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1999-04-21 第145回国会 衆議院 日米防衛協力のための指針に関する特別委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年四月二十一日(水曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 山崎  拓君    理事 赤城 徳彦君 理事 大野 功統君    理事 玉沢徳一郎君 理事 中谷  元君    理事 中山 利生君 理事 畑 英次郎君    理事 前原 誠司君 理事 遠藤 乙彦君    理事 西村 眞悟君       安倍 晋三君    相沢 英之君       浅野 勝人君    大石 秀政君       河井 克行君    瓦   力君       小島 敏男君    桜田 義孝君       菅  義偉君    田村 憲久君       西川 公也君    萩野 浩基君       萩山 教嚴君    平林 鴻三君       福田 康夫君    細田 博之君       宮腰 光寛君    宮島 大典君       吉川 貴盛君    米田 建三君       伊藤 英成君    上原 康助君       岡田 克也君    桑原  豊君       玄葉光一郎君    土肥 隆一君       横路 孝弘君    漆原 良夫君       佐藤 茂樹君    山中あき子君       若松 謙維君    東  祥三君       井上 喜一君    達増 拓也君       児玉 健次君    佐々木陸海君       伊藤  茂君    辻元 清美君  出席公述人         初代内閣安全保         障室長     佐々 淳行君         松阪大学政治経         済学部教授   浜谷 英博君         中央大学総合政         策学部大学院客         員教授     森本  敏君         元陸上自衛隊中         部方面総監・陸         将       松島 悠佐君         日本電信電話株         式会社特別参与 佐久間 一君         大阪大学法学部         教授      坂元 一哉君         専修大学法学部         教授      隅野 隆徳君         東京国際大学国         際関係学部教授 前田 哲男君  委員外出席者         衆議院調査局日         米防衛協力のた         めの指針に関す         る特別調査室長 田中 達郎君     ————————————— 委員の異動 四月二十一日  辞任         補欠選任   大島 理森君     萩野 浩基君   阪上 善秀君     菅  義偉君   西川 公也君     吉川 貴盛君   赤松 正雄君     漆原 良夫君   木島日出夫君     児玉 健次君 同日  辞任         補欠選任   菅  義偉君     阪上 善秀君   萩野 浩基君     大島 理森君   吉川 貴盛君     西川 公也君   漆原 良夫君     赤松 正雄君   児玉 健次君     木島日出夫君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件(第百四十二回国会条約第二〇号)  周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案内閣提出、第百四十二回国会閣法第一〇九号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出、第百四十二回国会閣法第一一〇号)      ————◇—————
  2. 山崎拓

    山崎委員長 これより会議を開きます。  第百四十二回国会内閣提出日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の各案件について公聴会を行います。  この際、公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。公述人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  佐々公述人浜谷公述人森本公述人松島公述人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。  それでは、佐々公述人にお願いをいたします。
  3. 佐々淳行

    佐々公述人 おはようございます。佐々淳行でございます。  本日は、現在審議中のいわゆるガイドライン法ほか三法について、かつて防衛庁内閣安全保障室長として十二年間安全保障問題に政府委員として取り組んでまいりました者として所見を申し述べたいと存じます。  まず、私が防衛庁に移りましたころは、神学論争がほぼ終わって、総論から各論へ、条約論争から協定あるいは政令の問題、法律の問題から政令の問題、あるいは抽象論から具体論へ、こういう過渡期に私は防衛庁に出向いたしまして、そして昭和三十五年、一九六〇年六月二十三日に制定されました日米安保条約が、その多くの部分を協定あるいは政令にゆだねていながら、長い間抽象論で終始をしておった時代が確かにございました。  この時代におきましては、いわゆる米ソ冷戦構造が確立されており、核均衡のもと、日本は、特に日本周辺アメリカ軍の絶対的な制海権制空権のもとにございまして、今日日本国民が不安を感じておりますような周辺事態というものはまず起こらないであろうと、しかも冷戦が一九八九年のマルタ会談を機会に終わるなんということは夢にも思わず、今世紀中はこの状態が続くと思っておりました。そういう状況のもとでは、台湾海峡の波が高くなったり、あるいは三十八度線がおかしくなったり、そういう難民が大量に流出してくるとか、こういうことはあり得ない、こういう想定のもとに、実はこれは政治行政具体案、具体的な協定あるいはマニュアルガイドライン、こういうものをつくることを大変怠っておったと私は感じております。  特に、日米安保条約というのは御承知のように二つの重要な条文がございます。第五条、これが、日本攻撃をされた場合アメリカ日本と共同して日本を防衛するという、アメリカ日本防衛義務。しかしながら、憲法九条の関係がございますので、アメリカ攻撃をされても日本はこれに参加をすることはできないし、しない。そのかわり、今度は第六条でございますが、第六条で、米軍日本及び極東の平和と安全のために行動を起こした場合の施設及び区域提供後方支援、これが第六条の条約上の義務でございます。  第五条、すなわち日本攻撃されたときの問題につきましては、だんだん情勢が変わってまいりました段階で、昭和五十三年のたしか十一月だったと思いますが、いわゆる旧ガイドライン、これが日米間で結ばれまして、その第五条攻撃があった場合の日米共同対処ガイドライン共同訓練もこれで始まりました。一九八〇年からは、例えばリムパック、二年ごとに行われておりますリムパック参加をする。これも私、政府委員答弁をさせていただきましたが、違憲であるという御意見政党が当時はございましたけれども、訓練はいいんだということで、これは合憲ということで通った。この辺が大体第五条のお話なのでございます。  第六条というのは、日本周辺、特に、これは一九六〇年一月の十九日でございますけれども、岸・ハーター協定というのが結ばれているんですね。岸・ハーター交換公文というのがございまして、これによりまして、第六条、この事態については事前協議をしましょう、そして日米共同委員会をつくりましょう、同数の委員を出し合って、そして主として三つの大きな問題は、事前協議、プライアーコンサルテーションといたしましょう、こういうことが決まりました。だから、実はもう一九六〇年から今日問題になっておるその六条の後方支援の問題というのは法律が決まり交換公文があったのでございますけれども、これの具体的な制度化マニュアル化、これはずっとおくれておりました。  この三つのポイントというのは、第一が、兵力の師団単位の配備の変更、第二が、主要な装備の変更、三番目が、実は今周辺整備法でやっておりますところの在日米軍極東有事に際して直接戦闘行動を起こした場合の後方支援、これが事前協議マターとなっております。直接戦闘行動と書いてございます。  そして、大体極東の平和と安全というのは何だ。これは当然昭和三十五年の安保論議のときに国会論議し尽くされまして、統一見解が出、これは日本極東の平和と安全に寄与するという日米安保条約範囲内のことだよと、これが第六条だよと、したがってこの極東概念というのは、当時中華民国、それから韓国、フィリピン以北の海域、これが大体その範囲内に含まれると。地理的な概念だったんですね。  そして、その範囲をどうして決めるかというと、在日米軍軍事作戦能力なんです。行って帰ってこられる範囲。したがって、例えば横須賀を母港として中東に行ったのが事前協議を無視した違反である、岸・ハーター協定違反であるというのは誤りでありまして、直接戦闘行動でございます。これが今問題になっておる、こういうことでございまして、第六条は、その意味では、日本が絶対に米軍制海権制空権のもとで安全であるということ、そして潜在的脅威となっておったのがかつてのソ連であった、こういうところから、おのずからその五条中心になっておったわけですね。  それが一九九〇年代になりまして、湾岸戦争があり、さらにはソ連崩壊、これによって冷戦構造崩壊をいたしまして、現在コソボで行われているような低次元紛争であるとか宗教紛争であるとか民族紛争であるとか、あるいは様式を異にした軍事脅威、すなわちテロ、破壊活動、あるいは核の拡散運搬手段拡散とどんどんどんどん脅威の性格が変わってしまって、かつそれが大きな現実の問題になってきた。つまり、アメリカが絶対的な制空権制海権を失い、かつ政策変更があった。こういうところから、日本にとっての具体的な問題になってきた。  そういう意味合いにおきまして、私は長い間、政府委員をやっている間、考えておったのでありますけれども、抽象論神学論争をもういい加減にやめたらどうだ、こう長いこと思っておりました。それが今日ようやく具体的な政策論になってきた、ガイドライン法になってきた。これはまことに我が国安全保障政策前進のために喜ばしいことであると、まずこの委員会の御努力に対し敬意を表する次第であります。  そして、この法案そのものがどうしてこんなに厄介なことになっちゃったかといいますと、やはり戦後一つ一つ整理しなきゃいけなかった独立主権国家としての安全保障上の政策と、安保条約に基づく、第六条の後方支援あるいは施設区域提供義務と、昭和三十一年十二月十八日にようやく参加をいたしました国連の、第七章第四十一条及び四十二条、制裁ですね、四十一条制裁ということが基本になっているようでありますが、非軍事的な制裁、経済的な制裁のときに封鎖経済封鎖が行われる。この船舶の臨検の問題がここに入っている。こういう独立主権国家の話と、六条の話と、安保参加国としての義務とがごちゃまぜになって一つ法案に入っているところから難しさが出ておる。  周辺事態という概念は、かつて三十年間の安全保障論議の中には出てまいっておりません。これは、台湾の地位が変わったということ、アメリカ政策の微妙な変化あるいは中国の姿勢、これらから、こういうちょっとあいまいな言葉を選ぶという選択を政府が、自民党がなさったのはやむを得ないと私は理解をいたします。  いずれにせよ、何にもないよりは何かできた方がいいのでありまして、その意味で、私は、本案の速やかなる成立を希望するものでございます。  ごちゃまぜになっていると申しましたが、例えば九六年、橋本クリントン首脳会談日米安保条約の意義の再確認が行われました際に、四つの安全保障にかかわる具体的な指示政策論として橋本総理から行政の各部に下されました。  第一が邦人の保護、救出の問題、第二番目が難民対策、第三番目が重要防護対象、例えば原子力発電所、これの警備の問題。御承知のように、これは今ガードマンが特殊警棒を持って守っているのでありまして、世界じゅう、軍隊警察も守っていない原子力発電所なんというのはございません。これを何とかせいやというのが三番目。四番目が、今議論されております第六条の後方支援の問題、在日米軍極東有事行動した場合の後方支援、これをしっかり詰めろよというのが、九六年の橋本総理行政命令でございました。  これに対して、今提案されておる第一、邦人救出というのが、まさに自衛隊法の一部改正案、百条の八に船舶を加えよう、艦船を加えよう、輸送艦。「おおすみ」という大型の輸送艦、ヘリコプターとホバークラフト搭載のものをつくったのでありますけれども、これを仮に極東有事の際に何か派遣しよう、邦人救出のために派遣しようとしても、これができない。これを何とかしてもらいたいというのが一つ。いわばこれは新しい課題であったと思います。  二番目の難民。これも、今回ようやくこの難民対策について日米合同して周辺地域においてやろうや、こうなっておるのでございます。だけれども、まだ残念ながら、国内法的にいいますと、これを、どんどん運んでこられたものを法務省がやるのか、外務省国連局が人道上やるのか、警察、消防がやるのか、地方自治体がやるのか決まっていない。こういう点、問題点が残っております。  それから、三番目の重要防護対象警備でございますけれども、これも、原子力発電所警備については、この日本安全保障体制に大きな欠陥がある。すなわち、領土、領空領海という主権侵害に対する取り締まりの法律がございませんし、これはけしからぬ罪なんですね。死刑無期長期三年以上の刑、正当防衛でも緊急避難でもなければ、海上保安庁の巡視船海上自衛艦も、ねらって撃つことができない。  これは、実は領空侵犯、八十四条も同じなんでございます。八十四条で、私、実は政府委員答弁をいたしまして、武器使用と書いていないものですから、必要な措置を講じさせるものと書いてあるものですから、共産党さんの質問に対して私は大変苦労して答弁をして、必要な措置の中には武器使用は当然国際通念上入っているんだと答えたら、これが今統一見解になっております。それで、沖縄の領空侵犯に対して使用ができた、こういうことに相なっておるわけでございますが、これもまだ十分でございません。  それから、どうしてもこの審議について二点だけ特に御要望を申し上げたいと思いますのは、この事前承認、これは与党も譲歩なさって、事前承認になりつつあるようであります。原則として事前承認、緊急の事態はこれを除くとなっておりますが、これは私は、情勢が緊迫をしてきて、当然閣議も行われ、安全保障会議も行われ、日米情報交換もあって、そして国会上程、こういうことになるのでありますから、日本国の安危にかかわる、国民の生命にかかわる問題があったときに、野党さんといえども、この修正案を出した以上は、審議拒否なんというのはまさかなさらないだろう、こういう御信頼を申し上げて、この条件はいいのではないだろうか。  緊急の場合というのはどういう場合をいうのか、これをやはりきちんとある程度つくっておかなきゃいかぬのかな。周辺事態というのは、これはサラウンディングスとは何だといってアメリカ人から聞かれても、私ども困ります。新しい概念ですし。シチュエーションというのは何だと言われると、地球の裏側まで行っていいという意見からありますけれども、これはやはり安保の枠内という現在の政府見解が正しいのではないだろうかと思います。これが一点であります。  もう一点は、私、実は防衛庁におりました場合に、有事法制の第一分類、これは防衛庁の所管する法令。第二分類、他の諸省庁の所管する法令道交法だとか何だとか。それから第三分類、これは内閣に行ってからやりましたけれども、どの省庁にも属さざる仕事、例えばジュネーブ協定に基づく捕虜虐待禁止条約なんというのはだれがやるんだ、人権擁護法務省がやるのか、外務省がやるのか、防衛庁がやるのか、地方自治体がやるのか、全然決まっていないわけです。こういう問題をやはりきちんと決めなきゃいけない。  それから、百三条というのがございます。自衛隊法百三条でございますが、これは、知事に、土地の使用あるいは物資の収用、これはお金を払いますけれども、対価を払いますけれども、と同時に、医療、輸送、建設の三業種に対して職務従事命令を出せるという規定があるのでございます。昭和二十九年の七月一日にできた法律でございますが、その詳細は政令で定めるとなったきり、四十年近くほうってあるのです。このきちんとした指示権がなければ、仮に、周辺事態法でもって米軍負傷兵を緊急輸送してきた、ある病院がこれを拒否した、あるいは地方自治体が受け入れを渋った、こういう場合どうなさるのでしょうか。  そういう意味で、周辺事態法が上がりましたらなるべく速やかに、危機管理基本法と私は申し上げましょう。有事法制と言うと戦争をやるみたいに思われてどうも語感が悪い。さんざん議論して、有事法制という言葉をやめようと私は言っております。緊急事態対処法でも安全保障基本法でも危機管理基本法でも何でも名称は結構でございますが、総合的な国家安全保障の順序立った仕組みをつくり直しませんと、PKOが問題になるとPKO特別法でしょう。今度、周辺事態法でしょう。このままでいくと、領域警備法というのが出てくるかもしれません。特別法特別法で、大変継ぎ足しのがたがたの建築が安全保障行政担当者は困り果てているという実情がございます。  もう一点申し上げます。武器使用でございます。  武力の行使とは全く違う武器使用、これは時間がありませんので、後で御質問ございましたらお答えいたしますけれども、やはり警職法七条、警察官個人が、正当防衛緊急避難死刑無期もしくは長期三年以上の凶悪な罪を犯した者の逃走防止と令状の執行でしょう。これはどうも、領域警備領空侵犯だとか領海侵犯というのは国家主権侵害でありまして、これに対して、個人が、刑事責任を負う危険を冒しながら、警察官職務執行法に基づいて職務執行をするというのはおかしいです。明らかに、この自衛隊武器使用規定というのは別のルールでつくり直すべきではないだろうか。  今度の法案にも、十一条に武器使用というのがございますけれども、これまた現場は困ってしまうわけです。船をねらって、無視して停船しなかった船を撃っていいのか悪いのか、現場指揮官は必ず困ります。これは危害許容要件を絞っていただいて結構でございますから、警職法七条準用というのはお考え直しいただいた方がいいのではないかなと感じております。  以上でございます。(拍手)
  4. 山崎拓

    山崎委員長 ありがとうございました。  次に、浜谷公述人にお願いいたします。
  5. 浜谷英博

    浜谷公述人 若干の私見とそれから提言を述べさせていただきたいと思います。  国家緊急事態法制というのは、本来は自国の有事、いわば日本有事に関する法制整備が最も重要な点でございます。現在我が国緊急事態に陥った場合、その対応の多くがいわゆる超法規的行動にならざるを得ないということが多方面から指摘されているわけでありますが、これは法治主義を標榜する国家としては全く稚拙な話でございます。またこの点が、周辺諸国に対しても、緊急事態に際して日本がどこまで何をやるかわからないといったような本来不必要な懸念を増幅させている一つの要因ではなかろうかとも考えられるわけであります。  したがって、本来の緊急事態法制というのは、日本有事の際の法制整備という点から出発して、その上で準日本有事、さらに周辺有事という形に、温度差のある事態を想定していくべきであろうというふうに考えております。その意味で、現在審議中の法案は、準日本有事それから周辺有事という本来的に対応の異なるべき状態を区別せずに論じている嫌いがありまして、そこに多くのわかりにくさが露呈されているのではなかろうかという感じがしております。この点、政府の示しているいわゆる四類型、きょうまた二類型が追加されたようですが、その類型を見ましても、かなりの温度差があるということは指摘できると思います。  つまり、現在論議されている周辺事態の一部のものは、我が国に対する武力攻撃、つまり、瞬時にして日本有事に発展するおそれのある事態も含まれておりまして、国内的には、いわゆる自衛隊法の七十七条の防衛出動待機命令というようなものが発せられる可能性も想定される状態であります。この場合には、すなわち、我が国として主体的にかかわるべきか否かなどという政治的判断余地がほとんどない状態でありまして、日米協力が有効かつ合理的になされない限りは、時を経ずし我が国の平和と安全に重大な影響を及ぼす状態に陥る、そういった蓋然性が相当高い状態を指しております。辛うじてまだ日本が直接武力攻撃にさらされていないというだけの場合であります。  この点、先ほど私が申し上げました本来的な周辺有事と申しますのは、我が国の平和と安全に直接的な脅威が差し迫っていない状態を本来指すべきでありまして、だからこそ、我が国がいつの時点から、また、どのような方法でかかわるべきか否かという政治判断余地が非常に大きく出てくるわけでございます。そのためには、いろいろな制約とか関与原則とかいうものが当然必要になってまいります。例えば大量の難民対策とか、それから国連決議に基づく経済制裁等々への対応でございます。現在のようないわゆる逆さまの議論整備のおくれというのはいかんともしがたいわけですが、これらの点を早急に整理した上で、本法案成立と一日も早い日本有事法制整備に着手すべきであろうというふうに考えております。  本院ではこのような観点からも議論が着々と進んでいるようでありますが、本来、我が国周辺にある種の緊張状態がある中での防衛法制論議というのは、これは余り望ましい環境とは言えない。一見、環境整備がだんだんできてきたみたいな話はございますけれども、本来はそうではなかろうと。すなわち、緊張状態を背景にした論議というのは、ともすれば行き過ぎた人権制約を伴う過剰な国防政策というのを見えにくくしてしまうわけでありますし、何よりも、つけ焼き刃的で非体系的な非常事態法制に終始する嫌いがあるからでございます。まして、政争の具や政治的な駆け引き、また政党独自性のアピールなどといったことによって、体系的整備というのがとりわけ重要な国家安全保障政策法制の根幹が揺らぐようなことがあってはならないというふうに考えるわけでございます。  いずれにせよ、冷戦構造の変革に伴う新たな国際秩序の模索の中で、現在まで平時における客観的な論議がなされてこなかった以上、我が国安全保障政策と適切な日米協力というのを実現するための法整備は喫緊の課題であろうというふうに考えております。  ところで、今本院議論されている周辺事態措置法案というのは、日本周辺地域における有事を前提として、国民の権利や自由の一部を制約する可能性を想定したいわば初めての法整備でございます。その意味で、政治部門挙げての責任ある関与というのが求められるのはいわば当然のことであります。つまり、軍事に対する政治の優先というシビリアンコントロールの徹底は言うに及ばず、積極的な政策判断によって国家の安全と独立、国民の生命と財産というものを擁護することは、時の政府国会の最大の任務だからでございます。それを遂行する上での具体策というのがいわゆる国会関与手段の考察であり、また、その一つ国会承認の手続でございます。  時間の制約もございますので、この点に絞って、以降少し詳しく述べてみたい、また、さらに若干の提言もしてみたいというふうに考えております。  国会承認の必要性というのは、申すまでもございませんが、軍事に対する政治の優先というシビリアンコントロールの観点から、自衛隊の活動については、国会がその活動を何らかの手段でチェックする仕組みが必要であるという点、第二は、本法案が認定する内容や措置の一部には国民生活に直接影響を与えるというものも想定されておりますので、国民の直接代表である国会が何らかの方策でそれを容認しておくことが望ましいということ、さらに第三は、実際上の活動を行う自衛隊、それから具体的協力を求められる地方自治体にとっても、活動全般にわたって国民的支持が明らかになっているということは重要な要素であることということが挙げられます。したがって、これは本法案論議の中核でもあろうというふうに考えているわけであります。  とりわけ武力集団というものを動かす決断は、あくまで政治部門全体の責任において行うべきであり、三権分立のもとでは、国会政府内閣の共同判断もしくは共同責任のもとで行うことが不可欠であろうというふうに考えております。  特に、自衛隊が、場合によっては我が国領域外で活動するようなことも想定されている以上、たとえ紛争地域とは一線を画するとはいえ、領域内での危険度よりは格段に大きい危険度のもとで活動するわけであります。また、我が国の置かれている地理的な環境、地理的要素から考えれば、必ずしも他国領海我が国領海との間に公海が存在するなどとは限らず、その意味では、いわゆる後方地域というものの存在すら危ぶまれるわけでございます。このような危険負担にたえられるのは、いわゆる国会承認を通じた国民の支持以外にはあり得ないだろうというふうに考えております。  また、現行法体系のもとでは、一度国会承認を与えますと、その後の国会のチェック手段というのはほとんどありません。時々刻々と変化する有事もしくは周辺事態のもとでは、それらへの何らかの対応策というものもあわせて考慮しておく必要があろうというふうに考えております。この点については、後ほど提案という形で述べさせていただきます。  ところで、国会承認については、今現在も議論されておりますが、その対象と承認時期というのが問題になっております。  まず、承認の対象については、基本計画の全体であるか、また自衛隊の活動にかかわる部分だけかという議論がございます。この結論には幾つかの前提の検討が必要であろうと思われます。つまり、基本計画というものの実体がまだ明らかになっていないということでございます。確かに、法案上はその項目が列挙されておりますし、全体の構成は説明されております。しかし、具体的にどれほどのボリュームのものかとか、審議のために、そのボリュームをどの程度の時間があれば消化して承認することができるかというような具体的なものはいま一つ明確ではありません。  また、実施要領というものが具体的な作戦行動に関するものだとすれば、基本計画というものはかなりコンパクトで相当簡略なものになる場合もある。その場合には、全体としての承認にもそれほど審議時間を要しないかもしれないということは想像できるわけであります。  政府基本計画の策定後直ちにそういう場合には国会承認を求めて、国会もまた速やかに審議して結論を出すべきであって、その際、結論までの審議日数というものを限定しておくという方法も一つの手段でございます。ただし、基本計画が大部のものになる場合には速やかな承認自体がまず困難でありまして、事後承認という、聞こえはいいんですが、実質的な追認になってしまう可能性がございます。すなわち、この場合、国会は迅速な承認を行おうとすれば包括的な承認、いわば政府案の丸ごとのみ込みみたいな、そういうことにならざるを得ない。また、十分な審議時間をとろうとすれば迅速な対応措置の機を逸するという、まさにジレンマに陥りかねないだろうというふうに考えております。  したがって、国会承認については、自衛隊法の第七十六条との整合性にも配慮して、原則事前、緊急時には事後というこの措置を認めて、いずれの場合にも、審議結果を得るまでの期間を限定した上で基本計画の全体をその対象にする。また、その承認については、特定の有効期限を設けた、いわゆる期限つき承認と私は呼んでいますが、期限つき承認というものが望ましく、この詳細については後に述べさせていただきます。  また、承認案件国会への付議までに一定の期間的猶予を設ける方法、治安出動を想定しているんだろうと思いますが、そういう方法が議論されたか報道されたかしておりますが、これは、その期間、あらゆる活動について政府に白紙委任をする結果となりますので、これは望ましい方法ではなかろうというふうに考えております。  いずれにしましても、国会という合議機関の特性を考えた場合には、緊急時における判断にはもともとなじまない部分が多いということは否めません。つまり、緊急事態に際して、アメリカ側との協議それから各種の政策判断、さらには自衛隊の出動などを時間的制約の中で的確に決断するということは、合議機関としての限界でもございます。それら臨機の対応というのは、少なくとも民主主義的な正当性を有する限り、内閣に決定をゆだねることが合理的であります。したがって、事前承認承認対象にこだわるよりは、それらを原則的なものにとどめて、次の二つの手段に国会の特性を発揮する方がより建設的であろうというふうに考えております。  その具体的手段を二つ提示する前に、若干アメリカ戦争権限法という法律を紹介して、その方法論を少し参考に供したいというふうに考えます。  戦争権限法は、その名称からして非常に誤解を招くことがあるんですが、これは、アメリカの建国以来初めて大統領の軍事力行使を制約した法律でございます。制定の背景や詳細な内容は別の機会に譲るとしまして、ここでは、我が国法整備に今後示唆的な部分について、骨子だけを簡単に述べたいと存じます。  まず第一点は、海外の紛争への米軍投入に際しては、議会と大統領の共同判断に基づくことでございます。  第二番目は、大統領の軍最高司令官としての権限行使を法による授権のある場合などに限定しているということであります。  さらに三番目は、米軍の投入の際には可能な限り議会と協議することとして、投入後は、いかなる場合も撤退まで定期的に協議するということになっております。  また四番目は、米軍の投入命令後は、四十八時間以内に、投入を必要とした状況、法的根拠、それから、投入状態の規模や期間の見通しなどを議会に報告すること、また、投入後はそれら一定事項を定期的に議会に報告すること。  さらに五番目は、米軍投入に際して、または投入後、議会の同意が得られない場合には六十日間、撤退時の必要性を証明した場合にはさらに三十日間が加わるわけですが、いずれにせよ、六十日間以内に米軍を撤退させること、また、議会が米軍の即時撤退を決定した場合にはいつでも撤退させなければならないこと。これがいわゆるアメリカ流で言う議会拒否権という発想でございます。この議会拒否権については、憲法上の議論等々がございまして、質問がございましたら答えたいと思います。  そして最後は、審議日数を限定した、議会の優先議事手続といったようなものが詳細に規定されております。  つまり、海外における米軍の行使に関しては、可能な限り事前の協議によって大統領と議会との緊密な意思の疎通を図って、両者の共同判断に基づく対処を目指したわけでございます。そして、特定の授権法による厳格な授権範囲の設定とともに、詳細な状況について議会への報告を密にして、その後の対応にも議会の影響力を留保しております。そして、ともすれば大統領のいわゆる独断に陥りがちだった米軍の継続使用というものについては、議会と大統領の意思が反する場合、議会側の強制手段、いわゆる議会拒否権によってでも米軍の撤退が可能であるということまで制度的に確立させたわけであります。  これらを参照しながら、以下、国会の特性を尊重した、我が国における法制を検討したいと思います。  先ほど言いました若干の提言の一つというのは、国会承認に至る前段階として、国会政府の間で協議手段の模索をすべきであります。すなわち、協議機関の設置を考えるべきであろうということ。それからもう一つは、基本計画の継続に関する事前承認制度、これを導入すべきではなかろうかというふうに考えております。すなわち、周辺事態の認定から基本計画、実施要項の内容などを期間を限って審議して、政府が計画の継続を求める際には、計画の変更の有無にかかわらず事前承認手続を踏むように義務づけるわけでございます。  前者の方は、さきの戦争権限法にもあるわけですが、特定の議会メンバーをあらかじめ定めておいて、緊急に招集する方法でございます。政府が一定の方向性を示して国会の協力を求め、承認への迅速なプロセスを担保する方法として検討すべき価値があるのではないかと思います。軍事的な実力行使を伴う可能性もある以上は、いわゆる政治部門の共同判断を確保するためにも、政府国会間の事前協議の仕組みを考えるべきではなかろうかというふうに考えます。  もちろん、具体的作戦行動などの実効性確保のためには、提供される情報と協議内容には限界があるということも否めないわけですが、ともすれば情報不足に陥りがちな国会へのいち早い情報提供にもなるわけでございます。厳格な三権分立制をとっているアメリカでさえ確立された方策が、議院内閣制のもとで、国会政府の緊密な関係の中で確立されないわけはなかろうというふうに考えております。  後者の方は、まさにこれは国会の特性が最も発揮される方策でございます。つまり、さきに触れましたように、初回の承認のいわば有効期限をあらかじめ定めておく、戦争権限法では六十日という期間が具体的に出てまいりますが、六十日というのは必ずしも意味があるわけではありません。これは、制定当時、上院案の三十日と下院案の百二十日というものの折衷案でございますから、それほど根拠がないわけですが、少しこれは長過ぎはしないか、近代兵器の性能等を考えますと三十日から四十五日間程度が妥当ではないかと考えておりますが。  この期間からさらに継続して基本計画を実行しようとする場合には、一定期間前に政府は計画継続に関する事前承認を求めなければならないということを義務づける規定を設けるのであります。この場合には、政府による事前の承認要請から国会の結論を得るまでの審議日数をあらかじめ優先議事手続として法定するなどの方法によって、期限内には必ず結論を得るということを手続的に確立しておく必要がございます。これはいわゆる泥沼化の防止、要するに派遣についての泥沼化の防止ということにも有効な手ではなかろうかというふうに思います。  そして、自衛隊の派遣に関して、国会側と定期的にその後協議を継続して、同時に、投入後の状況についても報告する。その内容は作戦行動に影響のない限り詳細であるべきであろう。  そして、自衛隊の派遣の継続について、その必要性がなくなったときには、基本計画の終了とともに自衛隊の撤退も速やかに行われるということになっておりますが、仮に国会の意思と反する場合には、いわゆる国会拒否権、向こうの議会拒否権を私は日本では国会拒否権と呼びかえたわけですが、国会拒否権といった手段の採用も検討しておくべきではなかろうか。すなわち、すべての国会の意思表示というものが、政府の要請にこたえる形で、いわば受動的に判断するということだけではなくて、直接国民代表としての国会の主体性を発揮して、シビリアンコントロールの実効性を担保する意味でも、その手段としてこういう場合を考慮しておく必要があるのではなかろうかというふうに考えております。  国会拒否権というのは、自衛隊の派遣を含む基本計画の承認後、初回の承認後、承認の有効期間の満了前に自衛隊の派遣を終了させる手段でございます。たとえ国会拒否権に法的拘束力、いわば法的強制力ですが、これを付与しないものがあったとしても、それはいわゆる政府の計画の継続に対する承認要請なしに表明される国会の主体的意思であるわけでありますから、議院内閣制のもとではインパクトはかなり大きいはずでございます。  こういう具体例を述べた上で、非常に重要な点があると存じます。それは、いわゆる国会のあり方であります。つまり、どうしても必要になるのが、いわゆる国防政策に精通した多くの議員の方々の存在でございます。ハードな武器技術や性能とともに、軍事知識や軍事常識といったものに通じた議員の方々のみが政府の計画に対する正しい批判や判断が可能になるというふうに思えるからでございます。  本院の構成メンバーにはそういう心配は恐らくないだろうということは考えられるわけですが、少なくとも、承認の必要性を強調する以上は、迅速性を失わない効率的な審議と、具体的かつ的確な判断力に裏づけられたいわゆる承認行為の質の高さというものも当然求められるわけであります。  殊に実力部隊等の運用に関して、その必要性と手段について、正当かつ正確な知識に基づいて政府側と対等に渡り合う、そして的確な反論などによってより効果的な安保政策に収れんされていく、こういうプロセスを見て国民は安心をするわけでありまして、この過程なくして本当の意味でのシビリアンコントロールの実効性は上がらないということは考えております。  以上でございます。ありがとうございました。(拍手)
  6. 山崎拓

