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1999-05-25 第145回国会 衆議院 農林水産委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月二十五日(火曜日)     午後五時一分開議   出席委員    委員長 穂積 良行君    理事 赤城 徳彦君 理事 増田 敏男君    理事 松岡 利勝君 理事 横内 正明君    理事 小平 忠正君 理事 木幡 弘道君    理事 宮地 正介君 理事 一川 保夫君       今村 雅弘君    大石 秀政君       金子 一義君    金田 英行君       岸本 光造君    熊谷 市雄君       熊代 昭彦君    塩谷  立君       鈴木 俊一君    園田 修光君       中山 成彬君    丹羽 雄哉君       萩山 教嚴君    御法川英文君       宮腰 光寛君    宮本 一三君       矢上 雅義君    安住  淳君       鉢呂 吉雄君    堀込 征雄君       漆原 良夫君    木村 太郎君       井上 喜一君    佐々木洋平君       菅原喜重郎君    中林よし子君       藤田 スミ君    前島 秀行君  出席国務大臣         農林水産大臣  中川 昭一君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      高木  賢君         農林水産省構造         改善局長    渡辺 好明君         農林水産省農産         園芸局長    樋口 久俊君         農林水産省食品         流通局長    福島啓史郎君  委員外出席者         農林水産委員会         専門員     外山 文雄君 委員の異動 五月二十五日         辞任         補欠選任   木部 佳昭君     大石 秀政君 同日         辞任         補欠選任   大石 秀政君     木部 佳昭君 本日の会議に付した案件  食料農業農村基本法案内閣提出第六八号)  派遣委員からの報告聴取     午後五時一分開議      ————◇—————
  2. 穂積良行

    穂積委員長 これより会議を開きます。  内閣提出食料農業農村基本法案を議題といたします。  この際、本案審査のため島根県及び北海道委員を派遣いたしましたので、派遣委員からの報告を聴取いたします。まず、第一班の島根県について増田敏男君にお願いいたします。
  3. 増田敏男

    増田委員 第一班として島根県に派遣された委員を代表して、団長にかわり私から概要を御報告申し上げます。  派遣委員は、穂積良行委員長団長として、木幡弘道君、宮地正介君、一川保夫君、今村雅弘君、熊谷市雄君、安住淳君、中林よし子君と私、増田敏男であります。このほか、現地参加議員として石橋大吉君が出席されました。  会議は、五月二十四日午後二時より松江市内のホテル一畑において開催し、意見陳述者方々から、現在本委員会審査中の食料農業農村基本法案について意見を聴取し、これに対して各委員より質疑が行われました。  意見陳述者は、島根大学生物資源科学部教授平塚貴彦君、鳥取県農業会議会長・東伯町農業協同組合代表理事組合長花本美雄君、有限会社みどり農産代表取締役山崎俊宏君、社団法人広島消費者協会会長本田笑子君及び島根美都町長佐々木健君の五名でありました。  意見陳述者陳述内容について、簡単にその要旨を御報告申し上げます。  まず、平塚貴彦君からは、法案の四つの基本理念は賛成できるが、農業基本的役割食料安定供給確保であり、食料自給率向上基本理念に盛り込む必要があること、市場原理に基づく価格政策は容認せざるを得ないが、経営安定対策を充実すること、中山間地域等の直接支払い政策我が国農政史上画期的なものであるが、財源確保のために他の重要な予算の削減を行わないこと等の意見が述べられました。  次に、花本美雄君からは、食料安全保障視点から穀物自給率を長期的に五〇%まで引き上げること、直接支払い制度については特別枠財源確保した上で地域実情に即した仕組みとすること、株式会社農地取得については、転売の禁止等秩序ある農地利用を担保するための措置を講ずること、高齢者対策については緊急の課題であること等の意見が述べられました。  次に、山崎俊宏君からは、特定農業法人認定基準緩和を行うこと、農業共済制度については品質低下も考慮した制度にすること、有機低農薬農業については、生産資材費等価格に反映されにくいことから、消費者との交流を進め、販売方法等検討する必要があること等の意見が述べられました。  次に、本田笑子君からは、消費者視点から、流通合理化による安価で鮮度の高い食品供給への要望、遺伝子組み換え等の新技術導入に際し、十分な情報提供とわかりやすい表示が必要であること、農業経営感覚導入し、良質な農産物消費者に提供すること、食料自給率向上のためには一定限度補助金制度が必要であること等の意見が述べられました。  最後に、佐々木健君からは、中山間地域等に対する直接支払いに大きな期待を寄せており、その実施に当たっては、国民全体に理解を求めること、地域実情に即した実施マニュアル策定が必要であること、有害鳥獣駆除経費土地改良施設維持管理費等支払い対象となるよう考慮すること等の意見が述べられました。  次いで、各委員から、食料自給率具体的数値目標及び目標達成のために必要な事項、中山間地域等に対する直接支払い実施基準財源確保あり方株式会社農地取得についての考え方法人経営集落営農との関係市場原理導入に伴う経営安定対策あり方基本計画内容策定手順についての考え方食品品質表示あり方高齢者農業あり方農林水産省予算の編成のあり方など多岐にわたる質疑が行われました。  以上が第一班の概要でありますが、会議内容速記により記録いたしましたので、詳細はそれにより御承知願いたいと存じます。速記録は本委員会議録参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。  今回の会議開催に当たりましては、地元関係者を初め多数の方々の御協力をいただきました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。  以上、御報告申し上げます。
  4. 穂積良行

    穂積委員長 次に、第二班の北海道について松岡利勝君にお願いいたします。
  5. 松岡利勝

    松岡委員 第二班として北海道に派遣された委員を代表して、その概要を御報告申し上げます。  派遣委員は、赤城徳彦君、横内正明君、小平忠正君、金田英行君、鉢呂吉雄君、木村太郎君、菅原喜重郎君、藤田スミ君、前島秀行君及び団長として私、松岡利勝の十名であります。このほか、現地参加議員として佐藤静雄君及び吉川貴盛君が出席されました。  会議は、五月二十四日午後一時より札幌市内ロイトン札幌において開催し、意見陳述者方々から、現在本委員会審査中の食料農業農村基本法案について意見を聴取し、これに対して各委員より質疑が行われました。  意見陳述者は、北海道大学大学院農学研究科長太田原高昭君、北海道農業協同組合中央会会長宗治君、北海道農民連盟書記長北準一君及び社団法人北海道消費者協会会長辻冨美子君の四名でありました。  意見陳述者陳述内容について、簡単にその要旨を御報告申し上げます。  まず、太田原高昭君からは、北海道現行農業基本法が目指した大規模専業化を忠実に実行してきた基本法農政の優等生であるが、生産者は膨大な負債を抱えることになったこと、新基本法国内農業維持拡大食料自給率向上を明記すること、直接支払い対象を中山間地域に限定せず、政府政策変更による専業経営への影響が最も大きい北海道のような平場対象とすべきである等の意見が述べられました。  次に、直宗治君からは、新基本法を全国民一致した法律として早期に成立させる必要があること、品目別生産目標食料自給率向上目標を明示すること、市場原理導入国際化の進展に伴い、地域農業中心的担い手に対する所得確保経営安定対策に万全を期すこと、平場の大規模専業経営対象となる直接支払い導入のため、環境機能面に着目した直接支払い制度早期導入を図ること、次期WTO農業交渉では、我が国食料安全保障農業多面的機能を位置づけた新基本法に基づいて毅然とした姿勢で臨むこと等の意見が述べられました。  次に、北準一君からは、食料自給率向上のため、国内農業生産維持増大を新基本法に明記すること、北海道稲作地帯において、食糧法への移行等政策変更背景として、規模拡大等で借り入れた制度資金等が固定負債化し、返済不能に陥る農家が続発していること、農業農村の持続的な発展を期するためには、担い手である農業者に対してWTO農業協定上緑の政策として認められている所得補償政策導入して、他産業従事者並み所得確保することが必要である等の意見が述べられました。  最後に、辻冨美子君からは、新基本法食料自給率向上及び自給目標を明示すべきこと、市場原理の活用に当たっては、価格低落時の経営への影響緩和のための所得補償が必要であること、消費者の権利と暮らしのニーズを正当に位置づけ、具体的な施策を進めること、消費者生産者連携し、ともに農業食料を守るという意識を促す政策が必要であること、農業国土環境保全のために果たしている役割を重視すること等の意見が述べられました。  次いで、各委員から、国民のコンセンサスが得られるような直接所得補償制度あり方北海道からの視点による都府県の農業認識食料自給率目標とすべき数値価格政策にかわるものとしての緑の政策あり方消費者の納得する農産物価格品目別所得補償経営体視点に入れた所得補償考え方農業予算構造あり方など多岐にわたる質疑が行われました。  以上が第二班の概要でありますが、会議内容速記により記録いたしましたので、詳細はそれにより御承知願いたいと存じます。速記録は本委員会議録参考として掲載されますようお取り計らいをお願いいたします。  今回の会議開催に当たりましては、地元関係者を初め、多数の方々の御協力をいただきました。ここに深く感謝の意を表する次第であります。  以上、御報告申し上げます。
  6. 穂積良行

    穂積委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。  お諮りいたします。  ただいま報告のありました第一班及び第二班の現地における会議記録が後ほどでき次第、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 穂積良行

    穂積委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔会議記録は本号(その二)に掲載〕     —————————————
  8. 穂積良行

    穂積委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大石秀政君。
  9. 大石秀政

    大石委員 自由民主党の大石秀政でございます。  大臣行革特一日じゅうに引き続き、御苦労さまでございます。  私は昭和三十八年の生まれですので、現行農業基本法より年下の私が本件に関して質問をするのも何かおこがましい感じがしたんですけれども、せっかく機会をいただきましたので、私が今度の食料農業農村基本法について少し個人的に思っていることと、ちょうどきのう検討会中間取りまとめが出ましたので、それらを中心お尋ねをしたいと思っております。  私たち以降の世代というのは、今の若い人も含めまして、ある程度食料が満たされているのが当たり前といいますか、普通だなという雰囲気があると私なんかも推測をしております。しかしながら、日本の長い歴史の中では、こういう状態というのは逆に言うと極めて特異な時代ではないかと思います。それゆえに、食料安保といいますか、自給率向上というのはその点からも大変大切なこととは思いますが、自給率を高めるという話になりますとどうしてもカロリーベースの話になりまして、自給率を高める、そしてカロリーベースといいますか、それを高めるのに資する農作物をつくっている方々だけに、何となくこの法律基本として政策的、農政的に比重がそちらにこれからちょっと行きやすくなっちゃうのかなという感じがいたします。  と申しますのは、カロリーを高める以外の農作物でも、例えば私は静岡ですので、お茶ですとかあるいは果物、あと、小渕総理のところでコンニャクなどをつくっておりますが、あれはどちらかというとダイエット食品というような感じで、そういった農作物をつくっていらっしゃる農業者方々もおります。または花、非常に今日本の中でも盛んですし、結構将来性のある農作物としてとらえられていると思いますけれども、そういった、いわゆる自給率を高めることには余り資さないですけれども、これからの農業にとって非常に大切な作物を一生懸命つくられている農業者方々に対する政策というのが今回の法律で何か変化があるのか、また、どういう思いを持っておられるのかということを少しお聞きしたいと思います。お願いいたします。
  10. 樋口久俊

    樋口政府委員 お話ございましたように、農産物を供給するということにつきましては、もちろん生産性向上しないといけないんですけれども、国民ニーズ高度化、多様化しまして、こういうニーズに即して生産が行われるということが一つ大変大事なことではないかと思っております。  今まさにお話ございましたように、我が国では、自然的条件でございますとか歴史的背景とか、いろいろな社会的条件のもとで南から北まで細長い国土の中でバラエティーに非常に富んだいろいろな作物が栽培をされておるわけでございまして、その中でも、御指摘ございました果樹とか花卉、茶、これらは熱量という観点から焦点を当ててみますとその地位は必ずしも大きなものでないんですけれども、中山間地域などにおきましては地域基幹的作物になっているというケースも多うございます。したがいまして、気候や風土、そういうものを生かして地域活性化を図るというようなことも考えてみますと、今後ともこれらの振興を図ることは大変大切なことじゃないかと思っておるわけでございます。  このため、御承知のように、新基本法に基づきます基本計画におきましては自給率目標を定めることになっておりまして、その中で品目について生産努力目標策定するということになっておりますが、今お話をしましたような果実でございますとか花卉茶等につきましても、そういう目標策定しまして達成にいろいろな対策を講じていこうということを考えております。  ちょっと具体策として一、二御紹介だけいたしますと、例えば果樹につきましては、条件が不利な地域でも気候や地形を生かして生産体制を整備できるということで、例えば矮化栽培を行う等々ということで生産体制を整備するとか、花につきましては、消費量については制約条件、つまり胃袋の制約がございませんので、まさに先生がおっしゃいましたように成長が期待されるというような点もございますので、そういう面の省力、大量の生産技術導入する等々ということで対応していくとか、またお茶につきましては、近年、健康的な機能部分が再認識されるというようなこともございますので、そういう機能性研究等を一層進めるとか、いろいろな対策を進めていくということで考えているところでございます。
  11. 大石秀政

    大石委員 どうもありがとうございました。  そういったことで、私が申し上げました作物をつくっていらっしゃる方は、特に将来性があるものについては若い方々が一生懸命今やっておりますので、その辺も含めて今後いろいろとお助けをいただきたいと思っております。  それで、中山間地域のことに移りますけれども、中山間地域というのは、私の方でもそうですけれども、結構重要な河川の上などに位置して傾斜地が非常に多いわけです。それで、農業生産活動による国土保全ですとか水資源涵養等公益的機能の発揮を通じて、言うまでもありませんが、ある面で日本国民全体の安全を守っている地域とも言えるわけです。昨年など、栃木の方から水害があって茨城の方まで来たというような事例もございますし、そういった意味も含めまして、中山間地域役割ということについて、再度で非常に申しわけございませんが、大臣お尋ねをしたいと思います。
  12. 中川昭一

    中川国務大臣 静岡といいますと、海から三千メートル級のところまである、大変天候の恵まれた地域であると同時に、傾斜地の多い地域だろうと思います。  そういう中で、中山間地域というのは、農家数あるいは面積、粗生産額とも約四割を日本全国の中で占めておる、農業面からいっても極めて大事な地域である。それからまた、国土全体の保全、特に下流の都市住民を初めとした国民生命財産に決定的な役割を果たしている。さらには、景観の面も重要だと思います。そういう意味で、今度の新しい基本法におきましては、中山間地域等生産条件が不利な地域についても、何としても耕作放棄あるいはまた人がいなくなってしまうというようなことを避けていかなければならないというふうに考えております。  したがいまして、基本法三十五条一項で、定住その他必要な施策を講じる、二項においては、生産条件の不利を補正するためのさまざまな支援を行うということが書いてあるわけでございまして、この中にいわゆる直接支払いという新しい考え方導入しようということで今検討をしておるところでございます。
  13. 大石秀政

    大石委員 どうもありがとうございました。  今、最後に直接支払いというお言葉が大臣の方から出ましたけれども、先ほど申し上げましたが、昨日中間取りまとめが出たわけです。中山間地域等直接支払制度検討会中間取りまとめでございますけれども、この資料の中にも、「この中には必ずしも意見の一致していない点もあるが、本検討会議論を広く一般に周知し、最終とりまとめに向けて国民各層意見を仰ぐとの見地から、中間的なものではあるが公表することとしたものである。」というふうにも書いてあります。  私の個人的な感想ですけれども、一応中間取りまとめでございますので、やはり細部についてはまだ今後検討を加えるという項目が多いような印象を持ちました。そういう感じではありますけれども、この中間取りまとめについて、当局としての御説明と、これに対します予算関係します概算要求等検討というものをどういうふうに進めるかということについて、少しお尋ねをしたいと思っております。
  14. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 御紹介がありましたとおりでございまして、昨年の十二月に農政改革大綱取りまとめまして、そこで基本的な枠組みを決めさせていただいたわけでございます。一月に検討会を設置いたしまして、六回議論をしてまいりました。各項目につきまして、それぞれ言ってみればブレークダウンの作業をしてきたわけでございます。  昨日の中間取りまとめでは、明確かつ客観性を持った基準のもとで透明性を持って運用するということを前提にいたしまして、五、六項目にわたりましょうか、取りまとめが行われたわけでございます。  まず第一点目の対象地域の広いネットでございますけれども、これは地域振興立法指定区域を念頭に置くということで、特定農山村法、山村振興法過疎法半島振興法及び離島振興法指定地域ベースとしたらどうだろうかということでございまして、その中で傾斜等条件に応じて対象農地を選定していくということでございます。  なお、この際、沖縄、奄美、小笠原といった特別立法地域についての検討はさらにこの後もう少し議論を続けるべきであるということでありましたし、五法だけでいいのか、五法の周辺部分についても対象地域として取り込んでいくような工夫が必要ではないだろうかという議論対象地域議論でございました。  二点目は、いかなる農業者と行為を対象にするかということでございますけれども、基本的には、集落協定に基づきまして五年以上継続をされる農業生産活動等、この等の中には水路、農道等も含めましていわゆる施設管理といったところも対象とすべきである、また、農業者等といたしまして第三セクターもこの対象にしていったらどうだろうかという御議論のように私は思っております。  それから三点目は単価でございますけれども、これは、コスト格差の範囲内で単価を設定するという点については合意が得られたわけですけれども、全額見るのか、それとも一定のすき間を設けて努力の余地を与えるのかということについてまだ議論が分かれております。それから、単価につきましては、傾斜度等に大きな差異がございますので、段階的に設定をしたらどうだろうかという御意見が多かったようでございます。  それから四点目といたしまして、この直接支払いに関する事業は市町村自主性と責任を持って実施をする、市町村自由度をできるだけ高めるということが適当である。費用負担についてはまだ課題が後に残されております。  それから期間につきましては、五カ年間というくくりを設けて、進行状況をウオッチしながら五年たったら見直しをするということも適当ではないかというふうな御議論でございました。  先生から御紹介ありましたように、まだ中間的取りまとめでもございますし、必ずしも意見が一致していない点もございますので、今後なお二、三度検討会も設けたいと思っておりますし、各方面の御意見を仰ぎながら平成十二年度の概算要求の時期までには結論を得て、ぜひ概算要求に盛り込んで十二年度から実施をするという段取りで臨みたいと考えております。
  15. 大石秀政

    大石委員 どうもありがとうございました。  今のお話の中にもあったんですけれども、対象地域指定等も含めまして、都道府県市町村というものについてもかなり大きな役割等があるように思います。その点を含めまして、中山間地等への直接支払い導入とその制度運営検討に当たっての都道府県ですとかあるいは市町村意向把握連携というものについての考え方を少しお聞かせいただければありがたいと思います。
  16. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 中山間地域等への直接支払いというのは我が国農政史上初の試みでもございますし、国民理解を得るという点でも広く関係者の御意見を賜ることが不可欠だと考えております。とりわけ、御紹介ありましたように、市町村共同作業あるいは役割分担という形で実際にこれを執行していただく立場にございますので、さらに御意見をしっかりと聞くのが重要であろうというふうに私どもは認識をいたしております。  こういうことでございますので、これまで検討会における議論に先立ちまして、昨年、市町村対象にしたアンケート調査実施いたしました。直接支払いなり耕作放棄なり、公益的機能に対してどういうお考えをお持ちか、何をしたらいいかというふうなことを詳しく調査いたしました。  それから、当然のことながら、一月に発足をいたしましたこの検討会には、専門委員というお立場で、北から西、南までかなり多くの都道府県あるいは市町村方々に御就任をいただきまして御議論を賜っているところでございます。  それから、検討会における各検討項目現地に即したものになるかどうかということにつきまして、地方公共団体意見交換も行わなければなりませんし、現地も踏んでおく必要がございましたので、現地調査を十カ所弱実施いたしました。  今後は、中間取りまとめも行われましたので、もう少し幅広い御意見を賜りたいというふうに考えておりまして、インターネット等を通じまして国民一般からも当然のことながら御議論を賜りますし、また、これから各市町村都道府県、それぞれケーススタディー等もやっていただかなければならないということで、なお一層国と地方公共団体の間の連携あるいは意向把握ということに意を用いてまいりたいと考えております。
  17. 大石秀政

    大石委員 今、インターネット等の話も出ましたが、この中間取りまとめについてのそういった国民ですとか地方公共団体の声というものを反映されて最終取りまとめが大変すばらしくいいものになるように、私も心から御期待を申し上げる次第でございます。  さて、中山間地域農村といいますか、そういう機能を初めとして、農村地域をそういった大きな役割があるということでいろいろな方策で維持するというのは、実際問題としてかなり大変な問題だと私も感じております。もちろん、農林水産省当局もかなり頑張ってやっておられますので非常に期待も持てるわけですが、生活の面も含めますと、これはいろいろな分野がございまして、ほかの省庁との連携が非常に大切な部分も出てくると思うのですけれども、そういった総合的な点でどのように当局がお考えなのか、少しお聞かせをいただきたいと思っております。
  18. 高木賢

    ○高木政府委員 改めて申し上げるまでもなく、農村振興が、農林業の振興にとどまらず、交通でありますとか情報通信、衛生、教育、文化、福祉、こういった多方面にわたる課題関係するものであることは言うまでもございません。したがいまして、農林水産省だけでなくて、国土庁を初め建設省、運輸省、厚生省、郵政省、文部省、さらには自治省などの関係省庁との密接な連携とこれらの省庁の協力がなくては実効が上がらないというふうに考えております。  新しい食料農業農村基本法案におきましても、特に農村部分につきましては各省庁に関係する事柄が多いということも念頭に置きまして、十五条の基本計画につきましては、第四項におきまして特に留意する規定を置きまして、「基本計画のうち農村に関する施策に係る部分については、国土の総合的な利用、開発及び保全に関する国の計画との調和が保たれたものでなければならない。」ということで、国土の全体の利用なり開発なり保全関係するんだという認識のもとにその整合性が明記されております。  それから、基本計画策定するに当たりましては、内閣総理大臣が諮問する機関であります食料農業農村審議会におきまして関係省庁の意見も十分取り入れながら、最終的に閣議で決定するということで、各省庁との連携を担保したいということで考えております。  具体的には、農村振興を図るに当たりましては、この条文の三十四条以下にも規定してございますが、農業上の土地利用と他の土地利用との調整によります計画的な土地利用の推進、これがベースになると存じます。加えて、農林業の振興にとどまらず、地域資源を生かした多様な産業導入による就業機会の確保ということが必要であろうと思いますし、都市との交流等の促進によります開かれた農村づくりということも必要でありますし、ただいま御指摘のありました一番の生活の基盤といたしましての都市へのアクセス条件の整備、福祉、教育、文化といった幅広い生活環境の整備が必要であろうと思います。またさらに、全体的な国土保全あるいは自然環境保全といったことも農村の基盤をつくる上で重要な事柄だと思います。  こうした事柄につきまして、関係省庁と連携を図りながら総合的かつ計画的に推進すべく、基本計画につきまして適正に決定してまいりたいと考えております。
  19. 大石秀政

    大石委員 どうもありがとうございました。  先ほど、派遣委員として行かれた方々の御報告等もございました。やはり、農業対策といいますか農村対策を考えた場合には、特に生活環境の整備あるいは高齢者の福祉の向上のための政策を充実することが非常に大切なことではないかと思っております。  来年四月から介護保険等も始まりますし、それに向けてJAなどでも、自主的と言ってはなんですが、そういったものに対するヘルパーの育成などにも取り組んでいるようなことも私お聞きをしておりますが、私が先ほど申し上げました生活環境の整備と高齢者の福祉の向上ということについて、先ほど御説明ありましたけれども、少し詳しくお教えいただきたいと思います。よろしくお願いします。
  20. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 農村地域は、御案内のとおり、都市と比較をして生活環境の整備が非常におくれております。それから、高齢化もかなり先行しております。  具体的に申し上げますと、生活環境の面でいえば、汚水処理施設の普及率というのは、農村部では二一%、中都市では六三%、大都市では恐らく九五%を超えますので、相当な格差があると言わざるを得ません。  それから、高齢化の問題をとりましても、全国全人口の平均が、平成九年の高齢化率一五・四%ということでありますけれども、この一五%台の数字というのは中山間地域では既に昭和六十年に出ている数字であります。言ってみれば、中山間あるいは農村部の高齢化というのは都市よりも十年、二十年と先行しているというふうに私ども思っておりまして、これにきちんと対応していくというのは重要で、かつ急がれる課題であろうと思っております。  そういう点から、農村の生活環境の整備としては、今申し上げた集落排水施設の整備、それから生活道路になっております集落道の整備、美しい農村景観の形成等にも貢献をいたします田園空間の整備といったことを推進してまいりましたし、これからも力を入れていきたいと考えております。  それから、高齢者福祉対策としては、今お話がありました農協によるホームヘルパーの育成、あるいは農協の余剰施設を活用した福祉施設の整備、それから農村の高齢者が健康で自立した農業関連活動に参加をし、推進ができるようにということで、普及職員の資質の向上に努めております。それから、各種の施設につきましては、高齢者に配慮をいたしまして幅の広い歩道にする、あるいは公共施設などのバリアフリー化を進めてきているところであります。  今回の基本法案それから農林水産省の設置法案の中で農村の総合的な振興というのが位置づけをされ、明確になりましたので、私どもは、これまで以上にイニシアチブをとってこの課題に的確に対処いたしたいと考えております。
  21. 大石秀政

    大石委員 どうもありがとうございました。  最後に、この基本法は、農業者方々だけでなく、国民全体の幸せに資するものでなければいけないと思っておりますが、自給率議論の中でもございましたが、自給率を上げるということと、例えば消費者方々の好みといいますか、いろいろなものが食べたい、特に若い世代の方々は余りそういったことをふだん認識はされていないというのが私の推測ですけれども、そういった自給率向上と選択の自由というものをうまくバランスをとりながら自給率向上させなければいけないという大変な作業に入るわけでございます。  その他、先ほど申し上げましたように、中山間地をさらに国民の安全に資する地域であるようにする政策等も含めて、国民全体に資する新しい食料農業農村基本法にするために、大臣の御決意というものを最後にお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。よろしくお願いいたします。
  22. 中川昭一

    中川国務大臣 まさに、国民的な共通認識のもとでこれからの四つの理念が二条から五条まであるわけでありますが、ポイントは、国民に対する安定的な食料供給、そのためには国内での生産基本としてということ、それからもう一つが、三条で多面的機能農村の果たす役割、そして四条、五条で農村振興あるいは農業の持続的発展、こういう四つの柱から成り立っているわけであります。  現行基本法、四十年前に二、三年かけて大議論の上できた基本法だそうでありますけれども、あそこには農業者あるいは農業農業従事者といった言葉は出てまいりますけれども、あくまでも生産者サイドを、どうやって少しでも経営あるいはまた生活基盤をよくしていくかということが当時の最大のポイントであったわけであります。  今回、四十年たって、やはりこういう時代ですから、国際的な状況も変わり、日本の食生活も変わってくるという中で国内生産基本とするということは、これは消費者の皆さんの理解もなければならない。つまり、消費者ニーズにこたえられるような生産をしていかなければならない。また、将来にわたっての不安を少しでも解消するためには、消費者自身が国内生産の大事さというものを理解していただかなければならないということで、生産消費者とが全く無関係あるいはまた対立関係にあっては日本の今後の食料政策というものは大変に危ぶまれるというふうに私は考えております。  そういう意味で、生産者消費者ともに共生した形、ともに生きるんだという認識のもとで、この食料農業農村基本法食料というすべての国民にかかわりのある極めて重要な基本法なんだという意識のもとでいろいろな施策を実行していきたいというふうに考えておりますので、当委員会での御議論を初め、いろいろな立場でのいろいろな方々の御意見をしっかり聞きながら、共通認識のもとでこの基本法がスタートし、施策がいろいろと実行されて目的達成ができるように努力をしていきたいというふうに考えております。ありがとうございました。
  23. 大石秀政

