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1999-07-23 第145回国会 衆議院 法務委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年七月二十三日(金曜日)     午前九時三十分開議   出席委員    委員長 杉浦 正健君    理事 橘 康太郎君 理事 八代 英太君    理事 山本 幸三君 理事 山本 有二君    理事 坂上 富男君 理事 日野 市朗君    理事 上田  勇君 理事 達増 拓也君       小野寺五典君    奥野 誠亮君       加藤 卓二君    河村 建夫君       鯨岡 兵輔君    小杉  隆君       左藤  恵君    笹川  堯君       菅  義偉君    西田  司君       保岡 興治君    渡辺 喜美君       枝野 幸男君    河村たかし君       北村 哲男君    福岡 宗也君       漆原 良夫君    安倍 基雄君       権藤 恒夫君    木島日出夫君       保坂 展人君    園田 博之君  出席国務大臣         法務大臣    陣内 孝雄君  出席政府委員         公正取引委員会         事務総局経済取         引局長     山田 昭雄君         警察庁長官官房         長       野田  健君         法務大臣官房司         法法制調査部長         兼内閣審議官  房村 精一君         法務省民事局長 細川  清君         法務省刑事局長 松尾 邦弘君         郵政省電気通信         局長      天野 定功君         労働省労政局長 澤田陽太郎君         労働省労働基準         局長      野寺 康幸君  委員外出席者         会計検査院事務         総局第一局長  関本 匡邦君         最高裁判所事務         総局人事局長  金築 誠志君         最高裁判所事務         総局刑事局長  白木  勇君         法務委員会専門         員       井上 隆久君 委員の異動 七月二十三日         辞任         補欠選任   加藤 紘一君     小野寺五典君   佐々木秀典君     河村たかし君   福岡 宗也君     北村 哲男君 同日         辞任         補欠選任   小野寺五典君     加藤 紘一君   河村たかし君     佐々木秀典君   北村 哲男君     福岡 宗也君 七月二十三日  外国人登録法の一部を改正する法律案内閣提出第七九号)(参議院送付) 同日  法制審議会の公開に関する請願横路孝弘紹介)(第六七五六号)  裁判所の人的・物的充実に関する請願斉藤鉄夫紹介)(第六七五七号)  法務局、更生保護官署及び入国管理官署増員に関する請願佐々木秀典紹介)(第六七五八号)  同(坂上富男紹介)(第六七五九号)  同(佐々木秀典紹介)(第六七八〇号)  同(佐々木秀典紹介)(第六八〇一号)  同(坂上富男紹介)(第六八〇二号)  同(佐々木秀典紹介)(第六八一七号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法制定に関する請願横光克彦紹介)(第六八〇〇号)  外国人登録法抜本的改正に関する請願日野市朗紹介)(第六八〇三号)  裁判所速記官制度を守り、司法の充実・強化に関する請願保坂展人君紹介)(第六八四四号) は本委員会に付託された。 七月二十二日  少年法改正反対に関する陳情書外一件(第二六九号)  同(第三〇九号)  オウム真理教を例とするテロ事件再発防止に関する陳情書外二件(第三〇八号)  地方裁判所及び高等裁判所裁判官増員に関する陳情書(第三五九号)  宇都宮地方裁判所管内裁判官増員に関する陳情書(第三六〇号) は本委員会に参考送付された。 本日の会議に付した案件  商法等の一部を改正する法律案内閣提出第七六号)     午前九時三十分開議      ――――◇―――――
  2. 杉浦正健

    杉浦委員長 これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所金人事局長白木刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 杉浦正健

    杉浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ――――◇―――――
  4. 杉浦正健

    杉浦委員長 内閣提出商法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。枝野幸男君。
  5. 枝野幸男

    枝野委員 前回に引き続きましてお尋ねをいたしますが、まず、もう一度お尋ねをさせていただきます。  週刊フライデー九九年四月二十三日付八ページにあります現金出納簿の一部と見られる書類が、警視庁保管真正書類とどこがどのよう一致をしていないのか。答えられないとしたら、その答えられない理由をお述べください。
  6. 野田健

    野田(健)政府委員 警視庁保管現金出納簿という帳簿は、具体的な捜査活動を支出の面から裏打ちしたものであります。銃器捜査に従事する捜査員のだれが、いつ、幾らの金額情報提供者謝礼として支払ったかなど、個々捜査活動にかかわる事項を記録したもので、まさしく捜査活動内容そのものを示すものであります。  したがって、たとえ一部であれ、その部分がどのよう一致しないかをお答えすることは、それ以外の部分真正であるとの推認を受けることになり、ひいては、情報提供者に対する謝礼支払い状況等が明らかになるおそれがあります。特に、けん銃事件捜査におきましては、自身の危険を賭して捜査情報を提供していただいた方もあり、このような方々に迷惑を及ぼすことにもつながるので、お尋ねの、書類にかかわる具体的な異同についての答弁は差し控えさせていただきたいと存じます。
  7. 枝野幸男

    枝野委員 今の答弁、矛盾していることにお気づきになっていらっしゃってお答えになっているのでしょうか。どうですか。
  8. 野田健

    野田(健)政府委員 説明申し上げたことで、特に矛盾はしていないと思っております。
  9. 枝野幸男

    枝野委員 いいですか。この四月二十三日付八ページの書類というのは、捜査員の氏名のところはモザイクがかかっております。このモザイクのかかっている写真について、真正のものと一致をしていますか、一致をしていないかということを聞いたのです。警察庁の皆さんはモザイクがかかっている部分については見ていないわけですから、その裏側は。ということは、モザイク裏側部分真正かどうかということについてはお答えになりようがないわけです。したがって、モザイクのかかっていない部分について、真正なものと一致しているか一致していないかということで、一部一致していないというお答えをしていることになるわけです。そうすると、捜査員以外のところについてのお答えであって、捜査員のところは真正なのか真正じゃないのか、真正なものと一致しているのかしていないのか、あなたはお答えになれていないはずなんです。お答えになっていないはずなんです。ここで、どこがずれているとか、どこが一致していると言ったとしても、捜査員のところは全部違っているかもしれないし、全部一致しているかもしれない。どちらに答えたことにもならないのです。したがって、あなたがお答えになったように、そこの部分真正であるとの推認を受けることになりというのは、少なくとも、捜査員名前のところは推認を受けることにはならないのです。そうじゃありませんか。
  10. 野田健

    野田(健)政府委員 フライデーの記事の写真を見ますと、確かに名前部分についてはモザイクがかかっておりますけれども、それを目を細めたり、あるいは斜めから見るということによって、名前推認される部分もあると私どもは存じております。
  11. 枝野幸男

    枝野委員 もう一回聞きます。  では、そのことも含めて一致している一致していないという先ほどの、全体は一致していそうだけれども、一部一致していないというお答えだったのですか。
  12. 野田健

    野田(健)政府委員 もちろん、モザイクがかかっておりますから、モザイクがかかっていて判読できない部分というものがあるとすれば、まさに、本物警視庁保管帳簿異同を言うことはできないというふうに思います。
  13. 枝野幸男

    枝野委員 そうなんでしょう。だから、このモザイクがかかっている部分については、ここで、どこが違っているどこが違っていないと、ほかのところでどう答えよう推認されようがないじゃないですか。  そもそも、このモザイクでだれか名前がわかるんですか。わかるんですか。どこか推認できそうなところ、言ってみてください。どこですか。
  14. 野田健

    野田(健)政府委員 個々具体的に、どれが推認できるかということを答えることは非常に難しいのでありますけれども、よく見ていただくと、中には四文字でなくて三文字ように見えるところもありますし、それから、字画からいってこの字ではなかろうかと思えるようなものもあると私は存じております。
  15. 枝野幸男

    枝野委員 非常にふざけた話で、三文字か四文字かで名前推認できる。世の中に三文字警察官、何千人いるんですか。警察庁だけだって何千人いるんですか。そんなふざけた話、ないですよ。  そもそも、けん銃捜査にかかわっている警察官名前を公表するのかしないのかという話は一般的にあるかもしれないけれども、警察官に三文字名前、四文字名前、ごちゃごちゃたくさんいるじゃないですか。そもそもが推認されようがされまいがいいのですよ、だって、この部分については真偽を言っていないわけですから。これ以外のところについて違っているところがあるとおっしゃっているのでしょう。この部分については違っているか違っていないか、お答えになっていないわけでしょう、先ほどおっしゃったとおり。  だから、ほかのところでどこが違っていると言ったって、ここの部分が正しいということの推認なんか働くわけないじゃないですか。この部分について何も答えていないんですもの。矛盾していませんか。
  16. 野田健

    野田(健)政府委員 フライデーに出ている写真というのが、いつ、どういう状況で、だれが撮ったかということについて我々は承知しておりません。また具体的に、そういう写真は本来、警視庁帳簿であれば外に出るはずのない書類であります。したがって、それぞれ出ているものについて、その異同について本来お答えすべき立場にはないのかもしれないというふうに思っておりますが、少なくとも、そこに書いてあるものは極めてよく似ている部分がありますので、その点についてはお答えしたというふうに考えております。
  17. 枝野幸男

    枝野委員 だから、どこが似ているのですか。  これは両方の意味から問題なんですよ。これはまさにフライデーが書いているとおり、裏金疑惑のところから問題かもしれないし、逆に、そこの部分を外しても、これが本物に限りなく近いものが出ているのだとしたら、そのこと自体警視庁としてのミスじゃないですか。そういう意味で、これは本物が表に出たものなのか、もし一部が違っていたとしても、本物が表に出たのが一部改ざんされているのか、それとも全く違うものなのか、それは我々は知る立場じゃないですか。どういうことなんですか、それは。
  18. 野田健

    野田(健)政府委員 フライデー写真に写っている現金出納簿とよく似た帳簿でありますけれども、それは現在警視庁銃器対策課が保管している帳簿をそのまま写真撮影したものとはとても思えない状況にありますが、非常によく似ておりますので、だれが、いつ撮ったかわかりませんが、それは重大な問題だというふうに考えております。
  19. 枝野幸男

    枝野委員 撮ったものとは思えませんがというのは、中身が違っているからなんですか。それとも、中身は限りなく近いのだけれども、出ているはずはないのに出ているからおかしいということなんですか。
  20. 野田健

    野田(健)政府委員 現在保管している帳簿をそのまま写真撮影したわけでは決してないというふうに考えておりますが、極めて類似しておりますので、だれがどういう意図でそのよう写真を撮ったのかということについては重大な関心を持っております。
  21. 枝野幸男

    枝野委員 極めて類似をしているとまでお答えになっているのだったら、全部答えなくてもいいですよ、違っている部分が十カ所あるうちの一カ所でもいいですよ、三カ所のうちの一カ所でもいいですよ、ここが具体的に違っているとおっしゃればわかるわけですよ。全部を言ってくれなんて言わないですよ。どこがどう違うのですか。形式が違うんですか、筆跡が違うんですか、数字が違うんですか。あるいは警部とか警部補というのは読めますが、そこの部分が違うんですか。どこでもいいですよ。一カ所でもいいから答えたらいいじゃないですか。
  22. 野田健

    野田(健)政府委員 どの部分一致しているか答える、あるいはどの部分一致していないか答える、そのことによって、結果的に真正部分というものが推認されるおそれがありますので、そのお答えについては控えさせていただきたいと存じます。
  23. 枝野幸男

    枝野委員 矛盾しているのがわかりませんか、御自身で。だって、全体について大体似ているとおっしゃっているのだったら、もう全体について推認が働いているんですよ。違いますか。
  24. 野田健

    野田(健)政府委員 全体について真正であるというよう推認を受ける危険が非常に高いという意味答弁を差し控えさせていただいているということでございます。
  25. 枝野幸男

    枝野委員 では、推認されるよう中身じゃないのですか。全然違うものなんですか。違うでしょう、先ほどの答えは。大体本物を撮ったのを、どこか変わっているというよう答え方だったじゃないですか。だったら全体は既に推認されていますよ。今の話、報道されたら、ああ、これは大体全部本物なんだな、どこが違うんだろうなと、だれだって聞いた人はみんなそう思いますよ。もう既に推認が働いているのだから、今の答弁、前提が狂っていますよ。
  26. 野田健

    野田(健)政府委員 先ほども申し上げましたように、真正帳簿書き方と同じよう書き方になっているものであります。したがって、極めてよく類似しているというふうに考えておりますけれども、少なくとも現在警視庁で保管している帳簿写真撮影したものではないということだけは申し上げられるということでございます。
  27. 枝野幸男

    枝野委員 じゃ、だれなら見られるのですか、これは。だれなら具体的に知らせてもらえるんですか。だれが知っているんですか、どこが違って、どこが知らないということを。
  28. 野田健

    野田(健)政府委員 その帳簿真正帳簿とどこが相違しているかということを知って、そしてそれに非常に意味を持つ者というのは非常に限られているというふうに考えておりますけれども、当然、この報道がありました後、調査をいたしました警視庁生活安全部あるいは総務部幹部はそれを知っているというふうに承知しております。
  29. 枝野幸男

    枝野委員 じゃ、今の話は、そこの点もう一回突っ込みますが、その前に、会計検査院が見せてくれと言ったら見せますか。そして、どこがどう違っているか説明できますか、会計検査院には。
  30. 野田健

    野田(健)政府委員 捜査費現金出納簿というのは会計帳簿でありますので、会計検査院検査があれば当然お見せすることになるというふうに考えております。
  31. 枝野幸男

    枝野委員 じゃ、総務庁監察局は、見せろと言ったら見せますか。
  32. 野田健

    野田(健)政府委員 総務庁行政監察対象ではないというふうに考えております。
  33. 枝野幸男

    枝野委員 それは、東京都だから、警視庁だからということですか、警察庁じゃなくて。そういう理解ですか。
  34. 野田健

    野田(健)政府委員 具体的にどのよう捜査をしているかということについては、行政監察の事柄ではないというふうに我々は考えております。
  35. 枝野幸男

    枝野委員 ありがとうございます。今の答弁、非常に重要で、行政監察のこれからのあり方の問題について大変重要な意味を持ったお答えですから、よくテークノートしておきます。  今の、警察庁としての答弁でいいですね。あなたの個人的な見解じゃないですね。
  36. 野田健

    野田(健)政府委員 私は警察庁官房長としてそのように考えておりますけれども、行政監察がどういう権限を持っているかということについては、私直接その所掌でありませんので、お答えするのは非常に難しいと思います。  ただ、現実に捜査をどのようにしているかということについて行政監察を受けたということはありませんので、恐らくそういうことについては行政監察対象ではないというふうに考えているということでございます。
  37. 枝野幸男

    枝野委員 だったら、先ほどの答弁撤回して、謝ってくださいよ。あなた、権限者じゃないのにそんなことを、対象じゃありませんだなんて答えるから、おかしなことになるわけですよ。違うんですね。先ほどの答弁撤回しますね。
  38. 野田健

    野田(健)政府委員 行政監察権限というものについては、行政監察担当部局お答えすべきものという意味では訂正させていただきます。
  39. 枝野幸男

    枝野委員 されたくないとかしてほしいとか、そんなことを言う立場じゃないということわかっていますね。される側なんだから。そうですよね。
  40. 野田健

    野田(健)政府委員 警察がどのよう捜査するか、あるいは捜査のやり方というものについて、個々具体的なことは行政監察対象ではないのではないかと私は考えております。
  41. 枝野幸男

