○不破哲三君 私は、
日本共産党を代表して、小渕首相に質問するものです。
まず、
日本経済の問題です。
私は、
日本経済の現状の深刻さは、
消費不況と財政
危機が重なって進行しているところにあると思います。
消費不況は、失業も
中小企業の倒産も、過去最高水準の
危機的な状態にあり、そこから抜け出す確かな
見通しはどこにも見えてきません。しかも、国と地方の財政
危機は、来年度末の借金総額、長期債務残高が六百兆円に上る見込みという、前例のないところまで重大化しています。
日本経済が活路を見出すには、これまでの政治の
枠組みや惰性にとらわれない思い切った転換が必要であります。
私は、
景気と財政の二重の
危機というこの情勢のもとでは、次の二つの点が、
政府の行動としてだれも避けるわけにいかない
原則、鉄則だと思います。それは第一に、財政の浪費的な支出を徹底的に切り詰めて、むだ遣いの思い切った削減を図ることであり、第二に、不
景気の打開のために本当に必要とされる対策に対しては、
政府が思い切った出動をすることであります。首相はこの点をいかがお
考えでしょうか。
小渕内閣の誕生以来の行動を見ると、あなたは
経済政策を、この行動
原則とは全く正反対の立場で進めてきたと言わざるを得ません。まず、
景気対策について言えば、小渕内閣は、大銀行に対しては、
国民の税金で既に六十兆円もの
枠組みをつくり、万全の
支援体制を用意してきました。また、ゼネコンに対しても公共事業
予算の
拡大をもってこたえ、補正
予算による積み増しは、前内閣の分も合わせ、年間で十六兆円にも上りました。
しかし、肝心の
景気対策、
実体経済の立て直しの対策はどうだったか。現在の不況が一昨年四月の
消費税増税を転機として悪化したもので、その直接最大の原因が
国民の個人
消費の冷え込みにあったことは、今や
国民的常識であります。ところが、あなたは、この六カ月間、冷え込んだ
国民の個人
消費を温め、
景気を
国民生活の大もとから活気づける対策を何
一つとってこなかったではありませんか。
首相が、昨年八月の臨時
国会で、
消費拡大の方策として公約したのは減税でした。その減税案はようやくこの
国会に出てきましたが、首相、あなたは、
政府のこの減税案が
国民消費の
拡大に役立つと本気で
考えていますか。
政府は、四兆円の所得税減税を実行すると言いますが、
政府のモデル
世帯計算でも、この減税案で実際に減税の恩恵を受けるのは少数の高額所得者だけであります。年収七百九十四万円以下の
世帯は、今年度よりも増税になります。試算してみますと、増税になるのは納税者の実に七割から八割、また、その増税の総額は何と約一兆円の規模にも上ります。首相、
国民の多数に一兆円もの増税を押しつけるような税制
改革案が、どうして
国民消費を
拡大する
景気打開策だと言えるのですか。
しかも、
政府が提出している統計から分析してみても、一昨年来の
消費不況で打撃を受け、
消費が縮小しているのは、
政府が増税を
計画している中所得、低所得の
世帯なのです。この増税
計画が
国民の家計にさらに重荷を背負わせ、
消費不況を一層深刻なものにすることは明らかではありませんか。
また、
政府が減税の柱だと言う法人税減税も、わずか三千六百ほどの大企業が減税総額の五五%を手にするという、大企業向け減税であります。真剣に
景気打開を
考えるなら、一部の高額所得者と大企業だけを
考えたこのような税制
改革案は、撤回すべきであります。そして、私は、
消費税の税率三%への引き下げを
中心に、
国民の大多数の家計を確実に潤わすような、
国民的な減税
計画への切りかえを強く主張するものであります。(
拍手)
どの世論
調査を見ても、
消費税率の引き下げは、文字どおり
国民の圧倒的な世論であります。そして、この減税が
景気打開効果の最も期待できる対策であることは、多くの識者が一致して指摘していることであります。
政府がまともな理由もなしに
消費税減税を回避し続けるなら、
景気対策に熱意なしと言われても仕方がないでしょう。
私
たちは、
日本の税制の将来像という問題については、私
たちのように
消費税廃止論の立場もあれば、
消費税二けた増税を目指す立場もあることをよく承知しています。だからこそ私
たちは、
消費税の廃止を将来
目標として掲げつつ、今日の緊急対策として、
消費不況への引き金となった増税前の税率三%への引き下げを要求しているのであります。また、税制の将来像の問題はわきに置いて、
