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1999-02-04 第145回国会 衆議院 本会議 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月四日(木曜日)     —————————————   平成十一年二月四日     午後一時 本会議     ————————————— ○本日の会議に付した案件  平成十一年度における公債発行特例に関する法律案内閣提出)、経済社会変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税負担軽減措置に関する法律案内閣提出)及び租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明及び質疑     午後一時三分開議
  2. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  平成十一年度における公債発行特例に関する法律案内閣提出)、経済社会変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税負担軽減措置に関する法律案内閣提出)及び租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明
  3. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) この際、内閣提出平成十一年度における公債発行特例に関する法律案経済社会変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税負担軽減措置に関する法律案及び租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案について、趣旨説明を求めます。大蔵大臣宮澤喜一君。     〔国務大臣宮澤喜一登壇
  4. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま議題となりました平成十一年度における公債発行特例に関する法律案経済社会変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税負担軽減措置に関する法律案及び租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案趣旨を御説明申し上げます。  まず、平成十一年度における公債発行特例に関する法律案につきまして御説明申し上げます。  平成十一年度予算につきましては、平成年度第三次補正予算と一体的にとらえ、年度末から年度初めにかけて切れ目なく施策を実施すべく、いわゆる十五カ月予算考え方もと、当面の景気回復に向け全力を尽くすとの観点から編成したところであります。  この結果、歳出面につきましては、一般歳出規模を前年度当初予算に対して五・三%増の四十六兆八千八百七十八億円としているほか、歳入面につきましても、所得税及び法人税について恒久的な減税実施するとともに、住宅建設及び民間設備投資促進経済金融情勢変化への対応等観点から、適切な措置を講ずることといたしております。  その中で、公債につきましては、財政法規定により発行する公債のほか、二十一兆七千百億円に上る多額の特例公債発行せざるを得ない状況にあります。  本法律案は、こうした厳しい財政事情もと平成十一年度財政運営を適切に行うため、同年度における公債発行特例に関する措置を定めるものであります。  以下、その大要を申し上げます。  第一に、平成十一年度一般会計歳出の財源に充てるため、財政法第四条第一項ただし書きの規定による公債のほか、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で公債発行することができるといたしております。  第二に、租税収入等の実績に応じて、特例公債発行額をできるだけ縮減するため、平成十二年六月三十日まで特例公債発行を行うことができることとし、あわせて、同年四月一日以後発行される特例公債に係る収入は、平成十一年度所属の歳入とすること等といたしております。  次に、経済社会変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税負担軽減措置に関する法律案につきまして御説明申し上げます。  本法律案は、近年における我が国経済社会の構造的な変化国際化進展等に対応するとともに、現下の著しく停滞した経済活動回復に資するよう、個人及び法人所得課税あり方について、今後の我が国経済状況等を見きわめつつ、将来抜本的な見直しを行うまでの間、早急に実施すべき所得税及び法人税負担軽減措置を講ずるものであります。いわゆる恒久的な減税具体的内容を定めるものであります。  以下、その大要を申し上げます。  まず、所得税について、最高税率を五〇%から三七%に引き下げるとともに、平成十一年以後の各年分所得税額から、二十五万円を限度として、その二〇%相当額を税額控除する定率減税実施することとしております。また、十六歳未満の扶養親族及び特定扶養親族に係る扶養控除額の加算を行うこととしております。  次に、法人税について、その基本税率を三四・五%から三〇%に引き下げるとともに、中小法人軽減税率等についても所要の引き下げを行うこととしております。  次に、租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  本法律案は、現下の厳しい経済情勢等を踏まえつつ、経済金融情勢変化等に対応するため、住宅土地税制投資促進税制金融関係税制等について適切な措置を講ずるものであります。  以下、その大要を申し上げます。  第一に、住宅土地税制について、控除期間及び控除限度額拡充等による住宅ローン減税実施長期所有土地等譲渡所得課税軽減等措置を講ずることとしております。  第二に、投資促進税制について、情報通信機器即時償却制度創設等措置を講ずることとしております。  第三に、金融関係税制について、非居住者等の受け取る一括登録国債利子源泉徴収免除等措置を講ずるほか、有価証券取引税等の廃止にあわせ株式等譲渡益課税適正化措置を講ずることとしております。  その他、小規模宅地等に係る相続税特例拡充特別法人税課税の停止、たばこ税税率引き下げ利子税等軽減等措置を講ずるほか、既存の特別措置整理合理化等を図り、あわせて適用期限の到来する特別措置延長等措置を講ずるとともに、居住用財産譲渡所得課税特例に係る阪神淡路大震災による滅失家屋の敷地の譲渡期間要件特例創設等措置を講ずることとしております。  以上、平成十一年度における公債発行特例に関する法律案経済社会変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税負担軽減措置に関する法律案及び租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)      ————◇—————  平成十一年度における公債発行特例に関する法律案内閣提出)、経済社会変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税負担軽減措置に関する法律案内閣提出)及び租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  5. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。末松義規君。     〔末松義規登壇
  6. 末松義規

    末松義規君 民主党末松義規です。  議題となりました法案につき、民主党を代表して、総理大蔵大臣自治大臣質問いたします。  それら法案の中で、法人減税住宅ローン減税などの問題につきましては、我々民主党が従来から是正を要求し、ほぼそのラインで是正されてきておりますので、ここでは、所得税減税問題を中心質問いたします。  ただ、その前に私がどうしてもお聞きしておきたいのは、小渕総理が、あるべき日本の姿として繰り返し胸を張って主張しておられる、富国有徳というコンセプトです。  施政方針演説についても、小渕総理は、内閣存在キーコンセプト富国有徳だと言い切られました。小渕内閣根本哲学であり表看板である富国有徳という言葉は、今後、小渕内閣の隅々にまでしみ渡っていくコンセプトであるだけに、極めて重要です。もちろん、昔から政治の根幹をなすと言われている税制の面でも適用されるでありましょうから、この際、その意味を掘り下げてみたいと思います。  御存じのように、明治政府においては、富国強兵、つまり、官僚国家をつくり軍事力列強諸国と勝負するという国策を全面に打ち出しておりました。小渕総理富国とは、明治政府富国と同じものなのでしょうか。また、その内容として、国の経済力、つまりGNPを引き上げるということだけなのでしょうか。  さらに、明治政府富国強兵という言葉と比べますと、今回は、強兵が有徳に変わっただけです。ということは、表では政府スリム化と言いながら、明治政府官僚主導国家経営ということを裏では維持するという決意をあらわしたということでしょうか。国民中心市民中心を掲げてきた我々民主党立場からすれば、ここはどうしても、富国ではなく富民という言葉を選ぶということになると思います。まさにこの点にこそ、民力を掲げる民主党と、国家主義中心とする自民党政治の最大の対立軸がはっきりわかるのであります。  小渕総理があえて富国にこだわった理由をお聞かせいただきたいし、率直に言って、小渕総理にとって、クリントン大統領が言ったようにピープルファースト、国民が先ということなのか、または、明治政府のように国家が先ということなのか、どちらが主でどちらが従なのか、はっきりとここで位置づけていただきたいと思います。  次に、有徳という言葉は私も好きな言葉ですが、基本コンセプト有徳とは一体何なのか、明らかではありません。御自分言葉で述べていただきたい。そして、それは、国民有徳人々になってもらいたいというメッセージなのか。あるいは、海外に対し、日本有徳の国だと思われたいという海外へのメッセージなのか。さらに、有徳の徳があるという場合の主語は一体だれなのか。政府なのか、あるいは国民なのか。  さらに、小渕内閣キーコンセプトである有徳部分は、総理の意向として、意識して本年度予算の中に表現されているのかいないのか。特に、国家統治基本である税制の中で有徳の思想を具体化していくという指導を行ってきたのか、あるいは行っていくつもりなのか。これらにつき、小渕総理の明確な答弁をお願い申し上げます。(拍手)  具体的に言えば、有徳考えに合った、例えばNPO活動に対し、実際に我々が寄附したいと思っても、米国のような寄附控除システムがないこともあり、NPO育成についてのインセンティブについては極めて不十分なものがあります。  これからの日本は、総理有徳という言葉で述べられたように、我々日本人一人一人の個性や長所を十分に開花させながら、心豊かな人生が送れるということが極めて重要になってまいります。