    大石委員 ありがとうございました。終わります。
  24. 穂積良行

    穂積委員長 次に、園田修光君。
  25. 園田修光

    ○園田(修)委員 今回の農業基本法食料自給率目標設定というのがあります。この部類については、自給率を高めるにはやはり消費者動向、消費者に対する施策が必要であろうかと思っていますが、農水省の消費者に対する、日本型の食生活に対する考え方を少し教えていただきたいと思います。
  26. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 今先生御質問ございました日本型食生活でございます。これにつきましては、昭和五十五年の農政審議会の答申におきまして、栄養的観点それから総合的な食料自給力維持の観点から日本の食生活がすぐれているという点が評価されたわけでございまして、これを受けまして、農林水産省といたしまして、日本型食生活の維持、定着に努めてきたところでございます。  しかしながら、現在の我が国の食生活の現状を見ますと、食料の相当部分を海外に依存する一方、脂質の摂取割合が適正範囲を超える世代が見られるなど栄養バランスの崩れが見られるということ、また、食べ残しなりあるいは食品の廃棄などの資源のむだなど、そういう問題が顕在化しているわけでございます。  こうした食生活の状況を踏まえまして、今回の食料農業農村基本法案におきましては、食料消費の改善及び農業資源の有効利用に資する観点から、健全な食生活に関する指針の策定、それから食料の消費に関する知識の普及や情報提供等を推進するという施策基本的な方向が第十六条の第二項におきまして明らかにされているわけでございます。  今後、この基本法制定後、厚生省とも連携いたしまして健全な食生活に関する指針を策定するとともに、これに即しまして食生活を見直す運動を展開することといたしたいというふうに思っております。具体的には、広範な関係者の賛同、御協力を得て、食を考える国民会議を通じました運動の展開、あるいは食生活と自給率との関係などにつきまして積極的な情報提供に努めてまいりたいというふうに考えております。
  27. 園田修光

    ○園田(修)委員 自給率を高めるには、それだけ米を食べていただいて、日本生産できるものをしっかり食べていただくというのが一番の原点だろうと思っておりますから、そのところもあわせて頑張っていただきたいと思っております。  先ほど、大石先生が中山間地域のことをお話をされました。実は、これは、私は鹿児島ですけれども、地方紙の一面に直接支払いという形で大きく出たわけです、今回の基本法の柱という形で。国政に送っていただいて、自分の地域は全部入るんだろうな、入らなきゃあの国会議員は力がないんじゃないか、そういうことも聞かれるような大変難しい制度だと思います。それだけに、国民がみんな納得をして、直接税金を払ってもいいよ、この地域ならば納得できるよというものをつくっていかなきゃならないと思っております。  そこで、中間取りまとめで、対象地域で、地域振興の五法という形できょうはこのペーパーをいただいたわけであります。よく考えてみますと、この地域振興というもの、これは、特定農山村法から始まって、過疎法にしても半島法にしても離島振興法にしても、農家と都市部の格差の是正から始まっている、そして農家が、まさしくその地域の人口を減らさないように、その地域でしっかり生活できるようにという形のものが趣旨だろうと思っております。  そういう形でずっとやってきていただいたわけでありますけれども、ただ、現状はというと、人口は下げどまることはない。どこかの政党の方も言われていましたけれども、これだけ人口が過疎になり、農山村では後継者も生まれていない、その現状をどう見るのか。しかしながら、私は、この法律を適用していなければ、まだそれ以上に人口が減ったんではなかろうかと考える一人なんです。  今のこの地域五法に該当した地域、いずれにしても農業でしか食べていけないところなんです。ほかの産業をといっても、何にもそこは産業が育つようなところじゃない、そういう地域なんですよ。そして、今までの施策で、過疎法にしても半島法にしても、いろいろな形で、住環境の整備を社会資本の整備という形で莫大なお金をいただいている。正直言いまして、ありがたいことだと私は思っております。ただ、しかしながら、直接そこに住む人たちにとって恩恵というのは、新しい道路ができて空港まで近くなったとかいう部類はありますけれども、国のお金が地方財政を助けること、これにまさしく重点を置いておられて、直接、そこで農家を立ち上げようや、自分の後継者に、自分の子供たちに農家を継がせようやと思うまでには至っていないわけです。  だから、今回農林省がつくっていただいた直接支払いという部類は、これはまさしく大きな政策転換の一つであって、この地域振興法の柱もまさしく、農家の皆さん、農業をする皆さんに対して、条件が不利で農業しかやっていけない地域を支えていただく大きな政策の柱だと私は認識しているんです。そのことに対して大臣はどう思われますか。
  28. 中川昭一

    中川国務大臣 いわゆる一般論としての条件不利地域というのは、ほうっておけばそこから人がいなくなる、あるいは耕作放棄地になってしまう、しかし、そこできちっと農業をやっていただく、あるいは住んでいただくことによって生産活動ができる。生産条件が不利といってもできるものは結構いいものができるわけですから、それとできるもののいい悪いとは直接関係ないわけでありますけれども、とにかく生産条件が不利だということでありますから、具体的にどういう支払い方法にするとかどういう対象者にするとか、今まさに中間報告、そして本報告ということでありますが、少なくとも生産条件が不利である、例えば高齢化率あるいは傾斜度、いろいろと生産にコストがかかる、道路がくねくねしているとか広いところがとれないとか、いろいろな条件不利地域がありますので、中山間地域等と、必ず等という言葉を入れておるわけでございまして、中山間地域以外を排除するということは決してないわけでございます。  しかし一方、先生が冒頭御指摘になったように、できるだけ広くやった方が政治家として云々ということでありますけれども、あくまでも、生産条件が不利なんだ、その差をどうやって埋めていくかということの手法として今度導入するわけでありますから、直接支払いを受けたら、極端に言えば生産条件のいいところよりもふえちゃったということにはいかないのではないかと私自身は思うわけでございます。  それから、やはり国民的な理解が得られなければ、これは国費が使われるわけでございますから、その辺のことも含めてまさに当委員会あるいは検討会の場でさらに詰めていかなければならないと考えておるわけでございます。  いずれにしても、中山間という生産条件の極めて不利なところで、しかし一生懸命頑張るんだという方に対して、いろいろな施策の中の一つとして直接支払いというものが、日本歴史始まって以来導入される手法でございますので、いろいろなところを今検討している最中でありますけれども、特に条件不利地域での生産意欲を失うことのないようなバックアップができるということだけは、今の段階で申し上げられると思います。その場合には、生産者だけではなくて、自治体との協力ということも当然大事なことになってくると思いますが、子細については、まさに今この法律の審議、あるいはまた検討会での検討の状況を我々は注意深く見守らせていただいて、来年度に間に合うようにしていきたいというふうに考えております。
  29. 園田修光

    ○園田(修)委員 今大臣が言われたとおりだろうと思います。これによって条件のいい地域より所得が上がるなんということは考えていないわけでありますけれども、現実に、集落ということで、一昨年ですか、国土庁が、大体二千ぐらいの集落がなくなっていくという予想なんかをしておりました。まさにその地域というのは、農業だけしか産業がない、農業だけしかできない。  昔だったら、それはもちろん食料の供給基地という形、あるいはまた高度成長の時期なら、労働者を輩出した地域なんだということでやれた時期もありましたけれども、現実にはもうそこで生きていかなきゃならない。今の国家の財政の中で、都市部の先生方は、いや、いろいろな形で都市部で上げた税金は地方に回すようなことはないよというような議論も現在あるわけであります。  しかしながら、昔はといっても、まだ二十年ぐらい前は、正直言いまして、東京に働きに来る人たちは、鹿児島からの一世の人たちというのが多かったのですよ、大都会で働く人たちは。だから、自分のふるさとのことについてはみんな賛同した時期があったのです。ああ、農家は苦しいんだからと。我々は農家で育って、おやじが農業をしながら育てて、学校を出していただいて、今企業に勤めているんだよという形があって、一年に一回ぐらいはふるさとに帰ってきて、お盆を過ごしてまた帰っていくという、田舎の事情が大分わかっていたのです。  しかしながら、今はどうかというと、それは全くないのです。もう二世になりますと、ふるさとのおじいちゃんのところだからというぐらいで、まさしく議論が平行線になってしまって、都市部は都市部だよ、地方は地方で生きていきなさいよというようなことが現実にあるわけです。  そういうような是正にも、今回の直接支払い国民的なコンセンサス、これはヨーロッパ型で、ドイツで、ふるさとに帰って農山村で休暇を二週間ぐらいやって、農業のありがたさ、景観のすばらしさ、そしてその中から文化でありますとか人間形成までやっているという地域で、広く国民からコンセンサスをいただいてデカップリングというのがあるんだということも聞きました。  そういう形の中では、やはり地域で、農業しかできない、その部類に対して、もちろん、水源涵養というのも大きな安全の一つであると思いますけれども、離島にあっても国土保全をするという形の中、採算性に合わないけれども一生懸命農家をやっておられる、それで国土保全されているんだという認識をしていただきたいと思っているところであります。  そこで、ちょっと自分のことを言うようですけれども、この地域五法の中には私の地域は外れるんですよ。そして、これは特別措置法の中なんです。沖縄振興特別措置法、奄美振興特別措置法、そして小笠原、この特定地域の特別振興、この法律が外れているんですよ。ただ、その地域農業しかできない地域であって、輸送コストはかかるわ、あるいはまた自然条件については台風常襲地帯で、これは大変な条件不利の地域に入ろうかと思っております。  引き続き検討という形なんですが、これは何かひっかかっているところがあるのですか。
  30. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 この直接支払いの大前提といたしまして、今先生から御指摘がありましたように、適切な農業生産活動等が行われることによって、維持をされることよって初めて公益的機能が維持をされる、こういう立場に立っておりますものですから、従来から中山間地域対策を講じてきたいわゆる地域立法五法、これはまず取り入れるべきだろうということでとりあえずの結論が出たわけでありますけれども、沖縄、奄美、小笠原、こういう地域対象とした特別法の指定地域につきましては、歴史的な経過として、戦後、アメリカの施政下にあったということとその後復帰をするというプロセスの中で、ほかの地域と違った取り扱い、ちょっとタイムラグが出たりした、そういうふうな事情もあるわけでございます。  冒頭申し上げましたようなこととの関係で、果たしてこの地域の定住条件がどうなんだろうか、それからこの地域が果たしている公益的機能がどうなんだろうかということについて、まだ少し勉強が足らないということで、引き続き検討ということになったわけでございます。結論が出たわけではなくて、この地域振興五法との関係においてもう少し勉強しようという意味でございます。
  31. 園田修光

    ○園田(修)委員 実は、委員会先生方もたくさんおられますから、ぜひ——それは復帰がおくれた地域なんです。奄美の場合は、昭和二十八年に復帰をしておりますから、小笠原とか沖縄とは大分違うわけでありますけれども、現実にはまさしく離島であって輸送コストもかかる、そしてまた現状はというと、台風常襲地帯、塩害、いろいろなことが言われる地域でありますから、そのこともできることならしっかり加えていただいて、もしも発言する機会がありましたら、また私も呼んでいただけば、行っていろいろな形で話をします。ただ、本当に国民的な理解がなければできないことはよく承知をしているところであります。それが一番大事だろうと思っております。  そういう形の中でこれまでいろいろと議論をしていただいておりますけれども、奄美のことを一つだけ言わせていただきますと、奄美の場合、いろいろな形で莫大な国営の農業事業をやっていただいております。そういう形の中で中央省庁の再編というものがありまして、今、国土庁所管で、いろいろな予算執行は各省庁に任せるというのが我々のこれまでのやり方でありました。今回、中央省庁の関係国土交通省というものができて、そこがまた窓口になっていきますけれども、ただ、今回、我々奄美としても、しっかり三省共管という形で、農林大臣にも自治大臣にも見ていただくという形のものを要望しておりますし、これからどういう形で決まっていくかわかりませんけれども、そういう中で、やはり農業中心に我々は生きていかなければ生きていかれないんだということだけはわかっていただきたいと思っております。  どうか大臣におかれましても、また離島の農業も見ていただいて、これからの日本の農政でしっかり落ち度のないような形のものをつくっていただきたいと思っておりますから、どうかよろしくお願いいたします。  ちょっと早いですけれども、これで終わります。
  32. 穂積良行

    穂積委員長 次回は、明二十六日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時公聴会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時一分散会      ————◇—————   〔参照〕     —————————————    派遣委員島根県における意見聴取に関する記録 一、期日    平成十一年五月二十四日(月) 二、場所    ホテル一畑 三、意見を聴取した問題    食料農業農村基本法案内閣提出)について 四、出席者  (1) 派遣委員    座長 穂積 良行君       今村 雅弘君    熊谷 市雄君       増田 敏男君    安住  淳君       木幡 弘道君    宮地 正介君       一川 保夫君    中林よし子君  (2) 現地参加議員       石橋 大吉君  (3) 政府出席者         農林水産大臣官技術総括審議官 小高 良彦君         農林水産大臣官房企画室長 川村秀三郎君  (4) 意見陳述者         島根大学生物資源科学部教授 平塚 貴彦君         鳥取県農業会議会長         東伯町農業協同組合代表理事組合長 花本 美雄君         有限会社みどり農産代表取締役 山崎 俊宏君         社団法人広島消費者協会会長 本田 笑子君         島根県美都町長 佐々木 健君  (5) その他の出席者         農林水産委員会専門員 外山 文雄君      ————◇—————     午後二時開議
  33. 穂積良行

    穂積座長 これより会議を開きます。  私は、衆議院農林水産委員長穂積良行でございます。  私がこの会議の座長を務めますので、よろしくお願い申し上げます。  この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。  皆様御承知のとおり、本委員会におきましては、食料農業農村基本法案審査を行っているところであります。  当委員会といたしましては、本案の審査に当たり、国民各界各層の皆様から御意見を聴取するため、御当地におきましてこのような会議開催することとなった次第でございます。  御意見をお述べいただく方々には、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願いいたします。  それでは、まず、会議の運営につきまして御説明申し上げます。  会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、座長の許可を得て発言していただきたいと存じます。  なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく方々は、委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  次に、議事の順序につきまして申し上げます。  最初に、意見陳述者方々から御意見をそれぞれ十分程度お述べいただき、その後、委員から質疑をすることになっております。なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、派遣委員を御紹介いたします。  自由民主党の増田敏男君、同じく今村雅弘君、同じく熊谷市雄君、民主党の木幡弘道君、同じく安住淳君、公明党・改革クラブの宮地正介君、自由党の一川保夫君、日本共産党の中林よし子君、以上でございます。  なお、現地参加議員として、元衆議院農林水産委員長石橋大吉君が出席をされております。  次に、御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。  島根大学生物資源科学部教授平塚貴彦君、鳥取県農業会議会長・東伯町農業協同組合代表理事組合長花本美雄君、有限会社みどり農産代表取締役山崎俊宏君、社団法人広島消費者協会会長本田笑子君、島根美都町長佐々木健君、以上の方々でございます。  それでは、平塚貴彦君から御意見をお述べいただきたいと存じます。
  34. 平塚貴彦

    平塚貴彦君 それでは、新しい基本法についての私の意見を陳述させていただきます。  食料農業農村基本法案に示されております四つの基本理念は、いずれも二十一世紀の我が国の経済社会の動向に影響する非常に重要な内容でございまして、この基本理念自体、私は基本的には賛成できるものでございます。  ただ、その中で、農業多面的機能の発揮、これの重要性、必要性が極めて強調されているという印象を受けるものでございます。私はそのこと自体に異論は全くございません。しかしながら、私の考えでは、農業基本的役割というものは、とりわけ食料自給率が極めて低い我が国におきましては、食料安定供給こそが基本的役割だ、最重要の役割だというふうに思っております。  そういう意味で、多面的機能の発揮というのはいわば副次的な役割であるというふうに私は考えております。したがいまして、基本法制定後の基本計画策定に当たりましては、食料安定供給確保、そういう観点をベースにして、具体的な政策を立案していただきたいというふうに考えております。  以下、主要なポイントについて若干のコメントをさせていただきます。  まず、食料政策についてでございますが、基本法案の中では、食料自給率目標設定ということがうたわれております。これは新しい基本法全体を貫く最大のポイントであるというふうに思います。したがいまして、できることならば、基本法自体に食料自給率向上をその理念の中に盛り込む必要があるだろうというふうに思います。具体的な数値に関しましては、十年後程度を目標にしたものを基本計画の中に実現可能な数値として盛り込む必要があるだろうというふうに思っております。  もちろん、食料自給率目標値を掲げましても、このことが達成できるかどうか、これは国民全体の責任と努力にかかっているというふうに思っております。したがいまして、自給率目標値を掲げたからといって、その達成が仮にできなくても、これは国あるいは政府だけの責任ではない、国民全体が真剣に考えていかなければならない問題だというふうに思っております。  そういう意味で、基本法案では健全な食生活の指針の策定もうたわれておるわけでございますが、このことも非常に重要でございまして、国民に対する強力な啓発活動が大切であろうというふうに思うわけです。  とりわけ、ことしの農業白書なんかでも示されましたように、食料資源利用のむだが非常に多い。例えば、食べ残しのようなものが非常に多いということが指摘されております。こういったことの解消でありますとか、あるいは日本人にとってどのような食生活が望ましいのか、そういった事柄の指針を国が国民の前に示す。このことは決して国民の食生活といったプライバシーへの介入でも何でもないというふうに思うわけでございまして、国民課題として極めて重要な食料自給率向上と密接につながっている重要な問題、この啓発活動が、今後、非常に重要であるというふうに思っております。  それから、農業政策についてでございますが、一つは、市場原理に基づく価格政策、これは国内外の諸情勢を考えますと、容認せざるを得ない政策だろうというふうに思っております。  しかしながら、一方で、特に認定農業者等に対しまして経営安定政策を早急に構築する必要がございます。特に、所得確保の観点から経営安定対策が重要でございまして、例えば主要な作目ごとに農業収入保険制度を創設するといったようなことを前向きに検討していく必要があるのではないかというふうに思います。  それから、農業政策の中で、基本法案では多様な担い手確保をうたっておりますが、これは現状を踏まえて、まことに適切な視点だろうというふうに思います。  とりわけ、その中で女性の農業参画の促進、このことは非常に重要でございまして、特に若い女性が農業に参画すること、このことが女性とか若者の農村定着に結びついていくものと思います。あわせまして、私は、若い女性、若者が農村に定着するために、農村の社会改革に本腰を入れるべきであろうというふうに思っております。  それから、担い手の中で高齢農業者役割が位置づけられたことも大きなポイントだろうというふうに思っております。  高齢者につきましては、農業への参画とあわせまして、特に介護の必要な高齢者に対する福祉サービスの充実が大切でございます。中でも、中山間地域におきましては介護保険制度のもとでの福祉サービスが果たしてうまくいくのかどうか、要するに地域間の格差が生まれるのではないか、そういった懸念もございます。そういう意味で、特に中山間地域における高齢者福祉サービス体制の充実が必要でございます。このことはまた、間接的に農業の維持発展とも密接につながっているというふうに思っております。  それから第三番目が、農村政策についてでございます。  農村政策の最大のポイントは、中山間地域等生産条件の不利を是正する、補正するための直接支払い政策導入でございます。このことは、御承知のように、我が国農政史上極めて画期的なものでございます。私は、この直接支払い政策農村政策の中に含まれておりますけれども、むしろ農業政策あるいは食料政策としても非常に重要であるというふうに認識をしております。  この政策が成功するかどうか、さまざまな条件があると思いますけれども、一つ申し上げておきますと、財源確保でございます。このような新しい政策導入する見返りに、財政の逼迫を理由にしてその他の重要な政策の削減があってはならないというふうに思っております。もしそういうことになりますれば、せっかくの新しい政策の効果は半減するというふうに思います。  なお、具体的な実施の手法につきましては、可能な限り地方自治体の裁量に任せていくということが重要であろうと思います。  それと、この政策に関連しまして、野生の鳥獣害防止対策でございますが、これは特に中山間地域に非常に深刻な問題でございまして、この鳥獣害対策に関する行為も直接支払い政策対象行為にぜひ指定をするべきである。霞が関に住んでいらっしゃる方々はぜひ中山間地域のこの実情認識していただきたいというふうに思っております。  その他、気がついておりますことを三点ばかり申し上げたいと思います。  一つは、新しい基本法の目的を達成するためには農林水産省以外の他の省庁の関連政策との連携の強化も必要でございます。例えば、先ほど申しました高齢者福祉サービスに関する政策とか、あるいは中山間地域中心とする農村の社会、文化的な施設の整備であるとか、さまざま関連した政策がございます。これとの連携が極めて重要であるというふうに思います。  それから二番目は、ただいまちょっと触れました中山間地域の野生鳥獣害対策でございます。これは、私は抜本的な対策を強化していただきたいというふうに思います。中山間地域農業者にとってはまさに死活問題でございます。そういう問題の解決のために、保護団体等との意見調整も積極的に進めていく必要がございます。  最後に、新しい基本法の制定を契機といたしまして、できるだけ、国のさまざまな農林水産行政を地方自治体にわかりやすく、また地方自治体が国のさまざまな政策を活用しやすいように、政策体系の簡素化を進める必要がある。とりわけ、縦割りの弊害をなくして、地方の立場を重視した政策体系の構築に努めていただきたいというふうに思っている次第でございます。  以上で私の意見陳述を終わります。ありがとうございました。
  35. 穂積良行

    穂積座長 ありがとうございました。  次に、花本美雄君にお願いいたします。
  36. 花本美雄

    花本美雄君 それでは、私から数点についての意見を申し上げたいと思います。  まず、日本の典型的な農山村地域を抱えるこの山陰の地でこのような委員会が持たれたことに深く敬意を表する次第でございます。  近年の我が国農業農村を取り巻く情勢は、景気の低迷、バブルの崩壊等により、かなり疲弊していると思っております。こうした状況は、農業者の高齢化、新規就農者や後継者等の不足や農村人口の流出、耕作放棄地の増加、農業生産の停滞等、農村が直面している多くの課題となって表面化しておるわけでございます。このため、現在国会で審議されている食料農業農村基本法は、二十一世紀に向けて、農家農業関係者が、農業生産農村活性化に夢と希望を持って生き生きと取り組める内容とすることが何としても重要だと思っております。  こういうような基本的な考え方のもとに、特に重要と考えられる事項について意見を申し上げ、基本法内容の充実をお願い申し上げる次第でございます。  まず最初は、食料自給率の問題であります。  現在、穀物自給率は二八%と聞いておりますが、先進国の中でも憂慮すべき低い水準となっています。今後、農家生産に対する希望と、消費者国民の皆さんが食料に対して安心できる食料安全保障確保するために、たとえ一年一%として二十二年の歳月を要しても、穀物の自給率を五〇%の水準にまで引き上げることを明示することが必要と思います。  また、年間三千万トンもの食料が輸入されていますが、木材のように国内生産農家が泣くようなことがないよう秩序ある輸入が必要であると思っております。農畜産物の国境措置をとってもらいたい。また、特に原産地表示を徹底的にやっていくことが必要だろうと思っております。日本の農畜産物でも輸出が可能なものもあるわけでございまして、いま少しできやすいようにすることも必要だと思っております。  また、木材価格の低迷により、ヒノキの柱材等においては、最近では立米が七万円から七万五千円というような状況でございます。  次に、農山村地域への直接支払い制度についてであります。  農山村地域への直接支払い制度については、農山村が生き返る国の大きな施策であると考えます。このため、農林水産省予算の別枠の財源確保した上で、農山村地域実情に即した対策の仕組みとなるようお願いいたします。農山村は、山林と水田と畑が経営基盤となっておりますので、山林もセットにした考え方経営安定と定住対策をお願いするものでございます。  また、その中にあって、試験研究機関の充実強化こそ、私は、農産についても畜産についても林産についても、日本の国の基本的な農業の仕組みの中での核たる試験研究がおくれておるではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。  次に、高齢化が進む農村にあって、魅力ある山村営農を確立するべく努力を払う所存でありますが、直接支払い制度がそのきっかけとなり、その役割を果たしてほしいものと願うばかりでございます。  次は、株式会社の農地の取得についてであります。  農地の有効利用と農業経営の斬新なアイデアと高い技術導入の観点から、株式会社農地取得は認めざるを得ません。しかしながら、秩序ある農地利用を図るため、例えば株式会社が農地を転売することを禁止することはもとより、廃業や倒産した場合は農地国債を発行し、農地保全措置を講ずる必要があると思うものでございます。  これに基づいて、市町村農業委員会、農協等が一体となって、農協法を改正するとともに、五年程度をめどに管理して、荒廃農地を出さないようにすることも大切であろうと思います。法人及び個人の大型農家を集積しやすいようにすることも必要だと思っております。農地の高度利用及び保全するなど、農地の保全管理が完全に守られるような実効性のある措置を講じていただきたいと思います。  最後に、高齢者対策についてでございますが、ある農家は、八十歳、八十二歳になって、芝や茶畑等を五ヘクタールから七ヘクタールも経営しておりながら跡取りがなく、あと五年、六年もしたら急激に農家がなくなることを思いますと、この際、思い切った施策をやっていただくことが必要だと思っております。  特に、農地の壊廃が進んでまいりますと、集落の機能が完全なものにならない、地域の崩壊につながる。こういうようなことを思ってみますと、私は、この高齢化対策というものは、介護保険制度導入されるといっても、それ以上に心配でなりません。このことについては、地域が一体になって取り組むことも必要でございますが、どのようにしたら農村、中山間地対策が成功して、そして日本の国が奥山村の中まで光り輝けるような体制になっていくかということが私は大事だと思っておるような次第でございます。  いろいろございますけれども、我々が期待できるような、今度の新しい基本法にぜひ盛り込んでいただいて、そして農山村、農家の皆さんが希望の持てる日本農業、二十一世紀づくりをやっていけるように努力をしていくことはもちろんでございますけれども、国民、皆さんの合意が得られて、それぞれの立場でこのことが実現できることを相図っていくことこそ肝要だと思っておるような次第でございます。  以上申し上げまして、私の意見といたします。
  37. 穂積良行

    穂積座長 ありがとうございました。  次に、山崎俊宏君にお願いいたします。
  38. 山崎俊宏

    山崎俊宏君 では、現場の一人として一言申し上げます。  私のところは平たん地で、圃場整備もされた水稲中心農業地帯で、一担い手として農業を行っております。ようやく田植えも終わり、今は転作大豆の播種作業に向けて準備中です。比較的条件のよいこの地区でも、老齢化が進み、若者が農作業をしている姿はほとんど見かけなくなり、担い手確保が急がれる状況です。  私自身、農家に生まれ、後継者として農業をやってきましたが、家としてではなく、地域の後継者としての考えから法人化をし、広く人材を集めることで地域農業担い手として農業に取り組んでいます。もちろん、法人になったからといって急にもうかるものではなく、何事も前向きにとらえ、次につなげることを目標としております。  本来、利益追求を目指すところですが、地域農業の一員との位置づけから、地域とのかかわり合いが大切で、特に関係集落においての耕作面積が拡大するにつれて、集団転作、水利の維持管理等、これまでその地区で築き上げたものを壊しかねないため、集落営農共同作業には常に参加し、転作作業も一手に引き受け、平成八年には特定農業法人にも認定されました。  我が鳥取県にもようやく二番目の特定農業法人が誕生しますが、特定農業法人に認定されることにより、農用地利用集積準備金制度の活用によって新たな経営展開が可能となります。さらなる特定農業法人の誕生のためにも、認定基準緩和、期間延長等をぜひともお願いいたします。  次に、農業共済制度についてですが、相次ぐ米価の引き下げと転作面積の拡大によって、一層農業離れに拍車がかかり、このままでは農地を農地として維持することも困難になってきます。そこで、認定農業者を初めとする地域農業担い手に期待するところですが、規模拡大をすればするほど転作対応が問題となってきます。  現在、大豆転作で対応しておりますが、天候に左右されやすく、収穫量、質とも不安定で、特に昨年は台風により収穫皆無となり、受け取り共済金で何とかしのいでいるということです。しかし、今の共済制度では、収量減に対しての補償だけで、品質低下による価格減に対しては対応はなく、新たに品質低下も考慮した制度にしていただくことが、経営の安定、さらなる生産意欲へとつながり、自給率向上になると思います。  また、以前と違い、量の時代から消費者ニーズにこたえられる質の時代へと変わり、生産現場としても、有機低農薬へ移行しつつあります。当地区にも堆肥センターが完成、間もなく生産開始となります。地域を挙げて有機栽培に取り組む計画ですが、生産資材費等価格に反映されにくく、今後、消費者との交流を進め、販売方法を検討していかなければならないと思います。  その一つとして、旬の野菜狩り園を計画しております。これは、有機低農薬栽培の野菜を消費者の皆さんに収穫していただき、少しでも旬を感じ取っていただけたらと考えます。また、子供たちへの教育の場として役立ちたい。農業体験の場としてもいいのではないかと思います。これが将来、農業後継者の確保に役立つかもしれないと思います。  どんな職業でも、楽なものはないと思います。ただ、好きであるかそうでないかによって大きく変わるもので、好きであれば現実に立ち向かう力がわいてくる、そうでなければみずからの努力より人の責任にしてしまおうと考えます。しかし、やる気を持って一生懸命頑張っても、自然相手の農業は夢と誇りを持ってもどうにもならないことがあります。安心して農業に取り組むことのできるような体制をぜひともつくっていただきたいと思います。  農業を守ることは自然を守ることにもなります。今後とも、一生産者として、これからが農業はおもしろいと前向きに考え、頑張っていきたいと思います。  以上で終わります。
  39. 穂積良行

