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1999-05-13 第145回国会 衆議院 本会議 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月十三日(木曜日)     ―――――――――――――  議事日程 第二十号   平成十一年五月十三日     午後一時開議  第一 電波法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  第二 郵便法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  第三 核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)     ――――――――――――― ○本日の会議に付した案件  株価算定委員会委員任命につき同意を求めるの件  日程第一 電波法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  日程第二 郵便法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  日程第三 核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案内閣提出)の趣旨説明及び質疑     午後一時三分開議
  2. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。      ――――◇―――――  株価算定委員会委員任命につき同意を求めるの件
  3. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) お諮りいたします。  内閣から、  株価算定委員会委員鈴木豊君を 任命することについて、本院の同意を得たいとの申し出があります。右申し出のとおり同意を与えるに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  4. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。      ――――◇―――――  日程第一 電波法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  日程第二 郵便法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付
  5. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第一、電波法の一部を改正する法律案日程第二、郵便法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。  委員長報告を求めます。逓信委員長中沢健次君。     ―――――――――――――  電波法の一部を改正する法律案及び同報告書  郵便法の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     ―――――――――――――     〔中沢健次登壇
  6. 中沢健次

    中沢健次君 ただいま議題となりました両案につきまして、逓信委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  まず、電波法の一部を改正する法律案は、航空無線通信多様化に対処するため、航空機地球局等について電気通信業務を行うこと以外のことを目的としても開設することができるようにすることとし、あわせて、国際電気通信連合憲章規定する無線通信規則等改正に伴い、海上における遭難通信等に関する規定整備をするとともに、無線局の増加の状況等にかんがみ、電波利用料の金額を引き下げるものであります。  次に、郵便法の一部を改正する法律案は、郵便の利便の向上を図るため、郵便利用者郵便に関する料金の納付を他の者に委託して行うことができるようにするものであります。  両案は、いずれも四月十四日参議院より送付され、四月二十七日本委員会に付託され、四月二十八日野田郵政大臣から提案理由説明を聴取し、昨五月十二日質疑を行い、採決の結果、両案は全会一致をもってそれぞれ原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     ―――――――――――――
  7. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 両案を一括して採決いたします。  両案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、両案とも委員長報告のとおり可決いたしました。      ――――◇―――――  日程第三 核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出
  9. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第三、核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。科学技術委員長北側一雄君。     ―――――――――――――  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     ―――――――――――――     〔北側一雄登壇
  10. 北側一雄

    北側一雄君 ただいま議題となりました核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、科学技術委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、核兵器の不拡散に関する条約第三条1及び4の規定実施に関する日本国政府国際原子力機関との間の協定の追加議定書の的確かつ円滑な実施確保するとともに、今後増大する保障措置業務量に対応することのほか、使用済み燃料貯蔵を安全かつ計画的に行うため、所要措置を講ずるもので、その主な内容は、  第一に、追加議定書附属書Ⅰに掲げられた活動国際特定活動とし、内閣総理大臣への届け出制度を設けることとしております。  第二に、追加議定書の定めるところにより、国際原子力機関からの要請にこたえるため、内閣総理大臣は、関係者から報告を徴収することができること、また、国際原子力機関の指定する者は、政府職員の立ち会いのもとに、その指定する立入検査等ができることとするとともに、内閣総理大臣も同様の立入検査等ができることとしております。  第三に、国際規制物資使用者等は、内閣総理大臣が定期に行う保障措置検査を受けなければならないこととするとともに、内閣総理大臣は、その指定する者に、保障措置検査等実施業務の全部または一部を行わせることができることとしております。  第四に、使用済み燃料貯蔵事業を行おうとする者は、通商産業大臣許可を受けなければならないこととし、その許可を行うに際しては、原子力委員会及び原子力安全委員会意見を聞き、これを十分に尊重して許可を行わなければならないこととしております。  また、貯蔵事業許可を受けた者に対しては、使用済み燃料貯蔵施設について、その建設に先立って設計及び工事の方法につき通商産業大臣の認可を受け、かつ、その使用前に通商産業大臣検査に合格することを義務づける等の規制を行うこととしております。  本案は、去る二月五日本院に提出され、四月十六日本会議において趣旨説明及び質疑が行われた後、同日本委員会に付託されました。  委員会におきましては、同日有馬国務大臣から提案理由説明を聴取し、四月二十三日から質疑に入り、二十七日参考人から意見を聴取し、二十八日には、審査に資するため、原子力発電所における使用済み燃料貯蔵状況について現地視察を行いました。五月七日に続き十二日に質疑を行い、特に、保障措置強化国内原子力産業への影響、使用済み燃料貯蔵核燃料サイクル上の位置づけ等の問題に関し、活発な議論が交わされました。  かくて、同日質疑を終了し、討論を行い、採決の結果、本案賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決をした次第であります。  なお、本案に対し附帯決議が付されました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     ―――――――――――――
  11. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 採決いたします。  本案委員長報告は可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  12. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ――――◇―――――  地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案内閣提出)の趣旨説明
  13. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) この際、内閣提出地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案について、趣旨説明を求めます。自治大臣野田毅君。     〔国務大臣野田毅登壇
  14. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案趣旨について御説明いたします。  地方分権推進は、二十一世紀を迎えるに当たって、新しい時代にふさわしい我が国基本的な行政システム構築しようとするものであります。  これまでの行政システムは、全国的統一性公平性を重視したものであり、我が国近代化、第二次大戦後の復興や経済成長を達成するために一定の効果を発揮してきたものでありますが、今日においては、国民意識価値観も大きく変化し、生活の質の向上や、個性的で多様性に富んだ国民生活実現に資するシステム構築が、強く求められております。  このためには、国は本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねること、並びに、地方公共団体自主性及び自立性が十分に発揮されるようにすることを基本とする、国と地方の新しいシステムに転換する必要があります。  このような趣旨は、既に平成五年六月に衆参両院において行われた地方分権推進に関する決議において明らかにされております。これを受けて制定された地方分権推進法に基づいて地方分権推進委員会勧告が行われ、昨年五月、政府として地方分権推進計画を作成し、国会報告したところであります。  この法律案は、地方分権推進計画を踏まえ、さらに地方分権推進する観点から検討を進め、地方自治法を初めとする関係法律四百七十五件について、必要な改正を行おうとするものであります。  第一に、国と地方公共団体との関係について、新しい関係を築くため、都道府県知事市町村長を国の機関として国の事務を処理させる仕組みである機関委任事務制度を廃止することとしております。  これに伴い、地方公共団体に対する国の包括的な指揮監督権等機関委任事務に係る根幹的な制度を定める地方自治法改正を行うとともに、個々機関委任事務を定めている関係法律改正を行い、地方公共団体が処理する事務を、自治事務法定受託事務とに区分することとしております。  また、機関委任事務制度を前提として成り立ってきた地方事務官制度は、これに伴い廃止することとし、地方事務官が従事することとされている事務については、厚生事務官及び労働事務官が行うこととし、そのため、国の地方出先機関を再編することとしております。  第二に、法定主義原則一般法主義原則、公正、透明の原則に基づき、地方公共団体に対する国または都道府県関与見直し整備を行うこととしております。  このため、地方自治法において、関与に係る基本原則、新たな事務区分ごと関与基本類型関与手続及び関与に係る係争処理手続を定めるとともに、個々法律における関与基本類型に沿った必要最小限のものにするべく、所要改正を行うこととしております。  第三に、国の権限都道府県に、また都道府県権限市町村に移譲するため、関係法律において所要改正を行うこととしております。  これに関連して、地方自治法等改正により、二十万以上の人口規模を有する市を当該市からの申し出に基づき指定することにより、権限をまとめて移譲する特例市制度を創設することとしております。  第四に、地方公共団体自主組織権を尊重し、行政総合化効率化を進めるため、必置規制の廃止または緩和を行うこととしております。  第五に、市町村合併推進地方議会活性化、中核市の指定要件緩和等地方公共団体行財政能力の一層の向上行政体制整備確立を進めることとしております。  以上が、地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案趣旨であります。(拍手)      ――――◇―――――  地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  15. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。虎島和夫君。     〔虎島和夫登壇
  16. 虎島和夫