    山崎委員長 ありがとうございました。  次に、森本公述人にお願いいたします。
  7. 森本敏

    森本公述人 本委員会に公述人としてお招きをいただき、光栄に存じます。  御承知のとおり、冷戦後の世界の中で、我々は、冷戦後の国際社会の平和と安定を維持するための新たな秩序をつくるプロセスの中に今日あると思いますが、そのプロセスはこれからまだ相当長く、その間、ヨーロッパにおけるコソボあるいはアジアにおけるいろいろな問題に見られるように、まだまだ道は遠いのではないかと思います。  一方、このような新たな秩序を維持するまでの間、我々はどういう道を現在選んでいるかというと、言うまでもなく、これは、冷戦時代に構築をした同盟を強化することによってこの冷戦後の世界を乗り切ろうとしているわけで、欧州においては、現在、コソボにおけるNATOの作戦は、まさにNATOが今後五十年生き残れるかどうかという、NATO存続をかけたいわば戦いをやっているのではないかと思います。  アジアにおいては、言うまでもなく、日米同盟という、冷戦後につくられた、最も確立された信頼性の高い同盟関係をどのようにして強化するかということが、アメリカにとっても日本にとっても、そして広くはアジア太平洋全体の平和と安定のために重要であります。  したがって、現在本委員会において御審議いただいておるこのガイドライン関係法というものをぜひとも成立させ、日米同盟を強化し、これを、日本の平和と安全のためのみならず、アジア太平洋全体の平和と安全のために役立てるということが不可欠であると考えます。  限られた時間の中で、この周辺事態安全確保法について、特に法案修正について所信を申し述べたいと思いますが、言うまでもなく、この法案は、ガイドラインに基づく日米防衛協力の実効性を確保するという側面と、もう一つ日本の平和と安全に重要な政策上の指針を与えるという、二つの側面があると思います。  法をいかにしてつくるかということについては、言うまでもなく、二つの大きな基準があると思います。それは、法の成り立ちから見ていかなる形のものが望ましいのか、特に、立法府と行政府の権限をいかにして調和させ、それぞれの権限を十二分に発揮させるのが望ましいのかという側面と、それからもう一つは、この法によって、政治の実態、この場合は国家安全保障をいかにして確保するか、そのためにどのような法の枠組みが最も有効で、組織的な機能発揮ができるのかという、いわば法と実態の二つの側面からこの法案修正が議論されるべきであると考えます。  かかる観点に立って、現在問題になっている幾つかの重要な点について意見を申し述べれば、まず、周辺事態の定義についてはほとんど議論がし尽くされておりますが、この周辺事態の定義というのは、「我が国周辺の地域における」という地域的概念、いわゆる地理的概念と、「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」という事態の性格と、二つの面を持っているわけで、どちらかの議論だけを集中的にやるということは、この定義を全体としてとらえることができないのではないかと私は思います。  言うまでもなく、我が国周辺の地域というものが地球の向こう側まであるはずがなく、したがって、明らかにこの前段の部分は地理的概念を示したものであり、後段の部分は事態の性格に立脚した表現でありますので、この二つをどのように調和させて議論するかということを考えた場合、その行き着く先は、日米安保条約第六条に言う極東並びに極東周辺に発生する事態を、日本が、米国との調整を行いつつ、主体的に判断して認定すべきものであると考えます。  最も重要な国会承認につきましては、浜谷先生が米国の戦争権限法を例に説いて大変ユニークな、また意味のある卓見を御披露になりましたので、私は結論部分を申し上げたいと思います。  私の結論は、まず、国会承認すべき内容というか対象は二つです。一つは、領域外における自衛隊の活動、それから、地方公共団体及び国以外の者、すなわち一般の国民が支援、協力する内容。この二つはいわば新しい分野でありまして、これは、憲法を初めいろいろな法に照らして、この際立法府がよく審議する必要があるということであり、したがって、この二つの問題については国会承認の対象とすべきであると思います。  しかるに、これを事前承認するということについて、私は必ずしも納得しないわけであります。第一に、状況に十分に迅速に対応できないという可能性があるということ。言うまでもなく、周辺事態は突然起こる何らかの不測の事態。六つのケースが現在示されておりますが、そのいずれをとっても、何カ月も前に予期されるなどということがほとんどあり得ないわけでありまして、このような事態に迅速に対応するためには、内閣内閣総理大臣の権限のもとで必要な認定を行い、措置を実施するということがまずあってしかるべきであると思います。それだけの権限を、自衛法等において内閣総理大臣に自衛隊の最高の指揮監督権を与えているわけでありますから、したがって、ここは、内閣が閣議において決定される内容をまず実行するということが望ましいのではないかと思います。  その際、すべてのものを事前承認するということになりますと、まさに浜谷先生の御指摘のように、まさに周辺事態が生き物のように変化するときに、基本計画やあるいはいろいろな対応措置が変化するたびに、そのたびに事前の承認をまた国会でとるということであり、それは事態対応するときに、事態というものに柔軟にかつ迅速に対応できないという可能性が常にあるということなのではないかと思います。  その際、いかなる期間に事後承認するかということについて、戦争権限法は六十日ということでありますが、これは世界的に活動をする米軍の場合でありまして、我が国の場合、我が国対応する地域はあくまで周辺事態ということであります。しかしながら、国会が休会になっているという可能性もあり、このようなときに国会を開いてこの重要な問題を審議するためにはどうしても、必要な議員の方々がお集まりになる時間的余裕を一週間と見て、衆参両院一週間ずつ、計三週間というのがこの事後承認の最大見積もられる期間なのではないかと思います。  もちろん、内閣は、必要な認定を行い、措置を実施した場合はまず速やかに国会に報告を行い、すべての活動が終わった後、事後に再び国会に報告を行うということは、これは当然であると考えます。  これが国会承認についての私の考え方です。  以下、細かい幾つかの点について申し述べたいのですが、一つは、捜索救助と船舶検査については、日米安保に基づき米軍に対して行う支援、協力活動と、本来、日米協力には限定されませんが、日本が主体的に行う活動が含まれていると思います。しかるに、この法案はそもそも日米防衛協力を目的としたものである限り、かかる観点から、日米安保の実効性を確保するための法律であるということを明記し、同時に、日米安保に依拠した活動を行うよう規定することが望ましいと考えます。その際、この法律で担保されない活動について、別途の法律でこれを確保するという必要があると考えます。  また、船舶検査については国連安保理決議が要るか要らないかという議論がありますが、私は、これは、日本の国内において必要なこの種の活動に多くの国民の皆様に理解と支援を得るためには、経済制裁を科するための国連安保理決議が必要であると考えます。  その際、安保理決議がある限り、相手船舶の船長等の同意は法的に見れば不要でありますが、他方において、実施区域が他の国の活動と混交されないよう指定されているということについては、これでは日米防衛協力というものが十分にできない可能性もあり、このところについては改善の余地があるのではないかと考えます。  地方公共団体及び国以外の者による協力については、この法律に基づく活動のうち地方公共団体や一般国民対応すべき活動内容について、基本計画の中で、協力の種類及び内容並びにその協力に関する重要事項が示されることになっているところでございますけれども、地方公共団体及び一般国民が支援、協力すべき内容が例示されておらないということについては、この法律に基づいていかなる協力が要請され、また求められるのかということが不透明であるという問題があり、この点は、あらかじめこの法律の中で、具体的に何らかの支援分野を例示する必要があるのではないかと考えます。  武器使用については、従来から二つの問題が議論されておりますが、一つは、捜索救助及び船舶検査に従事する個々の自衛官が合理的に必要と判断される限度で武器使用ができるということになっておりますが、この種の活動を行っている者の生命等を防護するための武器使用というのは、いわば隊員個人正当防衛及び緊急避難的な活動に限定されるものであり、これではこの種の活動を組織的に行うということは期しがたいと思います。  その点で、個々の隊員の武器使用というのではなく、自衛隊そのものの活動として、上官の指示もしくは命令に基づく武器使用という方法でこの法案が修正されるべきであると考えます。  また、後方地域支援に従事する自衛隊武器使用については、この法律の中で限定されていませんので、したがって、これでは実際の状況や活動を考えた場合、必ずしも適切でないと考えます。  いずれにしても、この種の問題は、もともと、昨年四月の末、閣議で御了解いただいた原案が、何らかの事情により、今日法案を修正する必要があるという状況に至っているわけで、したがって、もともとの成り行きを考えてみますと、この法案そのものを実際に閣議に通す場合、もう少し立法府と行政府で協議があってしかるべきであったのではないかと考えます。この種の最も重要な法案が立法府に十分に協議がなく閣議に通ってしまって、その後で、法案の修正がこのように多大な努力というものを傾注して行わなければならないこと自体、この法案を草案するときのプロセスに立ち返って、いささかの問題があるのではないかと考えるところでございます。  細かい点については質疑応答のところで述べさせていただくとして、基本的な考え方について申し述べました。  以上でございます。ありがとうございます。(拍手)
  8. 山崎拓

    山崎委員長 ありがとうございました。  次に、松島公述人にお願いいたします。
  9. 松島悠佐

    松島公述人 私は、元自衛隊の指揮官でございました。そういう立場から、このガイドライン関係法案審議に当たり、実際に行動を命じられる自衛隊周辺事態の中で本当に動けるのか、与えられた任務を達成できるのか、こういう観点から意見を申し述べたいと思います。  論点は二つに絞って申し上げます。一つは、自衛隊行動上の問題です。ほかの一つは、自衛権の行使についてであります。  自衛隊行動上の問題点につきましては、後方地域の定義と指定の問題、それから武器使用規定の問題、この二つでございます。  後方地域は、現に戦闘行為が行われておらず、活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがない、そう認識される我が国周辺の公海とその上空となっております。したがって、後方地域支援においては、武器使用を余儀なくされるような不測の事態も起こらないという前提の内容で法案が書かれております。  我が国周辺の地域において、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態が発生し、それを鎮静化するために米軍が作戦し、我が国がそれを支援しているという構図の中で、果たして定義されたような地域が存在するのだろうか、また、それを正しく指定できるのだろうかという疑問があります。  これまでも時々議論になっておりますように、軍事行動をとっている米軍を支援することは、それが後方地域であっても、武器弾薬以外の輸送、補給であっても、米軍に対する作戦支援に変わりはありません。米軍と交戦中の相手国から見れば、日本米軍と共同作戦を行っている敵対国であります。これは国際的に見ても軍事的な常識であります。  したがって、たとえこちらが後方地域の支援であり、将来とも戦闘行為が起こらないだろうと想定しても、不意急襲的な航空攻撃やミサイル攻撃や、あるいは潜水艦によるゲリラ攻撃等、後方攪乱を目的とした攻撃は常に予期しておく必要があります。近代戦におけるこれも軍事的な常識でございます。  これまでの政府の見解では、将来とも戦闘が起こらない後方地域は存在する、そして区域の指定もできるという判断ですから、本当にそんな地域があるのかないのか、区域指定ができるのかできないのか、これ以上申し上げるつもりはありません。  ただ、実際の場面で、自衛隊の部隊に後方支援活動を命じ、活動区域を指定するに当たって、本格的な戦闘は起こらない地域であっても、後方攪乱を目的とした不意急襲的な攻撃は常に起こることを予測し、対処できる態勢だけはとらせてやっていただきたいと願うものであります。  次に、武器使用ですが、この周辺事態関連法の中では、後方地域捜索救助活動や船舶検査活動並びに邦人救出において、隊員の生命と安全を守るために必要最小限度の武器使用が認められております。しかし、これは、たびたび指摘がありますように、自己防護のための武器使用であり、あくまで個人を対象にした権限の行使であります。しかも、正当防衛緊急避難以外には人に危害を加えてはならないという縛りがついております。  これに対して、自衛隊は、常に組織として行動し、任務に従事しております。したがって、隊員個人に与えられる武器使用の権限では、組織として対応することができないというのが現実の問題であります。  他方、我が方に武力を行使してくる相手は、米国と交戦中の軍隊か、ゲリラ、コマンドー等、いわゆる戦争法規で言う交戦者であり、組織的な戦闘行動を行うことが常態と考えておかなければなりません。  この戦闘行動として組織的な武力を行使してくる相手に対して、我が方は、個人の権限を基本にした武器使用で、しかも正当防衛緊急避難以外相手に危害を加えてはならないという権限の行使では、不測の事態に陥り交戦状態になった場合に、自衛隊が一方的な損害を受け、任務達成も不可能になることは必至であります。  周辺事態における我が国対処は、戦闘行動を目的としたものではありませんが、いかに後方地域における支援とはいっても、先ほど申し上げましたように、後方攪乱のための不意急襲的な攻撃の危険は常に存在するものであります。自衛のための戦闘は常に予期しておかなければなりません。  もし、このような不測の事態になった場合には、ごく普通の軍事的常識からいえば、活動中の部隊は、艦艇、航空機を防護するための戦闘を行いながら、与えられた任務を達成しようと努力いたします。しかしながら、本法案では、この軍事的な常識が適用されない状態自衛隊は活動をしなければなりません。  したがって、実際の場面で活動を命じる自衛隊には、そのような不意急襲的な攻撃から部隊を守り、任務が達成できるような態勢を準備させ、最小限の自衛戦闘ができるような武力行使の権限を与えるなど、必要な措置をとることが求められてまいります。  これが、部隊を運用する立場からの本法案に対する要望でございます。  二つ目の自衛権の行使についてですが、では、どうしてこのような問題が出てきたのかということですが、それは自衛権の解釈の問題だろうと思います。  申すまでもなく、個別的自衛権は我が国に急迫不正の侵害があった場合に限定されております。集団的自衛権は憲法上行使できないというのが政府の見解であります。このガイドラインの検討においても、この政府見解のもとで、周辺事態において自衛権の行使はできないことを前提としております。  したがって、周辺事態において活動中の自衛隊に、先ほど申し述べましたような自衛のための戦闘を認可できず、PKO法案と同様に、個人の防護という自然権的な武器使用にとどめざるを得なかったものであります。そのために、活動地域も、この武器使用の権限に照らしてみずから限定し、自衛のための戦闘も起こらないような地域を想定し、後方地域として定義をした、言ってみれば、大変無理な論理構成になっております。  本来、この周辺事態は、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態ですから、もし対応を誤ると、我が国にとって大変危険な状態をつくり出すおそれがある事態と認識しておかなければなりません。したがって、これを早く鎮静化し、国益を損なわないようにすることが必要であります。この事態対処国家防衛のための対処であり、自衛権の行使を前提に考えるべき性格のものではないかと思います。  ただし、我が国の自衛権の行使には、申すまでもありません、憲法九条の規定からくる制約があります。我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどめるべきであるとする見解をとっています。したがいまして、周辺事態において自衛権を適用するとしても、直接的な武力行使はその範囲を超えるものであり、結局、米軍に依存するしか方法はありません。  しかしながら、この法案に定められた程度の米軍に対する支援、すなわち、我が国の国益にかかわる事態を鎮静化するために、日米安保にのっとり作戦している米軍に対して、直接戦闘行動に至らない範囲後方支援に限定して活動することは、国家固有の自己防衛のための機能であって、憲法に違反するような、自衛権を逸脱した行為ではないと思います。少なくとも、自衛隊の実際的な行動、すなわち、戦闘地域とは一線を画した後方地域で捜索救助や後方支援などの活動をしている間に、不意急襲的な攻撃を受けた場合にだけ、みずからの部隊を守り、艦艇や航空機を守るための最小限の自衛戦闘をするというような対応をするわけですから、これは必要最小限度の自衛権の行使であり、憲法に違反するようなものではないと確信いたします。  法律の専門家でもない私が、このような意見を申し上げるのは適当でないかもしれませんが、例えば、集団的自衛権のうちのごく限られた一部を適用するとか、あるいは個別的自衛権を少し拡大して解釈するとか、いずれにしても、周辺事態検討の根底の問題として、自衛権解釈の見直しと周辺事態における自衛権の適用の是非をまず最初に論議するべきではなかったかと思います。そうすれば、今論点になっていることは全部解決するはずであります。  すなわち、自衛権に基づく対応であれば、後方地域の定義も、より現実的な表現ができますし、それに対応して自衛隊武力行使も、国際的な規則と慣例にのっとった、実態に適合したものに規定することができます。この場合、もちろん、国家の決定ですから、国会承認義務づけるのは当然だと思います。  他方、原案のように、憲法解釈に関する政府見解を変えないという前提にした場合は、この第十一条に記述された自己防護のための武器使用対応できる程度の状態で活動するわけですから、これは平素から持っている武器等防護のための武器使用と余り変わらない権限でもあり、活動自体もふだんの災害派遣と余り変わらないような内容となります。当然ながら、国会承認も必要としないと思われます。  ただ、先ほども申し上げましたように、周辺事態対処が本当にそのような安易な状況で終始するのかという疑問が残ります。実際はそのような安易な状態ではなく、いざというときには不測の自衛戦闘を強いられる事態が起こると予測されます。すなわち、政治が決断を避けて通った状態法律が想定していない状態が起こったときにどうするのでしょうか。  この法令で申し上げれば、隊員の自己防護のための武器使用では対応できない事態が起こったときにはどうするのでしょう。自己防護の武器使用すら想定していない後方支援活動で部隊が攻撃を受けたらどうするのでしょうか。結局、現場に立たされた指揮官が判断し、処置しなければならないんです。  このことは、今回のガイドライン法案のみならず、現在の国際貢献活動における武器使用でも同じことであります。幸いにして、カンボジアへの派遣以来、現在のゴラン高原まで、武器使用に至る事態は発生しておりませんが、もしそういう事態が起こったときには、現地に派遣された自衛隊の指揮官は非常に難しい対応を迫られることになると思います。その悩みは、いざというときにかたくなに法を守れば任務が達成できないし、任務を達成しようとすれば法を曲げて対処しなければならないというジレンマであります。こういう最後の判断を現場の指揮官に押しつけてしまっているのが我が国の現状であります。  シビリアンコントロールの原則は、申すまでもなく、政治判断軍事判断に優先することであります。政治が判断すべきことを的確に判断し、明確に示してやることによってシビリアンコントロールは初めて正しく機能するものであります。  そのような観点から本法案を見たときに、果たして正しい政治決断がされているのでしょうか。残念ながら、この法案は、最も安易な状態しか想定しておりません。したがって、これをそのまま履行すれば、不測の事態が起こったときに任務を達成できず、一方的に被害を受けるおそれがあります。つまり、隊員個人の自己防護のための武器使用だけでは、いざというときには隊員に無用の死傷者が出るでしょうし、艦船、航空機などの被害が出て任務達成が困難になる事態が生じます。  結論を申し上げます。  非常事態法令は、最も厳しい状況になったときにどう対応するのかということを示してやることが必要であります。特に、武力行使に至るような事態は、すぐれて政治の判断すべきことであり、政治が決断して示してやるべきであります。  周辺事態対処基本は、自衛権に基づく防衛作戦の一環であると考えます。そういう政治判断のもとに、国益を守り、国の平和と安全が本当に保てるような、そしてそのために現場で任に当たる自衛官が迷うことなく十分にその使命を果たせるような法案をぜひつくっていただきたいと思います。かつて自衛隊に奉職し、国防の任についていた者の一人として、心からお願いを申し上げ、意見の陳述にいたします。  ありがとうございました。(拍手)
  10. 山崎拓

    山崎委員長 ありがとうございました。  以上で公述人からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 山崎拓

    山崎委員長 これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮腰光寛君。
  12. 宮腰光寛

    ○宮腰委員 自由民主党の宮腰光寛でございます。  きょうは、公述人の先生方には大変貴重な御意見を賜りまして本当にありがとうございます。  まず、最近の世論調査の結果についてお伺いいたします。主に佐々先生にお願いをいたしたいと思います。  四月七日に共同通信社が発表いたしました世論調査によりますと、ガイドライン関連法案につきましては、「賛成」が二一%、「どちらかと言えば賛成」というのが四五%に上っておりまして、両方合わせると六六%という数値を占めたことが報道されております。「反対」と「どちらかと言えば反対」を合わせると二三%ということになっておりまして、三分の二が賛成、約四分の一が反対というような結果になっております。  これは恐らく、昨年の八月の三十一日に北朝鮮のテポドン・ミサイルが日本列島を横断したことや核疑惑が存在をするといったこと、それから先日の北朝鮮の工作船が我が国領海を侵犯したことなどが賛成の後押し要因となっているというふうに考えられるわけであります。しかし、もう既に国民の間で、日本の安全のために周辺事態へのしっかりとした対応が必要であるという考え方が主流になりつつあることは間違いありません。  それにしても非常にはっきりとした結果が出ていると思いますが、賛成が三分の二という世論調査の結果につきましてどのように評価しておいでになるか、伺いたいと思います。
  13. 佐々淳行

    佐々公述人 お答えいたします。  私、安全保障問題、危機管理の問題ということで、これをライフワークとしてやっておるわけでございまして、全国、御要望があれば講演旅行をして、その反応を身をもって、北は北海道から南は沖縄まで体験をいたしておりますが、先生御指摘のように、世論は急激に変わっております。これに追いついていないのが永田町と霞が関だと思います。
  14. 宮腰光寛

    ○宮腰委員 大変厳しい御指摘もいただきました。  次に、周辺事態の定義についてお伺いをいたしたいと思います。  政府周辺事態の定義を、我が国に対する武力攻撃には至らないが、我が国周辺の地域における平和と安全に重要な影響を与える事態といたしておりまして、これまで四つの類型を示してきておりました。きのうこの委員会で、新たに二つの類型を提示いたしまして、内乱が国際的に拡大をした場合、あるいは、日本周辺における武力紛争が停止しても秩序の維持、回復が達成されていない場合という二つの類型を加えて、六つの類型を提示いたしております。  一方で、我が国の平和と安全に重大な脅威とみなし得る事態というふうに考える考え方でありますとか、我が国に対する武力攻撃に発展するおそれのある事態というように、周辺事態の定義を限定的にとらえようとするような考え方もあります。  周辺事態の定義を、そのようにして限定的にとらえるか、あるいは、平和と安全に重要な影響を与える事態というふうに、事態に即して弾力的に考えるかという違いだと思っているわけでありますが、余り限定的な考えで定義をいたしますと、新しいガイドライン法案の重要な要素であります日本有事とならないための抑止的機能が有効に働かないのではないかというふうに思うわけであります。  佐々先生は危機管理の代名詞というような方でありますけれども、周辺事態の定義を、限定的にとらえるべきか、あるいは、もっと事態に即して弾力的にとらえるべきと考えておられるのか、伺いたいと思います。
  15. 佐々淳行

    佐々公述人 お答え申し上げます。  きのう二つ追加されたことによって、国内有事法制の必要性ということを当委員会がお考えになったのかな、私はそういう印象を受けておりまして、公述人は質問をしてはいけないと書いてございますけれども、お答えの形で申し上げますと、やはり周辺事態というのが内側に広がってきたという感じがいたします。  これを既存の法体系でやるとなると、内乱予備とか内乱罪あるいは外患誘致、これのことなのかな。それから、自衛隊法三条の任務で、これを読みますと、我が国の独立と平和を守り、直接間接の侵略に対処し、そして必要に応じ、公共の秩序の維持に当たると書いてあるんですね。その第二項でもって、陸は陸上で、海は海上で、空は空でと、当たり前のことが書いてあるんですけれども、これは読みかえますると、陸は治安出動、海は海上警備行動、空は八十四条の領空侵犯、こういうふうに読めます。  そういたしますと、やはり周辺事態というのは内側に及んでくる可能性あり、事態想定の第一ですね、我が国に及びそうである、及ぶ、だから防衛出動待機命令、七十七条を下令することもあるのかなと理解されますけれども、もしも攻撃があった場合には五条事態になっちゃうんですね、六条でなくて。周辺事態でなくて、我が国に対する直接の攻撃。例えば、テポドンを撃ってきたらどうするんだという御質問があるわけですけれども、これは当然五条でもって、直ちに七十六条による自衛隊の防衛出動で、八十八条の武力の行使です。武力の行使は武器使用と全然違います。これは個人の責任じゃなくて、国家主権の行為でございまして、隊員は、敵兵を殺傷しても、刑法適用になりませんから死刑になりません。これは国家主権行為であって、指揮官の命令でやらなきゃいけなくて、かつ国が責任を負う問題でございます。  したがって、昨日拡大をされた六つの想定、あの二つは、どうも国内における五条事態の準備、間接侵略と解されるような、破壊工作員、あるいは、この前潜水艦で韓国にやったような武装ゲリラが潜入してきたとき、自衛隊は知らぬ顔していていいのか、こういうことになるわけでありまして、これはやはり、五条事態及び五条事態を補完するところの国内の有事法制というのを、この次の段階、御検討いただかなきゃいかぬのかな。周辺事態を外へ広げていくというんじゃなくて、むしろ内側へ来ているというのが現状なのではないでしょうか。
  16. 宮腰光寛

    ○宮腰委員 そこで、先ほど佐々先生の方からお話がありました、総合的、体系的な国家安全保障基本法をつくるべきであると。いろいろなお名前を挙げておいでになりましたけれども、例えば危機管理基本法というようなお名前で表現をしておいでになりましたけれども、その考えておいでになる内容について、ちょっとお聞かせいただければありがたいと思います。
  17. 佐々淳行

    佐々公述人 お答えいたします。  私、ずっと警察と防衛とやってきたわけでございますが、何か起こると、そのたびに特別法をつくります。ハイジャック防止法というのもなかったんですね。サリン特別法もございませんでした。それから、今ハッカー取締法というのがこれから上程されようとしております。情勢に常におくれて特別法ができる。特に自衛隊法の場合には、基本法は全然変えないんですね。一部百条の便宜供与の問題だけ変えましたけれども、それ以外はそのまま、全部特別法でやってきているというところに、心棒の通っていない、大黒柱のない継ぎ足し建築の感じがするわけでございます。  そして、危機の態様が変わってきた。戦争と革命だけじゃなくて、今や、核の問題、あるいはバイオ、伝染病の問題、O157であるとか、重油の環境汚染であるとか、あるいは人質誘拐事件、ペルーの事件とか、どうも危機の態様が変わってきた。これに対しては、内閣法を改正して、内閣総理大臣に臨時に、閣議によりがたい場合には非常大権を与えるという緊急措置を講じさせ、国会さんには、今度は緊急事態対処する審議、書面通知を各委員にしてない場合は受け付けられないとか、こういうあほうなことを言ってないで、直ちに緊急に応じるという体制を国もおつくりになる、これが私の申し上げている基本法の考え方でございます。  中心になりますのは内閣総理大臣、そして、官房長官を内閣総理大臣にかわる職務権限、総理が倒れた場合には内閣総理大臣にかわって指揮をとる、ここまでぐらいはきちっと決めて、内閣危機管理監というのをせっかくおつくりになったんですから、これでもって、サリンに対しても、あるいは大地震に対しても対応できる体制をつくって、自衛隊法基本的にそろそろ改正をする必要があるのではないか、これが危機管理基本法の提案の趣旨でございます。
  18. 宮腰光寛

    ○宮腰委員 次に、周辺事態における国会関与についてお伺いをいたしたいと思います。  この問題は極めて重要な問題であります。周辺事態に際して、敏速に行動する政府の能力を損なうことなくシビリアンコントロールをどう発揮することができるか、安全保障政策を監督する国会の役割をどう果たしていくか、まさに基本的な問題であろうかと思います。  同時に、日本安全保障日米同盟の健全性を確保するということは、日本の国益にとって最優先されるべき課題でもありますし、ガイドライン法案は、政治的、戦略的に見て、日本にとって決定的に重要な意味を持つのではないかというふうに見ております。  そこで、幾つか出されている修正案のうち、基本的な部分で、政府が危機に対処する基本計画を実行する前に、その危機を周辺事態として認定すべきかどうか、国会事前承認が必要であるというような議論まで実はあったぐらいであります。  危機の認定をめぐる国会論議がおくれた場合に、承認を待っている間に危機が拡大してしまうということに当然なるわけでありまして、緊急事態対処を考えると、周辺事態の認定を国会で取り上げるなんということは、構造的な欠陥を持った法案であるといったようなことになるわけでありますが、周辺事態の認定そのものを国会承認事項とすることについて、どのように考えておいでになりますか。
  19. 佐々淳行

    佐々公述人 お答え申し上げます。  私、政府委員として防衛問題を十二年間やりましたが、その事前承認、特に、何が起こるか、どうなるかわからない問題について、想定問答を出し、そして概念規定をし、この討議をしているだけで間に合わないと思います。したがいまして、大きな障害になりますので、それは国防の最高責任者である内閣総理大臣を中心とする内閣の、行政の判断にゆだねて、それに対して限定的な承認をするとか条件をつけるとか、これを国会がおやりになる、これが事前承認の限界ではないだろうか。  今申しましたような法案審議みたいなことをやっていたら、とても間に合わない。先ほど松島元陸将が申しましたように、現場にいる自衛官、あるいは私の場合には警察官、死傷者がたくさん出てしまって収拾のつかないことになりますので、周辺事態の認定の事前承認というのは非常に困難であろうと思います。
  20. 宮腰光寛

    ○宮腰委員 公述人の先生方の御意見では、ほとんどの先生方が、事前承認については必ずしも必要としない、迅速な対応ができないので、閣議決定の内容をまず実行すべきであるという御意見であったかと思います。  その中で、森本先生は、国会承認の中身、対象については、領域外における自衛隊の活動と、自治体、民間の協力、この二点に限って承認の対象とすべきであるというお話でありました。  私も、自治体、民間の協力につきましては、これは基本計画と一体のものでもありますし、現実に国民に一定の負担を求めるという意味で、何らかの形で国会承認というものが必要ではないかというふうに個人的に考えているわけであります。  自衛隊の領域外における活動につきましても、例えば日本有事の場合、日本が直接攻撃されるような事態における自衛隊の防衛出動につきましては、国会承認が必要というふうにされております。ただし、原則事前承認、緊急時はこの場合であっても事後承認ということになっているわけでありますが、例えば、この日本有事の場合と、それから周辺事態の場合とで、あれもこれも同じレベルで国会承認が必要であるということについては、バランスからしていかがなものかというふうに思いますが、この点については、佐々先生、どういうふうに考えておいでになりますか。
  21. 佐々淳行

    佐々公述人 お答えいたします。  お説のとおりだと思います。  例えば、情勢がだんだん徐々に緊迫をしてくる、日米間で情報交換をする、偵察衛星も見る、そして、これは米軍が出動するかもしれない、こういう段階で、日米事前協議もあり、安保会議で決定をして上程をする、これは事前承認は可能だと思います。そして、特に国連憲章四十一条の経済封鎖経済制裁、これの場合は、平時のそういう手続でも間に合うんじゃないかなと思います。  ただし、突然始まった武力攻撃、これの場合は、何としてもやはり例外として事後承認でないと間に合わないんじゃないだろうかと思います。
  22. 宮腰光寛

    ○宮腰委員 先ほど、マイナー自衛権というお話がありました。  佐々先生、森本先生にお伺いしたいんですが、個別自衛権でもなく集団自衛権にもよらない、限定地域における不測事態による実力行使のできるマイナー自衛権を、人質救出作戦、あるいは作戦中の紛争処理で我が国の憲法上行使できるというふうに考えておいでになるのかどうか、あるいは、やるべきだと考えておいでになるかどうか。また、領域警備、ゲリラなどの対処について、陸上自衛隊の任務とすべきかどうか。この点について両先生にお伺いをいたしたいと思います。
  23. 佐々淳行

    佐々公述人 お答えいたします。  それがいわゆる自衛隊領域警備橋本総理のときの四項目の指示、これに当たるんではないかと思いますが、マイナー自衛権という言葉も使われております。  この間の海上警備行動で明らかになりましたように、侵略行動で、防衛出動を下令するには値しないけれども、警職法七条でもって危害許容要件がない、相手方が撃ってこないとか、そういう条件の場合、主権侵害なわけですが、これは何罪でもないんですね。領空領海あるいは領土、これに対する侵犯は、強いて読めば自衛隊法第三条で読めるのではないかな。第三条の任務、さっき申し上げました、必要に応じて、公共の秩序の維持に当たる、陸は陸で、海は海でと書いてございますね。これをきちんと整備をすればいいのではないかな。  その任務は、領空侵犯は航空自衛隊領海侵犯は、海上警備行動があった場合には海上自衛隊、こうなっておりますが、実は陸がないのでございます。だから、かなり強力に武装したゲリラ部隊が、例えば警察のSATでもとてもかなわないというのが上がってきたとき、これは一体何なんだと。  多分、治安出動の対象になるんだろうと思いますけれども、これもまた御承知のように国会承認事項でございますので、そのマイナー自衛権的なもの、これは、現在の自衛隊法の三条の中に任務を付与し、かつ、武力の行使とは別の、武器使用についてのきちんとした、ROEというと交戦規定と訳しちゃうものですから戦争みたいに思うんですけれども、そうではなくて武器使用法なんです、武器使用規定というものを、自衛隊独自のものをつくらぬといかぬなと。  自衛隊は組織活動でございますので、指揮官の命令で撃たなきゃいけないのに、個人の判断でやって、その結果、誤想防衛、過剰防衛があって死傷させた場合は、個人刑事責任を問われて被告になるというのは、こんな軍隊はございません。  自衛隊軍隊でないと言ってしまえばそれまででありますけれども、この防衛力の行使に当たっては、武器使用の再検討ができれば、そして、領域警備の解釈を、自衛隊法の任務、第三条、これの公共の秩序というのはそういう意味であるという政府統一見解をおつくりになればいいんですから、また領域警備法なんてわざわざつくらなくてもできるのではないかと考えております。
  24. 森本敏

