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1999-03-16 第145回国会 衆議院 農林水産委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月十六日(火曜日)     午前十時二分開議   出席委員    委員長 穂積 良行君    理事 赤城 徳彦君 理事 増田 敏男君    理事 松岡 利勝君 理事 横内 正明君    理事 小平 忠正君 理事 木幡 弘道君    理事 宮地 正介君 理事 一川 保夫君       逢沢 一郎君    今村 雅弘君       小野寺五典君    大石 秀政君       金子 一義君    金田 英行君       岸本 光造君    熊谷 市雄君       熊代 昭彦君    佐田玄一郎君       鈴木 俊一君    園田 修光君       中山 成彬君    丹羽 雄哉君       萩山 教嚴君    御法川英文君       宮腰 光寛君    宮本 一三君       矢上 雅義君    安住  淳君       神田  厚君    鉢呂 吉雄君       堀込 征雄君    上田  勇君       漆原 良夫君    木村 太郎君       井上 喜一君    江崎 鐵磨君       菅原喜重郎君    鰐淵 俊之君       中林よし子君    藤田 スミ君       前島 秀行君  出席国務大臣         農林水産大臣  中川 昭一君  出席政府委員         外務省経済局長 大島正太郎君         農林水産大臣官         房長      高木  賢君         農林水産省経済         局長      竹中 美晴君         農林水産省構造         改善局長    渡辺 好明君         食糧庁長官   堤  英隆君  委員外出席者         農林水産委員会         専門員     外山 文雄君 委員の異動 三月十六日         辞任         補欠選任   木部 佳昭君     大石 秀政君   中山 成彬君     佐田玄一郎君   丹羽 雄哉君     逢沢 一郎君   佐々木洋平君     鰐淵 俊之君 同日         辞任         補欠選任   逢沢 一郎君     丹羽 雄哉君   大石 秀政君     木部 佳昭君   佐田玄一郎君     中山 成彬君   鰐淵 俊之君     江崎 鐵磨君 同日         辞任         補欠選任   江崎 鐵磨君     佐々木洋平君 三月十二日  新たな農業基本法の制定に関する請願堀込征雄紹介)(第一一九一号)  食料自給率の引き上げに関する請願中林よし子紹介)(第一一九二号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  主要食糧需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案内閣提出第一一号)     午前十時二分開議      ————◇—————
  2. 穂積良行

    穂積委員長 これより会議を開きます。  内閣提出主要食糧需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀込征雄君。
  3. 堀込征雄

    堀込委員 特例措置から関税化への切りかえにつきまして、きょうまでさまざまな議論がされてきたわけでありますが、私ども民主党、現状で関税化への移行のやむを得ない事情というのは理解をしつつも、しかしこの関税化移行に対して、過去の総括がきちんと行われてきたのかどうか。あるいはまた、将来交渉にゆだねられている関税率などの問題で、農家農民に甘い幻想を抱かせるような説明が行われているのではないか。あるいはまた、WTO交渉全体の中で農業交渉をどうしていくかという全体像の説明が欠けているのではないか。いずれにしても、過去の三者合意などを含めまして、各党や各層への説明が十分行われていない。したがって、この問題についてさらなる議論が必要だという立場質問をさせていただくわけであります。  一つは、過去の総括の問題であります。  今特例措置関税化に切りかえるという大きな局面に立っているわけでありますが、この際、やはり過去のいろいろな問題というものをきちんと総括しておく必要があるんだろう。そのことを農家にきちんと説明しながら、私どもは前へ行かなければならない、こう思うわけであります。  それでは、ウルグアイ・ラウンド特例措置受け入れ一体、この判断はどうだったのか。正しかったのか、間違っていたのか、やむを得なかったのか。こういう点をやはり明確にしておくべきだと思うわけであります。  私ども日本政治を考えるときに、例えばあの第二次大戦の戦争責任の問題についても、一部の軍部だけが悪かった、あるいは、日本人一人一人の問題としての反省が行われていないのではないか。だから、ドイツと比べて戦後処理がおくれ、今もってアジア近隣諸国から、戦争責任だ、謝罪だ、償いだという問題が出されている。物事をあいまいにしてけじめをつけないところが、私自身も含めて、私ども日本政治あるいは日本官僚の欠点ではないか、弱点ではないか、こういうふうに思うわけであります。  少なくも、自民党は、関税化反対で、羽田外務畑農水大臣不信任案まで出して、例の十二月十四日声明までいろいろ出してやっているわけでありまして、このことについて、正しかったのか、間違っていたのか、あるいはやむを得なかったのか。今関税化をするに当たり、そのことをやはり明確にしておく必要があるのではないか。私自身、そういう意味では、あの当時かかわった一人の政治家として、非常に自己反省もしているわけであります。  そのことを、やむを得なかったということで済ましてはならないのだろう。いわば、そういうポピュリズムといいますか、そういうことに流された政治というものをきちんと整理をしながら、国民の前に示していく、農民の前に示していくということが関税受け入れ前提になるのだろう、私はこういうふうに思いますが、大臣、いかがでしょうか。
  4. 中川昭一

    中川国務大臣 先生指摘のように、今回の関税化措置に関しても、あるいは九三年十二月のあのウルグアイ・ラウンドの米に関する部分につきましても、きちっと過去を総括し、そして国民説明をするということは当然のことであり、極めて大事なことだと思います。  そういう前提に立ちまして、九三年のあのミニマムアクセス米受け入れということにつきましては、私自身も、当時党の農林部会長でございまして、全国生産者の皆さん、あるいはまた党の議論前提といたしまして、例外なき関税化という大原則を受け入れることはできないという立場で行動をしてきたわけでございます。  当時のことにつきましては、やはりこの包括的な関税化ということに対して、今申し上げたように大半といいましょうか、ほぼ全部といってもいいぐらいの農業者あるいは農業団体が強い拒否感をお持ちになっていらっしゃった。また、外国産米が国内に入ってきたときに、国内需要に対してあるいは国内生産に対して一体どのような影響を与えるかということは見通しが立たなかったということがあって、我が国としては、本当に数少ないといいましょうか、孤立無援交渉ではございましたけれども、最後まで頑張って交渉をしてきたわけであります。  そのような中で、最終的には、いわゆるドゥニー調整案というのが出てまいりまして、ウルグアイ・ラウンド交渉を成功させるために応分の負担を果たすことによって、我が国としては関税化を回避する、いわゆるミニマムアクセス受け入れによって特例措置を認めるという判断受け入れたわけであります。  このようになった国は、御承知のとおり、先進国発展途上国という仕分けはございますけれども日本、イスラエル、韓国、フィリピンについて米、乳製品その他一部の品目でございまして、我が国においても、そのような最終的な措置をとらざるを得なかった。決して、ベスト、つまり目標達成ではございませんでしたけれども、やむを得ない選択として受け入れたということでございます。
  5. 堀込征雄

    堀込委員 当時の事情からすればやむを得ない選択だ、そういう意味では、私自身も非常に反省しているわけであります。しかし、政治家は、何が農民の利益か、国際交渉も見通した上で、あるときはやはり勇気を持ってきちんと言うべきことは言う、そして農家農協からどんなに批判を受けても、この方が有利ですよという立場は明確にしておくべきではなかったかという反省を実は私はしているのでありまして、今後も、そういうところで国益に沿う、何が国益かということについてはきちんとしていく必要があるのではないかというふうに思っておるわけであります。  この問題は、よく日本官僚政治と言われますから、官僚のトップの長官にもお尋ねをしておきたいわけであります。  確かに、最終責任大臣政治家、こういうことになるわけでありますが、しかし最近、大蔵行政を見ても、あるいは先日この委員会でもありました林野行政などを見ても、例えば林野でいえば、改善計画を何度もこの国会法案で出した。このとおりやればうまくいきますよというはずだったのに、うまくいかない。結局、膨大な国民負担をすることになってしまう。大蔵もそうですが、そういうことに対して日本官僚責任をとったという経過はないわけであります。  そういう意味では、今関税化した方が輸入枠が少なくて有利ですよということを、この資料を一生懸命つくって言っているわけですよ。これを一生懸命つくってばらまいているわけです。しかし、そんなことは特例措置受け入れのときからわかっていたことでありましょうし、あるいはことしよりも去年、去年よりもおととしの方が有利だった、それはわかっていたことではなかったのか。  そういう意味で、私は、今までの行政というのをきちんとやはり反省してもらわなければ困る。長官立場からも、過去の経緯についてどういうふうに反省をしているか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  6. 堤英隆

    堤政府委員 行政につきましても、非常に状況変化が大きいわけでございますので、そういう状況変化行政にある者としてできるだけ的確につかむという努力をすべきだということはそのとおりでございましょうし、また、その状況に応じて柔軟に対応していく、そういうことで、政策についても場合によっては抜本的見直しをしていく、改善していくということもこれから求められてくるというふうに理解をいたしております。  そういう意味では、今御指摘の点につきましても、私どもとしましても、その当時、大臣からお答え申し上げたように、最善のものかどうかは別として、やむを得ないものとして、さまざまな状況の中での選択をしたわけでございます。その後、農家の間におきましても、あれだけの拒否感が強かったものが、この三年間、米のミニマムアクセス受け入れてきたという経緯の中で、ミニマムアクセス米消費の動向でありますとか、そういったことについてもかなり共通の認識ができてきたということは、やはり五年前とは違うのではないか。そういうことの中で冷静に、今のWTO協定についての選択肢としてどういうものがあるのか、その選択肢をとることが有利かどうか、そういう議論をする素地ができるまでにやはり三年程度の期間があったのではないかと思います。そういう意味で、そういうことの中で今回対応をされたということでありますし、役所としてもそういう方向対応をしたということでございます。  いずれにしましても、今御指摘のようなことを常に念頭に置きながら、これからも対応していくべきだというふうに考えております。
  7. 堀込征雄

    堀込委員 関税化反対の熱を冷ますのに三年間ぐらい要ったのだということなので、私は、そこは、この関税化受け入れに当たって、もう少しやはり正直にきちんと農家説明すべきではないかと思うのです。  例えばこの冊子、悪く言えば、これは何か、銀行か証券会社投資信託会社のセールスではありませんけれども、今お買い得です、今やるのが一番お得ですということを一生懸命言っているわけです。やはり過去の問題について、こうだったのでこういうことを整理しました、あのときの判断はこうだったということをきちんとしながらやらないと、これでは何か、今お買い得のチャンスですと言っているみたいな話でして、私は余り感心しないのです。あれだけ私ども議論した、そして場合によれば、見方によれば、みんなで選択を誤ったかもしれないという問題だと思いますね。だから、そういうことはきちんと国民説明をしながら前へ進むべきだろう、こういうふうに思うわけであります。  そこで、三者合意政府与党農協の三者合意というのが実はあるわけでありまして、この冊子を読みますと、今度の関税化移行は昨年の九月ごろから議論が始まって、与党農協の中で検証作業が始まった。そして十二月十七日に三者会議で、来年四月からの関税措置移行を決定したと合意している。この資料にも御丁寧に載せてあるわけでありますが、農水大臣談話総理大臣談話、そして全中会長談話、それぞれ発表されています。  要するに、よく読みますと、三者で決めました、三者で合意しました、それから、これは農政改革大綱にも関連するのですが、これからの農政も三者でやっていきますよということを書いてあるんですね。つまり、立法府も野党も、あるいは消費者団体もその他の農民も、いろいろ口を出さぬで結構ですよ、三者でやりますよという、全体を見るとそういう組み立てになっている。  長期にわたる課題で、しかも国益を守る問題について、私は、農水行政をこの枠で将来もやっていくというこの冊子、やはり書き直す必要があるのではないか。もしそうであるならば、ここでやる国会審議なんか必要ないわけであります。三者合意したことをこの委員会で通してくれ、こういうことで実は今法案が提案されている、こういうことなんですよね。これではそもそもスタートが間違っているのではないか、こういうふうに私は断ぜざるを得ないわけですが、いかがでしょうか。
  8. 中川昭一

    中川国務大臣 もとより、これは何か時間のむだみたいな答弁になりますけれども議院内閣制のもとで、国権の最高機関である国会の御意思を体して行政を行っていく。その場合には、国会で選ばれた内閣総理大臣のもとで各省大臣が任命され、そして行政としてやっていくわけでありますが、その場合のいわゆる与党というものが、常に行政と、もちろん一体と言っていいのか、場合によっては適度の緊張関係というものもあるかもしれませんけれども与党政府というものは、基本的にはやはり同じ方向でいかなければいけないと理解をしております。  しかし、そのことと国会を無視するということは全く別でございまして、いわゆる政府提出法律案というのは、まず、与党の了解がなければ出せないということは現実でございますし、その上で御審議をいただいて、そして場合によってはその御審議の中で、いろいろなお立場先生方あるいは政党が最終的な判断をしていくわけでございます。  そういう意味で、今回の関税化に関するただいま御審議をいただいている法律案等につきましては、あくまでも国会での御審議をいただく前提として与党との間に、また団体そのものが一昨年からこれを問題としていろいろと議論をしておるということでございましたので、最も直接的な関係のある生産者団体そして政府与党が最終的に同じような結論に達したということで国会に御提案を申し上げているところであります。最終的な合意の以前から、当委員会を初め参議院でもそうでございますけれども、いろいろな御議論があり、きょうを含めて大変多くの時間をいただいて御審議をいただいておるところでございます。その御意見というのは、仮に野党先生方のいろいろな御質問でありましても、貴重なもの、有意義なものであれば、我々としては大いに参考にさせていただきたいと思いますし、御意見につきましては十分拝聴させていただくということで、決して国会軽視ではないということを御理解いただきたいと思います。
  9. 堀込征雄

    堀込委員 議院内閣制の話はよくわかるのですけれども農協を含めて三者合意したものをこの委員会で通してくれ、こういう話に実は姿形としてはなっておるわけでありまして、なかなか私どもとすれば、そこのところをきちんとしないと認めがたいという問題があるわけであります。  政官業癒着という言葉があるわけですけれども、つまり、私は議院内閣制与党政府関係はよくわかりますけれども政官業癒着農政をやっていきますよということを暗に言っているわけですね。官の側はいわば業界に対する規制補助金で優遇する。業界は選挙で運動資金面で応援する。こういう構図が果たして農政運動上ないのかどうか。ここまで三者合意という話があると、やはりこういうことも問題にせざるを得なくなる可能性が出てくるわけですね。  これは一部新聞でも大々的に報道されておりますが、例えば平成八年の政治団体収支報告書を見ますと、農業と緑の代表を国会に送る会、この農協後ろ盾にある政治団体が、自民党中心農林議員に五千七百万円余りの献金をしている、つまりそういうつながりがある。そして、一方で、実はこういう三者合意があるという関係になると、やはり外から見ると、これは一つ癒着ではないかという印象を与えるわけでありまして、ここはきちんとしなければいけないんだろう。  私は、農林行政を進める上で、団体の協力そして支援がある程度必要だと思います。これはきちんとやらなければいけないんですが、そこにはおのずと節度のある関係というものが求められるんだろうというふうに思うわけであります。しかも、農協の場合は幾つかの事業補助事業の主体でありますし、それから金融問題なんかでは、農水省監督官庁立場にあるわけでありますね。このまま三者合意で、これからも農政改革大綱に沿って三者で行政をやっていきますよと言われると、農林省農林金融担当部署を、たとえ共管でも置いてはまずいんじゃないか、手心を加えた監査や監督が行われるのではないか、やはりこういう危惧を抱かざるを得なくなるわけですよ。  どういう考え方で今後、農水省として農協への指導監督をやっていくおつもりなのか。誤解を解く、三者合意、これはやはり取り消すという気持ちはありませんか。いかがですか。
  10. 中川昭一