    虎島和夫君 私は、自由民主党並びに自由党を代表いたしまして、先ほど趣旨説明がございました地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案につきまして、総理及び関係閣僚に対して質問を行います。  戦後、日本国憲法制定され、その中に地方自治の一章が設けられました。地方自治の本旨に基づいて、我が国の新しい地方自治がスタートすることになったのであります。  以後、半世紀が過ぎました。この間、地方時代を開こうと、願望と期待を込め久しく論じられてきましたが、戦前から続く機関委任事務制度を初めとして、さまざまな面で国の地方に対する関与が強く、私の地方自治に実際に携わった経験から見ても、まだまだ真の意味での地方自治には、ほど遠いものがあったものと思っております。  現在、我が国の内外の社会経済情勢は激しく変化しており、あらゆる分野における構造改革が喫緊の課題となっております。行政についても、生活の質の向上を求める国民の声、地域の個性を大切にした地域づくり必要性などが叫ばれる中で、これまでの中央集権の色が濃い制度では、もはや迅速的確に対応できない状態となってまいりました。  二十一世紀という新しい世紀を迎えようとする今、新しい行政システム構築が求められております。地方分権推進は、中央省庁改革と並んでその大きな柱であり、国と地方あり方そのもの、まさにこの国の政治の形をつくり直そうとするものであります。  我が党は、平成五年六月の本院において、地方分権推進に関する決議を行って以来、常にこの課題について、中心的かつ積極的な役割を果たしてまいりました。平成七年の地方分権推進法制定地方分権推進委員会の五次にわたる勧告地方分権推進計画の策定など、地方分権推進に向けた取り組みが着々と進められ、今回、その一つ到達点ともいうべき地方分権一括法案国会に提出されましたことは、まことに意義深いものがあります。この間の関係各位の御尽力に、心からの敬意を表したいと存じます。  また、このたび情報公開法が成立いたしました。既に一部の地方公共団体においては情報公開条例制定されておりますが、この法律の成立により、一層条例制定が促進されるものと期待されます。  情報公開制度は、行政住民との垣根を払い、民主主義基本である住民の声を行政に的確に反映させるため、有効な手段となるものです。住民自治意識の高揚にとっても、大きな意義があるものと考えます。そうした意味において、地方分権推進情報公開制度充実は、住民の参画による個性的で魅力ある地域づくりを進める上で、相乗的な効果を発揮することになるでありましょう。  今回提出された地方分権一括法案が早期に成立することを強く願いつつ、まず総理に、今まさに地方分権を進めるに当たって、その基本的な考え方をお聞かせいただきたいと思います。  まず、地方分権に関連して、どのように今後の行政が変わっていくのかという点についてお伺いいたしたいと思います。  地方分権は、行政システムの大きな転換でありますが、それはあくまでも手段であります。それによって国民住民生活をいかに豊かなものにし、充実させていくのかが目的であります。これについて、二つの面からお伺いいたすものであります。  一つは、今後、地球環境の悪化が懸念され、少子化の傾向が続き、高齢社会が展開する中で、国民すべてが安心して暮らせるような社会にしていかなければなりません。  我が党は、二十一世紀は、幅広い国民参加の成熟した高度環境福祉国家としての日本国を築き上げたいと決意しております。そのためにも、住民に直接接している地方公共団体権限責任を持って環境福祉を行える体制が必要であり、まさに地方分権が求められた大きな理由一つがそこにあります。今回の地方分権一括法により、今後の環境福祉施策はどのように変わっていくのか、総理にお伺いするものでございます。  次に、総理が提唱された生活空間倍増プランに関連してお尋ねをいたします。  国民多様化した価値観をそれぞれに生かして、ゆとりと潤いのある活動ができるよう、生活の質の向上を図り、将来の夢の実現を目指していくことが重要であるとの総理考え方に基づき、政府は、去る一月二十九日に、国民のさまざまな活動の場としての生活空間倍増に向けた基本政策を策定したところであります。  また、これを推進するため、市町村が、広域的な連携等のもとに、主体的に生活空間倍増地域戦略プランを策定することとされておりますが、これについても、地方分権趣旨に照らし、地方自主性自立性が十分に発揮されるべきであると考えますけれども、この点は国土庁長官にお伺いするものでございます。  さて、地方分権推進は、同時に、国と地方公共団体役割分担を明確にし、国と地方の双方にとって行政改革につながるものでなければなりません。そこで、まず、今回の地方分権は、国全体の行政改革という観点からは、どのような効果が期待できるのか、総理のお考えをお聞かせいただきたいのであります。  次に、今回の一括法において、地方にさまざまな権限が移譲されることになります。しかし、地方行政機構肥大化をもたらすことになっては、住民の理解は得られません。単に国から地方への仕事の移しかえでは何にもなりません。国においても、中央省庁等改革により一府十二省庁に統合するとともに、公益法人見直しなどを進めようとしております。  地方行政に関しても、行政スリム化は不可欠であります。地方分権という趣旨からすれば、当然地方公共団体が自主的に、みずから行政改革を進めることが基本でありますけれども、地方自治制度を所管する立場から、地方行革についてどのように取り組まれるのか、さらに、現在の都道府県ないしは市町村規模は、分権の受け皿としては適正であるのか、適正なものとするためには、特に市町村合併の促進にどのような誘導支援措置を考えておられるのか、自治大臣にお伺いするものであります。  地方分権を進めるためには、国のコントロールの縮小や権限の移譲などとともに、地方公共団体の自主的な財源充実していくことが必要であることは言うまでもありません。そのためには、地方税充実基本であります。また同時に、地域間の税源のアンバランスを調整するための制度も重要であります。地方財源充実確保についての自治大臣基本的な考え方をお伺いするものであります。  さて、地方分権が進めば、地域のことは地域みずからが決めることが基本となることは申すまでもありません。一方で、国土の均衡ある発展を考えた場合、過疎地域、離島、半島などの条件不利地域においても、健全な地域社会を守っていくことは重要です。折しも、新農政の展開、二百海里海洋新時代を迎え、これらの地域が新しい役割を積極的に担っていく今日、国としての支援対応施策は、今後ますます必要であると考えておりますが、この点についての総理の御所見をお伺いするものであります。  以上、地方分権推進に関しまして、数点にわたって質問をしてまいりましたが、今回の地方分権推進は、明治維新、第二次大戦後の改革に続く第三の改革であり、今回の法案はその扉を開くものとなるでありましょう。今後、さらなる関係者の努力に期待して、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  17. 小渕恵三

    内閣総理大臣小渕恵三君) 虎島和夫議員にお答え申し上げます。  このたびの法律案につき、議員が実際に地方自治に携わりました経験を踏まえまして、種々お尋ねがありました。  まず、地方分権を進めるに当たりましての基本的考え方についてでありますが、地方分権は、二十一世紀にふさわしい我が国基本的行政システム構築するものであります。地方分権を積極的に推進し、明治以来形成されてきた国、都道府県市町村という縦の関係であります中央集権型行政システムを変革し、対等、協力の横の関係構築したいと考えております。  地方分権推進との関係で、今後の環境政策についてのお尋ねでありました。  国民それぞれが地域におきまして、良好で快適な生活環境確保を図っていけるよう支援していくことは、環境保全施策基本でもあります。今回の分権一括法によりまして、各地方公共団体が、この理念実現に向け、必要な環境保全施策をより自主的に展開できることになり、身近な地域において快適な生活環境確保が可能になるものと考えております。  地方分権推進との関係で、今後の福祉政策についてのお尋ねでありました。  個人が尊厳を持ち、地域においてその人らしく自立した生活を営むことができるように支援することが、社会福祉施策基本でもあります。今回の分権一括法によりまして、各地方公共団体が、この理念実現に向けまして、必要な福祉施策をより自主的に展開できることとなり、身近な地域においてきめ細かで多様な福祉サービス実施が可能になるものと考えております。  地方分権推進により期待できる国の行政改革効果についてのお尋ねでありましたが、地方分権推進は、新しい時代にふさわしい基本的な行政システム構築しようとするものであり、今日、我が国が取り組んでいる行政改革の大きな柱の一つでもあります。また、国と地方公共団体それぞれの役割が明確化し、国の関与必要最小限に限られることとなるため、国、地方を通じた行政簡素効率化が図られるものと考えております。  最後に、過疎地域などの条件不利地域振興についての御質問でありましたが、国土の均衡ある発展と健全な地域社会の維持は、重要な政策課題であると考えております。このため、さまざまな面で不利な条件にあるこれらの地域につきましては、地方公共団体の自主的、主体的な取り組み支援しつつ、今後とも引き続き、国としても、産業基盤生活環境整備等施策を進めてまいります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)     〔国務大臣野田毅登壇
  18. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 地方行革に対する取り組みについてのお尋ねであります。  御指摘のとおり、地方行革は、地方公共団体がみずからの責任で主体的に推進すべきものであります。政府としては、地方公共団体に対し、具体的な数値目標を設定し、これを住民に公表しながら進めるよう要請するとともに、主体的な地方行革を促すための行財政支援を積極的に行ってまいります。  次に、地方公共団体規模市町村合併についてのお尋ねであります。  基礎的自治体として住民への行政サービスの水準を高め、行政効率化を図るためにも、市町村合併を積極的に推進することが重要と考えております。このため、今回の法律案に、合併特例債の創設、合併算定がえの期間の延長、地域審議会の設置などの思い切った誘導支援措置を盛り込むこととしたところであります。  次に、地方税財源についてのお尋ねでありますが、地方分権の進展に応じ、地方公共団体がより自主的、自立的な行財政運営を行えるようにするためには、地方公共団体財政基盤充実強化していくことが極めて重要であります。地方分権推進計画においては、地方における歳出規模地方税収入との乖離をできるだけ縮小するという視点に立って、地方税充実確保を図ることとされておるところであります。  今後、地方分権推進計画を踏まえ、税源偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系構築していくとともに、地方団体財源均衡化を図るための地方交付税確保に努め、地方税財源充実確保を図ってまいりたいと考えております。(拍手)     〔国務大臣関谷勝嗣君登壇
  19. 関谷勝嗣

    国務大臣関谷勝嗣君) 地域戦略プランにおける地方自主性自立性の発揮についてでありますが、地域戦略プランは、都市と地方の各地域がみずからテーマを選び、複数の市町村等が広域的な連携のもとに、関連施策間の連携が図られた総合的なプランを主体的に策定するものでございます。  地域戦略プラン推進に当たり、地方分権趣旨に照らして、地域の選択と責任に基づく自主的な地域づくりを進めることは、極めて重要なことと認識しており、このプランに対して、国としても、関係省庁が一体となった推進体制のもと、最大限の支援を行うことといたしております。  以上でございます。(拍手)     ―――――――――――――
  20. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 伊藤英成君。     〔伊藤英成君登壇
  21. 伊藤英成

