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1999-05-26 第145回国会 衆議院 農林水産委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月二十六日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 穂積 良行君    理事 赤城 徳彦君 理事 増田 敏男君    理事 松岡 利勝君 理事 横内 正明君    理事 小平 忠正君 理事 木幡 弘道君    理事 宮地 正介君 理事 一川 保夫君       今村 雅弘君    大石 秀政君       金子 一義君    金田 英行君       木村  勉君    岸本 光造君       熊谷 市雄君    熊代 昭彦君       塩谷  立君    鈴木 俊一君       園田 修光君    田中 和徳君       中山 成彬君    萩山 教嚴君       御法川英文君    宮腰 光寛君       宮本 一三君    矢上 雅義君       安住  淳君    鉢呂 吉雄君       漆原 良夫君    木村 太郎君       井上 喜一君    佐々木洋平君       菅原喜重郎君    中林よし子君       藤田 スミ君    前島 秀行君  出席公述人         全国農業協同組         合中央会会長  原田 睦民君         北海道農民連盟         委員長     信田 邦雄君         東京大学大学院         農学生命科学研         究科教授    生源寺眞一君         東北大学名誉教         授       河相 一成君         全国農業会議所         会長      桧垣徳太郎君         京都大学大学院         農学研究科教授 辻井  博君         和歌山県農業協         同組合中央会副         会長         中辺路農業協同         組合組合長   久保 英資君         東京大学名誉教         授         日本農業研究所         研究員     佐伯 尚美君  委員外出席者         農林水産委員会         専門員     外山 文雄君     ————————————— 委員の異動 五月二十六日  辞任         補欠選任   小野寺五典君     木村  勉君   木部 佳昭君     田中 和徳君 同日  辞任         補欠選任   木村  勉君     小野寺五典君   田中 和徳君     大石 秀政君 同日  辞任         補欠選任   大石 秀政君     木部 佳昭君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  食料農業農村基本法案内閣提出第六八号)      ————◇—————
  2. 穂積良行

    穂積委員長 これより会議を開きます。  内閣提出食料農業農村基本法案について公聴会を行います。  この際、御出席公述人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。食料農業農村基本法案に対する御意見を拝聴し、本案審査の参考にいたしたいと存じますので、忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見は、原田公述人信田公述人生源寺公述人河相公述人の順に、お一人十五分程度でお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。  なお、念のために申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、公述人委員に対して質疑を行うことはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、まず原田公述人お願いいたします。
  3. 原田睦民

    原田公述人 JA全中原田でございます。  本日は、昭和三十六年に制定をされた現行農業基本法にかわり、今後の食料農業農村政策方向を定める新たな基本法である食料農業農村基本法づくり国会での法案審議の場にこうして公述人としてお招きをいただき、農業者及びJAグループを代表して意見を述べる機会を与えていただき、まことにありがとうございます。  私は、提出されています食料農業農村基本法案については賛成立場から意見を述べさせていただきたいと思います。  まず、この場をおかりしまして、日ごろ農政に熱心に取り組まれている各先生の御尽力に敬意を表するとともに、農業者並びJAグループに対する各先生の御支援に対しましてあらためて感謝を申し上げます。  さて、JAグループでは、この新たな基本法制定に向けた政府での検討の過程からさまざまな形で取り組み検討を行ってまいりました。私どもは、日本農業は、担い手高齢化減少し、農地減少する中で、食料自給率が大幅に低下し、危機的状況に直面していることから、新たな基本法制定は、この危機を打開し、二十一世紀に向けた新たな展望を構築するための日本食料農業農村政策の新たな憲法の制定ととらえ、組織の総力を挙げて、農業者だけでなく国民全体の合意による法律制定を訴えてまいりました。そして、新たな法律づくりに向け、特に重点と考える事項については組織内でも十分に議論を重ね、農業者法案への熱い期待、強い願いを訴えてきました。  こうした取り組みを行った結果、私どもは、提出されました食料農業農村基本法案については賛成立場であり、JAグループの主張が最大限に取り入れられたものと考えております。  そこで、最初に、この基本的立場を踏まえながら、法案の内容についての私ども基本的考え方を申し上げたいと存じます。  まず、総則の基本理念食料農業農村基本計画に関連して申し上げます。  JAグループといたしましては、これまで、国内農業生産基本とした食料安全保障政策確立と、農業農村多面的機能を踏まえた農業農村政策確立を訴えてまいりました。このような立場からすると、法案で示されています四つの基本理念、すなわち、食料安定供給確保多面的機能発揮農業持続的発展農村振興については、ぜひとも確立していただきたい理念であります。  とりわけこの中でも、国内農業生産基本とした食料の安定的な供給確保という理念は、施策の全体を通じて基本となるものです。これは、農業者が意欲を持って営農に取り組む支えになるだけでなく、国民の安全な食料を安定的に確保したいという願いにこたえるものです。さらに、世界最大食料輸入国として次期WTO農業交渉に臨む我が国基本方針となるものであり、世界に対して我が国の姿勢を明確に示していくためにも、ぜひここで基本理念としてうたい上げていただきたいと考えます。  そして、基本理念具体化する指針として、品目別生産目標食料自給率目標設定は特に重要であり、生産消費の両面において国民的な取り組みが必要であると考えます。カロリーベース自給率が現在四一%にまで低下している深刻な状況を踏まえると、私どもJAグループとしても、米、麦、大豆などを中心とした土地利用型農業の再編や日本型食生活推進運動の積極的な推進などを通じて懸命な努力をいたしますが、少なくとも自給率が五〇%となるよう向上を図っていくべきであると考えます。  次に、農業持続的な発展に関する施策に関連して申し上げます。  第一に、農地確保及び有効利用についてであります。  先ほど申し上げました国内農業生産基本にして食料自給率向上を目指していくには、国内農地をしっかりと確保有効活用する必要があります。そのために、農地がどのくらい必要かの総量を明示し、これを確保するための対策を講じていく必要があります。それには、農業的な土地利用と非農業的な土地利用を明確にし、総合的な土地利用計画を策定し実行することが必要であります。また、農地有効活用の面からは、農地流動化による地域担い手への農地集積遊休農地解消といった施策を進め農地を効率的に利用する必要があります。私どもも、後に述べますように、農地の不作付地解消有効利用に精力的に取り組んでいくこととしております。  第二に、担い手確保育成についてであります。  現在、地域農業は、大規模経営法人など地域の中核的な担い手集落営農、女性や高齢農業者など、さまざまな人々によって担われており、これらの人々地域社会で調和し合って、地域営農形態に合ったやり方で地域農業を担っているのが現状です。したがって、こうした多様な担い手支援し、育成していく必要があります。  また、地域実態などを踏まえて、法人化推進にも積極的に取り組むべきであると考えます。  このことに関連し、農業生産法人制度要件見直し株式会社形態の導入については、地域との調和という観点から、不安や懸念が払拭できる実効ある措置がぜひとも必要であると考えます。  第三に、農産物価格形成経営の安定についてであります。  農産物価格需給事情及び品質評価を適切に反映して形成されることは必要であると考えますが、農家の将来にわたる営農の継続と発展という面からは、農家所得確保農業経営の安定という面に最大配慮がなされるべきであります。  したがって、確固たる国境措置設定と運用を大前提として、これまでの品目対策の経緯や生産現場実態品目の特性といったものを踏まえた所得確保経営安定対策が必要であると考えます。  さらに、農村振興に関する施策に関連して申し上げます。  第一に、中山間地などの振興についてであります。  中山間地など条件不利地域における直接支払いについては、その対象とする地域対象となる行為、対象者などに関して、現場実態地域の意向を十分に踏まえて、地域創意工夫が生かされるよう制度として導入する必要があります。このことを通じて、農業多面的機能が維持、発揮されることになると考えます。  第二に、都市農業振興対策についてであります。  都市住民への貴重な食料基地であるばかりでなく、多様な機能を持つ都市農地保全し、都市農業振興を図るとともに、農業と調和した町づくりを進めることが重要であります。  法案に関連して主要な点について述べさせていただきましたが、基本法はあくまでも理念基本的施策方向を示すものであり、それに基づく政策具体化がさらに重要であると考えます。  そこで、この法律に基づく関連施策の実施に際しては、地域実態を十分に踏まえたものとするとともに、また財源の確保にも十分御配慮をいただき、着実かつ積極的な政策展開に努めていただきますようお願いをいたします。  とりわけ、繰り返しになりますが、二十一世紀に向けまして、国内農業生産基本とした国民食料安定供給持続的農業生産を可能にしていくためには、次期WTO農業交渉において、我が国食料安全保障農業多面的機能を位置づけた新たな基本法交渉基本として、毅然とした態度で交渉に臨む必要があり、ぜひそのよりどころとしても新たな基本法制定していただきますようお願い申し上げます。  ところで、新たな基本法制定次期WTO交渉への対応は、食料農業農村に対する国民合意に基づく取り組みであることが不可欠であります。  このような立場から、私どもJAグループといたしましても、安全で良質な食料安定供給食料自給率向上を目指して、国土・環境保全国民食料安定供給自給率向上に向けた国民共生運動という運動をみずからの取り組みとして強力に推進しております。  具体的には、地域農業の多様な担い手確保育成支援対策農地の不作付解消有効利用対策環境保全型農業実践水田営農振興計画の策定、実践運動日本型食生活推進JAグループ一丸となって取り組むことといたしております。  また、学童など次世代との共生消費者との共生、さらにアジアとの共生など、さまざまな人々との共生運動に取り組んでいきます。  さらに、このたび、私どもJAグループが呼びかけとなり、農業者消費者などさまざまな立場組織とともに、食料農林漁業環境フォーラムを設立し、国民各層との合意形成を図ることとしております。  こうした取り組みは、近い将来、きっと実を結ぶであろうと確信しています。  以上、私ども考え取り組みについて述べさせていただきましたが、いずれにしても、今回の新たな基本法が、国民各層にその考えが浸透し、食料農業農村に対する、全国民が納得するようなすばらしいものとなるよう、今次国会で十分御審議をいただき、早期に成立いただきますよう切にお願いを申し上げまして、私の意見陳述とさせていただきます。  大変ありがとうございました。(拍手)
  4. 穂積良行

    穂積委員長 ありがとうございました。  次に、信田公述人お願いいたします。
  5. 信田邦雄

    信田公述人 御指名をいただきました公述人信田でございます。  私は、北海道農業経営する六万五千戸で構成する北海道農民連盟委員長を仰せつかっているわけでありますが、それよりも、流氷で御案内のオホーツク海寄りの北見市で、私は、水田十ヘクタールと畑、野菜も含めてでありますが、三十ヘクタールの経営息子夫婦とともに行っている農民であることをまず申し上げますとともに、私は四十数年農業誇りを持って今励んでいるところでありますし、きのうも、まだ田植えが終わっておりませんので、田植えの準備をして上京してきたところでございます。  さて、今国会には重要法案メジロ押しでございますが、私たち農民は、国民にとって、ガイドライン法よりも食料農業農村基本法が重要である、こういうふうに感じているところでございます。私たちは、この農業基本法を、またの名を国民のための命の基本法と名づけまして、これまで長年、農水省の皆さんと農業生産現場という立場から議論を重ねてきたところでございます。  それは、WTOに加盟している日本経済大国として、日本国際化対応農業でもしなければならない、これは必至でございます。世界に共通する農業関連法を持って次期WTO交渉に臨むべきで、国民の命である食料を可能な限り国内自給して国民を守るとともに、世界から経済の力で食料を買いあさり、大量の輸入をやめる方向世界の飢餓を減少させるFAOでの約束を果たしたり、食料安全保障として国際貢献するための基本法として極めて重要であると考えて、これまで議論を重ねてきたところでございます。  その意味では、基本問題調査会の熱心な長い御議論をいただきまして本基本法案ができましたことに、一定の評価をしているところでございます。  しかし、今申し上げました国際化対応、すなわち、WTOに向けての重要性と、国民のための命の基本法として二十一世紀を迎えるためには不十分であり、農民の一人として意見を申し上げますとともに、今国会において、十分かつ慎重なる審議の上、全政党が、政党議論を超えて、見直すべきところは見直し修正すべきではないか、それこそが国民のための食料農業農村基本法として全会一致制定する意味になるのではないか、こんなふうに考え、とりわけ、本基本法案には、農業以外に食料、すなわち消費者、これが入り、また農業を営む上で最も大切な農村が加わったことは、極めて意義が深く、世界に冠たる農基法として、全政党が一致して制定することこそ国民合意であり、食料環境の二十一世紀にふさわしいと言えるのではないか。したがいまして、私は、本法案農民立場から幾つかの修正考えておりますので、委員の諸先生方の御検討を強くお願い申し上げる次第でございます。  我が国農政歴史を振り返ってみますと、米を中心とした自給歴史でありますし、政策でありました。この政策は長く続けられたわけでありますが、国際化の中で、一九八六年からガット農業交渉、そして一九九四年のWTO農業合意批准、これで現行農業基本法国際化対応ができないものとなってしまったことは御案内のとおりであろうと思います。  すなわち、価格支持政策国境措置ができないような状況になり、北海道のように専業、あるいはまた、これまでの農業政策で大規模農業経営をしている、そういうところから大幅な所得減少で、現在負債を増大させ、超過債務となって、農協自体も大変厳しい状況に追われ、多くの農民が我先にと離農する、そういう状況になり、頑張って残っている仲間ですら将来不安を強く抱いておるところであり、この基本法に対する期待は非常に大きいのであります。その期待にこたえていくためにも、また、国際的にも他の農業国と共通の政策で競争できる基本法としていただきたく、私は次の六点について修正すべきと考えているのであります。  まず第一点でございますが、前文に崇高なる食料農業農村のあるべき理念内外にうたうべきであります。それは、国民誇りであり、農民指針であり、地球環境を守る農村持続国際社会日本が自信を持って掲げる、そういう意味でも大きいのではないか。  二つ目でございますが、第二条の食料安定供給確保であります。まさにこの第二条こそ、私は、農民のためではなく国民のためのものだ、多くの国民食料国内自給こそが食料安全保障であると願っています。すなわち、国内農業生産の可能な限りの増大を強く求めていることであります。したがって、第二条で国内生産増大を明記するとともに、基本計画には具体的な数値目標設定して、安定供給のための農地保全担い手確保、そして農業農村の多面的な機能発揮を図るべきだ、これは国の責務で行うべきである、こういうふうに申し上げたいと思います。  特に、農業の持つ多面的機能につきましては、国際機関会議重要テーマになっておりますことは御案内のとおりでありますし、FAOは、多面的機能発揮だけを協議する国際会議をことし九月に開催する、そういう方向になって、いかにして地球環境を守って人類が健康で幸せに生き延びていくか、そのために、各国が農業持続させ、国内自給増大させることこそが国際貢献ではないか、こんなふうに思っているところであります。  そのためには、第三点として、十五条の基本計画を五年ごとに見直すことになっておりますし、これは結構だと思いますが、内外信頼性を高め、国民合意を得る開かれた農政として、国民を代表する国会政府責任を持つべきである、いわゆる国会承認を十五条で規定しておいてこそ国民信頼を得ることができるのではないかと思うところであります。  第四点目でございますが、条文の第四条の農業持続的発展であります。  現行法では、農業と他産業との所得格差是正を明記していますが、新法にもやはりこれは明記すべきだ。そして、法定化した上で、御案内のとおり、専業的な農業においては、現行法のもとで他産業との所得格差は是正されず、若者は所得の高い他産業に流れて、担い手不足高齢化数字が示しているとおりであります。また、今調査会などの関係での政府考え方の中に、農政改革大綱で、現行法での施策遂行の結果を反省して抜本的に見直しを図る、こういうふうに言っているわけでありますし、北欧のある国では、農民所得は公務員の所得を下回ってはならない、こういうふうに制定しておりますし、第四条におきまして、そういう意味では旧法どおり修正していただきたい、こんなふうに思っているところであります。  その意味で私たちは、五点目として、農民が最も強く修正を求めるとともに、これが修正されなければ、この法案として本当に成功するのかどうか。そんな意味で、第三十条に非常に関心を寄せている農民の一人でありますし、私ども団体は強くここを願っているわけですが、すなわち、農産物価格形成経営の安定、いわゆる価格政策見直しです。WTO協定批准等による国際化対応として、価格支持政策見直しはやむを得ません。私たち農民の労賃である、そして月給である農産物価格市場にゆだねた場合、農民所得は不安定となります。そして、経営に不安を感じ、担い手は育たないのではないか。したがって、この三十条では、二項に農業所得補償を明記していただきたいのであります。  EUや米国などは、価格政策見直しに際しては、政府と国家の責任として農家所得補償して、直接支払いを行って次期WTO交渉対応しているのであることは、もう御案内のとおりでございます。食料輸入大国である我が国現状は、輸出国所得補償して価格を引き下げた上、輸出補助金までつけた安い農産物輸入し、それを市場価格として私どもに競争せよといっても、意欲ある農民をどのようにして育てていくのか、本案の三十条ではどうも不安でありますし、そしてまた不明確であり、なかなかこれでは農業は育たないのではないか、こんなふうに思っているところであります。  自給率四一%という先進国では恥ずかしい我が国といたしまして、国内農業を守るためにも、EUのように価格市場価格消費者に届けて消費者負担を軽くして、そして、国際競争のできる価格として、農民には財政負担で直接所得補償を行って、国際的にも承認される根拠法として今から準備した上で、次期WTO交渉に向かって新たな貿易ルールを要求することにしなければならない、こんなふうに思っておるところであります。  御案内のとおり、アメリカでは、農業法で最高十万ドルの直接支払いを七年間行うことを決定し、実施しているところでありますし、所得補償については、日本においてまだ疑問を持っている人々が多いようでありますが、これは認識が間違ったところに原因があるのではないか。また、所得補償についての予算がないからそれは難しい、財政上から反対する人々もいるわけでありますが、EUやその他の先進国では、農業予算の八〇%以上が農家所得として支払われているものであります。  日本は、数字のとり方もあろうと思いますが、わずか一八%余りしか農家の直接所得になっていない。間接的に予算が使われているためになかなか効果が上がっていない。したがって、私どもは、農業予算の抜本的な見直しをして、所得補償は可能だ、こんなふうに考えているところでございます。  最後になりますけれども、六点目です。  三十五条の中山間地等条文を、条件不利地域修正していただきたい。寒冷な気象条件草地率の高い地域、そしてまた消費地からの遠隔地などを対象にして、公益的、多面的機能確保を図る施策として、直接所得補償を明文化していただきたい。この条件不利地域については、日本の国として初めての直接支払い方向調査会などで御議論いただいて、その方向にありますことを評価いたしますが、ぜひ中山間地から条件不利地域というふうに明記をしていただきたい。  以上のような六点にわたって修正を求めている生産者立場として、どういう理由でこのように求めるかと申しますと、国民食料安定供給するのはスーパーではなく農民であるということをよく御認識いただきたい。村を守り、環境を維持し増進させ、文化と農村社会形成している農業持続、しかも定住できる、二十一世紀のための基本法として制定していただきたいからであります。  しかしながら、日本自給率の二六%を担っている北海道において、昭和三十五年には六十万の農民が従事しておりましたが、平成十年には十五万七千、四分の一になり、村は今や限界集落となり、さらに担い手不足高齢化が加速度的になり、減少が予測されているのであります。  本基本法は、柱が国際化市場原理、意欲ある担い手育成となっておりますけれども市場原理を超えた農業の持つ非経済的価値と、農民の陰の労働と言われる公益的、多面的機能政策をもって実現するために、基本法に明記して、先進国に負けない直接所得補償政策WTO次期交渉に導入し、国内自給による国民のための命の基本法となりますように、真摯な国会議論が十分行われた上で、修正いただき、全党一致制定いただきたい。  もし、修正などが行われず、私たち農民立場意見が通らない場合、本当に、二十一世紀に向かって頑張っている農民立場を代表できるのか不安に思う、納得できないと思うところでございまして、どうか生産者立場から切にお願い申し上げますので、委員の皆さん方の御努力をぜひいただきまして、私たち意見をお入れいただきますことを心からお願い申し上げ、この機会を与えていただきましたことを感謝申し上げまして、私の意見陳述とさせていただきます。  本当にどうもありがとうございました。(拍手)
  6. 穂積良行

    穂積委員長 ありがとうございました。  次に、生源寺公述人お願いいたします。
  7. 生源寺眞一

    生源寺公述人 東京大学の生源寺でございます。  新しい基本法に大筋で賛成する立場から、基本法あるいは関連する農政改革について、私の意見を述べさせていただきます。  最初に、基本法並びに農政改革の必要性あるいは背景でございますけれども、まず第一に、一九六一年にできました現行基本法がいわば時代おくれになったということがございます。  現在の基本法は、日本経済の高度経済成長に農業をいかに適応させるか、こういう点に理念があったわけでございますけれども、高度経済成長が終わりを告げるとともに、この基本法も役割を終えたと言っていいかと思います。  その後の農政は、言葉を選ばずに申し上げれば、いわば理念のない農政になってしまったわけで、そのもとで、農地の荒廃あるいは生産者高齢化という形で、農業のじり貧化が進んでいるわけでございます。  時代おくれになったのは、基本法だけではございません。農地法、土地改良法あるいは農協法といった戦後の農政の根幹を形成してまいりました法体系あるいは制度が、現在さまざまな形で制度疲労を来している。したがいまして、こういった点についても抜本的な見直し、改革が求められている、こう思うわけであります。  三番目に、現在の基本法には、これは時代的な背景の制約があったかと思いますけれども、国際的な視野が欠けております。  現在、一方では農産物の自由化がますます強く外から求められる、と同時に、他方では世界食料需給に不安定要因が言われているわけでございます。こういった中で、国際化時代にふさわしい農政の羅針盤が必要だ、こう思うわけでありまして、その意味でも、基本法あるいは農政改革は時宜を得たもの、こういうふうに考えております。  続きまして、具体的な論点につきまして、私の考え方を述べさせていただきます。  最初に、食料自給率政策目標化についてでございます。  食料自給率というのは、非常にわかりやすい概念でございまして、食料あるいは農業の問題を考える入り口としては非常に明快な概念であるわけであります。そのこともあって、先進国中異例に低い自給率国民の関心を呼んでいる、こう言ってよろしいかと思います。  ただ、その食料自給率を、今度は逆に出口として、やや漠然とした形で、六割がいいとか八割がいいという形で掲げるということについては、政策論としてはやや疑問を投げかけざるを得ないわけであります。  今一番必要なこと、あるいは真剣に考えなければならないことは、自給率向上に結びつく具体的な課題への取り組みであります。例えば、消費者のニーズにこたえる食料国内でどれだけ効率的に生産できるか。あるいは、米にやや偏った農業、ここからどうやって脱却するか。あるいは、二割を超えるとも言われておりますけれども食料のロスをどう圧縮するか。こういった具体的な課題をめぐるいわば実効性のある農政改革、これを断行すること、それが結果として自給率向上に結びつくのでありまして、その逆ではないというふうに考えるわけであります。  したがいまして、今回法案の中に掲げられております食料自給率の目標は、農業生産者、食品産業消費者あるいは農政当局、政策当局それぞれのアクション、行動から見通される自給率の引き上げの効果、これを積み上げていって、それでもって得られる、設定される、そういう目標として考えるべきではないかと思うわけでございます。  積み上げによって設定される目標は、ある意味では事後的に検証が可能な目標であるという言い方ができるかと思います。つまり、不幸にしてその目標が達成されなかった場合に、どこに問題があったのかということをきちんと検証できる。その意味では、積み上げ型の目標は、率の水準そのものを言いますと必ずしも派手なものにはならないかもしれませんけれども、しかし、今申し上げた意味での検証可能性ということを考えますと、むしろ漠然とした目標よりも厳しい目標という言い方もできるのではないかと思います。  自給率の問題に関連いたしまして、自給率政策目標化の議論にやや隠れてしまった感があるわけでございますけれども、不測の事態に備えた食料危機管理体制を構築する、こういう方針が法案あるいは農政改革大綱等に盛られているわけでございます。私は、この点を高く評価したいというふうに考えております。  もちろん、食料安全保障が大事であるということも理由でございますけれども、もう一つ、むしろ、日本農業政策あるいは日本農政が、国際社会で発言する、その内容に対する信頼性を高めるという意味でも、高く評価したいと思うわけでございます。  我が国は、海外に向かっては食料安全保障重要性を訴え続けてきたわけでございますけれども、しかし、国内において万全の対策が講じられているかということを仮に問われたとすれば、実は答えに窮するようなお寒い実情にあったというふうに言っていいかと私は思います。  その意味では、今回、食料安全保障あるいはそのための具体的な方策を構築する、こういうことが掲げられたわけでございまして、この点は、これまでは内外不一致と言われても仕方がなかった面があった食料安全保障政策に、いわば具体的な裏づけをつけるものとして評価していいというふうに思うわけでございます。  次に、市場原理の活用と施策担い手に対する集中という問題につきまして簡単に述べさせていただきます。  消費者あるいは実需者のニーズに合った生産を促す、あるいは品質の向上に努力しその成果を上げた生産者経済的に報われる、こういう環境をつくり出すという意味で、私は農産物価格政策への市場原理の活用という方針は望ましいことであるというふうに考えております。ただ反面、過去の価格政策農家所得確保ということにかなり強く配慮して運用されてきたことがありますので、価格政策市場原理を活用してまいりますと、多くの農産物の場合に価格の低下という結果がもたらされる可能性が強いわけでございます。  問題は、農産物価格の大幅な低下ということが起こった場合に、これからの日本農業を支える、将来を担っていただきたい、そういう担い手農家にとってそれが致命傷になりかねないことであります。ここはいろいろな形が考えられると思いますけれども担い手あるいは担い手の候補にターゲットを絞った思い切った所得確保対策を講じるべきであるというふうに考えております。ただし、農業所得に直結する狭い意味での農業政策につきましては、これを安定的に農業以外の所得を得ている兼業農家にまで及ぼす必要は私はないというふうに考えております。  その意味では、政策対象がやや二元化するといいますか、やや区別されるということになるわけでございますけれども、しかし、これは何も兼業農家をいじめるということではございません。兼業農家はそのほかの農家以外の方も含めて、農村のメンバーとしてはいわば農村環境整備といった農村政策の受益者でありまして、この点では、担い手農家と全く同等の立場に立つというふうに言ってよろしいかと思います。つまり、農業の構造政策農村政策、この二つのいわば懐の深い政策体系をつくっていくというところに私は非常に意味があるというふうに思っております。  その点で今回の基本法が現在の基本法とは少し違いまして、新しい基本法の中では、幅広い農村のメンバーあるいは都会から訪れる人をも視野に含めた形で農村政策を重視している、この点を私は高く評価したい、こう思うわけでございます。  次に、株式会社の問題につきまして簡単に触れさせていただきます。  株式会社の形態による土地利用型農業の問題については、現在その具体的な進め方について検討されているわけでございますけれども、いわば石橋をたたいて慎重に慎重に農業経営の選択肢を広げるような方向で動いているわけでございます。農地の投機的な取得に対する懸念、これが日本農業のいわばガンともいうべき問題であり続けてきたわけでございますので、ここは慎重に進めるということがまさに妥当なことだというふうに考えております。  ただ、これは株式会社に限ったことではございませんけれども、新しいタイプの農業経営、これまでの農業の通念にはおさまらないような経営、販売、加工あるいはツーリズム、観光といった分野も取り入れたビジネスというようなものが現に出現し、成長してきているわけでございますけれども、こういった新しいタイプの経営については、それが農業持続性を損なわないという限りにおいて、その成長を阻害するということは避けるべきだろう、こういうふうに考えております。  次に、中山間地域への特別な助成についてでございます。  中山間地域農業に対する特別な助成は、農業の維持、農村保全が目標であるわけでございますので、農業の維持にかなめとなっている要素、例えば水利施設の維持管理あるいは耕作放棄地がぽつぽつと出てくる、それを食いとめるような地域の活動あるいは最小限のいわば農地の整備、まだいろいろあるかと思いますけれども、こういった農業を維持するためにかなめとなっている要素に対するいわば政策的な、財政的な支援という形で行われるべきだろうというふうに思っております。何がかなめであるかということも含めてでございますけれども、地元の判断をできるだけ尊重した形が私は望ましいというふうに思っております。  もう一つ、特に都府県の零細な中山間地域の農業につきましては、実は農業だけで自立して生計を確保している方というのはむしろ例外的でございます。ある意味では、地域社会が維持されているからこそ農業も維持されている、こういう関係があるわけでございます。つまり、農業以外の所得がきちんと確保できる、あるいはそこが住むに値する環境である、したがってそこに住民もいる、また農家もいる、したがって農業も維持されているという因果関係が私は強いと思うわけでございます。  したがいまして、中山間地域の振興という政策についても、実はその地域社会全体をいい形で維持するような政策の中の一部の農業政策として行われる場合にのみ効果的であるというふうに考えるべきだと思っております。この点では、いわば農業政策、狭い意味での農業政策に過大な期待を抱くことは私は禁物だというふうに思っております。  もう一つ、中山間地域農業について重要な点は、住民に対してはっきり中山間地域農業を維持するんだというメッセージを伝えることのできるような政策ということでございます。  この点につきましては、例えば支出の対象につきましてはある程度柔軟性を持たせると同時に、しかしその支出額の算出の根拠といったところにつきましては、平場の条件のいいところとの生産性のハンディキャップの度合いを考慮するといったいわばメッセージ性のはっきりするような形の政策が望ましいというふうに考えるものでございます。  もう一つ、条件不利地域あるいは中山間地域といいますと、どうしても都府県の傾斜型あるいは峡谷型の農業地帯を連想するわけでございますけれども、先ほどの信田公述人の発表にもございましたように、条件不利地域の中には比較的機械化の適性があって、規模拡大もできる、しかし栽培できる作物が限定されている、極端に言いますと北海道の天北ですとか根釧のように草しかできない、こういった形のいわば生物学的な条件不利地域農業の場合あるわけでございます。  こういった条件不利地域では、実は条件不利地域政策の本場のEU条件不利地域と比較的共通点があるわけでございます。その意味では、私はこういった、遠隔地といいますか自立性の高い農業のある条件不利地域につきましては、EU型の直接支払いといったタイプの政策もオプションの一つとして考えておく必要があるというふうに思っております。  以上で私の公述を終わらせていただきます。御清聴どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 穂積良行

