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1999-08-04 第145回国会 衆議院 文教委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年八月四日(水曜日)     午前九時開議   出席委員    委員長 小川  元君    理事 栗原 裕康君 理事 小杉  隆君    理事 塩谷  立君 理事 増田 敏男君    理事 藤村  修君 理事 山元  勉君    理事 富田 茂之君 理事 松浪健四郎君       岩永 峯一君    大野 松茂君       奥山 茂彦君    佐田玄一郎君       下村 博文君    高鳥  修君       高橋 一郎君    渡辺 博道君       渋谷  修君    田中  甲君       中山 義活君    赤羽 一嘉君       池坊 保子君    近江巳記夫君       西  博義君    佐々木洋平君       笹山 登生君    石井 郁子君       山原健二郎君    濱田 健一君       粟屋 敏信君  出席国務大臣         文部大臣    有馬 朗人君  出席政府委員         法務省民事局長 細川  清君         法務省人権擁護         局長      横山 匡輝君         法務省入国管理         局長      竹中 繁雄君         文部大臣官房長 小野 元之君         文部省生涯学習         局長      富岡 賢治君         文部省初等中等         教育局長    御手洗 康君         文部省教育助成         局長      矢野 重典君         文部省高等教育         局長      佐々木正峰君         文部省学術国際         局長      工藤 智規君         文部省体育局長 遠藤 昭雄君  委員外出席者         文教委員会専門         員       岡村  豊君 委員の異動 七月二十一日  辞任         補欠選任   中路 雅弘君     石井 郁子君 同月二十七日         辞任         補欠選任   羽田  孜君     渋谷  修君 八月四日  辞任         補欠選任   池坊 保子君     赤羽 一嘉君   西  博義君     近江巳記夫君   笹山 登生君     佐々木洋平君 同日  辞任         補欠選任   赤羽 一嘉君     池坊 保子君   近江巳記夫君     西  博義君   佐々木洋平君     笹山 登生君 七月二十三日  公立学校での日の丸掲揚君が代斉唱強制反対に関する請願伊藤茂紹介)(第六七八一号)  同(北沢清功紹介)(第六七八二号)  同(知久馬二三子紹介)(第六七八三号)  同(辻元清美紹介)(第六七八四号)  同(土井たか子紹介)(第六七八五号)  同(中川智子紹介)(第六七八六号)  同(中西績介紹介)(第六七八七号)  同(畠山健治郎紹介)(第六七八八号)  同(濱田健一紹介)(第六七八九号)  同(深田肇紹介)(第六七九〇号)  同(保坂展人君紹介)(第六七九一号)  同(前島秀行紹介)(第六七九二号)  同(村山富市紹介)(第六七九三号)  同(横光克彦紹介)(第六七九四号)  同(辻元清美紹介)(第六八〇五号)  同(土井たか子紹介)(第六八二〇号)  同(中川智子紹介)(第六八四六号)  同(畠山健治郎紹介)(第六八四七号)  同(保坂展人君紹介)(第六八四八号)  同(藤村修紹介)(第六八六二号)  同(山元勉紹介)(第六八七二号)  同(児玉健次紹介)(第六八九三号)  同(瀬古由起子紹介)(第六八九四号)  学校への日の丸君が代強制中止に関する請願土井たか子紹介)(第六八一九号)  同(保坂展人君紹介)(第六八四九号)  学校日の丸君が代強制反対に関する請願石井郁子紹介)(第六八三三号)  同(金子満広紹介)(第六八九五号)  私立大学助成金大幅増額学生父母学費負担軽減に関する請願山元勉紹介)(第六八三四号)  同(藤村修紹介)(第六八六三号)  私立大学・短期大学への国庫助成及び奨学金予算増額に関する請願山原健二郎紹介)(第六八三五号)  国立大学学費値上げ反対私学助成金文教予算大幅増額に関する請願山元勉紹介)(第六八四五号)  同(濱田健一紹介)(第六八六〇号)  同(藤村修紹介)(第六八六一号)  同(石井郁子紹介)(第六八九一号)  私大助成大幅増額に関する請願濱田健一紹介)(第六八五九号)  学生の公平で公正な就職活動に関する請願畠山健治郎紹介)(第六八七一号)  同(大森猛紹介)(第六八九二号)  私立大学父母学生負担軽減に関する請願石井郁子紹介)(第六八八五号)  同(児玉健次紹介)(第六八八六号)  同(中林よし子紹介)(第六八八七号)  同(春名直章紹介)(第六八八八号)  同(松本善明紹介)(第六八八九号)  同(山原健二郎紹介)(第六八九〇号) は本委員会に付託された。 七月二十二日  義務教育費国庫負担制度堅持教職員定数改善早期完結教育予算充実に関する陳情書(第二七一号)  同外三件(第三六三号)  三十人以下学級等早期実現に関する陳情書(第三一一号)  三十人以下学級を柱とする次期定数改善計画策定に関する陳情書(第三一二号)  現行の教職員配置改善計画早期完結次期改善計画早期策定に関する陳情書(第三一三号)  教育行政充実強化に関する陳情書(第三一四号)  二〇〇二年ワールドカップサッカー大会の開催に対する支援に関する陳情書(第三一五号)  義務教育費国庫負担制度堅持に関する陳情書外八件(第三六二号)  三十人学級早期実現複式学級解消に関する陳情書外五件(第三六四号) は本委員会に参考送付された。 本日の会議に付した案件  文教行政基本施策に関する件     午前九時開議      ――――◇―――――
  2. 小川元

    小川委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。増田敏男君。
  3. 増田敏男

    増田委員 自由民主党の増田敏男でございます。時間が三十分ですので、簡明にお尋ねをいたしますので、よろしくお願いしたいと思います。  まず初めに、教育改革推進についてであります。  明治以降、我が国発展の歴史を振り返れば、その根本には、国民教育に対する熱意はもちろん、官民ともに挙げて教育には熱心だったな、こういう実感を私は持っております。教育の普及と充実のためにたゆまざる努力が続けられて今日まで来ているというのが姿だろう。戦後においても、六・三・三・四制の学校教育制度を確立し、教育機会均等の理念のもとで教育条件を整備し、教育水準向上を図り、国民知識社会的能力のアップに努めてきたわけでありますが、その後も、科学技術の進展に対応しつつ、我が国社会経済発展の原動力になったものと考えております。  しかしながら、教育における量的拡充が進む中で幾つかの矛盾も出てきたな、このように考えております。知識を一方的に教え込む教育に陥りがちで、みずから学ぶ、みずから考える、さらには、正義感公平性あるいは責任感といった豊かな人間性をはぐくむ教育がおろそかになってきたのではないのかな、また、平等性を重視する余り、一人一人の多様な個性能力の伸長という点が必ずしも十分ではなかったのではないか、また一方では、現在の教育についていけない子供を生むと同時に、個人の権利を重要視し過ぎる余り社会性に欠けた若者が多く見受けられるようになった、こういった感を私は持っております。  こうした問題点を解決すべく、文部省ではこれまで、教育改革プログラム策定して、具体的な施策を展開してきていると伺っておりますが、その現状についてお伺いをいたします。これが一点であります。  次に、来るべき二十一世紀において、日本の将来を支えるのはもちろん子供たちであります。そういう観点から、これからの子供と、その子供たちがやがて大人になってつくる将来の社会はどういうことになっていくんだろう、考えれば考えるほど心配になるところであります。大臣も私も同じような年代を生きてきたと思うので、恐らく同じようなお考えではないのかな。  そこで、今後、少子高齢化社会を迎える中で、あらゆる社会システムの基盤である教育役割は一層重要だ、このように考えております。二十一世紀を目前にした今、このような状況を踏まえながら教育改革をどのように進められるのか、大臣の御決意伺いたいと思います。もちろん、今日まで尽くされていますから、私は初めて大臣質疑をいたします、こういうふうにやるんだという決意を、簡明で結構ですから、改めてお聞きしたいものだ、そして、私たち心配している二十一世紀のこの国の教育の姿はと、そういうふうに思いをはせてみたい、このように思います。とりあえず、ここでお願いをいたします。
  4. 有馬朗人

    有馬国務大臣 おはようございます。  ただいまの御質問二つ内容があったかと思いますが、共通いたしておりますので、まとめてお答えを申し上げてみたいと思います。  まず、先生指摘のように、戦後教育というのはかなり成功したと私は思っています。問題点はたくさん出てきておりますけれども、しかし、教職員人たちが非常に熱心に教育に励み、文部省といたしましても最大限の力を注いできたことによって成功していたと思われることがたくさんあります。平均知識力というふうな点では、世界的に見て大変高いと思います。しかしながら、御指摘のようにさまざまな問題が今巻き起こっている。  独創性ということが特によく科学技術立国の上で言われます。そこで、率直に申し上げまして現在私が一番心配をしておることは、やはり文部省責任があることというのは、日本じゅう人々平均の質を上げることが一番大きな問題だと思っています。しかしながら、もう一つ、非常に創造的な人々をどうやって育てていくか。この二つを併存していくことができるかというのが、実を申しますと私の一番頭の痛いところで、今後もどちらもよくなるようにというふうなことを考えながら現在文部省として教育改革を進めているところでございます。  その次に、先生おっしゃられましたように、少子高齢化というふうなことがますます進んでまいります。そういう中で、日本が非常に活力のある国として発展し、そしてまた科学技術立国であり、あるいは文化立国、さらには教育立国を目指していきますためには、やはりその基本となります教育役割がますます重要になってくると思っております。  そこで、具体的に、現在文部省といたしまして教育改革プログラムによってどういうことを考えているかということをかいつまんで申し上げたいと思います。  まず第一に、子供たちゆとりの中で生きる力をはぐくむ心の教育充実していきたい。  第二に、行き過ぎた平等主義を是正いたしまして、子供たちがその個性に応じて多様な選択ができる学校制度を実現していきたいと思っております。  第三番目に、教育地方分権を進めるとともに、主体性のある学校づくりをやっていきたいと考えております。  第四に、国際社会の中で競争力を維持し、活力あふれる社会を実現していくためには、どうしても大学の活躍をまたなければなりません。そういう意味で、大学改革を行いたいと考えております。その際に、大学における教育充実していくこと、さらに研究の振興に対して一層の推進をすること、こういうことを考えております。そして特に、具体的には、技術移転というふうなことを通じまして産業界との協力をさらに積極的に進めていきたい、などということを重点に置いて教育改革推進全力を挙げて努力をしているところでございます。  特にゆとりということを最初に申し上げましたけれども、その中には、個性それから独創性等々を育てていくという意味合いも入っているということを申し上げておきたいと思います。
  5. 増田敏男

    増田委員 きのう、私のところへしばらくぶりで友達が参りまして、大臣質問するんだと言ったら、民間の出身の大臣がこの内閣ではよくやっているね、有馬文部大臣経企庁長官も、こういうことを言われました。私も、日ごろ期待をし、尊敬していますから、うれしくなって、どういうふうだといって議論をしたんです。もちろん教職関係にある方であります。  そういうことから、いろいろ話を展開していきまして気づいたんですが、通告してありますけれども教員資質向上について、もちろん教育は、教員がいかに立派であっても、あるいは家庭なり社会なりがそれに理解と受け入れと協力、協調がなかったら成果は上がるものではない、このように考えております。そこで、教育改革の成否は児童生徒教育を直接つかさどる教員資質向上に負うところが大変大きいと考えております。教育に対する使命感を持ち、現場課題に適切に対応できる力量ある人材が教壇で能力を発揮できるようにするため、教員資質向上にどのように取り組んでおられるか、これまたお伺いしたいと思います。  もちろん、先生になりました、一年終わりました、初任者研修です、五年、十年、二十年と経年研修制度は知っております。そういう中からいろいろ学校の姿が――これは受ける方の問題なんですけれども先生にはより多くを期待したい。  そこで、教員資質向上についてどういうお考えか、改めてお聞きしたい。お願いをいたします。
  6. 有馬朗人

    有馬国務大臣 先生のおっしゃるとおりでありまして、教員使命というのはますます重要でございます。そういう意味で、教育改革を進めていくに当たりましては、やはり児童生徒に直接接し、指導に当たります教員役割は極めて大きく、その資質能力向上を図っていくことは重大な課題であると認識いたしております。  そのため、平成年度教育職員免許法改正におきましては、使命感得意分野個性を持ち、いじめや不登校など現場課題に適切に対応できる教員を養成するという観点から、大学学部レベル教員養成課程におきまして、教職に関する科目の充実教員養成カリキュラム弾力化を図ったところでございます。今後、このカリキュラムが定着するように努力してまいりたいと思っております。  さらにまた、教員採用時期が非常に重要なことだと思いますが、その教員採用に際しましては、各都道府県指定都市教育委員会に対しまして、人物重視方向で一層の改善を図るとともに、さまざまな社会体験の評価や受験年齢の緩和など、多様な人材確保にも考慮するよう進めているところでございます。  さらに、研修におきましても、各種の専門研修社会体験研修など、現職教員に対するさまざまな研修機会提供等支援を行っているところでございます。  なお、教員採用研修等のあり方については、現在、教養審とよく言われますが、教育職員養成審議会におきまして審議されているところでございます。  文部省といたしましては、この審議会審議結果等を踏まえつつ、今後とも教員資質向上個性豊かな教員養成確保に努めてまいりたいと思っております。先生たちが、教員人たち使命感を持つよう、今後も我々といたしましても努力をさせていただきたいと思っております。
  7. 増田敏男

    増田委員 大いに頑張ってもらいたいと思います。  もちろんこれは、今のお答えに対する私の考え方を申し述べて参考にしてもらうのですが、採用するときに、先生に向いているか向いていないか、これがまず第一ですね。かつて私が若いころは、先生になるのは、ほかにないから先生になろうなんという時代がありました。もう不見識きわまりない言葉なんですが、足る足らざるは別に、おれはなったからこれに命をかけて生きるんだ、このくらいの気概と情熱がなかったら決して人を動かすことはできないだろう。教育は人に原点がありますから、やはり指導者に対しては大きな期待を持ちたい、引き続いて頑張ってもらいたいな、こういうことであります。  それから、私の耳に入ってくることなんですが、こういうことがあっては困るのですけれども、例えば教師子供注意をする。注意が厳しかったんだと思いますが、うちへ帰って、翌日から学校に出てこない。そして、親が尋ねた。そうしたら、私は先生にいじめられるから行かないんだと。親は心配して教育委員会に話した。教育委員会は、学校を通しその担任の教師に、こういう事実だがどうかと聞いた。そういうようなことが結局、こう言うとなんなのですが、今度は教員の方は、これは大変なことだ、難なく毎日終われば済むんだというような考え方になっていってしまうのではないかな。そういう声が私の耳にはいろいろと入ってきます。  だから、学級崩壊にしても学校崩壊にしても、これはもちろん大変なことだ。だから、まず親が理解を持たなかったらどうにもならない、そして社会が応援をしなかったらなおだめだ、こういうことを考えながらこの質問をしたわけであります。信頼している大臣ですから、どうかそれらを御整理いただいて、これから現場に向かったいろいろの御指導を賜りたいな、こう思います。  それでは、次の質問に入りたいと思います。  中高一貫教育についてであります。  このことは理想と現実には大変乖離があります。それは私たちにもわかっています。この制度ができたそのねらいは何かといったら、時代の要請で、この教育自体制度化してやっていかなければならないというような状況にあることも私なりに理解はいたしております。  そこで、簡単に聞くのですけれども、本年四月から制度化された中高一貫教育は、中等教育多様化を進め、生徒保護者選択肢をふやすという観点から大変有意義な制度であると考えます。  既に宮崎県では数年前から、またこの四月から岡山市などもやっておられると聞いております。また一方では、三重県や私の県の埼玉県の大宮市なども、こういった制度取り組みたいというので声を上げ、御指導いただいているというふうに承っておりますが、こうした取り組み現状について、まずやってみてどうだった、これから文部省はどうする、どういうふうに進めていく、ことしが制度を始めたスタートの年ですから、ちょうど一学期が終わったところですから、来年を踏まえて考え方をお伺いしたいな。まだ大臣まで行っていなければ担当者で結構ですから、お聞きしたいな。  それから、中高一貫教育推進を図るためには、いろいろ自治体の取り組みを促すために、国としても全般的な広い視野に立った施策を積極的に講じるべきである、このように実は考えております。  何でこんなことを言うかというと、希望した地域が偏ってしまっては制度のねらいがないだろう、これが一つあります。そこで、学校教育法改正により中高一貫教育制度化された後、国として今後どのような支援策を講じていくお考えか、あるいは啓発していく考えか、文部大臣にお伺いをいたします。  それから、初めの質問担当者で結構なんですが、初めの質問の方の、何でこういうことを聞くかというと、大体世の中の働くための最低基準高校卒というふうに現実はなってきております。だから、中学を出ているから就職したい、足りません。  本年から、特に理容師美容師など、ここは男性、女性諸君がいますから、こういう制度まで変わりまして、今までは中学を出て床屋さんになりたい、美容師になりたいと言えば、それで働きながらで間に合ったわけですね。今度はそうじゃないのです。もちろん通信教育制度は残しましたが、ほとんどが高校卒ということになったんですね。高校を卒業して、美容学校理容学校に行って、今まで一年だったのがことしから二年になって、その課程を卒業しないと一人前の美容師なり床屋さんにはなれない、こういうことになってきたわけです。高校卒基準と。もちろん、これだけでは制度として完全でありませんから、救うべく通信教育制度は残っています。でも、事ほどさように、これから高校卒というのが、高校進学率から考えれば当然でしょうが、最低基準のようになってくる。  そこで、小学校で二万人を超えて、中学校で八万人を超えて、義務教育で十万人を超える方々が不登校者だというふうに聞いております。それらを考えたら、どうしてもそれらの人が社会へ出ていくときには高校卒にはなってもらいたいな、こういう願いを私は頭の中で持っているわけであります。  自分の発言が多くなりましたが、ここで答弁をいただきたいと思います。
  8. 御手洗康