    穂積座長 ありがとうございました。  次に、本田笑子君にお願いいたします。
  40. 本田笑子

    本田笑子君 私は、初めに、農業基本法に対しましては十分理解はできておりませんが、食料とか農業は今後どうしていけばいいだろうか、消費者視点感じたことについて、五つほど発言をさせていただきます。  最初に、消費者役割についてでございます。  基本法の第十二条に消費者役割が入っております。ともに考える場ができたということは、当然とはいいながら、消費者も責任を感じております。しかし、今までの考え方や習慣を変えることが必要です。例えば、調理時などの廃棄量を減らしたり、外見より中身を見たり、また自然とかかわりながら生きることの必要性など、それらが当然視されて初めて持続可能な農業を営むことができるのではないでしょうか。  消費者の柔軟性も読み取れる数字があるわけです。皆様のお手元にはちょっとお渡ししていないんですが、あなたは生活の快適さとエネルギー消費量についてどのように考えますかというところの中で、消費量を減らしても頑張る、減らしながら快適な生活をする、とにかく減らそうと努力するというのが七八%あったわけです。これはやはり今の時代を自分自身で読み取っているのではないでしょうか。  二番目に、流通表示についてでございます。  流通合理化によってコストを抑え、競争力を高めて、できるだけ安く、鮮度の高いものを供給していただくことを望んでいます。  お手元にありますアンケートの食生活関連の欄をごらんいただきますと、二枚目にございますけれども、鮮度を三七・三%の人が望んでいる、これが一位でございます。二番目が安全と価格ですが、若い人はこれが二位、価格を大切にしております。  二位の安全は、二一・六%の人が求めておりますように、現在遺伝子組み換えなどの新技術導入には不安を持っていますので、十分に説明していただき、理解を高められるような情報の提供をしていただいて、また、わかりやすい表示消費者が選択できるところまでの手だてが必要です。  私どもは食品と接するところから農業感じ取るわけですから、顔が見えることで安心を与えます。三枚目になるかと思いますが、アンケートの中で産地表示のところがございます。産地表示の確認を七二・二%の人がしております。このように、産地に対する希望度、顔が見えることの希望度というものを消費者感じておりますが、私たちは、そのようにしていただければ需要の増加にもつながっていくのではないだろうかと思います。  次に、三番目ですが、農業経営について。  農業経営感覚導入していただき、輸入作物との競争の中で磨かれた良質な農産物消費者に提供していただき、また余剰の農産物は輸出を視野に入れた経営をしていただくと同時に、その中には情報通信も活用して農業活性化に期待したいと思います。  省エネルギーから考えますと、できるだけ適地適作をし、また旬を重視し、有機農法の視点に立った農業に転換していただきたいのですが、アンケートの中では、多くのエネルギーを使っていることを意識したことがあるという人が六四・三%もおります。輸送などの移動のエネルギーも加えますと、多くのエネルギーを使っているわけです。川上を汚さない農業が次の世紀には必要不可欠です。  次に、四番目ですが、自給率向上を目指して。  国民の生命維持を考えたとき、思い出せば一九七二年でございましたが、昭和四十七年、大豆の高騰で豆腐が急騰したことがございました。近年の自給率の低下に不安を非常に感じております。今飼料の輸入が途絶えたら、卵はどうなるのでしょうか。鶏は、牛は、豚はどうなるのでしょうか。飼料の生産も最低限は必要です。  気候の変動に影響を受けやすい農業、地形的にも中山間地の多い我が国は、農業維持の上からも、限度はありますが、補助金制度は必要です。そして、活力ある農村に新しく生まれ変わることが必要です。職住接近を視野に入れ、女性も経営者としての知恵を出し、新規参入者を受け入れることでしょう。都市から離れている農村には、安心を与える福祉対策の充実が必要です。それにより定住化が進み、生産の意欲も増してくるのではないでしょうか。  五番目、次の世代に引き継ぐために。  学校教育のカリキュラムの中に農業体験を導入することを提言いたします。自然の恩恵を知ることができるとともに、現在の子供たちに欠けている忍耐力も自然から学ぶことができるからです。  最後になりましたが、基本法の運用に当たっては、数字におぼれることなく、実態を分析して問題点を見出し、社会変化への対応はできるだけ早く、消費者に情報開示して、農業が変わっていく姿を実感させていただきたいと思います。  以上です。
  41. 穂積良行

    穂積座長 ありがとうございました。  次に、佐々木健君にお願いいたします。
  42. 佐々木健

    佐々木健君 私は中山間地の小さい町の町長の立場から、この新しい基本法、特に農村振興という面、なかんずく中山間地域の問題について、平素行政を進めておる立場から少し意見を申し上げたいと思います。  私は、今回のこの基本法の案、まだ案でございますけれども、今までありました農業基本法と比べていろいろな特色があるわけですが、その中で、特に農業なり農村の持っておる多面的な、公的な機能というものを評価されておる、しかもそれが法律の文面の中に入っておるということは、私は強く評価をいたすものでございます。  従来は、どちらかというと、農業生産あるいは農家経営安定ということが中心に行われておったわけで、それも大変大事でございますけれども、これからは農村地域振興といいますか維持管理ということが大変大事なわけでございますので、そういう面で評価をいたしておるところでございます。  そういう中で、特に高齢化が進み、後継者がいない中山間地域農村というのは今大変厳しい条件にあるわけです。公的機能を持っておりながらも、なかなかその機能を十分発揮できる体制にない。といいますのも、条件の悪いところから逐次耕作放棄というものが出てきておるわけでして、それは一カ所出ますと連鎖反応で次から次へ、水利その他が一つでございますので、一カ所がそういう耕作放棄になれば、それは連鎖的に地域に広がってくる。  それで、その耕作放棄は、農業生産上、非常に大きな問題でもございますが、それ以上に、農村にとっては地域の崩壊につながる大変大きな問題であるわけです。今集落営農だとか、あるいは中核農家の皆さんは大変努力をしていただいておりますけれども、なかなかそれだけの力ではどうにもならぬということで、この島根県なり中国地方の中山間地域では、農業生産法人なり、あるいはいろいろな組織をして、農地の流動化なり農作業の受委託というものを進めておるわけですが、これまた採算が非常に難しいということで、地方の財政負担の上に、何とかして農地を守ろうという努力を進めておるところでございます。今回のこの農村農業の公的な、多面的な機能の維持増進をしていくという一つの方策として、中山間地域への直接払い制度が今検討されておるわけで、我々はそれに大変期待をいたしておるわけでございます。  しかし、これは、私の今までの経験では、多分日本の農政上初めての、いわゆる農産物へのいろいろな助成策がございますけれども、農地を守るということに対する直接払いということは初めての政策だろうと思いまして、これをやる方法については十分検討していく必要があろうと思います。  その中で、私の意見は、まずこの直接払いというか、むしろ農業農村問題を、農村に住む農家の方なり我々農業関係者だけでなしに、国民全体の問題としてとらえて対応していく必要があろうと思います。先ほど本田さんからもお話がございましたように、やはり消費者も含めた農業農村問題を、特にこの中山間地域への直接払いというような制度国民全体の理解がないとなかなか施策として定着をしないだろうと思いますので、そこら辺をこれからどうやっていくのか。大変大きな問題だろうと思いますが、これはぜひ国なり国会の先生方のお力で国民全体の問題として取り上げていただきたいし、また我々農村の方も、この農村の持っておる自然環境その他をできるだけ都会の皆さん方に開放するといいますか利用してもらえるような政策も進めていく必要があろうというふうに考えておるところでございます。  それともう一つ、この中山間地域への直接払い制度というのは、これは地域によって中山間地域の状況が違っておりますので、画一的な施策というか基準というものでは実際問題として非常に難しい問題があるのではないだろうか。それぞれの中山間地域の事情に、あるいは実情に合ったような政策展開ができるようなマニュアルをぜひつくっていただきたいということでございます。  中には、先ほど来話がございますように、農地を守るということにあわせまして、有害鳥獣等の駆除といいますか、そういうことも農産物生産費には非常に大きなウエートを占めておるわけでございますし、また土地改良施設、水路だとか、そういうものの管理というのも、これは、農村は今までも共同で川上から川下まで管理をいたしておるところでございますので、そういう土地改良施設等の管理等についても今回十分検討していただきたいというふうに考えておるところでございます。  いろいろありますけれども、私は特に本日はこの中山間地域の問題について強くお願いをいたしまして、私の意見陳述を終わりたいと思います。
  43. 穂積良行

    穂積座長 ありがとうございました。  以上で意見陳述者からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  44. 穂積良行

    穂積座長 これより委員からの質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今村雅弘君。
  45. 今村雅弘

    今村委員 本日は貴重な御意見を賜りまして、どうもありがとうございました。  私、出身は、今おりますのは九州の佐賀県でございまして、ここは同じく中山間地もあれば、あるいは有明海に面した干拓地もあるといったことで、農業の問題は非常にバラエティーに富んで、それぞれの問題を抱えているところでございます。  そういう中で、時間がございませんので、早速二、三お伺いしたいと思います。  まず、平塚先生自給率の話をちょっとされたわけでございまして、十年後程度を目標にある程度設定すべきじゃないかということを言われましたが、これは先生の御意見といたしまして大体どのくらいが設定する一つの目安だというふうにお考えなのか、この点が一つ。  それから、政策推進体系の簡素化ということもちょっとおっしゃいましたが、この辺、我々も、実は自由民主党でも、朝八時前から集まっていろいろな議論を取り交わして、農林部会等で一生懸命やっているわけでございまして、できるだけ地域意見も聞いてやっているつもりでございますが、そういったものが正直言ってなかなか農家の方にはわかっていただけないような面もあるわけでございます。こういったものについて、今後どういった形でやっていけば、もっと生産者の皆様あるいは消費者の皆様の御意見が反映できるのか、この辺について具体的な御要望等があればお伺いしたいと思っております。  それから、ちょっと欲張りで申しわけございませんが、先ほどの山崎先生と本田先生関係でございますが、いいものをやはりつくっていきたい、特に健康志向といいますか安全志向といいますか、そういったものが日本農業のある意味では強みだと私も思っておりますが、生産者の方からは、先ほど言いましたように、有機農業をやったり、あるいは低農薬でやっても、そういった生産費が価格になかなか反映されにくい。  一方、消費者の方からしてみれば、できるだけそういったものは明確に出していただける方が消費者としても買いやすいし、また協力もしやすいということで、お互いに思いは一つであるかと思いますが、どうもそこのところがうまく結びついていないというような感じがしておりまして、今後、いろいろ消費者運動をされる中で、その結節点をどういうふうに求めていかれればいいのかなと思っておりますが、そのお考えがあったら伺いたいと思います。  以上三点でございますが、よろしくお願いいたします。
  46. 平塚貴彦

    平塚貴彦君 御質問は二点でございます。  最初の自給率でございますけれども、新しい基本法は大体十年ぐらい先を見込んでということで、五年ごとの見直しということでございますので、目標としては十年ぐらい先のことだろう。この自給率は、私が今考えておりますのは、やはりカロリー、熱量自給率というのが一番わかりやすいのじゃないかというふうに思います。  ただ、これは議員も御承知のように、どのような食生活のパターンになるかによって随分変わってまいります。したがいまして、食生活の指針というものも示すというふうになっておりますので、日本人として望ましい食生活のパターンというのを、モデル的なものを一応設定して、そういう食生活をした場合にどれくらいの自給率目標にするかというふうな観点が必要なのじゃないか。  現在、カロリー自給率が四一%でございますけれども、恐らく望ましい食生活というのは現在の日本人の食生活とはちょっとずれてくるのじゃないかと私は思いますので、具体的な数字は計算もしておりませんし、非常に難しいのでわかりませんけれども、やはり四一%は当然上回って、何%か上積みしたもので、実現の可能性がある程度あるものを設定すべきだろうというふうに思っております。それで、これは十年、二十年、三十年とかけて、息の長い対策だと思いますので、余り欲張らないように。  それと、先ほども私は申し上げましたけれども、食料自給率目標値を掲げたからといって、この目標値の実現ができなくても国の責任とか政府の責任というふうにはならない、これは国民全体が考えるべき事柄だろうというふうに私は思っております。そういう問題であるということを国民の前にきちっと国が啓発活動として示す、このことが非常に重要だろうと思っております。  それから、二点目の政策体系の簡素化でございますけれども、恐らく国の方もいろいろ努力はされているのだろうと思います。しかしながら、農林水産、特に農業関係政策だけでもデパートのように随分いっぱいあるわけでございます。県レベルでもいっぱいございます。ところが、これが地元といいますか現場になりますと、Aの政策とBの政策とCの政策を組み合わせて一つの政策にするといったようなことが当然起こるわけで、そうなりますと、どれをどう扱ったらいいかわからないというふうな声が地元の方からはよく聞かされるわけでございます。  そういう意味で、国のレベルではA、B、C、D、Eといろいろあっても、下へおりるときには何か一つのメニュー、いろいろなものを集めて、こういうことをやるときにはこういう政策とこういう政策をドッキングさせればうまくやれるというふうな、いわば一つ一つの材料を盛り合わせにして、メニューとして示すというふうな工夫も必要だろう。これは地方の行政機関の一つの役割でもあろうかと思いますけれども、やはり地元にとっては非常に複雑多岐でわかりにくいということでございます。
  47. 山崎俊宏

    山崎俊宏君 では、生産者として、そのことについて一言申し上げます。  まず、これまでは生産者はただつくるばかりという考え方で、結果、幾らになったというようなことになっておりましたが、これからはやはり売れるものを目指してつくる。その売れるものとは何かといいますと、やはり有機であり、低農薬というような考え方で、これまで生産者消費者にかなりの距離感があった。ですから、双方とも歩み寄るといいますか、お互いにどうなのかという気持ちで近づいていかないと、このままではどうもその溝が埋まらないのではなかろうかということで、私の意見の中に一言申し上げましたが、やはり実際に触れてもらう、見てもらうというか体験してもらうという、小さなことかもしれませんけれども、そのあたりからいま一度農業のすばらしさなり厳しさ、何とか消費者との直接的な触れ合いを考えていきたいなというような気持ちでおります。  以上です。
  48. 本田笑子

    本田笑子君 非常に健康志向が強うございまして、昨日ホウレンソウを買いましたら、有機と名がついているのは百五十八円ぐらいで、そして何の表示もないのは百円というような状態だったですね。やはり有機とつくとちょっと高いわけです。そしてまた、有機そのものが、まだ今の段階でははっきりした法律も整っておりませんし、不安ですね。ですから、不安要素が払拭されれば多少高くても買うのではないか。ただ、今のような百二、三十円ぐらいならでしょうけれども。百五十円というのはちょっと私も手をよう出しませんでしたけれども。やはりその辺の価格の問題というのがあるだろうと思うのですが、今後、非常に期待しております。
  49. 穂積良行

    穂積座長 ありがとうございました。  次に、熊谷市雄君。
  50. 熊谷市雄

    熊谷(市)委員 熊谷です。  きょうは大変貴重な現場からの御意見を聞かせていただきまして、ありがとうございました。時間が極めて少ないので、要点を絞ってお尋ねしたいと思います。  今、今村先生からも自給率の問題に触れられたわけでありますが、私は今度の基本法は、要するに自給率というものが向上できるかどうか、この一点にかかっている。言うならば、新しい基本法のつぼのようなものだというふうにとらえているわけですが、各先生方はその自給率向上というものを強調されたわけであります。  特に平塚先生先生は総括して十年ぐらいをめどに少し思い切った、後から責任を追及されることを恐れるのじゃなくて、もっとオープンな考え方自給率というものを設定すべきだというようなお話であったし、さらには、これは実現性も当然考慮の中に入れてという概念としてお話をなされているわけですが、我々は、今度基本計画に具体的に取り組む際に、この数値というものがどう打ち出せるか、打ち出していくのか、ここが議論中心になってくると思うのです。先生のお立場からして、現状というものを、自給率の低さなり、あるいは食生活の将来のいろいろな問題、こういうものを総合して、数値的にどれぐらいが適正、妥当なのか、これも余り遠慮なさらないで、ひとつ思い切った形でぜひお聞かせいただきたいと思います。  それから、これは一々やりとりしておったのでは時間がかかりますから、次に、これらの問題と関連して、花本会長さん、これは生産者立場ということからして、特に全中あたりは五〇%ぐらいというおおよその考え方というものも打ち出しているわけですが、五〇%というこの数値目標というものは、やはり生産現場からして、現実の問題としてどういうふうにとらえておられるか。  そしてさらに、この五〇%に到達するには、先ほど花本会長さんは十年ぐらいのサイクルで一年に一%というような具体的な例なども挙げられたわけですが、そういう形で進めていく場合に、何が一体大事な要件、要素になってくるのか、生産現場として自給率というものを向上するために何が一番大事かというのを一点か二点ぐらいでよろしいですから、お聞かせいただきたい。  それから、山崎さん、今法人経営を実際におやりになっておられて、そしてさまざまな形で集落とのかかわりというものが非常に大事だということも強調されたわけであります。  それで、私は集落営農というものを推進していくという非常に強い持論を持っているわけですが、あなたの法人というものを集落営農形態の中に結びつけて、そして集落全体というものをとらえた形で、いろいろな生産組織というものを展開していく、そうすると女性の役割も老人の役割もみんなつながってくるというふうに考えられるわけであります。あなたがやっている法人経営と全体をくくった集落農業関係あり方というものをどんなふうに、もし課題があるとすれば、どんな課題があるかということをお尋ねしたいと思います。  それから、本田さん、今度は消費者立場から。  先ほど平塚先生は、日本人の食生活というものを変えていくということが大事だ、言うならば日本型の食生活、こういうことをおっしゃったし、これは消費者に対して、食生活のあり方に対して余り干渉すべきでないなんという、政府はそんなことを考えてはだめだから、思い切って啓発、指導していきなさい、こういうふうにおっしゃったんですが、消費者立場から、例えば国がそういう食生活のあり方というものを打ち出した場合に抵抗感があるのかないのか、この一点をお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いします。
  51. 平塚貴彦

    平塚貴彦君 具体的な数値を示せということでございまして、これは非常に難しいわけでございますが、十年後程度で、切りのいいところで四五%、カロリー自給率でございます。私も研究者の一員でございますので、いろいろな計算をした結果でございませんので、そういう数字を申し上げるのは内心じくじたるものがございますけれども、数字を言わないで抽象論ばかりやっておっても仕方がありませんので、それを一つの目標にすべきだ。  御指摘のように、生産がどうなるかということと、一方、消費者がどのような食生活についての行動をとるかの両方がございます。ですから、この四五%という数字も、やはり国民全体の相当の努力が必要だろうというふうに私は率直に感じております。
  52. 花本美雄

    花本美雄君 自給率向上ということは、先ほども意見がありましたが、過去に海外の大豆の輸出が減ったということで、一日、二日したところが、豆腐が千円になったというような実例もあるわけでございます。  ですから、今二八%の自給率ということになれば、過去の米の大不作のときには、二百五十万トンも緊急輸入をしてパニック状態を抑えにゃいかぬのではないかというようなことまで出てきたわけですから、一年に一%ずつ努力をしても二十二年かかるわけです、五〇%は持っておらにゃいかぬとなれば。五〇%ということの基準は、そのときには何ぼどういうことがあっても、国民消費者の皆さんにおかゆの親方ぐらいは食べられるようにしておかぬといかぬのではないか、こういう気がしております。  その中で一番大事なことは、学校の子供が御飯を食べないようになっておる。三千万トンも食料を輸入しておって、農村では転作がどんどん進んできて、これ以上の転作はもうやれないわい、こういう状態ですが、そういうことでなしに、それは自給率を上げるということになれば、米で自給率を上げるということはなかなか至難だろうと思います。これ以上に米を使えということはなかなかなりにくいのだったら、自給率を上げるんだったら、雑穀を主に自給率を上げていくということもせにゃいかぬのではないか。  例えば、千六百万トンもトウモロコシを輸入しておるわけでございますから、これらのところも大いに考えていかにゃいかぬだろう。国内生産でできやすいもの、我々のところでは、大豆なんかは、今の品種では、自給率を上げようと思ったって、これは先ほど山崎さんも言われましたけれども、毎年毎年ちょっと雨が降れば収穫はほとんど皆無になる、こういうような状態のところに大豆をつくれと言われたってとてもだめだと思います。  ですから、その土地土地に合ったような品種を選定することも必要だし、そのことについて、今試験研究機関が育種について随分おくれておると思っております。ですから、これはやはり日本の研究機関というものにもっと力を入れて、諸外国に負けないような体制にしていくことこそ必要だと私は思っておりますので、穀物の自給率は五〇%、二十年かかっても二十二年かかっても、穀物の自給率を五〇%と目標数値を示すことによって農家の皆さんにやる気を出していただけるのではないか。このことは国民消費者の皆さんも納得してもらえる、私はこう思っております。
  53. 山崎俊宏

    山崎俊宏君 集落営農と法人との関係についてですけれども、本来、第一に、自分のことは自分でといいますか、その集落はその集落内で対応すべきというふうに思います。それはなぜかといいますと、例えば水系の問題等もございますし、本来、それが一番である。  私は集落営農の組合長もしております。法人として広域にやっていることも事実です。ただ、当初は集落営農で自主的に共同作業というような形をとっておりましたが、やはり実際に活動が困難になったという関係で法人化をし、その受け皿の道を選んだということでございます。  ですから、もうやめてしまえということは決して言いませんで、とにかく基本的には、できることは皆さん、それぞれしましょう、それが個人であろうが、集落営農という組織形態であろうが、基本的には、できることはそれぞれやりましょうという気持ちで、ただ、それ以外、できないところはうちの会社でお手伝いしましょうかというような形のつながりでやっております。基本的には、その集落はその集落で対応すべきという考えは今でも変わっておりません。  以上です。
  54. 本田笑子

    本田笑子君 国がそういうものを打ち出したときの抵抗とおっしゃいましたけれども、やはり現状だったらあるのじゃないかと思いますね。それで、その方向には、多少国民消費者も変わりつつありますが、現在ではやはりまだ抵抗があるだろうと思うんです。  いろいろなところで、やはり徐々に、先ほどどなたかおっしゃいましたように、各省庁がそれぞればらばらというのではなくて、やはり全体でそういうものを打ち出していただくことで国民考え方が変わっていくのじゃないか。  先ほどエネルギーの問題も申し上げましたように、ちょうどあれは京都会議があったころじゃなかったかと思うんですけれども、さっき私がエネルギーで申しましたのは二年前なんですが、そのころはやはりそういう問題があったころなので、少々だったらエネルギーは節約しても何とか今の生活を維持したいという気持ちが起こったように、非常に世論は揺れ動くところがまだあるんですね。  そういう面では、やはり全体的に底上げということをやっていただきたいと思っております。
  55. 穂積良行

    穂積座長 ありがとうございました。  次に、木幡弘道君。
  56. 木幡弘道

    木幡委員 時間がありませんので、一問一答でお願いできればと思いますが、委員長、よろしくお願いします。  佐々木町長さんにお尋ねしますが、農業委員制度の問題について大変な論議が基本問題調査会でもあったんです。国会の中でも論議があったんですが、現在の農業委員をこのまま公職選挙法に基づく公選にしていって果たして機能するのかどうか。これを教育委員と同じように市町村の任命制にして、人数を少なくした方がより機能するのではなかろうかということについてはどう思われますか。
  57. 佐々木健

    佐々木健君 農業委員会は、一番大きな仕事は農地の流動化ということですが、現実問題としては、十分その機能を発揮していないですから、農業委員会制度そのものを変えていくということは私は必要だろうと思います。  ただ、その選出の方法を教育委員会のように地方で選出するというには少し問題があるのではないか。何か別な方法を考えるべきだろうと思いますけれども、農業委員会そのものは現在の制度からは少し変えていく必要があろうと思います。
  58. 木幡弘道

    木幡委員 それで、花本会長さんにお願いしたいんです。  実は、農業会議そのものが、今かなり組織が肥大化して、本来の役割を果たし得ないのではなかろうかというのが、基本問題調査会、総理の諮問機関で大変な論議になりまして、そういう意味では、現職の農業会議会長さんとして、今ある農業会議そのものをどう機能させるかということについて、御意見があればお聞かせいただきたいんです。
  59. 花本美雄

    花本美雄君 これは非常に大きな政策の転換になると思いますが、私は、農業委員会の組織というものの活用をもう少し考えていかにゃいかぬのではないか。  そのいわれは、これから高齢化がどんどん進んできて、そして耕作放棄地がどんどんできてくる。だから、先ほど申し上げましたように、これは土地利用計画を今度農業委員会や町や農協なんかでやって、農協法を改正して、そして耕作放棄地を適正な法人なり大型農家なりに、利用計画に従って町長さんなりなんなりが農業委員会と協議しながらやっていくということになれば、早晩というより今すぐ方々に、耕作放棄地が余計出てきつつあるわけです。現に島根県あたりは三千町歩も三千五百町歩もできておるというようなことも聞いております。そうなってくれば、町長さんは選挙に出るものでございますから、なかなか思い切ったことのリーダーシップはとりにくいのではないか。だから、そうすれば農業委員会中心になって、農協なり町なりと協議しながら、土地利用計画というものをやっていかぬといけないのではないか。そういうことの調整をするのが私は農業委員会だと思っております。
  60. 木幡弘道

    木幡委員 平塚先生お尋ねしたいんですが、私どもは、基本計画の中に自給率と同時に農地面積の目標も立てたい、こういうふうに思っているんです。それと同時に、この基本計画そのものを国会承認させたい、こういうふうにも希望しているんですが、その問題について何か御意見があればお聞かせいただきたいんです。
  61. 平塚貴彦

    平塚貴彦君 数値目標的なことは当然基本計画の中にということだと思うんですが、農地の面積も示すことには私は賛成です。自給率に一番かかわっているのは農地の面積だと思います。御承知のように、農地の面積はどんどん減っておりまして、これからも私は減ると思います。ですから、どの程度を最低限度の確保面積にするのかというのが非常に重要なポイントであるというふうに思います。  ただ、いろいろな数値面積を示した基本計画そのものを国会の承認事項にするかどうか、これについては、そのあたり、私はちょっとよくわかりかねます、いろいろな責任の問題とか出てくるのだろうと思いますけれども。  基本法が国会で制定されれば、基本計画そのものはそこまで必要なのかなという気もございますし、国会承認ということになりますと、かなり重みが出るという点では国の責任が強くなるというので、そのあたりのことはちょっとよくわかりませんので、ここではお答えできないと思います。
  62. 木幡弘道

    木幡委員 本田会長さんにお尋ねしたいんです。  今ほど有機農業、有機野菜について、ホウレンソウの話が出ましたが、今実はJAS法といって、生産地を明示すべきだ、有機農業は有機農作物として明示すべきだという法律が今審議途中なんですが、消費者の方は当然はっきりした方がいい。一部で、生産者、特に小さい農家生産者については余計な経費がかかる、こういう意見が出ているんですが、それについて、本田会長消費者立場でどう思われますか。
  63. 本田笑子

