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1999-04-20 第145回国会 衆議院 日米防衛協力のための指針に関する特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    成十一年四月二十日(火曜日)     午前九時開議   出席委員    委員長 山崎  拓君    理事 赤城 徳彦君 理事 大野 功統君    理事 玉沢徳一郎君 理事 中谷  元君    理事 中山 利生君 理事 畑 英次郎君    理事 前原 誠司君 理事 遠藤 乙彦君    理事 西村 眞悟君       安倍 晋三君    相沢 英之君       浅野 勝人君    大石 秀政君       河井 克行君    瓦   力君       木村 隆秀君    木村  勉君       岸田 文雄君    小島 敏男君       桜田 義孝君    田村 憲久君       西川 公也君    萩山 教嚴君       平林 鴻三君    福田 康夫君       福永 信彦君    細田 博之君       宮島 大典君    八代 英太君       米田 建三君    伊藤 英成君       上原 康助君    岡田 克也君       桑原  豊君    玄葉光一郎君       島   聡君    土肥 隆一君       藤田 幸久君    横路 孝弘君       赤松 正雄君    佐藤 茂樹君       山中あき子君    若松 謙維君       東  祥三君    井上 喜一君       達増 拓也君    木島日出夫君       佐々木陸海君    東中 光雄君       伊藤  茂君    北沢 清功君       辻元 清美君  出席国務大臣         外務大臣    高村 正彦君         運輸大臣    川崎 二郎君         自治大臣    野田  毅君         国務大臣         (内閣官房長官         )       野中 広務君         国務大臣         (防衛庁長官) 野呂田芳成君         国務大臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君  出席政府委員         内閣官房内閣安         全保障危機管         理室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障・         危機管理室長  伊藤 康成君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第二         部長      宮崎 礼壹君         防衛庁長官官房         長       守屋 武昌君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 柳澤 協二君         防衛庁装備局長 及川 耕造君         経済企画庁総合         計画局長    中名生 隆君         外務省総合外交         政策局長    加藤 良三君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 竹内 行夫君         外務省欧亜局長 西村 六善君         外務省条約局長 東郷 和彦君         資源エネルギー         庁長官     稲川 泰弘君         運輸省港湾局長 川嶋 康宏君         運輸省航空局長 岩村  敬君         労働省労働基準         局長      伊藤 庄平君         自治大臣官房総         務審議官    香山 充弘君  委員外出席者         法務大臣官房審         議官      渡邉 一弘君         衆議院調査局日         米防衛協力のた         めの指針に関す         る特別調査室長 田中 達郎君 委員の異動 四月十六日              辞任         補欠選任   児玉 健次君     東中 光雄君 同月二十日              辞任         補欠選任   瓦   力君     福永 信彦君   田村 憲久君     木村 隆秀君   宮腰 光寛君     岸田 文雄君   玄葉光一郎君     藤田 幸久君   土肥 隆一君     島   聡君   辻元 清美君     北沢 清功君 同日                 辞任         補欠選任   木村 隆秀君     木村  勉君   岸田 文雄君     宮腰 光寛君   福永 信彦君     瓦   力君   島   聡君     土肥 隆一君   藤田 幸久君     玄葉光一郎君   北沢 清功君     辻元 清美君 同日                 辞任         補欠選任   木村  勉君     田村 憲久君 四月十六日  新ガイドライン関連法案立法化反対に関する請願中西績介紹介)(第二五九七号)  新ガイドライン有事法制化反対に関する請願深田肇紹介)(第二六八七号)  同(辻元清美紹介)(第二七三八号)  同(深田肇紹介)(第二七三九号)  新ガイドライン関連法案反対に関する請願辻元清美紹介)(第二七三七号)  新ガイドラインに基づく周辺事態法などの制定反対に関する請願松本善明紹介)(第二七四〇号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件(第百四十二回国会条約第二〇号)  周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案内閣提出、第百四十二回国会閣法第一〇九号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出、第百四十二回国会閣法第一一〇号)     午前九時開議      ————◇—————
  2. 山崎拓

    山崎委員長 これより会議を開きます。  第百四十二回国会内閣提出日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の各案件を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前原誠司君。
  3. 前原誠司

    前原委員 おはようございます。  民主党の前原でございます。この委員会で三回目の質問をさせていただきたいと思います。  まず一つは、事前協議について再度、前回に続いてお尋ねをさせていただきたいと思います。  前回、私は、アメリカのナショナル・セキュリティー・カウンシルの六〇〇八の一の文章を引用いたしまして、「在朝鮮国連軍への攻撃に即応するものを除いて、」ということで、いわゆる事前協議についての例外規定があるのではないか、こういうお話をさせていただきました。これについてはこの間の答弁では、そういうものの存在は知っているけれども、我が国としては、この事前協議については今まで答弁してきたとおりだということでございました。  それについて理事会でも今協議をしていただいているところでございますけれども、そもそも論としてちょっとお伺いをしたいのでありますけれども、日本が公式にこうだと言っていることに対して外国内部文書、あるいは正式な文書でもいいのですが、違うことが書かれているときに、今まで、そういうものを確認して、そしてその国との確認の中で新たな政府見解を出すということにしていたのか。あるいは、それは我が国の言っていることが正しいのであって、一々相手の国の言っていることについては、仮に我が国が言っていることと違うことであってもそれについては関知せず、こういう態度で臨むのか、外務大臣、それはどちらでございますか。
  4. 高村正彦

    高村国務大臣 一般的に言えば、日本とほかの国との関係において、日本が言っていることを、今の外国政府が公式に外に向かって違うことを言っていたら、それは違うではありませんかというお話はするのだろうと思うのです。ただ、現時点アメリカ政府がそう言っていることも知りませんし、内部文書にそういうものがありますよという報道をされたことを承知しているということにおいて、そういうことを一々外国に対してこうだああだということは一般的にありません。  ただ、今日本国会で行われていることはまさに公式に行われていることですから、アメリカ側が仮にそれは認識が違うということであれば、当然、そういう認識を持って日本に対して、それは我々のあれでは違うのですよ、こういう密約があったではありませんかということは言ってくるだろうと思いますが、そういうことを言ってきたということは一切ありませんし、そういう密約があることは今度の場合にもありません。  ありませんし、私たちが今言っているのは公式にこの国会で申し上げているのです。古い内部文書でこういうのがありますよということについて、一々私たちの方からその内部文書についてどうだこうだ、おかしいじゃありませんかとか、そういうことを言う必要はないだろう。もし問題があるのであれば、私たちが今公式にこういうことを、国会で申し上げていることでありますから、そういうことはアメリカ側が違う認識を持っているのであれば当然言ってくる話でありますし、そういうことを言ってきているということは一切ございません。
  5. 前原誠司

    前原委員 アメリカからはそういうこと、事実認識と違うじゃないかということは言ってきていないということでありますが、我が国からもアメリカに対して、その内部文書は違うのでないかということは言っていないわけですね。その存在は知っておられる。NSCの六〇〇八の一の「在朝鮮国連軍への攻撃に即応するものを除いて、」ということが書いてあることは知っておられるけれども、それについてアメリカに抗議をしたことがなければ、今おっしゃったように、日本の立場というのは、アメリカのその文書というものは事実認識違いであって、今まで答弁されたことが正しいですよ、そういうことですね。もう一度ちょっとお答えいただけますか。
  6. 高村正彦

    高村国務大臣 一九六〇年当時の文書というものがあるということはマスコミ報道で承知している、マスコミ報道だけではなくて、この国会における委員の御指摘によっても承知をしているところでございます。  ただ、繰り返すようですが、全くのアメリカ内部文書日本はこれ、私が現時点国会で申し上げていることで、そういうことはアメリカ側も当然ウオッチして見ておりますから、聞いておりますから、もしそれについて全然違うんだよということであれば、それはアメリカ側日本に対してただすべき話で、そんなことは、現実に両国でそういう話をしたということはありませんし、今私が申し上げていることに間違いはございません。
  7. 前原誠司

    前原委員 今まで事前協議というのは一度もされたことがないわけです。この委員会でも、あるいは今までの外務委員会予算委員会あるいは安保委員会でも何度となく取り上げられたと思うのでありますけれども、再度確認をしておきたいと思います。  一体、括弧つき事前協議、つまり、日常いろいろな協議をされているものではなくて、この岸・ハーター交換公文に基づく事前協議というのは一体どういう形で行われるのだろうか。つまり、言ってみればどのレベル以上の人が議論をすればその協議たり得るのか。総理大臣と大統領でしかだめなのか、あるいは外務大臣防衛庁長官までだったらいいのか、あるいはその方々がだめなら大使はいいのか、あるいはひょっとしたら北米局長局長クラスがいいのかとか、そういうクラスの問題をまずお伺いしたいのが一つ。  それと場所の問題ですね。もちろん、日本アメリカにそれぞれいるわけでありまして、どっちかに行くということはなかなか緊急の事態に対しては難しいということでありますけれども、電話などでやることも、それは、クラスの問題も含めて、やられることが妥当だという方々で行われるのであればそれはいいという話なのか。あるいはどちらかの場所で、さっき申し上げたように大使がその任を、かわりを果たすというものなのか。  その事前協議イメージを、もし行うとすれば、今までは一度も行われたことがないのでそれがよくわからないのですが、イメージをちょっと教えていただきたいと思います。
  8. 高村正彦

    高村国務大臣 日米間で事前協議が行われるルートについては、特定はされていないわけでありますが、通常外交ルートで行われることが最もあり得ると考えております。  そのような外交ルートとしては、政府を代表して外務大臣または外務省幹部在京米国大使館より協議を受けるというようなことが一般的に想定されるわけでありますが、御指摘のような場所手段等を含め、これに限定されるわけではありません。  大切なのは、事前協議を受けた場合の我が国対応の方なのだろうと思います。最初、相手が発議するところがどういうことかということよりも、我が国対応については原則として閣議に諮って決定することとしております。緊急閣議も招集し得ないような場合には、総理大臣外務大臣及び場合により防衛庁長官というような限られた者の間の協議により決定することも排除されないとの点は、これまでも国会政府お答えしているところでございます。  委員が御指摘のように、事前協議はこれまで一度も行われておりませんが、これは日米安保条約締結以来、事前協議を行わなければならないような事態が生起しなかったことによるものでございます。このことはまさに日米安保体制抑止力が効果的に機能してきたことの証左でもある、こういうふうに考えております。
  9. 前原誠司

    前原委員 確かに、向こうから事前協議申し入れがあって、それを我が国としてどう受けるかということの大切さはおっしゃるとおりだと思います。したがって、閣議に諮って、それで我が国イエスノーかというものを決定する、その部分はわかるんです。  わかるんでありますが、ただ、こういう交換公文に基づく事前協議で、さっきは幹部という言い方をされましたけれども、幹部の定義があるのかもしれません、あれば教えていただきたいんですが、やはりおのずと話を受けるレベルというものはあるんだろうと私は思うんですね。  できればそれは大臣同士というのが望ましいし、2プラス2のときでも、大臣が出られない場合は大使がそれに、任をかわっておられる場合もありましたね。そういうものが望ましいと思うんでありますが、さっきおっしゃったように、大臣がどうしてもそれができない場合については幹部という言い方をされましたけれども、その幹部というのは審議官なんですか、局長なんですか、そこら辺は決まっていないんですか。もう一度お答えいただけますか。
  10. 高村正彦

    高村国務大臣 先ほど申し上げたように、きっちりした形では決まっておりません。ただ、委員がおっしゃるように、おのずと大体どのくらいだということは、それはあるんだろうと思いますけれども、ことし外務省に入った方に何かどこかから電話がかかってきてということは、まあことし入ったといっても外務大臣なんかは入った直後ということもありますけれども、一般的には、おのずとあるとは思いますが、場合によったら審議官クラスもあるのかな、こういうような感じはいたします。
  11. 前原誠司

    前原委員 今の御答弁に全く不満足ということじゃないんですが、お気を悪くなさらないでいただきたい。確認のために、北米局長あるいは条約局長、どちらでも結構ですので、そこら辺のある程度のレベルというものは、今までの、今さっきおっしゃった外交ルートという常識から考えればおのずと定まってくるだろうと思うんですね、そこら辺についてちょっと事務方で御答弁いただけますか。
  12. 竹内行夫

    竹内政府委員 これは、全く今大臣から申し上げましたことに特に補足することはございませんが、外務省幹部と申しましても、やはりそれなりのレベルということが必要だろうということは事務当局としても十分認識しているところでございます。  普通は、普通はと申しますかこちらの大使がおられれば、東京で行われる場合には大使が当然想定されますし、それから、大使がおられないというような場合にはその臨時代理大使というのもございます。そういたしますと、自然と、大使カウンターパートなり臨時代理大使カウンターパートということで、大臣であったり次官であったり外務審議官であったり。それも、全くの緊急で例外的というような場合には、これは別に決まったわけではございませんけれども、私も、ここでお尋ねでございますからあえて申し上げますと、北米局長ということもそれはあり得ないことではなかろう。  しかし、今大臣がるる申しましたとおり、別にそれを受けたからといって局長が決められるわけでは全くございませんし、それから、局長によっては、局長が聞かれたような場合に、聞かれたといいますか通報を受けたような場合におきましては、それはもう一度レベルを上げて確認してもらうというようなことで、やはりこれは大臣に直接話をしてもらうということで受け答えするということもあろうかと思います。それはまさにそのときに応じて適切に処理するということだろうと思います。
  13. 前原誠司

    前原委員 事前協議の話はこれぐらいにしておきたいわけでありますが、私は、このNSC文書あるいは前回質問させていただいた佐藤元首相のナショナル・プレス・クラブの演説というものは、やはり何らかの、密約とまでは申しませんが、日米間での取り決めというのは、今はないかもしれない、それは大臣のおっしゃることを信じればそうなのかもしれませんが、その時点においてはやはりある程度のそういうニュアンスというものが私はあったと思うんですね。  それを、今回あるいは今までの答弁の中でも、事前協議というものは例外なくやる。こういうことをやはり国民にもう一度しっかりと知らしめる。つまり、事前協議というのは形骸化をしていて、アメリカから申し入れがあれば、イエスノーの二つはあるけれども、基本的にはイエスじゃないかとか、そういう疑念を持たれているということ自体に私は大きな問題があると思います。  事前協議がこれからないということが私は理想だと思いますけれども、仮に不幸にもあったという場合においては、日本の主権に基づいて的確な判断をするという姿勢をぜひ貫いていただきたいと思いますし、外務大臣のきょうの御答弁というものはそれを明確にやるということの裏返しだということを私は判断をさせていただきたいというふうに思います。  それでは次の質問に移らせていただきますが、集団的自衛権の問題についていろいろな角度から御質問をさせていただきたいと思います。  前回、いわゆる対潜水艦戦についていろいろと質問をさせていただきました。この委員会でもいろいろな方々から御質問のあった点でありますけれども、いわゆる情報というものが集団的自衛権行使につながらないのかどうなのかということについては、私は今でも極めて疑問を持っております。  つまり、武力行使一体化というところで武力行使はしていないということでありながら、しかし、今から御質問をするような対潜水艦戦でありますとか、あるいは後で質問しますような機雷掃海作業というものは、基本的にやはり私は武力行使とかなり密接につながっている行動だというふうに思っております。  前回は、私が質問させていただいてこれも理事会で今諮っていただいておりますが、対潜水艦戦を行っているP3Cやあるいは潜水艦、あるいは警戒監視活動を行っているE2CやAWACS、こういう送られる情報というものについては、どういうものが集団的自衛権行使には当たらなくて、あるいはどういうものが当たるのか、こういう質問をさせていただきまして、その類型化を、峻別をしてくれということでありました。  先般、御答弁の中では、いわゆる情報というのは基本的に大丈夫ですよというお答えもあったわけでありますけれども、今まで、さはさりながら防衛庁でも、これは当時の秋山防衛局長お答えになっていることで、「情報というのにも非常に種類がある、あるぎりぎりの段階になって、例えばある目標、何度何分、角度何度で撃て、こういうふうなことがあるとしますと、これも一種情報の伝達になるわけでありますが、これは果たして通常我々が考えている憲法上の問題もない情報提供になるのかどうかというあたりの問題はある」、こういうことも御答弁をされているわけであります。  理事会で諮っていただいている問題でございますが、再度御質問しますけれども、こういう情報についての、これはよくてこれはだめだという政府統一見解がまとまっていれば、お答えをいただきたいと思います
  14. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 日米安保体制下において、日米が平素から軍事情報を含め相互に必要な情報交換を行うことは、当然のことであります。このことは周辺事態においても何ら変わることはないと思います。  このような一般的な情報交換一環として米軍情報提供することは、ASWを行っているP3Cや潜水艦、あるいは警戒監視活動を行っているE2CやAWACSといった手段のいかんを問わず実力行使に当たらず、憲法九条との関係で問題を生ずるおそれはないと考えられるところであります。  なお、我が国がどのような場合にどのような情報提供を行うかにつきましては、具体的な事例に即して、国益に基づき、自主的に判断すべきものであると考えます。  一方、今も委員から御指摘ありましたが、憲法上問題になり得るとすれば何かということでありますが、先ほど来申し上げておるとおり、情報提供は一般的には実力行使に当たらないけれども、憲法九条との関係で考えるとすれば、ある目標方位何度何分、角度何分で撃てというようなことまでも、あえて一種情報提供であるとするならば、このような情報提供については憲法上問題を生ずる可能性があると考えます。
  15. 前原誠司

    前原委員 今までの答弁と全然域は出ていないのでありますけれども、今防衛庁長官おっしゃったそういう直接軍事行動、つまり相手目標攻撃するのに直接かかわる角度とか方位とか、そういうものだけが憲法上かかわる問題であって、その他情報一般というものは九条に照らして問題ない、こういう御答弁ですか。もう一度お願いします。
  16. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今申し上げたとおり、方位何度何分とか角度何度で撃てというようなことをあえて一種情報提供であるとするならば、憲法上も問題を生ずる可能性があるということは、私どもが一貫して答弁してきたとおりであります。  ガイドラインのもとで行うことを想定している情報交換につきましては、米国戦闘行為に直接役立てるために偵察活動を実施するということは考えておらないため、憲法上の問題は生じないものと考えております。  なお、自衛隊がその任務を遂行するために、情報収集活動により得られた情報を一般的な情報交換一環として米軍に対し提供することは、憲法上問題ないものと考えております。
  17. 前原誠司

    前原委員 常識的に考えると、今の御答弁というのは非常に欺瞞に満ちたものだと私は思うのですね。いい悪いの話じゃありません。答弁としては私は極めて不誠実だというふうに思います。  なぜかといいますと、一つは、ガイドラインに基づいて情報提供することがないということはあり得ないわけですよ。つまり、例えば対潜水艦作戦ASWにしたって、あるいは後から御質問する機雷掃海の問題にしても、アメリカの弱い部分について、海上自衛隊なりがやはりそれは補完をするという形で今まで訓練も行ってきているし、またそういう形の中で、もし日本有事があったときなんかは対処するということで私は組み立てがされているのだと思うのですよ。そういう中にあって、ガイドライン関連法案の中では、自衛隊はそういう活動米軍に対してするものではない、やるのは一般情報だけだということですけれども、その二つの違いというのは多分ほとんどないのだろうと私は思うのですね。一般情報ということでくくっているだけであると。  つまり、僕はやっちゃいかぬということを申し上げているのではない。もうちょっとやはり国民に対しての誠実さというものを示さないといけないし、ひっかかる問題が憲法上の問題ということであれば、もっと真摯に憲法上の問題も私は議論しなきゃいけないと思うのですよ。この情報の問題というのはまさしくその大きなポイントだと思います。  もう一度御質問しますよ。私が御質問しているのは、情報の中で、憲法に抵触するおそれのあるものとないものの類型化をしてほしいということで、先ほど目標に向かって角度がどうのこうのというお話がありましたけれども、それ以外の情報はすべて憲法九条に照らして大丈夫だという御答弁なんですかということを聞いているのです。もう一度御答弁いただけますか。
  18. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 これもまた先ほど御答弁したとおりでありますが、米国戦闘行為に直接役立てるために偵察行動を実施することは考えていない、したがって憲法上の問題は起こらない。そのことは、どのような情報提供をするかについては、具体的な事例に即して、国益に基づき、我が国が自主的に判断して、憲法違反になるような情報提供は行わない、こういうふうに申し上げているわけであります。
  19. 前原誠司

    前原委員 直接戦闘行為につながる情報提供しないということでありますけれども、しかし、例えばさっき大臣お答えになったように、P3Cや潜水艦でいわゆるASWをやるわけでしょう。そうしたら、相手潜水艦なりあるいはひょっとしたらその副産物として不審船も見つかるかもしれない。そういう位置というのは米軍に伝えるわけでしょう。あるいは、E2CやあるいはAWACS、航空自衛隊警戒監視活動を行っていて、上空に不審な戦闘機を日本が先に見つけたという場合は伝えるわけでしょう。でも、それは言ってみれば、周辺事態が起こっている場合においては、アメリカ攻撃対象になる可能性というのはあるのじゃないですか。
  20. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 大臣が御答弁していることに尽きるわけでございますが、自衛隊がその任務を遂行するために行う情報収集活動により得られた情報を、一般的な情報交換一環として米軍に対し提供することは憲法上問題ないと申し上げているわけでございまして、今大臣から申し上げたのは、要するに米国戦闘行為に直接役立てるために偵察活動を実施して、それに基づく情報提供をする。いわば自衛隊活動の任務遂行のための情報収集ということではなくて、まさに米軍戦闘行為に直接役立てるために偵察活動をするということによって情報提供をする、こういうことを御答弁したところでございます。
  21. 前原誠司

    前原委員 私はやっちゃいけないということを申し上げているのではないのです。これは私のポリシーというか、立場としてそのことはお話をしたいと思います。  ただ、御答弁が余りにも不誠実だと申し上げているのは、一般の情報をキャッチする中でその情報を伝えることはあると。つまり、アメリカの戦闘行動のため、その目的のために情報活動をするのじゃないという言い方をされますけれども、周辺事態が起こったときに何が一番大切なのかということになれば、相手潜水艦がどこにいるのか、あるいは相手の戦闘機がどこから出てくるのか、そういうことの情報というものを中心に集めるのが自衛隊警戒監視活動になるんじゃないですか。それは当然のことじゃないですか。一般情報をつかんで、それを一環として米軍に伝えるなんということは、私は答弁としては余りにも不誠実だと申し上げているわけですよ。もう一度御答弁いただきたい。
  22. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 もちろん周辺事態でございますから、日本の平和と安全のために自衛隊がその任務としていろいろな情報収集活動をする、警戒監視をするというのは当然だと思います。また、それが任務だと思います。そういう過程で、自衛隊が任務遂行をするために収集した情報、それを米軍情報交換するということは、私は憲法上許されている問題であろうと思います。  一方、そういう自衛隊の任務遂行ということではなくて、米軍の戦闘行動のために特定の偵察活動をするということによって情報を得る、それをまた提供するということは、これは性格が違う問題だろう、こういうふうに思います。
  23. 前原誠司

    前原委員 今の防衛局長お答えで性格が違うと言われても、私はその辺はよくわからないのですね。つまり、周辺事態が起これば、それに対して集中的に警戒監視を行うというのは当たり前だと。しかし、後者の方は、アメリカ攻撃に資するために、そのためのみに情報を収集するわけじゃないんだということになれば、じゃ一体何のための防衛協力なのかということになってしまうと思うんですよね。  防衛協力をすることを今回このガイドラインの法案で我々は審議しているわけです。そして、基本的には防衛協力が必要だと言っているわけです。アメリカも、自分たちの弱いところについては日本に助けてもらいたいと。そして、その一つの大きな柱というものが情報の収集なわけですよね。だったら、それを否定することはないじゃないですか。なぜ、アメリカ行動のために情報収集はしないということをわざわざおっしゃるんですか。防衛協力だったら、そのために情報収集活動をするとおっしゃればいいじゃないですか。もう一度御答弁ください。
  24. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 日本として、日本の平和と安全に対応するために自衛隊がその任務の一環として警戒監視をし、情報収集をする。それでまた、それで得られた情報は我が方の判断に基づいて米軍にも提供するということは、これは一つの協力ということなのかもしれません。  ただ、一方、そういう自衛隊の任務遂行ということではなくて、米軍の戦闘行動に役立てるために偵察行動をするということは、これは先ほど来御議論に出ているような憲法との関係でそこは疑義がある、こういうふうに考えている次第でございます。
  25. 前原誠司

    前原委員 最終的に、今防衛局長がおっしゃったように、憲法の解釈の問題で非常に慎重な答弁に終始をしているというふうに私は思うし、皆さん多分そう思っておられると思うんですね。ただ、憲法の解釈の中でそういう慎重な答弁をして、しかも、本来ならば堂々と、周辺事態日米間で防衛協力をやるんだ、そしてアメリカにその情報を伝えるんだと言うべきであるにもかかわらず、一般的な情報をつかんでそれを送ることはある、しかし、それはアメリカに対して一義的にその目的として情報を伝えるものではないという言い方というのは、私は言葉の遊びでしかないというふうに思いますよ。  ここは憲法解釈の問題に絡んでくる問題ですので、これはちょっと後で違う角度質問しますので、その点についてはまた後で御答弁をいただきたいと思います。  機雷掃海について同じような質問をさせていただきたいと思います。  ある事態周辺事態と認定をされたときに、アメリカの第七艦隊が作戦を展開する海域はクリアでなくてはいけない、つまり機雷なんかはないということが望ましいわけでありますけれども、その掃海能力というのは日本がたけている。それで、母港横須賀の出航から作戦行動地域までの掃海活動海上自衛隊が行うことができるのかどうなのか。その点について再度御確認をさせていただきたいと思います。
  26. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 新しいガイドラインにおきまして、運用面における日米協力として位置づけられている我が国活動は、機雷除去を含めまして、周辺事態我が国の平和と安全に重要な影響を与えることから、我が国我が国の平和と安全の確保の観点から行う活動であり、その活動の結果として、周辺事態により影響を受けた平和と安全の回復のために活動する米軍に資することもあり得ると考えております。  周辺事態における自衛隊法九十九条に基づく機雷の除去につきましては、我が国船舶の航行の安全確保を目的とするものであり、このような目的を離れ、専ら米軍艦艇の航行の安全確保のために行うといったものではなく、米軍艦艇の戦闘作戦行動における航行の安全に結果的に寄与するという場合があり得るにすぎないものと考えております。
  27. 前原誠司

    前原委員 これはだれが聞かれても、さっきの情報の話と一緒なんですね。つまり、米軍のために情報収集をするわけじゃない、機雷掃海をするわけじゃない、しかし、その結果として米軍に役立つものということはあり得るんだということで、すべて逃げているわけです。つまり、憲法解釈の問題という一つの大きなハードルがあるためにそういう御答弁にならざるを得ないというのは、この法案を議論してきた中で、本当に国民に対して説明がつきにくい、あるいは政府が本音を言っていないという大きなポイントだというふうに私は思うんですね。  昭和五十三年の旧ガイドラインのときに三つの協力項目があって、極東有事だけは最後まで詰まらなかったというのはやはりこれはグレーゾーンだったからであって、集団的自衛権の解釈の問題というものがあったわけです。  しかし、今回はそれを無理やり、グレーゾーンを白と黒ということに分ける中で、そういった文言で逃げようとされているということでありまして、これは政府憲法解釈、集団的自衛権の解釈は変えられることはないんだろうと思いますけれども、こういうことを続けていくということが、逆に憲法の信頼性というものをなくしていく大きな要因のような気がして私はならないのですね。私は、非常にその点を、防衛協力が必要だという観点で質問をさせていただきながら、本当に割り切れない、また本音の議論ができないというもどかしさというか悲しさを感じます。ひょっとしたら、防衛庁長官も同じように悲しさを感じておられるのかもしれませんけれども、その点だけちょっとお話をさせていただきたいと思います。  武力行使一体化について、さらに集団的自衛権の問題についてお話を進めていきたいと思います。  この特別委員会でも三月の二十六日に共産党の志位議員が質問をされましたし、また一九八一年の四月二十日の安保、そのころは特別委員会なんですね、特別委員会で西中清議員が質問をされていることに関連して、私は質問させていただきたいと思います。  どういう質問かといいますと、これは、日本に対して武力行使を行っているAという国があったとします。日本に対して武力行使を行っているそのAという国に対してBという国が後方支援をしている。その場合に、日本はB国に対して自衛権の行使ができるのかどうなのか。  今まで二回そういう御質問があって、政府答弁ありますけれども、再度この点についてお伺いしたいと思います。
  28. 高村正彦