    御手洗政府委員 まず、全国におきます中高一貫教育取り組み現状について私の方からお答えをさせていただきます。  中高一貫教育は、御指摘がございましたように、中等教育段階生徒たち能力や興味、関心あるいは進路、そういったものに応じて自分の望む教育をできるだけ多様な形で受けられるようにということで、高等学校教育、さまざまな改革を行ってまいりましたけれども、その一つの延長線上に、中学校高等学校を一貫して六年間を継続的な教育を行うことによって自分能力をできるだけ伸ばしていきたい、こういう観点から制度化を図ったところでございまして、御指摘のように、宮崎県におきましては既に数年前から事実上併設学校でやっておりましたけれども、今年度からは中等教育学校という形で発足いたしましたし、また岡山市におきましては、併設中学高等学校という形で実施されておりますし、また三重県におきましては、一つ高等学校と複数の中学校が連携する。当初予想いたしました三つのタイプの中高一貫学校が、くしくも本年度一校ずつでございますけれども発足するという状況になってございます。  遅いではないかという御指摘もあろうかと思いますけれども、来年度以降につきましては、秋田市におきまして併設型を初めといたしまして、今のところ私どもが承知している限り十九校で実施したいということで具体的な準備がされております。また、そのほかの都道府県におきましても、各都道府県におきまして中高一貫教育実践研究事業という形で、研究会議や、具体的な中学校高等学校を指定いたしました推進校を設けまして、具体的な実施の方向へ向けての取り組みをしているところでございまして、既に十二の都道府県におきまして一定の研究会議の報告が出されておりまして、これから具体化へ入るということでございます。  私どもにおきましても、これを具体的にどういうぐあいに推進していくかという形で、専門家方々あるいは現場の知恵をかりたいということで、急遽また本年度会議も設けまして、こういった実例をしっかりと分析をして、できるだけ早く情報を提供したいということで努力しているところでございまして、今後とも、各都道府県の具体的なこういった研究状況につきまして十分連絡を密にいたしまして、推進方になお一層全力を挙げてまいりたいと思っているところでございます。
  9. 有馬朗人

    有馬国務大臣 現在行っておりますことは、今初中局長よりお答え申し上げたとおりでございますが、さらにどういうふうに文部省として支援策を講じているかということについてお返事を申し上げたいと思います。  おっしゃられましたように、偏ることは望ましくございません。しかしながら、基本的には、中高一貫教育をどうするか、どういうふうに導入していくかということは、やはり各都道府県等設置者が判断することでございます。しかし、御指摘のような中高一貫教育の意義を踏まえまして、文部省といたしましては、生徒指導者にとって実質的に選択が可能となるよう、中高一貫教育校通学範囲の身近なところに数多く設置されることが望ましいと考えております。  このため、各都道府県等設置を促進するために、平成年度から実施いたしております中高一貫教育実践研究事業平成十一年度におきましてはさらに拡充を図りまして、実践的な研究を進めているところでございます。そしてまた、本年から新たに中高一貫教育推進会議設置いたしまして、今後の整備目標や推進方策について検討を進めますとともに、幅広い関係者の理解協力を得るため、全国六カ所におきまして中高一貫教育推進フォーラムを開催するなどの努力をいたしております。こういうことで、中高一貫という事業がよく理解され、それを推進していただくよう努力をしていきたいと思っています。
  10. 増田敏男

    増田委員 時間が来てしまいましたので、時間を考えながら質問したいと思います。そこで、最後の質問にしたかったのですが、先に要望だけしておきます。  一口に、体位は向上しても体力は落ちたという言葉が一般的であります。これは要望の方ですから、最後の質問を要望にかえておきますので、ぜひその辺に十分心を砕いて頑張ってもらいたいな。私も体協の会長をやったり、あるいはスポーツ少年団の会長をやったり本部長をやったり、いろいろと経験を積んで今日まで来ましたが、どうもそういう感が否めません。  そこで、青少年の健全育成とスポーツ活動の振興について、ぜひ健康の保持増進、体力の向上にもちろん資するものだから、国民が気軽に身近な地域で楽しめるスポーツの環境ができるように、またこれから少子高齢化になりますから、学校を地域の開放やその他に振り向ける等、いろいろの知恵を絞って地域社会と一体になって頑張ってもらいたいな。もちろんスポーツが生み出すいろいろのすばらしい点は、ここで述べていると時間がありませんから、何しろ体位は向上した、体力は落ちた、このままでは困るよ。  それから、体型を見て、日本人の体型が昔と今と変わってきた。どっちがいいか悪いかはわかりません。私は、ただ今見て、これは私たちより平均寿命が延びるかな縮むかな、こう思ったときに、私たちの方が延びるのではないか、こういうような感を実は持っています。したがって、総合的にスポーツの振興をお願いしたい、こう思います。これは要望です。  そこで、最後の質問になるわけでありますが、総合的な学習の時間について、この問題をお尋ねしたいと思います。  文部省では、完全学校週五日制の実施に向けて平成十四年度から新しい教育課程を実施するため、さきに学習指導要領の改訂を行っております。この新学習指導要領が目指している教育はどのようなものなのか。もちろん、これは中を読みました。指導要領やあるいはまたいろいろの答申を皆読みましたから、細かなことはいいのですが、どういうふうに持っていくのだ。その点を要約して、歯切れよく希望の持てるような答弁を期待したいな、こういうことであります。  それから、学校教育においては、一人一人の子供たち個性や創造性をはぐくんでいくことが重要であります。また、どの地域でも質の高い教育が受けられることを大切にしながら、それぞれの地域や学校の実態を踏まえ、もっと学校の創意工夫を生かした特色ある教育活動が展開できるようにすることももちろん必要であると考えております。このような教育を展開していく上で、このたび新設される総合的な学習の時間は極めて有効であると考えるのです。  しかし、ここでちょっと要望があるのですが、あるいは御注意になるかもしれません。現在試行中だと思います。これから本格的実施になる前に、まずだれが決めるのか。学校で決めると書いてありますが、校長だけで決まって下がついてくるわけがありませんから、だれが決めるのか、どういう会議をするのか、国はどういうような方向がいいのか、それらを教育を成就させるために、全うするためにぜひ絞って取り組んでもらいたいな。これはもう時間がないからお願いしておきます。  なぜかというと、今私がお尋ねしたような言葉の中に、私がたまたま行ってみたら、うちはうどんの町だから――大体小学校三年から高校まで百時間前後この時間はありますね。百時間を割るところも多いところもありますが、大体百時間前後あります。年間百時間前後のものは学校の裁量によって、この教育でこういう方向でやることができるわけです。だから、うどんの町だから、うどんの手打ちを教えるのだ。花の村だから、花壇を預けて、花は年に大体四回植えかえますから、そういうことでこれはやるのだ。結構だ。でも、目的はそれだけ、地域社会の小さな社会のことだけでは困るので、だから、ぜひこれから全体的な連携の中で頑張ってもらいたいな、こういう思いを持ちます。  たまたま一日の新聞に、これは京大の西村和雄教授の話ですが、日経に出ておりました。「大学生の学力低下」と出ていたのですが、私もこれを読みながら、なるほどなと思いました。  そこで、ぜひそういうような改革方向に向けられないのかな。また勉強でその時間をとれという意味ではないのですが、ここには、読み書きそろばん、そして数学と理科の学力を向上させることが改革だ、こういうふうに書いてありましたが、私は幾らか考え方が違いまして、私が育つ時代は読み書きそろばんで用が足りた。今はそれだけでは足りない。読み書き、話すことができる、これは日本語でも外国語でも同じです、読み書き話すそろばん。一つ余計になった、今私はそういう理解でいます。その上に数学なり理科なりを覚えておいて、そういう思考回路をそれぞれが持ったらすばらしい国になるだろう、こういうふうに思っている。  そこで、結論的に、今申し上げました総合的な学習の時間についてどうお考えか、どういうふうに運ぼうとしているか。それから、私の希望では、学校が決めることなんですけれども、ぜひ情報をとり合って、その中でいい方向をこれからどんどん選択してもらって、それでこの目的を達してもらいたいな、こんな思いであります。お願いをいたします。
  11. 御手洗康

    御手洗政府委員 御指摘の点、十分私ども踏まえまして各学校指導してまいりたいと思っております。  特に総合学習の時間につきましては、知識を教え込む教育から、子供たち自分考え自分で学び、そしてみずから問題を解決していく、そういう生きる力を養う上で基本的な学習の場面となろうかと思っておりますので、とりわけ御指摘の点を踏まえまして、国際理解や情報、環境、福祉、健康、こういった点も踏まえまして、横断的、総合的な学習をやっていくということに努力をさせていただきたいと思っておりますし、また、各学校でのすぐれた実践例というものを多くの学校に、文部省教育委員会協力いたしまして提供するという形で、いい授業が展開されるように努力をしてまいりたいと思っております。
  12. 増田敏男

    増田委員 時間が来てしまいましたからこれで質問は終わるわけでありますが、一月から今日まで長丁場でした。私が質問したようなことはほとんどここで出ております。問題は、知識でわかっただけでは困るのですよ、これを実践するのにより一層の御努力を、二十一世紀を踏まえて、信頼する大臣初め文部省のスタッフにお願いしますよというのが私の質問の背景であります。頑張ってください。  時間ですから終わります。
  13. 小川元

    小川委員長 次に、山元勉君。
  14. 山元勉

    山元委員 おはようございます。民主党の山元でございます。  五日ほど前ですけれども二十九日に、人権擁護推進審議会から答申が出されました。言うまでもなく法務省、文部省、総務庁に対してですけれども、きょうは、この答申について御質問をさせていただこうと思っています。  この答申は、平成八年に人権擁護施策推進法ができて、そして審議会が設けられて、それから二年二カ月にわたって二十九回委員会が開かれまして、精力的に論議がなされました。そのことには深い敬意を表したいと思いますが、幾つかの問題点、危惧を私ども持っております。  この答申を受けて、文部省がどのように施策を進められるのかについてお尋ねをしたいわけです。  この答申は実に長い表題がついています。「人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項について」、この表題に審議会の皆さんの思いが込められているんだろうというふうに思います。簡単に人権施策に関する答申と言ってもいいわけですけれども国民相互の理解を深めながら人権の教育や啓発を進めていく、こういう思いが込められているわけです。  人権教育のための国連十年の国内行動計画が既にございます。そして、この答申が出てきた。ですから、文部省はこの二つ方向、答申と行動計画をより積極的に進めていく責任があるんだろうというふうに思います。  そこで、この二つ、行動計画とこの答申を踏まえて、文部省基本的にどのような取り組みを、あるいは強化を図ろうとしていらっしゃるのか。まだ答申が出まして一週間になりませんから具体的には難しいかもしれませんけれども、これは長い間の課題でございましたから、この答申をつくる論議の中にも文部省は参加してこられました、ですから、具体的に文部省としてのシステムをどう強化するのか、あるいは問題になっております予算措置をどのようにしていこうとなさっているのか。  もちろん答申の中には、文部省がこの教育に担うべき課題は多いということは数々のところで指摘をされているわけですから、既に検討されておると思いますので、きょうの時点で、今申し上げましたように、文部省として、人権教育を進めていくためのシステムをどう強化するのか、予算措置をどうするのか、お考えをまず承りたいと思います。
  15. 有馬朗人

    有馬国務大臣 後ほど具体的なことは事務局よりお返事申し上げますが、まず、この答申を我々は非常に重要なことと考えております。  まず、文部省におきましては、現在までも、生涯学習の視点に立ちまして、憲法や教育基本法の精神にのっとりまして、学校教育及び社会教育を通じて人権尊重の教育推進いたしてきているところでございます。  このたび人権擁護推進審議会からいただきました答申は、国民一人一人に人権に関する正しい知識、日常生活の中で生かされるような直観的な人権感覚が十分身につくよう、人権教育・啓発を行うことが重要であるという指摘がされております。その上で、人権教育に関しましては、学校教育社会教育、家庭教育の各分野におきまして、今後講ずべき諸施策を御提言いただいております。  文部省といたしましては、この人権擁護推進審議会の答申を踏まえまして、人権教育推進のための取り組みを一層進めてまいりたいと思っております。
  16. 山元勉

    山元委員 今のですと、今まで、答申が出る前から文部省の立場としてあったわけです。私が聞いているのは、具体的に体制をどう強化するのか。例えば、文部省の中だけでいいますと、初中局もあれば高等教育もあれば、あるいは生涯学習も助成局も、皆あるわけです。すべてのところで人権教育については取り組んできているはずですけれども、省を挙げてどういうふうに体制を強化するのか。  あるいは予算要求について、前、私がこの委員会で、国連の人権教育についての予算はあるかと言ったら、一銭もない、特別に予算は組まないという話でした。私は、それでは今の時点では済まないだろうというふうに思うのですね。  ですから、今答申を受けて、財政措置をきちっとする、文部省としての体制を強化するという決意がなければ、これは進まない。  例えば、この答申の中には、二十一世紀は人権の世紀だと書いてある。花開く世紀だ、こう書いてあるわけですね。それをやろう、文部省がそれに責任を持とうとすると、そういうことが必要になるのではないかというふうに思うのですが、いかがですか。
  17. 有馬朗人

    有馬国務大臣 来年度の予算要求を今つくりつつあるわけでありますが、文部省の中で、予算要求を検討しているその中で、今回の答申の趣旨に配慮しながら、人権教育充実に努めてまいりたいと思っております。
  18. 山元勉

    山元委員 重ねて言いますけれども、今までも取り組んできていないとは言っていないわけです。ですから、一段と強化をするためには、例えば省を挙げての体制をつくるとか、あるいは、大臣もおっしゃいましたように、学校教育、家庭教育社会教育、そういうことを総合的にやらなきゃならぬのだということですけれども、そういう指導の手引といいますか資料をつくろうと思うと、今までより以上に、学校現場人たちだとか、あるいは学識経験者だとか、あるいはNGOの皆さんだとか、さまざまな人から意見を聞きながら、二十一世紀に花開かせる、人権の世紀にさせる、そういう準備をぜひ急いでいただきたい、これは要望をさせていただきたいと思います。  そして、次にもう一つ、この答申の中に、「人権教育」のところですが、答申でいうと二十五ページです、「学校教育においては、国は、各学校等での人権教育に係る取組に資するため、適切かつ効果的な指導方法や学習教材等について資料の収集、調査・研究をし、その成果を学校等に対して提供すること、」こう書いてあるわけですね。極めて具体的に書いてあるわけです。  これは文部省の大きな仕事だろうというふうに思うのです。一体これを今の時点でどういうふうに取り組もうとされるのか。予算措置がこれだと必要なのではないかというふうに思いますが、いかがですか。
  19. 御手洗康

    御手洗政府委員 人権教育を、学校教育あるいは社会教育を含めましてさまざまな場面で具体的に実施していくための手引といたしまして、文部省といたしましても、平成年度に、人権問題に関する識者、行政関係者の協力を得ながら、社会教育指導者の手引「人権に関する学習の進め方」等を作成し、都道府県や市町村に配付しているところでございますし、また、各都道府県、市町村におきましては、それぞれの学校教育の場面等におきまして具体的にどう進めていくかという教材づくりに相当な努力をしてきているところでございます。  今後とも、そういった各都道府県や市町村におきます資料や手引等の作成、こういったものができるだけ円滑に進めていくことができるよう、文部省としても努力をしてまいりたいと考えております。
  20. 山元勉

    山元委員 相当の努力をしてきたとおっしゃる。先ほどからしつこく言いますけれども施策を進めるという意味からいうと、この際やはり思い切って予算要求、予算も拡大しなければならぬのと違うかというふうに思いますから、この点については、この概算要求の時期に御検討をぜひ前向きでお願いしたいというふうに思います。  同じところにこういうことが書いてあるのですが、「教員が人権尊重の理念について十分な認識を持つことができるように研修等の一層の充実を図っていく」こと。教員研修を求めているわけですけれども、これも、今実際に学校で、特に同和加配がつけられている学校などでは多忙をきわめているわけですね。子供と接する時間が本当に少なくなってしまっている。そういうところにまた新たなといいますか一層の研修をと言われると、現場としては皆さん大変お困りになるのだろうというふうに思います。  確かにこの答申の中で法的な措置についての指摘はほとんどなくて、財政措置で十分いけるのだというふうな言い方が、審議会の会長のコメントでもあるわけです。そうすると、やはり財政措置がきちっと伴わないと、やはりこれはできていかない。研修を求めるのであればやはりそれなりの措置が必要で、現場の皆さんの努力期待するというだけではいけないだろうと思います。このことも含めてこれから御検討をいただきたいというふうに思います。  同じところに、「いわゆる同和加配教員制度を人権教育推進するための教職員配置等に発展的に見直していく」と書いてあるわけです。私も現場にいたときに同和加配がつけられている学校におりました。今まで、その人たちが同和教育だとかあるいは困難校の学校教育を進めていくために大きな役割を果たしてこられました。私はそれは済んでいないと思うのですが、ここには「発展的に見直していく」と書いてあるのですが、これは一体どういうことを意味するのか。同和加配というものを解消して、人権教育という名で、レベルアップをした名で見直していくのか、それとも、役割に着目した形で改めて見直していくということなのか、この文言を文部省はどういうふうに受け取っていらっしゃるのか、お尋ねをしたいと思います。
  21. 矢野重典

    ○矢野(重)政府委員 いわゆる同和加配教員制度は、同和地区を有します小中学校におきまして、児童生徒の学力向上、進路指導充実等を図ることができるようにするために、昭和四十四年度から実施され、同和教育推進に一定の役割を担ってきたものでございます。  文部省といたしましては、今後、先ほどの人権擁護推進審議会の提言を踏まえまして、またこれまでの同和加配教員制度の重要性を十分認識した上で、人権教育に関する具体的施策を実施していく中で教職員配置のあり方についても検討をしてまいりたいと考えているところでございます。
  22. 山元勉

    山元委員 局長のお言葉はどうもあいまいでわかりにくい。  そして、第一、私はさっき大きな役割を果たしてきたと、文部省としては一定の役割という言葉になるのかもわかりませんけれども、やはりこれは今まだ大事で、差別事象が続いているとか、改善事業の問題もそうですけれども、まだまだ済んでいないという認識でこの見直しという言葉を文部省としては受け取っていただかないと、現に、地方自治体は財政困難だということで同和加配を減らしている、引き揚げている地域がたくさん出てきているわけですね。これはやはり文部省としては危機感を持っていただきたい。  確かに地方行革だとかあるいは財政再建とかいう名で定員がカットされていく、それはそれぞれの単費でやっていた部分が多いわけですから、そういう点についてはぜひ文部省としても認識をしっかりとして、現場に着目しながら改めていただきたいといいますか、これから積極的にそのことについての努力お願いしたいというふうに思います。  そして、次の問題ですが、大学についても触れられています、大学教育。この委員会で以前たしか、相当前になりますけれども大学教育における人権教育、同和教育について十分なされていないという論議があったというふうに私は記憶をしています。  この答申の中で、大学についてたったの二行だというふうに思うのですけれども、「個々の大学等の実情、方針等に応じて学内における自主的な取組により人権に関する教育の一層の充実に配慮することが求められる。」こう書いてあるわけです。「自主的な取組により」と。  よく見てみますと、前の国連十年の行動計画の中では違ったニュアンスで書かれているわけです。「各大学における人権に関する教育・啓発活動について、一層の取組に配慮する。」と。自主的に取り組むことについて配慮するとは少し違う。意地の悪い読み方をすると、一層の取り組みに配慮するというのと自主的取り組みに配慮するということとは大分違うわけです。それぞれ頑張りなさいよということと、積極的に一層取り組むということとは、ニュアンスが、トーンが落ちている感じがするわけです。  先ほども言いましたように、この委員会でも大学における同和教育についての教育研究あるいは人権教育については取り組みが弱いというふうに思っていますが、こういうふうにトーンが落ちると大学における人権教育についてさらに危惧しなければならぬというふうに思うのですが、この問題について文部省はどういうふうに認識していらっしゃいますか。
  23. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 大学における人権教育につきましては、大学という機関の性格上、各大学の自主的な判断を前提としながらこれを進めておるところでございます。  御指摘にございますように、人権教育における国連十年に関する国内行動計画では、「各大学における人権に関する教育・啓発活動について、一層の取組に配慮する。」とされているところでございますが、今回の人権擁護推進審議会答申においては「人権に関する教育の一層の充実に配慮する」とされているところでございます。  したがいまして、この両者は、人権教育についての一層の取り組みを求めている点で変わるところはないと文部省としては考えておるところでございまして、文部省といたしましては、今後とも各大学における適切な対応を求めてまいりたいと考えておるところでございます。  現在におきましても、従来から各種会議等の場を通じて、憲法、教育基本法の精神にのっとり、同和対策審議会答申や地域改善対策協議会意見具申の趣旨を踏まえた、同和問題を初めとする人権問題についての一層の理解と適切な対応を求めてきたところでございます。今回の答申も踏まえ、引き続き一層の努力を重ねてまいりたいと考えているところでございます。
  24. 山元勉

