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1999-03-09 第145回国会 衆議院 農林水産委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月九日(火曜日)     午前十時開議   出席委員    委員長 穂積 良行君    理事 赤城 徳彦君 理事 増田 敏男君    理事 松岡 利勝君 理事 横内 正明君    理事 小平 忠正君 理事 木幡 弘道君    理事 宮地 正介君 理事 一川 保夫君       今村 雅弘君    小野寺五典君       金子 一義君    金田 英行君       岸本 光造君    熊谷 市雄君       熊代 昭彦君    鈴木 俊一君       園田 修光君    中山 成彬君       丹羽 雄哉君    萩山 教嚴君       桧田  仁君    御法川英文君       宮腰 光寛君    宮本 一三君       矢上 雅義君    吉川 貴盛君       渡辺 具能君    安住  淳君       神田  厚君    鉢呂 吉雄君       堀込 征雄君    上田  勇君       漆原 良夫君    木村 太郎君       井上 喜一君    佐々木洋平君       菅原喜重郎君    中林よし子君       藤田 スミ君    前島 秀行君  出席国務大臣         農林水産大臣  中川 昭一君  出席政府委員         外務省経済局長 大島正太郎君         大蔵省関税局長 渡辺 裕泰君         農林水産大臣官         房長      高木  賢君         農林水産省経済         局長      竹中 美晴君         農林水産省構造         改善局長    渡辺 好明君         農林水産省農産         園芸局長    樋口 久俊君         農林水産省畜産         局長      本田 浩次君         農林水産省食品         流通局長    福島啓史郎君         農林水産技術会         議事務局長   三輪睿太郎君         食糧庁長官   堤  英隆君         水産庁長官   中須 勇雄君  委員外出席者         農林水産委員会         専門員     外山 文雄君 委員の異動 三月九日         辞任         補欠選任   今村 雅弘君     渡辺 具能君 同日         辞任         補欠選任   渡辺 具能君     吉川 貴盛君 同日         辞任         補欠選任   吉川 貴盛君     桧田  仁君 同日         辞任         補欠選任   桧田  仁君     今村 雅弘君 三月五日  食料自給率の引き上げに関する請願(藤田スミ君紹介)(第一一一四号) は本委員会に付託された。 三月九日  新たな酪農・畜産基本政策及び十一年度畜産物価格等に関する陳情書(第一〇二号) は本委員会に参考送付された。 本日の会議に付した案件  主要食糧需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案内閣提出第一一号)     午前十時開議      ――――◇―――――
  2. 穂積良行

    穂積委員長 これより会議を開きます。  内閣提出主要食糧需給及び価格の安定に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安住淳君。
  3. 安住淳

    安住委員 きょうは、二時間二十分にわたって私におつき合いをいただいて、中川大臣初め農水省の皆さん、本当にどうぞよろしくお願いします。  まず、法律の問題の前に、大変ビビッドな話題でありますから、大臣日韓漁業協定非公式会合がきのうから始まったということでございますが、こちらに伝わってくる報道内容は、本当にあれだけ苦労をして、我が国国内でも大変不満がある中で、交渉に当たった関係者皆さんの御努力でようやくこの漁業協定が結ばれた、しかし、ふたをあけてみたら、二そうびきの底びき網漁フグ漁の一部についてだけは全く欠落をしていたというのは、きょう、長官、何か交渉にお出になられているところをあえておいでをいただきましたから、事実関係をちょっと伺わせていただきます。  これは、韓国側からは、どういうふうな理由といいますか、正式にはどういうお話があったのか、まずそこからお聞かせ願えますか。
  4. 中川昭一

    中川国務大臣 具体的といいましょうか細かい話は長官から答弁させますが、一月二十二日に日韓漁業協定が発効いたしまして、そしてその後、事務協議が二月五日にまとまったわけでございます。日本でも、決して漁業者皆さん方、百点満点ではないわけでありますけれども、韓国国内において非常に大きな不満があるということは報道等で我々も間接的に知っておりました。その後、今先生指摘のようなこと等、このことについては長官から答えさせますが、非常に複雑な事情に基づく手違いがあったという言い方がございまして、とにかく日本にその事情を聞いてもらいたいということでございます。  本来でしたならば、再交渉とかいうことであれば、これは我々としては再交渉する余地は全くないわけでありますけれども、とにかく事情を聞いてもらいたい、話を聞いてもらいたいということでございますので、日韓友好という広い立場に立って、現在、向こう海洋水産部の次官補、水産庁長官カウンターパートでありますけれども、と長官とがきのうから、話し合いといいましょうか、向こうの話を今聞いているという状況でございます。  長官から答弁をいたさせます。
  5. 中須勇雄

    中須政府委員 ただいま大臣からお答え申し上げたとおりでございます。  先週後半でございましたでしょうか、韓国側から外交ルートを通じまして、東シナ海における二そうびき底びき網漁業そしてフグ釣り漁業などにつきまして、操業条件に関する協議対象から漏れていた、こういう問題が生じたということで、我が国排他的経済水域内でのこれらの操業が確保できるように日本側協議したい、こういう意向が伝えられたわけでございます。  大臣からただいまお話し申し上げましたとおり、既に合意済み内容について、日本側として新たに対応するということは大変難しいことというふうに考えておりますし、こういったことを韓国側に伝えた上で、その事情なり考え方をきのうから聞いているというところでありまして、きょうも引き続き話し合いを続けていきたいと思っております。  具体的に、先生から御指摘ございました、何で落ちたのかということに関しましては、きのう聞いた限りでは、全くの事務的なミスである、業界と、韓国側海洋水産部という役所でございますが、業界海洋水産部の中での情報の間にそごがあった、こういうふうなお話でございました。
  6. 安住淳

    安住委員 どうも、あちらの水産庁長官というのですか、みずから辞任も示唆しているということでありますが、私は、一たん合意したことをもう一度見直すというのは、これは逆に言うと国内的にも大変難しい問題があるだろうと思うのです。  さはさりながら、大臣が今、日韓友好云々という話をしましたが、交渉のプロセスの中で、大体、締結をするときに、韓国における二そうびきの底網漁フグ漁というのは入っていることは当然だということで、例えば我が国もそれは入っているものだと思ってもし協定を結んだのであれば、これはやはり考える余地があるのかなと私は逆に思っているのです。しかし、それが全くないことを前提に我々は協定を結んだのか、そこのところは果たしてどうだったのかだけ、一点確認させていただけますか。
  7. 中須勇雄

    中須政府委員 今回、韓国側から指摘があるまで、私ども全く、二そうびき底びき網漁業及びフグ釣り漁業については、そういうものが我が国水域操業があるという実態承知しておりませんでした。
  8. 安住淳

    安住委員 この話は長くやるつもりはございませんが、大臣、これは事務レベルで話をしてもなかなか難しい話だと私は思います。むしろ、先のことを言えば、やはり政治的な配慮を含めたある種の決断が必要なのかなという気がいたしておりますが、どのような方向で決着をなさる腹づもりでいらっしゃるのか、話していただける範囲で結構でございますから、お話し願えますか。
  9. 中川昭一

    中川国務大臣 先ほど申し上げましたように極めて異例のことだろうと思いますが、日韓友好が、昨年十月、金大中大統領が訪日され、また三月、今月、日本小渕総理が行かれるということで、非常に日韓関係が今いい状況にあるという前提を私は認識をしながら、しかし、物事はあくまでも実務者レベルの話であろうというふうに思っております。  しかし、この後どうなるかということについては、きょうも向こうの話を聞き、そして実務者レベルでのどういう話し合いになるのかを見守りながら、今後のことについては、こういうことはしないとかこういうこともあり得るだろうというような予見を今自分自身に与えるべきではないと思っておりますので、今後については、どういう事態になるかは全く白紙ということで、今、私は実務者同士話し合いを見守っている立場でございます。
  10. 安住淳

    安住委員 長官最後に、国内的なことを言わせていただくと、特に関係する地域の漁協を初め、我が国排他的経済水域へ一部の韓国船が入ってくるということに対しての反発は非常に強かったわけでありますから、これを政治的に、いろいろな配慮の中で、どういう決着になるかわかりませんけれども、国内のそうした漁業者立場というものをぜひ御勘案をいただいて事務折衝に臨んでいただきたいと思いますが、最後にその御決意を伺わせていただきたいと思います。
  11. 中須勇雄

    中須政府委員 この問題については、御指摘のとおり、我が国の漁民の利害に大変重要な影響のある問題だというふうに私どもも受けとめております。  ただいまの先生の御趣旨を体し、関係漁業者初め関係皆様方十分意思疎通をしながらこの問題の解決に取り組んでいくべきだ、そういうふうに思っております。
  12. 安住淳

    安住委員 それでは、この問題はこれで結構でございますから、どうぞ長官交渉があるようでございますから、退席なさっていただいて結構でございます。  それでは本題に入らせていただきます。最初にちょっと確認をさせていただきますが、新農業基本法大臣、きょう閣議決定をなさったということでよろしいですね。
  13. 中川昭一

    中川国務大臣 新しい食料農業農村基本法法律案を先ほど、午前八時五十分からの閣議決定いたしました。
  14. 安住淳

    安住委員 昭和三十六年というのは私が生まれる前の年でございまして、ちょうど三十八年ぶりというか、前の農業基本法も無事育っていれば私ぐらいにはなっていたんだろうと思いますが、なかなかそう思うようにはいかなかったということも、後でいろいろな数字を示しながらきょうは農林省皆さんと少し論戦をさせていただきますが、それに合わせる形で関税化への切りかえ措置決定した。この二つは、いわば我が国農業にとっては大津波と大地震が一回で来た、それは、悪い意味でもいい意味でもやはり大きな曲がり角に来たことしではなかろうか。  そういう点から、まず初めに、この関税措置への切りかえについて何点か御質問をさせていただきたいと思います。  御存じのとおり、平成五年の十二月十四日に我が国ミニマムアクセスを容認いたしました。しかし、そのときの世論といいますか、これはなかなか大変な反発がありました。私は、そのときから今日までの経過を考えた場合に、この米の問題、関税措置への切りかえという問題は、やはりさまざまな選択肢があった中から今日この関税化への切りかえを決断なさった。つまり、さまざまな選択肢というのは、ミニマムアクセス最後までやり切る、また二〇〇一年から関税化をする。しかし、今回、農林省というか大臣は、あえてこの途中期間の中で関税化への切りかえを御決断なさったわけですね。  それは、もう少ししかるべく丁寧な世論形成に向けた努力と、それから、前の委員会で私は何度も質問をさせていただきましたが、一部の生産者団体との協議は確かに大変細かくやったけれども、しかし、そこからもう一つ下がったところの一般農家皆さんというか生産者皆さんに、この関税措置への切りかえというのが何を意味するのかということをもう少し丁寧に説明をすることによって、なおかつ、政府はこれを受け入れるという選択肢をなぜとったのかということをきちっと説明しないといけない義務が実はあったと私は思いますが、残念ながら、私の感覚でいうと、そのことに対してちょっと説明不足ではなかったかな、私はそう思っております。  ですから、大臣、これはここでまず入り口の話でありますから、なぜこの時点関税化措置を受け入れることになったのか、このことをきちっと我々が納得するような説明をしてもらわなければなりません。そのことからまずお願いしたいと思います。
  15. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、なぜこの時期に米を関税化したかということをできるだけわかりやすく説明しろという御質問でございます。  一言で言うならば、いろいろな事情を総合的に勘案してということになるわけでありますが……(安住委員「それじゃだめですよ」と呼ぶ)いやいや、そのいろいろな事情の幾つか、ちょっと漏れていたら長官の方からも説明することをお許しいただきたいと思いますが、九三年の十二月にウルグアイ・ラウンド合意がされ、九四年の四月にいわゆるマラケシュ合意というものでWTO協定が確定をし、そして九五年から新しい体制の中で米は例外なき関税化特例扱いにはなりましたが、ミニマムアクセスという米の義務的な輸入をするということになったわけであります。  毎年〇・八%ずつ入ってくる外国産米、これは一体国内においてどういう存在になっていくのか。一つ前提としては、ミニマムアクセス米国内需給影響を与えないという閣議決定がございますので、それを十分配慮しながら、しかし、消費者が求めるものについてはこれは拒否をするということはできないわけでございまして、そういう中で、ミニマムアクセス米国内における位置づけというものが、これはやってみなきゃわからないということが一つあったわけでございます。そして、それが三年以上経過をいたしまして、そのミニマムアクセス米国内における評価というものの大体我々認識を、実態を把握することができた。  一つには、日本のおいしい、そして値段の比較的高い米の方をやはり国民選択していくんだ、あるいはまた一方では、海外に対する米の支援対象として、これは一定条件がありますけれども、その条件のもとで海外に対する支援のニーズもあるんだというようなもの、あるいはまた、ミニマムアクセス米加工用としてはある程度の需要があるんだというようなこと等のデータがある程度わかってきた。  一方、国内では御承知のとおり平成五年に大冷害が実はあったわけでございまして、あのときに約二百五十万トンぐらいの米を輸入したわけでありますけれども、やはり国産米に対する嗜好が極めて高いということを改めて我々は認識したということであります。  そういう中で、もう一方では、米をめぐる法的な環境が随分整備をされてきた。新しい食糧法でありますとか、今回御審議をいただく新しい基本法、あるいはその前提となります農政改革大綱とかプログラム等々の法的な環境整備されてきたという状況であります。  そして、農業協定上、先生も御承知のとおり、途中で関税措置に移行することができる、そして移行した場合の最大のポイントは、やはり、先ほどの閣議決定を持ち出すまでもなく、生産者あるいは国内需給混乱を与えることがあってはならないということが大前提であるわけでありますが、その附属書に基づく関税相当量計算方式に純粋にのっとって計算をしていくならば、日本の米に対して割高感がある結果になる、したがって生産者にとっても供給面での混乱がないという判断をしたわけでございます。  さらには、今後の次期交渉に向かいまして、世界でたった四カ国だけが採用しておりますこの関税化特例措置としてのミニマムアクセスという制度、その中でも一番ターゲットにされる、そしてまた二〇〇一年に向けてのタイムリミットが来ているのは我が日本の米でございますから、次期交渉において、米を初めとする農業交渉で少しでも我が国の主張が確保できるような体制にしていくためにも、例外なき関税化というそのWTO農業協定上の大原則に戻った方が交渉しやすいということだろうと考えております。  では、なぜ今なんだ、そんなにいいことずくめであるとするならば、九五年から、一年目からあるいは二年目からやればよかったのではないかという疑問が当然出てくるわけでありますけれども、先ほど申し上げたように、九五年の大冷害あるいはまた外国産米評価が定まっていない、そしてさらには、当時の時点では、私も含めまして関税化をするなんということは、我々は断固関税化阻止で実は頑張っていたわけでございますので、そういう意味で、そんないい措置があると言われても、どうしても我々としては関税化ということに対して、生産者も含めてだろうと思いますが、当時、私は自民党の農林部会長でございましたが、ここにいらっしゃる先生方やほかの政党の皆さん方とともに関税化はしないんだということで頑張ってきたわけでございますので、そういう意味で、そんないい制度、その当時そんなにいい制度であったかどうかということの評価はまた別だろうと思いますけれども、今の時点ではそれをとることが最善選択であるという結論に至り、また消費者皆さんからも御理解をいただきながら今その作業を進めているところであります。  なお、先生指摘説明が足りなかったのではないかということに関しては、私はそうではないと言うつもりは毛頭ございません。確かに、農業団体は一昨年の十月から実は検討を始めていたそうでありますが、政治の場での議論というのは去年の夏以降始まったわけでございますし、決定は十二月の十七日でございました。したがいまして、末端の農家皆さん方に、一見関税化というびくっとするようなこと、しかしこれはプラスのことなんだよということを説明するために、我々としては全力を挙げてきたつもりでございます。年内に、あらゆるマスコミ、あらゆる我々がとり得べき広報手段を駆使いたしまして、そしてまた全国に農林省担当者が飛び、説明をし、そしてまた生産者団体だけではなくて消費者団体、あるいはまた自治体、いろいろな方々に対してできるだけ御説明をして、現時点においては、私は生産者関係皆さん方には御理解をいただいておるという認識を持っておるわけでございます。
  16. 安住淳

    安住委員 私も、その当時ミニマムアクセス選択したことに対して、今から冷静に考えれば、損得からいえば多分関税化を受け入れた方が高関税率でスタートできたのかもしれないが、しかし当時の論調からいってもそれはやむを得なかったということに対しては一定理解を示すわけであります。  しかし、大臣、さまざまな選択肢の中から、今回、途中の期間の中でこの関税措置への切りかえをしたんだということに関しては、少なくとも私が地元の選挙区に帰って農家皆さんと話をしても、みんなやはり唐突だと言いますよ。唐突にこういうことが決まったというふうにみんな印象を持っていらっしゃると思いますよ。我々だってそう思っているのですから。  経緯を見たら、一部の農業団体相手に、ちまちまとは言わないが、そこだけまとまってやってくれれば押し切れるだろうという、農林省、そういう甘い考えを持っていたんじゃないですか。言ってみれば、そこだけ乗り切って、あと与党さえ根回しすればこの問題はすっといくんだ。つまり、国会対策的な発想で、いわば国民議論になることを避けたとは言わないが、私は、そういうことからいうと、これだけ大きな問題、つまり関税化を受け入れるということは全く概念の違う話でありますから、それに対してもう少し反省をしてもらわないといけないのと、今度のこのやり方というか、手口というといかにも犯罪的な物言いですからそれは言いませんが、私はそのことに対しては強い抗議と反省を求めたいと思いますが、長官いかがですか。大臣でも結構ですけれども。
  17. 中川昭一

    中川国務大臣 先ほどのメリットの中に一つ言い忘れましたが、これはもう先生承知だと思いますが、関税化をすることによって〇・八から〇・四になるというメリットもあるわけでございます。  要するに、逆算をしなければいけないという議論が一方であるわけです。つまり、関税化に移行する場合でも、その年の年度初めからそういう制度をとることができるということですから、四月一日をもって関税化措置になる。それが九九年の四月一日なのか、二〇〇〇年の四月一日なのか、あるいは九五年の四月一日だったのか、いずれにしても四月一日である。四月一日までの間に九十日間の異議申し立て期間というのが協定上ございまして、したがいまして、その協定上のルールに我々は完全にのっとってこの作業を進めておるつもりでございます。  そうしますと、先ほど申し上げたように、いろいろな国内状況把握、あるいは法制度整備等々をある程度仕上げた上で、しかも農業関係者皆さんに御理解をいただく議論を始めていくということと、やるのであれば二〇〇〇年の四月一日よりは九九年の四月一日の方がいいということのその逆算との関係で、十二月中に何とかWTOに対してそれを通知しなければならない。しかも、細かい話ですけれども、十二月の末といえば、欧米ではもうクリスマス休暇ということになってしまうというようなこともございまして、できるだけ早くやろうということに努力したことは事実であります。  したがいまして、一般農家方々から拙速ではないかとか説明が十分でないと当初言われたことについては、私は謙虚にそれを受けとめさせていただきたいと思いますが、しかしそれはひとえに、生産者にとってもあるいは日本農政のあるべき姿にとっても私は最善選択であると思っておりますので、その後も、そして現時点におきましても、きちっと説明を今でもしておるつもりでございまして、御理解をいただきたいと思います。
  18. 安住淳

    安住委員 それでは、夏からなぜ国民的な議論をしなかったのか。違うんじゃないですか。本当は、きょう閣議に提出した農業基本法の問題が一方にあって、一方にこの問題を抱えて、いわばここのリンクというか、この問題が非常に基本法に大きな影響を与えるから、逆に言うと、WTOの問題に関しては、ちまちまととさっきから言っていますけれども、こそこそとやることによって国民議論を避けてきたんじゃないかと私は実は疑っているんですよ。もっと夏、いや、夏前でもいいですよ、それは日本農家皆さんにきちっと御説明すればよかったじゃないですか。次期が、次期がというんだったら、そんなことは我々だってわかりますよ。この十二月までにやらないと次の交渉までの間、そんなことはだれだって言えばわかるのですよ。なぜ夏からの議論を、少なくとも国民議論をやらなかったのですか。そのことに対しては、もしその前に私は農林水産大臣でありませんでしたというのだったら、農林省の幹部、だれかきちっと答えてくださいよ。
  19. 中川昭一

    中川国務大臣 関税化議論というのは、確かに夏以降、九月以降に政治の場で出てきた話でありますし、農業団体内部では一昨年十月から検討をしてきた作業だそうであります。  当時は、もちろんそれも大きな問題なわけでございますけれども、新しい基本法議論の大詰めの時期を実は抱えておりまして、九月十七日に答申が総理大臣に出され、それを国会の場あるいはいろいろな場で御議論をいただいておるということもあり、先ほど申し上げましたように、関税化選択をしても生産者皆さん影響を与えない、あるいは消費者皆さんの御理解もいただけるというためには、先ほどから申し上げているように、ここ数年間、法的整備あるいは国民的理解等々いろいろな準備というものが必要である大事な時期であったわけであります。いずれも大きな法律を抱え、そしてそれを一つ一つ議論をいただき前進をしてきたわけでございまして、そういう中でこれと関税化議論というものが秋以降出てきたわけでございますけれども、もちろん農林省内部では検討をし、また生産者団体内部でも検討をされていたそうでありまして、私といたしましては、そのタイミングは逆算をしたぎりぎりのタイミングであったということでございます。  ですから、先生、これのプラス、マイナスについては決してマイナスではないというお言葉を大変ありがたく私は受けとめさせていただいておりますけれども、プラスであったにしても、我々としても、限られた時間の中でできるだけ皆さんの御審議をいただき、そして与党あるいはまた団体あるいは国会の場での御議論も既に、単発的と言ったらおかしいですけれども、いろいろな御議論を、既に私がこの立場に立ってからも関税化の御議論は、委員会でも時々出ていたわけでありますけれども、そういうものの総合的な判断の上で、十二月十七日に最終決定をさせていただいたところであります。
  20. 安住淳

    安住委員 それは、JAとそちら側で議論するのは当たり前ですよ。それは国民議論では全くないじゃないですか。一般農家の人だって、JAの幹部の皆さんはどうか知らないですけれども、私は非常に唐突感を否めないから言っているのであって、これはむしろ堤長官に伺いますけれども、なぜ夏前までの間にこういう議論をちゃんとしないのですか。省内ではやっていらっしゃったかもしれないですけれども、もっとそれはあなた方、こんな重要な問題を、つまり何が重要かというのは言わずもがなだけれども、これは米の中長期的な展望にかかわる話で、はね返っていけば、我が国農業の基盤整備の問題に必ずリンクしてくるのでしょう。それをまた、それはもう時間がない、時間がないといってまたいつものように押し切ったとしか思えないのですよ。いかがですか。
  21. 堤英隆

    ○堤政府委員 二点あると思うのですけれども、やはり先ほど大臣がお答え申し上げたとおり、平成五年にこれを受け入れましたときに、農家農業団体の拒否感というのは非常に強かったわけでございますが、その後、やはり実際にミニマムアクセス米が入ってくる、そういうことで、ことしは六十八万トン入ってきているわけでございますけれども、そういう実態。それから、その消費の動向、そういうものが、消費者、行政、それから農業団体農業者の方々のある程度の共通認識といいますか、そういうものをできる期間としてやはり三年程度の期間があったのだろうと思います。そういう三年程度の経過の中で、先ほど大臣申し上げましたように、ミニマムアクセス米の消費の動向、これに対する考え方ということについて、平成五年のときのような非常に極端な国民の間の開きというものが徐々に薄れてきたという面が状況としては一つあると思います。  それからもう一点は、やはり二〇〇〇年交渉が始まるということで、その一年前ということで、近づくにつれて、各国ともそういった準備をさまざまな形で始めてきている時期だったと思います。そういう意味で、日本もやはりそういった二〇〇〇年交渉におくれてはならないということから、さまざまな勉強、検討が始まった時期がちょうどやはり昨年の夏ごろであったのではないかと思います。その検討の時期が行政であり、あるいはJAの団体であり、その他のところでもさまざまな議論があって、そういう状況の中で、現行のWTO協定上何ができるかということの検討の中で、先ほどおっしゃいました選択肢が浮上しまして、その一つ選択した、こういうことであろうというふうに認識をいたしております。
  22. 安住淳

    安住委員 この問題だけやっているとあれですけれども、もう少し聞かせてもらいます。  大臣、今の話で、行政側から見たら流れはそうかもしれない。しかし、そこに消費者とか、つまり国民世論形成努力というのがないということを認めているような話ですよ、今の話でいうと。これは全くないとは言わない。それを言うと、また委員会でやりましたのなんだのと言うから。しかし、これはJAと農林省と与党で決めた、そのプロセスは書いた、これはやむを得なかった、であれば、このことに関しては、逆に言うと、全責任を負ってくださいよ。よろしいですね。将来に対しても全責任を負ってくださいよと言っているのです。
  23. 中川昭一

    中川国務大臣 済みません。何の責任でしょうか。
  24. 安住淳

    安住委員 この受け入れた、関税措置に切りかえたことに対する責任は、すべてこれは負っていただかないと困りますよと言っているのです。
  25. 中川昭一

    中川国務大臣 この決定は、関係閣僚会議あるいは閣議決定されたことでありますから、政府として責任を負いますし、その主管大臣である私が責任を負うべき問題でございます。
  26. 安住淳

    安住委員 それでは、具体的な内容を少し聞かせてもらいます。  今回、従量税を適用したわけでありますが、それに基づいていうと、二〇〇〇年でキロ当たり三百四十一円ですね。大臣、率直に伺いますが、これは、これであれば外国産米が市場の中に、ミニマムアクセス分とは違って、これによって入ってくるおそれはあると思いますか、ないと思いますか。
  27. 中川昭一

    中川国務大臣 WTO協定附属書五並びにその付録に基づく計算方法に基づいて、九九年四月一日から三百五十一円十七銭、来年が三百四十一円。この数字というものは、結果的にキロ当たり乗せるわけでございますが、これによって入ってくる米というのは現時点では予測できないというふうに理解しております。
  28. 安住淳

    安住委員 やはり農家皆さんから見ても我々から見ても、これは非常に単純な話、これだけの高関税率、これが今後とも維持できるのか、それとも階段が下がっていくように下がっていくのか。利益、不利益からいえば、このことにやはり非常に関心が今移っていると私は思うのです。  それに対しては、確かに次期交渉の話であってなかなか難しいかもしれません。しかし、その中でまず考えなければいけないのは、なぜ従価税でなくて従量税にしたのか。それがどういうメリットがあるのかということについて、まず御説明をいただけますか。
  29. 堤英隆

    ○堤政府委員 従量税をとるか従価税をとるかというのは選択肢があるわけでございますけれども、その利害を考えましたときに、一つは、これから日本国産米はどういうものと競合するというふうに考えなければいけないのかということが基本だろうと思います。  そうしました場合に、まず需要面から見ますと、ミニマムアクセス米等が入ってきましたときには、業務用あるいは加工用ということで、いわゆるすそ物的なものとの競合が非常に強いということが一つ言えるかと思います。  他方で、では輸出余力はどうかということを見ますと、アメリカあるいはオーストラリアということもさることながら、やはり中国におきましては二億トンの生産がございます。そういう意味で、やはり中国米の供給余力といいますか、これはやはり相当懸念すべきだ、こういうことであろうと思うのです。  そうしますと、国内米との競合と外国産米の供給余力、両方考えましたときには、どちらかといえば、低価格米に対して防波堤的な機能を果たすかどうかということがこの問題のかぎだろう、こういうふうに思います。  そうしました場合には、従価税につきましては、結局のところ、価格低下とか、あるいはダンピングとか、そういうことに対する価格操作の対応は困難だということがあることに対しまして、従量税の場合には、価格低下あるいは低価格に対しまして安定的な国境措置として機能するという利点がございます。したがいまして、そういうことを総合的に勘案いたしまして、従量税で対応したところでございます。
  30. 安住淳

    安住委員 そこで、米の国際貿易の中に占める割合というのは、ほかの農産物から見れば決して多いわけではありません。しかし、我が国にとっては大変な影響があるわけでありますから、ある意味で米という商品の国際的な位置づけの中に占める我が国の米の中長期的展望、これに立った上でそういう政策決定をしないといけないと思います。当然お持ちでしょうから、大臣、これは中長期的展望をどういうふうに持っていらっしゃるのか、御説明いただけますか。
  31. 堤英隆

    ○堤政府委員 世界の中の米の需給につきましては各種の見通しがございます。そういう中で、やはり需要面では、開発途上国を中心として人口増加等が考えられますので、増加が見込まれております。  一方、生産面では、各研究機関によって若干の違いがございますけれども、基本的には、やはりかんがい施設の整備でありますとか、肥料、農薬の利用の拡大ということ等によりまして、ほぼ需要増大に見合った生産の増加が期待されるという予測がございます。他方で、最近のように環境問題、それから異常気象等によりまして、生産の伸びが抑制されるという可能性も強く指摘されております。  いずれにしましても、先ほどお話しのように、米につきましては、全体の貿易量に占める割合が五%程度でございます。他方、小麦につきましては、やはり一五%から二〇%ございます。非常に大きく振れるという特性がございます。そういう意味で、今後米の全体のことを考えました場合には、作況の変動等需給不均衡による価格の変動が大きくなる、そういうことを念頭に置いてこの問題にも対応していかなければならない、こういうふうに考えております。
  32. 安住淳

    安住委員 米の問題はちょっと別の項目でもう少しやらせていただきます。  そこで、もう一つの問題として、今回もミニマムアクセス米の取り扱い等について国家貿易でやるということを政府選択したというか継続をする。確かに外米の市場流入を防ぐためには、こうした貿易が、手段というか、必要なのかなと。しかし一方で、国内議論の中には、民間貿易にすべきだという議論もあると私は思うのですよ。ですから、国家貿易にしたという理由をきちっとわかりやすく説明をしていただきたいと思います。
  33. 堤英隆

    ○堤政府委員 国貿と民間貿易という二つの種類があるわけでございますけれども、結局のところ、民間貿易によりますれば、やはりアクセス機会を提供するということになりました場合に、いわゆる一次税率枠になりますので、かなり低い税率を設定せざるを得ないということだろうと思います。それは全量が恐らく入ってくるような一次税率枠を設定せざるを得ないんじゃないかということでございます。  そういう意味で、国内産米との競合が非常に強くなってくることに加えまして、今現在、例えば国貿でありますと、食糧庁の方でできるだけ国内産米との競合がない形で価格の設定それからその売却の操作をやっているわけでございますけれども、そういうことができません。国内産米との競合、価格及び量の面において衝突をするということが非常に強くなると思います。そういう意味で、国内農家に与える影響は非常に大きい、こういうふうに認識をいたしております。
  34. 安住淳