    穂積委員長 ありがとうございました。  次に、河相公述人お願いいたします。
  9. 河相一成

    河相公述人 河相でございます。私は、今度の新しい農業基本法案について二つの鏡から照らしてみたいと思います。  一つは、食料農業をめぐるナショナルミニマムという鏡から見たいと思います。もう一つは、食料農業をめぐるインターナショナルミニマム、この二つの鏡から照らしてみた私の見解を述べさせていただきます。  まず最初のナショナルミニマムの問題でございますが、その一番大事な問題は、食料自給率向上を今度の法案でどう具体化し、盛り込むかということだと思います。  法案の第十五条では、食料農業農村基本計画政府が策定するということになっておりますが、食料自給率目標もその中に含まれております。ただ残念ながら、その十五条第三項では「農業者その他の関係者が取り組むべき課題を明らかにして定める」という条文がございます。ということは、食料自給率の目標を定めることは定めますが、定める場合には政府責任ではなくて、国民責任ということにどうも責任が転嫁される嫌いがあるのではないか、そういう懸念を私は持っております。  私は今度の農業基本法では、国民的に非常に関心の高い食料自給率向上の問題について、もっと具体的に、しかも政府責任でそれを達成できるような、もうちょっと具体的に申し上げますと、食料自給率の目標値、これを明確に基本法の中に盛り込むことと同時に、その目標値を達成するための具体的な方策を政府責任で行うという趣旨のものを法案の中に盛り込むことが不可欠だと思います。  私がこういうことを申し上げる理由は、これは時間もございません、制限がございますので簡単に申し上げますが、日本がGHQの支配のもとにありました当時に、例の民間貿易が禁止されている時期が戦後初期ございました。それが解除された後に実質的な自由化政策が行われたわけでございますが、農産物の関連でいきますと、一九五一年にトウモロコシ、つまり飼料穀物の実質的な自由化が始まりました。これが農産物の自由化の第一歩でございました。  それ以下はずっと、皆さん方御承知のような、ことしの四月一日から米の関税化ということで、米の実質的な自由化が行われたわけでございますが、そういう約半世紀にわたる経過によって日本農産物の自由化がほぼ完成した、そんなふうに私は考えております。そういう一連の政府の流れ、政策の流れから、先ほど申し上げたような食料自給率の低下という問題が、残念ながら、歴代政府責任自給率が低下してきた、この歴史的な事実を私たちは直視せざるを得ないと思います。  そういうことから考えまして、先ほど申し上げましたように、今度の法案では、政府責任自給率向上とそれを達成するための具体的な方策、これを法案に盛り込むことが不可欠の、まず第一の課題と申し上げたいと思います。  第二には、ナショナルミニマムの問題でございますが、自給率向上させるためには、何をおいても国内農業生産の量を絶対的にふやすということなしには食料自給率向上は果たせないわけでございます。そのためには、いろいろな方策が考えられるわけでございますが、時間の制限がございまして、すべてを申し上げるわけにはまいりませんが、まず第一に申し上げたいことは、国内農業生産量を増加させるためには、農業生産を担っている現在の農民的な家族経営、この農民的な家族経営をどうやって公的に支援するか、具体的には、価格支持政策をもっと回復充実させるということがまず第一に不可欠な条件になるかと思います。  第二には、そういうことを行う前提といたしまして、農業技術の問題がございます。現在の日本農業は、御承知のとおり、水田農業中心でございますが、その水田農業農業の総生産量を拡大させるような条件を持っているかいないか、これは客観的に見詰め直す必要があるのではないかと思います。  現在まで行われてきました水田のいわゆる土地改良事業、もうちょっと別の表現でいいますと基盤整備事業、これはいわゆる土地改良法に基づいてやられているわけでございますが、土地改良法は、皆さん方御承知のとおり、基本的には申請主義です。農民の申請主義によって土地改良事業をやる。ところが、現実に行われている行政指導は、申請させ主義になっております。したがって、農民の本当の希望に沿った土地改良事業は行われてこなかったという客観的な事実があります。  そういうことから考えますと、水田に田畑輪換という農法を取り入れて、水田日本的な輪作体系、これに取り組めるような水田の構造を真の土地改良事業によって保障していかなければ、日本国内農業生産を絶対的に増大させることの技術的な困難を克服できないのではないかということを申し上げたいと私は思います。  それから、中山間地対策の問題でございます。これも私は、実は食料自給率向上の一つの大きな要素というふうに考えております。  中山間地帯は、日本農地の約四〇%前後がそこに含まれると言われておりますが、この地域が、例えば耕作放棄地だとか、あるいは後継者がいないとか、農村のコミュニティーが破壊されたとか、いろいろな深刻な問題を引き起こしているわけでございます。この中山間地帯に対して必要な施策をどのように国の責任で行うかということは、今緊急な課題の一つと言わざるを得ません。法案の三十五条でそのことに触れていらっしゃるわけでございますが、この法案の三十五条だけでは、私は極めて不十分だと言わざるを得ません。  したがいまして、今申し上げたような中山間地帯に対して、その地帯の農業生産農村のコミュニティー、これを回復、再生あるいはさらに発展させていくという方向をにらんだ大規模な財政出動をやることが、この事態に対しては不可欠な条件だというふうに私は考えております。  ナショナルミニマムのもう一点は、食の安全性でございます。  これは皆さん方も御承知のとおり、九三年のWTO協定の中に衛生基準協定が含まれまして、近くそのガイドラインが施行されるような段階になってきているようでございます。そのガイドラインが果たして日本農業北海道から沖縄までいろいろな地域の特性がございますが、その地域特性の農業実態に合ったようなガイドラインになるのかどうか、私はこの点に非常に懸念を持っております。  そういう意味では、私は、食の安全性についてもっと具体的な、日本的な農業日本的な食、消費者が安心して日本農産物をおなかの中に入れることができるような、そういう保障を今度の新しい農業基本法でもつけ加える必要があるのではないかと思います。  以上が、かいつまんで申し上げる私のナショナルミニマムの最小限の条件でございます。  大きい二番目に、インターナショナルミニマムの問題です。  これはまたいろいろ議論がございますが、ごく簡単に申し上げます。御承知のとおり、FAOの発表によりますと、八億四千万人の飢餓あるいは栄養失調人口が世界にはいるということになっておりまして、九七年のローマのサミットで、この飢餓、栄養失調人口の解決を国際的にやろうではないかという宣言が出されました。  私は、この宣言は非常に大事な宣言だと思いますが、その宣言に沿って私たち日本の今回の農業基本法がこたえるような内容になっているのかどうか。このNGOの宣言でも、世界農業生産増大させなければいけないという趣旨のことが盛り込まれております。残念ながら、今度の新しい農業基本法案では、農業生産量の増大ということを発見することができません。そういう法案では、国際的な支持を得られるような法案にはならないのではないか、これが第一に申し上げたい点でございます。  二番目には、日本食料安全保障です。  この法案の中には、第十九条で、不測時における食料安全保障についてるる述べられておりますが、あそこで述べられております不測時というのは、法案の中には具体的になっておりませんが、今までの国会審議を通じて報道などで私が散見するところによりますと、相手国の戦争及び輸出国の種々の経済困難あるいは突発的な気象変化などが想定されて、日本に対する輸出国日本に対して食料を輸出できなくなった場合にどうするか、そういういわゆる不測時、あるいは有事と言ってもよろしいんでしょうか、そういう事態に対してどうするかということについて、若干の条文がございます。  しかし、私が考えますに、食料安全保障というのは、いつでもどこでもだれでも必要な食料生産、入手できる状態を平時に三百六十五日整えておくことが必要だ、これが私の理解の食料安全保障でございます。そういう考え方でこの新しい基本法案第十九条にございます食料安全保障考え方を組みかえていく必要があるのではないか、そんなふうに考えております。  そういうことをいろいろ申し上げましたが、以上申し上げたことから出てきます私なりの結論は、今回の法案は、残念ながら、今申し上げたようなナショナルミニマムとインターナショナルミニマム、その二つの鏡から照らしまして、それに適応した法案ではないというふうに言わざるを得ないわけでございます。  また、今度の法案が唯一満たしている条件は、WTO農業協定にございますような農産物貿易の全面自由化という考え方、それから各国農業政府助成の削減という考え方、この二つの条件は十分に満たしているように私は見受けられます。そういうことで、先ほどから申し上げているような国内農業、それから国際的なミニマム、そういったことに対してこたえることができるような法案ではないというふうに考えざるを得ないわけでございます。  そういう意味では、私は、今度の法案審議に当たりまして、法案の内容と体系、すべてを全面的に組み直して、その組み直した法案についての審議を徹底して皆さん方に取り組んでいただきたいということを要望いたしたいと思います。そのためにも、組み直すためにも、十分に時間をかけて国民的な論議を尽くした上で、国民的な合意づくり、それと国際的な支持とが得られるような、そういった二つの条件を満たすことができるような法案の組みかえ、これをやっていただきまして、審議の仕切り直しということも当然私の念頭にはございますが、そういう一連の手続なしに今度の法案を成立させることになりますと非常に残念な結果になるのではないか、そういうことも申し上げて私の意見陳述を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  10. 穂積良行

    穂積委員長 ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 穂積良行

    穂積委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横内正明君。
  12. 横内正明

    ○横内委員 自由民主党の横内正明でございます。公述人先生方には、ただいま貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。  最初に、原田公述人にお伺いしたいと思います。  公述人は、全国農業協同組合中央会の会長でありますね。したがって、JAグループの総帥という立場にあられるわけでございます。JAグループは、今回の新しい基本法制定に向けて大変に努力をしてこられまして、国民世論を喚起して、この基本法制定していく推進役として御尽力を賜ったわけでございまして、そういう御努力に心から敬意を表したいと思います。そして、ただいまの公述では、この基本法案につきまして、JAグループの主張が最大限取り入れられているということで高く評価をしていただいたわけでございます。  そこで御質問でありますけれども、この新しい基本法理念、それから目標を達成していくためには、政府、それから自治体と並んでJAグループの役割というものは大変大きなものがあるのではないか、そういうふうに思うわけでございます。この法案の九条にも、農業者農業者の団体はこの基本法理念を達成するために主体的に取り組んでいくように努めるんだという規定もございますし、JAグループとして、この目標を達成していくためにこれから大いに努力をしていかれることだと思います。  そこで、JAとして、この新基本法制定されるということを契機として今後どういうふうに取り組んでいかれるのか、この基本法理念、目標を達成していくために具体的にどういう取り組みをされるのか。先ほどのお話では、国民共生運動というようなこともおやりになっているというふうに聞くわけでございますけれども会長としてこういう点に力を入れてこの基本法の目標を達成するために取り組んでいくんだというところを、少し具体的に御披露いただければありがたいと思います。
  13. 原田睦民

    原田公述人 新たな基本法、四つの問題が御案内のように基本的にはあるわけであります。同時に、農業改革大綱も示され、五年ごとに見直しをされる農業改革政策も示されておるわけであります。  そういう中に、自給率を例えば上げるにいたしましても、要はやはり地方が取り組まなければならない課題であろうと思うわけであります、もとより政府と一体でありますけれども。そのために、それぞれの県におかれまして、県、市町村あるいはJAグループ農業政策改革プログラムの推進をやっていこうということで既に取り組んでいる先進県もありますし、中でも各農政局を中心にしながら各県の農政部長さん、これらも今ではほとんど現場に出られまして、そして市町村、JAグループと一緒にそれぞれの地域地域政策プログラムをつくってそれを実践していこうというような機運が出ておりますし、そのような要請を全中といたしましては提唱してきておるところでございます。  一体となりまして、二十一世紀を目指してそうした改革に具体的に取り組んでまいりたい、このような基本姿勢のもとに取り組んでまいりたいと存じております。
  14. 横内正明

    ○横内委員 ありがとうございました。  次に、信田公述人にお伺いしたいと思います。  公述人は、北海道農民連盟、六万五千戸の農民連盟の委員長をしておられる。と同時に、御本人が四十ヘクタールの大規模農業経営しておられる、そういうお立場から具体的な御提案があったわけでございます。  基本法については、一定の評価はされるわけでありますけれども、しかし命の基本法としては不十分であるということで、具体的に修正すべき点を六点指摘されて、それを見直すべきだ、そして全会一致で成立させるべきだという御提案がございました。御提案については、これからこの委員会の場で議論していくわけでありますけれども。  実は、一昨日も札幌へ参りまして、地方公聴会がありました。北海道農業の実情について、委員長の同志でもある書記長さんからも具体的なお話を承って、専業農業地帯である北海道の現在の農業の苦境について種々、大変厳しい状況というものを承ったわけでございます。今のお話でも、農業人口が大幅に減少してきているという状況もあるということでございます。  そこで、北海道農業農民を代表するお立場からお伺いしたいのが、現在は非常に苦境にあるわけでありますけれども、しかし同時に、北海道農業というものは、この新農業基本法理念、目標を達成していくためにも大変重要な地域であろうというふうに思います。とりわけ食料安定供給、それから自給率向上を果たしていくためには、米というよりは、むしろ小麦とか大豆とか飼料作物とか畜産とか、そういうものの生産を拡大していかなければならない。そのためには、やはり北海道がそれを大規模にできる我が国の国土の中では唯一の地域であるわけでして、基本法の目標を達していくためにも北海道農業に頑張ってもらわなければならないし、期待は非常に大きいだろうと思うわけでございます。  そういう意味で、委員長からは、少し長い目で見て、北海道農業というものがこの新基本法の目標を達成していくために将来はどうなっていくべきなのか、北海道農業のビジョンみたいなものをお聞かせいただければありがたいと思います。
  15. 信田邦雄

    信田公述人 横内先生から将来の北海道農業考え方についての御質問がございまして、実は私、意見の中で申し上げましたように、北海道では、大変厳しい状況ですが、これまでの農政の展開の中で、意欲を持って本当に頑張っていることをまず申し上げておきます。それによりまして、日本自給率の二六%、おおむね四分の一は北海道だけで確保することが確立されているわけです。  しかし、申し上げましたように、世界の流れ、日本だけで農政の展開ができない中で、大規模経営や多額の投資をした北海道農業が今大変な状況にあります。しかし、二十一世紀は、やはり環境を守りながら、そして国民信頼を得ながら国内生産を拡大して自給していくために、やはり北海道がその責任を担うというのは極めて重要だと思いますし、私どもとしては、そこはもう必ず担っていかなきゃならぬ、そういうふうに考えているところであります。  したがいまして、先生の御質問にありましたように、どのような北海道農業を目指すのか。私どもとしては、基本的には、やはり世界と一緒になってやれる農業政策的にまず国が示していただくこと、さらに、品質も含めた、価格も含めた、国内消費者国民の皆さんの支持が得られるような農産物を常に提供していく、そういう中でこそ北海道農業が生きていけるのではないか。ただ、政策的に、若干今回の法律もそうでありますが、大規模に、あるいは市場競争で勝てば北海道農業がやれるということではない、こんなふうに思って、二十一世紀につきましては、国内国民の支持を得た政策と、そしてそういった農産物供給していってこそ北海道農業が成り立つのではないか、こんなふうな考え方を基礎に私の意見も述べさせていただいたところでございます。  以上でございます。
  16. 横内正明

    ○横内委員 ありがとうございました。  次に、生源寺公述人にお伺いしたいと思います。先生は、新基本法検討をした食料農業農村基本問題調査会委員もしていただいたということで、そういった調査会での議論を踏まえて、今幾つかの重要なポイントについて論理的に整理をして貴重な御指摘をいただいたと思っております。  そういう中で、先生がおっしゃった最初の食料自給率については、単純な目標ではないんだ、単に数字が六割だとか八割だとか、そういうふうに決めればいいものではないので、そういう意味の目標化ということではなくて、むしろ施策と一体的にというのでしょうか、こういう施策をやっていけば、その結果としてこういう数字になるんだよという、言ってみれば、政策というか課題と目標というものは一体的に提示をしなきゃいかぬというような御趣旨の御指摘だったのじゃないかと思います。まことにそのとおりだなというふうに思います。  そして、そういう先生の御指摘が通って、この基本法では十五条の三項にそういう趣旨のことが書いてありますね。食料自給率の目標は、農業者その他の関係者が取り組むべき課題を明らかにして定めるものとするということで、単に数字がぽんとひとり歩きするものじゃなくて、具体的にこういう施策を講ずるからこうなるという、課題なり施策と一体的な数字なんだということを、恐らく先生の主張が通ってそうなっているんだろうと思いました。  しかし、そうはいっても、この自給率、現在の四一%でいいわけはないのであって、長期的にはやはり高めていかなければならない。十年というのじゃなくて、二十年、三十年、四十年の努力が必要だと思うのですけれども先生農業の専門家としてのお立場で、中期的に、例えば十年後、それから二十年、三十年という長期をとらえて、やはりこのくらいの数字の目標を目指すべきだ、そのためには政策としてこういう政策を十年間はとり、その後はこういう政策をとる、そういう政策のシナリオというのでしょうか、それでこういう数字を目指すべきだという、そういうような長期的な自給率の目標数値とそれに至る政策シナリオというのでしょうか、ちょっと言葉がうまく言えないのですけれども、それを先生はどういうふうに考えておられるか、ちょっとお聞かせいただければありがたいと思います。
  17. 生源寺眞一

    生源寺公述人 まことに難しい御質問をいただいたと思っておりますけれども、現在の基本法の案にございます自給率の引き上げの目標というのは、あるところをベースにいたしまして、それに、これでもって一%、これでもって〇・五というような形で、象徴的な言い方をすれば、積み上げて目標を立てるということになるかと思います。  今議員御質問の長期的に見てどの程度の率がいいかという問題につきましては、私は、むしろ一人当たりの国内食料供給の力といいますか、供給の量、例えば、これをどう考えるかというのは非常に難しい問題がございますけれども、一人一日当たり二千キロカロリーの食料確保されているべきだ、そこから率として計算しようと思えばできるという形で、むしろ長期的な場合には、私は、絶対的な国内食料確保という観点から議論をスタートして、それが自給率の率という形であらわすならばどうなるか、こういう筋道で考えていくのが適切ではないかというふうに考えております。
  18. 横内正明

    ○横内委員 いずれにしても、その辺はこれから法律が通ってから、政府の中、あるいは審議会でかなり慎重な議論をして決めていくのだろうと思います。  もう一点、お話を伺ってもっともだと思いましたのが、この法律でもそうなんですけれども食料安全保障あるいは食料危機管理ということを大変強調しておられました。それがしっかり出ているから大変いいという御指摘があったわけでありますけれども、現在の食料危機管理、安全保障ということを言われながら、しかし、その具体にやっていることというのはまことにお寒い実情だというようなお話がありましたが、危機管理というようなことで具体的にどんなことをやるべきなのか、先生のお考えを、具体的な施策というようなものを御指摘をいただきたいと思います。
  19. 生源寺眞一

    生源寺公述人 この点につきましては、恐らく海外の施策がかなり参考になると考えております。  例えば、スウェーデンですとかスイスですとかあるいはドイツ、こういったところでは食料安全保障につきましては、もちろんその目標の水準につきましてはいろいろな国の事情がございまして違いはあるわけでございますけれども、何らかの事態が起きた場合に、例えば一年目には農業の体制をこういう形に転換するんだというような詳細な書き込みが行われているわけでございます。それでもって、二年目にはこういう形、また一方では、家庭での備蓄、あるいは国としての備蓄がこういう形で運用される。  また、農業につきましては、今石油、つまりエネルギーを使わなければならないわけでございますけれども、石油をどういう形で優先的に農業に投入するようなことが行われるか、こういったプログラムをつくっておくということが極めて重要だろうというふうに思っております。
  20. 横内正明

    ○横内委員 ありがとうございました。  河相公述人にも御質問しようと思っておりましたけれども、時間が来てしまいまして、大変に失礼しました。どうもありがとうございました。  これで質問を終わります。
  21. 穂積良行