    高村国務大臣 御指摘のような仮定の状況を設定して確定的なことを申し上げるのは大変難しいわけであります。個別具体的状況において現実に生起した事実に基づいて判断する必要があるわけでありますが、その上で、あえて一般論として申し上げれば、政府は従来から、憲法九条のもとにおいて許容される自衛権の発動については、いわゆる自衛権発動の三要件に該当する場合に限られる、こういうことを申し上げているわけであります。  このことを前提に、A国に対するB国の後方支援我が国の自衛権行使について一般論としてお答えをいたしますと、第三国であるB国がその国の行為として、我が国に対して武力攻撃を行っているA国を支援する活動を行っている場合について、B国のそのような行為が我が国に対する急迫不正の侵害を構成すると認められるときは、我が国は、これを排除するために他の適当な手段がなく、必要最小限度の実力行使判断される限りにおいて自衛権の行使が可能である、こういうことでございます。  臨検の場合もちょっと申し上げましょうか。(前原委員「はい、お願いします」と呼ぶ)  第三国であるB国を旗国とする商船が、我が国に対して武力攻撃をしているA国に物資を輸送している場合については、我が国は、武力攻撃をしているA国に対し、自衛権発動の三要件のもとで自衛権を行使することが想定されますが、その際、A国の海上交通、通商を制約することも、A国の武力攻撃を排除するため必要やむを得ない最小限度の措置であると判断される限りにおいて、自衛権の行使として可能であります。  この場合、我が国は、A国の海上交通、通商を制約することに当然伴う措置として、B国商船の臨検を行うなど、その活動に一定の制約を加えることが可能であると解されます。B国商船に対する臨検というのは直接自衛権の発動じゃありませんが、A国に対する、そういったことに対する反射効として、B国に対して一定の制約、臨検等を行うことが可能である、こういうことでございます。
  29. 前原誠司

    前原委員 では、もうちょっと具体的に詰めて御質問したいわけであります。  今と同じような前提なんですけれども、A国が我が国に対して武力行使を行っているという前提ですけれども、そのA国に対して、Bという国が、B国の領海内で例えば輸送でありますとかの後方支援をしているという場合は、B国に対して、日本は自衛権発動、もちろんその三要件に当たるという前提でありますけれども、自衛権の発動という可能性があるのかどうなのか、その点について御答弁いただきたいと思います。
  30. 高村正彦

    高村国務大臣 B国の領海内であるか領海外であるかということはその三要素を判断する上において余り関係ないことだ、こう思いますが、三要件を判断するときには、具体的な場合があって、具体的なあらゆる要素を考えなきゃなりませんので、抽象的に答えることはかなり困難でありますが、余り想定されないのではないかとは思います。  その三要件に当たる場合が絶対的に排除されるかどうかということはともかくとして、余り想定されないなという感じがいたします。
  31. 前原誠司

    前原委員 今の外務大臣の御答弁は、日本に対して武力攻撃を行っているA国に対して、B国が、領海内に限らず、その内外は余り関係ないというふうにおっしゃいました、領海内外で後方支援をしている場合というのは余り想定されないけれども、全く自衛権発動の三要素というものが排除されるわけではない、こういう御答弁でしたね。
  32. 高村正彦

    高村国務大臣 絶対的に排除されるかどうかちょっと定かでないというふうな感じを持っていますが、まさにその具体的な場合においてその後方支援が、日本自身に対するB国の行為が急迫不正の侵害になるかどうかという判断の問題でありますから、絶対に排除されるかどうかということは確信を持って言えない、ただし余り想定されないな、こういう感じを持ちます、こういうことを申し上げたんです。
  33. 前原誠司

    前原委員 では、続いて、同じように具体例を挙げて質問します。  B国がA国に対して、A国というのは何度も申し上げますけれども日本に対して武力行使を行っている、A国に対して、我が国潜水艦、護衛艦、戦闘機などの位置を教えているということが明らかになっている場合、この場合は、B国に対して我が国は自衛権の発動、行使ができるのかどうなのか、その点についてお答えいただけますか。
  34. 高村正彦

    高村国務大臣 これも、一般的にはそういう場合がB国自身の急迫不正の侵害と認められることは想定しにくい、こういうふうに思います。  B国とA国の武器体系が完全に一致して、A国がミサイルを発射するについて、B国の何か情報に基づいてその照準がすっと定まっちゃうような、そんな特殊のケースというのはそれはB国の攻撃と言えるかもしれませんが、そういう特殊なケースでなくて、ただ単にこの辺にいるよと言うことがB国自身の急迫不正の侵害になるとは思いません。
  35. 前原誠司

    前原委員 同じ質問条約局長、さっきの領域内外の後方支援等を含めて、ちょっと御答弁いただけますか。
  36. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  基本的に大臣が申し上げたとおりでございますけれども、まず、委員質問潜水艦、護衛艦等の情報提供の件でございますけれども、先ほど防衛庁の同僚の方からもお答え申し上げましたように、一般的な情報交換一環として行われる情報の供与それ自体というのは実力行使に当たらないのではないかというふうに、一般論として、情報提供一般に関しては考えるわけでございます。  したがいまして、そういう実力行使に該当しないものに対して我が方が自衛権を行使するということは考えにくいのではないかという、大臣が申し上げたとおりでございます。ただ、繰り返して申し上げますけれども、あくまで最終的判断は個別の状況に応じて考える必要があるということでございます。  それから、後方支援の問題に関しましては、これは基本的には自衛権の三要件に該当するかどうかというところでまず考える必要があるわけでございます。我が国に対して武力行使を行っているA国を後方支援しているB国に対しまして我が国が自衛権を行使し得るか否か。これは、武力行使を一般的に禁止している国連憲章に照らして、B国に対する我が国武力行使が自衛権行使の三要件に合致し、合法と認められるか否かによって判断されるべきでありまして、すなわち、我が国武力行使は、B国の行為が我が国に対する急迫不正の侵害を構成し、それを排除するためにほかに手段がなく、必要最小限の武力行使判断される限りにおいて、国際法上合法ということになるわけでございます。  それで、では御質問後方支援そのものについてはどうかということに関しては、先ほど大臣が申し上げたとおりでございます。
  37. 前原誠司

    前原委員 私は、日本憲法解釈を聞いているんではないんです。つまり、要は日本後方支援をしているんじゃなくて、日本攻撃を受けている。Aという国から攻撃を受けている。そのAに対していろいろな支援をしているBという国がある。そして、そのBという国が後方支援をしたりしている、あるいは潜水艦、護衛艦、戦闘機などの位置を教えている。  それは、今東郷局長は、実力行使でなければ自衛権発動の三要件にならないとおっしゃいましたけれども、それはどういう法的根拠ですか。日本憲法ですか、それとも国際法ですか、どちらなんですか。
  38. 高村正彦

    高村国務大臣 日本国憲法に基づいて日本が自衛権を発動する根拠として自衛権発動の三要素ということが言われておりまして、その急迫不正の侵害に当たるかどうかということについての判断としてB国の行為自体をどう見るか、こういうことを条約局長は申し上げているわけでございます。
  39. 前原誠司

    前原委員 もう一度聞きますね。  つまり、具体的内容を聞かなきゃいけないということでありますけれども、我が国がA国から攻撃を受けている、そして、それに対して反撃を行っているわけです。潜水艦とか戦闘機やあるいは艦船で反撃を行っている。その反撃を行う日本のそれらの戦闘機、潜水艦それから護衛艦などの位置をB国が教えている、そういう場合のB国は、今具体的に申し上げているんですよ、B国は、いわゆる日本が自衛権を発動する対象には当たらない、こういうことですか。もう一度御答弁ください。
  40. 高村正彦

    高村国務大臣 先ほどから私も条約局長も申し上げているとおり、B国の行為自体が日本に対する急迫不正の侵害に当たるということは想定しにくいことだ、もちろん具体的状況をいろいろ考えなきゃなりませんが、一般的に想定しにくいことだということを申し上げているわけでございます。
  41. 前原誠司

    前原委員 A国が戦争を行っている、それがどういう戦争か、戦争自体が正義か悪かという色分けはあるわけでありますけれども、A国に対して、その後方支援をしたり、あるいは潜水艦、護衛艦、戦闘機などの位置をB国が教えているという場合、このA国とB国の関係というのはどういう関係にあるわけですか、国際法的に言えば。
  42. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  現下の国連憲章下におきます国際法におきましては、今委員指摘のケースというのは、大きく言って二つに分かれると思います。  A国が国連憲章に従った正しい武力行使をしている場合、この場合は、B国のA国に対して行ういろいろな支援というのは、国際法上問題のない行為になるということになると思います。  他方におきまして、A国の行っている武力行使が不法な、違法な武力行使ということになった場合には、B国がこの違法な武力行使を支援するということは、国際法上正当化されないということになると思います。  この点は、戦前におきます、いわゆる主権国家が交戦権を持っており、したがいまして、国家同士が戦争をすることになった場合に、第三国というのは中立の立場に立ち、中立国としての義務が生ずるというケースと基本的に変わってしまったわけでございます。  したがいまして、委員指摘のケースに関しましては、一般的にお答えすることは現下の国連憲章においてはこれは大変難しいわけでございまして、あくまで正しい武力行使している国の場合と、それから違法な武力行使している国との場合で法的な位置づけが変わってくるということと理解しております。
  43. 前原誠司

    前原委員 日本が悪という前提になってしまうので余りこういう質問はしたくないわけですが、仮に、A国が個別的自衛権の発動のもとで、国連憲章上も認められた自衛権、つまり、個別的自衛権と集団的自衛権、二つを認めているわけでありますが、個別的自衛権の発動をA国がしている場合のB国の活動というのは、A国との対比の中ではどういう活動になるのかということをお聞きしているわけです。
  44. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  A国が、国連憲章下において正しい、合法な自衛権の行使をしている場合に、これを支援するB国がどのような立場に立つかというお尋ねと理解しますが、今申し上げましたように、それは、国際法上、そういう支援をする行為は何ら問題のない行為になるということでございます。
  45. 前原誠司

    前原委員 いや、問題のない行為なのはわかるんですが、B国は、それは自衛権に基づいての行動なのか、それ以外の活動なのか、それ以外の活動であれば、どういう根拠に基づいての活動なのか、その点はいかがですか。
  46. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  B国の行動というのが武力行使を伴うという行動になるのであれば、これは、B国は集団的自衛権行使するということがあり得ることになると思います。  他方、武力行使に至らざる実態上のさまざまな支援を行うということであれば、これは、国際法上の観点から見て問題のないさまざまな支援行為というふうに考えるべきだと思います。
  47. 前原誠司

    前原委員 なぜこういう質問をしてきたのかというと、先ほどの情報の問題、機雷掃海も含めて、私は、このガイドラインを貫く大きな一つの問題というのが、やはりこの集団的自衛権の解釈の問題というものにあると思うんですね。  何度も申し上げますけれども、米軍に対しての情報収集じゃない、米軍に対しての機雷掃海じゃない、しかし結果としてそうなる部分については構わないんだ、こういう答弁が公式のこういう国会の場でなされるということは、幾ら憲法解釈の制約があるとはいえ、私は、極めて不誠実だし、また、このガイドラインそのものを国民がわからないものにしている大きな理由だと思いますね。  私は、憲法解釈自体が憲法の精神をゆがめるということ以上に、拡大解釈をし続ける、そしてまた、そういうものが今はち切れそうになっている状況だと思うんでありますが、これは、近い将来、集団的自衛権政府見解というものを変える、もしくは憲法改正によってそれを成文化する、あるいはもっと逆に、今の憲法を厳格に運用するものであればグレーのところはやらない、いずれかの選択肢にしないと、憲法というものの信頼性というものが極めて薄くなるような気がしてなりません。  この集団的自衛権政府見解について、ちょっとお二人の大臣から、今御自身が考えておられる御見解、あるいは今後どうすべきかということも含めて、私見で結構でございますので、お答えいただけますか。
  48. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先ほど来の御議論のとおり、国際法上集団的自衛権は、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止する権利であります。  一般に、こうした国際法上の集団的自衛権の概念は、その成立の経緯等から見ても、実力行使すなわち武力行使を中核とした概念であると考えられ、その旨は、従来から答弁しているとおりであります。  一方、周辺事態安全確保法において我が国が行う後方地域支援等の活動は、先ほど来累次申し上げているとおり、それ自体武力行使に該当せず、米軍武力行使との一体化の問題が生ずることも想定されておりません。また、そもそも集団的自衛権行使には当たらないと考えております。  いずれにしましても、政府としては、集団的自衛権に関する従来の考えを変更することは考えておりません。
  49. 高村正彦

    高村国務大臣 私見を述べることを許されていない立場の人間に私見を求められるというのは非常に困るわけでございますけれども、私の考えは、防衛庁長官が述べられたことと全く同じでございます。
  50. 前原誠司

    前原委員 質問した私がばかでございました。  次の点について質問させていただきたいと思います。  具体的な修正議論というのは行われているという報道がなされておりますけれども、それについて幾つか御質問をしていきたいというふうに思っております。  日米安保条約の枠内ということでございますけれども、これは、我が党の中でも、この日米安保条約の枠内というのは二つの意味があると。つまり、地理的な範囲をある程度限定するということと、あともう一つは、今から質問することでありますけれども、日米間で、周辺事態というのは両国で認定をするということが今まで御答弁でありましたけれども、認定をしていて、アメリカ活動しておらず、事実上あり得るかどうかという現実の問題は別としまして法律の問題としてお尋ねをするわけでありますが、アメリカ活動していないときに自衛隊がこの法律に基づいて捜索救難や船舶検査を行うことは法律上あり得るということでありましたけれども、事実上あり得るのかどうなのか、現実としてどうなのか、その点について御答弁をいただきたいと思います。
  51. 高村正彦

    高村国務大臣 我が国の平和及び安全に重要な影響を与える周辺事態が生起している際に、米軍がこれに対応して日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を何ら行っていないということは、実際の問題としては到底想定されないわけであります。  いずれにしても、周辺事態に際して、我が国が、後方地域捜索救助活動、船舶検査活動を含む法案に基づく活動を行う場合には、日米間における協議、調整を踏まえ、基本計画が作成されるとともに、日米協力が行われることになると考えております。
  52. 前原誠司

    前原委員 つまり、今の御答弁ですと、日米周辺事態と認定をして、そして、アメリカ活動をせず日本が単独でやるということは事実上あり得ないと。つまり、こういう認定をすれば、ともに活動をする中で、日本が主体的に捜索救難、船舶検査を行うことはあるけれども、アメリカとしてはほかに何らかの活動をしている、そういう意味でございますね。もう一度、確認だけで結構です。
  53. 高村正彦

    高村国務大臣 今、委員が整理されたとおりでございます。
  54. 前原誠司

    前原委員 あと、質問通告した問題もありますけれども、ちょっと通告したもの以外で、恐縮ですけれども質問をさせていただきたいところが何点かあります。質問通告をしておりませんので、ゆっくりとわかりやすく御質問をいたしますので、わかる範囲で結構です。よろしくお願いいたします。  国会承認の議論が今なされております。国会承認で、我が党は、基本計画全体についての国会承認を求める立場であります。全体というのは何かといいますと、周辺事態の認定、それから基本計画、それからそれに基づく自衛隊の出動。こういう三つのものをセットにして、我々としては基本計画というものを国会承認にすべきだ、このように主張をしております。それに対して、一部、まだ議論の段階でございますけれども、自衛隊の出動のみを国会承認事項にすべしという議論もあります。  政府のお立場としては、まだまだ修正協議というものが進んでいない中で、原案がいいものだというお立場は変わりがないと思います。変わりがないということで、政府のお立場をおっしゃらなくて結構なんですが、仮に国会承認ということにした場合に、仮にの議論で結構です。仮に国会承認とした場合で結構でありますけれども、自衛隊の出動はよくて基本計画、私が申し上げたこの三つのものについてはまずいという論理があれば、教えていただければ教えていただきたいというふうに思います。
  55. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 現時点において大変答弁しにくい問題でありますけれども、私どもは、基本計画の報告について、なぜ報告にしたかというのは、これまでも御説明してきましたとおり、武力行使ではない、国民の権利に影響を与えるものではない、あるいは迅速性が必要だという観点から、そういう三つの活動の性格。それから、いろいろな類似の法律があります。例えば海上警備行動とかあるいは治安出動とかの場合は強制力を伴うものであります。しかし、そういうものも国会承認を必要としていない。こっちは強制力を伴わない場合に国会承認をするようにということは、やはり法律の均衡上ふさわしくない、こういうことを終始答弁してきたつもりであります。  そういう点から、私どもは、この基本計画について国会報告をお願いしているわけでありまして、今、委員が提案されている三つの事態について国会承認を必要としているか、あるいは、周辺事態の認定については承認にしてほかの二つについてはどうだかというような御質問について、私どもが今具体的に答弁することは大変難しい問題であり、差し控えるべき問題であると思っております。  これもまた、私どもも累次御答弁申し上げているとおり、立法機関である国会において十分な御審議を賜りまして、私どもとしては、その審議に誠実に対応してまいりたい、こういうふうに現時点では考えているところでございます。
  56. 前原誠司

    前原委員 基本計画の中に含まれるものとして、自衛隊の部隊等が実施するその他の対応措置のうち重要なものということで、この委員会でも何度も議論されましたけれども、機雷掃海あるいは在外邦人の救出ということで、今でも自衛隊法に法的な根拠があるものがあります。仮に、これは国会承認ということに基本計画がなったとしましても、この二つは今法律があるわけで、国会承認が受けられないとしても、この二つの活動は行えるものになるわけであります。  つまり、この二つの活動というものがある以上、国会承認というものは難しいという議論はあるというふうに私は思っておりますが、ここからはもう意見です、質問通告しておりませんので意見でありますけれども、ただ、我々民主党としては、今のところ、これは政府のお立場じゃありませんけれども、与党の中にも、自衛隊の出動についての国会承認は認めてもいいじゃないかという考え方がある。自衛隊の出動というものは、基本的に周辺事態の認定があって、そして基本計画というものが定められて、それについて出ていくものであります。  したがって、自衛隊の出動だけが国会承認でよくて、基本計画全体はだめなんだという議論でひっかかってくるのは、私が今申し上げた、今まで認められている活動についての取り扱いをどうするかという点は議論の対象としては残るけれども、しかし、それを除外して考えた場合には、基本計画として国会承認をするのと、自衛隊活動そのものを国会承認するのとでは大きな意味合いというか違いというのはない、それは迅速性の問題についても私はしかりだというふうに思っております。  これは、また今週あるいは来週にかけて各党間での協議が行われることになるわけでございますので、その点については、またある程度詰まり次第議論をさせていただきたいというふうに思います。  次に、周辺事態の定義の問題について、我が党の主張についてちょっと御紹介をしたいわけであります。  周辺事態の定義を、「我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」、これが今の政府原案の定義でございますけれども、それに「我が国に対する武力攻撃に発展する怖れのある事態」ということを加味しているわけです。つまり、「我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」のみならず、「我が国に対する武力攻撃に発展する怖れのある事態」、こういう文言を加味しているわけであります。  これを加味することによって具体的にどういう活動ができなくなるのかどうなのかということについて議論をさせていただきたいと思うわけでありますけれども、この「我が国に対する武力攻撃に発展する怖れのある事態」ということをつけ加えることによってどういうマイナスがあるのか、あるいはどういう、具体的に今政府が想定されている活動でできなくなるものがあるのか。これについて、事務方でも結構でございますので、御答弁をいただければお願いをしたいと思います。
  57. 高村正彦

    高村国務大臣 政府の定義があいまいだあいまいだとよく言われるのですが、「武力攻撃に発展する怖れ」というのもそれほど明確ではないと私は思っているわけで、その「発展する怖れ」というのをどのくらい広くとるかという話なんだろうと思います。  直接的に、明確的に、発展することが筋道だときちっと言えるような場合に限るとしたら、私は少し周辺事態ということについて狭過ぎるのではないかと思いますし、そのことによって日本の安全保障環境を著しく悪くして、そして、そういうことが日本武力攻撃に発展する蓋然性を高めるんだよ、こういうようなところまで含むんだとすると、それは日本の平和と安全に重要な影響を与える事態とどこが違うのだという話になってきて、私は、そちらまで含めるのであれば、法律用語として今の定義の方が適当なのではないか、こういうふうに思っております。
  58. 前原誠司

    前原委員 今外務大臣の感想を述べていただいたわけでありますが、要は、政府の原案の定義と、逆に我が国に対する武力攻撃に発展をするおそれのある事態というのが明確でないために狭くなるというふうにも考えられるし、明確でないので、逆にこれを入れることによってその違いというものもわからない、そういうことでございますね。  それで、今まで周辺事態の典型例として四つの分類をされているわけですね。我が国周辺の地域において武力紛争が発生している場合、そのような武力紛争の発生が差し迫っている場合、ある国における政治体制の混乱等により、その国において大量の避難民が発生し、我が国に大量に流入する可能性が高まっている場合、それで最後の四番目には、ある国が国連安保理決議に基づく経済制裁の対象となるような国際の平和と安全に対する脅威となる行動をとっている状況。そしていずれもが、今定義にある我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態、こういうことになっているわけであります。  仮に、今外務大臣が解釈をされた中で、狭くとっていただいて結構なんですが、この意味自体もよくわからないので、入った場合と入っていない場合の違いもわからないというお考えもありましたが、狭くとった場合に、今政府が典型例として出されている一、二、三、四でありますけれども、狭くなるということはどういう部分が除外をされるということになるのでありましょうか。その点、ちょっと教えていただきたいのであります。
  59. 高村正彦

    高村国務大臣 四つの典型例をお示ししたのは、要するに、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態、その事態の発生のもとのところを類型化して、こんなときにこうなる、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態に発展することがあり得ますね、こういうことを申し上げているわけであります。  ですから、今委員がおっしゃったような言葉、これは限定の言葉だか限定の言葉でないかよくわかりませんが、その発生原因のところを狭くするということでは必ずしもなくて、その結果、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態ということを、我々が考えていることのその部分を狭くすることがあり得る、こういう感じを持っております。
  60. 前原誠司

    前原委員 このことについては、政府のお立場としては、原案を尊重してそれを通していただきたいというお立場でありましょうし、今各党間でいろいろな議論が行われている中で、その修正協議が煮詰まった中で、あるいはその継続の中で、またこういう御質問をさせていただきたいと思います。  ただ、一つ、最後、時間になりましたので、私は再度お話を申し上げたいと思うわけでありますけれども、この国会、随分この特別委員会も長く議論がなされてきました。そして、何度も申し上げますけれども、私が、いいか悪いかは別にして、やはりひっかかってくるのが集団的自衛権の問題についてのところであります。これがどうもひっかかってならない。  特に、きょう御質問した情報の問題それから機雷掃海の問題というのは、確かに今まで政府一つの基準とされてきた武力行使一体化というものには、情報というものは武力行使一体化にならないという部分が物理的にあるわけでございまして、そういった答弁があるのは事実でありますけれども、しかし、ハードだと武力行使一体化にはなる可能性はあるけれども、そういうソフトの部分ですね、ソフトの部分についてなかなか明確な御答弁になっていないということで、私は、情報なんかのやはり明確な、もうちょっと厳密な解釈というものが必要になってくるのじゃないかと思います。  その点で、理事会情報についての、どれが武力行使一体化につながらなくてあるいはどれがつながるかということは今協議をしております。そしてまた、きょうの防衛庁長官の御答弁では私はまだまだ納得のいかない部分がありますので、さらに理事会でそれについてはもっと詳しい類型立てを資料として要求させていただきたいということを最後に委員長に申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
  61. 山崎拓

