○神崎武法君 私は、公明党・
改革クラブを代表いたしまして、ただいま議題となりました
小渕総理の
施政方針演説を
中心に、山積する内外の諸問題に
質問をいたします。
冷戦後の
世界は、安定した新秩序を模索してきましたが、二十一世紀を目前にして、いまだに確かな設計図を見出せないまま推移しています。
近年、資本主義のグローバル化、バーチャル、仮想化が急激に進み、国際
金融も様相を一変しました。共産主義のソ連初め東欧諸国が崩壊し、次々と
市場経済化し、資本主義が全
世界に広がってグローバル化したこと、また、高度情報通信革命によって、巨額の資本取引がほとんどコンピューターの中で瞬時に行われるというようにバーチャル化したことであります。そのため、国際
金融取引が異常に肥大化し、無秩序化し、それによる混乱のゆえにグローバルキャピタリズムが崩壊しようとしています。
事実、貿易など実需を伴った金額の数十倍もの投機マネーが瞬時に国境を越えて移動しています。九八年の
世界の外国為替の取引額は三百七十二兆ドルで、実際に貿易決済された取引額の三十四倍以上にもなっています。東南アジア諸国での
経済危機の原因はいろいろと分析されていますが、そのような
状況のもとで生じたことは事実であります。このような
動きに対して、
世界経済が耐えられなくなってきているのも事実であります。
さて、ことしの
世界経済の
最大の焦点は、申すまでもなくアメリカにあります。
さきのブラジル通貨切り下げによる反応に見られるように、アメリカの景気にはバブル的な要素が多分にあり、そろそろ調整局面に向かうことは必然と言われています。
一方、ヨーロッパでは、この一月一日に統一通貨ユーロが誕生しました。
参加十一カ国合計のGDPは約六・五兆ドルに上り、人口二億九千万人になるなど、アメリカに並ぶ
経済規模を持つ巨大通貨圏になります。ドルに過度に依存した国際通貨体制が是正され、
世界の国々や
企業、個人投資家の為替リスクが分散されて、
世界経済の安定
成長にとって大変望ましいと言われています。しかし、
我が国は、景気回復と
金融システムの
再生を速やかに実現して国際的な信認を回復しなければ、国際取引におけるシェアをユーロに奪われてしまうことになりましょう。
今、戦後
最大の
経済危機に直面している
我が国が学ばなければならないことは、ユーロがまさにヨーロッパの
危機の中から生まれたということであります。二度の
世界大戦による戦禍を断じて繰り返してはならないという
反省から、統合を通じて、疲弊した
経済を立て直すことでありました。各国歴代首脳の、相次ぐ
経済危機への粘り強い挑戦でかち得たものであります。
さて、
日本経済の先行きは不安一色のようにも見えます。しかし、
日本は依然として
世界第二位の
経済大国であります。質の高い労働力と
世界トップレベルの
技術力を持っています。また、貯蓄率も高く、千二百兆円の
個人金融資産を持っています。二千億ドル以上の外貨準備があり、貿易収支も大幅な黒字であります。
世界最大の対外純
資産国である
日本経済のファンダメンタルズは健全であります。今日の悲観ムードを打破し、
我が国の持つすぐれた可能性を的確に引き出していけば、バイタリティーに満ちた、活力ある
日本を
再生させることは十分に可能であります。
ある学者は、今の
日本は総論不在、原理原則不在、
哲学不在の無脊椎
状態にあると評しています。今進行しているグローバル化は、
経済活動
中心のものであります。これは、弱肉強食の資本の論理、
経済至上主義の暴力的な側面を持っており、結果的に
国民生活を脅かすことも多々見受けられます。
今トップリーダーに求められているものは、このようなさまざまな
課題を乗り越え、健全で創造的な二十一世紀
社会を構築するためのグランドデザインを
国民の前に提示し、
国民を説得し、的確にリードすることだと
考えます。
総理、あなたは、
国民にどのようなグランドデザインを提示し、
国民をいかに説得し、リードしていかれるのか、まず最初にそのお
考えを承りたい。(
拍手)
次に、自自
連立政権についてお伺いします。
昨年秋から難航していた自自
連立政権が誕生しました。あの
参議院選挙では厳しく対決していた
自民党と
自由党が、このような
連立政権を誕生させ、
国民は、一体
参議院選挙での
国民の厳しい審判は何だったのかとの思いがするのではないでしょうか。(