    穂積委員長 次に、小平忠正君。
  22. 小平忠正

    ○小平委員 民主党の小平であります。  きょうは、四名の公述人の皆さんにおかれましては、大変お忙しいところ当農水委員会においでいただきまして、貴重な御意見をいただきました。まず冒頭に、心から感謝、御礼申し上げます。  限られた時間でございますので、私からも私なりの考え方、あわせて質問させていただきますが、時間の関係上、場合によれば四名の皆様に御質問ができないかもしれませんので、その点はどうぞよろしく御理解をいただきたいと思います。  まず最初に、私どもは今回のこの食料農業農村基本法、次世紀に向かってしっかりと我が国農業のあり方をつくっていこう、こういう中で当委員会は今審議を続けております。先般も札幌、松江と地方公聴会もやりまして、きょうは中央公聴会を行っていますが、私どもは、基本的に今回の政府提案のこの法案というのは大いに評価できる面もあります。しかし、やはりいろいろな不備があるということは、多分にいろいろな方面に配慮をし過ぎてトーンダウンをしてあいまいもこ的になってしまったというか、しっかりと明快に打ち出さないで何となくぼかしてしまっている、一つの逃げの姿勢があるんではないか、そんなことを思いながら今いろいろと審議をしているところでございます。  そこで、私も、今回のこの法案は、まず冒頭にしっかりと前文をつくり、そこには、農は国の基なり、この精神を高らかにうたい上げて、そしてその上で一条から入っていく、そういうことで主張しております。同時に、いろいろな問題がございますけれども基本的には、やはり国内のこの農業生産というもの、また農業者の今後の経営のあり方、それから、どう消費者評価されるかということに視点を置いていろいろと主張しております。  まず最初に、原田会長にお伺いするんでありますが、いろいろと御意見をいただきました。基本的には賛成である、そういうことでお話しいただきましたが、御指摘いただいた中で、自給率が五〇%となるよう図っていくべきである、また、国内農地をしっかりと確保し、農地の総量を明示する必要がある、そういうお話をいただきました。同時に、三十条ですか、農家所得確保経営安定対策は必要であり、最大配慮を必要とする、こういうような御指摘もいただきました。こういう御意見は私は当然であると思います。  そして同時に、農水委員会においても、大臣を初め政府はこのような答弁を繰り返しております。私ども同じ思いで言っておりますが、しかし問題は、しっかりと法律にそこが明記されておりません。私はそこが問題だと思います。幾ら今農水委員会で口頭でやりとりしても、やはりこれがしっかり法律条文となって残っていかなければ、私はこれが将来において担保がないと思います。  そんな思いでいるんでありますが、原田会長、そうしますと、現行のこの政府提案の法案が、今原田会長のお話ですと、このままでよろしいんでしょうか。やはり、今おっしゃったようなお話を詰めていきますと、もう少しそこを強調して修正なりが必要だというお考えはお持ちでございませんか。ちょっとそこのところをお尋ねしたいと思います。
  23. 原田睦民

    原田公述人 農は国の基であるとただいま御発言が先生の方からございました。先生方も御案内のことと存じますけれども、かつて、ある全中会長さんが、田畑のある者は田畑を耕そうじゃないか、田畑のない者は心を耕そうじゃないか、田畑も耕さない、心も耕さなければ、その地域、その国は衰微するよということをおっしゃいました。  今、日本状況が、米にいたしましても史上未曾有の三五・五%という減反をやり、後継者が不足をし、年々歳々耕作放棄地がふえてきております。そして、とうとう国内自給率も四一%というところまで下がってきております。心の問題についても、今、国会においても日本の教育問題についていろいろと論議をされておるわけでございます。  私は常々、国防と食料問題とエネルギーとは、国民の生命財産、日本の平和と安定を図る上において国の責務としてこれは位置づけるべきであると。そういう意味合いにおきまして、今度の基本法がまさしく農業の憲法であるというようにも申し上げました。また、重くこの基本法を位置づけるといったようなことで、先生の方も前文にそういうようなことをしたらどうだろうかという御意見でございましたが、御案内のように、食料安定供給確保多面的機能発揮農業持続的発展農村振興という基本的な問題についてはうたわれておるわけでありますが、前文につきましては、やはり法案のスタイルに関することでございますので、国会審議において検討いただく内容であろうというように思います。  以上でございます。
  24. 小平忠正

    ○小平委員 全中原田会長の御意見をいただきましたが、私がお聞きしたことはほかにもあったんでございますが、前文のみならず、今いろいろとお話しいただいた中で、ならば、国内生産の問題ですとか、あるいは自給率の問題、五〇%になるように図っていくというお話もありましたので、そんなことを含めて御質問したんですが……。  時間もありませんので、信田委員長にお伺いします。今ちょっとお答えいただけなかった点も含めてですが、今信田委員長は、この法案見直し修正をすべきであるという論点で意見の開陳がございました。私は同じような思いをしているわけでありますが、また、原田会長とも同じように、今、国内生産の可能な限り維持増大をうたうべきである、こうも言われております。同時に、十五条の基本計画、これで国会政府責任を持つべきだ、私も同じ思いでありまして、特に十五条のところでは、この第三項ですか、ここでは、まさしく消費者あるいはその他の関係者に責任転嫁をされがちな危険もある、私もそんな心配をいたしております。  そういう中で三十条のことに絡めてお話がございまして、農業所得補償を明確に明記されたいという点等々ございましたが、信田委員長は、そうしますとこの法律は、今のお話では食料農村については評価されたい、しかし農業という面においてはいささか欠けている、そういうようなことに私はお聞きしましたが、それでよろしいんですか。そうなりますと、特に農業という視点の中、今お話のございました中で特に強調されたいことはいかがな点でしょうか、そこを確認させてください。
  25. 信田邦雄

    信田公述人 先生から御指摘ございましたが、私ども、今回の食料農業農村基本法食料として国民が入ってきた、それから、これまでの施策で反省をしながら農村をもう一度きちっとしていくという意味では前進ですが、これは食料農業農村は一体でなければならないために、どれかだけがいいということではございませんし、とりわけ農業がしっかりしていてこそ安心して国内農産物消費者である国民消費できる、それで食料が価値があるわけです。そして、農業所得の安定のもとで確立してこそ農村が成り立つという相関関係でございますから、そういう意味で、私どもは、三十条できちっと農業所得確立しておいてこそ食料農村も成り立つ、こういう観点から申し上げたところでございまして、消費者の皆さんの支持も得られると思います。  三十条一項の方で、市場原理に基づいて価格政策見直していくことについては国際化でやむを得ないんですけれども、その反面、どこの国もきちっと国の責任農家所得あるいは農家育成担い手確保しているにもかかわらず、三十条の二項は、どうも、育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するための施策を講ずるでは、私も四十町つくって、優雅でなく、本当に厳しい借金をしながら頑張っていますけれども、これでは息子に、おまえらこの法律で頑張ってくれと言いにくいわけですね。  そういう意味で、諸外国に倣うんではなくて、日本の国が責任を持って、ここはきちっと農家所得補償するというふうにしておいてこそ食料安定供給食料安定供給するためには国土も守られるし環境も守られていく、すべてのものがここにかかわっていく。自給率もそうですが、やはり農家の月給が確保されてこそ、所得確保されてこそそうなるんではないか、こんなふうに思っています。  とりわけ、北海道の専業農家地帯は国際的な影響を非常に受けます。今後、米の次に畑作物その他、酪農もそうですが、影響を受けまして、国が膨大な投資をしたものをこれから実らすためにも、国際的に通用する、認められるところの施策所得補償として入れていただきたい、こういうところを強く主張し、もし、この三十条がこのままですと、農民としては、この法案は、柱、命であるところが欠けていると言わざるを得ないんではないか、こんなふうに思っているところでございます。
  26. 小平忠正

    ○小平委員 あと残り五分なものですから、生源寺先生、これは今、原田会長もまた信田委員長、それぞれ御発言があった中なんですけれども条件不利地域で、中山間というものを、どなたでしたか、条件不利地域ということに言葉をかえるべきだ、これは三十五条の問題でしょうか、そういう御指摘がございました。  私は同じ思いをしているんですが、特に三十五条二項で、このように条件不利地域、これに対する農業生産条件に関する不利を補正するための支援を行う、これを言っておりますね。しかし、問題は、三十条にそこが欠落している、そういうことでこのことの御指摘がございました。  これは、生源寺先生もそのことの御指摘があったわけでありますが、私は、そういう意味におきまして、三十条、三十五条、こういうことを対比すると、この問題はやはり不備があるのではないかという思いをして今お聞きしておりました。生源寺先生、これについて今御発言のありましたとおりで、これでよろしゅうございますね、そうですね。
  27. 生源寺眞一

    生源寺公述人 私も所得確保対策につきましては、すべての農家にというふうには申し上げませんでしたけれども、意欲のある人あるいは将来を担っていくような方についてははっきりした形で所得確保するというような政策をとるべきだということを申し上げました。そのとおりでございます。  中山間地域につきましても、これはむしろ私も条件不利地域というふうに考えて、農業政策、独自の地域の指定のあり方ということを長期的には考えていいと思いますけれども、真に効果的な政策をそういうところに集中して行うということは、これは結構なことだというふうに思っております。また、真に効果的な政策であれば、実は間接的にであれ所得の条件の改善ということにもつながる、私はこういうふうに思っております。
  28. 小平忠正

    ○小平委員 ありがとうございます。  時間が来ましたので終わりますが、最後に、河相先生、本当に時間がなくて済みません。ただ、八億四千万の飢餓、栄養不良人口がこの世界じゅうに存在する、日本の人口の七倍の皆さんが今飢餓、栄養不良にあえいでいらっしゃる、そういう中でこの基本法は果たして国際社会に向かって高らかにうたい上げることができる法文か、そういう疑念、懸念をおっしゃられましたが、私も同感であります。こういうことを思いながら、この法律が皆さんに本当に評価してもらえる基本法になっていくように頑張っていかなきゃならぬ、こう思いながら質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  29. 穂積良行

    穂積委員長 次に、宮地正介君。
  30. 宮地正介

    ○宮地委員 公明党・改革クラブの宮地正介でございます。  きょうは、公述人の皆さん、大変御多忙の中を中央公聴会にお越しをいただきまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。  与えられた時間が十五分ということでございますので、端的に御質問させていただきたいと思います。  最初に原田公述人にお伺いをしたいと思います。  原田公述人は、当面自給率の目標については五〇%を目標にしてその向上に努めるべきである、こういうお話を伺いました。私は、この自給率向上というのは今回のこの新法の生命線であろう、こういうふうに理解をしております。  この自給率向上というのは、いわゆる生産者の段階だけでできる問題ではありません。消費者の理解あるいは国民全体の食生活の大きな変化という問題の中で、生産性は上がってきましたけれども、しかし昭和三十六年、現在の基本法ができたころには七九%あった自給率が、ちょうど三十八年たちまして毎年一%ずつ落ちた感じで、現在四一%まで落ち込んでしまったわけです。大きな食生活の変化という、国民のそうした流れの中で大変に落ち込んだ、こうした問題を五〇%に引き上げるということは大変至難のことであろう。そういうことで、私は、やはり国民の理解と協力と、国会と内閣が総力でこれに取り組みませんと、なかなかこれは目標設定してもその実現に向かわないであろう。  そういう意味合いにおきまして、私は、内閣の中に食料安全保障対策室的なものをつくって、現在、危機管理としては軍事とか災害はありますが、そこに食料という問題を入れて、やはり国民全体、国会、内閣、総力戦でこの問題に取り組んでいく、そこに初めて、今回の新法の中にある基本計画で農水省が中心として、それではどういう実効ある計画をまず五年を目途にしてつくり上げていくか、この連動が大変重要ではないか、こう考えておりますが、この点について御意見があればお伺いしたいと思います。
  31. 原田睦民

    原田公述人 我々JAといたしましては、かねてより自給率五〇%を目標とするというように唱えてまいったところであります。  ただいま先生がお話しのように、現行基本法ができた当時、国内自給率は七九%、それが毎年一%ずつ下がってまいりましてついに四一%まで下がってきた。では、この一%を上げるのにも容易ならぬ問題があることは御案内のとおりであります。例えば、麦作においては今より一・七倍とか、あるいは大豆であると三倍であるとか、さらには、飼料作物であれば一・四倍にふやさなければ一%上がらないということが言われております。  したがいまして、これは生産者そして消費者一体になると同時に、よく言われる適地適作、そういうことも必要であり、さらに、年々一%ずつふやしていくということになりますと、これはただ単に、今申し上げました生産者消費者、農林水産省だけではとても成就できるものではございません。ただいま先生がお話しになりましたように、各省、内閣を挙げて、国民一体になって取り組むことによって、この問題は初めて実現できるものと存じております。  そういうために、我々といたしましては、地域におきましても、消費者の皆さん、あるいは労働組合の皆さん、あるいは生協の皆さん等々とシンポジウムを開き、そのようなお話を申し上げ、先ほども申し上げましたが、全国規模におきまして食料環境フォーラムというものを開催して国民の世論形成に努めたい、このように思っておるところでございますが、ただいま先生がおっしゃったようなことをぜひ実現していただくように、今後ともよろしくお願いいたします。  ありがとうございました。
  32. 宮地正介

    ○宮地委員 次に、信田公述人にお伺いしたいと思います。  信田公述人は、北海道農家農業生産をしているお一人という立場から、先ほど大変貴重な御意見をいただきました。私も本年、信田委員長地域に視察に行かせていただきまして、北海道生産農家の皆さんが大変な御苦労をされているということは、実態を見させていただきました。特に、昨年のお米につきましても、いわゆる手取りが一万二千円。本当に本州に比べて、大変な輸送コスト、あるいは豪雪地域、そうしたいろいろなハンディの中で非常に御苦労されているという実態を見させていただきました。恐らく、そういう中から、三十条について所得政策をぜひ導入してもらいたいという御要望ではなかったか、こう承りました。  ただ、この三十条は、御存じのとおり、WTO交渉に向けてのいわゆる一つの条文でございまして、価格が大幅に下落したときにはそれなりのフォローアップはするというのが、二項に入っているわけでございます。  来年からのWTO交渉考えたときに、我が国が、やはり開放経済体制の中で、国内的にもこういうような市場原理を導入した価格政策を導入しているんだということを、国際的な中で、思い切って同じ土俵の中で、日本国が、政府が申し上げる、こういう一つの条文であろうと私どもは理解しております。それでは、そうした平たん地で大変なハンディをしょっている北海道生産農家の皆さんを、何とか救済できる方法はないんだろうか、これも、我々は真剣に今検討しているわけであります。  そういう中で、果たして三十条の中にそうした所得補償政策を導入することがいいのか。あるいは、十五条の四項のところにある、この基本計画をさらに実効あらしめるための総合政策をつくり上げていく、これを五年ごとに見直すわけでございますが、この実効政策の中で、そうした北海道のような平たん地の稲作生産農家の御苦労に対して、何らかの経営安定対策というフォローアップができないものだろうか。こういうことも我々は考えているわけでございますが、この辺、いわゆる三十条でなければだめなのか、あるいは、基本計画の実効政策の中で十分検討するということまでの柔軟な思考、哲学をお持ちなのか、この点について御意見を伺えればありがたいと思います。
  33. 信田邦雄

    信田公述人 先生には、日ごろ大変御指導いただいておりますことを、この席をおかりしても、また感謝を申し上げたいと思います。  私ども、三十条に固執しているのはなぜかといいますと、前のガット交渉のとき、日本は米の生産調整をしているのだから、米について云々といって世界に言ったところ、どこにそんなことが書いてあるのかと世界から指摘された経験があるわけですね。  それで、やはり世界法律に基づいて動いている。国民の決めによって世界とともに歩んでいる、そういう現在の情勢を踏まえて、やはり条文にきちっとうたっておく。  十五条で、私ども先生がおっしゃられるように若干いいのかなと思ったのですが、どうも国会の承認を得るようになっておりませんので、これももしかしたら、行政だけで提案して決めたということも世界で通るのかどうなのか、非常に心配でございまして、三十条でぜひ先生たちお願いをしたい、こう思っております。  もちろん、十五条で、その基本計画国会の皆さんで協議をした上で承認されるとなれば、これは世界に通用すると思いますけれども、そうでなければ非常に弱い。しかも、所得補償政策でなければ、黄色の政策も今度のWTOでは認められない可能性が非常に高いので、三十条では、特に専ら農業を営む者に対しての国際的に認証される法律にしておくことが重要ではないか。  また、そうでなければ、自給率確保していく本当の意味での専業農家がいてこそ自給率確保できるわけですから、あるいは増大できるわけですから、それも不可能になってしまって、先生方が主張しているこの三十条だって難しく、達成できない方向になってしまうのではないか。  そういう心配で、ここに力を入れて皆様にお願いをいたしているところでございます。
  34. 宮地正介

    ○宮地委員 次に、生源寺公述人にお伺いしたいと思います。  生源寺先生は、食料安全保障という、この危機管理のところが大変に重要である、今回の新法でここのところが入ったことは大変に評価ができる、こういうお話で、私も、我が国食料安全保障、あるいは世界的な食料危機、温暖化現象とか人口増とかそういうことを考えたときに、我が国がこれから世界食料安全保障国際貢献していく、こういう大変重要な段階に二十一世紀は入ってきているわけでございまして、そういう点では大変同感でございます。  国際貢献の問題も、今回、この法案に入れられておるわけでございます。それをさらに進めたときに、私は、先ほど原田公述人にも申し上げましたが、やはりこの内閣の中に、そうした食料危機管理の問題をしっかり明確にすべきであろうということで、内閣の安全保障室に食料問題をきちっと、防衛と災害と食料というような形で明確にすべきではないか、こういう意見を私は持っているのです。この点について、先生はどういうような御意見をお持ちなのか。  それから、もう一点。中山間地域の問題について、先生は非常に、農村地域活性化のために、このデカップリング制度の導入を有効的に活用したらどうか、私も、そのとおりと思います。  問題は、この財源の問題と、それから交付の仕方ですね。ここがやはりこれから、今基準づくりをやっておりますが、大変大きな問題でございまして、農家一戸当たりに、ある程度集落的に交付するやり方、集落全体に交付するやり方、あるいは市町村という行政単位に交付するやり方、こういうやり方もあるわけです。  それから、今回、いわゆる農水省の予算の中でやろうという意見もあるし、それにプラスアルファして、自治省の地方交付税の中の積算の根拠にこうした問題も導入すべきである、あるいは大蔵省は、やはり大事な問題でありますから、農水省の予算プラスアルファの新規財源を捻出して、抜本的な、デカップリング制度の効果あらしめるような財源措置をすべきである、こういう意見もあるわけでございますが、この点について、あわせて二つ、生源寺先生に御意見を伺えればありがたいと思います。
  35. 生源寺眞一

    生源寺公述人 第一番目の点でございますけれども食料安全保障というのはかけ声だけでは何にもならないというふうに私は考えております。これはまさにセーフティーネットでございまして、こういう不測の事態というのは、起こってもらっては困るわけでございます。  ただ、私は、今の日本の社会の空気といいますか雰囲気を見ておりますと、こういう不測の事態が仮に起こった場合に、幾つかの基本的な点についてのセーフティーネットが欠けているという状態が国民の間に情報として入った、そのときのいわば社会の意思決定なり行動の方にむしろ不安を覚えるものでございます。そういう意味では、私は、詳細なプログラムをきちんとつくるということで実は食料安全保障の本当の意味での実効性のある施策というものができるというふうに考えております。  また、食料安全保障は、国民の皆さん方、日ごろは食事、食べ物については全く心配することなくとっておられるわけでございます。こういった中で食料のことを考えよといってもなかなか難しい点があるわけでございます。ショック療法と言うとちょっとなんでございますけれども食料には絶対的な必需品としての意味があるということを改めて認識していただくという意味でも、食料安全保障をいわばグレードの高い施策として考える必要があるかと思います。ただ、それをどういう形の組織なり形態でやるかということにつきましては、私、今、特段の意見があるわけではございません。  それから、二番目の中山間地域の問題でございますけれども、これは、私の理解では、もともとEU施策について、これを日本に何とか導入できないかということで、結局は、日本には日本独特の農業の特質がございますので、それに合った形の施策を導入しようという形に、話としては進んできているというふうに思います。  問題は、私は、この施策は、余り形式だけで、名前だけでわずかな施策であったのでは何にもならないというふうに思っております。ここまでの農地はきちんと確保するということであれば、かなり思い切った施策を組む必要があるかと思っております。  問題は財源というようなことでございますけれども、これは中山間地域あるいは条件不利地域政策に限ったことではございませんけれども農政改革を本当の意味で実のあるものにするためには、それを支える人なりあるいは組織なり財源をきちんと見直すということが必要かと私は思います。もちろん、農林予算がその意味でふえるということがあれば結構なわけでございますけれども、残念ながらなかなか厳しい状況があるとすれば、予算全体の中で、いろいろな予算項目があるわけでございますけれども、まさに聖域を設けない形できちんと見直す、これが農政改革全般、特に中山間地政策について実効性のあるものにするためのポイントだというふうに思っております。
  36. 宮地正介

    ○宮地委員 ありがとうございました。
  37. 穂積良行

    穂積委員長 次に、菅原喜重郎君。
  38. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 自由党の菅原喜重郎でございます。きょうは、四公述人には、皆さんたち立場からいろいろ御意見を申し述べていただきました。  それで、最初に、原田公述人に質問をいたしたいと思います。  私は、自由化されても食える日本農業確立ということを主張してまいりまして、その根底には、やはり優良農地とかんがい排水の完備、水の確保、これは国土改善の立場からも国家が責任を持って実施すべきだということを、この委員会においてもしょっちゅう発言している人間でございます。  今回、原田公述人から見ますと、食料自給率少なくとも五〇%を確保することを要望されているようなんですが、実は、やはりこのためにも、また御主張の日本型食生活確立するためにも、農地面積の明確化を図るべきだという主張もなされておりました。私は、二百万ヘクタールの優良水田確保するならば、米においてはもう、私が指導できれば一反歩六百キロ指導できるような自信を持っていますので、一千二百万トン、さらに本州におきましては裏作が可能ですから、麦の裏作を入れますとこれは一千万トン以上確保できる、二千万トン。このことを実施さえすれば、五〇%の食料自給率はすぐにでも、いわゆるこういう基盤、かんがい排水と一緒に確立すれば五〇%確保できるんだ、こう思っているわけでございます。  しかし、どうも今まで農業団体ではこういう基盤整備は農民負担でありまして、これに力を入れるよりも価格政策や補助金政策の方に力を入れてきたのじゃないか。その結果が、第二種兼業化を内地においては促進させたのではないかと思っております。  しかし、今回この新しい農業基本法を契機に、中央会、農業団体としては、これから農地の集積、有効利用、さらには今言いました、国際的にも対応できる健全な日本農業確立のためにどのような構想、抱負をお持ちですか。お聞きいたしたいと思います。
  39. 原田睦民

    原田公述人 日本の農耕地もかつては六百万ヘクタールあったわけでありますが、年々農耕地が減り続けまして、現在では五百万ヘクタールを切っておる状況でございます。  そこで、米につきましては、二百万ヘクタールあればまず一千万トン、六百キロつくれば一千二百万トンが確保できるわけでございます。あとの三百万ヘクタールの農耕地をどのように有効利用、活用するかということ、これは極めて大切なことであろうと思うわけであります。  先ほど、ローマのサミットの話も話題に出たわけでありますが、その際、農地というのは世界共有の資産である、したがってそういう農地がやはり荒廃をするようなことのないようにしなければならないということも大いに論議をされたところであります。  そこで、水の問題、その先に農業基盤整備の問題でございますけれども、全国平均におきましては、農業基盤整備、土地改良事業というのは平均してまだ五〇%というような状況でございます。農地流動化、集積、大規模化を図っていく上においての農地のそうした基盤整備というのはこれから大いに進めることにおいて、やはり国際競争に勝ち得る一つの生産を目指していくべきであろうと存じておるところであります。  その際、やはり平たん地あるいは条件不利地域、特に中山間地あたりのそうした農業基盤整備がおくれておることは御案内のとおりであります。したがいまして、そうした農業基盤整備に当たりましては、国、地方、なるべくその生産者の負担を軽くするような政策をぜひとっていただきたいし、同時に、農村においてはそうした農業基盤整備と生活基盤整備というのも忘れてはならない問題であろうと思うわけであります。そのための土地の利用計画というものをきっちりとこの際つくる必要があると存ずるところでもあります。市街地におきましての都市計画区域内、市街化区域、市街化調整地といったような土地利用におきましても、だんだん下水道等が整備をされてまいりましたが、農村地域におきましては集落排水、そういったものがまだおくれております。  そういうことで、飲料水というものが年々飲みにくくなってきた。水源別に見ましても、私も広島に住んでおります。特に太田川の放水路の近くに住んでおるわけでありますが、この太田川というのが、広島あるいは島嶼部へ、愛媛県の方まで水が行っておるわけでありますが、年々カルキの量がふえてきております。  そういう中にありまして、中山間地あるいは山林の荒廃といったようなものがあるわけで、同じような視点に立って、山を守り、中山間地を守り、川の水をきれいにする、そういう、農業関係と山林関係とあるいは水産関係が一体になって取り組むべき課題であろうというように思っております。  以上でございます。
  40. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、信田公述人にお伺いいたします。  公述人には、食料自給の目標を掲げること、この数値目標措置をすべきことの要望もありました。  私は、北海道でも御質問させていただいたんですが、北海道、指数で見ますと、もう四分の一までに農家減少しているといいましても、専業、第一種兼業農家で六〇%以上になっておりますので、もうこれはEU並みの数字ですから、この数値目標を入れた際、やはり食える農業確立をしないことには後継者だって育たないと思うわけですので、この数値目標を入れた場合、水田経営で、北海道ではどういう経営規模が国際的にも対応できて食えていけると思うのか、この点をお聞かせいただきたいと思います。
  41. 信田邦雄