    山崎委員長 引き続き、取り扱いについて理事会協議いたします。  これにて前原君の質疑は終了いたしました。  次に、藤田幸久君。
  62. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 きょうは、主に防衛庁長官質問させていただきます。以前も二月に予算委員会質問させていただきましたが、航空自衛隊のいわゆる初等練習機の後継機の機種選定について質問をさせていただきたいと思います。  おさらいにもなりますが、初等練習機T3の後継機につきまして昨年機種選定が行われたわけですが、結果的に、富士重工のT3改、あるいはT7と言っておりますが、この飛行機に二億四千万円で決定をした。八月の二十七日でございますが、なっております。  ところが、このT7に決定する前の、九五年でございますから四年前に、富士重工の方が、当時中期防に関しまして防衛庁の方から打診を得た際に、これは第一次契約の価格として五億五千万円という数字を出しております。それから、T3のいわば派生機と言われておりますT5という同じような初等練習機、これは海上自衛隊が調達をしておりますが、この海上自衛隊が調達をしておりますT5の平成十年度の価格を見ておりますと、やはり五億五千万円ということになっております。その五億五千万円、平成十年度で同じような海上自衛隊の初等練習機がそういう形で購入をされておる。ほぼ同じ飛行機が昨年の八月の段階で二億四千万円でございますから、半分以下に下がって、その価格に基づいて機種選定がされたということでございます。  しかも、このT7の型式証明もないし、それから飛行実績というものも、T7そのものの飛行実績はなく、類似とされておられます飛行機の実績しか出ておらないといった状況もございます。  それから、機種選定のプロセスそのものもなかなか透明性に欠けておる。これは、二月の二日の予算委員会答弁でも非常にあいまいな答えしか出ていないという状況でございます。  これは私は、やはり防衛庁という日本の国を代表する機関が外国の企業に対しまして公募をしたわけでございまして、その結果が非常に不透明な形で進行しておる。その富士重工自身は一年間の取引停止ということになっておるわけでございます。いろいろな意味で大変問題の多い課題であると思いますので、質問させていただきたいと思います。  それで、まず最初に、前回質問に対しましても、二億四千万円に富士重工が価格を下げたという根拠について大変あいまいでございましたので、まず、コストの内訳について質問したいと思いますが、このT7という飛行機の機体そのものの価格の内訳、それから官給品の価格内訳、それからIRANという定期検査を含む整備の費用内訳について改めて質問したいと思います。  これは、今までいろいろ質問主意書等々を含めまして請求してまいりましたが、なかなか開示がないわけですが、これがやはり開示をされないと、この疑惑というものは払拭されないということになると思いますので、改めてこの費用内訳についてお答えをいただきたいと思います。防衛庁長官
  63. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 中期防で見積もったときの価格と、それから昨年機種選定をしたときの価格というお話がまず前提としてございましたけれども、中期防におきます見積もりと申しますのは、まさに中期防全体の経費枠を算定するために、当時として考え得るものとしてそういった見積もりをとったということでございまして、それは機種選定とは関係のない数字でございます。実際の機種選定に際しましての価格は、まさに、昨年の機種選定手続において会社から示されたものが機種選定に係る数字でございます。  それから、今先生お尋ねの、機体あるいは官給品あるいはIRAN等の経費でございますが、ちょっと引用をさせていただきますと、実は、この機種選定手続におきまして、我が方からは提案要求書を出し、それに対してこの企業からは提案書というのが出されておるわけでございますが、その中で、「本提案書及び添付資料の内容は、富士重工業株式会社もしくは関係する第三者が著作権として所有を有する商業上の機密であり、本提案書を受領された方が同書の目的とするところによってのみ使用が許諾されるものであります。つきましては、本提案書の内容及び本提案書に含まれる情報を本提案書の目的とするところ以外のために使用される場合には富士重工による書面での事前の許諾を取りつけていただきたくお願いいたします。」こういう条件で示されているわけでございます。  したがいまして、今先生御質問の機体、官給品の価格、あるいはIRANを含む整備の費用内訳につきましては、この提案書の内容を機種選定以外のために使用する場合には、今申しましたような事前の許諾を必要とするということでございますので、この会社に許諾を求めましたけれども、許諾が得られておりませんので、答弁を差し控えさせていただきたい、こういうことでございます。
  64. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 著作権の問題ということは、前のUXの場合にもそういった理由でこの資料提出を拒否しておるわけでございますけれども、一企業、そしてその企業の提案書に基づいて機種選定をしておる、そして、これだけ実は昨年以来調達に対して疑惑があり、かつ、これだけはっきりした価格が下がって説明ができないという状況がある場合に、これは国の税金で払われる、しかもライフサイクルコスト、二十年間で大変な額の飛行機を国民の税金で買うわけでございますので、この提案書に、企業の側からそういう理由があったということでもって国民の利益が損なわれるということであってはいけないと私は思います。  これは、一企業が企業同士で競争する場合の商権といったたぐいのものではなく、提案書を国の方が要求して出してきたもの、それに基づいて防衛庁の方で選定をしておるわけでございますから、国の利益を守るという観点からいたしますと、これは、国会に対しまして防衛庁長官の方ではっきり出すべきだろうと思いますが、いかがですか。
  65. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 これは契約をしたというわけじゃなくて、あくまでもこちらが提案を求めたのに対して向こうが提案をしてきただけの話でありまして、これは慣行的に著作権の問題であって、第三者が著作権として所有する商業上の機密でありまして、この提案書を受領された方が同書の目的とするところにのみ使用が許諾されるものでありまして、その他のことについては使えないということでありますので、私はこれはやむを得ないことだと思っております。
  66. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 慣行的に著作権の問題である、商業上の機密であるということでございますけれども、そのことと、国の利益、つまり国民の利益との比較においてどちらが重要だと長官はお考えですか。
  67. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 できる限り御審議のために必要な情報提供すべきだと思っておりますけれども、今申し上げましたような事情があるということもやはり御理解いただきたいと思います。  なお、全体としての経費総額で申しますと、このT3改につきましては、提案書におきまして、ライフサイクルコストも含めまして総額が三百七十五億円、それからもう一つのPC7マークIIにつきましては四百二十二億円、機体価格については、T3改につきましては二・四億円、PC7マークIIにつきましては三・一億円という会社提案でございまして、この内容につきましては会社側の都合でもって変更を許さないということで、この会社がこういうものを提案したことについてはその責任を持つ、こういう性格のものでございます。こういったこともあわせて御考慮いただきたいと思います。
  68. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 長官、質問に答えてないわけです。つまり、契約ではないといっても、慣行的に、著作権、商業上の問題だと言っていることと国民の利益とどちらが重要かということを申し上げております。
  69. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 国損を与えたり国民の利益ということは重視しなきゃいかぬところでありますが、これは契約を結んでないわけでありまして、提案書をいただいただけですから、その中身をやたらに天下に公表するということはやはり慣行的に見て私は行き過ぎだ、また、契約の段階になればおのずから外へ出せるものは出すということになりますので、そういうふうに考えております。
  70. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 契約でないということをおっしゃっていますけれども、これは前も質問いたしましたが、機種選定をした後、その後、随意契約です。つまり、これは一般公開入札じゃないということを防衛庁の立場はとっておるわけですから、機種選定そのものが決定権を持つわけです、その後、随意契約になるわけですから。ということは、機種選定が決まったということ自体はもうそれで動かしようがないわけで、しかも、この提案内容については、契約終了時及びその運用期間にまたがって拘束をされると言っているわけですから、今の契約ではないということは全然理由にならないと思います。
  71. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 そういうことも考えられますので、今度、機構改革をしまして、軍事専門家とか、あるいは公認会計士とか弁護士さんとか、こういう問題に権威のある第三者機関をつくりまして、そういうところで公平、中立性を持った意見を聞く機関を設置しているところであります。
  72. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 この資料を提出しないということについてでございますけれども、これは後でこの資料の請求ということについても申し上げたいと思いますが、これは一九九四年、参議院の内閣委員会でございますけれども、当時の航空自衛隊のUXの機種選定をめぐる疑惑問題について集中審議がございましたときに、自民党の村上正邦議員が機種選定に関する価格表というものを委員会に提出を求め、そして理事会で検討された結果、委員会に提出をしているということがございます。したがいまして、今の長官あるいは防衛局長からの答弁の中での理由をはるかに超えた形で、実は資料を提出しておるという前例がございます。  そんなことを踏まえまして、この数字につきましてぜひ提出を、つまり、富士重工の提案書そのものを委員会の方に提出いただくことを、ぜひ委員長にお願いを申し上げたいと思います。
  73. 山崎拓

    山崎委員長 理事会において……。  佐藤防衛局長
  74. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 私の記憶によりますと、UXのときは会社側の許諾があったのではないか、こんなふうに私は記憶しておりますが。
  75. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 会社の許諾以上に国のあるいは国民の利益が優先するということを申し上げており、かつ先例があるということを申し上げておるわけでございますので、理事会の方で御検討いただきたいと思います。  それで、なかなか資料が出てまいりませんけれども、私の方で独自にこの価格について調べた資料がありますので、委員長の御了解を得て、その資料を配付させていただきたいと思います。
  76. 山崎拓

    山崎委員長 資料を配付してください。
  77. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 これは、今まで申し上げたこと、それから、二月二日に野呂田防衛庁長官の方から価格が安くなったという理由の説明を受けましたが、それも勘案をしてつくった資料でございます。  上からまいりまして、一番上の数字が中期防の試算でございます。この右側の四億四千万円というのは、先ほど申しました五億五千万円が初期の回答であるのに対するこれは平均価格でございます。  それから、T5という海上自衛隊が既に使っております初等練習機、これは平成八年に調達をした際の価格でございます。  次に、長官が二月の二日に、なぜ二億四千万円まで下がったかという理由を、下の方に(1)、(2)、(3)、(4)、(5)というふうにおっしゃったわけでございます。私は、その海上自衛隊のT5が実際にどのくらいの価格明細であったかということを調べまして、それに応じまして、長官の答弁を一〇〇%以上勘案をいたしまして、実際にどのくらい下げるのだろうと思って計算をしてみました。  下の(1)、(2)、(3)、(4)、(5)のところですけれども、例えば、開発費用の削減があったということですから、開発費用を仮にゼロにしても四千万円しか削減ができません。  それから、加工費の削減が大幅に可能になった。これは加工費ですから、仮に最大限五%としても、五百十六万しか下がらない。  それから、治工具を新しくつくる必要がない。仮に、全く新しくつくる必要がなくて、全部引いても千五百七十六万円。  それから、民生品を活用したと言っておりますが、これも、最大限二割仮に削ったとしても七百五十二万円。  それから、エンジンを一括発注したとありますが、一括しても、最大限三割と仮に想定しても千二十四万円。  したがって、幾ら長官の答弁の理由づけでもって、実際にこれだけは下がらないと思いますけれども、それでも、最大限それを踏まえて下げてみても、せいぜい七千九百万円程度しか下がらない。  上の棒グラフに戻っていただきますと、一番左が中期防でございます。その次が、現在も使われております海上自衛隊の調達しておりますT5であります。  次に、「説明可能」と書いてありますが、最大限にその説明を受けとめたにしても、T7とすればそのぐらいにしか下がらない。それを、今度は一番右側でございますが、二億四千万円まで下がっておるというのが現状でございます。  上の数字に戻っていただきまして、結局、今、T7が昨年の八月の二十七日で二億四千万円で選定を受けておるわけですが、そのすぐ左、利益というのは、これは、防衛庁が民間企業に発注をする際に最低の利益率というものがあるようでございまして、それをここに書いてございます。  そうしますと、その左に官給品と機体価格ということにまいりますけれども、これが先ほど来資料がはっきり開示されていない部分でございますけれども、単純に素人目にこの数字を見ても、この機体価格というものがほとんどなくなってしまうのではないかというくらいに、総額が二億四千万円で決まってしまっている。  実際にこれだけ下げてしまって、本当に安全な初等練習機がつくれるのかということが、これを見て、これはだれの目にも明らかだと思いますけれども、長官、実際に、この二億四千万円で、この機体価格、官給品等、大体どのくらいになるのですか。  これを見ても、例えば官給品、つまりエンジン等々は官給品だろうと思いますけれども、まず、エンジンそのものが官給品なのかどうなのか。前回答弁で五十機発注したという答弁でございますけれども、五十機いつ発注したのか。それから、発注したということは、官給品であるのかないのか。その点についてお答えいただきたいと思います。
  78. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 先般、大臣から御答弁いたしましたのは、要するに、経費削減の一つの手法としてエンジン五十台を一括発注する、こういうことも経費削減の一つの手法として織り込まれているということを御説明したところでございます。  したがいまして、製造に必要な台数のエンジンすべてを、同社が社給ということで一括発注することを前提とした提案になっているということでございまして、これは、提案内容はそうだということで、実際に、まだ発注をしているわけではございません。
  79. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 社給ということは、今まで防衛庁が国産のメーカーにエンジンを社給という形で発注したことはあるのでしょうか。
  80. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 全体のケースを承知しているわけではございませんけれども、これまで通常は、官給というのが通例だろうと思います。  今回、そういう中で、経費を削減する一つの手法として、五十台社給として一括発注するということによって経費削減を行っているという内容になっているところでございます。
  81. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 今お配りした資料の三枚目でございますが、これは機体価格総括表というものですが、一番下の総計の二つ上に「エンジン(一機分)」とありますが、このエンジンは機体とは別になっているわけです。社給という場合にはこの機体の中に入るはずだろうと思うのですが、機体の中に入れば、ここにあるGCIPという、一般管理費といいますか、利益が上乗せされるわけですから、社給になれば、価格が下がるどころか価格が上がるのじゃないですか。今までエンジンを社給じゃなくて防衛庁が直接買い付けて、それで機体メーカーに渡してアセンブルさせたというのは、結局、官給品であるから利益を上乗せしなくていい、したがって、安くなるので官給品であったわけですから、これでエンジンが別枠になっているということは、これは官給品ということで提案要求に入っているのじゃないですか。
  82. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 提案は、五十台一括発注という前提で社給と考えているということでございます。  それで、これは御理解いただけると思いますが、五十台一括発注するということで、当然のことながら、エンジン単価の低減が図られるという効果があるものと思います。
  83. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 いや、私の質問はそうじゃなくて、社給品であったならば、当然利益が上乗せされるわけでしょう。ですから高くなるのじゃないですか。
  84. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 全体の価格が最終的にどうなるかということだと思いますけれども、個々の要素をとればいろいろなことが言えると思いますが、ただ、片方におきまして、五十台一括発注するということに基づきます価格低減効果というのは、これは当然あるものと思います。
  85. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 全然質問に答えていないわけで、社給品であれば、当然、ここのGCIPというのが上乗せされるわけですから、その分利益が二重取りあるいは二重上乗せということになるのじゃないですか。したがって、社給であれば、そもそも提案要求書にあるところのエンジンが上の機体部分に繰り上がるわけですから、したがって、安くなるどころか高くなるのじゃないですか。だからエンジンは今まで官給品にしていたんじゃないですか。
  86. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 御質問の趣旨がいま一つ私はあれなんでございますが、先生も、五十台一括発注すれば当然コスト削減効果があるということは、そこはお認めいただけるのだろう、こう思います。  それから、あと、今お配りいただいた資料でございますけれども、この中で、「エンジン」という項がございますが、そこに計上されているとすればという前提でもっていろいろ御議論でございますけれども、社給ということであれば、普通の整理でございますれば、部材費の方に整理をするというのが普通かな、こう思っております。突然の資料の配付でございますので、明確に申し上げるのはあれでございますが、通常、社給でございますれば部材費の方に計上するというのが普通だろう、こう思います。(藤田(幸)委員「済みません、ちょっと聞こえなかった」と呼ぶ)社給でございますれば部材費の方に記入するというのが普通ではないか、こう思います。突然の資料の配付でございますので、はっきりこうだというのは控えますけれども、通常、社給でございますれば部材費の方に計上するというのが普通だろうと思います。  それから、もう一点、くどいようでございますが、五十台一括発注すれば、それはそれなりの価格低減効果、コスト削減効果は当然あるもの、その辺は御理解いただけるものと思います。
  87. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 つまり、部材費の方に普通は入るということであれば、当然それに対して利益が上乗せされるわけですね。
  88. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 それは、ほかの経費と同じ扱いになってくるわけでございます。  ただ、繰り返すようでございますが、それは、そういうプラスの要素もあればマイナスの要素もあり、全体として見た場合、どちらが削減効果が大きいのかということが結局は勝負になってくるのだろう、こういうふうに思います。
  89. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 いや、ですから、繰り返しますが、つまり官給品ということは、今まで自衛隊の飛行機がほとんどすべてかあるいはほとんどが官給品であったということは、利益を上乗せさせないために政府が直接購入をしてきたわけです。ところが、社給品ということであれば、利益が上乗せされてしまうわけですから、一機当たりについてはその分だけ、利益を上乗せする分だけ高くなるわけですね。
  90. 及川耕造

    ○及川政府委員 一般論で申し上げますと、官給品とする場合というか、調達に当たりましては、経済性の追求といった場合には、むしろ社給品について追求するというのが、一括してプライム企業が調達するという点で効果的ではないか。  ただし、例外として、例えばまさに御指摘のエンジンのように、技術的に単独のシステムとして、運用上の安全性の確保や性能、機能の評価、品質評価ができるといったものについては官給品で行っている、これが基準でございます。
  91. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 いや、質問に答えてください。つまり、社給品であれば利益が上乗せされるわけですね、長官。
  92. 及川耕造

    ○及川政府委員 調達はさまざまなタイミング等を見計らって行う必要がございますので、でき得ればプライム企業が一括して行うのが時間的節約等も考えて効率的ということでございます。したがいまして、官給品で行う場合もございますけれども……(藤田(幸)委員「利益が上乗せされるのかと聞いているのです」と呼ぶ)GCIPが上乗せされることはおっしゃるとおりでございますけれども、トータルのコストとして下がるかどうかという点につきましては、社給品の場合の方が下がる場合もございます。
  93. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 つまり、利益が、GCIPが上乗せされるということであります。  それから、先ほど来、五十機、五十機とおっしゃっていますが、T5も四十機発注しているのです。だから、あたかもT7が五十機発注されたから非常に安くなるというのは、T5であったって四十機発注されているわけですから、T7が五十機だから一挙に下がるということはあり得ないと思うのです。  では、長官の方にお聞きしますが、実際に、この棒グラフの、一番上の資料ですけれども、これは長官の答弁に基づいてつくった資料です。長官の述べられた五つの理由、これを最大限に、あるいは最大限以上かもしれませんけれども、全部削ったとしても、上の棒グラフの右から三つ目でございます、それ以上にこれだけ下がっている。この説明は、どうしてこれだけ、二億四千万円まで下がるのですか、長官。
  94. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 まことに恐縮でございますけれども、まず先生が出発点とされています中期防での価格というのは、まさに中期防の全体の経費枠を積算するときに、その参考としてとったものということでございまして、機種選定とは関係のない数字でございます。  機種選定について会社から提案がありましたのは、先ほど申しました二億四千万、こういう提案があったということでございまして、この二億四千万というのは、二億四千万を前提にして国が採用をして、後で企業側が勝手にこれを上げていくということは、これは許されない仕組みになっておりまして、この二億四千万というものを、この会社が提案しました内容につきましては、会社側は国からの指示によらずにその変更はできない、こういう拘束をされる内容でございます。それがまず前提でございます。  それから、仮に中期防の全体枠を積算するときの参考値としてございましたその数字からこの二億四千万までの変動と申しましょうか、これはいろいろな分析の仕方があろうかと思います。また、それは限界もあろうかと思いますけれども、そういった意味で、必ずしもここで正確と申し上げるのは難しいかもしれませんが、先生の方からあえてその数字の御提示がございましたので、私どもとして現時点で分析している内容を申しますと、この中期防算定時の見積価格の四億三千五百万円に対しまして、直接材料費の関係で、これはむしろエンジンの社給化ということでプラスの要素でございます。これが約七百万円。逆に今度、加工費、これはT5の構成品の利用等によりまして約四千八百万円の減。それから、直接経費につきまして、T5の構成品の活用によりまして二千三百万円の減。それから、特割費につきまして四千百万円の減。それで、こういったものの反映といたしましてGCIPが約二千万円の減。それから、官給品から社給品に変わっておりますので、官給品の項が六千八百万円の減ということで、この四億三千五百万円と二億三千九百万円、二億四千万円、これの差はそういうふうに理解できるのではないか、こんなふうに思っております。
  95. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 では、もう一度今の数字を、幾ら下がったかという数字じゃなくて、絶対数字でおっしゃっていただけますか。つまり、直接材料費、加工費、直接経費等々。
  96. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 先ほども申しましたように、経費の内訳についてはいろいろ制約条件もございますので、その点をまず御理解いただきたいと思います。  また、変動要素につきましては、今私どもとしてはこういう整理を考えているわけでございますが、さらにその内訳と申しましょうか、その根拠といいましょうか、これは今ちょっと手元に数字を持っておりませんので、必要がございましたら、また後刻御説明に上がりたいと思います。
  97. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 今、一見まともな答弁のように聞こえましたけれども、根本が違っているわけです。  この資料を見ていただければ、長官、ぜひお目通しをいただきたいと思いますが、長官がこの紙の下の方の(1)、(2)、(3)、(4)、(5)で言っております比較の対象は、中期防との比較で言っているのではなく、T5との比較で二月二日は答弁をされているわけです。つまり、T5の機体も活用し、新規開発部分を云々云々、それから、T5の部分の生産に習熟していることで云々云々、それから、T5との関係で治工具を新しくつくる必要がない、T5との関係で言っているわけです。ところが、そのT5との比較についての答弁が全然ないわけです。  それから、先ほど来五十機一括発注と言っておりますが、T5自体が四十機一括発注しているわけですから、四十が五十になってもそんなに削減はできないだろうと。  もう一度長官、この五つの理由について実際にどの程度削減ができるのか。これ、全部削減をしても二億四千万にはならないんじゃないんですか。長官自身から答弁をいただきたいと思います。
  98. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先ほどから政府委員から答弁しておりますとおり、まず大前提が、四億四千万というのは中期防におけるあくまでも見積もりの想定価格であるということであって、現実の二億四千万とは性質の異なるものである、この大前提を委員にまず御理解してもらわなければいけないところであると思います。  それで、先般委員質問に私が答えたのは、まず、御指摘のとおり、T7では、生産ラインのあるT5の胴体前部と後部、主翼、水平尾翼と垂直尾翼をそのまま利用することでこれらの部分の設計費や生産ラインを構築する費用の節減を図るとともに、既に作業員がこれらの部分の生産に習熟していることから加工費の節減が可能となる、その結果、一機当たり維持費が九百万円、加工費が四千二百万円の減となっているということを御答弁いたしました。  また、T5の機体構成部分の活用に加えて、T3の胴体中央部の設計ノウハウを利用することで新規開発部分を胴体前部と中央部の接合部分に限ることが可能となりまして、一機当たり開発費は四千百万円の減となる、こういうふうに申しました。  さらに、搭載通電機器等へ民生品を活用したり、エンジン五十台を一括して発注したりすることにより、六千百万円のコスト減となるということを申し上げました。  それで、今申したような製造価格の減に伴う管理費や利益の減等その他の要因により、四千二百万円程度の減が生じているというふうに申し上げました。  そこで、今委員質問はすべて突然でありますから、私ども詳しい資料は持っておりませんが、ここであるものを足してみますと一億八千五百万円ぐらいになると思いますが、前回答弁では、以上の合計により約二億円の価格差が生じているものと承知していると答弁したところであります。
  99. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 いや、ですから、中期防との比較ではなくてT5との比較で前回答弁をされておるわけでございまして、今の数字は、先ほどの局長と同じように、中期防に比べて幾ら下がったという数字だったわけです。それではこの前の五つの理由と整合性がないと思います。
  100. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 先生が中期防の方の価格との比較ということもおっしゃいましたものですから、それとの関係で……(藤田(幸)委員「いや、T5と申しましたよ」と呼ぶ)では、中期防の方とは、そういたしますと、ちょっと私ども若干あれかもしれませんが、中期防でこうだったのが今度二億四千万になったのはどうなんだ、こういうふうな全体の御質問の流れでございましたから、それでもって御答弁したんですけれども……
  101. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 違います。その後で、T5の、昨年も五億五千万、あるいは平成八年の調達でいっても四億という話から申し上げましたし、この資料も、前回防衛庁長官答弁はT5との比較においてこれだけ五つ例を挙げておっしゃるので、T5との比較ということで聞いておるわけです。
  102. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 仮に、このT5との比較ということでございましたら、今私細かい数字を持っておりませんので、また別途整理をして御説明に上がりたいと思います。
  103. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 いろいろつじつまが合わない形で苦労をされておるようですけれども、二枚目の数字をごらんいただければわかると思いますけれども、T5自体が、例えばこの調達価格が毎年毎年上がってきているわけです。去年はたまたま富士重工が取引停止になっておりますから執行しておりませんけれども、T5自身が毎年毎年これだけ上がってきているわけです。  それで、先ほど来おっしゃっております、例えば特別割掛費というのは開発費ですし、それから治工具維持費等々、これは私は、海上自衛隊の資料ですから、九五年と九六年の資料しかございませんけれども、T5自体が毎年こうやって上がってきているわけです。それで、上がってきているものが、なぜ一年後にはT5との比較においても半分近くまですとんと落ちることが可能なのか。その説明がなければ、これだけ税金が使われて、機種選定をし、かつ世界的に公募をしながら公正なプロセスで機種選定をするという形で防衛庁が進めておられるのに、つじつまがとれないじゃないですかということを申し上げているんです。  長官、この二つのグラフ、長官自身がいろいろ、五つ項目を挙げられてこれだけ下がってきているとおっしゃっている、そのT5自身がこれだけ上がってきているんです、毎年。これはどういうふうにお答えになるんですか。
  104. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 何度もお答えしているわけでありますけれども、あくまでも中期防における価格は見積想定価格でありまして、その四億四千万から二億四千万上がったのならばともかく、二億四千万に下がったわけでありますから、私どもは、これは国損でもないし、国民に不利益を及ぼしているわけでもない、こう思っております。  その要素はT5との比較において私は申し上げたところでありますけれども、詳しいデータは、委員から突然のお尋ねでありますから今手元に何も持ちません。失礼でありますが、委員のその計算が合っているかどうかも私たちは検討していないわけでありますから、これだけを正しいとしてお答えすることもどうかと思いますから、御要請があれば、政府委員答弁しているとおり、後刻御報告に参ります、こう言っているわけであります。  それから、上がっても下がってもだめだというような議論があるとすれば、私どもは、この場合は下がったわけでありますから、国損を与えているわけでもないし国民に不利益を与えたわけでもないけれども、公正を期するために、今度第三者機関というものを設けまして、そこで適正な検討をしていただいて対処してまいりたい、こう思っているところであります。
  105. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 まず、下がった、下がったとおっしゃいますけれども、下がったというのは、しかも単に徐々に下がったわけではなく、急にがけを落ちるように下がっているわけですけれども、急に下がっているということは、そもそも高過ぎたという可能性があるわけです。つまり、水増し疑惑の点については昨年随分出てまいりましたが、それから急に下がったということ。  それから、どこまで下がるかが重要で、というのは、この防衛庁の提案要求書の中にも安全性ということを盛んに言っておるわけです。実際に、この二億四千万円から利益をとって、例えば外国製のエンジンをとっていきますと、例えば加工費というものが実際にできるのか。加工費というのは人件費ですけれども、もしそれが十分確保されないならば、これは安全に支障を来すということになるわけです。それがゆえに、この前もお話をしました、例えば定期検査というようなことも防衛庁の方で外国企業に対しても要請をしておるということは、安全性がこれは損なわれるということですから、安全性が損なわれるということが国民の利益でないと言ったならば、これは大変なことになるわけです。  ですから、下がればいいというのは詭弁でございまして、まず、私がなぜこういった棒グラフをかいたかというと、そもそも水増しがなかったのか、高過ぎであったかということと、それから、昨年の二億四千万円ということは、これは不当廉売の可能性があるのではないかということで聞いておるわけであります。  そのことに対してきちっとお答えにならない限りは、これは非常に疑いがそのまま残ってしまう。これだけ材料を示しながら、それに対するまともな回答が出てきていない。急な質問ですということをおっしゃっていますが、私は何回も質問主意書を出しております。私以外の議員も出しております。ですから、急な質問であるので数字が出ないということはおかしな話でございまして、先ほど来の答弁は、私は本当にまともな答弁をいただいていない。  国民がこれを聞いていて、こんな形で調達がされているということはこれは大変なことでございまして、ガイドラインに直接、間接の質問という話がやじで飛んでおりますけれども、昨年の教訓がありながらこういった形で防衛庁対応しておるということでありますと、ガイドラインを主管される大臣及び防衛庁の方がこういう形で説明責任がとれないということであるならば、私は、これはガイドラインに対しましても大変大きな影響があるというふうに思って、非常に細かく質問をしておるわけでございます。  したがいまして、もう一度繰り返しますけれども、T5に対してこれだけ下がっているというきちっとした答弁をいただきたいと思います。答弁をいただかないならば、私はこれは審議を続けても意味がないと思うんですけれども、長官、いかがでしょうか。
  106. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先ほど、T5に比べてどういう要素で価格が約二億下がったかという説明はるる申し上げたところでありまして、もう一回申し上げる必要はないと思います。  価格が下がったからといって安全性を阻害するようなことを防衛庁がやるわけはないわけでありまして、それは信用してもらいたいと思います。
  107. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 ちょっとそれでは違った角度で聞きますけれども、何回も委員会あるいは質問主意書等で資料の提示を求めているわけですけれども、結局なかなか出してこない。そして、私が調べましたらば、防衛庁の機密保有数というのが、平成六年末で十一万八千四百五十五件、百六十八万八千九百八十五点という数字が出ております。  ついでにお聞きしておきますけれども、現在の防衛庁の管轄の防衛機密の保有数、それが現在何件、何点あって、なぜそれだけ多いのか。これは先ほどの富士重工の提案書の開示の問題とも関係いたしますので、お答えをいただきたいと思います。
  108. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 防衛庁で扱う秘密には、日米相互防衛援助協定に基づき米国から供与された装備品等に関する事項を内容とする防衛秘密、これ以外の防衛庁の業務に関する秘密であるいわゆる庁秘の二種類があります。防衛秘密につきましては、平成九年十二月末現在で八千五百四十件、部数にして十五万四百部あります。庁秘につきましては、平成九年十二月末現在で十二万五千五百二十件、百八十四万二千七十部あります。  また、防衛庁としては、秘密の指定に当たっては、内容を十分に検討し安易な指定が行われることのないよう努めますとともに、指定した秘密についても見直しを行っているところであります。我が国の防衛を任務とする性格上、防衛庁の保有する文書、物件等の中には秘匿を要するものがあることについては御理解いただきたいと思います。  なおまた、情報公開法が施行されるわけでありますけれども、こういうものに対処をするためにも秘密は最小限度になるよう配慮をしておりますし、秘密の指定に当たっては、その内容が真に秘密として保全する必要があるかどうかを十分に検討し、安易に秘密の指定を行うことがないよう、現在、厳格な管理、検討を行っているところであります。また、既に指定した秘密についても絶えず見直しを行い、その必要のなくなったものについては秘密区分の変更または解除に努めてまいりたいと考えております。
  109. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 そういう秘密があるわけですが、今度のこの機種選定に関しましても、あるいは防衛庁の調達全般に関しましても、調達適正化会議というものが開かれるということになっていますけれども、その適正化会議のメンバーは、こういう今の防衛機密に対するアクセスが当然認められるべきだと思いますが、その点について、長官、お答えいただきたいと思います。
  110. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 防衛庁としては、防衛調達に係る透明性、公平性を図るため、今委員から御指摘ありましたとおり、第三者による監視体制を可及的速やかに整備する必要があるとの観点から、本年四月より、大学教授、公認会計士、弁護士等調達に関する高い専門知識を有する部外有識者から成る防衛調達適正化会議を開催することとしております。  この防衛調達適正化会議は、部外の有識者だけで構成され、防衛装備品の調達に係る基準など必要な事項について自由に検討を行い、検討に必要な資料について、防衛庁が提出を受けたり報告を聴取できることとなっております。また、その検討の結果についても原則として公表することとしており、これらのことから、会議の独立性をきちっと担保したものにしたいと考えております。
  111. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 時間が大分なくなってまいりました。きょうずっと聞いてまいりましても、説得力のある説明が全然出てこない。そしてこれは、急にこういった形で価格が下がったということに対しまして、やはりいろいろな防衛庁内部での動きがあったのではないかということが想像にかたくないわけです。  それで、法務省の方に来ていただいておりますのでお聞きをしたいと思いますが、二、三日前も、この調達問題について、地検の参考人、防衛庁の方をお呼びになったというようなことも出ておりますけれども、この初等練習機選定を含めました調達の問題に関して、中島洋次郎前代議士とのかかわりがどうかということと、こういった航空自衛隊に関する一連の航空機調達疑惑に関与した政府関係者、あるいはほかに国会議員がいないかどうか、あるいは関心を持っていないか、その点について、法務省の方からお答えいただきたいと思います。     〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕
  112. 渡邉一弘

