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1999-07-09 第145回国会 衆議院 法務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年七月九日(金曜日)     午前九時三十分開議   出席委員    委員長 杉浦 正健君    理事 橘 康太郎君 理事 八代 英太君    理事 山本 幸三君 理事 山本 有二君    理事 坂上 富男君 理事 日野 市朗君    理事 上田  勇君 理事 達増 拓也君       奥野 誠亮君    加藤 卓二君       河村 建夫君    小杉  隆君       左藤  恵君    笹川  堯君       菅  義偉君    西田  司君       宮腰 光寛君    保岡 興治君       渡辺 喜美君    枝野 幸男君       佐々木秀典君    福岡 宗也君       漆原 良夫君    安倍 基雄君       木島日出夫君    保坂 展人君  出席国務大臣         法務大臣    陣内 孝雄君  出席政府委員         公正取引委員会         事務総局経済取         引局長     山田 昭雄君         警察庁刑事局長 林  則清君         警察庁交通局長 玉造 敏夫君         法務大臣官房長 但木 敬一君         法務省民事局長 細川  清君         法務省刑事局長 松尾 邦弘君         法務省人権擁護         局長      横山 匡輝君         郵政省電気通信         局長      天野 定功君  委員外出席者         公安調査庁次長 書上由紀夫君         大蔵省主税局税         制第一課長   清水  治君         大蔵省金融企画         局企画課長   内藤 純一君         労働省労政局労         働法規課長   坂田  稔君         法務委員会専門         員       井上 隆久君 委員の異動 七月九日         辞任         補欠選任   加藤 紘一君     宮腰 光寛君 同日         辞任         補欠選任   宮腰 光寛君     加藤 紘一君 七月九日  裁判所速記官制度を守り、司法の充実・強化に関する請願佐々木秀典紹介)(第六六二五号)  同(坂上富男紹介)(第六六二六号)  同(枝野幸男紹介)(第六七〇五号)  同(木島日出夫紹介)(第六七〇九号)  裁判所の人的・物的充実に関する請願村山富市紹介)(第六六二七号)  同(池端清一紹介)(第六六五六号)  外国人登録法抜本的改正に関する請願坂上富男紹介)(第六六二八号)  同(坂上富男紹介)(第六六五七号)  同(佐々木秀典紹介)(第六七〇六号)  法制審議会の公開に関する請願生方幸夫紹介)(第六六七八号)  法制審議会委員一般国民採用に関する請願生方幸夫紹介)(第六六七九号)  子供の視点からの少年法論議に関する請願中川智子紹介)(第六六八〇号)  選択的夫婦別姓の導入など民法改正に関する請願中川智子紹介)(第六六八一号)  法務局、更生保護官署及び入国管理官署の増員に関する請願坂上富男紹介)(第六七一〇号)  同(佐々木秀典紹介)(第六七四七号)  同(坂上富男紹介)(第六七四八号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  商法等の一部を改正する法律案内閣提出第七六号)     午前九時三十分開議      ————◇—————
  2. 杉浦正健

    杉浦委員長 これより会議を開きます。  内閣提出商法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。陣内法務大臣。     —————————————  商法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 商法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  この法律は、会社をめぐる最近の社会経済情勢にかんがみ、株式交換及び株式移転制度を創設するとともに、親会社株主に対する子会社業務内容開示充実等措置を講じ、また、金銭債権等につき時価による評価を可能とする措置等を講ずるため、商法有限会社法及び株式会社監査等に関する商法特例に関する法律改正しようとするものでありまして、その要点は、次のとおりであります。  まず、商法につきましては、第一に、親会社子会社発行済み株式の総数を有する完全親子会社関係を円滑に創設するため、株式交換及び株式移転制度を設けることとし、会社株式交換を行うには、株式交換契約書を作成して、株主総会の承認を受け、また、事前に各会社貸借対照表株式交換契約書等を本店に備え置き、株主閲覧等に供しなければならないこととするとともに、株式交換に反対の株主に対して株式買い取り請求権を認めることとし、さらに株主等株式交換無効の訴えを提起することができることとしております。株式移転についても、株式交換の場合と同様の手当てをすることとしております。  第二に、親会社株主利益を保護するため、親会社株主は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所許可を得て、子会社株主総会議事録等閲覧等を求めることができることとするとともに、親会社監査役及び検査役は、その職務を行うため必要があるときは、子会社業務及び財産状況調査することができることとしております。  第三に、会社財産状況を適正に表示するため、市場価格がある金銭債権、社債、株式等について、時価を付するものとすることができることとするとともに、配当可能利益の計算上は、貸借対照表上の純資産額から、時価を付したことにより増加した貸借対照表上の純資産額を控除すべきこととしております。  次に、有限会社法につきましては、親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所許可を得て、子会社社員総会議事録等閲覧等を求めることができることとするほか、親会社検査役の権限について、株式会社の場合と同様の改正をすることとしております。  最後に、株式会社監査等に関する商法特例に関する法律につきましては、株式交換及び株式移転制度の創設及び親会社株主に対する子会社業務内容開示充実等措置を講ずることに伴い、所要改正をすることとしております。  以上が、この法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  4. 杉浦正健

    杉浦委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 杉浦正健

    杉浦委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺喜美君。
  6. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 自民党渡辺喜美でございます。  ただいま大臣の御説明にありました商法改正案質疑に入る前に、若干お時間をちょうだいいたしまして、今全国各地で大変な騒動を呼び起こしておりますオウム問題について御質問をさせていただきたいと存じます。  私の地元でも、ある日突然オウムがやってまいりまして、空き家になっておりました民宿を買い取って住みついてしまったのでございます。全国でそういったオウム拠点が何十カ所とあるようでございますが、我が栃木県大田原市の場合には、五月の末にこの空き家民宿を現金を積んで、地元の人によれば、三千万ぐらいの価値しかないのを現ナマで五千五百万払って買い取った。所有名義人オウム信徒のようでございます。それで、結局、金銭消費貸借を原因とする抵当権の仮登記を行っているのですね。これなどはまさに、元所有者に買い戻し請求をさせないような対抗措置、こういう感じでやっているわけでございます。  こうした非常に、法のいろいろな要点を駆使したやり方で各地騒動をもたらしているのでございますが、読売新聞の七月一日の世論調査によりますと、オウムに不安を感じているという国民が何と九割を超しております。それで、国の対応法整備を望むという声が七八%に達しているのであります。確かに、国民全体としてみれば、オウムがありとあらゆる生物化学兵器をつくり、現にそれを行使して殺人を犯している。そういったことに対する漠然とした不安感どころか、もうこれは具体的な恐怖心を持っているというのが私は実態であろうというふうに思うのでございます。非常に残念なことに、破防法請求棄却をされてしまった、そこに今日のオウム問題の根本的なスタートラインがあると思うのでございます。  政府におかれましては、このオウム問題について、関係省庁が集まりまして、既に対策に取り組んでおられると思います。現行法令のありとあらゆる適用を初めとした対策に取り組んでおられるわけでございますが、ぜひとも大臣オウム問題に対する決意のほどを、まずお伺いをさせていただきたいと存じます。
  7. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 今委員指摘のように、オウム真理教は、危険な体質を今なお維持したまま、豊富な資金を背景に、新たな拠点を獲得するなど、活動を活発に行っております。凶悪重大事件に対する謝罪はもとより、反省の意も示していないことから、国民の不安や危惧の念は依然として払拭されず、その活動拠点周辺住民とのトラブルも絶えない状況にございます。こうした現状を踏まえまして、政府としては、関係省庁が緊密に協力し、所管する法令を最大限活用して厳正に対処しているところでございます。  公安調査庁におきましても、オウム真理教動向いかんによっては、破壊活動防止法に基づく規制処分を再度請求することも念頭に置きながら、現在厳重な調査監視活動を行っております。その結果得られた情報は、国の関係各機関はもとより、住民とのトラブルが発生しております地域の地方団体にも提供しているところでございます。  このように、オウム真理教に対しましては、今後も引き続き厳重な調査監視活動など、また法整備を通じ、国民不安感の除去に最大限努力していく所存でございます。  先般、報道で、委員が、地元住民の大変な不安の中に、一生懸命御活躍、この問題に取り組んでおられた姿を拝見して大変感銘しました。私どもも一生懸命頑張ってまいりたいと思います。
  8. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 とにかく、こういったオウム問題を抱えておられるほかの国会議員先生にも聞いてみたのでありますけれども、中には、おどしを受ける方もあるようでございます。したがって、中には、できるだけテレビカメラに映らないようにしてデモに出かけるとか、それくらい心配をしておられる方もいるんですね。ですから、そういった圧力に屈しない断固とした態度で我々は臨んでいかなければならないと思っております。陣内大臣の今の御決意を聞きまして、大変安心をいたしました。ぜひ、この決意に基づいて対応をしていただきたいと存じます。  そこで、一連オウム事件によって逮捕された信者の数は四百二十八名に及んだということでございます。このうち、起訴猶予処分保留で釈放された数は二百十五人、公判請求された被告は百九十五名だった。百九十五名のうち百六十八名は刑が確定をし、執行猶予あるいは刑期満了などで既に釈放された者もいるということであります。その数は逮捕された四百二十八名中三百六十八名、これはことし二月ぐらいの話でございます。そのうち、実に四割、百七十名もの信者教団に復帰したということが確認されているという情報もございます。  オウムの一番怖いところは、教義に基づいて人をポアする、要するに殺しちゃう、こういうことを平気でやるところが一番怖い話でございまして、オウム教義の中にはタントラバジラヤーナ、こういう危険な教義があるわけであります。要するに麻原開祖を絶対崇拝するというところはいまだに変わっていないというふうに私は理解をしております。  この間、私が大田原現地に行きましたときに、何とかいう広報部長ですか、うらなりビョウタンみたいな顔をした広報部長が出てきまして、オウム教義は変わったんです、我々は危険な存在じゃないんですなどというようなことを言っておるのでございますが、どうなんですか、オウム教義は変わっているんですか。変わっていないんじゃないんですか。マインドコントロール手法も全く同じ手法でやっているんじゃありませんか。いかがでしょうか。
  9. 書上由起夫

    ○書上説明員 お尋ねの件でございますが、オウム真理教は、破壊活動防止法に基づく規制手続が行われていた最中には、麻原が説いた、今お話に出ました危険な教義であるタントラバジラヤーナ、これは秘密金剛乗というふうにも言っているようでございますが、これを封印するという意見表明をしておったわけでございます。しかしながら、その後今日に至るまで、教団といたしまして一連事件に対する反省を一切示したことがございません。それであるばかりか、平成九年一月の公安審査会による棄却決定直後から、再びこのような危険な教義を説いた麻原説法集信徒必読文献として使用させており、さらに幹部による説法会においても同じようにこの教義信徒に説法していることが確認されております。そういったところから見ますと、私どもでは、この教団は依然としてこの危険な教義を堅持しているというふうに認めておるわけでございます。  また、マインドコントロールそのものにつきましては、かつてのように薬物使用によるイニシエーション、こういったものは現在のところ確認されてはおりませんけれども松本説法ビデオを教材として執拗に学習に用いている、あるいは睡眠時間を極端に減らして信者極限状態に追い込んで教義を植えつけるなど、以前と同じような手法を用いている点もございますので、ほぼ同様の手法が用いられている。マインドコントロールはほぼ同じような状態にあるのではないかというふうに認めているところでございます。
  10. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 平成九年の一月三十一日に公安審査会決定が行われたわけでございまして、その際、破防法請求棄却するという残念な結論が出されたわけでございます。  その理由に、将来の危険性は十分に認めることができない、こういう理由になっているんですね。オウムは、破産宣告を受けたり、あるいは宗教法人解散命令を受けたりして信徒数が減少した。あるいは、規模や機能が大幅に縮小した。そして、人的、物的、資金的能力は、地下鉄サリン事件松本サリン事件を敢行した当時と比較すると格段に低下している。したがって、オウム暴力主義的破壊活動を行うに足りる能力を有していると認めることは難しい、こういう理由なんですね。  ところが、どうですか、今非常に巧妙にオウム資金を集めております。パソコンの輸入、組み立て、販売、こういうことをやって相当荒稼ぎをやっておるんですね。パソコン事業部というのがありまして、信徒が約二百名従事しております。台湾専門会社等から仕入れをしているようでございますが、暗号ソフトなどを使って電子メールで頻繁に連絡をとり合っている。実際に信徒台湾に派遣して、現地取引先のさらなる開拓もやっておる。台湾部品メーカーからオリジナル商品共同開発構想まで進行しているということのようでございます。大体大まかな数字で七十億円ぐらいの売り上げがあるようでございますが、そのうち、粗利が十億円はあるのではないか。粗利イコール利益みたいな商売でございますから、これは相当な資金力を持っているということが推察できるわけでございます。  なおかつ、先ほど申し上げましたように、出所した信者がこれからも続々出てくることが予想される。新たな信者獲得も積極的にやっているようであります。荒木君と語る会みたいな集会をやって信者獲得をやっているなんという話も聞いたことがございます。  今週号の週刊ポスト女性信者のこんな記述がございます。ある女性でございますけれども、この人は女子化学部隊というところに入っておった。この部隊は、ボツリヌス菌とか生物化学兵器サリンVXガスなどの開発を担当しておった、LSDの合成などもやっておった。こういう人たちが、これから次から次へと出所して教団に復帰していくというようなことになりますと、果たして本当に、教義も変わらない、彼らが信仰していることは同じだということになりますと、将来の危険性がないと言えるかという問題であります。  我が自民党では、六月の十一日、治安対策特別委員会というのをつくりまして、オウム真理教に対する対策について緊急に対応策決定を見たところでございます。第一に、現行法を最大限に適用して、教団違法行為の摘発に努める。第二に、先ほど大臣が言及されました、公安審査委員会に対して再度破防法規制請求を行うべきである。第三に、破壊活動防止法の適正な改正を図るべきである。こういう決定を見たところでございます。  再度お尋ねをいたしますけれども破防法の再規制請求可能性も大いにあると私は思いますが、再度具体的な御説明をお願いしたいと思います。
  11. 書上由起夫

    ○書上説明員 最近のオウム真理教活動状況につきましては、ただいま委員がおっしゃられたとおりだろうと思っております。  ただ、前回の棄却決定でこの危険性の問題が一番ネックになったわけでございますが、これは法文上、破壊活動を行う明らかな危険性という非常に厳格な要件が書かれているわけでございまして、そういった視点で見ますと、現在の活動状況は、おっしゃるような意味合いはあるわけでございますが、ただ、全般的に見ますと、この違法活動の面が非常に軽微なものが散見される程度でございまして、大部分は、豊富な資金をもとに不動産を買うとか、そういったところにとどまっておるわけでございます。  ただ、私ども、前の棄却決定以降、当然のことながら、再び危険な兆候が出てくるということであれば再度規制請求に及ぶという、そういった点も視野に入れて調査活動を今まで継続しているわけでございます。そういった意味で、徐々に状況は変わってきておりますが、引き続きそういった再規制の問題も視野に入れながら、危険兆候の有無、程度、こういったものを厳重に調査監視を続けてまいりたいということで御理解をいただきたいと思います。
  12. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 オウムというのは、先ほども申し上げましたように、パソコン商売をやっているんですね。彼らは、こういった世界に実に詳しい信者を多数抱えているわけでございます。  今、コンピューターの二〇〇〇年問題というのがございまして、これはまかり間違うと人命にかかわる危険性が極めて高いことが指摘をされております。したがって、例えば一九九九年九月九日とかいった九九九九と九がずらっと並ぶときとか、不可測の事態が起こることを心配する向きもあるわけなんですね。年末には飛行機に乗らない方がいいよというようなこともささやかれているわけでございます。  結局、高度の情報通信の現代にあって、非常に恐るべき種類のテロ、つまりサイバーテロというのがあるのですね。これはまかり間違えば人命に甚大な影響を及ぼしかねない、そういうたぐいのテロになる可能性もあるわけでございます。したがって、昭和二十七年にできた破防法でもってこういった極めて巧妙な技術を駆使したカルト集団規制するというのは、なかなか難しい問題があるのですね。ですから、これは思い切って、先ほども申し上げましたように、破防法見直し、こういうものを進めていくべきではないかというふうに我々は考えているのでございます。  公安庁におかれまして、もう既にこの問題が発生をして四年以上の月日がたっているわけでありますから、現行破防法の不備な点があるとすれば、また見直しをするとすればどういうようなことがあり得るか、御見解を承らせてください。
  13. 書上由起夫

    ○書上説明員 団体規制は、必要なときに迅速かつ的確に実効性がある形で行わなければならないと考えておるわけでございます。  オウム真理教に対する規制請求、これが棄却された経緯を見てみますと、現行破壊活動防止法適用要件がやや厳格に過ぎて、現実に対応できていないという側面があるのではないかと私どもでは考えておるわけでございます。こういった点を念頭に置いて、棄却決定後現在に至るまで、一体どういう規制法規が適切かということを、内容手続面にわたって鋭意検討を継続しているわけでございます。  その過程で、ただいま委員指摘のような問題を含みまして、各般の御提言や御意見を私どももいただいておるわけでございます。そういった点を十分に吟味、検討しつつ、できるだけ早期成案を得るべく今事務レベルで鋭意検討を続けているところでございます。  ただ、あくまでも現在の段階事務レベル検討ということで、成案に至っておりません。したがいまして、その詳細を明らかにできる段階には至っておりませんので、具体的な内容につきましては答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  14. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 組織犯罪対策法がまだ参議院を通っていない現状もありますから、なかなか言いにくいこともあるでしょう。我々国会議員レベルでも、この問題は見過ごしておくことのできない話でありますから、さらなる積極的な検討議員レベルでもやっていきたいと存じます。  とにかく、今、戦後体制が我々の全く予期せざる非常事態に見舞われて、今までのシステムや我々の依拠してきたパラダイムではもう到底対応不可能であるという事態があちこちに出てきているのですね。ですから、我々は、そういう今までの発想や制度システムでは対応できない問題と直面しているんだ、こういうことを肝に銘じてやっていかなければならないのでございます。  このオウム問題は、本当に残念なことに、各地の地方自治体が大変な苦労をしておられます。彼らの力ではどうにもならない事態に直面をしているんだということを、ぜひ我々は国会議員の立場で考えてまいりたいと思います。  どうぞ委員長におかれましても、大変な議員提案の御経験のある政治家でありますから、例えば被害者救済を取っかかりにしたカルト集団被害者救済あるいは規制といったものを議員立法でも考えていきたいと私考えておりますので、どうぞ積極的な御関与をお願い申し上げる次第でございます。  それでは、オウム問題は以上でございますので、公安調査庁におかれましては、国会にいてもしようがないですから、帰ってオウム対策に取り組んでください。  それでは、本論の商法改正に移らせていただきます。  今回の商法改正で、株式交換制度株式移転制度というものを創設しようということでございます。実はこの問題、私が一昨年の十一月五日の当法務委員会において質問をさせていただいたのであります。このとき、当時の政府委員の御説明は、法制審において検討に着手していただくことにしておるところでございますという話なんですが、大体これ、二年ぐらいかかるという話だったんですね。法制審議会というのは本当に、随分のんびりしているなと我々常日ごろ思っておったのでございます。大体、学者の先生が多いものですから、教科書を書くようなスピード審議しているんじゃないのかという指摘もあったりするわけでございます。ところが、この株式交換移転制度につきましては非常に速いスピードで、ことしの初めぐらいには法案ができた。これは我々にとっても、法務省法制審議会の努力を多とするものでございます。  今回、この商法改正の準備が予定より一年近く早くでき上がったわけでございますけれども、早くできた理由は何ですか。そのあたり、PRしてみてください。
  15. 細川清

    細川政府委員 確かに、当時の政府委員は御指摘のような御答弁を申し上げましたし、また、昨年の三月三十一日に閣議決定された規制緩和推進三カ年計画におきましては、平成十年度上期に検討状況を公表し、早期結論を得て所要措置を講ずることとされておりました。  しかし、先ほど指摘がございましたように、この法務委員会渡辺先生から、企業の国際的な競争が激化する昨今の経済情勢の中で、我が国の産業の競争力を強化するためには株式交換制度早期の導入が必要であるというふうに御指摘がありました。そういったようなことを考えまして、法制審議会商法部会には精力的に御審議いただくことをお願いいたしますとともに、私ども事務当局といたしましても法律案の作成を集中的に行いまして、この国会に提出するに至ったわけでございます。
  16. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 この株式交換移転制度については、もう既に税制上の措置は施されているんですね。租税特別措置法の改正が行われまして、譲渡益課税の繰り延べ、あるいは譲渡益に対する課税を行わないという措置がもう既に講じられておるわけでございます。税制というのは後からすったもんだするのが普通なんですが、税制の方が先行しちゃって法改正がおくれてついてくるという、非常にこれは珍しいケースなんですよ。  実際、現代の産業界の競争というのは、これは十年前には考えられなかったような、想像を絶するような競争が行われているわけでございます。とにかくグローバルであり、メガであり、サバイバル競争なんですね。ですから、こういう時代にあって、我が国が経済の長期的な停滞から抜け出せないということでは困るし、企業の競争力が低下をし続けるということでは、これは国益にかかわる問題になるわけです。  ですから、いかに企業の活力を衰退させないようなシステム制度づくりをやっていくかということが非常に大事なことでございまして、いわゆる過剰問題というのが今言われているわけであります。三つの過剰などとよく言うんですが、設備と債務と雇用の三大過剰ということが言われているんでございますけれども、ただ単に過剰な設備を横並びで廃棄するなんという、そういう減反政策みたいなことでは決して国全体の競争力は高まらないと私は思っておるのでございます。一九八〇年代にOPEC諸国が一律減反政策みたいなことをやったんですね。そうしたら、非OPEC諸国がいきなり増産をしかけてきまして、OPECというのは地盤沈下をしたわけであります。  そういうようなことを、今設備が過剰だから一律に廃棄をしていきましょうなんということは、決してこれは競争力の強化につながっていかない種類の話でございまして、いかに得意な分野に特化をしていくか、あるいは、社内体制を集中と選択でもって競争力のある分野に特化をしていくか。あるいは、信じがたいような、同業他社との事業部の提携みたいな話が今あっちこっちで進んでいるわけでございます。したがって、ぜひとも今国会で、この株式交換移転制度については成立をさせなければならないというふうに考えておるところでございます。  現行法でもって、非常に迂遠なやり方でやるしかないんですね。銀行については銀行持ち株会社ができるようにしたのでございますけれども、これも、一たん幽霊銀行みたいなものをつくるやり方でして、幽霊銀行をつくっているうちに本物の幽霊になってしまうような心配も今あるわけでございますから、端的に、株式交換・移転、こういう形で持ち株会社をつくることができるようにしなければなりません。  現行法のもとで持ち株会社を設立する際の問題点、それと、持ち株会社をつくることの意義について、簡単で結構ですからおっしゃってみてください。
  17. 細川清

    細川政府委員 現行法上の持ち株会社を設立する方法でございますが、第一には、いわゆる抜け殻方式、二番目には公開買い付けの方法による買収方式、それから三番目には、御指摘がありました三角合併と、三つほど方法があるわけでございます。  抜け殻方式については、現物出資の対象となる財産について、検査役による調査の手続に時間がかかる、それから、現物出資の対象となる債権の譲渡について債務者の承諾が必要である、あるいは不動産の譲渡についても、個別的に登記等の対抗要件を備える必要があるということで、非常に手続が煩瑣であるという批判があります。  また、買収方式については、公開買い付けに応じない株主が必ず残存する、それで完全親会社となることができない、あるいは多額の買収資金が必要であるというような批判があります。  三角合併については、ただいま御指摘のとおり、非常に手続が煩瑣であるということが指摘されているわけです。  そこで、親会社子会社発行済み株式の総数を有する完全親子会社を円滑に創設するために、株式交換制度の創設が求められていたところでございまして、今回の法案はこれに対応するものでございます。  それから、この意義でございますが、持ち株会社の設立につきましては、一般に言われておりますことは、持ち株会社を創立することにより、会社は、本社機能を企業グループ全体の経営戦略の企画立案、資金、人材の配分等に限定し、そのスリム化を図ることができ、また、合併と異なって、各子会社の組織形態、企業文化等を生かしつつ、経営戦略面での一体化を確保することにより、組織運営や人事面での摩擦を回避しながら、各事業部門に相当する子会社の活性化を図ることが可能になる。そういうことから、経営の効率化、国際的な競争力の向上等が図れるのではないかということであろうと思います。
  18. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 国会の都合でこれは非常に延び延びになってしまっておりまして、とにかく一日も早くこの法案は成立をさせたいということでございますので、どうぞ野党の先生方におかれましても御協力をよろしくお願い申し上げる次第でございます。  また、今回の商法改正において、時価会計の導入ということが一つのポイントになっております。これは金銭債権等の評価について原価法との選択制を認めよう、こういう趣旨でございますけれども、我が国の商法ではいわゆる取得原価主義ということが原則だったわけでございます。  昔はよく言われたものですよ。取得原価主義というのは農耕民族的な発想だ、つまり、長期的な視点で経営ができる、一々目先の業績にかかわらずに長い視点で考えていくことができるのだ。ですから、いわゆる含み経営などと言われたわけでありますけれども、含みが多ければ多いほど経営基盤が安定しておるということだったわけでございます。  一方、時価主義というのは、農耕民族の発想ではなくて狩猟民族の発想、常に目先の獲物を追っかけている、腹をすかした民族の発想であって、とにかく短期の業績にばかり気をとられてしまう、長期の視点がなくなってしまうというようなことが昔は言われておったのでございます。  ところが、土地や株といった資産価額がとんでもない下落をすることによって膨大な不良債権をつくってしまった。不良債権を目の前にしてみると、含み経営理論というのは本当に神通力を失ってしまったのですね。結局、不良債権の飛ばしとかそういうことをしでかす羽目になってきたわけでございます。したがって、こういったことはグローバルな競争の中でやはり共通の土俵でやらざるを得ない、そういう状況に好むと好まざるとにかかわらず追い込まれてしまった、こういうことでございます。  今回、時価会計制度を導入する御趣旨を簡単で結構ですから説明してください。
  19. 細川清

    細川政府委員 御指摘のとおり、現行商法におきましては、損益法の立場から原則として取得原価主義を採用しているわけでございます。しかしながら、社債、株式等のいわゆる金融資産につきましては時価で評価することが会社の資産状況のディスクロージャー上適当であるとの認識が一般的になっておりまして、これまた国際的な動向ともなってきているわけでございます。また、大蔵大臣の諮問機関でございます企業会計審議会におきましても、本年一月二十二日に、金融商品について時価会計制度を採用すべきであるとの意見書を公表して、明年の四月一日から実施することとしております。  このような理由から、改正法案では、企業の資産状況を適正に表示するとともに、国際的な会計基準との調和を図り、企業会計原則との整合性を確保するため、時価の評価を金融資産についてするという制度を取り入れたわけでございます。
  20. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 今国会で土地再評価について、これは議員立法でございますけれども、土地評価は世界的に時価会計でやっている国はないのでありますが、我が国の場合には異常な資産価額の下落という現実に直面をして、バランスシートが破壊されてしまっている企業が少なからずあるのですね。そこでこれを、含み益を持ったところも含み損を抱えたところもきちんとバランスシート上表に出してもいいですよという法律をつくって、もう既に実施されているわけでございます。  土地の場合には、再評価差額金というものは資本組み入れを認めるようにしたわけですね。去年の立法では負債の部に一〇〇%組み入れということだったのですが、ことしの三月の改正によりまして六割は資本組み入れを認める、将来土地を売ったときに税金を払わなければいけませんので、その部分は負債に組み入れておくというようなことをしたわけでございます。  これは法律の話ではございませんけれども金銭債権等時価評価をした場合の再評価差額金についてはバランスシート上のどこに組み入れたらよろしいのですか。
  21. 細川清

    細川政府委員 評価益は、未実現の利益でございますので、将来においてこれが実現したときには法人税等が課されることになります。そのため、評価益中、これらの税額が貸借対照表上未払い税金債務または繰り延べ税金負債として負債の部に計上されまして、その残りが貸借対照表の資本の部に計上されるということになります。  この評価益から税額を控除した部分を計上するための勘定科目の名称でございますが、これは法務省令でございますが、計算書類規則で定めることとなります。どんな名称が適当かは今後検討いたしますが、例えば評価利益額というようなことが考えられると思います。
  22. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 世の中全体、旧勘定から新勘定に移行せざるを得ない、そういう極めてドラスチックな現実に直面しているのが我が国の経済の実態でございます。終戦直後に似たようなことがございまして、当時やりましたことは、強制預金切り捨てみたいな話だったのですよね。銀行国有化をして預金封鎖をやって、新円切りかえをやって、旧勘定から新勘定に移行する。あの当時はハイパーインフレでやったのでございますけれども、今デフレ経済の中で下手間違うとスーパーデフレで旧勘定から新勘定に移行するみたいなことになりかねないわけでございまして、我々はバランスシート問題について国会議員の立場からありとあらゆる提案をしてきたのでございます。ぜひ、法務省におかれましても、こうした問題に関心を持って今後とも取り組んでいただきたいというふうに思うのでございます。  次回予告編みたいな話でございますけれども先ほど、私二年ほど前の当委員会で、株式交換・移転とともに、会社分割制度についても御質問をしてございます。会社分割制度が整いますと、一連の、会社のリストラ再編、業界再編につながる制度の枠組みが一通り整ってくるわけでございますが、この会社分割についての検討状況、法案提出の見込み、来年の通常国会にはできるのだという報道がなされておりますけれども、もっと早くできないものですか。いかがですか。
  23. 細川清

