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1999-02-10 第145回国会 衆議院 文教委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月十日(水曜日)     午前九時開議   出席委員    委員長 小川  元君    理事 栗原 裕康君 理事 栗本慎一郎君    理事 小杉  隆君 理事 増田 敏男君    理事 藤村  修君 理事 山元  勉君    理事 富田 茂之君 理事 松浪健四郎君       岩永 峯一君    大野 松茂君       奥山 茂彦君    倉成 正和君       佐田玄一郎君    下村 博文君       高鳥  修君    高橋 一郎君       中山 成彬君    松永  光君       渡辺 博道君    池端 清一君       田中  甲君    鳩山 邦夫君       池坊 保子君    西  博義君       笹山 登生君    石井 郁子君       山原健二郎君    濱田 健一君       保坂 展人君    粟屋 敏信君  出席国務大臣         文部大臣    有馬 朗人君  出席政府委員         文部大臣官房長 小野 元之君         文部省生涯学習         局長      富岡 賢治君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省教育助成         局長      御手洗 康君         文部省高等教育         局長      佐々木正峰君         文部省学術国際         局長      工藤 智規君         文部省体育局長 遠藤 昭雄君         文化庁次長   近藤 信司君  委員外出席者         文教委員会専門         員       岡村  豊君 委員の異動 二月十日  辞任         補欠選任   濱田 健一君     保坂 展人君 同日  辞任         補欠選任   保坂 展人君     濱田 健一君 本日の会議に付した案件  文教行政基本施策に関する件     午前九時開議      ————◇—————
  2. 小川元

    小川委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩永峯一君。
  3. 岩永峯一

    岩永委員 有馬文部大臣には、早朝から御苦労さまでございます。  世界屈指経済を維持し、国民ひとしく高い生活レベルを享受できるに至った最大理由は、我が国に極めて高水準人材が豊富に存在したことであると断言できると思っております。言うなれば、人材我が国の宝であり、その育成生命線であると言えます。  しかし、その教育を取り巻く状況は決して楽観できるものではございません。学級崩壊、異常なまでの受験競争の過熱、大学生の不勉強など、我が国教育制度が根本的に行き詰まっていることを示すような例が最近非常に目につくようになってまいりました。  二十一世紀には、個人自立公共心自己責任中心に据えた社会を築こうとしていく中で、個人自立心責任感公共心の醸成に支障を来せば、この国に未来はないものと言えるでしょう。教育制度改革は急迫の必要性を持っているものと考えております。そこで、今後の文部省はいかなる形で文部行政を行っていくかということに重大な関心を寄せつつ、有馬文部大臣所信を拝聴いたした次第でございます。  文部省は、以前から、教育改革プログラムを策定し、積極的に現在の教育制度の見直しをお進めになっていたわけでございますが、今回の所信においても、その方向を基本的に維持しつつ、子どもセンター全国展開子ども放送局の創設などを柱とする全国子どもプラン発展し、より一層踏み込んだ姿勢がうかがえ、非常に心強い限りでございます。  そこで、生涯教育振興初等中等教育充実につきまして二、三伺いたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。  第一点でございますが、さて、今日、まず最初にお伺いしたいことは、教職員配置学級編制についてであります。  我が国では、現在のところ一クラス当たり生徒数はおおむね四十人であり、これを一クラス当たり生徒数を三十人とするいわば三十人学級実現に向けて、その検討が各方面で議論されている状況でございます。しかし、生徒一人一人に対するきめ細かな指導を行うという観点に立ちました場合、果たして三十人学級実現唯一最善の策かと申しますと、私は甚だ疑問を覚えざるを得ません。  例えば、アメリカなどでは一クラス当たり生徒数も非常に少ないわけですが、それと同時に、クラスや学年の壁を取り払ったオープンエデュケーションが取り入れられております。それによって、生徒たち指導するに当たって、生徒たち実情と必要に応じた柔軟な指導文字どおり臨機応変に行うことが可能であると聞き及んでおります。  ですから、むしろ我が国でも、クラスを一人の教師が教えているという現状を改めて、一つクラス複数教師を置くようにしていくことをより重視すべきであると考えております。そして、そのために、各学校が積極的に非常勤講師を採用し、小中学校においては各クラスに副担任のようなものを常に配置できるようにすべきであると考えます。  我が国でも、一部の科目についてチームティーチングが行われております。また、非常勤講師自治体負担で雇用することも認められております。しかし、それらに対して、自治体の独力ではなかなか実現できないというのが実際のところであります。そこで、中教審の答申における教職員配置改善に関する提言の中にありますように、非常勤講師の報酬についても国が応分の負担をし、国として複数担任制を推進していくべきであると私は考えます。  以下にその理由を申し述べさせていただきます。理由は、長期的な環境変化に関連するものと、緊急の課題に関連するものの二点でございますので、順次述べたいと思います。  まず、長期的な環境変化に関連する理由についてでございますが、我が国は、高度経済成長を終えて低成長時代を迎え、当分この低成長時代が続くと言われております。そのような流れの中で、これから我が国では、付加価値を生み出す多様な人材知性が必要になることは避けられないでありましょう。また、学校においてそれぞれの子供たちの適性を最大限に伸ばすことは、その子供たちが将来我が国で暮らしていく上でも、経済的に自立していく上でも非常に助けとなると思われます。  今までの、一人の教師黒板の前に立ってクラス全体を見るというやり方は、すべての生徒能力を一定の水準に引き上げることに関しては有効であったと思います。しかし、そのような教育は、どうしても生徒たちをある程度画一的に扱うことになります。生徒たち人間性育成にも限界がありますし、その将来にとって本当に役立つ教育を今後行っていけるかという点でも疑問が残ります。生徒たちに最低限の知識を身につけさせると同時に、それぞれの個性をできるだけ伸ばすためには、生徒たち実情に応じて現場で柔軟な対応をとることを可能にする教育制度を整えておくことが必要だと思うのであります。  教師が一人しかいなければできることは限られております。しかし、二人いればできることにかなり幅が出てくると思うのであります。例えば、一人の先生黒板の前で講義をし、もう一人が机の間を回って理解の遅い生徒理解を助ける、また、クラス生徒関心に応じ二つに分けて、それぞれの関心に応じた授業を別々に行う、またはクラス二つにしてディベートを行うなど、単にクラスを、二十人学級二つつくるということよりも、柔軟で多様な教育方法をとることが可能になると思います。  また、試験で選別される高等学校とは異なり、小中学校では学習理解度にもかなり差があります。それに対してかなり柔軟な対応が可能になるのであります。落ちこぼれをつくらない、勉強のできる生徒学習意欲をそがないという点からも副担任制は非常に有効であると考えます。  以上のように、我が国経済社会構造変化を考えた場合、複数担任制の導入こそが生徒の将来にとってより好ましいものであると私は考えます。  次に、緊急的な課題に関する理由を申し述べさせていただきます。  昨今、新聞紙上をにぎわせております学級崩壊の問題であります。  現在の学級崩壊のありさまは深刻でありまして、教師指導は大変困難な時代になってまいりました。しかも、一クラス担任制をとっております現状では、クラスのことは担任がすべて責任を負うという意識が強く、同僚教師にも相談しにくい状況であり、多くの先生が孤独の中で悩んでいるといいます。  私も、この質問をするに当たり二、三の学校先生と懇談し、学級指導状況をつぶさに聞いてまいりました。そこで考えるに、これが複数担任制であるならば、クラスの運営に関して二人で相談し合いながら生徒指導していくことができます。どれほど現場先生方にとって心強いことでありましょうか。  実際、人材の面に関しましても、少子化の影響で未就業の新人教師が増加していることや、退職公務員の再雇用制度が導入されていることから、かなり充実してくるものと思われます。  以上のようなことを考え合わせて、私といたしましては、複数担任制を採用しようという自治体学校に対しては国が積極的にこれを支える必要があると考えます。  特に財政面におきまして、例えば、毎月十五万円の給与の臨時講師を四十万学級学級に配置する、そして国が半分見るということを考えますと、年間三千六百億という金が財政負担として要るわけですが、決して少ない金ではないと思うんですが、今後の教育の根幹にかかわる問題でございますので、文部省としても、財政当局に負けることなく積極的に推進していくべきであると考えますが、有馬大臣はどのようにお考えか、所見をお伺いいたしたいわけでございます。
  4. 有馬朗人

    有馬国務大臣 御指摘のように、非常勤講師活用につきましては、文部省といたしましても極めて重要な課題と受けとめております。  児童生徒の実態に応じてきめ細かな指導をするなどの観点から補助事業を実施しているところでございます。特に特別非常勤講師につきましては、その対象教科を全教科に拡大するなど、制度改善を図るとともに、各都道府県に対し所要の経費を補助し、その促進を図っているところでございます。  また、平成十一年度予算案におきましては、新たに小学校専科担当教員充実を図るため、小学校高学年対象非常勤講師を配置いたしまして、調査研究を行うための必要な経費を計上しているところでございます。  また、現行の第六次教職員配置改善計画では、個に応じた多様な教育展開を図るため、複数教師協力して、グループ別指導習熟度別指導など、きめ細かな指導等が行われるようにチームティーチングのための定数措置などを行うなど、教職員配置改善を図っております。  先日、私も小学校、中学校を見てまいりましたが、チームティーチングが非常に有効に働いているようであります。制度がとてもよく働いているように思いました。  現在、今後の学級編制教職員配置あり方につきましては、その財政負担に伴う教育効果も含めまして、専門家協力を得ながら、学校週五日制時代における新しい教育課程の実施も視野に入れて検討を行っているところでございまして、御指摘のような非常勤講師活用についても、この中で十分考慮してまいりたいと思います。
  5. 岩永峯一

    岩永委員 チームティーチングの場合は、その学級で週に一度なされるかなされないかという状況でございますし、基本的に、四十人の学級を、また三十人にいたしましても、思春期暴れ盛り生徒を一人の教員で守りできるということ自身がどだい無理でございまして、私の調べによりますと、アメリカあたりでは十七人の学級あたりでも二人の教員を置いている。だから根本的に、一人の教員では到底混雑した教室の中で教育ができないという原点に立って文部省としては物を考えていかなきゃ、財政難だとかいろいろな形の中で無理に押し込めた教育をいたしましても教育効果は上がらないし、落ちこぼれができてくるという現代の状況というものは救う手だてがない、このように私は思っております。  これは、私も我が党の文教部会等で積極的に提言していきながら、今の学級崩壊、また教育程度をどう上げていくかということに積極的に対応していきたいと思いますので、文部省もひとつ、いろいろ議論がありましょうし方法はあると思いますが、そういう原点に立って御尽力をいただきたいということでございます。  第二点目でございます。  委員長にお願いしたいのですが、実は資料がございますので、委員資料をお配りさせていただいてよろしいでしょうか。
  6. 小川元

    小川委員長 はい。
  7. 岩永峯一

    岩永委員 では、そうしたらお願いいたします。  次に伺いたいのは、理科教育の問題であります。  乏しい天然資源にもかかわらず、我が国がここまでの経済発展をなし遂げることができたのは、我が国が全体として高い水準科学技術を持っていたということが極めて大きかったと言うことができると思います。そして、これからも科学技術こそがその国家の盛衰のかぎになるということについても、万人が認めるところであると思います。このような認識を前提にした場合、我々は、我が国の将来を担う子供たちに対して、科学技術の分野についてどのような教育を行うことができるかということに我が国の命運がかかっていると言っても過言ではないと思います。  しかし、それに関して最近気がかりなことを耳にいたしますが、それは、理科離れの問題についてであります。  一九九五年にIEAによって第三回国際数学理科教育調査というものが実施されました。そしてその中に、四十六カ国に上る参加国地域協力をもとに、各国理科数学教育達成度を測定した結果が出されております。  そして日本は、中学一、二年を対象とした理科について、この国際比較において、シンガポール、チェコに次いで第三位という成績をおさめており、この数字だけで見ますと非常に頼もしい限りですが、実は、この結果をもう少し細かく見ていくと、なかなか憂慮すべきことが浮かび上がってくるのであります。結論を端的に申し上げてしまえば、生徒理科に対する関心と熱意が世界的に見ても極めて低水準にあるということなのであります。  詳しく申し上げますと、各国中学一、二年生の理科に対する意識をアンケート調査した項目がございまして、その中で、理科が好きな生徒の割合、理科日常生活において大切である、将来、科学に関係した仕事に従事したいという項目については、いずれも日本調査対象国最下位となっておるということでございます。  また、国際基督教大学の風間晴子準教授が「大学の物理教育」という雑誌の論文上で、この国際比較を分析した結果によりますと、中学一年で答えられていた問題に中学二年で答えられない、問われ方の形式が異なると正しく答えることができないといった現象が見られると言います。勉強成果がわずか一年間も定着していないのであります。血肉になっていないのであります。  要するに、試験対策暗記勉強としてしか理科をとらえていないので、成績は一時的によくても、その成果は結局のところ定着しない、応用力が身につかないということが如実にあらわれていると言えます。  そして、別の資料になりますが、一九九六年のOECDの国際シンポジウムの報告には、一般市民科学技術に関する知識において、日本最下位のポルトガルとほとんど差のない、最下位から二番目となっております。また、科学技術に対する関心の度合いは参加国最下位となっており、科学技術創造立国であるはずの我が国国民全体の科学技術に対する関心興味はここまで低いというのが現状なのであります。  有馬大臣におかれては、理科世界第一人者として、我が国科学技術を牽引してこられた見識と経験をだれよりもお持ちであると考えておりますし、大臣の周りには、それこそきら星のごとく優秀な理科学者がそろっておられることと思います。しかし、一たび目を転じて国民全体を見てみれば、かくのごときありさまであるというのが現実なのであります。  最先端技術開発に関して言えば、一部の超秀才たちが牽引していくことが効果的であると考えます。しかし、我が国科学技術政策を考える際、最先端科学技術を追求することと同じくらいに重要なのは、既存の技術をいかに実際の生活に役立てる、現実付加価値として結びつけるということではないでしょうか。これには、できるだけ多くの国民がなるべく先端技術に習熟し、科学技術以外の経験とアイデアを結びつけるように努力することが必要であると考えております。  この商品化のようなことは、一部の最先端学者たちだけではできるはずもありません。層の厚い、理科好きの国民というものがどうしても必要になると考えます。それこそ、科学技術創造立国を国是とする我が国のあるべき姿であると考えます。現状理科離れというよりも、理科嫌いが大半というような現状で、今後の我が国科学技術未来は暗たんたるものであると言わざるを得ないと思います。  有馬大臣日本科学技術界第一人者であられますから、きっと日本で一番理科の魅力をわかっておられる方なのかもしれません。どのようにすれば理科の楽しさを初学者に伝えられるのか、それを文部大臣としてどのように教育制度に反映していくおつもりなのか。この二点につき、大臣の率直な御意見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
  8. 有馬朗人

    有馬国務大臣 理科離れということにつきまして私も大変心配をしておりまして、先ほどお示しくださった風間さんの論文が出るはるか前から私はこの問題に心配をしておりました。したがいまして、一九九四年より、子供たちの合宿を兼ねて、私みずから理科教育をやるというようなことを図ったことがございます。  ただ、青少年の理科離れについての御指摘で問題になりますことは、少なくとも小中学校ではそれほど理科に対する関心は減っておりません。ただ、高等学校以降、大分減っていくということが心配でございます。小中学校段階での理科離れということよりも、むしろ知離れ、一般に知、知識に対する関心が薄くなっているというあたりがやや私としてもさらに心配な点でございます。  御指摘のように、いずれにいたしましても、知的創造力最大資源でありますから、我が国にとって、科学技術発展ということだけではなく、日本の国をさらに栄えさせていくためには、理科教育充実を図る必要があると思っております。  そこで、昨年十二月に改訂いたしました新しい小中学校学習指導要領では、自然に対する興味関心知的好奇心を高める、科学的に調べる能力やみずから問題を解決していく能力育成する、自然体験日常生活と関連づけて科学的な見方や考え方を育てることなどに留意をいたしまして、大いに改善を図っているところでございます。  文部省といたしましては、理科教育充実のため、今後とも、各種の研修事業理科教育設備の計画的な整備等施策を実施するとともに、地域施設等において開催いたします科学実験物づくり体験教室などを支援するなど、学校だけではなくて地域においても子供たち科学のおもしろさに触れる、実験のおもしろさに触れる、そういうことを通じまして、発見する喜び、つくる喜びなどを体験できる機会の提供に努めてまいりたいと思います。この点は非常に重要なことでございますので、私といたしましても、大いに関心を持って今後とも進めさせていただきたいと思っております。
  9. 岩永峯一

    岩永委員 大臣、もう私が今さら述べるまでもなく、大臣自身が一番頭を痛めておられるだろう、このように思いますし、有馬大臣こそがなし得る具体的な施策であろう、私はこのように思っております。ひとつ大胆に、大臣の在任中にやはりその改革の素地をきっちりつくっていただいて、そして、二十一世紀にも隆々とした日本の、科学技術立国工業立国として世界にリードでき得る体制をつくっていかなければ——先般も、立花隆さんの文春における二十世紀の反省と二十一世紀の展望の中で、二十一世紀日本は大きく後退を来し、そして絶滅の危機に瀕するのではないか、これは、そういう工業立国科学技術立国としての立場がそうなるのではないかという最終の結びがありまして、私自身も、今これらのアンケートの状況を見ておりますときに、本当に危惧するものでございます。  日本の国は、人間知性ほど大きな財産はないわけでございますし、この小さい島国の中でこれだけの経済繁栄生活水準が享受できているということは、我々、ひとえに先輩の知力のおかげであったろう、このように思いますので、くどくは申し上げませんが、ひとつ大臣の就任中に大改革をよろしくお願い申し上げます。  第三点目でございます。少々質問が多うございますので、早口で恐縮でございます。  社会教育法の第五章に規定されております公民館を利用した生涯教育あり方について伺いたいと存じます。  今、個人主義化核家族化などの進展によって、都市部中心地域社会連帯が薄れ、一人一人の住民が孤立する傾向になっているのではないかと、私といたしましては、非常に危機感を持っているわけであります。これは、女性や高齢者に限らず、青年層などすべての人々について言えることであります。人間は、濃密な人間関係の中ではぐくまれてこそよりよく学習していくものでありますから、このような傾向は決して看過できるものではないと私は考えます。  また、今後の小さな政府への流れを考えた場合、アメリカの例を拝見いたしましても、国民福祉の担い手として、人間同士のネットワークとしてのNPO活動中心になります。それら地域社会連帯というものはこれから非常に重要なものになっていくものと思われます。国として、地域社会をよみがえらせ、地域連帯を取り戻すということは、ただいま進行中の行革を裏打ちするものであり、極めて重大な意味を持っていると考えるわけであります。それには根気強い努力が必要になるのでしょうが、ここでは、公民館活用して少しでも状況をよくできないかと思い、意見を述べさせていただきます。  公民館は、社会教育法第二十条によって、住民の教養の向上、健康の増進、情操の純化、生活文化振興社会福祉増進を図るものとあります。実際に、現在でも公民館は、ミーティングの場を提供したり、カルチャースクールを実施したりするなど、住民ニーズに従って熱心な活動を行っていると聞いております。しかし、逆に言えば、あくまで受け身の態勢である。住民ニーズを先取りするとか喚起しようとかの姿勢は、法的な面からも運用の面からも感じられないというのが正直なところであります。  公民館はほとんどの集落に一つはあるものですし、これを地域活動の拠点とすることができれば全国的にいろいろ変わってくると思うのであります。そのような潜在力を持つ公民館というものを、現在のような使い方をするだけで満足してしまうのは余りにももったいないと思うのであります。  私は、公民館を、地域活動社会教育の決起のとりでととらえ直すべき時期が来たのではないかと思うのであります。昨年九月の生涯学習審議会答申にも、未発達な民間の社会教育活動NPO活動に対して積極的な環境整備と支援を行うべきものとございます。この提言を生かすためにも、文部省の断固とした決断をお願いしたいと考えるわけであります。  一言で申し上げれば、住民の皆さんにとって、与えられる生涯教育から参加する生涯教育というものに転換していかなければならないと考えるわけであります。今までの枠にとらわれることなく、公民館の側から積極的に地域住民に働きかけ、地域住民を巻き込んで活動するぐらいのことがあってもよいのではないかと私は考えるのであります。現在は、市町村の職員の方がそのまま公民館事務方としてお入りになっているようでございますが、その職員の方の気持ち次第でその活動が積極的にも消極的にもなってしまうと聞いております。  ですから、公民館の運営をやる気ある青年層などの地域NPOに任せてしまい、彼らの活動の拠点として活用させる、そして、公民館地域NPOの拠点、中心点にしてしまう、それくらいの公民館の思い切った活用はできないものなのでしょうか。  そして、地域に密着したダイナミックな議論が行われることにより地方行政を骨太なものとしていくことができます。また、それらの地域NPOの活動を通じて、行政監査、公教育の実施、公民意識の高揚などを図ることができ、公民館は今よりもはるかに活気に満ちたものになることでしょう。政府のスリム化を推し進めていった場合、小さい政府国民の間をつなぐものはNPOなどの人間同士のネットワークしかあり得ないことは、諸外国の例を見ても明らかなのであります。  どうでしょうか、我が国現状と今後を考え、社会教育法第五章の改正をも含めて、公民館の目的、運用の方法を、より時代に適したものと変えていくことを政府として検討できないでしょうか。ぜひとも御決断をお願いしたいと思います。  以上でございます。
  10. 有馬朗人

    有馬国務大臣 二〇〇二年になりますと、学校週完全五日制になりますので、その際には、学校だけにすべての教育を任すわけにはいかない、家庭並びに地域社会にお願いをしなければならないということを我々重々よく知っておりまして、同時にまた、日本では、もっと積極的に生涯学習をやるべきだというふうなことも認識いたしております。  公民館は、御指摘のように、その地域社会において学級をつくったり講座制を実施するなど、社会教育活動の拠点といたしまして重要な役割を果たしてきているということをよく認識いたしております。社会変化や人々の学習ニーズが多様化、高度化いたしました中で、公民館の果たす役割も大いに変化してきていると思います。  昨年九月に生涯学習審議会から「社会変化対応した今後の社会教育行政の在り方について」という答申をいただきましたが、その中でも、今御指摘のように、公民館としてさまざまな活動指摘されております。  まず、公民館あり方といたしましては、公民館運営へ住民が積極的に参加するように推進すること、公民館活動におけるボランティアを受け入れること、学習成果地域社会で実践的に生かすこと、社会教育関係団体や、先ほど御指摘になられましたNPOとの連携の重要性等が提言されております。  これからの公民館が、地域社会の活性化のため、人々が主体的に活躍できる場としての役割を果たしていくことを期待いたしておりまして、文部省といたしましても、公民館活動の一層の活性化に大いに努力してまいりたいと考えております。
  11. 岩永峯一

    岩永委員 きょう富岡生涯学習局長もお越しでございますが、大変あなたの熱意にふだん敬意を表している次第でございます。  私自身は、行政が与えるという立場だけではなしに、行政に向かって住民が意思を反映する、そういう拠点がこれからの行政の中に大変大事な要素を占めるのではないかと思います。  時間がございませんので今後の議論にしていきたい、このように思いますが、生涯学習局も積極的にこれらに対する取り組み、法の改正等も含めてお考えをいただきたいということをお願い申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  12. 小川元

    小川委員長 次に、渡辺博道君。
  13. 渡辺博道

    ○渡辺(博)委員 おはようございます。自由民主党の渡辺博道でございます。  有馬文部大臣におかれましては、教育改革の推進に全力を尽くされておられることに、まことに敬意を表させていただきたいと存じます。  さて、今国会の冒頭において小渕総理は、平成十一年は経済再生元年と位置づけて景気回復に全力を尽くすということを述べられました。そうした中で、現在の景気の動向は一向に明るさは見えない状況があります。でも、必ずや景気は回復していくものと私は確信しております。  ただ、その中において、どうしても景気の荒波に押されて企業倒産やリストラが現実に行われております。そのあおりを受けて、一生懸命勉強したい、そういったお子様がいらっしゃるわけでありますが、親がリストラに遭って失職する、そしてまた会社が倒産する、こういった中でお子様が安心して勉強できる環境づくりをしていくこともこれまた大事な役割ではないか、そのように思うわけであります。  そうした中で、教育を推進していく立場として文部省がそういった子供たち環境づくりにどういうふうに寄与していくか、これをまずお伺いさせていただきたいと思うわけであります。  いろいろな方法があろうかと思いますが、少なくとも教育に関しては、特に私学、この私学についてはやはり公私間格差というものがあります。高い授業料というものが当然あるわけでございますが、この授業料が払えなくなってしまう。当然のことながら、払えなくなればこれは学校をやめなくちゃならない。本人自身は一生懸命勉強するために学校に通っていても、そういった経済的事由によってやめるといった現実があろうかと思います。  この際に、やはり一つ方法としては、奨学金制度の拡充といったものも考えられるというふうに思います。さらには、私学に対してさらなる助成をしていく。こういった二つの面が考えられると思うわけであります。  まず一点、私学に対しての助成について、私自身は私学にもっともっと助成をすべきだというふうに思うわけでありますが、今回、私学助成金については予算においてもかなりの充実を図られてきたわけであります。  個別具体的な事例において、この私学の助成、例えば、授業料軽減の補助制度というものが新聞紙上で見受けられました。これは京都の例でありましたが、京都府が私立高校生に対しての助成制度というものを設けられるということで、保護者が会社の倒産やリストラで職を失い、収入が激減した私立高校生のため、京都府は今年度から学校側に補助をする方針を決めたというふうに載っております。こういったことが各地域に広まれば、一つの安心感が得られるのではないかというふうに思うわけであります。  ただ、これだけでは済まないと思います。やはり私学である以上は、その財政的基盤をしっかりとさせていくことが大事であります。そのためにも国で何らかの方策を練っていかなければならないというふうに思うわけでありますが、この点について、まず大臣の方にお伺いさせていただきたいと思います。
  14. 有馬朗人

    有馬国務大臣 大学は非常に私学が多いということはよく知られていることでございますが、高等学校以下でも私学が大変活躍をしておられるということを常々強く認識いたしております。  高等学校以下の私立学校におきまして、教育条件の維持向上及び修学上の経済負担の軽減等に資するため、都道府県が行う経常経費助成に対し国が補助しており、逐年その推進を図っております。  平成十一年度の私立高等学校等経常費助成費補助金につきましては、先ほど申し上げました私立高等学校等が我が国の学術教育に果たしてきた役割の重要性にかんがみまして、前年度対でございますが、五十六億円をふやしました八百四億五千万円を計上したところでございます。  私立高校生が安心して通学できる環境をつくっていくことは、私立学校の経営上の健全性の向上が御指摘のように不可欠であると思います。厳しい財政事情ではございますが、それを踏まえながら、今後とも経常費や教育施設整備に対する補助等私学助成予算の充実に努めさせていただきたいと思います。
  15. 渡辺博道

    ○渡辺(博)委員 大臣のそういった強い決意をありがたく思うわけであります。  個別事案について、みずから学校をやめなければならないような事情に陥った生徒にとりましては、何らかの措置として考えられるのは、やはり奨学金制度だというふうに思います。今般、平成十一年度予算案については、大幅な増を認めて有利子制度というものも拡充をしてまいりまして、十万人と、そして一千億円増というような大幅な増を見ておりますが、こういった画期的な制度もPRしなければ使われないわけでございます。万が一、親御さんが、両親が失業になったときにどういうふうに使っていいのか、どういうふうに相談していいのか、こういったものもやはり現実的な問題だと思うわけであります。  したがいまして、まずこの奨学金制度の内容については十分またお話をしていただかなければならないし、その手続についてもお話をしていただきたい、そのように思うわけであります。
  16. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私ごとになりまして申しわけありませんが、私も高等学校、大学と苦学をいたしまして、その際に、奨学金がいかにありがたいものかということをよく身にしみて感じております。そういう意味で、育英奨学事業は何とかしてさらに拡大していきたいと思っております。  優秀な人材育成教育の機会均等の実現というふうな点から、奨学金というのは大変重要な施策と認識しております。学生の要望を踏まえ、可能な限りその要望にこたえられるよう、育英奨学事業の充実を図ってまいりたいと思っております。このため、平成十一年度予算案におきましては、先ほど渡辺先生指摘のように、大幅に増大するように努力をさせていただいた次第であります。  まず、無利子奨学金について、貸与月額の増額や貸与人数の増員を図るとともに、御指摘の有利子奨学金について、貸与人数を十万人から二十万人に倍増するということをお願いいたしております。そして、あわせて、貸与月額の選択制の導入や、貸与に係る学力基準及び家計基準の緩和などを行うことにいたしております。  文部省といたしましては、これらの奨学金が十分活用され、学生が安心かつ自立して勉強できるように努めてまいりたいと思いますが、今御指摘のように、もう少し奨学金のことについてPRをすべきであると思います。  また、昨今の不況を背景にいたしまして、家計状況の急変によりまして緊急に奨学金が必要となった者に対しましては、既に次のような制度があります。無利子奨学金の中で、年間を通じて随時いつでも応急採用を行う仕組みを設けてございまして、勉学に支障を来すことのないようにいたしているところでございます。  この場合の採用基準につきましては、通常の場合よりも緩やかに取り扱っておりまして、成績も少し悪くてもいいとか、家計についてもさまざまな判断基準を置いてあります。家計基準につきましては、急変後の状況を勘案するなど、弾力的な運用を行っているところでございます。  日本育英会では、各支部を通じまして、全国の国公私立学校に対し、家計の急変により緊急に奨学金が必要となった者に対しましては、この応急採用制度を広く活用するよう周知を図っているところでありますが、今後とも、さらにこの点について一層の周知を図りたいと思っております。そして、この制度により適切に対応してまいりたいと思っております。
  17. 渡辺博道

    ○渡辺(博)委員 ありがとうございます。  やはり子供たちにとっても安心へのかけ橋ということで、ひとつその辺の充実をしていただきたい、そのように思うわけであります。  次の問題について御質問させていただきます。  実は、私は昨年、カンボジアに学校を贈りました。私たち自由民主党の国会議員四十一名で構成しているアジアの子供たち学校をつくる議員の会というものをつくってございます。先ほど質問しました岩永先生も一緒でございましたが、カンボジアに行って子供たち学校を贈ったわけであります。  そのときに感じたわけですが、カンボジアという国は、電気も水道もない地域がありました。そういった中で、子供たちが生き生きと生活している姿を目の当たりにさせていただいたわけであります。物はない、しかし彼らには心があるというふうに感じました。目の輝きが一味違うような感じがいたしました。現在、五教室を六百人の生徒が使われているということでありまして、まさに、日本と雲泥の差であるということを実感させていただいております。  この子どもたちが、将来において、日本との交流の中で、きっと親日家となって育ってくれるのではないかということを期待しておるわけでありますが、それは何よりも、教育はまさに国家百年の大計であるということでありまして、現在、カンボジアにおいては学校がまだまだ足りません。そうした中で、少しでも私たちがその一助になればということで、カンボジアに学校を贈らせていただいたわけであります。  その子どもたちの姿を今の日本子供たちにオーバーラップしてみたときに、日本はやはり恵まれ過ぎている、物が豊富過ぎる、その豊富さの中に心がだんだんと失われてきたのではないか、そのように感じているわけであります。心がこれからの教育の中で最も大事であるということで、心の教育というものをこれから充実していく必要があるということは、文部大臣所信の中からもまさにおうかがいできるわけであります。  こういった心の教育を推進していくためには、私は、教室内でやるよりは、すべて体験が重要ではないかというふうに思うのです。もちろん教室内でやることも重要でありますが、やはり体験を通じて心は磨かれていくというふうに思います。それは、すべては人と人との触れ合いの中で心は磨かれるというふうに思うわけでありまして、その際に、多くの人と出会うこと、または多くの人と語り合うこと、こういったことで自分との違いが大いにわかるわけでありまして、自分との違いがわかることが心の発達にも大きく寄与するというふうに思います。  その中で、一つ方法でありますけれども、スポーツを通じて心と体を鍛える、これが私は重要ではないかというふうに思います。特に、文部大臣所信の中には、地域、家庭、学校、その三者の連携が大事であるということを再三述べられております。  しからば、この地域の役割をどのような形で具現化していくかでありますが、私は、やはり地域の問題というのは、本当に細かいことかもしれませんが、そこのスポーツに直接かかわっている人たちに夢を与えることではないかというふうに思うわけであります。  そういった意味におきまして、まずは、地域におけるスポーツ振興のありようについて、有馬文部大臣の認識をお聞かせいただければありがたいと思います。よろしくお願いします。     〔委員長退席、栗原(裕)委員長代理着席〕
  18. 有馬朗人