    ○渡邉説明員 お答えいたします。  お尋ねの、中島洋次郎元代議士に係る飛行機調達をめぐる受託収賄事件につきましては、東京地方検察庁において所要の捜査を遂げた上、平成十年十二月二十八日、防衛政務次官として、富士重工業株式会社役員らから、海上自衛隊の救難飛行艇US1A改の試作製造分担の決定等に関し、同社に有利な取り計らいを得たい旨の請託を受け、その報酬として供与されるものであることを知りながら、平成八年十月三十一日、現金五百万円のわいろを収受したとの事実により、東京地方裁判所に公判請求をしております。現在、別に起訴された公職選挙法違反等の事件とあわせまして、公判係属中でございます。  検察当局が起訴した事実以外に何らかの事実を把握しているかどうか、あるいは捜査していないかにつきましては、捜査機関の活動にかかわる事柄でございますので、申し上げるべき性格のものではないと考えております。
  113. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 ほかの政府関係者、あるいはほかの国会議員とのかかわりについてはどうでしょうか。
  114. 渡邉一弘

    ○渡邉説明員 お答えいたします。  先ほども申し上げましたように、検察当局が何らかの事実を把握しているか、あるいは捜査しているか否かにつきましては、捜査機関の活動内容にかかわる事柄でございますので申し上げるべき性格のものではないと考えておりますので、御理解いただきたいと思います。
  115. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 長官にお尋ねをいたしますが、きょうずっと、前回でも、予算委員会でもそうですけれども、お聞きをしてまいりましたが、これだけ具体的な数字も含めまして、そして随分報道もされておる内容でございますけれども、どう考えても、きょういただいた説明では、説得力のある、しかも、国が公開公募した、そして機種選定そのものがその決定に基づいて随意契約をするということですから、実質的な契約に至る決定権を持ったプロセスである、しかも、その内容について防衛庁の方で全然開示をしていない。これは、これだけ大きな問題になってきたにもかかわらず、それから、第三者委員会をつくると言っていながら、実態としてはそういった方向に進んでいないということが、きょう非常に明らかになっておるわけです。  したがいまして、改めて委員長の方に申し上げますけれども、富士重工の提案書そのものがなければ、結局、先ほど来の長官あるいは防衛庁答弁でも、はっきりした答えが出てきていない。それから、そもそもこのT7という飛行機の飛行実績というものもはっきり明らかにされていない、型式証明というものもとられていない。そして、しかも飛行実績として、前回答弁もございましたけれども、言われておるのが、T7そのものではない、もともとの原型機であったものの証明しか出ていない。  ところが、原型機、原型機と言っておりますけれども、実際にはレシプロエンジンからターボエンジンに転換をされておるわけですから、ある意味では全く新しい飛行機になっておるけれども、飛行機そのものの型式証明あるいは飛行実績自体も出されていないということでございます。  長官にお聞きしますが、結局、そもそも違う飛行機の、実績時間等も出されていないまま選定をされてしまっておるということは、実態のない形で、しかも不透明な形で価格がこれだけ下がってしまっているということは、安全性上からも大変問題があると思うのですけれども、まだちょっと時間がありますから、資料についての請求をする前に、もう一度長官、これはやはり、T7というものは安全性上も非常に問題がある飛行機ではないかと思うのですけれども、その点、もう一度お答えいただきたいと思います。つまり、実績が出ていない。
  116. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員質問に対する、T7の価格、T3改に対する価格の問題については、私どもとしてはできる限りの答弁をしているつもりでありまして、全く説明がなされていないというのは、私どもは当たらないことだと思っております。  なお、富士重工の問題につきましては、許諾があればできるわけですから、委員の御指摘も踏まえて、ぜひ許諾をとられるように努力をしてみたいと思います。  安全性については、これまでのT3改としての検討をやった結果、安全性に問題がないと考えておるところであります。
  117. 藤田幸久

    藤田(幸)委員 では、ぜひその許諾を得るように努力をしていただき、また、委員長初め理事の方で、ぜひ前向きに資料開示がされるように努力をしていただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  118. 中山利生

    ○中山(利)委員長代理 ただいまお申し出の件につきましては、理事会で検討をいたします。  これにて藤田君の質疑は終了いたしました。  次に、島聡君。
  119. 島聡

    ○島委員 民主党の島聡でございます。  随分この委員会の質疑も進んでまいりました。ある新聞では、非常に質疑が進んで、いろいろな質問が繰り返しが多くなったよということもありました。ちょっと発想を変えながら質問をさせていただきたいと思います。  質問のきょうのメーンは、現在、国会承認をするかどうかということに対して議論されている、あるいは安保の枠内がどうかということで議論されておりますので、我々民主党がなぜ国会承認ということをきちんと求めるかというのは、やはり外交政策というものに対する国民に対する説明というか、世論に対するものにどう考えるかというのと、政府とが違うと思うわけです。  政府というのは、どちらかというと、できる限り世論というのに説明をしたり議論をするのをしないようにしようとする。我々は、基本的に世論というものを信頼して、世論に説明しながら、それは結局国会でということでありますが、それを進めながらやっていくのが、世論の推進力を持った外交政策を展開していくのがこれからの日本の外交政策であろうと思う、そういうスタンスがあるわけであります。  そういう意味で、高村外務大臣というのは、ある新聞でも、答弁がなかなかいいというふうに書いてありました。なかなか自分の言葉でお話をされていると。この前も、こんなことをおっしゃっていました。法律が出された以上、煮て食おうと焼いて食おうと勝手である、だが、生のままが一番おいしいと。なかなか味のあることを、これは答弁ではなくて、ほかの場所で言われたと思いますが。しかし、これは、刺身のままで食べても、ワサビがなくてはおいしくないですし、それから、食中毒の危険もあるわけでございますので、そういう意味では、きちんとした修正が必要なのではないかと私自身は思っております。  まず最初にお尋ねをすることは、例えば私ども民主党というのは、事態の定義に対して、政府案が日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態ということを書いてあるのに対しまして、日本への武力攻撃に発展するおそれのある事態に限定するよう修正を求めています。この修正を求めたところに、例えばこんな考え方というのは全く私はおかしいんじゃないかと思うので、それについて聞くわけですが、例えばそれを定義し直すと米国と一から協議をし直さなければならないから修正は考えられない、これは完全におかしいと思うわけです。もともとこのガイドラインというのは条約じゃないわけでありますから。  そうしたら、そういうような報道がされておりますが、もし報道が間違っているとするならば、改めてここで外務大臣に、そんなような考え方はおかしいと思うかどうか、お尋ねしたいと思います。
  120. 高村正彦

    高村国務大臣 民主党の修正案というのは、先ほど前原委員からもお聞きして、私なりの感想を述べておいたわけであります。  その中で、アメリカと一からやり直さなければいけないからなどということは私は一言も答弁をしておりませんし、そういう考え方が正しいとすれば私はそういうことを言っているはずでありますから、私はそういう考え方をとっておりませんし、外務省もそういう考え方をとっておりません。
  121. 島聡

    ○島委員 明快な答弁、ありがとうございます。そういう考えをとっていないというお話であります。  昨年ですか、高坂正堯先生という国際政治の先生がお亡くなりになって、つい最近全集が出ました。その全集の中にこんな言葉がありました。これは六〇年代の論文で、外交政策の不在と外交論議の不毛という論文であります。  日本の外交というのは職業的外交にいわば逃避している。声なき声があるということに基づいて、政府決定について極めて閉鎖的な態度をとっている。政府は世論に積極的に働きかけず、他方、国民に要求されている役割は、意見を述べて政策決定に積極的に加わるということではなくて、形成された政策に対しイエスノーかの意見を表示することだけが要求されている。政府はこういう消極的な賛成で満足し、むしろそれを好んでいる。したがって当然、得られる支持は形式的なものになり、相手を承服させる実質を伴わないことになる。  こういうようなのが六〇年代の論文でありますが、これはもうどんどん変わっていかなくちゃいけないと私は思いますし、だから、今大臣がそういうような考えはとられないということでありますから、きちんとした修正ができることが望ましいと思っております。  ちなみに、朝日新聞の世論調査では、先月ですが、周辺事態に関しては心配であるという答えの人が六割います。しかし、今のままの指針関連法案には四割余りが反対しまして、国会の事前承認を義務づけるべきだという人は六割を超えています。そういうこともかんがみながらやっていっていただきたいと思う次第であります。  それで、改めて、外交というものに対して国会がどう関与していくかということについてどう考えられるかをお聞きしたいと思います。  外交権限というのは、当然、かつては君主の大権に属するものだとされていました。近代の民主制国家において、これは行政府の専権事項と解釈されていたわけであります。日本国憲法も、外交関係の処理を内閣の事務と定めています、七十三条ですが。外交政策に対する国会の関与としては、条約承認権のほか、内閣総理大臣による報告の義務を規定しているだけであります。  しかし、国民主権の原理に従っていけば、アメリカがベトナム戦争の教訓を生かして戦争権限法をつくったように、これから先、民主的なコントロールというのを強化していかなくちゃいけないと私は思うわけであります。  特に今、地方分権が推進されます。国の仕事というのはやはり国の独自の役割、外交とか防衛だというふうになっていった場合に、現在の政府見解は、条約のことですが、憲法上、締結権が内閣にあって、我が国の一方的意思でその内容を変更できないという修正否定権に立っているというふうに私は考えておりますが、これが今後どのように、私は考え方を少しずつ変えていくべきだと思いますが、大臣お尋ねしたい。  先ほど大臣は、私心、私見は述べられない立場にあるとおっしゃった。では一体、大臣のそういう問題に対する意見というのは、委員会でなかったらどこで述べるのか。普通なら、大臣の意見は、それを言って、それを事務方の官僚がきちんとこういうふうだと委員会で述べて、それによっていろいろな政策変更をしていくべきだと私は思うわけでありますが、それも含めて、今後この条約締結権等はどういうふうにお考えかについてお尋ねしたいと思います。
  122. 高村正彦

    高村国務大臣 私見は述べられないと申し上げましたのは、私は外務大臣としての私の意見をこの場で述べている、そういうことを申し上げたので、外務大臣としての意見と違った私見を述べるなどという立場にはないということを申し上げたんです。それ以上でもそれ以下でもない、こういうことでございます。  憲法七十三条三号は、内閣が行う事務の一つとして条約の締結を規定しており、いかなる内容の条約を締結することとすべきかは、行政府がこれを決定することとなります。  他方、国会承認を求めるのは、このような行政府が決定した内容の条約を締結することについてであり、国会はかかる条約の締結について承認または否決することはできますが、立法府には条約の締結権はないために、締結すべき条約の内容を決定することはできません。したがって、国会が条約を修正するということはできないことになります。  この点は、従来より政府が繰り返し答弁してきたとおりであり、私の見解もこのとおりでございます。
  123. 島聡

    ○島委員 条約についてはわかりました。見解が変わらないということはわかりますが、改めてちょっとお尋ねしたいことがあります。  現在、日米防衛協力のための新指針の関連法案について議論されているわけでありますが、これは以前にも議論されたというふうに聞いておりますが、条約というのは、こういうことは国会承認を受ける、そうじゃなかったら国会承認を受けなくていいという話になっているというのがあります。日米防衛協力のための新指針に関して、ガイドラインに関しては国会承認を受けていない。  条約には、内閣が締結した国際的な合意のすべてが含まれるわけではないわけであって、国会承認を必要とする合意は、一九七三年の政府見解では、法律事項を含む国際約束、財政事項を含む国際約束、国家間の基本的な関係を法的に規定するという意味で政治的に重要な約束の三類型に分類されている。  私は、日米防衛協力のための新指針、今こうやって法律を議論しているわけであります。政治的に重要な約束であると思うわけであります。これを、日米防衛協力のための新指針というものは国会承認しなかった。もう以前に議論されているというわけでありますが、どうも納得がしにくいわけであります。納得のいく説明をお願いしたいと思います。
  124. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  これまで政府より申し上げておりましたことの繰り返しになるかもしれませんが、ガイドライン日米間で合意いたしましたときは、日米双方の政府の考え方といたしまして、法律的な権利義務関係を設定する文書ではなくて、両国間の政治的な意思の合致としての文書をつくるということでガイドラインを作成したわけでございます。  その政治的な意思の合致の文書としてのガイドラインに基づきまして、ただいま現在法的な観点から何をすべきかという観点から、一つにおきましては、日米間でACSAの改定協定締結し、他方におきまして、我が国の国内法の措置として二つの法律を今回国会にお出ししているということでございます。  政治的な意思の合致による文書をつくり、日米間の大きな方向性を定めるということが適当であったとその当時判断したということでございます。
  125. 島聡

    ○島委員 非常に流暢にぱっぱと答弁してくださったわけでありますが、私も外務委員会に二年間おりまして、ああいう答弁があるたびに、理解がしにくいので、きっと私が未経験で未熟だから理解しにくいのかなと思っておったわけでありますが、これは先ほどの高坂先生の論文でありますけれども、先ほどのような職業的、外交官的な意識があるからという前提で、「政府与党の側から、それを論議する方向に持ってゆく努力が、全然なされていないのである。また、国会の外交委員会においての、問題点をあいまいにし、相手をはぐらかすような答弁にもそれははっきりと現われている。彼らは、国会の外交委員会が政策決定について実権を持ち、そのために彼らの職業的外交が乱されるのを嫌っているのである。それは間違ったくろうと意識であり、残念ながら、多くの人が指摘しているように、外務官僚にはそれが強いのである。」これは、六〇年の時代と今も全く変わっていないというのが私の思いであります。  今回のガイドライン関連法案、よく、日米安全保障条約の非常に歴史的展開である、そう言われているにかかわらず、何か国民の方はよくわからないというのが実際のところです。それがあるから、そのまま今推移しているのではないかというふうに私は思うわけであります。先ほど前原委員も言いましたけれども、こういう六〇年代から続いている議論の仕方というのはそろそろ変えていかないと、外交政策の論議というのはうまくいかないと私は思います。  それで、今のはもうさっと説明を受けまして、納得していませんが、きょうはそれじゃありませんので、次に行きます。  今、国会承認が私どもは必要だと主張しています。国会承認が、政府案の方では報告でいいとおっしゃっているわけですから、それに対して、なぜ必要でないのかということをきちんと納得がいくような答弁をお願いしたいわけでありますが、もちろん、現在の議院内閣制のもとでは、内閣は国会に対して責任を負って、国会が内閣不信任決議を有することを論拠に、だから新たな承認権限を付与する必要性はないと主張しているという、これは報道でありますが、ありました。これはちょっと、不信任案をそういうふうに使うのは大げさ過ぎるのではないかと思います。  議院内閣制を採用している議会の場合、もちろん、内閣及び外務大臣の政治責任を追及する権限は初めから備わっています。国会による外交統制の強化というのは、もちろんこういう言論による統制もあります。それから、立法権、財政統制権、条約承認権、国政調査権を活用するのも当然でありますが、こういうような場合は、新たな立法措置を組み合わせることによってやることが当然必要だと私は思います。  例えば、内閣不信任という対抗手段というのは、これは本当に内閣を吹っ飛ばすような、そういうような最終的な手段であります。周辺事態をめぐる対米協力の是非という一点だけでそれを行使することになり、破壊力が大き過ぎると思うので、新たな立法措置が私は必要だと思うのですが、立法措置が必要でないという、そういう説明をお願いしたいと思います。
  126. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 一部新聞に今委員が御指摘されたような記事が載っていることは承知しておりますが、政府として周辺事態安全確保法案の基本計画の国会承認が必ずしも必要ではないと考えている理由は、記事にあるような、政府は、議院内閣制のもとで内閣は国会に対して責任を負い、かつ国会が内閣不信任決議権を有することによるものであると説明した事実は一切ございません。私どもが政府として法案の基本計画について必ずしも国会承認を得る必要がないと考えているのは、終始一貫して御答弁しているとおり、この三つの活動の性格とかあるいは他の法律の均衡論からいって報告で足りると申し上げてきたところであります。
  127. 島聡

    ○島委員 随時、答弁をたびたび繰り返しているというお話でありますが、納得しないので、もっと細かく聞いていきます。  基本的に、まず、国会承認をここまで不必要だと言うのは、現在の日本国会、私どもの国会審議というものを信用していないということなのかなというふうに私は思います。そこまで言うと答えにくいでしょうから、もうちょっと具体的に言いますが、緊急事態に直面した場合、米側との協議、基本計画の策定に必要な政策判断ですね、基本計画を承認するというのは。そういう政策判断というのを、軍事的な必要性を考慮しつつ適時に行うだけの力量というのがまだ国会にはないということでそういうことをおっしゃっているわけですか。  私は、基本計画というのは、自衛隊行動のみならず民間の協力までも含むわけでありますから、そうすれば、一括して国会で審議されるべきであると考えておるわけでありますが、いわゆる現在の力量がないと考えておられるのか、もしそれはあるとおっしゃるならば、要するに仕組みが今足らないと思っておられるのか、どちらですか。
  128. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 再々御答弁しているとおりでありますが、私どもは、この三つの活動は、この活動の性格とかあるいは他の法律の均衡上、国会報告で足りるということを申してお願いしてきているわけであります。したがいまして、御指摘のように、政府国会を信用していないとか、あるいは国会に基本計画をやる場合の承認が、必ずしも能力がないとかというようなことを考えてやっているわけじゃ決してないのでありまして、私も外務大臣も皆さんと同じ同僚の国会議員でありますから、国会を軽視するなんという考えはいささかもございません。  いずれにしても、私どもは、十分国会において御論議を尽くしていただければ、それに誠実に対応してまいりたいということも累次申し上げているところでございます。
  129. 島聡

    ○島委員 もう少し詳しく周辺事態についても聞いていきますが、周辺事態というのは地理的概念でなくて事態の性質に着目した概念であるという話であります。これを地理的概念にしなかったというのは賢明であると私自身は思っていますが、ただ、事態の性質ですから、事態というのは発展していくものではないかということをお聞きしたい。  例えば、あるケースで想定した場合、最初は、とりあえず邦人の救出だけだったというぐらいの感覚でいいかもしれない。ところが、これは避難民の受け入れも必要となるような事態に発展するかもしれない。さらに、紛争が拡大して、本当に実際に戦闘行為を含む活動になっていくかもしれない。それで、事態の性質に着目した概念ということは、事態の性質というのは、今後それはどんどん変わっていくものなのではないですか。
  130. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 周辺事態とは、我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態でありますが、委員指摘のとおり、事態の推移に応じ我が国に対する影響も変化し、また、それに応じ、とるべき対応措置の内容も変動し得ることは事実であると思います。  他方、周辺事態に際しては、いかなる対応措置をとることとなるかについては事態に応じて判断されるべきものであり、現時点において事態の推移に応じた対応措置の変化について一概に申し上げることは困難だと思っております。
  131. 島聡

    ○島委員 要するに、最初に基本計画をつくっていく、それで、事態が変わっていく、ということは、基本計画は、最初につくったものからまた変わっていくということは十分に考えられる。  どんどんどんどん事態が変わっていくならば、それを最初から基本計画に完全に織り込んで、危機管理だから、プリペア・フォー・ザ・ワーストだからということで物すごく大きな裁量にしていくのか。それとも、そういうどんどん変わっていった場合には一体どういうように対処をしていくんですか。
  132. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 周辺事態への対応措置の具体的な内容は、個別の事態に際して定められるべきものであり、現時点で確定的にお答えすることは困難でありますけれども、当該事態の推移に応じてとるべき具体的な対応措置の内容が変化し得ることは考えられるところであります。  御指摘のような事態に関して申し上げますと、具体的な周辺事態に対し、基本計画の案の策定時点において直ちに実施する必要はないが、事態の推移によって実施する必要性が予見される措置を特定し、これをあらかじめ基本計画に記述することはあり得ると考えますけれども、当初から自由裁量が可能であるような基本計画をつくることはこの法案の趣旨に反するものでありまして、許されないと考えております。  したがって、事態の推移によりまして、当初実施することを予定しておらず、基本計画に盛り込まれていない措置を実施する必要性が生じた場合には、この法律の第四条第三項の規定に従いまして、閣議決定により基本計画を変更して対応することとなると考えます。
  133. 島聡

    ○島委員 というように事態がどんどん変わっていくわけであります。  それで、これからのいろいろな理事協議等の中でなるわけでありましょうが、ということは、例えば、もし国会承認というものがあった場合に、国会承認というのは答えられないでしょうから、国会承認というのが必要であるという場合には、事態は変わっていくわけでありますから、そうすると、そのたびごとに、例えば二カ月ごとぐらいずつにはもう一回きちんと国会に報告する必要もあるだろうし、そしてまた本当に承認があったら、二カ月ごとぐらいに、きちんとそのたびごとに判断をする必要が出てくると私は思います。  事態の性質が変わっていく、この国会承認がどうなるかわからないところで答えにくいでしょうから、事態の性質が変わっていくというわけでありますから、国会に対する報告というのはどういうたびごとにやるというふうに今お考えなんですか。
  134. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 周辺事態への対応措置の実施状況につきましては、御指摘のとおり、適宜国会に御報告し、御議論いただくことは当然であると考えております。  しかし、この法案で我が国が実施する対応措置としての三つの活動につきましては、その性格が必ずしも国会承認を得る必要はない、あるいは基本計画を遅滞なく国会に報告し、国会での議論を踏まえつつ対応措置を実施していくことが適切であると考えており、このことは、基本計画の策定に関してであれ、あるいは対応措置の継続に関してであれ、変わりはないことと考えております。  現時点で私どもが精いっぱい答弁すればこのようなことでありまして、国会で十分御審議いただきますれば、誠実に私どもは対応してまいりたいと考えているところであります。
  135. 島聡

    ○島委員 私どもは、基本計画全体を国会承認にすべきであるという主張をしているわけでありますが、あえてお聞きするわけでありますが、基本計画を国会に諮ることというのは何か不都合があるのかということを伺っておきたい。  例えば、秘密を要する作戦遂行上望ましくないということが本当にあるならばという前提で、そこをお答えいただきたいんですが、基本計画と作戦行動の実施細目に当たる実施要項の違いについて述べていただきたい。そして、私は、実施要項は、それは自由、ある意味で秘密の部分があるかもしれませんが、基本計画にはそういう部分というのはそれほどそごはないのではないかと思うわけで、基本計画を国会に出すということは国益上もそれほど問題はないと私は思うわけでありますが、それについてどう御答弁されますか。
  136. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 この法案においては、周辺事態への対応措置は、一般に内閣の判断と責任のもとに政府が一体となって実施する必要があると考えられているため、基本計画を閣議決定することを義務づけているわけであります。この基本計画においては、具体的には自衛隊が本法案によって新たに規定された対応措置を行う場合のほか、他の関係行政機関が行うものも含め、現行の法令に基づく措置についても一定の場合には盛り込まれることとなるわけであります。  これに対して実施要項は、本法案に基づく自衛隊活動について、防衛庁長官が基本計画に従って活動の具体的な実施区域の指定とか、あるいは活動の具体的内容、期間、その他実施態様について想定しているわけであります。実施要項の内容は、活動を実施する部隊の安全等に係るものであることから、これを公表することは適当でないと考えておりますけれども、部隊等の安全に差し支えない範囲で概要等を公表することについては検討したいと思っております。
  137. 島聡

    ○島委員 今の話は、ということは実施計画も公表してもいい、そういう話ですか。
  138. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 実施要項については、部隊の安全等に差し支えない範囲で概要を公表することを検討したい、こう言っているわけであります。
  139. 島聡

    ○島委員 いわゆるガイドライン関連法案の最終的な目標というのは、この日本のあるいはアジア太平洋の平和と安全を守ることだと思っておりますので、それに対して、本当に秘密を要する作戦遂行上望ましくないというような説明があるならば、基本計画を国会承認をしないというのもやむを得ないと思いましたが、作戦実施要項もいいという話でございますので、基本計画が全部国会に出されて審議されるのは当然であるということを私は十分確信した次第でございます。  時間があと少しになってきましたので、事前協議の問題について質問をしたいと思います。  日米安保の枠内でと私どもは常に主張しているわけでございますが、周辺事態法案というのは、周辺事態に際し政府が首相の指揮のもとで適切かつ迅速に措置をとるとしている。もちろん、日米当局間では平素から周辺事態に備えた協力計画が用意されている。これをもとに日本政府が対米協力の基本計画を策定し発動する、これが実際の姿でしょう、幾ら迅速かつ適切にといっても。  ということは、事態の認定等に至る過程で日本の政治の意思を最大限に反映される仕組みが当然欠かせないわけで、重要な軸として安保条約が定める事前協議制度の活用がある。これは四十年近く空文だったのではないかと言われております。  アメリカ日本、密接な同盟関係を結ぶのは当然でありますが、国益というものが常に一致するとは当然限らないわけであって、国益を求めてイエスノーを言わなくてはならないときも私は出てくると思います。そのときには事前協議制度の活用が必要であるという観点から質問するわけでありますが、事前協議の主題、事前協議が行われる場合として、日本政府は、一、配置における重要な変更の場合、二、装備における重要な変更の場合、三、我が国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設・区域の使用と三つ定めていますが、一般的に事前協議というと二番の核装備のことをよく議論するんですが、きょうは一番、配置における重要な変更の場合についてきちんとお聞きしたいと思っています。  改めて読みますので、陸上部隊の場合は一個師団程度、空軍の場合はこれに相当するもの、海軍の場合は一機動部隊程度の配置とありますから、一つずつちょっと聞いていきたいと思いますが、陸上部隊の場合は一個師団程度とありますけれども、一個師団に相当するような規模の米軍地上部隊というのはそんなにあるんですか。
  140. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 御指摘の陸海空の……(島委員「陸軍だけでいいです」と呼ぶ)陸軍ですか。陸軍について言えば、例えば機甲師団の場合と歩兵師団の場合とでは、部隊の装備、編成に差があります。ありますけれども、一個師団は約一万五千人から二万人程度の兵員を要する部隊組織と考えられます。
  141. 島聡

    ○島委員 日本には、一個師団に相当するような規模の米軍地上部隊というのは、沖縄の第三海兵遠征軍に所属する第三海兵師団ぐらいしか存在しないんじゃないですか。     〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕
  142. 竹内行夫