    細川政府委員 会社分割法制の整備につきましては、三月三十日の規制緩和推進三カ年計画では平成十二年度をめどとすることとされておりましたが、産業競争力会議や経済界からの早期整備の要望が大変強うございます。  そこで、私どもといたしましては、法制審議会に早急な審議をお願いいたしまして、一昨日の七月七日に会社分割法制の創設を内容とする法律案要綱中間試案を取りまとめたところでございます。これは会社分割の手続、株主及び債権者保護の仕組み、分割の効力について定めることとしております。  今後の予定でございますが、中間試案に対する意見照会を行いまして、その結果を踏まえてさらに法制審議会で御審議をいただきまして、次期通常国会に提出させていただきたいと思っております。
  24. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 とにかく教科書を書くスピード審議をやられたらこれはたまりませんので、ぜひ審議スピードアップをお願いしたいと思います。  それから、これも次回予告編みたいな話で恐縮でございますが、新再建型倒産手続、これは先ほど政府・与党の決定を見ました産業再生策の中でもきちんと大きな柱として位置づけられているわけでございます。結局、なぜ我々はこういう一回死んでよみがえるという方策に取り組まざるを得ないのかというと、デフレのもとで一番やばい話は、借金をしている人が借金を返せなくなってしまう、そういうことなんですね。デフレのときには企業は売り上げは伸びない、収益は落ちるということでありますから、これはもう借金はどんどん逆に膨らんでいくということになるわけですね。  一方、サラリーマンの場合も、これは給料が伸びない、けれども住宅ローンの返済はどんどんやっていかなきゃいけない、こういうことでありますから、不幸にして賃金が伸びなくなっちゃった、逆にリストラに遭って職を失っちゃった、こういうことになると完璧に借金を返せなくなっちゃうということなんですね。  結局、今の倒産法制は、ある意味で一種の逆にモラルハザードだということを指摘する人もいるわけなんですね。つまり、個人の場合であれば免責を受けると全部チャラになっちゃう。そうすると、背中に羽が生えたように軽くなっちゃうという人も中にはいないわけではないんですね。やはり借りた金は返すんだというのが社会の正しい基本的なルールであって、全部返すことは難しいけれども、結局今までのやり方を変えて、新しく生まれ変わって、きちんと返せる分は返すんだという制度にした方がいいわけでございます。  今回、議員提案でございますが、同僚の山本幸三議員などが中心になりまして、特定調停制度というのを御審議いただくことになっておりますが、裁判所のある程度強制的なことを生かしながら、民事再生手続などとネーミングしたんでしょうか、こういう制度を構築しようということでございますけれども、これについて、中小企業にとって利用しやすい手続とするために現行法制の問題点をどういうぐあいに改めようとしているのか御解説をいただきたいと存じます。
  25. 細川清

    細川政府委員 再生型の倒産手続には三種類ございまして、ひとつは会社更生、それから和議、会社整理と三つあるわけでございますが、それについてもそれぞれ問題点がございます。  まず一つは、会社更生は大きな株式会社が目的でございますから、非常に手続費用の負担も大きい。それから、必ず管財人が経営者になりますから、従前の経営者が地位を失うという問題があります。中小企業がこれを利用することは事実上困難であると言われております。  それから、和議手続については、破産状態になった後でなければ手続が開始できないとか、申し立ての際に再建計画を整理しなければならない、履行確保の方法がないといったことから問題が指摘されています。  会社整理は、債権者の全員一致が原則ですから、一部でも反対すれば運用できないということになるわけでございます。  そこで、現在考えております新しい再建の手続では、こういった問題点を踏まえまして、中小企業にとって利用しやすい手続とするために、破産状態に陥る前に手続の開始を可能とする、二番目として、再建計画案は手続開始後の一定の時期までに提出すれば足りる、三番目として、原則として従前の経営者が事業の経営権及び財産の管理処分権を保持する自力再建型の手続とする、四番目として、再建計画は債権者による多数の賛成が得られれば成立する、五番目として、再建計画も裁判所が監督を継続する手段を設けて、また再建計画に基づく強制執行を可能として再建計画の履行を強力に促すといったことを考えているわけでございます。
  26. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 とにかく、産業再生によって競争力を強化するためには一回死んでよみがえるということが大事なことでして、死ぬことは怖くないんですよ、新たによみがえればもっと強くなるんですよ、未来が開けてくるんですよということがわかってもらわないと困るわけでございます。  最近、兼松という商社が非常に正しい産業再生の道を選択したのでございます。結局、総合商社をやめて得意の専門商社に特化をする。ずうたいは三分の一に小さくします、銀行に対しては一千七百億円の債権放棄を要請します、株主さんに対しては二株を一株にしてもらいます、そして社長は切腹しますということでございまして、いずれこれは増資をするときに業界再編につながっていくということでございます。  デット・エクイティー・スワップなどという手法もあるわけでございますが、この新しい民事再生手続において、減資や営業譲渡を容易にするためにどんな措置を考えておられますか。
  27. 細川清

    細川政府委員 減資や営業譲渡についてでございますが、これは商法上、株主利益保護のために株主総会の特別決議が必要となっておりますが、倒産した会社におきましては、株主総会を開催しようとしてもその定足数を満たすことすら難しいということが言われております。  そこで、この新しい再建型の手続におきましては、裁判所が適切に監督を行うことが可能であるという前提で、債務超過の状態にある株式会社においては株主権利は実質的には無価値でございますので、株主総会の特別決議等の商法上の手続を一部省略することが許されると考えております。そこで、債務超過の状態にある株式会社については、裁判所株主総会の特別決議にかわる許可をすることにより減資や営業譲渡をすることができる制度の創設を検討しているところでございます。
  28. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 とにかくこれも急ぐ話でございまして、次の国会には必ず出していただきたいと思います。  そして、先ほど申し上げました個人債務者の更生手続ですね。我々が今国会に出します特定調停では、個人の住宅ローンでぎりぎりになった人は住宅を手放さざるを得ない、それは課税上の問題があるからでございますが、住宅を手放さずに再建できる、そういう道も開いておく必要があると思います。この個人の更生手続についても、早急に国会に出せるように鋭意検討をしていただきたいと思います。  以上、質問を終わります。ありがとうございました。
  29. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、達増拓也君。
  30. 達増拓也

    達増委員 商法等の一部を改正する法律案であります。これはようやくきょうから審議入りしたわけでありますけれども、経済界からの期待が極めて高い法案であるというふうに聞いております。私のところにも経済団体からの個別の陳情、要請等ありまして、今経済の低迷から脱出して力強く前進しようとする日本経済を再生していくに当たって非常に重要な法案であるというふうに思うわけであります。  まず、大臣質問をいたします。こうした経済界からの期待、この法案の成立によってどのような効果がもたらされるのか。これは大臣のこの法案に対する決意という意味も込めて、その点伺いたいと思います。
  31. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 ただいま御審議をお願いしておりますこの改正法案の株式交換株式移転制度というのは、企業の再編成のための一つの手段として持ち株会社関係を円滑に創設することを目的とするものでございます。  持ち株会社を創設することによりまして、本社機能を企業グループ全体の経営戦略の企画立案等に限定し、そのスリム化を図ることができます。また、合併のように複数の会社が完全に一体化するのではなくて、各会社の組織形態あるいは企業文化等を生かしつつ、経営戦略面での一体化を確保することができます。このようなことで、組織運営や人事面での摩擦を回避することもできるわけでございます。各事業部門に相当する子会社の活性化を図ることがこのようなことでできるものと考えておるところでございます。  こういった株式交換株式移転制度を実現することによりまして、経営の効率化、国際的な競争力の向上等を図ることができ、ただいま委員指摘されましたような経済の再生につながるものと考えておりますので、ぜひ慎重審議の上、早急に御可決いただきますようお願い申し上げる次第でございます。
  32. 達増拓也

    達増委員 二年前、おととし独禁法が改正されまして、持ち株会社が解禁になったわけであります。  独禁法、独占の問題ということから二年前まで解禁されていなかった持ち株会社であります。当時、財閥の復活となるのではないかというような議論もありましたけれども、むしろ高度情報通信社会に突入していく経済社会の実情を踏まえますと、もっと小回りのきく小さい会社をたくさん組み合わせたような形の、そういう会社の持ち株会社を中心とした組み合わせ、いろいろな新しい状況や国際化に対応していくための、昔に戻るのではなく、新しい企業経営のあり方としての前向きな意味での持ち株会社解禁だったと思います。  今回のこの商法改正、持ち株会社を円滑につくるための株式交換制度等については、経済構造の変革と創造のための行動計画でありますとか、規制緩和推進三カ年計画の改訂版でありますとか、そういうところでも訴えられているわけでありまして、こういう規制緩和という観点から、既に先端的な企業経営に対応した法整備ということを進めていたアメリカやヨーロッパにおける類似の法制について、どういうものがあるのか、伺いたいと思います。
  33. 細川清

    細川政府委員 まず、イギリスとフランスでございますが、ここでは持ち株会社創設のための制度として、いわゆる少数株主締め出し買収という制度がございます。この制度は、一方の会社発行済み株式総数の一定割合の株主が他方の会社による公開買い付けに応じた場合には、買い付けに応じなかった株主の株式についても強制的に買い取ることができるという制度でございます。  ドイツにおきましては、編入という制度がございます。これも、一定数の他の会社の株式を取得した場合には、残りを強制的に取得できるというものでございます。  それから、アメリカにおきましては、三角合併制度と今回の改正法案に盛り込まれております株式交換制度と両方あるわけでございます。  ただいま申し上げましたように、諸外国においてもこのような持ち株会社を円滑に創設するための制度が設けられているところでございまして、我が国においても、このような制度を設けることは規制緩和という観点からも意義があるものと考えております。
  34. 達増拓也

    達増委員 それで、二年前に独禁法が改正されて持ち株会社解禁となった際に、衆参それぞれの院で附帯決議として盛り込まれた中に、今回の商法改正につながる法制度検討ということもあったわけであります。こういう株式交換制度検討でありますとか、親会社子会社関係等々、そうした検討をすべきという附帯決議があって、そして今回のこの法案提出になっているわけでありますけれども、その間の経緯、特に実際に持ち株会社をつくろうとしていろいろ工夫している民間、経済界からの要望を中心に伺いたいと思います。
  35. 細川清

    細川政府委員 現行商法上でも親子会社関係を創設する方法はあるわけですが、これについてはさまざまな問題点が指摘されているわけでございます。現物出資による場合には、検査役調査に時間がかかる、あるいは公開買い付けの場合には、多額の買収資金が要る上、すべての株式を買収できるとは限らないといった問題がございました。それからもう一つ、既存の会社が自分の持ち株会社をつくるという方法は今は全くないわけでございます。  そこで、経済界からは、完全親子会社関係を簡易に創設し得るような制度、具体的には株式交換制度早期創設の要望が寄せられたわけでございまして、今回の改正はこのような要望をも考慮して作成したものでございます。
  36. 達増拓也

    達増委員 先ほど渡辺委員質問の中でも触れられておりましたけれども、今回の法改正がない場合、現行法の枠の中で純粋持ち株会社を創設しようとする場合、いろいろなやり方が今でもあり得るわけでありますけれども、具体的にどういう問題点があるのかを御質問いたします。
  37. 細川清

    細川政府委員 現行法上の持ち株会社を設立する方法でございますが、まず一番目には、持ち株会社となろうとする会社子会社を設立し、これに対し現物出資、財産引き受け等の方法により営業を譲渡する方法でございまして、これはいわゆる抜け殻方式でございます。  それから、二番目の方法としては、持ち株会社となるべき会社を設立して、この会社が既存の会社株主から公開買い付け等の方法により株式を取得する買収方式でございます。  それから、銀行については、銀行持株会社の創設のための銀行等に係る合併手続の特例等に関する法律というのがございまして、これはいわゆる三角合併を認めているものでございます。  しかしながら、抜け殻方式につきましては、現物出資の対象となる財産について調査する手続に時間がかかる。それから、現物出資の対象となる債権とか不動産について個別に対抗要件を付さなければならないので非常に煩瑣である。特に、現物出資の中に根抵当権がある場合には、確定前の場合には、根抵当権設定者の個別の承諾が必要になってきます。そういう問題がありまして、非常に手続が煩瑣であるということがございます。  また、買収方式については、公開に応じない株主が必ず残存する、そういうことと多額の買収資金が必要になってくる。  それから、三角合併方式につきましては、銀行持ち株会社となろうとする会社とその完全子会社となる銀行、それぞれ設立しまして、そして合併して現物出資をするという非常に複雑な手続になるものですから、非常に手続が煩瑣である。また、既存の銀行が消滅する場合には、商号等の継続使用ができない、あと免許がどうなるかというような問題もございます。  そのために、こういった発行済み株式の総数を有する完全親子会社を円滑に創設するための制度としては、株式交換制度は適当であるということから、その創設が求められていたところでございました。
  38. 達増拓也

    達増委員 今回の改正案の核心的な部分は、株式交換制度ということで、株式交換契約書を作成し、これについて株主総会で特別決議による承認があれば、全体としての株式交換が実現する。これによって、新たに子会社になる方の会社株主一人一人から株を買い集めなくても、いわば多数決でそういう株式の移転が行われるというところにあるのだと思います。  これは、効率という点では極めて妥当なことだと思いますし、また、一々市場で株主一人一人から株を買い集めていくに伴うさまざまな混乱とか思惑とか、そういうことを考えれば非常に合理的だと思うわけであります。いわば株主総会決定で、少数の反対がいたとしても全体として株式が移転して、つまり、株主は新しい親会社の方の株主にとにかく全員一斉になってしまう。けれども、それに反対している、あるいは反対していた少数者、子会社になる方の会社に愛着があって、そっちの株主だから自分は株主でいるのだとか、新しい親会社株主にはなりたくないとか、そういう株主に対する措置はこの改正案ではどのようになっているのでしょうか。
  39. 細川清

    細川政府委員 確かに、株式交換をする場合には、その条件や相手方の会社内容いかんによってはそれに反対する株主があろうかと思います。  この改正法案におきましては、反対する株主について株式買い取り請求権というものを認めております。具体的には、まず反対株主は、株式交換契約書の承認を行う株主総会に先立って反対の意思を会社に対して書面で通知し、かつ当該株主総会において反対すれば、自己の有する株式を公正な価格で買い取るべきことを会社に対して請求することができるということになっております。価格は当事者の協議で定めますが、定まらない場合には、裁判所において非訟事件手続によって定めてもらうということになっているわけでございます。
  40. 達増拓也

    達増委員 株式交換契約に反対する株主への措置、そもそも株式交換自体が瑕疵があるのではないか、無効なのではないか、そういう主張をする株主等に対して、この法案では、株式交換の日から六カ月以内であれば、その無効の訴えを提起することができるというふうになっているわけでありますけれども、これは具体的にどういう理由でこうした無効の訴えが提起されるというふうに想定されているのでしょうか。
  41. 細川清

    細川政府委員 商法上、このような無効の訴えというものは多数ございます。例えば合併無効の訴えとか、それから決議取り消しの訴えとかさまざまございますが、こういった問題については、商法は特別の具体的な事由を規定しないで解釈にゆだねているわけでございます。  それで、株式交換の無効の訴えにつきましては、その無効原因と考えられるものを申し上げますと、まず株式交換契約自体について錯誤、詐欺等の一般司法上の瑕疵があるという場合。それから、株式交換契約書を作成しなかったといった場合。株式交換契約書に法定の重要な記載事項を欠いていたという場合。株主総会株式交換契約書の承認決議に取り消し、不存在、無効の原因がある、そういうような場合が想定されると考えております。
  42. 達増拓也

    達増委員 意欲的で既にいろいろ勉強している企業等であればそうした問題は発生しないと思いますけれども、新しい制度であります。そうした混乱が生じないように、制度趣旨を徹底して、いい形でこれを利用してもらえるように、特に大きい企業、法務部などしっかりしているところはいいのですけれども、ベンチャー企業系でこういう手法をどんどん取り入れていきたいとかいうところに対しては、そういう指導をきちっとやっていっていただきたいと思います。  さて、そういうふうに非常に合理的に完全親子会社関係を創設するためのこの制度でありますけれども、今の株主総会の承認があれば株式交換できるという全体の中で、特に株主総会の承認を要しない簡易株式交換制度というものもここで創設されているわけであります。これも合理性の要求、効率の要求と、一人一人の株主権利をどこまで尊重するか、そういういろいろな中で創設されたこの簡易株式交換制度ということだと思いますけれども、その趣旨を確認したいと思います。
  43. 細川清

    細川政府委員 本法案におきましては、株式交換は、株主の利害に重大な影響を及ぼす可能性がありますことから、原則として、株主総会の特別決議事項としているわけでございます。  しかし、合併の場合も同じでございますが、非常に大きな会社と小さな会社関係の場合には、株主権利に余り大きな影響を与えない場合があるわけでございます。具体的に申しますと、完全親会社となる会社の規模が非常に大きくて、小さな会社株式交換する場合、よく鯨がメダカを飲むような場合というのですが、そういう場合には、完全親会社の方の株主の持ち株比率というのは、株式交換によって影響される度合いが非常に軽微でございます。そこで、そのような場合について、株式交換の手続の簡素合理化を図る見地から、株主総会の承認を得ずに株式交換することができることとしたものでございます。株主総会の承認を得ずにできるということは、取締役会の決議でできるということでございます。  ただし、反対株主の有する株式の総数が完全親会社となる会社発行済み株式総数の六分の一以上であるときは、簡易株式交換は認めないということにしております。これは、六分の一以上ございますと、総会を開きましても可決される見込みがないということになるわけでございます。  なお、簡易株式交換要件を満たす場合でありましても、株式交換比率が著しく不公正な場合など、完全親会社株主が不利益を受ける場合もありますから、こういった場合には、通常の株式の交換の場合と同様に、会社に対して株式交換に反対する意思を事前に通知した株主については、株式買い取り請求権を認めているという制度になっております。
  44. 達増拓也

    達増委員 やはり株主一人一人の利益の保護や、また全体として公正な取引、契約が成立するように、その点も留意していただきたいと思います。  さて、親会社子会社関係について、親会社株主の保護のため、今回の改正案では、子会社業務内容等の開示充実等ということで、さまざまな新しい制度がここでも創設されております。親会社子会社関係というのは現在もあるわけで、それなりの検査ですとか監督ですとか、そうした制度があるわけでありますけれども、今般このように一気に拡大、充実する、その内容趣旨について説明いただきたいと思います。
  45. 細川清

    細川政府委員 親会社株主は、子会社の事業経営及び財産状況について大きな利害関係を持っております。特に純粋持ち株会社の場合には、持ち株会社の業績は結局は子会社の業績に左右されるわけですから、親会社株主としては、子会社の経営状態について非常に関心があるということになるわけでございます。  したがいまして、親会社株主としては、親会社の取締役が子会社株主としての権限を適正に行使することによって子会社の経営に関与することにもなるわけでございます。親会社の取締役が子会社を適正に管理していないという場合には、親会社株主は、親会社の取締役を解任したり、あるいは代表訴訟によって親会社の取締役の経営責任を追及するということになるわけでございます。親会社株主がこのような権利を的確に行使することができるようにするためには、親会社株主子会社業務内容親会社の取締役による子会社の管理状況を把握することが必要でございます。  そこで、今回の改正案では、親会社株主子会社業務内容等を開示することとしたものでございまして、その具体的内容は、定款、株主名簿、それから端株主の名簿、それから取締役会の議事録、それから株主総会の議事録、計算書類といったものを裁判所許可によって開示できるようにいたしたわけでございます。
  46. 達増拓也

    達増委員 今回の法改正の第三の柱として、会社の資産評価における金銭債権等時価評価を認めるという内容があるわけでありますけれども、この部分の概要と趣旨について説明をお願いいたします。
  47. 細川清

    細川政府委員 現在の商法におきましては、株式会社の資産の評価の方法としては、原則としては、損益法によりまして、取得原価主義を採用しているわけです。そのほかに、金融資産が非常に値下がりした場合には、その回復の見込みがないと認められる場合には、強制的な低価主義を採用しているわけです。それから、もう一つは、任意的な低価法というものを採用することができるという選択を認めているわけでございます。  ところが、最近の経済情勢によりまして、社債、株式あるいは金銭債権等のいわゆる金融資産につきましては、時価で評価することが投資家等に対する会社財産状況のディスクロージャー上適当であるという考え方が国内的にも国際的にも非常に一般的になってまいりました。  まず国内的には、大蔵大臣の諮問機関でございます企業会計審議会で、本年一月二十二日の意見書におきまして、金融商品についての時価会計制度を採用すべきであるという意見書を公表しておるわけでございます。それから、国際的には、国際会計基準委員会が作成しました国際会計基準の暫定基準でございますが、これでもやはり金融商品については原則として時価評価をすべきであるという意見が載せられているわけでございます。  そういったことから、この改正法案では、企業の資産状況を適正に表示するとともに、国際的な会計基準との調和を図り、証券取引法上で問題になります企業会計原則との整合性も確保するということから、市場価格のある金銭債権の一定の資産について時価評価を可能とする方法での商法上の資産の評価基準の見直しを行うこととしているわけでございます。  したがいまして、今回の改正時価評価は、これは選択的なものでございまして、時価評価を強制するものではないわけですが、市場のある金融商品については、基本的には時価評価をすることができるという形の改正でございます。
  48. 達増拓也

    達増委員 以上、今回の商法等の一部を改正する法律案について質問いたしまして、答弁を聞いておりますと、今回の株式交換制度の導入等というのは非常に大きな改革でありまして、大きな前進だと思うわけでありますけれども、同時に、株主総会のあり方ですとか取締役会のあり方、また監査役の重要性、そうした会社の組織また会社のあり方すべてにわたって大きくそのあり方が問われてきているということも感じるわけであります。  時代がどんどん移り変わり、情報化、国際化といったところが進みまして、会社の経営のあり方についても新しい手法がどんどん開発されている中で、この我が国の商法、それに関連する法の全体的な検討、そして必要な改革、改正、今一歩一歩、一つ一つやっているところではあるのですけれども、ここは、政治の側でも、全般的な大きい改革、そういう検討を進めていかなければならないということで、既にそれぞれの専門、経験をお持ちの先輩議員が中心にそうした検討作業をやっているわけでありますけれども、改めて、そうした作業を一層充実させて、我が国における経済構造改革を法制度の面からも進めていかなければならない、そういう思いを感じたということを付言いたしまして、私からの質問を終わります。  ありがとうございました。
  49. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、上田勇君。
  50. 上田勇

    ○上田(勇)委員 公明・改革の上田でございます。  商法等の一部を改正する法律案につきまして、質問をさせていただきます。  今回の法改正は、手続面、技術的な面に及ぶ点も多いものですから、若干細かい点に及ぶ質問になるかもしれませんけれども、ひとつ御了解をいただきたいと思います。また、先ほどから同僚議員の質問がございまして、何点か予定していたものと重複するものがございますけれども、それらはなるべく重複は避けるような形でさせていただきたいと思いますので、御通告しておる順番とは若干変わるかもしれませんけれども、ひとつ御了解をいただきたいというふうに思います。  まず最初に、今回の改正案の中の、資産の評価のところについて何点か御質問をしたいと思います。  先ほどからお話にも出ておりますが、本年一月に企業会計審議会が定めました金融商品の会計基準におきまして、有価証券、金銭債権等の評価基準が原則として時価評価の方向で非常に細かく定められております。一方、本法案では、従来の取得原価方式と時価評価の選択というふうになっております。  これは、一方で非常に細かく定めているのに対して、本法案では選択というふうに、任意の選択の幅を設けている理由につきまして、まずお伺いしたいと思います。
  51. 細川清

    細川政府委員 今回の法案におきまして、時価評価が強制ではなくて選択とされている理由でございますが、我が国には株式会社が百二十万社ございまして、そのうちの、資本金五億円以上の大会社は一万社しかないわけでございまして、ほとんどが中小会社である。そういう前提で考えますと、まず第一に、金融資産の取引や保有が少ないために、時価評価を行ってもさほど評価損益が出ずに、会社の財政状態等の表示に対する影響が少ない会社が相当数あるということが考えられます。  二番目の理由としまして、時価評価を行う場合には、毎回決算期において評価がえをすることが必要となりまして、これが会社にとって相当の負担となること、特に中小会社には負担となることなどから、すべての会社に一律に金融資産の時価評価を義務づけることは必ずしも適当であるとは言えないというふうに指摘されているわけでございまして、そういうことから選択制にしたわけでございます。  もっとも、公開会社につきましては証券取引法上あるいは企業会計基準の上で時価評価が強制されるということになるわけでございまして、投資家に対する保護といたしましては、そちらの方で対応できているのではないかというふうに考えているところでございます。
  52. 上田勇

    ○上田(勇)委員 中小零細企業等の問題については理解できるところでございます。とはいっても、やはりこれはどうもダブルスタンダードになっているのではないのかなという気もいたします。  そこで、海外の点につきましてもお伺いしたいのですが、時価評価が国際的な会計基準の主流になっているというふうに私は承知しておりますけれども、アメリカやヨーロッパの諸国においても、こうした会社法においては、中小企業など一定の条件のもとということかもしれませんが、原価と時価の選択制というような制度が存在するのでしょうか。
  53. 細川清

    細川政府委員 評価に関する外国法制でございますが、まずアメリカでは、売却目的有価証券と売却可能有価証券については時価評価をする、それから満期保有目的のものについては原価評価をするという制度が採用されております。イギリスでは、流動資産については低価法または時価法の選択を許しておりまして、固定資産である投資有価証券等については原価評価または再評価法が採用されております。ドイツでは、流動資産については低価法、固定資産である投資有価証券等については原価評価という制度が採用されております。フランスでは低価法が採用されております。  このように、諸外国のうち、イギリスでは流動資産であるものについて時価評価を選択的に認めているわけですが、今回の商法改正案のように、いわば見取りの評価基準を選択的に認めている国は外国にはないようでございます。これはやはり我が国の会社の実情によるものでございまして、中小企業を含めてすべての会社において一律に金融資産の時価評価を義務づけることは、その負担から考えて必ずしも適当ではないという考え方でございます。
  54. 上田勇

    ○上田(勇)委員 上場企業においては投資家保護という意味で統一されているというお話でございましたし、それは当然のことだというふうに思います。ただ、株式を上場していない中小企業であったとしても、確かに株式市場での投資家というのはいないのでしょうけれども、これに融資を行う金融機関はあるわけでございますし、そうした立場からすると、企業の経営状態は正しく評価する必要がありますし、それのためには、横断的というのでしょうか横並びについても、それぞれの企業で違う評価の選択をしているということになると、なかなか評価が正しくできないのではないのかなというような感じもいたします。  特に、中小の中でも、これから育成していこうというようなベンチャー企業には投資や融資という道をこれから広げていこうといっているときに、企業が用いている会計の評価方法が会社ごとに異なっているというのでは、なかなかその辺は評価として難しい面があるのではないかと思うのです。  そこで、先ほど、中小企業等におきましては毎年評価がえをしなければいけないのは負担になるというような話があったのですが、ただ、市場価格が形成されている債券とか株式というのはそれほど難しいことにはならないのではないかと私は思うのです。というのは、これは常に市場の評価というのが公表されているわけでございまして、それに、もちろん、市場価格のないものについては、あるいはそれが難しいものについては原価でいくしかないのでしょうし、それは、当然のことながら、中小企業に限らず大企業においても同じことなのだと思うのですけれども、市場で取引されているような債券、株式、こうした評価が本当にそれほど難しいのかなというふうにちょっと疑問に思うわけでございます。  そういう意味で、もちろん商法だけが評価を規定しているものではございませんので、いろいろな法律によって適正に定められているということではあると思いますが、いずれにしても、今後の課題として、こうしたダブルスタンダードの解消というのはひとつ御検討いただかなければならないのではないのかなと考える次第でございます。  それで、先ほど質問の中で、この時価評価の評価益についてのバランスシート上の計上の方法については御質問が出ました。それは理解するところでございます。そこで、それと関連するのですけれども、今回の法案の中で、二百九十条一項六号で、時価評価によって生じた評価益について利益配当等の制限を設けておりますけれども、その趣旨理由についてお伺いしたいと思います。
  55. 細川清

    細川政府委員 この時価評価益はあくまでも評価益でございまして、実際に売買したわけではございませんので、未実現の利益でございます。そういう意味で不確実なものでございますので、これを配当の財源に認めますと、会社債権者を害するおそれがあるということでございます。  これは現在持っているものですから、現在は高い時価がついていても、将来値下がりするかもしれない。値下がりした場合を考えますと、先に高い評価で配当いたしますと、結局、会社の資産の充実が害されるということになるわけでございます。そこで、時価評価による評価益については、配当財源である純資産額から控除するということにいたしたわけでございます。
  56. 上田勇