    有馬国務大臣 体験学習が極めて重要だということはもう明らかでございまして、先生の御説のとおりでございます。  今日のように少子化の時代でございますので、余り異世代とのつき合いが少ない子供たちに対しまして、地域社会で、異年齢の人々が一緒に何かをするというふうな訓練が行われることが極めて大切だと思っております。そういう意味で、スポーツというものは大いに教育の上でも重要な役割を演じていると考えております。  人々が生涯の各時期にスポーツに親しみ、心身の健康と潤いのある地域社会を築いていけるような生涯スポーツ社会実現を図ることは大変重要なことと認識させていただいております。  特に、子供につきましては、先ほど申し上げましたように、学校完全週五日制の実施などを考え、少子化時代のことを考えますと、学校外の地域社会におけるさまざまな活動充実することが極めて重要であり、とりわけスポーツ活動を通じて、心と体を鍛えたり、地域の人々と交流することは大変意義が大きいと思います。このような子供を含む地域の人々のスポーツの交流の場として、身近な学校体育施設などを拠点に、地域住民が主体的に運営するスポーツクラブを育成するというようなことが重要であろうと考えております。  文部省といたしましても、平成七年度より、総合型地域スポーツクラブ育成モデル事業を行っておりまして、今後とも、その育成定着に格段の努力をしてまいりたいと思っております。
  19. 渡辺博道

    ○渡辺(博)委員 現実的な問題でありますけれども、子供たち学校から帰って地域に戻ります。そういった中で、今、私の地元でありますが、子供会がそれぞれの地域にございます。その子供会が子供たち一つの受け皿となっております。その中で、子供会は、いろいろな事業をしておりますが、ドッジボールやソフトボールのチームをつくったりしておりますが、これを指導するのはやはりその地域の人なんですね。初めは、自分の子供のためにということでやっておられた人がおります。でも、子供が卒業して大きくなっても、引き続きその地域活動に熱心な方がいらっしゃいます。こういう人たちがやはり地域のスポーツを支えていらっしゃいます。こういった人たちのために、私は、新たな表彰制度をぜひともおつくりいただきたいなというふうに思うわけであります。  実は、資料としていただいた中には、文部大臣表彰についてのいろいろな交付実績があります。その中で、体育功労者表彰が昭和三十三年から今回まで四十一回行われて、表彰者数が二千五百六十七名です。それから社会体育優良団体、スポーツクラブですが、昭和五十二年が第一回目、今回二十二回目ということで、千六百八十二クラブ。さらには社会体育優良団体、これはスポーツクラブ以外の団体ということでありますが、昭和二十四年から今回まで五十回目、十年度までに二千八十団体を表彰しています。さらには体育指導員、これは法律で定められております体育指導委員の表彰関係だと思いますが、第一回が昭和五十七年、五年ごとに実施で、九年度まで五百五十四名表彰ということを資料としていただいております。  こういった制度はこれでまさにこの機能を果たしているというふうに思うわけでありますが、大事なのは、日本全国に果たしてスポーツにかかわる人たちが何人いらっしゃるかということなんですね。三千三百の地方自治体がございます。その中から一人表彰するだけでも、三千三百人が表彰されるんです。やはりこういった草の根的なものに光を当てていくことがこれから大事ではないかというふうに私は思います。  小さな政府と先ほども申しましたけれども、小さな政府、それは、大きな民間、その中間としてNPO、ボランティア団体、これからこういった三者の連携の中で社会が構築されていく、そのように思うわけでありますので、このボランティア団体に対してもう少し光を当てるべきではないか、そういうように思うわけであります。  文部大臣が表彰状一枚出すときの効果というのは、大臣はどの程度の効果があるとお思いでしょうか。これは大変効果があるわけでありまして、この経済不況の中でも結構経済効果があります。  どういうことかと申しますと、表彰状を受けますと、もう地域では大変なことになります。文部大臣賞受賞、祝賀会やりましょうということなんですね。そうしますと、当然のことながらそこの地域は活性化していくという一つの派生効果もあるわけであります。これは派生効果でありますが、もっと大事な効果は、その地域のために、子供たちの健全育成のために一生懸命やったこと、自分たちは国に認められたんだ、こういった気持ちが私は重要ではないかというふうに思います。  したがいまして、新たな制度として私はボランティア大賞というものを文部大臣賞で出していただきたいな、そんなことを思っておるわけでありまして、まさにこれが総参加型社会への一つの第一歩ではないか、そのように思うわけであります。したがいまして、このボランティアに対してもっともっと国は光を当てるべきだ。  昨年の十二月にNPO法案の施行が成りまして、ようやくその土壌もできてまいりました。したがいまして、さらに一歩進めて、このボランティアに対して、文部大臣としてしっかりと、スポーツ振興の一助として重要な役割を担っている人たちに対して光を当てていただくための制度の構築をひとつしていただきたいと思うわけでありますが、大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  20. 有馬朗人

    有馬国務大臣 大変多くの方々が地域でボランティア活動をしてくださり、指導者として大変活動してくださっていることに、常日ごろ大変敬意を表しております。  このような指導者に対して表彰を行ったらどうかという御指摘でございますが、その表彰の持っている意義は、本人の励みともなりますし、スポーツ振興の上でその意義は大変大きなものだと考えております。このような観点から、国や県や市町村では、現在それぞれのレベルで顕彰制度を設けていると思います。  文部省におきましても、先ほど御指摘のように、昭和三十三年から、地域スポーツの振興に貢献された方々に、都道府県教育委員会の推薦のもとに体育功労者の文部大臣表彰を行ってきております。その運用に当たりましては、御指摘の点も踏まえまして、指導者として現に活躍されている方についてもなお一層配慮するよう意を用いてまいりたいと思います。
  21. 渡辺博道

    ○渡辺(博)委員 ぜひとも前向きな御検討をお願いしたいわけであります。これからの二十一世紀日本をどのように形づくるか、まさにこの時期は大変重要な時期に来ている、そのように思うわけであります。  このボランティアの人たちは、みずからが表彰を受けたいがためにやっているわけではありません。これはもう当たり前のことであります。でも、ボランティアでスポーツ振興を図っている人たちは、子供たちが健全に育成していくその姿を見て喜びとしているわけでありまして、ぜひともそういった人たちのためにこの表彰制度をひとつ構築していただきたい、そのように思います。  そしてまた、これからの時代の中で、地域学校と家庭、この連携を密にしなければこれからの教育は成り立っていかない、私はそのように思うわけでありまして、先ほどの質問の中にもございましたけれども、学校の中に社会人講師としての制度が今度導入されます。私は、この制度はまさに地域のボランティアというような位置づけで、お金のかからない形で教育に参画できる、これも大きな効果ではないかというふうに思うわけであります。  お金のない時代であります。知恵を出し合って、地域の活性化、そして子供の健全育成に努めていくことが肝要かというふうに思います。その点は、表彰状一枚幾らかかるかわかりませんが、そんなにお金はかからないはずであります。そういったお金のかからないものがより多くの効果を来すということをぜひとも御認識していただき、前向きな検討をよろしくお願いいたしたいと思います。  時間が少し早いのですが、これで終わりにさせていただきます。ありがとうございました。
  22. 栗原裕康

    ○栗原(裕)委員長代理 次に、下村博文君。
  23. 下村博文

    ○下村委員 おはようございます。自由民主党の下村博文でございます。  有馬文部大臣におかれましては、大変にフットワークがあって、いろいろな学校を既に見学されているということをお聞きしまして、大変にすばらしいことだというふうに感じております。  今週の月曜日も、八日の日ですか、学校視察に行かれたそうでございますけれども、この中で、新聞報道にもございましたが、学級崩壊ですね、これは先月の二十八日付の新聞でも、この学級崩壊について現場教師と懇談をされたと。また、各学校をごらんになっていらっしゃるという中で、最近特にこの学級崩壊についていろいろと議論されているわけでありますけれども、これはかなり今後大きな、深刻な問題としてさらに広がっていくのではないかな、こんな感じを持っております。  これについては、学校先生のやはり指導の問題もあるでしょうし、あるいは家庭における幼児のときの子供の育て方の問題もあるというふうに思いますし、これは大臣もどこかでコメントされていらっしゃるそうですけれども、子供本人に本質的な問題があるというよりは、やはり周りの環境がそのように情緒不安定にさせているという問題があるというふうに思うのです。  いずれにしても、いち早くこのことに対して大臣として行動されているということは大変にすばらしいことであると思いますし、また期待をしておりますが、実際にこういう一連の行動をされた中で、今どのようにこの学級崩壊について問題意識をお持ちになっていらっしゃって、また、これについて今後どんな方向でその解決の処方せんをお考えになっていらっしゃるか、まずお聞きしたいと思います。
  24. 有馬朗人

    有馬国務大臣 学級崩壊とよく言われますので、まずその実態がどうかということを知りたいと思っております。  確かに、一番私が心配しておりますことは、実は不登校の子供たちが急増したことでございます。まず不登校の問題ということを取り上げながら、同時に、その子供たちの中に学級崩壊と言われているような原因をなす行動が見られてくる、これに対してどうするか。これは大変私も心を痛めていることでございまして、したがいまして、私自身として幾つかの学校を訪問させていただき、さまざまな施策について今検討をしているところでございます。  ともかく実態を調べたいということで、教育研究所及び大学の教授の方たちと御相談いたしまして、調査を少し始めたいというか、もう始めているという状況でございまして、まず、その辺を報告を受けながら対処いたしたいと思っております。
  25. 下村博文

    ○下村委員 不登校の問題ということで御発言がございましたけれども、この不登校はやはり心の問題に大きくかかわっている部分があるのではないかと思うんですね。  今回の大臣所信の中にも、心の教育、生きる力をはぐくむということで触れていらっしゃいます。その中で、「生命を尊重する心、他人への思いやりや社会性、倫理観や正義感、美しいものや自然に感動する心」、こういうものを持った人間として成長を強く願っているということで、具体的に、このために、「幅広く社会の各方面への呼びかけを行い、家庭、学校地域社会が一体となって力を結集しつつ、それぞれの分野で心の教育充実し、」と書いて、またそのようにきのうも発言をされていらっしゃったわけですが、これは本質的な解決にはならないと思うんですね。  問題意識としてはそれはそのとおりですし、それぞれ三者がそのような意識を持つということは必要ですが、やはりそれだけで先ほどのそれぞれの、生命を尊重する心とかあるいは倫理観とか正義感がはぐくまれるわけではないというふうに思うんです。  それぞれのそういうような具体的なことについて、我が国において心の教育として、具体的に方法論、戦略、戦術ということでいえば、戦術的にはそういう、いろいろなネットワークでいろいろな方々の御協力を得るということは当然必要ですけれども、大臣として、文部省として、実際、心の教育ということを一歩踏み込んで、もっと施策として行うということであれば、どの辺が必要であるというふうにお考えでしょうか。
  26. 有馬朗人

    有馬国務大臣 その施策について今いろいろ検討していることを後に申し上げますが、まず最初に、不登校をなくすためには楽しい学校をつくらなければだめだと思っています。子供たちが喜んで行くような学校でなければならないということがまず一番大きなことかと思っています。幸い、この月曜日に参りました学校勉強している子供さんたちは、学校は楽しいですかと聞きましたら、大変楽しいというふうに答えてくれる人が圧倒的でございまして、私も大変意を強ういたしました。  しかし、子供たちの不登校やいじめなどの行動の背景にはいろいろなことがございますので、いろいろ苦慮しているところでございますが、その一つに、思いやりの心や美しいものを美しいと感じる心など、人間としてのあり方や生き方にかかわる心の教育が必ずしも十分に行われていなかったという点もあると私は思っております。  この点に関しましては、中教審の「幼児期からの心の教育の在り方について」の答申、昨年の六月にいただきましたが、家庭や地域における教育とともに、学校教育における心の教育充実必要性指摘されております。  昨年十二月に告示いたしました新しい小中学校学習指導要領におきましては、この点を考慮いたしまして、心の教育充実に大いに努めることといたしております。例えば、小学校の道徳、第五学年と六学年でございますが、「美しいものに感動する心や人間の力を超えたものに対する畏敬の念をもつ。」ように、中学校の道徳では「自然を愛護し、美しいものに感動する豊かな心をもち、人間の力を超えたものに対する畏敬の念を深める。」というふうなことを教育してくださいということを明示しております。  さまざまな面で心の教育ということは今後進めていかなければならないと思います。先ほどは道徳ということで申し上げましたけれども、それ以外に、国語の授業であろうと英語であろうと、あらゆるところで子供たちが豊かな情操を持つような、その心をはぐくんでいくということが極めて重要であると私どもも認識いたしております。
  27. 下村博文

    ○下村委員 今のお話の中で、人間の力を超えたものに対する畏敬の念とか、あるいは美しいものや自然に対する感動というお話がありましたが、戦後の我が国教育の中でやはりそういう視点というのが欠けていたのではないかということを私は感じておりまして、非常に唯物史観的な、そういう考えが強過ぎたのではないか。  ある意味では広い意味での宗教心ですけれども、特定の宗教とか宗派ということではありませんが、それをもっともっと学校の中で学ばせるということによって心の豊かさをはぐくませるという意味では、もっと宗教的な学びといいますか、繰り返すようですけれども、特定ということではありませんけれども、それをもっともっと思い切って学校教育の中で取り入れることによって、先ほどのような情操的な人間性なり観念というのをはぐくむということにつながるのではないかというふうに思うんですけれども、この辺はいかがでしょうか。
  28. 有馬朗人

    有馬国務大臣 やはり学校教育というのは宗教とは離していかなければならない、こういう点は御理解賜りたいと思います。  しかし、富士山のような大変美しい山とかあるいはアルプスのすばらしい雪の山、ああいうものの美しさ、そして、それを通じて自然に対する畏敬の念を持つというようなことは大いに学校で教えていく、心を、教えるよりも育てていくべきだと私は思っております。
  29. 下村博文

    ○下村委員 ちょっとテーマを変えまして、平成九年六月の十六日、これは小杉元文部大臣のとき、生涯審の中で二つの諮問をされていらっしゃいました。一つは、青少年の生きる力をはぐくむ地域社会環境充実方策、そして諮問事項の二が、社会変化対応した今後の社会教育行政のあり方について、こういう諮問をされました。  このときに小杉当時の文部大臣が、学習塾など民間教育事業についても、子供たちを取り巻く学習環境一つとして、その役割や教育行政の対応あり方等について基本的方向を検討していただきたい、あいさつの中でこのように発言をされまして、これが翌日の各マスコミ報道で一斉に、文部省学習塾を認知したというような報道がございまして、どちらかというと、この生涯審の諮問事項よりも、その発言の方が大きく取り上げられたというふうなことがございました。  しかし、それはちょっとおきまして、この生涯審からそろそろ一年半、二年近くなるわけですけれども、その後の状況、そしてこれをいつごろまでに取りまとめられるか。経過、中間報告的なことがあれば、それも含めてちょっと簡潔に御発言をお願いします。     〔栗原(裕)委員長代理退席、委員長着席〕
  30. 富岡賢治

    ○富岡政府委員 今先生から御紹介いただきましたように、平成九年に生涯学習審議会に対して、地域社会環境充実方策、子供たちをめぐります環境充実方策について諮問いたしました中で、いろいろな環境子供たち環境の中でも塾問題というのはやはり大きいことだから議論していただいたらどうかということで諮問させていただいたわけでございます。  現在、子供たち環境充実方策、いろいろ、家庭、地域の連携のあり方というようなことが中心の議論が進んでおりまして、まだ塾の問題そのものについての議論は進んでおりませんが、今後、年度の終わりから来年度にかけまして、その問題の議論を進めるということで伺っております。
  31. 下村博文

    ○下村委員 文部省調査によりますと、平成五年度ですからちょっと前ですけれども、平成五年度の調査によりますと、小学生で塾に通っている生徒というのが二三・六%おりまして、約八百八十万人いる中で二百十万人ぐらいが通っているそうです。また、中学生ですと、通塾率が五九・五%、約四百九十万人の中で二百九十万人の生徒が通っている。小学生、中学生を合わせますと、一千三百六十万人の中で約五百万人の子供たち学習塾に通っているということなわけです。  今の生涯審の中でもありましたけれども、そういう視点の中で、これは学習塾だけではありませんが、おけいこごと的なものも含めまして、そういう意味では、いかに学校の自己完結型で、どちらかというと、今まではそれで全部終始するというようなことが限界として出てきた、いろいろな現象が今出てきているわけですね。その中で、先ほどからも議論がされておりましたけれども、学校の自己完結ではなく、地域社会あるいは家庭、そういう協力を得ながら一貫して子供たちに対してどう環境づくりをしていくか、そういう問いかけが今後必要になってくるのではないかというふうに思います。  実は大臣が、日経新聞におきまして、これは昨年十月の二十五日、有馬文部大臣に聞くという囲みの連載三回の中の一番最後、「初等・中等教育」の中で、塾についてこういうふうに発言されております。  「入試に関して言えば、小学校で塾に行ったり、中学校時代ずっと塾通いなどというのは絶対に良くない。ある段階において一年なり半年なり、徹底的に試験勉強という訓練に耐えることも必要だろうが、それが五年も六年も続くのは異常なことだ。」これはもっともなことだと私も思います。ただし、先ほどのデータの中で、実際に通っている生徒が五百万人ぐらいいましたですね。この五百万人というのは、大臣の言う、該当する塾ではない生徒の方が圧倒的に多いわけですね。  そういう意味では、塾といってもいろいろな塾もあります。また、いろいろそれぞれやっているという中で、この発言をされたその真意について十二分な御答弁をお願いしたいと思います。
  32. 有馬朗人

    有馬国務大臣 塾にさまざまあるということは、重々認識しております。小学校、中学校に行って子供たちに、学校は楽しいですかと聞くと、楽しいと答える人が多いということは先ほど申し上げました。しかしながら、忙しいかと聞きますと、忙しいと答える子供たちがまた非常に多いんですね。その理由は、なぜかというと、学校が終わってから塾に行かなきゃならないから、こういうふうに返事をする子供たちがおりました。  私は、特に小学校時代はもっと、学校勉強した後は自由に遊び回るべきであるということを常々言っております。若いうちに、特に小中学校のうちに体を鍛えておかなければならない。そのためには、東京では野原は残念ながらございませんけれども、せめて公園を駆け回る、こういうふうなことがやはり必要であると思っております。  しかし、塾というものに対して私が批判を申し上げたように、今お読みいただいたと思いますし、事実私も、過度に塾へ通うことはよくないと言っております。ただ、塾にいろいろなものがあるという点から、例えばどれを推すかということは、またここで余り識別したことを申し上げることは控えた方がよろしいかと思いますけれども、適当な、身につくようなことを勉強するとか、毎日ではなく、せいぜい週一回とかそういうようなことであれば、私は、大いにさまざまなことを勉強することはすばらしいことだと思うし、特に地域社会の中で、そういう塾などを使ってさまざまなことを勉強していくことは意味があると思っています。  ただ、私が塾に対して批判的なのは、小学校時代に、一年生から六年まで中学校に行くための勉強をするとか、それから今度は、中学校から高等学校に行くために、中学校一年から三年まで常に入学試験のために勉強するというようなことに対して私は極めて批判的なわけであって、高等学校を出てたまたま、浪人という言葉がいいかどうかわかりませんけれども、自分の行きたい大学に行けなかった人が、一年間そういう塾のようなところできちっと規則正しい、規律正しい勉強をする、これは私は何にも否定をいたしません。ただ、余りにも入学試験のための塾での勉強ということは、私は大変憂えていることでございます。  ただ、さまざまな面で塾が大いに活躍をしておられるし、生涯学習という点から見ましても極めて重要な役割を演じているということも重々私は了解をいたしております。そういう点で、すべての塾がだめなんだということを申し上げているわけでないことを繰り返して申し上げておきたいと思います。  学校教育充実し、入学者選抜の改善等を通じまして過度の学習塾通いの必要性が少なくなるよう、文部省として引き続き努力をさせていただきたいと思っております。
  33. 下村博文

    ○下村委員 今の御発言の中で、小学校一年生から受験塾にずっと通う、あるいは中学一年生から受験塾に通って受験勉強をずっと過度にするというようなことは望ましくないとおっしゃいましたが、実際、小中学生で五百万人の生徒が何らかの塾に行っているわけですが、今の大臣の言われている生徒がどの程度いらっしゃるというふうに、感覚的で結構ですが、統計は恐らくないでしょうけれども、感覚的にどういうイメージでおっしゃっていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。
  34. 有馬朗人

    有馬国務大臣 ここに学年別通塾率の状況というのが書いてありまして、中学校になりますと、一学年が四二%、二学年が四五%、三学年になりますと四七%という、ほぼ半分が行くような状況でございますね。  その中で、果たしてどのくらいが入学試験のための勉強であろうかということでございますけれども、これは学習塾へ行くデータでございますので、相当数が多少どこかで入学試験意識した勉強をしているんじゃないかと私は心配しておりますが、実態的に、この中の何%がというところまでは今把握いたしておりません。
  35. 下村博文

    ○下村委員 大臣、フットワークのすばらしい大臣ですから、学校だけでなく、そういう民間教育現場学習塾、そういうところもぜひごらんになっていただきたいと思うんですね。  それというのも、その五百万人の中で、あるいは今の中学生、中学三年生でいえば約六〇%近く、あるいは七〇%近くが塾に行っているわけですが、大臣のイメージされるような形で行っているというのは、ある統計によれば、実際は五%ぐらいではないかということも実は出ておりまして、その辺で私がちょっと心配をしておりますのは、角を矯めて牛を殺すようなことがあってはならないのではないか。文部大臣の発言というのは大変に影響をするわけでございまして、文部省が、広い意味で、民間教育について理解を持ってそれぞれはぐくんでいく、そういうことが大切であり、どちらかというと、今までは学校だけが教育であって、それ以外は教育でないという、先ほど申し上げました自己完結型のそういう姿勢が非常にあったのではないかというふうに私は思うんですね。  ところが、学校だけで問題が解決できなくなって、いや、生涯学習の視点の中でと、そういうふうなものが文部省の中でも出てきた部分があるわけですけれども、それと同じように、ぜひ、大臣におかれましても、昔のイメージの塾と、それから今の、では現実の中でどうなのかというのは大いなる違いがありまして、また、実態的にも、これは文部省の方で既に調べているんですが、もうただの進学塾とか補習塾ということではなく、いろいろなジャンル、いろいろな分野の中でいろいろな形でやっている部分がございます。ぜひ、それを把握していただきたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  36. 有馬朗人

    有馬国務大臣 例えば、そろばんの勉強をするとか、あるいは書道の勉強をするとか音楽をやるとか、こういうたぐいの、学校だけでは十分できないものがあることはよく知っております。いわゆるおけいこごとに入るかもしれませんが、そういうことを地域社会勉強することは私は大賛成でございます。別にそれをやめろというようなことは申し上げておりません。  ただ、余りにも技術的な、こういう問題が出たらマルをつけろ、こういう問題が出たらバツ、こういうたぐいの、入学試験対策だけを考えるような塾ということに対して私は非常に批判的な面があるわけでございます。  広い意味での塾に関しましては、先生の御指摘のとおり、地域社会教育力を増す上でも極めて重要なものと認識いたしております。
  37. 下村博文

    ○下村委員 私は、これは塾ということだけで矮小化できないのではないか、今の入学試験の問題、あるいは今の日本学校の問題、こういう問題を同時に議論しながら、その中で塾という位置づけも議論するのであればそれは筋が通ることでありますけれども、塾だけを問題視するかのような発言は問題の解決にならないということについては御理解をいただきたいというふうに思います。  その中で、今度、二〇〇二年の学校五日制に向けて教科書改訂を行うことになっておりますけれども、ある方の調査によりますと、学習内容が、現在と二〇〇二年度以降を比べて、小学校で三〇%ぐらい削減される、中学校では三六%が削減される、そのことによって、例えば中学校三年のときの数学の内容が高校生の方にシフトしていくということで、ある意味では、学力の部分でいえば愚民化政策的なことにもなるわけですね。  「我が国が活力ある国家として発展し、科学技術創造立国、文化立国を目指していくためには、あらゆる社会システムの基盤となる教育について不断に改革を進めていくことが不可欠」ですということを大臣所信の中でも述べていらっしゃるわけですね。私は、教科書の内容を易しくすることによって、ついていけない学力が不十分な子に対しては、ゆとりを持たせるということは必要だと思うのです。ただ、全部の小中学生がついていけないわけではないわけであって、余裕を持っている子供たちもいるわけですね。  そういうことも含めて、それを十把一からげでレベルを下げるということが、やはり今までの文部省の平等主義的な流れの中からどうしても脱し切れない部分としてあるのではないか。これが今後、十年、二十年、三十年たったときに、この科学技術創造立国ということでいえば、やはり学問というのはある程度基礎的な積み重ねをまずしていくということが必要ですから、この辺が結果的に相矛盾することになりかねないのではないかというふうに私は危惧するのですが、この点についてはいかがお考えでしょうか。
  38. 有馬朗人

    有馬国務大臣 確かに、完全週五日制になりますと、算数とか、あるいは中学におきまして数学とか理科などの時間数、内容も減らしていきます。特に、内容に関しましては三割程度削減をすることに決めました。  知識量が減るではないかという御指摘は、実は非常に多くの方からいただいているところでございますが、実は、私の考えは、確かに共通に学ぶ知識の量は従来に比して減るであろう、しかし、ゆとりを持つことによって、まず自分で読書をする、あるいは自分で算数の基礎をちゃんと勉強していく、学校で習っただけではなく、うちへ帰ってから余裕を持って自分の力で勉強を進めるということが極めて必要ではないかと思っております。  そして、学ぶ意欲であるとか、学び方、知的好奇心、探求心をそのかわり十分身につけさせるよう学校指導していただいて、学校としての役割は、生きる力としての学力、知識の量ではなくて、生きる力としての学力の質を向上させていくことができるのではないかと思っております。  それで、共通に学ぶべき内容は非常に厳しく厳選をいたしました。一方、生徒が選択して学習できる幅をこれ以上拡大したところでございます。そして、生徒の特性、個性に応じて、御指摘のように、ゆっくり勉強することが必要な子供もいるし、非常に早く先のことを勉強したいというような子供たちもおります。そういう意味で、生徒の意欲的な、主体的な学習活動がより活発に行われるようになるのではないかと希望いたしております。
  39. 下村博文

    ○下村委員 そろそろ時間でございます。  それぞれの個性、可能性を伸ばすという中で、それぞれの子供たちの多様化について、いかにそれを制度としてもつくってあげるかということがやはり大切であるというふうに思いますので、今までのような発想の中での文部行政ではない、ぜひ革新的な、大胆な、大臣として一歩を進めていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願い申し上げます。  以上で終わります。     〔委員長退席、増田委員長代理着席〕
  40. 増田敏男

    ○増田委員長代理 次に、松浪健四郎君。
  41. 松浪健四郎

    ○松浪委員 おはようございます。自由党の松浪健四郎でございます。こうして質問の機会を与えていただきましたことを、まず御礼申し上げたいと思います。  有馬文部大臣におかれましては、本当に積極的に文部行政並びに科学技術行政に取り組んでいただいておりますことに敬意を表したいと思います。  きょうは、国際的な視点から三つの事柄について御質問をさせていただきたい、このように思います。  まず最初に質問をさせていただきたいのは、大阪オリンピックの問題であります。  私は、有馬文部大臣にも、また小渕恵三内閣総理大臣にも、早く閣議了解をしていただきたいというお願いを繰り返ししてまいりました。その結果、文部大臣にも多大なる御尽力をいただいて、十二月の十一日に閣議了解をしていただいたわけであります。心からお礼を申し上げたいと思います。  この閣議了解を受けまして、去る二月八日、大阪市におきまして、大阪オリンピック招致推進会議が解散されて、大阪オリンピック招致委員会が設立され、そして設立総会を持ちました。五百五十名の方々が出席をされました。私も大阪の選出議員の一人として参加をさせていただいたわけであります。  ところが、参加された多くの人たちが異口同音におっしゃるのは、我が国は閣議了解をしておきながら、なぜこのオリンピック招致委員会に政府関係者約九十五名が参加されなかったのか。しかも、招致委員会が設立される直前に不参加を表明されました。そこで、当日、設立された招致委員会の名簿を見ますと、本当に残念なことに、政府関係者は一人も名を連ねていないわけであります。  大阪オリンピック招致委員会規約なるものが採択されましたけれども、その規約の第二章「組織」のところに、第五条、これは委員の陣容を示すところでありますが、「本会は、次の各号に掲げる者のうちから、別表に掲げる役職にある者」、これを委員といい、この委員をもって構成すると書かれてあります。そして、その第一に、つまり、委員の中で一番大事な人たちは第一に書かれてあります。「政府の関係者」ということになっておるわけであります。ところが、先ほども申し述べましたように、この名簿には、一番大切な政府関係者の委員がおらないということであります。  そこで、大臣にまずお尋ねをしたいわけですが、なぜ政府関係者がこのオリンピック招致委員会に参加を見送ったのか、そのことを大阪市民、大阪府民、ひいては国民に対して明確に御答弁いただきたいと思います。
  42. 有馬朗人

    有馬国務大臣 現在、IOCでいろいろ御議論をされておりますね。これからのオリンピック開催地決定方法の見直しや、IOC内の倫理の確立についても検討が進んでいるところであります。  私は、オリンピックというようなすばらしい、特に若者たちの気持ちを高揚するような、そういうオリンピックにおいて、現在いろいろ問題になっているようなことが起こったことに対して甚だしく残念に思っております。やはりオリンピックというのは公明正大にフェアプレーでやっていくべきだ、それでこそ、青少年のみならず、国民全体が、世界じゅうの人々が一生懸命オリンピックを楽しみ、オリンピックを支持するのであると思っております。  そういう結果、IOCが今御苦労をなさっているわけでありますが、今後のオリンピック招致活動あり方等についてもかなり変わってくることが予想されております。その動向を踏まえた上で政府としての対応を決めることが必要であると考えて、現段階での招致委員会の政府関係者の参画は見合わせたところでございます。  このことは、決して政府としてオリンピックに対して冷たくなったとかいうことではございませんので、この点ははっきり申し上げておきたいと思いますが、政府として大阪市のオリンピック招致活動協力する姿勢には全く変わりがございません。今後とも、必要に応じて、その招致活動を大いに支援いたしたいと思っております。  今後の見通しにつきましては、開催地決定方法の見直しについて一応の結論が出ると予定されておりますIOC臨時総会が三月中旬に開催されることとなっておりまして、IOCに設置される倫理委員会の動向を勘案しながら、当面は、総会で明らかにされるだろうIOCの検討結果を見て、どういうふうに政府として支援をしていくかということについて判断をさせていただきたいと思っております。
  43. 松浪健四郎

    ○松浪委員 今の答弁をお聞きしまして、私自身は納得できる部分もあります。しかし、もしIOCの動向を見てということであるならば、大阪オリンピック招致委員会に参加をしながら動向を見てもいいのではないかと私自身は思います。と申しますのは、大阪市長も、つまり招致委員会の会長も、その動向を見て招致活動をしていく、こういうふうに述べられておるわけでございます。  今大臣の御答弁の中にありましたように、三月の中旬に国際オリンピック委員会の臨時総会があります。その中でガイドラインが示されるのかどうか、私自身十分に承知しませんが、もしそこでIOCがある程度の結論を出したということであるならば、それを踏まえて早期に政府はこの招致委員会に参加される、このように理解してよろしいのでしょうか。
  44. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私は、それでよろしいと思います。  なお、政府として大阪市のオリンピック招致活動協力する姿勢については変わらないということはたびたび申し上げました。  先ほど御指摘がありました、二月八日の大阪市において行われた大阪オリンピック招致委員会の設立総会に当たりましても、私自身あるいは総理は出席をいたしませんでしたけれども、文部省といたしましては事務次官が出席しております。そして、文部大臣としてのお祝いの言葉を述べさせたのであります。そういう点からも、国は健全なやり方での大阪のオリンピック招致に対して最大限の協力をいたしたいと思っております。
  45. 松浪健四郎

