○松尾政府
委員 ただいまの御質問は、確かに
委員御指摘のように、従来、検証
令状で行ったケースが五例、電話
傍受がございます。その例に比べますと、今回の
法案の電話
傍受というのは、人権保障等の面で後退したのではないか、後退したんだ、しているんだというような
議論がありますので、若干長くなりますが、その点についてお答えしたいと思っております。
まず、従来、検証
令状で
傍受が認められておりましたケースが五例あると申し上げました。この五例でございますが、いずれも
覚せい剤の密売事案でございます。検証許可
令状によりまして、密売に用いられているということで特定されました電話についての
傍受をしたということでございますが、この五件の検証
令状による
傍受では、確かに先生御指摘のように、
立会人がその
内容も
傍受します。それから二番目に、そのうちの二例だったと
思いますが、
立会人が切断をしたということも現実にあったわけでございます。
確かにそれが前例としてあるわけでございますが、従来、こうした検証という
刑事訴訟法上の
一つの手続を利用して行った電話
傍受については、これから申し上げるようないろいろな問題点が逆にございました。
例えば、この検証許可状によりまして、今申し上げた
覚せい剤の密売事犯についての
傍受ということで
実施されましたが、では、そのほかにどの程度の
傍受が可能であるかとか、あるいは検証の手続において、
傍受を想定して
実施した手続の関係者の権利保護はどういうふうに図っていくのかとか、あるいはどの程度、例えば期間の問題等はどの程度が適当なのか、あるいは最大限どの程度認めるべきなのか、こういった点につきまして、電話
傍受を
規定している
法律が整備されていないゆえをもって逆にいろいろな問題が発生していたところでございます。
法律上、そういういろいろな問題が指摘されていた。
同時に、
捜査の面におきましても、この五件の検証はいずれも
薬物の密売事案でございまして、その者の検挙には確かに有効でございました。ただ、その背後にある
薬物の密売事案の首謀者の特定あるいは検挙、全体像の解明、あるいはどのような
組織がいかなる程度にこれに関与しているのか、あるいはさらに根源をたどっていきまして、我が国の
覚せい剤の
密輸、つまり
覚せい剤がどういう経路で入ってきたのか、こういった取引の解明には必ずしもどの程度これが利用されるのかが明快でございませんでした。
また、現在、実例として集積している五例は、そうしたより深い
捜査、あるいは本来罰せられるべき首謀者が罰せられているかという点から見ますと、限界があったということでございます。
また、人権保障の面におきましても、
傍受の要件あるいは手続が
刑事訴訟法の検証に関する
規定の解釈によって行われました。
通信傍受は、継続的かつ密行的に行われるという点で、関係者の権利
保護等について、従来の強制処分とは異なる配慮が必要であるということは指摘されるわけでございますが、
対象犯罪その他の要件を明示して
限定するとともに、
所要の権利保護の手続を設ける必要があるというような指摘も強くなされていたところでございます。
この五件の検証
令状によりました実例というのは、今回の
法案の作成に当たりましても、十分に参考にしているところでございます。
今回の
法案でございますが、先ほどからいろいろ答弁の中でも出ておりますが、権利保護の手続の点からいいますと、非常に厳格な
規定になっております。それから、電話
傍受の
令状の
発付されるまでの要件、あるいは
対象犯罪も厳格に絞られている、手続も非常に厳格に
規定されているということが言えるかと
思います。
それから、この
法案では、
傍受した
通信についてはすべて録音等の
記録がなされます。それから、
立会人の封印を得て、これは
裁判官が保管するということになっております。この
記録によりまして、
捜査機関がいかなる
通信を
傍受したのかが明らかになるようにしております。
そして、さらには、
通信の当事者は、この
記録をもとに
通信の
傍受に関する不服申し立て等を行うことが可能でございまして、検証
令状に基づく
通信傍受にはない
制度の整備が図られているところでございます。
今御
説明のありました
修正案におきましても、
立会人が
傍受をしている
通信の
内容を聞き、
傍受すべき
通信に該当するかどうかの判断をすることとしていないという点は
修正案も同様でございますが、
捜査の
対象となっている
事件についての詳細を把握していない
立会人に、その判断が困難であるということが
一つあります。
それから、
立会人がそのような判断をするために、
事件の詳細を知り、あるいは
通信の
内容を聞くものとすることは、かえって関係者の
プライバシーの保護上も問題があるということも言えようかと
思います。
また、電話
傍受という事の性質上、非常に長時間
傍受をすることが考えられるわけでございますが、
立会人も当然、単数よりも、むしろ多人数が交代で
立ち会いをしていただくということが想定されるわけでございまして、そのような多人数の方に
事件の
内容の詳細を告知しまして、さらに通話の
内容を
傍受していただくということは、今申し上げた
プライバシーの保護上では、問題がむしろ大きいということが言えようかと
思います。
以上で、検証とそれから今回の電話
傍受との違いといいますか、手続
規定あるいは人権保障
規定が非常に厳格に整備されているという点を御理解いただきたいと思っております。