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1999-02-10 第145回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月十日(水曜日)     午前十時開議   出席委員    委員長 杉浦 正健君    理事 橘 康太郎君 理事 八代 英太君    理事 山本 有二君 理事 坂上 富男君    理事 日野 市朗君 理事 上田  勇君    理事 達増 拓也君       奥野 誠亮君    加藤 卓二君       河村 建夫君    小杉  隆君       左藤  恵君    菅  義偉君       中谷  元君    西田  司君       宮島 大典君    保岡 興治君       渡辺 喜美君    安住  淳君       佐々木秀典君    末松 義規君       福岡 宗也君    漆原 良夫君       安倍 基雄君    木島日出夫君       保坂 展人君    園田 博之君  出席国務大臣         法務大臣    中村正三郎君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         公正取引委員会         事務総局審査局         長       平林 英勝君         防衛庁装備局長 及川 耕造君         法務政務次官  北岡 秀二君         法務大臣官房長 但木 敬一君         法務大臣官房司         法法制調査部長         兼内閣審議官  房村 精一君         法務省民事局長 細川  清君         法務省刑事局長 松尾 邦弘君         法務省矯正局長 坂井 一郎君         法務省人権擁護         局長      橫山 匡輝君         法務省入国管理         局長      竹中 繁雄君         公安調査庁長官 木藤 繁夫君         厚生省健康政策         局長      小林 秀資君         厚生省保健医療         局長      伊藤 雅治君         厚生省生活衛生         局長      小野 昭雄君         厚生省社会・援         護局長     炭谷  茂君         自治省行政局長         兼内閣審議官  鈴木 正明君  委員外出席者         内閣官房内閣内         政審議室内閣審         議官      森山 幹夫君         警察庁長官官房         審議官     村上 徳光君         警察庁刑事局捜         査第一課長   深草 雅利君         大蔵大臣官房秘         書課長     石井 道遠君         文部大臣官房審         議官      遠藤純一郎君         労働省職業安定         局高齢障害者         対策部長    長谷川真一君         建設大臣官房官         庁営繕部長   田村 至敏君         会計検査院事務         総局第四局長  増田 裕夫君         法務委員会専門         員       海老原良宗委員の異動 二月十日         辞任         補欠選任   加藤 紘一君     宮島 大典君   古賀  誠君     中谷  元君   枝野 幸男君     末松 義規君 同日         辞任         補欠選任   中谷  元君     古賀  誠君   宮島 大典君     加藤 紘一君   末松 義規君     安住  淳君 同日         辞任         補欠選任   安住  淳君     枝野 幸男君 二月四日  組織的犯罪対策法制定反対に関する請願木島日出夫紹介)(第二一四号) 同月八日  定期借家権制度を創設する借地借家法改正反対に関する請願木島日出夫紹介)(第五三八号)  同(保坂展人君紹介)(第五三九号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  法務行政及び検察行政国内治安人権擁護に関する件     午前十時開議      ――――◇―――――
  2. 杉浦正健

    杉浦委員長 これより会議を開きます。  法務行政及び検察行政国内治安人権擁護に関する件について調査を進めます。  この際、法務行政等の当面する諸問題について、法務大臣から説明を聴取いたします。中村法務大臣
  3. 中村正三郎

    中村国務大臣 委員長を初め委員皆様方には、平素から法務行政運営につきまして格別の御尽力をいただきまして、厚く御礼を申し上げます。  私は、昨年七月に就任いたしまして以来、現在、司法法務が抱えている重要な課題に取り組むべく微力を尽くしてまいりましたが、今後とも、皆様の一層の御理解と御指導を賜りまして、法務行政の各分野にわたって国民生活向上のために全力を尽くさせていただきたいと考えておりますので、どうかよろしくお願いを申し上げます。  それでは、法務行政に関する所信一端を述べさせていただきたいと思います。  法務行政の本来の役割法秩序維持国民権利の保全を通して国民生活の安定と向上を図るところにあることは言うまでもございませんが、今、社会経済の構造や諸制度が大きく変化していく改革時代にあって、法務行政も、変革する社会ニーズにこたえるための改革が求められるなど、課せられた使命はまことに大きなものがあると思います。元来、民主主義基本原理とする憲法のもとにおいては、国家機能は、その基盤国民に置いているものであることは言うまでもございませんが、国民生活向上のための役割を担っているわけでありますが、このような時期において、法務行政がその使命をよりよく果たすためには、改めて国民の視点に立って、何が国民利益にかなうかを十分念頭に置いて改革していくことが不可欠であると思うのでございます。  私は、このような認識に基づき、幅広い法務行政の各分野において、時代要請に応じ、国民の期待に十分こたえられる法務行政実現に努めたいと考えております。  以下、当面の重要施策について申し述べさせていただきます。  第一は、司法制度改革についてであります。  二十一世紀我が国社会においては、社会複雑多様化国際化等が進み、その状況のもとで実施されている規制緩和等によって生ずる社会のさまざまな変化に伴い、司法役割はより一層重要なものになると考えられます。私は、かねてから、既に強力に進められている行政改革と並んで、司法制度全般にわたる改革とその機能充実強化を図っていくことが求められていると考えてきたのでありますが、このような認識社会的に共通のものとなってきたように思います。政府は、二十一世紀我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、司法制度改革基盤整備に関し必要な基本的施策について調査審議する機関として、内閣司法制度改革審議会を設置するための法律案を今国会に提出したところでありますが、それは、このような状況認識によるものにほかなりません。法務省としては、時代変化に即応し、国民ニーズにこたえられる司法制度を速やかに実現できるよう、この動きに沿って積極的に取り組んでまいりたいと考えております。  また、司法基盤充実策一環として、司法にかかわるスタッフの充実を図ることが当面重要であり、今国会においても、裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、判事補等増加させることを内容とする法案を提出したところでありますし、検事を含む法務省職員増員につきましても、平成十一年度予算案に盛り込まれているところであります。  第二は、社会的状況変化に的確に対応すべく、民事刑事基本法について見直しを行うことであります。  まず、民事法整備を積極的に進めてまいりたいと考え、高齢社会への対応及び障害者福祉充実観点から、判断能力の不十分な高齢者障害者保護を図るため、禁治産及び準禁治産制度見直して後見、保佐及び補助の制度に改めることを中心とする民法の一部改正法律案並びにその関連法律案を、また、会社経営効率化企業国際的な競争力確保等観点から、持ち株会社の設立を容易にする制度を創設する商法の一部改正法律案を、それぞれ今国会に提出したいと考えております。  次に、少年審判のあり方については、かねてから国民の間にも見直しの声が出ているところでありますが、殊に、事実認定手続の一層の適正化は緊急の手当てを要する課題であり、今国会にこの点に関する改正法案を提出したいと考えております。  組織的な犯罪に対処するための三法案については、昨年の通常国会に提出いたしましたところ、現在継続審査となっておりますが、組織的な犯罪への適切な対処が国内的にも国際的にも重要かつ緊急の課題であることにかんがみ、何とぞ十分な御審議をいただきまして、速やかな成立に至りますようお願い申し上げる次第でございます。  第三は、治安確保及び法秩序維持についてであります。  最近における犯罪情勢を見ますと、刑法犯認知件数増加傾向にある上、毒物を用いた無差別大量殺傷事犯や、暴力団構成員等による銃器を使用した殺傷事犯など、国民生活の平穏を脅かす凶悪重大事犯が多発し、覚せい剤若年層への浸透や、暴力団来日外国人による薬物密売手段の隠密・巧妙化なども進行しております。また、金融機関その他の企業経営者による背任事犯や、いわゆる総会屋への利益供与事犯中央省庁幹部職員等による汚職・背任事犯政党助成法違反事犯など、我が国経済行政システム等に対する信頼を揺るがしかねない事犯が相次いでいる上、金融機関に関連する事犯の動向にも予断を許さないものがあります。さらに、諸外国との間において逃亡犯罪人の引き渡し、捜査共助等を要する事件増加するなど、犯罪国際化傾向が一層顕著となっております。  私は、このような犯罪情勢を的確に把握しつつ、変動する時代要請にこたえるため、さきに述べた組織的犯罪対策立法などの法的手当てのほか、検事増員を初めとした検察体制の一層の充実強化を図り、国民一人一人が安心して暮らせる安全で公正な社会確保に努めてまいります。  オウム真理教に関しましては、依然、危険な体質を保持したまま組織再興に向けた活発な活動を展開し、地域住民とのトラブルも各地で多発しておりますので、公安調査庁において、今後も厳重な調査継続してまいります。あわせて、公安調査庁におきましては、内外情勢変化に対応した業務運営に努め、公共の安全確保に万全を尽くすべきものと考えております。  第四は、犯罪者に対する矯正処遇更生保護についてであります。  犯罪者矯正処遇につきましては、被収容者の数が平成五年以降増加を続けている上、暴力団関係者覚せい剤等薬物事犯者、再入者等処遇に困難を伴う者が高い比率を占める一方、外国人収容者高齢受刑者の数が増加するなど、依然として困難な状況に直面していますが、引き続き、個々の被収容者特性犯罪傾向等に応じた適切な処遇に努めてまいりたいと考えております。また、被収容少年平成八年以降増加の一途をたどり、特に、重大事犯を犯しながら罪障感に乏しい者、安易な動機から凶悪犯罪を犯す者が増加するなど、少年の持つ問題性は一層複雑深刻化してきておりますので、その処遇に当たっては、従来にも増して、個々少年問題点を的確に把握して改善更生のための有効適切な措置を講じ、その特性に応じた計画的かつ効果的な矯正教育を推進してまいりたいと考えております。  更生保護行政は、犯罪非行を予防し、罪を犯した者や非行に陥った少年の再犯を防止しつつその社会復帰を図ることを任務とする、刑事政策上極めて重要な意義を持っております。昨今、少年非行増加及び凶悪化覚せい剤事犯増加などが社会問題となっておりますが、保護観察においても処遇困難な事案が増加しているところであり、今後とも犯罪予防活動及び保護観察の効果的な実施に努めてまいります。  本年は、現行の更生保護制度が発足されて五十周年を迎えます。また、保護司制度充実強化を図るための法改正が前通常国会において成立し、本年四月一日から施行されます。更生保護においては、保護司更生保護施設更生保護婦人会、BBSを初めとする民間の個人及び団体の献身的な御協力を得て、保護観察地域犯罪予防活動を行っておりますが、この節目となる年に当たって、関係者の士気の高揚と、地域関係機関との一層の連携に努め、更生保護の実を上げてまいりたいと存じます。  第五は、民事行政事務効率化及び訟務事件処理等についてであります。  民事行政事務に関しては、登記事務コンピューター化平成十六年度末までに完了させるなど、行政情報化に沿った施策を推進してきておりますが、高度情報化社会進展にかんがみ、利用者の負担を軽減し、その利便性を高めるため、登記情報コンピューターネットワークを利用して提供する制度について検討しており、今国会関係法案を提出したいと考えております。さらに、近年著しく増加している電子取引安全性確保等を図るため、電子認証電子公証制度の早期の実現に向けてシステム開発研究を進めているところであります。  訟務事務については、事件数が依然として高い水準にあるばかりでなく、質的にも複雑困難なものが増加する傾向にあり、その中には、訴訟の結果いかんが国の政治、行政国民生活に重大な影響を及ぼすものも少なくありません。訟務は、国民国家との法律上の紛争の適正な解決に資するなど、法の支配の確立のために重要な役割を果たしてきているところですが、司法機能充実強化要請される昨今、その一翼を担うものとして、裁判所における審理の迅速化充実化に対応すべく、引き続き事務処理体制充実強化を図り、一層適正円滑な事件処理に努めてまいります。  第六は、人権擁護行政についてであります。  昨年十二月十四日、両議院で採択された人権擁護に関する決議の趣旨を踏まえ、中央省庁等改革基本法に基づき、人権擁護行政について、推進体制整備を含めた充実強化を図ってまいります。  これに関しては、法務省に設けられた人権擁護推進審議会におきまして、人権教育及び啓発に関する施策及び人権侵害による被害者の救済に関する施策について調査審議がなされ、基本的な考え方が取りまとめられることになっておりますので、その結果をも踏まえ、充実強化のための具体的施策を策定してまいります。  また、法律扶助制度は、国民の裁判を受ける権利を実質的に保障するための重要な制度であり、法務省内に設けました研究会平成十年三月に報告書として取りまとめました研究成果をも踏まえ、今後ともその充実発展に努めてまいりたいと考えております。  第七は、出入国管理行政充実強化についてであります。  国際化の著しい進展に伴い、平成十年に我が国を訪れた外国人は約四百六十万人に上り、また、外国人登録者数は、平成十年末現在約百五十万人と、日本の総人口の約一・二%を占めるに至っております。  このように、国際間の人的交流が依然として高い水準で続いている中、出入国管理行政が果たすべき役割はますますその重要性を増しているところであり、私は、国際協調国際交流の増進への寄与及び我が国社会の健全な発展確保の理念に沿って外国人の一層円滑な受け入れを図ってまいりたいと考えております。  他方、我が国には、約二十八万人の不法残留者に加えて集団密航等による不法入国者も存在し、そのほとんどが不法就労活動を行っているものと推定されます。そして、これらの者により引き起こされる凶悪犯罪薬物犯罪社会問題化し、国民生活にも深刻な影響を及ぼしています。一昨年、集団密航者不法入国させる行為等の処罰を内容とした出入国管理及び難民認定法の一部を改正したところでありますが、その後も不法入国事件は必ずしも減少しているとは言えない状況にあります。そこで、これらの不法入国外国人に対し、適正かつ厳格に対応する方策の一環として、不法入国後に本邦に滞在する行為に係る罰則の新設などを含む出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案を今国会に提出し、不法入国外国人問題等に対し厳正に対処していきたいと考えております。  また、外国人登録法についても、平成四年の同法改正時における衆議院、参議院両院法務委員会附帯決議を踏まえ、指紋押捺制度廃止等内容とする同法の一部を改正する法律案を今国会に提出したいと考えております。  以上、法務行政重要施策につきまして所信一端を述べましたが、今国会に提出を予定しております法案は、いずれも我が国社会の変革のために欠くことができない重要な柱となる制度上の手当てに係るものであります。その内容は、今後さらに詳しく御説明いたす所存でございますが、御理解を得た上で十分な御審議を賜りまして、速やかな成立に至りますよう、この機会お願いを申し上げる次第でございます。  この課題の多い時期に当たり、委員長を初め委員皆様方の一層の御指導、御鞭撻を賜りまして、法務大臣としての重責を果たしていきたいと思っておりますので、どうかよろしくお願い申し上げまして、所信表明にさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  4. 杉浦正健

    杉浦委員長 平成十一年度法務省関係予算及び平成十一年度裁判所関係予算につきましては、お手元に配付いたしております関係資料をもって説明にかえさせていただきますので、御了承をお願いいたします。     ―――――――――――――
  5. 杉浦正健

    杉浦委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。坂上富男君。
  6. 坂上富男

    坂上委員 坂上富男でございます。  この通常国会から法務委員会に所属することになりました。よろしくお願いをいたしたいと思います。  まず第一に、私は、刑事問題になるであろうところの横浜大学大学病院における患者取り違え手術事件についての質問を、刑法的観点からさせていただきたいと思っております。  私の質問が多岐にわたっておりますものですから、私の与えられた時間内に終了するかどうかわかりませんけれども、できるだけ簡潔に御答弁をいただきたいと思います。もし残りましたら、別の機会法案審査の際にも質問をさせていただくつもりでございますので、この点も御理解をいただきたい、こう思っておるわけでございます。  まず、大学病院に対しましては、私たち国民は、医療に対する最高信頼を有しているのであります。万々一の場合は大学病院最高の治療を受けることができるとの安心感信頼を増幅させているのであります。今回の横浜大学病院での患者取り違え手術事件がなされたとの報道は、我々国民に対して激しい衝撃を与えたのであります。大学病院信頼に著しい動揺を覚えたのは私一人ではないと思うのであります。  それだけに、少しでも真相究明のために医学部長の当委員会への出頭を本日要請したのでございますが、そしてその真実を、一端をじかにもお聞きをしたいと思ったのでありますが、いろいろの都合で出頭かなわぬとのことでございまして、まことに残念に思っておるところでございます。いずれまた機会を見まして、刑法的観点からこの問題の解明に当たらせていただきたいと思いますので、出頭方協力委員長初め先生方要請もしておきたいと思っておるわけでございます。  報道によりますと、心臓手術する予定の患者は肺も、肺を手術する患者心臓もまた悪かったとも言われておる。そういう偶然が重なって、執刀前にミスを気づかなかったと新聞報道されておりますが、果たしてこれは真実でございましょうか。私は、多分言い逃れなんじゃなかろうかと思っておるわけでございますが、何しろこれは手術した人、見た人以外はわからぬわけでございまして、一体どんなふうになっているのか、この点も解明をされないと納得できないのであります。あけてみたらここも悪かったから手術した、こういう言い分でございますが、これは本当にそうなんだろうかということでございまして、単なる責任逃れでないか、その証明をいただかなければならないと私は思っておるわけでございます。  そこで、まず厚生省取り違え手術に至るまでの間違ったポイントは幾つかあったと思うのであります。そのポイントポイント注意義務を尽くしておられればこんな結果は出なかったんだろうと思うのでございますが、どういうポイントが幾つあったのか、どこでどういう注意をすればこの事故が起きなかったのか、概略でよろしゅうございます。今調査委員会調査しているそうでございますが、厚生省立場において、どういう点が幾つ問題があって、どういう手抜かりがあってこういう結果になったということをまずお答えをいただきたいと思うのであります。
  7. 小林秀資

    小林(秀)政府委員 お答え申し上げます。  まず、今回の事故に関しましては、横浜市が事故調査委員会を設けておりまして、そこで検討をしていらっしゃるところでございまして、今先生がおっしゃいましたように、どのポイントで間違えたのか、そのポイントが幾つあるのかということについては、まだ私どもでは承知をいたしておりません。今その調査委員会ではいろいろな御指摘がありまして、例えば病棟から手術室への患者の搬送のところの問題、それから手術室交換ホールでの患者受け渡しの問題、それから手術室での患者確認の問題、それから手術継続是非等問題等があるというふうには聞いておるところでございます。  いずれにいたしましても、この検討委員会は三月中に報告をまとめるというふうに横浜市の方からお伺いをしているところでございます。
  8. 坂上富男

    坂上委員 厚生省は何か三月まで報告を待っている、その間にまたどんな事故が起きないとも限らぬわけでございます。国民医療を守る厚生省立場としては、独自の調査をやはりしなければいかないんじゃないの。今言ったような問題点は大体私たちもわかっておりますけれども、それだったら、そんな厚生省から一々報告求めることはないのでございます。もう少し、こういう点に問題点があるということを、厚生省独自の判断がなされなければいかないんじゃないんでしょうか。これは、医療行政に対する厚生省監督責任というのもあるんじゃなかろうかと思っております。  そこで、この点も一つ聞きたいんです。手術の結果、間違った患者に間違った手術をしたということがカルテに書いてあるのかどうか。この点については、これは極めて重要な問題だと思うんですが、厚生省、どう把握をしておるんですか。  それから、文部省大学病院に対する指導監督官庁というふうに思っておりますが、どういう御認識ですか。
  9. 小林秀資

    小林(秀)政府委員 今先生のおただしの、カルテ等にどう書かれているかということについては、まだ承知をいたしておりません。
  10. 遠藤純一郎

    遠藤説明員 今回の横浜市立大学の病院における手術患者医療事故につきましては、医療機関としてあってはならない事件であり、まことに遺憾であると考えております。  文部省としまして、教育病院として医師の養成を担うとともに、地域における中核的な医療機関として、高度な医療を提供するという重要な役割を有する大学病院においてこのような事故が生じたことにつきましては、大学病院に対する国民信頼を損ねかねない重大な問題と考えておるところでございます。
  11. 坂上富男

    坂上委員 特に厚生省要請いたしますが、そんな程度の答弁では、とてもじゃないが国民も納得できないと思うんです。横浜市の調査委員会調査している、その報告を待って何か対応するのかしないのかわかりませんけれども、やはり独自にきちっと、カルテなんてあなたたち押さえて見なければだめなんじゃないんですか。  そこで、事故はオープンにしないとまた再発のおそれがあるということは、これだけ大きく出ているわけです。これは国民の常識です。でありますから、直ちにその原因は、厚生省厚生省独自で、そしてこの事故内容をできるだけオープンにすることが再発防止に私はなると思うのでございます。これはあなた、今直ちに全国の大学病院調査するなんという力がないんでしょう。でありますから、せめて起きたところだけでも早急にやっていただかなければならぬと私は思っておるわけでございます。  さてそこで、警察庁、いかがですか、これは完全なる業務上の過失傷害事件だろうと私は思っているのでございますが、どんな捜査を今どんな形でなさっておるのでございますか。これは的確にしませんと、かつてあの北海道大学の和田手術事件のとき、証拠は随分隠滅されました、あのときは。相当的確な捜査をしなければこの問題の解明に当たられないんじゃないかと思っておりますが、警察当局の決意をひとつお聞きをしたいし、状況もお聞きしたいと思っております。
  12. 深草雅利

    ○深草説明員 お尋ねの事案につきましては、一月十一日、横浜市立大学医学部附属病院において、心臓手術を受ける男性患者と肺手術を受ける男性患者が取り違えられて手術をされた事案であります。  神奈川県警察においては、現在、先生御指摘の点も含めまして、手術担当者等の関係者から事情聴取をするなど所要の捜査を推進中であります。
  13. 坂上富男

    坂上委員 今、捜査完了の日を切ることは無理でしょうが、早急に、ひとつできるだけ国民が納得できるような捜査を遂げていただきたい、こう思っておるわけでございます。  さてその次に、長野オリンピックの五輪疑惑についてちょっと聞きたいと思っております。  これについては監査請求がなされましたが、一カ年間経過をしているゆえをもって監査請求は却下になったと聞いております。何しろ九一年の問題でございますから。それから、焼却された帳簿でございますが、これは公用文書毀棄罪で告発がなされたのでございますが、公用文書でないというようなことで不起訴処分になっておるのも知っておるわけでございます。  さて、この長野五輪の疑惑について、私は、ここ最近の日本のオリンピック委員会の方で調査なさったり報告なさったのも、国民の目から見ますると極めて不明朗で、JOCの調査結果について国民は到底納得していないんだろうと思うのであります。  そこで、まず会計検査院にお聞きをいたしたいのでございますが、会計検査院は、長野五輪疑惑についてこの場合どの程度の検査ができるのか、これをお聞きをしたいのであります。法人である日学センターから平成八年に八千万円、平成九年に七千万円、財団法人長野オリンピック冬季競技大会組織委員会に支出されておる、こういうことでございますから、こういう観点から、会計検査院の調査対象になるんじゃなかろうかと思っておりますが、いかがでございますか。  それから、長野県、長野市、山ノ内町、白馬町の負担金が出されておるわけでございますが、その使途については、さきに一年間の経過によって住民監査請求が却下になってはおりますが、いろいろどうも最近の報告を聞いてみると、IOC委員会のガイドラインを超えた、IOC委員に疑惑のある方は約九名いると言われておるわけでございます。これは最近判明したことでございます。そうだといたしますと、これは明らかな違法の支出でございまして、最近ようよう判明したものでありまするから、地方自治法第二百四十二条第二項に、「ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。」というただし書きがあるわけであります。正当理由があれば、たとえ一年間の期間が経過をいたしましても監査請求の対象になる、こう言っておるわけでございます。私は、こういう観点から、住民監査請求がなされたら、これはやはりこの正当理由に当たって監査請求の対象になるんじゃなかろうか、こう思っておりますので、会計検査院と自治省の方からきちっとお答えをまずいただきたいと思います。
  14. 増田裕夫

    ○増田会計検査院説明員 長野オリンピックの運営主体となりました長野オリンピック冬季競技大会組織委員会、この団体そのものは会計検査院の検査対象とはなっておりませんけれども、先生おっしゃいましたように、この組織委員会には、特殊法人でございます日本体育・学校健康センターからここ数カ年度に総額約二億円のスポーツ振興基金助成金が交付されております。したがいまして、この日本体育・学校健康センターの検査の際に、この助成金交付の趣旨や、組織委員会におきましてこの助成金がどのような使途に使われたかをセンターとしてどのように確認しているか、そういった点について検査を行ってまいりたい、このように考えております。
  15. 鈴木正明

    ○鈴木(正)政府委員 長野オリンピックの招致委員会に対しまして、長野県あるいは長野市を初めとする地方団体から交付金あるいは負担金ということで支出がされております。それにつきましては、監査は行われているわけですが、お話の住民監査請求につきましては平成の四年に行われまして、平成八年に監査委員としての結論が出ているということでございます。  お尋ねの正当な理由ということにつきましては、御指摘のように、住民の方が相当の注意力を持って調査したときに、客観的に見てその行為を知ることができたかどうか、また、それを知ることができたと解されるときから相当の期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきだろう、こういうことでございまして、その点も含めまして県の監査委員においては判断がなされたというふうに承知をいたしております。  なお、この件につきましては、住民訴訟まで行きまして、最高まで行きまして、平成十年に結論が出ておりまして、それにつきましては請求人の請求を退けるという判決でございます。
  16. 坂上富男

    坂上委員 自治省、今言った点、最近やっとわかったことでございますから、私は、この条文を指摘をして、この条文の援用によって監査の対象になるというふうに思っておるわけでございますから、どうぞ自治省の方でいろいろ研究して、裁判になって却下になったからもうだめだ――これは、正当理由というのは、本当に、住民の皆様方調査をした結果、まさかこんなことになっているとはあの当時想像もしなかった、そして今初めてわかったわけであります。だから、監査請求するのは当たり前です。臭い物にふたをするなんというようなことのないように。情報公開法がまだもたついておりましてこれは間に合わぬものですから、地方自治法にのっとって、この適用によってやらせるようにぜひまた自治省の方も御相談の上、もし指導される機会がありましたら私はこの点を指摘したい、こう思っております。  その次、検察庁、法務省にお聞きをいたします。  今回、違法の支出があることは報告によって明らかであります。私は、これは刑法の背任罪に当たるんじゃなかろうかと思っております。それから、帳簿の焼却でございますが、これは公用文書というよりも、背任罪に対する証拠隠滅罪に該当するんじゃなかろうか。九一年、九二年中の行為であるので、時効になっているという問題点はあります。しかし、IOCの委員に対する違法支出は日本国内において行われたものであります。したがいまして、日本の刑法の適用の対象者であります、外人であっても。その上、外国人であるから、外国にある場合は時効停止の効力があります。私は、犯罪としては、歴然として背任、証拠隠滅に該当するのでなかろうかと思っておるわけでございます。  したがいまして、昨日夕刊の報道するところによりますと、アメリカのソルトレーク五輪招致疑惑でございますが、米議会も検査、それから捜査当局は贈収賄罪、これはどういう形で贈収賄になるか私はわかりませんが、適用を検討していると報じておるわけでございます。  検察も、国民信頼にこたえるという観点から、ぜひひとつそういう観点でこの問題は法律検討すべき十分な余地があるんじゃなかろうか。何か、やはりきのうの夕刊を見ておりますと、関係者皆様方検事総長に対して、もう一遍やり直してくれないかという陳情といいますか要請も出ておると聞いておるわけでございまして、どうも、これは民間の任意の行為であるからこれ以上手が染められないというようなことになったら、私は国民のオリンピックに対する信頼というのを大変損なうと思うのであります。でありまするから、この内容というものをきちっと国民の前に明らかにすることが必要なんじゃなかろうか。  そうだといたすならば、こういう問題を明らかにする手段といたしまして会計検査院はどうか、あるいは自治省の住民監査はどうか、法務省の、いわゆる検察庁の刑法罪の問題はどうかということは、あらゆる角度から検討されて、それでもだめだというんならこれは仕方がありませんけれども、やはり可能な限り的確に検討をいたしまして、国民の疑惑にこたえるのが義務だろう、こう私は思っております。あるいは私の意見は少し時代離れしているかなとも思います。現実離れしているのかなと思いますが、しかし、アメリカの話を見たりあるいは地元のお話を聞いてみると、これはやはり放置できないんじゃなかろうかと思っておりますが、いかがでございますか。
  17. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 長野五輪の招致にかかわる事項について、先生お尋ねのように、さまざまな議論がなされ、また報道がなされておることは承知しております。  ただ、お尋ねは一定の状況を想定して犯罪の成否いかん、こういうことにかかわるかと思いますが、具体的事案において犯罪成立するかしないかということは、捜査機関が収集した証拠に基づいて最終的には判断されることというふうに考えております。  また、時効の点について言及されておりますが、確かに、背任罪ということでございますと時効期間は五年でございます。それから、お尋ねの中にありました証拠隠滅罪の公訴時効期間は三年ということでございます。  ただ、時効の停止の規定が先生御指摘のとおりございます。例えば刑事訴訟法の二百五十四条二項には、「共犯の一人に対してした公訴の提起による時効の停止は、他の共犯に対してその効力を有する。」とありますし、同じく二百五十五条一項でございますが、犯人が国外にいる場合には、時効は、その国外にいる期間その進行を停止すると規定しておりまして、これらの場合には時効が停止するものということは御指摘のとおりでございます。  この件に関しましてさらに刑事事件として取り上げるべき事項があれば、検察は適切に対処するものと思っております。  以上でございます。
  18. 坂上富男

    坂上委員 ぜひひとつ、検察はできる限りの知恵を出して、厳格な法の適用を期待をいたしたいと思っております。ひとつ、三省庁ともに要請をしていきたいと思います。  それから、ちょっと話が違います。もう関係者、お帰りになって結構でございます。  水道管の談合事件でございます。これはもう大変な事件なのじゃなかろうかと思っておるわけであります。私は新潟県の出身でございますが、新潟県の地方自治体、すべてこれにかかわって影響を受けているんじゃなかろうか。まさに地方自治体は被害者でございます。こういうような状況が三十年、四十年間にわたって行われてきた、こう言われておるわけであります。したがいまして、その反射的効力といたしまして、地方自治体はこれに対する損害、被害を受けている、こういうことになるわけでございますが、そういう認識でいいのでございましょうか。公取、いかがです。簡単にどうぞ。
  19. 平林英勝

    ○平林政府委員 二月四日に公正取引委員会が鋳鉄管メーカー三社を告発いたしましたけれども、この事件内容は、三社が全国市場につきましてシェア協定をしてきたということでございますし、鋳鉄管というのは御承知のように水道に使われる資材でございますので、国民生活に極めて密接な関係を有する資材であるということでございますので、ユーザーであります全国の自治体にもそれは何らかの影響が及ぶというふうに考えられることは、御指摘のとおりではないかと思います。
  20. 坂上富男

    坂上委員 それから、警察にもう一言お聞きをいたします。  茨城県で中三の児童が殴打によって死亡した事件がございます。これは、警察捜査当局は素手でやられたんだ、こう言っておりますが、何か死体解剖の結果、どうも凶器によるところの痕跡が残っておる。そこで、遺族の方が再調査要請をいたしましたら、それはだめだというようなことを言われたということが新聞報道で数回出ておりまして、これもまた本当に大変なことでございますが、警察当局、これに対する再捜査、どんなふうに考えていますか。
  21. 村上徳光

    ○村上説明員 お答え申し上げます。  お尋ねの件につきましては、御遺族の方から警察に再捜査を求める要望書が出されていることは承知しております。そして、今回出されました要望書の随所ににじみ出る御遺族の悲しみには余りあるものと推察されるところであり、このような要望書が出されたことにつきましては、これまで警察として、必ずしも十分な説明を御遺族の方に尽くしていなかったのではないかとも思われるところでございます。茨城県警察におきましても、このような御遺族のお気持ちを真摯に受けとめ、その心情に配慮しつつ、さらに十分な捜査状況説明を行うなど、適切な対応をとってまいることとしているところでございます。  なお、茨城県警察からの報告によりますと、当時、目撃者、被疑少年や被害少年の友人、学校関係者等からの事情聴取、事件現場の実況見分、司法解剖等、要望書で指摘がなされたような点につきましても十分に勘案した所要の捜査を行ったものと承知しております。  現在のところ、再び捜査をしなければならないような状況にはないのではないかと考えておりますが、さらに検討を加えてまいりたいと考えております。
  22. 坂上富男

    坂上委員 きょうの新聞ですか、きのうの新聞でも出ていましたね。鑑定結果が出る前に捜査が終わったなんというようなことで、いかぬじゃないかと出ておりました。ぜひひとつこういうことも踏まえまして、遺族の気持ちも踏まえまして対応していただくことを強く要請をいたします。  いま一つ、新潟の毒物事件。二日前でございましたか、夕刊の見出しに、毒物犯人逮捕、ばんと出ておる。びっくりしたわけでございます。それからまた、地元の新聞でございますが、立件協議、こういうふうに書かれておるわけでございます。  しかし、いわゆる犯人と目される人の供述によると、焼却炉に容器を投げ込んだ、また変わって川の中に投げ込んだ、川の中を捜査をしてみたら、どうも容器が出てこなかったというようなことであるが、供述から見ると大体確信を持ったのじゃなかろうか、こう言われておるわけでございますが、まず犯人を逮捕したのでございますか。それから、一体どういう見通しなのですか。簡単に。
  23. 深草雅利