そうなると、生活のためだけに働くのではなく、人生目的である自己実現自己創造を行うために、さまざまな活動が行えるシステムづくりを、早急に我々政治がやっていかなければいけません。税制についても、国家第一主義一点張りではなく、人々自己創造を助けるような仕組みにすることが望ましいことです。  したがって、自分の徳を伸ばすという点で、自分がよかれと思う活動をしているNPO等に対する活動寄附金提供については、アメリカ等で行われているような寄附金控除システムが早急に行われるべきであると思いますが、小渕総理及び宮澤大蔵大臣考え方お尋ねしたいと思います。(拍手)  次に、所得税減税についてお聞きします。  総理は、衆議院本会議で、民主党羽田幹事長の問いに答えて、税負担バランス中立化景気配慮観点から、課税ベース課税方式抜本的見直しを伴わずに行う減税方式としては、定率減税が適当と答弁されました。しかしながら、政府が提案している最高税率のみの引き下げは、納税者ごと税負担バランスをゆがめるものとなります。  例えば、所得税改正引き下げられた最高限界税率三七%ですが、これが適用されるのは、サラリーマン夫婦子供二人のケースでは、給与収入約二千三百万円以上の階層だけで、数にして、日本国内ではたった十数万人しかすぎません。それ以下の階層はすべて、以前からの同じ限界税率が適用されます。これは不適当ではありませんか。宮澤大蔵大臣にお伺いします。  第二に、本当に景気に配慮する決意であるならば、消費性向が相対的に低く、海外での資産活用を多く行っていると言われる高額所得者に手厚い最高税率引き下げよりも、むしろ国民の大宗を占める中低所得者層について税負担等軽減を図るべきです。  繰り返し指摘されていますが、政府案では、サラリーマン夫婦子供二人のケースで、給与収入七百九十三万円以下の世帯、つまり給与所得者全体の七、八割を占める国民については、九八年の特別減税後よりも負担増になっております。これでは、大きな不安のある中で、国民消費拡大に動くはずがありません。宮澤大蔵大臣、答えてください。  総理御自身の言に従っても、景気に配慮した所得税率緊急是正としては、民主党提案どおり、各段階の税率を一律に二割ずつ下げる方式の方がよほど適当と思いますが、いかがでしょうか。宮澤大臣にお願いします。(拍手)  次に、民主党提案の、扶養控除見直し子育て支援手当制度セット導入についてお伺いします。  総理は、さきの本会議で、制度の違いを述べて、民主党の提案する、扶養控除見直しセットでの子育て支援手当抜本的拡充案に否定的な答弁をされました。  扶養控除の成り立ちを見ますと、社会保障制度の整備が立ちおくれていた戦前戦後の我が国において、税制あり方というよりは、むしろ社会保障制度代替措置として扶養家族についての所得控除が設けられ、拡充されてきたという歴史がございます。  これは、過去についてはやむを得ない面があったかもしれませんが、世界有数経済先進国となった今日、いつまでもこのような税制をいたずらに複雑化する控除制度に対し、社会保障制度の代役を求めることそのものが不適切であります。小渕総理並びに宮澤大蔵大臣のお考えを尋ねます。  いずれにしましても、今回の減税の一番の問題点は、その場しのぎばらまき減税だということです。日本の将来につなげる展望がないんです。財政事情がさらに厳しくなり、大幅減税ができにくくなる将来状況を思えば、今ここで将来の構造改革にこの減税を活用してつなげていかずに、いつ構造改革をやるんだという気持ちでございます。  民主党は、構造改革を重視しています。内容としては、第一に、課税ベースを広げることを目的納税者番号制度を入れ、総合課税化実施していくこと、二番目に、税制簡素化目的扶養控除を整理し、これらの控除社会保障政策に切りかえていくこと、三番目に、中央政府規模を大幅にスリム化していって、地方主権につなげていくことなどです。このような構造改革を進めていく戦略が今ここで一番重要なわけです。こういった構造改革に対して直ちに検討すべきだと思いますが、小渕総理、いかがでしょうか。  総理は御答弁の中で、国民生活の将来像を示した上で、税制についても抜本的改革案を示すと言われておりますが、はっきりと時期を明示していただきたい。まごまごしていると、日本経済危篤状態になってしまうからです。また、その抜本改革につき、どのような基本的イメージをお持ちなのでしょうか。小渕総理宮澤大蔵大臣にお伺いします。  次に、自由党を代表するお立場野田自治大臣にお聞きします。  昨年の参議院議員選挙の際、自由党公約として、所得税住民税を半分にするということを掲げられました。公約は、公党と国民との契約なので、極めて大きな重みを持っています。現在、自民党との連立協議の中で、かつてのこうした主張が消えてしまいました。  自由党主張税制改正について盛り込まれたのは、実質上、言葉だけの消費税福祉目的税化、そして課税最低限をさらに引き上げてしまった扶養控除の引き上げぐらいではないでしょうか。これでは、自由党主張してきた政策本意の自自連立とは言えないんじゃないでしょうか。さき公約実現は、今でも一貫して目指しておられるのでしょうか、それともおられないのか、明言していただきたいと思います。野田大臣の率直な御答弁を求めます。  最後に、私は、二十一世紀は二十世紀のように物質的豊かさを競う時代ではなく、自立と共生を目指す思いやり社会の中で、自分存在理由を競う時代になると位置づけております。そのような環境づくりをリードしていくのが新しい政治の役割だということをここで強調させていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  7. 小渕恵三

    内閣総理大臣小渕恵三君) 末松義規議員にお答え申し上げます。  冒頭、かねて私が申し上げてまいりました富国有徳につきましてのお尋ねがございました。  私は、施政方針演説で申し述べたところでありますが、最も重要なことは、国民お一人お一人が幸せで豊かな生活をし、安心して暮らせる社会を築くことであると考えております。そこで、富国富民ということを申されましたが、私は、国は立派だが国民は不幸せというようなことはあり得ないわけでございまして、したがいまして、国民国家とを対立的にとらえるべきではなく、一体として考えていくべきである、こう考えております。  こうした社会を築いていく上で、経済の繁栄はいわば基礎的な条件であることは申すまでもありません。同時に、経済面のみでは真の豊かさや心の充実を実現できないことも、これはまた当然であります。そうした意味で、国全体として、徳すなわち高い志を持った国家でなければ、真に豊かな国であり続けることは不可能であり、また、何よりも世界から信頼されなくなると考えております。  こうした考えに立ちまして富国有徳ということを申し上げてきたところでありますが、さらにこれに肉づけすべく、二十一世紀のあるべき国の姿について、有識者から成る懇談会を設置いたしまして、次の世代に引き継ぐべき指針をまとめたいと考えております。本日、末松議員の御指摘一つの御意見として受けとめさせていただきたいと思います。  有徳がどのように予算に反映されているかということでありますが、私は、内閣をお預かりして以来、徳すなわち高い志を持った社会実現に努めてまいりたいと考えております。その姿勢の一つのあらわれがまた、本年度予算であるとも思っております。  具体的には、他人に優しく、美しいものを美しいとごく自然に感じ取ることのできる社会、隣人が優しく触れ合うことのできる社会、そして、何よりも住みやすい地域社会を建設することであると考えておりまして、一歩でもそうした社会に近づけるよう、予算面でも、提唱いたしております二十一世紀先導プロジェクトを初めとして、都市、住宅環境、教育、福祉といった二十一世紀を見据えた分野に重点的、戦略的に予算の配分を行ったところでございます。  税制との関係につきましてお尋ねがありました。  真に豊かな国家を目指すため、まずは経済再生を図ることが肝要であるとの認識のもと、大規模減税実施を決断したところであります。この中で、恒久的な減税のほか、住宅減税実施するとともに、二十一世紀を見据えた社会経済情勢変化に対応するさまざまな措置を講ずることといたしております。  次に、NPO活動に対して、寄附金控除についてのお尋ねがありました。  我が国におけるNPOへの寄附金税制上の取り扱いにつきましては、今後、法人としての資格を取得するNPO実態を見きわめた上で、寄附公益性が担保される仕組みを前提として、税負担の公平にも留意しつつ、慎重に検討していく必要があると考えております。  人的控除あり方についてのお尋ねでありましたが、個人所得課税におきまして、基礎的な人的控除を差し引くことによって、担税力の調整を行いながら課税所得を確定するというのが基本的な考え方であり、子供のいる納税者につきましては、子供の数に応じた扶養控除等を設けておるところであります。  いずれにしても、人的控除等課税ベースあり方につきましては、税率構造課税方式あり方とあわせて、抜本的改革へ向けて、腰を据えて検討を行っていく必要があると考えております。  次に、今回の減税につきましてお尋ねがございました。  将来の抜本的見直しを展望しつつ、現下の厳しい経済情勢にかんがみ、早急に税負担軽減を図る観点から、期限の定めのない恒久的な減税実施することとしたところであります。  個人所得課税につきましては、最高税率引き下げを行うことといたしておりますが、これは、我が国の将来を見据え、国民の意欲を引き出す観点から行うものであります。また、現下の厳しい経済情勢にかんがみ、早急に税負担軽減を図る観点から、課税ベース課税方式抜本的見直しを伴わずに恒久的な減税を行う方式として、納税者ごと税負担バランスをゆがめない定率減税をとったところであります。  法人課税につきましては、我が国企業国際競争力の発揮、企業活動活性化観点から、その実効税率国際水準並み引き下げるとの趣旨で、法人税及び法人事業税基本税率引き下げるとともに、中小軽減税率等引き下げることといたしております。  したがいまして、今回の恒久的減税ばらまき減税であるとの御指摘は当たらないと考えております。  次に、二つの問題につきまして御意見を開陳をされました。直接のお尋ねではなかったと思いますけれども、重要な点でございますので申し述べさせていただきますが、納税者番号制度導入による総合課税の問題であります。  総合課税化につきましては、今後の納税者番号制度等所得把握体制の取り組みも含め、理論的実態面から十分検討を進めていく必要がございます。また、納税者番号制度につきましては、国民の受けとめ方や考え方を十分酌み取りながら、同制度目的を初め、プライバシーの問題、経済取引への影響、コストと効果の諸課題について、議論をさらに深めていく必要があると考えております。  もう一点、中央省庁スリム化について御意見がございました。  中央省庁等改革は、内閣の最重要課題一つであり、揺るぎなく推進してまいる決意であります。今国会におきまして、中央省庁等改革関連法案提出を予定いたしておりまして、この中で二十一世紀我が国にふさわしい中央省庁の具体的な姿をお示ししてまいりたいと考えております。橋本前総理が全精力を傾け取り組まれた課題でもあり、私といたしましても、いささかも退くことなく、その実現のために全力を尽くしていく決意でございます。  最後に、税制抜本的改革についてお尋ねがございました。  我が国の将来を見据えた税制抜本的見直しにつきましては、究極、国民一人一人にさまざまな意見のあることから、今後の我が国経済状況等を見きわめつつ、税体系あり方などを含む幅広い論点について、しっかりとした検討を行っていく必要があると考えております。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)     〔国務大臣宮澤喜一登壇
