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1999-03-23 第145回国会 衆議院 本会議 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月二十三日(火曜日)     —————————————  議事日程 第十二号   平成十一年三月二十三日     午後一時開議  第一 特定融資枠契約に関する法律案参議院提出)  第二 金融業者貸付業務のための社債発行等に関する法律案(第百四十二回国会内閣提出)  第三 国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  第四 国際通貨基金協定の第四次改正受諾について承認を求めるの件  第五 アフリカ開発銀行を設立する協定改正受諾について承認を求めるの件     ————————————— ○本日の会議に付した案件  日程第一 特定融資枠契約に関する法律案参議院提出)  日程第二 金融業者貸付業務のための社債発行等に関する法律案(第百四十二回国会内閣提出)  土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案大原一三君外三名提出)  日程第三 国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第四 国際通貨基金協定の第四次改正受諾について承認を求めるの件  日程第五 アフリカ開発銀行を設立する協定改正受諾について承認を求めるの件  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案内閣提出)  司法制度改革審議会設置法案内閣提出)の趣旨説明及び質疑     午後一時二分開議
  2. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 岸田文雄

    岸田文雄君 議事日程追加緊急動議提出いたします。  日程第一及び第二とともに、大原一三君外三名提出土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案を追加して、三案を一括議題とし、委員長報告を求め、その審議を進められることを望みます。
  4. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 岸田文雄君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。     —————————————  日程第一 特定融資枠契約に関する法律案参議院提出)  日程第二 金融業者貸付業務のための社債発行等に関する法律案(第百四十二回国会内閣提出)  土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案大原一三君外三名提出
  6. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第一、特定融資枠契約に関する法律案日程第二、金融業者貸付業務のための社債発行等に関する法律案、ただいま日程に追加されました土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。  委員長報告を求めます。大蔵委員長村井仁君。     —————————————  特定融資枠契約に関する法律案及び同報告書  金融業者貸付業務のための社債発行等に関する法律案及び同報告書  土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔村井仁登壇
  7. 村井仁

    村井仁君 ただいま議題となりました各案につきまして、大蔵委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  まず、特定融資枠契約に関する法律案について申し上げます。  本案は、企業の資金調達機動性の増大を図るため、特定融資枠契約に係る手数料について利息制限法及びいわゆる出資法特例を定めようとするものであり、以下、その概要を申し上げます。  第一に、この法律において特定融資枠契約とは、融資枠契約であって、借り主が契約締結時に商法特例法第二条に規定する株式会社であるものをいうことにしております。  第二に、利息制限法及び出資法におけるみなし利息規定は、特定融資枠契約に係る手数料については適用しないことにしております。  第三に、特定融資枠契約に係る制度のあり方については、この法律施行後二年を目途として、検討を加えるものとしております。  本案は、参議院提出に係るものであり、去る三月十九日、参議院議員塩崎恭久君から提案理由説明を聴取した後、質疑を行い、質疑を終局いたしました。次いで、採決いたしましたところ、多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、金融業者貸付業務のための社債発行等に関する法律案について申し上げます。  本案は、金融システム改革の一環として、投資者保護観点からの措置を講じつつ、いわゆる金融業者社債発行等による資金調達を自由化するものであります。  具体的には、社債購入者等保護に資するため、貸付業務のために社債発行等を行う金融業者につきまして、最低資本金基準等要件とする登録制度を実施するとともに、有価証券報告書等融資業務特殊性に対応した貸し付け状況等の項目を明確に表示することを義務づけることにし、あわせて出資法関係規定改正を行うものであります。  本案は、第百四十二回国会提出され、今国会まで継続審査に付されていたものでありまして、さきの第百四十四回国会の昨年十二月十一日、宮澤大蔵大臣から提案理由説明を聴取しております。  