    ○深草説明員 お答えいたします。  犯人はまだ逮捕いたしておりません。それから、捜査状況につきましては、現在、新潟県警察において、刑事部長以下百二十九名体制の捜査本部を設置し、事件関係者からの事情聴取、発生現場に対する検証の実施、遺留品発見のための捜索の実施、毒物入手ルートの把握分析、証拠資料についての綿密な鑑定分析など、多岐にわたる捜査を着実に進めているものと承知しております。
  24. 坂上富男

    坂上委員 できるだけ捜査の進展を期待いたします。  いま一つ、法務局はコンピューターのためにバックアップセンターをつくる、こういうふうなことになっておるわけでございます。新潟では、新潟霞が関構想として官公庁を全部一カ所に集めて、いわゆる新潟霞が関をつくる、こう言われておるわけだ。もうこれは言い出してから七、八年たっているのでございますが、法務局はそこへバックアップセンターをつくろうと思ったけれども、とうとう間に合わなくて、別のところをお借りしてバックアップセンターをつくられたそうでございますが、一体、建設省、これは本当にきちっとやる方針があるのでございますか。やるがごとく、やらぬがごとく、まだ建物の建設に入るというような事態がないのでございますが、どんな計画になっていますか。簡単でいいです。
  25. 田村至敏

    ○田村説明員 お答えいたします。  お尋ねの新潟第二地方合同庁舎につきましては、新潟県庁に隣接する網川原地区に、新潟市内に散在いたします法務省裁判所を初めといたします国の機関の出先を約三十官署ほど集約合同化する大変大規模なプロジェクトでございます。この庁舎は、県庁とともに当地区の中核施設としての役割が大変期待されているところでございます。  この合同庁舎整備に必要な敷地は五万五千平米でございまして、平成七年度にそのうちの二万三千平米を取得し、その後、平成九年度までに約四万三千平方メートル、全体面積の七八%の取得を行ってきております。平成十年度におきましても引き続き用地取得を進め、平成十一年度を目途に予定敷地の取得を完了することとしております。  この間、庁舎の建設計画につきましては、平成六年度以降、敷地調査、また基本的な庁舎整備方針の検討を行ってきております。平成十年度におきまして、これら調査検討を踏まえ、合同庁舎に入居する各官署の諸条件を考慮した検討作業に着手したところでございます。  今後、地域の町づくりとの整合性を図りつつ、平成十二年度以降できるだけ早期に着工できるよう努力してまいる所存でございます。
  26. 坂上富男

    坂上委員 土地の買収に百億ぐらいかかっておるという、大変な資本の投入であることもわかっております。なかなか容易じゃないということもわかっておるわけでございますが、平成十一年度中に土地の買収が終わりましたら、平成十二年からぜひひとつ建設に向けまして努力をお願いしたいし、我々もバックアップしたいと思っております。新潟は、このまま更地にされたままになったら荒廃します。一番大事な場所を不動産屋と同じようにただ土地だけ押さえて放置しておるような、そんな状態では許しがたいです。これ、場合によっては、私は別の、予算委員会でもきちっと指摘をしなければならぬ問題かなとも思っておりますが、ひとつ省庁の方では頑張ってください。私たちもバックアップいたしますから。ありがとうございました。  さて、今度は大臣にお聞きをいたします。まず、法務省人権擁護局廃止問題でございます。  さっきの大臣の所信表明にも出ておりますが、昨年は世界人権宣言五十周年の記念すべき年でありました。国連を初め世界各国で、世界人権宣言の持つ意義を再確認し、二十一世紀を人権の世紀とするために、各国政府は人権の保護と伸長に向けたたゆまぬ努力を推進することを表明しているわけでございます。大臣、人権擁護行政を所轄する法務大臣として、まずこの人権擁護についての御認識をお伺いしたいのであります。  最近、国連の場で、日本の人権擁護行政の現状について多くの注文がなされております。例えば、昨年の五月、国連子供人権委員会での日本政府報告に対する最終意見や、昨年十一月の国連規約人権委員会での日本政府報告に対する最終意見では、人権委員制度の不十分さ、裁判官などの法曹界の人権教育充実強化政府からの独立した国内人権機関づくりの必要性など、具体的な点が指摘をされておるわけであります。  この中のたった一つだけ、嫡出子でない子供たちについて今度は相続権を平等にしようという法案が出されるようでございまして、これ一つだけはこの期待にこたえているようでありますが、これ以外はまだ完全なものになっていないんじゃなかろうか。  こういうような国際社会要請について、法務大臣、まずどうお考えでございますか。  そこで、私は本当にこれはえらいことだと思っておりまするのは、法務省は、中央省庁改革に対する大綱の中に、人権擁護局は廃止なんですね。確かに、民事刑事、そういうところを廃止することは容易じゃありません。人権というのはなかなか、見方によっては抽象的な問題でもあるんですね。だものだから、廃止をすることも簡単。  そこで、法務省は何をおっしゃっているかというと、何か人権推進本部をして、法務大臣が本部長だから、前の局よりもいいんだというようなことを説明なさっておりますが、これは私は言い逃れじゃなかろうかと思っております。  基本的人権を守る、これは本当に憲法の基本でございます。そうだとするならば、こういうような問題につきましては、まさに言われておりますとおり、政府から独立した国内人権機関整備を図るべきだと私は思っているわけでございます。また、人権教育、それから啓発行政、少なくとも法務省から切り離して、あるいは内閣府が所管をする、そういうような意見もあるわけでございます。  しかし、私は、どっちにしたらいいかわかりませんが、法務省は一番人権感覚にすぐれていると期待をしているんです。ほかの諸君のところで中途半端なことをされるよりも、いかに基本的人権が大事であるかということの認識は、法律の専門家が一番御存じなんだろうと私は思っておりますから、必ずしも内閣の直轄にしたからといって、どれだけの力が発揮できるかわかりません。しかし、何しろ法務省は、予算の制約がございますものですから、なかなか皆さん大変だ。上の方から、局を一つ減らせ、こう言われると、ついやはり人権が犠牲になる、こういうような事態。  しかし、これは何事をおいても守らなければならない憲法上の基本的人権なんです。これがまだ完全に守られていないというのが国民の意見なんです。その守られていないところの人権局をここへ来て廃止をするなんというのはとんでもないことなんじゃなかろうか、実はこう思っておりますが、大臣、この二、三点、ひとつ御所見と対応を聞かせてください。
  27. 中村正三郎

    中村国務大臣 人権問題は、内閣が取り組むべき、憲法の定めによる極めて重要な施策であるということは、先生と私、考え方が同じであります。今先生が御質問の中で言われました。私も、個人的に聞かれれば、この人権問題というものは、一法務省が取り組むよりか、内閣府等で内閣全体として取り組むべきものかなとも思うわけでありますが、現実は法務省で所管をしております。  そこで、人権擁護局にかわって人権擁護行政を担うべき組織をどうするかということは、現在、中央省庁等改革推進本部との間で検討を進めておりまして、その内容はまだ確定しておりません。ただ、報道にあるようなことも検討されております。  また、中央省庁等改革基本法では、人権擁護行政充実強化を求めておりまして、八年十二月に制定された人権擁護施策推進法においても、人権啓発及び人権被害救済の施策を推進することは国の責務であるということが明記されているところでありますので、組織の再編に当たっても、人権擁護行政がいささかも後退するような方向では考えておりません。むしろ、先生の言われたような、内閣全体で取り組むべき重要な問題だというような方向性を持って組織の改革に努めてまいる方向に進んでまいると思っております。
  28. 坂上富男

    坂上委員 これは大臣でなくて結構ですが、一体人権擁護局は、今職員は全部で何名ですか。これは、今度本部になりましたら一体何名になるんですか、ふえるんですか、減るんですか、この点、簡単に。
  29. 但木敬一

    ○但木政府委員 人権擁護局についてお尋ねでございます。  人権擁護局は、人数そのものは非常に少なくて、二十名前後でございます。ただし、御案内のとおり、全国には人権擁護委員の方々が一万数千人おられる、こういう組織でございます。  本部の構想につきまして、それによって本部員あるいは本部の職員がどのぐらいの数になるのかというようなお尋ねでございますが、人権擁護行政をこれから担います組織については、現在、中央省庁等改革推進本部と鋭意検討中でございます。その方向につきましては、ただいま大臣が申しましたように、決して後退するような方向でその改革が行われるとは私どもは考えておりません。  ただ、具体的に人数がどうなるんですかというお尋ねでございますが、組織そのものがまだ不確定でございますので、その点は、何人ということは申し上げかねるわけでございます。
  30. 坂上富男

    坂上委員 もう一点大事なことは、どうして局を廃止しなければならぬのか、どうして本部にしなければならぬのか、これもどうも法務省としては言いづらい答弁だろうと思うのでございますが、やはり省庁、局を一つ廃止せい、それでそのやり玉に上がったのが実態じゃなかろうか。そうだとしても、これを利用して、もっと人権のための対応を拡充、さらに発展をさせるというところまでいけるのかどうか、私は、動機はやはりそんなところだったんだろうと思うのですよ。  しかし、私は、やはり法務省としてはもう仕方がないかなと思ってこうされたと思うのでございますが、皆様はそれでいいのでございますが、果たして人権救済を求める皆様方にとっては、拡充、充実こそ期待をしているのであって、何か、このことによって廃止をされる、減らされる、弱体化する、こういうようなことになったら、まさに世界の人権宣言に反する事態になるんじゃなかろうか。もちろん御答弁では、今後強力な折衝によって期待にこたえたいとおっしゃいますけれども、まず出発そのものに問題がありそうな感じがするんでございますが、いま少し御答弁をいただきましょうか。
  31. 但木敬一

    ○但木政府委員 委員御指摘のとおり、行革で一局削減という問題が一つ出てきていた、それも決して否定するところではありません。しかし、人権の問題は、実は全然別の問題でございまして、人権が今後扱うべき問題というのは非常に大きくなってまいります。  先ほどの人権擁護推進審議会というのができておりまして、この審議会は法律で設立した審議会でございますが、ここでは、人権教育、人権啓発、それと被害者の人権救済というようなことにつきまして、二十一世紀に向けて大きな計画を立てなさいということで、その審議会が現在審議中でございます。その内容も、人権救済となりますと、例えば、法務省でも、検察庁を持っている刑事局、あるいは入管局を持っている入管局、それから矯正施設を持っている矯正局、こういうようなところは権力機関でございまして、ある場合には、むしろ人権救済を求めるのがその権力を行使されている方ということになる場合もございます。  つまり、今後の人権擁護行政というのは、各局に対して平等ではなくて、むしろ、人権擁護施策の方がそうした権力諸機関に対しても一つの監視的な作用をしなければいかぬ。それも、二十一世紀に向けてどういうふうに人権擁護救済制度を構築していくかというようなことを考えますと、いわゆる横並びの局という形では今後の人権行政はやっていけないというような発想がございまして、それで、局という姿ではない姿というのを考えざるを得なかった。これは、先ほど委員御指摘の行革一局削減ということと必ずしも同じではございません。全く違う側面から、現在の人権擁護局の体制では今後の人権擁護施策はできないというふうなことから組織改編というのを発想してまいったわけでございます。
  32. 坂上富男

    坂上委員 この問題はまたのとき指摘させていただきます。  あわせまして人権擁護推進審議会の答申等について御質問したいのでございますが、これは少し時間がかかりますので、また、近く裁判官増員問題等審議もありますので、その中で人権と裁判の関係観点からも質問をさせていただきたい、こう思っておりますので、この点の質問は留保させていただきたいと思っております。  それで大臣、新聞によりますと、選択的夫婦別姓について大臣は、どうも反対する自民党側を説得したいというようなことも出ておりますが、説得状況はどんな状況でございますか。
  33. 中村正三郎

    中村国務大臣 これは、この間予算委員会でもお答えさせていただいたんですが、政府の方針として、男女共同参画社会実現へ向けて努力をしようと、その本部ができておりまして、総理大臣を中心に全閣僚が入った審議会がございまして、そこの行動計画の中に、夫婦別姓を推進する、それは法務省でやれということが明記されているわけであります。そういう中で、私は、法務省として、法務大臣として推進すべきものと認識して動いているわけでございます。  さはさりながら、これは非常に広範な御意見がございまして、もう委員十分御存じの上で御質問だと思いますが、政府でやりました世論調査によりましてもいろいろ複雑である、また、国会においても御意見がいろいろある。そういう中で、これを実現するためにはどうしたらいいかということを考えた場合には、やはり国会で御論議を深めていただいてある方向性を出していただく以外にないんじゃないかと思いまして、与党にお願いしましたところ、与党の法務部会長は、やってみようと。森山眞弓先生を小委員長としてやってきておるのでやってみようというので、森山先生にこの間お話しいたしまして、ひとつやってみましょうということでございますので、私は、これは党でやることですから余り口を出してはいけないわけですが、恐らく広範な与野党の間の話し合いも持っていただけるんじゃないか。そういう中で、どういう法律案なら今国会を、これは国会を通らなければ法律にならないわけでありますから、という御検討をしていただけるものと期待しているところでございます。
  34. 坂上富男

    坂上委員 この点はぜひ大臣に期待をいたしたいと思います。場合によっては、私らの方も参議院の方で参法として出した方がいいのかなとも思っておりますが、あらゆる観点からひとつ御検討と御努力を期待いたしたいと思っております。  余計なことでございますが、昨年の七月の参議院の選挙、自民党さんの方が少し成績がよくなかった。その原因の一つに、いわゆる無党派の諸君が選択的夫婦別姓に対する自民党の態度についても随分批判をしたその結果だとも言われております。若干その点、自民党さんの方はそういう観点を頭の中に入れられまして中村法務大臣の発言にもなっているのかなとも思っておるわけでございますので、どうぞひとつ、私が申し上げていることがもう国民的な議題になっておるのじゃなかろうかとも思っております。特に誤解があるのは、選択的という言葉が吹っ飛んでおりまして、結婚すればもう別姓になってしまったんだというようなこともありますが、幸いにして、おととしでしたか、二日間にわたりまして衆議院で審議をしていただきました。非常に理解をいただいたわけでございまして、私は、採決もそうでございますが、やはり議論、これが大事なんじゃなかろうか、こう思って、ふたばかりしておったのでは何が何だかわからなくなりますので、御期待をいたしたいと思っております。  大変恐縮でございます。昨年の暮れ、大臣に苦言を呈しました。  そこで、まず大臣、和歌山の毒物事件、それからオウム事件の弁護活動について大臣はいろいろと意見をおっしゃいました。一体、この意見は取り消されたのかどうかまずお聞きをしたいなと思っておるわけでございます。取り消したとするならば、どこでどう取り消したのか。この部分についてはどんなふうに御理解をしておられるのでございますか。
  35. 中村正三郎

    中村国務大臣 これは、法務省の内部の幹部を集めた新年の祝賀会で、私が、司法制度改革をやるべき年だから皆で頑張ろうというような話をいたしましたときに、私がと申し上げたわけではないんでございますが、私の発言の中に、国民の間に弁護士に対する不信感があるというようなことを私が印象づけるようなことを申し上げたということは極めて不適切なことであったということで、閣僚協議会でおわびをして、取り消しをさせていただきました。また、この間、同趣旨のことを予算委員会でも申し上げた次第でございます。
  36. 坂上富男

    坂上委員 あるいは予算委員会の記録の私の見落としかもしれませんが、弁護士に対する評価についてのお話は予算委員会でなさらなかったんじゃないかと思います、憲法第九条等に関連してお話しになったんであって。  実は、予算委員会で私にやれと言われたんですが、私はちょっと遠慮したんです。そうしたらまたぶつかりまして、余り気持ちいい話をしているわけではありませんが、しかしまた大変重要なことでございまして、大臣はこうおっしゃったんですよ。  弁護士に対する国民信頼が非常に揺らいでいるということであります。私も事業をやっていましたが、弁護士に頼むとなかなか受けてくれない仕事がある。そんなのをやったってだめですよ、むだですよとなかなか受けない。そして、刑事の弁護において、最近、和歌山やオウム事件を通じて、国民の中には、弁護士ってあんなひどいものだったんですかという感情が芽生えているのは事実であります。こう感じているのは私だけでないと思います。こうおっしゃっているんですね。  これは、閣僚会議の席上で取り消した、こうおっしゃっておりますが、国民の前に取り消したことになるのかどうかわかりませんけれども。  私は、まず申し上げたいのは、これらの先生方は弁護人の任務としてきちっとやっておられるんですね。殊に、オウム事件などは国選弁護なんですね。国選弁護というのは、嫌でも命ぜられたらやるというのが弁護人の責務なんですよ。したがいまして、もしこれについて被告人が、弁護のやり方がまずい、こう言われますと、損害賠償を起こされるという事態だって起きているんですね。国が国選弁護をつけるというのは憲法の規定なんですね。  でありまして、こういう事件があります。控訴審で、弁護の価値なし、控訴の理由なしと言った弁護士の弁護がありました。そういたしましたら、これは弁護人としての職責を尽くしていないということで、この国選弁護人は損害賠償の対象になって、三万円だか弁償されました。それから、もう国選弁護は私は耐えられないから勘弁してくれと言っても、裁判所はお許しになりませんでした。  それほど弁護士というのは、あるいは被告人は全国民から非難をされようと、この被告人のために、弁護人一人といえども弁護するのが弁護士の任務なんですね。その任務に基づきまして、例えば和歌山事件などは勾留開示の申し立てをする、あるいは黙秘権の告知をする、これは弁護士行為としては当然なことなんですね。それからまた、オウム事件も国選弁護人で、ほかのことを大分犠牲になさってやっていられると思うんです。  このオウム事件の批判をするような方、時たまあるんです。あるんですが、だれもいなかったら、今度は私が出なければならぬ場合だってないわけじゃないのでございまして、もう本当にみんなが、弁護士同士が国選弁護をやっておる先生方をバックアップするぐらいのことでなければいかないのでございます。でありまするから、これらの事件について法務大臣がこういう御指摘をなさるということは、いかに取り消されたといえども、これはちょっと問題のある発言でなかったかなと私は思っているのです。弁護士制度に対する御理解をいただいているんだろうか。弁護あって初めて民主主義があるんだろうと私は思っているわけでございます。これがやはり憲法の規定なんじゃございませんでしょうか。私は、決してその責任を問うているわけではございませんけれども、そんなふうに考えております。  あわせまして、いま一つは、中村大臣は財産家でございますから、いろいろトラブルが起きることも決して理解はできないわけではありません。事件をやってくれといって僕らも頼まれることがある。しかし、これはやらぬ方がいい、費用がむだですよ、これはやっても裁判負けますよ、こういうのはしない方がいいと言うのは、これはなかなか弁護士が言うことは勇気が要るのです。ああ、そうか、そうか、じゃ、これだけ出してください、弁護やりますよ、まあ私たちあるいは負けるかも、負けるであろうということをわかっていながらやる場合だってよくあるわけですよ。でありますから、大臣がおっしゃったことはどの先生かわかりませんけれども、かえってこういう先生ほど信頼に値する先生なんじゃなかろうかと私は実は聞いておったわけでございます。  大臣、そんなような観点から、これは本当に重要な憲法上の問題にも及んでいるんじゃなかろうかと思っておりまして、いわゆる司法関係のある大臣のお言葉としては、非常に私自身、率直に言って残念でございます。率直な御意見を賜りたいと思います。
  37. 中村正三郎

    中村国務大臣 まさにおっしゃられるとおりだと思いまして、私がこういうことがあるということを指摘したわけではございませんが、国民の間にこういうような意見があるようなことを申し上げるということは、まさに不適切であり、先生の今のいろいろなお話を伺い、認識をさらに深めまして、こういう発言については改めて撤回をし、おわびを申し上げる次第です。
  38. 坂上富男

    坂上委員 これ以上私は申し上げませんが、私たちは、法務大臣というのは大臣の中で一番信頼をしておる大臣だと私は理解をしておるわけでございますので、ぜひひとつ、その責任が極めて重大であることも再認識お願いいたしまして、対応していただきますこともお願いをしたいと思います。  さて、残り少なくなりましたが、防衛庁がおられると思います。東洋通信機、ニコー電子水増し事件、これを私はずっと、昨年来から予算委員会、安保等で取り上げてきた問題でございまして、大詰めに来たようでございます。どうも、これによりますと、検察庁のいわゆる背任罪の金額と、東洋通信、ニコー電子への損害賠償請求金額が著しく食い違ってきたわけでございまして、防衛庁にしては極めて勇気のある請求をしたなと私は実は見ておるわけでございまして、東洋通信機にニコー電子、このいわゆる請求金額についての認識をひとつお聞かせいただきたいと思います。  それで、検察の方では、防衛庁の言うておる金額といわゆる被害額の認識に随分差が出ておりまして、数倍になっておるのじゃなかろうか、こう思っておりますが、これは後刻、訴因の変更でもなさる予定なんでございましょうか。この辺のお話もいただきたいと思います。  何かきょうの報道によりますと、ニコー電子は、全額返済をいたします、こう言っているようでございます。東洋通信機は、しないわけではないけれどももう少し対応を見てみたいな状況のようでございますが、防衛庁、実態がどんなになっておるのか、検察庁、どういうふうな訴因変更の対応をされるのか、お答えをいただきたいと思います。
  39. 及川耕造

    ○及川政府委員 先生御指摘のとおり、私どもは二月の五日に両社に対しまして納入告知をしたところでございまして、その金額は、元利合計でございますが、東洋通信につきましては損害額約六十二億円、それからニコー電子につきましては約三十一億円、そういうふうに算定しているところでございます。  東京地検におかれて起訴に当たりまして算定された方法等については承知しておりませんけれども、防衛庁の算定額との差額につきましては、恐らく、遅延利息の算定期間等が異なることや、私どもが今回算定いたしましたものが予定価格訓令を最大限厳密に当てはめて計算したことなどによって生じたものではないかというふうに考えているところでございます。  それから、現在どのような両社の回答かということでございますけれども、納入告知後、これまでの間におきまして、東洋通信機につきましては納入がない状況でございますので、昨日、督促状を手交したところでございます。他方、ニコー電子からは即決和解による納入の希望が寄せられておりますので、現時点では督促は行っていないところでございます。  以上でございます。
  40. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 お尋ねの、防衛庁の返還請求額が、東京地方検察庁が公訴事実として認定した過払い相当額を大幅に上回っていることは承知しております。  防衛庁における算定方法の詳細は承知していないところでございますが、その差が生じた理由は、ただいま装備局長が御答弁した内容によるのであろうと聞いております。  いずれにしましても、東京地方検察庁は、本件につきましては、刑事裁判において必要とされる厳格な立証の観点、それから、少なくとも生じていると認められる損害賠償額を、いわばかたく認定して起訴したものと考えておりまして、この額と防衛庁の算定額に差があることに矛盾があるということには必ずしもならないと思います。  また、具体的事件の訴因の変更の要否の問題をお尋ねでございますが、公判を担当する検察官におきまして判断すべき事項でありますので、ここで具体的に申し上げるべき性格のものではないと考えますが、一般論として申し上げれば、検察当局においては、公判の推移に応じて法と証拠に基づいて適切に対応するものと考えております。
  41. 坂上富男

    坂上委員 時間が来たようでございますから終わります。  そこで、実は質問を予定しておりました司法制度改革審議会、それから法律扶助制度、それから被疑者弁護制度、陪審・参審制と法曹一元、それから人権擁護推進審議会、こういう点等一部残ったのでございますが、法案審議等の機会もあるようでございますからその際に譲りまして、本日この程度の質問をさせていただきました。ありがとうございました。
  42. 杉浦正健

  43. 福岡宗也

    ○福岡委員 民主党の福岡宗也でございます。  きょうは、今国会の最初の法務委員会でございますので、いろいろ聞きたいことはたくさんございますけれども、基本的な問題についてだけ御質問を申し上げたいというふうに思っております。  ただいま、法務大臣から法務行政所信についてお伺いをいたしたわけでございます。この中でも各論的に具体的な施策について述べられておりますけれども、それは後日に質問をすることといたしまして、本日は、基本的な考え方についてだけ二、三御意見を申し上げた上で、また御質問もいたしたいというふうに思うわけでございます。  この中で、法務大臣が述べられました基本的な考え方といたしまして、法務行政というのは、適正、公正な法の執行をなすことによって主権者である国民の人権と暮らしを守ること、それと同時に、法秩序維持をすることを目的として推進をしなければならない、こういうふうに述べられております。まさにそのとおりだろうと思うので、賛意を表するものであります。  しかしながら、具体的な施策を実施するという場合については、どちらにより比重を置くかということによってその施策内容は大きく異なってくる。場合によっては、これは矛盾をするという場合もあり得るということでございます。法秩序治安維持ということは法治国家において極めて重要であり、まず第一義的にこれを図る必要があることはもちろんでありますけれども、その意義、必要性を強調する余り、主権者である国民一人一人の人権を国家権力によって侵害してしまうというようなことになってしまっては、民主国家としては、角を矯めて牛を殺すのたぐいのことになるわけでございます。したがって、十分にこの辺の配慮はなされなければならないわけであります。  この点につきましても、法務大臣は、きょうの所信の中ではこのように言っておられます。元来、民主主義を基本とする憲法のもとにおいては、国家機能は、その基礎を国民に置いておるものである、したがって、国民生活向上のための役割を担っておる法務行政がその役割を十分に果たすためには、改めて国民の視点に立って、何が国民利益になるのかということを念頭に置いて改革していかなければならないと述べられておるわけであります。これもまた全面的に賛成です。  すなわち、法秩序維持すると同時にというよりも、法秩序以上に、むしろ民主国家においては、主権者である国民一人一人の人権が守られることによって民主主義、特に公正な選挙も行われるでしょうし、それから公正な議論も闘わされて思想、信条の自由も保障される、こういうようなことになるわけです。だから、基本的な理念というものについてのその御主張は、まさにもっとも、そのとおりだというふうに思うので、ぜひともこのとおりに推進をしていただきたいというのが私の率直な総論部分についての意見でございます。  特に、先ほど同僚委員の方からも御指摘ありましたように、人権擁護というものは、我が国のみならず、民主国家において国際的にもまず第一番に守るべきこととして、人権宣言であるとか人権規約、子供の権利とか女性の権利の問題とか、いろいろなものによって強く求められており、国際的にも、我が国はこれを批准しておるのだから、義務を負っているということでございますので、やはりこの基本方針は堅持をするという形を忘れないでいただきたい。これは要望でございます。  ただ、残念なことは、本日のこの施策、具体的な各論の部分を見ますと、総論部分と必ずしも合致していない。むしろ、治安と秩序の優先ということで、個人的な、国民一人一人の人権の問題というものについての項目というのがほとんど見当たらない、そういう配慮がないということ。  それからさらには、現在提出されておる諸法案の中でどういう法案が多いかといいますと、国民権利を、先ほどの人権の問題も、まあ民法の改正の問題なんかは人権の問題なので、法律案はありますけれども、それよりもむしろ、社会的な病理現象的なものが起こってきます、凶悪な犯罪もそうでしょうし、少年事件犯罪もそう、それからさらに商法上のいろいろな犯罪もそうでしょうけれども、起こってくるときに、対応としては、ここ数年の傾向としては、まず新しく罪を創設する、さらにまたそれを厳罰にするということが図られてくるわけであります。それに対する、反面の人権がどのように侵される危険性があるかという問題については、二の次になってきておるという傾向があるわけであります。  そして、今回の施策のところを見ましても、一から三までは、先ほども御主張でありますけれども、司法制度改革についてということもそういう方向の改革と読めるわけでありますし、二のところの民事刑事基本法についての改正もそうですし、それから第三の、治安確保及び法秩序維持についてということも、まさにそういうような視点からの改正なり改革というふうに読めるわけであります。  しかしながら、先ほども言いましたように、こういう病理現象を取り締まったり治安維持のために、どうしても必要な場合はありましょう。その場合でも、やはり基本は、それによって損なわれる人権の侵害というものについて適切な対処をする、きちっと整合性のある法律をつくるというところにあるわけであります。  そこで、大臣にお伺いしたいのですけれども、いろいろな法律案が出されておりますけれども、人権の保護という立場に立って、国会審議の場において、いわゆる人権擁護というものとのバランスの上に立った法律案の策定、そういうような基本姿勢でこれらの法律案について、または施策について国会で討論をされるという姿勢があるかどうか。この辺のバランスの問題について、率直なお考えをお伺いしたいわけであります。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
  44. 中村正三郎

    中村国務大臣 私の考え方は、基本的に委員の考え方と全く同じでございます。  それで、私の所信が、やや具体的施策と前文で、バランスの関係を御指摘されましたけれども、前文のところは、私自身が書いたものであります。そういう気持ちを込めて書きました。後の部分は、私が目を通して作成したものですから私の責任でございますが、今国会においてお願いすべき法律案処理とかそういうところに力点が置かれ、また司法制度改革に取り組むべき姿勢、そういったものを強調いたしましたので、お受け取りになったようなニュアンスがあったんだと思います。  私は、最初に委員が御指摘になったところが一番重要な点だと思っておりまして、法秩序維持とか社会正義の実現ということと人権問題というのが、場合によっては相対立する概念になるんじゃないかということでありますけれども、日本は民主主義国家であり、民主主義憲法があり、国民が正当に選挙された国会議員をもって行動するということになっておりますから、多数決の原則があります。だけれども、人権を擁護すべき人が必ずしも多数の中にはいないわけであります。  であるからこそ、あるときには民主主義の多数決の議論と相反するところで人権を擁護しなきゃいけない。だから、人権というのは啓蒙が必要であり、理性の部分において人権を擁護することを常に考えなきゃいけない。そういう理念に立って私はいつも行動しているつもりでございます。そういうわけで、今の委員の御指摘と同じ考えで、常に人権を重んじ、大切にするという観点から仕事をしていきたいと思います。  ですから、私は法務大臣になりましてすぐ、検察庁の幹部も集めまして、国民を起訴するのも、そして逮捕するのも、すべてそれは何のためにやっているんだ、それは、国民の基本的人権を守り、そして国民権利を守り、法秩序を守る、そのためにやって、結果的に国民生活向上させるためにやっているんだ、そういう観点に立ってやれ、そのために小渕総理が国会から選ばれて総理大臣になり、私を指名して、私が国会を代表して法務大臣になり、その指揮下にあるということを明確に意識して仕事をしてくれということを申し上げました。そういうことを今も変わらず、先生の御指摘をよく旨として仕事をしてまいりたいと思っております。
  45. 福岡宗也

    ○福岡委員 どうもありがとうございました。  結局、最後に大臣の言われましたとおり、民主国家の中においては多数決原理が支配をしておることも事実でありますけれども、その場合、民主主義の根幹は、何といっても少数意見、それからさらに構成する個々国民の人権が保障されるところにあるという観点、これを忘れずに頑張っていただきたいと思いますし、先ほど同僚議員が御指摘を申し上げました、いわゆる弁護人の責任の問題です。どんな凶悪な事件であり、非常に世論的な非難を受けるものであっても、きちっとした弁護を受ける権利がある。それを擁護するために弁護士にも厳しい使命が与えられているという観点も、やはり同じ観点であるというふうに御理解をいただいて、今後発言には気をつけていただきたい、こういうふうに思っておるわけであります。  それから、本日の具体的な所信関係でいいますと、先ほど言いましたように、第一から順番に具体的な施策が並べてありまして、人権関係の問題についてはやっと第六に出てくるわけであります。  これはどういうところで書いてあるかといいますと、先ほど御指摘にもありましたけれども、十年の十二月十四日、国会において採択をされました人権擁護に関する決議の趣旨を踏まえて、中央省庁等基本法に基づいて、人権擁護行政について、推進体制整備を含めた充実強化を図っていきます、こういうことをまず述べられまして、さらに、これに対しては、法務省に設けられた人権擁護推進審議会において、人権教育及び啓発に関する施策及び人権侵害による被害者の救済に関する施策について調査審議をして、そしてそれがまとまった場合にこれを具体的にやっていくというような趣旨のことで述べられているわけでありまして、今から研究しましょうということだけで終わっているんです、人権擁護。  ところが、やはり司法制度の運用のほかに法務行政の重要な柱であるのは、人権擁護活動なんです。これがこれでは、ないに等しいというふうに思われるわけであります。しかしながら、実際の社会において、我が国におきましては幾多の人権侵害問題があって、取り上げていたら切りがない。子供の人権の問題から御婦人の人権の問題、さらには国際的にもいろいろな人権がどんどん出てきているわけであります。そういう中で、具体的に、方向づけでもいいんですけれども、何かこれは今緊急にやらなければならないという施策がおありなのかどうか、ちょっとこれは御指摘をしたいわけでありますけれども、お答えをいただきたいというふうに思います。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
  46. 中村正三郎

