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1999-05-20 第145回国会 衆議院 農林水産委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月二十日(木曜日)     午前十時二分開議   出席委員    委員長 穂積 良行君    理事 赤城 徳彦君 理事 増田 敏男君    理事 松岡 利勝君 理事 横内 正明君    理事 小平 忠正君 理事 木幡 弘道君    理事 宮地 正介君 理事 一川 保夫君       今村 雅弘君    小野寺五典君       金子 一義君    金田 英行君       岸本 光造君    熊谷 市雄君       熊代 昭彦君    塩谷  立君       鈴木 俊一君    園田 修光君       戸井田 徹君    中山 成彬君       萩山 教嚴君    御法川英文君       水野 賢一君    宮腰 光寛君       宮本 一三君    矢上 雅義君       安住  淳君    今田 保典君       鉢呂 吉雄君    堀込 征雄君       上田  勇君    漆原 良夫君       木村 太郎君    井上 喜一君       佐々木洋平君    菅原喜重郎君       中林よし子君    藤田 スミ君       前島 秀行君  出席国務大臣         農林水産大臣  中川 昭一君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      高木  賢君         農林水産省経済         局長      竹中 美晴君         農林水産省構造         改善局長    渡辺 好明君         農林水産省農産         園芸局長    樋口 久俊君         農林水産省畜産         局長      本田 浩次君         農林水産省食品         流通局長    福島啓史郎君         食糧庁長官   堤  英隆君         水産庁長官   中須 勇雄君         自治大臣官房総         務審議官    香山 充弘君  委員外出席者         文部大臣官房審         議官      銭谷 眞美君         農林水産委員会         専門員     外山 文雄君 委員異動 五月二十日         辞任         補欠選任   木部 佳昭君     戸井田 徹君   神田  厚君     今田 保典君 同日         辞任         補欠選任   戸井田 徹君     水野 賢一君   今田 保典君     神田  厚君 同日         辞任         補欠選任   水野 賢一君     木部 佳昭君 本日の会議に付した案件  食料農業農村基本法案内閣提出第六八号)     午前十時二分開議      ————◇—————
  2. 穂積良行

    穂積委員長 これより会議を開きます。  内閣提出食料農業農村基本法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安住淳君。
  3. 安住淳

    安住委員 おはようございます。  きょうで四日目に入りました農業基本法、しかし実際はかなりもう質疑をしていまして、私もきょうで四回目ぐらいの質問でございますが、短い一時間の時間でございますけれども、きょうはちょっと別の観点といいますか、法案中身というよりも、我が国農業が今後どういうふうな推移をするのかということを、いろいろな観点から少しお話をさせていただきたいと思っております。  一九六一年に制定された農業基本法が始動して以来四十年弱の時間が過ぎましたが、私は、今日本農業というのは、大きな意味で言えば構造調整の時期だろうなと思うんですね。だからこそ基本法というものが出てきたわけでありますが、その中で、それぞれの分野にわたって、では、農業基本法が一九六一年にできてからどう変わってきたのかということと、それに基づいて、それでは、そのまま推移をすれば、十年後、また二十年後どうなるのかということをまずきちっと踏まえなければならないと思っております。  最初中川大臣に聞きますが、私のこの感覚では、大きな構造調整の時期を迎えたというのは、大きな意味では、じり貧状態がどうも続いていて、その傾向に歯どめが全くかかっていない、それはある意味では、多種多様な施策を講じてきたにもかかわらず、その有効性がもうひとつではなかったかなという認識に私は立っております。  最初に伺いますが、まず、この基本法の中でも大きな争点になっている自給率の問題ですね。昭和三十五年にはカロリーベースで七九%、それが非常に低落をして四一%。それでは大臣、これは、今のままの推移でいけば、農林水産省では、例えば平成二十二年とか、今から先十年後というのはどのように推移すると思われておられますか。
  4. 中川昭一

    中川国務大臣 おはようございます。  まず、食料自給率、今御指摘のとおり、昭和三十五年にはカロリーベースで七九%であったものが、直近の平成九年には四一%となっております。  平成七年に閣議決定いたしました農産物需要及び生産長期見通しにおいては、実は二十二年という数字がないのでございますけれども、平成十七年度には四四から四六%と見通されております。これは、平成五年の数値を基礎に、生産についての持てる力の最大限の発揮によって、可能な限りの我が国農業生産維持拡大を意欲的に見込んだものであります。  また、就農人口高齢化等について申し上げますが、基幹的な農業従事者数は、昭和三十五年には一千百七十五万人であったものが平成十年には二百四十一万人でございます。基本問題調査会の論議の過程で、この異動等が継続することを前提として推計した平成二十二年には百四十七万人になると見通されております。このうち六十五歳以上につきましては、現時点で百七万人が平成二十二年には七十四万人になると見通されております。  農地面積につきましては、昭和三十五年には六百七万ヘクタールであったものが現時点では四百九十一万ヘクタールとなっております。基本問題調査会の議論の過程平成二十二年の面積推計しましたところ、まずケース一といたしまして、今後、農地転用耕作放棄地等のこれまでの発生状況が継続する、要するに今のトレンドで行くと仮定した場合には、現在の農地面積から壊廃面積を調整いたしまして四百四十二万ヘクタール、それからケース二といたしまして、農家戸数の増減あるいは経営規模の縮小、拡大等の趨勢が続いたという数字を入れて仮定した場合には、農業経営利用される面積としては三百九十六万ヘクタールとされております。  それから農家所得は、昭和三十五年には四十五万円であったものが平成九年には八百八十万円となっております。将来の推計は、物価、経済状況等にも左右されますので特に推計を行っておりません。  一戸当たり平均経営規模は、昭和三十五年には〇・九ヘクタールであったものが平成十年には一・六ヘクタールとなっております。平均経営規模としては将来の推計は行っておりませんが、平成七年に閣議決定した農産物需要及び生産長期見通しにつき農政審議会で議論した過程においては平成十七年の農業構造の展望を見通しており、ここにおいては、稲作単一経営では十ヘクタール程度規模経営体が約五万程度形成されるというふうに見込んでおります。
  5. 安住淳

    安住委員 質問をしないところまで丁寧に答えていただきまして、ありがとうございました。それはいいんですが、私もその数字は全部知っております。  しかし大臣、私が聞きたいのは、それでは個別に伺いますが、ここはもうなぜということに対してちゃんと答えてもらいたいんですが、例えば経営規模について、昭和三十五年の時点で〇・七七、あの農地解放時点でいろいろな数字がありますけれども、大体言われているのは、〇・四ちょっと、農地解放当時、平均〇・四ヘクタールぐらいだった。それが三十五年で〇・七七、今、七年で〇・九二ですよね。これは、集約化は図られたと思いますか。もし思ったとおり図られていないとすれば、何が原因だと思っていらっしゃるんですか。
  6. 中川昭一

    中川国務大臣 昭和三十六年の基本法制定当時には、もちろん経営規模拡大というのが一つの大きな目標であったわけでありまして、それに向かってのいろいろな施策も講じてきたわけでございます。  一つには技術、あるいはまた、いろいろな合理化進展によりまして労働時間が非常に少なくなってきた。特に稲作が顕著だと思いますけれども、一ヘクタール当たりでも、一俵当たりでもいいんですが、非常に労働時間が少なくなってきた。一方、高度経済成長の関係で、農地自体価格も上昇して、土地に対する資産としてのウエートが非常に高くなってきた。  これが両方複合的に作用した結果、いわゆる兼業農家としての農業所得もふえましたし、他産業へ行く時間の余裕も出てきたことによって所得がふえていったということで、いわゆる農地流動化が逆に進みにくくなったということで、土地を手放さない、また、買おうとしても買えないということで、先生指摘の趣旨のとおりでありまして、思ったとおりの経営規模拡大が、そういう多方面のプラス要因が逆に経営規模拡大に結びつかなかったというふうに理解をしております。
  7. 安住淳

    安住委員 大臣昭和三十五年に一千百七十五万人がいて、〇・七七ですよ。今二百四十一万人でしょう、農業就業者人口というのは。それでいて、大臣北海道は別にして、一ヘクタールもないんですよ。これは失政と認めても私はいいと思いますよ、農林省。  後で土地の問題をまた詳しく前回に引き続き私やらせてもらいますが、昭和二十年、二十一年、ずっとあります。二十七年に農地法制定されて、三十六年に基本法制度があって、農地法改正があって、四十三年には都市計画法制定があって、るるずっと来た。確かに、耕作地主義ということに一貫して農林省は、法案中身だけ見ると、それはるる努力はしてきたのだと思いますよ。昭和五十五年、農用地利用増進法制定なんてありますね。しかし、結果としては、思ったほどの集約化なんか進んでいないんじゃないですか。  具体的に言えば、土地は耕す者のためにあると私は何度もこの委員会で言いましたけれども、そのことを徹底し切れなかった反省というのはないんですか。それに対して、ちゃんと農業基本法で何をするかという話を本当はやりたいんですよね。
  8. 中川昭一

    中川国務大臣 全体としては、昭和三十五年に比べて一・二倍程度の伸びにしかすぎないと言っていいんでしょう。しかし、土地利用型農業に着目しますと、特に北海道の場合には三・六倍になっておるわけでございまして、北海道は専業であり、また土地の値段も北海道以外の地域に比べれば安いという事情もあって三・六倍に拡大をした。しかし、それ以外の施設型あるいは本州の地域では、全体としてそういう低い数字になったということでございます。  施策としてもいろいろと、規模拡大あるいは農地流動化といった施策をとってきたところでありますけれども、強制的に、あなたのところはもう農地を手放しなさいとかそういうことはできないわけでございまして、土地を持つこと、あるいは小規模農業稲作を営むことのメリット農業者自身の側にあった結果としてそういう結果になっているということも事実ではないかと思っております。
  9. 安住淳

    安住委員 いや、大臣農水省は、結果的に土地集約化を目指したんじゃないですかと聞いているんですよ。だけれども、今の厳然たるこの数字を見ると、それはそうなっていないですねということだけまず最初に答えていただけますか、そういう現状認識
  10. 中川昭一

    中川国務大臣 ですから、昭和三十五年から現時点まで全体として見ますならば、一・二倍というのは、三十数年間の数字としては目指した方向に達していないということは言えると思います。
  11. 安住淳

    安住委員 後からやるつもりだったのですが、これを前倒ししてちょっとやります。話がちょうどそういう話に、続きの方が皆さんわかりやすいと思いますから。  それでは、構造改善局長がいらっしゃいますから具体的にちょっと詳しい話をしますけれども、昭和三十七年に農地法改正されました。この時点でのことを申し上げると、農業生産法人制度が初めて導入されるわけであります。そして、土地信託制度が創設されますね。農地取得の上限の緩和というものもここで初めて出るわけです、大臣。  私はちょうどこの年に生まれたから余り偉そうなことは言えませんが、農地解放があって十五年近く過ぎた。しかし、あの農地解放を考えると、四百七十五万世帯の農家に百九十三万ヘクタールを売り渡したという歴史があります。解放した地主がたしか百二十五万戸。つまり、かなりの土地細分化をされて、これが効率化を阻み、また同時に、時代背景からいうと、池田首相所得倍増ではないですが、高度成長に走るためには二次産業に多くの人材が必要である。ですから、離農者というものをできるだけふやして人をシフトさせるためにも、農業にへばりついてやっている人をできるだけ少なくしよう、これは堂々と池田さんは、前の委員会で私言いましたけれども、資料にも書いてあるし、そういう方向だった。  そのときの農業所得というのは、たしか、資料を見ないでしゃべるから間違っているかもしれませんけれども、四十万ちょっとですよ。大臣はさっき八百万と言ったけれども、それは……(中川国務大臣「今ですよ」と呼ぶ)今ね。だけれども、そのうち農業所得というのは違うんですよ、百十万か二十万じゃないですか。あの当時は四十数万円で、たしか二十万ちょっとなんですよ、農業所得が。所得の半分ですわね。  そういうことからいっても少な過ぎるから、当時役所にいた人は既にもう退官なさっていらっしゃるんでしょうけれども、そこで多分、農地法改正というのから土地規制をできるだけ強めていこうという話になってきたんじゃないですか。  歴史的な経緯というのは私の認識で間違いないですか。
  12. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 重要な点を幾つか御指摘がございました。確かに、基本法制定当時においては、土地自己所有という農地解放当時以来の影響が残っておりましたので、所有による規模拡大というところに重点が置かれていたわけでございますけれども、実際上は、社会経済情勢なり、先ほど大臣お話をいたしました技術の問題あるいは土地資産的保有の問題、そういうことで所有権移転させるということはなかなかできなかったわけでございます。  兼業機会も増大をいたしましたし、そういうふうなことで、所有権移転による規模拡大というのがなかなかできないということが社会経済情勢全体の中でわかってまいりましたので、先ほど御指摘があった、むしろ賃借による利用権の設定ということで、一番画期的なのは五十年代半ばの農用地利用増進制度だろうと思います。貸しやすく借りやすいという、そういうふうな状況の中で、今日、利用権の集積による規模拡大が進んできているわけでございます。  それから、先ほど先生から御指摘がございました、数字の総平均によって規模拡大が進んでいないという御指摘でございますけれども、私ども、確かに都府県において一戸当たり経営規模は一・二倍ということでございますけれども、三ヘクタール以上層の農家耕地面積シェア、これは昭和三十五年当時三%から現在二一%まで増加をしているということでございますので、そういう点では農地集約というのは相当な進展を見ているという評価もできるのではないかというふうに思っております。
  13. 安住淳

    安住委員 一理あると思いますよ。しかし、これは農業法人の問題まで進んでいきますから、その話で言うと。  それは、今局長さんがおっしゃった話で言うと、それだったら、昭和四十五年にたしか農地法をまた改正してあるはずですよね。その改正をしたときの審議中身というのを私読んだことがあるんですよ。それはたしか、所有権移転が本当に全然進まないから、売買賃貸をさらに進めるというのを昭和四十五年の改正案でやった。そのときには小作料規制緩和農業生産法人の要件を緩和したり、それから、経営規模拡大のための農地保有合理化法人による農地等売買を認めるようになった。つまり、農協の委託経営もこの時点で始まるわけです。  やれどもやれどもとは言いませんが、しかしこれは、社会的に見ると、ちょうどこの時期というのは土地の高騰の時代といいますか、列島改造論のブームに応じて、どうも農地というのは耕しただけでは余りもうからないけれども、特に都市近郊はそうですが、持っているだけで、一山当てるとは言わないが、資産になるぞと、だから幾らでもとにかくその土地にしがみついていこう、やはりそういう社会風土というのがあったのではないか。それを引きはがすために、規制がかかった中で農林省はさまざまな努力はしたのだと思いますが、結果としては、賃貸も含めて申し上げると、やはり思うように進まなかったということがあったのだというふうに私は認識をしております。いかがですか。
  14. 中川昭一

    中川国務大臣 具体的な数字局長の方からお答えさせますが、日本の伝統的な長い農業歴史の中で、やはり土地に対する執着というのは、長い間の農業者を初めとする一つ日本の文化、歴史を支える大きな一つ要因であったのではないか。したがって、こういう場でこういうことを言っていいのかわかりませんが、いわゆるたわけ者という言葉がありますけれども、これは決していい意味ではないということで、そんなようなこともあった。  一方では、やはり経済的要因から離農するということもなかなか、ほかのところの就業機会農地所有しながらできるという経済情勢もあったわけでございまして、高度経済成長で他産業就業機会もふえる。一方、農地価格も上がるという形で、確かにそういう意味で、農地を持ちながら、農業をしながら他産業での所得もふえるということがあった。  それに対して、インセンティブとしていろいろな施策を講じたわけでございますけれども、それがまさに基本法一つ目標でもあったわけでありますけれども、日本経済全体から見て、農政全体から見て、あなたはもう離農した方がいいんじゃないですかとか、土地を手放した方がいいんじゃないですかというようなことを強制的にできるということは、日本社会体制ではできないわけでございますから、そのぎりぎりの中でいろいろな努力をしてきたということが一つ歴史的な結果であったのではないかというふうに思っております。
  15. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 先生、四十五年の農地法改正にお触れになりましたので、ちょっとその点についてコメントをさせていただきたいと思います。  確かに、四十五年の改正はかなり大きな改正でございまして、四点ほど大きな内容があるんですけれども、その中でも、目的規定改正いたしまして、土地農業上の効率的な利用を図るためというのを加えました。それは、今大臣からも御説明をいたしましたように、兼業、そして耕作が手抜きになるというふうなことを踏まえてこの目的規定をつけ加えたわけでございますし、同時に、農地保有合理化法人制度を創設いたしたわけでございます。  そういう手だてを打ったわけでございますけれども、まだその当時におきましては、いわば借り手側の権利といいますか、それが非常に重視をされていた時代でございまして、貸し手にとってみれば高額な離作料を取られるというふうなこともございまして、この点についての、先ほどの私の答弁でいえば貸しやすい、借りやすい、返しやすい、こういうふうな状況をつくり出すまでにもうしばらく時間がかかりました。五十五年の農用地利用増進法制定によりまして、そういう分野について画期的な前進が図られたという認識でございます。
  16. 安住淳

    安住委員 大臣昭和四十六年当時の我が国耕地面積幾らだったか御存じですか、たしか五百八十万だった。いや、急に、通告も何もない話ですから別に正確な……。そんなものじゃないですか。
  17. 中川昭一

    中川国務大臣 手元にあるのが、耕地面積、四十年が六百万、五十五年が五百四十五万ですから、先生指摘のように、ちょうど中間ぐらいですから、五百六、七、八十万ぐらいじゃないかと思います。
  18. 安住淳

    安住委員 現在に話を戻してくると、今四百九十万でしょう。やはり私はこう思うのです。これは別に農水省を責めているわけでもなくて、世の中の社会情勢の中で農業をどう考えるか。やはり百万ヘクタールが農地でなくなっているわけですよ。そうでしょう。それは多分、都市開発やなんかが進んで、相当の農地が化けてしまったのですね。そう思いませんか、大臣
  19. 中川昭一

    中川国務大臣 減った原因は、もちろん農地からほかの産業用施設に変わったという部分もあると思いますし、また、農村地域における道路とかあるいは公共的ないろいろな施設に、公共用土地収用という別の一つ制度もございますし、そういう意味で、農地から公共用施設に変わっていったという面等々いろいろあると思います。
  20. 安住淳

    安住委員 そこで、今度は昭和四十七、八年ごろに米価はどうだったかというと、私の記憶では、毎年のように大変な上がり方をする。官房長、そうですね、四十七、八年というのは大変なんです。つまり、農家から見ると、いろいろな矛盾と、やはり基本が見えなくなってきている時代だったと思うのですね。一方で大変な減反をここで強いたわけですね。  ばらばらな、ちょっとまとまりのない話をさせてもらうと、たしか四十五年で持ち越し在庫が七百二十万でしょう。それで、五百八十九万、三百七万とくるわけですよ。またそれが五十年代に入って、六百六十六万という昭和五十五年の数字があるのです。つまり、減反が始まって、当時大体二五%ぐらい、国家予算で一兆円という話を私はこの間しましたけれども、四十五年、六年というのはそういう年です。  そういう中で、当時のことを余り責めてもしようがないのですが、多分その時点では、一等農地というか、農地をできるだけ守って、なおかつ土地集約化を図っていって、規模拡大をして足腰の強い農業をつくるという大きな目標があったにもかかわらず、今私が説明したような社会状況があって、しかし減反に伴って、また米価も上がった。だから結局、思うように後継者がといいますか、今で言う、つまり認定農家になり得るような、柱になるような農家というものができなかったのではなかったか、私はそういうふうに考えているのですけれども、いかがですか。
  21. 中川昭一

    中川国務大臣 先生は先ほどから米中心に御議論されているというふうに理解をしておりますが、確かに米に関していえば、昭和四十年ぐらいに自給を達成いたしまして、その後四十年代、五十年代初頭と二回にわたって大過剰を経験したわけであります。そういう意味で、米については一〇〇%以上の、お天気次第でございますから作況が一〇〇を割ることもときどきありますけれども、そういう中で、農政全体としての位置づけと、その中で中心的な稲作、米についていえば、まさに先生指摘のような需給の、供給過剰の状態が続いてきた。  では、なぜほかの部分に振り分け、全体として減っている、しかも自給できない主要な作物もいっぱいあるのにもかかわらず、米以外のところにいかないかといえば、やはり米が主食であり、生産者にとってもメリットがありということで、結局、米だけを見ればそういう状態がずっと続いてきたというふうに私も思います。
  22. 安住淳

    安住委員 いや、私は米の話をしているんじゃなくて、農地流動化を妨げてきて規模拡大ということができなかった、それが結果的には、きのうもどなたかの質問のときにありましたけれども、内外価格差をやはり生んだ原因ではなかったかな、私はそういうふうに思っているんです。  しかし、全く何もしてこなかったと言っているわけじゃないですよ。認めますよ。例えば、平成五年の農地法改正、それからこの間の十年の改正、私は、流動化に対する一定の制度は多分ようやくできたんだろうなと。  そこで、それでは基本法の問題に入ります。大臣は、四百九十一万ヘクタールというものをこれから先十年後も維持しなければならないと思っていらっしゃるのか、なおかつ、そのためにはどういうことが必要だと思っていらっしゃるのか、まずこれから伺います。
  23. 中川昭一

    中川国務大臣 基本法基本理念の一番最初にあります、二条の食料の安定供給と、十九条にあります、不測の事態における食料安全保障の観点からの確保については、可能な限り国内生産を中心として確保していかなければならないというふうに考えております。  そのためには、農地だけではなくて、担い手あるいは技術、あるいは国民的な理解等々いろいろな要素も必要でございますけれども、特に品目ごとの作付等も十分考慮し、それを総合的に積み上げた形で、今後ともこの農地を維持しながら、いわゆる国内生産基本とするという趣旨がより高い水準で達成できるようにしていかなければならないというふうに考えております。
  24. 安住淳

    安住委員 それは前提としてわかりますが、しかし、私は何らかの歯どめと何らかの規制をかけないと、四百九十一万ヘクタールが十年後にそのまま維持できているとは、今までの社会の流れからいって考えられないんですよ。  つまり、私自身も、土地を固定化するということに関して言えば、憲法上も含めて、相当私有権の問題に踏み込んだ話になるかもしれません。しかし、自給率という点から言えば、本来であれば一〇〇%にするには一千七百万ヘクタールも必要な国で、わずか、とらの子のと言ってはあれだが、四百九十一万しかもうない。これを本当に守っていくということであれば、大臣、何とかでなければならないなんという話じゃなくて、もっと踏み込んだ考えが必要だし、なおかつ、農業生産法人のところでやりますけれども、規模拡大と、それから、きょうはWTOの話は避けますけれども、これから非常に足腰の強い、国際的に内外価格差を埋めていくということを、例えば米だけに限って言えば、やるということになれば、それは、基本計画をつくるんでしょうけれども、相当の決意と覚悟が私は必要だと思うんですが、いかがですか。
  25. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 食料の安定供給、それから安全保障、この点から農地をしっかり確保していかなければいけないという点は、まことにそのとおりでありますし、先生がおっしゃっておられる危機感につきましては、私どもも全く同様に考えております。  こういう観点から、実はこの国会に農振法の改正もお願いをしております。農振法の改正の中におきまして、国が農地の確保に関する基本的な方針を定めるということで、国としての意図をきちんと表明する、そして農振地域の中の、とりわけ農用地区域内の優良農地の確保については、どういう線引きをするかということを、従来の通達ではなくて、法定でしっかりと事由を世の中に知らしめていく。それに、さきの国会で成立をさせていただきました農地法による転用につきましても、その基準を法定で明確にするというふうなことをやっているわけでございます。  そういったことと、先ほど来御説明申し上げておりますような作物別の必要面積の積み上げ、そして、この面積をどういう農地利用、つまり現状を見ますと、耕作放棄地もございますし、それから冬場の水田の利用率は三割以下というふうな現状もございますので、そういった利用の仕方ということの組み合わせにおきまして、基本計画上にきちんと明記をし優良農地を守っていく、農地の総量を守っていくというふうなことをはっきりさせていきたいというふうに考えております。
  26. 安住淳

    安住委員 我が党は、きょうの新聞にも出ておりましたが、修正案を出しました。修正案といいますか、我々の党としては、食料自給率の向上というものを明記すべきだと。  私は個人的には、大臣農地耕作面積を維持するということも、かなり大きな柱として、法案の中に書くのは難しいかもしれないですけれども、一つの重要な柱として掲げていって、この基本計画の中にも取り入れるべきではないかと思うんですけれども、いかがでございますか。
  27. 中川昭一

    中川国務大臣 先生の御質問のポイントは、やはりきちっと農地を確保して、そして食料をきちっと国内で生産していくという御趣旨だろうと思います。  全体としての食料については、二条あるいは基本計画等であるわけでございますが、農地につきましても、二十三条で国内の農業生産に必要な農地の確保、有効利用を図るため、農地として利用すべき云々、そのためにはその他必要な施策を講ずるものとするということで明記をしてございます。
  28. 安住淳

    安住委員 これは通告していないですから多分数字はわからないと思いますけれども、渡辺さん、四百九十一万ヘクタールあるでしょう。そのうち休耕田とか耕作放棄地ですね、休耕田といっても、減反に伴って何も、例えば転作をしないとかじゃなくて、全く田んぼをつくっていなかったり、また耕作放棄している、こういうのは全体の何割ぐらいあるんですか、ざっとでいいですから。
  29. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 ざっとした数字ということでございますので、お答え申し上げます。  耕作放棄地は現在十六万ヘクタール、それから不作付地、一年間作付を行わなかった農地というのも同じ十六万、両方合わせて三十二万程度と記憶しております。
  30. 安住淳

    安住委員 今の制度でいうと、例えばそれに対する課税制度なんかについては、普通の農地と変わりませんか。
  31. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 農地という形態に着目をして課税がなされておりますので、ほかの農地と違いはございません。
  32. 安住淳

    安住委員 大臣、ここからはちょっと政治的な話ですから大臣に答弁してもらいますが、私は、本気で、まじめにやっている人と、そうでない農家というものを選別しないといけない時代だと思いますよ。  その中で、三十二万ヘクタールもある使っていない農地、または耕作放棄をしている田んぼ。四百九十一万が本当にとらの子で大事な田んぼというのだったらば、今るる戦後の歴史を話してきたけれども、思い切ってこういうのは、例えば税制でいったら宅地並み課税なりをかけて、耕作をまじめにやる人にこれを集約するような仕組みというものを考えるべきだと私は思いますけれども、いかがですか。
  33. 中川昭一

    中川国務大臣 農地の中で三十二万ヘクタールが実際に耕作されていないということでありますけれども、それにはそれなりのいろいろな意味での理由があるんだろうと思います。  例えば、本当に条件が悪くて、あるいは後継者がもういなくて、お年寄りで労働ができないとか、いろいろあると思いますけれども、一般論として言えば、農地であるがゆえの農地に対する税制というものがあるわけでございまして、そういう意味で、政治家として答えろということであれば、農地としてのいろいろな特別の税制等の措置があるのであれば、これはやはり農地として利用すべきであり、そして、先生おっしゃるように、それを移転して集約していく。  ただし、集約する側にもそれによってメリットがなければならないわけですから、売る側、買う側、両方のメリットがなければいけないというふうに思いますけれども、農地であるがゆえにいろいろな措置が講じられていて、それが農地でないということがやむを得ない事情である場合もあるかもしれませんけれども、一般論としては、大変残念なことだなというふうに思っております。
  34. 安住淳

    安住委員 いや、大臣、これは非常に重要な話ですから。  私は、生産法人の話を今からしますけれども、つまり、ルールとして、転用をある程度厳しく規制して、なおかつ耕作者にそれを集約するとなれば、税制上の問題でいうと、休耕田といいますか、全くそういうふうに田んぼとして扱っていない土地が三十二万ヘクタールももしあるんだったらば、少なくとも所有者からそれを引き離すということはやはり当たり前の話で、そうであれば宅地並み課税というのは私は一つの考えだと思う。しかし、それをやりますとかやらないとは言えないだろうから、何らかのペナルティーを科すということはやはり必要なんじゃないですかどうですかということを聞いているんです。
  35. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 今大臣からお答え申し上げましたように、そういうふうに規制を強化する、課税を高くするということで果たしてその農地が使われるようになるんだろうか。むしろ、その農地が遊休化をしているという点についていえばそれなりの原因があるわけですから、例えば、コストの問題もあり基盤が整備されていない、担い手がいない、こういうところを一つ一つ解きほぐしていくということが大事ではないかなというふうに思っております。  それから、税制の面についていえば、一定の集約を公的な計画のもとでやる場合には、譲渡所得に対する所得税の特別控除といった制度もございます。つまり、あめとむちという点でいえば、農地農地として使われるような方向に誘導するような税制の方が望ましいというのが現在の私どもの考えでございます。
  36. 安住淳

    安住委員 それは、今度のこの基本法に基づく農地法改正で、そういうことは検討なさって出すおつもりですか。
  37. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 農地流動化について施策を強化する、その上で、例えば農地法上の障害があればそういう点についても除去をしていくというのが私どもの基本的な考えでございまして、農地法の検討を今、生産法人について先ほど先生おっしゃいましたけれども、それに関連をしてやっておりますので、そういったこととも関連をし、より一層流動化が進むような制度上の問題点も目下掘り出しているといいましょうか、整理をしている、そういう状況にございます。  必要があれば、農地法その他についての改正もしたいと考えております。
  38. 安住淳

    安住委員 それは前向きな話として私は評価をします。  ところで大臣、ちょっと私はどう質問していいかわからないんですが、田んぼがあってそれを耕す、それは人間なわけですよ。しかし、その主たるものは農家でないとならないんですか。それとも、田んぼをやれば、それは例えば、極端なことを言えば、日本人でないとならないですか。どうですか。私の質問の仕方がちょっとわからないかもしれませんが、とりあえず今のこの質問に答えてもらえませんか。
  39. 中川昭一

    中川国務大臣 農地所有者と耕作者とを区別して、耕作者については、所有者でなくてもいいわけでありますし、また外国人でも構わないということです。
  40. 安住淳

    安住委員 つまり、耕作者はだれであってもいいんでしょう。  私が言いたいのは、この問題は、例えば将来的に、農業生産法人の話に踏み込んでいくと、今回は大きな風穴をあけましたね、株式の取得ということでいえば。私は、今までの農政の難しさというか厄介なところというのは、農業者という非常に根強いものがきちっとあって、それが農業をやるものだという意識がやはり物すごくあるわけですね。私も基本的にはそういう考えなんですよ。ただし、土地集約化規模拡大というのは絶対必要なことじゃないですか。まず、それから聞きましょう。
  41. 中川昭一

    中川国務大臣 少なくとも土地利用型の農業形態においては、集約化することによって基本的にはメリットがあるわけでございますから、そういう意味では集約化が必要だと思います。  ただ、先ほども申し上げたように、出し手と受け手とのお互いのメリットがなければ土地の移動というものはできない、まあ、場合によっては合理化法人かなんかに預けるという手もあるのかもしれませんけれども。しかし、基本的な答えとしては、先生のおっしゃるとおりだと思います。
  42. 安住淳