    安住委員 そして、もう一点、SSGの問題ですね。  これは、大臣、何かフィッシャーさんが、去年ですけれども私もアメリカで、ワシントンで彼と話をしたことがあります。こういう措置に対しては、アメリカは非常に難色を示しているやにとれるようなニュアンスの話をしておりましたが、この制度そのものに対してアメリカ側から特段何か今のところ言われている点というのはございますか。
  35. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 いわゆるSSG、特別セーフガードでございますが、これは関税化した品目について一般的に認められているものでございまして、米の関税措置への切りかえに当たりましては、米国に対して、ワシントン、東京、いろいろな機会を通じて、特別セーフガードも含めた切りかえ措置内容について説明をしてきたところでございます。そういう中で格段のコメントをされておる状況ではございません。
  36. 安住淳

    安住委員 ということは、SSGについては、これはここに書いてあるとおり正常に作動するというか、そういうふうに考えておいてよろしいですね。
  37. 中川昭一

    中川国務大臣 そのとおりでございます。
  38. 安住淳

    安住委員 総括的な話を申し上げれば、きょう閣議決定をした新農業基本法を支障なくというか、これから国内的には、自給率の問題を含めて言うと、各品目別に相当な手当てをしないといけない。その国内措置が、私はこのWTOの問題は本当に厄介だなと思うのは、これに対する障害にもなるというか、そこをうまく分けながらやっていかないといけない。つまり、助成金制度そのものが、場合によっては削除の対象になるようなこともあると私は思うのですよ。ですから、新農業基本法をこれから議論していく中で、どうしてもぬぐい去れない、上から押しつけられたというか、そういう存在がWTOだというふうに私は認識をしております。  しかし、その中で我が国は、ある種国際的なルールの中で国内基盤の強化というか体質の強化というものを図っていかないといけない宿命といいますか、大臣、そういうことがあると思うのですよ。ですから、私どもが民主党として要求していたのは、WTOをある種きちっと位置づけて新農業基本法というのはあるべきだというふうなことを訴えてきた。  しかし、どうも、きょう閣議決定したものを私はまだ具体的に見ていないから何とも言えないですけれども、これに対しては余り具体的に踏み込んでいないように思っておるのですが、いかがですか。
  39. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、きょう閣議決定してこれから国会で御審議いただく基本法等々が今後の日本農政、あるいは農業、農村、そしてまた消費者を含めた国民全体にプラスになるという前提で、基本法その他の作業を進めておるわけでございます。その中には、自給率の問題もあれば、国土保全機能とかいろいろなポイントがあるわけでございまして、それらをWTO次期交渉の中でむしろこっちから積極的に実現をしていくということでございますから、あくまでも日本の今目指そうとしておる農政を国際交渉の場で実現させていきたいという気持ちでおります。そのことをぜひ御理解いただきたいと思います。  それから、先生の具体的じゃないじゃないかという御指摘については、ある意味ではそのとおりかなと申し上げざるを得ないのは、あくまでも基本法でございまして、四十数条の基本法、その中に、例えば基本計画というものをつくらなければならない、基本計画の中には自給率等々をきちっと書かなければならないというように極めて基本的な部分だけしか書いておりません。  しかし、それを基本計画の中で、あるいはほかの法律でもってその趣旨に基づいてより充実をしていくわけでありますし、また、基本法と一体としての農政改革大綱あるいはプログラムというものがもう既に確立をしておるわけでございますから、あくまでも基本法という基本部分があって、その上に、それを土台とした具体的な実体法、あるいはまた具体的にきちっと決めた大綱等があるということで御理解をいただきたいと思います。
  40. 安住淳

    安住委員 いやいや、反論します。  大臣、私が言っているのは、基本法だからこそ、あえて国際的な貿易ルールの中でこの我が国農業をちゃんと位置づけないといけないんじゃないかと言っているのですよ。そうでしょう。だって、今から財政出動をしないといけないですよ、農業基本法を具体的に計画にしたときに。後からじっくりやらせてもらいますけれども。  それは食料自給率を上げるべきだと言っている。しかし、どうするか。具体的には、小麦や大豆の生産をふやしていくためには、農家皆さんの自由意思にある意味では反するようなことをやるためには、そこで作付してもらうためには、それは何らかの経済的な支援を国としてやらざるを得ない、例えばの話。  そういうことを考えたときに、国際的な貿易ルールがあるWTOの中で、どういうふうに我が国はそれに対して順応してというか体質の強化を図っていくかということを位置づけた上で、基本法というのはあるべきだと私は思っておるのです。  だから、計画が出てくるのではなくて、これはまさに新農業基本法そのものが我が国農業のいわば憲法的な存在であるとすれば、なおさら国際的な関係というのは位置づけないといけない。私は、そのことは、逆に言うと逃げてはいけない話だと思いますけれども、いかがですか。
  41. 中川昭一

    中川国務大臣 反論するわけではございませんが、次期協定というのはこれからみんなでつくっていこうということで、何のルールも決まっていないわけであります。改革を継続しようということは合意されておりますけれども、そこをどういうふうにしていくかということについては、これはもう百数十カ国、百四十カ国近い国々があのウルグアイ・ラウンドのときには七年かけてやっとまとめ上げたわけでございまして、今度は、後ほど御質問があるかもしれませんけれども、さっきも先生がちょっとおっしゃっておりました、上から押しつけられたという言葉は私はとりませんけれども、輸出国と輸入国とのバランスがとれていないとか、我々としてはこれは青の政策ではなくて緑の政策にすべきではないかとか、そういうこと等をまさに来年から交渉していこうということでございます。  その前提として、今、日本農業、農村、食料、あるいは国民にとってプラスになるような法整備、あるいはいろいろな措置をするための基本法という位置づけでありますから、基本法その他の日本農政の文字どおり基本を諸外国皆さんにも御理解をいただきながら、次期交渉の中で我が国の主張をどうやって実現していくかということに、これから最大の努力を払っていかなければならないというふうに認識をしております。
  42. 安住淳

    安住委員 ということは、こういうふうな理解でいいですか。農業基本法の流れ、それを次期交渉我が国の基本的な考え方にしていくのだということでいいですか。簡単に答えてください。
  43. 中川昭一

    中川国務大臣 どういう方向で次期交渉に向かうかについては、ことし前半ぐらいまでの間に、国会の御議論を初めとして、これからじっくりと作戦を練って、国民的な合意のもとで交渉に臨んでいきたいと考えておりますが、少なくともそのときに、この基本法の基本理念に矛盾したもの、あるいはまた違うものを前提にした交渉に臨むことはないというふうに私は理解をしております。
  44. 安住淳

    安住委員 では、この問題について具体的に最後質問をしますが、二〇〇〇年の三百四十一円については、二〇〇一年以降もこの高い関税率を維持していく方針というか、そういう姿勢を次期交渉でも各国に対してお伝えになるわけですね。
  45. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、次期協定がまとまるまでの間は三百四十一円が継続されるわけでありますが、次期協定で例えば米の国境措置というものがどういう形で決められるかについては、まさにこれは交渉事でありますけれども、国内の生産に影響を与えない、あるいはまた国内需給影響を与えないための、実質的に担保できるような措置を実現できるように交渉に臨んでいく決意でございます。
  46. 安住淳

    安住委員 何となく弱腰に聞こえますね。もうちょっとやはり強気に、大臣、自給率のことなんか言ったら、それを守らなかったら、今から莫大なお金をかけて農業基本法をやるのでしょう、実際に実現していくためには私はかかると思うのですよ。砂上の楼閣になりかねないと私は思うのですけれども、いかがですか。
  47. 中川昭一

    中川国務大臣 ですから、まずルールづくりをしなければいけないわけでありますけれども、とにかくその一方で、我が国国内生産あるいは需給影響を与えないために何が必要なのかということだろうと思います。今この時点で三百五十一円より上か下かとか、そういう議論というのは今の段階ではすべきでないと思いますけれども。とにかく主要なる目的は、国内生産を基本としつつというあの基本法の理念というのは、まさに国内生産を守り発展させていくということでございますので、それに影響のないような結果を得ることが最大のポイントだと思っております。
  48. 安住淳

    安住委員 我々も一般農家皆さん次期交渉には参加できないわけであります。我々は、国民合意とさっき大臣はちゃんと言いましたから、今回やったように、JAと農林省と与党だけでちまちまやるなんというのじゃなくて、ちゃんと国民合意のもとに大事なプロセスを踏んで、その上でその総意を次期交渉にぜひつなげていただきたいと思っておりますから、よろしくお願いします。  さて、それでは、このウルグアイ・ラウンド交渉に引き続いた問題として、米の問題とウルグアイ対策費六兆百億円、どうしてもこれは総括をしないといけないということを前回も私申し上げましたが、少しこの話をさせていただきたいと思います。  米の歴史のことを少し私の方から、私自身の認識皆さんお話しさせていただきますから、大臣、もし感想があればお聞かせを願いたいと思うのです。  昭和三十五年からの統計を見ると、四十一年くらいまで需給のバランスが非常にうまくいっていました。大臣、昭和三十九年は持ち越し在庫量で一万トンだったのです。まさに需給のバランスがよくとれていた。  そこで、どうも皆さんからお話を聞いていると、昭和四十年ぐらいから我が国では開田ブームが起きるわけです。それで、米の値段もどんどん上がった。そういうことから、昭和四十三年ぐらいから三百万トン近い過剰米が出てきて、四十四年のピークで五百五十三万トンぐらいの米が余った。四十五年になると七百二十万トンになって、七百二十万トンの過剰米の処理にかかったお金は、当時のお金で約一兆円だと言われています。  そういうことから、これは生産調整をしないとなかなか需給のバランスがとれないということで、四十四年の試験的減反が四十六年になって本格減反になったわけでありますね。その後、この減反の効果とは余り言いたくないのだが、四十九年には六十二万トンまで落ちていって、ある種、成果を示すわけです。  しかし、同時に第二次過剰米時代というのが到来して、昭和五十五年には六百六十六万トンの過剰米が出てきた。このときに、我が国の国家予算を調べたら、約三十兆円です。その国家予算三十兆円の中で、六百六十六万トンの過剰米を処理するのに、大臣、二兆円使っているのですよ。  つまり、大量に余ったから減反をさせて、一方で、財政的なことで需給のバランスをとった。まさに、我が国の四十年近い米政策の基本というか原理というのはここにあったわけです。当時の減反率、五十五年当時で、私が調べたところで二五%、最大ピーク時で二七%近くまでいっていた。これは資料のとり方にもよります。  そこで今回、長官、去年は大体三百四十万ちょっとですね、持ち越し在庫。そうすると、大臣、今、例えば私の選挙区の宮城県では大体三〇%弱の減反をしています。つまり、四十年間構造的な問題を抱えながら、結局むべなるかなというか、やることは価格の調整と、生産面からの需給のバランスをとるために減反をせざるを得なかった。  私はやはり、この減反政策そのもの、かなり我が国農家皆さんの心理的な打撃というのは大きかったような気がするのですね。そのことについて、まず大臣、昭和四十六年から始まって今日に至る減反政策について、大臣御自身はどのように総括をなさっていらっしゃるものか、お話を聞かせていただけますか。
  49. 中川昭一

    中川国務大臣 四十六年の減反政策以降、先生の挙げられたデータは私の認識と同じでございます。  まず、前提として、生き物相手、自然相手の農業のとうとさ、まさにその微妙さというものが、作況が一一〇になったり平成五年のように七四になったりと、一違うだけで十万トン違うわけでございますから、これが一〇も違ったら大変なことになるということを、つい最近、平成五年も我々経験したところであります。  したがいまして、減反政策といいましょうか、需給調整政策というものが必要なわけでございますが、これはやはり、需要に合った生産を誘導することによって、生産者自身にとりましても価格の安定等の面からも意味のあることだろうと思います。また、米自体は余る時期もあるわけでございますけれども、麦、大豆、野菜のように、もっと国内で生産する、生産振興の必要な作目もあるわけでございますから、転作等もまた一方では必要になってくる。その辺のバランスを微妙にとっていかなければならない極めて難しい作業であるわけであります。  ですから、この間の米需給政策が必ずしもうまくいかなかったという時期もあったことは、率直に認めなければいけないと思っております。機動的な対応がとれなかったことによりまして、豊作が連続することによって大量な在庫を抱えたという時期もございますし、また生産調整面積が変動することによって作目を転換することが定着しなかったというようなこともありまして、過去にはいろいろな反省があるわけでございます。  また、米の単収等が非常に収量アップしていく一方、一人当たりの米の消費量の問題、人口あるいは高齢化の問題等々を考えますと、米一つとりましても、この米需給というものは非常にデリケートで、そして将来に向かってもやるべきことがたくさんあるであろう。  だから、今回の関税化におきましても、国家貿易という内外の国境措置だけはきちっと管理をし、そして国内需給をきちっと管理していく体制を引き続き継続していきたいというふうに考えております。
  50. 安住淳

    安住委員 言っていることは何となくわかるのですが、私は今非常に残念な思いを持って聞いておりました。大臣、少なくとも減反をどう思うかと聞かれて役所の用意した紙を読んではだめですよ。私は御自身の考えを聞いているのです、気持ちはわかりますけれども。  つまり、私が一番言いたいのは、数字的なことは今私が指摘したとおり、もっと言えば、昭和四十年で六百万ヘクタールあった全耕作面積が今は四百九十二万ぐらいですよね。耕作面積が減っているにもかかわらず、近代農業のいわばある種進歩があって、米の生産そのものは落ちていない。なおかつ、高齢化もし農業人口も少なくなったにもかかわらず、落ちていない。  しかし、逆に言うと、大規模化は全く進んでいません。全くと言うとちょっと語弊があるけれども。農地解放が始まったときが〇・四。北海道を除きます。大臣のところは特例ですから、大きいですから。今〇・九二ヘクタール、そう言われているのですよ。  つまり、私が一番言いたいのは、農家の心理的打撃と私は申し上げましたけれども、そのことを忘れて、価格的な話や需給バランスだけで減反というのは扱えない時期にもう来たなと私は思うから、私なりには、減反政策というものはそろそろ違う形に改める、いや、少なくともみんなでこれを話し合う時期に来たのではなかろうか、私はそういう認識に立って実は質問しているのです。  ですから、大臣、後で言質をとったり、そんなせこいことを私はしませんから、御自身のお気持ちをぜひ少し話していただけないですか。その話がわかれば、次にまたいろいろな議論があるものですから。
  51. 中川昭一

    中川国務大臣 今減反率は三五%でありますから、大ざっぱに言って、我が家の田んぼの三分の一が米をつくることができないということに対して、農家皆さんのお気持ちというのは大変つらいものがあるであろうということは、私も十分認識をしておるところであります。  一方、今の体制でございますから、どっと市場にお米が行けば米の値段がどんと下がるという状況でもありますし、先ほど先生からも御指摘ありましたように、現時点で三百四十万トンの在庫を抱えておる。こういう需給バランスでございますから、これはやはり、去年そしてことしと二年間の緊急対策でもって、生産者と行政とが一体となって、今申し上げたような大変な減反をやっておるわけであります。  米だけで見ますと、それは大変な減反だということになるわけでありますけれども、先ほどのお話にも関係しますが、たしか昭和四十年ぐらいには日本食料の自給率は七〇%ぐらいあったと記憶しております。これが米余りの状態と同時に自給率がどんどん下がってきておるという問題、これは一体どういうことなのだろうということを考えるわけでありますけれども、やはり消費者にとっての、一人当たりの米の消費量がどんどん減っている。これはやはり、もっと御飯を食べてくださいと我々はいろいろなところで宣伝するわけでありますが、強制することはできないわけであります。そういう中で、米を中心とした我が国の食生活というものを何とか維持していき、その中で水田以外の作目についても魅力ある農作物を育成するという観点からもやっていくということも必要であろうと思っております。  いずれにいたしましても、減反政策というよりも、米の需給政策という観点から我々としては今までも大きく方針を変えてきておるわけでございますけれども、今後も、その実態に合った、そして何といっても生産者が将来に希望の持てるような米政策というものが当然一番大事な政策の一つでございますので、きょうの先生の御議論を初めとしていろいろな方の御意見あるいは御指導をいただきながら、我々としては、固定化したものとしては決して位置づけておりません、今後、柔軟にといいましょうか、実態に役立つような米政策というものをこれからもとっていきたいというふうに考えております。
  52. 安住淳

    安住委員 きょうは後で流通の問題でそのことは話をしますから、大臣、ここでは一つだけ確認をさせてもらいますが、国内対策という点でいうとWTOにも関連するわけであります。  それからいうと、私は歩いていて、もうこれ以上の減反をやれば、耕作放棄というよりも農業放棄の時代がもしかしたら来る可能性があると思っていますから、約束はできないのかもしれないけれども、これ以上の減反はしないということをぜひ言っていただきたいし、少なくともWTOに関連した形でのさらなる生産調整を強いるということはないというふうに理解していてよろしいですね。
  53. 中川昭一

    中川国務大臣 十年産、十一年産米の緊急対策というのは二年限りである。なぜならば、政府の備蓄が百五十万トン、マックス二百万トンというところで三百四十万トン、全部が政府米を抱えておるという状況でございますから、緊急対策である。備蓄の方も少しずつ減ってきておる計算で今その作業を進めておるわけでございます。  ですから、来年どうなるかということを、これは正直言ってお天気次第という部分もございますので何とも申し上げられませんが、今の需給調整政策というのは二年間限りの緊急政策である。しかし、今後も国が関与したきちっとした需給政策を適切にやっていく。できれば、つくりたい人には少しでもつくれるような方向にしていきたいという気持ちは十分ございます。  それから、WTO協定に臨むに当たりましても、その前提には平成五年のあの閣議決定外国から入ってくるお米については国内需給等に影響を与えないという閣議決定を基本としながら、基本としてといいましょうか、それを守りながら交渉に臨んでいきたいと考えております。
  54. 安住淳

    安住委員 明確なお話はありませんでしたが、ニュアンスは伝わりました。  ぜひ、私は、どちらかというと、もう減反という形での生産調整の時代はそろそろ終わりにして、ある種、やはり市場の中で競っていただくというか、そういう時代が来ないと、またこれは農業基本法、読みようによってはそういうふうにも読めますから、同じことを考えているのかなと思いながらも、違うようにもとれるようにあいまいな部分を残しておいたのかな、そんなことはないですか。私が今言ったような方向に大臣は賛成ですか。
  55. 中川昭一

    中川国務大臣 まず一つは、米と同じようにというか、米にかわるような魅力的な作目に何としても転換をしたい人は転換をしていただく。二百八十万ヘクタール、実際に、実力ベースでどのぐらいの水田になるのかはちょっとわかりませんけれども、目いっぱいつくると千三百万トンも四百万トンもできてしまうわけでございますから、そういう意味で何らかの需給調整というのは必要だろう。  しかし、三五%という数字はさすがに高いという状況でございまして、しかしそれは緊急措置の過程の作業であるということでございますから、つくりたい人はつくりたいんだ、あるいはまた市場に任せればいいんだということをやると、地域によってかなり条件が違ってくるのであろうと私は思います。  例えば、先生の御出身のところは大変実力がおありになる地域だというふうに思いますし、また、米づくりがある意味ではその地域の文化あるいはまた産業にとっても極めて大事であるとか、今回の基本法の中でも大きな柱であります農地、特に水田の果たす多面的機能というものからも、やはり水田というものは、米をつくる、そしてそれをちゃんと国民に供給するということ等を含めまして、昔と違いまして随分市場原理的なものも導入しつつありますけれども、やはり農業ですから、万が一ということもあり、必ずしも強いところだけが残ればいいんだというふうにすぱっと割り切れない部分もある。国土全体を考え、また国民食料政策の中長期的なことも考えれば、やはり全体のバランスというものをよく考えながら、微妙な難しい作業ではございますけれども、需給調整政策を今後も継続をしていかなければならないというふうに考えております。
  56. 安住淳

    安住委員 稲作経営安定対策、長官、これは農家皆さんから、減反をきちっとやっている方はお支払いいただいて、六月でしたか、国から出る。この制度そのものは、財政上からいっても、今までみたいに何兆円もかけて、米の需給というのはなかなかもう理解の得られない時代の中で、一つ政策的には大きな前進かなと私は思っておりますが、これは今後ずっと長く続けるおつもりでございますか、そのことだけ。
  57. 堤英隆

    ○堤政府委員 稲作経営安定対策については、今おっしゃいましたように、平成十年の米の緊急生産調整対策と同時にスタートいたしましたので、そういう御理解があるかもしれませんけれども、これはやはり、できるだけ価格形成を市場にゆだねるということになりますと価格が動く、そういうことの中で農家の経営をどういうふうに安定させていくかという視点から導入しているものでございますので、十年産、十一年産以降につきましてもこの稲作経営安定対策をきちんと運用していきたい、こういうふうに考えております。
  58. 安住淳

    安住委員 仮に、積み増し金が使えないぐらいうまくいっている場合は、この積み増し金はどうしていくのですか。
  59. 堤英隆

    ○堤政府委員 積み増し金がたまるということは、自主流通米の価格がいい、農家経営にとっては比較的安定している、こういうことであろうと思います。今までの作況を見ますと、そういう状況ばかりが続くわけじゃございませんので、やはり作況は大きく動く、作柄は大きく動くということでございます。  そういう意味で、豊作、不作両方に対応していくことが必要だというふうに思っておりまして、当年におきまして、自主流通米の価格がよくて農家へのお支払いをしないという場合には、翌年にこれをそのまま積み残すといいますか継続するということでございまして、しかもそれは個人ごとにすべて管理をする形で継続していきたい、こういうふうに考えておりますので、農家方々も、その点につきましては安んじて営農にいそしんでいただける、こういうふうに理解をいたしております。
  60. 安住淳

    安住委員 この制度、ぜひよりよい方向に、見直しを含めて、これもきちっと現場の農家皆さんがわかるような形で運用をしていただきたいと思います。  さて、先ほどから、このミニマムアクセスを受け入れた、平成五年。その翌年の平成六年にウルグアイ・ラウンド農業合意に関連する対策大綱というのができました。六兆百億円という数字だけが、私から言わせればどうもひとり歩きをしていて、この中身についての検証、この間大臣は、まだ途中年次であるから総括はなかなか今の段階では難しいというお話をこの委員会ではなさっていました。しかし、関税化に切りかえるという今日に至ってみれば、これはなぜ、六兆百億円というメニューの中で何をやろうとしたのかということを少し検証して、国民皆さんからいただいた税金によって我が国農業の足腰をどういうふうに強くしていくのか、そして国際化の波の中で、それにたえ得る農業基盤を整備するというのがそもそもの目的だったと私は思います。そのことについて少し議論させていただきますが、大臣、今私が言ったことで、大体この六兆百億円の理由づけというのはよろしゅうございますか。
  61. 中川昭一

    中川国務大臣 なぜ六兆百億かというのは、あのときは、とにかくウルグアイ・ラウンド、六年間のこの大変な時期を乗り切るためにできるだけの対策をとろうということで、たしか国費でいうと三兆弱だったと思いますけれども、総事業費、六年間で六兆百億ということでございまして、これは新しい時代、米が一部入ってくるとかあるいはいろいろな農産物が関税化になるとか、そういう中で足腰を強くしていくということの観点から、できるだけの対策をとろうということでまとめ上げたのが六兆百億のウルグアイ・ラウンド対策でございます。
  62. 安住淳

    安住委員 まだ全部その時点が完了しているわけじゃないけれども、大臣、今の段階のこの予算の措置、それで日本農業がどのように変わっているかということに関しては御感想を持っていらっしゃいますか、うまくこのお金は使っていると思っていますか。
  63. 中川昭一

    中川国務大臣 具体的なことは、けさもいろいろ聞いたのですけれども、事務当局からお話しさせますが、実は六兆百億のとき、私は自民党の農林部会長でございまして、与党でつくり上げたわけでございますけれども、これは順調にいっておる。ただ、公共投資の方が二年間先延ばしになっておりますので、その分ちょっと残念な部分もございますけれども、これも含めまして、全体としては順調にこの対策が行われておると私は理解しております。
  64. 安住淳

    安住委員 それでは、公共、それから非公共に分けて御質問を何点かさせていただきたいと思います。  公共について、特に土地改良の問題ではございますが、このことについて少しお話をお聞かせ願いたいと思います。そもそもなぜ土地改良をするのか、なぜ圃場整備をやらにゃならぬのか、そのことについて、簡単で結構でございますからお話を願いたいと思います。
  65. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 水田農業の体質強化ということが最終目的でございますけれども、機械化営農技術が発展をいたしましたので、それに即応いたしまして区画整理をする、あるいは、用排水路、農道等の整備をする、これによりまして生産性の向上が図られる、あるいは、水田の汎用化が図られるということでございます。また、この圃場整備を契機にいたしまして担い手に農地を集積する、これによって経営規模を拡大するという、広い意味での農業構造改善が目的となっております。
  66. 安住淳

    安住委員 多分そういうふうにお答えになるだろうなと思っておりました。そうだと思います。  それでは、このウルグアイ・ラウンド対策関連の大綱を読みますと、第四次土地改良計画というのがあって、それの進捗を早めるというようなことが大綱の中で、これは自民党といいますか、あの当時の緊急農業農村対策本部がつくった中で、こう書いてあります。「第四次土地改良長期計画の着実な進捗を図る。」と。  そこで、具体的なお話をさせていただきますが、この予算措置平成六年から始まっておりますが、その中で、具体的に我が国の水田の圃場整備率は何%上がったのか。五年末から八年末までで、実際、ウルグアイ・ラウンドの予算を幾ら投入して大体何%圃場整備率が上がったのか、お答え願います。
  67. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 UR対策が開始される以前の平成五年度には、圃場整備率は五二・一%でございました。平成八年度末には五五・二%に向上いたしております。
  68. 安住淳

    安住委員 そうですね。三ポイント上がりました。大変な数字だといえば大変な数字だし、こんなものかいと思うかもしれない。今から言うことは、これは圃場整備がいいとか悪いとかという議論はいろいろあるかもしれない、しかし、私は、ある程度肯定をしています。我が国の――大臣、資料じゃなくて私の話を聞いてください。資料は読まなくて結構ですから。  私は、規模の集約化と、さっき局長の言ったことが大事だと思うのですよ。この間、何度も農水省の皆さんともお話をしました、この件で。私が一番感じているのは、構造改善局は技術屋集団だから、圃場整備を進捗させるために数字を上げることが大事だというのは、もうもっともだと思うのですね。私もそう思うのですよ。  しかし、では、そもそも国民皆さんからいただいた税金、これは総額でいうと、圃場整備の担い手育成型だけで、大臣平成六年から十年までの第三次補正までで四千六百億円も投入しているのですよ。三%上がりました、全国的に言えば。私の地元でも三九から四四まで上げてもらいました。しかし、大臣、なぜこういうことをやるかといったら、規模の集約化が大事だということですよね、規模の集約化。つまり、このメニューを新しくつくったわけですよ、担い手育成型、条件をつけています。一・二倍以上になっていること、やる人は。そうですね。  しかし、実際どうでしょうか。この圃場整備をやって、規模の集約化という一点に関して言ったら、進んだでしょうか。圃場整備は三%上がりましたけれども、規模の集約化は三%どころか、農業センサスだから、これは農水省の資料だ。全国平均の経営規模は、平成二年の〇・七七ヘクタールから〇・八〇ヘクタールとわずか約一・〇四倍にしか拡大していないと書いてある。費用対効果からいうと、農業基盤の整備、特に大規模圃場整備はお金がかかる、それはわかります。しかし、結果として、それをやることによって最大の目的である農業の集約化、これが図られていないということは、実は大変深刻な問題であって、ある意味で、日本農業の抱えている大きな構造的な問題も実はこの中にあるからだけれども、しかし、少なくとも、納税者に対してはきちっと、これだけのお金を使って圃場整備率が五五%まできたのだったらば、それに合わせた形で大規模化がこうなりましたというところがなかったら、政策的にどこかおかしいんじゃないかと言われたって、これは私は仕方がないと思っているのです、大臣。いかがですか。
  69. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 ちょっと前提となる数字の問題でございますので、今、安住先生は、日本全国の総平均をお出しになってそういうことを御説明になりました。ウルグアイ・ラウンド緊急対策もそうなんですけれども、短期集中、そして効果の早期発現ということを主目的にしております。  そういう点から申しますと、このUR対策予算を活用して圃場整備を実施した地区のうち平成八年度、九年度に完了した地区を調査いたしますと、担い手の経営規模、これは一経営体当たりの規模が二・六ヘクタールから五・六ヘクタールへということで、二・二倍に拡大しているわけですね。ですから、そういった認定農業者その他を中核としたところに集中的、重点的に予算を投入いたしまして高い生産性を求めるというのが目的でございますので、総平均だけで御議論をいただきますのは多少誤解を生むのではないかなというふうに思っております。
  70. 安住淳

    安住委員 私もその数字、知っています。しかし、我が国農業が結果としてなかなか集約化が図られていないというのは、局長、そうじゃないですか。  私が今から言いたいのはそんなことじゃなくて、そのことよりも、大臣、この第四次計画は平成十八年までやるのでしょう。それで、四十一兆円かけて、この五五%を七五%にするという計画なんですよ。しかし、残念ながら、ウルグアイ・ラウンドの予算はもう先が見えてきた。その中で、私のつたない頭で計算しても、一年間に一%上げるというのは大変な話ですよ、これは予算があるといったって。平成十八年に七五%なんという数字が本当に実現可能だと思っていらっしゃるのですか。いかがですか。
  71. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 大変厳しい財政事情ではありますけれども、私どもも、そのコストを下げながら、効果的な工法等を通じまして、極力その数字が実現できるように努力をいたしたいと考えております。
  72. 安住淳