    中村国務大臣 先ほどもお答えいたしましたけれども、委員御指摘のとおり、人権問題は政府として取り組むべき極めて重要な問題であります。国民権利の保全、これは法務行政の基本的使命の一つでありまして、この使命を果たすためには種々の方策で取り組んでまいるわけでありますけれども、人権擁護行政のほかにも、時代変化に即応していろいろ整備をしていかなきゃいけない面がある。そこで、今具体的に何か一つと言われますと、さっき坂上先生の御質問の中にもありましたけれども、やはり今度の省庁再編法案の中で、人権擁護行政充実強化していくという方向性が打ち出されております。それをどういう組織でやるかということは一番重要なことだと私は思っております。  私個人といたしましては、人権の問題というのは、法務省一つで取り組むよりか、もっと広範に取り組むべきものだろう。だから、一つの局で取り組むべきものではない。もっと広範囲な取り組みをしようというその組織づくりを今省庁再編の中で相談をしているところでありまして、先ほどの御質問と関連しますが、省庁再編法案の中では人権擁護行政充実強化をうたっておりますから、これをないがしろにするということは省庁再編基本法案の中でもできない、むしろ充実強化しろという方向性がございます。その中で、充実した組織体制をつくってまいりたいというふうに考えているところでございます。
  47. 福岡宗也

    ○福岡委員 わかりました。  そういうようないわゆる横断的といいますか、そういう関係の組織でもってより強化していくという方針で検討をされていくということのようですけれども、その場合はやはり、その中核になるのはどうしても法務大臣だろうと思うんです。従来までその職責の中心部分にありました大臣だというふうに思うので、そこのところを十分に主張をしていただいて、よりよい組織をつくって強力に推進していくという形にお願いしたいというふうに思います。  次に、先ほど坂上先生の方からも御指摘がありましたが、中村法務大臣の発言の問題についてお伺いをしたいわけであります。  就任後、法務大臣にはいろいろな場面において発言をされまして、マスコミをにぎわせているわけでありますけれども、そのうちやはり、本年一月四日、法務省の幹部を集めた御用開始の日におけるごあいさつの発言の中には、極めて重要なものがあると考えるわけであります。したがって、当国会審議に当たりまして、事実だけはやはり明確に確認をさせていただかなきゃならないんだというふうに思うわけであります。  特に、発言中、憲法に関するくだりは極めて重要だというふうに思うんであります。  御承知のように、民主国家におきましては、いずれの国も公務員には憲法遵守の義務が負わされております。大統領等の元首については宣誓等、厳しく神に誓ってそれを宣誓するという形もありますし、これに違背してはならない。それは特に国民に対するところの責務とも言われているわけであります。これは当然のことで、憲法は国の体系やら理念というものを決めておる基本的な法律であるわけですから、立法、司法行政をつかさどる公務員がこれを遵守するということでなければ、その執行というものはできないわけであります。  我が国も、憲法九十九条におきまして、天皇を初めとする、天皇は公務員であるかどうかわかりませんけれども、天皇または摂政までも含めて、「国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と明確に規定を置いておるわけであります。だから、いわばこの規定というのは、憲法があるからということはもちろんですけれども、そうじゃなくて、普遍の民主主義の原理だというふうに考えているわけであります。  そして、その意味するところというのは、憲法を単に守るということにとどまらず、これを尊重して、これを積極的に非難する者があれば擁護するというところまで含むというのが通説的見解でもありますし、これに違反をした公務員はどうなるのかということについては、政治的責任を負うのは当然なんだとされております。のみならず、積極的にこれを侮辱し、ないがしろにするといいますか、否定をするというような場合には、場合によっては法的責任まで生ずるんだ、こういうようなことも学説で言われておるような、我々国会議員もそうですけれども、重要な責任というふうに理解をしているわけでございます。  特に、法務大臣は、国会議員のほかに、国務大臣として行政執行の長という立場、総括者という立場でありますし、それからまた、司法、違憲立法審査権のある最高裁と同じように、法曹三者という形で、司法はやはり法を守るとりでであると言われているわけです。そういう司法行政の責任者であるということなものですから、ほかの大臣等と比べ物にならぬぐらいその責務は重大だろうというふうに私どもは認識をいたしているわけであります。  したがって、その法案審議、特に司法制度に関するいろいろな法案審議の場合も、常に我々は、憲法に違反するようなことはないだろうかということをその審議の中心に置いてやってまいるわけです。したがって、もしそれがないがしろにされるようなことがあれば、我々としては実質的に審議ができない、こういうことにもなりかねないというわけであります。  そこで、今まで予算委員会でも御質問もありましたし、それから新聞紙上でもいろいろと論議がなされておりますけれども、正直なところ、実際にどういう事実があったかということについては、はっきりしているようでしていないというふうな気もするわけでございます。  特に、憲法のくだりの中で、こういうくだりがあるのですね。新聞紙上と、それから予算委員会における上田議員の質問の中で大臣がおっしゃったという内容で、その中で日本人は連合国からいただいた、国の交戦権は認めない、自衛もできない、軍隊も持てないような憲法をつくられて、それが改正できないという中でもがいているという、大変な時代に我々は生きている、こういう発言をされたと報道やら質問内容で出ているわけですけれども、このような発言をされたという、発言内容自体については、これは間違いがあるかないかだけで、その理由等は一切要りませんので、イエスかノーで答えていただきたいというふうに思います。違っている点があれば、それはどこの部分がどういうふうに違っていて、どういうぐあいに言ったんだという御訂正をいただいても結構でございます。お願いいたします。
  48. 中村正三郎

    中村国務大臣 私は、これは、法務省の新年祝賀会で司法制度改革をやろうということから話をし出しまして、その冒頭において、今我々が直面する世界の情勢というのは非常に厳しいんだというようなことを話したところでお話ししたわけでありまして、私も正確にどう話したか覚えておりませんし、どういう方がどうメモをされて起こされたかわかりません。  ただ、私が申し上げたかったのは、そのとき、ちょうど国連に対する、国連平和軍への参加とかいろいろなことが言われておりましたので、それは、私どもの憲法によって、国際的な協力をするといっても限界があるんだというような趣旨で申し上げたことでありますけれども、いずれにいたしましても、司法制度改革重要性を強調するために、複雑ないろいろな世界情勢に言及したかったというのが真意でありまして、その強調する余り、私が言ったことが非常に適切を欠いていたということで、おわびをして撤回をさせていただいた次第でございます。
  49. 福岡宗也

    ○福岡委員 お答えをいただきましたけれども、それは私の質問をしておることについてはお答えになっていないのですね。  要するに、どういう趣旨で、またどういう流れの中で自分が言おうとしたんだということは、それはそれで結構でございます。お答えのとおりで結構でございますけれども、言葉というのは、客観的に表現をした言葉がどういうことであったかということがまた客観的に評価されるわけなんですですから、私が知りたいのは、どういう意図でやったかではなくて、具体的な言葉としてどう言われたかということ。  これは私、ずっと新聞の報道も、それから上田議員が質問されるときに使われた原稿のいわゆる速記も見ましたけれども、ほとんど変わってないんですね。それから新聞の各紙読み合わせましたけれども、ほとんど変わっていない。それが先ほど言いました表現なんですね。  もう一度読みます、これだけは。その中で日本人は連合国からいただいた、国の交戦権は認めない、自衛もできない、軍隊も持てないような憲法をつくられて、それが改正できないという中でもがいているという、大変な時代に我々は生きている、こういう表現になっているのですよ、すべてのものが。  だから、これが違っているのか。どういう意図で、悪気がなかったとか、そういう流れの中で言ったということはわかっていますから、この表現であったこと自体はまず一遍確認していただきたいのです。その上でどういう理由だということを説明していただくのは結構だと思いますけれども。
  50. 中村正三郎

    中村国務大臣 それは、そのことを話そうと思った会議でなかったものですから、私が一言一句どういうふうに言ったかは正確には私申し上げられませんが、私が申し上げたかったのは、先ほど申し上げましたように、交戦権というのはないんだと。そして私は、自衛隊というのは軍隊のようなものとは思っておりませんので、自衛のために軍隊というのも、じゃないんだよというようなことで、一定の制約がある中でやっていかなければいけないということを申し上げたかったわけで、一言一句、私も全部は覚えておりませんので、それは非常に不適切であったもので、おわびを申し上げて撤回をさせていただきたい、こういうことでございます。
  51. 福岡宗也

    ○福岡委員 やはり私の答えにはなっていませんけれども、結局、その後に閣議において取り消しをされているということ、これは各紙の新聞の報道とかいろいろな論調なんかもごらんになっているわけだと思うのですね。それを見て自分の言ったことを確認されて、それが不適切だということで取り消しをされたということになると思うのですよ。  ですから、やはり趣旨としては、私が先ほど読み上げた、一言一句といったって、てにをはまでは言いませんよ、それは。だけれども、言われたように、軍隊は持てないとか、それから自衛もできないとか、国の交戦権は認めない、こういうような憲法でもがいているんだ。もがいているという意味にもいろいろありますけれども、結局、余り積極的な意味じゃないですね、マイナス的な意味だと思うのですよ。そういうようなことについてははっきりと認識されているはずだと思うのですよ。だから、それはそれで、ちょっとはっきりと述べてください。  もう一度お願いします。
  52. 中村正三郎

    中村国務大臣 交戦権は否定されている、自衛のためといっても、軍隊のようなものを持ってはいけない、その中で苦悩しているという意味で申し上げたわけでございます。
  53. 福岡宗也

    ○福岡委員 それでは、一、二点だけ、意味だけちょっとお聞きをしておきます。  一言一句は別としまして、その中で日本人は連合国からいただいた、というふうにありますけれども、連合国から日本人がいただいたのは、その趣旨として、現行の憲法のことを指すわけですか。
  54. 中村正三郎

    中村国務大臣 一言一句そのとおりかどうかわかりませんけれども、私の今の考えを述べさせていただきますと、立案の過程はどうあっても、現憲法は帝国議会で制定されたものでありますから、これは立派な日本の憲法でありまして、それは遵守し、擁護するのが私の義務だと思っております。
  55. 福岡宗也

    ○福岡委員 そうすると、新聞で報道されている連合国からいただいた憲法だというのは、明らかにきょうの答弁とこれは正反対ですよね。  だから、もしもそういうような報道をされたのならば、自分はそういう趣旨で言ったのではないということで抗議しなければおかしいということになると思いますけれども、それはどうでしょうか。
  56. 中村正三郎

    中村国務大臣 法務省の新年会のお祝いする会であって、そういうことをしゃべることを私が意図してしゃべったという部分ではありませんので、私の言ったことに非常に不適切なところがあったということで、法務省の内部であったことでありますので、おわびを申し上げて撤回をさせていただいたわけでございます。
  57. 福岡宗也

    ○福岡委員 それから、もう一カ所確認しておきたいと思いますけれども、国の交戦権は認めない、そういう趣旨のことを言われておる。先ほども言われましたが、これは憲法の九条の第二項の一番最後のところの後段に書いてある表現とほぼ一致しているのですけれども、結局そういう意味ですね。どうでしょうか。
  58. 中村正三郎

    中村国務大臣 憲法の規定によって国の交戦権は認めないということに規定されております。
  59. 福岡宗也

    ○福岡委員 そうですね。  それから、もう一つ、軍隊も持てないというのは、やはり九条の第二項の陸海空軍その他の戦力は保持しないという規定がありますけれども、これの意味だというふうに理解してよろしいでしょうか。
  60. 中村正三郎

    中村国務大臣 先ほど申し上げましたように、自衛隊というのは、自衛のための戦力であって、私は、いわゆる軍隊というものではない、それは憲法で軍隊というものではないということだと思います。
  61. 福岡宗也

    ○福岡委員 ということは、自衛隊はそういうことでこの条項に当たらないので、それ以外の本格的な陸海空の軍隊ということの戦力は持てない、そういう憲法にされている、こういうような趣旨でおっしゃったというふうに理解していいわけですね。  それで、一番問題になるのは、最後のくだりで、そういう憲法を連合国からもらって、いわゆる改正ができないでもがいているという、この点の表現が、我が国の憲法について、先ほど大臣もおっしゃいましたように、ちゃんと我が国の立法手続に従って国民の意思によって制定されたにもかかわらず、改正できないからもがいている、そういう国民のためにならないというような趣旨を含んだような表現のところが一番問題であるわけです。この辺については、なぜ、もがいているといいますか、そういうような表現をとられたのか、そこのところをちょっと御説明をいただきたいわけです。
  62. 中村正三郎

    中村国務大臣 いずれにしろ、非常に私の適切を欠いた言葉であったので、撤回させていただき、おわびを申し上げていることでありますけれども、私は、当時、ちょうど国連軍参加とかいろいろなことが言われている中で、それは国際的な協力といってもある一定の制約があるんだよ、そういう中で苦悩しているんだ、こういう意味で申し上げたと思いますが、いずれにいたしましても、極めて私がそういうことを言うのは申しわけない、不適切なことだと思いますので、撤回させていただきまして、おわびを申し上げた次第でございます。
  63. 福岡宗也

    ○福岡委員 では、撤回の問題についてちょっと御質問いたしたいわけであります。  新聞の報道によりますと、翌日の閣議の席において撤回をされて、陳謝もされたというふうに報道されていたと思いますが、この撤回をするについて、閣僚の中からその問題が取り上げられて、審議対象になって、そこで取り消しをするということにされて、そして了承されたという形なのか。その辺のところはどういう手続、いきさつでもってされたのか、ちょっと御説明をいただきたいというふうに思います。
  64. 中村正三郎

    中村国務大臣 総理大臣から真意についてただされまして、私は、真意は、司法制度改革をやるべき年だ、この司法制度改革には、国民の負託にこたえて法務省としても全力をもって協力をしていかなきゃいけない、内閣でやる仕事でありますので、そういうことを強調したい余りに極めて不適切な表現をいたしまして、これは極めて申しわけないことでありまして、撤回いたしますということを申し上げた次第です。
  65. 福岡宗也

    ○福岡委員 そうしますと、閣議の席上で、総理大臣からその発言の真意を尋ねられた、そういう中で釈明し、撤回したというふうにお伺いしてよろしいですか。
  66. 中村正三郎

    中村国務大臣 総理大臣からお話がなくても、釈明し、撤回しようと思っておりましたけれども、総理大臣からそういうことを聞かれ、その上、釈明するという形にはなりました。
  67. 福岡宗也

    ○福岡委員 その閣議の席上のその問題に関する議論としまして、内閣の基本方針、いわゆる平和主義、戦争放棄の問題ですけれども、これは橋本内閣も小渕内閣も一貫して今後も憲法のとおり遵守していくという方針だったというふうに思うわけですけれども、そういった問題と中村法務大臣の御発言がどういうふうに整合性があるのか、食い違っているのかという問題については議論になったのでしょうか。
  68. 中村正三郎

    中村国務大臣 議論はございませんでしたけれども、私は、閣僚の一人として、憲法九十九条を守り、憲法を遵守し、そして擁護するということにいささかの狂いもございませんということは申し上げました。
  69. 福岡宗也

    ○福岡委員 それでは、撤回したとおっしゃいますけれども、撤回をしたというのは、その発言についてどの部分を撤回したのか、また、全部撤回したのか、その辺のところ、その撤回した部分をちょっと特定したいのですけれども、どこでしょうか。
  70. 中村正三郎

    中村国務大臣 司法制度改革について話しましたこと以外、最初話し出した、本当の最初の短い部分でございましたけれども、それを撤回させていただきました。
  71. 福岡宗也

    ○福岡委員 というと、先ほど私が憲法部分のところだけ抜粋して申し上げましたね。その部分については全面的に撤回をしたということでいいわけですか。
  72. 中村正三郎

    中村国務大臣 いわゆるスーパー三〇一条と言われる貿易的な手段をミサイルになぞらえた点と、それから、あたかも国民の中に弁護士さんへの不信感があるようなことを申し上げたということと、それから憲法部分でございますけれども、私としては、司法制度改革の話が主体であったのです。それ以外のところを撤回させていただいた、こういうふうに認識しております。
  73. 福岡宗也

    ○福岡委員 今、私の直接の質問は憲法問題だけですけれども、その他のものも含めて、今おっしゃった三点については全面的に撤回をしたということですね。  もっとも、撤回をした理由なのですけれども、先ほど私るる申し上げましたけれども、やはり公務員の基本的な義務である憲法を尊重し擁護する義務というものに違反をしておる、もしくは違反をしておる疑いが極めて高いということで撤回をされたということで理解していいのですか。
  74. 中村正三郎

    中村国務大臣 私は、憲法を改正しようとかしろとかいうことは申し上げていないわけでありまして、私の表現が司法制度改革を強調する余り適切を欠いたということで撤回をさせていただきました。
  75. 福岡宗也

    ○福岡委員 いや、私が質問しておりますのは、憲法を改正する論議を法務大臣といえどもすることは、一向に差し支えないと思っています、それは。私どももそうです。国会議員であって、遵守義務はありますけれども、こういうところが問題であればこういうところをこういうふうにしようかということを真摯に論議をして、それをまた国民に問うて、そして改正手続によってやるということは、これはよりよき国家をつくるために必要なことですから。  そういうことじゃなくて、ただ、現存する憲法については、それは尊重して行政も執行しなきゃならぬし、立法手続もしなきゃいけない、そういうことですね。だから、そういうことは、現行のものを、そういう手続なしに誹謗したり中傷したり、これを無視するといいますか、そういう形の取り扱い、ないがしろにするのも含みます、侮辱するのも含みますけれども、そういうことは許されないということなんで、大臣のおっしゃる、不適切だから取り消したということならば、そういうような、憲法を切り捨てるとかないがしろにするというふうに見られるような疑いのあることだからやはり撤回をしたということなら理解できるんですよ。だけれども、何もそうじゃないんだ、侮べつしたこともないし何も悪いこともしてないし、改正論議だけという問題ならば何も撤回する必要もないんですよ。  だから、そこのところはやはり違反したということ、断定的にまでそれは、いろいろな考え方がありますから多少の弾力性はありますけれども、少なくとも閣議においてそれを撤回されたということは重大なことなんですから、それについてはどういう理由だったと、やはり悪かったということであったと、陳謝ということですから。だから、その原因としては、少なくともこれはやはり違反するおそれがあると考えられたからじゃないかと思うんですが、その辺はどうなんですか。
  76. 中村正三郎

    中村国務大臣 私が極めて憲法遵守の立場から法律を論じているということは、私どもの法務省の幹部に聞いていただければわかると思うんです。私は、憲法を恣意的に解釈してはいけない、憲法違反の法律はつくってはいけない、守るべきは憲法だということを始終うちの幹部には言って立法作業をさせております。  そういう中で、司法制度改革をやろうよ、ことしは、一月、起きてみたら新聞の第一面が司法制度改革だった、これに取り組もうということで話し始めたその最初の部分で、まさに私の至らぬところで、表現その他不適切なところがあって、それを申し上げようと思って言ったことでないところに私の非常に不明のところがあったわけでございますので、撤回をして、おわびをさせていただいたわけでございます。
  77. 福岡宗也

    ○福岡委員 直接的には私の質問に対するお答えではありませんけれども、結局、そういうような表現の中に、私が申し上げたような疑いを招くというのですか、疑惑があるというような形のものがやはり含まれているという前提の陳謝というふうにお伺いをしておきます。  それでさらに、二点目の弁護士批判の問題については、坂上先生の方から先ほど詳細にお聞きになりましたので、私も繰り返しはもうここでやめますけれども、やはりこれも言った事実だけはちょっと確認をさせていただきたいわけであります。  ちょっと読みますけれども、私も事業をやっておりましたけれども、弁護士に頼むとなかなか受けてくれない仕事がある、そんなのやったってだめですよ、むだですよと言ってなかなか受けないという、これは民事についての多分御発言だ、こう思います。  それからその次に、そして、刑事の弁護においては、最近和歌山そしてオウム真理教の事件を通じて、国民の中に弁護士ってあんなひどいものだったんですかという感情が芽生えているのは、これは事実である、こう感じているのは私だけではないと思います。  大体こういう、これが速記のものもそれからさらに報道のものも、全部こういうふうに述べられておるわけですけれども、一言一句とは言いませんけれども、ほとんどこういう趣旨であったということは間違いないかだけ確認させてください。
  78. 中村正三郎

    中村国務大臣 これも新年会の、立食でやっている席でありますから、一言一句よく覚えておりませんが、報道の方が筆記をして出されたことでありますので、私の言ったことと一言一句一緒かは、それはわかりません。  ただ、その言ったことが、先ほど申し上げましたように極めて、国民の中にというような、人の言ったことを引いたようなことでありますけれども、それにしても不適切なことであったということで、これは心からおわびをして撤回させていただきたいと思います。
  79. 福岡宗也

    ○福岡委員 それで、問題なのは、自分は何となしにニュアンスでそう思うというような発言ならいいんですけれども、国民の中には弁護士ってあんなひどいものだということの評価、それからそういうものがもう芽生えているのが、これは客観的な事実だというふうにおっしゃっているんですよ。  ということは、根拠があるということなんですね、証拠とか、だれだれから聞いたとか、いろいろなところで話を聞いたとか、統計をとったとか。そういう根拠があるのかということをちょっと質問したいんです。
  80. 中村正三郎

    中村国務大臣 そこのところは、私が委員会答弁したとかそういう話でなくて、新年会のお祝いの席でありますので、一言一句覚えておりません。そういう中で、私の不明のいたすところで、極めて不適切な表現であった、そのように報道されておりますし、おわびをして撤回をさせていただくわけであります。
  81. 福岡宗也

    ○福岡委員 それで、この問題が問題だというところは、先ほどの坂上先生が十分におっしゃったので繰り返しませんけれども、やはり法曹三者の中の一方の柱である法務省の長というのは、やはり司法というのが人権のとりでであるだけに非常に重要で、弁護人の活動も人権のためにやっているということで、根拠もなしに、不適切だけで切り捨てるような発言をされるというのでは、法曹三者の信頼関係も失うというふうに私は考える。そこが問題だろうと思うんですね。その点について大臣はどのように考えられているでしょうか。
  82. 中村正三郎

    中村国務大臣 まさに不適切だったと思いまして、心からおわびを申し上げます。
  83. 福岡宗也

    ○福岡委員 私の申し上げたような趣旨のとおりだというふうにお答えいただいたというふうに聞いておきます。  そこで、最後のところですけれども、やはりその発言の中で、学者の、立法に対するところの参考人としての参画の問題について述べておられますね。これちょっと聞きたいんです。  こういうくだりになっておりますけれども、もし学者の議論だけで法律を決めるようなことが繰り返されていたら、立法府の我々に国民は投票してくれなくなるでしょう、国民のために重要な法律は立法府がつくる、国民の代表がつくる、そして極めて必要な企画立案等は行政府の方でやるんだ、こういうような趣旨のことが述べてあるわけです。  ここで一番問題なのは、学者の議論だけで法律を決めるということがあるんですけれども、これはどういう意味なのか、ちょっと今さっぱりわからないんですね。どういう意味でしょうか。
  84. 中村正三郎

    中村国務大臣 それも法務省内部のお祝いの会でありますから、私一言一句よく覚えておりませんが、私の趣旨としては、もし私が常日ごろ思っていることを言ったとすれば、今行政改革の中で、国会における議論を重視せよ、そして省庁再編法案の中でもいわゆる隠れみのという批判を受けるような審議制度は原則廃止しろというようなことも出ておりますし、国会には大臣の答弁を求めてと。私、いわゆる学者という表現を使ったかどうか記憶ございませんけれども、いわゆる法務省においてもいっぱい学者がおります、専門家がおります。そういう方の議論というのは、それは大切だけれども、そして実務家の意見も大切だけれども、やはり最後に法律を決めるのは立法府でしょう、それが守られないと、やはり立法府にいる我々は責任を果たしていることにならないのじゃないか。そういう過程で、専門家だとか実務家の御意見を聞くのは当然であるけれどもと、そういう気持ちを持っておりましたので、それでそういう発言をしたのかもしれません。
  85. 福岡宗也

    ○福岡委員 きょうお話しになった趣旨であれば、別に物議は醸さないのですよ。そうじゃなくて、これは客観的に、過去に、法律を決めるのは学者の議論だけで決まっているんだ、そういうことが繰り返されているという前提のニュアンスですよね。ということは、立法府が今まで権限行使していなかったようなことですけれども、これは国会を侮辱していますよ。実際には、そういう人から参考人として意見を聞いたり、議論の過程で、法案をつくる段階で意見は聞いたかもしれませんけれども、最終的には、国会で十分議論をして採決されているわけです。  客観的にそういった事実はなかったということは、ここで取り消してもらえるのですか。
  86. 中村正三郎

    中村国務大臣 私はそういう趣旨では申しておりません。それは、国会で採決しなければ法律になりませんから、学者が法律を決めることはできないわけであります。
  87. 福岡宗也

    ○福岡委員 ということならば、この発言は取り消すということだけではなくて、むしろ公式に見解を示していただきたいというふうに思うわけであります。  そこで、お伺いしておきますけれども、いわゆる司法制度の改正に当たりまして、国会で何回も附帯決議がされているわけですよ。昭和四十五年の五月からございまして、あと数回にわたって附帯決議があります。表現は全部違いますけれども、最初のものを言いますと、司法制度の改正に当たっては、法曹三者の意見を一致させるように努力する。いわゆる実際に法をつかさどる三者が十分協議をして、一致させてから国会に持っていらっしゃい。その上で、それをさらにまた法制審議会の方にかけて、今度は、憲法問題も含めてですけれども、他の法律との整合性もきっちりと、理論的に矛盾がないかということも含めて議論をして、それを法務当局の方でまたさらに練り上げて、さらに国会審議をやるという、司法制度というのは今まで厳格に手続を踏んできたわけですが、こういった事実は御存じですか。
  88. 中村正三郎

    中村国務大臣 附帯決議があること、存じております。
  89. 福岡宗也

    ○福岡委員 立法府である、立法権があるこの国会においてこのような附帯決議までしなければならなかった。どういう趣旨でこういうものができたのかということは、これはどういうふうにお考えなんでしょうか。
  90. 中村正三郎

    中村国務大臣 そのときの委員会の御意思だと思います。
  91. 福岡宗也

    ○福岡委員 いや、これはとんでもないことだと思います。そういうことじゃないのですよ。  何回も何回も言われている。メンバーもかわり、繰り返し言われている。それは、やはり司法制度というのは、国民の人権確保のとりでである司法というもの、こういったものの組織を変えるということですから、ある面はよくても、例えば、先ほど言ったように、治安優先でぜひともこういうものが必要だといっても、やはりそれが全体のバランスの中で行き過ぎていないか、手続的にはどうだという問題は、実務家が実際の実務の場において取り扱ったことも参考にする、それから、理論的に深く研究している幅広い人たちの意見も聞いて初めて、人権にも留意をし、しかも立法の趣旨にかなうような法律ができる。  だから、立法府としては、権限行使について十分ないいものをつくるという、そういう精神でこれはなされているのですよ。だから、これを省略するということについては、よほど合理的な理由がなければできないのだというふうに私は考えているわけですけれども、その点は、法務大臣、どうお考えですか。
  92. 中村正三郎

    中村国務大臣 それは内閣のどこの部署でもそうですけれども、法律をつくるときは、その法律に関する実務家だとか業界だとかいろいろな意見というのは十分に聞き、予算をつくるときだって公聴会もやり、ある場合には委員会でも公聴会をやり、十分な専門家の意見を聞いて法律を策定していくということは当然のことだと思います。
  93. 福岡宗也

    ○福岡委員 そうだとすれば、今後、そのような趣旨を前提にして、過去に言われたこと、もう言ってしまったから今さらどうしようもないところもありますけれども、そういうような発言はもう二度となさらないようにお願いをしたいというふうに思うわけであります。  人間、我々も放言をするときはいろいろありますけれども、ただ、今回の場合、なぜこんなことを問題にしておるかといいますと、新年のお祝いの場だというふうに言われましたけれども、これは、初仕事の場において、いわば、法務大臣として、本年度の基本的な所信というものもある程度述べて、訓示をしておる。しかも、法務省の幹部をお集めで、これは三百人ぐらい出ておられたという場においての重みのある発言であるわけですね。何か座談をやっていて、軽口きいていたというわけじゃないのです。  そういうところにおけるところの発言としては、それによって傷ついたり誤解をされてしまう。ましてや、一番大切な憲法遵守精神というようなものがないと誤解されるような発言をされるということになると、やはりこれはその資格を問われるということにもなりかねない、こういうふうに私は思うわけであります。そういう点で、極めて遺憾だというふうに申し上げます。  あと、これはどういうふうになるのかという問題については、また後日いろいろ議論されるでしょうけれども、その問題はこれで終わらせていただきたいというふうに思います。  次に、少年法の改正問題について一点だけ御質問をいたしたいと思います。  これにつきましては、まだ法案が提出をされておりませんので、細かい問題はさておきまして、どのような内容法案が提出されるかという予定等について、基本的なことだけお伺いをしておきたいわけであります。  この少年法の改正につきましては、法制審議会より、事実認定の適正化を図るための改正、これの要綱骨子という答申案が出ております。また他方、自民党の法務部会の少年法小委員会におきましては、刑事可能年数を現行の十六歳以上を十四歳以上に引き下げるというものを中心にした報告書が出ているわけであります。そして、法務省当局によりますと、今国会中に改正案を提出する予定だ、こういうふうに言っているわけでありますけれども、その改正案というのは、いわゆる法制審議会で十分審議を尽くした要綱骨子というものに基づいての改正法律案が出るのかどうかということです。この点について、大臣の御答弁お願いします。
  94. 中村正三郎

    中村国務大臣 法制審議会というのは、大臣の諮問機関であり、私が会長で、大臣の諮問に応じて審議検討するということでありまして、法務省行政機関でございます。そこで御審議をいただいて答申が出てきたのですが、それは私に対して出た答申でございまして、これを法律案にするには、立法府との御相談というのは当然必要なわけでありまして、今、なかんずく自由民主党と、与党と調整をしているところでございます。
  95. 福岡宗也

    ○福岡委員 ちょっとわかりにくい御答弁でしたけれども、要するに、調整をしておるということは、先ほど二つの案が出ていますから、両方ともに盛り込むような法案政府案として出すという可能性も含めてということですか。
  96. 中村正三郎

    中村国務大臣 年齢の方の問題は自民党で御論議いただいておるので、こちらがなかなか口を出すべき問題ではございませんけれども、それは仮定の問題ですけれども、与党において閣法として提出しろという御命令があるのか、それを議員立法でやるのか、まだそういう相談はしておりません。  ただ、法制審議会から答申をいただいた部分については、これを早急に与党と内容を詰めまして、法律案として提出したい、これは事実認定手続の点でございますが、そういうふうに思っております。
  97. 福岡宗也

    ○福岡委員 そうしますと、端的に申し上げますと、結局法制審議会の要綱骨子というものについてどういうふうにするのか、どの部分をやるのかということは当然検討してやられるのですけれども、年齢問題についてはどうするかということはまだ未定だというふうにお伺いしていいんですね、結論的には。
  98. 中村正三郎

    中村国務大臣 これは与党において御論議をして一応の結論は得ておられると伺っておりますが、その後の、法律をどういう形式にしてどこでどう動かすかということについては、与党とまだ決定したお話し合いはしておりません。
  99. 福岡宗也

    ○福岡委員 もう時間も参りましたので、この問題についてはまた後日質問をさせていただくことにいたしまして、基本的にこの少年法の問題も少年の将来、保護育成、更生にかかわる重要な問題でありますし、法務当局も言っておみえになるのは、あくまでも非行事実の認定に関する適性化ということで改正をしなければならぬという視点でこれを改正するということを言い続けておられるわけですね。したがって、あくまでも少年法の保護育成の理念は堅持する、こう言っておられるわけなので、我々が今骨子の中で見ている限りでは、これはどういう法案が出るかわかりませんけれども、必ずしもそういう目的に限定するものではなくて、必罰主義、厳罰主義というものの結果になるのではないだろうかなという懸念を持つようなことであります。  法案の策定に当たりましても、その辺のところを、我々が安心できるような適正手続も盛り込む、捜査の段階においても少年権利を守るというような方策も盛り込むというような形で検討して法案づくりをしていただきたいということをお願いをし、最後にちょっと大臣の所信をお伺いしたいと思います。一言で結構です。
  100. 中村正三郎

    中村国務大臣 私は、この少年法の問題に関しては、国民の関心が極めて高い問題だと思います。そして、今委員御指摘のような視点は十分に考えていかなければならないものだと思っております。そして、私は、何よりも専門家の御意見を伺い、法律専門家の御意見、そしてあらゆる分野の専門家の御意見を伺った上で、やはり国民の意思を代表する国会の御意思決定が一番重要なことだと思っているわけでありまして、国会において十分な御議論をいただきたいというふうに考えております。
  101. 福岡宗也

    ○福岡委員 どうもありがとうございました。これでもって質問を終わります。
  102. 杉浦正健

    杉浦委員長 午後一時より委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十三分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  103. 杉浦正健