    ○伊藤英成君 私は、民主党を代表して、ただいまの地方分権一括法案趣旨説明に対して、総理及び関係大臣質問いたします。  豊かな成熟社会の到来とともに、市民と地域の自律的なネットワークが社会の活力を形成する時代を迎えております。また、都市や地方住民が国境を越えて直接世界と結びつく時代でもあります。このような新しい時代には、地域自主性と市民自治のエネルギーが、社会のソフト面での重要な基盤を構成することとなります。二十一世紀の新しい国づくりの基本は、このような観点に立った分権改革を大胆に進めることにあると私は考えます。  分権改革とは、単なる制度改革行政システムの再編を意味するものではありません。国民住民の納める税金の使い道や行政サービスのあり方について、住民の監視が行き届き、住民がその決定に関与できる仕組みや環境をつくり上げることこそ重要であります。  つまり、分権改革目的は、地域の自己決定と自己責任という自治の基盤をつくり出すことにあります。これらの視点を欠いたまま国、地方の形をあれこれといじり回してみたり、効率優先の画一的な制度改革を上から押しつけるような議論は、見せかけの分権あって自治なしという状況をもたらすだけであって、今日求められている分権改革とは、全く異質のものと言わなければなりません。  さて、地方分権改革のための取り組みは、周知のように、一九九五年の地方分権推進法制定によって新たな一歩をしるしました。この法律によって発足した政府地方分権推進委員会は、九六年十二月に提出された第一次勧告で、機関委任事務の廃止と、国と地方との間の対等、協力関係の確立を高らかにうたい上げました。これはまさに明治近代化以来の中央集権システムを根底から変革する可能性を秘めた改革の始まりである、我々は、そのように大いに期待をしながら、委員会取り組みに注目し、これを積極的に応援してまいりました。  しかしながら、今般提出されましたいわゆる地方分権一括法案の内容は、余りにも期待外れのできばえと言わざるを得ません。  そこで、まず、総理の姿勢についてお尋ねいたします。総理は、今回の分権一括法案の取りまとめについて、一体何かイニシアチブを発揮してこられたのでしょうか。  昨年秋に提出された公共事業見直しについての委員会第五次勧告は、中央省庁がこぞって見直しに強く抵抗したために、国の直轄事業の縮減などについては具体的な改革案を盛り込むことができないという無残な結果に終わりました。この第五次勧告は、分権を通じて国の省庁スリム化したいという橋本前総理の指示を受けて、急遽検討に着手したものでしたが、後を受けた小渕総理が中央省庁の役人や与党議員の抵抗を抑えようとしなかったために、このような結果を招いたと言われております。  また、委員会で中心的役割を果たしてきた東大教授の西尾勝委員が、このことに抗議して昨年暮れに行政関係検討グループの座長を辞任するという事態も招きました。  私は、総理が昨年夏に就任して以来、この分権改革について何か積極的な役割を果たしたという事実を、寡聞にして存じ上げません。私は、冒頭申し上げましたような地方分権意義改革のビジョン、本法案到達点、残された課題について、総理がどのように認識をしておられるか、まずお聞きしておきたいと思います。  次に、具体的に法案の内容についてお尋ねします。  本法案の主な柱の一つは、機関委任事務制度の廃止と、それに伴う事務の再編成であります。  一八八八年の市制、町村制に端を発し、中央集権型行政システムの象徴となってきた機関委任事務制度を廃止し、それらのほとんどを、いわゆる現住所主義に基づいて自治体の事務と位置づけたことは、それだけでも百年ぶりの大転換であり、自治の時代への大きな一歩と評価したいと思います。  しかし、その自治体の事務自治事務法定受託事務への区分については、省庁の頑強な抵抗によって、原則として自治事務という考え方からは著しく後退を余儀なくされ、半分近い事務法定受託事務と区分され、また国の直接執行事務と区分されたものも少なくありません。総理は、このように半分近い事務法定受託事務に区分されたことについて、どのようにお考えでしょうか。  仮に、ひとまず法定受託事務に区分するとしても、数年間の期限を付し、その時点で引き続き法定受託事務に区分する必要があるか否かを再度国会で審議するというような形にして、できるだけ法定受託事務を減らして自治事務にしていくという努力をすべきではありませんか。  法定受託事務の定義そのものについても、法案規定された内容は、委員会勧告政府の計画から大きく変更されております。勧告では、法定受託事務とは、「事務の性質上、その実施が国の義務に属し国の行政機関が直接執行すべきではあるが、国民の利便性又は事務処理の効率性の観点から、地方公共団体が受託して行うこととされる事務」と定義されていましたが、法案では、そうした文言がどこかに消え去り、かわって、「国においてその適正な処理を特に確保する必要があるもの」という文言が挿入されました。これは、引き続き国が、自治体の処理する事務に対して広範に関与することを予定する定義にほかなりません。  このように、法定受託事務の定義を後ろ向きに変更したことについて、自治大臣はどのようにお考えでしょうか。  また、法案中、法定受託事務の指定を政令にゆだねているものが、条文数にして二百五十件近くにも上ります。法案を見ても、それが国の事務なのか自治体の事務なのか、自治事務なのか法定受託事務なのかがさっぱりわからないということでは、これからすぐに多数の条例制定しなければならない自治体も困るのではないかと思いますが、自治大臣、いかがでございましょうか。  次に、法案の二番目の柱である、国の自治体に対する関与のあり方についてお尋ねいたします。  法案は、機関委任事務の廃止に伴って、これまでの国から自治体に対する包括的な指揮監督を見直し、国から自治体への関与地方自治法に一般ルールとして規定するとともに、自治事務に対する国の権力的関与原則として否定することとしております。  ところが、その地方自治法自体が、自治事務の処理について各大臣から是正の要求があった場合に、自治体に是正改善の措置を講ずることを義務づけることとしております。このような自治事務についての自治体の是正改善義務は、現行法上存在せず、委員会勧告等にも、もちろん何ら盛り込まれていなかったものであります。  今回新設されようとしている地方自治法のこの規定は、明らかに自治事務に対する国の関与を現状よりも強化するものであり、地方分権推進趣旨に全く逆行するものと考えますが、自治大臣の見解をお尋ねします。  また、法案は、関与基本原則の中に、個別法上の関与規定必要最小限度のものにするために限定を設けておりますが、自治事務についての国による代執行については、できる限り自治体が代執行を受けることとすることのないようにしなければならないと、極めてあいまいなルールゆえ、例えば建築基準法改正部分では、現行法上も存在しなかった国の直接執行制度が新たに設けられることとなっております。  このような自治事務に対する過度の関与規定や、これを許すあいまいな一般ルールは改めるべきと考えますが、自治大臣の見解をお尋ねします。  さらに、法案では、国の自治体に対する関与について、自治体の執行機関が、新たに創設される第三者機関である国地方係争処理委員会審査申し出を行い、勧告等を受けることができることとされております。しかし、法案のような内容では、この機関の位置づけは十分な独立性を持つものとは言えず、またその権限も、勧告という権威を欠くものにとどまっていることは否定できません。  私は、この機関を少なくとも国家行政組織法の三条委員会に格上げするとともに、分権推進委員会で検討されていたように、勧告ではなく裁定を行う権限を持たせるなど、組織、権限の強化を図ることが必要と考えますが、自治大臣の見解をお尋ねいたします。  次に、権限移譲、税財源移譲問題についてお尋ねします。  法案では、本来、地方分権の大きな柱の一つであるはずの、国から都道府県都道府県から市町村への権限移譲については、狂犬病予防法などわずか三十五法律改正にとどまっております。  とりわけ大きな問題は、冒頭でも述べましたように、委員会の第五次勧告で検討課題となった国の直轄公共事業の範囲の限定について、著しい後退を余儀なくされていることであります。今回の法案では、わずかに運輸省関係の港湾法改正部分で第五次勧告関連の改正項目が盛り込まれたにとどまっており、それとても、直轄事業を明確に限定したものとは必ずしも読めません。  国は、全国的な規模でもしくは全国的な視点に立って行わなければならない施策及び事業実施等を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねるとした今回の地方自治法改正趣旨との間に、著しい乖離があると言わざるを得ません。  国のひもつきでない統合補助金制度の創設などを含め、国の公共事業の大幅な見直しを速やかに行うべきと考えますが、この点について総理の御見解をお尋ねいたします。(拍手)  国から地方への税財源の移譲については、これまた大蔵省などの抵抗が強く、今回の法案では全く触れられておりません。国、自治体間の租税収入と歳出総額の乖離を縮小する方向で、個人所得課税を初めとする基幹税目について税源配分を抜本的に見直しし、地方充実した自主財源確保を図ることが今後の大きな課題であると考えますが、自治大臣の見解をお尋ねいたします。  最後に、地方事務官問題についてお尋ねします。  法案では、戦後五十年以上にわたって暫定的に地方事務官が従事するとされてきた社会保険と職業安定に関する機関委任事務を廃止し、これらを国の直接執行事務とすること、そして地方事務官を廃止し、国の職員とするとしています。  しかし、これらを国の直接執行事務とすることは、地方分権推進に逆行し、中央省庁スリム化に反するものと考えます。社会保険行政など住民に身近な行政サービスは、地域住民の利便性向上を一番に考えれば、身近な自治体で行うべきと考えます。  現在、全国三千三百の自治体の窓口と三百十二の社会保険事務所で行われている社会保険事務を、専ら社会保険事務所だけで行うとすれば、結局、国の出先機関を拡大しないと対応できないのではないでしょうか。また、保険料未納や制度未加入による国民年金の空洞化が、一層進むことも大いに懸念されます。  行政サービスの低下や住民の利便性が著しく後退することが心配される今回の国の直接執行事務について、果たしてどこが地方分権推進行政改革なのか、総理の御見解を伺います。  また、国の直接執行事務により、具体的にどのように行政サービス向上し、住民にとってどのような利点があるとお考えか、厚生大臣の答弁を求めます。  以上申し上げましたとおり、本法案は、地方分権推進にとって半歩前進をもたらすものであることは率直に評価申し上げますが、いずれにせよ、その内容は、本来の分権改革という目で見れば、著しく不十分と言わざるを得ません。今後、その個別法改正部分も含めて十分な国会審議を行い、よりよいものに仕上げていくことが国会の使命であることを申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  22. 小渕恵三