    安住委員 大臣、そこで、私が言いたいのは、実は私、事前に農水省と話をしていて、ここが意見の分かれるところなんで、考え方が違うと言われればそれまでなんだが、圃場整備の今の仕組みの問題に少し言及したいと思うのです。  つまり、今は御存じのとおり、私なりの言い方をすれば立候補採択制なわけですよ。その地元の土地改良区の皆さんが県に対して申請を出して、それを県から国に出してそれを採択するという話でやっているでしょう。そうですよね。それだと、うまくいくところはうまくいくわけですよ。しかし、うまくいかないところはなかなか判こが全部つけないというか、事情もあってもらえない。これが全国的に言うと、つまり、それぞれの地域特性において本来整備をしなければいけない平地の、いわば特化をしなければいけない田んぼが逆に圃場整備ができなくて、むしろ判このつきやすい、こんなことを言うと怒られますが、そういう地域だけが圃場整備が進む。私はそこに実は大きな問題があると思っているのです。むしろ、計画性を持って国の主導でというか、そういうふうな形で、この圃場整備をやっていくべきじゃないか。仮に、十八年度で七五というのは、局長はそういうお話をしたけれども、私は多分かなり絶望的な数字だと思うんです。  まして、これから財政的に厳しくなりますね。そういう中で、限られた財源を有効に使って、もし土地改良をやるということになれば、私はこの長期計画の目標を、ある意味で、数字的には下方修正をしても結構だから、もう少し効果的なところに優先的に使うという仕組みに変えて努力をすべきだと思うんです。  そうでないと、進捗率をただただ高めるために、やりやすいところからやっても、結果として、本当はここは一等農地で米作地として将来残しておきたいなと思うところができないというような、そういうまだらな圃場整備実態が浮き彫りになってきている可能性があるから、全部の予算でこういう七五%も底上げができないとすれば、限られたところに特化して予算を使うことで効率的な圃場整備をやった方がいいのではないかと実は思っているんです。  だから、今のような立候補した採択をするのではなくて、国の方から計画的に、これは都市計画と一緒です、私から言わせれば。農地も計画的にここはこうしてくださいというようなことを主導的にやることが私は後から議論する農業基本法などでも非常に重要な問題じゃないかなと思うので、このことを指摘しておきたいのですけれども、御意見はありますか。
  73. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 計画的に土地改良事業を実施するというのは私もそのとおりだろうと思います。  ただ、基本的には農地は私有でございますし、それから日本農業実態を見ますと、大半の水田農業というのはやはり集落全体の合意のもとで進められます。一人の農業者あるいは一人の農地だけが独立して営まれるものではございません。その意味で、集落全体としての合意を前提とした事業の実施というのはやむを得ないし、また望ましいことなのだろうと思います。  ただ、ウルグアイ・ラウンド対策のように集中的にやらなければならないものにつきましては、ここにパンフレットもございますけれども、そのあたりを重々説明をし、皆さんに御理解をいただいた上で、県が促進計画、そういう計画を立てまして、それにのっとって実施をしていくというスキームになっております。  地域の声をよく聞き、そして県の意向、国としての計画、方向というものが一体になって初めて、集落を前提とした日本の水田地帯あるいは畑地帯での土地改良事業がなされるものというふうに私は思っております。
  74. 安住淳

    安住委員 大臣、それはいいんですが、お金が今からなくなってきて、この長期計画そのものの実行が難しくなったときには、私はこの採択のありようというのは考える余地があるし、また大規模化を、集約化を図っていかないと、せっかく圃場整備をやった土地が、減反もあるからかもしれないけれども、最後に遊んでいるというか、むだにならないようなやり方というのはもっと私は考慮する余地が十分あると思います。ぜひそのことを御検討いただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
  75. 中川昭一

    中川国務大臣 計画が達成できるかできないかは別にいたしまして、限られた財源の中ではありますし、また一方、我々の予算の使い方についても非常に慎重にやっていかなければならないという時代でございます。  そういう中でございますが、一方では、優良な農地、あるいはまた担い手の人たちが数多くいらっしゃるような地域とか、そういうような地域、つまり生産性、投資をすることによってそのメリット、投資効率が非常にいいというような基盤整備というものを限られた予算の中で優先的にやっていくということは、これはやはり投資効率という観点からも、また農業政策の観点からも当然必要だろうと思います。  また一方、中山間地域とか、そういう地域はそういう地域でまた目的を持って農業活動に従事されておるわけでございますから、今の先生の担い手地域あるいはまた集積することによってメリットのある地域に配慮しろという御指摘については私も同感でございます。
  76. 安住淳

    安住委員 次に、非公共の部分でいうと、余りこれは愉快な話ではありませんけれども、前の大綱にも農村と都市の交流等々があって、そういうことに予算を使うべきだということを根拠にいろいろな施設を建てました。ところが、行政監察等でいろいろな指摘をいただいております。特に農林漁業体験実習館、交流施設等々の中に非常に利用率の低いところがある。利用率が七〇%未満だというのが三三%もある等々指摘を受けて、行政勧告を受けている。このことはやはり箱物行政に対する警鐘でもあると思うし、そういう意味では、行政監察の結果を見ると、場合によっては補助金の返還等を要求すべきだというぐらい厳しいことも書いてある。  つまり、そういうことからいうと、局長、これは回答をもう間もなく出すように言われているはずですから、このことについて、最後にお伺いしますから、御答弁を願います。
  77. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 御指摘のとおりでございまして、平成九年九月八日に勧告がなされたわけでございます。私ども、九月八日の後、九月末には局長通達を出しまして、事業運営の適正化なり、施設の利用率の向上についての指導を始めたわけでございますけれども、今先生からお話がございましたように、三月中にも総務庁に対しまして改善措置状況を報告することにしております。  主な内容は四点でございます。  第一点は、計画の審査に当たって、地区の立地条件農業者のニーズ等を踏まえて、慎重かつ厳正に行うように指導するということでございます。それから二点目は、施設の採択に当たりましても、審査を慎重かつ厳正に行うということでございます。それから三点目は、施設の利用、活用が低調なものにつきましては改善措置を講ずる。もしどうしても改善が見込めないと判断をされるものにつきましては、利用目的の変更等の手続をとるというふうな指導をしたところでございます。そして、四点目といたしまして、基本法の見直しが行われているわけでございますので、この見直しの動向等を踏まえまして、現行の農業構造改善事業にかわる新たな事業の創設につき検討する。  以上の四点を報告する予定にいたしておりますが、いずれにいたしましても、手続のさらなる適正化、事業の効率化、農業構造改善事業の抜本的な検討ということに着手をしたいと考えております。
  78. 安住淳

    安住委員 この行政監察で指摘されるようなことは本来あってはならないわけでありますから、利用率の問題、果たしてそういうことに予算をつけたのが適切だったかどうか。これは国民皆さんの大事な税金を使っているという観点に立てば、どんどんとこれに対する厳しい監視をむしろ皆さんは持つべきですから、このことについてはぜひ御要望をしておきたいと思います。  次に、大臣、本日閣議決定をした基本法に関連して、私の方から自給率の問題、農地の問題、それから就農人口、人の問題、それから認定農家の問題等々について意見を少し述べさせていただいて、お話をまた続けていきたいと思います。  食料自給率、私もいろいろ調べた結果、確かになかなか大変であります。四一%という数字がありますが、しかし穀物ベースでいう自給率は二八%。これにはいろいろな要因がありますから、どこから手をつけていいのかわからないというのが実態だと思いますが、しかしいろいろなことを考えてみると、やはりさっき大臣も私の質問の中でお答えをしたように、食生活がかなり変化しています。  私の選挙区で農家皆さんに聞いたら、やはり三十年くらい前は大人は大体一年間に二俵と言われていたのが、今は一俵ちょっとぐらいしか食べない。つまり半分ですね。六十キロちょっとしか食べない。東北でもそうなのだから、多分都市部に来たらもっと食べないかもしれない、そんな時代になってきました。  つまり、食料自給率を上げるというのは食生活に対する、ある種大きな挑戦をしないといけないのと、それから先ほどから言っているように、自由市場に対して身をゆだねていくのではなくて、かなり政策誘導をせざるを得ない部分というのは私はあると思うのです。  そのことをちゃんとやるためには財政的な措置も必要です。だから、さっきから議論しているように、それを追っかけていけば、じゃ、我が国の国際貿易の中で我が国農業をどうするのだという話に行き着くのだけれども、その話はさっきやったからやめて、とりあえずそこの問題だけ言うと、大臣食料自給率についてはこの基本計画策定を今からするそうですが、数字を明記なさるのですか。
  79. 中川昭一

    中川国務大臣 法案の御審議をいただくと同時に基本計画を策定していかなければなりませんが、その中に、品目ごとに自給率目標を設定するというふうになっておりますので、何%とか、何・何%まで書き込めるかどうかは別にいたしまして、実現可能な目標数値というものを明示したいと考えております。
  80. 安住淳

    安住委員 私は、まず土地の問題から自分の認識を言うと、我が国の一億二千万人に対して、今五百万ない、四百九十二万ヘクタールでしょう。これはフランスなんか、FAOの資料ですけれども、五千七百万人の人口に対して三千万ヘクタールあるというわけですよ。イギリスなんか五千八百万人で一千七百万ヘクタールあるわけですよ。私が聞いた話では、一億二千万人の我が国で自給率を一〇〇%とすれば、一年間に食ったものを田んぼにというか耕作地に当てはめると、一千七百万ヘクタール必要だ。それに対して、実際我が国には四百九十二万しか全耕地面積がない。その中で自給率を上げていくというのは相当、面積の点からいっても、まず至難ではないかなというのが一点。  それから、供給熱量で、これもFAOの資料だけれども、調べると、やはり問題は米の食が進まないというか、昭和四十年度で一人当たり百十二キロ食べていたのが、平成九年でもう六十七キロになっている。私は、これはやはり自給率低下の一つの大きな要因だと思いますが、実際これを上げていくというのは具体的にどういうことなのかなというのを、自分ではよくわからないので、大臣はこれについていい案ございますか。
  81. 高木賢

    ○高木政府委員 ただいま御指摘のように、大きな二つの難しい問題があると思います。  一つには、まさに日本の農地面積が人口に比べて極めて少ない。逆に言えば、イギリスは人口と農地面積の関係でいきますと日本の七倍、フランスでは十二倍ということでありますから、大変恵まれた状況にあると思います。そういう状況のもとでありますから、耕地利用率を高めるということと単収の水準を高める、この二つが限られた面積を有効活用する上で大きなポイントになると思います。  それから、日本でいわば得意の作目といいますか、風土に適した作目であります稲作、これが米の消費の減少、ただいまも御指摘がありました、茶わんに直せば一日七杯が三杯半ぐらいになっているということでありますから、米以外のその他の麦、大豆、飼料作物、こういったものの自給率を上げて、全体としての自給率の向上につなげていく、これが大きなポイントになろうというふうに思っております。  それから、食料消費の問題がもう一つあろうかと思っております。
  82. 安住淳

    安住委員 生産の側からアプローチして、消費の側からアプローチする、自給率の問題を考えるときはこの二つが大事だと思います。  生産の面からいうと、今官房長がおっしゃった話と一緒で、ある種市場経済の中でやるということは非常に難しい問題があるなと私思っています。特に、麦とか大豆の生産性を上げるというのは、これは国内的な市場や価格動向を見ると相当難しい面がある。  一方、消費の面から見ると、例えば肉なんか、大臣、四十年から平成九年までの間でどうなったかというと、消費量が一人九キロから三十九キロ、牛乳とか乳製品に至っては、消費が三十八キロから九十三キロと二倍以上に伸びているわけです。私の子供も、御飯を食べるよりは何とかハンバーガー食べたい、食べたいと日曜日になるとやはり言うわけですから、これから、それぐらい食生活がなかなか思うようにいかない。  それにもう一つつけ加えると、残渣の問題があります。ごみ、食い残し。  統計が当たっているかどうか、農林省、もし持っていたら確認をさせていただきますが、私が調べた資料でいうと、一日一世帯当たりの食べ残しは二百五十グラム、我が国全体で三百四十万トン、純食料の五・二%に相当する、それぐらいの食い物をどんどん、言ってみれば、食っているんだか食わないんだかわからないけれども、捨てている。  こういう大量消費、大量生産社会のいわば申し子のような現状の中にあって、生産と消費の両面からどういうふうにアプローチをしてこの食料自給率を高めていくかということは、国民的な合意も必要だし、議論も必要だと思います。  これは、基本的な考えを少し話していただけますか、どうするのか。
  83. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、日本が世界の中でも最も自給率の低い国であるという厳しい現実を認識し、しかも、そのポイントがさらに少しずつ少しずつ下がってきておる、このことを何とか食いとめていかなければならないというのは、まさにこれは国民的に御理解をしていただける極めて大事な問題であろうと考えております。  そのときに、先ほど先生お話しになりましたように、三千七百万ヘクタールしかない日本の国土のうちで、千七百万ヘクタール農地が本当だったら必要だというような、これは実現不可能な数字になるわけであります。  ですから、今度の基本法におきましても、国内生産を基本としつつ、備蓄あるいは輸入を組み合わせて、安定的な食料供給、あるいは不測時における食料供給というものを基本法の中で位置づけているわけであります。  一方、与えられた条件の中で、つくればいいか、何でもかんでもいいから、さっきの米じゃありませんけれども、一千三百万トン米をつくったらいいかというと、これはやはり、じゃ、せっかくだから、今まで一日御飯四ぜん食べていたけれども八ぜん食うかというと、なかなかそういうわけにはいかないのだろうと思うわけでありまして、やはり国民的な、消費者サイド、生産者サイドのお互いのニーズの接点がない限りは、国内生産というものが消費に結びついていかないわけであります。  そこが難しいところでありまして、日本人はもっと米を食わなければいけない法律なんというのはつくるわけにいきませんから、そこはやはり我々も啓蒙あるいはまたいろいろな機会での宣伝、さらには、やはり消費者がもっと農村地域に身近な存在、あるいはまた逆に農村が都市にとって身近な存在になるというようなこと等も含めて、消費者皆さん理解を得ながら、先ほど先生も御指摘になったように、残渣の問題、食べ残しの問題等々を少しでも少なくしていく。  あるいはまた、米が主食の日本でございますから、米を中心とした日本型食生活というものが自給率の向上に役に立つのではないかと我々理解をしておりますので、そういったことも含めまして、実現可能な、できるだけ高い数字を目標にして、生産者皆さんが頑張っていただくことはもとよりでありますけれども、消費者皆さんにも御理解をいただきながら自給率を上げていきたいというのが基本的な考え方であります。
  84. 安住淳

    安住委員 基本計画が出てきたら、もっと具体的な議論をしたいと思いますが、私もいろいろ計算をしたんだけれども、これは質問じゃなくて私なりの考えです。  小麦を七十万トンにすると大体それで上がるのが〇・五%、大豆を二十万トンにすると、大臣、私の計算だとそれでも〇・二%ぐらいしか上がらないんですよ。米の消費を例えば五%ぐらい上げますと、それでも自給率でいうと一%上がるか上がらないかだと思いますよ。つまり、四一%を四五%にするというのはこれはもう大変な話ですよ、大変な話。だから、私はさっきから言っているように、ある種、挑戦しないといけないと思います、食生活に対する挑戦ですよ。  それから生産者に対して、前も私言いましたが、自由市場の中で自由に作物をつくる権利をある種規制をするというか、政策誘導するための財政的な支出も必要になってくるということでありますから、どうぞその点をよりわかりやすく、より具体的に示していただきたい。それに応じてまた次の機会に議論をしたいと思いますが、何かありますか、長官。いいですか、それで。大臣、それでよろしいですか。  私の認識はそういうことでございますから、ぜひ具体的な数字で、もし計画を出すのであれば我々が納得がいくような根拠を示して、なおかつ、針の穴に糸を通すような話で恐縮だが、国際的な流れに反しないような財政的な措置をどう講ずるのか、こういうものを考えていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  さて、次に農地の問題をやらせていただきたいと思います。  昭和二十七年七月十五日にできた農地法、第一章の総則第一条「農地はその耕作者みずからが所有することを最も適当であると認めて、耕作者の農地の取得を促進し、」云々と書いてある。私は今回の議論をするときに、この農地法、多分農業基本法の理念からいったらば大改正をしないといけない、そういうことになると実は思っております。  そこで、この農地をめぐる歴史というのはなかなか言いにくくてなかなかやりにくい問題ではあるが、私なりに少し議論をして、私の考えも言わせていただければと思います。  昭和二十七年に農地法ができたわけであります。そして農地の権利移動というものが進むことによって、我が国は農地解放というのが実現をいたしました。当時の資料をここに取り寄せておりますが、国がその当時買収した農地が百七十四万ヘクタール、買収をかけられた地主農家が百七十六万世帯、国から売り渡しを受けた農家の方が四百七十五万戸。つまり、この時点で名実ともに地主制度は崩壊をいたします。  しかし、その後の農地の問題で一つ忘れてならないことがあります。それは、言い方は悪いんだけれども、農地というものが果たして耕す者のためにあったのか、それとも農地そのものが資産であるというふうな、いわば誤解を持った認識というものが農村社会の中にはびこっていた可能性がなきにしもあらずだと私は思っております。規模拡大を進めなければならないという我が国農業の中で、昭和三十六年に農業基本法ができました。  私は、実はそのときの資料を国立国会図書館で取り寄せました。大臣、これは当時の池田勇人総理大臣が昭和三十六年三月二十五日に、水戸で農業基本法推進大演説会というのをやっています。これは御党の、自由民主党が発行している旬刊自由民主のコピーなんです。私は当時の資料を読んでいくときに、なるほどと思ったことが何点かあります。それは、この農業基本法を制定するときに、国民議論が少なくとも巻き起こり、社会党を含めて自民党も当時全国で大変なキャンペーンを張ります。我が国農業がどうあるべきか。その中で特徴的だった、当時の池田首相、このときは福田赳夫先生が政調会長を実はやっておられて、二人で行脚をするんです。その中で特徴的なものを旬刊自由民主が載せたので、そのコピーを私今持ってきました。  そのときに池田総理はこう言っているんです。私は、昭和三十六年当時ですよ、十年後には農家が半分以下にならなければならないと思っております。農業に不勉強な人間は、池田はまたふざけたことを言っているとお思いでしょう。しかし、十年前に比べて専業農家というものがどの程度になったか。農業所得よりも農業外所得の方が多い農家が専業農家の数と同じぐらいになっちゃったんじゃないか。農業人口を減らすことで規模の拡大をせにゃならぬ。だからこそこの農業基本法というものをつくるんだ云々ということが書いてあります。これが事実かどうかなんということを私は大臣に申し上げるつもりはありません。しかし、当時のにおいが実は伝わってきます。  当時のことを言うと、当時農水省の農政課長だった方があの小倉さんです。小倉さんの本も私読みました。小倉さんは、「農政・税制・書生」というところでこういうふうに書いてあるんですよ。私は、戦後農政の農地をめぐる問題の中で一番端的な話かなと思ったのでここで簡単に紹介しますが、小作農の方がかわいそうだというだけでは政治的にこの農地の問題を解決するというのは難しいだろう。農地の有効利用、食料生産性の向上という公共の利益があって初めてこの問題は解決し得るのだ。にもかかわらず、その後の農地制度は私権拡張の歴史であった。農地改革時には、国から買い受けた農地を転売する場合は国が先買いする規定を明記していた。それが数年を待たずに削減され、高度成長に伴い、農地は残念ながらますます資産化し、これが農地をいわば乱す結果になってしまった。現在の日本の農地は単に狭いだけでなく、地権が複雑に入り組んでいることに特徴がある。これが我が国農業の規模拡大にどれほどの障害になっていることだろうか。四十年前に書いたこの文章が私には今も新鮮に響きます。  大臣我が国の農地の歴史をどのように御自身はお考えになっておられるか、まずそこから伺いましょう。
  85. 中川昭一

    中川国務大臣 農地というのは非常に歴史があって、明治あるいは江戸時代から、もっと古い時代から、ずっとまさに農村社会の最も大事な要素の一つとして位置づけられておるわけでありますが、戦後のことに限って申し上げますならば、先生指摘のように小作人から自作農維持ということになった。しかし、先生おっしゃるように、その結果、小規模の自作農農家がたくさん誕生した。これではいけないということで、三十年代の初めから何か基本法をつくろうという議論があったそうだというふうに聞いておりますけれども、数年かけてできたのが現行の農業基本法であり、そこには、都市と農村との格差の是正とか食料供給とかあるいはもっと踏み込んだ選択的拡大とかいうような目標を掲げて農業基本法ができ上がったわけであります、当時、池田内閣総理大臣、河野一郎農林大臣だというふうに記憶をしておりますけれども。  その農業基本法が果たしてきた役割というのは大きかったと思いますけれども、残念ながら、都市の生産性の向上の方が農村部における生産性の向上よりもはるかに大きかった結果、現時点においてもやはり農村と都市とのいろいろな意味での格差というものがある。社会基盤のインフラ整備とかそういうものも含めたものがまだ立ちおくれておるというのが現状だというふうに思いますので、そういう観点から、その当時の基本法の理念の中でも現時点においても必要なもの、大事なものというものは幾つかあるというふうに認識をしております。
  86. 安住淳

    安住委員 ふだん歯切れのいい農林大臣も、この問題に関していうと余り歯切れがよくないなというのが私の感想なんです。しかし、正直言って、この問題は大変な話なんです、私にとっても。しかし触れなければなりません、建前も本音もなく。つまり、なぜかというと、私は、農地というもののある意味で既得権というものに、ある種今までタブーということで言わなかった問題にそろそろアプローチをしないと、農地は耕す者のためにあるという前提が大きく崩れつつあり、それが農家の、いわば農業のというか、規模拡大を阻んでいる実態というものを感じているからであります。それが規模拡大を阻み、耕作放棄という実態をあらわにし、つまり、いろいろな政策をやっても、土地の問題を解決しない限り、日本農業、特に次にできる新農業基本法、この問題はやはり解決をしなければならない大きな課題だと私は思っています。  そこで二点伺います。  まず一点は、大臣、今は、御存じのとおり、農地に関していえば、優遇税制という言い方が当たっているかどうかはわかりませんが、優遇されている税制というものがあります。しかし、私は思うんですけれども、これは通告していないから、もしかして想定していなかったらごめんなさい、耕作をしている農家皆さんには優遇税制があります。しかし、耕作を放棄した方にはそれと同じ制度が適用されていますか、適用されていませんか。これは局長、簡単で結構です。
  87. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 農地という形態に着目をして課税をされております。
  88. 安住淳

    安住委員 大臣、これは一つ提案です。耕作放棄をしたりしている農地に対しては、思い切った、例えば宅地並み課税をかけるとか、耕作者に対して税を優遇すべきであって、農地に対して税を優遇するというあり方でなくて、私は、むしろその既得権に踏み込んでいかないといけないというか、そうすべきだと実は思っているのでその話をしているんですけれども、簡単に御感想で結構ですから、いかがですか。
  89. 中川昭一

    中川国務大臣 明らかに耕作放棄地であれば税制上の優遇ということに関しては問題だと言わざるを得ませんが、一方では、先生も先ほど御指摘になったように、優良農地を何とか確保していこうという政策もあるわけでございますから、そういう観点から、農地として保全すべきものについては、耕作放棄地にならないようにするために何をしたらいいかということの方が先に立つ議論ではないかというふうに考えます。
  90. 安住淳

    安住委員 今の話は既得権の非常に象徴的な話のような気がしたものですから私は言っているので、どうやったら規模拡大が進むかというその一点で、私は実はこの問題に関心を持っているのです。ですから、偽装農家とは言わないけれども、まじめに働いている農家皆さんから見たら、田んぼがいずれ住宅地になるみたいな意識で、転がしていると言ったら変だけれども、そういう人たちときちっと分ける、そして、耕作者が優遇されるというか、やはり耕作地というのは耕す者のためにあるんだと。  私が農地法をさっき時間をかけて読んだというのも、まさにその理念があるからでしょう。その理念を生かすためにいろいろやったけれども、私物化をしてきた歴史というものがあるから、それに対して私は今度の基本法で挑戦をしてもらいたいと思うからこういう話をしているので、ぜひ考えていただきたいと実は思っているんですよ。答弁はいいです、ちょっと時間がなくなってきたので。局長、ぜひ考えてくださいね。  もう一つ農業生産法人の問題でございます。  本当に、十年くらい前まで、こういう議論というのはタブーだというか、そういう流れの中で、私なりには大変評価します、よくもここまで来たなと。しかし、これだけでは何をやろうとしているのかよくわかりません。つまり、何をやろうとしているのかがわからないというのは、大臣、入り口をあけました、民間参入の可能性が何ぼかあります、株式の規制等があって、現実に私も大手商社の、例えば社長さんともこの間話をして、これだったらば農業に参入する意思はありますかと言ったら、まあ全くないね、今は全く、こういう状態では関心ないねと。多分それが実態だと思うんです。  だから、制度面として、言ってみれば入り口をあけて、ではこれからどっちの方向に行くのかということに関しては、これは余り明確でないんですね、基本法では。試験的に今回こういうことで民間参入を認めたのか、それとも、今後耕すということであれば、その格が法人格であっても人格であっても構いません、そういうおつもりで今回の決定をなさったのか、それによって全然これは違うわけですよ。どっちですか。農業基本法で今回出したのはどっちの方の考えですか。
  91. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 御案内のことだろうと思うんですけれども、農業生産法人制度の枠内において、その組織形態として株式会社というものを認めるというのが基本原則でございます。これは農地法上、農業生産法人というのが、農地法二条だと思いますけれども、きちんと位置づけをされておりまして、農地法一条の目的に合致をした、地域に根差した農業経営体であるということにきちんとなっておりますので、私どもは、農地法の耕作者主義といいますか、その枠内でこの株式会社というものを導入すべきものというふうに考えた次第でございます。  一方、どういうことがこれから起こってくるかということなんですけれども、当面、私たち考えておりますのは、現在有限会社までとなっております方々が、その経営管理能力あるいは雇用の安定、新規就農の受け皿等々の観点から、全体としての信用力等を高めるために株式会社に発展をしていく可能性があるのではないか。また、既に畜産や園芸の分野で株式会社としてやっておられる方々が、例えば堆肥の有効活用というふうな形で農地を取得したいというふうなケースについては、多分、相当そういう御希望がありますので出てくるだろう。  そういうふうなことを前提にいたしまして、では株式会社一般はどうかということにつきましては、やはり……(安住委員「いや、僕が聞いているのはそうじゃなくて、今後それをもっと広げていくおつもりか、試験的に今回やったのか」と呼ぶ)私どもは政策大綱の中で、このような形態に限りという前提に立っておりますので、この形態でやりたいと思っておりますし、それを具体化するための検討を、この夏までを目途に生産法人の研究会でやらせていただいているところでございます。
  92. 安住淳

    安住委員 つまり、大臣、私の言っていることは極めて政治的な話ですよ。政策的な話。だって、民間参入をある種認めるわけですから。これは難しいと思いますよ、現実に。私も、今局長がおっしゃったことは百も承知で聞いているんですよ。  そうじゃなくて、私が聞いている切り口は、今後民間参入に関しては、もっと規制を緩和して入れていくのか、それとも、今回これで様子を見て、入ってこなければまた蛇口をぎゅっと閉めるのか、どっちの方向に行こうと思っていらっしゃるのかという難しい話を聞いているんですよ。
  93. 中川昭一

    中川国務大臣 まさに結論的なお答えとしては、今局長が言ったように、夏までに、今専門家の皆さん方に御議論をいただいているところでありますから、具体的なことを申し上げることはできませんが、少なくとも限定的な形で、株式会社形態の農地というか、農業法人を認めるという現実であることは間違いがない。ですから、そういう意味では、試験的というよりも認める方向でもう進んでおるわけであります。  しかし、今後それを広げるのか蛇口を閉めるかについては、検討会、そしてまた実際にやってみた後の判断になると思います。
  94. 安住淳

    安住委員 私はここでこれ以上議論はしません。しかし、いろいろなことを考えないといけないというのは、大臣、まず我が国農業の課題、コストを下げること、経営規模を拡大して体質を強くすること、あると思いますよね。それから、一定の収入を与えることによって農業で飯を食っていくような人たちをふやすこと。  そういうことからいうと、これは流通のこと、食品流通局長もいらっしゃるけれども、つまり、農業生産の額は大したことはないが、流通全体でいうと、川下産業を入れたらこのアグリビジネスというのはたしか八十兆円近い産業だと思うのですよ。コストダウンと言ったのは、いろいろな意味でこれは改革しないといけません。しかし、生産コストを下げるだけでなくて流通コストを下げれば、もっと生産者消費者の距離が近づいていくという方法がある。  そういうことに対してもっと多角的に考えたときに、農業生産法人の問題というのは、ただ試験的にこういうことをやるんじゃなくて、かなり流通に対して革命的なことを起こせる可能性がある、それが結果的には規模拡大や何かに結びついていけばもっといいことだなと私は思うからこの話をしているのです。  局長、せっかくおいででございますから、川下産業のことは余り今回基本法の中では触れていないのですけれども、今後どういうふうに育成していくおつもりなのかだけ、簡単にお話ししていただけますか。
  95. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 今回の食料農業農村基本法案の中でも、川下問題、特に食品産業の重要性といいますのは、まさに農業と並ぶ国民に対する食料供給の二本柱、車の両輪というふうに位置づけられているというふうに私は考えております。  先生指摘の点で、今やっております食品、川下対策でございますが、一つは食品産業の経営基盤の強化ということで、技術力の強化あるいは金融の円滑化、あるいは、特に食品産業と農業とが連携いたしまして、相互にプラスになる形での販路拡大あるいは新製品開発等をしていくということ。また、廃棄物の削減あるいはリサイクルの促進等の環境問題への取り組みということでございます。また、食品流通の活性化と効率化を図っていくという観点から、卸売市場の整備、活性化あるいは食品流通業の近代化への支援等の施策を講じております。  今後、今国会に提出を予定しておりますJAS法改正によります表示・規格制度の充実によります地域農業の振興あるいは消費者の商品選択に対します情報の提供、また、これも今国会に提出いたします卸売市場法の改正によります卸売市場の新たな展開と活性化など、さらに施策の充実に努めてまいりたいというふうに考えております。
  96. 安住淳

    安住委員 私は、川下産業に非常に重要だと思うのは、そのルールづくりなんですよ。さっき言ったように、農地法改正を今回するわけですよね。大規模改正になると思います。その中で、川下産業とちゃんとアクセスできる、そういう土壌をちゃんとつくっておかないと私はだめだと思うからこの話をしている。品質表示制度をぜひやってください。野球でいうと、皆さんはこれからはアンパイアでないとだめなんですよ。コーチや監督は任せて、ルールに違反した者にきちっと罰則を与える、大事だと思いますよ。  流通の世界、農産物だけではありません。水産物もそうです。  私のところの一例を言うと、ことし広島産のカキがいろいろな問題があって非常にだめだったんだ、貝毒なんかがあって。どうも、うわさですから、これは信憑性がないかもしれない。夜に広島ナンバーのトラックが来て、三陸のカキの種を買っていって、それで広島産のカキだといって売っているとか、生産者の中からそういう不安や不信が物すごく出ているのですよ。中国産のカキを混入してきて松島産のカキですなんて売っている業者もいると言われている。品質表示というのは本当に難しい。  私は、品川の家畜市場に行ったときも言われました。仙台牛のいいところを買って、こんなの、シールを張って神戸牛といって出せばわかりやしませんよなんということを言う人もいました。  品質表示制度のあり方を、もっと厳格に運用することを今まで怠ってきた。だから、川下産業にいわばルールなきルールというものが逆に言うと存在している。卸はそれでないと食えませんなんということを堂々と言うのもいる。  しかし、生産者を守るためにはそのルールづくりが非常に重要であるということだけを指摘しておきますから、大臣、この点はぜひよろしくお願いしたいと思います。  二時間二十分にわたって質問をさせていただいて、残りあと五分になって、私もあと十項目ぐらい用意しておりましたが、時間がございませんので、最後、認定農家制度のことを少し触れたいと思います。  去年の十一月に山形で認定農業者のサミットが開かれて、そのときのことをいろいろ新聞等で読ませていただきました。これは、気持ちはわかります。しかし、認定農家になってはみたもののというのが現実の現場の声だったんじゃないかなというふうに私は思っています。  アンケート調査の結果もあります。次に改善計画の再申請を出せと言われたらどうするか。積極的にやるという人はわずか三〇%しかおりません。  現実に目標としている三十五から四十万、今現在十二万、遠くこれは及ばない。認定農業制度を今後どうするおつもりですか。私は、市場の中から強者をつくっていくべきだという論者です。認定農家制度でいわば官が押しつけるものというのは、私は決して好ましいとは思っておりません。なぜかというと、今本当に我が国で求められている農業者というのは、自立した強さを求められているのであって、ある意味で、税制でも優遇をすることによって、その育成を阻害するという相矛盾することがこの制度には実はあるわけであります。  ですから、私は、この制度基本法ができると同時に考えなければならない時点に来ていると思うんだけれども、一分か二分で答弁をしていただければありがたいと思うんですけれども、いかがですか。
  97. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 現在十三万の認定農業者、それぞれ頑張っておりまして、これは御案内と思いますけれども、稲作の分野では全体農家の三倍ぐらいの大きさの経営耕地というふうな方もいらっしゃいますし、地域でそれぞれ中心になって、リーダー格になっております。  十四万の集落で十三万ですから、一集落にまだ一人はいないわけですね。そういうふうな状況の中で、やはり今先生おっしゃったように、市場にさらされる、自立をするという側面と、集落に住んで共生をするという、その両方をやはり調整していかなければならないという難しい時期であるわけでございます。  五年たちまして、計画の見直しの時期が順次めぐってまいります。そのプロセスの中で、どういうメリットといいますか、どういう政策をとったならばこういった認定農業者の方々がさらに意欲を引き出していけるかということについて集中的に検討したいと思いますが、その一つとして、やはりこれまでの施策をもう一度整理して、そういったこれからの担い手のところに集中をしていく、整備をするということを今検討中でございます。
  98. 安住淳