    信田公述人 北海道まで先生おいでいただきまして、大変ありがとうございました。  私ども食料自給率を前面に出しているのではなくて、食料自給率確立していくための周辺、基礎的なものをどうするかということで、自給率の問題は、国土の保持、先ほどから御意見がありますように、優良農地をどういうふうにして確保していくかから始まって、担い手、そして一番大切な農業者の、農民所得をどうするかということで言っているところであります。  現在、北海道では、見方によってはもうEU並みの農業になった、あるいはまた、これまでの農業政策、今の農業基本法で唯一達成した地域だなどと言われておりますけれども、確かに数字の示すところではそういうものも見えますけれども実態はそのようになっていない状況でございまして、先生から今御質問のありましたように、そのような状況の中で北海道の稲作をこれからどのようにしていくかというふうになりますと、私は、今のような、今回の基本法におけるところの三十条の関係や基本計画の問題や自給率の示し方では、北海道における稲作の目標は暗中模索になって、私からも、こういうふうにしたら二十一世紀に向けてやれるということは言うことができないのではないか。  しかし、先ほど御質問ありましたように、北海道農民としては、国民のために意欲を持って国内自給のために頑張り抜きたいと思っておりますので、一定程度の規模とコスト削減、そして施策の遂行によってぜひ頑張り抜きたいと思っているところであります。
  42. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 いずれにしても、北海道は国際的に対応できる専業農家確立ができそうなので、農林大臣には特別、いわゆる北海道農業施策を講ずべきだなんということを言っております。そういう点でも皆さん方の御協力をひとつよろしくお願いしたい、こう思います。  次に、生源寺公述人にお伺いしますが、時間がなくなってきましたので、本当に申しわけございません。先ほどの公述で、食料のロス対策ということには私もこれは大変感銘させられました。全く、このロス対策をすれば、二、三%ぐらい日本自給率を上げられるんじゃないかな、こう思っております。  さらに、株式会社によるところの農業経営の問題なんですが、私は、このことに対しましても、農地の投機的な投資の規制を行うならば、十分に採算の合い得る農業であるならば、個人であろうと株式会社であろうと、それは我々は育てていかなきゃならぬのじゃないか、こう思っております。  そこで、この株式会社によるところの農業経営の問題について、御意見をもうちょっと詳しくお伺いしたい、こう思います。
  43. 生源寺眞一

    生源寺公述人 公述の中でも申し上げましたけれども、株式会社だけがクローズアップされる議論というのはいかがなものかなという気はいたしますけれども、しかし、戦後の間もない時期にできました農地制度なりの前提には、いわば機械も非常に小さい、馬、牛というようなそういう技術、また農業の川下にあります食品産業、加工ですとか販売ですとか外食、こういった産業農業の結びつきというものも非常に弱い、あるいはこれが完全に切り離された世界での制度であったわけでございます。その時期に、私は、自然人と申しますか、家族経営というのがいわば自然であったかというふうに思うわけであります。  家族経営自体、私はこれからも日本農業中心になっていくとは思いますけれども、しかし、その中で、今までの農業の通念とは違うタイプの経営あるいは企業形態というものがあっても差し支えないというふうに私は思っております。問題は、これは自然人であろうと法人であろうと、ある意味では同じでありますけれども、土地を取得してこれを全く使わないとか、あるいは勝手に転用してしまうとか、そういったことについての規制をきちんと図るということがまず大事だというふうに考えております。  その意味で、私は、今回の改革につきまして大筋では支持するというふうに申し上げましたけれども、しかし、農地制度といったような問題につきましては、ややその突っ込みが足りないというふうに考えております。ある意味では、農地確保する、そういう制度をきちんとすることによって、その上で活動する農業者についてのいわば自由度を広げることも、あるいは可能になるというふうに思っております。  その意味では、私はもう少し農地制度なりの問題につきましては、一連の改革の後でも結構でございますので、やや時間をかけて、じっくり制度の改革をすべきではないか、そのことによってもう少し自由度が広がるのではないか、これが望ましいというふうに思っております。
  44. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 時間が参りましたので、河相公述人には失礼を申し上げます。これで終わります。
  45. 穂積良行

    穂積委員長 次に、中林よし子君。
  46. 中林よし子

    ○中林委員 日本共産党の中林よし子でございます。  きょうは、公述人の皆さんには貴重な御意見を聞かせていただきまして、本当にありがとうございます。  今度の新しい農業基本法というのは、本当に待ったなしの課題だというふうに思っております。とりわけ、農業を再建して食料自給率を上げていくということを、私ども日本共産党も、そのために今度の新農基法審議をしているところです。  そこで、まず最初に河相公述人にお話を聞きたいと思いますけれども食料安全保障の観点なんです。第九条の不測の事態というのがありますが、私は、先生が公述された、いつでもどこでもだれでも必要な食料生産、入手できる状況を三百六十五日整えるということこそが大切だとおっしゃったことに、大変共感をいたしました。それで、不測のときだけのものであってはならないのじゃないかというふうにも考えているわけですけれども、このことについてお考えがあれば、もう少し詳しくお述べいただきたいと思います。
  47. 河相一成

    河相公述人 お答えいたします。  基本的な考え方は先ほど申し上げたとおりなんですが、もうちょっと補足させていただきます。先ほどから若干議論が出ておりますが、例えば軍事の問題とか災害の問題とか、そういうときの危機管理の問題が大事じゃないかという御議論もございますが、私は、食料問題はそれと同列に扱うわけにいかないのじゃないかというので、先ほどのような意見を申し述べさせていただいたわけです。  それで、食料というのは三百六十五日人間の命を預かるものでございますから、これは有事の問題ではなくて平時の問題だ、基本的には私はそういう考え方でございまして、そういう意味では先ほど申し上げたような考え方で、私、実は食料安保という言葉も余り好きじゃないのでございますが、食料安保という言葉を使うならばということで、先ほどのようなことを申し上げたわけです。  そのためには、やはり、先ほども申し上げたのですが、平時の状態の中で国内農業生産をしっかりと位置づけておく、これこそが食料安保だと思いますので、そういうことを十分果たし得るような、それに関連する諸施策を国の責任できちんと行うということこそが必要だ、そんなふうに考えております。
  48. 中林よし子

    ○中林委員 引き続いて河相先生にお伺いしたいと思うわけですけれども政府のこれまでの輸入自由化政策が今日の食料自給率の低下を招いた、このようにお述べになりました。私もそのとおりだと思うのですが、ただ、今回の法案審議を通じて、政府は、国民の食生活が変わったこともその大きな原因だということを挙げているわけですね。この点での先生のお考え、とりわけこれまでの輸入自由化政策、それと自給率低下の関係で、もう少し詳しくお話をお伺いしたいと思います。
  49. 河相一成

    河相公述人 お答えします。  二、三の例を申し上げたいのですが、先ほど申し上げた、いわゆる輸入自由化政策が行われる前の段階の一つの特徴的な例を申し上げたいと思うのですが、小麦が大量に日本に入ってきたときの例です。  これは実は、厚生省の外郭団体であります日本食生活協会が出しました「栄養指導車のあゆみ」というパンフレットがございます。これを見ておりますと、こういうことを書いております。元厚生省の公衆衛生局長の尾村さんという方がお書きになっているのですが、とにかくアメリカ側が率先して十二台、この十二台というのは当時のキッチンカーのことを指しておりますが、十二台をつくり、各県に貸与、巡回せしめたことが刺激となって、小麦の国民消費が非常に拡大したということをおっしゃっております。  また、同じ厚生省の外郭団体が出しておりますパンフレットに書いてありますが、これはアメリカの、駐日アメリカ大使館の主席農務官チャールス・M・エルキントンという方がお書きになっているのですが、「栄養指導車は、日本人の食生活改善への目的を達成するために大きな貢献をしてきました。」「小麦と大豆の製品を活用して人体に必要な蛋白と脂肪を安価に摂取しうることを伝授するのがこの指導運動の重要な題目であったのであります。」こういうふうに述べていらっしゃるわけですね。  もう一つ例を申し上げたいのですが、御承知の学校給食法が一九五四年に制定されました。そのときに、当時の文部大臣がどなたであったか、ちょっと私は失念してしまいましたが、この学校給食法の提案理由を説明なさった当時の文部大臣が、この国会でこういう説明をしていらっしゃいます。  今後の国民食生活は粉食混合形態、つまりパンと日本の米ですね、粉食混合形態が必要だが、米食偏重是正はなかなか困難なため、学校給食により幼少時代に教育的に配慮された合理的な食事になれさせる、そういうことを提案理由の一つに述べていらっしゃいました。  今御紹介した二、三の例から申し上げても、やはり今日のような食生活の変化あるいは食料自給率の低下、これは明らかに政府の誘導政策によって行われたというふうに言わざるを得ない、それが大半の理由だ、そんなふうに私は考えております。
  50. 中林よし子

    ○中林委員 信田公述人にお伺いしたいと思います。  北海道農家の方々の大変な御苦労の実態が述べられましたけれども、負債が増大するとか離農がたくさん続くとかということで、私は本当に心が痛みます。そういう方々への対策がなければ、この新しい農業基本法も生きないのではないかと思うわけですが、それだけに三十条への期待が込められたというふうに思います。  市場原則にゆだねられた場合、非常に経営が不安定になるから農業所得補償を明記してほしい、このように述べられたわけですが、稲作安定対策のようなものを実はこの審議を通じてあの三十条で述べられていることは、そういうものを想定しているという政府の答弁があるわけですけれども、この間稲作安定対策というのが行われましたけれども、これが本当に農家経営を守るために有効に北海道で働いているのかどうなのか、その点についてぜひお聞かせいただきたい。そして、農産物価格支持政策やあるいは所得政策に対してもっと具体的な思いがあれば、それも聞かせていただきたいというふうに思います。
  51. 信田邦雄

    信田公述人 北海道は、日本農政のモデルとして、優等生として頑張ってきましたし、これからも、現在も頑張っていきたいと思っているところであります。  先生御指摘の稲経営の関係なんですけれども、稲作経営安定対策は、私ども経営にとって現在一定の効果はあるようですが、実は稲経営が、言ってみれば、新食糧法が出る前の私ども農家手取りの米は、一万六千円から七千円ぐらい六十キロであったのですね。ところが、先ほど宮地先生からも御指摘がありましたように、一気に二年間で一万二、三千円の手取りに、品種にもよりますが、そういうふうになってしまった。そこに稲経営が出まして、今一万四千何がしのものを補償されているわけですが、その時点での農家の負債等の実態は、十アール当たり百万とか五十万で十町、二十町と買い求めて規模を拡大して、それに合った何百万あるいは一千万を超す農機具の重装備をしていたわけですね。そして、一万六千円、七千円で支払う可能性で基盤整備もした。  そうすると、十アール当たり基盤整備の負担金、さらに農地の購入の支払い、利子、それから機械の購入におけるところの短期資金の支払いなど、とんでもないところに、暴落と言ったらこれはちょっとおかしいですけれども、そういうことになりまして、稲経営は、稲作経営安定政策としての目的の一定のものはありますけれども北海道においては非常に効果は薄い状況にございます。したがいまして、このままでは本当に息子の嫁を迎え入れて頑張っている専業農家が苦しいという実態をそのまま申し上げました。  まだまだ苦しい、負債整理対策数字は持っていますけれども、きょうはそういうぼやきのためにやっているわけではございませんので、先生御指摘の将来どうなるべきかというと、やはり、将来専業的な農業をどうやって育成していくか、生源寺先生もおっしゃっていましたけれども、そこの施策国民の理解を得て充実させていただいて、そして、あの広大な、農業しかできない地帯を守っていただく施策を私どもが強く求めて、三十条に、先ほどから繰り返すようでありますが、世界にきちっと宣言をした法律にしていただいて頑張り抜きたい、こんなふうに思っているところであります。
  52. 中林よし子

    ○中林委員 河相先生にもう一度お伺いしたいのですけれども自給率向上のために国内生産増大というのは欠かせないわけですが、それを増産していくためにも家族経営の位置づけ、これが非常に重要だとおっしゃいました。  今度の法案での家族経営の位置づけ、これについてどういうお考えをお持ちなのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  53. 河相一成

    河相公述人 家族経営というのは、私の考えでは最も農業生産力が高い経営形態だ、そんなふうに理解しております。高いという意味は、労働生産性の問題ではなくて土地の生産性です。これは最も高いのは家族経営でございます。というのは、非常に狭い土地でも輪作体系できめ細かく動植物の育成をすることができますし、非常に臨機応変にいろいろな対応ができるというのが家族経営の特徴だと思います。これが日本農業を数百年ずっと支えてきたという歴史がございます。  そういう意味で、私は、今度の法案の中ではそういう家族経営が持っている特性を積極的に位置づけるということをやられておらないのではないか、まずそういう懸念を持っております。したがって、今申し上げたような家族経営をきちんと位置づけて、家族経営が今後ともずっと農業経営を続けることができるような、そういう位置づけを法案の中で積極的に行うことこそが、先ほどから申し上げているような国内農業生産増大させる最も重要な決め手になるのではないか、そんなふうに考えております。
  54. 中林よし子

    ○中林委員 河相先生に引き続いてお伺いしますけれども、今回の法案WTO協定に見合うもの、これだけを満たしているとお話があったわけです。  私どもも、農業というのは、やはりWTO協定に、体をそういう洋服に合わせるのではなくして、本当に日本農業食料自給向上させていくためには改正させていく、そういう力も必要なんじゃないかと思うんですね。だから、次期農業交渉WTO協定に合わせた交渉のようにずっと政府は言い続けているわけですけれども、私は、むしろ改正させていく運動、これも必要なのではないかというふうに思います。  その点で、国際的にWTO協定農業協定そのものを変えていこう、こういう動きあるいはその可能性、これらについて知っていらっしゃったら教えていただきたいんです。
  55. 河相一成

    河相公述人 WTO協定に対する国際的な動きの問題ですが、一つは、先ほどもちょっと御紹介しました、九六年の、ローマで行われました、各国政府の首脳が集まった、いわゆるローマでの食料サミット、これは百八十カ国の代表が集まったサミットでした。これは、WTOに加盟しているのが今百二十数カ国ですから、はるかに多い国の代表がこのサミットに集まっております。そこのサミットで出されました宣言が、先ほどもちょっと御紹介いたしましたような、国内農業生産をふやさなきゃいけないということをその宣言に盛り込んでいらっしゃるわけでございまして、それは、今御質問にありましたWTO協定の改定に直結するような表現はございませんけれどもWTO協定は、先ほど申し上げたような国内助成の削減でございますとかそういうことが中心になっておるわけでございますから、このローマの宣言は、恐らく集まった百八十カ国の方々の思いは、WTO協定ではなかなか世界食料問題は解決しないのではないか、そんなふうな思いが込められた宣言ではないか、そう私は理解をしております。  もう一つ、これも同じローマで行われましたNGOの会議でございますが、これは八十カ国、二千五百組織の代表が集まったフォーラムでした。その中では、そこで出されました宣言にはこういうことが書かれております。食料の主権はマクロ経済政策や貿易自由化よりも確実に優先させるよう、国際法は食の権利を保障しなければいけない、続きまして、よってウルグアイ・ラウンド合意は見直さなければならないということがこのNGOフォーラムの中には明確に含まれております。これには日本農業団体代表も当然行っていらっしゃるわけでございまして、こういう考え方が国際的な一つの潮流としてあるということを私どもは十分念頭に置く必要があると思います。  私、宮城県におりまして、消費者の方や農民の方にいろいろなおつき合いがございますが、いろいろな話し合いをやっている、勉強会とか討論会とかいろいろなことをやっておりますが、その中でやはり、今度の米の関税化問題が浮上してきたときに、今のWTO協定の枠の中では日本農業の未来はないのではないか、そういう声が消費者農民からたくさん出ております。これは、表現としてはWTO協定の改定という表現は出ておりませんけれども、思いは多分同じ潮流の中に流れ込んでいくのではないか、そんなふうに私は理解しております。  そういう、今申し上げたような国際的な流れと国内のそういう御意見と、両方が重なり合えば、私は、一つの国際的な世論として協定の改正という方向に向く風が吹いてくるのではないか、また吹かせていかなければいけないのではないか、そんなふうに考えております。
  56. 中林よし子

    ○中林委員 どうもありがとうございました。終わります。
  57. 穂積良行

    穂積委員長 次に、前島秀行君。
  58. 前島秀行

    ○前島委員 社民党の前島でございます。公述の先生方、大変お忙しい中、ありがとうございます。お礼を申し上げたいと思います。  時間がありませんので端的に伺いますが、最初に原田公述人にお伺いいたします。  自給率の問題だとか食料安定供給あるいは農業の持つ多面的機能等々を達成するための基本的出発点というのは、私たちは、国内における農業生産の位置づけだろうな、こういうふうに思っています。一連の調査会等々の中で、やはり国内生産の維持増大ということがかなり主張されてきたけれども、正直言って、法案の過程でだんだん後退してしまったような気がするというのが率直な印象でございました。そういう意味で、私たちは、国内生産活動の維持増大ということはやはり基本法の中に明記してもらいたいな、こういう点が非常に強いわけであります。  これに対する御意見と、これを維持増大するためにはやはりその前提が農地確保、こういうこと、やはりここも明記すべきではないだろうか。具体的な数字をもってこの点は明記しないと、一連の流れの中でどんどん後退するような気がしてならない。私たちとしたら、五百万ヘクタールぐらいを目標として、基本法に無理であるとするならば基本計画の中には具体的に数字として出すべき課題ではないだろうかなと思います。  この二点について、原田公述人に御意見を伺わせていただきたいと思います。
  59. 原田睦民

    原田公述人 国内生産を一つの基本とするということの中には、やはり維持拡大は当然のことであると思っております。したがいまして、国会におかれまして、基本とするとともにその維持拡大をするという合意に達するのならば大変結構なことだと思っております。  それから、何といいましても、日本国内生産基本とするということになりますと、五百万ヘクタールの農地はやはり確保すべきである。そういう中にありまして、農業委員会と我々JAも一緒になりまして、そういうことが基本計画の中で織り込まれるようにということは同感でございます。  ありがとうございました。
  60. 前島秀行

    ○前島委員 ありがとうございました。  信田公述人に伺います。  やはり三十条の、価格所得補償というのが非常に大事だ、そのとおりに思います。それで、今政府の方も、新たな個別の品目対策という形で議論が進んでいると思います、麦だとか大豆、米も当然そうでありますが。同時に、私は、これから注目すべき自給率という関係から見ても、えさ米、飼料作物との問題というのも重要な個別対策としてあり得るのではないだろうかな。稲作と連動する問題でもあるだろうし、それから、北海道にとってもこれからの大きな一つの課題でもあるだろうと思いますので、このえさ米対策、飼料作物対策について御意見があればお伺いしたい、これが一点。  それから、先ほどいろいろ聞いていますと、やはり個別、品目別所得対策経営対策だけでは、どうしても限界の側面もあるような気がしてなりません。そうすると、経営体といいましょうか、農家という単位でとらえた所得補償的なものがないと、特に内地といいましょうか、本土の方の専業農家だけではないという側面から見ると、そういう個別作物、品目別対策ではない、農家単位あるいは経営単位の所得補償政策という観点も必要ではないだろうかな、こういうふうに思っているところでもありますので、この二点について、信田公述人の御意見を伺わせていただきたいと思います。
  61. 信田邦雄

    信田公述人 先生から御指摘ございました関係ですが、私ども、三十条だけを何か際立って言っているようですが、実は自給率からすべてこれは包含された中で、私ども、この基本法を全部否定するわけではございませんから、一部修正ということのために、とりわけこの三十条に力を入れているところであります。  なぜかといいますと、先生も、それから皆さんの御質問にもございましたように、ずっと歴史的に見ますと、優良農地が減っている分だけ、ちょうど同じように自給率が下がってきているんですね。この農地の利用度というのが非常に重要なわけでございまして、いかに国内農地を有効に使っていくかという施策が本来、自給率につながったり、村を守ったり、農業育成につながっている、そういう意味からいって、今、一〇〇%農地利用されていないのですね。これは日本歴史でちょっとないのでないか。これはやはり政策的な失敗といいますか、ミスでないかと私どもは心配しています。  したがって、飼料作物などを積極的に内地においてもあるいは北海道においてもつくって、遺伝子組み換えの大豆、牛乳がどうだとかといって、今私どもの飼料にもちょっと懸念をされる時代に入ってきまして、そういうことも含めて、飼料作物をつくって、自給率を上げるからというのでなくて、そのことが本来の農業政策ではないかというふうに思っております。  そうすると、経営体の関係なんですが、私ども、作物ごとにやっていきますと、非常に条件のいい人とか、そういう農家は救えるし、育成できるのですけれども、そうではなくて、地帯別、地域別、言ってみれば県別、それから南から北まで全部違いますから、まず農業経営体をいかに育成していくのか、守っていくのか。ですから、基本的な三十条の理念、私どもは、その所得補償には、経営体に対する所得補償、そして家族農業中心とした村で定住できる農業政策を今回の基本法に求めているのが、私どもの三十条の考え方でございます。  以上でございます。
  62. 前島秀行

    ○前島委員 ありがとうございました。  生源寺先生に二点ほど伺いたいのですが、一つは、先生はこれからの施策を、認定農家といいましょうか、中核農家政策的集中を、こういう御意見があったのですが、私もそれは重要なことだろうなと思います。同時にまた、日本農業実態から見ますと、兼業農家が圧倒的に多いということ、それから生産量から見ても、兼業農家の占める部分が四〇%を超えているという実態から見ると、やはり中核農家、あるいはこういう担い手農家政策的にも集中するということと同時に、地域社会といいましょうか、地域営農という側面、家族農業という側面から見ると、その辺の部分もやはり無視できないな、こういうふうに思うわけです。その点の整合性について、改めて御意見を聞かせていただきたいということが一つ。  それから、中山間地対策、直接支払いにおける地方自治体の役割ということですね。生産活動を維持する、個別農家農業を営んでもらうということと同時に、この政策理念というのは、それ以上に、私は、農業多面的機能あるいは国土保全という、地域における営みといいましょうか、コミュニティーの維持だとか、こういうことだろうと思うのです。  そういう面では、個別農家へのいろいろな対応と同時に、地域、自治体における役割ということも非常に重要ではないだろうか。そこに体制がないと合意も得られないだろうし、具体的な推進も難しいだろうな、こう思うので、その辺の自治体の役割、そういう面では、支払い方法として、自治体を通じて公的資金もやるなどというのも一つの手かなとも私たち考えているのですが、その点について、二点だけ先生に御意見をいただきたいと思います。
  63. 生源寺眞一

    生源寺公述人 第一点目でございますけれども、まず、事実認識と申しますか、将来の見通しという点で、私は、中核的農家というふうに表現するかどうかは別としまして、中心的な農家と、それから周辺におられる兼業農家の二つの層の構造になるということは、恐らくそのとおりだろうというふうに思っております。  私が、施策を集中すべきだと申し上げましたのは、いわば農業所得確保するその理念自体がなかなか難しいところがあるわけでございますけれども、その対象というふうに申し上げたわけでございます。  そのことの背景といたしましては、一つは、安定的な兼業農家と、それから一般の勤労者世帯、さらに専業的な農家経済の水準を見てみますと、今、長期的に、安定兼業農家がむしろ都市の勤労者世帯の方よりも比較的に恵まれた生活をしている。逆に、専業的な農家の方の家計の支出のレベルは、むしろ勤労者世帯の方よりも低い、そういう実態があるわけでございます。つまり、所得の再配分という観点から見ても、狭い意味での農業政策は、この担い手に集中していいのではないか、こういうことがあるわけでございます。  それからもう一つは、農村によってさまざまな実態がございますけれども、私は、だんだん世代がかわっていく中で、兼業農家だけの農業というものがなかなか維持しがたくなってくる面が出てくると思います。つまり、農業の場合ですと、技術をリードする方、あるいは水管理なりについて、全体を差配するような中心的な方がおられて、その方に陰にひなたに依存をしながら、兼業農家の方もおられる、そういう実態がありまして、これはますます強まってくるだろうというふうに思います。  その意味でも、兼業農家の方がある程度のシェアを占めるのはこれからもそうだと思いますけれども、兼業農家農業を支えるためにも、中心的な農家の方をきちんと私は育てる必要がある、こういうことでございます。  それから二番目の、中山間地政策でございますけれども、これは実は、ヨーロッパの直接所得補償と申しますか、条件不利地域政策がもともとのアイデアでございます。ヨーロッパのケースを日本にそのまま持ち込むということについてはいろいろ議論があるわけでございますけれども、学んでよい点は、ヨーロッパの場合も、EUの一般的な規則としては、あらあらの地域の指定の仕方ですとか、支払い方というものはあるわけでございますけれども、各国、それぞれ事情が違うわけでございます。  したがいまして、その政策の具体的なやり方については、かなり各国の裁量に任されている部分があるわけでございます。この関係を、実は日本のように南北に長い、非常に農業の条件の違いを含んだ国に引き寄せて考えますならば、国として一般的なある程度の枠なり方向を示すとしても、具体的なところについては、自治体にかなりの裁量をゆだねるという格好があっていいだろうというふうに思っております。  ただ、何でもいいという格好になりますと、これはまた本来のその支出の趣旨に反するということもあろうかと思いますので、大枠は決めて、むしろ自治体の自由度を確保する中で、意欲的なプランを出していただくということでいいのではないかというふうに思っております。  また、農業だけではだめで、地域社会をつくって初めて中山間地域あるいは条件不利地域の社会が維持できるという点は、全く私も賛成でございます。
  64. 前島秀行

    ○前島委員 河相先生に伺いたいと思います。  WTO交渉における我が国のこの基本的なスタンスです。私は、いろいろな国際的な流れもあるけれども、やはり食料自給するんだ、できるんだという権利というのは国際的にもお互いに保障されてしかるべきではないだろうかな、その基本的な原則に立って、それぞれの国の状況が保障されるような農産物のルールというのは国際的にあってしかるべきではないだろうかな、こういうふうに思います。そういう面では、今度のWTO交渉における我が国基本的スタンスというのは、輸入国における食料自給の原則が保障されるようなルール化ということはやはり捨ててはならない基本的スタンスではないだろうかな。  だとすると、日本食料の原点である稲作というものが、農民にとっても生産者にとっても国民にとっても安心できるような稲作農業といいますか、あるいは米の自給といいましょうか、あるいはその提供というものが保障されてしかるべきではないだろうかな、そんなルール、お互いに輸入国輸出国も保障し合うルールがあってしかるべきではないだろうかな、こう思っているところでございます。  そういう面で、このWTO交渉における日本の臨むべき基本的なスタンスというか認識について、先生の御意見を聞かせていただければと思っているところです。
  65. 河相一成

