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1999-04-21 第145回国会 衆議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年四月二十一日(水曜日)     午前十一時開議   出席委員    委員長 杉浦 正健君    理事 橘 康太郎君 理事 八代 英太君    理事 山本 幸三君 理事 山本 有二君    理事 坂上 富男君 理事 日野 市朗君    理事 上田  勇君 理事 達増 拓也君       小野寺五典君    奥野 誠亮君       加藤 卓二君    河村 建夫君       小杉  隆君    佐藤  勉君       桜田 義孝君    笹川  堯君       菅  義偉君    西田  司君       桧田  仁君    宮本 一三君       保岡 興治君    安住  淳君       佐々木秀典君    福岡 宗也君       山本 孝史君    漆原 良夫君       安倍 基雄君    権藤 恒夫君       木島日出夫君    保坂 展人君       園田 博之君    鯨岡 兵輔君  出席国務大臣         内閣総理大臣  小渕 恵三君         法務大臣    陣内 孝雄君  出席政府委員         法務大臣官房長 但木 敬一君         法務大臣官房司         法法制調査部長         兼内閣審議官  房村 精一君         法務省民事局長 細川  清君         法務省刑事局長 松尾 邦弘君         法務省人権擁護         局長      横山 匡輝君  委員外出席者         最高裁判所事務         総長      泉  徳治君         最高裁判所事務         総局総務局長  浜野  惺君         最高裁判所事務         総局人事局長  金築 誠志君         最高裁判所事務         総局刑事局長  白木  勇君         法務委員会専門         員       海老原良宗委員の異動 四月二十一日         辞任         補欠選任   加藤 紘一君     小野寺五典君   左藤  恵君     宮本 一三君   渡辺 喜美君     桧田  仁君   枝野 幸男君     安住  淳君 同日         辞任         補欠選任   小野寺五典君     加藤 紘一君   桧田  仁君     佐藤  勉君   宮本 一三君     左藤  恵君   安住  淳君     山本 孝史君 同日         辞任         補欠選任   佐藤  勉君     桜田 義孝君   山本 孝史君     枝野 幸男君 同日         辞任         補欠選任   桜田 義孝君     渡辺 喜美君 四月十四日  任意後見契約に関する法律案内閣提出第八四号)  民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律整備等に関する法律案内閣提出第八五号)  後見登記等に関する法律案内閣提出第八六号) 同日  子供視点からの少年法論議に関する請願金田誠一紹介)(第二三五四号)  同(藤村修紹介)(第二三五五号)  同(金田誠一紹介)(第二四〇六号)  同(金子満広紹介)(第二四九七号)  同(木島日出夫紹介)(第二四九八号)  同(北村哲男紹介)(第二四九九号)  同(穀田恵二紹介)(第二五〇〇号)  同(佐々木陸海紹介)(第二五〇一号)  同(畠山健治郎紹介)(第二五〇二号)  同(細川律夫紹介)(第二五〇三号)  同(村山富市紹介)(第二五〇四号)  同(矢島恒夫紹介)(第二五〇五号)  組織的犯罪対策法制定反対に関する請願古堅実吉紹介)(第二四〇五号)  定期借家権制度を創設する借地借家法改正反対に関する請願北村哲男紹介)(第二四九六号) 同月十六日  子供視点からの少年法論議に関する請願畠山健治郎紹介)(第二五六三号)  同(古川元久紹介)(第二五六四号)  同(保坂展人君紹介)(第二五六五号)  同(細川律夫紹介)(第二五六六号)  同(松本惟子君紹介)(第二五六七号)  同(横路孝弘紹介)(第二五六八号)  同(肥田美代子紹介)(第二五九九号)  同(深田肇紹介)(第二六〇〇号)  同(保坂展人君紹介)(第二六〇一号)  同(松本惟子君紹介)(第二六〇二号)  同(横路孝弘紹介)(第二六〇三号)  同(大森猛紹介)(第二六九四号)  同(辻元清美君紹介)(第二六九五号)  同(寺前巖紹介)(第二六九六号)  同(中路雅弘紹介)(第二六九七号)  同(春名直章紹介)(第二六九八号)  同(肥田美代子紹介)(第二六九九号)  同(東中光雄紹介)(第二七〇〇号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  司法制度改革審議会設置法案内閣提出第二五号)  法務行政及び検察行政国内治安人権擁護に関する件     午前十一時開議      ————◇—————
  2. 杉浦正健

    杉浦委員長 これより会議を開きます。  法務行政及び検察行政国内治安人権擁護に関する件について調査を進めます。  この際、前東京高等検察庁検事長に関する調査結果について報告を求めることといたします。陣内法務大臣
  3. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 月刊誌「噂の真相」の平成十一年五月号に、則定衛東京高等検察庁検事長交際していた女性公務出張に同伴したなどとの記事が掲載されましたが、私は、同記事内容が仮に真実であれば大変問題であると考え、直ちに事務当局調査の指示をいたしました。そして、最高検察庁において本人及び関係者から詳しく事情聴取するとともに、裏づけを行うなど、必要な調査を遂げ、その結果の報告がなされました。  その調査の結果を御報告申し上げます。  則定氏は、法務大臣官房長であった平成五年十一月ごろ、月刊誌上でSとされている人物の紹介銀座飲食店を利用するようになり、そこで従業員として働いていた女性と知り合い、交際するようになりました。  そして、則定氏は、法務省刑事局長であった平成六年九月五日月曜から七日水曜までの間、公務下関市内で開催される会議に出席しており、前日の四日日曜日に女性を伴って新幹線で大阪に行きましたが、それは公務とは全く関係のない私的な行動であり、女性交通費等全額同氏私費でこれを負担しているものと認められました。  則定氏は、女性に対し、平成六年十月ころ二回にわたり、小切手で五十万円、現金で三十万円の計八十万円を渡しておりますが、女性、S氏ら関係者からの事情聴取則定氏の銀行口座調査の結果を総合すれば、同氏は八十万円全額私費負担しており、S氏にこれを支払わせた事実はなかったものと認められました。  同口座は、則定氏が昭和四十七年に都市銀行支店に開設し、個人的な消費に当たって、小切手を振り出すとともに、クレジットカード代金引き落としに利用していたものであり、同口座への入金は、一たん他口座に振り込まれた同氏の給与や手当の一部を改めて同口座に移したものなどで、S氏からの入金や出所の不明な入金は一切認められませんでした。  また、S氏は、全く別の機会に、則定氏の意思とは関係なく、女性に三十万円を渡しておりますが、S氏はこのことを則定氏には伝えておらず、則定氏はその事実を全く承知していなかったものと認められました。  次に、則定氏が平成六年八月ごろ、横浜市内ホテルを利用するに当たり、交際中の女性ホテルを利用したことを知られないようにするために架空の名前を使用した事実は認められましたが、四年以上前のことでもあり、ホテルからもその裏づけを得るには至りませんでした。  則定氏がS氏らと銀座飲食店飲食したことなどについては、S氏が則定氏と職務上の利害関係にある業者に該当しない以上、プライバシーにかかわる事項として、本来お答えすべき立場にはありませんが、S氏との交際に疑念を持たれていることにかんがみ、あえてお答えいたしますと、則定氏がS氏とともに飲食した回数は三回程度であり、その代金支払いに当たり、則定氏は応分負担をしたものと認められました。  以上が則定氏の一連行為に関し調査の結果判明した事実であり、国家公務員法上の懲戒処分に付すべき事由は認められませんでした。  しかし、今回の則定氏の一連行為は、私事にわたることとはいえ、不適切であったことは否定できず、結果として、清廉であるべき検察への信頼を損ないかねない事態を招いたものであると判断し、四月十三日、直接の監督責任者である検事総長が、則定氏に対し、監督上の措置として厳重注意しました。そして、則定氏は同日付で辞職いたしました。  次に、堀口勝正次長検事発言について御報告申し上げます。  問題の発言がなされた後に、直ちに本人発言の真意を問いただしましたところ、謀略云々発言は、事実関係が誤っており、法令上も服務上も何ら問題とならない私事にわたる事柄を報ずる一雑誌記事新聞における取り上げ方に違和感を感じていたことから、不穏当な言い方をしてしまったということでありました。また、浮気云々との発言は、私事にわたることで他人の目を気にする余り検事が活力を失ってはいけないという趣旨発言したものが、あたかも浮気を肯定しているかのように、その意図と異なる趣旨に受け取られてしまったものだということであります。  いずれの発言についても、本人は全く不適切な表現であったとして、深く反省し、その発言を撤回しております。私といたしましても不適切な発言であったと考えております。
  4. 杉浦正健

    杉浦委員長 以上で報告は終了いたしました。     —————————————
  5. 杉浦正健

    杉浦委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。日野市朗君。
  6. 日野市朗

    日野委員 今の御報告、非常に興味深く聞きました。女性との関係云々については、まあお盛んなことでというぐらいにとどめておきますが、さて、今の御報告を伺って大分私の興味を引いたことがあります。  この事件について、S氏、それから女性、こう出てくるわけですね、もちろん則定氏が出てくるわけですが、どんな調査をやられたのですか。調査対象者はだれでありましたか。それから、調査対象となったものは、何、何、何でありましたか。ちょっと述べてください。
  7. 松尾邦弘

    松尾政府委員 御指摘の最高検察庁調査でございますが、則定本人はもちろんでございます。それから、関係者等から事情聴取を行いました。また、銀行口座帳簿類確認等、必要と思われる裏づけ調査を行っております。  なお、この調査責任者でございますが、最高検察庁総務部長が当たりまして、則定本人を初め、月刊誌で報ぜられております女性、あるいはS氏等の関係者から事情聴取をしております。
  8. 日野市朗

    日野委員 このS氏でありますが、佐藤さんというらしいですがね。余り珍しい名前ではないですから、佐藤さんと言っておきましょう。その佐藤さんとそもそもの則定さんとのなれ初めを言ってください。それから、この佐藤さんが、現在は廃棄物関係業者ですね、そしてその当時はパチンコ屋のいわゆるプリペイドカード会社だったと思いますね。それで、この佐藤さんと則定氏、飲食は三度ほどということですが、果たしてそれで間違いないのか。ちょっと今の点まとめて答えてください。
  9. 松尾邦弘

    松尾政府委員 お答えいたします。  このS氏でございますが、雑誌等報道によりますと関係業者等というような表現になっておりまして、若干の誤解を与えかねないわけでございますが、則定氏と職務上の関係は全くございません。  知り合った経緯でございますが、プライベートなつき合いということですので、本来は言及するのはいかがかという事項には当たりますが、このような事態になっておりますのであえて申し上げますと、平成五年ころでございますが、則定氏と佐藤氏の共通の友人を通じまして知り合っております。その後、プライベートな関係での交際があるということでございます。  このS氏でございますが、知り合った平成五年当時は、パチンコ関係の機械の製造販売といいますか、それにかかわる会社に勤務しておったということでございます。それで、現在は、生ごみ等の、あるいは廃棄物ですか、これの関係の事業をやっているということでございます。  それから、三回ぐらいという大臣報告の中にあった回数でございますが、これは我々も念を入れまして、関係者則定氏はもちろんでございますが、佐藤氏、あるいは雑誌の記載中にありましたMとイニシアルで言われている人あるいはその関係者、それから飲食店クラブ、あるいはバーというのでしょうか、そこの経営等に当たっている人あるいはその帳簿等、こういったものについてできる限り協力をいただきまして事実関係の特定に当たった結果、則定氏がこのS氏と銀座クラブに行った回数は三回程度という認定ということになるわけでございます。
  10. 日野市朗

    日野委員 三回程度というお話でございますね。若干の幅があるわけでありますが、この問題はいわゆる世間の耳目を聳動した事件でありますね。各週刊誌なんかがいろいろ書きまくっておるわけです。  それによりますと、この女性がある週刊誌インタビューに応じて、いや、則定さんの飲食したものを佐藤さんあてに請求書を出してやったこともある、こういうことも言っているわけです。三回程度則定さんと一緒だったかもしれない。それ以外にも行っていて、それを、いわゆるツケ回しということはあったのかなかったのか。私は、どうもあの女性インタビュー記事によると、あったように読めるんですが。この食い違いは何でそこで出てきているのか、もし食い違いがあったらきちんとまた調査をしてみるべきじゃないか、こう思います。  それはプライバシーだと言われるが、やはり公的な職業についている人については、プライバシーの保護というのはある程度制限されてくること、これは常識的なことですから、特にこの点は、プライバシーとおっしゃるけれども、お聞きしておきたい。
  11. 松尾邦弘

    松尾政府委員 今お尋ねの点でございますが、その銀座にありますクラブ等に何回ぐらい行ったかということを、全体として何回ということで先ほど申し上げたわけではございませんで、問題となっておりますS氏、M氏と何回ぐらい行ったかということは、三回程度というふうにお答えしました。そのほかに則定個人が行った回数は、相当回数あります。ただ、一般に新聞雑誌等報道されているような、頻繁に行ったとか、入り浸っているというような、そんなに多数回でないことだけはあえて申し上げておきたいと思いますが、個人で行った回数はございます。  確かに、女性の言ということで、佐藤氏と一緒に来たときにその飲食代金佐藤氏に請求したというような報道が一部でなされていることは承知しております。我々としても、非常に重大な関心を持たざるを得ないことでございますので、その点も念入りに調べてございます。  その結果でございますが、例えば三回程度と申し上げた中の一回は、則定氏の同期の検事二次会ということでこのクラブを利用した際に、佐藤氏もおられて、同席したということがございました。その際に支払いはどうなったのか、その場に居合わせた者からできる限り事情聴取いたしました。中には亡くなっておられる方もおりましたけれども、できるだけの調査をしました。  その二次会の終わりごろに、そこでの費用として、それぞれに幾らということを言われまして、みんなそれぞれ、そのとき財布から、一万円札プラス千円札がそれに加わったかどうかということを言っていましたけれども、そういうことで徴収しまして、そのときは、佐藤氏がそれをまとめて、自分の分と合わせて支払った。あるいは、その現金佐藤氏がその場は持ち帰って、その請求に応じて佐藤氏が支払ったということはどうもあったようでございます。  そんなこともありますので、これまで我々も、こういった飲食の際に応分負担はしているということを申し上げてきましたが、その応分負担の仕方も、今申し上げたようないろいろな形がございました。そのことを申し上げておきます。
  12. 日野市朗

    日野委員 話といいますか、物の本によりますと、何か大臣も政務次官も一緒に行って飲んでいるということも書いてあるわけですね。それは、個人的に行って飲むのは一向に構わないと私は思うんですよ。経済的に、または時間的に許せば、そんなときに、もっともっと検察官だって行って飲んで構わないし、むしろ世の見聞を広めるかもしれない、そんなふうにも思うんですが、もし、仮にもそれが佐藤氏が払ったというようなことになったとしたら、これはゆゆしき大事なんで、週刊誌や、私なんかも大変な関心を持ちます。この部分は、やはりどうしても情報を公開すべきじゃないですか。  私は、この事件で非常に特徴的なことは、非常に短時日で調査をやられた、そしてそれがさっぱり出てこないという、我々に提示されたのも一枚の紙ぺらでございまして、これは骨子と書いてあるけれども、骨子にも値しないくらいのものであります。ここはちゃんと情報を公開して、もし正すべき点があったら正す、世の中がそれで納得すれば納得する、それでいいんじゃないか、私はこう思うんですね。  特に私は、別に職業的に偏見を持つわけではありませんが、パチンコ関係の、特にプリペイドカードなんというのは、暴力団との関係や何かで、ちょっとこれも世間の注目を集めた種類の業界であります。それから、特に廃棄物関係なんかについては、我々は、一般市民的な目で見て、廃棄物処理業者のやっている無法、こういったものに対する司直の手は緩いのではないかという関心を持っています。  佐藤さんがそういう大物であったかどうかは、私は今ここで問いますまい。しかし、そういう点で疑惑を持たれるとしたら、これは検察にとっても非常に手痛いダメージである。そういうところから私は、こういったマスコミ等を通じて今問題とされている諸点、これはきちんと情報を公開すべきもの、こう思います。いかがでしょうか。
  13. 松尾邦弘

    松尾政府委員 我々としても、できる限りの事実、あるいはそれの裏づけとなる資料はお伝えしたいということで考えておりますが、今回の調査は、あくまで任意といいますか、通常の捜査とは全く違うことでございまして、いろいろな方にかなり無理を言って御協力いただきました。  それから、短期間ということでありますので、お休みのところをわざわざ出てきていただいたり、あるいはこちらから出向いたりしながら、相当な人数をかけて調査したわけでございますが、事項事項だけに、かなりプライバシーにわたることに立ち入ってお聞きしてあります。それをこの場で、あるいは資料として申し上げるということは非常に差し支えがある場合が多々ございまして、できる限り、先ほどの大臣報告の中で、事実関係とその裏づけのものも、触れられる限り触れさせていただきましたので、その程度でぜひ御勘弁いただきたいと思っております。
  14. 日野市朗

    日野委員 いや、やはり勘弁できないのです。東京高検検事長ともなれば、非常に高度に公的な職業でございますね。それは、プライバシーにかかわることはわかる。しかし、プライバシーを追及されるのが嫌だったら、こういう職業につくべきではないのです。私は、この点はぜひとも公表することが検察の威信を保つことになる、こういうふうに思います。もし、そこで調査が足りないのであれば、さらに調査されることも必要ではないですか。これは私の要望です。  それで、もう一点だけ聞いておきます。  検察官当座取引を持っていたということ、このことについて、これは個人的なことでございますというのですが、小切手を振り出すというのは個人的な行為なのです。何で当座取引をするようになったのか、何で小切手を持つことになったのか。その点について、調べておわかりになっていることがあれば。
  15. 松尾邦弘

    松尾政府委員 ただいまのお尋ねの点でございますが、確かに、金融機関に聞きましたところ、個人がこういう形で当座を持っているというのは極めて少ないという回答でございました。  そこで、我々としても、則定氏に、なぜこういうことになっているのかということを聞いたのですが、実態は、先ほどの大臣報告にもありましたが、昭和四十七年に、則定氏はその前に外国での生活を経験しておりますが、外国パーソナルチェック現金にかわって多用されている、端数も含めて書き込めばそれで終わる、これは大変便利だということで、日本へ帰ってきて間もなく、東京銀行の内幸町の支店でございますが、ここにパーソナルチェックのための個人口座を開いたという経緯でございます。  その後の支払いも、例えば自動車の購入とか、あるいは背広等をつくったときの代金支払いとか、そういったことをパーソナルチェックで払っておったということでございますが、その後、カードの時代になりまして、だんだん利用の頻度は少なくなっております。カードの方が多用されているという状況でございまして、その経緯を申し上げると、我々としても、それはそれでなるほどなというふうに了解した次第でございます。
  16. 日野市朗

    日野委員 もっと聞きたいことはありますが、お約束の時間ですから。もっと長くしておけばよかったなと今思っています。反省しております。  終わります。
  17. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、上田勇君。
  18. 上田勇

    上田(勇)委員 御報告をいただきまして、ありがとうございます。  週刊誌記事に出ていたということで、週刊誌記事というのは、とかくその信憑性についてはいろいろな度合いがあるということで、私も、週刊誌に書かれていることすべてが本当であるというふうには思いませんけれども、しかし今回、これは同時に、日刊の一流新聞がトップでその内容について扱いまして、そういうことであれば、それなりの確かな根拠があるのだろうというふうに、これは私だけではなくて、多くの人間がそういうふうに感じているのではないかと思うわけであります。  もちろん、これはプライベートな部分のことでもありますが、検察最高幹部にかかわることでもありますし、ただいま御報告をいただいたのですが、検察信頼回復を図るという意味でも、もう少し丁寧な御報告があってもよかったのではないのかなというのが率直な感想でございます。  私も、これは、何かきょう発売の週刊誌にも関連の記事が出ているようでございますけれども、週刊誌新聞記事を読んだだけでございますし、ほかに何の情報を知っているというわけではございませんが、今御報告を伺って、素朴な疑問が何点かございました。それについてお伺いをしたいというふうに思います。  今、日野先生からも御質問もあったのですが、今回、最高検で行った調査について、本人及び関係者から事情聴取をしたということでございます。これは、もちろん則定氏御本人、それから、今のお話の中では、関係している女性週刊誌言い方で言えば、女性A、それから知人S方々からは事情聴取をしたのだと思うのですが、その他関係者というのは、裏づけのためとかにほかの方からも聴取をしたのか。あるいは、その聴取の方法、どこでどういう形で聴取をしたのか、どの程度の時間をかけてそういう調査を行ったのか。その点、もう少し詳しく御報告をいただければというふうに思います。
  19. 松尾邦弘

    松尾政府委員 かなりの人数の方からいろいろお話を伺いましたが、その中には、飲食の際に同席したと思われる方については、支払い状況等を確認する必要がございますので、お聞きしてございます。  それからまた、週刊誌で取り上げられておりますA子さんとおっしゃる方、あるいはSさん、Mさん、それからその関係方々とか、そういった方に直接おいでいただいたり、あるいは、大変お忙しい方もおられまして、そこの仕事先まで来てくれということもありましたので、仕事先へ伺ったり、それから、遠方におられる方は、調査期間が非常に短期間でございまして、ここまでおいでいただく時間がないということでございますので、何度かにわたって電話でお尋ねした方もございます。  それから、帳簿関係につきましても、訪問先に置いてある場合もございましたし、あるいは、大分古い話でございまして、遠方にあるということもございました。そういった場合は、遠方まで出向いて、立ち会っていただいた上で拝見したとか、銀行調査にいたしましても、倉庫に一括保管されているということもございましたので、それはその倉庫に出向いたりということで、かなりの手間暇はかかっている話でございます。
  20. 上田勇

    上田(勇)委員 相当な人数方々から事情を伺ったということでありますし、裏づけ調査も行ったということがあるのですが、そうすると、お話を伺った方々、御本人も含めて、皆さんほぼ同じような認識だったのか。また、裏づけのために調べた書類等も、皆さんの証言というのでしょうか、話の内容と一致していたのかどうか。個々の具体的なことは結構でございますが、大体どうだったのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  21. 松尾邦弘

    松尾政府委員 一致したところもあるし、事実がかなり違っていた点もあったということでございます。  例えば、ホテルに仮名で泊まっておりますが、雑誌の記載によりますと、非常に仮名の使い方が説得力があるといいますか、仮名であったものですから、我々は、最初に読んだときは、これはホテル調査に行けば出るなと思っていたのですが、残念ながら、若干古かったこともありまして、裏づけがとれなかったということ。  それから、別のホテルもまた利用しているわけなのですが、あるいは場合によったら仮名なのかなということで、そのホテルのそれと思われる日の前後一週間を通じて、かなり膨大な、チェックする際に書くカード、これをめくらせていただきました。たまたまそのホテルは保存してありましたので、それはありましたが、そのときは本名でお泊まりになっていたということで、それが判明したということでございます。  それから、金額の点でございますが、例えば、どういう点が食い違ったか一点だけ例を申し上げますと、女性は、最初に則定氏から渡されたのが三十万円というふうに雑誌の記載ではなっておりますが、これを調べましたところ、最初は五十万円の小切手でございました。小切手につきましては、裏書が女性名前がございましたので、これは裏書等で確認をしております。  そんな点で、食い違いの点もかなりありましたし、また、一致している点もございました。  そんなことで、個々に触れるのは、なかなか難しい問題がございますので、避けたいと思いますが、重要な点での食い違いもそういう形であったことはあります。
  22. 上田勇

    上田(勇)委員 いろいろな点で一致した点もあるし、一致しなかった点もあるということでございます。そうすると、非常に素朴な疑問として、どういうふうにしてその結論に至ったのかなという点があるのですが、そうした中で、一つここで、今の御報告とそれから各種の報道と大きく食い違う点というのが、この知人のSと則定氏との関係ではないかというふうに思います。  この知人S週刊誌報道されているところではプリペイドカード関係業者、これはそういうようなお話がありました。また、週刊誌では政界ともさまざまな関係があるというふうにも書かれておる方なんですが、週刊誌新聞報道では頻繁にクラブ飲食をともにしているというふうに書かれておりますし、S氏がほとんど支払っていたということも書かれております。とすれば、この報道からすれば、S氏とそれから則定氏は相当親密な関係にあったのではないかというふうに思われます。  同時に、御報告にもあったのですが、このS氏が則定氏にかわって一部、御報告では則定氏は全然関知してないということでありましたが、三十万円ですか、その女性Aに支払っているということ。これは普通に考えると、今御報告にあったように三回程度一緒飲食をした間柄の人がそこまでするのかなというのが率直な疑問なんです。もう一つ、今の御報告によると、一方的に負担をかけたことはないというような意味のこともございました。これは週刊誌報道ともちょっと違うのです。  今の報告が本当であるということになりますと、週刊誌報道はほとんど重要な部分がでたらめだというふうに御判断されているのだと思うのですけれども、この点、いわば検察信頼という意味においては非常に重要なところ、核心の部分だと思うのです。ここが、報道されているものと今の御報告が大きく異なっているし、なおかつ、例えば部分的には、普通に考えれば、どうもかなり親密であったというふうに考えるのが自然なのではないかと思われる箇所もあるのです。  このように、週刊誌記事がでたらめであって、今御報告をいただいた内容が事実なんだというふうに御判断された根拠というのは、どのあたりを根拠にされているのか、もう少し具体的に御説明いただかないとなかなか説得力がないのではないかというふうに思いますけれども、もう少し丁寧に御説明をいただきたいというふうに思います。
  23. 松尾邦弘

    松尾政府委員 個々の事実の認定につきまして、それなりにできる限りの資料を集めて認定したつもりでございます。  例えば、今委員御指摘の、女性に渡された最後の三十万円というのがございます。これについては、女性は、則定氏に成りかわってS氏が払った、つまり、逆に言いますと、則定氏が払わせたといいますか、こんなことではないかという趣旨のことを雑誌で言っておりまして、そうでありますと、我々も、これは大問題であるということで、重要な事項の一つとしてかなりの力を入れてこれは調査いたしましたが、関係者、このS氏にもちろん聞きました。それから女性、それから、このお金の交付に関してはかかわっている方がまだ一人、二人おりますので、その具体的名前を出すのは差し控えますが、そういう方からも事情をお聞きしました。  その結果は、この大臣報告にありますとおり、則定氏は全然それを知らなかったということを言っております。それから、S氏も則定氏にはこの件は話していないということと、それから、渡した動機が、当時生活費等に若干困っておられた先ほどのA子さんの状況を見かねて、友人である女性とこのS氏が補助してあげたというのがどうも実態である。それは関係者の話からいくとほぼ間違いないということでございましたので、こういうように報告書に書かせていただいた次第でございます。  それから、S氏と則定氏が相当親密ではないのか、この三回という回数となかなかその親密さとがイメージが違うなということでおとりになったんだろうと思いますが、確かにこのクラブにおけるおつき合いというのは三回程度というふうになりますが、そのほかに、この間に立っておりますM氏という友達、これは則定氏ともう二十年来の家族ぐるみのつき合いでございますが、このM氏とS氏がまた親しい関係にあるとか、そんなこともございまして、飲む以外での、いろいろゴルフをやったりというつき合いはどうもあったようでございます。そういう意味で、友人としては親しかったということは言えるのかなと思います。  それからもう一つ、このS氏が、プリペイドカードといいますか、これは実際は、さっき申し上げましたようにパチンコの関係機械の製造販売をやっている会社に勤めていた人でございますけれども、その関係で、何かその会社の事実上のオーナーといいますか、スポンサーといいますか、もう一つそちらの人との関係があったのではないかということが雑誌等で取りざたされているわけでございます。その点につきましては、このS氏、M氏と則定氏が知り合った経緯等、またそのS氏、M氏あるいは則定氏のいろいろな話から総合いたしますと、そこの関係はないということでございました。  ですから、そういうふうに取りざたされているということはあるかと思いますが、この私的なつき合いというのはそこらの事業なり経営なりとは無関係であったというふうに認定できるのではないかなと思っております。
  24. 上田勇

    上田(勇)委員 いろいろと調査をした結果として今御説明をいただいたのですけれども、最初御報告いただいたことからすると、なかなかそういったことというのはわからない、むしろ何か隠そうとしているように、事実を全然言わないでということがかえって疑念をもたらしているんだと思います。先ほど日野委員からもお話がありましたけれども、ここはやはり、信頼回復という意味からも、ぜひ情報は公開していただくことが重要なんじゃないのかなというふうに思うわけでございます。  最後に、ちょっと御報告の中であった、架空の氏名を使用して女性ホテルを使用したことは認められたが、宿泊者名簿等の発見には至らなかったというようなお話がございました。これはたしか私の記憶では、オウム真理教の捜査のときなどには、偽名で宿泊したということで身柄を拘束したというような事例もあった。これは私文書偽造に当たるというような言い方だったのではないかというふうに思うのですけれども、今御報告いただいたこのくだりというのは、認めているということですので、これはそういった私文書偽造に当たるというふうにおっしゃっているのですか、それとも、いやそうではないんだというふうにおっしゃっているのか、そこはちょっと御説明をいただければと思います。
  25. 松尾邦弘

    松尾政府委員 具体的資料は出てまいりませんでしたが、仮名で泊まったことは御両人とも、則定氏もその女性も認めておりまして、これは間違いない事実でございます。それは法律上でいいますと旅館業法違反にもなりますし、今お尋ねの、私文書偽造が成立するかどうかという問擬されるべき事案であることは間違いなかろうと思います。  ただ、私文書偽造に当たるかどうかの問題は、必ずしも単純に、即成立するということもなかなか難しいようでございます。どういう形式のどういう書面に書いたのかというので、その書面の文書性が問題になりまして、文書性がかなりあるということになりますと、私文書という認定になりまして、偽造の問題が出てくるということがございます。  なお、お尋ねのように、オウム真理教に関係する事件のいろいろな捜査の際に、確かに仮名で宿泊した点をとらえて旅館業法違反等で検挙した事例もございます。おっしゃるとおりでございますが、結論としては、全部起訴猶予という処分にはなっているところでございます。
  26. 上田勇

    上田(勇)委員 時間ですので、これで終わります。
  27. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、木島日出夫君。
  28. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  この問題は既に参議院で質疑が行われていますから、端的にお聞きをいたしたいと思います。  私は、この問題は、基本的には男女間の倫理問題じゃなくて、昨年、大蔵接待問題が大問題になりましたが、その種の大問題であると思っております。  第一に、こう聞きます。  報告によりますと、則定検事長は、平成五年、九三年十一月ごろ、知人の紹介銀座飲食店を利用することになり、それが問題の女性と知り合った契機だというんですが、確認しますが、その知人というのは佐藤章氏であり、銀座飲食店とは銀座の高級クラブ「えがわ」に相違ありませんか。
  29. 松尾邦弘