    安住委員 そうであれば、ざっくばらんに聞くと、これから農業耕作するということについては、民間企業の参入に対しては、大臣は、今後、例えば五年、十年という長いタームで見たときに、どういうふうに感じていらっしゃるんですか。民間企業の参入というのは賛成ですか、反対ですか。
  43. 中川昭一

    中川国務大臣 これは、二年間にわたる基本問題調査会でも一番議論になった点の一つでございまして、中間報告では両論併記という形になったわけであります。  今回法案を御審議いただくに当たって、経営形態の一つの形として、限定的にいろいろな条件をつけて、株式会社というものも認めるということでありますから、そういう意味では、私は、法案に基づいて、いろいろな条件が前提で賛成でありますが、では、具体的にどういう条件がつくのかということについては、まさに当委員会を初めとする国会の御議論、そしてまた検討会で今御議論をいただいている最中でございます。
  44. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 今の非常に微妙な問題につきまして若干補足をさせていただきたいのですが、農業者という言葉と耕作という言葉がそれこそ交錯しているんですが、農地法上は耕作者という言葉を使っておりまして、農地耕作者みずからが所有することを最も適当とするという精神がある、それと同時に、土地農業上の効率的な利用を図るということがあるわけでございます。そういう点から、この耕作者主義という精神は、私どもはこれから先も生きるんだろうと思うのです。  ところで、法人の取り扱いにつきましては、耕作者たり得るかどうか、逆に言いますと、耕作者でなくなるその蓋然性の判断をどこで画するかということがポイントなんだろうと思います。今回の基本問題調査会の御検討、それから私どもの内部の議論では、この耕作者主義という精神のもとでいえば、やはり農業生産法人というところにとどまるんだろうというふうに考えている次第でございます。補足をさせていただきました。
  45. 安住淳

    安住委員 それは今後も永遠にそうだということですか。
  46. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 私どもとしては、やはり耕作者主義という基本理念は外すべきではないというふうに考えております。
  47. 安住淳

    安住委員 大臣、私がさっきから土地の問題にこだわっているのはまさにこの一点で、今、安易な流れといいますか議論があって、農家以外の、例えばある法人が土地をとったらば、それは転用される、農地以外のものに利用されるおそれが極めて高いからそういうのはだめだという話でしょう。私もそれは何となくうなずけるからさっきからくどいように言っていたけれども、農地の転用に関しては、耕作者がだれであるかないかとは全く次元の違う問題として、相当厳しいたがをはめたらいいんじゃないかという話を僕はしたのです。だから、農地法改正のときに、税制面を含めて非常に厳しい措置を講じるというのは一つの手だよと。前向きに考えますと言うから、それはそれでいいでしょう。  そういう土俵の中で、今度は規模拡大等々を考えたときに、今のままのやり方も一つあるかもしれないが、農地を守るということを前提として考えたときに、いろいろな組み合わせをこれからやはりやっていった方が、つまり長年、戦後五十年近く、〇・四ヘクタールからわずか〇・九ぐらいまでしかいかなかったこの土地集約を図るいろいろな方法というのはあるのではないかなと私は思うから質問しているんです。だから、一形態としてこれが風穴をあけたことになって、これからどっちの方向に向くかということに対して私は大変興味を持っているんですよ。だからこの話をしているんです。  どっちに向かっていくんですか。広がっていくんですか、今のままですか。ちょっと風穴をくらいでは、私も民間企業何社かに聞きましたが、しかし現実には、こんなことではだれも多分入ってこないと思います、この株式取得ぐらいでは。だから、現状では余り変化がない。そうではないかなと思うから、いや、これならこれで行くんだと言うんだったら、それはそれでいいですから。どういうことなのかということを、大臣、これは非常に重要ですよ。審議会で諮る、そうじゃないです。これは、まさに政治家なりリーダーが決めないといけない極めて重要な話だと思います。いかがですか。
  48. 中川昭一

    中川国務大臣 ですから、調査会でもいろいろな立場の方々に御参加をいただいていろいろな議論があったわけでありまして、現に地域農業者として耕作をしている方々にとっても当然のことながらメリットはあるわけであります、株式会社形態とする場合にも。ただし、デメリットも大きいという心配が非常に多いということでいろいろな議論が出てきたわけであります。  そういう中で、今局長が答えたように、地域で、耕作者主義というものを前提とした経営形態、法人化の一形態として極めて限定的にやろうというところまでは我々も考えておりますけれども、それをどういう形でやっていくかにつきましては、この委員会あるいはまた検討会等でいろいろなことが考えられるわけでありますが、今後どうなるかということについては、今の段階では、まさに新しい形のものをスタートさせようとするわけでございますから、これが今現に農業に従事されておる生産者にとってメリットになるかあるいはデメリットになるかということも、実際にやってみなきゃわかりません。  今先生からは、民間株式会社サイドから見たお話がありましたけれども、現に地域農業者としてやられている方々が実際やってみてどういうことになるかということもあるわけでございますが、今の段階では、その先についてはやってみなきゃ全くわからない、こういうことになりますけれども、とにかく原則は、地域社会を守り、そして地域農業者を守りながら、それの発展的な一形態として導入するということで、あくまでも中心は、現場サイドの農業者を中心とした観点から影響のないようにということが大前提で作業を進めているところであります。
  49. 安住淳

    安住委員 私は、時間がないので、きょうは米の問題を何問かしたかったのですけれども、それは後で一、二問します。  大臣、つまりこういうことじゃないですか。それでは、十年後に望ましい耕作規模というのは一農家当たり何ヘクタールですか、簡単に答えてください。
  50. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 既にその点につきましては、新政策のもとで、現在の中型機械化体系を前提とした耕作経営規模が、個別経営体で十ないし二十ヘクタールという基準を示しているわけでございます。これは、稲作ではそうですけれども、ほかの作物ではまたそれぞれの展望がございます。  それから、もう一つ申し上げたいのは、今、認定農業者という形で、これから発展をしていこうという認定農業者の方々のそれぞれの計画を拝見いたしますと、総じて、これは平均になりますけれども、平均で十二ヘクタールの規模を目指したいと、私どもも、そのあたりが当面の目標と考えております。
  51. 安住淳

    安住委員 僕もそうだと思いました。だけれども、そこまで行くには、今のような土地制度のあり方や農地法のあり方では私は進まないような気がしているんですよ。だからこそ、では、十ヘクタールや二十ヘクタールにするにはどうしたらいいかという話から見たときに、激変を緩和しないといけないということを農林省はいつもおっしゃるが、土地集約化に関しては、もう少しスピードアップをしていく方法というものを考えるべきではないかということを私は最後に申し上げまして、この問題はまた改めてやらせていただきます。  ところで、少し米の問題をさせていただきますが、大臣平成十年、十一年の緊急生産調整推進対策、私は米作地帯の選出でございますが、はっきり申し上げて、都道府県の減反面積率は、どうも今回は、残念ながらといいますか、主に米作地と言われたところにいわば割合を高める形で、全国平均で三割を超してしまった。しかし私は、この一律減反というものは、現場に与える影響というのは非常に大きかったと思います。  私自身の考え方を言わせていただければ、米作地帯に減反を強化するなんというのは、新食糧法の考え方からいうとやはり反するんだと私は思います。緊急にということでやられたかもしれません。しかし私は、基本的には、今年度で対策が終わって、来年度以降どうするかという話が、大きな議論が多分食糧庁の中ではやはりこれから起こるんだと思いますが、これは、基本的な考え方をどうするのかをちょっと聞かせていただいて、何点か質問します。
  52. 中川昭一

    中川国務大臣 今、米が大変に在庫が多いという状況の中で、昨年、ことしと二年間にわたる緊急対策をとって、非常に大きな比率の減反をしておるわけでございますが、今後についてはどうなんだという御質問でございますけれども、現時点で大幅な需給ギャップが存在しているということで、生産調整の推進を図ることは避けて通ることのできない課題だというふうに認識をしております。  それを行うに当たりましては、やはり需給と価格の安定を図るため、つまり、生産者にとっても、今のシステムからいって、つくりたいだけつくって、そして価格形成するときに暴落するということは大変なデメリットになるわけでございますから、生産者の自主的な減反という形をお願いしておりますが、国としても全面的なバックアップをしておるわけでございます。  今後につきましては、ことしの米の生産動向あるいは需給動向を十分踏まえて、また、自給率観点も踏まえながら、品質の改善、生産性の向上あるいは他作物の生産振興等を図り、本年秋までに結論を出したいというふうに考えております。
  53. 安住淳

    安住委員 いやいや、そんな紋切り型の話じゃだめなんですよ。  ということは、今の割合を続けるわけですか。北海道四七・二、青森三六・二、宮城でいえば二七・七、つまり七%近く宮城でいうとジャンプしているんですね。大臣地域特性を生かした適地適産という話を農林省はさんざん言っているんでしょう。それからいったら、米だってそこをやらないといけないんじゃないですかと僕は言っているんです。  僕は、はっきり申し上げて、減反には反対です。市場の中から強者をつくるべきだというのが私の考えです。最終的にそこに行くには、しかし、今やれば確かに大変な混乱も起きるし、新食糧法になってからもまだ時間が浅いから、全体の農家の皆さんの認識はまだそれほどでないと思います。ただ、減反については、百歩譲ってというか、生産調整はある程度必要だと思う。  しかし、本当に、この一律減反といいますか、確かにそういう話をすれば、多分、東京は六〇やっています、宮城はまだ二七です、北海道は四七、そういうふうに思うかもしれない。しかし私は、なおかつ米しかつくれない地域というのは実はあるんだと思うんですね。この地域特性というものを生かして、もう少しめり張りのきいた、減反面積そのものは変えないでも、例えばそこでの割合を大きく傾斜配分するという方法はあると思いますけれども、検討の余地はありますか、ないですか。
  54. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、今の減反面積を維持するとは申し上げていないわけでありまして、今の在庫、そしてことしの需給動向、そしてことしの秋のできぐあいを見て来年度に向けての生産調整をどういうふうにするかということでございまして、その具体的な議論というのは、そういう与件が出そろった段階でないと最終的には決定できないとしか、現時点では申し上げられないというふうに思っております。
  55. 安住淳

    安住委員 いやいや、僕が言っているのは、何というか、もう少し基本理念を聞いているのですよ。地域特性というのを認めた形での議論に入っていくのか、今まで積み上げてきた減反面積の流れでそのまままた、それに少しのり代をつけてやるのか、全然違うじゃないですか。そのことを私は言っているのですよ。だから、地域特性というものを考える余地はあるんじゃないかと聞いているのですよ。
  56. 中川昭一

    中川国務大臣 過去のいろいろな生産調整のやり方を私も何回か自分自身で経験してまいりましたけれども、あるときは、十個の要素をとって、それをどういうふうな比率にしたらいいかとか、いろいろなやり方があって、それぞれ自分のところの比率を高くしたいというのは当然の要望であるわけであります。  そういう中で、先生のところは米どころであるわけでありますし、また、米しかできない地域もあるとおっしゃいました。また、値ごろ感というものもある地域もあるわけでございますし、早場米という地域もあるかもしれませんし、そういうそれぞれが特性があって、その特性も、それぞれ主張する根拠というものも理解できるわけでございますから、それを総合的に調整するということは秋の段階での大きな議論になるというふうに考えております。
  57. 安住淳

    安住委員 今度の秋の、来年度以降の対策というのは抜本改革ですか、それとも、今までの流れに応じた減反の対策なんですか。
  58. 中川昭一

    中川国務大臣 新食糧法に基づいたルールでありますけれども、現時点では二年間の緊急対策をとっておるわけでありまして、そういう前提で今まで議論しているわけでありますけれども、今後、秋については、基本的なルールというのはおのずから決まっておるわけでありますけれども、それにどういう特性がことしの秋になって出てくるかということについては、今の段階では申し上げられないというのが実情でございます。
  59. 安住淳

    安住委員 いやいや、私はもっと全然違う話をしているのですよ。  いいですか、例えばの話、大臣、十年間かけて例えば減反緩和していく、十年後は、最後は自由競争になりますと、そういう抜本的な見直しをするのか、また緊急で、年度を二年だけに区切って、またこの減反率に同じような形でやらせてくださいと言っているのか、制度論で抜本的な改革をするおつもりがあるのか、堤さん、私はそういうことを聞いているのですよ。そういうことをちゃんと答えてくださいよと言っているのです。
  60. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 地域分担のあり方についてでございますが、現在のは二年で終わるのは明らかでございます。  次の対策につきましては、本年秋までにいろいろな方々の意向を踏まえて議論されていくと思いますけれども、中長期的な食料の安定供給とか、土地利用型農業全体の展開の中での水田の有用な活用の仕方、そういうことを踏まえて議論がされるものというふうに考えております。
  61. 中川昭一

    中川国務大臣 一つだけこの基本法との絡みで申し上げますと、やはり米は、平年作であれば、MA米を除けば一〇〇%近い自給率でございますから、全体の自給率を上げるという今までの御議論の観点からいえば、多品目で自給率を上げるためにどういうふうにしていったらいいかということも基本法成立後の一つの議論になってくるのではないか。それと、稲作がどうなっていくのかということも一つの新しいポイントになってくるのではないかというふうに考えております。
  62. 安住淳

    安住委員 時間が来ましたから、この話は続けて後日やりますけれども、これは私は全然違うと思っているのですからね。いいですか。  この緊急対策の減反を今までどおりやるのと、生産調整を含めて、助成金も含めて過去の資料は調べさせてもらいました。いろいろ意見を聞きました。私は、この十年の中で、例えば本当に自給率やこの基本法をベースに考えたって、最後は必ず米の問題、田んぼの問題に行き着くのですよ。ほかの産品となんか全然歴史も、それから背景も違う。しかし、これに対して、今までと相変わらず価格調整と減反だけで、悪いけれども現場はしのいできただけじゃないですか。  そうじゃなくて、今度のことは、来年以降からは、私は、新しい世紀の中で根本的に米の対策というのは改めるべきだと思いますよ。だからこそ、農地の問題もこれは全部かかわってくる話ですよ。  そのことに対して、省内でこれはやるそうだが、きちっとしたプロセスを見せてもらって、なるほどとみんなが納得するような方向に行かないと、減反は、表向きは確かに生産調整はできた、しかし、農家のやる気という点から考えたら、これほどの愚策とは言わないが、産業からいったら衰退の最も大きな原因だった、私はそういうふうに思いますから、このことをやはりできるだけやめていく方向で少し真剣にこの根本的な議論をして、抜本的な対策というものを、この秋口は緊急というような名前をつけない対策を出せるように、農林省の皆さんにぜひある意味では頑張っていただきたいと思うし、我々もそのことについてはまた後日意見を言わせていただきたいと思います。  では、終わります。
  63. 穂積良行

    穂積委員長 次に、鉢呂吉雄君。
  64. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 一昨日に引き続きまして、午前午後で三十分ずつという細切れでありますけれども、質問をさせていただきたい。  連日、大臣も大変強行日程でお疲れのことと思いますけれども、まさに二十一世紀の日本食料農業、農村を規定づける大切な審議でありますので、ぜひ本質にわたった御答弁を、まさに大臣の御答弁が歴史に残りますから、そういう視点でよろしくお願いいたしたいと思っています。  私も、いろいろ資料、あるいは農家の皆さんに、きのう北海道農家の皆さん二十五名が上京してこの論議の推移を見守っておりますので、そういうものをお聞きしながら質問に立っております。  基本問題調査会の答申の中に、これは先ほどお聞きいたしましたら、木村会長じきじき筆を入れたというふうに言われておりますけれども、この答申の前文と「おわりに」という最後の締めは、会長みずから書いたというふうに言われております。大変含蓄のある言葉ですから、ちょっと御披露させていただきます。  現在は、時代の大変大きな歴史的な転換期にあって、人々の価値観や生き方が大きく変わりつつある。二十世紀は物質的な価値を追求してきた。しかしながら、技術文明が一巡して、地球資源の有限性や環境問題の重要性、食料危機への不安が認識されるに伴って、今まさに精神的、文化的価値観がどう転換をされるのかという時代の移り目にある、という表現をしております。その後、  人々は「くらしといのち」の根幹に関わる食料と、それを支える農業・農村の価値を再認識し、これに対する評価を高めねばならない。私たちが日々口にする食べ物は、決して単なる餌ではない。私たちの身体と心をともに養う自然の恵みであり、生命の糧である。食と農に関わる活動、そして教育を通じて、自然を慈しみ、食べ物を作り育てる喜び、これをおいしく口にできる幸せ、食べ物を大切にして無駄をなくす心を養うことが重要である。 ということで、格調高い表現で、我々もこれは同感できる、大臣も同感できるのではないかというふうに思います。  そこで、この答申の最終場面で、三十五名いる委員、専門委員のうち、七名の女性委員全員が木村会長に抗議文を手渡すという女性の反乱があったというふうに言われております。この抗議文の内容と、それに対する大臣の御所見をいただきたいと思います。
  65. 中川昭一

    中川国務大臣 木村会長から答申をいただいた後に、女性委員が会長あてに意見書を提出されたということは私も存じております。何か農林省の記者クラブで記者会見をやったということだそうでありますけれども、私はもちろんその場にはおりませんでしたが。  しかし、私も二回、そのうち一回は三時間、最初から最後まで全部出席をさせていただきまして、大変勉強になりましたが、七名の女性委員の方も非常に積極的に発言をされておりますし、また、木村会長がそれに対して、全体として極めて公平かつ適切な議事運営をされていたということは、私自身が確認というか、尊敬の念をもって認識しておるところでございます。  各委員の意見の内容について、私自身はコメントすべき立場にはございませんけれども、二年近くにわたって御議論をいただいたこの答申につきましては、全委員の意見を聞き尽くし、そして、委員全員で答申を取りまとめたものであるということでございますので、女性委員も含めた全委員納得した形での答申というふうに私は理解をさせていただいております。
  66. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 いや、私はその女性委員の抗議の内容をお聞きしたかったのですけれども、時間がありませんから私の方からお話をさせていただきます。  私の聞いておるこの抗議文の内容とは、調査会の議論というのは、全体的に見れば、従来の農業基本法の枠組みから抜け切れておらない、依然として目先の経済論なり国際論に終始をしておるというふうに言いまして、したがって、確固たる視点と哲学に立脚した政策を行うべきであるということを言っております。議論は市場原理万能論ばかりが先行しておるということで、食とは何か、あるいは農とは何かという点を、もっとあるべき姿を考えていくべきであろうというような内容だというふうに承知をしておるわけであります。私は、今、この後書きは、これに反するような後書きではないというふうに思っております。  ただ、同時に、本当に食とか食べ物とか、あるいは農村とか農業の多面的な価値というように言葉では言うのでありますけれども、やはりその理念なり哲学というものが、言葉だけではなくて本当にきちんとしたものとして、この調査会はもちろんでありますけれども、我々の国会も踏まえたものになっておるのか。今出てきたような言葉もあろうと思いますから、なかなか一刻にすぐいくというわけにはいかないかもわかりません。  しかし、やはりそういうものをもっときちんと追求をして、あるべき姿というものを、政策論あるいは具体の政策としてつなげていくという努力がやはりまだ欠けておるのではないか。皆さんのこれに基づく基本法を見たときも、言葉としては理念なり基本的な政策に出てきております。しかし、具体のところになりますと、極めて言葉だけのところがあるというふうに思わざるを得ません。  この委員会の議論も、生産の立場からの議論が非常に多いのですけれども、むしろ食料を消費する立場というものについてもっと論議を深める必要があるのではないか。その証拠に、農水省が出している農政改革大綱、私も繰り返し見ておりますけれども、消費者の視点を重視した食料政策の構築といいながら、いわゆる消費者の立場に立った、これから具体的にどういうふうにしていくのかという視点がなかなか、備考欄を見ても出てきておらない。  大臣も、単に農業団体の意向ではなくて、幅広く消費者の意向も聞くということを盛んに言明しておりますけれども、我々の見るところ、どういうふうに消費者の意向を聞く仕組みをつくっていくのかといった点については甚だ希薄なものがありますし、現実にやっていらっしゃることは、農業団体のみとは言いませんけれども、その方向が非常に色濃いものがあります。  これからの、この食料を消費するという立場、この点について大臣として本当にどういう考えでいくのか、お答えを願いたいと思います。     〔委員長退席、赤城委員長代理着席〕
  67. 中川昭一

    中川国務大臣 話せば長くなりますので簡潔にお答えしたいと思いますが、先生、この条文だけ見ても言葉だけだという御指摘ですが、この法律は四十三条、まあ理念法といいましょうか基本法でございまして、現行農業基本法と違いまして、簡単に言えば新食料基本法と、一番簡単に言えば言える法案でございます。  したがいまして、その中に、生産サイドだけではなくて、中間段階あるいはまた消費者、さらには女性の立場、高齢者の立場、そして内外の非常時におけるいろいろな措置、国境措置、国際貢献等々について多方面にわたって重要な問題を、条文という形でございますから非常に短い文章ではございますけれども、やっておるわけでございまして、そういう意味で、国民全体、また国民各層に対してのさまざまな面に配意した基本法であるというふうに考えております。  そういう意味で、国民全体に関係のあることについて網羅的に書いてはございますけれども、この政策を講じるためにはいろいろな施策、あるいは財政上、金融上のみならず法制上の措置も講じなければならないということでございまして、現行基本法のように、基本法だけがぽんと、ある日突然ではございません、数年間大変な議論をした上での結果と伺っておりますけれども、基本法がぽんとできたのではなくて、これによって関係法制も整備をするというようなこと、あるいはまた財政上、金融上の措置等々も含めたさまざまな施策も一致した形でやっていかなければならないという意味で、極めて広範囲な分野にわたっての新しい食料農業、農村のあり方の基本法であるというふうに位置づけております。     〔赤城委員長代理退席、委員長着席〕
  68. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 非常に抽象語でありまして、例えば、答えはなかったのですけれども、その七人の女性委員大臣が直接、七人の方は消費の立場の方も多くいらっしゃいますから、木村会長と一緒に、どういう立場で今後の消費行政といいますか食料政策をやっていくのかについて懇談をするという考え方はありますか。
  69. 中川昭一

    中川国務大臣 基本問題調査会自体はまだ存在しておるわけでございますが、私が参加をしたあの三時間半余りの議論についての記憶はありますけれども、一々だれがどうこう言ったということを申し上げられませんし、また記憶も薄れてきておりますが、男性、女性に限らず、生産者あるいは消費者、学識経験者あるいは大学の先生、企業の経営者、いろいろな立場の方が本当に自由に、大分大詰めでの議論でありましたけれども、けんけんがくがくと言ったらおかしいですが、本当にいろいろな御意見があって、決して市場万能、市場一辺倒でもないし、また男性だけの意見が通ったわけでもございません。むしろ女性の方々も積極的に御発言をされて、それを木村先生が会長としてうまくまとめられて議事を進められていたという印象を持っております。そして、その結果として、全員一致の形であの答申をいただいたということでございます。  なお、これは蛇足でございますけれども、その後の、答申後に皆さんとお会いをする機会がございましたが、会長のお話あるいはまた、全員ではございませんけれども、メンバーの皆さんともいろいろな、思い出話というとちょっと時期が直後でございましたけれども、それぞれの先生方の御苦労話なんかも聞かせていただいて、一年半余にわたって木村会長を初め委員の皆様が本当に真剣に御議論をいただいたという強い印象を持ち、心から感謝を申し上げている次第でございます。
  70. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 大臣、もう少し本質にわたった、七人の委員とやるとかやらないとかということでなくて、これからの消費とのかかわりをどうやっていくかという、例えば今、ある面では、消費者というのはいろいろな面で、安全性の問題とか、新聞等でもいろいろな御発言もありますし、大臣も見ていらっしゃると思います。しかし、それを今後どうしていくのか。  国際的な安全ルールというものが一方にあったり、遺伝子の組み換えというようなものが表示という形で、もう大豆なんかはどんどん入ってきておるのではないか。きのうも私どもそういう要請も受けましたけれども、じゃ、表示をどういうふうにするんだとかということについて、ある面では大臣が先頭になって、国民の皆さんの目に見える形で、この前牛肉を食べたように、もっと目に見える形の消費者あるいは消費との関係を大臣がやる決意があるのかどうか。これだけで三十分終わっちゃったら何もできませんので、そういう大臣の具体的な行動の決意を聞きたかったわけであります。長くしゃべらないのでしたらお願いします。
  71. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、基本問題調査会は三月で終了したということで訂正をさせていただきます。  生産者あるいはまた食品産業界だけではなく、むしろ消費者あっての生産者であり、国内生産者あっての日本の国民でありますから、共生という観点から、生産者あるいは中間段階の産業、そして消費者の皆さんとこれからも積極的にいろいろな意見交換というか御意見を伺い、そして行政としてやれる部分は最大限やっていきたいと考えております。
  72. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 私は、ここに、食を考える国民会議を組織化するという言葉は言わないで質問したのですけれども、とうとう大臣からそういう言葉が出ませんでしたから大変残念なんですけれども、食に関しては、唯一書いてあることはこれだけです。ですから、そういうものをむしろ本当に大臣が念頭に置いてこれからの行動をやっていただきたいなというふうに思うわけであります。  価格政策と経営安定対策の方の第三十条に移らせていただきます。  この前も若干質問いたしましたけれども、しばしば大臣等は、農産物価格は需給事情と品質評価が反映されるようにしていくんだということを言っております。私は、まさに市場にゆだねてしまうということの危険性はやはり相当ある、幾ら国境措置を設けるとか生産調整をすると言いながら、それは相当あると。そこで、一つは、自主流通米の調整保管というのは価格政策になるんですか、経営安定政策になるんですか。  それから、いわゆる加工原料乳乳価について、先般の三月の段階で大枠のところが出されましたけれども、あそこにおける考え方。加工原料乳生産に係る酪農について、市場実勢を反映させる加工原料乳価格では、生産者の再生産を確保し得る水準に達することは困難である。したがって、加工原料乳地域における再生産を確保し、生産者の経営の安定及び所得の確保を図る観点から所要の措置を図るというふうになっておるわけでありますけれども、これは従来の不足払い制のような価格維持政策の色彩が非常に強いのでありますけれども、これも価格政策とは言えないかどうか。  この二点、事務当局からでいいですけれども、お答え願いたいのです。
  73. 堤英隆

    ○堤政府委員 まず初めに、自主流通米の調整保管についての御指摘がございました。  自主流通法人が、米穀の生産量の増大によります供給の過剰ということに対応して、必要な数量を市場隔離するということを通じまして自主流通米の需給と価格の安定を図るという措置でございますので、そういう意味ではこの自主流通米、全農がやっております自主流通米の調整保管が、厳密に、三十条で言うところの需給、この規定に該当するかといえば、そういう意味では性格をやや異にするというふうに思っております。  ただ、先ほど先生生産調整という言葉をお使いになりましたけれども、生産調整と相まって、こういう一時的な過剰ということに対します調整保管ということは、それを通じてマクロ的に米全体の需給調整を図って、結局は農家経営の安定ということにつながるわけでございますので、条文に該当するかどうかは別といたしまして、全体的なねらいということについては軌を一にするものというふうに理解をいたしております。
  74. 本田浩次

    ○本田政府委員 短い時間の中の御質問でございますけれども、初めて先生から御質問を受けたわけで、多少丁寧にお答えさせていただきます。  乳製品、加工原料乳については、その価格が大変硬直的、固定的であるというようなことで、先生指摘のとおり、例えば、加工原料乳の生産者手取りが極めて安定的に推移しているということは、加工原料乳地域の酪農経営の発展の基礎となったわけですけれども、一方で、牛乳、乳製品の需要動向でありますとかニーズが生産者サイドまで的確に伝達されないという問題があること、それからもう一つ、乳製品、加工原料乳の取引価格が極めて安定的に推移してきたわけでございますが、こうした背景のもとで、乳業者間において、原料調達面でありますとか製品価格面での価格競争が行われないで、配乳シェアが固定化するなど、コストの削減や新商品の開発などが阻害されてきたということでございます。言いかえますと、必ずしも需要者ニーズに応じた生産供給が行われていないといった問題があったわけでございます。  このために、先般三月に、新たな酪農・乳業対策大綱をまとめさせていただきまして、平成十三年度を目途に、市場実勢を反映した形で価格が形成される制度に移行しよう、こういうふうにしたわけでございます。  ただ、今回の改革によりまして、加工原料乳の取引価格はその需給状況によりまして変動するわけでございますけれども、高い関税相当量と国家貿易のもとで、それから緻密な計画生産を行っているわけでございますので、こうした計画生産と必要に応じた調整保管などによりまして、加工原料乳価格につきましては、一時的にはともかく、長期にわたって低迷することは想定しがたいと私どもは考えております。  また、改革に際しましては、先生指摘のとおり、加工原料乳の生産者に対しまして、加工原料乳地域における生乳の再生産の確保と所要の措置を講ずることによりまして、生産者の経営の安定及び所得の確保を図ってまいりたいと考えております。  現在、具体的には、実務的、実践的な事項について検討を行っているところでございまして、いずれにいたしましても、今後とも、酪農の健全な発展を図る方向で改革を進めていきたいと考えております。
  75. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 前段の方はよくわかったのですけれども、一番最後の結論のところが、私が求めておる価格政策になるのかならぬかというところの結論は、本田局長は避けたような形があります。  食糧庁長官も、一線を画するとかという、わかったようなわからないような……。  要するに、大臣、純粋に市場原理ではないというふうに各局長、長官は言っておるというふうに思いますけれども、そういう意味では、価格政策というのは市場だけにゆだねるということではないというふうに理解をしてよろしいですか。
  76. 中川昭一