    枝野委員 そんな無責任なことを官房長答えていいんですか。あなたの個人的な考え方ですね、それは。警察庁としての考え方なんですか。内閣としての考え方なんですか。あなたは政府委員として出てきているのだから、内閣としてそう答えていることになるんですよ。
  42. 野田健

    野田(健)政府委員 警察庁官房長としてはそう考えておりますけれども、行政監察権限のことにつきましては当局の方にお尋ねいただいた方がよろしいかと思います。
  43. 枝野幸男

    枝野委員 初めからそう答えればいいんです。  それで、通告していないので申しわけないのですけれども、会計検査院、いらしていただいていると思いますが、調べてください、今の点。会計検査院は見られるそうですから。
  44. 関本匡邦

    関本会計検査院説明員 お答え申し上げます。  警察庁に対します検査、過去にも厳正に対処をしてきたつもりでございますが、今回こうした報道内容等もございますので、改めて適正に対処してまいりたいと考えております。(発言する者あり)
  45. 枝野幸男

    枝野委員 今、坂上先生がおっしゃってくれましたけれども、ある程度の時期切ってもらえませんか。それは、何月何日までとは言えないかもしれないけれども、どれぐらいのめどで。十年後に答えてきたってしようがないので。
  46. 関本匡邦

    関本会計検査院説明員 お答え申し上げます。  いずれにしましても、近々実施いたします検査の結果をまちましてお答えします。
  47. 枝野幸男

    枝野委員 それでは、結果が出ましたら私の事務所に通知をきちんとしてください。忘れないでくださいね。  それで、その前の、警視庁の中でいろいろ調べたという話は、私の質問主意書の中でも漢数字の四の項目でお答えになっていますが、具体的にお伺いします。どの範囲の場所を、だれが、いつ、どれぐらいの延べ時間かけて調べたのですか。
  48. 野田健

    野田(健)政府委員 警視庁におきましては、週刊誌に掲載されたという事実を踏まえまして、本年四月初旬から下旬にかけまして、総務部及び生活安全部幹部が、これらの関係者から事情を聴取するなどし、あるいは帳簿の照合をするというようなことで調査をしたという報告を受けております。
  49. 枝野幸男

    枝野委員 じゃ、少なくとも調査責任者はだれですか。
  50. 野田健

    野田(健)政府委員 警視庁において調査した結果については、警視庁総務部長から報告を受けております。
  51. 枝野幸男

    枝野委員 総務部長が実際に聞き取りをしたのかどうか。つまり、現場責任者はだれだったかと聞きたいのです。
  52. 野田健

    野田(健)政府委員 具体的に調査に当たった者は、総務部会計課長ほか幹部、それから生活安全部銃器対策課長以下幹部であります。
  53. 枝野幸男

    枝野委員 それで、どんな人に、どんな話を聞いたのですか。つまり、捜査費を受け取ったという領収書が出ていて、その領収書真正じゃないものらしいという話が出ているわけですけれども、その領収書名義人にちゃんと当たったのですか。
  54. 野田健

    野田(健)政府委員 個々のその時期の捜査費の執行にかかわった職員に事情聴取し、そしてそれぞれその書類本名で書かれているものか、あるいは、本名ではないけれども他人名前で書かれているものか等を聴取した上で、だれに渡したかというようなことについて調べたということでございます。
  55. 枝野幸男

    枝野委員 その相手方確認をとらなかったら、捜査員人たちだけだったら、片側からだけの話じゃないですか。裏づけになっていないじゃないですか。そんな捜査なんですか、警察でいつも捜査するのは。
  56. 野田健

    野田(健)政府委員 そこに書いてある名義人について、その人に受け取ったかどうかということについて、調べる必要はないものというふうに考えております。
  57. 枝野幸男

    枝野委員 いいですか、一般的に、疑いを持たれている人が、これこれこうしました、その説明は一応合理性があると聞き取れる、それでも反対側の第三者なり、例えば物の受け渡しだったら相手方確認をとるのが捜査の初歩じゃないですか。なぜそれをやらないのですか。
  58. 野田健

    野田(健)政府委員 そこに書いてある、受け取ったという名前そのものの人に渡したということでは必ずしもなくて、捜査過程でだれに渡したということについては報告がありますので、それで十分というふうに考えております。
  59. 枝野幸男

    枝野委員 領収書というのは私文書偽造罪の私文書に該当しますね。
  60. 野田健

    野田(健)政府委員 領収書自体は私文書であるというふうに考えております。
  61. 枝野幸男

    枝野委員 名前と違う人間、つまり受け取った本人と違う名前を書いた領収書をそうだとわかって受け取っていたら、私文書偽造共犯じゃないですか、その警察官は。
  62. 野田健

    野田(健)政府委員 銃器捜査過程で、捜査協力をしてくれた方に対して謝礼を払う、その場合に、相手は場合によって身の危険を感じることがあるということで、本名で書くことはできないといった場合に、一つの方法としては、領収書がなしでもいいという経理の実際になっておりますが、多くの捜査員は、今おっしゃるように、だれかに渡したということを明らかにした方がいいということで、だれか適当な名前でも書いてもらった方がいいということになっているのが実情であります。  したがって、命の危険等の考えからほかの名前を使ったから、それが私文書偽造罪に当たって問擬すべきというものではないというふうに考えております。
  63. 枝野幸男

    枝野委員 そんなふざけた話がありますか。少なくとも、構成要件には該当しているでしょう。違法性が阻却されるんですか。責任が阻却されるんですか。なぜそれは犯罪にならないんですか。構成要件には該当していますよ。
  64. 野田健

    野田(健)政府委員 他人名義で私文書を作成した、そのこと自体は私文書偽造に当たるかもしれませんけれども、それを受け取ったから共犯になるというものではないというふうに考えております。
  65. 枝野幸男

    枝野委員 今の話は事実上示唆しているでしょう。それ容認しているんでしょう。  しかも、私は、この手のもので領収書をとれないという話について追及する気はないですよ。部分的にはあるでしょう。領収書を払いたくないという人もいるでしょう、金額も大きくなかったりするから。それまでだめだと言うつもりないですよ。でも、少なくとも偽名を使うだなんという話を、しかも法を取り締まるべき警察の方がやるだなんて、そんなふざけた話をみずから堂々と認めておって、国民に法を守ってくださいなんて言えるはずないじゃないですか。  少なくとも、これまでは間違っていました、これからは、少なくとも偽名でとるだなんてばかなことをやりません、これからは、とれないときは領収書をとれませんでしたと書類でやりますと。それが当たり前の答えじゃないですか。  時間になりましたので、まだまだこの話、まとめて相当やってもらわないと、委員長、困りますよ。犯罪警察がかかわっているという話ですからね。  それから、きょうの話は全く納得できませんので、警察庁の長官官房会計監査室長、警視庁生活安全部の部長それから警視庁銃器対策課長、以上の皆さんを証人として呼んで、きちんと直接お尋ねをしたい。  それから、この問題になっている現金出納簿、それからフライデー四月二十三日号に出ていると思われる時期の領収書等のつづり、これを資料要求いたしまして、それで質問を終わらせていただきます。委員長、お計らいください。
  66. 杉浦正健

    杉浦委員長 一般質疑もございますし、理事会でよく御相談したいと思います。
  67. 枝野幸男

    枝野委員 終わります。
  68. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、北村哲男君。
  69. 北村哲男

    北村(哲)委員 民主党の北村でございます。  ただいまの話とは少し違うことになりますが、一般質問の続きということで質問させていただきたいと思います。  いわゆる狭山事件についての問題でありますが、狭山事件というのは、もう御存じと思いますけれども、一九六三年ですから、今から三十六年前に女子高生が狭山において殺害されたという事件でございます。その被告人であった石川一雄さんが死刑判決を受け、さらに二審で無期懲役、そしてその後現在まで一次再審、二次再審と続いておりまして、今月の七月八日に東京高裁が、第二次の再審請求について十三年目にして棄却決定をした。新聞にも大きく報道をされておるわけですけれども、この中で、いわゆるこの再審について大きな問題がありまして、事実調べも十三年もかかっても全然行われていないという問題、あるいは証拠開示、検察官が手元に持っている未開示記録の開示が大きく問題になっているということであります。  過去、幾つかの重要な冤罪事件、いわゆる免田事件、松山事件あるいは梅田事件とさまざまな冤罪事件がありますけれども、その再審裁判において、未提出記録の開示は真実解明のために大きな役割を演じておりました。刑事裁判の目的は真実の究明であることは言うまでもありませんけれども、この点から見て、現行法の刑事裁判、特に再審裁判における未提出記録の開示手続については問題が多いのではないかと思いますが、まずはその点について法務省の御見解を伺いたいと思います。
  70. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 一般論として申し上げますが、再審請求事件における公判不提出記録の開示の問題というのは、従来からいろいろな形で論議をされてきております。委員御指摘のとおりでございます。  これは、事件の争点との関連性あるいは関係者のプライバシーの保護、また将来の捜査における協力の確保等さまざまな観点から、事件を担当する検察官におきまして個々具体的な事案ごとに個別に判断し、その際には当然再審請求の関係者との協議もすることになると思うのですが、そうしたことを踏まえまして適切に対処しているということで御理解いただきたいと思っています。
  71. 北村哲男

    北村(哲)委員 ただいまの御答弁、この法務委員会でも恐らく十数年にわたって何回もこういう点が繰り返されております。  私も、去年の五月ごろでしたか、当時の原田刑事局長から、未提出記録については、現場において、検察官、裁判所それから弁護人が十分に話し合って検討するようにというお話がありました。この法務委員会の原田刑事局長のお話をもとに、現場においては、検察官そして弁護人そして高等裁判所裁判官との間の話し合いということが鋭意進められておりまして、特に現場の検察官、東京高検では未提出の記録の整理が精力的に約一年かけて行われました。  そして、ことしの四月ごろには検察庁の方から、ある程度具体的に特定して請求されれば、提出について検討するという見解まで発表されておりました。そういう段階まで来ておりました。この協議の経過は、逐一東京高裁にも報告をされておるわけです。そして、その趣旨に従って、弁護団が証拠の特定といいますか、未提出記録が、いろいろわからないんですけれども、せめてある程度特定されれば、それを出すかどうかは検察官が検討するという段階まで来ている。その段階に来て、それが四月なんですけれども、四月、五月、その間検察官もおかわりになって、新しい手続に入ろうとした直後の高等裁判所の棄却決定があった。それが七月八日でございます。  経過を全く無視して棄却決定が行われた、この裁判のあり方が、真実追求を最高の使命とする刑事裁判のあり方に大きく反しているのではないかと私は思うわけですけれども、この経過無視の裁判のあり方について、法務省はどのようにお考えでしょうか。
  72. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 お尋ねの事件につきまして、先生御指摘のように、弁護団と検察官との協議が長い経過の中で何回も行われてきたことは事実でございます。  ただ、お尋ねの、具体的な再審請求事件における裁判所の審理、判断にかかわる事項につきましては、法務当局としては、審理経過あるいは判断について個別に所見を述べるというのは適当でないというふうに考えております。
  73. 北村哲男

    北村(哲)委員 それは確かにそうでございましょう。確かに、審理の内容について立ち入ることはできない。それは私どもも、この国会でやるべき問題ではないと思います。  しかし、それにしても、ある程度この法務委員会でも大きく問題にされ、そして裁判所も含みまた弁護団も含み、そしてこれは大きな社会問題にもなっている、こういう経過があります。  それで、私は、内容ではなくて、こういう経過無視の裁判のあり方そのものは、これはやはり政治の場でも問題にしていい問題と思っておりますけれども、裁判所はその点についてはどのようにお考えでしょうか。
  74. 白木勇

    白木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  お尋ねの事件につきまして、不提出記録の開示をめぐって検察、弁護の当事者間でやりとりがございましたことは、以前にこの法務委員会におきまして委員が御指摘になっておられますので私どもも承知をいたしておりますが、私どもといたしましては、その問題で検察官と弁護人の間でどのようなやりとりがなされてきたのか、そしてそのやりとりを、事件を担当しております裁判体がどのように承知していったのかということにつきましてはもとより全く承知をいたしておりません上、事は、やはり具体的な事件の審理と判断にかかわる事項、事柄でございますので、その審理のあり方等につきまして見解を申し述べることは差し控えさせていただきたいと存じます。
  75. 北村哲男

    北村(哲)委員 確かに、法務省も裁判所も具体的な事件に立ち入ることはできないという点については同感でありますけれども、しかし、この今まで話し合われてきた経過を無視された結果非常に不条理な裁判結果を付されたというのは、大きな社会問題であり、政治問題であると私は考えております。  ところで、そうなると、具体的な問題が、なぜこういうふうな結果になってくるかというと、やはり法的な、法律上の不備の問題があるのではないかというふうなことも考えてみなくちゃならないし、今司法改革が叫ばれている中で、この点についても考えてみなくちゃならない問題があると思います。  日本の再審制度の導入のモデルはドイツ刑法であると言われておりますが、実際は、この再審請求以来十三年間一回も事実の取り調べが行われていないということが新聞にも報道され、これが問題にされておるわけですけれども、ドイツでは、事実の取り調べを原則としているというふうに言われております。また、日本の過去の例でもたびたび、再審の申し立て段階で事実の取り調べが行われた結果新たな事実が解明されているということがあります。  本件では、事実の取り調べに関しては、証人尋問もあるいは新たに申請された鑑定人の尋問もあるいは現場検証なども全く行われていなくて、また、裁判所が自分たちが持っている権限である証拠開示のいわゆる勧告ということも行われていない。訴訟指揮に問題があることは当然であると思いますけれども、訴訟指揮は個別の問題でしょう。しかし、控訴審の判決以来この二十五年間、その間に出された新証拠は五十八点に及ぶというふうに言われておりますが、それでも事実調べは行われていない。しかも、現実に検察官の手元に、目の前に膨大な未提出記録があることがわかっていながらその開示が行われていなかったという問題点があります。これでは十分な審理は尽くされていないというふうに言わざるを得ないわけです。  それはそれとしまして、ここではそれについて深く追及はできませんけれども、法の手続上の壁のために未提出の記録が日の目を見ることなく結論が下されていること、その法制度自体に問題があるのではないかと思います。そして、経過と結論から見ていかにも不自然な結果に及ぶというのは、これは制度の問題ではないかと考えるわけです。司法改革が今論議されておる中で、誤判をなくすために改革が必要と思われますけれども、その点について、法務省はどのようなお考えを持っておられるのでしょうか。
  76. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 再審請求事件における再審請求者等に対する証拠の開示の問題でございますが、まず、刑事確定訴訟記録法というのが先生御指摘のとおりございます。これにおきましては、再審請求者等に対しまして、検察官が公判に提出した証拠を含む訴訟記録の閲覧を認めているということがまず第一にございます。  ただ、これは公判に提出されていない記録については閲覧の対象としていないという点はございます。公判の不提出記録の開示につきましては、先ほど冒頭の御答弁で申し上げましたように、個々具体的な事件でそれぞれ判断されているということでございます。  再審手続をどのように考えるかということについては、確かにいろいろな議論があります。また、立法論としても、さまざまな立法論があることも承知しております。いろいろな観点から今後も論議さるべき事項であるということは御説のとおりだと思っております。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
  77. 北村哲男