    竹内政府委員 我が国に駐留します米陸軍でございますけれども、これは現在のところ第九戦域陸軍地域コマンドというものを中心といたします兵力約二千名以下の部隊でございます。これは当然のことながら陸上部隊の一個師団には相当いたしません。  それで、今島先生御指摘されました第三海兵師団でございますけれども、これはその後と申しますか、大分削減をされておりまして、現在のところは一個師団にも該当しないというレベルでございます。
  143. 島聡

    ○島委員 ということは、今第三海兵師団も一個師団に該当しないというわけだから、米国は一々日本政府に相談せず、現在陸軍の場合は動かすことができる、そういう解釈でいいですか。
  144. 高村正彦

    高村国務大臣 今日本の中にある陸軍を動かすことは、これは配置における重要な変更にはならない、こういうことでございますが、今それだけしかいなくとも、アメリカの陸軍を一挙に日本に持ってくる、そういう配置における重要な変更ということは理論的にあり得るわけで、そういうときは日本との事前協議は必要ですよ、しかも事前協議をして日本イエスと言わない限りそういうことはできませんよ、こういうことの規定でございます。
  145. 島聡

    ○島委員 今の規定はもうわかっています。今私が聞いているのは、それぞれ各陸空海軍についても聞いて、いかにこれが虚構ではないかということを証明しようとしているわけでありますので。  空軍の場合、これに相当するものというのはどうなっていますか。
  146. 竹内行夫

    竹内政府委員 空軍につきましては、大体陸軍の一個師団に相当するものというものが配置における重要な変更に該当する米国の規模とされているところでございます。これは島先生も先ほどおっしゃられたとおりでございます。  この陸軍の一個師団に相当するものというものといたしましては、空軍につきましては二ないし三ウイング、航空団でございますけれども、から構成されているというふうに考えられております。  そこで、現在日本に駐留しております第五空軍でございますけれども、これは第一八航空団、第三五航空団及び第三七四空輸航空団の三個航空団から構成されておりまして、大体一個航空師団に該当すると考えられるのが現状でございます。
  147. 島聡

    ○島委員 今二個、三個ウイング、ウイングの規模は各様で、これは例えばアメリカがそれは一個師団に相当するものとは考えなかったと言えばそれまでであろうという解釈も多分あるでしょう。  最後に海軍も聞きます。  海軍は一機動部隊の配置とありますが、現在米海軍には機動部隊に類する部隊編成がないと聞いておりますけれども、そうすると、これはどう解釈すればいいでしょうか。
  148. 竹内行夫

    竹内政府委員 海軍の場合でございますけれども、大体、藤山・マッカーサー口頭了解におきましては一個機動部隊程度が配置における重要な変更に当たるとされているところでございます。それを典型的な例で当てはめてみますと、一機動部隊というのは二ないし三のタスクグループより成りまして、各タスクグループというのは空母一隻に三ないし四隻の駆逐艦等が入っているというものとされております。  それで、我が国に、いわゆる海外家族居住計画というものに基づきまして乗組員の家族を居住させております艦船というものは、空母一隻を含みます十七隻の艦船がございます。これらの艦船は我が国に配置されているという、厳密な意味ではそういうことではございませんが、仮にこれらの艦船によるタスクグループというものが編成されたといたしましても、一個のタスクグループということでございまして、一機動部隊に該当しないこととなります。  なお、島先生御指摘のありました機動部隊、これはタスクフォースといったり、最近ではバトルフォースという名前で呼ばれたりしておりますけれども、これは今私が申し上げました機動部隊に該当するものでございまして、最近の例で申しますと、湾岸戦争のとき等にそういう展開がされているということがございます。
  149. 島聡

    ○島委員 今いろいろ各御答弁いただきましたけれども、聞いてもらってわかるように解釈がかなりできるような状況である。それで、事前協議という日米政府間の合意にはそれほどとらわれることなく、いろいろな在日米軍部隊や第七艦隊を多分動かせるんだろうというふうに私は解釈します。  もちろん日本の安全保障というのは、日米安全保障体制を堅持するという選択を前提にして考えて、安保条約そのものも非常にある意味で簡潔な条約ですから、運用は、時代や国際環境に合わせて変わっていかなくてはいけないとは思います。  それならば、やはり今回、特に新ガイドラインの前提としては、橋本・クリントン会談で何かいつの間にか、米軍は極東だけでなくて太平洋、アジアにも責任を持つというように変わったというふうに私は解釈しておりますが、それならば事前協議の主題を見直して、米国がこれからは日本にきちんと相談ができるように、必要があるように見直すべきであると私は考えますが、どう思われますか。
  150. 高村正彦

    高村国務大臣 安保条約の条約範囲というものは変わっていないわけで、米軍が例えば戦闘作戦行動日本の基地を使用して出ていく範囲内というのは、やはりアジア太平洋に広く出ていくという話ではないわけであります。事前協議の対象をそれだけ広く認めるということは、では米軍日本の基地を使用してそれだけ広くやっていいんですかという話にもなりかねない話で、そういうことで事前協議の対象を地理的に広げていくという考えはないわけでございます。
  151. 島聡

    ○島委員 いや、そんなことを言っているんじゃなくて、事前協議の主題である今の、例えば一個師団とか一師団とかいうのが割とあいまいなので、もっときちんと狭めていって、米軍の軍事作戦行動が展開されるときにきちんと日本政府に対して相談ができるように、ある意味で、アメリカの、米軍行動自体も、日本政府との協議の中で、ある意味で自制を促せるようにするように、事前協議の主題というものをもう少し明確に、狭くする必要があると考えるのですがいかがですかという質問です。
  152. 高村正彦

    高村国務大臣 両国の合意で、両国、その三つの主題それぞれについて考え方の差があると考えておりませんし、今までずうっとこういうことでやってきましたし、これからもそういうことでいいだろう、そう考えております。
  153. 島聡

    ○島委員 今のままでずうっとやってきたし、これからもそれでいいというのは、私はそうは思いませんということを最後に申し上げたいと思います。  時間が来ました。私のきょうの主張は、日本として主体的な判断を、ある意味で事務レベルじゃなくて政治的なレベル判断していく仕組みがこの法案審議に絶対に必要であると思います。ですから、国会の関与、さらに事前協議というものをさらにきちんと整備していくことを主張しまして、質問を終わります。
  154. 山崎拓

    山崎委員長 これにて島聡君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  155. 山崎拓

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山中あき子君。
  156. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 山中あき子でございます。  いつも時間がなくて、急いで急いでお答えいただくのですが、きょうは何と一時間四十分ございますので、全部の先生をずっと拘束するというのは大変、それぞれ公務もおありと思いますので、主管の防衛庁長官外務大臣はずっといていただくことにいたしまして、あとの大臣は、それぞれ前半、後半という形で質問させていただきますので、どうぞその辺のところ、お気軽にといいますか、ほかの公務をなさっていただきたいと思います。  きょうは、時間がどういうふうになるかわかりませんが、一応最初に民間協力についてお聞きいたしまして、その中で、公聴会のこと、参考人質疑の中にあったこと、地方自治体の権限ということ、国会の関与のあり方、終了後の報告ですとか、その後のチェック体制ということ、そして日本の周辺というのは一体どういうことか、また安保の枠内というのがどんなようなことか、そして、もし時間があれば、機雷のことと、それから、ここからは少し、現在の国際情勢でございますが、北朝鮮のこと、それからコソボのこと、あと総合的な外交政策ということで、質問させていただきたいと思います。  四月の十四日に公聴会へ行きまして、私は函館に参りましたけれども、大変に驚きましたのは、例えば、太田教授はユーゴのことをずっとお話しなさったわけです、コソボの情勢を。お聞きしていますと、もしこの周辺事態の法案が通った場合には、ひょっとしたら自衛隊は今のようなユーゴの、そこへも行くのではないか。行くという意味は、後方支援をするのではないかというおそれを抱かせるような認識のあり方をしていらっしゃる方もおいでになりました。  また、このガイドラインが前のガイドラインを引き継ぐのだから、日米安保堅持の立場からこれは必要だ、こんなものかなと思う、しかし日本周辺の有事の前に、平和の維持に努力すべきで、やることがいっぱいあるだろうというような意見もございまして、経済の基本であるとか、あるいはどうやって平和を築いて平和を維持するかということを世界に広めて、意識改革をすることを考えたらどうかという意見もございました。  また、ずっと平和運動家でいらっしゃるという女性の方からは、国際化すればするほどお互いに敵対行動が難しくなるので、できるだけ国際交流を深めたい、私はその意見は大変いいと思うのですが、国際交流を進めることの大切さと同時に、たまたま米軍の艦船が函館に入港したその姿を見ただけで体が震えたということなんですね、戦時中を思い出したと。ですから、理屈ではなくて感覚的に何かそういうものに対して恐怖感というものを感じていらっしゃる。  それが、なぜそういうことになったかというと、米国が約束を守らないで我が物顔で行動するんだというようなことで、日本が主体性を失っているというような言い方をなさっていらっしゃいました。それで、非核三原則、専守防衛、平和憲法を守るから反対だとおっしゃるのですが、私も何度も質問させていただきましたように、この新しいガイドラインのところにはきちっとこの三つは書かれているわけで、そのことがわかっていらっしゃらない。つまり、法案の中身が十分わかっていらっしゃるのかどうかということをとても疑問に感じました。  百七十七の自治体が反対しているというような報道もありますけれども、TBSの世論調査の中で、ガイドラインの法案の問題に関心がありますかという質問に対しては、非常に関心がある、どちらかといえば関心があるということで、六〇%以上の方が関心があると言っているのですが、ガイドライン法案の内容について知っていますかということになりますと、余りよく知らないというのが四九・三%、大体知っているという三四・五%をかなり上回っております。それで、アメリカとの安全保障関係は、強化すべきであるというのが二五・九%、現状維持というのが五七・四%、弱めるべきであるというのが一四・二%というわけで、三人に一人が賛成でも反対でもなく、よくわからないというような、そういう調査もございます。  また先日、参考人として意見陳述をなさいました岡本行夫さんが、国民の間にこれが対米協力法案であるような認識が一部に持たれているのは残念でございまして、これは政府のPR不足のゆえではないかと思いますということをこの場でおっしゃっているわけです。  私は、やはりいざとなったときにきちんと認識して、きちんとした行動が全体でとれるためには、よく知ってもらうということが非常に大事なことで、ひょっとしたらその努力がまだ十分ではないのではないかというふうに思います。所管は、防衛庁であって、あるいは外務省であっても、これは自治体、それから民間に協力を得るとすれば、自治省としては、どういうような知ってもらう努力といいますか、今までにそういうことをなさってきたか、まずお聞きしたいと思います。
  157. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 本法案に対する国民の認識あるいは自治体自身の認識において、まだまだ十分な理解が進んでいない、したがってもっと政府は努力をして、この内容について国民にきちんと説明をしていけ、こういう御指摘はまことにそのとおりでございまして、さらなる努力をしてまいりたいと思っています。  今まで、政府として、内閣安全保障危機管理室あるいは防衛庁あるいは外務省、こういった役所から地方団体の要望に応じてできるだけ具体的に説明を行ってきておるわけでございますが、自治省におきましても、関係地方団体からの照会などに答えてきたわけであります。ただ、御指摘のとおり、それで十分かと言われると、まだまだ努力もしなきゃならぬ。したがって、これから説明会なども必要に応じてしてまいりたいと思います。  なお、今日までの説明の状況につきましては、昨年の四月この法案が国会に提案をされまして以来、それぞれ、基地協議会であったり、あるいは全国市議会議長会、あるいは渉外関係主要都道府県知事連絡協議会を初め、いろいろな関係団体と意見交換会を開催したり説明会を開催したり、もう既に十回以上やってきておるわけでございます。本年に入りまして、二月にも三回ほど今申し上げましたような会合を催し、あるいは三月末ごろでございますが、改めて全国知事会との意見交換会を開催する、こういうこともやっております。また、資料配付等もできるだけ理解を得られるよう詳しい説明をするように努力をいたしておるわけであります。  いずれにせよ、これからもさらに努力をしてまいりたいと思います。
  158. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 カナダで政権がかわって、外交政策がかわるときに、六カ月かけて全国を縦断して意見の交換という、シンポジウムやなんかをやっていった、そういう経緯がございます。私、たまたま昨年五月の連休にワシントンに行きましたときに、どうやったらこの法案がうまく通るかということのキーの一つは、いかに国民にわかってもらって、何もわからないということは何となく不安になって、不安になれば疑心暗鬼になって、疑心暗鬼になれば恐れが出てきて、そうすると拒否する、こういう自然の感情がございますから、やはりよくわかってもらうということをどのぐらいやれるかということが一つのキーだろうということを申し上げたのを覚えているのですけれども、今からでも、一年間に十回というのは私は非常に少ないと思うのですね。全部の都道府県にそれぞれ行っていたわけではないわけですから。それぞれがおのおのばらばらにやるのもこれで結構ですけれども、自治省と自治体、それも市町村レベルまで含めていろいろな形で、シンポジウムなりディスカッションなりで、そして、説明します、教えますという態度ではなくて、意見を皆さんからも聞きますという双方向の対話というものをぜひ早急に開始していただきたい。法案が通る、通らないは別としても、今、日本がどういうことを話しているか、決して国際的な問題は国内問題と不可分ではないわけですから、そういう努力をさらにしていただきたいと思います。  多少費用がかかると思いますけれども、そのぐらいの全国展開をなさってはいかがかと思いますけれども、いかがでしょうか、自治大臣
  159. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 これからも最大限の努力をしてまいりたいと思います。
  160. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 それでは、周辺事態法の対米協力の中で自治体に十項目例示をなさっていますし、これは依頼なのか、それとも強制力がどのぐらいあるのかというようなこともいろいろ言われておりますけれども、どうもいろいろな方に聞いてみますと、民間業者に対して後方地域支援の協力を依頼するからには、国がどういう責任を持ってどんなリスクを自分たちが負わなければいけないかということ、それに対するどういう措置をしてくれるのだろうかということに関して、民間業者が負うことになるリスクというものをある程度示すということについてはどういうふうにお考えでしょうか。
  161. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 法案の九条第二項で、民間の方を含みます国以外の方々に対しましていろいろな御協力を依頼することができるということになっておりますが、これは当然のことながら、その依頼を受けた者と国あるいは米軍との間の契約関係ということになりますので、今先生がおっしゃるリスクという意味がどういうことになるのか、私も必ずしも判然としないわけでございますが、基本的にはそういった私法上の契約の中で定められていくべきものだろうと思います。  ただ、そこで、万が一にも私法上の契約でカバーし切れないような非常に例外的な事象があった場合には、国の方でしかるべく補償をするというのが九条三項の趣旨でございますので、基本的には、何度も申し上げますが、契約の中であるということが第一点でございますし、また、周辺事態というのはあくまで我が国有事の場合ではないわけでございますので、そういう意味では、非常に大きなリスクということはちょっと考えにくいのではないかというふうには私は思っております。
  162. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 私もそうあってほしいと思いますけれども、先日のやはり参考人の陳述の中で、民間の協力の内容には、例えば民間の輸送業者が公海上で武器弾薬、米兵を輸送するということが排除されていないと。こういう場合に、あくまでもこれが民間の船であったとしても、そういうものを輸送するということによって、それが民間のものであるか、それとも、輸送している内容によっては兵たんの支援だというふうにとらえられて相手から攻撃されるターゲットになるのではないか。そういうことになると、もし全然そういうものを積んでいないものもターゲットにされた場合に、国としては補償をするのだろうかということが出ているわけですけれども、こういう点については、運輸大臣、いかがお考えでいらっしゃいますか。
  163. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 まず、基本の認識でございますけれども、これは何度も申し上げているんですけれども、民間の例えば航空会社また海運会社、こういうものに対して輸送協力の依頼でございますので、あくまで強制力を持ったものではない。したがって、社長なり経営陣が、我々が大丈夫ですよと言っても危ないと感じるならば、どうぞお断りくださいという前提にあります。  そしてもう一つは、もちろん、私どもが不測の事態が起こり得ない地域というものを防衛庁と十分話し合いをしながら、大丈夫だという私どもの確認の上で協力を依頼していく、この二つがかかっておると思っております。  その第一の、民間への依頼だから断ることができるんですよということが誤解で伝わっておって、どうも運輸省は強制力を持ってやるんじゃないか、こういう誤解の議論が実は多いように思っております。
  164. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 善意でオーケーして、そして輸送に携わった例えば民間航空機とか船舶とかが、万が一何かあった場合には、リスクに対する補償は国としてすると思うのですが、民間にも積んでいるぞということがわかって、全然関係のないものが間違って攻撃されたという場合には、国としては責任は負わないということになりますか。
  165. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 大変難しい議論でございますけれども、例えば私どもが想定していますのは、大丈夫だよという地域へお願いすることになった。しかし、その後状況の変化が起きた。そのときに、私どもは情報提供して、帰ってきてもらうという判断をする場合もある。また、実際に運んでおる方々が、我々の情報で行ってみたけれどもちょっと状況が違うということで、パイロットなり機関手が判断をする。それで帰ってこられる。そのときに、荷物を運べないということになりますので、ある意味では契約不履行になるかなと。しかし、そういう場合に、経済的なロスも私どもが補償しますということははっきりしておきたいというふうに思っております。  ただ、今、山中先生の仮定の話は、要するに我々がすべて補償しますよ、こういうことでお願いをしたときに、全く保証していない船が、日本の民間が手伝っているからそこへ来てしまうというとなかなか難しい議論でございますので、そういうことがないように、全体的には情報はしっかり流していきたいと思っております。
  166. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 そういったたぐいのときの保険のあり方も含めて、予期せぬことが起こったときに対処の仕方がまだ定まっていなかったとか、ほかの業者が手伝ったために自分たちが被害を受けたというようなことがあっては困るという議論が結構ありますので、その辺どういう扱いになるかということはぜひきちんと前もって検討しておいて、起こらなければもちろんそれは幸いなことですし、起こらないでほしいと思っていますけれども、被弾した場合にはカバーするというような、そういった保険の仕組み、補償の仕組みも含めて、私は、万が一に備えてやはり考えておくことが、民間の方たちに依頼するときに、自分のことだけではなくて全体に対して、ほかの同僚の船に対しても、あるいはほかの船が協力しても大丈夫、そういう安心感を与えることは非常に大事だと思いますので、ぜひこの点は少し検討していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  167. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 今の御議論の中で一番難しい想定を申し上げますと、私どもは基本計画に沿いながら、安全というものを担保して、そして運送業者にお願いをする。その場合に、防衛施設庁が契約をするものもある。また、米軍が直接契約を私どものあっせんでされる場合がある。もう少し議論しますと、そこで難しいのは、私どもの手を経ずに米軍が直接民間業者とおやりになったときに、私どもがどのようなことを言い得るかというところに大きな問題がございます。  私どもは情報提供して、そういう危ないところには行かないですよということを情報を流していきますけれども、民間業者のお仕事でございますので、自分たちはそこをやるんだと言われたときに、我々は逆に強制権を持ってそれをやめさせることができるかとなると、これは正直言って判断として難しいと思っております。
  168. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 結局、国の法律の枠の上でそういうことが起こり得るとすれば、国としてはやはりそれはどうするかということは、アメリカ軍あるいはアメリカの司令部と、どういう場合にはどの程度の補償をする、日本の場合でしたらこういう補償で、日本政府が借り上げた場合はこうで、アメリカの場合はこうでということの共通のマニュアルをきちんとつくられて、そしてお互いにそごを来さないようにということはなさるわけですよね。
  169. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 まさにそのとおりで、我々が関与して、あっせんにしろ、契約した場合について損害をこうむった、もしくは、先ほど言いましたように、届けるつもりだけれども届けられないで帰ってきた、この料金をどうするんだ、こういうような問題については、私どもはマニュアルにしっかり定めてお願いをしていくということになりますし、不履行になった場合、また被害をこうむった場合はしっかりした補償をしなきゃならぬ、このように思っております。
  170. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 やはりアメリカ側ときちっとその辺を対応することが一つと、その余波を受けたような事態が生じた場合にそれに対してどうするかということも、これは国としてやはり検討しておいていただきたいと思います。  そういうことも含めまして、先日、ソウルからアメリカ軍の家族が福岡空港に避難の演習で着陸しましたけれども、もちろん福岡空港というのは共用しているということで、きちっと法的に定められているわけですが、これからも頻繁にさまざまな形でそういった訓練というのが起こり得るかもしれません。  そういう場合に、民間の航空機の場合には騒音の制限とか使用時間とかということはきちっとあるわけですが、例えば軍用機の場合には、騒音も普通の日本の民間機の騒音とは違うわけですけれども、その辺のところはどういう形でこれから対処していく方針でいらっしゃいますか。
  171. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 まず、もう委員御承知のとおり、米軍機は、地位協定第五条に基づき、我が国の民間空港の一時的使用が可能であります。したがって、昨年では七百十九回、一昨年またその前で大体千回程度、民間の飛行場が米軍によって一時使用が行われておるのが現実でございます。  ただ、その使用につきましては、優先使用は認められておりませんので、当然、例えば成田等の混雑空港について、成田は今日まで使っておりません。緊急時で一、二回あった程度で、基本的には、混雑空港の使用については難しい状況である、こういう形で使われております。  また、周辺事態という場合になりましたときは、当然、まず第一義的には自衛隊米軍の飛行場というものを利用しながら基本計画は組まれていくだろう。しかしながら、それだけでは間に合わないという状況のときに、基本計画の中で民間飛行場の使用というものが検討されていくということで、そのときに、もちろん十分な地域への説明とかそういうものもしていかなければならぬだろう、こういうふうに思っております。
  172. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 今、大臣から成田のことが出ました。成田の使用も除外はされないということをおっしゃっているわけですけれども、成田の場合にはたくさんの海外の航空会社が乗り入れしているわけですけれども、もし周辺事態になった場合に、海外の航空会社との協定で条約または付表の変更をするというようなことがあるという場合には、そういうところの協力というのはどういうふうにお考えでいらっしゃいますか。
  173. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 成田につきましては、先ほど申し上げたように、米軍の一時的使用は地位協定で定められてあります。しかしながら、優先、最優先ではございませんので、今お話しのように、日本の飛行機そして外国の航空機、これが日常使っておるまさに混雑空港になっております。  それに加えまして、空港建設に至るまでいろいろな経過があったのは、委員御承知のとおりでございます。地元との話し合いの協議もございます、経過もございます。あわせて、国会運輸大臣等が、中曽根運輸大臣のときにもあったわけでありますけれども、いろいろな御答弁をされております。その重みというものも十分私どもは考えていかなければならないだろうと。  したがって、そういった基本的な認識のもとで基本計画というものは組みますということを申し上げておりますので、可能性としては低いというふうに、成田の特殊性というものを十分私どもは認識しております、こういう御答弁をさせていただいております。  それで、そういうケースだけではなくて、どうしても外国の航空機との間でお互いの譲り合いができないだろうかという場合は、もちろん何らかの調整は、私どもはお話し合いをしていくことになる。しかし、強制的にどきなさいということはやらないということを再三申し上げているところで、これは、港湾についても飛行場についても同じことでございます。
  174. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 もちろん強制的にはできないことでございますけれども、そのために実際にさまざまな混雑が起こるということは十分予想されることですので、どういう地域とはどういう協定があってということを一度きちっと洗い出しておかれて、そして早目に、いざとなったらどことどういうふうな折衝をすればすぐオーケーをいただけるか、いただけないかというようなことを、これもやはりマニュアルをつくるべきだと思います。その辺は当然なさるとは思いますけれども、意外と当然ということが抜けることもございますので、ぜひその辺はきちっと準備なさってください。  今は一例しか申し上げませんでしたけれども、やはり民間あるいは自治体の協力ということに対して、いまだ何がどういうふうになっているのかよくわからない、そういう感覚がずっとみんなの中に広がっているということを、私はこの間からさまざまな方からの意見で聞いております。  それで、内閣安全保障危機管理室が各都道府県を通じて自治体にその協力を要請して、そして空港や港湾の使用については、法令だけでなく、既にある騒音協定などを遵守するというような考え方や手続を明確にする方針であるということが報道されております。これは大変いいことだと思いますので、ぜひ早くやっていただきたいのですが、ただ、この要請項目の洗い出しや手順には米国との調整で時間がかかるため、マニュアル作成は実際には一、二年かかりそうということが四月十七日の報道で出ておりますけれども、これはそのぐらいかかりそうなのでしょうか。
  175. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 先生十分御承知のとおりでございますが、先般、二月三日にいわゆる十項目というものをお配りしておるわけでございます。これは、かなり包括的にと申しますか、書き方が抽象的でございますので、個々具体的なものがなかなかわかりにくいという御指摘がございました。私どもも、そういうことを踏まえまして、先ほど自治大臣からもお話がございましたが、いろいろな説明の機会にはできる限り具体的な御説明をするよう努めているところでございます。  今後とも、協力の求めとかあるいは依頼を行う際のその具体的な内容とか手続につきましては、わかりやすく、理解いただけるような方策を検討してまいりたいと思います。  また、そのマニュアルということでございますが、これにつきましても、累次、防衛庁長官あるいは運輸大臣からも御答弁がございます。私どもも、関係各省庁と十分御相談をしながら、現段階ではまだ法案の御審議をいただいているところでございますので確定的にお答えすることは難しいわけでございますが、法律の施行のとき、あるいは仮に間に合わなくても、施行後できるだけ速やかにそういったものはまとめていきたいというふうに考えているところでございます。
  176. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 できるだけ速やかにということですけれども、少なくとも例えば一年から二年を要するということであれば、まだもちろん法案自体が審議中ということでありますから、今から作業というわけにはいかないにしても、法案の早期成立が今課題になっているわけですけれども、法律の発効要件というのは、公布の日から起算して三月を超えない範囲というふうになっているわけです。  そうしますと、三月を超えない範囲でこの法律が発効して、そのときにまだマニュアルができていないという現実が起こり得るということで、そこの間の、マニュアルができるまでの間はどういうふうに対処するつもりでいらっしゃいますか。
  177. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 マニュアルと申しますと、どうしてもある程度網羅的なものを考えざるを得ないわけでございまして、そういう中では、やや難しいもの、あるいは比較的容易につくれるものと、いろいろ種類があるんだろうと思います。そういう意味で、全体として取りまとめをするには、必ずしもぴたりと法律の施行のときということを今申し上げられるほど、準備が整っているわけではございません。  ただ、私どもといたしましては、できるだけこれからも、法案審議の間でも、いろいろな準備はさせていただきたいと思っております。  また、ではマニュアルができていないときどうするのかというお尋ねでございますが、仮に、万が一そのようなことがあったといたしましても、そのときに基本計画でどのような協力の求めあるいは依頼を行うかは明示するわけでございますので、少なくともそういった部分については、各関係地方公共団体等おわかりいただけるような措置を講じるよう努力してまいりたいと思います。
  178. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 大体今の、時系列的に見ていきますと、そこに空白期間ができるということがわかっているわけですから、簡単なものだったらある程度できるということであれば、段階を経て、全部完成、一、二年後にすべての形が見えるとしても、基本的にわかるところから知らせていくという努力をなさる方が、それは基本計画に盛り込まれているからわかるでしょうと言われても、やはり受ける方としては不安が残りますので、その辺のところは、段階的にでもいいですから、できるだけ早い段階に、わかるところから、概要から見ていく、だんだん細目を詰めていくというような形でも、ぜひ努力していただきたいと思います。お願いできますか。
  179. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 マニュアルという言葉が大変多岐にわたると申しますか、ある一定のものを想像させるものでございますから、私も先ほどのような御答弁を申し上げているわけでございますが、今先生御指摘のように、必要がある場合において、それぞれについて必ずしも形式等にこだわることなく御説明するというのは、当然のことと存じております。
  180. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 それでは、地方の自治権のことについて自治大臣の御所見を伺いたいのですが、神戸のやり方に対して、これは一九八四年、中曽根大臣が、「地方自治の本旨に基づいて神戸の市長及び市議会がとっておる一つのやり方でありまして、それはそれとして我々はよく理解できるところであります。」そして、続きまして、私は今の答弁で地方自治の本旨に基づきと申し上げました、これは国は国の政策、地方自治体は地方自治の本旨に基づいて、またみずからいろいろな政策を実行している、独立的にある程度やっております、それは当然のことで、国は国、地方公共団体は固有の自治権に基づいて地方自治体の行為を行う、そういう次元が違うものであるというふうに御理解いただきたいと思いますというふうに答弁をなさっておりますけれども、神戸のことだけではなくて、高知のことが引き金になっていろいろな認識が示されておりますが、国とそれから地方自治体、そこのところの権限あるいは所轄ということについて、自治大臣の御見解を伺いたいと思います。
  181. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 今、いみじくも中曽根総理の答弁についてお読みいただいたわけですけれども、そこでも触れておりますが、国と地方公共団体というのは、相互に異なる次元においてそれぞれの事務を処理しているということでありまして、外交関係の処理というのは、国としての責任を有する事務の処理の世界であります。別途、港湾の管理というのは、地方公共団体の長がこれは港湾法に基づいて管理をするわけであります。そういう意味での役割分担というのは、はっきりしておるわけであります。  したがって、地方公共団体が行います権限行使というのは、少なくとも地方自治法あるいは港湾法に基づくいわゆる港湾の管理者としての権限行使ということでありまして、そういう管理者としての権限行使というのはあくまでもその地位に基づいて行われる世界のものであるということは、もうかねてから申し上げておるとおりでございます。  別途、周辺事態法第九条というのは、これはたびたび申し上げておりますが、あくまで、国から自治体の長にその権限行使を、協力を求めるという法体系になっておるわけで、そういう意味で、拒否する場合に、正当な理由があるか否かという場合に、何に基づいて判断するかというのは、今申し上げました港湾管理者としての立場に基づいてその正当性が判断をなされるべき世界のものであるということは、かねてから申し上げておるとおりであります。
  182. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 関連してでございますけれども、外務大臣に。  外交関係を処理することというのは、憲法七十三条の二で国の役割ということになっているわけですけれども、外交については国のことだから、非核しているかしていないかということについて地方自治体あるいは港湾管理者が何かを言うものではないというふうにお考えでいらっしゃるのでしょうか、それとも、そうではなくて、そういうこともあり得るというふうに御判断なさいますか。
  183. 高村正彦