  8. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 総理の御答弁を補足して申し上げます。  NPOにつきましては、これからどのような団体がNPO法人としての資格を取得することになるか、どのような活動をされるかということを、実態を見きわめたいと思っておりまして、それによりまして、寄附公益性が担保されるような仕組み考えまして、減税措置をいたしてまいりたいと思っております。  次に、所得税改正についてお話がございました。  最近、いわゆる定額減税をいたしましたが、本来、所得税の一番大事な部分累進課税でございますので、これによって公益性が保障される、フェアであるということでございますから、定額減税をいたしますと累進性というものが死んでしまうわけでございます。したがいまして、できるだけ減税はやはり定率にして累進を生かすということが大事なことだと思いますが、非常に急ぎますときには税額表ができません。二月ぐらいかかりますので、その場合には定率が難しくなりまして、定額でございますとそれだけ引けばよろしいわけですから、そういうことをいたした場合がございますけれども、できれば累進性を生かすという意味で、定率にするのが本来であると思います。  したがって、そういう意味で、末松議員が言われました、各段階の税率を一律二〇%引き下げ方式がいいと言われましたのは、その物の考え方は、私どもと同じでございます。まさにその方が累進性が生きてまいりますので、本来であると存じます。そこは、私ども、異存がまことにございません。  それで、おっしゃいましたことは、政府は、実はその最高税率を下げたではないかと。これは本来余計なことであって、これも二〇%だけ減税すればそれでいいではないか、そういう御主張であります。  そういたしますと、確かに、最高税率を下げた分だけ、それだけの財源が浮いてまいりますから、それだけの財源を使えば、もう少しその他の階層に、頭打ちを少し大きくして、より大きな減税ができる、そういう御主張で、それは一つの一貫した御主張と思いますが、それにもかかわりませず、私どもが最高税率をこの際下げましたのは、もう随分前から、税制調査会から、やはり六五という税率は先進国としては高過ぎるということを言われておりまして、いつかは直したいと思っておりました。  そして、我が国でも、いろいろこれからベンチャービジネスもできたり、国民が一生懸命やってもらいたいということがございますから、いかにも六五という税率は将来のためにいかがかということと、及び外国からもたくさん人がこれからも来られて、我が国でも仕事をしてもらうことになるんでございましょうから、日本所得税だけが高いということもいかがか、こういう考え方で、このたびの最高税率引き下げをいたしましたわけであります。  税制調査会の考えによりますと、余り高い税率は生産活動を阻害しかねない、あるいは租税の回避を起こすことがあるというようなことでございますが、ただいまのような考えから最高税率引き下げたわけでございます。  その点は、御主張には私は一つの一貫したお立場があると思いますし、それによってその他の階層減税をもう少しふやすことができたということもそうであると思いますが、そのような立場から政府としては最高税率引き下げをいたしました。  それからもう一つ。いわゆる社会保障との関係で、扶養控除のことに御言及がございまして、これは総理がお答えになったわけですが、児童手当とかそういう制度を、税の人的控除でやるか、あるいは人的控除でやらずに、児童手当そのものを歳出でやるかというのは、国によって違っておりまして、例えば、アメリカは、人的控除でやっておりまして児童手当がございません。イギリスの場合には、児童手当がございまして人的控除はございません。我が国は、両方のミックスをやっておりまして、将来にわたって人的控除というものを一般的にどう考えるか。  これは、私どもの気持ちで言いますと、やはり担税力というものがあって、子供さんがたくさんいれば、その応能負担というもので控除をすべきであろうというような、税そのものの持っている思想でやっておりますけれども、この両方に施策がまたがっておりますので、将来、いろいろ検討をする課題になるかもしれないというふうに思っております。  それから、将来の抜本的な税制改正というのはいつかということで、総理もお答えになられましたが、今、平成十一年度の租税見積もりは、昭和六十二年度まで押し戻されておりまして、それは、毎年マイナス成長ではどうもやむを得ないことでございますから、我が国経済がせめて二%程度の成長軌道に入った、そういうときに、全部の財政あるいは税制基本的に考えるべきではないかというふうに思っております。(拍手)     〔国務大臣野田毅君登壇
  9. 野田毅

    国務大臣(野田毅君) 末松議員にお答えいたします。  税制改革について、参議院選挙では、所得税住民税を半分にするということを公約していたが、自自連立協議の中であいまいになっているのではないかとのお尋ねがありました。  行革減税、つまり、所得税住民税を半分にする、その財源は主として行政改革による歳出削減によって行うというのは、自由党基本政策であります。これは、経済の活力を維持発展させる上で可処分所得の確保が極めて大切なポイントであるということ、それから行政の簡素化へのドライブをかけるということを考慮して打ち出したものでありまして、その理念とするところは、いわゆる官が民からお金を取り上げて使い道を決めていくというのではなくて、できるだけ民にお金は残しておいて、みずからその使い道は決めてもらうという、幅広い選択肢の中でみずから決めてもらうということを考えておるところでありまして、いわば、国民がみずからの才覚と自己責任によって自由に活動できる社会、フリー、フェア、オープンな社会をつくるということであって、その方針は何ら変わるところではありません。  自民党におかれても、効率的で簡素な政府を構築するというこの基本的な方向性は、自由党と一致をしているところだと考えております。  平成十一年度税制改革につきましては、大幅な減税が行われることとなりましたが、これは、党首合意における、直面する経済危機を克服するための当面の措置として、法人関係税の実効税率引き下げ所得税住民税等の減税により十兆円規模減税を行うということを実現したものであります。  なお、消費税の使途を福祉目的に限定することや、土地住宅税制、設備投資減税、あるいは有価証券取引税の廃止、あるいは法人税における連結納税制度の検討などなど、かなり前進した税制改革内容であると考えております。  また、経済社会構造改革を進めるとともに、社会保障制度の基盤を強化するための税制抜本改革については、引き続き、自民、自由両党の間において協議が行われることになっておりまして、自由党は、構造改革実現に向けて努力をするのは、これは当然のことであると考えております。  以上、お答えをいたします。(拍手)     —————————————
  10. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 石井啓一君。     〔石井啓一君登壇
  11. 石井啓一

    ○石井啓一君 公明党の石井啓一でございます。  私は、公明党・改革クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました平成十一年度公債発行特例法案並びに税制関連三法案に関し、小渕総理大臣並びに関係大臣質問をいたします。  本年一九九九年、我が国経済は重大な岐路に差しかかっております。デフレスパイラルのらせんを転げ落ちるのか、それとも確かなる回復軌道へ乗せる足がかりをつくるのか、まさに起死回生をかけたラストチャンスであります。  日本全体を覆うさまざまな不安を打ち払い、目前に迫った二十一世紀を明るく希望にあふれた世紀としていくための重要な年であると位置づけ、まずは景気回復全力を傾けなければなりません。しかしながら、過去の経験に基づく景気対策に終始するならば、大きな過ちを犯すことになります。戦後経済を支えてきた金融、産業、雇用、社会保障など、さまざまな構造システムが疲弊していることによる構造不況としてとらえ、大変革していかなければ、我が国は衰亡への坂を転げ落ちかねません。  私は、決して悲観論に立つものではありませんが、重大な岐路にあるという危機認識、緊張感のもと、速やかな景気回復に向けて、積極的な財政出動を行うとともに、あわせて構造改革につながる施策を断行していかなければならないと考えます。その意味において、今般の税制改正は、極めて重大な意義を持つものであるとの認識が必要であります。こうした前提のもと、順次質問をいたします。  まず、景気の認識について伺います。  九九年度政府予算案は、規模にして八十一兆八千億円を超える大型予算となっておりますが、経済構造改革などの抜本改革は不十分であり、公共事業についても、省庁別の配分割合に大きな変化はなく、二十一世紀我が国社会の変革に向けた戦略を欠く予算と言わざるを得ません。  政府は、九九年度政府経済見通しにおいて、実質経済成長率をプラス〇・五%と見込んでおりますが、民間のエコノミスト、シンクタンクでは、個人消費、設備投資とも、民需の落ち込みは依然として厳しい水準が続き、公共事業を初めとした公的需要も年度後半にかけて息切れし、民需を中心とした自律的な景気回復は難しいとの見方が支配的であります。さらに、金融機関の貸し渋りが早期には解決しそうにない上に、長期金利のさらなる上昇も懸念をされており、現在のままで推移するならば、経済成長プラス〇・五%達成は困難であると言わざるを得ません。総理の見解を伺います。  また、宮澤大蔵大臣は、来年度予算について、初回からハマの大魔神を投入したようなものと評されました。ハマの大魔神といえば、最後の切り札であり、これが失敗すればもう後がないわけでありますが、総理及び大蔵大臣は、この予算でプラス成長に転じなければ後がないという覚悟がおありかどうか、プラス成長が達成されない場合のみずからの政治責任についてどのようにお考えか、それぞれお答えをいただきたいと存じます。(拍手)  次に、金融問題について伺います。  我が国経済の大きなおもしとなっている不良債権の抜本的処理の進展が、速やかな民間主導の景気回復軌道に乗せ得るかどうかの重要なかぎを握っております。  最近、金融界の一部及び自民党内において、二〇〇一年四月からのペイオフを延期してはどうかという議論があるようですが、これは、結果として不良債権問題を先送りするだけであります。