○矢島恒夫君 私は、
日本共産党を代表して、
政府財政演説の主要な柱となっている
雇用対策、
産業対策、
景気回復の問題について
質問いたします。
雇用情勢の悪化は、今や危機的事態となっていると言っても過言ではありません。四月の完全
失業率は過去最悪の四・八%、完全
失業者数は三百四十二万人で過去最多を更新しました。男性の完全
失業者は五月で二百七万人と、一九五三年以来最高となり、
企業倒産や
リストラで職を失った非自発的離職者も百万人台を推移しています。
経済苦を理由とする自殺者は七割増と急増し、昨年一年間の自殺者が初めて三万人を超えました。一家の大黒柱である四十代、五十代の
増加が最も著しく、残された家族のことも含めて、言語に絶する悲惨な
状況そのものではないでしょうか。
景気回復について、
政府は、ことし一—三月期のプラス一・九%
成長を評価しましたが、公共
事業の集中発注などによる上げ底
成長となっていることを見なければなりません。判断を見誤ることなく、
雇用不安と消費減退が悪循環となって、さらなる
景気後退へと転落しないために、真に
効果的な
雇用対策こそが今求められているのです。
雇用対策は待ったなしの緊急の課題であって、全力を投入すべきことは異論のないところだと思います。また、それは
国民生活と
景気回復に役立つものでなければなりません。この考えは同じかどうか、
総理の
認識について
答弁を求めます。
総理は、五月一日、シカゴ大学で、
企業が
競争力を持つためには、残念ながら
失業率がまだ若干
増加せざるを得ないと、驚くべき発言をしました。私は、これを聞いて愕然としました。何と冷たい言葉ではありませんか。
長年勤めた会社から
リストラされるなど、不況の波が中高年層に重くのしかかって、中には自殺にまで追い込まれる。学業を続けたくても、親が解雇され、家庭の
経済的理由で退学を余儀なくされた高校生が百八十九校で二百六十一人と、半年間で約四倍に
増加しています。
調査した全国私教連の先生は、氷山の一角、実際はもっと深刻だと述べています。
総理、この現実をいつまで放置するのですか。一体、これ以上
失業がふえても仕方がないというのですか。
雇用状況を把握するには、大
企業の
リストラ合理化
対策を見ればはっきりします。九四年から九八年の間に、東証上場
企業だけで、その
従業員の約一割に当たる四十九万人もの人減らしが行われています。さらに、新聞報道にあるだけでも、ソニー一万七千人、三菱電機一万四千五百人、日立製作所六千五百人、日産自動車五千人などなど、大合理化
計画が次々と発表されているではありませんか。
総理、これを野放しにするおつもりですか。これで、どうして
雇用創出ができますか。
小渕内閣は、六月十一日、
雇用対策とあわせて
産業競争力強化対策をセットで決定しました。このもとになっているのは、言うまでもなく、
総理が鳴り物入りで発足させた
産業競争力会議の議論です。この
産業競争力会議は、
民間からは財界、経団連代表だけで構成され、
労働側代表や学識経験者は一人もいません。
経団連の今井会長は、五月十日の記者会見で、
日本が思い切った
競争力を手がけるなら、
失業率が若干ふえるのはやむを得ないと言い切っています。
産業競争力会議は
失業増加推進
会議ではありませんか。
産業競争力会議が行おうとしている
企業支援策が
雇用削減をもたらさないと言えるのでしょうか。設備廃棄を行えば、どう考えても、
雇用削減につながるのではないですか。明確な
答弁を求めます。
大
企業が国際
競争力を強化するためとして、過剰
雇用の削減、すなわち大
規模な人減らし合理化を行うとしたら、絶えず
失業者を生み出し、その結果、消費不況はますます悪化し続ける、これは最悪の悪循環ではありませんか。与謝野通産
大臣が、全部の会社が
リストラをやるということは全部の会社で不況運動をやっているのと同じことで、いわば合成の誤謬だと
国会答弁で述べたほどであります。
総理、大
企業を先頭にした
リストラの連鎖がまさに不況運動となっていくと、一層暗い消費不況のトンネルに入り込むことは明らかであります。消費不況を脱却するためには、大
企業リストラ合理化によって、一時的にせよ人減らしをさせることがあってはならないのではありませんか。大
企業による不況運動をこそ食いとめる、この考えを表明すべきではありませんか。
総理の
答弁を求めます。
次に、
補正予算案の
内容について
質問します。
政府の
計画では、七十万人の
雇用を
創出するとの目標を打ち出しています。果たしてそのような
雇用創出が今度の
補正予算で実現可能なのですか。
まず、九百億円を予定している
民間企業による
緊急雇用対策です。昨年度の第三次
補正予算でスタートした百万人
雇用対策の実績はどうですか。例えば、ことし二月にスタートした沖縄の実例では、六月時点で実績はわずかに二十一人ではありませんか。
成長十五分野で
雇用創出を図るとして十五万人を見込んでいますが、最大の情報通信
産業であるNTTは、この五年間で七万七千人も減らしているではありませんか。情報通信
産業全体では十数万人も減っているのが現状です。こうした厳しい
リストラを放置しておいて、どうして