今国会においては、三月十九日質疑を行い、質疑を終局いたしました。  次いで、井奥貞雄君外一名から、登録、監督の主体を金融再生委員会とすること、施行期日公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日に改めること等を主な内容とする修正案提出され、採決いたしましたところ、本案は多数をもって修正議決すべきものと決しました。  なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。  最後に、土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、第一に、事業用土地の再評価実施期限を一年延長し、平成十二年三月期まで適用することにしております。  第二に、再評価を行った法人は、再評価差額のうち、繰り延べ税金負債等金額貸借対照表負債部等に計上するとともに、再評価差額から繰り延べ税金負債を控除した金額等を、再評価差額金として、貸借対照表資本の部に計上することにしております。  第三に、配当可能利益の算定に当たっては、純資産額から再評価差額金の額を控除することにしております。  第四に、公開会社は、平成十三年三月三十一日までの間に限り、再評価差額金の額の三分の二を限度として再評価差額金を取り崩し、これをもって株式を買い受けて消却することができることにしております。  その他所要規定整備を行うことにしております。  本案は、本日、提出者大原一三君から提案理由説明を聴取した後、質疑を行い、質疑を終局いたしました。次いで、採決いたしましたところ、多数をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  8. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 三案を一括して採決いたします。  三案中、日程第二の委員長報告修正、他の二案の委員長報告はいずれも可決であります。三案を委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  9. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、三案とも委員長報告のとおり議決いたしました。      ————◇—————  日程第三 国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案内閣提出
  10. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第三、国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。厚生委員長木村義雄君。     —————————————  国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔木村義雄登壇
  11. 木村義雄

    木村義雄君 ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について、厚生委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、現下の社会経済情勢にかんがみ、平成十一年度以後の国民年金保険料の額を平成十年度の保険料の額と同額とし、公布の日から施行するものであります。  本案は、去る三月九日の本会議において趣旨説明が行われ、同日付託となり、十日に宮下厚生大臣から提案理由説明を聴取し、十六日から、山本孝史君外四名提出国民年金法等の一部を改正する法律及び厚生年金保険法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案とともに一括して議題とし、質疑を行いましたが、去る十九日の委員会において質疑を終了し、採決の結果、多数をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  12. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 採決いたします。  本案委員長報告可決であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  13. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第四 国際通貨基金協定の第四次改正受諾について承認を求めるの件  日程第五 アフリカ開発銀行を設立する協定改正受諾について承認を求めるの件
  14. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 日程第四、国際通貨基金協定の第四次改正受諾について承認を求めるの件、日程第五、アフリカ開発銀行を設立する協定改正受諾について承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。  委員長報告を求めます。外務委員長中馬弘毅君。     —————————————  国際通貨基金協定の第四次改正受諾について承認を求めるの件及び同報告書  アフリカ開発銀行を設立する協定改正受諾について承認を求めるの件及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔中馬弘毅登壇
  15. 中馬弘毅