    安住委員 素直に今のお話を聞けば、私が言ったとおり、この制度をこのまま運用するのは大変なので、そろそろ今後のことも考えて検討するということで、そういう認識でよろしいですね。はいかいいえかだけで答えてください。
  99. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 認定農業制度を改善充実したいと考えております。
  100. 安住淳

    安住委員 実態に合った形にぜひしてください。  しかし、社会主義国でないんだから、ある意味で、やはり市場の中でもまれて強くなっていく人を育てるという勇気を我が国農業は持たないからこういう結果になっているんじゃないかと私は思うのです。大臣、そのことをやはりベースに置く、これが三十八年ぶりの改正のみそだと私は思っているのですよ。競争的共存というと、まるで政党みたいなことを言いますけれども、そういうことをやはり基本に据えて、川下産業、アグリビジネスと一体となって足腰を強くしていく。  そうでないと、最後質問をしますけれども、我が国農業は、生産者だけ見て、農家皆さんだけ見たら、本当に暗い将来が待っております。昭和五十五年時点の基幹的農業従事者は四百十三万、平成七年度で三八%減って二百五十六万。推計によると、これは農林業センサスだから農林省の出したもの、平成二十二年度、またそれから四二%引いて百四十七万人しか農業をやらない。大臣、なおかつ六十五歳以上の人の占める割合は平成二十二年のときは五〇%を超える。  これだけ衰退化して衰弱化している現状というものを改めるためには、いろいろな新たな血の導入と思い切った発想と感覚が私は必要だと思います。このことに対する危機感は当然お持ちだと思いますから、これは最後質問にします。これはまた後でゆっくりやらせてもらいますが、このことをよく踏まえた上で、いろいろな外部からの血を導入し、耕作者というものをきちっと守っていく施策をとってもらいたい、私はそう思います。どうぞ最後に御答弁をいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  101. 中川昭一

    中川国務大臣 今の先生お話の大半は私も全く同感であります。やはりこれからの日本全体あるいは農業者の将来像を考えたときに、自給率の向上という一方の施策と現実とはかなり厳しいという認識を私も持っております。  ですから、先生がおっしゃられるように、消費者サイドのことをよく見た生産活動、あるいはまた生産活動のことをよく国民的に理解をしていただくといったようなこと、そしてその間には、直接的な情報通信手段もありますけれども、川中、川下産業等の役割も大きいと思います。  それからもう一つ、私はやはり小さいころからの教育というものも大事なポイントではないかと思いますが、先生の御指摘は私にとって大いに参考になる御指摘だと思っております。
  102. 安住淳

    安住委員 どうも長時間にわたって、大臣ありがとうございました。農水省の皆さん、ありがとうございました。  では、終わります。
  103. 穂積良行

    穂積委員長 次に、小野寺五典君。
  104. 小野寺五典

    ○小野寺委員 きょうは私の時間は三十分ということでありますので、ポイントを絞って質問をさせていただきます。  今回の米の関税措置への切りかえということでありますが、これは今回のWTOの来年に向けた交渉におきまして、それなりにやはりどっちが得かということを考えた場合に、このまま関税化を受け入れない場合には、特例措置の継続ということで来年には八十五万二千トンのミニマムアクセスを受け入れなきゃいけない、またさらに今後の交渉にとっては大変不利になる、いろいろな理由があると思います。  そういう中で、今地元を歩いておりますと、農家皆さんが一番心配していること、それはこの関税率。関税化については納得をしましょう。それはある面で仕方のないことなんでしょう。ですが、次期交渉に向けて、この輸出国から恐らくまたいろいろな引き下げの要求が来るのではないか。そうしますと、現在のところでは、例えば二次税率が三百五十一円十七銭、それがことしでありますが、来年に向けては三百四十一円に下がる。今後、そのまま交渉が継続すれば、その三百四十一円のままで継続されていく、そういうことが当然予想されるわけですが、どうしてもこの関税、高い関税ということを諸外国から言われる可能性が高いのではないか。この交渉に対してどのような形で対応されるのか、またもし現段階でどういうことが予想されるのかわかりましたら、ぜひ教えていただければというふうに思います。
  105. 中川昭一

    中川国務大臣 具体的な対処方針はもう少し時間をかけて、国民的合意を得ながら来年の交渉に臨んでいきたいと思っておりますが、大きく分ければ二つあるんだろうと思うのですね。  一つは、先生も御指摘になられたように、我が国国内農業をどうやって守っていくか、そして農業の果たす公益的ないろいろな役割について多くの国々の理解を得ながら、我が国の主張というものを実現していくかということ。  それからもう一つは、現在の協定そのものがごく少数の農産物の輸出大国に非常に有利になっている、バランスの欠けた協定になっております。例えば、輸出補助金は認められておる、あるいは輸出制限も認められておる、しかし輸入の方はだめだというようなこともございますので、輸出国にバランスが傾いたような協定を、むしろ我々が攻め込んでいって、輸出国、輸入国、バランスのとれたものにしていく。  こういう大きく分ければ二つの方向で、できるだけ多くの国の理解を得ながら、我が国の主張、つまり我が国を初めとする、これは世界的な環境問題も含めた意味のある主張だというふうに考えておりますので、そういう立場交渉すべく今その準備作業に入りつつあるという状況でございます。
  106. 小野寺五典

    ○小野寺委員 ただいまのお話大臣につきましては、言葉には出しませんが、決意というものはそれなりにあるのかなというふうに感じておりますが、ぜひなお一層、迫力に満ちた交渉を非常に日本全国農民が期待しておりますので、よろしくお願いしたいというふうに思っています。  そこで、次期農業交渉に向けたスケジュールについて少しお伺いしたいのですが。
  107. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 次期農業交渉に向けてのスケジュールということでございますが、現在のWTO協定におきましては、農業やサービスなどの特定の分野につきましては次の交渉の開始スケジュールを記載しておりまして、農業につきましては、西暦二〇〇〇年の年初から改革過程の継続のための交渉を始めるということになっているところでございます。  こういう協定内容を背景といたしまして、現在、WTOにおきましては、既に交渉開始が決まっております農業やサービスの分野に加えて、そのほかにどういう分野を取り込んでいくのか、その交渉はまた分野別にやるのか、あるいはまたこれまでのラウンドのような包括交渉スタイルでやるのか、そういった点、あるいはまた交渉期間としてどの程度の期間を想定するのか、そういったいわゆる交渉の枠組みについて議論されている段階でございます。  この後、本年末には米国で第三回WTO閣僚会議が予定されておりまして、その場でこうした枠組みについて合意を得るべく準備作業を進めていくということになっておりまして、当面のスケジュールとしましては、七月末までに月二回程度WTO一般理事会を開催しながら論議をしていこうというような合意になっているところでございます。
  108. 小野寺五典

    ○小野寺委員 今局長の中でお話ありました、一番私どもが心配していますのが改革過程の継続ということで、時計を逆戻しできない、そういうふうな厳しい責務を日本が負って今後交渉に臨むということだと思うのです。現段階で、今回のこの日本関税化への切りかえということで、これは通告ベースでいいと思うのですが、その通告に関して、主要な国に関しては恐らく説明を行っていると思うのですが、それらの国の対応についてちょっとお伺いしたいのですが。
  109. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 御承知のとおり、関税の特例措置をやめて関税化の原則に復帰するということにつきましては、これは農業協定上明確に定められているところでございまして、特に関係国と協議をする必要もないわけでございますが、その内容につきましては、要請等にも応じましていろいろな機会をとらえて御説明をしているところでございます。  これまでのところ、お互い理解を深めるようなための説明なり質問なりということでございまして、特にこれがけしからぬとかそういう公式な反応というのはないというふうに理解いたしております。
  110. 小野寺五典

    ○小野寺委員 なかなか私ども、ちょっと今の雰囲気は理解できないというか、一番心配しています、本当に今回の交渉は大丈夫なのか、関税率引き下げを強く要求されないのか、そういうふうな心配に対しては、何かまだジャブの応酬みたいな、あるいはそこまで踏み込んでいないのかなということでちょっと心配をしております。何せ来年、もう既に交渉開始のおしりが来ているものですから、事前の対応というのがすごく大事じゃないかなというふうに思っています。  そこで、もう一点大変自分たちが心配しておりますのが、前回の交渉のとき、このときには、WTO交渉ということで各省庁連携をとって当初は交渉をスタートしておりました。当初は農水も通産も大蔵も頑張るんだということを言っていたのですが、それぞれの役所がそれぞれ妥結をしていって、結局最後に残ったのが農産物、特に米が一つ残ってしまいまして、それがぽつんとしているので包括協議ができないということで米が悪者になってしまった、そういうふうに農家の方は見ています。  最終的に、ではいろいろなことを考えて妥協だということでミニマムアクセスを受け入れ、またUR対策ということで新しい事業を組んではいただきましたが、それに対しての現状を見ますと、余り農業の集約ができていない、そういう問題が起きてきていると思うのです。各省庁連携して、日本一丸となって次の交渉に当たるということが、これは今回の交渉にとって非常に大事なことだと思うのですが、その交渉、前回のような、いつの間にかくしの歯が欠けるように一つ一つ妥協していって、結局、最後にまたこの関税だけが残ってしまいまして、やむを得ないという形で妥協する。そんなことがないのか。なってはならないと思うのですが、ないということをぜひ外務省も含めてお話を伺いたいのですけれども。     〔委員長退席、松岡委員長代理着席〕
  111. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 現在、WTO次期交渉に向けて、先ほど来御説明が別途ございましたように、今後どういった形でやるか、話が進められているところでございますけれども、私ども外務省を含めた政府一体としましては、今度行われる交渉については、既に決まっております農業とサービス以外にも、例えば鉱工業品の関税も含めた包括的な交渉にすべきだということを考えておりますし、今それを主張しております。つまり、それぞれ個別に交渉されるということではなくて、全体をまとめた包括的な交渉であるべきだ、こういう形で臨んでおります。  特に今、この機会をとらえて、農業について私どもとしての立場も申し上げさせていただきますと、やはり我が国農業の実情、輸出入国の貿易関連措置状況を踏まえて、農業の多面的機能の発揮や食料安全保障の確保、あるいは農産物純輸入国としての我が国の考え方、こういったものが十分反映された内容の合意が得られるよう、外務省としても関係各省と一丸となって臨む方針でございます。
  112. 小野寺五典

    ○小野寺委員 今の局長お話は、そうなのかなというふうに聞くことができるのですが、自分が一番心配しているのは、今回の米の関税化を受け入れることによりまして、自分たちが政治家の立場農家経営の皆さん説明をするときは、二次関税率、今の二次税率で三百四十一円。来年でもそこでとまるのだ。ですから、これからこの高い関税率では日本に米が事実上入ってくることはまずないだろう、そういうふうに地元の皆さん説明をしています。それで、なるほどな、それだったら、どっちが得かを考えたら、これ以上ミニマムアクセスがふえるよりはいいのではないか、そういうふうに理解して、地元の皆さんもこちらに協力をしていただく、あるいは納得していただける、そういうことだと思うのです。  もし、今後の交渉で、例えば関税率がどんどん下げられる、あるいは最終的に妥協していくということになった場合に、特に心配しているのは、よく工業製品であれば、五年間の経過措置とか十年間の経過措置とか、そういうことである程度、では五年後には業種転換しようかとかそういうことができるのでしょうが、事農業あるいは米の場合に関しては、五年、十年というのは非常に短いスパンです。百年先とか二百年先ともし約束していただけるのならそれは別でしょうが、五年、十年というのはもうすぐ来てしまう、そういう性質も持っています。ですから、関税を引き下げるということは大変な問題になるというふうに思っているのです。  それで、前回の交渉のときに、たしか国会では何度も、米は一粒たりとも入れないという決議を政治家はしました。そのことに関して、農家皆さんは信じて裏切られました。もしこのたびまた、私が地元に戻って農家皆さんにお約束をした、米の関税率は高いのですよ、米は外から入ってくることはないのですよということが交渉の過程でなし崩し的に下げられていくというようなことがあったら、私どもは二度うそをつくということになります。  政治離れが叫ばれる中、もううそはつきたくない。ですから、もし交渉の過程で、これはどうももたないなということがもし初めに予想できるのだったら、初めからこのぐらいの期間にはこうなりますよというその見通しをむしろ農家の方にお示しする方が、今の時代、かえって信用を得るのではないか。そういうことなものですから、ここで言える言えないのことはあると思いますけれども、もし今、関税化に対して、一生懸命日本の国益を守っていくのだということをきっぱりと言明されるのであれば、それなりの腹をくくっていただきたい。そうでなければ、もう私ども議員はうそつきになりたくないものですから、本音の話をぜひしていただければというふうに思っています。  今のは私の個人の意見でありますので、コメントということは失礼になると思うのですが、ぜひ大臣に、その決意も含めて、もう一度米の関税化について決意をお話しいただければと思います。
  113. 中川昭一

    中川国務大臣 私も六年前の決定までの間、先ほども申し上げましたように党の農林部会長でございまして、先生と全く同じような気持ちで交渉を見守っていたわけであります。  ただ、うそをついたというふうに先生は地元でおっしゃられる必要は私はないのではないかな。つまり、これはあくまでも交渉事でございまして、特に米の関税化については、後で交渉経過を聞きますと、ほとんど我が国を支持してくれる国がなかったという状況韓国なんかも特例措置をとりましたけれども、我が国最後は孤立した状態の中で、しかし、例外なき関税化というものを何とか防ぐという外交交渉のぎりぎりの結果が、あのミニマムアクセス米の受け入れという形になったわけでございます。  もちろん、生産者皆さんの期待にこたえられなかったことは、今でも私はそういうふうに思っておりますし、また我々自身も大変悔しい、あるいはつらい思いをしたことも事実でありますけれども、交渉の結果、ぎりぎりの選択として、ああいう例外なき関税化は阻止をした。今回は、関税化に踏み切った方がベストであるということで御審議をいただいておるわけでありますが、次期交渉に当たりましては、我々としてはもちろん我々の目標を一〇〇%通すべく、今その基本体制をつくりつつある状況でございますけれども、先生おっしゃるとおり、できもしないことを最初からやる、例えば協定をゼロからつくり上げるとか、そういうことはなかなか難しいわけであります。  しかし、我が国立場を守るための、あるいはまた関係諸国との連係プレーを深められるための最大限の努力をし、それの実現に向けて、国を挙げて、また関係外国と一致協力をして、我々の要求、先ほどかなり大ざっぱなことを申し上げましたけれども、具体的にその方針ができ上がりましたならば、その実現に向けて全力を挙げてやっていきたいというふうに考えております。
  114. 小野寺五典

    ○小野寺委員 ぜひ私も、今のは先輩議員としてのアドバイスだと思いますが、地元に対しては誠意を尽くして説明をしていきたいというふうに思っています。  それでは、ちょっと質問を変えまして、農家経営のことについて少しお伺いをしたいと思います。  前回の交渉によりまして、UR対策事業ということで六兆百億円が現在も投入されて、構造改善事業等を進められております。ですが、その中で、一般農家方々の感触ですが、次のWTO交渉までに、農家皆さんに国はいろいろな事業をアシストしまして、それで大規模化、低コスト化を図って、次の交渉に向けて、なるべく外国に太刀打ちできるような農家経営ができるように、そういうふうな一つの政策的な流れでずっと来ているというふうに農家の方は大部分理解されています。それで、そうだそうだということで、むしろ先進的な農家の方が大規模化をし、あるいは専業家として一生懸命低コスト化を、機械化を図って努力をしていった。そういうことがずっとこの五、六年間続いてきたわけなのです。  ところが、現在、農家の経営状況を見ますと、あるいは農家お話を伺いますと、先日NHKでも少し放映されましたが、むしろ専業農家の方の方がかえって苦しくなっている。土地を集約し、土地を取得して大規模な農業を営もう、大規模な米作を営もうという方がむしろかえって苦しくなっている。そういうふうな中で今回また関税化ということで、どうも国の政策について少し不安を持っている、そういう農家がふえてきているというふうに思います。  それで今回、新しい農業基本法の中で、現在は中山間地に対しての幾つかの事業が今度は色濃く打ち出されまして、農業の多面的機能ということが表に出てきました。そうしますと、農家にとっては、あれ、この間まではUR対策で、そうだ、大規模化だ、低コストだということでいっていたのが、あれ、今度の交渉ではこれは多面的機能か。そうすると、中山間地だからこれはどうしたらいいのだろう。本当に農政の一貫性のなさというか、そういう部分で何となく不信感を持っている方が多いというふうに地元を歩いて伺っているのです。  ぜひ、そういう不信感を払拭する意味でも、今後の農政のあり方、恐らく大規模化と、それから中山間地に対する支援ということをそれぞれ地域に合わせてやっていくということは今後の方針だと思うのですが、その点についてもう少し詳しく教えていただければと思うのです。
  115. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 総体として食料の安定供給をする、それから個別経営について発展を図る、農業を持続させる、この三つを実現するためには、やはり先生がおっしゃったように、地域の実態に応じて多様な政策展開を図ることが必要になるのだろうと私どもは考えております。  その意味で、平場といいますか平地の地域では、やはり農地利用の集積をし、大規模化、低コスト化を図って効率的な農業経営を育成する、こういった効率的な農業経営が農業生産の大宗を占めるというふうな構造にしていくことが必要になるのだろうと思います。  ただ、その一方で、やはり傾斜地が多くて自然条件が不利な中山間地域等が随所にあるわけでございますし、こういうところでは規模拡大による生産性の向上というのはなかなか制約がございます。しかし、先生から御指摘ありましたように、食料生産のかなりの部分を占めておりますし、公益的機能も果たしております。  したがって、こういった地域では、三つぐらいのことが挙げられると思うのですけれども、気象条件等を活用して高付加価値といいますか高収益の農業をやるという点、それから二つ目には、地場産業の振興あるいは工業導入も図りながら就業機会をふやすという方向、そして三つ目には、複合経営、経営の多様化という観点で都市と交流をする、この三つぐらいのことを同時並行してやっていくというふうな政策を全体の、集団としてといいますか固まりとしてやっていくことが必要になるのだろうと思います。  今回特に、新しい基本法の制定作業にあわせまして、中山間地域に対してはいわゆる直接支払いを検討するということにしております。これらにつきましても、やはり中山間地域等の持っている公益的機能が十全に発揮をされますようにということで、この夏までに結論を出して、できれば十二年度から実施をしたいと思っております。  いずれにいたしましても、それぞれの地域の農業がいずれも重要な位置づけでございますので、これからの農政展開というのは、そうした地域の特性に応じた多様なやり方で臨むべきだろうというふうに考えます。
  116. 小野寺五典

    ○小野寺委員 今のお話、そういう方向でいけばすばらしいなと思うのですが、現実的には農地というのはかなり続いております。町で区分しているような、ここからここまでは集約的な平場の農地です、ここからここまでは中山間地ですというような、そういうきれいな区分けはつかなくて、地元を歩いていると、うちの方は中山間地だけれども今度圃場整備を入れるんだ、いろいろ何かふくそう、錯綜しているのです。  ですから、片方では中山間地なのでどうも将来的には所得補償があるのかな、でも、ここは何か将来的に低コストで下げなければいけない場所かな、そういうふうな混乱が実は現場では起きているということをぜひ今後の御検討の中に入れていただければというふうに思っています。  それから、最後質問になるかと思うのですが、実は農家皆さんから今一番私どもに寄せられる大きな声というのが、実は今回の減反、生産調整、先ほど三割強というお話がありましたが、実施されている中で、各土地改良区では、自分のところの圃場を今後の低コスト化あるいは効率化に向けて整備していくわけなんですが、そこで当初見込んでいるのは、当然減反ということは考えておりません。  ですから、そこの生産量、十あれば十生産できるのだ。そうすると、そこから上がる収益からこの構造改善事業に関する負担金というのを払っていくのだ。そういう経営見積もりで、当然そうですよね、会社でも売り上げが十あって、その十のうちから借金を返していくのだ、そういうことを考えて農家経営をされるのが普通だと思うのです。  ところが、現状を見ますと、米価が下がっているというのは市場経済で仕方のない部分かもしれない、そういうふうに農家の方は理解しているのですが、さらにその上、減反、生産調整というのが、農家の方に言わせると割り当てられるというふうに思っています。そうすると、今まで十つくっているから返済がこのぐらいできるのだよというふうに見込んでいたのが、七になってしまった。そうすると当然そこから出る収益というのは下がりますが、それでいて実は負担金というのは同じ金額を負担していかなければいけない。農家の方にとっては、米も下がる、減反も厳しい、そういう中で負担だけが相変わらずずっと続いていく、そういうふうな厳しい状況にあります。  また、こんなことをおっしゃる農家の方がいました。自分のところは息子も働きに出ているので、うちの圃場、田んぼというのを、全部ほかのところの生産調整も受け入れて、減反も受け入れて、私のところで全部引き受けましょう、ですから全部減反にした。そこで、調整水田ということで水を張って、幾らかのお金はいただいている。ですが、結局、そこを以前に土地改良したものですから、負担金というのを払っていくと、かえって、全部減反したのに、払う方だけそのまま残ってしまう。休んで全然そこから収益が上がらないから、経営的にはマイナスだ。そういうことが現地では多く起きています。  ですから、こういう農家の方の素朴な疑問というか、あるいは問題に対して、本来であれば生産調整というのはなくなっていけばそれはそれで一番いいことだと思うのですが、現在の需給バランスを考え在庫の問題を考えると、いきなりこれがまた生産調整、減反がなくなりますよということは一概に言えないと思うのです。  ですから、ぜひ、こういう農家方々、現在の負担金、分担金、賦課金、いろいろな言い方をしていますが、その軽減について何らかの対策を講じる必要があるのではないかと思うのですが、その点について伺いたいと思うのです。     〔松岡委員長代理退席、委員長着席〕
  117. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 御指摘のとおり、米の価格の低落あるいは生産調整の率が上がるという状況の中で、その負担金の問題も含めて、農家経済全体が非常に厳しい状況にあるということは認識をいたしております。  そのうち土地改良負担金につきましては、近年、償還金の無利子での繰り延べを行う平準化事業、あるいは、これは後から出てきましたけれども、償還金のうち利子を一定部分軽減する担い手育成支援事業を実施いたしまして、負担の軽減に努めてきたところでございます。さらに平成十年度からは、利子軽減のための担い手育成支援事業の利子助成範囲を三・五%から二%まで引き下げて、一層の軽減を図るというふうな工夫もいたしてきております。  いずれにいたしましても、地域の実情に応じてこういう負担金軽減対策がどういうふうに活用できるかということについて、もう少しPRもいたしたいと思っておりますし、御相談にも乗りたいと考えております。
  118. 小野寺五典

    ○小野寺委員 今言った負債に対しての利子補給あるいは軽減措置ということが一つはあると思うのです。  もう一つ、この負担金、賦課金の中には、土地改良事業の中ではどうしても揚水機場、排水機場、いろいろな施設の運営費用というのもその中に入っております。そうしますと、今まで圃場に水をくんだり、それから排水をしたりということが、減反になって三割減ったといっても同じようなコストがかかってしまう。そうしますと、農家にまた過重な負担がかかる、高コスト化に実はなっている。そういう中でこういう構造改善が進められているということをぜひ知っていただいて、ランニングコストというのでしょうか、そういう負担についての対応ということもお願いしたいのですが、その点はどうなんでしょうか。
  119. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 土地改良施設についての支援をどうするかということなんですけれども、土地改良施設は、今先生がおっしゃいましたように、稲作だけではありませんし、それから、地域の用水路、排水路という役割も持っておりますので、私どもは、これからの方向としては公的支援を強めていく方向だろうと考えております。農政改革大綱の中にも、公的支援を強める方向で検討せよというふうに明示をされておりますので、今、土地改良制度全体について洗い直しを行っておりますから、その一環として検討を行いたいと思います。
  120. 小野寺五典

    ○小野寺委員 意を強くする御答弁をありがとうございます。本当に、地元の農家の声というのは一刻も早くそういう対策も組んでほしい、そういうことでありますので、対応をお願いしたいと思います。  今回、米の関税化ということでの質問をさせていただきましたが、実際、この問題はかなり奥の深いところにつながっています。  それは、最終的には米というのは、日本の主食ということで位置づけられているのでありますが、どのような形で需給を持っていくか、それが一番大きな課題だと思っています。今回の基本法の中でも、食料自給ということが明確にうたわれております。  最後大臣に、この食料自給に関して、自給率を今後も堅持していくということについて、ぜひ決意をお聞かせいただければと思います。
  121. 中川昭一

    中川国務大臣 我が国が、先進国では最低、世界でも最も低い自給率の水準、しかもその数字が年々少しずつ低下をしておるという状況を、我々としても、また国民的にも看過できる問題ではないと思います。  国内生産を基本としながら食料を安定的に確保する、また不測の事態に十分対応できるようにする、そのために、できるだけ消費者皆さん理解と協力も得ながら、生産者皆さんが将来展望、将来目標を持った形で、自給率が堅持というよりも向上していかなければならないというふうに考えておりますので、そういうことが今回の基本法の中心の一つでもございますが、そういう決意で、実現ができるように頑張っていきたいと考えております。
  122. 小野寺五典

    ○小野寺委員 ありがとうございました。質問を終わります。
  123. 穂積良行

    穂積委員長 この際、休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ――――◇―――――     午後二時五十一分開議
  124. 穂積良行

    穂積委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田勇君。
  125. 上田勇

    ○上田(勇)委員 公明党・改革クラブの上田でございます。  今回の法案につきまして御質問いたしますが、平成五年末のウルグアイ・ラウンドの合意受け入れの際には、米の特例措置、いわゆる例外なき関税化に対する特例措置の受け入れというのが最大の関心事であったわけでありまして、また、翌年のこのWTO特別委員会におきましても、そのことが最大の関心事として議論されました。  そのときには、関税化されれば、仮に高い関税を張ったとしても、それを支払えば輸入が可能であって、国内生産への影響を完全に防ぐことができないおそれがある、したがって、ミニマムアクセス数量を、輸入量を譲歩したとしても、その関税化特例措置を設けて直接輸入数量をコントロールしなければならないということで、今の制度ができ上がったというふうに記憶しております。  そういう意味で、今回の改正というのは、その平成五年、六年のときの考え方を根本から転換するものであるわけでありまして、非常に重要な意味があるというふうに理解しております。現状におきまして、関税化選択した方が我が国農業にとって中長期的にメリットが大きいということの判断であろうかと思いますし、私も基本的にはそのことに同感するものでありますが、本当にこの選択、判断が正しいのか、何点かにわたって質問させていただきたいと思います。  まず、ウルグアイ・ラウンドの農業合意で、米は関税化特例措置が設けられたわけでありますが、そのとき、数量制限を設けられていた品目のうち、幾つかが関税化になりまして、当時は、こうした品目につきましても関税化されれば重大な影響があるんではないかというふうに言われておりまして、乳製品であるとか麦とかでん粉等の品目がございました。その後、一九九九年度から関税化されたんですが、それによりまして、国内需給あるいは農業生産にはどのような影響があったのか、その辺をまず検証してみる必要があるんじゃないかと思うわけであります。  また、関税化された農産物について設定された二次税率、これは輸入障壁として十分に機能したのだろうか。その辺、乳製品、麦、でん粉等、ウルグアイ・ラウンド合意によりまして関税化された品目の、その後の国内需給農業生産に対する影響につきましてどのように評価されているのか、まずお考えを伺いたいと思います。
  126. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 御指摘のございましたように、ウルグアイ・ラウンド合意に基づきまして、我が国で申しますと、小麦、大麦、乳製品、でん粉等々といった品目が関税化されたわけでございます。その際、こうした関税化品目につきましては、内外価格差により計算されました関税相当量をもとに関税率が設定されますとともに、小麦等につきましては従来どおり国家貿易が維持されたわけでございます。  こういった関税あるいは国家貿易の措置によりまして、これらの関税化品目につきましては、これまでのところ、特段の影響は生じていない状況にあるんではないかというふうに考えております。
  127. 上田勇

    ○上田(勇)委員 私も、ウルグアイ・ラウンドの合意を挟んでの輸入量あるいは国内生産量を見るときに、今のところ、その影響については予想されたものよりも小さかったんではないのかな、あるいはそれに対抗するだけの十分な措置がとられてきたというふうに評価している次第でございます。  そこで、今回、米について関税措置への転換を図るわけであります。もちろん、これによりまして、いわゆるミニマムアクセス数量の今後の増加、伸びの割合が減っていくということでありますけれども、そのほかに、その国内の米の需給国内生産への実質的な影響というのは想定されているのか、それとも、影響はないというふうに判断されて今回のこういう転換を提案されているのか、その辺、大臣、御見解を伺えればと思います。
  128. 中川昭一

    中川国務大臣 今回の関税化措置につきましては、平成五年の十二月の閣議了解におきまして、外国から米が入ってきたといたしましても国内需給あるいは生産に影響を与えないということで新しい体制がスタートしたわけであります。今回の関税化措置におきましても、引き続き、これを踏まえまして、国家貿易のもとで国内生産米の需給にできるだけ影響を与えないように、加工用に回すとか、需要については細心の注意を払っておるところでございます。  また、いわゆる関税化部分につきましては、WTO協定に基づいた、極めてルールにのっとった形で関税相当量を設定しておるところでございますけれども、外国産米需給動向あるいは結果的な価格等の見通しから見て、輸入米の新たな増は見込みがそうない、見込みがたいというふうに判断をしておるところでございます。  したがいまして、今回の切りかえによりまして国産米需給あるいはまた稲作経営に影響が及ぶものとは考えておりません。今回の、後ほど御審議をいただく基本法あるいはまた新たな米政策大綱、あるいは農政改革大綱の目指す方向に向かった施策の推進に努めてまいりたいと考えております。
  129. 上田勇