    杉浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。左藤恵君。
  104. 左藤恵

    左藤委員 私は、今緊急の問題として、前臨時国会において、そのときは無所属でございましたけれども、法務委員として質問をさせていただきたいと思っておりましたが、今回自民党の方へ移りましたので、そういう立場で、ホームレスの問題についてお伺いをしたいと思います。  大臣に最初にお伺いしたいと思いますが、午前中の質疑で坂上委員の方からもお話がございました人権の擁護の問題に関連して、これは大変大切な問題であることは申すまでもありませんが、ホームレスの人たちの人権というものがどこまで守られるべきであるか、このことについて、その担当の大臣としてのお考えをお伺いいたしたいと思います。  日本国憲法十一条から十三条というところによりますと、特に十三条におきましては、自由、幸福追求に対する国民権利につきまして、公共の福祉に反しない限り、最大の尊重を必要とする、こうありますが、最近問題になっております野宿生活者、いわゆるホームレスですけれども、この人たちの人権というものがどういう形でどこまで守られるべきであるかということについて、一般論として、法務大臣のお考えをまず伺いたいと思います。
  105. 中村正三郎

    中村国務大臣 ホームレスの問題につきましては、今、憲法十三条のお話をされましたけれども、ホームレス側の人権問題、人権を擁護しなきゃいけないということと同時に、そのホームレスの方たちが生活している公園等の周辺住民側の人権の問題というのもある。また、通行者等の人権の問題もあると思うのであります。ただ、具体的な施策を考えるに当たっては、憲法が、公共の福祉に反しない限り、人権は立法その他国政の上で最大の尊重を要するとしている趣旨も踏まえて、両者間の調和に十分配慮をしていくべきことだろうと思っております。  ただ、これは法務省だけでもなかなか解決できませんことでありまして、このたび総理大臣の指示によりまして、内政審議室が事務局になってホームレス連絡会議というのが設置されました。そういう中で、雇用、福祉、住宅等の分野、そういった対策もあわせて取り組まなければいけないということで関係省庁で会議をつくっておりますが、法務省といたしましても、積極的にそういった御論議に御協力を申し上げていきたいと思っております。
  106. 左藤恵

    左藤委員 今お話にありました、二月五日ですか、小渕総理がホームレスの問題の対策のための連絡会議を開かれた。そして、これからそういった緊急の問題について関係省庁で話し合っていくということについて、法務省はここへ入っておられるか。関係閣僚懇談会の中に法務大臣は当然入っていただいて、そうした今の人権の問題もありますし、緊急を要する問題でもありますので、そういったことで積極的に参加していただきたいと思いますが、内閣審議室の考えはどうなんでしょうか。
  107. 森山幹夫

    ○森山説明員 御指摘のとおり、ホームレス問題につきましては、関係自治体あるいは関係省庁におきまして、これまで大変御苦労されながら対策を講じてきておられるところでございます。しかしながら、昨今の経済、雇用状況を反映いたしまして、ホームレスの数が増加しているという現状にあります。  このような状況を受けまして、御案内のとおり、二月五日の閣僚懇談会におきまして、総理から、いわゆるホームレス問題について、雇用、福祉、住宅など各分野にわたって関係省庁が連携を図り総合的に取り組むべく、厚生省、労働省を中心に、私ども内閣内政審議室の協力のもとに、関係省庁及び地方公共団体も含めた会議を開くよう指示を受けたところでございます。  このように総合的に対策を講じるということでございまして、もとより、各省庁、各団体においても一生懸命取り組んでおられるところでございますが、今後ともこの会議の場におきまして、厚生、労働を中心といたしまして、各省庁力を合わせて一体的となりまして対策をできるものから進め、また取りまとめるように頑張っていきたいというふうに考えているところでございます。
  108. 左藤恵

    左藤委員 先ほど大臣からお答えいただきましたように、やはり人権の問題というのは、もちろんホームレスの人たち自体の人権の問題も大切ですけれども、それ以上にといいますか、非常に大切な、一般の市民の人たちが、治安上の危険性の問題とか、それから環境の問題だとか、いろいろなことにつきまして、我々の人権はどうしてくれるんだ、こういうこともあるものですから、その辺の関係を、いろいろな判断をされるときの一つの大きな調整をするためにも、私は、法務大臣が積極的にその懇談会に入っていただいて、より一層推進の役割を果たしていただきたい、このことを特にお願いをしておきたい、このように思います。  そこで、具体的な、今お話しのように急増してきた問題につきまして、いろいろと問題点があろうと思います。  これまた別の機会質問するべきことかもしれませんけれども、この機会に、ホームレスをどうしてなくしていくか、いろいろな対策を内閣として積極的にやっていただかなければ、簡単に片づく問題ではないのじゃないか、このように思います。  今ありました労働省、厚生省、建設省、警察庁、いろいろなそういった関係のお役所がばらばらにやっていただいては困るのであって、その点について、皆で何とかこの人たちを正業につかせる、それから、その人たちを一般の公共的な施設に野宿のような形で、当然の権利のようにそこにおらせること自体が私は非常に問題だろうと思いますので、それをなくするためにもやっていただきたい。  特に、大阪市は物すごくホームレスが集まる場所になっている。この前伺ったところでは、八千六百六十でしたか、大阪市内だけでそれだけのホームレスがいる。特に、例えば年末の対策なんかで、仕事がないわけです。そういういろいろなことがあったので、緊急の施設をつくって、年末の間だけでもそこへ収容するということをやりました。やりましたら、今まで以上に物すごいたくさんの人がそこに来て、この間は暖かいところで寝ることもできる、そして食事も与えられる、仕事がなくてもお正月越すことができるということで、一月六日までですか、収容されたときに、たしか二千二百か三百の人たちが集まったということです。  これは一体どこから集まってきたか。大阪市内のホームレスの人は、まだ依然として残っている人がかなりありまして、東京とか川崎とか、そういったところから来たとか、北九州の方から来たという人もあるというふうなことで、そのときだけえらくたくさんの人が集まってくる。これは、考え方によっては、大阪市がほかのところの市町村に比べていろいろな施設が行き届くといいますか、やってくれているので、それに便乗する。  それから、そういったものがまた非常に情報が早くて、そういったことを応援している人たちが、ボランティアでやっておられるのだろうと思いますが、そういう人たちが新幹線の旅費まで出して、来い、こういうふうなことをやっている。そういう話まであるぐらい、公正な、公平な市町村の対策というものをとってもらわなければ困るわけです。  中央の方でそういったことについて全部任せきりにしておるということであってはならないので、どういった基準でどういうふうなことでやってもらいたい、こういうようなものを打ち出したときに初めて対策がとれるのではないかな、このように思います。これは、そういった懇談会の席で、この問題については十分審議していただきたい、これを要望として申し上げたいと思います。  その一つに、労働省の関係で、雇用の創出、非常に難しいわけです。これだけの不況の中で、仕事が減っていく一方であって、日雇い労務者の場合は特に厳しい状況があるのではないか。その辺につきまして、そういう日雇いの方々の緊急的な対策で、今までの、仕事をただ職業安定所とか相談所とかそういうところであっせんするだけのことではとても片づけられないので、何か特別の方法というものが考えられないのだろうかということが一点。  もう一点、労働省に伺いたいのですが、現在、この日雇いであぶれる日が非常に多いわけであります。いわゆるあぶれ手当てといいますか、そういうふうに俗称言っているのですが、あぶれる人たちのための対策については、割とそういうものについて保障的なものが厳しい条件になっておると思うのですが、そういうものの緩和というものを考えられないか。この点については非常に緊急性を要する問題ですから、労働省で対策があれば伺いたいと思います。
  109. 長谷川真一

    ○長谷川説明員 日雇い労働者の雇用失業対策についての御質問でございます。  労働省といたしましては、日雇い労働者の雇用失業対策について、基本的には、国の雇用対策としては、民間企業による雇用の促進を図ることを基本に対策をやっておるところでございます。  雇用失業情勢が大変厳しい中で、日雇い労働者を取り巻く雇用環境が厳しいということでございまして、そういったことで日雇い労働者がホームレスになるという部分もあるわけでございまして、今般、雇用活性化総合プランというものを取りまとめたわけですが、そういった中でこの日雇い労働者対策を強化をいたします。  平成十一年の一月一日から、十五カ月の暫定措置といたしまして、求人開拓推進員による日雇いの求人の掘り起こし、これは大阪には二十六人配置をする、増加をするつもりをしております。そういったこととか、日雇い労働者を多数雇い入れる事業主に対する奨励金の支給、これも十五カ月で十一億円の予算を新設をいたしました。こういった対策を活用いたしまして、日雇い労働者の雇用状況の改善に努めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。  それから、雇用保険の日雇いの労働求職者の給付金の支給要件の緩和はできないかという御質問でございます。  これにつきましては、実は平成六年度の雇用保険法の改正のときに、従来、受給要件となります印紙保険料の給付日数が月平均十四日、これは一般の被保険者の場合と同じであったわけですが、日雇いの場合は月平均十三日ということで緩和をいたしたところでございます。  この問題につきましては、雇用保険制度全体の整合性の問題、また給付と負担の関係、日雇い労働者の場合は保険料に比べまして給付をたくさん出しておるという問題もございますので、この辺については十分慎重に取り扱う必要があるというふうに考えております。
  110. 左藤恵

    左藤委員 時間が限られておりますので、簡単に御答弁願いたいと思います。  厚生省の方にお伺いしたいと思う問題としましては、こういったホームレスの人たちの、風邪ぐらいならいいわけですが、ほかのいろいろな伝染病的なものもあって、感染症というものが、非常にそういう心配があると思います。ワクチンを服用させるとかいうこともなかなかできないでしょうし、こういったことに対する対策というもの、基本的な考え方というものをひとつ伺いたいと思うわけであります。  それからもう一つは、厚生省としてはとにかく、環境庁の関係もありましょうけれども、美化という問題がありまして、あんな状態では、大阪はオリンピックの招致を今願っていますけれども、とてもそれどころか、まず第一に、二〇〇二年のサッカーも長居公園でやることにもなっていますけれども、それもとてもできそうにないというふうなことだろうと私は思います。  それほど今非常にふえておることがあるわけですから、ふん尿のまき散らしだとか、ごみの不法投棄だとか、いろいろな問題があって、もう無法状態みたいなことになっておるのですが、これに対する特別の、例えば公衆トイレをふやすとかなんとか、そんなような対策を考えておられるのかどうか、厚生省の方でお答えいただければありがたいと思います。
  111. 伊藤雅治

    ○伊藤(雅)政府委員 感染症対策の面につきましてお答えをさせていただきたいと思います。  ホームレスの方々は栄養状態が悪くて、感染症対策上非常に重要な対象だというふうに考えております。具体的には、例えば、昨年、大阪の西成地区で赤痢の集団発生でございますとか、また、いろいろの報告から、結核などにつきましても他の地区に比べて大変高い発生率になっております。  したがいまして、私どもといたしましては、根本的なホームレス対策はもちろん必要でございますが、まず、現状におきまして、その緊急の対策といたしまして、赤痢などの感染症の患者発生時におきましては、患者の治療に万全を期すと同時に、患者の同居者や接触者などの健康診断や消毒の措置を講ずることによって拡大防止に努めていくことを、各自治体を指導しているわけでございます。  また、結核につきましては、これは大変大きな問題でございまして、今年度から、公衆衛生審議会の緊急提言を受けまして、保健婦が直接訪問をいたしまして、目の前でホームレスの方に服薬させるという特別対策を実施に移していきたいと考えております。  また、お尋ねのワクチンの接種の件でございますが、現行の予防接種法におきましては、ワクチン接種は主として子供の病気を対象に制度化されておりまして、ホームレスが問題となる感染症に対しては有効なワクチンがないというのが現状でございまして、御理解を賜りたいと思います。
  112. 小野昭雄

    ○小野(昭)政府委員 廃棄物処理法におきましては、「市町村は、必要と認める場所に、公衆便所及び公衆用ごみ容器を設け、これを衛生的に維持管理しなければならない。」という規定がございます。これは、市町村の責務として、公衆衛生の観点あるいは生活環境保全の観点から、市町村の判断できちっとやってくれということを法的に定めているわけでございます。  私どもといたしましては、この規定の趣旨を踏まえまして、各市町村に地域の実情に応じた対応をしていただきたいと考えておりますが、今先生御指摘の、大阪の例をお引きになりまして、どういったことが必要なのかということにつきましては、大阪の方からの御意見も聞きながら、技術的な支援が必要であれば、そういったものも図ってまいりたいと考えております。
  113. 左藤恵

    左藤委員 そのほかにも、例えば道路それから公園の管理をしております建設省、それもまた実際にそこにおきましていろいろな問題がありまして、治安の点から見て警察庁との関係があるだろうと思いますが、実はこの前も、かなり年輩の御夫婦が、夜、ホームレスのおる公園を歩いておられたら、何か奥さんがだんなさんの前でレイプされたような、そういうひどい問題があって、今告訴するとかなんとかいうようなことを言っておられるような事例もあります。  非常にそういう意味での市民の不安というものを起こしている問題がありますので、こういうことに対して、警らをするとか、二十四時間監視というのは難しいと思いますが、そういうことをやっていただいて、そういう人たちが全部犯罪をすぐ起こすような状況であるかないかということは別としましても、市民が安心して生活できるような体制というものをぜひ考えていただきたい。  そのときに、非常に大きな問題、これは建設省にも警察庁にも関係する問題でしょうけれども、最初に申し上げましたような、そういったことについて、もちろん現行犯であればこれはすぐ押さえることができますけれども、市民の安全を図るためのいろいろなことができるかどうかということで、ホームレスの個人の調査というものはやっておく必要があるのではないか。また、生活保護を受けさせたり、そういう者を収容するためにもそういったことが必要だと思いますが、その人たちは個人の自由とかなんとかいろいろなことを言いまして、とにかくそういうことについて、調べられるということが非常に嫌だという問題があると思います。  この辺、何か一つの、市町村に調査する権限というものを与えることができるのかどうか。これは人権の問題とも絡んでくる問題だと思いますので、後で裁判になったときの問題だとかいろいろなことについてその懇談会でよく煮詰めて、大丈夫だ、しっかりということで、そういう個人的なデータみたいなものを調査しておく必要があると思いますが、そういうことが懇談会でもやっていただけるかどうか。警察庁なり建設省なり、どちらでもいいですが、そういうことについてのお考えがあれば伺いたいと思います。
  114. 村上徳光

    ○村上説明員 ただいま先生から、いわゆるホームレスの方々の個人データの収集ができるかどうかというお話でございましたが、警察といたしましては、先ほど来お話が出ておりますように、地域の方々、またそこをお通りになる方々の安全等を十分配慮しながら、この問題に対処していく所存でございます。
  115. 左藤恵

    左藤委員 時間になりましたので、これは要望として、これからやっていただきたいと思いますが、今の御答弁というのは何のことか、答えになっていないのじゃないかな、私はこう思います。もちろん、地域の皆さんの例えば告発があったらそういうことをやるのか、積極的にいろいろ安全を図るための一般の警らをやるとか、そういうふうなことについて、個人的なデータみたいなものを持ってやるのとやらないのでは、私は非常に違うだろうと思います。  これはまた、プライバシーの問題とかいうことがあったり、いろいろな黙秘権のようなものとの関連もあるだろうと思いますので、そういう意味で、やはり私が先ほどお願いしました関係各省庁間の懇談会か何かで強力にこれをひとつまとめていただく、しかも緊急にやっていただきたいということを特に要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  116. 杉浦正健

    杉浦委員長 奥野誠亮君。
  117. 奥野誠亮

    ○奥野委員 中村法務大臣所信の表明を聞かせていただきまして、いずれももっともなことだな、しっかりやっていただきたいな、こう思ったところでございます。そして、国民ニーズにこたえていきたいとの熱意も御披露がございました。  私たち、民主政治の充実、定着を図っていくためには、行政側から積極的に情報を提供していく、これが大事じゃないかな、こう思っておるわけでございまして、その情報をもとに国民の側で正しい理解を持つ、それがまた積極的に有益な行政批判、改革への発言につながっていくのじゃないかな、こう思っておるわけでございます。既に地方団体にはたくさん情報公開条例が制定されておりますし、また、国におきましても既に国会に情報公開法が提出されておるわけでございまして、ぜひ早く成立すればいいがな、こう思っております。  国民の多くの方々は、自由主義、民主主義を基本にするこの社会体制のもとに充実発展を図っていきたいと願っておるわけでございます。そういう者は、自分の人権も大切にしますけれども、相手の人権も尊重しますし、自分の名誉を大事にしますし、同時に相手の名誉を傷つけないようにしてまいりますし、国家の尊厳は守っていきたいと思いますし、また国家の象徴である国旗とか国歌、こういうものについては敬愛の念を持って接するわけでございます。  しかし、中には、この社会体制では不満だ、この社会体制を変えていきたいという熱意を持っておられる方々がおられます。とかくそういう方々は、情報公開に当たりましても、あら探し的な方向をとられる方が意外にいらっしゃるな、こう思うのでございます。そして、何か飲食の会合でもございますと、大変ささいなことから、その会合に参加した氏名の公表までしろ、こういうような方向になっていったりするわけでございまして、やはり社会のあり方に対して国民の不信を増幅していく、そのことが社会変革の力になっていく、こういう考え方があるのではないかなと思えます。したがって、国家の尊厳は意に介さないと思いますし、むしろ国家の組織が弱まっていく方が社会変革が成功しやすいという考え方があるのではないかな、こう思っているわけでございます。  こういう中で、先般、過剰接待は贈収賄だとして起訴する事例がございました。官僚の中には、だんだん接待をみずから求める風潮まで出ておりまして、綱紀がかなり弛緩しているな、一罰百戒、こういうことも大切なのかもしれないな、こう思ったわけでございました。  私は、しかし、会合を通じましてお互いの話がスムーズにいく、理解が深まっていく、よい考え方がそこから生まれてくる、こう思っているわけでございまして、そういうことで、情報の公開が行政進展に役立っていくことが大事なんですけれども、逆に行政の渋滞につながるというような場合も見られるように私は思っているわけでございます。  殊に争訟になりますと、戦前は、行政事件行政裁判所で所管したのであります。戦後は、一切司法裁判所で所管することになったわけでございます。司法事件を裁く場合には、どうしても権利義務が主体になるわけでございます。行政事件は、行政事件が円滑に運営されていかなければならないという、そこに配慮が加わっていくわけでございます。  したがって、私は、情報公開は民主政治の進展のために非常に大切なものだと思っているわけでございますけれども、社会の中にはいろいろな考えの方もおられるわけでございますし、そもそも情報公開というものは、行政進展のためにこれを考えているわけでございますだけに、行政当局の主張にも耳を傾けながら情報公開をしていく必要があると私は思います。  したがいまして、法務大臣も、法務省運営に当たりましても、あるいは裁判所との会合もたくさんあるでしょうけれども、私のような意見もあるんだということを御披露いただきまして、このことによって行政が阻害されないように御尽力を得たいと思いますが、何か一言簡単に、御発言ございましたら、お願いいたします。
  118. 中村正三郎

    中村国務大臣 奥野先生、大先輩のお言葉でありますので、私、お話として十分心にとめてまいりたいことであると思っておりますが、飲食の接待の過剰なことにつきましては、私、ちょうどそのとき大蔵政務次官をやっていて、大蔵省の処分のときにかかわっておりました。  外国に行きましても、外国の方とつき合っても、必ず食事に誘われる。昼食をいたしながら仕事の話をする。ワーキングランチなんていいまして、やります。また、夜も、食事のときも仕事をしながら話し合う。そういうことも必要なことだと思いますが、ただ、行き過ぎてはいけないのだと簡単に言えば思うわけでございまして、役所の間では職員の倫理規程というようなことを制定いたしまして、今そういうことは慎む必要があるという中で、倫理規程を守ってやっているというのが現状だと思います。
  119. 奥野誠亮

    ○奥野委員 私は、敗戦前には旧内務省にありまして、勝利を願いながら公務に従事しておりました。敗戦後は、日比谷にありました占領軍の総司令部をたびたび訪れまして、その承諾を得ながら国内法をたくさん書いてまいった人間でございます。  中村法相の発言を通じまして、予算委員会や本会議、先ほども御質問がございました、問題にされておられるようでございますし、また、既に不適切な発言だとして取り消してもおられます。私は、これをとやかくここで取り上げる意思は全くありません。  同時にまた、あの日支事変の最中でございましたけれども、昭和十二年に斉藤隆夫さんが軍部の政治介入について批判的な発言をされた。それで、国会が除名処分にした。何で国会が軍部に加担をして政治介入をさらに許すような方向をとったのか、私は非常に残念に思っているわけでございまして、国会のあり方というものが国権の動向を決めるところでございますだけに、憲法を通ずる議論はもっと遠慮なしにぽんぽん言えるような国会にできぬものだろうかなというのが私の念願でございます。憲法というのは国の基本法じゃないか、国の基本法なら、擁護の義務に反するとか、何か口実をつくってとやかく言うのは避けた方がいいんじゃないだろうかなという気がするわけでございます。  同時に、憲法に関する情報を余りにも国民に対して教えなさ過ぎているな、こう思っているわけでございまして、やはり私は、質疑の前提としてこういう事態を申し上げて、私の申し上げていることに過ちがあってはいけませんから、法制局の方に、事実の間違いであるかそのとおりであるかだけをおっしゃっていただきたいな、私はこう思っているわけでございます。  私自身も、二十年近く前になるんですけれども、法務大臣をしておりましたときに、この委員会社会党の稲葉さんから質問を受けました。それは、自由民主党は自主憲法の制定を旗印にしているじゃないか、あなたはどう思うのかということでございました。私は、そのときに二つの考えがとっさに浮かびました。一つは、憲法発言を通じましてついに辞任に追い込まれた閣僚もいる、本会議で謝罪させられた閣僚もいる、あるいは何か意図があってこういう発言が出たのかなという疑問が一つございました。もう一つは、よい機会を与えていただいた、国民に率直に私は話しかけていきたいなということでございました。  したがって、そのときには、国民の間で議論が行われて、同じものであってもよいから、もう一度つくり直してみたいと思うなら、私はそれは好ましいと思います、こう答えたのであります。それが、数時間後には、奥野法務大臣罷免の発言を誘発してまいりました。いろいろな委員会から私は呼び出しを受けまして、率直に答えてまいりました。幸いにして、憲法議論がむしろ活発になったように思うのです。マスコミも取り上げたわけでございます。  それが、また中村法相の発言を機会にしていろいろな意見が出ているわけでございますから、そういう意見もあれば、私のような心配もあるんだ、国会というものはそうなけりゃならないんじゃないかな、一つの発言だけが通っていってそれで終わっちゃうと国の将来が心配だな、こんなことから、私はあえてこの場をかりさせていただくことにしたわけでございました。  憲法には、もちろん憲法を尊重し擁護する義務も書かれておりますし、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」という言葉もございますし、あるいは「言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」という言葉もございますし、改正条文もあるわけでございますので、私は、もう少し濶達な議論が国会で行われるようにした方がいい、こう思っているわけでございます。  ちょっと、私なりの記憶どおりに事実を申し上げさせていただきたいと思います。  ポツダム宣言を受諾して戦争終結に持ち込んだわけでございますけれども、その際に、国家統治の権限は連合国最高司令官に従属する、天皇や日本政府の権限は総司令官に従属する、こういうことでございましたし、またアメリカの初期の日本管理の基本方針は、日本が再びアメリカの脅威となるような存在にしないことを確実にするんだということでございまして、これはやっとの思いで日本に勝ったんですから当たり前のことだと思いますけれども、それが前提で七年間の占領行政が行われたことは、私は自覚しておかなきゃならないんじゃないかなと思うわけでございます。  そして、国会というところでは、最初の選挙のときには、候補者になるのにも資格審査があったんです。資格審査をパスしなかったら立候補できなかったんです。しばしば、国会議員なり公務員なりは、占領政策の意図に反するということで追放処分を受けているわけであります。  しかもまた、検閲方針が示されておるわけでございまして、こういうことを言っちゃいけないんだということがたくさんあったわけでございました。最初のころは、私のところへ来る手紙まで開封されておったわけでございました。そして、その中には、憲法と総司令部とのかかわり合いに触れてはならないという言葉もございました。したがって、七年間は総司令部とのかかわりは一切口にできないし、マスコミにも上がってきませんから、いまだに十分に情報が提供されていないことはやむを得なかったんじゃないかな、こう思うわけでございます。また、大東亜共栄圏という言葉を使ってはならないとか、いろいろな言葉がございました。  さらに、憲法改正は、マッカーサー総司令官がスタッフを集めまして、スタッフに対しまして三つの原則を示して書かせているわけでございます。その三つの原則のうちの一つを、私はここで読ませていただこうと思います。  国家の主権的権利としての戦争を放棄する。日本は、紛争解決の手段としての戦争、及び自己の安全を保持するための手段としてのそれをも、放棄する。日本はその防衛と保護を、今や世界を動かしつつある崇高な理想にゆだねる。いかなる日本陸海軍も決して許されないし、いかなる交戦者の権利も日本軍には与えられない。こう示されているわけでございます。  その中には、今申し上げましたように、自己の安全を保持するための手段としての戦争も放棄する、このとおりには幾ら何でも憲法には書けないじゃないか、しかし憲法には書かなきゃならない、だから苦心して私は書いたんだなと思うわけでございます。  例えば総則には、「諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」という表現がございます。私なりに、なるほどこれもその一つなんだなと思いました。それから、九条には、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、」「永久にこれを放棄する。」と書いてある。さらにまた「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」「交戦権は、これを認めない。」こういう表現があるわけでございまして、私はまた、そういうことを意識しながら中村さんの発言があったのかなと思ったりしているわけでございます。  それで、憲法が生まれましたときに、内閣法制局職員は、局長を除いて全部入れかえさせたんです。これは総司令部の命令です。そして、新しい法制局の職員をして憲法とほかの法律との整合性に当たらせたわけであります。民法もみんな改正になりましたよ。それは当然だと思うんですけれども、全部入れかえるということはなかなか厳しい姿勢をとるんだなと私はそのときは思ったものでございました。  そして、この憲法の制定に当たられました時の総理大臣が吉田茂さんでございます。吉田茂さんは、二十二年に選挙で第一党を社会党にとられたわけでございますから、下野されたわけであります。そのころに書かれた色紙だと思うんです。この色紙は、総理大臣の秘書官をしておられた西村直己さんが持っておられまして、亡くなってから未亡人が憲法記念館に寄附されておりますから憲法記念館にはありますし、また写しもつくっておりまして、だれにでもくれるわけであります。その色紙に書かれておる一つには、真ん中にだるまの絵がかいてあるんです。右側に、「安定の為である 徳次郎」と書いてあるんです。金森徳次郎さんであります。左に、吉田さんは素淮と号しておられて、素淮と書いてありまして、「新憲法たなのだるまも赤面し」と書いてある。「新憲法たなのだるまも赤面し」、これが憲法制定に当たられた吉田さんの本当の心境だろうと思います。こんなもの、当時の占領軍に見つかったら大変なことになったんだろうと思うのでありますけれども、それが今は憲法記念館にちゃんとあるわけでございまして、だれでも見られるわけでございます。  吉田さんは、最初の憲法論議のときには、自衛のための戦争も許されないということはおかしいじゃないかという質問に対しまして、これまでしばしば自衛の戦争と称して侵略戦争をやってきたんだからこれもできないことになっているんだ、こういうお答えをしておられるわけでございます。その後に吉田さんは自衛権を認められ、自衛のための戦いは肯定しておられるわけでございますから、解釈で憲法を改正したのは、解釈改憲はこれ一つだと言われているわけでありますけれども、明らかに解釈改憲が吉田さんの手によって行われたわけでございました。  昭和二十五年に朝鮮戦争が起こるわけであります。さすがに総司令部は、日本に軍隊をつくれと言えませんから、警察予備隊をつくれと言ってきたのです。警察予備隊をつくれと言うてきたのですが、与えました武器は、お古の機関銃であったり野砲であったりしたわけであります。これは人を殺す道具なんです。人を殺す道具は軍隊が使うのです。警察は人の命を守ることが任務でございます。軍隊をつくれということが実質でございました。だから、三軍の総司令官に当たられました林敬三さんは、新しい国軍の精神をどう持っていくかということに大変苦慮をしておられました。私のところにも随分訪ねておいでになりまして、また議論もしたことを覚えているわけでございます。  同時に、極東国際軍事裁判で一方的に日本が踏みつけられたわけでございましたが、それはそれとしまして、この警察予備隊がいかにもおかしいということで、独立を全うしましてからは、保安隊になり、そして今は自衛隊になっているわけでございます。  二十七年に日本は独立を全うしました。実力は全部総司令部が握っている。晴れて日本が自由になった。どこの国でも、自由になったら、そこで式典を行いますよ。私の記憶では、独立したときに何の式典もやっていないと思います。当時は憲法をたたえる式典も行いませんでした。やはりそれなりに、日本の名誉を重んずる立場から考えれば、この苦痛は何とか晴らしたいという気持ちがかなりあったのじゃないかな、こう思うわけでございます。  幸いにして、各党の中でも、国会の場で憲法を論議しようじゃないかという空気が生まれてきた。私は、大変ありがたいことだな、こう思うわけでございまして、ぜひこれがいい結果を見るように期待しておきたいと思っているわけでございます。  私は、二十五年の永年勤続表彰を受けましたときに、自分たちの感想を書いて官報に載せてもらう。そのときには、日本の明るい将来を築くためには占領下の七年間のことをもう一遍検討するような仕組みを考えることが大事である、そういうことを書いてあるわけでありまして、ずっと念願しているわけであります。  占領軍が大東亜戦争という言葉を禁止した。太平洋戦争というような言葉になっている。太平洋で戦ったのじゃないのです。アジア大陸で戦っているのですよ。今私が大東亜戦争と言ったら、多くの国民はけげんな顔をしますよ。公的な文書を見ましても、支那事変がいつの間にやら日中戦争になっていますよ。不拡大方針をとっておったのです。あのときは、細かい話になりますからやめますけれども、不拡大方針をとっておった。それが日中戦争に変わっていますよ。アメリカは言いましたよ。日本は支那事変ですよ、あくまでも支那事変。不拡大でしたよ。  そういうことはたくさんあるわけでございまして、私は昨年の一月にインドへ参りまして、インドの国務大臣とのお話の過程で、パルさんが極東国際軍事裁判で日本無罪論を堂々と述べてくれた、感謝しているということを言いましたら、向こうの方で、三百年と言いましたか、イギリスの植民地だった、そのときのつらい思いがあのパル博士の無罪論につながっていると思いますと言いました。  私は、大東亜戦争という言葉を使っていれば、その辺のこともわからぬわけじゃないのですけれども、太平洋戦争なんと言っていたら、日本はどんな戦争をしたのかわからなくなってしまっているのじゃないかな、こう思っているわけでございます。私は、アメリカとの関係を大切にしなければならない、安全保障のためにも経済協力のためにも大切にしなければならないけれども、だからといって、占領下のことを明らかにしていかないことは、遠慮することは間違いじゃないかな、こう思っているわけであります。両立できるものだ、こう思っているわけでございます。  私、もうおしゃべりをする時間がなくなってきたようでありますが、せっかく大臣に来てもらっていますから、七年間の起こったことを、大東亜戦争と呼んではいけないとか、いろいろなことがありました。そのとおり守っていますよ。今はもちろん、占領下の命令ですから、これはもう無効ですよ。日本がどういう言葉を使おうと、自由にできることだと思うのです。七年間の事例をもうちょっと国民の間に明らかにするような仕組みをつくったらどうかと願っているわけですけれども、ちょっとその辺で感想がありましたら、言っていただいたらありがたいな、こう思います。
  120. 中村正三郎

    中村国務大臣 大先輩の大変貴重な御体験、御意見を承らせていただきまして、ありがとうございました。戦後の七年間というのは、大変な時代だったと思います。私事にわたることで申しわけありませんが、実は、私の父も、戦争中活躍していたということで七年間の公職追放を受けまして、農業をやっておりまして、私は、肥やしをまくのを手伝って七年間過ごしたのを覚えております。  ただ、私は今法務大臣という立場で、こういったことにコメントするということはちょっとできない立場だと思いますので、大先輩の一つの御提言として承らせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  121. 奥野誠亮

    ○奥野委員 いろいろ法務省お願いしていましたが、申しわけありません、時間がありませんので、あとはやめてしまいたいと思います。  ただ、法制局の方、事実関係は、私は間違ったことは言っていないつもりだけれども、ちょっと確認だけさせてください。それで終わります。ありがとうございました。
  122. 秋山收

    ○秋山政府委員 委員の長い御経験からいろいろな御識見を承りまして、私どもは事実について論評する立場じゃございませんので、一言二言、立場上申し上げさせていただきますと、政府といたしましては、現行憲法は、占領軍当局の強い影響のもとに制定されたものでありますが、最終的には帝国議会において議決されたものであると考えている旨を従来から申し上げてきているところでございます。  それから、憲法九十九条の公務員の憲法尊重擁護義務でございますが、国務大臣その他の公務員に対して尊重擁護義務を課しているところでございますが、このことが、憲法の定める改正手続による憲法改正について検討し、あるいは主張することを禁止する趣旨のものではないことは、従来から申し上げているところでございます。
  123. 奥野誠亮