金融早期健全化法などを活用し、金融再生委員会の基本方針にもあるとおり、本年度末までに不良債権を一掃する覚悟で臨むべきであります。総理及び金融担当大臣のペイオフに対する見解を改めて伺います。  また、信用保証協会の融資枠の拡大により、貸し渋りは若干緩和され、その効果が倒産件数の減少などの形で見られておりますが、先般、予算委員会において明らかになったとおり、一部金融機関による、信用保証協会の保証つきの融資を悪用した旧債振りかえが行われるなど、金融機関の貸し渋り、資金回収の実態は依然深刻であります。  信用保証協会の特別保証は、一月末までに保証承諾金額で十二兆三千億円に上っておりますが、中小企業の経営を安定軌道に乗せるために、この二十兆円の特別保証枠をさらに拡大する、また、特別保証の返済猶予期間を延長する等、中小企業の資金繰り支援をさらに拡充すべきと考えますが、総理並びに通産大臣の見解を伺います。  さらに、財政と金融の分離について一言申し上げます。  私自身も昨年の三会派覚書に関与いたしました。確かに、一字一句について文言の詳細までは詰められてはおりませんでしたが、財政・金融の完全分離、金融行政の一元化という表現は、金融処理や金融危機管理についての企画立案機能も大蔵省から分離することが、素直な解釈になると思います。総理の素直な見解をお伺いしたいと思います。  続いて、法案の中身についてお伺いをいたします。  まず、所得税法人税減税の意義について伺います。  所得税法人税減税に関する法案名を見ると、経済社会変化等に対応して早急に講ずるために所得税及び法人税の負担を軽減するとなっております。これは最高税率引き下げも、定率減税も、すべて経済社会変化等に対応して早急に講ずるための特例措置ということであり、同法案第一条に規定されている、我が国経済状況等を見きわめつつ抜本的な見直しを行うまでの間の暫定措置でしかあり得ません。  政府は、恒久減税からいつの間にか恒久的減税にすりかえをいたしましたが、これでは一種の特別減税であり、恒久的にも当てはまりません。いつまでこの特例的な減税を継続し、いつ抜本的な見直しを行うのか、総理並びに大蔵大臣お尋ねします。  さらには、抜本改革の方向性として、直間比率の見直し課税ベース、すなわち各種控除や引当金、準備金等の見直し課題になると思われますが、これらについての基本的な見解を大蔵大臣に伺います。  また、宮澤大蔵大臣は、予算委員会において、凍結されている財政再建の再開の時期を、実質で二%程度の成長が軌道に乗った場合と答弁をされました。財政構造改革には増税や歳出見直しが伴うと予想されますが、財政再建の時期と税制抜本改革の時期との関係についてどのようにお考えか、総理並びに大蔵大臣答弁を求めます。  今般の税制改正案の中で、所得税住民税を含めた最高税率が六五%から五〇%へと引き下げられました。基本的な方向は評価しますが、本来、最高税率引き下げに当たっては、総合課税化納税者番号制度導入といった課題セットで行われなければ、金持ち優遇との批判を免れないとともに、後々の制度導入に大きな支障を来すのではないかと思います。総合課税化納税者番号制度についての総理並びに大蔵大臣の認識をお伺いいたします。  所得課税減税規模は、控除の引き上げで若干規模が膨らみましたが、住民税と合わせると、昨年、九八年に行った特別減税とほぼ同じ四兆三千億円であり、最高税率引き下げ等によって高所得者の減税規模が拡大する一方で、夫婦子供二人の平均的な世帯では、年収七百九十三万円以下の層は昨年と比べて税負担が重くなります。給与世帯全体では、六割を超える世帯が昨年と比べ税負担がふえる結果になります。これでは、今般の税制改正の重要な意義の一つである景気対策にはなり得ません。  我々は、現在の深刻な不況を考えるのであれば、基本的な考え方として、昨年と比べても大半の国民減税の恩恵を受け、消費刺激につながる施策を実施すべきと考えます。当面の景気刺激策として、何らかの形で税負担がふえる部分を埋め合わせる措置導入すべきであると強く主張をいたします。(拍手)  私どもは、昨年分特別減税よりも負担増になる所得層に対して、所得税で本人二万円、扶養家族各一万円、住民税で本人一万円、扶養家族各五千円の戻し税を導入することを提案しております。  また、今回、十六歳未満の扶養控除額が引き上げられる案になっておりますが、扶養控除の増額では、既に課税最低限以下の所得の世帯では全く受益がありません。また、所得により減税の受益額が変わってくること等を考えると、今後の子育て支援のためには、所得控除で対応するよりも、むしろ支給面で対応すべきと考えます。  私どもは、十六歳未満の扶養控除を廃止し、かわって、ゼロ歳から十六歳未満の子供に、第一子、第二子で月額一万円、第三子以降で月額二万円の児童手当の抜本的な拡充を提案しております。  以上申し上げたような税負担増の埋め合わせ措置がとられなければ、今回の減税法案には到底賛成できるものではありません。総理並びに大蔵大臣の前向きな答弁を期待いたします。(拍手)  なお、私どもの強い主張により実現した地域振興券につきましては、消費回復の呼び水としての期待が日増しに高まっております。悲観的論調が多い中で、これほどさわやかな話題を呼び、また国民の消費マインドを高めたということからしても、その効果ははかり知れません。今後の状況により、地域振興券をさらに追加的に実施することを検討すべきであると考えますが、総理の見解をお伺いします。  次に、住宅税制について伺います。  今般の税制改正住宅ローン減税が大幅に拡充されていることについては、一定の評価をいたします。しかし、住宅についていえば、バブル期にマイホームを購入した多くの方が、資産価値が下落する一方で、所得が伸びず、ローン地獄に苦しんでいる実態を無視するわけにはいきません。私は、既に住宅ローンを組み、返済に苦しんでおられる方々に対して、買いかえだけではなく、売り切りの場合の譲渡損失についても何らかの税制上の措置を講ずべきであると考えます。  小渕内閣生活空間倍増という政策目標を掲げられているのであれば、当然前向きの検討がなされると考えますが、総理並びに大蔵大臣答弁を求めます。  国民生活に密着した税制改正として、医療費控除制度拡充を求めます。  現在、所得税の医療費控除は上限が二百万円でありますが、特に難病患者の医療費負担には極めて重いものがあります。例えば、人工呼吸器を装着して自宅で闘病しておられるALSの患者の方の場合、介護費用を中心とする医療費は、月当たり五十万円から七十万円、年額では六百万円を超える重い負担となっております。医療費控除は、昭和五十年に引き上げられて以来、据え置かれており、この間の物価上昇等を考えるだけでも、十分に引き上げの妥当性はあると考えます。総理並びに大蔵大臣の積極的な答弁を期待いたします。  税制改正による減税の財源は、赤字国債であります。今日の深刻な不況を脱するため、経済再生なくして財政再建なしとの認識に立つならば、当面の措置としてはやむを得ないと考えます。しかしながら、三十一兆円に上る大量の国債が明らかになり、長期金利は急上昇し、その結果、住宅金利の上昇を招く、企業収益を圧迫するなど、減税効果を相殺しかねない皮肉な状況があらわれております。  大蔵省が公表した中期財政試算によっても、一定の経済成長によって税収はふえても、膨大な国債の金利がそれを上回ることから、結果として、経済成長率が高まっても公債の新規発行額は減らないということになっております。これらを見るにつけ、私は、ある意味において、国債に依存した景気刺激策そのものに限界があらわれているのであり、本格的な構造改革が待ったなしに迫られているという認識を強く持つものであります。  最後総理の見解をお伺いして、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  12. 小渕恵三

    内閣総理大臣小渕恵三君) 石井啓一議員にお答え申し上げます。  まず、政府経済見通しにつきましてのお尋ねがございました。  平成十一年度は、金融システム安定化策等によりまして、不良債権処理、金融機関の再編が進んでおりまして、我が国実体経済回復を阻害してまいりました要因が取り除かれつつあると考えております。また、昨年末に成立いたしました十年度第三次補正予算もとで、切れ目なく景気回復策を実施しておりまして、十一年度予算におきましても、恒久的減税を初めとして、国、地方合わせて、九兆円を超える思い切った減税実施するほか、公共事業につきましても大幅な伸びを確保するなど、積極的な財政運営を行うことといたしております。  このような諸施策と民間の真剣な取り組みが相まって、十一年度我が国経済の実質成長率が〇・五%程度まで回復するものと確信をいたしております。  平成十一年度予算についてのお尋ねでありましたが、政府としては、当面の景気回復全力を尽くすとの観点から、公共事業や中小企業対策、雇用対策に最大限配慮するとともに、科学技術の振興など、将来の発展基盤を確立する施策も十分取り入れたものといたしております。また、税制につきましては、従来なし得なかった思い切った内容恒久的減税を初め、国、地方を合わせ、平年度九兆円を超える減税実施することといたしております。以上、私としては、いわば背水の陣をしいて、思い切った決断を行ったところでございます。  これらの諸施策と民間の真剣な取り組みと相まちまして、先ほども申し述べましたが、平成十一年度には、我が国経済の実質成長率が〇・五%程度まで回復するものと確信をいたしております。私は、この平成十一年を経済再生元年と位置づけ、日本経済の再生にさらに全力を尽くしてまいりたいと考えております。(拍手)  次に、ペイオフの問題についてお尋ねがございました。  従来からの考えに実は変わりはございませんで、ペイオフを延期することは考えておりません。  すなわち、現行の預金保険法におきまして、二〇〇一年三月三十一日までに特別資金援助の申し込みがなされた場合、預金等を全額保護し得る仕組みが整備されておりますが、二〇〇一年四月以降の金融機関の破綻処理におきましては、ペイオフの延期はしないこと、言いかえますと、預金の全額は保護されず、一千万円を超える部分の預金については預金者にも負担を求めることとなりますが、このことにつきましては、これまでも申し上げてきておるところであり、その考えには変わりありません。  次に、中小企業の資金繰り支援の拡充についてお尋ねでありますが、貸し渋り対応特別保証制度につきまして、承諾件数が、既に中小企業の十社に一社に当たる約六十万九千件に上っておるところであります。また、昨年末には、私みずから、借り手である中小企業団体や貸し手である金融機関との懇談会を設け、融資の実態意見等をお聞きするとともに、金融機関に対して、改めて適切な対応をお願いいたしておるところであります。  さらなる対策につきましては、景気動向や貸し渋り対策の実施状況等を注視しつつ検討すべき課題であると考えておりますが、今後とも、貸し渋り対策に万全を期してまいりたいと思います。  次に、三会派実務者間の覚書についてのお尋ねでありました。  