    中川国務大臣 先ほど申し上げましたように、農林省あるいはまた農業団体が、今後米の問題、国境措置について何がベストかという議論をやってきたわけでありますけれども、そこに各党もそれぞれ御議論をされておるという中で、三者合意というものが何か非常に大きな、きちっとした公式の協議機関のように言葉がだんだん、三者合意とか三者のお話し合いとかいうことが出ておりますが、これは決して公式のものではないと理解をしております。一方、秘密にすべき問題でもないというふうに理解をしております。  現実政府与党、当時の自民党でございますが、自民党団体政府とでこの問題について密接に、大変デリケートな、そしてまた大きな問題でございますから、議論を重ねたこと、そして合意に至ったことは事実でございますけれども、これは別に自民党だけと農業団体とが話し合っているわけでもございませんし、多分先生のところの政党も、団体といろいろな場で協議あるいは話し合いの場も当然あると、これは推測をさせていただきますが、そういう意味で、政府与党団体がこの議論をしたことは事実でございます。  今後も、次期交渉に向かっては、基本的には国民合意の形成ということが大前提であるということを、私を含め農林省答弁で何回も申し上げておるところでございますから、政府与党あるいは団体だけではなくて、国会の御議論各党の御議論、さらには消費者団体経済団体等々、あらゆる立場の方々の御議論を通じて、我が国食料を守っていく、国産農業を守っていくという観点から、次期交渉に向かって今後ともやっていくわけでございますが、その中の一つとして、今後も政府与党団体が話し合う機会というものは当然出てくるわけでございます。  しかし、重ねて申し上げますが、それは秘密裏の、そしてまた正式な機関でも何でもないという中でこの協議を進めていくということを御理解いただきたいと思います。
  11. 堀込征雄

    堀込委員 ほぼその大臣答弁でいいと私は思うんですね。つまり、三者合意というのは公式なものではない、しかし秘密にすべきものでもない、そういうことだと思うのです。  ただ、この冊子を見ますと、内閣総理大臣談話から何から全部三者合意でやります、これからの農政改革大綱も三者でやっていきますよと書いてあるんですよ。多分これは事務方が書いたことだと思うので、大臣の意を必ずしも反映しているとは思いませんけれども、これでは国民誤解を与えます。ぜひ、こういうやり方はやめていただきたい、こういうことを申し上げておきます。  ちょっとこだわって質問をさせていただきたいのですが、つまりこういう発想というのは将来の農政とか問題に少し深い問題があると私は思いますので、こだわって質問してみたいのです。  つまり、この三者合意だけ見ますと、農協の側から見ますと、実はこれからも官依存で官と一体的にやっていこう、こういう感じが見えるわけですね。だから、今、自立農家を育成し、競争力ある農家を育てていくという意味で、この姿勢というのはやはり正す必要があるのではないか。団体の自主的なことではありますが、少し発想を変えてもらう必要があるのではないかという感じを私は一つ持っています。  二つ目は、官の側が、与党農協と三者でやっていきますよ、将来農業をやろう、こう言っている。悪く見ますと、自分権限規制既得権、三者で守っていこう、こういうようにも受け取れるわけでして、例えば農政改革大綱なんか見ましても、農業団体見直しますというが、自分の方の官の見直し農林行政見直しをどういうふうにやるかということは書いていないわけでありまして、よく言われる、一九四〇年体制といいますか戦時体制といいますか、国家総動員体制、あるいは統制競争否定農政全国画一型の農政、そういうものをどういうふうに展開していくのか、地域密着型のものにどう切りかえていくかというのは、現下の農政の非常に重要な問題なのではないかというふうに私思っています。  そういう意味で、統制競争否定考え方じゃなくて、あるいは全国画一型の行政の姿を改革しながら、農協の側は官依存の体質を改める、官の側も、地方分権を含めて新しい農政に向かって改革していくという姿勢が必要なんだろうというふうに思っていますが、その点について大臣の所見をちょっと伺っておきたいと思います。
  12. 中川昭一

    中川国務大臣 これは、これから御審議いただく新しい基本法の方でも大事なポイントになってくるのではないかと思います。先生おっしゃるとおり、四〇年体制、戦後の基本法体制といいましょうか、現時点では大きく状況変化している部分もございますし、また基本法の精神を引き続き進めていかなければいけない部分もあるわけでございますが、新たな基本法ということをこれから御審議いただくわけでございます。  そういう中で、先生指摘のように、地域の特性というものをむしろ下の方からニーズというものを上げていただく。私はよく申し上げますが、自然相手生き物相手ですから、極端に言えば、道一本挟んで自然条件が違う、あるいは土壌条件が違うというのがまさに農業でございますから、そういう意味で、上から画一的にやるということは現実もう難しい状況になってきておるわけであります。  一方、先生指摘金融のような監督行政もあるわけでございますし、また価格なんかを政府が決定しなければいけないというような仕事もあるわけでございますが、さらにもう一方では、先生指摘のように、地方分権あるいは規制緩和権限移譲といったような時代の要請、また国民全体にとってプラスになるような施策というか行政方針変更等もございまして、そういう意味で、広い意味での今回の基本法を中心とする法律体系の整備の中では、そういうものも踏まえた法案というものを国会に提出させていただいておるところでございます。  それから、新しい行政手法としては、五年に一度再評価をし、見直しをするというような行政手法も基本法の中で取り入れていきたいというようなことも考えておりまして、四〇年体制の変更すべきところはこの時代の流れの中で取り入れまして、より生産者あるいは生産地域、そして国民全体の福祉の向上のためにお役に立てるような農林行政というものをさらに推し進めてまいりたいと考えております。
  13. 堀込征雄

    堀込委員 そこで、前回交渉の結果、特別措置受け入れることになったわけでありまして、そのために、国内農業を守るために、いわゆるラウンド対策費六兆百億円という予算を実は平成六年の十月に、これは自社さ政権になって対策を打ち出したわけであります。一年に一兆円使って、次期ラウンドまでに国際競争力のある農業、足腰の強い日本農業をつくるんだ、こういう鳴り物入りのはずであったわけであります。  平成六年の補正から始まって平成十年の三次補正までで、国費ベースで二兆一千六百九十二億ですか、つぎ込まれております。これのこれまでの事業効果について、どのように農林省総括していますか。
  14. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 御指摘ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策でありますけれども、現在まだ対策期間中でございますので、全体の効果を総括して申し上げる段階にはないわけでありますけれども、個別事業につきましては、幾つか顕著な成果が出ております。  事例を申し上げますと、担い手育成型の圃場整備事業、これは生産基盤の整備事業でありますけれども平成八年度と九年度に完了をいたしました三十七地区について見ますと、担い手の経営規模が約二倍に拡大をしている、それから稲作の労働時間が七割短縮をしている、さらに、コスト全体で見ましても六割のコスト低減が図られているといった、力強い農業構造の実現に向けて、着実な成果が上がっていると考えております。  また、施設物につきましては、山村振興等特別対策で建設をされました都市農村交流施設、これは二百九十五施設ございますけれども、都市住民との交流を通じまして、一施設当たり八百七十万円の地域農産物の販路の拡大が図られておりますし、また、雇用の面では、就業機会が一施設当たり五人から六人確保されているということで、農村地域の活性化に大きな貢献をしていると考えております。  今後とも、残されました対策期間中に私どもは本対策を着実に推進いたしまして、事業効果の早期発現を図りたいと考えております。
  15. 堀込征雄

    堀込委員 私は、この予算というのは当初からまやかし的な部分がかなりあったと思うわけであります。  その一つは、まず六兆百億円という事業費ですね。つまり、このうち国費は二兆八千億でありまして、もともと六兆百億のうち、三兆五千五百億を実は公共の事業とした。したがって、ここには、地方自治体や農家負担を合わせた事業ベースになっている。一年一兆というけれども、それは国費ではなくて事業費ベースでそういうものが含まれている。姿形を大きく世間に発表した、これが一つあるんです。  二つ目に、この予算は歴年補正で措置をされてきた。つまり、予算措置の具体的手法が補正でありますから、どこか、何か世間から隠れて予算の分捕り合戦みたいな変な印象を与えてきたという経過が二つ目にあったと思うんですね。  三つ目に、財政構造改革見直しのときに、それぞれ長期計画がみんな二年延長されているわけであります。公共事業の実施年度も二年延長された。明らかに、このときやはり国費支出分が減らされているんだろうと私は思うわけであります。つまり、公共を減らし非公共をふやしている。要望がなければ実行しなくても済む融資事業などをこのときふやしているわけですね。  そういう意味で、幾つか積み重ねた非常にまやかし的な手法が実はあって、相当全体的には農家の不信を招いている、こういうふうに私は思っていますが、反論はありますか。
  16. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 一つ一つ指摘がございました事実につきましては、そのとおりだろうと思います。  ただ、私ども当初から、事業費ベースで六兆であるということについてはかなり真剣な議論をし、かなりまた皆さんに見えるような形で積み重ねてまいりましたので、その点での誤解はないのではないかなというふうに思っております。  それからもう一つ、公共事業につきましては、特に農業農村整備事業について、農業の体質の強化と農村の活性化の観点から、農業農村整備事業を加速的に推進するというのがこのウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策の趣旨でございました。その後、御指摘のとおり、平成九年、道半ばのときに、財政構造改革の閣議決定におきまして、二年間の延長と公共、非公共の比率の見直しが行われたわけでありますけれども、これもやはり非公共の、施設を建設するといった事業の方が、どちらかといえば効果の早期発現という点で、ウルグアイ・ラウンド対策を進めていく上で非常に望ましいのではないかというふうな御議論も踏まえまして、見直しを行ったわけでございます。  また、今日、見直し後の総事業費に対しまして、私ども、進捗率は、この公共事業の分野でおおむね八五%ということでございますから、かなり高い進捗を確保いたしております。  今後とも、限られた期間の中に、事業の円滑な執行と事業効果の早期発現に努めたいと考えております。
  17. 堀込征雄

    堀込委員 そこで、これは構造改善事業全体にわたる話でありますが、今までは、実は、予算と執行額の差、あるいは繰越額というのは非常にふえている。これは補正で措置しますから、市町村段階で繰り越しを措置せざるを得なかったという事情はよくわかるんです。しかし、よく見てみますと、繰越額がふえたりあるいは不用額がふえているという実情があるんではないか。  この要因は、私は、市町村財政が非常にやはり厳しくなっている。例えば、地方自治体の借入金残高は、平成四年八十兆のものが平成十年には倍の百六十兆円にもなっている。借金の元利返済負担が急激に重くなっているわけでありまして、公債費負担比率、起債制限比率という難しい言葉を自治省は使っていますが、一五%を超えると実は黄色の信号になるんですが、全国自治体三千二百七十九のうち六割以上の千八百四十七の自治体が実はそういうことになっていまして、今や、いかに霞が関を怒らせずに補助金を断るかというのが市町村長の一つの仕事みたいな話も聞こえてくるわけですね。  そういう意味で、例えば農村集落排水事業なんかは要望が強いんでしょうが、これからの事業はなかなか、市町村段階を考慮しながら、省の予算消化だけではなくして、地方自治体に配慮した執行が必要だと思いますが、その辺考え方はいかがでしょうか。
  18. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 今御指摘の中に、農業構造改善事業について申し上げますと、これは地域農業構造を改善するという点での総合助成事業でございまして、地元の農業者の方々の合意に基づいて各種施設を整備するものでございます。  いずれにいたしましても、地域の自主的な発意と選択の中からこの事業を採択し、実施いたしておりまして、御要望と私どもの実行という点を比較いたしましても、御要望の方が一・五倍というふうな状況でございますので、私どもは、地元からの強い要望に一〇〇%こたえることができないというふうな状況にむしろ置かれております。  それから、これは農業構造改善事業ではありませんけれども、集落排水の例を挙げられましたけれども農業農村整備事業全体、どの方式をとりましても、いずれも地元からの申請に基づいて行われる事業でございます。  それから、地方負担につきましては、私ども、予算の都度、本予算も、あるいは補正予算の場合もそうでありますけれども、自治省とよくよくお話をいたしまして、所要の地方財政措置がとられるように工夫を凝らしておるところでございます。
  19. 堀込征雄

    堀込委員 それでは、WTO次期交渉状況について、外務省にちょっとお尋ねをしたいと思います。  一つは、この全体交渉でありますが、水面下でいろいろな交渉が始まっておるはずでありますが、当然のことながら、前回、WTO設置を決めた交渉結果を受けて、物とサービスのより自由な枠組みをつくるために進められているわけであります。  全体のスケジュール、簡単に、どんな状況で進んでいるか、ちょっと御説明いただきたいと思います。
  20. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 お答え申し上げます。  現在、WTOにおいて、二〇〇〇年からの次期交渉ということで、いろいろな準備が進められております。  まず、ことしの十一月三十日から十二月三日まで、アメリカのシアトルでございますけれども、第三回目の閣僚会議を行うことになっております。ここで、二〇〇〇年からの次期交渉の内容、具体的な取り進め方について、WTO加盟国の間で合意することとなっております。  これを目指しまして、いろいろな準備が行われていますけれども、中心は、ジュネーブで、WTOの一般理事会という場所で、特別会合というものをほぼ毎月一回の頻度で開いておりまして、そこで順次作業をしております。もう第二段階ぐらいに来ておりまして、ことしの三月ぐらいからですけれども、具体的にどんな交渉にするのか、各国がいろいろな意見を述べているところでございます。秋になれば、さらに閣僚会議に向けて詰めた議論になると思います。
  21. 堀込征雄

    堀込委員 もう二点、ちょっと説明をいただきたいのですが、交渉方式の問題であります。  これは一部報道でありますが、与謝野通産大臣、一月、ブラッセルで、ブリタン欧州委員会委員長との間で、一括合意を目指す包括方式とすることで、実は日本とEUが一致した、こういう報道が一部にありますが、そういうことが事実なのかどうか。  それから、アメリカは、この間、大統領の年次リポートを議会に提出されていますけれども、鉄鋼や板ガラス云々から始まって、米の問題も実は取り上げられている。あるいは、ケアンズ・グループの十四カ国のチェックリストでは、農業分野の交渉を前倒ししようという動きがある。こういういろいろなことがあるのですが、交渉方式について、日本とEUは一括方式である、アメリカとしては、二国間交渉や、あるいは分野別交渉などを取り入れながら交渉をリードしようと。  交渉方式について、この三極の考え方なり今の実情について、簡単に説明いただけませんか。
  22. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 お答え申し上げます。  簡潔にと思いますが、御指摘のとおり、日本と欧州委員会、ECでございますけれども、両者の間では、二〇〇〇年から行われます次期交渉については、既にウルグアイ・ラウンドのときから決まっております、つまり、二〇〇〇年から交渉することが決まっております農業、サービス等の合意済みの議題に加えて、鉱工業の関税とか投資ルールとか、いろいろなものを、新しい分野も含めて包括的な交渉とするべきだということで一致しております。それから、期間としても、三年程度ということで一致しております。  これに対してアメリカは、必ずしもそこまでは今のところ来ておりませんが、最近の動きとしては、御指摘のとおり、大統領自身が、この間の一般教書演説において、各国に対して新たなラウンド交渉に参加するように呼びかけるという表現を使っております。これは、従来、ラウンドと申しますと、鉱工業品の関税も含めた包括的な交渉だということを意味していますので、まだそこまで明確に申しているわけではないのですけれども、そういった方向に向かっているということで、方向性においては近づいてきているかな、こういう状況でございます。
  23. 堀込征雄