    北村(哲)委員 再度伺いますけれども、いろいろ議論をすることが確かにありますけれども、その点で、いろいろな議論があるということでとどめていただきたくないのです。  今までの著名な再審事件あるいは冤罪事件と言われて、先ほど申しました。これは、いずれも二回も三回も再審請求が行われております。多いものは六回です。それこそ何十年にわたって再審、再審が行われて、やっと未開示証拠とかあるいは証拠リストなんかが提示されて、その結果、結論が出ているということがありました。その間に、被告人であった人たちは亡くなられて、結局無念の気持ちを抱いてこの世を去った人もいるわけです。  こういう手続を見ますと、いかにもむだですね。こういうものは早く、一回で処理してしまいたいというのは国民の願いであるし、もちろん関係者は、当事者も当然でありましょう。こういう過去の例に照らして、再審請求の裁判はどうあるべきか、あるいは刑事訴訟法は問題ないのだろうかという点についてさまざまな議論があるということは、それはさまざまあります。  しかし、法務省は、今どのようにすればこういうことがなくなるのだろうかということ。率直に言えば、私どもは、手持ちの証拠をはっきり全部お出しになって、あるものを本当に全部さらせば、精査すれば、人知の及ぶ限りの結論は早急に出てくると思うのです。それを小出しにされるものだから、手続上出さなくていいんだから出さないんだといって目の前にあるものを出さないで、弁護人からいえば無罪の証拠になるかもしれないものがいっぱいある、ロッカーに幾つもあるということに非常に悔しい思いをしながら、何十年もむだな時間を過ごしてしまうということがあるわけです。  そういうあり方の問題について、その方向性の問題について、法務省はどのようにお考えでしょうか。もう少し進歩した、あるいは目的的な回答をいただきたいと思います。
  78. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 再審制度につきましては、その運用の実情あるいは先生御指摘の諸外国の再審制度等、改正の必要性等については研究をしているところでございます。刑事再審の制度自体は、確定判決による法的安定性という一方での柱と、それから個々の事件についての具体的妥当性等の要請というもう一つの柱、この間の調和点をどこに求めるかということが一番基本的な問題だろうと思います。立法上、運用上、その両方をそれぞれバランスをとるという点で困難性もあるところでございます。この問題は、刑事裁判の本質あるいは刑事訴訟制度の基本的構造に触れるものでございます。  再審手続につきましては、適正な判断を迅速に求めるという観点から改めるべき点があるかどうかについては、先生御指摘のとおり、各般の、いろいろな観点からの検討を今後も続けていきたいということは考えております。
  79. 北村哲男

    北村(哲)委員 私は、恐らくこの次の政治の課題は司法改革、いろいろ、国会の改革も行われました、行政改革も行われました、これからの課題は司法の改革だと思います。裁判所の改革そして司法制度の改革、とりわけ刑事訴訟法の改革については司法制度改革審議会の中でも大いに議論され、新しい体系、特に日本の刑事訴訟法は、戦後五十年間、つくられてからほとんど改正が行われていないということでこういう矛盾を多く含んで今日まで来ているということで、大きな課題だと思っております。  ところで、今度は法務大臣にお伺いしたいと思います。  国連の人権委員会というのがございますが、昨年の十一月五日に最終見解というものを採択し、日本政府に対して司法制度に対する多くの勧告を行いました。  その中に二十六項というところがありますけれども、人権委員会は、刑事法上、検察官には、その捜査過程等において収集した証拠は、公判に提出する予定がない限り、これを開示する義務がないということ、及び弁護側には手続上どの段階でも、その開示を求める一般的権利が認められていないことに懸念を持つ。これは日本の制度です。委員会は、弁護を受ける権利が阻害されないよう、日本が、その法律と実務とを、弁護側に関連性のあるあらゆる証拠資料にアクセスすることが保障されるよう改めるよう勧告するとあります。しかも、この点は、今回だけではなくて、五年前の一九九三年の第三回の報告書の検討の際にも指摘されたところであります。  今回、委員会は冒頭、委員会は、第三回の報告を検討したときに出された勧告の大部分が日本政府は受け入れられていなかったということを遺憾に思うというふうに言っておるわけです。そういうコメントまでして、新たに今の問題を問題にしております。この点について、まず大臣のお考えを聞きたいと思います。
  80. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 規約人権委員会から今委員御指摘の勧告があったことは承知いたしております。  我が国におきましては、刑事訴訟法の第二百九十九条の第一項によりまして、検察官が公判廷で取り調べを請求する証拠物及び証拠書類については、あらかじめ弁護人等に閲覧の機会を与えなければならないものとされておるということはもう御承知のとおりでございますが、これに加えまして、最高裁判所の決定によりまして、裁判所は、一定の場合には、その訴訟指揮権に基づき、検察官が所持する証拠の開示を命じることができるものとされておるわけでございます。  実際にも、具体的必要性に応じまして、裁判所から検察官に対し、証拠開示の命令または勧告が行われておりまして、検察官においても、事実に即して、証拠開示の要否、時期、範囲等を検討し、被告人の防御上合理的に必要と認められる証拠については、これを適正に開示してきているところでございます。  御指摘の勧告につきましては、このように、弁護人等には公判の準備をするために必要な証拠の開示を受ける機会は十分に保障されていることから、さらに証拠開示を受ける機会を保障するための新たな措置をとる必要はないものと考えて規約人権委員会報告をしておりまして、それについての懸念が表明されたことも承知してございますが、今後、引き続きこの問題については検討を重ねていく必要があろうかと思います。
  81. 北村哲男

    北村(哲)委員 五年前から同じことを繰り返されている。今の大臣の御見解も、五年前も同じ、今回も同じ、法務省。  しかし、現実にはこういう事態が起こっておるという問題があります。ですから、繰り返しそれはおかしいじゃないかと現実に私は言いました。  この事件に照らしてみますと、目の前に、検察官が一年間かかってやっと整理した膨大な記録があるわけですよ。それを、今大臣は、弁護人は証拠にアクセスする権利は十分保障されているとここで言われました。国際社会でも言っているんです。おかしいじゃありませんか。全然ないんですよ、弁護人にはアクセスする権利が。裁判所は勧告することはできると言いました。それもあるかもしれません。しかし、現実にはしない。権利としてはないんです、勧告をしなければ。その点についてどう考えるかということで、人権委員会は、日本政府はおかしいではないかとたびたび言っているわけです。  特に、これだけではないんです。被疑者の国選弁護人制度がない問題とか、未決勾留期間の問題とか、その中で、未決勾留期間が長くて、そして代用監獄の中でやられるから自白が強要されるんだとか、そういうことについても直さなければいけないんだということを言われているわけです。特に、今の問題については、まさにこの狭山事件に関連して、アクセスする権利がないと一般論として言っておられるわけです。その点について、今のようお答えは私は非常に不満であります。  この点について、東京大学の平野教授という、刑事訴訟法の大家でありますけれども、今名誉教授です、この人が、ことしの一月のジュリスト、法律雑誌ですけれども、この千百四十八号の中で、我が国としては、ここ数年あるいは十数年間、刑事手続の改革には手をつけがたい状態であったので、この人権委員会の勧告をそのままにしてきたのもある程度やむを得ないかもしれない、しかし、やっと改革が動き始めた現在では、これらの点にも改革のための努力が及ぶことが期待されるんだ、国連の勧告をいつまでも放置するわけにはいかないではないかと言っておられるわけです。  その点について大臣はどのようにお考えでしょうか。全く今までと同じよう答えを繰り返されるおつもりですか。あるいは、法務大臣として、もう刑事訴訟法は変えろ、新しいものにしなくちゃいけないということを、積極的な姿勢をお示しになるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  82. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 今委員御指摘の、東京大学の平野龍一先生のこのジュリストの論文も読ませていただきました。  今先生の御指摘のようなことがこの中にるる書かれておるわけでございますが、我が国といたしまして、第四回の政府報告に対する規約人権委員会の最終見解につきましては、今後ともその内容をさらによく検討いたしまして、適切に対処していく必要がある、このようには考えております。
  83. 北村哲男

    北村(哲)委員 これは、適切な対処ではなくて、とにかく変えていかなくちゃならないという決意が私は大臣には必要だと思っています。  裁判所についても、私は、今裁判所は非常に硬直した姿勢があると思います。特にキャリア裁判官とかそういう人たちが、今の法律、それは法律に従わなくちゃいけないけれども、やはり、裁判所についてももっと真実追求、あるいはそういうむだなことをなくすという姿勢が必要だと思います。今の点について、平野教授のお話あるいは人権委員会の、今私が大臣に二回の質問をしましたけれども、それについて裁判所はどのようにお考えなのか、お聞きしたいと存じます。
  84. 白木勇

    白木最高裁判所長官代理者 国連の人権委員会が一九九八年十一月に出されました最終見解は、私どももよく承知をいたしております。  委員御指摘のように、証拠開示の問題につきましては、第二十六項に述べられているところでございます。私どもといたしましては、個別具体的な事件につきまして、裁判をいたしております裁判体に影響を及ぼすようなことは厳に控えるべきものと考えてはおりますが、国連の委員会が出されました見解は裁判官にお伝えすべきものと考えております。  そのような考えのもとに、一般的な形で裁判官方にこの見解を書面にして配付してお伝えしているところでございます。
  85. 北村哲男

    北村(哲)委員 裁判所お答えはいつもああいうかたくて言われますけれども、裁判所としても、一つの解釈の方向とか、あるいはどうするという、裁判所としても刑事裁判を改革する方向性を示さないとますます硬直するような気がするので、その点については、国連の報告書なんかについては、やはり十分に裁判所総体としても、また個々裁判官としても勉強が必要であろうと思います。  それで、改めて裁判所、法務省に聞くんですけれども、この勧告の中には、裁判官の国際人権B規約に関する教育の必要性もうたわれております。裁判官の研修会や人権教育あるいはセミナーなどの開催等もして、十分にそのあたりのことの教育あるいは実践等が必要だと思っていますけれども、まず、裁判所については、その人権教育とかそれから国連との関係とかそういうことについて、どのような教育、研修がなされているかについてお伺いしたいと存じます。
  86. 金築誠志

    金築最高裁判所長官代理者 裁判官に対する研修におきましては、これまでも、被疑者、被告人の身柄拘束に関連する問題、すなわち令状事務に関係する共同研究をやったり、少年事件の手続の運用をめぐる諸問題についての共同研究などをやったりしておりますが、こういった研究会におきまして、必要に応じてこの国際人権規約に関する問題を取り上げてきております。  さらに、昨年出されましたB規約人権委員会の最終見解の趣旨を踏まえまして、主要研修で行われております各種の裁判官の研究会、例えば刑事実務研究会でありますとか部総括研究会、裁判長の研究会ですが、それから、高裁判事の研究会、簡裁判事の研究会、こういった研究会におきまして、最終見解等について説明し、資料も配付するということをやっております。  今後とも、人権委員会の勧告も踏まえまして、このテーマについての研修等の実施について検討してまいりたいと思っております。
  87. 北村哲男

    北村(哲)委員 裁判所に伺いますけれども、そういう研修会あるいは勉強会なんかをしておられて、その中で、刑事訴訟法が今問題あるんだ、あるいはこのように改正しなくてはいけないんだというふうな裁判官の中での声。あるいは再審制度については、どうもこれはいかぬ、これではどうしようもできないと。例えばカナダで大改正をしたように、新しくしなければ事実の解明はできないんだ、そういう声は出てこないのでしょうか。
  88. 白木勇

    白木最高裁判所長官代理者 これまでも、委員お尋ねような協議会、全国的な規模で開いてまいりました。折しもことしは刑事訴訟法施行五十周年に当たりますので、そういったテーマにつきまして取り上げてみたいと考えているところでございます。
  89. 北村哲男

    北村(哲)委員 取り上げるだけじゃなくて、積極的な改革をやはり推進していただきたいと私どもは思います。  同じ質問ですけれども、法務省は、今どのような人権教育あるいは研修会などをやっておられますか。
  90. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 先生お尋ねの、国連の委員会による最終見解につきましては、これを全検察官に配付をしております。また、人権問題全般につきましても、例えば外国人及び子供の人権問題、あるいは女性の人権問題、あるいは同和問題等の各種人権の問題の課題等をテーマとしまして研修を実施しておりますほか、全般的な人権の問題等については、いろいろな研修の際にこれを取り入れていろいろ論議し、また研究しているということでございます。
  91. 北村哲男

    北村(哲)委員 もう時間がなくなりましたので終わりますけれども、ともかく、今私再三言っておりますように、司法改革、特に刑事訴訟法の改革等は非常に重要喫緊の問題だと思っております。  特に裁判官の、裁判所の硬直な姿勢に対しては、これは法曹一元という問題があります。今般の司法制度改革審議会の設置の際の中心課題もこの法曹一元でありましたので、特に戦後五十年にして、刑事訴訟法もそうなんですけれども、キャリア裁判官だけの育成が強調されて、難しい司法試験の後に研修所にすぐに入って、法技術論ばかりに集中してきたんだという反省もあると思います。  これはもう質問はしませんが、ぜひ私どももこれから司法改革について、その点についての改革を進めていきたいという決意を述べて、私の質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  92. 橘康太郎

    ○橘委員長代理 坂上富男君。
  93. 坂上富男

    坂上委員 時間がございませんので、結論だけの御答弁で結構でございます。  まず、保坂議員に関する盗聴事件問題についてでございますが、報道によりますと、テレビ朝日が告発をした、こういうふうに報道されております。しかも、これによりますと、株式会社としてのテレビ朝日が告発をなさった、こういうふうに聞いておるわけでございますが、もちろんもう今受理になったのだろうと思います。  それから、かつまた、今私たちが知り得るところは、いわゆる国会内にありますところの記者クラブに対する電話がどうも対象になったのでなかろうか、こういうようなことも言われておるわけでございます。  テレ朝が株式会社として告発をなさったということと、保坂さんが告訴をなさったということ。これはお互いに通話者の対応でございますが、テレ朝としては、全体の会社に対する被害があったと思われたのじゃなかろうかと思います。告訴と告発の違いは私も理解しているつもりでございますが、これによりまして、どのよう捜査の体系が変わるというのか、進展するというのか、この辺の見解はどんなでございますか。
  94. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 お尋ねの件につきましては、保坂先生からの告訴、それから、全国朝日放送株式会社、テレ朝というふうに俗称しておりますが、その会社からの告発ということを七月十九日に受理しております。  いずれにしても、事件の端緒ということでございまして、受理をして地検として捜査中ということでございますので、その経緯等にかかわらず、厳正、適正に対処するという方針で臨んでいるものと思います。
  95. 坂上富男