    森本公述人 ある国がどのような事態に対してどういう活動ができるかということを、事態に立脚して分類すると、その国の領域の外で起こる事態というのは、あくまで、まず有事という事態があって、それから平時というのがあって、その平時と有事の間に、平時から有事に至るまでに、緊急の事態というのがあるんだろうと思うんです。それで、その緊急事態の中で限りなく有事に近いところが準有事ということなんだと思うんです。  それで、もしそういうふうに分類すると、まず、日本の国内においては、有事というのはあくまで自衛隊法に言う防衛出動下令後のことで、したがって、平時から有事に至るまでの間のいわば緊急の事態対応する国内法というのはないので、したがって、それはいわゆる領域警備に関する国内法を整備するということになると思います。  一方、領域の外からの侵略というものを事態として認定した場合に、現在のガイドライン法というのは、平時から準有事に至るいわば緊急事態、国にとって緊急事態に同盟国としてどのような協力ができるかということであり、自衛権の問題ではないと思います。自衛権というのはあくまで、ある国が他国から武力攻撃を受けた場合に、国連憲章第五十一条に言う集団的及び個別的自衛権を使って行うのであって、緊急事態に行う国家の活動は自衛権の行使とは考えられないと私は思うんです。  したがって、国の中と外を分けたら、今申し上げたように、国内においては、有事の場合は防衛出動下令後。それから平時においては、まさに平時なのですが、緊急事態法整備がないのでそこは空白なので、領域警備という国内法を整備する必要がある。一方、それを外に当てはめた場合に、有事になったら、これは自衛権を行使ですから、集団的及び個別的自衛権を行使する。  じゃ、緊急事態にどういうことになるのかというと、緊急事態の法的整備がないので、そこは日米協力をやる。日米協力をやるための国内法が今回のガイドライン法、そういう整理でいいのではないかと思います。  以上でございます。
  25. 宮腰光寛

    ○宮腰委員 船舶検査について、お伺いをいたしたいと思います。  先日、福井市で地方公聴会が開かれましたけれども、仮に朝鮮有事あるいは台湾有事の場合において、国連安全保障理事会常任理事国である中国の拒否権によって、経済制裁の実効性を確保するための国連決議成立する可能性はないというふうな明確な意見の陳述があったところであります。  御承知のとおり、中国は一貫してこの新たなガイドライン法案には反対をしているということであります。仮に朝鮮有事台湾有事の場合、国連決議成立する可能性はあるのかどうか、佐々先生、お願いいたします。
  26. 佐々淳行

    佐々公述人 お答えいたします。  私は、P5、常任理事国五カ国が拒否権を持っている限り、満場一致の安全保障理事会、国連憲章四十一、四十二条の制裁はないだろうと長いこと考えておりました。多国籍によるものだろうと思っておりました、アメリカ中心で。  ところが、実例が出ましたのが、一九九〇年のサダム・フセインに対する安全保障理事会の決定なのであります。ゴルバチョフ・ソ連が賛成をし、トウショウヘイ・中国が棄権をいたしました。  それから、北朝鮮の最近の動向、例えば、テポドン発射をどうも中国に事前通告しなかったということで中国が非常に憤慨しているという情報がございますし、あるいは、今回の不審船のことなんかも大変苦々しく思っている。ソ連警備艇を出して、領海に入ってきたら撃沈するまで言ったわけですから、この二カ国が必ず否決をするであろう、拒否権を行使するであろうということは当たらないのではないだろうか。  と申しますのは、一九五〇年に、朝鮮戦争と同時に、中朝とソ朝軍事同盟条約ができました。これには同時参戦条項というのが入っておりました。つまり、昭和二十五年の朝鮮戦争がまた始まったらソ連と中国は必ず自動的に北朝鮮防衛に参戦するであろうという条項、ソ連改まったロシアは、これを廃棄通告しておりますね。それから、中国が廃棄を打診して、北朝鮮がこれに対して嫌がっている。こういう現状でございますので、この有事対応、特に、今問題を起こしそうになっておる北朝鮮の行動が何とも中国として認められないという状況になったときには、これに対して棄権という可能性もある。  ですから、常任理事国二カ国で必ず否決するのがいるからガイドラインだめだという議論は、私はくみしません。
  27. 宮腰光寛

    ○宮腰委員 中国の棄権の可能性は考えられ得るというお話でありますが、もし、それ以外の結果、いわば中国の拒否権によって国連決議成立をしないといった場合には、やはり国連決議のみを船舶検査の要件としている場合において公海上での船舶検査が不可能となるということに論理の帰結としてなってしまうわけでありますけれども、その際には日本の安全が守れるかどうか、その辺をお聞きしたいと思います。
  28. 佐々淳行

    佐々公述人 お答えいたします。  守れません。
  29. 宮腰光寛

    ○宮腰委員 国連決議がない場合であっても、多国間合意を要件に盛り込むことにより船舶検査を可能であるとする考え方について、国際的に見て問題があるのかどうか、その辺もお伺いいたしたいと思います。
  30. 佐々淳行

    佐々公述人 お答えいたします。  どうも四十一条のことがしきりに議論されているのでございますが、実は四十二条のこともお考えいただかなければいかぬだろうと思います。  四十二条というのは、国連の侵略国に対する陸海空の武力による制裁と書いてございまして、これに対しては、加盟国は、個別協議でございますけれども、要員を差し出せと書いてございます。  四十二条の要請があったとき、それじゃどうするのか。これは憲法九条とぶつかるからだめだということで、事実上国連脱退に等しいことになるのかどうか。  こういう場合は、日米安保条約に依拠せざるを得ない。これは国連憲章にもそう書いてあるわけで、国連軍が行くまでの間、日米安保条約でも何でも、多国籍、NATOでもよろしい、防衛条約の場合はそれを守って武力の行使をしていい、だけれども国連軍が来たらやめろと書いてございます。  ですから、国連に対しての正式の四十一条、二条の要請があった場合、本来は私は憲法九条の自衛権の問題ではないんではないか、憲法九十八条二項の国際条約遵守義務及び確立された国際法規の遵守義務、これを誠実に行うものとすると書いてあるわけですから。憲法と条約のどちらが優先順位かというと、日本はもう明らかに、法制局その他、憲法優位主義です。対等である、同等であるという意見もございますし、国際条約の方が上だという学説もございます。これを日本政治がどれを判断するかということ、政策判断の問題になろうかと思います。  いずれにせよ、この法律に関しての御質問でございますれば、国連決議が前提であるということを自民党も合意なさったとすれば、国連決議が否決をされた場合には日本はこの参加はできない、こう解する。その場合、日米関係が決定的に悪くなりますので、その意味で、さっき守れませんときついことを申し上げましたけれども、すぐ守れなくなっちゃうんじゃなくて、日米安保条約解消論がアメリカから出てくるであろう、こういう意味で非常に日米安保体制というのは危殆に瀕するであろうと思います。
  31. 宮腰光寛

    ○宮腰委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  32. 山崎拓

    山崎委員長 次に、玄葉光一郎君。
  33. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 民主党の玄葉光一郎です。  各公述人の皆様に、貴重な御意見をいただきましたことを御礼申し上げたいと思います。特に、修正協議の焦点について、それぞれの先生方、公述人の方々がお触れになっていただいたということに対して御礼を申し上げたい、そう思っております。  まず、浜谷先生にお尋ねをしたいと思います。  今お聞きをしていて、アメリカ戦争権限法というものを引き合いに出されて、国会関与についてお話をされたわけでございます。今お聞きをしていて、基本的な趣旨に私は賛成でありますが、推測ですが、恐らく、戦争権限法の話を政府に対してするとすれば、米国の戦争権限法はいわば米軍の海外における軍事力の投入なんだ、一方、この周辺事態法案は後方地域で行う活動であって、いわば軍事力の投入には当たらない、したがって果たしてどこまで参考になるのかわからないということを、私は言うのではないかなというふうに推測をいたします。同時に、先ほどお触れになられていた戦争権限法、アメリカにおいては違憲とされたではないかということなども言うかもしれない。ですから、その点についても御説明いただければありがたいというふうに思います。よろしくお願いします。
  34. 浜谷英博

    浜谷公述人 確かに、アメリカにおける軍事力というものと日本における自衛隊というものを全く同一視したような議論というのは、これはもともと不可能ではあろう。  しかし、アメリカも法治国家でございまして、日本も法治国家でございまして、そしていわゆる厳格なシビリアンコントロールをお互いに有効に機能し合おうということでは、国家原則としては一致している。その場合に、アメリカの海外派兵ということですら、これはアメリカの世界戦略でしょうから、日本がそれに対して余りとやかく言うことではございませんけれども、日本と同一視はできないという点では、確かにおっしゃるとおりだと思います。  しかし、アメリカ軍事力行使に対して、どういう法的な手続をとって、そこにどういうシビリアンコントロールがかけられているか、そういう制度的な部分というのは、まさに日本でも参考になるのではないか。  まして、日本の場合、今まで自衛隊の行使というものはそういう形ではやってこられなかったわけであって、いわば初めての経験なわけであります。したがって、どこかを参考にしながら、慎重に慎重に第一歩を踏み出すというのは、これは初めてやるときの原則でございますから、ひとつ参考にして、議論のいわば俎上に上げた方がいいのではないかという形で申し上げました。  それから憲法違反の件でございますが、これは、いわゆる戦争権限法そのものが憲法違反だ、そういう判決ではございません。戦争権限法の中の先ほど申し上げました議会拒否権、この議会拒否権というものについては憲法違反可能性がある。  一九八三年だったと思いますが、チャダ判決という判決がございまして、そこに、いわゆる議会拒否権というのは、厳格な三権分立制度からすれば、アメリカの大統領の行政権もしくは外交権の一部を侵害する可能性があるということで、それも同意決議、ちょっとこれは法律論として細かくなってしまうのですが、もともと、法的効果を持たせるためには必ず議会の可決と同時に大統領の署名の作用があることは、これは皆さんも御存じのとおりでございますが、同意決議というのは、議会の両院の可決だけで、大統領の署名をせずに法的効力を持たせる決議であります。  これが、いわゆる大統領の権限を侵害しているということで憲法違反ということになったわけであります。アメリカの場合は、確かに、私も憲法違反の判決というのは、これは納得ができる気がします。いわゆる厳格な三権分立制というのは、そういうことであろうというふうにも思います。  ただ、日本の場合は議院内閣制でございまして、これは、内閣の存在というのが国会審議のもとに置かれているわけであります。言うなれば、全面否定、不信任決議による全面拒否ということもできるわけでありまして、そういう意味では、いわゆる議会拒否権というのは議院内閣制のもとでは使い得る手段ではないか、政策の項目拒否、そういう意味で使い得る手段ではなかろうか、かえって議院内閣制の中でこそ有効になる手段ではなかろうかというふうに考えております。     〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕
  35. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 厳格な三権分立のアメリカ、大統領が直接国民に選ばれている。違憲判決が議会拒否権について出されたとしても、事の重大性にかんがみて、戦争権限法というのが制定をされた。日本は、国民が直接選んでいるのはまさに国会であります。そういう意味からしても、私も、国会承認というのがシビリアンコントロールのためには必要だというふうに思っております。  それで、今政党間で修正協議が行われております。国会承認の対象になった場合、これが仮に周辺事態の認定であろうと、基本計画の全体あるいは一部であろうと、あるいは自衛隊の出動であろうと、そして方法が事前承認であろうと事後承認であろうと、ちなみに我々は緊急の場合の事後承認というのを認めておりますけれども、いずれにしても、国会審議をするということは、どこまで国会政府が情報を提供するかということは大切な問題にならざるを得ないというふうに思います。  これは、防衛機密との関連で極めて微妙なバランスと緊張の上で考えていかなければならない問題だというふうに思っておりますが、この点については浜谷先生だけでなくて、佐々森本両先生にもお尋ねをしたい。その点についてどのように考えていくべきか。よろしくお願いします。
  36. 浜谷英博

    浜谷公述人 まさに御指摘の点は非常に重要なポイントだと思います。それで、私が先ほどちょっとプレゼンテーションの中で申し上げたことは、一つは、いわゆる議院内閣制の特性を生かそう。特性を生かすというのは、政府・与党というのは、これは一体でありますし、それから、かなりの部分、国会審議ということで政府関係者が国会出席できる。そういう制度的な特徴を生かしますと、事前の協議ということが絶対にできないわけではない。アメリカの厳格な三権分立制のもとですらできる制度が、議院内閣制のもとでできないわけがない。  そういう事前協議によって速やかな承認ということを担保したとすれば、コンパクトな基本計画であるならば、いわゆる三点セットそのままにして、事前のもしくは事後の承認というものは十分可能ではなかろうか。それも速やかな、審議期間の限定をした上でのそういう審議は可能ではないかという感じがいたします。
  37. 佐々淳行

    佐々公述人 お答えいたします。  まさに浜谷公述人おっしゃったとおり、アメリカと違うのは議会責任内閣制である、そして国会の指名を受けた者が内閣総理大臣をやっておる、こういうことでございますので、国難と申しましょうか、国民の生命財産が本当に危殆に瀕しているというときは、与党だろうが野党だろうが、必ず協力をするであろうと私は確信をしておるわけであります。  したがいまして、事前協議の手続を簡易化する、それからメンバーを限定して、先ほどの浜谷公述人の提案は非常に具体的なことでございまして、私、元政府委員として賛成でございます。双方で出し合って、合同の委員会をつくって、そこで、場合によっては、軍事機密の情報を提供しろといったらクローズドドアにしていただく、秘密会にしていただく。そこでもって納得のいく提示をする。  そうでなければ、危なくて出せません。すぐ、この議場を出た途端に新聞記者に囲まれて、今こうだよというような与野党協力の態勢では危なくて出せませんので、それは、野党も国会事前承認を御要求になる以上は、緊急上程の手続だとか、簡素化だとか、委員を限定して、期間を限定して、そして国のためにやるんだ、こういうことでもって、国難至るというときはもう与野党ないじゃないですか。それで、日本人としてやるべきだと思います。  それで、私は、その意味で、事前承認を妥協して入れた自民党の原案もやむを得ないとさっき申し上げたわけでございます。あとは、内閣が早く、小田原評定をやっていないで、早く決めて早く提案をする。どうも、両側が、国の緊急事態のときには情報の開示も思い切ってやるべきなのじゃないだろうかと考えております。
  38. 森本敏

    森本公述人 私は、国会承認については、玄葉先生の御指摘のとおり、国会承認の対象が、周辺事態の認定であれ、あるいは認定をした後必要な措置をとるという決定であれ、あるいはそれに基づく基本計画であれ、国会承認するという手続を踏む際、政府はほとんどのものをテーブルに並べないと国会承認していただけないというのは国会の通常のルールなので、したがって大変厄介な問題がここで起こる。  第一は、周辺事態を認定するに至った背景、いかなる日米協議を行ったのかという、国家の極めて重要な判断材料を国会に提出しなければ国会審議してくれないというのであれば、こういう、国家にとって極めて重要な国家の情報、判断を国会の場で審議していただくことが真に重要かどうかということは、私は疑問に考えるわけです。  しかも、基本計画を審議するということになると、私も役所にいましたので、これは自分の経験で申し上げるのですが、基本計画を国会承認ということになると、国会承認していただけるような基本計画しか出てこない。したがって、基本計画を国会で御承認いただいても、別途の基本計画がある。これは、政府の活動としてやむを得ざることになる。  そういうことがあってはならないので、したがって、周辺事態の認定とか措置とか、基本計画を事前に承認するということには納得しないわけです。最低限、国会で御審議いただくことは、先ほど申し上げたように、憲法その他の問題で、今までやっていなかった、新しい、自衛隊の領域外の活動と国民がどのようにかかわるか、この二つの問題は極めて重要なものなので、そのことについてだけ国会で事後に御承認いただく。  もし、日米間で周辺事態の認定をして、一緒に活動をやって、そして事前の承認が得られなかったら、このときこそ日米同盟は破裂します。私は、そういうことがあってはならないと思うんです。したがって、内閣日米のいろいろな調整を行って、判断を行い、これこそ周辺事態であると認定し、必要な措置をとったら、それは国会として認めていただき、事後に承認をするという手続が最も現実に即するのではないか、かように考えているわけです。  以上でございます。
  39. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 特定の国会のメンバーと内閣で、すべて情報を出し合って協議する。これは一つの、おもしろいというか、意味のある提案ではないかなというふうにも思いますけれども、佐々先生から、国難には与野党ない、これはもっともなことだというふうに思っていますし、ちなみに、いつ与野党逆転するかもわからない、そうも思っておりますから、我々も常に政権を担当したことを念頭に置いて考えているということでございます。  ちなみに、浜谷先生にお聞きしたいんですけれども、国会承認事項になって、その周辺事態が何カ月も継続している、そのときに、一定期間ごとに、新たに国会で、再度承認が必要かどうか。我々は必要だというふうに考えておりますけれども、その点についてはいかがお考えになられますか。
  40. 浜谷英博

    浜谷公述人 前に、PKO法案のときにも私はたまたま公述人をやっておりまして、そのときにも申し上げたんですが、PKOという活動も、いわゆる一九四七年、一番古いのはたしか一九四七年だったと思いますが、そのころから延々と現在も続いているのがある。そういうことに日本PKO参加というものはくみするべきではないというような発想がありましたものですから、そのときにも、継続を更新する際には事前承認と。  ですから、国会の十分な審議ができるというのは、ある程度時間的な幅がございませんと、十分な審議は尽くせません。ということから、緊急な対応能力に欠けているものを無理やりに発揮しようとするよりは、本来の国会の特性を生かした形でシビリアンコントロールの実効性を上げるべきだという発想からしますと、まさに、継続かどうかということは、いろいろな状況の変化ということを前提にして、いろいろな情報も出てまいりますし、間違った情報とか、本来言っていたことと違う状況が出てきたりいたしますので、そういうことを十分勘案、精査した上で、そして新たな活動に入るときには国会事前承認を求めるということを義務づけることの方が国会の本来の機能を発揮できるのではないか、また、それが国会の持っている機能そのものではないかという感じがするわけであります。  いわゆる緊急事態に、対応に決断力を求められるということよりは、合議制の限界がまさにそこでありますし、そういうことよりは、出てきた状況を十分審査して次の段階に備えるということの方が合理的であるし、また能力が発揮できるだろうという感じがいたします。
  41. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 武器使用の問題で一つだけ、森本公述人松島公述人、お二人にお尋ねをしたいと思います。  今政府の出している法案では、後方地域支援について武器使用規定がないということになっています。先ほど森本先生のお話、あるいはこのレジュメの中には、武器使用規定について置くべきであると。我々もそのように思っておりまして、ただ、政府の方は、後方地域において行われる活動なのだから、武器使用というのは想定されないんだということでございますけれども、改めて、この点について一言ずつお考えをお聞かせいただければと思います。
  42. 森本敏

    森本公述人 先生御指摘のとおり、現在の法案の原案によれば、後方地域支援に関する武器使用規定されていないのは、そもそも、かかる後方地域支援活動そのものがいわば戦闘地域と一線を画した後方地域において行われるのであるから、したがって、武器使用を想定しないんだという建前になっていると思います。  しかし、人間の歴史をよく考えてみますと、さきの大戦でも、公海上における輸送船というのが、一番安全な地域だと思っていて、結局は敵に攻撃を受けたり、荷物を奪われたり、あるいは撃沈されるということがしばしばあるわけで、公海上における輸送というのは、いわば安全だと思っている地域で行っているにもかかわらず、最も危険性の高い後方活動であるということが、いわばこの種の緊急事態のある種の不可避の事態、現象ということなのではないかと思います。  その意味において、建前はともかく、いかなる事態においても、公海上において輸送を行う我が方の船舶武器使用ができ、最低限の防衛手段をとれるということになっていることは、この種の活動を円滑に行うために不可欠な措置なのではないか、かように考えております。  以上でございます。
  43. 松島悠佐

    松島公述人 後方支援地域における武器使用については、今の森本公述人と同じであります。  やはり基本的にこの法案は、とにかく戦争は起こらないんだ、だから全く武器を使う状態は必要ないんだという前提を書いてございます。したがって、要らないんだと。先ほど、私、申し上げましたように、そんな地域は本当にあるんだろうか。  不測の事態というのは、我々はそう予定をしても、予定のとおり起こらないというのが現実でありますし、特に、日本海でもしそういうようなことがありましたら、例えば潜水艦とか、こういうようなものはもうほとんど日本領海の近くまで来ておるはずですし、例えば米軍のいろんな艦艇なり、あるいはそれに対する日本の支援なり、あるいは商船なり、こういったものをねらうというのは常識ではないかと思います。かつての大東亜戦争のときにも、日本の潜水艦は、ハワイの沖まで、あるいは太平洋の真ん中まで行って、輸送船を攻撃しておりました。これは当たり前ですね。  ですから、無理に定義をして、一切起こらないんだというようなことをやったんで、武器使用が要らない、こんなことになっていますから、それはそうではないんではないですかということをもう一回考えていただいて、そして、不測の事態でもあれば、武器使用というのは必ず発生してまいります、こう思います。
  44. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 最後に、法案とは直接関係ありませんが、間接的には非常に関連のある問題で、北朝鮮の問題について、佐々先生と森本先生に一つだけお尋ねをしたいと思います。  最近、村山訪朝団ということがささやかれているわけであります。これは各党、超党派で行くということでありますけれども、内容がどうなるのかということに大いに関連すると思いますが、やはり常に一種の不安というか懸念を私自身は持っているというのも事実でございます。  つまり、本当に具体的な成果も期待しない、だからお土産も持っていかないというのであれば確かにいいんでありますが、何かお土産物を持っていってしまうんじゃないかみたいな懸念もどこかにあります。また、北朝鮮の窓口も何かいろいろ逆に混乱を生じさせないかとか、いろいろな懸念を実は常にどこかで持っている。一方で、もちろん、対話は必要だ、そう思っている。  この点、お二人の先生方はどのようにお考えになられているか、お聞かせいただきたいと思います。     〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕
  45. 佐々淳行

    佐々公述人 お答えいたします。  最も危機予測の困難な国ということでございまして、何が起こっても不思議でないし、また自己崩壊するかもしれないし、いろいろな可能性があると思います。自己崩壊した場合も、難民問題が出てきたり、国連によるUNTAC方式による平和統一選挙とか、いろいろなことが起こる意味で、二十一世紀に向けて大変な問題であろうと思っております。  金大中韓国大統領が太陽政策をとっております。このクリントン、金大中ラインの太陽政策、これに対して、我々は、ある程度同情をしながらも、北風、不測の事態に対していつも備えておるという和戦両様の構えが必要であろうかと思います。
  46. 森本敏

    森本公述人 日本のいわば安全保障にとって、現在北朝鮮が日本をどのようにしようとしているのかということについて、私個人の見方は、日米韓という三つの国の相互的な連携をディスリンク、いわば解き放って、そして、日本という国が、北朝鮮から見た場合、韓国やアメリカよりもはるかに思ったとおりにならない国であると認識し、この日本に執拗な不安定要因を与えたり、何らかの脅威を与えることによって、北朝鮮の思っているとおりにしようと考えているのではないかと思います。  これが、昨年八月にミサイルが飛んできたり、今回不審船が我が国に入ってきた現象というものであり、これが北朝鮮のかかる政治的な意図に基づいて行われたのではないかと考えます。  他方、そのことを前提に考えれば、我が国は、政府が説明しておりますように、抑止と対話のダブルトラックのアプローチを進める必要がありますが、しかし、抑止というのは、これは実態がほとんど日米同盟に基づくアメリカの抑止機能に依存してしまっているというだけで、我が国自身としての北朝鮮に対する抑止機能は必ずしもまだ十分ではない。一方、対話については、日朝交渉が断絶した後、我が国は常に北朝鮮に対し対話の再開を提案しているわけで、我が方は待ちのスタイルということだと思います。  日本の国内世論は、北朝鮮に対して大変不安感も持っており、かつ、ミサイルが飛んできても何らの弁解も説明もなく、不審船でさえ北朝鮮は何らの関与がないと発言しているところから、我が国の北朝鮮に対するかかる行動については非常に納得をしない、あるいは強い不安感を持っているというのが、一般国民の偽らざる感情であると思います。  このような国内状況の中で、我が国は、北朝鮮が日朝交渉に前向きに応じてくるのであれば、常にドアを開いているわけであり、わざわざ出ていって日朝交渉の対話の道を開いたり、日朝と、ここで対話をする必要は私はないと思います。我が方は、黙って待っておれば、北朝鮮から応じてくるまで待つというのが外交の原則であり、そのための今までの外交努力というものを続けている限り、今の段階で、何らか我が方からわざわざ出ていって、対話の道を開くという必要は全くない、かように考えています。  以上でございます。
  47. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 大変参考になりました。ありがとうございました。
  48. 山崎拓

    山崎委員長 次に、山中あき子君。
  49. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 山中でございます。  皆さんと違って私は十五分ですので、恐れ入りますが、簡潔なお答えをお願いできればと思います。  先ほど森本先生の方から出ておりますレジュメを拝見しておりまして、大変重要な三点、一つは、国会承認国民の支援、協力に関する措置を入れるということ、これは自衛隊の出動と同時に。その点は非常に大事な点である、まさに共感するところでございます。  それからもう一点は、船舶検査に国連安保理の決議は必要である。この点も非常に同感をするところでございます。  そして、三点目は、「地方公共団体及び国以外の者による協力」のところに、あらかじめこの法律の中で例示すべきであるという点でございます。法律の中かどうかは別として、昨日はそのマニュアルの作成ということについての議論をさせていただいておりますので、中か外かは別としてもそういうことが提示されるであろうというふうに思っております。  その辺のことを踏まえまして、周辺事態ということで昨日、四項目プラス二項目ということで六つの包括的な統一見解というのが出ましたが、森本先生、これについてはどういうふうに評価なさいますでしょうか。
  50. 森本敏

    森本公述人 既に四つの事態政府より説明されていますが、昨日二つのケースが加えられたことにより、周辺事態がいかなる考え方で今後認定されるかについての基本的なシナリオといいますかケースが、ほぼ包括的にというか網羅的になったというふうに考え、大変わかりやすいと思います。  ただ、もちろんこの六つの分類というのはそれぞれがオーバーラップしておりまして、単独であるはずがなく、どれもが深く関連しており、ケースを六つに分けたからといって、例えばある事態がこの六つのうちのどれに当たるかなどという議論は実態として余り意味がなく、かつ、どこかの事態が、例えば第一のケースが第四のケースに移行し、第五のケースを包含して第六のケースもあり得る、こういうのが実際の国際情勢におけるいわゆる周辺事態というものではないかというふうに考えます。
  51. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 最終的には政治の意思というもの、見識というものが問われているというふうなお答えかというふうに思います。  それから、国会での承認の以後、実際に活動が終了した場合に、事後国会に報告するのは当然のことというふうにおっしゃいました。私もそれは当然と思いますけれども、これから初めてのことを行うときに、それをどのように検証するか、評価するかというシステムがもう一つ必要ではないかというふうに思っております。  つまり、独立した、そして客観性のある、権限を有する安全保障の専門的な集団というかグループ、そういう委員会なりを組織して、そこがきちっとその報告を客観的に検証し、次へのステップにしていく、こういうチェックをする機能ということについて私は必要ではないかと思っておりますが、この点について、森本先生、いかがお考えでいらっしゃいますか。
  52. 森本敏

    森本公述人 周辺事態に対して、まず認定をし、必要な措置をとるという決定が行われ、基本計画が策定され、我が国が実際の行動を行う際、なるべく速やかに国会に報告されるべきであると思いますし、また、すべての活動が終わった際、いかなる活動をどのような背景でとったのか、いかなる問題があったのかということをきちっと報告されるという必要があると思います。  その際、実際にどの種の活動を行ったのかということについては、私はやはり、具体的な特定の委員会において、現場で指揮をとった実際の指揮官を国会に招致していただいて、大臣の御説明も重要でございますが、実際に現場で指揮をとった者の問題あるいはそれぞれが体験したことを、今後の日本のために国会で十分に御審議いただくというかお聞きいただく、このことは今後国会の役割というものにとって特別に重要なのではないか、このように考えております。  以上でございます。
  53. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 委員会でのそういった検証というのと同時に、例えば、日本もいろいろなシンクタンクがありますけれども、外交と安全保障に関しましては、例えばアメリカで言う安全保障の調査会とか、またイギリスのいろいろなシンクタンクも含めて、そういった、国から離れた部分でのきちんとした客観性を持ったグループというのをもっとやはり日本は育てていくという意味でも、もう一つ、外側でチェックをする、そういうことについてはいかがでいらっしゃいますか。
  54. 森本敏

    森本公述人 実際いかなる事態があるか、そしてそれにどのように取り組むのかということを余り簡単に想定して物事を議論できないわけですが、いずれにしても、このガイドライン関係法に基づいて我が国が今後とる措置は、我が国にとって初めての経験であり、そして今後非常に重要な国の活動の体験になると思います。  それを今後積み重ねるということなので、できるだけ専門的な見地から、例えば、そういうことは現場でできるかどうかは別として、国会議員の方々やあるいは専門家の人が現地を実際に見て、どのような活動が行われているのかということを側面から見ていくということも、その後の我が国の活動にとって参考となり、意味のあることなのではないかと考えております。
  55. 佐々淳行

    佐々公述人 御指名ございませんけれども、その点について一言。  まず、審議会、何百ございますか、今行政改革でやっておりますね。治安問題の審議会がございません、一つも。防衛、安全保障問題の審議会が一つもございません。これを与野党でもっておつくりいただく。これが、この周辺事態法の副産物として、今まさに御指摘のチェック機関と申しましょうか、審議会をぜひおつくりいただくように、これはお願いをしたい。  それからもう一つ国会を重視いたしますのは、残念ながら、予算という問題があるんですよ。これは、新しい行動をやりますと、今アメリカのクリントンも、イギリスでも六十億ドルとかなんとか、予算の追加予算をやっておりますよね、コソボに対して。これと同じで、これだけのことをやりますと既配分の予算じゃできません。したがいまして、予算のことも御理解をいただかなければいけないので、事後報告は当然やるべきであろうと思います。
  56. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 お二人から、国会での検証の仕方、途中での監視、そして今おっしゃった、審議会になるかどういう委員会になるかわかりませんが、そういった第三者的な機能というものをきちっと整えるということで、私は大変力強い支援を得た気がいたします。  それから、今佐々先生がお立ちになりまして、先ほど安保の枠内ということの網かけが必要とおっしゃいましたが、もう一点、承認の場合に、緊急性がある場合には事後承認ということで、私は、これもやはり周辺事態の定義と同じように、すべて網羅はできないにしても、ある程度包括的な統一見解でこういう場合は緊急であるということを決めておきませんと、どれが緊急かというところでもめてしまいますと、迅速性ということの問題で大変難しいということがあると思うのですが、その辺はいかがですか。
  57. 佐々淳行

    佐々公述人 お答えいたします。  内閣安全保障室長初代を仰せつかりまして、起こり得べき危機ということでもって、ハイジャック対策だとかミグ25亡命対策だとか大韓航空機撃墜事件とかいろいろやりました。そのケースケースでもってつくっていくと切りがないんですね。何をもって非常事態と呼ぶか緊急性と呼ぶかというのはもう少し、例えば直接の軍事、交戦が行われたとかあるいは日本輸送船が被害をこうむったとか、具体的に書けと言われてもなかなか書けません。これは、さっき申し上げました審議会や何かで御審議いただくのが適当なのではないだろうかと思います。
  58. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 先ほどから危機管理のことについて出ておりますけれども、内的な要因、外的な要因、それを総合して日本の国と国民をどう守るかという有事法制というのもその一部と私は思っておりますが、そういった総合的な危機管理の法の整備ということの必要性ということについて、先ほど佐々先生からおっしゃられていましたが、森本先生、いかがお考えでいらっしゃいますか。
  59. 森本敏