景気対策として
消費税減税での一致を図ろうではないかと提案しているのです。
私
たちはまた、昨年十二月、あなたの
諮問機関である
経済戦略会議が
中間報告で、
消費税増税は不可避という
方針を示したことを知っています。しかし、あなた方がもし、将来の増税
計画の妨げになるという理由で今日の
国民的な要望を否定し、
日本経済の切実な要請に背を向けるのだとしたら、それは余りにも極端な党利党略だと言わざるを得ません。将来の増税はあなた方の
計画ではあるかもしれないが、
国民がそんなことを確認したことは一度もないからであります。
消費税減税を柱に、全
国民の家計を確実に潤す
国民的な減税
計画への切りかえについて、首相の明確な
答弁を求めるものであります。(
拍手)
次に、財政
危機の問題です。
この問題を
考えるとき、私は、三年前の九五年十二月、
政府の
諮問機関である財政
制度審議会が、
日本の国と地方の異常な借金の高さについて、近い将来において破裂することが予想される大きな時限爆弾を抱えた状態と厳しい警告を発したことを思い出さざるを得ません。その報告は、ヨーロッパの
経済・
通貨統合が、条件として、借金残高はGDP、国内総生産の六〇%を超えてはならないとしていることを挙げ、
日本の借金残高が四百十兆円、国内総生産の八〇%を超えていることを示して、この警告を行ったのでした。
それから三年、
政府がやってきたことは、財政
危機への対応ではなく、むしろやけぎみの浪費とむだ遣いの
拡大でした。
政府の発表では、ことし三月末、九八年度末の長期債務残高は五百六十兆円、三年間に百五十兆円もふえました。そして、九九年度末の
見通しは六百兆円、国内総生産の一二〇%にも達し、実に
国民一人当たり五百万円もの借金を二十一
世紀に引き継ぐことになります。
それは、この間に、公共事業野放しの
拡大や、国の年間総
予算にも匹敵する銀行
支援体制など、浪費に次ぐ浪費の
政策を強行してきた結果にほかなりません。しかも、
金融支援の六十兆円の
枠組みが現実の
資金投入として本格的に具体化されるのはこれからであり、また、九九年度も
予算の補正が予想されることなどを
考えると、財政
危機の進行は、今挙げた数字よりもさらに深刻であります。この
危機のもとで、何十兆円という税金を特定の業界の救済のためにこのように無造作に投入するなどは、納税者に責任を負う立場からは到底
考えられない無責任な
政策であります。
首相、今日のような空前の財政
危機に直面しながら、
政府がその解決の
見通しもなしに、浪費に明け暮れるなどは絶対に許されません。あなたがこの財政
危機を解決する、どのような
方針と
見通しを持っているかを
伺いたいのであります。財政
危機がここまで深刻化した以上、財政の健全化のためには、年々の赤字の解消を目指すにとどまらず、時限爆弾とまで言われたこの長期債務の総額を、どうして減らしていくかを大きな
目標とすべきは当然であります。
私は、先ほど財政
制度審議会の三年前の報告に触れましたが、この報告が
ヨーロッパ諸国の
経済・
通貨統合の条件を挙げたのは、偶然ではないと思います。借金残高を国内総生産の六〇%以内に抑えるというのは、
日本の財政の
歴史の中でも、八〇年代初めまでは当たり前の
状況とされてきたものであります。九〇年代の財政も、九〇年度、九一年度ともに借金残高ほぼ六〇%というところから始まりました。
経済成長との関連を
考えても、この六〇%を財政健全化の
一つの指標として扱う根拠は十分にあると思います。
政府は、財政再建の
目標として、国内総生産比一二〇%にまで膨れ上がった借金残高を圧縮する
目標をお持ちですか。お持ちであるとすれば、それがどういう
目標であるのか、それをどれぐらいの期間で、またどのような手段で
実現する
見通しなのか、明確な
答弁を求めるものであります。(
拍手)
財政
危機の問題で、
政府が明確な
方針を持ち得ないのには大きな理由があります。それは、
政府がどうしても財政赤字の大もとに目を向けようとしないからであります。私は、この議場でも何回も指摘してまいりましたが、
日本の
予算の中で公共事業が抜群の主役をなしているというのは、
世界でも本当に異常であります。
実際、国と地方を合わせて
国民が納める税金はこのところほぼ九十兆円ですが、毎年の公共事業の財政
負担は約五十兆円に上っています。そのうち、ほぼ十兆円が財政投融資を財源とするもので、
