運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1999-03-19 第145回国会 衆議院 文教委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月十九日(金曜日)     午前九時開議   出席委員    委員長 小川  元君    理事 栗原 裕康君 理事 栗本慎一郎君    理事 小杉  隆君 理事 増田 敏男君    理事 藤村  修君 理事 山元  勉君    理事 富田 茂之君 理事 松浪健四郎君       岩永 峯一君    大野 松茂君       奥山 茂彦君    倉成 正和君       佐田玄一郎君    下村 博文君       高鳥  修君    高橋 一郎君       中山 成彬君    古屋 圭司君       渡辺 博道君    桑原  豊君       近藤 昭一君    田中  甲君       池坊 保子君    西  博義君       笹山 登生君    石井 郁子君       春名 直章君    濱田 健一君       粟屋 敏信君  出席国務大臣         文部大臣         国務大臣         (科学技術庁長         官)      有馬 朗人君  出席政府委員         科学技術庁科学         技術政策局長  加藤 康宏君         科学技術庁科学         技術振興局長  田中 徳夫君         科学技術庁研究         開発局長    池田  要君         文部大臣官房長 小野 元之君         文部省生涯学習         局長      富岡 賢治君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省高等教育         局長      佐々木正峰君         文部省学術国際         局長      工藤 智規君  委員外出席者         文教委員会専門         員       岡村  豊君 委員の異動 三月十九日  辞任         補欠選任   松永  光君     古屋 圭司君   池端 清一君     桑原  豊君   田中  甲君     近藤 昭一君   山原健二郎君     春名 直章君 同日  辞任         補欠選任   古屋 圭司君     松永  光君   桑原  豊君     池端 清一君   近藤 昭一君     田中  甲君   春名 直章君     山原健二郎君 三月十二日  国立大学学費値上げ反対私学助成金文教予算大幅増額に関する請願坂上富男紹介)(第一一四六号)  同(保坂展人君紹介)(第一一四七号)  同(藤村修紹介)(第一一八〇号)  同(上原康助紹介)(第一二四九号)  同(肥田美代子紹介)(第一二八六号)  国立大学病院看護婦増員労働条件改善に関する請願石井郁子紹介)(第一一七五号)  同(山原健二郎紹介)(第一一七六号)  私学助成抜本的拡充と三十人学級実現に関する請願江崎鐵磨紹介)(第一一七七号)  同(佐々木憲昭紹介)(第一一七八号)  同(平賀高成紹介)(第一一七九号)  私学助成充実に関する請願堀込征雄紹介)(第一一八一号)  新たな教育支援制度の創設に関する請願赤羽一嘉紹介)(第一二三六号)  同(赤松正雄紹介)(第一二三七号)  同(池坊保子紹介)(第一二三八号)  同(石垣一夫紹介)(第一二三九号)  同(近江巳記夫紹介)(第一二四〇号)  同(北側一雄紹介)(第一二四一号)  同(久保哲司紹介)(第一二四二号)  同(佐藤茂樹紹介)(第一二四三号)  同(田端正広紹介)(第一二四四号)  同(谷口隆義紹介)(第一二四五号)  同(西博義紹介)(第一二四六号)  同(福島豊紹介)(第一二四七号)  同(冬柴鐵三君紹介)(第一二四八号)  学生の公平で公正な就職活動に関する請願上原康助紹介)(第一二五〇号)  三十人学級実現高校希望者全員入学教職員定数増に関する請願石井郁子紹介)(第一二六二号)  同(藤木洋子紹介)(第一二六三号)  同(藤田スミ紹介)(第一二六四号)  三十人学級など行き届いた教育に関する請願吉井英勝紹介)(第一二六五号)  三十人学級教職員定数改善私学助成大幅増額に関する請願金子満広紹介)(第一二六六号)  同(矢島恒夫紹介)(第一二六七号)  行き届いた教育実現に関する請願木島日出夫紹介)(第一二六八号)  三十人以下学級実現私学助成抜本的拡充教育予算大幅増額に関する請願大森猛紹介)(第一二六九号)  同(瀬古由起子紹介)(第一二七〇号)  同(中林よし子紹介)(第一二七一号)  私学助成大幅増額に関する請願東中光雄紹介)(第一二七二号)  私学助成抜本的拡充小中高三十人以下学級早期実現に関する請願児玉健次紹介)(第一二七三号)  私学助成大幅拡充、三十人以下学級早期実現教育費父母負担軽減に関する請願古堅実吉紹介)(第一二七四号)  行き届いた教育に関する請願(辻第一君紹介)(第一二七五号)  行き届いた教育、ゆとりのある学校に関する請願穀田恵二紹介)(第一二七六号)  行き届いた教育小中高三十人学級早期実現に関する請願春名直章紹介)(第一二七七号)  行き届いた教育、小・中・高校三十人学級早期実現に関する請願松本善明紹介)  (第一二七八号)  教育費父母負担軽減教育予算大幅増額に関する請願寺前巖紹介)(第一二七九号)  国庫補助制度堅持私学助成大幅増額に関する請願山原健二郎紹介)(第一二八〇号)  すべての子供たちに行き届いた教育に関する請願佐々木陸海紹介)(第一二八一号)  同(志位和夫紹介)(第一二八二号)  同(中路雅弘紹介)(第一二八三号)  同(中島武敏紹介)(第一二八四号)  同(不破哲三紹介)(第一二八五号) 同月十八日  一学級定数を三十人以下にすることに関する請願山原健二郎紹介)(第一三一七号)  三十人学級早期実現教育予算私学助成拡充教職員定数増に関する請願田端正広紹介)(第一三一八号)  豊かな私学教育実現のための私学助成に関する請願田端正広紹介)(第一三一九号)  三十人学級実現高校希望者全員入学教職員定数増に関する請願田端正広紹介)(第一三二〇号)  三十人学級早期実現私学助成大幅増額に関する請願中桐伸五君紹介)(第一三九二号)  国立大学学費値上げ反対私学助成金文教予算大幅増額に関する請願北沢清功紹介)(第一四五九号)  私学助成充実に関する請願北沢清功紹介)(第一四六〇号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  日本学術振興会法の一部を改正する法律案内閣提出第二二号)     午前九時開議      ————◇—————
  2. 小川元

    小川委員長 これより会議を開きます。  内閣提出日本学術振興会法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大野松茂君。
  3. 大野松茂

    大野(松)委員 おはようございます。自由民主党の大野松茂でございます。  日本学術振興会法の一部を改正する法律案につきまして、何点かお尋ねをさせていただきます。  今我が国は、経済のグローバル化ボーダーレス化が急速に進み、そういう競争が激化する中で、史上かつてない速度で人口の高齢化が進行することによりまして、産業の空洞化社会的活力の喪失、生活水準の低下など、危機的状況に直面するのではないかという懸念が広がってきております。さらに、人類未来には、地球環境問題、食料問題、資源エネルギー問題など、地球規模の諸問題が大きく立ちはだかっております。  このような諸課題対応するために、科学創造立国を目指して、科学技術基本計画を初め必要な施策実施を期していくことが国の重要な政策課題となっているものと私は認識をいたしております。将来に向けて活力ある豊かな社会実現していくために、学術研究未来への先行投資として極めて重要であり、その期待はこれまでになく高まっている、このようにも認識をいたしております。  学術研究は、研究者の自由な発想と自主的な研究活動基本にいたしまして、人文社会科学から自然科学まであらゆる学問分野にわたって、大学研究所を中心推進されているものと承知をいたしております。このような学術研究成果は、その応用や技術化を通じまして、日常生活を支え、人類社会の発展の基盤を形成いたしております。  今や我が国は、学術研究水準向上と国際的な役割の増大を背景にいたしまして、独創的、先端的な学術研究を進め、世界の学術研究の進展に積極的に貢献すること、国際社会において我が国の国力にふさわしい役割を果たしていくことが強く求められております。  そこで、まずお伺いいたしますが、二十一世紀我が国にとりまして学術振興は一層重要な課題と考えておりますが、文部省としてどのような施策をとってこられたのか、また、今後の振興方策についてお示しをいただきたいと存じます。
  4. 有馬朗人

    有馬国務大臣 おはようございます。  ただいま大野委員御質問のように、二十一世紀に向けて、学術科学技術、こういうふうなものをさらに一層進めていかなければならないと思っております。単に科学技術だけが先行するのではなく、必ず人文社会研究もそれに伴って、両々相まって健全な科学技術を進め、科学技術創造立国を目指していかなければならないと思っております。そして、これから二十一世紀において迎えますなかなか厳しい世紀、その世紀を生き抜くために、このような大学中心とする学術研究振興を図っていかなければならないと思っております。  そのため、具体的には、平成十一年度の予算におきましては、科学研究費補助金を千三百十四億円、対前年度比で百三十五億円増して拡充いたしました。  第二に、日本学術振興会出資金を活用いたしました未来開拓学術研究推進事業のための経費といたしまして二百五十億、これもまた対前年度比三十二億円増しまして計上いたしております。  それから三番目に、ポストドクター等一万人支援計画実現に向けた、特別研究員など若手研究員養成確保のための経費を七千百二十七人分、前年度に比べまして九百九十七人増を計上するなど諸施策推進に努めております。  また、昨年一月には、学術審議会に対しまして、科学技術創造立国を目指す我が国学術研究総合的推進について諮問をいたし、今後の充実方策について精力的に検討してもらっているところです。  今後とも、平成八年七月に閣議決定されました科学技術基本計画学術審議会審議等を踏まえまして、学術研究振興のための総合的な施策推進に努めてまいる所存でございます。
  5. 大野松茂

    大野(松)委員 それぞれ時代の要請にこたえて積極的に対応していただいておりまして、このことに感謝をいたしているところでございます。  今お話にございました科学研究費補助金科研費につきましては、あらゆる分野のすぐれた学術研究を格段に発展させることを目的とする研究助成費といたしまして我が国研究基盤を形成していくための基幹的経費である、こう思っております。これまで数多くの独創的あるいはまた革新的な新知見を生み出してまいりましたし、すぐれた研究者を育てて新しい研究領域を開発するなど、大きな成果を上げてきたものと思っております。  我が国大学における研究を支えているこの科学研究費補助金状況は今どうなっていますか、この点についてお示しをいただきたいと思います。
  6. 工藤智規

    工藤政府委員 おかげさまで、先生方の御支援をいただきまして、科学研究費補助金につきましては、予算額の上では近年大変増額を見ているところでございます。  御指摘ございましたように、科研費は、大学中心とする基礎研究を行っていらっしゃる研究者方々への助成金でございまして、人文社会科学から自然科学まであらゆる分野学問分野対象にしているわけでございますが、おかげさまで、年々申請意欲研究者の間でふえてまいっておりまして、十年度における申請件数は十万件を超えるという状況でございます。  この審査に当たりましては、いわゆるピアレビューといいましょうか、約二千人ほどの専門家審査員方々で厳正な審査をしているわけでございますが、何分申請件数も多い中で、新規での採択率は約二五%と非常に厳しい状況でございます。  このため、私ども予算拡充はもとより努力させていただいているところでございますけれども研究者の間からは、制度のさらなる改善あるいはサービス向上等について多くの期待が寄せられてきてございまして、そのため、今回の改正によりまして、このような声にもこたえまして、抜本的な体制整備を図りたいということを予定しているのでございます。
  7. 大野松茂

    大野(松)委員 実は、最近五年間における科研費新規申請件数または採択件数採択率、これらの推移を見てまいりますと、全国並びに私立大学について見てみますと、全申請件数における私立大学申請件数割合は二〇%程度でございます。そしてまた、全採択件数における私立大学割合は二〇%少々に実はとどまっております。この私立大学の少ない理由は何であるか。言うなれば、全対象研究者の五五%が私立大学と想定されるわけでございますが、そうした実態の中で、この少ない理由は何であるかをお伺いいたします。
  8. 工藤智規

    工藤政府委員 科研費は、個人またはグループ研究者に対する助成金でございますので、国公私大学別に必ずしも配分しているわけではないのでございます。  ただ、グループの場合でも、いろいろな大学研究者方々が共同で研究していらっしゃるケースが多いのでございますが、たまたまその研究代表者の方のところを中心補助金が振り込まれるということなどございますので、そういう研究代表者ベースでどういう国公私構成かと申しますと、先生おっしゃいましたように、私立大学は約二一%ぐらいのシェアでございます。これはどういうことかといいますと、今申し上げましたように、必ずしもこれが国公私での機関別割合になっているわけではなくて、たまたま代表者がそうであるということでございます。  もう少し分析してみますと、科学研究費補助金というのは、人文社会科学とか自然科学などいろいろございますけれども人文系先生方よりは自然系先生方の方がどうしても申請アクティビティーが高いということもございます。  そうしますと、私立大学は、全国学生収容規模でいいますとかなりのものなわけでございますけれども分野別に見ますと、文系の学部等構成が多いということでございますとか、それから、御案内かと思いますが、私立大学の場合に、必ずしもドクターレベルまでの大学院整備されていない部分があったりいたしまして、研究アクティビティーとなりますと、どうしてもある程度限られた私学にならざるを得ない部分がある。そういう、必ずしも私ども国公私で差別しているとかいうことでは全くございませんで、審査員方々に厳正に御審査いただいているわけでございますけれども私立大学構成分野別構成、あるいは大学院等整備状況などにも影響があるのではないかと考えているところでございます。
  9. 大野松茂

    大野(松)委員 人材立国、大事なことでございますが、これを実現させていくために、個々の大学が果たし得る役割というものは極めて大きいと思っております。  また、大学がそれぞれ特徴ある進め方をしていく中でも、科研費申請率というのは大学教員意欲をはかる指標ではないか、このようにも思うわけでございます。ですから、この科研費獲得額は、競争によって得ることのできる筋のよい外部資金、このようにも言えるのではないかと思っておりまして、大学改革にどれほど本気であるかということを科研費獲得実績に反映することにあるいはなりはしないか、このようにも思うわけでございまして、大学活力を示すバロメーターとしても、一つの視点がこのことにありはしないかと実は思っているわけでございます。  次に、お伺いいたしますが、科研費我が国を代表する競争的な研究費でございます。また、大きな期待を担っております。資料によりますと、先ほどありましたように、平成元年度に比べまして、予算平成十一年度では約二・五倍、申請件数では平成十年度十万件で約一・七倍、採択課題数では平成十年度四万二千件で約二・二倍、こういう数字が出ております。  競争的に配分される以上は、厳正な審査評価の仕組みが確立されることが前提でございます。先ほどもお触れいただいたところでございますが、現在の審査制度そのもの我が国が独自に開発したもの、このようにもお聞きしておりますが、審査の仕組み、またこの厳正化公平化、これらの点についてお尋ねいたします。
  10. 工藤智規

    工藤政府委員 科学研究費補助金は、国からの補助金ではございますけれども、従前から、文部省に置いております学術審議会の中に科学研究費分科会というのがございまして、分科会にそれぞれの専門分野ごとの小委員会等を設けまして、専門家先生方での御審査をいただいているわけでございます。  その審査に当たりましては、その種目によっていろいろではございますけれども、原則的には、第一段審査といいましょうか、書類を見ての審査、それから合議制による第二段審査というのが一般的な研究費についての審査体制でございまして、その第一段審査に当たる各分野専門家先生方については、日本学術会議からの御推薦を仰いでお願いしているところでございます。  御案内のとおり、日本学術会議というのは、日本におきます各分野の学会からの御推薦といいましょうか代表者構成されているいわば日本の学者の方々の英知の集団でございまして、そちらの方の御協力を得ながら審査員をお願いし、それから、科学研究費分科会におきます合議制審査員でさらに合議しながら慎重な審査をしておるという状況でございます。
  11. 大野松茂

    大野(松)委員 今回、文部省が長年にわたってじかにかかわってきた科学研究費補助金、この一部の審査配分業務日本学術振興会移管することといたしました。その理由は何か、まずこれが一点。そしてまた、日本学術振興会移管することによってどのようなメリットがあるのか、あわせてお伺いいたします。
  12. 工藤智規

    工藤政府委員 先ほども御説明申し上げましたように、近年、大変研究者科研費に対する申請意欲が盛んでございまして、平成十年度で既に十万件を超えている状況でございます。その審査等フォローアップ業務も大変は大変なのでございますが、他方で、御案内のとおり、最近の情勢といたしましては、内閣総理大臣平成九年八月の決定で、国の研究開発全般に共通する評価実施方法という、研究評価についてさらにきめ細かくやっていこうという、制度全体としての研究機関に対する基本方針があるわけでございますが、そのフォローアップがこの十一年度から本格化するという事情が一つございます。  また、研究者方々からは、先ほど申し上げましたように、新規採択率が約四分の一という非常に厳しい状況でございますので、もう少し科研費申請に当たってのいろいろなきめ細かい御相談でございますとか、あるいはその採択結果についてのいろいろな情報の開示でございますとか、さまざまなサービス向上についての要望が寄せられているところなのでございます。  このため、今後とも、このような要請研究者の御希望にこたえていくために、必ずしも文部省でこれまでどおりやった方がいいのかどうかということで、随分科研費分科会先生方とも御相談した結果、学術振興会といいますのは長く研究者研究振興のために事業を行ってきている団体でございまして、研究者からの信頼関係も厚いところでございます。この際そこに移管することによって、こういうようなもろもろの要請におこたえしていこうということが今回の制度改正のきっかけでございます。  これによってどういうメリットがあるかということなのでございますけれども、私ども文部省にとりましては、ある程度、よく求められておりますような政策企画機能の強化ということにもう少し重点を入れられるのかなという期待をしているのが一つと、他方学術振興会にとりましては、これまで既に諸外国対応機関連携協力して各種事業を行っているわけでございますけれども、このたびは、こういう助成事業を一体的に行うことによりまして、諸外国機関との事業整合性が進み、かつ国際交流事業を初めとする学術振興事業が一層強化されるものと期待しているところでございます。
  13. 大野松茂