本覚書の財政・金融の完全分離及び金融行政の一元化が具体的に何を意味するかにつきましては、政党間協議の中で整理が行われ、政府にお示しいただけるものと理解いたしております。政府といたしましては、政党間協議の検討結果を踏まえ、適切に対処いたしてまいります。  次に、個人及び法人所得課税抜本的見直しの時期について、お尋ねがありました。  個人及び法人所得課税あり方につきましては、税負担の公平の確保、税制経済に対する中立性の保持及び税制簡素化の必要性等を踏まえ、今後の経済状況等を見きわめつつ、我が国経済社会の構造的な変化国際化進展等に対応する抜本的改革に向けて、腰を据えて検討を行っていく必要があると考えております。  財政再建の時期と税制抜本改革の時期についてでありますが、個人及び法人所得課税抜本的見直しにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、今後の我が国経済状況等を見きわめながら、幅広い論点について、十分な議論を進めていく必要があると考えております。他方、財政構造改革につきましては、日本経済回復する軌道に乗った段階におきまして、財政、税制上の諸課題につき、中長期的な視点から幅広くしっかりとした検討を行い、国民の皆様にそのあるべき姿を示さなければならないと考えております。  総合課税化納税者番号制度についてお尋ねでありました。  総合課税化につきましては、今後、納税者番号制度等所得把握体制への取り組みも含め、理論面、実態面から十分検討を進めていく必要があります。また、納税者番号制度につきましては、国民の受けとめ方や考え方を十分酌み取りながら、同制度目的を初め、プライバシーの問題、経済取引への影響、コストと効果等の諸課題について、議論をさらに深めていく必要があると考えております。  次に、戻し税についての御提案でございました。  御指摘のような定額方式減税を行うことは、昨年のような、諸外国に比し突出して高い水準の課税最低限が継続し、納税者が構造的に大幅に減少することになり、基幹税たる個人所得課税あり方として適当でないと考えております。  なお、今回の見直しにおきまして、定率減税に頭打ちを設け、控除率をある程度大きくすることにより、中堅所得層に配慮するとともに、一定の扶養控除額の加算を行うことにより、子育て、教育等の負担のかさむ世帯に配慮いたしておるところでございます。このような大規模減税を、一時的でなく、期限を定めず継続して実施することによりまして、消費者や企業のマインドを高め、景気に効果的に作用するものと考えております。  児童手当の拡充についてお尋ねがありました。  この制度におきまして、三歳未満の時期に給付を重点化した改正を既に行ったという経緯や、児童手当のあり方についてさまざまな意見があること、御指摘のような拡充のためには巨額の財源が必要であること等を考えますと、慎重な検討が必要であると考えます。  地域振興券事業についてお尋ねがありました。  事業主体であります市町村には、大変事務的に御苦労いただいておりますが、先般、一月二十九日には島根県の浜田市で交付が開始されるなど、順調に動き始めたことと喜んでおります。地域振興券をめぐるテレビ、新聞等の報道を見ておりますと、さまざまな話題とともに、メディアで大きく取り上げられるなど、社会的反響も大きく、全国の市町村や商店街で、地域おこしに熱心にお取り組みいただいていることに大きな意義を改めて感じております。  今後の取り扱いにつきましては、今後の経済情勢や今回の事業の効果等も十分見きわめつつ、また、御党を初め関係の方々の御意見を拝聴した上で考えなければならない課題ではありますが、まずは、現在準備中の事業の実施に万全を尽くしてまいりたいと考えております。  次に、居住用財産の買いかえの場合の譲渡損失の繰越控除制度拡充すべきでないかということのお尋ねでありますが、本制度は、平成年度改正におきまして、住宅をめぐる諸情勢に特に配慮し、バブル期に住宅を購入し、住宅の含み損を抱え、買いかえに踏み切れないでいる者の住みかえを支援することによりまして、景気対策に資する観点から措置したものでありまして、御指摘のような拡充は甚だ困難であることを御理解願いたいと思います。  医療費控除についてお尋ねがありました。  医療費控除は、一般的な水準を上回って偶発的に生じる医療費の負担をしんしゃくする制度として設けられているものであります。その最高限度額につきましては、家計の平均的な医療費負担の水準から見て、現在適切なものと考えております。  最後に、本格的な構造改革が待ったなしに迫られているとの御指摘がありました。  昨年末に緊急経済対策を取りまとめ、十分な需要喚起を行うなど、機動的、弾力的な経済運営を行ってきたところであります。同時に、我が国経済が、豊かさの中の不況ともいうべき現在の状況を脱し、自律的に発展していくため、構造改革、特に新事業を創出することによる良質な雇用の確保や生産性向上などによって、経済の供給サイドの体質強化を図る経済構造改革を一層推進することがぜひとも必要であります。  このため、去る一月二十九日に産業再生計画を策定いたしたところであり、経済構造改革に向けた取り組みに全力を挙げてまいる決意であります。  以上、お答えをいたしました。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)     〔国務大臣宮澤喜一登壇
  13. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 総理の御答弁を補足いたします。  平成十一年度において〇・五%の経済成長をどうしても達成しなければならないということにつきましては、先ほど総理がお述べになられましたとおりですが、財政自身も実は背水の陣をしいておる思いでありまして、御承知のとおり、十一年度予算の国債依存度は三七・九%でございますが、今終わろうとしております十年度におきまして、第三次補正まで重ねましたところで公債依存度が三八・六%でございますから、ほぼ同じ水準で新しい年度をスタートしなければならない、そういう実情でございます。  それから、来年度の税収見積もりはほぼ四十七兆円でございますが、これは昭和六十二年の税収とほぼ同じ水準まで落ち込んでおるということでございますので、この観点からいたしましても、こういう状態は財政としては長く続けていられないというのが実情でございまして、私どもも背水の陣をしいておる思いでございます。  それから、大部分総理がお答えになられましたが、いわゆる納税者番号でございますが、これはもう長いこと、政府部内あるいは私ども大蔵省の部内でも検討を続けておりますが、結局、同じような目的を持った制度があちこちで考えられている。あるいはプライバシーの問題もございましょうし、経済取引にどのような影響を与えるかという問題も軽視できません。押しなべて、コストと効果との関係について、徴税という面からはもうこれは大変に欲しい制度ではございますけれども、国全体として考えましていろいろ問題がございまして、議論をなお深めていく必要があるだろうと思っております。  それから、先ほど定額減税定率減税の問題につきましては申し上げましたので省略いたしますが、扶養控除を今度ふやしたということについて、それはむしろ別途にそういう児童手当であるとかいうようなことを考えるべきではないか、そういう御議論でございました。  しかし、税制といたしましても、子供さんがいるというようなことは担税力関係をいたしますので、税制自身のそういう必要からそういう控除をやはりやっていきたいという問題がございまして、かたがた、この児童手当等を人的控除として行うか、あるいは国の歳出として行うかということは、各国にも差異がございますことは先ほど申し上げたとおりでございますので、この点はもう少し検討させていただきたいというふうに思います。  それから、居住用財産の問題は、先ほど総理が言われましたとおりで、実は家を売りたいが、それで新しく買いたいが、どうも売っちゃうと損が出るというときになかなか買いかえられないということを、政策的な意味で、住宅対策としてこういう制度をいたしましたので、どうも新しいものを買ってくれないということになりますと、それはどうもそういう政策意図でないものでございますから、まことに勝手でありますけれども、その当年度の損益を超えて翌年度への損失の繰り越しは、住みかえをしてもらうという条件において考えたわけでございます。  それから、医療費の控除は二百万円、上げられないかということでございましたが、平均的な医療費というものを常識的に考えますと、この辺が上限ではないかということは、どうも私どもそう思っておりまして、この点で御理解をいただけないかというふうに考えております。(拍手)     〔国務大臣与謝野馨君登壇
  14. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 中小企業の資金繰り支援の拡充についてのお尋ねでございますが、昨年十月に発足いたしました貸し渋り対応特別保証制度については、制度開始から一月末までの四カ月間で、既に保証承諾に至った実績は約六十万九千件、約十二兆三千億円となっており、多くの中小企業の皆様方に御利用をいただいております。  各信用保証協会に対し、中小企業者の個別の事情に応じ、返済条件の弾力化などきめ細やかな対応を指示し、貸し渋り対策に万全を期しているところでありますが、御指摘の、信用保証枠の拡大や返済猶予期間の延長など、中小企業の資金繰り支援の拡充につきましては、中小企業をめぐる今後の景気動向や本保証制度の利用状況等を注視しつつ、必要に応じ今後検討すべき課題であると考えております。(拍手)     〔国務大臣柳沢伯夫君登壇
  15. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) ペイオフ延期につきましてのお尋ねでございました。  これにつきましては、先ほど総理より御答弁いたしましたとおりでございます。政府として、これを延期しないという考えに変わりはございません。  金融再生委員会といたしましては、先般公表いたしました、先ほど石井議員もお触れいただいた、金融再生委員会の運営の基本方針に沿いまして、不良債権処理の早期完了を図りますとともに、二〇〇一年三月末を区切りとして制定されております早期健全化法や金融再生法等を的確に運用いたしまして、二〇〇一年三月末までに、預金者やマーケット等関係者から信頼される金融機関、金融システムを実現すべく万全を期してまいりたい、このように考えております。  以上でございます。(拍手)     —————————————     〔議長退席、副議長着席〕
  16. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 中川正春君。     〔中川正春君登壇
  17. 中川正春