拍手)
両党の政策
合意も、甚だ理解に苦しむことが多々見受けられます。
一つには、これまでの
連立協議の経過を見ても、
国家の根本法である
憲法に対する
見解に相当な開きがあることであります。自自
連立内閣が今後、
憲法観の違いを乗り越え、安定した
政権運営のかじをとれるのか、
国民は大きな不安と疑念を持っているのではないでしょうか。中でも
安全保障に関しては、両党の対立点は先送りされ、今回の
合意も、具体性に乏しい上に玉虫色の
合意と言わざるを得ません。
これまでの歴代
内閣がとり続けてきた集団的自衛権の行使は
憲法上許されないとした
憲法九条の解釈について、自自
連立政権として変更するつもりなのかどうか。さらに、国連軍の目的・
任務が
武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに
参加することは
憲法上許されないとした八〇年の
政府見解を初め、国連の集団的
安全保障措置に関する従来の
政府の
憲法解釈を変えるのでしょうか。
二つには、両党が、現行の小
選挙区比例代表並立制の比例区
定数五十
削減案を
合意したことであります。私どもは、旧公明党時代から、
国会議員の
定数削減を一貫して主張してきたところであります。しかし、比例区の
定数のみを一方的に五十
削減する案には反対であります。
その反対理由の第一は、小
選挙区比例代表並立制という制度は、あくまでも小
選挙区制度と比例区制度を並立させた制度であるからであります。比例区のみを
削減すれば、少数意見が
選挙に反映しづらくなるという問題が生じます。
総理は、小
選挙区で
政権を選択し、比例区で少数意見も国政に反映するという、お互いの制度の特性を考慮して並立制に決定した経緯をお忘れになったのでありましょうか。
反対理由の第二は、小
選挙区制度は、政策本位の
選挙をするということで
導入されました。しかし、実際に
導入、運用されて、大変な弊害が明らかになりました。小さな地盤で熾烈な
選挙戦を勝ち取るためには、知名度の高い二世議員や大政党の議員が大変有利になり、専門的知識経験を有する者が立候補しても常識的には当選できず、問題であります。
その
意味で、私は、全党的な
合意のもと、
選挙制度
改革について真剣に話し合うべきであり、その中で
定数削減も協議すべきであると
考えています。もし、
自民党と
自由党が現行制度の中の比例区のみを
削減する案を強行しようとするなら、私どもは、野党共同して断固対決していく決意であります。(
拍手)
また、
連立政権に
自由党の
小沢党首みずからが入閣することこそが、この
連立が単なる数合わせではなく、政党の確固たる
理念に基づく
連立であることを証明する唯一の方法であったはずですが、
小沢党首は入閣しておりません。二十一世紀を目前にして、内外の激動するこの時期に、国政を的確に運営することができるかと危惧するものであります。
総理、これらの諸点とともに、一体、自自
連立政権の誕生が
国民にとってどのようなメリットがあるのか、あわせて具体的に御
説明願いたい。(
拍手)
今日、
日本経済の
再生は最も重要な政策
課題であります。
日本の
経済再生なくしてアジアの
経済再生はありません。基軸通貨を持ったEUの登場により、
世界経済秩序の
状況は一変したと言っても過言ではありません。今後、
日本は、みずからの軸、すなわち通貨政策、円に対する政策を鮮明にしていくことは極めて重要であり、避けて通ることはできません。今回の
小渕総理の訪欧においては、
総理は、イタリア、フランス、ドイツの各首脳との会談において、
日米欧三極通貨協力によって、変動する為替相場の安定を図りたいという提案を行いました。
しかしながら、国際通貨として円が
役割を果たしていくためには、まず
経済の
再生が根本であります。それと同時に、円が国際通貨になるためには、まさに
政治的な努力が不可欠であります。また、国際
金融市場にふさわしい国内の法制度を完備しなければなりません。そのため、短期
市場の制度面、
税制面での整備など、円の使い勝手をよくし、アジアの
金融センターとしての
役割を担うにふさわしい努力が不可欠であります。
そこで、
総理は、円を基軸通貨としていくため、ビッグバンのほかに、どのような
具体策を
考えておられるのか、お伺いをいたします。