あとの四十兆円がその年の税金あるいは将来の税金を財源とするものです。結局、税金の半分近くを公共事業に投入しているわけで、税金をこのように異常な形で配分している国は、
世界のどこにもありません。
私は、
消費税減税などの
景気対策を初め、
国民の緊急切実な要求には積極的にこたえながら、国と地方の財政を健全な再建のレールに早急に乗せるために、財政の抜本的な転換にかかわる幾つかの提案を行いたいと思います。
第一、浪費的な性格の歳出について思い切った削減を行うこと。特に、公共事業については、その規模の半減という長期
目標を定め、年度を追って
計画的にその
実現をやり遂げることであります。
政府は、
国民の強い批判を前にして、余りにもむだの明白な事業について、ごく部分的な見直しを始めたようですが、現状はそんなことで解決されるものでありません。公共事業
予算の圧縮の
目標をきっぱりと定め、対米公約となっている公共事業総枠六百三十兆円を取り消すこと、公共事業を自動的に膨張させる仕組みとなっている分野別の長期
計画を廃止すること、列島改造型の
国土開発を無批判に繰り返した五全総を見直すことを初め、大型
計画を全体として凍結し、その中から緊急必要な事業を選別するなど、思い切った
措置が必要であります。
第二に、
社会保障の分野で国の
負担を抜本的に
拡大し、
国民が
安心して頼れる
社会保障制度を目指し、その財政的な基盤を強化することであります。
今、国政と
国民生活とのかかわりを
ヨーロッパ諸国と比較した場合、最もくっきりと違いがあらわれるのは、
ヨーロッパ諸国では、公共事業ではなく、すべての
国民の
生活を支える
社会保障が公的支出の主役となっていることです。
日本では公共事業への支出の四割相当しか
社会保障に回されていないのに、諸外国では公共事業の三倍から六倍の
予算が
社会保障の分野で支出されて、資本主義のもとでもそれが当たり前になっています。
その状態に一挙には飛躍できないとしても、
ヨーロッパ諸国の水準に近づくことを
国民的な
目標とする必要があります。その財源としては、
国民への新たな増税によるべきではなく、何よりも、公共事業の
負担を減らした支出のかなりの分を
社会保障の拡充に充てることで賄うことを追求すべきであります。
社会保障の
貧困は、
国民の将来不安を大きくし、
日本経済の前途をこの面からも暗くしています。高齢化
社会への対応は今日の大きな問題ですが、厚生省の
調査では、六百二十万に上る
高齢者世帯の四割が二百万円未満の低所得
世帯です。
年金の
内容は、改善の
見通しどころか、改悪の心配だけが先行している上、
政府の
計画では、この
世帯に
介護保険金や
高齢者医療保険の
負担が次々とかかってくることになり、新たな
負担総額は
高齢者全体で一兆円に上るとの試算もされています。
これでは、
国民が将来に不安を持つのは当然ではありませんか。
国民が将来に
安心を持てる
社会保障体系の
構築を目指し、国の
負担を国際水準並みに引き上げる方向で、財政的な基盤の拡充に
努力することが今こそ必要であります。
第三に、地方政治でも、開発
中心主義から住民サービス本位の政治へと、行財政の転換を図ることであります。
今、地方財政は、戦後第三次の財政
危機と言われるほど全国的に深刻な状態にあります。その最大の原因が七〇年代後半からの開発型政治の持ち込みにあったことは、今では全く明白です。実際、八〇年度に全国の行政投資の自治体
負担は十四兆一千億円でしたが、それが九五年度には三十二兆八千億円と実に二・三倍にもふえ、公共事業に投じる財源のほぼ三分の二を自治体が
負担するという状態になりました。
この過大な公共事業の
負担が自治体財政を圧迫して、
福祉、教育など、自治体の本来の仕事、住民サービスの仕事の水準が年ごとに困難になっているのが、全国の自治体の偽らざる実情であります。
地方自治体に持ち込まれたこの逆立ち政治を、住民自治の精神で立て直すことは、何よりもその自治体の住民の仕事であります。しかし、国政に携わる者としてここで目を向けなければならないのは、自治体の行政を逆立ちした方向に引き込む上で、国の政治が重大な、主導的な
役割を果たしてきたことであります。
ここでその通達などの文書を
一つ一つ挙げることはしませんが、全国の自治体に大型開発優先主義を持ち込んだのも、住民サービス切り捨ての方向に誘導したのも、
政府が大きくかかわって行われてきた仕事でした。その指導の結果が今、全国的な財政破綻となってあらわれているのであります。
ここでも、誤った開発