    坂上委員 ぜひこの真相は、願わくば、盗聴法問題がどういうふうな結論が出るのかわかりませんけれども、それまでに捜査をしてくれというのは少し無理な要請かなとも思っておりますけれども、ぜひひとつ検察としては、事が、捜査官によるところの事件なのか、あるいは謀略によるところの問題なのか、非常に大事な問題だと私は思っておりますので、迅速かつ適正な捜査を期待してやみません。  あわせまして、これに関連するのでございますが、先般来から少し問題になっておりました、あの野村氏の学歴詐称問題の告発に関することでございます。これは、私はいろいろ見てみますると、検察の方でどうも、証拠がついていないとすると誣告になるのじゃなかろうか、あるいは外国のところを調査しなければ、捜査しなければならぬものだから数カ月は最低かかるのじゃなかろうか、そうだとすると時効が完成するのじゃなかろうか、そうだとするならば誣告問題が起きるんじゃなかろうかというようなことを言われて、告発者がちゅうちょされましてお持ち帰りになったのじゃなかろうか。  普通は、お預かりをしておきます、そして、要件が整っているかどうかによって受理を決めますというのが普通でございますが、いわば普通の国民の方にすれば、検察庁というのは、俗に言うと怖いところというようなことでございますから、端々が完全にその言葉を理解できないまま、どうも下手なことするとこちらがというような心配もあってお持ち帰りになったのじゃなかろうか。  私は、検察庁の対応は、非常に告訴人、告発人に対しまして、適切なアドバイスあるいは対応がなかったんじゃなかろうかと率直に見ておるわけでございます。もちろん、抗議の電話が一万件近く行ったなどというお話にもなっておりますけれども、国民のための検察権行使にかかわることでございますから、私は、やはり一般国民に対しては親切、適正な指導があってしかるべきだろうと思うのでございます。これは誤解であったというふうに言えるのか、少し強権的であった、こういうことなのかわかりませんけれども、率直な気持ちをお答えいただいておかなければいかぬと思っておりますが、いかがですか。
  96. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 お尋ねの件につきましては、さまざまな報道がなされているところでございます。  対応しました検察庁の検察官の報告等も受けているわけでございますが、先生のお尋ねように、場合によりますと、あるいは行き違いというものが多少あったのかなということも可能性として否定するわけではございませんが、告発告訴等についての内容につきまして、いらっしゃった段階でいろいろなことを協議するといいますか、話し合いをするということも、これは普通一般に行われております。  今回のケースが、その中で特異に、あるいは非常に高圧的に対応したのではないかというような御懸念で御質問されたんだと思いますが、我々が承知している範囲内では、そういうことはなかったように思います。  ただ、確かに先生御指摘のように、時効がかなり間近に来ておりますので、そういった点の説明は当然したということでございます。また、それに対して、告発された側でどのように受け取られたかということの詳細は承知しておりませんが、そこのところであるいは考えていることの行き違いというものがあったのだとすれば大変残念なことであったと思いますが、対応について今後とも、また先生御指摘のように、確かに刑事事件について全く事情等を御存じない方も告訴告発人にはおられますので、その点には遺漏のないように検察庁も努めていきたいと考えておる次第でございます。
  97. 坂上富男

    坂上委員 保坂議員に対する盗聴問題にもかかわることでもございますので、特に告訴告発問題については、確かに告訴癖のある方、告発癖のある方があるのだそうでございますが、もちろんそれらの選別は、また罪とならないことが告発になったというようなことになりますと検察としては迷惑な話でございますから、適正な精査が行われるのだろうと思いますけれども、今指摘をしたような問題は、私たちにとってはやはり緊急な大事な問題でもございます。特に、盗聴問題、あわせまして浅香氏の告発問題についても、これは検察の検察権行使の適正さという意味において重要だと思いますので、私はこの際、取り上げることもいかがかと思いましたけれども、御指摘を申し上げておきたいと思っておるわけであります。  そこで、これに関連をいたしまして、法務省と郵政省が覚書を締結されておりますことを文書をいただきました。それによりますと、実は大変私は気になる部分があります。  この第九項でございます。読み上げますが、「令状による通信の傍受の具体的な実施方法、通信事業者等の協力義務の内容等については、法律の施行前に、捜査機関及び通信事業者等との間で、標準的な実施手順を定めることを含めた協議がなされることが望ましいことから、法務省及び郵政省は、こうした協議が開催されるよう努める。」こうあるわけであります。  そこで私は、これは一体いかがなんだと言いました。そして、この中に「法律の施行前」とある。「法律の施行前」というのは、法律が成立して施行するまでの間を指しますと法務省あるいは郵政省がおっしゃりたいところでございますが、私の解釈からいいますと、「法律の施行前」というのは、いわゆるこの条文の冒頭は御存じのとおり「法案」と書いてあるわけであります。法案をこれから閣議に提出するに当たってこういう協議でございます。したがって、この法律の成立ということはここにはまだ書いていないわけで、ただ法律の実施前、こうあるわけであります。  だから私は、法律の実施前というのは、法案の時代も含めて、そして法律が成立をする、そして法律になった、その実施前、その期間を指すのだろうと思うのです。しかし、それは間違いですよ、こうおっしゃいますが、これはやはり解釈の違いだと私は思います。  したがいまして、この条文を読んで、私は保坂さんに来たところの投書を読み返してみました。この投書の内容は、文書はこのとおりだろうと思うのでありますが、こう書いてあるわけであります。「通信傍受法の施行に当たって、」これも今言ったところとほぼ似ているわけでございますが、「警察では、警察庁の指示に基づいて、試験的に通信回線の傍受の準備をしています。作業を開始しているところは、本職のところだけではありません。」こうあるのですね。これは投書の文書であることは間違いありません。  この文書とこの覚書の第九項を見てみますると、まさにこのとおりのことが、この投書の中によって実施されているのではなかろうかということを私は覚書を読んで直観をいたしたわけでございます。どうも、この投書というものは非常に信頼性のある投書なのではなかろうか、こんなふうに思っておりますが、法務省いかがですか。
  98. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 使われております文言は、同じものがその中に含まれていることは御指摘のとおりかもしれませんが、それをもって信用性云々というところの判断はいかがなものかな、個人的にはそう思います。  全体的にその投書が信頼できるものかどうかというのは、その中に含まれているもの、あるいは傍受したという会話の内容等、現在東京地検でそのことについては捜査中でございますので具体的内容のコメントは差し控えますが、いずれにしても、そうしたことも含めまして捜査対象になるものと思っております。
  99. 坂上富男

    坂上委員 私は、投書の信憑性、いわゆるこれは、私らは捜査機関です、しかし許しがたいからという趣旨、書いていないですが、投書だったのだろうと思うのです。  どうもこの投書はおかしいではないかというようなお話もないわけではありませんが、調べれば調べるほど、私はやはりこの投書に盛られている事実の真実性を指摘したいな、こう思って見ておったわけでございまして、たまたま覚書をいただきまして見てみますると、この点もほぼ一致しつつあるのではなかろうかな、そして、この協定に基づいて実施されているのかな、こんなふうに実は思ったわけでございますが、目下捜査中だそうでございますから、一日も早い判明を期待いたしたいと思います。  さて、そこで郵政省、この傍受の対象者というのは通信事業者等なんですね。通信事業者に対しては郵政省は指導監督はするけれども、法務省と幾ら契約をしても、覚書をしても、通信事業者に対して強制力はないと思うのです。これは一体、郵政省は、自分らは何らの対応をしないのに、これを一般の通信業者に指導監督するなんというのは私はちょっとできないのではなかろうかと思っていますが、郵政省はどういうつもりでこういう覚書を締結されたのですか。
  100. 天野定功

    ○天野政府委員 お答え申し上げます。  令状による通信の傍受の具体的な実施方法あるいは通信事業者等の協力義務の内容につきましては、郵政省の立場としましては、電気通信の利用者の通信の秘密を不当に制約しないこと、また電気通信役務の円滑な提供を阻害しないことを確保するために、法律の施行前に、あらかじめ捜査機関及び通信事業者等の間で標準的な実施手順を定めるなどのための協議がなされることが望ましい、こう考えて、御指摘の覚書九項につきまして、郵政省及び法務省におきまして、こうした協議が開催されるよう努める旨の確認をしたものでございます。
  101. 坂上富男

    坂上委員 だから局長さん、こういうことを定めたら、通信業者に、あなた、通達するのでしょう。これはちょっと余計なことなのではないですか。どうですか。
  102. 天野定功

    ○天野政府委員 今の段階で、私どもの方は、何かいわゆる法律に基づく通達といったものを考えているわけではありません。私どもは、この覚書に基づきまして、捜査機関と通信事業者との協議の場の設定など、両当事者間での円滑な協議が持たれるよう仲立ちをすることは考えておりますが、いわゆる通達と言われるものを考えているわけではございません。
  103. 坂上富男

    坂上委員 具体的に通達は考えていないのはいいのでございますが、いわゆる郵政省の監督の立場から、強制されるのではなかろうか。まかり間違えますと、郵政省の言うことを聞かなければ取り消しの対象になったりするといかぬ、こういうふうに思われるものですから、郵政省が第九項のような協定を締結するということは、私はちょっと行き過ぎなのではないかと思いますよ。  例えばNTTとか、あるいはドコモとか、あるいはほかのいわゆる通信事業者の代表らが、あるいは協会がこういうことを結ばれるのはまだわかるのでございますが、郵政省が指導監督する立場で、これを協議することが望ましいとか「協議が開催されるよう努める。」  ここへ出てくるのは郵政省だけじゃないでしょう、通信業者が出てくるのでしょう、開催日。だれが出てきた、だれが出てこないなんということになったら、影響を受けるじゃないですか。大変強制力が及ぶと思うのでございますが、こういう点についてはどんなふうに考えたのですか。一言でいいです。
  104. 天野定功

    ○天野政府委員 協議について、強制するとかそういったことはまずあり得ないと考えております。  これは、これまでのこの委員会での審議でも法務省御当局から答弁されておりますように、傍受に当たりましては、やはり通信事業者の協力が相当必要だろうと考えております。その協力を円滑にするために、前もって、あらかじめ実施手順などを話し合っておくことが必要だろうということで、その場の仲立ちなどはやはり関係の省庁が行うのが適当だろうということでこの覚書を結んだわけでございまして、協議の内容を強制するとかそういった趣旨のものではございません。
  105. 坂上富男

    坂上委員 もう一点だけ。  指導に従わなかったといって、取り消しの対象、何らかの行政罰の対象になるようなことのないように、どうですか、それだけでも確約してください。
  106. 天野定功

    ○天野政府委員 この協議に何か私どもが強制的なことを発揮するということは考えておりませんし、万々一そのようなことに従わないことにつきまして、処罰をするというようなことも考えてございません。
  107. 坂上富男

    坂上委員 もちろんこれは成立を前提としたのでございますが、できるならば私らは廃案をねらっておりますものですから、それに向けて努力はいたしますが、ぜひひとつ、そういうような強制、私は、郵政省、これはちょっと行き過ぎなんじゃなかろうかなと実は読んでいたわけでございます。  さて、そこで刑事局長、今まで検証令状によるところの電話傍受が実施されたことが五件あるそうでございます。今度この法律が成立をいたしますと、検証による令状は、全くそういうことはできないのだ、いわゆる通信傍受の法律にのっとる以外には通信傍受はできないと、これは本当に解釈上も実務上も断言できるのでございましょうか。
  108. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 この法案が成立いたしますと、通信の傍受はこの法律によるということになりますので、検証という手段はとれないということになります。
  109. 坂上富男

    坂上委員 刑事訴訟法改正の二百二十二条の二に、通信傍受の強制処分については別の法律に定めると。「別に法律に定める」別の法律というのはいわゆる通信傍受である、こういう御答弁ようでございます。  しかし、これだけの条文で、刑事訴訟法の検証令状は否定していないのじゃないでしょうか、この条文は。私は余り解釈は得意じゃありませんけれども、何遍読み返してみても、刑事訴訟法の令状でもよるし、あるいは通信傍受の法律にもよるし、場合によっては両方いけるという解釈は可能なんじゃないですか。絶対心配ないのでございましょうか。特に明記していただきませんと、私らも大変な影響があるのでございますが、その辺もう一度。
  110. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 今先生御指摘のとおりの条文になっておりまして、検証ではなくて、この法律によるということになります。
  111. 坂上富男

    坂上委員 法律というのは刑事訴訟法を含むのですか。
  112. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 大変舌足らずで申しわけございません。  この法律と申し上げましたのは、通信傍受を定めている、今御審議いただいている法案が成立しましたときの法律ということでございます。
  113. 坂上富男

    坂上委員 そうしますと、今までの検証令状によるところの通信傍受はできない、こう聞いていいのですか。
  114. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 それはできないということでございます。
  115. 坂上富男

    坂上委員 時間がありませんので進みます。  覚書第三項第一、ここの傍受場所はどこになりますか。
  116. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 覚書第三項は「交換機能を有する人工衛星局を介して行われる、端末相互間の無線通信」ということでございます。これは、現在のところ、技術的に非常に難しい問題がございまして、現在の技術のレベルにおきましては、傍受は予定していないということでございます。
  117. 坂上富男

    坂上委員 傍受できないことを傍受するための覚書の中に書いておくのはどういうわけですか。
  118. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 今御審議いただいております通信傍受に関する法律でございますが、その中で、「「通信」とは、」という定義規定がございます。その定義には、この「交換機能を有する人工衛星局を介して行われる、端末相互間の無線通信」は概念としては当たります。  私が申し上げたのは、現在の技術ではこれを傍受することが非常に難しいということでございます。ただ、将来、技術的ないろいろな開発がされ、あるいは人工衛星局を介して行われる通信についての傍受が可能になるような技術あるいはシステムの変更等がございました場合には、それも対象にするということになりますので、それをあえて概念から除くということは措置しておりません。
  119. 坂上富男

    坂上委員 では、携帯電話の傍受場所はどこですか。
  120. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 NTTドコモの例をとりますと、携帯電話から発信された無線は、まず、無線局というところを通りまして、交換局、交換機のところへ来ます。したがって、無線局と、交換機を設置してある場所、それから、全体を統括しております、全国に何カ所かあるようでございますが、そういうステーションというところの三カ所を経由する、通常そういうことになるわけでございます。  傍受の場所は、その交換機のある場所、どういう名称で具体的に呼んでいるかわかりませんが、その場所と、さらに、それらを統括しているステーション、NTTドコモのステーションというところで傍受をするということになります。
  121. 坂上富男

    坂上委員 参議院と衆議院の答弁で、少し言葉としてはっきりしないのがあるのです。  携帯電話の傍受場所は、無線基地局か、ネットワークセンターか、交換局か、またはこの三種か、この辺明確にしてください。
  122. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 先生御指摘のように、今までの答弁の中で若干不明確なところがございましたので、ここで正確に申し上げておきたいと思います。  NTTドコモでいいますと、先ほど申し上げた三カ所を経由することになりますが、傍受するのは、無線局では傍受できません。交換機のある場所、これは無人も有人もあるようでございますが、その場所と、ステーション的な基地局といいますか、そういう大がかりな施設、この二カ所でございます。
  123. 坂上富男

    坂上委員 ネットワークセンター、これは保坂さんが質問した言葉と思うのですが、これはどうなんですか。
  124. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 ネットワークセンターというのは、具体的には交換局に対する監視、制御を行うオペレーションサービスセンターというようなことでございますれば、そのネットワークセンターはこの傍受の場所としては想定しております。
  125. 坂上富男

    坂上委員 そういたしますと、無線基地局での傍受はソフトの開発が必要だ、開発がなければ今のところ傍受できない、こういうことでございますね。
  126. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 御指摘のとおりでございます。
  127. 坂上富男