    ○奥野委員 どうもありがとうございました。
  124. 杉浦正健

    杉浦委員長 漆原良夫君。
  125. 漆原良夫

    ○漆原委員 公明党・改革クラブの漆原でございます。  いつも司法制度改革に積極的に取り組んでおられる中村法務大臣には、深く敬意を表するものでございます。総理大臣も今回、所信表明で、「すべての人々の人権が最大限に尊重される社会実現に努力するとともに、より国民に身近な司法制度の構築にも取り組んでまいりたいと思います。」こう述べられて、司法制度改革に対する積極的な決意を表明されておられます。この司法制度改革の衝に当たる法務省、なかんずく法制度全般を所管する法務大臣の責任というのは、まことに私は大きいものがあると思っております。  そんな中で、本年一月四日、五日付の各紙では、一斉に四日の法務省賀詞交換会での中村法務大臣のあいさつを見出しに載せまして、「法相、異例の憲法批判」、これは朝日でございます。「「改憲」発言 法相が取り消し 閣僚懇で陳謝」、五日毎日。「法相、改憲発言を撤回」、五日東京の大見出しが踊ったわけでございます。  さらに、毎日新聞は一月六日付の社説で「中村法相発言 不適切なのは内容だけか」、朝日新聞は七日付の社説で「法相発言 居酒屋気分のお粗末さ」という見出しで、それぞれ厳しく法務大臣の責任を追及しておるところでございますが、私もこれを見て大変驚きました。そしてまた、今回こうやってこの問題について質問しなければならないということについては、大変私は残念なことだと思っております。  しかし、この司法制度改革は、日本国憲法の施行後五十年を経過した現在、抜本的にその制度見直し改革しようというものでございますから、その陣頭指揮の任に当たる法務大臣国民信頼がなかったならば、到底その大きな事業としてはなし得ないだろうというふうに考えております。私は、その意味で、法務大臣は何よりもまず国民信頼を回復して、発言の事実関係とそして経緯を国民の前に明確にすべきではないかな、こんなふうに総論的に考えておりますが、簡単に、いかがでしょうか。     〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
  126. 中村正三郎

    中村国務大臣 これは先生のおっしゃるとおりでありまして、四日の新年の祝賀会で、まさに司法制度改革の年である、その司法制度改革にみんなで努力しようということを、これは立食パーティーの席だったのでございますが、法務省の幹部を集めてお祝いするときに、司法制度改革協力しようということを申し上げました。  もとより、司法制度改革、これは法務省だけでやるものではなくて、内閣として取り組むべきものであります。その重要性を強調したかった余り、今、日本の直面する問題というのはいろいろ難しい時代であるということを冒頭に少し申し上げまして、司法制度改革のお話をしたわけでありますが、その司法制度改革重要性ということを強調したい余り、極めて不適切な表現があったということで反省をしておりまして、閣僚懇談会においておわびを申し上げまして、撤回をさせていただいた、こういう経緯でございます。
  127. 漆原良夫

    ○漆原委員 新聞あるいは今までの予算委員会での御答弁がございますが、余り詳しくなかったので、私の観点から、少し細かくなりますけれども、御質問申し上げますので、よろしくお願いしたいと思います。  まず、一月四日に行われました法務省の新年の賀詞交換会、これは、どこで行われて、どういう人が参加されて、大体どのくらいの人数の人が参加されたのか、いかがでしょうか。
  128. 但木敬一

    ○但木政府委員 委員御指摘の賀詞交換会でございますが、これは、毎年法務省におきまして新年の初登庁の日に行われるならわしとなっております。本年も、一月四日、法務省の地下の大会議室において行われました。  出席者でございますが、本省の各部局、外局、在京の最高検察庁、それから法務関係の各官署、こういうところの幹部が出席しております。また、新年のお祝いの会ということでございますので、法務省にございます法曹記者クラブ、司法記者クラブのクラブ員も出席しております。  何名ぐらいかというお尋ねですが、人数は、立食式でございますので、数えておりません。ただ、大体三百名程度ではないかというふうに考えております。
  129. 漆原良夫

    ○漆原委員 そういう中で行われた法務大臣の発言の中で、ごあいさつの中で、日本国憲法の第九条に触れる次のような部分がございました。  日本人は、連合軍からいただいた、国の交戦権は認めない、自衛もできない、軍隊も持てないような憲法をつくられて、それが改正できないという中でもがいておるという大変な時代に我々は生きているんだと思います。  こういうごあいさつがあったというふうに私は聞いておりますが、まず大臣、こういうごあいさつをされたかどうか、いかがでしょうか。
  130. 中村正三郎

    中村国務大臣 これはお祝いの会の立食パーティーの席でありまして、極めて公式な席で、例えば委員会答弁とかでありませんので、一言一句覚えておりません。  そして、申し上げたかったことが司法制度改革について、十五分ぐらい話したうちの十三、四分は司法制度改革の話をしたと思います。そういうことでありますので、一言一句は覚えておりませんが、私が申し上げたかった趣旨は、当時ちょうど国連軍に参加とかということが新聞をにぎわせているときでございましたので、おのずと日本は憲法上の制約があるよという趣旨のことを申し上げたくて申し上げた。  しかし、いずれにいたしましても、そういうことを軽々しくそうした席でお話ししたということは、これは極めて適切を欠いたことであるということで、おわびをして撤回をさせていただいた、こういう経緯でございます。
  131. 漆原良夫

    ○漆原委員 大体そういう発言がなされたというお答えだと思いますが、まず、自衛もできないという御発言について、憲法九条はすべての自衛権を否定しているというふうに大臣はお考えなのか、この点、どうでしょうか。
  132. 中村正三郎

    中村国務大臣 憲法の解釈については、今の内閣の解釈のとおりだと思っております。  これは撤回をさせていただいた言葉であり、そういうことをああいう席で言ったこと自体を撤回させていただいたことでありますけれども、私としては、自衛隊というのは軍隊ではないだろう、これは憲法の規定で自衛ができるような戦力なんだろうというふうに思っておりますので、自衛のための軍隊というようなものを持ってはいけないんだよという趣旨で申し上げたと思います。  いずれにいたしましても、非常にまずい発言でございますので、撤回させていただき、おわびをさせていただいたわけでございます。
  133. 漆原良夫

    ○漆原委員 まずお断りしておきたいのですが、撤回をしたということはよく私も存じているのですが、その当時、また現在の大臣の憲法九条に対する御認識はどうなのかなということを、私、ぜひお尋ねしたいと思っておるのです。  大臣に憲法九条の解釈を聞くなんということは大変失礼かとは思いますが、やはり大事な問題でございますし、政府も統一見解を出しておるところでありますから、今までの政府の統一見解、また今までの政府の解釈から比べてみて大臣の発言はどうだったのかな、どういう御趣旨なのかなということはやはり一応確認しておかないといけないな、こう思うのですね。  したがって、撤回したからもういいということではなくて、どういう御趣旨なのか。自衛ができないというふうに当時発言されておりますけれども、今現在、憲法九条は日本国の自衛に対しては一切の自衛権を否定しているという認識なのか、それともそうではないのか。こういう憲法の認識についてお伺いしたいと思います。
  134. 中村正三郎

    中村国務大臣 私が申し上げたかったのは、国際協力をする場合などにもおのずと憲法上の制約があって、そういう中で、限界のある中でやらなければいけないから苦悩しているということを申し上げたわけでありまして、憲法を改正することを意図したわけでもありませんし、今の政府の憲法解釈のとおり私はやるということでございます。
  135. 漆原良夫

    ○漆原委員 今の政府の憲法解釈のとおりということであれば、日本国憲法九条は集団的自衛権は認めておらないけれども、個別的自衛権に限っては必要最小限度において憲法九条の是認するところだ、こういうお考えだというふうにお聞きしてよろしいでしょうか。
  136. 中村正三郎

    中村国務大臣 憲法は国の交戦権は認めておりませんが、交戦権というのは、戦いを交える権利という意味ではなくて、交戦国が国際法上有する種々の権利の総称である。一方、憲法は、いわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているが、独立国家に固有の自衛権まで否定するものではなく、この自衛権の行使を裏づける自衛のための必要最小限の実力を保持することまでは禁止していない。自衛隊はこの限度内の実力組織であるから、憲法に違反するものではない。こういう見解でございます。
  137. 漆原良夫

    ○漆原委員 それが政府の統一見解であろうと思います。  もう一度申し上げますが、国の交戦権は認めない、自衛もできない、軍隊も持てない、こう三つ否定しておられるわけですけれども、この言葉をそのまま聞きますと、交戦権もない、自衛もできない、軍隊も持てない、日本が外国の侵略に対して全く無防備あるいは丸腰であるかのような発言に聞こえますけれども、これはどうでしょうか。
  138. 中村正三郎

    中村国務大臣 お酒を前にしての立食パーティーの席でありますから、こういう委員会でお話ししたように一つ一つ覚えておりませんし、どういう方がお聞かれになっていたかよくわかりません。  ただ、私がお話ししたかったのは、極めて制約がある中で国際協力もしていかなければいけないということで、私は、自衛隊というのは憲法の規定上軍隊とは言えないと思っておりますので、自衛のための軍隊というようなものも持てないんだよということを申し上げたと思うのですが、それも司法制度改革をお話ししたかったための話でありますので、一言一句は覚えておりませんが、私のお話ししたことは、いろいろ報道もされ、それは非常に不適切なことであったということで撤回をさせていただきまして、おわびを申し上げさせていただいたわけでございます。
  139. 漆原良夫

    ○漆原委員 内容は、発言の文言一々は覚えていないとおっしゃっておられるわけですけれども、これだけ新聞に書かれて、これだけ社説に書かれて大きな問題になったことについて、私は、大臣の発言がどのような発言だったのかということは当然法務省内で問題にされて、掌握されてしかるべきだと思うのですが、そういう作業はなさっていないのでしょうか。  これは大臣、いかがですか。自分がその日どんな発言をしたのか、新聞報道いろいろされているけれども、それに相当するような発言があったのかないのかということを法務省の内部に調査を命じるとかいうふうな作業はされていないのでしょうか。     〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
  140. 中村正三郎

    中村国務大臣 調査というようなことはいたしませんけれども、私がどんなことをしゃべったかなということはお聞きをいたしました。記憶はそれぞれまちまちでありますけれども、いずれにいたしましても、申し上げたかったのは司法制度改革の話でございまして、憲法を改正しようとかなんとかいうことも申しておりませんし、そういう意図を持ってお話ししたことでありませんので、そういったことの細かいところのてにをはまでは私はよく覚えていないのでございます。  ただ、極めて適切でなかったということでおわびをして、撤回をさせていただきましたということでございます。
  141. 漆原良夫

    ○漆原委員 法務省から、賀詞交換会における法務大臣あいさつ要旨というのをいただいておるのですけれども、この中でこう書いてあります。  その中で日本人は連合軍からいただいた、国の交戦権は認めない、自衛もできない、軍隊も持てないような憲法をつくられて、それが改正できないという中でもがいておるという、大変な時代に我々は生きていると思う、というふうに、省内でつくった文書の中で書かれておるわけなんですが、こういう文書を法務省がつくったことは当然法務大臣も御認識じゃないんでしょうか。
  142. 中村正三郎

    中村国務大臣 その文書を私は持っておりません。ただ、つくったのだろうと思います。
  143. 漆原良夫

    ○漆原委員 先ほど、自衛隊は軍隊でないというふうな発言がございましたが、自衛隊と憲法九条二項の戦力不保持、これとの関係は、大臣はどのように考えておられますでしょうか。
  144. 中村正三郎

    中村国務大臣 憲法の有権的な解釈は、これは法の番人である内閣法制局に聞いていただきたいと思うわけでございます。
  145. 漆原良夫

    ○漆原委員 日本国として、最低限度の防衛もないというふうにお考えなのか、それとも自衛権はあるわけだから、戦力不保持というのはその範囲では認められるのだというお考えなのか。これは、法務大臣当然御存じだと思うのですが、また法務大臣としてこの辺の解釈は当然頭にあると思うのですが、いかがでしょうか。
  146. 中村正三郎

    中村国務大臣 それは、先ほど申し上げました政府見解のとおり私も考えております。(漆原委員「もう一度」と呼ぶ)政府の統一見解を先ほど申し上げさせていただきました。そのとおりに思っております。自衛権はあるわけでございます。
  147. 漆原良夫

    ○漆原委員 自衛権の範囲内で自衛隊の存続が認められる、こういうふうにお考えだ、こういうことでしょうね。
  148. 中村正三郎

    中村国務大臣 必要最小限の実力を保持することまで禁止しているものではない、こういうことであります。
  149. 漆原良夫

    ○漆原委員 私もそういうふうに思います。  そうすると、国の交戦権は認めない、自衛もできない、軍隊も持てないような憲法というのは、これは法務大臣、どういうふうに私ども理解したらいいんでしょうか。
  150. 中村正三郎

    中村国務大臣 私は、そこが不適切でありましたので撤回をさせていただいたわけですが、私が申し上げたかったのは、自衛隊というのはいわゆる軍隊でないと思っております。ですから、先ほど申し上げました自衛権というのは、自衛のための必要最小限の戦力であるということで、当時ちょうど国連軍とかそういうことが新聞をにぎわすところでありましたので、自衛のためでも軍隊というような種類のものは持てないのであろうというようなことを申し上げたのだと思いますけれども、それをしゃべりたかったのが本旨でなく、司法制度改革をやろうという中でお話しする前言葉にしゃべった部分でありましたので、正確には覚えておりませんが、軍隊に参加するとかそういうことはできないんだよということが申し上げたくてしゃべったと思います。
  151. 漆原良夫

    ○漆原委員 それはまた後でお尋ねするとして、ちょっと進めてみたいと思います。  先ほど読みましたように、日本人は連合軍から憲法をいただいたという御発言、それから憲法をつくられてという御発言、この御発言は、日本国憲法が日本国民の意に反して米国から押しつけられたというふうに受けとめられやすいんですが、大臣の真意はどうでしょうか。
  152. 中村正三郎

    中村国務大臣 立案の過程はどうあれ、帝国議会で制定され施行された憲法でありますから、これは立派な日本の憲法であり、私どもはそれを遵守し擁護する義務があるというふうに思っております。
  153. 漆原良夫

    ○漆原委員 日本国憲法は押しつけられたんだ、いわゆる憲法押しつけ論というのはずっと前から議論されているんですが、憲法は押しつけられた憲法だ、日本国民の意思を反映していないんだ、したがって、新たに日本国民の伝統と歴史に基づいた憲法をつくるべきだという、いわゆる改憲論の論拠とされてきたのが実は押しつけ憲法論になるわけなんですが、大臣の御発言、連合軍からいただいた、また憲法を連合軍からつくられたというこの御発言というのは、まさに外形的には押しつけ憲法論そして改憲論の論旨と同じように聞こえるんですが、いかがでしょうか。
  154. 中村正三郎

    中村国務大臣 先ほども申し上げさせていただいたんですが、私が、現憲法を厳重に遵守して、その上で行政に当たり、法律をつくれということを繰り返し言っていることは、私の省の幹部が皆知っていることだと思います。そして、憲法の行間を読んで解釈するようなことはせずに、ストレートに読んで憲法を守れということを言っておるわけでありまして、私は、立案の過程はどうあれ、それは日本国の帝国議会で制定された憲法でありますから、これは日本国の日本国民がつくった憲法である、ですから遵守をし、これを擁護していかなきゃいけないものだと思っております。
  155. 漆原良夫

    ○漆原委員 しつこくなって申しわけありませんが、ちょっと読みます。  交戦権は認めない、自衛もできない、軍隊も持てないような憲法をつくられて、それが改正できないという中でもがいておるというこの表現ですね。このもがいておるというのはどういうことでしょうか。改正できないでもがいておるという御発言はどういうことなんでしょうか。
  156. 中村正三郎

    中村国務大臣 先ほどから申し上げますように、ちょうど国際貢献、国連の平和軍というようなことが、PKFの解除ということが話題になっているときでありましたので、それは、憲法上の制約があってある一定の枠の中で国際貢献をしなきゃいけない、しかし国際貢献はいろいろなことで求められるということで苦悩をしているという意味で申し上げたわけでございます。(発言する者あり)
  157. 漆原良夫

    ○漆原委員 今外野から声が入っておりますが、憲法九十六条は改正の手続を規定しております。改正できないでもがいている、こういう発言。もがいている人というのは、憲法改正論者がもがいているのであって、憲法を改正しようという意思のない人は何ももがく必要はない。こう考えてみますと、中村法務大臣の、連合軍から三つのない、ない、ない憲法をもらって、それが改正できないという中でもがいているとおっしゃることは、やはり憲法を改正したいという気持ちのあらわれというふうに読めるのじゃないでしょうか。いかがですか。
  158. 中村正三郎

    中村国務大臣 そうではございません。そうではございませんが、これは、何度も申し上げて恐縮ですが、司法制度改革をやろうという話を一杯やる会の前にお話ししたくて話したときに、内外の情勢というのは大変厳しい中だ、しかし、司法制度改革は我々責任を持ってやっていかなきゃいけない、この部分を話したわけでありまして、委員会答弁したとかいうことでございませんので、正確に、私、本当に記憶をしておりません。  記憶をしておりませんが、そのようにとられる発言があったということは、これはまさに不適切なことでありますから、心からおわびをして撤回をさせていただきたい、こういうわけでございます。
  159. 漆原良夫

    ○漆原委員 そのままそのお言葉を承っておきたいと思いますが、先ほど来、閣僚は憲法九十九条で憲法を尊重し擁護する義務がある、こういう条文がございますけれども、当然、中村法務大臣としては憲法擁護義務を今後とも全うしていく、こういうお考えと聞いてよろしいですか。
  160. 中村正三郎

    中村国務大臣 これは、閣僚協議会でおわびをしましたときも明確に申し上げてまいっております。
  161. 漆原良夫

    ○漆原委員 新聞の報道によりますと、法務大臣は、一月四日の賀詞交換会での発言を、翌五日午前の閣僚懇談会で、表現に適切を欠いたとすればおわびするとして、発言が不適切であったことを認めて、取り消し陳謝したとありますが、そのとおりでよろしいですか。
  162. 中村正三郎

    中村国務大臣 そのとおりでございます。
  163. 漆原良夫

    ○漆原委員 発言を撤回し陳謝したという、この経緯を少し詳しくお尋ねしたいのですが、総理は一月二十五日の予算委員会でこう言っておられます。表現その他に適切を欠いた事実があるということで、次の日、私からその真意を求めましたところ、そうであると、これはおわびして撤回したい、こういうお話がありました、そういうふうな総理のお言葉があるのですが、その閣僚懇談会でどんな総理とのやりとりがあって、陳謝をして取り消しという結果になったのか、その経緯をお聞かせください。
  164. 中村正三郎

    中村国務大臣 私は、法務省内の会議とはいえ、新聞報道をされ、適切を欠く発言であったという思いでおりましたので、閣僚協議会で陳謝をして撤回させていただこうと思って参りました。ところが、総理大臣の方から、こういうような発言があっていろいろ報道されているけれども、法務大臣としてはどう考えているのだという御叱責がございましたので、私の方から、これは、司法制度改革をやろう、内閣でやる中で法務省は重要なことをやらなきゃいかぬということを新年のお祝いの会で申し上げたときに、それを強調したい余りに、内外の情勢というのは厳しいものがある、しかし、その中で国民のために司法制度改革はしっかりやっていこうという話をした、それが、強調したい余り、適切を欠いた表現があった、これをおわび申し上げて、撤回させていただきますということを申し上げました。
  165. 漆原良夫

    ○漆原委員 法務大臣がみずからこれは不適切だなというふうに思っておられた、また総理からもその旨の御発言があって、取り消された、こういうことですね。  総理から指摘された中村法務大臣の発言は、どこの発言をどのように指摘されたのでしょうか。
  166. 中村正三郎

    中村国務大臣 閣僚協議会の内容のことをどこまでお話ししていいかということもございますが、私にかかわることですから申し上げますが、報道されていることがある、そういうことに対するあなたの考え方はどうだという御趣旨だったと思います。御叱責と受けとめて、おわびをして撤回をさせていただいたわけでございます。
  167. 漆原良夫

    ○漆原委員 報道されていることがあるという、その報道内容の具体的な事項というのは総理は挙げられなかったのか。例えば、憲法発言だとかあるいは三〇一条発言だとか日債銀の発言だとか弁護士に対する発言、いろいろありますが、総理はどの部分を法務大臣に御指摘をされて、真意を尋ねられたのでしょうか。
  168. 中村正三郎

    中村国務大臣 総理がどういうことをおっしゃられたとかなんとかいうことは、私も記録をしたわけでございませんし、正確さを欠いてもいかぬと思いますので、私が考えておりますのは、その日の記者会見でも申し上げたのですが、いわゆる貿易上のいろいろな手段をミサイルが飛んでくるようだと表現したところと、それから国民の中に弁護士批判があたかもあるようなことをお話ししたということと、それから、憲法を改正するというようなことを申し上げたわけではないけれども、憲法に反することをお話しした。これは法務大臣としてそう軽々に申し上げるべきことではないと思いまして、適切を欠いたので、おわびをして撤回をさせていただいた、こういうことでございます。
  169. 漆原良夫

    ○漆原委員 ミサイルが飛んでくるとかという御発言と、それから弁護士批判の発言と、それから憲法に関する発言が不適切であったということで、陳謝して取り消された、こうお伺いしてよろしいでしょうね。  そうすると、確認をしておきたいのですが、法務大臣が不適切だということで陳謝をして取り消したという、この陳謝をしたという対象は国民なんでしょうか、それとも総理なんでしょうか。だれに対して陳謝したのか。お願いします。
  170. 中村正三郎

    中村国務大臣 これは一義的には法務省内部のこと、内閣の中のことでございますので、閣僚協議会でおわびをさせていただきました。その後、記者会見でおわびをさせていただき、それから予算委員会、またきょうの法務委員会でおわびをさせていただいているわけでございます。
  171. 漆原良夫

    ○漆原委員 確かに何回もおわびをしていただいておるのですが、またここでも何回もおわびをしていただいて大変恐縮なんですけれども、一義的には内閣に御迷惑をかけたと。今おわびしていただいているのは国民全部に対してというふうに理解してよろしいですか。いかがでしょうか。
  172. 中村正三郎

    中村国務大臣 国会国民の代表の前でこう申し上げているのですから、そういうことになると思います。
  173. 漆原良夫

    ○漆原委員 今おっしゃった、陳謝をして撤回をしたということ、その理由には、表現その他に適切を欠いた部分があるという、適切を欠いたんだから取り消したということなんですけれども、適切を欠いたという言葉というのは非常にあいまいな言葉になるのですが、これはどうでしょう、私の方から先に結論めいたことを申し上げて恐縮ですけれども、憲法問題については、憲法九十九条で定めているところの閣僚としての憲法尊重擁護する義務に照らして、そこを基準にして適切を欠いたというふうな意味で理解してよろしいのでしょうか。
  174. 中村正三郎

    中村国務大臣 私は、九十九条は、遵守し、擁護する義務を負うということは明確に意識しております。その中で、国際協力にはなかなか軽々しく言えないような、ある一定の制約があるのだよということを申し上げた。しかし、そういうことがやはり、新聞でもいろいろ書かれましたように、いろいろにとられる。そういうことはやはり軽々しく申し上げることじゃない。しかも、これが内部の祝賀会の席であったとはいえ、こういう発言は控えるべきであった、不適切であったということで、おわびをし、撤回をさせていただいたわけでございます。
  175. 漆原良夫

    ○漆原委員 新聞でいろいろ書かれたことは、中村法務大臣は憲法を改正する意図を持っているという改正論の観点から書かれておるわけでございますけれども、そうすると、そこで必然的に、法務大臣としての、閣僚としての憲法尊重擁護義務との関連でこの問題が取り上げられてきたわけでございますが、内心はともかく、法務大臣は、外形上そう誤解される発言をしてしまった、そういうこと自体が不適切だったのだ、不適切な表現だからそうなったのだというふうに私は考えておるのですが、いかがでしょうか。
  176. 中村正三郎

    中村国務大臣 マスコミの報道も全部覚えておりませんが、改憲には言及していないということを書いていたところもあれば、改憲に言及というような御表現もいろいろあったと思いますけれども、いずれにしろ、そういった、司法制度改革を強調する余り、一杯やるような会議でこういうことを話すということは、正確さも欠きますし、短い時間でやったことでありますから、非常にそういうこと自体が不適切であったということで、撤回をさせていただき、おわびをしたわけでございます。
  177. 漆原良夫

    ○漆原委員 一杯やるような場所で話をされたというふうにおっしゃっていますが、これは、先ほど御答弁いただいた内容によれば、法務省の幹部が集まった数百人の公の席で、法務大臣としての発言ではなかったのでしょうか。それこそ、朝日新聞の社説ではありませんが、居酒屋気分でどうのこうのという話が朝日新聞に載っておりますけれども、そうじゃないのじゃないでしょうか。賀詞交換会であったとしても、法務省の公式行事で、何百人という法務省の幹部を前にしての発言ではなかったのでしょうか。大臣、どうですか。
  178. 中村正三郎

    中村国務大臣 いわゆる、私が所信表明をするとか、それから今年一連の法務省のあり方をお話しするというような会ではございません。
  179. 漆原良夫

    ○漆原委員 法務省内部の話であったということは、私もそう思います。しかし、おっしゃったように一杯飲むような会合ではなかったということも、これも事実じゃないのでしょうか。賀詞交換会が、個人的に一杯飲むような会合ではないはずであって、先ほどの話によれば、法務省の仕事始めとして恒例の行事なんじゃないでしょうか。そこに法務大臣として、法務省の全軍を指揮する法務大臣として、今年の法務省の進むべき道を示したという、そういう大事な会じゃないのでしょうか。
  180. 中村正三郎

    中村国務大臣 少なくとも、私がこれから法務省を、一年間こうあるべきだというようなお話もしておりませんし、そういう会ではありません。みんなで司法制度改革の年だから頑張ろうというような趣旨のお話を申し上げました。  そして、これは日本人だれしもだと思いますが、お正月に集まってお祝いをするという会でありまして、そこに幹部が集まっていたわけであります。集まっていたわけでありますから、そこで、委員会で御答弁するとかなんとかいうこととは種類が違いますが、そういうところで軽々しくいろいろなことをお話しするということは、これは適切を欠くということで、反省をし、おわびをし、撤回をさせていただいたわけでございます。
  181. 漆原良夫

    ○漆原委員 真意は司法改革にあったのだということをたびたび大臣はおっしゃっております。また総理も、改革の必要性を強調したということだろうというふうに擁護しておられますが、先ほど申しました、この憲法に触れた部分と司法制度改革というのは、どんなふうにこれは関連してくるのでしょうか。
  182. 中村正三郎

    中村国務大臣 すべての立法、行政、それは憲法に従ってやるべきものと心得ております。
  183. 漆原良夫

    ○漆原委員 それは当然のことだと思います。  先ほど読んだ、連合軍からいただいた、国の交戦権は認めない、自衛もできない、軍隊も持てないような憲法をつくられて、それが改正できないという中でもがいている、この部分は、だからどういうふうにしようということでこの部分の発言になるのでしょうか。
  184. 中村正三郎

    中村国務大臣 それは、私としては、当時新聞をにぎわしていましたPKFその他に国際貢献が求められても憲法上の制約がある、その中で日本は苦悩している面がある、そういうことを申し上げたので、これで憲法を改正しようというようなことを意図したものではございません。
  185. 漆原良夫

    ○漆原委員 ただ、私は何回もここを読ませてもらっておりますけれども、これを一般の国民皆様がお聞きになれば、そうなのかと、いただいた憲法、そのいただいた憲法というのは、国の交戦権もない、自衛もない、軍隊も持てない、だから改正しなければいけないのだというふうに、そう聞くのが自然の聞き方じゃないのかなというふうに思うのです。  もしもこれが意を尽くしていないということであれば、法務大臣、この部分、どういうふうに訂正加除をしたならば法務大臣の意を尽くした文章になるのか。これはぜひ、この部分に手を入れていただいて、お示しいただければありがたいと思うのです。
  186. 中村正三郎

    中村国務大臣 これは、責任あるこうした委員会答弁申し上げたとかいうことではございませんので、私の趣旨を御理解いただけたらと思うわけでありまして、それは、何回も申し上げさせていただいて恐縮でありますけれども、国際貢献等を求められても、それは憲法上の制約がある、その中でやらなければいけない、そういう中で苦悩があるのだという趣旨で申し上げたわけでございます。
  187. 漆原良夫

    ○漆原委員 国際貢献の話を何回かされておるのですけれども、それが、交戦権は認められない、自衛もできないということと、どう関連しますか。
  188. 中村正三郎

    中村国務大臣 これは、委員会答弁したようなことではございませんので、私も一言一句覚えておりません。そういう中で、私は、適正を欠いたと思うものですから、撤回をさせていただきまして、おわびを申し上げているわけでございます。  ただ、その趣旨というのは、それは、国連平和軍へ行けば、もう当然交戦もあるかもしれないし、いろいろなことが想定されるわけで、それは憲法上できないのだよという趣旨で申し上げたと思いますが、それを申し上げたくてその十五分間話したのじゃないものですから、正確には覚えておりませんが、私の表現は全く適切を欠くものだと思いまして、それを撤回させていただきまして、おわびを申し上げたわけでございます。
  189. 漆原良夫

    ○漆原委員 何でこんなことをしつこく私は大臣にお聞きしているかというと、表現が不適切だったとか、真意は別にあるのだ、だから発言を撤回するというパターンは、今まで閣僚の問題発言のたびに、国民は何度もその言葉を聞かされてきたわけでありまして、国民から見れば、表現が不適切だったのじゃなくて、むしろ閣僚の本意がそこに出ていたのではないかという深い疑惑を持っているわけでございます。  そういう意味では、従来と同じようなパターンで、取り消してもう終わりだ、こういうやり方というのは、私は、国民の政治に対する信頼をどれほど傷つけてきたのかということ、やはり大臣は深く思いをいたすべきではないのかなという感じを持っております。  ことわざでも、綸言汗のごとしということわざがあります。また、君子の言は九思一言、九回思って一言を言う、一言言うにも賢者は九回頭の中で思索をめぐらすのだ、こういう言葉でございますけれども、きのうの発言をきょう全部撤回して、それで謝ったから一件落着という、私は、法務大臣の発言がそんなに軽くていいのかなという感じを持っております。  そういう意味で、ぜひ私は法務大臣に、この憲法発言、そう言ったかどうかわからないというあいまいなことではなくて、もう法務省も要旨をつくっているわけでございますから、どこにどの言葉を入れたら自分の意を尽くす言葉になるんだということを、きちっとやはり国民の前に明らかにすべきではないのかなと思う。それができないと、やはり法務大臣は言いたいことを言って、翌日取り消して終わりになっちゃったんだ、そういう疑惑がぬぐい去れないまま、従来と同じようなパターンになってしまうんじゃないかなというふうに私は危惧をしておるんですが、法務大臣、御感想はいかがでございましょうか。
  190. 中村正三郎

    中村国務大臣 いかに内部の会議であるとはいえ、先生御指摘のようなことを頭によく入れまして、反省をし、おわびを申し上げる次第でございます。
  191. 漆原良夫

    ○漆原委員 時間があと五分になりましたが、弁護士発言に対してもちょっとお尋ねしておきたいと思うんです。  これは取り消されたということなんですが、大臣の御発言は、私が最近憂いますことは、弁護士に対する国民信頼が非常に揺らいでいるということであります、私も事業をやってまいりましたけれども、弁護士に頼むとなかなかやってくれない仕事がある、そんなのはやったってだめですよ、むだですよといってなかなか受けない、そして、刑事の弁護においては、最近、和歌山そしてオウム真理教の事件を通じて、国民の中には、弁護士ってあんなひどいものだったんですかという感情が芽生えているのは、これは事実であり、こう感じているのは私だけではないと思います、こう発言されております。  弁護士については、弁護士自治が認められておりまして、弁護士法第一条では、弁護士の使命について「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」と規定されております。  また、弁護士自治の結果、同法三十一条では「弁護士会は、弁護士の使命及び職務にかんがみ、その品位を保持し、弁護士事務の改善進歩を図るため、弁護士の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする。」と規定されておりまして、弁護士となろうとする者は、必ず日本弁護士連合会及び単位弁護士会に登録しなければならない、こうなっておるわけでございますが、弁護士に対する国民信頼が非常に揺らいでいる、弁護士ってあんなひどいものだったんですかという法務大臣の発言は、弁護士にとってみれば、到底看過することのできない発言でございます。  法務大臣は、弁護士に対する国民信頼が揺らいでいる一事例として、弁護士がなかなか事件を受けてくれないことを挙げられておりますが、弁護士がなかなか事件を受けてくれないことと、弁護士に対する国民信頼が揺らぐことがどのように関係しているのか、説明していただきたい。
  192. 中村正三郎