    大野(松)委員 その移管に当たってなんですが、文部省に残される種目日本学術振興会移管される種目とはどのような考え方で区分されたのかということ、そしてまた、将来、すべての種目日本学術振興会移管するおつもりなのかどうか、これもお聞きいたしたいと思います。
  14. 工藤智規

    工藤政府委員 今回、予算で一応予定しておりますのは、金額的には、十一年度予算科学研究費補助金千三百十四億円のうち、学術振興会への移管分としましては八百二十六億ほどを予定しているわけでございます。  これはどういう考え方でということでございますけれども基本的には、科学研究費補助金といいますのは、若干言葉に語弊があるかもしれませんけれども、いわばノーベル賞級のかなり高度な研究から若手等を含めた一般的な研究までさまざまでございます。そういう中で、国として全部今まで文部省でやってきたわけでございますけれども種目によりましては各省庁との連携を必要とするものでございますとか、国としての関与の必要性についてはある程度濃淡があるところでございます。  したがいまして、今回、文部省に残すことといたしましたものは、政策的に重要な研究領域推進でございますとか、あるいは各省連携を必要とするものでございますとか、あるいは時として、例えば防災のように緊急な課題の取り組みを必要とするような場合でございますとか、そういう種目について、ある程度政策的要素が強いものでございますので、文部省に残し、その他の、ある程度制度的に定着し、研究者のためにも、混乱の余地がないものについて学術振興会で処理していただこうというものでございます。  将来これをどうするかというのは現時点では必ずしも即断できませんけれども、今後、学術研究をめぐる状況でございますとか、あるいはこの科研費補助金役割変化等もあることでございましょうし、また、学術振興会における体制整備といいましょうか事務処理等、ある程度なれていただかなければいけない部分もありますので、その体制整備状況等をいろいろ総合的に勘案いたしまして、かつ、学術審議会等専門家方々と御相談いたしながら適宜対処してまいりたいと思ってございます。
  15. 大野松茂

    大野(松)委員 この科研費業務の一部を移管することによりまして、日本学術振興会業務が増大することになります。現在、特殊法人全体について整理合理化が進められております中で、今次の措置はどのように理解したらよいのか、こういう観点もあるわけでございますが、お尋ねします。
  16. 工藤智規

    工藤政府委員 今回の学術振興会補助金業務移管につきましては、科研費補助金について非常に大幅な拡充が図られたこと、あるいは各種サービス向上等が求められていること等への対応なのでございますけれども、その際、私ども文部本省の中でも、担当者は夜昼なく非常に仕事をしていただいているわけでございますけれども、泣く泣くといいましょうか、ある程度本省の定員を削減しながら学術振興会体制整備を図らせていただいているところでございます。  ちなみに、学術振興会におきましては、平成八年から出資金を活用した未来開拓事業ども行ってございまして、予算ベースで見ますと、ここ五年で十一・五倍ほどの事業量に拡大しているのでございます。そういう事業対応した必要最小限の体制整備はある程度図らなければいけないという要請を私ども感じているわけでございます。  他方で、特殊法人全体についての見直し、合理化という要請もあるわけでございまして、私ども、それにも配慮したわけでございます。なお、ちなみに申し上げますと、政府部内におきましても、かねがね特殊法人については全般に見直しをしているわけでございます。  一昨年、平成九年の十二月の閣議決定で「特殊法人等の整理合理化について」ということが定められてございますが、この中で、学術振興会につきましては、科学技術創造立国を目指す上での重要性にかんがみまして、他の特殊法人とは違って、例外的にこのように言われてございます。「適切な事務の効率化を図りつつ、必要な体制拡充推進する。」ということでございまして、私ども、これをてこに、無原則にこの振興会の拡充を図るということではございませんで、先ほど申しましたように、本省定員の削減も含めながら必要最小限の体制整備を図ったわけでございまして、今回の移管については、この閣議決定の趣旨にも合致するものと考えているところでございます。
  17. 大野松茂

    大野(松)委員 実は、これは昨年の十一月十一日の新聞の記事でございますが、この科研費について、平成八年度までの四年間に終了した研究のうち、報告書が提出されず成果がわからない研究が約二百件あったと会計検査院の調査で判明した上に、文部省が同じ研究者に新たな補助金を助成していた事例もあるとして、会計検査院は文部省に、研究の事後評価が不十分として改善を求める方針である、実はこの新聞にこう書かれております。  この事実関係についてお示しをいただきたいと思います。
  18. 工藤智規

    工藤政府委員 昨年の報道に、会計検査院の平成九年度の決算検査報告書におきまして、御指摘のような御指摘がございました。  これは、若干御説明させていただきますと、科学研究費補助金も、これは補助金でございますので、補助金適正化法に基づく適正な処理が必要なのでございますが、補助金適正化法に基づく必要書類というのは実績報告書というものでございまして、それは、この科研費についてすべて適正に処理されてございまして、不適正経理等の案件はないのでございます。  他方で、御指摘されておりますのは、こういう補助金の法律上の適正処理とは別の話といたしまして、私ども科研費を受けられて研究された先生方に、研究成果報告書の提出をお願いしてございます。これは、せっかく研究された成果社会に還元して公の財産にしていこうという趣旨なのでございますけれども、そういう公のパブリシティーを高めるという手だてといたしましては、必ずしも研究成果報告書だけではなくて、学会での御発表でございますとか、あるいは、先ほど申した会計検査上の必要な実績報告書でございますとか、あるいは研究成果報告書の概要といいましょうか、むしろ簡単版のレポートなどでもある程度公表されているところなのでございます。  この研究成果報告書がなぜおくれているかというのは、グループ研究などをやっておりますと、いろいろな大学先生方が分担して研究していらっしゃるわけですが、研究成果報告書というのはいわば冊子なのでございます。物によっては何百ページにもなるのでございます。  研究者先生方はまじめでございますので、せっかくつくられるときには、いろいろ、文章の表現の体裁を整えたりとか、あるいはデータを更新したりとか、どうしても若干時間がかかる、手間取るのはしようがない部分がございまして、これをもって、先生方研究をサボっているとか、あるいは不始末をしているということではないものですから、私どもは余り目くじらを立てて督促をしていないのでございますけれども先生方研究に余り支障ない限りで、できるだけこれを正規に出してくださいということでの督促等をその後、こういう検査院の指摘もございましたので、させていただいているところでございます。
  19. 大野松茂

    大野(松)委員 誤解されないような対応をこれからもお願いしたいと思います。  最後に、大臣にお伺いいたしますが、有馬文部大臣は、原子物理学の分野我が国の泰斗として内外ともに高い評価を受けておいでになりますが、大臣御自身も、科研費の交付を受けられた実績がおありだと存じます。その立場で、科研費についてどのような感想をお持ちで、また、その御経験から、今後のあり方についてお考えがありましたらお示しをいただきたいと思います。
  20. 有馬朗人

    有馬国務大臣 研究者として、一言で申し上げますと、実にありがたい、こんなにありがたいものはないんですね、そういうことでございます。ただ、私自身は理論物理でございますので、紙と鉛筆と計算機をちょっと使うぐらいでありまして、それほど大きなお金は使いませんでしたけれども、それにしてもありがたい。特に、若い研究者を養成する上でこれほどありがたいものはないんです。そういう意味で、大正七年からの伝統でございますけれども大学における研究者にとって極めて重要な研究経費でございまして、心から感謝を申し上げたいと思います。  特に、この研究費科学研究費補助金のいいところというのは、各研究者、各研究グループの一人一人、あるいは一グループごとのみずからの考えで提案をして研究を続けることができる。すなわち、基礎研究というのはやはりボトムアップ型ということが極めて重要でございますので、そういうふうに研究者の自由な発想と独創性を大切にしてこの研究費を使わせていただくということで大変重要なことだと思っておりますし、ありがたいことだと思っております。  さて、ただいま御質問いただきました中で極めて重要なことは、今後どういうふうにこれをしていくか、科研費に対してどういうやり方がいいか、こういう御質問でございますが、私は、審査それから評価制度というものをやはりもっと充実していかなければならないと思っております。非常に数多いものですから、審査をしてくださるレフェリーも大変なのですが、そういう審査評価制度をさらに充実していくべきだと思っております。さらに、サービスの上で、さまざまな面からのサービス向上を図っていかなければならない。  それからもう一つは、どういうふうに審査が行われてきたのか、どうして自分のが落とされたかというふうなこと等々いろいろな問題が研究者の側にはございますので、一層透明性を確保していくべきだと思っております。  何よりも重要なことで、お願いでございますが、やはり今後とも予算を伸ばしていくということで努力をさせていただきたいと思っております。この点、ぜひともよろしくお願いいたしたいと思います。  今後とも、科学研究費が使われまして、日本学術研究が一層世界で高い地位を占めることができるよう努力をさせていただきたいと思っております。
  21. 大野松茂

    大野(松)委員 本案につきまして賛成であることを申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  22. 小川元

    小川委員長 次に、近藤昭一君。
  23. 近藤昭一

    近藤委員 民主党の近藤昭一でございます。  本日は、日本学術振興会法の一部を改正する法律案に関連をいたしまして、科学研究費補助金一般についてお伺いをしたいと思います。  有馬文部大臣におかれましては、私も科学技術委員会でお世話になっておりまして、科学技術庁長官も兼務していただいておりますので、その科学技術委員会におきましても質問をさせていただきました。きょうは文教委員会に差しかえでやってまいりまして、引き続き、科学技術振興ということで少々お伺いをしたいというふうに思っております。  日本は今、科学技術立国、とにかく資源がない、そういう中で人材を育成して、二十一世紀に向けて若い人たちに夢を持って勉強していってもらおう、そういうことだと思います。  そういう中で、少々科学技術委員会のときの重複にはなるんですが、先般、総理府が調査をしておりました中で、一般の国民の皆さんに、科学技術関係、科学技術について何が一番関心があるかというような質問、設問というか調査が行われておりました。  その中で、一番最初に、やはり地球環境の問題であると。今大変いろいろな問題が起きております。ダイオキシンあるいは環境ホルモン、こういったことに関連しまして、環境に対して関心が非常に高まっている。そして、そういった環境が原始時代というか昔に戻る、そういうわけにはなかなかいかない。しかし、やはり日本は、そういったものを技術をもって克服していく。もちろん、科学技術万能というわけにはいかないと思います。しかしながら、やはり日本は、冒頭申し上げましたように、科学技術でこれから日本という国を前面に押し出していく。そういう中で、やはり日本の技術というものを使ってそういった環境問題も解決していってほしい。あるいは国際交流におきましても、そういった技術の方面で国際貢献をしていく。そういう観点から環境問題に関心が非常に高いのではないかと私は推測いたしております。  また、二番目には生命とか医療。先般は臓器移植が国内でも行われたわけでありますが、そういった生命に関すること、医療に関することをやはり技術をもって克服していってほしい、そういうことだと思います。  そしてエネルギー問題。日本は資源が少ない、そういう中でいかにしてその少ない資源を有効利用していくか。また、大気汚染あるいは環境汚染といったものをクリアしながら、そういうものを克服したエネルギーをどう開発していくかということではないかと思います。  上位三つがそんなようなことだったと思います。そういった国民の皆さんの大きなニーズがある、関心があるという大前提。  そしてもう一つは、これはそういうニーズと大変に関連してくると思うのですけれども、そういった国民の皆さんのニーズとは別に、日本の政府として、やはり科学技術振興といったことにもっと重点を置いていこう。科学技術委員会で私が質問しましたのは、特にエネルギー問題、環境を保全しながらいかに効率のいいエネルギーを日本として開発していくか、国家としての戦略といいましょうか、そういったものがあると思うんです。ですから、その国民の皆さんのニーズ、関心、それとともに、政府として、やはり科学技術の関係でもこういったものに戦略的に力を入れていこう、そんなことがあるんだと思うのです。  ところで、今回の学術振興会改正の冒頭の大臣の趣旨説明にもあったと思うのですが、「学術研究の動向に即して」この法律を改正していくとようなお言葉がありました。「学術研究の動向に即して」とありますが、それは、どうやってその動向を探っていらっしゃるのか、それはどういう意味だということをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  24. 工藤智規

    工藤政府委員 御案内のとおり、文部省には、学術関係を御審議いただく会としての学術審議会というのがございます。これは、各界の研究者方々でございますとか、その他財界、言論界も含めて、学識経験者の方々にお願いしているわけでございますが、そういうところで種々御審議いただく場があるのが一つございます。  他方、科学研究費について申し上げますと、科研費審査につきましては、学術審議会科学研究費分科会において御審査いただいているわけでございますが、その審査に当たりましては、日本の各学会等を代表する方々構成いたします日本学術会議の御推薦を仰ぎながら、約二千人の審査員方々に、それぞれの専門分野ごとに厳正な審査を行っていただいているところでございます。これらの審査に当たってくださっている方々は、それぞれ当該研究分野において最先端の研究をみずから行っていらっしゃる方々であるばかりでなくて、国内はもとより、国際的な研究動向等についても十分承知の上で審査に当たっていただいているところでございます。  科研費につきましては、このような審査制度でございますとか、あるいは審査員方々を通じての学術研究動向の反映ということで、私ども、その審査に適切に反映されているのもと考えているところでございます。
  25. 近藤昭一

    近藤委員 この科研費の分配については、今おっしゃったような審議会を通してやられるということだと思います。  半分ぐらい私の想像もあるのですけれども、こういった学術研究は、どちらかというと基礎的な部分を重視して、先ほど私が申し上げましたように、国民の皆さんの関心とかニーズとか、あるいは国家戦略とは少々違うところなのかなという気もするのですが、その辺をちょっと確認したいのです。大きなところとは別のところで科研費の関係は動いていらっしゃるのかということです。
  26. 工藤智規

    工藤政府委員 先ほど先生がおっしゃいました環境、生命あるいは医療、エネルギー等、日本ばかりではなくて全世界的にも大変大事な分野でございます。こういう社会の、あるいは国民的な、人類のニーズにどうこたえていくかという観点からの御質問かと思うわけでございます。  御承知のように、大学等の基礎研究、この科学研究費補助金もその対象なのでございますが、というのは、いわばボトムアップと申しましょうか、研究者の自由な発想と独創性をベースにしてそれを振興するということを基本にしてございますので、トップダウン的な、ある研究テーマを国なりが示して英知を結集するというやり方とは別の動きでの基礎研究振興なのでございます。  ただ、そうはいいましても、大学先生方ももちろん社会的な関心あるいは要請については敏感でございますので、先生がおっしゃった環境等の種々の分野についての研究も当然たくさん含まれているところでございます。  他方で、私どもの仕組みとしましては、この学術振興会に絡みまして、平成八年から、政府からの出資金に基づきます未来開拓関係の推進事業を行ってございますが、これは産業界や各界の要請も受けながら、むしろある程度テーマを選定して、テーマ提案型のプロジェクトを推進してございます。  もちろん研究者の自主性をベースにするのはもとよりなのでございますけれども、一定の生命系あるいは理工系等の研究領域について、研究分野を設定して、研究リーダーを選び、公募の要素も取り入れつつ推進している仕組みでございまして、それはトップダウンということよりは、トップダウンとボトムアップのちょうど中間ぐらいの研究推進形態だと思ってございます。  そういうところでのテーマでございますとか、あるいは国立大学の関係は、国立学校特別会計ということで設置者として文部省でいろいろ予算措置などをさせていただいてございますけれども、関連の研究機関研究所の研究体制整備にも取り組んでいるところでございます。  これらをいろいろあわせますと、例えば、御指摘のありました地球環境の関係でいいますと、関係の研究施設等の研究体制整備、あるいは、私どもは新プログラム方式と言っておりますけれども、複合的、総合的な資金援助によってその効果を上げるための研究体制がございますが、地球環境攪乱下における生物多様性の保全等の総合研究でございますとか、あるいは国際共同研究で、地球圏・生物圏国際協同研究計画への参加でございますとか、あるいは、ユネスコを通じた活動で、ユネスコの地球環境科学関連事業への協力でございますとか、いろいろなことをあわせますと、私どもでカウントできます平成十一年度の地球環境関係の予算としましては四百十八億余りに及んでいるところでございます。  あるいは生命科学といいましょうか、バイオサイエンスあるいはライフサイエンスという分野についていいましても、ざっとカウントしますと、科研費中心に七百二十八億ほどの資金が投入される見込みでございますし、エネルギー関係も、核融合を初めとするいろいろなエネルギー関連の研究について百六十六億ほどの予算を予定しているとか、各般にわたる御支援を申し上げているところでございます。  いずれにしましても、基礎研究だから世の中から離れていいというわけでは決してございませんで、学術審議会におきましても、産業界あるいは実業界等の各界の御意見を踏まえ、社会のニーズにこたえる形で審査にも意を用いているところでございます。
  27. 近藤昭一

    近藤委員 ありがとうございました。  研究者の自由な発想といいましょうか、余り縛らない、トップダウン的なものではないという中で、そういう審議会を通じて、国民のニーズとか必要性とかにそれなりの配慮をしてやっていらっしゃるということだと思います。この予算科研費につきましてはそういう側面が強い、余りトップダウン的なものではない。  ただ、全体的な予算では、科学技術振興科学技術立国日本ということをぜひ御配慮をいただきましてやっていっていただきたいと思うのですが、大臣、その辺はどうでしょうか。
  28. 有馬朗人