    ○中川正春君 民主党の中川正春です。  平成十一年度における公債発行特例に関する法律案について、民主党を代表して、総理大臣並びに関係大臣質問をいたします。  九九年度末には、日本の国債残高は三百二十七兆円に達する予定であります。これは、単年度の税収入約四十七兆円の六倍以上に当たり、将来世代に対して大きく負担を強いるということは言うまでもありません。また、それ以上に、日本の貨幣円に対する信頼と国家そのものの権威にまでひびが入る可能性を含んでまいりました。多くの国民は来年度予算を称して、破れかぶれ予算、別名世紀予算と呼ぶのであります。  こうした大きなリスクを背負いながら、現在審議を進めている予算ではありますが、まず最初に質問しなければならないのは、深刻な景気状況に対して、この予算がどこまで本当に効き目があるのかということであります。  国民の多くは、今回の予算もまた、一時的な麻薬効果でしかないと言います。つまり、構造改革の視点に欠けており、相変わらずのばらまき型、一部の業界への利益誘導型予算の編成が繰り広げられているのであります。中には、改革を先送りするような逆効果の予算づけも目につき、本当の景気回復にはつながらないことがはっきりしてきました。後には赤字国債の増発だけが残り、それがまた国民に不安感を与えるという、景気に対する国民心理の悪循環を起こしているのであります。  政府は、ここ数年来、同じ過ちを何回も繰り返してきました。バブル経済崩壊後、八度にわたり、事業規模で合計百五兆円を超える経済対策を講じてきたのであります。過去を振り返れば、日本公債残高が百兆円から二百兆円に達するまでに十一年を要しました。しかし、二百兆円を超えて三百兆円に達するまでは、わずか五年しかかかっておりません。こうした異常ともいえる財政出動にもかかわらず、最終的に九七年以降の経済成長率は三年連続マイナスとなり、政府景気対策は全くのむだ遣いに終わっているのであります。  こうした厳しい現実にもかかわらず、いまだ自民党政権の中身も、したがってその予算の本質も何ら変わっていないということが、日本の危機的状況の根本原因であります。(拍手)  国民の切実な声を代表して、改めて小渕総理お尋ねします。根本的に予算の組み替えをする意思はありませんか。同時に、これまで膨れ上がったこの債務をどのように返済していくのか、国民の不安を解消する意味でも、明確なビジョンを聞かせていただきたいと思います。(拍手)  次に、金融関連の六十兆円の公的枠組みについてお尋ねをいたします。  昨年の金融国会で枠組み合意のできた金融関連の六十兆円に上る公的資金が、いつ、どのような形で実行され、具体的な公債となって計上されてくるのかということであります。  六十兆円の内訳は、資本注入が二十五兆円、破綻金融機関処理のために十八兆円と、あとは預金保護を目的とする十七兆円であります。まず、資本注入の二十五兆円枠については、現在の金融再生委員会における議論を踏まえて、それぞれの金融機関がどれぐらいの資金投入を希望しており、それに対して、最終、どれくらいの資金投入になるのかをお答えいただきたいと思います。  次に、破綻金融機関処理の十八兆円枠と預金者保護の十七兆円の枠についても、ここで明らかにしていかなければならないことが幾つかあります。  まず、預金保険機構が問題であります。日本銀行からの借り入れが八兆円を超える額になり、日銀のバランスシートをこれ以上悪化させないためには、これの返済が迫られているわけであります。これを前提にして、預金保険機構は独自に十兆円規模の債券発行を希望していると聞いております。しかし、一方で、大蔵省の金融審議会が、金融機関の要請によって、預金保険料率を引き下げる方向で検討を始めたということが昨日の新聞報道で明らかになっております。  さらに、その背後に、二〇〇一年三月までが期限となっている、先ほど話の出ましたペイオフ、預金の全額保護を期間延長してほしいという業界の意向も聞こえてくるのであります。ペイオフは怖いから、できるだけ先延ばしをしてほしい、しかし、預金の全額保護にかかるコストはできるだけ安くしたい、だから日銀の借り入れの巻きかえも含めて、できるだけ公的資金にツケを回そうという業界にとって、全く都合のいい力学がここに働いているのは明らかであります。  こうした最近の一連の議論は、金融業界の自己責任、自助努力の大前提に真っ向から逆行するものであります。安易な公債発行が、業界の構造改革を先送りさせる可能性があります。  ここで、大蔵大臣の意思を改めて確認したいと思うのでありますが、二〇〇一年三月までのペイオフ凍結については、先ほど、延期はないという断言した答弁がありました。それを前提にして、預金保険料率は当然それまで現行のままでいくと確認していいのでしょうか。そして、破綻処理と預金保護の枠三十五兆円のうち、最終的にどれほどが実際使われる見込みなのか、見解を聞かせていただきたいと思います。  次に、最近の債券の急落と、それが及ぼす景気回復への悪い影響について、お尋ねをいたします。  国債の大量増発によって長期の金利が急騰して、一年半ぶりに二・三一%のレベルになりました。また、昨年の十一月には、ムーディーズが日本の国債をトリプルAからダブルA1に格下げをしました。長期金利の上昇は、それぞれの企業に対して、資金調達コストを上げ、収益率を圧迫する形で影響を及ぼします。  さらに懸念されるのは、債券価額が下落して債券の含み損が拡大することにより、破綻に追い込まれる金融機関が出てくる環境をここでもつくってしまうということであります。年度末には二・七%のレベルまで上昇するだろうという多くのアナリストの予想は、決算期を迎えた企業にとって深刻な状況をつくり出しています。  国債の格下げもまた、企業の資金調達にマイナスの影響をもたらします。現実の債券市場には、いかなる企業の格付も当該国の格付を超えることはできないというカントリーシーリングが存在をいたします。日本の国債の格下げに連動する形で、日本企業の社債の格付も低目となっていくわけであります。自動車、電機、金融など各分野で、日本の代表的な企業もまた格下げされ、そのためにこれらの資金調達コストが上昇をしております。  ムーディーズのアナリストは、このままいけば、日本の国債はさらに格下げの懸念もあると示唆しております。これは、格付機関に言われるまでもなく、国債発行が限界まで来ているという認識、そしてその危機感は我々の中にもはっきりあるのであります。  そこで、経済企画庁長官にお伺いしたいのでありますが、こうした不安定な日本の債券の動向と、それが経済に及ぼす影響をどのように見ているのか、所見を聞かせていただきたい。さらに、純粋に経済専門家として、堺屋長官、あなたは、日本が許容できる国債の発行レベルはどの辺にあると考えますか、この際お尋ねをしたいと思います。  私は、ここで政治が的確なメッセージを出さなければならないと思うのであります。国の将来に関してトータルな財政ビジョンを持ってこそ、時の政権は国民に対して本当の責任を果たせるのであります。ただの破れかぶれ予算は無責任であります。たとえ法律では財革法が凍結になったとしても、小渕総理総理大臣の口から、改めて公債発行の限界を明確にすべきであります。  さらに、予算編成と行政改革という目の前の課題に対して、どうして厳しい危機感に立った構造変革を断行しないのですか。国民も市場も、またアジアの同胞や国際社会も、日本改革が、自自という新しい政治の枠組みの中で、本当に達成できるのかどうか、厳しく見守っております。  残念なことに、今私たちの前に出てきている予算案や行政改革法案の大綱を読む限り、時代に深く切り込んで本当の構造改革を起こそうという小渕総理政治指導者としての意思が伝わってはこないのであります。私たち野党の危機感は、この現在の政治の空白にあります。国民の不安を唯一克服できるのは、政治が真のリーダーシップを取り戻すことだと信じ、民主党がそれを実現していくようになるということを改めて表明し、私の質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  18. 小渕恵三

    内閣総理大臣小渕恵三君) 中川正春議員にお答え申し上げます。  まず十一年度予算についてでございますが、大変、旧態依然とした予算であり、効果があるかどうかという厳しい御意見であり、この予算についてどのように考えておるかということでありました。  十一年度予算は、当面の景気回復全力を尽くすというこの一点、観点から、公共事業や中小企業対策、雇用対策に最大限配慮するとともに、科学技術の振興や、将来の発展基盤を確立する施策も十分取り入れたものとしておりまして、その際、提唱いたしております二十一世紀先導プロジェクトを初めとして、環境、高齢者福祉など、二十一世紀経済発展基盤となる分野、物流効率化による経済構造改革に資する分野など、将来を見据えた、我が国経済活性化に不可欠な分野につきまして、戦略的、重点的投資を行っております。  また、税制につきましては、従来なし得なかったかなり思い切った内容恒久的減税を初めとし、国、地方合わせまして、平年度九兆円を超える減税実施することといたしており、こうした施策と民間の真剣な取り組みが相まち、平成十一年度には我が国経済の実質成長率が〇・五%程度まで回復するものと考えております。  国の債務を返済していく明確なビジョンを聞かせよ、こういうことでありました。  我が国財政は、平成十一年度末の公債残高が三百二十七兆円に達する見込みであるなど、極めて厳しい状況にあり、将来世代のことを考えるとき、私は、財政構造改革という大きな重い課題を背負っていると痛感いたしております。しかしながら、現在のようなマイナスの成長が続き、税収が減少しておる状況では、これをどうにかしないことには、財政再建はなかなか簡単なことではないと考えております。したがいまして、プラスの成長を実現すべく、まずは景気対策に全力で取り組みたいと考えております。  公債発行の限界を明確にすべきでないかとのお尋ねであります。  十一年度予算における公債依存度は三七・九%となっているなど、財政状況の急速な悪化は避けられません。したがいまして、まずは景気回復全力を尽くした上で、経済回復軌道に乗った段階において、財政、税制上の諸課題につき、中長期的視点から、幅広くしっかりとした検討を行わなければならないと考えておるところでございます。  十一年度予算におきまして構造改革を行っていないではないかというお尋ねでありました。  十一年度予算は、当面の景気回復全力を尽くすとの観点から編成されたものでありますが、その一方で、例えば公共事業の実施に当たりましては、再評価システムの導入や、事業採択段階における費用対効果分析の活用などを通じて、効率化、透明化に努めるなど、財政構造改革基本考え方は維持し、限られた財源の中で経費の一層の合理化、効率化を図っておるところでございます。  次に、行政改革についてお尋ねでありました。  行政改革は国政上最重要の課題一つであり、二十一世紀に向けた我が国経済社会の繁栄のかけ橋として、規制緩和、地方分権の一層の推進、また、スリム化された政府実現が何より必要であることは申すまでもありません。今国会におきまして、中央省庁等改革関連法案提出を予定いたしておりまして、この中で、二十一世紀我が国にふさわしい中央省庁の具体的姿をお示ししたいと考えております。  意欲を問う、こういうことでございましたが、橋本前総理が全精力を傾けて取り組まれた課題でもありまして、私といたしましても、いささかも退くことなく、その実現のために全力を尽くしていく決意でございます。  経済構造改革についてお尋ねがありました。  今後、我が国経済が、豊かさの中の不況ともいうべき現在の状況を脱し、自律的に発展していくためには、新事業を創出することによる良質な雇用の確保や、生産性向上などによって、経済の供給サイドの体質強化を図る経済構造改革に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。  以上、御答弁申し上げましたが、残余の質問につきましては、関係大臣から答弁いたさせます。(拍手)     〔国務大臣宮澤喜一登壇