中心主義から住民向けの仕事を本業とする住民自治本来のレールに立ち戻る以外には、地方財政再建の道はありません。これまでの誤った指導、誘導の反省に立って、この方向での地方政治、地方財政の再建を助けること、これが現時点における
政府の責任ある立場だと
考えますが、いかがでしょうか。
第四、
日本は公共事業大国として
世界で有名だとはいえ、その
内容がゼネコン好みの大型開発に偏っているため、
国民生活に必要な
施設が極めて
貧困だという状態は各分野に多く見られます。公共事業の全体規模の圧縮を図りながら、そういう分野については重点的な取り組みを進めることが当然であり、今日大切な点であります。
一例だけ挙げましょう。私は全国を回って、一方で巨大な開発や豪華な
施設建設がこれでもかこれでもかという調子で進んでいるのに、小中高校の
施設の荒れ方がひどく、雨漏りが直せない、ドアが外れたままだなど、敗戦直後の物不足の
時代を思わせるような状態が各地で見られることに胸を痛めてまいりました。そこには、開発優先主義と
福祉、教育の切り捨てがもたらした最悪な結果の
一つがあると思われたからであります。
今度、教育
予算を調べてみましたら、実際、小中高校の修理、
整備に充てられる公立学校
施設整備費が、この十数年の間に極端に減っていることに気づきました。一九八〇年度には五千七百十三億円あったものが、来年度
予算案では千六百三十八億円、四分の一近くにまで減少しています。自治体の
負担分を合わせれば、
整備事業が全国で約一兆円前後も減ったことになります。物価の上昇もあって、実際の
整備面積は七分の一に圧縮されています。
教育の現状の打開が
日本の将来にかかわる大問題となっているとき、こんな状態をこのまま放置することはできません。首相はどうお
考えでしょうか。
このことを含め、教育や
国民生活が必要とする公共
施設の建設にこそ、公共事業の重点を移すべきではないでしょうか。
生活密着型の公共事業が、大型開発に比べて
雇用の
拡大に格段の効果があることも、多くの
調査が示しているところであります。
以上、四点にわたる提案を行いました。
日本経済の将来を少し長い目で見た場合、これらを含む抜本的な対策に大きな
目標と年次的な
計画性を持って取り組むことは、先延ばしの許されない急務となっていると
考えます。首相の真剣な検討と
答弁を求めるものであります。(
拍手)
次に、安保、外交の問題であります。
政府は、この
国会に
ガイドライン関連法案を提出していますが、私は、最も重大な問題点の
一つは、
日本が
アメリカの先制攻撃戦略に
参加することの是非が問われるという点にあると思います。
御承知のように、国連憲章では、国連自身が決定する行動以外は加盟国の勝手な
武力行動を認めないことを建前としています。そして、その唯一の例外として認められたのが、加盟国が他国から
武力攻撃を受けた場合にそれに反撃すること、いわゆる個別的あるいは集団的自衛の行動でした。これが、第二次
世界大戦後、
国際社会が平和の基盤として設けた国際秩序の原点であります。
ところが、今
アメリカは、この国際秩序に満足しないで、国連加盟国に対する
武力攻撃、侵略行動が行われないでも、その危険があるなどの判断をした場合には、その国に対して軍事攻撃を行うという先制攻撃戦略を、戦略
方針の
一つとして公然と採用しています。私は、これは
世界の平和にとって大変危険な戦略だと
考えます。戦争か平和かの決定権を国際連合から
アメリカ一国の手に移すことであり、また、侵略の危険についての情勢判断自体、そこに誤りを犯す危険、あるいは特定の利害、目的、思惑が入り込む危険、これが多分に存在するからであります。
昨年、
アメリカが行った一連の戦争行動、スーダンとアフガニスタンに対する八月の攻撃も、イラクに対する十二月の攻撃も、すべて
アメリカがこの先制攻撃戦略の具体化として一方的に実行したものでした。特に、十二月のイラクへの攻撃は、イラク情勢について国連安保理事会が討議中に、それを全く無視して強行されたものでした。
だからこそ、
アメリカの行動は、その合法性、正当性自体が国際的な深刻な討論の対象となり、湾岸戦争の際には
アメリカと同じ立場に立った同盟国の中でさえ、支持できないとする国が続出したのであります。首相は、この先制攻撃戦略について、その是非をどうお
考えですか。これが第一点であります。
今
政府が提案しようとしている
ガイドライン法案は、その
アメリカが
アジア太平洋