    ○松浪委員 大変ありがたい答弁をいただいた、こういうふうにお礼を申し上げたいと思います。いずれにいたしましても、政府関係者が招致委員会のメンバーの中に加わっておりませんと、計画を策定いたしましてもなかなか政府の皆さんに協力を仰ぐことはできません。  御存じのように、オリンピックはすべての省庁にまたがる大きなイベントであります。例えば、文部省は当然のことながら、外務省にいたしましてはビザの問題がある。大蔵省の問題としては税関の問題があろうか。自治省では宝くじの発行等の問題もある。また、運輸省ではカヌー、ボート、ヨット等のコースを決める、それらにも深いかかわりがあります。農林省に至りましては、馬術のための馬の検疫等いろいろありまして、とにかく政府協力なくしてオリンピックの招致活動は極めて難しいということを訴えて、一日も早く招致委員会に政府関係者が名を連ねられますよう心からお願いをしておきたい、こういうふうに思います。そしてそれは、大臣の答弁の中にもございましたように、できるだけの支援をしていくということの中に含まれているんだ、こういうふうに理解をさせていただきたい、私はこう思います。  そこで、次に、このオリンピックの問題に関係してでありますけれども、オリンピックは、申すまでもなく、古代オリンピックをモデルに、一八九六年、クーベルタン男爵がオリンピックムーブメントを提唱され今日に至っております。  BC七七六年に始まった古代オリンピックは、実に二百九十三回まで続きました。その意味は、またなぜこれほどまで続いたのかと申しますと、私もかつてはスポーツ人類学者でこの面を専らとしておりましたけれども、ゼウスの神を中心にしたオリンポスの十二神を祭る葬祭競技会として始められました。法律のない社会にあっては、このイベントは政治的に大きな意味を持ちました。  同時に、ギリシャ全土からたくさんの人たちが集まってくる、今日風に言うならばサミットでありました。そこでは思想の交流、物品の交換、これらがあって、ギリシャの文化の向上を左右するほどの大きなイベントであったわけですが、原点には、やはり平和の祭典としての歴史がありました。そして、クーベルタン男爵も、平和の祭典として、一つの平和活動としてこのイベントを立派なものにしていく、そしてその思いがオリンピック憲章の中に書かれてあるわけであります。  しかしながら、時代が変わり、一世紀を過ぎた今日、オリンピックというものをいかに考えるか、いかに開催していくか。そして、国民に、また世界の人々に対してオリンピックをどのように理解してもらうか。そういう意味では、このオリンピックというものを総合的に研究していく必要がある、私はこのように考えております。  つきましては、我が国は既に三回もオリンピックを開催しているわけであります。そこで、文部省としては、このオリンピックをよりすばらしいものにしていくためには、オリンピック研究所というようなもの、この設立を考えていいのではないのか、私はこのように思っておりますが、この私の提言に対して文部大臣はどのようにお考えになられるか、お尋ねしたいと思います。
  46. 有馬朗人

    有馬国務大臣 まず、オリンピックというものの持っている意義につきましては、私どもも重々よく知っていることでございます。重要な祭典であると考えております。スポーツを通じまして、御指摘のように、平和、よりよい世界実現というふうなことに大変貢献いたしますし、若者の気持ちを大変活性化するという点で、スポーツの振興や国際親善の推進に大きく貢献しているものと認識いたしております。  我が国におきましては、このようなオリンピックに対する運動、ムーブメントの普及啓発を担う組織といたしましては、先生御承知のとおり、日本オリンピック委員会、JOCがございます。したがいまして、オリンピックに関する研究や調査世界に向けた情報発信などはJOCを中心にして行うべきものでございます。  しかしながら、こうしたJOCの活動に対しましては、文部省といたしましてもさまざまな形で支援させていただきたいと思っておりますし、特に今御指摘のオリンピック研究所というふうなものを、すぐにということは申し上げられませんが、現在建設が進められております国立スポーツ科学センターと連携を図りまして情報の収集や提供を行うなど、先生のお考えになっておられますようなことに関しまして協力してまいりたいと思っております。
  47. 松浪健四郎

    ○松浪委員 大変ありがたいというふうに思います。  それで、古代オリンピックは、神の介在する、神が支配するイベントでありましたからうまいぐあいにいきました。けれども、これだけ多様性に富んだものになってまいりますと、非常に難しくなります。そして、世界じゅうには、宗教はもちろんのことながら、政治的哲学、思想、これらもそうですが、価値観が余りにも違います。けれども、スポーツと文化は世界の国々の皆さん方が価値観を一つにすることができる、そういう意味において極めて大切なイベントである、私はこういうふうにとらえておるわけであります。  そして、このオリンピックというものを本当に健全なものとして、人類の遺産としてずうっと継承していくとしたならば、本気になってそのことをきちんと研究する必要がある、私はこのように思っております。JOCや日本体育協会がこれをやるというのが極めて難しいのは、余りにも現実的に、また現場のことを余りにも理解し、配慮し過ぎて偏ったものになる、私はこういう懸念を持っておりますので、今大臣がおっしゃっておられたように、そういう施設の中にきちんとした形でつくっていただければありがたい、私はこういうふうに思うわけであります。     〔増田委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、オリンピックというのはあくまでも神聖なイベントである、そして、昨今いろいろな問題が浮上してまいりましたけれども、私は、このほどのオリンピック招致委員会で会長の大阪市長が読み上げた宣言、これは極めて大事であるし、国民の皆さんにも大阪の心意気と姿勢というものを理解していただきたい、こういうわけであります。当日市長から宣言がされました。   大阪オリンピック招致委員会は、オリンピック憲章を尊重し、その深遠な理念に則り、正々堂々かつクリーンに招致活動を推進する。   大阪オリンピック招致委員会は、オリンピックムーブメントに貢献するため、大阪・関西をオリンピックの舞台として提供し、二十一世紀のモデルとなるようなオリンピックの開催を目指して、世界に向けて二〇〇八年オリンピックの招致活動展開する。 このように宣言をされました。  これらの趣旨を踏まえて、本当にオリンピックというものをすばらしいものにしたい、そして文部省としても、これをずうっと育成していくためにもオリンピック研究所というものをつくっていただきたいということを私は強く要望しておきたいと思います。  次に、私は約八年間、青年海外協力隊の技術専門委員をやらせていただきました。一言で言うならば、選考委員であります。私自身もかつて、アフガニスタンというきわめつけの発展途上国でスポーツ指導に従事したことがございますけれども、国際交流という視点からしますと、物すごく意義深いものであります。  この青年海外協力隊は昭和四十年に発足をいたしました。現在までに、六十六カ国に約一万八千人の我が国の若人を派遣してまいりました。これは、まずボランティア性に富んでいるということと公募制であるということ、そして現地の人々と生活をともにして、隊員一人一人の能力によって国際貢献をするという、この国の制度の中にあって非常に珍しい、貴重な制度である、私はこういうふうに認識をするものであります。  そこで隊員は、二十歳から三十九歳までの方が隊員になることができるわけであります。二年間現地で、隊員によっては奥深い山の中で、現地の人々と生活をともにしながら、ボランティア活動展開するということになります。私も専門委員として現地視察に赴いたことがございますけれども、この隊員たちが帰国した後、これは日本の財産だ、この人材をいかに生かしていくべきかということを常に考えさせられたものであります。  そこで私は、選考委員をしておりましたときに、合格者に対して、教員採用試験の問題集を何冊も抱えて現地に行け、そしてあいているときにはそれを勉強して、帰ってきたならば採用試験に合格して先生になってくれということをいつも指導してまいりました。  ところが、隊員いわく、先生、そんなことおっしゃいますけれども、私の行くところは電気があっても停電が多くて、夜、書物を見ることはできません、昼間の活動が極めて過酷ですので、すぐ寝なければ体がもたない、電気があっても停電が多いしというような話を直接隊員から聞く機会もありました。  けれども、この人たちは現地で大変な豊富な経験を積まれ、また人間的にも一回りも二回りも大きくなって帰国されるわけであります。私は、このような人材学校教育の場に生かしてもらえればうれしいなという思いを持ってまいりました。文部省は、このような人たちを教員として積極的に採用していこうではないか、そういう考えを持たれてしかるべきだと私は思います。  とにかく、我が国にありましては、これは顔の見える国際貢献、援助である。ことしの予算案を見ていただいてもおわかりになりますように、青年海外協力隊におきましては、五十人、昨年よりもたくさん派遣しようということで予算が盛られてあります。この小渕首相の心意気にも敬服をいたしますけれども、我が国が積極的に国際協力、国際貢献ということを考えたときに、それをやられた人たちの人材育成、使い方、これについて真剣でなければなりません。  帰国した後の隊員の職業、進路指導というものを協力隊は熱心にやっておりますけれども、約三割の人たちがどこへ行ってしまったかわからないという実情であります。つまり、帰ってきたならば、日本社会は結構冷たいんだということであります。  そこで私は、こういう人たちを可能な限り、文部省のお力で教員として採用していただけないだろうか、またそうすべきではないかということを申し上げ、そしてその所見、考えを文部大臣からお聞きしたいと思います。
  48. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私も、青年海外協力隊を非常に評価しております。大変な御努力をなさっておられることに対して、常々敬意を表しているものでございます。  青年海外協力隊の経験者は、その活動を通じて、自主性、自発性、国際感覚、協調性、リーダーシップ及び困難に耐える、先生の御指摘のような環境に耐えてくる精神力を養っているということで、大変すばらしい方々であると思います。このような資質能力は、教育改革を進めていき、あるいはいじめや不登校などさまざまな教育課題対応する、こういうふうな上で、教員として非常にすぐれた、必要な資質能力を持っている人々だと考えております。  御質問の、海外協力経験者で公立学校教員に採用された者は残念ながら少なくて、承知している限りでは、平成六年度から平成十年度までの五カ年間で三十七人というようにまだ少数でございます。しかし、文部省におきましても、一月二十八日の各都道府県・指定都市教育委員会の教職員人事担当課長を集めた会議の席上におきまして、青年海外協力隊の活動内容について紹介をさせていただきました。今後の教員採用選考試験において、青年海外協力隊の経験など、幅広い社会体験を積極的に評価するようにお願いしたところでございます。各教育委員会で積極的な取り組みが行われるよう今後も努力をしてまいりたいと思っております。
  49. 松浪健四郎

    ○松浪委員 同時にもう一つお願いしておきたいのですけれども、この青年海外協力隊には、一般募集と、もう一つ、現職の参加を募集する制度がございます。例えば、公立学校教員をやっておる先生が行きたいということになりますと、実は行けるようになっております。もちろん一般企業にもそういう形で現職参加をしていただいて、その給料、つまり生活協力隊が補てんをして面倒を見るというような形になっておりますが、教員の場合、非常にこの枠が小さくて、少なくて自由に参加することができない、非常に難しい形になっております。  そこでお願いしたいことは、今よりももう少し枠を広げていただいて、たくさんの先生方がこの協力隊の活動に参加していただけるように御尽力賜りたいわけですが、いかがでしょうか。
  50. 有馬朗人

    有馬国務大臣 教員学校以外で幅広くさまざまな社会体験を積むことは、教員社会の構成員としての視野をさらに広げ、あるいは専門的な知識技術の一層の研さんを積む上で大変重要であると考えております。このため、文部省では、各教育委員会に、企業や社会福祉施設等における教員の長期社会体験研修等の実施を奨励いたしております。  御質問の、現職教員の青年海外協力隊への参加については、このような教員の資質能力の向上の観点及び国際貢献の観点から有意義であると考えております。これまで、公立学校教員のうちで現職のまま青年海外協力隊に参加した者は、平成六年より平成十年までの間に二百五十六人でございまして、通算では七百四十九人となっております。  文部省では、昨年四月の教育改革プログラムに、教員の青年海外協力隊等への教育参加を大いに奨励することを盛り込んでおります。参加の促進に努めております。また、本年一月二十八日の、先ほど申しました各都道府県・指定都市教育委員会の教職員人事担当課長を集めた会議の席上においても、現職教員の青年海外協力隊への派遣について積極的に対応するようお願いをしたところでございます。  なお、昨年九月の中央教育審議会答申「今後の地方教育行政の在り方について」におきましても、このような青年海外協力隊の活動を含め、教員が在職のまま、自発的に内外の大学院、研究機関等で研修及びボランティア活動へ参加することが可能になるような教員の研修休業制度の創設が提言されたところでございまして、文部省では、この具体化に向けて検討しているところでございます。
  51. 松浪健四郎

    ○松浪委員 ありがとうございます。  時間が参りましたので、文化庁に質問通告を、参考美術品制度に伴ってやらせていただくつもりでしたが、時間が参りましたので、おわびを申し上げて、これで私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  52. 小川元

    小川委員長 次に、藤村修君。
  53. 藤村修

    ○藤村委員 民主党の藤村修でございます。  きょうの一般質疑、政府委員が答弁したのが一回だけでございまして、有馬大臣には御苦労さまでございます。何とぞ、またよろしくお願いいたします。  先般、一月十日でありました。大臣も、あるいは政府委員辻村局長も実は御参加されたNHKの教育テレビ、ETVが四十周年を迎えて、そのちょうど誕生日が一月十日、その記念日に、「日本学校・ここを変えて」という、朝の九時から夜の十一時までのおおむね十四時間の生番組が特集でありました。  NHKに聞いてみますと、この番組のねらいというのは、この日一日、すべての少年少女に開かれたメディアとなって彼らの声に耳を傾け、教師から文部大臣まで、大人たちも巻き込んで、よりよい教育環境実現に向けて真剣な議論を重ねていく、そういう企画でありました。  さらに、この同じ時間帯でチャイルドラインという、これは子供の電話相談であります。私どもも、この文教委員会のメンバーを中心に議員連盟をつくって推進をしておりますが、このチャイルドラインを全国規模で初めて試行錯誤されたということで、ETV、NHK教育テレビの企画として、非常に我々にとっても意味のある、中身のある企画をされたということに敬意を表しながら、有馬文部大臣も、たしか子供たちから、この委員会以上に相当厳しい質問に遭われてお答えをされておったり、あるいは辻村初中局長も討論会で、多分後で御発言あると思いますが、やはり文部省現場先生あるいは子供たち、相当の意識の差というか、そういうものを感じられたのではないかと思います。  私自身、ビデオでもちょっと見直しまして、十四時間全部見直すわけにいかないのですが、その中で感じたことといいますか、やはり特筆すべきは、今の中学生が内申書の問題というものに非常に、我々の想像以上に苦慮しているというのか、あるいは非常に圧迫を感じているということがあちらこちらで出てきておりまして、想像以上のプレッシャーが今内申書というものにあるんだなということ。  それからもう一つ、これは辻村局長も出ていた討論会では、今の内申書の話は生徒先生の信頼関係に相当影響するのですが、今度は現場先生と地方の教育委員会、そして文部省というこの三つがなかなか意思疎通がどうもうまくいっていなかったのかな、そういう問題点が浮かび上がったというふうに私自身は感じたわけでございますが、これはひとつ、出席をされた有馬大臣、子供の声を聞いてどうかということと、辻村局長にもこれは答弁をいただきたいと思います。
  54. 有馬朗人

    有馬国務大臣 NHKの教育テレビで一時間半、中学校高等学校生徒の皆さんと討論をやらせていただきまして、集中攻撃を受けたようなところがありました。  ただ私は、もちろん、少し対話をするときにはもうちょっと相手を尊敬してやるべきだというようなことを言いたかったのですけれども、時間がなくてやめましたが、しかし、本当にうれしかったことが一つある。それは、よく、このごろの子供たち意見を言わない、自分のことを言わないというようなうわさがある中で、非常にはっきりとさまざまな点で、しかも具体的に質問をしてきたということを私は大いに評価をいたしております。  しかし、私が大変あそこで心配になりましたことは、私はあそこでも申しましたけれども、日本の小中高、大学も入れたいのですけれども、先生たちが非常にしっかりした人たちであるという信念は依然として持っております。その人々に対しての尊敬の念は持っている。しかしながら、生徒諸君との話し合いを通じて、どこかやはり先生に対して信頼関係がちょっと弱くなっているようなところがある。あるいは今御指摘のように、教育委員会と文部省との意思疎通が少し弱いところがある、こういうふうなことが私としても感じられたことでございます。  こういうふうな機会があったことは私は大変評価をいたしておりますが、さらにまた、この前も小中学校へ参りまして、特に中学校の子に内申書をどう思うのかというようなことを聞いてみましたけれども、そこでは、その子供たちは余り、中学校の二年生でありましたけれども、内申書に対して非常にはっきりとした批判は持っておりませんでした。そういうことで、NHKでの際には大変内申書ということに対して批判が集中いたしましたが、この前、今申し上げた中学校では、それほどこのことについて強く認識をいたしたわけではございません。  それにしても、やはり内申書、調査書というふうなものの取り扱いということは、今後とも検討をしていかなければならないと思っております。
  55. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 いろいろな感想を持ちましたけれども、その中で二つほど特に感じましたことを申し上げさせていただきたいと思います。  一つは、文部省教育委員会と学校教師、その間の、どう言ったらいいんでしょうか、情報交換のやりとりが必ずしも十分に行われていないのではないかなということを痛感いたしました。  総合的な学習の時間という、これをこれからどのように展開していくかということで具体のやりとりがあったわけでございますけれども、私たちの気持ちとしては、これは、中教審や教育課程審議会のさまざまな議論、その際には学校先生方も議論に加わっての議論でこういった方向を打ち出し、学習指導要領にも載せたわけでございますけれども、そのことが、いろいろな情報の中で個々の先生方がいろいろな受け取り方をされている。  特に、大変なことになる、大変な負担感、大変な多忙感をまた総合的な学習の時間で持ち込まれるというような発言を伺いまして、この平成十一年度、これから、三年後に迫った新指導要領実施に向けて、私たち、教育委員会、学校先生たちと議論をして、この趣旨を確認し合う、そういう年にしたいと思っておりますが、その際には、特に留意をして、率直な意見交換ですね、文部省はこう思う、それを何か受け取ってただそれを実行するということではない、率直な意見交換をする必要があるということを痛感いたしました。  それからもう一つ、意思疎通が欠けるというそのときに、言葉が悪いかもしれませんが、文部省が決め、それを上からおろしてきて、それをそのとおり学校はやらねばならぬというような形に往々にしてなってくる。いろいろな案があり、その中でいろいろと各学校が、取捨選択でいいですよと言いつつも何か例示をしたりすると、それを守らねばならないというふうにいってしまう。  そこで、国としての考え方をどんな形で伝えるのか。具体例を示さないと抽象的でわかりにくい、だからといって具体例で例示を示すと、もうそれはやらねばならぬという形の義務づけのような形で伝わってしまっているという印象を受けました。それはあらゆる場面でそんなふうな受け取り方をされているというような感じがいたしましたので、これから始まります新しい学校五日制下での教育あり方、そのときに、文部省教育委員会と学校の間で意思疎通を欠いていたということでは大変大きなマイナスの影響を保護者や子供たちに与えると思いますので、そのあたりは私どもも留意をして十分な対応をしていかなければいけない、こんな印象を特に受けました。  それ以外にもいろいろと感ずることはございましたけれども、特にこの二つは感じたところでございます。
  56. 藤村修

    ○藤村委員 並行的にチャイルドラインがありました。その結果だけ少し私も御報告しておきますが、我々も関係しておりますチャイルドライン、これは、NHKが五十台の電話機で受けました。朝の九時から夜の多分十時ごろまで受けたと思います。千九百十八件の電話があった。小学校低学年から高校生、勤労者、不登校の子供、あるいはPTAのお母さんというところから相談があった。内容は、学校に関するものが千五百五十件ぐらい。これは、いじめ問題、友達関係、先生に対するいろいろな批判。それから、家庭に関するものが二百七十五件。これは、親との家庭内の問題、兄弟との問題もあります。それから、その他進路の悩み、性の悩みなどの相談。  一日の試行錯誤ではありましたけれども、NHKの御感想として、あるいは受けた方の御感想としては、やはり子供の声を今聞くことが非常に重要だなということは一様におっしゃっていました。我々も、こういう議員連盟をつくりながら、やはり参考にして、こういうことに努力をしてまいりたいな、そんな気がいたしました。  それから、一つだけここで、今初中局長もお答えになった意思疎通の問題などで、まず、相当誤解があるような部分を一つだけ、今の大きな問題であった内申書、これについてだけちょっと触れておきたいと思います。  内申書というのは、調査書とも言いますが、そもそもは高校入学選抜において用いられるこの内申書、調査書については、その様式や記載内容は各都道府県において定めているところである、こういうことであります。ただ、子供たちは、これは文部省が決めているんだという思いに駆られている、あるいは学校先生もひょっとしたらそうかもしれないということです。  先ほど文部大臣は、先日行かれたのは東京都ですね、実は都道府県単位でも、この内申書の扱いというのは県が決めるわけですが、相当違うようです。いわゆる高校入試の学力検査の成績調査書の記録をおおむね同等に扱うのが三十八道府県ですか、これは東京都は外れていますね。それから、学力検査の成績よりも調査書の記録をやや重視するというのが三県ほどあります。それから、両者の比重を各学校ごとに、つまり都道府県で決めるんじゃなしに、学校ごとにお任せしているというのが六都県ですから、これに東京は入っていると思いますが、そういう違いがあるということ。  ここではっきりと、これは局長に言っておく方がいいかと思うんですが、高校入試の選考基準、選抜基準というのに内申書をどう扱うかというのは、そういうことで都道府県の教育委員会がお考えになることだし、地方によってそれはもう学校に任されているところもあるので、そういうふうにしたい、あるいはそういうふうにするんだということをはっきりと言っておいていただきたいと思うんです。
  57. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 まず、入試のルールをちょっと説明させていただきたいと思うのでございますけれども、学校教育法施行規則にこういう規定がございます。  条文がございますけれども、「高等学校の入学は、第五十四条の四の規定により送付された調査書」これは内申書とも言われるわけでございますが、「その他必要な書類、選抜のための学力検査の成績等を資料として行う入学者の選抜に基づいて、校長が、これを許可する。」「学力検査は、特別の事情があるときは、これを行わないことができる。」第五十九条の三項で、「調査書は、」内申書でございますが、「特別の事情のあるときは、これを入学者の選抜のための資料としないことができる。」さらに四項では、中高一貫の実施等にも関連いたしまして、前段を省きますが、こうこうこうした学校においては、「調査書及び学力検査の成績以外の資料により行うことができる。」こういうふうに規定がございます。  ですから、扱い自体につきましても、学力検査と調査書を両方使う、それから一方で使う、あるいはそれ以外の方法もあるという方法があるという前提でございます。  では、内申書はどう扱われるかということでございますけれども、公立高等学校調査書、内申書につきましては、その様式とか記載内容は各県の教育委員会が決めてございます。そして、その扱いでございますけれども、基本的な枠組みにつきましては各県の教育委員会が定めているわけでございますけれども、その中で、例えば調査書と学力検査との比重の置き方を各学校が選択できるようにする。ですから、両方使うのですよと言いながら、その学力検査と調査書の比重は、四対六あるいは五対五、六対四、その中から各学校が選択するのですよという形で決めている県の例、あるいは定員の一部について、調査書または学力検査のいずれか一つによることを各学校の選択に任せる、つまり、どちらをも用いないことも学校の選択であり得る、こんなふうに決めているのが一般的でございます。  繰り返しになりますが、県の教育委員会が、公立学校につきましては、その様式、記載内容を定めつつ、枠組みを決めながら、各学校の選択によってその比重のつけ方を弾力的に扱うようにされている、これが一般的に内申書の扱いの現状でございます。
  58. 藤村修

    ○藤村委員 もっとも、中学生の本当にプレッシャーになっている内申書の問題を、あのテレビでも今と同じようなことをおっしゃっていましたので相当伝わっていると思いますが、特に中学校生徒あるいは中学校先生たちが誤解をしないように今後進めていただきたい、そういうふうに思います。  そこで、きょうの主題でございます地方教育行政のあり方についてということで幾つか、これはもう後は大臣がお答えいただくのだと思いますが、議論をさせていただきたいと思います。  今回の所信にもこの項目を掲げてお述べになっております。私自身、三年前になりますか、平成八年二月二十三日、当文教委員会におきまして、当時の奥田文部大臣にも同様の質問をしたのですが、当時というのは、その前年に地方分権推進法ができて推進委員会を発足させたばかりのときでありました。そのときに当時の文部大臣は、国は主役でなくてわき役の立場で、応援団のような、そういう立場にあるという、文部省、国としての役割の認識を示されました。今回、大臣所信においても、「地方分権を一層推進する観点から、」こういうことで、そういう言葉がにじんでいると思います。  そこで、では、それならば国として今後考えるべきこと、つまり、教育における国すなわち文部省の役割はどうなるのか。これを示さないと、分権と言うからには、今までの集権体制を地方へおろしていくというか移譲していくわけであります。そうすると、国は、では国の役割をある程度絞って考えるとどうなるのかということが必要である。  そしてもう一つ、今回、これはひょっとして意図的に触れられていないと思いますが、分権を考える場合には、財源の再配分というものがなければこれは分権にならないのであります。これは多分、中教審のこの答申のときでもそれは問題になったのでしょうが、これを問題にすると結論が出ない、そんな声も聞いておりますが、ただ、このことはやはりちゃんと触れていわば所信を述べていただきたいと思います。
  59. 有馬朗人

    有馬国務大臣 教育行政というものは、国も都道府県も市町村も、それぞれの役割を演じ、それぞれの責任を持って互いに連携協力しながら、全国的な教育の機会均等を確保し、教育水準の維持向上を図っていくことが基本であると考えております。  今御質問の、それでは国は何をなすのかということでございますが、三つぐらいの項目に分けて申し上げたいと思います。  まず第一に、基本的な教育制度の枠組みを制定する。二番目に、余りばらばらになってはいけませんので、全国的な基準の制定をする。三番目に、地方公共団体における教育条件整備のための支援を行うというような役割が重要であろうかと思っております。したがいまして、今後ともこのような役割を果たしていきたい、果たしていくべきだと考えております。  今回の中央教育審議会の答申でも、このようなことを踏まえつつ、教育の地方分権を推進する観点などから、国の関与の縮減や国の事務、事業の減量効率化を図ることを提言しております。  文部省といたしましては、このような答申も踏まえまして、例えば、今般告示されました学習指導要領において、各学校が創意工夫を生かした教育活動を主体的に展開できるよう、総合的な学習の時間の創設や授業時数の運用の弾力化などを考えておりますし、国の関与の縮減を図るとともに、研究指定校につきましては、国として取り組みが不可欠なものに限定するというふうに少し削減を図ることを考えております。  国の事務、事業等の減量効率化を進めているところでございまして、今後とも積極的に進んでいきたいと思っております。
  60. 藤村修

    ○藤村委員 財源問題は回答がまだ、後で聞くとして、ちょっと加えまして、今文部大臣は非常に整理され、三つとおっしゃった点は評価できると思うのですね。中教審答申では、国の現状の中でもう一つ書いてあって、「教育に関する事業の適正な実施のための支援措置等」という、これを今外されました。その前の三つを言われましたので、四つ目を外したことは非常に意味があることだと思います。多分、この四つ目について、いろいろ今削減、縮減のことが提案され、それをやっていこう、そういうことだろうと思います。  そこで、しかし文部省の仕事は、今大きく四つぐらいに整理されたのを、一つは、相当おろしていきましょうというときには、では財源の部分はどうなんですかと。ここは、さっきの三つ目の「地方公共団体における教育条件整備のための支援」、これがすなわち国費の適正な配分でありますし、これを相当おろしていかなければならない、この部分をちょっと答えておいてください。
  61. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 国、地方を通ずる一般的な財源あるいは税制の問題につきましては、残念ながら、中教審あるいは文部省自体で考えるという領域を超えているわけでございます。  それで、中教審答申の中の、特に国の支援措置として先生指摘のございました一番大きな義務教育国庫負担金、来年度予算では三兆四百九億円ほどお願いしておりますし、また、公立学校の施設整備費につきましても、来年度予算では千六百三十八億円ほどお願いをしているわけでございます。  これは、いずれも、都道府県あるいは市町村がみずからの職員あるいはみずからの学校をみずからの予算で建てていく、そのときに国として、教員の給与については二分の一、あるいは市町村立学校の建物につきましては二分の一あるいは三分の一を国が支援しましょうということでございまして、こういう基本的な考え方につきましては、私どもは、中教審答申におきましても、それを前提にして御議論させていただいたと思っているところでございます。
  62. 藤村修

    ○藤村委員 事がちょっと、問題が大きいものですから、本当にもう少し時間をかけて議論する必要があるのですが、ちょっと用意したもので、さっきの地方分権、あるいは初中局長もお答えになった、文部省と地方教育委員会そして学校現場との意思疎通の問題で一つだけ、ちょっと言い忘れ、具体例を示さないといけないことがありました。  これは、日経新聞のことしになってからの記事でありますが、一月六日の記事で、一面の左肩の「異端を育てる」という囲み記事なんですが、ここに、実は委員長も御関係の長野県の地元の問題がございまして、こういうことがあります。  これは長野県小海町の教育長のお話がありまして、ここは実は少人数学級、義務標準法で四十人と定められているのですが、少人数学級をやったのですね、独自に。そうしたら、県教委はこれに中止を求めた。その理由は、県内の他の市町村から、なぜ小海町だけが少人数学級なんだ、基準に沿ってしっかり指導してくれと言われたというのですね。小海町は公共事業の一部を削るなどして、いわば町の費用で、自前で少人数学級をやろうとして、やったら周りから今度は批判、それで県教委も何か文句を言わないといけなくなっちゃった、こんなことが起こっておりまして、これは、では文部省はどう考えるかということであります。
  63. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 小海町の事例は、私どもの考え方では、現場の関係者の間で現行の制度についての理解が多少不十分なところから、県教委と市町村教育委員会の間でそごがあったのではないか、こう思っております。  御案内のとおり、市町村立学校教員の給与につきましては都道府県がこれを全部負担するということになってございます関係上、人事権も基本的には都道府県の教育委員会がこれを持つということにしてございます。その関係で、学級編制を各市町村教育委員会が行います際には、やはり財政負担を伴いますので、都道府県教育委員会に認可を受ける、こういうことになっているわけでございます。  したがいまして、国が四十人と定めております標準を下回って二十人であるとか二十五人であるとかいうことは、これは標準法上も法律解釈として不適切である、私どもはこう思っているところでございますが、具体的に指導の場面でどのような学習集団をつくっていくか、これは現場の裁量で各校長あるいは市町村教育委員会が行うことでございまして、小海町の場合も、最終的には、いわゆるホームルームとしての学級編制は四十人を基準にしてまいりますけれども、国語であるとか算数であるとか、そういった個々の教科の場面につきまして、一つクラス二つに割って、担当する教諭につきましては、非常勤の講師という形であれば、これは現行制度の中でも各市町村教育委員会独自の予算で、自分自身で雇うことができるという仕組みになっておりますので、現行制度の中で最大限の努力をされている事例だと思っております。そういう形であれば、私ども、これは大いに進めていただいて結構だ、こう思っておるところでございます。
  64. 藤村修

    ○藤村委員 今議論されているのは、教育の地方分権というか、あるいは地方でできるだけ、あるいは現場に近いところで何でも大体お考えくださいと。さっき文部大臣もおっしゃって、方針としては、国として、文部省としては、一つは、全国的な教育制度の基本的な枠組みの制定だ、二つ目には、全国的な基準の設定だ、これは基準ですよね。それから三つ目には、地方公共団体における教育条件の整備を支援するんだ、こういうことに少し徹し始めないと分権化が進まないと思います。  例えば、今回、大臣所信の中で、ひとつ法改正を国会にお願いしたいとおっしゃっている。これは中身を聞いてみますと、どうも地教行法のそれもわずかの部分でありまして、今後もう少し根本的に考えるかどうかなんです。  例えば、学校教育法の百六条というのがあります。これが細かいのですが、「学校を設置しようとする者は、学校の種類に応じ、監督庁の定める設備、編制その他に関する設置基準に従い、これを設置しなければならない。」これ自体は全国的基準、基準という意味ではいいのだと思うのです。その他、しかしたくさんある中で、そして今の法文の中に、実はその監督庁というのは、「当分の間、これを文部大臣とする。」当分の間ですね。それから相当の年数がたった今、あるいは地方分権を考える今、これはもう文部大臣の手から地方の教育委員会に相当おろしていくということでいいんじゃないかということではないでしょうか。  その点、法改正の方向だけお伺いしたいと思います。
  65. 有馬朗人