    内閣総理大臣小渕恵三君) 伊藤英成議員にお答え申し上げます。  まず、地方分権改革推進のための私のイニシアチブについてお尋ねがありました。  地方分権は、二十一世紀にふさわしい我が国基本的な行政システム構築するものであります。私は、地方分権は今や実行の段階を迎えていると認識をいたしており、就任以来、積極的にこれに取り組んできたところであります。本法案は今国会においてぜひとも成立させていただき、地方分権を具体的な形で進めてまいりたいと考えております。  地方分権意義及び改良のビジョン、本法案到達点及び残された課題についてお尋ねがありました。  地方分権推進は、二十一世紀を迎えるに当たって新しい時代にふさわしい我が国基本的行政システム構築しようとするものでございます。国は本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方にゆだねるとともに、地方公共団体自主性自立性が十分に発揮されるようにすることが必要であると思います。  このため、本法案におきましては、国と地方役割分担のあり方を規定するとともに、これまで我が国中央集権型行政システムの中核的部分を形成してきたと言われる機関委任事務制度の廃止や、国の関与のあり方の見直し等の抜本的な改革を行うことといたしております。  この法案平成五年の国会決議以来の一つ到達点ととらえた上で、引き続き、地方分権推進計画等を踏まえた事務権限の移譲や税財源充実確保など、地方分権推進に積極的に取り組んでまいります。  法定受託事務の区分についてお尋ねでしたが、地方分権推進委員会におきまして、法定受託事務となるべき事務についてのメルクマールを定め、地方分権推進観点に立って精力的に御審議をいただいたものであります。今回の法案作成に当たりましては、地方分権推進委員会勧告を最大限尊重して閣議決定いたしました地方分権推進計画に即して事務の区分を行ったところでありますが、将来にわたりまして、法定受託事務の創設は厳に抑制してまいりたいと考えております。  第五次勧告に関するお尋ねでしたが、本法案は、地方分権推進委員会の第一次から第四次までの勧告を踏まえたものでありまして、直轄事業の範囲の見直しや統合的な補助金の創設等、第五次勧告に盛り込まれた事項については、先般閣議決定をいたしました第二次地方分権推進計画に沿って、今後、着実に実施してまいる所存でございます。  地方事務官が従事する事務についてお尋ねでありました。  そもそも、国と地方公共団体がそれぞれの役割に応じて事務分担することが、責任の所在を明確にし、ひいては地方分権に資するものと考えられます。社会保険関係事務は国が経営責任を負う保険事業であり、一体的な事務処理による効率的な運営が要請されるものであることから、また、職業安定関係事務は国の機関である公共職業安定所に対する指揮監督等の事務であることから、国の直接執行事務とすることとしたものであります。  また、今後とも、事務の執行に当たりましては、効率的な事務処理体制整備に努めるとともに、行政サービスの水準や住民の利便性に十分配慮してまいりたいと考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)     〔国務大臣野田毅登壇
  23. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 法定受託事務の定義についてのお尋ねでございます。  今回の法案における定義は、法定受託事務が、その適正な処理を確保することに国として相対的に高い責任と関心を有する事務であるという性格を、文言上、より明確に表現したものであり、実質的な内容の変更を伴うものではありません。したがって、この定義により、法定受託事務に対する国の関与のあり方が変わるものではありません。  次に、地方公共団体条例制定作業についてのお尋ねであります。  政令による事務の区分もまた、地方分権推進計画に即して行われるものであり、自治事務であるか法定受託事務であるかは、実際上は既にほとんどが明らかになっておるものであります。したがって、政令の改正は本法案の成立後となりますが、このことが直ちに条例制定作業に影響を与えるものではないと考えております。なお、今回の法改正に伴う政省令の改正所要の作業を速やかに進め、条例制定作業に影響を与えないよう努力してまいりたいと考えております。  次に、自治事務に対する是正の要求についてのお尋ねであります。  地方公共団体の違法な事務処理等が自主的に是正されることが期待できないような場合には、国等が何らかの形で関与することも必要と考えております。是正の要求は、このような意味で設けられた規定でありますが、自治事務に対する関与であることを考慮して、是正改善の具体的措置内容については、地方公共団体の裁量にゆだねるなど、必要最小限のものとするとともに、係争処理手続の対象としているところであります。  次に、代執行についてのお尋ねであります。  地方自治法上の一般的な根拠規定は、法定受託事務のみを対象とするものであります。自治事務に関しては、関与基本原則として、できる限り代執行の制度を設けることのないようにしなければならないことを規定しているところであり、今後の個別法の制定改正も、この基本原則に沿って行われることとなるものであります。  なお、御質問の建築基準法については、地方分権推進委員会の議論を踏まえて、国の利害に重大な関係がある場合に限定する形で今回設けることとしたものと承知いたしております。  次に、国地方係争処理委員会の組織及び権限についてのお尋ねでございます。  委員の任命に国会同意が必要であることや、委員の身分保障があることなどにより、組織としての独立性や職権行使の公平中立性は十分に確保することができるものと考えております。また、関与を行った国の行政庁は、勧告に即して必要な措置を講ずることが制度上強く期待されており、最終的には司法判断による解決が図られることになっておりますことから、係争処理手続としての実効性は高いものと考えております。  最後に、地方税財源充実についてのお尋ねでございます。  地方分権の進展に応じて、地方団体がより自主的、自立的な行財政運営を行えるようにするためには、地方団体財政基盤充実強化していくことが極めて重要であることは、御指摘のとおりでございます。  地方分権推進計画においては、地方における歳出規模地方税収入との乖離をできるだけ縮小するという視点に立って、地方税充実確保を図ることとされ、また、国と地方公共団体との役割分担を踏まえつつ、国と地方税源配分のあり方についても検討しながら、地方税充実確保を図ることとされているところであります。  今後、地方分権推進計画を踏まえ、所得、消費、資産等の間におけるバランスのとれた地方税体系や、税源偏在性が少なく税収の安定性を備えた地方税体系構築などに努め、地方税源の充実確保を図ってまいりたいと考えております。(拍手)     〔国務大臣宮下創平君登壇
  24. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 社会保険に関する機関委任事務を国の直接執行事務にすることについてのお尋ねでございますが、地方事務官が行っておる政府管掌健康保険や厚生年金保険等の事務につきましては、国の直接執行事務となっても、社会保険事務所で事務を行う方式は従来と変わらないため、事業主、受給者等の利便性は、引き続き確保されるものと考えております。  また、地方事務官は、現在、国家公務員試験の合格者から採用された国家公務員であり、その定員も国家公務員の総数に算入されており、地方事務官制度を廃止して厚生事務官といたしましても、国家公務員の総数が増加するわけではございません。したがって、地方事務官制度を廃止した場合においても、行政サービスの水準や住民の方々の利便性は十分確保されるものと考えております。  国民年金事務につきましては、現在、年金手帳の作成等都道府県知事機関委任されている事務を除き、市町村機関委任事務とされておりますが、市町村機関委任されている事務につきましては、今回の改正市町村法定受託事務とすることといたしております。  ただし、保険料の納付方法につきましては、現在印紙納付方式をとっておりますが、被保険者の保険料納付方法の実態にかんがみ、保険料の印紙納付方式を廃止いたしまして、金融機関を通じて直接国に納付することに改め、保険料の納付方式の改善を図ることといたしております。これに伴い、保険料を取り扱うことのできる金融機関の窓口を拡大するなど、被保険者の一層の便宜を図る措置をあわせ講ずることといたしております。  以上、御答弁申し上げました。(拍手)     ―――――――――――――
  25. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 桝屋敬悟君。     〔桝屋敬悟君登壇
  26. 桝屋敬悟

    ○桝屋敬悟君 私は、ただいま議題となりましたいわゆる地方分権推進一括法案に対し、公明党・改革クラブを代表して質問を行います。  地方分権の一番の課題は、国あっての地方ではなく、地域の集まりが国であるという、つまり、国と地方を対等、協力関係に転換することにあると私どもは考えております。すなわち、産業や雇用などの政策権限や、それに伴う財源地方へ移譲することで、地域から国をつくり直すことが求められているわけであります。  個性豊かで活力あふれる地域づくりの第一歩は、住民に身近な行政はできる限り身近な地方自治体が処理することにあります。この哲学のもと、諸井委員長を初めとする地方分権推進委員会の皆様が、血のにじむような御努力をされて、第五次にわたる勧告を取りまとめられたことに対しましては、心から敬意を表したいと思います。  しかし、この勧告を受けて作成されたはずの地方分権推進計画、そしてこの計画に基づいて作成されました今回の法案の内容を見ますと、国から地方への権限移譲は少ないというのが実感であります。機関委任事務法定受託事務という名称で事実上残っておりますし、一番肝心な財源移譲の道筋も示されておりません。地方分権とは名ばかりだったとの汚点を後世に残さないためにも、そしてこの法案が実効性ある内容になるようにとの思いを込めまして、以下、順次質問を行います。  本法律案は、地方分権推進委員会の第一次から第四次までの勧告をもとに地方分権推進計画を作成し、その計画において四百七十五の法律にわたる改正一括法として取りまとめたものであります。一括法案の問題点として、第一に、個別根拠法の中身にわたる審議は不可能に近い、第二は、審査の目が粗くならざるを得ない等の問題点が指摘されています。一括法とした理由について、まず総理大臣にお尋ねをいたします。  平成八年三月に発表されました地方分権推進委員会の中間報告では、今回の地方分権は、明治維新、戦後改革に次ぐ第三の改革が成就できると記述されております。総理は、今回の地方分権一括法意義についてどのように認識されているのか、また、本案によって住民にどのようなメリットがあると認識されているのか、お伺いをいたします。  次に、今回の法案の柱である機関委任事務の廃止について質問いたします。  そもそも、機関委任事務の廃止の大きな目的は、国と自治体が上下、主従関係にあるものを対等、協力関係にすることがねらいとされていました。今回の措置で、国と自治体の関係が本当に大きく変わるのかどうか、総理の認識をお伺いいたします。  機関委任事務を廃止して自治事務法定受託事務に整理したことにより、地方自治体の事務処理体制はどのように変わり、さらには、国民地方自治体における窓口手続はより簡易になり、利便性も向上するのかどうか、国民にわかりやすく御説明願いたいと存じます。  機関委任事務から自治事務とされた事務について、今後は地方自治体が独自の判断で行うことは当然であります。そこで、省庁関与についても、この関与基本原則が額面どおりに実施されるとすれば、従来各省庁機関委任事務に関して行っていた業務はほとんどなくなるため、これらの事務について人員を常置する必要はなくなるはずであります。  したがって、行政改革によるスリム化の一環として、自治事務とされた機関委任事務に携わっていた職員分の定員を、計画的に削減するべきであると思いますが、総務庁長官の御見解をお伺いしたいと思います。  次に、自治事務法定受託事務について質問いたします。  当初は八割が自治事務になると見込まれていましたが、結局六割以下になってしまいました。この原因はどこにあると認識しているのか。また、地方分権推進委員会自治事務とすべきであると考えたものが、各省庁同意を得られずに法定受託事務とされたものはどのぐらいあるのか。それらについては、改めて国会の場において、いずれに区分するべきかを議論すべきであると私は考えます。これらの点について、あわせて自治大臣の答弁を求めます。  また、法定受託事務については、国が事務処理基準を作成することになっていますが、どういう基準で、いつまでに作成するのか。また、事務基準を余り細かく作成すると自治体の条例の自由度の範囲が狭められるので、余り細かいことまで規定すべきでないという意見もありますが、自治大臣の御見解をお伺いしたいと思います。  法定受託事務は、国が助言または勧告、協議、同意、指示等の関与をできることから、国は、従来の機関委任事務のように、地方をコントロールすることになるのではないかとの懸念があります。さらには、この法定受託事務が、法律規定されているものはともかく、政令でも定めることができるようになっていれば、幾らでもふやせることが可能であります。原則として政令では定めないようにするべきですが、これらの点についてどのように対処されようとしているのか、自治大臣の御見解をお伺いいたします。  次に、地方事務官制度の廃止について質問いたします。  地方事務官制度は、昭和二十二年の地方自治法制定の際に置かれました同法附則第八条にその法的根拠があり、同条は、「政令で定める事務に従事する都道府県の職員は、当分の間、なお、これを官吏とする。」と規定をしているわけであります。以来、この附則第八条は順次改正され、今日、国と地方の密接な連携を要する事務である社会保険関係事務及び職業安定関係事務の二つが残っているわけであります。  今回の一括法においては、地方分権推進委員会第三次勧告に基づき、ともに国の直接執行事務として、厚生事務官労働事務官とすることとされています。しかしながら、先ほども話がありましたが、行政改革観点から、政府は、行政の減量、効率化を図る上で、国家公務員の削減の方針を打ち出しているわけでありまして、このことに逆行しないのかどうか、総務庁長官の答弁を求めたいと思います。  特に、社会保険関係事務につきましては、地方自治体の医療、年金、福祉、介護等の政策と密接にかかわるものでありまして、国民年金の空洞化が言われている中で、国民の利便、効率性の観点から、都道府県法定受託事務とし、その事務地方公務員が処理する方が好ましいとの強い意見があります。  どちらにしても、国、地方連携は必要となるわけであり、地方分権の精神からしても、国民生活に直結する事務は、できるだけ住民に身近な地方団体事務を行うことが求められているのではないかと考えますが、総理の見解を伺いたいと思います。  なお、地方事務官制度をどうするかという議論を行う場合、現状の地方事務官の執行体制をつぶさに考えますと、社会保険関係事務と職業安定関係事務とでは、一律に議論できない点もあるのではないかと考えますが、あわせて総理の御見解を伺いたいと思います。  次に、国地方係争処理委員会についてお伺いをいたします。  国の地方公共団体に対する関与に、係争を処理する第三者機関として、国地方係争処理委員会が設置されることとなりますが、この委員会総理府に置くとしていますが、内閣の外部に設置しないで、なぜ総理府に置くことにしたのか。また、その委員会の位置づけは、国家行政組織法の三条機関、八条機関のどちらとして設置するのか。自治体側から見れば、国の行政機関として置かれること自体が非中立に映るのではないでしょうか。これらの点について、総理の見解を承りたいと存じます。  また、国地方係争処理委員会権限としては、当初、国の行政機関の長または地方公共団体の長等からの裁定の申し立てに対して裁定するという案でありました。しかし、何ら法的拘束力のない勧告にとどまりました。裁定から勧告になった理由と、権限の弱い委員会が係争処理に力を発揮できるのか、その効果が本当に期待できるのか、率直な所感を総理にお伺いしたいと思います。  次に、市町村合併についてお伺いいたします。  今回の法案では、地方公共団体行財政能力の一層の向上行政体制整備確立を進める、その具体策として、自主的な市町村合併推進することとしています。過日発表されました経済戦略会議の答申においては、全国三千二百の市町村を少なくとも千以下に減らすことを目標に、国は市町村合併を促進するための有効なインセンティブシステムの拡充について積極的に進めるとしているわけであります。  言うまでもなく、経済戦略会議は、小渕総理のもとで創設されました諮問機関であります。この戦略会議の内容と今回の法案の内容を比較すると、余りにも乖離があると思いますが、国は本気でリーダーシップをとって積極的に市町村合併を進めるのか、あるいは市町村同士の話し合いを第一義とするのかどうか、その基本方針について総理にお伺いしたいと存じます。  地方財源充実についてお伺いします。  平成十年五月二十九日に閣議決定されました地方分権推進計画には、地方財源充実確保について盛り込まれていました。しかし、今回の法案には入っておりません。地方財源に関する部分が法案化が見送られてしまえば、まさに仏つくって魂入れずで、幾ら権限を移譲しても、それに見合った財源が伴わなければ、地方自治体は、現実に住民サービスの向上を目指す仕事ができません。政府地方分権を真剣に推進する意思のない証左であるとの厳しい声もあります。  総理財源の部分について、いつ法案化するのでしょうか。その時期についてお尋ねいたします。  また、私ども公明党・改革クラブとしましては、こうした観点から、かねてより、総理のもとで内閣府に地方行財政改革会議を設置し、検討を進めるべきであることを主張しているわけでありますが、あわせて総理の御見解をお伺いいたします。  財源問題の一番のネックになっている、国庫補助金の整理合理化について質問いたします。  補助金交付は中央省庁の裁量の余地が大きく、地方自治体は、補助金を獲得するため、中央省庁への陳情合戦、いわゆる天下りの受け入れなどを行っている実態は、かねてから指摘されているところであります。補助金は、機関委任事務以上に、中央による地方統制の手段になっているのが実態であります。  そこで、お伺いいたします。  第一に、今後、政府として、どのように補助金の整理合理化を進めていくのか。  第二に、地方分権推進計画では、国庫補助金については五年を期限とするサンセット方式の導入、国庫負担金についてはおおむね十年ごとの基本的な見直しを行うとされましたが、これらの点については早急に法制化すべきではないか。  第三は、毎年補助金を整理しても、新たに補助金が創設されれば、ネットでは補助金は減らないことになります。この新規の補助金の抑制策について、政府はどのような方針を検討しておられるのか。  以上三点について、大蔵大臣及び総理の見解を承りたいと思います。  経済戦略会議の指摘にもあるように、現在の日本経済の不振の原因の一つは、地方経済の低迷に求められます。地方が中央政府依存から脱却することによって自立性を回復し、独自の産業、独自の地方文化がさまざまな地域から次々に生まれてくることができなければ、日本の将来展望はないと考えるものであります。このため、地方主権を確立するための改革の大きな第一歩に今回の法案がなることを強く期待し、質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  27. 小渕恵三