    中馬弘毅君 ただいま議題となりました両件につきまして、外務委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  まず、国際通貨基金協定の第四次改正について申し上げます。  昭和四十四年の国際通貨基金協定改正により、計画的に新しい準備資産を創出する目的で、国際通貨基金の中にSDR制度が創設されました。このSDR配分は、昭和五十六年を最後に行われておらず、その後に基金に加盟した国がSDR配分を受けられない等、加盟国間のSDR配分に不均衡が生じておりました。このような状況を踏まえ、平成八年九月の暫定委員会において、SDRの純累積配分額割り当て額に対する比率が各加盟国間で一律となるようにSDR特別配分を行うとの方針が承認され、平成九年九月の総務会において改正案承認されました。  本改正は、SDR配分額基金加盟国間で衡平なものとするためにSDR特別配分を行うことを目的とするものであり、その主な内容は、平成九年九月十九日において特別引出権会計参加国である各加盟国は、そのSDRの純累積配分額が同日における当該加盟国割り当て額の約二九%に等しくなるような額のSDR配分を受けること等であります。  次に、アフリカ開発銀行設立協定改正について申し上げます。  アフリカ開発銀行は、アフリカ諸国経済開発及び社会的進歩に寄与することを目的として、昭和三十九年にアフリカ開発銀行を設立する協定によって設立され、我が国昭和五十八年二月に加盟しております。しかし、近年、域内加盟国による債務の履行遅滞の増加により、銀行財政状況が悪化したことに伴い、銀行運営改革する必要性が認識されるようになりました。この問題に対処するため、昨年五月の総務会において、銀行運営における域外加盟国責任及び発言権を高める内容改正案承認されました。  本改正は、銀行加盟国出資比率総務会議決要件等を変更することを目的とするものであり、その主な内容は、銀行域内加盟国及び域外加盟国出資比率を、三分の二対三分の一から六〇%対四〇%に改めること、また、総務会等議決要件を、会合において代表される加盟国投票権数の過半数から三分の二以上の多数に改めること等であります。  両件は、去る三月十七日外務委員会に付託され、十九日高村外務大臣から提案理由説明を聴取し、引き続き質疑を行い、討論の後、採決を行いました結果、いずれも多数をもって承認すべきものと議決した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  16. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 両件を一括して採決いたします。  両件を委員長報告のとおり承認するに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  17. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 起立多数。よって、両件とも委員長報告のとおり承認することに決まりました。      ————◇—————
  18. 岸田文雄

    岸田文雄君 議事日程追加緊急動議提出いたします。  内閣提出裁判所職員定員法の一部を改正する法律案議題とし、委員長報告を求め、その審議を進められることを望みます。
  19. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 岸田文雄君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加されました。     —————————————  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案内閣提出
  21. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案議題といたします。  委員長報告を求めます。法務委員長杉浦正健君。     —————————————  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案及び同報告書     〔本号末尾掲載〕     —————————————     〔杉浦正健登壇
  22. 杉浦正健

    杉浦正健君 ただいま議題となりました法律案について、法務委員会における審査経過及び結果を御報告申し上げます。  本案は、裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、判事補員数を三十人、裁判官以外の裁判所職員員数を十九人増加しようとするものでございます。  委員会におきましては、去る十九日陣内法務大臣から提案理由説明を聴取し、本日質疑を行い、これを終了し、直ちに採決を行った結果、本案全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決しました。  なお、本案に対し附帯決議が付されたことを申し添えます。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  23. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  司法制度改革審議会設置法案内閣提出)の趣旨説明
  25. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) この際、内閣提出司法制度改革審議会設置法案について、趣旨説明を求めます。法務大臣陣内孝雄君。     〔国務大臣陣内孝雄登壇
  26. 陣内孝雄