    森本公述人 私は、きょう佐々先生の御説明を聞いて少しびっくりしたことがあるんです。それは実は、先般参議院の公述人にお招きいただいた際、ほとんど同様の趣旨のことを私は述べたことがあります。  私の趣旨はこういうことです。  すなわち、今回この周辺事態法をつくる。さらに領域警備法律整備する。それから有事法制、第一分類から第三分類をつくる。ROEも今後整備していく。あらゆる既存の法律、新法、すべてを網羅する一つ法律がなければ、個々の、例えば現場の指揮官は、目の前に起きている事態がどの法律のどの条項によって動くのかという極めて複雑な、法の専門家でなければとても弾一発も撃てないという事態が起こってくるわけで、かかる問題をひとつきちっとするためには、名称は何でもよいと佐々先生はおっしゃって、私も全くそうだと思いますが、私は、国家緊急事態法という国家安全保障基本法をまずつくって、そして今回の周辺事態法はその第二章を埋めるもの、第三章は有事法、第五章は国連協力、第六章は邦人救出その他の問題。  それで、問題の第一章こそが今後取り組むべき最も重要な問題で、これは国の安全保障の根幹にかかわる基本原則をここで決め、例えば、国家安全保障について内閣総理大臣が責任を持つというのはどこの法律にも書いてないわけです。したがって、国家安全保障をだれが責任をとっているかということは日本の法体系の中にないという摩訶不思議な状態になっているわけで、内閣総理大臣の責任、そして立法の措置についての特例、あるいは国家緊急事態を宣言すること、あるいは宣言の基準、宣言した場合の国民の権利義務にかかわる問題、あるいは国家としての安全保障に関する基本報告を、例えばアメリカのナショナル・セキュリティー・ストラテジーのようなレポートを年に一回きちっと行政府国会に報告すること等、国家安全保障基本にかかわる総則を第一章でつくって、それらをすべて包含する一つ法律の中に盛り込む。これが国の安全保障の法体系を最も一元的に、かつすっきりさせるのではないか、かように考えております。
  60. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 それでは、最後になりますが、ペリー氏も、余り理解されてはいないが大変重要であるということで、予防防衛ということをおっしゃっております。  先ほど森本先生は、これから冷戦後どういうふうな安全保障に行くかの今過渡期であるとおっしゃいましたので、予防外交なのか予防防衛なのかプリベンティブアクションなのか、いろいろあると思いますが、ARFトラック2、それから世界のいろいろな会議にお出になっていらして、もう一方の、対話も含めた抑止の方のこれからの方向性についてお話しいただければ大変幸いでございます。
  61. 森本敏

    森本公述人 国家安全保障というのは、結局、実力を行使せずに抑止によって国家の安定を維持するというのが最も賢明な方法だと思います。しかしながら、抑止はしばしば破れ、他国から要らざる侵略や脅威を受けるということがあり、この場合は、断固としてこれを排除しこれに対応するという国家の意思と能力がなければならないと思います。  すなわち、抑止と対応というのは、いわば両輪の輪のごとく、実力をもって他国の脅威とか不安定状態を排除しこれに対応するということであり、我が国にとってみれば、これを、日米同盟と日本の防衛力を両輪の輪のごとく動かしてやるということだと思います。  しかしながら、よく考えてみますと、そのような抑止とか対応を働かさなくてもよいような環境国家を置くのがもっと賢明なやり方で、したがって、我が国にとってみれば、国家を最もよい安全保障環境に置くための努力というものが必要で、その点については、実はガイドラインに、国家をよい安全保障環境に置くためのいろいろな寄与として、例えば先生の御指摘のように、多国間あるいは二国間における安全保障対話や交流、あるいは軍備管理、軍縮面での努力、あるいはPKOや国際的な人道援助活動に対する日米協力等、いろいろな、我が国をよい環境に置いて、他国から見て、このような努力をしておる日本に手を出さない方がいいといった状態に置く努力をするということが最も重要で、これを、外交面で切っていえばそれは予防外交、防衛面で切ってみれば予防防衛という概念になるんだろうと思います。  この点は、冷戦後に特に重要な我が国安全保障努力であり、もう少し国としてトータルな考え方に立って概念形成を行い、外交政策を力強く進めていくという必要があると考えております。  以上でございます。
  62. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 ミリタリーとノンミリタリーの両手の外交ということ、ありがとうございました。  日米間も含めてルール・オブ・ローの確立が必要なのだということをきょう学ばせていただきました。公述人の皆様に御礼申し上げます。  これで質問を終わります。
  63. 山崎拓

    山崎委員長 次に、西村眞悟君。
  64. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 自由党の西村でございます。  冒頭、佐々公述人が、我が国の国防議論は抽象的、神学的なものから具体的になったと評価されておりますが、したがって御報告しなければなりません。それは国民の意識だけであって、この国会はまだ抽象的、神学的でございます。  その意味で、この法案には、部下の命に責任を負う指揮官の意見またその軍事常識が、反映されるどころか封印されたままでございまして、その意味で、私は、松島公述人がその観点から意見を述べられ、記録に残ることを高く評価する、このように思うんです。  広くは不測の事態対処する危機管理法の一環としての法であるにもかかわらず、部隊の安全が害される不測の事態を、殊さら起こらないという架空の前提を押し通しておるわけです。これで、審議の最中に私の心の中にあったことは、相手を知らず、事態も知ろうとせず、ただ内部の説明だけが事実のすべてであると思い込んで、いたずらに兵隊を殺したノモンハンやガダルカナルのこととオーバーラップしてきまして、この架空の官僚答弁に乗れば、また将来若い隊員の命をいたずらに奪うことになる、この国家法律が。そう思っておりましたら、答弁している官僚に思わず殺意を覚えるほどでございます。  問題のポイントを申し上げます。  不測の事態は起こり得るんです。予測できないことが起こるのが危機なんですから。そして、そのために対処しなければならない。今の武器使用で、松島公述人、これは十分ではないと私は思います。  そして、その不測の事態というのは、戦時国際法における交戦者からの攻撃である、ゲリラ、コマンドーを含む攻撃であるとするならば、これに対処して任務を遂行するための要件は、隊法八十八条の国際の法規及び慣例による武力行使、この意味武力行使という言葉を使えばびっくりするのがおるというふうないろいろな配慮があれば武器使用でもよろしいですけれども、それを行使する基準は国際の法規及び慣例であるというふうに自由党は主張しておるわけですが、松島公述人の御意見を伺いたいと思います。
  65. 松島悠佐

    松島公述人 私も全くそのとおりだと思います。  ここで本当に神学論争から出て本当の安全保障、防衛という問題を論議していただくときにぜひお願いをしたいことは、もう武器使用という言葉は使われない方がよろしいんではないか、こう思います。といいますのは、警察予備隊ができたときに、とにかく武器使用というのを警職法を準用してつくったわけです。警察は、御承知のとおり個人の判断でピストルを中心にしてそれを使うということです。これは、警察によって治安を保たれているような状態でたまたま暴力を行使する、今の世代でいってみれば、暴力団とかあるいは強盗だとか、あるいは、かつて左翼の相当暴れた連中がおりました。せいぜい鉄パイプを投げたり催涙ガスを投げたりそんなことをする程度なんです。  我々が今考えなければいけないのは、先ほど西村先生もおっしゃいましたように、交戦者なんです。これは、指揮官がいて、ちゃんと公然と武器を持って、その程度の制限はありません、そして組織的に武力を行使する、こういう相手なんです。これに、警職法を準用した個人の権限というようなものはまず適用できないと考えるのが常識だろうと思います。ですから、どこの軍隊でも、個人武器使用というようなことで動いている軍隊はございません。まして、正当防衛緊急避難で、それ以外は危害を与えないような武器使用で任務を達成しろという方が無理だと思います。
  66. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 ありがとうございます。  具体的にこの法案についても、佐々先生、私どもは、隊法八十八条の国際の法規及び慣例に基づいて武力を行使する、必要であれば、これをそのまま入れればよろしいと申し上げておるわけですが、御意見を伺いたいと思います。
  67. 佐々淳行

    佐々公述人 お答えいたします。  武力の行使と武器使用というのが、自衛隊法上はっきり使い分けをされております。国連憲章におきましても、武力の行使が出てくるのは二条だけ、四十二条、侵略者に対する警察行動と、五十一条の集団的、個別的自衛権。我が国内法では、全法律を探しましても、もちろん憲法に書いていないし、書いてあるのは、自衛隊法八十八条のみでございます。それで、この八十八条は、一応国連憲章の五十一条、自衛権、まあ個別的自衛権だけだといたしましても、それを憲法九条で受けて、自衛隊法三条で受けて、七十六条、出動下令、八十八条と、こうなっております。  ところが、この国際の平和維持のための協力活動、これについては、本来は四十二条、封鎖なら四十一条ですけれども、これは九条じゃないんですね、自衛権じゃないですから。したがいまして、これは私の解釈では、憲法九十八条の第二項、その確立されたる国際法規とか国際条約は誠実に遵守せよと書いてございます。国連憲章も国際条約でございます。日米安保条約も国際条約でございます。これを自衛隊法が受けていないんです。したがいまして、どうしても武力の行使というのを解釈するにはちょっと苦しいかなと。  そこで、私が主張しておりますのは、自衛隊法武器使用規定、あちこちにございます。八十二条の海上警備行動、これはもう御存じのとおり。八十四条は領空侵犯措置、「必要な措置」と書いてあって、武器使用と書いていないんですよ。それから九十条の治安出動。それから九十五条の事態防護がございますね。これがさらに足が生えてきたのがPKO法の二十四条でございまして、今度のが十一条でしょう、周辺の。全部違うんですよ。これは整合性を欠いております。  例えば、指揮官の命令で撃てというのが九十条なんでございますが、それ以外は全部個人なんですね。それから、PKO法に至っては、自己またはその場にいた隊員の防護であって、九十五条を除くと書いてございます。そうすると、シアヌークの警備はできないんですよ。それから、タケオの施設攻撃されても、これを九十五条で守ることができないという欠陥の武器使用法でございます。  これを、今度の十一条はどうなさるのか。やはり基本国連協力ということで、九十八条から引っ張ってきて、八十八条の武力の行使の次に一項立てて武器使用という規定をつくって、そして、例えば不審船の場合には小口径のあれでもってねらって撃っていいと書くとか、あるいはそれを政令で決めるとか、きちんとしたやり方をして武器使用規定をはっきりしてやらないと、まさに松島公述人おっしゃったように、先生おっしゃったように、現場の者が死にます。  私、浅間山荘でそれをやってきてずっと怒っているんです。正当防衛緊急避難、適切に状況を判断し、適切に武器使用、けん銃の使用を考慮せよ、どうしたらいいんですかということですね。だれも責任者がいない、指揮官がいない。警職法七条では、指揮官による射撃はできないんです、個人の判断ですから。これは改めないといかぬと思います。
  68. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 私も、もうぼつぼつバーチャルリアリティーの条文の説明を真に受けるのではなくて、国防の議論は、この法律をつくれば人がいたずらに死ぬ可能性があるという観点から、切れば血潮の出るような具体論をしなければならないと思っております。  武器使用武力行使と二つの言葉があります。軍隊では、部隊として動くときは武力の行使、これは戦時国際法で大体そうなって、武器使用という言葉は、歩哨とか倉庫番とかが夜中襲われたときに一人でぽんと撃つというのが武器使用だという言葉ですから、私は、むしろ実体は武力の行使、これが正しいとは思います。正しいとは思いますが、御意見を承りました。  さて、この四名の先生方の中で、本件周辺事態における自衛隊部隊の行動の本質を明確に言及されたのは松島公述人だけでございました。これは、自衛権に基づく防衛作戦の一環である、このように位置づける以外にいかなる位置づけ方があるのだろうか。神学論争はさておきまして、私、残り時間五分になりましたから、四名の先生方、簡潔に、これは何だと、神学論争はさておいて、御意見を、この行動国家主権の自衛権に基づく行動の一環なのかどうかをお答えいただきたいと存じます。
  69. 佐々淳行

    佐々公述人 お答えいたします。  ただいまお答えしたように、これは国連憲章四十二条の国連警察活動に対する協力、それから、日米安保条約に基づく第六条の後方支援、したがって、自衛隊の独自の防衛行動ではない、国際協力、条約遵守義務であろうかと思います。
  70. 浜谷英博

    浜谷公述人 私は、先ほど申し上げた中で、周辺事態と今議論されているものの中にかなりの温度差があるというふうに申し上げました。したがって、ある準有事と言われるような性質のものの中には、限りなく自衛権の発動に近い活動が含まれているということは指摘できようかと思います。ただ、それ以外の部分というのもかなり多うございまして、それに対する対応がこの法律の少なくとも主眼になっているということは認めざるを得ないところであります。
  71. 森本敏

    森本公述人 私の解釈は浜谷先生とほとんど同じです。つまり、自衛権の行使というのは、国連憲章五十一条に基づいて、主権国家が、国連が必要な措置をとるまでの間、武力攻撃があった場合、国家の権利として行使するものでありまして、武力の行使がないときに、すなわち平時から有事になるまでの緊急事態に同盟国と一緒になっていろいろな活動を行う、例えば日米間で情報の交換を行うという活動は、これは自衛権の行使とは国際法上は概念されない、いわば国と国の協力関係概念であると思います。  もちろん、しかしながら、有事緊急事態を厳密に線を引いて分けるなどというようなことが実体的な国際社会の中ではなかなか難しいということは事実でありまして、したがって、有事緊急事態の間にかなりなオーバーラップの部分があると考えますが、今回の法案に基づいて我が国が米国に対して協力をする、例えば公海上における輸送等は、少なくとも自衛権の行使という行為そのものではない、かように考えております。
  72. 松島悠佐

    松島公述人 もう結論だけ申し上げますが、今、憲法の中で自衛権というのは、とにかく領土に対する急迫不正の侵略があったとき、こうなっていますが、私は、やはり国益ということをもっと考えるべきだと思います。これは、領土に来なくても、こういう事態で明らかに国益が制限をされ、そして日本の安全と平和を脅かされているという状況は、やはり自衛権を発動できる事態である、こう考えて差し支えないのではないか。  あるいは、それがどうしても個別自衛権で読めないのなら、例えばこういう場合でしたら、集団的自衛権のごく一部を、アメリカの作戦の本当の後ろの方だけ支援をする、こういうことだって私は読めると思います。  ですから、やはり自衛権というのを基本に物を考える、そうしませんと、本当に自衛隊行動なりあるいは部隊の行動なりということが、しっかりした基準が出てこない、こう考えるわけであります。
  73. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 危機対処法律議論は難しいなと今思ったんです。それは、危機対処法というのは、小さな危機に対処するにはそれより以上の対処体制で対処しなければできない。したがって、最大の危機に対処する体制を整えねばならない。これがなければ危機対処法ではない。したがって、いろいろな段階のあるところを、私が質問したのは、この周辺事態における行動において、最大の危機に対処する場面はどういう事態、どういう国家の本質的行為かという観点から質問申し上げました。いろいろな事態があるのはわかるんです。  それで、終わりましたので、質問を終わります。ありがとうございました。
  74. 山崎拓

    山崎委員長 次に、児玉健次君。
  75. 児玉健次

    児玉委員 日本共産党の児玉健次です。  私は、今審議されているこの法案が、日本国憲法、とりわけ平和の原則と民主主義の原則と正面からぶつかり合う内容になっている、そういう立場でこれまで審議参加してまいりました。まだ審議は緒についたばかりです。きょうは、せっかくおいでいただきましたから、順次御質問させていただきたい、このように考えます。  最初に、浜谷公述人にお尋ねしたいと思います。  先ほど、米国の戦争権限法についてお話がございました。もちろん、アメリカ日本では憲法も違いますし、そしてそこからくる制度上の大きな相違もありますけれども、しかし、国際的な具体的な事例として非常に興味深く拝聴いたしました。  そこで、さらに敷衍して御説明をいただきたいんですが、アメリカでは、大統領が行う戦闘行動の継続を議会が支持しない場合には、軍隊投入を即時中止させる議会拒否権、コングレショナルベトというふうにいいましょうか、それが確立しているというふうに私は承っております。そのあたりも含めてお話しをいただきたいというのが一点です。  それから二点目は、先ほどの先生のお話の中で泥沼化の防止というお言葉がございまして、その泥沼化の防止というのはベトナム戦争に対する反省に発したのではないか、私はそういうふうに思いますので、そこのところを、それが今の仕組みにどのように投影していったのか、ビルトインされていったのか、その二点をお尋ねしたいと思います。
  76. 浜谷英博

    浜谷公述人 泥沼化の方の話からさせていただきます。  これは、戦争権限法のつくられた背景とか、それに触れませんとちょっとなかなか御理解は難しいかなと思いますが、簡単にだけ申しまして、まさにベトナム戦争の反省に立っておりました。  あのベトナム戦争を世界じゅうの反対の中からどうにかとめようとしたときに、議会はそれをとめる手段を持っていなかったわけであります。一生懸命とめようとしたのが、議会の予算をとめるという方法によって辛うじてカンボジア爆撃をとめたとか、いろいろなことがございますけれども、憲法上の権限もしくは議会の三権分立上の権限に基づいてそれをとめたということは、実績としてはありません。  そこで、いわゆる議会の復権の動きというのが一九七〇年代に出てまいりまして、その復権の動きの中で、ちょうどまたその背景にはプレジデンシーという、アメリカの大統領職に対する非常な不信感があった時期でありました。ニクソンのウォーターゲート事件なんかがそれでございます。それから国防省の秘密文書の暴露なんという、トンキン湾事件の実態なんかも暴露されてまいりました。そういうようなことから、いわゆる議会の復権の動きの中でこの戦争権限法が成立したわけであります。  これは当時、憲法上の権限配分にかかわる法案としては、大統領拒否権をオーバーライドして成立した、たった一つ法律であります。したがって、アメリカ法律の中でも非常に異彩を放っている法律であろうという感じがいたします。それが背景でございます。  コングレショナルビートーの話でございますが、確かにこれは、アメリカの厳格な三権分立の中の議会拒否権でございますから、アメリカの大統領の外交権を侵害するものであるという議論が、つくられた当初からございました。コングレショナルビートーというのは総称でありまして、戦争権限法で使われているのは同意決議と言われるものであります。そのほかにも、一院による決議、いわゆるワンハウスビートーとかコミッティービートーなんというのもございます。こういうようなものをいろいろな形で議会のシビリアンコントロールの歯どめの手段に使おうとしていたわけであります。  ところが、一院によるビートーなんというのは、これはまさに、両院制で両院の可決でなければ法的効果を持たないという大原則違反する。それから同意決議の場合は、大統領の署名を求めなくても法的効果を持つということは、これは大統領と議会の両方の合意によって法的効果を持たせるという、いずれにも反しているということで、一九八三年に違憲判決が出たわけであります。ただ、この違憲判決後もこの条文そのものはそのまま生きておりまして、使われないながらも、まだ現在存在しております。  また、おかしなことに、違憲判断が出た以降のほかの法律の中にも、一部、議会拒否権の規定というものが新たにつくられておりまして、したがって、ここでは、外交権を侵害するという憲法上の問題にだけは使われ得ない制度かもしれないけれども、それ以外の面では何か作用している部分があるのではないか。言葉は悪いんですけれども、一種のおどし的に、こういう手段があるぞというような見せしめ的な意味で持っているのではなかろうか。  ただ、私の個人的な見解としては、戦争権限法上の議会拒否権というのは明らかに憲法違反だろうというふうに思います。ただ、日本の議院内閣制のもとではかえって有効に作用する手段ではないかというのは、先ほど申し上げたとおりでございます。
  77. 児玉健次

    児玉委員 恐縮ですけれども、今のお話、非常に興味深く拝聴いたしました。  そこで、政府と議会との関係、先生が「新ガイドラインおよび関連三法案におけるACSA関連の諸活動」という論文をお書きになっている中に、たしかこういう一節がありました。「わが国では、内閣が常に国会に対する連帯責任を負い、国会の信任を内閣存立の基盤としている。しかし通常、法律成立後の有権解釈は、裁判所の確定判決を除き、具体的規範審査制をとるわが国では、常に行政府主導で行われているのが現状である。」  この点で、米国の政府と米国議会との関係、そして日本政府日本国会との関係、それを比較的に見て、先生どのようにごらんになっているでしょうか。その点ちょっと補足していただきたい。
  78. 浜谷英博

    浜谷公述人 かなり学問的な話になってしまいますので、総論的なものということだけ、要点を申し上げます。  アメリカの場合には三権分立制そのものが厳格でございますので、基本的には大統領すら議会に出てこれないというような状況がございます。ですから、そういう中でのシビリアンコントロール、こういうような状態のときに制度としてそれをどう活用するかということと日本におけるような状態とは、本来比較にならないわけであります。制度の根幹が違うということであります。  私が先ほどから強調しておりますのは、日本の場合に、政府・与党それから国会委員会というものがかなり親密に情報交換をやっているわけでありますし、ここで面と向かって議論もできるわけであります。こういう中で、議会と政府の間の情報交換なり議論なり意見のすり合わせなりというものは、議院内閣制のもとではもっと発揮していいのではないか。とりわけ、国家緊急事態なんかにおいては、国民が注視している中で行われるわけですから、それこそがまさに歯どめになるんじゃないかという感じが強くいたします。
  79. 児玉健次

    児玉委員 松島公述人に次にお尋ねしたいと思います。  私たちはこの法案審議の中で、いわゆる戦闘行動が行われる前線と、そして後方地域とかいろいろ言われますけれども、それは本来区分けができないと。そして兵たん、ロジスティックス、それがどういうものかという点についても、これまでの審議の中で可能な限り明らかにしてきたつもりです。  先ほど松島公述人は、私の聞いた限りで言えば、こういうふうに御発言があったと思います。米軍と交戦中の相手国から見れば、米軍に対して後方支援を行う日本米軍と同じであって、不意急襲的攻撃は常に予測しておく必要がある、それが近代戦の常識だ、そういうふうにもしかしたらお話しになったかもしれません。  その立場と、この法案の第三条一の四、定義をしているところですけれども、後方地域について、「我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲をいう。」この定義が成立しなかったらこの法案自体が成立しないんですが、そのあたりについて公述人の御意見を伺いたいと思います。
  80. 松島悠佐

    松島公述人 私が先ほど申し上げましたのは、ほとんどそういうことだと思います。アメリカと同じとは申しませんでしたが、アメリカと共同してやっているということでした。  この案で戦闘地域と後方地域を分けて考えているのは、私は、アメリカが戦闘をしている、そういう地域と一線を画する後方地域というのは存在すると思います。本当に直接的な戦闘をしている地域と、全くそういうことがない地域とは分けられると思います。そういう認識でこの法案は分けてあると思います。ただ、私が申し上げましたのは、その後方の地域というところででも、後方の攪乱のような散発的な行動というのは常に予測をしておかなければいけない、こう申し上げたわけでございます。  したがって、最後に例示をされました法案の定義の中で、現在戦闘が行われていない、活動の間を通じて戦闘が行われないと認識する地域、これも正しいと思います。しかし、そこにやはり先ほど申しました括弧書きでも、散発的な後方地域への攪乱といったものは除く、こう書いてあると全部わかると思います。それが書いてないものですから、私先ほど申しましたように、そういう地域は、全く起こらないというような地域はないのではないでしょうかと。その括弧書きを入れるということは私は大変大事だと思います。そうすることが通常の軍事的常識ではないかなと思います。
  81. 児玉健次

    児玉委員 森本公述人にお尋ねしたいと思います。  先ほどの御意見の陳述の中で、三番目でしたか、国以外の者に対する協力要請、地方公共団体、一般の国民、協力要請の内容が例示されていない、お配りいただいたレジュメの中でも同様のことが書かれております。  それで、先生がこれまでお書きになったものの中で、こういった事態に向けて、ディフェンスの九八年春季号、その中でこういうふうにおっしゃっている。「新ガイドラインを履行するためには、日米両国が同盟国間の協力として国家及び国民の総力を動員して実行して行かなければならないということを意味する。」そこで私はどうしても、一九三八年、第七十三議会で激しい議論が行われたあの国家総動員法を想起せざるを得ないんですね。国家総動員法では、第二条で「總動員物資トハ左ニ掲グルモノヲ謂フ」と例示しております。そして第三条で「本法ニ於テ總動員業務トハ左ニ掲グルモノヲ謂フ」、これまた例示しておりますが、しかし、この総動員法が日本があの太平洋戦争に突入していく上でどんな役割を果たしたかというのは、もう多くのことを述べる必要はないと思うのですね。  それで、私は公述人に、言うところの行政に対して国民の生活や権利を一括して白紙委任するに近いこういう法案と、そしてあの戦前の総動員法、それを歴史的にどのように対比なさるのか、その点について御意見を承りたいと思います。
  82. 森本敏

    森本公述人 私は、一九七八年、今からいえば旧ガイドラインができ上がったときに、外務省、現在の北米局、当時のアメリカ局の安全保障課に勤務しておりました。したがって、旧ガイドラインのでき上がりぐあいというのは、課員として作業にかかわっていたということが言えると思います。  旧ガイドラインと新しいガイドラインの決定的な違いは、いわば旧ガイドライン自衛隊米軍の間の協力関係というものであることに対して、新しいガイドラインは、いわば日本の地方公共団体あるいは国以外の者、いわば一般の国民がいろいろな形で国全体として協力をするという形になっている。ここが、つまり米軍自衛隊だけの協力関係というものではないということが新しいガイドラインの極めて重要な特色の一つであると考えます。  しかしながら、我が国にさきの大戦のときにあった国家総動員法というのは、二つの意味において、今我々が比べることがなかなかできないと思います。  一つは、当時は法律にどう書いてあれ、ある種強制力というものを持っていたわけで、例えば法律のもとで国民の一人一人がどのような協力をするかということについて、ほとんどノーというものが言えるような国内状況になかったわけですが、この新しい法律は、国以外の者に対する協力は、その協力や支援を依頼することができるという規定になっており、当然のことながら国民はノーと言えるというところが決定的に違う点であるというふうに考えます。  もう一つは、国民の持っておる権利義務基本的な人権というのが、帝国憲法のときと新しい憲法との規定は、その規定においても実体においても全く違うわけで、したがって、この法律によって個々個人の権利義務侵害されるということはゆめゆめあってはならないし、またそのようにはなっていない、そこが決定的に違うと思います。  決定的に違うのであれば、国民の側から見れば、この法律に基づいていかなる協力や支援が求められるのであろうかということは、法律の中に、例えばそれが医療の協力だとか輸送の協力だとかということをお願いすることになるんですということを例示的に説明してあるのが、国民が理解をしやすく、安心をしやすく、協力もしやすいということであり、丁寧であると思います。  ついでながら言うと、自衛隊が行う協力については、この法案の別表に例示的に述べてあるとおりでありまして、国以外の者に対する協力が全く例示的に示されていないというのは、かえって何を依頼されるのかわからない。ノーと言えることはもちろんでありますけれども、何が依頼されるのかわからないという立て方になっている。それはやはり丁寧ではないのではないか。むしろ、どういう協力を求められることになるのですということがあらかじめ法律の中で、具体的にではありませんが、例示的に書かれていることが丁寧であり、国民の支持が得やすい、かような趣旨から申し述べた次第です。  以上でございます。
  83. 児玉健次

    児玉委員 終わります。
  84. 山崎拓

    山崎委員長 次に、辻元清美君。
  85. 辻元清美

    辻元委員 社民党の辻元清美です。本日は、お越しいただきましてありがとうございます。  まず最初に、私は浜谷公述人にお伺いしたいと思うんです。  米軍に対しての後方地域支援などを行うかどうか、基本計画を策定するかどうか、それ以前に、米軍行動そのものに妥当性があるかどうかというところもしっかり検証してみないと、日本が国際的な批判を受けるというような立場に立ちかねない事態も想定されると思うんですね。といいますのは、米軍行動がすべて日本の国益に合致するとも考えられませんし、その際、はっきりと日本が主体的に判断するということが大事だと思います。  そこで、この委員会での審議の中で、最近の米軍行動に対して、もしくは米国の国益を主体とした世界じゅうのいろいろな行動がありますけれども、それについて外務省などの答弁を見ていますと、例えば、米軍が国際法上違反するような行動をするわけがないと言い切ってしまうような答弁もあるような、そういうふうな答弁をされる方も結構いらっしゃるんですが、私は、そのように言い切ってしまうような判断というのは非常に不安が残るんです。  そこで、浜谷公述人に、そういう外務省答弁などに対してどのようにお考えなのか、もしくは、私は米国と日本の国益が一致しなくて協力関係が持てない事態というのもあるのではないかと考えるのですが、その点について、最近のアメリカをごらんになっていましてどのようにお考えでしょうか。
  86. 浜谷英博

    浜谷公述人 外務省答弁がどういう前提のもとで、どういう具体例を取り上げて答弁したかどうかは今つまびらかではありませんので、その答弁自体が妥当かどうかということはわかりません。ただ、アメリカが必ずしも国際的にすべて是認されるような、そういう行動だけをとっているということは当然考えられない。いろいろな形で批判できるようなものもたくさんあるかもしれない。かもしれないですね。  ただ、今の法案というのは、いわゆる日米安全保障上の実効性であるとか日米間の信頼性の向上とか、そういうものを目的に掲げてやっている以上は、日米安保というのはいわゆる国連の掲げている理想に反しないということが前提でつくられておりますから、したがって、その行動に縛りがかかっている限りは少なくとも国際的に批判されるような行動ではなかろう。例えば、そういう行動が仮にあったとしたら、それは日本は主体的に判断して、それに対しては批判をするということは、これは許されてしかるべきだというふうに考えます。
  87. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、例えばこの委員会一つの論点になっているのは、台湾の問題なんですね。台湾に対しての日米の見解が必ずしも一致しているとは言えないというふうに私も考えるわけなんですけれども、日本の国益から考えますと、中国との友好条約がありますし、台湾問題については除外するのが適当ではないかと、はっきりとそのようなことを態度として示すべきではないかというこの委員会での指摘もあるわけなんです。その際に、米国がどういう国益に沿った態度に出るかはわからないわけなんですけれども、この点については、浜谷公述人はいかがお考えでしょうか。
  88. 浜谷英博

    浜谷公述人 第一義的には、まさに日本の国益が尊重されるべきでありまして、アメリカのとった行動が仮に日本の国益には必ずしも沿わないというようなことであるならば、必ずしもそういう協力はしない可能性もある。  しかし、台湾という地理的な問題とか、要するに日米安保条約のいわゆる枠組みとか、それから地理的な範囲とか、そういうものを考えますと、別に除外をしていないということは自動的に入っているということにもなりますから、したがって、そういうものの対処というのは、まさにそのもの、国益によるとしか言いようがないのではないかという感じがします。
  89. 辻元清美

    辻元委員 今の御意見を承りまして、自動的に入っていると。ところが政府は、入っているとも入っていないとも、そこのところは非常にあいまいでありまして、ですから、この委員会でもそこの点をはっきりしろということを申し上げているんですけれども、この後もまだ一般質疑等ございますので、そこは取り上げていきたいと思うんです。  さて、松島公述人にお伺いしたいんです。  非常に興味深く御意見を拝聴いたしまして、途中までは私と同じ意見なんですけれども、結論の部分がちょっと違う点があるんです。実際に後方地域支援について、後方攪乱攻撃というか、そういうことも想定されるし、必ず安全だというようなことは言えないという現場からの非常に貴重な御意見であったかと私は思うんです。  その際に、今の法律ですと、民間の船舶や航空機にも武器弾薬や武装した米兵を運ばせることは排除されていないというふうになっています。民間の船や飛行機でも武器弾薬を運べるんだ、協力依頼の可能性はあるんだというのが今までの流れだったわけなんです。  ところが、松島公述人現場からの声をお聞きしますと、武器使用の点について先ほどからるる御意見を述べていらっしゃいますけれども、民間の船舶や航空機というのは丸腰ですので、私は、これは護衛艦をつけるんですかと聞いたら、つけないと。監視はするかもしれないけれどもというような発言もありました。そういう中で、私は、やはり武器弾薬や武装した米兵というのを民間の船舶や航空機に運ばせるというのは、これはもう今の公述人の御意見を伺いましても、はっきり排除した方がいいのではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  90. 松島悠佐

    松島公述人 作戦支援の中で民間の船にどういうものを運ばせるか運ばせないか、これは私がここで申し上げるようなことじゃないと思いますけれども、護衛というようなことで申しますと、例えば、御質問されて、政府答弁は護衛はつける必要がない、こうお答えになったと。これは先ほどから何回も言いますように、戦闘は起こらないんだ、こういう前提でございますからそういうお答えになったんだと思います。  しかし、今私、何回も申しましたように、不測の攪乱みたいなことはあるよということになりますと、これは、日本は仮にそういう民間の船を沈めないかもしれませんが、周辺事態で、要するに米国と相手になっている国がどういうような考えでやるかわかりません。これは、この前、北朝鮮ですとテポドンがいきなり去年の夏飛んできました。例えばこんなようなことを考えているような国だったら、民間の船だろうと何だろうと沈めると思いますね。だからそれは、そういうことはないということを、例えば日本政府がこのように言っても、戦争をしている、武力を行使するのは相手ですから、相手がやってしまおうと思えばやると思います。  ですから、そのときに、そういう事態もあるよというふうに、後方の地域というのは後方攪乱の攻撃もあるかもしれない、それに対して民間の船も被害を受けるかもしれない、こういう認識に立てば、当然ながら援護をするし、そういうことをするんだと思います。  そのときに、民間の船に運ばせない方がいいとか運ばせた方がいいとかいうのは、私にはお答えすることはできません。これは、米軍の支援として、例えば自衛隊の船では運べないようなもの、あるいはそういうものを民間にチャーターをしてお願いをして運んでいる、こういう事態が必要なのかもしれません、作戦支援上。だから、そんなことはやるべきでないとかやるべきだとか私が申し上げられませんが、護衛ということで考えれば、そういう事態が起こるというふうに認識をすれば、当然ながら護衛を考えるのは当たり前だな、こう思います。
  91. 辻元清美