    中川国務大臣 今、米と加工用牛乳のお話がありましたが、今までの体制から比べれば市場原理というものを大きく導入するということでございますが、まず、内外の間できちっとした措置をとる、それから、売り手と買い手との間で一義的に価格が決められるという意味では市場原理でありますけれども、それによって特に生産者が大きな打撃をこうむることを防ぐということを前提にしての、その二つを、いわゆる純粋な意味の市場原理からいえば、その部分については外した形の市場原理だと、私なりに簡単に申し上げれば、そういうことだろうと思います。
  77. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 時間がありませんので、一つの例を挙げさせていただきます。  稲作の安定化対策、平成十年から行っておる対策であります。この前も少しお話ししたのですけれども、きょうはもう少し中身お話ししたいと思います。  新しい食糧法が平成七年に施行されました。順次その中身改正して、ほぼ値幅制限等の制度がなくなりまして、ある面では、自主流通米は入札制を伴う自由価格に移行したというふうに思います。  平成九年産は豊作でありまして、大豊作までいきませんけれども、作況指数は一〇二。十年産、昨年産は九八。しかし、非常に在庫があるという中の状況でございました。平成九年産の自主流通米の価格は、八年産、前年産に比べますと一〇%程度下がったわけであります。これはいろいろな品種があります。例えば、北海道のきらら三九七は一三%の減、新潟のコシヒカリは魚沼産で一〇%の減、宮城のひとめぼれで八・九%の減という形で、押しなべて下がったわけであります。  これは農業白書に非常に詳しく記載をされておりますから農水省のデータでありますけれども、米価の下落が稲作経営に与えた影響ということで、九年産の稲作経営、これは稲作による農業所得なわけでありますけれども、一・五ヘクタールから二ヘクタール層で九十三万円という稲作所得、これは前年産に比べて三十六万円の減でありますから、三割以上の減であります。五ヘクタールから十ヘクタール層で三百四十五万円の所得、前年比百九万円の減。十ヘクタール以上は五百二十六万円ということで、前年比二百二十万円の減ということであります。  これも農業白書で言っておるのですけれども、主要な米生産地である北海道、十ヘクタール以上の層の稲作所得は、先ほど言いましたようにほぼ一〇%から一三%の単品ごとの価格減なわけでありますけれども、所得は三七%も減少して、三百六十七万円の稲作農業所得でありました。大変な所得減になるわけであります。  これを農家所得という観点で見た場合、どんな状況だったか。農業所得と農外所得を組み合わせたものに対してその下落率を見ておるのですけれども、一・五ヘクタールから二ヘクタール層で四%しか農家所得は減少していません。二ヘクタールから三ヘクタールまでは六%、極めて低いのですけれども、十ヘクタール以上になりますと、二〇%の減と、大変大きな減少を呈する。これはわかるわけであります。生産費が固定的でありますから、農外所得によらない専業的な稲作経営者は、大きな打撃、二割の減になるということであります。  そういうことからいきますと、今回の稲作経営安定化対策というのは、昨年といいますから、一昨年の秋から始まったのでありますけれども、非常に制度としては問題が多いのではないかというふうに思います。  例えば、昨日も聞きましたけれども、加入者総数が出荷者の七九%、八割しか入っておりません。数量でいきますと九一%であります。これは、生産者が二%、国が六%の基金造成をするわけでありますけれども、ようやく去年産については品種ごとにその補てん金額、単価が決まったようでありますけれども、その総額、どれだけの補てん総額になったか。生産者が三百億、国が約九百億をその基金として造成して、どのぐらい使ったかというのは、六月で支払いをするということで、鋭意今事務を進めておるということでありますけれども、問題は、例えば北海道で品種ごとにいきますと、一千二百円ぐらいの補てん単価になるわけであります。  同時に、大臣も御案内のとおり、過去三年間の自主流通米の価格を補てんの基準価格にしますから、例えば、先ほど言った平成九年産というのが大きく加味をして、ことしの十一年産の基準価格、この制度の基準価格というのは、千二百円も下がったわけでありますから、一三%も下がったわけでありますから、非常に下落をする。過去三年間でありますから、豊凶差も出てくれば、この補てんというものが極めて大きな下がり方をするわけでありまして、この専業的な十ヘクタール以上の経営者をきちっと守っていく、その制度にはなり得ないというふうに思うわけであります。  これらのことについて、大臣としてどのようにお考えなのか。
  78. 堤英隆

    ○堤政府委員 まさに先生おっしゃいましたように、自主流通米の価格稲作に依存する農家農家所得面での打撃が大きい、先ほど農業白書を引っ張りながら御指摘いただいたわけでございますが、まさにそういうことを踏まえまして、私どもとしましては、平成十年度に初めて稲作経営安定対策というものを導入したわけでございます。そういう意味では、認識は同じだというふうに理解をいたしております。  そういう中で、本年度につきまして実績を見ますというと、今の段階で申し上げますと、全体の七百九十一銘柄中六百銘柄、七六%がこの稲作経営安定対策の対象になる。上場銘柄だけで申し上げますと、八十五銘柄のうち五十四銘柄、六四%が対象になるという意味では、初年度としてそれなりの成果が上がったものというふうに思っております。それを踏まえまして、次年度へ向けての加入促進ということで、現在対応しているところでございます。  なお、これにつきましては、まだことし始まったばかりで、先生も今御指摘のように六月の支払いということでございますので、一度もまだお支払いをいたしておりません。そういう意味で、今そのための作業を進めておるわけでございますが、そういった新しい制度の加入の状況、それから実施の状況、そのことによります農家経営の安定の状況、そういうことを踏まえて、経験を積みながら、今後必要であれば見直しをしていく。その際に、今御指摘のように、大規模生産農家の経営の安定ということにも十分配慮してまいりたいというふうに考えております。
  79. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 大臣、問題点があることは長官もおっしゃいました。私は、この実績に基づいてこれからいつか検討するのだということではなくて、今すべてのことを農水省内で検討を始めておると思いますから、価格政策と経営安定対策、この問題は極めて大きい問題であります。麦がその後に続いておりますけれども。お米が先行した嫌いがあるのですけれども、そうであれば、早急にこの稲作経営安定対策というものを見直しをする。  私は、実績を踏まないでも、五年を区切りとしてやっていくという形をとっておるようでありますけれども、早急に見直しをする課題であるというふうに思いますけれども、大臣の決意をお伺いしたいと思います。
  80. 中川昭一

    中川国務大臣 新食糧法のもとで新しい体制になり、そして、おととし、昨年と二年間、大量の在庫の中で、緊急対策ということでああいう生産調整をやっていただいておるわけでありまして、そういう中で経営安定をしていくということで、今先生と長官のやりとりのあったことでございますから、まさに私のところにも、きのう北海道の米作農家の皆さんからも御要望をいただきましたけれども、これはまさに六月の支払いという、目前に迫ってはおりますけれども、ことしの収穫に向かって、できるだけ早く問題点そして改善点を見出していかなければならないというふうに思っております。
  81. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 午後の質疑に移りますけれども、これは緊急対策でなくて、大きな対策の柱として経営対策を、法にも基づいてやるわけですから、ぜひそういう点で万全の恒久対策をつくっていただきたいと思います。  以上です。
  82. 穂積良行

    穂積委員長 次に、熊谷市雄君。
  83. 熊谷市雄

    ○熊谷(市)委員 私に与えられた時間は余り多くありませんので、担い手の問題に絞って質問をしたいと思いますので、ひとつよろしくお願い申し上げます。  なぜ担い手かということでありますが、今回、四つの理念のもとに日本農業を大きく変えていこうということで、新しい農業基本法が、これは歴史的に見ても大事業でありますし、さらには我が国の将来の根幹にかかわる問題であるということで注目を集めているわけでありますが、考えてみますと、そういう新しい役割、使命を担う農業基本法というのが成功するか否かというのは、これは一にかかって人にある、いわゆる担い手が農業の現場に定着するかどうかということにかかっているであろう。そういうことでこの問題を取り上げたわけであります。  しかしこれは、いろいろな解決の手法をどこに見出すかということになりますと、極めて困難な問題がかなり伴ってくる。言うならば、これは高度成長の落とし子のようなものだと言ってしまえばそうでありますが、しかし、将来展望というものを考えた場合に、避けて通れない問題が担い手の問題であろう、このように考えるわけであります。  そこで、今度の農政改革大綱、あるいは新基本法の中でもそうでありますが、いわゆる多様な担い手という形で幅広く担い手を求めていく、こういう考え方を打ち出されたわけであります。いわゆる意欲ある農業者、認定農業者を中心とした、そういう意欲のある者を考えていく、さらには農家子弟以外からの参入ということも認めていく、そして農業生産法人あるいは集落の生産組織、第三セクターによる株式会社等々、盛りだくさん挙げられているわけであります。  そうは申しましても、実際問題として、担い手の大宗を占めるのはやはり家族農業を主体とした農業生産者である、このように私は考えるわけでありますが、まず最初に、この家族農業現状認識について政府はどのように受けとめておられるかお尋ねをしたいと思います。
  84. 高木賢

    ○高木政府委員 家族経営は我が国において大宗を占めている経営でありまして、現状においては九九%以上が家族経営であるというふうに認識いたしております。
  85. 熊谷市雄

    ○熊谷(市)委員 そうは申しましても、担い手を初め、家族農業というものは、高齢化の問題あるいは農地集約、集積、そういういろいろな問題が、家族農業の経営形態というものが存在しているという観念の中から派生もしていると言わなければならないというふうに思うわけであります。  平成四年に新政策なるものを政府は打ち出したわけであります。言うならば、こういう問題を踏まえて、そしてさらに将来展望というものを開いていくという構想をねらいとして新政策を打ち出したというふうに思うわけでありますが、将来、農業を担っていく基幹となる経営体というものを育成していくんだ。時間の関係でその具体的な数字は省きますけれども、大きく分けて個別経営体と組織経営体、この二つの経営体で合わせて四十万から五十万ぐらいの農家群というものを考えている。さらには、稲作というものを分離して、単一経営あるいは複合経営、そして組織経営、戸数が合わせて十七万戸である、これを中心に規模拡大を図って我が国稲作の八割ぐらいのシェアを目指していくんだというものであったと思います。  さらには、この新政策の構想の中では、先ほど申し上げました農業法人であるとか、あるいは農業外からの参入をするというルートであるとか、女性の立場、役割の位置づけであるとか、いわゆる担い手の多様化という考え方がこの新政策の構想の中から発信されたのではなかったかというふうに思うわけであります。  したがって、新政策の考え方、精神というものが今度の新しい農業基本法の中に生かされていくのかどうかということ、この点、確認をしておきたいと思います。
  86. 高木賢

    ○高木政府委員 御指摘がありましたように、平成四年の新政策におきましては、望ましい経営体像といたしまして、効率的かつ安定的な農業経営という経営体像を提示いたしました。それは、御案内のように、主たる従事者の年間労働時間が他産業並みの水準で、主たる従事者一人当たりの生涯所得が他産業従事者と遜色のない水準の経営ということでございます。まさに、効率的というだけでなく、安定的な側面ということもあわせて勘案されております。  この望ましい経営体につきましては、その後、平成五年に農業経営基盤強化促進法ということで法制度化されまして、効率的かつ安定的な農業経営農業生産の相当部分を担う農業構造を確立するということが経営基盤強化促進法の目的にうたわれました。この新しい食料農業農村基本法案におきましては、その望ましい経営体像、現に認定農業者制度として運営されておることも勘案いたしまして、この望ましい経営体像が相当部分を占める農業構造を確立するということで、二十一条におきましてその精神を引き継いでおります。  それから、多様な担い手というお話がございました。望ましい経営体像だけですべて世の中をカバーできないわけでありますから、それのいわば補完的な意味合い、あるいは行き届かないところを補うという意味合いにおきまして、さまざまな経営のあり方、生産組織なり、あるいは個人として申し上げれば、基幹的な農業者あるいは高齢の農業者あるいは女性の方、こういった方々がそれぞれの意欲と能力に応じて、主として農業を営む方、主として農業を担う方と、役割分担をしながら地域農業生産に参画していく、こういう考え方をとっております。  本法案におきましても、そういう意味合いで、専ら農業を営む者等による農業経営の展開ということで、メーンの方々につきましては二十二条で規定しておりますが、地域農業のあり方でいろいろなものがあるということを念頭に置きまして、二十八条では農業生産組織の活動の促進ということで位置づけております。また、人といたしましては、一般的には人材の育成及び確保ということで、二十五条で規定しておりますが、女性の参画の促進ということで二十六条、高齢農業者の活動の促進ということで二十七条、それぞれの規定を置きまして位置づけを明確にいたしております。
  87. 熊谷市雄

    ○熊谷(市)委員 そういうことでありますと、先ほど来もいろいろな議論の中でも出てまいりましたが、なかなか規模拡大とかあるいは農地の集積とかというものは思うようにいかない、そういう問題がかなり今までの質問の中でも指摘をされてきたわけであります。したがって、そういう考え方というものをこれからの新農業基本法にも踏襲をしていくということであれば、なぜ、どこに原因があって思うようにいかなかったか、これをすっかり洗い出しながら反省を加え、そして新たな発想という形で検討していく必要性があるというふうに思います。  私は、思うようにならなかったということについては二つの側面があるのではないか。先ほど大臣の答弁にもあったようでありますが、受け手側と出し手側の双方にいろいな問題を抱えておった。出し手側からすれば、言うならば、土地というものは大事な資産であって人にゆだねたくない、そういう考え方が非常に根強く残っている。さらには、機械化が進んで、土曜とか日曜とかの休日農業というものが簡単にやれるようなそういう体制ができ上がってきている、したがって兼業農業というものが顕在化をしてきた、これが一つの大きな側面ではなかったかなというふうに思います。  ただ、これはいつまでもこういう形が持続できるかというと、私は決してそうは思いません。これは、昭和一けた台のリタイアという時期を迎えているわけでありますから、それとともに、土地は手放したくないけれども、経営はどなたかにお願いをしたい、そういう考え方というのは非常に最近強くなってきているなというふうに考えております。  それはそれとして、もう一つの側面は、今度は受け手側でありますが、これも、規模拡大を図っても、なかなか思うようなメリットが、それに対する規模拡大の報いがはっきりしていない、こういう面がある。特に農産物価格が低落、低迷を続けている。さらには、市場への対応、そういう前提で進んでいる。先々不安なものが残っている。規模拡大をして将来農業をやる、果たしてそういう意欲につなげられるかどうかというところに一つの問題があると思います。  さらには、そういうものに追い打ちをかけた結果になると思いますが、いわゆる生産調整という問題です。しかもこれは、三割近い、あるいはそれ以上の転作を余儀なくされてきている。それは、何かつくれば収入に結びつくんじゃないかな、そういう発想にばかり結びつかない、いろいろな耕地の条件であるとか、さまざまの理由によって転作ができない、団地化も組織化も思うようにならない、そういうようになってくると、三割の農地というものがいわゆる稲作によって確実な収入を担保する、そういう時代ではなくなってきている、こんなような理由もこの規模拡大に対する意欲を低下させているんじゃないかな。  そして今、総括して言うならば、受け手側が少ない、出し手側は多いけれども、受け手側はなかなかその需要にこたえられない、こういう問題が最近顕著になってきたのではないかな、こんなふうに思うわけであります。  そこで、こういった一つの阻害条件をどういうふうにして排除して、言うならば、新しい基本法の中で言う、二十一条の規模拡大をこれから図っていくのか。こういうことに対して、特に内容としては、今、小規模経営である兼業農家というものの扱い方、考え方をどうするかということと、もう一つは、大規模というか、そういう農家層の不安材料、特に経営安定対策という形の中でどんなふうにお考えになっておられるかをお伺いしたいと思います。
  88. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 幾つかの御指摘がございました。大臣からも、なかなか流動化集約化が進まないという点についてお答え申し上げた次第でございます。  確かに、出し手と受け手のアンバランスといいますか、それは非常に大きな問題でございます。それから、農地を貸すときに、貸しやすく、返ってきやすいという体制にあるかどうか。とりわけ、借りた方がそれをいい状態にして戻す、そういう体制にあるかないかというふうなこともございます。  各地で、特に安定兼業があるような地域ではそうした役割分担が地域内で進んでおりまして、兼業農家農地を少数の方に集約するというふうなことも進んでおります。流動化に向けて、私ども数々の施策をこれまでにもやってまいりましたけれども、今後とも、具体的に地域内で目標を定めまして、それに向けて具体的な対策をするということを進めていきたいと思っております。また、農地制度上障害になるようなことがあれば、これをまた乗り越えていくというふうなこともしたいと思っております。  とりわけ、農地集約する側にいたしますと、今現に持っている中型機械化体系がフルに効率的に発揮できるという規模が最適規模でございますので、そうした方向に向かって、これまでのような利用権の集積にとどまらず、作業の受委託等、これは集落営農を通じてやることになりますけれども、そうしたことにも心がけたいと思っております。  何よりも、この基本法案を御議論いただきまして、農政に対する将来的な信頼と展望を確立することが大事でございます。この基本法案の中には、経営安定対策ということを、もう既に現実的にはスタートしておりますけれども、明確に位置づけをいたしております。これによりまして、農業者の方々の将来に対する不安を払拭し、信頼をつなぎとめたいというふうに考えている次第でございます。
  89. 熊谷市雄

    ○熊谷(市)委員 経営安定対策もいろいろ今講じているわけでありますが、しかし、前のお話にたしか出ておったようでありますが、経営規模の大きな農家ほど収入、所得の目減りが非常に大きいということがはっきり出てきているわけでありますから、こういうものがしっかり安定をしていくための、言うならば経営安定対策ということについてさらに努力をいただきたいな、こんなことを要望申し上げておきたいと思います。  そこで、今いろいろな問題を出したわけでありますが、それらを具体的に、しからばどういうタイプの担い手という形で取り組むことによってより有効な一つの効果が期待できるかなというようなことについてひとつ話題を進めてみたいと思います。  私は、さっき、いろいろ多様な担い手としてのものがたくさんありますということを申し上げたわけでありますが、その中で一番現実的であって、しかも即効果があらわれる形のものとしては、集落営農体系というものをやはりぜひ考えるべきじゃないかな、私はこんなふうに思っております。  なぜ集落農業を重要視するか、その理由を幾つか挙げてみたいと思います。  一つは、さっき言った、家族農業というものが補完をされてくる。そういうものが補完された形で、言うならば、いわゆる経営規模経営体が大きくなるような、そういうものが描かれてくるということが一つでありますが、さっきも申し上げましたように、家族経営といっても、そこにはいろいろ問題を含んでいるわけであります。零細規模というものを温存させているということもあるし、それから、後継者の確保が困難であるということなり、あるいは高齢者依存が強まるとか、機械なり設備の過剰投資があって合理化に結びつかないといったような欠陥が家族農業にあるわけでありますから、そういう欠陥というものを集落に抱え込むことによって解消できるんじゃないかなというのが一つであります。  二つ目には、先ほどの答弁にもあったように、いわゆる兼業農家なり専業農家なりがうまく役割分担をしてバランスのとれた地域農業を構築していく、そういうことがこの集落農業という形の中で解消できてくるんじゃないかな、こんなふうに思います。  そして比較的若い人たちは、もう経営の中軸に役割を据えていく、あるいは女性なり高齢者なりも、その役割に応じたような形で分担をしていくことができる、そういったさまざまな一人一人の個性が生かされた形で、それを総括するような形で経営体をつくり上げていくということがこの集落営農にはかなり期待できるんじゃないかなというふうに思うわけであります。  それから三つ目としては、転作で問題になっている、団地化とかあるいは組織化とか、こういうものを図って、生産コストをより合理化しながら、収益性の上がるような方策を見出していくということになれば、集落営農体系ができるともう直ちにこれは組織化、団地化に移行できる、こういうものがあると思います。  さらには、集落の連帯感、相互扶助、こういう人間関係というものができ上がるわけでありますから、これからスタートする介護保険のホームヘルパー活動というようなものが潤沢に回転、運用ができる、言うならば、地域社会としての共生というものがそこにでき上がってくる。  もう一つつけ加えて言うならば、国とか自治体の支援が一つの集落を単位にして行われるということになってくると、それを構成する人たちに平等にそういう公共機関からの効果というものが行き渡ってくる、こういうことにもなってくる。不平等によってのいろいろな格差に対する苦情なんというものも出てこないのじゃないかな、こんなふうに考えるわけです。  言うならば、今度の基本法の二十八条で示されるこの集落農業というものが実現することによって、この新しい基本法で言う二十一条の問題なり二十二条の問題、二十六条そして二十七条、こういうところでうたわれている内容というものもおおむね包括されて、効果を生み出すことができるのじゃないか。したがって、こういうものに最重点を置いてこれから考えてはいかがなものかというふうに思うわけでありますが、政府としてのお考えも伺わせていただきたいと思います。
  90. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 官房長の方から多様な担い手という話を申し上げました。これを私どもはあくまでも念頭に置いております。  効率的、安定的な農業経営農業生産の相当部分を担う望ましい農業構造を確立するという方向に向けて進むわけでございますけれども、我が国農業なり農村の実情を踏まえますと、こうした効率的、安定的な農業経営の育成にとどまらず、地域農業全体としての効率的な農業生産をその地域の実情に応じて進める必要があるわけでございます。専業農家兼業農家がお互いに役割分担をし、補完をし合うというのがこれからの集落営農という点で望ましい方向だというふうに考えております。  この集落営農を通じまして、分散錯圃という問題が実質的に解消いたしますし、また、作業効率が上がるということでコストも下がるというメリットも持っております。現実問題といたしましても、農用地利用改善団体という形での集落営農が一万四千ほど既にございますし、それから、JAがイニシアチブをとっている地域営農集団、これも一万三千ほどあるわけでございます。こういったところにやはり同じように重点を置きましてこれからの活動を支えていきたいと思っております。  そういう点で、新しい法案の二十八条には、地域農業における効率的な農業生産活動を支える組織として、集落営農等の農業生産組織を明確に位置づけをいたしまして、その活動の促進に必要な施策を講ずることとした次第でございます。
  91. 熊谷市雄

    ○熊谷(市)委員 さらに、この集落営農の効果をもう少し具体的に紹介する意味で、宮城県の米山町で取り組んでいる、これは集落組織に生産組合というものをつくってやっているところですが、この米山町というのは、人口が一万一千人ぐらいで本当の純農村です。農業人口が大体七、八割ある、そういう地域であります。ここには三十幾つかの集落があるわけですが、そのうちの大体六割強、七割近い集落が、今申し上げました生産組合というものをつくって集落営農体系をやっているところなんです。宮城県としては最も転作が進んだという先進地であるし、その転作の団地化も七〇%確立をしているというところなんです。  ここで非常にユニークな事業が今度始まったわけです。転作としてチューリップの栽培が始まった。これはもう東北一の規模で始まっております。本数が大体七十万本、チューリップ祭りというイベントを開いて、その期間内に来た訪問客が二十八万人なんです。一万一千の人口のところに二十八万も来訪者が来た。そして、この七十万本のチューリップがもう全部完売をされた。こういう発想とか、それから最近、バラとかイチゴのハウス栽培、そういうものにも力を入れている。  さらにユニークなのは、ダチョウなんですが、これは高たんぱく質で健康にいいということで、最初六羽ほど導入したわけですが、これがもとになって、人工ふ化をして今百羽までふやした。そして、今言ったイベントのようなものにダチョウの肉を抱き合わせてやるといったような、とにかく次々に夢というものを発信している、こういう地域が現在あるわけですよ。これはやはり、集落というものがまとまって一つの目的にみんなが協力してやっている、こういうあらわれじゃないかな。  それで、若者が育っているのですよ。こんなちっちゃな町であっても、毎年四人、五人の新規就農者がある、こういうところをやはりこれからモデルにして、夢のある農業というものを描いていくべきじゃないかな。そして、担い手というものが極めて大事だという認識に立って、こういったものにシフトをしてこの新しい基本法に基づく政策というものを進めていかなければならないというふうになるわけでありますが、最後に、大臣に、そういう所信というか決意のほどをお伺いしたいと思います。
  92. 中川昭一

    中川国務大臣 先生冒頭おっしゃいましたように、何といっても農政の中心は人でございまして、新しい基本法が目指す方向も、やはり経営感覚にすぐれた効率的、安定的な農業経営を育成し、そして、その創意工夫を発揮した経営が行えるように、今後も意欲ある担い手に施策を集中しなければならないと思っております。  このため、資本装備の充実、労働力の確保、経営管理能力、技術の向上など全般にわたる支援策を、経営の効率化と経営の安定化をさせるための施策を整備することにより体系的にやっていきたいと考えております。ありがとうございました。
  93. 熊谷市雄

    ○熊谷(市)委員 ぜひ政府が模範を示して、意欲ある取り組みをお願い申し上げて、時間でありますから終わらせていただきます。ありがとうございました。
  94. 穂積良行

    穂積委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時九分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  95. 穂積良行

    穂積委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。小野寺五典君。
  96. 小野寺五典

    ○小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。  きょうは、食料農業・農村基本法、このことについて質問させていただくことを大変光栄に思っております。まさしく二十一世紀の日本農業、どうあるべきかということを決める大事な法律だと思います。農家の方の期待も大変高まっている。そういう思いを受けまして、きょうは質問させていただければというふうに思っております。  まず、今回の農業基本法、いろいろな大きな柱があると思うのですが、私はその中の一番大きな柱というのが食料の安定的な供給の確保。食料安全保障の議論もなされておりますが、思い起こせば、日本はたしか一九七〇年代だったと思います、ソビエトの大豆の不作によりまして、アメリカからの輸入が一時ストップするというような状況がありまして、そのとき本当に困った、そういう過去の苦い経験があります。それを踏まえても、本当に自国での食料の安定的な確保というのは大変重要だと思います。  今回、特にこの法案の第二条には食料の安定供給の確保ということで、かなり具体的にいろいろなことが明記されていますが、その中で、特に自給率ということを今後明確に設定する、そういうふうな基本計画の定めについても表示をされているところであります。  これは大変期待するところではありますが、一点心配なのは、自給率ということを確かにこの法律の中である程度定めることを決め、また基本計画の中で、実際にその品目ごとに自給率を設定するというふうに伺っているのですが、自給率を設定した後、この設定した目標に関してどのような具体的な政策でその自給率を達成していくのか。むしろ、その中身、具体的な政策についてもう少し議論を深める必要があると思うのですが、その自給率の向上のための具体的な施策についてお伺いしたいと思うのです。
  97. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、この法案食料農業・農村基本法ということで、冒頭に食料という国民生活全体にかかわる問題を第一に挙げた題名になっておるわけでございますが、この施策全体が、やはり生産者だけではなく、消費者あるいは関係者、業界等々を含めて、みんなで安定的な食料の供給を初めとする四つの理念の実現に向かって頑張っていこうということでございます。自給率をどう設定するかについての直接的な御質問ではございませんので、向上のための具体的な施策いかんということに直接的にお答えをさせていただきたいと思います。  まず、国内生産基本とし、そして世界の中でも極めて低い自給率を少しでも向上するために実現努力をしていくというさまざまな方策が必要になってくるわけでありますが、この場合、生産サイドだけでできるという問題ではないというふうに考えております。消費者あるいはまた学校教育といいましょうか、子供に対する一つの教育的な側面も必要になってくる等々、さまざまな立場の方々の一体的な取り組みが必要だろうというふうに考えております。  具体的に、農業者サイドにおきましては、耕作放棄地の解消あるいは利用率の向上、さらにはコストの低減と消費者ニーズに対応した生産等の課題に取り組む必要があると考えております。食品産業関係の皆さん方に対しましては、消費者の適切な商品選択、つまり、消費者ニーズにこたえるという観点、これは物だけではなくて表示の問題等々もいろいろあると思います。そして、農業サイドとの連携で販路の開拓、あるいは新製品開発の取り組みといった連携の強化、さらには製造過程や販売ロス等によって生じる廃棄の発生の抑制等の課題に取り組むことが必要だと思います。また、消費者サイドにおいては、食べ残しや廃棄等の発生、あるいはいわゆる日本型食生活と言われております、世界的にも評価されております栄養バランスが崩れている現状を見直していく必要があると考えております。  また、政府といたしましては、自給率向上のための課題を明らかにし、基本計画を自給率設定として入れていくわけでございますから、その達成のために地域段階での生産努力目標の策定の促進、あるいは市場原理を重視した価格形成の実現と消費者ニーズの的確な伝達、あるいは価格政策の見直しに伴う経営安定対策等の体系化、そして技術の開発普及、品質の向上、安定、生産基盤の強化。消費面では、健全な食生活の指針、あるいは消費の状況農産物の供給の状況、そして食べ残し、廃棄の抑制、日本型食生活の普及等の国民的な運動のための施策を政府としても講じていかなければならないというふうに考えております。
  98. 小野寺五典

    ○小野寺委員 今、平たく言いますと、国内生産をした農産物をなるべく多く食べましょう、多分、これからそういうふうな教育あるいは運動をするということなのかもしれませんが、現在、農産物の内外の価格格差というのを考えますと、なかなか対外的に国際競争に伍していけるような価格設定にはなっていない、そういう現状があると思うのです。それでも、自給率を設定した場合に、国内の施策だけでその設定に近づけるようなことができるとお考えでしょうか。
  99. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、一般論といたしまして、基本法の中にも書いてありますように、国内だけの問題ではなくて、国際的な貢献も含めまして、世界の中での食料と人口とのバランスという問題も規定の中に位置づけておるわけでございます。そういう観点の中で、日本国の中での自給率向上の努力をしていく。そのためにはやはり国内生産基本となる。これは日本生産者サイドのためにも、また消費者サイドのためにもなることだろうというふうに考えております。  しかし、現実問題、それで一〇〇%ということは無理でございますので、備蓄あるいは輸入を適切に組み合わせていくということでございますが、内外価格差の問題が確かにございますけれども、過去のトレンドを見ましても、生産者もいろいろ価格を引き下げる御努力をされてきておりますし、また、外国と同じような価格のものにしろということで、生産サイドに打撃を与えてまでやるということは、これは日本食料政策、農業政策からいってとり得ないところであります。  もっと申し上げますならば、生産をする過程においての例えばガソリン、あるいは電気といった重要な生産資材そのものの内外価格差もあるわけでございますから、そういう意味で、もちろん適切な価格で消費者に供給をするということの努力は必要でありますけれども、そこには適切な生産というものが前提にあってということでございまして、消費者と生産者との共生という観点から、ともに生きるという観点から、内外価格差をできるだけ小さくするという方向性は守りつつも、やはり現実的に生産者が頑張っていける範囲内で、そして消費者もただ価格だけにこだわるとは私どもは考えておりませんので、いいものを適切な価格でという両方の共通認識のもとで国内生産、そしてこれを中心とした備蓄、輸入というものを組み立てていきたいというふうに考えております。
  100. 小野寺五典

    ○小野寺委員 農家の方々は本当にかなりの生産努力をされております。先ほど大臣お話しされましたが、日本のようないろいろな生産にかかわるその他の費用に関して、どうしても高い金額になってしまいます。したがって、競争というのは、これは自然と限界があると思います。  そういう中で、ぜひ、今回日本では農業基本法の中に自給率目標というものを入れたものですから、それを国際交渉でも前面に打ち出していただいて、何とか日本農業を守っていただければというふうに思っています。  また、それに関連しまして別な質問をさせていただきたいのですが、今回の基本法の第十八条には、関税率の調整あるいは輸入の制限その他必要な施策など、具体的な輸入制限ができる、そういう項目が盛り込まれています。この制限の具体的な内容について少し教えていただきたい。  また、もう一点、こうなりますと、来年に控えておりますWTO交渉、この協定の整合にひっかかるのではないか、そういう危惧があるのですが、その辺について教えていただければと思うのです。
  101. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 食料農業農村基本法案第十八条に規定しております関税率の調整、輸入の制限でございますが、これはガットの第十九条それからWTOのセーフガード協定並びにこれらを実施するための国内法に基づきまして、政府による調査の結果、予想されなかった事情の変化による輸入の増加によりまして、国内産業の重大な損害またはそのおそれが生じているという場合、さらに、そういうことによって国民経済上緊急に必要があると認められる場合に行います関税の引き上げや輸入数量の制限を想定しているものでございます。  また、その他必要な施策という規定もございますが、これは、この条文に基づいて施策を講じていきます過程におきまして、必要に応じて検討していくということになろうかと思います。例えば、国内農産物生産性の向上を図るため、または生産品の品質改善とか差別化の推進によりまして競争力の強化を図る、そういうための国内施策といったものが考えられるところでございます。  こういった関税率の調整なり輸入の制限につきましては、WTOの協定上認められている措置でございまして、その発動に当たっても、当然のことながら協定との整合性に留意していくということでございます。  また、その他の必要な施策ということにつきましても、協定との整合性に留意していくということは当然のことと考えております。
  102. 小野寺五典