    ○上田(勇)委員 つまり、ウルグアイ・ラウンドの農業合意で関税化された品目についても、適切な措置がとられたことによって、その後、国内農業に対してもマイナスの影響はなかった、また今回の米の関税化への転換についてもそういう実質的な影響は想定されないというお話だと思うんですが、そうしてみますと、では、米の関税化特例措置を設けたのはどうしてなんだろうかという疑問があるわけであります。  当時、当然のことながら、それは関税化よりも特例措置を設けた方がメリットが大きいんだという判断であったはずでありますし、また関税化すると非常に重大な問題が起きるから特例措置を設けるということで判断されたのではないかというふうに思うのですが、今お聞きしますと、今の段階になってみれば、実はそれは影響がないんだというお話であります。特例措置であろうが関税化であろうが、実質的な影響はないんだということであります。  ところが、当時のいろいろなものを見てみますと、例えば当時の村山総理はこういうふうにおっしゃっているんです。「関税を受け入れるかあるいはミニマムアクセスにするか、この選択もやはりあったと思いますが、しかし私は、やはり完全に関税化されるよりもミニマムアクセスを受け入れて、この六年間のうちに国内の対策を万全を期すということの方がある意味ではよかったんではないかというふうに今思っています」、こういうふうに、つまり、二つ選択肢があったんだけれども、関税化特例措置を設けた方がベターなんだという判断で特例措置の方を選択されたとおっしゃっているわけであります。  ということは、当時、こうしたメリットがあるというふうに考えていた前提にどこか誤解があったのか、どこか誤りがあったのか、また、その後の状況が変わったのか、それが今回のこういう判断につながったのか、その辺について御見解を伺いたいと思います。
  130. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、八六年から始まりましたこのウルグアイ・ラウンド交渉、九三年まで七年間かかったわけでありますが、その中で最大の焦点でありました米の国境措置につきまして、国会の場あるいは生産者皆さん方も、とにかく関税化はだめだということで、関係者、あるいは私も含めまして国会の場では、そういう意見が圧倒的というか、ほぼ総意であっただろうというふうに今思い出すわけであります。  しかし、交渉全体が、例外なき関税化というものが大前提での交渉であり、しかも百数十カ国の協議の場で我が国と同じような考え方をとる国が極めて少ない、米に関しては同じような立場の国は一カ国、二カ国ありましたけれども、最終的に我が国立場を支持する国はほとんどなかったという状況の中で、今先生指摘のように、ぎりぎりの選択として関税化に移行するか、そうではなくて、一定数量分、四%から八%という範囲内で義務的な輸入という方向に進むか、二つに一つという選択最後に示されたわけであります。いわゆるドゥニー調整案というものでございますけれども。  その中で、ぎりぎりの選択として関税化を受け入れるということに関しては、当時、先ほど申し上げたような、生産者皆さん方あるいは国会での議論を考えますと、包括的な関税化というものに対してはとても強い拒否感があったというふうに記憶をしております。また、そのルールに基づいた関税が張られるわけでありますけれども、仮に、それによってどういう形でどのような外国産米が入ってきて、それが国内にどういうふうに需要があるのかということの見通しも全く立つデータがなかったわけでございます。したがいまして、我が国といたしましては、最終的に、その調整案の方の特例措置ミニマムアクセス特例措置、四%から八%という特例措置の判断になったわけでございます。  したがいまして、今から考えればそっちの方がよかったのではないかという議論は、結果的には、現時点では、今後四月からそういうふうにした方がベストであるという判断に至ったわけでございますけれども、九三年十二月のあの最終合意の段階では、やはり関税化ということに対して、生産者関係皆さん、あるいはこれは私も含めてでございましたけれども、多くの国会での各党含めた議論としては、到底受け入れがたいものであった、現時点から振り返りましてもそういうふうに私は判断をしておるところでございます。
  131. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今御答弁にありましたように、当時の雰囲気の中では、米の関税化、これは自由化にもつながるというふうに認識されておりましたので、当然それは大変難しいことであったというのは私も全く同感でありますけれども、農水省の方でつくりましたこの資料、「米の特例措置関税措置への切換えについて」というこのパンフレットの中では、今回、関税化に踏み切る、関税化へ転換する理由として、二〇〇〇年度までにはミニマムアクセス米の輸入が八・五万トン程度減るというような話であるとか、また、この中には、極めて少数の国しか適用していない特例措置にこだわることは、次期農業交渉における我が国のスタンス等にマイナスの影響を与えるおそれがあるというような理由が述べられております。これも本当なのかなというふうに思いますが、ただ、こうした点というのは、いずれも合意の受け入れの時点でもわかっていたことなんだというふうには思うわけであります。  ということは、今までの御答弁の方も含めて考えますと、これは農水省としては、当時からやはり関税化を受け入れた方がベターだというふうには思っていたのだけれども、その当時のいろいろな政治情勢であるとか、あるいは農業関係者理解の問題であるとか、それまでに至る経緯であるとかから、本当はベターだと思われた方を選択できなかったのだというようなお考えなんでしょうか。その辺はちょっと御説明いただければと思います。
  132. 中川昭一

    中川国務大臣 やはりあのときとは情勢は変わってきているというふうに言えると思います。  今先生指摘のように、数字的に見れば、三から五という数字、あるいはまた〇・四ずつでいいという数字、そしてまた、関税相当量にしたかどうかわかりませんけれども、関税の張り方によってはそういうことも可能性としては否定できなかったわけでありますけれども、雰囲気とかそういうことを別にいたしましても、先ほど申し上げたように、入ってくる米の動きが全く見えないという状況、さらには、あの後たまたま不幸なことにといいましょうか、平成五年に大冷害がございまして、やはり国産米に対する需要が非常に強いんだということを改めて認識したわけでございます。  また一方、国内的にいろいろな米の制度の大きな転換、あるいは先ほども申し上げましたように新しい基本法、さらには大綱、プログラムといった法的な制度面での環境整備が非常に整ってきた、さらには、我が国が主張しております農業の果たす多面的な役割、あるいは国際的な貢献のあり方等々が、例えばOECD会合でありますとかいろいろな国際会合でもって、EU等々の国々からも深い理解を得られておりまして、我が国の主張というものが決して我が国だけのものではない、環境の問題を含めまして、我が国として主張していることがいろいろな会合の中でも宣言文の中に取り入れられたりいたしまして、当時よりもはるかに我が国のとるべき立場が強くなっているというような認識も持っております。  そういう意味で、九三年当時のあの決定時点に比べて、我が国としては、いろいろな今申し上げたようなことを総合的に含めまして、それから次期交渉のことも当然念頭に置きまして、現時点では関税化に踏み切ることが最善選択であろうというふうに判断をしたところでございます。
  133. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今、大臣から、我が国の主張についても大分理解が広まってきたという御答弁をいただきました。その意味で、次期交渉も来年から始まるわけでありまして、ぜひとも我が国の考え方、主張が大いに反映されるように、交渉において頑張っていただきたいと思うわけであります。  ちょっと先ほど触れさせていただきました農水省の文書の中で、我が国のスタンス等にマイナスの影響を与えるおそれがあるという言い方があったのですが、これは、例えば、今関税化に対する例外措置を継続していった場合には、今大臣が述べていただきましたような我が国の主張が反映しにくくなるというような意味合いなのでしょうか。それとも、この特例措置をあと二年間継続したとしても、その後の交渉ではもう到底もたないということをお考えなのか。その辺、このマイナスの影響というのはどういうようなことを具体的に念頭に置かれているのか、御説明をいただければと思います。
  134. 中川昭一

    中川国務大臣 このまま米についてミニマムアクセスという例外措置だけを推し進めていくとするならば、先生もさっきちょっと御指摘になりましたけれども、これを維持している国は四カ国だけであります。イスラエル、あるいはまた韓国、フィリピン。そして、韓国、フィリピンはいわゆる発展途上国扱いでございまして、ちょっと違う。あるいはまた、各国関心の高いであろう米についての例外措置をとっているのは我が国だけでございますから、そういう意味で、次期交渉においては、これだけが非常に大きく目立ってしまうということもございます。  一方、関税化することによって、先ほど申し上げたようないろいろなメリットもあることでございますので、このまま関税化をせずに今の例外的なミニマムアクセスを持続するということは、やはり次期交渉にマイナスになる、関税化するよりもマイナスになるという判断をせざるを得ないというふうに考えております。
  135. 上田勇

    ○上田(勇)委員 いろいろな御説明で、二〇〇〇年まで、今の合意の期間までは、関税化するケースとそれから特例措置を継続するケースの利害得失を比較した場合に、ある程度関税化のケースの方がメリットが大きいということで、今回そういう判断をされるということであるかと思いますし、私も基本的にはそれと同じ意見を持っております。  ただ、今いろいろなところで不安の声が上がっております。これは生産者消費者も同じでありますが、それはやはり二〇〇一年からどうなるのかというのが今の時点ではわからないということだと思います。とりあえず、二〇〇〇年から始まる交渉が妥結するまでは二〇〇〇年の水準が維持されるということではありますが、しかし、いずれ交渉は妥結するわけでありますし、今度の次期交渉というのは、改革の継続という前提で行われているので、どのような形になるかというのは、非常に生産者にとってもまた消費者にとっても不透明、不安感を与えているというふうに思うわけであります。  今の時点でこの交渉事についてどうなるかということをお聞きしても、これは無理なお話だと思うわけでありますが、こうした生産者あるいは消費者も含めてでありますけれども、先行き不透明感、不安感についてなくすという意味からも、少なくとも、二十一世紀においても引き続き主食である米については国内で自給するのだ、そのために必要な手だてというのは、この交渉の中で必ず最小限の手当てというのは絶対確保していくという約束が必要だと私は思うのですが、そのあたり、大臣、いかがでしょうか。
  136. 中川昭一

    中川国務大臣 先生指摘のように、次期交渉にどういうスタンスで臨んでいくかということにつきましては、まさにこれから御議論をいただきまして、消費者も含めた国民的なコンセンサスのもとで次期交渉に臨んでいくわけでございまして、引き続き先生方の御議論をいただきたいわけでございます。  今の段階で、極めて観念的な話ではございますけれども、まず、国民の最も必要不可欠な食料国内生産を基本としながらやっていくということが大前提である。それをやるためには、やはりその生産活動に従事される農業者の方々が、将来にわたって安心してといいましょうか、意欲を持って生産活動に従事できるという体制を引き続き維持していく、あるいはさらに、基本法等の議論を通じてそれを深めていくということがまず大前提にあるわけでございます。  と同時に、これは我が国だけではございませんが、農業が果たす多面的な役割、あるいは環境、あるいは文化、伝統、さらには教育的な側面等々、いろいろな面を含めまして、我が国ではないほかの国々にも共通するような、そういうメリットを各国が共有できるような内容のものにしていかなければならない。  さらには、それぞれの国にはそれぞれの国の事情がありますから、それぞれの国のよって立つ基本、日本の場合には冒頭申し上げたようなことが第一にあるわけでございますけれども、それぞれの国のよって立つ基本が十分守られるような形での新たな農業合意、もっと突っ込んで言いますならば、現協定は輸出国にバランスが少し傾いた、少しというかかなり傾いた協定でございますから、そのようなものの是正も含めて、各国がよって立つ、特に我が国の場合には、今申し上げたようなことが実現できるように、これから交渉に向かう準備を、国民的に今御議論をいただきたいというふうに考えております。
  137. 上田勇

    ○上田(勇)委員 やはり国民が、農業者、消費者とも、非常に不安に思う点というのは、これはいろいろな国境措置関税措置なのか特例措置なのか、そういうことの問題ではなくて、それは相手のある交渉事でありますので、いろいろな形で我が国の国益というものを最大限に守ってもらう交渉をしていただかなければいけないのですけれども、それだけではなくて、その基本線というのは、二十一世紀になっても、次期交渉が終わったとしても、やはり主食である米については国内産で基本的に自給していくのだ、そういう政府からの約束が聞きたいのだ、そこが聞けないと、次の措置がどうなるかとかそういうことではなしに、要は、米については将来とも自給していくのだというところの約束が政府から明確にないとなかなか安心できないのではないかというふうに思うわけであります。  その意味で、米はとにかく国内産で自給していくのだというその基本的なスタンスを維持するためにどういう方法がいいのかというのは、これはまたいろいろと手法の意味での議論があるのだと思うのですが、その基本的な政策、基本的なスタンスというのは、ぜひとも明確に、農業者に対しても、また国民全体に対しても約束していただきたいと思うわけであります。その辺、もう少しはっきり簡潔に大臣の方から言明していただけると皆さん安心すると思いますが、いかがでしょうか。
  138. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、消費者サイド、全国民的な立場からいえば、安定的な食料が確保される、しかも、それは国内生産が基本である、そして自給を維持するというお話がありましたが、自給率そのものが日本の場合には極めて低く、しかもその数字が少しずつ低下をしているという現状を、何としてもほかの国々と同じように、国内自給をできるだけ高い水準に持っていくための努力をこれからしていくわけでございます。  そして、特にその中でも主食であります米については、現時点においても一部入ってきておりますけれども、やはり消費者のニーズというものは、特に主食用については国産がもうほとんどでございますから、引き続き国産米を基本としてという以上に、何と言ったらいいんでしょうか、消費者が必要とする米は必ず国内で自給できるという体制をこれからも維持、また、これからの交渉に向かってもそれを基本として交渉に臨んでいきたいということを、はっきりと国民の皆様あるいは生産者皆さんに私から申し上げさせていただきたいと思います。
  139. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ぜひその線で今後とも取り組んでいただきたいというふうにお願い申し上げます。  次に、今の制度の中で、今回のこの米の関税化によりまして、二次税率の部分というのは、この高額な関税を支払えばだれでも自由に輸入できるようになるわけであります。ミニマムアクセスの部分については引き続き国家貿易を続ける。その必要性については、先ほどの質疑の中で出ましたのでお答えを伺ったんですけれども。  このミニマムアクセス需給状況を見てみますと、九米穀年度でいえば、輸入量が五十一万トンあるのに対して、実際の需要量というのは三十万トン強。十米穀年度についていえば、輸入量六十万トンに対して、実際の需要量というのはその半分以下の二十三万トン程度というふうに資料を拝見いたしました。それで、余った分は在庫の積み増しと、実は海外の援助用に回っているというわけであります。  つまり、このミニマムアクセス米というのは、輸入はするものの、国内に用途のない米をどんどん輸入しているというわけでありますが、これは、国家貿易であるがためにそういう不要な米を大量に輸入しているというような指摘もあるんです。また、当然のことながら、これらの管理には、いただいた資料でも、管理費でも年間百億円とか百五十億円と経費がかかっているということでありますけれども、国家貿易を廃止すれば、そういった財政負担といったものも軽減されるんではないかとも考えられるんです。  その辺、国家貿易を維持しているがゆえに国内に需要のないむだな米を輸入しているというようなことになっている、そういうふうにはお考えではないんでしょうか。
  140. 堤英隆

    ○堤政府委員 御指摘のように、この三年間でミニマムアクセス米を百五十四万トン輸入いたしております。そのうち、主として業務用あるいは加工用を中心に売却を進めてきているところでございますけれども、すべてが消費されているわけではございません。一部はまた援助に回っているということも御指摘のとおりでございます。  ただ、これはまたWTOのそういう条約を誠実に履行するという一面がございますので、そういった国内消費についてさまざまな工夫をしながらこなしていくということもまた必要だろうというふうに思っております。  その点につきまして、今、国家貿易であるがゆえに全量を輸入するということになるのじゃないかという御指摘でございます。  この点については、国家貿易を維持するのか、民間貿易でやるのかという、選択肢としてはもちろん二つあるわけでございますけれども、国家貿易によらずに民間貿易によって行うという場合には、国みずからがミニマムアクセス数量の輸入を行う必要はないわけですけれども、当然ながらその場合の枠内税率、要するに一次税率だと思いますけれども、この一次税率につきましては、事実上ミニマムアクセス数量の全量が輸入されるような水準、極めて低い水準に設定するということが求められております。具体的にも、アメリカ等それぞれの米輸出国との話し合いをしなきゃなりませんので、ミニマムアクセス数量の全量が輸入されるような関税、一次税率を設定せざるを得ないというふうに考えております。  そういうことになりますと、結局は、民間貿易によりましてもミニマムアクセス数量全量が入ってくるということのみならず、現在、国家貿易をやることによりまして、主食用と余り競合しない売却の仕方ということが国貿はできるわけでございますけれども、そういうことではなしに、主食用そのものがどんと入ってくるということは避けられないというふうに思います。  それから、国貿であるがゆえに、二百九十二円の範囲の中でマークアップをとって、ミニマムアクセス米国産米価格の均衡というものを保っているわけでございますけれども、そういうこともできなくて、そのまま為替の変動とか国際価格が直結する、影響するという事態にもなりますので、国内産米あるいは国産農家に対する影響というのは極めて大きい、悪影響を及ぼす、こういうふうに考えております。
  141. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今ちょっとお話も出たんですが、このミニマムアクセス米のマークアップ、キログラム当たり二百九十二円をとっているんですけれども、このマークアップがあると、やはり高過ぎてそれでは買い手がつかないというようなことがあるんではないんでしょうか。このキロ当たり二百九十二円のマークアップというのは高過ぎるというような評価というのはないんでしょうか。
  142. 堤英隆

    ○堤政府委員 結局、二つあると思うんですけれども、一つは、国貿を維持することによって国内産米の自給ということに極力影響を与えないという一つの政策的な目的ということがあると思います。  そういう意味で、食糧庁が買いましたお米を幾らの値段で売るかということの差がマークアップであるわけですけれども、結局それは、国内産米との品質の差、評価の差、そういうものを比較的きちんと見ながら、おのずから国産米価格との関係ミニマムアクセス米価格を設定していくという形をとっているわけでございまして、それなりに品質なり、それから卸売業者の方々評価というものを踏まえたものとして、現在、売り出し価格を設定させていただいているところでございます。
  143. 上田勇

    ○上田(勇)委員 国内産米の自給への影響といったことについては、それはそれでわかるんですけれども、同時に、では、このミニマムアクセス米を輸入はするけれども用途がない。援助に回すといってもおのずと限界があるんでしょうから、そうするとどんどん在庫が積み増していく。これは財政負担になるわけでありますけれども、そのことを放置しておくというのもこれまた問題なんじゃないかというふうに思うんです。  これは、両方、二つの政策目的があって、それを両立させるといったことは非常に困難なことなのかとも思いますけれども、かなりの在庫が、需給表を見てみますと、もう既に七十万トンぐらい今在庫があるんじゃないかというふうに思うんです。いずれもっとミニマムアクセスの輸入枠は拡大していくわけでありますし、かといって、国内の需要というのは多分そんなに見込めないであろうということは容易に想定されるので、これはかなり在庫が積み増していくと思うんですが、いずれ処理しなければならない。  そのときの処理の方法、またそれに伴う財政負担については、どういう方法でその穴埋めをする方針なのか。そのときになってまた泥縄式に考えるのではなくて、今からもう当然考えられていることだと思うんですけれども、この在庫が膨れ上がってしまうということについてはどういう方針でそれを処理されようとしているのか、御見解を伺いたいと思います。
  144. 堤英隆

    ○堤政府委員 ミニマムアクセスの現在の在庫は、直近の時点におきまして四十一万トンでございます。  それで、御指摘のように業務用あるいは加工用ですね、みそとかせんべいとか、そういうものを含めまして、できるだけそういう用途に提供していく、供給していくということと、一部はおっしゃいましたように援助用ということで、海外からの援助要請が強うございますので、KR援助、あるいは、昨年十月につくりました大規模な新たな援助方式ということによりまして、ミニマムアクセス米等につきましてもそういう形をとっているところでございます。  財政負担の点について御指摘ございましたけれども、先ほど来ありますように、マークアップを他方ではとっております。また、ミニマムアクセス米を在庫することによりまして金倉等もかかります。そういう意味でいえば、この二、三年の会計年度で見れば、二億ないし三、四億の赤字ぐらいではないかなというふうに私ども思っております。  いずれにしましても、ミニマムアクセス米として、国際規約に従いまして私ども輸入をしていく立場でございますので、先ほど申し上げましたような、国産米需給にできるだけ影響を与えない形での工夫をしながら、場合によりましては、援助用のことも含めて、その処理につきましては万全を期していきたいというふうに考えております。
  145. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。  先ほど大臣の御答弁の中でも、前回のWTO協定というのは、やはり輸出国側の利益が大きく反映されて、輸入国としての利益が必ずしも十分反映されたものとはならなかったのではないかというような評価をされました。私も全くそのとおりだと思います。  我が国の場合を見てみますと、WTO協定で、輸出国が言っていたように、例えば農産物の価格が下がって消費者メリットがあったかといえばそういうわけでもございませんし、では生産者にはどういうメリットがあったのかというと、特にこの協定によるメリットというのは何もなかったのではないかと思います。また、いろいろウルグアイ・ラウンドの交渉の中で言われていた各国の農業予算などについても、我が国ではほぼ横ばいで推移しておるわけでありますので、そう考えますと、日本にとってはこのWTO農業協定というのはどうも何もメリットがなかったのではないかというふうに考えられるわけであります。  他方、アメリカについて見てみますと、データでも、このWTO協定を挟みまして、実は、農業生産額も農産物輸出額も伸びているわけであります。例えば、ちょっとデータを見てみますと、九三年には農業生産額が一千七百七十六億ドルであったのが、九七年には二千八十七億ドルに伸びている。また輸出額も、九三年には四百二十八億ドルであったのが、九七年には五百七十三億ドルになっている。生産者にとってはかなりメリットがあったというふうに読み取れるんじゃないかと思います。また、農業関係予算を見てみましても、アメリカの農業関係予算、九三年には六百三十一億ドルもあったのが、九七年には五百二十五億ドル。納税者にとってもメリットがあったのかなというふうに思うわけであります。  そういう意味で、このWTO農業協定というのは、アメリカのような輸出国には相当なメリットがあった。他方、日本のような輸入国には、デメリットというのでしょうか、デメリットばかりで、何もメリットがなかったというような感じもするわけであります。  その意味で、先ほど大臣が、次の交渉では輸入国の主張もぜひ取り入れてほしい、取り入れるように全力で交渉するんだというお話であったのですが、ただ逆に、輸出国の側から見ると、このUR交渉WTO農業協定というのは非常にメリットがあったものですから、そう簡単には、この方針というのでしょうか、それを変えることに同意するのは難しいのではないかというふうにも思うのです。  この辺、先ほどちょっとお伺いもいたしましたけれども、大臣、このWTO農業協定、前回の協定をどのように評価されているのか。また、次の協定に向かって、非常に難しい、そういう困難な客観情勢だと思うのですけれども、その中でも輸入国としてのメリット、どのような形で反映させていく方針で臨まれるのか、ひとつ御見解を賜れればと思います。
  146. 中川昭一

    中川国務大臣 前回の評価は、先ほどちょっと申し上げましたけれども、率直に申し上げて、国論が真っ二つに割れていたというふうな印象を私自身持っております。  農業関係の人と消費者サイドあるいは一部マスコミとか学者さんの一部とかいう人と、全く議論が、国論が二分されたという状態の中で、しかも国際交渉の舞台で我が国立場を同じくする国が最後はほとんどなくなってしまったという中でのぎりぎりの選択が、米についていえばああいう形になったわけでございます。  その結果、今先生指摘のように、とにかく日本の場合には、四から八という例外的なミニマムアクセスの増加という義務を負わされたということ、一方、輸出国の方、多分純粋な農業輸出国という国々の数は非常に少ないんだろうと思うのですけれども、いわゆるケアンズ・グループとかアメリカとか、ごく少数だろうと思いますが、自分たちの自由なマーケットでの貿易活動をやりたいということの見事な結束みたいなものが当時あったのではないかと思うわけであります。  そういうようないろいろな反省材料、改めてまた、来年に向かいまして、前回の交渉の整理、レビューをもう一度やる必要があるのではないかと私は思いますけれども、そういうような前回の評価を踏まえまして、次期交渉におきましては、まず輸出国、輸入国、バランスのとれた貿易というものが一番健全な貿易である。もちろん、その大前提と同時に、改革の継続という大きな流れがあるわけでございますけれども、その中で、具体的に日本としてどういう点はどういうふうに主張していくかということについては、まだこれからいろいろな場で御議論をいただきながらまとめていかなければいけないわけでありますけれども、少なくとも、消費者も含めて、国益というものを共通認識のもとで統一、統一といいましょうか共通認識を持って交渉に当たっていくということ。  それから、日本と同じような立場の国々、例えばお隣の韓国でありますとか、あるいはまたEU、EUの中でも我が国と非常に状況の似た国々もございますので、そういう国々、あるいは、これは日本とは立場は若干違うのかもしれませんけれども、いわゆる発展途上国といいましょうか、輸入したくても輸入ができない食料不足国みたいな国々が世界じゅうにはたくさんあるわけでございまして、そういう国々がただ値段と量だけで貿易ルールを決められてしまいますならば、そういう最貧国といいましょうか、そういう国々の立場というものも我々としては十分に配慮をしていかなければなりません。飢餓と人口との関係というものも、我が国としても強く主張しておるところでございます。  そういう意味で、とにかく、我が国の主張は、我が国固有のものもあれば世界に共通するものもあるわけでございますので、そういうものにつきましては、世界じゅうのいろいろな国と密接な連絡をとりながら、輸入国としての立場、あるいは我が国が国際的に何が貢献できるかということを前面に打ち出しまして、国際的な立場我が国の主張を強く押し出して、そして我が国立場が、この新しい国際貿易、農業分野での貿易ルールの中で実現できるように御議論を深めていただきながら、来年の交渉に臨んでいきたいというふうに考えております。
  147. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。  もう時間がなくなりましたので、最後一つだけお伺いいたします。これはまたちょっと別な話なんですが、先日、新聞に、日本コメ市場が、これは民間の米市場でありますが、取引会を東京穀物商品取引所と関西商品取引所で開くと。現在の現物に加えて将来的には先物取引を導入したいという意向を持っており、それへの関心を高めたいという意味でそういうことを商品取引所で開くのだという報道がございました。  これから、国内的にも米の流通というのをもっと自由化していく、国内的な流通をもっと自由化することによって市場原理を導入、また生産者にとっても創意工夫が生かされるような流通体制をとっていかなければいけないと思うのですが、その場合には、当然その価格の変動といったのが現在よりも大きくならざるを得ないわけでありまして、そういった生産者また流通業者、双方の価格変動に対するヘッジの方法として、そういう先物取引の需要というのが出てくるのではないかと思うわけであります。  その意味で、こうした検討というのはこういう民間の取引業者の中でも非常に関心が高まっているということでありますけれども、こうした米の先物取引について、導入するお考えはあるのかどうか、その方針をお伺いしたいと思います。
  148. 堤英隆

    ○堤政府委員 私ども、米の取引につきまして、御指摘のように、市場原理、銘柄評価、そういったものをできるだけ導入していくということは基本的に大事なことというふうに思っております。また、規制緩和も重要だというふうに思っていまして、そういう方向での努力を続けておりますが、今の段階におきまして、自主流通米価格形成センターにつきましては、そういった先物取引についてはまだできないという形になっておりまして、当面は、値幅制限の廃止等々のそういった需給実勢をより的確に反映するような仕組みはどうあるべきか、そういうことにつきましての改善を今後加えていきたいというふうに思っております。  また、御指摘報道につきまして、民間企業が開設する米の取引市場についてのお話がございましたけれども、今の段階ではまだ先物取引までの具体的な計画はないというふうにお聞きしております。
  149. 上田勇

    ○上田(勇)委員 もう時間が参りまして、ちょっと通告申し上げていた質問で行かないところもございますが、今の最後の先物のお話につきましては、これは先物取引というのは、必ずしも投機ということだけではなくて、流通が自由化されたときに、そういう価格変動に対するユーザー側からのリスクヘッジという意味での、そういう形でアメリカ等では使われているものでありますので、今後、そういう国内での流通に市場原理が導入される場合には必要な一つの方法になってくると思いますので、またひとつその辺につきましても御検討をお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  150. 穂積良行

    穂積委員長 次に、木村太郎君。
  151. 木村太郎

    ○木村(太)委員 私は、三十分という短い時間でありますが、しかし、できる限り質問してまいりたいと思います。  個人的な話になって恐縮でありますけれども、私のうちも農家でありまして、ちょうどうちの前が水田、うちの周りがリンゴ園地になっております。そういうわけではないのですけれども、特に大きな動きとなった米の関税化に関してと、また、先月、WTOでリンゴにかなり影響があると思われる一つの結論が出ましたので、こういったことを中心に尋ねてまいりたいと思いますので、大臣初め皆様方、よろしくお願いしたいと思います。  まず最初にお聞きしたいことは、午前中からの議論の中でも既に出ておりますけれども、やはり私も、地元に帰りますと、生産者から最も心配する声としては、今回高い関税を設定したとしても、将来本当にこのまま続いていくのかどうかというような不安を持っている声が根強いように思われます。  前回のウルグアイ・ラウンド交渉の中では、アメリカが特に完全自由化というものを求めていたわけでありますけれども、今回この関税化を受け入れたことは、高い関税であっても、いわゆる完全自由化に向かうシナリオの第一歩ではないかというような言い方をする、また心配をする生産者の声もあります。こういった声にどうこたえるか、お尋ねしたいと思います。  また加えて、完全自由化を特にアメリカが前回求めていたわけですけれども、この考え方が次期交渉に向けても、つまり、今現在も含めてアメリカのこの考え方というものは変わっていないものと日本側はとらえているのかどうか、お伺いしたいと思います。
  152. 中川昭一

    中川国務大臣 アメリカは前回、最後最後まで米の問題で日本とやったわけでありますが、次期交渉においては、引き続き改革過程を継続するという大前提があるわけでございますけれども、アメリカ等の輸出国が、アクセス機会をさらに拡大しろという主張をしてくることは考えられます。また、日本日本としての立場を、先ほどから申し上げておりますように、何としてもおかしいところはおかしいということを主張し、また日本として要求することは要求をしていくという強い決意で臨みたいというふうに考えております。  その際、この貿易というもの、特に農業分野というものにおきましては、生き物あるいは地球といったものに直接関係する分野でございますので、人類と食料、あるいは地球と農業といった観点もございます。いわゆる非貿易的関心事項というものが国際会議等でも合意されておるわけでございますので、アメリカの一方的な要求が仮にあったといたしましても、我が国としては、我が国立場を強く主張し、そしてその実現に向けて頑張っていきたいというふうに考えております。
  153. 木村太郎