    山元委員 大学教育を受けた人たちが、例えば地球環境についての理念をしっかり持っている、あるいは人権についてしっかりした理念を持っているということが大事なのだろうというふうに思います。そういう講座のない大学がたしか前にあって問題になったのだというふうに記憶をしていますから、今局長お答えになりましたように、変わることはない、適切に求めていきたいということでぜひ進めていただきたいというふうに、これはお願いを申し上げておきたいと思います。  最後に、国連の子ども権利委員会が九八年に日本の権利問題についての指摘を総括所見という形でいたしましたけれども、その中でこういう触れ方がしてあるのです。日本国に対して、「条約第二十九条に従って、人権教育を系統だったやり方で学校カリキュラムに含めるために適切な措置をとるよう勧告する。」こういう勧告が出ているわけです。これをどういうふうに受けとめるか。  今度の答申の中で、いろいろと今の現状についての指摘が、たしか九項目だったと思いますが、ございました。その中に「学校教育」があるわけですけれども、一体、この答申とあわせてこの権利委員会の勧告をどう実現していこう、あるいはどう受けとめて措置をしていこうというふうに考えていらっしゃるのか、お伺いしたいというふうに思います。
  25. 御手洗康

    御手洗政府委員 御指摘のような国連子ども権利委員会からの勧告もあるわけでございますけれども我が国におきます小中高等学校におきます人権教育につきましては、従来より日本国憲法及び教育基本法の精神にのっとって、具体的には道徳、これを中心にしながら、小中学校社会科あるいは高等学校の公民科、それぞれの学習活動の場面におきまして、発達段階に即して系統的に実施してきているところでございます。  今回の学習指導要領の改訂におきましては、特に小中高等学校を通じまして、総則に、すべての学校教育課程全体を通じた人権教育、人権に配慮した教育を一層推進するという観点から、人間尊重の精神を具体的な生活の中で生かすことというような規定を置きまして、さらに、社会科あるいは道徳等につきましてもそれぞれ具体的な記述を追加いたしまして、人権の幅広い側面からの学習ができるように、また実際にボランティア活動や体験的な活動を通じて行う、実際に行動として身につけることができるように、そういった学習に十分配慮しているところでございます。
  26. 山元勉

    山元委員 この勧告が出されたとき、去年の六月ですけれども、なかなか公式の訳文が出されなかったのです。さっと受けとめて、さっと対応するというのがいかにもできていないという思いがあの当時ありました。日本政府は、あの勧告を本当にまじめに真剣に受けとめて対応しなければならぬという姿が見えないで、今の新しい指導要領がずっとつくられていって、もう既に出されているわけです。  私は、今局長はそういうことについては配慮をしているとおっしゃるけれども、その勧告を十分受けとめて対応していないというふうに思いますし、少なくとも不十分だと思いますし、そして新たに答申が出された段階で、本当に、大臣もおっしゃるように学校でも地域でも家庭でもというふうに考えると、学校カリキュラムにしっかりと位置づけていくという努力は、新しい指導要領は出たけれども、今後ともそれは文部行政の中でできるわけですから、積極的に学校カリキュラムにきちっと位置づけるための努力を続けていく、一層今しなければならぬのだということを決意してほしいというか、考えてほしいと思うのですが、そのことは一言どうですか。
  27. 御手洗康

    御手洗政府委員 先ほどもお答え申し上げましたけれども、新しい学習指導要領、さまざまな面で工夫をさせていただいているところでございます。二十一世紀国際社会の中に生きていくという観点からも、しっかりとした基本的な人権感覚を身につけた子供たちが育っていく、非常に重要なことでございますので、各学校におきまして積極的な取り組みが行われますよう、文部省としても十分努力をしてまいりたいと思います。
  28. 山元勉

    山元委員 よろしくお願いしたいと思います。  それでは、法務省お見えいただいていますね。法務省に、少しこの答申に関しての質問をさせていただこうと思っています。  いわゆるパブリックコメントという手続が今度とられました。しかし、一口で言って、各界から、極めて不十分なやり方であった、あるいは処理の仕方であったという批判が出ているわけです。閣議でこの三月に決定をされたパブリックコメント、きのう別の会議で法務省の人に聞きましたけれども、あれに基づいてやったのと違うというような言いわけはありましたけれども、私は、国民としては、パブリックコメントという制度で、二十九日間ですか、意見を出してくださいと言った限りにおいては、最大の努力で、閣議決定の精神あるいはその立場に立ってやるべきだというふうに思いますけれども、まず最初に、どういう方法でやられた、どういう結果であったということについてお尋ねします。
  29. 横山匡輝

    ○横山政府委員 人権擁護推進審議会におきましては、六月十八日の第二十七回会議におきまして答申案を決定、公表し、答申案に対する各方面からの意見を募集することとしました。意見は、公表した六月十八日から七月十六日までの約一カ月間、実質二十九日間にわたりまして、郵送、ファクス、電子メールにより受け付けております。その結果、七月十六日までに寄せられた文書は約一万八千通に上ったところであります。  意見の内訳としましては、国の責務を明確にすべきといった実施主体等の責務に関する意見、人権教育・啓発は政府全体で取り組むべきであるといった推進体制の整備に関する意見、行財政措置を具体的に盛り込むべきといった人権教育・啓発に関する行財政措置に関する意見、それから人権教育・啓発に関する法的措置を盛り込むべきであるといった法的措置に関する意見等が多く寄せられております。そのほか、人権及び人権教育・啓発の現状に関する意見、人権教育・啓発のあり方や施策に関する意見などが寄せられたところでございます。
  30. 山元勉

    山元委員 時間がありませんから、いずれそれぞれの場でこのパブリックコメントのあり方については論議されるだろうと思いますが、私は、前の男女共同参画法のときのパブリックコメントと今度のを比べてみて、期間からいっても非常にお粗末な仕方がしてあって、これが一つのモデルになっていく、先例になっていくということは大変心配をしなきゃならぬというふうに思っています。  例えば、今ありましたけれども、公表の方法でも、ホームページあるいは窓口や新聞、広報誌、官報、報道、いろいろあるわけですね。私は、そういう努力は極めて不足していて、国民ほとんどが知らないうちに事が運ばれていったという感じがまず一つしますし、そして、今もありましたようにまとまって一万八千通余りあった、そして法的措置を求めるということが一番多かった。こういう結果についてどう対応したのか。  例えば、終わって、七月十六日に締め切った。七月二十九日には最終答申をした。たったの十三日間。一万八千通が来て、そしてたったの十三日間で最終答申が出ているわけですね。私は、一生懸命になって意見を言った国民の皆さんに対して、やはりこれはあってはならない処理の仕方だというふうに思うのです。  時間がありませんから、そこのところを指摘しておきたいと思いますし、一つお尋ねをしたいのですが、この閣議決定のときには、提出された国民の意見、情報を考慮して意思決定を行うとともに、これに対する当該行政機関の考え方を取りまとめ、提出された意見、情報とあわせて公表する、こう書いてある。  この法的措置、財政措置についていろいろの意見がある。当該行政機関、例えば文部省に、こういう意見が来ていますがどうですか、そういうことをお尋ねをして、文部省がこういう意見を出した、これについてはこういうぐあいに考えますと。それぞれの行政機関に対応してこの最終答申がまとめられたのかどうか。どんと積まれて、これだけ来ましたよ、主にこんなことが多いですというだけでは、これは国民の皆さんを本当に軽んじたことになると思うのですが、いかがですか。     〔委員長退席、栗原(裕)委員長代理着席〕
  31. 横山匡輝

    ○横山政府委員 七月二十一日に開催されました審議会におきましては、ここにそれまで寄せられました意見を全部取りまとめたものを提出いたしまして、その審議におきまして、答申案に対して寄せられた意見で指摘されていることは、そのほとんどがそれまでの会議で既に十分検討された事柄であり、特に議論すべき重要な論点が抜け落ちていた、あるいは議論の視点が間違っていたというふうなことはなかったと整理されたところと承知しております。  同日の審議会におきましては、これらの意見を踏まえた上で審議がなされ、それまでの審議会の認識を再確認し、答申の取りまとめがなされたものと承知しております。  ただ、今回の意見募集の手続に関しましては、ただいま委員が御指摘されましたような御批判があることは承知しております。今後の審議会の運営におきましては、このような御批判のある点も含めまして、今回の意見募集の経験が生かされていくのではないかと考えているところでございます。
  32. 山元勉

    山元委員 会長の記者会見でのコメントもそういうことが書いてあるわけです。法的措置が必要だということが多かった、そのことは十分踏まえて論議をしてきたんだから、こういうことなんですね。けれども、その答申案を見て、国民の皆さんが、なお足りませんよ、こうしてくださいよという意見を出したのと違いますか。いや、そんなことよくわかっていました、それじゃ答えにならぬです。これだったら皆さんに聞く必要はないわけです。  私たちは、法的措置について必要だということは審議会設置されたときからいろいろ意見があった、だからそのことは論議をしてきた、その答申をまとめたんですといって国民の皆さんに言うたら、どっと来た。それは初めからわかっていましただけじゃ答えにならぬでしょうが。ですから、私たちはそういうことを配慮しながら論議をして答申を出したけれども国民の皆さんからやはり――男女共同のときには、女性の皆さんがいろいろな思いを込めて、主に女性の皆さんが出したと思うのです。この場合は、今まで痛い思いをしてきた、差別について苦しんできた、あるいはそのことについて努力をしてきた人がいろいろのコメントをしたんだろうというふうに思う。そうしたら、改めてそれは真摯に受けとめる態度がなかったらいかぬだろう。締め切って、あっという間の十三日だと思うのですよ、一万八千通処理する、あるいは各省の意見を聞くということは。  だから、そういうパブリックコメントのあり方ということについては、今局長、批判を含めてこれから経験を生かしていきたい、こうおっしゃいます。ですから、ぜひ、これは閣議決定しているわけですから、政府が思っているパブリックコメントのやり方というのは、私らからいうとこういうものではなかった、法務省にしてみれば、反省して、これは不十分であったという経験を生かしてもらいたい、まさに局長が言うように批判を生かしてもらいたい、こういうことを要望して、質問を終わります。ありがとうございました。
  33. 栗原裕康

    ○栗原(裕)委員長代理 次に、中山義活君。
  34. 中山義活

    ○中山(義)委員 民主党の中山義活でございます。  私、前回の文教委員会の帰りに、文部大臣が階段を元気におりておりましたので、あっスポーツ心があるなと。  こういうスポーツをする気持ち、またスポーツをやろうという意欲というのはどこから来るのか。文部省考えている生涯教育の中で、六十五から八十がバラ色の、人生の一番いい時期だ、こういうような生涯学習をしていただかないと、子供たちが一生懸命勉強して、行く先が、介護をされてベッドの上に寝ている、こういう状況では子供たちは将来に希望がなくなるわけですね。そういう面では、スポーツとか健康とかというのは生涯教育の中の極めて重要な部分を占めるのですね。  しかし、スポーツというのは、六十五歳から新しいスポーツを始めるという人は余りいないのですね。やはり若いうちにスポーツをやる。そのきっかけは、テレビで有名選手のスポーツを見てあこがれる。ちょうど大臣の年齢であれば、戦後、一番日本人が自信をなくしたときに、古橋とか橋爪とかが世界記録を出して、これで、日本人もやるわい、そういうことで、日本人の気持ちも高揚して、経済的にも文化的にも大きくなった、このように思うのですね。それから、プロレスなんかでいえば力道山であるとか、こういうスポーツの選手が世の中に与えた影響というのは極めてでかいのですね。  今でも、阪神が優勝すれば経済波及効果はこのくらいあるとか、巨人軍が優勝すればこのくらい経済波及効果があるんだという、ある意味では国をスポーツというものが引っ張っていったり、または東京オリンピックなんかでも、ああいうオリンピックの感動というものによって、日本人というのは、改めてスポーツにあこがれを持ったり、日本の国というのは大したものだぞ、世界に存在感があるぞ、こう思うわけなんですね。  そういう面では、スポーツというのは、特にそういう有名な、シンボリックなスーパーマンをつくることによって逆にすそ野は広がっていくのですね。よく、すそ野を広げていくといい選手ができると言いますが、逆なんですね。シンボリックな人が何人かいて今こういう日本のスポーツのあれがあるのですが、実は、お寒いことに、毎回毎回オリンピックで金メダルの数が減っていっているのですね。これはやはり日本人としても恥ずかしいし、やはり日の丸を上げて君が代を高らかに歌う、そういうオリンピックでなければいけない、私はそう思うのです。  そういう面で、大臣、オリンピックつまり世界で活躍できる日本人をスポーツの世界でもっとつくってもらいたい。お金だけじゃなくて、いろいろな意味でそういう意欲をもっと文部省が示してくれないと、なかなか選手は育っていかない。これは、お金の面も名誉の面もそうですが、そういう面での大臣の見識を聞きたい、こういうように思うのですが、よろしくお願いします。
  35. 有馬朗人

    有馬国務大臣 先生指摘のとおり、私の若いころに古橋さん、橋爪さんが大いに頑張られた。それからもう一つ、湯川先生がノーベル賞をとられた、これが私どもの世代に決定的な影響を与えたということを申し上げておきたいと思います。  そういう意味で、オリンピックで、参加した方たちが、特に日本人たちが大いに活躍してくれることはありがたいと思っておりますが、オリンピック競技大会における我が国のメダル獲得数というのをつくづく見てみましたけれども、昨年行われました長野オリンピックにおける活躍はありました、しかし、主要各国と比較した場合、御指摘のとおり近年減少してきているということは、私、大変残念なことだと思っております。このことは、日本の国際競争力、あるいは国際競技力といった方がこの場合正しいでしょう、国際競技力の向上に比しまして、ほかの国の国際競技力の向上が非常に著しいというわけでございまして、残念ながら日本の国際競技力は長期的、相対的に低下傾向にあると思われます。  日本の国際競技力がこのような現状にあることは大変残念でございます。そして、我が国の選手が他国の選手に伍して活躍することが、特に若者、青少年に対して夢と希望を与え、スポーツの振興につながるということにかんがみまして、競技スポーツの一層の振興に今後とも努めてまいりたいと思いますし、もう一つ、やはり若者全体の体力というものを、単に体が大きくなった、背が伸びただけじゃなくて、体力を伸ばすことが極めて重要であると考えております。
  36. 中山義活

    ○中山(義)委員 実は、やはり競技スポーツの中には、本当に体を健康にしたらこのように成績が上がってくる、体をもっと効率よく使ったらこうなる、非常に競技スポーツの中には科学があるのですね、医学があるのですね。つまり、例えば歩くにしても、大臣の場合に、脈拍計をつけまして大体百十から百二十ぐらいの脈拍数で三十分間歩きますと、内臓の脂肪はもっとなくなってくる、血糖値は落ちる、ガンマGTPは落ちる、中性脂肪、コレステロール、みんな落ちるわけですね。そういう面で、やはり競技の中にいろいろな科学があるのですね。それが一般の病気にも活用ができるとか、人間の限界を突きとめるということは科学的に極めて意味のあることなんです。医学的にも意味のあることなんです。  そういう面で、競技に勝つということは、その国の文化性が高い、いろいろな意味での背景がある、こういうことでございまして、陸上競技でも何でも、日本が予選も通らない、そういうようなことであれば、ああ日本人は経済のことは一生懸命やっても文化的には低いんだな、こういうふうに見られる可能性もあるわけですよ。昔はよく、日本は、経済は一流だけれども政治が何流で、文化はもっとひどい、五流だ、六流だ、こう言われた時期があるわけですね。そういう面でも、もうちょっとスポーツに対する力の入れ方、例えば具体的に示しますと、今まで共産主義国の中ではよくスポーツマスターとかいろいろな制度がありましたね。それと同じように、日本でも何か、そういう意味合いでの名誉ある称号でありますとか、そういうこともこれから考えていかなければいけないと思うのですね。  私は、単にお金だけじゃないと思うのです。ただ、日本余りにも、金メダルをとっても三百万円ぐらいだとか、ゼロが間違いなく一つ少ないですよ。あれだけ一生懸命自分の人生をかけて、一番若くて頭が柔らかくて体がきく、全部スポーツにかけているわけですから。それで三十になったらお払い箱では、スポーツ選手もちょっと気の毒だと思うのですね。  特に、プロのないスポーツがありますね。野球とかお相撲とか、プロのあるものはまだ将来プロに移るということができますが、器械体操であるとか水泳であるとか、陸上であるとか、若干プロもあるようですけれども、こういうスポーツは本当に自分の青春をかけてやってくれているわけですね。それで金メダルをとれば、その日だけでも日本人は何か世界で優秀な民族であるような気もするし、あの日の丸が上がることによって爽快な気分になって、まあ君が代をすぐその日からみんなが歌うかどうかはわかりませんけれども、やはり国というものを相当意識すると思うんですね。  そういう面で、私は、オリンピックのゲームというのは非常に大切にとらえていかなければいけないと思うんですが、その助成の仕方が、具体的に言いますと、お金は、とにかくアマチュアの選手は金メダルをとってもそれが少ない、名誉がない、その辺があるんですが、その辺について、今後のお考えがあったらお示しをいただきたいと思うんです。
  37. 遠藤昭雄

    ○遠藤(昭)政府委員 お答えいたします。  今の御質問でございますが、御指摘のとおりに、オリンピックで三位までに入りますと、JOCの方で三百万、二百万、百万というふうなお金を出しております。また、各競技団体ごとに一定の額を出すというところもあるわけでございます。それは各団体の方でいろいろ御努力をされてやっておるわけですが、私どもとしては、そういった方たち文部大臣表彰という形で、オリンピックだけじゃございません、アジアの大会で優勝された方とか、できるだけ幅広くそういった方たちに表彰をさせていただくということもしております。  もう一つ、そういった当面の話のほかに、もっと大事なことは、そういう一流の選手が一定の時期を過ぎたときに、その方たちが今後どうやってスポーツ界で活躍をしていくか、つまり指導者として活躍をしていただく、そういう道を我々としてもいろいろ考えて今後対応をしていくということが大変大事ではないか、この点についてもこれからさらに検討を深めて充実をしていきたいというふうに考えております。
  38. 中山義活