  19. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 最初に、お許しを得まして、先ほど石井議員のお尋ねの中でお答えを漏らしておりましたので申し上げます。  それは、直間比率や課税ベースなどの税制の根本的な今後の見直しについてのお尋ねでございましたが、まず、個人所得課税の各種の控除を初めとする課税ベースを見直すということにつきましては、今後我が国経済状況等を見きわめながら、税率構造のこともございますので、それを含めまして、国際化の進展、さらに国内個人法人所得課税の関連などを考えまして、幅広い観点から十分に検討していかなければならないと思います。  また、税体系あり方につきましても、社会経済構造の変化、財政等の状況をも見ながら、幅広い国民的な御議論によって検討してまいりたいと思っております。  次に、中川議員のお尋ねでございましたが、預金保険機構につきましての特別保険料率のことでございます。  これは、預金保険法の施行令がございまして、平成年度から平成十二年度までの特例期間中特別保険料を徴するということで、料率につきましては、平成十一年三月末までに特例業務の実施状況を踏まえて検討を行うものとされておりますので、金融審議会のもと検討を進めてまいることになろうと存じます。  それから、三十五兆円の枠が十分であるかどうか。  この点は金融再生委員会の柳沢委員長の御所管と重なってまいりますけれども、現状のあり姿からこれからの破綻等々を予測することはなかなか困難でございますので、きちんとしたことは申し上げられませんけれども、預金者の保護あるいは信用秩序の維持、内外金融市場の発展性確保に万全を期さなければならないことはもちろんでありまして、今私が感じておりますことは、そういう目的の上でただいま特に問題があるようには考えておりません。  なお、柳沢大臣からお答えがあろうかと存じます。  以上でございます。(拍手)     〔国務大臣堺屋太一君登壇
  20. 堺屋太一

    国務大臣(堺屋太一君) 国債の大量発行日本経済に及ぼす影響及び公債発行限度額についてのお尋ねがございました。  国債の大量発行日本経済に与える影響といたしまして、まず、長期金利の問題がございます。長期金利は、年末に二%を超えるまでに上昇いたしましたが、その後、一月に入りまして低下いたしました。しかしながら、二月に入りまして再び上昇し、ここ数日、二%台前半に上昇しております。これが一時的なものなのか、趨勢的なものなのか、目下のところ、まだ判断できない状況にあります。  長期金利の上昇が長期趨勢的なものになってまいりますと、やがて、預金者の金利収入がふえるとか、あるいは金融機関の営業収入が増加する等の利点も、効果もありますが、その反面、設備投資、住宅投資を抑制し、金利利払いが増加することによって、借入金の多い企業の業績が悪化するなどのマイナス効果も出てまいります。国債につきまして、当面の発行は手当て済みでございますけれども、地方債、社債等の発行条件が厳しくなるということも配慮する必要があると思います。  当面の景気の現状から見まして、こうした諸要素がどのような影響を与えるものか、鋭意今その影響把握に努めておりまして、今後の景気判断、経済の運営についても、この点については注意深く見守っていきたいと考えております。  また、公債発行限度額を数字で示すということは、大変難しいことでございます。総理大臣からの答弁にもございましたように、公債依存度は三七・九%、かなり高いものになっておりまして、我が国財政を急速に悪化させていることは確かでございます。  しかし、現下経済情勢でございますと、まず景気回復全力を挙げるべきだと考えております。しかる上で、経済回復軌道に乗ってまいりますれば、経済の拡大によります歳入の増加、あるいは景気対策事業の削減による歳出の削減、また、国有財産の売却や活用等、いろいろな多くの選択肢の中で財政再建を考えることができるものと思っております。(拍手)     〔国務大臣柳沢伯夫君登壇
  21. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) 金融関連のいわゆる六十兆円の公的枠組みについてのお尋ねがございました。  まず、そのうち資本増強に関する各金融機関の投入希望額の見通しでございますけれども、金融再生委員会におきましては、まず主要行等につきまして、現在予備的な検討を鋭意進めております。今後、資本増強を希望する各金融機関におかれましては、優先株等の発行権限の承認の議決を得るために、臨時の株主総会を開催し、その決議に基づきまして正式の申請を行うことになろうと考えられるわけでございまして、委員会におきましては、これを受けて正式な審査の手続に入るということに相なります。  このような状況にありますため、現段階で、投入する金額について何らかの見通しを私から申し上げるということは、極めて困難でありますことを御理解賜りたいと思います。  いずれにしましても、金融再生委員会は、金融健全化法の目的であるところの不良債権の処理、信用の円滑な供与、業務の再構築等が実現されますよう、適切な金額の資本増強を実施してまいりたい、このように考えているところであります。  また、破綻処理、預金保護の三十五兆円の枠につきましては、先ほど大蔵大臣から御答弁がございましたとおりでございまして、現在、私ども、この運用にも当たらせていただいておるわけでございますけれども、現在段階で何か問題がある、このようには全く感じておりません。  以上でございます。(拍手)     —————————————
  22. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 矢島恒夫君。     〔矢島恒夫君登壇
  23. 矢島恒夫

    ○矢島恒夫君 私は、日本共産党を代表して、ただいま提案されました所得税法人税特例法案など三法案について、総理大臣に質問いたします。  最初にただしたいのは、今提案されています政府税制案が、今日の不況打開に役立ち、国民の消費の拡大につながるかという点であります。  まず、所得税についてであります。  政府減税法案だと言いますが、大蔵大臣予算委員会で大筋認めていますように、納税者の大多数は九九年度の納税額が九八年度の納税額を上回り、その増税総額は約一兆円であります。この層は、一昨年四月の消費税増税後、最も打撃を受けた中低所得の世帯であり、このような税制実施することが、景気回復に結びつくのかという問題であります。  総理、勤労者の実質賃金が十六カ月連続で低下しているのです。勤労者世帯の可処分所得と消費支出は、九七年度、九八年度と続いて落ち込んでいます。特に、所得階層の五段階区分で見ると、第一分位、第二分位、第三分位に当たる中低所得階層の落ち込みが平均以上に大きいのです。総理、可処分所得が減ったこと、そして、そのことによって消費支出が影響を受けることは明らかであります。このような状況もとで、中低所得者に対する実質増税は、消費を一層落ち込ませることになり、景気回復は一層困難になるではありませんか。  総理は、他の施策と相まって可処分所得を下支えし、個人消費の回復が図られると言っていますが、どのような施策と相まって消費が拡大するのですか。消費性向が上がるというのであれば、この中低所得階層消費性向が上がる理由も含めて、国民が納得できる根拠を示してお答えいただきたいと思います。(拍手)  しかも、政府案に基づいて計算すると、サラリーマンで子供二人の四人世帯では、年収七百九十四万円以下は増税、これは納税者の六六%に当たります。子供が三人の五人世帯になると、年収八百六十九万円まで、七二%が増税です。さらに、子供二人、年老いた両親を扶養する六人家族では、年収一千七十六万円、実に八四%の世帯までが増税になります。  国民の大多数が増税になるというだけではなく、扶養家族の多い、生活の大変な世帯ほど増税になる。総理政府減税案がこのようなものであることをお認めになりますか。これでは、景気対策に全く逆行することは明らかではありませんか。  一方、政府案は、高額所得者を大幅に優遇するものになっています。最高税率を大幅に引き下げた上に定率減税を行えば、高額所得者減税額が有利に配分されるのは当然の結果であります。年収五千万円の場合、三百万円を超える減税になるのです。  一昨年十一月、経済企画庁の研究所で行われた研究試論が、OECD経済政策委員会第一作業部会に、日本の所得格差の概要を討議資料として報告していますが、これによりますと、日本の可処分所得の不平等は過去十年間で拡大したということであります。総務庁の統計で見ても、年間実収入の五分位の階級間格差は最近拡大傾向にあります。今回の高額所得者優遇の所得減税は、この可処分所得の不平等を是正しないばかりか、さらに拡大するものであることは明らかであります。  総理、あなたは、国民の所得格差が拡大する傾向にあることを認めますか。もしそうであれば、それを是正するための再分配政策を強めなければならないとは考えないのですか。それとも、一部高額所得者に大幅な減税をすれば、景気回復に大きな役割を果たすと考えているのですか。答弁を求めます。  小渕首相は、所得税個人住民税最高税率引き下げについて、我が国の将来を見据え、国民の意欲を引き出す観点から行うものと述べていますが、では、その意欲を引き出すという人たちが、国民の中でどれだけいるかということです。六千万人近いサラリーマンのうち所得税最高税率五〇%が適用される人は一体何人いるのですか。二万人程度にすぎないのではないですか。わずか三千人に一人ではないですか。約百十六万人の国家公務員の場合は、三権の長である衆参両院議長総理大臣、最高裁判所長官、この四人以外にないのではありませんか。  こうしたごく少数の高額所得者減税のため大多数の国民に増税をかぶせる、これこそ逆立ちした政治ではありませんか。総理の明確な答弁を求めます。(拍手)  次に、政府案のもう一つの柱である法人減税についてお聞きします。  今回は、法人税基本税率を三四・五%から三〇%に引き下げるのが中心になっています。法人税率は二年連続の大幅引き下げであります。九八年度改正実効税率を三・六二%引き下げましたが、今回はさらに五・四九%引き下げようとしています。しかも今回は、法人税引き下げを行うときには通常行われるべき課税ベースの拡大を放置したままの改定であります。したがって、今回の法人減税によって大企業が恩恵に浴するのは言うまでもありません。  