    ○上田(勇)委員 それでは次に、株式交換の方に移らせていただきます。  まず最初に、きょうは公正取引委員会にも来ていただいておりますが、平成九年の十二月に独禁法が改正されまして、純粋持ち株会社の設立が解禁をされました。それ以降の持ち株会社の設立の状況についてどのようになっているのか、把握しているところにつきまして御報告をいただければというふうに思います。
  57. 山田昭雄

    ○山田政府委員 お答えいたします。  先生御案内のとおり、独占禁止法九条におきましては、持ち株会社と国内の子会社の総資産の合計額が三千億円を超える場合には、毎事業年度終了後三カ月以内に私どもに事業報告書を報告するという規定になっておりまして、また、持ち株会社を新設した場合につきましても、設立後三十日以内に届け出なければいけないということになっております。  御質問改正後の状況でございますが、平成九年十二月に施行されて以降、報告件数ですが、平成九年度は報告書はございませんでした。平成十年度になりまして二件、報告書の提出があったところでございます。新設はございません。
  58. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今の報告の数字で、届け出二件、新設ゼロということでございましたけれども、この報告の数字というのはどのように評価されているのでしょうか。  独禁法を改正しました目的、趣旨というのは、今御報告いただいた今の状況というのは、十分に達成されているものというふうにお考えなのでしょうか。その辺の御見解を伺いたいと思います。
  59. 山田昭雄

    ○山田政府委員 お答えいたします。  確かにこれまでのところは既に設立いたしました持ち株会社は極めて少ないわけでございますが、私ども、新聞報道等でも、持ち株会社を計画している企業、あるいは最近の企業の再編成あるいは企業合理化で持ち株会社を活用したいというような企業、こういったものについても注視しているところでございますが、これは必ずしも、いろいろ計画しているという報道等もされているところでございます。  私どもといたしましては、現在御審議されております株式交換あるいは株式移転制度等、持ち株会社の活用を容易にするための施策が検討されておりますが、これらの諸制度の整備とともに今後持ち株会社を活用する企業もふえてくるのではないか、このように見ているわけでございます。
  60. 上田勇

    ○上田(勇)委員 そういった持ち株会社の構想に関する報道というのは私もよく接するのでございますが、今の御報告にもありましたように、現実にはまだ今のところ余り進んでいないというところだというふうに思います。  先ほどからその原因の一つが、今の商法の規定がそういった持ち株会社の設立を想定したものとして十分に整備されていないというようなことが挙げられております。現行商法におきましても、そういう持ち株会社を設立する方法に、先ほどからの質疑にも出ておりますが、抜け殻方式であるとか買収方式、また第三者割り当て増資方式といった方法があるわけでございます。それぞれの方法に問題やいろいろな障害があって、これまでのところ必ずしも十分に目的としたところは達成されていないというところではないかというふうに思います。各方法の問題点につきましては、先ほど質問でもございましたので、あえて御質問いたしません。  そこで、法務省にお伺いをしたいのですが、今公正取引委員会の方からも言及がございましたけれども、今回の改正によりまして株式交換による完全親子会社の創設が認められるわけでございますけれども現行商法の規定でいろいろとあった問題点、障害、そういったものはこれでクリアできるという御説明だというふうに思います。  そういう意味で、今回の改正を奇貨といたしまして、持ち株会社の創設は経済界におきましても経営の効率化、機動力を高めるという意味で、先ほどもあったように、そういう構想があるということはずっと報道されているのですが、今回の改正によりまして結果的にこういった持ち株会社の創設が促進される、増加するものというふうに認識されているのでしょうか。その辺の御見解を伺いたいと思います。
  61. 細川清

    細川政府委員 先ほど公正取引委員会から御報告がありましたように、現在のところ持ち株会社の設立というのはそれほど活発ではないというふうに聞いておりますが、政府の産業競争力会議におきましても、経済界の代表からはこの法案の整備を早急に行うべきであるという御意見が出されまして、それを前提に具体的に持ち株会社化を進めたいというふうに表明されているところがあるわけでございます。  これは相当報道機関等でも報道されておりますし、また個別に聞いたものもございます。具体的な名前を出すのは適当ではないと思いますけれども、我が国を代表する有数の企業が商法改正を待っているという状況でございまして、この法案の改正が成立すれば、早速ことしじゅうにも株主総会を開いてこれを決議すると予定している会社が相当数あるのではないかというふうに見込んでいるところでございます。
  62. 上田勇

    ○上田(勇)委員 私もいろいろな経済団体等からそういった構想を持っている会社があるというお話は具体的にも伺っておりまして、経営の方法により自由度を高めていくという意味では、いい方向での改正になるというふうに承知しているところでございます。  ただ、これまでも、独禁法改正のときにも実は持ち株会社、純粋持ち株会社の問題点につきましてはいろいろな議論がございました。特に今回の改正によりましてそうした持ち株会社がふえていくだろうということを想定いたしますと、持ち株会社の問題点につきまして若干御質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず最初に、純粋持ち株会社の場合には、株主というのは親会社株主でございまして、一方、実際の事業は子会社が行っている。したがって、株主が事業経営に直接関与できないという点に問題があるのだという指摘がございます。  本改正によりまして、親会社株主に対する子会社の各種の経営情報へのアクセスは相当改善されるというふうに思いますし、それは評価するものでございますけれども、それでも親会社株主は、実際に事業を行っている子会社の経営についての権限のうち、子会社の取締役の選任権がない、また子会社の取締役に対する株主代表訴訟を起こす権利がないなどの問題があるというふうに思います。  まず最初に、親会社株主子会社の取締役の選任権、あるいは子会社の取締役に対する株主代表訴訟、こうした権限は今回でも設けられていない、そういうふうな理解でよろしいのでしょうか。
  63. 細川清

    細川政府委員 原理的には、親会社子会社は全くの別法人でございますので、親会社の取締役が子会社株主としての権限を行使して子会社の役員を選任するということになりますので、親会社株主親会社の取締役に対して意見を反映することによって子会社のコントロールとかそういうことができるという、いわば間接的な方式になっているところでございます。ですから、その点は御指摘のとおりでございます。
  64. 上田勇

    ○上田(勇)委員 そういう意味で、通常の会社株主の権限に比べて、経営に関与するのに比べて、親会社の取締役の選任を通じて、あるいは親会社株主総会を介してという関与になってくることで、一方、親会社は何をやるかといえば、実際の事業は子会社が行うわけでありますので、親会社の取締役が子会社の取締役の選任あるいは子会社の経営を管理するということになると思うのです。  そうなりますと、通常の会社に比べて、株主会社経営に対する権限、権利といったことが相当実質的に制限されるのではないかというふうに思いますけれども、その辺は問題はないのでしょうか。御見解を伺いたいと思います。
  65. 細川清

    細川政府委員 確かに、既存の会社子会社になりますと、子会社株主親会社株主になりまして、直接に子会社に対して権限がなくなるわけでございます。これはいわゆる株主権の縮減の問題として議論されている問題でございます。  そういうことでございますので、この改正法案では、従来の子会社になる会社株主の保護ということを考えておりまして、まず事前及び事後の情報開示をする、それから、株式交換契約書につき、株主総会の普通決議ではなくて特別決議による承認が必要だということでいたしました。  それから、先ほど申し上げましたように、反対株主には株式買い取り請求権を認める等の保護を図っております。それから、株式交換により子会社の経営に直接関与できなくなる株主を保護するために、親会社株主に、子会社株主総会議事録、取締役会議事録、定款、株主名簿、計算書類、会計帳簿等の閲覧請求権を与え、それから、親会社監査役子会社調査権を有する、あるいは監査報告書にその子会社調査事項を記載する、そういったことをいたし、さらには裁判所の選任した検査役員も子会社調査権を認めるということでいたしたわけでございまして、そういうことでこの問題に対処したいというのがこの法案の考え方でございます。
  66. 上田勇

    ○上田(勇)委員 純粋持ち株会社の解禁の際に、もう一点議論になった点が、子会社の方の労使の関係の問題でありました。きょう労働省にもお見えをいただいておりますので、その点について何点かお伺いをしたいのですが、その問題の指摘というのは、子会社の労働者にとりまして、交渉の対象となる使用者というのは子会社の取締役になります。しかし、この子会社の実質的な経営判断は親会社の取締役が行っているというケースがあるのではないか。そうすると、その子会社の労働者は、当事者能力のない子会社の経営者を相手に交渉等を行うことによって、事実上その労使の交渉がうまく機能しないというような指摘がありますけれども、これについて労働省、いかがお考えでしょうか。
  67. 坂田稔

    ○坂田説明員 ただいま先生指摘の問題でございますが、一般論として申し上げますと、持ち株会社子会社はそれぞれ別個の存在でございますので、子会社には当然子会社としての経営判断があろうかと思います。また、今までのところ、持ち株会社におきまして先生指摘のような問題が特段生じているとは承知しておりません。  ただ、いわゆる親子会社関係におきましては、従来から、判例によりまして、形式的には雇用主の地位にない場合でありましても、労働者の労働条件に関しまして、雇用主と同一視される程度に現実的かつ具体的にその労働条件を支配、決定することができる地位にある場合につきましては、いわゆる使用者というふうに認められてきております。したがって、今後持ち株会社におきましても、もしそういうことがございましたら、この考え方が適用されていくことになろうかと思っております。
  68. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今お話にあったように、労働省からいただいた資料の中にも、個別の案件で、相当な数がいわゆる親会社の経営者にそうした使用者としての義務を課しているというような事例が多くございます。今具体的な問題点は起きていないということでございましたけれども、そういったこともあって、いろいろ懸念が表明されていることではないかと思うのです。  労働省にもう一つお伺いをしたいのですが、これは平成九年五月十四日の衆議院商工委員会で独禁法改正を議論したときの委員会でございますが、その中の附帯決議で、四番目としてこういうのがございます。「持株会社の解禁に伴う労使関係対応については、労使協議の実が高まるよう、労使関係者を含めた協議の場を設け、労働組合法の改正問題を含め今後二年を目途に検討し、必要な措置をとること。 なお、右の検討に当たっては労使の意見が十分に反映されるよう留意すること。」という附帯決議が付されております。参議院においても同様のものがされておりますが、ちょうど二年を経過したわけでございますけれども、どのような措置をとられたのか、また、これまでどういうような取り組みをされてきたのか、お伺いできればというふうに思います。
  69. 坂田稔

    ○坂田説明員 平成九年の独禁法改正を受けまして、労働省といたしましては、労使関係者に学識経験者を加えまして、持ち株会社解禁に伴う労使関係懇談会というものを設置しております。これまで九回にわたりまして、企業グループにおける労使関係の実態、あるいは諸外国の実情等を調査してまいりまして、現在、最終的な結論に向けまして精力的に御議論をいただいているところでございます。  労働省といたしましては、ことしの秋ごろを目途に報告書の取りまとめをお願いしたいと思っておりまして、今後、その結論を踏まえまして対処してまいりたいというふうに考えております。
  70. 上田勇

    ○上田(勇)委員 先ほどの御説明で、この改正を奇貨といたしまして、そういう持ち株会社の設立が増加していくだろう、促進されていくだろうというようなことでございましたので、ぜひそれに対応する取り組みを労働省の方でもお願いをしたいというふうに御要望申し上げたいと思います。  それでは、若干細かい点にも及ぶものでございますけれども、今回の株式交換内容につきまして、何点か引き続き質問させていただきたいと思います。  まず最初に、先ほどの御説明では、現行商法での持ち株会社設立の方法として認められております買い取り方式においては、株主の意思によって買い付け等に応じない少数株主が残るかもしれないという問題点、先ほど答弁をいただきました。一方、本改正法におきましては、株主総会の特別決議によりまして、反対をしている株主についても、その意思とは関係なく、いわば強制的に交換または三百五十五条の規定に従って買い取るというような形になる、そういうことができるというふうになっており、株主権利に一定の制限を加えることによりまして、完全子会社の設立を円滑にすることができるようにしているというふうに承知をいたします。  そうすると、現行商法の買収方式等の場合には株主の意思、権利が尊重されるのに、今回の改正で、株式交換の場合には制限を加えるということについて、均衡を欠くのではないかというふうに思うのですが、その辺は問題はないのでしょうか。     〔委員長退席、山本(幸)委員長代理着席〕
  71. 細川清

    細川政府委員 改正法案中の株式交換は、これは改正法上の組織法上の行為として位置づけられているわけでございます。この組織法上の行為としては、最たるものは合併でございますが、合併につきましてはやはり特別決議によってなされますので、反対の株主もこれに強制されるということになるわけで、その保護のために、合併におきましても株式買い取り請求権という制度を認めているわけでございます。  株式交換制度は、経済的には合併と同じでございまして、ただ、法律的に人格が別であることは残るということでございます。ですから、従来の商法との連続性につきましては、合併との均衡を考えますと特に問題はないというふうに私どもは考えているわけでございます。
  72. 上田勇

    ○上田(勇)委員 この法案の三百五十五条のところの規定では、いわゆる株主総会に先立ち会社に対し書面で株式交換に反対の意思を通知し、かつ株主総会において株式交換契約書の承認に反対した株主請求することができるということになっているわけでございますけれども、事前に通知をしなければならないというような条件が加えられておりますが、本来ある株主としての権利に制約を加える代償としてこの措置が設けられているのではないかというふうに思うんですが、その上で、さらにこのような事前の通知等の制限を加えるということについて問題はないのでしょうか。御見解を伺いたいと思います。
  73. 細川清

    細川政府委員 株式買い取り請求権の行使方法については、今回の改正法案の考え方はこれも合併の場合と同じ考え方でございます。  それで、事前の通知それから総会の出席での反対と両方要求しておりますのは、要するに反対の意思が明確にされているということを確認することができる手段という意味でございまして、この点につきましては、昨年意見照会をいたしましたが、特に問題だという意見は聞いておりません。ですから、これで相当であるというふうに考えているわけでございます。
  74. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ちょっと確認をさせていただきます。  ということは、その株式交換に反対であったとしても、事前に通知していなかったり、あるいは事前に承知していなかったために通知できなかったといった場合には、この買い取り請求権というのは行使はできないということなんでしょうか。
  75. 細川清

    細川政府委員 その場合には、法律上の要件に当たりませんからできません。したがいまして、その方は親会社の株式を付与されますので、その会社関係を持ちたくなければ、その時点で、その親会社の株式を売却するというような方法をとることになろうかと思います。
  76. 上田勇

    ○上田(勇)委員 もちろん、これは理論的には株式交換をしても、株主のいわゆる経済的にはニュートラルということであるので、そういう制限を加えることも認めているんだというふうに思います。  そうすると、ここで大事になってくるのは、株式交換を行う際の交換比率が公正に定められなければならないということだと思いますけれども、その公正さというのはどのようにして確保されるのか。御説明をいただきたいと思います。
  77. 細川清

    細川政府委員 御指摘のとおり、交換比率というのはどちらの株式にとっても非常に大事でございます。そして、交換比率は基本的には双方の会社の資産状況を反映すべきものでございまして、その資産状況を適切に反映していれば正当な交換比率ということになるわけでございます。  そこで、この交換比率が適正かどうかを各株主が判断するために、まず各会社貸借対照表、損益計算書等の計算書類を株主に事前に開示すべきこととしております。この貸借対照表は、交換比率の適否を判断するためのものでございますので、できるだけ新しいものがよろしいということで、承認総会の会日の前六カ月内の日において作成された貸借対照表開示すべきこととしているわけでございます。  ただ、これだけではまだ十分ではございませんので、その開示すべき計算書類が最終の貸借対照表、すなわち決算期の最後につくったいわゆる決算の貸借対照表ではない場合には、その正確性を担保するために、監査役の監査を経るなどの法定の手続を経て、あるいは株主総会の決議を経た、そういった法定の最終の貸借対照表をあわせて開示することによりまして株主が交換比率の適正を判断することができるようになっているわけでございます。
  78. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今お話にもありましたけれども株式交換を行おうとする場合には、その交換比率の公正さが非常に重要だ。そのためには、二つの会社が交換をしようとする場合に、それぞれ、一方の会社はやはり相手の会社の実態を極めて正確に把握する必要があると思いますし、それを行うことがその会社の取締役の株主に対する責任だというふうに思います。  もちろん、交換を行おうとするそれぞれの会社はきちんとした手続にのっとって財務諸表等を公表しているわけでございますし、それに基づいて交換の比率等を決める契約書を交わすというようなことになっていくんだと思うんですが、どうも最近は、我が国の優良企業の中にも、公表している財務諸表等にかなり正確でないもの、あるいは偽りのものがあるということも言われております。  そうしますと、やはり自分の会社株主に対する責任として、それぞれ株式交換を行おうとする会社の経営陣は、そういった公表されている財務諸表やいろいろな経営情報が本当に正確なものなのかというのを確認する必要があるのではないかというふうに思います。そのためには、一つの方法として、検査役による調査を相互乗り入れという形で課すべきではないのかなというふうにも考えますけれども、その辺、御見解を伺いたいと思います。
  79. 細川清

    細川政府委員 交換比率の問題は合併の場合の合併比率の定め方と全く同じ問題でございまして、要するに片っ方に有利になれば他方に不利というふうになる関係でございますので、双方の会社とも相手方の会社の資産状況を綿密に調査した上で比率を決めるということになろうと思うわけです。ですから、利害の対立する両社が協議の上比率を決めるということにおいて、その手続において、既に適正な方向に向けての作用が働くというふうに考えられるわけでございます。  ですから、その上でそれを公表し、かつ最終の貸借対照表等を開示することによって、株主が判断して、最終的にこの株式交換を承認するかどうかを決定するという仕組みでございまして、この仕組みは合併の場合にも全く同じでございまして、今のところ、これでそれほどの問題は指摘されていないわけでございます。  ですから、こういうことで、株式交換についても大きな問題はなく、適正さが担保されるのではないかというふうに期待しているところでございます。
  80. 上田勇

    ○上田(勇)委員 それでもう一つ、先ほどちょっと言及をいたしました三百五十五条の株式買い取り請求権関係でお伺いをしたいと思うんですが、この条文の趣旨というのが、株式交換に反対の株主は、会社に対し、自己の有する株式を承認の決議がなければその有すべき公正な価格で買い取るべきことを請求することができるということが書いてございます。したがって、それは株主が、先ほどちょっと触れましたけれども法律に定められた適正な手続にのっとって反対をした場合に、公正な価格で買い取ることを請求することができるというわけでございます。  しかし、この株主はこの株式交換に反対しているわけでございますので、いろいろな理由があることはあるものというふうには思われますが、やはり一つ重要な根拠として、その株式交換契約書に定める交換比率に不服がある、あるいは今回の株式交換による親子会社関係ができることによって不利益が生ずるというようなことがあって反対しているということも考えられるのではないかというふうに思います。  そうしますと、先ほど答弁をいただいた株式交換の公正な交換比率に対する認識と、反対している株主は、違う、それは公正でないのではないかというふうに思っているということをやはり考えなければいけないのだというふうに思います。そうすると、その株式についての評価が、会社による評価と、それから株主、反対している株主の評価が異なるわけでございますけれども、その上で、さらに公正な価格というのはどのように決定をしていくのでしょうか。     〔山本(幸)委員長代理退席、委員長着席〕
  81. 細川清

    細川政府委員 株式の買い取り価格は、まず株主会社の協議によって定められることになりますが、この協議が調わないときは、株主請求により裁判所が定めることになります。これは、三百五十五条の二項で二百四十五条ノ三の第三項を準用しているわけで、そういうことになるわけでございます。  この裁判の手続は、通常の訴訟手続ではございませんで、非訟事件手続法に基づいて行われる手続で、簡易迅速に行われることが予定されておりますが、この手続の中で公正な価格が定められるわけでございます。裁判所は、両方の意見を聞きますが、必要な場合には、この価格の決定のために公認会計士等の専門家に鑑定を依頼することも可能でございます。  なお、「承認ノ決議ナカリセバ其ノ有スベカリシ公正ナル価格」と申しますのは、合併や営業譲渡の場合の株式買い取り請求権の場合の価格と同じ規定ぶりでございまして、この意味は、例えば合併とか営業譲渡とか株式交換等が問題とならなかったならば株式が有すべきであった公正な価格という意味でございます。そういうことが公表されますと、それに影響されまして一般的に株価が動きます。そういうものが公表されなかったとしたらば有すべき公正な価格ですから、結局、それが公表される前の価格を参照して、裁判所は公正な価格を定めるということになるわけでございます。
  82. 上田勇

    ○上田(勇)委員 それでは次に、法案の三百五十八条に簡易株式交換制度が設けられております。  そこで、この簡易株式交換制度を設けられた理由と、それから、この場合には株主総会の議決を省略することになっておるわけでありますけれども、そうした手続で株主権利というのは十分尊重されるのでしょうか。御見解をお伺いしたいと思います。
  83. 細川清

    細川政府委員 まず、株式交換というのは、株主の利害に重大な影響を及ぼすものでございますので、株主総会の特別決議を経なければならないということが原則でございます。  しかし、完全親会社となる会社が非常に大きな会社で、これに比較して非常に規模の小さな会社株式交換をする場合には、完全親会社となる会社株主に対しては影響が非常に少ないということになります。ですから、そういう場合には、株式交換の手続の簡素合理化を図る見地から、株主総会の承認を経ずに株式交換をすることができることとする簡易株式交換制度を設けたわけでございます。  これは、合併の場合にも、合併の仕方の簡素化ということで、前回の改正で簡易合併ということを新しく設けたわけでございまして、これに倣ったものでございます。  ただし、反対株主の有する株式の総数が、完全親会社となる会社発行済み株式の総数の六分の一以上であるときは、これは簡易株式交換はできないということになっているわけでございます。そういう場合には、総会を開いても承認される可能性が少ないわけですから、この場合には簡易の株式交換はできないということにいたしたわけでございます。  それから、株主保護の問題でございますが、簡易株式交換の場合であっても、御指摘のように、交換比率が著しく不公正だと考える株主が当然おられるわけで、そういう場合には、やはり株式の買い取り請求権を認めなければなりませんので、それは認めております。その場合には、総会がありませんので、総会には出席する必要はありませんので、公告された後に反対の意思を会社に通告すれば、買い取り請求権を行使することができるということになるわけでございます。
  84. 上田勇

    ○上田(勇)委員 次に、ちょっとこれは通告をしていない問題なんですけれども、きのう法案をいろいろと考えさせていただく中で、例えば、金融商品の中には、一つは転換社債というのがございます。それから、新株引受権つきの社債というのもあります。また、株式を買い取る権利のオプションがございます。いろいろと金融商品がありまして、現に株式の保有株主でなかったとしても、株式を購入する株主となる権利を持っているという立場、そういう金融商品をお持ちの方がおられると思うのです。  今回の株式交換制度の中では、こうした転換社債、それから新株引受社債、オプションなど、将来株主になる権利を現に有している人たちについてはどのような取り扱いになるのか、御見解を伺いたいと思います。
  85. 細川清

    細川政府委員 例えば転換社債の場合には、現在株主ではなくて、現在は社債権者でございまして、将来株主になり得る地位を有するにすぎないわけでございます。ですから、株式交換のときには、この人は、転換前は株主ではございませんので、株式交換の影響を受けないということになりますので、例えば子会社になった会社の転換社債を持っている人はそのまま社債権者であるわけです。その転換権が株式交換で失われるわけではありませんので、株式交換後転換を請求することは可能でございます。  そうなりますと、それは、その人だけが、親会社としては別の株主ができるということになるわけです。そういう場合に、それでは困るとすれば、親会社の方はさらにその株式を買い取るということも可能ですし、もう一度株式交換をするということも可能なわけでございまして、特にそういった転換社債の権利者あるいは新株引受権つき社債の権利者の利益に変更がないように、今回の改正法案ではなされているわけでございます。
  86. 上田勇

    ○上田(勇)委員 もう一つ、最近、報酬の方法としてのストックオプションというのもございます。これも従業員が株式を購入する権利を既に有しているということであるのですが、それについてはどういうお考えなんでしょうか。
  87. 細川清

    細川政府委員 これも同じでございまして、ストックオプションの場合にも、まずオプションを行使しなければ株主になっておりませんので、その権利株式交換によって影響を受けないということでございます。それで、その後に行使すれば、その人は子会社になった会社についても株式を取得することができるということになるわけでございます。
  88. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今の二つの件で、これはあくまで公正に行われて、いわゆる経済的な損失を受けないという場合においては、今おっしゃるとおりなんだというふうに思います。  ただ、転換社債にしろストックオプションにしろ、会社側が将来株式を購入する権利を与えているわけでございます。その場合に、当然これは必ずしも全部が株式を購入するというわけではなくて、そのときの経済的な判断に基づいて行使されるのでしょうけれども、今度は、会社側がその権利を与えた評価と受け取った側の評価、あるいは、転換社債を購入した側のその会社の株式に対する評価というのが必ずしも一致しているとは限りませんし、特に、将来の方向について一致しているというふうには限らないのだと思います。  そうなりますと、株主においても、その交換比率の公正さや、その他理由によって、株式交換を行うことによって不利益をこうむるというようなことからいわゆる買い取り請求権等の保護の措置が設けられているんですけれども会社側が発行したそういう将来の株主となる権利についても、当然、交換を行うことによって不利益が生ずるということが想定されるそういう転換社債やストックオプションを受けた側においても、何らかこの株式交換の実施に対して発言する権利が与えられてもいいんではないかというふうに思うんですけれども、その辺はいかがなんでしょうか。
  89. 細川清

    細川政府委員 転換社債の転換権を行使する方法、対価、手続等、あるいはストックオプションの行使の方法の対価等は、あらかじめ定められているものです。それを現実に行使するかどうかはその権利者の判断によるわけです。会社の業績というものはいろいろ変動いたしますので、将来株価が非常に下がったという場合には行使すると損になる、高くなっているときは、株価が上がっているときは行使した方が得だという判断をするわけでございます。ですから、会社の業績というのは常に変動するものだということが前提に転換社債とかストックオプションがなされているわけでございます。  だから、株式交換もそれと同じ一つの現象だというふうに考えればよろしいわけでございまして、現行法でも、転換社債を発行している会社が合併するというようなこともあるわけですから、必ずしもそれが権利を害するとは一般的には言えないんではないか、不利な場合にはそういう転換権なりオプションを行使しないという判断もまたあり得るというふうに考えるわけでございます。  もう一つの理由は、実は転換社債について、株式交換の手続に取り込むといたしますと、これは大変複雑な問題が起きてきまして、これは社債権者集会を開いてまた特別決議をしてもらうということになるわけですが、それは非常に煩瑣な手続になって、円滑な持ち株会社創設の手続を新設しようとする今回の改正の目的にも適合しないという判断でございます。したがって、最終的には、ただいま御指摘のような件につきましては、一切権利は変更しないという前提で今回の改正案ができているわけでございます。
  90. 上田勇

    ○上田(勇)委員 なぜこういう質問をさせていただいているかというと、先ほどちょっと、質問の関連で、三百五十五条には、株主総会において株式交換契約書の承認に反対した株主が、承認の決議がなければ有すべき公正な価格で買い取るという権利があるんだというふうなことであったのですが、ということは、いわゆる株式交換契約書が結ばれたことによって株式の価値が変わるということが当然想定されるんではないかということで、そうすれば、その契約書を挟んで、実は株主になる権利を持っているけれども株主になっていない人というのは、当然のことながら経済的にも利害が変わるという可能性があるのではないかということで御質問させていただいたんです。すべてをそういうふうに網羅するということは、今回の法案で手続を円滑化していこうということであれば、逆に煩雑なことにしてその趣旨を損ねるということはよくないということは私もよく理解できますので、この点につきましてはこの辺にさせていただきたいと思います。  それで、全体的に、近年、この法務委員会でも商法改正が毎国会のように政府側から提案されておりますし、また、議員立法という形でも法案の提出が相次いでおります。これは、我が国の経済や企業の活動のあり方が非常に変化が激しくて、従来の法制度がなかなか現実に沿っていけないということを物語っていることではないかというふうに思います。  ただやはり、一つ懸念されるのは、どうも法制度の方が現実の経済活動を追認するというような形で進んでいるのではないのかな。したがって、現実がこういうふうに進んでしまっている、あるいは、もう既に経済界の方でこの法律改正を待つかのように、新しい経営の形態であるとか新しいいろいろな手法を導入するというような形になっているわけでありまして、どうも商法、我が国の会社法全体の体系が、現実の企業経営の方が先行してしまっていて、法体系としてのそういう体系が失われてしまっているんじゃないのかなというような感じがいたします。  もちろん、スピードが重要なことだというのはよくわかりますし、それぞれの改正がそのときの要請に基づいて行われているということはよく理解をできますけれども、経済の国際化が本当に一層進んでいる中で、現状追認型というだけではなくて、商法の体系、とりわけ会社法の部分の体系については全体的な見直しが必要になってきているのではないのかなというような感じがいたしますけれども、最後にその点だけお考えを伺えればというふうに思います。
  91. 細川清