さて、
長期化した現在の
不況をどのように脱却するのか、
総理も悩んでおられると思います。過去の循環的な
不況と同様な
対策で解決できないことは、既にこの数年間で証明されました。現在の
不況にはいろいろな要因が重なっていますが、戦後
経済を支えてきた
金融、産業、雇用など、
行政、
経済、
社会システムの疲弊による構造的
不況ととらえ、総合的な変革を展開していくべきであると
考えます。
戦後
経済を一貫して貫いてきたものは産業優先のシステムづくりであり、結果として
経済大国になりましたが、一方で生活小国を形成してしまいました。
企業の資本は蓄積されましたが、大きくなったパイの配分は生活者に対しては余りにも少なく、
企業と生活者の間には大きな乖離が生じたのであります。初期においては
企業の
成長が
国民全体の生活を豊かにしましたが、
国民の
消費を超える産業生産が続く中でこの関係が逆転し、過剰な産業生産が、豊かさを求める
国民生活を脅かす
事態も起きています。
中でも、大きな変化を与えたのは国際
環境の変化であり、過去の
不況は、ほとんどの場合、アメリカを
中心とする諸外国に輸出を拡大することによって救済されてきましたが、今や、輸出をこれ以上増大することは容易ではありません。このことは、国内においてGDPの六〇%を占める
個人消費に望みをかける以外にないことを物語っています。
しかし、
個人消費の回復は現在低迷し、
膠着状態が続いています。過去における産業優先の
経済構造を生活者優先に転換できないことが足腰の強い
消費市場が生まれない理由になっていると、ある学者は指摘をしております。景気が低迷するごとに公定歩合を
引き下げ、生活者から生産者へ強制的に所得移転を行ってきたことは、その典型的な例であります。かつてのように海外にその
市場を求めることができなければ、産業、生産者のみに
景気対策を行っても、
消費は拡大するわけがありません。
総理、今や
景気対策は、
消費者、生活者
中心に
考えるべきであります。今までの産業、生産者
中心から、生活者を主にして生産者を従にした
景気対策の
確立が求められているのであります。公明党が地域振興券を打ち出したのも、このような論理に基づくものであります。
九九年度
政府予算案は、所得
減税などを含むものの、なお旧来型の
予算と言わざるを得ません。
景気対策に
方向を転換する決意があるかどうか、
総理のお
考えを伺います。
また、我が党は、年末から新年にかけて重点的に
実態調査を行ってきましたが、
金融機関の貸し渋り
状況は一向に改善されてなく、むしろ長引く
不況でますます深刻になっています。
総理は、この深刻な貸し渋りの
解消のために、本気で取り組んでいただきたい。
次に、
税制改正についてお伺いします。
政府は、九九年度
予算案において総額にして九兆円規模の
減税を盛り込んでいますが、額においては一定の評価をするものであります。
所得税、
住民税減税も四兆円規模であり、
最高税率を五〇%に
引き下げるなど、評価すべき改善も見られますが、恒久
減税にならなかったことは近い将来の増税を意図するものであり、納得できません。
また、各階層ともに二〇%の
減税を行っていますものの、昨年の四兆円
特別減税を加味して比較をすると、標準世帯で年収七百九十三万円以下の層が
負担増になります。税体系としてはやむを得ない面もありますが、今回の
税制改革は
景気対策の側面があり、年収七百九十三万円以下という納税者の八割が
負担増になることは、どうしても看過できない問題であります。
中堅
所得層を
中心に、単年度の定額戻し税として、二兆円規模の激変緩和を実行すべきであります。財源が厳しい中ではありますが、
さきに述べました生活者優先の政策こそ
景気対策の糸口でありますだけに、どうしても実行しなければならない
課題であります。
なお、地域振興券につきましては、関係者の御努力でようやくその趣旨が浸透し、「親子三人家族の二万円ポッキリ宿泊プラン」とか「一泊二日北海道空の旅・二万円プラン」など、いろいろな企画やイベントも計画され、
消費拡大の呼び水として、地域
経済や商店街の活性化に相当の
効果があると期待されています。さらに、第二弾の
実施を要請する商店街等もあらわれています。私
たちも、こうした要請にぜひこたえてまいりたいと
考えます。
政策