    ○小野寺委員 そうしますと、いわゆるセーフガードという条項がありますので、緊急的な輸入増加に関しては、この第十八条で、関税の調整そして輸入の制限ができるというふうに理解していいと今の答弁から伺いました。そういうことがなければいいのですが、輸入農産物、いついかなるときに急増するかわかりませんので、ぜひ常日ごろのチェックをお願いできたらというふうに思います。  次の質問に移りたいのですが、先日、自民党の本部で、自民党の米国農林業事情視察団というところの報告がございました。この委員会では松岡理事が行かれている、そういうところの報告です。  その際に出た報告の中で、実は、アメリカのある州でたばこを購入したら、それが一箱四百五十円した。日本では同じものが二百五十円で売られている。これは日本にとっては逆にダンピングということにならないか、そういう議論が出ました。  それで、どうもダンピングといいますと日本の専売特許のように国際的には報道されていますが、この農産物の中で、例えばアメリカでの市況と日本での価格ということを実際にマーケットで調べた場合に、ダンピングという形で日本に入ってきていることはないのか。あるいは、アメリカにはいろいろな形の補助金があるというふうに伺っています。かなり高率の補助金も実は出ているというふうにも伺っています。  そういうふうな監視体制というのでしょうか、そういうものを農林水産省ではもっとするべきだと思うのですが、現在そういう調査をしているのかどうか。あるいは、もししていないのであれば、ぜひそういう調査をしていただきたいと思うのです。
  103. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 ダンピングに関連する御質問でございますが、ダンピングによりまして農産物の輸入が行われますことは、我が国農業に大きな損害を与えることもあるということで、農水省としましては、それぞれの農産物につきまして、輸入量とかあるいは国内価格の動向等、個別品目ごとの状況把握に努めているところでございます。  また、国際的には、ダンピングを防止するために、いわゆるアンチダンピング関税であります不当廉売関税の制度が設けられております。この関税は、ガットの第六条、それからWTOのアンチダンピング協定、それからこれらを実施するための国内法に基づきまして、政府による調査の結果、ある国の産品がその正常の価額より低い価額で我が国に輸入されるダンピングによりまして我が国の国内産業に実質的な損害を与えている、そういう場合に特別の関税を課するものでございます。  農水省といたしましては、個別品目ごとの輸入量や価格等の把握に日ごろから努めているところでございますが、ダンピング輸出による価格の低落あるいは関係生産者所得の減少等による国内農業への重大な損害等につきまして十分な証拠が認められた場合には、関係省庁とも御相談しながら、このアンチダンピング関税を課するための手続に入るべきものというふうに一般的には考えているところでございます。
  104. 小野寺五典

    ○小野寺委員 そうしますと、具体的には農水省としては調査をしていないということでしょうか。  たしか、主要な大使館には、農水省からそれぞれ農業の専門家が書記官として出向しているというふうに伺っているのですが、そういう調査というのはその中には入っていないのでしょうか。
  105. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 諸外国におきます商品価格の動向でございますが、もちろん各在外公館におります農務官等を通じての情報も随時入手しておりますが、そのほかに定期的には、私どもとしまして、ジェトロを通じまして、主要国の主要都市におきます主要な食料品について継続的に調査を行っているところでございます。
  106. 小野寺五典

    ○小野寺委員 これからまたWTO交渉を含め農産物交渉が盛んになってくると思います。  その際に、日本側もある程度強く発言できるような、例えばアメリカの補助金の内容、この間の調査団の報告によりますと、直接所得補償だけで年間に六千億円補償されている、そういうふうな補助金も出ているというふうに伺っております。  もうちょっと農水省としまして基礎的な資料をしっかり集める必要があるんじゃないかというふうに思いますので、ぜひその辺を強く要望いたします。  次の質問に移ります。  今回の農業基本法の中で、第二十四条に、生産基盤の整備ということがあります。現在、担い手型の圃場整備を含め非常に有効な基盤整備が行われていることは事実なんですが、実は、地元に帰りまして、いろいろな声がある中で特に強いのが、現在、基盤整備、特に補助率が高い担い手型など利用したいのだけれども、今地方財政が非常に逼迫しております。特に都道府県の財政が厳しい状況にあります。御存じのとおり、地方自治体の場合、起債制限がございまして、自由に赤字公債を発行することができない。そういう状況にありまして、非常に財政的に制限がございます。  そういう中、国の方ではせっかく圃場整備の予算をとっても、地方自治体に裏負担というか財源がないということで、圃場整備が進まないという実情がかなり起きているのですが、ぜひ、こういう厳しい状況にあるからこそ、圃場整備にかかわる県の負担あるいは市町村の負担分について、その軽減を手当てするような方策についてお考えではないか、お伺いしたいと思うのです。
  107. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 農業の構造改善を進めるに当たって圃場整備事業は不可欠な事業でございますので、御指摘のように、都道府県を事業主体としてこれまで積極的に推進をしてきたところでございます。  その際、事業の円滑な実施という観点に立ちまして、平成三年に、実は、受益の度合いに応じた地方公共団体の標準的な負担割合を示すガイドラインを策定いたしました。県営事業でいいますと、県の負担が二七・五%、市町村が一〇%という形で出しているわけでございます。また、平成七年度からは、この圃場整備事業の基幹工種に当たります区画整理事業を一般公共事業債の対象工種とするといった形で、地財措置の拡充にも努めているところでございます。  御指摘がございました県の負担、特に宮城県の場合には、農家負担を軽減するという観点で、県の負担が言ってみればガイドラインの二七・五を超えて三五までかさ上げをされているというふうな事情もあるのだろうと思います。基本的には、私ども、全体としての事業費は、コストを下げるということも大事なことでございますので、望ましい整備水準、それから、コスト削減についての具体的なアクションプログラムといいますか、三年間で一〇%下げるというふうな計画を立てまして、コストの節減にも努めているところでございまして、これから先も極力効率的な事業実施がされるように努力をいたしたいと考えます。
  108. 小野寺五典

    ○小野寺委員 今、平成三年それから平成七年、ガイドラインということが出ましたが、特に今年度から、どの県もそうだと思います、宮城県に限らず、地方財政の危機が叫ばれる中、このガイドラインを見直すというような見通しはないのでしょうか。
  109. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 ガイドラインそのものについて現在見直すという予定はないわけでございますけれども、全体として、農家負担も含めて圃場整備事業に対する負担をどうやって軽くしていくかということにつきましては、これから先の農業農村整備事業をどう持っていくかということとも関連をいたしまして、内部で検討しているところでございます。
  110. 小野寺五典

    ○小野寺委員 ぜひこのガイドラインの見直し、平たく言えば、もう少し国の負担を上げていただいて、財政逼迫しております地方自治体の負担を軽減していただければ、さらに基盤整備が進むのではないかというふうに思っています。  次に、今回の新農基法の中の大きな一つのポイントとして、中山間地への直接支払いということがあります。現在、検討会でその状況についていろいろな議論がされているというふうに伺っているのですが、実は、農家の方々の大きな不安というのは、これにかなり期待するところが多いということなので、その指定の範囲はどの程度なのか、あるいはどのぐらいの直接支払いが見込まれるのか、そういう具体的なことについて今関心が移っているのですが、この導入についての今後の見通しについて少し教えていただきたいのです。
  111. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 昨年の農政改革大綱の中で、中山間地域等への直接支払いへの具体的検討ということを決定したわけでございます。また、今回の基本法の三十五条二項におきまして、不利の補正という形でよりどころも設けることといたしました。一月二十九日に検討会を発足させまして、五回ほど検討を行ってまいりました。近々、六回目の会合を開いて中間的取りまとめを行いたいと思っております。  この中間的取りまとめは、まだ議論が相当多様にわたっておりますので、一本の取りまとめにはならないのではないかというふうに私は思っておりますけれども、その後これを公表し、また議論を深めて、この夏の概算要求に何とか間に合わせる、そして平成十二年度から実施に移りたいというふうに考えております。  この間、地方にも出かけまして、現地で実情の調査をいたしました。それから、地域施設その他について、各地方公共団体からも御要請がございますけれども、もろもろの事柄につきまして、残された期間、取りまとめに向けた努力をいたしたいと考えます。
  112. 小野寺五典

    ○小野寺委員 期待するところ大いにありますし、また、せっかく期待が上がる中、実際ふたをあけてみたら、何だ、こんなものかというようなことにならないように、ぜひしっかりとした現地の調査をし、また、農家の方の期待に沿えるような形でお願いできたらと思っています。  それでは、もう次の質問に移るのですが、今回の基本法の第三十四条に、国は、地域農業の健全な発展とともに、景観がすぐれ、豊かで住みよい農村とするため、地域の特性に応じた生活環境の整備その他というような、農村の振興ということがあるのです。現在、農村の振興ということも確かに問題ですが、それ以外に、山村あるいは漁村の振興というのも大きな課題になっていると思います。  そこで、ぜひ、提案またはお伺いしたいことがあります。  漁村の集落環境の整備ということなのですが、これは、主に漁港事業の中で、漁港の周辺を主体に事業が行われているということになっているのですが、御案内のとおり、今、漁港というのはいろいろな面で多くの問題を抱えています。  漁村の中には、とりわけ人工的な漁港を新たにつくらなくても、天然の漁港、港湾で十分機能が発揮できる、そういう地理的な場所も多々あります。ですが、そういう場所は逆に陸地からかなり、狭隘な道路が陸地にあるために、その環境整備というのが余り図れないという状況で、取り残されているような現状があります。  ぜひ、この集落環境整備事業ということ、漁港事業の中で広くこういう事業の手当てができないか、そういう見通しがないかについてお伺いしたいのです。
  113. 中須勇雄

    ○中須政府委員 ただいまお話ございましたように、漁村の場合は約七割がいわゆる離島とか半島等の条件不利地域にございますし、背後に山が迫って、非常に狭いところに住居地域が形成される、条件が厳しいところが多いわけでございます。したがいまして、どうしても、集落排水施設等を初めとした生活環境施設については、都市部に比べて大変立ちおくれているというのが現状であります。  このために、今お話ございましたように、第九次の漁港整備計画の中で、漁港漁村整備という中におきましても、重点的にこの生活環境の整備については予算措置を講じまして、事業効果の早期実現ということで努力をしているところであります。  ただ、率直に申しまして、限られた予算の中で大変数は多いわけでございまして、やはり、重点的にできるところから進めていくというふうなことで取り組んでいるわけであります。  そういう中で、今先生の御趣旨にございましたように、整備が進むにつれて対象地域拡大ということも考えていかなければならないということで、今年度におきましては、いわゆる漁港背後の集落ということに従来限っておりましたのをさらに範囲を広げて、一体的に整備する必要のあるちょっと離れた集落、そこまで整備の対象を広げて、一体的に整備を行えるというふうな予算措置というか、事業面での拡充を図ったところでございます。  今後とも、整備状況進展なり予算の確保ということに努めながら、それと、漁村の環境整備というのは関係省庁が非常にございますので、関係省庁とよく連携をとりながら、立ちおくれている漁村の生活環境の整備に努力をしていきたい、積極的に努めていきたいというふうに考えております。
  114. 小野寺五典

    ○小野寺委員 ぜひ、この漁港、今まではハード面で、船着き場というのをどんどんつくっていくという事業から、これからはやはり漁村集落という視点に変えて、集落の環境整備に予算をどんどん使っていただきたい、そういう思いであります。  今回のこの農業基本法は非常に大きな法律でありますし、また、今後何十年もこの基本法によって日本農業が支えられていくわけですが、ぜひ、この議論というのが、現在は農業の問題でありますが、この基本法の中にもありますように、これが、林業そして水産業、あらゆる面でそういう一次産業に波及しますように、これに引き続きまして、林業あるいは水産業の中でも新しい基本法をつくっていただくような方向で論議が進んでいければ、ありがたいと思います。  きょうはどうもありがとうございました。質問を終わります。
  115. 穂積良行

    穂積委員長 次に、鉢呂吉雄君。
  116. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 大臣、三十分ですけれども、お願いいたします。  私、おととい質問をいたしまして、反響の大きさにびっくりしたのですけれども、自給率の向上のところで、基本計画のところに、私が、自給率を向上させることはなかなか困難性が大きいということで、施策を集中して予算を重点的に配分して、自給率の達成について国、政府が責任を持って行うべしということの条文を入れるべきだというふうに発言をしたのですけれども、やはりそこが一番肝要なところではないかという声が私のところに直接電話が来たり、農業新聞に出たせいもあるのでしょうけれども、この法律のメッセージといいますかアピールといいますか、そういうものを発する必要があるのではないかという点で、各党からのいろいろな御意見も出たと思います。おおむね、修正すべき点は、自給率を向上して国内生産拡大を図るべきだ、また維持拡大を図るべきだという声は各党から出ております。自民党さん、与党さんも、先ほど熊谷先生お話を聞いても、やはりなかなか現状大変だということで、この基本法が本当の意味で国内生産の増大に役立つようなものになってほしいという声は大変強いのですけれども、大臣として、御所見をお願いいたしたい。官房長は立たなくてもよろしいです。
  117. 中川昭一

    中川国務大臣 自給率を向上させなければならないということでは、政府・与党、そして各党の先生方ともう一致をしていることだろう、きょうで四日目でございますか、議論を通じて私はそう認識をしております。  そういう意味で、最初のうちは維持増大という言葉の方がいいのではないかという議論からスタートしたわけでありますけれども、維持増大よりももっと強い定性的な意味を込めてということで、国内の農業生産基本としてということが基本理念の第一番目として二条二項に書いてあるわけであります。  これに基づいて、十五条でもって食料自給率目標を設定するということでございますが、この数字がもちろん高ければ高いほどいい、実現可能なものでなければならないということは私も何回も答弁させていただいたところでありますが、もう一つ大事なことは、やはり実現可能な数字でなければならないということだろうと思います。  各生産サイドの品目ごとの数字を積み上げ、そしてまた消費者サイドにも理解をいただきながら、食べ残しあるいは日本型食生活といった観点まで、国民に対する啓蒙あるいは子供に対する教育の面まで私自身は視野に入れておるわけでございますけれども、そういう数字を掲げるということは、この法律の基本理念に基づく基本計画の中で十分私は担保されるというふうに考えております。  自給率の向上あるいは自給率そのものを法文の中に明示しろということでございますけれども、これは決して自給率目標を低く見積もるからこの法律の中に書き込まないということではなくて、基本になっていないという認識、それからもっと上げなければいけないという認識を前提にしまして、しかし十年程度目標という一つの目安、そして五年ごとに必要があれば再評価をするという今回の法律の手法を考えますときに、五年ごとに数字を条文の中で改正する、上げたり下げたりするということは、この基本法という非常に大きな法律の性格からいっていかがなものかという二つの理由でもって、二条に基づく理念、そして十五条に基づく基本計画でもって十分向上という目標に向けて担保されるものであるというふうに私は理解をしているところでございます。
  118. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 国内生産基本とするという中には、もっと明快に、増大、拡大よりも強い文言が含まれている、あるいは大臣がおっしゃいました自給率目標という言葉で自給率の向上というものが入っておるというには、やはりメッセージとしては、普通の人が大臣の言葉を抜きで見たときに、そういうメッセージは難しい、抽象的な文言にも通ずるわけだと思っております。  そういう意味では、ぜひ大臣としてここはきちんとした法律として示していただきたいものだなというふうに思いますし、それとの関係で、先ほどとの継続になりますけれども、農産物価格の形成と経営の安定というこの第三十条の表題でありますけれども、ここはやはり、答申でもきちんと意欲ある担い手という言葉を書いていますけれども、意欲ある担い手に対する所得確保対策の導入、あるいは改革大綱も、市場原理を重視した価格形成の実現、これはいいですけれども、二番目に、価格政策見直しに伴う所得確保・経営安定対策の実施。この改革大綱は、前段は個々の作物ごとにやる場合は所得確保対策として行うのだ、経営全体として作物を全部あわせてやる場合は経営安定対策として今後そういうものについては検討しましょうという表現で農政改革大綱は出されておるのであります。  私は、明確に所得確保対策というふうに、経営対策を抜けというふうには言いませんけれども、最低、価格形成、それにかわるものとしてあるということであれば、所得確保、経営の安定という文言をきちっと法律に明記しなければやはり大きなメッセージとして発せられないというふうに思いますけれども、いかがお考えですか。
  119. 高木賢

    ○高木政府委員 法案の三十条二項では「価格の著しい変動が育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するために必要な施策」ということで幅広い書き方になっております。この方がいろいろな今後起こり得る事態、何が必要な対策かということはあるわけですけれども、幅広い規定の方が規定ぶりとしていいのではないかということで整理したものでございます。
  120. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 先ほど稲作安定化対策、私は後で聞きますけれども、WTOでいけば黄色の政策にしかならないだろうと。いわゆる自主流通米の価格補てんの基礎としてやるわけでありますから、まさに価格政策の変形といいますか、そういう形で財政支出がされるわけであります。収入保険的な制度の、生産者の補てんもありますけれども。畜産局の方は、加工原料乳の方は、所得補てんをするという意味合いの新たな制度を考える、これはまさに所得補てん的な意味合いの濃い政策をつくろうとしておるのだと思います。  そうであれば、答申に示された所得確保政策の導入という形でやはりきちんとした表現をしてほしいというふうに思いますし、政府は昨年中央省庁の改革法案をつくりました。その中央省庁の再編基本法の第二十三条、農林水産省の編成方針という中の五項でありますけれども、農業経営の展開を可能とせしめるために、生産者所得を補償する政策への転換について検討することというふうに明瞭に、皆さんの提出したといいますか、これは農水省ばかりでなくて政府全体として提出をして今中央省庁再編の基本法になっております第五項に、所得補償をするための政策への転換、検討ということで書いてありますけれども、明瞭にそのように言っておるわけであります。  私は、やはり言葉は大事でありますから、何か経営安定とか、あるいは自給率目標を掲げるということとか、国内生産基本とするというだけではメッセージが弱いのではないかというふうに思いますから、大臣の御所見をいただきたいと思います。
  121. 高木賢

    ○高木政府委員 経営対策ということはこの新しい基本法案ではかなり重視をいたしております。もちろん、農業者所得確保というのが重要な課題であることは言うまでもありませんけれども、所得の確保というのはやはり農業者自身の経営努力がまず基本になる。それに加えまして、政策としてもいろいろな支援をいたす。こういうことの双方の努力が相まって実現をする性格のものであるというふうに考えております。  本法案におきましては、二十一条におきまして、農業経営という視点を重視いたしまして、営農の類型及び地域の特性に応じて経営対策を講ずるということを明記してございまして、より幅広く、いろいろな局面での事態も想定しながら、経営対策を体系的に整備する、こういう考え方で整理をしてございます。  したがいまして、所得補償ということも基本法で検討ということで規定されておりまして、そういった手法も今後のいろいろな事態に応じてあり得ると思いますが、当面、とにかく、この法案といたしましては、こういう経営安定対策ということでくくっているわけでございます。
  122. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 農政改革大綱によれば、その経営政策の体系的整備というところで、今官房長が言われましたようなさまざまな施策を体系的に講じていく、資本装備ですとか雇用確保、技術向上等の経営全般にわたる支援策として体系的に整備をするというふうに書いています。  しかし、そこがやはり一番問題でして、大臣、今まさに全面的に価格を市場原理に移行する、そうであれば、これは相当大きな、急激な変動を伴うことであります。今までの生産所得補償方式の価格政策とは大変違った形であります。  ですから、私は、段階的に安定的に移行する施策に十分注意を払わなければ大変な事態になるのではないかと思う。アメリカでさえ市場介入の価格制度、ヨーロッパはもっと強い介入の制度をつくりながら、残存しながら次の施策に移行しておるのであります。  ここのところを、移行体系というものをきちっと、価格制度にかわる所得確保をしながら、安定的に農家経営を移行していくという施策に全力投球していただきたい。  加工原料乳については、そういう面が十分見られるというふうに私は思っています。まだ今検討途中で、局長北海道に来てさまざまな講演をやっておりまして、私はそれを子細に見させていただいております。そういう配慮がなければ、稲作の場合は、食糧庁長官がおりますけれども、全体的な価格政策とそれにかわる所得政策について、あのときは緊急的に入れたかもわかりませんけれども、しかしこれは緊急的な措置ではありません。これからの日本稲作の政策をきちっと具体化するものでありますから、やはりきちんとした体系をそこにこそつくるべきである。  そして、透明性のある、どちらかというと生産者は、何かいろいろな経営対策を講じている、しかし結局のところ、違うところがもうけて、目に見えた経営改善にさっぱりつながっていかないではないかというような、予算のあり方についての大変な御批判もあるときでありますから、そういうものを踏まえて、またWTOの精神を踏まえて対策を講ずる時点に今はあるのではないかというふうに私は思いますので、端的な御答弁でいいのですけれども、大臣からお願いします。
  123. 中川昭一

    中川国務大臣 二十一条で、効率的かつ安定的な経営を目指す、そしてそのためには、今官房長が申し上げたように、自主性といいましょうか、いろいろな知恵を主体的に絞って経営ができるようにしていくということが、前提といいましょうか目標でもあるわけであります。  一方、消費者と生産者との間で、内外のファイアウオールをつくった上で、市場原理というものを導入していきましょうと。その場合に、育成すべき経営体につきまして、打撃をこうむる場合に対しての経営安定対策として、今回の乳価あるいはまた今検討中の麦、大豆といったもので、個々の品目ごとに経営を安定化する対策をとっていく、そしてまた、全体として、経営全体が他産業並みの労働時間あるいは生涯所得といった形の農業者を少しでも多くつくり上げていくことによって、日本農業の持続的な発展を目指していくというのが基本的な考え方であります。
  124. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 一点だけ、官房長の方がよろしいのでしょうけれども、先ほど言いましたWTOにおいて、先ほどの稲作経営安定対策というのは黄色の政策にしかならないのではないかというふうに思いますけれども、それをどのようにしていくのか、お答え願いたいと思います。
  125. 堤英隆

    ○堤政府委員 稲作経営安定対策とWTO協定との関係なんですけれども、WTO協定上は、削減対象とならない緑の政策ということについて、貿易歪曲的効果または生産に対する影響が全くないか最小限だということと、それから生産者に対する価格支持効果を有しないものであるということと、さらに具体的に政府が提供する一般サービスとか、あるいは一定の要件を満たす生産者への直接支払い及び収入保険、こういうものが含まれるとなっているわけです。御案内のとおりでございます。  他方で、削減対象となります黄色の政策は、こうした緑の政策の要件に合致しないもの、こういうことであるというふうに承知をいたしております。  そこで、稲作経営安定対策の前身であります自主流通米対策費は、生産者の出荷量に応じまして、六十キログラム当たり幾らという形で出しておりましたので、これは産品特定的であるということと、それから価格支持効果を有していること、先ほどの概念との関係からはそういうことでございますので、削減対象である黄色の政策に分類される、こういうふうに私どもも認識いたしておりました。  現行の稲作経営安定対策は、米のみを対象にしているということと、それからもう一つ価格下落時のみ発動されるという違いはありますけれども、発動される際には何らかの価格支持効果を有するという性格がございますので、今先生おっしゃったように、自主流通米対策費と類似するのではないかという見解、見方もございます。  しかしながら他方で、需給実勢に応じた、要するに自由な自主流通米価格の形成を前提として、その変動が稲作経営に及ぼす影響を緩和するという意味から、緑の政策に含まれております収入保険的な要素も持っているのではないかという認識も持っております。  そういう意味では、今この段階ではっきりした形のものは申し上げにくいわけでございますが、現行WTO農業協定のルールなり、稲作経営安定対策の性格なり、それから諸外国の類似制度等の取り扱い等に十分留意しながら、もう少しその点については検討、対応させていただきたい、こういうふうに考えております。
  126. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 収入保険的なものであれば無制限にいいということではなくて、要するに、三割減収した場合の七割補てん以下でなければならないという条項もあるというふうに私なりに把握していますけれども。  いずれにしても、そういう問題もありますから、そういう黄色の政策にならぬようなきちんとした所得確保、生産を刺激しない、そういうものを制度化すべきであるというふうに思いますし、仮に、自給率を上げるために生産拡大する、その生産刺激的な政策というものをとった場合に、今大豆等飼料作物と言っておりますけれども、それはWTOのものにひっかかる可能性もあるのではないか。  ちょっと時間がなくなりましたから答弁は求めませんけれども、そういう意味で、大臣に、この法案に関して、今回の国際貿易ルールに関する問題については、国民合意なり、あるいはまたこの法案について甚だ欠ける点がまだあるというふうに私は思います。  私ども民主党は、国は、国際機関において、世界の食料需給の将来にわたる安定並びに加盟国の農業の持続的な発展及び多面的機能の発揮に資するための農産物の貿易に関する適切な措置が取り決められるように努めるものとするという条文をぜひこの新基本法に修文すべきであるというふうに考えますけれども、大臣の御答弁をお願いいたしたいと思います。
  127. 中川昭一

    中川国務大臣 今回の農政あるいは食料政策の憲法ともいうべき基本法と、それから次期交渉を目前に控えております時点でのWTOに臨む姿勢との間は、時期的にも内容的にも全く関係ないものではない、一番最初のときに密接不可分という言葉を使ったと思いますが。そういう意味で、法案作成に当たっても、WTOとの関連についていろいろと念頭に置きながら法案を作成してきたところであります。  国境措置、あるいはまた今の経営安定対策等を含めた国内措置等々、いろいろあるわけでございますけれども、我が国基本的立場というものは、まさに国内農業あるいはまた農村を守る、食料を守るだけではなくて、国際貢献あるいは多面的機能を初めとして、地球的な規模で、各国にこれは理解をさせなければならないという、非常に大きな意味我が国の主張を実現させなければいけないものだというふうに考えております。  したがいまして、個々の条文なり個々のWTOでの議論というものと全く無関係ではございません、むしろ関係があると言った方がいいと思いますけれども、その交渉に当たっての、交渉に臨む内容あるいは態度等、法律的な、基本法としての位置づけとしての法律の条文とは形式的には私は別の問題であろうと。これから交渉に臨むに当たって、こういう交渉に臨むんだから条文にそのことを書けというのは、この基本法の、あるいは法律一般としてもいかがなものかというふうに考えております。趣旨については、全く無関係ではない、むしろ非常に時期的にも内容的にも密接なものであろうという認識は私も同じくしておるところでございます。
  128. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 法律に努力義務を、努力規定を記載するということの重要性が私はあると思います。同時に、きょうはちょっと時間がなくなりましたから、例えば、先ほどの、さまざまな施策が黄色になるのか緑にしていけるのか、あるいはWTO協定の二十条そのものを、あるいは次の交渉においても、政府の助成なり保護というものを削減する過程としてこれからもやっていくんだという二十条規定そのものを日本政府としてどのように改善を求めていく立場に立つのかどうか。  あるいはまた、先ほど言ったような生産刺激的なものというのを、需給との関係で非常に自給率が低下している国においては、そのことの権利といいますか、あるいはまた、逆に国際的な食料の供給からいけば、義務的な、国内で食べる、日本人が食べるものは日本である程度のものは供給していくという、そういうものを国際的に認め合うというようなところに突っ込んでいくのかどうか。  そういったものについて、やはり国内的な論議をした上で、一定の日本政府としての方針を持って臨むべきであるというふうに思います。これは、今そこまで法律に書けということを言っているわけではありませんけれども、ぜひそこは大臣に望みたいのであります。  時間がありませんから、もう一つ行きます。  先ほど言いました昨年の中央省庁等改革基本法二十三条には、その二項に、農業生産、流通加工、農村及び中山間地域対策等と限定つきでありますけれども、地方公共団体の役割について、それらの施策、対策における地方公共団体の役割については、その拡大、地方公共団体の拡大ですね、役割の拡大、及び地方分権の徹底を図ることというふうに農水産省の編成方針の中で明記をされて法律になっておるわけであります。  しかるに、今基本法案は大変後退をしておると言わざるを得ません。第八条に地方公共団体の責務ということで、国との適切な役割分担を踏まえて、地方公共団体は施策を策定し、及び実施する責務。それから、第三十七条には、国及び地方公共団体は、食料農業及び農村に関する施策を講ずるにつき、相協力するとともにと、相協力するという形でしか基本法は入っておらないのであります。  同じ基本法であっても、こういう適切なとか相協力というようなあいまいな形ではないというふうに思います。やはり、ここはきちんと、私ども民主党のきのう発表した修正案でも、まさに昨年の皆さんがつくった中央省庁の改革基本法の文言とそっくりに私どもの修正案をつくらせていただきました、地方公共団体の役割を拡大及び地方分権の徹底を図らなければならないと。  大臣、やはりこのことは、きちんとした法律の整合性をとっていただきたいというふうに思います。
  129. 高木賢

    ○高木政府委員 新しい基本法案におきます地方公共団体の位置づけでございますが、これは、現行の法案と全く異なっております。  現在の基本法では……(発言する者あり)いえ、ですから、今の法案についての取り扱いを申し上げようと思ったんです。  もちろん、現行の基本法と比べますと、全く違っておりますのは……(鉢呂委員「現行の基本法というのは農業基本法ではないですよ」と呼ぶ)はい。それは、現行の基本法では、今地方公共団体の責務というのは、国に準じて施策を行えというのがあるんです。それに対して、今は、この法案では、国との適切な役割分担を踏まえて云々ということで、はっきりと地方公共団体の位置を、国との役割分担ということで規定しております。  それから、今御指摘もありましたけれども、まさに国と地方公共団体は、現行の基本法が準じてというのに対しまして、相協力ということで、上下ではなくて対等な関係というふうにちゃんと整理をし直しております。地方公共団体がどういうふうに具体的に施策を行うかということにつきましては、準じてということでありませんから、地方公共団体のその自主的な御判断でやれる、こういうことでございます。  それで、それから先なんですが、今、地方分権のお話もございましたけれども、そういう全体の、まさに国と地方の関係を律するわけであります。したがいまして、農業の世界だけこの基本法で特別に地方分権に関して踏み出すというふうに具体的にはいきません。今申し上げたような趣旨としては入れてある、こういうことでございます。
  130. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 官房長たる者が、中央省庁等改革基本法について私がしゃべっておるのに、これは昨年の、平成十年の六月十二日、施行は同じですね。これとの関係で言っているんですよ、あなた。この中央省庁等改革基本法、まさにそれに基づいて今各法をやっておるわけでありますけれども、その二十三条に農林水産省の編成方針というところがあるんです。ここに、ほかの省庁等ではないんですよ、農林水産省の編成方針のところで、これらについては、農業生産等の施策、対策における地方公共団体の役割について、その拡大及び地方分権の徹底を図ることというふうに明記されているんですよ。今、現行の農業基本法のことを言っておるのではありません。  大臣、きちっとこの法律の整合性をとってもらわなかったら、私どもは、皆さんが所管してつくったからこんなあいまいな、相協力をするとか、そんなことではないんです。例えば、中山間地域対策における地方公共団体の役割は、その役割を拡大及び地方分権の徹底を図れというふうに言っているんです。法律ですよ、これ。  これに基づいてきちっと、この食料農業・農村基本法の地方自治体の役割なり国との関係について、法律条文の整合性を図ってもらわなければ、我々は審議に応じられないと言っているんですよ。
  131. 高木賢