    高村国務大臣 外交につきましては国の専権事項でありますから、そのことに地方公共団体がいやしくも介入するようなことがあってはならない、お互いがそれぞれ次元の異なった事務をしているわけでありますから、国が地方公共団体の権限に介入することがあってもならないと同じように、それぞれがそれぞれの権限に基づいたことをやる、それが法治国家の建前である、こういうふうに思っております。
  184. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 私も、九六年にこれは書いて、地方は地方の役割それから国は国の役割という中で、私の場合はスウェーデン・モデルを例にとりまして、国防権とか国教会の監督権、減刑権、特別選挙の施行の決定、指示、それから、法案、予算案の提出権、法律施行細則の制定、それから、委任立法権、行政上の決定権、それから、国家資源の利用、活用権、外交権というのは、これは国の範囲である。  このスウェーデンというのは、スウェーデン・モデルというように申し上げるまでもなく、単一の政府国家と強力な地方自治体というので構成されているわけですが、きちっとやはり法律に、ここは国のものであるというのが一つまとめてできているわけです。  ですから、あの法律とこの法律とあわせて見るとどっちが優先するかというようなことではなくて、そろそろ地方分権ということをもっと地域主権というふうに考えて、これは徴税権のことも含んできますからなかなか大ごとではございますけれども、やはり、地方の自治を守るということと国益を守るということと、どういうふうにそれを立法府としてきちんと組み立てるかということをそろそろ考えていいのではないかと思いますが、自治大臣、いかがですか。
  185. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 御指摘のような角度から、今国会で、国と地方の関係について、いわば対等、協力の関係に持っていこう、そして、できるだけ住民に身近なことは地方自治体が責任を持って物事を処理できるように役割分担をはっきりさせようという地方分権一括法、これから御論議をいただくわけでございます。ぜひ今国会で通していただきたい、こう思っておるんです。  しかし、この点は、あくまで平時における、つまりノーマルな状態における役割分担の世界でございまして、少なくともそうでない緊急事態におけるあるいは大規模災害等々初めいろいろな緊急事態が発生した場合においてどういう対応をするかということは、本来別の角度からきちっとしたいわゆる危機管理の体系というものがあるのは、これは国家として当たり前のことでございます。  それから、日本国は、何といってもやはりみずから、一たん我が国自身の有事ということであれば、それに本当にどう対応するかということに関する事柄も、みんながまじめにもう少しきちんと整理をしておくべき事柄であるということも、私はそのとおりと思います。  ただ、そのことについて、いつ、どういう手順、どういう内容でこれを決めていくかということは、これはまた別の問題でございまして、しかし、これは避けて通ることができない大事な課題であるということは申し上げておかなければならぬ、私はそう思っております。  そういう点で、いわゆるノーマルな状態における国と地方のそういう仕事の責任分担といいますか、この話とやはり事柄は違うのではないか、私はそういう認識をいたしております。  そういう点で、今回の周辺事態に関連してどういうことを行うかということも、本当はその辺も含めて、きちんとした政治家としての議論をしていただきたい、私はそう思っています。
  186. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 私も、前回それから予算委員会のときも、総合的な、内的な要因、外的な要因を一緒にあわせた危機管理のあり方というもの、きちんとその基本法をつくるべきだ、そういうふうな主張をしてまいりましたので、まさにそうでございますが、今私が申し上げたのも、平時のときでございます。  こういう役割分担が最初からきちんと今の行政改革の中でできればいいなと思っているのですが、何か、そこまできちっといっているのか、いくのかなというのがちょっと心配でございまして、そういうことも含めて、今この機会でございますから、この法律はこの法律、審議しているわけですが、関連して、やはり地方行政改革の方でもやはりその辺のところを詰めるということをぜひなさっていただきたいと思います。  運輸大臣自治大臣は、一応私の方の質問は終わりましたので、お引き取りいただいて結構でございます。  続きまして、周辺事態法の中の基本計画についての質問をさせていただきたいと思います。  基本計画については、国会承認をするかしないかというようなことがいろいろ言われているわけでございますけれども、周辺事態安全確保法の第十条におきまして、基本計画は事後に国会に報告するものとされております。  これまでもいろいろ皆さんの審議がございましたように、法案で言われているものも、また、その際の自衛隊活動を初め、地方公共団体、あるいは先ほどから申し上げています民間に求められる協力内容、こういったこともその計画の中で初めて具体化してくるということになるわけでございまして、現時点では国民に対して提示できないという以上、周辺事態の認定やあるいはその取り組みを明記した基本計画というものを国会承認なしで行政段階で決定してしまうということは、これは国民にかかわることである以上、やはり透明性ということも踏まえて、承認の中にきちんと基本計画というものを入れるべきではないかというふうに考えております。  その点につきましては、基本計画というものをきちんと承認するかどうかということの考え方を、防衛庁長官、お示しいただきたいと思います。
  187. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 私どもは、これまで何回も同じことを答弁して恐縮でございますが、この新しい法律で与えられる三つの活動は、いずれも武力行使を伴うものではない、あるいは国民の権利義務に直接関係のあるものではない、あるいは迅速性を必要とするものだということを申し上げて、国会承認ではなく国会報告でお願いしてまいったわけでございます。  ですから、私どもとしては、基本計画は、そういう三つの活動の性格、それからもう一つは、他の法律との均衡論からいって、やはり国会報告で済むのじゃないかということを重ね重ね申し上げてきたところでありまして、例えば、大変強制力を必要とする海上警備行動とか、あるいは要請による治安出動のようなものは、それぞれ強制力を伴うものでありますけれども、この法律による三つの活動は、そういう強制力を伴うものではない。そして、今言った、強制力を伴う方が国会承認ではないのに、強制力を伴わないこっちの基本計画が国会承認ということでは、法律の均衡論としても問題があるという前提に立って、私どもは、承認ではなくて報告だということをお願い申し上げているわけであります。  しかし、委員、最近、私ども、毛穴にしみて感じるわけですが、各党が大変真剣に御論議していただいているわけですから、立法機関でそれらの議論がなされた上で詰まってくれば、私どもとしてはそれに誠実に対応してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  188. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 これは、二月二十日の「後藤田正晴の目」という新聞の記事の中で、後藤田先生が、米軍への後方支援の範囲は極東の中の日本周辺ということを言われて、そして、  事前の国会承認を義務づけることで、シビリアンコントロールがさらに利くのではないか。さらに、自衛隊員に使命感を持たせるためにも、国民の代表たる国会承認がほしい。国民生活を制約する規定があることを考えても、事前承認とすべきだろう。だいたい、「国会報告」では防衛出動、治安出動、国連平和維持軍への部隊派遣などの場合と平仄が合わない。それでは間に合わないという意見があるが、「事態」は直下型突発地震のように生じるわけではない。社会現象である以上、予兆があるはずだ。 ということをおっしゃっているのですが、この意見に対しては、今の防衛庁長官お答えだとどういうふうな御説明をなさいますか。
  189. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 多分、後藤田先生の論文の趣旨は、アメリカにおける後方支援の例を引いて、アメリカの実態がそうだからということを教唆されていると思うのですが、私どもは、アメリカ後方支援、つまり、これは兵たん支援ともいうことでありましょうが、私どもはそれをしようというのではなくて、あくまでも、この法律によって戦闘地域とは全く一線を画した後方地域というのを設けまして、その後方地域の中でそういう支援活動をやるというのが後方支援活動でありますから、後藤田先生のおっしゃっているのとは本質的に違いがあるということを御理解いただきたいと思います。
  190. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 今の御意見は、最初の認識、その依拠するところが違っている、ですから違う結論になっているということでございますとすれば、私は、後藤田先生のような方も勘違いなさるように、もしかしたら非常にわかりにくいのかなということも思いますので、その辺のところも、先ほどのことも含めてですけれども、またわかりやすい形で国民に知らせるという努力をぜひなさっていただきたいと思います。  これはまだ議論のあるところでございますので、ここで結論をいただくということにはならないと思いますが、それに連動いたしまして、後方地域支援活動の開始後に、定期的な国会への報告ですとか、あるいは、PKOの活動のときと同様に、活動終了後に一連の活動に関する報告書を国会にまとめて提出するというようなことが当然と思われますが、この点についてはいかがでいらっしゃいますか。
  191. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 大変重大な事態でありますから、国会に対しては随時きちっとした報告をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  192. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 報告がなされた後、それをそのまま、終わってしまいますと、何事も、次に向かって、一つずつ学んで、そしていい形にしていくということを考えますと、当然、民主主義のルールといたしましては、チェック・アンド・バランスで、報告書あるいは報告を出されたレポートについて、私は、第三者の機関が、委員会なり何かがあって、そして、例えば独立性を持って、客観性を持って、調査能力をきちっと持って、権限を持っている一つの専門家の集団が、今回の行動を全部、どういうふうだったか、こういう点はこれから改善すべきであろう、こういう点は非常によかったのではないか、この点はもしかしたら法律がもう少し必要かもしれないというような作業が、やはり評価システムをきちっと持つことは非常に大事だろうと思うのです。今までそういう議論がほとんど出ておりませんでしたけれども、私は、報告書が出るのであれば、当然それにかかわって、この機会にそういったシステムを構築するということが必要かと思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
  193. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先生のおっしゃっていることはごもっともでございますが、それに一番ふさわしいのは、私は、立派な専門家がそろったこのガイドライン特別委員会が一番その場じゃないかとは思いますが、しかし、純粋な第三者機関に意見を聞くということは大事でありますから、そういうことも工夫してみたい、こう思っております。
  194. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 大臣のお言葉ですけれども、私は、当事者あるいはここにかかわった人間がチェックをするというのは非常に難しいと思うのです、自分たちがかかわった法案に基づいてチェックをする。ですから、先ほどから申し上げているように第三者機関が必要だと思いますし、日本はやはりもっとそういう意味のシンクタンクになり得る、特に外交、防衛の、それぞれの国に、イギリスもアメリカも戦略研究所もあります、日本も幾つかあるのですけれども、やはりきちんとした権威の、世界的な権威を持っているようなところまでまだ育っていないというのが現実だと思いますので、そういう集団を育てるという意味でもぜひその辺は考えていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  195. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 十分検討させていただきたいと思います。
  196. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 それでは、周辺事態の法案でございますけれども、周辺事態というのがどういうようなことかということは随分議論されてまいりましたので、ここでその中の同じような議論はもう繰り返すつもりはございません。ただ、周辺事態というものの概念をある程度明確化して、そしてどういった認定基準で認定するのか、そういうことをわかりやすく包括的に類型化するということを、今着手していらっしゃると思いますけれども、その進みぐあいはどういうことになっていますでしょうか。
  197. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 類型化の問題でございますが、これは外務省が窓口になりましてまとめていただいておりますが、ざっとしたところがまとまってきましたので申し上げさせていただきたいと思いますが、ある事態周辺事態に該当するか否かは、その事態の規模、態様等を総合的に勘案して判断するものであるため、その具体例をあらかじめ概括的、包括的に示すことはできないということは前から申し上げてきたところであります。  でありますけれども、例えば次のような場合が考えられる、こういうふうに思います。これは、従来外務大臣が四つの類型を申し上げてきましたけれども、それを補足したものであります。  一つは、我が国周辺の地域において武力紛争の発生が差し迫っている場合であって、我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合。  それから二つ目は、我が国周辺の地域において武力紛争が発生している場合であって、我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合。  それから三つ目は、我が国周辺の地域における武力紛争そのものは一応停止したが、いまだ秩序の維持、回復等が達成されておらず、引き続き我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合。  そして四つ目は、ある国の行動が国連安保理によって平和に対する脅威あるいは平和の破壊または侵略行為と決定され、その国が国連安保理決議に基づく経済制裁の対象となるような場合であって、それが我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合。  そして五つ目は、ある国における政治体制の混乱等によりその国において大量の避難民が発生し、我が国への流入の可能性が高まっている場合であって、これが我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合。  そして六つ目は、ある国において内乱、内戦等の事態が発生し、それが純然たる国内問題にとどまらず国際的に拡大しておる場合であって、我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合。  また、ある事態周辺事態に該当するか否か、また周辺事態において我が国周辺事態安全確保法案に基づいていかなる対応措置をとるかにつきましては、日米両国政府において密接な情報交換、政策協議を通じ共通の認識に到達する努力が払われるわけでありますが、我が国がそれらの時点の状況を総合的に勘案し、あくまで我が国の国益を確保する観点から主体的に判断するものであります。  なお、ある事態周辺事態であると判断され、法案に基づき特定の対応措置を実施する必要があると認められる場合には、内閣安全保障危機管理室を中心として基本計画の案を策定し、安全保障会議における審議において閣議決定を求める、こういうことになるわけであります。  私が今述べました六つの類型につきましては、これで全部確定したわけじゃなくて、今外務省を中心に私どもが検討している類型であるということをつけ加えさせていただきたいと思います。
  198. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 やはり幾つかの類型が示されてきますと相当わかりやすくなってまいりますので、ぜひそれは速いピッチで作業を進めていただきたいと思います。  それから、日米安保条約の枠内という言葉がいろいろなところで躍っておりますけれども、純粋に法的にこの言葉というのは、日米安保条約の枠内ということと日米安保条約の目的の枠内ということと、目的が入るか入らないかでどのような違いがありますか。
  199. 高村正彦

    高村国務大臣 余り違いはないんだろうと思っています。私は目的という言葉を大体入れて使っていますが、必ずしも目的という言葉を入れないで使っておられる方も政府内部におられますし、大体聞いていて、同じ意味のことを言っているな、日米安保条約の枠を超えてどんどん行ってしまうということではないということを申し上げていることで、大体同じ意味に受け取っていただいて結構でございます。
  200. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 法制局の方にお伺いしたいのですけれども、その枠内という言葉というのは法律的にはよく使われるのでしょうか。
  201. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 純粋に法令用語として先例があるかどうかというお尋ねに限定してお答えいたしたいと思いますが、最近は法令検索が随分普及しておりまして、それにかけた限りでは枠内という言葉を使った条文はなかった、現在のところそういうことでございます。
  202. 高村正彦

    高村国務大臣 先ほどの私の答弁をちょっと補足いたしますと、大体目的という言葉を入れている人と入れていない人がいるわけですが、入れていない人も目的の枠内という意味で安保条約の枠内という言葉を使っているので、目的の枠内と言った方がより正確かなと私は理解をしております。
  203. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 それで、戻りますが、枠内という言葉は今のところ検索されている中では見えないとすれば、どういう言葉がこれに該当する概念として法律用語としてはよく使われているのでしょうか。
  204. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 法令上どういう言葉を使うかというのは、具体的には、まずどういう政策を定め、それを適切に表現するにはどうしたらいいかという具体的な検討の場で考えるべきことですから、抽象的にお答えをするのはどうかとは思いますけれども、一般常識的に申し上げますと、枠内という言葉は、範囲内とか範囲内でというような場合、そういう言葉で処理することが多いんじゃなかろうかなというふうには思います。
  205. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 外務大臣、目的が入っても入らなくてもほぼ同じだろうと。ほぼ同じだろうと思うのですけれども、一般的に見れば、入らなくても入っても同じであれば、入れる必要もないわけでございますね。入れても入れなくても同じであれば、入れる必要はないわけですね。
  206. 高村正彦

    高村国務大臣 入れないで使っている人たちがおられますが、よく聞いて吟味してみますと、目的の範囲内、こういう意味で使っておられるようだと私は申し上げたんです。
  207. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 目的という言葉があることによって違いがあるのかないのかという点は、多分大きいんだろうと思うのです。つまり、日米安保条約の周辺事態というのがあらわしている周辺というのがどういうところに来るかということなんだろうと思うのですが、もう全く違う文言で考えるということもあり得るわけで、枠とか範囲とかという言葉を使わないということだってあり得るわけですから、これにいつまでもこだわるというつもりはないのですが、余りにも言葉が躍っていますので、躍っている中で、さあ、違うのだろうか違わないのだろうか、枠内という言葉は何となくなじまないしということで先ほどの見解を伺いましたけれども、多分、ここでまた改めて議論するというところにもおりませんので、どういう形の網をかけるかということについて、もう少し検討をみんなでするということになるのだろうと思います。  それからその次、続きまして、機雷のことについてお伺いしたいと思います。  八七年の九月に、機雷の除去活動について、公海上に遺棄されたと認められる機雷が、我が国船舶の航行の障害になっている場合、それを除去する行為は自衛隊法上可能とする見解をまとめているわけですけれども、これは間違いありませんでしょうか。
  208. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 我が国に対する武力攻撃一環として機雷が敷設されていると認められる場合は、我が国領海はもとより公海においても、自衛隊法七十六条による防衛出動により機雷の除去は可能であると考えます。  他方、この機雷が武力攻撃一環として敷設されているものでないと認められる場合は、これらの機雷は海上における危険な妨害物になると考えられますので、我が国領海はもとより公海であっても、我が国船舶の航行の安全確保のために、必要な場合には、一種の警察活動として、自衛隊法九十九条により機雷の除去は可能である、こういうふうに考えております。
  209. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 日本は、カナダと一緒に地雷の禁止条約に率先して署名した国であります。日本機雷掃海というのは大変に能力が高くて、ほかの国のできないところを随分国際的に貢献してきたというふうに思います。  機雷の除去という言葉と機雷の掃海という言葉は、これは違うのかどうか後でちょっと調べてみます、今気がつきましたが。マインスイーピングです。普通、掃海ですよね。でも、除去という言葉がここでは使われておりますから。それは後でまた調べて、質問をするかどうか決めますが、問題は、私は、今の紛争のあり方を見ると、これから地域紛争が起こるとすれば、諸島地域のお互いの小さな小さな紛争の中には機雷を敷設していくという可能性が相当あると思うのですね、安価な武器といたしまして。  ですから、日本は、地雷の禁止をした国ですから、中谷先生もいらっしゃいますけれども、ぜひ、地雷と同時に機雷も海の上からなくす。つまり、武器としては、これは無差別にたまたまそこへ行き当たった人を殺傷するという、そういった種類でございまして、ねらった人だけを、ターゲットに向かってという、そういうものとは全く違う性質の武器であるということも含めて、その辺は、外務大臣、ぜひそういう方向で御検討いただくというお気持ちはおありになりますでしょうか。
  210. 高村正彦

    高村国務大臣 今委員が御指摘になったように、ねらった相手だけを殺傷するものでない、そういう面では同じ一面がある、こういうふうに思います。  今、安全保障手段として、機雷と地雷の役割がどれだけ違うかといったことを総体的に考えていかないと、相手を殺すからいけないということだと武器は全部やめろという話まで行き着くわけですので、その手段と目的、目的のためにどれだけ役に立つか、有効性があるかということを総体的に考えないで、ある一面が同じだからすぐこうだということはなかなか言えない、こう思いますし、防衛政策はむしろ防衛庁長官の方がおっしゃることだろう、こういうふうに思います。
  211. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 防衛庁長官はそうですとおっしゃらないだろうと思って外務大臣にお聞きしましたが、私は、武器はなくなればなくなるほどいいと思っていますから、どんな武器にしろ。そういう意味で、今非常にハイテクになってきた、こういう時代ですので、除去できる、除去というか本当に廃棄できるものから、やはり日本はその辺もやっていったらどうか、そういう姿勢のことを申し上げたわけでございます。  さて、北朝鮮の食糧問題に移らせていただきたいと思いますけれども、このガイドライン論戦のときにも随分いろいろな形で北朝鮮という名前が出てきております。この法案を審議しています間にいろいろなことがどんどん動いてまいりまして、それで現在の状況では、ソウルからの報道、韓国紙によりますと、これは一月の六日ですけれども、北朝鮮との南北当事者対話を再開するために、韓国政府が北朝鮮に二十万トン規模の肥料、農業基盤整備のための機材支援や政府間の非公式会談を一月中に提案するということを報じたということがあります。  私は、昨年十二月にUNDPが北朝鮮に対する会議を行ったときに、日本からはだれが出席しているかということをお聞きしましたら、その開催地の外務省の、政府の代表が出席するということをおっしゃった。そのときに、どうして日本がイニシアチブをとって農業の専門家などを出さないのかということを申し上げたことがございますけれども、やはり、起こらないでほしい方向を考えますと、食糧をただ援助するだけではなくて、農業基盤をどういうふうに改革していくかというのが非常に大事なところになってきているわけでございます。  昨年の十二月には、欧州の代表が、申し上げるまでもなく御存じと思いますけれども、北朝鮮を訪問いたしました。そして、食糧不足のその真の原因は農業基盤づくりであるということを言っていますし、もう一つ、非常に参考になる見方というのは、自分たちは、日本でもなくアメリカでもなく韓国でもないので、北朝鮮と利害関係がないので、逆に果たせる役割があるのではないか、そういう発想で、非常に活発に欧州が今北朝鮮とのコンタクトをとり始めているという、そういう現実もございます。  クリントン政権も食糧支援のプログラムを発表いたしましたけれども、やはりこれは、北朝鮮報道でも、三月二十五日にピョンヤン発で、アメリカの行政当局は、十万トンの食糧の提供と、ジャガイモ生産者の作業のために追加で十万トンの食糧を北朝鮮提供する決定を三月二十二日に公にした、これは昨年十二月の世界食糧プログラムによる請願にこたえたものである、さらに、種芋、肥料、農芸化学などを提供している、そして、実際にアメリカ当局によって、その食糧の提供とは別に農業の改善が行われているというようなことが出てきています。  そういう状況を見ますと、日本は今ストップしているわけですが、国際的なプレッシャーという中で、日本も早く食糧支援をしろということが来ていると思うのですけれども、どういう条件で食糧支援を再開するのかしないのか、その辺の日本の方針はどういうふうになっていくのでしょうか。
  212. 高村正彦

    高村国務大臣 日本は、北朝鮮が昨年八月にミサイルを発射して、それも無警告で、我が国日本列島の上を飛び越えていった、こういう事態を踏まえまして、食糧支援は当面見合わせる、こういう措置をとっているわけであります。  そういう中にあって、日本政府とすれば、対話と抑止、一方で北朝鮮のいろいろな、核とかあるいはミサイルとか、そういった問題のことにつきましては抑止するような、そして一方では対話をやっていこう、こういう政策をとっているわけでございます。北朝鮮が建設的な対応をとるのであれば私たちもそれにこたえていこう、非建設的な対応をとるのであれば厳しい対応をしていこう、こういうことでございますが、対話と抑止、建設的な対応をとるのであれば日本政府としてもそれに対していろいろこたえていこう、こういう基本姿勢については、余り条件の変化がないのにいろいろふらふらさせない方がいいと思っておりますので、私たちは、そういう状況のもとで、北朝鮮がぜひ建設的な対応を示してもらいたい、こういうことをいろいろな形で呼びかけているところでございます。
  213. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 今大臣が、北朝鮮に対して対話と抑止ということで、これもよく言われるのですが、私個人の見解でいきますと、対話も不足していますし、抑止も不足しているのじゃないかという気がいたします。ですから、やはりこのガイドラインの法案だけではなくて、さまざまな意味での抑止もそれから対話も、北朝鮮も含めて、もう少しきちんとした背骨の見える形ですることが必要だと思うのです。  と申しますのは、時間が余りありませんので全部御紹介できませんけれども、北朝鮮の担当者は、日本といろいろ努力して話して決めても、その後アメリカに何か言われると変わってしまうので、それだけの努力をしてもむだであるというようなことを述べていたり、あるいはアメリカ側も、日本を抑えるためにこのガイドラインがあるんだから、だからアジアのためになっているんだよ、日本を、瓶のふたをもっと強めているんだという逆の言い方をしたりしているというようなことが報道されています。報道というよりも、そういう情報が入ってきているので、私は日本人でございますから、やはりそういうふうな物の見方をされているということ自体、非常に考えなければいけないことだというふうに思っておりますので、対話、抑止、両方の面でもう少しきちっとしたこの地域の安全保障の政策を考えていって、つまり、具体的な、どういう場合にはどうするのかというようなことの提案をこちらからどんどんしていくということも含めて考えていただきたいと思います。
  214. 高村正彦