    有馬国務大臣 御指摘のとおりでございまして、科学技術創造立国のためにはさまざまなことを考えていかなければならないと思っております。  地球環境の問題、あるいは生命、医療、エネルギー、そういうそれぞれの問題は、国民の関心の大いにあるところであることを我々もよく認識しておりまして、今局長がお返事申し上げましたように、ボトムアップ型のよさとトップダウン型のよさとを常にかみ合わせながらやらせていただいております。  研究者も、決して国民の要望というものに関心を持っていないわけではございませんで、常にそれには関心を持っております。したがいまして、ボトムアップ型で出てきた提案の中にもその要望に極めて合うものがございますので、そういうものをかなり優先的に採用するというふうな努力をしていると思っております。そういう点で、大学及び国立研究所等々の研究者が、これからもさらに国民の要望に対して関心を持つべく努力をさせていただきたいと思っております。  特に、科学技術庁の方がトップダウン型のやり方はやりやすいという面も持っておりますので、科学技術庁と協力をしながら、先ほど近藤委員が御指摘になられました国民の要望をさらに一層、場合によってはトップダウン型で進めていく、と同時に、文部省の今までの伝統でありますボトムアップ型のよさをかみ合わせまして、さらに国民の要望にこたえるよう努力をさせていただきたいと思っております。
  29. 近藤昭一

    近藤委員 大臣、どうもありがとうございます。  そういった中で日本研究が行われている、科学技術振興あるいは一般的な、文系といいましょうか、社会科学振興が行われていると思うのです。  ところで、他の先進諸国と比べまして、日本研究者の一人当たりの研究費というのはどのような状況なのか。一人の研究者が持っている研究費は、全体的にどうか。そして、その研究費の中身ですね、公的補助がどれぐらいあるのか。公的補助については、外国と比べて多いのか少ないのか。そして、民間からの寄附等々で行われているものがどれぐらいの割合で、その部分については外国と比べて多いとか少ないとか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  30. 工藤智規

    工藤政府委員 科研費につきましては、おかげさまで近年予算充実が図られてきているわけでございますけれども、今御質問がありましたように、では諸外国と比べてどうか。特に私どもが気にしているのは、世界のガリバーでありますアメリカとの関係といいましょうか、こういう研究面でも、協調すべき面と競争を要する面と両方あるわけでございます。  比べ方はいろいろ難しいのでございますけれども、例えばOECDの購買力平価という指標がございますが、それによりまして研究者一人当たりの研究費を比べてみますと、企業を含む我が国全体の研究者の一人当たりでは、日本の場合、約二千二百万円なのに対しまして、アメリカ、フランスが約三千二百万円、ドイツが二千九百万円、イギリスが二千七百万円ということになってございまして、やや低い。その中でも、特に大学における研究者研究費ということで見てみますと、日本は千二百万円なのに対しましてアメリカは約三千六百万円ということで、相当な開きがあるという状況でございます。  もちろんいろいろな指標のとり方もございますけれども研究者先生方にお聞きしましても、実感として、どうもアメリカに比べてまだまだ研究費ももっと充実が必要であるとか、さらには、私どもも問題意識として感じておりますのは、研究者方々の処遇改善、あるいはサポート要員の充実でございますとか、研究を取り巻く諸条件の整備にまだまだ課題を感じているところでございます。  それから、御指摘ありました民間等からの、いわば研究費でどれぐらい国等が支出しているかということでございますが、これにつきましても、欧米諸国と比べて日本の場合には政府負担の割合が少ないというのが現実でございます。実際に、各大学におきます、特に、国立大学の方が経理を私どもは把握しやすいものでございますから国立大学について見ますと、科学研究費補助金と、それから、当たり校費と言ってございますけれども、基礎的、基盤的な研究経費、それと民間からの寄附等を含めた外部からの研究資金、その三つの主要な研究費構成割合がそれぞれ三分の一ずつということで、科研費にも相当負っているほかに外部からの御援助にも期待しているのが現実でございます。
  31. 近藤昭一

    近藤委員 ちょっと確認だけしたいわけでありますが、そうすると、研究者一人当たりの持っている研究費、使っている研究費というのは、総体的にまだまだ不十分だけれども大分ふえてきた。そういう中で公的な部分科研費については、今財政的には大変厳しい中ですが、徐々にふえつつある。民間からの寄附みたいなものは、総体的に以前から割合としては割と多かったんじゃないかなというふうに今お聞きをしたわけです。  ところで、その民間からの寄附、そういうものはふえているんですか、研究者に対して。
  32. 工藤智規

    工藤政府委員 民間等からの研究費については、寄附という形でいただいているものと、あるいは共同研究という形でお互いお金等を出し合いながら研究をするという形のものと、いろいろでございます。  金額的に、国立大学の場合で、例えば平成元年度と平成十一年度、ここ十年ほどの比較をしてみますと、平成元年度に外部資金関係の総額が四百三十二億でございましたが、平成十一年度では千百七十四億を予定してございますので、金額の上ではふえているのでございます。ただ、昨今の経済事情もございまして、ここ二、三年はちょっと、外部からの寄附等の伸び悩みで皆さん悩んでおられるという状況にございます。
  33. 近藤昭一

    近藤委員 ぜひとも科学技術立国日本をつくっていくために、また、文部省でございますので、やはり若い人たちがしっかりと学校において夢を持って勉強できるという環境をぜひ整備していっていただきたいと思います。  ところで、そういう量的な研究費部分と、今回の法改正の提案理由の中にもありました、とにかく研究者へのサービス向上ということを目指してこの法案を改正するということでありますが、直接サービス向上のために法案を改正するということではちょっと趣旨は違うのかもしれませんが、研究者の人たちが今受け取っている科研費の使いやすさということをお伺いしたいと思うんです。  量的にはだんだんふえているということでありますが、研究者の人たちが受け取っている科研費の使いぐあいということでございますけれども申請をして自分がその科研費をもらうことが決まる。では、それをどう執行していくかというところで、これはいろいろな声も聞くものですから、その声の現状がどうかということ、それに対してどういうふうにお考えかということをお伺いしたいと思うんです。  大学にいる研究者科研費を決定される。そうしますと、自分で執行するのではなくて、予算がおりてくると、大体この細目が決まっていて、それぞれの科目ごとにどれぐらいの予算がもらえるかということが決まる。そうすると、その研究者は、必要になったときに、この項目については、自分は、科研費として、予算として、補助金としてこれだけもらった。それで、必要なものができたので、大学の事務の担当者の人に、自分がもらっている予算の中でこれをまず支出したいというような、そういった予算の執行といいましょうか、研究費の支出の事務を担当してもらうということらしいですけれども大学で何人かの人が研究費をもらうということになると、例えば去年二人しかもらっていなかった大学が、極端に言うと、ことしは十人ももらうことになる。そうすると、事務手続的には五倍ぐらいの負担がふえる。ところが、そのふえた負担についての人件費はその科研費の中ではもちろん賄えないのではないか。ところが、現実の問題としては、五倍もふえたものの中で現場としては随分困ってしまう。  あるいは、予算として実験装置を置くことが認められた。ところが、それを置く部屋が今度は必要になった。そうすると、部屋を新たに準備しなくてはいけない。あるいは、部屋はあるけれども、その実験装置というものを置くためには少々改良する必要がある。ところが、その改良する費用というのはその科研費の中からは出てこない。  あるいは、今のにちょっと付随するわけですけれども、新たに部屋を置いた、実験装置は置いた。そうすると、関連の、例えば机がどうしてもふえるとかいすがふえてくる。あるいは、その部屋に一台複写機なんかも必要だろう。もろもろのそれに関連する設備、備品の購入なんかも、細かいものだけれども多分出てくる。細かいけれども、そういうものが積み重なってくるとかなりの費用だ。ところが、その費用は科研費の中からは使うことはできない。  あるいは、そういったことに関してスタッフも必要になってくるだろう。研究費、そして実験装置も認められた。でも、自分が研究しようとしたときに、その補助スタッフというか、それに関する専任スタッフとか、そういった人たちも必要になってくるけれども、この人件費については、何か一部認められるようになったというようなお話も聞いているのですが、なかなかまだまだスムーズじゃないところがあるのではないか。  あるいは、二十四歳、二十五歳の年齢になって、大学院も卒業して、でも大学に残って研究をしている。私の友人にもそういう例があったりしたのですけれども、いわゆるまだ働いてはいない、大学に残って研究をしている。そうすると、自分の生活費というか、給料はない。だから、そういうことのために結婚するわけではないんでしょうが、奥さんがそのだんなさんの生活費も面倒を見ている、そんなような状況。つまり、研究者本人の給料はそういった科研費からはなかなか、もちろんこういうものを認めるのはいかがなものかな、難しいとは思うんですが、ただ、現実問題として、働いていない、研究に専念している、では、その生活費はどうするか等々のいろいろな問題が出てくると思うんですよ。  そういった場合に、科研費としてはなかなかそういったものについては認められていなくて、現実の場ではかなり研究者の人が困っている。だから、量的には随分と予算としてはふえてきたけれども、それの運用、使い勝手という部分では随分とまだまだ課題があるんですというような声を聞くんですけれども、その辺は、もしかしたら今の私の聞いている声が間違っているかもしれないし、あるいは改善されているかもしれない。その辺をちょっとお聞かせいただきたいのです。
  34. 工藤智規

    工藤政府委員 御指摘ありましたように、これはせっかくの日本における研究者のあらゆる研究振興するための経費でございますので、できるだけ研究者方々の使い勝手のいいものにしていくのが、常に私ども課題として受けとめているところでございます。  そのため、これまでもいろいろな改善措置を講じてきたところでございますけれども、今御指摘がございました中で申しますと、基本的な前提といたしまして、科研費は、ある程度研究をする体制ができているところでの研究者研究を御援助しようということでございますので、全くの更地にこれから研究施設をつくって、研究設備を入れて、あるいは人を雇ってとなりますと、それだけで相当なお金を食うわけでございますし、せっかくの各研究者から要望の強い研究費、建物を建てたあるいは設備を買ったで、あとその後の研究費が出ないというのでは困るわけでございますから、基本的なベースが整っているところを前提にさせていただいてございます。  そのために、残念でございますけれども、建物代まではちょっと御勘弁いただきたいということでございまして、一部、研究装置あるいは設備をお買い求めいただくのはあり得ますけれども研究装置だけを買って、あとの実験経費が全くなくなるというのでは困るわけでございますので、そこも兼ね合いしながら、設備の割合をそれなりのリーズナブルなものにしていただくようにお願いしているところでございます。  他方で、建物の整備につきましては、国立大学の場合は、直接設置者としての責任で予算措置を講じているわけでございますけれども私立大学につきましても、例えば私学助成の一環で、学術フロンティア推進事業という形の補助事業を行うとか、別の方途を活用しながらぜひそういう研究体制整備に御努力いただきたいと考えているところでございます。  もう一つ御指摘のありました人件費の関係でございますが、これはかねがねいろいろな御意見があっていろいろ改善もしているのでございますけれども、欧米の場合は、ある程度グラントを確保しますと、それで人を雇うのは当然のようになってございますけれども日本の場合に、研究者方々にそういう雇用関係まで制度を開くのがいいのかどうかというのは若干御議論もございます。といいますのは、研究者が実際に雇用関係をする形で人件費を支出しますと、例えば保険を掛けなければいけないとか、あるいは源泉徴収の手続もしなければいけないとか、やはり人の雇用に伴う別の業務も結構いろいろふえてくるわけでございます。  そういうこともございまして、正式にあらゆる人件費まで使えるようにするには御議論もございましてまだいってございませんけれども、御案内のとおり、平成八年に労働者派遣事業に関する法律の制度改正がございまして、科学研究事業への労働者派遣という仕組みも整えられましたので、そういうスキームを活用しながらの雇用といいましょうか、大学院生なりあるいは研究補助員なりのお手伝いを仰ぐという道はあるわけでございます。  また他方で、原稿の整理でございますとかデータ処理のアルバイトでございますとかいう形であれば、労働契約としての雇用ではなくて、ある程度その業務に対する謝礼という形での人の確保というのは、従来からもできるわけでございますし、いたしまして、そういう形で、科研費基本的な性格からして建物とか一部お使いいただけない部分も若干ございますけれども、今後ともさらに、関係の先生方の御意見も承りながら、一層使い勝手のいいものにしていく努力をしてまいりたいと思ってございます。
  35. 近藤昭一

    近藤委員 いろいろとそれなりの背景があって、そういうことに対しては予算を使っていくのは難しいという状況があるんだと思うのです。ただ、せっかくそういった科研費がふえてきたのに、むちゃくちゃにという意味じゃなくて、余りむやみに使われるのはどうか、やはり実質的に使いよいものにしていくということは必要だと思うのですね。  今の、特に人件費の問題のところでありました、保険の問題を処理しなくてはいけない、あるいは年金の問題を処理しなくてはいけない、こういったことも大きな枠でいうと、とにかく事を起こすことにはそれに付随する経費がたくさん出てくる。そして、その経費だけではなくて、その経費を処理するための人件費といいましょうか手続と申しましょうか、そういったものがどんどんふえてくるんだ。ですから、予想もしなかったと言うと変な言い方かもしれませんが、なかなか予想しにくい、あるいは考えにくい予算も、何かやるとやはり付随して出てくるんだろうというふうに思うのですね。  そうしますと、ちょっと今お話も出たような気がするんですけれども、アメリカなどですと、そういうものがある程度出てくるんだという大前提のもとにグラント、いわゆる研究費の補助が決まった。そうすると、それに対して最低でも五〇%、多ければ八〇%とか、いわゆる研究費以外にそれぐらいの予算を見るというようなことが常識的にというか、慣行的にというか、そういうようなことが行われている。アメリカではいわゆるオーバーヘッドチャージというふうに呼ばれているようでありますが、日本的なオーバーヘッドチャージといいましょうか、今後日本もそういったものを考えていかれるおつもりがあるか、これについてどういうふうにお考えかということをお聞かせいただきたいと思います。
  36. 工藤智規

    工藤政府委員 御指摘のように、アメリカの場合は日本とは違いまして、日本の場合、研究費は、特に大学関係で申しますと、科研費をベースにしながら、あと当たり校費という形で一般的な研究のための経費を措置する、デュアルシステムという形になってございます。  アメリカの場合は、そもそも競争的な資金を確保することによって研究を遂行するという仕組みになってございまして、そのためにグラントを確保する。おっしゃいましたようなオーバーヘッド、かなり高額のものを大学全体として使う仕組みが定着しているようでございます。  日本の場合も、ある程度それを参考にしながらということで、私どもかねがね学術審議会先生方とも御相談し、御議論いただいているところなのでございますが、今でも一応ある程度できる部分がないわけではないのは、例えばある程度特定できる光熱水料などについては現に可能でございますし、お払いしているわけでございますが、先生御指摘のような欧米諸国のような本格的なオーバーヘッドの導入についてはまだ至ってございません。  これは、先ほど申しましたように、今の科研費といいますのは、研究者の所属する機関基盤的な研究条件がある程度確保されているという前提にしているものでございますのでこのような取り扱いになっているわけでございますが、今後どうあればいいかというのはいろいろ議論があるところでございまして、目下学術審議会において御検討いただいている次第でございます。その検討状況でございますとか各大学の実態等も踏まえまして、今後さらに検討してまいりたいと思っております。
  37. 近藤昭一

    近藤委員 ぜひともそういう現場の声に耳を傾けていただきまして、積極的に御検討いただきたいと思いますし、そういう制度がいいのかどうかということが大前提だと思うのです。例えば、折衷案と申しましょうか、アメリカの場合はある程度、五〇とか八〇とかかなりの高額でありますが、まず日本では一〇%とか一五%とか、そういうところで様子を見ながらやっていくということもいいのではないかなというふうに思うわけであります。  そんなお願いをしつつ、もう一つ、これは全く同じではないんですが、関連しているんですが、そういった研究費については随分と伸びてきたということであります。ところが、全体的な科学技術の運営費の問題ですね、やはり研究費と運営費というところの違いがさまざまなところで出てくる。  かつて素粒子ニュートリノの研究で有名だった東大宇宙線研究所観測装置のスーパーカミオカンデ、あれは去年でしたでしょうか、スーパーカミオカンデに関連して、そのカンデを使っての研究費そのもの、これは随分と伸びてきた、ところがカミオカンデを動かすための運営費、あるいはそれを修理するための装置補修費が不足していて、この装置がうまく動かないというような報道がたしか去年あったと思います。  いろいろと聞きますと、研究所というのは学校扱いであって、つまり学校特別会計。そしてその学校特別会計の中には、一般会計の部分から支出がされている。そして当時、財政構造改革がありまして一般会計から特別会計に入る予算が随分と削られた。その結果、カミオカンデの運営予算が不足してきたというようなことがあったのですが、今これについてはどういうふうになっているのでしょうか。きちっと解決をされているのかどうかということをお聞きしたいと思います。
  38. 工藤智規

    工藤政府委員 今先生御指摘がありましたように、この平成十年度、間もなく終わろうとしてございますけれども、十年度予算の政府案の編成に当たりましては、いわゆる財革法という法律に基づきまして一定のスキームが定められました。私学助成について対前年度同額以下ということでございますとか、国立大学の関係につきましては、国立学校特別会計の繰入額を前年度同額以下というスキームであったわけでございます。そういうスキーム下で、いわば一定の人件費の増加等もあるわけでございますが、前年同額以下という枠組みの中で、やむを得ず既定経費の見直し、縮減を図らざるを得ない側面になりまして若干御心配をおかけしたのは事実でございます。  ただ、そういう個々の研究施設等の研究費の見直し、縮減はございますけれども他方で、科研費の増でございますとか、あるいは、学長や研究所長の裁量にゆだねる経費について百億円余りの増額を図るとか、他の補完的な経費の増額も図って対応してきたところでございます。  十一年度予算においては、財革法が、おかげさまでと申しますか、凍結になりましたので、国立学校特別会計予算についてもそれなりの充実を図ってございまして、スーパーカミオカンデにつきましても、新たな実験のための経費をさらに上積みするなど所要の経費を計上してございます。
  39. 近藤昭一