    有馬国務大臣 御指摘学校教育法の監督庁に関する規定についてでございますが、学校教育法制定当時、地方教育行政制度等が整備確立していなかったことから、全国的な基準を設定する義務について、本文において監督庁と規定するのみで、主体を明らかにせず、附則において、監督庁を、当分の間、文部大臣や都道府県の教育委員会と定めているところでございます。  このような規定のあり方は、今後、国、都道府県、市町村の役割分担を明確にし、新たな連携協力体制をつくり上げていく中で、それぞれの責任と役割を不明確にするものであります。そのため、ただいま御指摘学校教育法第百六条につきまして、国の役割を明らかにする観点から、見直すことが必要であると考えております。  現在、法律改正の具体的な内容について検討しているところでございますが、本文の各条項について、監督庁としている規定について、文部大臣あるいは都道府県の教育委員会などとし、それぞれの役割として明確に位置づけたいと考えているところでございます。
  66. 藤村修

    ○藤村委員 そこで、先ほど助成局長が答えられた長野県小海町の話なんですが、これは、さっきのお答えを聞いていると、今の義務標準法でこういうふうに定めているのでそれに従ってくれという話なのか、それは基準なのかという話か、どっちかよくわからなかったので、その点、一点だけ言ってください。
  67. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 義務標準法に定めております学級編制の標準、一学年の児童生徒で編制する場合四十人、これは上限ということでございます。したがいまして、これは、実際問題、一つの全国的な基準という形で私ども運用させていただいているところでございます。
  68. 藤村修

    ○藤村委員 ですから、それは上限であって、小海町のように、事情によって、そこで三十人の学級をつくって構わないわけですね。他の学校から文句を言われて、県教委がそれはやめてくれ、四十人にしろと言うのはおかしな話なわけです。  実は、中教審のこの前の答申でも、そのことが、四十人が上限とおっしゃったが、実態としてはどうも四十人が上限でかつ下限になりつつある、そういう理解になっている。そこで、やはりこれは中教審も言っているのですね。義務標準法に定める学級編制の標準について、国がその給与費を国庫負担する際の基礎となる教職員定数を算定するための基準であるという性格をもっと明確にしてとおっしゃっている。  それは国が、計算上、こういう数式でお金は出します、しかし実態は、各都道府県教育委員会で、学級編制はこの地域においては三十人が適当だと思えば三十人にできるという、今の法律上そうなんですから、そのことをはっきり明確に今後言っていっていただきたいな、そう思うのでありますが、反論がありますか。
  69. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 私の答弁が不十分であったかと存じます。  現行学級編制を四十人ということにつきましては、上限ではございますけれども、御指摘のように、四十人を三十人、三十五人という形で編制するということについては、現行の法律が標準として定めているという法律の精神からすれば、これは特段の理由もなく一般的に三十人や二十人で編制し得るということはできない、私ども、こういう形で各都道府県教育委員会に指導しているところでございます。  中教審答申におきましては、今後、それらを含めまして、より弾力的な形で定数が使えるように、そういったことをより検討しようということでございますので、現在、専門家あるいは現場の方々を含めまして検討会議を設けて、十分現場意見も聞きながら、これから時間をかけて検討させていただきたいと思っております。
  70. 藤村修

    ○藤村委員 ですから、今もう一回答弁され直しますと、やはり四十人が上限であり下限である、つまり四十人にしなさい、こういうことでありますね。これがいけないというのがこの中教審の去年の地方教育行政のあり方答申であるし、中教審の答申でも、この義務標準法第六条関係を考え直せと言っていらっしゃいますので、文部大臣、これは早急にやっていただけますか。
  71. 有馬朗人

    有馬国務大臣 この点に関しては、現在、さまざまな点から検討をしているところでございます。  現に、少し御質問に直接のお答えにならないと思いますけれども、公立義務教育学校学級編制及び教職員定数の標準に関する法律第六条においては、各都道府県ごとに公立小中学校等に置くべき教職員の総数の定め方については規定しております。しかしながら、その方法は、校長、教頭、教諭等の職種ごとの数を合算した総数を標準として定めることとしておりまして、その総数の範囲内で実際にどのように教職員を配置していくかということは、各都道府県の裁量に任されているところでございます。  なお、現行の第六次教職員配置改善計画においては、児童生徒の個に応じた多様な教育展開するためチームティーチング等を導入し、さまざまな指導方法を工夫できるよう教職員配置改善を図っているところでございます。こういうふうな趣旨の理解を図りつつ、都道府県が学校地域実情に応じた弾力的な教職員配置ができるように配慮してまいりたいと思います。  また、先ほど局長が答えましたように、各市町村が独自で少し教員をふやしたい、教諭そのものはふやせませんけれども、その市町村の工夫で非常勤の講師を採用することはできるようになっております。
  72. 藤村修

    ○藤村委員 今の点、文部省が、日本小学校や中学校学級の定数は四十人が適当という教育観点から言っているのではなしに、これは先ほど大臣おっしゃったように、やはり地方公共団体における教育条件整備のための支援の一環で、どういうふうに国費を、資源を分配するかというときの基準でありますと。このことだけははっきりしていただかないと、何か日本の国の文部省は、学級の定員は四十人がいいみたいな考え方を教育観点から思っているなら大きな間違いではないかと思います。
  73. 有馬朗人

    有馬国務大臣 二つの意義があると思います。  一つは、今おっしゃられましたように、国としての義務を遂行する上での財政的な裏づけのための基準である、この点が一つでございます。実は、もう一つある。それはやはり、四十人が本当にいいのか。この前も中学校に行きましたら、五十人にしてくれと言う子どもたちがいるのですね。なぜかというと、友達が大勢できるんだ、こういうふうな説もありました。もちろん先生方は、三十人というふうな御主張の方もおられました。生徒の中にもいました。  四十人というものは、過去において五十人であり、四十五人にした。一九八〇年には四十人になったと思います。一遍になったわけじゃなく、段階的に四十人学級充実してまいりました。五十人から四十人になったときに、果たして教育はどういうふうに変わっていったか。それから、四十五人になってから四十人になるわけです。その四十五人から四十人になった一九八〇年以降、どういうふうに教育がよくなってきたか。こういうふうな分析を通じて、現在のところ、四十人というのはかなり一つの標準としていい数であろうと私ども思っておるわけですが、しかし、諸外国の例なども見、中教審では私は欧米並みにという主張をした人間の一人でありますが、そういうことを勘案いたしまして、四十人学級という枠をやめるのがいいのか、それともチームティーチングなどでふやしていくのがいいのか、この辺につきまして、現在、専門家の人たちに検討をお願いをしているところでございます。  そういう意味で、今までは、五十よりは四十五、四十五よりは四十がいいだろうという判断をしてきたわけであります。
  74. 藤村修

    ○藤村委員 少々大きな問題過ぎて、時間が足りないと思います。  もう一つだけ、教育委員制度の問題、ちょっと入り口だけきょう議論をしたいと思うのです。  去年がちょうど教育委員会発足五十周年で、私も式典に参加させていただきました。戦後五十年の中のほぼ五十年、教育委員会が進んできた。昭和三十一年に委員の公選制を外したある意味では大改革があって以降、地方教育委員会の制度は四十年余りほとんどさわられてこなかった。今回、これは中教審答申によって相当大きく見直したり改正しようというわけですから、教育世界における革命的な事項になるわけです。  そこで、これはさらに時間を要して議論をしないといけない点でございますが、二点だけお願いをしたいと思います。  今回、答申を受けて、教育委員の選任のあり方とか、それから委員の数の弾力化とか、あるいは委員への情報提供などの改善方策とか、それから教育長の任命承認制度の廃止など、多分幾つか法改正を要求されると思います。その心というかその方向性というのは、今後、地方教育委員会というものはもう少しちゃんと充実拡充しようというのか、それとも整理統合しようというのか、どっちの方向なんでしょうか。
  75. 有馬朗人

    有馬国務大臣 最大の願望は、教育委員会を活性化したいということでございます。
  76. 藤村修

    ○藤村委員 なかなか妙のある答えでございまして……。  そこで、方向として私一つ主張しておきたいのは、中高一貫で中等教育学校ができます。すると、今までは中学校は市町村教育委員会、高校は都道府県の教育委員会。これも、いよいよ中高一貫学校というのがだんだんに主流になってくれば、教育委員会の整理統合の方向は必要だと思います。  あるいは、もう一点別な観点からいいますと、全国三千三百ある市町村教育委員会それぞれが同じような役割で、それぞれが小さな文部省の役割、つまり教育以外に文化、スポーツ、生涯学習などなど、小さな文部省が三千三百も要るのか。これはやはり統合していくという方向、これも必要ではないかと思います。この方向性についてちょっと答えていただきたいと思います。
  77. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 教育委員制度は、都道府県あるいは市町村すべての地方公共団体にこれを置きまして、地方におきます、それぞれの地域におきます教育、文化、スポーツの行政執行機関として置くという現行法制になっております。  したがいまして、これを各市町村ごとに置くか置かないかというのは、これは地方自治の非常に大きな原則の問題になってくるわけでございまして、文部省といたしましても、従来から、小さな市町村につきましては、より一層教育委員会の機能を向上させるために、市町村ごとに組合をつくったり共同設置をしたりという自治法あるいは地方教育行政法の制度がございますので、できるだけそういうことでお願いをした経緯もございまして、一時は十五ぐらいの統一された市町村の教育委員会があったわけでございますけれども、これもやはりそれぞれの市町村独自の事情で現在では九つまで減ってきているということでございます。  文部省がそれぞれの市町村を前提にいたしまして、ああいうのがいいこういうのがいいと言うのは、これは地方自治に入ってまいりますのでなかなか申し上げられませんけれども、私どもとしては、やはり市町村におきます教育行政の主体としての合議制の協議会制度、これは非常に安定性、継続性、そういった点で重要な制度だと思っておりますので、御指摘の点も含めながら、できるだけ広域的な行政が行えるような指導は続けてまいりたいと思っております。
  78. 藤村修

    ○藤村委員 時間がありませんので、教育委員会についてもう一度これは時間をかけて文部大臣とお話をしたいと思うのですが、一つ最後に要望として、今の教育委員会の件では、今の政府委員の答弁では全く役割のスリム化はなかったです。つまり、地方のそれぞれの教育委員会が、文部省と同じように文化もスポーツも担わないといけないのかどうか。私は、考え方としてある程度教育に相当絞ってきた方がいいのじゃないかというお願いと、それからもう一つは、教育委員会の情報公開。これはやはり地域に開かれた教育委員会づくりをするのだ、こういう姿勢はぜひ示していただきたいなということを最後にお願いして、もし一言ございましたらお伺いをして終わりたいと思います。
  79. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私は、先ほどお答えいたしまして、妙な返事でありましたけれども、私の心は、やはり教育委員会がもっと活性化して、そして地方の教育の上での重要な役割を果たしてもらいたいと思っております。  それからもう一つは、もっと教育委員会同士、さまざまな段階、県のものがあり、市町村のものがある、それがお互いにもっと話し合いをして協力してほしいと思っておりますし、御指摘のように、教育委員会がすべて、教育、スポーツ、文化、あらゆるものを全部そこでやるのかどうか。この辺に関しては、やはりいろいろ問題があろうかと思いますが、今後ともさらに検討を加えてよりよい地方教育行政を図りたいと思っております。
  80. 藤村修

    ○藤村委員 終わります。ありがとうございました。
  81. 小川元

    小川委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時三十九分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  82. 小川元

    小川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山元勉君。
  83. 山元勉

    ○山元委員 文部省には、去年からずっと多くの審議会の答申が出されました。あるいは学校五日制の準備だとか地方分権の準備だとか、さらには、今現場学級崩壊とか不登校とかさまざまな問題が山積をしていますから、大変な御努力をいただいているんだろうというふうに敬意を表したいと思いますが、きょうは、私の方から少し御意見も申し上げて、さらなる御努力をというお願いを申し上げたいというふうに思います。  今申し上げましたように、二〇〇二年度から学校五日制が実施をされる。それに伴って、十二月に幼小中の学習指導要領を告示されました。その中で、所信の中でも大臣おっしゃっていますけれども、教育内容の厳選だとか選択学習の幅の拡大だとか、あるいは総合的な学習の時間の創設、こういうことを工夫して、そして問題は、「円滑な実施に向けての諸条件の整備に取り組んでまいります。」こういうふうに大臣所信で述べていらっしゃる。私も賛成です。そのことにかかわって幾つかお尋ねをしたいわけですが、円滑な実施に向けての諸条件の整備に取り組んでまいりたい、問題は、どういう諸条件を整備するかということだというふうに思います。  それで、新しい指導要領が実際に実践をされていく、実現をされていく、そういうためには、現場の教職員がこれをしっかりと理解をし、こなして、実践をしていくということが大事なんだろうというふうに思いますね。選択学習の拡大にしても総合的な学習にしても、教職員の子供観といいますか、あるいは学習観全体が変わっていかないと、これには対応していけないというふうに思うんです。ですから、今までの学校での実践、教師経験というものから、新たな学校五日制の対応についての能力、そういう大幅な研修の計画がないとこれはできないだろう、しっかり読んでやりなさいよではいけないだろうというふうに思うんですね。  そこで、この条件の整備一つとして、現職教職員の研修についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、まずお伺いをしたいと思います。
  84. 有馬朗人

    有馬国務大臣 ただいま、初任者研修はもちろんのことでありますが、ある一定の現場を踏んだ方たちに対しても、また大学等々に戻って研修をさらに進めていただくようなことを考えております。  具体的なことについては、局長よりお返事させます。
  85. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 現職教員の研修につきましては、各都道府県等におきまして、初任者全員を一年間体系的に訓練するというところから始まりまして、五年目あるいは十年目というような形で全員に一時期集中的に、学校経営や教科指導等、あるいは今日の教育改革学校五日制等の問題を含めまして、その時々のさまざまな課題に対する研修を各都道府県教育委員会が責任を持ってやっておられるところでございますし、私どももそのための助成等にも努めているところでございます。  また、学習指導要領の趣旨徹底につきましては、本年度から全国に文部省が実施いたしまして、それをまた各都道府県教育委員会で十分趣旨徹底を図るというふうなことも計画をしているところでございます。
  86. 山元勉

    ○山元委員 先ほども言いましたように、学級崩壊というような悲しい言葉がどんどんと——この間、日教組の方の教研集会というのがございました。本当に毎日今の現場の苦しさというのが報道をされまして、今までこういう学級崩壊という言葉をふんだんに使っての報道というのは、いつも注目をしているんですけれども、私余り経験ないんですね。そういう状況を見ると、やはり今の教育課程学校教育あり方に問題があるんだろうと率直に考えなきゃならぬと思うんです。  本来、子供というのは、人に愛されたいとか、丈夫になりたいとか、賢くなりたいとか、いろいろなことを、本来的に人間のものを持っているわけですね。それが、教師と子供との関係、子供同士の関係、あるいは子供と親、家庭の関係というのが今壊れているんだろう、そういうことが表面化してきたんだろうと思うんですね。  そういう中で学校五日制になって、指導要領が変えられて、そしてこれに対応するんだ、こう文部省はおっしゃっているんですけれども、今の御答弁を聞いていると、大々的にきちっと先生にこれを一遍考えてもらいますよ、勉強してもらいますよというのはわかってこない。県教委や何かにも頑張ってもらいますと。大臣がおっしゃったように、初任者研修、これは今までもあるわけですね、あるいは大学に帰っている少しの人をと。  私が言っているのは、すべての教師に研修を改めて大々的に行うというようなことを、文部省は画期的な研修のあり方について考えるべきではないかということを申し上げているのですが、いかがですか。
  87. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 新しい学習指導要領につきましての趣旨、ねらい、内容を、一人一人の教師が十分にそしゃくし得心するまで検討していただく、これは大変大事なことだと思っております。その際の、その趣旨の徹底のやり方でございますけれども、私どもとしては三つのことを考えてございます。  一つは、学校教師に直接説明をする。ただ、これは、都道府県の教育委員会があり、市町村の教育委員会、そして学校があるということでございますので、文部省が直接個々の教師にこれをというのはいかがかと思われます。  したがいまして、先般第一回を開いたわけでございますけれども、都道府県の教育委員会の指導担当の主事等を中心に集まっていただいて、そしてそこでは、徹底的な議論をする中で、今回の新しい学習指導要領につきましての内容をしっかりと理解していただき、それを各都道府県に持ち帰っていただき、市町村教委あるいは各学校協力し合って新しい学習指導要領についての理解を深めていただく、こういうことをまず考えてございます。  その際に、私どもとしては、ただ県の指導主事さんに伝達すれば、あとはもう各県でやってくれ、市町村でやってくれということではなくて、これからさまざまな形で各県がやります際には、私どもも直接出かけていって加わって、一緒に研修会に参加したいと思いますし、その趣旨あるいはねらいということは、これはもう文部省責任を持って学習指導要領を作成したわけでございますので、資料といったものにつきましては豊富に作成して参考に供する、こういうことを考えてございます。これをぜひやってまいりたいと思います。  もう一つ加えさせていただきまして、今回の新しい学習指導要領の趣旨を伝えます際には、完全学校週五日制下での学校教育ということが大変大きな問題でございます。土曜日、日曜日が完全にお休みになる。土曜日がお休みになるということにつきましては、月一回、月二回の段階におきましても、親御さんたちからのいろいろな懸念のようなものがありました。今もまだ払拭されていないのではないかという懸念を私は持っております。  あと三年間でございますので、私たちは、学校教師たちに教育委員会のルートを通してきちっと伝えるということとあわせまして、今、PTAの代表の人たちと相談しているわけでございますけれども、今回の完全学校週五日制下での学校はこうなる、カリキュラムはこうなるということを保護者の人たちに直接文部省が訴えかけるようなそういう場を考えてやっていきたい、こんなふうに思っております。これは、春になりましたら早々に、幾つかのブロックに分かれましてそういったことをやりたいと思っております。  それからもう一点は、教師の養成に当たっていただく大学の先生たちでございます。  従来、直接私たちが大学の先生たちと新しい学習指導要領についてかんかんがくがくの議論をするということは、率直に言って余りございませんでした。しかし、小中学校の新しい教育、新しい理念を実践していただくのは学校先生たちです。その先生たちは、それぞれに努力していただくわけでございますけれども、やはり、教員養成の段階から四年間なり二年間しっかりと新しい学習指導要領の趣旨を理解して教育を受ける、その人たちが全国の学校に配置されて教育展開するということも大変重要だと思います。したがいまして、私どもは、教員養成大学学部の先生方にも、この新しい学習指導要領につきましてのねらいや理念をきちっと伝えたいと思っています。  そういう三つの柱を並行させていく中で、今先生が御提言でございますので、私ども、教師に対してどんなやり方がいいかというのはさらに工夫改善を加えてみたいと思いますけれども、今のような三本の柱の中で、やはり特に中心になりますのは学校先生でございますので、いろいろと検討をして実効のある周知徹底になりますように努力をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  88. 山元勉

    ○山元委員 ぜひ今までにない画期的な形で、先生方に自信を持っていただくような研修をお願いしたいというふうに思います。  ところで、去年の九月のこの委員会で私は、今申し上げましたのは研修ですけれども、教師の側の燃え尽き症候群ということを、教師の心のありよう、あるいは健康の状態というのは大変なことになっていて、燃え尽きてしまって、意欲を失う教師が大変多いということを指摘しました。私どもの地元の近畿の大学で調べたら、三割、四割の先生にそういう兆候があると。大変な状況になっているわけです。そのときに文部省の答えは、調査はいたしませんというふうにたしか答えたと思うのです。  今度、大臣が、学級崩壊の問題も含めて実態把握をするというふうにおっしゃっています。私は、学級崩壊という現象は、どこでどのくらいあるんだ、どういうことなんだ、子どもが机の上を走るんだ、あるいは飛び出していくんだ、いろいろなことがケースとしてありますというようなことではなしに、実際に子どもと教師との関係がどうなっているのか、そのときに教師の実態はどうなんだということをきっちりとした調査をしてほしい。前の答弁では、県教育委員会がとか校長がとかということのお答えでしたけれども、私は、それではもう済まぬ状況になっているので、ぜひそういう実態について調べるということを急いでもらいたいというふうに思いますが、いかがですか。
  89. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 いわゆる学級崩壊に対します調査でございますけれども、今、国立教育研究所のスタッフとどんなふうにやるかということを真剣に議論をいたしております。一点難しい点は、いわゆる学級崩壊というのは、教師生徒の間の人間関係がある面で崩れて授業が成り立っていない、そういう状況を指すわけでございます。  したがって、それを調査するということになりますと、それを受ける学校側の意識の問題もございます。そして、保護者たちがその学校に自分の子どもを通わせているかというようなことにもなるわけでございますので、その調査の仕方を今実際どうしようかということでやっております。  その際に、その調査の中身につきましては、表面的ではなくて、ケーススタディー的に、中に入って、そして実際の背景とか要因といったものがどういうことなのか、それをしっかりと探りたい。そして、時期的にもできるだけ早く、早急に、こういうふうに思っております。
  90. 山元勉

    ○山元委員 私も教師をしていたわけですが、四十年前になりますけれども、国分一太郎先生の本を見て、扉のところに書いてあった詩というのを、私はいつも自分に言い聞かすように言っていた詩があるのですよ。それは、間違いなく言いますと、「君ひとの子の師であれば」という本でした。   君ひとの子の師であれば、   とっくにそれはごぞんじだ。   あなたが前へ行くときに   子供は前を向いて行く。   ひとあしひとあし前へ行く。 これが国分一太郎先生の本の扉のところに書いてあった詩なんです。教師が前へ行くときは、子供も前を向いて行く、一足一足前へ行く、そういう自信がすべての先生にこれから持たれないといけないのだろう。  この間のアンケート調査で、四四%の先生学級崩壊の危険に遭うかもしれぬというおそれを持っているというアンケートが出ていました。四四%の先生が、そうではなしに、すべての先生が、やはり自分が前へ向いて行けば子供も前へ行くんだということを、自信を持ってやれるような環境をつくってもらいたいと思いますし、そしてそういう一つの出発は、先ほど言いましたように、新しいこれからの教育の研修だということについては文部省はおわかりをいただきたいというふうにお願いをしておきたいと思います。  とりわけ、この中で幾つかおっしゃっていますけれども、総合的な学習というのは大変難しい仕事だというふうに思います。この指導要領の中にも、総合的な学習というのはいいことが書いてあるのです。「自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てること。」これが総合学習だ、こういうのですね。「学び方やものの考え方を身に付け、問題の解決や探求活動に主体的、創造的に取り組む態度を」育てる、これは難しいですよ。  今の四十人学級、先ほどの藤村先生の話の中にありましたように、上限は四十だと。四十人の子供、今の実態でいいますと、三十六人以上の学級というのは今小学校で一九・九%ですから、二割の学校が三十六人以上なんですね、四十人を上限として。中学校でいうと五〇%、五〇・七%が三十六人以上の学級です。私の若いときには、五十六人を担任したことがありますよ。けれども、そのときには本当にゆとりのある学校でした。今の学校で四十人を上限として、三十八人、三十九人の子供を持って、今申し上げましたような理想的な総合学習ができるというふうに文部省は考えていらっしゃるのかどうかということですね。  先ほどからのお話を聞いていても、四十人上限ですと。三十八人入学してくる町で、二つ学級に分けたら県教委がだめだと言った、それはそうなんだという答弁だったけれども、私たちは今度法案を出しますけれども、何とかして三十人を配置の財政的基準として、ここの学校は難しいから二十五人にしような、ここは先生みんな頑張ってくれ、三十五人やでというふうに弾力的運用がそれぞれできるようにしてもいい。けれども、今の四十人を上限とする、四十一人だったら、二十一と二十にしたらというような考え方では、この総合学習というのはとてもじゃないができないというふうに思うのですが、いかがですか。
  91. 有馬朗人

    有馬国務大臣 先日も、小学校、中学校を回ってまいりましたけれども、中学校では、二年、一年は三十人学級でしたね。四十人学級は三年が多少持っていたと思います。  御指摘の総合的学習の時間のやり方でございますが、その中学校を見ていましても、体育のバレーボールでしたけれども、地域の大変実力のある方を非常勤でお願いをして、随分丁寧に、半分に割って訓練をしておりました。私は、総合的学習の時間を四十人でやらなければならぬとは思っていない。それは、それぞれの学校で工夫なさって、理科であれば二十人ぐらいが適当だと思う。それぞれの学校で工夫をして御指導賜りたいと私は思っております。  総合的学習の時間に関しましては、中央教育審議会でも随分議論がありました。ヒアリングをいたしました。そうすると、現場の方たちは、やはり指導要領に書いてくれなきゃだめだとか、何を教えるべきかというようなことを書いてくれと随分御要望がありました。私は反対いたしました。なぜかというと、やはりこういうものを使ってこそ各学校が主体的に御判断をいただきたいと思ったからであります。そのやり方もまた各学校、各先生方にお任せをしてやりたい。もちろん全く自由だとお困りでありましょうから、幾つかこういうふうな、環境勉強したらどうかとか、あるいは外国のことを勉強するものをしたらどうかとか、幾つかのことは申し上げ、それはまた今後そういうやり方も踏襲されると思いますが、やはり今御指摘の点に関しては、各学校、各教員の方たちにひとつ御工夫を賜りたいと思っております。
  92. 山元勉

    ○山元委員 おっしゃるとおりです。各学校、各地域で工夫をしてくださいと、私の言っていることと変わらないわけです。そのために、定員、配置の基準をきちっと変えてもらいたいと。四十人までということではなしに下げていく努力。この問題は大きいですから、これは、いずれ私どもは法案を出して大臣とまた論議をしたいと思います。  要は、心の教育というのを前のときも私申し上げましたけれども、教師と子供とが本当に目を見合う、あるいは心が通じ合うというのですか接する、そういう時間。四十人持っていて、例えば小学校でいいますと、国、算、社、理、図、音、家、体と八教科あると、私は音楽できぬから七教科で、ほかの学級へ行く、こうなるわけですけれども、一日やはり終わって、ああ、あの子はきょうどないしておったんやろうと思いますよ、それは。心が通ったり、目が合うたりすることができなかった子供がやはりできてくるわけですね。  ですから、そういう点でいうと、今さまざまな工夫をするとおっしゃった大臣、それはいいんです。だから、できる基準にしてもらいたいということをこれからまた申し上げたいと思います。  そこで、そういうことをやった例で、これは文部省も御承知だと思いますけれども、兵庫県が、トライやる・ウイークというんですか、トライをやるウイークということですが、中学校二年生全員、五万四千人でしたかが、一週間、それぞれの班に分かれて、学校から出て勉強していくというすばらしい実践をやっているわけです。  文部大臣も、そのことについてはコメントをしていらっしゃるのがありました。この文部大臣のコメントの前半はいいのですけれども、後、がくっとしたのです。これはいいことだと、「いろいろ課題はあるが、きわめて成功している。このような試みが、全国に広がればいい」これは大臣としてお考えになられる。「地方自治体が、それぞれ考えた方が積極的にやれる。教育的評価が高いということが重なれば、国として考えることになる」。これは逆で、自治体の皆さん、やってくださいよと言うのだったらいいけれども、地方自治体がそれぞれ積極的にやった方がいいだろう、それが重なってきて成果が上がってくればうちも考えますよというのは、これは、後の方の文部大臣のコメントを見てがくっとしたのですけれども。  兵庫にも参観なり問い合わせが殺到したそうですけれども、大変な努力をしているのですね。中学校二年生が五万四千人、一万六千カ所でいろいろの、それぞれのところを探して、果樹園へ行こう、スーパーへ行こう、いろいろなことをやって子供たち勉強をしている。およそ五億円要ったというのです。  私は、時間が余りないのですけれども、今度、文部省が予算書の一番最初に書いていらっしゃる緊急三カ年計画、異議ありません。しかし、兵庫県が中学校二年生だけで五億円使ってやったのに、これで見ると、センターは全国で三百六十五カ所、四億四千万円、あるいは子ども地域活動促進事業、一千カ所を全国で展開をする、六億円。兵庫県は、五億円使って中学校一学年をやったわけですね。私は、大変な努力と金が要ると思うのですよ。  これは兵庫で初めての試みですから、大変な準備を県教委も地教委も学校もそれぞれやって、大変なエネルギーを使われた。そして、結果的に金も要った。文部省が考える全国プラン、本当に交流をして、効率よく、こういう例があるよ、こういうやり方があるよ、そしてついでにこういう金は出せますよということを早く、これは初年度ですから余りみみっちいと言わぬ、その初年度、これから頑張ってもらいたいという意味を込めて言うのですけれども、このことについて、文部大臣のように、みんながやってくれたらいいのだというようなことではない姿勢をやはりもっと見せてほしいのですがね。
  93. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私は、各地方自治体が御自分の意思でやることをお願いしたい。もちろん国として援助することは、いろいろ工夫をいたします。しかし、やはり教育の根本は地方自治体、お父さん、お母さん、市町村、そして地方自治体が真剣にお考えいただく。これを余りにも、国からこうやったらどうか、ああやったらどうかと指導することは、私は反対であります。  しかしながら、今御審議を賜ります予算の中では、さまざまな工夫をさせていただいております。例えば、田んぼを子供たちが自由に使えるようにする、そういう遊ぶ場を農水産省と組んでやるとか、さまざまなことを工夫はいたしております。しかるべき非常にすばらしい提案が出てくれば、またこれは真剣に文部省としても考えさせていただきたいと思います。しかし、原理的には、やはり地方自治体、各教育機関が御自分で考えていただきたい。
  94. 山元勉

    ○山元委員 基本的にはそういうことだというふうに私も思います。ですから、これから始まると言ってもいいのでしょうけれども、文部省には、そういう計画なり、あるいは財政的な支援ということについては積極的にぜひお願いをしたいと思います。  少し話は違うのですが、ゆとりの問題かもわかりませんが、国民の祝日に関する法律というのが去年改正になりまして、来年一月から、成人の日は一月の第二月曜、そして体育の日は十月の第二月曜、こうなったわけですね。  あのときの趣旨というのは、家族もそろってゆとりのある暮らしをしましょう、省エネにもなりますとかいろいろあったのですけれども、学校とのつながりを考えますと、お父さんやお母さん、家族は、第二月曜だったら土、日、月と三連休になるわけですけれども、子供はそうはいかぬのです。二〇〇二年の学校五日制までの間にそういう祭日が五回あるのです。そのうち三回は、子供は三連休にならないわけですよね、第一土曜と第三土曜は学校へ行かなきゃなりませんから。第一土曜に学校へ行って、次の月曜は第二月曜になって八日だから、だからお父さんは休みだということで三連休になるわけです。三連休にならないというのが、五回あるうち三回アウトになるのですね。  ですから、子供は二〇〇二年までは待てやいということにするのか、それとも、法の精神からいって、家族でやはりゆとりのある暮らしをしましょう、だから子供も三連休というふうにすれば、第一土曜も学校を休みにするのか、二を一に繰り上げるのか、何かの工夫があった方がいいのではないかというのが意見としてあるわけですが、いかがですか。
  95. 有馬朗人

    有馬国務大臣 この点は私も気にしておりまして、今担当の方で検討してもらっているところでございますので、辻村局長よりお返事申し上げます。
  96. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 二〇〇二年度からは土曜日が完全に五日制になりますからいい。あと二〇〇〇年度と二〇〇一年度、この二年間の問題でございます。  それで、先生から御指摘のように、確かに五日あるのですが、私どもがいろいろと勉強しておりますのでは、二〇〇一年の成人の日は一月八日、その六日は、一月六日でございますので多分冬休み中であろうと私どもは見ています。ですからそれは、先生、ちょっといろいろ勉強の過程の問題でございます。  ただ、体育の日が、今おっしゃったように三連休にならない、土日でとまってしまうという問題はございます。これは、国が一律に省令でえいと一斉にやるのか、そうではなく、各自治体の判断にゆだねるのかということが、私ども課題なのではないか。私立の学校の場合は省令ではございませんで、各学校の学則で休みを決めるということになります。ですから、国で仮に一律に決めるとしても、私学の場合は残ってしまうとか、こういう問題もございます。  ですから、私どもとしては、この新しい祝日法の趣旨を伝える、その中で、この土曜日の部分をお休みにするかは、各教育委員会の地域実情に応じて、判断にゆだねるということにしてはいかがかな、こう思っております。休日にする権限は各教育委員会にございますので、それを生かして、うちは三連休だ、いや、うちはという、そういうことで対応することがいいのではないかな、私ども、事務的にはそんな方向で今検討をいたしています。問題意識としては持ってはございます。
  97. 山元勉