    松尾政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  30. 木島日出夫

    ○木島委員 共通の友人を通じて則定氏は佐藤氏と知り合ったというんですが、共通の友人とはだれでしょうか。
  31. 松尾邦弘

    松尾政府委員 先ほどから雑誌中でMと称されている人でございます。
  32. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、この問題は単なる私的な問題じゃないと思いますので実名を挙げますが、松田雅良という人ですか。
  33. 松尾邦弘

    松尾政府委員 具体的名前に言及するのはいかがと思いますが、事が事だけに申し上げますと、松田雅良さんという方でございます。
  34. 木島日出夫

    ○木島委員 平成五年十一月当時、則定氏は、たしか法務省の官房長、そして、その後、刑事局長になられたと思います。  佐藤章氏というのは、コスモ・イーシー株式会社という株式会社の取締役であった。その会社は、例のパチンコの機械の製造販売等をしている会社であった。そのコスモ・イーシー株式会社の代表取締役は熊取谷稔氏であった。間違いありませんか。
  35. 松尾邦弘

    松尾政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  36. 木島日出夫

    ○木島委員 コスモ・イーシーという会社はどういう会社か。かつてパチンコ業界にプリペイドカードが導入された問題が発生いたしました。平成元年十一月ころ、衆議院予算委員会でもその問題をめぐりまして、警察庁の官僚と政治家と関係業界との癒着が大問題になりまして、大変な質疑が予算委員会で行われております。そのときに、日本レジャーカードシステムという会社も登場しますが、その質疑の中でコスモ・イーシーという会社名前が登場してきますが、承知しておりますか。
  37. 松尾邦弘

    松尾政府委員 承知しております。
  38. 木島日出夫

    ○木島委員 どんな点が指摘されたのか、コスモ・イーシーというのはどういうかかわりを持ったのか述べてください。
  39. 松尾邦弘

    松尾政府委員 今、手元に資料がございません。いろいろな形で報道されたものと承知しております。
  40. 木島日出夫

    ○木島委員 きょうは、その問題が中心でありませんので、指摘だけしておきます。  平成元年十一月一日、衆議院予算委員会会議録がございます。そこで、各党派の委員がいろいろな形から質問しているんですが、我が党の、当時の野間委員も質問をしております。  日本レジャーカードシステム株式会社というプリペイドカードを発行することを認められた会社、これに警察庁が後押しをした、そこで癒着が問題になったわけであります。そのプリペイド会社の発起につきまして、この熊取谷という人物から陳情書が出されているわけであります。その後、それが取り下げられて、NTTとか三菱商事とか銀行などが一体となって設立されたわけであります。  その日本レジャーカードシステム株式会社の株主の一部に、遊技場自動サービス機工業会というのがある。そして、遊技場自動サービス機工業会というのは、自動玉貸し機等の会社四十八社が入ってつくられたものでありますが、その一つに問題のコスモ・イーシー株式会社というのがあるという関連であります。  私、ここに閉鎖登記簿謄本をとってきております。この会社は現在も生きている会社でありますが、設立が昭和六十二年二月十日であります。そして、平成二年六月二十五日に除却された登記簿謄本を見ると、代表取締役が熊取谷稔、取締役が佐藤章であります。先ほど言ったその国会質疑の中でも、我が党の野間委員が質問に使っておるんですね。これは平成元年ですが、「去年の十月に、「グリーンべると」という業界誌、これがあります。これによりますと、コスモ・イーシーの佐藤さんという統括本部長、彼がいろいろ書かれております。この中身を見ますと、三年前から立案をした、」  要するに、三年前からプリペイドカードを認めてくれというのでいろいろ運動をやっていたということの、そういう指摘の中で、佐藤さんというコスモ・イーシーの統括本部長の名前が国会でも出てきているんですが、この佐藤さんというのが今回問題になった佐藤章氏、同一人物である。間違いありませんか。
  41. 松尾邦弘

    松尾政府委員 今お読みになった中の佐藤氏と今回の問題になった佐藤氏が同一であるかどうか、ちょっと私申しわけありませんが、今確認はできません。
  42. 木島日出夫

    ○木島委員 しかし、佐藤章氏というのは、当時コスモ・イーシーの取締役だった、それは間違いないわけでしょう。答えてください。
  43. 松尾邦弘

    松尾政府委員 その点はおっしゃるとおりでございます。
  44. 木島日出夫

    ○木島委員 そういう人物なんですよね。そういう人物とおつき合いをしてこういう女性問題にまで発展する事態に至った、大問題だと私は思うんです。  そこで、先ほどの報告ですと、則定氏と佐藤氏との会合は三回だけだった、則定氏は応分負担をしたという報告でありますが、その時期が大変大事だと思うので、その時期、場所、同席者の人数と有無、そして、費用総額、費用総額の中の則定氏の負担した金額、それを明らかにしてください。
  45. 松尾邦弘

    松尾政府委員 則定氏が佐藤氏と知り合ったのは平成五年の中ごろではないかと思われますが、それから、平成六年いっぱいぐらいまでの間に、前後合わせて三回ぐらいということでございます。  その金額あるいは負担の割合等でございますが、それぞれ応分負担をしたということで申し上げてありますが、その一回の例としては、先ほど申し上げましたとおり、かなり多人数で行った件がございます。それから、そのほかには、一次会は則定氏が持って二次会佐藤氏が持ったというような、前後を通じて応分と言えるようなこともございました。  そんなことでございますので、金額その他の問題はそのように御理解いただきたいと思っております。
  46. 木島日出夫

    ○木島委員 到底納得できません。時期を言ってください。時期が非常に大事です。
  47. 松尾邦弘

    松尾政府委員 この時期につきましては、今申し上げた間ということで御容赦いただきたいと思いますが、具体的には、それぞれの記憶なり、あるいは店の方の関係者の供述とか、そういうことで、ある程度狭い範囲で認定できるかもしれませんが、それは、今回の調査そのものが、冒頭に申し上げましたように、いろいろな形で公にはしない部分も含めまして事情を聞かせていただいているということもございますので、なかなかお答えするのは難しいところでございます。
  48. 木島日出夫

    ○木島委員 到底納得できません。  実は、登記簿謄本をずっと追いますと、佐藤氏と熊取谷氏との関係は大変おかしな関係が発生したようで、平成六年十月三日、佐藤章氏はコスモ・イーシーの取締役を解任されています。そういう状況になっているわけです。それで私は時期が非常に大事だと。  ここに、「パチンコ産業三十兆円の闇 政財官 癒着の全構図」という本が出版されております。その中の一部にこう引用されています。「ゴルフ会員権の大量販売で逮捕された水野健と同様の詐欺事件を起こして国外に逃亡していた熊取谷稔が、何といつの間にかパチンコのプリペイドカードの発行会社「日本レジャーカードシステム」の大株主になっていた。」  則定氏が佐藤氏とおつき合いをした当時、まさにコスモ・イーシーの代表取締役がこの熊取谷稔氏であり、取締役が佐藤章氏ですから、これが事実だとすれば大問題だと思うんですが、熊取谷氏はそういう詐欺事件を起こして国外に逃亡していたということがここに書かれているんですが、そういう事実はあるんでしょうか。
  49. 松尾邦弘

    松尾政府委員 そういう事実は承知しておりません。
  50. 木島日出夫

    ○木島委員 調べませんでしたか。
  51. 松尾邦弘

    松尾政府委員 その点については、本件ではそこまでの調査は必要ない事項と我々は考えておりますので、特段調べておりません。
  52. 木島日出夫

    ○木島委員 調査が非常に不十分ということを指摘しておきたいと思います。  いろいろな資料によりますと、則定氏が佐藤氏や松田氏と飲食をした場所として、先ほど指摘した「えがわ」に加えて、ロイヤルサルート、コスモという場所が指摘されているんですが、そういうところでの飲食はありませんでしたか。
  53. 松尾邦弘

    松尾政府委員 雑誌にそういう名前がどうも登場しておることは間違いございませんが、このS氏あるいはM氏とEという店における飲食は認められるところでございますが、あとの二店につきましては、そのお二人が同席したということについては確証はございませんでした。
  54. 木島日出夫

    ○木島委員 到底納得できないんですが、その三回の飲食の最初の時期と最後の時期を言ってくださいよ。
  55. 松尾邦弘

    松尾政府委員 今御質問の中で、佐藤氏がお尋ね会社の役員をやめたという時期、それが登記に反映しているということでございますが、則定氏が佐藤氏と知り合ってつき合うようになって間もなく、佐藤氏は今言った会社を、縁を切っているといいますか切られているといいますか、そういう関係のようでございまして、その後もその佐藤氏と、まあS氏とM氏といいますか、それと則定氏のおつき合いはずっと続いておったわけです。  それで、前後三回というのはその間のことでございますが、さらに言うならば、平成五年に知り合ってから六年あるいは七年ということでございますが、そこらあたりの間にそういうこともあったということでございます。
  56. 木島日出夫

    ○木島委員 私がしつこく聞くのは、佐藤氏は、平成六年十月三日付でコスモ・イーシーの代表取締役熊取谷稔氏から解任という処遇を受けているんですよ。だから、それの前か後までつき合っていたかどうかは非常に大事なんですよ。先ほど言ったように、熊取谷氏というのは、私もいろいろな点で名前は知っている、そういう人物ですからね、だから聞いているんですよ。
  57. 松尾邦弘

    松尾政府委員 今申し上げましたように、知人としてのつき合いは、その会社の役員をやめた後も従前と同様に続いていたということでございます。
  58. 木島日出夫

    ○木島委員 時間がありませんので、もう押し問答をしてもしようがありませんから質問を移りますが、則定氏が女性に支払ったのは、平成六年、九四年の十月ころの小切手三十万円と現金五十万円ということのようでありますが、先ほど来出ておりましたけれども、女性の方の文章を見ると、五十万円というのは、則定氏じゃなくて、佐藤氏の金じゃないかというふうに読み取れるんですけれどもね。この問題について、その五十万円は一体だれが金を出したのかについて、その女性はどう言っていたんですか、あなた方の調べに対して。
  59. 松尾邦弘

    松尾政府委員 女性が、そこらあたりは推測であるということは言っております。  ただ、委員御指摘の五十万円でございますが、これは小切手で渡されておりまして、小切手の裏書はその当該A子さんと称する女性でございます。それで、小切手の振出人は則定衛ということでございます。  したがいまして、雑誌の記載あるいはA子さんの供述をもとにしたということでありますと、その点については、我々の調べですと、事実は違うということでございます。これは、小切手と、またそれの裏づけとなる当座の該当部分の支出、これはまさに五十万円でございました。そんなことで、これは恐らく一〇〇%間違いない事実だと思います。
  60. 木島日出夫

    ○木島委員 よう納得できませんが、佐藤章氏から女性への三十万円、それと別の三十万円、これについて、参議院では、中絶その他の八十万円とまた別途の、別種の金という報告をしておるようでありますが、それはどういう趣旨の金だったんですか。その問題についてその女性は何と言っておるんですか。
  61. 松尾邦弘

    松尾政府委員 女性は、佐藤氏から渡されたということでございまして、佐藤氏と、あるいはその金の支出に絡む関係の方が一人、二人おられると私は申し上げましたが、そうした人あるいは則定氏からいいますと、これは渡された趣旨が全然違いまして、その前に五十万円と三十万円と二口ありますが、その三回目の三十万円というのは、先ほど申し上げましたが、その後、女性が若干生活費の補助が必要かというふうに佐藤氏が友人として思い、また関係するA子さんの知人という女性もそう思って、それが契機で援助したお金ということでございまして、この点についてはほぼそれで認められると思います。
  62. 木島日出夫

    ○木島委員 時間が来たから終わりますが、まだまだ大事な部分が隠されているということを指摘いたしまして、終わります。
  63. 杉浦正健

  64. 保坂展人

    保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  この問題についてまず刑事局長に伺いますが、先般から出ていますロイヤルサルート、こちらの方に、四月十六日の夕方にその専務が調べを受けたという情報があるんですが、事実ですか。四月十六日です。
  65. 松尾邦弘

    松尾政府委員 いろいろな形で事情関係の方からはお聞きしております。お聞きするに際しては、なかなか日程がとれなかったりいたしまして、何回かにわたってお尋ねをして、あるいは、その後に確認の電話あるいは確認のためにもう一度おいでいただいたとか、いろいろな方がございます。ただ、それは、おいでいただいたこと自体も公にされたくないという方もおられますので、いつ、だれを、どのような形で事情聴取したかは御容赦いただきたいと思います。
  66. 保坂展人

    保坂委員 必要な調べはみんな終わったんじゃないですか。終わった、最高検もすばらしい短い期間で終わったのに、実は調べは続いているじゃないですか。どういうふうに説明するんですか。
  67. 松尾邦弘

    松尾政府委員 参議院に御報告した段階で基本的な調べは全部終わっております。それまでの間に、確定するためのあらゆる手段をとったわけでございます。  ただ、そのときに、率直に言いまして、その期間には御協力をいただけない方もございました。ただ、それについては、御協力いただけないわけですからほかの方法でもって調べを尽くしまして、事実を認定するに足りるものについてはあらゆる手段を講じたということを申し上げておきます。  ですから、その後申し出があったケース、いや、お話ししてもいいよということでありますと、それはもうよろしいというわけにもいきませんので、お話をお聞きした人もあるいは二、三あるかと思います。
  68. 保坂展人

    保坂委員 法務大臣、先ほど報告がありましたけれども、そんな短い期間で調べられないんですよ、実際のところ。ですから、公式に終わった後も、今刑事局長が認めたように、調べはまだ続いているわけです。  さて、私は、この問題の核心はやはり業者佐藤章氏と検事長関係だと思って、直接にこの女性と会って話を聞いてまいりました。したがって、私の方でも調べをいたしました。その結果、先ほど木島委員からもあったんですが、女性の方は三十万円の小切手則定氏からいただいた、まあここは争いはないわけですね。その後五十万円、これははっきり言われているんですよね。佐藤さんが女性の自宅を訪れて、公務員なんだから自由に渡す金は彼にはないんだよと言って、キャッシュで五十万円を置いていった、こういうふうに言っているわけです。さらに、最後の三十万円ですが、女性の方は、これは則定本人からのものだと思っていた、この間の一連報道で、それがそうではなかった、そういうものじゃなかった、こう言っているわけです。  これだけ証言が違うのに、ここをきちっと究明しないのはなぜですか。先ほど、五十万円の小切手、裏書が女性と言っていましたけれども、キャッシュで五十万円をその佐藤氏が自宅に持ってきたと。実際に痛みを持ったのが女性の側で、それだけの体験があって、記憶を勘違いしたり架空の記憶を持ちますか。その辺、ちゃんと調べたんですか。
  69. 松尾邦弘

    松尾政府委員 お答えします。  A子さんの「噂の真相」という雑誌に掲載された話した内容といいますか、大変具体的でリアルでございます。また、経緯等におきましても、一つの流れとしてはあり得るなということでございましたので、当初我々は、それを読んだ段階では、これがそのとおりであれば非常に重大な問題だということはもちろんでございます。  ところが、調べをいろいろやっていきますと、例えば一つ例として、今小切手の問題がございました。小切手は、もう少し立ち入って申し上げますと、これはA子さんが金融機関の窓口まで行きまして、みずから署名をして現金化しております。ですから、現金五十万円を手にしたということは間違いございませんが、それは小切手をみずから換金して手に入れたということでございます。それで、三十万円は、A子さんは小切手だ、こう言うんですが、これは現金でございます。これも小切手が窓口で現金化されておって、それはA子さんではないわけでございまして、その点は明らかにA子さんの記憶違いだろうと我々は思っております。  そんなようなことがかなり重要な部分についても見受けられますので、A子さんの供述を前提にいろいろお聞きいただきますと、我々のいろいろな手を尽くした調査の結果とはそごを来すということもあろうかと思いますが、それはA子さんの記憶違いの部分もあるというふうにお考えいただきますと御納得できるということではないかと思います。
  70. 保坂展人

    保坂委員 では、確認しますが、その五十万円を自宅に佐藤章氏が持ってきたという事実をA子さんが主張している、これは彼女の間違いということですね。簡単に。
  71. 松尾邦弘

    松尾政府委員 それは間違いでございます。
  72. 保坂展人

    保坂委員 これだけの問題で短期間にその女性の証言を全部はねのけて事実認定したということは非常に疑いを持ちますが、この検事長口座、東京三菱銀行、昭和四十七年当時に開設された口座だそうですけれども、これは私的な用途で使われている口座である、給料等を当座に移す、つまり給料振り込みを受けている口座じゃないということも参議院でおっしゃいました。別の口座にわざわざ移すわけですよね。そしてまた、SないしM、佐藤さんないし松田さんの入金はなかったと証言されていましたけれども、そうすると、給料以外の収入というのはこの口座に入っていたんですか。
  73. 松尾邦弘

    松尾政府委員 二点申し上げたいと思いますが、今御質問の中で、我々がA子さんの供述を全部はねのけてとおっしゃいましたけれども、それはA子さんの名誉のためにも申し上げておきますと、相当の部分は真実でございました。その点は我々もはっきり認めているところでございます。ただ、何点かの点で、中には重要な事実もありますが、事実の記憶違いでないかなと思われる点があったということでございます。  それから、口座につきましては、これは結果的には全くプライベートな口座でございましたが、全部見させていただいて、その出入りについてチェックをいたしました。その中で、収入の主なものは、これも本来ですと則定氏のプライベートな話ですので触れたくないんですが、遺産相続に絡んで、分割してそれがその口座に入ってくるというようなものが原資としては大きいのかなと思います。それからあと、個々に預金の口座から振りかえられた分もございましたし、あるいはボーナス等の一部が振り込まれた分もあるということでございまして、いわばその跡づけといいますか、そういうものは全部できております。
  74. 保坂展人

    保坂委員 先ほど、佐藤氏と則定氏がどうやって知り合ったか。これは報道の中には、またその女性にも聞いたんですけれども、同僚の元検事さんの紹介で、その方は清水博さんだというふうに聞いたんですが、間違いないですか。
  75. 松尾邦弘

    松尾政府委員 そこのところは、ちょっとやはり事実が違うかなと思います。個々の具体的な名前を申し上げるのは、大変個人的なつき合いの範囲内の話でございますので申し上げかねるのでございますが、雑誌に書かれておりましたEというクラブに出入りする契機はとなるとちょっとやはり違う。清水さんがそのクラブ紹介したとかということ、あるいは清水さんがA子さんを紹介したとかということではございません。
  76. 保坂展人

    保坂委員 それでは法務大臣に伺いますが、この短い質疑で到底最高検の、つまり検察の威信なりあるいは捜査機関に対する高度の信頼がなければ、これは検察みずからよって立つことができないわけです。  みずからの内側の問題について、身内に甘いのではないかということを我々この事態が起きてから特に申し上げてきたんですが、法務大臣、どうでしょう。今の答弁だと、この期間の中に来ていただけなかった人からも聴取をしているわけですよ、四月十六日にも。調査結果を言ってしまってからもまたやっているわけですよ。不十分じゃないですか。もう一回そういう疑念が出てきたときにはやり直す、そして信頼に足る検察をきちっとつくれ、こういうふうに言われないのはなぜですか。
  77. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 短期間のうちにこの調査を行ったということは、場合によっては検察の威信を揺るがしかねないという心配がありましたので、私は、「噂の真相」の報道を知って、至急調査をして、そういう誤解があるのかないのか、あるいは事実関係、問題があるのかないのか、こういうものをしっかりと把握しなさいということを命じたわけでございます。  その結果、八日、九日からずっと、日曜を挟んで十二日月曜日に至るまで、全力を挙げて調査をして、先ほど私が申し上げたような結果の報告となったわけでございます。  私といたしましては、その結果、法令上、服務上問題となるべき事実があるか否かを十分に見きわめることができたということで、再調査を行う必要はない、このように考えております。
  78. 保坂展人

    保坂委員 陣内大臣、私はこの問題でもう既に三回質問主意書を出していますが、読んでおられますか。
  79. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 読ませていただいております。  なお、時間の都合上、また少し時間をいただいている件もございますが、御理解を賜りたいと思います。
  80. 保坂展人

    保坂委員 検察信頼回復するために急いだのはわかりますが、五日間は緊急調査だったというふうに考え、そして、ほかにも他の委員からも質疑がございます。不明な点もあります。  例えば、検察の皆さんが同期会をやるのに、なぜ佐藤章さんがそこにいなきゃいけないのですか。同期会というのは、心置きなく仲間内で話すのが同期会じゃないですか。そういうところに、なぜぽつんとそういう業者の方がいるのですか。そういうところをきちっと信頼回復していただくために、大蔵省だって長い期間かけて、防衛庁にしても装備品疑惑で調査していますよ。  そういうことについて、もう一度、不十分な点が出てくれば、陣内法務大臣調査を指示されますか。
  81. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 今のところ、十分調査をし尽くしたと思っておりますが、不十分な点がもし出てくるということであれば、また委員の御意見を尊重させていただきたいと思います。
  82. 保坂展人

    保坂委員 不十分だから、これだけ質問が出ていると思います。  私たちは、決してこの問題、個人プライバシーをいろいろ殊さらに探るという趣旨ではなくて、検察という、政官財の、いわばそこにメスを入れる唯一の、国民がこの間信頼してきたその機関の中で、その最高幹部が、訴追を受けた側あるいは告発をされかねない側の人たちとグラスを傾けていた、これは信じられない、こういう気持ちでいっぱいです。  きちっと、そういう交友関係そのものも、全く瑕疵がないんだというところを国民が納得するまで、大臣調査を指示していただきたいという要望をして、私の質問を終わります。
  83. 杉浦正健

    杉浦委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十一分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  84. 杉浦正健

    杉浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出司法制度改革審議会設置法案を議題といたします。  これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。日野市朗君。
  85. 日野市朗

    日野委員 我が国の統治構造の基本は三権分立にあります。三権分立は、言うまでもなく、チェック・アンド・バランスの機能によりまして、司法、行政、立法、これが均衡ある機能を果たしていくというところにその存在意義がございます。  そこで、我が国の三権分立の現状、どのようになっているかというと、私、いろいろと考えてみるところであります。少し私の見解を申し述べたいと思うのでありますが、我が国において三権の分立がきちんと機能しているかどうか、この点について私はかなりの危惧を持たざるを得ないという状況であります。そして、この三権分立が十分に機能していないところに、今問題となっております法案、これが大きな議論を呼んでいるという現状になっているのであろうと思います。  内閣においても、この点について非常に心配をしておられることはよくわかります。当法案を提出されて、そして司法制度改革審議会、これを内閣に置かれて、これからその審議によって日本の司法制度を考えていこうという姿勢は、これは評価できるところであります。むしろ私は、これを積極的に進めること、これが我が国の健全なる社会、健全なる統治機構、これをつくり上げていくために非常に大事なことであろうというふうに思っているわけであります。  しかし、この点については多くの議論ございまして、今の日本の司法、これでいいと言う人は余りいないのでありましょうが、これをどのように進めていくかということについては多くの議論があるところであります。ある人は、司法は最低限のセーフティーネットだというふうに言われる方もおられます。私もそうだと思う。  しかし、それと同時に、現在の日本の閉塞状況と言われるものをつらつら考えてみますと、私は、これも三権分立が十分に機能していないのが原因の一つではないかと実は思っているのでございます。本当は、国民というものは、法に従ってみずからを律していけばいろいろなことができるはずだ。しかし、それができずに、行政主導の一つの枠組みをつくり上げられてしまって、その中で、制御された社会の中で、自分の生き方、これを模索するという形になっているのではないか、このように思うわけであります。  私、よく、明治の人間というのは非常に活発な、独創性を持った、そしてバイタリティーを持った、非常にすばらしい生き方をしたというふうに考えているんですが、現在の日本は、そういう伸び伸びと闊達に生きるという生き方が制御されているのではないかというふうに思うのです。そして、私の表現をかりて言わせていただければ、今の日本人には荒ぶる心がなくなってしまった、こう思います。荒ぶる精神がなくなってしまっているのではないかという感じがいたします。そういった耐えがたい保守性を日本人は今身につけてしまっているのではなかろうか。  これは、この三権分立の中で、そういうシステムの中で、自由闊達に生きるという生き方を閉ざしてしまっている。つまり、三権分立というものが十分な機能をしていないところにその原因があるんだというふうに私は考えざるを得ないのでありますが、総理は、この三権分立という制度についてどのように考えておられるか。チェック・アンド・バランスの原理、これをどのように考えておられるのか。  そして、私は、この司法権が十分に機能し得ないというのは、他の二権、立法、行政、これに対して、特に行政に対して従属性を持ってしまっているのではないかということを非常に危惧をいたします。この三権分立の考え方、そして他の権力に従属してはならないというふうに思う私の心情、こういったものに対して、総理はどのようにお考えになっておられますか。
  86. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 三権分立は、新憲法下、特に強調されておることでございまして、それぞれ、司法、行政、立法が、先生おっしゃるようにチェック・アンド・バランスの機能を発揮して、お互い両々相まって日本の国が進展しておるものと理解しております。今の状況について種々の問題があるという日野先生のお考えと承っておりまして、具体的な点についてまだお伺いしておりませんけれども、私自身は、現憲法下における三権が、おのおのの機能を発揮して進んでおるというふうに認識をさせていただいております。  比較すれば、特に司法権について、戦前におきまして、旧憲法下におきましては、かなり行政権の中で処理されておったことにかんがみれば、現在、最高裁判所を中心にした裁判制度がしっかりとした形で存在をするという中で、私としては、それぞれ独立性を保って、かつ相互の間の適切なチェック・アンド・バランスの関係が保たれるべきであるということは御指摘のとおりであります。  現下憲法におきましては、立法権が国会、行政権が内閣、司法権が裁判所にそれぞれ属するとされておりまして、それらの間に議院内閣制、内閣の裁判官任命権、違憲立法審査権等の、相互に他を抑制し、均衡を保つ仕組みが定められており、これが機能いたしておるというふうに考えておるわけでございます。そういった意味で、司法権について、特に今次、この法律も含めまして御議論されておられることだろうと思っております。  憲法第七十六条第三項におきまして、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」と規定され、裁判官が具体的事件の裁判に当たり、何者からも干渉を受けず、独立していることが明文で保障されているのであります。このような憲法の定める司法権の独立については十分尊重されるべきものであると考えておりまして、申し上げましたが、私としては、司法権につきましても、これが憲法の趣旨にのっとって適切に処理されておるものと考えております。  しかし、諸般の問題について全く問題なしとしないというような諸点がありまして、常々この点について国会でも御議論いただきまして、あるいはまたそれぞれ審議会におきましても御議論されてきたところでありまして、より一層確実なものといたすべく努力していかなければならないことは当然と認識いたしております。
  87. 日野市朗

    日野委員 総理の今の御答弁の中に、まあ総理としては、現在の状態がうまくないなどということは、これはおっしゃるわけにはいかぬのでありますから、今の御答弁はそれで了といたしますが、私は、現在の司法をめぐる状況は実際はもっと厳しいものがあるというふうに思っているんです。そして、私と同じように考える人たちが実は数多くいるのだということを認識していただきたいと思うのです。  この委員会における参考人質疑でもこれは論じられた点でありますが、日本における司法というのは常に虐げられてきたという主張があるわけであります。明治の時代から司法権というものは十分に尊重されてこなかったという、これは論者がいるわけであります。私も実はその一人であります。そして、こういう考えを持っている人たちというのは決して少なくないということは、私の方から総理にお話をしておきますから、ひとつその点は御認識をいただきたい、そういう人たちがいるということは。  特に、私は、日本における司法というのは、時の権力の維持機構、それを確立するということを優先してきたというふうに思うのでございますよ。戦前も、非常に裁判官というものの数も少なかった。それから、裁判所が、これは天皇の名においてする裁判でありますから、裁判官が多くのことを主張することもできなかったというような事情は、これはあったのであります。  特に、私は、戦後を見まして、特に安保闘争、六〇年安保、七〇年安保というような時期がありまして、これはもう、六〇年安保のときの世情がどのようなものであったかということは総理も御記憶でありましょうし、ましてや七〇年安保をめぐる世情がどのようなものであったかということも十分御理解なすっておられると思います。そのような中で、司法権は秩序維持、秩序維持というのは、私がここで申し上げる意味は、時の権力の維持機構としての役割を果たすということに、私の表現をもって表現させていただければ、これのために随分狂奔したというふうに私は思います。  私は、その当時の司法権のあり方について、司法はその果たすべき役割を忘れてしまったのではないかというような感想すら持っているわけであります。これが、警察権力それから検察権力、こういった治安維持の衝に当たる人々は無論でありますが、特に裁判所も大きな変貌をこの二つの時期に遂げたのではないか、そんな感じがしております。  何で裁判所がああなってしまったのかなということを考えますと、裁判官のキャリアシステムでございます。そして、そのキャリアシステムを通しての司法内部の統制強化というものが非常に大きな役割を果たしてきた。さらに、そのもとを尋ぬれば、裁判所というところは、日本が戦後多くの分野で戦争責任を問われたにもかかわらず、追及されたにもかかわらず、裁判所というのは戦争責任の追及というのはなされていなかったのですね。そういうことも大きな一つの伏線としてあったのではないかと思いますが、私に言わせていただければ、裁判所も時の権力の維持機構の一翼を担ったというふうに私は思います。  その現象的なあらわれとしては、例えば日本における無罪率が非常に低いこと、それから行政訴訟における原告の勝訴率などというものが非常に低いこと、また、裁判所における憲法判断というようなことが行われていない。それは幾つかはありますよ。しかし、憲法違反の主張がいっぱい出ていても、それに対してこたえることをしなかったということなんかにもあらわれているのだろうというふうに思います。そして、加うるに司法予算の貧困、これが、裁判所の人員それから裁判所の法廷を初めとする諸施設の不足、そして、その結果が裁判の遅延ということになって、それはますます国民の関心がこの司法から薄れていったという結果になっているのだろうというふうに思います。  私は、こういう点で、司法そのものに対して今ここで大きな改革を加えていくこと、これは必要だと思います。ですから、司法制度改革審議会、これを設けることには、私は、さっきも申し上げたように賛成なんです。しかし、また時の政治権力維持機構、その一翼を担うような司法の方向にこの改革が向かうとすれば、これは日本の将来を大きく誤るというふうに思います。  この審議会の設置が、内閣に置かれるということについては、これは私はやむを得ない、こう思います。やむを得ないのだ、これは。裁判所がこれをやるわけにいきませんし、国会でやれば、これは両院に置かなくちゃいかぬという面倒なことにもなりますし、これを内閣に置くことは必要であるというふうに思う。  ただ同時に、これは内閣に置かれたから内閣がほしいままにこの司法制度をいじっていいということにはならない。もちろん、そのための工夫もこの審議会設置についてはされていることは私も認めますが、ここで大事なことは、行政が司法権の独立を侵してはならない。この審議会設置、これを口実に行政が司法権の独立を侵してはならないということ。つまり、行政府としては謙虚な心を持ってこの審議会を運営していくということが必要であろう、私はこう思うのでございますが、総理はいかがでしょうか。
  88. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 繰り返しになりますが、三権の分立については、私はそれぞれの任を心得て対応していると思いますが、ただ、司法のあり方につきましては、今般こうした審議会を設けるということも含めまして、世に現在の司法制度のあり方を含めましていろいろな御議論のあることは十分承知をいたしております。  したがいまして、それにのっとって今回法律案として提出させていただいておりますが、今御指摘のように司法権の独立を侵すことにならないかというようなお尋ねでございますが、もっとものことでございまして、そうした司法権の独立ということに関しましては、この内閣の責務としても十分心得て対応していかなければならないと思っております。  政府としては、常に司法の独立を尊重してきたところでありますが、いやしくも行政による司法への干渉ととられることのないように十分な配慮をしてまいらなければならないことは当然と心得ております。
  89. 日野市朗