    近藤委員 質問時間も終了いたしましたのでこれで終わりますけれども、今のお話を聞いていると、財政構造改革が凍結されたから解決した、解決というか補われた部分もあるのではないかなと思うのです。ですから、結局は、研究費はあるけれども運営費は不十分だったとか、そういうようなことに関して、やはり根本的な解決を要望したいと思います。  せっかく科学技術振興予算がふえている、科学技術立国を目指していくという中で、やはり使いやすい、研究者の立場に立ってそういったものが執行されていくというようなことを要望したいと思います。ありがとうございました。
  40. 小川元

    小川委員長 次に、山元勉君。
  41. 山元勉

    ○山元委員 民主党の山元でございます。  今、同僚の近藤委員が相当具体的なことについてお尋ねしましたから、私は、重複しないようにお尋ねをしたいと思います。  提案理由の説明のところで、大臣が、二十一世紀を目前に控えて、我が国科学技術創造立国を目指していくためには、補助を充実していくんだ、こういうふうにおっしゃっているのです。我が国施策として私も重要なことだというふうに認識をしておりますし、とりわけ、我が国は、資源が少なくて、科学立国の道を選ぶ、したがいまして科学技術全般について先行投資充実していく、こういうことが大事なんだろうと思います。したがいまして、この十年間ほどで、金額でいうと二・五倍ほどになっているし、申し込みの件数も一・七倍、二倍近くになっているわけですね。そういう点で重要なことだというふうに思うのです。  そこで、端的に、そういうふうにふやし続けてきたけれども、実績はどうだったんだ、評価について、文部省としてどのように認識していらっしゃるのか、まずお尋ねをしたいと思います。
  42. 工藤智規

    工藤政府委員 研究評価というのは大変大事なことでございまして、内閣全体といたしましても、国の評価の大綱的指針ということで取り組んでいるところでございますし、私ども学術審議会の方からも、評価体制の強化について御提言をいただいているところでございます。  そのため、私ども科研費研究成果等の評価につきまして、これは、御案内のとおり基礎研究でございますので、すぐ何か実用に結びつくとかそういうことではなくて、先生方が当初の研究計画に基づいてどういう形での研究成果を上げたのか、それがひょっとしたら実業界に還元されることがあるかもしれませんが、それはまた別の仕組みとしてお考えいただきたいわけでございますけれども、当初計画に沿っての研究成果評価につきましては、特に大型の研究費につきましては、中間段階と事後での両方の評価基準を定めておりまして、それに基づいた評価体制をしいているところでございます。  また、比較的小型の研究費についてまで中間、事後となりますと、費用効率とか研究者への負担とかいうこともございますのでなかなか、学術審議会の建議におきましても、ある程度の、論文の投稿でございますとか、学会等における研究成果を通じた評価中心として行われるのが望ましいのではないかという御指摘もいただいているところでございます。  そういう比較的小規模の科研費による研究につきましては、研究者に対しまして、学会等での発表の奨励でございますとか研究成果の公表、研究成果報告書等の形での社会への還元をお願いするなどしておりますほかに、十年度の研究計画調書から始めたのでございますけれども、新たに申請される場合に、これまでの研究成果についてもさらにテークノートするといいましょうか、具体的に記述していただくことによりまして、配分、審査の際にそれを活用するなど、いろいろな側面での評価充実を図っているところでございます。     〔委員長退席、栗原(裕)委員長代理着席〕
  43. 山元勉

    ○山元委員 先ほども、学術審議会での厳正な審査をしている、こういうお話がありました。今、評価の問題についても力を入れているということですけれども、しかし私、意地の悪い言い方をしますと、大臣の所信のところにもありましたけれども、より適切な配分だとか、裏返して言うと、余り適切でなかった、これは意地の悪い言い方ですけれども。あるいは、新聞の記事でも、移管によってきめ細かなことができるんだ、移管によってよくなるんだということが出ているわけです。裏返してもう一遍言いますと、意地悪く言うと、今まできめ細かでなかったとか適切でなかった、こういうことが言えるわけですね。  ですから、この移管という機会にしっかりとした、そういう今までの評価なり、評価というのは過去の事業評価ですね、あるいは検証をしてみる必要があるだろうというふうに思いますから、ぜひそこのところは文部省で改めて、この大きなお金がむだでなかったか、効率よく運用されてきたかということについては、十分御検討いただきたいと思うのです。  それにしても、評価については、会計検査院が昨年十二月に指摘をしていますね。研究が終わって一年たっても、あるいはそれ以上たっても報告のないものが八百四十二件ある、六十九億ほどが報告されていないというのですね。今局長が言うように、本当に成果がある、あるいはこういうふうにきちっとしてきたとしたら、一年たっても報告が出てこないということはあり得ぬだろうというふうに、素人考えかもしれませんけれども思う。  研究というのは続いていくものだということはわかりますけれども、そういう、出していない人になお三十五件、一億九千万円、二億ほどがさらに支給されている、こういう状況というのはおかしい。千三百億円もお金を使うということの中で研究は進められているのですが、国民には見えないわけです。やはり監督する文部省がここのところはきちっとしないと、すぐそういうことを言うのですけれども、垂れ流しになってしまうという可能性があるわけですね。その点はいかがですか。
  44. 工藤智規

    工藤政府委員 先生がごらんいただいたその新聞報道は若干誤解もあるのでございますけれども、これは科学研究費補助金補助金でございますので会計検査院の検査の対象になるわけで、経理をしっかりしなければいけないのでございます。経理面で求められている実績報告書というのはすべて提出されておりまして、何ら不正経理はないのでございます。  他方で、今御指摘の研究成果報告書と申しますのは、各研究者方々にある程度研究が終わった段階で本をつくっていただきまして、それは国会図書館に献本して、ごらんいただくような形での立派な体裁をとっているのが多いのでございますけれども、冊子体にするということになりますと、特にグループ研究などの場合には、あちこちの大学先生方のレポートをまとめ、あるいはその整合性をとるのにどうしても時間がかかるとか、あるいは、せっかく本にするに当たってもう一回推敲するとかいうこともあって、若干時間がかかるのはやむを得ない部分があるのでございます。  他方で、研究成果の報告というのはこれだけではございませんで、いろいろな学会での活動でございますとか、あるいはもう少し簡単版での、研究成果の報告書の概要という形でのレポートでございますか、それを私ども学術情報センターの方でデータベース化いたしまして、日本だけではなくて欧米でもごらんいただくような形での情報公開といいますか、成果公開に努めているわけでございます。そういう形でいろいろやっているわけでございまして、たまたま冊子体の報告書が出ていないからサボっているということでは必ずしもないのでございます。  ただ、せっかく検査院から御指摘いただきましたので、求められている研究成果報告書につきましても、研究に支障のない範囲でぜひできるだけ早く出してくださいということで督励を申し上げているところでございます。
  45. 山元勉

    ○山元委員 それは、私と同じように、検査院も物がわかっていないのだということになりますよ。検査院は、「研究成果報告書等の提出状況」というふうに書いているわけですね。おっしゃるように、きちっとした報告書が出ていないという言い方ではなしに、会計検査院だって、これは研究が継続しているなとか、あるいは集約には相当時間がかかるテーマだなんてわかるはずですよ。ところが、昨年の十二月にこういうものを出しているのですから、これはやはり検査院に理解をしてもらうなり、これは国民が見たら、何だ、こんないいかげんなことをしているのかということだけしかならぬわけですよね。  ですから、そこのところはしっかりと、先ほども言いましたように、国民の目の届かないところでの金の使い方といいますか、研究ですから、よほどしっかりとしておかないとやはり不信を生むだろうというふうに思います。これからの研究について、こういうことをしっかりとしなければ支給はされない、受給できないのだということにしていかないといけないとも思いますし、そこのところはしっかりとこれから改善をしていただきたいと思います。  それから、今度、学術振興会移管される。特殊法人の問題については私も随分とかかわりましたけれども、統合だとか廃止だとかいろいろある中で、拡充というふうに閣議決定された数少ない特殊法人です。それは、先ほど私も申し上げましたように、大変大事な課題を持っている法人ということでそういうふうに決定されたわけです。  さて、そこへ移管されるということですが、今いろいろ心配がある事業というのですか、予算を移す、振興会で大丈夫かなと思うのですね、これは一般的にですよ。そうすると、審査体制がどう変わるのか、あるいは今申し上げましたような、成果についてきちっと集約できるのか、そういう体制がこの振興会にあるのか。六十人や七十人の法人ですから大変難しい仕事になるだろうと思うのですね。うまくバトンタッチをしていくことが大事、そして受け皿がしっかりとしていることが大事だというふうに思うのですが、その体制についてはどういうふうにお考えですか。
  46. 工藤智規

    工藤政府委員 まず、これまで科学研究費補助金の配分、審査に当たりましては、私ども事務官が審査するという仕組みがございませんで、学術審議会委員専門家方々、それから日本学術会議の方から御推薦いただいた二千人ぐらいの審査員方々、それぞれ専門分野専門家方々の御審査をお願いし、私ども、それを事務的に処理しながらやってきているところでございます。  今回、学術振興会移管するに当たりましても、基本的なスキームといいましょうか、学術審議会基本的な方向を踏まえながら対応するわけでございますけれども、その審査に当たる専門家方々については日本学術会議の方から御推薦を仰いで、学術振興会のもとに委員会を置いて専門分野ごとの厳正な審査をすることを予定しておりますので、審査体制そのものはこれまでと同様とお考えいただきたいと存じます。  また、それをサポートする事務体制でございますけれども、これは確かに、これまで学術振興会ではやってきておりませんので不安な部分をお感じになるかもしれませんけれども、私ども、このためには、移行期間は文部省学術振興会の方である程度一体的にやらざるを得ない部分もあるほかに、かねがねお互いのためにも人事交流を進めているところでございます。そのノウハウを共有しながら、必要最小限の人員増も図りながらでもその体制整備を図って遺漏なきを期してまいりたいと思ってございます。
  47. 山元勉

    ○山元委員 この間、振興会の人においでをいただいて今の状況を聞かせてもらいました。大丈夫ですと言って、受け皿として胸をたたいての話ではなかったわけです。今まで直接的に文部省学術審議会を通してやっていらっしゃった仕事を、いわばワンクッション置くわけですね。そうすると、どうしても新しい事業でもありますから、四人、五人の増でやりなさいといっても、振興会の方は胸をたたいていないわけですね。ですから、そういう点については、この行革の流れの中であるけれども、こういう重要な課題について、職員の体制をきちっとしないと遺漏が出てくるだろうと思います。  何より大事なのは、どんどんとふえていく、今年度で十万人ということですけれども、やはり公平に審査される、公平に支給される、あるいはよくわかるという透明性の問題ですね、公平性や透明性の問題についてしっかりと、今より以上に、特殊法人としての振興会がやる仕事ということについての信頼感をつくっていこうと思うと、あるいはそういうシステムをつくっていこうと思うと、これはやはり努力が必要だろうと思うのですね。  そこで、具体的にその手だては、今の局長の話を聞くと、こうしますということがないような感じが少しするのですが、大丈夫なんですかということを、改めてもう一遍。
  48. 工藤智規

    工藤政府委員 御指摘のように、財政事情も厳しい中ではございますが、私ども、許される範囲内で学術振興会における事業拡大といいましょうか、事業を円滑にするためにその体制整備は今後とも努力してまいりたいと思ってございます。  そういう人員増という量的な側面だけではなくて、むしろ学術振興会も、今までの学術審議会における科研費分科会での運用もそうでございますが、日本における各分野の権威者の先生方のいわば自立性をもとに運用されてきた部分がございますので、そういう研究者方々との信頼関係基盤の上に私ども事務的にフォローする必要があるわけでございまして、そのためには、文部省それから学術振興会の人事交流、これまでもしているところなのでございますけれども、お互いにさらに人事交流を深めまして、そのノウハウを共有し、いささかの誤り、間違いなり、あるいは停滞を来さないように最大の努力を続けてまいりたいと思っております。     〔栗原(裕)委員長代理退席、委員長着席〕
  49. 山元勉

    ○山元委員 少しこの法案から離れての質問もさせていただきたいので、最後に大臣に。  これはもう大臣の専門分野のことでもあるわけです。そういうことで、この内容等あるいはこれからの方向については十分思いを持っていらっしゃるだろうと思うのですね。最初に私も申し上げましたように、この施策政策については賛成ですし、法案に賛成ですけれども、今後どういうふうに本当に意義のある制度にしていくのか、今後の努力について大臣から少し対応を聞かせていただきたいと思います。
  50. 有馬朗人

    有馬国務大臣 その前に、科学研究費について、役立ったかどうかということについてちょっとお返事を申し上げます。  科学研究費は、私は使った側でありますが、大変役に立ったと思います。  具体的に申しましょう。この十年、日本は、あらゆる分野と言っていいくらい、世界で第二位の論文大国になりました。これが伸びていった最大の原因は、科研費——あらゆる分野ではない。人文社会はちょっと別です。ほとんど理系と申しましょう。明らかに、特に電気・電子であるとか物理、化学、有機化学、農学、こういうところで非常に急速に伸びました。(発言する者あり)ちょっと——人文社会については私専門でございませんので、申し上げません。  それから、もう一つ御了解賜りたいことは、この前もお話をいたしたかと思いますけれども、最近アメリカの大学が非常にベンチャーで活躍している。このベンチャーで活躍するに至る前に二十年要るんです。すなわち、一九八〇年にベイ・ドール法というものができました。そのベイ・ドール法によって大学が産業界とより密接に協力をするということが許されるようになりました。それまでアメリカでも結構うるさかった。そのことによって、スタンフォード、MIT、カリフォルニア大学、こういうところが利益を上げるに至りますまでには十年かかりました。十年間はほとんどもうけがなかった、利益がなかった。一九九〇年になってにわかに伸び始めます。そして、一九九八年においては相当のお金を生み出しまして、それを研究費に戻すことができるようになりました。そういう意味で、やっと日本がその段階に達したということを申し上げておきたいと思います。  そしてまた、御心配のように、科研費がふえていったときに審査が十分やれるんだろうかという御指摘。これは今までは研究助成課一課でやっておりましたけれども、これを学術振興会に移すことによって、今までよりは、マンパワーをふやす等々のことで審査充実でき、透明性を上げることができると思っております。  それにしても、御指摘のように、研究者が大きなお金を使って研究をやった以上、それに対してきちっとその結果を報告するということは義務でございますので、これは今後も大いに研究者に願っていこうと思っています。既にもうそのようにいろいろな機会を通じてお願いをしているところであります。  こういうふうに、科学技術振興ということは極めて重要なことでございます。したがいまして、十一年度予算で科学研究費を大幅にふやしていただく、千三百十四億円にしていただく。それから、今までなかったことで数年前から始まりましたけれども、今までの科研費に対して第二科研費と我々言っておりますけれども、国から出資金方策によってかなり大きな経費を出してもらうようになりました。  それからもう一つは、ポスドクをふやしていただいておりますので、若手研究者の養成に非常に成功するようになりました。  こんなことで、過去に比べまして、科学技術に対するお国の御支援は随分強くなりましたので、それに対して研究者が大いにこたえていくべき努力をする必要があると思っております。  ただ、文部省の科学研究費というのは、決して理科系だけではなく人文社会にも使える、そういう学術研究に使っているというところが極めて重要な点でございまして、今後の科学技術の促進というのは、人文科学の研究者たちの手伝いをいただかないと、援助をいただかないともう進められないような段階になってくると思います。例えば、生命の倫理というふうなことに関してはどうしても人文社会の人たちの助けをかりなきゃならない。そういう意味で、学術という全般にわたって研究を進めているということがこの科学研究費の非常に重要な点だと思っておりまして、この点をつけ加えさせていただきたいと思います。
  51. 山元勉

    ○山元委員 論文大国というお話がありましたけれども、一面、ノーベル賞小国だということもありますから、この点についてはこれから日本として力を入れていかなければならぬところですし、今大臣がおっしゃいますように、文系についてもしっかりと力を入れていかなければならぬ、私はこう思いますから、この点についてはまた引き続いて御努力をいただきたいというふうにお願いをして、この問題は一たん終わりまして、法案と離れますけれども、日の丸・君が代について少しお尋ねをしたいと思うのです。  御案内のように、昨今、大変この問題についての論議が高まっているといいますか、多くなっています。そして、私が心配をするのは、国家として、民族として大事なこの問題が、いかにも拙劣といいますか、ばたばたと論議がされている感じがしてならぬわけです。参議院におけるさきの予算委員会やその他の委員会での大臣の答弁についても読ませていただきました。  そういう上に立ってさらにですけれども、何といっても唐突だというのは、二月の末に小渕総理は、参議院の予算委員会で、法制化については今考えていないというふうにおっしゃったのですね。十日ほどたって、今国会でというふうにお変わりになった。その間に、野中官房長官の発言もございました。あるいは広島でのああいう不幸な事件もございました。しかし、総理がこの国会では考えていないとおっしゃっていたのを、十日ほどで積極的にそういうふうにお変わりになって論議を進めようとしていらっしゃるわけです。  多くを申し上げませんけれども教育について責任を持っている文部省、あるいはそういう点でいうと、国家のありようや民族のありようについての考え方について責任を持っている文部省と言ってもいいと思うのですけれども、その文部省が今こういう状況の中で、端的に言えば、この国会で法案を提出して何としてでもということなのか。あるいは、いやいや待て待て、議論をしっかりとして、もっと国民的なコンセンサスが大事だ、これからずうっと将来にわたって、長きにわたって日本としてきちっとして、この敬愛する旗や歌がもっと明確に制度化あるいは位置づけられるということが大事だ、言いかえれば、まだまだ議論をこれから深めなきゃいかぬという立場に立たれるのか。いや、そんな法制化は必要ないぞと。三択ではないのですけれどもね。  一体、急いでやらなきゃならぬとお考えになっているのか、本当に国民的な合意をつくろう、そういう努力を国民の中にもあるいは教育の現場にもつくろうとされるのか。文部省の率直な今の態度というんですか、お考えを聞かせていただきたい。
  52. 有馬朗人