    ○高木政府委員 ですから、まさにそういうことを踏まえて、今の基本法では国に準じてやれというのを改めて、適切な役割分担を踏まえてやりなさいということと、相協力して、上下ではないというふうに基本法では整理をした、こういうことを先ほどから言っているわけでございます。
  132. 中川昭一

    中川国務大臣 基本的に、中央省庁再編の議論、それから地方分権の議論、その上に立ってこの基本法はできておるわけでございまして、国の役割、そして地方の役割、そして国と地方とが協力する役割というものが、八条と三十七条ですか、あるいは七条の中で書いてあるわけでございまして、具体的に、こういう場合には国だとか、あるいはこういう場合には地方だとか、あるいは相協力してというものが、実施上いろいろと考えられるというふうに仕分けをしております。
  133. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 議論の過程でこの中央省庁のことが言われているわけじゃないのです。議論の過程ではないのです、大臣。これはまさに法律として設定されて、その中に農水省の編成ということで書かれているのですから、相協力とかそういう形ではないのです。地方自治体の拡大なり地方分権をきちっと明記されておるわけですから、そことの整合性を図るべきであるというふうに思います。  また後ほど質問機会があったときには質問いたしたいと思います。  終わります。
  134. 穂積良行

    穂積委員長 次に、今田保典君。
  135. 今田保典

    今田委員 民主党の今田保典でございます。  食料農業・農村基本法についての関連した質問をさせていただきます。これまで各委員の方々からいろいろな質問がなされたかと思いますので、若干重複する部分があろうかと思いますけれども、確認の意味、あるいは私の地元の方々の声として素朴な意見も含めまして、質問をさせていただきたいと思います。  今日、我が国農業を取り巻く環境は、食料自給率の低下、農業従事者の高齢化と後継者の不足あるいは農村の活力の低下など、多くの問題を抱えておることは言うまでもございません。新基本法は、これらのことを十分に認識した上で、二十一世紀における我が国農業のあるべき姿を描き出そうというものと私は確信をいたしておりますが、それらについて若干不明な点がありますので、御質問をさせていただきたいと思います。  その前に、これは私の持論でありますけれども、以前にも本委員会において申し上げた経過があるわけでありますが、食料農業、農村、こういう言葉を使っております。いわゆる農村という名称についてでありますけれども、地元の若い方々、さらに私も含めまして、どうしても暗いイメージ、マイナスイメージがつきまとっているのではないか。そういった意味で、余り好きでない言葉だというふうに言わざるを得ないわけであります。  ですから、例えば農業生産地域とか、あるいはほかに適当な言い方に変えてみるあるいは検討されてもいいのではないかなというふうに思うのですが、この点についてお伺いをします。
  136. 高木賢

    ○高木政府委員 農村につきまして、伝統的な生活習慣とか、慣習というのが色濃く残っていて、何となく閉鎖的であるとか暮らしにくいんじゃないかとかいうマイナスのイメージがつきまとってきたことも一部にはあると思います。  しかし、これからの農村は、まさに都市住民にも開かれた、豊かな美しい景観の村として生きていかなければいけないというふうにも思います。やはり自然環境豊かという非常にプラスの面があるわけですから、この辺は、子供さん方を初め、都市の方々にも十分PRしていかなければいけないし、また、マイナスのイメージであったトイレなどを初めとする生活環境の整備というものについては引き続き進めていかなければならないと思います。  まさに、言葉の問題でいえば、田園地域とかいうふうに言ったらどうかというお考えの方もございますし、今おっしゃるように農業生産地域というようなこともございますが、私どもは、やはり実態を改善するということがないと、いかにどうやっても、時間がたつと同じことになってしまうのではないか、こういうおそれを持っております。  したがいまして、やはり一番弱い立場のというとちょっと大げさですが、高齢者の方々とか女性の方々が生き生きとしている、こういう生活環境あるいは住環境、こういうものを持った地域に農村をしていかなければいけないという考え方で臨んでおります。  名称を変えるというところまで議論はまだ煮詰まっていないのではないかということで、本法案では従来どおりの農村という言葉を使わせていただきました。
  137. 今田保典

    今田委員 今ほど言われたのですが、ただ、環境を変えるあるいは生活的なものを実質的に変えなければならないということは十分わかるのですが、やはりイメージというものも非常に大事だと私は思うのですね。今からの特に若い女性、こういった方々が本当に農業に携わってくれる、あるいは農家に嫁いでくれる、そういった方向の環境づくりというのは、私は、国も地方自治体も非常に重要な時期に来ているのではないかなというふうに思うのです。  そのことを考えれば、やはりイメージというものは非常に大事な時期に来ているのではないかなというふうに思うのですが、何かうまい回答があったらお知らせいただきたいのです。
  138. 中川昭一

    中川国務大臣 農村といいますと、特に、私の生まれる前でありますけれども、食料不足でいろいろ悲劇があったとか、そういうことを歴史で学ぶわけであります。やはり明るい農村、昔そんなテレビの番組がありましたけれども、文字どおり、名実ともに明るい地域にしていかなければならないということであります。  欧米なんかの農村地帯は、花がいっぱい咲き乱れて、非常にきれいな農村景観を維持しているわけでありますし、農村民宿なんかでも非常に内容の濃いものがあるわけでございます。そういう意味で、名前だけでもだめですし、また暗いイメージで実態だけが先行してもだめでありましょうから、名実ともに明るい、そして都市の人たちも喜んで来る農業生産地域にしようということでございます。  先生のおっしゃっている意味もわかるわけでございます。法律の目的は、先生のおっしゃるようにするための大きな多面的機能の一つとしても重要な一面があると思います。しかし、法律の名称としては新しい食料農業・農村基本法という形で全体をくくっていったということをぜひ御理解いただきたいと思います。
  139. 今田保典

    今田委員 いろいろな方々の考えもあるんだろうと思いますけれども、私なりに思えば、何か進歩しないなというふうに言わざるを得ないわけであります。これは後ほどまたいろいろな場で議論させていただきたい、このように思います。  次に、食料の安定供給の確保についてでございますけれども、第二条の四項において、「国民が最低限度必要とする食料は、凶作、輸入の途絶等の不測の要因により国内における需給が相当の期間著しくひっ迫し、又はひっ迫するおそれがある場合においても、国民生活の安定及び国民経済の円滑な運営に著しい支障を生じないよう、供給の確保が図られなければならない。」とありますけれども、国民が最低限度必要とする食料とはどの程度の数量を想定されているのか。  さらに、あってはならないことでありますけれども、不測の事態に対してどのような対応を考えておられるか、お聞きをしたいと思います。
  140. 高木賢

    ○高木政府委員 本法案におきまして、国民が最低限度必要とする食料の供給が確保されるように、食料の増産、流通の制限などの必要な施策を講じるということにされております。  その意味合いは、最低限必要とする食料というのは国民の生命の維持等が可能な水準、こういうことであろうと思いますが、それにつきましては農林水産省において一つの試算をいたしました。  それは、現状程度土地利用状況あるいは生産技術等を踏まえたそういう前提のもとに、熱量効率を最大化した場合に、輸入などが一切ない場合でも国内農業生産でどれだけの熱量の供給が可能かということを試算いたしますと、大体千七百六十キロカロリー、一日当たりですけれども、この水準が供給可能であります。  もちろん、今のは現状を前提としておりまして、そのほか作付可能な土地等を考えますともうちょっと供給量はふえると思いますけれども、現在の水準程度で最低限供給できるということを考えますと千七百六十キロカロリーです。これがどの程度の時期のことをいうかといいますと、戦後、二十年代前半ぐらいの水準になろうかと思います。この辺が一つの目安ではないかというふうに考えております。  それからもう一つ、その後の対応策ということでございますが、日ごろから、不測の事態への対応としては、生産力を保持しておくということと国内外の食料需給を的確に把握しておくということがまず日常として大事でございます。  一時的、短期的な場合あるいは長期にわたる場合、いろいろなケースがありますけれども、一時的な場合ですと、備蓄の取り崩しということで、大体その範囲でとどまるのではないかと思います。しかし、長期になりますと備蓄も取り崩されてしまってなくなってしまう、こういうことになりますから、熱量効率の高い穀類とか芋類、こういうものの増産を図るなり、あるいはほかのものを犠牲にしてといいますか、ほかのものから転換をする、こういうことが必要になってまいります。その転換を的確に行うということが事態に応じて必要になってくるというふうに考えております。  それから、価格、流通面でも、物が少なくなってまいりますから、値段が上がるあるいは流通が偏るということのないように、価格、流通の統制といいますか規制制度が、今国民生活二法とか食糧法等に措置がございますので、それを活用して対応していくということで価格の安定と供給の適正化を図ることにしております。  さらにこれらは、今申し上げたのは概括的でございますが、かなりきめ細かく詳細化をしておかなければいけません。その具体化の作業は、現在省内において進めているところでございます。
  141. 今田保典

    今田委員 どうもありがとうございます。  次に、農業後継者の育成と確保についてお伺いをしたいと思うわけでありますが、私の地元でも、田んぼに行っておられる方はほとんど六十歳を過ぎております。そういう状況の中で、農業に携わる方の高齢化が急速に進んでいくのではないかというふうに思うときに、農業の担い手不足というのは当然起きてくるわけでございます。中山間地域だけではなくて、平たん地域にまでもう既に来ているのではないかというふうに私は思います。したがって、我が国農業の維持あるいは発展のためには、早急に若くて意欲のある人材を確保することが極めて重要な課題ではないのかなというふうに思っておるところであります。  いかにすばらしい、新しい農業基本法をつくっても、そこでいろいろと協力してくれる農業従事者がいなければ、これはやっていけないのは当然であるわけでありまして、そういったものに対しての取り組み、育成について、具体的に今後どのようにお考えなのか。私は、これは本当に急がないと間に合わないなというような感じもするわけでありまして、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  142. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 お話がございましたように、今後とも我が国農業が持続的な発展を続けていくというためには、農業を引き継いで実施をしていってもらいます新規の就農者、農家の子弟はもちろんでございますが、都市で育たれた青年とか、ほかの産業から農業に新たに参入してみえる、こういう中高年齢者など、多様なルートから幅広く確保するということは大変重要なことではなかろうかと考えておるわけでございます。  このような、新規に就農される場合のハードルといいますか隘路は、大別して三つほどあるわけでございまして、一つ技術の習得、なかなか十分な技術が身についていない場合がある。それから、ある程度の資金が必要でございます。それから、何しろ生産手段として農地が必要であるわけでございます。こういうことに対応しまして、各県にございます農業大学校や、全国で現在十校ほど就農準備校ということで実施をしておりまして、そういうところでのかなり実践的な研修教育をやるというようなことが一つございます。  それから、先ほどお話をしましたように、就農前の技術の習得のための研修のお金や、機械や施設を整えるための経営の開始資金といったものについて無利子の資金の貸し付けを行うということもございます。  それから、農地の確保という点につきましては、新規就農ガイドセンター、これは各県にございますけれども、そういうような場所でいろいろな情報を提供するということ、それから、今度は、離農の農家がございますので、そういう農場を新規の就農者にリースをする等々、施策を進めてきているわけでございます。  こういう施策が効果もあったんではないかと思いますが、三十九歳以下の若い就農者の最近の動向を見てみますと、平成二年には四千三百人ほどでございましたのが、それから七年たちまして平成九年には、約倍の九千七百人に達しているということがございます。この中では、学校を卒業してすぐ就農された子弟が若干ふえておりまして、九年に二千二百人、そのほかUターンとか農外からの新規就農者が相当ふえておりまして、足しますと先ほどお話を申し上げたような数字でございます。  これまでの対応もそうでございますが、これからも、お話ございましたように、新規の就農者のための対策を一層充実しなきゃいかぬということでございまして、中高齢者やUターン等の就農ルートがますます多様化をする可能性があると思っておりますので、就農相談でございますとか、それから研修等への支援策を強化する、あるいは、先ほど御紹介をしましたようなリース農場事業でございますとかそういうものを活用した継承を円滑にやっていくとか、それから、かなり長期的な視点に立ってでございますが、学校等におきます農業教育と連携を図っていくというようなことに積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
  143. 今田保典

    今田委員 今まで御質問した内容とは若干裏表の関係になるわけでありますけれども、いわゆる農業生産地域における配偶者の問題等についてちょっと触れていただきたいと思います。  農業生産地域における配偶者問題の現状をどのように農林省段階で認識しているのか、国として直接対処、対応するのは無理でしょうけれども、側面から支援できる環境を整えていく必要があるのではないかというふうに思うわけであります。  今、農業生産地域では、嫁に来る人がいないとか、いろいろな問題を抱えておるわけでありまして、これも大変な問題になっておるわけであります。この点についていかがでしょうか。
  144. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 農村におきます未婚者の割合というものを見てみますと、地域の中心になっていろいろな活動をしていただきます壮年層、大体三十代、四十代の男子の方々の未婚の割合がほかの産業に比べて高いという実態にございまして、私どもとしては、配偶者の問題は深刻であるという認識は十分持っているつもりでございます。  ただ、配偶者問題そのものは、先生まさにおっしゃいましたように、プライバシーでございますとかいろいろな人生観でございますとか、かなり微妙な部分がございましたりいたしまして、行政、特に農政の一環としてこういうものに直接かかわるのはなかなかなじみにくい点があるわけでございますが、農村で生活を現にしておられるこういう方々について、この問題がどういうふうにして解決されるか。  ポイントの一つは、農業や農村が若い世代、とりわけ女性の皆さんにとって、そういうところに入り込んでいけるかどうか、暮らしやすいものであるかどうかということは大事なことでなかろうかと思っております。現に、農業就業人口の六割を我が国では女性に担ってもらっていまして、男性と対等なパートナーとして生き生きと活動していただく、誇りを持って農林水産業に従事をしていただく、そういうような環境整備をするということが結果として配偶者問題の解決につながるのではないかと思っております。  このため、農林水産省としましては、まず女性にとって魅力のあるそういう農業や農村の環境づくりを進めるということで、いろいろな生産基盤、生活環境の整備をやっているわけでございます。  一、二、御紹介をいたしますと、例えば、社会参画の促進という面で、農協等々の役員への登用をできるだけ県なんかと御相談をしながら進めるようにしようじゃないかという話が一点でございます。  それから、やはり女性の方、経済的基盤があるということが地位の向上につながるということでございますので、地元での農産加工、農林漁業関連の、地元の農産物利用された企業運動、そういうものへの支援をするとか、それから何より、家族で経営をされる中で、家族の皆さんの役割分担や休日とか、そういう就業条件を明確化するということもそういうことにつながるのではないかと思っております。  これらの男女の共同参画社会の形成に向けたいろいろな施策を推進するということが大切なことだと考えているところでございます。
  145. 今田保典

    今田委員 今の問題と若干似通った問題なんですけれども、現行農業基本法においては、できるだけ多くの家族農業経営が自立経営できるように育成をする、こういうふうにうたってあったわけでありますけれども、新しい基本法には、この部分については明確に定められていないわけでありまして、このことに大変不安を持っておられる方がおるわけであります。  また、今ほど申し上げましたように、農業に従事する女性や後継者の就業条件の改善あるいは経営参画の促進等を目的としたいわゆる家族経営協定というものを締結して、家族に対する所得の配分とか、あるいは就業時間の取り決めや役割分担等を明確にすることによって新しい家族農業経営というものができるのではないかなというふうにも思っておるわけであります。  こういったケース、国内で既にやっているところもあるやに聞いておりますので、その実態、さらに、よその国でそういうものを強力に進め、さらに、女性の地位といいますか、農業にかかわっている女性の地位について、どのようになっているのか、あわせてお尋ねをしたいと思います。
  146. 高木賢

    ○高木政府委員 経営につきましては、効率的、安定的な経営が農業生産の相当部分を占めるような農業構造をつくるということで、新しい法案の二十一条で経営のあり方について明記しております。  ただ、その場合の経営は、今御指摘のありました家族経営と法人経営、大きくいうと二つ考えられるわけですけれども、家族経営が現在も九九%を占めるのは事実でありますし、今後とも家族経営が主流になると思います。また、法人経営といっても、家族経営が法人化したものも当然含まれておりますから、そういう意味では、実質的には相当部分、大部分が引き続き家族経営ということに実態としてなるのではないかと思います。  そういう観点から、家族経営につきましては、二十二条に家族農業経営の活性化を図るということを明確化して、位置づけておるというのがこの法案の扱いでございます。  それから、続いてお尋ねのありました家族農業経営協定がどうかということでございますが、先ほど来の御質問と関連いたします。  農業におきます女性の地位の向上の明確化ということから、きちんと働いた分だけは受け取ることをはっきりさせる、そういう家族経営の新しい、近代的なあり方を推進するために、家族農業経営協定というものを運動として推奨いたしております。  かつては、親子というような関係で、縦の関係の家族経営協定が多かったわけですが、最近では、横の関係といいますか、夫婦の間で結ぶというものがふえてまいりまして、平成十年八月現在で、全国で九千九百四十七件の協定という実績になっております。この中には、先ほど申し上げました、労働報酬だけでなくて、休日、労働時間、経営移譲、こういったものが取り決められているということでございます。  それから、諸外国ではどうかといいますと、これはフランスが比較的進歩していると思います。フランスの場合には、女性の割合は、農業人口では三割ということで、我が国の六割に比べますとかなり低い。むしろ、夫婦が別の仕事についている場合が結構あるというのが実態であろうかと思います。  しかし、フランスの場合には、女性の五三%が自分名義の農地所有している。これが我が国では六%しかない。それから、自分名義の預貯金が、フランスの場合には八一%、我が国では六七%というようなことで、フランスの場合に比べますと、まだ我が国はおくれておるという実態にございます。  フランスは、そういうことで、一種の夫婦だけの法人形態が認められているというようなこともありまして、比較的女性の地位がきちんと位置づけられている、そういう国であろうと思います。
  147. 今田保典

    今田委員 表向きは、日本状態というのはそういうことだろうと思うのですが、実態は、むしろ女性の方が農業に携わっている時間が多いのではないかなというふうに思うくらい女性の方はやっておられるのですよ。そういった環境あるいは農業の実態、そういったことを思えば、もう一工夫も二工夫も国として考える必要があるのではないかということを私は申し上げておきたいと思います。  次に、補助金制度のあり方についてお尋ねをしたいと思います。  現行制度では、転作助成金等の例外はありますけれども、農業従事者に対する個人補助は一切認められていないわけであります。いわゆる農業団体を通じなければ制度を活用できないということになっておりますけれども、この制度は今後も維持していくのかどうか、お伺いをしたいと思います。
  148. 高木賢

    ○高木政府委員 補助金につきましては、いわゆる臨調におきまして答申が出てまいっておりまして、個人の自立、自助にゆだね得るものはできるだけゆだねるということで、いわゆる補助から融資へという方針が出されております。  したがって、補助金につきましては、原則として、共同利用施設という、三戸以上が共同して利用するというものにつきまして補助対象としてきたわけでございます。この考え方は、やはり現下の財政事情なり、個人の補助ということについて国庫負担をするということは、他産業との並びから考えても甚だ難しいことではないかと思っております。  ただ、工夫といたしましては、機械とか施設などは、JAなどの行いますリース事業に助成をして、そこから個人の農家がリースを受けるというような形での効率的な利用、こういったものについては工夫を凝らしております。  それから、補助金の具体的な推進の仕方につきましても、できるだけ、使途を絞るということより、統合メニュー化をして、使いやすいようにするとか、今お話がありましたように、交付の手続につきましても、農業団体を通さなければだめだとかというような縛りでなくて、交付が受けやすいようにということで対処したいと思っております。
  149. 今田保典

    今田委員 時間もございませんので、今の件について、私はいつも疑問に思うのですよ。  私の地元山形では、特に私の地元はサクランボが非常に周りにありまして、サクランボにハウスをかける際、農業団体を通さなければ助成は受けられないという仕組みに非常に疑問を感じているのですよ。そういうハウスの業者、いろいろな業者があるわけですよ。その業者で取り扱うものについても、ある一定の助成というものができるんだという制度をつくるべきではないのか。そのことによって、コストが非常に安くなるというような地元の意見もあるんですよね。そういったことを今後考えているのかいないのか、もう少し詳しくお知らせいただきたいと思います。
  150. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 今お話がございました点についてですが、聞きました限りでは、三人いるけれども農協を通さないといけない、そういうことでよろしゅうございますか。  だとすれば、私どもが扱っておりますものはそういうふうになっておりませんで、農業者の方が三人お集まりになった場合には、条件として、例えば農業団体がかかわらなければいけないというようなものに常になっているわけではございませんので、もし事柄を教えていただければ、ちょっと実態を調べてみたいなと思っております。
  151. 今田保典

    今田委員 時間が来ましたので、質問を終わります。ありがとうございました。
  152. 穂積良行

    穂積委員長 次に、木村太郎君。
  153. 木村太郎

    ○木村(太)委員 きょうも、大分長い審議時間になっておりまして、大臣初め農水省の皆さんにも、心から敬意を表したいと思います。しかし、大事な法案であります。私も、一時間という与えられた時間、質問してまいりますので、御答弁をお願いしたいと思います。  私は、本会議場でも質問に立たせていただきましたので、その際答弁もいただきましたが、ある面ではさらに具体的にお答えいただきたいというような思いで質問させていただきたいと思います。  まず、食料自給率ということを考えたいと思いますが、この目標設定というのは、十年ごとの基本計画をつくって、そして五年ごとに見直しをしていくというように答弁でもあるわけです。ただ、本会議でも私、指摘しましたが、平成七年に打ち出した第六次の長期需給見通し、この時点でもきちっと自給率というものを示していたにもかかわらず、現在カロリーベースで四一%まで低下してしまった。ですので、基本計画でこれから示されていくと思われる目標値というものが、必ず確実に実現を図ることができるという担保というものは何なのかということを、ぜひ明確にお答えいただきたいと思います。
  154. 高木賢

    ○高木政府委員 食料自給率目標につきましては、新しい基本法案におきます十五条の二項二号で位置づけております。その中で、目標として、目標数値を明らかにするということですけれども、それは単に目標数値だけ書くということではなくて、同じ三号に、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策ということをあわせて書きまして、まさに施策の裏打ちとともに自給率目標数値を示す、こういうことになります。  また、同じ三項におきまして、農業者その他関係者が取り組むべき課題とともに明らかにして定めるということでもございまして、関係者の取り組みと相まって、先ほど申し上げました、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策ということが明記されておりますので、施策の裏打ちを持ったものとして目標を定めるという点が、単なる見通しと異なる担保であるというふうに考えております。
  155. 木村太郎

    ○木村(太)委員 今言ったように、平成七年に第六次の長期需給見通しを立てて、そこでも目標値というものはあったんですね。でも実際は低下した。この第六次のときからきょう現在までも、施策の裏打ちはあったと思うんですね。毎日、または毎年毎年、農林水産省として施策を展開してきたと思うんですね。  今の答弁も、もちろん私否定しませんけれども、今までもやってきたことには違いないと思うんですね。しかし、新基本法をつくって、そして大きな転換を図ろうとしている中での違いというのは、では何なのかということであります。
  156. 中川昭一

    中川国務大臣 今までの基本法に基づく自給率の見通しというのは、農業基本法という名前が象徴しておりますように、農業及び農業従事者がいろいろな面で少しでもいい生産状態、生活状態になれるようにという中での食料生産、それに基づく自給率の見通し、そして結果ということだったわけでございますが、今度の基本法というのは、あくまでも、国民全体に関係する食料というものを、生産者はもとよりでございますけれども、国民全体がみんなで自給率を上げていくこと、そして安定的に食料を供給することが、現時点、そしてまた将来にわたって非常に大事であるということがポイントでございます。  そういう意味で、過去においては、自然、生き物相手でございますから、平成五年の大冷害のようなときもございましたけれども、今回は、今官房長が言いましたように、十五条に基づく基本計画、そしてその根拠としての二条の国内生産基本とした食料の安定供給というものを前提にして、各種生産者、消費者、その他国民全体、あるいはまた法律、施策、予算等のいろいろ総合的な推進によって、みんなで自給率を設定していこう。  その場合には、品目ごとに実現可能なもの、予測可能なものをきちっと設定して、その上で最終的にやっていこうということでございますから、単なる見通しではなくて、みんなで実現できるという前提に立った目標であり、しかもそれは、現在の自給率を考えますと、大変低いわけでございますから、国内生産基本とするというその言葉にかなうように、実現可能な、できるだけ高いものを設定し、そして実現をしていく努力をする。  その前提として、基本計画は政府の責任において設定をするわけでございますから、政府がその責任を持ちながら、全体で協力をして策定し、実現をしていこうとするものでございます。
  157. 木村太郎

    ○木村(太)委員 今の大臣の答弁を聞きますと、国民全体で総力を挙げてというような、一言で言えばそういった答弁だと思うんです。  今の答弁の中でも、品目別というような言葉がありました。確認しておきますが、自給率目標設定というのは、具体的にはどのように算出されていくのか。いわゆる計算方法でありますね。これをお答えいただきたいと思います。
  158. 高木賢

    ○高木政府委員 具体的な算出の仕方でございます。これはまず、品目別に需要がどういうふうに見通されるかということを出します。そして、それに対して国産のものの供給量がどの程度いけるかということを出します。  そう言っただけではなかなかわかりにくいかと思いますので、大豆なりについて申し上げますと、需要としては、搾油の原料用としての需要があります。それから食品用としての需要があります。これが、これまでの趨勢なり見通しから何万トンになるかということをまずはじくわけでございます。それに対して国産の大豆がどれだけそこに食い込めるかということであります。油の原料用の大豆というのは、実は日本は雨がたくさん降るものですから、非常に油の含有率が低い大豆しかできないということで、これはなかなか外国産の油の含有率の高い大豆とは対抗できないのが実態でございます。  そこで、国産の大豆はどういうところにいけるかということでありますが、煮豆とか納豆とか、こういった食用用途に限定された今の流通実態がございます。その中でも一〇〇%はまだ獲得いたしておりません。煮豆用などはかなり高いのですけれども、まだ一〇〇はいかない。しかし、若干のさらに伸びるすき間もあろうかと思います。それから、納豆になりますと、これはまだまだ国産の供給の比率が低いわけで、これが納豆製造業者の方にどれだけ受け入れられるだろうかという、供給のめどを立てるということが必要になります。それからさらに、豆腐になりますと、形がないものですから、必ずしも国産のもののウエートが高くない。こういう実態に対してどれだけ食い込めるかということをはじき出すわけです。  例えば、現在は国産の大豆が十四万トン食品メーカーに供給されております。そういうことで、どれぐらい食い込んでいけるかということを出しまして、例えば十万トンぐらいふえるということになりますと、全体の自給率には〇・四%寄与する、こういうことになるわけです。  そういうふうに、物別に需要がどうなるかという見通しを立て、それに対して国産のものの供給を現状よりどれだけ伸ばせるかという見込みといいますか目標を立てて、それぞれを全部足し上げて、総合的な自給率目標にするというプロセスをとるわけでございます。  それから、消費面について申し上げますと、今大体二千六百キロカロリーの供給ということですが、実はかなりのむだがございます。したがって、二千六百という供給をしなくても、むだが削減できれば、例えば二千五百五十でいいかもしれないし、二千五百でいいかもしれないということになるわけでございます。そうなりますと、分母が小さくなりますから、自給率としては高くなる、こういうことになるわけでございます。  そういった、それぞれいろいろなものを積み上げまして算出していくということを考えております。
  159. 木村太郎

    ○木村(太)委員 ということは、品目別にきちっと計算しながら、それを積み重ねていくというふうに私は今の答弁で理解したわけです。  例えば、今までの大臣の答弁にもありましたけれども、最初から実現不可能な目標はいかがなものか、違う言い方をすると、実現可能なできる限り高い目標ということだと思うのですが、そういう認識を示していることを考えれば、例えば、将来的に仮に何%ぐらいという数値を今から持って、基本計画が十年ごとということでありますから、この十年間ではそれに向けてまず五%上げようとか、その次の十年間はさらに五%上げようとか、もちろん、その間に五年ごとの見直しもあるわけですけれども、いわゆる時間的なものでの積み上げ方式みたいなことも考えられるのでしょうか。
  160. 中川昭一

    中川国務大臣 今官房長が具体的にかなり細かく申し上げましたが、大体十年ぐらいをめどにして、その間に、例えば天候とか経済状態とかあるいは新技術の開発とか、いろいろなこともあるでしょうから、五年ごとに見直しという手法も考えながら、余り長期ということもあれですし、二、三年でというのも、それはプラスになる数字にいたしましても、やはり田んぼや畑でつくるものが中心でございますから、一応、十年を一つのめどとし、そして五年ごとに見直しもあり得るということで、現在、検討会でいろいろと御議論をいただいておる、またこの委員会でもいろいろと御意見をいただいておるという状況です。
  161. 木村太郎

    ○木村(太)委員 もう一つ、素人的な考え方になるかもわかりませんけれども、例えば、最初に御答弁あったのが品目別、それで、私が質問したのは時間的な積み上げ方式というようなことを聞きましたけれども、もう一つ考えられるのが、地域別ということですね。  例えば、四十七都道府県あれば、私の地元、青森県の場合だと自給率的に見た場合にこうだ、それ掛ける各県の四十七の姿を持ち寄って全国の日本の姿というような、いわゆる地域別に自給率というものをとらえることも手法としては考えられるような気がするわけです。もちろん、都道府県がいいのかとか、あるいは東北地方なら東北地方という全国的に幾つかのブロックに分けての自給率というのが示せるのかもわかりませんし、そういったことも手法としては考えられるのでしょうか。
  162. 高木賢

    ○高木政府委員 自給率目標につきまして、例えば県別というようなことは十分考えられますし、また、これは地方自治の問題がありますから、やれというわけではありませんが、やっていただくことが望ましいし、我々としてはそう働きかけたいと思います。  ただ、技術的な問題だけいいますと、例えば国の間ですと、いつ、何が入ってきたかというのはわかるのですけれども、県ですと、当然空から陸から、別に関所がないものですから、本当に物の流入をどれだけきちんとつかまえられるかという問題は技術論としてはあります。ただ、一人当たりどの程度食べるだろうかとかいう検討例は、ごく粗っぽいものであればできるのではないかというふうに思います。現にある県では、もう既にそのようなある種の目標をつくりまして、農政部で発表している県もございます。  そういった事例も参考にしながら、お勧めしたいというふうに考えております。
  163. 木村太郎

    ○木村(太)委員 私も、どういう検討というか、あるいは計算の仕方、方式で目標値を定めたらいいかというのもなかなか判断できませんけれども、ただ、先ほど大臣の答弁にあったとおり、今後検討しながらということには違いないと思うのですね。  ただ、一番最初の御答弁にあったとおり、今現在まで、何となく品目別というようなことが結構表面的に出てきている感があって、それが間違いだとかそういう意味でなくて、検討しながら、いろいろな考え方、いろいろな手法というものがその議論の中で当然出てくると思うのですが、そのことをじっくり議論しながら目標値というのを、最初から品目別というようなことが柱にあって、それだけで最初からいくんだというのでなくて、いろいろな考え方を出し合って、どうしたらいいのかということで、柔軟に、ある面では議論しながら、検討しながら、目標値というものをぜひ明示していただきたいというふうに考えております。  もう一つ、この自給率向上に向けて、先ほどもちょっとありましたけれども、やはり自給率ということを考えれば、消費が分母となりますし、国内農業生産というものが分子、単純に考えればこういうふうに考えられるわけですけれども、その場合、この自給率向上に向けての消費というもののあり方、あるいはそれをどう考えて対応していくのか、お聞かせいただきたいと思います。
  164. 中川昭一