    ○中山(義)委員 今のは、要するに金メダルをとった、そういう一つの大きな目標に向かって、多くの人がそれに向かって努力をするように、やはりそれなりの、文部大臣が直接労をねぎらうとかいろいろなことによって、その人たちがみんな目標に向かって頑張っていく、どんなつらいことも乗り越えて頑張ろうということが一つだと思うんです。  もう一つは、やはり具体的に、その選手をコーチする側または選手、こういう人たちがどうやったら技術向上をしていくんだろうか、こういう視点は非常に大切なことでございまして、例えば蔦監督が率いた池田高校は、ある時期、すごく山の中で練習をやっていましたので、いざとなると選手が上がってしまうと。そこで、選手が強くなる方法は一番いいのは対外試合だというのですね。高校野球ですから、いろいろスタッフを連れていくと二十人ぐらいでしょう。これが東北のあの東北高校と試合をさせてなれさせようとなりますと、一回遠征しただけで百万ぐらいかかるわけですね。高校野球の中でも一番強くなる方法はやはり試合しかないとあちこちで対外試合をさせる。この一回の試合で百万も二百万もかかるので、これを応援するその地域の皆さんが、学校のPTAとかそういう人たちが寄附をしてやっている、これが現状なんですね。  それから、私は器械体操をずっとやっておりまして、私の友人というのが月面宙返りのあの塚原光男。この人なんかは、自分の息子が今オリンピックのA指定になっているんです。これはA指定でいろいろ文部省からも御尽力をいただいているんです。それでも子供を連れてヨーロッパへ行っていろいろな試合に出させることが一番競技の力がつくんですね。よく根性だとか、精神的に強くなれって、こう言うんだけれども、実際は、その精神力を強くするにはやはり体験とか経験をふやすことが一番早いわけですね。  私ら、こうやってここでしゃべっていますけれども、政治家の人はよく人前でもそんなに上がらないでしゃべれる。これはもう回数ですよ。二十三年私も政治家をやっていますから、人前でしゃべるということは、これは経験とか回数でなれてくる。  だから、スポーツでも、金メダルをとるような人はやはりその回数が多くなければ競技力が上がってこないというのが現実なんです。ところが、日本に相手がいなかったら、ヨーロッパとかアメリカへ行く以外にないんですね。相手がいないんです、強い選手が。そういう選手と戦ってみるということが大事なんで、そういう面には大変お金が要るわけでございますけれども、今後シドニー・オリンピックが近くなりまして、この景気の悪いときに日本人に元気をつける、これはスポーツでやるのが一番いいと思うんですね。  先ほど大臣もおっしゃいました、古橋だとか世界記録を出して日本国民は盛り上がったと。我々でも野球をやったのは、やはり川上の赤バット、大下の青バットですよ。それで我々も野球をやろうと。随分古い話になりますが、私ももう五十四ですから。その後はやはり王、長嶋。そういう有名選手に触発されてスポーツをやっていることは間違いないんです。これは本当に間違いないんです。私ども、いろいろな方に聞いてみても、スポーツをなぜやったか。これは、見るスポーツ、いわゆるテレビでスポーツというものが見るスポーツとしても盛んになってきた。だから、こういうような媒体によって子供たちが触発されていく。  そういう面ではどうしても強い選手を、もうあと一年ちょっとしかないので、今、コーチにどのくらい、選手にどのくらいというのがあるんですが、何かこれをオリンピックの一年前だからということで、ぜひ特別に強力に支援するような方式をちょっと考えていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  39. 遠藤昭雄

    ○遠藤(昭)政府委員 お答えいたします。  海外に強化練習のために行くとか、あるいは国内でトップレベルの選手たちがそういう合宿をするということをやっておられますが、先生がおっしゃるように大変お金のかかることでございまして、各競技団体も苦労しておるわけです。それに対しましては、JOCの方は、トップ選手、日本代表を編成するような場合につきましては、国内それから海外に対して国の補助金も入れまして手当てをしているという状況でございます。それから、選手個人にとりましても、日常からそういう活動は個人としても当然やっているわけで、それにもやはり金がかかる。一人一人大変工面をしてやっているという面があるわけでございまして、それに対しましても、今先生おっしゃいましたように、Aから幾つかの段階に分けて日常のスポーツ活動に対しても助成をしておるということでございます。  これは今、JOCとかあるいは基金というものを通しましてそういったものを整合性のある形で助成をするようにしておりまして、特に日常活動の方については三百名近くの選手の方にそういったことは現在行っております。本当はもっともっと拡充をしたいんですけれども、基金の方は、こういう利息の時代ですのでなかなか思うに任せないのですが、できるだけ重点的に効果的に対応をしていきたいというふうに思っております。  それから、シドニー・オリンピック、もう間近に迫ったわけでございますので、この点につきましては、スポーツ振興基金の方でも、例えばA指定でいいますと、現在は個人が十五万、チームが七万五千円でございますが、この十一月の十日から三月までの半年間につきましては、シドニー・オリンピック対策として、個人二十万、チーム十万というふうに、多少でございますが、引き上げさせていただきまして、少しでも頑張っていただきたいということで対応をいたしておるところでございます。
  40. 中山義活

    ○中山(義)委員 徐々にコーチと選手に、要するに現場の方に直接お金が行くようなシステムを構築していただいたので、選手やコーチも非常にありがたがっているんですね。一時はどうも、JOCからいろいろな団体にお金が行くので、間にどこかを経由しますと、もう戦後五十四年もたちますとどの組織も古くなっておりまして、どうも動脈がつっかえていて、お金を入れてもどこかへつっかえちゃって選手まで行かないというようなこともたくさんあるやに聞いておりまして、そういう面で、私どもは、直接選手にお金が行く、直接コーチに行く、これは大切なシステムだと思うんですね。  それからもう一つは、有森さんが裁判で起こした肖像権の問題、これもある意味では人権にかかわる問題ですよ。個人の肖像権なのに団体が押さえちゃって、自分のところに逆らえば自分の団体の主催する競技会に出られないよと。つまり、オリンピックの最終予選なんというのは、例えば陸上競技のその団体がやるわけですね。体操でもそうですよ。だから、その団体が押さえてその八十何%を取っちゃう、選手にはほとんどお金が行かない。  こういうようなことも、これからやはり大きく日本の選手が――自分の力でかち得た名誉、また自分の力でつくったその技術、これは大変だと思うのですよ。あのウルトラCのわざというのは本当に、実際鉄棒を近くで見た人は感動しますよ。今までは二回宙返りをやっておりたのだけれども、二回宙返りをやってまた鉄棒を持つのですから。これはウルトラCですね。自社さきがけ政権がウルトラCとすれば、自自公はウルトラEといいますか、そういうふうにどんどんわざは年々進展していくので、新しいものを開発していくということは大変な努力でございまして、そういう面でも、私どもは、個人の肖像権とか個人が将来どういう生活をするかまである程度考えてあげなければいけない。  ですから、私は、オリンピックの選手がすごく有意義な人生を送ったのですから、それをどんどんいろいろなところで講演させるとか、その講演をあっせんしてあげるとか、成人式なんかによくオリンピック選手を、その地域の教育委員会が講演させていますよ。やはり有名な選手が来ると、あれだけわいわい騒いでいた二十の子たちがぱっと静かになりますね。そして、話を聞いています。それはやはり貴重な人生体験を、自分の体験を通して話をするから感動するわけですね。そういう面でも、今言った肖像権の問題であるとか将来の問題についてももうちょっと文部省で配慮をしていただきたい、このように思うのですが、いかがでしょうか。
  41. 遠藤昭雄

    ○遠藤(昭)政府委員 今の肖像権のお話でございますが、これは現在アマチュアスポーツにおきましては、既に、加盟団体の優秀選手による広告宣伝活動収入というものをJOCにおいて一括して取り扱う、それで選手の所属する競技団体に対して選手強化資金として配分するというシステムが採用されておるわけでございます。  お話ございました有森選手につきましては、これは、今回JOCの方で例外措置として対応をしたというふうに聞いております。ここら辺の点も将来的にいろいろな問題があると思いますので、JOCの方でも、こういったことを一つの例として、今後さまざまな観点からまた検討していくのではないかというふうに思っております。  それから、先ほどもお答えしたこととダブるかもしれませんが、一流選手として活躍してその後どうするかということについては、先ほど申し上げましたスポーツ振興基金、この中でも、例えば一流選手の時期を過ぎて自分はもう一度勉強したいというふうな方には、それに対して一定の経費を出すということも可能になっております。  ただ、それが基金の利息の関係でどれだけ充当できるかという問題はありますが、できるだけそういった方たちにも、その後の人生をどう送るかということは十分視野に入れて対応していかなければいけないし、それから、留学だけじゃなくて、今度は指導者としてやっていく、そのためには、例えば在外研修制度というのもありまして、近くまた六、七人が出かけることになっておりますが、そういった形で、海外で今度は指導者としての勉強を十分していただいて、国内へ帰ってまた違う観点から活躍をしていただくというふうなことも考えておりまして、そういったことも総合的にやって、そういう一流選手として活躍した人たちがその後もいろいろな場面でスポーツのために貢献できるような、そういう方策を今後とも考えていきたいと思っております。     〔栗原(裕)委員長代理退席、委員長着席〕
  42. 中山義活

    ○中山(義)委員 とにかく、選手は国の財産だと思ってくださいよ。あのザトペックだって、それからチャスラフスカだって、チェコでいろいろな問題が起きました。ソ連からまた侵攻されて、戦車でじゅうりんされた。しかし、名前が出てくるのはスポーツ選手だったのですよ。ザトペックとかそれからチャスラフスカとか、あの人はどこへ行ったのだろうとか。そういう意味合いでは、やはりスポーツの選手というのは相当大きな国の財産だと思わなければいけないですね。アメリカなんかだって、大統領とジャック・ニクラウスが一緒にゴルフをやったり、そういうレベルですよ。だから、日本のスポーツ選手も、これからはしっかり外国語ができて、日本の財産として外交のことにも一生懸命やってもらう。民間外交としてもスポーツ選手を使うということは極めて大きなことだと思うのですね。  そういう面では、有名な選手、そういう人たちが国の財産であるというような視点を持っていただきたいと思います。これは文部大臣、本当にシドニーに向かって、そういう選手が日本の貴重な、元気を保つ源だというふうに考えてもらって、この不景気の中でもスポーツ選手が頑張ることによって、頑張れ日本日本は元気だというところを世界各国に見せて、日の丸をばんばん上げてくださいよ。せっかく法案を通そうという意欲で今やっているわけだから、日の丸君が代をばんばん出すように頑張ってくださいよ。お願いします。  それから、いろいろ補助金を出すときに、どうも最近、新聞を読むと不正が起きているということが一つ心配なんです。これは、これからサッカーくじを活用するときに、サッカーくじというのはもともと、何か教育関係の官庁が胴元になるなんというのは私らちょっと嫌なことだなと思っておりまして、根っから賛成はしていなかったのですが、やはり何といってもお金がなければいい選手を強化できないというようなこともありますし、サッカーくじによってすばらしいスポーツ事業ができれば、それはそれとしてあのサッカーくじはすばらしかった、こう思えるのですが、いわゆる何とかセンターという団体が天下りの対象であったり、または何か変なことをやれば、このサッカーくじというのは根本から崩れる可能性がある。  この間、JOC加盟の競技団体が虚偽の報告をしてお金をもらったとか、こういうことがありましたね。こういうことがあると、サッカーくじの意味がなくなっちゃうのです。せっかく教育官庁がサッカーくじをやるのだったら、これは厳正にやって、本当に日本の財産になるようなスポーツ選手を育てるのだ。これは純粋な目的に向かってやっていってもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  43. 遠藤昭雄

    ○遠藤(昭)政府委員 お答えいたします。  御指摘のJOCの補助金それから体育・学校健康センタースポーツ振興基金の助成と、今二通りルートがございまして、JOCの補助金の方には国の方から補助金を出しております。それが団体に委託をされるというルートがあるわけでございます。これは、対象はちゃんと分けてありまして、JOCの方は、日本の選手団の編成、そういった選手たちのセレクトなり練習というために補助金を出しております。センターの方は、それに対して各競技団体の競技水準の向上のためにやる事業に対して助成をするというふうに対象を分けてございます。  残念なことながら、今回、会計検査院からの指摘もございまして、現在それぞれの機関で調査をしておりますが、一部これが重複しているという結果が出ております。つまり、税金を二重取りしている部分があるという結果が出ておりまして、私ども、さらに調査をしたいと思いますが、これに対しては厳正に対応していきたい、こういったことが二度と起こらないように必要な見直しをきちんとしていきたいというふうに今のところ考えております。  それで、今、スポーツ振興投票制度は金融機関の選定段階に入っておりまして、八月中に決めたいと思っておりますが、これが決まりますとエンジン部分ができるわけでございますので、いよいよ具体的に進んでいくということになろうかと思います。決まりましてからさらに情報システムのシステムアップとかに一年半ぐらいかかりますので、売り出すのはもっと先になるわけでございます。  これも当然、生涯スポーツとか競技スポーツに助成をさせていただくことになるわけですが、出すまでの間に、今申しました基金の問題、補助金の問題、それから新たなくじからの助成ということにつきましては、今回のようなことが二度と起こらないように十分議論をしていただいて、きっちりと区分けをして、また手順的にもそういう問題がチェックできるような、そういうシステムを今後十分に考えて、それらの資金というものが有効かつ効率的に使用していただけるように十分考えていきたいというふうに思っております。
  44. 中山義活

    ○中山(義)委員 どちらにしても、結果的には教育官庁がギャンブルの胴元みたくなってしまうわけですから、ですから、しっかりこれはやってもらいませんと、このようにいろいろな不正が出てくると非常に心配だ。お金が今度あり余ってきて、それがずさんに行くようじゃしようがないと思うんですね。  さっきからお話ししているように、オリンピック選手は日本の財産だ、このように思っていただいて、これをもっともっと外交であるとかまたは人間の文化につなげていかなきゃいけないんですね。  もう一つ地方分権との絡みで、おらが町の大選手だ、こういう選手も、地域でそういう者に報奨金を出すとか、いろいろな方法論があると思うんですね。今の日本の国のシステムでは、なかなか地域からいい選手が育ってこないんです。  そのような意味合いも含めまして、どうしても、スポーツの選手をしっかりつくって、本当に、不景気のところでスポーツによって日本人が元気になる。とにかく、スポーツ、文化、こういうもので一流にならなければ、日本の国は、いつまでたったって世界で、日本という国は経済だけだということになってしまうと思うんですね。スポーツと文化によってエコノミックアニマルという名前はもう地球から消えますから、しっかり文部大臣に最後に意欲を示していただいて、金メダルを二十個ぐらいとらせる、このぐらいの意欲を言っていただいて私の質問を終わりたいと思いますので、よろしくお願いします。
  45. 有馬朗人

    有馬国務大臣 大いにスポーツ選手を育てて金メダルをたくさんとる。もう一つ、私は、ノーベル賞をもっとたくさんとるような文化国家もつくりたいと思っています。よろしく。
  46. 中山義活

    ○中山(義)委員 最後になりますが、速く駆けっこができる、これと、算数がすごく優秀だ、または英語が優秀だ、これは全く同じ次元だというふうに考えていただかないと、速く走る子は、あれはただ生まれつき足が速いんだ、だけれども、英語のできる子、算数のできる子は一生懸命勉強をやったと褒めるんじゃ、これはよくない。駆けっこも算数も全く同じレベルで考えていただきたい、このように思う次第です。
  47. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私も小学校のときには百メートルの選手でございまして、決して算数ができるということで人気があったわけじゃなくて、一番学校で速い人間ということで人気がございましたので、よくわかっております。
  48. 中山義活