    坂上委員 そういうことになってまいりますと、捜査当局が、単に今傍受できないことまでここに書かれている、可能性はあると。しかし、この技術の開発というのはやはり通信事業者なんですね。検察が幾ら努力してもこれはできっこないわけです、お互いに。そうだとしますと、やはり、ソフトの開発について通信事業者は、結果的に、捜査当局からこの開発の努力を要請されたら拒み切れないんじゃなかろうか、こう思っておりますが、まず郵政省、これはどんな感じを持っていますか。  これは、こうやって皆さん書かれているわけです。確かに、通信だから、傍受はできないけれども書いておいた、いずれ将来開発になるだろう、こういう前提に立っているわけでございます。そしてまた、無線基地局も今のところ傍受できない、しかしながら、これについてもソフト開発の可能性もあるんじゃなかろうか。こんなようなことからいいますと、どうもこれについて協力をどうしても通信事業者が迫られるんじゃなかろうか、こう思っていますが、郵政省、どういうお考えですか。
  128. 天野定功

    ○天野政府委員 通信事業者等が、個別の令状による傍受の実施への協力を超えて、傍受を実施するためのシステムやネットワークを構築したり、ソフトの開発をしたりしますことは、この法案の協力義務の範囲外というふうに考えております。  このような法案第十一条の協力義務を超える協力が必要となった場合には、捜査機関等が通信事業者等に対しまして任意の協力を求めることはあり得ると考えますが、通信事業者への過度の負担を伴い、電気通信役務の円滑な提供が阻害されるおそれがあるような場合には、必ずしも協力の要請に応じることにはならないと考えております。
  129. 坂上富男

    坂上委員 これはなかなか容易な問題じゃないんですが、郵政省、きちっとした対応をしてもらわぬといかぬと思っております。別に協力したから悪いということではないのでございますが、郵政省が言う以上に捜査当局から協力を強く求められることもあろうと思います。本当に郵政省のいわゆる通信の秘密という立場に立って、きちっとしてもらわぬといかぬと私は思っています。  最後でございますが、今法務省の御答弁は、もし法律が成立をすれば検証令状による捜査はもうできなくなる、こうおっしゃっております。  そこで、最高裁にお聞きをしたいのでございますが、最高裁は今まで検証令状を発付される場合にはいろいろと条件をつけられておるわけであります。私は、検証令状による電話傍受と通信傍受法案によるところの通信傍受をいろいろ比較対照してみると、約十三項目ぐらいの違いがあるんですね。しかも、実体的な違いというのは切断権があるかないか、そういうような点なのでございますが、裁判所は令状の中にこういうことは付加することができるのでございましょうか。  例えば、該当するか否かを判断するために必要な範囲でその通信を傍受することができるというのが法案の中にあるのでございますが、こういうようなことは、してもいいかして悪いかということは裁判所の令状の条件につくのでございましょうか。  それから、重大な犯罪を実行したことを内容とするものが傍受中たまたま出てきたときはこれは傍受してもいいと、今までのようなこと、切断権との関係において条件をつけられるかどうか。  それから、傍受記録は今までは裁判所が保管をしないでいたんですが、今度は、令状の記載によって、傍受記録は裁判所は預かることができるというふうに書かれるのでございましょうか。  それから、事後通知です。いわゆる傍受された諸君に通知をしなければならぬという部分があるのでございますが、これは通知しなさいということは出すことができるんでしょうか。  それから、記録の閲覧それから聴取というようなことも、見せることは令状の中で記載することによって可能なんじゃなかろうか。それから、不服の申し立ても刑事訴訟法によってできるんだ、こう思うのでございます。  裁判所がもしこのことができるとするならば、今事改めてこの法律は特段必要ではないんじゃなかろうか、こんな観点からの質問なんですが、裁判所の令状発付の条件の中にこういうようなことは入れることは可能なんじゃないですか、いかがですか。
  130. 白木勇

    白木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  刑事訴訟法自体は、令状に条件を付すことができるかどうかについては全く規定するところがございません。しかし、実務におきましては条件を付して令状を発する場合がございます。強制採尿をする場合の捜索・差し押さえ許可状に、医師をして医学的に相当と認められる方法で行わせなければならないといったような条件を付すなどがその例でございます。  検証令状によって通信の傍受を行う場合、令状の請求を受けた裁判官といたしましては、これまで事柄の重要性にかんがみまして、期間を限ったり、立会人を特定したり、対象外の通話については立会人がスイッチを切断するなどの条件を付してきたものというふうに理解しております。ただ、これは、あくまで事件を担当された裁判官個々の裁判としての判断でございます。  このように、事は具体的な事件についての裁判としての判断でございますので、その条件の当否でございますとか、それ以上にどういった条件を付すことができるのか、またそれが適当かといったようなことにつきましては、私ども事務当局として言及することは差し控えさせていただきたいと存じます。
  131. 坂上富男

    坂上委員 裁判官の裁判感覚、人権感覚によるというふうに聞いていいと思うのであります。  そこで法務省、今御答弁によりますと、検証令状によるところの捜査は今までもやったことがある、そして、傍受法案によるところのものは、今度は、法案が成立をすると、もうこれしかできないんだ、こういう御答弁でございます。  これは比較対照してみると、犯罪捜査対象というのは四種類に限定をされた、こう言われておるわけでございます。それはそれなりに私はいいことだと思っておるわけでございますが、今までの検証令状によるところの犯罪捜査は、全部の犯罪についてこれができたわけであります。では、一番端的な違いは何であるかというと、立会人の切断権なんですね。それから、いわゆる予備盗聴と言っては悪いかもしれませんが、言葉はやすく言いますが、予備盗聴、予備傍受、それから別件傍受、この三つができるということが本件のポイントであって、そうでなければ、今まで十分できた、しかもほかの犯罪にも捜査立場としてはできる立場なんですね。それをあえてこの法律を成立させなければならぬということが、私は全くわかりません。あるとするならば、切断権が裁判官によって強制されちゃう、予備盗聴ができない、あるいは別件盗聴ができない、こういうことがやはりこの法案のポイントなんじゃないですか。  そうだとすると、これは明らかにプライバシーに対する侵害であり、憲法の通信の秘密に対する重大な侵害になるんじゃなかろうか、私はこう思っておりますが、法務当局の御見解、いかがですか。
  132. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 今回の通信傍受法案でございますが、憲法に保障する通信の秘密ということにつきましては、それを最大限に尊重しつつ、他方で、治安の維持、あるいはそれによってもたらされる基本的人権等の実質的な保障ということとどう調和をとるかということでこの法案ができ上がっているわけでございます。  その中で、過去の検証の例と切断権の問題、さまざまな問題があったわけでございますが、他方で、対象犯罪が明確になっていないとか、あるいは傍受された人の権利保障が具体的にどういう手続で行われているのかとか、さまざま問題点もまた指摘されておったわけでございます。  そうした点も踏まえまして、調和のとれた通信傍受を行っていくということで、総合的な観点から今回の法案は立案されているというふうに御理解をいただきたいと思います。
  133. 坂上富男

    坂上委員 了承できませんけれども、時間も参りましたので、御指摘をいたしまして、さらにまたひとつ十分な御配慮もお願いをしながら、私は質問を終わります。ありがとうございました。
  134. 橘康太郎

    ○橘委員長代理 木島日出夫君。
  135. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。前回の七月九日に続きまして、商法の一部改正についてお聞きをいたします。  最初に法務省から、株式交換・移転における子会社の、これに反対した少数株主の権利の問題についてお聞きをしたいと思います。  本改正法によりますと、株式交換・移転は商法の三百四十三条の特別決議で可能となります。特別決議は、発行済み株式の総数の過半数の出席で、これが定足数で、議決権の三分の二の賛成で成立するわけでありますが、子会社の反対少数株主にとっては、強制的に子会社の株主の地位から追われる、そして、親会社たる持ち株会社のごく少数の株主の道を選ぶのか、それとも株式買い取り請求権を行使して株主の地位から退却することを強制される、余儀なくされることになるわけであります。  いずれにしろ、事業会社たる子会社の株主としての地位が剥奪されることになるわけでありまして、まさに株主にとっては死活にかかわる事態でありますが、なぜこのような重大な株主権の変更に関する決議を商法三百四十三条の特別決議で可能とするような法制度を今回提起してきたのか、まず法務省からお聞きしたいと思います。
  136. 細川清

    ○細川政府委員 株式交換、株式移転につきまして特別決議によることとしたのは、いわゆる合併の場合と同様の考慮によるものでございます。  なぜこのような制度が必要であるかということは、独占禁止法の改正の際の国会の両院における附帯決議もございますし、また政府部内における規制緩和計画にもございます。社会実態から見て、企業の再編のためにこれが必要であるというふうに考えまして、法制審議会の審議を経ましてこのような改正案を作成したわけでございます。
  137. 木島日出夫

    ○木島委員 合併の場合に準じたという御答弁でありますが、実は、一昨年に独禁法が改正されまして持ち株会社が原則解禁になった。その法案が審議された商工委員会において、これは一九九七年五月十四日の商工委員会でありますが、その問題について法務省は、合併とこのような株式交換・移転とは基本的に違うということを強調していたはずであります。その商工委員会の質疑で西川太一郎委員から、せっかく独禁法が改正されて持ち株会社が解禁となるんであれば、それが設立を容易ならしむるため、株式交換制度をつくったらどうか、そして、合併と同じなんだからそのような制度をつくったらどうか、それに不服の株主には株式買い取り請求権を付与すればいいじゃないか、そういう質問に対して、法務省の柳田幸三法務大臣官房審議官はこう答えているわけであります。   ただいま御指摘ございました株式の交換制度は、当事会社の株主総会の決議等によりまして、ある会社に出資をして株主となった者を強制的に別の会社の株主とするというものでございまして、株主の地位に重大な変容を生じさせるものであると同時に、株主権の内容につきまして重大な変更を生じさせるというものでございます。先ほど合併制度のアナロジーで御指摘がございましたけれども、合併制度の場合には、会社の法人格というものは新設会社あるいは存続会社に同一性を持って存続をしていくわけでございますが、この場合には全く別の会社の株主になってしまうということでございまして、全く新しい制度ということになるわけでございます。 と言って、非常に慎重な立場から答弁を一昨年していたわけですよ。  ところが、今法案に対して、先日の質疑におきましても法務省は、合併と同じなんだということで、株主総会の決議も合併に準じて特別決議でいいんだという御答弁なんですが、そうじゃないことを言っていたじゃないですか。どうして今回そういう立場に立ってしまったんですか。これだけの株主権の得喪に、権利の得喪に関する問題ですから、もっと厳格な決議が必要だったんじゃないか、そういう問題提起を私はしているわけですが、どうなんですか。
  138. 細川清

    ○細川政府委員 確かに、御指摘のとおりの国会答弁を当時の政府委員がしておりますことは私どもも承知しております。  この御指摘の商工委員会における政府委員答弁の趣旨は、合併においては当事者の一方または双方が消滅するのに対し、株式交換、株式移転においては会社が存続するという違いがあり、具体的手続を検討するに際してはこの点についても配慮する必要がある旨を申し上げたものでございます。  しかしながら、株主の保護という点だけについて限って見ますと、株主が従前の会社の株主の地位を失い別の会社の株主になるという点においては、株式交換、株式移転も合併も同様でございます。そのいずれも株主の地位に重大な変更を生じさせるものであるということから、合併の場合と同様の手続保障のもとで株式交換、株式移転を行うことを認めたものでございまして、私がさきのこの委員会で御答弁申し上げたのも、そのような趣旨を申し上げたわけでございます。
  139. 木島日出夫

    ○木島委員 子会社の反対少数株主にとって、同じじゃないかというのは、私はとんでもないと思うんですよ。子会社の株主権を行使するためにその株主は子会社の株主になっているわけですよ。合併の場合には、柳田審議官が答弁しているように、同一の法人格の株主の地位を引き続き取得するんですよ。ところが、この株式交換・移転制度は、自分が子会社の株主権の地位を行使するために株主になったのに、その地位が剥奪されて、そして、望まないのに親会社、持ち株会社のごく少数の株主にさせられるということでしょう。その子会社の少数株主にとっては、権利利益について全く異なる条件にさらされるということになるんじゃないんですか。  ですから、法務省が今回の法改正をするに当たりまして各界からの意見を聴取いたしましたが、大学関係者からは、こんな特別決議じゃだめだ、もっと厳格な株主総会決議が必要だという意見が噴き出したんじゃないんですか。名古屋大学、東北大学、九州大学、京都学園大学、一橋大学、横浜商大、武蔵大学、法政大学、これらからは意見が出まして、一般的な特別決議よりも加重な要件、例えば商法三百四十八条による決議、これは総株主の過半数の賛成が必要なんだ、三分の二の発行済み株式総数の賛同が必要なんだ、非常に加重した要件を規定した商法三百四十八条による決議が必要じゃないか、そういう意見もこれらの大学からは出ていたんじゃないんでしょうか。私は、これらの意見の方がまともだと思うんです。  今回の法改正は、余りにも大企業や財界の利益に偏重して、子会社の少数株主の権利の根幹を踏みつぶすことになるんじゃないんでしょうか。御都合主義と言われてもしようがないんじゃないんでしょうか。どうしてそんな道を選択したんですか。
  140. 細川清

    ○細川政府委員 御指摘のとおり、この株式交換、株式移転の制度の創設につきましては各界に意見を照会しております。その中には、ただいま木島先生が御指摘のとおりの学界からの意見もあったことも事実でございますが、他方、この総会の決議要件について御意見を述べている団体のうち、大学を除く団体、すなわち日弁連、経済団体、金融機関その他の団体及び通産省からも意見をいただきましたが、これらはいずれも特別決議で足りるという意見でございました。  それで、もう少し私ども説明をつけ加えさせていただきますと、株式移転と同じような効果をもたらす手続という場合、さまざま考えられるわけですが、例えばA社がB社を吸収合併した後、そのB社の従来の事業を現物出資で分社化するということにしますと、これは全く同じ効果が生じます。しかし、今の一連の手続は特別決議でできるわけでございます。そういうこともございますし、吸収合併の場合は、例えば小さい会社が大会社に吸収される場合は、小会社の株主というものは大会社の株主になるわけでございまして、法律的な価値評価の問題としては合併の場合と同じように考えてよいのではないかというのが最終的には法制審議会の結論でございますし、私どももそれでよいと考えた次第でございます。
  141. 木島日出夫

    ○木島委員 吸収合併にしろ対等合併にしろ、いずれにしろ合併というのは少数株主の持っていた法人格が引き続き承継されるわけですよ。なくなってしまうわけじゃないんですね。ところが、今回の株式交換・移転というのは、株主にとって自分の法人がなくなっちゃうんでしょう。それで別法人の株主にさせられちゃうわけでしょう。質的に違うんですね。  商法には、こういう株主総会の加重要件を必要とする場合が規定されております。例えば株式譲渡について取締役会の承諾を要件とする変更、要するに公開会社の株式から未公開、閉鎖会社ですかの株式にする変更ですね。株式の譲渡につき取締役会の承諾を要件とする変更の場合は、単なる特別決議じゃだめなんですよ。それより厳しい加重要件がつけられているんです。これが商法の原則です。それはなぜかというと、反対する少数株主にとって、その地位の変更は非常に重大だからであります。  そうしますと、今の日本の商法体系で、譲渡についての制限、自由に譲渡ができる仕組みから取締役会の承諾を必要とする株式譲渡についての制限、これについても商法は非常に加重な総会要件を付しているんですよ。ところが、今回の株式の交換・移転制度というのは、単なる株の譲渡制限なんというものじゃないでしょう。自分の支配、関与する法人が変わってしまうんですから、その会社の株主たる地位が失わせられてしまうんですから、私は、この商法の基本的な立場からいったって、その議決要件というのは重くなりこそすれ軽くていいなんという理屈はどうしても出てこないと思うんですよ。どうですか。     〔橘委員長代理退席、山本(有)委員長代理着席〕
  142. 細川清