    本田笑子君 ちょっと済みません、もう一回言ってください、簡単に。ごめんなさい。
  64. 木幡弘道

    木幡委員 時間がないもので、それでは結構です。  山崎さんにお願いします。  今、大変努力をなさっている後継者の方々が、地元の農協あるいは農業団体に、自分の営農を通じて、どのような形で改革をすべきだという問題点があれば御指摘いただきたい。
  65. 山崎俊宏

    山崎俊宏君 大体大型農家というのは農協とも余り仲がよくないということを聞いておりますが、私のところは、全面とは言いませんが、農協を利用している。つまり、これは生産者消費者との関係と似ている部分もありますけれども、お互いに誤解がある部分というのもたくさんあるのじゃないか。ですから、その辺でお互い利用するところはいい意味でどんどん利用し合う、そういうことで農協を極力利用している。ですから、うまくやっているというのが現実です。
  66. 木幡弘道

    木幡委員 実は、きょうの各公述人の先生方、自給率の問題と中山間地域、まさにそのとおりでありまして、ただデカップリングについて、直接支払いの原資をどこに求めるかということ、これからになるんですが、その原資を求める場合に、国民に広く負担を求めるということになれば、農業系統団体の組織の再編整備という自助努力がなければ、なかなか理解を得ることができなくなる点があるんです。  先ほど山崎さんから話がありましたとおり、農業共済の問題で、収量制から価格あるいは品質制にすべきだ、これは前から国会で論議になっているんですが、しかしながら農業共済そのものの二段階制、全国段階と都道府県段階、二段階制については今回も見送られたんです。そういうことも考えると、農業団体の組織論について、現場から、これから農業団体はこうあるべきだという意見があったら、山崎さんからお聞かせいただきたい。
  67. 山崎俊宏

    山崎俊宏君 現場ではふだんそのこと等を考えてやっていることもないわけでございまして、やはり答弁はちょっと難しいなというのが実際です。
  68. 木幡弘道

    木幡委員 そうですか。  それでは、最後に、平塚先生にお願いします。  実は基盤整備事業といいますのは、農家の負担もあるいは行政の負担も大変かかる。農地の確保をして、二十一世紀型の農地を整備しなきゃならない。一方で、これから新たに中山間地域に対する、先ほど先生御指摘の有害鳥獣についてもデカップリングでもって考慮する。あるいは高齢者の問題についても、幅広く中山間地域のデカップリングをする。原資をどこに求めるかということになった場合、これは大変厳しい状態になるということは想定されるんですが、その問題について、平塚先生、何か御意見があればお聞かせいただきたい。
  69. 平塚貴彦

    平塚貴彦君 まさにそこが最大のポイントの一つであろうと思います。私は新しい政策を打ち出すことに伴う新たな財政負担を理由にして他の政策が削減されるようでは困るということを先ほど申し上げました。  特に、中山間地域等への直接支払い政策というのは、私は農林水産省だけの政策として打ち出すことにそもそも無理があるというふうに思っています。これはまさに農村政策でもあるわけですね。まさに農村政策の中に位置づけられている。特に、多面的機能の発揮ということを相当強調しているわけですね。だとすれば、国土政策の一環である、そういうふうに考えないといけない。特に、水源の涵養とか国土保全ということになれば、これは農林水産省一省庁の問題だけじゃないわけでございます。  ですから、そういうところも各省庁との連携が必要だということでございまして、やはり広く国家的政策と位置づけて、他の省庁と農林水産省が、たまたま所管は農林水産省だけれども、政策内容なり目的というのは省庁を超えた国土政策、国家政策として位置づけて財源確保を考えるべきだというふうに思っております。  以上です。
  70. 木幡弘道

    木幡委員 ありがとうございました。
  71. 穂積良行

    穂積座長 次に、安住淳君。
  72. 安住淳

    安住委員 安住でございます。  時間がありませんので、端的に、私の方も一問一答でお願いします。  平塚さんにまずお伺いをいたしますが、今のこの中山間対策に関連して、具体的に、どんなところでだれを対象にするかという、いわゆるガイドラインを設けなければなりません。このことについて参考になる意見があればお聞かせ願いたいと思います。
  73. 平塚貴彦

    平塚貴彦君 これは、対象地域なり行為なり対象者はさまざまございまして、非常にたくさんのことがございますので、時間が制約されると思います。  私は、その中で幾つか申し上げてみますと、例えば対象地域というのはできるだけ広くとる必要がある。特に、一定の面積ですね。団地の面積を最低限規定しようというふうな話もあるようですけれども、中山間地域ではなかなか団地化というのは困難でございますので、余り面積の下限にこだわるというのは賛成できない。  また、交付単価掛ける作業量といいますか、特定の農業者に対して交付される金額につきましても、上限を設けるというのは賛成できません。例えば、第三セクターとか、あるいは農作業サービス事業体等はかなり大面積ですね。作業を請け負うという場合には、当然交付価格は高くなるわけでございます。そういう余り制約した基準はつくらない方がいい。  それと、非常に大事なことは、先ほど佐々木町長もおっしゃいましたけれども、中山間地域実情というのは非常にさまざまでございまして、いろいろな格差が発生する原因とか、その程度とか内容はまちまちでございますので、国は大まかな基準をつくって財源確保して、あとは地方に相当程度任せてしまう。地方はしんどいわけでございますけれども、地方自治体に任せてしまう、そういう柔軟な姿勢をとっていただく必要があるのじゃないか。  そのほかいろいろございますけれども、ちょっと時間がございませんので、この程度にしておきます。
  74. 安住淳

    安住委員 そこで、佐々木さんにお伺いします。私も東北の出身ですが、現実にそれぞれの町でデカップリングの指定をするというのは、確かに地方でやることはいいのかもしれませんが、むしろ大変さが伴うと私は思うんですけれども、いかがでございますか。
  75. 佐々木健

    佐々木健君 大変ではございますけれども、今平塚先生が言われたように、私もそれぞれの地域実情に合った指定をすべきだろうと思います。  それから、指定地区もそれぞれの地域の事情がありますので、やはり広くて厚いのが一番いいわけですが、なかなか財政的にそれが難しい。いろいろな面で難しくなると、むしろ広くて薄いよりも狭くて厚い方がこの事業としての事業効果は出るのではないかな。同じするなら、広くて薄くするよりも狭くて厚い事業といいますか、そういう施策の方がこの事業としての政策効果が出るのではないかと思います。
  76. 安住淳

    安住委員 本田さんに二点ほど伺います。  第一点は、品質表示制度であります。現状の品質表示制度に大変不満を持っていらっしゃる消費者の方がもしかすると多いのではないかと思いますが、どこをどう具体的に改善して、何をもう少し表示すべきなのかという点と、自給率の問題で必ず出てくる問題がありまして、これは残滓、いわゆる食べ残し等々の問題があります。これについては、具体的に何かお考えになっておられることがあれば教えていただきたいと思います。
  77. 本田笑子

    本田笑子君 品質表示の問題は、書けば非常に複雑になると思うんですが、やはりどこがつくったか。それから、今度は内容、有機などはどういう状態か、国が方向を示されればその基準値に合っているとか、具体的にそういうものが表示されないと、あいまいなんですね。特に、お野菜なんか、箱から出していきますから、その辺でわからなくなる。その辺がはっきりできなければ、出荷する段階からしなければいけないのじゃないかという気もしますね、途中の流通段階で非常に分かれていくので。  そういうことと、それから自給率、さっきの食べ残しの問題ですが、これは本当に、もう毎日それぞれがやるしかなくて、私も今努力していると一カ月に一万円ぐらい、冷蔵庫で腐らせなくなった、まずそこからスタートしなればいけないのじゃないか。食べるときも、今ごろはすぐ腐ったりしますから食べ残しは持って帰れないということもあったり、非常に昔と変わってきた面もありますので、まず自分からということしか今の段階ではないかなと思っております。
  78. 安住淳

    安住委員 山崎さんにお伺いいたします。  現状の減反政策についてどのように思っていらっしゃるのか、御感想を聞かせていただきたいというのと、今認定農家の方の率直なお悩みを聞きましたが、やはりほかの地域でも減反農地への対応というのが非常に難しいという意見が随分聞かれます。その点も含めて、お話をいただければと思います。
  79. 山崎俊宏

    山崎俊宏君 転作につきましては、賛成でもなく反対でもないというのが本音のところでございます。それで、米の需給バランスをとるためには当然転作は必要だという認識でございます。  ですから、現場といたしましては、その転作によって、減反ではなくあくまでも転作、我々は物をつくってそれを売ることによって経営が成り立つということでございます。ですから、休ませてどうこうというのはいかがなものかなという気持ちもあります。  その点で、とにかく基本的には、生産して販売してもうける、そこでやはり転作の取り組みは大豆ではなかなか難しいなというところで、付加価値のございます白ネギ等の増反にも取り組んでいるところでございます。
  80. 安住淳

    安住委員 一律減反ではなくて、例えば認定農家の方にだけは減反の傾斜配分を少し緩めていくとか、そういうことについてはいかがですか。
  81. 山崎俊宏

    山崎俊宏君 その点でございますが、確かに認定農業者といいましても、今の段階では各行政の長、町長さん等が認定する。本来は、地域から認知されることで初めて認定農業者になるということになりますと、例えば転作につきましても、傾斜配分する場合につきましては、飯米農家等の問題もございます。  ですから、大型農家だけ、専業農家だけ傾斜配分によって緩和するというのは、今の段階では地域の合意が非常に難しいという状況でございます。
  82. 安住淳

    安住委員 最後に、佐々木さんにお伺いします。  今度の法案の一つの柱として農村という言葉が入っております。基本的には、私は、先ほどの意見でいえば、農村というのは多種多様にあるので、国がやるべきことでなくて、地方自治体が中心となってやるべきことで、国が農村というものを一面的に定義するのはいかがかと実は思っておりますが、このことについての御感想をお聞かせ願えますか。
  83. 佐々木健

    佐々木健君 私は、やはりそれは今御指摘のとおり、それぞれの地域で自主的に農村を守っていくものと思っていますが、特に、今回の中山間地域における直接払い、いわゆる国土保全という面から見れば、これは国の施策としてやはり取り上げていただくべき問題だろうというふうに私は理解をしております。
  84. 安住淳

    安住委員 ありがとうございました。
  85. 穂積良行

    穂積座長 次に、宮地正介君。
  86. 宮地正介

    宮地委員 公明党・改革クラブの宮地正介でございます。  きょうは、公述人の皆さん、御多忙の中大変に御協力ありがとうございます。逐次、各公述人の皆さんに御質問をさせていただきたいと思います。  最初に、平塚公述人にお願いしたいと思います。  今回のこの食料農業農村基本法は、御存じのとおり昭和三十六年に農業基本法がつくられまして、三十八年ぶりの新法の成立に向けて今国会で審議をしているわけでございます。まさに、二十一世紀に向けて、我が国農業農村食料の抜本的な改革を行い、希望のある日本農業の将来に向けての改革だと私どもは受けとめております。そうした農業問題あるいは食料問題、農村問題の新しい憲法ともいうべき法律が今審議をされているわけでございます。  そういう中で、今回四つの理念が掲げられておりますが、前文が今回は入っておりません。現行農業基本法には前文が入っております。いわゆるこの法律がつくられていく背景、また今後どういう方向に向けていくか、そうした前文がないこと、果たしてこれでいいのだろうか、二条から始まる四つの理念で消化されているのであろうか、私たちはこういう危惧をしているわけでございますが、この点について先生の御意見が伺えればありがたいと思います。
  87. 平塚貴彦

    平塚貴彦君 この第一条に目的が示されておりますので、恐らくこれが何か前文のような位置づけがされているのじゃないかというふうに思いますが、どうなんでしょうか。こういう法案のスタイルというものを、私、余りよくはわかりませんので。  確かに、現行法は前文がございますね。そういう意味で、目的というところを、もう少し格調高く前文というふうなものをつけてもいいのかとは思いますけれども、そういった法律の形式的なことはよくわかりませんので、自信を持ってこうだということをちょっと申し上げにくいわけでございます。
  88. 宮地正介

    宮地委員 さらに、先生食料安定供給、恐らく二条の理念のところにだと思うんですが、自給率向上という文言を挿入したらどうかというような御発言と私は受けとめたんですが、この点について、なぜそのような御意見をお持ちなのか、御説明をいただければありがたいと思います。
  89. 平塚貴彦

    平塚貴彦君 二条もそれなりに食料自給率向上をにおわすような内容になっております。また、基本計画では自給率目標を示すということになっておりますけれども、やはり私が申し上げましたように、食料自給率向上ということが今回の新法の全部を貫く一番重要な理念といいますか目的だろうというふうに思っております。  そういう意味では、食料自給率を高める、向上させるというふうなことがわかるように、第二条のところに盛り込むのが適当だろうというふうに考えております。これは国がそういう意気込みを国民の前に示す。そのことによって、農業者はもちろん消費者も含めまして、我が国の将来を見通して、食料自給率向上が極めて重要であるということをより強く認識するという意味で、できればこれを盛り込んでいただきたいというふうに私は考えております。
  90. 宮地正介

    宮地委員 大変に貴重な御意見、ありがとうございます。  私どもも、新法の中に自給率向上というこの六文字がどこを見てもない。そういう中で、二条の中に検討できないか、あるいは十五条の基本計画の中にこの六文字が挿入できないか、今検討しているわけでございますが、十五条に入れることについては何か御意見はあるでしょうか。
  91. 平塚貴彦

    平塚貴彦君 十五条に入れるというよりはこちらの二条の方がよろしいかと思います。  十五条のところは食料自給率目標を定めるというふうになっていますが、目標というのは果たして数値目標という意味なのか、あるいは高めるというふうな内容目標なのか、ちょっとわからないわけでございまして、むしろ十五条は数字で示す。自給率もそうですけれども、農地の面積、先ほどどなたかおっしゃいましたけれども、そういった数値目標というふうな意味合いがわかるような表現の方がよろしいのではないかというふうに思っております。
  92. 宮地正介

    宮地委員 ありがとうございました。  次に、花本公述人にお伺いしたいと思いますが、花本公述人からは、穀物自給率を五〇%まで引き上げるという大変貴重な御提言をいただきました。  その問題についてさらにもう少し突っ込みますと、穀物というには、麦とか大豆とかコウリャンとか、こういうものの生産性向上が分子に入ってくるわけですね。国内の米、麦、大豆、トウモロコシ、こうしたものの生産性向上をさらに掲げていかなければならない。この問題はなかなか現状の中で厳しい状況にあることはもう御存じのとおりでございます。特に、麦とか大豆は非常に今海外からの輸入に大きく依存しているわけでございまして、この分子の国内生産を高めるということは大変至難中の至難でございます。  この点と、今度は海外の、輸入の問題について、これはやはり今後、WTO交渉が来年から始まるわけでございますが、こうした点との絡みでも大変これまた難しい。分母、分子とも大変難しい状況にあるわけです。  これを五〇%に引き上げるということは並大抵の問題じゃない、こう私ども理解しているわけですが、花本さんとしてはその点をどういうふうにお考えの上で五〇%にというお話なのか、もう少し詳しく御説明いただければありがたいと思います。
  93. 花本美雄

    花本美雄君 私が五〇%と話しておるのは、一番基本になるものは、食料不足が来た場合に輸入がスムーズに進むのかどうか、これは大変だよと。だから、せめて全体の五〇%ぐらいは農家の皆さんの目標として、国もこう考えておるんだよ、みんなが元気を出してやるようにということを明らかにしてもらうと、農家の人も馬力が出るのではないか。  それともう一つは、二二%も足らぬわけですから、一遍にそんなことはできるはずはないです。ですから、一年に一%ずつやっても二十二年かかるぞと。それからもう一つは、財政措置があると思うんです。財政措置が伴ってきますから、一年に一%ずつ、二十年かかってもそういうことを達成するんだということにならないといけないのではないか。  また、今転作が言われておりますけれども、米の生産が一番できやすい地帯でございますから、米の生産のできるところには米の生産を大いにやらせればいいではないか。だから、米ができにくいところに無理をしてつくることはないではないか。  そういうところを調整しながら、国が五〇%の目標に一年一年努力をしながら二十年かかってでもやっていくということがないと、これからは、食料不足が生じた場合にはなかなか大変だよ、私はこういう気持ちがしております。  そしてまた、この自給率について政府財源措置が、これは中山間地対策でも一緒でございますが、農水省の現在の予算の中で操作されてしまうと、ほかの政策は何もできぬようになってしまうわけです。  それからまた、農村対策にしても中山間地対策でも、今の農水省の予算の中で踊るようなことをされてもこれはできぬと思います。ですから皆さんの政党間の調整によって、別枠できちっとこれだけはつける。それは先ほど意見がありましたように、国土庁の問題もございます、自治省の問題もあります、厚生省の問題もあります、こういうときに、農水省、どの予算でやれなんと言われることは面倒です。だから、別枠でこれだけはばっとつけてやる。そして、これはこういうぐあいに自給率をやるようにするんだという大方針のもとにぴちっとやられないといけないと私は思うんです。  やはり日本国土をどういうぐあいに位置づけられておるか。一番大きな例は、実際に現場の方では、三十四戸も三十六戸もある集落でも、現在三戸ぐらいになっておるところがある。もう五年もしたらこの集落は消えてしまうというところもあるわけです。それは政策の欠陥だと私は思うんです。  そういうことにならないように、やはり先生方が各党で協力していただいて、日本国土はどうするんだ、どういうぐあいにつくっていくんだ、こういう気概を持っていただかないと、きょう提案されております新しい農業基本法は絵にかいたもちのようになってしまいやせぬか、こういうふうに私は思っております。
  94. 宮地正介

    宮地委員 ありがとうございました。  続きまして、山崎公述人にお伺いしたいと思います。  生産法人として大変御苦労されていることに心から敬意を表したいと思います。  今回の法律の中で、特に三十条というところに、いわゆる市場原理導入ということで価格安定対策を入れているわけですね。これは、ある意味では、来年から始まるWTO交渉を考えてこうした制度導入検討されているのではないかと我々は理解しているわけですが、問題は、経営の安定対策について、極端に価格が低落したときには何らかの形でフォローアップできるように一応法律ではなっておるわけでございますが、やはりこれから農作物の自由化という問題が進んでいったとき、生産農家の皆さんの価格との問題、市場原理導入との問題というのは大変大きな問題で、経営の安定上、皆さんの立場から見て、これをどういうふうにお考えになっておられるのかが一点。  それからもう一点は、来年恐らく通常国会で農地法を改正して、先ほど花本さんからお話がありましたように、生産法人に限って株式会社化の問題が法改正されてくる、こういう状況にあるわけでございます。この点について、現在有限会社として、生産法人として御努力されておりますが、株式会社化の問題をどういうふうにとらえておられるのか。  この二点、お伺いできればありがたいと思います。
  95. 山崎俊宏

    山崎俊宏君 市場原理を入れますことで結果的に価格の暴落、これはやはり直接的に経営影響するものでございます。ですから、来年というか次の生産につながる程度の最低の、再生産につながるような収入保険といいますか経営保険といいますか、ちょっと難しいことはわかりませんけれども、そういう形での取り組みがないと先行き不安でどうにもならないというのが、とにかく来年はどうかな、五年先、十年先なんかわからないというのが生産現場の声だろうと思いますので、それをぜひとも実現していただけたら、より安心して経営に取り組めるのじゃないかというふうに考えます。  もう一点、株式会社の問題でよく質問されておるときに思いますのは、ぴんとこないのもそうですけれども、基本的には、これはあくまでも農業生産法人の一つの発展的形態としての株式会社というような位置づけでだったらしようがないのかなと。当初は、勉強不足かもしれませんけれども、資本がどっと流入してきて、例えば土地の買い占めとか、そういうふうになるのじゃないのかなというような気持ちでおったわけでございますが、あくまでも今のような農業生産法人の一つの発展的形態としての株式会社というのでありましたら、いいのかなというような気持ちでおります。  以上です。
  96. 宮地正介

    宮地委員 続きまして、本田公述人にお伺いしたいと思います。  一つは、食生活の大きな変化が我が国自給率の低下に非常に大きな影響を与えていると思うんですね。この食生活の変化の問題について、消費者の皆さんも大変敏感だと思うんです。その中で、特に鮮度の問題とか安全性の問題というのは大変に大きな割合が先ほどのデータでも出ておるわけです。  特に、最近、大豆など海外からの輸入農作物の中に、いわゆるDNA食品、遺伝子組み換え食品、これについて、相当消費者の間でも、安全性の問題から、しっかり表示を明確にしろという声もあるわけでして、これについても今農水省の中でいろいろまた検討部会で検討しているわけですが、この点についてどうお考えになっておられるか。食生活の変化という問題と海外からのDNA食品表示の問題と安全性の問題についてどういうお考えなのか。  それから、最後に佐々木公述人に、特にデカップリング、中山間地域対策の原資の問題。先ほどからいろいろ出ておりますから、これは政府を挙げていろいろ検討していただきますが、いわゆる交付の仕方、これの基準づくりがやはり大変問題だと思うんです。各農家ごとに交付するのがいいのか、あるいは市町村なり集落別に交付して、そして後はそこでいろいろ検討されて交付する。やはり国民理解と合意が何といってもこれは大事なものですから、その国民理解と合意を得た中で、どういう交付の仕方が最も国民理解が得られるのか、合意が得られるのか、これも大変重要な問題なんですね。この点について何かお考えがあればお伺いしたい、こう思うわけです。  時間がないので、ぜひ本田公述人、佐々木公述人の順で御説明いただければありがたいと思います。
  97. 本田笑子

    本田笑子君 食生活の変化は、やはり今は外国へ行っている人もかなりいますので、洋風化というのがかなり生活の中に入ってきていると思うんです。日本型食生活といって盛んに、朝はこういうスタイル、おみそ汁で御飯がいいだとか日本の食事はいいだとか言いますが、やはり若い者と年寄り、年齢によって随分差があるようですね。ですから一概には言えないんですけれども、しかし日本型食生活は確かにいいということは感じております。ですから、これはやはり底流にあって、もう少し皆さんに啓発をしていく必要があるのではないか。そうすれば、お米とともに伸びていく可能性はあると思うんです。  それから、先ほどの遺伝子組み換えの問題ですが、この問題は、今大豆については要望を出しております。私たちは、やはり見えない、今までにない、わからないことについては非常に不安感を皆持っております。今の段階では、大豆がもう既に私たちの生活の中に入っているという話も聞いてみたり、この辺は私たちも実際にはまだわからないわけです。見えないんですね。ですから、ここをはっきりさせていただきたい。  あの牛のクローンの話も、お話を聞くと、実際にはこれは双子にするんだから危なくないんだという話を聞いたりするんですが、新しいものに対するおびえというものが、わからないだけに非常にあることは確かだと思うんです。その辺ははっきりと説明をしていただくということで、必要ならばこれは仕方がないわけですから、食料の今後のことを考えると。ですから、これは受け入れざるを得ない一面があるかもわかりませんが、とにかくもっと説明をということでございます。
  98. 佐々木健

    佐々木健君 今度の中山間への直接払いの対象は、農地の所有者でなしに、農業生産活動なり農地の保全をしておる者を対象にということですと、これは全国的にはいろいろな形態があるわけですけれども、特にこの中国地方では、ほとんど集落営農なり、あるいは農業法人が主体にやっておって、個人というのは非常に数が少ないわけですね。ですから、これらについては、個々の農家へというよりも、町村なり、あるいは集落を対象にという方が、この中国地方の状況から見ればいいのではないかと私は思います。
  99. 宮地正介

    宮地委員 ありがとうございました。
  100. 穂積良行

    穂積座長 次に、一川保夫君。
  101. 一川保夫

    一川委員 私は自由党の一川保夫といいますけれども、本日は皆さん方、どうも御苦労さまでございます。  もう既にいろいろな先生方から御質問がありましたけれども、重複を避けまして、私の方からお聞きしたいと思います。  まず最初に、花本さんにお伺いしたいんですけれども、農業関係の大変いろいろなお仕事を長年されてきたというふうにお聞きしております。昭和三十六年に現行農業基本法が制定されて以来今日まで、農業を取り巻く諸情勢の変化に伴って、今回新しい基本法策定せざるを得ない状況に来ているわけです。これまでの現行基本法、今日までの状況をずっと眺めてこられて、日本農業というものはどこが一番問題があったか。まず、どういう感想を持っておられますか、そのあたりを、ちょっと要点だけでもお聞かせ願いたいと思います。
  102. 花本美雄

    花本美雄君 旧と言っては失礼ですけれども、今の基本法は、選択的拡大ということで、生産を上げて農村活性化を図ってやっていく、構造政策をやっていく、これは成功したと思っております。ですけれども、成熟したところの現状からいってみますと、国民消費者の皆さん方がそれでは満足しない。それから農家の方も、労働力がどんどん農村から出ていってしまって、昔の基本法のような考え方ではどうにもならぬ、これが流通の面と基盤の面と両方から農村社会を直撃してきておると思っております。  ですから、この際はっきり、新しい体制の中で、国際化していきます中にあって、流通もにらんだ生産性というものを考えながら、そして農村社会をどうするかという方向に基本法の体制というものをつくっていただかにゃいかぬ。  その中で一番大事なことの一つは、先ほども意見に出ておりましたけれども、高齢化社会というものが押し寄せてきますが、先生方はここ五年先に農村農業者がどれだけ残るのか、こういうお考えをちょっと、私らはいつも思うわけですが、もう五年もしたら、今の農村の中で農業をやっている人が、六十五歳以上から七十歳以上の人が多いわけでございますから、恐らく三割は農家をやめる人が出てくるのではないか。そうすると、新しい基本法はこれに備えて、先ほど申し上げましたように、農地が荒廃しないように、生産性が上がるように、食料の五〇%を何年かかってでもやるというような体制になれば、新しい視点に立った基本法というものをつくってもらわにゃいかぬ。  それは、国際化されますこのときでございますから、特に一番大事なことは価格政策だと私は思っております。それは国際化した国際水準の単価で、物流の中でやるんだから、それをまねしてやっていかにゃいかぬと言われたって、日本の狭い土地の中ではなかなかそう簡単にはいくものではないと思います。  ですから、今度の基本法は、皆さんがどこまで、どういうぐあいにして、その国際化されるところの流通体系を日本国土に合ったような体制でつくり直していただくか。  例えば、それは材木が一番いい例です。三十年前に自由化されて、今の農山村はやはり山を持っておる、それから水田を持っておる、畑を持っておって、牛を飼っておる。こういうような総合的な山の効果というものがあるわけですから、皆さんが方向づけをなされるように流通化を、一番農山村の中山間地対策なんかを、元気がないと言われますけれども、山の価格が、立米が十五万円も二十万円もするようになれば、黙っておっても奥山村の皆さんはつくっていかれるようになるけれども、現実はヒノキでも、先ほど申し上げましたように、立米が七万円や七万五千円からしておらぬわけです。これがせめて、戦後復興は済んだのだから、十五万円ぐらいになっていけば、皆さんも御承知のように、森林利率は〇・〇一ですから。  私は、そういうことから考えて、米も、今これだけ日本型の食生活と言われますけれども、ハイブリッド米や何か、アメリカの方では物すごく進んできて、そして短粒種の米ができてくる。そうすると、それがどんどん日本の国をねらって生産されておる。片や生産調整をしながら、片や輸入のものが入ってくるような現状の中にあっては、これこそ何でも、畜産でもそうでございます、酪農製品でもそうでございます、木材でもそうでございます、これの国境措置というものをどうされるかということが、先生方の一致した、日本国土をどう守るのだということにもつながってくると思うんです。  もう一つ大事なことは、私は、今の中で一番大事なことは教育問題だと思うんですよ。これは、我々は都会のことばかりだと思っておりましたところが、農村の中でも、中学校でも、不登校の生徒が一校に五、六人から、多いところは三十人ぐらいあるというような現実があるわけでございます。そうなってくると、教育の荒廃が都市ばかりではない。だから、これは農村の問題も大きく左右するわけですから、土に親しんで、農業に親しんで、そして子供のときからそういうことに親しみを持ってやっていくということになってくれば、新しい農業のつくり方はその辺から芽が出てくると思っております。  ですから、これはひとつ、ぜひとも心を、潤いをはぐくむ最適な場は農業だ、土地だ、土だ、私はこう思っておりますから、先生方が新しい基本法をこしらえる中に、あとはそのバランスだと思っております。  だから、この中山間地対策でも、本当に今の農水省の予算の中で踊るようなことを考える人がいたら、これは成功しやしません。絵にかいたもちです。ですから、予算は枠外できちっとつくって、そしてこの中山間地対策自給率の問題や何かは、農村、村をつくるということの中にきちっとやってもらわぬといかぬと思っております。
  103. 一川保夫