    有馬国務大臣 参議院の方の予算委員会でもたびたびお答えを申し上げたことでございますけれども、まず、国旗とか国歌というものが持っている意義とか歴史とかということをちゃんと学校で教えていくことが必要であると思っています。そういう意味で、学習指導要領においては、国歌・国旗の意義を十分学校で教えるよう指導しているところでございます。  今回、そういうことの後のことでございますが、国歌・国旗の法制化を含め検討に着手することになったのは、二十一世紀を迎えるに当たって、ひとつ国旗・国歌についても、成文法として明確に位置づけるということを検討する時期に達したのではないかと考えております。  しかし、このことに関しましては、国歌・国旗についての法制化を含めた検討は政府全体にかかわる事柄であり、今後、政府部内の検討に文部省といたしましても参画するなど、適切に対応してまいりたいと思っております。
  53. 山元勉

    ○山元委員 少しわかりにくいんですね。  例えば、二十一世紀を迎えるに当たってとおっしゃったけれども、二十一世紀はあと六百日ほどで迎えるということは早くにわかっておるわけです。二月の二十五日に総理が、法制化について当面考えていませんということをはっきりと予算委員会でおっしゃった。それからどどっと変わっていって、政府部内で論議するんだ、二十一世紀を迎える、文部大臣がそう言われると、先ほど言った三択でいうと、ああ、急いで法制化ということを考えていらっしゃるのと違うのかなという感じがするんですよ。  参議院でも、文部大臣も総理も、国民の中に定着をしているから、繰り返しこうおっしゃっています。一体、今日本の中に、例えば日の丸・君が代が国旗・国歌として定着しているんでしょうか。何を指して定着という言葉を何回も繰り返しておっしゃるのか、私はわからぬわけです。  オリンピックの表彰台で、旗が上がって君が代が鳴る、そのときに感激する、私だってじんときます、これは。南極に日の丸が立つ、そのときにも感激する、それはそのとおりです。一つの感動する場面であって、じんとくるけれども、それでは、お正月にしろ建国記念日にしろ、町の家々に日の丸が出ているかというと、出ていない。  私の町内でも、二十年ほど前に町内会長さんが、町内会費が余ったからといって日の丸をずっと配った、過去に。そんな、十分の一も二十分の一もやはり使っていないですよ。だから、気持ちとしてそういう、感情的なものかもしれませんけれども、国民の中に定着をしているということについては、私は、まだまだ表面的な問題をおっしゃっていると。  確かに、学校での掲揚率だとかあるいは斉唱率というのは上がってきました。けれども、それはやはり定着というのには遠いと思うんです。その端的な例がこの間の広島の例です。校長先生の家へ委員会が朝な夕な押しかけていってと言ったらおかしいけれども、職務命令を出す形で率を上げてきた端的な、あれは望ましくない例ですけれども、そういうことが行われてきて、高くなってきた、定着してきているんですよとおっしゃるのは、私は少しためにする言葉ではないか、こう思うんですが、大臣、いかがですか。
  54. 有馬朗人

    有馬国務大臣 しかし、世論調査などを見ますと、かなり定着していると私は思っております。  それからまた、御説のように、まだまだ困難な場面も、学校もあることは事実でございますけれども、統計によれば相当の大きな率で国歌・国旗が学校において、例えば卒業式、入学式に掲揚され歌われているというふうなことで、確かに長年の慣行でございまして、国歌・国旗についての長年の慣行ということは明らかでございます。そういう点で、成文法にはなっていないけれども、慣習として日の丸・君が代が国歌・国旗であるという認識が確立している、そして、広く世論調査などで見られるように、国民の間に定着していると考えております。
  55. 山元勉

    ○山元委員 定着についての考え方、見方というのはいろいろあろうと思います。今大臣がおっしゃるような見方も確かにあります。しかし、今この段階で、私は、性急な押しつけというんですか、国民への押しつけというのは、やはり将来に禍根を残す。極端に言えば、例えば国会で、ある日多数決で決めた、そのことが一体どれほど国民に受け入れられるのか。ああよかった、これで安定するわ、定着するわということになるのかということについて、責任を持たなければいけないというふうに思うんですね。それについては、余りにもやはり性急だというふうに、私の意見を申し上げているわけですけれども、思うんです。  国民の中にはいろいろの思いがあるわけですね。私も古い人間でして、戦争が終わる前に小学校を卒業したのですけれども、やはり修身で習いましたよ。習った教科書、君が代のことについて、「「君が代」の歌は、昔から、私たちの先祖が、皇室のみさかえをおいのりして、歌ひつづけて来たもので、世々の國民のまごころのとけこんだ歌であります。」そして、戦地にいる兵隊さんはと、こういうようなことを習ったわけです、教科書で。それについては、やはりすとんと割り切れないものがあるわけです。  それで、私は長じて小学校の教師になった。そして、一生懸命になって社会の時間に主権在民を教えなきゃならぬ、教えました。こういう教育を受けた者が、天皇の御代というふうに教育を受けた者が主権在民の憲法を教える。そういう一つのわだかまりといいますか、国民の皆さんは、大きな部分でそういうことを持っていらっしゃる人もいるし、なお強烈なのは、そのときに戦争に参加した人だろうというふうに思いますよ。  そういうものを払拭し、一気にはできぬかもしれぬけれども、やはり国民の世論として、こういう国歌、こういう国旗を我々の民族の国家の一つの象徴だということを圧倒的多数の国民の皆さんが理解するような論議が必要なんだろうと思うんですね。  ですから、先ほど申し上げました三つの選択、即やるんだ、あるいはもっと議論だ、いや、必要ないんだという三つからいうと、やはり慎重な論議が、文部省としては、特に、学校現場に混乱を持ち込まないというんですか、より強烈にしないためにも、配慮が要るのではないかというふうに思うんです。  時間が余りありませんが、そういうためには例えば開かれた論議の場をつくって、調査会をつくるとかそういうことをして、即法案を提出するから論議をしてください、採決をできたら早くしてくださいというようなことでない、そういう仕組みなり論議の場というものをつくる必要があるのではないかと思うんですが、大臣、いかがですか。
  56. 有馬朗人

    有馬国務大臣 既に学校においては、国歌・国旗を教育の場で指導しております。まず、国旗というものあるいは国歌というものは、どの国でもその国の象徴として大切にされており、互いに尊重し合うことが大切である。それから、長年の慣行により、日の丸が国旗であり、君が代が国歌であることが広く国民の認識として定着しているというふうなことを今学校で教えていただいている次第であります。  そして、今回のことはさらにまた国会で御審議を賜って進めていくことでございますので、文部省としての立場ということをここで申し上げませんけれども文部省としては、学習指導要領に従って今までどおりこれを指導させていただくという格好で進めてまいりたいと思っております。
  57. 山元勉

    ○山元委員 私は、端的に、調査会などを設けてそういう国民的な論議をと申し上げたのですが、どうもそれはすれ違っているような感じがするわけです。  確かに、新しい指導要領にも現行の指導要領にも同じような文言で「指導するものとする。」と書いてあるわけですね。ですから、それは教師として努力をする必要がもちろんあるだろうというふうに思う。けれども、そのことと法制化の問題とはいささか違うと私は思うんですね。  先ほども言いましたように、法制化をして国民に押しつけると言ったら語弊がありますけれども、押しつけるというようなことでは将来に悔いを残すというふうに思えてならぬのです。私どもの党はまだ論議を始めたばかりですから、今申し上げているのは私の一つの私見です。  どうしてもやはりこれは国民的な論議で——他の国の国旗・国歌について私も国会図書館の方にお話を聞きました。例えば、何にも法的根拠のない国もあれば、憲法に書いている国もあるわけです。あるいは、あるときに国民合意でつくった歌もあれば、あるいは、独立したときの喜びで激しい戦の歌詞が並んでいる国もあります。さまざまな国がありますけれども、今二十一世紀を迎えるからというときに、そういう中身について、国民的なより強い合意なり一致がない中でされることについては、私はやはり将来に不安を感じる。ここのところは、文部省はやはり慎重であってほしいというふうに思います。  時間がありませんが、ある新聞の社説で、やはり、今なぜ法制化かということで、私が申し上げたようなこととよく似ているんですが、「なぜ、いま法制化か」、この社説の中で、学校でのこういう悲劇を繰り返さないためにも、法制化については短絡的であってはならぬとか、あるいは、法制化によって学校での日の丸と君が代を徹底させようというのは本末転倒だ、こういう社説があるわけです。まあ一社の社説ですから……。  けれども、やはり国民の中にこういう気持ちがあって、将来にわたって国民が、何かうれしいことがあれば喜々として歌える国歌あるいは持てる国旗というのが必要なんだろうというふうに私も思います。ですから、それは法制化であろうと国会決議であろうと閣議決定であろうと、各国にいろいろあるわけですから、いずれの形にしても、今そういう配慮を最大限する必要があるのだろうというふうに思います。  これは、これから論議がどんどんと進められていくというのですか、深められていくわけですけれども、どうも私は、この間からの、特に参議院での文部大臣や総理の御答弁を聞いていると、二月二十五日から十日ほどの間にどどっと、その間には広島の事件が起こるわけです。悪い言い方をすると、それを口実にして、長い間もやもやしておったのをどどっといってしまおうと、これは悪い言い方ですけれども、やはりそこのところがあれだったんだということでは、何遍も言いますけれども、将来に悔いを残すようなことになる。  胸が張れるようなそういう処理の仕方について文部大臣として努力をしていただきたいというふうにお願いをしたいのですが、いかがですか。
  58. 有馬朗人

    有馬国務大臣 野中官房長官が三月十八日の木曜日の記者会見で言っておられたことでありますが、それぞれ国会の皆様方の御意見を十分拝聴していかなければならないと思うわけでございますとおっしゃっている、やはりこのことに私どもも同感でございます。
  59. 山元勉

    ○山元委員 時間が余りありませんから、今までの経緯なり、それぞれ国民の中に起こっていることあるいは感情というものについては十分申し上げることはできませんでしたけれども、ぜひこれは、少なくともこの文教委員会ではこのことをテーマにして論議できるような、学校の中にこういう混乱がなお続くとかなおひどくなるということにならないような配慮の論議というのは必要だろうというふうに思うのです。委員長にまたお考えをいただきたいとお願いをして、質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  60. 小川元

    小川委員長 次に、西博義君。
  61. 西博義

    ○西委員 公明党の西博義でございます。  本日は、日本学術振興会法一部改正案に関連して、まず初めに大臣に、科学技術並びにその研究に関しての全般的なことについて御質問を申し上げたいと思います。  今世紀に入りまして急速な発展を遂げた科学技術は、来世紀にはさらに自然、社会、または経済、さらには人間自身にまで大きな影響を与えるだろう、こう思われます。  戦後、日本の繁栄は、端的に言えば、科学技術成果である工業製品の生産並びにその輸出等によって大きく成果をおさめた、こう思われるのですが、実は私自身も、議員になるまで二十年間、工業高専の工業化学科の教官として第一線の技術者の育成に当たってまいりました。現在の我々のこの便利な生活はある意味では科学技術成果でもありますし、私の分野で申しますと、化学的な素材を使ってたくさんの製品ができ上がっていることは、目の前をごらんになっても十分おわかりになると思います。私自身はまたそのことに喜びも感じてまいりました。  しかし、今に至って、その反面、今国会で審議されることになっております特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律案、長い名前ですけれども、PRTR法案でございます。いわゆる環境ホルモン等に関連をしまして、これから化学物質を管理していこう、移動を追跡していこうという法案でございます。アメリカでは六百ぐらい、日本でも二、三百の化学物質がそれに指定される、こういう時代になってまいりまして、自然や環境への影響が真剣に論議される。それに対して私たちは、科学技術の進展が日本並びに世界の繁栄につながっていくんだ、こういう側面が非常に強調されてきて、その負の側面というのがややもすると忘れられてきたのではないかと私自身の反省も含めて感じております。  その一例は、化学の方面での話ですが、ここまで科学技術の進歩が自然や生命に大きな影響を及ぼす時代に入っても、今まで研究者は、自分の仕事が社会にどのような影響を与えるのかということを考えるよりも、専門分野の中で研究に没頭して、そして業績を上げるということが第一義であったというふうに私自身も思うところでございます。しかし、これからは、人間がみずからつくり出したこの科学技術の文明の将来に何を求めて、また何に夢を託すかということを改めて問い直すことが必要であろう、こう思うわけでございます。  九五年末に成立した科学技術基本法、私どももその議論に参加させていただきましたが、また翌年、今後五年間に国が取り組むべき施策をまとめた科学技術基本計画によって多額の科学技術予算の投入がされるようになりました。それによって日本科学技術は抜本的な活性化を目指す、こういうことになってまいりました。  しかし、私は、先ほども申し上げましたように、今までどちらかというとアクセルを踏むばかりでございまして、やはり同時にブレーキというものも考慮していかなければならない。つまり、科学技術の危険性に対する謙虚な認識ということも同時に必要ではないかというふうに思います。  科学技術振興を通じて日本は、産業振興という面だけではなくて、どういう社会を将来目指そうとしているのか、これをはっきりすべきだ、また、世界にこのことに関してどう貢献しようとしているのかということをアピールしていく必要があるのではないか、こう思いますけれども、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  62. 有馬朗人

    有馬国務大臣 西議員御指摘のとおり、科学技術によって随分便利になりましたし、日本はそれによって経済力をつけてまいりました。しかし、先生御指摘のように、科学技術が生み出した影の部分もございます。そういう点で、科学技術に従事する者及びそれを利用する人々は、やはりその影の部分を除外するべく努力をしていく必要があると思います。今御指摘のダイオキシンとかあるいは環境ホルモン、こういうふうなものについては、やはり科学技術者が今度はそれを除外することに努力をするということも必要であると思います。  それからまた、私は実は、科学技術会議をどうするかという議論に参画いたしましたときに、人文系の人たちそれから社会科学の人たちにぜひ入ってもらう、そのために科学技術会議を総合科学技術会議というふうにすることを提案した一人でございます。  このことはなぜかというと、今世紀はどちらかというと物理なり化学なりが中心になって進んでまいりましたけれども、二十一世紀はいよいよ生物の世紀である。こうなりますと、まさに倫理の問題が出てまいります。そのときに、科学や技術、それに直接携わる自然科学系の者だけで判断ができなくなると私は思っておる。そういう意味で、人文系研究者社会系の研究者にぜひとも入っていただいて、例えば生命倫理などということに関してはきちっと対応していくべきだと思っております。  ただ、先生御専門のことを一言申し上げますと、かつてコールタールというのは全盛期においては公害の甚だしい原因でありましたが、科学技術が進んで、あれからは染料を取り出すというふうなことで、今やもう大変な資源になるわけです。したがいまして、現在ありますさまざまな公害の中の物質は、科学技術を進めれば、単なる公害ではなくて、そこから新しい物質を取り出すというふうな意味でかなり、非常に有用なものになることもあり得ると思っております。そういう意味で、科学技術者は一層の努力をすべきだと考えております。
  63. 西博義

    ○西委員 大臣の、バランスのとれた学問、自然科学だけではなく人文科学、社会科学というのは、大変重要な御指摘だと思います。  続きまして、文部省は、科研費の補助事業、それから傘下の振興会が行っている未来開拓学術研究推進事業、これを研究への補助事業として今行っております。目的は、あらゆる分野のすぐれた学術研究、これが科研費の補助事業のキャッチフレーズでございます。未来の開拓につながる創造性豊かな研究、これが未来開拓の目的でございますが、いずれも研究テーマの設定などは研究者の自発性が尊重されている、こうお伺いをいたしました。  一方、平成八年度から、文部省だけではなくて、それぞれの省庁の政策目的を達成するために、省庁傘下の特殊法人への政府出資金を利用した研究推進制度というのがそれぞれの省庁で実施をされるようになりました。その制度のもとに設定された研究テーマを見てみますと、まさに各省庁の喫緊の重要課題が網羅されております。そのテーマのもとに、一流の研究者にお願いをして何とか解決をしたいということがありありとうかがわれるわけでございます。  例えば、厚生省をちょっと調べてみたのですが、感染症の脅威に備える研究、国際的な連携によるエイズ研究、それから遺伝子治療等、今本当に解決されなければならない厚生省としての各種課題が種々載っておりました。  そういうことを考えますと、文部省研究費は持っておりますけれども、どちらかというと研究者自身が自主的に運営をし、またそれを使っていくという性格の研究費でございまして、私は、そのこと自身は大変いいことだと思いますし、文部省はそれに関与する必要は全くない、こう思っているんです。  同時に、今各省庁等の研究の流れを見てまいりますと、文部省として、もっと文部省本体のことについて研究テーマを設け、解決すべき課題があるのではないか。必ずしも理科系のことではなくて、例えばいじめ、不登校等、これは文部省が長年取り組もうとしてなかなか解決のつかない問題でございます。そういうこと等にやはり文部省自身が組織をして、研究テーマをつくり、そして研究者に精力的な研究をお願いする、こういう側面の研究事業がぜひ必要なのではないか、こう思いますが、大臣、いかがでございますか。
  64. 有馬朗人