    河相公述人 WTOの次期交渉で一番大事なことは、各国の農業歴史、条件、あるいはその国民の食習慣、みんな違うと思うのです。それをどうお互いに各国が尊重し合うかということがベースにないと、本当の意味の国際的な農業貿易ルールというものは成り立たないのではないかというのが私の基本的な考え方です。  それに基づいて考えますと、現在のWTO農業協定は、御承知のとおり、非常に画一的にすべての、グローバルスタンダードという言葉が最近はやっておりますが、いわゆるそういうスタンダードを各国に全部押しつけると申しましょうか、そういう協定が農業協定だと思いますので、その協定は、先ほど申し上げたような各国の農業の事情、食生活の事情、これを全部お互いに尊重し合った、そういう新しい貿易ルールにつくり直していくという基本的な姿勢を日本政府も持っていただきたいというのが私の強い念願でございます。
  66. 前島秀行

    ○前島委員 終わります。
  67. 穂積良行

    穂積委員長 これにて午前の公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後一時から公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十三分休憩      ————◇—————     午後一時三分開議
  68. 穂積良行

    穂積委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、御出席公述人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。食料農業農村基本法案に対する御意見を拝聴し、本案審査の参考にいたしたいと存じますので、忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見は、桧垣公述人、辻井公述人、久保公述人、佐伯公述人の順に、お一人十五分程度でお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答え願いたいと存じます。  なお、念のために申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、公述人委員に対して質疑を行うことはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、まず桧垣公述人お願いいたします。
  69. 桧垣徳太郎

    ○桧垣公述人 ただいま委員長から御紹介をいただきました全国農業会議所桧垣徳太郎でございます。  私は、食料農業農村基本法案賛成立場から意見を述べさせていただきます。  まず、新たな農業基本法案の評価について申し上げます。  食料農業農村基本法案においては、食料安全保障確保農業多面的機能農業持続的な発展農村振興の四点が基本理念として明確に打ち出されておりまして、現行農業基本法にない新たな理念が明確にされ、施策具体化していきます上での方向が示されておるのでございます。その意味で、現行農業基本法が主として農業立場からの法案であったのに対しまして、今回の法案国民的視点の入れられた法案であるという意味で、私ども評価をいたしておるわけであります。  私ども農業委員会系統組織では、食料農業農村基本政策及び新たな基本法につきまして、これまでたびたび意見を集約し、食料農業農村基本問題調査会政府に対しまして意見を述べ、その反映に努めてきたところであります。新たな基本法案には、我が国初めての中山間地帯への直接支払い制度の導入を初め、私ども意見も反映されていると認めており、全体として共感を持ち、評価をいたしているところであります。  本法案は、二十一世紀に向けて、食料農業農村政策具体化する上での基本指針であり、目前に迫りましたWTO次期農業交渉に臨む我が国基本的立場として、主張の根拠となるものであります。いわば、我が国農政の憲法ともいうべきものであります。我が国農政基本を国の内外に明確にする上でも、この法案が、国民合意のあかしとして、今国会で可決成立されることを強く期待をいたしておるものであります。その上で、基本法が掲げた四つの基本理念が、財政措置も含め、具体的施策の展開によって実現されることが肝要であると考えております。  次に、食料政策についてであります。  御案内のように、我が国食料自給率は、カロリーベースで約四割というように、先進国では例を見ない極めて低いものであります。端的に申し上げますと、食料輸入が途絶えた場合、あるいは滞った場合には、日本食料の安全は保ち得るのか甚だ懸念されるところでありまして、私は、極めて憂慮すべき実情にあるというふうに考えておるのであります。  二十一世紀は、人口増加や食生活の高度化などにより、世界的に食料の需要が増大し、供給がこれに伴わないおそれがあるというのが大方の一致した見方であります。食料問題は究極的には人道問題につながる問題でありまして、日本だけが金があるからといって自由に食料を買いあさることは許されないという時代が私は来るのではないかと思っております。  こうした二十一世紀世界食料事情を見据えたとき、我が国食料自給率先進国の中で最低であり、さらに低下を続けている現状は看過できないものであると考えております。  そこで、食料農業農村基本法が、第一の基本理念として、国内農業生産基本とした食料安定供給確保を挙げた点は、適切、妥当であると考えております。  法案では、いわゆる基本計画を策定し、その中で食料自給率の目標が設定され、それに必要な農地面積も基本計画で明示されることになると聞いております。食料自給力の強化は、国としての重大な課題であります。政府生産者消費者、国を挙げて、食料自給率向上に取り組むことが重要であると考えております。  第三に、農業持続的発展についてであります。  現行農業基本法が描きましたシナリオは、経済成長が農村から都市に、農業から商工業に労働力を吸収することを通じて、農業構造を改革し、生産性の高い、合理的な農業を築こうとしたわけであります。経済成長で国民所得が高まれば、肉や果物をたくさん食べるようになり、選択的拡大も進むというものでありましたが、この観測あるいは算段は私はやや甘かったのではないかと考えております。  その後、想像を超えた経済の高度成長により、所得、生活水準が上昇するとともに、土地価格も高騰いたし、農地価格昭和三十五年当時に比べると十倍にもなり、通勤兼業が一般化し、北海道を除いては構造改革は思ったとおり進まなかったのであります。  さらに、近年、若者の農業離れ、担い手の不足、高齢化が進むとともに、農地減少に加えて、耕作放棄地が全国的に発生をいたしております。我が国農業は、歴史的にも危機状態に直面していると言っても過言ではないと思います。  こうした状況のもとで、食料安全保障確保農業多面的機能発揮という新基本法の二つの基本理念を実現するためには、国内農業持続的な発展が不可欠であります。この点に関しまして、以下、三点について意見を申し述べます。  第一点は、農業にとって不可欠な農地資源の確保有効利用についてであります。  新たな基本法では、基本計画の中で農地確保目標を明示すると聞いておりますが、食料自給率向上を図るためにも、農地減少は極力防がなければなりません。このため、国民的理解のもとに農地法や農振法などの農地制度の厳正な運用を図りますとともに、農地転用など農地の壊廃を極力少なくする対応が重要であります。私としては、有限の財である土地、農地については、規制は安易に緩和すべきものではなく、むしろ強化する方向検討すべきではないかと考えております。  なお、遊休、耕作放棄地の解消対策がもう一方の重要な課題になっております。私ども系統組織でも実態を調査いたしまして、その解消に力を注いでいるところでありますが、国としてもさらなる御支援お願いいたしたいと考えております。  二点目は、農業を担う人材、担い手確保についてであります。  国内農業基本とする食料安定供給のためには、効率的かつ安定的な農業経営育成とこれを担う人材の育成及び確保が不可欠であろうと考えております。私ども全国農業会議所では、新規就農ガイドセンターという就農相談窓口を設けまして、全国農業法人協会とも連携して活動しているところでありますが、農業への就農、就職を希望する人が着実にふえつつあると受けとめております。こうした取り組みを強化しつつ、幅広い就農支援対策を一層強化していく必要があるのではないかと考えておるところであります。  さらに、効率的、安定的な農業経営を広範に育成するためには、経営安定対策とともに、就農から経営継承に至る、経営のそれぞれの発展段階に応じた体系的な経営政策の整備が必要であると考えているところであります。  三点目は、農業構造の改革についてであります。  農業持続的発展を図る上で、農地農業を担う人材の確保重要性と私どもとしての取り組みの一端を述べたわけでありますが、もう一点、経営経済的に成り立ち、かつ自然生態系とも調和した合理的な農業をどう築いていくかという問題があります。  これはいわば農業構造の改革の問題でありますが、なかなか困難な問題でありまして、かつ、解決には時間のかかる課題であると思っております。また、かつての農地改革のように、国家権力によって強制的に農地と人の組み合わせを切りかえるということはできません。それぞれの地域農業者状況に応じ、地域、集落での話し合いや合意、あるいは個々の農業者経営活動、そして関係機関、団体の取り組み、さらに政策的な誘導などにより、地域に適応した望ましい農業構造を実現するほかないわけであります。  法案では、望ましい農業構造の確立を目指しております。具体的な施策推進に当たりましては、私は、認定農業者等を核とした集落農業の再編成、再構築が最も重要であると考えております。そのため、私ども農業委員組織でもこのような目標のもとに組織的な運動に取り組むことといたしておりますが、国としての具体的な政策展開期待しているところであります。  第四に、WTO次期農業交渉についてであります。  新基本法が目指す農業持続的な発展食料安全保障確保農業多面的機能発揮という理念の実現は、現行WTO農業協定のもとでは極めて困難だと考えるものであります。そこで、WTO次期農業交渉について若干意見を申し述べます。  WTO次期農業交渉における我が国の主張は、新基本法における四つの理念の実現と調和し得る農産物貿易ルールに改革することを目指すべきであると思います。  すなわち、非貿易的関心事項であります食料安全保障農業多面的機能に十分な配慮がなされるとともに、各国の農業国民食料の特性と歴史的な経緯がそれぞれ違うわけでありますので、輸出国輸入国の権利義務のバランス、世界食料の総生産の維持増大などに十分な配慮がなされ、公平公正な国際規律とすべきであると考えております。基本法案で明確にしている基本理念や具体的施策方向が国際規律の中に正当に位置づけられるよう、国を挙げて最大限の努力をすべきだと考えるところであります。  以上、農業委員組織の代表として、また私見をやや含めまして意見を述べさせていただきました。  新基本法は、二十一世紀食料農業農村を大きく左右する極めて重く大きな法律であります。また、農業経営者や担い手にとりましては法制上の精神的な支えともなるものであります。ぜひ今国会での論議を尽くされ、できますならば、国民合意のあかしとして全会一致で可決成立願えれば幸いであります。  以上、私の公述を終わります。(拍手)
  70. 穂積良行

    穂積委員長 ありがとうございました。  次に、辻井公述人お願いいたします。
  71. 辻井博

    ○辻井公述人 ただいま御紹介にあずかりました京都大学大学院農学研究科の辻井博でございます。  私は、新農業基本法に対して反対する、ないし批判する立場から公述をさせていただきたいと思います。  新農基法には、もちろん評価すべき点は多々ございます。先ほど桧垣公述人がおっしゃったような点でございます。私も後との関係で、二、三評価すべき点をつけ足して、ないしもう一度申し上げておきたいと思います。  現在の農基法が一九六一年にできまして、その目的は必ずしも達成されていない。その後、国際化その他、桧垣公述人もおっしゃったようなもろもろの問題が日本の農林業、農山村に起こりまして、それを正面から見据え改革する必要があったということが第一点で、新農基法評価すべき点でございます。  第二点は、これは農業の視点だけではなく国民の視点、国土・自然環境、景観、文化の視点から、国民合意形成を意図して政策理念政策枠組みを示したということが評価すべき点であると思います。  答申と大綱では市場原理重視という言葉があったのですが、新基本法では、どこを見てもそれが削除されております。これも評価すべき点かなというふうに思うのですが、後からこの点に関しては私の意見を申し上げます。  それからあと基本理念。二条から五条でございますが、二条一項、食料安定供給。二条二項、国内農業生産基本とする、そういう文言。二条四項、国民の最低限必要な食料供給確保。三条、多面的機能発揮。四条、農業持続的、循環的発展。五条、農村振興施策の方では、十五条二項の二、基本計画内での食料自給率の目標を定めると明示した点。二十三条、農地確保及び有効利用。三十五条、中山間農業の不利補正支援。こういう点が評価すべき点だと私は思います。  次に、しかし私は、この新農業基本法は、次に述べるような点で重大な問題があるというふうに考えております。  第一点は、価格、需給政策に関する基本的枠組みでございます。  私の理解するところでは、新基本法価格、需給政策の枠組みは、第一点は価格支持の放棄、それから粗収入保険制度、さらに第三には関税化でございます。こういう基本的な枠組みでこの政策はでき上がっていると思うわけでございますが、ここから導き出される結論と申しますのは、国内農産物価格の長期的低落、それから食料自給率目標の五年ごとの引き下げ、日本農家、特に大規模農家発展インセンティブを喪失させること、さらに、国内農業農村の崩壊というふうなことが私には考えられます。だから、この新農業基本法は、日本農林業崩壊の枠組みになるおそれがあるというふうに私は思います。  それゆえに、先ほど申し上げました評価すべき点での基本理念、二条二項、二条四項、例えば、二条二項は日本農業生産基本とするとか、二条四項は国民の最低限必要な食料供給確保、三条は多面的機能発揮、四条、農業持続的、循環的発展、五条、農村振興、そういう理念の達成がおぼつかなくなるのではないかというふうに私は考えます。  第二番目の問題点でございますが、これは二〇〇〇年に行われる次期WTO農業交渉対応としての新農業基本法という問題でございます。実際に、新農業基本法はそういうふうな対応としてつくられたというふうに言われておりますし、書かれております。そして、言われていることは、米を例外扱いせず、全農産物を関税化して、市場原理重視の枠組みの農政のもとでの方が、多数の農産物、包括交渉という形の交渉ができて、日本が国際交渉で孤立せず、同調国もつくれるというふうに言われております。  私はこれは一つの見識だというふうに思います。しかし、新農業基本法理念法でございますから、WTO市場原理主義の貿易理念に対して、アジアの一国である日本の新しい農産物貿易交渉理念ないしルールを示して、WTO理念修正を求めるべきではないかというふうに私は考えます。しかし、新農基法は、そうはせず、初めからWTO市場原理主義の貿易理念に合わせた形でつくってしまっております。これは敗北主義であるというふうに私は思います。  さらに重要なことは、一番最初に申し上げましたけれども、新農基法日本農業の崩壊をもたらす枠組みであるかもしれない、そういう判断とのかかわりです。こういう点から、一体立法府は日本の農林業、農村を十分に考えていただいているのであろうかというふうな点に関して、私は非常に不安を覚えます。  第三点、米に関することでございます。これに関しては、二点ございます。  第一点は、ウルグアイ・ラウンドの合意、その後のお米の関税化のことでございます。  皆さんもちろん周知のごとく、九九年、ことし四月から、一キログラム三百五十一円で関税化が実施されました。これは一応一一〇〇%とかいうふうな関税率になると言われておりますけれども、実は、SBSの輸入、すなわち市場原理によって輸入が行われております。その輸入米は、一応日本米と近いような品質を持っているお米でございますが、その輸入価格が九十円でございますから、それから計算しますと、約四〇〇%の関税になります。  実は、この関税化は、アメリカ、EU、オーストラリアが、関税が高過ぎるというふうに強く反発しております。だから、次期WTO交渉では、この関税の引き下げが強く議論されると思います。今四〇〇%なのですけれども、仮に二〇〇%に押し下げられましたら、かつ、仮に年二・五%、これはウルグアイ・ラウンドの合意で決定された引き下げ率でございますけれども、そういう引き下げ率でこの二〇〇%が引き下げられますと、たった五年で、SBS輸入市場原理輸入されている輸入、その輸入の関税率以下になってしまいます。そうしますと、五年間で大量の短粒の、日本米に近いようなお米が輸入されることになりまして、これは日本の稲作農業農村の崩壊に結びつく可能性大であるというふうに思います。  お米に関することの第二点でございますが、お米はアジアで世界の総生産量の九〇%が生産されておりまして、アジアのほとんどの国々は、日本も含めて、米を自給自足しようとしてきましたし、また、アジアの諸国は米を自給自足すべきであると私は思います。  なぜそういうふうにアジアの諸国が自給自足してきたかといいますと、お米の貿易市場、ここからお米を輸入しなければいかぬのですけれども、これが非常に薄く不安定で頼りにならないという、小麦やトウモロコシという他の穀物と比べて非常に違った性質を持っております。お米の貿易市場は非常に薄く不安定で頼りにならないわけで、アジア諸国は、主食で必需品で賃金財で政治財であるお米を、そういう薄く不安定で頼りにならない世界米貿易市場に頼ることはできず、自給自足の政策を追求してきたわけでございます。  かつ、お米は、日本も含めて、多面的機能というのは、アジアで二十億人の人たち生産、流通、消費にかかわっておりまして、非常に大きなものを持っております。  だから、アジアの農業政策の典型は自給自足及び国家米備蓄という形で、どの国も、ほとんどの国がそういう形でやってきたわけでございます。だから、日本はお米を自給自足でやるべきだというふうに私も思います。  最後に、以上のいろいろな問題点を含めまして、新農基法修正提案を二つだけ申し上げたいと思います。  第一の提案は、農林水産物に関しては、国家自決権、国家自決制というふうな原理による農業政策を、日本も含めて、アジア諸国はとるべきであるというふうに私は思います。  農林水産業は、その生産が個々の小さな生産主体によって分散的に行われ、水や土や、それから森林というふうなコモンズ、すなわち共有資源を利用するという形から、環境破壊、資源枯渇という問題を防ぐことは至難のわざでございます。だから、今現在言われている関税化、すなわち関税率の引き下げが国際交渉によって外生的に、外部から決定されて低下していくような関税化を基礎とする政策には私は反対いたします。  各国がとるべき政策というのは、例えば、ある国は最適自給率というのを作物別に決めまして、そういう政策をとっていく。自由貿易をしたいという国は、それは自由にやっていただいたらいいのではないか。それによってその国が利益をこうむるということは、国際経済学の中で明らかになっている点でございます。  関税化が避けられない、そういうふうな可能性もございます。そういう場合は、関税化において、もう一つの関税化というふうなものを志向したらいいのではないか。関税化には二つの形があるというふうに私は考えております。  一つは、先ほど申し上げましたように、外生的関税化、すなわち関税の引き下げ率が画一的に国際交渉によって決められて、引き下げられていくような関税化。内生的、自決的関税化というのがもう一つの関税化でございまして、これは国内農産物生産向上の成果に依存して、関税を農作物別に下げていく、そういう形の各国別の関税化、そういうような形が望ましいのではないかというふうに思っております。  もう一つの、私の新農基法修正の提案でございますが、これは林業、中山間政策でございます。  七〇%が森林で覆われている森林国日本におきまして、実は、新農基法の六条で農業と林業は関連性を重視しなければならないということが言われているのでございますけれども、実はその次の第七条ではこの第六条が新農基法基本理念としては含まれていないわけでございます。三十五条では、中山間条件不利地域施策に触れているわけでございますけれども、林業ということは全く明記されておらないわけでございます。  林業と申しますのは、米よりずっと前から自由化がされてきております。だから、私は、日本の林業と申しますのは、日本の稲作とかその他農業がこのままいきますとたどるべき将来をあらわしているように思えるわけでございます。  昨日と一昨日、私は法事で奈良県吉野郡天川村へ行ってまいったんですけれども、これは吉野林業の中心でございまして、そこの森林組合長さんやらそれから林業家に聞きますと、十五年間、木材価格が下がり続けて林業は自壊状態にある、なすすべがない、熱帯材が輸入されて、杉やヒノキを切って市場へ持っていっても赤字になるというふうなことでございます。  だから、私がお願いしたいことは、林業政策の抜本的改革、かつ、何とか新農基法農業との関連で林業を位置づけていただいて、そういう形で林業政策の抜本的な改革をしていただければ非常にありがたいというふうに思います。  これで私の公述を終わります。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
  72. 穂積良行

    穂積委員長 ありがとうございました。  次に、久保公述人お願いいたします。
  73. 久保英資

    ○久保公述人 ただいま御紹介をいただきました久保でございます。和歌山県農協中央会副会長をしております中辺路農業協同組合の組合長でございます。  今回、これから日本農政の道しるべとなります食料農業農村基本法制定する重要な審議に際しまして意見を述べる機会を与えていただきましたこと、心より御礼を申し上げます。  平素はまた、日本農業の活性化並びにそれを担う農業協同組合の活動に格段の御理解、御協力をいただきまして、心より厚く御礼を申し上げます。  さて、私は、さきの立場を踏まえ、また山村の一農業者として、次のとおり意見を申し述べます。  まず、和歌山県農業の概要を申し上げますと、和歌山県は古来より木の国と言われておりますとおり、大部分が紀伊半島の山岳地帯でございます。しかし、温暖な気候や豊かな水資源などに恵まれており、県の面積の八%という狭小な耕地を積極的に利用いたしまして、果樹と園芸に特化した、高技術、高品質、高所得の特色ある農業を営んでおります。  平成九年度の農業生産額は千三百四十三億円で、そのうち果樹が五〇%を占めております。果樹王国和歌山と言われておりますとおり、果樹粗生産額は、平成九年度で七百十億円で、平成に入って連続全国一位の座を守っており、特に四百年の歴史と伝統を持つ紀州ミカンは全国シェアの一三%、カキが一九%、梅においては有名な南高梅が主で、六七%を占めております。また、花卉栽培も盛んで、宿根カスミソウ、スターチスなどは全国一位の生産を誇っておりますし、花の共販率は七〇%ということになっております。  こうした活力ある農業が展開されておりますのも、ウルグアイ・ラウンド対策を初め事業採択をいただきまして、流通施設等の諸整備をいただきましたおかげでございまして、農家消費者の双方から喜んでいただいておりますこと、厚く御礼を申し上げます。  さて、和歌山県におきましては、このように厳しくとも元気に農業が営める地域がある反面、高齢化とともに年々耕作放棄が進み、農業、林業を維持できない地域を多く抱えているという正反対の二極構造となっております。  私の農協地域は紀南の山間地で、富田川、日置川の上流に位置し、二町村にまたがっております。昭和二十五年、五百六十ヘクタールの水田耕作がありましたが、平成十年の作付は百四十ヘクタールで、実に四分の一に減少しております。  減少した水田が何にかわったかというと、森林です。昭和三十年代、四十年代は補助金政策でもって人工造林が進められ、自然林を切って次から次へとヒノキを植え、杉を植え、田畑も植林と化してしまいました。結局、紀州の山々は今すばらしい緑に包まれているといえば格好はいいわけですけれども、四季折々の移ろいはなく、野鳥や山の動物はすめなくなっております。人はこれを緑の砂漠と言っております。  今先生お話がございましたように、外材に圧迫されて国産材は値下がりし、意欲をなくした林業者は間伐等の手入れを怠り、山の保水機能は低下し、とても健全な森林とは申せません。今、皆、愚かなことをしたものだと反省をいたしておるわけでございます。  今、こうした山々を強制的にでも間伐し、下草を生やし木を太らすこと、また伐採した都度その後は広葉樹への再転換を図るなど百年の大計を図るべきと考えます。  そして、今、すみかを追われたシカ、イノシシが農作物を荒らします。猿は二十匹ぐらいの群れをなして家のすぐそばまで出没し、自家用の野菜さえつくれない状態でございます。猿が来るからナスもキュウリも何もつくれない、猿が来るから住めぬ、猿に追い出されるような地域がございます。私も三十アール近い谷田をつくっております。田ごしらえをしてあぜを縫って、秋にはだれが収穫するのでしょうかということです。猿がとるか、イノシシがとるか、田植えをした私がとるかという状態でございます。  山の疲弊は水の量と質を大きく左右します。中流そして下流を潤す中でまた汚れ、注がれる海の魚や貝などの生息に大きな影響を与えます。山に人が住んで農林業を営み、自然を守ってこそ水も守られ環境保全されます。  法案の中で中山間地振興が盛り込まれていますが、山村は今崩壊し始め、振興の状態ではありません。自力更生の力はなく、多面的な機能が劣化しつつあります。今や山村は救済すべきときだと考えております。  言われております所得補償も、各論に入ると所得基準あるいは地域ごとの査定とか難しさがあろうと思いますけれども、何とぞ一日も早く試行を進めていただきたいと考えております。  そして、農業農村問題だけでは救い切れない面もあると思いますので、環境面からの施策をオーバーラップしていただきたいと考えております。  そのためにも、農林省の試算による六兆八千七百八十八億円と言われます農業農村の多面的、公益的機能の計量評価を、機能ごとに具体的に理解しやすい方法で広く国民にPRしていただきたいと考えております。十兆と言われる農業生産額の約七割に当たるこういった機能があると言われておるわけでございます。  食料が潤沢にある今日、一般世論は農業を軽視しております。日本になくとも外国にある。しかし、あらゆる角度から検討するとき、将来を考えるときに、この基本法農業者の問題よりも消費者の問題であると考えております。そのことを強く訴えていただきたいと思います。審議が大詰めに来ても消費者は知らぬ顔ではないのですか。問題であります。  特に、CO2の発生を六%削減するとの国際的な約束がなされてございます。その中で、CO2の森林の吸収率が数値であらわされてございます。農山村の機能を広く知らしめることによりまして所得補償国民合意が得られるんじゃないかと考えます。  デカップリングが進んでいるヨーロッパの国々では、農業者の力が強いことと環境問題が優先されることから、所得補償は順調に行われていると聞いております。  自然環境を守りながらも、おのれの意思表示もできないくらい弱っている中山間地農業を、国民的課題として、政治の力で救っていただきたいと切にお願いを申し上げます。  また、中山間地の高齢者率は三〇%になっております。集落においては五〇%、六〇%というところがございます。このことは地域全体的な老人ホームということでございます。この高齢者が都会の息子のところに押しかけたら大変な社会問題になるわけでございます。私たちも、来年からの介護保険法の実施に当たり、JAグループ挙げて助け合い組織を結成し、在宅介護の支援をし、掛金負担が余り上がらないようにと努めておるわけでございます。  また、中山間地農業に多い兼業農家の問題です。当初申し上げました、果樹王国、和歌山を担っているのも、多くの兼業農家が入りまじって、これだけの活力となっております。多くの人々がかかわり合って、集落も農業も活性化しております。兼業農家があって、農業者の数も維持され、日本農業が維持されていると思います。  最後に、今回の基本法は、食料問題、農業、そして農村問題と三つの分野に整理されて調査研究が行われ、法案として御審議いただいておりますことは非常にありがたく、感謝申し上げます。JAグループといたしましても、当初より一千万人の署名活動を展開して、将来展望を開ける基本法制定してほしいとお願いをいたしてまいりました。  法案に盛り込んでいただきたい具体的な内容につきましては、所得率の向上なり、所得補償の問題なり、この法の心をどういうふうに盛り込むか等々、いろいろの課題もあるようでございますけれども、これらを踏まえて、一日も早く法案の成立をいただきまして、その後、施策、運用の中でこうした多くの意見にこたえていただきますようお願い申し上げます。また、食料安定供給を図るための消費者法案であるということを強くPRしていただきたいと考えております。国民総意の基本法となることを心からこいねがって、私の意見とさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  74. 穂積良行