    日野委員 この審議会を設置する、そして、この審議会の中でいろいろな議論をしていくことになるでありましょう。この法案によりますと、言葉はどうか、丸投げというようなことさえ言われておりまして、あとは審議会にお任せをする、審議会において十分に議論をしていただくのだ、こういうことのようでございます。  方向性としては、私も決してその方向を否定するものじゃありません。ここでは十分な議論が必要であります。しかし、今司法の改革を言う場合に、幾つか主な論点というのはあるわけでございます。その論点の一つは、法曹一元の制度であります。これはもう総理に、何も法曹一元についてここで解説する必要も何もないでありましょう。要は、裁判官は、法曹の検察官とか弁護士であるとかそういう職務を担った人たちが裁判官になっていくという制度なんでありますが、私は、この法曹一元というのは非常にすばらしい制度であろう、このように思っております。  現在のキャリアシステムを見ますと、裁判官はかわいそうですよ、かえって。キャリアシステムの中で埋没をしてといいますか、小さな裁判官という世界の中に閉じこもって、その中で仕事をし、そしてしょっちゅう転勤させられて、かわいそうだ。我々、裁判官になるかと言われたら、まず最初に、あんなに三年に一回ぐらいの割で転勤させられるなんというのは、本当にこれは、とてもそんな生活には耐えられないだろうななんという、そんなふうな思いもするのであります。  この法曹一元というのは、いろいろな世界を生きてきた人たち、そのほかの世界を十分に見てきた人たち、これが裁判官として任用されて、そして裁判の仕事に携わる、こういうことであります。これは非常に大事なポイントであり、もういろいろなところからいろいろな研究の成果、勉強の成果が寄せられているわけでありますが、その中では、かなりの部分に、この法曹一元ということは大事な問題だという指摘があります。  私は、司法制度改革審議会においても、この点は非常に大事なポイントでありますから、当然これは審議されることになるんだろうというふうに思っておりますが、総理も、審議会の審議に全部を任せ切る、全く影響がないということではないのでありましょう。例えば行ってあいさつをする、それからいろいろな場面場面でこの審議会に対して働きかけ等もなさることがあるのではないかというふうに思います。何しろ主任の大臣は総理でございますから、この法曹一元をこの審議会において議論をするということについてどのようにお考えになっておられますか。
  90. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 法曹一元制度につきましては、かつて臨時司法制度調査会におきまして、一つの望ましい制度としつつも、我が国の現状及び近い将来においてはこれが実現されるための基盤となる諸条件が整備されがたいとして、この制度を採用することはできないとの結論を下したものであると承知いたしております。  しかしながら、司法制度の改革につきましては、各界の提言中にもこの制度について言及するものが少なくなく、これからの司法のあるべき姿について、一つの考え方として、広く国民の意見を踏まえて種々の観点から議論される必要があると考えております。本委員会におきまする参考人の意見も含めまして、司法制度の改革についての各界の提言中にもこの制度について言及するものが少なくなく、これからの司法のあるべき姿について、一つの考え方として、審議会において検討事項として取り上げられるものと考えております。  今委員が御指摘をされました、裁判官のあるべき姿あるいはまた現在の状況につきましての御指摘は、私もかねがねそういう思いがいたしております。ただ、検察官検察一体の原則でおるに比べますと、裁判官は、上級審、下級審、すべて裁判官本人の意思によって、法と正義に基づいて判断を下せる、そういう意味で、裁判官を志向する方々もおられることは承知をいたしております。  現状につきましての委員の御指摘につきまして、私もかねていろいろの考え方もいたしておるところでございまして、そういった意味で、この法曹一元化の制度の問題も含めまして、いろいろな観点から今回検討していただく審議会であるべきものと考えておりますが、主任大臣ということでございますが、私から特に考え方を冒頭申し上げるべきものでなく、選ばれました、国会の御信任をいただいた委員各位の十分な活発な御議論の中で方向性が定められるもの、このように認識いたしております。
  91. 日野市朗

    日野委員 では次は、国民と司法という観点から、現在私が憂慮している点を申し上げれば、国民が司法に対する関心が非常に薄いということであります。私は、そういった点は正していかなければならない、司法に対して国民も積極的に関与し、参加をしていくという観点は必要であろうと思うのでございます。  国によってさまざまでございますが、陪審制度とか参審制度というような制度を取り入れている国は多いわけでありますが、司法の民主化ということと国民の司法参加を実現するという観点から、陪審、参審、これは大事な課題であろうというふうに思います。私は、この点について、司法制度改革審議会においても当然これは議論されてしかるべしというふうに思っておりますし、活発な議論がこれをめぐってなされることを希望しているものでございますが、総理はいかがお考えですか。
  92. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 陪審・参審制度の導入につきましては、委員御指摘の趣旨も含めまして、司法をより国民に身近なものとしていくという観点からも意義のあることと提言がされていると承知をいたしております。  この問題につきましては、我が国の司法の基本にかかわる問題でありますので、種々の観点から慎重に議論される必要があるものと考えておりますが、国民の司法制度への関与の一つのあり方として、審議会におきましても検討事項として取り上げられるものと考えております。  国民のサイドから考えますと、最近いろいろ欧米等でも事件がございまして、特に陪審制度をとっておられるアメリカなどで、有名なO・J・シンプソン事件その他の事件報道がなされております。日本の国民も、こういうものをテレビ等で拝見しながら、陪審制度、また映画等にもかなりそういったものが出てまいりまして、日本の制度とああこういった点では違うのかなという、かなり認識が深くされておるだろうと思うんです。したがいまして、日本として古来の裁判制度のあり方というものと、諸外国の例等につきましてもかなり国民的な関心度が高まっておるというように認識をいたしております。  いずれにいたしましても、今後、申し上げましたように、検討事項として取り上げられ、いろいろの御意見を求められていかれるのじゃないか、見守ってまいりたいと思っております。
  93. 日野市朗

    日野委員 今、陪審制度で、映画の話なんかも出ましたが、「十二人の怒れる男たち」なんというのはすばらしい映画でございましたね。あれを見て、ああ、事実認定というものに対して国民、素人がかかわるということはすばらしいななんて、そんな思いをしたことがございます。それはそれで。  それから、現在の裁判所を見てみますと、裁判官は本当にかわいそうですね。全くもう、一生懸命働いて、法廷を開くのは週に何回、こう決められていて、そして宅調だなんといって自宅に引きこもって仕事をする。我々、うちに仕事を持ち帰るなんというのは嫌なものでございますが、それをやっているわけであります。何でそれに対する抗議の声が裁判所から出ないのかなというふうに思ったりもするのでありますが、何か宅調なんというのは、あれは江戸町奉行の、南町奉行と北町奉行以来の伝統なんだという説もありまして、私も、こんな制度はどういうものかと思ったりするのであります。  それから、裁判が長いというのも、やはり法廷がないんですよ。その法廷をだれが使うかということが裁判所内で大問題になっているわけなのでありますけれども、私、そういう状態を見ると、もっと法廷もふやしたらいいじゃないかと思うんですが、どうも裁判官の皆さんは、法廷というのは少ないんだ、それを当然のことと考えているような節があるのです。私は、そこのところを直さなければ裁判を促進するということは、これはできないんだろうなと思います。  裁判というのは、これはどこの国でも長くはなるんですね。イギリスには千何百年続いた裁判があるとかいう話も仄聞するところでありますが、それは極端な例としても、もっと早く裁判というものを決めていかないと、社会の動きに司法がついていけない。司法はますます国民から忘れ去られたものになってしまう、そんな感じが実はしてならないのであります。ここを何とかしなくてはいかぬのじゃないか、こう思うのですが、そのためには、やはり人もふやさなくてはいけません。法廷もふやさなくてはいけません。それから、法廷に付随するいろいろな諸施設、諸人員、これをふやしていかなくてはいけないのですね。  ところが、裁判所の方は、もっとふやせ、人も物もふやしてくれという主張がさっぱり出てこない。ここいらは私は非常に不思議なことだなと思っているのですね。やはりこれは行政に従属しているのかな、こう思わざるを得ないのでありますが、この点について、小渕総理、どのようにお考えですか。
  94. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 政府といたしましては、これまでも司法の機能の充実強化に努めてまいったところでございますが、二十一世紀の我が国の社会において、社会のさまざまな変化に伴い、司法を質的、量的に一層充実強化し、国民に身近で利用しやすい司法制度を実現していくことが不可欠であると考えております。そのため、具体的にいかなる施策をとるべきかについては、利用者である国民各層の声を広く聞く必要があると考え、本法案を提出したところであり、本審議会において、国民的見地に立って実りある審議が行われることを期待いたしておるところでございます。  日野委員御指摘のように、裁判所自体が裁判所の増設、拡充ということについて強い要請がないのではないかという現状を分析されて御指摘がございました。私もその実態をすべて承知をしているわけではありませんけれども、いろいろ事件の件数その他も、今日ここに出席するので若干調べてみますると、まさに、訴訟、例えば民事にいたしましても、昭和三十年代に十五万件だったのが今や四十五万件になっている。こういうものの処理のために、裁判所も大変多くの事犯を判断していくというためには今のままでよろしいかということも言えるのではないかと思っておりますが、現時点で、政府としてはできる限りの拡充強化に努めてきたところでありますが、こうした実態も含めまして、改めてこうした審議会におきまして御議論を賜れれば幸いだ、こう考えておるところでございます。
  95. 日野市朗

    日野委員 今、総理がずっと自分でも見られて、そしてやはり司法の予算というのは弱いな、こうお思いになっていると思います。これはこの二年間の審議期間にかかわらず、私は、そこのところは、この審議会の答申を待ってなんということを言わないで、やはりもっと司法の予算をつけるということに努力をしていただくよう、これは要望です、決して質問ではありません、これは要望として申し上げておきたい、ひとつ御理解をいただきたいというふうに思います。  結局、裁判所というのは人権擁護の府であります。しかし、私先ほど申し上げたのですが、これは総理と私との間に見解の違いがあります。それは多くの人にあることですからやむを得ないと思いますけれども、やはり人権擁護の府としての司法、それをきちんと確立してもらいたい。これをきちんとやってもらう、そのことが日本の社会全体の活性化をもたらすゆえんであるというふうにも私は考えますので、このような観点からも審議会において司法の改革を論議していただきたい、そういうふうにこの審議会には希望したいというふうに思います。総理の所見といいますか感想といいますか、ひとつ伺えればと思います。
  96. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 もう御指摘のとおりでございますので、ぜひ、この審議会を通じまして、人権擁護の府としての司法の確立という問題について御検討を賜れれば幸いと思っております。  二十一世紀の我が国社会における社会の複雑多様化、国際化等に加え、規制緩和等の推進により、社会は事前規制型から事後チェック型に移行していくと考えられます。このような社会において、ルールが十分守られるような、司法がその役割を十分果たすことによりまして、社会的弱者の保護救済が図られるものと考えております。  これまで、このような役割を果たすべく司法関係者におきましても最善の努力をなされたものと認識はいたしておりますが、審議会におきまして、そのような観点に立って司法制度の充実強化に向けての議論が行われるものと考えております。
  97. 日野市朗

    日野委員 次には、実務的なことといいますか、総理が直接主務大臣としてなさる事柄についての質問を何点かいたします。  まず、この審議会の委員の選任でございます。  司法の世界というのはかなりいろいろな問題がありまして、その持っている問題の一つ一つがいろいろな沿革を持っているということもまた特徴的なことでございますね。でありますから、私は、この審議会の委員の選任に当たっては、一般の皆さんの広い御意見、広い感想、これを伺うことも大事だと思います。  一方では、今までの法律実務に携わった経験者も入れて、何でこのような問題が生じているかということについての分析を行っていくということはぜひ必要なことであろうと思うのですが、総理はいかがお考えでしょうか。
  98. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 司法制度改革審議会は、国民的見地から、二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議することを目的とするものでありますから、司法制度全般につきまして、このような視点のもとに、調査審議をするのにふさわしい有識者を国民各界各層から委員として選任する必要があると考えております。  委員御指摘のように、審議対象が司法にかかわる事項になりますので、法律実務の経験者も委員として選任する必要があると考えておりますが、重ねてでございますけれども、司法問題となりますと専門家でないとわかりにくいという考え方が一般的ではございますけれども、世に有識者という方は多々おられるわけでございますし、特に司法制度の重大性にかんがみれば、まさにこの委員の選任ということは極めて重要なことだと思っておりまして、この審議会における答申がすばらしいものになるためにも、ぜひ適切な委員の選任について心がけてまいりたいと思っております。
  99. 日野市朗

    日野委員 具体的に、法律実務の経験者も入れるということでございますね。
  100. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 そのように考えております。
  101. 日野市朗

    日野委員 ぜひ人を得てもらいたいということは私の強い希望でございますが、この審議会の委員の方に人を得ると同時に、この種の審議会におきましては、事務局というものが非常に重要であるということは申し上げるまでもございません。もう総理なんかもよく御存じのとおりです。  事務局に人を得るということもまた非常に大事なことばかりなのですが、先ほどから私も申し上げました、司法というものが行政に従属するような形では絶対にいけないわけでありまして、三権分立ということの実が上がるような審議を行うためには、これは行政官ばかりを事務局に入れるということでは、どうしても官僚的な発想、そういうものがいろいろ影響していくということは非常に私ども心配をするわけでありまして、民間の人材、特にこれもやはり法律実務に詳しい民間の人材をも登用をすべきであるというふうに思っているのでございますが、総理はどのようにお考えでしょうか。
  102. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 これまた大切なことを御指摘いただいたと思っております。  事務局は、司法制度改革審議会の審議のための資料調査、収集、整理、分析及び審議結果の整理等の職務を行うなど、審議会において委員による十分な審議が行われますよう、その補佐的な役割を果たすべきものでありまして、それにふさわしい知識等を有している者を充てることが必要であると考えておりますが、委員御指摘の、法律実務を理解している民間人の登用も含めまして検討してまいりたいと考えております。もとより、事務局が審議会の調査審議を方向づけたり誘導することはあってはならないと考えております。  本件と異なることでありますが、私も経済戦略会議という会議を主宰しましたけれども、事務局体制ということは非常に重要であるということを認識いたしております。委員が活発な御議論を通じまして御審議をいただくことではありますが、同時に、今委員御指摘のように、事務局というものの体制、またその選任、こうしたことにもよほど目配りをしませんと、実が上がらないというケースも多々今まで審議会等にあったやに散見できますので、今回、こうした問題については十分意を払うべきもの、こう考えております。
  103. 日野市朗

    日野委員 この審議会は、やはりかなりの注目を集めているんですよね。それはそうでございます。司法というのは何といっても三権の一つでございますからね。立法、行政、司法とこうあって、この審議会に対する非常に多くの注目が集まっている。  つまり、この審議会が、いやしくも国民の目から遠ざかっているようではいけないというふうに思います。透明性というものが大事でございます。私は、できる限りこの委員会の審議の模様は透明性を持たなければならない、できるだけ公開していかなければならない、そんなふうに思っているわけでございます。  ですから、政府もこの種の審議会の公開、透明性ということには気を使っておられることは私もよく存じていますが、特に国会としては、これは非常に強い関心を持たざるを得ない部分であります。特に、国会の中でも、法務委員会というのはこの衝に当たる委員会でございますから、特にこの法務委員会に対しては、委員が求める場合は、その求めに応じて所要の報告が必要であるというふうに私は考えております。そのような機会が多いほど、納得の得られる審議、そして納得の得られる結論ということになるんだろう、こう思います。  この透明性、特にこの法務委員会に対して、これは議事録を示すということも含めて、報告が必要という私の考え方に対して、総理はどのようにお考えになっておられましょうか。
  104. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 審議会等の審議の公開につきましては、従来から政府の基本的方針でありまして、中央省庁等改革基本法におきましても公開の原則がうたわれておるところでございます。  具体的な公開の方策を含め、司法制度改革審議会の運用につきましては、審議会が設置された後、審議会において、基本法の趣旨を踏まえ、適切に対応されるものと考えております。  国会への報告に関しましては、これに関する規定を置くまでもなく、国会からの求めがあれば審議会から適切に報告がなされるものと考えておりますし、時代の要請といいますか、ある面で、国民に対して透明性を明らかにし、ディスクロージャーをいたしていくということは、なさなければならないこれからの方向であると深く認識をいたしております。
  105. 日野市朗

    日野委員 今さら言うまでもございませんけれども、非常に大切な審議会の設置法が今審議されて、その結論が出ようとしています。これは非常に大事なことに立ち向かわれるということは、もう今さら総理に対して申し上げるまでもないと思いますが、非常に重大なこの審議会を主任される総理として、これからもしっかりとこの問題についてやっていかれることを心から祈念いたしまして、私の質問を終わります。
  106. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、漆原良夫君。
  107. 漆原良夫

    ○漆原委員 公明党・改革クラブの漆原でございます。  私は、昭和四十六年に弁護士登録をして以来二十八年間になるわけでございますが、今回、司法制度改革にかける総理の所信を今国会で聞かせていただいて、大変にうれしく思っている一人でございます。  昭和三十七年にも臨時司法制度調査会が内閣のもとに設置されて、司法制度改革に着手したわけでございますが、必ずしも十分な成果を上げたとは言いがたいというふうに認識しております。憲法施行後五十年を経過した今日、司法制度を抜本的に見直すべきだという声が各方面から上がっておりますが、政府は、この国民の声を的確にとらえていただいて、司法が本当に真の意味の国民の司法になるよう、国民に奉仕する司法になるよう、最大限の努力をすべきだと思っております。  そこで、司法改革に着手されようとする総理の御決意と、その基本的な方向性をお聞きしたい、こう思っております。
  108. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 先ほども日野先生に御答弁申し上げましたけれども、やはり司法が国民に真に信頼をされなければ、まさに民主主義の基本である、三権が分立しながら相協力しての国家経営が成り立たないわけでございます。  そういった意味で、司法のあり方につきましては、一般国民の中にも、例えば、先ほど来御指摘ありましたが、裁判が長くなるとか、あるいは専門家だけでやっておるのではないかとか、いろいろございました。また、日本人の古来の概念からいいますと、今さらお上に訴え出て、そして判断を裁判所に求めるというようなことよりも、むしろそれぞれの相対の中で物を決着するというような、若干歴史的な風潮がございました。  そういう中で進んできたような点もございますが、近代国家として、そして、人権を尊重し、それぞれの権利を主張していくという世の中になってまいりますと、その決着を司法によって図らなければならないという案件も非常に多くなっている。それに果たして現在の司法制度は適合しているかという、恐らく国民の中にある意味のうつうつとした気持ちがあるのではないか。  こういうことを考えまして、これはこの委員会でもかねがね御議論のあったことだろうと思いますけれども、改めてそうしたことを集約してこの機会に審議会でお諮りして、改正されるものは改正していかなきゃならない、こういう気持ちで今回法案を提案させていただいた、こういうことでございます。
  109. 漆原良夫

    ○漆原委員 それでは、私の持ち時間が少ないものですから、私自身の問題意識に基づいて、個別的な問題で総理の御見解をお尋ねしたいと思っています。  まず、民事の法律扶助制度の充実ということについてお尋ねしたいのです。  憲法三十二条は、国民の裁判を受ける権利を基本的人権として保障しております。私は、法律扶助制度というのは、この国民の裁判を受ける権利を実質的に、制度的に保障する重要な制度だというふうに考えていますが、まず、この点に関する総理の御見解を承りたいと思います。
  110. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 御指摘のとおり、民事法律扶助制度は、憲法第三十二条の裁判を受ける権利を実質的に保障するという理念のもとに充実が図られてきた重要な制度であると承知をいたしております。
  111. 漆原良夫

    ○漆原委員 総理の御見解をお伺いしてほっとしたわけでございますけれども、それにしても、我が国の法律扶助制度の実績、これは諸外国の実績に比べて非常に、申しわけない言葉で申し上げると、貧弱だというふうに言わざるを得ないというのが私の考えでございます。  例えば、国庫負担金で比較をしてみますと、イギリスは九四年、千百四十六億円、アメリカ、九四年度、四百六十二億円、ドイツ、九〇年度、三百六十三億、フランス、九三年度で百八十二億、スウェーデン、九三年度で四十五億円、お隣の韓国でも九七年の実績が十四億四千四百万、こうなっております。  これに対して、我が国の実績、これは九六年でございますが、二億七千百万、しかも法律扶助に対する根拠規定すら日本にはない。実際は、民間団体であります財団法人法律扶助協会というところに国から寄附をするという格好で国庫負担がなされているわけでございます。  総理は、この日本の現状と諸外国の現状をお聞きになられて、現在どのように認識されていますでしょうか。
  112. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 民事法律扶助制度は、申し上げましたように、憲法三十二条の裁判を受ける権利を実質的に保障するための制度でございまして、本制度の果たす役割の重要性にかんがみまして、法務省におきまして、財団法人法律扶助協会が行う民事法律扶助事業に対し補助金を交付し、特に近年では毎年補助金を増額するなど、本制度の充実を図ってきたところであると承知をいたしております。  政府としては、本制度の一層の充実強化を図っていくことは、司法を国民に身近なものにするという意味で、我が国の司法制度にとって喫緊の重要課題であると認識をいたしておりまして、今後一層の充実発展に努めてまいりたいと思っております。  漆原委員御指摘のように、確かに、この制度に対する国の国庫補助額等につきましては、欧米先進国と言われる国々に比べて段違いに数字が低いわけでございまして、この制度を本当に活用してきたかどうかということにつきまして、その要請がどうだったかということにもかかわると思いますけれども、せっかくここに出席をいたしますので、調べてみますと、平成六年度で五千七百六十七件利用されておりまして、平成十年度で約一万件だそうでございます。  この制度を十分承知をした上でこれを活用しようと考えられなかったか、あるいはまた、いろいろな点で、この制度を活用しようということでなくして処理をしてきたか、いろいろの原因があろうかと思います。しかし、いずれにしても、冒頭、答弁申し上げましたように、極めて、憲法の趣旨にのっとってなさなければならないことでございますので、この数字はいかんともやはり少ないのではないかという気がいたしております。  こうしたことも含めまして、今後いろいろ、審議会その他あるいは本院の審議等を通じまして、この制度をもっともっと国民のために役立たせていくというために必要な経費について、国もそうでありますが、恐らく弁護士会その他も負担をされておるのだろうと思いますから、改めて認識を双方いたして、活用できるようにしていかなければならぬ、このように考えます。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
  113. 漆原良夫

    ○漆原委員 総理、今おっしゃっていただいたように、法律扶助は憲法三十二条を実質的に保障する権利なんだという御認識であるとすれば、きちっと真正面からこの法律扶助問題に政府としては取り組んでいくべきだ、法律扶助協会、民間団体に寄附という格好ではなくて、きちっと根拠法をつくって国の事業としてやっていくべきだと私は考えます。  平成六年の十一月に、学識経験者、それから法務省、最高裁判所、日弁連、そして法律扶助協会から成る法律扶助制度研究会というのが発足をしまして、平成十年三月にこの研究会の報告がなされております。  この報告によりますと、法律扶助の理念というのは、総理おっしゃっていただいたように、憲法三十二条の裁判を受ける権利を実質的に保障する制度だというふうに理念を述べておられます。そして、「国の責務」として、国は、法律を制定するとともに、運営体制を整備し、運営主体を適切に監督して、全国的に均質かつ効率的なサービスを確保し得るようにし、また、責務にふさわしい財政負担をすべきである、こうしておりますが、この報告書の考え方に対する総理の御見解を承りたいと思います。
  114. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 民事法律扶助制度につきまして、現在、法務省におきまして、その充実強化を図るため、できる限り早期に法制化することを含め検討していると承知をいたしております。  ここに法務大臣がおられますので、具体的時期等についてはどのようになっておりますか御答弁いただいても結構だろうと思いますが、いずれにいたしましても、趣旨は、せっかくそうした研究会で検討されて、その方向性が定められておるわけですから、したがって、政府としては、それに伴って、これをいかに実現するかということについて、この研究会の報告書を受けまして、目下、鋭意検討中でございます。法務省といたしましては、法務大臣から、どのようになっているか、ちょっとお答えをさせていただきたいと思います。
  115. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 お答え申し上げます。  法制度化の時期につきましては、次期通常国会に法案を提出することも念頭に置きまして、事務当局に検討をさせておるところでございます。
  116. 漆原良夫

    ○漆原委員 刑事事件では、起訴前の弁護の問題だとかあるいは少年事件に対する付添弁護の問題、これもぜひ公的補助の対象としてほしい。国選弁護制度を拡張するか、あるいは法律扶助の範囲に含めるか、いずれにしても、起訴前弁護それから少年事件の付添弁護、これはぜひとも公的援助の対象にしてもらいたいという希望を述べておきたいと思います。  今、少なくとも民事に関する限りでは、もう議論を尽くされて結論が出ている。あとは政府の気持ち一つだという状況だと思うのですね。そういう意味で、今、次期通常国会、来年の通常国会も含めてその法案の提出をお考えいただけるということを聞いて、大変うれしく思っています。  ぜひ民事と刑事も一緒にして、できたら統一でやっていただくのが一番いいのですが、しかし、刑事に対する公的補助というのは非常に難しい問題があるわけですから、それと一緒にされると、多分これは本審議会の方で問題になると思うのですね、刑事の方は。これと民事の方まで一緒にされると、民事が非常におくれていく、こういう危惧があるのです。したがって、結論の出ております民事の関係だけでも、ぜひ来年度の通常国会も積極的に焦点に当てていただいて、実現に向けて法案提出をしていただきたいというふうに思っております。  もう一点は、この予算規模にもよるのですが、予算の規模が小さければ余り効果がない。予算規模が大きければ大きいほど、利用する方が多くなって、国民の権利がそれだけ実質的に保障されるということになると思うんです。ぜひ大幅な予算をつけてもらいたいということを総理にお願いしたいと思うんですが、お考えをひとつよろしくお願いします。
  117. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 予算は法務省からきちんと適切に要請をされるかと思いますけれども、今の委員の御指摘も含めまして、人権擁護、憲法の趣旨にのっとって司法が適切に対応のできるように必要な予算というものは確保されていかなければならない、このように考えております。
  118. 漆原良夫

    ○漆原委員 次の問題に移りたいと思います。  国民の司法参加という問題は、先ほど来述べられておりますが、確かに、司法が国民に理解されて支持されるためには、国民とかけ離れた存在であるいわゆる官による司法から民による司法へというふうに発想が変わっていく必要がぜひともあると思うんですね。そういう意味で、参審・陪審制も含めて国民の司法参加というのは私は大事な施策であろうかと思います。  私は、その問題はともかくとして、きょうは法曹一元について、先ほど来話がありましたので、私もその問題について少しお聞きしたいと思うんです。  昭和三十九年八月に発表されました臨司意見書というのがございます。これでは法曹一元の制度の概念についてこう言っています。「裁判官は弁護士となる資格を有する者で裁判官としての職務以外の法律に関する職務に従事したもののうちから任命することを原則とする制度」、いわゆるキャリアシステムを排斥する、もともと判事補を裁判官の給源とするということを排斥する制度だというふうに言っております。そういうふうに結論づけております。その上で、   法曹一元の制度は、これが円滑に実現されるならば、わが国においても一つの望ましい制度である。   しかし、この制度が実現されるための基盤となる諸条件は、いまだ整備されていない。   したがって、現段階においては、法曹一元の制度の長所を念頭に置きながら現行制度の改善を図るとともに、右の基盤の培養についても十分の考慮を払うべきである。 こういうふうな臨司意見書の結論でございましたが、この臨司意見書の結論に対して総理の御感想をお尋ねしたいと思います。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
  119. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 先ほども御答弁させていただきましたけれども、また今委員から御指摘のように、法曹一元化につきましての臨時司法制度調査会等のいろいろの答申もございまして、その結果、先ほど申し上げましたように、我が国における現状及び近い将来においてこれを実現させるための基盤となる諸条件が整備されがたいとしておりまして、この制度を採用することはできないと結論を下したものであると承知をしております。  しかしながら、司法制度の改革につきましては、各界の提言の中にもこの制度について言及するものが少なくなく、これからの司法のあるべき姿について、一つの考え方として、広く国民の意見を踏まえて種々の観点から議論される必要があると考えておりますが、私も専門家でございませんのですべて分析、承知をしておるところではありませんけれども、それを実現していくためには、日本の弁護士さんの絶対数といいますか、そういうものも、これを本当に実現していくためには、このままで可能性が出てくるのかというような諸問題も実はあるのではないかと思っております。  そうした観点からも、全般的に、弁護士制度等々もろもろの問題を総括的に判断していきませんと、御答弁申し上げましたように、今の時点で直ちにこれを実行するということがなかなか困難の状況でありまして、そうした要素をこれから一つ一つ取りほぐすといいますか、解決をしていくという方向の中でこうした考え方が実現されていくのではないかというふうに考えております。
  120. 漆原良夫

    ○漆原委員 今総理のお言葉の中に、法曹一元の前提となる諸条件が整備されがたいのでこの制度をとらなかったというふうにおっしゃったように私お聞きしたんですが、臨司の意見書では、三十九年、現段階では諸条件が整備されていないのでその長所を念頭に置きながら現在は採用しない、こんなふうになっていたと私は記憶しております。したがって、諸条件が日本国において整備されがたいのでその制度はとらないという臨司の意見書ではなかったのではないかと思っております。  そういう前提で、政府としましても、臨司の昭和三十九年以来いろいろなことをやってこられたと思うんです。私も何回かこの法務委員会で質問させていただいて、今まで臨司の意見に基づいて基盤培養にどんなことをやってきたのかという質問をさせていただきましたが、例えば、裁判官も検事も弁護士も統一して修習をやる統一修習の実施だとか、今総理がおっしゃったように司法試験合格者を大幅に増員するとか、あるいは弁護士から裁判官に任官されるシステムをつくったとかいろいろなそういう基盤の培養、整備に向けて御努力されたことをよく伺っております。  ただ、臨司の求めている法曹一元の理想から見ると、現状はまだまだ道のりがほど遠いなと実感として感じておるわけでございますが、現状と総理の認識はいかがでございましょうか。
  121. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 なかなか難しいお尋ねですが、現状はなかなか、この問題を直ちに実行するというに至るには諸問題がまだ残されておると思っております。先ほど申し上げましたように、種々の点につきまして、法曹一元化のためのネックになっておる諸点をどのように解決していくかということにつきましては、今後いろいろ審議会その他を通じまして御検討願ってまいりたいと思っております。
  122. 漆原良夫