    有馬国務大臣 御指摘のとおりでございまして、先ほどもお答え申し上げましたけれども、ボトムアップ型の研究というのが大学中心にした研究のやり方だと思いますけれども、そのボトムアップ型で育ったものの中で重要なものを取り上げる、あるいは国民の、あるいは社会全般の、世界全般の需要というかニーズのある分野を今度はトップダウン的にやっていく、両方が必要だと思っております。  文部省は、御説のように、どちらかというと基礎科学に重点を置いてまいりましたので、天文学であるとかあるいは宇宙科学の進展というふうなことにおいては、もともとはボトムアップ型ではあるけれども、大きな科学についてはトップダウン的に選んで随分やってまいりました。さらに今、環境であるとかあるいは情報であるとか、そういうことに関して、文部省といたしましては、かなりトップダウン的に進めていこうと思っております。ですから、両方をうまく調和をさせながら進ませていただきたいと思っております。  科学技術庁の方は、かなり積極的にトップダウンのやり方でやってまいりました。このやり方のよさも文部省としてさらに一層考慮に入れながら、より一層すぐれた科学技術を生み出すよう努力をさせていただきたいと思っております。
  65. 西博義

    ○西委員 今までの科研費等の研究的な側面は確かにそうだと思うんですが、私は、さらに申し上げたいのは、文部省そのものが課題としている問題を、例えば先ほど申しましたいじめだとか不登校だとか、これは自然科学の問題ではなくて、いつ、どこで、だれがやっても同じ答えが出るという性格のものではありませんから難しいことはよくわかるんですが、やはり何人かのリーダーに専門的に研究をしていただいて、文部省が本格的に取り組んでいるという姿をぜひ見せていただきたい。  いろいろなところでやっていらっしゃる。例えば教育研究所等でもやっているんだろうとは思うんですが、そうではなくて、ありとあらゆる英知を結集して解決のために今努力しているということを国民の皆さんに知っていただく、そういう考え方というのはぜひ必要ではないか、こう思うんですが、いかがでございますか。
  66. 有馬朗人

    有馬国務大臣 大変ポイントのあることについて御質問いただきました。  実は文部省として、直轄研の一つに国立教育研究所というのがございます。そこに今依頼をいたしまして、いじめの問題等々さまざまな問題が起こっておりますので、どういうふうに学級を経営していったらいいかということに関しまして、学級経営の充実に関する調査研究をゆだねているところでございます。こういうふうな面で国立教育研究所が大いに活躍をしてくれると思っておりますが、これがまさに先生御指摘の、トップダウンの文部省として絶対やらなきゃならないことと思って始めた次第でございます。
  67. 西博義

    ○西委員 たびたびこのことで申し上げるのは失礼なんですけれども、そういうルーチン的なことではなくて、もう少し戦略的に、やはりもっと対象を広く日本の英知に呼びかけて課題を解決するということであれば、さらに国民の皆さんは、文部省は、本当に取り組んで何とかしたいと心から積極的に考えているんだなということになると思うんですが、今のことですとなかなか地味でございまして、国民からはなかなか見えないし、私どももその研究成果を残念ながら余り意識をしてとらえることがないという今の状況を解決するためにも、ぜひ大臣からトップダウンで、日本の英知を集めて教育的な今日的な課題を解決するという仕組みをまずつくっていただきたいというのが趣旨でございます。
  68. 工藤智規

    工藤政府委員 先生がおっしゃったような文教行政が抱えておるいろいろな問題、深刻な問題も含めて多々あるわけでございますが、そういう課題への対応として、科研費を用いて研究者方々が自由に御研究いただくというのも一つでございますが、先生がおっしゃいましたように、各界の英知を集めていろいろな研究をするということも必要なことでございます。  そのため、私ども、別に科研費ということではございませんけれども、一般会計予算の中での調査経費を措置しながら、例えば、有馬大臣がいらっしゃるのであれでございますけれども、かねがね職業高校改善方策について問題意識があった部分については、それを専門高校という形での「スペシャリストへの道」というレポートをまとめていただいたのは有馬大臣が座長であったとかいうこともございます。  あるいは不登校問題について、不登校生徒の追跡調査という形で、平成十年から十一年にかけて、今、各界の学識経験者の方々にお願いしながら調査研究をしていただくということも含めて、いろいろなパイプで施策を講じているところでございますし、おっしゃいましたような課題についても、それぞれの部署でメンバーなどを人選いたしながら適切に対応してまいりたいと考えてございます。
  69. 西博義

    ○西委員 このことについては、また追って議論をさせていただきたいと思います。  続きまして、現在、我が国は、科学技術研究成果を蓄積し活用しようとする大きな流れができてまいりました。平成八年度から本格的に始まりました競争研究資金制度、それから、技術移転機関をつくるために大学等技術移転促進法が制定されまして、このことによって一つの大きな流れができたと思います。  特許など知的所有権について、研究者と国との間の配分のあり方について御質問申し上げたいと思います。  まず、国の基本ルールとしては、特許庁の職務発明に対する補償金制度がございます。これは国の収入の一部を研究者に分配するものですが、国の収入が五十万円以下の場合、その三〇%の十五万円、百五十万円を超える場合には、例えば二百万円という場合には三十二万五千円が研究者に補償金として支払われることになっております。補償金には年間六百万円という上限が設定されております。問題は、補償金の計算式に余り合理的な意味がないのではないかということと、研究者への配分が大変低いというふうな印象を受けております。  さて、次に、国立大学の教員の特許に関するルールというのがありまして、これは昭和五十三年に通達が出されておりますが、まず、条件として、応用開発を目的とする特定の研究課題のもとに、まずaとして、国から特別の研究経費を受けて行った研究の結果生じた発明、それからbといたしまして、国が特別の研究目的のために設置した特殊な研究設備を使用した研究から生じた発明、この二つのものが指定されておりまして、それ以外は研究者に特許権が帰属する、こういうふうになっております。  現行のルールの問題点は、応用開発と特定研究費というこのくくりなんですが、今後このことが必ず条件として適切なのかということでございます。知的所有権の対象が、基本発明など基礎的なものが重視されていく見通しから、応用開発という区分は余り適切ではないというふうに考えております。また、私は、教官当積算校費といえどもこれは公費ですから、特許権に関してはもちろん国にも一部帰属はすべきである、一〇〇%個人ということではなかろうというふうな気持ちも持っております。  そんな問題提起をさせていただいた上で、まず、科学技術庁、きょう来ていただいておると思いますので、この科学技術庁関係の特許の扱いについてちょっと説明をしていただきたいと思います。
  70. 池田要

    ○池田政府委員 お尋ねでございます科学技術庁におきましての特許の帰属の現状でございますけれども、職務発明規程というものを設けてございまして、附属の試験研究機関におきまして当庁に勤務します研究者の行った発明につきましては、特許権の帰属等について定めております。  平成八年に科学技術基本計画が決められました際に、この基本計画の中に「民間の研究開発の促進」と「国等の研究開発の成果の活用」というくだりがございます。この中に、各省庁は特許権等の研究者個人への帰属を導入しなさいという方向が打ち出されておりまして、これを受けまして、平成八年の十二月でございますけれども、この規程を改正してございます。それまで国有としておりました特許権等につきましては、原則二分の一まで発明を研究者の持ち分とするということを可能とするなどの措置を講じてございます。  それから、平成十年に至りまして、これはその前年に「二十一世紀を切りひらく緊急経済対策」というものが打ち出されてございまして、この中に、産学官連携による研究開発環境の整備というところがございます。これを受けまして、プログラム著作物でございますとかデータベース著作物の作成に関しましても、特許権と同様に、当該著作物を作成した研究者の持ち分とすることを可能とするような規程を改正してございます。  こういう措置によりまして、特許権等の取得ということが研究者にとってもメリットのあるものになって発明に対するインセンティブが高められる、国の試験研究機関におきます研究開発が活性化して新産業の創出に資するということを期待しているところでございます。  現に、こういった措置を受けまして、平成八年度までは出願されました七十二件、私ども試験研究機関を見ましたときに七十二件、特許権のうち国の研究者に持ち分が与えられたものは一件でございましたけれども平成九年度に及びますと出願件数自体が百二十一件に増加してございまして、そのうち国の研究者に持ち分が与えられたものは二十八件に達したということでございます。こういう具体的な変化というものも見てございます。  科学技術庁といたしましては、今後とも、研究者が積極的に研究開発に取り組んでいただけるような環境の整備に努めてまいりたいと考えているところでございます。
  71. 西博義

    ○西委員 ありがとうございました。  特許のルールというのが各省庁によって若干異なっているように思われます。私は、今科学技術庁からお話がありましたように、最高五〇、五〇というお話がたしかあったと思うのですが、これをやはり今後の流れとして国の共通のルールにすべきではないか、そう思っております。もちろん大学等で、それぞれの条件によりまして若干特殊な事情もあることは承知しております。それはそれとして、基本的な配分割合といいますか、ルールはやはりどこかで決めていくべきであろう、こう思うわけです。  研究成果の適切な価値に見合う使用料がここで得られるということは、研究する上でも大変重要なことだと思いますけれども、もしこれが実現しないということであれば、次善の策として職務発明に対する実施補償金制度というのがあります。これを改善していただいて、研究者と国の配分を適正化する必要があるのではないか、これが第二点の提案でございます。いずれにしても、国の統一ルールをぜひつくっていただきたい。  さらに、特許の専用実施権を行使できるように兼業規制のあり方を検討する、このことによって、研究者自身がやはりそれの製品化に向かって責任を持って頑張ることができる制度ができるわけでございます。これらの提案について、私は大臣のお考えを伺いたいわけでございます。  特に科学技術に関する調整をつかさどる科学技術庁の長も文部大臣は今兼任されていらっしゃるわけですし、また特許庁長官の私的懇談会で知的財産権に関する報告書をおまとめになったということを新聞でもちょっと読ませていただきました。そんな意味で、きょうは大臣に御答弁をいただきますと同時に、関係省庁への呼びかけもぜひともお願いをしたいな、こういう趣旨でお伺いをしたいと思います。
  72. 有馬朗人

    有馬国務大臣 御指摘のとおり、文部関係、大学関係の特許権の取り扱いと、国立試験研究機関におけるものとかなり違うところがございます。  先ほど池田局長よりお返事申し上げましたように、国立研究所に関してのやり方は先ほど御報告申し上げたとおりでございまして、この点に関して文部省、特に大学関係は多少違うようなところがある。この点に関しましては、省庁の合併その他、今後科学技術庁及び文部省が一緒になっていくというふうなこともございますので、確かに御指摘の点については、今後慎重にさらに検討させていただきたいと思っております。  特に、個人帰属についての問題でございます。この辺に関しまして、現在のところでは、特許の出願・管理事務や経費等が発生するとの側面もあることから、その導入に当たっては特許化の支援もあわせて行うことも必要であり、科学技術庁においては、平成十年度より、大学、国立試験研究機関等を対象に特許化支援事業を開始いたしました。こういうふうなこともございますし、また研究者に特許等を生み出すインセンティブを与えるということも必要でございます。こういうことで、国立大学及び国立試験研究機関整合性を持って特許に立ち向かうことができるように考えさせていただきたいと思います。
  73. 西博義

    ○西委員 ありがとうございます。  時間が迫ってまいりましたが、次に、具体的に特殊法人日本学術振興会のことについてお伺いをしたいと思います。  この振興会は、研究者養成事業、それから学術国際交流事業、それから学術情報事業などをもともと主な事業内容にしておりましたが、平成八年度より新たな事業として、未来開拓学術研究推進事業が追加されました。さらに今回、科学研究費補助金事業が、予算にして約六〇%と伺っておりますが、この審査配分業務移管されることになる、これが今回の次第でございます。  この経緯をずっと考えてみますと、二年前、つまり平成八年前までは、どちらかというと、研究者の人的な支援をする、例えば研究者を養成するとか、それから国際交流に先生方を援助するとか、こういう人的な支援中心としていた振興会が、二年前から、財政支援、つまり補助金を配分するという事業が加わってきました。それに伴って予算規模も、平成七年度では百三十億の予算規模でございましたところが、今年度の予算案では千三百五億ということで、四年間で十倍の予算をここで処理するということになりました。  私たちの目から見ると、文部省は次から次へとなし崩し的にこの業務の拡大を行っているようにも見えるわけでございます。まだこれから先どうなるのかということもわからずに、小出しに、これをお願いします、また次、これをお願いします、こういう改革の進め方というのは、私たち立法府の側から見ると、全体像が非常に見えにくい感じがいたします。行政改革の趣旨からしても問題があるのではないか、こう思います。  そういう意味で、今回のことに関連して、この日本学術振興会の将来像をどのように描いているのか、このことをまずはっきりと示していただきたいと思います。
  74. 工藤智規

    工藤政府委員 御指摘のように、いろいろ御検討を煩わして申しわけないのでございますが、今回の制度改正につきましては、先般来お話し申し上げていますように、科学研究費業務の拡大、さらには、研究者等からの多様なニーズにおこたえするために行うわけでございますけれども日本学術振興会というのは、学術振興会法の一条に書いてございますように、「学術振興に関する事業を行い、もつて学術の進展に寄与することを目的」としているわけでございます。  端的に申しますと、誤解を恐れずに言わせていただきますと、どういうふうな学術振興会に持っていこうとしているのかということへの端的なお答えとして、私どもとしては、日本版のNSFを目指しているのでございます。といいますのも、諸外国におきましては、政府の行う学術政策に加えまして、アメリカのNSFあるいはイギリスのリサーチカウンシルのように、学術振興機関はよく機能してございます。  NSFは、予算助成額が日本円に換算しまして四千億円を超え、かつ職員、スタッフも千二百人を超えるぐらいの大規模な機関でございますけれども、そこで行っております主な事業も三つ、つまり、人材育成、国際交流、研究助成という三つの柱でございまして、私ども、今回の改正によりまして、日本学術振興会におきましても、これまでの事業に加えて、この助成部門をさらに充実することによりまして、大きな柱、三つの柱を持つことになります。これによりまして、諸外国学術振興機関と比較しても、学術中心機関として必要な規模をほぼそろえることになりまして、日本におきます学術振興の実を期すことができるのではないかと期待しているところでございます。
  75. 西博義

    ○西委員 時間が来ましたので終わります。  学術振興会は今後ますます重要な役割を果たすと思いますので、その充実方をよろしくお願い申し上げます。  終わります。
  76. 小川元

    小川委員長 次に、富田茂之君。
  77. 富田茂之

    ○富田委員 公明党・改革クラブの富田でござます。  西委員の方から、学術振興会法につきましては詳細な質問がございましたので、私の方は、ちょっと法案からは離れますが、奨学金の制度について何点か御質問させていただきたいと思います。  実は、二月十日の大臣所信に対する質疑で、奨学金制度について何点か大臣にお尋ねしたのですが、そのときは、残念ながら、私どもにしてみれば、一歩踏み込んだ御回答はいただけませんでした。大臣の奨学金にかける熱意というのはもう十分感じ取れたのですが、具体的には、十一年度予算に出ている奨学金の拡充ということで御理解いただきたいという答弁でございました。  ところが、翌日、二月十一日に自民党の政調の方から、修正協議に関して、協議機関、検討会を設けたいというようなお話をいただきまして、二月十二日から十八日まで連日のように両党の政策担当者で話し合いをさせていただきました。二月十八日になりまして、公明党・改革クラブと自由民主党との間で、平成十一年度予算に関する修正協議をまとめまして、両会派の間で確認書を交わさせていただきました。  その中で、第二項目として、奨学金につきまして、「高校生、大学生及び一定年限以上の専修学校生を持つ両親等の教育費負担を軽減するとともに、勉学に熱意のある本人の希望に応え、新しい奨学制度の創設を含め、以下の後期高等教育支援拡充を図る。」という合意がなされました。具体的には、有利子奨学金のかなりの拡充、そして緊急採用奨学金制度の創設、これは無利子ですが、この二点について合意させていただきました。  この合意内容につきまして、大臣は、今後どのように取り組んでいかれるのか、ぜひ御決意をお聞かせ願いたいと思います。     〔委員長退席、栗原(裕)委員長代理着席〕
  78. 有馬朗人

    有馬国務大臣 今委員御指摘のように、去る二月十八日の自由民主党と公明党・改革クラブとの合意の中で、奨学金については二点ございました。  第一は、有利子奨学金について、貸与人数の増員、学力基準の緩和、利息の扱いの変更が行われるとともに、二、保護者の失職、死亡等による家計急変に対応した緊急採用奨学金制度を創設することが確認されたと承知いたしております。  奨学金につきましては、私も大変重要だと思っておりますし、教育費負担の軽減を図り、学生が自立して学べるようにするために、やはり奨学金というのは極めて重要な役割を演じていると思います。  しかし、先ほど申し上げました公党間の合意ということは、平成十一年度予算においてもほとんど大幅に実行可能と読んでおります。例えば貸与人数、有利子奨学金貸与人数を、現行十万ということでございますが、二十五万ということで合意が出ておりますが、既に二十万という予算要求をしておりますし、それはさらに努力をすることで公党間の合意を実行することができると思い、それを誠実にやらせていただきたいと思っております。
  79. 富田茂之