    中川国務大臣 自給率のときに、先ほどの先生の御質問で、品目ごとに柔軟にというお話がありましたが、やはり生産サイドだけではなくて、消費サイドの役割というものもこの場合に非常に大きいのではないかと考えております。  つまり、つくりたいからつくるというだけでは、これは消費されなければ自給率ということにはなりません。そういう意味で、国内生産基本としてというのは、消費者ニーズにこたえることによって、生産、消費、両サイドにとってプラスになるということであります。  その場合に、消費者側から見ると消費者が求める必要なものが供給されるということ、それから消費者側あるいは流通側においての理解努力というものが、例えば十二条で消費者の役割という項目がありますけれども、例えば食べ残しとか廃棄とか、そういうものをできるだけなくしていく。あるいはまた、これはたまたまといいましょうか、幸運なことに、日本型食生活というものが健康面でも非常に世界的にも評価されておるわけでございますので、そういう日本型食生活の普及定着というものに努力をしていくとか、あるいはまた、流通段階でもいろいろとむだをなくすとか、そういうようなさまざまな努力も、ソフト的といいましょうか、意識の問題として、消費者の役割というものも自給率向上の上で非常に大きいというふうに認識をしております。  いずれにしましても、法案を成立させていただいた後、基本計画を策定するわけでございますので、その後できるだけ早い時期にやはり設定すべきものというふうに考えております。
  165. 木村太郎

    ○木村(太)委員 次のテーマとしては、所得確保対策のことをちょっとお聞きしたいと思います。  中山間地域等ハンディキャップのある地域に対して直接支払い制度を設けること、これに大変意欲を示しているわけですけれども、確認させていただきたいのですが、その中身をどのように考えているのでしょうか。
  166. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 農政改革大綱におきまして、耕作放棄を防止し公益的機能を確保するという観点から、中山間地域等への直接支払い制度の実現に向けて検討を開始したわけでございます。  検討項目としては、対象地域、対象者、対象行為、単価、期間、地方公共団体との役割分担、こういったことがテーマになっております。基本的枠組みとしては、特定農山村法などの指定地域の中から、傾斜等によって生産条件が不利で耕作放棄の発生の懸念が大きい農用地区域内の一団の農地等々が考えられるわけでございます。  一月二十九日に検討会を設置いたしまして、これまで五回検討を重ねてまいりました。来週早々にも中間取りまとめのための検討会を開催いたしまして、これはまだ議論が多様でございますので中間取りまとめという形で公表し、さらに、この夏に向けて取りまとめのための検討を重ねたいという状況にございます。
  167. 木村太郎

    ○木村(太)委員 中山間地域等というふうに表現しているわけですが、その等の前の中山間地域というところまでを見ても、中山間地域と一言で言っても、その姿にまた差があると思うのですね。例えば、簡単に言えば、本当に山の奥というかそういうところもあれば、結構平場に近いところもあるだろうし、中山間地域といってもその姿に差があるというふうに私は思うのですが、どう考えますか。
  168. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 今回の基本法案の中で、三十五条に中山間地域等ということで、「山間地及びその周辺の地域その他の地勢等の地理的条件が悪く、農業生産条件が不利な地域」という定義をしてあります。  この直接支払いにつきましては、先ほど御説明申し上げましたように、特定農山村法などのいわゆる地域振興立法といいますか、地域振興五法と言ってもいいと思いますが、そういったものを大きなネットとして囲い込みまして、その中からさらに条件を今詰めているところでございます。  条件の一つとして、地理的条件から傾斜というのを入れましたけれども、それ以外にも経済的、社会的条件において不利性が中立的かつ客観的な基準として認められるものがございましょうから、そこを現在詰めているところでございます。
  169. 木村太郎

    ○木村(太)委員 では、中山間地域等の等についてちょっと聞きますが、等というのは、今もちょっと答弁がありましたけれども、経済的な、社会的ないわゆるハンディキャップがあるところというふうに考えていいのですか。もっと具体的に言うと、いわゆる地理的条件に限らず、地域性というか、例えば私の地元のように豪雪地帯とか、そういうこととしてとらえていいのでしょうか。
  170. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 先ほど来申し上げておりますけれども、例えで申し上げますと、この検討会の議論の中では、例えば過疎とか半島、離島地域について、指定地域とするのかどうかという御議論がございまして、これらの地域における公益性、公益的機能についての議論がまだ収れんをしていないというふうな状況にございます。  ただ、この直接支払いの導入というのは、国際規律であるWTO農業協定の緑の政策を活用するわけでございます。その中には、中立的、客観的条件からして不利である、それからその支払いの方法のところに、追加的費用が必要である、あるいは収入が喪失をするというふうな範囲内において単価を算定して支払うということになっております。  今の豪雪地帯につきましての議論を御紹介いたしますと、北海道、東北、日本海側のほぼ全域が対象となるというふうな事情、それから積雪と作物の単収の関係について言いますと、例えば豪雪地帯の方が米の単収が高いというふうな、農業生産条件の不利性が認められないのではないかというふうな議論が強く出ているところでございます。
  171. 木村太郎

    ○木村(太)委員 議論がまだ収れんされていない、議論が続いているということですので、現時点での印象ということになると思うのですけれども、議論がまだ収れんされていない段階で、可能性というか、対象になると思われるようなことの御答弁があったわけです。  だとすれば、今まだ議論は終わっていませんけれども、検討が続いているわけですけれども、この時点で確認させていただくとすれば、御答弁があったようにいろいろなハンディキャップがあると認められるとすれば、それは平場であっても可能性としてはあり得るというふうに判断していいですか。
  172. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 申し上げておりますように、あくまでも、WTO農業協定の中の条件不利地域直接支払いというスキームを活用いたしますので、このスキームとの整合性ということを強く意識しております。  いわゆる純然たる平場が入るかどうかという点につきますれば、それは否定的というふうに申し上げざるを得ません。
  173. 木村太郎

    ○木村(太)委員 わかりました。  ではもう一つ、直接支払いという考え方から聞きますが、自給率目標の設定に向けて、品目別の生産目標ということを先ほど来お答えがあったのですが、だとすれば、この品目別の所得確保のための経営対策というものも当然視野に入れていくことが必要ではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  174. 高木賢

    ○高木政府委員 品目別の生産努力目標を立てるということになりますれば、その目標の達成のためにさまざまな対策が必要になるということは当然であります。その中では、技術の開発普及なり、品質の向上なり、あるいは生産性の向上なりということもございますが、当然、今価格政策の対象になっている品目もかなりの重要度を持っているわけであります。それも価格政策の見直しということでプログラムにのっておりますが、当然、その価格政策を見直すというだけでなくて、それに見合っての経営安定対策を講ずるということは、その方向で対応したいということでございます。     〔委員長退席、松岡委員長代理着席〕
  175. 木村太郎

    ○木村(太)委員 今の答弁を聞いて、ぜひ具体的に一つ取り上げていただきたいのです。今までもこの委員会で何度か取り上げたのですけれども、品目別の経営対策も検討していくのだという今の答弁でありますので、ちょっと地元的な話になって恐縮でありますけれども、既に皆さんにお願いしておりますリンゴの生果の価格補償制度たるものを、実は国に対してもお願いしているわけですが、なかなか今現在国からのいい答えがない段階で、今のリンゴ産業を取り巻く環境を考えて、地元の県や市町村や農業者団体が既に十一年度から動いております。こういったことをぜひ前向きに検討していただきたい。  前に質問をさせてもらったときには、簡単に言えば、リンゴだけには認めることはできない。リンゴに認めるとミカンも、先ほどあったサクランボも、ほかの品目もというふうになるのでというようなお答えもあったわけです。  ただ、新農業基本法の一番のメーンである自給率向上ということを考えれば、勝手な理論武装かもしれませんが、今現在国内で生産されている農産物、そしてその中の果樹、果物の中でも、今現在は経営的には苦しいながらも高い自給率的な位置づけにあるようなもの、その一つがリンゴだと私は思っているわけです。こういったものが、これからも自給率が下がらないためにも、維持を図っていくためにもというような理論なんかをもって、私の理論ですけれども、理屈でありますが、品目別ということに対して今答弁では否定がなかったわけですので、こういうこともぜひ今後前向きに検討すべきと思いますが、お答えいただければと思います。
  176. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 リンゴの件についてでございますから私からお答え申し上げますが、結論から申し上げますと、再三同じ答弁で申しわけないのですが、実は、リンゴ農家所得の安定につきましては、需給変動や災害対策、これにつきまして、一つは計画的な生産、出荷を促進するというような支援体制とか、それから災害がございました場合の減収には既に農業共済制度というのがございます。こういうものの機動的な実施をいたしまして、需給、経営の安定を図るということで支援をしているわけでございます。  こういう制度の現行の仕組みに加えまして、御提案のようなさらなる施策を講ずるということにつきましては、いろいろ越えないといけないハードルが何点かあるわけでございます。最大のところは、災害のための対策を片方で講じて、さらに別の理由での減収についても措置を講ずるということについては、これらの双方の仕組みの間とか他の作目との間のいろいろな制度間の調整でございますとか、課題がございまして、冒頭申しましたように再三同じでございますが、先生の再三の御意見を念頭に置きながら将来の課題にさせていただきたいということでございますので、よろしくお願いいたします。     〔松岡委員長代理退席、増田委員長代理着席〕
  177. 木村太郎

    ○木村(太)委員 将来の課題ということでありますが、私は現実の課題だと思っています。私はリンゴのことを取り上げましたけれども、リンゴ産業を取り巻く環境も、それだけ現実に今現在大変厳しい状況になっている、やめるかやめないかというふうに考えている人が多いわけですね。  もう一つは、リンゴだけでなくて、他の農産物、他の品目、あるいはまた他の果樹でもあると思います。だから、将来的な検討課題というのではなくて、先ほど官房長の答弁にあったとおり、品目別に対してのいわゆる所得確保対策、経営安定対策みたいなものを否定しないような答弁がありましたので、将来的な課題というのでなくて、これだけの新基本法をつくろうとしているわけですから、自給率をつくり上げていくために、品目別にも見ていくわけですよね。そういう中で、私が指摘したことも、将来的というのではなくて、現実の問題として検討していただきたい。  もう一度御答弁をお願いします。
  178. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 重ねてで恐縮でございますが、先ほど指摘を申し上げましたような課題、このほかにも実は、経営安定対策、例えばリンゴでございますと、講じてございますもののほかの財源の扱いをどうするかとか、さまざまございますので、私どもとしては、こういうものを、先生おっしゃいましたような意味で、全く放置をしているわけでは決してございませんで、詰めるべきものはどういうものかということは、再三の御指摘でございますので、きちんと念頭に置きながら対応をしているというところは御理解をちょうだいしたいと思います。
  179. 木村太郎

    ○木村(太)委員 先ほどの答弁と今の答弁の違いは、将来という文字がなくなったというふうに私は判断しましたので、ぜひお願いしたいと思います。  次に、担い手の確保対策という思いからお聞きします。  私の住む地域も農村でありまして、実は私のうちも兼業農家というふうになっております。専業農家兼業農家と、また、農村に住んでいますけれども農業に携わっていないいわゆる非農家、こう三つに分けた場合に、やはり現実に所得の姿で比較すると、兼業が一番高くて、次が非農家、そして三番目に専業というふうになっているような感を私は持っております。  そういった中でも、農村というところ、住んでいるならば、例えば集落排水などの農村整備については、これは平等にきちっとやっていくことが基本にあるべきであろうし、しかしながら、担い手確保ということを考えた場合に、やはり兼業以上に、専業に対していろいろな思いというか対策を絞っていくことが物の道理からいくと自然な姿だと思うのですが、どう考えているでしょうか。     〔増田委員長代理退席、委員長着席〕
  180. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 全く同じ認識でございます。効率的、安定的な農業経営がやはり生産の相当部分を担う、そういう農業構造をつくり上げることが大事でございまして、これまでも、とりわけ認定農業者等に対して、農用地の利用集積であるとかスーパーL資金などの有利な金融等を講じてきたわけでございますけれども、やはり施策全体がやや複雑で、体系化されていない、非常に使いにくい面があるということも否めないものですから、私ども、今これを再構築すべく勉強しております。  施策の集中と体系化ということで、例えば発展段階、つまり就農の時期、経営改善の時期、安定の時期、そして経営を継承する時期という、発展段階に応じたメニュー、さらにはそのメニューを効率的な経営に必要なメニューあるいは安定化に必要なメニューといったような形に整理をいたしまして、こうした担い手に施策を集中していくということを検討しております。
  181. 木村太郎

    ○木村(太)委員 ぜひお願いしたいと思います。  もう一つ、担い手確保対策ということ等を考えた場合、教育ということからちょっと考えてみます。  例えば学校給食において米飯給食を実施したりとか、教育の分野でも農業のありがたさというものを取り上げながらいろいろ努力をしていると思うのです。教育の分野を通じて、農業の担い手確保の深刻さというものを私が一番感じる場面というのが、例えば農業高校の卒業式に行った場合、ことし卒業する生徒の中で、そのまま農業に就農する人がどのくらいいるかということを見たときに、その数字の低さに、担い手確保の難しさ、また現実というものを最も感じるわけであります。  ちょっとこれも地元の例で恐縮でありますが、地元の例でちょっと調べてみましたら、去年三月、農業高校を卒業した人の中で、新規に就農した人の割合というのが、農業県である私の地元であっても五・八%にすぎない。また、就職を選んだ人でも、農業関連の産業に就職している人の割合が高いかというと、決してそうとも思えない。もちろん、みずからの進路というのはみずからが決めるのは当然であります。ただ、農業高校とか、あるいはまた農業大学校あるいはまた農業大学農学部とか、これらの教育における実態を農林水産省としてはどう考えて、また今後どう臨もうとしているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  182. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 まず、農業高校から就職をされる、あるいは進学をされる状況でございますが、私ども、全国の数字を承知いたしておりますが、先生が御指摘数字とそう変わらないオーダーではないかと思っております。  私どもが農業教育というものを考えました場合に、農業高校、大学農学部、それから私どもが直接かかわっておるといいますか、県の農業大学校というのがございますけれども、こういうものがそれぞれ立場と目的によりまして農業教育を行っているわけでございまして、学校の中での教育につきましては、きょう文部省さんもお見えでございますからそこでお話をいただいた方がいいかもしれませんが、私どもの方からは農業高校あるいは大学との連携につきまして若干お話をしたいと思います。  農業高校では専門的知識を身につけていただく中で、先生お話ございましたように、やはり就農に対して少し強い意欲を喚起してもらうということは大事なことじゃないかと思いまして、生産現場をより身近に感じてもらうということで、県にございます農業大学校と連携を推進するということにいたしております。ぜひどんどん来て、農業大学で実務の研修をやってくださいということをやっているわけでございます。  それから、農業高校でいろいろな実習なり講義なりをおやりになる場合に、普及センターができるだけ協力を申し上げましょうということをやっておるわけでございます。  それから、今先生お話ございましたが、県の農業大学校へ入校される場合に、いろいろな情報を提供するとか御相談に乗るとかということもやっております。  こういうことで就農意欲を高めるということをやっておりまして、なかなか数字が上がらないのは事実でございますが、全体として新規就農者の数が上向きでございますので、こういう対策も効果があったのかなと思っております。  次に、大学の農学部等でございますが、大学はもうちょっと高いレベルの目的を持っておられまして、高度な技術の開発や、これを担う技術者の養成という役割を持っておられるわけでございますが、その中でもやはり就農を希望される学生さんがおられるわけでございまして、農業経営の中で勉強してもらうということで、在学中に農家の中に入って就農体験をされるというようなことで、インターンシップを実施しているというようなこともございます。  ただ、正直申し上げて、どちらかといえば、これまではそれぞれが別個に動くといいますか、意思の連携が十分でなかったという感は否めないわけでございますが、昨年十二月に文部省さんと合意がございまして、今後は密接な連携体制を構築していこうということでございまして、そういうことでそれぞれいろいろな形で支援なり情報交流をしていきたいなと思っております。
  183. 木村太郎

    ○木村(太)委員 ということは、実態としては、農水省から見た場合も今の姿が決していい状態だとは思っていないわけですね。だから、今までの文部省との関係も一層緊密にしていくというような答弁も今ありましたけれども、では、文部省、きょう審議官においでいただきましたけれども、文部省としてはどう考えていますか。
  184. 銭谷眞美

    銭谷説明員 それでは最初に、農業高校の現状から御説明を申し上げます。  現在、全国の農業高校の数は三百九十三校でございまして、学ぶ生徒は約十一万八千人ほどでございます。その進路状況でございますけれども、先ほど先生からも青森の状況の御紹介がございましたけれども、大体、大学、専修学校等へ進学する者が三割強、就職する者が六割ぐらいでございます。その就職する者の中で、直に就農する者は六%ぐらいでございますけれども、農業と直接関係する分野への就職者が三二、三%ということで、四割程度の卒業生が農業にかかわる仕事に従事をしているということになろうかと思います。  それで、農業高校につきましては、文部省としてもこれまで魅力ある農業高校づくりを進めてまいったわけでございますけれども、最近で、特に三点だけお話しさせていただきますと、一点には、ことしの三月に高校の学習指導要領を改訂いたしまして、農業教育につきまして、バイオテクノロジーの発展、あるいは地球環境問題、農村に期待される機能の多様化などに対応した教育内容の改善を図ったところでございます。  それから、先ほどお話がございましたように、文部省と農林水産省が連携をいたしまして、農業高校と農業大学校との継続的なカリキュラムのあり方等について検討を行うとともに、先進農家等でのインターンシップの推進ということも図っているところでございます。  三点目でございますけれども、農業経営基盤を持つ生徒を対象として後継者養成を実施してまいりました自営者養成農業高等学校につきまして、経営基盤がなくても農業に対する意欲にあふれた生徒も対象とした農業の担い手育成の教育を進めるために、その名称を農業経営者育成高等学校に改めるなど、その充実を図ったところでございます。  引き続き、農業高校における農業の担い手となる人材の育成に努めてまいりたいと思っております。
  185. 木村太郎

    ○木村(太)委員 地元の例で大変恐縮なんですが、私の住む町に実は園芸高校というのがあります。全国に唯一、たった一つしかないリンゴ科というものを持った園芸高校があります。そのほかにも学科はあるんですけれども、実は定員割れが激しくて、つい最近でありますが、一つの学科の名称を変えまして、もちろん中身も変えたわけですが、そうしたら志願者の数がかなり改善してきたという姿もありました。本当に理屈抜きに、さっき、農村という言い方が大体悪いというようなことを今田委員がおっしゃっていましたけれども、やはりこれも現実だと思うんですね。学部・学科の名前をちょっと変えただけで少しふえたりとかする。  この点やはり、先ほど答弁あったとおり、文部省と農林水産省の連携をもう少し密にして、昨年の秋からということでありますけれども、農林水産省からも、教育に対して思うことは文部省に対してもいろいろ積極的に主張していただきたいな、私はそう思います。そういうことで、連携を密にしていくということでありますので、それに期待をしたいと思います。  次に、優良農地確保ということをお聞きしたいと思います。  田んぼ、畑の農地価格という視点から見ると下落が続いてきた。ピーク時の昭和五十七年なんかに比べますと、私の地元なんかでは三〇%ぐらい価格が下がっているんですね。ということは、農業は、今現在、農地を買ってまでして営む産業でないというあかしにも映るわけです。そして、遊休地、放棄地がふえてきている。全国的には何と青森県の耕作面積に匹敵する十六万二千ヘクタールというものが、昭和六十年から見た場合に荒れ地化してしまったというふうに、調べてみましたらわかりました。  そこで、私は本会議でも言いましたが、この優良農地の確保ということを考えれば、今まで以上に規制の強化が必要だし、今まで以上に特典という二つの両極端をうまく組み合わせてやっていくことが基本的には必要ではないかなというふうに思うわけです。  この規制の強化と手厚い特典という相対することをどのようにうまく使いこなしながら優良農地確保対策に向けていくのか、お聞かせいただきたいと思います。
  186. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 優良農地の確保のための規制の強化と特典の明示ということでございます。  規制という点では、農業振興地域制度におきまして優良な農地を農用地区域という形で設定をして、農用地区域内における農地転用は認めないという規制を現に行っております。また、特典という点では、圃場整備事業等の農業基盤整備事業につきましては農用地区域において重点的に実施をするという措置をとってきたわけでございます。  このたびのこの国会に提出をいたしております農振法の改正案の中で、優良農地につきまして国の農地確保の基本方針というものを明確にしたいと考えておりますし、あわせて、この線引きの基準を法定化いたしまして、きちんとした透明性のある基準のもとで線引きを行うということを考えているわけでございます。農地法の基準も昨年法定化をされましたので、この転用規制とあわせまして優良農地の確保に努めてまいりたいと考えております。  また、この地域内における基盤整備事業実施に当たりましては、国の補助、あるいは農家負担の軽減についてこれまでもいろいろと工夫をしてその負担軽減を図ってきたところでございます。
  187. 木村太郎

    ○木村(太)委員 ぜひお願いしたいと思います。  時間がなくなってまいりましたので、ちょっと順番が変わるかもわかりませんが、お聞きしたいと思います。  これも以前ちょっと取り上げたことがあるんですけれども、農業という産業の周りにある産業農業関連産業について聞きます。  俗に規制緩和という言葉がありますけれども、規制緩和一つのいいところというかメリットというのは、例えば携帯電話がいい例でありまして、一気にいいものがより安く、便利に使えるようになった、これだけ短期間に普及したというメリットが大きいわけです。  例えば、農家の声として、米の値段もリンゴの値段もなかなか高くならない、しかし、肥料や農薬、農業資材、農機具の値段は毎年少しずつ高くなっているような感じがあるという声をよく聞きます。そうしますと、農家が消費者という立場に立ったときに、いいものはより安く、便利に使える姿になっていると国として判断しているでしょうか。
  188. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 農業生産資材に占めるウエートなり位置づけというのは、大変生産コストの中で大きいということは私ども十分認識をしておりまして、このため、何とかしてそれを全体としてコスト引き下げができないのだろうかということで、これは私どもの音頭取りで始まったわけでございますが、製造から流通まで、各関係の団体等に集まっていただいていろいろな勉強をした結果、平成八年度に、とにかく皆さんで相談をして行動計画をつくろうじゃないかということで、農業生産資材費低減のための行動計画というものが策定をされたわけでございます。特徴は、関係団体がほとんど入っておられるのと、都道府県まで実は具体的な対応方針をお決めになったということが特徴でございます。  これに沿って、九年度から、それぞれできること、あるいは計画的に年次別に決められたものについて動きがございまして、一々御紹介をするものでもございませんが、例えば肥料なんかでございますと、海外に原料をかなり頼っておりますので、なかなか国内ではできない部分もあるけれども、そちらの方で何とかならないだろうかということで、海外から安い原料を求める等々いろいろな対策が講じられております。  こういう効果が発現されることを私どもは十分期待をしておりますし、私ども自身がいわば音頭取りをしたものですから、できることは十分対応していきたいなと思っておるところでございます。
  189. 木村太郎

    ○木村(太)委員 やはり新基本法をつくって、自給率という目標もきちっと持って、それに向かっての基本計画というものが定まっていくと思いますけれども、だとすれば、今言ったようなことも決して私は小さな問題だと思いません。農業関連産業のあり方というか、少しずつ値段が高くなっているということに対して、これもまた農家から見ると経済的な一つの大きな負担になっているわけですね。ですので、基本計画の自給率向上に向けて歩むためにも、私が今指摘したことも十分表面に出して検討して、そして定めていただければなと私は思いますので、今の御答弁に沿ってまた一層の御努力をお願いしたいと思います。  何でもそうですけれども、やるためにはやはりお金、予算が必要になってくるわけです。ちょっと予算のことをお聞きしますが、これも本会議で聞きました。大臣からもまた大蔵大臣からも、農業の重要性ということをきちっと把握して、惜しまないで対応していくというような御答弁があったわけです。農業の憲法と言える新基本法制定となれば、農業関係予算の姿そのものの内容も見直しが必要になってくるような感も持ちますが、もしそうだとすれば、当面次の概算要求に対して変化があらわれてくるのは当然かなというふうにも思うわけですが、いかがでしょうか。
  190. 中川昭一

    中川国務大臣 農業予算の今後につきましては、圃場整備あるいは生活基盤整備については注意深く点検をしながら、引き続きやっていかなければならないと思っておりますが、今度の新しい基本法の中で、新しい役割といいましょうか、新たな役割を推進するために必要な施策というものも含めて、総合的に食料農業、農村政策を推進していかなければならないと思っております。  需要に関しては、国内農業生産基本とした安定供給、あるいは消費者の視点も重視した食料政策、あるいは、農業の持続的な発展のために、担い手を中心とした農業構造の確立、価格政策に基づく経営安定施策の実施、自然循環機能、景観等のいわゆる多面的機能、さらには中山間地域対策の中でも議論が出ております条件不利地域に対する直接支払い、これは検討中でございますけれども、来年度の概算要求までに結論を出したいということで今検討をしておる最中でございます。  このようなさまざまなニーズ、あるいはまた事業の効果も勘案しながら、必要な見直しをして十二年度の予算編成に当たりたいというふうに考えております。
  191. 木村太郎

    ○木村(太)委員 今の答弁ですと、制定されたとすれば予算面でも変化が出てくるというふうに素直に私は聞こえました。  もう一つ踏み込んで聞きたいのが、基本計画をつくるわけですね。それは十年ごとであって、五年ごとの見直しをしていく。だとすれば、予算的にも、もちろん予算というのは単年度、単年度でやっていくのが当然でありますけれども、しかし、基本計画と同様に十年ごとという時間的なスパンを、今後、実際は一年ごとの単年度予算の国会の承認をいただきながらということになっていくと思うのですけれども、しかし基本計画をかなり意識したことも考えられるのでしょうか。
  192. 中川昭一

    中川国務大臣 基本法基本計画というのは、食料農業、農村に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るために基本計画を推進するわけでございます。  そして基本計画は、十年程度先を展望しながら、必要に応じて五年ごとに見直しをするということでございますから、個別の施策を、基本法案に盛り込まれた基本理念に即して、大くくりにして総合的、一体的に推進をするという考え方で、一定の時期に必要な施策の効果等を踏まえ必要な見直しを行うということでございます。  したがいまして、十年というものを一つの大きな基本的な考え方の中で、現実単年度主義でございますけれども、そういう基本方針に基づいて年度ごとの予算編成に取り組んでいきたいというふうに考えております。
  193. 木村太郎

    ○木村(太)委員 わかりました。  もう一つ、がらりとテーマが変わりますが、農業分野における国際協力、これをちょっとお聞きしますが、法案の中でも国際協力というのをうたっているわけですけれども、ただもちろんこれからも日本が国際社会の中でさまざまな分野、つまりは農業分野でも協力し合うこと、また世界に対して貢献していくことは当然だと思います。  ただ現実に、例えば、リンゴの例で本当に失礼でありますけれども、ふじという品種がありますが、実はこのふじというのは私の住む町で誕生した品種であります。しかし、実際アメリカ産ふじが今輸入解禁されようとしているわけですね。  日本で生まれたものがいつの間にか海外に渡って、そして海外の農家が一生懸命生産して、そして日本に向けて輸出をして、日本に対して輸入解禁を迫る。そうすると、ますます国内産の農産物と外国産のものが激しく競合する、こういったことも現実には今現在もあるし、これからも国際協力を進めるといった場合、結構そういうことがふえていく可能性が強いと思うのですね。結果的に、国内の生産者の首を絞める形にもなりかねないような感もあるわけですね。  ただもちろん、先ほど言ったように、国際協力というのも私は必要だと思うし、否定しません。しかし、その点難しさがあると思うのですが、この点はどう考えておりますか。
  194. 中川昭一

    中川国務大臣 基本法の二十条で国際協力、これはあくまでも、現時点でも八億数千万人いるという飢餓人口、それが今後の食料と人口のアンバランスの中でさらに大きな問題になっていくということで、必要な技術あるいは資金さらには農産物そのものを援助するということが趣旨であるわけでございます。  先生指摘のように、いわゆるブーメラン効果的に安く、ふじならふじ、あるいは日本技術でつくられたものが日本に入ってくるということによって国内の生産者が影響を受けるということが現実にあるわけでございますが、この二十条の本来の趣旨は違う趣旨ではございますけれども、現実にそういう可能性も今後予想されることでございますし、実施に当たりましては、国内生産に影響を与えないということを十分考えながらいろいろとやっていかなければいけないというふうに考えております。
  195. 木村太郎

    ○木村(太)委員 ぜひそういう点も注視しながら対応を図っていただきたいと思います。  時間が来ましたので最後にお聞きしますが、これも本会議で私、全国一律型と言われるこれまでの国の農政の姿があったというふうによく新聞なんかでも書かれておりますが、言葉的には地域重視型に変えていく必要があると。では、その地域の実態を知っているのはやはり地元の県であり市町村である。だとすれば、地方分権という流れも今出てきて、やはりこういったことも農業分野においても進める必要がある。よって、本会議では総理と自治大臣に御答弁に立ってもらいましたが、農林水産大臣のお答えをいただいて、終わります。
  196. 中川昭一

    中川国務大臣 地方分権とそして新しい基本法、これは決して矛盾してはならない問題だと思っております。  したがいまして、先ほども官房長が別の委員に答弁しておりましたように、現基本法とは違う位置づけで、七条、国の役割、八条、地方の役割、そして三十七条で協力をするということで、お互いの立場、対等な役割、それぞれがやるべき役割、そして協力しなければいけない役割、それぞれを対等の関係の中で推し進めていくことによってこの基本法の趣旨を到達させていきたいというふうに考えております。
  197. 木村太郎