    国務大臣陣内孝雄君) 司法制度改革審議会設置法案について、その趣旨を御説明いたします。  二十一世紀我が国社会においては、社会複雑多様化国際化等に加え、規制緩和等改革により、社会事前規制型から事後チェック型に移行するなど、社会のさまざまな変化に伴い、司法役割はより一層重要なものになると考えられ、司法の機能を社会のニーズにこたえ得るように改革するとともに、その充実強化を図っていくことが不可欠であると考えられます。  そこで、政府といたしましては、このような観点から、二十一世紀我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、司法制度改革基盤整備に関し必要な基本的施策について調査審議する機関内閣に置く必要があると考え、この法律案提出することとしたものであります。  その要点は、次のとおりであります。  第一に、内閣司法制度改革審議会を置くこととし、二十一世紀我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、司法制度改革基盤整備に関し必要な基本的施策について調査審議するとともに、調査審議した結果に基づき、内閣意見を述べることをその所掌事務とすることとしております。  第二に、審議会は、委員十三人以内で組織し、委員は、学識経験のある者のうちから、両議院の同意を得て、内閣が任命することとしております。  第三に、審議会事務を処理させるため、審議会事務局を置き、事務局に、事務局長のほか、所要職員を置くこととしております。  なお、この法律は、政令で定める施行の日から起算して二年を経過した日にその効力を失うこととしております。  以上が、この法律案趣旨であります。(拍手)      ————◇—————  司法制度改革審議会設置法案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  27. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。これを許します。枝野幸男君。     〔枝野幸男登壇
  28. 枝野幸男

    枝野幸男君 私は、ただいま議題となりました司法制度改革審議会設置法案について、民主党を代表して質問をいたします。  現在の司法制度は、残念ながら、国民の期待に十分にこたえているとは言えません。薬害エイズの裁判に象徴されるように、判決が出るまでに余りにも長く時間がかかり過ぎることや、費用がどれぐらい必要になるのかがわからないために、弁護士の敷居が高いことなどに加えて、裁判所行政に甘いという認識から、泣き寝入りを余儀なくされるケースも少なくなく、紛争解決という司法役割のうち、実際に機能しているのはごく一部にすぎません。  結果的に、法の支配という近代国家の大原則有名無実になりつつあります。司法がその役割を十分に果たしていくためには、そのシステムを抜本的に改革する必要があると考えます。  しかしながら、今回の法律案は、その目的において賛同できるものの、その内容には強い疑問を感じざるを得ません。その最大の疑問は、内閣に、司法制度改革について、いかなる権限が与えられているのかという点であります。  本審議会は、内閣に設置され、内閣に対して、司法改革に関する調査審議の結果に基づいた意見陳述をすることになっています。これは、内閣司法改革に関する権限を持っている、このことを当然の前提としています。もちろん、この法律目的である、第二条が司法制度改革と並べて調査審議事項としている、基盤整備に関する必要な基本的施策、これについての多くの部分は、行政権限に含まれるものと思います。しかしながら、司法制度そのものについて、内閣にいかなる権限があるのか、私には甚だ疑問であります。  そもそも、司法制度は、憲法及び法律によって規定され、その範囲内で最高裁判所に規則の制定権が認められています。もちろん、内閣には国会に対して法律案提出する権限があるとされているのでありますが、しかし、その権限司法制度に関する部分にまで及んでいると考えてよいのか、私は大いなる疑問があるのであります。  御存じのとおり、憲法には、内閣法律案提出権に関する明文の規定はありません。憲法七十二条には議案提出権について規定がありますが、ここで言う議案については、予算や条約という、他に規定のあるものに限定して解釈することも可能であります。  それにもかかわらず、解釈上、法律案提出権が認められているのは、その実質的な理由が求められるからにほかなりません。内閣が、行政機関として憲法及び法律を執行する過程において、何らかの法制度上の不都合を感じた場合に、みずからその不都合を解消すべく国会に対して法律案提出すること、これを認めなければならないという実質的な根拠があるからにほかなりません。すなわち、憲法七十三条に規定する内閣の職務に関連した内容であるからこそ、みずから法律案提出をすることが認められると解釈するべきであります。  一方、みずから司法制度を所管し、担当している最高裁判所には、仮にその制度不都合を感じたとしても、法律案提出権は認められません。それなのに、みずからは司法制度を担当していない内閣法律案提出権を認めるというのは、甚だアンバランスであります。  しかも、内閣は、みずからの行政権の行使について、裁判所司法審査に服する立場にあります。司法によって裁かれる立場にありながら、公権力の一つとして、その制度を変えるように提案する権限を持つというのは、原則としてアンフェア考えるべきではないでしょうか。いわば、まないたの上のコイが、まないたや包丁を変えろと言う権限を持つようなものであります。  権力分立原則の中で、内閣司法に対して及ぼし得る権限は、憲法に明確に規定のある部分、つまり、判事などの任命権に限定されると解釈するべきであり、司法制度については、国権の最高機関であり、唯一の立法機関である国会こそが、立法という作業を通じて、行政とは無関係に、責任を持つと考えるべきであります。