    ○山元委員 この法改正の趣旨が、ゆとりある国民生活実現するためにということが大目標になっているわけですから、そのために祝日を移動さすというようなことを発想したわけですから、そこの点についてはやはりきちっと都道府県を指導していただく。また指導と言うと画一的とおっしゃるかもしれぬけれども、そういう理解を各県が持って選択ができるようにしていただきたいなというふうにお願いをしておきたいと思います。  時間が余りありませんから次の問題ですが、人権擁護推進審議会というのが今進められています。これは、おととしですか、推進法ができまして設置をされたわけですけれども、二年間、おととしから審議をしてきて、ことしの春または夏には答申が出されるだろうと。これは啓発と教育の部分についてですから、文部省は、この内容については大きな責任を持っていただかなければならぬと思うのですが、現在の論議、私どもが聞くところでは、大変不十分な論議が進められているのではないかというふうに心配をしているのですけれども、現在の審議の状況についてお答えをいただきたい。
  98. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 現在審議中でございますので詳細につきましては控えさせていただきたいと思いますが、経緯を若干御報告いたしますと、ただいま先生から御指摘のとおり、平成九年の五月に法務、文部、総務庁長官、この三大臣からの諮問で、人権教育、啓発に関する施策の基本的事項についてということで審議が始まりました。各委員からの活発な御議論、それから外部の人たちのヒアリング等で、これまでに二十二回会議が開かれてございます。  その具体的なものにつきましては、余り詳細につきましては控えさせていただきたいと思いますけれども、人権教育、啓発の実情というものをどう認識するかということについての議論、私どもとしては大変活発にというふうに伺っておるわけでございます。  それを踏まえまして、今後、学校についていえば、発達段階に即してどう教育、啓発を展開していくか、それから家庭の問題が大変大きゅうございますので、家庭教育あり方、それに対してどう支援していくかという問題、それから地域でのさまざまな問題がございますので、そういったものをどうするかといったこと、それから、これを単なる知識ではない、態度が重要な問題であろうということで、そういったものについてどのようにして取り組んでいくべきかといったこと等につきまして、私どもとしては、真剣な御議論をなされているというふうに承知をいたしております。  いずれにいたしましても、この人権擁護推進審議会は五カ年間の時限で設けられておりまして、国会の附帯決議等でも、前半二年間が教育、啓発に関する施策中心に議論する、後の三年間につきましては、人権侵害を受けた人に対する救済のあり方検討するということでございますので、具体的にいつまとめをということにつきましては、まだ決着といいましょうか方向が見えておりませんが、今、そうした二十二回の審議を踏まえまして詰めの議論を真剣になされている、こんなふうに私どもは承知しているところでございます。
  99. 山元勉

    ○山元委員 確かに、範囲の広い人権問題の審議ですから難しいだろうというふうに思いますけれども、私が一番心配しているのは、例えばこの推進法ができたときの法案の提案理由説明の中でこういうくだりがあるんです。  「政府といたしましては、これらの状況を踏まえ、」「これらの状況」というのは、同和問題の人権侵害の問題なんですが、「人権の擁護に関する施策の基本ともいうべき人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策並びに人権が侵害された」ときの救済、今おっしゃった後の方の段ですが、「これらの施策について改めて十分な検討を行うことが必要であり、これが同和問題の早期解決のためにも不可欠と考え、この法律案を提出する」というふうに、人権全体としてのことだけれども、一番基本の中心部分はここですよという提案理由がされているんですね。  それから、その年に、地域改善対策協議会、地対協が意見具申をしているのですが、そのときにも、しっかりとこの同和問題を解決しなければ人権問題は解決しないよという意見具申がされているわけですね。そういうことを踏まえて論議が進められているのかどうかということについて私どもは危惧があるのです。  ですから、今おっしゃるように、広いヒアリングをずっとやってきて、まとめつつあるのだとおっしゃいますけれども、そこのところがしっかりと踏まえられているのかどうか、この審議会がつくられた主たるねらいがしっかりと踏まえられているかどうか、文部省はどういうふうに認識していらっしゃるか。     〔委員長退席、増田委員長代理着席〕
  100. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 私どもは、先生から御指摘になりましたただいまの点は十分に踏まえられているというふうに伺っております。  御指摘になりました地域改善対策協議会の意見具申におきましても、人権問題の重要な柱として同和問題をとらえるということが明確に述べられているわけでございますし、また、この審議会のもとになりました人権擁護施策推進法の提案理由の中に明確に書かれているわけでございまして、当然にそうした経緯を経て発足した審議会でございますので、その趣旨を十分に踏まえて審議されるべきであるし、なされている、こんなふうに私どもは思っております。
  101. 山元勉

    ○山元委員 ぜひ文部省としても、この三つの中に入っているわけですから、主たる責任があるというふうに考えていただいて、答申が出てきた、きょう言うていたのと全然違うなというようなことにならないように御努力をお願いしておきたいと思います。  それから、ことしは国連の人権教育の十年の中間年に当たるわけですね。ちゃんと五年たってしまったのです。前に私がこの委員会で、子どもの権利条約やあるいはこの国連十年のことで予算はと言ったら、格段の予算は組みません、こういう話であったと記憶をしています。  この五年間、どういうふうにこの取り組みが進められてきたか。中間年に当たって今までをどう評価するのか、考えるのか。そして、これからの後半の五年間、世界じゅうが取り組んでいるこの問題について、日本としてもしっかりやったということをこれから五年後に総括しなければならぬと思いますけれども、今中間年に当たってどういう総括をしていらっしゃるか。  時間がありませんから次の問題もあわせてお尋ねをしたいのですが、文部省が人権教育をやるということも大事だけれども、地方自治体や、あるいはマスコミあるいは民間の企業も一生懸命やってもらう必要があるわけですね。文部省の取り組みの総括と、地方のそれぞれの他の団体の実態についてどういうふうに把握をしていらっしゃるかお答えをいただきたい。
  102. 有馬朗人

    有馬国務大臣 政府といたしましては、平成九年七月に人権教育のための国連十年に関する国内行動計画をとりまとめ、各関係省庁において関連施策を推進しているところであります。文部省といたしましては、政府の一員として、この国内行動計画に沿って人権教育に関する諸施策を一層推進し、政府全体の取り組みに積極的に貢献しておりますし、さらにまいりたいと考えているところでございます。  具体的には、学校教育において、学校教育活動全体を通じて人権尊重の意識をさらに深め、一人一人を大切にした教育の一層の充実を図り、また社会教育においては、公民館等を拠点として行われます人権尊重に関する多様な学習活動の一層の振興を図っていく所存であります。  また、昨年十一月の市民的及び政治的権利に関する国際規約、いわゆるB規約に基づく人権委員会からの見解で、人権問題についての指摘があったことも存じ上げております。  今申し上げましたように、文部省といたしましても、従来から人権教育には力を大いに入れておりまして、今後とも、適切に、さらに進んでいきたいと思っております。  何といっても、日本国憲法及び教育基本法の精神にのっとって、人権尊重の意識を高め、一人一人を大切にした教育を推進しなければならないと思いますし、現在推進しているところでございます。  平成十年六月の中央教育審議会答申においては、子供たちが身に備えるべき生きる力ということを提案いたしました。その核になる豊かな人間性として、命を大切にし、人権を尊重するという心、そういう基本的な倫理観、他人を思いやる心を挙げています。これに沿って、文部省でも、大いに生きる力を教育し、その中で、人権を尊重する精神を教育するようにいたしたいと思います。  また、今回の文部大臣所信表明におきましても、中央教育審議会の答申を踏まえ、生命を尊重する心、他者への思いやりや社会性、倫理観や正義感などをはぐくむ心の教育充実を取り組むべき教育改革の重点課題の第一に挙げさせていただきました。  ここで、文部大臣所信の中で、今までは人権教育充実というのが趣旨の中に含まれていることが多うございましたけれども、今回は別に人権教育ということを率直に表に出しませんでしたけれども、これは、あくまでも生きる力を推進するということの中に私としては含ませたつもりでおります。
  103. 山元勉

    ○山元委員 最後の締めくくりのお尋ねをしようと思ったことを今大臣お答えになりました。  所信表明の中に、ずっと、去年もおととしも、社会教育学校教育を通じて人権教育を一層進めていくということが書いてあったのです。ことしは書いてなかったのです。去年の暮れに国会で、衆参両院でわざわざ国連の人権宣言五十周年を記念して決議を上げたわけです。ですから、そのことを踏まえてでも、私は、今までに二行入れたらやはり五行書いてほしかったと思うのです。  その中身として、一層大事にするとかいろいろなことをおっしゃいましたけれども、私は、そういう心の教育ということだけで、言い方は悪いけれども、一般化するだけではなしに、実際に、差別の事象があるところではあるわけですね。悲しい事件が起こっているわけです。  ですから、やはりそれを根絶するための人権教育、これは社会教育のところでも学校教育のところでも文部省はもっと一生懸命になって、国連からこんな、いろいろな勧告を今度受け入れた、それも時間がありませんから言いませんけれども、そういうことではなしに、日本が国連から褒めてもらえるような人権国家になるのだということをこの所信表明の中でもおっしゃっていただきたかったということを申し上げたかったのですが、大臣の気持ちとしては理解をいたします。ありがとうございました。
  104. 増田敏男

    ○増田委員長代理 次に、田中甲君。
  105. 田中甲

    ○田中(甲)委員 民主党の田中甲です。どうぞよろしくお願いします。  私は、今まで地方行政常任委員会ですとかあるいは決算行政監視委員会にも所属してまいりましたが、選挙法の問題あるいは警察庁にかかわる問題、そういうことを中心に国会で活動をさせていただいてまいりました。今回、文教委員会に所属をさせていただきまして、右も左もわからない新参者でございまして、大臣、よろしく御指導いただきたいと申し上げるとともに、文教委員会でベテランの先生方に、恥ずかしい質問をするかもしれませんけれども、一生懸命質問させていただきたいと思いますので、御指導よろしくお願いいたします。  ずぶの素人であります。有馬文部大臣が目指している教育、その究極の目的というのは何なのか、ひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  106. 有馬朗人

    有馬国務大臣 心の教育というようなことをこのごろ申しておりますが、その一つ手前で、まず、生きる力ということを養成すべきだと思っております。  生きる力というのは、たびたび申し上げておりますように、自分で課題を見つけ、自分で学び、自分で解決していくというふうな力、これが知、徳、体の知に対応するものだと思います。勉強するだけではなくて、それをみずからの血や肉にして、そしてどんどん問題を解決していく力。徳、体に対応するところは、まず倫理観、しっかりした倫理観、私は、特に二十一世紀日本人はもっとしっかりした倫理観を持たなければいかぬと思っております。常に申し上げていることであります。  まず、倫理観をしっかり持つ。それから、他人を思いやる心を持つということ。そして、美しいものは美しいと思う健全な心や体力を備える。これが私の理想とする教育の理念でございます。  その上で、今度はさらにそれを砕いて、心の教育という問題。そこでは、やはり同じように申し上げますけれども、しっかりした倫理観を持つ。悪いことは悪い、いいことはいいというふうなことをしっかり身につける。思いやりのある、そして崇高なものに対しては尊敬の念を持つ、こういうふうな気持ちを持つ子供たち育成すべきである、育てるべきだと思っております。
  107. 田中甲

    ○田中(甲)委員 ありがとうございます。  重ねて、文部省というものが、生涯教育ですとかあるいはスポーツの分野ですとか、もちろん学校教育もそうでありますけれども、それをすべて網羅する中で、文部省の役割というものをお聞かせいただければありがたいと思います。
  108. 有馬朗人

    有馬国務大臣 文部省の役割というのは非常に広うございまして、教育のところ、これは初中教育もあれば高等教育もある、生涯学習もあるわけですね、こういう面で、そういう広い教育を進めていくという上でお役に立ちたい、それからまた学術研究というふうな面でもお役に立ちたい、スポーツもやりたい、芸術もやりたい。  先生初めてお入りになって、いろいろわからないとさっきおっしゃいました。私も、全くまだ素人でございまして、わからない状況でございます。よちよち歩きをしておりますが、文部省としては非常に広い範囲のことをカバーして、努力をさせていただきたいと思っております。
  109. 田中甲

    ○田中(甲)委員 今印象に残ったのが、広い範囲であるということと同時に、お役に立ちたいという言葉を二回聞かせていただきました。国民のために文部省が役に立つということがやはり大切なのだろうというふうに私も受けとめさせていただきたいと思います。  そんな中で、私、今、議員として当然の仕事なんですけれども、議員立法を何本か提出準備あるいは提出というようなことをやってまいりました。どうしても突き当たるのが教育の問題になりまして、そもそも教育がという言葉が頭をよぎるということが間々ございます。  その一点が、文部大臣も九八年の参議院選挙で当選をされた、そのときの投票率が五八・八四%でございました。前回の衆議院選挙の全体の投票率が五九・六五%。その中で、申し上げたい点は、二十歳から二十四歳の投票率といいますのは二九・八二%、十人に三人も投票所に行っていないという点でございます。逆に、六十五歳から六十九歳までの幅をとってみますと、八〇%投票に行っている。  ここで私は、いわゆる公民教育と申しますか、民主主義というものが、過去の先人たちがどういう努力をして、今の投票権が与えられている、あるいは被選挙権が与えられている、そこに参加をしていくことの権利を与えられたということの重要性というものがもっともっと教育の場で教えられてしかるべきではないかというふうに考えるのですけれども、大臣、いかがでありましょうか。
  110. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私も同感でございます。  国民の意思が選挙などを通じて政治に十分反映されるためには、主権者である国民一人一人が政治に対する関心を高めていくことが大切であると思っております。このような観点から、その基礎になります学校教育においては、従来より国民主権を担う公民として必要な基礎的素養を培うための指導を行っております。  このような考え方のもと、従来より、小中高等学校を通じて、社会科や公民科において、小学校では、議会政治や選挙、国民主権の意味、中学校では、民主政治の仕組み、議会制民主主義の意義、国民の政治参加の大切さや選挙の意義など、高等学校では、政治、社会の特質、政党政治と選挙、世論形成と政治参加の意義などについて随分教育を行っております。  今後とも、さらに、学校教育活動全体を通じまして、児童生徒社会の構成員としての自覚を持ち、その責任を果たしていく態度が育成されるように努めたいと思います。
  111. 田中甲

    ○田中(甲)委員 ありがとうございます。  ここに、かなり古いものでありますけれども、「選挙制度国会審議録」というものがあります。これは昭和二十年の議事録でありますが、選挙権の年齢を二十五歳より二十歳に、被選挙権の年齢を三十歳より二十五歳に、それぞれ五歳引き下げるとともに、新たに女子に対しましても、男子と同様の条件をもって選挙権並びに被選挙権を認めることといたしたい次第でありますと。そして、続くのですけれども。  私は、簡潔に御質問させていただきますが、少子・高齢化社会の中で、若者が、自分たちの権利というものをしっかりと主張できるように枠組みを改正していくべきだろうというふうに思っております。とかく高齢化社会の中に入ってまいりますと、若い者は責任負担というものが強いられて、それを地方行政並びに国政の場に、リアルタイムに自分たちの世代の意向というものを発言する機会というのがなかなか与えられないわけであります。  私は、成人年齢で被選挙権も与える、あるいは、今後成人年齢の変更がある場合には、世界の標準ですから、十八歳から投票権というものを与えていく、あるいは被選挙権というものを与えていくという考え方を実は持っている者で、そういう法案も準備しているのですが、大臣の御所見を一言いただければと思います。
  112. 有馬朗人

    有馬国務大臣 これは文部省人間としてもお答えがすぐにできないことでございますけれども、私のふだん申し上げていることを、個人としての考えを申し上げます。  これはやはり、若者に自分たちの力を見せる機会を大いに与えるべきだと思っております、いろいろな面で。単にスポーツやなんか、もちろん大いに発揮してくれますが、そういうところだけではなく、もっと積極的に、政治においてもあるいは学校とかなんかにおいても、研究においても、もっと若者が大いに中心になって働けるような、実力を発揮できるような社会をつくっていかなければならないと考えております。
  113. 田中甲

    ○田中(甲)委員 ありがとうございます。  もう一点、常々感じている点がありまして、私見で結構ですからお聞かせいただければありがたいのですが、憲法の前文にうたわれている恒久的な平和、恒久平和ということを実現していくためには、戦後五十三年たちますが、我が国日本は大事なことを忘れてきてしまったというふうに思っておるのです。それは、戦前、戦中、戦後における事実を明らかにしていくということを我が国日本は、同じ敗戦国でありますドイツと比べても、かなりそれは顕著な差があるというふうに思っておるのです。  歴史認識という点では、これは国、それぞれ個人、個々違うと思います。しかし、その溝を埋めるためにも、真相を究明していく、事実を明らかにするということが極めて重要になってきていると思うのです。アジアにおける信頼醸成という面では、そこを自発的に行うことがとても重要なんだろうと考えておるのですが。  そこで、小学校あるいは中学校、高校、成人していく過程において、それにふさわしい戦前、戦中、戦後の事実を教育の場でも伝えていく必要があるのだろう。なかなかこの点は国会の場でも、発言する機会とかそれを受けとめていただけるゆとりというものが、目の前に出てくる事象に追われてないのですけれども、この機会にぜひ、この点に関して大臣がどのようなお考えをお持ちか、お聞かせいただければありがたいと思います。
  114. 有馬朗人

    有馬国務大臣 これは、日本の中におります研究者、学者だけではなく、周辺諸国、世界的な人々の意見も酌みながら、客観的な正しい描像を描くべきであると考えております。  しかしながら、私の基本的な歴史に関する姿勢というのは、たびたび申し上げておりますが、一九九五年八月十五日の村山内閣総理大臣談話を基本といたしまして、我が国が過去の一時期に、植民地支配と侵略により、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた事実を謙虚に受けとめ、これに対する深い反省とおわびの気持ちに立って、世界の平和と繁栄に向かっていく、力を尽くしていくということを思っております。  政府といたしましては、このような考え方を踏まえて、関係諸国との信頼関係を一層強化していくとともに、責任ある国際社会の一員として国際協調を促進し、それを通じて、平和の理念と民主主義を進めていくという立場をとっております。  しかし、こういう考えを基礎に置きまして、先ほど申しましたように、より客観的に研究者たちが、日本だけではなく諸外国とも協調して、新しいイメージをきちっとつくってくださることを私は念願している次第であります。
  115. 田中甲

    ○田中(甲)委員 さらに教育の場でその必要性があるとお考えですか。
  116. 有馬朗人

    有馬国務大臣 やはり若い人たちに正しい歴史をきちっと客観的に学ばせることが必要だと思っております。     〔増田委員長代理退席、委員長着席〕
  117. 田中甲

    ○田中(甲)委員 どうもありがとうございます。  驚きました。私はこれは通告していなかったのですが、もちろん大臣が御自身の気持ちで、あるいはお考えでお答えをいただけるというふうに当然思っておりましたけれども、きちっと資料が後ろから出されたという、非常に文部省も頑張っているな、負けないぞという感じでありますが。  司法の場から立法不作為ということが言われるようになりまして、これからも判決の中で立法不作為ということがまた出てくるのでしょう。こういう立法府の中の情けない姿ということは改善していかなければならないという思いを持っておりまして、立法府が自発的に、他の国々から言われるのではなくて、真相を究明していく。  聞くところによると、各官庁の非公開資料というものが、積み重ねると二万メートルにも及ぶという膨大な資料がまだ非公開である。また歴史の研究者は、どの部分を消去してきたか、焼いてしまったのか、どこかになくなった部分が全体の資料のどの部分かということを研究しながら、さらに歴史の真相の究明に努めたいという、そんな動きもあるようです。大臣の御所見を賜って、大変にうれしく思っております。ありがとうございました。  委員長、配付物をよろしいでしょうか、委員の皆さん方にお配りをさせていただくということで理事会に諮ってございますが。
  118. 小川元

    小川委員長 はい。
  119. 田中甲

    ○田中(甲)委員 がらっと話をかえます。  従来は社交ダンス、ソシアルダンスということでございますが、大臣もおやりになるのですか。今は社交ダンスという言葉、ソシアルダンスという言葉は世界的には余り使われなくなってきているようであります。ボールルームダンスあるいはダンススポーツ、こちらの方が今は主流なのかもしれません。今お配りをさせていただきましたのは日本のダンス界の組織図でございます。  真ん中を見ていただきますと、そこに文部省と警察庁と書かれておりまして、従来は、警察庁の真下にあります全ダ連という団体が教師の資格を発行しているということでありました。約十三年間の間、ごく一部のダンススクールの特定の例外を除いては、ダンスというものは風俗営業の適用になってまいりました。昨年、国会で風俗営業の適用除外になりまして、文部省の財団であります日本ボールルームダンス連盟も教師の資格を発行できるという形に規制緩和が行われたところでございます。  ところが、この図を見ていただきますと、左側の縦のライン、国際オリンピック委員会から下に下がってまいりますと、国際ダンススポーツ連盟、IDSFと申します。今、アマチュアが世界七十三カ国という形で加盟しております。そのもとに日本ダンススポーツ連盟、JDSF、アマチュアと書いてございますが、これは今月の七日、三日前の話でありますけれども、アマチュアダンス連盟、JADAというところと、LACDという競技のアマチュアの団体が一つになりまして新しくできたのが、ここに書いてありますJDSFであります。ここがアマチュアのラインです。  これからオリンピックの正式種目にダンスがなろうという動きが出ているわけでありますけれども、二〇〇四年のアテネで公開競技になりまして、二〇〇八年では、北京でしょうか、大阪でしょうか、正式な種目に決定するという流れがもうかなりでき上がっております。そこで、日本のダンス界は、アマチュアを取りまとめています日本ダンススポーツ連盟、ここがオリンピックとの交渉を行っていく団体であり、これが基本の団体となり、右側の随分ごちゃごちゃとなっているところはすべてプロの団体であります。  ところが、私がきょう質問させていただくのは、アマチュアというものが、地方行政常任委員会で警察庁生活安全局長といろいろとやりとりをさせていただく中、議員立法も準備したのですが、閣法で対応したいということで風営法の改正になり、ダンスというもののごく一部ですけれども、教師の資格を持っているところ、カリキュラムが出されているところに関しては風俗営業ではなくなった。その規制緩和によって、今度はプロの方がダンス界を一括して取りまとめていく役というような位置づけになりつつあります。これは徐々に説明をさせていただきますが。そうしますと、お話をしましたアマチュアの世界というものがだんだんプロの配下に入ってこなければいけないという形になってしまう、そういう危惧が今持たれているんです。  きょうもアマチュアの団体の方が傍聴に見えられているようですけれども、アマチュアの団体とプロの団体が車の両輪のごとく、ともにお互いの分野で協力をし合いながら日本のダンス界というものを一つにまとめ上げていく、そしてオリンピックにつなげていく、そういう形が必要であろうかと思うんですけれども、もしダンス界のことで大臣の御所見等ございましたら、今お聞かせをいただければありがたいと思います。
  120. 遠藤昭雄

    ○遠藤(昭)政府委員 お答えいたします。  現在の日本のダンス業界の団体の状況でございますが、これはもう先生お詳しいわけでございますが、若干状況を申し上げますと、国内の団体として、まず日本ボールルームダンス連盟、JBDF、図の真ん中下ほどにある団体でございますが、これがあります。これは、プロ、アマを通じたダンスの振興を目的とする団体といたしまして、文部省平成四年に財団法人として認可をしております。これはダンス教師を正会員とする団体でございますが、アマチュアダンス競技の開催とか、アマチュアインストラクターの養成、そういったことをしておりまして、アマチュアも含めたダンス界全体にわたる活動をしている。そういう意味では、統括団体であるというふうに私どもも考えております。しかしながら、実際の活動の段階におきまして、JADA、ここでいいますとアマチュアのJDSFの前身でございますが、こことの協力関係は必ずしも十分うまくいっておりません。そういう現状にあります。  それから、次にアマチュア団体として、そこにあります日本ダンススポーツ連盟。これも先ほどお話がありましたが、最近こういうふうに新しく結成をされた。これは、地域や職場のダンスサークルの団体とか、学生ダンス部の団体、それからダンス教室などに属しております競技ダンスを目指す人たちの団体、この三つから成っておるわけでございまして、この団体は、自分たちとしては社団法人化をしたいという御意向を持っておられるということでございます。  このほかにも、その表の右の方に、ごく小規模でございますが、全日本ダンス議会、JDC、それから、日本プロフェッショナルダンス競技連盟などがありますが、さらに、警察庁所管の団体として、プロダンスの教師のほとんどが加盟しております全日本ダンス協会連合会というのがございます。このように、国内を見ましても、大変複雑な状況になっておるということでございます。  しかも、もう少しややこしいと申しますか、複雑なのは、国際レベルで見ましても、この右の上の方にあります世界ダンススポーツ議会というのが、これはプロの団体としてあるわけですが、ここに加盟しているのは日本では全日本ダンス議会なわけでございますが、小規模なものですから、日本ボールルームダンス連盟、ここも実際上は参加できるように、支障のないように実際上しているというふうな状況一つあります。  それから、もう一つだけ申し上げますと、また最近の動きといたしましては、IDSF、左上ですが、国際ダンススポーツ連盟というところがIOCの承認団体となりまして、将来においてダンスがオリンピック種目となる可能性が出てきたわけでございますが、こういったことから、IDSFでは、従来のアマチュア団体としての規定を改正して、プロ、アマの区別なくダンス競技者が競技できるよう組織の再編成などを行うという方向を昨年の十二月に打ち出していると聞いております。  さらに、このIDSFは、商業ダンスとダンススポーツの両方の活動に従事することはいいとしても、二つ活動を代表する組織は別々に管理すべきであるというふうなことも打ち出しておると聞いておりますので、そうしますと、そういったことも考えて、日本でどういうふうにやっていくかということを考えなければいけないということで、大変複雑な状況にあるというふうに認識をいたしております。
  121. 田中甲

    ○田中(甲)委員 複雑にしたのは、私の考えでは、文部省に大変大きな責任があるというふうに思っておるんです。  数字が間違っていましたら正確な数字に訂正していただいて結構ですが、ボールルームダンス連盟に財団の許可を出した、その際にかなり文部省が無理をしているというふうに私は思います。この図、ボールルームダンス連盟から二つに分かれて、プロの方のインストラクターの部門とアマチュアの方のインストラクターの部門がありますけれども、このアマチュアとの関係というのが教師と顧客という関係ですから、本来、アマチュア同士が、アマチュアの純然たる、公民館、体育館でサークルを楽しんでいくという世界とは違う。  私は、あのときに文部省は、今回新しく統合されました日本ダンススポーツ連盟、JDSFの前身であるJADAというアマチュアダンス連盟に財団を出してしかるべきだったというふうに思っておるんです。ここでボタンのかけ違いをしている。それを大変に複雑な状況にあって困ったなんて言っているのは、少し責任の回避じゃありませんか。  きょう、私の手元に通知が届きました。十日付ですから本当に届いたばかりなんですけれども、今説明があったIOCとIDSF、国際ダンススポーツ連盟とのつながりを説明していただきましたが、その下にある日本ダンススポーツ連盟、何度も言いますが、JDSFが正式にIDSFの連盟に加わることが承認されたという通知が今私の手元に届いております。英文で届いておりますが、届いたのが九日ですから、本当に、多分文部省の方も知らないと思いますが、こういう通知が来ております。つまり、IOCの組織は、日本ではこのアマチュアの日本ダンススポーツ連盟と連絡をとり合いながら、オリンピックに向かって前進をしていくということが明らかになったわけです。  文部省が財団法人を認めたボールルームダンス連盟は、オリンピックにつながっていくラインはないんです。なぜここに財団を出して、日本の中のアマとプロ、アマチュアに関しては少し無理がありますけれども、その統括を行っているという位置づけの中で、ダンス界を無理やり一つにまとめようとしているのか。アマチュアに対してしっかりとした、社団法人なら社団法人という公益法人の資格を与えて、アマチュアとプロが一緒になって、オリンピックに向かって一体となった姿をつくるために努力すべきが文部省の役割じゃないんですか、違いますか。
  122. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私もダンスというのはテレビで見るくらいのことでありまして、よくわからないのでありますけれども、今御指摘の点については慎重に検討させていただきます。  ダンスというのは、生涯学習やスポーツ、文化の振興観点から重要な役割を演じていると思うんですね。より多くの人々がダンスに親しめる、健全なダンスに親しめる環境をつくっていく、また、国際的にも大変高い競技水準となるように、文部省としてもその振興に意を尽くしていきたいと思っております。  ただいまの御指摘のことにつきましては、直ちに検討いたしまして、しかるべき対策をとらせていただきたいと思います。
  123. 田中甲

    ○田中(甲)委員 ありがとうございます。  大臣がそのようにおっしゃってくださったので、余りごちゃごちゃと言うことは避けたいなというふうに思っております。思っておりますが、ここだけはやはり文教委員会の理事先生方委員先生方にも知っておいていただかなければ困ると思いまして、若干そのお話をさせていただきます。  個人名は出しません。個人名は出しませんが、大変なことが行われているんですね。文部省の体育局生涯スポーツ課の当時の課長補佐、当時といいますのは、いわゆるJBDF、ボールルームダンス連盟が財団化を相談していたときの課長補佐は、その後、文部省の体育局競技スポーツ課、つまりオリンピックに関係していくんですけれども、そこの課長になって、その後、JOC、日本オリンピック委員会の理事兼事務局長という立場に立っています。その方が、本年、財団法人日本ボールルームダンス連盟の理事に就任を予定する、こういう話になって、一連の流れでつながっているんです。  これは何を意味しているかというと、ボールルームダンス連盟とJOCとIOCをつなごうとする天下りがここで行われているのです。  今お話しした方の次に文部省の体育局生涯スポーツ課の課長補佐になられた方は、その方のときにJBDFを財団として許可をした、そのときの課長補佐ですけれども、その方は、文部省の体育局競技スポーツ課の課長を務められてから、同じようにJOC、日本オリンピック委員会の理事兼事務局長になられている。こういうラインがつくられている。まさにこれは天下りじゃないですか。これを天下りと言わずして、何を天下りと言うのですか。
  124. 遠藤昭雄

    ○遠藤(昭)政府委員 先ほどの点も含めて若干お答えをいたしますと、日本アマチュアダンス協会、JADAからは、数年前から社団法人化について私どもも相談を受けております。日本ボールルームダンス連盟が四年にできておりますが、そのときに、このJADAとJBDFとの間で協定書が交わされておりまして、それによりますと、JADAはJBDFに協力する、それから、JBDFもJADAをアマチュアダンスの統括団体として認め、将来のJADA法人化に協力するというふうに合意をいたしております。  ですから、私どもとしては、文部省は決して無理に統合するとか分けるとか、そんなことは考えておりませんで、やはり、同じジャンルの人たちが十分話をしていただいて、納得できるところ、折り合うところは折り合っていただいて、ダンス界全体が発展をしていくようにという思いで、私どもとしては、その間に入って、今までそれぞれの団体に対してお話をするように努めておるところでございます。  それから、今の、文部省の職員が一人入っているじゃないかという点でございますが、これは、こういった問題も含めて両団体で十分話をしていただきたい、そのために恐らく、その当時担当をしていた詳しい人に入ってもらった方がいいだろうということで入っているわけでして、これは無給で入っているわけでございまして、決して天下りというふうな趣旨ではないというふうに私どもは考えております。
  125. 田中甲

    ○田中(甲)委員 その辺の事実確認はこれからさせてください。  その前段の話ですね。私も協定書は持っています。その辺は私も確認した上でお話をしているのですけれども、「甲」がボールルームダンス連盟、「乙」がアマチュアダンス協会ですね、「甲は乙をわが国のアマチュアダンスの統合団体として認めてこれを尊重し、将来乙が公益法人の許可を得る際には、全面的に支援する。」ということを約束しているわけですから。  しかし、アマチュアダンスの皆さん方が、何年前にその許可をとろうとして文部省の門をたたいていますか。これは、私の方にも記録がありますからあえて言いませんが、もう足かけ七年ですか、なぜこんな長い間ほうってあるのですか。  それともう一つ、おっしゃることは非常に正当に聞こえるのですけれども、私がつくった組織図というものをお配りしました。これをもとに話していただきましたが、文部省のつくった組織図はそうはなっていない。  文部省は、ボールルームダンス連盟、財団の下に日本アマチュアダンス協会を置いて、括弧書きで「下部団体となる方向で相談中」と書いてあるのですよ。これが文部省の本当の考えじゃないんですか。こういうことをやって、アマチュアに対して、本来のアマチュアで純粋に競技を行っている人たちに対して門を閉ざして、自分たちの関係のあるボールルームダンス連盟をJOCにつなげていくというラインをつくっている、そうじゃないですか。
  126. 遠藤昭雄