    一川委員 ありがとうございます。  佐々木公述人にちょっとお伺いしたいんです。  今回の新しい法案の中では、もちろん国のそういう責任は重大なわけでございますけれども、あわせまして、地方公共団体とのいろいろな連携とか地方公共団体の責務といったようなことについても法律の中に若干記述しておるわけです。当然ながら、先ほど来のいろいろな御意見を拝聴しておりましても、農業にかかわる問題というのは、まさしく地方のいろいろな特性を生かしていくという面では、地方公共団体のいろいろな創意工夫なり、そういうお知恵を拝借しながら、これから日本の農政も展開すべきだというのはその根底にあるような気がします。  これから地方公共団体が農政を展開するに当たって、一部地方分権とか、そういう世界にも入ってくるかもしれませんけれども、何かそのあたりについて佐々木先生の御意見がございましたら。
  104. 佐々木健

    佐々木健君 今御指摘のように、地方の農業農村問題というのは、地方自治体が地域の皆さんと一緒になって取り組んでいかにゃいけない、これは大変大きな要素があるわけですが、肝心かなめの財政が大変弱うございまして、ここをどうするのか、ここが一番大きな問題であるわけでして、地方分権もあわせて、地方の財政の確立といいますか基盤の強化ということもあわせて考えないとなかなか対応できぬと思います。
  105. 一川保夫

    一川委員 次に、消費者関係の御指導をされている本田公述人にお伺いしたいんです。  これからの新しい農業政策農村政策食料政策を展開するに当たっては、国民全体のコンセンサスといいますか、そういう世論の結束が大事だということはどなたも大体共通していると思います。特に消費者側の立場としまして、これからの農業とか農村の持つ役割とか、そういった農業の大切さといいますか重要性といったことも含めて、農業関係者以外の人たちにいろいろと啓蒙していただくという中では消費者の皆さん方の役割も大きいものがあるというふうに私は思うわけですけれども、そのあたりについて何か御意見がございましたら。
  106. 本田笑子

    本田笑子君 先ほどからお話にありましたように、小さいころの教育というのは非常にあるのじゃないかと思うんですね。やはり食は幼いころに返ってくるというのがありますように、小さいころのおふくろの味というのも言われたり、やはりそういう小さいころの学校教育の中でそういうものを入れていくということ。  泥んこになって遊ぶことすら今はありませんでしょう。先ほど土にまみれてという話がありましたけれども、そういうものがちょっと今の生活の中には、私も東京に住んだことがあるんですが、そのときにそんな話をしたことがあるんですね。マンションに住んでいて、コンクリートの上を踏んで、土というのはほとんどない。ちょっとこれじゃ、やはり皆さん、どこで何がつくられてということもわからないだろうね、だから上にできるのか下にはうのか、野菜でもわからないような、できてみても、これはどこという感じですね。  ですから、その実態をわからないで今生きているというところがあるので、やはり学校教育あたりが非常に大切なのじゃないかと思うんです。
  107. 一川保夫

    一川委員 先ほど来いろいろな教育の話題が出ておりますけれども、確かに、我々もそういう考え方でまたこれからもいろいろな議論を深めてまいりたいというふうに思っております。  次に、山崎公述人にお伺いしたいのは、先ほどの、最初の御本人からのいろいろなお話の中に、基本的には農業が好きでないとなかなか難しいというような言い回しがちょっとあったような感じがいたすわけです。もちろん、何事も取り組むものが好きでなければいい結果は出てこないわけですけれども、私自身も農村に住んでいる人間の一人でもございますが、基本的には、努力した結果が報われるような仕組みなり、そういうものがちゃんと用意されておれば、農業方々も当然それなりの生きがいは感ずるわけでございますし、また一方では、国民全体のそういった支えがあるという中で働く意欲がわくのだろうというふうに思います。  山崎さん自身が今農業をやっておられて、農業が本当に好きになるにはというのは、それは持って生まれたものなのか、あるいは努力すればそうなるのか、そのあたり、ちょっとお聞かせ願いたいんです。
  108. 山崎俊宏

    山崎俊宏君 それは急に好きになれと言われても好きになれるものではない。私も別に親から勧められて農業についたわけでもございません。  先ほど来からお話があるように、小さいときからやはり何らかの形で農業に触れていかないといけないのかな。ただ、年をとってからまた農村に帰りたいということはありますけれども、年をとってからじゃちょっとしんどいのでございますので、やはり小さいときから少しずつ、ましてや、今は農村出身者は農業をする時代ではなくて、非農家といいますか農業以外の方が農業に、好きであろうと思いますが、一つのあこがれという形で入ってくる。要するに、人種がかわるといいますか、そういう時代でございますので、やはり小さいときからそれに触れることがまず大事なのかなというような気がいたします。
  109. 一川保夫

    一川委員 先ほどの話にも共通するような、そういう教育、割と小さい、幼いころからの環境というのは非常に大事だというふうな印象を持たれていると思います。  それでは、ちょっと話題をかえまして、平塚先生の方に。  冒頭のいろいろな説明の中で、高齢者のこれからの農業に対する取り組みというのは政策の中で一つのポイントになるのではないかというお話がありましたし、一方、当然ながら、高齢者は福祉問題というものが、それと並行してしっかりとした対策がとられないとだめだというお話がございました。  先ほど花本先生のおっしゃったように、これから当然高齢化する社会に入ってくるわけでございますけれども、特に高齢者農業といいますか、そのあたりについて、何かもう少し掘り下げた御意見を聞かせていただければ。
  110. 平塚貴彦

    平塚貴彦君 実態として、高齢者がかなり重要な位置を担い手で占めているわけです。ただ、高齢者が本当に頑張って農業をやろうとする場合に、例えばなかなか仲間がいない、ゲートボールの仲間はいるんだけれども、農業の仲間がいないというふうな実情がございます。  そこで、時間がございませんので、いろいろ申し上げたいことはございますが、一つ日ごろから私が主張していることは、例えば高齢者の方々、あるいは女性もいいんですけれども、そういう高齢者の方々が集まって農業をやれるような、それぞれの地域に小さい団地をつくる。例えば、園芸団地をつくりまして、小ぢんまりとしたハウス施設を幾つか準備する。そのハウスをリースいたしまして、賃貸しをいたしまして、そこでやりたい人が、高齢者が集まってまいりまして、これは女性を対象にしてもいいと思いますけれども、農業を行う。例えば、野菜をつくるとか花をつくるとか、あるいは牛舎をつくればそれは牛を飼うということになるわけでございます。ぽつんぽつんと、孤立無援といいますか仲間がいない状態では、なかなかやっていても楽しくもないわけでございます。  そういう施設等をつくれるような土地というのは、幸い、特に中山間地あたりでは随分と今あるわけでございます。そういうところを活用して、リース施設園芸なんかをやってみたらどうか。あるいはリース式の、アパート方式の牛飼いなんかをやってみたらどうか。そうすれば、高齢者も女性の方もそこへ集まってきまして、いろいろなコミュニケーションの場にもなりまして、楽しくやれるわけでございます。  そういう仕組みをつくっていくことによって、この法案に示されている女性の農業への参画とか高齢者の農業参画なり役割というものが具体的に生かされてくるのじゃないか、それは具体的な政策のレベルでございますけれども、そういったことを考えております。これは高齢者でも元気な高齢者で、農業への参画、そういう高齢者を対象にした対策として、そんなことを考えております。
  111. 一川保夫

    一川委員 最後に、もう一回佐々木さんにちょっとお伺いしたいんです。  先ほどのお話の中で、現実問題、中山間の山村にとっては、農村の資源と言われている土地改良施設といいますかかんがい施設とか、そういうたぐいのものを維持管理していく、それ自体が今非常に大変なんだというようなお話がございました。ああいう制度というのは、基本的には受益者負担というものが伴ったような制度になっておりますけれども、そういうことも含めて、これからの農村のいろいろな資源というか資産をちゃんと更新していくために、どういうことが望ましいというふうにお考えですか、何か御意見ございましたら。
  112. 佐々木健

    佐々木健君 基本的には、やはり前々から、昔から続いておる集落地域の共同施設として利用してきておるわけですから、それができれば一番いいわけですけれども、現状では、なかなか集落そのもので、そういうふうに共同の溝掃除その他に出られる人は二人か三人しかいない。そうなってまいりますと、これは集落を超えて町全体で、そういう土地改良組合の班だとか、そういうことで土地改良施設の整備といいますか維持管理をしておるわけでして、私は、今回の中山間地域条件の悪い地域への直接払いの算出の基礎は、有害鳥獣の防除経費なり、そういう共同施設管理というものも十分加味したものにしていく必要があるのではないかというふうに考えております。
  113. 一川保夫

    一川委員 ありがとうございました。  以上で終わります。
  114. 穂積良行

    穂積座長 次に、中林よし子君。
  115. 中林よし子

    ○中林委員 きょうはどうもありがとうございます。最後でございますので、よろしくお願いします。日本共産党の中林よし子でございまして、地元島根県でございますので、よろしくお願いします。  私は、今回の食料農業農村基本法という法律をつくる以上、本当に日本農業の再建、そして、とりわけ食料自給率向上が確実になる、そういう法律でなければならない、このように思っているわけですね。  そこで、まず現場で頑張っていらっしゃる山崎さんにお話をお伺いしたいと思うんです。  政府は、今回の基本法で、農産物市場原理にゆだねても、よいものをつくれば高く売れるから大丈夫だ、こういう説明をしております。しかし、例えば新食糧法のときに、米をつくる自由もあるし売る自由もあるんだ、こういうふれ込みで新食糧法ができたと思っているんですが、規模を随分拡大されて稲作中心農業をされているとお話を聞いたんですけれども、こういう市場原理導入で本当に営農が成り立っていくのだろうか。米が一部市場原理、もう導入されているわけですけれども、その後の山崎さん自身の経営実態、これは一体どういうぐあいに変化が出てきているのか、そのお話を聞かせていただきたいんです。  私ども日本共産党は、やはり農業経営安定のためには農産物価格制度を再構築する必要があるのじゃないかと考えているわけですけれども、その辺のお考えがあれば、ぜひ聞かせていただきたいと思います。
  116. 山崎俊宏

    山崎俊宏君 昔はつくる自由、売る自由という、何か懐かしさも感じますけれども、確かに、うちの会社でやっていることですけれども、米は直販に仕向けて、要するに規格外流通という形でやっております。それによって若干の価格の下落を通常よりも抑えて乗り切っているというのが実情でございます。ということにしましても、なかなか売るという、これまで経験し得なかった、ましてや自分のものに自分が値段をつけて売る、そのことを、経験がなかったものでございまして、かなり苦労しましたけれども、今のところ口コミのみでかなりふえてきた。  そういう意味では、ある程度のことしか言えませんけれども、いいものをつくれば必ず売れる、僕らの経験での、狭いエリアでの話で恐縮ですが、そういうことはある程度は言えますけれども、国際的といいますか、大きく考えた場合にはどうかなと。ですから、米に関しましては直販という形で何とかやっているというのが現状でございます。
  117. 中林よし子

    ○中林委員 美都町の佐々木町長にお伺いするわけですけれども、私は、かつて水害があったとき、ちょうどお見舞いに行ったときに、町長さんから山を美都町で守っていくことがいかに大切かというお話を直接お伺いして感動を覚えたことがあるんです。美都町の町民一人で何人分もの国土を守っているんだから、それに応じた災害対策なり、あるいは交付金なりが必要なのだというお話を聞いて非常に共感を覚えたことを今思い出しているわけですが、今回の条件不利地域に対する直接補償というのは、そういう意味では本当に中山間地の農家方々が待ち望んだ制度だと思うんですね。  そこで、例えば今回対象地域をどうするかということで、広く厚くがいいんだという率直なお考えを聞いて、本当にそうだと思ったんですけれども、政府が考えているのは、耕作放棄地の発生の懸念がある一団の農地ということを言っているわけですね。  その場合、私、美都町を思い出したときに、例えば、五十八年災害のときに、一戸ぽつんと遠くに離れた農家施設などが災害復旧の対象にならない、一人施設はならないという問題があったと思うんですね。そういうときには、町単独でお金を出して何とか農家方々を救っているという町の大変な実情を目の当たりにして、本当に対象地域をどういうふうに設定していくのか。一団の農地ということになっているんだけれども、私は、そういう離れたところも含めたところを条件不利地域の直接支払い対象にすべきではないか、こういうふうに思うんです。その点が一点。  それから、これに対して、自治体の負担の問題ですね。ある村長さんにお話を聞いたら、自治体、村だとか町が負担するということになると、自分で出して自分の足を食べていくような、タコがタコの足を食べるようなものだ、こういう問題はぜひ国で負担してほしいんだと率直な声を聞かせていただいたことがあるんですけれども、この負担の問題、これについてのお考えがあったら聞かせていただきたいんです。
  118. 佐々木健

    佐々木健君 対象地域、それぞれの地域によって違いますので、一団地といってもいろいろなあれはあるでしょうけれども、私は、国では一つの基本的な基準をつくっていただいて、その基準に沿ってそれぞれの地域市町村対象地域を決めていく、そういう方法でやっていかないと、今回の中山間地域への直接払いの制度は、全国一律の小さい基準ではなかなか対応が難しかろうというふうに思っておりますので、それぞれの地域実情に合った方法で対応していく必要があろうと思います。  それから、町村の負担ですが、町村で出せれば一番いいわけですのでそれは進んでやりますが、悲しいかな、中山間地域市町村の財政はなかなかそこまで手が回らない。だから、私はいつも言っておるわけですけれども、我々中山間地域の者は相当広い国土をいろいろな意味で守っておるわけでございます。そういう意味で、この国土保全という国全体の施策の中で、今回の中山間地域への直接払い等については国の責任において、あるいは国民全体の理解の上に対応していただくのがいいのだろうというふうに考えております。
  119. 中林よし子

    ○中林委員 平塚さんにお伺いしますけれども、今町長さんが財源問題ということをおっしゃって、平塚さんも先ほど財源問題に触れてお話をされました。直接支払い問題で、この財源問題なんですけれども、国の財政の逼迫を理由に削減があってはならないとおっしゃったわけですが、私もそう思います。  それで、先ほどからの質疑の中で、農水省だけで考えるのはいかがなものかという話があったんですけれども、ただ、農水省の中の予算がありますね。この予算の使い方についてのお考えがあればと思うんですね。  今年度の国の予算を見ると、公共事業と非公共事業の割合が、公共事業の方が五一・六%と過半を占めているわけです。欧米をちょっと調べてみると、イギリスなどは六八・九%が価格それから所得補償に回って、公共事業費というのは本当にどれだろうかと思うぐらいしかとっていないんですね。それから、フランスでも六二・八%がやはり価格所得予算になっているということですから、日本の国の農林水産省内の予算の比率についての御意見があればということ。  それから、農水省が発表している公益的機能の試算が、昨年度の試算でも三兆三百十九億円の値打ちを持っているということを出しているわけですから、やはりそれに見合うだけの条件不利地域に対する直接支払い制度というのはなされるべきではないかと考えるわけですけれども、そういう点も踏まえて、お話を聞かせていただければと思います。
  120. 平塚貴彦

    平塚貴彦君 公共事業関連の比率が高いというふうなことでございます。どの程度の比率が適当なのか、私にはなかなかわかりにくいわけでございますが、最近は盛んに公共事業の見直しが言われております。  ただ、農林水産関係の公共事業では、中山間地域中心にいたしまして、公共事業の必要な事柄というのはまだまだ大変多いわけです。例えば、下水道一つとりましても、これは都市と比べればもう格段に普及率は低いというふうなこと、それから農業生産基盤の整備も、まだまだ山間部、中間農業地域中心にやらなければならないことはいっぱいある。農道の整備等もございます。そういう意味で、農村への公共投資、公共事業というのはまだまだ必要だというふうに私は思っています。  ただし、その予算の使い方というのはやはり工夫をしないといけない。例えば、圃場整備一つをとりましても、余り工事の仕方まできちっとメニュー化されているというのはいかがなものか。農家の人たちなんかから、もっとお金が少なくて地域実情に応じた整備ができる方法もあるというふうなことも聞きますし、あるいは牛舎であるとか、いろいろな施設を整備する場合にも、必要以上にお金がかかり過ぎているというふうなこともございますので、そういった面での改善はやっていかなければならないだろう。けれども、公共投資そのものはまだまだ不足しているというふうに思っております。  それから公益的な機能、いわゆる多面的な機能を評価したものがいろいろあるわけで、いろいろな方法を見ても、少なくても三兆円程度あるというふうな御指摘はそのとおりなのだろう。ただ、それを背景にいたしまして、どの程度公益的機能を維持するために予算を組むかというのは非常に難しい問題だろうと思います。  けれども、この公益的機能が相当の評価額に上っていることは事実でありますから、それをやはり維持していく、健全な形で発揮していくということは今後の我が国の経済社会にとって非常に重要な意味合いを持っておりますので、こういった公益的機能を維持するということを根拠に、一定の直接支払いのための予算を組むということは十分国民も納得してくれるだろうし、私は、国が積極的に啓発活動をやりながら、国民の合意形成を図って予算措置を講じていくべきだというふうに考えております。
  121. 中林よし子

    ○中林委員 続いて平塚さんにお伺いしたいのですが、多様な担い手確保の問題で、女性の農業参画の必要性を訴えられました。現に女性の担い手というのは非常に大きな役割を果たしているわけですが、今回の基本法案の二十六条に女性の参画の促進がうたわれました。うたわれているのは私も大賛成なんですけれども、ここで、女性の農業経営における役割を適正に評価するとともにという項目があるわけです。それでは、現行の法体系の中で、本当に農家の女性が適正に評価できる、そういうものになっているかというと、私はそうなっていないのじゃないかと思うんですね。  現に農家の女性たちに話を伺いますと、一つは税制の問題で、専従者になっていないので、税制上はただ働き扱いになっているということで、農地を取得しても、あるいは不動産を取得しても全部夫名義になるということ。それから、夫の両親を介護して、亡くなって相続しますね、そのときは、夫と夫の兄弟は相続権があるけれども、自分には全くない、一体自分は何年これだけ頑張ってきたのかということで非常につらい思いをする。だから、いろいろ言われているし、家族協定も結べとあの新農政のときに言われたのだけれども、そこが担保されないと、今度二十六条をうたってもらっても、本当に実効性が伴わないんですよという話を聞いたんですね。  この点で、先生の方で、女性の参画のいわば本当に現実的な担保の仕方といいましょうか保証のあり方、その辺で何か御意見があれば聞かせていただきたいんです。
  122. 平塚貴彦

    平塚貴彦君 これは御指摘のように、制度改革をきちっとやらないと基本的には解決しない問題だろうと思います。  ただ、制度改革を待たずにやれることというのは、今、中林議員も御指摘がございましたような家族協定、これはやっているところはあるわけでございます。女性の方に対して一定の専従者報酬といいますか給料のようなものを支払うような形の家族協定を行われている経営もございます。そういうことを制度改革を待たずに実践していくということを、行政なり農協あたりがもう少し指導的な力を発揮してもらいたいと思います。  また、家族の経営でありましても、法人化をいたしまして、例えば有限会社のような形にいたしまして、そして女性の経営上の地位を明確にしていく、そうして実質的に経営者の一員として経営に参画していくような方法をとることも可能でございます。  また、農業者年金なんかは、農地の所有権がなくても農業者年金には加入できる、つまり女性も、妻も加入できるような道はもう既に開かれているわけでございます。  そういう既存の制度なり、あるいは既存のさまざまな方法を工夫することによって、実質的な女性の農業への参画あるいは地位の向上を図っていくとともに、御指摘のように制度改革はぜひ私も実現していただきたい。女性の力なくして日本農業は到底支えられない。むしろ、男は余りぱっとしないけれども、女性の頑張っている経営は非常にうまくいっている例を私もたくさん知っております。
  123. 中林よし子

    ○中林委員 消費者立場からの本田さんにお伺いしたいんですけれども、とてもいい資料を見せていただきました。食生活関連のアンケート調査で、第一位は鮮度を基準にする。第二番目は安全性、第三番目は価格、全体統計のまとめでそういうふうになっているわけです。これから見ますと、やはり鮮度にしても安全性の問題にしても、もちろん国内生産についてもありますけれども、やはり輸入農産物食料品、これについての懸念が大きいのではないかというふうに読み取るんですね。  WTO協定に横並びにして残留農薬などの基準緩和されました。これは当然強めるべきだと私は思うんですが、先ほどから遺伝子組み換えの表示の問題も出ておりますけれども、輸入農産物の安全性の確保の問題で御意見があれば聞かせていただきたいと思います。  それから、消費者として、現在四一%までカロリーベースで引き下がった自給率問題についての思いがあれば、お聞かせいただければと思います。
  124. 本田笑子

    本田笑子君 安全確保の問題ですけれども、これは、やはり輸入品に対してはまゆつば的、そういうものは確かにありますね。しかし、台風なんかで非常に高騰したときには、外国のものが私たちの生活を非常に助けてくれたということもあるわけです。ですから、どこにしろ表示ということがはっきりすれば、今の段階では、シイタケにしましてもブロッコリーにしましてもナンキンにしましても、かなり生活の中に入ってきていると思います。ですから、私たちが一番見るのは表示ということなので、表示をしっかりしていただきたいということだと思います。  それから、自給率の問題につきましては、やはり私どもは内需をしっかりと、今はやはり揺らいでいると思うんですね。外国のものを入れて自由化が始まっていますので、農家の人も自信をなくしているのではないかというような気がします。もう少し農家の人も自信を持って、やはり近いところで、鮮度のいいものは近いもの、エネルギーも少なくて、私たちの食に、声もかけられる、何をどうしてつくったかということも聞ける、そういう面では非常に国内産は愛好したいと思っております。  以上です。
  125. 穂積良行

    穂積座長 これにて質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  意見陳述の方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。  拝聴いたしました御意見は、法案審査にこれから大いに役立ててまいりたいと思っております。改めて厚く御礼を申し上げます。  また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして心より感謝申し上げます。ありがとうございました。  これにて散会いたします。     午後四時三十五分散会     —————————————    派遣委員北海道における意見聴取に関する記録 一、期日    平成十一年五月二十四日(月) 二、場所    ロイトン札幌 三、意見を聴取した問題    食料農業農村基本法案内閣提出)について 四、出席者  (1) 派遣委員    座長 松岡 利勝君       赤城 徳彦君    金田 英行君       横内 正明君    小平 忠正君       鉢呂 吉雄君    木村 太郎君       菅原喜重郎君    藤田 スミ君       前島 秀行君  (2) 現地参加議員       佐藤 静雄君    吉川 貴盛君  (3) 政府出席者         農林水産大臣官房総務審議官 石原  葵君         農林水産大臣官房総務課長 白須 敏朗君  (4) 意見陳述者         北海道大学大学院農学研究科長 太田原高昭君         北海道農業協同組合中央会会長 直  宗治君         北海道農民連盟書記長 北  準一君         社団法人北海道消費者協会会長 辻 冨美子君      ————◇—————     午後一時開議
  126. 松岡利勝

    松岡座長 これより会議を開きます。  私は、衆議院農林水産委員会派遣委員団長松岡利勝でございます。  私がこの会議の座長を務めますので、よろしくお願い申し上げます。  この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。  皆様御承知のとおり、本委員会におきましては、食料農業農村基本法案審査を行っているところであります。  当委員会といたしましては、本案の審査に当たり、国民各界各層の皆様から御意見を聴取するため、御当地におきましてこのような会議開催することとなった次第であります。  御意見をお述べいただく方々には、御多用中にもかかわらず御出席いただきまして、まことにありがとうございます。忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願いいたします。  それでは、まず、会議の運営につきまして御説明申し上げます。  会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、座長の許可を得て発言していただきたいと存じます。  なお、この会議におきましては、意見陳述者方々は、委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  次に、議事の順序につきまして申し上げます。  最初に、意見陳述者方々から御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただき、その後、委員から質疑をすることになっております。なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、派遣委員紹介いたします。  自由民主党の赤城徳彦君、横内正明君、金田英行君、民主党の小平忠正君、鉢呂吉雄君、公明党・改革クラブの木村太郎君、自由党の菅原喜重郎君、日本共産党の藤田スミ君、社会民主党・市民連合の前島秀行君、以上でございます。  なお、現地参加議員として佐藤静雄君が出席をされております。  次に、御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。  北海道大学大学院農学研究科長太田原高昭君、北海道農業協同組合中央会会長宗治君、北海道農民連盟書記長北準一君、社団法人北海道消費者協会会長辻冨美子君、以上の方々でございます。  それでは、太田原高昭君から御意見をお述べいただきたいと存じます。
  127. 太田原高昭