雇用創出ができるのか、
政府の確たる
計画を示していただきたい。
都道府県の申請に基づいて交付することになる
緊急地域雇用特別交付金は、なぜ一年あるいは二年間に限定するのですか。失対
事業の轍を踏まない、このことを強調しているのですが、これで
新規雇用・就業を生じる
効果が期待できますか。また、
民間委託に偏重するなら、
雇用創出に結びつきにくいという結果となりませんか。
労働大臣の
答弁を求めます。
また、
少子化対策特別交付金として、二千億円余の
予算額で市町村による駅前保育ステーションの
設置などが例示されていますが、待機児童解消にどれだけの実効性と継続性を持ち得るのか、その保障は甚だ疑問であります。肝心なのは、働く職員のための財源であります。これが手当てされなければ、
雇用の
増加に結びつきません。職員確保のための財源は準備されているのかどうか、そして、この
施策によって一体どれだけの
新規雇用を見込んでいるのか、
答弁を求めます。
経済界からは早くもさらなる
景気対策をとの声が上がっていますが、
経済界が要望しているような、またぞろ大型公共
事業の積み増しなど頭に描いているのか、
大蔵大臣の
答弁を求めます。
日本共産党は、
雇用対策は緊急課題であるとして、積極的提言を行ってまいりました。それは、大きく三本の柱から成っております。第一は、大
企業の
リストラ解雇規制、第二は、サービス残業や長時間
労働の規制によって
雇用を
創出する、第三は、介護、教育、防災など必要とされる公的分野で
雇用創出を図るというものであります。
民間部門での
雇用拡大のためには、大
企業の身勝手な
リストラを規制しないでどうしてできるでしょうか。
政府の
対策は、
雇用対策といいながら、大
企業の人減らし、
リストラ、合理化には、何ら規制を行わないどころか、容認そのものではありませんか。我が党は、解雇規制
法案を既に議員立法として提案しておりますので、この提案に対する
総理の見解を求めます。
日本共産党は、
我が国の異常なサービス残業や長時間
労働にメスを入れるべきだと考えています。
政府の統計でも、
日本の
労働者は、ドイツの
労働者と比較して、年間約三カ月分も長く働いているのであります。さらに、
日本にはサービス残業という先進国では考えられないこともまかり通っております。
リストラを合理化する
雇用の過剰というのは、こうしたサービス残業や異常な長時間
労働を前提とした議論にほかなりません。
日本の異常なサービス
労働や長時間
労働を国際水準並みにすれば、
雇用拡大は十分に可能であります。
財団法人の
社会経済生産性本部が試算した
雇用拡大の
数字が五月に発表されました。それによると、サービス残業の削減によって九十万人、残業ゼロによって二百六十万人の
雇用拡大が実現することになります。これは、四月の完全
失業者三百四十二万人の七六%をも吸収できる
規模になるのですが、
労働省はこうした試算を行ったことがありますか。
雇用拡大を言うのであれば、
日本の異常なサービス残業や長時間
労働にメスを入れるべきではありませんか。
答弁を求めます。
また、自治体での
雇用を問題にするのであれば、今どれだけの公務員が必要とされているのか、この問題を真剣に検討すべきであります。来年スタートする予定の介護保険は、厚生省の試算でも、介護が必要な高齢者すべてにサービスを提供するためには、あと二十五万人のホームヘルパーが必要であります。三十人学級の実施には、日経連の百万人
雇用創出提言でも、あと十万人の教員が必要としています。消防職員も、最低限の消防基準よりもなお六万人不足しているのです。
国際的に見ても、
日本の公務員は諸外国に比べて極めて少ないのが現状であります。
国民の安全、安心という見地から見たとき、こうした人員を確保することは急務であります。
国民生活を守る公務員の
雇用を抜本的に拡大すべきです。
答弁を求めます。
もう一つは、
中小企業の問題であります。倒産の防止、
雇用の拡大のためにも、
中小企業への貸し渋り
対策が不可欠であります。ところが、銀行の貸し出しは、日銀発表では、この六月実績で五・七%減と過去最悪ではありませんか。三月に行った大銀行への公的資金投入で貸し渋り解消を各銀行とも約束したのが、軒並み未達成ではありませんか。十五行中八行で未達成額が総額で七千百五十四億円に上っているではありませんか。これでは、公的資金を何兆円投入しても、決して
景気回復にはつながりません。
総理、大銀行の貸し渋りはやめさせると、この場で
国民と中小業者に約束することはできますか。
答弁を求めます。
最後に、私は、
小渕内閣の
産業競争力強化策とそのための
雇用対策が、大
企業による
リストラという名の不況運動促進となることを厳しく指摘するものであります。この結果、橋本
内閣の九兆円負担増によってもたらされた戦後最悪の消費不況を一層加速させ、さらなる大失政となりはしませんか。
総理、こうした心配は一切ないと言うのなら、その根拠を明確に示していただきたい。この
答弁を求めて、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣小渕恵三君
登壇〕