    ○富田委員 ぜひ、自民党さんの方からの申し入れでもありましたので、大臣の方でも、今の御決意に従って確実に実行に移していただきたいと思います。  事務的な点について確認させていただきたいのですが、この確認書におきまして、有利子奨学金の学力基準につきまして、「勉学意欲のある者を広く対象とするよう緩和する。」このように合意がされました。この合意に基づいて、今後の採用手続の中で、具体的にどういうふうに運用されていくのか、また、この合意を運用する場合に、日本育英会法の改正等をしなくていいのか、現行法制度のままでこの合意の実行が可能なのか、その点についてお聞かせ願いたいと思います。
  80. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 お尋ねの点でございますが、御案内のように、日本育英会の奨学生の採用につきましては、学力基準と家計基準により選考、採用を行っているところでございます。  そのうち、有利子奨学金の学力基準につきましては、例えば大学一年生の場合で申しますと、これまで、高校時の成績の平均が三・二以上となっていたわけでございますが、平成十一年度からは、まず第一に、成績が平均水準以上の者、第二に、特定の分野において特に優秀な能力を有すると認められる者というふうに改めて基準の緩和を図ることとしたわけでございますが、御指摘いただいております、さきの公党間の合意を受けまして、その二つに加えて、さらに、勉学意欲のある者を基準として追加することとしてございます。  この採用手続でございますが、採用に当たっては選考ということが行われるわけでございます。その選考は日本育英会が行うわけでございますが、それに当たりましては、各学校長等の推薦により選考を行っているところでございます。したがいまして、勉学意欲のある者の具体の選考、採用につきましても、所属する学校長または出身の学校長等が、学習に意欲があり、学習を修了できる見込みがあると認められる場合に推薦を行う、そしてそれに基づいて選考、採用を行うこととしているところでございます。このような手続によりましてより広く奨学生の採用ということが行われることになる、そういうふうに考えておるところでございます。  次に、これに伴う育英会法の改正必要性の問題でございますが、冒頭申しましたように、日本育英会の事業は学力基準と家計基準を設けて運用しているところでございます。  今回、学力基準として、勉学意欲のある者を加える、そういうこととしておるわけでございますが、これは、従来から設けております学力基準の緩和ということでございます。したがいまして、現行の法律の範囲内における運用の一環として対応できるものでございますので、日本育英会法の改正の必要はないというふうに考えておるところでございます。
  81. 富田茂之

    ○富田委員 次に、緊急採用奨学金制度の創設が合意されたわけですけれども、これも四月一日から実施されるというふうに聞いております。この点の採用手続がどういうふうになるのか。  この緊急採用奨学金制度につきましては、物すごく問い合わせが私たちの党にもありますし、また日本育英会の方にも電話等による問い合わせが物すごく行っている。国民の関心が物すごく高い制度だと思いますので、どういうふうに具体的になされるのか、ぜひ教えていただきたいと思います。
  82. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 日本育英会の奨学金の貸与を受けようとする場合には、まず、本人からの申し出に基づいて、その学生生徒が所属する各学校長からの推薦を受けて、日本育英会が選考、採用を行うというふうな手続になっておるわけでございまして、具体的には、各学校の担当教員であるとか学生部等の奨学金担当部署を通じて具体の出願が行われるわけでございます。  新たに創設されます緊急採用奨学金制度につきましても同様な手続を考えておるところでございます。具体的には、学生生徒が所属する各学校を通じて日本育英会へ奨学金の申請を行うこととなるわけでございまして、保護者の失職や死亡等により家計が急変した場合には、随時日本育英会としては申請を受け付けることといたしておるわけでございます。  ただ、この制度につきましては、新たに一万人という大きな規模で行うことといたしておりますし、また、その受け付けが随時行われるということもございます。そしてさらに、学力基準については、勉学意欲がある者というふうな取り扱いをする、そういう新たな内容となっておるわけでございます。したがいまして、その内容及び具体の申請手続について、十二分に学校関係者を初め周知徹底を図る必要があるわけでございます。  日本育英会といたしましても、既にその内容については明らかにしておるところでございますが、先ほど申しましたような新たな内容を含むということもございますので、さらにこの制度について十分に活用なされるよう、全国の各学校を初め関係者への周知徹底にさらに努めてまいりたいと考えておるところでございます。
  83. 富田茂之

    ○富田委員 ぜひ御努力をお願いしたいと思います。家計の急変等の証明等も簡易な手続でできるようにぜひ御配慮をいただきたいと思います。  最後になりますが、私どもの党は、自民党さんとのこの合意を評価いたしますけれども、もう一歩進んで、前回大臣にお尋ねしたように、希望者全員にできれば無利子の奨学金を貸与できるような制度を創設したいということで、今その立法を目指して党内でも努力しております。  自民党さんとの協議の中でも、今後は育英よりも奨学に重点を置いて、希望する者すべてに貸与する方向でというような、確認書の前段階ですけれども、検討会で自民党の担当者の方とその点も合意しております。我が党が目指しているそういう方向性に対して大臣はどのようにお考えになっているか、ちょっと御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  84. 有馬朗人

    有馬国務大臣 無利子奨学金の点でございますが、平成十一年度予算において無利子奨学金の貸与月額の増額と貸与人数の増を図りました。それから、先ほどもお話しいたしました有利子奨学金に関しては大幅に増大をするというようなことで、今回かなり抜本的に育英奨学金をふやす方向に参りました。こういうことが十一年度の予算でございますが、御指摘のような、希望者全員に無利子奨学金を貸与するという新教育奨学金制度の御要望があるということに関しまして、私もよく存じ上げております。  ただ、育英奨学事業の目的に沿うかどうかとか、あるいは今、日本が置かれております厳しい財政状況のもとでの限られた資金の中で事業実施するということが、現在それでやっているわけですが、これに加えて新教育奨学金制度のようなものを実現するということは、現在の財政状況のもとではかなり難しいんじゃないかと考えております。  いずれにいたしましても、今後とも、学生のニーズを踏まえまして、可能な限りその希望にこたえられるように奨学金の充実に努めてまいりたいと思います。不満足な御返事で申しわけありません。     〔栗原(裕)委員長代理退席、委員長着席〕
  85. 富田茂之

    ○富田委員 大臣の熱意はよくわかりますので、私どもの党も一生懸命取り組んでまいりますので、今後とも御協力をよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。  終わります。
  86. 小川元

    小川委員長 次に、石井郁子君。
  87. 石井郁子

    石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。  学術振興会法の一部改正案につきましては、この改正理由として、科研費予算額申請件数が急増したということが挙げられております。そして、審査員数が、学術振興会分だけで約二千四百名と増員される計画である、そして審議体制充実が図られるということになってございます。  学術振興会が行う審査、配分ですけれども、やはり研究者の間ではこの問題が大きな関心事なんですね。どのようにこの透明性が担保されるのかという点で、先ほど来も質疑がございまして、現行とそう大きくは変わらないという御答弁だったかと思いますが、やはり審査、配分の透明性の担保をどのように考えたらいいのかということで、これはまず文部省にお聞きしたいと思います。
  88. 工藤智規

    工藤政府委員 透明性ということにつきましては、私ども、これまでいろいろ努力しているところでございます。例えば、審査に当たる審査員先生方分野によって違うわけでございますけれども、原則、第一段審査が約二千人の研究者方々でございます。それから第二段審査では、科学研究費分科会委員先生方中心に行っているわけでございます。  審議会の委員先生方でございますと、御承知のように、既に氏名も公表しているわけでございますが、第一段審査に当たる具体の審査員のお名前をどういう形で公表するかというのは、デリケートな部分もございまして、余り事前に公表いたしますと公正な審査が期せられるかどうかという不安もあるわけでございますので、そこは、事後的ではございますけれども、こういう方が審査しておりますよという形の公表をしているところでございます。  それから、その審査結果についてでございますけれども、これにつきましても、大きな研究課題などにつきましては、これまでも、仮に採択されない場合、残念ながら配分に漏れたような場合について、その不採択理由を開示するとか、それから、今回学術振興会移管するに当たりまして、一般の研究者の方の一番要望の多い基盤研究中心移管するわけでございますけれども、そこで、第一段審査の後、第二段審査において残念ながら不採択となった研究課題、つまり、採択率が今四分の一ぐらいの状況なものでございますので、その場合に、結構御不安がこれまでもあるわけでございます。  それについては、場合によっては、いろいろなケースがあるのでございますけれども、その研究者申請書の書き方あるいはプレゼンテーションの仕方をもう少し工夫すればということもあったり、いろいろその次の申請の機会に御検討いただくようなこともあるわけでございますので、第一段審査でもし不採択になった場合に、A、B、Cぐらいの、ある程度可能性の濃淡をつけた形でのお知らせをするとかいうことも含めて検討してございます。  これは法的な担保ではないわけでございますけれども、これまでの科研費の扱い、研究者との信頼関係のもとにやってございますので、いずれにしましても、この透明性、公平性を確保しながら、間違いのないように運営してまいりたいと思ってございます。
  89. 石井郁子

    石井(郁)委員 随分御丁寧に御答弁いただきましたけれども、私どもの聞くところでは、十年近くも申請し続けているけれども一度も当たらないという声もありますし、当たるところではもう出すたびに当たる、こういう不公平さというのがやはりあるのですよね。その意味で、どのようにしてこの公平さとか透明性というものを担保していくかということは、やはりもっと研究する課題かなというふうに私たちも考えています。  それはそれでおきまして、一方では、申請数に比して採択率が低い、絶対数の問題があるかというふうにも思うのですが、この点はぜひ大臣にお答えいただければと思うのですけれども採択率でいいますと、一九八九年で二三・三%で、十年後の九八年度で二四・八%と、ほとんど変わらないという状況なんですね。だから、科研費は増額したけれども採択というのは四件に一件ぐらいだという状況になっているわけであります。  こういう意味で、科研費というのは本当に研究者にとって切実だという点からしますと、かなり多くの研究者がやはりもらえない、受けられないという状況になっているということにつきまして、大臣の御認識をちょっと伺っておきたいと思います。
  90. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私もこの五年間落選続きです。決してみんながさっと入るわけじゃないのですね。ただし、私は立場上、自分が中心になって科研費を出せませんけれどもグループをつくってやっているのですけれども、なかなか審査が厳しいということはお伝え申し上げておきましょう。決して一部の人が続けてもらうということではないと思います。  それから、今御指摘のように、科研費がふえたのに採択率が依然として全体的に低いという問題は私も非常に心配しておりまして、科学研究費をふやしていただく、そしてまた科学技術基本法をさらに実行していく際に、常にこの採択率をもっとよくしようということを言い、努力をいたしているところでございます。  ただ、私の希望が実はあるのです。人文社会系は明らかに少ない。それはそもそも希望してくる人が少ないのですね。それからまた、希望者が、依然として採択率が低いとは申しますけれども、急激に科学研究費がふえているのに伴いまして母数は随分ふえました。ですから、今まで遠慮して出さなかったような人がどんどん出してきているようになりますので、その採択率が、現在も低いけれども、かつての低さとは意味が違うということを御理解賜れれば幸いでございます。  それからまた、科研費の一部でCOEを構築するなんということも努力をいたしておりますけれども、毎年五つか六つ採用することになる。その中で、やはり人文社会希望が非常に少ないのです。こういう点で、ぜひとも人文社会の人たちに努力をしていただきたいと思っております。  一例を申しますと、平成十年度における申請件数は十万件を超えました。こういう意味で、かつての申請件数に比べて抜本的に大きくなったということを御了承賜りたいと思います。
  91. 石井郁子

    石井(郁)委員 今、大学の中では、研究室間の格差あるいはその貧富の差が広がっているという声が聞かれるわけであります。これは実際、科学研究費が東大など一部の大学研究室にやはり集中する傾向にあるんじゃないか。東大だけでも九十億の科研費で、採択件数上位五位までで、約三六%の配分額というふうになっているかと思うのです。こういう点で、何か今大臣からは、人文科学分野人文社会系がもっと申請を積極的にというお話もございましたけれども研究分野も大変偏重しているし、そういう問題があるんじゃないかというふうに思うのです。  そこで、ちょっとお伺いしたいのですけれども、確かに、人文社会系には、件数ベースで一三・四%、金額ベースで八・一%なんですね。これは、もちろん金額でいうと、実験設備を大きく抱える自然科学系とは比較はできないかもしれないですけれども、今年度、人文社会系には総額でどのぐらいの科研費の配分になっているのか。もし金額がわかりましたら教えていただきたいということと、大臣から御答弁がございましたけれども、やはり研究活動の総合的な均衡ある発展という観点で、今のような状況をよしとされるのかどうかという点もちょっとお聞きしておきたいなと思います。
  92. 工藤智規

    工藤政府委員 平成十年度の分野別科研費の配分状況でございますけれども、件数でいいますと、人文社会系が一三・四%でございます。金額的には八・一%という状況になってございます。  平成十一年度は、これからでございますのでまだわからないわけでございますが、これは先ほど大臣もおっしゃいましたように、かねがね学術審議会の中でも議論がありまして、もっと人文社会系のシェアをふやしたいという希望はあるのでございますが、何しろこの科研費というのは、そもそも研究者からの御申請を待って、それを審査の上、配分するものでございます。あらかじめその専門分野ごとに配分枠が決まっているわけでは決してないのでございまして、審査の結果こうなっているのでございます。  どうもその申請と配分のペースというのがほぼ同じでございまして、配分結果が今申し上げたような結果に終わっておりますのは、申請件数が必ずしも多くないという状況なのでございます。これは、人文社会科学もいろいろな特殊性がございますし、分野によって違うわけでございますが、割と、グループ研究よりは各個研究で、しかも、必ずしも科研費をいただかなくても研究できるというような特殊事情もあるかと思ってございます。
  93. 石井郁子

    石井(郁)委員 時間がありませんので次の問題に移りますが、科研費の使用期間についてお尋ねしたいのです。  現場の研究者からは、大体四月下旬に決定される、しかし、内定はされるけれども実際におりるのは七月ですね。実験用の高価な設備の場合ですと、そこから業者と交渉するということになりまして、研究室に設備が入るのは十一月ごろになるという話があるわけでございます。そうして、翌年の二月、三月までの期間に一定の研究成果を上げる、予算としても使い切らなくちゃいけないということになるわけで、これでは、研究成果を上げるという点では、事実上不可能に近いという声さえもあるのですよ。  要するに、予算は単年度で締められるわけでしょう。言ってみれば、こういうやり方で枠をはめられると非常に使いにくいという点がありますので、無理があるという点で、希望としては、何らかの、単年度で科研費をかちっと締めていくというやり方をちょっと柔軟に、弾力的にやることはできないのかどうかということがございます。いかがでしょうか。短くお答えください。
  94. 工藤智規

    工藤政府委員 そういう御要望は伺っているのでございますが、ただ、私ども、できるだけいろいろな改善をしてまいってございまして、予算成立と同時にできるだけ早期に執行できるように、実は、申請を受け付けてからもう今日まで毎日のように審査会を行っているところでございます。実際にお金が研究者の手元に届くのには若干のタイムラグがあるにいたしましても、予算が成立し審査会が終わりますと、直ちに内定という形でのお知らせを研究者にいたしまして、すぐに研究活動ができるように私ども努めているところでございます。  また、複数年度にわたる使用につきましては、昨今、研究課題によりまして二年以上にわたる研究課題がふえてきているわけでございますが、それが切れ目なくできますように、私ども、内定とか、あるいは予定した経費の配分につきましても留意しているところでございまして、これからも可能な限り早期の内定、さらには外国での経費使用制限の緩和など、研究者のニーズに合った制度改善に努めてまいりたいと存じております。
  95. 石井郁子

    石井(郁)委員 ぜひその辺は前向きに御検討いただくようにお願いをしておきたいと思います。  科研費の問題は、そういう意味では、民主的配分あるいは補助金の増額、拡充を引き続き求めていかなければならないというふうに思っているところでございます。  私は、次の問題として、大学の基準的経費の問題についてお聞きをしたいと思います。  国大協がまとめられた「文化学術立国をめざして」というのがございますね。それによりますと、教官当たりの積算校費ですが、一九七〇年を一〇〇としますと、物価上昇率も考慮しますと、一九九四年度が非実験で六〇%だ、実験・臨床で五九・五%ということになっているわけでございます。  ですから、こう見ますと、大学研究というのは大変な状況にあるのだろうと察しがつくわけですが、改めて具体的に、私、最近「大学改革」という本も見ました。これは九州大学の文学部の先生がお書きになっていて、まさに文科系の実態なんですが、本当に驚きました。  ちょっと御紹介したいのですけれども、この先生の講座におりてくる研究費は年間百三十三万円だと。専門の国文学関係の新刊図書費というのは、年平均で千四百万円もある。ですから、現在の国立大学文系基礎学講座では、どうしても必要な図書の十分の一しか買えない。同僚のアメリカ人の若手研究者は、一年間で二百万円の自腹を切って図書購入に充てているという。それから、アメリカの大学日本語図書購入の方がはるかに充実しているというふうに書かれているのです。  この先生の講座でいいますと、先生とそれから院生、学生合わせて総勢六十名弱ですよ。それに対する予算の総額はこういうものである。この予算は少なくとも十数年間変わっていないというふうにおっしゃっているわけです。実際そうですね。先ほど言ったように、一九七〇年をベースとすると下がってきているわけですから、これでは本当に基礎研究が衰退をしていくというか、早晩成り立たなくなるということさえ言われているわけであります。  こういう実態からしますと、科研費予算をふやすとともに、やはりすべての研究者の底上げという点での積算校費の増額というのは急務だと私は思うのですね。  この点で、文部大臣は、東大総長時代に国立大学協会の会長もされていらっしゃいました。その九一年には、国大協の国立大学財政基盤調査研究委員会が中間報告を出されておりまして、教育研究費についてこのように指摘をしているわけです。  経常的研究費は必要額の二分の一以下だ。旅費、図書費は自己負担。研究設備の計量・分析機器というのは、八割は研究に不十分だ。研究助成金についても、科研費の交付は半数以上が五年に一回以下だというふうに書かれているわけであります。そして、改善への意見として、積算校費の増額、科研費の交付受給件数を多くすることだというふうに書かれてあります。  大臣は、国大協時代にこういうことを強く主張されていらっしゃったわけでございまして、現在も、その立場でというか、そうお考えになっていらっしゃるかどうかということをちょっと確認させていただきます。
  96. 有馬朗人

    有馬国務大臣 今でもそう思っております。  ただ、十年度はマイナス二%でございましたけれども、それまでは、私が、今御指摘の点で随分世の中に訴えた時代、すなわち平成元年までは一回下がったままずうっとそのままで来ていたわけですけれども、それ以後、平成二年以後はずっと伸びておりまして、十年に二%減った、それまではかなりふえてきていました。しかし、十一年度は、少なくともそれを減らすということはしないように努力をしたつもりであります。  そして、現に、平成元年、一九八九年の教官当積算校費のトータルは千七十億円、それが平成十一年度、一九九九年では、教官当積算校費のトータルでありますが、千五百七十六億と伸びておりますので、全般的にはかなりふえてきていると思います。  ただ、それで十分かどうかということは御議論のあるところでありまして、私にしても、国立大学研究教育活動に支障を来さぬよう努力をしていきたいと思っております。
  97. 石井郁子