    ○中山(義)委員 どうもありがとうございました。
  49. 小川元

    小川委員長 次に、赤羽一嘉君。
  50. 赤羽一嘉

    赤羽委員 おはようございます。公明党・改革クラブの赤羽一嘉でございます。  きょうは、私、衆議院議員六年間務めさせていただいておりますが、文教委員会での質問は初めてでございます。この機会をとらえまして、私実は神戸市の選出議員でありまして、あの阪神・淡路大震災そしてあの神戸市の少年による連続児童殺傷事件という、まさに、地元では二つの大震災をどう乗り越えるかという中での兵庫県が発信している教育のあり方を、大臣よく御承知のことだと思いますが、ここで御紹介させていただき、有意義な結果を出したいというふうに思いまして、十五分でございますが、立たせていただきたいと思います。  この質問に当たって、文教委員会の議事録を過去から読ませていただいて、非常にそうだなと思った有馬国務大臣の御答弁、ある議員さんが、大臣の目指している教育、その究極の目的というのは何なのかという御質問に対して、大臣は、  心の教育というようなことをこのごろ申しておりますが、その一つ手前で、まず、生きる力ということを養成すべきだと思っております。   生きる力というのは、たびたび申し上げておりますように、自分課題を見つけ、自分で学び、自分で解決していくというふうな力、これが知、徳、体の知に対応するものだと思います。勉強するだけではなくて、それをみずからの血や肉にして、そしてどんどん問題を解決していく力。 これが大事なんだ、こういう御指摘でございまして、この大臣の御見識と、兵庫県が今やろうとしている、試みをしていることというのはまさに同じ思いに立った試みなんだなというふうに思っております。  そこで、生きる力をどうつけるか、心の問題をどう解決していくか。言うのは簡単ですが、実際どのようにしていくことが本当に今の子供たち生徒さんたちに生きる力というものをはぐくむのかということが大切なんだと思います。兵庫県でやっております、まさに体験学習、これはもう御承知のことだと思いますが、ことし二年目になりますが、大変な成果をおさめておりますので、ぜひこの点、もう一度ここで御紹介をさせていただきたいと思います。  そもそも阪神・淡路大震災では、まさに、言葉で、ここで私が言い尽くせないぐらいの多くのものを失いました。いまだに各学校では心のケアという問題を残しながら大変な状況が続いておるわけでございます。  ただ、その中でも、国内外から寄せられた数多くの御支援またボランティア活動の数々の中で、まさに人と人を結ぶきずなの強さや心の温かさ、そしてともに生きることのすばらしさを、被災者の私たちが実感をしながら教訓として得たわけでございます。そして同時に、あの震災という未曾有の災害を経験したことによって、生命の尊厳とか自然への畏敬の念、また救護活動なんかを通して思いやり、助け合いの大切さを教訓として学び、そしてこの教訓を生かしながら生きる力をはぐくむ教育を進めようというのが兵庫県の教育委員会の発想だったと思います。  そういうことでやっていたやさきに、あの神戸市の少年の連続児童殺傷事件が起こって、大変な中で、どうこの二つの事件を乗り越えていくかということでいろいろなことをやりました。  兵庫県では心の教育緊急会議というのを設置して、いろいろな専門家に来ていただいて提言をいただいた。その中で、これからの心の教育は、従来のように結論を教え込むのではなくて、活動や体験を通して子供たち一人一人が自分なりに生き方を見つけるよう支援していく。つまり、これまでの教えるということ中心の教育から、はぐくむというふうなところに重点を置いた教育をしていく必要があるということでありました。  兵庫県下、平成年度までは、国の補助金も出ておりました、自然体験を中心とした自然学校を小学校五年生に五泊六日で実施してきましたが、昨年から、県下の全公立中学校二年生を対象に一週間、これは大臣も地元へ来ていただきましたが、地域に学ぶ中学生の体験活動週間のトライやる・ウィークというのを実施したわけでございます。このトライやる・ウィークというのは、とにかく子供たちに生きる力をはぐくむためには学校という決められた枠の中ではしょせん非常に無理がある、地域の教育力というものを利用すると言うと変ですが、そこを大いに活用していかなければいけないと。  実際問題としては、受け入れの問題とか、言うほど簡単ではなくて、ですが、やはり震災を経験した兵庫県民、我々すべて同じようにこういった教育の大切さというものを実感してきたがゆえに、県下三百三十五校、千五百十数クラスで五万五千人の中学生を受け入れるということを、兵庫県民、神戸市民がすべて協力したからこそできた試みだというふうに思っております。  指導のボランティアにも二万三千名を超える方たち協力をしましたし、私の後援会の副会長も材木屋をやっておりまして、そこに五人中学生を受け入れました。ただ材木屋さんの手伝いをさせているだけじゃ気の毒だということで、市にかけ合いまして、中学校の前のバス停、非常に寒々しいバス停ですが、それを工事をさせてくれと。歩道を掘り起こして木材を下に埋め込んで、いすも取っ払って丸太でいすをつくる、まさに木の町というイメージの出るようなものを一週間でつくりました。初日、私行ったんですが、非常に生命力のない中学生が、おはようございますと言うこともできないような子たちが、こんな寒い中で嫌だなと思っていた連中が、一週間後、完成の日に行ったら、物すごく目の輝きが違う。まさに、体験学習というのはすごいなと思ったし、でき上がったものも、つくる喜びというのを感じた。  そういった例は実はこの本にも、まとまった報告書が出ていますのでぜひまた大臣にもお読みいただきたいと思いますが、何十という代表例が出ておりますし、恐らくここに出てない例もたくさんあったというふうに思っております。     〔委員長退席、栗原(裕)委員長代理着席〕  そこで彼らはいろいろなことを言っているんです。私、結果として一番驚いたことは、二百七十七校の調査なんですが、千七百十九名不登校傾向の生徒さんがいた、その中で五三%の九百十四名がこのトライやる・ウィークに終日参加した、その結果、二週間以内に学校に戻ってきた子たちが約八割いた、年末までにちょっと減りましたけれども、三百十四名の不登校生徒がそれ以来不登校が直ったというのです。これは読売新聞の社説にも取り上げられておりましたが、まさに生きる力をはぐくむことのできた一つの実例として、やはり素直に、率直にこの試みはよかったと認めるべきだというふうに私は思っております。  生徒も、来年ももし機会があったらぜひやってみたいかといえば八六・七%がやってみたい、保護者も八八・三%の方たちが行かせてみたい、関係者も受け入れを協力してもいいというのは九三・一%、学校先生は七四・七%の人が教育として実効性があった、こういうふうに申し上げられているわけでありまして、まさに余り悪いことが目につかないような、いろいろなことがあったのでしょうけれども、結果としては非常にいいものが多かった。一週間のトライやるだけでは終わらずに、その期間が終わった後も、自分たちが行った幼稚園のクリスマス会に参加したりとか、地域の自治会の活動に参加するようになって、その地域自体も非常に活性化されてきたということがあったそうでございます。  まさに、受け入れながら地域自体もいいことがあった、生徒たちももちろん経験ができてよかった、学校先生もすごく勉強になった。学校先生は初めて名刺をつくって地域の人たちとあいさつをしに回ったとか、事業所を回っていい経験になったなんということで、本当に三者、まさにトライやる・ウィークのトライやるというのは、挑戦するトライアルということもありますが、トライアングル、三者のところからもきていますので、こういった点は、試みとしては非常に画期的なことがあると思うんです。  この点について私はそう評価をしておるんですが、大臣としてのこのトライやる・ウィークの試みの評価はいかがか、まずお聞かせいただきたいと思います。
  51. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私も、トライやる・ウィークに去年、自分が参画したわけではありませんけれども、参りまして、見せていただきました。大変感銘を受けました。  その際に、先生指摘のように、さまざまな点ですばらしい成果が生まれていると思いますが、まず第一は、御指摘のとおりの不登校児童生徒が随分戻ってきたということであります。それからもう一つ、体験をするということは極めて重要である。さまざまな体験をするということと、一見、道徳心とか正義心とは関係がないように思われがちでありますが、こういう体験をする、あるいは自然を見る、あるいは家事の手伝いをする、こういう社会体験などをした人々子供たちは非常に正義感があるということもはっきりしてまいりました。こういう点で、生きる力、そしてまた心の教育の上で、トライやる・ウィークのような試みは大変有意義であると思っております。  したがいまして、文部省といたしましても、通商産業省等々と協力いたしまして、より積極的に商店などで手伝いをするとか、そういう社会実習を小中学校、特に中学校児童生徒諸君が行えるように今計画をしているところでございます。
  52. 赤羽一嘉

    赤羽委員 文部省としてもバックアップしていただけるという大変心強い答弁だったと思いますが、私は、大臣のこれまでの御答弁でもありますが、教育はそれぞれ各地方で県の教育委員会が中心に、地域の実情に合わせてやっていくということが大事であって、余り国の中央でとやかく言うことがない方がいいともちろん思いますが、こういった試みが今のような非常に高い評価を得られるのであれば、これはぜひ全国の各都道府県に、こういった成功例があるんだということを、兵庫県もそれなりに発信をしておりますが、文部大臣の方からも全国への啓蒙をしていただくお考えはありますでしょうか。
  53. 有馬朗人

    有馬国務大臣 先ほどの御答弁で申し上げましたけれども文部省といたしまして、いろいろな体験学習を行った方がいいという認識のもとでさまざまな施策を試みているところでございます。先ほど申しましたように、通商産業省との協力のもとで、商店で少し働くというようなことを積極的にやっていく、あるいは農村地区に出かけていく、こういういろいろなことを今考えているところでございます。
  54. 赤羽一嘉

    赤羽委員 それで、これを実施するのは、多分二つの障害があると思うんです。  一つは財政的な、これは一クラス三十万円の補助金を出しておりまして、県が二十万円、市町村が十万円、こういった財政がなかなか整わないのでできないということがある。  もう一つは人的支援中学校単位に「トライやる・ウィーク」推進協議会というのをつくっているんですが、校長先生とPTAの代表と自治会とか地域の代表さん、この三者が寄り合っているんですが、皆さんお忙しい方ばかりで、これは兼業、片手間でやらざるを得ない。非常に大変な思いをしていまして、その辺の人的な措置も、これがもうちょっと恒常的なものであれば、教師学校先生で、高齢化してなかなか若い小学生についていけないような人たちのために、専門にそういう調整をするような、キャリアアップしてそういう職としてつけるような、もしくは、地域の高齢者が、非常にいろいろな能力がある人で時間がある人たちなんかがそこの場で、仕事というほどの給与を求めるわけじゃありませんが、そういったものができるような調整機関的な人的支援。  この二つをやっていかないと、なかなか言うはやすく実行は難しいというのが現状だというふうに思うんですが、そういった方向、大蔵云々というのはあると思いますが、それはもう我々政治家が大いに頑張っていきたいと思いますので、財政措置も含めて、我々の応援があればという前提で結構ですから、文部省も、何とか国としても頑張りたいという御決意を聞かせていただきたいと思います。
  55. 有馬朗人

    有馬国務大臣 このトライやる・ウィークのような事業というのは、たびたび同じことを申し上げるようでありますが、まずは地方自治体が主体的に動いていくということが非常に重要だと思っております。いきなり国から、いわゆるトップダウン的に、お金だけ出してやれといってもこれは動くことではございませんので、まずは地方自治体がいろいろな角度からこういう努力をしていただいた上で、全体的に見た上で国としての考え方というものをさらに進めたいと思っておりますけれども、現在のところ、例えば今問題になっておりますトライやる・ウィークの実施に当たりましては、兵庫県の教育委員会から、援助してくれというふうな御要望は今のところございません。しかしながら、まずは地方自治体が、どういうふうに、どういう事業を展開したいか、こういうふうなことをぜひさらに御検討になられ、大いに進めていただければと思っております。  文部省といたしましては、さっきから申し上げていますように、商店との協力というか、商店に行って勉強させていただく、こういうふうなことは今考えているところでございます。
  56. 赤羽一嘉

    赤羽委員 もう時間が来ましたので、最後に一問だけ。心のケアということで、兵庫県は、これまで震災以後毎年、教育復興担当教員という方を二百七名配置をしていただいております。これはやはり、時間がたてばたつほど震災からの後遺症というのが少なくなると考えられている方は多いと思いますが、実は、心のケアの問題というのは複雑になってきて手間暇かかる、先生自体も大変疲弊しているという状況がございまして、今の状況余り変わっていないと思いますので、教育復興担当教員の加配継続を来年度もぜひお約束していただきたいということでございます。
  57. 矢野重典

    ○矢野(重)政府委員 兵庫県のいわゆるカウンセリング担当教員につきましては、平成年度から加配を行っているところでございまして、平成十一年度におきましても、今御指摘がございましたように特別に二百七人の教員の定数加配を行ったところでございます。  そこで、今後の取り扱いでございますが、今後の取り扱いにつきましては、兵庫県からの具体的な要望でございますとか、県が行ってございます実態調査等を踏まえながら対応を検討してまいりたいと考えているところでございます。
  58. 赤羽一嘉

    赤羽委員 どうもありがとうございます。県も同じような要望が出てくると思いますので、そのときはぜひ対応していただきたいということで質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  59. 栗原裕康

    ○栗原(裕)委員長代理 次に、近江巳記夫君。
  60. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは二十五分ほど私は時間をいただいております。そういう短時間でございますが、きょうは私は主として専門高校の問題についてお伺いしたいと思います。  平成六年の四月に、当時理研の理事長をされておりました有馬先生が、文部省初中局長の私的諮問機関として職業教育の活性化方策に関する調査研究会議が発足されて、その座長に就任されたということがございました。  私ごとで恐縮ですけれども、ちょうど私はこの四月に羽田内閣で科学技術庁長官を拝命いたしまして、科学技術庁と理化学研究所、こういう関係の中で御高名な有馬先生にもしばしばお会いさせていただく機会もございました。大変有意義な、専門高校の将来はどうあるべきかということについていろいろと研究していただいておるということで、私ごとに入って非常に恐縮ですけれども、私自身も工業高校を卒業いたしまして、それからさる大学へ入学したわけでございますが、そういう体験を持っておりますので、先生にもそうした体験を交えてお話をさせていただくことがございました。そのとき、私は、非常に先生が深い御理解を持っておられるなと大変感服をいたしました。  その七月に中間答申を出されまして、平成七年の三月に答申としておまとめになったわけでございます。私どもの承知している範囲におきまして、当時のいわゆる職業高校、専門高校の中で、この有馬先生の答申というものは非常に大きな波紋を描いたわけでございます。子供たちの将来にとって希望にあふれた道を開く、その指針を示していただいたということで、私も大変喜んだ一人でございました。  そこで、政府はそれをお受けになり、その中間発表が平成六年の七月に行われているわけですから、答申が平成七年の三月でございますから、早いところは着手されて、特別選抜であるとか推薦制であるとか着々と進められたところもございます。正式には平成年度からこれがスタートということをお聞きしておるわけでございます。  そこで、いろいろな項目をここで提言されておられるわけでございますけれども、特に高等教育機関への進学、これに対するいわゆる特別選抜それから推薦入学、この点につきましてどのぐらい進捗しておるか、状況についてまずお伺いしたいと思います。
  61. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 平成十一年度入学者選抜においては、国公私立大学合計で、特別選抜を実施している大学学部、入学者数は、前年度二十八大学三十七学部から三十八大学四十学部に、前年度三百二十五名から四百十一名にふえております。  推薦入学につきましては、前年度百二十八大学二百十七学部から百五十六大学二百六十八学部に、前年度五千二百五十九名から五千九百七十九名に増加をいたしております。  特別選抜や推薦入学がこのように着実に拡大をしているものの、さらなる充実が必要であると考えているところでございます。
  62. 近江巳記夫

    ○近江委員 さらなる充実が必要である、そういう御認識を今示されたわけでございますが、私もそのとおりだと思います。  それなりに御努力はいただいておるわけでございますけれども、ただいま御報告いただいたそれを検討してまいりますと、私も資料をいただいておりますけれども平成十一年度、一番新しいデータでいきますと、国立大学九十五校ございますね、その中でいわゆる特別選抜をやっておる大学は十五校、一五・八%にすぎないわけですね。公立大学六十六大学では一校、一・五%、私立大学四百五十四校のうち二十二校、四・八%、こういうわずかでございます。  しかも、入学者はどうかといいますと、国立大学では七十九名、〇・〇八%、公立大学では十名、〇・〇四%、私立大学では三百二十二名、〇・〇七%、合計で四百十一名、〇・〇七%、こういうことなのですね。  八年度に正式に発足をして、今はもう平成十一年でございますから、そういう中でこういう現状でございます。国立大学でわずか一五・八%、公立大学に至っては一・五%、私立大学で四・八%。まだまだこれは大学の認識が私は足らないと思うのですね。  推薦入学の状況を見ましても、国立大学では五三・七%、公立大学で三〇・三%、私立大学で一八・七%。入学者はどうかといいますと、国立大学では千十九名、一%、公立大学では百八十三名、〇・八%、私立大学で四千七百七十七名、一%、合計で五千九百七十九名、一%、こういうことです。推薦制におきましてもこういう状況なのですね。発足して四年、五年になるのに、まだこれだけの理解しか得られていないのかと、一面非常に寂しい気がするのですね。     〔栗原(裕)委員長代理退席、委員長着席〕  高校生の状況でございますけれども、進学が大変ふえてきておりますね。専門高校も、平成年度のデータで見てまいりますと、大学に進学した人が一四・四%、専修学校へ行った人が二二・四%、合計三六・八%なんですね。それから、総合学科では、進学した人が三二・一%、専修学校等へ行った人が三一・八%、合計六三・九%行っております。それから、その他の専門学科におきましては、六一・三%が進学をして、二二・九%が専修学校へ行っておる。実に八四・二%が進学しておるのですよ。  こういう現状からいきますと、時代の傾向としては、有馬先生が座長で答申していただきましたように、職業としてのいわゆる基本教育また知識、それをもってスペシャリストの道として第一段階に専門高校で学び、そして社会へ出た人も生涯教育の中で、企業の中でもさまざまな研修もし、自己の挑戦が始まると思うのですね。さらにまた、進学をして勉強していこうという、まさに生涯教育という時代に入っているのだ。そういう中で、専門高校におきます進学状況というのは、そういう状況でございます。  専門高校も、職業教育を主とする学科、農業、工業、商業、水産、家庭、看護とございますけれども平成年度のデータで九十七万九千九百二十八名、二三・一%、その他の専門学科で九万九千七百九十八名、二・三%、総合学科で四万三千四百二十七名、一%、これを合わせますと二六・四%、百十二万三千百五十三名。  現在、いわゆる高等学校の在籍数というのは四百二十五万五百十八名おるわけでございますが、そのうち、専門高校生は二六・四%、実に百十二万三千百五十三名の子供たちがいるわけでしょう。それを単純計算で三で割れば、三分の一が卒業するんですけれども、先ほどデータで私申し上げましたように、今や、進学する人、そして専修学校、いわゆるさらに学びたいと上へ行く人は実に四〇%に達しているんですよ。ですから、約十五万名がそのように進学しているんですね、専修学校を含めまして。  そうすると、この百十二万三千百五十三名、三学年ですから、一学年平均しまして三十七万四千三百名程度ですね、その中で十五万名が上へ上がっているということで、四〇%の子が進学しているんですよ。その率からいきますと、今、各大学の受け入れが余りにも少な過ぎると思うんです。これだけの、有馬先生が座長でやっていただいて、特別選抜、推薦制度というものが発足しながら、まだ各大学における認識が足らないと思うんです。  ですから、その足らないという認識は今局長の方から示されたわけでございますけれども、私は、その足らないという認識をばねとして、今後、どのように各大学にプッシュをして、そして理解を深めてやっていくかということが大事だと思うんですよ。大学の自治とかさまざまなことは私もよく存じておりますけれども、これだけ有為な人材がたくさん希望を持って待っておるわけでございますから。  そこで私は聞きたいんですけれども、これは発足してもう四、五年になるんです。そこで、文部当局として専門高校生が進学をしてどうなったかということを調査されているでしょう、その概略、ポイントを御報告いただきたいと思います。
  63. 御手洗康

    御手洗政府委員 御指摘のとおり、専門高校、総合学科を卒業いたしまして、特に、今御指摘ございました、それを対象とした卒業選抜及びこれらの卒業生を対象とした推薦入学で大学に入りました学生たち学校の適応状況ということをできるだけ調べまして、それを広くアピールするということは、そういった門戸をもっと開く上でも大変重要なことだろうと私ども考えておりまして、本年五月に、これらの関係の校長会の全面的な協力を得まして、卒業生及び大学での状況についてアンケート調査をさせていただきました。  主な内容といたしましては、卒業生に対しますアンケート調査の結果では、特に、大学に進学した理由といたしましては、「専門的な知識や技術を身につける」とした者が四五%ということでございまして、単に漫然と進学したというような学生はほとんどいないということで、専門高校や総合学科の卒業生につきましては、大変目的意識を持っているということが極めてはっきりとしたわけでございます。  また、大学の教官等に対します調査結果によりますと、特に、専門高校や総合学科の卒業生が他の学生に与える影響につきまして、「ものづくりに熱心で他の学生をリードする場合が非常に多い」、それから「専門分野のすぐれた能力が大変いい刺激となって大学教育に活性化の働きをもたらしている」と、非常に積極的な評価も多く見られるところでございまして、卒業生の学習意欲や授業の理解度等についても高い評価が得られているということがわかったわけでございます。  私ども、こういった点につきまして大学等にももっとPRをいたしながら、その門戸をもっと開くように努力をしてまいりたいと思っているところでございます。
  64. 近江巳記夫