減税として、住宅取得促進
税制を大幅に
拡充することになっていますが、これはそれなりに評価いたします。しかし、
総理、バブル最盛期から九〇年代前半にマイホームを購入したサラリーマンや自営業者の
方々が、今どのような生活を強いられているか、御存じですか。
一生に一度の買い物と言われるマイホームを購入したたくさんの
方々が、その後の
長期不況で会社が倒産したり賃金カットなどで、住宅ローンを払えなくなっています。やむなくマイホームを手放そうにも、土地価格や住宅価格の暴落のため、希望する価格では売れず、売っても安く買いたたかれ、結局マイホームは手放し、後には清算し切れなかった住宅ローンが残ることになるのであります。まさに残酷物語であります。
総理、住宅促進
税制の
拡充も必要でしょう。しかし、このような既往の住宅ローンの返済で大変苦労しておられる
方々に、具体的な支援策を講ずべきではありませんか。買いかえ特例を、売り切りにした場合も何らかの方法で適用すべきであります。
銀行救済には数十兆円もの
国民の血税を投入して、一方、その
銀行の住宅ローン返済で苦労している
方々を救済しないのは納得できません。
総理の御決意のほどをお伺いいたします。(
拍手)
地方分権型
社会の構築は、二十一世紀の大きな
課題であります。そのためには、国と
地方の財源配分を抜本的に
見直し、
地方の財源を思い切って
拡充することが不可欠であります。
ところが、
地方自治体の
財政事情は、
不況のあおりも受けて、まことに厳しい
状況にあります。
福祉、教育、医療分野の
予算が切り捨てられようとしています。特別養護老人ホームへの
補助金カット、母子家庭に対する乳幼児医療の有料化、敬老祝い金の廃止、公立や私立学校の授業料の
引き上げ、保健所の健康診断の廃止、学校教員の大幅
削減、公営住宅の建設戸数の大幅
削減など
政府の
経済失政のツケが、すべて
国民へ回されようとしているのであります。
この際、
地方財政を
拡充して、
住民の生活と
福祉を守るため、
地方消費税率を拡大することを真剣に検討すべきであります。現在、
消費税五%のうち一%が
地方消費税分ですが、これを二%に拡大し、
地方財政を充実させることです。そして、この
拡充した財源は
地方自治体の
福祉関連分野に優先的に配分し、
地方の
福祉を断じて後退させないことであります。大蔵大臣と自治大臣のお
考えを伺います。
次に、
社会保障と雇用問題についてお伺いします。
我が国は、
世界に前例のないスピードで少子高齢
社会へ向かっています。六十五歳以上の高齢者人口が、二〇〇六年には二〇%を超え、二〇三〇年には
国民の三人に一人が六十五歳以上という超高齢
社会になると言われています。
本来、
社会保障制度は、
国民の生活に安心感を与えるべきものであります。ところが、
政府の年金制度
改革は、保険料は
引き上げ、給付水準は
引き下げるというものであります。医療保険制度は、改正するたびに
国民に負担を強いることばかりです。これでは、
国民は将来への希望を失い、老後の生活不安から、財布のひもをかたく締めるのは当然であります。また、これでは、新婚家庭で子供を欲しくても産めないのが現実でありましょう。
今
政府が
国民に示さなければならないことは、将来において
社会保険料と税負担がどれだけふえても、実質所得を現在よりも下げないという決意とその設計図であります。ところが、
政府は、年金制度
改革を初めとして、保険料は
引き上げます、給付水準は
引き下げますと言うばかりであり、実質所得がどうなるのかについては、何ら
国民に示していません。これでは、
国民の将来に対する不安は募るばかりであり、
景気低迷の中で
消費が拡大するわけがありません。また、新婚家庭では子供を産みたくても産めない
状況をつくることになります。
総理、どれだけの
経済成長を維持すれば、税金と
社会保険料の負担率が
上昇しても手取り実質所得も
上昇していくのか、それを実現するために何を
国民に公約するのか、御
答弁を求めます。
中
長期展望として、今
政府が真剣に取り組むべきことは、少子化
対策と高齢者雇用の問題であります。合計特殊出生率が一・八に回復するという前提のもとに行われている人口予測でも、二〇二五年における高齢者、六十五歳以上の総人口に対する比率は二五・八%になると予測されています。合計特殊出生率は、現在一・四二であり、このまま放置をしていると、一・三〇近くまで低下することは間違いありません。子供を産みたくても産めない若いカップルのためのみならず、国全体のために、万難を排して緊急の