地域でとる軍事作戦に対して、
日本が軍事的な
協力を行う
方針とその
内容を定めるものであります。私が指摘したいのは、ここで、
アメリカの先制攻撃戦略に対する
日本の
参加が問題になっているということであります。その角度から、幾つかの点について質問したい。
第一に、
政府は、
日本の周辺で
日本の平和と安全に重大な影響を与える
事態が生まれたときに
ガイドラインが発動され、
日本は
米軍の軍事行動に
参加するとしています。
問題は、この
周辺事態なるものの
内容であります。それは、国連憲章の規定にあるような、国連加盟国が外部から
武力攻撃を受けたという
事態に限定されるのでしょうか。それとも、そういう
事態はまだ存在していないが、
アメリカがその危険を先取り的に判断して、先制攻撃戦略に基づく軍事行動に出る場合も含まれるのでしょうか。
もし後者の場合でも、
政府が
周辺事態と判断して
ガイドラインを発動し、
アメリカの軍事行動を
支援する行動に出ることがあり得るのだとしたら、それは、
日本自身が他国に対する先制攻撃戦略に
参加することになるではありませんか。
政府は、そういうことが許されると
考えているのか。はっきりした
答弁を求めます。(
拍手)
第二に、
日本がとる
支援活動の
内容であります。
政府はこれまで、
日本が行うのは
後方支援だから戦争行為への
参加とはならないなどと繰り返し弁明してきました。しかし、戦争行為であるかどうかは、
日本政府の勝手な線引きで決まるものではありません。
国際社会でこの問題がどう扱われているかが何よりも問題であります。一体
政府は、
ガイドラインで規定している
日本の軍事
支援の諸行動が、国際的な基準で見て戦争行為に属さないと断言できるのですか。
例えば、
ガイドラインは、公海上の米艦船に対する海上輸送を
後方支援の項目に挙げています。国際的には、この活動は戦争行為の一部をなすものとされており、その行為に
参加する船舶は、相手国から攻撃を受けても文句の言えない立場に立たされます。戦争の現場では、
政府の勝手な解釈など通用しないのであります。
首相、あなたは、
政府が
ガイドラインで引き受けている諸項目が、国際法の基準に照らして戦争行為として扱われるものでないと断言できますか。もしそう断言するのだとしたら、私が今挙げた項目、米艦船への海上輸送について、それが戦争行為に当たらないとする国際法的な根拠を、この場で具体的に示すことを求めるものであります。(
拍手)
第三に、
政府はこれまで、多くの問題について、その時点で情勢に応じて判断するといった
答弁を行ってきました。
周辺事態の周辺にどんな
地域が含まれるかについても、
事態の
内容についても、
後方支援活動の規定についても、突き詰めた討論をすると、すべて、そのときに
考えるであります。そのときに
考えるとは、いざ
事態が起きたときの判断と行動の基準を定めないということ、言いかえれば、そのときの
政府の勝手な判断に任せるということにほかなりません。
これでは、そのときの
政府の判断いかんで、いかなる国連加盟国も
武力攻撃を受けていないのに、
アメリカの一方的な判断で行う先制攻撃に
日本が
参加することもできる、
後方支援という名目で、国際的には戦争行為とみなされる軍事活動に加わって
日本が事実上の参戦をすることもできる、
中国の一部である台湾
地域を対象とする軍事作戦に
日本が
参加することもできる、すべてがあり得るということになるではありませんか。
アメリカの軍事作戦に参戦するかどうか、
日本の運命を左右するこの問題について、多くの重要問題で
政府に白紙委任するような
ガイドライン法案は、憲法に基づく法治国家である
日本で許され得るものではありません。首相の
見解を厳しくただすものであります。(
拍手)
以上、
ガイドライン関係法案の問題点を指摘してきましたが、
日本共産党は、
ガイドラインとその法案には、二十一
世紀の
日本の安全と平和の見地から反対であり、その撤回を強く要求するものであります。(
拍手)
今の
ガイドライン問題にも関連することですが、ここで、
北朝鮮をめぐる問題について、質問と提案を行いたいと思います。
北朝鮮と
日本の間には、今、複雑で重大な
状況が進んでいますが、私が特に懸念を禁じ得ないのは、
日本と
北朝鮮との間に
交渉ルートが存在しないまま、対立的な雰囲気、特に軍事的な対応の悪循環ともいうべき
事態が
拡大していることであります。
日本では、