    ○木村(太)委員 終わります。
  198. 穂積良行

    穂積委員長 次に、一川保夫君。
  199. 一川保夫

    ○一川委員 今回のこの新しい農業基本法というのは、これまでいろいろ質疑の中でも話題が出ていますけれども、食料農業・農村基本法というふうに、従来の農業基本法農業という単独の名前から、食料なり農村、そういう文言が追加された法律になっておりまして、そういう面では、今日的ないろいろな課題をこの法律である程度方向づけをしたいという意味では非常に意義のある、また大事な法律であるというふうに認識いたしております。  我々も基本理念といったものが非常に大事であるということは従来から主張してまいりましたけれども、特に、この法律の中で今四本柱の理念というものを整理してございまして、その中の一つに農村の振興ということがうたわれております。そういう意味では、この法律の目的とする範囲を従来の農業基本法に比べて大幅に拡大する中で、国民的な視点で農政そのものを位置づけしていきたい、そういう意気込みであろうというふうに思いますので、そういう面では高く評価したいとは思います。  特に、現行の法律は従来、農業の発展はもちろんでございますけれども、農業者所得を中心にしての地位の向上というのですか、そういう観点を相当重要視した、農業に特化した基本法であったと思いますけれども、今回は、先ほど言いましたように、農村という問題なりまた国民的な視点での食料の安定供給という観点での法体系になっているわけでございますが、私は特に農村ということについて若干の時間御質問をしたい、そのように思っております。  この農村という概念というか定義というものはあってないようなものでございまして、いろいろなデータでも、何か統一されたものというのはそう余りないわけでございますが、何となく我々の頭の中には、町の中心部を除いた地域がみんな農村だというふうなイメージがございまして、非DIDというようなデータの統計を見ましても、国土面積の九七%は農村だ、そういう整理のデータもございますし、また、全国の人口の三五%だったですか、それくらいの人口が農村地域に住んでいる、そういうデータもございます。そういう面では、農村地域に住んでいる皆さん方というのは当然、農業従事者の方々が従来は中心であったわけでございますけれども、今日ではもう農業に直接従事している方々の農村地域でのウエートというのはこれまた相当下がってきておるというような感じもいたします。  そういうことからしますと、この基本法というのは、単なる農業に従事している方々だけじゃなくて、農村という概念でいえば当然ながら、農業に従事していない方々で農村地域に住まいをしている皆さん方に対しても、この法律はしっかりと一つ施策としてカバーしていこうという目的を持っているわけでございます。  まず、そのあたりの議論をしていくために、今農水省の方で、この法律にうたわれているように、農村という言葉をこれから対外的に説明される場合にどういうような概念というか定義づけで説明していかれるのか、そのあたりをまずお聞きしたいと思います。
  200. 高木賢

    ○高木政府委員 農村という言葉の持つ意味でございますが、今お話がありましたように、農村というのは法令上かなり使われております。しかし、その定義というのをはっきり書いておりますのは、農村地域工業等導入促進法というものだけでございます。これは、ある地域に工業が導入されたときに奨励措置を講ずるというものですから、どこが農村地域であるかという線をしっかり引いておかなければいけないということで線引きがされているわけですけれども、その他の場合には特に定義が使われておりません。  本法におきましても、基本法でありますからもっと定義ということがないわけでございますが、今御指摘にありましたように、どういうふうに使うのかということでありますれば、ちょっと長くなりますが申し上げますと、農業的な土地利用が相当の部分を占め、かつ農業生産と生活が一体として営まれており、居住の密度が低く、分散している地域というふうに説明をいたしております。
  201. 一川保夫

    ○一川委員 私自身もちょっと調べましたところ、そういった明確な定義づけはないわけですけれども、そうかといって、では農村地域をいろいろな施策でカバーをしながらその地域の振興を図っていくという面では、これは一農林水産省施策だけではカバーできないというふうに私は思いますし、当然ながらこの法律の中でも、いろいろな関係機関との協力の中でその振興を図っていくというようなうたい方をされているというふうに思っております。  では、農村という問題をこの法律に入れまして、しっかりとこれから施策の柱として推進していこうという以上は、現状の農村というこの空間に対してどういう課題がある、どういう問題意識を持っているのか、現状の課題なりそういったところを農林省としてどういうふうに考えているのか、要点だけでもちょっとお話ししていただきたいと思います。
  202. 高木賢

    ○高木政府委員 お尋ねのありましたように、農村振興策というのは、ひとり農林水産省施策のみで対応できるわけではございません。地域振興の任務を負います国土庁なり自治省さんなり建設省なり、それぞれの省庁との密接な連携並びに当該省庁の御協力なくしては実効ある推進はあり得ないというふうに考えております。  その趣旨はこの法案でも明確になっておりまして、十五条でいわゆる基本計画を定めるということにしておりますが、そのうちの農村に関する施策部分につきましては、国土の総合的な利用、開発、保全に関する国の計画との調和が保たれたものでなければならないということで、農村に関する施策が国土の総合的な利用にかかわっておるものだという認識がまず前提として持たれております。  農村の振興ということですが、先ほどもお話がありましたが、農業者だけが暮らしているわけではないわけで、その他の二次産業、三次産業の方々もともども暮らされております。しかしながら、先ほども申し上げましたように、農業土地利用が優位にある地域、相当部分を占める地域ということでございますから、どういう課題があるかということで申し上げますと、まずは、計画的な土地利用を推進するということが一番根本の課題であろうと思います。  それから、地域資源を活用いたしました地域所得確保というのが二つ目の課題であると思います。これは、もちろん農林業は当然でありますけれども、農林業にとどまらず、もろもろの産業、工業導入なども推進しておりますが、ほかの産業の基盤の整備によります多様な就業機会の確保ということがあろうと思います。それから、開かれた農村づくりに関係いたします地域間の交流の促進、いわゆる都市と農村の交流の促進ということも当然あると思います。  それから、三番目には、所得だけでなくて、安心で快適な生活の確保ということも当然のことでございまして、生活基盤の整備が必要であります。都市へのアクセス条件の整備とか、医療、保健、福祉、教育、文化、こういったもの、あるいは住環境の整備ということが生活環境の整備として重要であろうと思います。  それから、もう一つ、国民の求める国土環境保全機能の維持向上という問題がございます。国土の安全性の確保なり自然環境の保全、こういったことも農村に課されている課題ではないかというふうに整理をいたしております。
  203. 一川保夫

    ○一川委員 農村地域は、農業、そのほかの二次産業、三次産業も含めてでございますけれども、そういった生産の場であることは当然でございますし、それとあわせまして生活の場でもあり、また、そういうものが健全な姿で定着することによって、農村の持ついろいろ多面的な効果というものが評価されるのだろうというふうに思っております。  しかし、一方においては、非常に大きな今日的な課題としましては、地域によっては、非常に過疎化現象が進んでいることは間違いないわけでございますし、またそれと並行して高齢化現象が進んでおるわけです。逆に、平地部の農村地域へ行けば、混住化社会といいますか、そういう現象が非常に進んできておるわけです。そういう面では、農林水産省施策はもちろんその基盤的なものとしては大切なものがあるわけでございますけれども、他の省庁とのいろいろな連携というのがそういう面では非常に大切になってくると思っております。  そういう中で、先ほどもちょっと話題に出ておりますけれども、この法律の中でも、地方公共団体の役割をいろいろと期待するような言い回しが条文の中にうたわれております。そういう面で、きょうは自治省の方に来ていただいていると思いますけれども、地方公共団体をいろいろな面で指導されている自治省としまして、これからの新しい時代に向けての農村というものに対する役割、あるいは現状の問題も含めて、それらに対する何か所見がございましたらお伺いしておきたい、そのように思っております。
  204. 香山充弘

    ○香山政府委員 農村振興に関しての考え方について、お答え申し上げます。  農村は、食料供給という経済、産業活動面の役割だけではございませんで、水資源の涵養あるいは自然環境の保持、国土保全等重要な役割を有しておりますけれども、近年、過疎化、高齢化の進展その他によりまして活力が低下いたしておりまして、農村の有するこれらの機能の低下が大変心配される状況にあるというふうに考えております。  御指摘にもありましたように、農村地域は、国土面積に大変大きなウエートを占めておりますから、国土政策としても重要な意味を持っておりまして、地域における総合的な行政主体である地方団体は、農村の有する多面的な機能が確保され、さらには発展するように、これは生産面だけではなくて、生活環境あるいは人材の育成、確保等々幅広い観点から総合的に農村振興に対する事業を推進する必要があるというふうに考えております。  自治省といたしましては、地方団体が地域の実情に即して総合的に取り組む農村振興のための施策について、積極的に支援してまいりたいと考えておる次第でございます。
  205. 一川保夫

    ○一川委員 自治省の立場で、農村振興のために、ぜひひとつよろしくお願いしたい、そのように思っております。  私自身も、農村地域に住まいをしている人間でございます。中山間に入るか入らないか微妙なところに居住しておりますけれども、農村地域に今住んでいる皆さん方のいろいろな活動状況を見ておりますと、先ほども言いましたように、職業が非常にバラエティーに富んでいるという現状の中で、それぞれの地域で、恐らく地域の特性を生かしながら地域振興、俗に言う村おこし、町おこし的なものに取り組む運動が最近非常に盛んになってきたような気がいたします。  そういう面では、法律あるいは行政的に、ああしろ、こうしろということを、そういったところに具体的に、画一的に物事をしていくという時代ではもちろんないと私は思います。ただ、そういう意欲のある、問題意識を持って何かに取り組もうとする地域なりそういう皆さん方に対してしっかりとした制度を用意してあげるという非常に大切な時期に来ているというふうに思っております。  そういう面では、この基本法一つの理念なりそういった施策方向に沿って、これから具体的ないろいろな制度が見直しをかけられていくというふうに思いますけれども、本当に農村地域に住んでよかった、住んでいることに非常に誇りが持てるというような状況にぜひしてあげていただきたいというふうに思います。そういう基礎的な制度が整備されれば、そういうものを駆使しながらいろいろとやっていける、そういう知恵はもう十分農村に住んでいる皆さん方にはあるというふうに私は思いますので、そういう観点でのこれからの具体的な制度の検討をよろしくお願いしたいというふうに思っております。  そういう中で、最近ちょっと気がついた中で非常に心配なことは、戦後間もなく、食料増産等々で全国国土の隅々まで食料生産するという中で、かんがい施設とか排水施設も含めてでございますけれども、今で言う中山間よりもむしろ山間地域に、そういう施設が当時いろいろと整備された時期があるわけですけれども、今日そういう施設が老朽化し、傷んでいる状態を放置せざるを得ない。それを更新するためには地元負担を要する、いろいろな面でエネルギーが今なくなりつつあるというような感じがいたします。  これは、地域資源、農村資源としては非常にもったいないわけでございます。国土の保全なり多面的機能を十二分に発揮するという観点からしますと、現状、土地改良区という組織が農村地域に、一応大きな平野部を中心にしてあるわけでございますけれども、土地改良区という組織をもっと今日的な課題に即して見直しをかけながら、そういうノウハウをしっかりと発揮していただくために、土地改良区という組織をしっかりと活用しながら、そういった中山間地域等の農村地域、非常に今エネルギーが衰えつつある、活力が低下しつつある地域のそういう土地改良施設をしっかりと点検し、整備していくというようなことに対する制度をしっかりと構築していただいたらどうかなというふうに私は感ずるわけでございますけれども、そのあたり、いかがでしょうか。
  206. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 今先生から御指摘があったとおりの状況になっております。  農村地域は、都市化、混住化が相当進んできておりまして、その中で農業水利施設などというのは、言ってみれば農業施設であると同時に、下流域の大都市地域の災害防止機能等の国土保全機能、あるいは農村地域での地域住民のための生活環境用水あるいは生活排水の受け入れといった公共、公益的機能を果たしつつあるわけでございまして、その役割が近年特に高まっております。  最近、私ども、統計情報部を通じまして、農村地域の中の非農業者に対してアンケート調査をいたしました。土地改良施設なり土地改良区について、どういう印象を持っていてどういう期待を持っているのかという調査をいたしましたら、かなりの方々が、この土地改良施設に対して、公益的、公共的機能を期待したい、そういう御回答がございましたし、あるいはそこにおける作業に自分も参加をしたい、またそうしたものに対する公的支援を高めるべきだ、こういう御意見が強うございました。  一方では、今先生おっしゃられましたように、施設が老朽化をし更新の時期を迎えている、維持管理には金がかかる、土地改良区は小規模零細というふうな状況でございますので、この際、そういったもろもろの社会経済情勢の変化を踏まえまして、統合整備によって組織体制を強化する、それから、今申し上げた施設管理に係る施策を充実する、これは基本問題調査会の中でも公的支援の強化という形で書いてあります。それから、農村地域に根差した公共団体として地域住民から期待されている役割の発揮という点に重点を置いて、土地改良制度土地改良法の改正も視野に入れながら、こうした土地改良区の一層の活性化という方向に向けた検討をいたしたいと考えております。
  207. 一川保夫

    ○一川委員 私は、今局長の答弁にあったように、今回のこの基本法というものが制定されていった場合には、やはり、土地改良法という非常に歴史のある法律はありますけれども、そういう法律を、しっかりと今日的な状況にマッチするような形で見直しをかけていくということが非常に大切な課題でもございますので、ぜひその問題に取り組んでいただきたい、そのように思います。  農水大臣に、ちょっと農村振興という面で御見解を特にお伺いしておきたいと思います。  今までもいろいろな話題が出ました。非常に幅広い地域でございますし、また、農水省だけでどうこうなるという問題でもないかもしれませんけれども、そうかといって、やはり農村地帯ですから、農業、林業という産業を中心にしながら、そういった産業が健全にその地域に定着していくということが農村地域の繁栄の基礎をなすということは間違いないというふうに私は思いますので、そういう観点で、大臣の見解をいただきたいというふうに思います。
  208. 中川昭一

    中川国務大臣 現在の日本の農村は、過疎化とか高齢化とか、いろいろ大きな課題を抱えておるわけでございますけれども、先生指摘のように、極めて重要な地域である。これは、単に生産活動、国民の生命に不可欠な生産をしておるというだけではなくて、新たなニーズとしての多面的な機能、国土保全とか景観とか、あるいは教育的な側面とか、いろいろあるわけでございます。そういう意味で、何としてもこの農村地域の持続的な発展というものがこれからますます重要になってくると考えております。  そうした役割を有する農村を計画的、総合的に振興するために、農業的な土地利用とほかの機能の土地利用との調整を図りながら、地域所得の確保、そのために、農林業で地域の特性を生かした振興、あるいは地場産業等多様な就業機会の確保、そしてまた、都市住民が来ることも含めた快適で安心な活力のある生活を確保するために、やはり集落排水あるいは道路等まだまだ生活インフラがおくれておりますので、その整備、そして、都市と農村との交流の促進といったことを含めて、いわゆる多面的機能が十分に発揮できるように、先生指摘のように、農林水産省だけでできない部分もございますので、関係省庁ともよく相談をしながら、重要な農村の役割の発展に向けて頑張っていきたいと考えております。
  209. 一川保夫

    ○一川委員 農村地域は、この法文等にもうたわれていましたように、農村文化の伝承というようなことも一つの課題になってきておりますけれども、農村におけるいろいろなそういう文化財的な資産というのはまだまだたくさんあるわけでございます。これまた先人のいろいろ苦労された歴史の遺産でもございますし、また、農業というのは、やはり、基本的には自然相手の産業でございますので、自然に対する感謝の気持ちなり、また自然に対する恐れといいますか、そういう災害等に対する過去の非常に苦しい経験もあるわけでございますので、常にそういうものを念頭に置いた農業であり、農村地域でなければならないというふうに思います。  そういう面では、そういうものを象徴的にあらわしている農村文化といったようなものをこれから我々の後世につないでいくということは非常に大切な課題であろうというふうに思いますので、そういう面についても配慮方をよろしくお願いしておきたいと思っております。  今大臣もちょっと触れられましたけれども、都市と農村とのいろいろなかかわりのことが書かれたところが、三十六条だったですか、ございます。俗に都市農業といいますか、今、市街化区域の中でもそういった農業をやっている地域もございますけれども、都市近辺、都市の農業、こういったものも、ある面では非常に消費地が近いということもございますし、また、環境保全という観点では非常に評価の高い、そういうエリアでもあろうというふうに思っております。  また、都市と農村というもの、その境をある程度円満な状態で緩衝的に維持していくためにも、都市の農業というのはある面では生産性が非常に高いところもありますけれども低いところもあるというふうに私は思いますが、そういう都市農業というものを、これからの農政の中でどういうふうに位置づけ、期待しているのかというところをちょっと確認しておきたいと思います。
  210. 高木賢

    ○高木政府委員 都市農業についてのお尋ねでございます。  都市農業は、経済面でいいますと、市場に近いという有利性がありまして、野菜とか花などの生鮮農産物の供給の上で重要な役割を果たしております。その中では非常に付加価値の高いものが生産されて、まさに、おっしゃるように、本当に市場に近いという有利性を活用している地域もございます。  それに加えまして、都会の多くの方々のための市民農園あるいは学童農園、観光農園、こういった農業体験なりあるいは子供の食教育、こういった面での役割、さらにはレクリエーションの場の提供というものもございます。  それから、緩衝地帯というような意味合いでは、緑や防災空間の提供という面で、都市の過密な地帯との緩衝的な役割も果たしているというふうに考えております。  したがいまして、消費者重視という基本的な考え方ではございますが、特に都市農業につきましては、都市住民のニーズに対応した健全な発展ということが必要でございます。農産物の提供につきましても、直売場の整備というようなものを含めまして、より安定的な集出荷体制をつくるとか、それから、食教育あるいは農業体験の促進のために学校教育との連携、これも、先ほども別の先生から御指摘もございましたが、そういったものをさらに進めてまいりたいと思います。  また、体験の場としての市民農園なり観光農園の整備推進ということで、都市の方々に農業を身近に感じていただく貴重な場でございますので、そういう位置づけで推進してまいりたいと思います。
  211. 一川保夫

    ○一川委員 都市農業というのは、そういう面では非常に重要な役割を担っておるというふうに思いますので、また、一つ制度の中でしっかりとしたフォローアップをお願いしたいというふうに思っております。  次に、最後になりますけれども、国と地方公共団体とのいろいろな役割分担も踏まえたこれからの地方分権の一つの流れに沿っての対応の仕方について、先ほど来いろいろな議論があったと思いますけれども、今回の法律の十一条等でもうたわれていますように、あるいは八条だったですか、地方公共団体に対する責務なり、また、いろいろな面で国と地方が役割分担をしながら地域の自主性をしっかりと生かしていくというような条文があったというふうに思います。  こういう一連の地方公共団体とのいろいろな連携、農業者なりまた農業にかかわる団体の方々のそういった自主的な努力というものに対していろいろと支援していこうというような条文になっておりますけれども、これは従来の農政のいろいろな制度の展開の仕方を基本的にここは変えていきたいとか、ここは大胆に切り込んでいきたいというものがあるのだったら、ちょっと説明していただきたいのですけれども。
  212. 高木賢

    ○高木政府委員 新しい基本法案の十一条の自主的な努力を支援するという規定、実は現行法の五条にも規定がありまして、法文的にいいますと特に変わるところはないと考えております。  ただ、現実問題としては、これまでの農政が、とかく上からの指導といいますか、そういう力が強くて、地域の方々、農業者農業団体の自主性というものに対して相対的に力が強かったのではないかというような運営上の反省も実はあると思います。  いずれにいたしましても、主人公は農業者であり、また国民でありますので、行政は基本的にそうした方々の努力に対して支援をするという立場でこれに取り組むということであろうと思います。個々具体的な施策でそれをどう生かすかということが、これからの新しい基本法のもとでの私どもの責務であろうというふうに思っております。
  213. 一川保夫

    ○一川委員 では、最後にちょっと。  先ほど自治省に答弁していただきましたけれども、もう一点お伺いしておきたいと思います。  今ほどのお話に関連するわけでございますけれども、農業というものは、御案内のとおり、当然ながら自然条件に左右をされ、地形条件にも左右されるわけです。したがいまして、それぞれの地域の特性に相当影響を受ける、そういう産業であることは間違いないわけです。  そういうことからすれば、その地域の特性を熟知している地方公共団体等がいろいろな面でこれからの施策の展開に対して重要な役割を担っていただけるというのは、これはまた非常に大事なことでございます。地方分権ということの一つの流れがありますけれども、私は、農政というものは、もっともっといろいろな面で、地方公共団体なり地方の皆さん方の創意工夫なり、そういったものを生かしていけるような制度なり仕組みにすべきだというふうに考えております。そういう面では、今回この条文にもいろいろな地方公共団体との役割分担等々のことがうたわれております。  そういう面で、これからの農政の展開という観点で、地方公共団体の役割というものは、私は、これまで以上に大事なものがあるというふうに思っておりますので、そういうことについての自治省としての見解をお聞かせ願いたいと思います。
  214. 香山充弘

    ○香山政府委員 お答え申し上げます。  新基本法におきまして、地方団体は国との適切な役割分担を踏まえて、地域の諸条件に応じた施策を実施する責務を有するものとされております。大きな方向づけは国ということになりますけれども、具体的施策については、実情に即して地方団体が自主的に実施し得るようにするということが極めて重要であろうというように考えております。  自治省は、このような観点を踏まえまして、これまで地方分権の推進に努めてまいりましたし、財源面でも、例えば平成十年度には国土保全対策事業というものを創設いたしまして、地方団体が自主的かつ総合的に実施する事業に対する財源措置の拡充といったことに努めてまいったところでございます。  今後とも新しい基本法の理念にのっとりまして、地方団体が自主性を発揮しながら農村地域の振興に積極的に取り組むことができるよう、自治省としてもできるだけの努力をしてまいる所存でございます。
  215. 一川保夫

    ○一川委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  216. 穂積良行

    穂積委員長 次に、中林よし子君。
  217. 中林よし子

    ○中林委員 まず初めに、今回の食料農業農村基本法案の第十九条、不測時における食料安全保障についてお伺いします。  この規定は、第二条の四項の規定に基づいて、そういう場合にということなんですが、この第二条第四項は、「凶作、輸入の途絶等の不測の要因により国内における需給が相当の期間著しくひっ迫し、又はひっ迫するおそれがある場合において」、こういうふうに規定しているわけですけれども、この凶作、輸入の途絶等の不測の要因によりというその中身には、戦争というものも入るのでしょうか。
  218. 中川昭一

    中川国務大臣 二条四項に基づく十九条の不測の事態というのは、食料の安定的な供給に対しての不測でございますから、要するに安定的に入らない。つまり、食料安全保障上、大きな問題が発生したということでございますから、いろいろな場合が考えられますけれども、いわゆる戦争というものについても、周辺であるいはまた局地的な戦争による影響が生じた場合も入るというふうに考えております。
  219. 中林よし子

    ○中林委員 その場合、第十九条で、「食料の増産、流通の制限その他必要な施策を講ずるものとする。」ということになっているわけですけれども、戦争の場合を想定して、これは農水省だけで考えるわけにはいかないんじゃないかというふうに思うのですけれども、防衛庁とも相談されているのでしょうか。
  220. 中川昭一

    中川国務大臣 仮に世界のどこかで戦争が起こって、輸送あるいは生産地が戦争になるという場合で影響を受ける場合をも含めまして、いわゆる食料安全保障上の問題が発生した場合には、防衛庁を初めとして関係省庁とも協議を行った上で、どういう不測の事態に対応すべきかということについて、連携をとりながら今後の対策を考えていかなければならないというふうに考えております。
  221. 中林よし子

    ○中林委員 今後の問題なのか、もう既に防衛庁と連携をとって協議を具体的に始めていらっしゃるのでしょうか。
  222. 高木賢

    ○高木政府委員 法案をまとめて、政府として閣議決定をして提出したわけであります。したがいまして、その過程におきまして、防衛庁とは、こういう法案の内容にするということについては協議し、合意を得ております。  具体的にどういう対応をするかということについては、現在は省内での検討段階でございまして、不測の事態に対してどう対応するかということにつきまして、まだ具体的な相談まではいっておりません。
  223. 中林よし子

    ○中林委員 私も、その不測の事態に、食料の安定供給というのを当然国として考えなければいけないというふうには思うのですけれども、輸入との適切組み合わせによってという義務規定は、食料を安定的に国民に供給する、国内生産基本としてというのが大前提としてあるわけですけれども、私は、これはいわば裏側から見れば破綻した理論ではないかと思うのですね。  問題なのは、やはり食料自給率が余りにも低い。そういうときに、それならば、不測の事態が起きたときに、二、三年、輸入食料品が入らないという場合に一体どうするのかということで、これまでも食料農業・農村基本問題調査会農水省はいろいろなシミュレーションを提示されていると思うのですね。  そのシミュレーションによりましても、例えば耕作地が二〇一〇年ぐらいにあと百万ヘクタールぐらい減るという状況になって、そして不要不急の農産物はつくらないで芋類などを増産させて、今よりも三倍にした場合、一体どのくらいの国民のカロリーベースになるのかという試算が示されております。  現在、国民のカロリーベースは二千六百五十一キロカロリーということになっているわけですけれども、そういう前提を置いたとき、不測の事態ということでこういう対応をとったときには、千四百四十キロカロリーの供給ができるということなのですね。  千四百四十キロカロリー。このカロリーの状況というのは一体どういうことをいうかというと、アジアの男性の栄養不良境界水準、もうこれ以下はだめですよという境界水準が千七百六十キロカロリーですから、それよりも低いということになると、寝たきりで何にもしないでやっと生命を維持できるぎりぎりのところになるのかそれ以下なのかというところだというふうに思うのですね。  だから私は、そういうことではなくて、議論をもとに返すようで悪いのですけれども、やはり国内の食料自給率をどう高めていくか。こういう試算で、本当に輸入が途絶えたときにどうしてやっていくかと農水省が出したシミュレーションでも、生命の維持をしていくことさえもなかなか難しいような状況が出てきているわけです。その後具体的に提示されたのは、千七百キロカロリーというのが最終的にはシミュレーションとして出されている。それは耕地が減らないとして出された数字だというのも私は知っております。  だから、そういうことを考えたときに、自給率を引き上げてこそ不測の事態にも対応できるというふうに思うのですけれども、大臣、いかがでしょうか。
  224. 中川昭一

    中川国務大臣 十九条で規定しておるのはあくまでも不測の事態であり、不測の事態とは、文字どおり、過去の例でいろいろとシミュレーションはしておりますけれども、それで全部カバーできるものではないわけでありまして、先ほど冒頭、戦争というところから先生は議論を始められましたけれども、いろいろな不測の事態、あるいは我々の想像を絶するような不測の事態も可能性としてはあるわけでございます。  例えば、アメリカやフランスのように自給率が一〇〇%以上の国であっても、国内のストライキだとか、あるいは交通が突然麻痺をしたとか、電力がおかしくなったとか、いろいろなケースが考えられるわけであります。ですから、自給率を上げれば不測の事態に対応ができると一元的に単純には申し上げられないと思います。
  225. 中林よし子

    ○中林委員 大臣、本当に私はまじめに考える必要があると思います。  もちろん国内でいろいろ不測の事態はあるでしょう。凶作という場合もあるわけです。その場合、緊急に米を輸入しなければならない事態、私どもも経験して本当に大変だったと思うのです。そのときに、もっと備蓄があれば、本当に減反せずにつくっていれば、こういう思いもいたしました。  だからこそ、一〇〇%以上、それぞれの作物の自給率を引き上げていく。全体として自給率を高めておれば、そういう国内の不測の事態に対しても対応ができる。ましてや七千万人分のいわば食料を輸入しているような、四一%といえばそういうことですよ。そういうときに、諸外国の事情の中で輸入が途絶えたときということは当然考えられるわけですから、そういう意味でも、私は、本当に真剣に国内食料自給率の引き上げ、ここが本当に実現できる、そういう基本法でなければならないということを重ねて指摘をしておきまして、次に移りたいというふうに思います。  中山間地域の振興についてお伺いします。  中山間地域耕地面積全体に占める割合は四二%、それから農家戸数に占める割合も四二%、農業生産額では三七%という非常に大きな位置を占めています。我が国農業、農村の中で、この数字から見ても重要な位置を持って、自給率向上のためにはこの中山間地の振興抜きには考えられないというふうに思います。  中山間地の農民の皆さんは、非常に耕作に不利な地域の中でいろいろな努力をされております。とりわけ高齢化が進んでおりますから、そういう中で六十五歳以上の方々が農業に対してどういう考えをお持ちなのかということで、農水省が調査をしておられます。一年前の農林水産統計の中にその調査の結果が出ております。  なぜ農業をやるのかという農業に対する考えで、複数回答でございますけれども、食料生産する大事な仕事である、この答えが四七%、一番高いのです。それから、農業は育てる仕事でやりがいがある、これが三二%の回答です。だから、収入が得られるというよりも、そういう崇高な考えの中で日本食料や国土が守られているのだというふうに私は思います。  そこで、大臣にお伺いしたいのですけれども、こういう中山間地の方々の農業に対する御努力に対してしっかりと役割を果たすような政策をしてこそ、自給率向上も、あるいは食料農業、農村の発展もあるのではないかと思いますけれども、基本的な考えですので、お答えいただきたいと思います。
  226. 中川昭一

    中川国務大臣 日本農地の約四割を占めております中山間地域は極めて重要な役割を果たしていると私も考えております。  農業生産だけではなくて、いわゆる多面的な機能、国土あるいは水源涵養あるいは景観、さらには文化、歴史、さまざまな役割を果たし、そしてまた、下流部の都市住民を初めとする日本の国土特有の地形の中で中山間地域がしっかりしていることが、日本の国土、日本の国民全体に対して極めて大きな役割を果たしているというふうに考えております。  しかし一方、中山間地域は傾斜地が多く、また、いわゆる一枚の圃場の面積も多くとりにくいというように生産条件が不利であること、あるいはまた、生活といいましょうか、定住条件も不利であるというようなことから、この地域を何としても、生産面でも定住面でも、農業を続けるあるいは定住をしていくという期待にこたえる、あるいはまたその役割を担っていただくべく、いろいろな対策を考えていかなければならないと思っております。  そういう意味で、本基本法の三十五条におきましても、生産条件の不利を補正するための中山間地域等への直接支払い制度というものを新たに設ける方向で、現在検討を続けております。  中山間地域は条件不利地域であると同時に、できたものが決して悪いということではなくて、中山間地域でいいものができるというところもあるわけでございまして、そういう意味で、この地域での生産活動というものも、先生が先ほどおっしゃられた、私も同じ考えでありますけれども、自給率を少しでも向上していこうというこの基本法一つ基本的な考え方にも合致するところでございますので、生産基盤の整備等中山間地域に対する各般の施策を総合的に講じていきたい、いかなければならないというふうに考えております。
  227. 中林よし子

    ○中林委員 基本的な考えは、私も大臣も一致しているというふうに思います。  そこで、改めて、中山間地の持っている値打ち、それを金額に換算しているいろいろな試算があるわけです。公益的機能の問題で、農水省農業総合研究所の一番新しい資料、一九九八年の試算によりますと、公益的機能の経済的評価は三兆三百十九億円もあるということになっております。  これだけの値打ちがありながら、農家の一戸当たりの総所得というのは平地の農家の約八割、それから一人当たりの収入では勤労者の六六%、こういうふうに統計上出ております。  私どもは、中山間地というのは、今では国土の無償の管理者だ、そういうふうに思うのですけれども、いつまでも無償の管理者にしてはならないと思います。だから、当然、条件不利地域に対しての、先ほど大臣もあらゆる施策が必要だとおっしゃいますけれども、その施策が必要だと思います。  三十五条にそれを、基本法の中に書いてあるのだ、こういうふうに今大臣が述べられましたけれども、その第一項、これがいわばその基本を書いているものだと思うのですね。この第一項の基礎になるのは、平成五年、一九九三年に制定された特定農山村法と同じ趣旨に基づいてこの第一項があるというふうに私は読み取りました。そうなると、平成五年に法律としてつくられた特定農山村法、この法律の効果といいますか、それが問われると思うのですね。  そこで、具体的にお伺いしますけれども、中山間地域経営改善・安定資金融通促進事業、これがこの法律に基づいて行われておりますけれども、実績はどのようになっていますか。
  228. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 特定の資金をメンションされましたけれども、全体情勢を簡単にお話をさせていただきます。  特定農山村法で千七百三十の市町村を指定いたしましたが、その九割の市町村におきまして整備計画ができ上がっております。  同時に、この地域で創意工夫を生かした各種のソフト事業に取り組むということで、これを支援する制度平成六年に創設いたしました。約七割、千九十三の市町村が取り組みまして、新規作物の導入や農業所得の向上にかなりの成果が出ているところでございます。  今お話がございました資金、長期低利資金でございますけれども、これは、全体に低金利という状況の中でほかの資金との差がないということ、それから、農家の方々が減収を他の既存作物の収入で補てんしたというふうな状況にございまして、実績がございません。  それから、この中山間地域に対しては、先ほど大臣から総合対策ということで申し上げましたが、特に基盤整備の分野で重点を置いた対策を行っているところでございます。
  229. 中林よし子