対策を
確立すべきであります。
本年度の
税制改革の中で、十六歳未満を
中心とした
扶養控除が
引き上げられたことはよく承知しています。しかし、よく
考えてみれば、
扶養控除の拡大は、高額所得者であるほど優遇され、まだ税額の少ない、あるいは払っていない若い世代の子育てには十分に役立っていないと言わざるを得ません。私は、将来不安から進む少子化傾向に歯どめをかけるために、根本的に発想を転換して、この際、
児童手当制度と奨学金制度を抜本的に
見直し、
拡充すべきと
考えます。(
拍手)
児童手当制度については、支給対象年齢を、現在のゼロ歳から三歳未満を十五歳までに拡大し、支給額を第一子、第二子は月額一万円、第三子以降は月額二万円に倍増し、親の所得制限は撤廃すべきであります。また、十六歳以上の高校、専門学校生、大学生に対しては、奨学金制度を
拡充し、学生の成績要件や両親の所得制限を撤廃して、希望するすべての学生に無利子で貸与すべきであると
考えます。この
児童手当制度と奨学金制度の
抜本的拡充について、
総理の御
見解をお伺いします。
高齢者雇用も大変深刻な問題であります。
高齢化が進むにつれて、五十歳から六十四歳の高齢生産年齢人口が増加し続けています。さらに、六十五歳以上の健康な高齢者がふえ、雇用に対する希望もふえています。高齢者雇用は、ひとり高齢者のためのみならず、
社会保険料を負担する側の人口を増大させ、保険給付を受ける側の人口を抑制する
意味から、雇用希望への
対策が急務であります。
企業が必要としているのは職場への適応力がある若年労働者であり、高齢労働者との間にミスマッチが生じます。ここには、どうしても国の政策が必要になります。
総理の高齢者雇用に対するお
考えをお伺いいたします。
次に、教育問題についてお伺いします。
二〇〇二年度からスタートする新学習指導要領は、学校週五日制の完全
実施を前提に、これまでの知識詰め込み型教育からの脱却を目指しています。しかし、この新学習指導要領を定着させるためには幾多の
課題があります。
これからの二十一世紀を担う子供に求められるべきものは、受験知識の多寡ではなく、豊かな創造性や独創性と、確固たる自律心や自主性であります。また、そのため、能力や関心に応じて伸び伸びと学ぶ教育
環境を整えることであります。いじめ、校内暴力、学級崩壊等は押しつけ教育に大きな原因があるとも指摘されています。これらの点を十分に踏まえて、まず教員
自身が大きく意識
改革することであります。
また、多彩な才能を持つ教員の確保と育成のために、教員採用試験の年齢制限撤廃、
社会人採用枠の拡大、二十人から二十五人規模の少人数学級の実現、さらには通学区制の自由化、高校、大学の入学試験の
抜本的改革等が急務であります。
神戸事件の
反省から、兵庫県内の全公立中学校の二年生を対象に
実施した職業体験学習トライやる・ウイークが、大変よい
効果を上げていると伺っています。これは、中学二年生を一週間、学校の授業から解放し、原則としてその学校区内にあるさまざまな業種で働かせたり、ボランティア活動をさせたりするものであります。生徒
たちは、保育所、病院、図書館、建築現場、町工場、商店、スーパーなど、広範にわたって生き生きと働いていたそうであります。
高齢
社会を迎えて、介護を必要とする人、ホームヘルパーの不足に悩む人などを手助けすることによって、人間の弱さ、それらの人を支えることの重要性を認識するなど、
社会を構成する一員としての自覚も深まってきましょう。事実、このトライやる・ウイークに
参加した不登校生の七割が登校するようになったとのことであります。地域の実情に応じて、いろいろな試みが積極的に行われるように、教育現場の徹底した規制緩和も必要であります。
総理は、二十一世紀
日本を展望して、教育制度をどのように
改革されようとしているのか、お伺いいたします。
次に、農業問題についてお伺いします。
昨年農水省が発表した推計によると、二〇一〇年の農業従事者は、全国で現在より百十万人も減少し、中でも九州
地方では五〇%も減り、米どころの東北
地方でも三八%も減少するとのことであります。しかも、農業従事者の高齢化はますます進んでおり、このままでは、二十一世紀の