    ○漆原委員 その点に関して弁護士会は非常におもしろい提案をしております。これは、すぐ法曹一元が実現するわけではないんだけれども、法曹一元の少しでもプラスになれば、一里塚となればということで、研修弁護士制度というのを日弁連が提案しております。これは、司法修習の終了後、すべての修習の終了者が、研修弁護士という資格で一定期間弁護士実務を経験することを弁護士登録、裁判官、検察官への任官の要件とする。ですから、裁判官になろうとする方、検察官になろうとする方は必ず一定期間弁護士の実務を担当しなければならない、こういう制度なんですね。  マスコミでもこの案は非常に注目されまして、日経新聞とか朝日でも大きく報道されています。「豊かな市民感覚を持った法律家を育てるには、直に依頼者と接し、その悩みを聞き解決策を探る経験が不可欠である」、あるいは「法曹に携わる者が、市民感覚からずれて独善的になるのも大いに困る。司法には透明で公正な紛争解決のほか、人権を守り、行政をチェックする役割もある。 そうした責務にこたえられる法曹を養成するには、机上の知識や法律技術だけでなくて、生身の人間のさまざまな苦労や思いをはだで知る機会が不可欠だろう。」というふうに社説で言っているわけなんです。  この制度は、一遍に法曹一元にいくのは非常に日本の制度上難しいと私も思いますが、そこにいく一歩前段階、一歩前進という格好で、裁判官になられる方、検事になられる方は必ず弁護士実務を一定期間研修として担当していただくこの制度をぜひとも実現させていただければありがたいなと思っておるんですが、総理は、この研修弁護士制度をお聞きになって、御感想をお聞きしたいと思います。
  123. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 私の感想というよりも、むしろこの点についていろいろと政府内でも検討しておりましたことを要約しますと、司法修習終了後、法曹として活動経験が全くない段階での研修は、実質的には修習の延長の感を否めず、継続教育の方法として不適当ではないか、修習を終了した、法曹資格を取得した者が直ちに裁判官等として職務に従事できないとすることは、修習制度の基本的理念に反するものではないか等の根本的な問題があるといたしております。  現在は、司法修習制度といたしまして、実務修習の期間中に、例えばボランティア活動等を通じて、法が対象としている社会の実相に触れさせる機会を付与する等の修習をすることによりまして、今委員が御指摘をされたような問題点の解決の一助になっているのではないかというのが考え方でございます。  いずれにいたしましても、修習制度の基本的理念にかかわる問題等があることから、議論が十分尽くされていないところもありますが、将来の法曹養成制度のあり方として、一つの提案として受けとめたいと考えております。委員の御指摘も、司法修習制度のあり方、もっと進めば弁護士制度のあり方、あるいは裁判制度のあり方等につきましても、いろいろな角度からいろいろと検討し、提言があり、そうした問題について真剣に取り組むことは必要なことではないかというふうに私は考えております。
  124. 漆原良夫

    ○漆原委員 今総理のおっしゃった点は、実は私はまことに同感なんです。この研修弁護士制度というのは、まさに総理おっしゃったように、修習の延長だという点がやはり一番大きな問題だと思うんですね。  そこで、私の非常に個人的な意見を総理に申し上げる機会があって非常に幸せなんですが、常々私が考えておったのは、裁判官が五年実務の経験をしますと、特例で、単独で裁判できる立場になるわけですね。裁判官が五年裁判実務を経験した段階で、実はここで二年か三年弁護士の実務をするということが最も法曹一元に近い制度だな、私は、これは持論として思っておるんです。  まさにおっしゃったように、修習が終わってからすぐまた半年やっても、修習の延長で、余り実りはないと思うんですね。しかし、裁判官の実務を五年なら五年、十年なら十年やって、裁判官とはこういうものだという、きちっと頭の中に一つの裁判官像ができて、その方が初めて弁護士事務所で二年なり三年なり弁護士実務を経験すると、今まで裁判官席から見ていた弁護士なり弁護人が、今度は自分が見られる立場の方に立つわけですね。じかに依頼者と接触をして、いろいろな悩みを聞いて、どうやって法律構成したらいいか、どうやって証拠を集めたらいいか考えるわけですね。  そういう意味で、私、ぜひ、裁判官を五年なり十年やった人が二、三年弁護士実務を担当するのが本当は一番いい、法曹一元に近い考えだと思っておるんですが、総理の御感想は求めません。そういうふうな思いを持っておるということだけお聞きいただいておけば結構だと思います。  もう時間がなくなりました。最後に、私は法曹の質についてお尋ねしたいと思うんです。  法曹は、人格高潔な人、正義感の強い人、そして情操豊かな人が望まれるわけでございますが、現在の司法試験のレベルというのは非常に専門的で高いわけでございまして、大学の授業だけではほとんど合格できないという現状にあります。そのため、学生は、大学には籍を置いたまま、授業はほとんど受けないで、司法試験専門の予備校に通っている。朝から晩まで法律の技術的な勉強をして、合格している。大学に行くにも予備校に通って、大学に入ってからもまた予備校に通って、そして合格する。二年間の修習を受けるわけですけれども、非常に専門的な技術の習得に明け暮れるわけですね。これでは法曹に期待される人格の形成は望むべくもないな、私はこう思っております。  大学教育も含めて、司法試験制度を抜本的に見直す必要があるのではないかなと思っておりますが、総理の感想をお尋ねしたいと思います。
  125. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 司法試験は、従来から、長期間受験勉強に専念しなければ合格のできない極めて難しい試験と言われており、このような状況を改善するため、合格者数の増加、合格枠制の導入等の改革が行われ、相当の改善効果が見られたと承知をいたしておりますが、法曹の質を強化するという観点から、意欲ある優秀な方々が過大な負担を負うことなく合格し得るような司法試験とするため、さらに検討を重ねていく必要があると考えておりますし、今委員の御指摘は、素朴な、国民的な要請ではないかというふうな感じが私はいたしております。  試験は、日本の試験の中で最も難しいと言われることでありますが、その難関を突破するためには、今委員が御指摘のような勉強の姿であり、そのことがある意味で、勉強のみに集中するということで、人格形成その他を含めまして、必ずしも問題がないのかということについての国民的ないろいろとお考えがあろうかと思います。ぜひ、そういった点からも、この制度のあり方につきましても、十分検討いたしていかなければならないと私も考えております。
  126. 漆原良夫

    ○漆原委員 これで終わりますが、私の意見を率直に聞いていただきまして、本当にありがとうございました。心から感謝を申し上げます。
  127. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、安倍基雄君。
  128. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 総理、お忙しいところ、ありがとうございます。  私は、この法律案そのものについては基本的に賛成なんですけれども、一つ疑問があるんですよ。というのは、最近の風潮として、非常にジャーナリズムに乗っているような人を委員にして、そこでもって決めていくという風潮が若干ある。昭和三十七年にできました臨時司法制度調査会ですか、これは構成員として、衆議院四人、参議院三人、それから裁判官、検事、弁護士三人ずつと学識経験者四人、そういう構成になっているんですね。  今回、二十一世紀に向けての司法制度の改革というのは非常に大事な問題ですから、素人の方がある意味からいうと弾力的な発想ができるという感覚もありますけれども、これは、さっき経済戦略会議という話が出ましたけれども、むしろ司法制度の根幹に触れるような問題なわけですから、長期的に非常に大事なことなんですね。となると、素人の発想もいいけれども、基本的には、やはりそこで司法の考え方が十分反映しないことにはしようがないんじゃないか。なぜ、今回の審議会のあれが学識経験者ということだけにして、国会がいわば承認するとはいっても、任命権は大体総理にある。  私は、この前の質問のときに、いろいろ法務大臣に、あなたはどういうビジョンを持っているのですかという話を聞いたのです。いろいろ言われました。しかし、では最終的にどう決めるのですかと言ったら、委員が決めるのです、委員の主管は内閣ですと言われたものですから、これはやはり内閣総理大臣を呼ばなければいかぬのじゃないかという話に発展したのであって、私は、それで総理に。  前回は、そうやって、非常にプロ集団的な、当事者を中心に構成した。学識経験者と言われるのはごく少人数であった。今度は、みんな学識経験者というので束ねてしまって、そういう司法のいわば専門家というのが必ずしもはっきりしていない。その点について、どうして前回はこうで今回はこうであるのかという点をお聞きしたいのです。
  129. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 臨時司法制度調査会は、裁判官、検察官の任用制度及び給与制度等に関する問題を主として、専門家の立場から検討されるために設立したものであると承知をいたしております。今、これは、安倍先生が御指摘されました。  これに対しまして、司法制度改革審議会は、司法制度の利用者である国民各層の視点に立って、二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を見据え、司法制度全般について幅広く議論を行おうとするものであります。  したがいまして、委員には、このような目的にふさわしい有識者を、両議院の同意を得て国民各層から任命することといたしております。この点については、今、安倍先生のお尋ねの中にも、こうした議会の同意を得るというところで、クレディビリティーといいますか、そうしたものの担保がされるのではないかということも御承知で、お尋ねいただいているのだろうと思います。  さらに、司法制度改革審議会は、この調査審議が司法権の行使に干渉するようなものでなく、また、その審議事項は司法制度の改革という国政の基本にもかかわる極めて重要なものであることから、行政の最高機関である内閣に設置されたものであり、その委員も内閣において任命することといたしたものでございます。  そこで、御指摘は、司法問題は極めて専門的であるので、いわば素人と言われるような考え方が集まっていかがという御指摘もあろうかと思いますが、私は、やはり法に対して、素人という言葉はいかがと思いますけれども、幅広く、むしろ専門的という立場でない形で、全般をよく理解される方を任命申し上げ、そして、幅広に、既存の概念をかなり新たにして対応するという形の中でのこの審議会の結論というものは、国民のそうした考え方を集約できるものだ、私はこう思います。また、そうすることのできる委員を選任すべきものではないかというふうに思っておりまして、まさに、委員の選任というものが極めて重要なものとして、今、委員お尋ねも含めて、慎重に対処しなければならないという念を深くいたしておるところでございます。
  130. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私も、素人の弾力的な見解というのは非常に役に立つと思いますけれども、要は、司法制度の根幹なのですから。  これは、昔の学識経験者というのは、大体、学者とかいろいろあるのですけれども、現在の連中は、どうも、そう言っては言い方は悪いですけれども、例えば、今の経済戦略会議、あれはなかなかいろいろな人がいます。しかし、司法制度というのはまたちょっと違うのですね、基本的に。国の構造ですから。司法の構造ですから。  ですから、私は、やはり司法のベテランというか、それに対する大きな見識を持った人間を入れないことには、これはどういうことになるかわからぬ。しかも、その委員の決めることによるのですよというのでは、これはまた、私としては非常に心配だということで、この点本当に、委員の人選につきまして、よくよく、司法制度とは何かということをよく知った人間を任用していただきたいと私は思います。  それから、私は十分しか質問時間がないものですから。もう一つは、これからの日本がどういう方向にいくのか。  例えば、いわば法制でも、今の陪審制を中心とした英米法系でいくのか、あるいは大陸法系でいくのかという大きな問題もあるのです。アメリカの訴訟社会が必ずしもいいとは限らない。それならそれで、今度、委員に素人を入れるのであれば、事務当局あるいは総理としても、一つの大きなビジョンがある程度ないことには、これは委員が決めるのですよとなってしまうと、根幹が危ぶまれるということです。  その点、あと三分しかないそうですから、総理のビジョンをひとつお聞きしたいと思います。
  131. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 時間がありませんで申しわけありませんが、先ほどの、委員の選任につきましては、当然のことでございますけれども、審議を充実するものとするために、司法を利用する立場の方々だけでなく、司法に関して深い知識と経験を有している司法関係者法律学者等からもふさわしい有識者を選ばなければならない、このように考えております。  お尋ねの、司法に対するビジョンと申されましたけれども、現下の状況が、国民的なサイドから考えまして、このままでいいかという諸問題が多々あるかと思いますので、今回の審議会を通じましてそれを十分御検討いただきまして、新しい世紀にも対応できるような日本の司法制度を確立していかなければならぬ、抽象的でありますが、そういうような考え方に基づきまして対処していきたいと思います。  初めから、余り、総理大臣として、望ましい姿はこうあるべきというようなことを申し上げない方がかえってよろしいかと思っております。
  132. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今の時点で、いわば総理大臣の意見は余り述べない方がいいかもしれませんけれども、今しきりと、英米系的な話がみんないいと言っているのですよ。陪審制度も、国民が関与する面ではいいのですけれども、それがもし、公平さ公正さを失ってくると、これは問題になるのです。さっきもシンプソン事件、そういったいろいろな事件がございますけれども、ともかく、国民の関与とか、素人の考えがいいというような風潮はありますけれども、それはそれなりに、もう少し腰を据えて、じっくり構えた論議をしませんと、ちょっと私はこの点、これから非常に大事な問題でございますから。  それからもう一つ。さっきの委員の中にもございましたけれども、審議の過程で、やはり我々国会議員がそれなりのいわば意見を述べるとか報告を受けるとか、そういう要素も必要だと思うのですよ。これは、何も我々は、何というか、議論をかき回そうというのじゃなくて、審議の過程において、どういうことになっているのかということを絶えず目配りをすると。  前回の委員の中には国会議員が衆参三名ずつ入っているわけですから。そういうことを見ますと、やはり我々は、この問題を、若干、人によっては丸投げしているのではないかというようなことを言いますけれども、そういうことのないようにさせていきたいと思っております。  では、最後に、ちょっとこれは総理大臣の権限じゃないかもしれませんけれども、最近、法制審議会というのが非常に物事の論議が遅くなって、議員立法でどんどんと、法務委員会でいろいろ議員立法しているのです。議員立法の中にはいいのもあるけれども、実際のところ、どうしてもラフな面が最近ありまして、法制審議会そのものをもうちょっと機能よくというか、どうも既得権のいわば擁護みたいな連中ばかりになってしまっている感じが若干あるもので、そういった意味で、法制審議会の現在のあり方についての、いわば総理の御感想をお聞きしたいと思います。
  133. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 法制審議会は、国民生活に重大な影響を与える、民事、刑事、基本法等の立案準備において、これまで重要な役割を果たしてきたものであります。しかしながら、審議会等における審議は、経済情勢の変動、社会の動向等に適切かつ迅速に対応する必要がありまして、法制審議会におきましても、このような見地から、審議期間の限定を図るなど、さまざまな改革に取り組んでいると承知をいたしております。  さらに、法制審議会のあり方につきましては、中央省庁等改革基本法、中央省庁等改革に係る大綱、行政改革会議最終報告等も踏まえ改善が進められていくものと考えておりますが、法制審議会は法務大臣の諮問機関でございますので、私から特にコメントすることは差し控えたいとは思いますけれども、今委員御指摘のように、すべてこの審議会を経過しませんと立法化がされないというような経過の中、あるいは審議の過程の中で、かなり何十年も審議でその結論が出なかったというようなことについては、国民サイドからはかなりいろいろの問題点を指摘されてきたことは事実だろうと思っております。本来の趣旨に戻って、この審議会がその責任を果たすことを私としては期待をいたしておるところでございます。
  134. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 時間となりましたから終わりますけれども、あとは法務大臣に後から聞きますから。ありがとうございました。
  135. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、木島日出夫君。
  136. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  総理に出席していただいてありがたく思います。総理の出席でありますから、司法改革の基本的な理念、今の日本の司法のどこに問題があるのか、どのような方向で司法を改革しようとしているのかというこの基本問題についてお伺いしたいと思うんです。  それはなぜかといいますと、今度政府が出してきた審議会設置法案がまことに珍しい仕組みになっておりまして、何を柱に立てて審議するのかという中身が白紙委任なんですね。司法改革と司法の基盤強化、そういう言葉しか入っていないわけであります。しかも、任期はわずか二年、日本の百年を超える司法の歴史を持っているわけでして、いろいろな分野での問題が今噴き出している中で、審議の柱が白紙委任でわずか二年ということになりますと、選ばれた十三人の委員がどういう問題を取り上げて審議をするのか、非常に大事だと思うからであります。  それと同時に、これまで審議をやってきまして、司法改革とみんな同じ言葉を使うわけでありますが、大きく二つの流れがあるのではないかということを私はこの場で指摘をしてまいりました。名前をつけて差し支えなければ、一つは規制緩和型司法改革、もう一つは基本的人権擁護型司法改革というふうに名づけてもいいんじゃないかと思うんですね。  総理も自民党の総裁でありますが、一つの流れである規制緩和型司法改革という理念はどうかというと、これから日本の社会経済あらゆる分野で規制緩和を推進していく、そうなると、事前指導型の行政や社会から事後チェック型の行政や社会経済に転換する。そういう社会になりますと、恐らく貧富の差も拡大するでしょうし、権利関係をめぐる争いも激しく増大するであろう、刑事事件も増大するんじゃないか。規制緩和の社会をそうとらえますと、こういう社会に対応する司法の構築という発想じゃないかと思うんですね。  結果的には、そういう社会には今の司法はもうついていけない、余りにも小さ過ぎる、紛争解決機能も弱過ぎるという立場から、紛争解決の迅速化、そして治安の維持に重点が置かれる、そういう一つの大きな流れがあるんじゃないか。失礼ながら、自民党から出されている司法改革の提言も読ませていただきましたが、そういう流れの一つじゃないか、経済団体からの提言もその流れに乗っているんじゃないかと思うわけですね。  もう一つの潮流は、日弁連から出されている司法改革の提言。それもあるけれども、基本的には、司法というのは基本的人権の最後のとりでだ。そういう面から今の日本の司法を考えると、非常に不十分だ。容量も小さいことも当然、司法参加がされていない、明治以来、百年間の官僚裁判官のもとで、国民の声が全く通らないような官僚裁判官によって裁判が行われている。これでは基本的人権が擁護できない。  特に、そういう小さな司法は、容量の上でも小さいだけじゃなくて内容も小さい。それはどういうことかというと、憲法のもとで与えられている行政に対するチェック、あるいは立法府に対するチェック、違憲立法審査権、これをほとんど日本の司法はやらない。アメリカの司法はどんどんやるんですね。そういう、内容の上でも、容量の、器の面でも非常に小さい。これでは基本的人権が守れないではないかという観点から司法改革を強調する。その一つの突破として、国民の司法への参加というものを非常に重視するという、そういう流れ。どうも二つの流れが、余り明確に区分けするのはいいかどうかは別として、あることは事実。  ですから、総理がこの法案を出され、内閣が所管するわけでありますが、どういう基本理念に立ってこの審議会を設置されようとしているのかというのはやはり基本的に大事だと考えますので、総理の基本認識、これを改めて御答弁願いたいと思うんです。
  137. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 我が国の司法制度につきましては、これまで、国民のニーズにこたえるべく、司法関係者において最善の努力がされておるものと認識いたしております。政府といたしましても努力をしてまいりましたが、昨今、国民各層から司法制度の改革についての種々の提言がなされていることを十分承知いたしております。  時代の変化が大変激しい上に、二十一世紀の我が国社会において、社会の複雑多様化、国際化等に加え、規制緩和等の社会のさまざまな変化に伴い、司法の役割は従来にも増して重要なものとなると考えております。司法の機能が国民のニーズにより一層こたえ得るような改革をする必要があると考えております。木島委員、いろいろな分類の仕方につきまして御自身のお考えもお伺いをいたしましたが、現下はこのいろいろな諸点におきまして改革をしなければならない点がある。  例えばといえば、いろいろございますけれども、法曹の質と量の強化、法曹一元の問題、あるいは民事法律扶助制度の充実、弁護士事務所の法人化、司法への国民参加のあり方、大学における法学教育のあり方、ロースクール方式の導入等々と、大変問題が山積をいたしておる。こういうことをきちんとこの際しっかりと見据えて、新しい司法制度のあり方を考えるべき事態に立ち至っておる、このように認識をして審議会を設置させていただくということでございます。
  138. 木島日出夫

    ○木島委員 今の御答弁をお聞きしていますと、やはり規制緩和型司法改革という理念に基づいてこの法案を提出してきたのかなと思うんですね。国民のニーズというと、どうもそういうふうにしか聞き取れないわけです。  実は、私の勝手な分類というのじゃなくて、先日この委員会に四人の先生に参考人として来ていただいたんですが、その中のお一人である戒能通厚先生の口述が大変鋭い指摘をしているんですね。読んでみますと、  端的に申しますと、司法というのは、必ずしも行政改革の、今流れの中で展開しております規制緩和によって生じた社会の事後的な救済という役割、そういうことが果たして司法の役割なのかということに、私は基本的に疑問を持っているわけでございます。   私は、現在の日本の司法の最大の問題は、司法の中心であります裁判官の職務が、率直に言いますと極めて劣悪な状況にある。何といっても、事件数が膨大であることに加えまして、転勤が非常に多い。三年に一回は転勤するということもございます。そういう中で、裁判官は果たして十分に市民の権利の実現、人権の保護、社会正義の実現という職務を実現できるだけの精神的な余裕を与えられているのかどうかということにつきまして、私は極めて危惧を持っているわけでございます。   通常言うところの司法行政というものが最高裁事務総局によって基本的には握られていて、それぞれの裁判所ごとの裁判官会議というのはもう既に今形骸化している。 こうまでこの先生はお述べになりまして、委員からの質疑応答に答えて、私の質疑に答えて、最後に、「何といっても規制緩和型司法改革というのはぜひやめていただきたいというふうに考えているわけです。」こうまでここでお述べになったわけなんですね。  国民のニーズにこたえて司法の容量を大きくして、本当に国民の負託にこたえていこうというのは、それはそれで大事だと思うんです。私はそれを否定するものではありません。しかし、そこだけを強調して、基本的人権擁護としての司法のあるべき姿、特に行政や立法に対するチェック機関としてそれがきちっと行われることが、最終的には国民の基本的人権を守る司法に課せられた憲法上の最大の責務だと思うので、そこはいささかも脱落させてはいかぬと思うんですよ、今度の審議の中で。それはどうでしょうか、総理。
  139. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 いわゆる規制緩和型、もう一つは基本的人権型とも委員は御指摘されておりますが、いずれも重要なことだろうというふうに思っておりますので、そうした二つの要請にこたえる意味からも、今回の審議会の設置の意義は深いというふうに認識をいたしております。
  140. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございます。そういう方向で、幅広い視野で審議をしていただき、そういう審議会にしてほしいと思うんです。  これまでの審議を通じまして指摘されてきた問題点、共通点の一つは、小さな司法ではだめだという点であります。これは、私は、政府がこれまでとり続けてきた基本政策が小さな司法政策ではなかったかと思うんですね。裁判所予算に典型的にあらわれている。国の予算総額のわずかに〇・四%にすぎないんです。総理がことしおつくりになった予算もそうです。私は予算委員も兼務しておりますから、よくわかります。  これに見られますように、率直に言って、これまで政府は、三権の一つである司法を極めて軽視してきたんじゃないか。少数の裁判官で多数の事件を処理する体制をとり続けてきたんじゃないか。そういう政府の基本政策の中で、民事事件が急増する中、裁判所の人的、物的充実は追いつかない。裁判官や裁判所職員は自宅に仕事を持ち帰るなど、大変な状況になっておる。  刑事事件を見ますと、そういう状況に追いまくられていますから、調書裁判という言葉で批判されているんです。調書を読んで犯罪の有無の事実認定をしてしまう。そういう調書裁判と批判されているような刑事裁判の改革も立ちおくれてしまって、代用監獄での自白に沿った警察官調書をうのみにするような判決の結果、多くの冤罪が日本の司法のもとで生み出されてきている。  こういう中で、さらに審議促進のみが一方的に強調されて、どうも、ややもすれば、当事者の主張に十分に耳を傾ける審理、あるいは真実発見のために充実した審理、それと説得力のある判決文の起草、そういう面で、司法の基本的な使命が置き去りにされかねないような状況が今基本的に日本の裁判にあるんじゃないか。それが今回の司法改革の一つの大きな眼目ではないかと思うんです。  ある新聞が書いていましたが、他の先進諸国と比べてけた違いに少ない法律扶助の問題、あるいは被疑者段階での国選弁護の創設など、こういうものは何も審議会で難しい論議をしなくても、総理が、今の現政府がしっかり司法の予算をふやすんだという構えに立てば、来年度予算からだってできるはずじゃないかという意見がマスコミにも載っておったわけであります。どうでしょうか、審議会の答申を待たずしてやはり司法予算を抜本的にふやす、そういうことが求められていると思いますが、行政府の長として、予算の提案権者としての総理の御見解をお聞きしたいと思います。
  141. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 司法の基盤の充実強化のために、裁判官、検察官増員等、司法の人的、物的強化は必要であるという御主張でございます。  二十一世紀の我が国の社会において、司法の役割はより一層重要なものになると考えられ、そのためには、御指摘のとおり、法曹の質及び量の拡充も重要な課題でありまして、司法の機能を質的、量的に充実強化して、国民に身近な司法制度を充実していく必要があると認識をいたしておりまして、そのための努力の中で、予算的な措置につきましても、だんだんに政府としては努力をしてきたつもりでございます。  ただ、これが予算的な増加だけで問題の本質がすべて解決するかどうかというところに実は司法制度の大きな問題があるのではないか。例えば、裁判官あるいは検察官の数をふやすということだけで、今、遅々として裁判が、即決性が疑われているような問題については、弁護士さんの問題、あるいは裁判所との関係、その他もろもろの関係が存在しているんじゃないかというふうに思っております。  私、きょうここに出席させていただいて大変光栄だと思っておりますが、恐らくここにおられる諸先生方は、その点につきましては長年にわたりまして御研究、御検討された結果を承知されておられるわけでありまして、まさにこういったお考えを今後この審議会におきまして反映をさせていただくことによりまして、十分問題の本質をえぐることによりまして、本格的な司法制度をつくり上げなきゃならぬ。そういう意味で、今回この法律案を提案させていただいた意義を改めて、ここに出席をさせていただきまして、深く深く認識をいたしておるところでございます。
  142. 木島日出夫

    ○木島委員 実はもう一つ、大体共通して指摘されてきた問題として、裁判所の内部からの自己改革の問題があると思うんです。それは、言葉を変えれば、司法行政を通じての裁判と裁判官に対する官僚統制の強化の問題、そこを変えなきゃだめだという問題ですね。  これは私、根本を言うと、政府が最高裁裁判官の任命権を持っている、その任命権を利用して、どちらかというと政府寄りの人物の登用をずっとしてきて、司法支配が基本的にそこからつくられて、そして違憲立法審査権の行使が極めて消極的である、行政や大企業寄りの姿勢が目立つ。  そして、最高裁はどういう状況をつくっているかというと、昇格や転任など人事を握っているわけです。そして、裁判官会同などをいまだにやって、これを通じて全国の独立しているはずの裁判官を内容的にも拘束して、最高裁の判例や方針を事実上押しつけてきている。これは厳然たる日本の裁判の実態ですよ。また、判事、検事の人事交流など、司法行政を通じて裁判の内容についての事実上の官僚統制がしかれてきた。  やはりこれを打開することが極めて重要な課題だ。これは今次の司法制度改革審議にあって、一つの大きな柱として徹底的に問題を洗いざらいして論議をしてもらわなきゃいかぬ課題だと思うんです。それを突破する一つの手段としての法曹一元制度とか陪審とか参審とか、国民の司法参加が非常に大事だと感じているわけであります。  そういう立場から、改めて自民党の方の司法改革の報告書を読みますと、ほとんどそういう視点がないんですね。ないんですよ。それでは本当の意味で国民の立場に立った、国民の気持ちのわかる裁判というのはできないんじゃないかと思うんですが、総理の基本的な認識をお聞きしたい。これは裁判所の自己改革の問題なので余り政治がああやれ、こうやれと言うのは私は賛成しませんけれども、こういう問題が基本的に日本の裁判所にある、そういう御認識はあるんでしょうか、総理、どうなんでしょうか。
  143. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 まず、裁判官の任用につきましては、内閣総理大臣として、与えられた権限につきましては公正無私で適切な人事を行わなければならぬ、そう考えて対処いたしております。  自民党のつくり上げましたものにつきましては、その中でいろいろとこれから実行していく問題は、まさに全体的に御議論をいただきながらこれを実行していくべきものと考えております。
  144. 木島日出夫

    ○木島委員 時間はいいですか、まだ。  では、審議会について一つだけ。  やはり、本当に国民に開かれた審議会というのは大事だと思うのですよ。そのためには、審議内容情報公開と国民の声をよく聞くという両側面だと思うのですね。先ほど答弁がありましたが、審議会の公開の点で、ぜひこれはせめて議事録は直ちに全部公開してもらいたい。総理、これだけはやってほしいと思うのですが、いかがでしょうか。総理、せめてそこだけは、議事録全面公開だけは約束してほしいと思うのですよ。
  145. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 先ほど御答弁申し上げましたように、いずれこの審議会で答申を得てこれを立法化するということになりますれば、国会の御審議を得なければならぬことでございますので、その段階におきまして立法府としての意思は十分承りますが、その前提としては、より審議会における透明性確保のためにこれを公開することは、これは当然のことと考えております。
  146. 木島日出夫

    ○木島委員 時間ですから終わりますが、私は、選ばれてくる十三人の審議委員の皆さんには、ぜひ国民の前で堂々たる、公開も含む審議をやってもらいたいということを希望いたしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  147. 杉浦正健

  148. 保坂展人

    保坂委員 社会民主党の保坂展人です。きょうは、小渕総理、御苦労さまでございます。  まず最初にお聞きいたしますけれども、一月四日の読売新聞に、「陪審制導入を検討 司法改革の項目全容判明」という記事が載っております。この中には、裁判の迅速化でありますとか、あるいは陪審、参審などの導入、さらに、法律扶助制度の見直し、あるいは無期刑を見直し終身刑を導入する、注目すべき検察行政の国会に対する説明責任、あるいは検察の起訴独占の見直し、起訴陪審など、十一項目があるわけなのです。  小渕総理に伺いますが、この記事において明らかになった法務省の検討事項というのは存在をしたのでしょうか。
  149. 房村精一

    ○房村政府委員 ただいま委員の御指摘の、一月四日付の朝刊に載りました法務省の検討している審議事項というものは、この司法制度改革審議会においてどういう事項が検討されるであろうかということを、各種提言を参考にいたしまして、こういう事項が取り上げられる可能性があるということで、法務省内で想定として取りまとめたものでございます。  したがいまして、これは法務省の内部で検討されたというものでございまして、特に内閣に御報告したとかそういう関係にはございませんので、総理においては当然これは御承知されていないというぐあいに考えております。
  150. 保坂展人