    太田原高昭君 御紹介いただきました太田原でございます。  本日は、北海道までお出かけいただきまして直接地域の声を聞く機会を設けていただき、大変感謝しております。委員先生方には、私どもが書いた本を資料として差し上げておりますので、随時ごらんいただければと思います。  私がきょう申し上げたいことは三点ございます。  一点目は、北海道は、農業基本法、今度の新しい基本法に関して、特別に重要なかかわりを持っている地域であるということであります。  御存じのように、基本法農政と言われているこれまでの期間において、北海道基本法農政の優等生というあだ名がついておりました。全国的には、基本法農政は、特にその構造政策においてその目的を達成できなかったと言われております。したがって、新しい基本法が必要だということになっているわけであります。北海道は、この点については、基本法が明記しておりました自立経営の成立という点でも規模拡大という点でも、基本的に、現行基本法の理念を達成した唯一の地域であるというふうに、これも一般認識されております。  資料の十三ページをちょっとごらんいただきたいのでありますが、専兼別に見た農家戸数のシェアが都府県との対比で書いてあります。一番新しい数字で申し上げますと、都府県では第二種兼業農家が六六・五%、三分の二を占めているのに対して、北海道は、専業農家が四五・五%、第一種兼業農家が三八・一%、合わせまして八〇%以上がいわゆる農業を主体とする主業農家で占められているという状況がございます。経営規模も、一般に、大体EU並みに規模の点では到達しているというのも御存じのとおりであります。  しかし、このことは、その反面では、これも十二ページに農家戸数の推移が出ておりますが、昭和三十五年、基本法が成立する時点で二十三万三千戸あった北海道農家戸数は、平成七年において七万三千戸まで、まさに三分の一に減少しております。  現行基本法が国会で審議されたとき、当時の社会党を初めとして、これは三割農政である、七割の農民の首を切るものであるというふうに反対の論陣を張ったことは記憶に新しいのでありますが、都府県の農家はこれに対して、いわば総兼業化という、村落の平等主義に基づくいわば一種の抵抗をして、その道には乗らなかった。それに対して北海道は、文字どおり三割農政という結果になったわけであります。残った農家が規模拡大したわけでありますが、これもただでできたわけではありません。膨大な負債を背負いながらここまでの規模拡大をしてきたということであります。いわば大変大きな犠牲を払いながら、北海道は、官民挙げて基本法の理念の実現に邁進してきた地域である。  これで、基本法農政は失敗だ、新規まき直しが必要だということになりますと、北海道はいわば優等生とおだてられて二階に上げられてはしごを外されるのではないか、大体関係者の皆さんにそういう危惧があるということを申し上げておきたいわけであります。  二番目は、自給率の問題であります。  自給率目標値は、残念ながら基本法の本文には盛り込まれませんで、基本計画に書かれるということであります。どのくらいの自給率目標とされているのか定かではありませんが、私は、必ずや、この四一%という国際的に大変恥ずかしい水準から頑張って引き上げる数字が示されると確信しております。  この自給率を引き上げるためには、これも先生方よく御存じのとおり、小麦、豆類、飼料作物という主として畑作物の大幅な生産拡大が必要になります。これがなかなか現実には難しいというふうに言われているわけであります。この点では、北海道は、こういう重要農産物でありながら自給率の低い作物についての国内における適地であり、主産地であります。  これも資料の七十六ページをちょっとごらんいただきたいのでありますが、生産量が全国第一位の農産物のシェアがここに書いてありますが、小麦で四九%、大豆一五%でありますが、インゲン九四%、小豆七九%、豆類では北海道は圧倒的な主産地であります。その他は省きますけれども、飼料作物という点では、牧草地面積は全国の八二%を占めております。  北海道農業全体として全国の農産物生産に占めるシェアは、金額表示ですと一〇・五%ということで、文字どおり食料基地であるわけでありますが、この一〇・五%というのは金額表示でありまして、自給率の計算の基準になっているカロリーベースで計算いたしますと、国内の農産物の総カロリー生産の一九・五%、約二〇%を北海道で賄っているということでございます。  このように、自給率を引き上げるためには、北海道農業の抜本的な強化策が当然必要になるだろう。そういう点で、私の希望でございますが、基本法の条文に、国内農業維持拡大、あるいは自給率向上という文言を明記していただきたい。そのことによって、北海道役割北海道農業役割はより鮮明になるだろうというふうに考えております。  三番目は、直接所得補償についてでございます。  後からほかの陳述人の方々からいろいろな話が出るだろうと思いますけれども、現在、日本一の規模を持つこの北海道の専業農家は、ガット合意以降の価格低下に大変苦しんでおります。このままでは、いわゆる中核農家と言われる人たちが離農し、せっかくここまで来た北海道農業が空洞化するおそれがあるということを大変恐れております。  第一点で述べました北海道の大規模専業農家は、いろいろ弱点もございましたけれども、基本的に価格政策によってこれまで支えられてきたというのが私の認識でございます。現行基本法には、この点で、農業基本法第十一条は、政府価格安定政策を義務づけております。同じく十三条は、輸入農産物に対する国境措置を義務づけております。いわば北海道の大型農業はこの二つによって守られてきたというふうに申し上げていいと思いますが、今回の基本法、新しい基本法ということで、ここがどうなるのかというのが、北海道農業関係者が一番不安に思っている点であります。  その点で、国境措置については新しい基本法の十八条にほぼ現行法どおり残された、このことについては私は大変評価しております。しかし、価格安定政策の義務づけはなくなった。これからの価格市場原理でいくんだということになっております。この価格安定政策政府への義務づけという点が、現行基本法がWTO協定違反であるということで変えざるを得なくなったということが、恐らく今回の改定の背景であろうというふうに思っております。  WTOとの関係価格安定政策をとることができないということであれば、それにかわる所得補償政策をとって、特に農業に収入の大部分を依存している意欲ある主業農家、専業農家を支えるということが国政として不可欠であるというふうに思っております。その点で、直接所得補償、条文では直接支払いという表現になりましたけれども、これが中山間地対策に限定されているという点は、私は大変不満であります。  御承知のように、EUは、これまで条件不利地対策としてとられてきた直接所得補償を、九二年の農政改革で全地域、全経営対象としたいわゆる包括的デカップリングに改めております。これは、ガット合意によってEUも政策を変更せざるを得なかった。その政策変更に伴う農業者所得減については政府に、国家に責任がある、したがって国家がそれを償うのは当然であるという考えに基づくものでありまして、我が国の場合もこの考えを当てはめるべきではないかというふうに考えております。そうすれば、これは中山間地だけの対策ではなくて、特に北海道のような政策変更による影響が最も大きい平場専業経営こそが直接支払い対象になるというふうに考える次第であります。  このような考え方を取り入れることで、北海道を初め全国の意欲ある農業者の期待にこたえ、国内農業維持拡大自給率向上達成し、国民食料に対する不安を取り除く必要があるということを強調いたしまして、私の意見陳述を終わります。  ありがとうございました。
  128. 松岡利勝

    松岡座長 ありがとうございました。  次に、直宗治君にお願いいたします。
  129. 直宗治

    ○直宗治君 ただいま御紹介いただきました、北海道中央会の副会長を仰せつかっております直と申します。よろしくお願い申し上げたいと思います。  まず、今回のこの農林水産委員会の地方公聴会を、わざわざ札幌まで諸先生にはお出ましを願いましてこの地で開催していただきますことにつきまして、心より厚く御礼申し上げるところでございます。  それでは、早速私の方から考え方を申し上げたいと思います。  まず、前段、御案内のことと思いますけれども、北海道農業の現状について若干申し上げたいと思います。  北海道農業は、明治二年の開拓使の設置以来、積雪寒冷な気候や火山灰地や泥炭地という悪条件を、近代的な農業技術導入や、また国の支援策によって、生産基盤の整備によって克服し、わずか百三十年余りの間で我が国最大の食料基地に発展してまいっております。  御案内のように、米を初めてん菜、バレイショ、小豆、小麦、タマネギ、牛乳、肉牛などは全国第一位の生産量を誇っており、国民食料安定供給に大きな役割を果たしております。また、今ほども太田原先生からもお話がありましたように、現行農業基本法の優等生と言われるように、恵まれた土地資源を生かしながら、専業農家を主体に、大規模で生産性の高い農業を展開しております。さらに、本道農業は、食料生産のみならず、肥料や飼料等の生産資材産業や食品加工業など多様な産業と密接に結びついており、地域経済社会を支える重要な産業として道民生活の安定に寄与しております。  しかしながら、WTO体制の発足で、新たな国境措置のもと、輸入品との激しい競争を強いられており、懸命な経営努力にもかかわらず、専業地帯の北海道農業をめぐる経営環境の悪化が進み、農業者は将来に大きな不安を抱いております。北海道農業者が将来に希望と意欲を持ち営農できるためには、我が国農業農村の発展と、良質な食料確保に向けた国内政策の確立と、それを可能とする次期WTO農業交渉での交渉成果の獲得が不可欠であります。  そのため、我が国食料自給率の回復、向上による食料安全保障や、農業農村多面的機能の発揮を理念とし、専業農家の育成など各般の施策展開が盛り込まれた新たな基本法を国会において十分審議を尽くしていただき、全国民一致した法律として早期に成立されるよう、まずもって要望いたします。  次に、各般の施策の具体化に当たり、数点に絞って御意見を申し上げたいと思います。  初めに、第十五条にあります食料農業農村基本計画に関連して、品目別生産目標食料自給率についてであります。  世界の食料需給は長期的には逼迫する可能性が見込まれる中、国民の必要とする食料について、国内農業生産基本とする食料安定供給確保体制を確立することは絶対必要であり、これを具体化するため、品目別生産目標食料自給率向上目標を明示していただきたいと思います。  次に、第三十条の所得確保経営安定対策であります。  市場原理国際化の一層の進展は専業農家ほど大きな打撃を受けていることから、地域農業中心的担い手に対する所得確保経営安定対策に万全を期すことを強く要望いたします。  なお、品目ごとの所得確保経営安定対策については、これまでの品目政策の経緯や、特に生産現場の実態、品目特性を十分踏まえた対策とすることを求めます。  北海道の基幹作物に関する経営安定対策には次のような不安や課題があります。  米では、他の作物に先駆けて市場原理導入されましたが、価格の暴落により所得の減少が顕著になってきております。自主流通米の価格下落時の価格補てん対策として稲作経営安定対策実施されておりますが、これとても補てん基準価格価格下落幅を満度補てんする仕組みではなく、補てん金を加えてもなお生産コスト割れにあるのが北海道米の現状であります。価格下落の打撃は経営規模を拡大した意欲的な経営ほど大きく、稲作農家は、今後の経営の維持安定に大きな不安を抱いております。再生産を可能とするため、稲作経営安定の諸対策の充実強化を強く要望いたします。  酪農についても、本年三月、新たな酪農・乳業対策大綱が出され、平成十三年度より、生産者補給金制度の廃止を初めとして、現行価格制度を市場実勢を反映した価格形成の仕組みに移行することとなりましたが、この移行に伴う経営安定措置について、酪農家が生乳の再生産を安定的に行える所得確保し得る対策の確立を強く求めます。  さらに、本道の畑作物であります麦についても、昨年五月に新たな麦政策大綱が決定され、十二年産より民間流通に移行することになりましたが、この移行に伴う経営安定対策についても、生産コストを償い、安心して再生産に取り組み得る具体的な仕組みとするよう強く求めております。特に、畑作は輪作が不可欠であります。畑作経営トータルとしての経営安定対策の早急な確立をお願いする次第であります。  市場原理導入については、牛肉の自由化でも、牛の個体価格暴落により大きな打撃を受けた経験があります。農業者は、今後の経営に深刻な不安を持っております。  また、農村では離農、高齢化が進み、後継者不足が深刻化しておりますが、労働の対価も確保できない現況では、後継者や新規就農者を確保しようとすること自体が無理なことが明らかであります。  専業農家経営安定に向け、価格暴落に対する経営安定措置を早期に講じるとともに、土地改良負担金や基盤整備の負担金など、各種支払いコストの低減に向けた総合的な対策も講じて、再生産の可能な所得確保し得る万全の対策を強く要望いたします。  なお、第三十五条にあります中山間地域等条件不利地域に対する直接支払いについてでありますが、農水省の検討会の中間答申では、特定農山村法など五法指定地域一定傾斜地対象として想定しております。しかし、北海道では、五法指定地域以外の平場にあっても厳しい自然条件制約のもとで酪農、畑作等が営まれており、対象地域対象行為、対象者等に関して現場の実態や地域意向を十分踏まえ、地域の創意工夫を生かせるものとすべきであります。特に、平場の大規模専業経営対象となる直接支払い導入のため、環境機能面に着目した直接支払い制度早期導入を図られたく要望いたします。  次に、第二十二条、二十三条の関連である農地の流動化と担い手対策であります。  国が示した見通しでは、現在約七万戸ある農家戸数が、平成二十二年には五万一千戸まで減少すると見込まれております。他方、我が国食料自給率向上には、北海道の百二十万ヘクタールの耕作面積の維持が必要であります。そのため、食料自給率目標達成に必要な農地の総量明示とその確保対策、総合的な土地利用計画の策定が必要であり、それを有効に活用するため、新規参入者の確保とともに、抜本的な農地流動化対策の確立が不可欠であります。  高齢化により離農が見込まれる中で、将来不安から規模拡大意欲が減退している現状を踏まえ、担い手確保されるまでの間、農地を保全管理する仕組みの構築や、農地保有合理化事業の拡充強化などの農地流動化の対策や、JA出資型の法人への支援策など、多様な担い手の育成対策を要望いたします。  最後に、第十八条に関連する次期WTO交渉についてです。  新しい基本法の理念である食料安全保障農業農村多面的機能の発揮を実現していくためには、各国の持続的な農業生産を相互に尊重し合う、真に公正な貿易ルールの確立が欠かせません。  幸い、法案の第十八条には、関税率の調整や輸入の制限を行う旨の定めが残されました。いざとなれば輸入制限するという国の決意のあらわれと受けとめております。  次期農業交渉では、この条文の内容が名実ともに実行可能となるように、我が国食料安全保障農業多面的機能を位置づけた新たな基本法に基づいて毅然とした姿勢で臨むとともに、国民合意形成や国際的な理解を獲得できますよう、特段の御配慮をいただきたいと思います。  以上、専業農家を主体とする北海道農業農村が果たしてきた役割について十分御理解を賜り、農業の持続的発展と高品質な農畜産物の安定的供給のため、食料安全保障多面的機能の発揮を理念に据えた新たな基本法を全国民一致した法律として制定されますよう、また、全国画一的な農政でなく、専業地帯を重視した施策の展開に十分配慮しながら、各般の施策の具体化を早急に図られますことをお願い申し上げまして、意見といたします。  終わります。ありがとうございました。
  130. 松岡利勝

    松岡座長 ありがとうございました。  この際、現地参加議員吉川貴盛君が出席されましたので、御紹介いたします。  次に、北準一君にお願いいたします。
  131. 北準一

    北準一君 私は公述人の北準一であります。本日は、松岡団長を初めといたしまして農林水産委員会の皆様には、農業政策にいろいろな御尽力をいただきながら、北海道に来られて私どもの意見を聞いていただく、このことについて感謝と御礼を申し上げたい、このように思うところであります。  私は、北海道農家六万五千戸が加盟しております北海道農民連盟の書記長という仕事をしておりますけれども、私自身は、みずからも米をつくっている稲作農民であります。私は、今国会で審議されております食料農業農村基本法案について意見を述べさせていただきたいと思います。  本連盟では、皆様のお手元に配付してあります資料にありますように、政府提案の本案に対して六項目の修正などを求めておりまして、現在、全道規模で修正を求める署名活動を実施しておるところであります。私はこの中で、特に食料自給率向上のために国内の農業生産維持増大基本としていただくことを前提といたしまして、今回は、特に重要と思われる第三十条関連の農産物価格制度の見直しに伴う農家所得対策中心意見を述べたいと思います。  初めに、北海道の水田農業、稲作経営の実態について、今、直副会長の方からもお話がありましたけれども、ちょっと御説明を申し上げたいと思います。  我が国は、関税化や国内支持削減などのUR農業合意を九三年に受け入れまして、九四年のWTO農業協定批准に伴い、価格支持などを内容とした食糧管理法の見直しが迫られ、市場での価格形成などを柱とする食糧法へと大きな政策変更が行われたところであります。その結果、北海道産の自主米価格はここ数年で一五%程度以上も下落しておりまして、農業収入に多くを依存する北海道の稲作農家経営の悪化に非常に苦しんでおるのであります。  北海道は、平成六年に、UR農業合意などの国際化時代に対応するため、国が示しましたいわゆる新農政の方向を参考に、将来における経営類型の一つとして、二十四ヘクタール規模の大規模稲作専業経営によって千四百八十万円の農業所得を目指した「北海道農業農村のめざす姿」を策定し、今日まで規模拡大路線を続けてきたところであります。  ここで、北海道における規模拡大型稲作農家経営実態といたしまして、空知管内岩見沢市周辺の農家の事例をちょっと御説明申し上げます。  この農家は、昭和五十五年以降に十二ヘクタールの農地、水田を購入いたしまして、今おおよそ五千万円程度の負債を持っておりますが、現在は二十ヘクタールの水田を三人の専従者で耕作しております。昨年、平成十年分の経営収支を見ますと、農業収入は二千六百万円、経営費を差し引いた農業所得は四百七十万円程度であります。ここには労賃は含まれておりません。この農家は、十年度期首におきまして、農地取得や機械・施設投資など約五千五百万円もの多額の負債を持っており、負債の年償還額は六百五十万円でありまして、所得から差し引きますと百八十万円の実質的な赤字、こういう実態になっております。実際の経営では、農地取得などに投資した資金が米価の下落などで固定負債化している、これが実態として浮き彫りになっておるところであります。  農林統計の調査による平成九年の北海道稲作経営の十から十五ヘクタール層の稲作部門収支を見ましてもこうした傾向があらわれておりまして、農業粗収益一千四百二万円、農業経営費一千十七万円、農業所得はわずか三百八十五万円にとどまっておりまして、生活費にも不足する額であります。とても新規投資分を回収できる経営状態ではありません。  さらに、この経営を、企業が行っている財務分析と同じ手法を用いた損益分岐点を用いて分析しますと、家族労働費を含めた費用は一千三百九十九万円でありまして、損益分岐点売上高は千三百九十八万円となり、その結果、経営安全率は前年より一六ポイント低下いたしておりましてゼロであります。辛うじて投下した労働費が回収できる、そういう実態でございます。  また、私が住んでおります空知管内の稲作農家経営分岐点を用いた分析では、純益収支概念による経営安全率はマイナス四%であります。投下した家族労働費さえ回収できない経営実態にあるわけでございます。なお、全道平均ではこの安全率がマイナス七%、こういうひどい状態でございます。  こうしたことから、稲作地帯ではここ数年、土地改良事業の負担金や規模拡大などによる借入資金が固定負債化し、返済不能に陥る農家が多発しているのであります。  旭川市の東旭川町ペーパン地区の道営土地改良事業では、三十九戸の対象農家のうち、傾斜地ということもありまして、水田本地の十アール当たり年償還額が、平準化事業などの償還軽減策を講じた後でも、単当二万円を超える農家が二十戸、三万円を超える農家が二戸あったのでございます。しかし、米価急落などで償還に耐え切れなくなりまして、九年には十二戸が返済不能に陥り、ついに昨年、十年には六戸が離農に追い込まれるという状況になりました。  道内における国営及び道営土地改良事業と農業関連制度資金を合わせた平成八年度末の借入金残高は一兆円を超えておりまして、ほぼ北海道農業生産額に匹敵しているのであります。生産コストの低減のために規模拡大や土地改良事業等を積極的に進めてきたことが、農産物価格制度の見直しの政策変更によりまして、逆に負の資産として今経営を圧迫している状態であります。  このため、制度資金にかかわる農家負債で返済不能なものについては、元利金の減免措置や抜本的な超低利の一括借りかえ制度などの施策がぜひ必要であります。さらに、土地改良事業負担金については、抜本的な制度改善の上、既往事業の受益者負担金の金利を無利子化し、さらに、今後の国営などの土地改良事業における受益農家負担をゼロにする、負担なしにするという施策経営安定対策の一環として講ずる必要があると考えております。このため、農家負債整理のために緊急対策本部を設置いたしまして、北海道農業の再建を図るべきであります。  続きまして、農産物価格の形成と所得の補償及び農業と他産業との格差の是正について、私どもの考え方を申し上げたいと思います。  現行農業基本法では、政策目標といたしまして、農業従事者が所得を増大して他産業従事者と均衡する生活を営むことを期する、このことを掲げておりまして、農産物価格安定と所得確保を明文化していたのであります。  しかし、提出されました新基本法案では、市場実勢を反映した農産物価格形成と経営安定の措置をするとの表現にとどまっておりまして、国際的な農政展開の潮流に即した、価格政策から所得政策へという農政改革の大命題から大きく乖離していると言わざるを得ません。  私ども本連盟の試算では、北海道における稲作と転作を合わせた水田農地十アール当たりの生産額は、UR農業合意基準年の昭和六十三年の十二万八千円の農業生産額から、平成十年には九万七千円に落ち込んでおります。その差は三万円でありまして、二四%の減少であります。これを実質的な農業所得に置きかえると、五〇%に近い大幅な所得の減少をしているのであります。  現在、経営安定対策として講じられております稲作経営安定対策がありますが、自主流通価格が長期または大幅に下落する場合、補てん基準価格も低下するため、補てん後の農家手取り価格生産費を大きく割り込んでおります。現状の経営安定対策では、価格支持制度の見直しなどの変更に伴う所得の大幅減少を償う政策としての役割は全く果たしていないと言えると思います。  このため、UR農業合意で緑の政策として認められております所得の大幅減少に対する補償の法制度化、すなわちEUなどで実施しております所得補償政策導入がどうしても必要であると考えられます。現在、価格支持政策から市場価格形成への移行は極めて大きな政策変更でありまして、農産物価格の著しい変動の影響緩和し、農業経営の維持発展のために必要な施策として、所得の補償政策を国の責任として、国の責務として法案に明記することを強く求めるものであります。  また、新基本法案では、農業と他産業との生産性と生活水準の格差是正や所得の均衡については明文化されておりません。本道のような専業的な農業経営が過半を占める地域では、他府県のように兼業の機会は極めて少なく、しかも、支持価格制度の見直しなどの政策変更による大幅な所得減少によって、他産業との所得格差がますます広がっておるのであります。  農林統計の調査による北海道の九年の稲作部門の経営全体を見ますと、農業専従者が投下した労働時間は三千六百八十六時間、経営統計で用いている一時間当たり千六百円の労働評価、これも非常に低いわけでありますが、千六百円の労働評価で換算しますと五百九十万円の労働報酬に相当する農業所得が入るわけでありますが、実際に農業者が手にしているものは半分以下の二百七十四万円であります。本道の勤労者一世帯当たりの所得であります六百六十三万円にはほど遠い内容でございます。このため、農家の若者は収入のよい他産業分野に就職しており、新規就農者は減り続け、離農者も相次ぐなど、農村社会や地域経済にも深刻な打撃を与えておるのが実態でございます。  したがいまして、農業農村の持続的な発展を期するためには、担い手である農業者に対して、緑の政策として認めております所得補償政策導入、そして他産業従事者と均衡する所得確保することがぜひ必要であります。  こうした政策が講じられなければ土地利用型農業の持続や担い手農家の維持は困難でありまして、国土環境保全、水源涵養、景観形成、保健休養、地域経済、社会、文化、これらの維持発展などの農業が果たしている公益的、多面的機能の重要な役割が果たせなくなるからであります。  このことに重きを置きまして、私どもの六項目の修正の視点をぜひつけ加えた委員会の論議をお願いし、このことを決定していただきたい、ここを強くお願いするところでございます。  意見陳述を終わるに当たりまして、国民生活にとって欠かすことのできない食料農業農村を二十一世紀に受け継いでいくことが我々農民の使命でもありますし、また、それは大きく国の責任であると考えております。新農業基本法について慎重な論議を積み重ね、国民の合意あるいは世論形成を図りながら、私どもの要望をきちっと取り入れていただいた法案の決定にさらなる御努力をお願い申し上げまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。  この機会をいただきましたことに大変感謝と御礼を申し上げます。ありがとうございました。
  132. 松岡利勝

    松岡座長 ありがとうございました。  次に、辻冨美子君にお願いいたします。
  133. 辻冨美子

    辻冨美子君 北海道消費者協会の辻でございます。よろしくお願いいたします。  北海道消費者協会は、全道で七十四協会がありまして、その七十四協会で組織されております。日本型食生活の勧めだとか地産地消運動だとか、それから、昨年から道産品ウオッチング運動などを進めておりまして、道内の農業農家とは常にかかわりを持っております。  食料は私たちの命と健康を支える最も大切な生活物資です。その生産を担っている農業が魅力ある農業で、そして豊かな農村であるように期待し、意見を述べさせていただきます。  まず、自給率向上についてですが、残留農薬など不安の残る輸入食品より国産品、できれば地元の農産品に目を向けたいと思っています。自給率が他国に例がないほど落ち込んでいるのは問題です。新法では、自給率向上をはっきりうたうとともに、自給目標も何らかの形で掲げるべきではないでしょうか。  次に、価格所得補償についてですが、市場原理の活用はよいと思いますが、価格変動が激し過ぎて、消費者としても不安です。価格が低落したときの経営への影響緩和するため、所得補償を初め、何らかの歯どめ対策は必要だと思います。  次に、北海道農業の位置づけということで申し述べますと、担い手があり、生産性の高い北海道農業は、全国のリーダー的存在としてきちんと位置づけるべきです。  また、日本は沖縄から北海道と長い列島で、地域によってそれぞれ作物経営方法も違います。北海道のように寒冷地による不利な地域についても、中山間地域への所得補償と同様な立場から、中山間地域だけでなく、北海道農家も場合によっては対象にしていただきたいと思います。国際的な競争力をつけた大規模専業経営農家、また、有機減農薬などのこだわりのある農家の方に対しても所得補償を考えていただきたいと思います。  四番目に、消費者にわかりやすい表示と安全の重視をということです。  今までの農業基本法には消費者という言葉は入っていませんでした。このため、安全性や表示の問題や流通コスト低減の課題なども、生産者やメーカーの都合のみが優先され、消費者立場はないがしろにされていたように思います。新しい農業基本法では、消費者の権利と暮らしのニーズが正当に位置づけられ、具体的な施策を進めることができるよう求めます。  例えば表示問題ですが、遺伝子組み換え食品や有機産品を初め、農産物の産地、種類などわかりやすい表示を徹底すべきです。また、残留農薬基準などを厳しくし、食品の安全重視を盛り込むべきです。  消費者との交流につきましては、消費者生産者連携し、ともに農業食料を守るという意識を促す政策が必要で、子供のときから学校での農業農村教育などにも力を入れてほしいと思います。後ほど時間がありましたら、私どもが行っています交流だとか連携の運動などをお話ししたいと思っております。  次に、環境国土保全のための役割重視というところでは、農業が水田など国土保全や緑の環境維持に果たしている役割を重視し、国民によくPRする必要があると思います。特に、自然が多く残されている北海道は、自然と農地が調和よく存在し、その景観が観光資源にもなっているところが多いのです。それらは人々の情緒を豊かに育てる側面もあり、都市と農村のかかわりは、生産と消費といった関係以外にも価値が広がっていると思います。  以上で私の意見を終わらせていただきます。
  134. 松岡利勝

    松岡座長 ありがとうございました。  以上で意見陳述者からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  135. 松岡利勝

    松岡座長 これより委員からの質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金田英行君。
  136. 金田英行

    金田(英)委員 四先生については、本当にお忙しい中、我々委員会の審議の参考のために貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございます。  我々、本当に三十八年ぶりの農業基本法の改正であります。特にこの北海道は、食料供給基地として、まさに、全国とはなかなか条件の違う中で食料基地の役割を果たしてきました。特に北海道は、本州と違ったいろいろな特色をたくさん持っております。そういった中で、この基本法、大転換の農業基本法の改定作業をやっているわけであります。  最初に、まず太田原先生お話しさせていただきますけれども、本当に、太田原先生基本的な御認識については、まさにそのとおりだなというふうに思わせていただきました。直接補償についても、価格支持政策をこれからは農政の中ではやめて、市場原理にゆだねる中でやっていくんだ、しかし、市場原理に単にゆだねただけでは特に専業農家については厳しい対応になるので、そういったところを補てんするという意味合いで直接支払い制度導入するんだという認識もそのとおりかと思います。  まず第一点に、我々、この直接補償支払い制度を随分いろいろ検討させていただいております。けんけんがくがくの議論があるわけであります。大体、どういう目的でこうするんだ、所得補償政策として中山間地等の直接支払いをやるのか、あるいは、所得政策ではないんだ、あくまでも条件不利地域、競争するには同じ条件であらなければならないので、この条件不利な地域についてそのコスト差を負担してやるんだ、厳密に考えていくという考え方がいろいろ激論になっているわけであります。  この点について、先ほど先生は、総合的デカップリングが必要だというようなことをおっしゃっておりましたけれども、我々が心配しているのは、果たしてそんなことで国民のコンセンサスが得られるんであろうか、単なる農家に対する金のばらまきにすぎないんじゃないかというようなことをすごく心配しておりまして、ああ、なるほどな、そういったことについては直接支払いをしてもいいなというようなコンセンサスが得られるかどうかというところが一番の問題点なんです。  時間がないものですから、単なる金のばらまきにならないような、国民のコンセンサスが得られるような、特に北海道の専業農家、特に今検討されているのは、傾斜地について、ヨーロッパの緑の政策をまねる、国際的に通りのいいような政策に取りかえるという形で、新しい政策でありますけれども、そういったことについて、ばらまきになるんではないかという御批判についてどう答えたらいいのか、所見があったらお聞かせいただきたいと思います。
  137. 太田原高昭

    太田原高昭君 御質問いただいてありがとうございました。  この直接所得補償については、先ほどの陳述の中でも申し上げましたが、日本では大分誤解してこれが議論されているというふうに前から私は思っております。  ヨーロッパでは、確かにウルグアイ・ラウンド以前は、これは条件不利地対策としてやられておりました。しかし、ウルグアイ・ラウンド以降は、要するに政府の責任によってガット農業合意をのみ、WTO協定を批准した、その結果、従来の価格を維持できなくなった、その責任を国家が何らかの形で償わなければならない、いわば国家賠償の考え方に立っているわけであります。  そうであれば、委員御質問のその目的あるいは方法、ばらまき云々と言う前に、まずこれは、何らかの形で国家が責任を負わなければならないことなんだということを明確にしていただきたいというのが私の一番言いたいことであります。  次に、国民のコンセンサスが得られるか。これは、ヨーロッパでどのようにして国民のコンセンサスが得られているかということは、これも十分御承知だと思いますけれども、デカップリングを導入しましてから、消費者価格、市場価格はヨーロッパで三割下がりました。その分、生産者については所得が補償されました。消費者価格が下がったわけですから、両方とも満足しているわけですね。その点では国民的合意というのはまさに得られているわけでありまして、日本でもそういう明快な、わかりやすい施策をすれば、これは必ず国民のコンセンサスを得られると私は考えております。
  138. 金田英行