    穂積委員長 ありがとうございました。  次に、佐伯公述人お願いいたします。
  75. 佐伯尚美

    ○佐伯公述人 佐伯でございます。大変時間が限られておりますので、ごく要点に問題を絞って私の意見を申し上げさせていただきたいと思います。  私は、現在かけられています新基本法について、基本的には賛成でございます。この法案は、私の印象で言いますと、ベストとは言えないけれどもベターであるというのが基本評価でございます。  私は、基本法考える場合の最大の問題点は、どういう基本法をつくるかということではなくて、どのようにして守られる基本法にするのか、そこが最大の問題点だと思うのですね。いかに法律に美辞麗句を並べてみても、それが守られなかったら何の意味もない。本来、基本法は個別施策の上にあって農政基本的、長期的方向づけをする、そういう役割を期待されているわけですね。  ところが、現行基本法は一体どうなったか。そうした機能を全く果たさなかった。その他の個別の農業施策というのは、基本法とは全くかかわりなく、それぞれの利害、それぞれの状況に応じて展開され、現在まで来ております。  それどころか、しばしば基本法の規定あるいは方向に反するような施策が行われてきた。恐らく、私の記憶によりますと、国会でも個別農業施策基本法に照らしてどうであるかというような議論はほとんどなされなかったのじゃないかと思うのですね。それで基本法は飾り物になってしまった、いわば形骸化、空洞化してきたというのがこの三十八年の実態だったというふうに思います。  なぜそうなったかということは、いろいろ理由がありますが、きょうは申し上げません。少なくとも、新しい基本法考える場合に、これまでの基本法が空洞化し役に立たなかったということの反省を踏まえて、できるだけ基本法を現実に近づけるとともに個別施策との関連づけを考えるということが何よりも必要だと思うのですね。個別の法律の文章をどうするかという話は、余り観念的に議論しても全く意味がないというふうに私は考えているわけであります。  その点について言いますと、今かけられている法案にはいろいろな形でもって現実に近づける、あるいはそれを個別施策とつなぐ、こういう工夫なり措置考えられている、その点私は大変高く評価するわけであります。いわばそれが私の総論的な賛成の理由でございます。  その点をもう少し細かに、具体的な今想定されている仕組みについて、各論的に四点ほど申し上げてみたいというふうに思います。  第一点は、これまでたびたび皆さんがおっしゃいましたし、御議論になったと思いますけれども農業政策の守備範囲が拡大された、あるいは対象が拡大された、いわば農政の広域化といったもの、あるいは広角化と言ってもいいと思うのですね。現行基本法は、対象農業内部に限定して、しかも主として農業生産、そこに焦点が絞られていた。これに対して、新しい基本法は、その名称が示すように、農業政策以外に、食料政策農村政策の分野まで対象を拡大している。いわば農政食料政策化、あるいは地域政策化、そういう方向が非常に明瞭に出ている。  一部には、これは地盤低下している農水省が領土拡大政策を図っているのだというふうな悪口もあります。そういうものがあるいはあるのかもしれぬけれども、私は、やはり基本的には、現代社会における農政というのは、もはや狭い農業の分野にはとどまり得ない、こういうことが基本的にあるのだと思うのですね。農業生産だけでなく、流通、加工、消費、それを含めた全体的なシステムみたいなものを考えざるを得ない。そういうような意欲があらわれているというふうに私は理解しているわけです。  特に、食料政策は、今も和歌山県の中央会副会長もお触れになりましたけれども、私は、タイトルとしては食料安定供給確保となっていますけれども、もっと端的に法律に則して言いますと、これは消費者政策だと思うのですね。消費者視点、あるいは国民全体の視点から見た食料需給のあり方をどうするかというのは、食料政策の本質だと思うのですね。その意味では大変重要な政策だと思うのです。  私はかねがね、現在の日本農業問題は、もはや農業なり農民の問題ではない、それはもう国民全体の問題であって、そういう視点から考えなければもう展望はないだろうというふうに言っていたのですけれども、今度の政策では、そういう食料政策消費者視点、それを真っ向から取り上げようとしている。内容として十分かということについてはまだ議論の余地がありますけれども、少なくともそういう意欲が示された、そういった点は私は大変買うわけであります。以上が第一点であります。  それから第二点は、農政理念が転換した。これはもう皆さんそれぞれおっしゃいましたから特に詳しくは申し上げません。現行基本法がいわば効率視点、目標としては農工間生産性格差の是正と所得均衡、いわば経済的効率性、そういう視点から農業を律しようとした。それに対して、今度の基本法ではそれを超えて、いわば経済以外の価値、それを二条から五条までに四つ挙げてあるわけですね、それが目標だと。  食料安定供給が二条、それから農業多面的機能が三条、持続的発展が四条、それから農村振興が五条、こういう四つの点を挙げている。これはまとめて言えば、農業の非経済的価値ないし公益的機能ということかと思います。つまり、農業は、単なる市場原理ではかられる以上のプラスアルファを持っているんだ、そういう理念を打ち出したというふうに私は解釈しているんですね。  これはEUなどでは社会的な常識でありますけれども日本ではともすれば、農業は効率的視点からのみはかるという風潮がこれまで強かった。それに対するアンチテーゼというのか、それに対置する、こういう点でそれを明確にしたということは私は高く買いますし、恐らくここにいらっしゃる皆さんの大部分もそうかと思います。  それから第三点は、今度の基本法の法的性格でございます。それは、恒久法からいわば時限法的なものに変わった、あるいは変えようとしているという点であります。  現行基本法は、明示されていませんけれども、大体恒久法というのがいわば暗黙の前提であった。それは、決められた以上ずっと変わらぬ、未来永劫変わらぬというのが暗黙の前提であった。ところが、農業政策というのは、社会状況が変わっていけばだんだん変わっていかざるを得ないのですね。望ましい農業政策のあり方というのは、全体の状況が変わったら変わっていかざるを得ない。ところが、従来の基本法はそれに対応するようなメカニズムを持っていなかった。  これに対して新基本法は、明確に時限法と言っているわけではありませんけれども、時限法的な要素を入れた。それが基本計画であります。あるいは、それ以外のいろいろな、農政改革大綱あるいは改革プログラム、これらを五年ごとに見直すことによって弾力的に状況対応していこう、こういうものを入れたという点は大変大きなメリットであって、少なくとも、これによって、実態に合わない基本法とかあるいは時代おくれの基本法という弊害をかなりの程度克服する可能性を持っている。可能性です。そうなるかどうかはまた別であります。それが第三点です。  それから第四点は、今の問題に関連して、基本法と個別施策とをつなぐ媒介項、それから制度的な措置、仕組みを考えているということです。  先ほど言いましたように、基本法最大の欠陥は、基本法だけ宙に浮いてしまって、個別政策と全く関連なくやられていたという点にあるんですね。それをつなぐために今度の法案では、基本計画農政改革大綱あるいは農政改革プログラム、こういうものを入れている。それを五年ごとに見直していく。こういうことを考えているんですね。それによって中間的に方向修正していこうということです。  こういうふうに、実施計画を五年ごとに見直すことによって弾力的に対応して、そこに具体的な施策のつながりを結びつける。それは私は大変大きなメリット、少なくともこれまでに比べたらメリットであって、多分大部分の人はそこを大変高く評価しているんじゃないかと思いますし、私も大体そうであります。  以上が、私が新基本法評価するゆえんあるいはその理由であります。  ただし、では全面的に賛成かというと、かなり問題があります。基本的に賛成であるけれども、しかし同時に幾つかの問題点とか注文もあります。そのことを、今申し上げたことに関連して四点ほど申し上げてみたい。  第一点は、農政あるいは政策の統合化ないし省際化についてであります。  農政の守備範囲が次第に拡大する、あるいは拡大しようとしている、食料政策あるいは地域政策まで射程に入れる、そうなればなるほど他省庁の政策との重複が生ずるのは当然であります。従来のように、農政だけであると大体農林省の守備範囲でおさまった。ところが、食料政策になりますと、農水省以外に自治省であるとか厚生省であるとか文部省であるとか通産とか、こういうものに関連してくる。地域政策になりますとさらに関連が広がりまして、ほとんどの省庁がこれに絡まってきますね。農水省の役割といったら非常にマイナーなものでしかない。それを私は省際化と呼んでいるんです。  省際化というのは、学際化という言葉もありまして、いろいろな学問がダブる部分を学際化と言っている。それになぞらえて私は省際化というふうに称して呼んでいるわけです。私のつくった新造語です。  いずれにせよ、そういう形でもって各省にまたがる分野がふえてきた。その場合、これをどう調整し全体としての総合性を確保していくのかということが大変重要になる。  ところが、そこのところは非常に不明確で、最初の第一条に、施策の総合的、計画的推進を図ると言っている。総合的とは一応言っているんですけれども、一体、総合化の主体はだれにするのか、あるいはどういう仕組みを考えるかはっきりしない。国民的な視野という点に立てば、場合によっては農水省の省益が犠牲になることがあり得る、そういう覚悟で総合化を考えなければ、どうも視野を拡大したことの意味が生きてこないのではないかというのが第一点であります。  それから第二点は、農政における地方分権化の方向がまだ非常に不徹底であるということですね。  御承知のように現行基本法は、地方公共団体はいわば国の下請機関であるというような位置づけだった。独自性あるいは主体性をほとんど認めなかったですね。  具体的に言いますと、今の基本法の三条に、地方公共団体は国の政策に準じて施策を行う、準じてということですね。これに対して新しい基本法は、幾つかの改善を考えている。例えば七条、国と地方公共団体は、適切な役割分担をして農政をやっていくんだというような規定がある。あるいは、三十七条では同じく、国と地方公共団体は相協力して農政をやっていく、展開していくと言っている。こういった、適切な役割分担なり相協力という発想はこれまでの基本法になかったんですね。それが入れられたというのは一応私は評価するんです。  ただし、望蜀の嘆を言いますと、それを一歩進めて、農政の地方分権化についての基本的な方向づけをしてほしかったというふうに思います。  私は、地方分権化というのは、すべての施策を同じように地方に移すという話じゃ全然ないと思うのですね。その施策の性格に応じて、地方分権的に運用すべきものとそれから中央集権的に運用すべきものとおのずから分かれる。分かれる中、何が地方分権として今一番重要かというと、構造政策とそれから中山間地政策です。これはもう申し上げませんけれども、それぞれが非常に多様な形で末端で進んでいる。それを上から一律に規定したら、百害あって一利ない。そういう方向づけぐらいはあってしかるべきであったのかというのが第二の注文であります。  それから第三は、先ほど言いました最後の点です。基本理念と個別施策との関連づけが欠如している。  これは皆さんも御承知かと思いますけれども、この基本法案が発表されたときに、日本のマスコミは競って、市場原理の強化だ、それによる農業の効率化を目指すというのが今度の基本法だ、こういう報道をしたわけですね。素直に法律的な文面だけ読んでみますと、理念のところに効率化とかいうことは出ていないです。唯一出ているのは、合理的な価格形成、合理的な価格という文章だけですね。それにもかかわらず、なぜマスコミは市場原理の強化を目指す新基本法という評価をしたかというのは、やはり価格政策の部分でWTOの規定に沿った形で市場原理の強化が目指されているということがあるのだと思います。  それだけではなくて、最初に挙げた四つの理念、いわば農業の非経済的価値、公益的機能、それについて、それをいかに個別施策に反映させていくか、そのつながりが全く触れられていない、そこに問題があったのじゃないかと思うのですね。公益的機能なり外部経済性というのは、要するに市場原理に反映されない、価格には反映されない。  では何でもってそれをカバーするのかというと、結局は、何らかの形の受益者負担かさもなければ財政負担、そこでカバーするということでなければ農業の非経済的価値は反映されないですね。そこを、どういう施策についてどういう方向でもって非経済的価値政策化していくか、そういうつながりの多くが書かれていないために、これは理念だけで、要するにこれはPR効果、言葉であって、実際はこっちなんだというふうにマスコミは受け取ったし、あながちそれはマスコミの認識不足とも言えない点があるということ、そこに問題点が残ったという感じがします。  それから、もう時間がありませんから一点だけ、第四点は実施計画ですね。  基本法があって、実施計画として基本計画その他があるわけですが、それは五年ごとに見直す。その見直すやり方、主体ないし視点、これが非常に不明確であります。  経緯からいいますと、この話はもともと、基本問題調査会の答申の中で、情勢の変化に柔軟に応ずるために五年ごとにそれまでの農政の総点検と評価を行うというふうに書かれたのを法律化したということだと思うのですね。そこで総点検と評価というふうに言ったことの中に、私の解釈では、暗黙のうちに、インプリシトに、第三者機関による客観的かつ透明な評価、点検ということが含意されていたというふうに私は解釈したわけです。  ところが、今度の法律案では、そこまで書いてありませんけれども、だれが評価するのか、どうも農林省ないし農林省の中の機関が評価するような印象を与える。それで果たして透明性、客観性を確保できるのかどうかということですね。やはり農政当局自身が自分がやったことを反省するということはできないし、やりたがらないし、やっても客観的にはできない、国民が納得するような形でできないのだろうと思う。そこの公平性、客観性あるいは透明性を確保するために、どういう形でもって見直しをするかということをもうちょっと明確にする必要があったのではないかということ、それが第四です。  以上述べましたのは、いわば大部分は法律の文言というよりもむしろ運用の問題かもしれません。しかし、私は、基本法にとっては、最初の繰り返しになりますけれども、形式的な文章をどうするかというようなことを観念的に議論をしても何の意味もないと思うのですね。やはり、運用を含めて実態との関連をどう考えるかということが大変重要ではないかというふうに思っております。  個別問題に入れませんでしたけれども、一応私の話をこれで終わらせていただきます。(拍手)
  76. 穂積良行

    穂積委員長 ありがとうございました。  以上で公述人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  77. 穂積良行

    穂積委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。増田敏男君。
  78. 増田敏男

    ○増田委員 私は、自由民主党の増田敏男です。  公述人の皆様には、きょうは大変御苦労さまでございます。初めに敬意を表します。それから、限られた時間でありますから、それぞれの皆さんにお尋ねが及ばないかもしれませんけれども、あらかじめ御了解を賜りたいと思います。  それでは、早速でございますが、桧垣公述人にお尋ねしたいのですが、食料自給率の関係で何%ぐらいをお考えですか、ずばり、これが一点。  それからその次に、農地の規制を強化するんだ、こういう御意見がございましたが、現行農業基本法の中のあり方のままの強化を言っておられるのか、あるいはこれから二十一世紀を展望して、強いて言えば農地はこういうふうにここにしっかり定めるんだ、そういう意味での強化をおっしゃっているのか、その二点をとりあえずお尋ねいたしたいと思います。
  79. 桧垣徳太郎

    ○桧垣公述人 自給率の目標をどのくらいにするかという御質問でございますが、これは望ましい自給率と、現実的にこれなら達成できるといいますか、可能性があるのではないか、そういうものと二つあると思うのです。  私は、望ましい自給率としては、いかなる事態になっても日本人が飢え死にすることがない。そういう前提に立ちますと、大体六〇%ぐらいの自給率は欲しい。しかし、現在の四一%という自給率から出発しまして六〇%というのは夢のような話である。でございますので、現実的な自給率として、五〇%程度のところが現実的な目標になり得るのではないかというふうに私は思っております。  それから、農地制度の運用についてもっと強化すべきではないかという意見を申し上げましたが、これは実は、農地制度だけでできるのかどうかは私は多少疑問を持っております。といいますのは、土地というのは、農地、非農地を通じて一つの秩序がなけりゃいかぬわけでありまして、そういう意味で、やはり土地制度全体について、国土の利用の適正化、あるいは国土の環境を保持していくにはどうすべきかという議論がもっとされるべきではないか。  それから、農地制度だけ申し上げましても、実はこれは若干問題があるかと思いますが、率直に申し上げまして、今の農地制度の中でも、公的施設、市町村や県の施設のために転用するというのは許可が要らないことになっておるわけです。そういうことになりますと、農地制度本来としては優良農地としてここは壊廃することは好ましくないというところでも規制のしようがないわけで、これをどうするかという問題を私は真剣に考えていいのではないか。  このことから、公的施設への転用がほかの私的な転用というものの方へ波及効果を及ぼしておることは間違いないわけでありますので、そういう点は検討すべきではないかというふうに考えております。
  80. 増田敏男

    ○増田委員 ありがとうございました。  続いてお尋ねをいたすのですが、株式会社の農地取得に対してどうお考えですか、これが一点。  それから、同じ問題を、組合長さんをなさっておられるそうですから、久保公述人にお尋ねしたいと思います。株式会社の農地取得をどうお考えですか。  それからもう一点、農業四団体、農協、今でいえばJA、農業委員会、土地改良、それから共済組合、こういった関係も基本法の中では見直していくんだ、こう位置づけてありますが、この辺は何かお考えがありますか。
  81. 桧垣徳太郎

    ○桧垣公述人 まず、株式会社の農地取得の問題、要するに株式会社が農地を取得して農業に参入することが適当であるのかどうかということに御質問の趣旨はなるかと思うのでありますが、私は、一般株式会社が農地を取得して農業に参入することには反対であります。  反対の理由は、やはり基本的には、農地の権利の取得というのは耕作者に対して認めていくことが最も望ましい。したがって、法人の取得につきましても、耕作者と言えるにふさわしいような法人については農地の取得を認めてよろしいというふうに思うわけでありまして、一般株式会社については、弊害だけ起こって、農業にとっても全く利益は出ないというふうに思いますので、私は反対であります。  それから、農業団体のあり方、整備の問題につきましては、これは、私も農業委員会系統の組織の頂点におる人間でございますから、なかなか言いにくいのであります。ただ、私は農林省にも言っておりますのは、農林省の新政策というのがたしか四、五年前に、五年ぐらい前に発表になったのですが、その中で、農業組織及び団体の整備という項目がありました。ところが、その項目はあるのですが、中身は何も書いてないので、こんな新政策方向というのはおかしいぞ、少なくとも農業組織あるいは農業団体につきましては、一つは、時代の進展に対応できるような組織でなければいけない、それからもう一つは、もう当たり前の話なんでございますが、効率的な団体、組織にすべきだ、同時に、できる限り簡素にすべきである、そういうことを考えてもらいたいということを当時の次官に言ったのです。  私の意見は、そういうことでございます。
  82. 久保英資

    ○久保公述人 株式会社が農地を取得して云々ということでございますけれども、そこで農業をしてくれれば、白い猫でも黒い猫でもネズミをとればいいということでございまして、そこで農業をやってくれれば、私は結構だと思います。  ただし、農業をやらなくなったら即その土地はもとのとおりに返還すべきだ、大いに農地を活用して農業生産を上げていただきたい、そういうふうに考えております。ただし、今言いましたように、農業をやめたら即撤退をしていただくということでございます。  それから、あとの、各農協、委員会、共済組合、それぞれの組合が目的どおりの期待を担う機能を果たしているかということでございまして、そこから御判断をいただいて再構築をすべきだと考えております。
  83. 増田敏男

    ○増田委員 それぞれにありがとうございました。  自給率の問題は、いかに国が設定しても、あるいは法律につくっても、農家の皆さんが頑張っても、それだけで自給率は上がるものではありません。国民の協力と理解がしっかり根づいていなければ、幾らつくったって売れません。もうこれは現実ですから、自給率考えたときにはそういう問題がある。しかも、私たちの国は、今二十一世紀を展望して、ここで大きく方向転換というよりは、新時代に向かった、農業基本法にかわる基本法を新しくつくろうとしています。  そういうことから考えますと、これからの人口流動だけで考えても、やがて二、三年たったら少子化が現実にあらわれてきます。十年たたない間にこの国は頂点になって、人口は減少に入ります。そして二〇一〇年ころには、確実に年間百五十万からの人が減っていく。そういう中で、私たち農業をどうするかの法律議論をし、十年ぐらいは見通して、五年ごとに見直していこうというのが今の状況です。いろいろの御意見をありがとうございました。  そこで、時間がありませんので、次に辻井公述人にお尋ねをいたすのですが、先ほど、基本的にはどちらかといえば反対の御意見で、批判的な立場にある、こうおっしゃっておられましたから、率直にお話を承りました。  その中で、私がちょっと理解ができなかったのは、価格制度を、これはどうしてもやっていくべきだ、こういうような強い御主張がございました。できれば、それにこしたことはありません。今、価格制度をやっていくというと、その負担をどういうふうにお考えでしょうか。国民の税に回すのか、あるいは国が出せと言ったって、どこかで何かしなければ、国はお金ありませんから、その辺の関係はどうお考えか。もしお考えがあったら教えてください。
  84. 辻井博

    ○辻井公述人 私は、今まで議論されておる関税化ということには反対でございまして、その関税化は二つあると思うのですけれども、これはウルグアイ・ラウンドのときのように国際交渉で決めて関税率が引き下げられてくる、こういう関税化は反対でございまして、国際的な協定で、各国の生産性の上昇ということを規律として入れたようなもとで関税の引き下げ率が各国で自律的に決められる、そういうふうな関税化がいいんじゃないかと思っているのです。  先生がお伺いになりました、支持をすべきかどうかということ、それは、だからそういう枠組みの中では全然考えておりません。考えておりませんというか、関税化でございますから、自動的に関税率だけは国内価格が国際価格よりも引き上げられるわけでございまして、だれも負担する必要はないということでございます。  ただ、私はその前に関税化反対と申し上げたのですが、今まで議論されている関税化反対でございまして、新しい関税化、すなわち自律的、自主的関税化というのがいいということで、負担はその場合は必要はないということでございます。どうもありがとうございました。
  85. 増田敏男

    ○増田委員 最後になってしまいましたが、佐伯公述人にお尋ねをいたすのですが、ついに農業従事者は大体昭和一けたが、私も一けたなんです、昭和一けたが中心、中核という形になりました。  ちょうど昭和三十六年、農業基本法ができたとき、私は市会議員でした。したがって、やがてこれから自立経営農家がどんどん育っていくんだと大きな夢をかけて議論した姿を今思い描きましたが、工業、商業その他に比べて、残念ながら農業は一緒に歩むことができませんでした。  今、時間に違いはあっても、何でもかんでもここで見直さなければという思いに立って実際の農業を眺めると、大体私の仲間が中核で、これを五年たって見直すときには何割かが離農してしまうんじゃないのかな、十年たったらどうなんだ、こう考えながら、高齢者と後継者とこの辺を考えてどういうお考えをお持ちですか。恐縮でございます。
  86. 佐伯尚美

    ○佐伯公述人 大変切実な話を伺いました。  確かに、これまで日本農業を支えてきたのは、おっしゃるように、私もそうですが、一けた世代ですよね。その世代が大体六十から七十ぐらいになって、幾ら頑張ってもあと十年は農業労働をやっていけないのだろうと思うのですね。  その点からいいますと、恐らく昔、基本法ができたときに、地すべり的に構造変化が進むと言ったけれども、その地すべり的な変化の一番基本にある労働力、農業従事者、そこの減少が急速に進むのだろうという気がします。ただ、問題は、その受け皿を一体どう想定し、どこまで用意されているのかということかと思うのですね。  それを見ますと、確かに点としてはございます。自立経営とか企業経営とか企業経営体の点としてありますけれども、どうもそれは、ある支配的なシェアを占める、生産シェアを占めるまでは至っていない。したがって、そういう個別な経営を拡大していくということも一つの方法ですけれども、同時に、やはり集落的な地域の連帯を生かしたような生産組織営農地域営農集団と言ってもいいのですけれども、そういうものをいかにつくり出していくか。それは一種の過渡かもしれませんけれども、しかし、過渡としてはかなり長い過渡期が必要なんじゃないか。  そういうものを生かすために、先ほどの話にひっかけますと、やはり地域の中でどういう形のものが育っているか、そういうものが生きるような、そういう構造政策をぜひこれから詰めていっていただきたいというふうに思っているわけでございます。
  87. 増田敏男

    ○増田委員 ありがとうございました。時間の関係で中途になったと思います。おわびを申し上げます。  それでは、質疑を終わります。
  88. 穂積良行

    穂積委員長 次に、安住淳君。
  89. 安住淳

    ○安住委員 民主党の安住でございます。  きょうは、公述人の皆さん、本当に御苦労さまでございます。貴重な御意見をありがとうございました。時間がございませんので、早速質問をさせていただきます。一問一答で、どうぞよろしくお願いします。  佐伯公述人にまず伺いますが、先ほどのお話で、確かにこの基本計画基本法理念と現実というものがいかに乖離をしてきたかというこの昭和三十六年からの歴史、私もそのとおりだと思います。具体的に、五年ごとの見直し、これは第三者機関できちっとした例えば評価点検システムが必要ではないかということですが、これをもう少し具体的に、考え方を持っていらっしゃればお話をしていただきたい。  もう一つ、他省庁にまたがるというお話がありましたが、まさにそのとおりで、実は食料農業農村基本法と今回言っていますが、私、個人的には、この農村というのを果たして本当に基本法の中でくくっていいのか。本当はそうではなくて、私も選挙区は宮城県でございますが、農村にも、大都市圏に付随したような農村もあれば本当の農村もあったり、これは、うがった見方をすると、農林省の既得権を守ろうとするためにあえて農村という定義を使ったのであって、基本的には、これは地方自治体が中心で進めることをいかにサポートするかという方に切りかえていった方がむしろいいと私は思っているのですけれども、この二点についてお考えがあればと思います。
  90. 佐伯尚美