    堀込委員 私、今の状況説明を受けて、やはりWTO交渉を早期に開き妥結をさせる、そして自由貿易のルールを確立していく、そして日本の産業界の市場アクセスをふやしていく、これはある意味で、日本の国家戦略として、国益の問題として処理されなければならないと思うわけです。そのためには、今の交渉状況でいろいろな国内問題を処理しておかなければならなかった、その最大の問題が米の関税化だったのだろう、こう思うわけであります。  そういう意味で、前回のラウンドで米問題に終始をしてしまって、日本としては守勢に、守りに回ってしまった。早く米問題を片づけて交渉のリード役を果たしたい、こういうことなのだろうと思います。  そう見ますと、この関税化を去年の九月からだあっと急いだ理由がだんだん見えてくるのではないか。これは、国益のためにあっても不思議ではない話であります。あってもいいと私は思うのです。しかし、そのことを、世界の自由貿易のルールを進めることが我が国国益にかなうことだ、だから農業分野ではこうしようというマクロな立場での説明も、やはり農民農協にきちんと行うべきではないか。そういうことがないと、どうも決定的に説得力に欠けるのではないか、こういうふうに思うわけであります。  今、この法案審議しているのですけれども、どうしてもそういう印象を受けるわけでありまして、なぜこれだけ急いできたか。まず、去年、与党の対策をやった、与党意見がまとまった、次に農協を同意させる、最後に国会、議会だけれども、これは最悪の場合、与党多数で押し切ってもいいが、今こうやって審議をしているというふうに組み立ててきたのではないかという感じを受けまして、やはりきちんとした説明、全体像を含めた説明をして農業者にも理解を得ていく、こういう姿勢が大事だと思いますが、最後に大臣、今の私の意見に対して見解がありましたら、お答えいただきたいと思います。
  24. 中川昭一

    中川国務大臣 九四年の四月ですか、マラケシュ合意がされまして、WTO協定が確定したわけであります。その中に、当然、附属書五等の農業あるいは米に関するいろいろな条文があるわけでございまして、それをもっと早くやっておけばという先生の御指摘もありましたし、また、私も答えさせていただきましたが、今後、次期交渉を来年以降やっていく下準備といいましょうか、日々の努力というのは、実はもう既に始まっておるわけでございます。例えば、EU等と合意している事項なんというのは、まさに、FAOあるいは農業大臣会合等で確認されておるような多面的な機能、非貿易的な問題について、もう既に決議文、宣言文の中に取り入れられておるわけであります。  それを今後とも、来年からということじゃなくて、引き続き現時点においても、あらゆる場で我々の立場説明していかなければならないと思っておりますが、と同時に、これからの、来年から正式に始まります交渉において、我が国立場をきちっとしたものにしていく。その準備作業が、まさに今後極めて大きな国内的な作業になっていくのだろうと思います。  したがいまして、現時点においては、いや、農水省はこう考えていますとか、あるいは与党を初め各党さんがどう考えていますとかいうことを結論的に押しつけるのではなくて、こういう国際情勢、あるいはこういう協定、そして我が国が守るべき、主張すべきものはどうだということを、生産者の皆さんだけではない、国民全体の皆さんにある程度御議論をいただいて、そして国会の場での御議論も当然でございますけれども、国論の統一といいましょうか、外に打って出る日本としての国民的な後押し、共通認識というものをつくっていくことが、次期交渉に臨む上で最大のポイントだろうと私は考えております。  そういう意味で、今後も引き続き、次期交渉に向かっての我が国国内合意形成に最大限の努力をしていかなければなりませんし、そのためには、冒頭の先生の御指摘にもありましたように、あらゆる立場の方々に実情等を御説明し、御理解をいただきながら、合意形成をしていかなければならないというふうに考えております。
  25. 堀込征雄

    堀込委員 終わります。
  26. 穂積良行

    穂積委員長 次に、鉢呂吉雄君。
  27. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 きょうは、米の特例措置関税化への切りかえ措置についてということで、法案審議でありますから、民主党の最後のバッターとして、締めくくり的な質問をいたしたいと思っています。  まず、大臣に対してでありますけれども、手続上の問題であります。農水省が十二月に出した、今回もこの書類で私ども説明をしておるのでありますけれども、七ページには、今回の関税相当量の設定は、農業協定の規定に基づくものでありまして、関係国との交渉なしに行うことが可能である。この下の方には、調整が行われた場合、いわゆる関税率等の調整が行われた場合については、関係する加盟国は、要請があるときは、適当な解決策について交渉するということはあるけれども、調整を行わない限りは、関係国との協議の必要はない、こういうふうに書いてあるわけであります。  農水大臣として、そのとおりでよろしいでしょうか。
  28. 中川昭一

    中川国務大臣 これは、あくまでもWTO農業協定を前提にした文章でございまして、協定に基づけばそういうことになるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  29. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 私は、農水省が必ずしもこの交渉の全体像を国民に開示をしておらないのではないかというふうに思うわけであります。農水大臣も常々、この間の十二月、一月、二月、いわゆる調整がない限りは関係国が異議申し立てをすることはないかのような発言を記者会見等でもやってきております。国会答弁でもそういうふうに、今から申し上げますけれども。  しかし、現実には、いわゆる一九八〇年のガットの制度に基づいて三カ月以内に異議申し立てをすることができるということが、皆さんの、農水省国民に対するメッセージでは出てきておらない。このことについてはどのように考えますか。
  30. 中川昭一

    中川国務大臣 済みません。出てきておらないという御質問でございますか。済みません、最後のところがちょっと聞こえなかったので……。
  31. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 国民に示しておらないのではないですか。
  32. 中川昭一

    中川国務大臣 それはきちっと、WTO協定上、要するに年度開始から九十日以内にWTO事務局に通知をする。その通知の内容が協定に基づいておるものであれば、それは通知、そしてまた、九十日後のWTOからの確認書の送付をもって四月一日からそういう関税化措置をとることができる。一方、先生指摘のように、異議申し立てをその期間内にすることができるということについて、一般論として、この異議申し立てはガット加盟国はできるわけでございますから、そういう意味で、関係国が異議申し立てをする権利がないということは、我々としては申し上げておりませんし、異議申し立てをすることの可能性が全くゼロであるということは、今までも一度も申し上げたことはございません。
  33. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 それは農水省の勉強不足だったかもわかりませんけれども国民の受け取り方として、いわゆるWTOの農業協定の附則書五に基づいて、先ほど言いましたように、調整という形をとらない限りはそういう協議というのはなさないんだ、調整を行わない限りは関係国との協議の必要はありません、これ以外は一切書いていませんよ、今大臣が言われたような形は。  外務省にお聞きいたします。今の譲許表の修正ないし訂正の手続について簡略に言ってください。
  34. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 お答え申し上げます。  譲許表の修正手続でございますけれども、先ほど御指摘がございましたガットの一九八〇年の決定というのがございまして、ガットというのはWTOの前の譲許表でございますが、そのときの手続が今WTOでも適用されていると理解しております。  まず、譲許表の修正、場合によっては訂正になりますけれども、この場合は修正でございますが、WTO事務局に通報するということになっています。そして事務局は、それを受けて加盟国にそれを通報する。そして、異議申し立て期間ということで三カ月の間にいずれかの国から何ら問題、つまり異議の申し立てがなければ、修正ないし訂正が確定するということでございます。そして事務局より、その旨の確認書をそもそも修正を求めた国に対して通達されるということでございます。
  35. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 今局長、後のことは説明がなかったんですけれども、その確認書がWTO事務局から日本政府に発出されたときに、日本政府はどのようなことが必要になりますか。確認書の締結について国会の承認が要るのではありませんか。
  36. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 失礼いたしました。  WTOと日本との関係のみについて申し上げてしまいましたけれども、御指摘のとおり、確認書を受け取った段階で、政府といたしましては、その確認書に従うというか、確認を得た修正を国会に提出いたしまして、その承認を得るべく手続を進め、御承認を得たところで修正が確立するということだと理解しております。
  37. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 これは国会の問題でもありますけれども、その確認書というものが国会に出て、国会の、これは条約の締結事項になるわけでありますけれども、そういうものがなければ効力を発しない。まさにそういうものを一括して、もちろん、年度初めということがWTOで決まっていますから四月以降でありますけれども、そういう手続を一括して起こさなければ、幾ら関税法があってもどうにもならないということになると思いますけれども委員長、どのように考えますか。
  38. 穂積良行

    穂積委員長 政府側において答弁を願います。大島経済局長
  39. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 一般論として申せば、譲許表の修正というのは、国会の御承認を得てそれが確立するということでございます。  ただ、今、これからお諮りすることになります、あるいはお諮りしておりますその関税措置への切りかえということについていえば、その措置への切りかえそのものが農業協定という一つの条約に従って行われておりますので、譲許表の修正が成立する以前であっても、国内措置によって関税措置への切りかえを妨げるところは何もないというふうに私ども理解しております。
  40. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 これは、三カ月という期限、三月二十一日というものを待たなければ、最終的な結論は国会として示し得ないのではないでしょうか。
  41. 穂積良行

    穂積委員長 今お聞きのように、政府側の答弁は、農業協定により、これは国内的には可能であるという答弁でありましたが、これについての質疑でございます。政府側から再度答弁されますか。  譲許表で、国会に報告され、その承認を得る手続と、農業協定によって我が国が通告して国内的に発効することとの関係を明確に、その関係政府側として答弁願います。大島経済局長
  42. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 繰り返し改めて答弁をさせていただきます。  まず、譲許表の修正が確定して、WTOの事務局から確認書が発出され、私どもが受け取ったところで、政府といたしましては、速やかに譲許表の修正について国会に提出したいと考えております。  しかし、いずれにせよ、その譲許表の修正手続が完了しない場合であっても、我が国が今回の特例措置の適用を終了させるための国内法令はWTOの農業協定に根拠を置いておりますので、その農業協定に従ってこの措置を進める以上、関税措置への切りかえは実施することが可能であると理解しています。
  43. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 これは、その後もあなたは答弁しませんから言いますけれども日本が条約的なものとして国会で承認をして、国会で承認したということで譲許表の修正及び訂正の効力発生についてWTO事務局に通告をして、そこで初めて効力が発生するということになるわけであります。ですから、この一連の手続を、もちろん関係国からの異議申し立てがなければこれは四月一日から始まるかもわかりません。しかし、あくまでも、関係国から異議申し立てがあった場合、二十一日を過ぎなければこのことはわからないわけでありますから、このことと一括した国会審議がなければ我々としては責任が持てないわけであります。
  44. 穂積良行

    穂積委員長 大島経済局長。  譲許表についての一般原則と、農業協定が一般原則に対する特別法的性格として国内的に間違いなく発効するかどうかについて、明確な答弁を願います。
  45. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたとおり、一般的に申せば、譲許表の修正が発効するまでは修正前の譲許表が有効であり、あるいは発効することによって新たな譲許表になるわけでございますけれども農業協定について申せば、その附属書五のパラグラフ第2において、加盟国は、実施期間中のいずれの年の開始時においても、同附属書パラグラフ6に定めるところに従い、特例措置の適用を終了させることができる旨定めています。現在、我が国はこの農業協定の規定に従って、特例措置の適用を終了するべく対応しているところでございまして、また、その特例措置の終了は関税措置への切りかえという農業協定上の基本原則にかなっているものでございます。農業協定というのは、私ども国会での御承認も得ております条約でございます。  したがって、WTOの農業協定に定める指針に従って関税を算定している限り、我が国は調整を必要としないわけでございますけれども、そのまま関税措置への切りかえということが妨げられると解されるものはございません。
  46. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 あなたは今、その一九八〇年の一般的なガットの手続、これは全然関係ない、こういうふうに言われるんですね。そうしたら、三カ月というのはどこから出ているんですか、あなた方が言う三カ月。一九八〇年のこの三月二十六日の譲許表の修正及び訂正に関する手続、これはもう効力を失っているというふうに見ているんですか。そこがはっきりしていないんですよ。ちょっと時間がないんで、委員長、これ、きちっとしてください。
  47. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 現在とられております特例措置、これは現在の譲許表に反映されております。特例措置を終了させ関税措置に切りかえる場合には、最終的には譲許表も修正する必要がございます。したがって、その手続は、御指摘のとおり、先ほど私も申し上げたとおり、ガットの決定によって行う、それ以外の手続が規定してございませんので、八〇年のガットの規定に準拠するということでこの修正の手続を、WTOの事務局との関係で、今事務局を通じてWTO全体として進めているわけでございます。  ただ、それではその修正の確認がいつ行われるかということの関連では、先ほど来私どもが申し上げているような理解をしておるところでございます。
  48. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 一九八〇年の譲許表の修正手続というものが最終的には必要であるということを局長は述べたと思いますから、これは農水大臣、今のこの関係法だけではこれは当然この国会の論議にはなじまない、三月二十一日以降でなければ。  このことについては、農水省は一切この話をしてきませんでした。三月二十一日はどういう根拠で言われているのか。こういったことでは、我々まともな審議はできないのではないですかね。
  49. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、今経済局長が何回も説明していますように、ガット協定というものが現に存在をして、その中でWTO協定というものが九四年からスタートしたわけであります。それで、一般的な異議申し立てというのはいろいろなときにできるわけでございまして、その異議申し立て期間については、先ほどの八〇年の協定ですか、にその規定が書いてある。  一方、この例外なき関税化特例措置である我が国選択したミニマムアクセス米制度を一般的な関税化にする規定というものは、この附属書五並びに附属書五の付録にやり方が書いてございまして、きちっとしたやり方で、こういうふうにしていかなければならないということになっております。そして最後に、七番というところで、「1から6までに定める指針に従って得られたであろう関税相当量の水準について調整が行われる場合には、関係する加盟国は、要請があるときは、適当な解決策について」「十分な協議の機会を与える。」ということでございますから、これはその九十日という異議申し立て期間というのは現に存在する。  したがいまして、十二月の二十一日だったか二日だったかにWTOに通報をし、WTOからすべての加盟国に、日本はこういう措置に変更することになったよと言うことになっておるわけであります。その場合に、我々は、WTOの規定に基づいたものでありますから、そもそも異議申し立てが起こるということは実は想定をしていないわけでありますけれども可能性としてはゼロではないということは先ほども申し上げました。また、異議申し立てが仮に出た場合には、関係国と協議をすることによってこのWTOの確認書が発効できるように、我が国としてはその異議申し立て国と話し合いをするということになっておるわけでございます。  いずれにしても、我々としては、異議申し立ての可能性はゼロではないにしても、異議申し立ての出る可能性は極めて低い、まあ出るかもしれません。しかし、現時点においては、我が国としては、三月二十一日をもってその異議申し立て期間が終了するということをもって確認書が我が国に送致されるというふうに理解をしております。
  50. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 これは、先ほど申し上げましたけれども、異議申し立てが出たときには、この確認書における国会承認を伴うわけであります。これらについては、一切今まで明らかにしてこなかったのは事実であります、委員長。私は、この点についてこれ以上質問することはできません。  こういう重大なことを全然説明せず、しかも農水省は、私は、勉強不足だったんじゃないかというふうに言っているのですよ。こんな太字で、関係国との協議が必要ないから、まさに今やるべきだ、このことが強みですよということで、大臣も、アメリカが盛んにちょろちょろ言っているけれどもそんなことはこの農業協定からいけばできるわけではないんだということを盛んに記者会見等で言ってきました。  しかし、どうも私が外務省筋から調べた段階では、こういうものの手続が必要になりますと。しかも、流れは、USTRのあの報告書に見られるように大変ひどい、日本には圧力をし続ける、これについても大臣がきちっと抗議するぐらいの談話があってしかるべきだと思いますけれども、そういう強い姿勢に今変わってきております。新聞等では、異議申し立てをするのではないかというのが強いという方向に流れが変わっておるではありませんか。  そういう中で、この国会で、こういう手続について国会承認事項があるということについて、一切我々には知らせず審議をしていくということは、委員長、私は重大な瑕疵があるのではないかというふうに思います。
  51. 中川昭一