    内閣総理大臣小渕恵三君) 桝屋敬悟議員にお答え申し上げます。  議員からは、本法律案につきまして、地方自治、とりわけ福祉の第一線で御尽力された御経験を踏まえまして、種々の御質問があったものと拝察をいたしております。  そこで、まず、本法案の形式をなぜ一括法にしたかというお尋ねでありましたが、今回の地方分権一括法は、第一次から第四次までの地方分権推進委員会勧告を最大限尊重して作成した地方分権推進計画に基づくものであり、同一の趣旨目的を有するものであること、また、改正の大宗を占める機関委任事務の廃止及びこれに伴う事務区分の再構成や関与見直しについては、地方自治法で新たに規定される通則との整合性に配慮した関係法律整備が必要であり、これらの法律が相互に関連していて一つの体系を形づくっているものであることなどの理由で、一括法として立案したものであります。  本一括法意義及び住民メリットについてのお尋ねでありました。  地方分権は、今や実行の段階を迎えており、本法案を今国会においてぜひとも成立させていただくことによりまして、新しい時代にふさわしい我が国基本的な行政システム構築されるものと考えております。また、地方公共団体自主性自立性が高まることによりまして、地方公共団体住民の意向を踏まえて行政を進めることができるようになり、住民にとっても大きなメリットがあるものと考えております。  機関委任事務の廃止により、国と地方公共団体関係が変わるのかとのお尋ねでありましたが、今回の改正によりまして、我が国中央集権型行政システムの中核的部分を形成してきたと言われる機関委任事務制度が廃止をされ、国の包括的な指揮監督権にかわって、新たな関与のルールが定められることになります。この新しいシステムのもとでは、地方公共団体自主性自立性が大幅に高められ、国と地方公共団体との関係は、上下、主従の関係から大きく転換されるものと考えております。  機関委任事務の廃止による、地方自治体の事務処理体制の変化、国民負担の緩和、利便性の向上についてのお尋ねがありました。  機関委任事務制度の廃止によりまして、地方公共団体が自己決定できる分野が拡大し、地方公共団体事務処理の迅速化が図られます。これによって、住民の負担も軽減されるとともに、行政住民ニーズが的確かつ迅速に反映されるようになるものと考えております。  地方事務官が従事する事務についてお尋ねですが、そもそも、国と地方公共団体がそれぞれの役割に応じて事務分担することが、責任の所在を明確にし、ひいては地方分権に資するものと考えられます。この点、社会保険関係事務につきましては、地方分権推進委員会第三次勧告のとおり、国が経営責任を負う事業として、財政収支の均衡確保観点、効率的な事業運営の確保観点から、国の直接執行事務と整理することが適当と考えております。  社会保険関係事務及び職業安定関係事務につきましては、それぞれ、社会保険関係事務は国が経営責任を負う保険事業であることから、また、職業安定関係事務は国の機関である公共職業安定所に対する指揮監督等の事務であることから、国の直接執行事務とすべきものと考えております。  国地方係争処理委員会の組織についてのお尋ねですが、その役割と性格にかんがみれば、内閣の外部に、独立した機関として置くという考えもありますが、行政機関肥大化を極力抑制するという行政改革の要請をも踏まえ、国家行政組織法第八条に基づく審議会等として、総理府に置くことといたしたものであります。職権行使の公平中立性は、委員の任命に国会同意が必要であることや、委員の身分保障があることなどによりまして、確保することができるものと考えております。  国地方係争処理委員会権限についてのお尋ねですが、国の行政事務は各省大臣が分担管理することが原則とされておりまして、強力な裁定権限を国地方係争処理委員会に与えることは、この原則に対する重大な例外となることから、これを勧告機関といたしたものでございます。  しかしながら、関与を行った国の行政庁は、勧告に即して必要な措置を講ずることが制度上強く期待されており、また、最終的には司法判断による解決が図られることになっていることから、係争処理手続としての実効性は高いものと考えております。  市町村合併に係る基本方針についてお尋ねがありました。  地方分権の成果を生かし、住民サービスの向上を図るためには、市町村みずからが、自主的、積極的に合併の推進に取り組むべきと考えております。その上で、国は、市町村の合併に関する地方公共団体取り組みを積極的に支援していく必要があると考えており、本法案に思い切った支援措置を盛り込むことといたしたところであります。  地方財源充実確保についてのお尋ねがありましたが、地方分権推進計画に沿いまして、国と地方役割分担を踏まえ、国庫補助負担金の積極的な整理合理化や、事務権限の移譲などを推進し、地方税地方交付税等の必要な地方一般財源確保を図ることといたしており、今後とも、この具体的内容に応じて、法律改正等、所要措置を講じてまいることといたしております。  また、地方財源充実確保を積極的に進める観点から、地方行財政改革会議を設置いたしまして、検討すべきとの御提言でありました。  政府といたしましては、地方分権推進計画に沿いまして、地方財源充実確保に取り組んでまいりたいと考えております。  以上、御答弁申し上げましたが、残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)     〔国務大臣太田誠一君登壇
  28. 太田誠一

    国務大臣(太田誠一君) 機関委任事務制度の廃止に伴う定員削減についてのお尋ねがございました。  地方分権推進は、国の事務及び事業の減量、効率化にも資するものであり、政府としては、積極的にこれを推進してまいる所存であります。機関委任事務自治事務化に伴い、国の関与の縮小などにより国の事務量が減少することがあれば、可能な限り、これを国家公務員の定員の削減に結びつけていきたいと考えております。  地方事務官制度の廃止が国家公務員の削減の方針に逆行しないかとのお尋ねでございますが、現在、地方事務官が従事している事務については、地方分権推進委員会勧告を受けて、事務の性格にかんがみ、国の直接執行事務にすることとしたものであります。また、現行の地方事務官も国家公務員であり、今回の措置により、全体として国家公務員数の増加につながるものではありません。  いずれにせよ、政府としては、国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本計画に基づいて、改革努力を通じまして、地方事務官でありました定員も含めまして、国家公務員の十年二五%削減に最大限努力してまいります。(拍手)     〔国務大臣野田毅登壇
  29. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 機関委任事務のうち、六割以下しか自治事務になっていないことについてのお尋ねがございました。  地方分権推進委員会においては、法定受託事務となるべき事務についてのメルクマールを定め、地方分権推進観点に立って、精力的に御審議をいただいたものであります。今回の法案は、この地方分権推進委員会勧告を最大限尊重して閣議決定した地方分権推進計画に従って作成したものであります。  次に、法定受託事務の区分についてのお尋ねでありますが、地方分権推進委員会個々事務の区分を検討される過程において、各省庁との間でどのような意見の交換があったかについては、その詳細を承知はいたしておりません。今回の法案作成に当たりましては、地方分権推進委員会勧告を最大限尊重して閣議決定した地方分権推進計画に即して事務の区分を行ったところであり、最終的に、地方分権推進委員会の御了解もいただいたものでございます。  次に、法定受託事務の処理基準に関するお尋ねでありますが、今回の分権一括法による改正は、原則として、来年四月の施行を予定いたしております。また、施行までには地方公共団体における条例、規則の改正も必要となるものでありまして、それらに間に合うように、法定受託事務規定する法令を所管する各省庁において、必要最小限度の範囲で処理基準を定めることになるものと考えております。  次に、法定受託事務について、機関委任事務のように、国がコントロールするのではないかとのお尋ねでありますが、今回の分権一括法による改正により、機関委任事務に係る包括的な指揮監督の規定は削除されます。それにかわって、関与について、法定主義などの基本原則を定めるとともに、手続ルール、係争処理手続などを新しく設けることといたしておりまして、これにより、国と地方公共団体の新しい関係構築されるものと考えております。  次に、法定受託事務を政令で定めることについてのお尋ねでありますが、今後、法定受託事務の新設は厳に抑制されるべきと考えております。仮に政令で法定受託事務を創設する場合には、法律の委任の範囲内でのみ定められることとなるものであります。また、その場合にも、法定受託事務の定義に該当する必要があり、さらに、地方分権推進計画に定めたメルクマールに従うこととなりますから、法定受託事務が政令において無限定に創設されるということにはならないものと考えております。  次に、国庫補助負担金の整理合理化についてのお尋ねでありますが、地方分権推進していくためには、財政面での地方公共団体自主性自立性を高める見地から、国と地方との役割分担見直しに合わせて、国庫補助負担金を真に必要なものに限定するとともに、一般財源充実確保を図る必要があると考えております。  これまでも、地方分権推進計画等を踏まえ、地方公共団体事務として同化、定着、定型化しているもの、国庫補助負担金が少額なものなどについて、一般財源化や廃止縮減などの整理合理化を進めてきておるところでありますが、今後とも、地方分権推進観点から、国庫補助負担金の整理合理化を積極的に推進してまいりたいと考えております。  次に、国庫補助負担金のサンセット方式の導入及び国庫負担金の見直し等についてのお尋ねでありますが、自治省としては、地方分権推進計画に基づき、これらの措置が着実に実施されることなどによって、国庫補助負担金の整理合理化が積極的に推進されるよう、引き続き関係省庁に要請をいたしてまいります。  最後に、新規の国庫補助金の抑制策についてのお尋ねでありますが、地方分権推進計画において、新規の国庫補助金の設定は厳に抑制するとともに、行政需要の変化等に即応して真にやむを得ず新設する場合には、件数及び金額の両面において、スクラップ・アンド・ビルド原則を徹底することとされております。自治省としては、地方分権推進計画に基づき、国庫補助負担金の整理合理化を積極的に推進するよう、引き続き関係省庁に要請をいたしてまいります。(拍手)     〔国務大臣宮澤喜一君登壇
  30. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 補助金の中には、例えば生活保護費等の負担金あるいは義務教育国庫負担等、国の政策の重要な部分に関するものも幾つかございますが、同時に、しかし、社会経済情勢は絶えず変化をいたしますし、また、国と地方関係のあり方も変わっていかなければなりませんので、それらを含めまして、絶えず新しい見直しをしていくことが必要であるというふうに心がけております。その中には、仰せになりましたように、いわゆる一般財源化を図るということも、一つの整理合理化の方法であろうというふうに考えております。  したがいまして、補助金は、社会の需要の変化に応じまして絶えず検討していかなければならない問題でございますが、今自治大臣がおっしゃいました、必ずしも一律にサンセット方式を法制化することが適当であるかどうかはともかくといたしまして、従来から、新しく補助金を設定いたしますときには、原則として五年以内に終期を設定いたしております。また、終期設定の現実にないものについては、サンセット化の推進を、期限を設けまして、現実の行政としてはいたしております。  それから、新規の補助金の抑制につきましても、ただいま自治大臣の言われましたとおり、なるべくもう新規のものは行いたくない、やむを得ず必要があります場合にはスクラップ・アンド・ビルド等の原則を貫きまして、今後とも補助金の整理合理化を推進してまいりたいと考えております。(拍手)     ―――――――――――――     〔議長退席、副議長着席〕
  31. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 春名直章君。     〔春名直章君登壇
  32. 春名直章