    保坂委員 今の答弁で、法務省の中で、まあこういうことで検討がされるだろうという内部の文書だったということでございます。  そうしますと、読売新聞がそれを入手していて、我々法務委員は全然見ていないわけなんですね。要旨と書かれていますが、全文は見ておりません。やはり透明なルールをもって全部公開して、国民参加の司法改革、この設置法案の審議に当たって、こういうものは審議の初めにやはり出していただくのが筋だと思いますが、小渕総理、その点、いかがでしょうか。総理に伺いたいと思います。
  151. 房村精一

    ○房村政府委員 ただいま申し上げましたように、法務省内で審議事項を想定して検討するために作成いたしました資料でございます。どういう経過で新聞報道されるようになったかは私ども承知しておりませんが、そういう、いわば内部の検討資料にすぎませんものですから、これを特に公開するということはいかがかと思っております。
  152. 保坂展人

    保坂委員 それでは、実は一月四日というのは、法務・検察の賀詞交換会が行われた日でありまして、もうこれは総理も何度もお聞きになっていると思いますけれども、当時、前中村法務大臣がこの読売新聞記事を見て、ことしは司法制度改革の年だということで、いろいろの問題発言といいますか、後に釈明された発言をしたわけなんです。そうしますと、法務省の内部文書と、中村大臣はそういうふうに受けとめたわけですけれども、そういう大切なものが国会の場に提出されていないということについて、総理大臣としてはどういう御所見をお持ちでしょうか。これはもう小渕総理に聞きます。
  153. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 ただいま事務当局から御答弁申し上げましたように、あくまでも法務省の内部で検討してきております案件についての文書ということでございまして、お答えがありましたように、私自身にそれが報告をされておるわけでもございませんし、また、先ほど前中村法務大臣がその文書を見て新年に御発言されたという前後関係につきましても承知をしておりませんので、私として、今この段階で御答弁申し上げることはできないことでございます。
  154. 保坂展人

    保坂委員 総理、予算委員会で、法務大臣自身がたびたび、これは議事録にも残っていると思いますので確認していただきたいのですが、確かに法務大臣はそういうふうにお話しになっています。  そして、実は法務大臣がおやめになったわけなんですけれども、このいきさつについても一つだけ、参議院の予算委員会の審議の際に、内閣の責任でこれは調査をいたしますと野中官房長官が答弁をして、小渕総理もそのことをもってよしとしたという経過があったと思いますが、内閣の調査というのは、この件で、つまり参議院の予算委員会で入管問題をめぐって法務大臣が答弁に詰まったという件について調査はされたのでしょうか。
  155. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 御指摘の、中村前大臣の件に関しましては、その一連の言動に関し内閣において調査を行い、その結果を参議院予算委員会報告することとされたものの、その後中村前大臣が、みずからの言動をめぐり国会審議に重大な支障を来し責任を痛感しているとして辞任されたことから、政治家として最大の責任のとり方をされたものとして、同委員会理事会に御了解を得たと承知をいたしております。三月十七日、参議院予算委員会におきまして、上杉副長官から説明し、了承を得ておるところでございます。
  156. 保坂展人

    保坂委員 その調査をされたのかどうか、本来ならこの調査も明らかにしていただきたいのですが、ちょっと時間の制約がありますので。  今回の司法制度改革についてなんですが、これは自民党の案の中では、弁護士自治の見直しという部分も含めた、これもまあ検討の対象であると。先日ここに官房副長官に来ていただきまして、このこともこの審議会は含めるのかどうかということで御質問したのですが、全般にわたって議論をするという答弁なんですが、この点は弁護士自治の見直しも含んだ幅広い議論ということで、総理の方から、どういう御見解でしょうか。
  157. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 司法制度改革審議会は、広く国民的見地から二十一世紀における司法の役割を明らかにし、司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議するものでありますので、法曹に関して広く各般の議論がなされるものと思いますが、具体的な審議事項につきましては、本審議会におきまして二十一世紀の司法の役割を明らかにする中で、各界からの各種の提言を参考にしつつお決めいただくことになろうかと考えております。
  158. 保坂展人

    保坂委員 この審議会の情報公開について、大変当委員会でも議論がされたのですが、その際に、平成七年九月二十九日の審議会の透明化、見直し等についての閣議決定がございますが、これは国家行政組織法八条に基づく審議会について閣議決定されたものと読めるのですが、今回の内閣法十二条四項に基づく審議会についてもこれは準用されるという御見解でよろしいでしょうか。
  159. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 審議会等の審議の公開については、従来から政府の基本的方針でありまして、中央省庁等改革基本法におきましても公開の原則がうたわれているところでございます。具体的な公開の方策も含め、司法制度改革審議会においても、基本法の趣旨を踏まえ、適切に対応されるものと考えております。
  160. 保坂展人

    保坂委員 再度具体的に確認、先ほど他の委員からもありましたけれども、情報公開を基本として、例えば審議会あるいは議事録、こういうものは公表していくという理解でよろしいですか。
  161. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 基本的にその方向で対処することが、でき上がりました審議会の国民的な信頼度をより高めるものと認識をいたしております。
  162. 保坂展人

    保坂委員 さらに、審議会の事務局の構成がこの審議会の運営に大きな作用をするだろう、昭和三十七年の臨司の振り返りからもそういう議論がなされました。事務局の構成なんですけれども、司法官僚の方あるいは法務省の出身だったり最高裁の出身の方以外に、例えば民間人、例えば日弁連の出身、あるいは民間の情報公開などにかかわってきた、いわゆる司法官僚ではない民間の方たち、こういう人たちも事務局に入れるべきではないかという意見が出ているのですが、この点についてはいかがでしょうか。
  163. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 事務局の体制というものは極めて重要であるというふうに認識をいたしております。  事務局員の選任につきまして、今具体的にこれを明らかにすることはできませんが、ぜひ、この審議会が設立され、そこで委員が自由濶達にみずからの考え方を十分述べ、そして、司法制度を改革するためによりよい答申をおまとめいただけるために、事務局というものがそのことにいささかも予見を与えるようなことはあってはならない。私は、これは審議会と審議会の事務局のあり方として厳に留意をしておかなければならない点であると認識しております。
  164. 保坂展人

    保坂委員 それでは、最後の質問になるかと思いますが、内閣に設置される、今回は司法制度改革審議会、かつて昭和三十七年当時、臨時司法制度調査会、これは資料の中に入っているのですけれども、これと今回の構成がちょうどよく似ていまして、ただ一点だけ、臨司の場合、調査会ですから、「調査会は、」「答申又は意見を内閣から国会に報告するように、内閣に申し出ることができる。」つまり、調査会から内閣に意見を上げて、内閣から国会に報告させるという部分昭和三十七年のこの臨司にはございます。ところが、今回のこの法案にはそこの部分がすっぽり抜けているというところで、国会軽視ではないかという議論も多々当委員会で出ました。その点について、総理の見解を伺いたいと思います。
  165. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 臨時司法制度調査会は、特定の事項を主として専門家の立場から検討するために設立されたものであると承知をいたしております。これに対しまして、今般お願いをいたしております司法制度改革審議会は、司法制度の利用者である国民各層の視点に立って、二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を見据え、司法制度全般について幅広く調査審議するための内閣の補助機関として設置されたものであります。  このような審議会設置の趣旨に照らし、国会議員には、委員として審議会に関与していただくのではなく、審議会の意見をもとに講じられる施策に関して具体的な立法化を図る段階で、立法府として審議をしていただくのが適当であると考えております。  しかし、調査審議の対象が国政の基本にかかわる極めて重要な事項であることから、委員の任命に関しましても両議院の同意を得ることといたしております。また、国会への報告に関しましては、これに関する規定を置くまでもなく、国会からの求めがあれば、審議会から適切に報告がなされるものと考えております。
  166. 保坂展人

    保坂委員 臨司の際にあった国会報告規定、今回提出のものに入れておいて何も問題はなかったというふうに思うわけですが、時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。
  167. 杉浦正健

    杉浦委員長 これにて内閣総理大臣に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  168. 杉浦正健

    杉浦委員長 この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所泉事務総長、浜野総務局長金築人事局長、白木刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  169. 杉浦正健

    杉浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  170. 杉浦正健

    杉浦委員長 この際、本案に対し、山本幸三君外六名から修正案が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。日野市朗君。     —————————————  司法制度改革審議会設置法案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  171. 日野市朗

    日野委員 私は、ただいま議題となりました修正案について、提出者を代表して、その趣旨を御説明いたします。  本案の趣旨につきましては、既に当委員会の質疑の過程で明らかになっておりますが、審議会の所掌事務をより明確にしようとするもので、この際、案文の朗読をもって、その説明にかえさせていただきます。  それでは、案文を朗読いたします。     司法制度改革審議会設置法案に対する修正案   司法制度改革審議会設置法案の一部を次のように修正する。   第二条第一項中「明らかにし、」の下に「国民がより利用しやすい司法制度の実現、国民の司法制度への関与、法曹の在り方とその機能の充実強化その他の」を加える。 以上であります。  何とぞ本修正案に御賛同賜りますようお願いいたします。
  172. 杉浦正健

    杉浦委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  173. 杉浦正健

    杉浦委員長 これより本案及び修正案を一括して質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐々木秀典君。
  174. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 民主党の佐々木秀典です。  きょうは、前段、今退席されましたけれども、総理大臣がお見えになりました。お聞きをいたしましたら二十年ぶりぐらいだそうでございまして、そういう意味では、当法務委員会に総理大臣がお見えになって司法問題についての議論をしたということは、非常に私は意義あることだし、今度の司法改革ということについて国民の皆さんの関心を喚起する意味でも大変きょうはよかったと思っております。  さらに、私の質問に関連して、きょうは最高裁判所事務総長にお越しをいただきました。事務総長にお越しいただくのも相当しばらくぶりじゃないかと思うのです。形式的には、司法行政のトップは最高裁判所長官ということになっておりますが、実質的には、司法行政の実務あるいは実質的なトップは私は事務総長だと心得ておりますので、どうかこれを機会に最高裁判所事務総長にも時々お出ましをいただいて、司法行政全般についてのさまざまな御議論をさせていただく、あるいは状況お話や御意見などについても伺う機会が多く持てることを望んでおりますので、ぜひひとつお気軽に当委員会においでいただくように要望しておきたいと存じます。  そこで、この司法制度改革審議会を内閣に設置する件でございますけれども、これまでこの司法問題、司法制度の問題については、先ほどの審議の中でもありましたように、かつての臨時司法制度調査会、これで大きな議論になったことはございますが、その後、具体的な司法の問題などについては、当委員会の附帯決議に基づいてつくられた法曹三者協議会でその都度協議をして事に当たってきた。具体的に解決できたこともあるし、解決できなかったこともたくさんある。最近では、例えば、司法試験制度の改正などについて三者協議で一応の結論が出て、司法試験の方法、それから合格者の増員問題などについてもこの協議会を経て改定をされてきたということがあります。  しかし、総論的な問題などについてはなかなかこの協議会で協議の成果が得られないということもあり、そんなことを踏まえて、今般司法制度改革審議会の設置の問題が提案をされた。これも私などは、自由民主党の中に司法制度特別調査会が置かれて、ここで司法制度の全般について、あるいはあるべき司法制度についての議論がなされて、それでその報告書が出され、これを私ども見せていただいた。  ということから、自民党の方から、かねがねこうした審議会の必要、内閣において司法制度全般について審議をすることの必要性ということが御議論され、提案をされてきたことは承知をしておりましたから、今度の立法も恐らく与党からの議員立法として出されるのではないだろうか、それについて、私ども野党にも提案などについて協力を求められるのではないかと予測をしていたのですけれども、それが議員立法ではなくて政府提案になったわけです。  その理由というか、直接の理由にはならないかもしれないけれども、経緯といいますか、その環境については先ほどの総理大臣とのやりとりの中でも一応は出ているのかなと思いますけれども、本当は、総理大臣がまだいらしたらその点をお聞きしたかったのですが、これは議員立法でなくて政府提案ということになったわけであります。もうこういうように政府提案として出されたのですから、私どもとしてもそれを受けとめなければなりません。  そこで、その問題はこちらに置いておくことにいたしまして、しかし、そうはいっても、法曹三者、きょうは日弁連はおいでになっていませんけれども、国家の機関であります法務省そして最高裁判所、これに無関心でいられるはずはないし、また、お聞きするところによると、法案も出ておりますけれども、前の臨時司法制度調査会の構成とは違って、これを審議する審議委員は法曹と別な方々、広く一般の国民の目線でこれを審議するということから、広く国民の中での有識的な人にお願いする、こういうことになっているのだというのです。しかし、それにしても、ただ御自由におやりくださいというわけにはいかないだろうと思うのですね。  しかし、法案を見ますと、これについて法曹三者に協力を求めるというようなことが書いていないのですね、条文では書いていない。書いていないけれども、当然これは関心を持たなければならないし、法曹三者としては協力をしなければならないだろうと思われるわけです。  さきに報道もあったのですけれども、例えば、最高裁判所は、この法案が成立することを前提として、裁判所の中にこれに対する協力機関というか協力体制をつくる準備をしている、こういう報道がなされております。  そこで、この協力体制についてもお伺いをしたいわけですけれども、これを二番目にいたしまして、まず法務省それから最高裁判所としては、この司法制度の改革ということについて、この審議会にどういうことを一体期待するのか。  自分たちとしては今まで法曹三者協議でいろいろやってきたけれども、それで解決できなかったこと、あるいはそこでの議題に上らなかったようなことについて、特にこういうことについて審議をしていただくこと、その審議の上でこういう方向づけをしてもらいたいのだというようなことについて、お考えを持っておられるのかどうか、これをそれぞれ法務大臣と最高裁判所、両方からお聞きをしたいと思います。もちろん、法務大臣、もしも事務方の方で補足の点がありましたら、それもお伺いしたいと思います。  協力体制の方は、ごっちゃになりますから後にしましょうか。まず、その期待するところはどうなのかというところから。
  175. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 二十一世紀の我が国社会におきましては、社会の複雑多様化、国際化に加え、規制緩和等の推進により、社会は事前規制型から事後チェック型に移行してまいります。このような社会におきましては、利用者にとって利用しやすい司法の実現を図ることは重要なことであると考えておりますし、また、司法がルールの維持という役割を十分果たすことによりまして、社会的弱者の保護救済が図られるものと考えております。  司法制度改革審議会におきましては、そのような観点のもとに、国民各層から選任される有識者の委員方々に、例えば、国民がより身近で利用しやすい司法制度の実現、また、法曹の機能の充実強化など、司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について有益かつ貴重な調査審議をしていただく、こういうことを期待しております。  今委員がお触れになりましたその人選の点についてでございますけれども、これは当然のことですが、司法を利用する側の立場から、例えば、経済界、労働界、消費者等の国民各層からふさわしい有識者を選ばせていただきたいと考えておりますし、また同時に、この審議事項が司法にかかわる事項でございますので、司法関係者法律学者を選任する必要もあろうと考えております。
  176. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 司法制度改革審議会は内閣に設置される機関でございますので、裁判所が審議会の具体的審議項目等について意見を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。しかし、ただいま委員が御指摘になられましたように、三権の一つである司法を担う裁判所といたしまして、審議会について強い関心を抱いているところでございまして、裁判所の立場で審議会にどのようなことを期待しているかという観点から申し述べさせていただきたいと存じます。  裁判所といたしましても、社会経済情勢の変化等に伴い、国民の法的ニーズは多様化し、かつ、量的に拡大してきておりまして、より迅速で適正な紛争解決、より利用しやすい司法制度への要望がこれまでになく高まっていると認識いたしております。そこで、このような国民のニーズを受け、司法制度全般の機能のあり方について実証的かつ多角的に検討を加え、今後も受け継ぐべきものはこれを発展させ、改めるべきものはこれを改めて、国民の利用しやすい多様な紛争解決制度とその基盤づくりを考えていくことが求められていると存じております。  そこで、司法制度をその利用者である国民の視点から見直そうという司法制度改革審議会の設置は、大変意義深いものと考えているところでございます。そして、審議会において、裁判手続に限らず、広く司法全般にわたり、国民の法的ニーズにどのように対応していくべきかについて、幅広い観点から審議が行われることを期待している次第でございます。
  177. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 かなり抽象的なお返事だったと思うのですね。  それと、法務大臣のお答えで特徴的だったのは、先ほどの総理大臣の御答弁とも合い、これは先ほども同僚委員からも指摘があったのだけれども、一つは、国民に利用しやすい身近な司法というのはわかるのだけれども、規制緩和などの社会的なニーズにこたえてという点がやはり強調されているという点では、少し気がかりなことがありますね。  裁判所の方は、実証的、多角的にさまざまな検討をする、これはもちろんそうだろうと思うのですね。  これは後の質問とも関係するわけですけれども、もう少し、確かにこの法律で、この審議会には何と何と何をやってもらうのだというようなことは書いてないわけだし、なかなかそれを言うのは難しいかもしれないけれども、しかし法曹三者からは、ぜひこのことについては審議し、方向を出していただきたいというような要望は出てもいいんじゃないかと私は思うのですね。  例えば裁判所からは、とにかく今裁判所は忙しくてしようがない、裁判官が少ないんだ、もっと裁判官あるいは職員、これを増員してもらいたい、そのためには予算も必要だとすれば、うんと司法予算を増額してもらいたいということを遠慮なく言ったっていいと思うのですよ。どうもこの辺、奥歯に物が挟まったようで、私たちじりじりするんです。  法務省にしたってそうだと思うのですよ。この間いろいろ高官の問題がありましたけれども、しかし現場の検察官検察事務官なんか本当に苦労されていると思うのです。私は北海道ですけれども、北海道の各都市に派遣をされている裁判官にしても検察官にしても、それは一生懸命やっているわけですよ。だから、そういう人たちの待遇問題も含め、あるいは仕事のしやすいような環境をどうやってつくるかということも含めて、私はやはり率直にもっと審議会に言った方がいいと思うのですね、できた場合には。  その辺は、この審議会ができた場合には、その経過の御報告なども伺いながら、また議論していきたいと思います。  そこで第二の質問ですが、先ほど申し上げたように、法曹当事者としてこの審議会にどういうように協力していくのか。当然、協力を求められることになるだろうと思うのです。委員の中には直接には入らないにしても、まだ必ずしも明確になってはいないようですけれども、この審議会に事務局が置かれることになるであろうし、その事務局には法曹三者から恐らく人員の配置を求められるのかどうか、多分そうなってくるのではないかと私は思うのだけれども、そのことがある。  ないにしても、いずれにしても、資料の提供だとか、あるいは逆に聞かれることだとか、いろいろあると思うのです。それにこたえられるような体制は、やはり即座に、敏速に、しかも効果的に対応していくことが必要であると思うのですね。何といっても、審議の期間、二年間という非常に短い期間なんですから、能率的にやらなかったらだめなわけですからね。  この体制について、法務省、最高裁判所、どんなふうに準備をされておるか、それをお伺いしたい。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
  178. 房村精一

    ○房村政府委員 審議会の審議への協力の点でございますが、これは、今回の法案の中で第六条にそういう協力に関係する規定が設けられておりまして、「資料提出その他の協力」、その第一項が「審議会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関、最高裁判所及び日本弁護士連合会に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。」という明文の規定を置いてございます。なお、同じ第六条二項におきまして、「審議会は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。」こういう規定がございます。  「協力を求めることができる。」という規定と「協力を依頼することができる。」という規定を書き分けておりますのは、一項に規定されているものにつきましては、審議会から協力を求められた場合には、観念的には協力に応ずる義務がある、こういうことで、二項と区別をして規定しております。  この中に、特に最高裁判所及び日本弁護士連合会を含ませておりますのは、先ほど委員の御指摘にありましたように、司法の問題を取り上げるこの審議会に、法曹三者たるもの当然協力すべき義務はあるだろうということから、関係行政機関と並びまして、最高裁判所及び日本弁護士連合会の協力義務を規定したところでございます。  したがいまして、法曹三者として、当然この審議会の審議につきましては全面的に協力をしていくことになろうかと思っております。  法務省といたしましても、この条文に規定されておりますような資料の提出あるいは意見を求められた場合の意見の開陳、こういうことに積極的に応じていきたいと考えておりまして、省内的にも、各部局からそれぞれ人を出していただいて、全省的なバックアップ体制を整えて、資料の収集等の準備に当たっているところでございます。  今後、具体的に審議会から協力を求められた場合には、全面的に協力して、でき得る限りその審議の促進と審議が充実したものになるように努めていきたいと考えております。
  179. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 法務省、大体わかるのですけれども、具体的に、特別のセクション、部になるのか局になるのか課になるのか、新しくつくるという構想まではいっているのですか、いっていないのですか。
  180. 房村精一

    ○房村政府委員 省内において、所掌事務としてこの審議会関係の事務を担当いたしますのは、私どもの司法法制調査部ということになります。そこの人員の増加等の手当てをしていただいたところでございますが、省内的には、事務次官を委員長といたします協力委員会を設けまして、そこで各局から、例えば刑事関係については刑事局の御協力を得る、こういうような体制を整えて、それぞれの部局において今準備を進めているところでございます。
  181. 浜野惺

    ○浜野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  先ほど委員御指摘の審議官の点も含めましてお答えさせていただきます。  国民のニーズに対応いたしまして、適正迅速な裁判、利用しやすい裁判を実現するため、これまで最高裁は種々の検討を重ねてまいってきたところでございますが、今般、先ほども委員御指摘のとおり、事務総局に、本年四月一日付で、審議官を中心といたします専門チーム、これを発足させた次第でございます。これは、社会経済情勢の変化等を反映いたしました国民の法的ニーズに変化が生じまして、司法に対する国民の期待が高まる中で、最高裁として、これからの司法制度全般の機能のありようについて総合的に検討していく必要があると考えたところによるものでございます。  司法制度改革審議会が設置されました暁には、審議会からの要請があれば、この専門チームの調査検討結果を初めとして、各種の資料の提供や実情の紹介、あるいは裁判制度を担う立場から意見を申し上げるなど、可能な限りの御協力をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  182. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 最高裁、今、お話では、専門チームはもう発足させているということですね。審議官も新しくつくったのですね。チームの人員はどのぐらいですか。班構成なんかにはなっているのですか。
  183. 浜野惺

    ○浜野最高裁判所長官代理者 委員お尋ねの審議官室の構成メンバーは、審議官が一名、それから若手裁判官が二名、それから事務官が三名でございます。合計六名で構成しております。
  184. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 まだ日弁連の方は聞いていませんけれども、恐らく日弁連としてもそういう準備体制を整えるのだろうと思うのですね。そこでまた、恐らくそのレベルでの協議などということもあり得るのだろうと予測するわけです。この審議会ができてまいりますと、まずどこからどういうような議論が始まるのか、全く私どもとしても予測がつきかねるわけですが、しかし、今まで法曹三者協議会の中で協議をされていたようなことについても行く行くは審議会の方でも議論のテーマになることも考えられるわけです。  一方、それではこの法曹三者協議会の方との関係はどうなるのか。法曹三者協議会はこの審議会が始まったら開店休業としてしまうのか、あるいはやめようということになるのか。この審議会との関係、それから、審議会ができた場合の法曹三者協議会のあり方などについてはどんなふうに考えておられるのか、それぞれからお聞きをしたいと思います。
  185. 房村精一

    ○房村政府委員 当法務委員会の附帯決議等をきっかけといたしまして法曹三者協議会が設置されたわけでございますが、これは、司法制度の改正に当たって法曹三者の意見を一致させるように努めるということは、司法制度の実際の担い手である法曹三者がその実情を熟知している司法制度につきまして十分な協議を行うということによりまして、司法制度の改正あるいはその円滑な運用に資することができる、こういうことから三者協議会が設けられているわけでございます。  この司法制度改革審議会が設置され、その活動が開始された場合におきましても、法曹三者の司法制度に関して意見交換をし、十分な協議をするということの意義は変わらないというぐあいに理解しております。したがいまして、この司法制度改革審議会が設置されたからといって、法曹三者協議会が不要になるということではないと理解をいたしております。したがいまして、必要に応じて、法曹三者の意見交換に今後も努めてまいりたいというぐあいに考えているところでございます。
  186. 浜野惺

    ○浜野最高裁判所長官代理者 今般その設置が審議されております司法制度改革審議会は、近時の社会経済情勢の変化、国民の法的ニーズの変化に対応するために、司法制度の利用者である国民の見地に立って、広く司法制度の機能のあり方について検討することを目的とするものである、かように承知しております。  委員御指摘の法曹三者の協議は、司法制度を円滑に運営していくために、司法制度の担い手である法曹三者が、個々具体的な問題について、制度面あるいは運用面にわたって実践的な見地から行われてきたものでございます。司法制度改革審議会が設置された場合でありましても、法曹三者の協議の役割は今後も必要である、かように考えております。  もっとも、司法制度改革審議会が設置されました暁には、法曹三者の協議においては、審議会での議論や審議会の意見を十分に踏まえて、よりよい司法制度の運営について具体的かつ実践的に検討が行われることになるものである、かように考えております。
  187. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 今、御両所の御答弁を聞いて、やや安心もしておるわけです。せっかく設けられている法曹三者協議会、これは緊急差し迫った問題ですとか、あると思うのですよ。これはやはり法曹でなければわからない、あるいは実務に当たっている者でなければわからない、それに責任を持つ者同士で決めていかなければならないということはあるはずですから、やはり法曹三者協議というのは生かしていかなければならないと思いますね。  あるいは、私は、審議会との関連で言えば、特に審議会の中で議論になって、こういうことについては早くおやりになったらいいのではないですかなどということについて、場合によると御示唆があるようなことについては、法曹三者が積極的に受けとめていただいて、それについて協議をしていく。例えば、司法試験の例の見直しの問題ですとか、あるいは法曹の増員問題ですとか、こういうことは、やろうと思えば、私どもの委員会でも、国会の場でもそれを受けてやれるということがあるわけです。  それをやるためには、やはり法曹三者協議の協議を経てと思っておりますし、そういう御示唆を審議会の方から受けて、それに取り組むというようなことも必要だろうと思うので、いずれにしても、法曹三者協議というものは私は形骸化してはいけない、こう思っておりますので、どうか法曹三者それぞれにまた御努力をいただいて、生かしていただきたい、このことを強く要望しておきたいと思います。  それから、先ほど来お話がありましたように、これが二年間という期限つきになっておりますから、大変短いのです。だから一番最初に、私は、この二年の中でどこまでの論議を期待するんだ、こう言っていたのです。  ですから、もう一度そことの関連でお聞きをしたいのですが、仮にこの二年内に、二年がたってしまったら、これはなかなか予想がつきにくいのだけれども、政府としては、これは内閣官房の方かな、どういうようなことになれば所期の目的を達したと見るのか。あるいは、議論がいずれも中途半端なままだとすると、この二年が来たときに、さらにこれを延長するというようなことにするのか、あるいは、委員を改めて、それで延長する、そこで法改正というか法律の延長をまた国会に持ち込まれるのか。その辺、どう考えておられるのですか。
  188. 房村精一