    中川国務大臣 今回のUSTRのアメリカ議会への報告というものの中に、米、鉄鋼等についてはさらに二国間協議を深め、あるいはWTOの場等々で圧力云々というような報告書が出されたようであります。圧力という言葉は我々にとって極めて遺憾、不愉快な表現だと私は率直に思うわけでありますが、実は、去年も同じ言葉が使われておるわけでございます。そして、去年もことしも、外交当局を通じまして、もっと友好国としてきちっと、今までも関税化するに当たって、あるいはそれ以外でも常に最大の友好国として、自由主義国家同士の友好国として常に連絡をとり合ってきておるわけでございますから、今回もあの議会報告の後に外交ルートを通じて、我が国立場の重ねての説明等、そしてあの報告書に対する、まあ国内的な報告書ですからコメントを、余り立ち入ったことはやるべきでないかもしれませんけれども我が国としての立場をきちっと申し上げたところでございます。
  52. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 委員長、いわゆる国会承認の手続が必要だということについて明確な御答弁がございません。また、我々、この間皆さんから見せられている資料なり問題は大変大きい問題があるというふうに思いますから……。
  53. 穂積良行

    穂積委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  54. 穂積良行

    穂積委員長 それでは、速記を起こしてください。  鉢呂委員質問に対して、政府側から再度答弁をいたさせます。中川農林水産大臣
  55. 中川昭一

    中川国務大臣 改めて申し上げます。  米の関税化への切りかえは、農業協定上の基本原則にかなうものであり、農業協定の附属書五では、「加盟国は、実施期間中のいずれの年の開始時においても、」四月一日ですが、「特例措置の適用を終了させることができる。」税率とか量のことはちょっと今の議論と別なので省略いたしますが、我が国としては、農業協定に従って、特例の終了、すなわち関税措置への切りかえを行うこととし、このために必要な食糧法等の一部改正を御審議いただいているところであります。  仮に、譲許表修正をWTOに通知した後の三カ月の異議申し立て期間、この三カ月の異議申し立て期間というのは、鉢呂先生が先ほどから言われておるガット上の一般的な原則としての異議申し立て期間が三カ月ということでございますから、その期間の長さというものは、協定本則、ガットの方から引っ張ってきておるわけでございますが、その期間を待っているわけであります。  したがって、三月二十一日以前にはWTOから何の通知もない、三月二十一日以降にWTOから何らかの通知があるわけでございますが、仮にこの申し立て期間内に諸外国から異議申し立てがなされた場合であっても、この関税措置への切りかえは農業協定に極めて忠実に沿って認められたものでございますから、国内法の改正によって実施することができるということでございます。
  56. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 これは私は法案にも関係するから言っておるんであります。仮にと言いましたけれども関係国からガット一九八〇年手続に基づきまして異議申し立てがあったときには、そのことを含み入れてこの法案はできておらないのであります。含み入れておるんであれば、必ず発効期日等にそのことを記載しておらなければ、これは国会承認を伴うわけでありますから、そういう形で私は質問はこれ以上進まないのではないかということを申し上げておるわけであります。
  57. 穂積良行

    穂積委員長 それでは、鉢呂委員の残余の質問時間については後刻に回すとし、今のあなたの質問に対して、この際、政府にもう一回答弁を求めますか。要りませんか。
  58. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 私は、私の残余の質問をおいてこの委員会がそのまま続行するということにならぬ性格のものではないかと。この法案自体について疑義を提出したわけでありますから、このガット一九八〇年条項に基づくこともこの法案は想定しておらないのではないかということでありますから、そこについてきちんとしたこの委員会としての判断がなければならないのではないでしょうか。
  59. 中川昭一

    中川国務大臣 ガット、その八〇年の協定に基づく九十日間の異議申し立て期間というものは、私も、あるいは外務省経済局長も否定しておらないんです。その異議申し立て期間があるから、十二月二十一日でしたか、その九十日間、そして四月一日に間に合うという前提で逆算をしたわけであります。それがまさに十二月二十一日か二日に通報した意味であります。  したがって、ガット上の異議申し立て期間というものも我々は効力のあるものとして承知をし、またその通知そのものでもってできるというのは農業協定上の一つの我々の権利でございますから、我々はそれを行使しておるわけであります。  それから、三月二十一日までにどういうふうになるのかというのは、率直に言ってこれはわかりません。異議申し立てをする国があるかもしれません。一部新聞には異議申し立て確実かなんというような記事も出ておるわけでありますけれども、現時点においては常にアメリカ等と密接に話し合いを持っております。協議ではございません。話し合いをして、お互いに意思の疎通をしておるところでございまして、ぜひ、こういう前提でガットの協定、そしてWTO農業協定に基づく措置によって、国内法の改正でもってこの関税化措置ができるということを御理解いただきたいと思います。
  60. 穂積良行

    穂積委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  61. 穂積良行

    穂積委員長 速記を起こしてください。  この際、暫時休憩いたします。     午前十一時三十分休憩      ————◇—————     午後五時三十三分開議
  62. 穂積良行

    穂積委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。鉢呂吉雄君。
  63. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 それでは、午前中、審議がとまったわけでありますけれども政府としての見解というものがございましたら、改めて求めたいと思います。
  64. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 それでは、見解を述べさせていただきます。  まず、農業協定附属書は、加盟国が実施期間中のいずれの年の開始時においても特例措置の適用を終了させることができる旨定めております。その際設定されるべき二次税率の算定方法やミニマムアクセス数量に関しても、明確に規定しております。  特例措置の適用を終了させる場合には、農業協定に従って国内法令の改正を行うとともに、WTO協定上、譲許表を修正するための手続をとる必要があります。ただし、農業協定上、四月一日までに譲許表の修正手続を終了しなければならないとの規定はありません。  したがって、譲許表の修正については、譲許表の修正が確定してWTO事務局より確認書が発出された後、速やかに国会に提出して御承認を得たいと考えていますが、四月一日までに譲許表修正手続が終了しない場合でも、加盟国による特例措置の適用の終了は関税化という農業協定上の基本原則にかなうものであり、国内法令により関税措置への切りかえを実施できます。(鉢呂委員「最後、何と言いましたか」と呼ぶ)国内法令により関税化への切りかえを実施できます。
  65. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 最初の文は、そこは可能であるというふうに書いてあったわけでありますけれども、できるという形に変えたわけであります。そういう意味では、譲許表の修正手続を終了しなければならない規定はないとか、非常にあいまいな点があるわけであります。  したがって、例えば今回の法律の施行月日を見ましても、四月一日というふうに明記をされておるわけでありますけれども、いわゆる異議申し立てによる確認書というものが成立した時点でこの関税率なりミニマムアクセスの数量に変更が生じた場合に、今のこの改正案ではそのままいかない場合が生じるわけでありまして、そういう点についてはどのような対応をするのか。私は、現行のこの改正案についても、施行月日のところにただし書きがなければならない、いわゆる異議申し立てによる確認書等が出た場合に、それに応じて改正をしなければならないとかいう規定がなければならないと思いますけれども、その点についてどのように考えているか。
  66. 堤英隆

    堤政府委員 むしろ私どもは、当然、政府でございますので、四月一日に実施をするという前提の上に立ちまして、関税定率法、それから食糧法等の改正をお願いしているわけでございまして、そういう意味では、全体的な整合をとって御審議をいただいているというふうに理解をしております。
  67. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 少し答弁になっておらないと思うんですけれども。具体的に異議申し立てがあり得るわけでありますから、異議申し立てがあった際に、確認書はWTOから発出されません。したがって国会承認も生じてこないわけでありますけれども、仮に譲許表の修正というものの合意が成り立って、それが現在のこの改正案と違った形になる、例えばミニマムアクセス米が〇・八%増が〇・四%で改定をする案が今出されておるわけでありますけれども、それが異なった場合に、この法案では対応できないのではないですか。
  68. 堤英隆

    堤政府委員 大臣から何度かお答え申し上げておりますように、また、今の政府統一見解にもございましたように、譲許表の修正をしなくとも、要するに異議申し立てが仮にあった場合におきましても、この法律の改正によりまして実施できるということでございますので、その旨先ほど申し上げましたように、全体的な整合をとって対応しているということでございます。  それから、譲許表が仮に修正された場合にはどうかということでございますけれども、私ども、これも何度も大臣からお答え申し上げておりますように、ミニマムアクセス米の数量、それから二次税率ともに、現行の農業協定に明確に書いてあるものに沿いまして、何も足さず、何も引かず、誠実に忠実に計算をいたしておりますので、かつミニマムアクセスにつきましても数量そのものも書いてあるわけでございますので、そういう意味で、当方としまして、相手方に対してそういった法的な根拠を与えるものではないというふうに理解をいたしているところでございます。
  69. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 修正をした場合に、譲許表の修正の申し出があり、修正の合意が成ったときに、法律としてはどういう形になるわけですか。
  70. 中川昭一

    中川国務大臣 譲許表の修正の申し立てをしようとする国は、三月二十一日までにWTOに申し出をしなければならないわけであります。それを前提に、WTOから異議申し立てがあったということになるわけでございます。それが成立ということは実は我々は全く考えていないわけでございますけれども、仮に異議申し立てがあったとすれば話し合いという手続に入るわけでございますけれども、それとWTOの協定に基づく四月一日以降の関税化への移行というものは、国内法令の改正によってできるということでございます。
  71. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 質問の趣旨が通じていないのかもわかりませんけれども、その修正があった場合にどういう手続で行うのですかというふうに言っておるわけであります。
  72. 中川昭一

    中川国務大臣 修正があったということは、異議申し立てをした国があって、日本がその国と話し合った結果修正されるか、あるいは、異議申し立ての手続から紛争処理手続に移って、WTOの紛争処理手続の結果として修正をするということしか考えられないわけでございますので、それまでの間は、仮に修正ということになるといたしましても、それとは関係なく、四月一日から国内法令の手続の改正によって関税化、あるいは〇・四というような、三百五十一円十七銭というような形の米の関税化措置ができるということでございます。
  73. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 時間がなくて申しわけないのですけれども、要するに、今の〇・四が〇・六増になった、こういうことはあり得ない、そんなことを日本が認めるということではありませんけれども、仮になった場合に、そのことは、この今の法律が、もう一度修正の、改定の法案を出すということになるわけですね。
  74. 中川昭一

    中川国務大臣 我々は、あくまでもWTO農業協定附属書五及びその付録に基づいて関税化をし、その場合には、〇・八から〇・四にするということが協定上明示されておるわけでありまして、それに基づいてやる。つまり、調整を加えていないわけでございますから、そういう意味では修正はないということでございます。
  75. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 要するに、いわゆる関税率を、今の例えば四百七十一円でしたか、関税額を修正協議によって変えたという形になったときに、どのような法律手続がそこに生じてくるのでありましょうか。
  76. 中川昭一

    中川国務大臣 関税相当量につきましても、今申し上げたような協定に基づきまして明示されておりますけれども、八六年から八九年の三年間の平均の内外価格差、これが九五年からスタートして二・五%ずつ毎年削減していった数字が、九九年の四月一日においては三百五十一円になるという、協定上のルールに全くのっとった形で当然に計算された数字でございますから、それが何円になる、ほかの数字になるということは考えておりません。
  77. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 ちょっと時間がなくなるわけですけれども、いわゆる異議申し立てにより協議をしなければならない、その際に、もちろんこちらは譲る気は全くありませんけれども、仮に違った形の修正が加えられたといった場合の法手続を聞いておるのです。日本政府姿勢とかいうことではありません。
  78. 中川昭一

    中川国務大臣 ですから、修正になった場合というのは、異議申し立てがあって、そして日本がそれに対して話し合いをして、その結果、何らかの修正が仮にあった場合、あるいはまたWTOの別の協定に基づいて紛争処理手続に相手の国が入っていった場合、そういう場合に別の結果が出てくる可能性がないわけではありません。解釈の問題として、向こうはそういう申し出をするわけでありますから。  しかし、仮にそうなった場合の最終的なときが、先生がおっしゃる修正が成り立った場合ということだろうと思いますけれども、それまでは、少なくともその修正が成立するまでは、四月一日以降は、今のルールにのっとって関税化を進めていくことができるということでございます。
  79. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 現状の日本政府関税化への切りかえを、そのまま四月以降も踏襲していけるということを聞いておるのではなくて、相手国の異議申し立てによって譲許表の修正議論がされて、仮に何らかの修正が加えられたときの法手続は、一つは、この確認書を国会で承認して、WTOに承認した旨を通告するという作業はありましょうけれども国内法の食糧法なり関連の法案について、法律について、どのような修正が必要とされておるのかということをお聞きしておるわけであります。
  80. 中川昭一

    中川国務大臣 我々としては全く想定しておりませんけれども先生の仮にという前提での御質問にお答えするならば、行き着くところは、WTOの紛争処理手続の最終的な結果でもって仮に違う結論になったとするならば、それに基づく国内法の改正、関税定率法あるいは関税暫定措置法の改正という手続に入っていかなければならないというふうに考えております。
  81. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 この問題だけで終始してしまったわけでありますけれども、私どもは、先ほど堀込委員の方からもお話があったとおり、今回の法改正につながる一連の国民的な合意をとる作業は極めて不十分であったというふうに考えておりますし、同時に、次期WTO交渉に臨む基本的な方針につきましても、政府は、この間、さまざまな段階で、例えば、政府与党農業団体から成るWTO農業問題三者会議を開催して一体的な取り組みを図っていく、さらには、十二月十七日の農水大臣談話でも、これはこの資料の中にもありますけれども交渉の基本戦略を、今後、与党農業団体農水省により構成される三者会議を基軸にやっていくというような政府の取り組みの基本的な考え方でありまして、私どもは、国民的な合意を得るには、農業団体、しかもその一つであります全中と三者会議を基軸にしてやっていくということでは極めて不十分である、国民的な合意を取りつけるにはもっと幅広い形をとらなければ、本当の意味での合意をもって農業交渉をしていくということにならないのではないかというふうに思っております。  この点について最後に大臣に御質問をして、私の質問を終わらせていただきます。
  82. 中川昭一

    中川国務大臣 先生のおっしゃるとおり、次期交渉に向けて、あるいは今回の関税化でもそうでありますけれども国民の御理解をいただくということが大事であることは、我々も同じ認識でおります。  三者合意、あるいは三者の間の話し合いというものが持たれたことは事実でございますけれども、午前中も堀込先生にお答えを申し上げましたが、議院内閣制のもとで国会最高機関としての位置づけ、そして与党政府との関係、さらには生産者団体の代表である皆さん方、さらには消費者、あるいは経済界やマスコミの御理解も含めまして、いろいろな方々の御理解をいただかなければなりません。  私自身、この関税化に当たりましては、全国消費者団体の代表の皆さん方に直接お会いをし、御説明をし、御理解をいただいたところでございますし、引き続き我々も全力を挙げて頑張っていかなければならない。  三者合意というのはあくまでもそういう一つの位置づけでございまして、そこだけですべてを決めるということではないわけでございますけれども与党政府という関係の中で、今までもいろいろと相談をし、いろいろやってきたわけでございますけれども、今後も三者の間の話し合いというものも重要でありますし、また全体としては、国民的な御意見また合意が必要でございますので、そのための努力をしていきたいというふうに考えております。
  83. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 終わります。
  84. 穂積良行