    ○細川政府委員 株式を取得する多くの方々は、これは投資としてなされるものですから、その投下資本を回収するということは非常に大切なことでございます。したがいまして、株式の自由譲渡性を制限する場合には、これはいわゆる特別の特別決議というものが要求されているのは先生御指摘のとおりでございます。  まず、株式交換、株式移転の場合におきましても、この譲渡性を制限するような親会社に株式交換をされる場合には、まさにただいま申し上げましたような特別の特別決議が必要だという要件に今なっています。この改正案ではそのようになっているわけでございます。そういう譲渡制限がない会社との間で株式交換・移転します場合には先ほどの特別決議でよいという判断に至ったわけでございまして、株主は、そういう場合でも、反対株主の買い取り請求権を行使するか、あるいは交換なり移転があった後にその新たに取得した株を処分するということで投下資本を回収することができるわけでございます。
  143. 木島日出夫

    ○木島委員 ある資産家が株を持つのは、決して投資するためだけじゃないですよ。その会社を所有しまたは支配するという目的を持って株主になるわけですよ。売り抜ければいいというわけじゃないですよ。日本の商法は、株式を売り抜ける場合、自由に売り抜けたいというのは公開会社の基本ですね、それを制限しようとするときに、非常に重い、特別決議より重い要件を課しているんですね。ところが、今回の株式交換というのは売り抜けるなんというものじゃないでしょう。地位が剥奪されてしまうんでしょう。そうしたらもっと重い要件をかぶせても当然じゃないかというふうに私は思うんです。とても説得的な答弁じゃないと思うんですね。  この商法改正が成立いたしますと、子会社の少数株主の権利はどうなるか、地位はどうなるかというと、親会社、持ち株会社のほんのごく少数の株主にさせられちゃうわけですよ。そうすると、そのごく少数の株主の権利がどのぐらい子会社に及ぶかというと、この法改正によっては子会社の会計帳簿の閲覧権が確かに与えられることになります。裁判所の許可を得て与えられます。しかし、要件は百分の三の株主なんですね。百分の三というのは大変なことで、とてもじゃないけれども子会社の反対少数株主は、親会社、持ち株会社の百分の三なんという地位にはつけませんから、基本的にはこの会計帳簿書類閲覧謄写権というのは取得できない、行使できないでしょう。本当に何の権限もないような微々たる持ち株会社の少数株主にさせられるわけですよ。  そうすると、私は、憲法二十九条の財産権の保障の規定にだって抵触せざるを得ないんじゃないかと思うんです、こんな規定の仕方は。どうなんですか、憲法二十九条をどう考えてこの法案をつくったんですか。
  144. 細川清

    ○細川政府委員 現行商法上、株主がその会社の会計帳簿の閲覧を求める場合には、発行済み総数の百分の三以上の株式を有することが要件となっております。これは、会計帳簿等は具体的な取引行為等を直接明らかにするものであるため、会社の取引上の秘密にかかわる事項なども含まれることから、その開示には慎重を期する必要があるという考慮でございます。改正法案で新設する親会社の株主に対する会計帳簿閲覧権についても、やはり現行法と同様百分の三の少数株主権とするのが制度の均衡上妥当であるという判断でございます。  なお、非常に小さい会社が大きな会社と株式交換をした場合に、従来小さい会社の発行済み株式総数の百分の三以上の株式を持っていたけれども、株式交換後は完全親会社の発行済み株式の百分の三に満たないという先生御指摘のような事態が生じることは当然あり得ます。しかし、その場合でも、では株式交換で新たに親会社の株主になった人についてだけ会計帳簿の閲覧権に関する持ち株要件を緩和するということは、他方、商法の大原則であります株主平等の原則にも抵触することになると思うんです。そういうことから、これは現行法の持ち株要件に合わせたものでございます。
  145. 木島日出夫

    ○木島委員 ですから、そういう株主平等の原則に反するから取り入れることはできない、もともとそんな状況にしてしまうのは、こんな無理な株式交換制度を、一般的な特別決議で結構だ、強制できるというような組み立てをするからじゃないですか。ですから、子会社の少数株主、それは場合によっては三分の一弱ぐらいの大きな支配的地位を持っている子会社の少数株主であるかもしれませんよ。当然、帳簿閲覧権なんかあるぐらいの力を持った少数株主ですよ。それでも特別決議によってその地位が抹殺されるというわけですから、私は、今の答弁ではとても憲法二十九条の財産権の保障の根本原則をクリアできていないということを指摘せざるを得ません。しかし、時間の関係がありますから、このぐらいで移りたいと思うんです。  この仕組みによって権利が侵害されるのは、子会社の反対少数株主だけではありません。私は、こんな制度を無理やりつくり出す一番のねらいが大企業や財界のリストラ合理化のためだと見ておりますので、やはり、子会社の労働者の権利がどうなるのかということ、それから子会社と取引している下請企業の地位がどうなるか、これが非常に重大だと思いますので、労働省にお聞きしたいと思うのです。  株式交換・移転制度は、子会社の株式を一〇〇%所有する完全親会社たる持ち株会社創設を容易にするための法改正が主たる眼目だと思うのですね。  一昨年の独禁法改正で、持ち株会社が解禁されました。そのため非常に奔走していた経団連の競争政策委員長、旭化成工業社長の弓倉礼一氏が、九六年二月七日の朝日新聞のインタビューに答えてこう言っています。質問は、「不振な事業を売却したり、賃金や労働条件を切り下げたりなどのリストラ(事業の再構築)に使われる、との見方が有力です。」そういう質問に対して、答えです。「日本企業は潜在的な失業者を抱えているため、終身雇用制度を改めないともたなくなりつつある。純粋持ち株会社が認められれば、子会社ごとに賃金や労働条件の格差をつけやすくなる。子会社の売却もやりやすくなるので、思い切ったリストラができるのは事実だ」。こういう理念でこの制度を持ち込んできた。持ち株会社解禁をやらせた。そして、商法上の制約があるので持ち株会社がなかなかつくれない。それで、つくりやすくするため、今回の商法改正を持ち込んできたわけでありますが、そうすると、やはり子会社の労働者の地位が非常に心配になるわけであります。  労働省にお聞きしたいと思うのです。  子会社、これは、持ち株会社から見ますと事業会社ですよね。この労働者や労働組合は、持ち株会社の管理者である取締役会や経営陣に対して団体交渉をする権利があるんでしょうか、労働協約を締結できる権利があるんでしょうか、お答えいただきたい。そして、こういう根本問題に対して、労働省としてどういう考えを持っているのかもあわせて答弁願いたいと思います。
  146. 澤田陽太郎

    ○澤田政府委員 お答え申し上げます。  御質問の点は、労働組合法上の使用者の判断基準をどうするかということにかかわると思いますので、その点から申しますと、労組法上の使用者については、特段の定義がございません。一般的な解釈として、労働契約の当事者であって労働者を雇用する地位にある者をいうということになっております。  それで、判例あるいは労働委員会の命令というものでいろいろな実体的な判断等がなされておりますが、判例におきましては、相当程度特殊なケースについてではありますが、基本は労働契約の当事者たる使用者ということになりますが、契約上の雇用主と実際に同じような地位にあるというふうに判断される場合、具体的に言いますと、現実的かつ具体的に子会社を支配する状況にあるというふうに判断される場合には、たとえ労働契約上の使用者でなくても使用者だというふうに、労組法上の団交の応諾義務あるいは労働協約締結権の対象となるという場合もありますが、これは全く個々具体的な事案に即して判断されておりますので、一般的に、一〇〇%親会社が子会社の労働組合との関係で使用者の地位に立つ場合というものは、基準として確定しがたい状況にございます。  労働省としても、こうした状況にございますので、現在の労組法におきます使用者の書きぶりにつきましては、判例、解釈等で具体的に補っておりますので、これで現状では適当ではないか、こう考えております。
  147. 木島日出夫

    ○木島委員 ですから、個々具体的な場合には辛うじて親会社に団交応諾義務が生ずることもあり得る、しかし、一般的にはないだろう。そうなんですよ、だから心配しているんでしょう。  同じく、一昨年の独禁法改正問題が登場したときに、九六年二月十日の朝日新聞に、連合の総合政策局長の野口さんがその心配ぶりを主張していますよ。「労使関係の観点からは、持ち株会社解禁でどんな影響が出ますか。」という問いに対して、「持ち株会社の傘下に入る事業子会社の労組は、その子会社のトップとでは実のある労使交渉ができなくなる恐れが大きい。その場合、持ち株会社の経営者と交渉する必要が出てくる。」そうなんですよ、こういうことになるんですよ。まさにこういう状況をつくり出すのが持ち株会社創立の根本的な目的なんですよ、大企業にとっては。そうでしょう。  今、労働省からお話があったのは、特殊な場合というのは、私、昭和五十年七月二十三日の徳島地裁判決、有名な徳島船井電機事件だと思うのです。子会社が親会社の現実的統一的管理支配下にある一製造部門にすぎない場合において、子会社の解散に基づくその労働者の解雇が、本条、労組法七条一号、三号、不利益取り扱いや支配、介入ですが、これに違反する不当労働行為に該当するときは、法人格否認の法理によって子会社の法人格を否認し、親会社に雇用契約上の使用者としての責任を認めるのが相当である。大変有名な画期的な判決が確かにあります。しかし、これは長い裁判闘争を経て、ようやくにしてこういう権限を労働組合、労働者がかち取っているのです。しかし、それは個別具体的です。  今回、持ち株会社が解禁される。そして、この商法改正によってそれがやりやすくなる。一〇〇%支配の完全親会社が持ち株会社として君臨するようになる。そして、その目的はリストラ合理化だ。結局、子会社を、ちょっと経営がうまくないのはどんどんとたたきつぶすような目的なんでしょう。そうしますと、やはりこの連合の政策局長の心配は現実のものになるわけです。  今、労働省は、個別具体的な場合には救済される可能性がある。それではだめだ。だからこそ、日本の労働組合や労働者は、こういう持ち株会社解禁に当たって、労働組合と労働者の権利をきっちり守れるような法制化をしてもらいたい、そういう要求が噴き出し、その要求が、実は一昨年の衆参両院の商工委員会での附帯決議になってきたんじゃないでしょうか。何度も質疑されましたように、一昨年五月十四日の衆議院商工委員会、一昨年六月十日の参議院商工委員会の附帯決議では「労働組合法の改正問題を含め」「二年を目途に検討し、必要な措置をとる」、こう決議しているんですよ。  しかし、労働省はネグレクトしているでしょう。この決議を守っていないでしょう。今論議中だ、この秋にも一定の方向が出そうだ、そんな悠長なことを考えているわけでしょう。しかし、現実には、商法の改正はこうやって出てきているんですよ。怠慢じゃないですか。  そういう完全持ち株会社、一〇〇%子会社を支配できる持ち株会社がこれでつくられるわけですから、それにあわせてどうしても、親会社の団交応諾義務とかこれを認めるような労働法制は必要じゃないですか。どうですか、労働省。     〔山本(有)委員長代理退席、橘委員長代理着席〕
  148. 澤田陽太郎

    ○澤田政府委員 平成九年の商工委員会の附帯決議に基づきまして、私どもも、御指摘の、労使に学識経験者を加えた、持ち株会社解禁に伴う労使問題懇談会をこの二年弱運営してまいりました。  ことしの秋に、お約束の二年というめどが参りますので、労使の合意を得て一定の取りまとめをしたいと考えておりますが、現在のところ、純粋持ち株会社について議論をするという土俵でこの懇談会ができておりまして、純粋持ち株会社が実際にできて、そこでどういう労使関係上の問題が起きたかという現実の問題が、まだ余りないという状況でございまして、労使ともに議論がそれほど突っ込んだ段階に至っていないということでございます。  先生から今、怠慢であるとおしかりを受けましたが、附帯決議にもありますように、懇談会では労使の意見を十分踏まえてやれという御指摘でございますので、できるだけ早く取りまとめをいたしたい、こう考えております。
  149. 木島日出夫

    ○木島委員 労働組合は二年も前からそういう心配を提起して、労働法制の変更は必要なんだということを提起しているじゃないですか。非常に不満であります。  ついでに、では、労働者の個々の権利はどうなるのか。首切られたときに、首切られた労働者は、完全親会社たる持ち株会社に対して直接雇用契約上の地位を求めて係争する権利があるんでしょうか。あるいは、労働条件が切り捨てられたときに、直接の雇用契約を結んでいる子会社を飛び越えて、それを支配している持ち株会社、完全親会社に対して、労働条件を守ってくれ、守るべきだという要求をすることができるんでしょうか。あるいは、できるようにすべきだと思うのですね、しなきゃならぬと思うのですが、この点は、では労働省、どういう考えですか。
  150. 野寺康幸

    野寺政府委員 ただいまの御指摘でございますけれども、子会社の労働者は原則として子会社に雇用関係がある、こういうことでございますが、仮に子会社の労働者が解雇された場合に、持ち株会社の方を相手にして解雇無効あるいは地位保全の訴訟を裁判所に提起することは可能でございます。こういった場合の判断も、先ほど労政局長の方から御答弁申し上げましたように、個々具体的に判断されるということでございます。  この関係では、過去において若干の裁判例がございますけれども、労働者の請求が認められたケースとしては、例えば昭和四十五年の川岸工業事件、仙台地裁のケースがございます。この場合は、法人格否認の法理を根拠として、未払い賃金の支払いの仮処分申請を認めたといったようなケースでございます。  また、同じように、昭和五十四年には、神戸地裁におきまして中本商事事件というのがございましたが、これは、解散した子会社の従業員につきまして、同じく法人格否認の法理を適用することによりまして親会社との雇用関係を認めたケースでございました。
  151. 木島日出夫

    ○木島委員 団体法制と同じなんですね。労働個別法制についても、個々の具体的事案によっては法人格否認の法理を使って持ち株会社に対して地位保全の請求をすることができる。しかし、それじゃだめだということが提起されているんじゃないですか。  そもそも持ち株会社とは何か。これは独禁法に定義がありますよね。株式を所有することにより国内の会社の事業活動を支配することを主たる事業とする会社をいうのですよ。これが持ち株会社の定義ですよ。今度、商法改正によって、子会社の株を一〇〇%所有する完璧なる持ち株会社ができるのですよ。そうしますと、個々具体的に法人格否認が認められるかどうかに労働者の地位保全を認めるかどうかを係らしめたんじゃ、これはいかぬと思うのですよ。一般的に、こういう持ち株会社に対しては子会社の労働者は首切られたときには裁判も起こせる、労働条件に係る交渉をすることもできる、そういう労働法制を一緒につくらなければ不公平じゃないですか。そこはどうでしょうか。端的に答えてください。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
  152. 野寺康幸

    野寺政府委員 現在までの判例を先ほど引用させていただきましたが、一〇〇%子会社というケースであっても、必ずしも、その労使関係におきまして子会社の方に実質的な支配が及んでいるかどうか、これは現在までのところ、個別的に判断すべきものというふうに考えております。
  153. 木島日出夫