    ○春名直章君 私は、日本共産党を代表して、地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案に関連して、総理並びに自治大臣質問いたします。  まず、四百七十五本にも及ぶ法律改正を一括して提出した問題であります。  そもそも、日本の全法律の約三分の一に当たる膨大なものを一括法として提出して、充実した審議が可能とお考えなのかどうか。国会審議の著しい軽視ではありませんか。総理の見解をまず伺うものであります。  憲法で地方自治の本旨がうたわれて半世紀理念として認められた自治体の行政権、財政権、自治立法権は、三割自治との言葉にあらわされるように、歴代自民党政権のもとで著しく制約されてまいりました。今、地方分権というのであれば、この国の支配、統制とそのための制度こそ廃止すべきであります。そして、憲法がうたう地方自治の本旨を構成する住民自治と団体自治を保障することこそが求められているのであります。  ところが、あなた方の言う地方分権論は、専ら国と地方役割分担という角度、また、行政改革のためにという視点しか聞こえてこないのであります。総理、一体あなたは、地方分権の魂をどうお考えなのでしょうか。地方自治の本旨の実現、すなわち自治体の行財政権、自治立法権を拡大することこそ必要ではないでしょうか。総理基本認識を伺いたいと思います。  権限と税財源充実という点で、本法案には見るべきものがほとんどありません。しかし、今日、地方自治体の借金が百七十兆円を超え、東京、大阪、神奈川、愛知など大都市圏の自治体ですら赤字転落が現実問題となっているこの姿を見れば、税財源の移譲こそが待ったなしの課題ではないですか。一体いつまでにどのように実行するのか、明確にしていただきたいのであります。  次に、法案の具体的な内容について伺いたいと思います。  住民の直接選挙で選ばれた知事や市町村長を国の機関として、国の事務を行わせる機関委任事務制度の廃止は、当然のことであります。問題はその後であります。この法案では国の関与が縮小する保証がないのであります。  第一に、機関委任事務の割り振りの問題です。分権推進委員会の中間報告では、原則として地方公共団体自治事務とするとうたわれていました。ところが、結果は、法定受託事務が全体の四割を占めるまでに膨れ上がったのであります。なぜ、これほど法定受託事務が多くなったのですか。法定受託事務に代執行という制度が温存され、最終的に国の強い関与ができるからではありませんか。  第二に、その少なくなった自治事務にすら代執行という仕組みが導入されていることは重大であります。政府地方分権推進計画にも、自治事務については国の行政機関は代執行することができないと明言されていたではありませんか。これは、自治体に対する国の統制を強化するものではありませんか。  第三に、関与原則規定しておきながら、その一方で、国の行政機関自治事務と同一の事務をみずからの権限に属する事務として処理する場合の方式の規定を置いている問題であります。なぜ、このような規定が必要なのですか。この規定は、自治事務であっても、国が判断し、省令を含む法令を定めさえすれば、国のいかなる関与も認められるというものであります。これでは、関与基本原則を法定化したといっても、その原則を定めた意味がなくなるのではありませんか。  また、違憲の疑いのある内閣総理大臣の是正措置要求を、各大臣にまで広げたのはなぜでしょうか。これによって、例えば高知の非核港湾条例制定への政府の介入のように、港湾管理に直接権限のない外務省が、担任する事務と判断すれば、地方事務に介入する道を正式に開くことができるのであります。総理大臣に限定されていた是正措置権限をそれぞれの大臣に広げることは、まさに国の関与を飛躍的に強めるものではありませんか。  第四に、現行自治法の自治大臣の技術的助言、勧告規定をそのまま改正案に盛り込んだのはなぜでしょうか。全国で荒れ狂っている自治体リストラの旗振りとなった九八年十一月の自治事務次官通達、国の公共事業積み増し路線に地方自治体を巻き込み、自治体財政の破綻を招いた財政課長内簡などは、この規定を根拠にして出されております。地方自治を担当する自治省こそ、率先してこうした規定を削除すべきではありませんか。  以上の諸点について、自治大臣の明確な答弁を求めるものであります。(拍手)  改正法案では、国の関与が縮小されない、むしろ一層国の介入、関与があからさまに強化されるようになると、今一斉に批判、心配の声が広がっています。総理、この声にどうおこたえになるのでしょうか。本法案が最大の焦点だとした関与の縮小に資するものとなっていないのなら、一体何のための法律改正かということになるのであります。総理の見解を改めて問うものであります。  一括法案には、関与の問題だけでなく、多数の重大問題があることを指摘しなければなりません。  その第一は、上からの市町村合併推進という問題であります。  住民が主人公という地方自治の大原則に照らすなら、市町村合併問題は、何よりも住民の圧倒的多数の意思、合意が前提とならなければなりません。今、その合意形成のシステムがないもとで、合併促進の見地からのみ特例制度を拡大するならば、ますます住民合意のない合併が推進させられることになるのではありませんか。総理は、このやり方が地方自治の形骸化をもたらすものと考えないのでしょうか。  そもそも、地方分権市町村合併は全く別次元の問題であります。推進委員会も、分権の受け皿としての合併は退けるとの立場だったのではありませんか。地方分権一括法に合併特例法を盛り込むこと自身、私は重大な問題だと考えますが、総理の答弁を求めるものであります。  第二は、地方議員定数削減の問題であります。  改正案は、法定定数の上限の見直しを行い、既に各自治体の条例によって定数削減を行われている上に、さらに二百三十七人もの定数削減を強要するものとなっています。この改悪により、人口区分によっては、五十年以上も前の第二次世界大戦中の議員定数よりも少なくなる自治体すら出てくるのであります。  地方議会活性化は、地方分権の重要テーマの一つではありませんか。権限移譲が進むのであれば、それをチェックする地方議会役割は今後ますます大きくなるのであります。なぜ定数削減なのか、国民に納得できる説明をすべきであります。地方分権に真っ向から逆行する定数削減をなぜ上から強要するのか、自治大臣の明確な答弁を求めるものであります。  第三に、米軍用地特別措置法の改定を盛り込んでいる問題であります。  憲法二十九条は国民の財産権を保障し、公共のためにやむを得ず私有財産を収用、使用する場合でも、公正な手続と正当な補償を厳しく求めています。この憲法規定に基づき、戦後の土地収用制度は、地方自治体の独立した機関である収用委員会の審理を経て、初めて土地の強制使用、収用ができるとしてきたのであります。  ところが、政府は、この精神を踏みにじり、九七年四月、収用委員会の裁決を経なくとも、契約期限が切れている土地であっても、手続中の土地について、暫定使用という名目で継続して使用できるという改悪を強行したのであります。  今回の再改定案は、その上に、これまで市町村長や県知事に行わせてきた土地調書への署名捺印、いわゆる代理署名や裁決申請書の公告縦覧を、国の直接執行事務として取り上げた上に、さらに、新たな米軍基地の強制使用に際して、収用委員会が一定期間内に緊急裁決をしなかった場合、あるいは緊急裁決を却下した場合に、総理大臣みずからが使用または収用の裁決ができるとしているのであります。総理大臣が収用委員会にかわって裁決をすることになれば、収用委員会の審理は形だけのものとならざるを得ません。  総理、この改定は、市町村長や知事の関与を完全に排除し、地主や地元関係者など、地方意見反映の機会を根底から奪うものであります。このような改定は、地方分権の名に値しないばかりか、憲法三十一条の適法手続原則にも反するものではありませんか。明確にお答え願いたいと思います。  新ガイドラインで、日本は米側に対して、周辺事態への対応として、新たな基地の提供を適時適切に行う、このことを約束しています。この改悪は、こうした米側への約束を果たすためのものではありませんか。総理の明確な答弁を求め、徹底的な審議を強く主張して、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  33. 小渕恵三