    ○遠藤(昭)政府委員 冒頭にも申し上げましたように、このボールルームダンス連盟、JBDF、これを平成四年に文部省として財団法人として認可をいたしておりますが、そのときの考え方としては、プロ、アマを含めたダンス界を統括する団体としての理念のもとにこれを設立いたしておりまして、文部省もそう考えておるわけでございます。  そのとき、平成四年に先ほどのような合意文書がなされているということですので、そのときのそういう条件のもとで関係団体が御議論をしていただければいいというふうに私どもとしては考えておるわけでございます。
  127. 田中甲

    ○田中(甲)委員 公平な立場でひとつ役に立ってください。そうでなければ、このジャパン・ダンス・スポーツ・フェデレーションあてに、IOCが国際ダンススポーツの連盟を通して、このアマチュアダンスを承認してくるはずがないんですよ。  アマチュアを統括しているのは、アマチュアの部門で純粋にやっている活動があるわけですから、そこと、プロのまとめ役になっていくのでしょう、財団法人日本ボールルームダンス連盟が、プロのばらばらな状態ということを統括していくことに努力をしながら、アマチュアとまた対等な立場で話をしていく、こういう形で、しかるべきオリンピックの大会においては、日本が、具体的なことになりますが、優秀な選手を出していくことができるという公平な体制、ルールというものをつくってもらいたいと思います。  この間、アジア大会がタイでありましたね。このときにはダンスが公開競技でありながら、アマチュアの方から選手を派遣することができなかったのです。認められなかったのです。それは、やはりこういう日本国内のどろどろとした組織の中の問題ということがあって選手を派遣することができなかったというふうに、残念ながら関係者からは聞いております。多分、そういうことが間違いなく影響を及ぼしているのだろうというふうに思いますので、この辺は、きょうの質問の中で、大臣からも検討していただけるというお話ですから、ぜひともよろしくお願いをしたいと思います。  ちょっと山が終わってしまいまして、きれいにここで終わった方がいいのかなとは、その方がよろしいですね。ありがとうございました。またどうぞよろしくお願いします。
  128. 小川元

    小川委員長 次に、池坊保子君。
  129. 池坊保子

    ○池坊委員 公明党の池坊保子でございます。  二月五日の予算委員会の一般質問で、厚生大臣並びに労働大臣にも質問し、あわせてお願いもいたしました農事組合法人幸福会ヤマギシ会に所属しております二千二百人の子供のことについて、文部大臣質問並びに幾つかのお願い事をしたいと存じます。  平成九年二月に、ヤマギシ会の子供のおじいちゃん、おばあちゃんを中心としたヤマギシの子供を救う会が、文部省に子供の人権侵害調査申し入れ書を提出したと思います。そして、その後、七月二日、八月二十九日も、初等中等教育局長辻村氏あてに同じような要望書を出したのではないかと存じます。そして、その中で、子供の人権侵害の事例を幾つか挙げております。  その中には、月一回しか母と子が会えない母子分離とか、一日二食のために、朝御飯を抜かして子供たちが空腹を訴えている、あるいは係という名のもとに、その世話係から暴力を受けている、あるいは強制労働、また部活の禁止、高校進学禁止等を挙げまして、文部省に速やかに子供の人権について調査をしてくださいという依頼書があったはずでございます。  それは七つございまして、一は、強制的な労働をされているのではないか、それは労働基準法に違反するのではないか。また二つ目には、幼年の子供への思想の強要は、子どもの権利条約に違反するはずである、それはどうなのか。三つ目には、教育委員会がヤマギシと協定し、存在しない児童数の入学枠を決めていることは異常であるので、調査し、実態と責任を明確にしてほしい。四、組織的、集団的な越境入学はおかしいのではないか。五、通信、移動、思想、信条の自由を制限されていることは憲法に抵触するのではないか。六、学校当局が、学校気付で祖父母、関係者が郵送した手紙を無断でヤマギシに渡しているが、憲法、郵便法などに違反しているのではないか。七、肉親が孫に面会を申し出た場合、学校側はそれを禁止しているが、その法的理由の根拠と面会の禁止の即時廃止をお願いしたい等のことでございました。  辻村初中教育局長、そのような要望書をお受け取りになりましたでしょうか。
  130. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 確かに私が直接受け取っております。
  131. 池坊保子

    ○池坊委員 それに対してどのような対処をなさったかをお聞かせいただきたいと思います。
  132. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 いろいろとお話を聞きまして、今のような文書もいただきました。  そこで、私どもが直接この事実関係を確認するということではないわけでございますので、三重県の教育委員会の方に連絡をいたしまして、三重県の教育委員会の人に来ていただいて、こういうやりとりがありましたよというようなことも含めて伝えながらいろいろとお願いをいたしました。  大きく二つございます。一つは、県下の関係部局と連絡協議の場を設けるなどして、児童虐待あるいは人権侵害等の問題が看過されないような取り組みをしてほしいということが一つでございます。  それから、二つ目。今ちょっと先生からもお挙げになられましたけれども、祖父母等から児童生徒への手紙の送達あるいは面会希望があったような場合には、この会が干渉するといったこと、そういったことについて左右されることなく、中立公平な立場に立って可能な限り認めるような対応をしてほしいということ。それから、高等学校への進学を希望する生徒たちが、高校に行きたいと思いながらもほとんどの子供が行かれていないという状況を伺いましたので、そうした生徒等につきましては本人の主体性を尊重した適切な進路指導がなされるように、三者面談の持ち方等を工夫して適切な対応をしてほしい、主にこの二つを県の教育委員会の方に対しましてお願いをし、関係部局との連携等も図りながら取り組みを強化してほしい、こういうお願いを私どもとしてはいたしました。
  133. 池坊保子

    ○池坊委員 その結果、三重県の教育委員会の方からはどのような結果報告が来たのか、簡単に御報告いただきたいと思います。
  134. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 県の教育委員会といたしましては、学校という側面でその子供たち状況を見るわけでございます。その際、例えば懲罰ということで食事を欠くというようなことがあるとか、あるいはお母さんたちと連絡をとりたくてもとれないことがあるとかということで、学校教育のサイドから認識し、学校教育の所管のサイドから見てゆゆしいと思われる点については適宜対応されている。ただ、基本的には、子供たち生活をしておりまして、その中につきましてはなかなか把握し切れないということもありました。  しかし、先ほど申しましたように、この子供たち教育に支障が生ずるというようなことが絶対あってはいけないので、そういうことにつきましては引き続きいろいろな形で実態把握に努めて取り組んでまいります、こういうことでございました。
  135. 池坊保子

    ○池坊委員 私は、残念に思いますのは、三重県の方に何か問題転嫁をなさったのではないかという気がいたします。と申しますのは、全国に二十校あるのですね。三重県というのはそれの一校でしかございません。ですから、十九校を調べていただかなかったら、それは回答にならないと思うのです。今のような事実がございます中で、大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  136. 有馬朗人

    有馬国務大臣 このヤマギシ会の問題というのはさまざまな難しいことを含んでいると思います。私のところへも個人的に、賛成派のお父さん、お母さんからの手紙が来たり、それを心配するおじいさん、おばあさんから来るというようなことがありまして、私も文部大臣になる前にこういう状況を知っておりました。  現在のところ、御指摘のように、繰り返しになりますが、三重県の教育委員会に対して県内の関係部局との連携に努め、児童虐待等の問題が看過されることのないように努めてほしい、それから、学校として生徒の主体性を尊重した進路指導等がなされるよう配慮するべきであるというようなことで指導いたしております。  今御指摘の、それ以外にもたくさんあるというふうなことに関しましては、さらに調査を進めてしかるべき手を打ちたいと思っております。非常に難しい問題だということを認識いたしております。
  137. 池坊保子

    ○池坊委員 大臣は、きのうの所信表明の中でも、「年々進みつつある少子化は、我が国社会経済に大きな影響を及ぼすものであり、子供を産み育てることに夢を持てる社会をつくっていくための積極的な取り組みが求められております。」というふうに述べられていらっしゃいます。その趣旨からも、今育っている子供たちが最も大切でございまして、その子供たちを養育するにふさわしい環境かどうか調査してほしいという要望が出ておりましたら、それは率先してやっていただきたいというふうに切に望むものでございます。  私もヤマギシ会に対して先入観があるわけではございませんし、無農薬の食べ物は食べていた人間でございますけれども、私は、先を歩む人間として、子供たちが安心して、かつ心豊かに生活できる環境を確保してあげるのが責務だというふうに考えておりますので、これはきちんと調べていただきたいというふうに思っております。  私の調査によりますと、一九九八年三月三十一日付で広島県の弁護士会が、憲法や子どもの権利条約で保障されている人権が侵害されているという警告書を広島県三次市のヤマギシズム学園に提出しております。  これは、どうしてそういうことになったかと申しますと、広島県志和地小学校に通うヤマギシ会の子供二十四人を担任していらした先生方が、子供の日ごろの生活態度を見て、これはおかしいのじゃないか、空腹の余り輪ゴムを食べたり、あるいは快活さがないとか部活が禁止されているとか、大変に熱意ある先生方が連名で、校長さんがその弁護士会に警告書をお出しになったのです。そしてそれを受けたところ、そこに通っておりました子供二十四人はすぐに強制的に転校させられました。  また、同じようなことが岐阜県武並小学校、ここには二十六人通っておりますけれども、ここでも同じように、先生が、おかしいのじゃないかという注意をなさり、そしてその子たちも強制的に転校させられました。ですから、その後の子供たちの転校状況をぜひ調査していただきたいと思うのですが、大臣、いかがでございますか。
  138. 有馬朗人

    有馬国務大臣 文部省に持ち帰りまして、慎重に検討させていただきます。
  139. 池坊保子

    ○池坊委員 私、先ほども申し上げましたように、二十校にヤマギシの子供たちが通っているのです。にもかかわらず、この二校の先生方は大変に愛情深く常日ごろ子供の行動に関心を払っていたからこういうことがわかったのであって、これは学校先生の熱意のたまもので、こういう学校でいじめとか不登校は少ないのではないかと私は思います。ほかの十八校にこういうことがないからといって、そういう子供の日常生活がおかしいかどうか、皆無だということではないと思いますので、これは本当に全国的にこういう調査をしていただきたいと思います。  私が予算委員会でお願いいたしましたのは、厚生省、法務省、労働省、文部省共同で速やかに協議会を発足させていただきたいとお願いいたしましたところ、厚生大臣も労働大臣も、それは必要なのではないかという前向きの御答弁でございましたので、有馬大臣、これはぜひ有馬大臣中心になってやっていただきたいので、この共同協議の場を持っていただきたいと思います。これはやはり子供の命がかかっていることでございます。ですから、看過することなくきちんと対応していただきたいと思いますので、もう一度、対応を共同でしていただけますでしょうか。
  140. 有馬朗人

    有馬国務大臣 さまざまな問題を含んでいると思いますので、先ほど申し上げましたように、きちっと対応をさせていただきたいと思います。その前に、まず状況判断ということが大切でございますので、まず状況判断をさせていただきたいと思っております。
  141. 池坊保子

    ○池坊委員 そうです。状況判断、確かに大切でございます。そしてその間にも子供たちはどんどん成長しておりますので、それはしっかりと胸にお置きいただきとうございます。  総理も、五つのかけ橋の、安心へのかけ橋の中で教育の大切さを説いていらっしゃいました。経済の次は教育だというふうに言っていらっしゃるようでございますけれども、政治というのは、部屋を片づけるように、一つの部屋が片づいたから次の部屋を片づけようということではなくて、同時進行していかなければならないことだと思いますので、経済とともに、ともに教育が最重要と思って、育ち行く子供たちを見守り、力になっていただきとうございます。  話がかわりますけれども、学級崩壊が叫ばれております。今、四十人学級は多いのではないかというのがいろいろな方々の意見でございます。三十人前後がよいのではないかという意見が出ておりますが、大臣はどのようにお考えでございますか。
  142. 有馬朗人

    有馬国務大臣 この点に対しては、たびたびお返事を申し上げておりますけれども、現在進行中の第六次の計画を完全に行うということを一方でやりながら、現在専門家たちに、一体どういうふうに教えていったらいいか、クラス編制をどうしたらいいか、あるいはチームティーチングはどういうふうに有効であるか、ほかの方法はあるかというようなことを含めまして、総合的に今判断をしてもらっているところであります。その上で、例えば三十人がいいとか三十五人がいいとか、いろいろ出てくると思いますが、そのときには今度は財政との関係を論じていかなければならないと思っております。
  143. 池坊保子

    ○池坊委員 全国に教育大附属小学校というのは七十三校ございますけれども、これはどういう教育理念で運営されている学校なのでございましょうか。
  144. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 国立大学にあるいは国立大学の教育学部に附属する学校でございますが、これにつきましては、大学または学部における、子供の教育に関する研究に協力をするというのが一つございます。それと、もう一つの大きな目的は、その大学のあるいはその学部の計画に従って学生の教育実習に当たるということがその使命でございます。
  145. 池坊保子

    ○池坊委員 えっ、大学の——ちょっと驚いたので今、えっと言ったのですけれども、そうすると、大学のために、その大学の研究を補佐するために小学校があり、それから大学で先生方を養成するために小学校子供たちがいるということでございますか。今の御説明だとそのように受け取れると思いますけれども。ちょっと思いもかけないお答えだったので、私、驚いたのです。そうすると、子供が主体ではなくて、あくまでも大学が主体になっていくわけでございますか。
  146. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 附属学校学校教育法一条に定める学校でございますので、したがいまして、一定の教育計画に従いまして子供たち教育を行っていくということが当然の使命としてあるわけでございます。そのほか附属学校の役割としては、先ほど申しました大学の研究に協力していく、あるいは学生の教育実習に協力していくということが使命としてあるという趣旨でございます。
  147. 池坊保子

    ○池坊委員 そのお答えはちょっと主客転倒のように思います。まず子供がございまして、そのためにこそ大学の先生が必要なのであって、大学の研究も実習も、子供をきちんと育てるための実習でなかったら意味がないと思いますけれども、大臣、どうお思いになりますか。
  148. 有馬朗人

    有馬国務大臣 二面があると思うのですね。確かに、普通の公立、私立の小中学校と違う面があることは事実でございます。これは、やはり大学として教育学部を持っている、あるいは教育系の大学でありますと、どうしても、そこでどういう教育をしていったらいいかということはどこかで実践をしていかなければならない。その実践をするときに、やはりその学校で最も子供たちが幸福に育っていくように、何も悪い実験をしようというようなことは許されないわけでありまして、必ず、よくしていくためのさまざまな方策を検討していくことになると思います。  ただし、その際に、公立学校と違ったやり方をすることは私はできないと思うのです。そういう一つの枠はあると思いますが、それぞれの教育系の大学においては、教育をいかによくしていったらいいかという実践の場所、それから学生が教育実習をする際に、いずれにしても公立学校、私立学校に行って一週間なり二週間なりの教育実習をいたします。それと同じように、自分の学校教育の理念を学ぶというふうなことをやる。教育実習の実施の場でも役に立つような役割を持っております。  しかし、おっしゃるように、教育ということは、やはり子供たち一人一人がよりよい教育を受けるべく努力をしていく必要は当然でございます。ただ、特に国立の教育系の大学あるいは学部に属する高等学校や中学校あるいは小学校には、ある付加的な役割があるということはやはり厳然として存在していると思います。
  149. 池坊保子

    ○池坊委員 教育実習の件に関しましては、教育大の今最大の悩みは就職するところがないという悩みでございまして、教育実習だけ受けるけれども、それを実践することができないというのが、大臣も御存じのように最大の悩みでございます。  二つ目の、子供たちが幸福になるための実践をしていく、つまり附属小学校教育の先駆けというか、常に実験をしながら、子供たちにどうしたら幸福な環境を与えてあげられるか、あるいは幸福な教育をしてあげられるかということの実践をするところというふうに認識してよろしいのだと存じます。  が、だとするならば、今この七十三校を調べましたところ、学級が三十八人とか三十九人になっているのでございます。先ほど大臣が、三十五人がいいのか三十人がいいのかとおっしゃいましたが、それはいろいろな経験やいろいろな調査の中からとおっしゃったのであるならば、まず、文部省が直接タッチをしているその附属小学校から二十五人とか三十人学級勉強を教えよう、クラスを持とうというようなお考えは全然おありにならないのでしょうか。
  150. 有馬朗人

    有馬国務大臣 大変難しいところでございますね。なぜかというと、三十人学級、二十人学級実験したいと思います。しかし、それをやったときに、エリート教育をやるのではないかという非難が起こるわけですね。こういうところを、やはり公立とのつり合いという悩みがあるということを申し上げておきましょう。やはり公立の枠、公立でやらなくちゃならない枠に従っていかなければならない。その上でさまざまな実験をしてみるということは必要だと私も思います。  ただ、全部の学校を三十人学級にするとかなんとか、いろいろなことは難しいと思います。それは公立の学校と同じような役割があるという、その点の制限は、これはやむを得ないと思っております。
  151. 池坊保子

    ○池坊委員 今、学校の方針とは違って、少子のために十六人とか二十二、三人のクラスもございますので、それがエリート校ということには私は結びつかないのではないかと存じます。エリート養成とおっしゃるならば、大臣がお認めになりました、千葉大学に三人の学生を入れることの方が私はずっとエリートを養成していらっしゃるのではないかと思うのです。  大臣も昨日の所信表明の中で、「教育改革は国政上の最重要課題一つであり、最大限の努力が要求されるもの」であるとおっしゃっていらっしゃいます。ですから、最大限の努力を払って、さっきも財政上ということをおっしゃいましたけれども、まず、国が予算化をしていただかないことには、地方自治体もやりたいと思っているところはたくさんあるんですね。だけれども、それを地方自治体に任せられちゃうのではちょっと予算的につらいという自治体がたくさんございますので、この予算化の方向にお考えいただきたいと思いますけれども。
  152. 有馬朗人

    有馬国務大臣 教育は大切ですので、初中教育のみならず高等教育を含めてやはり国としてできるだけのことをしたいと思っております。ただ、なかなか今日の財政状況は厳しくて、ほかのものと比べてどれを重要視していくかというふうなことで大変苦慮をいたしております。
  153. 池坊保子

    ○池坊委員 大変に財政状況が苦しいのはわかっておりますけれども、学級崩壊、いじめ、不登校、そうやって現実にいろいろな問題が目の前にあるのでございますから、まずそういうことから、それはどういうことに起因しているのか、もちろんたくさんの要因がございますけれども、子供たちが多くの人数で学んでいるということも一つの原因なのではないかと私は思っております。  私は、大変残念に思いますのは、まず子供を中心にして、そこから予算というのを考えていただきたい。予算がないから子供は四十人近くあっても仕方ないんじゃないかというのは、これも考え方からいったら主客転倒なんじゃないかと思うんです。  それで、私が今心配いたしますのは、これはもう好むと好まざるとにかかわらず、少子化が進んで二十人になるなんということは、そういうことになりましたらこれは文部省の恥だと思うんですね。先生が余っちゃってよさんでということのないように、ぜひ文部大臣の御在任中に前向きに進んでいただきたいと思い、私、終わらせていただきます。ありがとうございました。
  154. 小川元

    小川委員長 次に、西博義君。
  155. 西博義

    ○西委員 文部大臣、お疲れでございます。よろしくお願い申し上げます。公明党の西博義でございます。  私、久しぶりに、一般質疑といいますか、全般的なことについて質問する機会を与えられましたので、文部大臣に御見解をお伺いしたいと思いまして質問させていただきます。  今回質問をさせていただくに当たって、教育の根幹、概念といいますか、そういう問題についてぜひとも議論をしたいなと思ったのですが、私自身、なかなかまとまらなくて、イギリスの思想家であるホワイトヘッド博士の教育に対する考え方、この方は随分古い人で、もう八十年前、大正時代に活躍され、昭和初めにアメリカのハーバードの方に移られて、アメリカにも大変影響力の強かった方で、二十世紀における世界の知的な巨人の一人だと私は思うんですが、その方のお考えを中心に、現在の教育事情と対比しながら大臣のお考えをお聞きしたいと思います。  大臣も高名な物理学者でいらっしゃいますと同時に俳人でございますけれども、この方も、もともと数学者でございまして、その後思想的な方面でも活躍された方でございます。  きょう本も持ってきたのですが、この本を読んでみますと、このホワイトヘッドの教育に関する考え方は、要約すると、学生たちは活気にあふれている、教育の目的とは、この活気のある学生の自己発達を刺激し、指導することである、こういうふうにある意味では要約されるかと思います。そして、そのことを達成するために二つ言っているんです。多くのことを教え過ぎるな、それから、教えるべきことは徹底的に教えよ、この二つを言っているんです。  さて、文部省学校教育に関する意識調査を見てみますと、これは九八年十一月に出されたものですけれども、授業の理解度に関しては、授業のわからない児童生徒小学校で三二%ぐらい、中学校で五六%、高校になりますと六三%、こういうふうにだんだんと上がってきます。私も以前に、九六年ですが、理科教育のことについて質問させていただいた折に、科学技術振興のための青少年の育成方策に関する調査、これは九五年十一月に行われたものですけれども、このところでも、小学生の間は比較的理科教育に対して興味があるが、中学校になると急速に興味が薄らいでいく、こんなような結果でございました。  こんな状況を見てみますと、現在の教育が児童生徒たちを本当に啓発しているのか、さらにドライブがかかっているのかということになると大いに疑問があると思うわけでございます。  その点についてホワイトヘッドは、思考力の活動について子供の訓育上何より気をつけなければならないのは、生気のない諸観念、生気のない諸観念というふうに彼は呼んでいるんですけれども、頭に詰め込まれるだけで、現実には使われもせず、テストもされず、新鮮なさまざまな関連性に結びつけられないようなただの観念である、こう彼は言って、こうしたばらばらの知識はむしろ有害である、こう断定しております。  この話ももちろん八十年前の話なんですが、私も、現在の子供たちがばらばらで大量の知識を詰め込んで消化不良になっている、こう思うわけでございます。この点について、まず、大臣がどういうふうにお考えになられているのかお聞きをしたいと思います。
  156. 有馬朗人

    有馬国務大臣 ホワイトヘッドのことは、実は中央教育審議会の第一小委員会の座長であった河野先生から教わりました。そして、その思想が色濃く中教審の第一次答申、一昨年でありましたか、出しました答申の中に反映されております。それは、今先生が御指摘の、余り多くを教えるな、教える以上は徹底的に教えろ、こういうふうな思想、それから、生活等々とさまざま結びつくような教育をしていくべきだ、こういう思想が色濃く中央教育審議会の結論に反映され、そしてまた、それを受け取りました文部省教育改革プログラムの中でもこの思想が色濃く反映されていると思います。  これからの教育を考えたときに、子供たちに、みずから学び、みずから考える力、それから先ほど申しましたような倫理性とか思いやり、美しいものを美しいと思う、こういうふうな心と健全な体力を持つ生きる力を養成していかなきゃならない。そういう点で、私どもも大いにホワイトヘッドの考え方に従って現在進んでまいっております。  そして、子供たち理解が十分いくように、余り教え過ぎて消化不良を起こすのではなく、教わったことはみずからちゃんと消化して応用力を増すようなゆとりを持たしてやらなきゃいかぬ、これが学校週五日制に踏み切った理由でございます。  同時に、非常に早く理解を進める者に対してはその習熟度に応じて少し高度の教育をする、それから、大器晩成型と私は言っておりますが、ゆっくり勉強したい者に対してはゆっくりとした教育をきちっとしていく、こういうふうな工夫を今後我々はしていかなければならないと思っております。
  157. 西博義

    ○西委員 全く私の考えとも合致しているという意味ではありがたい御答弁だと思います。  さらに、ホワイトヘッドはこういうふうに言っているんです。致命的なつながりのなさを特徴とする現代のカリキュラム、これは現代のカリキュラムがどうであるかということは別として、八十年前のイギリスのカリキュラムのことを言っているんですが、これをまず改めるべきだ、こう言っているんです。彼は、極論すると、教育のためにはただ一つ教科しかない、それは人生という教科である、すべてがこの人生という教科のための学習である、こう言っているんです。私は、この言葉は非常にいい言葉だなと。  何のために勉強するのかというと、すべてその人の人生、もう少し子供たち世界でいいますと、生活、こういうもののためにあらゆる教科、学問というのがあるんだ、こういう位置づけというのが非常にぴったりするのではないかなというふうに感じました。特に、今生活感を失っている児童生徒にとっては重要なポイントである、こう考えております。きょうの議論の中でも、生きる力という言葉がたびたび出ておりますけれども、そのこともかなり関係のある発想ではないかというふうにも考えております。  今のカリキュラムは相互のつながりが果たしてあると言えるのか、また、若干のこれからの方向として、教育課程において総合的な学習という教科が取り入れられますけれども、これが十分と言えるのか。それぞれの教科ができる限りつながりを持つためにもっと再編をすべきなのかということにつきまして、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  158. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私どもといたしましては、総合的な学習の時間を最大活用してほしいと思っております。これは新しい試みでございますので、小学校、中学校それぞれを通じて大変な御苦労をおかけすることになると思いますが、この際に、いろいろ考えられます横断的な学習をそこでする。  例えば、環境の問題をやるのに、単に何人もの環境専門家だけではなくて、国語の先生が来たり、英語の先生が来たり、数学先生理科先生、そういう人々が総合的に環境を教えるというふうなことが、ホワイトヘッドの言います、一つの専門だけじゃなくていろいろなものを総合して勉強していくというふうなことに役に立つのではないか。そして、ひいて言えば、人生を豊かにするというふうなことが行われるようになるのではないかと思います。さらに、小学校におきましては、複数教科をあわせたり相互の関連を図ったりする合理的、関連的な指導を進めるようしているところでございます。  文部省としては、まず二〇〇二年より発足いたします新しい体制、すなわち、学校完全週五日制に対応した新しい学習指導要領の円滑な実施が図られるようさらに努力をしてまいりたいと思います。そのために、教科の再編統合を含めた将来の教科等の構成のあり方については、今後さらに調査研究課題としてまいりたいと思っております。
  159. 西博義

    ○西委員 先月の二十五日ですが、教科書検定調査審議会が、小中学校で使う教科書の記述を基礎的、基本的な内容に厳選する、こういうことを決めたということを新聞でも拝見しました。  私は、この教科書のあり方について、先ほどからの議論も若干あるのですが、スリム化ということを言っているのですが、無味乾燥な教科書を出す、これは無償化の問題も若干関係するかと思うのですが、無味乾燥な教科書を出すだけでは、これはだめだなと逆に思っております。スリム化というよりも、先ほどからの総合的な学習等のことも勘案しますと、写真や図などをたくさん取り入れた、例えばカラーにして見やすくするなど、内容のわかりやすさということ、これをポイントにすべきである、こう思います。  といいますのは、自分で学習する力、もう少し興味を出して周辺のことを勉強する、こういう力を養ったり、それから現実との関連性を学んだりする問題を少しつくってみたりということで、参考にできる資料をできるだけやはり多くすべきではないかというふうに思います。そのために若干分厚くなってもむしろいいのではないか。高等教育でも、アメリカの大学なんかは随分分厚い教科書、立派な教科書ができておりますけれども、やはり自分で学べるという方向に持っていくべきだというふうに思います。もちろん、授業では基本、基礎を教える、しかし後で自分でまた学び直せる、こういうことにすればいいのではないか。  もちろん予算の問題がございます。制限があるわけでございますが、例えば教科書の無償については、無償貸与ということを検討してもいいのではないか。無償給与にするかわりに、小中高まで教科書を無償で貸与するというシステムを広げていくことも可能ではないかと思うのですけれども、御検討をお願いしたいと思います。
  160. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私も高等学校教科書を何冊か書いた経験から申しまして、日本教科書というのは、アメリカ教科書に比べて薄いということは事実でございます。  ただし、もう既に教科書を書くようになりましてから三十年近くになりますけれども、初めのころよりははるかに日本教科書も、図版が入るようになったり説明が丁寧になったりいたしまして進歩いたしました、著者の一人として申し上げたいのですが。しかしながら、御指摘の点は明らかにありますね。  ただ、誤解のないようにお願いをいたしたいのですけれども、新聞等々の報道によりますと、今回のカリキュラム改訂によって三割減だから教科書のページ数も三割減にせよというふうなことを文部省指導したような書き方をしていることがございますが、これはございません。ですから、やはりそれぞれ教科書会社、教科書を書く人々が工夫をしていかれることを望んでいる次第であります。  よい教科書をやはり努力してつくるべきだと思っております。しかし、現在、各教科書発行社においてもさまざまな努力がなされておりまして、現在では随分著者の努力、それから発行社の努力によって大変によくなってきたと思います。  貸与制の問題でありますが、御説のとおり、アメリカなどは貸与でございます。どっちがいいかということを私自身経験から申しますと、日本人は、どちらかというと自分の本を持ちたいという、明らかにそういう傾向がございますね。アメリカの人はえらいあっけらかんと、授業が終わると返してしまう。そういうことで、教科書の貸与制の導入は、教科書を個人の所有物から共用の図書に変えていくというような、あるいは書き込みができなくなる、線を引っ張れなくなる、こういうふうなことで果たして実現ができるだろうか、その辺の物の考え方を根本的に変えないとなかなか貸与制にはいかないだろうなと。  それから、同じ教科書を長期間使用することになるために、それに耐え得る丈夫な本にしなければならない。明らかにアメリカ教科書はがっちりしていますね。丈夫な本にするための製造原価の上昇、破損の場合の修復費など財政負担の増加も予想される。ただ、もちろん貸与制でありますから毎年毎年新しくする必要はなくなるかもしれません。それからもう一つの問題点は、教科書の内容の改訂が速やかに行えないというふうな問題もあろうかと思います。  また、義務教育教科書無償制度は、義務教育無償の精神をより広く実現する趣旨から実施しているものでございまして、義務教育でない高等学校にまで拡大することはなかなか困難であろう、こういうふうに考えている次第でございます。     〔委員長退席、栗原(裕)委員長代理着席〕
  161. 西博義

    ○西委員 私、今までこういう内容、つまり、教育とはとかいうことを何回か御質問申し上げましたが、なかなか答えがあってないような問答でございまして、そういう意味では、明確な目的、子供を教えるということの目的、それから目標、改革の姿というのは、なかなかはっきりとは出てまいりません。これはある意味では当然かと思います。  またホワイトヘッドに戻るのですけれども、彼はこういうふうに言っているのです。これは大臣も先ほどちょっとお触れになりましたことで、当然だというふうにお思いになると思うのですが、知識も知育の主要な目的であります。重要さでは知識にまさるほかの養分があります。古代の人々は、この養分を英知と呼びました。英知こそ知識を駆使するものであり、必要な問題の解決のための選択をし、私たちの直接的な経験に価値を与える働きをするものです。知識を支配する英知とは、身につけられる最も個性的な自由です。こういうふうに英知ということの評価をしているわけでございます。  私は、中高一貫教育の導入で、今後、郷土学習それから体験学習等を重視し、子供たち生活感を取り戻す、そういう教育が行われていくことだろうと思います。また、総合学習等を盛り込んだ新しい教育課程をさらに改善することによって、先ほど申し上げました人生という教科にふさわしい、つながりのある教育課程、あらゆるものを英知でもって人生という教科に集約していく、そういうイメージなんですが、こういうふうな形の教育というのがふさわしかろう、こう思うわけでございます。  現在の教育を、詰め込みだけではなくて、英知を磨く教育へ変えていく、このことが初等教育、中等教育の目指す大きな方向性ではないか、こう考えているわけでございますが、大臣の御所見を賜りたいと思います。
  162. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私は、実は一つ心配していることがあるのです。  今、個性化、多様化という時代でございますね。私は、中教審においても、あるいは文部省教育改革プログラムにおいてもその方向に持っていきたいと思っておりますが、ただ私は、まず基礎、基本はきちっと教えなければならないと思っているのです。基礎、基本というものが余りにも多過ぎる必要はない。最低限の知識でいいから基礎、基本はぴしっと教える。ホワイトヘッドの言うとおりであります。ぴしっと教える。その上に応用力であるとか独創性が育っていく、個性が育っていくと思います。  私が心配しているということは、個性、多様性ということだけがひとり歩きをしていって、基礎を教えなくなる、基礎、基本を重要視しなくなるということは私は危険だと思っているのです。ですから、中教審の答申の中にも基礎、基本の重要性については、もう口が酸っぱくなるほど強調したつもりでございます。  それをまずやった上で、同時に英知のようなものを植えつけていく、育てていく。あれはもう初めからあるのです。初めからある、人間が持っているそれを、教育の教じゃなくて育、育てるという考えで英知を引き出していくべきだと思っております。そういうことが成功すれば私はすばらしい教育が実行できたと思うのですが、極めて難しいものだと思っております。
  163. 西博義