    辻元委員 それでは、森本公述人にお伺いしたいんですけれども、いただきましたレジュメで、先ほど別の委員の方も取り上げられました、地方公共団体及び一般国民が支援、協力すべき内容と範囲については例示すべきであるという意見なんですけれども、今百七十七自治体の地方議会で、公述人も御承知のとおり、慎重審議や反対を求める意見書が続々と、ここのところ倍になってきたというような報道も見受けるわけなんです。  一つは、例示するのと同時に、自治体への説明などが非常に不十分ではないかという点を私は委員会が始まる以前の予算委員会から指摘してきたんです。ところが、説明するといっても、十項目ぐらいの紙を書いて、さっぱりわからぬというようなのが今の状況なんですが、この説明不足の点についてはいかがお考えでしょうか。
  92. 森本敏

    森本公述人 先生の御指摘の点は、私は全く同感です。同感ですが、やはり法案がまだどのような形になるのかという全体像が見えないので、なかなか地方公共団体に説明するということが十分に行き届かないのではないかと思います。  しかし、法案がきちっと衆参両院で通過すれば、これがどのような形で実際に実行に移されるのかということについては、単に各県のみならず、いろいろなルートで、いろいろなレベルできちっと国民に説明する必要があると思いますし、また、わかりやすく説明するためのいろいろな資料やブックレットをつくって国民にわかりやすくやるということがぜひとも必要であるというふうに考えます。  この点については、したがって、いろいろなやり方があるので、それは政府が既に十分にお考えいただいていると思いますが、地方議会や市民の集会に出ていって政府がきちっと、この法案がどういう内容のものになるのかということを説明するあらゆるオペレーションはぜひとも必要である、かように考えております。
  93. 辻元清美

    辻元委員 今、説明は非常に重要であるという御指摘だったと思います。私は、法案ができ上がってからというより、法案をつくる前に、森本公述人も御指摘のように、例示をしてあって、それでこれについてはどうかということを事前にもやはりよく説明をして意見を聞くことが必要ではないかと思います。  ただ、今これは例示もされておりませんので、それ以前の状況であるので、果たしてこれでこのまま法案成立させてしまうということは非常に無責任になるのではないかという態度で今審議に臨んでおります。  さて、時間が参りました。非常に今後の審議に参考になる御意見をいただいたと思います。ありがとうございました。
  94. 山崎拓

    山崎委員長 これにて午前中の公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時九分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  95. 山崎拓

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。公述人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にさせていただきたいと存じます。よろしくお願いを申し上げます。  次に、議事の順序について申し上げます。  佐久間公述人、坂元公述人、隅野公述人、前田公述人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。  それでは、まず佐久間公述人にお願いいたします。
  96. 佐久間一

    ○佐久間公述人 本日は、この委員会におきまして私の意見を申し述べる機会をいただきましたことを、まことに光栄に存じております。  私は、現在審議されております関連法案につきまして、その意義を評価し、また必要性を認識しているものでございますので、法案等に賛成の立場から私見を述べさせていただきます。  この法案についての意見を申し述べる前に、現在に至るまでの経緯を振り返ってみたいと存じます。お手元に資料をお配りしてございますが、その順序で申し上げたいと思います。  冷戦時代における我が国の防衛体制につきましては、私は、あの時期、我が国の防衛政策というものは、防衛力を整備し、充実し、それを使って訓練を行うということに重点が置かれたと認識しております。それは、いわばハードの世界であります。一方、その防衛力を必要な場合にどのように使うのかといういわばソフトの面については、法体制が欠落したままで推移してきたというふうに考えております。  当時の日米防衛協力関係基本となりましたのは、申すまでもなく、昭和五十三年に作成されました、いわゆる旧ガイドラインであります。このガイドラインはそれなりに成果があったと私は考えております。例えば、有事における日米の共同作戦行動のやり方といったことが具体的に検討されましたし、また、このガイドラインを契機にして陸海空自衛隊共同訓練というものが充実してまいりました。  一方、この旧ガイドラインが持っている問題点というものはあったと思います。  一つは、御承知のとおり、この作業は両国間の研究協議でありますので、その成果については両国に義務を与えるものではない。裏返して申しますと、私は当時、現役時代いつも懸念しておりましたのは、せっかく両者が共同して計画をつくっても、いざというときに本当にそのとおりできるんだろうか、アメリカにこれは単なる研究協議だと言われたらもうそれで終わりではないかという懸念も持っておりました。  またもう一つは、日米共同を行う場合の、それを具体的に行う法的な枠組みが欠落したままであったというのは事実だと思います。したがって、もし事が起こった場合、不幸にして我が国がそういった事態に直面した場合には、恐らく、その事態にどう対処するかということが混乱のままに推移し、あるいは、必要な時期に対処ができない、措置ができないという、タイミングを失するということもあったのではないかというふうに考えます。すなわち、事態に有効に対処できないために我が国があるいは被害を受けるということもありましたでしょうし、あるいは、それらの状況を通じて、日米の同盟関係の信頼性というものに対する影響も及ぼしたのではないかというふうに考えております。  もう一つは、これは当然でありますけれども、旧ガイドラインは、冷戦時代における我が国の防衛構想、その場合の日米協力というものを前提にしたものでありますので、当時から課題になっておりました、いわゆる極東事態についての検討も行われませんでした。ましてや、現在のような冷戦後の環境における日米の共同についての検討は手がつけられなかったのは当然であります。  さて、冷戦が終わりまして、我が国を含め世界の安全保障環境は大きく変化いたしました。その状況については私は今さら申し上げることもないと思いますけれども、一言で言うならば、我が国だけではなく、各国にとって、冷戦後の安全保障という課題は非常に複雑になり、難しくなってきたということが言えると思います。  ここに三つ、「紛争要因の多様化」等書いておりますが、最後の「米国の基本戦略」、これは私の私見でありますが、湾岸戦争でも見られましたように、もしどこかで事が起こった場合、アメリカとしては、その地域にある前方展開部隊とその当事国によって事態を最小限に食いとめる、そして次に兵力を集中して相手を排除するという戦略、これはアメリカの地政学的な条件から今後とも変わらないと私は見ております。ということは、事が起こった場合に、その当事国の自助努力というものが不可欠であるというふうに考えております。  こういった冷戦後の安全保障環境の変化を受けまして、当然のことながら、我が国においても政策の再構築が行われてまいりました。内容につきましては、そこに列記しているとおりであります。  新しい防衛計画の大綱につきましては、その中に示されております我が国の防衛力の役割、これは、紛争あるいは危機の予防、抑止、そして事が起こった場合の対処、そういった三つの考え方をまとめたものだというふうに私はとらえております。また、この防衛力の役割に任務の多様化ということがございます。したがって、当然ながらガイドラインの見直しということにつながったというふうに認識しております。  平成八年の春、日米両国の首脳によって発表されました日米安全保障共同宣言、私は、これは恐らく将来、歴史においても大きな意義を持つものだというふうに考えております。と申しますのは、冷戦が終わって国際状況が変化した後においても、依然として日米両国が同盟関係を堅持するということを内外に宣明したという意味で、歴史的な意義を持つと私は考えているわけであります。  そのような経緯を経て今回の法案に至ったというのが、私の認識であります。  次に、新しいガイドラインにつきまして、これをどのようにとらえるかという、私なりの認識を申し上げたいと思います。  まず第一に、実効性に対する配慮がなされている。当然ながら、ガイドラインというものは条約ではありませんので、そういった性格のものではありませんが、前のガイドラインの経緯を踏まえまして、今回のガイドラインは、閣議で報告されたと同時に、その実効性確保のための閣議決定がなされたと私は認識しております。  また、この内容は、新しい情勢対応する措置というものが盛られております。例えて申し上げますと、より望ましい安全保障環境を構築するための日米の協力、すなわち、軍事交流だとか軍備管理、あるいはPKO活動における協力といったことがうたわれております。軍事面につきましても、新たな事態の要素、すなわち弾道ミサイルとかテロ、コマンドー攻撃、こういったことについても触れられております。  また、新しいガイドラインにおいては、依然として、日本に対する武力攻撃事態における日米協力ガイドラインの中核であるということをうたっております。と同時に、周辺事態における日米の協力、しかもそれは、我が国の安全にとって極めて緊密な関係を持っているということが述べられております。  そういったことを踏まえてつくられたのが今回の法案であると私は認識しております。  全般につきまして申し上げますと、申すまでもなく、ガイドラインの実効性を確保するための措置が具体化された形になってあらわれたというふうに私は認識しております。今日に至るまでの関係者の努力というものは非常なものがあったと私は評価しているところであります。  また、我が国安全保障にとっての空白の領域、すなわち法体制について、それを整備する第一歩であるというふうに私はとらえております。もちろん、これですべて安全保障に関する法体制が整うわけではございませんけれども、少なくとも、今まで手がつけられなかった分野に第一歩が踏み出されたというふうに考えております。  次に、周辺事態対処の意義でありますけれども、この法案の第一条に目的が明示されている、すなわち、我が国の平和と安全の確保ということが目的として掲げられておりますし、私は、これは極めて的確といいますか、明確な目的だというふうに思います。そのために日米安保体制の実効性を確保するというのは当然でありますが、それはいわば手段であります。目的は我が国の平和と安全の確保である、そのための手段が日米安保体制の実効性を確保する、そこのところはよく認識しておく必要があるんだろうと私は考えております。  また、事態対応基本原則につきましては、政府、地方公共団体あるいは民間を含めた一体的な措置ということがうたわれておりまして、これも的確な対応だろうと私は考えております。  次に、基本計画の国会への報告でありますが、これも法案にございますように、私は、あらゆる事態に的確迅速に対応するためには、法律の枠の中で政府が決定し、措置を行うというのが最も必要であり、不可欠だと考えているところであります。  武器使用につきましては、幾つかのケースで定められておりますが、私は、これは任務達成のための必要要件だというふうにとらえております。すなわち、自衛隊の部隊等が任務を達成するためには、みずからに被害を生じては目的は達せられないわけでありますので、任務を達成するという観点から最小限の武器使用というものは必要だというふうに思っております。また、この点につきましては、従来論議されてまいりましたPKO活動あるいは邦人輸送における問題点が改善されたものと認識しております。  次は、まことに口幅ったい言い方でありますが、この法案ができる、あるいはできた後の政治及び関係組織、団体に対するお願いということを申し上げたいと思います。  まず、政治に対する期待。申すまでもなく、この法案等が一日も早く成立することを私は念願しております。それが、今まで戦後長期間にわたって空白になってきた法体系を整備するということになるからであります。  また、法案を御審議いただく場合、私のお願い申し上げたいのは、一つは目的、すなわち、繰り返しになりますが、我が国の平和と安全の確保という目的を達成するためにいかなる手段があるのか、これは複数のものがありましょう、その手段を客観的に評価していただきたい。すなわち、それぞれの手段が、目的を達成するという意味でそれに適合しているのか、適合性、また、目的を達成することができるかという可能性、また、いろいろな手段を講じることによって生ずる結果を受け入れられるかどうかという受容性、また、それがタイミングよく行われるかという適時性、そういった客観的な基準でそれぞれの手段を検討していただきたいということであります。  もう一つは、我が国の主体性と日米関係との調和ということであります。新しいガイドラインに、周辺事態における措置について三つに区分しております。日米両国がそれぞれ主体的に行う活動における協力、それから次は純然たる米軍に対する支援、三つ目は運用面における協力であります。この三つ意味をそれぞれ的確に判断していただいて御審議をいただけたらというふうに思うわけであります。  また、同盟の意義ということも忘れてはならないと思います。同盟というのは、申すまでもなく、異なった国が共通の目的に向かって協力することであります。それは単なる一方的な依存であってはならない。もちろん同じことをやる必要はないと思いますけれども、日米関係においても、日本ができること、なすべきことについてはきちんと日本の判断でやっていく、それが同盟を永続させる大きな要素だろうというふうに思います。  かつて、私は、アメリカのある著名な国防関係者と話をしたときに、このガイドラインの問題が出てきたころでありました。もし日本周辺で事が起こって、日本の安全に極めて深刻あるいは緊密な関係がある事態において日本が何もしないということになれば、恐らくアメリカ国民の同盟関係に対する不信というものは大きくなるだろう、それはアメリカ政府が幾ら国民にこの同盟関係の必要性を説いても、それは説得は不可能である、それは心の問題であるということを言いました。私は、その言葉が今も焼きついております。  次は、この法案等が成立した以後の努力でありますけれども、この法案につきまして、周辺事態安全確保法案につきましては、これが公布されてから施行するまでの期間は三カ月以内となっております。また、自衛隊法の一部改正案は、公布の日に施行されるということになっております。そのためには、関係組織、機関において相当な努力が必要と思われますし、その項目についてはこのペーパーに列記したとおりであります。  最後に書いておりますのは、安全保障に関する建設的な論議政策の確立ということでありますが、これにつきましては、もう御承知のとおり、集団的自衛権と集団安全保障、あるいは武力行使と武器使用、さらには大きな課題である有事法制等、今後、さらに国内において論議を尽くし、結論を出すべき課題がたくさんあると私は考えております。どうか、これらの課題につきまして、建設的な論議をしていただきまして、国民の大多数が納得する方向で国を導いていただきたいと思うわけであります。  以上、私の見解を申し上げましたが、最後に、この法案の目的にありますように、我が国の平和と安全の確保という大きな目的のために御尽力いただきますよう国民の一人としてお願いいたしまして、陳述を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  97. 山崎拓

    山崎委員長 ありがとうございました。  次に、坂元公述人にお願いいたします。
  98. 坂元一哉

    ○坂元公述人 大阪大学法学部の坂元でございます。  私は、今回のガイドライン関連法案は、我が国安全保障の基盤である日米安全保障条約冷戦後の国際情勢に適合させ、この条約の目的に沿って、日米同盟を効果的に運用し、日米同盟の抑止力を高める、そのために必要な取り決めと考えて、賛成するものであります。この法案が、国会の十分な審議を経た上で、なるべく早く成立することを願っております。そうした立場を前提にした上で、本日、三つの点について、私の考え、あるいは希望を述べさせていただきたく思っております。  まず一つは、この法案に対する国会関与という点であります。  私は、この法案法律になり、もし現実に実施されるという場合には、我が国安全保障の根幹にかかわり、国民生活に多大な影響を及ぼすと思われますので、実施される措置については、ただ国会への報告というだけではなくて、承認を取りつけるようにした方がよかろうと考えております。この点は、既に各党の御議論の中で、そういう方向になりつつあると聞いております。ただ、承認の時期や方法、何を承認するかなどという点については、考え方の違いがあるとも聞いております。  私は、この承認という問題は、国権の最高機関である国会によるシビリアンコントロールの問題であるとともに、迅速な行動の必要性、アメリカ側から見た日本行動の確実性、信頼性という問題も含むので、難しいのだろうと考えております。  例えば、もし事前承認ということになりますと、民主的なコントロールはより強化され、自衛隊などの行動は明示的な国民多数のコンセンサスを背景に行うことができます。しかし、周辺事態の認定、基本計画の内容、自衛隊の出動すべてについて承認を得るということになりますと、行動の迅速性は失われる可能性が高くなります。もちろん審議を迅速にやればいいではないかということも言えますが、それでは、国会の御判断が十分な議論を経ずになされるということになるおそれもあると思います。  また、アメリカ側にすれば、日本国会基本的に信用するにしても、もしものことがあった場合のことも考えなければなりませんので、日本行動を計算に入れるということが難しくなると思います。  では、迅速性ということも考えて、一部だけ、例えば自衛隊出動だけ事前承認にすればという考えもあると思います。防衛出動や治安出動には事前承認が必要ということから、この考え方には理解できる点もございます。しかし、これですと、他の対米協力活動は行われているのに、自衛隊だけの活動が不承認になるという可能性もあります。現実にそうならなくても、アメリカ側から見れば、自衛隊が出動するかもしれない、しないかもしれないという不確定な状況の中で行動せざるを得ず、現実には、自衛隊の協力抜きの作戦も考えなくてはならなくなると思います。  私は、周辺事態の認定、基本計画の内容、自衛隊の出動、これらはすべて一体のものとして考えられておりますから、それらすべてについて、政府事態が発生して、ある一定期間経過した後あるいは事態の終了後に承認を求める、すなわち事後承認がよいのではないかと思っております。  なぜそう思うかと申しますと、それは、このガイドラインに基づく行動の迅速性や確実性を高めるというだけではなくて、政府行動の徹底した検証をする、そのための時間的余裕を与えるという点からもよいのではないかと考えるからです。もし万一周辺事態が起こり、日本行動した場合には、後で国会がその行動を時間をかけて検証し、問題点を洗い出し、事のよしあしを議論して、意思表示をするというふうにしてはいかがかと考えるわけであります。  それでは政府への白紙委任ではないかという批判もあろうかと思います。確かに、政府の判断に任せることになりますが、やはりこのような問題では、まず政府を信頼し、次に議会で政府行動のすべてを綿密に検証するという形で、民主的なシビリアンコントロールを強化するのが一番よい道ではないかと考えております。もし仮に承認が得られないという事態になれば、それは内閣不信任と同じというくらいの位置づけにして、国会が真剣に議論するのがよいと思います。  事後承認といえば、原則は事前だけれども緊急時は事後承認という考え方もあります。これについては、それでよいのかもしれないと私は思いますが、問題がないわけでもないと考えます。  事態の進展の中で、いつ、緊急であると判断するのか。緊急でない場合は事前に承認を求めることになりますが、それをいつ求めるのか。事態は比較的緩やかに動いている段階から急に深刻になるということもありますから、必ずしもその判断が容易でない。しかも、まだ緊急とは言えない段階で国会でオープンに議論をしますと、それが、事態の推移に影響を与えるおそれもあると思います。私は、したがって、国会承認は事後承認とするのがよいと思っております。  さて、次に、私は、この法案の目玉の一つであります、自衛隊による日本米軍への協力、特に後方地域支援という言葉の問題について、感想を述べさせていただきたく思っております。  この後方地域支援という言葉は、新しい日本独自の用語で、それだけになじみが薄く、後方支援との区別などが問題になっていると思います。  政府は、周辺事態に際して、日本からの米軍に対する物品及び役務提供などの支援措置は、我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲、すなわち後方地域で行うと説明しています。そして、そういう範囲での支援ならば、日本の支援は武力行使とは一体化しないと説明しています。  これに対しては、専門家の中から、現代戦では戦況が刻々と変化するので、一体そういう地域を設定できるかどうか疑問であるという指摘がなされてきました。しかし、私は、政府が言うように、そういう地域が設定できるとして話を進めたいと思います。その場合、私は、そうした後方地域が設定できたとしましても、そこにおける支援が常に必ず武力行使と一体化しないとは言えないのではないかと思っております。  例えば、公海上の後方地域でアメリカの艦船に給油をした。ところが、その給油を受けた艦船が急にミサイルを発射せざるを得なくなった。こういう場合はいかがでしょうか。日本の意図はどうであれ、客観的に見れば、武力行使と一体化しているとみなされるのではないでしょうか。  もちろん、これは少々極端な例なのかもしれません。それに、私は、そうした後方地域支援をすべきでないと言っているのではなくて、むしろ、周辺事態に際して、日米安保の目的に沿って行動する米軍には、当然でき得る限りの支援を行うべきですし、それがこの法案の趣旨であると考えています。  ただ、私が心配しますのは、こうした戦闘区域と一線を画した後方地域というものを設定し、そこだけで米軍を支援するということにしますと、何か日本は危険でないところだけで支援したがっている、そういう印象を与えるのではないかということであります。  周辺事態は、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態ですから、もともと日本にも危険が忍び寄っているわけであります。そうしたときに、日本のとるせっかくの行動が、あたかもただ安全第一のように見える、実際は違ってもそう見えるというのは残念ですし、危険を賭して協力している相手方を失望させるのではないか、そこが心配な点であります。  私はもちろん、この後方地域支援という言葉が、我が国武力行使は自衛目的に限るというこれまでの政府見解との整合性を保ちながら、冷戦後における日米の防衛協力関係を強化し発展させようとする努力の中から出てきた、ぎりぎりの言葉であると理解しております。その点は理解できますが、しかし、やはり苦しいところがあるのも事実のように思います。  この言葉についてもそうですが、私は、日本は現在既に、安全保障の根本問題について国民的に大きな議論をすべき時期に来ていると思っております。そうした議論の中で、この後方地域支援にも関連して、最も重要な問題の一つに、いわゆる集団的自衛権の問題があると考えています。  日本は現在、集団的な安全保障の世界の中で繁栄を享受し、日米安保条約という明示的に集団的自衛権に基づく安全保障の取り決めを結び、しかも、さまざまな意味で、大国としての責任を問われるようになっております。私は、それにもかかわらず、集団的自衛権の行使ができないという立場をとり続けることは難しいし、また賢明でもないと考えております。もちろん我が国の憲法は、国際紛争解決の手段としての武力行使を禁じております。我が国は、その憲法の精神にのっとって、武力の行使については極めて慎重に行うべきだと思っております。  しかし、集団的自衛権は、国際法上の権利であって、義務ではなく、その行使をするとしても、日本独自の判断で行使することができるものであります。そこで、日本の場合、例えば、集団的自衛権の行使はできるが、平和憲法の精神上、武力行使はあくまで慎重に行うというような、国家としての基本的立場を設定し、その上で、具体的な行使の形態と範囲について、政策判断として、必要ならば法律でその限度を定めるというようなことができればよいのではないかと考えています。  もしそういうことができれば、例えば周辺事態に際しましても、日本は、我が国領域並びに我が国周辺の公海上及びその上空において、米軍に対して物品及び役務提供などの支援措置を行うというようにすることができると思います。これですと、アメリカから見て、ガイドラインの価値はより高まりますし、日本アメリカだけに危険を負わせているというような印象も持たれにくいと思います。  もちろん、今述べましたことは一つの考え方でありまして、いろいろな批判があるのも承知しております。しかし、私がここで申し上げたいのは、平和国家として武力行使に極めて慎重であるべきという要請と、新しい状況の中で安全保障についても国際社会で責任と名誉ある立場を占めるべきとの要請の間で、どのような理論的立場が可能か。二つの要請をうまく調和させる、すっきりとした理論的立場はどういうものか。そうしたことについての議論が、この法案をきっかけに、ますます活発になることを希望したいということでございます。  さて、最後にもう一つ日米間の協議の問題について、簡単に触れさせていただきたいと思います。  この新ガイドラインによる日米防衛協力は、対等な主権国家間における協力関係でありますから、日米両国間の協議が重要になると思います。新ガイドラインは、日米間の緊密な協議と、そのための包括的なメカニズムの構築をうたっております。それは大変結構なことであると思います。周辺事態を認定し、それに日米が共同で取り組む際には、日米両国がそれぞれに主体性を保ちつつ、いかにそれぞれの国益や主張を調和させていくかということが重要な課題になります。  日米両国は既に半世紀の間、同盟関係にあり、両者の立場の理解も、意思の疎通もかなりのものがあると思いますので、そうした課題への対処はもちろんできると思います。ただ、協議する中にはイエスもあればノーもありますから、なおさらのこと、協議を円滑にかつ濃密に行うように、日ごろから協議の道筋を十分に明確にし、整備しておき、もし万一周辺事態が発生した場合に、混乱がないようにしていただきたいと希望しております。  この点、周辺事態の認定と、それに対応するための協議は、日米安保におけるいわゆる事前協議との関連もありますので、そのことについても、両者の間がどのような関係にあるのかということを、制度的に明確にしておくべきではないかと思います。  ところで、事前協議に関してですが、最近までに明らかになったアメリカの外交文書によりますと、一九六〇年の安保改定交渉におきまして、朝鮮半島有事の際に日本から米軍が直接出動する場合、果たして事前協議の時間的余裕があるかどうかということが問題になりました。  アメリカ政府は、アメリカ軍部の強い要求もあって、朝鮮半島有事の場合に、国連軍として出動する米軍については事前協議の対象とはしないという趣旨の約束を日本政府に求めたのですが、アメリカの外交文書を読む限りでは、日本政府アメリカ政府の要求を受け入れたようであります。これについては、書いたものにしておりますので、必要ならば後でお届けいたします。  その約束がその後どうなったかは不明ですし、私はまさか今でもそれが有効とは信じたくありません。しかし、そのときの問題は今でも残っていると思います。すなわち、事前協議は、ある場合には極めて迅速に行う必要があるということであります。したがって、事前協議を実のあるものにするためには、そうした場合のための態勢の整備、例えば日米両首脳の日ごろの意思の疎通、特に安全保障問題に関する意思の疎通、また緊急時における両者の連絡体制の整備なども重要な課題であると思います。  以上、私は、ガイドライン関連法案に関しまして、国会関与周辺事態における後方地域支援、日米間の協議の三点に絞って、みずからの考えをお話しさせていただきました。このような発言の機会をいただいたことを深く感謝しております。(拍手)
  99. 山崎拓

    山崎委員長 ありがとうございました。  次に、隅野公述人にお願いいたします。
  100. 隅野隆徳

    隅野公述人 隅野と申します。  私は、周辺事態措置法案を中心に、憲法学の立場から問題点を指摘して、御参考に供したいと思います。  同法案は、同時に審議されています自衛隊法改定案や日米物品役務相互提供協定改定の承認案件とともに、一九九七年九月に改定されたいわゆる新ガイドラインを具体化し、アジア太平洋地域への日米軍事戦略を積極的に展開し、国家総動員体制をつくり上げようとする性格を持っています。したがって、平和主義、民主主義、基本人権を保障する日本国憲法の諸原則との矛盾、対立を深め、全面化させるものと言えます。  以下、四点について述べます。  第一点は、法案で、自衛隊アメリカ軍と共同で日本の領域外での軍事行動を行う法的根拠を定め、日本国憲法九条の戦争武力行使の永久放棄や交戦権の否認を侵害する危険性を持っていることです。  法案一条の「周辺地域」の用語が不明確であり、また、周辺事態の判定基準があいまいで、日本に対する武力攻撃の発生がないにもかかわらず軍事行動がされる可能性があって、従来の政府見解による個別的自衛権発動の立場からは説明のつかない事態が考えられます。  しかも、周辺事態の判定の主体も手続も定められてなく、そのため、情報や指揮関係等から、アメリカ側の判定に日本が実質的に従わざるを得ない場合も想定され、日本の自主性、国家主権侵害の危険が指摘できます。  また、アメリカ軍行動に対するいわゆる後方地域支援の内容は多方面にわたっており、政府見解では、戦闘地域と一線を画した後方地域でのもので、それゆえに武力行使と一体化せず合憲としています。しかし、戦闘地域と後方地域とは軍事上不可分一体で相互流動的であり、後方地域支援が武力行使または武力による威嚇と実質的に結びつく危険があり、同時に、攻撃を受けた国からの反撃の危険性に連なります。  このことは、第二次大戦後、日本が憲法の平和主義原則に基づき、直接戦争参加することなく平和的発展を進めてきた方向を大きく転換させることであり、また、そうした武力行使ないし戦争参加の拡大は、集団的自衛権の憲法上への明記など憲法改定の方向と結びつくものであり、憲法研究者として深く憂慮せざるを得ません。  第二点は、法案日米安保条約条約改定の手続を踏まずに一層拡大強化、変質させ、それが、日本国民のみならずアジア諸国民の平和と安全に脅威を与えていることです。  日米安保条約は、本来、一九九一年のソ連崩壊により廃棄ないし解消して当然であったと言えましょう。しかし、安保のいわゆる再定義ということで、アジア太平洋地域全体の平和と安定のためとして軍事優先の観点で位置づけられ、本法案等により、アメリカのみならず日本が再び対外軍事進出の根拠法を持とうとしている、そのことに対し、アジア諸国民は強い警戒と批判を持たざるを得ません。とりわけ中国の台湾問題は、一九六〇年の安保条約極東条項に台湾を含ませたまま今日まで継承していますので、今回の法案により、中華人民共和国に対する軍事的な内政干渉の意味合いをも持ってきて、矛盾の焦点になっていると言えます。  日本国民の平和と安全のためには、本法案のように日米安保条約五条や六条の規定をも超えて日米軍事同盟を強化拡大する方向ではなくて、日本国憲法の平和原則に基づき、非同盟中立を追求し、平和外交に徹することが何よりも重要と考えます。日本国憲法前文に規定されている全世界の国民の平和のうちに生存する権利の保障を基軸に据えて、経済、技術、教育、文化、医療等の諸分野で、日本がアジア諸国民との友好、連帯を発展させることが特に重要ではないでしょうか。  第三点は、アメリカ軍への自衛隊の後方地域支援等に当たって、内閣総理大臣が閣議を経て決定する基本計画を国会に事後報告するにとどまり、そのことが議会制民主主義や法治主義原則侵害する危険性を法案は持っていると言えます。  この点は、国会政党間の折衝で、原則的に国会事前承認、緊急の場合には事後承認に修正する動きが報道されています。しかし、そのような修正がなされたとしても、法案の持つ全体的な違憲性や危険性を治癒するにはほど遠いと言えましょう。国会事前承認といっても、周辺事態では多くの場合が緊急性を持ち、結局事後承認の線になることが予測されています。  そのほか、法案では、広範な委任命令の想定を含んでいることをも含め、軍事行動の緊急性と実効性等が重視され、国民意見国民の利益の尊重が二次的に置かれる傾向があります。これは、日本国憲法が、十五年にわたる日本の侵略戦争の反省に立って、憲法前文に、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意して国民主権を定め、国民の平和保障を基本的に主権者である国民の意思決定によるとしたことを無視するものと言えます。  第四点として、法案は、憲法の地方自治と財政の諸原則をも脅かし、国民基本人権を広範に侵害する危険性を持つことが問題です。  法案は、第九条で、地方公共団体の長に基本計画に基づく必要な協力を求め、また、国以外の者に必要な協力を依頼できると規定しています。しかし、そのことが地方自治体や民間諸団体の不安と警戒心を大きく呼び起こしています。  政府見解は、これを地方公共団体に対する一般的な協力義務と述べていますが、憲法の地方自治原則によれば、地方自治体は、国と対等・並立の関係にあり、命令・服従の関係にはありません。国の機関委任事務の場合はその例外と言えましょう。しかし、その場合には、国と自治体の間に争いがあれば、地方自治法百五十一条の二で、裁判所の判断に基づく処理が定められています。  ところが、本法案による自衛隊軍事行動に伴う地方自治体への協力要請、協力依頼で、例えば地方自治体の管理する港湾や病院の使用で紛争や対立が起きたとき、その問題処理が明確に法的に定められてはいなく、予測のつかない混乱と侵害地方自治体と地方住民に与える危険性を持っています。  また、法案に伴い、予算や財政上の諸原則に与える問題も重大で深刻です。日本軍事費が、戦後、朝鮮戦争をきっかけに急速に増加し、今日では、核兵器を持たないにもかかわらず世界で順位の高い位置にあることは周知のところです。その上、自衛隊の海外出動となった場合、一層軍事費が増すことは一般的に予測されますが、この点は、ぜひ国会で深く御審議いただきたいところです。  軍事費の増大が国民の医療や福祉、教育を予算面でさまざまに侵害していることは、現実に見るところです。この点で、一九八二年度の予算で防衛費が異常に突出し、対前年度伸び率で社会保障費の伸び率を上回って、その当時、軍拡元年と言われたことは記憶に残ります。  また、赤字公債の累積が今年度末には六百兆円にもなると言われ、国の財政を脅かし、国民生活を圧迫しています。その点でも、法案に基づく日本軍事行動の拡大がもし赤字国債と結びつくとすれば、戦前、戦時の日本財政の破綻の再現にも連なることが予想され、深く危惧するところです。  以上のように、日本国憲法に全面的に矛盾、対立する本法案及び関連する自衛隊法改定並びにACSA協定承認案件は、廃案以外に道はないと言えます。このことは、日本の憲法研究者の大多数の共通した見解ですし、また、広く法学者の学会でも反対をし、廃案を求める声明が出されています。また、国民の中でも意見は多様であり、意見が未形成の部分が多いと言っても過言ではないでしょう。  本来ならば、この点については、ぜひ衆議院が解散して、国民意見を問うという姿勢をとってほしいと考えます。国会では以上のことを十分に踏まえて慎重に審議していただくよう、希望してやみません。  以上で終わります。(拍手)
  101. 山崎拓