    ○房村政府委員 この審議会の審議の期限は二年間ということを予定しております。  委員の御指摘のように、司法の抱える問題、非常に多くございますので、そのすべての問題をこの二年間で議論するということは、これは到底不可能だろうと思います。しかし、二十一世紀に向かって我が国社会が非常に大きく変動しているときに、やはりそれに司法としても迅速に対応していく必要があるということも間違いのないところだろうと思っております。そういうことから、この審議会の審議の期限を二年といたしまして、その二年内ででき得る限りの審議を尽くしていただいて、二十一世紀のあるべき司法の姿を示していただくということを考えたわけでございます。  したがいまして、審議会、発足いたしましたら、種々の御提言もございますので、そういうものを踏まえまして、また、この国会における審議経過等も参考にしつつ、審議会の委員方々において、どういう事項をどういう順番で審議をするということをまずは計画を立てていただいて、効率的でかつ集中した審議を尽くしていただいて、二年間で結論を出していただく。そのために事務局も最善の努力をすることと思いますし、法曹三者、法務省も含めまして、その審議の迅速化と充実のためにでき得る限りの協力をしていくということになろうかと思っております。  したがいまして、私どもとしては、その二年間で当然審議の結果の意見をいただける、こういうぐあいに考えております。
  189. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 そうはおっしゃるけれども、私どもは、一体どこまでやっていただけるのかな、ちょっと心配なのですね。そう期待しないと言ったらこれは大変失礼になるので、まだ審議会も構成されていないわけですから。恐らく有能な方々委員に任命をされて、審議が始まれば相当な成果が上がることを期待はしますけれども、さて、二年でどうかなというような不安感が非常にあるのですね。  それで、恐らくこの司法制度の問題というのは、総論、各論を入れると本当にいろいろな問題があるし幅が広いと思うのですよ。何しろ、扱う事件だって多岐にわたっているわけですから。民事、刑事、行政、破産から身分関係から、言ってみれば社会の縮図。社会の隅々というか全般で起こる各種の問題が紛争となり、あるいは権利の侵害となって、最後は司法救済を求めてくるということになるわけですから、本当に幅広い。  例えば自民党の司法制度特別調査会の報告の中でも、検討すべき事項として挙げられている項目というのは極めて多岐にわたっているわけでしょう。さっきからお話のあるように、規制緩和などを前提にして、社会の変化に応じ、しかも国民に利用しやすいという観点からどうするんだというようなことでお考えになるにしても、具体的には事件の処理の問題、これは、実はこの委員会の議を経て民事訴訟法の大改革も行われたわけですけれども、裁判所も今、裁判のスピードアップあるいは的確な処理ということに非常に苦労されておられる。  そういうようなこともあるわけですけれども、そのほかに今度、法曹の質と量の強化、これは先ほどの総理大臣の御答弁の中にもあったわけだけれども、法曹をどうやっていくのか。法曹一元の問題、これも大きいですね。各論まで含めると大変だと思うのですよ、大学教育のことにまで触れているわけですから。本当に、これは二年でどれだけ十三人の委員方々に検討していただけるのかなと、心配でなりません、率直に言って。  それから、いろいろなところが出しております。日弁連からももちろんこの制度改革についての意見書が出ておりますし、それから経済団体からも出ているわけですね。それぞれの主眼の置き方が少し違うわけですけれどもね。  例えばこの自民党の報告の中で指摘されているのでは、最高裁判所裁判官の国民審査のあり方についてもというような項目がある。これは、私も何度かここでも取り上げたことがあるし、予算の分科会などでも取り上げたことがあるのですけれども、この最高裁判所の国民審査の方法などというのは、〇×式になっていないわけですからまことにわかりにくいし、大体、最高裁判所の裁判官そのものだって全く国民の皆さんにはわかりにくい。何を基準に審査をしたらいいかというのは、あの一片の公報だけだけれども、あんなものを見る有権者なんていないわけですね。衆議院の選挙と一緒に行われる。衆議院の選挙の方にばかり関心があるわけですから、全く形骸化しているわけです。  そんなことのあり方についてももっと検討する必要があると思うし、同時に、やめさせる方ではなくて、任命についても国民の参加ということがあっていいのではないだろうか。これは全く内閣の恣意と言ったら申しわけないけれども、恣意的な任命ということになっている。  しかし、戦後の一時期、片山内閣時代に、最高裁判所の任命諮問委員会というのがあって、これにある程度国民各層からの、それこそ有識者が入り、それから衆参の議長さんなどもメンバーになって任命の予備的な審査というかそういうことをやって、最高裁判所の裁判官の任命に資したということがあったわけですけれども、それも現在全然行われていない。こんなことでいいのか。  だから、最高裁判所の国民審査の前に、任命のあり方自体にももう少し国民の意見が加わるようなやり方というのを考えていく必要があるのではないかということなども、私はやはり今度のこの審議会でぜひ検討してもらいたい、そんなふうにも思っているわけです。  したがって、各方面からいろいろな御注文を出すと、それを整理するのも大変かもしれませんけれども、やはり整理していただいて、ぜひこういうことを審議会で審議してもらいたいというようなことを要望する何か手段も考えていただけないものかな、そんなことを思っているわけです。そうでないと、委員そのものは確かに各方面から選ばれることにはなるだろうけれども、しかし実際には、また国民との距離がこの審議会に置かれることになってしまうのではないだろうか、こういう心配があります。  それからまたもう一つ、これはオリックスの社長の宮内さんなどが言っておられることですけれども、裁判官のあり方というか裁判官に対する不服などということが、たまたまいろいろなところで指摘をされておられますね。例えば、裁判官は経済を知らな過ぎるとか、あるいは余りにも裁判官が不自由に過ぎる。これは去年の二月段階で、ある新聞でのインタビューに答えられたものですけれども、   最近、若手の裁判官と自由に話をする機会があったのですが、これほど身分保障をされた人はいないはずなのに、休みの日にテニスをするぐらいの時間がほしいという話をするのにさえ、「発言は匿名でお願いします」と言うのです。それほど、あの裁判官はこんなことを言っているということが明らかになっては困る世界なのです。 ということを言っておられる。  これは寺西裁判官の例の政治的な言動といいますか、それは政治的かどうかというのは大変問題があるのだけれども、この委員会でもしばしば取り上げられて問題になった。事ほどさように、私は、裁判官は非常に不自由だというのはだれしも考えるところだろうと思うんですね。こんなことについても、裁判官の市民的自由と職務のあり方などということについての議論だって私はあってもいいと思うんです。  かつて、昭和四十年代に私が青年法律家協会の議長をやっているときに、裁判官の政治的な中立公平ということが盛んに言われる中で、裁判官は自分で中立公平であるだけではなくて、公正らしさを疑われてはならないということを当時の事務総長あるいは最高裁の長官が言った。そのことについても、非常に物議を醸して、いろいろな国民的な論議があったことは御承知のとおりだろうと思いますが、そういうことについても私はこの審議会などで議論があってもいいのじゃないか。  ちなみに、最近、この間もちょっと申し上げましたけれども、「日独裁判官物語」という映画ができました。五月一日から一般公開されるそうですので、ぜひこれは法務大臣にも、最高裁長官初め皆さんにも見ていただきたいと思います。  聞くところによると、最高裁は、これの取材の要請に当たっては非常に非協力的だったと聞いております。ドイツの裁判所は非常に協力的で、それこそ向こうの最高裁の長官から何からが、お酒を飲んで一緒に話すようなことまでやってくれた。非常にフランクだったということを言っていますね。それからまた、市民的な活動の自由などについても、向こうは全く問題にならなかった。寺西裁判官の例を向こうで話したら、もう噴飯物だということになったということです。そのぐらい違う。  そんなことを含めて、私は、裁判官の人間性というか、あり方というか、自由というか、そういうことの議論だってあってもいいと思うのです。仕事と人間的な自由とはやはり区別されるべきだと思いますけれども、どうも見ていると、裁判官は不自由だというのはもう一般的なことであります。  そんなことを含めての、もっと幅広い論議が審議会で行われることを私としても期待しているし、それについて裁判所、法務省、どうか協力体制をぜひ整えていただいて、場合によったら、現場の裁判官の話を聞きたいなどというときには、あらかじめ準備をしたというようなことでなくて、現場の裁判官がぱっと審議会に行って自由に話す、そのことについてとやかく言わないというような保障もきちんとしていただいて、やっていただきたいということをお願いしたいと思います。  以上申し上げて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
  190. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、坂上富男君。
  191. 坂上富男

    ○坂上委員 坂上でございます。  私は、この審議会法案については質問する予定はなかったのでございますが、急遽、少しまとめのために質問をさせていただくことに相なりました。  私は、本来、司法の任務というのは何だろうかといつも考えておるわけでございます。私は、やはり司法の任務というのは、社会正義の実現、それから人権の保護、擁護、これなんだろうと思っておるわけでございます。  そこで、実は私は法務委員会に、私なんかが一番古いようになったんでしょうか、十数年間、行くところがなくてというわけでもないんでございますが、一番この法務委員会が長いのであります。  では、この十数年間にわたりまして法務委員会で議論になったのは何だろうかと考えてみますると、陪審やれ、参審やれ、それから法律扶助をひとつ増額していただきたい、そして、最近に至りましては、いわゆる被疑者の国選弁護も、そしてまた少年に対する弁護も、それからまた留置施設法についても、もう警察の留置場に置かないでちゃんと留置所でもって留置せよ。あらゆることがこの委員会で議論をされたわけであります。裁判官をふやせ、それから検察官をふやせ、職員をふやせ、それから裁判所の速記官はそのまま残せ、いろいろな話があったわけでございます。  これがいずれも思うように実現しないのは何かといえば、予算なんですね。大蔵省が財布の口を締めて開いてくれないからこうなっているんではなかろうか、私はこう思っておるわけです。  でありまするから、今、多分、司法制度改革審議会で審議されるのは、あるいはまた新聞報道などに載っておる、あるいはまた自民党さんの案、あるいはまた各団体の審議会に対する審議対象事項、全部、どれを見ても、もう十数年間言い古されまして実現できないことだけなんですね。  これは一体何であるかといいますと、政府の怠慢なんですね。政府がきちっとやる気になって、本当に司法のあり方、正義を守る、国民の人権を守るという立場にあれば、こういう審議会などというのはしなくても、本来法務委員会発言によって、このものがいろいろと意見を聴取されながらやれなければならない問題なんではなかろうかと私は思っているわけであります。  だから、私はこの法案が出てきたとき少し首をかしげました。我が党の中でも賛成、反対の意見がありました。しかも、これらはいずれも、司法をどうやって守っていくか、司法をどうやって発展充実させるかという、先生方の賛否が分かれて激しい議論をしていたものでございます。しかし、私は、いささかそんなような観点から見て、どうもこれは司法権みずからが放棄したんじゃないのか、そして、これを審議会に白紙委任したんじゃなかろうか、こんなようなことも実は思っておるわけであります。  そこでまた、各団体の意見を聞いてみますると、この審議会ができれば我々が要望していることがいかにも実現できそうだ、こういうようなことから賛成、賛成、賛成。そして、我が団体はこのような要望をいたします、我が団体はこのような要望をいたしますというようなことがずっと出てきているわけですね。こういうのは、本当に私は、先生方の御意見を聞いているほとんどすべてがこの中に集約されている、こう実は思っておるわけでございまして、そんな感想を持ってはおります。  しかし、これをつくることによって司法がマイナスになるということだったら絶対にこれは許されない。しかし、最悪の場合でもマイナスにはならぬという最小限度の保証があればこそ、白紙委任でなくして、内閣総理大臣が先頭になって本当に今度こそ本物の司法制度を実現するということの期待を込めて、私たちはこれについて少し意見を申し上げ、質問をしなければならない、こんなふうに実は思っておるわけでございます。  そこで、まず、国民の裁判所に対する不信の原因の中の一つに、再審制度というのがあります。これは今、先生方、資料を見ていただくとおわかりのとおり、結構再審というのはあるんですね。どうですか、再審の実情はどんなような状況であるか、前回も質問したんでございますが、もう一度御答弁いただけますか。
  192. 白木勇

    ○白木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  直近の五年間の数字で申し上げますと、再審請求のあった事件の総数は三百八十五件でございます。再審開始決定のあった事件数は四十件でございます。それから、再審で無罪になった事件数は四十一件となっております。
  193. 坂上富男

    ○坂上委員 なぜ私は再審問題をこの審議会法案に取り上げるかといいますと、やはりこの問題は、本当に、誤判があるかどうか、誤判があったとしたらこれが救済されておるかどうかということが司法に対する信頼の最も大きな問題点の一つだろうと思っているからなんでございます。  そこで、今お話がありましたとおり、再審の申し立てがあっても、再審開始になるというのはなかなか少のうございます。しかも、開始をする以上は再審無罪というようなことの裁判所の心証がなければ、これはなかなか再審開始は行われておらないなというのがどうも状況のようでございます。  これはどうなっておりましょうか。警察が捜査をいたしまして、証拠目録を書いて、そしてその証拠目録を検察庁に送致いたします。今これはどう言っているんでしょうか。証拠目録表と言っているんですか、送致書と言っているんでしょうか。こういうのは一体何と言っておるのか。そしてまた、このことについて、再審申し立てしている人たちは、これはぜひとも提出してほしい、見せてほしい、こう言っていると思うのでございますが、この点、法務省の方、どんな見解でございますか。
  194. 松尾邦弘

    松尾政府委員 先生のお尋ねは、証拠金品総目録というものに係ることだろうと思います。  証拠金品総目録には、品名のほかに、提出者の住所だとか氏名だとかいろいろなことが記載されております。これを公開いたしますと、関係者プライバシー等を害するほか、将来の捜査に対する協力が得られなくなるというおそれもございます。  そのようなことで、この証拠金品総目録を公開するかどうかという問題は確かにございますが、個々の事案ごとに、その保管者が、これを公開する必要性に留意しつつ、これを公開することによって関係者プライバシー等の保護や将来の捜査における協力の確保等に与える影響、これらを踏まえまして、これを公開することが相当と認められるかどうかを個別に判断して対処するということになろうかと思います。
  195. 坂上富男

    ○坂上委員 最高裁にお聞きをいたしますが、最高裁判所はこの問題について、裁判所の方で提出したらいかがですかという勧告があれば検察の方はこれを提出しているようでございますが、これはいかがですか。
  196. 白木勇

    ○白木最高裁判所長官代理者 捜査記録の開示につきましては、公判におきましてはもちろんのこと、再審請求事件におきましても検察、弁護の両当事者間で鋭く対立する場合がございます。その場合、一般論として申し上げますと、開示を求められた証拠が存在し、その開示をさせることが必要かつ相当であると裁判所が判断した場合には、証拠の開示を勧告するなり命ずるなりの措置がとられることは委員御承知のとおりでございます。  そういった裁判所の勧告などの措置がなくても、検察官と弁護人の話し合いでそういったものが出されるということが望ましいかどうかという問題でございますが、結局のところ、私ども、個々具体的な事件につきまして個別に判断されるべき問題ではないかというふうに考えております。
  197. 坂上富男

    ○坂上委員 勧告があった場合、提出はどうなっていますか。
  198. 白木勇

    ○白木最高裁判所長官代理者 私どもの承知いたしております事例で、勧告した場合には提出されていることが多いようでございます。
  199. 坂上富男

    ○坂上委員 余り時間をとりたくないのですが。  お話のように、裁判官がいわゆる証拠目録、これを提出してください、提出したらいかがですかと勧告なさいましたら、検察はこれを提出するわけです。勧告がなされないときなぜ提出しないか。これはいわゆる秘密にかかわる部分もあって、あるいはほかの供述人に迷惑が及ぶおそれもあるんじゃなかろうか、こう言っている。しかし、裁判所の勧告があれば提出するというんですね。でありますから、私は、検察の言い分というのはちょっと当たらないんじゃなかろうか。  これは、本当にこれだけの証拠でもって捜査をし、これだけの証拠を収集して、裁判が成って有罪になったんですよというようなことを示して、あるいはその証拠の中に無実の証拠が発見されるかもしれません。  そんなようなことから、今検察の御答弁を聞きますと、いわゆる捜査に影響がある、捜査の秘密である、あるいは供述人に迷惑がかかる、そんなようなことになるから公開はしませんと言っておりますけれども、今裁判所の判例を見てみますると、勧告があれば出しているわけでございますから。この違いは、勧告あるなしにかかわらず、いわゆる公文書でございまするし、情報公開もこのごろ積極的になっておるわけでございまするから、これは要望があったらきちっと出していただかなければいかない問題なんだろうと私は思っております。  これは本当に納得のいく裁判、殊におれは冤罪なんだという人たちに対する、どうぞ全部見てください、そしてその中から真実は何だということを発見するというのがやはり裁判に対する信頼だろう、私は実はこう思っておるわけでございます。  そこで、今おっしゃったような問題点を踏まえながら、検察からは、そういう要求があったらぜひ提出されるよう協力もしていただきたいし、どうしても法律上無理であるとするならば、私は、この審議会の中で、果たして再審のあり方はこれでいいのかどうかということはやはり議論されてしかるべき重要な問題なんじゃなかろうか、こう実は指摘をしたいのでございますが、この点について法務当局、いかがですか。
  200. 松尾邦弘

    松尾政府委員 刑事の裁判全般におきまして、真実の発見といいますか、これが非常に重要な事項であることは我々も承知しております。  先ほどの証拠金品総目録も含めまして、こういったいわゆる不提出証拠あるいは不提出資料の開示の問題というのは、現実には弁護人と検察官の間でその提出をめぐっていろいろな意見が交換されるということでございますので、我々としても、弁護人の意見を聞き、あるいは御要求のありました不提出記録の内容等を精査いたしまして、真実発見ということについて必要があるものは提出しております。また、その点についての御意見を数次にわたって伺う場合もございまして、そこのところは慎重に対応しているつもりでございます。また、今後ともその姿勢は堅持していきたいと思っております。
  201. 坂上富男

    ○坂上委員 今のことを私は指摘だけしておきます。また、具体的な事件も要望もあることはあるのでございますが、私が申し上げなくとも問題になっておることも御存じだろうと思いますので、さらに再検討もいただきたいし、どうしても法律上不可能であるとかあるいは捜査上不可能であるとするならば、やはり再審問題に対する情報公開の問題といたしまして、これは審議会の中で議論されてしかるべき問題でなかろうかということだけ指摘をまずしておきたいと思っておるわけでございます。  さて、修正案についての御質問をさせてもらいたいと思います。  参考人の御意見を聞きますと、いずれの参考人も、司法制度改革の内容として、法曹一元制度の導入、裁判所の人的、物的整備の拡充強化、国民の司法制度への関与について調査審議する必要があると述べられておるわけでございます。本修正案では、審議会の職務として、上記三点の調査審議をすべきであるという趣旨が織り込まれているんだろうと思うのでございますが、この点についてはどういうふうに理解をしたらいいのでございましょうか。  あわせまして、私らの方に回っておりまするところの附帯決議について、このことも相当明確に書かれておりますが、この点はどのように理解をしたらよろしゅうございますか。
  202. 山本幸三

    山本(幸)委員 御指摘の修正案でございますが、本修正案におきましては、司法制度改革審議会において調査審議されるべき主要な事項につきまして、法律用語上の検討を踏まえて、「国民がより利用しやすい司法制度の実現、国民の司法制度への関与、法曹の在り方とその機能の充実強化」を例示することによりまして明らかとしたものでございます。  その具体的中身といたしましては、委員ただいま御指摘の、法曹一元制度の導入、裁判所の人的、物的整備の拡充強化等が当然に含まれるものと考えております。すなわち、法曹一元制度の導入につきましては「法曹の在り方」に、裁判所の人的、物的な拡充強化につきましては「国民がより利用しやすい司法制度の実現」及び「その機能の充実強化」に含まれるものでございまして、また司法制度への関与につきましては法文上の文言として明示されているというところでございます。  そういう意味で、委員の御指摘の問題意識は、十分審議会の論議に反映されるものと期待しているところでございます。
  203. 坂上富男

    ○坂上委員 ありがとうございました。これは、私の方は了承をいたします。  それから今度、事務局の構成でございますが、事務局の構成それから委員会に対する議題の原案、これはどんなふうになるのか、ひとつ政府の方で御答弁ください。
  204. 房村精一

    ○房村政府委員 審議会に置かれる事務局でございますが、この役割は、審議会の審議のための資料調査、収集、整理、分析、それから審議結果の整理、こういうような職務を行う。それによりまして、審議会において委員による十分な審議が行われるように補佐的な役割を果たすということでございます。  したがいまして、審議会での議題であるとかあるいは審議会のそういう内容につきまして、事務局が調査審議の方向づけをしたりリードしたりということはあってはならないことと考えております。
  205. 坂上富男

    ○坂上委員 大体わかりました。  せっかくできる審議会でございます。まさにこの審議会が二十一世紀の司法の充実発展のための役割を演ずることができるように、私も期待はいたしておるわけでございます。ただ単に、今まで十数年来あるいは二十年来言われたことをなかなか実現できないものだから、審議会でまた審議をさせて答申をさせて、これからやりますやりますというようなことでお題目倒れにならないように、本当に、内閣総理大臣せっかく来ているんだから、責任を持ってこれについてはしていただかなければならない問題だと思っておるわけであります。  私たちはもう法務委員会をやらなくともいいぐらい、ひとつ審議会がきちっと答申をなさる、これについて政府が責任を持って実現をするということでなければならないと思っておるわけでございますので、ぜひ期待をしながら、私の質問を終わります。  以上でございます。
  206. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、上田勇君。
  207. 上田勇

    上田(勇)委員 公明党・改革クラブ上田でございます。  きょうは、この審議に先立ちまして小渕総理大臣にも御出席をいただきました。司法改革に対する総理の基本的な考え方や審議会の人選、運営などについていろいろとお考えを承ったところでございます。  引き続き法務大臣に質問させていただきます。  最初、非常にそもそもの話で恐縮なんですが、この法案によるところの主任の大臣が、先ほど御出席いただきました小渕総理大臣であられる。審議会が置かれるのは内閣であります。にもかかわらず、法務大臣が法案の審議を担当されるというふうになりました経緯及び理由につきまして、以前質疑でも出ておりますが、再度御説明をいただければというふうに思います。
  208. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 法律の定めるところによりまして、ある行政事務を主管する立場の国務大臣を、内閣法上主任の大臣と申しておるわけでございますが、司法制度改革審議会に関する事務は、その性質上、各大臣の分担管理には属せず、内閣の直接の分担管理に属すると認められる事務でございますため、主任の大臣の規定を置きまして、内閣法に言う主任の大臣を、内閣の首長の立場にある内閣総理大臣といたしております。  しかしながら、司法制度改革審議会設置法案につきましては、平成十一年二月五日の閣議決定の際、内閣総理大臣から、本法案は司法制度に関するものであるため、その国会対応につきましては法務大臣にお願いする、こういう趣旨の御指示がございました。したがいまして、法務大臣である私が、法案の審議に当たっての対応を担当しているのでございます。
  209. 上田勇

    上田(勇)委員 今、法案の審議に当たっての対応をされているというお話でございました。まさにそのとおりなんでしょうけれども、やはりこれは司法制度にかかわることであるので、最も関係の深い法務大臣を御指名したということなんだというふうに理解いたします。  法案の対応というと、きょうこの後採決が予定されておるんですが、ここで法務大臣の責任が終わってしまうというようなことでは、何か法案を通すときだけ法務大臣が担当されているというようなことになってしまいます。きょうも含めまして、これまで委員会でいろいろ審議されてきたこと、またこの後附帯決議も予定されているわけでございます。附帯決議に対するお答えは法務大臣の方にきょうはやっていただくことになるんだと思うんですが、それに対してきょうで責任は終わりということであってしまっては、何のためにそこでお答えをいただくのかということも出てきてしまいます。  ぜひとも、今回法案の審議を内閣の中であえて法務大臣が担当されたという趣旨を御理解いただきまして、審議会が設置された後、主任の大臣とはいっても、直接総理がそれについて関与していくということは、時間的にも、いろいろな職務関係上からいっても無理があると思います。そこはやはり、今回法案の審議について御指名を受けたということでありますので、この審議でいろいろ提起されたことであるとか、またこれから予定されております附帯決議に含まれているようなこと、そういったこともぜひ法務大臣関心と責任を持って今後とも担当していただきたいというふうに考えておりますけれども、大臣、いかがでございましょうか。
  210. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 御指摘の点につきましては、内閣の一員として、そのように努めてまいりたいと思います。
  211. 上田勇

    上田(勇)委員 内閣の一員ということで、当然のことなのかもしれませんが、たくさんおられる大臣の中から、この法案の審議についてはあえて法務大臣というふうに総理が御指名になったわけでございますので、この後についても、それはまだ総理の方から法務大臣にというふうに御指名がないから言えないのかもしれませんが、やはりこの審議を担当されたということは、この後のことについても責任を持っていただかなければいけない面があります。  ほかにもおられる大臣と同等という意味での関心と責任で内閣の一員ということではなくて、やはりこの司法改革ということについては法務大臣が最もふさわしいということで御指名を受けたわけでありますので、引き続きぜひ、内閣の中にあって、法務大臣が、他の大臣と同等ではなくて、やはりもっとより積極的な関心と責任を持っていただきたいというふうに思いますけれども、そういうことでよろしいんですね、内閣の一員という言い方なんですけれども。ひとつ確認をいただきたいと思います。
  212. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 法務省といたしましても、この司法制度改革審議会の審議に当たりましては、法務省の立場として十分協力してまいる考えでございます。
  213. 上田勇

    上田(勇)委員 もちろん、法務省の立場として関与していただくのはそうなんですが、私は、今回法務大臣がこの法案を担当されたというのは、各省庁にまたがることに最もふさわしいという立場に置かれたので、陣内大臣が、法務省の大臣ということではなくて、内閣を代表する立場で今回は担当されたというふうに理解しております。  そういう意味では、具体的に閣議とかで決められていないので、今お答えできないのかもしれませんが、その点は、多分これは小渕総理のお気持ちも、趣旨もそういうことであるというふうに私は思いますので、ぜひそういうつもりで今後ともかかわっていただきたいということを御要望させていただきます。同時に、やはりきょうこれから予定されている附帯決議についても、大臣が、その意を体してという決まり文句ではありますが、御答弁をいただくわけでございますので、それについては、ぜひ責任を持って今後取り運んでいただきたいというふうにお願い申し上げる次第でございます。  それで、この法案の審議につきましては、これまで二日間にわたりまして参考人の質疑も行いまして、学識経験者それから裁判官、検察官、弁護士、それぞれの立場に立たれた方々、労働界や弁理士会など、非常に幅広い方々からいろいろな御意見をいただきました。  それで、そうした御意見をお聞きいたしまして、共通していたことは、現在の司法制度が必ずしも国民のニーズや期待に十分にはこたえられていない、したがって、司法改革が必要なんだという点はほぼ共通した御意見であったというふうに私は思います。  ところが、では具体的にどこが問題なのかという話になりますと、結構幅広い意見がございましたし、また、司法改革の方向ということになりますと、それぞれ参考人の先生方の立場や経験、考え方などで、非常に多様な意見が示されました。これは、今国民のライフスタイルや価値観といったようなものが多様化している中で、各界、いろいろな立場、経験の方々から異なった意見が出てくるのは当然のことなんだというふうに思いますが、こうした意見をこの審議会では集約をしていかなければいけない、非常に重要かつ難しい議論になってくるんではないかというふうに思います。  そういう意味で、この審議会、先ほどから、この委員の人選につきましては各先生方からも御質問があったんですが、これまで御答弁いただいているのは、審議会は国民の幅広い意見を反映できるような構成にしなきゃいけない。これはもう当然賛成でございますが、同時に、この司法制度改革審議会について言っているわけではございませんけれども、どうも、とかく審議会というようなものが、結構、その委員として各界を代表するいわゆる名士みたいな方が名前を連ねて、実質的には行政のつくった案を後追い承認する箔づけみたいな機関になっているというような批判もございます。  それで済む審議会というのもあるのかもしれませんが、私は、この司法制度改革審議会というのは、これはすべての国民の権利に関するものでもありますし、やはり実質的な審議が求められるのではないかというふうに思います。という意味で、とかくありがちないわゆる関係団体の代表の方だとか関係する学会の大御所の方やマスコミ受けのする方の名前をずらずらと並べるのではなくて、有名だとかそういったことにとらわれるのではなくて、実質的な審議をしてもらえる委員構成にしていただかなければいけないというふうに思うわけでございます。  そういう意味で、先ほどから、この件について大臣の方からも何回か御答弁はいただいているんですが、非常に難しい問題なのかもしれませんけれども、もう少し、先ほどからいただいている答弁に加えて、今私申し上げましたようなことについてどのように考えられているのか、大臣の御見解を伺いたいというふうに思います。
  214. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 このたび設置をお願いしております司法制度改革審議会は、国民的見地から二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議することを目的とするものでございますから、司法制度全般について、このような視点のもとに調査審議するのにふさわしい有識者を国民の中から選任する必要があると考えますし、その場合には、委員の先生が、御指摘なさったような観点、考え方が非常に大事じゃなかろうかと思っております。  委員御指摘のように、審議対象が司法に係る事項になりますので、当然司法実務の経験者も委員として選任していく必要があろうかと思っております。
  215. 上田勇

    上田(勇)委員 ぜひ、私が今申し上げたことも御考慮をいただきまして、選任に当たっていただきたいというふうに思います。  次に、この委員の任命や法律の施行等でございますが、今、もう既に関係方面には一定の考え方も示されているというようなお話も聞きますが、これは、委員が任命されて初めてこの審議会が動くということでございますので、この委員の任命や法律の施行等、今後の予定はどのように考えられているのか、お聞かせいただければというふうに思います。
  216. 房村精一

    ○房村政府委員 この法律を成立させていただいた後の予定でございますが、まず、委員の任命についてでございます。  この法律の附則の第一項で、「この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第四条第一項中両議院の同意を得ることに関する部分は、公布の日から施行する。」こういう規定になっております。したがいまして、成立をし、公布をされますと、直ちに同意人事の手続が開始できる状況になります。そういう意味で、できるだけ早く院の同意を得て任命をするという作業を開始する必要があろうかと思っております。  それから、施行につきましては、今読みましたように、三月を超えない範囲内で政令で定めるということになりますので、その施行日を定める政令の準備が必要となります。  また、審議会に置かれる事務局の構成等につきましても、これは政令で定めるということになりますので、その事務局の構成等を定める政令の準備も必要となります。  いずれにいたしましても、二十一世紀のあるべき司法の姿をこの審議会で御議論いただくわけでありますので、成立をさせていただいた場合には、でき得る限り早くこの委員会をスタートして、できるだけ充実した審議を早くしていただくという必要があろうかと思っておりますので、成立した後のそういう手続については、できるだけ急いでやりたいと考えております。
  217. 上田勇

    上田(勇)委員 次に、事務局の構成についてもお伺いしようと思ったんですが、これはもう既に各委員の方から質問が出ておりますので、そうした各委員から出ました意見等も踏まえまして、ぜひ適切に対処していただきたい、このことを御要望させていただきたいというふうに思います。  この司法改革については、既に各方面からさまざまな提言あるいは意見が出ております。日本弁護士連合会もそうでありますし、経済関係団体からも出ております。弁理士会や司法書士会などの関連団体からも出ておりますし、学識経験者の方々もいろいろな場で御意見を発表しているところでございます。また、法務省それから裁判所においても、先ほどから、いろいろな検討あるいはその準備は進めているというような答弁でございます。  その中で、この司法改革の中には、おおむねこうしたいろいろな提言や意見に共通しているものもたくさんあるんじゃないかというふうに思いますし、国民のコンセンサスがある程度まとまっているというような事項も含まれております。また、こうした中には、決めれば直ちに実施に移せるものもあるし、一定期間、計画的、段階的に環境整備をしつつ進めていかなければならないというような事項も多いというふうに思います。  そういう意味で、今回この審議会を設置しますと、調査審議をしまして、その結果に基づいて意見がまとまるまでには二年間かかるということでございます。その間審議会の結論を待つということにもなりかねないんでありますが、特に、この司法制度改革の中には予算措置を伴うようなものもございますので、この審議会ができることによって、かえって財政当局等が、いや、審議会の結論が出るまでちょっと待とうじゃないかというようなことになるのじゃないかというおそれもあります。  結果として、すぐにでも手がけられるものまで二年間先送りしてしまうというようなことがあってはならないというふうに思いますけれども、そうしたようなことにはならないということをぜひ答弁いただければというふうに思います。
  218. 房村精一

    ○房村政府委員 委員御指摘のように、さまざまな司法の問題がこの司法改革審議会で議論されることになろうかと思います。中には、現在の司法にとって緊急に施策を講じなければならないというようなことで、審議会の二年間の審議を待ついとまもなく政府等において実施しなければならない事柄も当然あろうかと思います。  これは、審議会での審議事項の取り上げ方、あるいは審議の進め方ともかかわりますが、政府としても、この審議会で審議をしていただいた事項について、その結論を待ってこれを積極的に実現していくというのは当然でございますが、同時に、審議の状況を見ながら、迅速に、直ちに実施しなければならないような事柄につきましては、審議状況との関連を見つつ適宜適切にこれを実施するということで取り組んでいきたいと考えております。  したがいまして、二年間の審議があるからといって、その間必要な施策を引き延ばすというようなことのないように、でき得る限りの努力を今後も続けていくつもりでございます。
  219. 上田勇

    上田(勇)委員 先ほども申し上げましたが、私が一番懸念しているのは予算措置についてでございまして、結論が出る前に予算をつけるわけにはいかないというのはありがちなことではないのかなというふうに思います。  先ほどから、いろいろな先生方の質問の中でも、例えば司法予算の拡充であるとか、裁判官、検察官などの増員、司法施設の整備、こうしたものはほぼ各界の意見も共通していることでございますし、特に、そのほかにも、法律扶助制度など、国民の裁判を受ける権利として実質的に保障するという非常に重要な施策であって、これもまたかなり広範なコンセンサスができていることじゃないかというふうに思います。  先ほど、総理の方からも前向きなお話をいただいたところでございますので、こうした事柄については、審議会の議論の終結を待つことなく、直ちに実行の方向で進めていただきたいと思います。既に、これについてはかなり議論も煮詰まっているということでございますので、ぜひ、そこにつきまして、ちょっと繰り返しになりますが、大臣の方から御決意を述べていただきたいというふうに思います。
  220. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 司法の機能を充実強化し、国民に身近で利用しやすい司法制度を実現するために、具体的にいかなる施策をとるべきかにつきましては、利用者である国民各層の声を広く聞いていく必要があると考え、本法案を提出したところでありますが、早急に必要な施策につきましては、委員御指摘のように、審議会の審議状況等を踏まえつつ、適時適切に実施してまいりたいと思います。  御指摘の、司法の機能の質的、量的な拡充に関しまして、政府としても、そのために、予算や人員等の面でも最大限の配慮をしていかなければならないという気持ちを今新たにしておるところでございます。今後とも、適切に対応してまいりたいと思います。
  221. 上田勇