    ○西委員 時間がもうほとんどなくなると思いますが、最後に、同じくホワイトヘッドの言うことなんですが、そのまま読ませていただきます。  学校こそ教育の基本単位だというとき、私は、学校より大きな単位も、小さな単位もないのだという意見を正確に伝えようとしているのです。どの学校も、その学校だけのもつ特別な環境的諸条件との関係において配慮されねばならないという主張を保持せねばなりません。 ややこしい言葉ですが、つまり、教育改革については学校こそが改革の主体だ、私はこう考えているわけでございます。  そこで、学校が主体的に取り組めるように、一つは、少人数学級の編制ということ。先ほどからも始終議論がございました。それと、教員スタッフの充実。それから二つ目が、学校長へ学級編制権を付与する、この二つを今後考えていきたいと思います。  私は、一つは、具体的には三十人学級を早期に実現することである、こう思っております。時間がなくなりましたのでちょっと早く行きますが、最終的には、私は、この三十人学級実現する上で財政負担あり方というのは非常に大きな問題となって浮かび上がってくると思います。地方で自由にやれということですが、それは負担の面で大変重荷になってまいります。  一つ方法として、これも大きな提言なので難しいのですが、国は、教育環境のミニマムを保障するという意味で、今回は、現在の四十人学級に要する教員数、この給料を国が全額負担する、これでもって文部省は四十人学級のミニマムを負担していく、その上で、地方があとどういうふうな形にするかということは地元地元でお考えいただく、こういう考え方を採用してみたらどうか。もちろん難しいことはよくわかっております。今みたいに二分の一、二分の一ですと非常に中途半端な形になるということを申し上げておきたいと思います。その一点だけお願いをいたします。
  164. 有馬朗人

    有馬国務大臣 大変膨大な財政になると思います。ただいまでも三兆円かかっておりまして、これを全部国が負担するとすると、もう一つ三兆円が要る。これは極めて難しい問題でございまして、御意見として承ります。もう少し詳しくは助成局長よりお返事申し上げます。
  165. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 学級編制を校長にゆだねてはどうかという御指摘がございました。  現在は、市町村教育委員会が都道府県教育委員会の認可を受けて行うということで、設置者である市町村の教育委員会と、これに伴います教員の給与を負担します都道府県教育委員会の責任に係らしめているわけでございますけれども、中教審答申におきましては、これをもう少し、学習集団のあり方という観点から、弾力的な編制が各地域学校の実態に応じてできるようにということを研究せよという御提言もいただいておりますので、今後の教職員配置について、現在検討しております協力会議の中であわせて検討させていただきたいと考えております。
  166. 西博義

    ○西委員 どうもありがとうございました。
  167. 栗原裕康

    ○栗原(裕)委員長代理 次に、富田茂之君。
  168. 富田茂之

    ○富田委員 公明党・改革クラブの富田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  私の方からは、時間が二十分しかございませんので、現行の奨学金制度をめぐる状況課題について、論点を絞って大臣にお伺いしたいと思います。  私どもの党、公明党の方では、今、新教育奨学金制度を創設したらどうだということを提言させていただいておりまして、本日の午前中に政府、また自民党の方にも予算の組み替え要求という形で、その中に新奨学金制度の創設をお願いしたいということで申し入れをいたしました。今後いろいろ検討していただけると思うのですが、そういう流れの中でどういうことを考えているかという点について、何点か大臣に伺って御回答をいただきたいと思います。  国民金融公庫等の調査によりますと、今、小学生以上の子供さんがいる世帯の教育費が、平均で年収の二三・九%を占めている。また、年収が四百万円以下の世帯ではこれが四三・七%にまで達していて、年収が低い世帯ほど教育費が家計にとって負担になっているという状況にあります。そのために、多くの両親や学生たちはアルバイトが日常化していますし、お母さんたちはパートへ出ているというのが今は普通になっています。  私たちの大学生のころも、何とかバイトをして、私なんかは家庭教師と奨学金で大学を出たのですが、今のように勉強もしない、スポーツもしないでずっとバイトばかり行っているというような状況ではなかったと思うのですね。今は本当に深刻な状況になっていると思います。  また、不況が長引いて、バイトで賄えなくて学費を滞納する、あるいは、特に私立の高校生の中には退学を余儀なくされているという生徒さんが数多く出ているというような報告もされております。  数字で出ているのをちょっと御紹介したいのですが、ちょっと古いのですが、平成九年九月の貯蓄広報中央委員会というところの調査、「貯蓄と消費に関する世論調査」というものがございます。ここで、なぜ貯蓄をするのか、貯蓄目的を尋ねているのですが、二十代、三十代、四十代、五十代と分けておりますけれども、二十代、三十代、四十代ともに、病気、災害への備えと同じぐらいの数字が、子供の教育費のためということで貯蓄に向いている。例えば二十代は四八・四%、三十代は六六・二%、四十歳代は五九・八%。これだけのパーセンテージで子供の教育費のことを考えて貯金している。子どもの教育費のための蓄えが住宅取得や増改築資金より多いのですね。本当に子供のことを考えてお父さん、お母さんは一生懸命今お金をためるような状況になっている。  また、じゃ、それだけの教育費を一体どうやって家計から捻出しているんだという調査国民金融公庫の方が平成十年の四月に行っております。「家計における教育負担の実態調査結果」というものが出ておりますけれども、共働きをしているというのが六八%、教育費以外の支出を削っている、五三・六%、預貯金を取り崩しているというのが五二%。これまでの家計の流れから見ると、ちょっと信じられないような数字に、この最近二、三年間、どうもなっているようであります。  それだけ教育費が家計に重荷になってきているという状況を考えますと、政府としても、教育費の負担軽減というものについて積極的に取り組むべき時期に来ていると思うのですね。  昨年末、自民党さんの方でもいろいろ御検討されて、新聞報道等によりますと、こちらの委員会の先生たちが多分入っていらっしゃると思うのですが、自民党の文教部会の方でも、子育て減税と教育減税を党税調の方に取り上げてもらいたいということで大分議論されたようであります。ところが、残念ながら、それが事実上先送りになってしまった。いろいろ理由がついていたようであります。  私は、その中で、特に私学教育減税を自民党の皆さんが一生懸命検討されて、何とか取り上げられるんじゃないかなというような報道にもなってきたものですから、ここは我が党の考え方に非常に近いなということで期待しておりましたが、残念ながら見送られた。その理由として、新聞に出ていたのでは、私学の生徒だけを優遇する理由がないというような、ちょっと理由にもならないような理由で見送られてしまった。  私学の教育費控除制度というのは、私学の人たちを優遇しているのじゃないのですね。私学の方が国公立よりも教育費がかかる、そのかかる分について控除対象としようということであって、決して優遇ではないので、なぜそういうふうになってしまうのかなと。与党また政府の方でも、ぜひその点を考えていただきたかったなと思うのですが、大臣の方は、今の家計における教育負担状況等、政府としてその負担軽減のためにどういう努力をすべきだというふうに認識されているか、まずお聞かせ願いたいと思います。
  169. 有馬朗人

    有馬国務大臣 確かに御指摘のような点がございます。  文部省調査によりますと、例えば、大学生一人当たりの年間の学費は平均約百万円かかっております。さらにまた、今御指摘のように、貯蓄広報中央委員会の調査によりますと、三十代、四十代の世帯主が貯蓄をする目的として、子供の教育費を挙げている人の割合が、病気や災害への備えと並んで非常に高いという結果が出ております。  文部省といたしましては、保護者の教育費の負担の軽減を図ることは極めて重大な課題と考えております。保護者の負担が過大とならないよう、従来から、予算、税制などの面でさまざまな措置を講じているところでございます。  まず予算面で申し上げますと、平成十一年度予算案において、育英奨学事業について、有利子奨学金の貸与人数の十万人から二十万人までの倍増や、貸与月額の選択制の導入など、抜本的な拡充を図るとともに、私学助成について、経常費補助の増額を図るなど、拡充することといたしております。また、幼稚園の問題もありますので、幼稚園就学奨励費補助についても充実を図る努力をいたしております。  税制面におきましても、平成十一年度税制改革において、教育費等の負担のかさむ世帯に配慮して、特定扶養親族、十六歳以上二十三歳未満に係る扶養控除額を加算するとともに、十六歳未満の者に対して係る扶養控除額を所得税について加算することといたしまして、関連の法案を提出していることといたしております。  文部省といたしましても、今後とも、保護者の教育費の負担軽減に努力をいたしたいと思います。  なお、先ほど御指摘の私学教育費減税のことでございますが、私もこれは大いに努力をいたしたのですけれども、今回、私立学校に限定せず、広く、国公私立学校に通う子供を持つ親の教育費や、子育てに係る負担軽減の観点から、教育費、子育て減税という形で、扶養親族控除及び特定扶養親族控除の増額が盛り込まれたことでございまして、ある意味では、私学教育費減税はその中に考慮されたと考えております。決して、私学はやらないんだ、こういうわけではございませんので、御了解を賜りたいと思います。たびたび申し上げるように、私学の教育における重要性を私は重々認識している次第でございます。
  170. 富田茂之

    ○富田委員 今質問しようと思ったことを先に大臣から答えられてしまったのですが、よくその御趣旨はわかるのですね。特定扶養控除の方を増額した、その中に入っているのだというのはわかるのですが、多分、自民党の皆さんも考えられた私学の教育費控除の制度の方が、本来、家計で教育費の負担に一番苦しんでいる世帯にとってはもっと直接的に減税効果が及んだと思うのですね。  昨年末に私どもの党が政府・自民党にいろいろお願いしたときに、例えば、給与収入七百万の世帯で、私立大学に通っているお子さんがいると、この控除制度が導入されれば五万八千円ぐらい減税になりますよ。自民党の皆さんも同じような資料を持たれていて、これだけ直接的に財布に影響する、こういうのをぜひやりましょうよというような話をしていたのです。今委員長席にいる栗原先生はよく御存じだと思うのですけれども。特定扶養控除の方ではなかなかそこまでストレートな減税効果はないという点もありますので、ぜひ今後も、この点に大臣中心に取り組んでいただきたいと思います。  また、大臣が先ほど答えられました育英奨学事業、特に有利子の事業の方では、本当に拡充がされて、二倍になる、一千億もふえるということで、ここ何年かずっと見ても、これまで大学生の奨学金の申込者、申込者のうち大体六〇%ぐらいしか採用されていなかった。そうすると、申し込んでいる方たちは大体倍になれば有利子奨学金の方で恐らくカバーできるだろうというふうに文部省の方は考えられてここを拡張したんだと思うのです。そこは評価させていただきたいと思うのです。  実は、申し込みたいけれども申し込んでもいない、奨学金は欲しいけれども申し込んでいないというのが、文部省の方の調査でも、大学生の方で二〇%ぐらいいるわけですね。この人たちは、恐らく学力基準とか家計基準でもう最初から、いろいろ説明会を聞いても、自分が申し込んでもとてもはじかれちゃう。私も大学へ入ったときに、説明会へ行って、家計基準、うちは貧乏だったものですからこれはすんなり入るな、あと学力基準、ここは問題だなと思いましたので、多分、学生さんのうち半分はもうそこであきらめちゃうということがやはりあると思うのですね。  二〇%以上の方が、希望しているけれども申し込んでもいない。そうすると、この方たちが本当に希望したときに、申し込んで、採用できるようなところにまでやはり拡充するように、もう少しこれからまた努力していっていただきたいなと思います。  今回の育英奨学金事業の拡充では、実は、不況の直撃を受けて退学等まで余儀なくされている高校生が実際は対象になっていないのですね。無利子の部分は、大学生の月額がふえたり人数をふやすというふうに中身ではどうもなっているようで、実際高校生が希望しても、高校生の枠は余り拡大されていない。  大臣、午前中の質疑のときに、応急採用の制度がある、大変な場合には応急採用で対応できるし、応急採用の場合は学力基準も家計基準も緩和しているんだからそれで大丈夫ですというふうに言われていたのですが、これは、私、昨年も質問させてもらったのですけれども、それで大丈夫だったら、退学者や学費滞納者が出るということは本来あり得ないと思うのですよ、これだけもう奨学金の制度というのは告知されているわけですから。それでもかなりの数の学費滞納者とか退学者が出ている。  昨年の十月二十一日ですか、私立学校先生たちの組合が、二十六都道府県の私立中高約百八十校に通う二十一万人を対象に実施した調査の中で、学費滞納者が一校に平均で十七人出ている。そこまで来ているんだというような調査もありました。ただこれは、それまで積み重ねてきた調査とか、本当に平等にできているのかという保証がありませんので、これがそのままの正しい数字だとは思いませんが、こういう報道もされているということを考えますと、かなり厳しい状況にある。  文部省の方の資料をいただきましたら、平成八年度と平成九年度の高校の退学者の内訳が出ておりまして、その中で、経済理由による退学者という数字も出ていました。八年度で、公立の高校の場合ですと、経済理由による退学というのが全退学者のうちの一・七%の割合なんですが、私立の方にいきますと、これは三・九%に膨らむ。九年度は、公立高校の方が、経済理由による退学が一・六%、それが私立高校の方は四・三%に膨らむ。私立の高校生がいかに今回の不況の直撃を受けて学業を断念せざるを得ないかという数字が文部省調査でもきちんと数字になってあらわれてきているのですね。  そういうふうに考えますと、応急採用の制度があるから何とかそれでカバーできるということではなくて、育英奨学事業の拡充というのであれば、無利子奨学金、ここをこれからどうやって充実させて、本当に勉強したい子は、家計基準とか学力基準に関係なしに、せっかく高校まで行ったわけですから、きちんと高校を卒業できるような具体的な何か援助策を文部省中心になって考えるべきだと私は思うのですが、大臣、その点、どうでしょうか。
  171. 有馬朗人

    有馬国務大臣 奨学金に関しましては、さらにまた努力をさせていただきたいと思います。  もう一つ申し上げておきますと、無利子の方も相当数の人数を十一年度の予算の中でふやしていただくことにいたしておりますので、この点もひとつ御了解賜れれば幸いでございます。しかし、今後さらに努力をさせていただきたいと思います。
  172. 富田茂之

    ○富田委員 ぜひ無利子奨学金の方の拡充を努力していただきたいと思います。  もう一点、先ほど大臣おっしゃられましたが、今回貸与月額の選択制の導入を図ったということで、これも非常にいいことだと思うんですね。  昨年、この委員会で日本育英会法の一部改正がなされましたが、その際に全会一致で附帯決議をつけました。附帯決議の第二項に「育英奨学事業の予算の増額を確保し、貸与人員、貸与月額の拡充に努めるとともに、貸与金額・貸与方法の多様化についても検討すること。」ということで決議させていただきました。  それにすぐこたえていただいたということで、大変すばらしいものだと評価できると思うんですが、もう一歩欲張って申しわけないんですが、多額の資金が必要となる入学のときとか、あるいは学費納入、大学の場合は一期、二期と分かれているようなこともあるようですが、そういう特別にお金が必要になるようなときにその特別に必要な額に対応するような形での奨学制度というものができるように、もう少し弾力的な運用が図れるような法改正というのも必要だと思うんですが、そこはどうでしょうか。
  173. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 例えば入学時に入学料や授業料等を大量に納める必要がございますし、あるいはまた下宿などをすることによって相当額のまとまったお金が必要であるというのは、これは事実でございます。こういったお金を奨学金として貸与するという考え方は当然あり得るわけでございますけれども、御案内のように、既に例えば国民金融公庫等の教育ローンが広く実施をされております。また、現在の育英会の奨学金というのはあくまで入学後の修学、これを援助する、そういう本来の目的がございます。そういった点から、教育ローンに類似した制度を新たに設けていくということについては難しいものがあろうかと思っております。  ただ、年間の貸与額の全部または一部について、これを弾力的にまとめて支給をするというようなことが可能かどうかというようなことについては、月々の奨学金を支給するということから、貸与月額を定めている現在の奨学制度との関連の中でどういう整理ができるのかについては、今後研究してまいりたいと思っております。     〔栗原(裕)委員長代理退席、委員長着席〕
  174. 富田茂之

    ○富田委員 ぜひお願いしたいと思います。国民金融公庫の教育ローンがあるからといって、なかなかそれで入学できる人というのは少ないんですよ。  実は、ちょっと遠いんですが、私は各国会ごとにこういう新聞をつくって国会報告を出させていただいているんですが、今回、一面に、「不況下の子どもたちを救おう!」ということで、「教育負担の軽減を」というふうに入れまして、昨年十二月十五日に公明党・改革クラブで総理に申し入れさせていただいた内容を書いて出したのですね。地元で十八万部ぐらい新聞折り込みをしましたら、これを見てあるお母さんがすぐ電話してきました。各種学校ですけれども、そこに入るのに物すごいお金がかかる。入る前にきちんと考えておけばよかったけれども、受かっちゃって、学校が提携しているいろいろなローンを頼んだけれども、高くて借りられない、返せる当てがないようなローンだと言うんですね。国民金融公庫も枠がありますから、それをはみ出るような入学金等ですとなかなか借りられない。そういうこともありますので、今局長が言われたように、いろいろ検討していただきたい。  また、今は額が全然違うんですね。私は昭和四十八年の大学入学ですが、大学に八年間もいましたけれども、当時、月三千円の学費でして、バイトすれば十分にやれるような状況でしたけれども、昨年来いろいろな学生が部屋に来ます。学費が高くてもうやっていけない、何とかしてくれという要望を、各委員先生たちの部屋もずっと回っていると思うんですが、そういう点から考えても、やはりもう少し、奨学金のこれまでの制度からはみ出るかもしれませんけれども、もう一歩踏み込んだ形をぜひ考えてもらいたいなと思います。  もう時間になりましたので終わりますが、最後に、昨年十二月十五日に公明党・改革クラブとして小渕総理に、今ずっと御質問しましたような奨学金の拡充についてぜひ検討してもらいたいという申し入れを行いました。大臣、その点について考えがありましたらお聞かせ願いまして、終わりたいと思います。
  175. 有馬朗人

    有馬国務大臣 たびたび申し上げますように、勉学の意欲のある学生が安んじて学業に専念できるようできる限りの支援を行っていくことは大変重要なことと思っております。  このため、奨学金につきましては、平成十一年度予算案について、先ほど申し上げましたように、無利子奨学金については貸与月額の増額や貸与人員の増員を図るとともに、有利子奨学金について、貸与人数を御案内のように十万人から二十万人に増員することといたしまして、あわせて貸与月額の選択制の導入、貸与に係る学力基準及び家計基準の緩和を図ることといたしておりますが、一つなかなか予算の上でできませんことは、公明党・改革クラブのお申し入れの一のように、希望するすべての学生に対する無利子の奨学金制度の創設につきましては、育英奨学事業の目的や現在の厳しい財政状況を踏まえるとなかなか困難でありまして、残念ながら今回は実現ができないという状況でございます。
  176. 富田茂之

    ○富田委員 終わります。
  177. 小川元

  178. 保坂展人

    保坂委員 社会民主党の保坂展人でございます。  大臣には引き続き、九月十八日に本文教委員会でお尋ねをした外国人学校卒業生の入学資格問題を中心にきょうは質疑をさせていただきたいと思います。  九月の下旬でしたけれども、私どもの土井党首とともに、この質疑を踏まえて、文部大臣のお部屋にさらに要請ということで出向かせていただきました。その席で大臣は、果たして実情がどうなっているか、これを各国に照会して、大体集めるのに二、三カ月くらいはかかるだろう、その後分析して判断したいというふうにおっしゃっていました。半年くらいかなというふうにおっしゃっていたので、そろそろ結論が見えてくる時期というふうに思いますが、現在の調査の進行状況、例えば何カ国からもう返事が来ているのかなど、少しお話しいただけたらと思います。
  179. 工藤智規

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  昨年大臣が申し上げたように、各国実情調査をしようということで、外務省の協力もいただきまして、先進国、アジア地域を含めまして二十三カ国・地域の御当局と、それから約二百ぐらいの外国人学校調査票を送っているところでございます。  ただ、国によっていろいろでございまして、すぐには返事できない、数カ月待ってくれというレターが来たところもございますが、現在までのところ約三分の一ぐらいの回収状況でございまして、その集まりぐあいを考えますと、なおしばらく時間を要するのではないかと考えているところでございます。
  180. 保坂展人

    保坂委員 この問題を考えますと、率直に申し上げて、日本はまだ鎖国の後遺症が、これだけ時間がたっているにもかかわらず、あるのかなという気がいたします。  例えば、この問題でも、外務省のあたりからも、文部省の解釈ではこれは国際社会に通用しないぞという声も上がっているというふうに聞きます。事実、国連でこの問題、たびたび指摘されておりますよね。大臣、そのあたりいかが御認識でしょうか。
  181. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私の了解しているところでは、必ずしもおっしゃられたとおりではないと思います。やはり外国に対して、外国の人たちの学校に対してどういうふうな判断をしていくかということに関しましては、一方では御指摘のような面もございますけれども、他方、またさらに慎重な考慮をすべしというようなところが外務省あたりにもあるように聞いております。  ですけれども、おっしゃるとおりに、今調査をいたしておりますので、三分の一というのは私の予想よりは少し遅いかと思いますけれども、やはり各国の事情もあってすぐに答えが出せない。バングラデシュですか何かは大変苦労しておられるようでありまして、余り無理強いもできないところもありますが、なるべく早くこの調査は終わり、その後の検討に入ってまいりたいと思っております。  もう少し丁寧に申しますと、外国人学校卒業者の大学入学資格につきましては、昨年来、検討したい旨申し上げております。諸外国における、それぞれの国に設置されている外国人学校に対する取り扱い等の調査を行うなど、今後の国際化の中でどのように考えるかを整理することにしておりますが、このようなことは、これまでの取り扱いを変更することを前提とするものではないということは申し上げているとおりでございますけれども、さらに急いで整理をして判断をいたしたいと思っております。
  182. 保坂展人

    保坂委員 大臣は九月十八日の答弁で、例のテンプル大学日本校の卒業生の院の受験というのをお認めになった立場、当時は文部省からいわば指導を受けた。今度は逆に、その東大も含めて指導をする、この立場について、このことは文部大臣になりますとやはり矛盾があるなということをつくづく認識しておるということを述べられているのですね。調査をしたり、いろいろ調べていく中間だと思いますが、矛盾があるというのは今でもお感じになっていますか。
  183. 有馬朗人

    有馬国務大臣 大変難しいところでございまして、どういう取り扱いをしていくかというのは国によって違うところもあるし、それから、日本に置かれたさまざまな国の学校にもよっているわけですね、教育内容等々。  そういう意味で、一つのはっきりしたお答えは今できないのですけれども、私が東京大学総長時代平成三年に、テンプル大学はアメリカにおいてアクレディテーションをちゃんと受けているというようなことを認識した上であのときは判断をいたしました。
  184. 保坂展人

    保坂委員 官僚答弁はなるべく排して。  要するに、矛盾があるというふうにはっきり率直におっしゃっているので、そのことを今でも、いや、矛盾していなくて、やはり文部省の説明するとおりだったというふうに今は変わっていらっしゃるかどうか、ちょっと確認したいのですが。矛盾があるというのは、やはりそのままですか。率直なお気持ちだけで結構です。
  185. 有馬朗人

    有馬国務大臣 たびたび申し上げましたように、さまざまな大学の現在の教育指導方法であるとか、そういうところで違いがあるなということの認識をいたしております。
  186. 保坂展人

    保坂委員 もう既に新聞各紙で御存じだと思いますけれども、九州大学で、この方は合格しなかったようですけれども、大学院の受験を認めるということがありました。  比較社会文化研究科の科長は、同じお名前の有馬さんとおっしゃる方ですね。文部大臣が、かつての東大総長として大学の判断をなさった部分を、なかなか今発揮できない分、同じ名前の有馬さんはなかなか頑張っておられるなと思いますが、この方は、朝大の卒業生かどうかを判断したのではなく、大卒と同等の能力があるかどうかを正式に審査して受験を認めた。従来の規則を変更したのではなくて、これまでも朝大卒の志願者がなかったわけで、通常の手続で、法令にのっとった解釈であるとおっしゃっていますが、どうお考えになりますか。私はいいことだと思いますが、いかがですか。
  187. 有馬朗人

    有馬国務大臣 我が国の大学院の入学資格につきましては、学校間の接続や全体としての体系性を維持し、大学院の教育研究水準の確保を図るため、学校教育法第六十七条の規定に基づき、大学卒業者またはそれと同等以上の学力があるとして文部大臣が定める者に与えられるとしておりますが、各種学校である、今問題になっております朝鮮大学校卒業者に対しましては、一般的に大学卒業者と同等以上の学力があると認定することが困難であることから、大学院入学の資格は認められないという判断をいたしております。
  188. 保坂展人

    保坂委員 今の答弁は、有馬さん以外のほかの大臣でも、だれでもできる答弁で、やはり東大のトップでもあられたという立場を踏まえて、ぜひ紙を見ないで答弁いただきたいと思うのです。  その東大なんですけれども、やはり有馬大臣指導がきいてしまったのか、朝鮮大学の方から要望書が東京大学へ院の受験に対して届けられていまして、これを見ると、都立大学など公立では三校、早稲田など私立では十一校、院の入学実績がある。この数は七十二人に上っている。その中には、その後、日本の国立、そして公立、私立大学の教授や助教授を務めている方もいるということで、門戸を開いてくださいと要望しているわけですが、結果、だめだったわけですね。だめだった結果、テンプル大学ジャパンを認めた総長時代有馬先生の意思を継いだ、やはり国際的にも妥当な判断をされている若い学者の方たち、先生方が、東京大学が認めなかったのは、これはまずいのではないかと。  ちょっと御紹介しますけれども、私たち東京大学に勤める者にとって、これはより身近な、深刻な問題だ。現在、さまざまな海外からの留学生を大学院生として受け入れています。その際に、国籍やその国の大学の教育課程が異なることを理由に受験を認めないという措置がとれるでしょうか。日本社会にあって日本教育を受けた朝鮮大学校卒業生に対してのみこうした扱いがされるのであれば、それは民族差別と呼ばないわけにはいかないでしょう、こういうふうに言われているのです。  民族差別というふうにここで東大の先生たちもおっしゃって、これは大変だというふうにおっしゃっていることについて、大臣、どうお考えですか。これは、ぜひ肉声でお答えいただきたい。紙は要らないと思うのですけれども……。
  189. 有馬朗人

    有馬国務大臣 今御指摘の大学だけではなくて、ほかの学校などに対しても同等の取り扱いをしているはずであります。ですから、特定の大学に対し、特定の国に対して差別をするというようなことは全くありません。その点は申し上げておきたいと思います。
  190. 保坂展人

    保坂委員 一番冒頭に、考えれば考えるほど鎖国をしているのかなというふうに思ったのは、十一月六日、これは国連の規約人権委員会で勧告が出ました。五年ぶりですね。その勧告には、はっきりと十三番目に、「委員会は、朝鮮学校の不承認を含めて、」これは朝鮮学校だけの問題ではないですけれども、「日本国民ではない日本の韓国・朝鮮人マイノリティに属する人々に対する諸々の差別の実例に懸念を抱く。委員会は日本政府に、規約二十七条の下での保護は国民のみに限定されないとする一般意見二十三への注意を促す。」こういう勧告。そして同時に、これは五年前にも同様のことを言っているので、どうもほとんど進んでいないじゃないか、五年間何やっていたんですかと言っているわけです。  二〇〇三年に政府は報告書を出すのです。大臣、いかがでしょうか。このような姿勢でずっといって、国際社会で通用するでしょうか。
  191. 有馬朗人

    有馬国務大臣 ですから、私は調査をすると申し上げていて、調査をしているところでございます。その点は明らかに進歩しているわけです。
  192. 保坂展人

    保坂委員 大臣、それではお聞きしますけれども、その調査というのは、現状を変更することも含めた選択肢でなさっていると解してよろしいですか。
  193. 有馬朗人

    有馬国務大臣 現状ということもあり得ると思います。
  194. 保坂展人

    保坂委員 つまり、現状固定ということもあり得るし、現状を変更するということもあり得る、その二つの選択肢がある、こういうふうに解釈してよろしいでしょうか。
  195. 有馬朗人

    有馬国務大臣 現状を続けるという選択肢はかなり大きいと思いますけれども、実情を判断して変更することもあり得ると思います。
  196. 保坂展人

    保坂委員 規約人権委員会など国連の機関から、ジュネーブに行けば再三指摘されるわけですよね。外務省から悲鳴の声が上がるのもやむを得ない状況。ここは各大学の判断にゆだねて、まさに今やられている調査に私ども若干の懸念があるのは、これまでずっと長いこと変更していないので、やはりこれだけは変更できないということで、こういう勧告が出ても、最後まで、法的拘束力がない、それだけを繰り返すのみで、ずっと平行線でいくという心配があるんですが、この点はいかがでしょうか。
  197. 有馬朗人

    有馬国務大臣 あくまでも調査の結果を待ちたいと思います。  それからもう一つは、やはりその際には、外国のことが絡むことでありますから、外務省等関係省庁とも相談をしていくことになると思います。
  198. 保坂展人

    保坂委員 硬直しているのは外国人大学校だけじゃないんですね。  これは東大の院の話だと思いますけれども、大学三年生で外交官試験に受かった方がいらっしゃいます。大学の方は中退されますよね。そして、外交官となってから院を受験した。合格したわけですね。合格してさあと思ったら、中退をしているので合格を取り消してしまったということが東大で起きた。こういうことはもう少し柔軟にやるべきじゃないでしょうか。
  199. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私は、これは、外交官試験の方は通っても卒業してほしいと思っております。東大としてはその方針をとってまいりました。ただし、外国の大学に入ることがありました。その際には、この人物は十分東大の四年間を卒業したものと同等の資格があるという手紙を出しまして、ハーバード等々で受けてもらったことはあります。しかし、東大としては、やはり三年で出てしまえば、これは中退です。そういう意味で、私は、外交官の方の問題があると認識しているわけであります。
  200. 保坂展人

    保坂委員 やはり外務省からため息が聞こえてきそうな答弁なんですね。  それでは、これは引き続き聞いていきますし、もう一つの選択肢、つまり現状固定じゃないことも含んだ、現状固定の方がどうも大きいというので少し不安なんですけれども、ぜひちゃんと正確な判断を下していただけるように、どうでしょう——一番問題は、インターナショナルスクールもあるし中華学校もあるんですけれども、問題は、朝鮮人学校であり朝鮮大学校であるというのは大体本音の話なんですね。どうでしょう、大臣、そこにきちっと出向かれて、何をやっているのか、どれだけの課程を組んでやっているのか、どの程度の学習をやっているのかごらんになったらいかがでしょう。
  201. 有馬朗人

    有馬国務大臣 これはさまざまな点から検討しようとは思っていますけれども、直接出かけていくことがいいかどうか、これはさまざまな判断をしなければならないと思っております。
  202. 保坂展人

    保坂委員 それでは、この点は一区切りしまして、残りの時間、フリースクールについて伺いたいと思います。  去年の八月に読売新聞や朝日新聞に、不登校の生徒が大変ふえてきたということで、文部省もついに不登校の子供たちを受け入れているフリースクールに対して財政支援、これは形としては調査費という形をとりつつも、事実上、そういう子供たちの場を支えるということに踏み切ったというニュースが新聞に載っているわけでございます。読売新聞などは「民間の施設も対象に含めたのは、学校の登校にこだわらない「柔軟路線」を一層進めた施策といえる。」というふうに書いておりますが、この点は、大枠では、文部省があるいは各地の教育委員会がいわば指揮系統に包括をしている適応指導教室以外の民間のフリースクールもやはり何らかの形で支えていこう、こういう内容の報道なんですが、これは間違いなかったでしょうか。
  203. 有馬朗人