    細川政府委員 確かに、御指摘のとおり、商法改正は頻繁に行われているわけでございまして、これは、商法というものが経済の状況を反映するというせいもあるわけでございます。  ただ一方、これは企業のあり方、組織のあり方を定める基本的な法律だということでございますので、それはその時々の当面の事情だけで改正していいものではないということは確かに御指摘のとおりでございます。  ただ、最近非常に改正が頻繁なのは、やはり日本社会全体あるいは日本経済全体が大きな転換期に来ているというふうに感じられるわけでございます。日本の法制度は、百年前の明治維新のときに法典が編さんされ、戦後に大改革を受けたわけですが、現在は、大きな社会経済の変動状況にかんがみまして、第三の法制の変革期とも言われている時代でございます。  そういったことを考えてまいりますと、私どもとしては、従来から、この商法改正につきましては項目を定めて順番に実はやっていたわけでございまして、会社分割が最後に残っているんですが、合併とか持ち株会社とか親子会社の問題に始まって分割という問題もあるということは、従来五年ぐらいのスパンでやっていた計画の一環でございまして、産業界から要望があったからだけでやっているわけではないということを御理解いただきたいと思います。
  92. 上田勇

    ○上田(勇)委員 時間になったということで、終わります。
  93. 杉浦正健

    杉浦委員長 午後一時より委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十八分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  94. 杉浦正健

    杉浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。福岡宗也君
  95. 福岡宗也

    ○福岡委員 民主党の福岡宗也でございます。  商法等の一部を改正する法律案について御質問を申し上げたいと存じます。  今回の商法改正法律案は、平成九年の六月に成立をいたしました独禁法の改正、すなわち、この五十年間一貫して維持されてまいりました持ち株会社の全面的禁止という九条を改正いたしましてこれを解禁する、ただ、例外として事業支配が過度に集中する場合を除く、こういう形の全面的改正を行った。こういう改正を受けまして、現実に一〇〇%子会社の株式を保有するいわゆる完全親会社というものを成立させるという経済界の必要性に応ずるために、現行商法の規定に従ってこれをなすときのいろいろな障害、手続の煩雑というところを避けるための新しい株式交換制度、さらには株式移転制度を設置しようとする法案だというふうに提案の趣旨説明されているわけでございます。  したがいまして、持ち株会社の創設ということを、現在の経済界の要請からして、また日本の国際競争力を高めるということからして必要であるという立場から考えれば、当然容認せざるを得ないし、新しい制度の創設ということも必要だろうということで、基本的にはこれは賛成ということになろうかというふうに思いますし、私もそのような立場に立っておりますので、基本的にはこの法案については賛成であるということでございます。まずこのことを申し上げ、この基本的立場に立った上で、さらに問題点を数点御指摘を申し上げたいと思うわけでございます。  そこで、質問の第一は、独禁法の改正のときの国会における審議におきましても、それから与党間のいろいろな意見交換の場においても、持ち株会社の解禁に伴うところの惹起が予測されるような実際のいろいろな問題、さらには、例外的な規定がございますので、その解釈についてやはり明確にしておく必要があるんだということで、さまざまな議論がなされてきたわけであります。そうして、その議論というのは、最終的にはほとんどの部分が附帯決議としてここに盛り込まれているというふうに私としては理解をしているわけであります。  したがって、まず質問の第一としましては、その確認と、これに対する対応が現実にどうなされているかということをお伺いいたしたいと思います。  独禁法の九条に定められておりました持ち株会社の全面禁止というのは、戦後の経済民主化の一環としまして、財閥解体の成果の上に制定をされたものだと言われております。その後の我が国の経済の公正で自由な競争の維持に果たしてきた役割は極めて大であったわけであります。  しかしながら、現在の国際競争の時代、グローバル化の時代を迎えまして、経済構造の改革もしなきゃならぬ、企業経営の多角化というものを図らなきゃならない、それから金融改革もしなきゃならぬというような状況の中で、やはり企業合同的な、融通性のある親子会社の創設ということが非常に必要になってきたということで、これはある意味では不可欠であったとも言えるわけであります。  しかしながら同時に、独禁法が目的とするところの公正で自由な競争を確保するということもまた、これは両翼のように大切な問題であります。したがいまして、今度の改正もこの点は維持するということで、事業支配力の過度に集中する場合の持ち株会社の創設は禁止をするということにしたわけであります。  そして、国会等における論議、簡単にこの点も申し上げますと、まず第一番に、先ほども申し上げました財閥の解体ということで始まったものが、財閥の復活を可能にする。それから、不当な系列化というものが増大することは問題があるだろうということは論議されました。それから、事業支配力の過度の集中という問題についても、これは非常に抽象的な文言でありますので、法令によってより明確にしていく、さらには、法令で困難な場合には、ガイドラインによって行政指導基準を明確にしていくということも論議をされたわけであります。  さらに、規模が巨大と判断する場合ということで、これは確定的というわけではありませんけれども、そのときの論議は、総資産が親子会社合わせて十五兆円を超える場合には、やはり全国的ないろいろな種目にわたるところの企業支配としての過度な場合に該当する一つのメルクマールとするというようなことまでも議論をされたわけであります。その他、持ち株会社解禁によって予測される幾多の利害関係者との調整の問題も、これは相当に議論をされてきたわけであります。  これらの問題は、議論はそのときされましたけれども、最終的な結論としては具体的に対応はできていないんですけれども、早く発進させる必要があるということで、附帯決議の中で直ちに検討するということにして、それらのものを持ち越して独禁法はそのまま改正をされたというわけです。いわゆる持ち株会社の解禁は、そういうような条件がついて解禁されたとも言い得るわけであります。  そういうわけで、私としましては、わかりやすいためにこの附帯決議に沿って、問題点について具体的に今どういうぐあいに対応されているのか、また将来どう対応されるのかということについて、まずお伺いをしたいわけであります。  そのまず第一番は、先ほどちょっと言いましたように、今回の持ち株会社の例外とされておる、事業支配力が過度に集中することになる、これの解釈は九条の五項にもあります。その九条の五項を見ても必ずしも明確じゃないということでありますので、これについて、附帯決議の中では、法制化を含めてガイドラインの策定等もすることを検討するんだということが明確に書いてあります。  したがいまして、質問の第一は、このガイドラインは現実にもう策定されておりますけれども、この中身について、どういうような考え方でこういうガイドラインをつくったんだということと、その主なところ、特に持ち株会社の判断の対象になるグループというもののとらえ方の問題と、それから、事業支配力が過度に集中するというものの考え方などについて、どのように説明をガイドラインでされているか、まずお伺いをいたしたいわけであります。
  96. 山田昭雄

    ○山田政府委員 御説明申し上げます。  持ち株会社につきましては、先生今お話のとおり、九条の第一項で、「事業支配力が過度に集中することとなる持株会社は、これを設立してはならない。」ということになっているわけでございまして、この「過度に集中することとなる持株会社」というのはどういうものかということは、御承知のとおり九条の五項で定められているわけでございます。  公正取引委員会といたしまして、本条の規定の運用に当たりまして、どのような持ち株会社が禁止されるかにつきまして、事業者の予測可能性を高めるということ、それと運用の透明性を図るということでございます。これは恣意的な運用を避けるということが附帯決議に書いてございますが、そういうことかと思います。これが重要であると考えまして、「事業支配力が過度に集中することとなる持株会社の考え方」というのを、平成九年の十二月八日でございますが、作成、公表いたしました。この公表に先立ちまして、原案を公表いたしまして、関係事業者あるいは関係業界あるいは学者の先生方、いろいろなところから御意見を承りまして、作成したものでございます。  その内容でございますが、三つの類型、九条の五項で書いてございますが、まず、持ち株会社グループの規模が大きい、これはグループの総資産合計額が十五兆円超、かつ五以上の主要な事業分野において大規模な会社、これは総資産額三千億円超を有する場合。先生先ほど申しました、いわば財閥復活を思わせるような持ち株会社、こういうものが第一分類でございます。  第二類型といたしまして、金融における融資を通じての支配ということでございますので、総資産額十五兆円超の大規模な金融会社と総資産三千億円を超える大規模な事業会社、こういったものを持ち株会社の下に有するような場合。  第三の類型といたしまして、相互に関連する五以上の事業分野それぞれにおきましてシェアが一〇%以上または売上高三位以内、こういった有力な事業者を有するような場合。先生ちょっとお話ございましたような、不当な系列化ということを念頭に置いているわけでございます。  こういった三つの類型を明らかにし、かつ、事業支配力の過度の集中にならない、例えば純粋分社化であるとかあるいはベンチャーキャピタルが所有するような場合、こういったものは問題になりませんという、問題にならないケースも明らかにし、かつ、初めてのことでございますので、事前の相談制度というものもありますということを知らしめるということもございまして、ガイドラインの中にこういったことを主として盛り込んでいるわけでございます。
  97. 福岡宗也

    ○福岡委員 どうもありがとうございました。  ガイドラインの内容自体については、私自身も検討させていただきましたけれども、適切だろうというふうに思っておるわけです。問題は、ガイドラインというものの効力の問題ですけれども、私としましては、これは行政的な指導の基準というか解釈基準みたいなものを示すということにあるのだというふうに思うわけであります。したがいまして、法的拘束力というところまではちょっとないというふうに考えているわけですが、この点についての御見解をまずお伺いをしたいということ。  九条の一項と第五項の解釈とか類型性をガイドラインにすべて任せるということではなくて、国会における議論の中でも、まず、できれば法令化、法律で定めるか政令によってきちっと定める。そういうことによって、最高裁までも拘束をする一つの明確な判断基準ができるということになれば、法的安全性はより増すということもあるわけです。そういう点で、類型まで法定するというのは、十五兆円を超えるとかそういうことまではちょっと難しいかもしれませんけれども、ある程度、抽象的な、法令的なものになじむような基準までは法令化した方がいいんじゃないかなというふうに考えるのですけれども、この点についてはどのように考えておられるか、一言だけお願いをしたいと思います。
  98. 山田昭雄

    ○山田政府委員 先生指摘のとおり、法的拘束力というのは九条の五項で規定されている、これがまさに法律そのものでございますから、私どもとしては、その考え方を、運用を明確化する、あるいは予測可能性を高めるということで定めたものでございます。  御指摘のとおり、すべて法制化するということにつきましては、経済的な事象を法律上の概念や法律の用語であらわすのにはおのずから限界がありまして、規制内容を明確化するということ、これが必要ではございますが、必ずしも容易でないために、先ほども申しましたようなガイドラインという形で示しまして、そして事業者の予測可能性を高める、このように考えてきているわけでございます。
  99. 福岡宗也

    ○福岡委員 どうもありがとうございました。  確かに経済問題については、その時々の経済の推移というものもございますので、固定的に法令化するのがいい場合と、ちょっと問題のある点は確かにあるわけでありますけれども、若干運用してみて、やはりここは確定的にこうした方がいいんだということが出てくる可能性もありますので、その辺も含んで御検討をいただきたいというふうに要望をいたしておきたいと思います。  それから第二番目に、附帯決議でされておりますのは、金融持ち株会社についての金融関係法整備の必要な措置というものを至急にとりなさいということが求められているわけであります。今度の持ち株会社の解禁の最も重要なポイントは、金融持ち株会社を創設する必要性ということが叫ばれていたと聞いておるわけであります。したがいまして、具体的に百四十一回の国会で整備をされているということも聞いておりますけれども、その内容をポイントだけ簡単に御説明をいただきたいと思います。
  100. 内藤純一

    ○内藤説明員 お答えいたします。  平成九年の独禁法改正によりまして持ち株会社が解禁されたわけでございますが、これに伴いまして、金融分野におきまして持ち株会社の導入ということが行われたわけでございますが、御指摘の附帯決議等を踏まえまして、銀行等の経営の健全性を確保する観点から、所要の金融関係法制の整備等を図ったところでございます。  具体的に申し上げますと、平成十年三月に施行されました銀行持ち株会社等整備法におきまして、銀行を子会社とする持ち株会社、銀行持ち株会社というふうに呼んでおりますが、これに関し、銀行経営の健全性の確保等の観点から、銀行持ち株会社に係る認可、第二に、銀行持ち株会社業務範囲制限及び子会社の範囲制限、第三に、銀行持ち株会社グループの連結ベースでの規制、ディスクロージャー等でございます。第四点といたしまして、銀行持ち株会社及びその子会社に対する報告徴求、立入検査等の規制を整備したところでございます。  あわせて、保険会社子会社とする持ち株会社、証券会社子会社とする持ち株会社につきましても、報告徴求、立入検査等、保険契約者及び当事者保護の観点等から、それぞれ必要な措置を講じたところでございます。
  101. 福岡宗也

    ○福岡委員 次に、第三点目といたしまして、持ち株会社解禁に伴うグループ経営における連結ベースのディスクロージャーの充実、いわゆる情報開示制度ですけれども、これの見直しをするということ、それから持ち株会社株主子会社の事業への関与をどうするか、それから子会社関係者の権利保護のあり方についてどうするかという問題が指摘をされて、すぐにこれは検討せよとなっているわけであります。  特に重要な点といたしましては、持ち株会社株主子会社の事業への関与の問題であります。午前中の質疑の中でもこの問題は討議されましたけれども、この事業への関与ということの中身なんです。いわゆる親会社の方の株主子会社株主総会に何らかの形で関与できるような方法の検討であるとか、それからまた、実質的に支配をしておる取締役に対するところの代表訴訟、そこまで拡大をすることができるかどうかというような問題もあるわけであります。  さらに、これは株主の問題でありましたけれども、もう一つ、債権者の問題、特に利害関係者としての一番中心である債権者の権利行使の問題であります。いわゆる子会社の取締役の責任を債権者が追及できるのは当然でありますけれども、実質的には親会社の指図に従っていろいろな経営が行われているというような場合に、子会社の取締役の責任を追及しても仕方がないので、親会社の責任が追及できるかどうか。  それからさらには、二百六十六条の、取締役の、第三者の責任の追及、損害賠償請求権をいわゆる親会社に対して請求ができるかというような問題ですね。  それからさらには、責任の問題からいいますと、実際にはすべての子会社の事業経営についての行為が親会社の取締役において行われているような場合に、親会社の取締役と子会社の取締役の責任はどうなるのか、場合によっては子会社の責任は免責されることもあるのか、こういうような問題、いろいろあると思うのですね。  だから、こういうような問題について、これは第三項で極めて重要なことだというふうに指摘をされていると思うのであります。言いかえれば、午前中の答弁にありましたように、法形式的には確かに親会社子会社、別でありますから、形式どおりにいけば何の問題もないので、会社法に規定してあるとおり、それぞれの会社に対して、株主それから取締役の責任というのは相互に負えばいいということで尽きるわけでありますけれども、ただ、親会社子会社で、しかも完全子会社ということになると、それはもう一〇〇%親会社の言いなりということになると、法形式は別であっても実質的には同一と考えられるということもあろうかと思うのですね。  そういう場合に、従来の判例の考え方からすれば、ある程度同一性を認めて、個々の責任の問題は認めた事例がたくさんありますので、今後も最高裁の判例としてはそういうような判例が出てくる可能性が私は多分にあるような問題だというふうに思っておりますけれども、当面立法者側の意向としてはそこのところをどういうふうに考えておられるのか、検討もされたかという点を含めてお答えをいただきたいと思うわけであります。
  102. 細川清

    細川政府委員 御指摘のとおり、株式交換制度が創設されますと、親会社の収益のすべてが子会社の事業活動に由来することとなる純粋持ち株会社の創設も予想されまして、親会社株主権利を保護することが非常に重要な問題となってくるわけでございます。  もっとも、ただいま御指摘のとおり、親会社子会社法律上は別法人だ、別人格だと言わざるを得ません。それで、親会社株主子会社株主総会へ直接出席することを認めるというようなことを考えますと、商法の原理原則の問題から、非常に難しい問題が発生するということになります。  そこで、改正法案では、親会社株主親会社の取締役が適切に子会社株主権を行使することによって子会社の管理を行うという思想に立ちまして、そのためには情報開示をきちんとすることが必要だということとなりました。そこで、従来認められていなかった、親会社株主が、子会社のさまざまな定款、株主名簿、総会の議事録、取締役会議事録等を公開することによって適切な権利を行使することができるようにいたしたわけでございます。  それから第二点目の御質問の、子会社の債権者あるいは子会社の少数株主親会社の取締役の責任を追及することができるかどうかという問題の提起でございます。  この問題も先ほどと同じように大変重要な問題でございまして、いろいろ解釈上の努力で、判例等があるわけでございますが、ただ、これも立法化するということになると大変難しい問題もあるわけでございます。  したがいまして、先ほど申しましたように、親会社株主に対し子会社情報を提供するという措置を講じたわけでございます。  親会社の取締役の行為によって子会社株主や債権者に損害が生じた場合には、福岡先生指摘のとおり、商法二百六十六条ノ三の適用もございますし、また、債権侵害ということで、一般の不法行為の法理によって損害賠償を請求することもできますので、これはこれでそういう点に任せまして、その点については今回の改正には取り上げなかったわけでございますが、大変重要な問題でございますので、今後とも運用状況を見ながら問題点を注視してまいりたいと思っておるところでございます。
  103. 福岡宗也

    ○福岡委員 ありがとうございました。  非常に大切な問題であると同時に、理論的に、確かに、おっしゃるとおり難しい問題ではあります。しかしながら、基本的に、個々の場合の具体的妥当性ということだけで判断をしておるというのではなくて、こういう持ち株会社という完全支配という形が形成されてくるということの前提のもとに、新しい法理論の構築といいますか、そういう場合には、同一性をある一定の限度において認めて、親会社子会社というものの権利関係というものを根本的に、理論的に見直す、そういう姿勢があれば、これはすべてではありませんね、別会社でありますけれども、そういうものを、処理をしなければならない問題はひっくくって、同一性というものを理論的に構築できれば、僕はこの問題は解決するという気はするわけであります。  そういう意味で、今御検討されるとおっしゃいましたけれども、根本的な部分で検討して、この問題とこの問題は同一会社と同様に取り扱っていい、こういうような法制度の整備をぜひともお願いしたい。そうでないと、具体的に裁判してみなければ結論はわからぬ、こういうような格好になりかねないという、法的安定性の面で問題が生じてくる可能性が多過ぎるというふうにちょっと思うので、そういう意味で、要望をいたしたいというふうに思います。  それから、全くそれと同じ問題だと思いますけれども、四点目としましては、労使関係への対応です。特に、子会社の従業員が、実質的な経営支配、そしてまた実質的に労働力支配をしておる完全親会社というものと交渉できる権利があるか、親会社の方からいえば、応諾義務があるかどうかという問題であります。  これは、形式的に言えば、先ほどの、現在の商法の建前は別法人でありますから雇用契約をした当事者ではない。したがって、当事者ではないということになるわけでありますけれども、従来からの持ち株会社、実質的には、解禁前でも事業持ち株会社はあるわけですから、今回は純粋持ち株会社だけが解禁されたということですから、そういう場合で、事実上労働力を支配している親会社というものは、やはり子会社の労働者に対する応諾義務があるんだと、いわゆる使用者性を認めた判例が最高裁においても出ているわけであります。  したがって、この点について、明確な法制によるところの制度というものをきちっと設ける必要がある。特に、労働組合法における使用者の地位というのは、どういうのが使用者になるんだ、雇用契約以外で実質的に労働力を支配する人たちは、労働者として親会社が取り扱いをしなければならないんだという規定を明確に置くべきではないかなという御指摘があるわけであります。  それから、労働協約の問題もそうですね。やはり、子会社との間で、実際の本来の雇用者でありますところの子会社との間の契約を締結するという場合に、そのことが当然に親会社に拡張できるような形の制度というものを何らかの形で創設しないと、円満な労使関係というものもできないという形になるようであります。  特に、先ほどのほかの同僚議員の御質問答弁の中に、判例があるから、判例に従って、今後も、そういう労働力を実質的に支配する親会社の場合は適用があるんだ、使用者性が認められるんだ、だからそれで解決すればいいというような御答弁があったように私記憶しておりますけれども、それでは困るのですね。なぜかといいますと、その点について、判例というのは、多少事実が異なれば、やはりそれはまた違った判例も出る可能性もありますし、判例自体が変更されるということだってあるわけです。  したがいまして、判例が積み重ねられてある程度固定化した場合には、これは法律によって争いのないように明確にしておくんだ、そういうことによって労使関係が安定するということがあるわけでありますから、やはり労働組合法の改正等をなして、明確な形でそれを明定をしていく。それによって労使関係の安定化、いわゆる親会社子会社というものの法形式と実質の分離という問題を誤りなく解決ができる指針になる、こういうふうに考えるわけでありますが、この点については御検討いただいておるかどうか。これは労働省の方でお願いしたいと思います。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
  104. 坂田稔

    ○坂田説明員 先生がただいま御指摘の問題でございますが、確かに、使用者性につきましてはさまざまな議論がございます。  一昨年の独禁法改正の際の、衆参両院商工委員会の附帯決議を受けまして、現在労働省ではその問題につきまして、労使の関係者それから学識経験者から成ります持ち株会社解禁に伴う労使関係懇談会というものを設置いたしまして、現在まで九回にわたり精力的に御検討いただいております。  この中では、現在日本にあります企業グループの労使から、それぞれ労使関係の実態をお聞きしたり、あるいはまた諸外国の実態あるいは法制、そういったものも含めて検討しております。本年の秋ごろには結論をまとめてまいりたいというふうに考えておりますので、労働省といたしましては、その結論を待ちまして対処してまいりたいというふうに考えております。
  105. 福岡宗也

    ○福岡委員 今そういうことで懇談会を開いて検討して、これらの問題に対応していただけるということなので、至急にそういった対応をお願いしたいというふうに思うのであります。  ちょっと一点だけ、私が言い忘れたことの中に、倒産法制の整備の中で労働者の賃金、退職金等の問題がどういう取り扱いにするかということが今論議されているわけであります。この点も、やはり子会社親会社関係である程度検討する必要があるのじゃないかというふうに思うのであります。  特に、親会社は今回分社化などをして、ある企業を別の会社にしてしまう。ある程度経営したけれども、うまくないから切り捨てる。だからこれは、ほかへ売るなり、その会社だけは整理するなり破産をさせようというようなことになってくるケースも考えられるわけですね。そういった、親会社の都合によってどうにでもなるというような場合に、賃金であるとか退職金というのが、子会社の、どちらかといえば経済的な力が弱い会社の中でこれを清算するということになれば、評価というのは非常に減少するということは我々の常識であるわけですから、数%の配当などということにもなりかねないわけですね。  そういう場合の賃金債権の取り扱い、親会社がある程度責任をとるかどうかという倒産法制の問題、これも重要だと思いますので、この点についてもぜひとも御検討をいただきたいということを申し上げて、これは要望でありますけれども答弁は求めませんけれども、お願いしたいというふうに思います。  それから次に、第五番目といたしまして、持ち株会社の解禁に伴いまして税法上の措置を整備するのだということが明確に書いてあるわけであります。これについては具体的な整備を検討されているというふうに聞いているわけですけれども、簡潔に、どういう方向で、どの点が問題であったかという点を御説明いただきたいと存じます。
  106. 清水治

    ○清水説明員 お答え申し上げます。  御指摘の附帯決議におきまして、企業組織の変更が円滑に行われますよう、資産譲渡益課税に関します圧縮記帳ですとかあるいは連結納税制度などの税制上の検討を進めるという御指摘があったわけでございます。  企業の組織変更への対応といたしましての、附帯決議の後に講じられました税制上の主な措置について申し上げますと、まず、平成十年度の改正におきまして銀行関係、いわゆる三角合併方式によります銀行持ち株会社の創設に伴います株式譲渡益課税の繰り延べ措置が講じられてございます。また、平成十一年度の改正におきまして、御審議中の商法改正によります、株式交換制度の創設された場合におきます株式譲渡益課税の繰り延べ措置、また共同で現物出資をいたしました場合の譲渡益課税の繰り延べ措置といったものが講じられているところでございます。  それから、連結納税制度に関しましては、個々の法人ごとに課税をいたしています現行制度と大きく異なる考え方でございますので、法人課税の体系全般に及びます検討が不可欠だということから、この七月から、政府の税制調査会の法人課税小委員会におきまして専門的、実務的な検討が開始される予定になってございます。
  107. 福岡宗也

    ○福岡委員 この問題につきましても、結局のところ、こういった企業合同みたいな形でありますけれども、これを推進するために税制を便宜的にある程度圧縮するような形でやるということは、もちろん必要だろうというふうに思っておりますけれども、問題は、税制そのものの持つ国民全体についての公正さ、公平さの担保というものも非常に大事であります。その点、抜本的に御検討になるということでございますので、ぜひともこれは十分な御議論をして、公正さの担保というものができるような制度にしていただきたいというふうに思うわけでございます。  そこで、次に、直接的な質問といたしまして、今回の制度であります株式交換、それからまた移転の両制度について御質問をいたしたいと思うわけでございます。  今回の商法改正の中心点はこの点にあるかと思うのですけれども、いわゆる純粋持ち株会社の解禁を、独禁法改正をいたしましてなしたわけであります。これは非常に経済上必要性があったというふうに私も理解できるわけでありますけれども、これが完全持ち株会社でなければならぬというか、なるべくならば完全持ち株会社にしたいというようなことで今回の改正というのが提出されているように見えるわけであります。すなわち、いわゆる株式交換株式移転制度も、完全持ち株会社になるための手続として定められておる。そしてある意味では強制的に、多数決でもって取り上げるという制度にもなっているわけであります。  持ち株会社というのは、子会社の取得価額が総資産の五〇%を超えれば持ち株会社だということですから、大体五〇%以上支配しておれば持ち株会社ということになるわけでありますから、企業支配という面からすれば、これは十分力のあるところであるという気がするわけであります。ましてや、現在の会社法上でいえば、九〇%支配しておればほとんど少数株主権の行使もないという形で、代表訴訟はありますけれども、それ以外はほとんどないわけで、親会社の自由になる会社ということになるわけで、なぜ一〇〇%かということがちょっと私にも理解できないところがあるのです。そこのところの、一〇〇%とそうじゃないということでこう違うんだという、その必要性がどういうところにあるかということをちょっと御説明をいただきたいと思うわけであります。
  108. 細川清

    細川政府委員 なぜ一〇〇%の株式を取得するための制度が必要なのかという点でございます。  まず、一〇〇%を保有している親会社は、完全子会社を自社の一営業部門のように機動的に管理しかつ運営することができるということになりますし、また、完全子会社の側から見てみますと、株主は一人でございますので、親会社のみを株主として取り扱えば足りますから、株主総会の招集通知の期間の短縮等、非常に機動的な運営ができる。そういうメリットがあるわけで、そういう点から一〇〇%の親会社を設立する必要があるのだという要望が出されていたわけでございます。
  109. 福岡宗也

    ○福岡委員 そうしますと、結局のところは、やはり企業合同をしていくという形になる場合の中で、機動性とか、それからまたいろいろな考え方でそれは分かれたりするということもあるわけですけれども、そういった場合の機動性というのか、そういうものの場合に非常に便宜的な措置がとりやすいというようなことがあるということでございます。  そうすると、必ずしも一〇〇%の完全子会社というのが望ましい、こういうわけではなくて、そういうような要望にこたえられるようにする、こういうふうにお伺いしてよろしいのですか。
  110. 細川清

    細川政府委員 商法会社の自主運営の基礎的なルールを決めた法律でございます。ですから、それが望ましいとか望ましくないというよりも、必要な場合で、かつ適当な場合に、それが実現できるような手段を備えておくということが必要である、そういう考え方でございます。
  111. 福岡宗也

    ○福岡委員 はい。わかりました。そういうようなことで、そういうニーズにこたえるような制度をつくろうという御趣旨だということのようであります。  それから、先ほどから、午前中、議員の方々から御質問がありまして、答えが出ておりますけれども、完全子会社、持ち株会社というものを設立するためには、現行商法制度を利用したのでは、いろいろな手続的な煩雑さとか障害もあるということで、これはなかなかできないのだ、特に、抜け殻方式それから買収方式、第三者割り当て方式など、それぞれいろいろな弊害がある、こういうようなお話がございました。  それで、項目だけひとつ、まずどういうことがあるのかということをちょっと御説明をいただきたいのです。前に、午前中に聞いていますので、項目だけ。
  112. 細川清

    細川政府委員 まず、現物出資等により営業を譲渡する、いわゆる抜け殻方式でございますが、これは現物出資等の対象となる財産について検査役による調査をすることが必要でございまして、その手続に非常に時間がかかるということと、現物出資された債権、不動産について個別に対抗要件を付さなければならない。特に、根抵当権につきましては、根抵当権設定者の承諾も必要になるということがございまして、これが煩瑣であるということでございます。  また、買収方式については、公開買い付けに応じない株主が残存する可能性がある、それから多額の買収資金、キャッシュが必要だということでございます。  三角合併方式については、銀行持ち株会社となろうとする会社とその完全子会社となる銀行をそれぞれ設立して、その上で合併して株式を現物出資するという、非常に複雑な手続になりますし、既存の銀行が消滅する場合には、吸収合併される場合には、商号等がどうなるかとか免許がどうなるかとか、そういう問題も生じてくるということが指摘されているわけでございます。
  113. 福岡宗也