    ○佐伯公述人 それぞれ大変大きな問題で、明快にお答えするのは難しいかと思います。  前の方については、私、具体的にどういうシステムがいいかというイメージは持っていません。しかし、少なくとも、ある種の専門家が集まって、しかも、政府からある程度離れてそれを客観的に評価できるような、農政審議会があるではないかという議論はするのですけれども農政審議会はむしろそれを実施する方ですから、それからちょっと離れたような形できちんと評価できる、どことどこが問題で、どこがうまくいった、そういうことをきちんと評価して国民に公表できるようなシステムにしないと、結局は、形式はつくったけれども実態としては何か政府のものを追認したにすぎないという形に流れていく可能性があるのではないかというふうに思います。  それから、後者の農村政策ですけれども、おっしゃるとおりだと思うのですよ。基本問題調査会農村部会をつくった。そこで決定的に欠けていたのは、現在の、特に中山間地政策の総体を点検するということをやらなかった。今の中山間地政策全体でいいますと、条件不利対策と言っているのですけれども中心になっているのは過疎法と振興法ですね。農林省が農政としてやれるのはごく一部なんですよ。今の過疎法あるいはこれ、ああいう条件不利対策の総体自身がどういうふうに動いて、どこに問題点があるか、そういう中で検討して、その中で例えばデカップリングの問題を位置づけるべきだったのですけれども、そこは全部ネグレクトしてしまって、専ら中山間地域に所得補償をやるという話になってしまったわけですね。  私は、それは大変危険であって、いたずらな幻想を振りまく可能性がある。あれだけ騒がれたために、地域地域へ行ったら大変な金が来るようなイメージになっているけれども、恐らく、数百億ぐらいの金を回しても、一挙に中山間地域がよくなるということはないと思うのですね。  それはやはり、日本的な条件不利地域政策の全体がどうなって、特に、今までの政策というのは専らハード中心であって、ソフトはほとんどなかった。そのことのツケが出てきているということを明確にした上で、それを末端にいかに総合化していくかということを議論してこそ初めて基本問題だと思ったけれども、そういう視野が全くなかったし、その延長線上で今度の基本法もできてしまったという点は、私は大変不満でございます。
  91. 安住淳

    ○安住委員 大変貴重な意見をありがとうございました。私もかなり似たところがあります。  続いて、久保公述人にお伺いをいたします。現場の声を聞かせていただいて、私も大変参考になりました。実は、二点ほど伺いたいことがございます。  デカップリングというのが行われるとすれば、確かに中山間地、久保公述人のいらっしゃるようなところも対象になる可能性は高いわけでありますが、現実に、これを具体的にどういう地域に、またどういう方々にどういうふうな形でお配りするかということは非常に難しい問題があります。我々のような東北の大米作地帯と言われるところでも、中山間地の非常に不利な地域もあって、面としてなかなかとらえられないところがあるわけですね。  実際、生産者の代表として、このことに対して具体的なガイドラインをお持ちであれば、またどういうお考えか、あればぜひお聞かせを願いたいと思います。
  92. 久保英資

    ○久保公述人 特に考え方は持っておりませんけれども、例えば、前の一億円のような形で、地方に権利を与えて、その地方地方の個性を生かした形で地方の創意工夫を図っていただく、通常の所得補償の分とデカップリングの分と。  また別の意味で、例えば、耕作はするけれども田植えはようしないというような水田の方々、田植えだけしてやれば耕作はここ五年、十年は続けられる、しかし、田植えはようしない、耕作と田植えだけしてくれたらあとの管理はずっとやりますとか、その地域地域によって、人、人によっていろいろな形があると思います。  総じて、お金で片をつけるということではなしに、地方でそういったアイデアを募る部分も含めていただきますと、また競い合って、いいものができてくるのじゃないかなと今考えております。
  93. 安住淳

    ○安住委員 ありがとうございました。  それから、関連しますが、これは桧垣公述人にもお伺いをいたしますが、私も、四百九十一万ヘクタールという耕作面積がこれ以上減るのを何かの形で防がなければならないと思います。  しかし実際に、確かな数字はありませんが、全国には大体三十万ヘクタール強の耕作をしていない田んぼというかそういうのがあります。しかし、これに関して、例えば具体的に言うと、課税制度なんかでは、ほかの農業者と同じような優遇措置を受けている。もしかすると、こういうことに対して、例は適切かどうかわかりませんが、宅地並み課税をかけたり、何らかの形で、大規模化を図る上にも、まじめに耕作をしている人たちのために集約をしていく方法というのは必要ではないかと思いますが、いかがでございますか。お二人に。
  94. 桧垣徳太郎

    ○桧垣公述人 御指摘のように、現在の耕地面積四百九十万ヘクタールというのは、これ以上減ったのでは、先ほど言いました自給率目標五〇%などというのはとても到達できる条件でなくなってしまうのじゃないかというふうに思いますので、私は、第三次国土計画でも四百九十万ヘクタールの農耕地を保全するんだということになっておりますから、この程度の耕地は維持をすべきであるというふうに思います。  不耕作地に対して課税の強化のようなお話がありますが、これは農政論でなしに、むしろ税制論としてちょっと問題があり過ぎるのではないか。不耕作地が事実上、宅地以下の状態にあるというような場合には、私は、宅地課税というものをしていいのではないかと。むしろそのときには、所有者が耕作地に再び耕作をするという意思を明示するかどうかというようなことを確かめた上で宅地課税をやってもいいのではないかというふうに私は思います。
  95. 安住淳

    ○安住委員 次に、辻井公述人にお伺いしますが、米の生産調整のあり方というのは、先ほどの公述人のお話の延長線でいくと、どのようなお考えを持っていらっしゃいますか。今のような生産調整をずっと続けるべきだと思っていらっしゃるのか、それとも国内の競争というものをもう少し新食糧法の理念に従ってやっていくべきなのか、そこら辺のお考えをお伺いしたいと思います。
  96. 辻井博

    ○辻井公述人 お米というのは必需品でございまして、学生たちには需要の価格弾力性が小さいんだと言うんですけれども、結局、価格変動が本質的に物すごく大きいものなんでございますね。価格は暴騰、暴落する可能性がある。だから、私は、新農業基本法のもとでも、生産量の管理でございますか、これは、何らかの形で政府が介入して需給均衡を図るようにやっていかなければならないというふうに思います。  今までのいろいろな議論では、手挙げ転作とか上からの押しつけ転作とか、いろいろなことがございましたけれども、これは、私はどちらがいいかというのはよくわからないのでございます。しかし、いずれにしても、基本的にはやっていかなければならない。アメリカでやっているような手挙げの転作が日本で本当にできるのかどうかというのは、これは研究に値するもので、私はその点はよくわかりません。でも、減反は行うべきであるというふうに思います。どうもありがとうございました。
  97. 安住淳

    ○安住委員 最後に、佐伯公述人に似た問題を違う角度からお伺いしますが、認定農家制度を含めて、農林省の政策というのは、できるだけ規模を拡大して、いわば強い農家を何とかつくっていこう。つまり、私は、平等主義からの脱却というのはやはりもう避けて通れないんだと思います。それからいったら、今の生産調整の話というのは、実はやはり根本的に大きく我が国を覆っている農業政策の一番の問題点だと私は思っております。  そういう中で、規模拡大というものをもし是認なされるのであれば、それに向けてどういう施策を打っていくかということが、いわんや市場原理のあり方というものをやはり定義づけるんではないかなと思いますので、この辺についての御意見を最後に伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  98. 佐伯尚美

    ○佐伯公述人 大変抽象的で、しかも基本的な問題でございます。  私は、おっしゃるように、やはり農業政策、特に構造政策というのは、一点集中主義というか、言葉は悪いのですけれども選別政策、そういうものを貫くべきだし、これまで以上にそういう方向を明確にすべきだろうという気がいたします。  今はそういう議論がないのかどうかは知りませんけれども、そういう議論をすると必ず、貧農切り捨てだ、差別だといったような議論が、国会とは申しませんけれども多かったわけですね。しかし、私は逆でして、むしろ日本農村ないし農業最大の特徴は貧乏がなくなったということだと思うんですね、戦前に比べてもそうですけれども農業はかなり難しいけれども、逆に農民はますます豊かになってきている。  ですから、外国人が日本に来ますと、日本農業は実にうまくやっているじゃないか、あれだけ豊かじゃないかと言うわけですね。それはやはり、農業がよかったんじゃなくて、兼業によって農民が豊かになって、かつてのような貧困がなくなったということなんですね。そこは区別して、やはり農業政策というのはますます特定のところに絞っていくという方向考えるべきだろうし、恐らく、先ほどちょっと議論になりました生産調整なり価格政策も、そういう特定の階層に絞っていくという方向性の中で考えなければもう展望はないんじゃないかというふうに思っております。
  99. 安住淳

    ○安住委員 どうもありがとうございました。終わります。
  100. 穂積良行

    穂積委員長 次に、宮地正介君。
  101. 宮地正介

    ○宮地委員 公明党・改革クラブの宮地正介でございます。  きょうは、公述人の皆さんには、御多忙の中、当委員会にお越しいただきまして、貴重な御意見を大変ありがとうございます。限られた時間でございますので、端的に申し上げたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  最初に、佐伯公述人にお話を伺いたいと思います。  今回の新農業基本法におきまして、十五条に基本計画をつくりまして、この基本計画がいわゆる具体的な施策の実効政策になるわけでございます。この六項のところに、基本計画を定めたときには国民に公表しなければならないという公表の義務規定がつくられているんですが、私ども公明党としては、ここはもう少しきちっと、国会の方に報告または承認を求めるぐらいの、国会がきちっと責任が持てるような、そういう修正がやはり必要ではないか、こういうことも考えておるわけでございますが、この点についてどういう御意見をお持ちなのか。  それから、先生は今、いわゆる農水省マターでなくて、今回の法案は、食料政策地域政策、国土政策など多くの政策がワンパッケージになっているので、これはやはり各省にまたがるそうした大変大きな施策になっておると。私もそのように理解をしております。できたら内閣総理大臣のもとに関係閣僚の閣僚会議みたいなものを設けて、やはり内閣総理大臣のもとにそうした施策を実効あらしめるものにしていく。  そういう中で、当面、自給率を五〇%に引き上げる、国民総体の、国会も内閣も国民も、全体の総力で今後の二十一世紀日本食料安全保障あるいは世界食料安全保障に貢献できるような、そうした抜本改革にしていくべきではないか、こういう考え方も持っているわけでございますが、この二点について、先生の御意見を伺えればありがたいと思います。
  102. 佐伯尚美

    ○佐伯公述人 いずれも大変具体的な問題で答えづらいんですけれども、前者の基本計画国会の承認事項なり国会での審議事項にしたらどうかということについて、私は、一見それは大変合理的なように見えて、本当にそれでうまくいくのかという気がするんですね。というのは、基本計画について非常に不明確な点は、きょうは触れなかったんですけれども基本計画の作成をだれがするのか、あるいはどういうプロセスでするのかということ、そこを全く触れていないわけですね。  それから後は実態論でございますけれども、恐らく、実態としては、基本計画に限らないで、基本法の全体の枠組みもそうですし、あるいは新たな米政策もそうで、三者協議でやっているわけですね。自民党と農協とそれから農林省との三者でもってネゴをして、大体枠組みを決めて、それをのせてくるという形でもう基本的なものが進んできたというのが私は実態だと思っているのです。  それは、ある意味では大変効率的にいったという面がございますけれども、他方、我々から見て、どういうプロセスでどういう議論があってああいうふうになったのかというのは全然見えてこないんですね。そこのところは大変不明瞭、不透明だという印象を持っています。そういう作成のプロセスと、それからつくったものの承認を含めて、全体としてあれで本当に国民が納得できるのかということをもう一遍考えてみる必要があるのかなという気がいたします。  それから、食料安全保障なり食料政策という問題は、それは、農林省といっても、農林省を超えるような大きな問題だから、内閣に別な組織、どういうのかわかりませんが、やったらどうかというお話ですね。  究極というか、将来的にはそういう展望で考えた方がいいのかもしれませんが、差し当たりは今のままでやって、しかし同時に、食料政策というのは農業政策とは違うということを明瞭にするために、予算面で別にするというふうなことで内部的に仕切りをつくる、例えば備蓄政策というのは、これは明らかに国民全体の問題ですけれども、それを今は食管会計の中で処理しちゃっているために非常に不明瞭になっているということがあります。  そういうものを含めて、食料政策にかかわる負担というのは、本来の農業予算とは別な枠組みである、そういう形で考えていくことが差し当たりやることの第一歩ではないか。その延長線上に、あるいは先生おっしゃったように、それを別な組織でやっていくということはあり得るかもしれませんけれども、そこまでいくのはちょっと早過ぎるんじゃないかというのが私の印象であります。
  103. 宮地正介

    ○宮地委員 次に、久保公述人にお伺いしたいと思います。  和歌山県の中山間地域で大変御苦労されている貴重な御意見、大変にありがとうございました。まさにこの中山間地対策の不利補正という、いわゆるデカップリング制度の導入の基準づくりが今政府内で検討されているわけでございまして、これはやはり国民の皆さんにまずわかりやすく、まただれにも理解、合意の得られるような交付の仕方というのが私は大変大事であろう、EU型の制度を参考にして検討することもこれは結構でございますが。  そこで、その交付の仕方として、いわゆる一戸当たり農家の皆さんに支給するやり方、あるいは、一部支給して、さらに集落なり市町村ごとに交付して、そしていわゆる公平、公正な交付をする。国のマターよりも、集落なりその地域の市町村の方が具体的に実態が非常によくわかっているわけですから、そこに一たんきちっと交付して、それから先、公平、公正な透明性のある交付をしていくというやり方、現実、和歌山においては、そうしたことについてまずどんな御意見があるのか。  それからもう一つは、やはり財政的な面として、現在、農水省のいわゆる構造改善事業の一つの総予算の中から何とか捻出しようという努力が行われているやに聞いておりますが、私はむしろそれにプラス、現在全国の市町村に交付されているいわゆる地方交付税、この地方交付税の算出の積算のベースに、今回のこのようなデカップリング制度という不利補正の問題もやはり新たに算入をして、この地方交付税の中で少しフォローアップするようなこと、こういうことも検討すべきではないか。  今回のこうした新制度導入によって、私は、農水省マターだけの予算を超えて、政府全体の中で、場合によってはプラス新規財源もしっかりと据えて、腰の据わったきちっとした財政措置をすべきではないか、こんな意見も持っているわけですが、久保公述人のそうした問題についての御意見を伺えればありがたいと思います。
  104. 久保英資

    ○久保公述人 先ほど安住先生からお尋ねいただいたときにお答えしたようなことでございまして、ある程度の部分を地方に任せないと、その実態はわからないというふうに考えておるわけでございます。そういうことで、まず試行を始めながら、だんだんと積み重ねていくと。  先ほど申しましたけれども、ヨーロッパでは農業が強いし、環境の問題も重視されているということですけれども、今日に至るまでの過程は、長い歴史があって今日ができ上がっているように聞いておるわけでございまして、試行することによってだんだんと熟していって完璧になる、当初からそういうふうな完璧なものは私は出ないと思いますし、全国的に知恵を拝見することによっていろいろなものが出てくるであろう、そういうふうに考えてございまして、お尋ねいただきましたようなことと同じでございます。  そしてまた、先ほど公述いたしましたように、農業面だけでは対応し切れないわけでございまして、農業の総生産額が十兆、多面的機能、公益機能が七兆、十兆に対する七兆、この七兆の財源をどこから出していくかということは、これはもう先生方の領域でございますから、大いに御議論をいただきたいと思います。私の領域ではございません。どうぞひとつ、国家百年の大計のもとに、そういうようなことをお願いしたいと思います。
  105. 宮地正介

    ○宮地委員 次に、桧垣公述人にお伺いしたいと思います。  特に自給率向上と、いわゆる優良農地確保というのは、これは切っても切れない大変重要なところでございます。特に農地転用の問題というのが最近非常に大きな問題で、私の住んでいる埼玉県などは、首都圏で都市農業の非常に盛んなところでございますが、一時、バブル期などにおいては、この農地転用の問題、宅地化の問題等で大変苦労したところでございます。  そういう中で、一つは相続税の問題について、確かに農地には猶予制度二十年というのがあります。林地についてはまだそれがない。最近、首都圏などで非常に安易に林地がいろいろと売却されていく、そうした問題が、産業廃棄物のそうした大変な地域になって、ダイオキシン問題が出てくる。もう一度、しっかりと優良農地確保する。今の状況ですと、大体相続を三代すると、農地がもう本当になくなってしまう。これで今後、日本の優良農地確保ができるのであろうか。四百九十万ヘクタール、これはもうこれ以上下げるわけにいかぬのですから、新しいこうした農業基本法制定に伴って、もう一度、農地、林地の相続税制度見直しを抜本的にやる、そうした時期がやはり来ているんではないか、こういう感じがしているわけですが、この点について桧垣公述人の御意見を伺えればありがたいと思います。
  106. 桧垣徳太郎

    ○桧垣公述人 先ほども申し上げましたように、四百九十万ヘクタール程度の農耕地は、今後自給率を上げていくという目標を掲げる限りどうしても必要だというふうに、その点はもう御意見のとおりでございます。  そのために、農地の相続税の問題を抜本的に考え直したらどうかというお話でございますが、農地の相続税問題は、現行は、御案内のように、農業の相続人が将来長期にわたって農業経営をやっていくということを明らかにした場合には、農地としての利用の期間はいわゆる農地価格による課税をする、もし予定期間の間に農業としての土地利用をやめたら、これはさかのぼって宅地課税をやる、そういう考え方でやっておるわけであります。  優良農地確保ということで、相続税問題で優良農地確保していくということについてはちょっと私もどういう方途があり得るのかということを思いつかないのでございます。これは今後農水当局、またこれは税制の問題でございますから税制当局も検討してもらいたいし、私ももう少し勉強させていただきたいと思います。
  107. 宮地正介

    ○宮地委員 大変ありがとうございました。
  108. 穂積良行

    穂積委員長 次に、一川保夫君。
  109. 一川保夫

    ○一川委員 きょうは皆さん方、大変御苦労さまでございます。  最初に、桧垣公述人にお伺いしたいと思いますけれども、これまでいろいろと質疑のあった点はできるだけ重複を避けましてお願いしたいと思います。  一つは、先ほどのお話の中に、まさしく食料問題というのは人道的な問題であるというようなお話の中から、日本は、これから将来にかけて世界食料が逼迫する状況の中で、その経済力に物を言わせてどうのこうのということがあってはならない、やはりそのためにも国内農業生産力、供給体制をしっかりと構築すべきだというお話がございました。  今ほどの話題にもありましたように、その最もベースになるのは、農地をしっかりと確保していくということが持続的な農業を維持するためにも大変大事だというお話がございまして、私も全く同感でございます。  しかし、現実、ではそれぞれの農村地域はどうなっているかということを見たときに、先ほどもお話がありましたように、平場の優良農地だなと思われるところに限って割と公的なものを立地させるために大規模な転用が行われるということが現実ありますし、また、片や、本当の農山村の、これから農業以外の産業を導入して活力を持たせたいと思われるような農地については割と厳しい指導がされているような感じも私はするわけです。  そういう面で、これまでの農地転用に対する、あるいは農地利用に対するいろいろな施策のあり方は若干反省点もあるのではないかというふうに思います。先ほど幾つかそういうコメントがございましたけれども、特にこれまでの農地制度農地政策の中で反省すべき点、それから、特にこれからの施策の展開でこの点は留意すべきだという点をもう一度お話しいただければありがたいと思います。
  110. 桧垣徳太郎

    ○桧垣公述人 今までも申し上げてきましたように、やはり自給率を維持向上させていくんだという農業政策をとろうとするならば、私は、優良農地は断固として守っていかなければならぬというふうに思うわけであります。  現行農地制度もかなり厳しい運用をしておるわけではございますけれども、相変わらず相当の農地の壊廃が行われておる。特に、先ほど申し上げましたように、公的施設のための転用は、これはもう許可を要しないということでもう自由にやっておるわけであります。これがまたその周辺の土地価格の上昇を招き、一般の、非公的な転用希望者、あるいは転用希望者への土地の譲渡をしたいという意欲を刺激するという悪影響が出ておるわけでありまして、この点を私はどうしても反省したいものだと思います。  それと、これも農林水産省だけの範囲ではやり切れないと思いますけれども、本当は、非農地も含めまして、有限な資源でございます土地につきましては、大局的に判断をしました一種の利用計画、土地利用の計画というものがあって、その土地利用の計画地はそれぞれの計画の目的以外に使うことができないというフランスやドイツの制度を私は日本でもちょっと学ぶべきではないだろうかというふうに思っておるわけであります。  いずれにいたしましても、農地制度につきまして、冒頭にも申し上げましたように、国民から理解をされなければいけませんが、むしろ規制は私は強化をする方向検討すべきであるというふうに思っております。
  111. 一川保夫

    ○一川委員 それから次に、やはり桧垣先生の説明の中に、今回のこの新しい基本法というのは農業に従事する人にとって精神的な支えになるんだということで大変意義が大きいということも含めてのお話がございました。  私も、当然これは国民的な視点で、食料とか農村とかそういうことも含めて、この法律は幅広く国民的な合意を得ることは大変大事なことではありますけれども、一方では、現実に農業に従事している人なりまた農村で居住している方々にしっかりと誇りを持っていただきながら農業に意欲的に取り組んでいただけるような、そういう支えになるということが非常に大切なことではないかというふうに思っております。  そのためには、当然ながら、やはり俗に言う農業に対する生きがいというものが私は大事であると思いますし、またそのバックで、国民全体の皆さん方がそれを支えているということが必要だというふうに思うわけですけれども、そのあたりの御所見、もう一度、何かこれまでの経験を踏まえてございましたらよろしくお願いしたいと思います。
  112. 桧垣徳太郎

    ○桧垣公述人 私が公述の最後のところで、農業経営者なりあるいは担い手が法制上の精神的な支えとしてこの法案の成立を期待しておるということを申し上げたわけでありますが、今農業がある意味で非常に変革の時期に入っておるわけでありまして、これから農業経営をやっていく、あるいは農業担い手となろうとする人たちは、こういう変革の中で、農業者としての誇りと、それからある意味農業に対する意欲を持たなければこれはやっていけるものではないし、また生産性を上げていくという進歩は期待できない。  そういう意味では、私は今の農業基本法に関係した人間の一人でございますからみずから反省もいたしておるつもりでございますが、現行基本法というのは、ざっくばらんに申しまして、今死に体になっている。そういうことでございますから、現行基本法に従った農政がやられていないではないかというようなことは、これは政治の世界でもあるいは農業界の中でも言う者がいなくなっている。要するに、法制として死に体になっている。そういう状態では、農業の将来に希望を持ち、また農業誇りを持ち、そして自分たちはこの農業というものに意欲を持っているんだということを農民に勧めましても、あるいは慫慂いたしましても、それは話にならない。  ですから、この際、先ほども触れましたように、国民的な視点も入れた新しい食料農業農村基本法というものが制定をされますこと、特に国会でできれば全会一致で成立をさせていただきたいものだというのはそういう趣旨でございます。
  113. 一川保夫

    ○一川委員 現行基本法にかかわってこられた責任ある立場の一人としての大変含蓄のあるお言葉でございましたけれども、我々も大いにまた参考にさせていただきたい、そのように思っております。  次に、久保公述人にお伺いしたいと思います。  冒頭の陳述の中にお話がございましたけれども、和歌山県といえば、我々のイメージとしては、大変山の多いところだというイメージは抱いておりますし、先ほど耕地面積が八%ぐらいだというようなお話の中で、しかし、和歌山県の農業というのは、ミカンなり梅なりカキといった果樹を中心に全国でも有数の特産地といいますか、優秀な農産物生産してこられたという中では、大変厳しい自然条件の中で今日まで努力してこられた和歌山県下の農民の方々なり、またそれをリードしてこられた農業関係者に心から敬意を表したいと思っております。  また一方では、そういう活力のある果樹農業とは別に、大変厳しい山村地帯があるのだというお話もございました。これは恐らく、同じ県下の中にあって、気象条件はそう大差はないのかもしれませんけれども、いろいろな面で人間の努力の限界を超えているというような地域が最近非常に顕在化してきたということだろうというふうに思うわけです。  その一つの原因として、これまでの森林行政といいますか、そういったことの反省点もお話がありましたけれども、中山間というよりも、どっちかといえば本当の山村地域だと思いますけれども、これからのそういった山村地域農業、その農業を営みつつその地域に住んでいただく、そういう方々に定住していただくためにも、今後どうすべきかということが一番ポイントになるわけです。  先ほどの直接支払い制度等のことも検討を開始されましたけれども基本的には、いろいろなプライドを持った方々もたくさんいらっしゃるわけですから、単なる経済的な問題でどうのこうのということよりも、やはり自分たちの生まれ故郷に対してしっかりとした誇りを持ちつつそこに定住していただくためには、今農政として基本的にこういうことをやってほしいということに対する何かお考えがあればお聞かせ願いたいというふうに思います。
  114. 久保英資