    ○近江委員 限られた時間ですので、詳しい御報告はいただけなかったと思いますけれども、私も先般この調査資料をいただいて拝見しました。非常に高い評価が与えられております。成績におきましても非常に高いクラスにおりますし、調査データを見ますと、専門高校から特別選抜、推薦で入ったほとんどの子供たちが非常に他の学生にも影響を与え、まじめで成績も優秀であると。これは政府が調査されておるわけですよね。  今までは、どちらかというと大学当局は、専門高校からは、補習をしなきゃならないとか一般教科をやっていないからとか、そういういろいろな声があったように私も聞いているんです。しかし、今の入試状況を見ますと、例えば医学部へ入る子が生物をとっていないとか、理学部へ入る人が物理をやっていないとか、大学へ入ってから勉強しておるのが現状でしょう。  そういう点からいきますと、非常に意欲に燃えた専門高校生の、基礎的な知識をつけ、やっておる子供たちというのは、目的を持って進学を目指すわけですから、非常にこれはすぐれた成績も示すし、また、その成長ぶりがうかがえるわけでございます。そういう点で、さらに大きくその受け入れをプッシュしていただきたいと思うんですね。  その中で、当然、学校当局に調査書とかいろいろなものが行こうかと思いますけれども、職業に関する教科、科目の成績、あるいは職業資格等、これは当然重視をすべきであると思いますし、あるいは学力検査におきます職業に関する教科、科目の拡大、これは当然検討すべきだと思うんです。  こういうことも含めまして、もう一歩突っ込んだ具体的な、大学当局、高等教育機関に対して今後どうプッシュをされるか、その点をひとつ伺いたいと思います。初めに局長から聞いて、大臣からぜひ御答弁をお聞きしたいと思います。
  65. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 御指摘いただきました点でございますが、例えば推薦入学においては、簿記検定試験合格者等の資格取得者に対して調査書の学習成績の評定平均値の要件を緩和したり、小論文を免除するなど、各大学において考慮が行われているところでございます。  また、学力検査につきましても、その大学の目的、特色、専門分野等の特性から見て適当と認められる場合には、普通教科の一部にかえて職業に関する教科を出題し、あるいは、数学、理科等の科目に職業に関する基礎的、基本的科目を加えて選択解答させることが望ましいということ、さらには、職業に関する科目の出題に当たっては、専門高校卒業生等が普通教育を主とする学科の卒業生に比べて不利にならないよう特に配慮するものとする旨の指導等も行っておるところでございます。  文部省といたしましては、諸会議の場等を通じて各大学の積極的な対応を求めてまいりたいと考えておりますが、先般まとめられた調査結果において、学部教育の活性化等も専門高校出身者によって図られているという積極的な評価が多く見られていることなどもきちんと紹介をしながら、進めてまいりたいと考えておるところでございます。
  66. 有馬朗人

    有馬国務大臣 先生指摘のとおり、大学側の受け入れるパーセンテージがまだ少ないのでございますけれども平成八年のときに国立大学は十五人であったのが、今七十九というふうに急激にふえてきております。遅いという御指摘のとおりでございますけれども、それでも、当初の大学側の見解を考えてみますと、随分これで伸びてきたと思っております。しかし、さらに伸ばしていかなければならないと思っております。  私は大変楽観的に見ておりまして、十八歳人口が減ってきておりますので、ここに金の卵があるということを皆さんは認識せざるを得なくなる。ですから、大学側が積極的に専門高校卒業生を入学させない限り人数が充足しないということが起こると思います。ですから、そういう意味で、多分、大学側はさらに真剣に専門高校の卒業生を入学させる努力を図っていくであろうと私は思っております。今高等教育局長より御説明申し上げましたように、文部省といたしましても、さまざまな手段で、専門高校の卒業生が入りやすくするという努力をいたしております。  それからもう一つ、初期の、すなわち私が初めてこの問題をお手伝いいたしましたころの大学側の反応というのは、先生指摘のとおり、専門高校出の人々は一般の教養が足りないからとても教育しにくいんだと言っておりましたけれども、これに対しましては補習授業をせよというふうな方針で、文部省といたしましても、補習授業費を出すということで大学に対してお手伝いをする。そのことにより、大学側も、専門高校出の人々に対して必要な教養をさらにつけるという努力をしやすくなりましたし、また、大学側も随分努力をしてくれるようになっております。  そういう点で、私はこれはさらに急速に伸びていくだろうと考えておりまして、それに対して重要な施策文部省としても手を打っていきたいと思っております。
  67. 近江巳記夫

    ○近江委員 大臣からもそういう御答弁がございまして、確かに少子化の中で、大臣おっしゃるような環境であることは間違いないと思います。その中で、さらにこういうすばらしい答申を出していただいて、政府として力を入れていただいておるわけですから、ひとつさらなる御努力を強く期待するものでございます。  それから、この答申のときには四つの主なテーマがございました。一つは、進学の道です。一つは、高校テクノセンター等、高度な施設設備の整備、こういうことが答申され、その後、沖縄と東京の二カ所に設置されておりますが、その後、各都道府県のどこもないのですね。  科学技術基本法が制定され、高等教育機関に対するそういう施設整備等にはかなり力が入ってきた、こう私は見ておりますが、専門高校におけるこの辺の整備というものにつきましては、地方自治体との関係も当然あるわけでございますけれども、これは遅々として進まないどころかとまっているのです。こういう現状について、これでいいのかどうか。  高校の段階におきまして、これだけの日進月歩の技術の世界でございますし、少なくともやはり更新し、そして多くの子供たちがセンターで研さんに励めるように充実をしなきゃならない。地方自治体は財政が厳しいからできませんと。では、財政が厳しいからということで教育を座視していいのかという問題があるのです。その点につきましては、政府としてどういうような指導、誘導をされるのですか。これは完全にとまっていますよ。
  68. 御手洗康

    御手洗政府委員 御指摘のとおり、「スペシャリストへの道」において提言をいただきましたいわゆる高校テクノセンター、これは、単独の学校ではなくて地域の専門高校が共同して整備をする、先端的で高度な大型な情報機器あるいは先端技術装置等を整備して共同で利用する、こういうことによりまして産業教育の最先端の技術を子供たちに積極的に教育していくために有効であるということで、御提言をいただいたわけでございます。  御指摘ございましたように、平成年度に東京都で、それから九年度に沖縄県で、相当大規模の、思い切った共同利用施設が整備されまして、文部省としてもそれなりの国庫負担の措置で援助いたしたわけでございますけれども、その後、残念ながら、こういった大型のものは設置者である都道府県の方から上がってきておりません。  確かに、その後、各都道府県がこういった大型のものに回せるような、財政状況が大変厳しくなっているという一般的なことは事実でございますが、私ども、こういった大型のものは来ておりませんけれども、各学校におきます産業教育の新たな展開のための通常の学校ごとの整備の予算につきましては、各都道府県の要望を踏まえまして、毎年必要な事業の確保努力をしているところでございますけれども、この趣旨につきましても、さまざまな機会にさらに御要請をしてまいろうかと思っておるところでございます。
  69. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう時間ですから終わりますが、今御答弁ありましたように、テクノセンターの設置を初めとして、各専門高校における教育施設の整備充実につきまして、一層政府として力を払っていただきたいということを強く要望しまして、私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  70. 小川元

    小川委員長 次に、佐々木洋平君。
  71. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 自由党の佐々木洋平です。  二十分という時間でございますので、きょうは、外国人留学生の問題について御質問をいたします。  現在、日本に滞在する留学生の数は、九八年度五月一日現在で五万一千二百九十八人、うち、アジアからは四万五千九百十四人で、約八九・五%と圧倒的に多いわけでございます。特に、中国二二%、韓国が一一%、台湾四%、こういうふうな順序になっております。  そこでお伺いしますが、国立あるいは市立、国公立ですね、私立、大学大学院とその他の専門学校の比率がどうなっているのか。また、国費留学と私費留学の比率、あるいはまた、最初に日本に入国する際の留学ビザと就学ビザの比率についてまずお伺いしておきたいと思います。
  72. 工藤智規

    ○工藤政府委員 外国人留学生の人数につきましては、先生指摘のとおり五万一千人余りでございまして、そのうち、国立大学等国立学校に入っておりますのが四二%でございます。それから、公立大学が四%、私立大学は五五%という状況でございます。  また、学部、大学院等の別でございますけれども、在学段階別で見ますと、学部レベルが約四五%、大学院レベルが四〇%、短期大学が三%、高専が一%でございまして、専修学校レベルが一一%という状況でございます。  近年の流れを在学段階別に見ますと、大学院レベルが大分ふえてきているという状況がございます中で、専修学校段階のシェアがだんだん少のうなっているという状況がございます。  また、国公私の割合で申しますと、私学の割合が幾らか低下しながら国立の割合が上昇する傾向にあるという状況にございます。  それから、ビザの関係でございますけれども、留学生でおいでになる方々はすべて留学ビザでおいでいただいてございます。
  73. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 どうもありがとうございました。  次に、大臣にちょっとお伺いしたいのですが、大臣も留学生といろいろ懇談する機会があると思います。私もいろいろな方々とお会いするときに、いつでも出る話は、欧米の大学に比べて日本大学は入学しやすい、卒業するのも簡単だ、専らそういう話が出ます。大臣、この辺はどのように受けとめているか、まずお伺いします。
  74. 有馬朗人

    有馬国務大臣 よくこの点がさまざまな方から御指摘されております。  ただ、私は現場にいたことを考えてみまして、欧米と日本とは随分やり方が違うと思うのです。例えばフランスであるとかドイツであればバカロレアとかアビツールである程度の成績をとれば入れる。そのかわり、入ってから落後する人が非常にいる。日本の場合は、何といっても入学試験というものがありまして、質をそろえているということで、大学へ入ってから教育がしやすい面があるということは申し上げておかなければならないと思います。  ドイツの大学の学長たちとよく話し合ったことがあります。フランスでもそうですが。もっと入試を厳しくしておけばこんなに大勢途中でやめる学生が出ないのにというのが、ドイツの学長たち、フランスの学長たちの認識でございます。だから、日本はうらやましい、こういうふうに言っておりました。  しかしながら、御指摘のとおり、それでは日本は入学試験を厳しくしているから教育は甘くしているかという問題が残っております。確かに、学部によっては多少甘いところがあるかもしれません。しかし、私がおりました理学部では、極めて厳しい授業を行い、極めて厳しい最終的な審査を行って卒業させておりました。そういう点で、さまざまな大学があろうかと思っておりますが、ただ単純に、欧米は入るのが易しくて出るのが難しい、日本もそうしろということではない。この点は、やはり日本大学制度がどうあるかということと欧米の制度がどうあるかということで比べてみなければならないと思っております。  それからもう一つ申し上げますと、イギリスはこのごろ授業料を取るようになりましたけれども、ドイツやフランスの授業料はほとんどただであります。そういう点、日本はかなり高い授業料を取っている。こういうふうなことで、欧米の先生たち教育への――米国はちょっと違います、欧米と言うのはやめます。ヨーロッパの大学日本大学においては先生たちの態度もかなり違うところがあると思っておりますが、単に入れるのは難しくて出すのは楽にしているという非難は、必ずしも私はそのとおりだとは申し上げていない次第でございます。
  75. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 今大臣からるるお話がございました。  これはあくまでも外国人、特に中国人、韓国人の生徒が言っている話なんですが。そこで、日本の入学のための選考基準というものを後でちょっとお伺いしたいと思うのですが、例えばアメリカですと、各大学によって、TOEFL試験というのがもちろんあるわけですが、それ以外に高度な学力ということを要求されるわけです。専門学力予備試験というのがあるわけです。これはあくまで予備試験でございまして、例えば数学と口頭試問というのがありまして、ハーバード大学では、数学が七百四十点、口頭試問が七百四十五点なんですね。それからコロンビア大学は、何か今いろいろ話題になっておりますが、数学が六百八十点、口頭試問が六百二十点。オハイオ大学は、五百五十一点、五百五十五点と。こういうふうに、これに合格しないと受験資格がないのですね。  ですから、やはり日本もある程度大学によってそういう基準を設けるべきだというふうに私は思うのですが、日本のシステムはどのようになっているのですか、お伺いします。
  76. 工藤智規

    ○工藤政府委員 日本へおいでいただく留学生方々の選考でございますが、留学生の方は、大きく分けますと、往復渡航費も含めてほぼ日本国政府が丸抱えでお呼びする国費留学生と、御自分で費用を調達する私費留学生に分けられるわけでございます。  国費留学生の場合は、それぞれの諸外国の大使館からの推薦あるいは国内の大学からの推薦を受けまして、二十数名で構成いたします国公私の大学関係者等の選考委員会で御審査いただきながら、それぞれの留学生の御希望を聞いて大学への受け入れを確定しているわけでございます。  その場合の選考に当たりましては、基礎学力といたしまして、英語、数学、理科――数学、理科は理系の場合が中心でございますが、あと、世界史などの基礎学力のほかに日本能力を、これは必須ではございませんで、日本語が御不自由でも日本においでいただく熱意のある方について、その日本能力を判定するための日本語の試験を課しているところでございます。そういう筆記試験だけではなくて、面接などを行いまして、真に勉学の意欲のある、能力資質のある方をお迎えさせていただいてございます。  それから、私費留学生につきましては、それぞれの大学で御選考いただくわけでございますけれども、それは国内の入学試験と同様、各大学でいろいろ自主的にお決めいただいているわけでございます。ただ、いずれにしましても、学業にたえる学生を受け入れなければいけませんので、各大学で総合的に御判断いただいているところでございます。
  77. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 今の御答弁ですと、国費入学といいますか、そういう部分については大分厳しい選考の基準があってはいれる、私費入学についてはそれぞれの大学側のあれに任せておく、こういうことのようです。  例えば私立大学なんか見ても、これは留学生が話しているのですが、日本語一級から四級までの級があるそうですが、大体一級を取っておれば、早稲田大学であろうとも亜細亜大学であろうとも、どこの大学も横並びで同じだ、一切そういうあれがない、こういう話を彼らは言っております。  ですから、国に帰った場合に、例えば自分の国でレベルの高い大学にその学生が仮にいるとした場合、ところが、到底それに入れない人が日本のそういう高いレベルの大学に平気で入れるということが外国では常識になっているのですね。この辺が私は非常に問題があるのではないかなという感じがします。  そこで、それぞれの大学は、特に私立大学自分大学の評価といいますか、そういうものをきちっと示すべきであろうし、それがひいては大学のレベルを上げるだろうし、日本に来た留学生が、例えば韓国の留学生が国へ帰って何か仕事をやろうとしても全然相手にされない、留学したからどうこうということはない、こういう話も平気で言っておりますが、やはりこのレベルアップというものが私は非常に必要ではないのかなと思います。  そこで大臣にちょっとお伺いしたいのですが、確かに、どちらかといえば私立大学は量の方を多くとろうとするような感じがするのですが、そうではなくて学力のレベルを重んじるような、そういう基準はやはりきちっと明確にすべきではないのかなという感じがします。それがひいては日本大学の権威を保つことにもなるわけですし、と同時に、また日本大学生もその刺激を受けて一生懸命頑張るということだろうと思いますが、御見解をお伺いします。
  78. 有馬朗人

    有馬国務大臣 御指摘の点は、私も重要な点だと考えております。  先ほど学術国際局長からお返事申し上げましたように、国費留学生に関してはかなりさまざまなやり方で人物を選んでいます。それから、特に、私が大学院にいたころでありますが、大学院では随分厳しい口頭試問をやります。そういうことをして選びますので、非常に優秀な人が留学生として育っていっておりました。ですから、先生おっしゃられるように、余り数だけにとらわれずに、質ということを考えていかなければならないと思います。  ただ、現在までは、文部省といたしましては、留学生受け入れ十万人計画を立てておりまして、そのもとで、日本に来る前、渡日前から帰国後まで体系的な留学生交流のための総合的な諸施策推進しております。  そういう点で、さまざまなやり方で留学生を受け入れておりますので、多少、質より量の方と、違うふうにごらんいただくかもしれませんが、質という点も随分考えておりますので、今後、留学生の選考、受け入れに当たりましては、選考試験や研究能力、人物評価等による総合的な判断をさらに進めまして、すぐれた留学生の受け入れに努力をさせていただきたいと思っております。
  79. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 どうもありがとうございました。  次に、アジアからの留学生が約九割ぐらい占めておるわけですけれども、当然ながら、日本に留学するということは、相当期待を持って来るわけですけれども、留学生の諸君に聞くと、ちょっと期待外れだという部分がございます。  それは何かといいますと、まず一つは科目でしょうが、日本の歴史とか文化という部分の授業というものを盛り込んでおらない、非常に少ないということが第一点。第二点は、第二外国語を専攻するわけですけれども、その第二外国語はほとんどフランスとかドイツとか、そういう講座はあるのですが、逆にアジア諸国の言葉、中国語であったり、そういう部分が非常に少ないということをよく言うのです。  それから、アジアの文化なりあるいは文学なり、そういったものをもっと日本が率先して留学生の諸君に教えるのがやはり日本の立場じゃないのかな、先進国として。当然、ヨーロッパで勉強したいのだったら、彼らはヨーロッパに行きますから。日本に来たいというのは、アジアの、日本の文化なりそういうものを望んでいると思うのです。そういう意味で、そういう考え方文部省として大学の方に指導すべきではないのかなというふうにも思います。  また、大臣にお伺いしたいのですが、こういう日本に来ている留学生大臣は何を期待しますか、その辺をあわせてお伺いしたいと思います。
  80. 有馬朗人