    ○福岡委員 確かに、お答えのように、従来方式を利用した場合には、そういった手続の煩雑さがあるということはまた実際事実ですね。私もそう思います。  しかしながら、問題は、これらの手続で定められておるいろいろな要件というのがありますけれども、これはある意味ではいろいろな権利者の保護のためにそういう制度があるわけです。どういうことかといいますと、例えば、現物出資の場合には、現物出資をされることによって、その評価、割り当てる株式が、どれだけのものを割り当てるか、それは現物出資の評価をどう見るかによって違ってくるわけであります。だから、そういうものの適正さということから、やはり外部的に、裁判所の選任するところの検査役の検査を十分に受けて、一般大衆投資家の保護を図っていくということも考えられるということであります。  それからさらには、対抗要件の問題等につきましても、それぞれの権利ごとに、債権者、債務者、さらには第三者の順位の問題もあります。それから、その権利をどう取り扱うかという問題、権利移転の問題等が絡んでくる場合にどうするかという問題であります。  これは、確かに権利移転という方式はとっておりませんけれども、事業会社である子会社の重要な部分が、実質的に会社全体として企業支配が親会社に移ってくるということでありますから、実質的な債権者というものは、債務者からすれば変更と見られるということですね。法形式的にはそんなことになりませんよ、実質的にはそういう形になるわけですけれども。そういうことに対する保護はこれでいいのかとか、そういう問題は別個に起こってくるわけであります。  極端な言い方をすれば、こういう交換方式をとることによって、本来ならば検査役の検査であるとか対抗要件とかというものでもって保護されている実質的なそういう人たち権利保護ということを、素通りするといいますか、脱法的に抜け殻になってくるというような、そういう感じも私は持つわけであります。  先ほどおっしゃいました免許事業の問題もそうですね。こういう形で親会社に移転する場合には、こういう方式をとれば、免許事業で、受けた会社子会社なら子会社だけしかできないことが親会社の方に移せるような形になるのか、分社化して設立した場合にはできるのかという問題も出てくるので、そういった問題についてはやはりある程度検討していく必要があるのではないかなということですけれども、この点はどういうふうに考えられているかということと、これに対する手当て等も検討されたことがあるのか、ちょっと御質問をいたしたいわけであります。
  114. 細川清

    細川政府委員 まず、検査役調査の点でございますが、株式交換は、株式移転もそうでございますが、今回の法案におきましては、合併と同様の組織法上の行為と位置づけて、そういう設計をしているわけでございます。  合併におきましては、存続会社が消滅会社から承継する財産につきまして、これは検査役の検査というものは不要でございまして、消滅する会社から承継する財産の額を基準に存続会社の資本増加の限度額を規制するという方法をとっているわけでございまして、今回の法案におきましても、全く同じ考え方がとられているわけでございます。  それからもう一つ、債権者保護手続の問題でございます。  株式交換の場合には、これによって変動するのは、当該法人の株主が変わるわけでございまして、今まで多数いた株主が一人になるということでございます。ただそれだけでございまして、従来の子会社になる会社はそのままの法人格でとどまりますし、会社の資産には当然影響を及ぼさないということになるわけでございます。したがいまして、その点を考えますと、特に債権者保護手続をとる必要がないという結論に至ったわけでございます。
  115. 福岡宗也

    ○福岡委員 その点の御答弁、そのとおりだろうというふうに思いますが、ただ一点、私が申し上げているのは、法形式的にいけば、そのとおりで一〇〇%問題はないと思うのです、別会社でありますしね。ただ、問題は、実質的に、別の会社にはなりましても、企業支配的には親会社の方が全面支配をするという格好になっているという、その実態を踏まえて、それに対する何らかの方法を講じておかないと、ある会社に借金をしたのだ、知らぬ間に、厳しい取り立てとか約束も知らぬよ、親会社の方が、という話にもなるという場合に、債務者の保護手続というのは、実質的にそういうものが交代をする場合も、やはり前の借り主からある程度あるということで、もちろん債権は譲渡もできますし、いろいろありますけれども、そこのところを対抗要件的なものもちゃんと備えてやるということによって、ある程度はっきりさせておるというふうにも思うわけですね。  したがって、そこのところがやはり法形式と違うということだけに、ある程度、将来の問題ではありましょうけれども検討していく必要の一つじゃないかなというふうに私どもは考えるわけですね。だから、ぜひともその辺も含めて御検討をいただきたいというふうに思います。これは要望にしておきます。  それから次に、交換制度の問題点の一つといたしまして、結局、交換にしろ移転にしろ、子会社株主株主権を強制収用するということを最終的に認める手続ではないかなというふうに思うわけであります。  我が国の憲法は、御承知のように財産権の保障をしておりまして、これに対する制約というのは公共の福祉による制限というふうに私は理解をいたしておるわけでありますし、それからさらに、株主権利の中でも、共益権とは違って、固有の権限というものがありまして、これは多数決で奪うことができないと考えられているのが通説だというふうに思うんであります。  そういうことになると、特別決議というものが必要でありますし、厳格な手続は一応定められておりますけれども、最終的にこれに応じないという場合に、株式を取り上げて別の株式である親会社の株式を割り当てるということ自体が公共性があって認められるという範疇に入るかどうか、この点が若干私の方としては心配な点であるわけであります。したがいまして、その理論的根拠といいますか、どうしてそういうことが許されるのかということを御説明いただきたいわけであります。  午前中の御説明によりますと、合併の場合にも同一の制度があるんだ、いわゆる企業合同の一つの手段として。そして、その場合に、多数決で三分の二で決められた後に、それで不服な人はさらに株式買い取り請求権があって、買い取ることによって、経済的に補償することによって株式合同の合併の効力を受けるということで同じだというような御説明があったんですが、私としては、合併の場合には、二つの会社が合同するということを承認するという効力が反対者にも及ぶ、こういう対世的効力があるということだけであって、基本的に、持っていた持ち株そのもの自体は同一性のある次の会社の持ち株ということになるんで、これは余り問題がないと思うんです。財産権がとられたという問題はないわけです。  ところが、今回の場合には、全然別会社株主になるということなんで、別会社の株式、親会社の株式をもらうという対価はもらいますけれども、強制的にもとの会社の株式を取り上げられているという点においては根本的に合併とは違うと思うんですね。  だから、公共性とかなんとか、どうしてそういうものまで許されるかという別個の理論的根拠をきちっと説明しないと、これは問題がまた将来出てくるんじゃないか。特に、合併の無効の訴えが起こってくる可能性もあるわけですから、そんなところで論争になっていったら困るわけです。したがって、その辺のところは合理性はどうなのか、ちょっと御説明をお願いしたいわけであります。
  116. 細川清

    細川政府委員 この問題はやはり合併の場合と同様な問題だろうと私どもは考えているわけでございます。  合併の場合には、少数株主、つまり反対した株主であっても、吸収合併の場合は、みずからが株主であった会社がなくなって、吸収した会社株主に強制的にかえられる。それから、新設合併の場合にもやはり同じで、新設合併の株主に強制的にかえられるということでございまして、組織法上の行為の場合には、会社の組織法上の行為が株主に及ぶんだということは、これは商法上も認めていることであろうと思っておりますし、諸外国の法制でも、いろいろ形式は違いますが、こういった完全親子会社を設立する制度が設けられておりますので、特に難しい克服困難な問題があるとは考えていないわけでございます。
  117. 福岡宗也

    ○福岡委員 どうもありがとうございました。  諸外国にそういった制度があるということはそのとおりでありますけれども、結局のところ、完全親会社を認めなきゃならないところの経済的な必要性。  それからさらには、完全親会社を実現するために、いろいろな方式がありますけれども、例えば任意買収方式とかいうことの例をとってみれば一番わかりやすいと思いますけれども、公開でそれを買い集めるということになると、応ずる人はいいけれども、応じない人の中に、自分の株式を不当に高価で売りつけようというような人が出てきた場合に、それについて対抗の措置がない。そうすると、非常に株の取引についての不公正さというのを助長してくる。それを容認する結果になるんじゃないかという、そういう経済界における公正さ担保といいますか、そういうための制度的な枠というものが必要なんだろうということは、僕もそう思うんですね。  したがいまして、そういうような面から、単なる私的取引というよりは、全体の、現在の経済の中で公正さを担保するための制度としてこれがやはり公共の福祉に合致する、だから私的所有権の制限的なものを若干伴う強制的交換というものも効力があるんだ、それによって全体的に効力が及ぶんだ、こういうふうに考えるべきじゃないかなと私は思うんですけれども、それはどうなんでしょうか。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
  118. 細川清

    細川政府委員 ただいま伺っておりまして、おっしゃるとおりだというふうに思いました。  株式交換制度が反対する株主に及ばないものといたしますと、反対しておいて、後から高いお金で株式を買い取れというふうに親会社請求することができるということになりますと、多くの人がそういうことをするんではないかということになりまして、結局会社の再編等ができなくなるということになろうかと思いますので、御指摘はそのとおりだと思っております。
  119. 福岡宗也

    ○福岡委員 どうもありがとうございました。  結局、これはそういう若干強制収用的な部分を含んでおりますので、やはりぜひともそういうような観点からの御説明をしていただきたいと思いますし、私も賛成の立場でありますので、そういうことでこれはいい制度だというふうに認めざるを得ない、こういうふうに主張もしたいと思っているわけであります。  それから、それに関連をいたしまして、先ほどもお話がありましたように、今回の交換制度それからさらに移転制度は、一〇〇%の完全親会社というものの創設を目指すための制度だということで、法文にもそれはちゃんと書いてありますけれども、それと並んで、そこまでしなくて、完全親会社の成立は一応は目指す、だから契約自体もそういう形で契約をする、株主総会もそういう形でかけるけれども、現実に反対者が相当数おって、しかも、それに対して変更してくれるかという通知をしても、絶対に自分は変更しないというような強い意思だという場合に、交換を強制せずに、そういう株主にはその段階株式買い取り請求権を行使するか、それとも、しない場合には子会社の株式を保有するまま残す、こういう弾力的な制度というものも設ければよりスムーズにいくことができるというような気もするわけですね。いわゆる強制を伴わない交換制度というような制度をここで考えるということですね。  だから、交換制度と並んで、準交換制度的なものですけれども、そういうことは検討されたかどうか、また検討される余地があるかどうか、ちょっと御質問をいたします。
  120. 細川清

    細川政府委員 御指摘のような、反対する株主には交換をしない余地を残す制度というものを設けた場合の問題点でございますが、これは先ほど福岡先生がおっしゃったような問題がまさに起きるわけでございまして、多額の代金を受け取ることを目的として株式交換契約に反対する株主がかえってふえてくるということになりまして、株式交換の承認そのものを得ることができなくなる事態というものが考えられるわけでございます。  したがって、買収方式による持ち株会社の創設と同じような問題が結局生じるということになるのではなかろうかと考えております。
  121. 福岡宗也

    ○福岡委員 確かに、おっしゃるように、そういう悪質な株主も出てくる可能性がありますけれども、実際にはそういう場合でも、その株主はこちらに買収を強制することはできないわけで、残れるということだけになるので、そういう残るような悪質な株主がいるということ自体が事業経営がやりにくくなるということはあるかとは思いますけれども、前の事業会社に対して本当に愛着を持っている人たちを残すという場合、ぎりぎりの決着の選択が最後のところで子会社の取締役それから株主たちの意思に任されてくるということになると、そういうのもあった方がいいのじゃないかなという気もするんですけれども、今後検討をいただきたいというふうに思います。  もう時間が参りましたので最後の質問になりますけれども、今回の持ち株交換制度、それから移転制度、これは厳格な手続によって定められております。いわゆる株主に対する公開制度というのがまずありまして、そして、それに対して親会社子会社となろうとするものの契約がなされて、特別決議があって、株式買い取り請求権の行使と不行使の問題があって、そこで成立をするということであります。そして、その契約内容についても具体的に手続が明定されているということであります。効力的にも対世的な効力があるというふうになっているわけであります。  そこで、この契約の性質は、有効、無効の問題を判断するときに影響するのでお伺いしたいのですけれども、立法者側としては、これはどういう契約だというふうに理解されているのか、お伺いをしたいわけであります。株主に対して効力が及ぶということからすれば第三者のためにする契約なのかなとも思えるし、そうでもない、組織的なものかなとも考えたり、いろいろ考えているわけでありますけれども、その点についてのまず性質、それからその効力というものについてお伺いをしたいわけであります。
  122. 細川清

    細川政府委員 株式交換株式移転の法的な性格でございますが、これは、完全親子会社関係を創設する組織法上の行為であるというふうに考えております。そして、完全子会社となる会社株主には組織法上の行為の効力が及ぶ結果、その地位に変動が生ずる、そのような制度の組み立てになっているわけでございます。
  123. 福岡宗也

    ○福岡委員 そうしますと、交換制度の無効については株式交換無効の訴えというのが認められている、六カ月以内ですね。認められておりますけれども、無効原因としてどういうようなのがあるのか、ちょっと予測がしがたいところがあると思うのです。普通、法令、定款違反というのが無効原因の主なものだと思いますけれども、例えば先ほど言いました契約の中に要件事項すべて、例えば株式交換の比率であるとかいろいろなその他の事項がずっとたくさん定められております。そういったものが欠缺している場合はだめなのかとか、それから手続的な面では、株主総会の手続上どういうようなものが無効原因になるかということ、それからさらには、決議不存在なんかの場合には、これは六カ月の制約というものがあるのかどうかというような問題。無効とか不存在とかいう問題のいろいろな法的問題が起こってくると思うのですけれども、どういうような考えがあるのか、簡潔にひとつお聞かせを願いたいと思います。
  124. 細川清

    細川政府委員 株式交換の無効原因でございますが、これは他の場合と同様、商法上は具体的事由を規定しておりませんが、一般論として、当然解釈の問題として出てきますのは、株式交換契約自体について錯誤、詐欺等の一般司法上の瑕疵があること、それから株式交換契約書を全くつくっていないといったところ、あるいは株式交換契約書に法定の重要な記載事項が欠けていた、あるいは株主総会株式交換契約書の承認決議に取り消し無効の原因があるといった場合が無効の原因として考えられるわけでございます。  それから、株主総会の決議取り消しの訴え等の関係については幾つか学説がございますが、一般的には吸収説ということで、決議取り消しの事由がある場合には株式交換無効として主張すべきであるということが一般的に解釈されているわけでございます。
  125. 福岡宗也

    ○福岡委員 そうしますと、今回の交換制度の場合も、過去のいわゆる株主総会の無効取り消しそれから不存在のいろいろな判例がありますけれども、規定のないところはそういったものに従って実質的には運用されるということですから、簡単な瑕疵の場合にすべてそれが無効になったり取り消されるということではないということですね。  どうもありがとうございました。まだちょっと質問がいろいろ残りましたけれども、また改めてさせていただくことにいたします。  最後に、今回の私の質問の観点は、こういった制度は必要ではありますけれども、やはり独占禁止法の自由で公正ないわゆる自由競争を保障するということには明確な基準というものをきちっとしておく必要があろうかということが一つ。  それからさらに、こういう完全持ち株会社というような法形式と、実質的な経済支配といいますか企業支配というものがそごしていることを容認していくということになると、そのために生じてくるさまざまな利害関係人の利害調整というものをどうしていくかという問題をきちっとしておかないと、これに伴ういろいろな不正な行為というもののばっこを許す場合もあるわけですね。  したがいまして、今始まったばかりでありますからすべてが一〇〇%万全というわけにはいきませんけれども、附帯決議にありますような諸問題は少なくとも早急に、労働問題なんかは二年ぐらいである程度整備するというように書いてありますけれども、きちっとした形にして、そして安定した関係をつくっていくということがこの制度を成功させるゆえんであるというふうに考えるわけであります。  そういう意味におきましては、ぜひとも早急にこういった問題を整備して、マイナス面はきちっと手当てをして、それをプラスに変えるという御努力を賜りたいというふうに思います。最後に、大臣の方から一言だけ御答弁をお願いいたします。
  126. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 持ち株会社及び親子会社をめぐる利害関係者の利害を調整し、これら関係者の権利を適切に保護することは、今委員指摘のように、このような関係にある会社の適正な経営等に不可欠であり、ひいては我が国の会社制度の健全な発展にとっても極めて重要な課題であると認識いたしております。  したがいまして、この問題につきましては、今後も持ち株会社及び親子会社制度の運用状況等を見守り、弊害が生ずれば、立法措置を含め適正な対処をしてまいりたいと考えております。
  127. 福岡宗也

    ○福岡委員 どうもありがとうございました。これで質問を終わります。
  128. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、木島日出夫君。
  129. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  きょうは商法改正の法案質疑でありますが、その前に、同僚委員である保坂議員に対する盗聴問題についてひとつお尋ねをしておきたいと思います。  衆議院法務委員であります社会民主党の保坂展人議員は、六月二十二日午後六時二十四分ごろ、テレビ朝日の記者との電話による通話を何者かによって盗聴されたとして、一昨日の七日、東京地方検察庁に対して、電気通信事業法違反容疑で告訴をいたしました。告訴状にありますように、被疑者不詳であります。だれが、何の目的で盗聴を行ったのか。  また、朝日新聞社と毎日新聞社に対して、盗聴した電話通信回線の傍受記録なるものが匿名の手紙とともに郵送されたことが、本件盗聴事件発覚の端緒となったようであります。だれが、どんな意図で二つの新聞社に対してこのようなことをしたのか。手紙の差出人と盗聴の容疑者とが同一人物なのかどうかを含めて、現在全く不明の状況であります。  しかし、事は国会議員とマスコミ人との間の電話通信に関する盗聴容疑という、まことに重大な事案であります。当然、真相の速やかな徹底解明が求められていると思います。  そこで、最初に法務大臣に、この問題、この事件をどう受けとめておるのか、まずお聞きをいたしたいと思います。
  130. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 お尋ねの件につきましては、東京地方検察庁において、保坂議員からの告訴を受理し、捜査中であるものと承知いたしております。  この件につきましては、検察当局において適宜適切に対処するもの、このように考えております。
  131. 木島日出夫

    ○木島委員 野田国家公安委員長は、昨八日の閣議後の記者会見で、この事件に関して、通信傍受法案成立妨害の意図を感じる旨述べたと報道されております。  当委員会に野田大臣を呼ぶことは原則できませんし、本日おりませんから、今私は野田大臣の真意をただすことはいたしませんが、昨日八日の閣議で、この問題に関する何らかの報告があったのかどうなのか、あるいは法務大臣から何らかの報告を閣議にしたのか、大臣、お答えいただきたいと思うんです。
  132. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 この件についての報告なり私からの発言は全くございません。
  133. 木島日出夫

    ○木島委員 それでは、野田大臣が通信傍受法案成立妨害の意図を感じる旨述べたやに報道されている、これが事実だとすれば、野田大臣の現在の一つの認識だと思うんです。同じ閣僚として、野田大臣のこうした認識に対して陣内法務大臣はどのようにお考えなのか、法務大臣としての認識をお伺いしたいと思うんです。
  134. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 私から特に申し上げることは適切ではないんじゃないかと思っております。
  135. 木島日出夫

    ○木島委員 しかし、同じ閣僚として重大な発言だと受けとめざるを得ないんです、これは。御存じのように、通信傍受法案が現在参議院で審議中である。衆議院当委員会では、大変な状況の後、いわゆる強行採決なるものの結果、参議院に送られたということは、法務大臣御承知のとおり。  同僚閣僚ですよ。通信傍受法案の所管大臣が、あなた、陣内法務大臣。この法案が仮に成立すれば、実施の警察庁の所管大臣が野田国家公安委員長。そういう人物の発言が、報道されておるのが真実だとすれば、考えを聞かざるを得ないんです、私は。逃げないで答えていただきたいんです。
  136. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 どういう発言をされたのか、どういうお考えで発言されたのか、私全く知り得ないところでございますので、私からそのことについて触れることはできないと思います。
  137. 木島日出夫

    ○木島委員 それでは、法務大臣は、野田大臣のように、本件について、現在、通信傍受法案成立妨害の意図を感じる、そういう感じをお持ちですか。そういう感じは全く持っていないのか。そこは、法務大臣の今の認識をお聞きしたいと思うんです。それを答えてください。
  138. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 ただいま申し上げましたように、東京地方検察庁において、保坂議員からの告訴を受理し、その捜査中であるというふうに承知しております。したがいまして、私から所見を述べることはあえて避けさせていただきたいと思いますが、検察当局においては、いずれにしても、適宜適切に対処してまいるものと考えております。
  139. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、七日、この国会内におきまして、保坂議員から詳しく事情を同僚委員らとともにお聞きをいたしました。そして、その結果、保坂議員とテレビ朝日記者との間の電話が盗聴されたということは間違いない事実だと私自身認めたところでございます。  特に、私が盗聴は間違いなくされたのではないかと確信するに至った根拠の一つを述べたいと思うんですが、それは、朝日新聞社と毎日新聞社に郵送された手紙の中にある文言、六月二十二日午後六時二十四分ごろ傍受した通話の男性が保坂先生であることを知ってしまいました。六月二十二日午後六時二十四分ごろ傍受した通話、こう文言にあるわけでありますが、その点が、保坂議員からの私なりの事情聴取の結果、次の四点でぴったりと符合するからであります。  一つは、同日、衆議院議員会館の保坂議員にテレビ朝日から連絡があったその時間と全く一致しておるということ。二つ、会話の内容が保坂議員の記憶と全く違わないということ。そして三つですが、これは非常に重大な事実だと思うんですが、テレビ朝日の送信記録があるようです。NTTからとればとれるわけなのでありますが、そのテレビ朝日の送信記録に、保坂議員の携帯電話にかけたその携帯電話の上六けたの番号が確認された、こういう重大な事実であります。四つ目に、その送信記録から指摘できるんだと思うんですが、通話のあった時間が当日六時二十四分から七十秒間だった。  ここまで事実が符合いたしますと、保坂議員とテレビ朝日記者との電話が六月二十二日午後六時二十四分ごろ七十秒間にわたって氏名不詳の者に傍受されたということ、これは常識的な合理的な疑いをかけるのは当然だと思うんです。  刑事局長、お聞きしますが、ここまでの事実が確認されれば、この事実はもう明らかに電気通信事業法違反であると断定できるかと思うのであります。当然、犯人とかその動機とか意図、目的等は徹底して捜査をしていただきたいのですが、少なくとも、今、告訴によって検察当局に差し出されている諸資料、証拠、それに基づけば本件が電気通信事業法違反は明らかであると思うのですが、法務当局の、刑事当局の御見解をまず聞きたいと思うのです。
  140. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 具体的な告訴事実についての真相の解明は、今東京地検で受理をいたしまして捜査中ということでありますので、具体的内容に触れるのは適当ではないと思うのです。  ただ、法案を出しておりまして、その御審議の中で、今回保坂議員の電話を傍受したと称する件について、例えば「NTTのTWSにアクセスし、」というような形で傍受がなされたというように報道されているわけでございますが、法案の審議の中で、まさにTWSという機械ですが、テスト・ワーク・ステーションというのですが、これが質疑に出ておりまして、それについて私が現にTWSにアクセスして傍受することは可能ではないかという点について答弁をしていることもございますので、今回の告訴事件と離れて技術的な問題に限りましてだけ答弁をさせていただきたいと思います。  と申しますのは、結論から申し上げますと、まず携帯電話と固定電話との間の通信を考えてみました場合に、携帯電話の方を傍受することは技術的に不可能でございます。  それでは二番目に、固定電話の方を傍受することはいかがか。今、技術的に不可能と申しましたのは、通信事業者以外が傍受することはというふうに限定をいたしますが、通信事業者以外が傍受することは携帯電話では不可能でございます。  それから固定電話、通常のNTTの固定電話でございますが、これも結論から申し上げますと、NTTの職員以外は、何らかの機材を用いて外部からTWS、つまりテスト・ワーク・ステーションにアクセスし傍受を行うことはできません。つまり、何重ものセキュリティーがかけられているものと我々は承知しております。  したがって、TWSにアクセスをして傍受したという記述がもしあるのであれば、それは技術的に不可能でございます。その点だけ申し上げておきたいと思います。
  141. 木島日出夫

    ○木島委員 刑事局長は、氏名不詳者から朝日新聞と毎日新聞社に送られた手紙は見ておるのですか。
  142. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 報道機関から非公式にといいますか、入手しまして、手紙は承知しております。
  143. 木島日出夫

    ○木島委員 非公式入手というのは何ですか。捜査ですか。
  144. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 これは捜査ではございません。
  145. 木島日出夫

    ○木島委員 捜査ではないですね。あなたは法務省の刑事局長。  告訴は東京地方検察庁になされ、七日に提出したのですが、受理は八日のようですが、受理したのは東京地方検察庁。どういう体制でどこが捜査に入るのか。刑事局長、それだけは答弁してください。東京地検特捜部が体制をつくって捜査に入るのですか。
  146. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 告訴状は東京地方検察庁の特捜部に提出されまして、通常ですと同部、つまり特捜部で捜査することになると思われます。
  147. 木島日出夫

    ○木島委員 「TWSにアクセスし、傍受した時のものです。」と私が入手している手紙のコピーには書いてはあります。  その辺は徹底的に捜査の対象になるとは思うのですが、それでは、刑事局長いろいろ今おっしゃいましたけれども、告訴の対象になっている電話の機器、これはテレビ朝日の記者から保坂議員へ発信した部分が傍受、盗聴され、告訴の対象になっているわけですが、発信した方の電話がどういう電話機であったのか、今御存じですか。
  148. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 私がその点を承知しておりますのは報道に出ている限りということでございまして、テレビ朝日側の記者が使用した電話という程度しか承知しておりません。それがどういう電話であって、例えば局内のどこにあってというようなことについては承知しているわけではございません。
  149. 木島日出夫

    ○木島委員 固定した電話機なのか携帯電話なのか、デジタルなのかアナログなのか、そういう点は承知しておりますか。
  150. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 その点の詳細は承知しておりません。ただ、どうも携帯電話でなくて局の電話を使ったというような報道ぶりであったと承知していますので、今、先ほどのような形では、一般論に引き直せば、固定電話とそれから携帯電話との通信ということで考えますとというふうに申し上げた次第でございます。
  151. 木島日出夫

    ○木島委員 先ほどの私の四点にわたって、これは間違いなく盗聴という行為は行われたのではないかと私は意見を申し上げました。  もちろん、だれがやったのか私もわかりません。そこは徹底、厳正捜査してもらいたいということで今質問に立っているわけですが、それに対して、答弁として、殊さらにその手紙の中から、TWSにアクセスした、そしてそのときに傍受したときのものだというところを取り上げて、そういうことはできないはずだという答弁をする。私は、率直に言って刑事局長何を考えているのかなと思うのですよ。  この手紙をうのみにすることは当然私もしていないし、するつもりもないし、法務大臣だって刑事局長だってうのみにすべきではないと思うのです。手紙の中にとても常識的には考えられないことが一部二部あったとしても、私の質問に対してそこだけを取り上げてここで答弁するという態度は何たる態度かな。本当に保坂議員の告訴の真意をとらえて、徹底して真実を解明する検察当局と関係のある法務省の刑事局長答弁としては、私はいかがなものかなという印象を今受けたということだけ指摘しておきたいと思うのです。  では、ついでに私は法務大臣に聞きたいのです。一点だけ、告訴の受理の問題についてただしておきたいと思うのです。  七日に保坂議員は告訴状を提出しました。しかし、七日の時点では突き返されたそうであります。告訴状受理はなかったそうであります。そして、告訴状をコピーだけがとられて、コピーを検察庁は受け取って、原本は告訴本人に、保坂議員に返したそうであります。そして、その後、改めて告訴状原本、これを検察庁に提出するという行為がない。そういう状況で、どういう事情か、昨日の夜でしょうか夕方でしょうか、告訴状受理という状況が生まれた、これは一体どういう事情なんですか。
  152. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 告訴状を受理するまでの時間的な経過はまさに委員指摘のとおりだと思います。通常、特捜部の受理の手続は、告訴状をお持ちいただいたときにいろいろお聞きはすると思いますが、告訴状の内容等をさらに再度チェックいたしまして、その告訴権者あるいは告訴事実の内容の、構成要件的な該当性の問題等を含めましてチェックをした後、間違いない、あるいは受理しても問題ないということでございますと受理をするということがおおむね行われておりまして、今回もそのような手続をしたのではないかなと私は推測しております。
  153. 木島日出夫

    ○木島委員 それなら、保坂議員に改めて連絡をして、受理することになったから正式に告訴状を持ってきていただきたい、そういう手続をやればいいじゃないですか。翌日、きょうですよ、私がこの問題を質問する、恐らく保坂議員本人も質問するでしょう、そんなことがきのうの段階ではっきりして、慌てたように、コピーだけ受け取っておいてそれで告訴を受理しましたなんという、本当に私は、率直に言って、今の地検のやり方は不自然さをぬぐえません。  法務大臣、こういう状況です。先ほど答弁をされました。告訴状は受理された、適宜適切に対処すると答弁をされました。事は重大であります。改めて、検察当局が事件の全容を徹底的に解明する、そして容疑者を摘発して、厳正な処断を下す責務が検察当局にはある。指揮権の問題が当然あることを承知の上でありますが、法務大臣としての決意のほどを承っておきたいと思います。
  154. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 これは一般論として申し上げるわけでございますけれども、検察当局におきましては、常に法と証拠に基づきまして、刑事事件として取り上げるべきものがあれば適宜適切に対処するものと思います。
  155. 木島日出夫