    ○久保公述人 なかなか山村対策、過疎対策に対する妙案はないことは皆さん御承知のとおりだと思いますけれども、やはり山村に住みたいという方は多いということなのです。山村で農業はできないけれども、山村に住みたいという希望はあるということなのです。若い方々が農業を志して山村へ来ても、やはり思う所得が上げられないのでリタイアしていくわけですけれども、定年退職された方々がお金を持って生きがい営農として山村に住みたいということはあるわけでございます。  先ほど言いましたように、地域全体が既に老人ホームでございますから、老人の方々にたくさん来ていただければいただけるほど、在宅介護の支援をしながら、老人施策も充実してくるだろう。定年退職された方々で、農地は言うなれば趣味、生きがいという領域の方々でも、できるだけ多く来ていただけるような施策が講じられたらありがたい。山村で農業というのはできないけれども、山村に人が住まないと、自然は守られません。  昔は、林業が盛んでございましたし、林業で生計を立てることもできました。山村の農業者は、林業の傍ら農業をやり、農業の傍ら林業をやってきて今日まで生計を立ててきたわけでございます。山村農業の崩壊は、林業が壊滅したということが大きな原因になっておるわけでございます。林業の立て直しは、すぐにはできないと思います。林業は、本当に、間伐をして、百年の大計でもって今林業を育成すれば、それは必ず一年一年木が大きくなって財を蓄えるわけでございますから、これこそ国内ですばらしいこれ以上の備蓄はない、そういうふうに考えてございます。  ちょっと質問の趣旨から外れましたけれども、山村へ大いに、農業をしない方々でもたくさん住んでいただくようないわゆる住宅施策環境整備の問題、そんなことをやっていただければ非常にありがたいと思っております。
  115. 一川保夫

    ○一川委員 現実にそういった山村地域で御苦労されている公述人のお話、我々も、これからのいろいろな議論の中で参考にさせていただきたい、そのように思っております。特に、林業と農業とのかかわり合いというのは非常に我々も関心の強いところでもございますし、またこれからもいろいろな面で御指導を賜りたい、そのように思っております。  それから、引き続き久保公述人にお伺いしたいのは、先ほどのお話の中で、この新しい基本法にもっと消費者サイドが関心を持っていただきたいということを強くおっしゃっていたように思います。これは、消費者ということは、当然狭い意味消費者ということもございますし、あるいは都市に住んでいる方々、または農業以外の産業に従事されている方々、そういう方々に、この新しい基本法というものをもっとPRしながら、しっかりと関心を持っていただくようにしてほしいということの指摘があったように思うわけでして、これまた国民合意という中では大変大切なことでございますけれども、特にその点について御所見をもう一度お伺いしたいと思います。
  116. 久保英資

    ○久保公述人 この法案では、長期的に安全な食料を安定して供給していくというのが最大のねらいでございます。  平成五年でしたか、米不足があったように、少しの米不足で大いに騒ぐわけでございます。しかし、農業者は、自分の食料確保してから後供給するわけでございます。農家は、いろいろなことがあっても、外国の食料が途絶えても、まず農家は困らないわけです。消費者が困るわけです。  私は、この基本法消費者の声が盛り上がってつくっていただきたい、消費者が、国民が食べる食料でございますので、国民が関心を持っていただきたい、そのことをこいねがっておるわけでございます。消費者の方々が盛り上がって、こういった法律を早くつくれ、農業もしっかりせい、こういった理念のもとに法律をつくって、意欲を燃やして希望が持てるようなものを農業者に与えようじゃないかということになってほしいのですけれども、今は農業者の方が法案のことについてやきもきしているわけでございます。一千万人の署名の中で、私も街頭に出て、農業者の署名は要らない、消費者の方々に署名をしてもらおうと思って街頭に立って、生協の方々と一緒に消費者サイドの新しい農業基本法をつくりたいということで、したわけでございます。  しかし、大局的には消費者なり国民との乖離があるのが残念でたまりません。
  117. 一川保夫

    ○一川委員 どうもありがとうございました。終わらせていただきます。
  118. 穂積良行

    穂積委員長 次に、藤田スミ君。
  119. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 公述人の皆さん、きょうは本当にありがとうございます。  私ども日本共産党は、今日の日本農業を再建して食料自給率向上させていくことは二十一世紀にとっての国民の命の根本の問題だと思っておりますし、それだけに、そうした課題をより確実なものにしていくための基本法でなければならないという立場で、今審議をしているところでございます。  いろいろお尋ねをしていきたいと思いますが、まず最初に、辻井先生の方から質問をさせていただきます。  きょうは、辻井先生は、今回の新基本法はそもそも次期WTO交渉対応したものとしてつくられているという御発言がございました。実は、一昨日、北海道で北大の太田原教授も公述人に立たれましたけれども、同様の発言をしておられたわけでございます。先生は、特に国家自決権の立場をとるべきだと。私どもも、食料の問題はそもそも国家主権にかかわる問題だという立場でございますが、この点でも同感いたしました。また、林業政策が米の先輩というのはつらい言い方ですが、今日、材価が輸入材に押されてどうにも経営が成り立たないという状態は、まさに稲作経営がこのままでは将来そういう姿になりかねないという御指摘もあったと思います。  そこで、私は、これまでもしばしば勉強させていただいておりますが、ここに来るまで先生の論文も若干読ませていただきました。先生は、自由貿易の害の方が自由貿易の利益より多い、日本の米市場は開放すべきではないというお説を主張していらっしゃるわけでございますが、その背景にある、日本の米輸入自由化によってアジアの諸国に与える影響ということをもう一度ここで聞かせていただきたい、同時に、しからば新基本法のあるべき姿ということをもう一度簡潔にお話をいただけたらというふうに思います。よろしくお願いいたします。
  120. 辻井博

    ○辻井公述人 非常に大きな問題でございまして、ちゃんと答えられるかどうかわからないのですけれども、二点にわたって、特に、アジアの米政策の問題でございます。  私は卒業してからずっと、アジア諸国の米政策、米需給の問題を研究してまいりました。どの国も自給自足政策と国家備蓄政策をとり、国内米価の安定を必死になって図ってきたわけでございます。これは日本も例外ではございません。  なぜそういうことになったのかというのを研究してまいりましたら、先ほども申しましたけれども、自由化したときにお米を輸入すべき米貿易市場が非常に薄く不安定で頼りにならない、そういう性質を持っておりまして、アジア諸国は、自分らの国民のカロリーの八割も供給しているようなお米を、そういう不安定で頼りにならない米貿易市場に頼るわけにはいかないというわけで、そういうふうな米自給政策と米備蓄政策をとり、国内米価の安定化政策をとってきたわけでございます。  この米貿易市場の性質は、まさに九三年の北海道、東北の大冷害の直後に起こりました平成の米騒動のときに日本国民も体験したことでございます。日本人だけじゃございませんで、アジア人、タイ人でもインドネシア人でも、こういう米貿易市場の薄さ、不安定性は何回も体験しまして、暴動、クーデター、政権の変更なんということが、凶作直後に、アジアの諸国では起こっているわけでございます。だから、お米は政治財だというふうに私は思うわけでございます。  そういうふうな理由で、私は、世界のお米の生産の九割をアジア諸国がつくっており、かつ、自給自足で国内消費しているわけでございますけれども、各国は自給自足すべきであると思うわけでございます。  もう一点、日本は、例えば九三年の平成の米騒動のときに、お金に任せてアメリカとタイからお米を買いまくったわけでございます。その結果といたしまして、国際米価は四カ月で倍になりました。ところが、アジアには八億人の飢餓人口がおります。この大部分はお米を主食としております。だから、そういうふうな面でも、私は、日本の大量のお米の輸入というのは、アジアのそういう飢餓人口及びその周りにまだたくさんおります貧困人口を危機に陥れるような政策であると思います。その理由からも、お米は自給自足でやるべきであるというふうに思うわけでございます。  もう一点は、難しい問題でございますが、私は先ほども申し上げましたように、この新農業基本法基本的枠組みと申しますのは、特に価格、需給政策は、三つの柱、すなわち、価格支持の放棄、粗収入保険、関税化政策ということになっていると思います。この結果として、日本農民が長期的に対面いたします問題と申しますのは、農産物価格の長期的低下ということになると思います。  これは、特に大規模農業経営の人たちに対する農家経済発展のインセンティブを強くそぐものであるというふうに思います。私は既に、大規模稲作経営農家の人たち日本じゅうでたくさんお会いしていますけれども、自分の息子に自分の経営を引き継げということは言えないんだというふうなこともおっしゃっております。  そういうことでございますから、私は、そういう性質はぜひ新農基法から国会議員の先生方に取り除いていただきたいというふうに思うわけでございます。そうでないと、日本農業農家経済発展ということが非常に阻害される。  一つだけ申し上げますと、例えばどうすればそれが成り立つかといいますと、これは繰り返しになりますけれども、関税化政策にも二つありまして、ウルグアイ・ラウンドで日本が強要されたような関税化ではなくて、日本国内の例えば米の生産費の上昇に合わせて関税率を引き下げていくというふうな、各国別の関税の引き下げの合意、仮に関税化が不可避としましたら、そういうふうな形の関税化というのを考えた新基本法制定していただきまして、そういう理念でもって次期WTO、二〇〇〇年の農産物貿易交渉に当たっていただけましたら非常にありがたいというふうに思います。  これは、私の友人と言ったら怒られるかもしれないですけれども、桜井新先生やら松岡先生も、いろいろな会議で同席いたしました限りでは、たしかおっしゃっていただいたことでございます。よろしくお願いいたします。
  121. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 それでは、桧垣会長と久保公述人にお伺いをしたいと思います。  私は、全国農業会議所会長代表者集会で決議された要望書と決議文をいただきました。この中にも、きょう会長がおっしゃった遊休、耕作放棄地の発生防止と解消対策取り組みということが書かれておりまして、ここではそのために農地保全・耕起の日というのを統一設定して運動として取り組んでいこうということがうたわれているわけでありまして、このことは大変ありがたいことだと受けとめさせていただきました。  午前中も、JAの原田会長は、農地世界共有の資産であって、荒廃させてはならないんだ、田畑のある者は田畑を耕すべきである。大変含蓄のある言葉を聞かせていただいてぐっときたわけであります。  考えますに、私は、会長も国としての支援をとおっしゃいましたけれども、一番大事なのは家族経営の存在というものについての再確認じゃないかというふうに思うわけであります。家族経営は土地の生産性が最も高いんだということもまた言われているわけでありますが、農地荒廃の解決の問題と家族経営の存在意義ということ、大変抽象的に聞こえるかもしれませんが、お願いをしたいと思います。  それから、和歌山の久保公述人は、兼業、専業の区別なく、要するに多くの人々農業にかかわり合ってこそ農業は維持できるんだということをお話しくださいました。私は、この点については、本当に農業というのは兼業とか専業とかいうことではなしに、より多くの人がかかわってこそ農村の維持発展にもつながるというふうに考えております。そこでもやはりもう一度問い直さなければならないのは家族経営の意義ではないかというふうに思いますので、御両人から御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  122. 桧垣徳太郎

    ○桧垣公述人 お答えをいたしますが、遊休農地の発生の防止それから解消の方策についてどうするかということでございますが、私は、農村現場における農業組織化の問題、それを考えないとこれはなかなか受け皿ができない。  私の持論は、少なくとも集落というものを無視して日本農業というものは成り立たない。でございますから、集落単位の農業組織化というものを考えていくべきである。その中で、農地の利用ができなくなるという人たち農地をどうやって吸収していくか、あるいは現に遊休化している農地農業生産対象として生かしていくということを、集落の農業ビジョン、農業の計画の中に取り入れていくという方向をとらざるを得ない。またそれについては、行政的といいますか、ある種の援助措置が要るだろうというふうに思っておるわけであります。そういう形で、農業会議の系統といいますか農業委員会としては、言葉はちょっと大げさ過ぎるかもしれませんが、二十一世紀農村再生運動としてそういう組織運動を進めていきたいということを考えておるわけであります。  それから、家族経営の存在意義でありますが、ここに大先生方おいでになるんですが、先年農業経済学会というのが東京で行われたのですが、その農業経済学会の結論が、やはり世界農業を担っていくものは家族経営だということを結論として出されたわけであります。  私どももかねてからそういう考え方を持っておりまして、農業の持っております特徴は、やはり農業というものに対する一種の愛情を持ち、また農業をやっていくことに対する一種の喜びというものを持った者でなければ長続きしない、そういう経営というのは家族経営以外には考えられないということでございます。  ちょっと時間がないものですからあれですが、いわゆる法人経営というのも進めておりますが、法人経営も、家族経営の延長の中で法人化を進めていきたいというのが私ども考え方でございます。
  123. 久保英資

    ○久保公述人 平場の農地保全はまた方法があると思いますけれども、山間農地保全については非常に難しいわけでございます。かといって、農地を手放すかというたら手放さないんですね。そこに問題があるわけでございまして、農地を手放してくれれば流動化が図れるんですけれども農地は手放せない、荒らしておくというところに実際問題現場では苦労をいたしておるわけでございます。  家族経営が必要なことは言うまでもございません。本当に、これらの集落でこれらの生産を上げるのに、五人で生産を上げて五人で会議をして五人で事が運ぶかというと、そうではないんです。兼業農家もいて専業農家もいて、会議で、集落でいろいろ話し合いながら、その中でコミュニケーションを図りながらやっていくことに、地域、かかわり、そういったよさが出てくるわけですね。それをしなくなったから集団で子供が学校で田植えを行ったり、今までは家庭でみんなやっていたんですね、兼業でやっていたわけです、それをやらなくなったから、学校である日突然田んぼの中へ入らなくちゃいかぬというようなことになってきておるわけでございまして、兼業農家をもうちょっと進めて、いわゆる農業生産ということではなしに、いわゆる土と親しむ情操教育という問題においてもそのことをやはり進めていきたい、しかし、実際問題は道が険しいわけでございます。  また、兼業農家は一面では安全弁的な役割を果たしておるわけでございます。価格が暴落してくるとちょっと一、二年やめておこうか、あるいは不足し出したらまたつくろうかということで、いろいろそういった機能も兼業農家は果たしておりますし、兼業あっての農村であります。  この法案の中で効率化ということもうたわれております。なるほど効率化もそうですけれども地域がどう栄えていくか、農村がどう栄えていくかということの視点と相矛盾する点がございますので、いろいろ今後御指導をいただきたいと思っております。
  124. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 ありがとうございました。  佐伯先生には、せっかく質問をしようと思っておりました。先生の論文の中に、農産物価格形成を果たして全面的に市場に任せ得るものかどうかということで、そんなことをしたら本当に大変なことになるんだよ、だから欧米だって最低の価格は支持されているんだという論文を読ませていただいて、きょうはお話を聞きたい思いでちょっと勉強をしたんですが、ごめんなさい。お許しをいただきまして、また先生の御本で勉強させていただきます。  ありがとうございました。
  125. 穂積良行

    穂積委員長 次に、前島秀行君。
  126. 前島秀行

    ○前島委員 佐伯先生にお伺いをしたいと思います。二点ほど伺いたいと思います。  一つは、先生先ほど、基本法を論ずると同時に個別政策も一体的にやらなければだめだよという点、御指摘いただきました。そういう意味で、特にこれからの基本法を論じ、これからの日本農業をいろいろ検討していくに当たって、特に個別的な対策で、こういう点は指摘したいとか、こういう個別政策検討すべきではないか、そういう点で先生の御指摘、御注文があったらお聞きをしたいというのが一つです。  もう一つは、先生のきょうの最初の公述で、農政における地方分権はまだまだ不徹底だ、こういう御指摘がありました。例えば、新しい直接支払い検討するに当たっても、やはり国と地方自治体が一体にならなきゃいかぬだろうな、こういうふうに思いますし、これからの農業というのは、農村という単位、食料という概念、そういうことを考えますと、やはり地方自治体の存在は大きい。  今フランスで議論されて、もうそろそろ成立するだろう新しい農業基本法の中でのデカップリングなんかを見ますと、プランニングは全部自治体がやる、案をつくって、それを国と農民が個別に契約をしていく、それを国が補償していくという概念のようでありまして、その中心は、地域における自治体が必要な施策を提起する、こういうことだろうというふうに思っています。  そういう面で、地方自治体のこれからの農政の存在は大きい。こういう意味で恐らく先生も、地方分権はまだまだ不徹底、こういうふうに御指摘いただいたろうと思いますので、具体的にこういう点をという点がございましたら御指摘をいただければありがたいと思っているところです。
  127. 佐伯尚美

    ○佐伯公述人 時間も随分過ぎたようですから、ごく簡単にお答え申し上げます。  第一点の、基本法と個別施策をつないでというか、それを含めて議論すべきだという点についてでございます。  私は、この基本法法案もそうですし、それ以前の基本問題調査会、それから答申、それから改革大綱、一連の議論の中で、どうもそこのところがまだ十分に詰められていないんじゃないかという感じがしています。もちろん、個別施策といっても、非常にたくさんある施策を全部やることはできませんし、必要もない。  私は、やはり基本的には、農政中心になってきた四つの施策だろうと思うのですね。食管法、新しい米政策ですけれども、それから価格政策ですね、特に米価政策、それから農地法、土地改良法、一種の公共事業ですね、それから農基法、この四つがやはり戦後の農政基本になってきたし、今なお中心になっている。これを基本的にどう変えていくかということが今問われているんだろうと思いますけれども、率直に言って、それぞれについて大変不明確、不徹底だという感じがいたします。  食糧法については、御承知のように、新しい米政策が出て、今改革途中でありますけれども、長期的な方向はまだ見えていない。先ほど生産調整の話もあったけれども生産調整を三十年やって、まだ続けている。こんなばかなことはあるはずはない。これだけ自給率が落ちていながら、こっちに過剰を持って生産調整をする。過渡的にやむを得ないですけれども、しかし、長期的にああいうのをやって、三十年たって何が残ったか。精神的な荒廃だと思うのですね。もう農協も嫌になっている。それをまだ続けるのか。そこのところが全然見えていない。  それから、農地法については、桧垣さんがいるからちょっと言いにくいのですけれども農地改革の遺制がまだ残っちゃっている、遺産が残っている。それを徹底的に反省していない、見直していないという問題があります。  土地改良法については、若干の改正が行われていますけれども、抜本的に見直すところまでいっていない。農基法に至っては、言葉があって内容がないということですね。  非常に不十分だという点が私は大変不満でありまして、恐らくこれでは済まないのだろうという気がいたします。  地方分権は、僕は、今までの議論が、どうもEUがどうであるという話の方に引きつけられ過ぎたと思うのですね。EUEUなりに一つの実験をやっているということはあります。しかし、EU的な方式がすぐ日本に入らない。  むしろ、日本の中で幾つか、特に地方ベースでデカップリング的なものが出てきているわけですね。例えば高知がそうですし、新潟がそうですけれども、県ないし市町村で、地方レベルでのデカップリングが先行的にあるんですよ。  私は、そういうものを踏まえて、それがどこまで一般化でき、どこまで生かされるかというふうに詰めていく必要はあると思うのですね。何か外から持ってきたのをそこまでこうやるという話ではなくて、具体的な行動なり具体的な行為に即しながら限定的にやっていくというのが少し出てきている。それをどう広げていくか、そういう形でもって詰める必要があるのではないかというふうに思っています。  時間がありませんから、余り詳しく申し上げませんけれども、一応。
  128. 前島秀行

    ○前島委員 桧垣公述人にお伺いをしたいと思います。  先ほどの公述の中にも、やはり生産者農民が自信を持ちたいんだ、同時に、将来に向かっての展望も持ちたい、そういう意味で、社会的に法律的に担保してもらいたい、そういう面で農業基本法の早期の成立をということだったろうと思うのです。そういうことを考えるに当たっても、私は、これからの農業における国内生産の位置づけというのは非常に大切だな、こういうふうに思います。  基本法では、国内生産基本にと、こうなっていますね。私も委員会で大臣に、そこは維持増大、こういうふうにならぬのかと言ったら、いや、基本という中にそういう意味が含まれているんだからという答弁でしたけれども、正直、基本ということと維持増大ということとは私はちょっと違うんだろうな、こういうふうに思っているところです。  私たちとしたら、やはり食料安定供給だとか自給率だとか、あるいは会長が言われた、生産者が将来に展望を開く、自信を持つ、こういう意味からも、この基本法において国内生産増大ということは明確に位置づけるべきだろう、この基本法の中に明記すべきだろうな、こういうふうに思っているんです。  我が党としたら、正直、非常にこの点、こだわっている部分でもあるんですが、会長としても、またきょうの公述人としても、この点についての御意見を聞かせていただきたい、こういうふうに思います。
  129. 桧垣徳太郎

    ○桧垣公述人 私から今さら申し上げるまでもないんですが、食料問題につきましては、この基本法では、国内生産基本とし、安定的な供給を図るんだということになって、それを受けて、食料農業農村基本計画を定める、その中で自給率向上というものを目指した計画を立てます、そういうことを政府は言っておるわけでありますから、政府もその計画の中で国内農業生産の維持増大ということに触れないで計画を立てることは私はあり得ないというふうに思うわけです。そういう意味では、基本的な物の考え方としては、国内生産の維持増大ということに異論を持っておるのではないと私は理解をしておるわけであります。  したがいまして、ここで国内農業生産の維持増大ということを明文化するかどうかは、そこいらの法律表現上の問題としてお考えになっていいことではないか。私は、そういう御意見は十分理解ができる。おまえ、賛成か反対かということを聞かれますれば、賛成であるというお答えしかできないと思います。
  130. 前島秀行

    ○前島委員 法案をつくるのは国会でありますから、我々と政府との間の議論ですので、ある意味だったら、国会において会長を相手に法律議論ができるともっといい案文ができるかなと実は思っているところであります。  辻井公述人にお伺いをしたいと思いますが、先生の言われた関税化の問題等々をお聞きしていますと、やはりその前提は農業交渉といいましょうか、WTO農業協定そのものにぶつかるな、こういうふうに思っているわけであります。私たちも、二〇〇〇年からのこの交渉に向かって、輸入国である日本立場、そして日本の固有の農業の特徴等々を考えると、やはり輸入国として、食料自給という原則がそれぞれの国で保障されるという国際的ルールが確立される必要があるし、また、それが確立されませんと、本当に地に着いた、日本の条件に合った農業が展開しにくいな、こういうふうに思っています。  そういう面で、どうしてもWTO交渉における私たち日本のスタンスというのは、食料自給の権利を保障された、それぞれの国の農業の特色というものを生かされた、お互いの国の条件をお互いに保障し合うような農産物貿易ルール確立であるべきではないだろうかな、こういうふうに思っています。  そういう観点から見ると、現行農業協定というのはやはり輸出国中心であるし、それぞれの国の食料自給の原則というのはかなり制限されてしまっている。その枠の中での農業政策になってくると、問題が出てきているしというような率直な感じがいたします。  そういう面で、これからの農業交渉基本的スタンスは、その辺のところの貿易ルールを原則的に各国の実情、各国の食料自給の原則に合わせるという筋、そのためのルールというのが本筋ではないだろうかな、こういうふうに私たちは思っています。現行協定でも、前文ではそれらしきことを言っているけれども、各論に入ってくると全然それは生かされていないというのが実態かなと思っているところであります。  そういう意味で、これからの日本農業を展開していく上でも、この農業交渉の行方、ルール化というのは大事だなと思っているところでありますが、その点における先生の御意見をお聞かせいただければというふうに思っています。
  131. 辻井博

    ○辻井公述人 私も先生と全く同じ意見でございまして、私は、二〇〇〇年から始まる次期農産物貿易交渉では、日本はアメリカとEUからの非常に厳しい要求に直面することになるであろうと思っております。  と申しますのは、アメリカは九六年農業法において価格支持をやめてしまいまして、ローンレートという最低価格支持はあるんですけれども、それでも、アメリカがかつて関税を全くゼロにするとウルグアイ・ラウンドの初期に主張したんですけれども、そういうふうな線に沿って関税引き下げを強く要求できるような状況になっておりますし、EUも、東ヨーロッパ諸国を近くEUの中に入れることになりますから、保護を下げざるを得ないわけでございまして、その影響と申しますのは、EU自身がアジェンダ二〇〇〇というので言っていますけれども、自由化、保護の削減、関税の引き下げということになるわけでございます。  そういうふうな意味で、日本は一応、先ほども申しましたように、例えばお米をとりましたら、私の計算では四〇〇%で四月に関税化したわけでございますけれども、それが交渉の結果二〇〇%になるかもしれない。だから、物すごく厳しいことになるのではないかと思います。  アメリカやヨーロッパが言っている関税化、自由化、それはWTOの原則に従ったものでございまして、これは比較生産費説とか市場原理の尊重という原理で貫かれたガットという国際貿易協定及びWTOの協定に基づいてこの交渉はなされますから、やはり関税は大幅に引き下げられる可能性があって、だからこそ新農基法はそういうWTOが言っているような形でつくるべきではなくて、日本がアジアの一国として交渉に当たれるような、日本の特色を反映したような、そういう新農基法をつくっていただければ非常にありがたいというふうに思うわけでございます。  現在の農基法というのは、私の認識では、まさにWTO市場原理の尊重、関税化、関税引き下げ、そういう原理に沿った形でつくり上げられているのではないかというふうに判断しているわけでございます。  やっていただきたいことは、これで三度目になりますけれども、例えば、ぜひ交渉をしていただきたいのは、関税の引き下げ率を決めるときに、各国別の国際交渉で画一的に関税引き下げ率を決めるのではなくて、先生がおっしゃったように、各国の特性を反映した、各国の稲作の生産性の増強に応じて決まってくる各国別の関税引き下げ率というのを決められるような形で交渉していただきたいし、新農基法も、もしもそういう形でつくり上げていただけたら非常にありがたいと思うんですけれども、現在はそうなっていないというふうに私は判断しておるのでございます。  ちょっと長くなりましたけれども、ありがとうございます。
  132. 前島秀行

    ○前島委員 公述人の皆さん、ありがとうございました。これで終わりにさせていただきます。
  133. 穂積良行

    穂積委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、本当にありがとうございました。当委員会を代表して心から御礼を申し上げる次第でございます。  これにて公聴会は終了いたしました。  次回は、明二十七日木曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十五分散会