    高村国務大臣 対話も抑止も足らないではないかと。抑止の面でも足らない面があるので、ぜひこのガイドライン関連法案について、成立について御協力をいただきたい、こう思うわけでございます。対話については、私たちとして私たちなりの努力、これは今きっちりした措置をとっているところでございますから、そしてまた、その中に国交正常化交渉は当面見合わせるという措置もある中で、ではどういう形で対話を呼びかけていこうかというのは、これはいろいろ水面下でやるということもありますし、私たちとしては私たちとして努力をしているつもりでございます。  だけれども、北朝鮮がどう見るかということは、それは国際社会にみんなそう見られているよというのであれば、私たちも大変緊張して、これは何とか変えなければいけないなと思いますが、やはり、北朝鮮がこう見たからこう変えるというのは、これは好ましいかどうか、我々としてもいろいろ考えていかなければいけないことだと思っています。
  215. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 北朝鮮がこう考えているだろうということは、国際的に日本がどう見られているか、日本に対する国際的な評価の中でも、今のような形で、もうちょっと、日本の政策がないから日本の外交についての回顧録には書けなかったというようなアメリカの専門家の話もあるように、それは一つの鏡であるというふうに私は受けとめるべきだというふうに思います。  それでは、コソボの問題に移っていきたいと思います。  冒頭に申し上げましたように、公聴会ですとかあるいは地方の方々お話している段階で、なぜか、コソボのようなことが起こって、コソボの今の時点でも、もしこのガイドライン法案が通ればすぐ日本米軍の支援活動を開始するのではないかというふうに言われている面がありますが、そういう認定の仕方ではございませんですねということをまず確認させていただきたいと思います。
  216. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態とは、我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態であり、ある事態周辺事態に該当するか否かは、あくまでその事態の規模、態様等を総合的に勘案して判断します。周辺事態が生起した場合には、周辺事態安全確保法に基づき、我が国の平和及び安全を確保するために我が国としていかなる対応を行うかを決定することになりますが、この法案がいまだ成立を見ていない現時点において、我が国対応措置とは無関係に、ある事態周辺事態に該当するか否かを抽象的に逐一お答えすることは適当ではないと考えますというのが一般論でございます。一般論でありますが、コソボの問題が周辺事態に当たるなどということは、私の常識からいっておよそ想定できない、こういうことでございます。
  217. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 私もそのように解釈しておりましたが、そういうふうにとらえている向きが結構あるということは、また説明不足のところに戻ってくるかもしれませんけれども、もう少し、やはりその辺のところも含めてきょう確認をさせていただくことによって、どういう形かで随分おわかりいただけるところもあるかと思って、あえて質問させていただきました。  ところで、外務大臣は、現在のコソボの情勢に関しましてどのような認識を持っていらっしゃいますか。という意味は、緒方難民高等弁務官の要請もございましたし、日本はかなり支援もしていると思いますけれども、外務大臣のとられた理解ができるというスタンスは、積極的にこれを支援するとかしないとかということに余り触れずにおっしゃっていらしたと思うのですけれども、今の御認識はどういうことになっていますか、もう相当時間がたちましたけれども。
  218. 高村正彦

    高村国務大臣 ちょっと質問の趣旨のわからないところがあったんですが、積極的に支援をするとかしないとかという意味が、NATOの空爆に対して支援をするかしないのかという意味なのか、難民に対して支援をする、しないという意味なのか、ちょっと御質問の趣旨がわからなかったんですが、おっしゃっていただければと思います。
  219. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 日本政府見解としては、今のNATOの空爆に対してはどういう態度をおとりですかということをまず最初にお伺いします。
  220. 高村正彦

    高村国務大臣 当初私が談話を発表したその内容のとおりでありまして、今その言葉を正確に覚えているわけではございませんけれども、昨年三月以来、国際社会が大変な平和解決のための努力をしてきた、それにもかかわらず、ユーゴ政府が国連決議にも反して、そして、その談話の中にはそういう言葉は入れていませんでしたが、民族浄化のようなことを行っている、まさに人道上の観点から、これ以上悲惨なことが起こらないようにやむを得ずとった措置だと理解している、こういうことが空爆が行われた直後に私が出した談話でございます。  そして、空爆がかなりの期間続いているわけでございますが、そういう中で、さらに難民もふえる、ユーゴ政府の民族浄化と言われるようなこともさらに激しくなっている。こういうような状況の中で、やはり根本はユーゴ政府が、国際社会が今示している和平案、これはアナン国連事務総長の和平調停などもあるわけでありますが、こういったことをユーゴ政府は拒否しておりますが、こういうことはぜひ受け入れてもらうことによって、難民も出ない、民族浄化というようなこともとまる、そして空爆もとまる、そういうことが一刻も早く来ればいいな、こういうふうに考えております。
  221. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 今の動きといたしましては、難民救済ということに主に力を置くということを斉藤駐米大使もおっしゃっているようですけれども、そのほかに、今、調査も終わって帰ってきたと思いますので、日本としてはどういうかかわり合いをしていくというふうにお決めになっていらっしゃいますか、何か特別のプロジェクトなり。
  222. 高村正彦

    高村国務大臣 一つは、今申し上げたように、ユーゴ政府が、国際社会、特にアナン国連事務総長が示しておられるような調停案を早目に、早急に受諾して、そのことによって平和的解決が図られるように、それは根本原因を解決するということでございますが、それと同時に、日本政府とすれば、コソボ難民の大量流出という事態に迅速に対応することが国際社会の責務であると強く認識しております。  このような観点から、コソボの難民に対する支援策として、既に食糧、医薬品、生活必需品等を提供するため、国連難民高等弁務官事務所等を通じた千五百万ドルの支援を決定し、これは昨年実施済みのものを含めれば総額二千五百万ドルになるわけでありますが、また、テント一千張りを国連難民高等弁務官事務所に譲渡したわけでございます。  さらに、先般、マケドニア及びアルバニアに外務省調査団を派遣したところであり、現在、この調査団の報告を踏まえ、さらなる支援策を検討中でございます。  今、難民は、危機的な状況は脱したようでありますが、そうであってもいまだに大変悲惨な生活をしておりますので、まず第一に、難民に直接、直接といってもUNHCRを通しての支援であります。そういうことをやるのと同時に、難民の受け入れ国、アルバニア、マケドニア、いずれも裕福な国ではありません、大変貧しい国でありますから、その国の財政も大変なことになっているわけで、そういったところについても支援をするということを考えていかなければいけない、こういうふうに思っておりますし、将来的には、これが平和的解決を見た後は、コソボの復興ということについても日本政府としてもお手伝いをできるものなら考えていきたい、こういうふうに考えております。
  223. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 四月一日に、緒方難民高等弁務官が、日本は備蓄物資の援助を検討中だが、どれだけ早く現場に物資を持ってこられるかにかかっているというコメントを出しているわけですが、調査団が帰ってきて、今も検討中というのは、一般的な形でいけばそんなにゆっくりではないのかもしれませんけれども、こういう国際状況のときには、できる援助、食糧とかあるいは医療活動というのは多ければ多いほど、早ければ早いほどいいわけですから、そういう意味で、ぜひ積極的に、もっときちんと、もっときちんとというのは、もっといろいろな意味で考えていただきたいと思います。  それで、私は、これはちょっとPKOの動きというのがもう出てきておりますから、PKOというのをNATO中心じゃない形で起こそうかというのも出てきて、かかわってくるのかもしれませんが、このニュースを聞いて間もなくのときに、日本からは民間の医療チームが、早速難民の支援に当たるということで、成田を飛び立っていきました。  実は、この間、防衛医科大学の卒業式に出席して、防衛庁長官もおいでになったのですけれども、その後の懇親会でのスピーチの中で、私は、やはり世界の今の状況というのは、さまざまな紛争がまだ世界じゅうにあって、決して平和な状態になっているとは言えないので、ぜひ若い人たちが言葉の技術を身につけて、そして医学を、日本の医術を中心にして、日本の人だけを助けるのではなくて、世界じゅうの人のために活動してほしいということを申し上げたのです。  実は、法的には、軍医という立場で自衛官であるということは、自由に、例えば今のときにぱっとコソボに、お医者さん五人、看護婦さん十人、そういったチームを二十ぐらいつくって、それぞれアルバニアとかマケドニアとかというところに派遣して、日本の赤十字のテントを張って、そしてそこで医療活動をするということができたらどんなにいいかなということを考えましたときに、それも含めて、そういう医療活動の貢献のあり方というものを、今までのPKOというものの枠になるのか、そのほかの枠になるのかわかりませんが、派兵というような発想ではなくて、医療活動をもっとした方がいいのではないかというふうに私は非常に強く思っているのですが、そういう方向での検討というようなことは、これからお考えいただけますでしょうか。
  224. 高村正彦

    高村国務大臣 早ければ早いほどいい、多ければ多いほどいいということをおっしゃいまして、それは一般論としてそのとおりだと思いますが、今何にもしないで検討しているわけではなくて、もう第一弾は出して、その上でさらなる追加支援を検討しているということでございますので、御理解を賜りたい。国連機関のアピールがある前に第一弾の支援は発表したということで、決して遅くなかったと自負しておりますので、御理解を賜りたい、こういうふうに思います。  それから、医師を派遣するということでありますが、そういうことに私たちも非常に関心を持って、調査団にそのことについても調査をさせたわけでありますが、現時点でお医者さんは十分いる、もう既に入っておりまして十分足りている、それに対して医薬品が十分でない、こういうような報告を受けておりますので、日本から民間の方たち、お医者さんにも行っていただいているということは大変ありがたいことだ、こう思っておりますが、今向こうのニーズに合った支援というのは何なのかということを考えながら、一番適切なことをやってまいりたい、こういうふうに思っております。
  225. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 これは参考人のときに岡本行夫さんも、日本があれだけ湾岸でお金を出したのに、なぜ見える顔という形で評価されなかったかということの中で、アジアの各国も含めてそういう医者をうんと出すとか、そういった人的な目に見える支援、細やかな、きめ細かい支援というものができない現実の状況というものがあったということをおっしゃっておりましたから、私も、たまたまそういう若い人たちの顔を見ながら、きちんと国際的な活動のできる医者をうんと育てるということは非常に大事だと思いますし、これは国立の大学でございますから十分できる話であろうと思いますので、法的な整備も含めて、今お伺いしたところでございます。  ところで、コソボに関しては、CIAが事前にクリントン大統領に対し、ユーゴスラビアに対するNATOの空爆より数週間前に、ジョージ・テネットCIA長官は、セルビア人が主導するユーゴスラビア軍はコソボ自治州で民族浄化のための戦闘を激化させることで応じるであろうというふうに予測していた、実際にその予測が当たったということも言われております。  そして、先日アメリカでキッシンジャー博士と四十五分間意見交換をさせていただいたときにも、またニューズウイークにも書いていらっしゃいますように、守るべき平和を見つけられないであろうNATOの平和維持軍というのに味方をして、既にコソボに駐留していた監視員を強化しないで引き上げてしまったということは重大な誤りであった、空爆による戦争を終わらせるための条件は、直ちに休戦すること、ランブイエでの交渉開始後に派兵されたセルビア軍の撤退、コソボの自治についての交渉を即時に開始すること、それから、このような停戦条件がミロシェビッチによって拒絶されたら、必要ならばNATOの地上軍を導入することも含め、戦争を継続させ激化させて終わらせるという以外にはないであろう、しかし、完全に外国人の担当者のみで創案された合意に基づいた、交渉したその提案を、空爆の脅威をもって押しつけようとしたことはコソボの危機を悪化させた、NATO軍の短期間の占領の後各グループは和解するだろうとクリントン大統領は断言したが、その措置には現実的な根拠はなかったのではないかというように、かなり厳しい批判をしております。  そして、バルカン半島で始まった第一次世界大戦は、民族紛争の結果として起こったのではなく、全く反対の理由で起こったものである、すなわち地域紛争に外部の圧力が介入したからであるというような意見を述べていらっしゃいまして、歴史的な背景をほとんど考慮していない、長期的な展望がないという意味で、今回のNATOの空爆に対しては基本的には非常に厳しく批判していらっしゃる。  それから、ちょうど四月の七日、八日、大統領、首相を経験なさった女性の方たちで、カウンシル・オブ・ウイメン・ワールド・リーダーズというのが、二回目のサミットがございました。そのときにもやはり、日本は、平和主義でアメリカの友達だったら、空爆で解決することができないことを率直にアドバイスするべきではないかというような意見もありましたし、また、米国の力の外交、世界の警察意識には問題がある、それから、英国は米国に異議を唱えず、だれも米国にアドバイスできない現在の世界情勢は問題である、それから、余りに安易に軍事力が使われ過ぎているというような意見が実際に闘わせられました。  そのほかに、アメリカのテレビですとかあるいはマスコミを通じてのディベート、ディスカッションあるいはフォーラムなどで、さまざまな人たちが、例えば、同じように虐殺をしたルワンダにはアメリカは全然手を入れなかったのに、なぜコソボに手を入れたのか、これは何かアメリカの国益にかなうことだったのかとか、さまざまな批判が出ておりまして、CNNとかそれからニューズウイークなどの世論調査ではクリントン政権は支持を受けていますけれども、果たして力の外交だけが、今までのやり方でいいのだろうか、そういう問題提起に至ってきていると思います。  日本にいらっしゃる多摩大の学長のグレゴリー・クラークさんがやはり、ユーゴスラビアでセルビア人がナチ支持のクロアチア人とイスラム教徒の手で第二次世界大戦時に虐殺されたことを忘れてしまっているようであるというようなこともおっしゃいまして、その上で、実は明石さんは一九九〇年代のカンボジアにおける紛争解決の調停を手伝った国連代表であった。また、これはジャパン・タイムズに載っていた記事ですが、彼は当時ボスニアの紛争を解決するように派遣されたが、セルビア人の側の意見を聞こうとし、また妥協的な解決を求めようとする意気地のなさということをアメリカは軽べつし、それで非常に失礼なやり方でボスニアから追い出した。なぜ彼に今までの経験したボスニアの出来事を日本で出版しないのかと尋ねたら、こういう答えがあったそうです。ユーゴスラビアのことを話すとき、だれも自分が正しく報告したことを正しい形で報道してくれないと明石さんがおっしゃったという記事がジャパン・タイムズに載っていました。  私はもちろんその真偽のほどはわかりませんけれども、実はアメリカでも、明石さんはどうしているんだ、明石さんは今ユーゴに飛ばないのかということを言われて、今ちょうど選挙の最中ですから御無理でございますということだったわけですけれども、しかし、考え方によっては、日本はもっと上手に人を活用するということがあってもいいのではないか、人を生かすということがあってもいいのではないか。そういう意味では、セルビア人の意見もアルバニア人の意見も聞ける明石さんというのは、非常に非軍事的な形で交渉をする一人のキーパーソンになり得ると思いますけれども、そういう形で明石さんを派遣するというようなお考えはありますか。
  226. 高村正彦

    高村国務大臣 私たちも、明石さんというのは卓越した能力を持った方だと思って、東京都民に受け入れられなかったのは大変残念である、こういうふうに思っているわけでありますが、明石さんという人材が現時点存在することは事実でございますので、活用できる方は、能力を持った方は我が国としてもできるだけ活用してまいりたいと思いますが、現時点で、直ちに明石さんにこの関連でユーゴスラビアに飛んでいただこうという構想を持っているわけではございません。
  227. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 人材というのは宝物ですので、やはり日本なら日本にいる人材を適材適所で生かしていくということを考えていただけたらというふうに思います。  時間もなくなってまいりましたので、ここで私は、先日小川さんが、思想と呼ばなければならない部分というのが残念ながら欠落しているということを日本の政治についておっしゃっておりましたし、また、ブルッキングスのマイク・モチヅキが、日本政府がアジアのあすについての青写真、そこへ至る道筋を示していないというようなことを言っておりましたけれども、先日の三月十八日の特別委員会における私の質問に対して、小渕総理は、アジア太平洋総合安全保障対話の取り組みと目的、そういう意味では私の申し上げたのは一致する点もございます、研究させていただきたいというふうにお答えいただきました。  また、それと同時に、予防外交につきましても、予防外交のあり方というものに対しては小渕総理も随分前からそれぞれの所信表明の中にもおっしゃっていらっしゃいましたけれども、そういった観点からいたしましても、また当日のお答えの中でも、やはりきちんと予防外交というものも検討に値すると思うということをおっしゃっていらっしゃいました。  きのう、たまたま玉沢先生がテレビに出ていらっしゃって、このガイドラインというのは、軍事的なものだけじゃなくて非軍事的なものも全部含んで外交なんだということを強調していらっしゃったと思いますが、私はここで、先回、官房長官にお伺いしようと思ったらおいでにならなくて、かわりに総理にお伺いしたという点もございますので、きょうは、逆さになって大変恐縮でございますけれども、その予防外交であるとか総合的安全保障対話であるとか、つまり、対話と抑止の対話の部分というのを何かの形で、例えば談話とか附帯決議とかということで、この法案と一緒にワンセットのものであるということを、政府としてお示しいただくことを御検討いただけませんでしょうか。
  228. 野中広務

    ○野中国務大臣 我が国は、従来より日米安全保障体制を堅持いたしまして適切な防衛力の整備に努めてまいりますとともに、我が国を取り巻く国際的な環境の安定の確保のための外交努力をたゆまずやってまいったと思うわけでございます。  我が国の日米防衛協力のための指針におきましては、日米間両国政府の、このたびの周辺事態が発生することのないような、いわゆる外交上のものを含むあらゆる努力を払う旨記述されておるところでございまして、これは、周辺事態のような事態が発生することのないよう、委員がおっしゃいましたように予防外交を行うことの必要性を明らかにしたものであろうと思うのでございます。  これはまた、我が国を取り巻く国際環境の安定の確保のための外交努力の一環であると考えておるところでございまして、このような外交努力の重要性は冷戦後ますます高まってきておりまして、また、その領域もさまざまな分野で広がってきておると認識をしておるところでございます。  各首脳、閣僚レベルの対話、あるいは信頼醸成のための二国間、多国間の安保対話、防衛交流等々さまざまな努力をすることによりまして、紛争の根源となり得る貧困とか、その他の問題を解決するための開発戦略、さらには各国間の人的交流の促進等も、このような外交努力を構成することが重要な要素であると考えておるわけでございます。  政府といたしましても、今申し上げたような認識のもとに、先生おっしゃいましたような予防外交の推進のために種々の取り組みを行っておりまして、例えば、昨年一月、紛争予防戦略に関する東京国際会議を開催し、国連が地域的機関等と協力しつつ行う紛争予防の能力の強化等につき討議を行ったところでございます。  開発という観点からは、また昨年十月に、第二回アフリカ開発会議を国連等とともに主催をいたしておるわけでございまして、それぞれ、予防外交に関する具体的な議論をさまざまに開始されておるところでございまして、今後とも、我が国として積極的にイニシアチブを発揮していくことといたしております。  政府といたしましては、今委員も御指摘ございましたように、今後とも、予防外交の強化を我が国外交の重要な柱と位置づけまして、一体性を持って推進をしてまいり、不断の努力を傾けてまいりたいと考えております。
  229. 山中あき子

    ○山中(あ)委員 大変心強く伺いましたが、法案そのものには明記されておりませんので、ぜひこれは、談話か何かの形で、この法案と一緒に発表していただきたいと思いますので、それは委員長の方に検討をお願いしたいと思います。  国民に知ってもらう努力と、それから日本のアイデンティティーを築くこと、それから国際社会の一員としての責任をどう果たすかということで、総合的な視座、長期的な展望、そして背景の哲学をきちっと持った日本でありたいというふうに思っています。  質問を終わります。
  230. 山崎拓

    山崎委員長 これにて山中あき子君の質疑は終了いたしました。  次に、東中光雄君。
  231. 東中光雄

    東中委員 最初に、NATOのユーゴに対する空爆問題で、外務大臣にお伺いしたい。  NATO軍のユーゴスラビア爆撃は日増しに激しさを増しまして、十二日にはギリシャに向かう国際列車爆撃、十四日にはコソボでの難民の車列爆撃などで多数の非戦闘員が惨殺されるという惨事が続発しています。これに対して、クリントン大統領は、大規模な戦争には犠牲はつきものというふうな、開き直った発言さえされております。  私たち日本共産党は、空爆開始の時点で、紛争当事者の一方が和平案に合意しないからといって大規模な爆撃を強行するやり方は全く道理がない、このことを指摘して、NATOの軍事力行使は、紛争打開への道のりをさらに複雑化するばかりか、戦争を拡大し、罪のない一般市民を初めとする多数の犠牲者を生む本格的な戦争に発展する危険がある、こういうふうに厳しく警告、指摘をしてきました。  今日の空爆拡大のもとで、一般人の被害がどんどん出てきているという状態で、私は、日本政府は、NATOに対して空爆の即時中止を求めるべきだ、そしてすべての当事者が武力行使は直ちにやめ、和平交渉を再開するよう、そういう提起をして、積極的に活動すべきだと思うんですが、外務大臣、いかがでしょうか。
  232. 高村正彦

    高村国務大臣 現在、国際社会におきましては、コソボ問題の政治解決のために種々の努力が行われているわけであります。その主眼とするところは、この問題の政治解決のためには、今委員もおっしゃいましたが、すべての戦闘行為の停止、軍及び治安部隊のコソボからの撤退、国際平和部隊の駐留、難民帰還等が不可欠との基本的立場に立って、これらのユーゴ政府による履行を空爆停止のための条件としたものであります。主にアナン国連事務総長の提案も、このような考えに立ったものでございます。  しかしながら、ユーゴ政府は、このような国際社会によるコソボ問題解決のための外交努力をかたくなに拒否し続けており、国際社会の要求を受け入れる姿勢を示しておりません。  我が国としても、コソボ問題の政治解決の早期実現を望んでおりますが、このためには、国際社会が一致して外交努力を行っていく必要があると考えております。我が国といたしましても、G8等の枠組みを通じ、このような努力に寄与していく考えでございます。     〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕
  233. 東中光雄

    東中委員 私は、NATOの空爆の即時停止ということを提起して、すべての武力行使はやめるということを提起すべきだと言っているわけです。  アメリカなどは、空爆はミロシェビッチ政権のコソボでのアルバニア系住民抑圧をやめさせるためにやむを得ない措置だ、こういう手段だというふうにしています。ところが、もともとコソボ問題というのは、アルバニア系住民の自治権を奪い、抑圧してきたユーゴのミロシェビッチ政権、これはよくないと思うのです、その政権と、それから分離独立を主張する一部アルバニア系武装組織のコソボ解放軍との間の内戦状態。  問題は、この内戦状態にNATO軍が軍事介入をした、そして一方の当事者になって戦争を国際化している、国連憲章が定めた内政不干渉という原則を踏みにじっている。この空爆自身は、国連憲章からいっても、国際法からいっても、安保理事会の決議がないという点からいっても、全く根拠のない、やめるべきことだということを私たちは考えておるわけです。この点をはっきり指摘して、時間がありませんので、本来の質問に入りたいと思います。  最初に、周辺事態我が国から戦闘作戦行動に発進をする米軍に対する支援問題であります。  ここで、周辺事態法案によりますと、周辺事態に際して、米軍日本から戦闘作戦行動に発進する、出撃する、自衛隊は、その米軍に対する支援活動を行うということが原則で、しかし、一定の場合はそれは含まない、こういうふうになっていると思うんですが、その点、構造として、そうではございませんか。
  234. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員質問、最後の方はちょっと不分明でしたが、周辺事態安全確保法の別表第一の備考の二の問題だと思いますが、そこに規定する、「戦闘作戦行動のために発進準備中」とありますのは、部隊が具体的な戦闘作戦行動の実施について命令を受けて、当該作戦行動の実施のため、エンジンの始動、発進前の諸点検等、具体的な準備に着手している段階を指す、こういうふうに考えております。
  235. 東中光雄

    東中委員 今、法案の別表第一の備考二についてのお話がありました。  そこで言われておるのは、「戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備を含まない」、「発進準備中の航空機」というのは、指令を受けて、そして出撃していく、その態勢に入っている状態だということを言われましたね。それに対する給油と、補給のうちの給油ですね、それから修理、整備のうちの整備は含まない、それ以外のものはそれ以外のあらゆる時期について全部やれるというのが、これは備考はやれない分だけをやっているのですね。  だから、戦闘作戦行動に出ていくという部隊に対して自衛隊は、あの別表に掲げている七種類ですか、八種類ですかは全部できる、しかし、そのうちで発進準備中になっているものの給油と整備は含まない、こういうふうになっているのじゃないかということを私は聞いているのです。どうですか。
  236. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 先生のおっしゃいます、戦闘作戦行動に出るとおっしゃいましたでしょうか、それの意味していることが必ずしもはっきりしないわけですが、私どもとしては、あくまでも、こういうふうに米軍に対する、この法律で定められました後方地域支援等が行えるわけでございますけれども、ここに書きましたような「戦闘作戦行動のために発進準備中」、こういう航空機に対しては、給油、整備、この整備の中には修理だけではなくていろいろな、例えば武器の搭載とかそういうものも含むと思いますけれども、そういうものも行わないということが書いてあるわけでございます。
  237. 東中光雄

    東中委員 ちょっと今言われたことで、整備の中には武器の搭載等も含む、こう言われましたが、武器の搭載、例えばミサイルとか爆弾を積むという行為は整備行為だという解釈ですか。
  238. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 航空機に対する整備という概念の中に入っていると思います。
  239. 東中光雄

    東中委員 それで、それを除くのは発進準備中の航空機だ。発進準備中というのは発進待機中ではないわけで、だから、帰ってきたばかりの、戦闘爆撃をやってそして帰ってきた、帰投してきた航空部隊は発進準備中ではないわけですね。
  240. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 実際の形態がどういうふうになるかわかりませんけれども、仮に、行動をとって戻ってきて、戻ってきた段階で再び戦闘作戦行動のために発進準備中、こういうふうに考えられる状況でございますれば、ここにございますように、給油及び整備というのは対象にはならないということでございます。
  241. 東中光雄

    東中委員 帰ってきたばかりで発進の指令がない場合、あなたの言う指令だ、それのない段階ですよ。指令というのはいつ出るのですか。例えば、待機している、スクランブルをやる待機の飛行機がありますね。それで、あれはミサイルも積んでいますよ。ちゃんと待っているでしょう。それで、発進ということになったら急いでだあっと出ていきますわな。その発進の命令が出てから発進準備になるのでしょう。そういう意味でしょう。
  242. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 いずれにしましても、航空機が行動をとるためには、具体的にどういう任務か、ミッションかということが与えられませんと、それに対する油をどうするとか、それから兵装をどうするとか、そういうことが決まってこないわけでございます。  したがいまして、まさに戦闘作戦行動のために発進をするというためには、そういう具体的なミッションが与えられて、それで、それに応ずるいろいろな、発進前の諸点検であるとか整備であるとかあるいは給油であるとか、そういうふうなことを行う段階であるということでございます。
  243. 東中光雄

    東中委員 それでは、どういう事態で整備をしたり——補給、輸送、修理、整備、それから医療、通信等、七種類の後方支援をやるわけですね。それは一般的にやるわけです。  それで、それは、その部隊が例えばF16の部隊、二十五機の部隊だということになったら、周辺事態でそれは爆撃に行きますよ。直接戦闘作戦行動を起こすわけでしょう。しかし、それの、さあ行くという場合は準備中段階ですよ。そのほかの、待機中とか、帰ってきて次にいつ行くかわからぬという段階は、帰ってきたら当然整備しますよ。私も航空隊におったからよく知っている。帰ってきたら必ず整備しますよ。点検し整備する、そして補給し、やりますよ。そういうことはやるのでしょうと言っているのですよ。  そういうことはやることになっていると。ただ、発進準備中になったら、それは直接的にすぐ発進するということになってからやるのは、パイロットのクルーの関係で要請がないからということを言って、あなたの答弁でそう言っているのだから、それ以外のときは全部やるのでしょうと。やるのが前提で、発進準備になった場合には、米軍の方から要請がないからやらない。それは、パイロットのクルーがあって、要請がないのでやらないのだ、あなた、そういう答弁をしているじゃないですか。そうでしょうと言っているのです。
  244. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 これ以外の場合で、航空機の修理であるとかそういう所要が生じますれば、それはやれるということだと思います。
  245. 東中光雄

    東中委員 給油以外の補給、それから輸送、積載する爆弾、弾薬等を運んでくる。そして、出発する直前になったら積むのはやめる。しかし、そういう後方支援活動はやる。それから、修理も整備も必要なものはやるということじゃないですか。何をそんなに、決めておったことを、ようやるのですか。除く分以外は全部やるのでしょうと言っているのですよ。どうです。そうだと言えばいいじゃないですか。
  246. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 申し上げていますように、要するに、ここに書いてあることは、そういうことはやらないわけでございますけれども、この法案で定められているように、後方地域支援としてのものはやれる体制になっているわけでございます。  ただ、具体的にどういうものをやるかとかなんとかというのは、これはその時点で日本政府としてもちろん判断することでございますけれども、法律の枠組みとしては、そういった後方地域支援はやれる、こういうふうな枠組みになっているわけでございます。
  247. 東中光雄