    ○木村(太)委員 続いて、これも生産者サイドからの心配する声として私は受けとめているのですけれども、お尋ねしたいと思います。  今回のこの関税化受け入れに対しまして、海外の米生産がむしろ刺激されまして、日本に向けてのコスト低減、あるいはまた日本人向けの品質、食味の向上、こういったことに一層力を入れる一つの刺激になるのではないかというような心配をする声もあるのですが、こういったことをどうとらえているでしょうか。  また、大事なことは、もちろんこれからも、今までも一生懸命やってきたと思いますけれども、我が国の米の国内における国際競争力をあらゆる面でつけることが大事だと思います。こういったことに一層また力を入れていく決意を農林水産省も持っていると思いますけれども、ただ、ここで大事なことは、多分、先ほどもあったとおり、次期交渉においても関税の引き下げというものを強く求めてくると思います。こういった動きに対しても、今後、国内においてあらゆる面で努力をする、その努力をするテンポを上回る水準とならないように、外国からの、例えば関税引き下げをしろとか、こういった海外からの、外国からの一つの圧力たるものに対して、やはり国内努力のテンポがきちっと順調にいくようなことも踏まえて今後いろいろな形で交渉等に当たるべきだと思いますが、この点の考え方をお示しいただきたいと思います。
  154. 堤英隆

    ○堤政府委員 二次税率を含めました次期交渉につきましては、先ほど大臣の方からお答え申し上げたことに尽きるかと思います。  その上で、幾つかの点が御指摘ございましたので、その点について御説明させていただきますと、海外の米生産の関係でございますけれども、これは今回の関税措置への切りかえということとは別途、やはりアメリカそれからオーストラリア、タイ、中国、そういった国々におきましては、それぞれの国内の需要ということと同時に、海外に輸出をして外貨を稼ぐ、そういう意味でのニーズというのは非常に高まっていると思います。  我が国といたしまして、どういう形のもとでこれに対応していくかということは極めて重要でございますので、そういう意味での国内の競争力の強化、コストダウン、そういうことにつきましては新農業基本法を御審議いただくわけでございますが、そういう中で、それぞれの農家方々が意欲を持って規模拡大なりコストダウンということにつきまして御努力いただくような形で、私どもも政策面からの強化ということをやっていきたい。  いずれにしましても、そういった稲作をめぐります国際環境の変化というものに国内農業が対応できるような諸条件につきまして、一生懸命努力をしていかなきゃならない時期に来ているというふうに認識をいたしております。
  155. 木村太郎

    ○木村(太)委員 いま一つお尋ねしたいことは、今もありましたけれども、また先ほど安住委員もおっしゃっていましたが、こういった大きな動きがありましたけれども、新しい農業基本法制定の動きというふうにもなってまいりました。私なりに感じることは、いわゆる農業の国際化、先ほど尋ねたとおり、国際競争力をつける意味でも、この新農業基本法における農業の国際化に対する考え方というのが何か少し薄いような感じ、印象を持っているわけですけれども、この点はどのように考えているのでしょうか。
  156. 高木賢

    ○高木政府委員 新しい基本法につきましては、本日閣議決定をいたしました。その中で、我が国農業につきましては、国際化の進展に伴いまして輸入農産物との競合が強まるということを踏まえまして、一層の体質強化を図るということによりまして、その持てる力が最大限発揮されるようにしていくということが重要だという考え方に立っております。  具体的に、この考え方のもとで、基本法でどういう規定が置かれているかということを申し上げますと、まず国民食料の安定的な供給に関しましては、国内農業生産を基本として、これと輸入及び備蓄を適切に組み合わせて行う、こういうことを、国内農業生産が基本ということをまず基本理念として掲げております。  それから基本計画という、政策推進の柱を位置づけておりますが、その基本計画におきましては、国内農業生産と食料消費の指針として、食料自給率の目標を設定するという基本的な方策を明記いたしております。  それから、具体的な施策といたしましても、我が国農業の力を強化する方策といたしまして、望ましい農業構造の確立、あるいは専ら農業を営む人による農業経営の展開、あるいは農地の確保及び有効利用、農業生産の基盤の整備、技術の開発及び普及、こういった基本的な事柄を規定してございます。  また、消費者から見ての合理的な選択に資する、そういう方策といたしまして、食品の表示の適正化というのをうたっております。  また国境措置そのものにつきましては、農産物の輸入によりまして、これと競争関係にある農産物の生産に重大な支障を与えるおそれがある場合の関税率の調整、それから輸入制限、こういった規定を明定しておるわけでございます。  また、基本法におきましては、食料の安定供給の確保と農業、農村の有する多面的機能の発揮ということを二つの基本理念として明記しておりますが、この理念はまさにWTO次期農業交渉におきまして、農業、農村の有する多面的機能あるいは食料安全保障の重要性、こういった我が国の主張の根拠となるものでございまして、この主張が反映された合意が得られるように努力していきたいと考えております。
  157. 木村太郎

    ○木村(太)委員 答弁を聞いていますと、あらゆることをすることがまた国際化に対応することだというふうに、一言で言えば感じたわけでありますが、ぜひ、多面的に一生懸命努力をお願いしたいと思います。  上田先輩がいろいろと詳しく先ほど御質問されておりましたので、私は米の関税化についてはこれで終わりたいと思います。  次に、同じWTOでも、先月大きな判断がありました。それは、我が国の植物検疫制度の見直しをすべしという、それを促した一つの判断がWTO紛争処理上級委員会でありました。  中川大臣も、特にアメリカ側とのいろいろな接触の中でリンゴ等のことを大変心配していただいて、話題に積極的に出して、いろいろと日本側の考え方というものを主張してきたわけでありますけれども、しかし、判断は大変残念な結果になりました。日本が当初から主張してきました、輸入に際し品種ごとの検疫データを義務づけるということは科学的根拠がないのだ、行き過ぎであるというようなWTO上級委員会の判断でありましたけれども、改めてこの判断に対しての大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  158. 中川昭一

    中川国務大臣 今先生指摘のように、二月二十二日に上級委員会で、リンゴ等の検疫に対しての判断が公表されました。我が国が主張しておりました品種ごとの殺虫試験確認という現行の方法は十分な科学的な根拠がないということで、SPS協定に違反しているというパネルの判断を支持するというものであります。  この結果は、動植物の安全性あるいは病害虫から守るという、細心の注意をとっておる我が国といたしましては大変残念な結果だというふうに思っておるところでございます。しかし、パネルの結果でございますから、この内容を十分検討いたしまして、我が国のやっていることが必要以上に厳しい試験を要求しているという判断でございますけれども、我が国としては安全性を引き続き確保していかなければならないというふうに考えておりますので、結果を踏まえて、その中で十分安全性が確保できるように、これからも引き続きこういう検疫措置についてしっかりとやっていきたいというふうに考えております。
  159. 木村太郎

    ○木村(太)委員 そこで、見直しをしなければならないことにはなったわけですけれども、そのことで今後どういった影響が予測されるのかということをお尋ねしたいわけであります。  例えば、先月アメリカのバシェフスキー通商代表が、アメリカの生産者がリンゴなどで年間約五千万ドル、日本円でいいますと六十億円以上対日輸出することをアメリカ政府としても後押しをするということを、具体的な数字、試算なんかも明らかにして、こういうことを発言しているようであります。あるいはまた、特に私なりに心配するのが、今回の対象品目であるリンゴ、サクランボ、ネクタリン、クルミなど、こういった品目以外にも拡大されていくのかなというような心配もいたしますし、リンゴだけに限っていいますと、対日本向けの輸入解禁を迫る動きというのがますます激しくなってくる、こういった心配も持つわけでありますが、この検疫制度見直しによって農林水産省は、どういった予測というか影響を考えているのでしょうか。
  160. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 お答え申し上げます。  先生の御質問の中で、実は二つのお話があったのではないかと思うのです。一つは、先ほど大臣から御答弁を申し上げました、今回の報告の影響といいますか、それについてどういうことが考えられるのだろうか。それからもう一点は、アメリカサイドで、ある御発言があった、それについてどう考えるかということです。  まず最初の点でございますが、先ほど大臣お話し申し上げましたが、植物検疫制度は、一つは、我が国に存在をしていない病害虫を防ぐ、それからもう一つは、一部に存在をしておりましても大きな被害を与えるおそれのある病害虫の侵入を防ぐという目的でやっておりまして、その基本的な考え方は、今回の報告が出ましたからといって、私どもとしては何ら変わらない、影響を受けないものだと考えております。  したがいまして、今回の上級委員会の報告では、輸入解禁をいたします際の安全性の確認のやり方、そのやり方について問題点が指摘されているということでございますので、その点につきましては、現行の方法にかわります新たな方法を今後検討していかないといけないということで、ちょっとダブって恐縮ですが、何かそのことで制度がすぐ影響を受けるということはないと思います。いずれにしても、病害虫の侵入に対する安全性を確保する、そういう基本的な考え方は前提の上で、私どもとしては専ら技術的な問題を検討していくということになろうかと思います。  それからもう一点は、アメリカの通商代表部の意見ということで新聞報道等に流れておりますけれども、この数字は、率直に申し上げて、私どもとしては伺ったわけではございませんが、報道の数字を見る限りで申しますと、かなり意欲的な数字をお出しになったのではなかろうかと思っております。  その考え方の根拠は、ちょっと長くなって申しわけないのですが、かつて平成五年に同じようなことがございましたときにもかなり意欲的な数字をお出しになりましたが、実際は、レッドデリシャスが我が国に参りました実績は、六年産が八千トン、七年産が八百トン、八年産が百トンということで、九年産、十年産は参っておりません。  そういうこともあったりしますので、私どもとしては、決して甘く見ることはないと思いますが、先ほどの先生がおっしゃった数字だけで見ますと、かなり意欲的な数字が入っているかなという率直な感想でございます。
  161. 木村太郎

    ○木村(太)委員 それでは、具体的にお答えをいただきたいのですけれども、さらに品目がふえる可能性もあるととらえていますか。あるいはまた、アメリカ以外の国も、たくさんの国がさらに積極的に輸入解禁を迫る動きが出てくるものと予測しているかどうかをお尋ねしておきます。
  162. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 先ほどもお話がございましたアメリカの話で申し上げますと、現在、私どものところへリンゴ五品種の解禁の追加の要請がございまして、これは従来の手法で既にデータが提出されております。これはもう先生既に御承知のことだと思います。これにつきましては、従来のルールで対応をしていくということでございます。もちろん、まだ最終的なチェックをいたしておりまして、決定をしたわけではございません。  そのほかにはもろもろございまして、どこの国がどういう要求があるかということになりますと、大変多うございますので個別に挙げられませんが、今回のことで具体的に甘くなるとか、そういうことは私どもとしては考えておりません。少なくとも、試験方法を見直すということを要求されているという考え方でございます。
  163. 木村太郎

    ○木村(太)委員 もちろん、制度そのものの見直しもこれからですので、一概にどうこうと判断できないと思いますが、ただ、可能性としてあるかどうかというものを日本側はどうとらえているかということを確認したかったわけであります。  そこで、制度そのものについてちょっと聞いていきたいと思います。  これから見直しに入っていきまして、遅くても二〇〇〇年の六月ごろまでにいわゆる新しい制度内容日本側は打ち出さなければならないというふうに聞いております。しかし、リンゴでいいますと、我が国のリンゴ産業というのは百二十年ぐらいの歴史がありますが、やはり病害虫との闘い、これが一つの、リンゴの歴史そのものであったというふうにも言えるわけであります。新たな検疫制度を、今後もちろん具体的に見直ししていくわけですけれども、現時点でどういう方向で見直しに入っていこうとしているのか。現時点で結構ですので、新しい検疫制度というのがどうあるべきと考えているか。先ほど大臣の答弁にあったとおり、やはり安全性の確保ということを重要視しなければならないのは当然でありますが、この点お尋ねしたいと思います。  もう一つ、これは新たな検疫制度をつくる、見直しをしなければならない動きとは別個に、しかし、今回のこれだけ大きな動きと同じ時期に一つの問題が出てきたように思います。それは、これもアメリカのことですけれども、アメリカの生産者サイドから、日本が派遣している検査官によるアメリカ産リンゴの衛生検査というものを、少しコストを削減するためにも廃止を求めていこうということが報道されておりました。これは明らかにルール違反というか勝手な考え方だというふうに思うわけですが、これは事実なのかどうか。もし事実だとすればどう対応するのか。  いま一つは、検疫制度は見直ししていかなければなりませんが、検疫体制そのものはやはり充実させていかなければならないと思います。具体的には、植物検査官の増員、そういうことで充実強化というのが今後求められてくると思いますが、いかがでしょうか。
  164. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 三点ほどあったかと思います。  一つは、具体的にどういう方向で検討しているのかというお話でございますが、これは先ほど大臣が申し上げましたのとダブるかもしれませんが、基本的には病害虫の侵入に対する安全性を確保するという、これはもう大前提でございます。それについてはかなり技術的な分野がございますので、私どもとしては、専門家の意見をまず聞くということから出発をしたいと思っております。  ただ、限られた時間ではございますので、その制約の中で、できるだけ確度の高いといいますか、きちっとした方式を見出していきたいと思っております。  それから、アメリカから検査官派遣について意見が来ているかという御質問でございますが、これは正直申し上げまして、私どもは、例えば定期協議なんかがございますけれども、そういう場面では、こういう要請があったということは承知をいたしておりません。  ただ、先生おっしゃいましたように、植物防疫官が相手の国へ行ってチェックをいたしますのは、一般的にといいますか、通常やられておるわけでございまして、例えば私どもの国の温州ミカンとかリンゴがアメリカに、確認を受けて現に輸出をされておりますが、その際も、相手国の担当官といいますか防疫官が来て、こちらの現地で確認をしてチェックをいたしておりますので、そういうことは頭の中に入れながら必要な対応はしていかないといけないと思いますし、その際でも、病害虫が侵入することを阻止するということが大前提であることは重ねて申し上げたいと思います。  それから検疫の実施体制につきましてでございますが、これにつきましては、一つは、例えば各飛行場とか港で検疫の体制をしいておりまして、典型的には、最近の例で申し上げますと、関西空港とか、ああいうところで急激に輸入がふえるとか、あるいは従来入っていた港に入らなくなるとか、そういうこともございますし、全体の輸入の動向といいますか、業務の必要性、それから実際どういうものが入ってくるようになっているか、そういう輸入の動向等を見ながら、とにかく検疫の実効を確保するという前提で、業務量に応じた配置をして、しっかり守っていきたいと思っております。
  165. 木村太郎

    ○木村(太)委員 そういったことをしながら、病害虫が侵入しない、先ほど大臣の答弁があった、安全性の確保を今後も一層努力していかなければならないわけですが、ずばり聞きますのでずばり答えてください。  もし、万が一、病害虫が侵入して被害が出た場合は、国がすべての責任をとる覚悟はできているのでしょうか。一言だけでいいですから答えてください。
  166. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 これはもう既に先生承知の規定でございますが、植物防疫法の規定に、国が責任を持ってそういう場合には防除をする、その防除の費用は全額国庫負担で行うという規定が万一のためにはございます。しかし、これもくどくて申しわけないんですが、そういうことがないような体制をしくし、試験方法をとりたいと思っております。
  167. 木村太郎

    ○木村(太)委員 もちろん、今後どういうふうになっていくかは、先ほど答弁があったとおり、専門家の皆さんの意見を聞きながらスタートしていきたいということでありますので、今私はもし万が一ということを言いましたが、もし万が一があってはならないための努力が始まるわけでありますので、ぜひ安全性確保、くどいようでありますが、努力をお願いしたいと思います。  やはり大事なことは、先ほど米に関しても言いましたが、もちろん守ることだけでなくてこっちからも攻めていくことも大事だと思います。また、そのためには、国内における生産体制の強化というのをリンゴに関してもますます努力していかなければならないと思うわけです。  そこで、時間がなくなりましたからあわせてお聞きしますが、まず、攻めるということを考えた場合に、例えば私の地元青森県産のリンゴでいいますと、東南アジアを主体に約三千トンぐらい輸出をしております。これも今後さらに、地元生産者、地元の県、市町村等、あるいはまた農業者団体、いろいろ努力しているんですが、国として輸出拡大ということをどう考えているのか、お知らせいただきたいと思います。  また、私、前の委員会でも、今までも何度も主張してきたんですが、また今まで大臣にも直接お会いしてお願いもしてきた経緯がありますので、いま一度、WTOの大きな判断があった直後でありますからもう一度主張させていただきたいことは、生産体制の強化ということを考えた場合に、今現在行っておりますいわゆるリンゴ園地改良、改植事業というもの、これは十二年度が目標年次になっておりますから、十三年度以降も生産者の希望が多分続くと思いますので、ぜひ生産者の不安にこたえるためにも国としてのバックアップをお願いしたいと思います。  いま一つは、生食用のリンゴ価格の安定制度、これを実はお願いしてきたんですが、今現在は国の方では、はい、わかりましたという返事はもらっておりません。また、前に指摘したときには、リンゴだけにそういうことを認めることはできないというような趣旨の答弁もありました。それを私もすべて否定しませんけれども、いわゆる新農業基本法、これは食料自給率ということを一つのメーンにしようとしている中で、国内果樹において今現在高い水準の自給率にある果物に関して視点の方向性というのを変えていただいて、あるいはまた地域活性化とかいろいろなことを考えながら、生果の価格安定制度というものに対してぜひ積極的な国のバックアップをお願いしたいと思います。  生産者が大変苦しい中で、実は、国の返事をもらえないままにことし県サイドで今やってみようというような動きになってまいりましたので、こういった点に対しての国の対応を聞いて、時間になりましたので終わります。
  168. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 まず、輸出の点でございますが、これにつきましては、国産のリンゴ、特に青森のリンゴは相当量が東南アジアを中心に年間二千トンから四千トン程度もう輸出をされている大変量の多い品目でございますが、私どもとしましては、一つは、バラ科につきますモモシンクイガという虫がございますので、これを防除するための条件整備が一点。それから、海外で消費されるというのは大変大事なことだと思っていますので、できるだけ消費宣伝、これに力を入れまして、御協力を申し上げているというところでございます。  さらに、一つ御報告をいたしておきますと、御承知のことだとは思いますが、オーストラリアに対しまして本年一月に青森のリンゴが輸出解禁になりまして、十一年産から輸出ができることになったということでございます。  それから、助成の点につきましては、これは前お答えしたのと全く趣旨が変わりませんのでまことに恐縮ではございますが、一つは、矮化栽培につきましては、青森県は大変御熱心に取り組んでおられるというのは私ども十分に知っておりますし、成果も上げていると思っております。これにつきましては六年度から十二年度までを事業期間としておりまして、現在経過中でございますが、その成果は十分知っておりまして、その実施期間後は、その成果を見ながら、あるいはその後の諸般の動向を見きわめて対応をしていきたいと思っているところでございますので、御理解いただきたいと思います。  なお、青森県からいろいろ御要請がございます価格安定制度につきましては、現在私どもが対応いたしております価格の安定化のための計画出荷の制度でございますとか、あるいは共済制度等々のほかにこういう制度をつくることについてなかなか難しい面がございますが、そういうさらなる施策が必要であるかどうか、リンゴの需給動向等を見きわめながら将来の検討課題とさせていただくということで御理解をちょうだいしたいと思います。
  169. 穂積良行

    穂積委員長 次に、菅原喜重郎君。
  170. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 大臣質問させていただきます。  農水省は、農政を劇的に方向転換させる、米政策について米の関税化措置への切りかえを昨年十二月二十一日にWTO世界貿易機関へ通報しました。この措置については野党の方々からは唐突過ぎる等の批判も出されているわけでありますが、消費者を初め農業者や関係者全体に対して、なぜこのような措置に踏み切ったのか、こうした大転換を決断した背景にはどのような要因があったのかを説明すべきだと考えるわけであります。とりわけ、物事には結果に至るプロセスが重要なことでありますので、背景について国民にわかりやすく、理解できるように大臣にまず説明をいただきたいと考えますが、いかがですか。
  171. 中川昭一

    中川国務大臣 改めて、菅原先生からの御指摘でございますので、私なりに御説明をさせていただきます。  九三年までの七年間にわたりますウルグアイ・ラウンド交渉、特に農業交渉でございますが、例外なき関税化という大前提の中で、我が国としては、米については関税化を受け入れることはできないということでぎりぎりまで頑張ったわけでございまして、最終的に、調整案が出まして、例外措置としてミニマムアクセス、しかも原則三から五というものを四から八%へふやすという若干プラスアルファの義務的輸入を前提とした特例措置でございますが、それを受け入れたわけでございます。  先ほども御質問ありましたが、協定関税化選択の道もありましたし、また、この六年間の協定期間中に途中で関税化をするルールも協定の中に明記してあるところでございます。  その後、外国産米が入ってきて、その需給動向あるいは国内におけるいろいろな制度の見直し、充実等々の状況の変化、さらには外国から入ってきたお米が特に主食用としてはほとんど国民に受け入れられない結果、在庫として結構な量になってき、しかもそれに対する財政負担が伴っておるという現状等々を把握し、そしてまた途中で関税化することによって、次期交渉へのステップとして、原則に戻るわけでございますから、交渉に向かってのスタンスがより強くなるという判断もあって、関税化措置に九九年四月一日から踏み切るということを決定したところでございます。  なお、関税化に当たりましては、協定附属書に書かれておるルールどおりの関税相当量というものを、従量税、キログラム当たり何円という形で計算をしたところでございます。この場合には、この二次税率というものは協定に基づくルールどおりの計算でございますので、我が国の自主的な判断をWTOに通知すればいいということになっておるわけでございます。  したがいまして、先生指摘のように、十二月二十一日に通報をいたしまして、開始日が毎年四月一日でございますので、九九年四月一日に間に合わせるため、また九十日間という異議申し立て期間もございますので、それを勘案して、逆算をして十二月二十一日にWTOに通知をしたところでございます。これによりまして、年間のミニマムアクセスの増加量が毎年〇・八%から〇・四%と半減するということも、これは我が国にとって大きなメリットになるであろうというふうに考えております。  また、一番大事なことは、この関税化によりまして関税相当量を払えば輸入をすることができるわけでございますけれども、この関税相当量はルールどおりの計算の結果でありましても十分国産の米との間に価格差が生じておることから、これによって閣議了解に基づく外国産米国産米の生産や需給影響を及ぼすことがないという判断のもとで選択をしたということで、以上申し上げたところでございますが、我々としては現時点においての最善の判断といたしまして関税化に踏み切ったところでございます。
  172. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 国民に今回のこの関税措置に切りかえたということの説明をいろいろするのですが、やはり国民はまだ納得できないのですね。私は、どうもこういう措置は、世界自由貿易の流れの中であと十年ぐらいはまずこういういろいろな関税措置で対応できるかもしれぬけれども、いつかは日本の米問題も自由貿易の中に取り込まれていく、そうすると、あと十年、さらに二十年かの間に外国農業と対抗できる米づくりの体制をつくらぬとだめなんだ、そういうふうなことを話しております。  それにつけても、今回の米の関税措置への切りかえで専業農家や専業的経営者は将来的に不安をぬぐい切れないでおりますので、やはりこういう方々に自信と誇りを持って仕事に従事できるための対策や、体質強化のための施策を講ずることが重要な課題となってきたのでありますから、このことについての現時点における考え方、対策を示していただきたい、こう思いますので、ひとつこのことをよろしく答弁願いたいと思います。
  173. 中川昭一

    中川国務大臣 関税化で十年後、あるいはその後に対する不安という先生からのお話でございました。  現時点においては、我々も必死になって御説明をしておるところでございまして、御理解を得つつあるというふうに考えております。次期交渉はどうなるんだろうかということに対する関係者皆さんの御心配というものは我々も理解できるわけでございまして、それに対して心配のないように次期交渉に臨んでいくという準備作業に今取りかかろうとしておるところでございます。  また、四月一日からの関税化移行に当たりましては、先ほど申し上げましたように、外国から入ってくる米の量が、増加率が半分になる、あるいはまた関税相当量国内産米が十分対抗し得る価格に結果的になるというようなこと等を考えますと、私といたしましては、この関税化によって輸入の増は見込みがたいということから、平成五年の十二月の閣議了解であります外国産米国産米の生産あるいは需給等に影響を与えないという了解事項を引き続き踏まえた上での措置でございます。したがいまして、関税措置への切りかえによりまして、米作農家を中心とした専業的経営者に悪影響を及ぼすことはないというふうに考えております。  そして、専業的経営者が、将来に対して夢あるいはまた不安、いろいろお持ちになっていらっしゃると思いますが、それにつきましては、昨年末に取りまとめました農政改革大綱あるいはプログラム、そしてこの後御審議をいただきます新しい基本法等の中で、例えば自給率向上の目標でありますとかいろいろな対策等々を盛り込んでございますので、それによって日本の米作農家を初めとする農家皆さん方が、影響を受けずに持続的に経営に取り組んでいくことができるというふうに考えております。
  174. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 私は、今まで自由化されても食える日本農業の確立を政府が図るべきだと主張してまいりました。具体的には、再三私が提起しておりますように、基盤整備とかんがい排水施設の完備、すなわち水対策をきちっとすることによって我が国の米づくりも裏作を取り入れると、決してアメリカに負けないものを構築できると主張してきているわけでございます。  そこで、このような事態に関連して、農業実態なのですが、このことは、過般農水省が提出した農業基本法が目指すものの資料に収録されている中から引用してみましても、認定農業者を中心とした地域農業の構築の事例として、兵庫県において七十戸の地域の部落が、地区内圃場四十六・五ヘクタールを三ブロックに分けて、一ブロック十一・五ヘクタールについてはすべてこの認定農業者二名へ利用集積した。その結果、認定農業者は規模拡大を実現するとともに、大型機械の活用による省力化等により、水稲単収が五百十キログラム、町平均が四百八十キログラムです、第一次生産費が九万五千円、町平均が十三万五千円、このように効率的な水稲生産を実現しているわけでございます。さらに、この認定農業者に緊急の場合が生じても、営農組合、オペレーター十名がバックアップする体制整備して、認定農業者と営農組合が二人三脚で地区内農業の生産体制を構築したとあります。  さらに、滋賀県では、十九戸の地区で、認定者一人に集落の水田の七〇%近く、十八・一ヘクタールを集積して、非常に効率を上げる体制をつくっているわけでございます。  さらに、青森県におきましても、六十四戸の地区におきましては、認定者二人に、作業受託面積二十六・四ヘクタール、賃借権の設定三十二・九ヘクタール、認定農業者等の農作業受託組織の当該地区の経営耕地面積に占める割合六八%、これは九十・六ヘクタール、認定農業者は村平均の十三倍、二十八・五ヘクタールと規模拡大が進捗しているという事例も載っております。  さらに、愛知県においては、五十五戸の地区において、認定農業者二人を水稲の担い手として位置づけて、利用権設定と農作業受託のすべてを集積し、地区内水田の八四%、延べ八十五・九ヘクタールを受託させているわけです。  さらにこの事例を、たくさんありますので。これは新潟県でも、三十一戸の地区が、認定農業者十三名に集落内水田の八〇%、二十三ヘクタールの集積を実施し、水田の連担化を図り、大幅な作業効率の向上を図った。その結果が、十アール当たり作業時間三十六・六時間を十六・九時間に切り詰めている。そして、その他の方々は、余剰労働力を施設園芸部門へ向ける等で生産性の高い複合経営を実現しているわけであります。これは愛媛県にもこういう事例が出ております。  こういう事例を見ますと、やはりこの基盤整備とかんがい排水が完備いたしますと、日本の米づくりも国際競争に十分に対抗できる体質になっていく、私はこう考えております。  そこで、今この基盤整備の補助率も大体九〇%、市町村がこれに援助をして九五%、大型圃場の整備は平均九〇%―九五%になっているわけでありますね。このことはちょっと担当のどなたかにお聞きしますが、この数字は正確ですか。
  175. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 圃場整備事業の負担割合ということでございますけれども、現在主流が担い手育成型という圃場整備事業でございますので、それで御説明申し上げますと、国庫補助が五〇%、それからガイドラインで出しました都道府県の負担が二七・五%、市町村が一〇ですので、残余の農家負担割合は一二・五%でございます。  ただ、今先生説明ありましたように、その一二・五%の中でも、一〇%を限度として、六分の五の範囲内で無利子のお金を貸し付けられる、あるいは五%を限度として促進費を交付するという状況になっておりますので、先生が示された一〇%、あるいは市町村が上乗せをして五%というふうな現状は、おおむね今の状況をあらわしていると思います。
  176. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今聞きましたように、おおむね九〇%―九五%の補助率が可能になっている、やや現実になってきているわけですね。しかし、実際に今圃場整備をしようとしますと、兼業農家で、兼業農家率は大体もう九八%ぐらいになっているわけでございますが、後継者率はほとんど兼業農家はないような状態ですので、この後継者のない農家は、わずか五%、一〇%のいわゆる自己負担でも、なかなか基盤整備の事業を承諾するのに大変な事態を生んでいるわけです。  しかし、基盤整備は、こういう関税措置をとった以上は何としてでも進めなきゃならぬ。そうなりますと、私は、圃場整備事業について、もうそろそろ土地区画整理法の保留地制度と同様の制度を導入し、義務的な共同減歩による公共用地の創設との見合いで農家の金銭負担をゼロとする事業ができないか、このことを一つ質問しますので、お答えいただきたいと思います。
  177. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 土地改良事業の場合に、減歩という手続を経まして、いわばお互いに土地を出し合って、その土地を例えば公共用地等に充当する、その清算金といいますか、売却益を農家負担の一部にあるいは全部に充てるという方法は、有効な手法の一つだろうと私も思います。現実に、現在の土地改良制度の中で換地制度がございますけれども、土地の権利者の合意のもとで減歩をして非農用地を生み出し、その際の清算金を負担金に充てるということは、制度上も可能でありますし、実例も幾つか見られます。そういうふうなことで、減歩による非農用地の創出、その非農用地の売却によって収益金を負担金に充てるというのは、一つの工夫だろうと思います。  ただ、これを義務的にやったらどうかという御指摘なんですけれども、土地区画整理事業の場合には、土地区画整理をしました後が、例えば高層利用ができるというふうな、立体的に土地の価値が数段に上がるというふうな状況もございますので、そういったことと比べますと、平面を使う農地の場合、特に個人の財産ということもございまして、義務化をするというのはなかなか難しいことではないかなというふうに私は今思っております。  ただ、いずれにしても、これは地域の中で一生懸命に話し合いを重ねますと、工夫の中から負担を減らせるということも可能でございますので、そういう点からは進められる制度ではないかというふうに思います。
  178. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 都市計画事業では、こういう減歩制度をとっているわけです。しかし、都市は地価が高いので、減歩制度でもその事業費をペイさせることはできてくると思います。農地は、そういう点では難しい点があると思いますが、しかし、現実は九〇%―九五%という補助率になっているんですから、そして、この事業は緊急に進めなきゃならぬ、そういう事態に、もう米関税措置でなってきておりますので。それから、こういう事業を導入するとなると、農林省も建設省並みの予算獲得ができると思いますし、国土大改造、国土保全にもつながる事業になっていくと思いますので、ぜひこのことは大臣検討していただきたい、こう思います。  それでは、時間もなくなってきましたので、最後に、WTO次期農業交渉について大臣にお伺いして、質問を終わりたいと思います。  いよいよ二〇〇〇年からWTO次期農業交渉が始まりますが、各国においては、EUにおけるアジェンダ二〇〇〇による共通農業政策改革等、国内農政改革を進め、交渉へ向けた準備作業を進めているところであります。我が国としても、今国会において農業基本法の改正が提案されるところでありますが、次期交渉に向けて、農政改革を早急に進めることが必要であると考えます。  そもそも今のWTO農業協定は、食料輸入国については輸入制限措置関税化し、関税率を引き下げ、また国内助成について削減約束をする一方、食料輸出国については輸出税、輸出規制に十分な規律がなく、極めてアンバランスな状態にあると見ております。  さらに、食料安全保障については、九六年のFAOの食料サミットにおいても合意に達したが、国民に対しての、食料を安定供給する上で国の最も重要な責務であり、その責務を果たせるような交渉結果を獲得することが必要であると考えています。  このような食料安全保障や農業の有する国土保全、自然環境保護等の多面的機能について、農業、農村に携わっている者のみでなく、国民全体にかかわる問題であり、次期交渉に臨むに当たっては、国民合意のもと、一丸となってこれに当たることが必要であると思いますので、次期農業交渉に臨む農林大臣の決意をお聞かせいただきたいと思います。
  179. 中川昭一