    有馬国務大臣 最初におっしゃられました期待外れだという点、これは私も非常に心配をしておりまして、日本文化に関して十分な教養を持っていないというのは、外国人だけではなくて日本人も、日本学生もそうなわけであります。ですから、理科系の人間といい、文系の人間といい、日本の文化、日本のよさ、問題点、こういうふうなことについて、歴史的にもあるいは文学的にも、いろいろな面からもう少し、日本学生も含めアジアの、アジアだけではありません、留学生人たちにも教える機会が多い方がいいと思っております。  どういうふうにやっていくか、これはいろいろやり方がありまして、大学でありますと、昔だと教養部とか教養学部でありますが、それが大綱化されましたので、やはり大学全体で一般教養を教える際にこういう点に力点を入れてほしいと思っています。  それから第二外国語の問題でありますが、これは大いに私どもも関心を持っているところでありまして、どういうふうに第二外国語を教えていくか。しかし、韓国語や中国語、特に中国語については随分いろいろな大学で開講されていると思います。  それからもう一つ、第二外国語という問題は、実は、博士を取るときに二つ外国語をやらなきゃいけないという問題がございまして、私もこの点に関しまして、第一外国語は彼らにとっては日本語でありますから日本語、そして第二外国語としてさらに英語を課したりいたしますが、その中にアジアの言葉を入れて資格とするというようなことは考えられると思っております。  それから、留学生にどういうことを期待するか、これはやはり日本を愛してくれる、日本を知ってくれる人をふやしたいと思っております。そしてまた、それぞれの方の母国のいろいろな文化を日本人に伝えてほしいと思います。地球規模化したこの時代において、幾つかの国の文化をよく身につけるということは極めて大切でございますので、そういう点で、外国の留学生が大いに活躍してくださることを願っている次第であります。そして、将来、日本とその方たちの母国の間の人的なつながりの橋を形成していただきたいと思いますし、日本と諸外国の相互理解を深めていく上で、友好関係を深めていく上で、ぜひとも留学生方々に御努力賜りたい。  そして、特に開発途上国においては、その国のためになる人々を我々は養成していかなければならないと思っています。今までもそうでありますが、今後もまた外務省と連携いたしまして、帰国留学生、一たん帰った人々が、時々また日本に来て、新しい日本について見ていただく、そういう機会をさらにふやしたいと思っておりますし、逆にまた、指導教官であった人々が留学生の国へ出かけていきまして、現在の日本はこうだよとか、その留学生たちがどう育っていたか、こういうふうなことを見るチャンスをふやしたいと思っております。  いずれにいたしましても、留学生というのは未来の大使とよく言われますけれども、極めて重要な人々でありまして、絶対に反日にならないように、日本に来たことがつまらなかったとか、残念だったとかいうふうなことにならないように、留学して母国に帰られた人たちが、日本はよかった、あの留学をしたことはよかったと思うように努力をさせていただきたいと思っております。
  81. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 どうもありがとうございました。以上で質問を終わります。
  82. 小川元

    小川委員長 次に、石井郁子君。
  83. 石井郁子

    石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。  国旗・国歌問題は、今参議院の特別委員会審議中でございますけれども教育現場への影響が極めて重大でございますので、きょう、私は重ねて質問をさせていただきます。  日の丸君が代を国旗・国歌と法制化するに当たりまして、政府は、国民に強制し義務づけるものではないという御答弁をたびたびされていらっしゃるわけですけれども、そのことを改めて確認できますか。そしてまた、強制できない、義務づけてはいけないというのはどういう理由からでしょうか。よろしくお願いします。
  84. 有馬朗人

    有馬国務大臣 たびたび同じような御答弁を申し上げて恐縮でございますけれども学校における国旗・国歌の指導というものは、児童生徒日本の、我が国の国旗と国歌の意義を理解させまして、これを尊重する態度を育てながら、同時に、諸外国の国旗と国歌も同様に尊重する態度を育てるために行っているものでございます。  今回の法案におきまして、国旗・国歌の根拠について、慣習であるものを成文法として明確に位置づけるものでございます。学校教育において、国旗・国歌に対する正しい理解をさらに促進するものと考えており、意義があるものと受けとめている次第でございます。  文部省といたしましては、学習指導要領に基づく学校におけるこれまでの国旗・国歌の指導に関する取り扱いを変えるものではないと考えておりまして、今後とも学校における指導充実に努めてまいりたいと思います。
  85. 石井郁子

    石井(郁)委員 私の趣旨がちょっと伝わらなかったようでございますけれども文部省の御見解、きょうは文教委員会ですからそうなんですけれども大臣は閣僚の一人でもございますから、政府として国民に強制はできない、義務づけないという御答弁ですが、それを確認したい。そして、それは一体どういう理由からでしょうかとお尋ねしているわけであります。
  86. 有馬朗人

    有馬国務大臣 政府といたしましても、官房長官がお返事申し上げたと思いますけれども国民に対して強制するものではございません。
  87. 石井郁子

    石井(郁)委員 なぜ強制できないのでしょうか、それをお聞かせください。
  88. 有馬朗人

    有馬国務大臣 国民の一人一人が国旗・国歌に対して愛着を持つ、そういうふうなことで国民一人一人が御判断になることかと思っております。
  89. 石井郁子

    石井(郁)委員 なぜか憲法が出てこないのですけれども、強制できない、義務づけることができないというのは、憲法十九条の思想、良心の自由を侵してはならないという、やはりここからきているのではないでしょうか。  次に、国民には強制できないということを、たびたびそういうふうにおっしゃっているわけですから、それが学校という場になると押しつけということになってくるわけで、国民に強制できないものは、学校子供教職員にも押しつけることはできないというふうに思うのですけれども、この問題についての御見解はいかがでしょうか。
  90. 御手洗康

    御手洗政府委員 今回御審議をいただいております国旗・国歌に関する法案は、国旗と国歌を定めているものでございまして、それに伴いまして何らかの義務づけというような条文はないわけでございます。  これに対しまして、学校教育におきましては、再三繰り返しになりますけれども文部大臣が定めております学習指導要領におきまして、我が国学校教育におきます国旗と国歌の指導について、全国的にすべての学校で教えなければならない基準ということでお示しをしているわけでございまして、学校教員並びに校長は、この学習指導要領に基づきまして適切に教育課程を編成し実施しなければならない、こういう法的な関係に立つわけでございまして、最終的に子供たちがその指導をどう受けとめるかということは、これは教育指導の結果の問題でございますので、そこまで学習指導要領は義務づけておりません。  子供は当然、通常の場合に、学校が定められた教育活動に主体的に参加していく、これは教育活動の本来持っております作用でありますし、教員はそういった教育活動の本来的な作用に従って児童生徒指導していくということでございますけれども指導の結果、最終的に児童生徒が、例えば卒業式にどういう行動をとるかあるいは国旗・国歌の意義をどのように受けとめるか、そういうところまで強制されるものではないという意味で、強制するものではないと申し上げているところでございます。
  91. 石井郁子

    石井(郁)委員 学習指導要領に基づきまして教師がいろいろ義務を負うというか義務づけというか、そういうふうに文部省がおっしゃるわけですけれども、最初に伺っているのは、強制という問題でいうと、やはりそれはしてはならないという立場でしょう。強制ができないのは憲法の十九条があるからではないですか。それは一般国民にも教職員にもひとしく保障されるものだというふうに当然理解されるわけですが、よろしいですか。
  92. 御手洗康

    御手洗政府委員 委員指摘の強制という言葉をどう理解するかということでございますけれども、通常の国語的理解であれば、無理強いして何かをさせていくということであろうかと思います。そういった無理強いして何かをさせていくということは、一般的には教育活動として適切ではないと私どもは思っております。  ただ、子供一つ課題に向かって主体的に困難に打ちかっていく、これも一つ教育作用でございますから、強制と言われることは一体どういう場合に当たるかという言葉の使い方の問題であろうかと思いますけれども、憲法十九条で保障しておりますのは、内心の自由にまで立ち入って強制することがあってはならない、こういう意味でございます。  そういう意味では、これは学校教育におきましても国民一般の場合におきましても何ら異なるところはないものと思っておりますし、教育に当たる学校教員が、憲法に保障された基本的人権であります内心の自由にまで立ち入って強制すると判断されるような教育活動を行ってはならない。こういう点につきましては、私ども、今後とも十分留意をしてまいりたいと思っております。
  93. 石井郁子

    石井(郁)委員 子供に対してどういう指導をするかという問題は言われるとおりだと思うのですが、私が最初に確認したいのは、教師自身も内心の自由は保障されなければいけませんねということなのです。  このことで実は大臣が既にいろいろと御発言がございますので、ちょっと私の方から申し上げたいのです。  内心の自由は保障されなければいけないということはもう確認されていることだというふうに思うのですけれども、それに続けまして、ただ、それが外部的行為となってあらわれる場合には、一定の合理的な範囲内の制約を受け得るものと解釈されているということをおっしゃっていらっしゃいますけれども、それはよろしいですか。――済みません、もう時間があれですから。  では、この解釈は、有馬文部大臣の憲法解釈なのでしょうか、それとも憲法学説のどこかから援用されているものでしょうか。
  94. 矢野重典

    ○矢野(重)政府委員 良心の自由につきまして、先ほど御指摘がございましたように、これが内心にとどまる限りにおいては絶対的に保障されなければならないが、外部にあらわれるときは一定の制約を受け得るものであるということにつきましては、おおむね異論がないものと私ども考えているところでございます。(発言する者あり)
  95. 小川元

    小川委員長 静粛に。
  96. 石井郁子

    石井(郁)委員 だから、おおむねというのはどこでですか、どなたがおっしゃっているのですか、それをお聞きしているのです。
  97. 矢野重典

    ○矢野(重)政府委員 私どもが承知しておる限りにおける学説等において、おおむね異論がないものと考えられているところでございます。
  98. 石井郁子

    石井(郁)委員 具体的におっしゃってください。学説というのですから、どなたのですか、どういう著書ですか。具体的におっしゃってください。
  99. 御手洗康

    御手洗政府委員 憲法解釈を私ども文部省なり文部省の役人が行う立場にはないわけでございますけれども、私ども公務員といたしまして、法律に基づいて一定の行政作用をいたします際に、当然そのことが法律に反していないかどうかということは、みずから職務を執行するに当たって常に判断をしなければなりません。  また、そういった意味では、一定の行政作用が憲法に反するかどうかということも、私ども職務を遂行するに当たりまして、憲法遵守義務がございます公務員といたしまして、当然それは自分たちの職務を遂行していく上でも、職務としてみずからの責任においてさまざまな知見を取り入れながら判断しているところでございますので、私どもとしてはそのように考えながら仕事をしておるということで御理解をいただきたいと存じます。
  100. 石井郁子

    石井(郁)委員 今の局長答弁は全く答弁にはなっていません。一般的な公務員としてのあなた方の立場をおっしゃっただけにすぎません。  今私が尋ねていますのは、大臣が解釈された、そして何度も国会で御答弁をされている、その根拠について伺っているのです。私、大変問題だと思います、それを明らかにできないということは。  それでは、私の方から申します。  私は幾つか調べてみました。これは「注釈日本国憲法」ですけれども、昭和五十九年に出ていますよね。内心の自由という問題は、私たちがなぜこれを重視するかといえば、これは絶対的な自由だからなのですね。しかも、戦前にはこの条項はなかった。明治憲法にはなかった項目ですよ。なぜなかったかといえば、天皇の絶対的権威の前に、国民の内心における思想、良心も自由であり得なかった。だから、戦後、まさにここが据わったということは本当に人権としても人間としても重要な問題で、この「注釈日本国憲法」では、「生命・身体の自由とならんで、人間の尊厳を支える基本的な条件であり、また、民主主義存立の不可欠の前提でもある。」こう書かれていますよね。  さて、これが制約があると文部省はおっしゃっているのですけれども、この「注釈日本国憲法」では、この原理は、「民主主義が民主主義たるために最低堅持すべきことがらである。その意味で、本条の保障は絶対的であり、いかなる名目をもってしても一切の制約を許さないものと解すべきである。」これが憲法解釈ではないですか。いかなる名目をもってしても一切の制約を許さないのだ、そういう意味なのですよ。あなた方、勝手に制約をつけているではないですか。そんな憲法解釈がどこにあるのですか。
  101. 有馬朗人

    有馬国務大臣 教育公務員として、あるいは教員として、地方公務員としての制約はございますね。ですから、その制約と、御自分の、教員一人一人が持っている内心の自由、今その両者の関係を御質問だと思うけれども、その人が仮に内心の自由で何かをしたくなかったときに、その人が最終的に内心の自由でしないということは、それはやむを得ないと思いますけれども、しかしながら、教育をする人間としての義務は果たさなければいけない、そういう問題が私はあると思うんですね。  ですから、その人に、本当に内心の自由で嫌だと言っていることを無理やりにする、口をこじあけてでもやるとかよく話がありますが、それは子供たちに対しても教えていませんし、例えば教員に対しても無理やりに口をこじあける、これは許されないと思う。  しかし、制約と申し上げているのは、内心の自由であることをしたくない教員が、ほかの人にも自分はこうだということを押しつけて、ほかの人にまでいろいろなことを干渉するということは許されないという意味で、合理的な範囲でということを申し上げております。
  102. 石井郁子

    石井(郁)委員 せっかくですけれども大臣の御答弁もやはりすりかえていらっしゃるわけですね。  局長自身がおっしゃったじゃないですか、文部省としてはやはり憲法遵守の立場で憲法をちゃんと見ていると。だから、どんな憲法解釈を見ているんですかとお聞きしているわけですが、それはお答えにならないでしょう。それで公務員論にすりかえているわけですよ。それは別な問題なんです。  だから、今回はもう時間があれですから、本当に文部省有馬文部大臣はどうなんですか、外部的行為となってあらわれる場合には一定の合理的な範囲内の制約を受け得るという解釈は、これは文部省の解釈だというふうに確認しておいてよろしいですか。簡単に答えてください。
  103. 矢野重典

    ○矢野(重)政府委員 私どもさまざまな学説等を踏まえながら、基本的には、文部省の解釈として今申し上げたような考えでございます。
  104. 石井郁子

    石井(郁)委員 さまざまな学説の中身は全然明らかになりませんでした。  さて、それでは、教員教職の専門性というかどういう立場で教育の仕事に携わるかという問題なんですね。  そこで次の問題が出てくるわけですけれども、私は、内面の自由というのは教育の仕事にとって本当に重要だというふうに思っているわけです。それは言うまでもなく、教育の仕事は人間の内面に働きかける仕事でしょう、まさに精神活動そのものじゃないですか。だから、その自由という問題がやはり重要になってくるわけですね。そして、そういう教育の仕事に教師責任を持つ。どういう責任を持つかということは、教育基本法の六条がはっきり書いていますよね。「法律に定める学校教員は、全体の奉仕者であつて、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は、尊重され、その待遇の適正が、期せられなければならない。」この項目は、これもまた戦前の反省に立っているんですね。  だから、教師は専門性をかけた責任、そして教育の自由を保障する、こういう意味合いで書き込まれたものじゃないんでしょうか。文部省はこの教育基本法の六条は否定しませんね。
  105. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 教育基本法の第六条でございますけれども学校の法的性格、そういったことを踏まえて、学校教員使命、身分についての原則を規定したものでございまして、私ども教育基本法六条は大事なものだと思っております。
  106. 石井郁子

    石井(郁)委員 私は、教育基本法六条というのは、本当に戦後の教育面での大きな変化であって、非常に大事だと思っているんです。  そこで次の問題なんですけれども文部省は、先ほど出された学習指導要領に基づいて教師は義務を負うと。だから、教師には義務づけをしているわけですよ。ここに学習指導要領というのを挟むわけです。それで、学習指導要領に基づいて遂行しなければ、校長が決めたことに従わなければ職務命令で処分もいい、こういう答弁もされていますよね。そこで公務員論を持ち出してこられるわけですけれども教育というのは一般行政と違うんじゃないですか。  教育の独自性を持っている、まさに教育の専門性を持っている、文部省というのはまさにそういう教育のことを考えるところなのに、処分だけは公務員論で行政処分だということでされる。いかがですか。これが文部省のやることなんでしょうか。
  107. 矢野重典

    ○矢野(重)政府委員 お答えします。  職務命令とおっしゃいますが、これは学校現場において校長がいきなり職務命令を出すわけではないわけでございまして、学校におきましては、国旗・国歌の指導を行うに当たりまして、校長は、日ごろから職員会議等の場を通じまして、教員との間で国旗・国歌の指導やその意義等につきまして意思疎通あるいは共通理解を図るように努めて、全教員が一致協力して国旗・国歌の指導を行うような学校運営上の配慮を行うことが何よりも大切でございます。  しかしながら、このような取り組みをしたにもかかわらず、国旗・国歌の指導教員に求めることが困難な場合があるわけでございまして、そういう困難な場合について、校長は学校運営の責任者として、その責任を果たすために、学習指導要領の趣旨を実現するために、必要に応じ教員に対し職務命令を発することもあり得るものでございます。
  108. 石井郁子

    石井(郁)委員 現場ではこの十年間どんな状況だったか。日の丸君が代問題をめぐっては、一九八九年の学習指導要領で入学式、卒業式で掲揚、斉唱する、指導するものとするとなったわけでしょう。それ以来もう議論ができなくなった。今校長先生お願いの一辺倒だ、指導要領があるからやってくださいと。校長先生は、そこでは教育論もなければ、それこそ憲法もないんですよ。指導要領があるからやってください。これはたくさんの方がおっしゃっていますよ、親の方も。これでは本当に校長先生の権威もなくなるというふうに私は思うんです。  そこで伺うんですけれども、最終的に学校長が行政処分、職務命令を出すということですけれども、そもそも学校長は教育者でしょう。どうなんですか、私は教育者だというふうに思うんですね。だから、校長先生教職員が反目を広げる学校というのはやはりよくないでしょう。言ってみれば、校長先生をも文部省のいわば下級官吏的な位置にあなた方がおとしめているんじゃないですか。本当にこの問題は学校を重苦しくしているんですよ。でも、その指導要領に従わなければ職務命令だと。職務命令が頻発しているわけですよ、現場では。それが、議論もなくしている、学校を暗くしている、もうあきらめている。これは教育ではないですよ。どうですか。
  109. 矢野重典

    ○矢野(重)政府委員 先ほど申し上げましたように、いきなり職務命令をかざして職務を命ずる、必要な指導を命ずるということは通常はないわけでございまして、それは、職務命令を発さなきゃならないような事情がある中で、校長はやむを得ず職務命令を発して校長としての責任を果たそうとしているものというふうに私ども理解しております。
  110. 石井郁子

    石井(郁)委員 しかし、実際国会の審議の中では違うじゃないですか、発言は。とにかく校長が決めて、それに従わなければ職務命令を出す、処分もやむなし、こういう発言さえ出ているじゃないですか。これは大変な事態ですよ。  私は、これは新聞の報道ですけれども、今見ていますが、従わなければ処分する、そこまであなた方は言っているんじゃないですか。こういう言い方というのは本当に権力的な介入、統制そのものじゃないか。戦前最も否定したやり方を今文部省はやろうとしているんじゃないか、そう言わざるを得ません。  決して、おっしゃるように、本当に職場で自由な議論を尽くしてやっているという状態ではありません。こういう職務命令は教育の場になじまないと私は思っているんですね。もうやめるべきだというふうに思いますが、いかがですか。
  111. 矢野重典

    ○矢野(重)政府委員 先ほど来繰り返して恐縮でございますけれども、さまざまな学校運営上の配慮を尽くして、それでもなお学習指導要領の趣旨が実現できないような場合に、最終的に、校長が学校運営の責任者として、その責任を果たすために職務命令を発することもあり得ることでございます。この点につきましては、どうぞ御理解をいただきたく存じます。
  112. 石井郁子

    石井(郁)委員 重ねて確かめますけれども、やはり義務づけるという発言は強制ですよね。だから、政府は国民には強制しない、義務づけないと言いながら、学校には義務づけている、強制している、こういう理解でいいですね。局長、どうですか。
  113. 御手洗康