    山崎委員長 ありがとうございました。  次に、前田公述人にお願いいたします。
  102. 前田哲男

    ○前田公述人 前田哲男でございます。  自衛隊日本安全保障に関心を持つ者として、審議中の日米ガイドラインに基づく関連国内法に対し、反対する立場から、幾つかの疑問点、問題点を指摘してみたいと思います。  今お述べになった隅野参考人の御意見基本認識を共有しながら、しかし、この場では私は、本末転倒、法の下克上という、この関連法案にあらわれた民主主義に反する法の運営に危惧の念を抱きながら、その点から指摘してみたいというふうに考えます。そこにこの法案に対する国民から見たわかりにくさが潜んでいると思いますし、また同時に、憲法の民主主義ルールに反するような法律審議が行われているというふうに感じるからであります。  第一に、今回のガイドライン日米安保条約の枠組みを下から覆すものであるということは、既にしばしば指摘されております。日米安保条約の枠組みがいかなるものであるかということを思い起こせば、この条約に調印された岸信介総理が一九六〇年二月一日の衆議院における施政方針演説で次のように言われている、そのことから明らかだろうと思います。すなわち、本条約は、国連憲章において否認された侵略行為が発生しない限り、決して発動されることのない平和と自由の条約なのであります、こう述べておられます。  岸総理は、同じ国会、多分この委員会のこの席であろうと考えるのですが、石橋政嗣議員の質問に答えて、日本は、極東の平和と安全が日本の平和と安全にいかに緊密な関係にあるといいましても、日本自衛隊日本の領域外に出て行動することは、これは一切許せないのであります、こうも述べておられます。  さらに引用すれば、安保改定交渉の責任者であった藤山愛一郎外務大臣の趣旨説明でも、以下の説明がなされております。「繰り返して申し上げれば、この条約は、国連憲章に従って武力の不行使を定め、かつ、条約地域を日本の施政下にある領域に限定し、日本攻撃されない限り発動を見ないこととしている点よりして、他のいかなる国をも脅威しない、全く防衛的性格のものであります。」これが、政府国民に対し示した安保条約の目的であり、枠組みなのです。どこから考えましても、周辺事態、後方地域支援、後方地域捜索救助活動などという概念が介入する余地はありません。  もし政府日米安保協力に新たな分野を設置しようとするのであれば、政府間取り決めにすぎないガイドライン改定によるのではなしに、安保を改定して国会に提議し、批准を求め、国民に信を問う、そうすべきであります。当然とるべき手続を怠り、政府間の内閣事務にすぎないガイドラインによって安全保障の根幹を下から変更しようとするのは、まさしく本末転倒であります。  それは、例えますと、あたかも車のエンジンを取りかえた、タイヤもハンドルも取りかえた、内装も一新した、ついでにカーナビもつけた、しかしナンバーとボンネットが同じなのでもとの車のままだ、そう言っているに等しいのではないでしょうか。かなり強引きわまりない論法であろうと思います。  政府は、本委員会における審議で、周辺事態を設定したガイドラインが現行安保条約の第何条に該当するのか、第四条、随時協議なのか、第五条、共同防衛なのか、第六条、基地の許与なのか、ついに明らかにできませんでした。安保条約の目的達成のためということを繰り返すのみでありました。また、想定されていないからといって、やってはならないことにはならないという、開き直りのような言葉も出ております。  国会で批准された条約に基盤を持たないガイドラインという政府間取り決め、そのような取り決めに基づいて国民の権利義務にかかわる国内法が制定される事態は、ゆゆしいものと言わなければなりません。  次に、ガイドライン安保条約を下から覆す本末転倒は、それのみにはとどまりません。  自衛隊の後方地域支援活動に関しても、法の下克上というべき現象があらわれております。それは、附則と雑則による自衛隊に対する任務の付与であります。  御承知のとおり、自衛隊法第三条は自衛隊基本的な任務を定めておりますが、そこでは、「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛することを主たる任務とし、」こういうふうに明記しております。  自衛権の行使に関し、内閣は一貫して、急迫不正の侵害、他に手段がないこと、必要最小限度の措置という自衛権行使の要件を示しております。個別的自衛権に基づき専守防衛の枠内で自衛隊の実力は発揮される、そういうふうに政府自衛隊合憲の理由を国民に説明してまいりました。  にもかかわらず、この周辺事態法案においては、さまざまな分野で、いろいろな形の日本の外における自衛隊の活動が規定されております。それは、日本攻撃されない、個別的自衛権の発動とは違う段階で設定されております。  政府は、自衛隊の部隊が領域外で行動する周辺事態類型の典型的な例として、日本周辺地域武力紛争が発生し、日本の平和と安全に重要な影響を与える場合という例を挙げておりますが、このような任務は自衛隊法第三条の規定にはございません。もし必要とするならば、自衛隊法第三条の改定をこの委員会に提案し、自衛隊の任務を、直接侵略、間接侵略並びに周辺事態に対し我が国を防衛する、そのように提案すべきであります。  ところが、今回の周辺事態法案においては、隊法第三条にない自衛隊行動を認めるために、周辺事態法案の附則に自衛隊法の雑則条項を一項目追加するという、極めて回りくどく、またこそくな手段で抜け道をつくっています。隊法第三条には全く手をつけず、周辺事態法案の附則二に、自衛隊法第百条の十「後方地域支援等」という条項をつけ加え、それによって自衛隊米軍に対するさまざまな後方地域支援活動を実現させる、そういうやり方であります。  自衛隊法第百条、第八章雑則という章にくくられているものでありますが、見出しは「土木工事等の受託」というふうに書かれております。そこには、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において、土木工事の受託、教育訓練の受託、運動競技会に対する協力などが並んでいます。そこに今回、百条の十「後方地域支援等」が新設されました。つまり、周辺事態協力は、自衛隊法基本任務条項にでなく、百条の雑則条項に根拠を持っている。サービスか余技の扱いです。当然ながら、新設された、目下提案されている百条の十「後方地域支援等」にも、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度において後方地域支援等を実施するという条件がついています。  つまり、一方で、日本周辺地域武力紛争が発生し、日本の平和と安全に重要な影響を与える場合が起こっていながら、準有事を想定しながら、それに対応する自衛隊行動の法的根拠は、任務遂行に支障を生じない限度で行う余技かサービス、札幌雪まつり支援やアジア大会に対する支援と同じ列に置かれているのです。状況設定と法的裏づけが完全に乖離、分裂、矛盾しています。  後方地域支援あるいは船舶検査活動、こうした自衛隊行動は、状況次第では武器使用武力の行使に至りかねない行動を含むものであるのに、そのような任務を自衛隊法雑則に規定し、それをもって、隊法の基本任務にもない周辺事態における領域外行動を実施できるようにする。ここにも法の下克上の形が典型的にあらわれていると思います。  こうした不可解な法のつくり方が、近隣諸国に日本安全保障政策に対する懸念と警戒心を増大させ、また国民の関心から遠ざける要因をつくっているものというふうに考えます。  第三に、憲法の根幹の一つである地方自治が、この周辺事態法案によって根幹から崩され、覆される本末転倒であります。  ガイドラインには、米軍の活動に対する日本の支援として、後方地域支援を行うに当たって、日本は、中央政府及び地方公共団体の権限及び能力並びに民間の能力を適切に活用するとあります。ここにありますとおり、後方地域支援活動は、決して自衛隊のみに求められているのではなしに、地方と民間にも及んでいるのです。日本国家活動は、中央政府、地方公共団体、そして民間、この三つ以外にないと私は考えますので、ということは、国を挙げて後方地域支援活動に協力する約束がなされたことを意味します。国家総動員と言って過言ではありません。政府が言う、周辺事態法案は国民の権利義務関係するものではないという説明は明らかに誤っております。  さらにガイドラインには、「日本は、必要に応じ、新たな施設区域提供を適時かつ適切に行うとともに、米軍による自衛隊施設及び民間空港・港湾の一時的使用を確保する。」とも記しています。ここでも、新しい基地の提供、民間空港、港湾の一時的使用、この二つの面で、地方と民間のガイドライン協力が設定されているわけです。  このようなガイドラインに記された対米協力の根拠として周辺事態法が提案された、そういうふうに理解できます。したがって、この法案の第九条に盛られた、地方自治体及び国以外の者に対し必要な協力を要請することができる、必要な協力を求めることができるという規定は、地方自治及び国民の権利義務にとって重大な意味を持たざるを得ません。既に、民間航空機による米軍武器輸送や民間港への米軍艦艇の寄港、公共埠頭の軍事使用、私立病院への患者の受け入れ打診といった形で、各地で先取り的な動きが始まっています。  本法案成立すれば、第九条により、国は地方に協力義務を課すことができ、また、第十二条の「必要な事項は、政令で定める。」この条項を活用して、具体的な協力事項を次々に命じるようになることは明らかであります。それは戦前の国家総動員体制の再来を予感させるものです。  憲法は、地方政府としての地位を自治体に与え、条例制定権を含む自治権を保障しています。周辺事態法は、その地方自治の本旨を下から覆し、逆立ちした法の運用によってさまざまな義務を負わされようとしています。ここにも法の下克上と呼ぶべき現象があるように思います。  以上、新ガイドラインに基づく周辺事態法は、国会の批准によらない条約の実質的改定であるという点と、自衛隊法基本任務に反する新しい任務の追加を加えたという点及び地方自治の破壊という理由により、廃案にすべき、そのように考えて、私の意見陳述といたします。  ありがとうございました。(拍手)
  103. 山崎拓

    山崎委員長 ありがとうございました。  以上で公述人からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  104. 山崎拓

    山崎委員長 これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮島大典君。
  105. 宮島大典

    ○宮島委員 自由民主党の宮島大典でございます。  本日は、四名の公述人の皆様方には、大変参考になる、また貴重な御高説を賜りまして、冒頭、心から感謝を申し上げたいと思うわけでございます。  それでは、順次幾つかの点について質問をさせていただきたいと思います。  佐久間公述人におかれましては、過去の御経歴におきまして、第二護衛隊群司令あるいは佐世保地方総監、佐世保に長年御赴任をいただいたわけでございます。佐世保は私の地元でございまして、地元民がひとしく過去の佐久間公述人の御功績につきまして、深く敬意と感謝を申し上げているところでございます。その後、公述人は、海上幕僚長、そしてまた九一年からは二年間統合幕僚会議議長をお務めでございます。  ということで、私は、公述人のお立場というものは大変貴重であるというふうに思います。現場の、国防の第一線に立たれまして、十分いろいろなことを熟知されておられます。もちろん現役の皆さん方も、そういう第一線に立たれている方はいらっしゃるわけでありますけれども、しかしながら、そういう現役の方が物をおっしゃいますことはできません。ということで、佐久間公述人のようなお立場の方がぜひ、いろいろな場面において貴重な御意見というものを国民の皆さん方に発信をしていただくことを心から切望したいと思うわけであります。  また、先般は、その一環であろうかと思いますけれども、実は、週刊読売に佐久間公述人の周辺有事に対するインタビューというものがついておったわけでありまして、私もこれを拝見させていただきました。この中では海上警備行動についてのお話が、いわゆる想定ということでついているわけでありますけれども、実は、この雑誌が発売をされたのと相前後して北朝鮮の不審船の侵入という問題が起こったわけでありまして、私も、そのことは非常にタイムリーであったことを記憶いたしております。  実は、その中におきまして公述人がおっしゃっておられますのが、八五年に宮崎県沖の日向灘で、北朝鮮のものと思われる高速船が領海に入ってきた、そして海上保安庁の巡視船が追跡をした際に逃げられたというケースがあったということを事例として挙げられたわけであります。そして、そのことについて、現場としてのいろいろな状況というものも書いてあるわけでありますけれども、今回は、その不審船の問題については海上警備行動というものがまさしく行われたわけでございます。  ということで、その八五年の時点の状況とそしてまた今回の事例、どのように対応が変わっていったのかということについて教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
  106. 佐久間一

    ○佐久間公述人 八五年の時点では、私は現役でございましたが、現場の部隊でなくて、海上幕僚監部で勤務しておりました。ただ、そういった不審船があらわれたという情報、海上保安庁と情報交換をしておりましたし、それに対して海上保安庁がいわば全力を挙げて対応をした、しかしながら、能力的にもついに対応することができなかった。  もう一つは、今回の事案におきましては、海上保安庁は不審船に対して警告射撃を行ったわけですが、八五年の時点ではついに行うことができなかったと私は承知しております。当時、海上自衛隊は、もちろん行動命令が下令されておりませんので、いわゆる官庁間協力という範疇で海上自衛隊の航空機による追尾、動静の監視は行ったと記憶しておりますが、それ以上の対応には至らなかったわけであります。  今回の事案と比べてみますと、まず、海上保安庁自身としても前回の教訓を踏まえて、目的、任務を達成するためにどのようにすべきかということを真剣に検討された結果があらわれたと私は思っております。また、今回は、海上自衛隊の護衛艦が付近の海域におりましたので、現場においては非常にスムーズに両者の間の情報交換なり協力ができたというふうに聞いております。さらに、今回の事案におきましては、政府として初めて海上警備行動を下令するという決断をされたわけですが、私は、その時点においては、我が国国家として領域の主権を守るという目的を達するためには、海警行動の下令以外の選択はなかったというふうに思います。そういった意味では極めて迅速な決断がなされた。  したがって、前回に比べると、こういった我が国主権侵害に対して、国の関連機関、すなわち海上保安庁と自衛隊、両者の力を総合的に組み合わせて、有機的に組み合わせて事態対応するという国としての姿勢が、前回に比べると格段の改善がなされたというふうに私は認識しております。
  107. 宮島大典

    ○宮島委員 ありがとうございました。  そしてまた、その事後にもインタビューをお受けになられまして、工作船についてのお話というものをなされたわけでございます。その中にも、国民の中で自衛隊が出ていったのに捕まえられなかったということについての指摘があったということも、素朴な感情というものがあるということもお話をいただいておりますけれども、しかしながら、これから、足らざる点についてどのようにまた補足、補完をしていかなければならないのかという点があろうかというふうに思っております。その点についてもぜひお聞かせをいただきたいと思います。  それともう一つは、やはり戦術、装備、この点についてはいかがだったのかというような、私は若干の疑問点も残るのじゃないかなと思います。現場の皆さん方につきましては本当によくやられたというふうに思っております。P3C哨戒機の危険性というものもあったでありましょうし、あるいは護衛艦の中で臨検に対して備えておられた隊員の皆さん方、この方たちの構えというものも非常に冷静沈着であったというふうに思うわけであります。  しかし、先ほど公述人のお話にもございましたとおり、果たしてその隊員の皆様方に関しての装備が十分であったかどうかということは、いささかちょっと疑問が残るところであろうかと思いますので、過去の経験を踏まえられまして、その点についてこの件がいかがであるのかということをお教えいただければと思います。
  108. 佐久間一

    ○佐久間公述人 今回の北朝鮮の工作船事案につきましては、既に政府関係省庁においても真剣に取り組まれて検討が行われているというふうに私は承知しております。また、今先生から御指摘のように、今回の事案に対応する保安庁あるいは自衛隊の装備の面で問題がなかったか、そのことについても、私は万全であったとは言えないと思います。  ただ、いろいろ国内においても論議がされておりますが、私は、そういった個々の問題点、それは必要でありますけれども、それだけでなくて、まず、こういった事態に対して、我が国の領域の主権を確保する、そういった目的のために国としてどのように対応するのかといういわば国家の意思の問題、これが根底の大きな課題だろうと思うわけであります。例えば、領域から追い払えばいいという一つの選択もありましょうし、あるいは拿捕して犯罪を証明するということもありましょう。そういったいろいろな選択があるわけですが、我が国としては領域主権の確保のためにどういった対応をするのだということを平素からきちんと明らかにしていただくこと、それがまず肝心ではないかと思うわけであります。  そして、それが明らかになった後に、では、そういった任務はどこの組織が対応するのか。例えば海上保安庁、あるいは陸上においては警察といった警察機関が対応する。これは、私は将来においても一義的にそうあるべきだろうと思います。しかし、そこだけに装備面等で必要な能力というものを集中しますと、非常に大きな投資が必要になることも考えられるわけです。保安庁の巡視船艇の速力を全部四十ノットにするとなると、これは大変なことでありまして、恐らく不可能でありましょう。したがって、国全体として、そういった力を持っている組織を総合的に使う。例えば自衛隊をバックアップ的に使うということは私は今後ともあってしかるべきだろう。しかしあくまでも、一義的には警察機関が行う。  そして、では、その両者がどのような任務を分担するのかということについては、やはり今回の事例というものを参考にしながら、関係組織において緊密なあるいは具体的な協議検討、あるいはそれに基づく体制の強化というものも必要であろうと思います。そして、その一環として、それぞれの組織においてどういった装備を改善するのか、あるいは訓練をどうしていくのか。例えば、保安庁と自衛隊との共同訓練ということも当然必要になってくると思います。それから、今回出ましたように、護衛艦が百二十七ミリとか五インチ砲しか持っていない場合に本当に対応できるのか、しかも、与えられた権限の中で対応できるかということについては、確かに今回、問題が摘出されたというふうに思っております。  そういったもろもろの分野においてどうやって対応するのかというのを、最初に申しました国の意思に基づいて総合的に検討し、所要の措置が行われるべきだというふうに私は考えております。     〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕
  109. 宮島大典

    ○宮島委員 ありがとうございました。  時間もございませんので、法案の方についてのお尋ねをさせていただきたいと思います。  先ほど佐久間公述人からレジュメをいただきまして、それに基づいてのお話をいただいたわけでございます。ということで、旧ガイドラインの成果及び問題点というものもお話をいただきました。殊に問題点につきましては、日米が共同でいろいろなことを考えておられた、また訓練もしていた中で、果たしてその実行が可能なものなのかということが非常な問題点であったということであろうかと思います。そのことを踏まえながら、今回、新ガイドラインになる中でこの周辺事態安全確保法案等が提出をされているわけでございます。  ということで、佐久間公述人には、以前の旧ガイドラインから新ガイドラインに移るに当たってその問題点というものがいかに解消されつつあるのか、あるいは、この法案のこれまでの論議の中でそのことがなし得るのかという点につきましてお話をいただければと思います。
  110. 佐久間一

    ○佐久間公述人 過去の例を申し上げたいと思います。  昭和五十一年から旧ガイドライン日米の協議作業が開始されました。当時、私は実務者レベルでその末席に連なったわけですが、協議が始まった時点のアメリカ関係者の期待、そして結果的に失望というものを私は非常に印象深く思い出しております。  と申しますのは、日米両国政府の合意に基づいてこういったガイドラインの研究作業を始めた、その結果、彼らは、恐らくその成果として、いざというときにはアメリカの部隊は自衛隊から補給を受けることもできる、あるいは共同して作業もすることができる、そのような結果になるだろうと期待して臨んだわけであります。しかし、日本側は、そういった向こうの希望に対して、そういったことは自衛隊は法的に任務が与えられていない、あるいは我が国の国内法はそういったものはないと、ことごとくと言っていいほど断ったわけであります。それに対してアメリカ側は、最初は驚き、憤慨し、最後は失望したというのが私の実感でございます。  その結果、旧ガイドラインの例えば後方支援の分野におきましては、補給ということについても本当に、枝葉末節と言ったら語弊がありますけれども、例えばアメリカ日本に対して、アメリカから調達している補給品についてのサポートをするとか、そういったごく一部のことしか書かれていないわけであります。  そういった過去の教訓を踏まえて、今回のガイドライン作業におきましては、いわゆる周辺事態において日米がそれぞれ行うであろう行動、これは主体的とか共同とかいろいろありますけれども、その中で必要になってくる日米の協力作業、そういったものを綿密に私は検討した、その結果が新しいガイドラインに盛り込まれ、それに基づいて今回の周辺事態安全確保法案に盛り込まれているというふうに考えております。  したがって、今回の法案成立した場合は、先ほど申しました二十年前のアメリカの失望でなくて、本当にこれで、日本の安全とそして周辺地域の安全にかかわる事態において日米が共同して対応できるということが自信を持って言えるんだろうというふうに思っています。そういった意味では格段の進歩であるというふうに認識しております。
  111. 宮島大典

    ○宮島委員 公述人のお話、法案の中身についてのお話でございましたけれども、そこに、いわゆる任務達成のための部隊の安全確保ということをおっしゃっておられました。先ほども申し上げましたとおり、このことについてはやはりしっかりと確保していかなければならない問題ではないかと思っておりますけれども、その点についての武器使用につきましては必要であるというような御指摘もいただいたわけでございます。  そこで、いわゆる船舶検査についても論議されているところでありますけれども、臨検の際に相手が武器をもって抵抗した場合の対処をいかにしていくかということも考えていかなければならないと思います。その点については、自衛隊法との関係というものが当然出てくるわけでありますけれども、その八十八条で武力行使というものが可能になっておりますけれども、しかし一方で、七十六条の制約というものもあるわけでございます。ということで、武器使用というものを武力行使とはやはり別途として考えていかなければなりませんし、自衛官においてのいわゆる武器保護というものもしていかなければならないと思うわけであります。先ほども御指摘ありましたとおり、自衛官がけがをしてはその任務というものを果たせないわけでございまして、その点については絶対に安全というものを確保していかなければならないと思うわけであります。  ということで、そういう法律との兼ね合いについて、これからどういう問題点というものをクリアしていかなければならないのかという点についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  112. 佐久間一

    ○佐久間公述人 今先生から御指摘ございましたとおり、今回の法案等によって自衛隊に与えられる任務を遂行するためには、その安全を確保することが前提条件であります。そのための手段として今回武器使用が認められたというふうに考えておりますし、これは従来のPKO法等に比べると、教訓を踏まえた改善だというふうに認識しております。  ただ、先生今おっしゃった武力行使ということにつきましては、御承知のとおり、自衛隊は防衛出動が下令された場合は武力行使ができるわけですけれども、私の認識では、今回の周辺事態安全確保法案ではそういった事態ではない、いわば国際法的に言うならば平時の事態だというふうに考えております。したがって、非常に抑制された武器使用になるということは当然だと思いますけれども、ただ、我が国武器使用というものは、過去の経緯等もありまして非常に抑制的でありますが、平時における自衛権という考え方も国際法にあるわけでありまして、それをどのようにとらえるかというのが私は将来の課題ではないかと思っております。  また例を申し上げますが、カンボジアでPKO活動が行われましたときに、私、現役でおりましたので現地に参りました。当時の向こうの司令官と会いまして、彼が言ったのは、日本は非常に厳しい制約で任務につく、それは十分に了解しているし日本のこともよくわかっておる、だからそれをきちんと守る、ただ、武器を使って自分たちを守る、部隊を守るというのはこれは自衛権なんだ、そこのところはわかってほしいということを言いました。  もちろん、彼は日本の状況というものを承知した上で言ったわけですけれども、日本においては、自衛権といいますと集団的自衛権とか個別的自衛権、いわば国全体がそういった侵略に対応する場合の自衛権の行使ということだけに論議が集中されていると思いますけれども、一般的に言うならば、自衛権の行使というのはそういう非常に高い大きなレベルだけでなくて、先ほど言いました、部隊が、あるいは国民を守る、そういった意味での自衛権の行使というものはあり得るわけだろうと私は思っております。  米国のROEにおいては、国家の自衛と部隊の自衛というふうにきちんと分けているようでありまして、ただ自衛権を行使したから直ちに戦争につながるというのはちょっと極論ではないか、そういった意味で、自衛権というものを広くとらえている国際的な認識というものをもう一度踏まえて、我が国の自衛権あるいはその行使のあり方ということについてより掘り下げた論議が必要ではないかというふうに私は思っております。     〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕
  113. 宮島大典

    ○宮島委員 この法案論議する中で問題点というものがいろいろクローズアップされてきているわけでありますけれども、先ほど坂元公述人の方からもお話がございましたが、いわゆる国会関与という問題が一つあろうかと思います。ということで、国会関与については、そのコンセンサスをやはり得るということは大切ではないかと思います。  周辺事態ということになれば、場合によっては、自衛隊我が国の領域から出まして活動をするということにもなろうかと思います。とすれば、紛争地域と一線を画すといいながらも、やはり自衛隊としてのリスクというものもはるかに国内よりも高まってくるということであろうかと思います。そうすれば、その領域外活動というものに対しての国会、すなわち、国民がオーソライズせずに行われるということについて好ましくないというような意見もあろうかと思います。それが、戦闘員、いわゆる部隊員の皆さん方に対しての士気にもつながっていくのではないかというような考え方もあるわけでありますけれども、その点について公述人のお考えがあればお聞かせをいただきたいと思います。  それともう一点でありますけれども、先ほど、後方地域支援のいわゆる定義というものがなかなか難しいのではないか、前方、後方と一線を画すのが難しいのではないかというようなお話もありました。  確かに、そういう意味では、我が国が危険区域外から出た中で米軍の活動について支援をしていくというような考え方もできようかと思いますけれども、先ほど来佐久間公述人は、日米安保関係の心の部分、いわゆるパートナーシップというものをおっしゃっていたわけでありますけれども、その点について、後方であるか否かという問題について、どういうふうにそれを判断するかという点についての御所見をお伺いしたいと思います。
  114. 佐久間一

    ○佐久間公述人 申し上げます。  最初に、国会関与のお話だと思います。  私は、陳述のときに、この法案に基づく措置を実施する場合は、速やかに的確に行う必要があることから、法律の枠内において、政府の決定によって行われるべきである、それが私は唯一の方策だというふうに考えていることを申し上げました。しからば、事後承認あるいは国会による承認ということはどう考えるか。既に政府は、この法案に基づく措置は、国民の権利云々についてはかかわらない、影響を与えない等いろいろな理由で必要ないという認識をお持ちだと思っておりますが、私は、それだけでなくて、やはりほかの要素も考えるべきではないか。  と申しますのは、これは我が国が直接武力行使をする事態ではありませんけれども、そういったいわば国際紛争、あるいはそれに類した事態において我が国国家としてどう対応するかというのは、国際的に見て非常に大きな意味を持つものだろう。右にするか左にするかというのは非常に大きな意味を持つ。そういった意味で、政府の決定というのは大きな意味を持つ。それから、この周辺事態というのは、当然ながら我が国の平和と安全に非常に密接な関連を持つ事態でありますから、そのときに我が国がどう対応するかというのは、その後の情勢の推移にも大きな影響を与えるだろう。  さらにもう一つ、今先生御指摘の、実際に任務を与えられて現場で任務に従事する隊員にとって国会関与がどうかということでありますが、私は、それらのことを加えて考えるならば、事後の承認というのが妥当であろうというふうに思うわけであります。特に、元自衛官の立場で申しますならば、現場で厳しい任務に従事する隊員にとって、自分たちの任務は国民に負託されているんだということがはっきりすることがやはり大きな支えになるんだろうというふうに思います。  それから、後方地域の限定が非常に難しい、私も最初からそのように思っております。現代の戦闘様相においては、前線と後方という分け方は非常に難しくなっておりますし、しかも、それは時とともに流動的になるということはよく承知しております。  ただ一方、現在の法案は、政府として従来の政府の見解あるいは政策というものの継続性というものを確保するという意味から、ある意味では非常に難しい規定になっていると思います。それが現場の部隊でどう影響するかというのは、例えば、今回の法案においては、活動の中断という規定がございます。現場の指揮官も、そういった状況が変化した場合は活動を中断するということが規定されておりますが、現場で任務行動を行いながらそれを判断するというのは非常に難しいんだろうと私は思います。  したがって、先ほど陳述の中で項目だけ述べておきましたが、こういった任務あるいは措置を行う場合は、防衛庁あるいは政府全体として情報を的確に収集し、それを配付し、そして国家としてあるいは政治の決断というものを明確に現場に知らせていただくこと、これが極めて重要だろうと思いますし、また、それが可能なシステムというものをつくることが裏づけになるだろうというふうに思っております。  したがって、繰り返しになりますが、後方地域というものを特定することは非常に難しいとは思いますけれども、しかし、それは政治の判断、政策の判断ということであれば、現場で任務に従事する部隊はそれに対して整々と対応するでしょうし、ただ、現場で混乱を生じないように、政府あるいは関係省庁での的確な、連続的な指導あるいは情報の配付というものをぜひお願いしたいと思っておるところであります。よろしくお願いします。
  115. 宮島大典

    ○宮島委員 最後に、もう一点だけお尋ねをしたいと思います。  安全保障に対する建設的な論議政策の確立という点について最後にお話をいただいたわけでありますけれども、しかし、これからの我が国が検討する大きな課題一つは、やはり、日本に対する直接的な攻撃に対する論議というものをいかに深めていくかということにもなろうかと思います。  このたびの周辺危機に対する対応というもの、効果的な体制をつくるということについては、それ自体抑止力を保っていく方策であろうかと思いますけれども、しかしながら、その核心的な部分について触れずにいるというのも、これもまた現状ではないかというふうに思います。ということで、これからいかにそのことを深めていくかということであろうかと思いますけれども、その点についての御所見をお伺いしたいと思います。
  116. 佐久間一

    ○佐久間公述人 申し上げます。  先生御指摘のとおり、いわゆる有事法制我が国に対する侵略が行われる場合の我が国対応については、昭和五十年代から検討されながら、それが実際の形では結実していない。これはもう事実であると思います。また、今回の周辺事態安全確保法案というのは、いわば我が国に対する直接有事でない事態についての対応でありまして、本来我が国有事を最初にすべきだというのも御指摘のとおりだと思います。  ただ、私も、現実の形としては、今有事法案というものから最初に手をつけて次に周辺事態という選択、あるいはそういう順序をするよりも、より切実な問題という観点からこの周辺事態安全確保法案というものを最初に手がけられるということは、現実の対応としてはあり得るだろうと思います。また、すべての法体系が整備されるのが望ましいわけですが、それは私は一挙にできるとは思いません。しかし、一部であっても、先ほど空白と申し上げました、空白であった領域が埋められるということは、国家国民の安全という観点から、非常に私は望ましいことだろうと思います。  なお、有事法制について付言いたしますと、御承知のとおり、かつての研究で第一分類から第三分類までに分類されております。第三分類については所掌官庁も明らかでないというままになっておるわけでありますが、私は、実は、この第三分類の中に、非常事態有事における国民の安全の確保ということに関する課題が全部ここに入っているんだろうと思います。  例えば、非常事態において国民をいかに避難させるか、誘導するか、そういったこと、これは全部第三分類に入っているわけでありますので、むしろここのところを掘り下げた検討あるいは対策をとらないと、不幸にして事が起こった場合に一番被害を受けるのは国民自身ではないかというふうに考えております。  以上であります。
  117. 宮島大典

    ○宮島委員 貴重な御意見、まことにありがとうございました。  もう時間もなくなりましたので、それぞれお尋ねをしたかったんですけれども、前田公述人にお尋ねをしたいと思います。  我が国が戦後五十有余年、経済的に発展をしてまいりましたのも、やはり、その裏づけといたしましては日米安保条約というものがあったということは、これは論をまたないことではないかなというふうに思っております。ということで、この五十有余年、我が国の平和の部分につきましても、日米安保というものがどのように位置づけをされるべきなのか、その評価をお聞かせいただきたいと思いますし、もとより日米安保条約につきましては賛成のお立場であるかどうかについてもお尋ねをしたいと思います。
  118. 前田哲男

    ○前田公述人 大変難問をちょうだいいたしまして、短い時間にそれを一口でお答えするのはとても不可能でありますが、日米安保条約は、日米関係の根幹をなす同盟的な条約であることは言うまでもありません。そして、それが冷戦期に果たした役割と冷戦後果たすべき役割、さらに二十一世紀に維持、存続すべきか否かということを分けて議論をするという認識もまた必要であろうと思います。  私は、日本国憲法を支持する立場の人間として、日本国憲法とともに育ってきた世代の人間として、日米安保条約を憲法の上に置く考えには承服いたしません。日米が仲よくしていく、その間に同盟関係条約関係があることは否定いたしません。しかし、日米安保条約のような条約、とりわけその運用、第五条、第六条のみしかないような運用のあり方、第二条は経済的協力であるわけですが、しかし、実際には第五条、第六条中心の運用がなされ、今、かつそこの部分が異常に肥大して、さらに拡大しようとしている、こういう安保の運用に関しては私は同意できない。同時に、冷戦が終わり、反共、対ソのためにつくられた日米安保条約のその部分における歴史的使命はもはや消滅したというふうに見た方がいいと思います。  しからば、どのような方向に向けて安保条約日米関係を再定義するか、まさしく日本に問われていた。それに対し、アメリカガイドラインという要求を突きつけてきた。日本日本で何かこたえるべき案を出すべきであった、出してしかるべきであった、そこで日米議論すべきであったと思うのですが、しかし、テーブルの上にはアメリカガイドライン安保再定義のものしかなかった。極めて不幸なことですが、そして、今、それが周辺事態法案に結実している。  このようなことに関しては私は反対いたしますけれども、しかし、日米が争えというようなことを主張するものではありません。日米の平和と安定は、太平洋を含めたアジアにおける基本的な要件として日本も重視しなければならないものだというふうに考えております。
  119. 宮島大典