    穂積委員長 次に、漆原良夫君。
  85. 漆原良夫

    ○漆原委員 公明党・改革クラブの漆原でございます。  今回の政府の決定は、関税化特例措置を関税措置に切りかえるというものでございまして、私は、今回の政府の決定自体も多くの問題を含んでいる、こう考えておりますが、まず、その決定に至る経緯、手法におきまして、これは国民の意思を軽視するものとして大いに疑問を持っております。  このミニマムアクセス受け入れに際しましては、大臣が既によく御存じのとおり、国論を二分したあの大激論の末に、苦悩の選択としてこれを受け入れたという経緯がございます。今回の政府の決定は、大事な大きな米政策の一大方向転換をしたわけでございますけれども、この決定は、政府自民党農業団体の三者間で、しかも二、三カ月という極めて短時間で協議がなされその方向転換が決定された、こういうものであります。そのため、各地の農協中央会からも、減反しているのに輸入米が入ってきて矛盾を感じる、あるいは日本の稲作を左右する重要なことをこんな短期間では決められない、こんな声が聞こえます。情報も時間もないという困惑やあるいは不満の声がたくさん出ておりまして、さらには、消費者であります一般国民の意思は今回全く無視をされて、関税措置への切りかえが検討されていることすら知らされていなかったということでございます。  三月十日、当委員会で参考人質疑が行われましたが、消費科学連合会の事務局長伊藤さんは、こう言っておられます。今回の関税化選択消費者が蚊帳の外にあったことに不信感を持っている、こういうふうな率直な意見を述べておられます。私は、政府はこれらの声に謙虚に耳を傾けるべきではないのかな、こんなふうに考えております。  私は、ミニマムアクセス受け入れに関するこれまでの経緯や、また、次期WTO交渉には本当に国論を統一して臨まなければならない日本立場を考えた場合、政府としては、末端の農業経営者や消費者を含めた幅広い議論を十分に展開して、そして不信と不安を解消するとともに国民合意の形成を図るべきではなかったのかというふうに考えます。このような考えに基づいて質問をさせていただきたいと思います。  私は、最も疑問に思うのは、そもそも関税措置への切りかえがなぜ九九年四月からでなければならないのかということでございます。政府は、関税措置への切りかえの理由として、ミニマムアクセスの量的拡大を抑える、あるいは次期交渉に強い姿勢で臨むに当たっての交渉ポジションを確立する、こう述べられております。しかし、そういう理由であったとすれば、何も九九年四月に限定される必要はなくて、さかのぼって九六年、九七年、九八年からも可能であり、また、二〇〇〇年からでも可能ではないか、こう思います。  そこで、なぜ政府は九六年、九七年、九八年に関税措置をおとりにならなかったのか、その理由をお尋ねします。
  86. 中川昭一

    中川国務大臣 先生指摘のように、八六年から九三年まで七年間かかったWTOの、特に農業分野での交渉におきましては、例外なき関税化という交渉の大きな流れの中で、我が国の特に米に関しては関税化は絶対に受け入れられないというのが生産者の皆さんの総意であり、また、私自身も含めまして国会での議論というものもそういう方向であったと今でも思っております。  一方、マスコミ等の議論あるいは一部の方々の議論で、それとは別の自由化、関税化をした方がいいじゃないかという議論もございまして、まさに国論を二分した議論が、最後の最後まで続いたわけでございます。  そういう中で、我々としては何としても関税化を阻止しなければいけないということで、最終的には我が国が一国だけで最後まで頑張ったというような形になりましたけれども、最終段階でドゥニーさんの調整案というのが出てまいりまして、代替措置、代償措置をとることによって、つまりミニマムアクセスという制度、しかも、六年間で三%から五%という原則を少し上乗せした四から八という調整案が出まして、最終的にはそれによって関税化を避けることができたということで、その調整案を受け入れざるを得なかった、決して百点満点の選択ではなかったけれども、当時としては関税化をしないで済んだということであります。  一方、先生指摘のように、今回の関税化国益としてベストであるというならばなぜもっと早くということ、これは、今から思えば当然そういう議論が出てきて自然だと思います。しかし、当時の生産者あるいはまた国会を初めとする政治の場での雰囲気は、とても関税化というものを選択することができなかった。あるいは、では、九五年はだめでも九六年ならできたじゃないかということでありますけれども、いずれにいたしましても、その一定の関税相当量を払うことによってお米が、外国産米が入ってきた場合に、その動きというのが一体どういうふうになっていくのかということの見通しがつかない。幸い、ミニマムアクセスというのは国家貿易の中での範囲でございますから、閣議決定にもありますように、国内の生産あるいは需給に影響を与えないというできるだけの努力をすることができる国家貿易制度を維持することができたわけでございますけれども、それと関係のない、関税相当量を払えば幾らでも入ってくるんだという、それがどの程度入ってくるのかということの見通しがつかないという状況がございました。  一方、食糧法あるいは新しい基本法等々の新しい時代に向かっての国内の法的な体制づくりも進んでまいりましたし、三年以上を経過した現在、国内で入ってきております外国産米の需要というものが、一部の低価格米の主食用への需要はありますけれども、総じて国内の生産あるいは消費者ニーズに、主食用としては大きなニーズがあるとは思えないという状況判断になったわけでございまして、そういう意味で、今度の四月一日からということに決断をしたわけであります。  では、二〇〇〇年の四月一日でもいいではないかという先生の御指摘でございますが、御承知のようなあの協定のルールに基づいて一番最初にやっていれば、九五年四百二円という関税相当量から始まるわけでございますけれども、それを六年かけて一五%、つまり二・五%ずつ下げていかなければならないということでございますから、できるだけ高い相当量が張られることによって国内生産へ影響を与えることがない。  さらには、もう二〇〇〇年といえば次期交渉が始まるわけでございますので、少しでも早く原則である関税化移行することによって、そして日本が数年前から主張しております非貿易的な関心事項に対しても各国の理解を同じ土俵の場で得られるようにするためにも、さまざまな努力をしていかなければならないということで国民的な理解を得るべく、確かに、率直に申し上げて、去年の夏以降、十二月十七日までの期間といえば決して十分な時間ではなかったわけでありますけれども、与えられた時間の中で、関係団体あるいはまた国会の場、そしてまた消費者団体を初めとする国民各位の皆様方にできるだけの説明をすることによりまして、御理解を得つつあると私は理解をしておりますが、さらにその努力を深めながら、次期交渉あるいはまた日本の国産の米を守り、そして安定的な国産米の需給を維持していくという観点から、総合的に判断をして、ベスト選択として四月一日から関税化移行したいというふうに考えた次第でございます。
  87. 漆原良夫

    ○漆原委員 政府説明によりますと、平成九年の九月以降に現行協定の分析、検証作業を開始した、それで四つの選択肢のうちから一つを選んだんだ、こんなふうな説明がなされておるわけでございますが、その平成九年九月以前にこの現行協定の分析、検証作業は行っていなかったのかどうか、お尋ねします。
  88. 堤英隆

    堤政府委員 政府でございますので、このUR協定を締結しました後でも常に私どもはそれを運用しております。したがいまして、その運用の実態、それから現行農業協定との関係、そういうことにつきましては常に勉強をしながら対応していくということは、また私どもとしては、役人としては当然でございます。  そういう中におきまして、具体的には、先ほど大臣申し上げましたように、三年ほどの実施期間というものを経て、翌年、一九九九年から実質的なその次期交渉が始まる、各国でもそういう動きが始まりつつある、そういう時期におきまして、やはり突っ込んだ勉強をそれぞれのところでしていこうということで、夏ぐらいから本格的な検討、検証作業は始まった、こういうことでございます。
  89. 漆原良夫

    ○漆原委員 今回初めてこのミニマムアクセスがどんどんふえていくということがわかったわけじゃない、前からわかっておったという御答弁でございますが、そうだとすれば、そういう事実をもっと前に国民に明らかにすべきであったし、またできたはずだ、こう思います。そういう検討をもっと前の段階で、これが九八年がいいか九七年がいいか、これはわかりませんが、その前の段階で、すべて国民に明らかにした上で、どういう選択肢があるのか、そういうふうな判断をすべきではなかったのかなと。それをしないで、急に、昨年の九月から二、三カ月の間で大きな方針決定をしてしまったという、これはある意味で私は政府の怠慢ではないのかなという率直な意見を持っておりますが、いかがですか。
  90. 堤英隆

    堤政府委員 ミニマムアクセスの数量自体につきましては、このガット・ウルグアイ・ラウンド受け入れましたときから、各年それぞれどういう形で伸びていくのか、その具体的な数量はどうなるのかといったことにつきましては、かなりの方々に御説明し、それはそれなりに浸透していたのではないかなと私は思っております。  ただ、全体的に、先ほど申し上げましたような形で、平成五年、国論を二分するような状況の中でこの問題を受け入れてきたわけでございますが、そういった冷静な議論をお互いできるということにつきまして、やはり三年程度の期間がどうしてもかかったということであろうと思います。  そういう中で、ミニマムアクセス消費の実態、運用の実態といったことがお互い目に見えてきて、共有のものができて冷静な対応ができる、そういうことでやはり大体昨年の夏ぐらいからそういう動きは本格化したということで御理解を賜りたいというふうに考えております。
  91. 漆原良夫

    ○漆原委員 これは、しつこいようですが、もしそうだとすれば、三年間の実績をもとに検討したということであれば、場合によってはもう一年延ばして二〇〇〇年に決定するということも可能ではなかったのかなと。二〇〇〇年に決定するために、今から事実関係を明らかにして国民合意を得るという、一年間かけてじっくり得るということも可能ではなかったのかな。なぜ一年延ばすことなく、今回どうしても決定しなければならない、そんなせっぱ詰まった理由があったんでしょうか。
  92. 中川昭一

    中川国務大臣 先ほど先生も御指摘のように選択肢が幾つかあったわけでありまして、二〇〇〇年四月一日からでもいいじゃないかという御指摘でございますが、これは六年間の最終年度に当たるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、さらに二・五%関税相当量が下がるわけでございます、これはことしやっても来年また同じ金額になるわけでありますけれども。  そういう意味で、我々としては次期交渉をにらんだという観点もかなり大きなところでございまして、御承知のようにミニマムアクセスという制度を導入しているのはイスラエル、そして発展途上国扱いの韓国、フィリピンだけでございます。発展途上国の方は十年間で一から四でありますし、またイスラエルの方は米ではない別の品目でございますから、日本だけが関税化をせずに、しかも日本の米だけということになれば、日本がほかのところでいかに理解の得られる主張をしたといたしましても、日本は特別扱いではないかという中での議論になるわけでございます。  そういう意味で、できるだけ早く原則である関税化の土俵に乗って、そしてその我が国の主張あるいは地球的規模でのいわゆる非貿易的関心事項について日本と同じ立場がとれるような国々との理解、あるいはまた共同歩調をとるための努力というものを、次期交渉に向かって少しでも長い期間、その時間がほしい。現に、農業大臣会合あるいはFAOの会合等でも我が国の主張が宣言文の中に入れられておるわけでございまして、来年関税化するよりもできるだけ早い時期にやっておくことが、ある意味では、その関税化というものの中で、我が国自身のなれといいましょうか、もう既に関税化措置をしているんだ、しかし国産米等の需給に影響を与えないんだ、そしてまた次期交渉に向かってより強いスタンスで、内外ともにより強いポジションで交渉に臨んでいけるんだということを考慮して、できるだけ早くということで、ことしの四月一日からということにさせていただいたわけでございます。
  93. 漆原良夫

    ○漆原委員 今の説明説明として承っておきますが、次期交渉に臨むためのポジションを確立するという意味であれば、これは二〇〇〇年から始まるわけですから、二〇〇〇年に向けて関税化措置をとったとしても、今おっしゃったようなWTO交渉に向けての強いポジションを確立できるんじゃないのかなという気はします。  こんなに一般の末端の農業経営者それから消費者、これを不安と不満に陥れて、なおかつやらなきゃならなかった理由は本当にあるのかなという疑問はまだ私の頭の中に残っておりますが、それはそれとして次の質問に移ります。  端的に、大臣は、今回の決定については国民の声を十分に聞いたというふうに御認識されていますでしょうか。いかがでしょう。
  94. 中川昭一

    中川国務大臣 先ほど申し上げましたように、物理的には、一般の生産者あるいは一般の国民の皆様方の時間というのは、率直に申し上げて、そう長いものではなかったというふうに私も思います。ただ、生産者団体内部では、一昨年の秋以降この問題を研究されており、また政府部内でもいろいろと内部の検討を進めていたところでございまして、そういう中での最善の選択として、国民の皆さんに、限られた時間ではありますけれども、できるだけのことをやってきたつもりでありますし、これからもまたやり続けていかなければならないと思っております。  例えば、生産者団体あるいは自治体等につきましては、全都道府県に担当の課長以上の者を一日がかり、二日がかりで説明に行かせましたし、また年末には、一般紙を含めましてあらゆるマスコミを通じて、今回の決定の概要を、生産者だけではなく一般の国民消費者の皆さん方にも御理解できるように、年末ぎりぎりまでかけて、たしか十二月三十日に一斉に各紙で広告を出したわけでございます。  また、私自身も、十二月の二十四日に消費者団体の連合会の代表の皆さん方と数時間にわたりまして御説明、御議論をさせていただきましたし、またこれからも引き続き努力を続けていかなければならないと思っておりますが、御理解を得つつあると思いますし、さらに次期交渉に向かって、これがいいスタンスであるという国民的な次期交渉に臨む一つ方向性をつくる上で、今回の決定が国民的な御理解をさらにいただけるように努力をしていかなければならないと考えております。
  95. 漆原良夫

    ○漆原委員 私も、次期WTO交渉は、米の輸入国の立場を反映するためには、ぜひとも国論を統一して強力な姿勢で臨まなければならないな、こう思っております。  中川大臣も、今回の決定は次期交渉に臨むに当たっての出発点の一つ、こういうふうに位置づけられておるわけなんですが、今回の決定は、日本の米政策を決定的に変更する、こういうものであるわけでありますから、そうだとすると、関税措置に切りかえるという、ある意味ではルビコンを渡ってしまってから、さあ右へ行くか左へ行くか検討してくださいというやり方ではなくて、ルビコンを渡るべきかどうかというこの段階から国民の真意を問うといいますか、国民に十分理解していただく。それで初めて強力な国民合意ができるのじゃないのかな。そういう意味では、やはり政府のとった今回のやり方というのは大きな片手落ちがあったのじゃないのかなという印象をどうしてもぬぐい去れないのですが、いかがでしょうか。
  96. 中川昭一

    中川国務大臣 我々としては、決定そのものもさることながら、できるだけ御理解をいただくように努力をしてきたつもりでございますし、これからも努力をしていかなければならないと思っております。  そういう意味で、先生の御指摘を重く受けとめて、先生のお考えになっていることと私とは最終的には同じではないかと思いますので、その目的実現のためにも、先生の御指摘の点は深く受けとめさせていただきたいと思います。
  97. 漆原良夫

    ○漆原委員 最終的に同じかもしれませんが、決定に至る経緯としてはもう大きく違うということをあえて申し上げさせていただいておきます。  それから、次に問題としたいのは、この米政策の一大転換というときに当たって、大臣なり政府は一貫して国会における審議を避けてきたのではないのかな、こういう印象を持っております。  昨年の七月に小渕内閣が誕生し、中川大臣も御就任されたわけでございますが、なぜ政府の方から積極的に、与党でありますから、与党を動かして、委員会を開くなりして審議をされようという努力をされなかったのか、この辺をお尋ねしたいと思います。
  98. 中川昭一

    中川国務大臣 これは議院内閣制ですから、何回も申し上げるつもりはございませんが、私が七月三十日に拝命して以来、与党議論を夏、九月ぐらいからしてきたわけでございまして、与党の御議論も、最初のうちは非常にいろいろな御意見があって、その中で最終的に集約されていった。また団体の方も、先ほど申し上げたように、一昨年来の議論がだんだん集約されていって、ほぼ合意が得られるようになってきた。これが政府与党の非公式なといいましょうか、政府与党間の作業であります。  これは、特にこの問題に限らず、一般的にそういうやり方をやっておるわけでございますが、その上でまた、より広い舞台、あるいはまた各党、あるいは国会の場を通じて御議論をいただくということで、与党との本格的な議論も実は秋以降でございまして、その限られた中で与党との精力的な話し合い、また国会の場でもその後いろいろな場で、まだ最終決断をする前からいろいろな御質問等もいただいてきたところでございます。  そういう意味で、限られた、凝縮された期間ではございますけれども、先ほど先生との御質問、また答弁が繰り返しにならないように申し上げますが、早ければ早いほどいい、しかし何で今ごろからなんだと、前と後ろから詰まったようなぎりぎりの時間的な中で、最大限の御理解そしてまた御了承をいただいたというふうに考えております。
  99. 漆原良夫