    ○木島委員 きょう私の方からはこの問題はこれだけにとどめて、きょうの質疑の本題であります商法改正についてお聞きをしたいと思います。  私からは、商法改正、大きな項目は三項目でありますが、その中での第一項目、株式交換移転制度による持ち株会社の創設の問題についてきょうはお聞きをしたいと思います。  今回の商法改正による株式交換移転制度の導入は、親会社子会社の株を一〇〇%保有するいわゆる完全親会社、この創設を容易にするための改正であります。が、なぜ今このような改正をしなければならぬのか、その政策の目的は基本的に何か、まず法務当局からお伺いしたいと思うんです。
  156. 細川清

    細川政府委員 現在は、多くの企業は単独で行動するのではなくて、企業グループを形成して活動することにより、経営の効率化、国際的な競争力の向上を図っております。株式交換及び株式移転制度は、このような企業グループを形成するための有効な法的手段である完全親子会社関係の創設を円滑に行うことができるようにしようとするものでございまして、現在の経済情勢上、経済界からも要望があるものでございますから、こういう改正が必要であるといたしたものでございます。
  157. 木島日出夫

    ○木島委員 一昨年の九七年六月に独占禁止法が改正をされました。法制定以来五十年間基本的に禁止されてきた持ち株会社が事実上解禁をされていきました。また、同じく一昨年の十二月に金融持ち株会社の創設を可能とする法改正が行われました。これらは、大企業や大銀行の資本集中を飛躍的に加速させる、そして巨大グループと多国籍企業の経済支配力を著しく強めて、それで独占の弊害が大きくなる、そしてその結果、日本経済の民主的発展や国民生活、特にそこで働く労働者の皆さん、下請企業の皆さん、債権者の皆さん等々、国民生活に重大な悪影響を及ぼすものとして、我が党は、これらの持ち株会社の解禁に反対をいたしました。  今回の商法改正による株式交換移転制度の導入というのは、まあ言葉は悪いですけれども、当局の立場に立ちますと、せっかく一昨年独禁法を改正し、また金融持ち株会社を創設可能とする法律はつくったが、肝心かなめの商法というこの基本法の中にさまざまな制約がある、それによって、大企業、独占企業がやりたくても、容易に完全持ち株会社が創設できない、そういう状況に現にある。  先ほど質問で、公正取引委員会からも余り進んでいないというお話がありましたが、それは、進む気がないんじゃなくて、せっかく法律改正してもらったが、商法の諸制約があってなかなか完全持ち株会社ができない、そういう状況にあるのを打開するために基本法たる商法改正する。商法の基本原則、株主権利その他その他、債権者の権利を抑えてでも一昨年つくられた制度、完全持ち株会社の創設を容易にする、そんなために今回この改正法案が持ち出されてきたんじゃないかと私は理解しているんですが、そう理解していいでしょうか。
  158. 細川清

    細川政府委員 平成九年の独占禁止法の改正に当たりまして、衆議院、参議院それぞれの商工委員会で附帯決議が付されているわけでございます。そして、その衆議院の附帯決議の第六項でございますが、「持株会社の設立等の企業組織の変更が利害関係者の権利等に配慮しつつ円滑に行われるよう、会社分割制度株式交換制度等について検討を行う」ということに附帯決議はされているわけでございます。参議院におきましてもやはり同様な附帯決議がなされているわけでございまして、そういう附帯決議もございましたし、また政府規制緩和計画にもそういうことが載っておりますので、私どもでは、こういったことも勘案して現在の改正案を提出している次第でございます。
  159. 木島日出夫

    ○木島委員 そこで、法務大臣にお聞きしたいんですよ。閣僚の一員としての法務大臣に、今の小渕内閣の基本姿勢についてお伺いしたいんです。  確かに附帯決議はあるんです。手元にあります。しかし、先ほど午前中に同僚委員からも指摘されておりましたが、一昨年五月十四日の衆議院商工委員会の附帯決議、同年六月十日の参議院商工委員会の決議、いずれも第六項めに確かにあります。「持株会社の設立等の企業組織の変更が利害関係者の権利等に配慮しつつ円滑に行われるよう、会社分割制度株式交換制度等について検討を行う」とありますよ。しかし、その同じ附帯決議の第四項目めに「持株会社の解禁に伴う労使関係対応については、労使協議の実が高まるよう、労使関係者を含めた協議の場を設け、労働組合法の改正問題を含め今後二年を目途に検討し、必要な措置をとること。 なお、右の検討に当たっては労使の意見が十分に反映されるよう留意すること。」あるんですよ。  ところが、さっき法務大臣、民事局長もお聞きのとおりです。四項目め、どうなっているんだという質問に対しては、労働省は、ようやく検討はやって、ことしの秋ごろにも検討結果が出る、そういう段取りだと言うのですよ。本当に私は、子会社の労働者、子会社の労働組合が大変な事態になると思うのですよ。完全子会社がどんどんつくられていって、親会社がリストラする。はい、この子会社は廃業だ、そして労働者は全部解雇だなんということは想定されるわけですから。  ですから、附帯決議の四項、六項は、少なくとも同時に出さなければいかぬ。これは内閣の姿勢の問題だと思うのですよ。持ち株会社創設をやりやすくするために、商法だけはとんとん改正して今国会に出されてきて、しかし、労働者の権利、基本にかかわる労働組合法の改正問題はようやくこの秋に意見がまとまる、そんなテンポだ。本当におかしいと思うのですよ。  そこで、改めて、なぜそんな状況が生まれているのか、なぜ今この段階でこの改正を急がなければならぬのかを、内閣の閣僚の一員たる法務大臣に私はお聞きしたいと思います。
  160. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 衆参両院で附帯決議された事項については、これは守るように努めることは当然でございます。  そういう中で、法務省におきましては、昨今の経済情勢、国際情勢を見たときに、多くの企業が単体で活動するのではなくて、企業グループを形成して活動することにより、経営の効率化、国際的な競争力の向上等を図っておるわけでございます。  したがいまして、そういう中での株式交換及び株式移転制度は、会社がこのような企業グループを形成するための有効な法的手段である完全親子会社関係の創設を円滑に行うことができるようにしようとするものでございまして、これはまた同時に、それぞれの企業文化、伝統等を保持しつつ、企業グループを形成することによる経済的効果を上げることにもなるというふうな考え方から取り組んでおるところでございます。
  161. 木島日出夫

    ○木島委員 それは皆さんの論理でしょう。  しかし、私が言うのは、株式交換制度等、あるいはこれからあなた方が考えようとしている会社分割制度、こういうのが実行されていきますと、本当に働く者の権利が守られるかどうか非常に心配な面があるといって、二年を目途に労働組合法の改正問題も含めて検討し、必要な措置をとるべきと、こういう附帯項目がついているわけですよ。そっちの方はネグレクトされちゃっている、それはどうなんですかということを、閣僚の一員たる法務大臣に今伺ったところであります。  本年六月十一日に、小渕内閣の産業構造転換・雇用対策本部が決定した「緊急雇用対策及び産業競争力強化対策について」という文書があります。その二つ目が「産業競争力強化対策」です。その一が「事業再構築のための環境整備」であります。「企業の自助努力を前提としつつ、経営の「選択と集中」を通じた企業の財務体質の改善の円滑化に資するため、企業の組織形態の自由な選択、事業転換や過剰設備の廃棄等を容易にするための環境整備として、以下の措置を講ずる。」その第一が、「企業組織の自由な選択」であります。そしてなお、その第一が「株式交換株式移転制度の導入」であります。文書は、「持株会社設立や会社の買収・子会社化を円滑に行えるよう、株式交換株式移転制度の法案の今国会における早期成立と早期導入を図る。」こういう位置づけなんですね。  これから補正予算が提出をされ、予算委員会も始まるのですが、最大の問題に雇用対策、産業競争力強化問題がなってくると思うのですが、六月十一日のこの小渕内閣の基本文書の産業競争力強化対策の何よりも第一に、会社の買収、子会社化が円滑にできるような、持ち株会社設立が円滑にできるような株式交換株式移転制度早期成立、早期導入がうたわれているわけです。  これに至る前提として、本年六月三日に行われた第四回産業競争力会議があります。これには陣内法務大臣も出席をされていると思います。その議事要旨をとって読んでみましたところ、何しろ奥田トヨタ自動車社長、現日経連会長、出井ソニー社長、あるいは樋口アサヒビール名誉会長、あるいは牛尾ウシオ電機会長、これら日本の経済界の中心の人たちからこもごも、株式交換制度を早くつくってほしい。  ソニーの出井社長などは、「これがもし通らないと株価にも非常に影響するし、海外からの日本の評価にかかわる。」そういうような意見も出されたやに書かれております。そこで、陣内法務大臣から、発言として、「株式交換制度については、大変重要な問題だと認識。早期成立に努力をしたい。」そういうのが要旨として議事録に出ているのです。  そしてさらに、私は大変驚いたのですが、総理発言も出ているのですよ。それで、要旨のようですが、「改めてご提案のあった株式交換制度の問題については、国会の中で法律案の順番を変えてでもやっていきたい。」一国の総理大臣が、法務委員会理事会で協議するような、法案の順番を変えてでも株式交換制度の創設のためには努力したい、そんな論議が六月三日の第四回産業競争力会議で行われているとうかがえるのですが、陣内大臣、これに御当人が出席していたのでお聞きしますが、こんな状況だったのですか。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
  162. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 この産業競争力会議というのは、総理の主宰によりまして、産業の競争力強化を目指し、官民を挙げて経済の供給面の問題へ取り組もうということで、自由な意見の交換をする場だと承知いたしております。  そして、第四回において、今委員指摘のような経済界からの御発言がございました。それに対して、私は、今、国会にお願いしているところであるということ、そして、ぜひできるだけ早い時期に通していただくようにさらにお願いをしていきたいという旨のことを発言しました。  この日は、これはガイドライン法案の特別委員会か何か、別途行われておりましたので、私そちらの方の答弁のために途中で退席いたしましたので、最後の部分につきましては、私ちょっと存じ上げておりません。
  163. 木島日出夫

    ○木島委員 最後の部分というのは、総理の発言の部分ですか。(陣内国務大臣「ええ、そうです」と呼ぶ)大臣がこの議事録要旨にあるような発言をされたのは事実ですね。(陣内国務大臣「そうです」と呼ぶ)  それで、私は、何でこんなに今の財界が持ち株会社創設を急ごうとしているのか、純粋持ち株会社創設を急ごうとしているのか、その趣旨について、これは公正取引委員会にお聞きしようかなと思うのです。  持ち株会社設立、会社の買収、子会社化を円滑に行えるよう求める財界や大企業の意図や目的は何なのか。要するに、完全持ち株会社、純粋持ち株会社の経済的な本質というのは何なのかということです。  私は、この「企業の組織形態の自由な選択、事業転換や過剰設備の廃棄等を容易にするための環境整備」のためと競争力会議にありますが、これは結局何かといいますと、結局、独占大企業のリストラ合理化を促進する。完全持ち株会社が上に立って、たくさんの子会社を下に従えて、何でもできるわけですから、適当に采配振るって、ちょっと採算が合わなくなったような部門は、もう完全子会社ですから、リストラ合理化でやめさせてしまう。労働者、全部首切っていく。下請、全部首切っていく。そういう、結局、独占大企業のリストラ合理化を促進し、労働者や下請中小企業の切り捨てを行う、それを行いやすくすることによって、大企業の利益を極大化するための方策、これが経済的な本質ではないかと思うのですが、公正取引委員会、どうでしょうか。
  164. 山田昭雄

    ○山田政府委員 お答えいたします。  大変難しい御提起で、今の現状を私の方から、どういうふうに考えているかということかと思いますが、まず、もう先生御承知のとおり、平成九年の独占禁止法改正というのは、これは、経済が非常に国際化してきた、また経済構造改革も進めなきゃいけない、そして、それまでの独占禁止法は純粋持ち株会社というのは全面的に禁止していたわけでございまして、そういったことから考えますと、企業経営の選択肢として持ち株会社を利用したいというような要望もあり、独占禁止法の目的に照らしても過剰な規制になっているのではないかということで、見直しをし、改正をしたわけでございまして、独占禁止法の目的からいいまして、事業支配力の過度集中になる、こういう持ち株会社は引き続き禁止するということで改正がなされたものでございます。  現在持ち株会社化されたものというのは、私どもに報告があったもの、事業活動の報告で把握しているものは二件でございまして、それらがどういった目的あるいは意図、経済効果を持ってやられたかという、これをすべてのものに当てはめるというのは、なかなかお答えしにくいところでございます。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
  165. 木島日出夫

    ○木島委員 いろいろお答えがありましたが、例えば、一昨年の独禁法の改正などによって持ち株会社が解禁された。現行商法ではやり方は三つあるとさっき答弁されましたね。例えばやり方の一つとして公開株の買い取り方式がある、株を買い占めていけばいいのだと。しかし、その現行商法のやり方では、反対する株主もいるから一〇〇%株は買収できない、完全子会社をつくるのは不可能と。今回の商法改正によってその制約を取っ払って、一〇〇%子会社の株を親会社が支配できる、取得できる、保有できる仕組みをつくろうというのが目的だというのでしょう。民事局長、そう答弁しましたね。  何でこれ、一〇〇%にしなきゃいかぬのですか。一部子会社に一〇%や五%の買収に反対する株主がいては、何でいけないのですか。私はそれがわからない、民事局長
  166. 細川清

    細川政府委員 一〇〇%の親子関係が必要な理由として一般的に言われていることは、まず親会社の方から見ますと、一〇〇%株式を持っていることによって、子会社をその会社の一事業部門のように機動的に管理運営できるということが挙げられております。今度は、子会社の方から見てみますと、子会社にとっては株主は一人になるわけでございますので、株主総会の運営等が非常に容易になる、こういうことでございます。
  167. 木島日出夫

    ○木島委員 大体、今、日本で親会社子会社の株を八割持っていて機動的な運営ができない、一〇〇%持てば機動的な運営ができる、そんなことはあり得ないですよ。そんな理屈は通らないですよ。何で一〇〇%親会社子会社の株を支配しようとするのか。商法の原則を変えてまで、子会社の少数株主権利を抑えてまで親会社が一〇〇%株を支配しようとするのか。どこにその秘密があるのかなと、私、いろいろ考えました。  これは九七年三月十一日の朝日新聞の記事でありますが、こういう記事があって、ああこれだなと私は思いました。持ち株会社解禁でどうなるかという記事でありますが、「課題残る少数株主対策 進む一〇〇%子会社化」、この中で、「米英独では、持ち株会社が傘下の子会社の株式を一〇〇%保有するのが大半だ。」その次が大事なんです。「米国で一〇〇%子会社が多いのは、少数株主株主訴訟を起こされるのを防止するためだ。」とあるのです。  親会社子会社を、七割、八割株を持っていたら、それは完全支配ですよ。しかし、それでも、五%、一〇%の子会社の少数株主がいることすら許さないという、そのための法律でしょう。今回の商法改正でしょう。その本当の理由はここにあるのかなと。株主訴訟を起こされたら大変だ。  これは、裏返しすると、子会社の取締役が勝手な経営をする、それは子会社の少数株主株主訴訟を起こせるのですが、完全子会社になれば、確かに株主は、親会社が一〇〇%握っちゃっていますから、違法不当な、ふらちなことをやった子会社の取締役に対する株主代表訴訟は、起こす人はいません。親会社が全部株を握っているのですから。そういうことになるのじゃないですか。その辺が本当の目的なのじゃないですか、一〇〇%子会社の株を握ろうという純粋持ち株会社、完全持ち株会社を急ごうとしている本当の理由は。それは、つぶしたいときにはつぶす、そこの労働者を全部首を切っても批判されない、株主代表訴訟すら起こされない、そういう法的仕組みが欲しいということじゃないのですか。民事局長、どうですか。
  168. 細川清

    細川政府委員 まず、五〇%以上、仮に八〇%の株を持っている場合には、その子会社を支配できるというのは当然でございますが、先ほど申し上げましたように、その程度が八〇%と一〇〇%とは違うので、一〇〇%の方がより機動的な運営ができるということが第一点でございます。  それから、従来の子会社株主は、これは親会社株主になるわけでございますから、親会社株主としての権利は行使することはできるわけでございまして、子会社の経営が不当な場合には、その経営が不当な理由親会社の取締役が適切にその権限を行使していないということが原因であれば、その親会社の取締役に対して株主代表訴訟を提起することができるわけでございます。したがいまして、先ほど指摘になったようなことだけがこの目的だということではございません。
  169. 木島日出夫

    ○木島委員 確かに、株式交換によって子会社の少数株主親会社株主になるでしょう。なるけれども、それはほんの微々たるものになってしまうでしょう。例えば、子会社が一千株だとしますよ、発行株数が。それで、少数株主が百株だと考えてください。百株、十分の一の少数株主が反対した。そして、親会社はもっと大きいのが普通ですから、一万株だとしましょう。そうすると、一万一千株になるか、いろいろあるのでしょうが、少なくとも一万数千株、一万数百株の中のほんの百株とか五十株ぐらいの権限しか与えられないでしょう。  その交換によって親会社のほんの微々たる少数株主になった株主は、確かに親会社の取締役に対しては株主訴訟を出せますよ。しかし、肝心かなめの、ふらちなことをやった、勝手放題なことをやった子会社の取締役に対しては、株主代表訴訟を起こせないでしょう。どうですか。
  170. 細川清

    細川政府委員 株主代表訴訟の提起権限は、これは単独株主権でございますから、一株でも起こせるわけでございます。ですから、量の問題ではございません。(木島委員「いや、子会社の取締役に起こせるかと聞いている、親会社株主が。そういう質問です」と呼ぶ)わかりました。単純にお答え申し上げますと、親会社株主子会社株主ではありませんから、子会社の取締役に対して株主代表訴訟を提起することはできません。
  171. 木島日出夫

    ○木島委員 できないのですよ。  それで、日弁連の意見書、九七年三月の「純粋持株会社解禁に関する意見書」では、子会社の少数株主権利が強制的になくされるか、親会社の微々たる少数株主になってしまう、その権利を守るためには、親会社の少数株主にも子会社の取締役に対する代表訴訟提起権を与えなきゃいかぬじゃないか、それから、親会社の少数株主になった株主にも子会社違法行為廃止請求権、差しとめ請求権を与えなきゃいけないじゃないか、そして、親会社のそういう微々たる少数株主にも子会社の会計帳簿書類閲覧請求権を与えなきゃいかぬじゃないか、この三つがどうしても必要だということを提起しているんですよ。しかし、この法改正によって、辛うじて三番目の、親会社株主には子会社の会計帳簿の閲覧権が裁判所許可を条件として与えられたのみでしょう。  だから私は、本当に、子会社の少数株主権利を抹殺してまでこの制度を急ごうとするのは、持ち株会社、いわゆる完全親会社、純粋親会社が絶対的な権限を握って、たくさんの子会社を支配して、そのリストラ合理化を自由化して、それにもかかわらず労働者からも、ましてや株主からも批判されない、そういう仕組みをつくり上げる、そんな経済効果をねらっての改正法案じゃないかなと思わざるを得ないということを、時間ですからきょうは指摘をして、引き続きこの次質問を続行させていただきますが、何か言いたいことがあったらどうぞ。
  172. 細川清

    細川政府委員 この代表訴訟に関する日弁連の意見は、一定の範囲で権利を付することには賛成であるが、その範囲については個別の慎重な検討を要するというものでございます。
  173. 木島日出夫

    ○木島委員 次回また、それは論議しましょう。終わります。
  174. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、保坂展人君
  175. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  法務大臣に、率直に、政治家同士として、本当に基本の基本、先ほど本件について同僚議員からの質問にお答えいただいた点は結構ですから、本音のところでお答えいただきたいと思います。  大臣御存じのように、六月二十二日の夕刻、私の携帯電話と、テレビ朝日記者のこれは固定電話だそうですが、それぞれ発信記録が確認をできました。発信記録というのは、ちょっと細かくなりますが、私がかけて留守番電話サービスだった、これが私の方の携帯電話の発信記録であり、あちら方の固定電話の発信記録の中に記録があったんですね。それで、内容が、これは新聞社に送られてきた内容が傍受記録として一分少々の会話があります。これは、なるほどそういう会話をしたと、予告なしに朝日新聞からの取材に対して、いろいろなぞかけ問答的に、会話した記憶がありますかと言って、私は、その傍受記録なるものを見ないで答えた内容がほぼそこに再現をされております。  人権擁護を所管される大臣に伺いたいんですが、盗聴の被害に遭った者がどのような被害、圧迫を受けるのか、とりわけ政治家そしてジャーナリストとの間の通信が傍受、盗聴されたとき、それぞれの当事者にどのような影響をもたらすのかということについて、大臣の受けとめ方を伺いたいと思います。
  176. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 これはあくまでも一般論としてお答えしたいと思いますが、通信の秘密を違法に侵害する盗聴行為、これは憲法で保障される人権の侵害でございまして、到底許されることではないと思います。  他方、通信傍受法案に定める犯罪捜査のための通信傍受、これは、組織的かつ密行的に行われた犯罪の犯人の検挙及び真相の解明が困難な状況に適切に対処することを可能にするものでありまして、組織的な犯罪に適切に対処するための犯罪捜査という公共の福祉の観点から、通信の秘密に対する制約が、やむを得ない、必要最小限の範囲に限定して、裁判官の令状に基づき行われるものでございまして、これについては憲法上許されるものと考えております。  したがいまして、今その両方の面を考えながら取り組んでいかなきゃならないと思っております。
  177. 保坂展人

    ○保坂委員 大臣、私、特に意地悪な質問など絶対しませんので、逆にそう読まれるとかえってよくないと思います。つまり、私は、これは通信傍受法案なんて全然絡めて聞いておりませんので、傍受記録が送られてきたわけですから、まるで私が何か犯罪の容疑がかけられて通知されたのか、しかしまだ法案も成立してないしなとという話になってしまいますので、いわゆる違法盗聴について、行われた場合、どんな影響があるのかということについてだけお答えいただきたいということで聞いております。  重ねてそういう立場で聞きますが、ですから、大臣は人権擁護の部分を、まさにここをきちっと守っていただかなければならない、そういうお立場です。そして、お互い、政治家として正反対の意見あるいは時に厳しい対立関係にある場合もございます。しかし、意見、立場はどうあれ、人権というものは、それが侵されたときに、相手の意見、立場がどうあろうが、やはりきちっと守るというのが、私はそういうふうにしていきたい、こういうふうに思っておるんです。  また、被害者の救済制度ということも充実が叫ばれていますが、これは非常に難しいと思うんですが、あえて、盗聴された被害者の救済というのは一体どういうふうに行えばいいとお考えでしょうか。
  178. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 先ほど申し上げましたように、通信の秘密を違法に侵害するいわゆる盗聴行為、これは憲法で保障されている人権の侵害でございます。これは到底許されるべきものではないということを再度申し上げまして、それに対する侵害被害ということについては、これは慎重に取り組んでいくべき必要があるということも申し上げたいと思います。
  179. 保坂展人

    ○保坂委員 それで、具体的に盗聴された方というのはいらっしゃると思うんですね、今まで。いわゆる探偵事務所などに盗聴された、あるいはいろいろな政治的対立や何かで盗聴された。  今回、私のケースというのはまさに違法盗聴。本人が知らないところで、当事者が知らないところで録取されていた記録が突然報道機関に送りつけられてくるという形で暴露されたわけですけれども、いかなる影響が生じてくると御想像になりますか、被害者にどういう影響が出てくると想像されますか。
  180. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 今お尋ねの件につきましては、東京地方検察庁に本日委員から告訴関係書類を提出され、受け付けられたというふうに伺っております。したがいまして、これにつきましては、適宜適切に対処する、このように考えております。
  181. 保坂展人

    ○保坂委員 自民党の中には、大変私も尊敬する方が多いんですが、お互い違う立場になっても相手のことを想像するという想像力を持っていただきたいと思います。  私は、これ、実は先ほど刑事局長も言われましたけれども、全部紹介すると長いですから、一部します。「同封した資料は、電話通信回線の傍受記録です。警察の施設から、NTTのTWSにアクセスし、傍受した時のものです。 通信傍受法の施行に当たって、警察では、警察庁の指示に基づいて、試験的に通信回線の傍受の準備をしています。作業を開始しているところは、本職のところだけではありません。」以下あって、その記録が添付されているわけです。  これは率直なところ、私も、受け取って、そうか、こういうふうにされているんだというふうに思うほど単純じゃないですよ。これは何だろうという率直な違和感がありましたよ。しかし、怖いのは、実際に交わされた会話があったということです。  ですから、いろいろなケースを想定しました。これはもう公に発表もしていますけれども、額面どおり、書いてあるとおりのことということも一応考えてみる必要がある。第二に、警察を名乗って、何らかの手段で携帯電話並びに相手方の電話との通信を把握して、その意図はわかりませんが、こういった投書を送りつけた場合。三番目に、マニアというのが世の中に存在します。まさに盗聴を喜びとしているマニアの方がいるだろう。そういう方がこういうことをキャッチして、まさに今、時の流れのこういう法案の激しい議論だ、当事者だということでやる。幾つか想定しました。しかし、そのうちにいろいろな被害が出てきたわけです。つまり、電話がかけられなくなったということです。  大臣にちょっと先ほどお聞きして、自分で答えますけれども、実は私の携帯電話、発信記録を調べてびっくりしたのですが、一日二十本ないし三十本かけて、結構電話魔かもしれません、そして同数の着信があったように思います。大体五十ぐらいの会話があるのですね、携帯電話だけで。家に帰れば家に帰ったで電話。政治家ですから、電話しない政治家というのはなかなか今難しいかな、全部対面で会うという。しかも、この電話は盗聴されているかもしれないということを突きつけられたわけですから、そうすると、この電話で相手の方にかけるのも何か迷惑をかけるのかなという期間がございました。現在もそういう意味で電話が使えなくなっているということがあります。  そこで、では今度、刑事局長にちょっと伺いますけれども、そういう影響を与えている、そしてまた、実は電話というのは双方でございますから、私がねらわれたことにこの書面はなっていますけれども、しかしその逆もまたあり得ることですよね。そうすると、テレビ朝日記者がねらわれてやられていた、これまた広がりが大きいわけですね。そういう意味で、政治家とジャーナリストの間の会話が何者かによっていわば把握されて明らかにされた、これを世に盗聴と言うのですよ。どういうふうにお考えですか、その影響について。
  182. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 先生指摘のように、通信が違法に盗聴されるということは大変重大なことだというふうに我々は考えております。  ただ、前提として、これだけお話ししておかないといけないと思いますのは、つまり、法案の中身に触れることにもなりますので、ほっておけないということでお聞きいただきたいと思うのですが、まず、携帯電話と固定電話との通話、これは技術的に携帯電話サイドを傍受することは不可能なんです。では、固定電話サイドはどうかということになりますと、例えば、NTTの交換機に傍受の機械をつけるということによって傍受することが可能です。先ほどの携帯の問題も、例えば、NTTドコモのネットワークセンターの機械にそういう機械を接続して傍受するのはもちろん可能なんですが、途中で傍受することは不可能だということを申し上げています。そこの点だけは誤解がないようにお願いしたいと思うのです。  いずれにしても、そこらに何らかの違法な細工をして傍受したということであれば、これは大変重大なことで、現法案でも、一般人であれば二年以下の懲役、業者であれば三年以下の懲役、それから捜査、調査に当たる係官であれば三年以下の懲役と、重罪になっております。そのことにもその評価はあらわれていると思っております。
  183. 保坂展人