    上田(勇)委員 ぜひ、よろしくお願いいたします。  それで、今は審議会の結論が出るまでの期間のことをお話をさせていただきましたが、二年後には審議会の意見がまとめて発表されることになります。当然、審議会の意見については、法務省、あるいは裁判所も含めてでございますが、これは最大限に尊重して、実行に移していただけるものというふうに思います。  この委員会の審議の中で、かつての臨時司法制度調査会の意見書を見ても、必ずしもそれが十分に尊重されたのかどうかというような疑問も言われているところでございますし、法務省あるいは裁判所にとって都合のいいところ、あるいはやりやすいところだけを裁量でしては、つまみ食いみたいな形にしてはならないというふうに考えるわけでございます。  その意味で、審議会の意見については、これは法務省、裁判所それぞれにお伺いをいたしますが、最大限に尊重していただけるというふうに考えておりますが、そういうことでよろしいでしょうか。
  222. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 司法制度改革審議会の意見を十分尊重し、政府の施策に最大限反映させていく必要があると考えておりまして、速やかに具体的施策を策定してまいりたいと思っております。
  223. 浜野惺

    ○浜野最高裁判所長官代理者 司法制度改革審議会の審議の具体的な項目、審議の方法、報告や意見の集約のあり方につきましては、今後審議会において検討されるべきもの、こう承知しておりまして、裁判所といたしましても、現段階で、御指摘の点について具体的なコメントは差し控えたいと存じます。  ただ、一般論として申しますと、司法制度改革審議会の意見は内閣に述べられることとされておりますが、国民を代表される有識者の委員方々の御意見を集約したものとなって、立法的な措置、運用面における改善等、さまざまな必要な方策を講じていくことになるものと思われます。  裁判所といたしましては、その内容を十分に踏まえさせていただきまして、司法の立場から、よりよい司法の実現に向けて、さらに努力してまいりたいと考えております。
  224. 上田勇

    上田(勇)委員 審議会の意見を十分尊重していただいて、それを実施していただくためには、私は、二年後に審議会の意見が出たら、内閣として、直ちにその内容を実行に移すためのスケジュールとか予算措置を含めた行動計画、アクションプログラムを作成していただきたいというふうに考えるわけでございます。  これは、先日、新聞でも、中坊公平氏も、司法改革十カ年計画というような名前を使っておっしゃっていたものでありますけれども、もちろん、意見に示される内容というのが、即刻できるものもございましょうし、これは、計画的、段階的にやらなければいけないものもあります。あるいは、前提となる環境を整えた上でないと実行に移せないというようなものがあるのではないかというふうに思いますし、それぞれに、やはり人員や予算が必要になってくる。それはやはりしっかりと確保していかなければいけないわけでございます。  そういう意味で、審議会の意見を十分に尊重することをその段階で確認するためにも、意見が出たら、直ちに内閣として行動計画を策定していただきまして、必要な予算、人員等も確保していかないと、こういうような形をとっていかないと、やはり審議会の意見を尊重するとはいっても形ばかりになってしまうのではないかという危惧がございますので、ぜひ、そういうような行動計画を策定していただくようにしていただきたいと思いますが、その点について、お考えはいかがでしょうか。
  225. 房村精一

    ○房村政府委員 先ほど法務大臣が述べましたとおり、司法制度改革審議会の意見を内閣として承った場合には、これを十分尊重しまして、できるだけ早期に実施していくということは当然のことと考えております。  委員の御指摘の、具体的なアクションプログラムを作成するというようなことも含めまして、その具体的な実施の方法をこれから検討していきたいと考えております。
  226. 上田勇

    上田(勇)委員 次に、ちょっとこれは法案の細かい点で申しわけないのですが、法案の第九条で、「政令で定める。」というのがございます。「この法律に定めるもののほか、審議会に関し必要な事項は、政令で定める。」ということになっております。非常に簡単な法律で、ほとんどこれで尽くされているとは思うのですが、ほかにどのようなことを政令で規定しようと想定されているのか、教えていただきたいというふうに思います。
  227. 房村精一

    ○房村政府委員 例えば、この法律の条文で申しますと、事務局についての第七条の第二項が、「事務局に、事務局長のほか、所要の職員を置く。」そこまでしか法律では定めておりませんので、例えば、所要の職員としてどのような者を置くかというようなことは、この政令に委任されているということになろうかと思っています。そういう事務局構成等に関することが、この政令の主要な事項になるのではないかと考えております。
  228. 上田勇

    上田(勇)委員 ということは、今のところ想定されるのは、そういう極めて技術的な、事務局の構成であるとか、そういうような事柄であるというふうに理解してよろしいのですね。  それで、先ほども、今回の審議の中で、いろいろと参考人の方々から御意見を伺ったということは述べさせていただきましたが、参考人の御意見の中に、何人かの方々が、裁判官のキャリアシステム、それから最高裁を頂点とする管理体制が、裁判官の自由な考え方を抑圧し、さまざまな市民生活や活動から隔離させてしまって、裁判所を市民から離れたものにしてしまっているというような意見が数人の方から述べられました。  裁判官を経験されてきた参考人の方からは、そうした見方は誤解であって、裁判官は実に自由に発言、行動しているというような言い方も一方ではございました。しかし、裁判官を経験されてきた方がこういうふうにおっしゃっていて、それの評価、内容というのはそれぞれの立場でいろいろあるんだと思うのですが、私は、問題なのは、多くの国民がこの司法の現状について、これは結構詳しい有識者も含めて、裁判所に対してこういう見方を持っているというのは、やはり司法に対する国民の信頼という意味では、そういうふうに見られていること自体が適切に機能していないのではないかというふうにも思うわけでございます。  司法に対する国民の信頼と期待、これを実現していただくために、こうした見方を多くの国民が持っているという現状、これについてどうお考えなのか、またそうしたことが事実なのかどうか。多分、裁判所の方は事実でないというふうにおっしゃるのだと思うのですが、ただ、こういう見方をされているということについて、やはり改善していかなければいけないというふうに思うのですけれども、それについて裁判所の方から御意見がありましたらお願いいたします。
  229. 金築誠志

    金築最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  裁判官のキャリアシステムは、通常他の職業等を経験せずに裁判官に任官いたしますので、市民感覚に乏しいとか世情に疎い面があるというふうな指摘があるということは承知しております。もっとも、これはキャリアシステムという制度そのものについての一般的なマイナス面という形で指摘することが多いのじゃないかと思いまして、現実の裁判官一般がなべてそうである、世情に乏しいとか、そういうことではないと私は思っております。  キャリアシステムにつきましては、我が国を初めとして、伝統的にこの制度がとられている国は少なくないわけでございます。裁判官の中立公平さの確保とか、裁判官としての技量の錬磨とか廉潔性の保持とか、全国に一定水準の裁判官を配置できることとか、特に弁護士偏在地域でも裁判官を配置できるというふうなメリットも指摘されているところであるわけでございます。  ただ、キャリアシステムにつきましては、今申し上げましたような指摘もありますので、若い裁判官を民間企業において研修させたり、海外留学に派遣したり、そのほか、法律問題に限定しないでいろいろな形の研修を行っているところでございます。こういう点については今後とも充実していきたいと思っております。  それから、最高裁による管理体制が裁判官を市民感覚から乖離させているのじゃないか、こういうふうな指摘でございますけれども、この点は、そういうことはないのじゃないかというふうに私どもは考えております。  確かに裁判官は、中立公正な立場あるいは廉潔性ということについて疑いを抱かれないように、日常生活の場面においても世間一般の誤解を招くような行為は避けるようにしなければならない、そういう厳しい面はございますけれども、そういう職業上の制約は別にいたしますと、世間一般の人とそう変わった生活を営んでいるわけではない。管理統制の結果、裁判官が世間と隔絶した生活を送っているとかほかの社会の人との交際を非常に控えているんだというふうに言う方もあるわけでございますが、しかし、例えば学校時代からの友人、これはいろいろなところへ進んだ方がいるわけであります。私などもそういう友人とずっとつき合っておりますけれども、これは多かれ少なかれ皆さんがそうだと思います。  それから、最高裁の管理統制として、裁判官の人事異動などが関係しているんだというふうな指摘をする向きもあるわけでございますけれども、これも、裁判官の人事異動というのは、全国の裁判所にそれぞれのポストにふさわしい経験、力量の裁判官を配置するという必要から、その趣旨にのっとって行っているわけでございまして、言われるところの裁判官の管理統制の手段にしているとか、そういうふうなことはしておりませんし、するつもりもないわけでございます。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
  230. 上田勇

    上田(勇)委員 いろいろな見方があるんだと思うのですけれども、ただ、今回いろいろお話を伺った参考人の方々の御意見、この参考人の方はそれぞれ有識者の方々でありますので、単にイメージでおっしゃっているだけではない。そういった方々の意見の中ですらそういう問題の指摘があったということは、これは事実であるかどうかは別にいたしまして、先ほど中立公平に対する疑問を抱かれてはならないということがありましたけれども、それを余りにも気にする余り、逆の方からの誤解を受けているのではないかという気もいたします。ぜひとも、そこは今後とも改善方に努めていただきたいというふうに要望するものでございます。  それで、もう時間もないので、最後、実は法案とは関係ないことなんですが、先日、新聞報道によりますと、倒産法制について、法制審議会で、現行の法制を見直して新再建型の倒産手続の整備について議論を開始したというふうに報道されておりました。報道の範囲で、内容については若干私なりに意見もございますけれども、いずれにしましても、産業、経済の今の現状の中で、そういうことについて議論が行われるというのは非常に意義のあることであるというふうには思います。  内容については今後検討しなければならないというふうに思いますけれども、今後、これのスケジュールについては法務省としてはどのようにお考えなのか、最後にお伺いをいたしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
  231. 細川清

    細川政府委員 最近の企業の倒産件数の増加を見ますと、そういう経済情勢を見ますと、新しい再建型の倒産法制の整備が急務であるということは委員御指摘のとおりだと考えます。  法務省では平成八年十月から、倒産法制全体、すなわち、破産法、会社更生法、和議法、商法中の会社整理それから特別清算、全体について見直し作業を行っているわけですが、特に新しい再建型の手続につきましては緊急の整備が必要であるということで、昨年の夏に方針を変更いたしまして、この手続についてだけ他と切り離して早急に整備いたしたいという考えで作業を進めております。  したがいまして、現在、法制審議会の倒産法部会ではほぼ毎週一回部会を開いていただきまして、この夏の終わりごろまでには何とかおまとめいただいて、私どもといたしましては、その後に開かれる最初の国会に御提案申し上げたいというふうに考えておるわけでございます。
  232. 上田勇

    上田(勇)委員 以上で終わります。
  233. 橘康太郎

    ○橘委員長代理 安倍基雄君。
  234. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 さっきの午後の総理への質問に関連しまして、私は、三十七年の例の調査会ですか、四人の学識経験者の名前を調べてみたのですが、会長が我妻さんで、あと今里廣記、阪田泰二、鈴木竹雄、それぞれ専門家というか、今里さんは財界の代表、阪田さんは官僚のOBでしょうが、そういう人間を選んでいるわけですね。  何も高名な学者が必ずしもすべていいというわけじゃないですけれども。午後の総理の質問で出てきたときの、素人的な人は非常に発想はいいわけですけれども、それをまた十分吟味しなくちゃいけないわけですよ。  私は、総理にちょっとお話しした、経済戦略会議ですか、ああいったことでもいいけれども、いわゆる制度というものは、長い間本当に基本的な問題になるわけですから、これはやはり、全くそういったことに対して知識が十分じゃない人と専門家というのは、ミックスが大切なんですよ。審議会というものが思いつきであっては困るわけですね。その点、私は、人選なんかは内閣がするのでございましょうけれども、法務大臣も十分その辺を意識して、人選については進言してもらいたいと思うんですよ。  私は、さっき言ったように、最近の傾向として、どうも、ジャーナリズムに乗っているような人、あるいは各界の代表というようなことばかりを気にして、国民のためとおっしゃるけれども、結局、一番問題は、司法は公正さが大事なんですね。公正さ、迅速さ、その二つが大事なんであって、国民の目から見たといっても、基本的には公正が一番大事なんですよ。  それで、私は、人選につきまして、法務大臣のお考えをお聞きしたいと思います。これは、人選が内閣とはいうても、結局、司法の代弁者というのは法務大臣ですからね。その点、お考えを承りたいと思います。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
  235. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 司法制度改革審議会は、国民的見地から、二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議することを目的としておるということは、これまで申し上げてきたとおりでございます。  したがいまして、司法制度全般について、このような視点のもとに調査審議するのにふさわしい有識者を国民各層から選任する必要があると考えておりますが、審議を充実したものとするために、司法を利用する立場の方々だけではなく、司法に関して、今議員御指摘のように、深い知識と経験を有している司法関係者法律学者等からもふさわしい有識者を選ばせていただくことになる必要があると私は考えております。
  236. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私が総理に質問したときに、かつての調査会が学識者四人で、あとは国会議員といわば法曹の代表というような、構成としては、今考えられているのと大分違っている考えだったんですね。あれは何も、問題が限られたという議論もありますけれども、法曹一元化の問題を論じたり、いろいろなことも論じています。むしろ、二十一世紀のための基本的な政策とすれば、かつての調査会よりもっと重たい審議会なわけですよ。その点を十分踏まえて考えていただきたいと思います。  それから私は、総理に、法制審議会のというか、非常に審議が遅くて議員立法が続々とあらわれているということについて、いろいろな議員立法の中で、これは当然閣法にすべきだ、本来政府が自信を持って提出すべきものなんだよ、議員立法でどんどんやられても構わぬのかねと。そうすると、法制審議会を通過させるのに何年もかかる。私は、本当に、そういった意味で、この法制審議会というのは法務大臣のいわば諮問機関みたいなものですから、現在の法制審議会でいいと思っていらっしゃるのかどうか、その点について法務大臣の考え方を聞きたいと思います。
  237. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 法制審議会は、法務大臣の諮問に応じまして、国民生活に重大な影響を与えることとなる民事法、刑事法その他法制度の根幹をなしている基本法につきまして、政策の審議とともに、法案立案の準備を図る重要な審議機関でございます。法制審議会における審議が社会の動向に速やかに対応する必要がある、これはもう委員御指摘のとおりでございまして、審議会のあり方に関しましては、その見直しについて種々の指摘、提言がなされているところでございます。  そこで、法務省といたしましては、審議事項を必要に応じて限定するなどして審議の促進を図っておりますが、今後とも、中央省庁等改革基本法、行政改革会議最終報告や中央省庁等改革推進本部の中央省庁等改革に係る大綱などを踏まえまして、そのあり方について改善を進めてまいりたいと考えております。
  238. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 今、議員立法が本当に続々と出てくる。これはある意味からいえばいい傾向ではあるんですけれども、しかし、他面から、どうも議員立法の中には十分練っていないのも随分あることは事実です。  でありますから、私も昔役人でおったんですけれども、法制局で練りに練って出すのが閣法です。その中間くらいがというか、本当は審議会が、どんどん各界の意見を聞いて論議して、自信を持って閣法で出すという姿勢が必要なんです。それが余りにも、既得権の擁護か知らぬけれども、時間がかかって、大事なものがどんどんと議員立法で処理されてしまう。こういうことはある意味から、議員立法もそれだけのいわば十分練った立法ならばいいんですけれども、今の状況はどうも本当に私は心配でならない。  今大臣は、検討するとかしないとかはっきりしないんですけれども、その点もう少し、法制審議会がきちっと機能するように、人間をかえるなり、やり方を変えるなりしていただきたい。この点、明確な答弁をお聞きしたいと思います。
  239. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 ただいま御答弁申し上げましたように、この審議会のあり方については、国民の期待に沿うように、中央省庁等改革に係る大綱等を踏まえながら改善を図ってまいりたいと考えております。
  240. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 幾つも聞きたいことがあるんですけれども、私の場合、時間が余り長くないので、ちょっと一点、これはこういった機会に一度聞いてみたいと思ったんです。  最近、破綻金融機関について、例えばある企業に担保がないのに追い貸しした、これは背任だというような議論がよくなされておって、それは、担保がないのに追い貸しすれば背任には違いない。経済界が、今の裁判官が現実と遊離しているという議論は、例えば私がある融資をしておった、それが追加融資をあと少しすれば生き残るかもしれない、しかし担保が十分じゃないという場合には、本当にぎりぎりの経営判断をするんですよ。それでもって、担保が少ないのにかかわらず貸すという場合も間々あるわけです。  しかし、これは、形式的に言えば、返済が十分見込めない、担保がないのに貸した、背任だという話になる。どうも、現在の司法のやり方がそういう形式論理をやり過ぎている。じゃ、裁判官の皆さんがちゃんと経営できるんですか、そのときにどう判断するんですか。  私は、何もそういったかつてルーズな融資をした人間を擁護するつもりはないです。ただ、場合によっては、現実論として、本当にぎりぎり、その相手の会社がつぶれるか、債権が全く不良化しちゃうか、あるいは生き延びるか、そういう一種の経営判断もあるんです。そこを形式論理で背任だ、背任だと言ったら、みんな背任になっちゃうんです。それなら裁判官が経営できるのか。私は、いろいろ経済界から、裁判が現実と遊離しているという一つの考え方は、そういう形式論理で割り切るからだと思うんです。  私は、かつてこの場で言ったと思いますけれども、あるいはある本にも書いたんですけれども、総会屋の問題で、お金を渡した、お金を渡すのは悪いことに違いない。ところが、トップをひっくくっちゃうわけですね。そのために倒産したということもある。というのは、私はある言論人と話したことがあるんですけれども、山一の倒産は、総会屋のために一番のトップを勾留しちゃった、手がつけられなくなった、貸す方も、経営陣がかわっちゃって信用ならぬと。山一の倒産は、経営陣をひっくくったおかげだという議論をする言論人がいたわけです。  やはり経済というものは、裁判官は本当の経済はできないんですよ、率直に言って。私は、今のこの背任の問題も、形式論理でいけば背任だ。だけれども、そのときの状況においては別の判断もあるんだ。そういう経済の実態を知らない裁判官が余りにも司法を振り回す、それが経済界の非常な不満になっていると私は思います。  この点につきまして、時間もございませんからあれですけれども、法務大臣なり担当者なりの御意見を承りたいと思います。
  241. 松尾邦弘

    松尾政府委員 今先生の御指摘の、刑事事件についてでございますが、形式的な論理で画一的にというような形で物事を処理する、これは問題があるというのは大変重要な御指摘だろうと思います。  その点に関して二点申し上げますと、破綻金融機関に限って言いますと、検察官はこれまでも、破綻金融機関の新しい経営者といいましょうか、あるいはその新しい経営陣によって選任された内部調査委員会等がございます。そういった調査結果に基づきまして、そこからの告訴、告発を受けるということを基本的な姿勢ということでやっておるように承知しております。  その役職員、破綻した旧経営陣といいますか、刑法の規定する背任罪あるいは商法の規定する特別背任罪ということにつきましてその犯罪行為が認められる場合には、そうした告訴、告発を受けるなどした上で適切に捜査処理を行うということを基本にしているというふうに承知しております。  それから、二点目でございますが、この商法上の特別背任罪は、この立証あるいは証拠の収集が非常に困難な罪種に属します。そうしたことは、一つには、先生のおっしゃいましたような経営上の判断ということではなくて、刑事責任を追及する上でもなかなか難しい問題がございます。  そういった問題がございますので、検察官は、そういった罪種、特にそうした破綻金融機関にかかわるような事件については、特に慎重に広範な証拠を集めまして、法と証拠に基づいて、刑罰法令に触れるかどうか適正に判断して公訴権を行使し、裁判所の判断を仰いできている、またこの姿勢も堅持すべきものと思っております。  以上でございます。
  242. 安倍基雄

    ○安倍(基)委員 私は何もルーズなことをやった連中を弁護するつもりはないんですけれども、どうも、やはり司法とか警察の一番恐れられる部分なんです。それなりに、本当に慎重ないわば権力行使というか権限行使というのが大切なわけです。その面で、私は、一つの例として挙げました。  やはり裁判官というのは、今の話のように、確かに、後の経営者が前の経営者を告発する、そういう場合には恐らくそれだけの理由があるんだと思います。前の経営者がおかしなことをやったんだと思いますけれども、非常にそういったことの慎重さをもし欠けば、経済界が司法のためにやられちゃっているんだという話になるので、そこで司法に対するいわば不満というか、信頼がなくなるという要素もありますので、時間も短いですからこれでやめますけれども、これからの司法制度の改革につきましても、要するに、その場その場の形式論理だけにいかないようにということをお話しして、私の質問を終わります。
  243. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、木島日出夫君。
  244. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  最初に、法務大臣、法務省に確認しておきたいんですが、先ほど修正案の提起がありました。第二条の審議事項の中に「国民がより利用しやすい司法制度の実現、国民の司法制度への関与、法曹の在り方とその機能の充実強化その他の」この三項目を入れるという修正であります。  政府から提出されているこの法案が、審議事項について、司法制度の改革とか司法基盤の整備という、全く抽象的で、縛りがかかっていないに等しい項目である、私、白紙委任と言って批判もしたわけでありますが。そういう審議会の審議すべき事項、白紙委任的な法案から、少なくとも修正案が可決成立したならば、この三項目については、審議会はこの三本柱については審議をする。要するに、国内外の制度をよく精査し、国民から意見を聴取し、そして審議をし、そして一定の結論を出すという義務づけになる、そういう意味を持った修正案だと思うんです。  特に、先ほど提案者から「国民の司法制度への関与」という中には法曹一元も含むんだという提案者としての解釈ですか、文言解釈についての答弁もあったわけですから、当然「国民の司法制度への関与」の審議の中には、法曹一元制度についても広く内外の状況を審議し、資料を集め、国民の意見を聞き、もちろん法曹三者の意見も聞き一定の結論を得るという大変な課題を審議会は背負うことになる。そういう意味の修正であると私は認識するわけでありますが、内閣を代表する法務大臣も、修正が可決した場合にはそういう重い荷物を、具体的な荷物を審議会が背負うんだという覚悟だということでよろしいですか。
  245. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 本修正案において示された事項につきましては、いずれも各種提言等においても言及されているところでございますし、内閣提出の原案においても「司法制度の改革と基盤の整備」の内容に含まれていたものと考えております。  したがいまして、国会における御審議の過程においてこのような修正を行うことが相当であるということでございますれば、政府といたしましても、これに従って、その趣旨を十分踏まえて適切に対処してまいらなければならない、このように考えております。
  246. 木島日出夫

    ○木島委員 この法案によれば、審議期間が二年間なんですね。私は、今、日本の司法制度全体を見て、問題点を洗い出して、そして資料収集し、国民の意見を聞いて、分析して、討議して結論を得る、これは大変な作業であって、二年間というのはある面では短過ぎるんではないかなとも感じているわけなんですが、そこはきょうはもう質問いたしませんが、二年間全体のタイムスケジュールをどのように想定しているのかお聞きしたいんです。  といいますのは、参考人の一人からこういう意見があったんですね。審議をする柱を決める前にその前提作業に力を入れてほしい、今の日本の司法制度が抱えているあらゆる問題を全面的に、徹底的に洗い出す作業をまずやってもらいたいんだ、それは大変な時間と労力、作業が必要だと。しかし、徹底的に問題点をすべて洗い出した上でそれをやる。わずかの二年間、一年間かければ残った時間は一年間しかなくなるわけですが、論議をするためのテーマを絞り込むというその作業をやって、それから絞り込まれたテーマについて審議し、答申に至るということだと思うんですが、その前段階ですね。  これで修正案が可決されれば、少なくとも三項目については最初から審議しなきゃならぬというので義務づけられるわけでありますが、当然これだけじゃないし、これも非常に抽象的な言葉でありますから、「国民の司法制度への関与」といったってさまざまあるわけですからね、参審、陪審、その他その他。ですから、そういう前段の作業は非常に大事だという参考人からの指摘がありまして、私も大変鋭い、もっともな指摘だなと思って、そのためにもかなり時間を要するんじゃないかと思うんですよ。  そんなことも含めまして、きょう、私、こういう質問を皆さんにしていいのかとはばかるのは、それこそ十三人の選ばれた委員が決めることだというお答えが返ってくるのかもしらぬけれども、少なくとも政府の法案として、二年というタイムスケジュールを持ってこの法案が出されてきたんですから、その辺の絵柄、二年間のスケジュールの全体構造、どんな構想を皆さんお持ちになってこの法案を出してきたのかを示していただきたいと思うんです。
  247. 房村精一

    ○房村政府委員 委員からもう先に言われておりますが、具体的な審議事項については、やはり審議会の委員方々にお決めいただくことになろうと思います。  ただ、従来この種の審議会においてどのようなことがされているかということで申し上げますと、やはり審議事項を絞り込む前提としては、それなりにその実情を把握された上で御議論をして絞り込むということが通常ではないかとは考えております。また、いろいろな実情を把握するために、ヒアリングをしたり資料を収集したりというようなことは当然されると思います。  この二年間という非常に限られた期間に、どのようなテーマを取り上げてどのような順番で審議をしていくかということは、これは実際に審議に携わる方々がお決めいただかなければ効率的な審議はできないだろうと思いますので、その点は審議会でお決めいただけると考えておりますが、今言ったような一般的な審議会のあり方をあわせて、御参考までに説明させていただきました。
  248. 木島日出夫

    ○木島委員 これは法務大臣に要望なんですが、ぜひ、これは審議委員が決めることなんでしょうけれども、今のように徹底して問題点を洗い出す作業に時間をかけて、それでどのテーマに絞り込むかについても論議を徹底してやっていただいて、そして絞り込む決断を出す前に、それを国民に返してもらいたいと私は思うんですね。あるいは、国会でもいいです。こんな問題があるというのをつかんできた、しかしわずか二年の間あるいは残された一年半の間にはそれを全部やるのは無理だから、こういう優先順位で、この項目についてはきっちりやりたい、法律で決められた三項目はもちろんのこと、それをやりたいというようなことを、審議委員十三人が独走して決めてしまって他人の意見を聞かないというんじゃなくて、絞り込むに当たりまして、事前に国会の意思とか法曹三者といいますかの意思ぐらいは聞く作業をやってもらえないだろうかと思うんです。  これは、こういう審議委員に縛りをかけるのがいいかどうかという問題はありますが、そう私は希望したいんですが、法務大臣、どうでしょうか、そういう審議会があってもいいと思うんですよ。
  249. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 審議会で審議される事項につきましては、できるだけ国民の皆様に知っていただく、そういうことがこれからの二十一世紀の新しい改革に向けて大事な取り組みではなかろうかということをこれまでも答弁させていただいているわけでございます。そのときに応じて、審議会で適切に対応していただけるものと考えております。
  250. 木島日出夫

    ○木島委員 それと、そういう作業に非常に時間がかかった、本気になって法曹一元についての是非について論議をする、参審制、陪審制についての論議をする、あるいは弁護士制度あるいは隣接の司法書士と弁護士、参考人にもおいでになりましたが、弁理士その他の業界の縄張り問題なんかについても、もしさわろうとしたら大変な作業になるわけでありまして、二年ではとてもじゃないけれども時間が足りないというようなこともあり得るわけですね。そういう場合には、この審議会の設置期限二年を延長するような法案修正も想定しておりますか。
  251. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 二十一世紀に望まれる司法制度のあり方ということでございます。二十一世紀を目前にしておりますので、それまでに立派な答申をしていただくように、報告をまとめていただくように、審議会の御努力を期待してやみません。
  252. 木島日出夫

    ○木島委員 いや、日本の司法制度がつくられて百年以上たつわけでしょう。この根本的な問題にまでメスを入れて改善しよう、改革しようと思ったら、二十一世紀目前で、二十一世紀までにはいいものをつくりたいという気持ちはわかるけれども、二年でやるというのは逆に拙速で、ろくなものできやしないと私は思うんですよ。  審議事項を大した重みのないものだけに絞り込んで、予算を欲しいということで軽い答申を出そうというのならそれでいいでしょう。しかし、本気になって日本の制度を根本的にどうあるべきかを論議しようと思ったら、これから百年後の日本の司法まで見通して、百年の大計をつくろうと思ったら二年じゃ無理だと私は思うので、私の意見を申し上げておきたい。二年後にどんな雰囲気になるのかによってまた情勢は変わるでしょうから、意見を申し上げておきたいというふうに思います。  それで、前回の質問のときにも私聞きましたが、そういう面でどういう審議会になるのか、どういう論議が行われ、どういう答申が出るのかについて、一番決定的に大事なのは、十三人の委員が、どんな立場の人たちがどういうルートを通じて選任されるかだということだと思います。  もう一つやはり決定的に大事なのは、既に質疑もありますが、事務局体制だと思うんですね。率直に言って、日本にある審議会はほとんどが、事務局は官僚機構の皆さんが握る、膨大な情報は事務局が収集する、そしてその一部を、事務局、官僚組織が持っている情報に比べると情報の少ない審議委員に小出しにする、そして審議の方向性を大体決めてしまうという、要するに事務局主導の審議会。審議会は、官僚機構がやらんとすることのお墨つきを得るためのセレモニーにすぎないというのが多いんです。そういう批判があるわけですね。絶対そうさせてはならぬ。その一つは審議会の十三人のメンバーの構成であり、もう一つはやはり事務局体制だ。  さっきお聞きしましたら、事務局をどうつくるかは政令事項だとおっしゃいましたね。そうすると、この法案が成立してから政令をつくるんでしょうが、どんな事務局をつくろうとしているのか、青写真はあるでしょう、それを示してください。
  253. 房村精一

    ○房村政府委員 事務局につきましては、ただいま予定しておりますのは、事務局長法律で定められておりますので、その下に参事官を三名置くということを予定しております。さらにその下に補佐、係長などの職員を置きまして、合計十名程度の構成を今のところ考えておりますが、具体的に、法律が成立した後、早急にそこの点は詰めてまいりたいと思っております。
  254. 木島日出夫

    ○木島委員 事務局長一名はどんな部署からどんなレベルのメンバーを想定しているか、参事官三名というのはどんなところからどんなメンバー、レベルの人を、官民いろいろあるんでしょうが、想定しているのか、補佐と係長、十名程度だとおっしゃいますが、どんなところからどんなレベルの人をあてがうつもりなのか、明らかにしてほしい。
  255. 房村精一

    ○房村政府委員 まず事務局長でございますが、この条文の七条で、「関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。」ということでございますので、公務員で、この司法制度審議会の事務、司法制度あるいは司法制度に関係する分野の職を占めている人を充てるということが予定されております。具体的にどのような人をということは、まだ成立もしておりませんので申し上げる段階ではないと思っております。  それから参事官、それからその補佐の職員等でございますが、これも、先ほどの総理の答弁にも民間の登用も含めてということもありましたが、当面、多数は公務員、他のそれぞれ関係する省庁からの職員がそこに出向するという形になろうかと考えております。民間の方の登用については、これからの検討課題ということでございます。(木島委員「補佐と係長」と呼ぶ)補佐、係長も含めて、多くの者はそういう形で、関係する省庁からの出向者が占めるということになろうかと考えております。
  256. 木島日出夫