    ○宮島委員 ありがとうございました。
  120. 山崎拓

    山崎委員長 次に、土肥隆一君。
  121. 土肥隆一

    ○土肥委員 きょうは、四人の先生方、本当に、お忙しい中わざわざお越しいただきまして、心から感謝申し上げます。民主党の土肥隆一と申します。  私は、このガイドラインの関連法案を考えながら、冒頭の質疑でも申し上げたのですけれども、やはり世代間格差みたいなものを感じておりまして、私は六〇年安保世代でございまして、こう見ると、坂元先生だけがそうではないんだろうというふうに思う次第でございます。  きょうは公述人の皆さんの意見を聞くということでございますから、やりとりとしては非常に難しゅうございますけれども、まず坂元先生にお聞きいたしたいのでございますけれども、先生が先ほど申されました幾つかの論文の中の一つ、「安保改定における相互性の模索—条約区域事前協議をめぐって—」という論文がございます。  これは私、大変興味深く読ませていただいたのですが、中は、先生の非常に綿密な、いわばアメリカにも行かれて物証をとってきて、そして、日本では公開されていないアメリカの文書を多角的に引用されて、大変説得力のあるものでございますが、まずは、条約区域という考え方でいきますと、例えば日米安保極東及びその周辺、こういうふうになりましたけれども、極東といういわゆる条約区域概念が生まれるまでにはいろいろな紆余曲折があったように書かれております。  例えば、一九五八年、マッカーサー大使がダレス長官にあてて自分の草案を送っておりまして、そこでは西太平洋、こうなっておりますね。西太平洋から、まだ沖縄が返還されておりませんから、沖縄、小笠原など、それからグアムはどうするんだというような議論がありまして、結果的には極東という言葉で落ちつくわけですが、私は先生の論文を見ておりまして、極東という概念がすとんと出てきて、それで双方がおさまってしまうわけですね。日米双方がおさまってしまうのですが、この辺はどうしてそういう事態になったのか、御説明いただけませんでしょうか。ちょっと政府に対する質問みたいで申しわけありませんけれども。
  122. 坂元一哉

    ○坂元公述人 お答えします。  六〇年安保世代ではなく、六〇年安保を研究している者の立場でございますけれども。  極東と申しますのは、最初の旧安保条約に盛り込まれている言葉でございまして、この問題は、要するに、米軍の基地使用、その範囲がどのようなものか、これを余り広くしたくない日本側となるべく限度をつけてもらいたくないアメリカ側との間でいろいろな折衝があったわけでございますけれども、その中で結局、日本側の意向が通りまして、前に、旧安保条約にありました極東という範囲が出てきたわけでございます。その後、その極東範囲がどこまでかということで国会で大変な議論になったということは、もう先生も御承知のとおりだというふうに思います。  最初にどこから出てきたかというのは非常に難しいことでございまして、これはやはりアメリカ側から出てきた、五一年の交渉の際でありますけれども、アメリカ側から出てきたのではないかとは思いますが、しかし、これは両者の話し合いの中で出てきたものでありますので、どちらが先、アイデアはだれが出した、こういうことはちょっと言えないところでございます。  しかし、結局のところ、極東といいましても西太平洋といいましても太平洋といいましても、これは要するに、そこだけで米軍行動できるということではございませんで、その範囲の安全を守るためには米軍行動はそれよりより広がる、そういう了解になったように思っております。
  123. 土肥隆一

    ○土肥委員 そうすると、先生のこの概念でいきますと、条約区域というのは今でも極東が残っている、こういうふうに理解していいと思うのですね。その極東をそっくり条約区域として残しながら、今回、周辺地域日本及び日本周辺の地域と。その周辺地域という、ここにまた地域概念が出てくるわけですけれども、条約としては極東しか残っていないというふうに考えていいのでしょうか。
  124. 坂元一哉

    ○坂元公述人 条約区域というのは、日米相互に危機に対処し合います日本の施政下にある地域というものと、それから米軍行動範囲を示す、行動範囲と申しますか、米軍がその場所の安全のために行動する範囲を示す、これは使用区域、いろいろな用語があるようでございますけれども、この二つがございますので、そのあたりは、条約区域極東だけということではないというふうに思います。
  125. 土肥隆一

    ○土肥委員 そうすると、先生、ちょっと込み入った議論になりますけれども、我が国周辺の地域における我が国の平和、この我が国周辺の地域というのも条約区域というふうに考えてようございますでしょうか。
  126. 坂元一哉

    ○坂元公述人 今、我が国周辺の地域というのは、それは今回のガイドライン法案のことでしょうか。これは条約ではないので、条約区域というふうに呼べるのかどうか、私は、それは私の答弁範囲ではないなというふうに思っております。
  127. 土肥隆一

    ○土肥委員 わかりました。  しかし、アメリカもこれを認めて、この日本周辺事態法案を見ているわけです、英文で見ているのでしょうから。そうすると、条約ではない、日米間の特殊な区域というふうにしか理解しようがないのでありまして、こういう条約区域というのは、また委員会質問しますけれども、やはり正式な区域というようなものとちょっと違うのじゃないか。日米間で取り決めた特殊な区域、しかし、特殊といっても、周辺とは何なのかという議論を今やっているわけでありますけれども、そういう思いがいたしまして、私としては、条約上は極東地域しか残っていないというふうに考えているわけであります。  先生の論文で、何度も申しわけないのですけれども、次のいわゆる事前協議のことも大変興味深く述べておられまして、「事前協議の秘密」ということになっておりまして、一九六〇年の一月六日にマッカーサー大使と藤山外相の密約があった、事前協議についての密約があったと。そして、四つございまして、そのうち密約の第一、第二、第三は日本側でも知ることになったけれども、いわば第四の中身についての密約があったのではないかという先生の調査の結果でございます。その密約というのは、核搭載した米軍の艦船、このことについては事前協議の対象にしないということの密約があったというふうに先生の論文では書いてありますが、これについてもう少し具体的にお示しいただけますか。
  128. 坂元一哉

    ○坂元公述人 それは、これまでにもいろいろな報道等で出ておりますように、核兵器の日本への導入ではありませんが、通過といいますか、トランジットと申しますか、これについては、具体的なその約束の中身まで文書で出されているわけではありませんし、まだそれについては秘密扱いになっていると思いますけれども、この導入といいますか通過の問題は、交渉中にも、日米双方でこれが問題であることは気づいておりまして、そのことについての何らかの取り決めがあったというふうに考えます。  私の論文ではなくて、ほかの証言とかあるいはさまざまな研究によりまして、何らかの了解事項があったのではないかというようなことが言われておりまして、私の論文は、そのことは、これまでにも知られていることということで軽く取り扱っているところでございます。軽くといいますのは、事態が軽いということではなくて、簡単に触れているということでございます。
  129. 土肥隆一

    ○土肥委員 そうすると、今度のニューガイドラインあるいは周辺事態法案、こういう事態に、こういう状況の中で事前協議というのは生きているんでしょうか、あるいはもう別の段階に入るんでしょうか。日米安保条約がそのまま残っているわけですから事前協議というのは当然あるわけですけれども、先生の、今私が申し上げましたような核搭載した艦船の問題については、今後もなぞとして残っていくというふうに先生は御理解でしょうか。
  130. 坂元一哉

    ○坂元公述人 なぞと残るか残らないかという問題は、文書の公開という問題とも関連するというふうに思います。これは、アメリカ側、日本側両方含めまして、さらに文書の公開が進めばそれはなぞではなくなるというふうに私は考えます。  事前協議が残っているかということでございますが、もちろんこれは、事前協議は残ってもらわなければ困るわけでございまして、問題は、その周辺事態の認定やそれに対する対応の際のさまざまな協議と事前協議との間の関係がどうなるかということについて、これはよく考えておく必要が実はあるのではないかというふうに私は考えます。例えば、事前協議をしまして、米軍の出動を日本政府が認めるという場合に、では、それはすなわち周辺事態の認定ということにもうなってしまうのかどうかといった問題は割と考えておく必要があるのではないか、それは国会承認の問題もありますので。そういうことがございまして、さまざまに、このあたりのことは、今後も議論が必要ではないかというふうに考えております。
  131. 土肥隆一

    ○土肥委員 ところが、従来の日米安保条約では事前協議、こう言っておりますけれども、今回の周辺事態のニューガイドラインによりますと、大変複雑なというか、「平素から行う協力」こうなっております。これは平時から行う協力と言うべきだと思いますけれども、情報交換とかいろいろな安全保障協力、対話、いろいろ言います。  そして、包括的メカニズムあるいは調整メカニズム、これを駆使いたしまして、そして、そのメカニズムに基づいて訓練や共同演習をみっちりやって、周辺事態が予想される場合になりましたら、日米双方、情報交換政策協議を強化して、そして、そこでまた日米間の調整メカニズムを運用いたしまして日米共同調整所の活用、こうやって初めて準備が整って、いわば事態が発生したということを内閣総理大臣は宣言するわけでございます。  しかし、そのときには調整メカニズムがきっちり働いておりますから、アメリカの側でも既にもう開戦、戦争が始まっている、戦端を開いている、ほぼ同時的か、あるいはアメリカの開戦がやや早くて、それにちょっとおくれるような形で日本政府周辺事態の発生の宣言をする、そして、基本計画などがそこに同時に発表されるというふうに思うのであります。  こうしたニューガイドラインを見てまいりますと、事前協議、単純に日米安保条約で考えていた事前協議がどういうふうに働くんだろうかということを考えるときに、きょうは政府に聞かないで先生に聞くのは、先生が専門的に日米安保条約を研究していらっしゃるからお聞きするわけでございまして、先生の御意見はどうなんでしょうか、この辺では。
  132. 坂元一哉

    ○坂元公述人 私は、日米の防衛協力はもちろん重要なものだと思いますが、その前提としまして、十分な防衛協力のためには十分な協議というものが必要だ、協議なくして協力なしということだと考えております。  そこで、この協議という問題は非常に重要な問題なのでありますけれども、その協議は、事態において迅速性、その行動の確実性という問題と関係しておりまして、実は、これは本当に難しい問題ではないかと思うのであります。ですから、私は、それは、本当に事前協議をちゃんとやってもらわなければ困りますし、そのための体制を整備していただかなければ困るというふうに思っております。  緊急という場合は、いつ起こるかわからないから緊急でありまして、そういう場合に、日米の両首脳の例えば連絡体制がうまくいかないというようなことがないようにしていただきたいなと思います。本当にうまくいくのかいかないのかというのは、これはむしろ私が聞きたいと申しますか、国会内閣の皆さんにもよくお願いしたいところでございます。
  133. 土肥隆一

    ○土肥委員 前田先生にお尋ねいたします。  前田先生の御主張をお聞きしておりまして、むしろ私なんか、正直に言いまして、ぴったり一致するわけでございます。やはりちょっと古いのかなと思ってみたりもしているのです。前田先生が古いという意味じゃございませんで、私がです。  前田先生、私が今悩んでいるのは、こういうガイドライン関連法案審議しておりまして、いよいよ賛否を迫られているわけですね。そのときに、もうまるっきり頭から反対だというのも一つの立場だと思いますけれども、私が今回のガイドライン関係法案を考えておりますときに、日米安保それから旧ガイドラインまでは認めてもいいのじゃないか。  つまり、戦後、私は安保世代と言いましたけれども、みっちりというかべったりというかどっぷりというか、日米安保条約のもとで生きてきたわけでございまして、私の人生の一つの大きな部分をこの日米安保条約が占めているわけでございまして、そういう意味では、日米安保というのは当然のもののようにして生きてきた、まあ、一九六〇年のときには国会を取り巻いて突入を何回もいたしましたけれども、そういう思いで今おるわけですね。  しかし、このニューガイドライン及び周辺事態安全確保法案を見てみますと、ここで一度日本人は立ちどまって、そして、どっちに進むのかということを考える時間を与えた方がいいんじゃないか。無反省にとは言いませんけれども、ずっと自民党政権が続いたわけですから、このまま、冷戦が終わりましたよ、米軍関与も大分少なくなりましたね、しかし、アメリカの世界戦略を維持していくためにはやはり十万人ほどアジアに要る、そのうちの七割は日本が見てくれるからというような話で何かずるずると入ってしまったという感じで、先生がおっしゃったようないろいろな危惧の念というのはあるんです。そういう中で、日本人の特に旧、古いジェネレーションの人たち、私どもみたいなのはやはり悩んでいるんだろうと思うんですね。  そうしますと、例えば安保改定をまずやるべきだ、もう日米安全保障条約をはるかに超えているじゃないかとおっしゃいますが、いや、超えていないというのが政府の判断でございまして、いわば発展的事態と申しましょうか。その辺で、先生、もう一度、安保条約を否定はしていないとおっしゃいましたが、これからとるべき日本の未来というのは、法文上はこうであるとか、自衛隊法がこうであるというようなことを超えて、何か日本の生きるべき未来というようなものを先生はどう描いていらっしゃるか、お聞きできませんでしょうか。
  134. 前田哲男

    ○前田公述人 古い人間の意見がお役に立つか、甚だ疑問ですが、でも、今のような悩みをお聞きしますと、新聞で見る限り、既に大勢は決まった、修正協議が水面下で続いているという中での今のような御意見、私、大変心強く、勇気づけられる思いで拝聴いたした次第であります。  日米安保条約というより、日本の平和、安全保障をこれからどういうふうに築いていくかという中で、日本とアジアとの関係であり、また太平洋を挟んだアメリカとの関係、さらに、世界唯一の超大国であるアメリカとのつき合い方、さまざまに出てくるのだろうと思います。  ある意味でいいますと、冷戦期は極めて過ごし心地がよかった。世の中は、世界は、西と東、共産主義と自由主義、ソ連圏とアメリカ圏、日本は民主主義、西側の自由主義の一員という二分法の世界で生きていくことができた。しかし、これからは、そして今もそれはもう許されなくなったわけですから、日本自身、どのような未来を構想するのか、アジアとの関係を構築するのか、またアメリカとの関係を維持するのかということを主体的に判断する、それが国家意思であり、国家の選択であろうと思います。  余りにもふがいないというふうに感じるわけです。余りにもアメリカの世界観、アメリカの外交戦略、そしてアメリカの言う安保再定義にそのまま乗っていってしまっている。どこに日本国家意思があるのだろう。  アメリカは、北朝鮮との間に危機回避のシナリオをたくさんのパイプで構築しております。日本には一本もありません。極めて残念なことです。日本にあるのは危機対処アメリカは北朝鮮との間に回避のパイプを持っていますから、回避シナリオが完成しますと、北朝鮮とアメリカ関係は飛躍的によくなるはずです。しかし、そうなったとしても、日本と北朝鮮の関係には平和の配当は恐らくないでしょう。なぜならば、我々は、北朝鮮に対し危機対処のシグナルしか発信していないし、これからも発信しようとしていない。それがこのガイドラインに結実し、周辺事態法案を初めとする関係国内法に今盛り込まれて、私たちの前にあるのだと思います。  だとすれば、そうではない、冷戦後というこれまでと違った秩序の枠組みが動き出した、その中で、超大国であり、また理念を同じくするアメリカとのつき合い方というのはどのようにあるべきかということをもう一度考えて、アメリカと朝鮮との関係日本と朝鮮との関係、同じ部分もあり、しかし違う部分もある。冷戦期はほとんど同じだったと思います。今は違う部分が出てきたと思います。アメリカ台湾との関係日本台湾との関係冷戦期には同じであっても、今は違う部分が出てきたと思います。そういったことを、アメリカとの間に議論していって少しも構わないのではないか。アメリカは、それを拒否するような度量の狭い国ではないと思います。しかし、こちらから何も提起しないので、向こうの安保再定義が粛々と進んでいく、そういう事態ではないか。  私は、日本から提起し、発信していくという意味での安全保障、私はそれを日本国憲法の前文及び第九条に基礎を置きたいと思いますが、しかし、それにはそんなにこだわりません。そういうことを国家意思としてもっとはっきりと発信していく、そういう作法をぜひ持ってほしいというふうに考える次第です。
  135. 土肥隆一

    ○土肥委員 それでは、若い坂元先生にもう一度お聞きいたします。  先生の論文をいろいろ読ませていただくと、安保条約、新安保条約ですね、六〇年安保ですけれども、物と人との協力関係が、つまり米軍が人を提供する、日本は基地を提供する、人と物との協力関係が固定化された条約である。基地を提供すれば日本は防衛してもらえるという関係がずっと続いてきたというわけです。そして、冷戦構造が終わって湾岸戦争なども経験した後、物と人との協力ということについてのいろいろな疑問が出てきた。  そして、旧ガイドラインになって、先生は、初めて人と人との協力というか、それの第一歩が記されて、そして、今回のニューガイドラインで、まさに責任ある政策として、日本が、いわば人と人との、人を出して、そして日本周辺の地域の平和と安全のために積極的に行動することができた、これが新ガイドラインである。人と人との協力がやっとできたんだということをある雑誌に書いておられました。  私は、ちょっと抵抗がありますのは、やはり冷戦構造が終わって、湾岸戦争があって、そして今までの、金だけ出して血も流さないと言われてみたり、クウェートから感謝されなかったりというようなことがあったわけですけれども、それで、この新ガイドラインで初めて人と人との協力関係アメリカとの間にできたんだというふうに言っておられるのですが、その価値判断みたいなものはどこから出てくるのか、お聞きしたいと思います。
  136. 坂元一哉

    ○坂元公述人 まず、私は、我が国の過去五十年の歩みの中の平和主義というものを心から支持するものであります。  我々に課されている問題は、この平和憲法の精神を新しい冷戦後の時代にどのように適合させていくか、そういう問題ではないかと思っておりまして、土肥先生の苦しいお心の中とかそういうことについては、本当によくわかっているつもりでございます。  そういうわけで、今、人と物との協力、あるいは人と人との協力。これは、かつてフランス大使も務められました西村熊雄という条約局長が本の中で書いておられる言葉ですけれども、日米安保の協力関係が必要である、これまでその形態というのは、基地を貸して安全保障を得る、こういう形である、このことで両方相互性があるのだ、こういうふうに言ったのが西村熊雄氏であります。要するに、基地のことを物と呼び、アメリカ軍のことを人と呼んだわけであります。したがって、人と物との協力。  これは、もともと、人を出す方は、物だけ出している方に対しては、我々は大事な将兵の危険を賭しているのに、物を、基地を貸すだけでのほほんとしているのかという議論が一方にある。他方、基地を貸している方は、平時においては大変な努力をして基地を貸しているのにただ乗りと言われてみたりする、これはもうけしからぬ。こういう、もともと精神的といいますか、きずなを築きにくいところがあったわけでございます。  しかしながら、これは、冷戦下におきましては、日本の基地を守るということは、あるいは日本の基地をアメリカに貸すということは、非常に全体として意義のあったことだ、冷戦政策遂行のために大変重要な貢献をしたということになったと思います。ただ、冷戦が終わってから、それでそのままでやれるのかということが問題になっているのじゃないかと思うわけであります。  そこで、では、人と物との協力を全部やめることができるかといいますと、必ずしも私はそうではないと思っておるわけでございます。そしてまた、日本が人と人との協力という形でアメリカと同じことができるかというと、それもそうではないと思っているわけでございます。  したがって、先ほど、先生、私の論文のことでおっしゃっていただきましたが、私は、その論文の中では、人と人という要素も入れていかなければいけないと。旧ガイドラインでも少し入ったけれども、この新ガイドラインでもそういう要素が入ってきた。問題はどこまでの限度かということでございまして、私は、これによりまして人と人との協力が完全にでき上がった、だからそれでいいのだ、そういうふうには申し上げていないわけでございます。  その際、人と人との協力をする場合には、我々の平和憲法の立場というものを十分に考えるということが重要になってくるんじゃないか、そういうことに関しての議論が深まっていくことを切に希望しているものでございます。
  137. 土肥隆一

    ○土肥委員 お二人だけお聞きして、隅野公述人と佐久間公述人には質問を向けませんでしたが、大変恐縮に存じます。  どうもきょうはありがとうございました。
  138. 山崎拓

    山崎委員長 次に、佐藤茂樹君。
  139. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 四名の公述人の皆様方、きょうはお忙しいところ、貴重な御意見を開陳していただきまして、まことにありがとうございます。  もう時間も、私から後、残り十五分ずつということになりましたので、前口上はこれぐらいにして率直にお聞きしたいんですが、まず最初に、国会関与について、佐久間公述人と坂元公述人は、それぞれ意見を述べられたとき、また質疑の中で答えられたんですが、隅野公述人と前田公述人に、基本的にこの法案に対する態度は異にするんですが、お聞きをしたいわけでございます。  私どもは、やはり、この周辺事態という我が国安全保障の根幹にかかわる事態に対して、さらに自衛隊が、実力部隊ですけれども、そういうものが出動する、そして今回の新ガイドラインでも、先ほどから言われているように、非常に広範な協力ということで、国民の生活にも非常に影響を与える事態が考えられる。そういうことからすると、当然、国会承認というものがこの決定の流れの中で位置づけられなければならないだろう、そのように考えておったわけです。ところが、政府案というのは、もう御存じのとおり、例えば、防衛庁のつくりました図面を見ましても、国会の位置づけというのは極めて小さくて、なおかつ、十条で言われているように、遅滞なく報告するという程度の扱いになっている。  そういう点からいいますと、確かに迅速な政治決断は必要なんだけれども、やはり、その政府の決定に対してどう国会関与させていくのかということが、今、修正の協議の中でも一つの大きな争点になっているかと思うんですね。  基本的には反対であるという立場かもわかりませんが、それぞれ、隅野公述人と前田公述人に、今回の周辺事態のこの法案における国会関与のあり方につきましてどういう御意見をお持ちなのか、御意見を伺いたいと思います。
  140. 隅野隆徳

    隅野公述人 日本国憲法のもとでの問題と、それから一般的に、近代国家における立憲主義をとっている国での安全保障における議会なり国会のかかわり方ということで述べたいと思うのです。  後者の点から申しますと、アメリカの独立戦争後のアメリカ連邦国家の建設及びフランス革命後の近代憲法という場合には、国の安全保障戦争の開始、終了を含めて、議会が当然にそこに決定し、終了を判断するということが打ち出されます。これは、一番典型的には、フランス革命後、一七九一年憲法でそういう国会関与ということが明確になりました。アメリカの場合は、大統領制との関係で、これがその後のアメリカで大きな議論になりました。  そのように、近代国家であれば、しかも憲法を持つ立憲主義をとっていれば、国の安全保障戦争の開始、終結は、当然に議会、国会が決定をする、終了についても意思表示するということになっています。  日本の場合には、御承知のように、日本国憲法で、第九条で、一切の戦争放棄のみならず、軍隊、戦力を持たないということですから、その点は、自衛隊自身が、日本国憲法上、憲法論からいえば認められない存在である、したがって、自衛隊行動についてそれを承認するということは、憲法上は考えられないことです。それにもかかわらず、もちろん、国の、国民の安全ということについて国会関与し、それについて議論をし、方向を決めるということは当然にあり得ることだというふうに思っています。  今回の周辺事態法案の場合には、それがアメリカとのかかわりで、しかも国会にも事前の承認もなしに進むというのは、余りにも、最初に述べました近代憲法の立憲主義をとっている国家の線をも踏み外す行為であるということで、憲法学界からは大きな批判の的になっているところです。  以上です。
  141. 前田哲男

    ○前田公述人 法案第十条の事後報告が事前承認に修正されたからといって、この法案がにわかによくなるというふうに考えるものではありませんが、しかし、先ほど述べました本末転倒はここにもあらわれているわけですから、それが修正されるということになれば、その一つが正されたというふうには言うことができると思います。  そもそも、このガイドラインということで始まりましたので、ガイドラインは、よく言われておりますように、ウオーマニュアル戦争マニュアルですから、迅速、機動性という軍隊の論理に立たなければならない、それは立つのが当然です。そこで議会の関与のあり方などを定めるはずがないと思います。  ですから、これは安保改定という入り口から入っていれば、それぞれの憲法並びに法律規定に従ってというような条文が当然挿入されるでしょうから、それに基づくガイドラインでありますればそれなりの対応がとれるんだけれども、我々はいきなりウオーマニュアルから立ち上がってしまった、そこに議会の役割が正当に反映されないのは、ある意味では必然であり、当然でありますから、そこの手違いをもやはり議論していただかなければならないというふうに、ある意味では自業自得ではないかと思います。     〔委員長退席、赤城委員長代理着席〕
  142. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 ありがとうございました。  それでは、続いて坂元公述人にお聞きしたいんですが、坂元先生は私と大学が多分同窓だと思うのですが、同じ、高坂ゼミではありませんでしたけれども、政治学を大学時代に学んだ者としてお聞きをしたいのです。  それは、もう前田公述人なんかも先ほど来、意見の中で言われているんですが、今回の周辺事態法案、さらにその前の新ガイドラインでの日本の協力内容、さらには地域なんかも含めて安保条約との関係なんですね。特に、従来の日米安保条約で言われていたものからいうと、例えば、極東周辺に変わるという、地域が一つ表現が変わったということと、もう一つは、今までは基地提供義務だけだったのが、今回、後方地域支援という言葉で言われておりますが、広範な米軍に対しての支援内容なんかが盛り込まれている。これを条文上だけ読むと、なかなか理解しがたい部分があるわけですね。  それも、私どもも何点か政府に対して問いただしたわけです。一応、これは論点整理の中で表現されていることというのはどういうことかというと、この日米安保条約上の根拠についてどう言っているかというと、「日米安保条約は、日米間の条約で、規定があるものは条約上の義務としてやらなければいけない。それ以外のことを、日本主権国家として、みずから日米安保条約の信頼性を高めるためにやってはいけないということではない。」と。「やってはいけないということではない。」という割と消極的な表現しか政府はしてない。  それに対して、先ほど土肥委員から紹介がありました公述人の書かれた「外交フォーラム」、これは九七年の十二月号ですけれども、一つそこに積極的な論点で書かれているなという表現があったので、ちょっと読ませてもらいますと、   ここで「物」に加えて「人」も出すことを、日本義務の増加であるとか、アメリカの言いなりになるとか、考えるべきではない。それは義務ではなく、日本の判断で自発的な行動として行なうものである。日米安保はむしろ、行動の「てこ」と考えればよいのである。   それに「人」を出す協力によって安保条約における日本の発言権は増し、また「物と人との協力」についてまわる感情摩擦を防ぐことができる。さらに基地問題もそういう「人」を出す行動との釣り合いで、解決しやすくなるであろう。 そういう一節を入れておられるんですけれども、そういう表現も踏まえた上で、今回の新ガイドライン並びに周辺事態法案で言われているようなアメリカに対する日本の協力内容について、日米安保条約との関係についてどのような見解をお持ちなのか、意見をお聞きしたいと思います。
  143. 坂元一哉

    ○坂元公述人 日本の行う協力、これはもちろん、条約義務で行う協力と、それから今回の周辺事態法案、新ガイドラインによって行う協力とあるわけですけれども、もちろんこの新しく行う協力というのは義務ではないということ。義務ではありませんから日本の主体的に行う行動だ。しかし、これはあくまで日米協力の実を上げるというために行うものでありますから互いの協議というものが必要になる。しかし、私は、その協議の中で、日本は自国の主体性というものを保ち、そしてみずからの国益とみずからの主張というものを堂々と主張し、その中から、すり合わせた中で両者の行動が出てくるのではないかと思っております。  そこで、基地問題のことを申し上げましたけれども、安保条約の構造が、ただ単に人と物の協力、先ほど申しましたけれども、基地を貸して安全保障を得るというだけですと、これが物としますと、基地を貸すということだけが前面に出てくるわけでございます。しかし、そうではなくて、日本がもう少し違う協力をするということになれば、その基地問題についてもまた新しい構造の中で考えることができるんじゃないか、そういうふうな意味で基地問題についても言及したわけでございます。  ただ、繰り返しますが、私は、そこで申し上げたかったことは、日本が主体的に行動してということが大事なことではないかな。先ほど前田先生がおっしゃいましたけれども、日本国家としてのはっきりとした意思を持つということがやはり大事ではないかなというふうに考えているわけでございます。
  144. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 それでは、佐久間公述人にお尋ねしたいのですが、いろいろ現場の話をお聞きしたかったんですが、時間がどうもないようなので……。  まず最初にお聞きしたいのが、これは平成九年の七月三十日の産経新聞に「安保の視点」ということで公述人が意見を述べておられるんです、インタビュー形式で。その中で「政治のツケを現場に回すな」、そういう見出しがありまして、どういうように佐久間先生が言われているかというと、「政治論議では、現場の現実や軍事技術などをよく踏まえ空論をもてあそばないでほしい。机上では成り立つ論議現場では適合しないこともあり、政治のツケを現場に回してほしくない」。  確かにそのとおりだと思うんですが、それで、この周辺事態法案の政府案をごらんになって、今の現職でないから言えるという部分があるかと思うんですが、このままでいくとツケが現場に回るなという危惧を抱いておられるような、また、そういう懸念を持っておられるような部分がございましたら述べていただきたいなと思うのです。
  145. 佐久間一

    ○佐久間公述人 先ほど、私は活動の中断ということを一つ例を申し上げました。それと、それに関連いたしまして、戦闘地域と後方地域の区分けができるのかということを申し上げました。  私は、現実の政策として、法律あるいは政府政策は、従来の憲法解釈あるいは政策の継続性を考えて、それと矛盾するような規定を設けることはできないというのもよくわかります。しかし、一方現場においては、右か左かということを明確にして任務を遂行しなければ、かえって混乱したり、あるいは遅疑逡巡して任務が達成できないということもあると思うのです。そういった両者のすき間を埋めるのが、いわゆる行動規定、ROEだろうというふうに私は思っております。したがって、非常に難しい法律ではありますけれども、それでも運用はできる、ただし、そういった政治現場行動とのすき間をきちんと埋めていただくことによってできるだろうというふうに考えております。
  146. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 佐久間先生にもう一つだけ。  今修正協議の中でももめている問題で、佐久間先生は海上幕僚長も経験されたことがありまして、そのころには話題にならなかった船舶検査活動のことなんですが、一つは、国連決議に基づく集団安全保障措置の一環として行うという、これは法案どおり。それに対して、多国間の取り決めでやってもいいんじゃないのか、そういうこともありますが、やはり国連というきちっとしたお墨つき、そういう決議があるもとで現場が動くのと、多国間取り決めで動くのとで、若干やはりそれぞれ自衛官の任務に違いが出てくるのではないのかという懸念を私は持つのと、もう一つは、今回の政府案で言われている船舶検査の実施要項で果たして実効性が保たれるのかどうか、そのあたりについて佐久間公述人の御意見をお聞きしておきたいと思います。
  147. 佐久間一

    ○佐久間公述人 今御指摘になりました船舶検査の前提要件でありますが、この法案規定では、御指摘のとおり国連決議ということになっております。今までの、行われた実例、実績もすべてそういったことが前提になっているんですが、国会論議されているというように承知しておりますが、私は、それだけで実施するということに限定するのが現実的かということについては、やはり検討の余地があるだろうと。しかし、国連決議はもう関係ないというのもまたこれは行き過ぎであろうし、言ってみれば、一番起こり得る事態をカバーできるのは、国連決議及びその他の多国間のということではないかと私は思っております。  それから、今回の法案の第七条でございましたか、示されております船舶検査要領、率直に申しまして、私は、法律規定では細か過ぎるのではないかという感じを持っております。ただ、繰り返しになりますが、従来の政策の継続性ということからああいったいわば枠をはめられたんだろうと思いますが、ただ、あれだけで、じゃ現場でできるかといったら、それもまたできないだろう。したがって、法が定められたら、その趣旨あるいは枠に基づいて、さらに細かい現場における判断の基準というものは作成し、部隊に明示されるべきだろうというふうに思っております。
  148. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 貴重な御意見、ありがとうございました。以上で終わります。
  149. 赤城徳彦

    ○赤城委員長代理 次に、達増拓也君。
  150. 達増拓也

    達増委員 公述人の皆様、きょうは大変お疲れさまでございます。  まず、佐久間公述人に質問したいと思いますけれども、先ほど佐久間公述人、質問への答弁の中で、自衛という概念また自衛権という概念についてまた考える必要があるのではないかという趣旨のことをおっしゃっておられまして、その点、私も、また自由党の方でもそういうことを考えているところでございます。  従来の政府の解釈、今の解釈でもあるんですけれども、自衛の問題を、自衛権の行使ということで非常に限定し、憲法九条のもとにおける武力行使の例外的に認められるケースとして自衛権の発動、自衛権の行使、したがって、自衛ということは武力行使を伴う行為であって、それで、今回の周辺事態における後方地域支援等は武力行使ではないし、それは集団的であれ個別的であれ自衛権の行使ではないという整理になっているんですが、国際的な議論の中で、例えば日本が今まで後方地域支援に当たるようなことをしないというふうにしてきたことは、結局日本が集団的自衛権を認めないからそういうことをやらないのであって、日本も集団的自衛権を認めて、直接戦闘に参加しないまでも、米国が紛争あるいは戦争をやっている場合にせめて後方地域支援ぐらいはしてほしいという文脈でよく言われることが多かったと思うんですが、その集団的自衛権の中に、直接戦闘以外の同盟国へのさまざまなサポートを含めて考えるということは国際的には一般的と言っていいんでしょうか。
  151. 佐久間一