    ○木島委員 労働省がこんな姿勢では、私は、この会社法制の大変革によってリストラ合理化のあらしがこれから吹きまくろうとするときに、日本の労働者の権利や労働組合の権利は守れないと思うのです。  この辺で次にかえますが、下請中小企業がどうなるかというのはもう一つの大問題であります。下請中小企業振興法というのがあるのですね。この三条一項に基づく振興基準があります。そこに親事業者の責務というのが書かれています。自己より小さい中小企業者に対しいろいろな仕事を委託することを業として行うもの、こういう親事業者に対して下請企業を守るための法律であり、それに基づく振興基準がつくられているはずであります。  そこで、これは通産省ですか、公正取引委員会でしょうか。こういう完全な持ち株会社がつくられる、一〇〇%資本を支配して子会社を支配する、そしてリストラによってそれを切っていく、そのときにその子会社の下請をどうやって守るかというのが今度中小企業政策の根幹になっていくだろうと思うのですが、通産省、公正取引委員会の御所見をお伺いしたいと思うのです。
  154. 山田昭雄

    ○山田政府委員 お答えいたします。  下請振興法は通産省の所管でございますのでさておきまして、私どもでは、下請代金支払遅延等防止法という、下請事業者と親事業者との製造委託等についての問題について、代金の支払い遅延等につきましてこれを防止するための法律を運用しております。  今お話がございましたが、下請法に言う下請事業者の保護のためにはやはり発注書面ということで、親事業者はどういうものが当たるか、下請はどういうものが当たるかというのをはっきり定義しておりまして、そして発注書面を親事業者は必ず交付しなければいけない、こういう義務づけになっております。したがいまして、例えば親子会社の場合におきまして、御指摘のように子会社が下請法に言う親会社に該当する場合には、下請法に違反する行為が他の事業者の指示等にかかわって行っているといたしましても子会社の行為として下請法の責任を追及していく、こういうことでございまして、これはもう形式的に発注書面をはっきりさせて運用に万全を期していく、こういうことが下請事業者の保護になる、このように、法律の仕組みもそうなっておりますし、私どももそのように運用しているわけでございます。
  155. 木島日出夫

    ○木島委員 ですから、そういう運用ではもうだめだ、あくまでも子会社との取引のある下請でしょうから、子会社にまで攻め上ったって、その子会社そのものが、今回持ち株会社の法制化がやりやすくなって、持ち株会社がつくられた場合には、リストラ合理化のために、もう自分の気に食わない子会社を全部つぶそうとするわけですから、その子会社との下請関係を幾ら守ろうとしたってそれじゃだめなんですな。ですから、持ち株会社の下請中小零細企業を守るための責務をしっかり位置づけなければ、これは日本の下請を守れないですよ。そういう認識はないですか。
  156. 山田昭雄

    ○山田政府委員 これは下請法上の親会社、子会社の定義というものの中にもはっきり出ているわけでございます。例えば親事業者が下請事業者となる下請に製造委託をすること、この下請法上の親事業者に当たるということを免れるために、例えば子飼い部門を子会社化する、そしてその子会社が下請法上の親事業者に当たらないということで再委託するような場合、どちらの責任をとるかということで、下請法上はっきりと、これは定義で、そういう場合に、親会社が子会社を通じて脱法的に行っている、トンネル会社をつくっているような場合につきましては、子会社を親事業者としてみなすということで、そこに責任を追及していくということになっておりまして、そういう意味の方が、形式的に発注書面をはっきりさせて責任を追及していくことの方が非常に下請事業者の保護になる、このよう考え方をとっているわけでございます。
  157. 木島日出夫

    ○木島委員 言いたいことはわかるのですが、そういう枠のもとでは今日のリストラ合理化のあらしから下請中小零細企業を守ることはできない。その根源は持ち株会社の支配する政策にかかっているわけですから、そこに責任をとらせるようにしなければいかぬということを私は思います。  最後に一点、法務大臣に御所見をお聞きしたいと思うのです。  実は、独禁法関連法体系に関して、これは九七年の四月一日の「エコノミスト」に上村達男さんという立教大学法学部教授の鋭い御指摘があります。見出しは「独禁法関連法体系は未整備 “解禁”につきまとうこれだけの危険」という文章であります。独禁法改正によって持ち株会社が解禁される、そしてどういうことが行われるかというと、持ち株会社の方は、連結納税制度をつくれとか法人格は持ち株会社と子会社とは別人格なんだからという理屈で、子会社のやった不始末は全然責任をとらない、子会社の労働者が首切られようと下請を切ろうと、親会社の持ち株会社の方は、法人格が別なんだからといって逃げまくってしまう、そういう状況になりやしないか、それじゃならぬぞということを鋭く指摘した文章であります。アメリカにしろ、ドイツにしろ、こういう企業結合法制をつくるときには必ず持ち株会社の責任というのもしっかりあわせつくっているじゃないかという指摘もあるわけであります。  ところが、今回のこの法案を見ますと、一昨年の独禁法の改正、そしてこの国会に出されてきている産業再生法関連法なんかを見ますと、親会社、持ち株会社の方は自分の責任を全然とらない、そしてやりたい放題やるという、そういう体系がつくり出されるんじゃないか、これでは不公平じゃないかと思うんですよね、法務大臣。  どうでしょうか、この際、そういう商事法制、会社法制をつくるんであれば、同時並行して、労働者の権利を徹底的に守る、下請の中小零細企業の権利権益を徹底的に守るような法制度があわせ提起されなければ不公平じゃないでしょうか。最後に、この点についての法務大臣の閣僚としての御所見を伺って質問を終わりたいと思うんです。
  158. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 今、委員御指摘のことを伺ってまいりました。会社は、社会的責任というものを十分考えながらこれからの厳しい企業環境の中で発展していただくように心から願っておるところでございます。
  159. 木島日出夫

    ○木島委員 終わります。
  160. 杉浦正健

  161. 保坂展人

    保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  まず、法務大臣に伺いたいと思います。  法務省は、私の電話が何者かに盗聴された事件で、七月十三日の参議院の法務委員会で、これは捜査当局とは別に、技術的な面も含めて独自に調査をするというふうに答弁されていますが、調査はされておるでしょうか。
  162. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 刑事局長答弁させます。
  163. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 今回御審議いただいている法案にも関することでございますので、また法案の立案の過程で、通信についての技術的な問題、さまざまな観点から事務当局としての検討をしております。そのこともありますので、そういう技術的な問題等を中心に刑事局で調査をしているということは事実でございます。
  164. 保坂展人

    保坂委員 私も、技術的な点について自分の出来事がなぜ起こったのかを知らなければいけないので、ぜひその内容は明かしていただきたいと思います。  その一端をお聞きしていきますけれども、先日の法務委員会で、刑事局長は、例の文書が信用できない根拠として、いろいろ、特に冒頭の部分が信用できない理由だ、特にNTTのTWSに接続してというあたりが技術的に不可能なのでということでした。  そこで、郵政省に来ていただいていると思いますが、NTTの地上局のTWSの端末は一体何台あるのか、そして操作可能な方は何人いるのか。加えて、そのTWSに外から接続をいたしますPTT、ポータブル端末、これは一体何台ぐらいあって、何人ぐらいの人が操作可能なのか、お答えいただきたい。
  165. 天野定功

    ○天野政府委員 NTTのTWSでよろしゅうございますね。  現在、東西に再編成されて変わっておりますが、東西NTT合わせまして、TWSは約二千五百台、それを操作できる人は約一万五千名と承知しております。  それからもう一つ、PTTのことのお尋ねがございましたけれども、全国に約一千台、それを操作できる社員は全体で約一万名というふうに聞いております。
  166. 保坂展人

    保坂委員 私が想像していたよりずっと多かったんですが、そうすると、今、局長がおっしゃったこれはダブっている可能性もありますよね、TWSも操作できるし、PTTもやれるという。だから、二万五千人と単純合算にはいかないと思いますが、部署を変わったりしている方もいると思うんですね。  そうすると、トータルで大体何人ぐいの人がNTT内でこれらの機器を扱えると、これはわからなければいいんですけれども、二万五千人以下だとは思いますが、大体何人ぐらいか。
  167. 天野定功

    ○天野政府委員 かなりの数がダブっていることは承知しておるんですが、操作できるのが幾らかというのは、ちょっと手持ちの資料では正確に短時にお答えできません。
  168. 保坂展人

    保坂委員 それでは、松尾刑事局長に伺います。  警察捜査のために電話局に協力を求めるケースがあると思います。例えば誘拐事件などの逆探知ということは当然だと思いますけれども。実は、これはつい一カ月以内の雑誌の記事なんですけれども、NTTの北陸支社の法務担当課長が、これは石川県で起きた事柄なんですが、セピアという、これはテレクラというやつですね。そこに断続的な無言電話がすごい数でかかってきて被害があるということで、石川県の金沢東署に被害届を出された。そして、NTT金沢支店に逆探知を要請したわけですね。上の方に上がってきた。そうすると、これはだめだという返事をしているわけですね。本社でも、やはりそれはだめだ、令状も何もないんでと。しかし、結果として、三日間逆探知は行われたようです。それで、その逆探知の中で、三日間店舗を休んで、一本の電話がかかってくると警察官がとって、NTTの職員はそこにいませんから、無線でNTTの方に飛ばして逆探知を指示した、こういう記事が、これはフラッシュという雑誌に載ったんですが、それは御承知でしょうか。
  169. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 申しわけありません。私、その記事そのものを読んでおりませんので。今初めて聞くところでございまして……。
  170. 保坂展人

    保坂委員 それでは、裁判所の令状がなくて、こういった警察からの要請で、NTTが組織として規範上はそれはだめだということで抵抗したようですが、事実、現場ではやってしまった、これは問題ありませんか。
  171. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 その電話機の所有者なり管理者が承諾している場合にどういうことをできるのかというのは、今回の通信傍受法案の範疇とはまた別な話でございます。特に誘拐事件等でございますと、被害者の電話を警察官が傍受して、場合によりますと、どこからかけているのかということも含めまして探知する必要がある場合には、通信事業者に協力を求めることはあり得ると思います。
  172. 保坂展人

    保坂委員 今初めて知ったということであれば、指摘だけしておきますけれども、この逆探知の間、会話を聞いていた疑いがあるということが指摘をされています。これは当然違法な捜査だと思いますので。  そこで、松尾さんにまた伺いますけれども、先ほどの郵政省の答弁で、TWSは一万五千人ですか、そしてPTTの方は一万人近い方が扱えるんだと。そして、先日の答弁で、NTTの全面的な協力がなければ不可能ということでしたけれども、NTTが全面的に協力しなくても、部分的あるいは個人的な協力でも、これはPTTを使って、あるいはTWSを使用してということのいわゆる盗聴というのは技術的な可能性としてはありというふうに言わざるを得ないと思うんですが、いかがでしょうか。
  173. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 ただいまの御指摘の、機器を操作できる人が何人いるかということでございますが、それと、PTTからTWSにアクセスをしたというような投書になっているということでございました。それは単純にアクセスできるものではないと。これはいずれNTTからあるいは技術的に詳細に、まあ捜査当局で確定すると思いますが、そういう問題。  それから、PTTからTWSにアクセスするには、我々の技術上の調査ということで承知している範囲では、ID番号だとか、あるいは直ちにつながるのではなくて、逆にそれが確認された上でPTTとTWSとが機能するとか、いろいろな安全装置、セキュリティーネットがつけられておりますので、そうしたことをもろもろ考えますと、単に個々の人が協力するということではなくて、相当な人数、つまりNTT側で、私は全面的ということを言いましたが、そうしたことをすべて解除するような協力が広範囲にないと技術的には難しいということでございます。
  174. 保坂展人

    保坂委員 時間がありませんので、松尾さんの論理は少しおかしいのじゃないかと思うのですね。PTTのいろいろなセキュリティーシステムはありますけれども、しかし一万人もの方が、あるいは退職されている方もいるわけですから、そういう意味では、万を超える可能性があれば、一応これは調べるという範囲に入るわけで、そこから、NTTが全面的に協力をしなくても、これは独立した組織あるいは部署で、あるいは個人でということも範囲に入れてやはり考えるべきではないかということを指摘して、さらに、先日、携帯電話は聞けるのかということで郵政省の方に伺ったところ、携帯電話自身の傍受は難しいのだという御答弁をいただいております。特に、移動が激しく行われますと、かなりこれは難しいのだと。  それで、松尾局長の方ではネットワークセンターということを言われていまして、新幹線のコントロール装置が並んでいるような監視制御盤があるネットワークセンターというのがどうもあるのだそうですね。そこで聞くということを法務省の方はお考えになっているというのですが、郵政省の方、これは可能なんですか、技術的に。ネットワークセンターで携帯電話を聞くというのは技術的に不可能だという話も関係者から聞いているのですが、いかがでしょう。
  175. 天野定功

    ○天野政府委員 携帯電話による通信の傍受の可能性というのは、通話の相手の端末がどうなっているかによって変わってくるわけでありまして、一概に言い切れないわけでありまして、この前、一つのケースとして、NTTドコモの端末相互間での傍受は、これはかなり困難であると申し上げました。  それから、今お尋ねのネットワークセンター、これはNTTの場合はオペレーションセンターというふうに呼んでいるようでございますが、そこでは監視制御卓というのがございまして、そこでの機能として、不特定の通話を通信信号としてモニターすることは可能でありますが、その通信信号を音声として聞くためには特別の新たな装置を準備しなければならないということで、現在の状況では、直ちに聞くのは困難であるというふうに承知しております。
  176. 保坂展人

    保坂委員 では、松尾さんにもう一度。  ちょっとパネルをよろしいでしょうか。今回の私の出来事で起こったことなんですが、この中に、NTTの無線基地局、交換局と、そのさらに広範囲なところにネットワークセンターがあるわけですね。今、携帯電話の傍受というのは、いわゆる法案成立後ということですが、どこで考えているか。もう一度確認したいのですが、ネットワークセンターだけですか、それともこういうところに接続するということをお考えなのか。
  177. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 技術的には、先生が今お示しのその中のドコモ交換局と、それからネットワークセンターということを考えております。  ただ、ドコモ交換局といいましても、どうもいろいろな規模のもの、大中小がございますので、やはり今の法案の予定しております、例えば立会人が立ち会えるスペースだとか、そういったことも考慮しまして、それが可能なドコモ交換局という限定はあるかと思いますが、交換局においても傍受は技術的には可能だというふうに考えております。
  178. 保坂展人

    保坂委員 そうすると、傍受令状を被疑者移動の付近とかということでとって、立会人を車に乗っけて、携帯電話は移動しますから、このドコモ交換局を次から次へ渡り歩くというようなことも想定されているわけですか。
  179. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 今先生のお尋ねは、傍受をする場所の特定性を欠きますので、そういったことは想定しておりません。
  180. 保坂展人

    保坂委員 それでは松尾さんにまた伺いますが、参議院の照屋議員に対する御答弁で、ドコモの中で故障あるいは新しい配線を設置した場合、これが的確に動くかどうかの装置がどうもあるようで、これが利用できるのじゃないかと。これは装置なんですか、それともコンピューターのソフトなんですか。どちらですか。
  181. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 今先生のお示しの図面でTWSというふうに書いてありますが、これはテスト・ワーク・ステーションと呼ぶのでしょうか、これは、NTTドコモの方は必ずしもそういう名称で呼んでいない――今のはNTTの方ですか。(保坂委員「これは地上局です」と呼ぶ)はい。先ほどから言っておりますステーションというところにある、監視制御台というような名称で呼んでいるようでございますが、その機能は、今先生御説明になった、そういう新たに配線をした場合にそれが正確に動いているかどうかとか、さまざまなテストに使う機械というふうに承知しております。
  182. 保坂展人