今回の法人三税の減税総額約二兆三千億円について試算しますと、黒字企業約八十六万社のうち、その〇・四%の三千六百社が、五五%に当たる約一兆三千億円の減税に浴するのであります。資本金階級別に見るならば、最も減税額の大きいのは、資本金百億円以上の、〇・一%にも満たない七百七十の黒字企業が九千六百億円もの減税を受けるのであります。これでは、経団連会長が百点満点と評価するのも当然ではありませんか。  法人税率の引き下げについて、小渕首相は、我が国企業国際競争力の発揮と言いました。しかし、日本法人税実効税率は、現在でもニューヨーク市とほぼ同じで、ドイツより五ポイント低くなっています。今回このように引き下げれば、国際的には低い方になるのではありませんか。総理、なぜこうまでして大企業を優遇するのですか。  特に、大銀行には六十兆円もの公的資金投入の枠組みを設けて資本注入を行い、税制でも税務行政でも、金融機関の不良債権の無税償却の許容範囲を拡大し、その上法人税率を大幅に引き下げる、このように至れり尽くせりの手厚い看護をしようとするのはなぜですか、これで公平な、公正な政治と言えますか。答弁を求めます。  私は、このような一部高額所得者と大企業だけを優遇し、国民大多数に増税を強いる税制改革案には反対であり、撤回を求めるものであります。(拍手)  今、深刻な消費不況のもとでやるべき景気対策は、消費に直結し、国民すべてに行き渡る消費税の減税税率を五%から三%に引き下げること、中低所得者に手厚い所得減税を行うことです。  一月一日の朝日新聞の世論調査によれば、所得税最高税率引き下げに反対という人が六一%、望ましい減税の方法としては、消費税率引き下げという人が六八%となっています。何よりも国民の圧倒的多数がこのことを求めており、国民の期待にこたえてこそ、政治への信頼も回復され、不況打開の道も開かれるのではありませんか。総理の決断を求めるものであります。  次に、特例公債発行に関する法律案についてであります。  政府は、九九年度予算案で、赤字国債二十一兆七千百億円を含む三十一兆五百億円もの国債発行を計画しています。この結果、公債依存度が三七・九%と、借金財政の過去の記録も塗りかえる最悪予算となるのであります。九八年度当初予算の国債発行額十五兆六千億円と比べても、何と二倍近い額ではありませんか。  今から三年前の九五年十二月、国と地方の長期債務残高が四百十兆円、国内総生産の八〇%を超えていたとき、政府の諮問機関である財政制度審議会が、大きな時限爆弾を抱えた状況と重大な警告を発しました。それから三年、借金はさらに百五十兆円もふえ、今年度末の長期債務残高は五百六十兆円、そして九九年度末に何と六百兆円、国内総生産の一二〇%にも達するのであります。  ところが、小渕首相は、この深刻な事態に対して、経済回復軌道に乗った段階でしっかりとした検討を行うと述べるだけで、余りにも無責任ではありませんか。首相は、財政危機打開について展望も確信も持てないのですか。明確な答弁を求めます。  景気回復したら考えると言うけれども、大蔵省の中期財政試算では、景気回復して二〇〇〇年度以降三・五%の経済成長があっても、毎年度約三十兆円もの国債を発行し続けなければならないとしているではありませんか。まさに、一刻の猶予もならない事態ではありませんか。  今日の財政危機の最大の原因が、公共事業の野放しともいえる拡大にあることは明白です。その上、年間総予算に匹敵する銀行支援、大企業、高額所得者のための減税、こうした歳入歳出両面にわたる浪費こそ、財政危機に拍車をかけているのです。  消費不況と財政危機という二重の危機に直面している今こそ、財政の浪費的な支出を徹底的に切り詰め、むだ遣いの思い切った削減を図ること、そして、個人消費を本当に温める対策に政府が本腰を入れて財政出動を行うこと、この二つが、二重の危機を克服するために避けることのできない鉄則ではありませんか。  総理答弁を求め、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三登壇
  24. 小渕恵三

    内閣総理大臣小渕恵三君) 矢島恒夫議員にお答え申し上げます。  まず、個人消費の拡大策についてお尋ねがございました。  政府といたしましては、昨年末に成立いたしました第三次補正予算もとで、切れ目なく景気回復策を実施いたしておりまして、十一年度予算におきましても、当面の景気回復全力を尽くすとの観点から、個人所得課税恒久的減税実施するほか、公共事業や中小企業対策、雇用対策に最大限配慮するとともに、住宅ローン減税を行うこととするなど、人々生活基盤の安定化につながる施策を十分取り入れたものといたしております。  私は、この平成十一年度経済再生元年と位置づけ、個人消費拡大を含め、日本経済の再生に全力で取り組んでまいりたいと考えております。  増税との御指摘であります。  平成年度におきまして定額減税方式による特別減税実施いたしましたのは、あくまでも、できる限り早期に減税実施するために、臨時異例の一年限りの措置としてとったものでありまして、今回の個人所得課税見直しにおきまして、景気の現状に配慮し、課税ベース課税方式抜本的見直しを伴わず、恒久的な形で減税実施するものであることから、納税者ごと税負担バランスをゆがめない定率方式をとったものであります。  定率減税実施によりまして、単年度比較で見ると、昨年より減税額が減少する世帯が生じることは事実でありますが、一年限りで打ち切られる文字どおりの特別減税と、恒久的に効果が持続する減税を単純に比較することは、適当でないと考えます。  所得格差と税制改正についてお尋ねがありました。  御指摘の報告につきましては承知をいたしておりますが、今回の税制改正におきまする最高税率引き下げは、我が国の将来を見据え、国民の意欲を引き出し、経済社会の活力を高める観点から行うものであります。また、定率減税には頭打ちを設け、控除率をある程度大きくするとともに、扶養控除額の加算等を行うことにより、中堅所得層や、子育て、教育等の負担のかさむ世帯に配慮することといたしておることは、御案内のとおりでございます。  高額所得者減税のための増額との御指摘でありますが、最高税率引き下げは、先ほど申し述べたとおり、国民の意欲を引き出す観点から行うものでありまして、定率減税におきましても、中堅所得層に配慮するとともに、一定の扶養控除額の加算によりまして、子育て、教育等の負担のかさむ世帯に配慮しておりまして、全体としても、高額所得者に偏ったものとなっておりません。  仮に昨年よりも減税額が減少する者が生じないようにするには定額減税を継続するしかありませんが、その場合、諸外国に比して相当高い我が国課税最低限が、約五百万円と、さらに突出して高い水準に引き上げられたままとなり、納税者が構造的に大幅に減ることとなり、広く社会の構成員でそれぞれの経済力に応じて公平に負担し合う基幹税たる個人所得課税あり方として、適当でないと考えられます。  なお、我が国個人消費課税は、高い課税最低限と低い最低税率により、諸外国に比べて低中所得者の負担が相当低いものとなっていることにも留意をすべきと考えます。  次に、法人課税見直しについてお尋ねでありました。  今回の法人課税見直しは、我が国企業国際競争力の発揮、企業活動活性化観点から、その実効税率国際水準並み引き下げるとの趣旨で、法人税及び法人事業税基本税率引き下げを行うものであります。基本税率引き下げは、大企業、中小企業といった法人の区分にかかわらず実施するものでありまして、また、中小軽減税率等引き下げることから、今回の法人課税見直しが、大企業を優遇するものとは考えておりません。  早期健全化法における資本増強等の枠組みが、政治の公正化を失うのではないかとの御指摘でありますが、金融は、経済活動に必要な資金を円滑に供給するなど、国民経済にとって重要な機能を果たすものであり、資本増強制度を含む金融システムの安定と再生のための諸施策は、我が国経済全体の活性化に資するものであり、適切かつ重要なものと考えております。  次に、消費税減税についてお尋ねですが、消費税率の引き上げを含む税制改正は、少子高齢化の進展という我が国の構造変化税制面から対応するものでありまして、我が国の将来にとって極めて重要な改革であったと考えております。消費税に限らず、税は低い方がいいという面はありますが、税財政のあり方考えるとき、消費税率引き下げは極めて困難であり、この点、国民の皆様に御理解をいただきたいと願っております。  また、中低所得者に対する所得減税についてお尋ねでありますが、今回の見直しにおきまして、定率減税に頭打ちを設け、控除率をある程度大きくすることによりまして、中堅所得層にも配慮するとともに、一定の扶養控除額の加算を行うことにより、子育て、教育等の負担のかさむ世帯に配慮いたしておるところでございます。  財政危機打開について、展望及び確信についてお尋ねがありました。  将来世代のことを考えますと、しばしば申し上げておりますように、私は財政構造改革という大変大きな重い課題を背負っていると痛感いたしております。しかしながら、現在のようなマイナス成長が続いてまいりますと、税収が減少しておる今日の状態では、これをどうにかしないことには、財政再建はなかなか簡単なことではないと考えておりまして、したがいまして、プラスの成長を一日も早く実現すべく、まずは景気回復全力で取り組みたいと考えております。(拍手)  最後に、財政危機と消費不況に対応した予算とすべきでないかとのお尋ねがありました。  十一年度予算におきまして、当面の景気回復全力を尽くすという観点から、公共事業あるいは中小企業対策、雇用対策に最大限配慮するとともに、科学技術の振興など、将来の発展基盤を確立する施策も十分取り入れたものといたしております。また、歳入面では、恒久的な減税を初め、国、地方合わせ、平年度九兆円を超える減税実施することといたしており、歳出面からも、税制面からも最大限の措置を講じて、不況克服に全力で取り組んでおるところでございます。  一方で、例えば公共事業の実施に当たりましては、再評価システムの導入や事業採択段階における費用対効果分析の活用などを通じて効率化、透明化に努めるなど、財政構造改革基本考え方は維持しつつ、限られた財源の中で経費の一層の合理化、効率化を図っておるところでございます。  以上、御答弁申し上げました。(拍手
  25. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  26. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。     午後三時十分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  小渕 恵三君         大蔵大臣    宮澤 喜一君         通商産業大臣  与謝野 馨君         自治大臣    野田  毅君         国務大臣    堺屋 太一君         国務大臣    柳沢 伯夫君  出席政府委員         大蔵省主計局次長  藤井 秀人君         大蔵省主税局長  尾原 榮夫君