日本農業はゆゆしき
事態になります。農業後継者の育成と、新たな農業従事者の確保が急務であります。
この通常
国会には新農業
基本法が提出されますが、
政府は、加速する農地の流動化と経営規模拡大
対策、高齢による離農者への配慮、離農して再就職希望者への職業訓練、営農意欲を著しく妨げてきた米減反政策の廃止、中山間地域農業への所得補償制度の
導入など、
日本農業の抱える諸問題をどのように
方向づけていくのか、お伺いいたします。
次に、昨年来緊迫の続くイラクと朝鮮半島情勢についてお伺いします。
昨年十二月十七日に始まった米英両国による対イラク
武力行使について、
総理はいち早く、
米国及び英国の
行動を支持するとのコメントを発表されました。あれから一カ月が経過した現在、イラク
政府の
姿勢に大きな変化は期待できず、国連安保理においても、打開策を見出し得ない
状況であります。
そこで
総理にお伺いしますが、イラクがUNSCOMの査察を受け入れない場合に想定される
米軍等による再攻撃に対し、
我が国は今後も支持を続けるのかどうか、またそれはどのような根拠によるものなのか。
また、国連安保理常任理事国の中では、これまでの査察システムの改正、またイラク
国民への人道的配慮の視点から、国連制裁の緩和を求めるなど、国連による対イラク政策を見直すべきだとの意見もあります。
我が国は、これらの主張に対し、いかなる認識を持ち、いかに
行動されようとしているのか。さらには、イラクと
国際社会との関係が正常化に向かうよう、
我が国は具体的にどのような
外交努力を進めていかれるのか。
総理の御決意のほどをお伺いいたします。
昨年八月以降、
北朝鮮、朝鮮
民主主義人民共和国内に地下核施設建設の疑惑が新たに表面化し、アメリカは、九四年の米朝枠組み
合意に基づき査察受け入れを
要求しています。
北朝鮮側はこれを否定し、疑惑の解明に応じようとしていません。また、日を追うごとに
我が国に対する非難報道も激しさを増しています。
一方、ミサイル開発問題についても、またミサイル実験を行うのではないかと強く懸念される中、開発と輸出の阻止への具体的な
行動にはいまだ至っておりません。さらには、韓国軍による
北朝鮮潜水艇の撃沈、
北朝鮮兵士と見られる遺体の
日本海岸漂着など、緊迫する
事態も看過できません。アメリカ
政府が
北朝鮮政策について全面的な
見直しに着手したとの報道もあります。米朝関係が大きく
動き出せば
我が国への波及は避けられず、まさに予断を許しません。
米朝枠組み
合意の今後の推移と
日本の
対応、そして今後の
北朝鮮問題に対する
外交方針について、
政府の
見解を求めます。
次に、
日米防衛協力のための新たな指針、新ガイドライン
関連法案についてお伺いします。
初めに、
日米安保条約第六条には、極東
有事の際の
米軍への
基地、区域の提供の義務が明記されているだけで、
周辺事態対処のために軍事目的で
行動する
米軍に対して、自衛隊が補給、輸送、整備等の
後方支援を
実施するといった、
日本の新たな対米協力については全く触れられていません。
周辺事態法案は
日米安保条約第六条の規定から大きく超えるという
議論もありますが、
日米安保条約第六条で言う極東
有事と今回の
周辺事態との関係について、まずお伺いします。
次に、
我が国周辺の地域、そして
我が国の平和及び安全に重要な
影響を与える
事態について、
政府はこれまで、地理的な概念ではなく
事態の性質に着目したものであると
説明してきましたが、定義が極めてあいまいであります。
総理、この際、
周辺事態の定義について
政府の統一
見解を明らかにすべきと
考えますが、いかがですか。
次に、
基本計画の
国会への報告に関する問題であります。
周辺事態法案では、これまでの
日米安保体制の変更をもたらす重大な
内容を含んでいるにもかかわらず、
周辺事態に対する
対応措置の
内容を規定する
基本計画については
国会への報告とされています。これでは、
憲法のシビリアンコントロールの形骸化につながりかねないゆゆしき問題であります。
国会への報告でよいという
政府の理由の一つに、
国民の権利義務に直接関係するものではないと
説明をしていますが、
法案では
地方公共団体や
民間にも協力を求めており、まさに