    ○保坂委員 ちょっと技術的なことに、どうも刑事局長は、技術的な議論は用意しています。その前に、嫌がらせや脅迫の被害に遭った者でなければわからない不気味さがございますよね。私、人生の先輩としてここは刑事局長にお答えいただきたいのですが、不法、不正な威迫あるいはおどし、あるいは不愉快な嫌がらせ、こういうことに対して正義の王道を貫くのが法務・検察の気概、こういうふうに考えております。そこを信頼しなければ、告訴状など出さない。  さて、今、自分の携帯電話があるわけですよ。これは先ほど話したように、一日二、三十本あった電話が、きのうなどは三本ぐらいしかかかってこない。そのうち二本は事務所からだ、どうも社会的に孤絶したかなという感じを持つわけです。人に聞くと、携帯電話の番号を変えた方がいいですよ、あるいは、もう保坂さんの名前じゃなく、ほかの人の名義で電話を持ってやった方がいい、そういうものかな、確かになと思うのですけれども、私、何も悪いことをしていない。何か自分の番号を変える、そして、今の番号にその変えた番号のガイダンスを流す、そうしたら余りそれは意味がないような気もしますし、何かこそこそ番号を変えたり、まして他人名義の電話などを持って対応しているというのは、不正な威迫あるいは不法な行為に屈服した、そういうことになりはしまいか、こんなふうに思うわけです。  それで、やせ我慢をして、十分の一あるいは二十分の一の着信量に耐えながら、いいこともあるんですね。電話で簡単に済ますことだけじゃなく、ちゃんと顔を見て話すという意味で、日常はむしろ充実するかもしれないのですが、しかし不便は負うわけです。アドバイスをお願いしたいのですが、こういう場合どうしたらいいですか。
  184. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 私自身政治家でございませんので、その影響の及ぶ範囲あるいは深さについては、必ずしも先生のお感じになっておられることを理解できるかどうかわかりませんが、いずれにしても、そういう通信の秘密を侵害され、あるいはそれによって威迫をされたというようなことになりますと、その被害は、それ自体、当該個人に対しても心理的に大変甚大なものがあろうと思います。  また、先生の例を拝見しましても、月曜以来の報道ぶりを見ますと、それは先生以外にもいろいろな方が、場合によりますと先生の携帯なり固定電話なりに通信をすることは控えたくなるような心理になってくる、それが結果的に着信量の減少に出ているのかなと私も十分推察できるところであります。  一般論としてでございますけれども、いずれにしても、違法な通信の傍受等は許されるべきことではありません。今回の法案でも、その点については従来に比べますと格段に重い法定刑を設けているということにも、我々のその点についての評価は出ているというふうに御理解いただきたいと思っております。
  185. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは法務大臣に伺います。  先ほど木島議員からもありましたが、閣議後の記者会見の野田自治大臣、これは国家公安委員長としての発言かと思いますけれども、要するに、これは盗聴法、組織犯罪対策三法などの成立を妨害しようとする悪質な意図を背後に感じる、極めて不愉快で怒りを覚える、検察には厳正で徹底した捜査を望みたい、もともと保坂議員に対する盗聴は何の意味もない、いかにも盗聴をやっているかのように思わせるのは極めて悪質で許しがたいなどとあるのです。  私は、これは、ここにいらっしゃらない方についてでありますから、あえて反論はいたしませんけれども先ほどお尋ねしているのは、どんな立場であろうが、自由民主党の方であろうが共産党の方であろうが、それは立場を超えて、何か不気味なことがあって、私は被害があって訴えているわけですから、それはやはり法務大臣として、こういう受けとめ方しか今表に出ていないわけです。大臣の今のコメントは余り訴求効果ないですよ、厳正に捜査させていきますというのは。ですから、きっちりした所感をあえて言っていただきたいと思います。この野田大臣についてどうかということはあえて聞きません。大臣、いかがですか。
  186. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 これはこれから捜査が始まるところでございますので、いずれにしても、厳正、公正、不偏不党の立場で、きちっとした捜査をしていけるものと信頼しております。
  187. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、警察の方にも来ていただいていますね。  これは国家公安委員長が、つまり警察が、こういったことで、つまり内部告発文書の体裁をとって、警察の内部からという形で届いたわけですね、報道機関に。しかし、それが、だから私が言った選択肢の中に入っています。入っていますけれども、断定は一切しておりません。それはこれからの捜査にゆだねているわけですけれども、この野田大臣の発言というのは、既に警察内の調査は終了して、盗聴法反対グループの所業である、犯行であるというような何か有力な情報をつかんで、もうそこに大体絞った、こういうふうに理解してよろしいのですか。そういう情報が国家公安委員長に上がったのでしょうか。
  188. 林則清

    ○林(則)政府委員 まず、国家公安委員長の御発言についてが出発点になっておりますけれども、報ぜられるところによりますと、警察庁の指示により試験的に通信回線の傍受の準備をしている、こういう一項があるわけですね。これは断じてそういうことは全くないわけです。でありますから、ある意味では、これは警察庁も被害者なわけです。  そこで、警察が関与しておる可能性が全くないにもかかわらず、我々は内部ですからよくわかっていますから、そういうことが全然ないにもかかわらず、あたかも警察が盗聴しているかのような文書が出回ったということであれば、当然国家公安委員長の御発言のような発言になってしかるべきものというふうに考えます。  それで、調査ということでありますけれども、何か調査をしたか。私どもとしては、今申し上げましたように、全くあり得ないことを書いてあるものですから、あえて調査をするまでもなく、警察が指示してそういうことをやらせておるということは全くないものというふうに考えております。  それから、先生のように、私どもの立場としては、はっきりしているのは、警察がそういうことを指示したことはないという点だけでありまして、証拠や事実に基づかずに、こういうことではなかろうか、ああいうことではなかろうかというふうなことを、推測にわたる事項を公的機関たる我々が申し上げる立場にもないし、また申し上げるべきでもないというふうに考えております。
  189. 保坂展人

    ○保坂委員 今の答弁を聞いて、組織を代表しての答弁なのでそういうふうになるのでしょうけれども、やや不安を覚えるのは、やはり捜査能力についてであります。  つまり、あらゆることを疑ってみるというのがやはり捜査の基本であるというふうに思うのですが、緒方事件についても再三やっていますが、きょう繰り返しませんけれども、あれは反省をしているけれども、しかしやったとは言えない、確認できなかったという答弁に終始をされているわけです。ですから、私は、その答弁が、あの事件は確かにああいう古い時代、冷戦下におけるそういう時代もありましたというのであれば、この法案の論議ももう少し違う方向に行ったということを指摘をしておきたいと思います。  刑事局長に一言今の点に絡んで伺いたいのですが、有名な伊藤検事総長の回想録の中に、おとぎ話に例えた箇所が緒方事件に絡んで出てきます、この委員会でもたびたび紹介したので省きますけれども。実際に現職警察官があの場合には特定をされた、されたからといって、検察と警察という大組織が事を構えるというようなことがあると今後多大な影響がある、つまり、起訴猶予というのは一種の政治的な決着であるというふうに読める回想があります。しかし、これは二度とあってはならない選択だと思いますが、今回の捜査に聖域はあるかということで一言伺います。
  190. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 率直に話させていただきますが、今回の保坂先生のケースにつきまして、警察と検察が何か対立するような関係になることはあり得ないというふうに思っております。  今、警察の刑事局長からのお話にもありましたとおり、警察官と名乗る者の書いている内容自体が技術的に不可能なことでございますので、そこのところは我々法案提出者としても当然考えざるを得ない。それがまた技術的に可能だとか、そういうことになりますと、法案の提出者として、今まで説明してきたことにかかわることになりますので、私も大変重大な関心を持っております。法案提出者としての立場で言わせていただくならば、その警察官と自称する者の書いている内容は、技術的には成立しないということでございます。
  191. 保坂展人

    ○保坂委員 刑事局長、全く正面から答えていないのですが、要するに、捜査の前に、これはあり得ないことだといって一切省く、つまり、警察の側は、そんなのは調べるまでもないとおっしゃっているわけですからね。ですから、この技術的なことについては今からちょっと議論しますけれども、では、それはもう省いてやるということですか。技術的に間違ったことを書いているので、警察という部分は全く省く、考えるまでもないことだ、こういうことですか。
  192. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 今回の法案でも、技術上の問題というのは、参議院の法務委員会でもつい先日質問を受けまして、私は、大体今申し上げたような、結論としてはなるような答えをしております。そういうことでありますので、私は今の答弁で、技術的な観点から、少なくともその警察官と自称するものの内容は成り立たないということを申し上げただけでございまして、具体的な、先生とあるいは記者との間の会話の有無も含めまして、それが電気通信法違反の事実がどこかにあるのかどうかということにつきましては、現に告訴をなさっておられて、それが東京地検の特捜部でこれから捜査をするということになりますので、その内容を待たざるを得ないかということでございます。
  193. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、TWSの話に入ります。  NTTのTWSによって、いわば試験制御装置に外部からアクセスする、これは不可能というふうに局長はおっしゃっていますけれども、例えば、これはいろいろな制約があって、NTTの職員しかできませんけれども、PTTというのがあって、これはノートパソコンと電話で、アイテムやIDなどいろいろ必要な要件はありますけれども、そこにアクセスをして通話中の会話をモニターすることはできるのですよ。これは御存じですか。それから、電話局の中でTWSの前に行ってこれを聞くことはできるでしょう。そしてもう一つ技術的に、最後に、もしTWSと専用回線をつないだら、それは電話局の中だってできるじゃないですか。
  194. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 先生の今のお尋ねの点は、法案の立案の段階でも、TWSあるいはPTTというシステムのことについては承知をしております。その使い方そのものは、今先生がまさにおっしゃったとおりでございまして、NTTの職員がそういう形で現に使っておるということでは、御質問のとおりでございます。
  195. 保坂展人

    ○保坂委員 そうすると、今言った間違っているというのは、必ずしも間違っていないわけですよね。いや、それはあり得ないことというのはわかりますよ。そんなことをやるわけがない、それはわかりますよ。ただ、技術的に不可能ということではないじゃないですか。TWSと専用回線をつなげば、電話局の百メートル先の別の建物で同様の操作をすることは技術的に可能じゃないですか。
  196. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 お答えする場合に、条件をきちっと言っておかないといろいろ誤解が生じますので、その前提をちょっと置かせていただきますと、このPTT、TWSにどういう形でアクセスをするのかということなのですが、これは、まず、その機械自体が非常に特殊な機械でございますから……(保坂委員「PTTは言っていません。外部ケーブルだけ今聞いています」と呼ぶ)技術的に、TWSを経由して、結局は試験制御装置という本体にアクセスするという話になるのですが、何らかの形で線をつなぐこと自体もNTTの全面的な協力がなければ不可能だということは先生おわかりだろうと思います。  仮につないでも、試験制御装置そのものの本体にアクセスするには、今先生の御質問の中で出ましたが、何重ものセキュリティーをクリアしなければいけません。パスワードだとか、あるいはIDだったらIDナンバーだとか、そういったこともありまして、まずそういった技術的な点を完全にクリアすれば、抽象的、技術的にはそれは可能だということは言えますが、現実問題として考えると、私が先ほど不可能だと申し上げたのは、現実的にはNTTの全面的協力なしにはそういうことはできませんということを申し上げたわけでございます。
  197. 保坂展人

    ○保坂委員 私もこれは大分研究しましたよ、お互いやはり研究が大事ですから。そうすると、やはりPTTの場合には、松尾さんおっしゃったとおり、何かいろいろなセキュリティーがありますよ。ただ、電話局だって、建物が狭くて、分館みたいな形で継ぎ足していく場合があるわけですから、その場合は、ケーブルを引っ張ってTWSも可能なわけです。その場合には、そういった前提となる幾つかの、PTTの場合とは違うんですね。これはしっかり押さえていただきたい。よろしいですか。一応答弁してもらいましょう。専用回線でつないだ場合だけ聞いているんです。
  198. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 限定いたしますと、この法案で傍受する場合は、まさにおっしゃるような形をとります。特にデジタル回線の場合には、TWSという機械を使って、そこに傍受の機器を接続して行います。  したがって、それは有線でつなぐわけでございますので、その部屋でやる場合もありますし、その部屋が狭くて機械が置けなければ、例えば隣の部屋でやるなり、建物自体がそういうスペースがない場合には、さらにその隣の建物を利用するとか、いろいろなことが考えられますが、技術的には、それは線をつないでいくことによりまして傍受するということは可能になります。
  199. 保坂展人

    ○保坂委員 では、余り間違っていないじゃないですか、そういう意味では。  では、郵政省の方に来ていただいていますね。  アナログ携帯はどんどん盗聴されたわけですよね。そういうこともあってデジタルにしました。今、デジタルがこれだけ普及したのも、これは聞けないよ、盗聴されないよ、こういう理由だったわけです。これは、盗聴技術などを持つ専門グループにも無理だというふうにNTTドコモから聞いておりますけれども、これは刑事局長に聞くまでもないので自分で答弁しますけれども、今回の通信傍受法案の対象に携帯電話を省くなんて話はないわけです。携帯電話はそういう意味では一番可能性が強いわけですから。  郵政省に伺いますが、NTTドコモには今のTWSに当たるようなものはないんだそうですね。地上局の固定電話の交換機ではそもそもこれは通らないんですね。だから、携帯で、NTTドコモの場合はドコモの交換機に接続するしかあり得ないんですが、さて、携帯電話会社が、通信傍受法の準備で、実際に会話内容を聞けるように、もう技術開発などを終わっているのか、今始まっているのか、何もないのか、郵政省にこれはお答えをいただきます。携帯電話の傍受は可能なのか。
  200. 天野定功

    ○天野政府委員 お答え申し上げます。  まず、いろいろな通話の仕方を想定しなきゃいけないんですが、携帯電話と携帯電話、携帯相互間の通話の場合は、現在の技術ではまず聞けない、傍受できないというふうに聞いております。  その次に、一方が固定電話で一方が携帯電話、こういう固定—携帯間の場合はどうか、こういうことになりますが、それも、傍受する場所によって異なってまいります。  まず、NTTの交換機の部分での傍受でございますけれども、固定側の回線を収容している交換機部分での傍受は、先ほどから御議論出ておりますTWS、試験制御装置から当該傍受対象回線の電話番号を指定して交換機に接続し、モニター機能を利用することにより、傍受を行うことはできるというふうに聞いております。(保坂委員「携帯—携帯は」と呼ぶ)ですから、携帯と携帯との端末の場合にはできないと申し上げているわけですね。今は固定と携帯の関係を言っておりまして、固定電話の回線を収容している交換機の場合にはできますと。  その次に、今度は、携帯電話会社の交換機部分での傍受はどうか、こういう問題になってくるのでありますが、この場合には、傍受の対象となります携帯電話の端末が特定のエリアで使用される場合に、そのエリアを受け持つ交換局におきまして傍受するということになろうかと思われますけれども、傍受の対象となる回線を短時間で特定するのはなかなか難しいと聞いておりますが、仮に回線が特定されれば、その通話内容を傍受することはできるというふうに聞いております。
  201. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、もう一回郵政省に聞きます。  この七月に入ってからなんですが、大変なスキャンダルがNTT、NTTドコモを襲っていますね。NTTとNTTドコモの顧客情報が大量に流出していたという事件です。これは、報道によれば、十万円あればあらゆることがわかると言われていて、業者がいて、その業者に頼むと、住所、自宅の電話番号、氏名、生年月日、世帯主、その世帯主の生年月日、本籍地、取引銀行の口座番号、そして銀行の残高まで出てきちゃった、こういう話です。  これは一回じゃなくて複数、いろいろなところであって、調査中もあるでしょうけれども、こういう不祥事が通信事業者の中から起きていて、絶対に漏れてはならないものが漏れてしまっているということで、不安が強いわけですね。こういうところはきちっと、つまり今言ったようなことに照らすと、例えば携帯—携帯間、あるいはTWSなど、それはもうNTTのほとんどの社員がまじめに通信の秘密を守りながらやっているとは私は思いますよ。しかし、一部のそうでない職員が現にいたわけですね。そういうところはきちっと、大丈夫なのかということを伺っておきます。
  202. 天野定功

    ○天野政府委員 去る五月十日に、NTTの職員が、インターネットを介して各種情報を販売していた者からの依頼に応じてNTTの電話加入者の個人情報を漏えいして、これに対する謝礼を受け取ったということで、NTT法第十八条、これは収賄の罪に当たるわけですが、それで逮捕された事件がございました。また、今先生指摘のとおり、これは先日、七月二日でございますけれども、一部の報道機関で、NTT及びNTTドコモの顧客情報が複数の社員の関与で大量に流出しているというような報道がなされたところでございます。  郵政省としましては、これまで、電気通信事業における個人情報保護に関するガイドラインというものを郵政省告示で昨年の十二月に定めまして、利用者の個人情報保護のための施策に取り組んできたところであり、それにもかかわらず、まず五月の事件が発生したことは大変遺憾に思っている次第です。  また、この事件に際して、NTTに対しましては上記ガイドラインの徹底について要請しておりますし、関係団体に対しても、各事業者がこのガイドラインを踏まえた個人情報の適正な管理に一層努めるよう要請をしているところでございます。  特に、先日、七月二日の報道された事件については、これはまだ現在は調査中でございますので断定的なことは申し上げられませんが、仮にこれが事実であるとすれば、プライバシー保護が強く要請される電気通信事業者の職員としてはあってはならない行為でございまして、これに対しては私ども重大な問題と受けとめておりまして、早急にNTT及びNTTドコモに対して事実関係調査をお願いしておるところでございます。
  203. 保坂展人

    ○保坂委員 では、刑事局長に最後の詰めをしますけれども、実は、NTTドコモにお聞きをしますと、携帯電話のいわゆる傍受、あるいは盗聴、同じことですけれども法律があるかないかの違いだという意味ではね。行為としては同じです。これは不可能だという話が最初はありました。ところが、これだけ議論していて不可能はないだろうと。それで、いろいろ聞いたところ、デジタル信号を聞けるようにそのソフトを開発途上である、一部はできている、こういうふうに聞いているんですけれども、携帯電話の音声というのはデジタルなんですね。  これはちょっと大事なことなんですが、傍受法案ではビデオテープで聞くことになっていますけれども、ビデオテープというのは古い世代の記録方法であって、例えば五ギガなんという大変大容量の四百時間記録されるというものも出てきております。お聞きしますけれども、そういうものも当然使用は考えておられるかどうか。そして、例えば、傍受の際に必ず立会人がいなきゃいけないということですけれども、無人で録音をしておくなんというようなことが技術的には可能だと思いますが、今回の法案でそれはだめなのか。大事なことなので、それをちょっと答えてください。
  204. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 今郵政省の局長からのお答えにありましたが、携帯電話間の通信ですが、NTTドコモでいいますと、ネットワークセンターというのが全国にどうも九カ所あるようでございまして、そこの監視制御卓という大がかりな、新幹線の運行を制御する並みのコンピューターを使いまして、そこのところでは傍受することが可能でございます。したがいまして、この法案における傍受は、電子監視制御卓に接続する形で、今申し上げたデジタル通信といいますか、これを解析するような機械を業者の方と相談しながらしっかりしたものをつくっていくことが必要だろうと思っております。  また、無人かどうかということは、これは、法案では立会人をそういう場合でも置かなきゃいけないということにはなるわけでございます。
  205. 保坂展人

    ○保坂委員 今大事なことを言ったのですが、要するに、立会人を置いて、立会人は外形的な事項を判断するわけですね。ですから、電話番号をぴりっと決めて、これだ、そしてスイッチを押した、そしてその場を両者は離れて、それでもいいということですか。要するに、常時人間がモニターしていなければいけないのか、機械に自動的にやらせていいのかどうか、それを聞いているのです。
  206. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 法案の修正案で常時立ち会いということでございますので、傍受する期間に、傍受に当たる捜査官もいない、立会人もいないなんということは、これはできないということになります。
  207. 保坂展人

    ○保坂委員 わかりました。  エネミー・オブ・アメリカという映画があって、これはほとんどフィクションというような見方をして鑑賞したわけですけれども、要するに、音声信号をデジタル化すれば巨大な情報源がある、それを自動的に録音していって、ある種のキーワードを後から引き出すという、いわゆるインターネットのメールサーバーから情報を検索するようなやり方というのも技術的にはこれから可能になってまいります。そうすると、これは傍受というよりは検閲ということに近いかと思いますけれども、そういうことも含めていろいろ考えさせられたし、現に今被害があるのです。  最後に、終わるに当たって、法務大臣に、捜査についてではなく、被害者をきちっと救済する、盗聴などを野放しにしない社会をつくるという決意を伺って終わります。
  208. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 盗聴があってはならない、当然のことでございます。
  209. 保坂展人

    ○保坂委員 盗聴と傍受はどう違うのかという議論はまた次の機会にしたいと思います。
  210. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、坂上富男君。
  211. 坂上富男

    坂上委員 私も、少し多岐にわたりまして質問をいたしますが、集中的には、保坂議員に対する盗聴問題に集約をさせてもらいたい、こう思っておるわけであります。  まず、人権擁護局、おられますか。大臣もお聞きいただきたいのでございますが、アイビー社という会社がありまして、ここの会社というのはいわゆる身元調査をやっておる、こういうようなことがありまして、この身元調査のやり方については、人権侵害に及ぶということで、法務省が警告書を出されたと聞いております。それから、これをもとにおきまして、甘利労働大臣が経済団体百社以上に対して、身元調査をしないでほしいという要望書を出された、こう聞いておりますが、この実態について簡単にひとつ御答弁いただきたいと思います。
  212. 横山匡輝

    ○横山政府委員 お答えいたします。  今委員指摘の大阪府内の調査会社、日本アイビー社の調査員が、就職に際しての採用調査の依頼を受けましたものについて、就職差別につながるおそれがある調査をした事件に対しまして、昨年十二月二十五日、大阪法務局長から、当該調査会社に対しまして、本件行為の不当性と社会的責務を強く認識、自戒するとともに、同和問題や基本的人権の尊重について正しい理解を深め、今後このような行為を繰り返さないよう説示を行ったところであります。  次に、労働大臣の書簡の点でございますけれども委員指摘の身元調査事案に関しまして、労働省におきましても、本年四月一日、経済・業種別団体の代表者あてに、就職差別につながるおそれがある身元調査が行われることのないよう配慮を求める労働大臣の書簡を出されたものと承知しております。これは、就職差別を防止する観点から適切な対応をされたもの、そのように考えております。
  213. 坂上富男

    坂上委員 局長、そのアイビー社は解散したとも言われておるのでございますが、名前を変えて、実質的にここで活動をした皆様方が、別の会社の名前になってどうも身元調査をしておるというような事実が上がっておるわけでございますが、きのう名前も指摘をいたしました。したがって、登記簿謄本等を調べてみて、やはりアイビー社の諸君がまた名前を変えてこういう身元調査をやっているという事実はあるんじゃなかろうかとお聞きをしておったのですが、どうでしたか。
  214. 横山匡輝

    ○横山政府委員 お答えいたします。  委員指摘会社が、日本アイビー社から名前を変えてやっているのか、この関係につきましては、登記簿謄本からだけではなかなか事実を把握するということは難しいと思います。  それで、当局としましては、委員指摘の事実につきまして、そういう意味でまだ把握しておりませんけれども、今後、人権侵犯に当たるような事実があるかどうか調査しまして、適切に対応したい、このように考えております。
  215. 坂上富男

    坂上委員 そこで、私はここに、報告書と題する身元調査報告書をある会社から入手をしまして、私のところへ届けられたわけであります。依然として身元調査が行われている、この身元調査の報告書を読んでみますると、非常に恐ろしいことが書かれてあるわけでございます。  まず一つは、「政治セクト加盟の有無」について、平成七年八月現況、本人何々は政党籍はなく、また特定の政治思想団体加盟の事実や実践経歴、労組関係者との交流や政党関係機関誌等の購読もない、何々党を初めとした革新組織とのつながりは認められない。そういうふうに、この人はこういう関係がないということが書いてあるのでございますが、その内容について、恐ろしいことなんです。  二番目に、「思想の実態について」、こう書いてあるのです。  今回、本人は何々党員ではないか、何々、は消してあるのですよ。何々党員ではないかとの情報に基づき、管轄する神奈川県委員会、横浜市神奈川区、党費納入者一万三千百四十名、同党何々地区委員会、横須賀市何々、委員長何々、党費納入者八百二十人を初め、神奈川本部何々支部等の各機関並びに住民市民運動の諸団体を工作した結果、本人が何々党籍を有している事実はなく、また、何々等特定の加盟や政党機関誌を購読している事実も認められなかった。こういうことの調査を受けたけれども、こういうこととは関係なかったという報告書なんですね。  これがどうも関係者が、そこの会社が保存してあったのだそうでございますが、いただいてきて、依頼をいたしまして一週間とか十日でばんとこういうものが出てくるというのですね。これはもう本当に大変なことがまだ行われているんじゃなかろうか、こういうことが思われるわけであります。  私は、このものは人権局にきのうも、詳細は見ていただきませんでしたが、後で提出してもいいのですが、報告書、それからこういう形態、その中の一部を今読み上げたわけでございます。こういうようなことが今の世の中に、そして就職のとき、あるいは職場における思想調査、こういう身元調査が行われているのですね。しかも、それが一週間か十日でこういう資料ができ上がるのですね、一万三千幾ら。  これはどこから報告が入るのでしょうね。こういうのは、いわゆる公安調査庁あるいは公安関係の警察の方でございましょうか、そういうようなことからの報告を聞く以外はこういうものはできないのじゃなかろうかと私は実は思っているわけでございます。これは、私はこのものを見て、私の推測でありますが、多分間違いないでしょう。  人権擁護局長、こういうふうに書いてあるもの、それで、こういう報告書は間違いなくあるわけでございます。どこから入手をしたかということも後でお話をしても結構なのでございますが、こういうような人権侵害、身元調査が行われているということ、しかも、前に警告をして、俗に言うとその残党の人がまたこういうことをやっておる。それと公的機関がつながっているとするならばこれは大変なことなのでございますが、これだけのことを直ちに民間会社がわかるはずはありません。そういう点に対する人権擁護局長の御見解をいただきたいとまず思っております。
  216. 横山匡輝

    ○横山政府委員 ただいま委員から身元調査に関しましていろいろな御指摘を受けましたけれども、当局といたしましては、ただいま御指摘のような点も含めまして事実関係調査しまして適切に対応してまいりたい、このように考えております。
  217. 坂上富男

    坂上委員 大臣、今言ったような事実があるのでございますが、この点に対する簡単なコメントをひとつ。
  218. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 基本的人権の重要さ、これは、もう委員おっしゃるとおりでございまして、政府を挙げてこの問題について取り組んでいるわけでございますが、今御指摘のような事実があるかどうか十分調査いたしまして適切に対処してまいりたいと思っております。
  219. 坂上富男

    坂上委員 ぜひお願いをしたいと思っております。  そこで、話がまたちょっとかわりますが、問題は同じなんです。恐縮でございますが、刑事局長さんにもかかわることでございます。  まず警察当局からお聞きをいたしますが、松尾刑事局長氏が最高検におられたときでございますか、被害に遭われたのは。何か事件があったとか。それから、通信傍受法が始まってから、官房長のお宅が、川越だそうでございますが、ボーガンが撃ち込まれた、こういうような事件がありました。それからまた、中村参議院議員が、私は発表のとき立ち会ったのですが、パチンコで殺すぞとか何とかするぞという殺人予告的な脅迫でございました。  この三つの事件は、一体どんな捜査の過程をたどって、今どんな結果になっておりますか。簡単でいいです。
  220. 林則清

    ○林(則)政府委員 最初にお尋ねの、現松尾刑事局長、最高検においでのときに自宅の郵便受けの中にナイフ、脅迫状、あるいは、さらに日を置いて、火炎瓶様のものとマッチが置かれておったというものについては、今懸命に捜査中であります。まだ犯人には到達しておりません。  それから、二つ目に聞かれました中村参議院議員の件につきましては、先生おっしゃいましたように、本年の五月の下旬から六月上旬にかけて、秘書の方の携帯電話や議員の事務所の電話へ、はじきでやってやる云々という脅迫的な内容の電話がかかってきたという事案でありますが、警視庁では、議員の方からその旨の届け出がありましたので、議員等関係者の御意向を十分踏まえた上、議員方の警戒を強化するなど所要対応をしております。ただ、まだかけてきた犯人には立ち至っておりません。  それから、最後に、法務省の官房長の自宅へボーガンが撃ち込まれた事件でありますけれども、これにつきましても、あらゆる可能性というものを考慮に入れながら捜査中であります。  以上でございます。
  221. 坂上富男

    坂上委員 警察当局は、まず、法務省の幹部のお二人に対する事件について、こういうような見通し、うわさ、うわさの話をしてもいかぬかなと思いますが、しかし、これはまた大変なことでございますので、情報としても確認しておられるかもしれません。  松尾刑事局長事件は昨年のことでございます。いまだもって捜査中。一体いつごろ捜査が完結するのでございましょうか。全く見通しがなぜつかないのか。もうついているんだけれども、どうも今発表するのはぐあいが悪いというようなことはございませんか。松尾さんのことについては、それは本当に被害者というのは容易じゃございません。さっき保坂さんがおっしゃったように、大変深刻だろうと私は思っておるのです。  それをこんなことでお聞きするのもいささか恐縮なんでございますが、立場上お許しをいただきたいとは思っているのでございます。松尾さんの問題につきましては、こういう説もあるのですね。どうも身内が、身内というのは法務省関係者、職員がやったというようなことは専ら言われておるようでございますが、それを発表することはなかなか問題があるものだから、そうやっておられるのではなかろうか、こういうふうにも思っておるわけでございます。  それから、但木官房長の問題も、大体見通しが立っている、確かにまだ送検はしていない、だけれども、ほぼわかっているのをやはり少しちゅうちょされているのじゃないか。特に今、通信傍受、盗聴法問題がのるか反るかという山場にもかかっておるものだから。こういうようなこと。  それから、今度、中村参議院議員に対しても、これはあるいは、ちょっとまだ時期的に相当時間も必要かなとも思いますけれども、ある程度見通しがつきつつあって、ある程度の見通しの御答弁ぐらいいただいていいのじゃなかろうか、私はこう思っていますが、簡単に、どうですか。
  222. 林則清