    御手洗政府委員 先ほど来私と助成局長で繰り返し答弁しております考え方なり指導方針というものは、今回の法制化の前と法制化の後において何ら異なるものではございません。
  114. 石井郁子

    石井(郁)委員 学習指導要領のことで伺っておきます。  学習指導要領に基づいてということが文部省の唯一の根拠になっているわけですね。このことでも本当に申し上げたいことはたくさんあるんですけれども、この学習指導要領については、あの学力テストの最高裁判決等々も持ち出すまでもなくやはり大綱的基準なんですよ。必要かつ合理的な基準の設定として認められている。だから、大綱的基準だという理解でいいますと、やはり国旗・国歌についてはこの大綱的基準の範囲を超えているんじゃないか、逸脱した指導があり過ぎるのではないかというふうに思っているんですが、その辺はいかがですか。
  115. 御手洗康

    御手洗政府委員 学習指導要領におきまして、これが学校教育課程の編成と実施の基準となるという意味で、その教育課程そのものを事細かに律することのないように、できるだけ大綱的なものとしてとどめる、これは私ども学習指導要領の改訂のたびごとに繰り返し努力をしてきたところでございます。  しかしながら、最終的に学習指導要領の形で示された文言につきましては、あるいは指導事項につきましては、学習指導要領に掲げている文言に従ってそれをそのままやってもらわなければならない事項、あるいはそういう方向性を示しながら各学校にある程度の裁量の幅を持って工夫をしていただくように示している事項と、教育の内容、各事項に伴いまして、現行の学習指導要領につきましてもそういった性格の違いがあることは事実でございますけれども、例えば卒業式、入学式におきます国旗・国歌の取り扱いにつきましては、これはそのままの形で全国の各学校におきまして、入学式、卒業式におきましては国旗を掲揚し国歌を斉唱するということは最低限やっていただかなければならないという意味理解していただきたいと思います。
  116. 石井郁子

    石井(郁)委員 ちょっと具体例で伺うんですけれども、この議論の間に、これは七月二十三日の新聞ですけれども、福岡県北九州市教委が、八六年から四点指導というのをやっているそうですね。国旗掲揚の位置はステージの中央だ。式次第には国歌斉唱を入れる。三つ目には、国歌斉唱は教師のピアノ伴奏で行い、全員が起立し、正しく心を込めて歌う。四番目に、教員は全員参加。  正しく心を込めて歌うというのを聞いて、私はこれこそ内心にまで踏み込んでいるのではないかというように思うんですが、しかし、これに対して指導第一課長は、学習指導要領の解釈に基づいている、その要領を超えるものでも子供の信条を踏みにじるものでもないと説明しているんですね。これは文部省、どう思いますか。
  117. 御手洗康

    御手洗政府委員 御指摘指導につきましては、北九州市教育委員会学校設置管理者としての権限におきまして各学校教員等に指導しているものであろうかと存じておりますけれども、具体的な一々の指導内容については報告は受けていないところでございますが、お聞きする限りでは、校長が教員児童生徒に対して指導すべき指針として示しているということであれば、それは設置者の判断に任せられていることであろうかと存じております。
  118. 石井郁子

    石井(郁)委員 今これをお聞きになっても、やはりそれは結構だという文部省のお考えですか。心を込めて歌いなさいということを指導しても、設置者指導として認められるということですか。
  119. 御手洗康

    御手洗政府委員 学校教育におきます国歌の指導につきましては、その意義を理解し、それを尊重する態度を育てる、こういうことを最終の目標として行っているわけでございますので、尊重する態度を育てるような指導のあり方として教員がそういった態度で教えていくということは、私ども指導から見ましても特段問題はなかろうかと存じております。
  120. 石井郁子

    石井(郁)委員 私は、今の答弁を聞いて、やはりこれは大変だなとますます思いました。  内面に立ち入って強制できないということをおっしゃりながら、しかし尊重する態度だったらこういうこともやっていい、こういうこともやっていいということになると、全然境界がないじゃないですか。私は、そういうことに行き着くというのがこの問題だというふうに思うんですね。  つまり、内面、価値にかかわる問題を教育の場で扱うときには抑制的でなければいけません。また、本当に慎重でなければいけないと思うんです。これが教育基本法のとってきている立場だというふうにも思うんですね。ところが、今それを大きく踏み外そうとしているということが私は大変危惧されるわけであります。  時間がありませんので、最後に、ドイツの教育法学の創始者と言われる人で、ハンス・ヘッケルさんという方がいらっしゃるんですけれども学校の行政はどうあるべきかということで、大変私たち考えなきゃいけないのですが、こういうことをおっしゃっているわけです。  それは、学校がドイツの文部省ともいうべき学校官庁の命令下にある下級官庁になって、教師が官僚制度に組み込まれていっている、そういう現状の中でおっしゃっていることなんですが、このような現状は疑問であり不健康だ、自由で自立的な人間を育成、教育すべき場がみずから不自由ではあり得ない、生き生きした個性豊かな人間が、常に新たで個性的な状態で教育を受ける場が規範や命令の支配するところとなってはならないと。だから、命令の支配するところになってはならないんですよ。学校が本当に責任と自由、民主主義に満ちていなければならないんじゃないですか。  そういう意味で、私は、今回の文部省の国旗・国歌の義務づけ、あるいは上意下達の教育行政というのは、本当に世界の流れと逆行するということを厳しく申し上げまして、きょうの質問を終わりにいたします。ありがとうございました。
  121. 小川元

    小川委員長 次に、濱田健一君。
  122. 濱田健一

    濱田(健)委員 社会民主党の濱田健一でございます。  人権問題について質問要旨を出して、二十分お話を伺う予定にしておりますが、まず大臣に、今の石井委員の御質問に関しまして、質問の中には入れていないんですが、一点だけ御見解をお聞かせいただきたいと思うんです。  大学におられたということを前提にして、今回、君が代の歌詞、歌の意味について、政府は象徴天皇のおられる日本という国が永遠に発展するように、栄えるようにというような意味で統一見解を出されたというふうに思っているわけですが、仮に文部大臣が今大学にいらっしゃって、入学試験で君が代の歌詞についての意味を問うというふうな試験問題が出されたときに、今度の政府の出されたような見解も出てくるだろうし、古今和歌集の中で脈々と続いてきた、言われてきたいろいろな解釈が、それぞれの人の人生の中で解釈の仕方というものがあると思うんですが、答えというのがいろいろ出てくるかと思うんですね、そのときに、これはマルよ、これはバツよというようなことがあるのかないのか。文部大臣のお考えで結構でございます。
  123. 有馬朗人

    有馬国務大臣 別に、文部省として統一見解があるわけではございませんが、実は同じような御質問がきのうございました。ただ、そのときに、本当に質問という格好じゃなくてありましたので直接お答えをしなかったのですけれども、私の見解は、いろいろな答えに対していろいろな採点法があると思いますけれども君が代の解釈については、まずこういうふうに考えられるかと個人的には思っています。  それは、歴史的な面、古今和歌集なり和漢朗詠集なりに出てきたときの君が代の解釈、当時の人々の、当時の文化の中で考えられる君が代の解釈、これは今でも成り立つと思うのですね。それから、今回のように国として一つ法案を提出するときの解釈、特に新憲法のもとで象徴的な天皇と日本という国が長い間繁栄することを祈る、こういう一つの公的な解釈、両方あって、例えば入学試験の問題に出ることはまずないと思いますけれども、仮に十歩譲りまして、一歩じゃなくて十歩ぐらいあるいは百歩ぐらい譲って出たとします、そのときに、両方の解釈、またさらに違う解釈もあり得るかもしれませんね、それはそれぞれの意味があって正解になると思います。  しかしながら、もし仮に試験に古歌としての解釈はどうかと言われたり、あるいは現在の、今回の法律化の際に出した見解はどうだったか、こういうふうに限定されれば、それに対して答えがおのずから決まってくると思っております。
  124. 濱田健一

    濱田(健)委員 私は、実は内閣と文教委員会の合同審査のときにこのことを聞きたかったのです。政府がいろいろな解釈のある歌詞の意味について一定の限定した解釈をすることは、私から見ると危険だなというふうに申し上げたかったわけでございますが、きょうはこのことを中心にやる議題ではございませんので、今の大臣の御見解をお聞きしたということにしておきたいというふうに思います。  子どもの権利条約の批准から既に五年たちました。これが採択されて五年、国内で批准されて五年、ちょうど十年たったわけでございますけれども、私たちから見ると、「チャイルド」というのを「子供」と訳さずに「児童」というふうに訳してしまって国会に出すというような、本当にそれでいいのかなという思いもちょっといたしましたし、国内法を全然変えずに批准だけやったということで問題視したわけでございますが、今度ようやく子供の買春や子供ポルノ禁止法という、子供たちの、今、日本の国の中でもそうなんでしょうが、発展途上国等でのこういういびつな問題に対しての規制する法律がやっと国会でできたということは一つの前進だというふうに思っているところでございます。  ただ、子どもの権利条約の一つ一つの条項を見たときに、子供たちの権利を守っていくという趣旨、立場から見たときに、まだまだ国内法を変えなくてはならない点、例えば一つ申し上げますと、民法における婚外子の相続差別というような問題等を含めて、子供の権利の保障に差別があってはならないとする子どもの権利条約に矛盾するような国内法の規定の改正というものが、二十一世紀を目前にしながらまた二十一世紀という新しい時代に入る中で、より求められているというふうに思うのですが、こういう矛盾点を今法務省としてはどのように改正していこうとされておられるのか、全くそれは考えていないのか、そういう部分について問いたいと思います。いかがでしょうか。
  125. 細川清

    ○細川政府委員 嫡出でない子の法定相続分を初めとするいわゆる婚外子に関する法改正の問題についてでございますが、この問題が社会や家族のあり方に極めて重大な影響を及ぼすものであり、その取り扱いについては国民の意見に十分配慮する必要があると認識しているところでございます。  そして、平成八年の総理府による世論調査の結果では、嫡出子と非嫡出子の相続分を同等にする改正に賛成の意見が二五%、反対の意見が三八・七%。女性のみを取り上げてみますと、賛成が二一・三%、反対三九%となっているところでございます。このように、この問題に対する国民の世論が大きく分かれている状況でございます。  そこで、法務省といたしましては、国民が議論する上で参考となる情報を提供しつつ、引き続き国民各界各層の議論の動向を見守ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  126. 濱田健一

    濱田(健)委員 私が一点絞って具体的な部分でお聞きいたしましたので、そういうことになると思うのですが、いわゆる子供という、個人というか個々に視点を当てたときのさまざまな矛盾点を持つ国内法は、やはり今後早急に、時間をそうかけないで、矛盾という点について正すということが立法府である国会の大事な使命だというふうに思いますし、それは私たち議員がみずからやっていかなくてはならない点として、みずからを当然奮い立たせなければいけないわけですが、関係する省庁としてはこの部分についても早急な取り組みを私は要求をしておきたいというふうに思っております。  法務省はもう結構でございます。ありがとうございました。  この権利条約について、先生たちから見ても、これでは学校現場指導できないやというような文言といいますか、いろいろなところがあるというような解釈もなされているわけでございますけれども子供という側から見たときに、この権利というのが、子供は一人の人間であるという大きな大きな大前提の中で決められた条約でございますので、それに向かって教師による体罰や性的な虐待というものがなかなか減っていかない。教育現場では、統計によっていろいろ違いますけれども、増加傾向にあるというような報告も私たちのところには届くわけでございますが、こういうものを徹底してなくしていくための手だてを文部省としてはどのように講じておられるのか。
  127. 有馬朗人

    有馬国務大臣 お答え申し上げます前に、先ほど私が天皇を象徴とする日本国がと言うべきでありましたのを、象徴天皇と日本国というふうに順番を間違えておりましたので、ちょっとそれを訂正させていただきます。  もう一回丁寧に解釈を申し上げておきましょう。  君が代の歌詞は、日本国民の総意に基づき、天皇を日本国及び日本国民統合の象徴とする我が国の末永い繁栄と平和を祈念したもの、こういうふうに解釈することが適当であると考えている次第でございます。  以上、訂正を申し上げました。  次に、今の、徹底のための手だてはどう講じているかという御質問でございますが、まず、学校教育において児童の権利に関する条約の趣旨に沿って児童生徒の人権に十分配慮した指導が行われることが重要なことであると考えております。特に、児童生徒教育に直接携わる教員に対して条約の趣旨を周知徹底することは極めて重要な課題であると認識いたしております。  このために、文部省におきましては、都道府県教育委員会等に対して条約の趣旨を生かして一層指導充実していくべき主要な点について通知するとともに、各種の広報誌や教員等を対象とする研修会などの場できめ細かな周知に努めているところでございます。  今後とも、条約の趣旨の徹底に努めるとともに、教育現場における教員による体罰や性的な言動等が根絶されるよう、あらゆる機会を通じて指導を徹底してまいりたいと思っております。特に、このところ性的な問題がよく起こっておりますので、これは絶対ないようにすべく努力をさせていただきたいと思っております。
  128. 濱田健一

    濱田(健)委員 現場教師指導の徹底ということでやっておられるということでございますけれども、それに関連して、けさほど山元委員からも御指摘があったように、人権擁護推進審議会の答申が出されました。人権という部分について、人権問題の国連の十年の非常に大事な節目の中で出された答申なのですが、私たちから見ると、法律を新しくつくるわけでもなし、財源的な手当てをどうしようということなどもなかなか触れておられないこの答申については、非常に不満足だというふうに私は思っているわけでございます。  そのことについて文部省に直接どうこう申し上げるつもりはきょうはございませんが、人権問題についての人々の認識というものが、財源的な措置による物的なというか外見的な改善というのは国の施策に基づきながら一定程度前進していることを否定はしないのですけれども、内面的な人権教育、一人の人間が多くの人々に対する人権、多くの人たちが一人の個人に対する人権というものを本当にどういうふうに内面的に見るか、そういう取り組みはまだまだおくれているというふうに思っておりまして、私は、けさの山元委員の御質問につけ加えるようですけれども学校教育における人権教育推進という立場では、文部省の中にこのことを担当する新しい課とか担当する審議官等の設置を行いながら、二十一世紀は人権の時代とか人権の世紀とかという言葉を使われる方々もたくさんおられるわけでございまして、役所のこれに立ち向かうというかこれに対する積極的な姿勢というものを示すべきときではないのかというふうに思うわけですが、その辺の御見解はいかがでございましょうか。
  129. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 御指摘ございましたように、人権教育は、憲法、教育基本法の精神にのっとりまして、人権尊重の教育推進するという意味学校教育社会教育にわたる重要な課題でございます。  このための新しい組織をつくってはどうかという御指摘でございますけれども先生御承知のように、現在、中央省庁等の改革を進めておるところでございます。新しい文部科学省に向けまして、現在、局課の組織編成を検討しておる段階でございますけれども、新しい省になりました時点での新しい初等中等教育局におきまして、適切な課が学校教育における人権教育を担当できるよう検討していきたいというふうに考えております。
  130. 濱田健一

    濱田(健)委員 時間がありませんので。  今、中央省庁等の改革に向けての動きの中で、私が申し上げたようなところは十分考慮いただきたいというふうに思います。  もう一点ですが、特設された道徳教育というのがございます。道徳というのは非常に大事だというふうに思いますが、押しつけ的な道徳は本当の意味子供たちが人間として育っていく上でプラスにはならないというふうに私は思う立場でございますが、総合的に見て、先ほどと同じことなのですが、人権、自分の人としての権利も、そして他人の人としての権利も十分守っていく、尊重されるという中において、では道徳というのはどういうことなのか、人の道、人の徳とは何なのかということも出てくるというふうに思うわけです。  私は、学校教育の中に、道徳教育もしかりですが、人権教育というある意味では特設した授業といいますか、そういうものも取り入れるべき課題だと長年思っておりまして、次の学習指導要領等の改訂の中ではそういうものも検討しながら手引書等もつくっていくべきではないかというふうに思いますし、先ほども話に出ました総合的な学習の時間のテーマに人権を積極的に取り入れながら、一人一人の子供たちがそれぞれに持っている人としての尊厳というものを大事にしながら、大事にされながら大人になっていく、そういう場の設定というものも非常に大事ではないかというふうに思うのですが、この辺についての御見解はいかがでしょうか。
  131. 御手洗康

    御手洗政府委員 道徳教育は、児童生徒が人間としてのあり方を自覚し、内面から人生をよりよく生きていく、そういった基盤となる道徳性を育成するということを基本としておりまして、決して特設された道徳の一時間の中でのみ学習がされるあるいは見つけていくということではございませんで、その時間も十分活用しながら、各教科や特別活動あるいはそれ以外の教育、家庭外の学校生活全体を通じて、さまざまな場面で人としてあるいは日本国民として必要とされるさまざまな道徳的な価値を体得していくという学習でございます。  これに対しまして人権教育は、日本国憲法及び教育基本法の精神にのっとりまして、児童生徒の発達段階に応じまして、これも学校教育がさまざまな場面、教科あるいは道徳、特別活動等を通じまして人権尊重の意識を一人一人がしっかり持っていく、こういう観点から行われるものでございますので、両者を一緒にしていくということは決して適切な学習活動ではないと思います。  もちろん、人権学習を通じて道徳性が非常に高まっていく、あるいは道徳の教育の中で人権をお互いに尊重する、あるいは思いやりの心を持っていく、そういった基本的な人権感覚が身につくということは道徳律そのものでもございますので、極めて大事な活動であろうかと思っているところでございますが、御指摘のございました総合的な学習の時間におきましても、これはそれぞれの地域の実態に即しまして、各学校の判断によりまして、各教科を通じて横断的に総合的に、あるいは先ほど来ございましたように地域の方々の御協力も得ながらさまざまな活動がされていく、その中で地域の実態、学校教育方針に基づきまして人権に関する学習がしっかりとしたテーマで学習されるということも当然あってしかるべきであろうと存じております。
  132. 濱田健一

    濱田(健)委員 時間が来ましたので、あとは要望を三点。  道徳教育のための教材というものはある程度いろいろな形で国もバックアップしていただいておりますが、人権教育の教材というのは民間の研究団体だけでしかほとんどつくられていないというのが現状です。それをつくるためのいろいろな知的なものの提供や財源的なバックアップというものも国は検討いただきたいということ。  研究指定校制度は、いろいろな学校の日常活動に対して制約をかけるというような意味で国や各都道府県は減らしていく傾向にありますし、そのことは是とするわけですが、人権教育についての研究をしていくという中身についてはより充実が必要だと私は思っておりまして、先ほど同和加配の問題もありましたけれども、人権教育担当教諭をふやしていくということはますます大事だというふうに思います。  そして、国立大学私立大学を問わず、大学教育を終えた社会人が人権教育という問題についてほとんど理解をし得ていないという現実では、そういう講座等も文部省がいい意味での指導を加えながら開設をしていくという方向性でぜひ努力をいただきたいというふうに思うところでございます。  これで質問を終わります。ありがとうございました。
  133. 小川元

    小川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十分散会