    中村国務大臣 受けてくれないというのは、先ほど坂上先生のお言葉にもありましたけれども、弁護士が、こういう訴訟をしても勝ち目がないとか、それはやってもなかなか裁判所が受けないだろうとかいうアドバイスをするのは、弁護士として当然のことだと思います。ですから、それは批判でなくて、弁護士という職業に対する理解を深めなきゃいけないという思いも込めてのことであります。
  193. 漆原良夫

    ○漆原委員 大臣の御発言が弁護士に対する援助であるということであれば、それはそれで結構でございます。  私も、弁護士は依頼者の言うことを何でも聞くのが弁護士の仕事じゃありません。法的な権利が立つのかどうか、証拠から判断して受任すべきかどうか、当然判断すべきことであって、そういう意味で法務大臣がおっしゃったのであれば、それはそれで結構でございます。ただ表現が非常にまずかったということだけ申し上げておきます。自分が弁護士だから私は強く申し上げているわけじゃないので……。  もう一つ、刑事の弁護においては、最近、和歌山そしてオウム真理教の事件を通して、国民の中には、弁護士ってあんなひどいものだったんですか、こういう感情が芽生えている、これは事実だとおっしゃっている。この、弁護士ってあんなひどいものだったんですかという具体的な事例を挙げていただきたい。
  194. 中村正三郎

    中村国務大臣 これも、委員会等で御答弁を申し上げたことでなくて、そういった会の発言でありますので、一言一句どう申し上げたかよく覚えてはおりませんけれども、私がそういう意見で弁護士さんのことを批判したのではございませんが、それにしても、国民の間でこんなような意見があるというようなことを私が申し上げるべきではないと思いまして、深くおわびをし、撤回をさせていただきたいと思っている次第でございます。
  195. 漆原良夫

    ○漆原委員 大臣のお考えではないんですね。大臣が、弁護士ってあんなひどいものだったんですかというふうに考えておるということではないんですね。これは明確にお答えください。
  196. 中村正三郎

    中村国務大臣 そうではありません。
  197. 漆原良夫

    ○漆原委員 弁護士はひどいと思っていないということですか。
  198. 中村正三郎

    中村国務大臣 ないです。
  199. 漆原良夫

    ○漆原委員 大臣がそう思っておられないんであれば、これは幸いでございます。  司法改革には、弁護士会そして弁護士の協力というのは私は不可欠だと思うんです。この発言を取り消したから終わりじゃなくて、大臣がそう思っていらっしゃらないんであれば、それはそれでいいんですけれども、もしそう思っていらっしゃるんであれば、これは大変弁護士及び弁護士会の感情を逆なでする御発言だと思うんです。少なくともこういう御発言が外に出たわけでございますから、弁護士会に対してしかるべき誤解を解く手続をなされるべきだと思うんですが、いかがでございましょうか。
  200. 中村正三郎

    中村国務大臣 これは私が申し上げるということでなくて、こんなことをということを言ったということ、それ自体が私が言うべきことでなかったと思います。  それと、私、実は弁護士さんとのつき合いが非常に広うございまして、いろいろな事件で御一緒したりして、弁護士さんの仕事は非常に理解している方だというふうに私自身は思っていたわけでございます。長いつき合いがございます多くの弁護士さんを存じ上げておりますし、法律扶助制度の問題でも御協力も申し上げてまいりましたし、何か誤解を解く方法があるか、ちょっと考えてみたいと思っております。
  201. 漆原良夫

    ○漆原委員 弁護士会ないし弁護士に対する誤解を解く努力をぜひしていただきたいということを御要請申し上げて、私の質問を終わらせてもらいます。ありがとうございました。
  202. 杉浦正健

    杉浦委員長 上田勇君。
  203. 上田勇

    ○上田(勇)委員 公明党・改革クラブの上田勇でございます。  きょうは、もう午前中の審議から、一月四日の中村法務大臣の発言にかかわるいろいろな質疑が行われまして、大臣の方から、不適切な発言であって、撤回の上陳謝したいということでもございます。  もちろん、憲法の問題にしろ、他のアメリカとの問題、弁護士等へのことについても、それぞれ各人がいろいろな意見を持つのは当然であるというふうに思いますけれども、きょうのいろいろな議論を聞いておる中で、内部の会合とはいえ、これは法務省の幹部の皆さんを集めての会合であったわけでありますし、先ほどの御説明では、記者が入っていたということも十分御承知の上だったと思います。  ですから、その辺は、一つは、大臣も不適切な表現であったということをお認めでございますけれども、その後、翌日撤回されて陳謝されているんですが、やはりこういう不適切な表現、法務大臣という行政の長としての御発言を、謝って取り消せば信頼を失うことがないんだということではなくて、法務省はもちろんのこと、政治に対する国民の不信感をまさに増長させたという意味では、本当に大臣の責任は重たいものであるというふうに私もここで指摘せざるを得ないと思います。こうしたことが今後起きないよう、まず最初に大臣に対しまして強く御要請を申し上げたいというふうに考える次第でございます。  この一月四日の御発言については、いろいろと今まで質疑で取り上げられましたので、私の方からは、伺いました大臣の所信の中身につきまして、何点かお聞きをしたいというふうに思います。  初めに、きょうの所信表明とはこれは関係ございませんけれども、民法の改正の問題について大臣の御見解を伺いたいのです。  報道されているところによりますと、中村大臣は、選択的夫婦別姓制度の導入など、民法の改正に向けた検討を始めるように自民党の方に要請をしたという報道がなされております。この民法改正案は、私たち公明党・改革クラブも含めまして、当時は平和・改革でございましたけれども、野党議員の有志によりまして、議員立法で法案国会に提出されているものでございます。そういう意味で、大臣のこうした前向きな取り組みについては大変ありがたく、高く評価させていただきたいのです。そういう意味で、ぜひこの法案の早期成立に向けて大臣にも御協力お願いしたいということでございます。  そこで、自民党の方に民法の改正について早期検討を御要請したということでございますけれども、与党の反応、対応はどうだったのでしょうか。また、大臣として、この問題について今後どのような方針で取り組んでいくつもりなのか、お伺いしたいというふうに思います。
  204. 中村正三郎

    中村国務大臣 この問題につきましては、就任以来、反対、賛成、両方からいろいろなお話を伺いました。そして、政府において、どういう立場にあるかということを検証してみたのですが、既に政府では男女共同参画社会実現ということを目指しておりまして、今国会にも男女共同参画基本法を提出するということを総理大臣が所信表明で述べているところでございます。  この男女共同参画社会実現するために、政府に閣僚会議がございまして、それは総理初め全閣僚が入っておるわけでございますが、そこで、男女共同参画社会実現二〇〇〇年プランというのがございます。そのプランの中に、平成十二年度までにやるべき行動計画があります。その中で、選択的夫婦別姓の実現に向けて推進を図るという法務省役割が記されておるわけであります。  こういうことでありますから、私どもの立場政府の方針に従ってこれを推進するべきであろうということを認識いたしまして働きかけたのですが、さはさりながら、これは先生御存じのとおり、大変に世論も分かれている。内閣で実施しました世論調査でも、この前の、ちょっと古い世論調査かもしれませんけれども、賛否というと反対の方が多く出ている。年齢層によって大変差がある。これはどうしてだろう。これは、やはりその年代によって非常に感じ方の違いがあるのだろう。しかし、これは、男女共同参画社会実現していくためには、行動計画でやらなければいけないということになっている。  それではどうしようということを考えたのですが、やはりこうした国民の基本的人権とか生活そのものに関係あることは、国民の代表である国会の御論議をいただくべきであろう。また、国会の御論議をいただけて、御同意がなければ法律として成立しないわけですから、なかんずく与党の御審議を願いたいということで、こういうような状態にあって、我々は推進するべき立場にある、検討してくれませんかということを法務部会長にお願いいたしまして、やってみようということで、担当の小委員長が森山眞弓先生でありましたので、そこにお話しくださって、そこにお願いをいたしました。この間、ちょうど予算委員会でこの質問があり、答弁したときに、森山先生いらっしゃいましたので、終わりましてから、先生、ぜひよろしくお願いしますと言いましたら、やってみましょうということでお引き受けをいただいているわけであります。  これは広く国会で御論議をいただきまして、国会の御論議ですから私が余り申し上げるべきことではないかもしれませんが、ぜひ与野党で、この実現ができ、通るような法律にするにはどうしたらいいかという御論議をいただけたらと思っているわけでございまして、法務省としては、それを推進の立場から側面的にバックアップしてまいりたい、このように思っております。
  205. 上田勇

    ○上田(勇)委員 民法改正についてはいろいろな議論、意見があるというのは私も承知しておりますし、正直申し上げれば、我が党内においてもいろいろな議論の経過を経て、これは賛否ともいろいろな議論を経てきているわけでございます。  今お話しいただいた中で、今度の民法改正案、法制審が出した答申もそうですし、私たちが出している法案も、いろいろな項目があるのですけれども、大臣、今問題になっているというのでしょうか、ネックになっているというのは、やはり夫婦別姓のところだけがネックになっているというふうに考えてよろしいのでしょうか。
  206. 中村正三郎

    中村国務大臣 御論議になって、国会でこれを提出して、なかなか法案通過がどうかということで、国会の御論議にまたなければいけないなと思っていますことは、これと例の非嫡出子の二分の一という問題でございますね。この二つがあるのではないかというふうに思っております。
  207. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今大臣からもありましたように、今度の民法改正の議論には、非嫡出子の相続差別の問題が入っているわけでありますけれども、この点については、確かにいろいろな議論があるというのは私も承知しておりますが、きょう、ほかの委員の方からも話がありました、去年の十一月ですか、国連人権委員会の勧告の中でも、この問題については取り出して言及されているわけでありまして、改善の必要があるとの意見が示されております。  我が国は、とかくいろいろな面、人権という面で大変厳しいような指摘もこの国連人権委員会からは受けている面が多いというふうには思いますけれども、こうした国際的な国連の人権委員会からの要請にこたえるという意味でも、この民法の改正案の早期成立が望まれているところではないかというふうに思います。こうした国連の勧告などといった国際的な世論あるいは国際的な要請について、大臣はどのように御認識されているのでしょうか。
  208. 中村正三郎

    中村国務大臣 確かに日本は国際協調の中にあり、国連中心でいろいろなことをやってまいる、そこから出されます勧告というのは重く受けとめなければいけないわけでありますが、一方、日本は主権国家であり、その主権国家法律をつくる国権の最高機関国会でありまして、国会の御決定がなければできないわけでございますね。ですから、私どもの努力するべきことは、国際機関の御指摘などもいろいろ御説明しながら、国会で広く御論議をいただいて、そして同意点が見出せたら同意点を見出して、法律化していくという努力をするということではないかと思います。  何と申しましても、国際機関の勧告との調整の難しいのは、その国家の主権、国民の考え方とそういった勧告が違った場合なのですね。それを私どもはやはり一つの政府機関として埋める努力をしていかなければいけないものというふうに考えております。
  209. 上田勇

    ○上田(勇)委員 民法の改正の問題は、法制審議会の答申が既に九六年の二月、もう三年前に出ております。という意味では、法務省としても、この問題についてはそこのところまではぜひ進めたいということで、残念ながら三年間たなざらしになっているというお立場なのではないかというふうに思います。  最近よく、大臣がこういうふうにおっしゃったかどうかというのはちょっと私も定かではありませんが、法制審の論議には時間がかかり過ぎて、タイムリーな対応ができないというような御批判というのを何人か与党の重要な方からも伺った記憶がございますが、どうも今回は全く逆のことでありまして、法制審の答申が既に三年も前に出ているのに、そこから、たなざらしにしたまま、法務省としては全く論議に時間がかかって、法務省なのかこれは与党なのかわかりませんけれども、議論ばかりかけていて適切な対応ができていないのではないか。これは、批判が全くそのまま逆に当てはまっていることじゃないかというふうに思います。  そういう意味で、もう既に有志の議員立法が国会に提出されているわけでございますので、もちろん、この議員立法を提出したのも、これは政府がいつまでたっても一向に法案にする気配がないということから議員立法として提出させていただいたわけでありますが、こういう事態でありますので、もし政府の方として、今提出されている法案とほぼ同じ、私たちが提出している法案とほぼ同じような考え方であるのであれば、ぜひこの成立に御協力をいただきたいというふうに思いますし、また、内容の面で見解が異なるというのであれば、政府案を提出していただきまして、この国会の場でしっかりとした議論をして成立させていきたいというふうに考えますけれども、大臣、政府としての案を提出される見込みというのはあるのでしょうか。
  210. 中村正三郎

    中村国務大臣 委員、多分御存じで御論議されていると思いますが、この嫡出でない子の相続分関係のことは、世論がまた極めて割れておりまして、特に女性の方の反対の方が若干多いというような現象、また年代別のいろいろなばらつきもあるという中で、政府として法律を提出しますのは、法律を提出して、これを成立させていただかなければいけないわけでございます。そういう中で、やはり与党と御相談し、与党は野党と御相談し、これが国会の大宗の御意見として通っていくという法律でないと、なかなか行動が起こしにくいという現実問題があると思います。そこらも、先ほどの夫婦別姓などと同様に、国会で広く御論議いただいて、そして方向性を出していただければ非常にありがたい。  まさにこれは、何回も申し上げて恐縮ですが、提出しても、法律が通りませんとこれは何もならぬ問題でありますので、そこらで国会の御論議を少し深めていただきたいという希望はするわけでございます。
  211. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今、特に民法改正案の中で、夫婦別姓とともに非嫡出子の相続の問題が、いろいろな意見が分かれている。私もそれは十分承知しておりますし、我が党内の議論の中でも、そうした意見が途中の経過の中ではかなり出てきたということはそのとおりであります。  しかし、これはやはり国民権利にかかわることでありますので、世論が割れているから、あるいはいろいろな意見があるからできないんだという性質のものではないんではないのかな。先ほど、大臣も、民主主義は多数決の原理であるけれども、少数者の権利も尊重しなければいけないということでありましたので、これは、世論が割れているからということだけで片づけられないことだというふうに私は思います。  そういう意味で、もちろん、今おっしゃったように法案成立しなければ意味がない。我々野党各党、有志の出している法案も、その意味で、出しているだけでそのまま議論が進まないという状況でございまして、これも当然のことながら与党の御理解がなければ成立しないわけでございます。そういう意味で、今、大臣の方から、側面的に法務省の方で応援していただけるということでもございましたので、ぜひその点を重ねてお願い申し上げたいというふうに思います。  次に、少年法の改正の議論が今いろいろ話題を呼んでおります。一月の二十一日に法制審の答申が出ていまして、今さまざまな議論を呼んでおりますが、もちろん、内容の詳しい点は、少年法改正案、今国会に提出というふうに伺っておりますので、そのときに議論する機会もあると思いますが、大臣の基本的な考え方だけについて、ひとつお伺いしたいというふうに思います。  これも報道で恐縮でございますが、中村大臣は、「少年法は保護・更生という方向だけでいいのか。抑止力という要素も検討されていい」というふうに御発言されているという記事がございます。この犯罪の抑止力というのは、厳罰化、重罰化という意味なのでしょうか。どういう意味でおっしゃったのか、ちょっと確認をさせていただきたいと思います。
  212. 中村正三郎

    中村国務大臣 少年犯罪年齢の年少化、凶悪化ということが大変な世間の関心を呼び御論議を呼んでいる中で、いろいろな御意見がある。その中には、今、保護更生という観点から書かれている少年法であるけれども、やはり犯罪に対する刑罰というのは、抑止の効果ということも考えていいのではないかという御意見もあるということを御紹介したことはございます。  しかし、これをどういうふうに決めるかということは、やはり、私、これは、国民の基本的人権、生活そのもの、お子さんのことでございますから、これを御論議いただくのは、やはり国会国民の代表に御論議いただくのが一番いいのではないかと思いまして、与党にちょうど少年法改正の小委員会があるということでございますので、そこにお願いいたしました。  何カ月かにわたって、いろいろな御専門家を、お呼びすると言っては御無礼かもしれませんけれども、来ていただいて、意見交換をしたり意見をいただいたりして御審議をくださっているというふうに伺っております。  そして、抑止の観点からも論じたらいいではないかという御議論を御紹介したわけで、また、抑止効果ということを話したから、それですぐ重罰化、厳罰化とかいうことではないとも思っておりまして、私が予断をもって、こうしたら、ああしたらとかいう発言はしたことはございません。
  213. 上田勇

    ○上田(勇)委員 また、別の報道によると、大臣は、「法案をつくるのは法務省であり、答申は」これは法制審の答申のことだと思いますが、「あくまでその参考意見だ」と述べたというふうに報道されております。さらに、その記事の中で、これはいわゆる記者の方の気持ちを書いたものだと思うのですが、「国会提出前の政府案作成の段階で、自民の意向に沿う形で答申を大幅に変更する準備があることを示したものだ。」というふうに、これは大臣がおっしゃっているわけではございませんけれども、こういうふうに報道されております。  確かに、法制審というのは法務大臣の諮問機関でございますので、大臣の言うのはそのとおり、間違いはないわけでありますが、この発言の意味されているところというのは、今、法務省が提出に向けて検討されている法案というのは、法制審の答申とは異なる内容のものになるということを示唆されたのでしょうか。また、それだったら、どういうような変更を想定されておるかも含めてお願いいたします。
  214. 中村正三郎

    中村国務大臣 法制審議会の問題は、内閣全体がやはり国会の議論を重視して、そして法律をつくっていこうという方向性の中で、省庁再編法案、与野党の御意見で、審議制度というのは、それに過度に頼るのはやめようというような御議論の中で、基本的な法律案とか基本的な政策をつくる審議会というのは原則廃止していこう、専門家の御意見をいただく場合には、そういうときにアドホックに委員会をつくって御意見をいただこうというような方向性にありますので、それは与野党一致した行政改革の中の御議論だったと思います。そういう意味で、五十九年に法制審議会が設置法である審議会から法務省組織令の中の審議会に入り、法律によって定められた審議会でない諮問機関ということで、ここで御意見をいただいて、それをまた国会で御相談しながら法律をつくっていくというのは、そういう筋道であろうかと思います。  ただ、今その新聞記者がおっしゃった大幅に改正してというようなことは実はないんでありまして、細かいことで、ちょっとこれはやはり、先ほどから申し上げているように、法務委員会だから本当のことを申し上げますが、これも法律が提出されて御審議をいただいて成立させていただかなければいけないわけですから、成立させていただくためには各党の御意見もいただきながら成立させていただけるような法律にしなきゃいけないという御努力の中で、多少の検討をしているということでございます。
  215. 上田勇

    ○上田(勇)委員 私が今ちょっと二つの新聞記事を挙げさせていただいたんですが、これをこのままそのとおりに読みますと、どうも何か、今の中村大臣のお考えが、法制審の答申というのが保護更生という方向だけで抑止という要素が欠けており、それについては答申を土台にして法案提出までには変更するんだというようなふうにも受けとめられたんですけれども、そうではないというふうに考えてよろしいですね。
  216. 中村正三郎

    中村国務大臣 全くその部分ではございません。
  217. 上田勇

    ○上田(勇)委員 この問題でいま一つ議論になっていると承知しているのが、刑事罰適用年齢の引き下げの問題がございます。先般、一月の二十一日に示されました法制審の答申ではこれについては触れておりませんが、そうしたいろいろなことを今申し上げたことといろいろ総合してくると、このことをおっしゃっているのかなというふうにも思ったんですけれども、今、そういうことではないということであったというふうに思います。  私は、こうした厳罰化とか刑事罰適用年齢の引き下げとかというのが少年犯罪の防止にストレートに役立つんだろうかというのには疑問を持っておりますし、私も、日本弁護士連合会はもちろんのことですが、教育とか児童心理の専門家などの方々からもいろいろ御意見を伺ってきた中で、必ずしもそういう意見というのは多くなかったわけでございます。その意味で、今いろいろな議論が行われておりますけれども、大臣は、刑事罰の適用年齢の引き下げについてはどのようにお考えなのか、御見解を承れればというふうに思います。
  218. 中村正三郎

    中村国務大臣 私も、法務大臣に就任して短いものでありますし、そういった問題を長年研究してきた者でもございませんので、私に確たる自信を持った意見はございません。こういう意見がある、ああいう意見があるということを勉強させていただきまして、その上で与党で御審議をいただけないかということをお願いした、こういう状態でございます。
  219. 上田勇

    ○上田(勇)委員 私も、少年であったとしてもそれ相応の判断力はあるわけでありますし、全く責任がないという考え方にくみするものではありません。また、少年非行がすべて社会の責任であるというような考え方、そういう立場に立つものでもございません。しかし、かといって中学生を刑務所に入れることが必ず正しいものかどうかというのは、これは大いに疑問に思うところでありますし、そういう意味で、この対象年齢の問題については、どうも犯罪防止という効果の面でも疑問がありますし、いろいろとまだ検討していかなければいけないことでありまして、拙速に結論を出すことはやめて、やはり各方面の専門家の意見もよく聞いた上で慎重に対応していただきたいというふうに思うわけであります。  私は、この法制審の内容についても、いろいろと専門家の御意見を伺いまして、仮にそれがそのまま法案になったとしても、まだいろいろと疑問な点はあるというふうに私どもも考えておりますので、このままではちょっと成立させるということには問題があるのではないかなというふうに考えているところでございますので、これはもちろんこれからの議論でございますが、現段階での考え方について、一言述べさせていただきます。  この少年法の問題でもう一つ大きな問題として、犯罪被害者権利擁護の視点がございます。犯罪による被害者の方々の権利の問題、これは非常に重要な点であるというふうに思います。  今、少年犯罪被害者当事者の会という会がございまして、先日、インターネットでホームページを開いているものですから、その中のいろいろな御意見を私も見させていただきました。御自身の子供さんを犯罪の被害で亡くされた御両親の大変悲痛な叫びにも接し、本当に何とも言いようのない気持ちになりました。  その中でも特にこういう御意見がありまして、審判が、これは少年審判ですね、これがいつ始まりいつ終わったのかもマスコミを通じてしかわからなかった、私たちはいつも蚊帳の外であったというような、そうした趣旨のことがたくさんございました。この点については、法制審の答申の中でも、少年審判の結果等通知という形で盛り込まれておりますが、私は、どうも、この当事者の会の皆様、直接お話を伺ったわけではありませんが、こうしたいろいろな御意見が載っているのを見ますと、これだけではちょっと不十分なんではないのかなというふうに感じるわけでございます。  ただ、これは少年事件に限ったことではなくて、我が国刑事司法においては、こうした被害者立場というのでしょうか、また知る権利、そういったものがどうもないがしろになってきているんではないかなというふうに私自身考えるわけでございます。引き続き、法制審もあるんでしょうけれども、いろいろな場で被害者立場に立った議論をしていただきまして、改善していってもらいたいというふうに考えるわけでございますけれども、大臣、この点についてはいかがお考えでしょうか。
  220. 中村正三郎

    中村国務大臣 大変ありがたい質問をいただきました。  実は、記者団にこの点は発表したんですが、多少取り上げていただきましたけれども、取り上げ方が小さかったので余り大きな話題にもなりませんでしたけれども、私が就任いたしましたときに、被害者に通知がない、これは少年問題に限らず一般的な刑事事件等でもそうでございますけれども、それを全国統一した方式によって被害者通知制度をつくったらどうだということを申しまして、まず第一に東京地検から始めたんですが、全国だんだん広がってまいりまして、私就任しまして数カ月、やっと全国統一して被害者通知制度ができることになりまして、四月一日に全国的に施行するということで、大臣名の依命通達を出したところでございます。  こうした世間からの被害者の人権はどうするんだという御批判、それから、トラック事故等に遭った被害者が知らないうちに処理されて何にもわからないといったことがないように、先ほどから申し上げていることですが、検察行政もすべてこれは国民生活向上のためにあるんですから、国民の視点に立ってこういう改革をやっていこうということで、一つ一般的な被害者通知制度を発足させるということをしたわけでございます。  また、少年法については、この点は与野党御異議のないところだと思います。答申に載っております。そのとおりに成案を得ていこうと思っておりますが、さらなる充実ということにつきましても、また御論議いただき、御注意がありましたらそういったことをお伺いして、改善を図っていきたいと思っております。
  221. 上田勇

    ○上田(勇)委員 この被害者の会の方々のいろいろな御意見を見ていても、たしかその中で下稲葉法務大臣に対して申し入れをされているところがあったんですが、もちろん少年法の改正についてそこでは要請をしているんですけれども、それは、私が先ほど申し上げたように、余りにも被害者に対する情報の開示であるとかそういった配慮といったものがないといったことについて法律の改正を要望していることでありまして、厳罰化だとかそういったことを直接要望しているのではないということもまた言っているわけであります。  そういう意味で、今回のこの少年法改正の論議というのが、いろいろな形でこれから各方面の議論があるというふうに思いますけれども、ぜひ慎重な検討が必要なことであるというふうに私たちも思っておりますので、またこの法務委員会の場で、法案が提出されるまでの間にもいろいろな角度からの議論があるというふうに思いますので、またよろしくお願いしたいというふうに思います。  最後になりますが、ちょっと時間がなくなってまいりましたので、薬物対策のことについてちょっとお伺いしたいというふうに思います。  大臣は、所信の中で、この薬物の乱用と対策の必要性についてはもう数回にわたりまして言及をされております。私も、この問題は極めて深刻な事態にあるというふうに憂慮しておりますし、その意味で、大臣の御認識とこれに取り組む姿勢についてはそのとおりであるというふうに評価をさせていただきたいと思います。  私たち公明党としても、これまで薬物の問題については非常に真剣に取り組んでまいりました。薬物防止キャラバンカーの配置、そうした予算計上要請なども行うなど、薬物乱用防止のための啓蒙普及についても積極的に取り組んでまいりましたし、関係省庁の御理解を得ることによってその成果も上げてきたというふうに考えております。また、この薬物乱用問題というのは、国内だけでは解決できない問題であるということから、国連の薬物統制計画、UNDCPに対する積極的な支援なども訴えてきたところでございます。  先日、東京で、アジア薬物対策東京会議というのが開かれました。これはもちろん法務省の所管ではないので、詳しいことはあれですけれども、UNDCPのアルラッキ事務局長が来日をいたしまして、二月三日に我が党の神崎代表とアルラッキ事務局長がお会いしまして、私もその場に同席させていただいたのですが、その場でアルラッキ氏の方から、我が党のこれまでの取り組みについて謝意が述べられたのですけれども、残念ながら、政府の対応については若干注文がつきました。UNDCPへの支援がどうも最近減っているということで、協力要請もございました。  これは、東京会議とかUNDCPの支援というのも法務省の所管ではないのはよくわかりますし、薬物乱用対策というのは、法務省だけではなくて、厚生省、外務省、警察庁、多くの省庁にまたがっている問題であるというのも承知しておりますが、ひとつ大臣、この所信の中で薬物対策の必要性について強く訴えられているわけでございますので、内閣の一員として、我が国政府の対応についてもどのように考えておられるのか、また、法務省として、国内対策、国際協力の面で具体的にどのような施策を講じていくお考えなのか、その辺をお伺いしたいというふうに思います。
  222. 中村正三郎

    中村国務大臣 薬物の問題は極めて重要な問題だと思っておりまして、政府は、昨年五月、薬物乱用防止五カ年戦略を閣議決定いたしました。法務省といたしましても、その趣旨を踏まえて、関係機関と連絡、連携しつつ、青少年の薬物乱用傾向の防止や密売組織の取り締まりの徹底等に取り組む決意をいたしております。  検察当局におきましても、いわゆる麻薬特例法等を活用して徹底した捜査を実施するとともに、厳正な科刑の実現と不法収益等の剥奪に努めているところでございますが、従来の捜査手法のみでは犯罪の全容解明に十分な効果を期待できない面があると考えておりまして、この面につきましては、アルラッキさんに私もお会いしたのですが、アルラッキさんの方から、こうした薬物等の取り締まりについて組織犯罪対策法の成立を強く期待するということを言われました。特に、こうした犯罪のハイテク化等に直面して、我が国において、犯罪防止のための通信傍受ができるようにというような具体的な話までアルラッキさんからありまして、そういった点についても、法律成立に御尽力賜れればとお願いを申し上げる次第でございます。
  223. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今、組織犯罪対策法案についてのお話がございましたが、私たちも、今この薬物等の現状にかんがみて、そういった犯罪組織に対する対策というのが非常に急務であるというふうに考えているところでございます。  ただ、今提出されている法案、通信傍受のあり方であるとか刑の加重のあり方、我々まだ疑問に思っている点がたくさんございまして、幸い、与党また政府の方においても、そうした点は明らかにしていこうということと、また、修正についても柔軟な対応をしていただけるという表明がございますので、ぜひともまた、いわゆる対策の必要性と同時に、そうした国民権利に対する侵害が行われないような法案づくりを目指して取り組ませていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。  これで終わらせていただきます。
  224. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、達増拓也君。
  225. 達増拓也

    達増委員 中村法務大臣、常日ごろから司法改革について主張されているところでありますけれども、きょうの所信表明の中でも、まず、総論部分について、司法改革の必要性を強く訴えられておりました。また、各論に入って、当面の重要施策ということで項目が挙がっているわけでありますけれども、その第一に司法制度改革というものを持ってきて、並々ならない覚悟があるのだなというふうに思います。  内閣司法制度改革審議会を設置するための法案を提出する予定であるということでありますけれども、新聞でも既にいろいろ報道されております司法制度改革審議会、当初は司法制度審議会という名前が考えられていたところ、特に大臣の意向で改革の二文字を挿入し、ここにも大臣の司法改革への並々ならない決意というものがあらわれているのだと思います。このような審議会、時宜を得たといいますか、もっと早くてもよかったというくらい今必要なものだと思います。今国会で、できるだけ早い段階で成立させていかなければと思うわけでございます。  この司法制度改革につきましては、自由党が昨年六月の党大会で採択いたしました「日本再興へのシナリオ」、これは日本のあらゆる分野における改革を力強く進めていくための包括的な政策パッケージなわけでありますけれども、その「日本再興へのシナリオ」の中でも、司法制度改革ということを強く訴えておりますので、この部分につきまして今紹介させていただいて、大臣の所感を伺えればと思います。   司法制度改革   政治、経済社会が激動し、先行き不透明といわれる今日、社会基盤である法秩序維持国民権利保全のため、司法制度整備が必要である。   自立した個人からなる自由な社会においては、国民相互の権利の調整および行政国民との利害の調整は、これまでのような事前チェック型から、公正透明なルールに基づく事後チェック型に改めなければならない。そのためには、司法制度改革が必要となる。   (一)司法制度整備   適正かつ迅速な裁判を受ける権利を保障するため、裁判制度および準司法機能充実を図るとともに、優秀な法曹を十分に確保できるように司法試験制度改革する。また、国民の人権保障に資するため、弁護士の法律相談を容易に受けられるよう制度を拡充する。   (二)訴訟制度改革   裁判を受ける権利を実質的に保障するため、民事訴訟制度に関し、口頭弁論手続および証拠開示制度改革するとともに、当事者適格の拡大などを図る。組織犯罪国際犯罪、コンピューターによる犯罪等の新しい犯罪に対処するため、法制度整備する。   (三)犯罪被害者補償制度の確立   国民の自由な活動を保証するためには、犯罪の防止を図るとともに、凶悪な犯罪によって被害を受けた国民の生活を保障しなければならない。このため、現在、給付金の支給に留まっている犯罪被害者救済制度を国の補償制度に改める。   (四)人権の擁護   基本的人権および、あらゆる差別を克服するための物的、精神的インフラ作りのための基本法を制定する。   また高度情報化社会進展に伴う個人情報の侵害、情報通信網を利用した犯罪等に対処するため、必要な法制の整備を行う。 以上でございます。  大臣の所感を伺いたいと思います。
  226. 中村正三郎

    中村国務大臣 司法制度改革につきましては各界からさまざまな御提言がなされているところでありますが、自由党の司法制度改革政策につきましても、司法制度整備改革の必要性を指摘された貴重な御提言と受けとめております。司法制度改革審議会審議されますことは、これは内閣全体で定め、また司法制度改革審議会で定めるようになると思いますけれども、この御提言等を最大限審議の中に取り入れられるように努力をしてまいりたいと思っております。  今ざっと伺いますと、私どもの考えていることとほとんど一致しているわけでございますが、自民党がまとめました案、また、そういったものをもとに私どもが審議していただいたらというような希望をまとめましたものに含まれておりませんのが、犯罪被害者に関する制度の問題についてでございます。  犯罪被害者民事手続により迅速的確な被害回復を実現するに当たって、実際上の問題として、財産の散逸や、被害者による証拠資料の収集の困難などを伴うことが少なくないとの指摘があるということは承知をしておるわけでございまして、そのため、関係部局において、犯罪被害回復の実を図るための手続等について検討は行っております。  民事手続との関連など、解決しなければならないさまざまな問題があるところでありますが、できるだけ早期に犯罪被害回復を実効的なものとするための司法手続上の方策の実現に努めてまいりたいと考えております。  委員御指摘の、犯罪被害者に関する制度のあり方については、社会全体として、どのような支援を行っていくべきかも含めたさまざまな観点から検討が必要であると考えております。  また、司法制度改革の中で、私どもが検討していただきたいと思っている中に、附帯私訴の問題があります。附帯私訴の制度を導入いたしますと、先ほど申し上げましたようなところが解決される部分も含まれてくるのではないかと思います。  いずれにいたしましても、自由党の御提言を私どもの改革の中になるべく取り入れさせていただくように努力をしてまいりたいと思っております。
  227. 達増拓也