    ○佐久間公述人 お答えいたします。  私は法律の素人でございますが、この席には法律の専門家がたくさんいらっしゃいますので、私が申し上げるのはいかがかと思いますけれども、今の御指摘は、先ほど私が述べましたように、従来我が国の自衛権の論議というのは、国家全体として事態対処する、そういった非常に大きな事態を前提にして集団的あるいは個別的ということが論議されてきたというふうに思っております。ただ、国際社会においては、自衛権の行使というのはそれだけではない、現場においてある部隊が危機に瀕したときにそれに対処するのも自衛権の行使、ただし、その場合はいわゆる必要性と均衡性の原則を守るということがルールになっていると思います。  また、これも釈迦に説法でございますが、一九二九年の不戦条約、さらに国連憲章ができた以後は、昔で言う自衛権の行使と今の自衛権の行使とは意味が違ったと思います。  ただし、国連憲章以後は、実際に起きた国際的な、日本でいうと武器使用に該当するものも、あるいは武力行使に該当するものも、すべて自衛権を根拠にしてきているというのも事実だと思います。それは非常に幅広いものであろう。  したがって、その問題について、あるいはその分野についての論議というものが、今後我が国においてもあってしかるべきではないかというのを私は申し上げたつもりであります。ただ、これがこの法案と関連してまいりますと、また非常に難しいことになるんだろうと思いますし、時間的な制約もあると思います。  私は、現実の対応としては、今回の法案で盛られております武器使用というものが、現状、従来の状況に比べるとはるかに前進と思いますので、そこで一歩前に進むということが、対応としては賢明ではないかというふうに考えております。
  152. 達増拓也

    達増委員 では、同じ質問を坂元公述人にも伺いたいと思います。  これは、法学と国際政治学の出会う場所での非常な問題だと思うんですが、日本の国内での議論に基づいて、後方支援活動は集団的自衛権ではないと言いつつやったとしても、それを見る外国、アメリカなり第三国から見れば、集団的自衛権を行使しているというふうにみなす国もあるかと思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。
  153. 坂元一哉

    ○坂元公述人 それはもちろんあるというふうに思います。  集団的自衛権という言葉は、もちろん国連憲章に盛り込まれた言葉でありますけれども、これについても国際的にもいろいろな議論がありまして、我が国のとっている立場は我が国のとっている立場で、一つの立場だと思っております。  ところで、我が国がとっている立場の中で、武力行使と一体化という、これも、日本的といいますか、日本独自の考え方だと思いますけれども、支援はするけれども、武力行使と一体化しないものであればこれは武力行使ではない、当たり前ですけれども、ですから、それは集団的自衛権とは関係ないんだということで、後方支援的なものをやるということをしようとしていると思うんですけれども、そのやり方が、少し国際社会の中から見れば不思議な感じはするなというふうに思うわけでございます。  確かに、ある行為が武力行使までいかないで支援をするということはあろうかと思いますから、その場合は集団的自衛権にはなりませんけれども、もちろん集団的自衛権の行使とは言えませんけれども、しかし、武力行使と一体化ということをしなければいいんだという形で集団的自衛権ではないというやり方は、理解されにくいところもあるというふうに思います。
  154. 達増拓也

    達増委員 それでは、また佐久間公述人への質問に戻ります。  部隊の自衛ということを考えた場合に、今回の法案での後方地域支援というものは、後方地域の定義の中に、自衛隊が活動している間はそこで戦闘が起こらないという、いわばそこで自衛隊は絶対攻撃されないということが定義されている、そういう中での後方地域支援ですから、法案では、基本的にそういう戦闘に遭遇することを想定しない形の武器使用とか武装とかしか認めない格好になっているんですが、そもそも日米間で合意した新ガイドラインの中にも、周辺事態というのは、日本に対する武力攻撃や、また武力攻撃が差し迫った事態に推移し得る、それらが同時に起こることもある。したがって、活動中の、具体的には輸送艦等に対する攻撃というのは、現実的にはかなり考えられると思うのです。  ちょっとこの法案の後方地域支援ということを離れまして、輸送艦なりが米軍に対して何か補給しようとするときに攻撃を受ける可能性が高い場合に、それを撃退するような準備をし、かつ、それによってまた相手の攻撃をも抑止し得る、そういったことをとらえて部隊の自衛というふうにおっしゃっているんでしょうか。
  155. 佐久間一

    ○佐久間公述人 今御指摘ありました最後の部分ですね、輸送の安全を確保するために部隊全体として例えば護衛するとか、そういったことまでは私は言っているわけではございません。今回の法案でもそういった状況は想定されていないと思います。  しかしながら、では、後方地域支援がすべて安全か。確かに、そういった状態になるときは活動を中断し、あるいは実施区域変更することになっておりますけれども、一〇〇%それで保証できるかとなりますと、私は、完全に大丈夫だということを言い切るのはむしろ非現実的ではないかと思います。したがって、そういった危険もあり得ると承知の上で後方地域支援の活動をやる。  その場合に、かかってきた自分の火の粉を払うためには今の法律ではどうするかというと、例えば自衛隊法でいうと九十五条とか、そういった根拠でやらざるを得ないのかなという感じは持っております。船舶検査活動と後方地域捜索救助活動では武器使用が認められておりますが、後方地域支援ではそれはありませんので、現行の法規で対応する以外にはないのかなと。  危険については、皆無というのはちょっと言い過ぎではないかというふうに思っております。
  156. 達増拓也

    達増委員 さらに佐久間公述人に伺いたいと思います。  先ほど佐久間公述人は、周辺事態というものは基本的に平時なんだというふうにおっしゃって、この周辺事態安全確保法案の枠組みではまさにそういうことになっていると思います。そして、新ガイドラインの中でも平時として定義をされているわけであります。  ただ、平時といっても、日本に対する武力攻撃には決して至らないような純粋平時、周辺のある国の社会的混乱で難民が大量発生、飢餓に自然災害が加わって、内戦とかという戦闘を伴わない形での難民の集団発生などは、まさに日本に対する直接攻撃にはなり得ない純粋平時だと思うのです。そういう純粋平時と、エスカレーションによって日本に対する武力攻撃につながるかもしれないような、それは直接攻撃になっていないから平時ということなんでしょうけれども、それが差し迫った事態、あるいはそれに推移し得る事態であると、これはもう準有事と呼んでいいようなことだと思うんですね。ですから、周辺事態は平時だとしても、その中に準有事と純粋平時が含まれている。  したがって、この法案自体はあたかもすべてが純粋平時であるかのごとき体制になっているところが問題と自由党は考えておりまして、準有事的な展開になっても対応できるようなことを担保しておかなければならないと考えているわけであります。  それで、その準有事ということをもう少し深めてみますと、周辺事態と別に、新ガイドラインの中には、日本に対する武力攻撃が差し迫った事態というのがあります。  恐らく、そういう事態の場合、自衛隊は動員をかけまして、それで、例えば敵の海上戦力が押し寄せてきそうであれば、日本領海からさらに必要に応じて公海上にも海上自衛隊の部隊を配備し、迎撃態勢をとるようなことになると思うんですが、それはまだ日本として武力行使をしていないから、自衛権の行使にまでは至っていない。ただ、そういう動員とか戦力の展開というのは、まさに広義の自衛といいますか、自衛権の行使のための準備、そういう自衛だと思うんですね。  それで、先ほど、国全体の自衛と別の、部隊の自衛ということをおっしゃられましたが、そのような武力攻撃が差し迫った事態に動員をかけたり部隊を展開したりすることは、自衛の問題としてはどういうふうにとらえればよろしいと考えますでしょうか。
  157. 佐久間一

    ○佐久間公述人 これまた法律の問題でありますので、私、素人ですが、私の認識では、今御指摘になりました準有事といいますか、我が国に対する武力攻撃のおそれがある場合というのは、御承知のとおり、自衛隊法第七十六条で防衛出動下令の対象事態になっているわけであります。したがって、そういう事態は、いわゆる周辺事態でなくて、いわば我が国に対する有事というふうにとらえるべきだろうと思います。  ただ、その場合にどういう権限を行使できるのかということにつきましては、相手からの武力攻撃が開始され、いわゆる戦争状態になった場合は、いわば国際法上の、昔で言う戦争法規の適用になるわけですけれども、おそれ出動で展開している部隊が相手の攻撃がない段階で戦争法規を適用できるか、これは不可能、それはいわゆる自衛権の範疇で対応せざるを得ない。  それは、先ほど言いました必要性と均衡性の原則であって、一たん弾を撃ったからそこで戦争にエスカレートするということではなくて、むしろ今の国際社会は、たとえ弾を撃ったとしても、それはそれでできるだけ抑えていくということで律せられていると思いますので、そこのところは、そういった現在の法規とこの周辺事態法案に基づく対応とは整合はとれていくだろうと私は考えております。
  158. 達増拓也

    達増委員 武力攻撃が差し迫った事態というのは、これはもう有事である。確かに、周辺事態を超えてしまうわけですから、それはもう周辺事態の中ではなくて外の話だと思うんですね。問題なのは、周辺事態というのがそういう有事に推移し得るというところで、周辺事態の中ではあるんだけれども、推移し得るということで、純粋平時と呼べないような準有事というのをどう考えるかということだと思うんですけれども、その点は課題は残ると思うのです。  では、最後、その点について、坂元公述人にこの点伺いたいと思いますが、周辺事態武力攻撃が差し迫った事態という間に推移というのがある、これを念頭に置いたときに、周辺事態を純粋平時ととらえるようなやり方はまずいと思うんですけれども、この点いかがでしょう。
  159. 坂元一哉

    ○坂元公述人 私の理解では、周辺事態とは、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態ということでございますから、これを平時と呼ぶのは少し普通の語感とはずれているかなというふうに思います。法律の建前としては、これを平時とすることは、それは法律の書き方かもしれませんけれども、私は、やはりその武力行使が起こる場合と周辺事態が発生する場合の間の、今委員おっしゃいましたような、そういうところにはどう対応するかということは十分検討しておく必要がありますし、それを何と呼ぶかということはまた考える必要があるんじゃないかと思います。
  160. 達増拓也

    達増委員 以上で私の質問は終わります。ありがとうございました。
  161. 赤城徳彦

    ○赤城委員長代理 次に、佐々木陸海君。
  162. 佐々木陸海

    佐々木(陸)委員 日本共産党の佐々木陸海です。きょうはどうも本当にありがとうございます。限られた時間ですので、早速質問に入らせていただきます。  最初に、隅野公述人にお伺いをしたいと思います。  公述の中で、憲法の地方自治と財政の諸原則を脅かすという御発言がありました。この財政上という問題について、ガイドラインでは予算上の措置をとることを義務づけるものではないということが言われているんですが、これまでこの委員会でもその財政上の問題はほとんど論議をされてこなかったのです。確かに、九四年の北朝鮮の核疑惑のときに寄せられた千五十九項目の米側の要求等々を本当に満たしていこうとか、あるいはそういうことがいつあっても満たせるようにしていこうということを考えただけでも、予算的な問題もなかなか大変なことになろうかと思うんですが、国会でもまだ余り議論がされていませんから材料が不十分ですけれども、さらに、隅野公述人、財政の問題でおっしゃることがあればおっしゃっていただきたいと思います。  あわせて地方自治の問題についても、政府がかつては非核神戸方式を容認するかのような態度をとっていたのが、今度、高知ではああいう態度をとってきたというような問題もありますので、その辺の点も含めて、地方自治の問題についてもさらにお述べになりたいということがございましたら、お述べいただきたいと思います。
  163. 隅野隆徳

    隅野公述人 最初に、財政の問題について触れさせていただきます。  新ガイドラインに関連する問題としては、例えば一九九五年の十一月だったと思いますが、いわゆる在日米軍の思いやり予算の新特別協定が結ばれるというように、当然に、それが一九九六年の日米安保共同宣言、さらに新ガイドラインへとつながっていきますから、新ガイドライン関連法案は財政の問題を伴うというふうに思います。  しかも、自衛隊が海外派兵をするということになれば、当然に装備等々の点での拡充ということが問題になると思います。既に今までにも、自衛隊は、いわば予算の上で一時は聖域化されるということもあったわけで、そういう点で、この周辺事態法案に伴う財政問題ということは無視できないものがあるかと思います。  しかも、財政プロパーの問題であれば、御承知のように財政構造改革法ということで、赤字公債が国及び地方自治体をめぐって大変累積をして、それをどう解消していくかということが一つの大きな問題になっているのは御承知のとおりです。  この点は、実はこの自衛隊の海外派兵ということに伴って、赤字公債との結びつきということを戦前との関係から危惧するわけです。というのは、現在の財政法の四条、五条というのが、赤字国債の発行の規制、及び、特に五条は日銀引き受けの禁止というのを定めています。これは、何といっても、第二次大戦、太平洋戦争の戦前、戦中の中で、日本軍事公債を出し、それを日銀引き受けで行っていったもので、日本が財政破綻をし、そして何よりもインフレで国民を痛めつけた、そういう反省の上にできた規定です。  ですから、財政法四条、五条というのは、日本国憲法の九条の平和主義を財政面で支える非常に重要な規定です。現在は、主には赤字公債は不況対策ということで出されますが、戦前、戦中の場合に、最初は不況対策ということが実は軍事公債につながっていったということも重要な点かと思います。  そういうことで、今、現実には不況対策の赤字公債が大変に大きな問題ですが、しかし、周辺事態法案に伴う軍備の拡大ということが赤字国債、赤字公債と結びつくということになると日本の財政破綻は一層深刻になるということを、ぜひ国会、衆議院においても御検討いただければというふうに思います。  それから、地方自治のことにも触れられましたから、その点を申し述べさせていただきますと、地方自治の問題は、いろいろな点でこの周辺事態法案に関連して深刻な問題を提起しています。具体的に、地方自治体の港湾、空港、病院あるいは運輸等々、いろいろな側面でかかわってきますから、この点をぜひ衆議院では深めていただければというふうに思います。  法案の九条一項、二項で、地方自治体に対する協力要請もしくは協力依頼について、「法令及び基本計画に従い、」というふうにあります。しかし、この法令といってもほとんどないと言ってよいんじゃないでしょうか。もちろん、自衛隊法等あるいは日米安保条約関係のは若干はございます。しかし、何しろ日本国憲法のもとで平和主義を原則国家建設が進められてきたわけですから、そういう軍事を想定した法体系になっていないということがあります。ですから、例えば自衛隊法百三条で、防衛出動の場合に、都道府県知事に防衛庁長官なりが依頼して、土地、家屋あるいはそのほかの収用、徴発というようなことが政令をもって定めるというふうに規定がありますが、その自衛隊法百三条のもとでの政令もまだつくられていないという状況です。  そういうことで、しかし、現実にもし米軍への後方地域支援ということになって、例えば米軍の負傷者を佐世保の病院に入院させるといった場合に、地域住民の医療はどうなるかということで、いろいろな摩擦が出てくると思います。  そういう利害対立をどう解決するのかというのが、実は今度の周辺事態法案にも何も書いていない。そうすると、法的に定めがない。九条三項には補償の問題が若干ありますが、完全補償なのかなどについても何も規定がない。そうしますと、そういう自治体と国との間の衝突、あるいは、住民と在日米軍あるいは自衛隊との衝突という場合に、法的な処理をどうするのかというところが当然問題になって、場合によっては、事実上進められるということになると、住民があるいは自治体が大変不利に置かれるということがあります。  他方、もう一点指摘させていただきたいんですが、御承知の、高知県で非核港湾条例の制定問題がついせんだって来問題になっております。この辺も、実は自治体の条例制定権なり法令解釈権というところから、むしろ自治体は自主的に、積極的にこの問題に対処していく必要があるだろうというふうに思っています。  何か政府側の文書を見ますと、現在自治体外交ということがいろいろな面で、平和姉妹都市宣言とか進められていますが、そういうものをむしろ認めないような方向でありますが、しかも自治体の相互、世界的な連帯というのは進んでいますから、そういう自治体外交と言われている内容は、現実には世界的にあるわけです。それを政府の見解では認めない。その一環として、高知県が核兵器を装備した軍艦については外務省を通じてそこの確認を求めるということすら規制を加えるというのは、ちょっと世界の方向とも余りにもずれているし、あるいは日本国憲法の平和主義の観点からもおかしいというふうに言って差し支えないのではないかと思います。  以上です。
  164. 佐々木陸海

    佐々木(陸)委員 どうもありがとうございました。  もう一点、隅野先生に簡単にお伺いしたいと思いますが、この周辺事態で想定されている自衛隊行動について、武力行使でもなければ武力行使と一体化するものでもない、だからいいんだということを政府は説明しているわけですが、しかし、これは実態とかけ離れている。これに対して、日本有事の際に行使できる自衛権を、周辺事態をいわば準有事ととらえて、自衛権の延長線上としてこれを説明しようというような見解、主張が一部にあるわけですが、そういう主張について、憲法上どんなふうにお考えになっているか、簡潔にお述べ願いたいと思います。
  165. 隅野隆徳

    隅野公述人 今回の場合には、実は憲法の九条二項の交戦権の絶対的な否認ということといろいろ衝突するという問題があると思います。  交戦権の否認については、現在の自衛隊法のもとで、政府のこれまでの考え方は、交戦権まで食い込んではいないんだ、自衛行動権の発動で、自衛隊法七十六条に基づく防衛出動のときには武力行使できるんだというふうに言っています。  しかし、憲法論として言えば、交戦権と自衛行動権というのは一体的なわけで、つまり、国が軍事力を対外的に行使するという場合は、自衛権の発動であれ、それは交戦権の一環になるわけで、その点、政府は明らかに憲法と矛盾する、九条と矛盾することを言っているというふうに思われます。  そういう点で、準というような言葉が盛んに使われますが、今回の場合には、後方地域支援が実質的に米軍との一体的な軍事行動に国際法上は認められるというのは、これは法的には一般的に確認されていることと言ってよいでしょう。  しかも、船舶の臨検なんかの場合であっても、国際連合の決議にあっても、日本国憲法からすると、果たしてそれ自身が認められるかというと大変疑問であるわけで、それをきっかけにして隣国あるいは周辺国との軍事衝突になるということも新ガイドライン自身においては想定しているわけですから、そういう点で、今回の周辺事態法案が抱える問題というのは、まさに日本戦争状態に入っていくということを想定している事態と言ってよいと思います。  それは、憲法九条からいえば、戦争の発動あるいは武力行使、あるいは最低限、武力による威嚇、おどしというところに該当し、それは同時に、国際法上は九条二項の交戦権の否認に該当し、認められないところであるということが言えるのではないかと思います。
  166. 佐々木陸海

    佐々木(陸)委員 前田公述人にお伺いしたいと思います。  私、本末転倒あるいは下克上という御説に大変賛成なんでございますが、今度の問題での法の下克上とか本末転倒が一体何ゆえに起こっているのかという問題について、御見解を簡単にお示し願いたいと思います。
  167. 前田哲男

    ○前田公述人 明らかに本末転倒を正し、下克上を正道に戻すためには、アメリカの要求を受け入れようとすれば、憲法のもとでは成り立ちがたいものでありますから、憲法そのものに問いを発しなければならない。また、現行安保条約のもとでもそのような行動規定されていないわけですから、安保改定交渉を提起し、それは当然国会に批准を求め、かつ、国民の審判を求めなければならない。そのような手続を要するわけで、もしそれが本当に必要であり、日本の国益であるというふうに政府が考えるならば、信じるならば、そのような手続をとるべきであろうと思います。そのような手続をとって、国民に信を問うべきであろうと思います。  しかし、そのような要求を受け入れざるを得ないという判断を一方で覚悟しながら、それを国民の前にはっきり示すことを怠り、その関係を糊塗しようとしたとしか考えられないのですが、その結果、そういうふうに下から、既成事実からもとを変えていくという変則なものができてきて、それを整合させようとする余り、法技術的には実に回りくどい、論理がつながらないことはないんだけれども、それは多分、佐久間さんがおっしゃったように、ここだけ、国会の中だけであって、現場には通用しないような論理のつながり方になっていたのではないか。  ですから、政府が事実を直視し、国家利益あるいは国の方向をちゃんと国民に示す勇気を持っていたらこういう法案にはならなかったのではないか、それがなかったからではないかというふうに考えております。
  168. 佐々木陸海

    佐々木(陸)委員 終わります。
  169. 赤城徳彦

    ○赤城委員長代理 次に、辻元清美君。
  170. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党、社民党の辻元清美です。本日は、どうもありがとうございます。  さて、私は、まず最初に前田公述人に何点かお聞きしたいんですけれども、公述人のお話で、一九六〇年に安保条約が調印されたときの定義などにも触れていただきました。先ほど古いか新しいかという話がちょっと出ましたけれども、私は一九六〇年に生まれているんですよ。四月二十八日ですから、この岸総理の施政方針演説、二月一日にはまだ生まれてなかった私から見ましても、前田公述人の御意見に賛同する点が多いですので、何や古い新しいはないんではないかということを先に申し上げまして、質問に移らせていただきたいと思います。  さて、まず後方地域支援ということについての御意見を伺いたいんです。  これは、今コソボの問題などでも、後方支援関係する施設がやはり真っ先に攻撃対象になっているというふうに私は考えますし、今政府答弁では、後方地域支援だから安全なんだということを繰り返し答弁しておりますが、おかしいと思います。  特に、これは代表質問でも私は申し上げたんですが、湾岸戦争の折に、私は現場の近くで戦争に遭遇しまして、偶然に同じ船舶に前田公述人も乗っていらっしゃいましたので、あの体験から照らし合わせても、安全な地域での後方地域支援なんというものは成り立たないと私は考えているんですが、いかがでしょうか。
  171. 前田哲男

    ○前田公述人 この法律は、後方地域支援というまたもう一つ別の概念を立てて、しかし、ともかく前方と後方が存在し、かつ、後方は安全であるという前提のもとに論を進めるということをしていると思います。しかし現実に、また歴史が示すところを見ても、そのようなことはあり得ない、成り立たないと思います。  おっしゃいましたように、コソボではまさに今、後方地域が攻撃対象となっているわけで、ですから、難民軍隊の区別がつかず、誤爆が日常的に生じ、国際問題になっているという事態が起こるわけなんですね。  湾岸戦争においてもそうでした。まず、敵の神経系統を奪うためのレーダー施設、防空施設に対する攻撃が行われて、それが達成されますと、軍事目標に対する攻撃が仮借なく行われ、そして最後に軍事基盤、国民の士気あるいは国民の生活を維持するための基盤、ダムでありますとかあるいは高速道路でありますとかテレビ局、電話局というところに攻撃が至るということはもう鉄則です。  日本海軍航空隊が一九三八年、ちょうど今から六十年前になりますが、中国の臨時首都であった重慶に対し爆撃を加えたことがあります。私は十年以上前にその現場を、数カ月滞在して調べたことがありますが、日本海軍航空隊の攻撃もまさしく、まず最初は飛行場を破壊する、次に飛行機を破壊する、その次に軍事施設、そして最後は無差別、都市無差別というふうにいくわけです。  このように歴史的な経緯を踏まえましても、また現実に起こっているところから考えましても、前方後方、後方は安全というような定式は成り立たない、そういうところで行動するから大丈夫なんだということは決してあり得ないと考えております。
  172. 辻元清美

    辻元委員 ありがとうございました。  それでは、引き続きもう一点、前田公述人にお伺いしたいんです。  先ほどのお話の中に、民間航空機による米軍武器輸送や民間港への艦艇の寄港、公共埠頭の軍事使用がもう既に先取りしたような形で始まっているというようなお話がありましたけれども、この実態について少し触れていただけますでしょうか。
  173. 前田哲男

    ○前田公述人 アメリカの艦艇、航空機の日本の港、空港に対する寄港、立ち寄りは、日米地位協定第五条によって、無料で、着陸料、入港料を課せられないで出入することができるということになっておりまして、それ自体、新しいことでも、また不法なことでもありません。  ただ、そうしたこれまで親善とか友好訪問の名目で行われてきた米軍艦艇の非軍事施設、つまり横須賀、佐世保、あるいは三沢、横田のような提供施設以外の空港、港への立ち寄りが頻繁になったのは、ガイドライン協議の進行と軌を一にしております。  同時に、九七年九月にガイドラインが調印、決定された後の状況はさらにまた新しいレベルに達しているだろう、そういう兆候を幾つか見ることができます。  ことし二月に大分県の日出生台でアメリカ軍の海兵隊の実弾射撃演習が行われたのですが、このときは一番組織的な、恐らくガイドラインの実施、先取りというより、ガイドラインはもう有効であるわけですから実施と呼ぶべきですが、その例だろうと思います。  沖縄から百五十五ミリ砲六門を運んだのは日本通運がチャーターした二隻の民間船でした。これは地位協定五条に言う軍用船の扱いを受けるというふうになりました。一方、弾薬は、沖縄から一たん佐世保に運ばれ、佐世保の弾薬庫に格納された後、やはり日本通運のトラックによって、九州横断道を通って日出生台の演習場に運ばれました。さらに演習に参加する海兵隊要員は、コンチネンタルエア・マイクロネシアをチャーターして大分空港に到着しました。  こうした米兵の移動に関しては、これまでも日米共同訓練のたびに散発的、部分的には行われていたのですが、今度の例が典型的に変わったと思われるのは、防衛施設庁が日米地位協定に基づいてこれを行った。防衛施設庁がすべてをコントロールした、コーディネートしたという形でとられたわけですね。明らかに、ガイドライン以前と変わった形態における民間そして防衛施設庁、防衛庁関与が行われている。  こういう実態が今も続いていて、こうした場合の民間航空機の武器輸送に関しては、政府答弁で、アメリカ人の運航管理者が搭乗していれば、その航空機、日本の民間航空機、この場合全日空機であったわけですが、全日空機はアメリカの公の管理のもとにある航空機とみなす、つまり、アメリカの軍用機と同じ扱いにするという解釈が示されているわけです。こうした解釈はかつてはありませんでしたし、ガイドライン以後ということになるだろうと思うのです。  そうしますと、第九条、地方公共団体及び国以外の者の国への協力義務、一般的協力義務が今後これに適用されますと、大変広くこうしたことが行われるおそれがある。その意味では先取りということになるだろうと思います。
  174. 辻元清美

    辻元委員 そういう各地の動きは私も報道等で幾つか存じ上げているんですが、さてそういう中で、これは前田公述人と隅野公述人にお伺いしたいと思うんです。  百七十七の地方自治体が慎重審議や反対の決議を行ったり意見書を提出したりしている。この数は急激に今ふえてきているわけですね。また、石垣の市長が協力を拒否するというようなことをはっきり示したり、それから、直接関係がある海員の皆さんやパイロットの皆さんや港湾労働者の皆さんも、この国会の周りにも集まって反対の行動をとられたりということが今広がってきています。こういう動きに対して前田公述人はどう思うのかということを伺いたい。  それから隅野公述人には、憲法学者の間でも今回のこの新ガイドライン関連法案に対しての反対の輪が広がってきているというふうに報道等では私は記事を見たんですけれども、その現状についてお伺いしたいと思います。
  175. 前田哲男

    ○前田公述人 私、このガイドライン審議が始まって、NGOのような活動の中で、ガイドライン速報という、ファクスと電子メールによる通信、国会での動きを含めた通信を送っているんですが、それに対する反響を見てみますと、地方と、関係のある労働組合、労働者の反応が、危機感とともに非常に高まっているという印象を受けます。  自治体は、今おっしゃったように百七十七、もっとふえていると思います。ただ、非核平和宣言をした自治体は千四百以上ありますから、それをもって多い少ないを言うのはまだ早計だろうとは思いますが、短い期間に大変ふえていることは間違いない。それほど、少なくとも地方自治体が関心を持って、関心の中には危惧を込めてこの審議を見守り、法案を受けとめていることは間違いないことだと思います。  また、労働組合全体、連合というような労働組合のナショナルセンターがはっきりした意思表示をしておりませんけれども、しかし、航空労組連絡会、全日本海員組合、全日本港湾労働組合といった港湾荷役あるいは船舶輸送、さらに航空輸送の労働組合に関しては大変強い反対が起こっておりまして、パイロットを初め、また船員の人たちが各地で活発に抗議活動をしている。それはむしろ強まっていると私自身感じております。     〔赤城委員長代理退席、委員長着席〕
  176. 隅野隆徳

    隅野公述人 憲法研究者のこの法案に対する反対の意思表明ということについてお答えいたします。  端的には、全国憲法研究会という学会がございます。三百人以上の憲法研究者で組織されて、一九六五年ですから、もう三十年以上になります。この組織が、個人的な意思の連合ということで、四月の初めに、その時点で三百名以上の半数以上の百五十人以上の人の意思を結集して、周辺事態法案等を憂慮する憲法研究者の声明というのを発表しました。全体として先ほどの私の公述のところとかなり共通するところがあると思いますし、そして最後には、多くの点で日本国憲法の基本原理に抵触するおそれのある周辺事態法案等に対して、私たちは憂慮の念を表明するということを表明しております。  そのほか、法学研究者の組織で、民主科学者協会法律部会という五百人以上の横断的な法学研究者の会がございます。この学会においても、昨年の十月に反対、廃案を求める声明を出すというようなことで、法学者の間のこの法案に対する関心は大変高く、また今後も批判の動きを強めていくというふうに思います。  以上でございます。
  177. 辻元清美

    辻元委員 さて、前田公述人にもう一点お聞きしたいんですが、最近では、国連などを中心にしまして、人間安全保障という概念と、それに基づくアクションプログラムもいろいろなところで新しく出てきているということは、前田公述人も以前からおっしゃっていたことだと思います。  今度ハーグでも、五月には国際会議がありますけれども、そういうふうなNGOや、それから国連を中心とした人間安全保障の考え方について、前田公述人のお考えを伺いたいと思います。
  178. 前田哲男

    ○前田公述人 日本国憲法は、その当時言葉はありませんでしたが、人間安全保障と今日呼ばれる考え方の上に立っていると思います。それは、前文にあらわれている言葉、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」またそれに続けて、「諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」この二つの主題は明らかに、今日人間の安全保障と呼ばれているものと響き合っていると思います。  また、国際社会において、名誉ある地位を占めるという決意、さらに、我らは自国のみのことに専念して他国を無視してはならないのであってという国際協調主義、これらすべて、今言われている人間安全保障の根底をなす思想だと思います。  そのようなものを持ちながら、我々はそれを世界に対し発信する機会をこの半世紀以上持っていなかったということを、冷戦後、それは冷戦のせいということを言うことはできるわけですから、しかしそれがなくなった今、積極的に考えていく時期ではないだろうか。  人間の安全保障は、軍事安全保障を一〇〇%否定するものではありませんが、しかし、軍事安全保障によって何も解決できないというところから発する考え方であって、貧困、差別、抑圧、独裁的な政治政治的な自由のなさ、そうした構造的暴力を解消していくことによって安全保障の基盤をつくろうという考え方でありますから、我々はそれをもっと大切にして、そこから政策を紡ぎ出していく。  こういう法案を見てみますと、佐久間さんには失礼ですが、自衛隊の、自衛隊部隊のための、軍事目的のための安全保障、国際協力というふうに余りにも偏り過ぎているのではないか。それがゼロである必要はありませんが、しかし、日本の国際協力はそうではなくて、例えばスウェーデンがやったように、では我々は湾岸戦争のときに野戦病院を構築する、それだけ日本は責任を持ってやるという命題を立てる。今であれば、難民救援あるいは放置された残留地雷のために日本国家威信をかけて協力する、そういうテーマを立てて、それに向かって全力を挙げる。軍隊軍事活動による、軍人のためだけのものではない活動を設定し、実施し、それによって国際貢献をするというやり方があると思います。余りにもハードウエア中心、軍隊というものの役割をのみ考えた目標設定の仕方をするので、無理に自衛隊のあるべき姿を別のものにしようとすることが出てくるのではないか。  その意味で、人間安全保障という憲法にのっとったものの中からどのような日本の国際的な協力、貢献のあり方を構築していくかをぜひ御検討願いたいというふうに考える次第であります。
  179. 辻元清美

    辻元委員 本日は、長時間にわたりまして、公述人の皆さん、どうもありがとうございました。私が最後ですので、これで終わりになります。ありがとうございました。
  180. 山崎拓

    山崎委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  これにて公聴会は終了いたしました。  次回は、明二十二日木曜日午前八時理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時七分散会