国民の権利義務に直接かかわっているではありませんか。
また
政府は、迅速な決定を行う必要があることも理由に挙げていますが、自衛隊派遣にかかわるシビリアンコントロールの原則を省くことには重大な問題をはらんでいます。
国会には報告で済ませ、
政府の
判断のみでよいというのは、まさに
国会軽視と言わざるを得ません。言うまでもなく、
周辺事態は、戦闘あるいはそれに近い
状態の後方地域で対米支援を行うものであり、自衛隊法七十六条で言う自衛隊の防衛出動と同様に、
国会の承認のもとで
実施するよう改めるべきだと
考えますが、
総理の御決断を求めます。(
拍手)
平和な
国際社会を構築するためには、具体的な平和戦略が不可欠であります。軍事
中心のハードパワーではなく、
経済、
政治、
文化、科学
技術などを複合させたソフトパワーを、
国際社会で積極的に活用すべきであります。
我が国のソフトパワーとしては、
世界唯一の被爆国としての核廃絶、軍縮の推進、ODAの展開、地球温暖化
対策、
環境汚染
対策、人口、食糧
危機対策、災害緊急援助、麻薬撲滅
対策などが
考えられます。
我が国の保有するこれらのソフトパワーを、地球的規模の問題へ積極的に活用すべきであります。
また、ことしは国連高齢者年でありますが、高齢者の抱える諸問題についても、総力を挙げて取り組むべきであります。さらに、来年は平和と
文化のための国際年でもあります。
昨年、ハリケーンで一万数千人の犠牲者を出し、壊滅的な打撃を受けた中米ホンジュラスへ派遣され、現地では大変好評であった自衛隊チームの国際緊急援助隊等は、今後とも積極的に派遣すべきでありましょう。
また、
日本の国際公約である留学生受け入れ十万人計画が、二〇〇〇年初頭の達成目標を目前に、事実上
破綻していますが、特に
経済危機のアジア諸国では、
日本への留学を断念せざるを得ない
事態に追い込まれている学生がたくさんいます。留学生は、将来の
日本との平和のかけ橋として、
長期的な平和友好の構築に大変重要であります。このような視点からも、ODA
予算を優先的に活用して、当面十万人目標を達成するために総力を挙げるべきであります。
世界トップレベルの
我が国の科学
技術をもって、地球温暖化
対策や
ダイオキシン対策などの
技術と
経済支援も積極的に進め、国際貢献すべきであります。このような人間の生命と人道にかかわる重要問題においてこそ、
日本は積極的に国際協力や
経済支援の先頭に立つべきであります。これらの活動を通じて、アジア諸国を初め、
国際社会の
我が国に対する認識と評価が一層深まるのではないでしょうか。
我が国が保有するこれらのソフトパワーを、有効かつ優先的に活用した積極
外交を展開すべきと
考えますが、
総理の忌憚のない御意見を伺います。
昨年は、元
自民党代議士及び秘書などによる総支部の架空領収書を使った報告書への虚偽記載事件、政党交付金の流用事件、秘書の
選挙違反による初の
国会議員の拡大連座制の適用など、不祥事が相次ぎました。一方、
国政選挙の買収事件で連座
責任を問われた候補者がくらがえ出馬して市長選で当選するなど、連座制の制裁
効果が疑問視される出来事もありました。
特に、
国民の大切な税金で賄われる政党交付金が
政治活動とは言えない方面に流用されたことは、明らかに
国民への背信行為であり、私
たち政治家は当然として、関係者は厳粛に受けとめなければなりません。
自民党は、去る七日、政党交付金の不正流用や買収事件で、
政治資金の
あり方に対する
国民の
批判の高まりを口実に、政党交付金総額の
削減と、事もあろうに
企業・団体献金の存続を決めたとのことであります。しかし、これは全くの本筋、論理のすりかえではないでしょうか。
総理、あなたは
自民党総裁でもありますが、これらの一連の事件や
動きに対して、いかに理解されておられるのか、しかと承りたい。
最後に、
総理、この通常
国会に新たな自自
連立政権で臨まれていますが、国政の基盤である
政権が、ほとんどの
国民が夢想だにしなかった
自民党と
自由党による
連立政権である以上、一日も早く景気回復の道筋を立て、しかるべきときに
衆議院を解散し、
国民にその信を問うのが憲政の常道と
考えます。
総理のお
考えを伺いまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣
小渕恵三君登壇〕