    金田(英)委員 ありがとうございました。  そういうことで、我々も大体そういう気持ちでやっていることはやっているんですが、中小企業の、商店経営者の皆さん方と比べて、いや、私の経営、またことしも大幅な赤字だぞ、この不景気で大変だ、米の価格が下がったから農家の皆さん方はある程度の補償制度はあるけれども、我々には全くないよというような意見等々もありまして、果たして、国民のコンセンサスが得られるような中山間地等の直接支払い補償制度を打ち立てることができるのかどうかということなんです。  私どもも、党の部会でいろいろと議論しております関係でも、今の検討の中では傾斜地等々について大分比重が置かれているものだから、そうじゃないんじゃないのというお話もいろいろとさせていただいております。実際にフィンランド等々では、北緯何度以上のところというような形で、緯度が判断基準になっている、寒冷な気候の中で土地の生産性がすごく低いからというような形で。そういった基準等々も、各国いろいろ違いますけれども、あることはあるわけであります。  北海道農業は確かに今大変な事態でありますけれども、果たしてそんなことでいいのかどうか。まずは直接支払い補償制度導入することから始めましょう、細かいというかそういったことについてはもう少し制度の運用を見ながら対策を講じてまいりましょうという意見も一方にあるわけでありますが、そんなことで大分難しい。要するに、煮え湯をひっくり返したような騒ぎになるわけであります。隣の農家は一反歩二万円もらうのに私はもらえないとか大変な騒ぎになるので、この基準づくりについて今大変な議論が進められているところであります。  そういったことで、直副会長お尋ねしたいんですけれども、先ほど直さんから、平場対策が抜けているぞ、中山間地等というような段々畑のイメージでは困るんだ、そのような趣旨の御発言があったかと思います。確かに、農家の皆さん方、我々の選挙区でも大分離農が進んでおりますし、耕作放棄地はどんどんふえている。この対策をとるために、この中山間地等支払い補償制度があれば所得がある程度は保障されるから担い手確保もできるというような、そんな形でこの担い手対策としての直接補償制度みたいなものを考えておられるのかどうか、そこら辺をちょっとお尋ねしたいと思います。
  139. 直宗治

    ○直宗治君 中山間地域生産性が低い、しかしながら、我が国としてはそこはどうしても必要だ、それを、国民からお手伝いを願いながらその地域農業あるいはその地域を守っていこう、こういう考え方でもって議論されていると思います。私はそのことは、やはりそれなりの見方と、労働の生産性からいえば極めて低い地域でありますから、そこで農業を営むとなれば、それなりの対策というものがやはり必要だと思うんですね。  しかしながら、北海道の稲作農業あるいは畑作農業、酪農を挙げて言えば、日本でもって今一番規模が大きいんですよ。一番規模の大きい水稲農業が一番苦労しておるんです。  これは、市場原理導入という形の中でもって旧食管法から今の食料政策に変わった、このときには、価格あるいは生産性というものは国でもって責任を持つ、やはりこういう条文が加えられておるわけです。しかしながら、ここ二、三年の北海道水稲農業経営というのは惨たんたるものがあるわけですね。  だから、実際にそういう国の施策によって展開してきた、いわゆる基本法の優等生、選択的拡大、所得向上、規模の拡大を目指してやった、そしてまた新農政の精神、農水省で書いた新農政のプログラムの政策によって展開してきた、そのところが一番経営が困るということはどういうことなんですかということなんですよ。どこの国へ行っても、その国の一番大きい経営規模、どこがだめになってもそれだけは残るというのが自然体なんですね。ところが今、米だけを見ればそういう形になっていないということなんですよ。  それともう一つは、今まで言われているように、しからば傾斜地だけであれば、北海道の根釧のように牛と牧草しかとれない地域、これはそうしたらそういうところに入らぬですか。何をやりたくても牛と牧草しかとれないんですよ。そして、しかもそこは厳寒地域なんですよ。マイナス二十度というのはもう日常なんですね。そういう中でもって朝の三時から起きて、そして規模を広く持って、国内の牧草でもって乳を出していこうというところですね。そういう平場対策。  畑作においてもそうです。今全部価格市場原理だけにゆだねられて、それだけでもって競争せいと言っても、今の日本農業の形の中では勝てません。それは現実の問題として、例えば今麦の問題がありますけれども、麦だって、アメリカから二千四百円か五百円で入ってくる、それを国内でもって保護されて、そういう輸入先から守って麦は一万円にしておる、こういう環境ですね。  だから、そういう環境の中で農業をやっているわけですから、何らかそういう専業的な平場農業も、価格だけで対応できないならば所得というものでもって判断して、それを生活の基準としたものでなければ、どんな立派なものをつくっても、後継者と労働対価のないところには労働力がないということなんですよ。私は、そのことをやはりきっちりと理解していただきたい。  以上です。
  140. 金田英行

    金田(英)委員 貴重な御意見、どうもありがとうございました。  北さんにお尋ねしたいんですけれども、これから北海道の専業農家は、特に稲作農家は大変な経営不振に陥って、借金対策も大変だぞというような事例を引いての貴重なお話、本当にそのとおりだと思って、政策的にどうやったらいいのかなということで、我々、常に頭を悩ませているわけなんであります。  負担金対策、あと所得補償ということを随分強調されておられましたけれども、そのような所得補償という制度が、今基本法の中で議論されている中山間地等の直接支払い制度、そんなものではもう間に合わないんじゃないかというふうに思うんです。総合的なデカップリングということになりますと、いわゆる所得保険みたいな、全農家所得全体を保険で保障してやる、中山間地、条件不利地域の直接支払いという具体的な目標ではもう覆い切れないんではないかというふうに私は思っておるんですけれども、その点についての北さんの御意見がありましたらお尋ねしたいと思います。
  141. 北準一

    北準一君 いろいろ経営の負債にしても、その要因、今までの構造政策的にやってきた部分が、今お話がありましたとおり、価格政策の見直しという大きな起点ですから、今例えば事業負担金だけをやればいい、農地の負債、購入対策だけをやればいい、ポイント的にやるということはできないと私は思っています。  お話がありましたように、北海道でも不作付あるいは放棄地が相当出ているという実態ですから、およそこの状態が三年、五年続くとまだまだ広がる。  ですから私は、今基本法が目指しているものは、食料の安全保障に基づくといいますか、そこをベースとして、それは何かといいますと、我々農民のサイドから見ても、やはり耕作をしていかなければいかぬということですね。管理だけではだめなんです。だから、きちっとした耕作をやはり維持していく、続けるあるいは拡大していく、この視点が欠けていると私は思います。  ですから、その耕作を維持していくということを前提に、耕作に対する所得政策といいますか、つくらない者にそれはどうすべきということはありませんが、やはり耕作をきちっと続けていく上にその所得政策を組む。ですから、先生お話がありましたように、例えば負担金の対策をどうしよう、あるいは償還金の対策をどうしよう、後継者対策をどうしよう、そういういろいろな分野はありますけれども、私は基本的には、耕作をしていくという前提に、例えば酪農政策でやりましたような面当たりだとか頭当たりだとか、こういう視点がぜひ必要と考えています。
  142. 金田英行

    金田(英)委員 ありがとうございました。  時間が来たようですので、辻さん、時間がなくて御質問できませんで申しわけありませんでした。では、また後の機会にさせていただきます。  どうも御苦労さまでした。終わります。
  143. 松岡利勝

    松岡座長 次に、小平忠正君。
  144. 小平忠正

    小平委員 きょう四名の公述人の皆さんには、大変お忙しいところ、貴重なまた高邁な御意見を拝聴いたしました。まことにありがとうございます。まず心から、私からも御礼を申し上げたいと思います。民主党の立場で、今の四名の皆さんの御意見を体しながら、私からも、私の考えなりまた質問等をさせていただきますので、よろしくお願いします。  私どもは、農業基本法現行基本法はもう限界に来ている、したがって、二十一世紀を見据えて、次世紀に適合し得る新しい基本法をつくっていく、これが農業の憲法である。まず生産者の皆さんがこれにのっとって安心して営農をする、また消費者に向かっては安全で良質な食料を提供する、こういう基本のもとに新しく農業の憲法をつくっていこう、こういうことで、農水委員会、まず衆議院でいろいろと論議を重ねております。きょうは、そんな中で、専業地帯の雄である北海道に地方公聴会ということでこういうことになったわけであります。  今皆さんの御意見の開陳をいただきまして、私も同意見で、改めて質問というか反論というか、そういうことはないので、おっしゃるとおりであると思います。まず、そこのところはもうおっしゃるとおりであります。  私も、今の御意見に加えて感ずるのは、我が党はこの基本法に、最近の傾向ではないんですけれども、現行基本法のように、また憲法のようにしっかりと前文をつくって、そこに高らかに、農業は国の基なり、この精神をうたい上げる、要するにわかりやすく農業というものの重要性をまずうたい上げる、その上で第一条、各条項に入っていく、そういう考え方のもとに主張しております。これは今後、これからの農水委員会でこのことをさらに主張していこうと思っています。  そういう中で、私はきょう皆さんの御意見をお伺いしまして、北海道という専業地帯の立場からおっしゃっていることはもう本当にそのとおりであって、特に、直副会長おっしゃった専業地帯が抱えている問題、私も同感であります。特にこの専業、北海道というのは兼業化の機会がない、ということは農業以外に頼る収入がない。しかし、このように国際環境が厳しい中で、また国の施策にものっとって規模拡大をしてきた、そうすると、こういう中で内外の価格差による急激な価格低下、これはもうダイレクトに経営を圧迫して、急激な所得低下をもたらしている。このことが、言うならば農業の破綻、そしてさらには集落の崩壊、こういうことになってきておりますね。  そういうことを考えると、専業地帯には言うならば所得補償は必要である。しかも、今まで我が国がとってきた価格政策、これがWTOの協定のもとで限界に来ている。ならば、これにかわるものとして、緑の政策として所得政策を行う。今お話がございました。そういうことが認められているならば、ぜひとも専業農業にもこの新しい基本法では所得補償というものをしっかり打ち出して、政府の責任で経営安定対策をする、そのことが大事であり、この現行政府案では欠けている、私どもはそう思いながら今いろいろと委員会議論しているところであります。  そして同時に、自給率の問題。これは、今太田原先生がおっしゃったように、国際的に恥ずかしい、もうそのとおりであります。先進国では七〇から八〇%、あるいは一〇〇%を超える、多い国は二〇〇%、そういう食料自給率を守っている国が先進国の条件だと思うんですね。しかるに我が国は四一%。しかも、放置すればこれはますます低下することはもうはっきりしている。  そういう中で、この自給率向上をしっかりうたい上げていこう。そのことは、言うならば、今二条でうたっています国内生産基本、ここに生産維持拡大、これを明記して、そして自給率向上を目指す。このことをまず高らかに明記して、その上で、第十五条でこの自給率目標設定、そしてこれにつながってくる農地面積、総面積の目標設定も並行して行う。そういうもとにこの十五条をしっかりつくって、そしてそれを国会承認、このことも明記をして、自給率向上政府の責任のもとに行う、そういうことで私ども展開しております。  基本的なことを申し上げましたけれども、皆さんの御意見とも大体同じなものですから、できるならばもう少し時間をとって先生方の御意見をもっと詳細にお聞きしたいところでありますけれども、今お話をお伺いして、私なりの考え、感想を申し上げました。  そこで、せっかくの機会でありますので、短い時間でありますが、まず太田原先生、いかがですか。今のことで何か補足して特に強調されることがございましたら、簡潔にひとつお願いしたいと思います。
  145. 太田原高昭

    太田原高昭君 先ほど金田先生の方から、収入保険でカバーできないかというお話がありました。私たちも、新しい基本法の条文を拝見いたしまして、経営安定対策として所得確保対策ですか、恐らくモデルになっているのは、現在の米についてとられている収入保険がモデルなのかなと思っております。しかし、これはぜひ申し上げたいんですが、現在とられている収入保険制度では、北陳述人が申し上げましたように、これは経営安定対策になりません。  大体保険といいますのは、自然災害のように偶然的に起きることについては非常に有効でありますけれども、今後、今の状況の中では価格の傾向的低落が予想されるわけですね。傾向的に低落するものに対して保険方式というのは、これは無効であります。  本当に経営を安定し、農業者に安心して経営をしてもらうためには、ヨーロッパ的な所得補償考え方、これがやはり基本に据えられなければならないだろうと再度強調したいと思います。
  146. 小平忠正

    小平委員 どうもありがとうございました。  それでは、直副会長、今いろいろと北海道立場で御意見の開陳がございましたが、重ねて確認したいのであります。自給率の問題について、これを明示する、そういう御主張でありましたけれども、そこのところは私も同感であります。今お話がございましたが、そこのところはどうですか。
  147. 直宗治

    ○直宗治君 自給率、これはすぐ上がるだろう、そういうお考えの方も消費者の皆さん方にはおると思うんですね。自給率を一%上げるとなったら、今北海道でつくっている小麦、これが全部倍になってようやく一なんですね。約五十万トン。小麦であれば、一%の自給率を上げるのにどれだけの面積が要るかということなんです、面でいけば。だから、簡単に自給率向上自給率向上と言っても、この現況の中で、しかも後継者がいない、しかも農地の流動化が図れない、ということは農地価格が暴落しているということ、経営が逼迫している、そういう中でもって自給率を一%上げるというその難儀、それをだれがやるんですかということです。だから、農業者にそれなりの所得というものをあげるだけのものがきちんとされれば、やはり自然的に自給率は上がるんですよ。  やはり私たち北海道が今日まで営々と専業農家地帯でもってやってきているわけですから、そのことに目を見開いていただいて、再度この自給率向上というものについて、専業農家的なところにコストの削減をしながら国民の期待にこたえていく、それに足りないものについては、先ほど言ったように、やはり国でもって所得補償なりあるいは経営安定対策なり充実したものができれば、営々と農業が継続されている以上発展していくだろう、私はそのように思っております。
  148. 小平忠正

    小平委員 ありがとうございました。  確かに、自給率向上、言葉は簡単ですが、一%上げる、これはもう大変なことだ、おっしゃるとおりです。逆に言うと、自給率を下げることはもっと簡単だ。したがって、その難しい自給率を、まず現状はしっかりガードして上げていくことに努める。そのためには、今おっしゃるように、経営的な安定が伴えばいく、そういうことなので、私どもは、ここのところは政府の責任で、自給率向上というものを明記しながらこの方向に向かっていきたい、そういう思いであります。  さて、北書記長、農民組織のリーダーとして、また現に稲作生産農家として第一線で頑張っていらっしゃる、本当に肌で今の専業農業の厳しさを感じていらっしゃるわけですね。今お話がございましたように、空知の農業の厳しさ、経営実態のお話数値を上げてお話がございました。  私も過半の農水委員会で、政府施策にのっとって規模拡大をした農家経営状況の悪化、もう既に赤字に転落をして預貯金に手を出している、言うならばキャピタルロスが生じている、そういう中で完全にもう行き詰まってしまって離農を考えている、もう後継者には託せない、そういう状況に追いつめられていることを実は指摘したわけであります。  そういう中で、経営安定対策の重要性、これについていろいろお話がありましたのであえてまた申し上げることもないと思うんですけれども、今お話があった中で、WTOで認められている緑の政策、これは、所得政策を進めるために大きな論拠になると私は思います。そこのところにおいて、今後、農民運動といいますかそういう中でここはぜひ強く主張していただきたいと私からも思いますが、この問題について何かさらにありましたらちょっと御意見をと思います。
  149. 北準一

    北準一君 今米のところで稲経があるんですが、今太田原先生からもお話があったように、あの論議があった時点から、私どもは不十分だというとらえ方です。これはもう、やはり際限なくこれ以降価格というものは上昇は望めないだろう、それが今の国際的な視点だというとらえ方を私らはしていますから、この稲経のところは全く役に立たない。  ですから、所得補償政策というのは、私らは、例えば勤労者世帯との所得格差是正といいますか、北海道なんかは特にそうですが、今申し上げたようにこれは歴然としてあるわけですから、そこを埋める政策として、先ほど金田先生からもお話がありました国民合意あるいはそういうコンセンサスを得られるのかという部分ですが、私はもうその機は熟していると思っていますし、今それをしっかり主張して入れるべきだと私なりの感覚で思っています。国民の皆様は、それは一二〇%とはいかないかもしれませんが、完全に合意がとれると私は思っております。そういう感覚です。
  150. 小平忠正

    小平委員 ありがとうございました。  時間も余りないので、最後に辻さんにお伺いします。  消費者立場で、全道に七十四ある協会、安全で良質な食料のために頑張っていらっしゃる、本当に御苦労さまです。特に環境の面、それから、言うならば、遺伝子組み換えのようなことを例にとるまでもなく、今の農産物が非常に危険である、そういう方向の中で厳しくチェックをされながら活動されている、本当に御苦労さまであります。  そういう視点の中で、この新しくつくろうとする基本法の中で、特にこの問題、環境あるいは消費者サイドの観点から指摘がありましたが、特にまた留意される点がございましたら。
  151. 辻冨美子

    辻冨美子君 私どもは地産地消という運動をしております。それだけでなくて、心配のある輸入品よりも国産のものを食べたいというふうに運動しておりますけれども、国産品は輸入品よりも何倍も高いというふうになりますと、やはりどうしようかなということになります。せめて何割か、二割だとか三割だとかぐらいでしたら国産のものを選ぼうということにもなると思います。先ほどから所得補償ということを太田原先生もおっしゃっていましたけれども、やはりそのくらいの価格消費者に出せるような政策というのですか所得補償というのですか、そういうところを考えていただきたいと思っております。
  152. 小平忠正

    小平委員 ありがとうございました。終わります。
  153. 松岡利勝

    松岡座長 次に、木村太郎君。
  154. 木村太郎

    木村(太)委員 四名の先生方、本当に御苦労さまでございます。時間が限られておりますので、早速御意見をいただきたいと思います。  まず、きょうはもちろん北海道であって、北海道を代表する各分野の皆さんの御意見をいただいたわけですけれども、例えば、皆さんが北海道農業を身をもって実感しながら御意見を述べた。だとすれば、北海道以外の都府県の農業がどうあるべきかということもある面では、視点を変えれば感じることができると思うんですが、その点、御意見がありましたら、太田原先生からでもいただければと思います。
  155. 太田原高昭

    太田原高昭君 北海道での公聴会でありますので北海道のことを中心に私も申し上げましたが、申し上げたことは、基本的に全国的なことに当てはまると思います。専業農家の問題にいたしましても、北海道は専業農家が非常に分厚く存在するわけですが、都府県でも、頑張っている専業農家、たくさんいらっしゃいます。その人たちは、恐らく北海道の専業農家と同じような状況にあり、同じような規模を持っていると思います。  特に、私の所得補償について、中山間地よりも北海道の中核農家だというふうに聞こえたとすれば、それは言い方が悪いのでありまして、中山間地への、つまり条件不利地対策というのは当然とるべきであって、特に都府県の山村というのは、これは大体、日本のいろいろな稲作農業も、鎌倉、中世時代に山村ででき上がった農耕文化が海岸平野までおりてきた、そういう歴史でありますから、まさに日本の文化のふるさとであるわけですね。そういうところをしっかり守るというのも、これは国際的な、日本政府の重要な義務になるだろうというふうに思っております。  そういう点で、特に都府県、北海道ということを峻別して申し上げるつもりは私はございませんけれども、北海道政策変更影響を一番強く受けている、そのことを通して全体を見ていただきたいという気持ちがあるわけでございます。  以上です。
  156. 木村太郎

    木村(太)委員 それは、例えば先生の先ほどの御説明ですと、規模拡大して、そしてまた専業農家も多いという北海道農家の姿がある、だとすれば、都府県の方はむしろ規模も小さいし、兼業農家が多い。しかし、私から見ると、先生おっしゃるとおり、北海道農家方々も負債を抱えて大変厳しい。しかし、専業が余りいない。兼業が多くて規模も小さい都府県の農家の方も、農業から上がる収入というか、それは大変厳しくて、むしろ兼業によって、他のお仕事でそれを補てんしているような感じがあるわけですね。  我が国の農政全体から見ても、やはりこれは北海道だけでなくて他の地区でも、基本的には、経営コストの削減とかということで規模を拡大して、いい例で言えば圃場の整備とか、いろいろ都府県でもあちこちやっているわけですね。そうすると、今の姿を考えて、どっちに行っても先が見えないという思いを私は持っているものですから、むしろ皆様方の視点から見た場合、では規模が小さくて兼業農家の地帯に対して御意見があればということで御質問させていただきました。  もう一つ次にお聞きしたいと思いますが、先ほど来、所得補償お話が続いたわけですけれども、直副会長さんもおっしゃっていましたが、十年産の稲作から米の所得補償という制度、安定政策が始まった。しかし、十年産からスタートしたばかりなんですが、先ほどの御意見ですと、既に十分だというふうな考えを持っていないというふうに私は聞こえたんですけれども、どうでしょう。  稲作に関して言えば、十年産から始まったこれだけでなくて、さらに新たなるものが既に必要なのかどうか。また、制度そのものは仮にいいとしても、中身がもう少しこうあるべきだとかいうような御意見がありましたら、ちょっとお聞かせいただければと思います。
  157. 直宗治

    ○直宗治君 市場価格でもって私たちのお米の値段が決められる、そのことについては、新しい法律でもって出発したことでありますから、否定はいたしません。  ただ、現状の中では、北海道の十年産の予想価格が市場でもって大体平均一万五千二百十八円ぐらいになるだろう、きらら三九七でもって販売されるようになるだろう。補てん基準価格は、今は三年間ですから高いんですよ。これは一万六千九百五十六円なんですね。そこから下がった分の八〇%を補てんしようということです。大体補てん額が、今正式に決定したわけですけれども、千二百四十円。私たちは、まあ千三百九十円ぐらいになるか千四百円になるかなと思っておったんですけれども、若干米が上がりましたのでそういう価格になっております。  それから、やはり私たち北海道は、遠隔地、これは生産地なんですね。消費地ではないわけですよ。いわゆる五十万トンの米を生産している。まず消費者に売る米だけでも五十万トンを生産しているということですね。それを府県まで全部輸送をかけておる。そして販売促進をする。それらの倉敷だとかもろもろの経費が三千四百円かかるということになるんですね。そうすると、農家手取りが一万二千九百円になるわけですよ。北海道生産費は全国から見て大体八〇ぐらいで落ちついているんですけれども、これが一万五千五百八十円ぐらいになるんですよ。そうすると、単純に計算しても八三%しか補てんされていないということになるんですね。この経営安定対策も、高いものが一年なくなればまだ下がってきます。しかし生産費は下がらないわけですね。下がればいいんですけれども、下がるように努力しますけれども下がらない。  だから、そういう中で稲経で、要するにそれだけでもって全部補てんできるのかということ、今生産者が二で政府が六でもって経営安定対策をやっているわけですけれども。だから、それをもっと充実する。あるいは、先ほど言ったように、面でもって、経営規模が、例えば全国平均が一町一反ぐらいというんであれば、北海道みたいに五町の、五ヘクタールの平均面積、二十町あるいは十五町という面積もある。だから、画一的な農政でなくして、電信柱の値段が決まっているのと同じ、そういうのではなくして、専業地帯はその専業地帯のメリットを生かして、しかも、そこでもって経営ができる価格なり所得なりをどうやって補てんするのかという新たな視点でやはり考えなければ、一番経営の大きい、国の農政にのっとってやってきた、しかし振り返ったときには、全く経営規模を拡大しないで、二町ぐらいでもってじいちゃん、ばあちゃんでやっている方が借金もなくて裕福だったというのだったら、今まで展開した農政はどうなっているんですか、これを私は言いたいんですね。それは、地域差だとかなんとかいろいろあります。  もうちょっと言わせてもらえれば、ちょっと論外になりますが、水道水でもって稲をつくっているところがたくさんあるわけですね。だから、そういうところが本当に同じような政策の中でいいのか、そういう一面も私たちの仲間から声が出るんですね。大阪へ行ったら水道水で稲をつくっておったぞ、あれは経営がペイするのか、どうしてああいうことをやっておるんだろうな、そういう見方もあります。  したがって、私たちは、政治というところでもって、やはり伝統と文化とそれなりのものがそれぞれの地域にあるわけですから、北海道のような専業地帯で、面的にやれるところはやはりそういうものを生かせる農政の展開をしていただきたい。そのために、先ほど言ったように、画一的でなくて、地域地域のめり張りのきいた施策がやはりこの際必要でないでしょうかということを申し上げたいんです。  以上です。
  158. 木村太郎

    木村(太)委員 続いて聞きますが、所得補償制度でいいますと、地理的に見た場合に、平場というのが先ほどもありました。私もそれをなるべく検討すべきだと個人的にも思っているんです。  もう一つ考え方として、これは私は政府にももう質問等しているのですが、いわゆる価格制度でなくて、農産物品目別のいわゆる所得補償制度なるもの。実は、私は隣の青森県なのですが、特に農協の中央会とか農業者団体、市町村からの要望があって、ことしからリンゴに関しての、名前は価格安定制度なんですが、実際は所得補償制度機能を持っているんですね。これはすべて一気に全部の農産物はできませんけれども、自給率向上維持拡大ということを考えた場合に、国内農産物の中の幾つかの品目で、まだ高水準の自給率があるものは何々なのか、だとすれば、この維持拡大、これから下がらないためにもどうしたらいいかということを考えれば、品目別所得補償制度なるものも検討すべきだ、もちろん検討した後の結果ですけれども、というふうに私は個人的には思っているんですが、この点、御意見があればお伺いさせていただきたいと思います。
  159. 太田原高昭

    太田原高昭君 簡単に申し上げますと、賛成です。  特に、日本農業は意外に主産地化、地域分業が進んでおりますから、実際の所得補償政策導入ということになれば、やはり作目別という視点を入れないと実効的な政策はできないと思います。しかし、それだけではなくて、やはり経営全体としてどうなのか、これで農業で生きていけるのかどうか、その観点も同時に必要ですから、複合経営もございますから、ここのところは、組み合わせて、有効な政策をつくっていただきたいなと思っております。
  160. 木村太郎

    木村(太)委員 時間がもうほとんどなくなりましたのでもう一つお聞きしますが、規制緩和という言葉がありますが、よく解釈すれば、いいものがより安く便利に使える。具体的に言えば携帯電話。私も一台持っていますが、これだけ短期間に普及して、当初、携帯電話がデビューしたときから見ると、電話機そのものも通話料も安くなって、今では高校生でも持っているというような感じであります。  では、農家消費者立場になったときに、米も他の農産物もなかなか値段が安定しないし低い、しかし、農機具、肥料、農薬、農業資材関係は何となく毎年値段が少しずつ高くなっているという声をよく私の周りの農家からも聞きまして、また、それが決して小さなことでないというふうにとっているように私は思えてなりません。農業経営する、生産していく上で必要なもの、使わなければならないものが、本当に、いい物がより安く便利に農家に渡っているかどうか。これはもちろん、例えば農協を通じて購入する場合もあるだろうしいろいろあると思います。また、農協を通じての購入の形態に対してもいろいろな御意見もあるのも事実でありますが、むしろ北さんに、現場の声としてお聞かせいただければと思います。
  161. 北準一

    北準一君 規制緩和といいますか、今いろいろ規制緩和の方向で論議されて、農業の分野でも、農薬の登録免許だとかいろいろなところでその効果はもう働いてきているということは言われていますが、ただ、今現在、実質それが顕著な数字には出ていないですね。私は、規制緩和だとか行財政改革といいますか、そっちの方向は当然だと思っております。ですから、例えば農業予算云々だとか所得補償政策を組むときに、それでは財源がどうなんだとか、実質はやはりそういう論議で詰まっているんだと思いますね。  ですからここは、私は、やはり農業政策全体を思い切っていわゆる行革、行財政改革の俎上にのせる。農業ほどいろいろな諸団体、機関やら業界が寄ってたかっているところはないと私は見ています。ですから、そこら辺の大胆な改革というものがやはり要るんだろうと思っております。三兆五千になるか、いろいろな予算が使われ、国民の目から見て、それが農民のところへ行っているんだろう、そういう見方と農業批判、しかし実際はそうではないというこの現実。ですから、そこでの改革的な視点がぜひ必要、そんなように思っております。  ですから、規制緩和がストレートにいわゆる耕作者、農民のところに効果あらしめる手段というものを皆さんでぜひやってもらいたい、そう思っています。
  162. 木村太郎