    中川国務大臣 来年から始まります、二〇〇一年からと予定されております新しいWTO協定、その中の農業協定の見直し交渉に当たりまして、今先生からポイントの御指摘が既にあったという理解をいたしますが、改めて、まず国内生産を基本としつつという農業基本法上の理念、このほかにも幾つかございますけれども、我が国国内で、今法制度整備あるいは改革の推進というものが行われておるわけでございまして、そういう中で、特に意欲ある担い手あるいはまた農業が果たす多面的な役割、維持発展といったものを踏まえて、また、消費者サイドからの農業に対する、食料に対する関心も高くなってきておるわけでございますので、そういう国内における食料農業あるいは国土といったものを維持発展させていくという措置を、交渉においても基本の一つとして推し進めていき、将来にわたって生産者皆さんが意欲を持って生産活動に従事できるようにしていかなければならないというふうに考えております。  また、先生指摘のように、輸出国と輸入国とのアンバランスというものの解消も必要でございます。さらには環境面あるいはまた国土保全機能等々の問題、あるいは地球的な人口と食料とのアンバランスといったような問題は、一部の国だけの問題ではなくて、まさに全世界的な課題でございますから、先生指摘のように、FAOの会議あるいはいろいろな農林大臣会合等々の場でも結論として得られておるわけでございますので、そういうような観点からも、我が国の主張イコール世界共通の利益につながっていくという認識を持っております。  いずれにいたしましても、生産者だけではない、消費者も含め、あるいはまた経済界も含め、オール・ジャパンで共通認識を構築していき、そしてまた日本立場を同じくする国々との連携を深めながら、我が国立場、そしてまた国際的なコンセンサスになっていって、次期交渉の結果が、日本農業、農村あるいはまた国土、そして地球全体の発展、利便にお役に立てるように頑張っていきたいと思いますので、先生の御指導も引き続きよろしくお願いいたします。
  180. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 どうもありがとうございました。終わります。
  181. 穂積良行

    穂積委員長 次に、中林よし子君。
  182. 中林よし子

    ○中林委員 私は、去る二月十七日、当委員会での大臣所信に対する藤田スミ議員の質問を踏まえて質問をいたします。  藤田議員の質問で、外務省は、「譲許表の修正が発効するまでは修正前の譲許表が有効なものとして残るということは、先生指摘のとおりでございます。」こういう答弁をされております。つまり、譲許表の改正がなければ古い譲許表が残り、それが有効であることを認めました。そして、譲許表は条約であり、国内法との関係では、基本的人権や第九条など憲法上問題になるものを除いて条約が優先することは日本国憲法でも定められ、解釈上も確立している基本原則であること、これもお認めになりました。  二月四日の予算委員会での私の質問に対して東郷条約局長が、「譲許と申しますのは、譲許税率以上の関税を課さないということを国際的に約束するという趣旨」、こう言っております。現在、米に関しての譲許表には関税率は明記されておりません。つまり無税です。関税率が記入されていない譲許表が残ったままで関税率を課すことは、譲許の基本原則に真っ向から抵触するのではありませんか。
  183. 中川昭一

    中川国務大臣 先生の御指摘の、ある部分はそのように申し上げ、御理解がそのとおりだと思いますが、譲許表に前の条件が譲許されているから有効だとは私は申し上げておりません。  また前と同じことを申し上げることになりますが、十二月二十一日にWTOに、我が国固有の権利として今度関税化するということを通知をし、その結果、WTO事務局はすべての参加国に対して、日本は四月一日から米を関税化しますよということを通知しておるわけであります。それだけで実質的に物事は終了するわけであります。  ただ、事務的な手続あるいは九十日間の異議申し立て期間というものがあるわけでございますから、そのような期間は譲許表が変更されないということになるわけでございまして、そういう意味で、譲許表の中に日本の米の関税は譲許されていない、つまり関税率ゼロということでありますが、もうその時点で、譲許表上あるいはWTO協定上、日本関税化をし、関税相当量は三百五十一円十七銭ということで、WTOに譲許されたというふうに理解をしていただきたいと思います。
  184. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 お答え申し上げます。  まず、国際約束と国内法との関係でございますけれども、先生指摘のとおり、憲法がございます。あえて条文を引用する必要もないと思いますけれども、一般的に申せば、条約と法律とが抵触した場合には、条約が優位であるということは当然でございます。  今回の関税化について申せば、我が国は、WTO農業協定という国際約束に従って、特例措置の適用を終了するための所要の国内措置をとるということでございまして、条約に反してとかいうことではなくて、むしろ条約に従って行っているのでございます。  そしてまた、譲許表の修正に関連しまして、一般的に言えば、譲許表の修正、発効するまでは、修正前の譲許表が有効であるということは申せますけれども、今回の具体的な話に即して申せば、今回の措置というのは、農業協定附属書に従って、そこの定めるところに従って特例措置の適用を終了するということの措置をとっている。つまり、特例措置の終了というのは、関税化という農業協定上の基本原則にかなう、こういったものでございます。  したがって、農業協定の定める指針に従って関税が算定されている限り、我が国努力にもかかわらず、もし譲許表修正の手続が完了しないということがあっても、そういうようなことをもって特例措置の適用の終了が妨げられるというふうには解するべきではないという立場でございます。
  185. 中林よし子

    ○中林委員 一般的にはそのとおりだということをお認めになりました。  そこで、確かに、今回はWTO協定に沿って、WTO政府は通告をしたというのはよく知っていますよ。知っているけれども、三カ月の間に異議申し立てがあった場合の話をしているわけですね。そうすると、前の譲許表が残るでしょう、修正されないままにいくでしょう。こうなった場合はどうなるのですか、外務省。
  186. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 私どもとしては、農業協定の規定に従ってこの措置をとっているわけでございますので、諸外国理解は当然得られると確信しておりますが、万が一にも異議申し立てが行われた場合にも、私どもとしては、私どもの考えるところに従いましてそれを説明し、先方の理解を得て異議を撤回してもらうように働きかけるわけでございます。いずれにせよ、私どもの今現在行おうとしております特例措置の停止、関税化への切りかえというのは、農業協定という国際約束に基づいて、それに従って行っているということでございます。
  187. 中林よし子

    ○中林委員 今おっしゃったように、もし異議申し立てがあるならば説得する、政府はそういう態度でしょうけれども、しかし、説得はなぜやるのかというと、修正されない譲許表が残っているからでしょう。  そうすると、これは現在も有効です、一九四七年ガット第二条で譲許表の取り扱いを規定し、その中で、「その譲許表に定める関税をこえる通常の関税を免除される。」こういうふうにしているわけですけれども、日本が勝手に関税を行使したということですると、この規定に抵触するんじゃないですか。クリアできますか。
  188. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 一般的な形で、譲許表における譲許というのはどういうことかということかと思いますけれども、関税について譲許表上譲許するというのは、かねて私の同僚も申し上げたとおり、譲許税率以上の関税を課さないということを国際的に約束するということでございます。  したがって、農業協定附属書に従って特例措置の適用を終了させるという場合に、関税を譲許表において譲許することを求めるという趣旨も、まさに関税化に伴って譲許税率以上の関税を課さないことを約束することを求めているわけであって、繰り返しになりますけれども、譲許表において義務を負ったもの以上の関税は課さない、そういう義務を負うという趣旨のものでございます。
  189. 中林よし子

    ○中林委員 以上の譲許は課さないということになっているのでしょう。今、ゼロなんですよ、無税なんですよ。それを国内で何がしの関税率をかけるということは、どこに書き込むわけですか。譲許表なんか要らないことになるじゃないですか。国内で勝手に決めたことを、それは計算どおりやっているんだから、法に基づいてやっているんだから、国際的なルールに基づいて計算しているんだから大丈夫だとあなた方はおっしゃっているんだけれども、国際的なルールとすれば、三カ月間というものの間に異議申し立てすれば、それは協議に入っていくわけでしょう。そうなると、現行の譲許表というのが国際的には有効になっていくわけですよ。そうでしょう。
  190. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 繰り返しになって申しわけございませんけれども、私どもの現在行おうとしていることは、基本的には農業協定に従って行っているわけでございまして、諸外国理解は当然得られるものだと思って確信しているわけでございます。  したがいまして、万が一にも異議申し立てがあって、譲許表の修正というのが四月一日までに行えないということは論理的には排除できないことは事実でございますけれども、さはさりながら、その後になっても、私どもとしては、説明を行って理解を得る。  他方、私どものとろうとしています関税化措置そのものは、農業協定という国際約束に従って、その規定に従った方式によって算定されたものであって、したがって当然、農業協定の枠内の、国際約束の枠内のことをやっているわけでございますので、諸外国がそれに当然理解をしてくれるものだと確信してやっています。
  191. 穂積良行

    穂積委員長 ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  192. 穂積良行

    穂積委員長 速記を起こしてください。  中林君。
  193. 中林よし子

    ○中林委員 今でもおわかりのように、国際的なルールとおっしゃるわけですけれども、農業協定すべてにわたって、譲許表に定めるという規定が貫かれているわけですよ。農業協定三条、四条、五条、六条、七条、十三条、みんな、譲許表が改定されなければ、これは効力を発しないということになっているわけですね。  だから、今のような答弁をされたのでは、これは国際問題にもなりかねない。国内法だけで関税化ができるという政府説明は、譲許表の取り扱い一つとっても通用するものではありません。だから、この問題での徹底審議を求めたいと思いますけれども、委員長、取り計らっていただきたいと思います。
  194. 穂積良行

    穂積委員長 外務省大島経済局長から、また答弁をさせます。大島局長
  195. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 改めて御説明させていただきたいと思います。  繰り返しになりますが、農業協定附属書に従って特例措置の適用を終了させるということは、農業協定の国際約束でございまして、したがって、条約でございます。その条約に従って、その定める方式に従って関税化を行うということでございますので、私どもは、条約である、国際約束である農業協定の厳格に定めるところに従って、これを行っているわけでございます。  農業協定そのものは、参加国は既に国際約束として加盟しているわけでございますから、ほかの国も我が国がこれからとろうとしています措置について十分理解できるものだと確信してやっているわけでございます。
  196. 中林よし子

    ○中林委員 ちゃんとルールが、特例措置から関税化に移行するときの特例措置は書いてありますよ。その中に、6の項目を満たさなければということで、「譲許表において譲許され及び適用されるものとする。」というのがあるからこそ、あなた方は、三カ月前にWTOに通告して、四月一日からの関税化をと言っているわけでしょう、そのルールに基づいて。だけれども、その三カ月の間に異議申し立てがあるかもわからない。ルールに乗っているからそれはないんだと皆さんはおっしゃるけれども、あるかもわからない。その可能性は否定できないはずなんですよ。だからこそ、そういうことがこのWTO協定農業協定、しかも特例措置関税化にする場合には、ちゃんとルールが書いてあるわけですよ。それに基づいてやるわけですから。  この問題、私、まだほかにもいっぱいやらなければいけませんので、この問題での徹底審議を、委員長、取り計らっていただきたいと思います。
  197. 中川昭一

    中川国務大臣 いろいろな可能性があることはもちろん私ももとより否定するものではありませんが、関係各国と十分話し合いをしておるところでありまして、国際問題になるとは考えておりませんので、御安心いただきたいと思います。
  198. 中林よし子

    ○中林委員 それは大臣のお考えですし、外務省のお考えだと思うんですけれども、私は納得しませんので、徹底審議を委員長に求めたいと思いますが、いかがでしょうか。
  199. 穂積良行

    穂積委員長 当委員会の運営につきましては、理事会にお諮りをしまして、その合意の上で進めておるところでございます。今後ともそのようなことで取り計らわせていただきます。  中林君。
  200. 中林よし子

    ○中林委員 それでは次に、関税化の本質問題について質問したいと思います。  WTO協定自身は、すべての非関税障壁を関税に置きかえるという関税化をその中心的な柱にして、その関税率を引き下げることによって貿易障壁を減らし、そのことによって自由貿易を進展させることにその目的がある、これはマラケシュ協定の前文を見れば明らかだと思います。  すなわち、関税率の引き下げがない関税化はあり得ないというふうに思いますけれども、これは基本的認識ですので、その点を明らかにされたいと思います。
  201. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 WTO協定は、御承知のとおり、多角的な自由貿易体制ということの根幹を盛ったものでございます。その協定の基本は、まず、関税その他の国境措置を基本的に自由化していくということだと思いますが、具体的にそれをどうやっていくかについては、各国間の交渉ということでございます。それを通じて、交渉を経てその具体的な措置がとられていく、こういう仕組みがWTOの仕組みだと理解しております。
  202. 中林よし子

    ○中林委員 今の中に、私の関税化の引き下げということが目的でしょうということに対して、端的な答弁はされませんでした。  WTO協定の設立に際して、その一番基礎になったマラケシュ協定では「関税その他の貿易障害を実質的に軽減し及び国際貿易関係における差別待遇を廃止するための相互的かつ互恵的な取極を締結することにより、前記の目的の達成に寄与することを希望し、」というふうに、関税は軽減していくということが前文でちゃんと明記をされております。  さらに、通産省が出しておる一九九八年版の不公正貿易報告書の中に、WTOの「法的規律の概要」で「逐次その上限税率を引き下げることによって、関税障壁を解消することを目指している。」こういうふうに書いてありますし、また「関税引き下げの正当化根拠」として「WTOは、数量制限を原則として禁止し、関税による産業保護を認める一方で、加盟国が交渉を通じて関税を逐次引き下げていくことを目指している」というふうに書いてあるわけですから、これは、関税引き下げということがこの関税化の本質ではありませんかと聞いているわけですよ。
  203. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 今先生が引用されましたマラケシュ協定そのもの、まさに先生がおっしゃるとおりのことがもちろん書いてあるわけでございますけれども、先ほど私が御説明いたしましたWTOの中での貿易の国際的な枠組みのあり方についての言及とも関連したことがありますので、改めてそこを強調させていただきたいと思います。  この前文の文章には、そのような作業が相互的かつ互恵的な取り決めであると言っておりますので、一般的には、もちろん関税その他の貿易障害を実質的に軽減する云々ということが書いてございますけれども、それは同時に相互的、互恵的なものであるということで、実質的には交渉を経てそれは行われる、そして、関係各国の利益のバランスがとれたところでそれが定まっていく、そういった方式で行われておりますのがWTOの枠組みだとも理解しております。
  204. 中林よし子

    ○中林委員 今、軽減ということをおっしゃいました。だから、それは各国のいろいろな交渉事というのは当然あるでしょう、でも、今お認めになりましたように、関税率の引き下げのない関税化はあり得ないというふうに思うわけです。  関税化日本農業に大きな影響をこれまでも与えてまいりましたけれども、今回、米の関税化によって日本農業にどのような影響を与えると農水省はお考えでしょうか、大臣
  205. 中川昭一

    中川国務大臣 今回の関税化によりまして、日本農業、とりわけ米ということなんでしょうけれども、これについての影響はどうだという御質問でありますが、あくまでもWTO協定のルールに基づいて関税相当量というものを算定いたしました。これは我が国の判断で、自動的な計算に基づくものでございますから、これは我が国が決めてWTOに通知をすればよいことになっておりますが、この金額というものは、我が国国産米に与える影響は極めて少ない、困難を与える見通しは持っていないというふうに考えております。  平成五年十二月の閣議了解、ミニマムアクセス導入に伴う転作の強化は行わないという趣旨を引き続き遵守することができるというふうに考えております。総合的に勘案いたしましても、今回の関税化によって、日本の米の生産あるいは需給影響を与えるとは考えておりません。
  206. 中林よし子

    ○中林委員 物すごいことをおっしゃいましたよ。関税化によって日本農業経営が悪化することはない、影響はない、このようにおっしゃったわけです。私は、ミニマムアクセス米の輸入だけでも相当な影響があったというふうに思います。  そこで、実質、もう既に関税化されている問題で質問したいと思います。  牛肉の関税化、これは、先日、本会議で我が党の松本善明議員が指摘をしましたけれども、ここに「農林金融」というものがあります。これは農林中金総合研究所が九四年二月に発表した総研レポートで、「牛肉輸入自由化の影響と今後の課題」、その「はじめに」で明記されているわけですが、「既に輸入自由化が実施されている牛肉を先例に、その影響や課題等を整理し、あわせて、今後の米問題を考える参考として、取り急ぎとりまとめたものである。」ということになっているわけですね。その中で指摘しているのは、牛肉輸入自由化の評価としてまず第一に挙げられているのが、肉牛を初め、我が国畜産、酪農全般の構造調整を加速、こういう評価をし、具体的には、大多数の小規模農家を中心に、肉牛等畜産経営からの脱落、離農が急速に進んだこと、二番目に、一方で規模拡大が進み、しかも輸入品との競争上、ゴールのない規模拡大に伴う経営リスクや環境問題が内在し、三番目にこれらの結果、将来の負債問題の顕在化が懸念される、こういうふうに指摘しております。  現に、牛肉の関税化以降、肉用牛の飼養農家は、九〇年の二十三万二千戸から九七年は十四万三千戸へと減少しています。減少率三八%、四割に近い八万九千戸の農家が離農に追い込まれております。その結果、牛肉の自給率は、九〇年の五一%から九七年には三六%まで下がっております。今なお下がり続けております。  この牛肉の関税化の現実、これをどのようにお考えでしょうか、影響がなかったとお考えでしょうか。
  207. 本田浩次

    ○本田政府委員 先生から幾つか御質問がございましたので、そのそれぞれにつきまして、私どもの考え方をお答えさせていただきたいというふうに存じます。  まず、肉用牛の飼養戸数の問題でございますけれども、御指摘のありました数字自体は先生指摘のとおりでございます。ただ、肉用牛の飼養戸数につきましては、自由化前後、長期的に減少傾向で推移してございまして、昭和五十九年から平成三年、自由化の時点まででございますけれども、この七年間の減少戸数が九万三千七百戸でございます。それから、平成三年から平成十年までの同じく七年間の減少戸数は八万七千七百戸でございまして、この七年間、相互の間、自由化前後でございますけれども、ほぼ同じペースで減ってきているというのが実態でございます。  平成十年では結果的に十三万三千戸になっておりまして、このうち十一万戸、八三%が黒毛和種などの繁殖農家でございまして、これら繁殖農家は大変小規模、高齢者層が中心になっております。我が国の畜産の中では、まさにこの繁殖農家が兼業形態で営まれているという状況でございます。  牛肉輸入自由化以降、黒毛和種の子牛販売価格は、平成五年から六年にかけまして一時期低下したわけでございますけれども、全体として高い水準で推移していることから、戸数の減少自体が価格低下によります生産意欲の減退によるものではなく、主として兼業形態によります繁殖農家の高齢化などによる要因によるものと考えているところでございます。  それからもう一点、牛肉自由化が畜産農家にどのような影響を及ぼしていったかという全体的な問題でございますけれども、平成三年度の牛肉輸入自由化後、牛の枝肉卸売価格でございますけれども、品質的に輸入牛肉と競合してございます乳用種を中心に、低下傾向で推移してまいりました。ただ、八年度以降は回復しております。  また、牛肉の輸入量につきましては、消費の伸びに伴いまして増加を示してきたわけでございますが、狂牛病の発生を契機といたしまして、平成八年度に輸入が減少して以降、九年に回復しましたけれども、平成十年度に入ってほぼ前年並みで安定的に推移しております。  近年の牛肉の消費形態につきましては、輸入牛肉は外食を中心に、国産牛肉は家計消費を中心に消費されるといった、いわばすみ分けが進行しておりまして、需給は極めて安定的に推移しているところでございます。  牛肉の輸入自由化に際しましては、自由化に伴う牛肉価格の低下は最終的には子牛価格に転嫁されるものでございますので、私どもは、肉用子牛生産者補給金制度を導入いたしますとともに、肥育経営の安定のための肉用牛肥育経営安定緊急対策事業を措置して、国内生産の維持を図ってきているところでございます。  このように、牛肉の輸入自由化に対しましては、御指摘のとおり、消費が極めて拡大しておりますので、消費拡大に対応するような形で輸入の増嵩も見られるわけでございますけれども、所要の対策を実施することによりまして、畜産農家に及ぼす影響につきましては極力回避してきたところでございます。今後とも、各般の施策の的確な実施によりまして、国内生産の振興に努力してまいりたいと考えているところでございます。
  208. 中林よし子

    ○中林委員 あなた方は本当に、都合のいい数字を取り上げながら、関税化が肉用牛飼養農家影響がなかったみたいなことを言い切られるなんて、とんでもないというふうに思いますよ。黒毛の牛を飼っているのは一、二頭飼いで高齢者なんだから、その方々が高齢になって働けなくなったり亡くなったりしたから農家戸数が減ったんだなんというのは、これはとんでもない言いがかりでしょう。では、次から次に年はみんなとっていくわけですから、高齢者はまた出てくるわけですよ。それなのに、それで牛は飼っていかれない状況をつくったのは自由化そのものじゃありませんか。それはどこの農家だって言っているわけです。  あなた方がそういうことを言うと思うから、私たちは比較的政府筋に近い論文などを見ているわけですよ。ここに雑誌「肉牛ジャーナル」九七年七月号、それのコピーがございます。この中で、「牛肉自由化後十年の変遷と活路」というまとめがございます。これを見ましても、「日本の牛肉生産において最近気がかりなことは生産が停滞から減少に転じていること」として、「肉用牛飼養農家数が減少していることは当然だが、平成九年には十四万三千戸となり減少のテンポが早くなっている。さらに肉牛の飼養頭数では平成六年の二百九十七万一千頭をピークに減少しており、平成八年には二百九十万一千頭、平成九年には二百八十一万五千頭と減少が加速している。」と言っているわけですよ。そして、今後の肉牛経営の推移を展望してみると、このまま推移すると、平成十七年には農家数が半減することが予想される、肉用牛全体の頭数も二割以上の減少が見通される、このことは国内での肉牛生産規模の縮小を意味している、こういうことを言っているわけですね。  御存じのように、牛肉の関税化は、関税率が初年度は七〇%からずっと引き下げられて最終年は三八・五%、こういうことになって、肉牛生産が縮小していることをこれらの論文はリアルに指摘をしているというふうに私は思って、影響がないなどというようなことは絶対に言えないと思いますよ。  牛肉自由化の前からもう農家戸数は減り始めていたんだ、こういう数字も挙げられましたけれども、関税化の前に調製品が入ってきているじゃないですか。それで農家の人たちは自由化への道だということで実はどんどん経営が成り立っていかなくなってきたということのあらわれです。  答弁を求めるとまた同じことをおっしゃるので、答弁は求めません。私は、こういう肉用牛生産農家の二の舞、それが米農家にも影響を与えるというふうに思うんですよ。米生産農家は肉牛の生産農家の比ではありませんね。ほとんど日本じゅうの農家がかかわっているから、日本農家に与える影響というのはさらに深刻な打撃を与える。その広がりと深さでは、牛肉関税化の比ではないと思うわけです。  大臣次期農業交渉でも自分たちは頑張るんだと先ほどからおっしゃっているけれども、しかし、さきに言いましたように、関税化WTOの求めるところは、どんどん引き下げていくということが大体その目標になっているわけですから、米の関税化が牛肉関税化のような状況にならない、そういう保証はありますか。
  209. 中川昭一

    中川国務大臣 現在、九五年から二〇〇〇年までの六年間は、御承知のとおり、六年間で一五%、つまり毎年二・五%ずつ下げてきておるわけであります。二〇〇一年以降、どういうふうな関税率あるいは関税相当量になるかということにつきましては、今後のWTO交渉に臨む我が国の基本方針ともかかわる問題でございますので、これから我が国として検討をしていくべき事項だと考えております。  いずれにいたしましても、日本国内農業を守ることが最大の基本的な前提にあるということは言うまでもございません。
  210. 中林よし子

    ○中林委員 あなた方は大変強弁していらっしゃるわけですけれども、現実が、関税化によってこれだけ日本の肉用農家に打撃を与えている、オレンジだって同じことが言えているわけですよ。私は、そういう意味では、米の関税化というのは、その同じ道、さらに深く広く影響を及ぼさざるを得ない。それは歴史が必ず証明するでしょうけれども、証明して農家に犠牲を与えてからでは遅い。だから、私たちは関税化に踏み切るべきではない、こういう態度で臨んでいるところです。  そこで、今回の関税化受け入れが次期農業交渉交渉ポジションを強めるということを、今ずっと大臣はおっしゃっております。ちょっと視点を変えて質問したいと思いますけれども、資料は配られていると思います。  ここに、アメリカとEUの関税化品目のアクセス数量と輸入実績、これは予算委員会で資料要求した中で出てきた資料でございます。これを見ていただきたいと思うのですけれども、アメリカでは、例えばアイスクリーム、初年度でアクセスの数量が三百二十八万四千リットル、これに対して、実績の方を見ていただければ、九七年はわずか二万二千リットルしか輸入しておりません。さらに、低脂肪チョコレートクラムは、アクセス数量二千百二十三トンに対して、九七年の輸入実績は実に〇・四トンしかない。下のEUを見ていただいても同じようなことが言えるわけですけれども、農水省、アクセス数量に輸入実績の方がかなり下回っているのですけれども、どうしてこんなことが起きるのですか。
  211. 堤英隆

    ○堤政府委員 今おっしゃいましたのは、UR合意におきまして、ミニマムアクセスまたはカレントアクセス枠につきましてその国が設定するわけでございますけれども、その設定された数量の中でどれだけ輸入するかということにつきましては、民間貿易でございますので、それぞれの国内需給事情それから品質の問題、そういうことの中で民間において決定されるべきことだというふうに思っております。  今おっしゃられましたことは、多分、それぞれの枠を設定してその枠を残しているということは、それぞれの品目が国内的な品質の問題等の中で一定の国際競争力を持っていること等が影響しているというふうに考えております。
  212. 中林よし子

    ○中林委員 民間ベースでやっているから、国際競争力の中で需要がなければ入れないのだ、こういう説明だったと思います。  日本政府の統一見解では米を国家貿易品目としているから、ミニマムアクセス機会を設定すれば、通常の場合には当該数量の輸入を行うべきものとしているわけです。しかし、この統一見解も私はおかしいと思います。日本国民が食べたがらない長粒種、こういう外米を無理やり輸入するというのがミニマムアクセス機会の設定の趣旨ではないと思います。もう既に在庫は、山ほど輸入しておりますので、利用価値もない、そういうものは輸入できないと政府が態度表明すれば、民間と同じように全量を入れなくても済むのじゃないですか。
  213. 堤英隆

    ○堤政府委員 WTO協定上、ミニマムアクセスというのは受け入れているわけでございますが、その場合に、御指摘のように、民間貿易で対応するか、それから国家貿易によるかということの選択肢はあると思います。  この問題を考えましたときに、まず一つ考えなければならないことは、民間貿易でありますと、要するに、第一次枠に相当する税率は、そのミニマムアクセス全量が入るような極めて低い税率でなければならないということでございます。具体的にも、関心国、関係国と協議の上、第一次税率を定めてまいりますので、ほかの税率を見ていただければおわかりのように極めて低い数字でございます。  そのことを前提に申し上げれば、今の日本の米の内外価格差の状況からすれば、ミニマムアクセスを民貿で張りました場合には、非常に低い第一次税率のもとで、全量が恐らく、例えば主食用というような形の中で、国産米と極めて競合する形で入ってくる、こういうふうに認識をいたしております。  他方、国家貿易ということになりますと、今御指摘のように、ミニマムアクセスについて輸入義務ということはございますけれども、申し上げたい点は、国貿を通しますので、先ほどから申し上げておりますように、主食とできるだけ競合しない業務用あるいは加工用等の販売ということに極力充てた形で、国産米とのそれだけの競合を避けた形で運用ができるということが一つ。  それからもう一点は、マークアップ二百九十二円の範囲の中でとれますので、国産米価格ミニマムアクセス米価格との整合性をとりながら、これもまた国内産米の需給影響を与えないという形の価格設定ができる。  両面からいきまして、国内の稲作農家に対する影響国内産の需給に対する影響ということにつきましては、国家貿易で対応することの方がはるかにベターであるというふうに思っております。
  214. 中林よし子

    ○中林委員 私は、日本と同じ国家貿易で、米について特例措置を受けている韓国の事例を調べてみました。  これはアメリカの農務省の資料なのですが、大臣だけ見ていただいてよろしいでしょうか。  赤い線を引いている上がコリア・サウスとなっておりますので、韓国です。そこを見ていただくと、韓国ミニマムアクセス機会は、九五年の初年度は一%の五万トン、二〇〇〇年には二%の十万トン、そして最終年度の二〇〇四年に四%の二十万トン、こうなっているわけです。それに対して実際の輸入量は、そこにありますように九五年が一万三千トン、九六年が十一万トン、九七年が三万トン、九八年が六万トン、こうなっているわけですね。  日本政府のように、国家貿易だから国内がどうあろうとミニマムアクセス機会イコール輸入量、こういうことにはなっていないのです。これで、韓国WTO協定違反だとして、どこかの国から提訴されていることがありますか。これは私は重大な問題だと思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  215. 堤英隆

    ○堤政府委員 今、見させていただきましたので、まだよくわかりませんが、私が持っている資料によりますと、韓国の場合には、日本と同じように韓国について米のミニマムアクセスを約束しているわけですが、国貿という形になっております。いずれも、一九九五年、一九九六年、一九九七年ということで、約束数量にちょうど見合った量を輸入しているという実績の表を私は持っております。
  216. 中林よし子