    ○漆原委員 議院内閣制という制度はよくわかります。それは形式論でありまして、政府自民党、ある意味では一体なわけでございますから、政府の方から積極的に自民党の方に声をかけていただいて、どうかこれを農水委員会審議してもらいたい、こういうふうな働きかけは十分できるわけであります。  実際に昨年の十二月十八日に農水委員会が開かれたわけでございますが、まさに三者合意の成立した翌日ということで、しかも野党の方からぜひ開くべしという要求があって初めて開かれた、こう聞いております。  そういう意味では、これは政府としては、もしこの野党からの要求がなかったら、全くこの問題について野党意見を聞くという意思はなかったのかどうか。なかったというふうに解釈されてもやむを得ないと思うのですが、いかがでしょうか。
  100. 中川昭一

    中川国務大臣 限られた時間の議論でございまして、十七日に三者で合意をし、十八日に当委員会で御議論をいただき、そして十八日に閣議で正式に政府としての関税化措置を決定したということでございます。その間、本当に限られた時間ではございますけれども、先ほども議論のありましたように、四月一日からということとの、異議申し立て期間の三カ月との時間の問題もございますし、早く決定をしなければならないということもございました。  これは、あくまでも、食糧法あるいはまた関税定率法等の御審議を最終的にいただくということが国内法上必要なわけでございますので、WTOの通知という政府の手続と一体として、現在この場で関係法案の御審議をいただいておるということでございます。
  101. 漆原良夫

    ○漆原委員 私がお尋ねしたのは、野党の方から要求があって初めて開かれたということでございますけれども野党の方が要求しなかったら、大臣としては、この問題について国会審議を経ないで済ませよう、こう思われていたかどうかというお考えを聞きたいのです。
  102. 中川昭一

    中川国務大臣 この問題は、お米の関税化という、農業政策上も、また生産者だけではない、国民全体にとっても極めて大きな問題でございますから、仮に野党先生方から御議論がなくても国会で御議論をいただくべき重要な問題であろうというふうに考えております。
  103. 漆原良夫

    ○漆原委員 ちょっと質問と答えがすれ違っておるように思いますが、ただ、いずれにしても、今までの経緯からすると、野党からの要求がなければ、大臣としては積極的に関税措置への切りかえについての審議国会でする気はなかったんだなというふうに私は考えます。野党の要求で、実際には十二月十八日に三時間ということで衆議院の農水委員会が開かれました。その終了後、同じ日に、内閣総理大臣談話が、切りかえに向けた所要の手続を進めるという談話が発表されております。こう考えてみますと、初めから国会審議関係なく、与党としては、政府としては、もう切りかえをやるんだ、こういう前提の上で進められておって、国会審議はある意味では非常に形式的だったんじゃないかなというふうに考えざるを得ません。  私は、全体を総括しますと、広く国民の意思を聞こうとなされなかった、また国会における審議も非常に形式的、消極的な姿勢大臣は臨まれた、こう考えますと、大臣としては、今回の切りかえについては国民的な議論の盛り上がりというのをある意味では意図的に避けたんじゃないか、決定を先にしてしまって後で議論していただこう、こういう姿勢であって、関税措置への切りかえについての国民的な議論を意図的に避けたんじゃないかなという印象をぬぐい去れないんですが、いかがですか。
  104. 中川昭一

    中川国務大臣 決してそういうわけではないと御理解をいただきたいわけでありますが、仮にWTOへの通知自体は政府の手続でできる、しかし、先ほども議論のありました譲許表の変更等国会で承認をいただかなければなりませんし、関税化をするということで、今まさに御議論をいただいております法律改正が必要になってくるわけでありますから、国会を全く無視して政府だけで仮にやるとするならば、野党だけではなくて与党先生方の御理解もいただけないというふうに考えなければなりません。  そういう意味で、我々としては、限られた時間ではありますけれども、できるだけ国会先生方を初めとして国民的な御理解をいただくべく努力をしてまいりましたし、今後も引き続き、先生の先ほどの御指摘もいただきまして、頑張っていかなければならないというふうに考えております。
  105. 漆原良夫

    ○漆原委員 この問題について最後に私の感想を申し述べたいと思うんですが、国民合意というのは、ある意味では、政府の決定したことについて盲目的に理解を示していく、こういうことではなくて、国民が苦しんで議論をして、その中から生まれてきたものが本当の意味国民合意ではないのかな、こう思っています。したがって、そういう機会を今回奪ってしまった、機会を与えなかったという政府の手法というのはまことに残念だ、私はこう思っています。  大臣は、今から振り返ってみて、今回の決定の仕方は拙速だったということを率直にお認めになるお気持ちはないでしょうか。
  106. 中川昭一

    中川国務大臣 先ほども申し上げましたように、九五年からこの制度がスタートし、また二〇〇〇年から新しいルール、新しい交渉が始まっていくという中で、先ほどから申し上げておりますように、確かに、議論としては限られた数カ月という、逆算した時期も決まっておりますし、また、最初から何年かかけての見通しというものも見きわめていかなければならないということでございましたので、この決断というものはぎりぎりのものであったというふうに思います。拙速とは思いませんが、限られた時間の中で、この選択が与えられた中ではベスト選択であったというふうに私自身は考えております。
  107. 漆原良夫

    ○漆原委員 この問題の最後として、締めくくりとして、今後本当に国民合意を図っていかなきゃならない、こう思います。そのために、政府として、大臣としてはどんなふうな方法を具体的におとりになるのか、それをお尋ねしたいと思います。
  108. 中川昭一

    中川国務大臣 まず一つは、次期交渉というものに向かって各国間のいろいろな駆け引きがもう既に始まっているのではないか。アメリカの議会報告、あれは米国内の話でございますけれども、あれが大きく報道され、何かもうWTOに提訴するのが確実だというような報道までされておりますが、我々の承知しておるところでは、そういう状況には至っていないという理解もございます。  そういう意味で、これから我々としては、次期交渉というものは、あくまでも基本法の精神との整合性というものも日本立場としては考えていかなければならない。つまり、日本国内食料生産をこれからますます維持増大させていく、あるいはまた消費者のニーズにこたえられるような、国内生産を中心とした安定的な食料供給をしていかなければならない。さらには農業、農村あるいは山、海が果たす、食料供給だけではないいろいろな機能というものがひいては地球的な人口と食料あるいはまた環境面での貢献というものに果たす役割等々、いわゆる非貿易的関心事項をも踏まえ、そして特に、輸出国と輸入国とのバランスがとれてない現行ルールを何としても修正して、輸出国、輸入国がともに対等の立場で互いに貿易が前進できるような形にしていく。  それは、何も輸出を拡大するということだけが自由貿易の目的ではない、輸入国の立場、輸出国の立場、そして先ほども申し上げたようにそれぞれの国の事情、歴史、文化、いろいろなものを踏まえての各国間の相互信頼というものの上に国際的な貿易ルールというものが成り立っていく、そういう観点から国内合意を深めるための努力をし、また各国の理解を得るための努力をさらに続けていきたい。特に先生からも先ほど御指摘をいただきましたことも改めて私の決意のきっかけにさせていただき、努力をしていきたいと考えております。
  109. 漆原良夫

    ○漆原委員 今回の関税化への切りかえに関連して一番皆さんが心配されているのは、次期交渉ミニマムアクセス水準がどのぐらいになるのか、それから関税水準がどのぐらいになるのか、ここが一番大きな問題であると思います。  今大臣もおっしゃいましたけれども、アメリカのクリントン大統領が米国議会に提出した年次報告書、これによりますと、日本が四月から予定している米の関税化について、食用の高級国産米と加工用輸入米の価格を比較して高関税率を算出するのは関税算出方法に疑義があるというふうな記事が載っておりました。  この点に関しては、昨年の十二月十八日、我が党の宮地委員の方から既に御指摘がされていまして、こういう高関税率を維持できるかどうか、特にアメリカの通商代表部がぴりぴりしているよ、一九八六年はまさにタイ米、しかもそれが加工米でしょうというふうに御指摘をされて、それがそのとおり今まさに現実化されようとしているわけでありますけれども、我々も非常に心配しております。  ここで失敗をして、アメリカの言うなりになって引き下がってしまうようでは、今回の政府措置そのものに対して国民の信頼が失われていくだろう、こう思います。アメリカの主張と日本の主張、断じて我々の主張を維持していくんだ、それにはどう対処していくのか、その辺を明確にお示しいただければありがたいと思います。
  110. 中川昭一

    中川国務大臣 もとよりアメリカは日本にとって友好国でございますから、そういう意味で、いつも必要があれば話し合いをし、また時には意見が違えば激しく議論をできる関係の両国であります。現に、昨年のAPEC、林産物、水産物のときには、まさに政府あるいはまた国会挙げて頑張れ、頑張れという応援をいただきながら、あのAPECの話し合いの場で我が国の主張が通ったというふうに理解しておるところでございます。  次期交渉におきましても、米が一番大きな問題でありますけれども、米に限らず農産物一般、あるいは水産物も林産物も、またほかの品目も含めて、我が国としては包括的にバランスのとれた貿易ルールに直していこうという決意を持っております。  具体的にどういう形にするか、今先生指摘のように、ミニマムアクセスをどうするのだ、あるいはまた関税に相当するものをどのぐらいにするか、いろいろ具体的なことにつきましては、まさにこれから国民的な合意を形成するために国会の場を初めとして御議論をいただくところでございまして、いわゆる対処方針はまだ決まっておりませんが、ぜひ国民合意のもとでの次期交渉に向けての対処方針をつくっていく。それを踏まえて、我々としては、我が国立場というのは決して我が国一国のエゴイズムではないのだということも踏まえて、特にアメリカとのやりとりが一番厳しくなるでありましょうけれども我が国立場を守り抜いていくという決意は、私を含め政府全体としてきちっと取り組んでいきたい。また、そのためにも、先生を初め国会の場での御議論、そしてまた御支援をいただくことを、この場をおかりしてお願い申し上げたいと思います。
  111. 漆原良夫

    ○漆原委員 大臣の御決意をお伺いしましたが、今の決意のままに、今回決めたこの高関税率を断じて守り抜くように、外務省なんかも一緒になって、外圧に負けないようにひとつしっかり頑張ってもらいたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  112. 穂積良行

    穂積委員長 次に、中林よし子君。
  113. 中林よし子

    ○中林委員 私は、質問するに当たりまして、まず一言申し上げたいと思います。  これまで米の関税化をめぐって論議をしてきましたけれども、極めて未解明な問題をたくさん残しております。しかし、本日三時間の審議で採決をしようということは、今後の日本農業にとって大変大きな禍根を残すことになりはしないか、このように思いますし、また、日本農業責任を負うべき当委員会の役割からしても極めて残念なことだ、このように指摘をして質問をいたします。  本日、政府の統一見解が出ましたので、急遽それについて質問をいたします。  外務省にお伺いします。  異議申し立てがあった場合に、譲許表改正ができず、現在の譲許表が残るわけですが、その譲許表の効力はどうなるのか。効力はなくなるのか、それともなくならないのか、端的にお答えいただきたいと思います。
  114. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 お答え申し上げます。  一般的に申せば、譲許表の修正が発効するまでは修正前の譲許表が有効であるということでございますが、本件につきましては、我が国は、農業協定の規定に従って特例措置の適用を終了するべく対応しているところでございます。農業協定の定める指針に従って関税を算定している限り、万が一にも、我が国の努力にもかかわらず譲許表の修正手続が完了しないことがあっても、国内法令上の措置により関税措置への切りかえは実施できると考えます。
  115. 中林よし子

    ○中林委員 今外務省は大変なことをおっしゃいました。つまり、一般的には修正されなければ現在の譲許表が残る、今回の場合は、それならば今回は、農業協定のいわば特例措置関税化移行する、それにのっとってやっている、ただ、それは国内の手続にすぎない、WTOに通告はしたけれども、異議申し立てがあった場合は国内法の方が優先するなどという規定がどこにありますか。
  116. 中川昭一

    中川国務大臣 今経済局長が申し上げたのは、もう当たり前のことを言っているわけで、特別法が一般法に優先する、特別協定が一般協定に優先するということであります。そして、そのための国内措置が必要である、国内措置を通報すれば、その特別協定に基づいてそのまま実施することができるという当たり前のことを申し上げたわけであります。
  117. 中林よし子

    ○中林委員 国際的には何が通用するかということが今問われている問題ですよ。  それで、一九四七年のガット二条1(b)の規定で明記されていますが、この考えについて、さらに千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第二条1(b)の解釈に関する了解で、より譲許表の問題が強化されたわけですよ。国内法だけで関税化できるということがこの原則に真っ向から抵触するものではないですか。それでいけるんですか、外務省。
  118. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 お答え申し上げたいと思います。  繰り返しになって申しわけございませんが、一般的に申せば、譲許表の修正が終わるまでは現行のものが有効でございますが、本件につきましては、あくまでも農業協定という条約、この条約の規定に従って関税措置への切りかえを行うものでございます。  したがいまして、先ほど来申し上げていますように、その譲許表の修正については、もとより確認書が発出された後で国会に提出をし御承認を得たいと考えていますけれども、譲許表修正手続が終了しない場合でも、加盟国による特例措置の適用の終了は関税化という農業協定上の基本原則にかなうものであるので、国内法令により関税措置への切りかえを実施することができるということでございます。
  119. 中林よし子

    ○中林委員 特例措置の附属書によって計算されて通告されたというのは私もよく承知しています。  でも、あの規定で6の要件を満たしてということがあって、それぞれ各国が譲許しなければそれは生きない規定になっているわけですよ。しかも、譲許というのは国際ルールなわけですから、よその国は何を見るのか。国内法を見るわけじゃないですよ、譲許表が改正されたのかどうなのか、修正されたのかどうか、ここを見てやっていくわけです。だから、日本政府の統一見解で、例えばWTO協定違反で提訴された場合には、日本政府の見解でいけるんですか。
  120. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 お答え申し上げます。  譲許表の修正に関連しましてですけれども、確かに関税措置に切りかえる場合に、譲許表の修正も必要であるということは申しておりますけれども、一定の時期までにそのような譲許表の修正を終えなければいけないという規定はございませんので、先ほど来の立場を表明しているわけでございます。  他方、諸外国につきましては、日本側のとります関税化措置についてはWTOの事務局に対して通報してございまして、WTOを通じて各国に連絡が行っております。したがって、日本側がいかなる措置をとろうとしているか、これは農業協定に基づいて行っている措置であることは明らかでございまして、日本側の措置については諸外国は承知しておるところでございます。
  121. 中林よし子