北朝鮮からの一方的なミサイル攻撃があり得るのではないかという心配が語られ、それに対する軍事的な対応
措置が問題になっています。一方、
北朝鮮の昨年来の対外的な声明や国内での報道を見ると、
アメリカが
韓国や
日本を率いて
北朝鮮に先制攻撃を加えるという予想が既定の事実とされ、攻撃があったら反撃するぞという戦争前夜のような言明が連日のように行われています。
世界政治のいろいろな経験に照らしても、互いに先制攻撃を懸念し合うこの
状況が悪循環的に
拡大することは、大変危険なことだと言わざるを得ません。しかも、関係諸国の中で、
韓国も
アメリカも
北朝鮮との間にそれなりの
交渉ルートを持っているのに、
日本だけは正式の
交渉ルートを持たないまま、対立的な関係だけが先行していることは、問題をとりわけ深刻にしています。
北朝鮮の政権あるいは政権党が、
国際社会におけるルールについて、我々と共通の常識を持たないことは私
たちもよく知っています。
日本共産党自身、
北朝鮮の側から国際的な道理を無視した不当な攻撃を繰り返し受けたために、一九八二年以来、
北朝鮮の政権及び政権党と、いかなる関係も持っていません。
しかし、国際的な平和と安全のためには、また、不測の
事態を未然に防止するためには、相手がそういう
状況にあればあるだけ、
日本の側が国際的な道理を踏まえ、問題を平和的に打開する態度を尽くすことが重要であります。その見地から、二つの提案を行いたいと思います。
第一は、
北朝鮮と正式の対話と
交渉のルートを
確立する
努力を、本腰を入れて真剣に行うべきだという問題であります。対話と
交渉の場を持たないまま、すなわち
日本側の真意を相手に伝える場、相手側の意思や認識を公式に聞く場を何ら持たないまま、対立的な関係や雰囲気だけが
拡大するという悪循環は、早急に断ち切らなければなりません。
中断している国交正常化
交渉を改めて軌道に乗せる問題に、今こそ本格的に取り組むべきではありませんか。また、そのほかの方法を含め、両
政府間の接触、対話、
交渉の場を開く問題に、
日本の側から積極的な対応をすべきではありませんか。
第二に、今日の軍事的対応の悪循環では、どちらの側でも、相手側が先制攻撃に出るのではないかという心配が問題とされています。ここに重大な点があります。私は、この悪循環を絶つために、
日本がいかなる国に対しても先制攻撃の立場をとる意思を持たないことはもちろん、先制攻撃的な性格を持つ第三国の軍事行動に
参加したり、これを
支援したりする
方針を持たないことを、
アジアと
世界の平和に対する
日本政府の
基本的な態度として、今明らかにすることが重要だと思います。
そういう立場を宣言することは、悪循環からの暴発を防止する上でも、
北朝鮮との関係で
日本が
日本にふさわしい平和外交を展開する上でも、大きな支えとなるであろうことは疑いありません。
北朝鮮問題に対する
政府自身の
見解、
方針を改めて伺うとともに、この二つの提案に対する首相の
見解を求めるものであります。(
拍手)
首相は、就任以来、首脳外交の展開に大きなエネルギーを注がれてきましたが、
国際社会での
日本の政治的地位は、率直に言って、決して高いものではありません。それは、
日本が国際政治の問題で独自の定見と
方針を持たない国、
アメリカの陰に寄り添う国だとの認識が
国際社会で既に定着しているからであります。
ソ連が解体して既に八年目、
世界の主な国々は、
アメリカの同盟国であっても、より自立的、自主的な方向で自分の国際的な位置を強める道を進んでいます。その中で、どんな国際問題でも
アメリカへの同調と追従の枠から出ようとしない
日本の態度が、
アジアでも
世界でも
日本の立場を失わせていることを、今率直に認識すべきではありませんか。
いよいよ二十一
世紀は目前であります。私
たちは、
国民多数の合意を得て日米安保条約を廃棄し、独立、非同盟、中立の新しい立場で、
国際社会で
役割を果たすことを展望している党であります。しかし、同時に、その大
目標に至る以前においても、
アジアに生きる
日本として、
アメリカの戦略的利益を第一義としない自主自立の外交に踏み出すことは可能だし、必要であると
考えています。平和外交へのこうした転換は、二十一
世紀を迎えるに当たっての急務であります。
日本共産党は、内政、外交の両分野で、
国民の利益に立って、
日本の政治の新しい進路のために全力を尽くすことを申し上げて、質問を終わるものであります。(
拍手)
〔内閣
総理大臣小渕恵三君登壇〕