    達増委員 司法制度改革をめぐる議論、大臣御指摘のとおり、さまざまなところからもいろいろな意見が出ているところでありまして、我が党の改革案も特に含めまして今後立法化されれば、内閣に設置される司法制度改革審議会でいい議論がなされて、必要な施策に通ずる結論が出ることを期待したいと思います。  なお、非常に待ったなしで求められている司法制度改革もいろいろございまして、今自由党の「日本再興へのシナリオ」から引用させていただいた部分については、司法試験制度改革して法曹人口の拡大を図るという部分があったわけでありますが、これについては、昨年実際、司法試験の法律の改正がありまして、かなり前進を見たと思います。まだ、あれで今後ずっとオーケーということではないと思いますので、また随時検討しながら、社会ニーズに応じた法曹人口拡大を図っていかなければならないのだと思います。  また、やはり自由党の司法制度改革論の中に盛り込まれておりました、組織犯罪に対処するための法制度整備、これについても現在、継続審議で組織犯罪関連の三法案委員会に出ているわけであります。  この組織的な犯罪につきまして、大臣所信でも、中村法務大臣、「組織的な犯罪への適切な対処が国内的にも国際的にも重要かつ緊急の課題であることにかんがみ、」というふうに述べていらっしゃいますけれども、国内、国外のそれぞれにつきまして、組織的な犯罪に対する対処の緊要性につきまして、具体的に説明していただければと思います。
  228. 中村正三郎

    中村国務大臣 まず、我が国における最近の組織的な犯罪の実情でございますが、組織的な犯罪が少なからず発生する、多発するという状態にありまして、我が国の平穏な市民生活を脅かし、健全な社会経済維持発展にも悪影響を及ぼすというような状況にあると思います。  とりわけ薬物犯罪につきましては、暴力団周辺者にとどまらず、一般市民さらには中学、高校生等の未成年者、年少者に急速に拡大しており、その背景には、暴力団を含む内外の組織が密輸や供給にかかわっているものと考えられます。  また、銃器に関する犯罪につきましても、暴力団による対立抗争事件企業幹部を対象としたテロ行為金融機関等に対する現金強奪事件など、一般市民が巻き添えとなり、あるいはねらわれる悲惨な事件もしばしば発生しており、その背後にはやはり暴力団等による組織的な密輸だとか供給が行われているものと考えられます。したがって、このような組織的な犯罪の防圧は急務であり、これに力を入れてまいるわけでございます。  次に、国際情勢でございますが、国際的な交通通信手段の発達や経済活動の大規模化に伴って、どの国も組織的な犯罪影響から免れることは困難な状況になっております。そういう中で、組織的な犯罪の問題は、平成元年のアルシュ・サミット以来、昨年のバーミンガム・サミットに至る主要国首脳会議等の国際会議の最も重要な課題の一つとして継続的に取り上げられております。また、国連では、御案内のとおり、二〇〇〇年の採択を目標として、包括的な国際組織犯罪対策条約の交渉が急ピッチで進められているわけでありまして、我が国もこの条約に全面的に賛意を表し、取り組んでいるわけでございますが、国際的に協調した対応が強く求められてくるわけだと思います。  主要国におきまして、犯罪収益の規制、犯罪捜査のための通信傍受に関する法制度を初め、各種の法制度整備が既に進んでいるという現実がございます。この間、私、実は世界の司法大臣のテレビによる会議に出たのでございますが、もうアメリカ、欧米等は犯罪防止のための通信傍受は当たり前のことになっておりまして、企業犯罪とか企業を巻き込んだ犯罪の防除のために、コンピューターラインにも傍受に入ろう、また、そうした場合に、犯罪者企業も暗号通信を使っておる、その暗号通信を解読する技術、そしていろいろな企業やそういうところのコンピューターまで入っていくということを安全のためにやるのだから容認しなければいけないというような議論もされておりました。  そこで、日本は非常に技術的に進んでいるのでということでイギリスのストロー大臣から水を向けられたのですが、日本は、まさにその犯罪防止のための通信傍受をさせていただきたいという法律案国会で今御審議をいただいているところでありまして、そういったことが認められれば、その上で犯罪者の使う暗号も解読する技術を習得しなければいけないし、企業の御協力も得なければいけないだろうというお返事をしておきました。  また、先ほどもありましたアルラッキさんが、国際協調をして、国際的な組織犯罪対策の条約もつくろうというときに、日本だけ犯罪防止のための通信傍受ができないということは、何とか早くできるようにされたらというようなアドバイスがございました。  ぜひ、このことにつきましても、御審議をお進めの上、御承認いただけたらとお願いを申し上げる次第でございます。
  229. 達増拓也

    達増委員 大臣から、国内、国外のそれぞれについての、この問題の緊要性についての御説明をいただきました。  国内にありまして、一般国民というものは組織的な犯罪に対しては極めて脆弱でありますので、これをきちんと守る手だてを、体制をつくっていかなければならないと思いますし、また、国際的な協力体制についても、サミットや国連の場などを通じて、かなり国際的な協力が深まっているということであります。  そうした国際的な協力の輪の中で、日本だけが弱いままでありますと、まさに、組織犯罪をやっている側からすれば、取り締まりの緩いところや取り締まりの体制のないようなところをベースにして、世界を舞台に犯罪を展開することができるわけでありまして、日本だけが体制を整備せず、輪の中の弱い部分を残したままですと、国際的な輪全体が崩壊してしまう。その意味で、非常に日本は責任ある状況だと思いますので、早い段階でこの法案成立させなければというふうに思います。  次に、大臣の所信の中で、当面の重要施策の第三、「治安確保及び法秩序維持」の中で、オウム真理教について言及をされておられました。  オウム真理教については、教団につきまして、自由党、さらにその前、新進党の段階から、やはり破防法を適用すべきではないのかということを主張しておりまして、昨年、自由党になってからも、その旨、この法務委員会で指摘をしたところであります。  この教団につきまして、裁判がいろいろ進んでおりますし、また、関係者の手記でありますとかインタビューでありますとか、雑誌に掲載されたり、あるいは本の形で出版されております。そうしたものを読んでおりますと、どうも、かなり教団として意図的、組織的に社会を混乱に陥れ、国家を転覆させようという、まさに破防法が想定しているような破壊的な団体としての本質がこの教団について新たに明らかになりつつあるのではないか。  また、そういう中で、教団自身に新しい動きが見られるとの大臣の御指摘でありますけれども、これにつきまして、公安調査庁、改めてこの教団について公安審査委員会に必要な処分を請求しないのかどうか、伺いたいと思います。
  230. 中村正三郎

    中村国務大臣 オウム真理教についてはいろいろ報道もございまして、相変わらず危険な体質であるということは同感でございます。ただ、今のオウム真理教の状態を見ますと、現時点において、直ちに再び公安審査委員会に処分請求をするような状況ではないとは思っております。  しかしながら、教団は勢力の増大を図って活動を活発化させ、また、活動拠点周辺の住民とのトラブルも絶えないわけでございまして、その現状にかんがみまして、公安調査庁において、教団の今後の動向いかんによっては再度処分請求を行う可能性もあることを念頭に置いて、今、厳重に調査監視活動を行っているところでございます。
  231. 木藤繁夫

    ○木藤政府委員 お答え申し上げます。  ただいま大臣からもお答え申し上げましたように、オウム真理教につきましては、依然として危険な思想を維持したままでございます。それとまた、勢力もかつての勢力をだんだん回復させてきまして、在家信徒などもかなりふえてきているという状況にあります。それと、周辺住民とのトラブルなども活動の拠点に際しましてかなり起きているという状況にございますので、破防法の請求ということが当然今後問題になってくると思うわけでございますけれども、ただ、現時点で直ちにやるかということになりますと、いろいろ難しい要件が決まっておるものでございますから、特に、将来の危険性というような要件につきましては、今直ちに請求するということになりましてもなかなかに難しいのではなかろうか、こう思っておるところでございます。
  232. 達増拓也

    達増委員 大臣所信の、当面の重要施策の第五でありますけれども、「民事行政事務効率化及び訟務事件処理等」ということで、登記事務コンピューター化について言及されておられます。  登記情報コンピューターネットワークを利用して提供する制度について、関係法案を提出する予定ということでありますけれども、現在のコンピューターやインターネット等のパソコンネットワークの普及、また行政効率化、そうした一般的な要請にかんがみても、こうした立法化は急ぐべきであるというふうに思います。  ところで、来年は西暦二〇〇〇年でありまして、ことしに入ってから、新聞、マスコミ等でも徐々に関心が高まっていますけれども、西暦二〇〇〇年問題というものがございます。コンピューターのソフトウエアや機械類に埋め込まれたチップ等の中で、西暦を二けたで処理するものが入っていた場合に、西暦二〇〇〇年を一九〇〇年と取り違えて計算ミスをしたり機能停止したりとさまざまなトラブルが発生し、場合によっては社会的に広範な困難が生じる、そういう危険性が指摘されているわけであります。  登記情報に限らず、法務省で扱っているさまざまな電子情報あるいは電子化されたネットワークなどにつきまして、やはり、これがシステムダウンということになりますと、司法の世界内外に非常に甚大な影響を与えると思うわけでありますけれども、法務省における二〇〇〇年問題対策、現在、進捗状況はどうなっているのかを伺いたいと思います。
  233. 但木敬一

    ○但木政府委員 委員御指摘のとおり、国民生活に極めて大きな影響を与えます登記事務、あるいは、外国人も含めて、我が国に出入国するたくさんの人々に関します入管関係のコンピューターシステムに非常に大きな影響を与えます。これが万一、二〇〇〇年問題を生じた場合には、大変な影響を与えるだろうと考えておりまして、私たちも全力でこの二〇〇〇年問題に取り組んでおります。  なお、平成十年の九月十一日付をもちまして、全大臣で構成されております高度情報通信社会推進本部で決定されました、コンピューター西暦二〇〇〇年問題に関する行動計画というのがございますが、法務省といたしましても、この計画に従いまして、すべてのコンピューターシステムについて問題が生じることのないように、現在、所要の措置を講じております。  なお、すべての実験等を含めまして、平成十一年の上半期、つまり六月末までにはすべての危機管理対策計画も含めて終了する予定でございます。
  234. 達増拓也

    達増委員 二〇〇〇年問題については、外部のシステムとの関係等もあり、これでオーケー、一〇〇%大丈夫というところまではなかなかいかないような性質の、特殊な問題であるというふうに聞いております。したがって、ことしいっぱいを通じて、最後の最後までこれについて悩まされるんだと思いますけれども、しかるべき対応の方、政府法務省としても、きちんととっていただきたいと思います。  これは、きょう質問はいたしませんけれども、裁判所関係についても同様であると思いますので、裁判所関係についても、二〇〇〇年問題への対応というところについて指摘をさせていただきたいと思います。  以上、予定していた質問は終了いたします。  司法制度改革を軸といたしまして、法務行政司法関係の取り組みに対しまして、自由党としても、自民党と協力しながら強力に進めていきたいと思っております。  以上で私の質問を終わらせていただきます。
  235. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、木島日出夫君。
  236. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  同僚委員からも再三取り上げられてまいりましたが、非常に重要な問題でありますので、私からも、法務大臣の一月四日の法務省賀詞交換会での発言問題について、最初にお尋ねしたいと思います。  不適切な発言だったので撤回した、おわびをする、それでは済まない問題ではないかと私は考えておりますので質問をする次第であります。  最初に、どういう言葉が事実として語られたのか、基本ですから確認をさせていただきたいと思うのです。  私は、予算委員も兼務をしております。既に予算委員会で、予算委員会の同僚委員から提出をされた文書があります。法務大臣の発言が恐らく録音、反訳されたものかと思います。一文一文、録音でなければ表現できないような文書であります。先ほど同僚委員から、法務省から持ってこさせたという文書が読み上げられましたが、基本的には同一であります。最初と最後の結びのところだけが若干表現が違っておりますが、同一であります。  私は、予算委員会で既に配付され、法務大臣の手元にも予算委員会のときに手渡されたかと思いますので、問題のところを正確を期すために読んでみたいと思います。憲法にかかわる発言の部分のみであります。  その中で、日本人は、連合軍からいただいた、国の交戦権は認めない、自衛もできない、軍隊も持てないような憲法をつくられて、それが改正できないという中でもがいておるという大変な時代に我々は生きているんだと思います、こういう表現であります。  先ほど来、同僚委員質問に対して、細かい表現、文章は余り定かに記憶にないということでございます。メモに基づく発言、あるいは正式な原稿がつくられて、それに基づく発言ではなく、これは私の推測でありますが、賀詞交換会の主催者としての年頭のごあいさつでありますから、恐らく原稿がなくての発言だったと思うのですが、その確認と、細かいことはともかくとして、こうした発言をしたこと、表現等についても、それは否定はできない事実ですね。一応確認をしておきたいと思います。
  237. 中村正三郎

    中村国務大臣 新年のお祝いの立食パーティーですから、もちろん原稿はございません。そして、委員会答弁とかではございませんので、一言一句そのとおりだとか間違ったとか、それは私はよくわからない面もございますけれども、そのような趣旨というか、そのような表現があったと思います。私の考えていた趣旨とは違うので、そこで、非常に適切を欠いておったということでおわびをして、撤回をさせていただいたわけでございます。  何回も申し上げて恐縮ですが、原稿もない、そして、私が行きましてすぐごあいさつくださいといってしゃべり出したものですから、非常に適切さを欠いた表現になりましたことをおわびを申し上げます。
  238. 木島日出夫

    ○木島委員 全体で何分ぐらいのごあいさつだったのですか。
  239. 中村正三郎

    中村国務大臣 後で聞きましたら、大体十五分ぐらいじゃないかと言われました。
  240. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、この発言というものは、事の性格上、不適切な表現であり、撤回しておわびをするから決着済みだというわけにはいかない、そういう重大な問題だと思います。  それは、発言の中身が憲法及び憲法九条に関する法務大臣認識が語られているということ。そしてそれは、法務省ないし最高検察庁、法務関係部局の幹部が集められた公式な場での発言であるということ。それから、マスコミ等も入り、当然のことながら法務大臣発言は、中身によってはマスコミを通じて広く内外に流布される、そういう形での発言であったということ。そして何よりも、発言の中身が、憲法尊重擁護義務を負った閣僚の一員、しかも法の最高責任者である法務大臣の発言だったということからして、不適切だから、取り消すからそれで決着というわけにはいかない問題だと形式的にも思うわけであります。  私は、この文書を改めて読んでみまして、三つの論点が含まれていると思うんです。  一つは、いわゆる押しつけ憲法論と表現される問題。日本国憲法は、アメリカ占領軍によって押しつけられた憲法であるという認識、これは、戦後五十年間、大論争になった中心点の一つでありますが、それが、日本人は連合軍からいただいた、という表現で表現されているということ、これが一つ。  二つ目の論点は、憲法第九条。これは日本国憲法の基本的な三原則とも言われますし、私ども日本共産党は、三原則に加えて、議会制民主主義と地方自治を入れて五原則とも言っておりますが、広く流布されている平和原則、主権在民、基本的人権という日本国憲法の三大原則、この大原則にかかわる戦力不保持、それから交戦権の否認、さらに自衛権否認、これに対する批判的な立場からの表現であるということ。戦力不保持と交戦権の否認は、紛れもなく、違った解釈がしようがないわけですが、憲法九条二項の中心的なテーマであります。自衛権否認の発言は、これは誤解されているのかと思いますが、ともかくも、そういう憲法九条二項の基本原則に対する批判的な認識の表明であるということ。  そして三つ目には、先ほど来大臣は、憲法改正を意図したものではないんだと再三再四繰り返し弁明しておりますけれども、憲法改正への明確な志向が読み取れる。それが改正できないという中でもがいておるという大変な時代に我々は生きているんだと思います、そういう表現によって明確に、特に憲法第九条に関する、また押しつけられた憲法だということを前提にしての改正への方向、志向、これに向けられた表現になっているということは読み取らざるを得ない。大臣が主観的に改憲を、憲法改正を意図したものでないと幾ら言っても、この文章からは、大臣の憲法に対する認識は改正の方向を向いているということを読み取らざるを得ないと思うわけでございます。  これは、現日本国のありようの根幹に触れる大きな問題の三つにいずれも触れられている、そういう重大な問題について発言したんだ、そういう自覚、認識は今法務大臣にはございますでしょうか。     〔委員長退席、達増委員長代理着席〕
  241. 中村正三郎

    中村国務大臣 このときに私がお話ししたかったのは司法制度改革のことでありまして、そのような大きな問題提起とかそういうことを考えてのことではございませんで、憲法改正を意図した発言でもございませんし、私が憲法を遵守しないということでもございません。遵守義務があり擁護義務があるということはきっちりとわきまえております。  また、そういった表現をしたのも十五分話したときの導入部分で話しまして、私は、当時PKF参加とかそういうことが話題になっておりましたので、そういった国際貢献にもおのずと一定のこういった憲法上のやってはいけないことがあるんだということの趣旨で申し上げたつもりでございますが、いずれにいたしましても、そういうようなことを軽々しく話すというのは軽率であり、適切を欠いたことでございましたので、おわびを申し上げ、撤回をさせていただいたわけでございます。
  242. 木島日出夫

    ○木島委員 私の指摘したようなそういう重大な問題について語るというそんな認識は、語ったときにはなかったという趣旨の御答弁だったかと思うのですが、私は、もしそうだとすれば、一国の法務大臣の職責と相反する。法の支配のもとにある日本であります、主権在民です、基本的人権の尊重でありますよね。その法をつかさどる最高責任者でしょう。  だから、そういう今の御答弁をお聞きしますと、残念ながら、その御答弁、そういう姿勢自体が私は法務大臣の職責に抵触するんじゃないかな、そんな軽々しい認識で憲法のことを触れられたんじゃたまったものじゃない、法務大臣を辞するべきでないかな、それ自体で考えざるを得ないのですが、いかがでしょう。
  243. 中村正三郎

    中村国務大臣 私がその会で申し上げたかったことは、いろいろな複雑な世界情勢に言及し、我々が直面するいろいろな問題をお話しした上で、司法制度改革は我々が協力をしてなし遂げようという話をしたかったわけでありまして、そういうことの中で非常に適切を欠いた表現があったものでございますから、これを訂正し、おわびを申し上げて、御理解を賜りたいと思っておる次第でございます。
  244. 木島日出夫

    ○木島委員 先ほど答弁で、自分が考えていた趣旨と違うので不適切だったので撤回した、おわびをしたということでありますが、事が重要なだけに、私は、同僚委員からも午前中にも質問されておりますが、何が撤回されたのか、何が不適切だったのか、どういう理由で不適切だったのか、やはりそれが今問われていると思うのです。その答弁いかんによっては重大問題にまたなる、ならざるを得ないと思いますので、確認をしたいと思います。  なぜ撤回したのか。二つ、どちらか二者択一で答えていただこうかなと思うのです。それはこういう理由で撤回されたのでしょうか。  憲法並びに憲法九条に対する法務大臣認識、一政治家の認識について語ったけれども、表現が不適切であり、自分の真意ではない。憲法並びに憲法九条に関する自分の憲法解釈の真意が伝わっていない、誤解をされた。自分はそんな認識を、憲法九条ないし押しつけ憲法の問題ですが、憲法全体について持っていないのだが、表現が稚拙で、そう受け取られてしまった。だから、これは真意でないから撤回しておわびするんだ、そういう意味で撤回する、不適切だとおっしゃっておるのでしょうか。  それとも、そうではない、表現は決して誤解を生むようなものではない。これを読めばだれも誤解しません。憲法が、日本人は連合軍からいただいたという表現、国の交戦権は認めない、軍隊も持てないような憲法、これはそのとおりです。憲法九条二項、そのとおりです。それが改正できないという中でもがいておるという表現、自民党の皆さんは憲法改正を旗印にして結党された、あなたも自民党員の一員であります。誤解を生むような表現じゃないわけです。よって、この表現は憲法認識に関して誤解を生むような表現ではない、明確だが、こういう憲法認識では法務大臣は務まらない。国会議員の我々ももちろん憲法九十九条で憲法擁護義務はありますけれども、なおさら大臣の憲法擁護義務は重い、とりわけ法務大臣の憲法擁護義務は重い。自分の憲法認識は間違ったことは言っていないが、その立場法務大臣は務まらぬ、それは抵触する、批判もされた、だから撤回する、不適切だったというのでしょうか。どっちなんでしょうか。これはやはり重大な撤回理由だと思うのですよね。明確にひとつ答えていただけませんか。
  245. 中村正三郎

    中村国務大臣 繰り返しになってまことに申しわけありませんけれども、私がお話ししたかったのは、司法制度改革重要性について話すときに、いろいろな国際協力でも制約があるとかそういったことを冒頭に言及したかったというのが真意でありまして、もともと憲法をどうしようというような発言をするようなことではなかったわけでございまして、折しもPKFとかそういう話が出ておりましたので、国際協力をするといっても憲法上の制約があるよという意味でお話をいたしました。  そういうようなことをこういった司法制度改革のときにお話しするというのは適切を欠いておったと思いまして、おわびを申し上げ、撤回をさせていただきたいというふうに申し上げたわけでございます。
  246. 木島日出夫

    ○木島委員 そういうことを聞いているのじゃないのですよ。  確かに、発言の多くの時間的部分は司法制度に関するものだった。そういう中で、この部分だけ、時間的には短いでしょう、しかし発言された内容は非常に重大な中身を含んでいるから問題になったわけですね。どういういきさつでこういう言葉が出てきてしまったかを問うているわけじゃないし、そんなことが今問題にされているわけじゃないのです。表現された、発言された中身そのものが重大な問題だとして指摘をされ、批判もされ、法務大臣の職責と矛盾するのではないかと指摘をされているわけでしょう。だから、どういういきさつでそういう表現が出てしまったかを聞いているんじゃないんですよ。そんな、不用意だったから撤回したわけじゃないんでしょう。  私の質問に真っ正面に答えてほしいんです。憲法認識ですよ。法務大臣の憲法認識、押しつけられたものかどうかという認識、憲法九条二項に関する認識。交戦権は認めない、戦力不保持、この大原則に対する法務大臣認識、一政治家でもいいでしょう。それは今でもそういう認識なんだということ、それを表現してしまったんだということで、それはまずかった、そんな認識ではとても九十九条と抵触してしまうから撤回したというのか、もともと自分はそんな憲法認識は持っていないというのか、そこが大事だと思うんです。そこをはっきりしないと、これは、諸外国、特にこの憲法九条がつくられた背景であるあの十五年戦争によって侵略をされたアジアの人たちにとっては、重大な問題になると私は思う。  そういう認識の政治家が法務大臣としてこれから法務行政をやるんだということになりますと、これは重大な問題にこれまた発展する可能性のある問題だと思うので、これは重大なところなので、明らかにしておきたいと思うんですよ。
  247. 中村正三郎

    中村国務大臣 憲法制定に至るあのときの状況はどうあれ、日本国帝国議会で制定され、そして公布された憲法でありますから、これは立派な、我々が守るべき憲法であります。そして、それを遵守しそして擁護する義務が私どもあることも明確であります。その考えに全く違いはございません。
  248. 木島日出夫

    ○木島委員 そうすると、一月四日に発言してしまったその発言、表現されたところから読み取られる日本語としての文意、それは、自分の現憲法に対する認識とは違う、自分はそんな憲法認識は持っていない、そう聞いていいんですか。
  249. 中村正三郎

    中村国務大臣 私は、この会で話を申し上げたかったのは、司法制度改革をことしはやるべき年だ、ことしはまさに、朝出るとき新聞を見たら第一面のトップが司法制度改革だった、そういうことから話し出しまして、司法制度改革を強調する余り不適切な表現があったということでありまして、そういう会でありますから、一言一句、委員会答弁するように正確に御答弁したかどうかというようなことも記憶にございません。  私が申し上げたかったことは、ちょうどそういうときにPKF等の話がありましたから、憲法というのはこういうものだよということを申し上げたくて言ったんだと思いますが、いずれにしろ、そのような場面で軽々しくこういうことを言うことは著しく適切でないと思いましたので、おわびをして撤回をさせていただいたということでございます。
  250. 木島日出夫

    ○木島委員 大臣は、憲法制定議会のことにもお触れになりまして、憲法遵守義務があるんだとおっしゃられました。私も、改めて憲法制定議会の議事録をちょっと勉強してみまして、非常に格調高い答弁を当時の閣僚がやっておりますので、御紹介だけしておきたいと思うのです。  昭和二十一年六月二十六日、衆議院本会議。一九四六年です。憲法制定議会であります。内閣総理大臣吉田茂氏の本会議答弁。  改正案ハ特ニ一章ヲ設ケ、戦争放棄ヲ規定致シテ居リマス、 中略で、  是ハ改正案ニ於ケル大ナル眼目ヲナスモノデアリマス、斯カル思ヒ切ツタ条項ハ、凡ソ従来ノ各国憲法中稀ニ類例ヲ見ルモノデゴザイマス、斯クシテ日本国ハ永久ノ平和ヲ念願シテ、其ノ将来ノ安全ト生存ヲ挙ゲテ平和ヲ愛スル世界諸国民ノ公正ト信義ニ委ネントスルモノデアリマス、此ノ高キ理想ヲ以テ、平和愛好国ノ先頭ニ立チ、正義ノ大道ヲ踏ミ進ンデ行カウト云フ固キ決意ヲ此ノ国ノ根本法ニ明示セントスルモノデアリマス こういう本会議、総理の答弁もありますし、これは、一九四六年、昭和二十一年七月四日の衆議院憲法改正委員会の質疑で、協同民主党、林平馬委員質問ですが、  斯カル平和愛好国民ガ、殊ニ世界平和ヘノ一本道シカ与ヘラレナイ国民ガ、茲ニ憲法ヲ以テ戦争抛棄ヲ世界ニ宣言セントスルノデアリマスルカラ、此ノ憲法ハ実ニ日本ノ憲法ニ止マラズ、世界ノ憲法タラシムルノ信念ヲ持タナケレバナラヌト信ズルモノデアリマス、 こういう質問に対して、内閣総理大臣吉田茂氏が、  只今私ノ答弁中其ノ点ニ付テハ言ヒ洩ラシマシタ、全ク御同感デアリマス、政府ト致シマシテハ其ノ趣意ヲ十分含ンデ将来トモ善処スル積リデ居リマス こういう答弁をしたり、これは、昭和二十一年、一九四六年八月二十五日の衆議院本会議で、芦田均委員長報告であります。  改正憲法ノ最大ノ特色ハ、大胆率直ニ戦争ノ放棄ヲ宣言シタコトデアリマス、是コソ数千万ノ人命ヲ犠牲トシタ大戦争ヲ体験シテ、万人ノ斉シク翹望スル所デアリ、世界平和ヘノ大道デアリマス、我々ハ此ノ理想ノ旗ヲ掲ゲテ全世界ニ呼掛ケントスルモノデアリマス、サウシテ是コソ日本ガ再生スル唯一ノ機会デアツテ、斯カル機会ヲ日本国民ニ与ヘラレタルコトニ対シ、私ハ天地神明ニ感謝セント欲スルモノデアリマス、併シナガラ憲法ガ如何ニ完全ナ内容ト雄渾ノ文字ヲ以テ書綴ラレタトシテモ、所詮ソレハ文字タルニ過ギマセヌ、我々国民ガ憲法ノ目指ス方向ヲ理解シテ、其ノ精神ヲ体得スルニアラズンバ、日本ノ再生ハ成シ遂ゲルコトハ出来ナイト思ヒマス こういう報告を芦田均委員長がしている。  これが原点であり、この原点は半世紀たった今日でも私はいささかも揺らぐものではないと思うわけでありますが、法務大臣の一月四日の発言、司法制度を語るところ不用意に飛び出した発言とおっしゃられました。私は、それはそうだとすると、逆に、常日ごろそういうことを思っているから出てくるのであってと思わざるを得ないのです。答弁には納得できませんが、角度を変えます。  法務大臣は、自分の発言がこういう重大な意味を持っているということは認識されるでしょうか。要するに、この発言は、憲法九条にかかわる発言でありますし、公的な場所での発言でもありますから、そしてマスコミも入っているわけですから、場合によっては国内政治、内政にかかわるだけではなくて、外交上も非常に重大な問題に発展するおそれも秘めていた。特にアジアの諸国民の思いは今もあるわけですから、そういう種類の問題にかかわる発言であった、そういう認識といいますか、それは今はありますか。     〔達増委員長代理退席、委員長着席〕
  251. 中村正三郎

    中村国務大臣 たびたび繰り返しになって申しわけありませんが、新年の祝賀の席で司法制度改革頑張ろうという趣旨のお話をしたときの話でありますから、委員会でお話しするように、一言一句、こういう正確とかいうことも、よく覚えておりません。  そういう中で、このような、いかに改革の必要性を強調する余りといっても、軽々しくこういうことを言うべきでないと思いまして、先ほどからお話ししていますように、これはおわびをして訂正をさせていただきたいと思って閣議に参ったのでございますが、総理の方から御注意があり、おわびをして訂正させていただいた次第でございます。
  252. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、発言の撤回とおわびでは済まない問題だというのは、三つの点から言えるんじゃないかと思っているんです。  一つは、やはり外交問題ですよ。これから日本はアジアの諸国と平和友好関係をさらにきずなを強めていく、それが日本の国の平和と安全、国民の安全を守る道だ。そういう外交、特にアジア諸国との外交、それを考えたときに、この発言が残るということは非常にゆゆしいものである。こういう発言をした政治家が少なくとも日本の政治の中枢、閣僚にいるということは、これは外交上重大な問題だということが一つ。今言いました。  二つは、法務省の公式の場での発言であります。  発言を聞いた者は法務省最高幹部、検察の最高幹部であります。検察、法務といえば、法をつかさどる、執行を守る中心部隊であります。これを素直に受けとめると、うちの大臣は改憲論者かなということになるわけでありまして、法務大臣たる者が、法の運用、執行に当たる幹部を前にしての公的な場での憲法九十九条に反する発言であったということ、これ自体重大で、法務大臣の職責にとどまるわけにはいかない問題だと思います。  三つは、今この時期にこういう発言が飛び出したことの重大な意味だと思います。  御案内のように、今国会には新ガイドライン法制化のための法案、周辺事態法案継続している。その中心問題は、憲法九条二項の交戦権にかかわる問題ですね。周辺事態でアメリカが軍事行動をやる、その軍事行動に我が国が後方地域支援をする、後方地域支援を認める法案でしょう。これは再三予算委員会でもやりましたし、その他の委員会でもやっていますよ。そこできょう論争やるつもりは全然ないんですが、少なくともこの法案の中心は、日本が、日本の自衛隊、軍隊が日本の領土、領空、領海外でアメリカのやっている軍事行動に後方支援という名目で戦争参加することですよね。こんなことが憲法の交戦権否認、この憲法から許されるかどうかが最大の焦点ですよ。  こういう時期に法務大臣たる者が、交戦権がない、国の交戦権は認めない、そういう憲法をつくられて、それが改正できないという中でもがいておるという発言をされた。これは政治的に大問題だ。やはり憲法九十九条の遵守義務にどう見ても抵触せざるを得ない。  三点挙げましたが、私は、私どもの党は、総理大臣に法務大臣は罷免すべきだということを、そういう立場でありますから、きょうは法務委員会でありますから、そういう重大な発言だと。いろいろ経過その他はおっしゃりたいことあるでしょう。しかし、こういう問題である以上は、法務大臣としての職責を務めるのはいかがか。辞職すべきだ。私は、改めてそういう立場を明らかにして、ぜひそういう立場法務大臣も立ってもらいたいと要求いたしますが、御答弁いただきたい。
  253. 中村正三郎

    中村国務大臣 私は、本当に何度も何度もでまことに申しわけありませんけれども、司法制度改革をことしはやろうよということで、私が今年の法務省のあり方について述べるよというような会議でもございませんし、新年の祝賀の会でございましたので、そこで、ことしは司法制度改革の年、それを頑張ろうよ、それだけを申して、全般の政策を申したわけでもございません。  そういう中で、折しもPKFだとかなんとかという話がありましたので、PKFに行くといったって、それは憲法上の制約があって非常に難しい問題で、そういう中で苦悩しているということの意味を申し上げたんだと思いますが、極めて短い言葉でありましたので、そういうような話の中で触れるべきことではない、非常に適切を欠いておったということで、不明をおわびいたしまして、撤回をさせていただき、おわびを申し上げた次第でございます。
  254. 木島日出夫