    ○中林委員 WTOの農業協定そのものは国際ルールを規定しているものです。だからこそ九十日以内という規定がちゃんとあるわけですから、それによって譲許されない、修正が認められない、そういうことになれば、国際ルールは前の譲許表が残っていくわけですよ。結局、国内法令によって関税化を実施できるという日本政府の統一見解、きょう出されたものは、国際的には私は全く通用しない、まさに日本政府のひとりよがりな見解であって、国会がこういう統一見解を是とするならば、国会自身の権威の問題にもかかわる、こういうふうに思います。このことを指摘して、次の質問に移ります。  米の関税化というのは、国内法さえ改正すればできるということを今でも繰り返しておっしゃるわけですけれども、そう生易しいものではないでしょう。この一週間の世界の動向でそのことが極めてはっきりしたというふうに思います。  三月九日にアメリカ通商代表部が議会に提出した通商年次報告で、米の関税化に懸念を表明して、その中で特に、日本関税率の算出に当たって用いた方法について懸念を示した、新たな第二次関税率を最大限にするため、日本は高コスト、高品質の国産米のこれまでの価格を加工用の低品質の輸入米の価格と比較した、この方式はWTOとの一貫性において疑問を生じさせるものであると、高関税の譲許自体にWTO協定上の疑問を持っていることを表明したわけです。これは、日本の米関税化に伴う譲許に対して異議があることを議会に表明したと言えるものです。あとは、アメリカがWTOに申し立てるかどうか、そこだけですが、アメリカの異議申し立ての可能性というのは極めて高くなっていると言えると思うのです。  いずれにしても、きょうを入れてあと四日間、結論は出てまいります。問題は、アメリカが日本の米の関税率を引き下げるために圧力を加え続けると表明しているわけですね。その手段の中に異議申し立ても含まれていることは明らかだと思います。政府は、こういう事態になることを想定せずに今回の関税化に踏み切ったのでしょうか。その点を明らかにしてください。
  122. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、大統領の議会報告というのは例年年一回やっておる通常のものであり、そしてその中で、米、鉄鋼等について二国間でよく話し合い協議をし、またWTOの場、その他の場等でもよく協議をしていく、そして圧力をかけ続けるというような表現があるわけでありますが、この表現そのものは昨年の議会報告でも使われておる表現でございます。  また、アメリカが異議申し立てをするかどうかというのは、WTO協定上根拠のあるかどうかは別にいたしまして、あくまでも権利としてあることは私どももいささかも否定するものではございません。アメリカがどういうふうにするかはアメリカの御判断でありましょうし、また、我々は、常にこの問題については我が国の正当な立場について話し続けておるところであり、今回の議会報告についても、国内問題ではありますけれども我が国からアメリカに対して、さらに日本の正当なる立場というのを主張し続けておるところであります。アメリカが異議申し立てをする可能性が高くなったか低くなったかについては、私はそういう差し出がましいことは申し上げることはできません。
  123. 中林よし子

    ○中林委員 大臣は、極めて何か、アメリカがどのような立場をとろうともと冷静さを装おうとされておりますけれども農水省はこんな冷静な立場はとっていないじゃないですか。新聞報道によると、アメリカにちゃんと説明に行って物別れに終わった、このようにも書いてあって、かなり慌てておられる様子がうかがえるわけですよ。  そこで、私は、政府の見通しというのは甘過ぎたんじゃないかと思います。農業団体をミスリードしたと厳しく批判されることになると私は思いますよ。場合によっては、政府政治責任農水省を含めてのことですけれども、これが問われることになりはしないかと私は思います。  前回、私の異議申し立てに関する質問で、大島外務省経済局長が、「万が一にも異議申し立てが行われた場合にも、私どもとしては、私どもの考えるところに従いましてそれを説明し、先方の理解を得て異議を撤回してもらうように働きかけるわけでございます。」こういうふうに述べているわけです。  要は、日米二国間交渉になるのじゃないかと思いますね。アメリカは、関税率を引き下げない限り異議の撤回はしないでしょう。そのことは通商年次報告を読めばはっきり出ているわけです。現在の譲許表が有効なものとして生きている状況が長期に続くことになっていって、関税化を強行すれば、譲許ルール違反の状況が長期に長引くことになると私は思います。国際国家日本を標榜しておられる日本政府としても、次期交渉を進めようとする農水省としても、こういう二国間交渉に持ち込まれることは決して望ましいことではないんじゃないかと思いますけれども大臣、いかがですか。
  124. 中川昭一

    中川国務大臣 今回の関税化につきましても、アメリカとの間で二国間交渉はただの一度もやったことはございません。今後もやるつもりはございません。やるべきことは、お互い、先ほど申し上げたように、友好国であり、米に関心のあるアメリカに対して、我が国の正当な立場説明する話し合いの場は頻繁に持っていることは事実でございます。
  125. 中林よし子

    ○中林委員 二国間交渉をこれからもやらないとおっしゃるわけですか。例えば、アメリカ政府が異議申し立てをした場合、アメリカとの間の交渉というのはやらないのですか。
  126. 中川昭一

    中川国務大臣 ですから、異議申し立てがあった場合には、異議申し立てというのはあくまでも向こうの持っている権利であり、各国が持っている権利でありますから、我が国としては、我が国立場説明し、御理解をいただくということであって、あくまでも正式の各国間の貿易ルールに関する協議の場というのはWTOの場であるということであります。
  127. 中林よし子

    ○中林委員 異議が出た場合はWTO協定の場だとおっしゃいますけれども、二国間の間ということになるわけでしょう、アメリカから出たら。  その場合、「自由民主」という雑誌の中に、かつて自民党農林部会長をやっておられた柳沢代議士が講演をされている中で、二国間交渉についてこういうふうに述べておられるのです。これは自民党の第十六回全国研修会で、「日本農業の現状と新農政のポイント」ということで話されているのですが、「一般的に言って、貿易の問題を日米二国間で交渉した場合には、日本がアメリカに対して言えることは余り多くありません。日本はアメリカに対して猛烈な黒字になっているからです。」こういうことを言って、日米二国間交渉で関税の引き下げを向こうが要求していることに対して、ちゃんとそれを維持できる保証というのはないんじゃないでしょうか。
  128. 中川昭一

    中川国務大臣 済みません、それは、柳沢農林部会長が発言されたのですか。(中林委員「ええ、講演で」と呼ぶ)柳沢農林部会長は、私の前の農林部会長でございまして、WTO協定のときの農林部会長が私でございますから、それはWTOのまさに交渉をやっている最中の御発言だと思います。
  129. 中林よし子

    ○中林委員 自民党の農林部会の責任者が、講演で、二国間交渉ということになれば、アメリカに対してはほとんど言えることはないんだと。つまり、アメリカの方が関税を引き下げよと言われると、それに対して異議を申し立てられないということを吐露しておられるわけですよ。  だから、私は、今回アメリカの通商部の報告で、ずうっと日本に対して圧力をかけ続ける、このように言い切っているわけですから、高関税が保たれていくという保証はどこにもないということを申し上げておきたいと思います。  それで、私は前回の質問で、ミニマムアクセスというのはWTO協定上は最低輸入義務ではなくて最低輸入機会であって、それが民間貿易であろうと国家貿易であろうと、何ら区別がないものであることを明らかにいたしました。日本政府が、透明性のある手段で、日本国民がどんなに関税が低くても長粒種は主食用としては食べないものだ、需要がないものだ、こういうことを証明し、説明すれば、現在のような在庫として山のようになっているミニマムアクセス米の輸入量を削減したとしても、何らWTO協定上問われるものではないというふうに思います。  現在の特例措置をとることによって仮に二〇〇一年以降アクセス数量が上積みされたとしても、輸入義務ではない以上、何の問題もないじゃないですか。そのことは、日本が特別措置を継続した方が日本農業にとって決定的に重要だ、その方がより利益になるんじゃないですか。大臣、いかがですか。
  130. 堤英隆

    堤政府委員 このウルグアイ・ラウンド農業協定におきます米のミニマムアクセス機会の法的性格につきましては、平成六年五月二十七日の衆議院予算委員会におきます政府統一見解をこの間お話ししたところでございます。単に機会を提供するということだけでなしに、米につきましては国家貿易品目ということでございますので、国が輸入するということでございますので、ミニマムアクセス機会を設定すれば、通常の場合には当該数量の輸入を行うべきものというのが政府の統一的な見解でございます。  この点につきましては、今御指摘がございましたけれども、国貿をとって、要するに特例措置を講じながら、かつ一次税率のような低い形のものをとるということはできません。そういう意味では、我が国の米につきましては、国貿をとって国内需給に影響を与えないということと、それから、二百九十二円という、これは置きかえれば七三〇%に相当するわけでございますけれども、そういった高いものを張れるということは、これは一緒に、セットになっているわけでございます。  そういう意味で、このミニマムアクセス機会ということにつきましては、国貿ということによりまして国内需給に影響を与えないような措置をとっていくことができるというふうに考えております。
  131. 中林よし子

    ○中林委員 前回の質問でも聞きましたけれども、義務輸入というのはどこに書いてありますか。WTO協定上あるんですか。
  132. 堤英隆

    堤政府委員 これにつきましても前回も私お答え申し上げているところでございますけれどもミニマムアクセスを国家貿易で行います場合に、約束数量の全量を輸入しなければならないという義務がWTO農業協定上明文化されているわけではないということは、前回申し上げました。  それで、これは明文化されているわけではございませんが、ミニマムアクセスは、この運用を国貿で行います場合には一キログラム当たり二百九十二円、当時の輸入価格関係で七三〇%という高いマークアップを徴収することが認められている背景には、国貿でございますので、アクセスはこの全量を輸入されるべきものという共通の理解、そういうことの上に立っているということでございます。
  133. 中林よし子

    ○中林委員 それは政府のそのときの統一見解ということであって、政府のいわば国内での解釈にすぎなくて、国際的にはどこにも通用しませんよ。  私は韓国の例も出しました。韓国は、自主的な判断で、ミニマムアクセスの譲許に書かれている数量よりも多く輸入している年もありましたけれども、おおむねそれよりも低い数量でしか輸入していない。アメリカの農務省の資料も提示して私は質問いたしました。しかも、日本が同じように国家貿易をとっている一般用途向け指定乳製品、これなどは、ミニマムアクセス量よりもさらに上回って入ってきておりますけれども、マークアップの、それよりも本当は第二次関税をかけなきゃいけないのにかけないで、低い関税でしか入ってきていないじゃないですか。参議院の委員会で明らかになったというふうに私は思います。  そういう意味では、本当に、今回、農業団体国民に対して、関税化移行していくことがミニマムアクセス数量を減らすことになるんだからこれがベスト選択だったと言われますけれども政府の勝手な解釈で、義務的輸入でないにもかかわらずそれを満額入れてきた、それ自体の方がおかしいんじゃないかと思うわけです。  それで、私は次期交渉についてもいろいろと論議をしたいと思ったわけですけれども、残念ながら時間があとわずかしかございません。  そこで、お聞きしたいと思うんですけれども、私は、日本特例措置そのものを残していった方が、政府の考え一つミニマムアクセス数量を減らすことができる、この立場にしっかり立てばいいということを言っているんですが、あのWTO協定交渉のときに日本特例措置を選んだということは、食料安全保障の主張の裏づけだったんじゃないかと思うんですね。  ここに外務省が出した「解説WTO協定」がありますよ。食料安全保障の項目がございます。そこを見ても、農業協定においては、前文のほか、以下の規定において食料安全保障に配慮がなされている、こういうふうにして、一定の条件を満たす農産物については、食料安全保障等の非貿易的関心事項の要素を反映する特別措置の対象として、関税化を行わないことができることが挙げられているんです。要するに、食料安全保障の裏づけとして特例措置というのはあったわけですね。その食料安全保障について、その実現に日本政府は先頭に立ってきたんだ、このようにおっしゃっております。  その日本が今回この特例措置を放棄して関税化に踏み切るということを他国が、よその国が見たら、日本食料安全保障の主張を投げたんだなというふうに見られないかと思うんですけれども、その点はいかがですか、大臣
  134. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、韓国についての先生の前回からの御指摘については、後ほど食糧庁長官の方からお答えさせます。  ミニマムアクセス選択し、国家貿易を維持したということは、まさに食料安全保障でありまして、ミニマムアクセスで民間貿易ルールであれば、先ほど食糧庁長官が申し上げたとおりのことになってしまうわけであります。ですから、国家貿易というのは、国内の安定的な需給のために歯どめにもなれば、必要であれば国家管理のもとでそれ以上のものを輸入することもできる。だから、先生指摘のように、脱粉等が足りない場合には緊急輸入をするということも、国家貿易のもとで必要なことであるからやるわけであります。  まさに、国民にとって、責任を持った、重要な農産物について国がきちっとやるために国家貿易が必要であり、その意味で、食料安全保障という観点からこの制度が機能しているわけでございまして、そういう立場からの御理解をいただきたいと思います。
  135. 堤英隆

    堤政府委員 韓国政府関係がございましたので、その点については御説明させていただきます。  韓国政府につきましては、米のWTOへの通報ということをやっております。それの資料によりますと、一九九五年から九七年まで、各年ともミニマムアクセス枠の全量が輸入されたという実績が報告されております。  具体的にも、韓国の約束数量は、一九九五年は五万一千三百七トン、一九九六年は六万四千百三十四トン、一九九七年は七万六千九百六十一トンの約束がございますが、輸入実績は、一九九五年には玄米ベースで五万七千八トン、一九九六年には精米ベースで六万四千百三十四トン、一九九七年には七万六千九百六十一トンということで、それぞれ、韓国政府といたしましてWTO事務局に対しまして、一〇〇%の輸入実績であるということの御報告がされているというふうに承知いたしております。
  136. 穂積良行

    穂積委員長 中林君、質問時間が超過しております。
  137. 中林よし子

    ○中林委員 時間がもう過ぎておりますので、関税化は本当に禍根を残すことになるので、撤回を要求して、質問を終わります。
  138. 穂積良行

    穂積委員長 次に、前島秀行君。
  139. 前島秀行

    ○前島委員 水かけ論になるからあえて答弁は求めませんけれども、けさからの議論の中で、譲許表そのものも、国際ルール、条約の一つを構成していると私は思います。同時に、国内法が条約に優先することはないだろうとも思います。したがって、先ほどの統一見解に、四月一日までに手続を完了しなくちゃいけない、そういう規定がないからいいんだ。これを前提としましても、条約を構成する譲許表の承認がないということは、その条約は完成をしていない、手続中である、こういうふうに解釈すべきだろうと思いますね。  したがって、政府が言うように、四月一日をもって関税化するんだというのはいわば日本の宣言みたいなものだから、それはWTO協定に基づいて承認されたとしても、条約を構成するこの譲許表というのはまだ手続途中なんですね。手続の途中なんですよ、完了していないのですよ。だから、WTOも了承のサインを日本には出さない。したがって、条約としての国会の手続はできない、こういうことになるわけなんです。  譲許表そのものも条約を構成する要件である、同時に、国内法が国際法に優先することはあり得ないという前提に立つならば、やはり譲許表の承認が完了していないと、それを実行することについては無理があるのではないか、問題がありゃせぬかということ、もしアメリカ等が提訴をした場合はそういう事態が起こることは間違いないと私は思います。  そう思うということを答弁を求めても水かけ論になりますから、私は答弁は求めませんけれども、けさからの議論を聞いていて、その辺のところには無理がありゃせぬかなということだけは指摘をしておきたい、こういうふうに思います。  それから、長官もしくは経済局長でいいのですけれども関税化したのだから外国から米は入ってこないぞ、ここを余り言って、国民並びに生産者に幻想を与えることは、今後の問題として非常に危険ではないかなという感じが私はします。  確かに、二〇〇〇年までのことを考えると、やはり七万数千トンは減少させることができるかもしれませんけれども、しかし、さまざまな要件を考えると、関税化したら米は入ってこないんだということを余り農民並びに国民に期待させることは、関税化を絶対化することについては危険ではないかな、こういうふうに実は思っているのです。  そこで、長官並びに経済局長に聞きますが、あなた方が出した資料に基づいてこれからの関税相当量を計算しますと、例えば、これも交渉事の一つでしょうけれども、一九九七年を基準年とした場合の関税相当量は幾らになるのか、あなた方が出したこの資料に基づいて計算をしてみますと、輸入米は六十円から百円の間ですから、計算上、中をとったとして八十円としますね。これに対して、国産の一九九七年の新潟コシヒカリは三百四十四円。この関税相当量は幾らになるかというと、二百六十四円です。あなた方の資料に出ているあきたこまち、一九九七年の価格は二百九十二円です。これを八十円引けば幾らになるかとなると、二百十二円。それから、きらら三九七、北海道、これは資料によると二百五十三円。八十円引くと百七十三円。これは大ざっぱな数字ですけれども、いわゆる一九九九年の三百五十一円十七銭という関税相当量と同じ計算方法で、一九九七年を基準年とすると、大筋こういう数字になるだろうと思いますね。  交渉事の一つだろうけれども、もし基準年が二○〇〇年からの交渉の中で一九九七年となったとすると、関税相当量は、新潟の場合をとった場合、三百五十一円十七銭から二百六十四円、あきたこまちは二百十二円、きらら三九七は百七十三円に関税相当量が下がってしまうという計算に概略なるわけですね。  あるいは、先ほどの議論から、これからも日本に対して関税引き下げの圧力攻勢をする、こういう議論になったとすると、さらに削減率というのが加わるとすると、二〇〇〇年まではミニマムよりか多少、七万六千トン抑えられることは間違いないけれども交渉次第では、二〇〇〇年を超えたらこういう結果になるよ、関税化というのはそういうものだと私は思いますね。  そういう面で、関税化をすれば米は入ってこないのだ、最高の選択なんだというのは、二〇〇〇年以降の、これはあくまでも交渉事という前提はつくけれども、そんなに期待感を与えたり幻想を与えることは、結果として、いろいろ生産者国民農政不信、政治不信を招く要因になりゃせぬのかな、そういう心配をしますが、その点について御答弁をお願いしたいと思います。
  140. 堤英隆