    内閣総理大臣小渕恵三君) 春名直章議員にお答え申し上げます。  まず、本法案の形式についてのお尋ねがありました。  地方分権一括法案は、地方分権推進を図るという同一の趣旨目的を有するものであること、また、改正の大宗を占める機関委任事務の廃止等については、通則法としての地方自治法関係法律が相互に関連していることなどの理由一括法としたものであり、むしろ意味ある効果的な審議ができるものと考えております。  住民自治と団体自治の拡充強化等が必要ではないかとのお尋ねであります。  今回の法案は、地方公共団体自主性自立性を高めることによりまして、地方公共団体がみずから決定のできる範囲が広がり、団体自治という面においてはもちろん、住民自治という面におきましても、大きな意義を有するものであると考えております。さらに、今回の法改正は、行財政権、自治立法権の拡充にもつながるものと受けとめております。  地方への権限と税財源の移譲についてお尋ねですが、今回の法案におきましては、都市計画法、森林法などの改正による権限の移譲や特例市制度の創設などを行っております。また、地方分権推進計画に沿いまして、国と地方役割分担を踏まえ、国庫補助負担金の積極的な整理合理化や事務権限の移譲などを推進し、地方税地方交付税等の必要な地方一般財源確保を図ることといたしております。  今後とも、国から地方公共団体への事務権限の移譲や地方税財源充実確保等、地方分権の一層の推進に向けて、積極的に取り組んでまいりたいと思います。  国の関与についてのお尋ねでありましたが、法案におきましては、機関委任事務に係る国の包括的な指揮監督権を廃止し、関与法定主義基本原則手続ルール及び係争処理制度地方自治法規定するとともに、個別の法律における関与についても見直しを行い、その整理縮小を図ったところであります。  市町村合併についてのお尋ねですが、行財政基盤の強化を図り、地方分権の成果を十分に生かすためにも、市町村合併を積極的に進めることが必要と考えております。その際、市町村の判断を尊重することは当然でありますが、都道府県の積極的な取り組みとあわせ、国としても、幅広い行財政措置を講じ、市町村合併を総合的に支援していくことが重要であると考えております。  最後に、駐留軍用地特措法改正についてお尋ねがありましたが、これは、地方分権推進委員会勧告を受けまして、国と地方公共団体との役割分担を明確にするという観点から、同法の事務について国が最終的に執行責任を担保し得る仕組みを講じようとするものであります。したがいまして、同法の改正については、地方分権に背くとの指摘は当たりませんし、また、周辺事態への対応に関連して行うものでもありません。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)     〔国務大臣野田毅登壇
  34. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 法定受託事務についてのお尋ねでありますが、地方分権推進委員会においては、法定受託事務となるべき事務についてのメルクマールを定め、地方分権推進観点に立って、精力的に御審議をいただいたものであります。今回の法案は、この地方分権推進委員会勧告を最大限尊重して閣議決定をいたしました地方分権推進計画に従って作成をしたものであります。  次に、国の代執行についてのお尋ねであります。  代執行については、一般的な根拠規定として、地方自治法に第二百四十五条の八の規定を設けることとしておりますが、これは法定受託事務のみを対象とするものであります。自治事務に関しては、同法第二百四十五条の三第二項において、関与基本原則として、できる限り代執行の制度を設けることのないようにしなければならないことを規定しているところであり、今後の個別法の制定改正もこの基本原則に沿って行われることとなるものであります。  次に、関与基本原則についてのお尋ねでありますが、関与基本原則を定める地方自治法第二百四十五条の三は、自治事務及び法定受託事務のそれぞれについて、関与基本類型を示すとともに、自治事務に関する基本類型以外の関与等について、これを設けることのできる場合を限定しようとするものであり、各個別法においても、このような基本原則に則した関与の整理縮減がなされているところであります。  それから、是正の要求等の主体についてのお尋ねでありますが、個別の法律において国の関与規定する場合、行政事務を分担管理する各大臣の権限とするのが一般的であること、また、個別法に基づく関与をできるだけ廃止縮小しようとしたことから、地方自治法に基づく是正の要求等の主体についても各大臣とするのが適当と考えたものであります。  なお、改正案においては、新たに国の関与に係る係争処理制度を設けることといたしておりまして、各大臣が直接その当事者となることで、権限行使についても十分慎重に行わせる効果があるものと考えております。  次に、自治大臣の技術的助言、勧告についてのお尋ねであります。  各大臣の助言、勧告は、専門的、個別的な見地から、特定の行政分野について行われるものでありますが、さらに、地方公共団体の組織及び運営の全体について、総合的な見地から、技術的な助言、勧告がなされることは、地方自治行政の円滑な運営に資するものであると考えております。  最後に、今回の改正は、地方議員の定数を法律で定めるのではなく、一定の上限数の範囲内でそれぞれの地方公共団体が自主的、自立的に条例で定めることとするものであり、必ずしも定数の削減を一義的な目的とするものではありません。また、上限数の設定に当たっては、地方分権推進委員会第二次勧告において、基準の見直しに当たっては、減数条例制定状況を十分に勘案することとされていることを踏まえたところであります。  以上であります。(拍手)     ―――――――――――――
  35. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 畠山健治郎君。     〔畠山健治郎君登壇
  36. 畠山健治郎

    ○畠山健治郎君 私は、社会民主党・市民連合を代表いたし、議題となっておりますいわゆる地方分権一括法について、地方分権基本課題と本法律案とのかかわり合いを中心に、総理並びに関係大臣お尋ねをいたしたいと思います。  地方分権推進に関する国会決議以来六年、ようやく今日法律案が提案されましたことは、関係者のこれまでの御努力に深く敬意を表しながら、歓迎するものでございます。  地方分権推進委員会の一連の指針勧告の経緯と本法律案を見ますと、地方分権はいまだ遠しの感をぬぐえません。と申しますのも、明治維新、戦後改革に次ぐ第三の改革と言われながら、住民と自治体の自己決定権の保障を基本に、新たな国家像を具体化する政治改革としての地方分権が、主として国の関与の縮小にとどまり、あたかも、これをもってして地方分権は終わったかの風潮さえ行政内部に見られるからであります。  そればかりではありません。地方分権推進委員会の第三次指針勧告法定受託事務の性格、自治事務に対する中央政府関与等の法律内容においても許容しがたい部分が多々あり、これが地方分権に対する期待感を阻害する要因となっておることも、間違いのない事実であります。  このような問題意識を持ちながらも、多くの困難を乗り越え、ここに至った本法律案については、我が党は全面的に否定するつもりは毛頭ございません。是正すべきは是正するとの立場から、徹底した審議を行う所存であり、内閣においても、こうした我が党の基本的態度に積極的にこたえるよう要請をしながら、質問に入らせていただきたいと思います。  そこで、まず総理お尋ねをいたします。  総理は、本法律案をもってして地方分権は終わりと考えているのか、それとも、始まりの始まりと認識されていらっしゃるのか。よもや、これをもってして完結編とお考えになっているとは思いませんが、率直に見解をお示しいただきたいと思います。  完結編と考えていないならば、本法律案において、今後の分権展望を具体的に示すことが必要であろうと考えます。そこで、提案をいたしますが、今回の法律制定地方分権の一里塚であるとするならば、今法律意義と今後の改革課題改正地方自治法に前文としてうたい、それを担保する立場から、同法附則に改革期間を明示する必要があるのではないでしょうか。  また、これと関連して、地方分権推進委員会の今後の扱いについて、来年をもって制度的に任務が終わる同委員会について、地方分権推進法改正し、今回の改正に伴う地方分権の進行状況の監視はもとより、法定受託事務の一層の自治事務化、全く手つかずと言っていい権限移譲と、それを保障する税財源の移譲、そして地方分権の最も基本である住民自治の豊富化について、順次、指針勧告を求めることが必要であると考えますが、いかがでしょう。  また、改正地方自治法の一条において、中央政府と自治体の政府関係における役割分担を明示しておりますが、このような基本的事項と自治体の組織及び運営に関する事項を地方自治法のみで規定することは、どう見ても、適切とは思われません。憲法に定める地方自治基本原理と制度基本原則を定め、もって地方自治の本旨を実現する地方自治基本法を制定することが、今後の地方分権には不可欠と考えます。  以上、四点にわたる提案について、総理並びに自治大臣の見解をお尋ねいたします。  次に、法律案基本的問題に絞って、幾つかお尋ねをいたします。  今回の地方分権に係る制度改革一つの目玉は、総理府に設けられる国地方係争処理委員会にあると思います。ところが、中央省庁等改革関連法案においては、この係争処理委員会は総務省に設置されることになっております。一体、これはどういうことでありましょうか。  これでは、地方自治の所管省と係争処理委員会を分離した意味はないではありませんか。これでは、係争処理委員会の独立性並びに審査勧告に対する自治体の信頼は極めて希薄なものとなってしまいます。少なくとも係争処理委員会については内閣府に置くべきであろうと思いますし、国家行政組織法上も三条委員会とすべきであると考えますが、総理並びに自治大臣の見解をお伺いいたします。  現行地方自治法制度的矛盾の一つ地方事務官問題があることは、申し上げるまでもございません。この問題が機関委任事務制度の廃止によって整理することについては大いに歓迎をいたしたいと思いますが、問題は、その整理の方向であります。  これまで機関委任事務としてきた社会保険並びに職業安定事務について、何ゆえに中央政府の直接執行事務とするのか。法定受託事務に移行させることで事務処理に不都合が生ずるとは考えられません。しかも、当該事務、とりわけ社会保険事務にかかわるほとんどの地方事務官地方公務員への身分移管を求めていることを直視するならば、少なくとも、事務については法定受託事務として、職員については都道府県に身分を移管すべきではありませんか。  地方自治法施行以来のこの問題については多様な解決の方法があり、やみくもに中央政府に移すことは問題解決の柔軟性にみずから扉を閉じること、そして結果としてこれら業務の円滑な実施を阻害することになりかねません。国家公務員二五%削減を公約する総理、あなたは、法定受託事務とすることで何ら差しさわりのないこれら事務を、あえて中央政府の直接事務とすることが本当に妥当とお考えでいらっしゃるのですか。また、その結果、一万八千の国家公務員をふやすことも辞さないと考えていらっしゃるのですか。総理並びに厚生大臣の見解を承りたいと思います。  ところで、本法律案には、地方分権推進委員会の指針勧告との関係で、見逃せない問題があります。それは自治事務法定受託事務の問題であります。  当初、推進委員会は、法定受託事務について、国民の利便性または事務処理の効率性の観点に比重を置き、法律またはこれらに基づく政令の定めるところにより自治体が処理をする云々との性格づけをいたしておりました。それが、いざ条文化されてみますと、「国においてその適正な処理を特に確保する必要があるもの」との文言が加えられ、自治体の処理する事務との性格は極めて希薄なものとなっております。  指針勧告とは異なるこのような文言としたのは一体なぜなのか。法文上の表現問題と伝えお聞きするところでありますが、本当のねらいは、法定受託事務を著しく拡大した結果、自治体の処理する事務との性格を薄め、中央政府の広範な関与確保する必要があったためではありませんか。自治大臣の見解をお伺いいたします。  自治事務法定受託事務の区分の関係についても問題があります。改正地方自治法の二百四十五条の五及び二百五十条でも明らかなように、自治事務に対しても、中央政府は是正の要求及び是正の指示ができることとされており、さらには代執行も可能となるような規定さえ設けられておるからであります。  そこで、お尋ねをいたしますが、一体、是正の要求と是正の指示とは、その効果において違いがあるのですか。もし、その効果は同一で、自治体は是正改善の法的義務を負うとすれば、一体、自治事務法定受託事務との違いはどこにあるのか疑わしいと言わざるを得ません。また、自治事務に対するこのような関与が許されるなら、地方分権が進展すればするほど、関与手続は整理されても、中央政府の自治体に対する法的拘束力は強いものとなるのではありませんか。  しかも、これが許されるならば、もはや内閣は、ガイドライン法に基づいて、自治体への協力要請に関して、個別法の規定と考えを異にする自治体に対し、いつでも法的拘束力をかけることができることになりかねません。これは、事実上の有事立法の先取りにも等しい。このような改正は、地方分権とは似ても非なるものと言わざるを得ません。(拍手)  総理並びに自治大臣の見解をお伺いいたしたいと思います。  改正地方自治法において、住民自治の豊富化に関する制度改正がほとんどなされていないことは、今回の地方分権の限界をよく示しておると思います。それどころか、議員の定数について上限を設けたことは、地方分権に対するあしき挑戦そのものと言っても過言ではありません。この上限制が実施されれば、議員定数は上限を下回って条例化されることは必須であり、それがもたらす政治効果は、改正の意図する議会の活性化とはおよそ無縁なものとなることは明らかであります。  議員定数をどれだけにするかは本来住民が決めることであり、それが地方分権のあり方ではありませんか。仮に法定化する場合でも必要なことは、住民自治を保障するという立場から、量的下限であることを忘れてはなりません。その意味で、上限制を下限制に転換するよう、総理並びに自治大臣の発想の転換を強く促したいと思いますが、いかがでしょうか。  最後に、一言、我が党の決意を申し上げたいと思います。  村山内閣地方分権推進法を指摘するまでもなく、本課題については、我が党はその推進をだれよりも早く主張し、実践をしてまいりました。そうした立場から本法律案を見たときに、地方分権の歩みはいまだ始まりの始まりにすぎません。これを第一歩に地方分権をより確かな歩みとし、我が国民主主義の新たな礎石とするため、今後とも地方分権推進に全力を挙げることを申し上げ、私の質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  37. 小渕恵三