    ○中林委員 政府はこの法律の目的をこのように実は言っております。「特定農山村地域について、地域における創意工夫を生かしつつ、農林業その他の事業の活性化のための基盤の整備を促進するための措置を講ずることにより、地域の特性に即した農林業その他の事業の振興を図り、もって豊かで住みよい農山村の育成に寄与すること」を挙げているわけですね。  日本共産党はこの法律に反対をいたしました。その理由に、一つは、中山間地域の乱開発を推進し、また、開発のめどのない山間過疎地域の市町村にとっては計画策定の負担だけが残る。それから二番目に、中山間地域農業者が望んでいる所得補償をせずに、農民に借金を負わせる融資事業に終始して、ほとんど実効性のない法律だという指摘をしました。  先ほど、計画は立っているんだとおっしゃったのですね、計画は立ったと。融資事業がないのですよ。実効性が伴っていない。日本共産党が指摘したとおりになっているじゃないですか。これで本当に、この目的にある、豊かで住みよい山村の育成に寄与したと胸を張ってあなた方は言えますか。
  230. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 重ねての答弁で恐縮なんですが、この資金だけで特定農山村法の全体を運用していこうということではございません。  今申し上げましたように、資金につきましては、金利情勢それから農家のビヘービア、そういうことでたまたまこういう状況になりましたけれども、それ以外に、今申し上げましたように、この中山間地域活性化推進事業でかなりの優良事例が出ているわけでございます。平成十一年からは、特定農山村に対しまして、特に地域の活性化を推進するような事業も次々に打っておりますので、私どもは、この法律の精神は依然としてやはり時代に即したものだというふうに考えております。
  231. 中林よし子

    ○中林委員 当時の法律制定の時期にさまざまな融資制度があるなどというのはわかっております。にもかかわらず、こういう融資制度もつくった。それによってバラ色の絵を描いて、市町村には計画をちゃんと立てろということで、いわば市町村は計画は立てたけれども、それは計画を立てる負担だけが残って、それに基づく実効性は伴っていない。融資ゼロですよ。一円でも二円でもあれば、まあ一円、二円という単位はないわけですけれども、一カ所でも二カ所でもだれかが借りていれば少しはいいのでしょうけれども、ゼロということは、いかにこの法律が有効に働かなかったかということを物語っている何よりの証拠だと私は思います。  具体的に言いましょう。  それならば、この法律によって過疎が食いとめられたのか、人口減少が減ったのか、農業従事者がふえていったのかということを調べてみます。  余りいい統計がありませんでしたけれども、九〇年から九五年、ちょうどこれは九三年にできているのですけれども、農業センサスによれば、中山間地における農家戸数は、九〇年には百六十二万六千四百二十戸あったのが、五年たった九五年には百四十五万九千七百三十戸となって、実に十六万六千六百九十戸減っております。それから人口も、実にこの間、四十四万二千六百六十四人減っているのですよ。何よりもこれが有効に働かなかったという証拠ではないかと思います。  だから、失敗した政策をそのまま基本法の、しかも第一項に位置づけるということは、やはり有効に働かないのじゃないか、私はこのように思うのですけれども、これについてのお考えはありますか。
  232. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 再度の答弁で申しわけないのですけれども、大臣からも御説明申し上げましたように、この基本法の三十五条一項もそうですけれども、この特定農山村法という法律それから特定農山村法の誕生に伴って実施をしてきた施策だけで中山間地域を振興するということは制度的にも実態的にも無理なことでございます。全体として、中山間地域を総合的に振興する対策、大臣からは、所得機会、定住の促進そして公益的機能の発揮というふうなお話をいたしましたが、そういうものが両々相まって振興が図られるわけでございます。三十五条一項は、それを具現化すべく条文化をしたわけでございます。  それから、特定農山村法の推進状況一つとってみましても、私の手元にありますデータでいえば、対象作物の栽培面積が一定の期間内に二割ふえた、三割ふえた、販売額も二割ふえた、これを実施している農家も三割ふえた、一戸当たり所得は三割ふえたというふうな実績も上がっておりまして、その分野における限りこの特定農山村法の意義はあるものと私どもは認識をいたしております。
  233. 中林よし子

    ○中林委員 毎日生活して、農業生産に励んでいる人たちはこの法律だけでやっているわけじゃないというのは私もわかります。さまざまな条件の中でやっているわけです。  たまたま今いい条件のところだけおっしゃいましたけれども、あの法律のときに、所得補償はやらなかった、融資に変えられたといういきさつがあるのですよ。だから、今度の三十五条の第二項、これが非常に期待されていると思います。この二項の、不利を補正するための支援を行うということの意味合いというのが、今、農家の人たち、とりわけ中山間地では大変大きな期待を持って受けとめられております。  私は広島県神石郡豊松村というところで生まれました。人口二千人のところです。まさに山間部です。そこで、つい先ごろ、農家の皆さんの実態を聞いてまいりました。そこでは、高原野菜としてトマトのブランドをつくって、かなりの実績を上げております。そういうところで、実は日本共産党の村会議員は一人もおりません。いわば保守系無所属とおっしゃる方々が十人いらっしゃるわけです、定数十のところです。  そこで、そういう村会議員の方が集まってくださいました。農協の組合長さんもいらっしゃいました。役場の助役さんもいらっしゃいました。そこで言われたのは、今回のこの条件不利地域に対する所得補償の問題で、国が十分な施策をしてくれるのであれば、高齢化が進んでも農業農地を守っていくことはできるんだ、そうやれば自分たちも農業を続けられるという非常に強い要求を出されました。  そこで、具体的にお伺いします。現在、この条件不利に対する所得補償をどうするかということが中山間地域等直接支払制度検討会で検討されて、間もなく中間とりまとめがされようとしているわけですけれども、この検討会だけじゃなくて、まず基本的に農水省の考えを聞きたいのですね。それは、まず、対象地域をどうするのか、それから対象行為はどうなるのか、対象者はどうするのか、それから単価はどうするのか、地方自治のかかわり方、これはどうなっていくのか、この五点について、わかるように簡単に説明してください。
  234. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 今御指摘がありました点につきましては、既に昨年十二月の農政改革大綱におきまして基本的な枠組みを示したところでございます。  具体的に申し上げますと、「対象地域は、特定農山村法等の指定地域のうち、傾斜等により生産条件が不利で、耕作放棄地の発生の懸念の大きい農用地区域の一団の農地とし、指定は、国が示す基準に基づき市町村長が行う。」この中で、等という言葉が幾つか入っております。この点につきまして検討会で御議論を賜っているわけでございます。  今先生が冒頭挙げられました特定農山村法は、言ってみれば、例示として出ておりますので当選確実。それ以外に地域振興立法、あわせまして五法ございますので、離島とか半島とか、そういったものが入るのか入らないのか。特にこれらにつきましては、その公益的機能の意義がどうかということを議論していただいております。また、その地域の中で、水田と畑、それに草地の扱いをどうするのかということにつきましてもそれぞれ具体的な検討を行っていただいております。  それから、対象行為としては、生産の継続行為のほかに、水路とか道とか、のり面、あぜ、こういったものの管理、ここまで含めたらどうだろうかというふうなところまできております。ただ、生産の行為の中では、米の生産調整との関係について意見がまだ大きく分かれております。  それから、対象者につきましても、土地所有者ではなくて実際に活動を行う方、それも農家にとどまらず、農業者にとどまらず、第三セクターとかそういったところも対象に含めてはどうかという議論が出ております。  単価につきましては、WTOの農業協定の枠組みの中でやるわけでございますので、追加の費用もしくは収入の喪失という点に着目をいたしまして、いわばコスト差の範囲内で行うわけでございますけれども、それとても、全額やるのか、それとも今後の努力に期待して一定の割合とするのかというふうなところに議論がまだ分かれております。期間は一応五年。  それから、地方公共団体との役割分担につきましては、できるだけ地方公共団体の自由度を増してほしいという意見がある一方で、その財政負担については国が全額行うべきだという御議論と、いやいや、これは地元の市町村も応分の負担をすべき、また、その負担については地財措置で調整をすべきだというふうな御議論がかなり幅広く出ておりまして、中間取りまとめはその幅広い状態で多分行われると思いますので、その後さらに集約に向けた努力をいたしたいと考えております。
  235. 中林よし子

    ○中林委員 まだ検討する項目が余りにも多いということで、私はちょっと唖然としております。  そこで、例えば対象地域の問題で、五法が適用できるのかどうか、そこもまだ固まっていないというお話だったのですが、この農政改革大綱で見ると、今言われたように、耕作放棄地の発生の懸念の大きい一団の農地という規定になっているわけですね。そうなると、一団の農地ということが現実に当てはまるでしょうか。私は出身が島根県です。もう本当に点々と農地があるというのをいっぱい知っているのですよ。この一団という意味合い、これは一戸だけ離れたところに農地を持っているというようなところは当てはまらないのか、ここは公益的機能を発揮していないのか、それはどうなんでしょうか。
  236. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 時間の関係で要点のみお話し申し上げましたので、一団の農地のところが御関心と思われますので、そこについてお話をいたしますと、ここでの御議論は、公益的機能を発揮するという観点からは一定の面的なまとまりが必要であり、一団の農地について下限を設定すべきであるという御意見と、戸数の少ない集落もあり、下限の設定は妥当でないという意見に分かれております。  それから、先ほど傾斜というお話をいたしましたけれども、それ以外に、例えば谷地田のような、区画が不整形で非常に小さい、そういう小区画の水田から成る農地も対象としてはどうかという御意見も出ている状況でございまして、まだそこのところはもう少し幅広い御意見を集約するプロセスが必要かなと思っております。
  237. 中林よし子

    ○中林委員 さらに、対象農家の問題なんですけれども、これは集落協定というものを結ぶんだと思うのですけれども、その集落協定を結ぶという対象農家はどういうものを考えていらっしゃいますか。
  238. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 集落協定の意義は、中山間地域等は起伏が多い地形でありまして、水路、農道等も含めて農地の管理を個々の農業者が行うのは非常に難しいわけでございますので、集落、集団という形でいろいろなものを取り込んでいく必要があろうかと思いますので、できれば相当多くの方が、農地所有者とそれから実行する方に入っていただいて、集団的対応をしていただくというふうなことを期待しております。この協定では、集落の農業者農業生産活動あるいは管理活動を行いまして、共同して耕作放棄を防止するというふうな目的で仕組んでいったらどうだろうかということであります。  ですから、対象地域の範囲をどうするか、構成員の役割分担をどうするか、対象行為として取り込むべき事項をどうするか、つまり、だれが、どこで、何をどうするというふうなことをできるだけ簡単な形で協定にしていただければなというのが私どもの感じでございます。
  239. 中林よし子

    ○中林委員 耕作放棄地をその集団で取り込んでいくというようなことを集落協定に盛り込もうとされているようですけれども、そうじゃないんですか。違うんですか。  では、ちょっと一緒に答弁してほしいのですけれども、この集落協定を結んで、それ以外の、例えば、新規参入をどうするかということがないと私はいけないと思うのですね。そうしないと、もう現状維持のままでいくしかないんじゃないかというように思うのです。新規参入者がこの集落協定というものに入れるのかどうなのか、そこもちょっとあわせて答えてください。
  240. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 冒頭大臣からもお話し申し上げたのですけれども、耕作放棄地を再度農地として復活をするというところを目指すわけではなくて、これ以上の耕作放棄が出ては公益的機能に支障があるので、それを防ぎたいということです。もちろん、耕作放棄地を例えば限界地であれば林地化するとか、そういうことについては妨げるものではありませんけれども、主たる目的は、これ以上耕作放棄が出ないようにということでございます。  それから、集落協定に集落に後から入ってきた方々を認めるのか認めないかということでございますけれども、これは先生から貴重な御意見をいただきましたので、協定の一部変更というふうな形で、例えば、新規参入者が実際にそこで生産活動なりあるいは水路等の維持管理に参加をして活動を行うというふうなものは取り込む余地があるのではないかなと思います。そういった点につきましても検討会に紹介をいたしまして、これから先の御議論に供したいと考えております。
  241. 中林よし子

    ○中林委員 大臣、私ぜひ聞いてほしいと思うのですね。  今回のこの条件不利地域に対する直接所得補償というのは、日本共産党もずっと一貫して主張していましたし、やはり多くの条件不利の地域農家からは待たれている施策だと思うのですね。  もう既に自治体としてこういう施策を実行しているところはたくさんあるわけですが、例えば、京都府が中山間地域農業の活性化ということで始めております。ただ、ここでは認定農家に限定しているし、その認定農家が、稲作作業の受託だとか規模拡大という条件があって、それをやる者について所得補償するということになっているわけですね。  だから、その所得補償を受けられた、しかもその条件に合った認定農家の人たちは大変喜んでいる、こういう施策なんですね。ところが、認定農家であっても受託をしないとか、その条件に合わない認定農家も当然いて、限定されているわけですよ。だから、そういう人たちも一生懸命農業をやっているのだけれども、この京都府の条件不利施策にはマッチしないということで、こういう方々からは大変不満の声が出ている施策なんです。  今、検討会で検討している問題で、例えば下限を設けるべきだ、設けない方がいい、この二つの案がありますとか、まだまだ十分な考えがまとまっていない。しかも、下限をしいた方がいいというのと、とるべきでないというのは、違う話ですよ。それが今ここに提示されても、私は、それならばこの検討会にこの委員会は白紙委任するのか、国民は白紙委任するのか、農水省としての考えはないのか、こう思うのです。  だから、私ども日本共産党は、対象地域だとか対象者を限定すべきではないというふうに思うのですね。  そして、地方自治体の負担、これも、私の生まれ故郷であるその豊松村の役場の方がおっしゃるのは、自治体負担が押しつけられたのでは何の意味もない、タコがタコの足を食べるようなもので、そうでなくても大変な財政事情なんだから、やはりこういうものは国がしっかり財政負担すべきだ、こういうお話もあったのだけれども、そこもまだ検討会で検討中だという話なんですよ。  だから、私どもは、自給率目標数値も示されない、あるいは一番待たれている条件不利地域に対する直接所得補償のその中身も非常にまだあいまいなままだということでは、とても国民の期待にこたえられるような基本法ではないのじゃないかと思うのですけれども、ちゃんと示すべきではないでしょうか、大臣。いかがですか。
  242. 中川昭一

    中川国務大臣 まず自給率につきましては、実現可能なできるだけ高い数値を基本計画の中で明示をしたいと思っております。これについても、検討会でいろいろと、また審議会での御意見を聞きながら策定をしていきたいと思います。  また、中山間地域につきましては、これは農業、林業、水産一般に言えることですけれども、自然相手また地形相手の仕事ですから、全国十四万集落それぞれが、一人ずつの顔が違うように、条件が違う。特に中山間地帯においては、生産条件が不利だという共通点があり、その上でいろいろな地形等々条件が違うわけでございますから、それだけに、その地域に住む人々の、ある意味では結びつきというものがより強いものでなければ、そこでの定住なり生産というものは維持しにくいのだということが、さらに中山間地域においては求められるわけでございます。  そういう意味で、先ほど構造改善局長から、大綱、そしてまた農林省で現在基本的な部分についてはお示しをいたしましたけれども、さらに細かい議論、これは予算措置を伴う問題でございますから、国民的な理解というものも大前提として必要なわけでございます。そういう前提の中で、できるだけいいものを初めて導入しようということでございますから、予算要求の時期までになるたけいいものを検討会で示したい、これが政府、農林水産省の考えでございます。  したがいまして、先生からも先ほど集落協定に新規参入があった場合どうするのかということについては、構造改善局長は、そういう御意見もあるということを今伺いましたので、早速検討会に諮ってみましょうというふうに、率直にお答えをしておるところでございますから、それはそれとして、貴重な御意見として素直に我々は受け取って、そして、この委員会の場を通じ、検討会の場でできるだけいい形で直接支払いの方式がスタートできるようにしていきたいということを、まさに先生の御指導によって一つお示しができたのではないかというふうに考えております。
  243. 中林よし子

    ○中林委員 それならば、素直に聞いていただきたいと思います。  多くの中山間地の農家の人たちは、要するに条件をつけてほしくない。  今大臣おっしゃったように、傾斜も違う、作物も違う。そんなことは百も承知ですよ。しかし、EUでやられているこの条件不利地域に対する補償の問題は、例えば標高何メートル以上だとかいろいろなことはありますけれども、そこで農業をやっている人は条件がついていないのです。そういうことをちゃんと考えていただきたいのですね。  もちろん、作物ごとだとか、牛を飼っていれば牛の頭数に対してとか、それぞれあるでしょう。あるんだけれども、問題は、基本的な性格ですよ。いろいろな条件があるからということで、もう初めから何か限定するようなことを言わないで、対象地域や対象者を限定しないで、しかも、手続は簡素に、そして、自治体への負担を少なくしていくというようなことを、素直に聞いていただけますか。
  244. 中川昭一

    中川国務大臣 条件のつかない中山間地域という考え方はないと思います。
  245. 中林よし子

    ○中林委員 本当に素直でないと思いますよ。  だから、傾斜地が、それは角度が幾らというところでするのはあるでしょう。ただし、例えば何アール以上つくっていないとだめだとか、一定の要件を満たしていないものは全部足切りするよというようなことではなくして、地域は、そういう法律に基づいて、ここは中山間地だと言われれば、それに応じて農業をやっている人たちは何らかの所得補償があるんだということを言われる必要がある。それでこそ、この三十五条の二項は生きてくるのじゃないか。それこそ、今後の二十一世紀の日本農業基本法じゃないですか。そのぐらいのことはちゃんとやってください。  そこで、大臣、二十一世紀の日本食料農業が決まろうかという大切なこの論議に、本当に、言葉のひっかかりにひっかからないで、私は真剣に論議したいと思うのですね。  予算の問題だというふうにおっしゃいましたので、予算問題をお伺いしたいと思います。  食料農業・農村問題調査会の答申を見ますと、行政手法のあり方というのがありまして、その二項に、財政措置の効率的、重点的運用というものがあります。  その前に、予算ということになると、この基本法に基づく農林水産予算全体枠、これがまずは問題だろうと思うのですね。この基本法に基づいての予算は、今までの予算よりもふえるのですか、減るのですか。
  246. 中川昭一

    中川国務大臣 従来から、予算については、それぞれの項目ごとにチェックをし、不要なものについてはやめたり、また重点的なものについてはやってまいりました。そういう意味で、新しい基本法のもとで、やるべきことについては積極的にやっていき、そしてまた厳しいチェックのもとで、不必要なものについてはなくしていくということで、直接的にこの法律に必要な予算措置は十分とるということはお答えできますけれども、前に比べてふえたかどうかということは、全体の枠組みの関係もありまして、直接的には関係のない話だと思います。
  247. 中林よし子

    ○中林委員 食料自給率を上げ、さまざまな国民に対する施策をやろうと思えば、予算がふえなければ本当にそれは実現できないだろうというふうに私は思います。  そこで、今申し上げましたこの答申のことで聞きますけれども、財政措置の効率的、重点的運用を明記しているわけです。「厳しい財政事情の下で限られた国家予算を最大限有効に活用」するためと。今大臣が答弁されましたけれども、これに基づいて中山間地の直接支払いもやられるんですか。
  248. 高木賢

    ○高木政府委員 答申は、私どもが、内閣総理大臣あてということでありますが行政機関として受け取ったというものでございます。財政措置万般につきましての御提言であるということですから、この中に、いかなる予算であれ入るというふうに思っております。
  249. 中林よし子

    ○中林委員 例えば、EUは地域だとか対象の条件をつけていないということを私申し上げましたけれども、EU並みに実施したらどの程度の予算が必要になるかということを試算されたことがあるのかどうか、まずそれをお伺いしたい。  農水省がこの検討会に出している資料があるわけですけれども、これを見ますと、EU各国における給付状況、これは一九九五年版なんですけれども、フランス一戸当たり三十万、イギリス二十九万、ドイツ二十七万というふうになっているわけですね。これを日本農家に適用したらどうなるか。いろいろな条件はあるんでしょうけれども、私は単純に計算してみました。中山間地の農家戸数は百四十六万戸ですから、例えばフランス並みにした場合、四千三百八十億円あれば実現できるということになるわけですね。これは農林水産予算全体から見れば非常に少ないものである、やろうと思えばできるというふうに思うんですね。  先ほども、代替法による中山間地が持つ公益的な金額というのは三兆三百十九億円に上っているということを申し上げましたけれども、中山間地の果たしている役割、そのほかにも大気浄化だとかいろいろな役割があるからもっと膨れ上がると思うんですね。代替法でいえば三兆円以上。農水省が試算している三兆円ということで、フランス並みに、単純に当てはめて計算した四千三百八十億円というのは、この持っている値打ちのいわば一五%程度でできるということですね。  だから、このくらいやったってだれからも文句を言われる筋合いはないんじゃないか、政府が本当にやろうと思えばできるんじゃないかと私は思うんですけれども、いかがでしょうか。
  250. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 幾つかお答え申し上げなきゃいけないんですけれども、EUではほとんど条件がついていないというのは、実はそうではないわけでございまして、大変大きな条件がついております。例えば、小麦、リンゴ、ナシ、桃等は対象から除外するとか、それから単価については上限、下限がついているというふうなことなどもございます。日本農地の賦存状況が、営農形態がと言ってもいいと思うんですけれども、中山間地域では水田と畑が半々ですね、百万と百万ですから。そういう状況を考えますと、このEUの支払い額算出手法で日本の試算をするというのは、これは私は、無理だし、非現実的なことではないかなというふうに思っております。  それから、もう一点ちょっと申し上げたいんですけれども、今先生四千数百万というお話で、百四十六万戸の掛け算をしていらっしゃるわけですけれども、EUの場合にも、地域のカバレッジは五三%、その五三%の中の三〇%の農家だけが支払い対象になっているという実態がございますので、中山間地域全体がそのままこの交付対象になるという論理にはならないのではないかなというふうに私ども思っております。  いずれにしても、単価が決まり、面積が決まりますと総額が出てまいりますので、その予算の確保に全力を挙げたいと考えております。
  251. 中林よし子

    ○中林委員 お話を聞いていると、いかに限定していこうか、いかに予算も少なくしていこうかと、そっちの方向にしかどうも答弁が聞こえないんですよ。本当に中山間地の農家の方々の実情、実際に適用できるようなことをやろうと思えば、あらゆる試算があってしかるべき。だから、全体の枠が決まらなければそういうこともできませんなんて言わないで、こういう条件のときはこのぐらいのお金がかかるとか、ちゃんと国会に示さなければ、私たちは、一体これでどのくらい条件不利地域に対する補償になるのかという判断のしようがないじゃないですか。一番大切なところを、今後の検討、今後の検討ということで白紙委任をさせるようなことがあってはならないということを私は指摘しておきたいと思います。  そこで、一点だけちょっと大臣にお伺いしておきたいんですけれども、今地方自治体は本当に大変ですよね。大臣として、今回の条件不利地域に対する所得補償、自治体負担をどう考えておられますか。
  252. 中川昭一

    中川国務大臣 これはまさに、さっき構造改善局長がお答えしたとおり、自治体の受け方、あるいは出し方も含めて、まさにここもポイントの一つですから、自治体の財政状況が厳しいことも重々承知しておりますし、国の財政状況も厳しいわけでございますが、そこも議論の一つでございます。
  253. 中林よし子

    ○中林委員 だから、素直に意見を取り入れたいなどとおっしゃるんだけれども、都合の悪いことは本当に取り入れられない。私は本当にここにも、具体的なものが示されないで論議しなさいと言われても、論議しようがないような、こっちに行くのかあっちに行くのかわからないようなことで、都合が悪いことはそう言って逃れていくというようなことでは、本当に基本法を今論議しているわけですから、私は農水省として最大限まじめなものは提起してほしいということを重ねて申し上げておきたいと思います。  そこで私は、百歩譲って、農水省の予算の配分、この見直しを考えてみたときに、どう見ても、今の日本農水省の予算というのはゆがんでいると指摘をせざるを得ないんです。それは、今年度の予算を見ても、公共と非公共の割合が、公共の方が五一・六%と半分以上を占めているわけですね。これで本気で中山間地対策ができるんだろうか、このように思います。  公共事業の中でも、むだなものがやはりたくさんあるというふうに私は思います。今年度予算で、一般農道整備はわずかに百二十億円、それまでいっていません。ところが、広域農道整備事業、これは実に五百九十一億円、一番農民が求めている予算が少なくて、大規模なものが多い。それから農免農道三百八十億円、合わせて農道事業の八九%がゼネコンなどの奉仕につながる広域農道建設に偏っている。それから、諫早干拓事業あるいは中海干拓事業、木曽岬干拓事業、一方で減反をやりながらこういうところに予算がついているということを、私は本当に、実際考えていかなきゃいけないというふうに思います。  そこで、私の地元であります国営中海干拓事業について聞きます。  五月十八日付の朝日新聞、これによりますと、「中海干拓工事 再開五百億円必要 農水省試算 事業費二倍に膨張」という見出しの報道があります。この本庄工区というところが、まだ中海の海の中にありますけれども、これを再開するのに五百億円以上の追加投資が必要であると農水省の試算でわかったという報道なんですけれども、農水省、どうですか。
  254. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 新聞報道は承知をいたしております。  本庄工区については、もう御承知のとおり、今まさに本庄工区検討委員会で、これまで二年間の調査に基づいた検討を行うこととしておりまして、きょう第二回の会合を開催しているところでございます。本庄工区の利用のあり方につきましては、この委員会に調査結果等を提示いたしまして、私どもとしては、さまざまな検討を進めていただくということにいたしております。  農林水産省の試算という点については、思い当たりません。
  255. 中林よし子

    ○中林委員 それにしても、この報道は、極めて詳しく具体的に農水省の試算だと言われている中身を報道しております。「工事を再開した場合、工期は八年間と見込まれ、干拓予定地から水を抜いて干し上げ、約千三百ヘクタールの農地と道路や貯水池を造成する基盤整備などに約五百十億円かかるとしている。また、隣接する島の地下水を保全する水路をつくると、さらに六十億円かかるという。」これは、農水省の試算が漏れない限り、こういう勝手な記事はできないと思うんですね。だから、私は、確かにプレスリリースはしていないかもわからない、公表はまだかもわからない、しかし試算はしているんだと思うんですね。  今、本庄工区検討委員会というところで、二年間の調査の結果に基づいて、この本庄工区千三百ヘクタールを農地として利用するのか、それとも中海として漁業振興の方向でやっていくのかということを検討委員会で検討してもらって、最終的には結論を出すということは私は知っているんです。県民として、あるいは国費が投じられてきているわけですから国民として一番知りたいのは、この二年間のすべてのデータの公表だと思うんですね。  そこで、検討委員会は第一回が三月十五日に開かれ、そして二回がきょう開かれているということなんですが、検討委員会のすべての中身を公表されますか。
  256. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 委員会の運営につきましては、当然のことながら委員会がお決めになることでございます。学識経験者十一名をもって構成されたこの委員会で、第一回の委員会での御判断は、三月十五日に開催されましたけれども、委員会においては原則公開で行うこととする。具体的には、マスコミ関係者及び一般傍聴者を認める。一般傍聴者につきましては、席の数等もございますので、十名ということになっております。そして、委員会での配付資料は原則として公開をし、閲覧をするということになっております。  私ども、順次この調査結果等をこの委員会にかけてまいりますけれども、同様の取り扱いで今後の運営には当たりたいと考えております。委員会資料を提出する、その後公開をするということにさせていただきませんと、委員の間での議論を十分に尽くしていただくことになりませんので、そういったやり方をもちまして、委員会の御判断どおり審議ないしは資料の公開をしていきたいと考えております。
  257. 中林よし子

    ○中林委員 では、委員会すべてが終わってから公表するということですか。
  258. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 もう少し端的に申し上げますと、委員会の傍聴はマスコミはオーケー。それから、資料もその時点で入った方には配られます。それから、委員会が終了いたしますと、そのほかの方々もいらっしゃいますので、そういったものは閲覧ができる。そして、御希望があれば委員会の議事要旨等ができた段階でこれも閲覧をすることができますし、次回の委員会では当然のことながら前回の議事概要が配られるということになっております。
  259. 中林よし子

    ○中林委員 この中海国営干拓事業は、昭和四十三年から始まっております。実際は昭和三十八年から始まっているわけですが、工事は四十三年からということで今日まで来ているわけですが、この五百億円追加ということがもし真実ならば、一千億円をはるかに超える事業になります。  この間の島根県の減反などによる農地の減少は、実に千三百ヘクタールの二十倍に達しております。昨年の減反面積はこの約十倍の減反面積になっております。だから、だれが考えてみてもやはりむだだ。それよりも、既存の農地、中山間地の不利益なところに所得補償をしっかりやって、そして本当にそこで生き生きと農業が営めるようにすべきだというふうに思います。  予算の比重を公共事業に重きを置くんじゃなくて、例えばEUなどですけれども、イギリスは、全体の予算の中で価格所得補償関係が約七割を占めております。フランスでは六三%、ドイツでも五一・六%というふうに半分以上をそういう価格所得補償で占めて、農業を本当に頑張れと言っているわけですよ。  だから、大臣、本当に農業をしっかりやって、そして食料を、安全なものを日本の国土で生産していただくという観点で今度の基本法をつくっていくならば、当然そういう予算の流れも変えるべきではありませんか。
  260. 中川昭一

    中川国務大臣 基本法に基づく施策、特に新しい施策は、予算措置も含めて、ほかの法律面も含め、一体的に施策を講じていかなければならないと思っております。  他方、農村地域におきましては、圃場整備あるいはまた集落排水、農道、いろいろな面での生活基盤もまだまだおくれておるわけでありますから、必要なものについては、公共事業だから何でもかんでも要らないというわけにはいかないというふうに考えております。
  261. 中林よし子

    ○中林委員 時間が参りましたので終わりますけれども、公共事業が全部必要でないとは言っていないんです。余りにもゆがみ過ぎているんじゃないか、国民が望んでいないようなものをさらに引き続いてやろうなどという愚策はやめるべきだ、こういうことを申し上げているわけです。そのことを重ねて申し上げまして、私の質問を終わります。
  262. 穂積良行

    穂積委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時八分散会