    堤政府委員 私どもは、今回の関税率をはじきましたことを前提といたしまして、国内産米にどういう影響があるのかというさまざまな御指摘がございますので、今見ていただきましたような資料によりまして、今回の関税相当量を張れば、国内産米の価格に対しても相当高い水準でございますので、当面、国内産の需給に影響を与えることはない、そういうことの説明はるるいたしております。  それから、次期交渉の点についての御指摘であれば、これはまさに御指摘のように、次期交渉の中でどういうスタンスで臨んでいくのかということでございまして、今おっしゃいました基準年一つとりましても、どんな形になるのかというのは、まさに交渉事でございます。  また、全体のミニマムアクセス数量がどうなるのか、そういうことも含めて全体の交渉になるわけで、私どもは、大臣から何回も御説明を申し上げておりますように、国内農業に悪影響を与えることがないよう、精いっぱい理論構築もし、政策も練って対応していくということであろうというふうに思っております。
  141. 前島秀行

    ○前島委員 私は、そんなことを聞いてないのですよ。三百五十一円十七銭を決めた計算の方法で、同じ方法で、例えば基準年を一九九七年にとると、おおむねこういう数字になりますねということを聞いているのですよ。それは基本的にそうでしょう。
  142. 堤英隆

    堤政府委員 私どもは、八六年—八八年を基準として計算をしておりますので、今おっしゃられましたような形での数字をはじいておりません。
  143. 前島秀行

    ○前島委員 水かけ論ですから、いろいろな立場があるから下がると言うわけにはいかぬだろうと思いますけれども、素直に、やはり同じ計算方法でいけば、例えば基準年はこうなるとこう下がるのですよ。  だから、永久に一九八六年から一九八八年を基準年にすると次期交渉で決まったなら、あとは関税率がどれだけ下がるかだけなんですけれども、新たな基準年を、一九九六年から九八年というのもあり得る。現在の基準年が出てきたというのは、ウルグアイ・ラウンド交渉が始まったのが一九八六年ですよ、それの三年間の経過を基準ととったんだから、その例からすると、二〇〇〇年ごろが基準年にされる可能性だってなくはない、こういうふうに思いますよ。  私が言いたいのは、要するに、関税化したら米が入ってこないんだ、心配するなという幻想を余り与えると大変なことになりゃせぬかなということを指摘しておきたい、こういうふうに思っています。  それからもう一つ、私は、関税化になるにせよ、ミニマムアクセスになるにせよ、特例措置の継続になるにせよ、ミニマムアクセス米が入ってくることは間違いないわけですね。その中でのSBS方式の問題点ということは、私、あるような気がしてなりません。  九五年、九六、九七、九八年のSBS方式の輸入量を見ますと、九八年は十二万トンになっています。九五年が一万トンで、もう倍々で来て、一万トンが、九六年に二万二千トンになり、九七年が五万五千トンになり、九八年が十二万トンになってきているわけです。そして、このSBS米は、なかなか認めがたいと思いますけれども、国産米にブレンドされているというのは、ある意味で常識的というふうに消費者は受けとめている部分もあることは間違いないですね。  そういうことを考えてくると、このSBS米を今後どうしようとするのか。SBS米は国産米に影響を与えないと言っているけれども、十二万トンが入ってきているのです。現に食卓に流れていることは間違いないわけなんです。このSBS米は、関税化になったってミニマムアクセスとして入ってくるわけでありますから、これは大変な事態になりはせぬのか、この辺の考え方をお聞かせいただきたい。
  144. 堤英隆

    堤政府委員 SBSにつきましての使途がございましたけれども、現在、SBSにつきましては、破砕米は大半が加工用ということでございます。それからウルチ米は業務用等ということで、いずれも低価格米需要に対応して使用されているということでございます。それから輸入数量につきましては、先生のお話があったとおりでございます。  今後につきましては、私ども、現在、十一年度のSBSの数量につきまして、食糧法の規定に基づきます需給計画をつくっておりますので、その検討を進めておりますが、全体としましてことし並み、ことしの十二万トン並みという形で、回数、それから一回ごとの数量、大体そういう方向で現在検討を進めているところでございます。
  145. 前島秀行

    ○前島委員 このSBS米の使用の仕方といいましょうか、利用の仕方について、農水省として改善なりあるいは指導なりをする予定はありますか。
  146. 堤英隆

    堤政府委員 SBSを含めて全体のミニマムアクセス米が、私どもとしては国貿でございますので、国内産米にできるだけ影響を与えないようにということでやってきております。  そういう意味で、従来からも極力国内産米に影響を与えない運営をしてきておりますので、今後もそういう方針を堅持したいということが一つと、それから、仮に主食用等に使われました場合には、それと同等以上のお米を海外等に持っていくことによりまして、実質的にも国内産米の需給に影響を与えない、そういうことでこれからも心がけてまいりたいと考えております。
  147. 前島秀行

    ○前島委員 実質的にSBS米が主食の方に外食産業を中心にして相当進出していることは間違いない事実なんです。同時にまた、国産米とさまざまな形でもってブレンドしていることも事実なのであります。このことを踏まえて、やはり影響を与えないという原則論の中で、私は、ちゃんと指導すべきであるし、改善すべきであろうと思いますので、その点はぜひこれからもやっていただきたいということを要望しておきたい、こういうふうに思います。  それから最後に、大臣、次期WTO交渉に臨むに当たって、国論を統一せねばいかぬ、ウルグアイ・ラウンドの経験からそこを感じた、私は、大臣、当時の御苦労から見ると、実感だろうと思います。やはり国民意見を統一するということは大事だろうと思います、当然のことだと思いますけれども、私は、今回の関税化の決定過程において三者合意だけに重点を置いたということについては、国民合意を得るためには一定の問題点があったことは間違いないだろうと言わざるを得ないと思います。いわゆる三者が協議することは否定しませんし、大事なことだろうと思います。事米であり、主食であるということになってくると、やはり消費者、国民意見を聞いて方針を決めるという手順を踏むべきであったと思います。方針を決めた後というのは、やはり受けとめ方は違うだろうと思います。  そういう面で、大臣のこれからの考え方、あるいは気持ちといいましょうか、決意という意味で、WTOの交渉に向けて国内意見国民意見を統一するという意味で、三者だけではなくして、積極的に議論をしていく、意見を聞いていく、そしてまたこの国会でもその辺のところを大いに議論をする、その辺のところの決意といいましょうか、気持ちといいましょうかを最後に聞かせていただいて、終わりたいと思います。
  148. 中川昭一

    中川国務大臣 次期交渉に向かいましての対処方針といいましょうか、臨む姿勢というものは、まさにこれから数カ月かけて御議論をいただき、そしてこれから文字どおり国民共通認識のもとで次期交渉に向かっていかなければならない。  先生も御指摘になりました、まさに先生と一緒にあのときはやらせていただいたわけでありますけれども、本当に、消費者と生産者があたかも対立しているかのような報道ぶりというものについては、我々としては大変残念なものがあったわけでございます。  そういう意味で、次期交渉に向かうに当たりましては、もちろん、議院内閣制でございますから、与党立場が違ったままでは、国会の御議論にしても、何か物事を決める上でも、これは何もできないということになるわけであります。議論をするに当たりましては、いわゆる与党、そしてまた生産者団体の皆さんはもとよりでございますけれども国会の場を通じて、各党、各先生方の御議論、そしてまた生産者サイドだけではなくて流通あるいは消費者サイド、いわゆる経済団体、さらにはいろいろNGO的な方々が、最近は農業関係にも非常に熱心に関心を持っていただいておりますので、マスコミも含めまして、オール・ジャパンで、あらゆる立場の方々の御意見を聞き、そして意見集約をし、我が国として最善の、国内生産を守り、発展をし、そして国民の安定的な食料供給といわゆる非貿易的な、いろいろな機能の、国内だけではない、地球的な規模での農業の果たす役割というものの合意、新しい協定づくりに向かってこの交渉に臨むべく、これからもまた、先生を初め、国会の場での御議論を拝聴しながら、今後の作業を進めさせていただきたいというふうに考えております。
  149. 前島秀行

    ○前島委員 終わります。
  150. 穂積良行

    穂積委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  151. 穂積良行

    穂積委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。安住淳君。
  152. 安住淳

    ○安住委員 私は、民主党を代表して、主要食糧需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。  反対の第一の理由は、今回の関税化移行に至るまでの政府与党姿勢であります。  ガット・ウルグアイ・ラウンド農業交渉の際、米の関税化受け入れるか否かについては、国論を二分する激しい議論が闘わされました。そして、その結果として、苦渋の選択としてミニマムアクセス米受け入れ選択したのであります。  しかし、今回の関税化受け入れに至る過程を見ますと、一部農業団体との事前協議のみで、これほど重要な決定を農林省並びに与党はしてしまっているわけであります。このような国民不在の決定を、我々は断じて見過ごすことはできません。  第二の理由は、我が国農業の体質強化のために講じられたはずのウルグアイ・ラウンド農業対策事業が、現時点でほとんど効果を上げていないように思われることであります。  この対策が既成の公共事業に予算を上乗せするという形で進められたため、本来であれば足腰を強くし、体質改善をすべき分野に予算面で力点を置かなかったことが、今日の農業の深刻な結果を招いているのであります。政府は、これまでのウルグアイ・ラウンド農業対策事業の内容と効果についてしっかりと総括を行い、その上で今後の我が国農業の体質強化に向けた政策と予算的な裏づけを示すべきであります。そのことが担保されない以上、関税化受け入れを現時点で認めるわけにはいかないのであります。  第三の理由は、関税化受け入れ国内における輸入米のウエートが大きくなるのではないかという生産者並びに消費者の不安を払拭し切れていない点であります。この点については、特に生産者の現場で、関税率がいずれはなし崩し的に下がっていき、十分な国内対策を打たないままに、我が国農業の基盤を根底から崩すのではないかという不信が募っております。まさに、WTO次期農業交渉に臨む政府姿勢が極めてあいまいなことも、今回の委員会審議を通じてまさにその点が浮き彫りになりました。  以上、述べてきましたとおり、現時点での関税化受け入れは余りにも拙速と言わざるを得ません。今国会では、三十八年ぶりとなる新たな農業基本法案の審議が予定されておりますが、本来であればこの審議の中で、今後の我が国農業方向と制度のあり方、さらにはWTO次期農業交渉や農産物の貿易の問題について広範な議論が展開されることになるわけであります。そのような議論を経た後で関税化受け入れについても検討するというのが当然の道筋であると我が党は考えるわけであります。これらのことからも、本法案については反対の立場をとらざるを得ないことを表明しまして、私の討論を終わります。(拍手)
  153. 穂積良行

    穂積委員長 次に、藤田スミ君。
  154. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は、日本共産党を代表して、主要食糧需給及び価格の安定に関する法律等の一部改正案に反対の討論を行います。  反対の第一の理由は、本法案が米を関税化する実施法であり、米関税化が米の本格的輸入につながり、日本農業に壊滅的打撃を与え、食料自給率を低下させるものである以上、この法案の成立は断じて認められないわけであります。  WTO農業協定における関税化は、本協定が、農業に対する助成及び保護を実質的かつ漸進的に削減することを目的とする中で、趨勢的な関税率引き下げにつながるものです。そして、次期農業交渉での大幅な関税率の引き下げと長期的な関税引き下げは必至であります。現に、アメリカのゴア副大統領も、現在平均して四〇%という高率関税を課している農業分野で、大幅な関税引き下げを呼びかけると演説をするなど、アメリカ政府関税率の大幅削減を求めています。  米の関税化と長期的な関税率の低下は、圧倒的な価格競争力を持っている外国産米の輸入を着実に増加させ、特に日本の商社による開発輸入が本格的に始まれば、品種、品質ともに国産米と何ら変わらない米が輸入されることになります。現在、米生産を初め日本農業は、生産者の高齢化と後継者不在の状態に置かれており、米輸入の増加は日本の米生産基盤に取り返しのつかない打撃を与え、大規模な離農の進行と農村の崩壊を押し広げ、食料自給率を急速に低下させていくことになり、決して許すことはできません。  反対の第二は、本法案が成立すれば、条約としての譲許表が改正されなくても関税化が実施できるという、国際法を無視した立場に立った関税化実施法案であるということであります。  従来、関税交渉の際は、WTO事務局への譲許表改正の通報の際は、あらかじめ関係国との調整を済ませてから通報してきたため、異議申し立てがあることはありませんでした。しかし、今回はその事前調整なしに通報したため、異議申し立ての可能性現実化し、アメリカ政府の異議申し立てという事態をも招こうとしているわけであります。それは日本政府の拙速の結果であり、譲許表の改正がなくても関税化ができるという日本政府の主張は、国際法さえ無視した暴論であり、国際的にも厳しい批判を浴びるであろうことを指摘しておきたいと思います。  第三の理由は、関税化前倒しによるミニマムアクセス数量の増加率の削減や、次期交渉にメリットを与えるなどの政府の主張は全く根拠がないという点であります。  今回アメリカからの異議申し立てがなされた場合は、譲許表の改正がなされず、ミニマムアクセス数量の増加率の削減の根拠を失ってしまいます。それでも強行的に実施すればWTOに提訴される可能性があり、紛争となった場合、日本政府ミニマムアクセス数量の増加率の削減を維持できるのか、何の保証もありません。しかも重大なことは、ミニマムアクセスに基づく輸入を義務づけたものでないことはWTO農業協定上も明白なのであります。  次期交渉において、交渉立場を強化するという主張について見ても、昨年の十二月十八日、当委員会の場で中川農林水産大臣は、「各条項の字句を変えていくということ、あるいはフレームワークを変えていくということは非常に難しいことであろう。」と述べ、結局、交渉立場を強化するといっても、農業協定の字句の修正もできないことを初めから想定しているわけであります。関税化のメリットはどこにもありません。  反対の最後の理由は、関税化に際しての従量税の採用と特別緊急関税制度の導入も、関税化による打撃を回避することはできないという点です。  従量税は、不作によって国際価格国内価格も上昇した場合は障壁の機能が低下し、特別セーフガードも、輸入急増に対しては規制的な役割を果たしても、輸入の漸増に対してはその規制を行うことはできないものであります。  以上見たように、本法案は、廃案以外に道はありません。日本共産党は、参議院段階でも本法案の廃案のために全力を挙げることを明らかにして、反対討論を終わります。(拍手)
  155. 穂積良行

    穂積委員長 これにて本案に対する討論は終局いたしました。     —————————————
  156. 穂積良行

    穂積委員長 これより採決に入ります。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  157. 穂積良行

    穂積委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  158. 穂積良行

    穂積委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  159. 穂積良行

    穂積委員長 次回は、来る十八日木曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十七分散会