    保坂委員 そうすると、郵政省の方にまた伺います。  私の方がドコモから聞いている話ですと、TWSというのは使わない方向で考えているのだ、それで、むしろ交換局に接続する、デジタル音声を一本のアナログにほどいていく、そういうソフトを開発するということで対応、こういうふうに承知しているのですが、本当のところはどちらなんでしょう。
  183. 天野定功

    ○天野政府委員 TWS、試験制御装置とも呼んでおりますが、これはNTTの設備でございます。NTTドコモにはないのです。NTTドコモの機能としましては、故障時の回線状態の確認あるいは回線試験等に使われる装置、これはワークステーション、似ているのですけれども、WSとは呼んでいるようでございますが、そういうものはあるのですが、おっしゃるようなTWSとはやはりちょっと機能が違っております。
  184. 保坂展人

    保坂委員 ちょっと今取り違えてお答えになったと思うのですが、そうではなくて、このドコモの交換局でソフトをつないで聞けるような音声にするという想定と、もう一つ、刑事局長がおっしゃっているネットワークセンターのいわば制御盤、そこに接続してと、これはどちらが主に考えられているのかということをお聞きしているのです。両方なら両方でも結構です。
  185. 天野定功

    ○天野政府委員 傍受の場所として今考えられているのは二つ考えられておりまして、これは法務省の方の答弁のとおりでございまして、一つは交換局のところ、それからもう一つは先生おっしゃるネットワーク、これはオペレーションセンターと呼んでいるようでございますが、その二通りの場所を考えております。  実際に、具体的にどうなるのか、これは法案成立後に、やはり実施手順などを捜査機関と通信事業者の間で話し合われて決まっていくものと考えております。
  186. 保坂展人

    保坂委員 実はNTTのTWSは、郵政省御存じのとおり歴史が多少ありまして、もう通信傍受法案とは関係なくあったと思います、一一三センターということで。ですから、これを使ってやる。ISDNもここで聞けるということも、いわば我々議員にも公開されて、説明も電話局で受けております。それで、さっき何人が扱えるのかということをちょっと聞いてみたのです。  この無線電話、例えばNTTドコモ、最大企業ですけれども、この中で、例えばこういう電話を聞く際のシステムを知り得る方あるいは技術的に聞ける方というのは、一体何人ぐらいいるのでしょうか。全然いないのでしょうか。
  187. 天野定功

    ○天野政府委員 NTTドコモグループ、九社全国であるわけでありますが、その九社全体で申しますと、WSと言われているわけでありますけれども、これは約三百五十台ぐらいございまして、その操作できる人は全体で約百二十名というふうに聞いております。
  188. 保坂展人

    保坂委員 ありがとうございました。  それでは、最後にこの問題で一点だけ刑事局長に伺いますが、刑事局長の方は、報道機関に送られてきた写しを見て、要するに手紙の部分に着目された。先日坂上先生の方から、反訳書の書式について何か似た部分があるのではないか。確かに、私もよく比べてみたら、捜査報告書の方は年月日、時、分、秒までありますね、そしてその次に氏名に内容。もう一つ、傍受記録の方、傍受記録というのは私の会話がそういうふうに書かれていたわけですが、この順番は、やはり月、日、時、分まであって、通話者、内容とあります。  簡単に言うと、日時があって氏名があって内容があるんです、捜査報告書の方も。今回報道機関に送られてきたのも日時があって通話者があって、氏名不詳ですけれども、氏名があって内容があるんですね。この組み合わせが一致する確率というのはどのくらいでしょうか。
  189. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 傍受記録をどういう形で書くのかということですが、これから詳細に確定させますが、常識的には、保坂先生のところへ送られてきた文書ように、通話者、時間等特定されておって、Aという通話者の発言、Bという通話者の発言という形で順次書いて、反訳するとそういうことになると思いますので、それは、形式的にはあのような形になるのかなというふうに思います。
  190. 保坂展人

    保坂委員 先日、ちょっと時間があったのである数学者の方と議論しながら、数学というほど難しくないですけれども、素人が書く場合に内容のみ書く場合があります、内容の後、氏名をつける場合もあるし、日時だけをつける場合もある、そして内容の後、氏名、日時をつける場合もあるし日時、氏名をつける場合もあるというぐあいに組み合わせて、パズル式に考えていくと十一通りあります。だからどうということではないですけれども、そういうことにも着目していただきたいなと思います。  続けて、これも一点だけ、長くは入りませんけれども、交通事故の問題で刑事局長並びに法務大臣に一言だけお聞きしていきたいと思います。  これは、六月三十日でついに時効になられた、法務大臣にもお会いしていただいたし、刑事局長にも会っていただきましたが、矢伏さん、吉沢さんという二人のお子さんが亡くなった、これはもう五年前ですけれども、その事件でございます。  その際に、検察審査会の不起訴不当という議決が出た後の再捜査捜査報告の際に、やはり担当の交通部長の方、大阪地検の交通部長の方がえらく怖かったという話なんですね。おれは部長なんだ、こうやって来るのは異例なんですよ、スピードにしても、時速五十キロ出して、そのぐらいの人間を捕まえていたらみんな捕まえなきゃいけないよ、証拠を持ってこいというような言い方とか。非常に傷ついた、決定がどうあれ、決定にも不服ではあるんですが、傷つかれたということなんですね。そのことはもう十分伝えて御存じと思いますが。  さて、これは法務大臣にいきなりお聞きしてよろしいでしょうか。被害者に対して、被害者とともに泣くという視点から、こういった言動はやはり改めるべきだ、あるいは今後は気をつけろという注意を、大臣、なさいましたか、いかがでしょうか。
  191. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 今、交通部長という人の言動については、私どもも、どのようなことが本当にあったのかというのはなかなか確かめにくいわけでございますけれども、いずれにしましても、今おっしゃいましたように、検察においては、被害者とともに泣く、そういう基本的な姿勢で、被害者の声を重く受けとめまして、その心情を捜査あるいは公判に反映させていくように努めなければならない、このように承知いたしております。
  192. 保坂展人

    保坂委員 これは何回もやっていることなので簡明にいたしますけれども、こういうことがあったときに、別に私は何か厳しい処分をしろと、余り繰り返している場合はそれは求めなきゃいけないでしょうけれども、しかし、そういうふうに去年転換をされて、なかなかまだ従前の意識が転換できない。そして、交通部長みずから説明してやっているんだという姿勢が被害者に傷を与えたと指摘をされた場合に、刑事局長、やはり何か注意ぐらいはあってしかるべきだと思うんですよ、口頭での注意ぐらいは。  現在はこの方、どの部署につかれたのか。注意はあったのか。いかがでしょう。
  193. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 被害者の御遺族の方とも私も面会いたしました。その際にも先生御指摘のようなことが言われましたので、検察の姿勢として問題があれば、それは正さなきゃいかぬということで調査をさせてもらいました。大阪地検の当時の交通部長がそういう不穏当とか、あるいは恫喝にわたるような発言をしたということは、我々としてはないというふうに承知しております。  ただ、いずれにしても、被害者の心情を十分に酌んで丁寧に対処するということは一般的には大変重要なことでございます。我々としても、被害者に対する通知制度を本年の四月から発足させたわけでございますが、そういった点についても遺漏のないように十分に検察としても考えているところだろうと思います。  また、お尋ねの、大阪地検の当時の交通部長でございますが、現在は同地検の刑事部長でございます。
  194. 保坂展人

    保坂委員 そういう発言があったのかないのかということは、それこそ録音でもしてない限り証明できないんでしょうけれども、四人の両親が涙を浮かべて訴えるということを法務大臣も受けとめたわけですから、これはぜひしかと受けとめて、軽い注意でもいいです、こういうことのないように、それから今の後任の方にも言っていただくというのを、やはりぜひこれは要請したいと思います。  肝心の商法の質疑で積み残したものを、一問だけになると思いますが、やります。  通産省の方は来ていらっしゃいますか、来られてないでしょうか。――アメリカのケースをちょっと聞こうと思います。  アメリカの産業界が、MアンドAなど、かなり荒っぽく企業の買収あるいは再構築ということで、現在のところの繁栄をきわめていると言われています。  買収先の資産を担保に親会社が融資を受けることもあるのではないかという点について、アメリカのデメリットの部分も十分着目するべきではないか。過度な競争社会、アメリカ的な社会は社会不安の原因にもなるだろう。そして、逆に、日本の場合ずっと保護をされてきたということもありますから、そういう意味で、アメリカのケースを見たときに、買収相手や新しい子会社を資金調達の道具、ツールとして利用した後さっさと売り飛ばして、また、悪化すれば完全にカットする、切り売りするなど、そういうことがアメリカで起こってはいないか、起こっているというふうに聞いているんですが。  こういうことを考えたときに、経済効果はきっと出るかもしれない、しかし、ほかの委員も指摘しているとおり、労働環境はかなり劣悪になる。赤字の子会社との連結決算で、もうけのある親会社の税金を相殺してしまうなど、そういうこともあるんじゃないか、こういう点について、ちょっと簡単にお答えいただきたいと思います。
  195. 細川清

    ○細川政府委員 まず、最後の点の連結決算ですが、現在行われております連結決算はディスクロージャーの面でございまして、御指摘の点は連結納税だと思うんです。御指摘のような問題を生じるのは連結納税の問題でして、それにつきましては現在大蔵省で検討中、政府税調で検討中ということでございますので、まだ先の問題でございます。  それから、子会社の株を自由に売れるではないかということなんですが、商法上は、投下資本の回収のために株式は自由に譲渡できなければならない、そういう原則になっておりますので、商法の面においてそういうことを禁止することはできないということになります。ですから、問題は、後で社会立法的な見地、あるいは独占禁止政策の面から、あるいは労働法制の面から、問題があれば検討するということになるのではなかろうかと考えております。
  196. 保坂展人

    保坂委員 最後と言ったのですが、今アメリカで起きている例について、いろいろ伝え聞くことについて、不十分かもしれませんけれども言ったわけです。それについてはどういう教訓なり視点をお持ちで立法されたのかということについて、コメントというか、答弁をお願いしたわけです。
  197. 細川清

    ○細川政府委員 商法は、こういう取引社会なり企業の行動のインフラストラクチャーでございまして、これをどう使うかというのは株主なり経営者が考えることでございます。ですから、私どもが考えておりますのは、今、世界経済が大競争時代ですから、日本の経営者、株主に対しても、外国が持っていると同じようなインフラストラクチャーをつくり、あるいは道具をつくってやらなければならない。要するに、インフラが悪いために日本の会社、企業が競争に負けるようなことはしてはいけない。その上で、同等の立場でグローバルな競争をしてもらいたいというのが私どもの考え方でございます。
  198. 保坂展人

    保坂委員 私、通産省に予告しておいたと思うのですけれども、やはり国内向けの答弁ばかり。つまり、アメリカの例について、素朴にこれはどういうふうに考えるのかということだったので、ちょっと答弁はすれ違ってしまったと思うのですが、しかし時間も超過しておりますので、問題を指摘したのみにとどめて、これで終わります。
  199. 杉浦正健

    杉浦委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  200. 杉浦正健

    杉浦委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。木島日出夫君。
  201. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、日本共産党を代表して、商法等の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。  反対の理由の第一は、本商法改正による株式交換・移転制度の創設が、九七年の独禁法改正によって解禁された持ち株会社の設立を容易にして、独占大企業による資本の集中を一層推し進めるためのものであることです。  財界・大企業が持ち株会社設立を急ごうとしているのは、グループ企業の経営資源、すなわち金、人、物を効率的に使い、より多くの利潤を獲得するためであり、そのためにリストラ、人減らし合理化を容易にするためであります。その結果、労働者の雇用と労働条件、下請中小企業の経営、あるいは会社債権者は重大な事態にさらされざるを得ません。政府の六月十一日の「緊急雇用対策及び産業競争力強化対策について」の決定は、この財界・大企業の要求にこたえたものであり、このような施策を推し進めれば、現在最悪の状況にある我が国の雇用情勢は一層悪化し、国民消費の減退による景気の悪循環を招くことは明らかであります。  反対の理由の第二は、株式交換・移転によって、子会社の反対少数株主の権利が根本から侵害されるということであります。  事業会社たる子会社の少数株主は、その意思に反して、完全親会社たる持ち株会社のごく少数の株主となるか、あるいは、株式買い取り請求権の行使によって株主たる地位を失うことを余儀なくされるのであります。同時に行われる親会社の株主の利益保護規定による子会社の会計帳簿等の閲覧は、百分の三以上の株主に限られており、強制的に完全親会社たる持ち株会社の少数株主にされた反対少数株主にとって、この権利を行使することはほとんど不可能でありましょう。  持ち株会社たる独占資本の利潤追求のために、子会社の反対少数株主の株主たる権利が完全に侵害されることとなる株式交換・移転制度は、憲法二十九条の財産権の保障に抵触するおそれあるものと言わなければなりません。  反対の理由の第三は、完全親会社たる持ち株会社が創設されることによって、支配される数多くの子会社の経営者による違法、不当な行為、あるいは持ち株会社の経営者と子会社の経営者との共同による違法、不当な行為について、その違法、不当性を追及することが事実上不可能となるということであります。  子会社の株主は、一〇〇%親会社たる持ち株会社が握ることになるわけですから、このような場合、子会社の取締役に対する株主代表訴訟を提起することは事実上あり得ません。株式交換・移転制度を創設する財界・大企業の真のねらいもこの点にあると言われるゆえんであります。その結果、我が国企業社会のモラルハザードが一層進行し、財界・大企業、持ち株会社の経営者、支配者層によるほしいままの横暴勝手な行為が助長されることになりかねません。  以上三点を指摘して、反対討論といたします。
  202. 杉浦正健

    杉浦委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  203. 杉浦正健

    杉浦委員長 これより採決に入ります。  内閣提出商法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  204. 杉浦正健

    杉浦委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  205. 杉浦正健

    杉浦委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、山本幸三君外五名から、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党、社会民主党・市民連合及びさきがけの共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。山本幸三君。
  206. 山本幸三

    山本(幸)委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。     商法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たっては、次の事項について格段の配慮をすべきである。  一 株式交換及び株式移転の制度の創設に伴い、株式交換又は株式移転に反対する株主の株式買取請求権及び株式交換無効の訴えの制度について周知徹底し、少数株主の権利が害されないよう配慮すること。  二 完全親子会社となる会社双方の株主の権利の保護のため、株式交換比率の公正さが確保されるよう制度の趣旨の周知を図ること。  三 株主の利益を保護するための子会社の業務内容等の開示制度の趣旨及び株主代表訴訟の制度の趣旨の周知を徹底すること。  四 完全親子会社における労使関係の対応については、労使協議の実が高まるよう労働組合法の改正問題等必要な措置をとることをも含め検討すること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  207. 杉浦正健

    杉浦委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  山本幸三君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  208. 杉浦正健

    杉浦委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付すことに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。陣内法務大臣
  209. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。     ―――――――――――――
  210. 杉浦正健

    杉浦委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  211. 杉浦正健

    杉浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  212. 杉浦正健

    杉浦委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時十九分休憩      ――――◇―――――     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