    内閣総理大臣小渕恵三君) 畠山健治郎議員にお答え申し上げます。  地方分権の認識について、まずお尋ねがございました。  地方分権は、二十一世紀にふさわしい我が国基本的行政システム構築するものであります。地方分権は今や実行の段階を迎えていると認識をいたしており、まずは本法案を今国会においてぜひとも成立させていただき、地方分権を具体的な形で進めるとともに、今後とも、地方分権の一層の推進に向けて、地方分権推進計画を踏まえた、国から地方公共団体への事務権限の移譲や地方税財源充実確保に積極的に取り組んでまいりたいと思います。  地方分権推進委員会についてお尋ねがありましたが、同委員会は、地方分権推進計画の作成のための指針の勧告と、計画の実施状況の監視機能を有しており、平成十二年七月の存置期間までは、同委員会活動を見守るべきものと考えております。地方分権推進法の期限切れの後の体制につきましては、その時点での状況を踏まえ判断すべきこととなろうと考えております。  社会保険事務や職業安定事務についてお尋ねですが、地方事務官が従事しているこれらの事務は、地方分権推進委員会勧告を受けまして、地方分権推進計画において、国の直接執行事務とし、これに従事する地方事務官はそれぞれ厚生事務官及び労働事務官とすることといたしたところであり、今般、この計画に沿って法案を提出したところであります。  地方事務官は現在でも国家公務員でありまして、その定員は国家公務員の総数に算入されておりますので、地方事務官制度の廃止によりましても、国家公務員数が増加することにはなりません。  地方事務に関する関与についてお尋ねでありますが、今回の改正におきまして、地方公共団体自治事務に対する関与は、必要最小限のものとするとともに、手続ルールや係争処理手続などを新しく設けることといたしておりまして、地方分権趣旨実現するものとなっているものと考えております。  なお、周辺事態安全確保法案に基づく地方公共団体の協力との関係につきましては、仮に、自治事務につきまして地方公共団体の長の対応がその権限について定めた個別の法令に違反するような場合、地方自治法に基づく措置をとることも法律論としては考えられますが、地方公共団体の長は協力の求めに応じて権限を適切に行使していただけるものと考えております。  最後に、議員定数の定め方についてのお尋ねでした。  地方公共団体の自己決定権を拡大する観点から、今回、地方公共団体みずからがその条例をもって議員定数を定めることといたしたものであります。このような場合にあっても、必要に応じ、法律において何らかの基準を定めておくことが適当でありまして、議員定数に関する歴史的経緯や地方行政を取り巻く状況を勘案いたしまして、法律において人口区分ごとに上限数を設けることといたしたものであります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。(拍手)     〔国務大臣野田毅登壇
  38. 野田毅

    国務大臣野田毅君) 改正地方自治法に今回の改正意義や今後の改革課題などを規定してはどうかとのお尋ねでございますが、地方分権推進は、新しい時代にふさわしい我が国行政システム構築するために、まず取り組まなければならない重要課題でありまして、このことについては、今や広く共通の認識が得られているものと考えております。先ほど総理からも御答弁をいたしましたように、今後とも、幅広く必要な検討を行い、法律改正を含め、地方分権の一層の推進に強い決意で取り組んでまいる所存であります。  次に、地方自治基本法の制定についての御提案がございましたが、現行の地方自治法は、国と地方公共団体との基本関係の確立を目的といたしておりまして、まさに地方自治に関する基本的な法律であると考えております。地方自治法の内容を充実することが、地方公共団体における民主的にして能率的な行政確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を真に保障していくことにつながるものと考えております。  次に、国地方係争処理委員会についてのお尋ねでありますが、国地方係争処理委員会は、公平中立な立場から、国の関与について審査し、勧告等を行う機関であります。このため、委員の任命につきまして、特に両議院の同意を必要とするなどの規定を設けているものであります。今回の中央省庁等改革考え方に従い、国地方係争処理委員会が総務省に設置された場合であっても、これらの規定により、委員会の中立性、公平性、職権行使の独立性は十分に保障されているものと考えております。  次に、法定受託事務の定義についてのお尋ねでありますが、今回の法案における定義は、法定受託事務が、その適正な処理を確保することに国として相対的に高い責任と関心を有する事務であるという性格を、文言上、より明確に表現したものでありまして、実質的な内容の変更を伴うものではございません。したがって、この定義によりまして、法定受託事務に対する国の関与のあり方が変わるものではございません。  次に、是正の要求と是正の指示は、地方公共団体事務処理が違法な場合などにその是正改善を図るために設けられた規定であり、ともに関与を受けた地方公共団体が是正改善すべき法的義務を負うという点では共通するものがあります。  しかし、是正の指示が、是正改善の具体的措置の内容についてまで及び、それに従う義務が発生するのに対し、是正の要求は、自治事務に対する関与であることを考慮し、具体的措置の内容には及ばず、地方公共団体の裁量にゆだねられている点において異なります。  なお、法定受託事務については、許認可や指示などが相対的に広く認められ、最終的には代執行を行うことができることとされているなど、関与のあり方について、自治事務とは大きく異なっておるものでございます。  最後に、議員定数の定め方についてのお尋ねでありますが、地方公共団体の自己決定権を拡大する観点から、今回、地方公共団体みずからがその条例をもって議員定数を定めることとしたものであります。このような場合にありましても、必要に応じ、法律において何らかの基準を定めておくことが適当であり、議員定数に関する歴史的経緯や地方行政を取り巻く状況を勘案して、法律において人口区分ごとに上限数を設けることとしたものであります。  なお、上限数の設定に当たっては、地方分権推進委員会第二次勧告において、基準の見直しに当たっては、減数条例制定状況を十分に勘案することとされていることを踏まえたところであります。  以上であります。(拍手)     〔国務大臣宮下創平君登壇
  39. 宮下創平

    国務大臣(宮下創平君) 地方事務官に関する御質問でございますが、申すまでもなく、社会保険事業は、社会保障の根幹である国民皆保険、国民皆年金を確保するため、国の責任において実施しているものでございます。  現在、社会保険関係事務機関委任事務とされており、都道府県知事が職員を指揮監督することとされておりますが、これに従事している地方事務官は、現行制度におきましても、国家公務員試験の合格者から採用された国家公務員であり、給与や事務経費は国が全額負担し、出先機関である社会保険事務所も国有財産となっております。  社会保険関係事務につきましては、地方分権推進委員会において、関係者からのヒアリングも踏まえまして、種々の角度から検討が行われたところであります。  その結果、同委員会の第三次勧告におきましては、社会保険事務について、国が保険者として経営責任を負い、財政収支の均衡確保のために不断の経営努力を行うことが不可欠であること、また全国規模事業体として効率的な事業運営を確保するために一体的な事務処理による運営が要請されているところであり、これらを踏まえまして、地方事務官が従事する社会保険関係事務は国の直接執行事務とし、地方事務官厚生事務官とすることとされております。  この第三次勧告を受け、地方分権推進計画が閣議決定され、今般の法案提出に至った次第であります。  なお、地方事務官の定員につきましては、地方自治法施行規程に定められておりますが、現在でも国家公務員の総数に算入されておりますので、地方事務官厚生事務官といたしましても、国家公務員の総数が増加するものではございません。  以上、答弁申し上げました。(拍手)     〔国務大臣太田誠一君登壇
  40. 太田誠一

    国務大臣(太田誠一君) お尋ねの国地方係争処理委員会については、今回の審議会の整理合理化方針に沿い、最もふさわしい所掌事務をつかさどる府省に置くこととし、地方自治制度を担う総務省をその設置先とすることとしたところであります。その独立性につきましては、同委員会の委員は、係争処理委員会の委員は、両議院の同意、衆議院と参議院同意を得た上で総務大臣が任命を行うこととしておりまして、御懸念の点は当たらない。  なお、係争処理委員会の国家行政組織法上の位置づけにつきましては、地方分権推進委員会において御議論があり、地方分権推進委員会の提言を踏まえまして、中立公平の確保を前提として、審議会、いわゆる八条機関といたしたところであります。今後、地方自治体の信頼を得つつ、適切な運営が図られますように努めてまいります。(拍手
  41. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。      ――――◇―――――
  42. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十六分散会     ――――◇―――――  出席国務大臣         内閣総理大臣  小渕 恵三君         大蔵大臣    宮澤 喜一君         厚生大臣    宮下 創平君         郵政大臣    野田 聖子君         自治大臣    野田  毅君 国務大臣    有馬 朗人君         国務大臣    太田 誠一君         国務大臣    関谷 勝嗣君         国務大臣    柳沢 伯夫君  出席政府委員         自治省行政局長         兼内閣審議官  鈴木 正明君