    石井(郁)委員 重ねて、その点ではぜひ大臣の御決意も伺っておきたいと思うのです。  と申しますのは、九九年度の予算でいいますと、前年比マイナス二%ですね。これはやはり深刻だと思うのです。だから、次年度をどうされるのか。今度、対前年比でいくとどうなるかということはありますから、やはり何とかしなければいけないという点では、ぜひ大臣のそういう強い御決意をお願いしたいなと思うのですが、いかがでしょうか。
  98. 有馬朗人

    有馬国務大臣 先ほど申し上げたことの繰り返しになって恐縮ですけれども教育研究条件の水準維持に十分配慮していかなきゃならないと思っております。  それから、自己収入の確保、いろいろ奨学寄附金等々が伸びてきておりますので、自己収入の確保や既定経費の見直しなど各般の努力を行いながら、学術研究推進、人材養成確保に重大な役割を担っております国立大学教育研究活動に支障を来さぬように努力をさせていただきたいと思っております。
  99. 石井郁子

    石井(郁)委員 積算校費というのは大学の基準的経費でございますから、そこが圧迫されていたのでは本当に大学研究が深刻だという点で、次年度はぜひ増額にするという文部大臣としての御努力をぜひお願いしたいというふうに思います。  もう一点ですけれども、私は、きょうは、国立大学の施設の整備拡充について質問させていただきます。  これは文部省の文教施設部所管で、今後の国立大学等施設の整備充実に関する調査研究協力者会議が昨年三月に報告書を出されていらっしゃいます。この協力者会議にも、当時、理化学研究所の理事長として大臣はかかわりになっていらっしゃると思うのですね。そういう点からも、大学の校舎の大変な老朽の実態、私もこれをいただいて、文部省として、ここまでちゃんと調べてきちっとお書きになっていらっしゃるという点では感心もしたのです。  例えば、全施設面積の五二%が通常改修等の措置が必要な時期である二十年を経過している。その七割が改築、改修等の措置を必要としている等々がございますね。いろいろありますが、もう時間がありませんので省略しますが、この中にはこういう実態が報告されております。  平成九年度の予算ベースで改築、改修整備が推移したと仮定しましても、およそ十年後には、経年二十年以上の建物は現在の一・四倍になるわけです。全保有面積に対する比率は約七割に達すると見込まれるとしています。  では、こういう状況を踏まえて、九九年度の国立学校施設整備費は一体幾らなのか、これは単純な話なんですが、ちょっと数字を教えてください。
  100. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 時間もございますので、平成十年度の国立学校施設の整備関係予算でございますが、十年度当初予算額が九百十七億でございます。十一年度が八百八十二億でございますが、御承知のように十年度は第三次補正等がございますので、これを合わせますと二千四百七十八億になってございます。  先ほどるる御説明ございましたけれども文部省としては、老朽・狭隘化の計画的解消に努めていきたいというふうに今思っているところでございます。
  101. 石井郁子

    石井(郁)委員 まさにその計画なんですけれども、この報告書にも、「教育研究に支障が生じているのみならず、安全性の確保の観点からも劣悪な状態」だと分析されていますし、「老朽・狭隘の解消は、国立大学等施設の基本的かつ緊急の課題である。 施設の自己点検・評価に基づき、中長期の整備計画を立案し、計画的な整備を図る。」というふうにございますが、では、その計画というのは一体どうなっているのでしょうか。
  102. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 老朽・狭隘化の解消につきましては、科学技術基本計画に基づく整備推進してまいりますときに、平成八年度からのとりあえずの計画はあるわけでございますけれども、まだ全体としての計画は現在持ってはございません。ただ、各国立大学それぞれ整備計画を持っておりますので、そういったものを十分検討しながら、今後具体的なものを検討していきたいというふうに考えているところでございます。
  103. 石井郁子

    石井(郁)委員 先ほども、通常予算ではもうマイナスになっている、しかし補正でやっとふやしていく、こういうやり方をしているようですけれども、それでは到底間に合わないだろうと思うのですよね。今お話しのように計画も十分立てられていないということでは、こういう事態をどうされるのかという点で、私は文部省としての態度が本当に問われると思うのですね。だから、やはり予算の増額が基本ですけれども、どのようにこの老朽・狭隘を解消していくのかという点で、やはりきちんと計画を持つべきではありませんか。  これは文部大臣に、こういう調査に基づいて報告をされていらっしゃったわけですから、文部大臣として、そういう計画をお立てになるという点をぜひお聞きをしておきたいなと思います。
  104. 有馬朗人

    有馬国務大臣 先ほどおっしゃられましたように、私は、国立大学の施設を十分なものにしていかなきゃならないということを長年主張してまいりましたし、その調査委員会委員長として取りまとめた人間であります。したがいまして、単に古いものだけではなくて、狭隘であるとか、それから新しい分野研究が進んでいく、教育が進んでいくというさまざまな点がございますので、総合的にきちっと調査検討をした上で対策を講じていきたいと思っております。
  105. 石井郁子

    石井(郁)委員 ぜひよろしくお願いをいたします。  終わります。ありがとうございました。
  106. 小川元

    小川委員長 次に、濱田健一君。
  107. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 社会民主党・市民連合の濱田健一でございます。  日本学術振興会法の一部を改正する法律案について、基本的な部分について数点大臣に御質問させていただきたいと思います。  平成七年十一月に科学技術基本法が制定をされて、八年の七月には基本計画、十年を見越した前半五年間の基本計画というものが閣議決定をされました。平成十一年度はその中間地点を越えて、いよいよまとめの時期といいますか、後半の二年間に入っていくわけでございますが、この基本計画にのっとった三年間の成果、そして今後の、十年の半分の五年間に残された課題、こういう点についてどういう御認識を大臣はお持ちか、お聞かせいただきたいと思います。
  108. 有馬朗人

    有馬国務大臣 まず、科学技術基本法が議員立法でつくられたこと、それから、それに基づいて基本計画、五カ年計画がつくられたことに対しまして、研究を続けてきた人間の一人といたしまして、心から御礼を申し上げたいと思います。  そこで、この科学技術基本計画によってどのくらい成果が出てきたかということでございますが、まず第一に、さまざまな成果、例えば論文の数であるとか特許とか、そういうものがかなり急速にふえつつあるということを最初に申し上げておきたいと思います。  しかし、科学技術基本法がございますので、科学研究費補助金が、平成七年度九百二十四億でございましたが、平成十一年度になりますと千三百十四億というふうに四二・二%拡大されてきたこと、それからもう一つ出資金でございますが、日本学術振興会出資金がふえてきて、それを活用いたしました未来開拓学術研究推進事業というものが、平成八年度においては百十億でございましたけれども平成十一年度においては二百五十億、二倍以上に拡大されているということでございます。同じように科学技術振興事業団に対しましても出資金が出ておりますので、科学技術振興事業団の方の戦略的基礎研究推進制度というふうなものが拡充されております。大変これはありがたいことであります。  それから、さらに私ども研究者にとって非常にありがたかったことは、ポスドクがふえたということです。ポスドク等一万人計画が推進されております。平成七年度にはポスドクというのは、日本学術振興会が取り扱っております特別研究員の数は二千五百四十人にすぎなかったのですが、平成十一年度にはこれが四千四百十人になります。それからまた、博士課程の学生に対する奨学金なども大幅にふえているということを申し上げておきたいと思います。  そして、柔軟かつ競争的な研究環境の実現、産学官の連携交流の推進、こういうことに資するために、これまでに、大学の教員等の任期に関する法律とか、大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律の施行などを実施したところでございます。  そして、平成九年の十二月に学術審議会から、学術研究における評価のあり方について建議をいただき、研究評価充実に努めているところでございます。  科学技術会議においては、政策委員会中心に、科学技術基本計画の進捗状況及び今後の課題についてのフォローアップが進められているところでございます。文部省といたしましては、それを踏まえ、同計画の施策実現に向け、今後とも最大限の努力を傾けてまいりたいと思っております。なお、次期計画につきましては、今後このフォローアップを深めながら議論が進められると考えられております。  こういうことで、大学関係、国立研究所関係の研究者は、大いに今ハッスルしているところでございます。
  109. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 基本法による基本計画の推進によって、さまざまな形での公的なバックアップというものが進められているという問題の趣旨で今御回答いただいたわけでございますが、平成八年の日本全体の研究費、これは民間を含めて、教育白書の中で拾ってみますと、十五兆七百九十三億円、公費負担の割合が二一%。大学について言うと、三兆百三十一億円で公費負担が五一・一%という形で御努力いただいているとは思うんですけれども、この割合というものが先進諸外国と比較をして遜色ないのかどうか。もっともっと私たちは必要であるというふうに思うわけでございまして、大学を含めて御見解、大臣、いかがでしょうか。
  110. 有馬朗人

    有馬国務大臣 この点、私が常に主張していることでございまして、まだ少ない、二一%程度であります。しかし、十七兆円ということによってこれがかなりふえてきたということも事実でございますが、ただ、ふえ方が、今のところ補正予算というものを大幅に使うことによってふえておりますので、当初予算というところのふえ方はまだまだ十分ではございません。しかし、これを何とかして今後ふやしていかなければ先進諸国と比べてどうしても弱いと思っています。  詳しく数字は局長より御返事申し上げますが、アメリカが三五%、フランスが四十何%というふうに先進諸国の方がはるかに多い、このことは今私は身にしみて覚えておりますので、お返事いたします。
  111. 工藤智規

    工藤政府委員 先生御指摘のように、我が国研究費につきまして、文部省を含めた政府全体の拡充の努力を続けているわけでございますけれども、対GDP比の公費負担割合、さらには大学における研究費の公費負担割合、いずれも、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス等と比較した場合に、残念ながら低い水準でございます。  特に、COE分野で世界をリードしておりますアメリカの対GDP比の公費負担割合というのが〇・八三%なのに対しまして、我が国は〇・六三%でございます。〇・二でございますが、GDPに対する〇・二でございますので、これを、日本をアメリカ並みにということになりますとさらに一兆円の投資が必要という水準でございますので、さらなる努力が必要と認識してございます。  このため、先般来大臣からも御答弁申し上げていますように、学術研究未来への先行投資と位置づけまして、予算の確保も含め努力してきたつもりでございますし、今後もさらに最大限の努力を続けてまいりたいと存じております。
  112. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 今回の改正案の中心であります科学研究費補助金でございますが、この研究種目はいろいろなジャンルの分け方があるようでございますけれども申請種目といいますか、いろいろな立場で、いろいろな領域で研究活動されておられる皆さん方から相当数の申請が見られるようでございますけれども、その申請の特徴というものがあるのかないのか。また、特に今申請をされているものの中で、国としてこれはどうにか物にしてほしいというような期待される事例がありましたら披瀝をお願いしたいと思います。
  113. 工藤智規

    工藤政府委員 これまでも科学研究費補助金研究種目につきましては、研究者のニーズを踏まえながら学術審議会で御検討いただいて制度改正をしてきたところでございまして、現在のところ十一の種目がございます。  いろいろ多岐にわたってございまして、いわばノーベル賞級研究推進という気構えで推進してございます特別推進研究から、奨励研究と言ってございますけれども、一般の方々のごく身近な研究まで多様でございます。その中で、若手といえども非常に示唆に富んだ研究をする方々研究奨励のためにわざわざ、萌芽的研究と私ども申してございますけれども、これからの将来性を見込んだ研究推進をバックアップするということもあるわけでございます。  いずれにしても、その採択に当たりましては、専門家研究者によりまして厳正な審査を行っていただいておるわけでございますが、これから期待される部分というのは、まあ基礎研究でございますので、それがすぐどう応用されるかどうかとか、あるいはすぐノーベル賞がもらえるかどうかとかというのはなかなか難しいのでございますけれども、昨今新聞等で報道されておりますいろいろな大学関係の研究成果、そのほとんどが科研費をお使いいただきながら研究推進しているものでございます。  最近報道された例などで御紹介いたしますと、個人名を挙げて恐縮でございますけれども、例えば、昨年文化功労者にもなられまして、先般アラブのノーベル賞とも言われておりますキングファイサル国際賞を受賞されました名古屋大学の野依教授をリーダーとする研究グループ研究でございますとか、あるいは京都大学の竹市教授の研究課題としてのシナプス結合と神経回路というのも特別推進研究の中でノーベル賞をねらうものとして関係者から期待されている研究課題の例でございます。こういうのがいろいろございます。
  114. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 ありがとうございました。  地元のことでちょっと恐縮なんですが、桜島の関係でございます。  私も五十年近く毎日見なれた風景で、あの噴火、あの火山がなければ非常に平たんなところだ、風景がおもしろくないなというふうに思っているわけでございますが、火山によるいろいろな災害というものは、これは今少し落ち着いておりますけれども、相当な人的、物的、農作物を含めた被害を高じておりますが、火山噴火予知研究、これらについての進捗状況といいますか、取り組みはいかになっているのか。
  115. 工藤智規

    工藤政府委員 地震火山国日本で各地でいろいろ懸念する研究調査材料があるわけでございますが、桜島につきまして、従来より測地学審議会、これは文部省にたまたま置いてございますけれども、関係省庁協力して研究協議する場でございまして、その測地学審議会から各大臣に建議される火山噴火予知計画に沿いまして研究体制の強化を図ってきているところでございます。  平成六年度から十年度まで第五次火山噴火予知計画というのが立てられてきたわけでございますが、桜島につきましては、活動的で特に重点的に観測研究を行うべき火山として位置づけられておりまして、大学関係では、桜島町にございます京都大学防災研究所の研究センター、さらには鹿児島大学理学部の観測所を中心にいたしまして重点的な観測研究を行っておりますほかに、気象庁、国土地理院等でも関連の事業を行っているところでございます。  十一年度以降のあり方につきましては、昨年、測地学審議会が第六次の火山噴火予知計画というのを提案してございまして、それに沿いましてさらなる観測研究充実強化を図ってまいる所存でございます。
  116. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 ぜひ、火山予知、災害予防という意味でその研究を深めてもらって、具体的な措置ができる中身というものを御提示いただきたいと思います。  最後に、やはり科学技術振興については、子供たちがそのことをしっかりと学び興味を持つということが大事でございます。さまざまな取り組みを学校教育社会教育の中でやっておられますけれども、今後とも特にこういう面で力を入れて科学技術立国日本を背負う青少年を育てていくという部分、どういうところに観点を置かれておられるのか、大臣の決意をお示しいただきたいと思います。
  117. 有馬朗人

    有馬国務大臣 まず学校教育という面では、昨年末に改訂いたしました新しい小中学校学習指導要領において、自然に対する興味・関心、知的好奇心を高めること、科学的に調べる能力や問題解決能力を育成すること、自然体験や日常生活と関連づけて科学的な見方や考え方を育てること、こういうことに留意いたしまして、現在改善を図っているところでございます。  それから、学校における理科教育充実させなければいけないというので、指導方法の改善充実や理科教育設備の計画的な整備を図っているところでございます。これは学校の中でやることであります。  しかし、学校完全週五日制が導入されますときには、さらに地域における教育力を増さなければいけないと思っております。そこで、地域における青少年の科学技術に対する興味や関心を高めるための取り組みといたしまして科学技術庁とも協力いたしておりますが、この点でも、科学技術庁と文部省がともに力を出し合うということは非常にすばらしいことだと思っております。  まず第一に、学校休業日等に地域の公民館や科学館等で開催する子ども科学・ものづくり教室を支援していこうと思っています。  それから二番目に、日本学術振興会が計画し、大学大学共同利用機関子供たちが最先端の研究成果研究所のあり方などを見る、直接触れる機会を提供し合うサイエンスプログラムの実施を行う、それから科学博物館とか技術館を充実させる、こういうふうな努力を今いたしているところでございます。
  118. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 村山内閣のときに、教育未来先行投資だと言われた言葉を私たちは改めてかみしめながら、科学技術予算、そして文教予算全体をやはりふやすということが日本の二十一世紀の発展の礎になるということを改めて認識しながら頑張りたいと思います。大臣、どうもありがとうございました。
  119. 小川元

    小川委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  120. 小川元

    小川委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出日本学術振興会法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  121. 小川元

    小川委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  122. 小川元

    小川委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、栗原裕康君外六名から、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び粟屋敏信君共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。藤村修君。
  123. 藤村修

    藤村委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     日本学術振興会法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、人類社会の発展の基盤を形成する学術研究の重要性にかんがみ、この法律の実施に当たっては、次の事項について、特段の配慮をすべきである。  一 学術研究のための基幹的な経費である科学研究費補助金の重要性にかんがみ、今後とも、その予算拡充に努めること。  二 科学研究費補助金に係る審査及び評価については、更に一層適切なものとなるよう、今後とも、制度及びその運用の改善に努めること。    また、日本学術振興会が新たに行う科学研究費補助金の配分のための審査及び事務処理体制整備充実に努めること。  三 研究者がその研究を遂行する上で、科学研究費補助金が果たす役割の重要性にかんがみ、研究者に対して科学研究費補助金に関する情報の円滑な提供に努めること。 以上であります。  何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  124. 小川元

    小川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  125. 小川元

    小川委員長 起立総員。よって、本動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、本附帯決議に対し、文部大臣から発言を求められておりますので、これを許します。有馬文部大臣
  126. 有馬朗人

    有馬国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと思います。  どうもありがとうございました。     —————————————
  127. 小川元

    小川委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 小川元

    小川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  129. 小川元

    小川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十五分散会