    有馬国務大臣 平成十一年度予算におきまして、御指摘の適応指導教室や民間施設で指導等を受けている不登校児童生徒学校復帰を支援するためのさまざまな取り組みに、調査研究を委託する事業として約七億三千万を計上いたしました。したがって、間違いではございません。  この調査研究は、適応指導教室、民間施設等を合わせまして約六百カ所での実施を見込んでおりますが、具体的にどこの適応指導教室や民間施設で実施するかは、事業の実施主体である都道府県教育委員会で判断されるものでございます。  この事業の趣旨が生かされまして、私が非常に心配をしております不登校問題への取り組みが推進できるよう、事業の円滑な執行に向けて準備を進めさせていただきたいと思います。
  204. 保坂展人

    保坂委員 大臣、まさに今転換期だと思います。文部省のテーマの中でこういった問題が言われるということ自体が画期的といえば画期的です。ただ、ある意味で、新しいことをするときには古い発想をやはり一部転換して実行していかなければならないと思うんですね。  そういう意味で、私のところに連絡がありまして、つい先日、全国十数カ所の県で、フリースクールを運営している皆さんとお話をする機会がありました。これはまちまちなんですね。大変丁寧に、こうやったら手続できますよという手ほどきをしていただいている県もあれば、返事も来ない、もともとこれは適応指導教室を支援する予算であって、あなた方は関係ないですよという対応のところも案外多いんですね。  分権の時代とは言われますけれども、文部省は何をねらっているのか。つまり、適応指導教室外の民間のフリースクールも、調査研究ということでひとつ応援していこうじゃないかという趣旨は、これは変わらないのかどうか、これははっきり言っていだたきたいですね。
  205. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 趣旨につきましては、ただいま大臣から御答弁があったとおりでございます。  ポイントは、学校復帰を支援する、そのときに、これまでは公立の施設だけであった、それに民間の施設も加えて研究をしてみようということでございます。ですから、その趣旨を十分に踏まえてこれを実施していかなきゃいけないと思っております。  やり方としましては、今予算の審議をお願いしているわけでございますから、我々、その要綱等の準備をいたしておりますが、研究自体は県の教育委員会に委託をする、そして、県の教育委員会がそれぞれの地元の様子をよくわかっているわけでございますので、我々はガイドラインみたいなものはつくらなければいけないと思います、それは国費を投入するわけでございますから。しかし、各県の教育委員会の判断を十分に尊重しながらこれを運営していきたい。  そこで、今先生が御指摘になりましたような、せっかくの予算が、これは不登校問題に対する取り組みを充実するということですから、そういう趣旨が十分生かされるような、そういう予算執行に十分心得ていきたい、こういうふうに思っております。
  206. 保坂展人

    保坂委員 局長から答弁があったので、では、さらにあわせて伺いますけれども、各県の判断というところの中に、各県は、今までこんなことをやったことがなかったということも多いわけですよ。局長初め文部省の皆さんの方が、登校拒否についても、当事者と会ったり話をしたりする機会がこの五年間随分ふえたじゃないですか、そういう意味では。ですから、こういう政策が出てきた、予算も出てきた、そこは評価したいのですけれども。  ただ、最初に新聞記事で御紹介したようなニュースを見れば、日本じゅうあちこちの県で、もうなけなしのお金で施設を運営している人は、ああ、では何か申請ができるのかなと思うじゃないですか。思って行ったところ、各県の担当者の意識の問題で、あなたの施設は関係ないですよ、学校復帰ということをきちっとうたっていますかと。  学校復帰というのは、もちろん文部省施策から外せないということはわかります。しかし、学校復帰施設ということを表看板にしたら、民間のこういう場がなぜできてきたのかということもある意味で矛盾してくるわけですよね。とりあえず行くか行かないかという部分から、居場所として毎日そこに通えるようになって、学べるようになって、結果として学校に戻った子もいる、あるいは戻らない子もいる、その辺を弾力的に認めていこうというのがこの間の審議会、あるいは国会の場でもそういう議論だったんじゃないのかと思います。  ですから、その点、あくまでも弾力的に、現場現場でも具体的に実現するようにその趣旨が十分浸透していないんじゃないかという指摘をしたいと思うのですが、いかがでございますか。
  207. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 その点は、これはこれから新規にスタートする新しい事業でございますから、その趣旨とかねらいとか運用とか、これは十分に各県の教育委員会の担当者に伝える。少なくとも、今お話を聞いていますと、何か、全然相談にも乗らずに門前払い、そういうところは余りないのではないかと思いますけれども、御指摘でございますから、せっかくのこの予算が各県で詰まってしまうというようなことのないように、これは各県の教育委員会に十分趣旨を伝えたい、こう思います。
  208. 保坂展人

    保坂委員 今の件、登校拒否の問題も大変ですけれども、最後に、実は大津波が学級崩壊という形でちらちら出てきていますよね。ですから、即応していく行政であっていただきたい。  実は、先ほどの外国人学校調査も、もっとピッチを上げて、もう決断しているというふうにしていただかなければ、我々大人にとっての半年というのは大したことはありませんけれども、やはり子供は、十歳、十五歳にとっての半年というのは大人の五年、十年分ですよね。ですから、そこを踏まえて、子供の立場に立って大臣に、今の問題も、新聞に紹介されたように、きちっと結実するように努力いただきたい。一言お願いいたします。
  209. 有馬朗人

    有馬国務大臣 不登校の問題は極めて重要でありますし、いわゆる学級崩壊が本当であるかどうか等々は今調査をしていることは申し上げました。それに従って、もう極めて早い手を打ちたいと思っております。
  210. 保坂展人

    保坂委員 これにて終わらせていただきます。ありがとうございました。
  211. 小川元

    小川委員長 次に、石井郁子君。
  212. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。  きょうは大変長時間にわたりまして、本当に大臣御苦労さまでございます。私、最後の質問になりました。よろしくお願いをいたします。  これから児童数が減少していくわけであります。また、若い先生現場に入ってこないということが今日の教育現場の困難の要因の一つにもやはりなっているということが指摘をされています。こういうときですから、三十人学級への移行、法制化をもう検討すべきだというふうに私は思いますし、かねがね主張してまいりました。  もう既にこの点では質疑がございますので、関連して二つだけちょっと確かめておきたいというふうに思います。  これも出ているのですけれども、大臣のもとで、教職員配置の在り方等に関する調査研究協力会議、昨年立ち上げられましたね。ここでは何を検討されているのか、それから、いつごろをめどにどういう報告をされるのか、その点いかがですか。
  213. 有馬朗人

    有馬国務大臣 かなり重要な問題でございますので、ほぼ一年をかけてと考えております。具体的に今どういうことが議論されているかにつきましては、助成局長よりお返事を申し上げたいと思います。
  214. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 中教審の答申を受けまして、平成十二年で終わります教職員定数の配置のあり方ということを視野に、その後の検討を幅広くさせていただきたいと思っておりまして、これからの議論ではございますけれども、私ども事務当局といたしましては、一つは、指導方法の多様化と、学校五日制時代における新しい教育課程の、先ほどから御議論ございます総合学習などをどう展開していくかというような観点から、どういう教職員配置が必要かということが一つ大きな課題になろうかと思っております。  また、それ以外にも、学校教育上のさまざまな、生徒指導対応であるとか不登校対応であるとか、現在行っております第六次の定数改善計画で課題となっております事柄、あるいは教員以外の専門的な職員に関する配置のあり方、さらには、けさほど来御議論ございます学級規模のあり方、あるいは学習集団のあり方、こういったものを本格的に議論した上で、今後の教職員の配置や学習集団のあり方についてかなり広範な御議論をいただきたいと思っているところでございますけれども、いずれにいたしましても、これからの議論ということでございます。
  215. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 もう一点、チームティーチング、このことをちょっとお尋ねしたいのですけれども、チームティーチングでやっていくということを文部省はしばしばおっしゃいますので、この教員定数改善の第六次計画では、これを完了すると一体どれだけのクラスがTT配置になるのか、これは数字をお示しください。
  216. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 私ども、定数として平成十年度において配置している数が一万三千九百四十人でございますので、少なくともこれ以上の教職員がチームティーチングという形で各学校において授業に当たっている、こう考えているところでございます。
  217. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 私、クラス数をお尋ねしたのですけれども、私どもの調査では、学級の数で見ますと、例えば小学校は全国に二十七万九千七百クラスある。こういうクラスにTTとして配置されるというのは八千四百四十一クラスじゃないでしょうか。そうすると、わずかに三%だ。中学校でも四・六%ぐらいにすぎないのですよ。しかも、ある程度の学級規模がなければTTの先生が配置されないということもまたあるのですね。ですから、私は、本当にこういう点では焼け石に水だというふうに思うのですよ。  先ほどの協力会議検討事項にも、本当にこの学級規模を縮小するという方向に真正面からどうも取り組んでおられないということがやはりうかがえるわけですけれども、きょうはもう私は議論いたしません。  第六次のこの定数改善も財政構造改革法で先送りをしているわけですね。本来ならもう完成していなければいけない。だから、もう次の計画に踏み出さなければいけない、こういう時期に、文部省、ずっと来ているわけですよ。だから、早くに、財政の裏づけを含めて、真剣に三十人学級への移行に精力的に取り組むべきだということを、私はきょうは重ねて要望させていただきたいというふうに思います。これは答えは要りません。  それで、きょうはまず、告示されました新しい学習指導要領についてお尋ねをいたします。  これは、二〇〇二年から小学校、中学校教育内容が変わるということですね。教科書も変わるということで、どういうふうに変わるのかという点では大変重要な内容を含んでいると私は考えています。  そこで、まず子供の実態についての御認識を伺いたいのですけれども、文部省は昨年、「学校教育に関する意識調査」を発表されておりますね。そこでは、学校の授業の理解度、これは小学校では、よくわかると述べた子供たちが百人中十九・九人です。中学校では四・七人です。高校では三・五人という数字で、これは新聞にも発表になって、非常に世間を驚かせた数字だったというふうに私は思います。中学二年生で、よくわかると大体わかるを合わせましても四四・二%なんですよ。過半数もないというのですね。  今、授業がわからないということでいらいらを募らせている子供たちが大変ふえていますし、子供の暴力行為というのも、残念ながらふえていますよね。それから先ほど来議論の、不登校の子供たちが十万人を超えたという深刻な事態になっているわけでしょう。だから、授業がわからない、こういう実態をどういうふうに文部省大臣として御認識されているのでしょうか。
  218. 有馬朗人

    有馬国務大臣 御指摘のとおり、学校の授業がよくわからないという人が多いですね。よくわかる、あるいは大体わかるという者を合わせたものは、小学生で六八・一%はわかると言っています。中学校で四四・二%、高等学校では三七・三%という状況でございます。小中学校高等学校を通じて基礎、基本を身につけてほしいと常々考えておりますので、この結果は大変残念に思っております。  さて、その際に一つ問題になるのは、教えることが多過ぎるのではないかというような問題がございますね。そういう点で、今回の学習指導要領では、大幅に教える量を減らしていっているわけであります。そしてまた、学習指導要領に示す内容を確実に身につけてほしいと考えておりまして、このために、多くの知識を一方的に教え込むのではなく、教育内容を基礎、基本に厳選して、子供たちがじっくり考え、自分なりの考えを持ちつつ、自分のものとして知識、技能を身につけていくことが極めて大切だと思います。これが、まず子供たちにゆとりを持たせなければならないということでございまして、二〇〇二年より完全学校週五日制に踏み切ろうと思う大きな理由一つであります。  それからもう一つは、そこで二割ないし三割教えることを少なくするということで、しっかりと、じっくりと教えるということで、先ほどのような、わかる人が少ない、こういう状況を何とか改善していきたいと思っております。ですから、今回の学習指導要領の改訂におきまして、特にこのような観点に立って改善を図っているところでございます。  各学校でわかりやすい授業を展開し、それぞれの子供の個性に応じた指導の工夫改善を進めるなど、子供たちがしっかりと教育内容を身につけることができる教育実現を図ってまいりたいのでありますし、もう一つ子供たち学校へ行くのが楽しいということを実現いたしたいと思っております。
  219. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 大臣からは、こういう、授業がわからないという子供たちが多いことについては、やはり憂慮をしているというか懸念をされているということがございました。  しかし、こういう実態のもとで今度の新しい指導要領の改訂が進んだのかといえば、どうも一方では、教育課程審議会では、今は子供たち学習状況はおおむね良好だという前提から出発もされておりまして、現状認識では大変矛盾しているんじゃないかと私は思うんですが、そこはちょっとおいておきます。きょうは議論いたしません。大臣の方から、新しい指導要領の考え方をもうお示しいただきましたので、そっちの内容の方に入りたいと思うんです。  私は、ちょっと一つ例で申し上げたいのですけれども、本当に大事なことは、強調されましたように、子供たちがちゃんと学べるのかどうかということですよね。  それで、例えば算数の例で申し上げたいのですけれども、算数というのはやはり積み重ねの学習だ、教科だ、それから、重要なことをそこできちんと習得しなければ次に進むのが困難だということは一般に言われているわけですね。小学校の算数でいえば、九九とか小数、分数、あるいは一年生だったら繰り上がり、繰り下がりという問題もあるかと思いますが、そういうことはやはり基礎ですということですよね。しかし、その基礎でどうも多くの子供たちがつまずいている、わからないままに取り残されているという状況がやはりあるわけです。  それで、私ちょっと例で申し上げたいのですけれども、例えば九九なんですが、今、現行は大体三十九時間でしょうか、二年生で教えられるようになっているんですけれども、新しい指導要領でもそれはほとんど変わらないと思うんですね。一部、何か三年生に上がったというのはあるんですけれども。  だから、もう十年来、二十年来、この九九で本当につまずいているというのは、現場からたくさん声を聞くわけですよ。でも現行は変わらない、このままですということで、本当にすべての子供たちがつまずき、大丈夫なのかという問題なんですね。いかがですか。
  220. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 先生指摘のとおり、算数の九九は小学校の二年生で勉強いたします。そのとき、現在小学校子供たちは、この九九以外に、整数の足し算、引き算とか、あるいは正方形、長方形、直角三角形の性格とか、その他、数と計算から、測定、図形、そういったものにわたって勉強いたします。  そこで、今回の対応でございますけれども、学校完全週五日制を実施する、そのために全体として時間数が減らざるを得ない。そこで、具体的に、今のお尋ねの第二学年、小学校の二年生につきましては、年間で申しますと、百七十五時間算数の時間の指導に充てておりました。その時間が百五十五時間、二十単位時間減少いたします。  しかし、九九は二年生でそのまま学習してほしいということで残しましたが、今申し上げました、それ以外に二年生で学んでいる、例えば不等号の式の問題とか、あるいは三けたの整数の足し算、引き算、あるいはリットルなどのかさの単位、それから正方形、長方形、直角三角形といったものの性質、そういったものを上学年に移行するなどして内容を削減いたしました。  したがいまして、私どもとしては、百七十五から百五十五というふうに時間数が減りましたが、そして九九の学習は残りましたが、二年生のところで学ぶべき他の事項を相当に上学年に譲る等して二年生のところに時間を確保する、そういう努力をいたしましたので、九九につきましてしっかりと学習ができるのではないか、こんなふうに私どもは思っております。
  221. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 今のお話ですと、九九にかける時間というのは、削った分のところがあるので、現行よりも時間数はふやしてもいいというか、ふえるというふうに考えているということですか。
  222. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 正方形、長方形、直角三角形とか、あるいは三けたの整数の足し算、引き算に何時間かけるか、これは、定量的にきちっと一律に示すことは大変難しいわけでございますけれども、標準的に行われておりますもの等を、いろいろな方々からの意見等を踏まえて私ども試算をしております。  そのようなものをベースにいたしますと、今回、二年生のところで本来学ぶべきもので上学年に譲ったもののおよその時間数というものを考えますと、それが上に行った、そのことによって時間数にすき間ができた、その分、九九にかける時間は相対的にふえるというふうに私どもは考えております。
  223. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 九九のことでいいますと、子供たちが九九の成り立ちとか構成、意味をわかる、それから反復練習をして使えるようにする、それから自分の頭で考えて問題もつくれるようにする、ここまでやろうとしますと、本当に現行では時間が足りないという話があるんですよ。だから、そこで残念ながら落ちこぼされていく子たちが出てきているわけで、本当にそこを何とか改善してほしいという声がありましたよね。今後、本当にそうなるのかどうかというのは見守りたいというふうに思うんですけれども。  その算数でいいますと、これは日本数学教育学会の調査にもよりますと、学習指導要領を改訂したたびに算数嫌いがふえてきているんです。一九七七年で二一%の子供たちが嫌いだ、八七年には三三%、九八年では四〇%という数字ですね。  だから、子供たちの算数嫌い、理科嫌いも含めて今よく議論になっているところは、私はいろいろな要因もあると思いますけれども、やはりわかりたいと思っている、わからせたいと思っている、そこで必要な時間がちゃんとかけられていない、こういう問題があったわけですから、やはりそこは本当にしっかり改善をすべきだということを申し上げたいというふうに思います。  それで、今度の指導要領では三割削減ということが言われているわけですが、いろいろ調べてみると、本当にそうなのかという疑問があるんですね。一つのわかりやすい例で申し上げたいのは、国語なんです。  例えば、集約する、統合する、重点化ということを言いまして、気持ちの読み取りという、国語というのは作品を読むわけで、主人公の気持ち、登場人物の気持ちをいろいろ読み取らなきゃいけないわけですが、これまでは二年生から五年生にわたって各学年で指導してきたものを、五年、六年だけで指導するということになっているんですね。それで、国語の先生たちは、気持ちの読み取りというのは全学年で大事にしてきたと。それを五、六年だけで指導するというのは、子供の実態、現実を知らないのじゃないかという批判がありますね。これでは厳選にならないという声があるわけであります。  だから、三割削減というけれども、こういう形の三割、厳選したということが果たしていいのか、これは何かおかしいものにならないのか、そういうことがありますので、いかがですか。
  224. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 今の議論は、いろいろな検討を加えたところの一つでございます。  国語の学習につきましては、言語としての教育をもっと重視すべきだ、具体的に言いますと、しっかりと漢字を書く、平仮名を書く、文章を書く、正しい言葉で表現する、そういう言語としての教育をもっと徹底すべきだという意見が大変強く一方でありました。もう一方では、今先生が御指摘のように、文章に書かれているものの中の作者の気持ちを読み取る、そこに書かれている人物の気持ちを読み取る、こういうことも大変重要だということでございました。  そこで、今回の小学校の国語でございますけれども、具体的には、今先生がおっしゃったとおり、学習指導要領の規定では、例えば、今まで二年生で人物の気持ち、三年生でも四年生でも書いてございました。今回は、五年、六年に「登場人物の心情や場面についての描写など、優れた叙述を味わいながら読むこと。」ということにいたしましたが、一方で、指導計画というか、総則的な国語の扱いに触れたところで、各学年の内容の指導については、必要に応じてそれぞれの学年よりも前の学年において弾力的に指導を行うようにしてくださいという形にいたしました。  これは、五、六年のところでは徹底的にこれを重点的に指導する、しかし、前のところにつきましてはそれぞれの授業の進捗状況等によって弾力的にお願いしますという形にいたしました。それは、冒頭申しましたように、言語としての教育ということも一面では大事だということもあるものですから、私ども、そんなふうな形にしたということでございます。
  225. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 国語は国語としてのいろいろなことはあると思うのですけれども、しかし、私は、気持ちの読み取りという例で一つ申し上げましたように、やはり現場の感覚と合わない部分じゃないかというふうに思うのですね。だから、三割削減というけれども、全くつじつま合わせ的に時間数を減らす、そういう部分がやはりあって、これで本当の厳選と言えるのかどうかということをここでは私は指摘をしておきたいというふうに思います。  それで、現場では、とにかくいろいろな形で先生方は御苦労される、努力をされているのですね。そのことについて私はちょっと伺っておきたいと思うのです。  私、実は算数の問題を調べていて、大阪で高校生が小中学校の算数教育を受けてきてどういうふうに思ったのかということで、先生にも伺ってみて、子供の作文を見る機会があったのですよ。ちょっと読み上げますね。  「黒板でできなくて、ちがう子はできてて、自分だけずっと黒板につったっていてすっごくはずかしくてみじめな思いだった。なんでわからんのとか、自分にすごく腹が立つこともあって、本当に楽しいなんて中学三年間一度だってなかった。」と書いているのです。しかしこの子は、実は高校で微分積分を習って、何だ、分数というのはこんなことだったのとわかるようになった、点数もちゃんといい点数をとれるようになって、数学がこんなに楽しいものだったということがわかって、うれしいということをちゃんと書いている子なんですよ。  だから、私はこれを読んでいて、子供も本当に努力しているし、先生方がそれぞれのところで努力されているんだな、子供たちというのはみんなこういうふうに成長するんだなということがすごくわかったのです。  そういう意味では、きょう午前中の議論にもありましたけれども、年間の時間数は決まっているでしょうけれども、どの単元にどういう時間を割り当てるとか、それからどういう配列でいくとか順序だとか、学習指導要領は一定のものを示していますけれども、やはり現場実情に合わせて、あるいは子供の実態に合わせて、先生方がうんと自主的に創意工夫ができるんだというふうに考えて当然だと思うのですが、文部省、そういうことでいいですか。
  226. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 各先生方のそれは専門の御判断で、一人一人わからせる授業ということでやっていただければ結構なわけでございます。
  227. 有馬朗人

    有馬国務大臣 この点に関して私、一言申し上げたい。  私は、中央教育審議会の際にもさんざん申し上げたことですが、子供たちの習熟度に応じた教育をやるべきだということを主張しております。やはり今のように、おくれた子に対しては丁寧な指導をしていただきたいと思っております。それからまた、少し早く理解をしていく子供たちに対しては、それなりの早い、習熟度に応じた、早く進んでいく教育を施していかなければならないと私は思っております。
  228. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 私は、習熟度ということとはちょっと違うのですけれども、とにかく、現場のそういう創意工夫ということを本当に最大文部省としても保障するという立場に立ってほしいということですね。  この点に関連して伺いますけれども、今度、総合的な学習の時間というのを設けられましたね。この総合的な学習も、さまざまな意見があり議論がされているところなんですけれども、この指導要領の総則では、その内容について、テーマとするべきものについて、「例えば国際理解、情報、環境福祉・健康などの横断的・総合的な課題、」という例示がございますね。これはあくまでも例示であって、これ以外のことも当然やっていいということを含んでいるというか、考えていいのだ、これもそういう見解でよろしいですか。
  229. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 御指摘のとおり例示でございまして、それ以外にも当然あり得るということでございます。
  230. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 当然あり得るというか、当然あっていいんだ、もっと幅広いいろいろなものに、現代社会で起こっているさまざまな問題に取り組んでいいんだということで確認してよろしいですね。  私、あと残りの時間で、きょうも既に議論になっていますけれども、高校選抜での内申書問題ですね、予算委員会でもちょっと大臣に申し上げましたけれども、もう少し突っ込んで伺いたいというふうに思います。  この問題は、調査一般をどうするかという問題もあるのですけれども、子供たちがここで今さまざまな声を上げている問題は、内申書の中の観点別評価という問題なんですよ。観点別評価、これについて異議を申し立てているというか、これはもうやめてもらいたいという声が本当に多くある。これはNHKの教育テレビでもそうでございました。  子供の声をちょっと申し上げますと、関心とか意欲とか態度というものは客観的に評価できるんですか、これはあくまでも先生の主観にならざるを得ないじゃないかと子供は言っていますね。それから、先生の前でだけ意欲的にしていれば、結局本当のところはわからないんだ、だから先生の前と別のところと自分は人格を使い分けているという問題があります。そのほかボランティア活動生活の全部、子供たちの行動がすべて評価の対象になっている、ここが本当に嫌なんだと言っているわけでしょう。  その点でいうと、例えば委員会、生徒会の係なんかやるのも自分のためだ、これはみんなのためじゃないというふうにまで言っているとか、それから、内申をずっと気にしながら生活している、授業以外でも先生が見ているし、学校にいる間はいつも先生の目を気にしている、こう言っていますね。それから、これは高校三年生ですが、私はもともとまじめな性格だった、ところが、まじめに振る舞っていると周りから、内申点を上げたいんでしょうという目で見られる、だから内申というのはいじめにつながるんだということまで言っていますよ。  ぜひ大臣に、これは子供のいいところを、日常的なところを評価するというふうには言われると思うのですけれども、やはり高校の合否をかけたいい子競争になっているんですよ。これは仕組みとしてこうなるという問題として、少なくとも観点別評価はやめる。それから、人格をそんな点数化なんかしない。ABCだとかランクづけるのもそうですけれども、しない。こういう評価項目はなくすということを本当に今お考えになったらいかがか、踏み切ったらいかがかということをぜひ申し上げたいのですが、いかがでしょうか、大臣
  231. 有馬朗人

    有馬国務大臣 またさかのぼった議論になって申しわけありませんけれども、どうやって高等学校なり大学なりに入学する人を選抜するかというのは極めて難しい問題だろうと思う。  もともとは公平原則がありますので、学力試験だけというのが一番公平でございます。マル・バツでぴしゃっとやる、これほど公平なものはない。が、マル・バツでやるとこれは大変な非難を世の中から受けるわけです。  それで、長い間学校勉強したのだから、その間の勉強の態度等々は見てくれ、こういうことで内申書を採用しなきゃならないという意見が一方であるわけですね。調和を図っていかなきゃならないということを常々申しております。さらに口頭試問を課すとか、そういうさまざまな多角的な面から、その人物をこの学校で十分育てられるかという判断をしていくべきだということが私の原則的な考えでございます。  さて、そこで今の御指摘の件ですが、一つお伺いいたしたいことは、算数が何点であったとか、そのことはついてもよろしいですね。学校で、小学校、中学校での成績はよろしいでしょうか。  今御指摘のところは、私のお伺いした判断では、教科に関する、例えば体操が非常によくできる、音楽がうまい、こういう評価は客観評価をしてもよろしい。しかし、性格に関してだけは注意してくれという御指摘と判断をいたします。  この性格に関して、果たしてABCがいいのか、それとも点数がいいのか、これはさまざまな問題があると思います。それからまた、性格判断というものが本当にできるだろうか、どうかということも、個人、一人の先生ができるかどうかということもまた問題はあることは私もよく認識しております。この辺に関しては、さらに今度教育課程審議会等々で、内申書のあり方などについて御検討賜ることになっておりますので、その辺で十分御検討賜ろうと思っております。
  232. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 これだけ本当に子供たちからも親からも、そして先生方だってやはりやりにくいという声が噴き出しているわけですから、検討をすべきだというふうに思うんですね。確かに、偏差値追放という中で、内申書重視の路線に変わってきました。既にもう五年たっているわけでしょう。この五年でいろいろな矛盾が出てきた、問題が出てきたわけですから、本当に検討されていい時期ではないかというふうに思うんですね。  ただ私は、それにつけても、やはり文部省として反省していただきたいなと思っているのですが、それは、こういう観点別評価というものを文部省として推進してきたということがあるわけでしょう。高校入試の改善等に関する状況を見ますと、最初のころは六県ぐらいでしたけれども、今では各県、ほぼ全県が観点別評価というのを取り入れている。こういう形で、一方では入試のあり方方法は各県の裁量でやる問題ですというふうに言いながらも、しかし、これはやはり取り入れるようにということを文部省としては推進してきたんじゃないのですか。この推進を今後も、今検討されるということなんですが、続けるのかどうかということでいえば、私は、反省も含めて本当に検討していただきたいといふうに思うのですが、いかがですか。
  233. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 先回の学習指導要領の改訂に当たって、形式的に知識を覚えているか覚えていないかではない、その彼が仮に学力等が低位にあっても、意欲を持って学ぶ、それを積極的に評価しようではないかという考え方がありまして、それをどんなふうに評価するか。それは、内申書に結びつくかつかないかというのは別にして、日常の指導要録の上で関心・意欲・態度という項を新たに加えて、新たに加えてといいましょうか、重視して指導要録の様式を作成したという点では、確かに文部省がそういった対応をしたということはそのとおりだと思います。  しかし、そもそも指導要録は各学校子供たちの日常の生活あるいは学習の過程を記録するものでございますから、文部省が示しましたものはあくまで参考といいましょうか、ひとつ検討に加えてもらいたいというものでございます。その実施状況等を調査した、それが推進してきたという評価を加えられるとすれば、それはそれで我々もそのとおり受けなければならないかと思いますが、基本的には、この観点別の指導要録の扱いにつきましては、各都道府県の教育委員会あるいはそれを受けた市町村教育委員会なり学校の御判断であろうかというふうに思います。  したがいまして、今、推進するかどうかと言われれば、私どもは、そういう参考としての資料を示しました、それをどのように扱うか、これにつきましては基本的に各公共団体において御判断をいただければいいというふうに考えるところでございます。
  234. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 指導要録をお示ししている、これは確かにいろいろな記録として各学校が持たなければいけないというのは、そうだと思うのですね。  でも、私は驚いたのですよ。その指導要録で観点別評価というのが入っていますよね、学習状況。それから、行動の記録というところでは、基本的な生活習慣、明朗・快活、自主・自律、責任感、創意工夫、思いやり、寛容・協力性、自然愛護、公正・公平、こうあるのですよね。私は予算委員会でも言ったのですけれども、例えば、明朗・快活なんてことを、まさに人格評価でしょう。暗い人が、暗いというか静かな人がいたっていいじゃないですか。これはやはり大変ですよ、こういうことを書かれると。指導要録はそうです。指導要録だって、それは点数が書いてあるかもしれません。  ところが調査書、これは各県が参考までにとあなたはおっしゃるけれども、調査書も私幾つか取り寄せてみました、十数県。同じなんですよ。そういう行動の記録の項目、明朗・快活だなんとか、ほとんど全国同じ。だから、言われるように、文部省が一言言えばもう下までこうなっちゃうんですよ。とても参考なんというものじゃないです。全く画一そのものですよ。  だから、こういうことというのはちょっと恐ろしいでしょう。子供たちのいわば人格が、こういうパターンで、行動の記録もこの十幾つかで全部評価される。これはちょっと恐ろしいですよ。それが子供たちの中に、教師への不信を生み出し、あるいは政治への不信も生み出し、文部省への不信もつくりとなっているわけでしょう。本当にこれはやめるべきですよ。  この観点別評価や行動の記録、人格評価の点数化ということを思い切って削除するというか、やめるということに私は本当に踏み切ってほしいということを重ねて申し上げたいのですが、いかがですか。
  235. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 先生が御指摘された明朗・快活云々、これは行動の記録というものでございます。指導要録といいましょうか、日常の生徒活動の記録の参考として入っていることは事実です。では、これを内申書、高校の入試選抜にどう使うか、これはまた別途高校の入試をどうやるかということで考えなければいけないと思います。  いずれにいたしましても、先ほど大臣から、新しい学習指導要領が告示される、それを受けまして、その新しい学習指導要領にふさわしい評価のあり方、すなわち指導要録の内容につきまして、これを検討すべく教育課程審議会で開始をしたいということでございますので、その際にはさまざまな角度から議論をしたい、こういうふうに思います。
  236. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私は、今局長がお答え申し上げたとおりのことを繰り返すことはいたしませんけれども、ただ、調査書でその本人のすぐれた点はぜひともきちっと書いてほしいと思います。単に先生の前で快活に見せるというふうなことは私は好きではありませんけれども、本当に明朗な、快活な人、そして自発的にボランティアをやるような人物、こういう人についてはちゃんと評価をして調査書等に書けるようなことをしたいと思います。  だから、それをどこまで点数化するか、これは私としては今後の検討の的だと思っております。
  237. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 すぐれた点を書く、そうあってほしいというのはあると思います。だけれども、それは何も点数化じゃないわけでしょう。文章で書いていただいていいわけですよね。私は、きょう申し上げたのは、点数化する、相対化して順位をつけたりする、そういうことをやめるべきだと言っているわけであります。  この問題で、もう時間が参りましたが、とにかく今子供たちが声を上げていますよ。NHKがそういう点では大変いい一つの形をつくってくれたわけですけれども、あちこちでやはり子供の声をうんと聞いて、そして日本教育をよくしていくという点では、私たちも皆さんと一緒に努力をしていきたいということを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  238. 小川元

    小川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十七分散会