    ○木島委員 到底納得できる答弁ではございませんが、時間も限られておりますので、次の質問に移りたいと思います。  国際人権規約に基づく問題であります。  我が国も、国際人権規約B規約、これは批准しております。その市民的及び政治的権利に関する国際規約、いわゆるB規約の四十条に基づいて国連人権委員会我が国から四回目の報告がなされ、この人権委員会検討がされた上、昨年最終見解が日本政府に送付されてきました。規約第四十条に基づき締約国から提出された報告検討の日本版であります。そこで、序論、肯定的要素、そして次にC、主な懸念事項及び勧告として三十項目に及ぶ勧告が、言葉は悪いけれども、正式の国連人権委員会から日本政府に対して突きつけられているわけですね。  その圧倒的多数の部分が法務省所管にかかわるものであるわけでありますので、一つ一つ重大な問題ばかりでありますが、時間もありませんから、指摘をし、この勧告をどう受けとめて、この次の報告は二〇〇二年十月に指定されているんですね。日本政府の第五回報告を提出せいと言われているわけですから、このときに向けてどう措置されようとしているのか、簡潔に答弁いただきたい。  十項目ぐらいやりたいんですが、時間がありませんから、時間の許す限り言います。  勧告の第九番目のところにこういうことがあります。委員会は、人権侵害調査し、不服に対し救済を与えるための制度的仕組みを欠いていることに懸念を有する。要するに、人権擁護委員会というのはあるけれども、法務省の監督下にある。その権限は勧告を発することに限定されていることから、そのような仕組みではだめだ。委員会は、締約国日本に対し、人権侵害の申し立てに対する調査と救済のための独立した仕組みを設立することを強く勧告する。  要するに、昨年人権擁護五十周年の記念式典もありまして、大臣も式辞を述べられました。私も参加しました。しかし、法務省のもとにあるような人権委員会じゃだめだというんですよ、これは。独立した委員会、しかも勧告だけじゃだめなんで、調査、救済ができる、そういう強力な人権委員会なるものをつくるべきだという強力な意見なんですが、これをどう受けとめ、どうされようとしているのか、簡潔にひとつ。
  255. 横山匡輝

    ○横山政府委員 お答えいたします。  現在、法務省には、人権擁護施策推進法に基づきまして人権擁護推進審議会が設置されております。この審議会に対しまして法務大臣から人権救済制度のあり方についての諮問がなされ、今後本格的な調査審議がされることが予定されております。  ただいま委員御指摘のとおり、国連の規約人権委員会からは、独立した人権救済の機関の設置についての指摘を受けているところでありますが、この人権救済を行う機関につきましては、一定の独立性が必要という考え方もあるところでありまして、法務省といたしましては、審議会での調査審議の結果も踏まえまして慎重に検討してまいりたい、そのように考えております。
  256. 木島日出夫

    ○木島委員 論争していると時間がなくなっちゃうから、次に行きます。  委員会の勧告、十項目、さらにとりわけ、委員会は、調査及び救済のため警察及び出入国管理当局による不適正な処遇に対する申し立てを行うことができる独立した当局が存在しないことに懸念を有する。委員会は、そのような独立した機関または当局が締約国日本により遅滞なく設置されることを勧告する。警察のことは聞きません。出入国管理当局による不適切な処遇に対して、そういう救済機関がないじゃないか、これをつくるべきだと勧告されているのです。これをどう受けとめるか、簡潔にひとつ。いい答弁お願いします。
  257. 竹中繁雄

    ○竹中(繁)政府委員 お答えいたします。  入国管理局の方の収容施設は、行刑施設とは異なりまして、被収容者の矯正ないし更生を目的としたものではございません。あくまでも、退去強制事由に該当する者を実際に送還するまでの間、その身柄を確保していくことを目的とするものでございます。  私どものところに被収容者処遇規則等がございますが、これに基づき適正な処理が行われております。また、その処遇に不服がある場合には当然裁判で争う道も開かれているので、あえて委員会が勧告するような独立した機関を設ける必要はないと考えております。
  258. 木島日出夫

    ○木島委員 国際人権委員会がこういう勧告をしている、それを全然受けとめていない、まことに不満でありますから、私は、追って法務委員会で徹底的に質問をし続けたいと思うのです。  十二項目には、戸籍、国籍、相続権に関する婚外子に対する差別を解消せよ。十六項目には、婚姻の解消、取り消しに関する男女平等の問題、これはいわゆる法務省審議会から答申が出て、残念ながら法務省法案をつくってこないので、今野党が一致して法案を出している問題ですから、これは当委員会で進めていきたいと思うのです。きょうは、それは質問しません。  十七項目にこういうのがあります。委員会は、日本の第三回報告検討終了時に、この前のときですね、外国人永住者が登録証明書を常時携帯しないことを犯罪とし、刑罰を科す外国人登録法は、B規約第二十六条に適合しないとの最終見解を示した意見を再度表明する。三回のときに、外国人永住者が登録証明書を常時携帯しないことを犯罪にするなということを言ったにもかかわらず、全然やっていないじゃないかということで、また勧告された。委員会は、そのような差別的な法律は廃止されるべきであると再度勧告する。  本当に私はこの文書を読んで恥ずかしくなりましたが、今国会法務省から、これは外国人登録法ですか、改正法案が出ているのですが、これはどうですか、常時携帯義務違反、犯罪から外していますか。
  259. 竹中繁雄

    ○竹中(繁)政府委員 現在、不法入国者それから不法残留者が多数存在するという状況でございます。こういう状況の中で、外国人の居住者が合法的な居住者かどうかということをできるだけ早く把握するという必要がございまして、その判断のための方法として一定の義務づけをしたとしましても、帰国ないし居住に関し許可を要しない自国民との関係で平等か不平等かというようなことが問題になるような性格ではないと考えます。したがいまして、規約第二十六条、平等原則に違反するようなものではないのではないかと考えております。  今改めて御報告いたしますけれども、今回の法改正におきまして、この部分については入っておりません。
  260. 木島日出夫

    ○木島委員 全然だめですね。不法入国者のことなんか言ってないですよ、人権委員会は。外国人永住者に対して登録証明書を常時携帯しないことを犯罪とすることはやめなさいと言っているんです。全然答弁になっていない。わかっていてそういう答弁しておるんだと思うけれども。  不法入国じゃないですよ、外国人永住者に対して、何でそのぐらい罰則から外してやらないの。そこを、何で外さないんですか。不法入国じゃない。
  261. 竹中繁雄

    ○竹中(繁)政府委員 おっしゃるとおり、ここでは特別永住者について触れていることは事実でございますけれども、特別永住者といえども外国人であることは間違いないわけで、特別永住者に対しては非常に特別な、ほかの国でも見られないような優遇的な措置はとっているわけでございますけれども、この件に関しては、先ほど私が申し上げたとおりだということでございます。
  262. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、本当に今の答弁、日本の法務省の人権意識というのはこんな程度かなと思う。これは、国際社会に対して、日本は人権国である、日本国憲法の三大原則の一つに基本的人権の擁護があるなんというのはとても言えないと思わざるを得ないですね。不法入国でも何でもないですよ。外国人永住者、こういう限定がついているわけですからね。私は、これは希望しておきます。こういう限定がついているわけですからね。  さらに、これは死刑の問題とか死刑確定者の拘禁状態についても触れられていますので、一つだけ指摘しておきます。  第二十一項、委員会は、死刑確定者の拘禁状態について、引き続き深刻な懸念を有する。特に、委員会は、面会及び通信の不当な制限並びに死刑確定者の家族及び弁護士に執行の通知を行わないことは、規約に適合しないと認める。委員会は、死刑確定者の拘禁状態が、規約第七条、第十条一に従い、人道的なものとされることを勧告する。こういうのがあります。  もう時間のようですので、死刑確定者に対する通信が本当にひどいというのは私も驚きました。年賀状も見せないというんですよ。そういう苦情が私のところに来ていますよ。具体名は挙げません、死刑確定者。きのうの新聞には、裁判所からの書類ですか、これすら被拘禁者に出さないというようなことが大きく出ていましたね。  ちょっとこの問題だけは改善してもらいたいということを、もう時間ですから、その答弁だけもらって終わりましょう。
  263. 坂井一郎

    ○坂井政府委員 お答え申し上げます。  申し上げるまでもございませんけれども、死刑確定者の処遇に当たりましては、身柄の確保を厳正にするということと同時に、できる限りその心情の安定を図るということが必要でありまして、現在行われております面会や信書の制限は、この趣旨から、我々としては、必要最小限のものだというふうに考えております。  それから、死刑の執行の事実を事前に家族等に通知した場合には、これを本人が知りまして、その心情の安定を害することが懸念されるということから、執行後は速やかに家族に通知することとしております。したがいまして、現在直ちにこの取り扱いを改めるという考えは持っておりません。  以上でございます。
  264. 木島日出夫

    ○木島委員 時間が来たから終わりますが、そういうことを日本政府は第四回報告としてるる書いているんですよ。そういう日本政府立場を全部人権委員会は審査した上で、これじゃだめだといってこういう勧告が出たんですから。  その他たくさんの勧告が出ておりますが、ぜひこれは、人権後進国にならぬように、国際的な人権大国になるように、この勧告をしっかり、重く受けとめてこれからの法務行政をやるようにお願いをいたしまして、これは法務大臣の最後の決意だけ、これを受けとめる決意だけをお聞きして、私は終わります。
  265. 中村正三郎

    中村国務大臣 けさほどからたびたび御答弁していますように、人権問題は極めて重要なことであり、先ほどの御質問にありましたように、いわゆる多数決の中では解決しない問題でありますので、そのことを踏まえて十分に対応してまいりたいと思いますが、先ほどからのあれにもありますように、私、個人的には人権問題というのは内閣全体で取り組むべき問題と認識しているわけでありまして、今度の人権問題を担当する新しい組織づくりにおきましても、限りなくそういう方向性ができるように、強力な人権政策が進められるような方向で検討をしてまいりたいと思っております。
  266. 木島日出夫

    ○木島委員 終わります。
  267. 杉浦正健

  268. 保坂展人

    保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  私も大臣の憲法発言についてたくさん伺いたいことがありますけれども、後の機会にさせていただいて、きょうは、今木島議員からも御指摘のあった規約人権委員会、特に確定死刑囚の方々に対する処遇の問題、これはかなり深刻な問題です。それを中心に聞いていきたいと思います。  まず、中村法務大臣には、私ども死刑廃止議員連盟、さまざまな政党の方も参加いただいていますけれども、執行が近いんじゃないかということで何度も申し入れを受けていただいて、率直な意見交換などさせていただいているので、実のところ、執行されたことに対して大変残念であるという気持ちを既に以前にもお伝えしておりましたけれども、例えば参議院選挙の公示日、これは絶対に超党派で議員が反対して動くなんてことは不可能ですね、天と地が裂けても無理。こういう日を選んだのか、考えなかったのか、そこで執行しちゃうわけですね。あるいは、前回の十一月も、規約人権委員会の勧告があって間もなく、閉会中をすっとねらって執行がある。  中村大臣、率直に、これだけ法務委員会で死刑の問題を提起をしてきたし、他の議員の皆さんからもいろいろな意見を、きっちりこれは考えていこうという機運が高まっているのに、執行ということについて国会審議すらできないようなときに執行がある。情けないと思われませんか。私は執行してほしくないという立場でございます。しかし、国会の空白をついてたびたび執行がある、これは国会軽視以外の何物でもないというふうに思うのですが、いかがでしょう。
  269. 中村正三郎

    中村国務大臣 行政当局に、国会の空白をついてとか国会のスケジュールを念頭に置いてというような意識は私はないんだと思うのです。それがたまたまそういう日に当たってしまったということであると私は思っております。  そして、死刑執行は、死刑の判決がおりてからそれぞれ法定の期間内ということになっておりますが、その間、再審の請求とかいろいろなことがございまして、そういう中から、事務当局で死刑を執行するということ、我々のところに裁決するかどうかということで来るわけでありますが、その過程において、私は、国会がこうであるからとかなんとかいう、そういう恣意は働かないものと私は信じております。
  270. 保坂展人

    保坂委員 参議院の公示日であることも考えないとしたら、それもまた国会軽視のあらわれだということを指摘しておきたいと思います。そのぐらいは考えるべきであるというふうに求めたいと思います。  具体的になりますけれども、十二月の参議院の法務委員会で、千葉議員の御質問に対して、大臣は、刑場をごらんになった、これは大変私どもも求めてきたところ、私たちもそこを見たいというふうに求めて懸案になっている点でございますけれども、感想の中で、やはりその日にいきなり言われて処刑されるというのはいかがなものかな、アメリカの例など引きながら、そのあたり考えてみたい、事前告知も含めて考えてみたいとおっしゃっているんですが、その点はやはりきちっと課題として進められているでしょうか、法務大臣お願いします。
  271. 中村正三郎

    中村国務大臣 あの御質問をいただきまして、これから考えてみるべきことだなという考えを持ちまして、私が、特にこういった司法制度の専門家でございませんので、いろいろな雑誌で見たり、あるいは非常に平易な例で申しわけありませんが、例えば外国の映画で見たりという中で、告知をされて、教誨師の方が来て、手続というかいろいろなことを経て死刑執行が行われるということも伺ったことはありますし、考えてみたいなと思ったのでございますが、その後、いろいろ今までの経緯を伺いますと、関西の方で一時告知をして死刑執行していたことがあるということも伺いました。そのときに、先生は恐らく御存じだと思うのですけれども、事故が起こったということも伺いまして、そういうことをいろいろと法務省内部で話し合っておりますが、なかなか簡単に結論が出ない問題というふうに認識を改めているところでございます。
  272. 保坂展人

    保坂委員 きょうは法務委員会が開催されておりますが、ちょうど偶然、私ども死刑廃止議員連盟の企画で、実は確定死刑囚で獄中で三十余年にわたって冤罪であると訴え続けておられる袴田巌さんのお姉様と、そして徳島ラジオ商殺しの事件で、再審決定当時の主任裁判官であられた秋山弁護士などにお話を伺いました。そして、私はこの死刑の問題、一般論で言うのではなくて、この袴田さんのケースに即して少し考えてみたい。そして、ぜひ考えていただきたいという点を幾つかこれから出したいと思います。  実は、御存じかと思いますけれども、長い争いの中で唯一の証拠とされる五点の着衣、みその中につかっていたと言われる、これは袴田さん自身もズボンなんかはけないわけなんですが、付着している血液のDNA鑑定、これに東京高裁が踏み切るということを御存じだろうと思います。これが今進行中である。したがって、そう遅くない時期にこの結果はわかるわけです。  袴田巌さんは獄中で、お母さんに向けてあるいは御家族に向けて、もう出られるだろう、自分の無実はこれで晴れるだろうとたくさんの手紙を書かれている、莫大な量の手紙を書かれているのですね。ところが、大臣、この三年余り、お姉さんは十五回ぐらい面会に行かれているのですが、会われていないのですね、面会拒否。それから、弁護人の方、DNA鑑定でこうやっていよいよ始まっていますよということを当然その当事者に伝えたい、この弁護士も面会拒否でございます。  そうしましたら、きょうまた新しい事態がございました。拘置所の方にお姉様が出向かれました。そうしたら、面会所にもう袴田さんがいらしたそうです。つまり、拘置所の方で大分努力をしていただいて、三年ぶりですから、肉親に会うことができたそうです。どうでしたかというふうにお聞きをしたら、元気ですかと言ったら、元気だよぐらいの話はしたみたいです。おれがだれだかわかるかというふうに言われて、お姉様が袴田巌と言ったら、いや、おれは何とかの神だ、それは違うな、別の人だと言って一分で帰られたそうです。今そういう状態になっている。しかし、そうやって会えたということで、元気でいらっしゃるということはわかったわけですけれども、長い拘留によって、つまり、袴田巌さんですかと言ったときに、自分は○○○の神であるというふうに答えて、その人は別人だからと言ってそこから帰ってしまうような状態になっている、これはやはり大問題じゃないかと思うのですね。  この問題を、矯正局長に伺いましょうか、こういう形で、確定死刑囚の方で、例えば再審請求の弁護人や肉親にも会わない、会えない、そういう方が過去並びに現在いらっしゃいますでしょうか。
  273. 坂井一郎

    ○坂井政府委員 お答え申し上げます。  私の知る限り、そういう方は袴田さんだけだというふうに承知しております。
  274. 保坂展人

    保坂委員 実は、法務省にはたびたび死刑の問題には質問もしています。それだけでは足りなくて、質問主意書も何通出したか数え切れないほど出して議論をさせていただいていますけれども、この袴田さんの処遇の問題については、大変誠意を持ってお答えいただいた。そしてまた努力をしていただいた。そこの部分は、何とかこれを改善していこうということにおいて大変ありがたかったなという率直な思いを、まずはお話ししておきたいと思います。  けれども、袴田巌さんが今どういう状態か。東京拘置所の認識は、大変健康で元気で問題がないという認識なんですね。細かく聞いてみますと、段ボール何箱も手紙を書いてこられた方です。そして、お姉さんが面会に行かれると自分がしゃべれないくらい、自分の裁判について、どうやったら冤罪が晴れるかということについてしゃべり続けた方ですね。その方が、今肉親が面会を申し込んでも会わない。きょうは一分だけ、三年ぶりに会ったわけですけれども。そして、手紙はというと、弁護団が手紙を書きます。今までに四十通以上、たしか、お話によると全部破棄ですね。ですから今回は、手紙だと捨ててしまうので色紙を書いて、色紙だと捨てられないというので、例えば、会いに行くから何とかというメッセージを郵便として届けていただいたり、いろいろな工夫もしているわけですけれども、そういう状態が、私たちは普通の健康な状態というふうには到底思えないわけです。  ましてや確定死刑囚です。その方が、訪ねてこられた肉親と会わない。あるいは、自分の裁判の成り行きについて、弁護人に、おれは知らぬ、会わない。この状態はやはり異常だというふうにお考えになりませんか。そしてまた、何らかの治療あるいは状況改善、どういうふうに矯正局としてお考えになっているのか、お願いします。
  275. 坂井一郎

    ○坂井政府委員 お答え申し上げます。  健康だと申し上げたのは、体重的にも、それからいわゆる血圧だとか、そういう肉体的なところで特に異常はないだろうと。それから、食事その他もちゃんととられますし、睡眠その他も特に問題がない。いわゆる肉体的な面で、特に衰弱して今にも死にそうだとか、そういう状況にはないということを申し上げているわけでございます。  それで、精神的な面を申し上げますと、先生先ほどから御指摘のように、自分は神の国から来たみたいなことを言っておりますし、過去にはもっと悪い状態もございましたので、我々としては、いわゆる完全に普通の状態だというふうには思ってはおりませんけれども、だからといって、特にその状態が悪化しているかと言われると、そうでもないだろうという認識でございます。  これにつきましては、月に一回ずつ精神科のお医者さんのカウンセリングもしておりますし、それよりも何よりも、そういう精神科のお医者さんたちと相談しながら、当該袴田さんの処遇に当たっている担当の職員がいろいろな話を聞いたり、働きかけをしたりして処遇をしているというのが実情でございます。
  276. 保坂展人

    保坂委員 今のお話を引き取ってお聞きすれば、月に一回カウンセリングと言われる、対面でやっているわけですね。ところが、拘置所の職員の方、処遇に当たられる方、担当の方に聞きますと、肉親に会わないということは治療の対象ではないのですね。要するに、そこはもうタッチしていないんですよ。これは、その話に触れるとちょっと怒ったりとか、いろいろ感情が波立つので触れないようにしているということでございます。  それから、先ほど言ったように、手紙をずっと書いていった、自分で勉強もされた、それだけの知的な活動もずっと続けてこられた方、これが、地裁のいわば棄却決定の前後から、最近は手紙も何も書いていないのですね。そして面会すらかなわない。房の中でどうされているのですかとお聞きしたところ、座っているか、何かぐるぐる回っているかです。これは、正常な状態とはとても言えないというふうに僕は思います。  ですから、確かに食事はしているでしょう、あるいは入浴もしているかもしれない。けれども、人間が健康な精神を持って、自分の命ですから、そしてやっていないんだということを叫びながら、訴えてきた。その訴えが実るかもしれないというときに、袴田巌さんですかと言ったら、私は違います、それは別人だと帰ってしまうというのは、余りにも今の拘置所の、死刑制度の問題だけではなくて、長いことこういう環境にいれば、だれだってそういうふうになってしまう。そういうことを考えると、この問題は一刻も猶予がならないと思います。  法務大臣に伺います。今初めてお聞きになったこともあるかと思いますけれども、細かい話はいたしませんけれども、大変、再審に向けた可能性がある方です。DNA鑑定に東京高裁が踏み切ったということ自体がそれを裏づけていると思います。その方が、そのことを弁護人が伝えに行ったときに会わない、あるいは肉親とももうコミュニケーションできない状態になっていることを、やはり放置してはいけないのではないでしょうか。そこをもう一回、自分が袴田巌であることを、あるいはボクサーとして活躍されていた若い時期もあります。そういう記憶を取り戻して、自分の身の上に起こったことをちゃんと理解できる状況にするための努力をぜひお願いしたいと思います。大臣、いかがですか。
  277. 中村正三郎

    中村国務大臣 今局長も御答弁申し上げましたように、それなりに一生懸命努力はさせていただいているようでございます。そして、裁判所の判決があり、それを再審請求という手続に基づいて行っているという裁判の手続の進行している中で、どういうような対応ができるのか、これをさらに検討させてみたいと思います。  特に、今新聞でちょっと報道されましたので、その報道が違っておりましたので申し上げさせていただきたいのですが、この収監された方の人権問題とか処遇の問題は非常に微妙な問題で難しい問題である。そこで、局の中に委員会をつくりまして、お医者さんだとか教育者だとかも入っていただきまして、処遇の問題を改善するための委員会をつくって研究を始めようとしているところでございます。これが誤って、何か監獄法を改正する委員会じゃないかというような報道もされましたので、違うということを記者会見で申し上げたところでございますが、今の先生の御指摘をいろいろ伺って、矯正局で何ができ得るか、さらに検討を進めさせたいと思います。
  278. 保坂展人

    保坂委員 事の本質を受けとめていただいた答弁だったと思います。  実は、拘置所の中というのは、やはり入ってみなければわからないことというのは多々ありますね。そして、間接的にいろいろ聞いても、中で何があるのか、特に確定死刑囚の処遇なんというのは、これは体験された方は皆さん結局は命を失っていきますから、聞きようがないわけですね。手紙も制限されている。ということは、ベールに厚くくるまれてしまっているわけですね。  これは奇想天外な話というふうにお笑いにならないで聞いてほしいのですが、確定死刑囚の処遇を私ども法務委員が国政調査権の一環として体験したい、同じように扱って、どうなっているのかを、ある期間、そう長い期間は難しいでしょうけれども、そういうことを望んだ場合は、いかが判断されるでしょうか。
  279. 中村正三郎

    中村国務大臣 それは、そういう体験をしてみてさらに考えようというのは極めて重要で御立派な考えであると思いますが、実際にやるとなるとなかなか難しい問題があると思いますが、それもできるものかどうか、何でも考えてみる必要がありますから、ちょっと考えてみたいと思います。
  280. 保坂展人

    保坂委員 実は、歴史をひもとくと、学者の方とか司法修習生とかやっておられる時期があるんですね。その時期には皆さん、刑場も見ていますよ。  ですから、この矯正の現場というのがここ三十年ぐらい急速にクローズになってきて、どうも何が行われているのかわからないという中で、やはりこの三十年を袴田さんはいわば拘禁されて、死の恐怖と闘ってきたわけですね。そして、闘いに疲れて、あるいは緊張に疲れたのかもしれませんが、今自分が自分であるという認識、あるいは袴田巌さんですかと言ったら、僕は違いますと帰っちゃうような人であれば、再審への扉が開きましたと言われても認知できないんじゃないですか。  だから、そういう意味で二重の悲劇が今起こりかねないという認識で、この問題、ぜひ大臣としても注意深く見ていただき、そして特に、だれとも会わないという部分はやはり治療の対象となるんじゃないかと思いますので、その点、一言お願いしたいと思います。
  281. 中村正三郎

    中村国務大臣 何がなし得るか、矯正局でさらに検討させたいと思います。
  282. 保坂展人

    保坂委員 それで、先ほど木島議員からもあったんですが、昨日の朝日新聞の記事で、これは裁判所からの、確定死刑囚の方が起こした裁判なんですが、訴訟の口頭弁論調書の写しを拘置所長あてに郵送したところ、返ってきちゃった。裁判所からのものも拘置所は突き返しちゃった。これは本当ですか。
  283. 坂井一郎

    ○坂井政府委員 お答え申し上げます。  お尋ねの事案につきまして調査しましたところ、東京拘置所に収容されている死刑確定者二名に送付された口頭弁論調書を裁判所に返送した事実というのは、現にございます。  その理由でございますけれども、これは裁判所から送付された文書でございますけれども、拘置所で見ましたところ、通常裁判所から送られてくるのとは違う、いわゆる呼び出し状あるいは送達が必要な文書と違う文書が入っているものですから、その性格を確かめましたところ、いわゆる裁判所が訴訟の当事者に送付するような文書でないということでございますので、一体だれからどういうふうに入ったかもわからないような文書だということで、そういうことであれば、そのまま収容者に渡すというのもいかがかということで、送り先である裁判所の方にお返しした。その後のことは、東京拘置所としてはよくわからないというのが実情でございます。
  284. 保坂展人

    保坂委員 これはちょっと聞き逃せないですね。  裁判所に送り返したということは、裁判所の文書だということを認識したから送り返したわけですね。特別送達の文書であれば本人に渡す。しかし、特別送達外の裁判関係書類。しかも、出られないですよね。つまり、公判に行くわけにいかないんですよね、法廷に行くわけに。というと、本人はそれで知るしかないじゃないですか。それを本人に交付しないというのは、法的根拠はあるんですか。
  285. 坂井一郎

    ○坂井政府委員 先ほどお答え申し上げましたとおり、裁判所からの文書であれば、当然にこれは収容者の方に行くわけでございます。だけれども、それは確かめましたところ、要するに、裁判所のものではなくて、裁判所が送ったものでないということですので、そういうことであれば、一体渡すのがいかがかということで送り返したというのが実情でございます。
  286. 保坂展人

    保坂委員 これはちょっと、国連で恥かきますよ、こんなこと言ってたら。裁判所の文書だけれども裁判所から送られなかったので、裁判所に送ったんでしょう。だから、裁判所に送ったということは、裁判所の、写しであったのかコピーであったのか知りませんが、要するに文書そのものはにせものでも何でもなかったわけでしょう。要するに、裁判所が封を張って届けたというものじゃないので裁判所に送り返した、こう解していいですか。その事実関係、なぜそれなら渡せないのかというのが全然わからないんです。
  287. 坂井一郎

    ○坂井政府委員 もっと簡単に申しますと、裁判所が送るものに裁判所の書類でないものが同封されてきたということでございます。したがいまして、これはいわゆる裁判所のものでないものが裁判所の封筒に同封されてきたというだけのことでございますので、それをお渡しするのはいかがかということで裁判所に返したということでございます。
  288. 保坂展人

    保坂委員 法的根拠はないんですね、今の話を聞くと。そうじゃないものを留保して書類だけを渡すということもできますものね。  もう一つ似たような話があるんですが、一月二十七日の毎日の夕刊に、いわゆる総量規制というのを始めましたよね、留置品の量的な規制ですよ。それで、東京拘置所なんですが、六・五メートルに上る訴訟記録を整理しろ、どう整理しても三・八メートルしかならなかった。それじゃだめだというので、三・五メートルということでとられちゃって、これは十分な反対尋問の準備ができなかったということで問題になっているんですね。  これはまさに、今の件も袴田さんの件もすべてそうなんですけれども、やはり拘禁中の人々が裁判を受ける権利ということを著しく侵害する事例じゃないかと思うんですが、いかがですか。
  289. 坂井一郎

    ○坂井政府委員 御質問は、いわゆる総量規制というものだろうと思います。  かつてから、一部の行刑施設におきまして、特定の被収容者が収納箱にして数十箱ないしは百数十箱という多量の領置物を持っておりまして、領置倉庫の領置棚が収容し切れないという事態が生じております。そういうことで、領置物の適正良好な管理に支障を来しておりましたところから、各施設において被収容者一人当たりの領置物の総量を定めて、その総量を超える場合にはいわゆる購入、差し入れを許さないというような省令を出したものでございます。したがいまして、これにつきましては領置物を廃棄するということを強制するものではございませんし、強制的に処分することを認めたものではございません。  それから、居室内に幾ら置くかというのは、先ほど申しました総量規制とは直接の関係ない、これはいわゆる管理上の問題でございまして、被収容者が余りに多量のものを居室内に置いておきますと、先生御案内だと思いますけれども、三・五メートルというとほとんど天井につくぐらいの量でございます。したがいまして、それはいろいろな居室の検査であるとか、あるいは余り多量になりますと、一体その収容者がどこにいるかすら陰に隠れてわからないというようなこともございますので、これを制限するのは我々としては当然であろうというふうに思っているわけでございます。  それで、新聞報道等では、何か全国の拘置所において被告人に裁判記録の処分を強要しているというような記載になっておりますけれども、我々がやっておりますのは、要するに領置をするものの総量を規制しているだけですから、もし読みたいのであれば、三・五メートルに達するまではとりあえず房内に置いておって、読めば、今度はそこから一部を取り出して、領置倉庫に入れて、新たなものを入れてということをぐるぐる循環させれば、何も裁判記録だから廃棄しろとかそういうことを申し上げているわけではございません。  それと同時に、先ほど申し上げましたけれども、裁判所と公務所から送付された文書につきましては、領置物の量がどうであれ、それはそれとは別個に領置するということをやっておりまして、そういうことで御理解いただきたいと思います。
  290. 保坂展人

    保坂委員 時間がわずかなんですが、一点だけ。大蔵省に来ていただいているんで、一言だけなんですが、当法務委員会で、ちょっと古い、一昨年になりますけれども、大きな事件になっていった最初の始まり、第一勧銀の金融検査時における接待、ゴルフ、これについてその当時十五万円供託をしている。押収されちゃって金額がわからないんで、供託というか、置いておいて精算を後にいただきたい、これはどうなりましたでしょうか。
  291. 石井道遠

    ○石井説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、平成六年に行われました大蔵省の第一勧銀に対する検査、それに関連いたしまして接待があったということで、当時の検査部管理課長でございました日下部氏並びに当時の上席検査官でございました宮川氏の両名につきまして、会食並びにゴルフの接待を受けた金額につきまして、これを精算する必要があろうということで、第一勧銀側に対しまして、金額を確定の上請求してほしいということを要請をいたしたわけでございます。  ただし、第一勧銀側は、その段階で、捜査当局から資料が押収されておるので具体的な金額の確定が困難であるということから、具体的な金額が確定できないということでございました。  そこで、放置しておくわけにはまいりませんので、日下部氏につきましては二回の会食分として五万円、それから宮川氏につきましては一回のゴルフ分として十万円を、個人の負担で自主的に第一勧銀側に預けております。  これにつきましては、先生からの御質問にお答えしておりますけれども、きちんと金額が確定できればその段階で速やかに精算をするというふうに考えておりますけれども、改めて第一勧銀側にその後の状況を確認いたしましたところ、今もって第一勧銀側のその種の資料が捜査当局に押収されたままになっておるようでございまして、いまだ返還を受けてないことから細かい金額の確定はできないという返答をもらっております。  私ども、このままの状態でいつまでも放置しておくことが決して望ましいとは思っておりませんので、この捜査資料の返還云々は別といたしましても、なるべくその事実関係の把握を第一勧銀側として努めてもらって、速やかに金額を確定の上、精算をしてもらうように、引き続き働きかけを行ってまいりたいというふうに考えております。
  292. 保坂展人

    保坂委員 最後に一言だけ大臣にお聞きして終わります。  死刑の問題、特に処遇の問題、執行の問題、あるいは再審の過程における本人の精神状態、細かくいろいろお聞きしました。これはぜひ、法務省でずっとこれを所管してきた方々の内側の論理だけではなくて、法務委員会が先頭になって、きちっと国際的な基準、まさにこういうものこそ国際社会に通用できるレベルに押し上げていただきたいとお願いして、一言だけいただきたいと思います。
  293. 中村正三郎

    中村国務大臣 そういった検討をいたしますのに、矯正局長と議論をいたしました。矯正局長に、なぜ外部の方の議論が必要なんだということを聞きましたところ、内部の者だけでは、従来の慣行に浸ってという言葉は悪いかもしれませんけれども、なかなか改善ができない面がある、だからこそ外部の方に入っていただき、お医者の方、教育者等も入っていただき審議をしたいということでございましたので、私は委員会を許可いたしました。この委員会を有効に働かさせて改善を図っていくように努力をさせたいと思います。
  294. 保坂展人

    保坂委員 私もぜひ、委員会ではなくて、国政調査権の一環として、当法務委員会がきちっとその実情を、国際水準に持っていく、そのための国会論議を進めるためのさまざまな調査にぜひ御協力をいただきたいということを申し上げて、きょうの質疑を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  295. 杉浦正健

    杉浦委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四分散会