    木村(太)委員 時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。
  163. 松岡利勝

    松岡座長 次に、菅原喜重郎君。
  164. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 自由党の菅原喜重郎でございます。  きょうは、公述人の方々には御苦労さまでございました。いろいろ御意見をお聞かせいただきましてありがとうございます。  私、自由化しても食える日本農業の確立を図るべきだなんという大きなテーマを掲げた主張を今日までしてきたわけでございます。そういいますのも、かつて私、北欧の農学校、園芸学校で学んだ経験がございますので、一つに、そういうような向こうの農業形態をイメージしているからでもあります。  そういう観点からいたしまして、北海道が三割農政に、農家数が減少した、それも膨大な負債を背負っての結果だといいましても、しかし数字から見ますと、EUの農業形態と大体対抗できる数になってきている。そういうことですから、私も中川農林大臣に、北海道だけは、力を入れるといわゆるEU並みの専業農家が育成できるし確立できるんだから、そういう画一的な政策でなくして対策を考えるべきではないか、殊に北海道出身の大臣なんだからということで質問もしておりました。  それで、太田原公述人にお伺いするんですが、今回の農業基本法の中では自給率目標数値が示されなかったのが残念だということを言われております。この自給率目標を、ここ十年のスパンで日本でどのくらいの数値を上げられるのか、あるいはこのままでは下がるのか、そういう見通しについて、また、そういう公述人の数値を実現するためには北海道農政にこういうことをしてもらえばいいというような抱負がございましたらお聞かせいただきたいな、こう思います。
  165. 太田原高昭

    太田原高昭君 その点については、私は、近く明らかにされるとされている五年刻みの政府計画の最初の五年間の目標としては、五〇%以上というふうに書いていただきたい。将来的には、二〇二〇年くらいまでには、できれば基本食料の自給七〇%を目指すということ、それが国際的な責任として日本が示すべき目標であろうというふうに考えております。  そのためには、先ほどから申し上げておりますように、自由化しても食える日本農業、これはすばらしい理想でありますが、今のままで自由化したら北海道でさえ食えないということを実証してきたのが、この間の北海道の歩みだったのではないか。  ですから、当面五〇%、将来的に七〇%というような理想を実現するためには、やはり今までの農政の仕組みを相当変えてもらわなければならない。少なくとも、この自由化がWTO協定によって国際的に日本政府は断れない立場にあるんだということであれば、EU型の所得補償で農民を鼓舞激励してもらう、特に、若い人が魅力を持って従事できる職業として農業を再生させるということが基本だろうと思っております。
  166. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 それでは次に、直公述人にお伺いします。  実は私、先ほど言いましたような自由化しても食える日本農業の確立、そのためには、かんがい排水等基盤整備は国家責任でやれ、こういう主張もずっとしているわけです。そういう点で、実は、公述人は、土地の基盤政策というのは万全の対策をしなければならぬという主張もされておりました。また同時に、やはりこれは北海道立場からの主張だと思うんですが、全国画一的な農政ではだめだ、今回の品目別生産目標数値を明確にしてほしいという要望で、もしも、全国画一的な農政じゃなく、北海道でも、品目別生産目標数値を明確にして、専業農家として食える形態を考えるとしたらどういう形態をお考えになれるか、北海道農業の実態から、現実的な御抱負がありましたらひとつお聞かせください。
  167. 直宗治

    ○直宗治君 品目別、先ほど冒頭、北海道農業の現況についてということでもって申し上げたわけですけれども、例えばてん菜、ビート糖、一〇〇%これは北海道しかございません。それから麦、これは約六〇%の生産であります。それからバレイショ、これも六〇%を超しております。あるいは酪農、これも約四〇%以上を超しておる。こういう品目別に見ましても、日本一の生産量があるわけでございます。したがって、畑作経営一つとっても、これだけ大規模な畑作農業というのは日本北海道だけしかないんですよ。日本の財産だと私は思っておるんですね。  今麦価が、民間流通になって、新しい制度の中でもって価格が決められようとしております。だから、一個の個人にしてみれば、私の畑作でもって三十町つくっておりますよ。これは四年に一回ずつ輪作しなければだめなんですよ。だから、そういう意味において、各産物のそれぞれの価格というものが、今までは政府でもって決めて交渉しておったんですけれども、これから民間に移行される、そのときの不安があるわけですね。  だから、それらのものが下がったとき、例えば一品目下がっても経営全体がだめになりますから、そういう意味において、トータル的に輪作体系でもって所得確保でき得る、そういう品目別施策というものが必要。例えば大豆であれば、大豆はまた特に国が力を入れているから思いが違うでしょう。そういう政策を展開していただきたいということを申し上げておるんです。
  168. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 そういう点では私も大賛成で、現実的にも自信があります。  それでは次に、北公述人にお伺いしますが、東北以西、大体裏作が可能なんですよ、麦の裏作。ですから、私は、二百万ヘクタールの優良水田、かんがい排水と一緒に国家が整備すれば、表作で大体一千万トン以上、裏作でも一千万トンの麦ができますから、この麦は、何も売らなくとも自分の飼料として家畜に与えて、いわゆる堆肥の循環、土地に、水田に還元していけば、政策さえよかったら国家安全保障である主食だけは農民の力で十分確保できるぞ、だから、土地基盤整備とかんがい排水を、これは国土改善、国土改良の立場からも、建設省、農林省、国土庁、三省庁一緒になって実施すべきだということを主張してきているわけです。  ただ、北海道で、表作だけの米作で果たして、価格の点、品質の点で、そういう本土並みに対抗ができるのかどうか。この点について、面積拡大とか今言った基盤整備、かんがい排水が完備してもどうなのか、その点をお聞かせいただきたいな、こう思います。
  169. 北準一

    北準一君 生産性では、府県のいわゆる単当生産額北海道は、今の時点でおよそ三分の一ぐらいと言われています、府県で十万上がれば北海道は三万と。距離だとかそこでつくる品目だとか形態でそれは違うと思いますね。  しかし、今先生の土地改良事業あるいはそういう資本投資が、北海道は、例えば地下水だとか泥炭地の問題だとか、条件をまだ改良しなければならない、あるいは整備しなければならぬところがまだまだたくさんありますね。北海道では、いろいろな整備事業が実施されてきているのは今おおむね半分ぐらいです。  ですから、私は、農業者という視点じゃなくて、いわゆる国の財産として農地、土地を考えるべきだ、基本的にそう思っています。農業をしている者だけがそれを引き継ぐとか、そうではなくて、国民すべてがその就業の機会を持つとか、国民が責任を持って耕作をしていく、そういう視点に立てば、どこの土地のどういう政策が必要かということはもうおのずと出てくると思うんで、そんな認識をしております。
  170. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 本当に、農地の優良化には国家に大変な責任を持ってもらわぬといかぬ、こう思っているわけなんです。  それでは、辻公述人にお伺いします。  消費者立場からいいますと、良質な、安全な食料を、そしていわゆる国際並みに安い価格で供給してもらうというのが消費者の本音だと思うんです、先ほどもお答えがあったんですが。しかし、こういう安全性の問題ばかりに重点を置かれて主張されますと、価格は高くてもいいのか、こういう二律背反的な疑問が出てくるわけです。ですから、そういう価格の点は、国が所得補償でやれということで果たしていいのかどうかということなんです。  これから自由化になっていきますと、国内産が国際水準の価格と大体どのくらいの差であれば消費者は買うか、こういう一つの見通しなんです。三倍とか四倍になってきたんじゃとても買わぬだろうし、そうすると、二倍以内かどうかというところなんでしょうが、こういう点はどうなんでしょうか。
  171. 辻冨美子

    辻冨美子君 私ども協会の中で話し合っている価格では、外国産よりも大体三ないし四割ぐらい高い、でもやむを得ないんじゃないかな、それぐらいでしたら選択の余地があるんじゃないかというふうに言われています。それぞれ、今いろいろなこだわりの野菜やなんかも出ていますし、価値観が違いますので、倍でも買うよという人がいるかもしれませんけれども、やはり納得できる価格というのを求めております。
  172. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 その大体の数値でもあらわしていただいて、どうもありがとうございました。  では、時間が来たのでこれで終わりたいと思います。本当にどうもありがとうございました。
  173. 松岡利勝

    松岡座長 次に、藤田スミ君。
  174. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 きょうは、公述人の皆さん、本当にありがとうございます。  私ども日本共産党も、現在のような日本農業食料状況では本当に大変なことになるという立場から、新しい基本法を制定するなら、日本農業の再建と食料自給率向上を確実なものにしていくためのものであらねばならないという立場でこの新しい法律案を見ております。  ところで、最初に北公述人にお伺いをしたいと思います。  三月のときにもわざわざ国会にお越しをいただきまして、本当にありがとうございました。北海道の現状は、きょうも、それからこの前も北公述人からも本当に詳しく聞かせていただき、私どもは、その発言を魂のように大事にしなければいけないという立場で農政の問題を考えているところでございます。あのときには、新基本法自給率なり国内生産というものをどう位置づけるかというところが大きなポイントだ、そこがすべてを決するんだというふうに発言をされていらっしゃいます。これは本当にそのとおりだと私は思いますけれども、信田委員長は、そういう角度からごらんになって、現行基本法より後退したと厳しい御指摘をされているというのも、新聞報道で読ませていただいております。  そういう立場からきょう六項目にわたる要望というものも出されていると思いますし、私ども、この要望についてもちろん異論があるわけではございませんが、一つ具体的に、農産物市場原理にゆだねても、いいものをつくれば高く売れるから大丈夫だというのが国会での答弁でございます。しかし、農水省の調査でも、それこそ規模拡大の優等生と呼ばれる道の七割に近い農家が先行き不透明、農産物価格が安いというふうに答えているわけであります。本当にいいものをつくれば高く売れて、だから市場原理にゆだねても大丈夫だということに対して御意見を聞かせていただきたいと思います。
  175. 北準一

    北準一君 今の国会論議といいますか委員会論議、いろいろされていると思いますし、今日まで現基本法で我々農民も一生懸命効率追求をやってきた、市場対応をしてきた、この延長線でまだ物が見られているんじゃないか。ここはもう限界を超えたわけですね。ですから、そこはもうすっぱり視点を変えなければいかぬだろう。ただ、優位なものをつくればあるいは品質主義でいけるんじゃないか、それは一部にはありますが、しかし、日本食料事情を全うすることにはならないと私は考えています。
  176. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 引き続いて、太田原先生にお伺いをしたいと思います。  太田原先生は、これも日経新聞の記事を読ませていただきまして、思わずそうだと私は声を出してしまいましたが、基本法改正のそもそもはWTO協定の批准、その失政のツケを農業者に回し知らぬ顔は困る、こういう御発言で、国の責任を強調しておられます。それは、きょう直公述人もこのことを強調されたんじゃないかというふうに思っております。  先ほどから何度もEUの問題が出ておりますが、この国の責任ということと、それからEUとの比較で、EUの所得補償政策についてもう少し詳しくお聞かせをいただきたい。EUのルグラ農業局長は、全部価格保証をなくしてしまうなんというのは愚かなことだと発言をされて、アジェンダ二〇〇〇の後も、つまり新しいWTO協定の後も価格支持制度は最低維持していくということも宣言されているというふうに思いますので、この点についてもお聞かせをいただきたいと思います。  大変長くなって恐縮ですが、もう一点だけ。  さすれば、必ず出てくるのが予算に限界ありという問題でございます。私どもは、農業予算そのものが国の予算の中でだんだんその地位が低められてきているということに対しても問題ありというふうに考えておりますけれども、先生は、農業予算の構造、予算構造のあり方という点についてどういうふうに考えていらっしゃるか、そこのところをお聞かせいただきたいと思います。
  177. 太田原高昭

    太田原高昭君 新聞記事まで目を通していただいてありがとうございました。  私は、この基本法改定の議論について最初から不満なのは、なぜ新しい基本法がつくられなければならないのかという議論が徹底して不足していたということです。最初から、現行基本法はもう古くなった、事情に合わなくなった、だから変えるのだということで説明をされている。しかし、そういう言い方をすれば憲法も変えなければならないということになるわけでありまして、基本法という名のついた法律日本に幾つかありますが、改定問題が起きているのは農業基本法だけであります。これはなぜなのか、国民にもっと説明すべきだというふうに最初から私は思っておりました。  それは、先生方はもう十分御承知のように、日本政府がガット農業合意を受け入れ、WTO協定を批准したから現在の価格支持政策を決めている農業基本法を破棄せざるを得なくなったというところにそもそもの発端があるというふうに私は思っております。そのことを明確に説明すれば、新しい基本法に何を盛り込まなければならないかという論点はおのずから明らかになります。そのことが非常にあいまいにされて、何かとんでもない論点も含めて、非常に脈絡のつかない議論がかなりされてきたのではないかという印象を私は持っております。  ヨーロッパ諸国は、これはアメリカ、カナダも含めてそうなんですけれども、ガット農業合意の結果、ヨーロッパ諸国も、輸出国でありますけれども、コストからいえば、アメリカやいわゆるケアンズ・グループに比べて大変高いわけですね。そのことを輸出補助金その他によって補償してきた。そのことについてはEU諸国も譲らざるを得なかったわけです。そのことを国民農業者に、これは政府の責任である。政府の責任で、特に農業者所得が下がらざるを得ないと。価格支持政策を捨ててはおりません、支持水準を下げざるを得なくなったわけですね。それで、三割下がった、その責任をやはり国はとるということを明言しております。  私は、これが一番わかりやすい対応の仕方でありまして、素直に考えれば日本政府もそういう対応をすべきである、そうすれば、これは消費者生産者を含めて、みんな納得するであろうというふうにずっと考えているわけであります。  それで、予算措置でありますけれども、当然財政問題ということになるんですが、この点は、今の農業予算の組み替え、それからウルグアイ・ラウンド対策費用の組み替えということがどうしても必要になってくるであろう。どちらかというと、農家の懐に入るよりは、いわゆる公共事業中心になっておりますこういう予算案を組み替える。EUやアメリカに比べても、日本農業予算は、農業者所得効果という点では非常に低い。ヨーロッパの共通農業政策で出している農業予算というのは、その八〇%が農家の懐に入る仕組みになっております。それに対して日本は、直接農家所得になるのは一六%しかない。非常に大きな違いがございます。ここのところを先生方にぜひ比較研究していただいて組み替えをすれば、そうびっくりするような予算をつけなければ、国民的合意が得られないような財政支出になるということは決してないというふうに私は思っております。
  178. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 ありがとうございます。  私どもも、農業構造を変えなければいけないということを常に主張しておりますので、思いがけないところで先生意見の一致を見て大変うれしゅうございます。  直公述人にお伺いをいたしますが、今、国の責任ということで、三割保証価格が下がれば、国がそれを三割補てんする、それは保険方式じゃないというふうに私は認識をしながら聞かせていただきましたが、この稲作経営対策のような保険方式で、市場原理導入されていく麦、それからその他の北海道の重要な農作物に当てられていけばどうなるか、それからまた、それらを本当に維持していくために、そして拡大していくために、その所得補償の問題について一言お聞かせをいただきたいと思います。
  179. 直宗治

    ○直宗治君 まず、今回の基本法の立法化を今議論されているわけですけれども、このことに対していわゆる国民的なコンセンサスを得ようと議論しているわけですけれども、基本法というのは農業者のものか、消費者のものか、国民のものかということなんですね。  農業は、これは職業の一つにしかすぎないわけですよ。職業の選択を農業に求めて農業者をやっておるということなんですね。だけれども、国民の目から見れば、これは食料の供給なんですよ、食料というものをだれかに供給してもらわなければいかぬということなんです。その点が、私たちは議論するときに、農業者にあれもやってくれ、これもやってくれ、所得まで補償してくれと言うのはおかしいじゃないかといいますけれども、そのことの見きわめ方がどうなるんですか、なぜ立法化しなければならぬですかということなんですね。私はやはりそこを強調したいんですよ。  農業というのは国民全体のものであるということは言をまたないところなんですよ。ただ、そのことばかり言ったって、国際的なこのような事情の中でもって、高ければいいというものでもないしということになれば、やはりある程度供給する価格を下げて、消費者にもその喜びというものを与えなければならない。そのときに、兼業であれば別の世界でもってお金を得て農業はやっていけるでしょうけれども、北海道は開拓以来農業を基盤として発展してきた、この第一次産業を基盤とした北海道の土地柄としては、そういう基盤の拡大にも限界がありましょう。私たち農家でもって幾ら働いても、二十町の水田を一人でもって植えて家族だけでやるとなったら、並のものではないんですね。しかしながら、将来はやはりそこまで頑張ろうと。だから、それに対しての所得は、都市勤労者並みの所得を得るために、それをやはり面でもって、面積でもって幾らか所得補償をするとか、あるいは価格でもって所得補償をするとか、国民が必要とするならば何らかの措置をしてもらわなければ、私たちは、幾ら頑張っても限界があります。  そのために、自給率を上げると言っても、所得のないところに労働はあり得ないわけですから、若い人たちもやはり農業をやってみようかといって意欲を持って取り組める、そういう政策を今回の基本法でやっていただきたいということを私は申し上げているのです。そのために私たちも努力をするけれども、価格だけでは所得補てんされないわけですから、その方策は稲作経営安定対策でもやっておるでしょうし、酪農でもって、今回二円対策の中で新しい視点で取り入れた政策等もあるということで、そういうことを私は考えていただきたいということなんです。
  180. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 時間が参りましたので、消費者の代表である辻公述人から御意見を述べていただくことができないことをお許しいただきたいと思います。  私どもも、農業国民全体の問題だ、実は私も消費者、大阪の人間ですから、そのものでございますが、それにこだわって頑張っておりますし、日本共産党も、農業の問題は生産地の問題、消費地の問題ということではなく、国民全体の問題という認識でございます。ありがとうございました。
  181. 松岡利勝

    松岡座長 次に、前島秀行君。
  182. 前島秀行

    前島委員 公述人の皆さん、御苦労さまでございます。最後ですので、しばらくおつき合いのほどお願いをいたします。  私たち社民党として、今度の新基本法、いわゆる農業多面的機能だとか農業の持続的可能性を展開するという新しい概念が入ったことは評価できるなと思っています。ただ、それを具体的に保証するといいましょうか担保する政策、手法となってくると、各論になってくると、腰が引けている面が多いな、そんな印象を実は持っているわけでございます。その代表的なものが、食料安定供給における国内生産の位置づけ、その維持拡大ということをやはり明確にすべきではないだろうかなと実は思っています。  その点については参考人の皆さんと全く意見が同じですので、私が御意見を伺いたいのは、いわゆるデカップリング、直接支払いについてです。  私は、こういう政策をやるときにはやはり国民的な合意が必要だ、提起をする側は、哲学的なと言ってはちょっと表現がオーバーですけれども、やはり根拠をちゃんと明確にして、議論をした上で出発しないと、中途半端になったり、逆にマイナスになってしまうなということを実は心配するわけですね。  この政策導入された根拠、背景というのはやはりあるだろうと私は思いますね。国際化の中で価格支持政策には限界が来た、国境措置にも限界が来た。だから、やらなくちゃいかぬ側面は、デカップリング、直接支払い方式という概念を導入していかぬと国民立場からもだめなんだぞという意味で入ってきたんだろうと思いますね。やはり国民議論をして、その辺のところの合意を得て、信念を持ってやらないとふらついてしまう、腰が引けてしまうのではないかな、私はこういうふうに思っているところです。  そこで、最初に辻公述人に、消費者の側から、国民の側から、こういう政策をどう受けとめていらっしゃるのか、あるいは、農家所得不足を補うことについては、いや、農家の勝手じゃないのとか、こういう御意見も正直言ってなくはない、また、そこを気にしている側面もなくはないんでありますが、その辺のところの受けとめ方を聞かせていただけるとありがたいなと思います。
  183. 辻冨美子

    辻冨美子君 今おっしゃったように、なぜこんなに農業予算を使わなければならないのということが私どもの話し合いの中で出ることも確かです。ですけれども、いろいろ話し合っていくうちに、やはり私たちが納得できるような情報公開をもっとしてもらいたい、そして、先ほどからおっしゃっているように、国民的に、みんなでこの基本法を考えようというのであれば、それはそれで、私たちも意見をもっと言って、いい基本法をつくってもらおうじゃないかというような話し合いになっているんです。
  184. 前島秀行

    前島委員 ありがとうございます。  私は、農業基本法、今の置かれている状況から見ると、農民だけの問題ではないし、生産者だけの問題ではないし、農村だけの問題ではないんで、ぜひ消費者側からも積極的な御意見を聞かせていただけるとありがたい、こういうふうに思います。  次に、太田原先生にお聞きしたいんでありますが、この直接支払いという方式、私も大臣等々に委員会で質問したんですが、現時点の議論は、中山間地対策、しかも、ほっておくと耕作放棄地になる可能性のあるところ、その大きいところを対象にしてやろう、非常に限定されているわけですね。やはりここに、基本的にこの政策、この理念の受けとめ方の限界があるんじゃないだろうか。では一挙にヨーロッパ型に、私もフランスの新しい方法をちょっと資料で読ませてもらいましたが、現実問題としてそこまで一挙にいくのかなという心配も正直言ってなくはない。  しかし、せめて、私たちももう少し対象地域は拡大すべきではないだろうか。例えば環境保全農業には、平地といえども中山間地としての適用をしてみるという側面とか、あるいは都市と農村が交流する事業なんかは、地域政策としても国土対策としても積極的に適用してみるとか、そんな視点も、当面、緊急的に今必要ではないか、後にヨーロッパ型に、こういうふうなことは考えられるんですが。  そういう面で、現実的に配慮しつつ、せめて当面はこれぐらいは適用すべきではないかという点で、北海道から見て、あるいは専門家として、研究者として見て、御提言、御指摘いただける点があるかないか。  それともう一つ、恐縮ですが、支払い方式として、個人に直接支払う方法がいいのか、あるいは、地域政策地域との関連から見ると、必ずしも個人じゃなくして、自治体等々を通じてあるいは団体等々を通じてやる方法もあってしかるべきではないだろうか、その点について先生の御意見を聞かせていただければと思っています。
  185. 太田原高昭

    太田原高昭君 農水省でも、今財政事情もあり、大蔵との交渉もあり、いきなり全面的なものは難しくて、とにかく直接支払いというところをどこかに忍び込ませておいて後からだんだん拡大するのだ、そういう説明を私たちも受けております。それが現実的な方策であれば、それはそれで結構だと思うのですが、ただ、この直接所得補償方式について、やはり正確な認識が前提になると思います。  今農水省の足を引っ張っている一つのことは、以前、どこがどういう調査をしたかということは正確に申し上げられないのですが、全国の自治体、市町村の産業課長クラスを対象にして、農水省だったと思います、直接所得補償方式についてどう思うかというアンケートをしているのですね、地域を守るためにこういう方法はどうかと。それに対して、意外なことに、七〇%の反対という結果が出てきた。これはなぜか。どうもそれは説明の仕方が多分悪かったと思うのですが、反対の理由が、これはいわば生活保護のようなものである、農業者の自尊心を傷つけるとか依存心を強めるとか、だから反対だという理由が多かったわけですね。もしそういうふうに受け取られる説明の仕方をしたのだとすれば、これは説明自体が間違いでありまして、直接所得補償というのはそういうものではない。  大体、これは何度も言っているので繰り返しませんが、明らかに国家責任に対する補償、もっと言えば、フランスでは賠償という言葉を使っているのですが、そのことをはっきりさせて、恩恵的なものではなくて権利なんだということを明確にする必要がある。そのことを一つ明確にすれば、進め方はいろいろな進め方があるのではないだろうか。
  186. 前島秀行

    前島委員 ありがとうございました。  北公述人にお伺いをしたいと思います。  いわゆる所得補償政策、いろいろな御議論がきょうもありましたが、当然品目別検討すべきである、特に、日本農業といいましょうか、日本食料の柱になるものはやはり品目別にこの所得政策は確立すべきである、それに携わる農家、農民の皆さんの再生産の可能なものをつくり上げていくべきである、こういうふうなことは当然だろうと私は思います。  それで、北海道はどうかなという側面はあるんですが、専業農家、規模拡大が大きいわけでありますが、北海道以外の内地の農業というのはかなり兼業といいましょうか主要作物もいろいろある、こういうことになってくると、品目別だけの所得補償政策で大丈夫なんだろうかという側面が正直言ってあるんですね。まあそんなに欲をかかないで、せめて品目別だけでも、こう言えばそれまでのものですが、やはり農家の実態、地域の実態からすると、品目別作物別ではなくして、経営体農家という一つの単位の中でこの所得補償というものも考えていくべきではないだろうか。そういう側面がないと、やはり営農というものも、あるいは食料確保という面もどうしても偏ってきてしまうんではないか、こういうふうな御意見等々もあります。  その作物別、品目別だけでいいか、経営体農家個人、農家という単位の中でこの所得補償を考える必要があるかないか、これが一つ。  それから、食料自給率を上げるということはもう必然的に、今、日本の穀物等とエネルギーで、自給率の低い小麦とか大豆、小豆等々の生産あるいは飼料作物をどう拡大していくかということが自給率につながる。このそれぞれの作物というのは北海道の主要作物である。そうすると、太田原先生が言われたように五〇%を目標にすると、その辺のところを具体的にどうするのだというところの現実的な問題なのかな、こういうふうに私は思います。  そこで、北公述人に、北海道の側から見た、この自給率を上げるためにも、小麦だとかあるいは大豆だとか等々、当面政府のやるべき対策といいましょうか施策は何なのか。トータルで言えば、所得を補償してくれることだよ、再生産が可能になることだよということはわかっているんでありますけれども、それより具体的な、何か要望する施策がありましたら御指摘いただければというふうに思います。
  187. 北準一

    北準一君 品目別にすべきか、先生お話がありました経営体というものを視点に入れるか。私は、当面論議されているのは品目ということで、そこはステップとしてはあるんだろうと思っていますが、しかし、基本的な対策あり方は、経営体もしくは面当たりといいますか、例えば畑作で三十町経営していれば、その一つの耕作を続けていく、耕作を維持していく、生産を増加させるという視点で、いわゆる面、経営体というのが私は本来的な視点だと思っております。それと、誘導していく手法として、例えば品質の部分だとか品目というものも当然一部にはあると思いますが、大きくは経営体あるいは面の対象、そんなような考え方が一番ベターだろうと思っています。  それで、先生、一つ所得補償の起点というものが、先ほどちょっと申し上げたように、いわゆる生活所得がどういう手法で補てんされるんだということだと私は思っています。例えば私も今いろいろな調査をして、経営収支は五百万、六百万と、収支の所得は出ているんですね。しかし、そこからいわゆる資本になる土地だとか負債を償還した場合に、二百万とか三百万とか三角印がついたり、生活ができないというこの実態が問題なわけですね。  ですから、経営安定ということのとらえ方がどういう形でとらえられているのか、そこが一つ問題がある。ですから、直副会長も言われましたように、生産で労働対価としてどうあるべきか、ここがすべてその分かれ目になる、そんなように思っています。  それから、麦、大豆の品目自給率向上、これは当面、今の麦、大豆等のいわゆる所得にかかわる部分を下回っては、もうこれは生産維持も拡大もまるきりできないと思っています。ここは、北海道、府県といわず、やはり日本全体でどういう増産体制をとるのかということがポイントだと私は思っております。もちろんこれは、転作等も含めて、府県も含めて、いわゆる農地の有効利用を、耕作利用をどうやって図っていくかという視点でとらえていけばおのずと答えが出てくるんではないかなと思っています。
  188. 前島秀行

    前島委員 直公述人には質問できませんで済みませんでした。土地問題をお聞きしようかなと思いましたけれども、時間が来ましたのでこれで失礼いたします。どうもありがとうございました。
  189. 松岡利勝

    松岡座長 これにて質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  意見陳述者方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。  拝聴いたしました御意見は、法案審査にこれから大いに役立ててまいりたいと思っております。改めて厚く御礼を申し上げる次第であります。  また、この会議開催のため、格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして心より感謝申し上げます。  これにて散会いたします。     午後三時三十分散会