    ○中林委員 そうすると、これはアメリカの農務省の資料なのですけれども、これは間違いだとおっしゃるわけですか。
  217. 堤英隆

    ○堤政府委員 間違いと申し上げているわけではございませんで、その事情、その中身をよく調べてみないとわからないと思います。
  218. 中林よし子

    ○中林委員 今、私がお見せしました。だから、そういう御答弁をされるのも無理からぬところもあるかもわかりませんけれども、少なくとも、これはアメリカの農務省の資料です。その上にジャパンというのがありますから、日本の場合は数字が一致しております。だから、これは非常に信憑性のある数字だということを申し添えておきたいと思いますので、韓国の例はどうなのかということをこの委員会に報告していただけますか。
  219. 堤英隆

    ○堤政府委員 調べまして、御報告させていただきます。
  220. 中林よし子

    ○中林委員 韓国も国家貿易の特例措置がとられているわけです。一〇〇%輸入しなければならないということを日本政府はずっと義務輸入だ、こういうふうに言ってきたわけですけれども、これはWTO協定のどこに書かれているのですか。
  221. 堤英隆

    ○堤政府委員 外務省の方から正式なお答えがあると思いますが、私が知っている限りでは、協定上の根拠というよりは、米のミニマムアクセス日本に入れます際の平成六年の五月二十七日の衆議院予算委員会におきます政府統一見解におきまして、三つほどのことが言われております。  一つは、法的義務としては、米の消費量の一定割合の数量については輸入機会を提供する。ただし、特別な場合を除きまして、米は国家貿易品目として国が輸入を行う立場にありますことから、ミニマムアクセス機会を設定すれば、通常の場合には、当該数量の輸入を行うべきもの、こういうふうな形での政府統一見解があって、それに従って対応しているということでございます。
  222. 中林よし子

    ○中林委員 外務省も同じ答弁でしょうから、よろしいです。  要するに、WTO協定には規定はありませんね。今そうおっしゃったわけです。政府の統一見解だと。要するに、また日本政府の勝手な解釈でしょう。譲許表の問題しかり。ミニマムアクセス米、義務輸入だ、これまで農家にさんざんそう言って説明してきたわけでしょう。今回関税化に踏み切れば、輸入する量が、ミニマムアクセスの量が、義務量〇・八%だったのが〇・四%になるのだから減るのだ、こんな根拠は崩れるではないですか。  韓国のように、日本立場をはっきりさせて、国内需給影響を及ぼしてきたわけですから、ちゃんとそれをはねのけることはできる。だから、関税化なんかに踏み切らないでもミニマムアクセス米は幾らでも削減できるということが言えるのではないですか。大臣、いかがですか。
  223. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、先ほどいただいた表ですけれども、九五年のところはよくわかりません。日本の数字もよくわかりません。しかし、九六年、九七年、九八年、九九年と、日本韓国も、日本の場合には四から八、六年間、韓国の場合には一から四、十年間の数字にほぼ合っている、私はこの表を見て今そういう理解をしているところであります。  なお、国家貿易であるがゆえに、米そのものが世界じゅうから消えてしまったという場合を除いては枠を提供し、そして輸入したいという米があれば国が輸入をするというのは、これは外務省が答えておりませんので正式なことは申し上げられませんが、前の協定、ガットの条文にたしか出ていたというふうに私は記憶をしております。それに基づいた政府統一見解だというふうに私は理解をしております。
  224. 穂積良行

    穂積委員長 ちょっと待って。  大島経済局長、きちんと答弁してください。
  225. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 突然のお尋ねでございまして、ちょっと十分な資料がございませんけれども、まず農業協定に附属いたします附属書五、これはいわゆる農業協定の四条2に関する特例措置についての文書でございますけれども、第A部というのがございまして、その1の(e)のところに次のように規定がございます。「当該指定産品に関する最小限度のアクセス機会が、当該加盟国の譲許表第一部第一B節において明記されているとおり、実施期間の最初の年の開始時から基準期間における当該指定産品の国内消費量の四パーセントに相当しており、かつ、その後は実施期間の残余の期間において、毎年、基準期間における対応する国内消費量の〇・八パーセントずつ増大されていること。」こういう形で、最小限度のアクセス機会ということの必要性を規定しているわけでございます。それを踏まえまして、国家貿易だということを前提に先ほどの政府統一見解ができているわけでございます。
  226. 中林よし子

    ○中林委員 それを踏まえて勝手に決めただけだということでしょう。  つまり、WTO協定では、最低量の輸入をする機会を与える、ミニマムアクセスの機会を与えるということで、それぞれが国際的に約束しているわけですよ。だから、その上限以内だったらどうぞということで、一応出してきている。  日本の場合は、国家貿易だから一応無税にしてマークアップという関税に相当するものをとっている、こういうことになっているわけですけれども、それぞれの国が輸入してはならないというのではなくて、日本ではこれまで米は輸入していなかった。輸入していなくて、要らないもの、でも輸入機会は与えますということで出したのがミニマムアクセスです。  国際的には輸入の機会を与えたにすぎないというだけであって、このときにも義務的輸入だということで勝手な解釈を日本政府がやり、今回関税化に踏み切ればその義務的輸入の量が減るのだなどということをおっしゃっているならば、これは二重三重の意味で私は農民をだますことになりはしないかというふうに思うわけですけれども、そのことを強く指摘しておきます。  WTO協定を結ぶときにも農民は反対をいたしました。農業はやはり国の非常に重要な位置を持つもので、食料品を生産するということは自由貿易にはなじまない。ましてや米は主食です。しかも、多面的な機能を持っている、こういうことをうたっているわけです。それを完全に自由化する、関税化に踏み切っていくなどということは、牛肉しかり、これまでの関税化した農産物しかりです。その同じ道を歩んでいくことにほかならないと思いますので、関税化の撤回を要求して、私の質問を終わります。
  227. 穂積良行

    穂積委員長 ちょっと待ってください。  ミニマムアクセス米の輸入が義務か義務でないかということについて、もう一回外務省経済局長答弁してください。
  228. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 先ほど申し上げた点をもう一回御指示に従いまして繰り返させていただきます。  農業協定附属書五、「第四条2の規定に関する特例措置」という見出しがついておりますけれども、その第A部1の(e)に、簡潔に申せば、最小限度のアクセス機会を与えるということを具体的な数字とともに規定しているということでございます。それと、我が国におきましては、米の輸入は、国家貿易品目であるということから、ガットの規定にある方式でございますけれども、その方式に従って国が輸入する。そういうことを踏まえまして、先ほど別途御説明のございました政府統一見解があって、我が国としては、ミニマムアクセス機会を設けるということであれば、通常の場合は当然その数量の輸入を行うべきものである、こういうふうに考えているわけでございます。
  229. 中林よし子

    ○中林委員 終わりますと言いましたけれども、答弁に出られましたので。  今おっしゃるとおり、機会を与えただけです。それに基づいて政府は統一見解を出したにすぎない。日本政府の勝手な解釈だ。そのことが明らかになりました。  以上で終わります。
  230. 穂積良行

    穂積委員長 次に、前島秀行君。
  231. 前島秀行

    ○前島委員 時間もたってきましたので、大臣関税化政府が受け入れたというのは大きな方針転換であることは間違いないな、同時にまた、関税化を受け入れたということを聞いたときに、私は正直言って、五年前、六年前は一体何だったのだろうかなというのを率直に感じます。そしてまた、きょうのいろいろな議論を聞いていましても、間違いなく、最低言えることは、日本は、米にとって、稲作にとって見えない危険なかけに走ったなということだけは言い得るかなというふうに私は思いますね。  したがって、関税化に踏み切ったということ、これを事実として受けとめるとすると、政府は相当腹をくくってこれから対処しないととんでもないことになりはせぬかな、このことだけは間違いないだろうと思いますね。  五年前、たしか六年前、あのガットで大騒ぎをしているときに、私は覚えているのですが、今の外務大臣が農水委員長でしたよ、農水委員長の音頭で各党そろって、私たち、ジュネーブのガット本部へ行って日本の主張をしてきました。覚えています。  そのとき私たちは、みんなでお互いに高村外務大臣を中心にどういうことを言ったかというと、日本の米、これは日本の主食であり基幹産業なんだ、このことの影響というのははかり知れないものがあるので、これからも基幹産業としての米を継続的に日本はやっていかなければならぬ、したがって、この自由化につながる関税化は我々は受け入れられないんだということを主張したことを覚えています。  同時にまた、私たちは、主要食物、特に主食というのは貿易の取り扱いについてガット上措置が認められてしかるべきではないか、特に主食、日本の場合は米に当たるので、ガット上その措置を認める、一定の貿易の調整措置をガット上認めるべきではないかということをお互いに要求をしてきたということを覚えています。高村外務大臣が団長でありました。自民党の理事皆さんも加わっているわけであります。  そういうことを思い出しまして、今度関税化を受け入れたということは、率直に私の実感として、余りにも簡単過ぎなかったのかなという思いがすることは間違いありません。  そこで、私は、これから日本政府も相当腰を据えてかからないと大変なことになる、受け入れた関税化というものは一体どういうものかということをお互いに認識してかからないと大変なことになるだろうと思いますね。  私たちは、この代表団もそうであったけれども、関税化というのはやはり自由化を前提とした政策ではないだろうか、自由化へ段階的に進んでいく、あるいは激変緩和の措置関税化ではないだろうか、そういうことを心配して、したがって米の自由化は反対なんだ、関税化は受け入れられないんだということを言ってきたのですね。そういう認識で私たちは関税化というものを受けとめてきたと思っています。  あるいは、関税化の国境措置との関係でありますけれども、いわゆる基礎的食料については国境調整措置がガット上認められるべきなんだということを言ってきた、だから関税化に反対なんだという主張だったと思いますね、当時は。自民党さんも含めて、高村外務大臣も含めてそうだったと思います。この関税化というものはそういうものだという基本的な認識について、大臣、どうでしょうか。
  232. 中川昭一

    中川国務大臣 当時、私も前島先生と一緒に仕事をさせていただいておりました。当時はとにかく、米だけではありませんでしたけれども、やはり中心的な米について関税化をするということは、これは安い外国産米がどんどん入ってくる、あるいは高い、関税なのか関税相当量なのかわかりませんが、そういうものを張ったとしても、いわゆる関税化をしていけばこれが入ってくるということで、我々最後まで頑張ったわけであります。  また、日本は米というものが主食なんだという議論も随分外国にもいたしましたが、主食という概念、どうも余り外国理解されなかったようなことも今思い出すわけでございます。  そういう六年前よりもっと前の数年間の議論というものを今先生お話を聞きながらいろいろ思い出しておるわけでございますが、いずれにいたしましても、国論がかなり大きく割れていた、あるいはまた我が国と同じ立場をとる国が少なかったということ等々もございまして、最終的には我が国を含めたごく少数の国が、関税化ではないけれども上乗せ措置のついたミニマムアクセス措置というものを選択せざるを得なかった。正直言って、私自身も大変残念だったことを今記憶しております。これはあくまでも当時の、先生との思い出話みたいな答弁で恐縮でございますが、そんな感じを持っております。
  233. 前島秀行

    ○前島委員 やはりそういうふうにお互いに、僕は真剣に当時農水委員会でも議論をして、与野党一致して委員長を団長にして行って、日本立場を訴えてこよう、私は真剣だったと思いますね。五年前、六年前ですよ。それが百八十度方針が変わったのですから、私は、相当の覚悟は必要だろうな、ここだけは指摘しておきたいと思います。  同時に、関税化というのは食料が世界的に、地球的にあり余っている時代のルールではないのかとか、あるいは輸出国にとって有利なルールではないのかということも私たちは指摘してきました。このことも基本的には変わっていないと私は思うのです。  そういう中で、今度関税化を導入したということは、一体諸外国にどういう受けとめ方をされるだろうかということは、これからの交渉に当たっても、またこれからの日本国内にあって対策をとる上でも重要だろうな、こういうふうに私は思っています。  要するに、私たちは、基礎的食料については国境調整措置がガット上認められるんだ、こういうふうに当時は言ったし、その後も歴代の大臣というのは、主たる農産物を単純に自由経済の中でゆだねて解決してはなりませんよということを、これは大河原さんですよね、それから、主食だけは自由化してはいけないと思う、これは大体各大臣は言ってきましたね。正直言って、十分な議論もなくして、あるいは後で言いますが、見通しもなくして関税化を受け入れたということは、私たちが、WTO協定は次の機会では基本的に見直そうではないか、だから当面、前提としての、暫定措置としての、あるいは特別措置としてのミニマムアクセスを受け入れよう、こういう形であの当時決断しただろうと思いますね。  そういう前提経過からくると、今度関税化を受け入れたということは、WTO協定そのものの見直しの旗を今回おろした、こういうふうに思われてもしようがないだろうし、そういうふうに解釈せざるを得ないと思いますけれども、大臣、どうですか。
  234. 中川昭一

    中川国務大臣 先生が何回も御指摘になっておりますように、先生のお言葉をかりれば、見えざる危険なかけの状況に入った。私は危険なかけとは申し上げませんが、交渉事でございますから、どういうことになるかということは、それはやってみなければわかりませんし、また先生指摘のように、これは政府だけではなくて、国会を挙げて、あるいは国民的な合意のもとで腹を据えて交渉に臨んでいかなければいけないし、今回はそれができる状況にあると私は信じておるわけでございます。  そういう状況の中で、先生指摘のように、WTO協定、六年たったら時代が変わる、そしてその六年間に国内農業生産も体力をつくっておこうということで、対策なんかを先生と一緒につくらせていただいたわけでございますけれども、やはり協定の中身を変えていく必要があるということは、現時点においても変わらないというふうに私は思っております。  先生指摘のように、輸出国と輸入国とのアンバランスの是正、世界における食料と人口とのバランスの問題、あるいは最貧国の多くの国々の扱いをどうしたらいいのかを含めた国際貢献の問題、そして国内的ないろいろな我が国農業を発展させるための問題等々、これは協定のルールを変えていく必要があるというふうに考えております。  ただ、だからといって、条文そのものを最初から見直すとか、ましてWTO協定そのものをなくしてゼロから構築するとか、あるいはまた米だけWTOから外に外してしまえみたいな議論は最初からとるべき考えではないというふうに理解をしております。
  235. 前島秀行

    ○前島委員 この関税化を受け入れたこと、WTOの基本的なルールを見直すのだということを主張してきたんですよ。それは、国境措置ということをガット上認めさせるのだというところに大きな力点があったし、私はそのことを主張してきたのだろうと思いますね。だから、よく言われるように、ガットの農業交渉の中の市場アクセスの問題だとか、国内支持だとか、国際競争だとか等々、四つの項目の中で私たちが最大限重視してきたのは、いわゆる基礎的食料、とりわけ主食というのは国境調整措置をガット上認めるのだという市場アクセスのところに大きな力点があって、そのことがあるから関税化は反対なんだということを言ってきた、こういうふうに私たちは思いますね。  そこで、大臣に聞きたいのですが、関税化というのは国境調整措置なんですか。私は、今までの主張から見るとそこはそう言い切れない。特に関税というのは、先ほどの議論ではないですけれども、ゼロに向かって限りなく近づくものではないだろうかな、そういうすべての障壁を除くための急激なことの問題点ということがあることは事実だから、その激変緩和措置として関税化というものがある、すなわち、自由化というものを前提とした議論だろうな、こういうふうに私は思っています。だとすると、この関税化ということは、我々が基本的に主張してきたこの国境調整措置とは言い切れない、こういうふうに認識すべきだろう、こう思っていますけれども、その点どうですか。
  236. 中川昭一

    中川国務大臣 ウルグアイ・ラウンド農業交渉において、いわゆる例外なき関税化という議論がされましたが、これは輸入数量制限を初めとするいろいろな措置を、関税以外の国境措置について品目の例外なく関税措置に置きかえるという意味だというふうに理解をしております。  また、平時においては、ウルグアイ・ラウンド協定上もそうでありますけれども、六年間で一五%ずつ下げなさいという原則がございますが、もちろん一般原則、特にWTOというのは改革の継続というものが次期協定においても大前提になるわけでありますから、その交渉の結果が、関税が上がるか下がるかということは、これはやってみなければわかりませんけれども、今回御審議いただいておりますこの食料法律におきましても、特別セーフガードという措置もとっておるところでございまして、万が一のときには輸入国においても輸入を制限することができるという緊急措置も、ごく緊急的な部分であるわけでございますので、そういう面も含めまして、これから御審議をいただき、また、次期交渉に向かって方針を決めていきたいというふうに考えております。
  237. 前島秀行

    ○前島委員 しつこいようですけれども、いわゆる今度の一連の受け入れに当たって、これからはガットの中で、農業の多面的機能というものを重視して訴えていくのだとか、食料安保の重要性というものを訴えていくのだ、こういうことを言うのですね。私は、この理論というのは、基本的に関税化と相矛盾するのじゃないかな、突き詰めていくと。そういうふうに感じてならぬですね。だから私たちは、五年前、六年前、この主要食料については国境措置というものを認めるべきだ、ガット上認めるべきだ、こう言ってきたのです。  私は、基本的にそこのところが矛盾するんじゃないかな、こう思っています。しかし、これからは次の二〇〇〇年のガット交渉の大きな我々の主張としてその多面的機能ということを重視していくんだ、あるいは食料安保というものを強めて訴えるんだ、こう言っているのですが、それなら具体的に、この論理に基づくルール、貿易ルール、国境措置というのは何を想定しているのですか。
  238. 中川昭一

    中川国務大臣 まさしくその辺をこれから半年ぐらいかけて、国民的といいましょうか、国会の場を初めとして、あらゆるところで御議論をいただく戦略を練る上で一つの御提言だと私は今直観いたしました。つまり、多面的機能とかいろいろな非貿易的関心事項、これは、要するに国境措置と相入れないというだけでその仕分けができるのか、できないのか。あるいは逆に、そういう非貿易的関心事項、例えば、その多面的機能は国内措置として認められる政策なのかどうかという、いわゆる緑だ黄色だという議論がありますけれども、そういうことも含めて、日本としてはどういう立場で、これは国境措置でひとつ主張していこうとか、あるいは、これは国内措置としての緑の政策として主張していこうとかいうようなことをまさに来年の交渉に向かって御議論をいただき、そして国民的合意のもとで交渉に臨んでいく、今一つの大事なヒントを先生からいただいたような気がいたします。
  239. 前島秀行

    ○前島委員 私は、大臣、こう思っているのですよ。いわゆる五年前、六年前に主張してきた主要食料に関してだけはせめて国境調整措置をガット上認めるべきだということは完全に放棄したと私は思っています。それを関税に切りかえることを受け入れて、その関税率を維持することにこれから頑張ろうというのが一つだと思いますね。  だから、農業交渉の中の四つの大きなジャンルがありましたね、市場アクセスと国内支持と輸出競争と衛生検疫等。この中の市場アクセスのことについては、もうあとは率だけでもって頑張るということに踏み切ったんだろうなと私はこう思っています。残っているのは、今大臣が言われました国内支持政策、もしくは相手国との輸出競争の中でもって有利な条件交渉事でやるしかないな、こういうところに踏み込んだ、こう私は理解をするわけです。間違いありませんか。
  240. 中川昭一

    中川国務大臣 先生はそういう御議論でずっとこられておりますが、実は我が国としては、国境措置というのは、逆にこちらから今度は輸出国に攻め込むといいましょうか、こちらから攻めていく必要がある部分もある。先生もさっきおっしゃいましたけれども、輸出補助金の問題とか、あるいは輸出規制の問題、輸出国側のアドバンテージ、こっちにとってのディスアドバンテージというアンバランスを解消していくために、国境措置に関していえば、あとは関税の引き下げ率だけしかないじゃないかというと、決して私はそうではない。例えば、ミニマムアクセスなるものの扱いをどういうふうにするかということも、まだまだこれから国内的に議論をしていかなければいけないと思います。  それから、何よりも、輸出国のアドバンテージに対して、イコールフッティングといいましょうか、少なくとも平等な立場に持っていけるようにするという意味で、私は、ただ輸出国から言われっ放しに対して、もう前回のようにぐっとただひたすら耐え忍んでということではなくて、輸出国に対して積極的にこっちから仲間の国々とともに攻め込んでいく議論というものもぜひやっていかなければならないというふうに考えております。
  241. 前島秀行

    ○前島委員 いわゆる四つの項目の中の市場アクセスの項については、私は、関税化を受け入れたことで、あとは率の勝負ということだと思いますね。その率の勝負というのは、先ほどの消去法の議論じゃありませんけれども、二〇〇〇年まで我が党が提出したものが認められたとしても、それから先はやってみなければわからない世界、こういうことになりますね、率の世界だから。だから、見えない危険なかけだというふうに私は言っているんです。  残されたのは、緑だ青だと言われる国内の支持政策のところ、どうするかというところに、私は農業基本法との兼ね合いの中でもって踏み込んだな、こういうふうに言っているわけです。  したがって、市場アクセスの方の側から見ると、唯一これから残っている可能性としては高関税が維持できるかどうかという一点しかないだろう、私はこういうふうに思いますね。だから、農業団体も高関税が維持できるだろうなという前提で物事を議論しているんじゃないでしょうか、私はそう思います。  そこで、高関税は維持できるか、こういうことなんですね。その中の最大の一つの問題として、先ほどのルールの議論とは別にして、これからの二〇〇〇年の交渉の見通しという形の中で、まずアメリカの出方というものが最大の一つの問題点だろうな、私はこういうふうに思いますね。  これは農畜産業振興事業団のデンバーの駐在員事務所のレポートです。これを読んでみましたら、結論として、アメリカはガット、WTOで約束したことは九六年農業改革で全部やった、ある意味では約束以上の改革をしている、このことは次期交渉のアメリカのスタンスを大体示しているというのが一つの見方。要するに、厳しく来るぞということ。  それから最近の世界の穀物需給状況を分析する中で、九六年農業改革のとき想定したものよりか世界の農産物需給が非常に暗い影をアメリカにとって投げかけているんだ、アジアの経済状況という変化によって。要するに、需要が減ったということ。そういう中で、当然アメリカは輸出拡大政策をとってくることは間違いないというふうに駐在員の皆さんが見ていて、そのことがWTO交渉の二〇〇〇年の中に反映されることは間違いないという指摘をしているわけですね。  この指摘と同時に、私たちが思い出すのは、このガット交渉の中のアメリカの基本的要求は一体何だったのだろうかな、あの関税問題のときに。アメリカは、関税相当量、十年間で七五%削減すべきである、十一年目はすべての関税を五〇%以下にすべきである、ミニマムアクセスは十年間で七五%にふやすべきである、こういうアメリカ側の基本的要求があって、いろいろな交渉でああいうふうに一五%になってきた、こういう経過ですね。  私は、今のアメリカの置かれている状況だとか、あるいはみずからWTO協定に整合性を持って改革をしてきたということから見ると、このガット交渉の中のアメリカの主張というのが復活するのじゃないだろうかな、そんなに私は甘いものではないだろうなということを思わざるを得ないのですけれども、この辺の認識は、大臣、どうですか。
  242. 中川昭一

    中川国務大臣 アメリカはとにかく農産物を輸出したくてしようがない、これは昨年のAPECの会議でももろに私とバシェフスキーさんとでぶつかったところであります。そして、アメリカが少なくとも農業分野に関しては九六年農業法でいろいろと新しい制度を導入してきた、それで全部現行の協定をクリアしたかどうか、私は詳しいことはわかりませんけれども、今回は包括交渉ということが大前提WTO交渉になるということを我々は主張しておるところであります。  そういう中でアメリカは、農業については、やれ関税を下げろ、やれ門戸を開けということを言っておりますし、林産物、水産物についても同様のことを言っておるわけでありますが、一方ではスーパー三〇一条というような、どう考えましても、マルチの場できちっと処理すべきものをアメリカが勝手に制裁を加えるというようなことを堂々とやっておる。工業品についても、ある日突然三〇一を出すの出さないのとやっておる。  こういう状況を考えると、私はやはり以前から先生ともよく議論をいたしましたが、日本の全体の貿易のルールづくりの中で、少なくとも農業や水産や林業だけがその犠牲になるようなことだけはしてはならないという気持ちで今までもきましたし、今回もまさに大きな議論のポイントになると思いますけれども、一部の輸出国だけの理論でもってこの農業交渉分野が決定されるということに関しては、我々としては断固闘い抜いていかなければいけない。そういう意味で、先生指摘のように、腹をくくって、国民的な合意のもとで次期交渉に臨んでいきたいというふうに考えております。
  243. 前島秀行

    ○前島委員 これからの交渉事の結果として、数字がどうなるかは横に置いておきまして、長官にちょっと聞きたいのですが、MA米の入ってきた価格動向、それからその間の、ここのところ数年の国産米価格動向等はどういう傾向にあるのかということと、それから今回の二次関税の計算の基礎になった基準年というのがありますね、一九八六年から八八年。一九八六年、ちょうどガット交渉の開始された年です。それから三年間を基準年とした、こういうことなんですね。  それで、二〇〇〇年から開始されるんですが、率がどうなったかは別として、いわゆる計算の方法として基準年というのはどうなるんでしょうか。この基準年から見ると、一九八六年の基準年であったわけだから、当然この基準年というのは二〇〇〇年以降の交渉の結果としても変わると予測していいでしょうか。その辺のところをちょっと。
  244. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 まず、基準年についてお答え申し上げますが、ウルグアイ・ラウンド農業合意のときには、関税以外の国境措置をすべて関税化するという考え方で、その場合に、関税率を設定するに当たりまして、お話しございましたように、基準年を八六年から八八年と設定いたしまして、その内外価格差をベースとして設定したものでございます。  次期交渉におきまして、どういう形で、あるいはどういう方式で関税交渉をやるか、これはまだこれからのことでございまして、交渉それ自体の中で議論されて決められるということになろうかと思います。ただいまの時点で、予断の限りではないと思います。
  245. 堤英隆

    ○堤政府委員 御指摘の数字について申し上げますと、ミニマムアクセス米の最近の価格の動向を見ますと、これは国別で大分差があるんですけれども、平成七年度は大体五十九円から八十六円の間、八年度は六十四円から八十五円、それから九年度が六十二円から九十八円の間でございます。  それから、国内価格でございますが、これは現在、従来と違いまして、調査のとり方を変えておりまして、産地、品種、銘柄ごとということでございまして、それを仮に自主流通米価格センターの数字で申し上げますと、新潟のコシで申し上げると、七年産、キロ三百八十八円、八年産三百九十七円、九年産三百四十四円ということでございます。北海道の「きらら」を御説明申し上げますと、七年産三百四円、八年産二百九十一円、九年産二百五十三円、それぞれキログラム当たりでございます。
  246. 前島秀行

    ○前島委員 私がなぜ聞いたかとなると、関税化の削減率が全然変わらないにしても、二〇〇〇年以降の関税計算を、基準年をどこに持つかによって、それとその間のMA米の輸入価格国内米との価格変化によってこの二次関税というのは変わってくるということなんですね。私は基準年というのを、だからガットの交渉から見れば、またガットの交渉のときの一九八六年に戻ることはあり得ない。その理屈と同じにいうと、二〇〇〇年以降を基準年とするだろうな、こういうふうに想定するのが私は常識だろうと思いますね。  今の長官の、動向としてMA米というのは価格が上昇してきている、その間、国産米というのは下がってきている、その差に基づいて、その差でもって計算されるという理屈になってきますと、今回はじいたこの四百二円、削減率を入れて三百五十一円十七銭とか、あるいはキロ当たり三百四十一円というのは、この自然な流れから見たって半分ぐらい、二百円台に下がるだろう、私はこういうふうに思っています、単純の計算ですけれども。今までの計算に基づいてやるとそうなるんですよ。その上に、交渉事で削減率がまた変化をしたら、私はとんでもないことになりはせぬかというふうに言うのです。  だから、アクセスのところでもって関税率の勝負にかけるんだというそのことを農民が信じて、絶対に高関税率なんだからMA米以外は入ってこないよということを信じていたらとんでもないことになりはしませんかというのが私の指摘なんです。  だから、関税率、削減率が変わらぬでも、自然の流れからいけば、二次関税というのは当然変わってくる、関税率が落ちてくるということなんであります。そのことをちゃんと政府なり農林水産大臣も受けとめて、農民に、国民にちゃんと説明していかないと、私は、二〇〇〇年以降とんでもないことになりはせぬかということを指摘したいのです。だから、そういう面で私は、最初に見えないかけに走っちゃったんじゃないか、踏み込んだからには後戻りできないでしょうから、よほど腰を据えたことをやらないと、とんでもないことになるよと。  私たちが六年前、七年前に主張したこの市場アクセスの議論はもう放棄しちゃったんですから、あとあるのは国内支持政策で、緑の政策として所得補償等々をどうやっていくか、あるいはデカップリングをどうやっていくかという世界しか基本的に残っていないのかなというふうに私は思うわけであります。  そのことをちゃんと国民説明し、農民にも消費者にも説明しないと、とんでもないことになる。その上で、これからの日本の基幹産業であるこの農業の米をどう維持していくか、どう守っていくかということにならないと、私は、二〇〇〇年に向かって国内統一した、バックにした交渉なんということはできっこない、こういうふうに思うのです。  その辺のところの認識とこれからの決意とを含めて最後大臣に聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  247. 中川昭一

    中川国務大臣 先生のおっしゃることは、率直によく理解できます。生産者皆さんの不安ということについても、できるだけそういうことのないように、これから国民的な来年に向かっての共通認識を構築していかなければならないと思っております。ですから、よほど腹を据えてということも、本当にそのとおりだと思います。  ただ、幾つか前回と違う点があると思いますのは、これからの努力次第でありますけれども、国民的合意の構築ということができるかできないかということ。それから、前回は、もう先生も御承知のとおり、結局米の関税化を免れた先進国というのは日本だけでございまして、つまり、世界じゅうで日本だけが特別措置最後までこだわったということであります。  今回は、基準年をいつにとるか、あるいはまた、どういう、関税額か率かわかりませんけれども、にするかについては、今後の議論、これからルールをつくっていくわけでありますけれども、実は、三百五十一円十七銭が高い、安いという議論があります。これは客観的な基準でありますけれども、実はこの数字自体は、決して世界的に見て飛び抜けて高い数字ではない。逆に言いますと、アメリカであっても、あるいはスイスやヨーロッパの国々でも、農産物について五〇〇%、七〇〇%という関税を張っておる国は現にいっぱい、品目でいえば結構あるわけでありまして、そういう意味で申し上げるならば、今回は、日本だけがひとりぼっちではないという意味で、若干前回とは状況が違うかなというふうに思っております。そういう意味で、仲間を大勢つくって、日本立場をより強固なものにしていくということも大事なことだと思います。  いずれにしても、先生のお言葉をかりれば、見えない危険な、かけという言葉は私は使いたくありませんが、本当に交渉の世界にこれから入っていくだけに、腹を据えて、また先生にも御指導いただきながら頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  248. 前島秀行

    ○前島委員 これから先の議論は、またしたいと思います。  以上で終わります。
  249. 穂積良行

    穂積委員長 次回は、明十日水曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十五分散会