    ○木島委員 今の構想では、どうも官僚主導になるんじゃないですかな。  事務局長は法務省から出るつもりですか、最高裁から持ってくるつもりですか。そこに民間人を充てるという、弁護士会あたりから選んでくるという構想、発想はないのですか。それとも、法曹三者以外から、本格的にこの問題で頑張ろうという民間人を長に充てるとか、そういう発想はないですか。参事官三名もそうですが、そういう発想はないのですか。
  257. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 事務局は大変重要な審議の補佐役をするわけでございますので、先ほど、二年間でしっかりとした審議をするためには、いろいろな情報資料を収集したり、調査したり、整理したり、分析したりしなければならない、そのようなことを行う必要があるというような御指摘だったと思いますけれども、そういう任にたえ得るような、つまり、審議会において委員による十分な審議が行われるように、その補佐的な役割を果たすにふさわしい人、こういう者を選んでいく必要があると思っております。
  258. 木島日出夫

    ○木島委員 実は、なぜこういう質問をするかといいますと、後で最高裁からも十分に御意見をお聞きしたいのですが、参考人として登場されました戒能先生から、司法に内在する欠陥、それを克服するための方策は司法内部からは聞こえてこない構造になっているように思える、そういう指摘があるのですよ。先ほど来、同僚委員からも再三指摘されております。  司法の問題はいろいろありますが、その一つの大きな問題が、どうも裁判機構が官僚組織になって、ピラミッドになって、本来、裁判官というのは一人一人独立しているはずなんですが、とんでもない、最高裁事務総局を頂点にした強烈なピラミッド機構ができ上がっていて、独立している一人一人の裁判官が上ばかり見ている、自分の出世や転勤のことばかり考えている、だからまともに行政裁判では行政批判の裁判ができない、そういう指摘があるのですよね。  私、失礼ながら、本来最高裁判所が自己改革をやるべき課題だと思うのです、そういう問題は。しかし、今の段階では、私は、どうも自己改革をやることが期待できない。法務省だってそうですよ、検察問題ありますが。やはり自己改革というのは難しいわけですよ。  本気になって、日本の裁判制度、それを支える検察制度、もう一つ支える弁護制度、それに隣接の司法制度、法曹教育まで含むそういうところを、徹底的に問題点を洗い出そうとするのなら、十三人の委員は当然のことでありますが、それを支える事務局、すべての情報を収集する常勤の人たちが事務局なんですから、大変な知識と能力を持つのがこの事務局なんですから、その事務局に、まかり間違っても法務省なり最高裁から人があてがわれるようなことがあったら、私は自己改革はできないと思うのですよ。  たしか、ここにおいでになった弁護士の方の参考人の中から、事務局を、弁護士会といいますか、弁護士出身者で占めてもいいんじゃないか、あるいは民間人でほとんど占めてもいいんじゃないか、そのぐらいやらないと本当の意味の司法の自己改革はできないんじゃないかという指摘もあるのですよ。どうでしょうかね、そういう発想。弁護士とは言いませんよ、それにふさわしい……。  私は、法務省と最高裁から人を選んでこの事務局を占めたら、一人や二人民間人を入れたって、総理のお話がありましたけれども、こんなものは大した力を発揮できないわけで、やはり根本のところを変えてもらわないといかぬのじゃないかなと思うのですけれども、法務大臣、そう思いませんか。
  259. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 事務局の役割というのは先ほど申し上げましたとおりでございまして、審議会の調査審議を方向づけたり誘導することはあってはならないというのが大前提でございまして、ともかくも、審議に必要な資料調査、収集、整理、分析、及び審議結果の整理等、この職務に専念する、補佐的な役割を果たすということでございますので、その道にたけた人、適任者を選ぶ必要があろうかと思います。
  260. 木島日出夫

    ○木島委員 しかし、日本にある財政制度審議会にしろ、金融審議会にしろ、厚生省関係の社会保障制度なり年金なりの審議会、私は知っていますよ。ほとんどすべてお役所の皆さんが事務局を握って、すべて情報はそこに集中し、その情報の中からえり分けて、自分の役所に不都合にならない部分だけをきちっと理屈をつけまして、それは理屈つけますよ、能力あるから。そして、それを審議会に渡して、参加した審議会、本気になって読み通せるかどうかわからないぐらいの膨大な書類を渡して、そして賛否を問うたりしているわけでしょう。それが実際の今の日本の審議会の現状ですよ。そんな審議会にさせてはならぬと私は思うのですよ、手続的にも。  それだけに、今大臣がおっしゃったように、事務局主導のような審議会であってはならぬというような決意はまことにそのとおりで、そうやってほしいと思うのですが、現実にはなかなかそうはならぬから、そういう大臣の決意を制度的に担保するための保証として、せめて事務局の、では、過半数を官僚が占めることはやめてほしい。それはどうでしょう。半分は民間から選んだらどうか。法務、裁判からは半分以下にしたらどうか。
  261. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 大事な審議、しかも短期間のうちに審議を実りあるものにしてもらいたいということが目的でございますので、そういう裏方といいますか補佐役として十分役割を果たさなければならない、そのための必要な人選が重要である、このように考えております。
  262. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、本当に立派な審議会をやろうと思ったら、学者を、大学の教授とか助教授レベルの人を事務局に任命したっていいと思うのです。制度上、可能でしょう。そういうこともひとつ念頭に置いて、仮にこの法案が成立したときの事務局体制づくりの政令づくりのときには、頭の片隅に置いておいていただきたいと要望だけしておいて、この辺で次の質問に移りたいと思います。  先ほどもちょっと触れましたが、この司法制度改革審議会と、最高裁がどういうスタンスでこの審議会に臨むかという問題についてお聞きをしたいと思います。  司法制度改革ですから、その中心はもちろん裁判の改革だ。裁判官の改革、裁判制度の改革がその中心に座るテーマだということは間違いない。  そうすると、最高裁判所は、全体として、この司法制度改革審議会のまないたにのったコイになると思うのですが、ある面では、本格的にこの審議会が、現在の司法部、裁判所の問題点をえぐり出そうということになれば、これは、最高裁としては、まさに外部からの批判論議にさらされるということにもなることが想定されるわけであります。  そこで、率直にお聞きしますが、先ほど専門チームをつくったと、審議官一名、若い裁判官二名、事務官六名。これは、何のためにこんな専門チームをつくったのでしょうか。この審議会が、現在の最高裁のとっておられる体制、これにいささかも批判的なことをやっちゃいかぬように誘導したり、最高裁の意向を押し込んでいくための専門チームなんでしょうか。その基本的なスタンスを事務総長にお聞かせ願いたい。
  263. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 審議会に対する基本的スタンスというお尋ねでございますけれども、まず我が国の現状でございますが、我が国の司法というものは、公正な手続に基づきまして私的な紛争を解決し、法的秩序の維持を図るという使命を果たしてきていると考えております。  他方、司法による紛争解決が社会経済のテンポに比して遅いとか、専門的ニーズに対応し切れていないとか、必ずしも司法制度が利用しやすいものになっていないという御指摘があることも事実でございます。  ただ、一国の司法制度というものは、それぞれ国の歴史的、文化的な背景のもとで多様な形をとって発展してきておりまして、司法制度について論じるときには、その歴史的、文化的背景や、司法制度が社会経済構造の中でどのように機能しているかということを十分に検討した上で実証的になされる必要があろうかと思っております。  司法制度の機能を充実させるためには、制度全体について多角的に検討する必要がございますが、裁判所といたしましても、国民のニーズを踏まえ、また、適正な手続に基づく公正な紛争解決等の司法に求められている使命を十分に自覚し、司法の現状について十分検討し、必要な方策を講じていく必要があると考えておるところでございます。国民が利用しやすい司法のために、司法制度の機能のあり方について検討してまいりたいと考えているところでございます。  こういった問題につきまして、司法制度改革審議会においても、国民の法的ニーズにこたえるために、幅広い観点から司法制度に関する事項について建設的な審議が行われることを期待しているわけでございます。  最高裁判所に審議官室を設けましたけれども、ただいま申しましたような現状認識に立ちまして、司法の現状について、外国等の事情調査するあるいは我が国の裁判制度の現状を調査する、そうして、審議会から要請がございましたときにはそれについて提供していくといった観点からつくったものでございまして、決して我々の意向を審議会に反映するといいますか、そういったことを考えたものではございませんで、私どもとしては、審議会の御意見を十分に承って、我々としてやれることをやっていきたい、こう考えている次第でございます。
  264. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、審議会で日本の司法を知らない人が勝手な論議をするのも本当によくないと思うので、裁判官を経験し裁判を内部から本当に経験した人が審議委員のメンバーに一人ぐらい入ることは、それは当然だし入らなければいかぬとは思っています。弁護士もそうだし、検察官もそうだと思うのです。  しかし、そのことと、事務局に最高裁から、任命は審議会がやるのでしょうけれども、事実上指名されて、おまえ行ってこいといって事務局に入ることは、これはよくない。司法、最高裁はあくまでもまないたのコイなんですから、事務局には絶対人は送らない、いかに審議会なりこれからつくられる政令でいろいろなことを書かれても、それはぜひやってほしいと思うのですよ。最高裁からは送らないでほしい。  資料だけは包み隠さず全部洗いざらい出してほしいのですよ。判検交流とかいろいろな人事の問題とか、裁判官会同がどういう影響を与えているのか、そういう問題も含めて、恐らく裁判所は嫌がるでしょうけれども、日本の司法制度の改革のためにぜひ資料は出してほしいと思うのですが、事務局に送るということだけはやめてほしい。それをやりますと、やはり最高裁に不利益なもの、現在の裁判体制に不利益なものは隠そうとする意思が必ず働く。そういう意思が事務局の中に働いたらまともな審議が行かないからなんですよ、経験則上。事務総長、どうでしょうかね、ぜひ、事務局に最高裁から人を送らないと約束してもらえませんか。
  265. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 現在法案に出ております司法制度改革審議会は内閣に置かれる委員会でございまして、その人選等について私どもの方で申し上げるのは差し控えるべきだろうと思っております。
  266. 木島日出夫

    ○木島委員 時間が来たから終わりますが、私は、この司法制度改革審議会というのは、法律をつくられたらこれで終わりじゃなくて、まさにそれが出発だと思うのです。そこで、まず、国会の意見や法曹三者の意見やら国民の意見やら、やはりいろいろ反映させるべきだし、またそれでフィードバックもすべきだと思いますので、ぜひ、国民のための司法改革という理念は最後まで貫徹してほしい、あらゆる手続の場で貫徹してほしいといういうことを要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。
  267. 杉浦正健

  268. 保坂展人

    保坂委員 社民党の保坂展人です。  三月三十一日の議事録を振り返りますと、ちょっと訂正点、私の質問自身がちょっと発音が悪かったのか、房村さんに伺っているところがちょっと間違っておりまして、その質問は、「簡単に聞きますけれども、内閣審議会になった理由はどんな理由でしょうか。」と議事録にあるのですが、私が聞いたのは、内閣審議官になったのはどういう理由ですかという質問だったので、そこをちょっともう一度御答弁をお願いします。
  269. 房村精一

    ○房村政府委員 私が内閣審議官に併任発令をされた理由ということだと思いますが、今私、本来の地位が法務省の司法制度調査部におります。そこで司法制度に関する事務を広く取り扱っておりますが、今回、内政審議室において司法制度改革審議会の事務を取り扱うにつきまして、そういう司法制度に関する知識、経験を有している者を併任発令をしてその事務を補佐してほしいということで、多分併任をされたものと理解しております。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
  270. 保坂展人

    保坂委員 私の予想どおりなんですが、先ほど木島委員の質問に対して、事務局の編成は事務局長一名で参事官三名、これは最高裁と法務省と大蔵省というふうに私ども聞いているのですが、その点明らかにしていただきたいのと、もう一つ、十名というふうにはっきり事務局構成の規模をおっしゃったのですが、これはどなたが結論づけられたのか、お願いします。
  271. 房村精一

    ○房村政府委員 現在、司法制度改革審議会に関する事務は内閣官房の内政審議室で取り扱っております。したがいまして、政令の準備等もそこでするということになりますが、そこで今検討しておりますのがその程度人数になるのではないかということでございます。もちろん正式に決まったわけではございませんので、現在検討されておる数字ということでございます。  それから、参事官三名ということは、これは一応予定がされておりますけれども、具体的にどこの省庁の人間がその参事官になるかということはまだ、そもそもその政令自体成立もしておりませんので、私どもとしてもちょっとこの段階では何ともお答えしかねるということでございます。
  272. 保坂展人

    保坂委員 最高裁では審議官を復活させていますから、この段階で答弁されても一向に構わないと思うのです。ただ、事務局編成は審議会の進行に大きな影響を与える、例えば審議会自身が、民間人を過半登用すべきだ、公務員だけじゃだめだ、きょうは決算行政監視委員会で、役所や政府のいわば業績評価、行政評価システムの議論をやっておったのですが、やはり官僚が持っている限界もあるということで、そういう十三人の審議会の皆さんが事務局はそうつくるべしというふうに決められたら、これはどうなりますか。
  273. 房村精一

    ○房村政府委員 司法制度改革審議会は、この法律に基づきまして内閣に置かれる内閣の補助機関でございます。その審議会に事務局を置くということが同様に法律で定められておりますので、基本的にその事務局に勤務する者の任命権は内閣に属しております。内閣の補助機関として置く審議会での審議を補佐する事務局構成につきましては、内閣において基本的に決めていくべき事柄ということになろうかと思いますし、審議会の委員方々に審議していただくのは、これからの日本の司法のあり方、これを踏まえて、その整備、充実のための具体的施策を審議していただくということになろうかと思っております。
  274. 保坂展人

    保坂委員 大臣に伺いますが、再三この法務委員会での議論の中で、やはり事務局の中に民間人、しかも司法官僚制について弊害ありという問題意識を持っている、例えば、民間人の中には弁護士会もありましょうし、自由人権協会という団体もあります。あるいはアムネスティという人権擁護の世界的な団体もある。こういう民間人を、先ほど、大多数は公務員だという事務当局の答えですけれども、審議会自身が自由闊達な議論をしていくためには、ここのところの民間人枠というのはもう少しフレキシブルに、自由に考えていいのではないか。いかがでしょうか。
  275. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 事務局は、司法制度改革審議会の審議のための資料調査、分析あるいは収集、あるいはまた審議結果の整理等の職務を行うことになっておるわけでございますので、審議会において委員による十分な審議が行われるように、必要な十分な補佐をしていかなければならないわけでございます。それにふさわしい知識を有する者を充てることが必要であると考えておりまして、そのような知識を有する民間人の方があれば、その方の登用も含めて検討してまいりたいと思います。
  276. 保坂展人

    保坂委員 それでは、先ほど小渕総理への質問の中で、ちょっと時間が足らなくて聞き切れなかった部分を再度伺います。  一月四日の読売新聞記事の中で紹介されています、司法改革の、房村さんのお話だと、法務省の中の内部メモであると。したがって、これも表に出るものではないし、出た経緯もわからないけれども、あくまでも内部メモなので、例えば法務委員会あるいは議員個人に出すべきものではないというお答えだったように思いますけれども、では、この内部メモというものは、その後、扱いはどうなったんですか。ここで書かれていることは全く白紙で、もうなくなったんですか。それとも、この中で語られていることはやはりある程度事務局の議論の骨格の中に生きてくるんですか。
  277. 房村精一

    ○房村政府委員 先ほど申し上げましたように、その新聞報道されたメモの中身というものは、法務省としてどんなものが予想されるかということを取り上げたメモでございまして、法務省としてこれらの事項がその審議会で審議されるべきであるというような判断を下したものではございません。  従来から申し上げておりますように、法務省としても、この司法制度審議会において具体的にどういう審議事項を取り上げるかは審議会の委員方々に決めていただくのが相当である、こういうぐあいに考えてきているところでございます。
  278. 保坂展人

    保坂委員 では、もう一度聞きますが、予想メモである。つまり、これを審議しろという話じゃなくて、こういうものが話題になるだろうという予想を一応羅列したものだというふうに理解していいですか。
  279. 房村精一

    ○房村政府委員 はい。そいうことで、こういうことが取り上げられる可能性があるということでございます。
  280. 保坂展人

    保坂委員 大臣に伺います。  これは一月四日、それこそ中村前大臣、賀詞交換会での発言にも直接的につながっていった記事なんですが、陣内大臣は、こちらの読売新聞、ここにある記事は要旨なんですよ。この記事の中で、司法改革の項目が判明と。陣内大臣は、就任されたときに、あるいは引き継ぎのときにこれは全文を拝見されているでしょうか。
  281. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 いきさつについての報告は伺っております。これは、いろいろな立場の方々が検討項目をずっと挙げておられる、それを網羅するような形で取りまとめてあるというふうなことを伺っております。
  282. 保坂展人

    保坂委員 私、何度もこの法務委員会で質問をしております。これは直接的にいわゆる日本の死刑制度にも関連をする事項がこの中にあります。つまり、無期刑を見直して、そして終身刑を導入するというようなことについても検討の対象になるかもしれないなというような、そういう枠の中に入っているわけですが、大臣も、現在時点でそういう認識をお持ちでしょうか。つまり、それは、されるべきだとかそういう話じゃなくて、されるかもしれない予想メモというふうに今房村さんの方はおっしゃった。その中にこう文言があるんですが、その点についていかがでしょうか。
  283. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 私が死刑問題についてどう考えるかということについては、以前の機会に御報告したと思いますけれども、問題の、今後司法制度改革審議会にどういう項目をお願いしたらいいかというような具体的なことにつきましては、私自身、前大臣のような整理をしておりませんので、具体的にお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。
  284. 保坂展人

    保坂委員 ではもう一度、房村さんの方にお聞きしますが、先ほど、予想のメモというふうにおっしゃって、その予想のメモという趣旨であれば、別に法務省として項目づけをして審議会を縛るという趣旨じゃないとすれば、このメモ自体は、流出の過程は不明であるにしても、これは生きているというふうに判断してよろしいんですか。つまり、そういうふうに予想したということは事実であるということを聞きたい。
  285. 房村精一

    ○房村政府委員 生きているという言葉の意味がちょっとわかりかねるんですが、その時点でそういう整理をして、そういう紙をつくったということはもちろん事実でございます。  ただ、その後、では、そういう判断を今もしているかということになると、別にそれを特段何らかの意味のある、例えば手続が進む、手続上の資料というようなものではありませんので、その時点でそういうものとして作成したという事実があるということでございます。
  286. 保坂展人

    保坂委員 もう一度伺いますが、これは前中村大臣もかなり力を入れて、例えば国会に対する検察の説明責任であるとか、起訴陪審だとか、そういうところはその前大臣の意向というものもかなり強く反映したメモということじゃないですか。
  287. 房村精一

    ○房村政府委員 いずれにいたしましても、法務省の内部で作成した内部資料ということでございますので、その詳しい、どういういきさつでということはちょっと差し控えさせていただきたいと思います。
  288. 保坂展人

    保坂委員 では、再度大臣に伺います。  特に細かいことを聞いているわけではなくて、先ほど法曹一元の話もありました。裁判の迅速な進行の問題もありました。それから、坂上先生の方からは、それこそ再審のありようについてもありました。日本の刑罰の場合、いわゆる無期と死刑との間には物すごい乖離があるわけですね、御存じと思いますけれども。  例えば、仮釈放を認めないところの終身刑みたいなことも当然議論になって、各界でなっているということを踏まえて、しかも、法務省のメモにこういうものがあったということであれば、こういうのは議論されてしかるべき問題だと思いますけれども、その点、御所見を伺いたいと思います。
  289. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 審議の内容につきましては、ただいま修正案に盛り込まれたようなことが基本になろうかと思います。基本的には、そういうものを踏まえながら、審議会で委員の皆さんの審議の中でお決めいただく課題だと考えております。
  290. 保坂展人

    保坂委員 そうすると、では審議会はちょっと外しましょう。審議会は外して、ここの法務省がメモで作成した無期と終身刑のそういう問題も議論されるべき問題である、これは法務委員会でもたびたび主張しているのですよ。そういうことについて、大臣、お考えはいかがですか。
  291. 房村精一

    ○房村政府委員 審議会の項目ということを離れてということでございますと、そういう御主張があるというのはただいま委員の御指摘のとおりでございますし、法務省としても、それは、死刑制度について国民の間でいろいろな議論がなされるということは、もちろん重要なことだろうというぐあいには考えております。
  292. 保坂展人

    保坂委員 今の答弁、大臣の方からいかがですか。同様なら同様というふうに。
  293. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 つけ加えることはございません。
  294. 保坂展人

    保坂委員 それで、いろいろ調べてみたのですけれども、昭和三十七年の臨司がございました。このときには、要するに法制審議会とのすみ分けについての規定がございまして、附則で法務省設置法を改めている。そしてまた、法務大臣は、このときの臨時司法制度調査会設置に当たっては、その置かれている間、法制審議会にはそこは諮問しないものとするということも決められていますね。このことは、同じ内閣法十二条四項において設置されるこの審議会、どういうふうに整理をしてとらえられているのか、お願いします。
  295. 房村精一

    ○房村政府委員 臨時司法制度調査会のときは、ただいま委員御指摘のように、臨時司法制度調査会で取り上げられる法曹一元、それから裁判官、検察官の任用制度、給与制度等、法律で定められた事項につきましては、審議が行われている間、法制審議会に諮問しないものとしております。  これは、今申し上げたように、臨時司法制度調査会で取り上げられる事項が非常に限定されている。法曹一元というのもいわば裁判官の任用制度でございますので、裁判官、検察官の任用制度あるいは給与制度ということに限定されております。したがって、そういう限定された項目について緊急に必要な施策を臨時司法制度調査会で審議をいただいている間に、同じテーマについて政府として積極的な施策を講ずるということは予想されないということから、その二年間の審議期間中は専ら臨時司法制度調査会で審議をお願いするということにいたしたわけでございます。  今回設置をお願いしております司法制度改革審議会は、二十一世紀のあるべき司法を踏まえて、幅広く司法制度について審議をしていただくということになりますので、この審議会で取り上げられる可能性のある事柄につきましても、審議期間中に政府として緊急に施策を講ずる必要がある場合も当然予想されるわけでございます。  先ほど来、民事法律扶助の話が出ておりますが、これが審議会で取り上げられる可能性は十分あろうかと思っております。しかし、その間、政府が民事法律扶助について何らの施策を講ぜないでいいかということもあります。そういう場合に、政府として、審議は審議として、これと矛盾しない範囲で施策を講ずるということも当然にあり得るわけでございますので、今回は前回と違ってそういう規定を置かなかった、こういうことでございます。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
  296. 保坂展人

    保坂委員 では、法務大臣に伺いますが、今回は昭和三十七年の臨司とは違って、このときはたった二つ、たったというか、大きな問題ではありますけれども、二方面についてであった。今回はマルチ、すべてを包摂するような大変大きな守備範囲を持った審議会なわけで、ここは本当に国会の空洞化につながらないためにぜひ答弁いただきたいのですが、今審議会が検討していることだから、あるいは議論していることだからといって、政府としてスピーディーにやるべきことをとどめるべきではないし、また、国会における議論も、それによってその二年間は空白になるなんということがあってはならないと思うわけで、その点に対して御答弁をお願いします。
  297. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 ただいま委員お話しになりました考え、私もそのとおりに考えております。
  298. 保坂展人

    保坂委員 この法案について、白紙委任ではないかということで多々疑問がございました。ただ、全部は晴れていませんけれども、情報公開、それから事務局構成の中で民間の力を活用していくこと、国民に幅広く開かれた議論というところで答弁もいただきました。この答弁をしっかり生かしていただきたいと思います。  終わります。
  299. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、保岡興治君。
  300. 保岡興治

    ○保岡委員 この司法制度改革審議会の設置法も審議の大詰めを迎えまして、きょうは小渕総理大臣にも御出席をいただいて、これまで、もう本当に熱心な委員各位の御議論で、共通の認識ができ上がってきたのじゃないかというふうに感じております。  私が冒頭に質問したときにも申し上げましたけれども、二十一世紀の国際社会というのは大競争時代になっていく。自由と民主主義と市場原理という一つに連なる理念で包まれる歴史が繰り広げられる。そういった意味で、透明なルールと自己責任の理念ということは、二十一世紀に生き抜く日本の国としては、国際的な信頼を得たり、また調和して進んでいくのに非常に重要なものである。また、国内的にも、国民の人権あるいは個人の尊厳、利益の擁護というような非常に根本的な重要なテーマについて、これをしっかり確保する。そして、元気で安心のできる国をつくる。そういう二十一世紀の社会のこれまた根幹の部分を改革するという非常に重要なテーマであるということを申し上げてまいりました。  衆議院での審議を終えるに当たって、陣内法務大臣に、所感を込めてもう一度その意義についてお答えいただければと思います。
  301. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 ただいま委員御指摘のとおり、透明なルールと自己責任の理念に立脚した活力ある社会、それと同時に、すべての人々の人権、利益が最大限に尊重され、安心して暮らせる社会を実現しなければならないと思っております。そして、このような人権の擁護、権利、利益の実現という観点から、より国民に身近な司法制度の構築に取り組むことが極めて重要なことであると考えております。
  302. 保岡興治

    ○保岡委員 今大臣が述べられたような所見に沿って、この課題に取り組むに当たって、二十一世紀はもう目前に迫っておりますし、また二年間という審議期間を考えれば、一刻の猶予もならないと思えるのでございます。  こういった状況下において、法案が可決成立した後は一日も早く司法制度改革審議会を設置して議論を開始すべきであると考えますが、その点についての大臣の所見を問いたいと思います。
  303. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 委員御指摘のとおり、司法制度改革は喫緊の課題であると考えております。したがって、本法案につきましてはできる限り早期に御審議をいただき、法案成立後は、できる限り速やかに委員の任命について両議院の同意をいただいた上で、司法制度改革審議会を設置して、この審議会の場において司法制度改革についての具体的な調査審議を進めていただきたいと考えております。
  304. 保岡興治

    ○保岡委員 先ほども申し上げましたとおり、二十一世紀の新しい国家の姿かたちあるいは国民、社会のあり方の根幹をなす重要な改革テーマが、橋本内閣以来の六つの改革に次いで七つ目の改革として明確に位置づけられました。そういった、明治維新以来、あるいは戦後の司法というものを改めて見直すというこの重要な仕事、このテーマを議論する審議会というものは非常に重要だと思います。審議会に臨むに当たっての、法務大臣と最高裁の決意をお伺いしたいと思います。
  305. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 委員御指摘のとおり、この審議会は極めて重要なものであると考えております。  したがって、法務省としても、この審議会の審議に最大限協力してまいるとともに、国民が身近に利用することができ、社会の法的ニーズに的確にこたえることができる、より国民に身近な司法制度を構築するため、積極的に適宜適切な方策を講じ、来るべき新しい時代の要請にこたえてまいりたいと考えております。
  306. 泉徳治

    ○泉最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  我が国は、社会経済構造の変化、国民の価値観の多様化などの大きな変動期を迎えておりますが、このような変化を反映して、法的手続による紛争を解決するという司法に対する国民の期待はこれまでになく高まっているものと思われます。  委員御指摘のとおり、このたび、国民のニーズを踏まえた司法制度の機能の充実強化を図るために審議会が設置されますことは、まことに意義深いものと考えている次第でございます。  裁判所といたしましても、審議会において、国民のニーズを踏まえた幅広い観点から建設的な審議が行われることを期待いたしておりまして、審議会から御要請があれば可能な限りの協力をさせていただきたいと考えておる次第でございます。
  307. 保岡興治

    ○保岡委員 今御両所の決意に心から敬意を表すると同時に、審議会が成功裏に次の時代の重要なテーマを切り開いていくことができますように、心から期待をすると同時に、我々、国会にある、国民を代表する立場からも、これはお互い各政党においても、委員においても、前広に、できるだけ具体的に知恵を競って工夫をするということで、単に審議会のパブリックコメント、提案を待つだけではなくて、積極的に当委員会などを通じてみずからの意見や考え方の表明もする。そういうことで、前広に、審議会に立派な結論を得ていただいて、そうして最終的にはまたこの我々の委員会で、制度として、法案として審議をするわけでございますから、我々国会議員の使命は審議会以上に重要な役割が期待されると思います。  そういうことをお互いに誓って、そして、委員長初め各委員、あるいは陣内法務大臣初め役所の皆様方に、この審議に熱心に御努力を賜ったことに心から敬意を表して、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  308. 杉浦正健

    杉浦委員長 これにて本案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  309. 杉浦正健

    杉浦委員長 これより本案及び修正案を一括して討論に付するのでありますが、討論の申し出がございませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出司法制度改革審議会設置法案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、山本幸三君外六名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  310. 杉浦正健

    杉浦委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  311. 杉浦正健

    杉浦委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  312. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、ただいま議決いたしました本案に対し、山本幸三君外七名から、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合、さきがけ及び鯨岡兵輔君の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。山本幸三君。
  313. 山本幸三

    山本(幸)委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。     司法制度改革審議会設置法案に対する附帯決議(案)   本法の施行に当たっては、次の事項について格段の配慮をすべきである。  一 政府は、審議会の設置及び運営に当たって、司法権の独立を侵害しないように配慮すること。  二 政府は、審議会の委員の選任に当たって、司法制度の実情を把握すると同時に国民各層からの声が十分に反映されるように努めること。  三 政府は、審議会の事務局の構成及び運営については、審議会の審議を公正に補佐することができるよう民間人の登用も含め配慮・指導すること。  四 審議会は、その審議に際し、法曹一元、法曹の質及び量の拡充、国民の司法参加、人権と刑事司法との関係など司法制度をめぐり議論されている重要な問題点について、十分に論議すること。  五 審議会は、その調査審議の状況に関し、情報公開等透明性の確保に努めることとし、法務委員会は、必要に応じ、同審議会事務局を介して、同審議会の議事録並びに審議の状況について報告を求めることができるものとすること。  六 政府は審議会の調査審議と並行して、裁判官及びその他の裁判所職員の増加、下級裁判所の施設の充実等裁判所の人的・物的拡充に努めるとともに、既に一定の方向性の示されている法律扶助制度等の諸制度の充実を図ること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  314. 杉浦正健

    杉浦委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  山本幸三君外七名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  315. 杉浦正健

    杉浦委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。陣内法務大臣
  316. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、政府といたしましても、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりますことをお約束申し上げます。(拍手)     —————————————
  317. 杉浦正健

    杉浦委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  318. 杉浦正健

    杉浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  319. 杉浦正健

    杉浦委員長 次回は、四月二十八日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時八分散会