本法案のよしあし以前に、司法制度に関する法令案作成という所掌事務規定した法務省設置法なども、違憲疑いがあるのではないでしょうか。  そこで、総理に対し、お尋ねをいたします。  まず、一般的に、内閣国会に対する法律案提出権を有していることの実質的な根拠は何であるか、具体的にお答えください。また、内閣が、憲法上の規定もない中で、司法制度に関する法令案作成に関する事項所掌事務に含めているのは、権力分立原則に違反し、憲法六十五条の逸脱であり、憲法四十一条の侵害ではないかと考えますが、総理の御見解を伺います。  そもそも、司法改革が求められている最大理由一つは、裁判所行政に隷属しているかのごとき疑いが持たれていることにあります。  行政を被告とする案件において、その違法または違憲を認めるケースは、大変少ないのが実情です。しかも、いわゆる判検交流裁判官と検察官や法務官僚との人事交流によって、それまで行政機関の側で行政訴訟にかかわってきたいわゆる訟務検事や、あるいは行政そのものを担ってきた法務官僚が、あるとき突然裁判官に姿を変えて、国勝訴判決を下すことも少なくありません。  法曹一元が実現せず、在野の弁護士を経験した裁判官の数が圧倒的に少ない中で、行政側を経験した裁判官だけがふえているという現状では、裁判所としての公平らしさが疑われても仕方ありません。  また、裁判所が、内閣、もっとより端的に言えば、大蔵当局の顔色をうかがうことなく対応してきたならば、少なくとも予算人員が足りないというその点では、改革を必要とする部分の多くが既に解決されているはずであります。  本来、裁判所予算は、内閣の意向に反してでも、独自の要求額国会に示し、その国会の判断を仰ぐことができる制度になっています。ところが、この制度は、事実上利用されたことがありません。常に、裁判所予算要求は、内閣、端的に言えば大蔵当局との事前折衝の中で、事実上自粛させられてきています。  また、裁判所は、なぜか、内閣の行っている公務員定員削減五カ年計画などにおつき合いをしています。こうした行政におつき合いをしている裁判所の姿は、まさに司法行政への隷属を象徴しています。最高裁判所は、行政府がどのような計画を立てようと、独立して、必要な人員増を求め、あるいは不要な人員を削減すればよいのであります。  そこで、憲法上の問題を別としても、こうした状況の中で、内閣司法改革を担当することは、司法の独立に対する信頼をますます低下させるとはお考えにならないか、総理見解をお尋ねします。  また、審議会設置の前に、内閣独自でもできること、すなわち、裁判官訟務検事法務官僚として登用しないこと、裁判所予算要求について必要以上の介入をしないこと、さらには、内閣公務員定員削減計画につき合わせるようなことはしないことなどを、まずは隗より始めるべきと考えますが、総理は、いかがお考えでしょうか。  私は、内閣が、司法の客体、一利用者として、その立場から発言をすることまでは否定するものではありません。例えば、日本弁護士会連合会や経済団体連合会などは、司法制度を利用する立場から、さまざまな提言をしています。内閣であれ、準公的機関であれ、民間機関であれ、裁判所を利用する立場としては対等であります。したがいまして、こうした機関と横並びで一定の発言をすることは、むしろ妥当なことであります。  この場合、あくまでも、司法の一利用者としての内閣見解を示すだけですから、法律審議機関を設け、そのメンバーも国会同意人事にするなどして、変に権威づけるということは、全く不必要なことです。内閣内部の任意的な機関で独自に調査審議し、その結果を見解として公にすれば足りることであります。  本法案を撤回し、あくまでも司法の一利用者という緩やかな立場からの検討にとどめるべきと考えますが、総理見解を求めます。  また、この機会に、総理は、一方で行政改革の一環として審議会の大幅削減を進めていますが、そうした中で、あえて法律に基づく審議会を、時限的とはいえ設置することが、整合性を欠くことになるとはお考えにならないのか、お尋ねをいたします。  最初に提起しましたとおり、司法改革必要性は、私も全く同感であります。しかし、本法律案にも、またその提案理由説明にも、具体的に何がどう問題だから改革が必要であるのかは示されていません。私は、先ほど述べましたとおり、現在の司法行政に隷属しているかのごとき印象を与えていること、ここに最大の問題があると考えます。  改革を議論するのであるならば、いわゆる法曹一元や陪審制度、参審制度の導入などによって、裁判官の官僚化を抑止し、司法への市民参加を促進すること、これを第一のテーマとするのが当然ではないでしょうか。  また、第二の問題としては、裁判所及び司法研修所のキャパシティーの不足を取り上げる必要があります。  裁判が長期化している原因は、裁判官弁護士などの数が決定的に不足していることにありますが、この背景には、司法予算の不足という問題が横たわっています。最近も、司法試験合格者を大幅に増加させる際に、司法研修期間の大幅短縮を同時に実施しました。司法修習に予算を確保できないから、人員をふやすかわりに期間を短縮したと言われても、反論できないと考えます。  数が足りないからといって、質を低下させても構わないということにはなりません。司法予算を十分に確保し、裁判所司法研修所の定員を、質の低下をもたらすことなく増員させる、これが必要であると考えます。  そこで、総理に、具体的にどのような観点から司法改革が必要であると考え、本法律案を提案したのか、お尋ねします。特に、今指摘をいたしました二つの問題点、二つの視点について、総理の具体的な見解をお示しください。  なお、審議会の検討にゆだねるなどというごまかしの答弁でお逃げにならないようお願い申し上げます。司法改革が必要であるとみずからおっしゃって法律案提出している以上、その具体的な根拠や視点が存在するはずであり、そうした根拠を示せないのであるならば、改革が必要であるという主張そのものが空虚なものとなります。  