    ○林(則)政府委員 ただいま坂上先生から警察の捜査力に対して望外の評価を賜りまして、本当にびっくりしております。  現在の日本警察は、犯人に到達しておるにもかかわらず、それをそのままにしておくとか発表しないというほど余裕がある警察力はございません。
  223. 坂上富男

    坂上委員 それでは聞きましょう。  まず、こういう事実はありますか。法務省官房長宅事件について、法務省の但木官房長は、推測だ、組織犯罪対策関連法が関係していると思う、こうおっしゃっておるわけでございますが、この点については、この疑いはどうなんですか。
  224. 林則清

    ○林(則)政府委員 御指摘の点をも含めて、あらゆる可能性を考えながら捜査をいたしております。
  225. 坂上富男

    坂上委員 この点は、どうもこれは裏づけができそうだとかできないとか、言うこともまだできないということですか。
  226. 林則清

    ○林(則)政府委員 具体的な捜査の内容につきましては、現在捜査中でありますので、裏づけが、どの部分がどうというような点は差し控えさせてもらいたいと思います。
  227. 坂上富男

    坂上委員 官房長、あなたに聞かないで御答弁いただければと思ったのでございますが、この新聞にはそう書いてありますから、これもまた御記憶あると思いますが、いかにもこれはこういうふうな、盗聴法関係の方にどうも関連した事件じゃないか、こういうふうに今でも思っておられましょうか。どうでございます。
  228. 但木敬一

    ○但木政府委員 私、被害者の立場で、事件直後に個々の新聞社等からインタビューを受けております。その段階で私は、もちろん、だれがどういう目的でやったのか現段階では何もわかりませんということを前提にして、ただ自分としては心当たりがないので、職務に関係することではないかというふうに申し上げました。職務に関係するといって今一番厳しいものは何ですかということで、組織犯罪対策関連法案の問題があります、こういうお答えをいたしました。  そのときそう感じたのは事実でありまして、それについては、例えば中村参議院議員も、被害者としての感情を事件の後述べられていると思います。それは被害者としての感情でありますから、それをどうですかと言われても、そのときにそういうふうに感じていたということについて、今それを取り消すとかなんとかということではないと思います。  ただ、既に本格的な捜査の段階に入っております現段階におきましては、私は、自分の犯人像はこうだとかああだとかいうことを申し上げるのは適当でないというふうに考えております。
  229. 坂上富男

    坂上委員 これは、どうも盗聴法関連の問題でなさそうだということも言われておりますが、あなたの被害者としての気持ちとして、関連が今でもまだあるとお思いになっておられますか、そういう感想を聞いているのですから、どうぞ。
  230. 但木敬一

    ○但木政府委員 私、法務省の官房長でもございますが、事件の当事者でもございます。複雑な立場でございますが、捜査が行われているときに被害者として、今公式にこうではないか、ああではないかということを申し上げるのは、本格的捜査が始まっている現段階では適当でないと思います。
  231. 坂上富男

    坂上委員 被害に遭ったときは被害者の一人だ、そしていろいろと推測することはそれは自由である、しかもその気持ちは被害者の立場なんだ、それはそれで結構なんです。  しばらくたったわけです。落ちついて見られて、そんなことに対する感想はいかがでしょうか、こういうことを聞いているわけでございまして、あとは捜査中だから、あるいは被害者だから御答弁は差し控えたい、こういうのは、率直な気持ちを聞いているわけです。本当にやはり私が思ったとおりのようなものにいきつつあるのじゃなかろうかなとか、思ったことはちょっと勘違いだったかな、そういうことを聞いているのです。どうぞ。
  232. 但木敬一

    ○但木政府委員 お聞きになりたいことはよくわかりますけれども、ただ、既に捜査がなされておりまして、私自身、被害者の立場としてそれなりに取り調べを受ける立場にもございます。ですから、今捜査が行われている中で、私が考えているのはこういうことですということを申し上げるのは適当ではないというふうに思いますので、重ね重ねの御質問ですが、失礼させていただきたいと思います。
  233. 坂上富男

    坂上委員 刑事局長、あれによりますと、刑事局長については死刑廃止運動に絡んだ犯行というようなうわさが出ておった。それについては刑事局長は何らのお話、コメントしたようなものはちょっとわからないのでございますが、この事件についてはどんな、また被害者だから答えられないというよりもひとつ率直な、いずれまた事件が来れば送検されて検察が捜査されるわけでございますから、なかなか答弁しにくいのだろうと思うのですが、どうも私が聞いているところによると、検察職員が、刑事局長が次席検事をなさったころの人事に対する不満の腹いせでやったというふうに書かれているわけでございますが、率直な御答弁を。
  234. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 そのような人事をやった記憶もございませんので、心当たりがないわけでございますが、事件があったころから、私は、どういうことが推測されるかといったたぐいの話について発言したことはございません。  また、捜査機関からも聞かれましたが、その点については思い当たるところはないということで、それは一貫して言っております。現在もその原因について、私自身があれこれ思い当たるというようなことはいまだにございません。現に捜査をしてもらっておりますので、その結果を待っておるというところでございます。     〔委員長退席、山本(幸)委員長代理着席〕
  235. 坂上富男

    坂上委員 松尾刑事局長事件は去年の問題でもあり、まあまあ、これはうわさ、私は証拠を持っているわけではありませんが、今言ったようなことが言われておるわけでございますから、これはやはり早急に警察当局の方も、お調べが完成しておったら職務上送検なさるのは当たり前でございますから、そういう心配を我々は実はしておるわけでございますので、ひとつできるだけ速やかに、そして厳正に迅速に捜査の上、送検をしていただく。そして、その真相が少しでも見えるように、そして国政の審議の上で我々の判断材料にもしていただけるようにということを強く要望しておきたい、こう思っておるわけでございます。  でありまするから、そういきり立たぬで結構でございますから、冷静にひとつ、きちっきちっとした、私は、わかっておって言えませんか、こう聞いておるわけではありません。もうそろそろ捜査の時期が終わってある程度見通しが立ったのじゃないか、こう言っているわけでございますから、どうぞ誤解のないように。何か非常に、気が少し激しくなっておられるようでございますから、どうぞ冷静に御答弁いただければありがたい、こう思っております。  さてそこで、私は、実は盗聴法、通信傍受について一回も質問する機会がないわけでございますので、一点だけ、保坂問題にもかかわってくるから聞きますが、まず、傍受記録作成に用いる記録媒体、こう言うのだそうでございます。これをできるだけ、どういうものがこの媒体だか、名前を読み上げてください。簡単で結構です。
  236. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 傍受記録作成に用いる記録媒体は、カセットテープ、フロッピーディスク、光ディスク等を想定しております。
  237. 坂上富男

    坂上委員 三種類だけですか。
  238. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 光ディスク等と言いましたが、レーザー光を用いてデータを読み取る方式のディスクの総称ということでございまして、中には、MOディスクあるいはCD—ROM、それからこれは何と読むのかわかりませんけれども、DVD—RAM、アルファベットではそうなります。それからPD。そんなものが、多様なものがあるようでございます。また、恐らく、技術的な進歩によりまして、これ以外にもあるいは新たな記録媒体となり得るものが出てくる可能性はあるところでございます。
  239. 坂上富男

    坂上委員 だから、刑事局長、記録媒体というのは大事なのです。幾種類あるのか、どういうものがこの対象になるのかということを実は聞いているわけでございますから、百だったら百、五十だったら五十とか、できるだけ調べて名前をざっと挙げてください、こう聞いているのですよ。法務省はわからないのですか、これは。どうぞ、種類を挙げ切れなかったら数だけでもいいから言ってください。今言った程度の数ではないでしょう。物すごい数ではないですか。どうですか。
  240. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 どんなものを想定しているかということでございますが、傍受記録の内容を刑事手続で使用する場合には、傍受記録のほか、それを反訳する等の処置が必要でございます。これに使うものというのは、定まったものはないのでございますが、想定しておりますのは、カセットテープと、先ほど言いましたフロッピーディスク、光ディスクというようなところを予定しているということでございます。
  241. 坂上富男

    坂上委員 大変失礼ですが、何が記録媒体になるかというのは、提案者そのものが知らないのではないですか。きのうから私は強く言っているのですよ。何回か、連絡に来られた人にも言ってあるわけでございます。本当にわかっていますか。  それで、刑事局長、この記録媒体をもとにいたしまして、いわゆる通信記録というか報告書というか、反訳書がつくられるのでしょう。だから、どこから反訳書が出てくるのかということは、やはり知っていなければ、どうやって傍受をするのか、どういう媒体であれをするのかわからなければ、提案者そのものがわからないと言われても仕方がないのではないでしょうか。いかがですか。
  242. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 今も申し上げましたが、想定しておりますのは、カセットテープ、フロッピーディスク、光ディスク等でございます。これが傍受記録として使われるわけでございますが、その傍受記録のほか、その内容を反訳したものを証拠とすることもまた考えられるというところでございます。
  243. 坂上富男

    坂上委員 まず全部この種類を挙げてもらって、その種類がどういうふうな形で反訳書として使われるのか。その反訳書が裁判に提出されるのだろうと思うのでございます。それを実は聞こうと思っているのですが、今言ったカセットテープ、フロッピーディスク、もう一つ、三つぐらいしか言われないとすると、後はどういう質問をしていいか、続かないです。でありますから、これはぜひひとつ私のところに文書で出してもらわなければ、本当に提案者がわかって提案しているかどうか、失礼ですが、疑問だというふうに私は指摘せざるを得ません。  そこで、そのものをもとにいたしまして、証拠になるところの反訳書というのを提出するのだろうと思うのです。  そこで、反訳書の書き方を私はきのういただきました。これによりますと、こう書いてあるわけであります。「被疑者○○に対する覚せい剤取締法違反被疑事件につき、傍受記録の反訳をしたので、報告する。」「一 平成○○年○月○日午後一時三十分三十秒から同日午後一時四十三分二十秒までの通話」、だあっと書いてあります。最後は「以上」だろうと思うのでございますが、捜査記録と同じように。これが証拠資料として、これを反訳いたしましたものでございますと法廷に提出されるのだろうと思うのであります。  そこで問題は、保坂さんに来ましたところの、保坂さんに関する投書でございますが、これは、保坂さんが授受の、電話をしたときの、内容は白紙にしてもらいまして、形式だけこういうふうにいただいて、きょう、今持っているわけでございます。  これも確かに今、定型ではないですよ。いろいろ捜査官がそういう形で捜査報告書として出すのでありましょう。私は、こういうふうなのは一つの例ではないか、様式を聞かせてください、これは政令で決まるのか何で決まるのか私はわかりませんが、立場上、考えて出してくださいと言って、いただいたのです。  これと実は合わせてみたいと思ってお聞きをしたのでございますが、傍受日時、六月二十二日午後六時二十四分ごろ、通話者、こういうふうな項目があるわけです。これとこれは一字一句似ているとは私は言いませんが、ほぼ同じではないか、実はそんな感じがしているのでございます。どうもこの投書というのは臭い、こういう皆さん方の、政府側の答弁でございますが、私は、これ二つ見てみますと、どうも似ているのではないの。  こういう点からもひとつ捜査、やはりこれ、出し方は専門的ですよ。素人はこんな書き方はできませんやね。私も法曹の一員なんだけれども、こんなふうにきちんと書けません。やはり捜査報告的なものではなかろうかなと実は私は思っているのでございますが、これは私の意見でございます。御答弁を求めても、言いようもないと御答弁になるかもしれませんが、そんな感じをしているのでございます。捜査に当たって、私が指摘したことも配慮の上で捜査していただかぬといかぬと思っていますが、刑事局長、いかがですか。
  244. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 反訳をした書面の様式についてでございますが、まだきちっと定まったものはございません。法律の適正な執行の担保という観点から、必要に応じて検討してまいる事項というふうに承知しております。  今先生指摘の、保坂先生の件について、私ども先生に差し上げました想定している様式と類似しているという御指摘がございましたが、保坂先生のときに使われました通話の反訳と類する書面、この様式等につきましても、捜査当局がさまざまな形で捜査の対象にすると思いますが、具体的にどういう点がどうだということは控えさせていただきたいと思います。
  245. 坂上富男

    坂上委員 私も、一々、字を合わせて間違いなくこれは捜査機関だなんて言うつもりはないのです。ただ、直観的に——警察当局にも反訳書というのはどういう書き方をするか出してくださいと言ったのです。法務省にも言ったのです。その結果は、警察と法務省と相談の上に提出をしますといって、法務省側からいただいたのを私は今読み上げたわけでございます。これから見ると、やはり専門家だな、そんな感じを実は、私の感想ですが、しておりますこともぜひ指摘をしておきたいと思っております。  もう一つ、ちょっと資料のために御質問しますが、大臣、大変あれでございますが、何かテレビの「あまから問答」に出演した際、通信傍受があれば坂本弁護士事件は起きなかったと発言されておるそうでございます。これはもう参議院で質問がたびたびあったのだそうでございまして、ダブりで恐縮でございますが、やはりきょうの質問の必要性がありますので、ひとつ。  しかし、大臣は必ずしも法曹でもございませんから、あるいはまたそれ自体はそうではないからこういうことになるのではなかろうかと実は私は思っているのでございますが。あのとき、いわゆる坂本事件については、オウムのバッジがあった、これはどうもオウム関係があるのではないかとあれだけ言っていたのだけれども、神奈川県警はちっとも捜査されなかった、そういうことが言われているわけでございます。それからもう一つは、松本サリンもそうでしょう。最初、被害者と目された人が、奥さんまで被害に遭ったのでございますが、この人を犯人として一生懸命捜査しているのだ。  でありまするから、今、通信傍受があったからといって、全然もう別の捜査をしているのに、通信傍受をするのだったら、オウムがおかしいということから、捜査の必要で捜査するので、あのころオウムがおかしいなんてだれも思わなかったから、これだけの大被害が起きたわけでございます。大事件が起きたわけでございます。それを大臣は何もかも、坂本事件、あるいは松本のことはおっしゃったかどうかわかりませんが、通信傍受があればなんて。知らぬ国民はそうかなと思いますがね。この点、大臣、率直にひとつお話しください。
  246. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 お尋ねの発言でございますが、坂本弁護士一家の殺害事件が発生した当時、犯罪捜査のための通信傍受に関する法律が成立していればこの事件そのものを防止することができたというふうなつもりで申し上げたわけではございませんでした。  いずれにしましても、法秩序を守り、社会正義を実現していくような立場にある弁護士さんがああいうことになったということに対しては大変憂慮をしておったわけでございまして、こういう事件のような組織的な殺人事件の首謀者の検挙及び真相解明のために通信傍受という捜査方法が効果的であって、通信傍受を初め、組織的な犯罪に適切に対処するため、組織的な犯罪に対する刑罰を加重する、そういうことも含めまして、こういうことを実現することによりまして組織的な犯罪を未然に防止することができるようになり、国民全体が安心して暮らすことができる社会を築くことができなければならない、そういう気持ちで申し上げたところでございます。     〔山本(幸)委員長代理退席、委員長着席〕
  247. 坂上富男

    坂上委員 そうすると、大臣、あの当時、お調べになって、オウム関係ありとしてあの捜査の初動のときお考えになったんですか。松本サリンのときも、これはオウムじゃないかと初動捜査のときお考えになって、捜査の対象になっていたんですか。聞いたところ、全くそんなことはないんですよ。筋違いのことをやっていたんですよ。筋違いのことをやっておったために事件が大きくなっちゃったんです。したがって、いわゆる盗聴法と、気に食わなければ通信傍受と言いますが、通信傍受とサリンを、あるいは坂本弁護士さん事件を結びつけるということはちょっと筋違いなんじゃなかろうか、こう思っているんですが、どうですか。
  248. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 坂本一家事件が起こった後も電話を使っていろいろな連絡をとり合ったということを承知しておったものですから、ああいう組織的な犯罪については電話傍受をすることが大変有効な捜査手段であり、かつまた、そういうことを通じて抑止力が全般的に働いていくんじゃないか、社会正義が実現していくんじゃないかという思いを込めて申し上げたところでございます。
  249. 坂上富男

    坂上委員 大臣、私は、相当専門的な議論になりますから、余り言うことを慎みますが、あの当時、オウムに疑いがかかっていないんです。疑いがなければ通信傍受できないんですよ。だから、それを言うことは、あの当時疑いを持っていたんですよ、したがって通信傍受ができるんだったらすぐできたんです、こう言わなきゃだめなんですよ。疑いも、相当な疑いがなければだめだ、こう通信傍受には書いてあるんですよ。疑いもしないで、電話していたそうだなんて言って、それで通信傍受をやればよかったんだなんて、これじゃ犯人は逃げていきますよ。犯罪なんて挙がらないんじゃないの、こんなこと言っていたんじゃ。  大臣、技術上の専門家でないから私は言うことをはばかりますが、素人の立場で言うのと法務大臣とでは大違いなものですから、国民はこれを聞いて、やはりこれは必要なんだなと思うだろうと私は思いますよ。  でありますから、私は、大臣大臣の気持ちはよくわかりますよ。気持ちはわかりますが、幾らオウム同士が電話をしていたといっても、疑いをかけなければ、被疑容疑を捜査官が認定をしなければ通信傍受できないんですよ。  刑事局長、この点答弁しますか、どうですか。
  250. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 坂本さん一家の殺害事件を引き合いに出したということで、私も実は、問題だといえばそれは同罪かもしれません。  私は、何回もそれは引いておるわけですが、通信傍受の対象犯罪になる組織的な殺人というものがどういうものかと聞かれた場合には、例えば、過去にあった事例では、その典型は坂本さん一家殺害事件でございますということで申し上げてきました。  それからもう一つは、今大臣がお答えしたのと同じでございますが、通信傍受がどういう場合に効果的なのかというお尋ねに対しましては、例えば、今坂本さん一家殺害事件松本智津夫等の法廷で裁かれておるわけですが、その冒頭陳述等に出ております電話の使用状況等を見ますと、仮にそういうことがあれば効果的な捜査手法にはなったであろうということを申し上げてきたわけでございます。そのような引用の仕方でございますので、どうか御理解いただきたいと思います。
  251. 坂上富男

    坂上委員 それだったら、もう一戦ひとつ議論やりましょう。  いいですか、それまでの間に五件、検証と称して通信傍受をやったでしょう。なぜこれを使わないんですか。これを使えば、今大臣がおっしゃったように、どうも電話していたらしい、早く犯人を挙げられたんじゃないですか。検証のための通信傍受、今でもできるんだ、これは。あたかも、今までだったら手段も何もなかった、こう言ってあなたたちは弁解して逃げようとしているんだけれども、手段はあるんだよ、五件も。これを使ってやって早くオウムを挙げれば、サリン事件なんか起きなかったかもしれませんよ。こんな程度で私は、答弁、納得できませんよ。本当に私は……(発言する者あり)ああそうだ、私は本当にそう思いますよ。  ですから、一つ今取り上げたのは、本当に、通信傍受問題が一体国民のためになるのか、どうしても必要なのかということはやはり真剣な議論をしてもらわないといかぬと私は思っているわけでございます。  そこで、たまたま保坂君の事件が起きてきたわけでございます。これは、国会議員が、テレ朝がやられたのか、保坂君の方がやられて保坂君がその中に引きずり込まれたのか。私はどうも、保坂君をやるというよりも、やはりあっちの方が一つの対象だったんじゃなかろうかと思います。しかし、これは捜査機関とは言いませんよ、あるいは謀略とも言いませんよ、どちらか、これを早くしてくれ、こう言っているわけでございます。  そこで、大臣、伊藤元検事総長の著作のおとぎ話、これは大臣としては御存じだろうと思っておるわけでございます。これはわかっておられますね、お読みになって。これはおとぎ話として、非常に苦衷を述べられたんだろうと実は私は思っておるわけでございます。  そこで、今回の事件で、私も保坂先生から御相談を受けました。先生、どんなことが起きたんだろうと。これは直ちにあなた、告発しなさい、告訴しなさい、それから、すぐ世間に発表してその是非を問わぬといかぬですよ。直ちに実行しました。まかり間違いますと、でたらめなことを言う、告訴する、それは誣告になって反対に本人がやられますから、私は、ぱっと早く出して真相の究明を一刻も早くしてくれと。  謀略なのか、あるいは投書にあるように警察官と称する人が、この人がしたのか、あるいはほかの者が見ておってそういうことを言っておるのか、これはまだわからぬようでございますが、やはりそれだっても早く明らかにする必要は私はあるんだろうと思いますよ。そこで、例えば早く犯人が挙がれば、こういうことかとよくわかるわけです。本当のことを言うと、私は盗聴法が上がる前に全力を挙げてこれを調べてもらいたいなと思っていますわ。  そこで、万一、例ですからどうぞ怒らないで聞いてくださいよ、この投書に書いてあるような事実であったとすれば、これまた大変なことです。謀略であったとすれば、これもまた大変なことでございます。だから、私はさっき官房長に、嫌な質問なんですが、これがどうだったんですか、あなたの感想と今とはどうもちょっと私は違うように思いますがと。松尾刑事局長の方も、事件は第三者だと思ったらどうも身内なんじゃなかろうかなというふうなうわさ、これはうわさで恐縮ですが、事実だと思いますよ。そのまま犯人がわからないで終わらさないでくださいよ、これはきちっとしてもらわないといかないんですよ。  そこで大臣、この「あまから問答」というのは、私はもう一遍熟読玩味する必要があると思うのでございます。いわゆる捜査権を持っておる警察、そして捜査権を持っておる検察、この全体を日本の警察権行使あるいは検察権行使の上においてどう円満にやれるかということが、国民が安心してやれることでございます。いろいろの投書が、また皆さんのことについても投書は我々のところに来てはいるのですが、殊さら取り上げません、今は。しかし、やはりそんなことから考えますと、大臣、まず「あまから問答」そのものについて……(陣内国務大臣「おとぎ話」と呼ぶ)ああ、おとぎ話そのものについて、率直な感想をまず言ってください。
  252. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 お尋ねのおとぎ話については、これは伊藤元検事総長が個人の資格でお書きになったということを承知しておりまして、したがいまして、その内容について私の立場から論評するというのは適当ではないのではないかと思っております。
  253. 坂上富男

    坂上委員 では、一言に言うとどんな内容だったかおわかりですか。失礼ですが、答弁してください。
  254. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 おとぎ話ということでございますが、想像するに、警察が不法な手段で電話を傍受したのじゃないかというようなことに関連した話だったと思います。
  255. 坂上富男

    坂上委員 では私から申し上げましょう。  警察官が盗聴したんだ、そしてこれは犯罪である、しかし起訴猶予だということで、これはまたいろいろ警察と検察の関係もあって、再度やらないということを誓ったから起訴猶予にしたんだとは聞いているのです。しかし、検事総長としてはやはり不満だったんだろうと思いますよ。検察権行使が適正に行われなかったという証拠なんじゃないかと私は思っていますが、これはどうですか。検察権行使が、それはやめた人が言うんだから、そんなことは論評の限りでないとおっしゃいますが、大臣、私はやはり、検察権がいろいろな条件によって適正な行使ができなかった、今後このようなことのないようにということを伊藤元検事総長はおっしゃったと思っていますが、いかがですか。
  256. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 一般論として申し上げますと、検察当局においては、どういう犯罪であれ、厳正公平に、また不偏不党を旨として、刑事事件として取り上げるべきものであれば、これは常に法と証拠に基づきまして適切に対処をしてきたと思っておりますし、今後も同様に適切な対処をするものと信頼しております。
  257. 坂上富男

    坂上委員 そこで大事なのでございますが、伊藤総長はどうも適切な検察権行使がなかったとおっしゃっていると私は思っています。私の発言が間違いなら、おまえ、間違いだと強く叱責していただいていいですよ。  そこで、今、必ず適切な検察権行使いたしますと私は期待しておりますし、信頼しております、こういう御答弁だ。このおとぎ話の二の舞になることを実は恐れるわけです。もちろん、捜査当局がやったとは今言っていないんですよ。仮にの話です。政治は仮にの話も必要なんですが、仮にの話、おとぎ話にあるような事実がもし出てきたとするならば、特に保坂問題で出てきたとするならば、またこの二の舞になったら実は大変なんでございます。  だから、私はこれを取り上げて言っているのでございますが、場合によっては適正に行使せよと検事総長に言うことは、これは検察の指揮権と言われておるわけでございます。正しいことをきちっとしなさいと言うことは、これは指揮権の発動としては私はやるべきだろうと思っているわけでございますが、本当に検察はきちっとやるでありましょう、こういう御答弁ですから、まず信頼はいたします、期待をいたします。期待はいたしますが、万々一、おとぎ話のような事態になったらこれは大変だ、こう思っておるわけでございます。  そうした場合は、私は、指揮権発動やむなしなんじゃなかろうかとも思っておるわけでございます。だって、国民の期待、あなたの答弁と違うような事態が起きたら、これは大変なのでございます。私は、指揮権発動をするかしないかという質問はきょうはいたしませんが、しかし、おっしゃるようなことが本当に担保できるんだろうか、刑事局長いかがです。今言ったような問題、余りあれでしょうか、いいですか。
  258. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 お尋ねの件につきましても、従来同様、東京地方検察庁におきまして、厳正公平、不偏不党の立場から、徹底した捜査を尽くすものと我々も期待しているところでございます。
  259. 坂上富男

    坂上委員 ことしでしたか、中村法務大臣のことでちょっと騒がれました。これもやはり指揮権発動関連かなというようなことで議論が相当あったわけです。いろいろなことがあって辞職なさったわけでございます。でありますから、その当時きっと刑事局長が当事者でもあったのでしょう、きちっと守ったのでしょう、だから中村氏が退陣ということに私はなったんだろうと思っております。  本当に、今おっしゃるように、大臣もおっしゃる、刑事局長もおっしゃった、そしてどのような真相が判明してくるのかわかりませんけれども、検察権行使に当たっては、まさに厳正、適切、公正でなければならぬと思っておるわけです。  ましてや国会議員、これは国民の代表、信託を受けまして、まさに命がけで国政に当たっていると私は思います。また官房長も、刑事局長も、脅迫を受けながら、これまたお立場で頑張っておられるのも私は了としております。また保坂さんも、本当にこれは深刻で、私はこんな渦中の中心的なものにはならぬが、この十分の一ぐらいの立場になってももうふらふらだ。そういうものなんですね。だものでございますから、保坂さんも頑張ってもらわなければならぬし、本当の真相の究明もしなきゃならぬと思うのです。それは真っすぐ、本当にこの問題で取り組んでやっていただきたいと私は思っております。  それは、権力のある者に形としては盾突いた形になって我々はやっているわけでございますが、いやそんなことはありませんよと皆さんおっしゃるだろうと思いますが、やはり私たちとしてはいろいろ気になる部分だってないわけじゃないのです。私らのところも投書来ますよ。さすがにお前の命取るぞというのは、余り動きが悪いせいか来ません。ただし、おまえは反対、反対ばかりだから、もう落選だ、こういうのが来ているのですわ。政治的命を取ると。こういう……(発言する者あり)あなたもそうなの。そういうような状態で、みんな俗に言うと体を張って頑張っているわけでございます。(発言する者あり)まあ、まあ、わかりましたから。ぜひ私は、検察権行使、そして捜査をきちっとしていただかなきゃならぬでありますが、ひとつ確約を再度していただきまして、どういう帰趨になるのか、特に警察の方もできるだけ速やかにしていただきたい。  どうですか。わかっているんじゃないですか、松尾さんの方なんというのは。もうそろそろ曙光が見えたのでないですか。全然、皆目つきませんか。そうじゃないでしょう。  私はぜひ、そんなことで、的確な捜査、まさになれ合いでもって隠している、とんでもないとあなたはおっしゃった。そうでないんだ、一生懸命やっているんだけれどもまだまだ捜査がはっきりしないんだ、それならばいいですが、もっと頑張ってもらわぬといかぬと私は思いますよ、もし事実とするなら。  しかし、どうも今言ったようなことを並べてみますと、やはり少し気になる部分があるんじゃないでしょうか。でありますから、私ごとき者が言うのは大変生意気です。しかし、本当に今回ほど真剣に、これほど国民の立場に立ったり、皆さん方がまた治安の立場に立って激しい論争をしておるわけでございますから、しかもその中の一番先頭に立っておる保坂君にこんな、謀略なのかあるいは捜査当局のあれなのか私はわかりませんが、本人にとっては本当に大変でございまして、国政の遂行に影響があっては非常にいかぬとも思っていますよ。  でありますから、ぜひひとつあれしたいし、私は、こんな事態になって、この法務委員会が特別に調査すべきじゃないかと提案もしたのでございますが、もう少し状況を見よう、こうなったんだろうと私思っておりますので、本当にこれほど真剣な議論が続いていることはないと思っておりますので、どうぞ大臣、ぜひ検察に対して十分な、できる範囲のことをひとつお願いをしていただきたいし、そのとおりの期待をひとつ履行していただきますこともお願いをしたい、こう思っておりまして、余計な話をしまして恐縮でございましたが、私は質問をそんなところでくくらせていただきまして、続けさせていただきます。  商法問題も用意はしてきたのでございますが、時間になりましたので、さっきの福岡君の質問を援用することによってお許しをいただきたい、こう思っております。ありがとうございました。
  260. 杉浦正健

    杉浦委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十二分散会