次に、審議会運営についてお尋ねいたします。  これまで指摘しましたとおり、内閣審議会を置くこと自体に疑義がある以上、そのメンバーの選任や議論の情報公開、事務局体制などで、いやしくも行政による司法への干渉ととられないような配慮が必要です。  具体的には、審議会委員国会同意手続に際しては、委員候補者から参考人として意見聴取した上で手続を進めること、審議会会議は、議事録を完全公開するとともに、傍聴を可能にすること、事務局には官僚以外の幅広い人材を登用するとともに、いやしくも事務局が議論を誘導したと疑われることのないよう十分配慮することなどが必要と考えます。総理の、こうした点に関する見解をお尋ねします。  最後に、司法制度改革は、先ほど述べましたとおり、本来、我々立法府の責務であります。その責務を怠ってきたことを反省しつつ、今こそ、議会において司法改革の議論を活発化させる必要があると考えます。関係機関や専門家、市民などの幅広い意見をシステマチックに聴取する機関を設け、内閣ではなく、議会の主導する市民の立場からの司法改革を進めるよう提言して、質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇
  29. 小渕恵三

    内閣総理大臣(小渕恵三君) 枝野幸男議員にお答えいたします。  内閣法律案提出権根拠についてお尋ねがありました。  内閣は、行政権行使に当たりまして、広く各種の問題に直面し、かつ国民からさまざまな情報や要望に接しておりますので、こうした情報や要望を基礎に、広く施策を立案すべき立場にあるというべきでありまして、議院内閣制をとる我が国といたしましては、憲法第七十二条に基づき、内閣法律案を立案し国会提出できることについては、憲法制定時の国会審議におきましても明らかにされ、その後の国会審議を通じ、この解釈は定着いたしておると考えております。  法務省設置法司法制度に関する法令等の作成所掌事務として定めていることにつきましてのお尋ねでありましたが、既にお答えいたしましたように、内閣には法案提出権があり、司法制度に関する法令案についても同様であります。法務省が御指摘のような事項を所掌することといたしておりますのは、権力分立や憲法規定に違反するものではないと考えております。  司法の独立についてのお尋ねがありました。  政府といたしましては、常に司法権の独立を尊重しつつ、予算人員等の面でも最大限の配慮をしてきたものであります。司法の機能の充実強化のための施策を講ずることは、国務を総理する内閣の責務であり、このような司法制度改革を行うことが、司法の独立に対する信頼の低下を招くものとは考えておりません。  本審議会を設置する前に、内閣独自でできる取り組みをせよとの御意見であります。  内閣といたしましては、裁判官の登用には相当の理由があるとしてこれを行ってきたところでありますし、予算及び定数等につきましても、これまで裁判所に協力し、司法機能の充実強化に努めてまいりました。本審議会は、二十一世紀我が国社会における司法制度基盤整備等に関し必要な基本的施策について調査審議し、司法機能の充実強化を図っていこうとするものでありますので、御理解をいただきたいと思います。  司法の一利用者という立場からの検討にとどめるべきではないかとのお尋ねであります。  司法制度改革審議会における調査審議の対象事項は、裁判に関するものに限らず、広い意味で司法制度のあり方にかかわるものであり、国政の基本にかかわる極めて重要な事項であることから、本審議会は、国務を総理する内閣法律で設置するのが適当であると考えております。  司法制度改革審議会の設置と行政改革との整合性についてお尋ねがありました。  本審議会は、司法制度改革という国政の基本にもかかわる重要な事項につきまして、総合的、基本的政策を調査審議するため、時限を付して特に設置されるものであり、中央省庁等改革基本法においても、必要のある場合には時限を付して設置することを認めておりますので、行政改革と整合性を欠くものではないと考えております。  司法改革必要性をめぐり、司法への市民参加の促進と司法予算の十分な確保という二つの視点、テーマについてお尋ねがありました。  二十一世紀我が国社会におきまして、社会事後チェック型に移行するなど、さまざまな変化に伴い、司法役割はより一層重要なものとなると考えられ、そのためには、司法の機能を質的、量的に充実強化し、国民に身近な司法制度を構築していく必要があると考えております。  司法制度改革審議会運営に関するお尋ねであります。  審議会委員の選任手続、会議及び事務局運営等におきましては、行政による司法への干渉ととられるようなことがあってはならないと考えております。内閣としては、会議の公開を含めたその運営事務局の構成及び運営等が適正に行われるよう配慮してまいりたいと考えております。  以上、御答弁といたします。(拍手
  30. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  31. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 本日は、これにて散会いたします。     午後一時四十二分散会     ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  小渕 恵三君         法務大臣    陣内 孝雄君         外務大臣    高村 正彦君         大蔵大臣    宮澤 喜一君         厚生大臣    宮下 創平君  出席政府委員         法務大臣官房司法法制調査部長         兼内閣審議官  房村 精一君