    東中委員 だから、全部やるということじゃないですか。発進準備中のものについてはやらない、しかもそれは給油と整備だけに限っておる。その整備の中には武器搭載も含まれるということを、今そういう答弁があったということであります。  そこで、私はちょっと聞きたいのですが、防衛大学校の松浦一夫という助教授の周辺事態の定義という論文があります。それを見ますと、周辺事態措置法案の起草の過程で、一時、武力行使との一体化を避けるため、同法の中に周辺事態における戦闘行動に発進する米軍機に対する支援は除外するという明文規定を入れるべきだという主張がなされたが、結局これは明文規定にはならなかった、こう書いてあるのです。  周辺事態における戦闘行動、というのは結局戦闘作戦行動ですね、これに発進する米軍機に対する支援は除外する。戦闘作戦行動日本から出ていく部隊に対する支援はもう除外する。それはそれなりでいいわけですね。こういうふうに提案されたけれども、それは消えちまって、明文化しなくて、そしてこの備考になったというんですよ。うんと削ったわけだ。発進準備中の、しかも補給をしないというんじゃなくて、ごく限られた部分にした。しかも、その理由はなぜかというたら、クルーとしては決まっておるので、米軍側からニーズがなかったからしたんだという答弁がもう既にありました。そうすると、ニーズがあったらやるんですな、なかったからやらぬと言うんだから。  そうすると、最初に提案されておったのは、戦闘作戦行動に参加する部隊の補給というのは、それは兵たん作戦なんだから、それを日本が負担して、分担してやったのでは戦争そのものになるということで、それは除外すべきだということがあったんだけれども明文から外した、こういう、これは防衛大学校の先生の論文です。  防衛庁長官、これは、日本を基地にして、周辺事態だということで米軍が爆撃に行く。今のNATOがイタリアを基地にしてどんどん爆撃に行っていますがな。そのときに、基地にして爆撃に行く、そういう共同事態で、これは事前協議の問題がありますけれども、法案では、それはあることを前提にしてあるんだから。そういうのに対して、今度は事前協議も触れないでそういう場合に支援をするということが原則的に決まっているんです。ただし、これとこれだけはこの段階では除くという構成になっているんです。  これは、原則が戦闘作戦行動、戦場とか何とかと言うけれども、日本から爆撃に出ていくんでしょう。それはもう相手方から言えば、もとをたたくのは当たり前ですね。そういう格好になる、そういう戦争行為の遂行のための支援を日本がこの法律で負担することが前提になっている。提案がされたけれども、それは明文にならなかったということなんですから、これは重大な問題なんです。  こういう経過があったかどうか。この法制定で、松浦助教授が言うているようなことがあったかどうか、そういう経過をひとつ長官、説明してください。
  248. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 松浦さんという人がどういう経緯でそういう話を書かれたかわかりませんが、詳しい話は私にはわかっておりませんので、後で防衛局長から答弁させますが、ただ一つ、別表第一に掲げる支援というものは、後方地域支援として行う自衛隊に属する物品提供及び自衛隊による役務提供を書いたものでありますけれども、これは義務的にこれを全部やらなきゃいかぬというものじゃないのであって、こういう範囲内で協力するという意味でありますこともまた御理解いただきたいと思います。
  249. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 私は、このガイドラインの取りまとめの段階から、またこの法案の取りまとめにも携わってまいりましたけれども、私の記憶ですと、今御紹介があったような、そういうことはなかった、そういったことは承知していないということでございます。
  250. 東中光雄

    東中委員 では、この備考の二が入った経過は、なぜ発進準備中の航空機に対して、それから、発進準備じゃなくて、爆撃をして帰ってきた、それに対する整備とか修理とかそれから補給とか、そういうもろもろのことがありますね。あるいは、パイロットに対する補給、食事の提供というようなことも、これはすることができるというふうになっていますね。そういう体制、それから、もし負傷してきたら治療もする、医療の支援もこれは自衛隊がやるということができるようになっている、そういう体制になっているんですね、これは。それは発進準備中じゃなくて帰投したときのことですから。その部隊は部隊として任務がありますから、一回やったらもうどこかへ行っちゃうというのでないことは明白なんだ。  しかし、まだ次に発進の準備は、発進命令が出ていないという段階で整備しますがな。当たり前のことでしょう。それは自衛隊がやるということになったら、これは爆撃行動自身の兵たん作戦は全部日本が、全部というか持つことができるようになるんだから、持って、そして爆撃に行くということになるので、憲法上問題になる。この前の審議で、法制局長官が、憲法違反でないということが、憲法違反だ、クロだという断定はできなかったけれども、しかしクロでないということの断定もしてない、検討中であるということを言いましたがね。しかし、この部分だけはニーズがないからやめたんだという答弁をしています。  ところが、実際は、この部分だけのけたらいいという問題と違うんだ。日本周辺事態で発進基地にしてしまって、どんどん行く、何回も行くということになった場合、その場合に、一体こういう支援をしておっていいのか、憲法上許されるか。明白に戦争行為の爆撃部隊の兵たん部門を担当することがこの法律によってできるようになったということで、明らかに憲法違反だというように私は、この部分だけのけたってこれはだめだというふうに思うんですが、長官どうでしょう。
  251. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 何度も答弁の繰り返しになって大変恐縮でございますが、今お話にありましたとおり、除外されるゆえんのものは、給油とか整備についての米軍からのニーズがなかったから除いたというのが本当であります。しかし、除かなかったら憲法に抵触するかということについては、今先生も引用されたとおり、法制局長官も、簡単な問題じゃないのでさらに検討したいということを申し上げたわけであります。  さらに、私どもは、全部巻き込まれるのではなくて、別表に掲げたのは、後方支援に関する我が国の支援の内容を書いたものであって、これを全部、要請があれば義務的に履行しなければいかぬというものではないということも、またつけ加えて御理解をいただきたいと思います。
  252. 東中光雄

    東中委員 こうしなきゃいかぬということじゃなしに、こうするということを、こうすることができる、できることはやらなきゃいかぬということになるのは、これはもう行政法の常識ですから、そういう形で問題になる。範囲は、ニーズがなかったからやらなかっただけだと、ほかのところはニーズがあったということですね。そうでしょう、そうでなければつじつまが合わないわけですから。ニーズのあった部分はやったということになります。だから、要請してきたらやるということじゃないですか。非常に重要な問題を含んでいる。  ただ、ニーズがないと言いますけれども、これは九六年の二月の日米相互再発進準備訓練というのを、コープノース、日米共同実動演習の中でやっています。それによりますと、これは朝雲の記事ですが、再発進準備は、フライトを終え着陸したF15を使って行われ、米軍のF15を空自整備員、空自のF15を米軍整備員が受け持ち、ミサイルの搭載、卸下、燃料補給などを実施、日米のパイロット、整備員のクルーコーディネーション向上を図ったという記事が、これは朝雲九六年三月七日にあります。  だから、米軍が爆撃に行った、帰ってきたら日本自衛隊の整備員が全部整備を担当する、これは日本のやつに対しても担当する、そういう演習です。だけれども、ニーズがないというのは、それはそのとき聞いたら、そこまでやってもらわぬでもそのときは米軍でやりますよと言うたのかもしれない。あるいは、発進準備中、もうこれから出ますというときに、安全ピンを外せというやつがありますよ。そういう態勢のときは要りませんということだけを言っているんじゃないか。  そういうことなので、ニーズがなかったからやらないと言われておるのは極めて限られた部分についてだけで、あとは日本を発進基地にして戦闘作戦行動に、要するに、今一番多いのは爆撃です、空挺部隊の降下もこの戦闘作戦行動の中へ入りますけれども。しかし、この爆撃の場合に、兵たん作戦を全部自衛隊が負担するということになっている。これはもう共同の周辺事態での戦闘行為、パイロットでないけれども整備はやるんだということですよ。整備は戦闘部隊に参加していないので、パイロットだけが戦闘部隊、戦争をやっているんだ、そんなばかなことを言う人はだれもいませんよ。  だから、そういう関係になって、この補給の規定は、明白に自衛隊の戦争参加ということになる、憲法上許されないことだということを私ははっきり指摘をしておきたいと思うのであります。  それで、運輸大臣に来ていただいたのですが、ガイドラインによりますと、周辺事態における対応として「日本は、必要に応じ、新たな施設・区域の提供を適時かつ適切に行うとともに、米軍による自衛隊施設及び民間空港・港湾の一時的使用を確保する。」というあの規定がございますね。ガイドラインの規定です。そのガイドラインの規定を実効性あらしめるためにということでつくられたのが今度の周辺措置法であります。提案理由の中にそう書いています。  そうしますと、民間空港の一時的使用を確保する、「日本は」というのは、日本政府は、です。それは、八条によって関係省庁の運輸大臣がこの確保する措置をとるということになるわけですが、民間空港の一時的使用を確保するというのはどういうふうに、だから民間使用を米軍提供するという措置をとるということなのでしょうね。運輸大臣、どうでしょう。     〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕
  253. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 今御指摘いただいたように、基本計画の中において、どうするか、対応することになってまいります。その具体的な用途については、今具体的に確定される正確なものはございません。  しかし、あえて言えば、人、物の輸送というものに使われるだろう、こういうふうに考えております。
  254. 東中光雄

    東中委員 米軍の民間空港の一時的使用を確保するということ、そのための措置をとるということになれば、米軍日本政府との関係でいえば、これは安保条約、地位協定に基づいての措置以外にないわけですから、二4(b)、地位協定二条四項(b)での一時使用の提供を民間空港について受けるか、それから五条による出入り権、出入り権というのは飛行場に離着陸する権利ということなのだろうけれども、それをある程度継続して、一時的使用を確保するということを言うているのだから、二4(b)を全部設定してでなければできないのか、あるいは民間空港のままでその中の一部を使用するか、この二つしかないと思うのですが、そういう措置をとると。だって、ガイドラインでは確保すると書いてあるんだから、そしてそのガイドラインで決まったことの実効性を確保するためにこの法律があるんだ、そしてその法律では基本計画をつくってそれをやっていくんだというわけですから、そうなるのでしょう。どうでしょうか。
  255. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 前から御答弁申し上げておりますけれども、通常は地位協定第五条によるものだろうと考えられております。  それから、二4(b)の可能性をよく御質問いただくわけですけれども、理論的にその可能性をすべて否定するわけではございませんが、実際には、協定第五条の場合に比べて、日米合同委員会を通じた手続が必要となること、自治体や民間事業者に対する調整がより慎重となること等から、迅速な協力の観点においては、基本的には五条であって、二4(b)はまれというふうに考えております。
  256. 東中光雄

    東中委員 このガイドラインによりますと、「日本は、必要に応じ、新たな施設・区域の提供を適時かつ適切に行う」ことと書いてあるのです。だから、全く何もないところでも新たなる海上ヘリポートをつくろうと、新たなる基地の提供を適時適切に行うという、このガイドラインで約束してきていますのや。だから、空港についても、一時的使用はあの五条でやる、通常はと言われたけれども、五条の本来の規定は出入りを認めるだけですから、一時的使用という概念はちょっと違うわけですね。  ところが、続いて一時的使用を何回もやるという、一時的使用と書いてあるのだから。だから、一定期間を定めてという二4(b)は、これはまさに一時的使用でしょう。だから、両方が、そのために適時適切に行うように日本はやるという約束をしてきたのだ。しかも、それを実施する、実効あらしめるためのこの法律だというのでしょう、この措置法は。  それはどういう形でやるのかといったら、基本計画によってそれを担当大臣がやっていくのだ、こうなっているのでしょう。だから、結局、民間空港も、新たに飛行場を建設するよりはそれは早いわ。だから、それを、新たな基地の提供の前に、新たな二4(b)による部分的基地の提供ということになる、あるいは五条に基づいてその一時的使用を認めていくということになる。  その場合に、そこへ来た米軍が戦闘作戦行動をやると言うた場合に、民間空港の管理者として一時的使用を認めた場合に、その一時的使用を認めたところへ来ている米軍が戦闘作戦行動をやればどういうことに、やるということに当然なると思うのですが、そういう場合に、運輸省は、そんなものはだめだということが言えるのか言えないのか、そこのところをお伺いしたい。
  257. 竹内行夫

    竹内政府委員 先生御指摘ガイドラインの施設の使用に関する箇所でございますけれども、まさに先生も御指摘になられましたけれども、この施設の使用というのは、日米安全保障条約及びその関連取り決めに基づくという大原則がございます。  それで、今直接御質問になられました点でございますけれども、あくまでも、米軍日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地として日本国内の施設及び区域の使用が許されるといいますのは、これは第六条によりまして使用を許された施設・区域のみでございます。施設・区域として提供されていない通常の港、飛行場、民間の飛行場等の日本の領土領海内を、出撃のための発進基地として使用するということは、安保条約上も地位協定上も全く予想されておらないところでございます。  それで、このようなことは事前協議以前の問題といたしまして条約上認められるところではないということ、これが従来より政府から一貫して申し上げているところでございます。
  258. 東中光雄

    東中委員 共同使用、二4(b)の使用の場合はどうですか。
  259. 竹内行夫

    竹内政府委員 二4(b)と申しますのは、まさに期間を限って米国に一時的な使用を認めるということでございますし、その使用の目的については、合同委員会でそれぞれ個別に決めているところでございます。  したがいまして、まず第一の問題といたしまして、合同委員会で決められている使用目的というのが、戦闘作戦行動のための発進のための基地として使用することができるかどうかということがございます。  したがいまして、民間空港というものを二4(b)で仮に、まれなケースでありましても、仮に一時使用を認めるというときにおきましても、それは、合同委員会の場におきまして、我が方が主体的判断をもちまして、そういう行動を認めるか否かという判断をまずやることがあるということでございます。
  260. 東中光雄

    東中委員 それは主観的にはそうであろうと思いますが、ガイドラインによれば、新たな基地の提供を適時適切に行う。適時適切に行うということをガイドラインでのんできたんじゃないですか。のんできたといったらおかしいですけれども。そうでしょう。それで、適時に向こうが要求してきたら、いや、それはどうのこうのと言う。  そう言うんだったら、適時適切に行うなんというようなことを書かぬでおけばいいですよ。ガイドラインに書いてきたんでしょう。ガイドラインに書いてあることの実効性を確保するのがこの法律やとあなたは言うているんじゃないか。だから、この法律の提案趣旨からいけば、そんなこと言えないんですよ。あの提案理由にそう書いてあるじゃないですか。そうでしょう。こういう、これはごまかしですよ。  それから、イタリアの国際空港から、米軍が、NATO軍が今爆撃に行っているんですよ。  これは一つ申し上げますと、今、NATO軍のユーゴ空爆作戦における発進基地の状況について見ますと、空爆の拡大に伴って出撃基地も拡大、強化された。そして現在は、ユーゴへの直接発進基地となっているのは、米本土とイタリア、ドイツなど八カ国の二十九基地あります。最も多いイタリアは十四基地が使われています。  それで、イタリアのアビアノ空軍基地は、米軍のF117爆撃機十二機、F15E二十五機、F16百五機など、合計十四機種百八十七機の出撃基地になっています。イタリア全体で配備機数は三百九十四。しかも、十四のイタリアの発進基地のうち、ブリンディジというのですか、これは国内・季節的国際空港、それからトラーパニという国内・季節的国際空港、及びアンコーナ、これは国際空港、この三つは民間空港ですが、これが発進基地になっています。これは、米科学者連盟のホームページのNATO諸国軍配置表によって地図に落としてみたところであります。  この民間空港に、AWACS空中警戒管制機、それからAC130特殊作戦攻撃機、それからEC130電子戦機、MC130ヘリ給油機、それからMH53ヘリ、こういうのが配備をされて、機数もわかっておりますが、それが発進しているんです。発進基地になっているんです。  だから、今のこの措置法の体制でいけば、民間空港も一時使用に提供する。確保すると書いてあるんだから。それを約束して、その実効性あるための措置を今法律でつくっているんでしょう。そして、それを使うということになったら、現にイタリアで米軍はこういうふうに民間空港を使っているんですから。日本は場面が違うけれども、やはりそういうことになるじゃないですか。そういう仕組みになっているんだ。  成田や関西空港は、施設設置のときの条件からいうて、軍事使用はしないという条件がついていますね、地域の人たちとの間で。しかし、民間空港の一時的使用を認めるということをガイドラインで認めるどころか、確保するということまで約束してきて、その実効性を確保するためにこの法律をつくるということになったら、そうなるのは必然じゃありませんか。どうでしょう。
  261. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 先ほど外務省から御答弁ありましたように、基本的には日米安保条約というのはかぶっておりますから、逆の方向から持ってこられていますけれども、日米安保条約に基づきという概念でございますので、御理解を賜りたいと思います。
  262. 東中光雄

    東中委員 日米安保条約をかぶっているんじゃないんですよ。  日米安保条約には、五条で日本有事の場合の共同対処があるんです。それからもう一つは、いわゆる極東有事における基地使用があるんです。ところが今度は、日本の領域に対する攻撃じゃない、極東に対する平和と安全の維持の極東でもない、周辺地域という全然別のところで、しかし、別だけれども、どこからどこまでかということを、地球の裏側じゃないということしか言わぬわけやから。そういう違う、安保条約上にない文言を使って、安保条約上にない概念の地域をつくって、それで今度は、武力攻撃を受けていない、平和と安全の維持ということでもない、日本に重大な影響を及ぼすというだけの、また違った概念なんです。  そういう周辺事態なる概念をつくって、今度は何をやるのかといったら、安保条約上どこにもない、米軍への戦闘支援ということが書いてあるんじゃないですか。安保条約の枠組みからまるっきり離れている。その中で民間空港の一時使用を確保するという約束をして、その実効性を確保するための法律をつくって、それでそれを使うようになったら、イタリア流にいけばここで戦闘爆撃行動に入っていくということになる。  今、安保の体系をかぶっているからとおっしゃったけれども、かぶっていないんですよ。全く別の体系になっているんです。(発言する者あり)極東は周辺だという不規則発言がありましたけれども、そういうことで済ますんだったらいいんですよ。元防衛庁長官がそういう不規則発言をしなきゃいかぬぐらいに、周辺は極東ではない、極東とは違うんだということを外務大臣は何遍も言っているんだよ。一緒だとは一切言わないんだ。そういう問題なんだ。  だからこれは、民間空港でいえば、安保条約の枠をかぶっているからそういうことにならぬと今おっしゃいましたけれども、どうかぶっているんですか。
  263. 高村正彦

    高村国務大臣 安保条約によって我が国の基地を使って戦闘作戦行動米軍がとれる範囲が周辺事態安全確保法案で広がるなどということは一切ないわけでございます。
  264. 東中光雄

    東中委員 私、外務大臣に聞いてへんのですが。そんなあさってみたいなことを言われてもしようがないですよ。運輸大臣が安保条約をかぶっているからとおっしゃったけれども、かぶっていないから、どうですと言うて、運輸大臣の言われたことについて私反論しているわけだから、答えてくださいよ。
  265. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 それでは、また文章を読みます。「日米安全保障条約及びその関連取極に基づき、日本は、必要に応じ、新たな施設・区域の提供を適時かつ適切に行うとともに、米軍による自衛隊施設及び民間空港・港湾の一時的使用を確保する。」以上です。
  266. 東中光雄

    東中委員 だから、確保するんでしょう、民間空港の使用を確保するんでしょう。それで、確保した後がこういうことになるじゃありませんかと聞いているんじゃないですか。確保すると今おっしゃった。書いてあるとおりですよ。私もそれを言うているわけや。  それで、確保して、後、その結果、米軍は戦闘作戦行動に行くぞと、その場合に支援するぞというのは別表で書いているんだから、載せているんだから、そういうことについて、民間空港はそれでいいんですかということを言っているんです。民間空港はそれでいいんですか。もう時間ですから。
  267. 竹内行夫

    竹内政府委員 先ほど運輸大臣がお読み上げになられましたガイドラインの当該部分でございますけれども、まさしく、運輸大臣が申されましたように、安保条約がかぶっているということだろうと思います。すなわち、安保条約及びその関連取り決めに基づくということでございます。  ということは、仮に、民間空港の一時的な使用を米軍に対して認める、それで使用を確保するというようなことをやろうと思う場合には、先ほど私申し上げましたけれども、まず第一番目に、その使用目的ということを日米間で合意するわけでございます。したがいまして、日本の同意なしに戦闘作戦行動に使えるような使用目的というのが認められることはないわけでございます。  それから第二番目に、仮に戦闘作戦行動が認められるような使用目的が決められたといたしましても、現実にその空港を使いまして戦闘作戦行動の基地として発進をするというような場合にはまさしく事前協議の対象となるということで、日本の同意なくしてはそういうことはできない。  これが、先ほど来、運輸大臣が安保条約がかぶっているということを申されている趣旨だろうと思います。  したがいまして、イタリアの例については、私、寡聞にして詳しいことを存じ上げませんですけれども、イタリアの例とこの安保条約及びその関連取り決めに基づきます取り扱いということを同列して論ずることは適当ではないというふうに考えます。
  268. 東中光雄

    東中委員 時間ですから終わりますけれども、要するに、使用を確保する、その確保する方法は、二4(b)により提供するかあるいは五条によって出入り権を一時的使用に拡大するかということになる、それは日米合同委員会で話するんだということでしょう。そのときには、あなた方は合同委員会で目的を決めると言うけれども、アメリカ側がそれを要求してきたらどうなんだということが、実効性を確保するということの立場からいけば問題ですよ、イタリアではこうやっていますよ、きっとそういうことになりますよ、そういうことは許されぬ、こういうことを私は言っているわけです。  終わります。
  269. 山崎拓

    山崎委員長 これにて東中光雄君の質疑は終了いたしました。  次に、北沢清功君。
  270. 北沢清功

    北沢委員 私は、社会民主党・市民連合を代表しまして、今議題になっておりますいわゆる周辺事態法等に関して、主として地方自治との関連について御質問を申し上げたいと思います。  その前に、実は私は、先ごろ、福井の地方公聴会に地域代表ということで出席をしました。物には本音というものがあるわけでして、公述人の党派を超えての意見というのは、今の、何といいますか、軍事的な面でのエスカレートというものに非常に冷静にならなければならない、そして、いわゆる外交努力なりまた国民間における交流というものをもっと積極的に考えて、理解をしなければならないということを実は口々に言われております。  そのことは、福井が十五という原子力発電所を持っている、不幸にこのことが、ミサイルの攻撃になると、上からの力には非常に弱いから、日本が原子力によって麻痺状態になりはしないかということを実は心配をしているのが、やはりそのことが福井の特徴だろうと私は思います。  それからもう一つ、実は私は、小学校の同級生で、戦時中に高等商船にいた友人がございますが、この君が先ごろ私に手紙をよこしました。  それで、よく、今度の法案の前提に立つ後方支援というものが非常に何か安心したものではないかということが、当初政府側において述べられておりますけれども、やはり、この前の大戦を契機に、後方支援というものを、いわゆる補給路というものを断つために大変な戦術的な大きな転換がございました。したがって、当時の後方支援に携わった皆さんが六万五千人亡くなっている、実際は一番心配なのは後方支援に携わる皆さんであるということを綿々と書いて送ってまいりました。  決してその人は思想的な関係があるわけではございませんが、そのように、今、日本の不安というものは、敦賀における公聴会を見ても、後方支援が安心だということだけで問題を見てくると、大変なことになるのではないかという思いを私はしております。  本論に入りますが、いわゆる周辺事態法案の九条一項に言います、地方公共団体の長に対して、その有する権限について必要な協力を求めることができるとの規定に関連をいたしまして、およそ百七十の自治体の議会が反対や慎重審議を求める意見書を採択しております。これだけの議会が意見書を採択していることは、背後に本案に対して懸念を抱く自治体がさらに数多く潜在しているということが十分うかがえるわけであります。  そこで、自治大臣防衛庁長官にお聞きをいたしますが、これらの意見書に目を通したことがございますでしょうか。また、その意義をどのように受けとめているか、見解お尋ねいたしたいと思います。
  271. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 地方自治体から寄せられております意見書についての御質問でございます。それに先立って、福井における公聴会等の御感想もございました。そういう意味で、大変それぞれの地域において心配をしておられる方も多いと思います。  ただ問題は、私は、日本のそういう施設を攻撃しようという方が大体けしからぬことであって、攻撃される方が悪いような発想の議論は本末転倒ではないかというふうに思っておることも、あわせてまず申し上げておきたいと思っております。  今の御質問のことにつきましては、地方団体が関心が高いということはそのとおりでありまして、地方議会からこの法案に関しての意見書が私の方にも寄せられておりまして、反対の意見書が五十、慎重な取り扱いを求めるものが二十六、そして自治体の意見尊重をしてもらいたいというのが二十二、こういう意見書をちょうだいしております。  内容を見ておりますが、中には法案について十分な御理解をいただいておらないという中で指摘をされておるということもございます。私も全部が全部目を通しているわけではございませんが、主なものをそれぞれ幾つか内容を拝見、拝読をいたしております。  法案につきまして、そういう意味で、まだ十分な御理解がいただいていないということに基づくものも、そういう御意見もございますので、これまでも内閣安全保障危機管理室あるいは防衛庁外務省から、地方団体の要望に応じてできるだけ具体的に説明を行ってきておるところではございますけれども、なお一層自治省におきましても、関係の団体からの照会に答えるということのみならず、関係省庁と連絡調整に努めて、地方団体に対する十分な理解が得られるような説明のためにも努力を傾けたいと考えております。
  272. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 この法案につきましては地方公共団体の関心が大変高いものと承知しております。政府としては、これまでも要望に応じ、適宜説明を行ってきたところであります。  一部の地方公共団体の議会から、周辺事態安全確保法案に関連する意見書が提出されておりまして、私どもの方へいただいております意見書は、反対が七十、これは三千二百七十九の市町村の中の二・一%に相当します。それから、慎重な取り扱いが四十五で、一・四%であります。いずれも、平成十一年の四月十九日現在までの累計であります。  また、これらの意見書の中には、この法案についての正確な認識に基づかない指摘も見られるところでありまして、例えば、新ガイドライン集団的自衛権や海外での武力行使を定めており、憲法に違反するという意見もあります。また、この法案が自治権や基本的人権を侵害しているという意見もあります。  こういうことでございますので、なおさらこの法案についての正確な御理解がいただけるように、政府としても引き続きさまざまな機会をとらえて説明してまいりたいと考えているところであります。
  273. 北沢清功

    北沢委員 今、自治大臣の言われる、攻める側がどうこうという、私はそういう発言はしておりません。もう外交努力とか、交流を通じて理解を深めるようなことをすべきだ。  それから、やはり世界の最近の問題は紛争で解決していないですね。もうベトナムを見ても、イラクを見ても、今度の事件を見ても、大量の人が不幸な戦禍に遭っているけれども、そのことがすぐ勝利だとか解決だとかということにならぬということをよく見るときに、外交努力の必要性というものを、または地方の意見というものをもっともっと真摯に受けとめる必要があるのじゃないかということを実は私は感ずるわけであります。  自治体にとっては地方自治の行使イコール戦闘の後方支援となる以上、懸念を抱くことは当然なことです。福井でも、民間が一時的に使用にたえられないような米軍の使用や自衛隊の使用になるのじゃないか、そういう心配を実はみんな持っているのです。懸念を抱くことは当然なことでありまして、しかも、協力項目や内容が具体的に示されていないとなれば、なおさらであります。当初義務と言い、追及されれば、一般的協力であって制裁もないという一貫性のない説明に疑念と不安を募らせるのは、当然のことです。  改めて聞くのは、こうした自治体の意見書に対し、内閣は真摯に受けとめるべきではないかということを重ねて私は両大臣に要請をしておきます。これについては意見がなくても結構ですが、ただいまの答弁から見て、そのことを要請しておきます。  次に、九四年の朝鮮半島緊急時に際して、米軍から要請をされた支援項目は一千五十九あったという報道もあります。そのことの真偽は別として、これまで内閣は自治体に協力項目を例示するだけで、具体的な項目数と内容については全く説明しておりません。これでは自治体が不安を募らせるのは当たり前のことです。法的に人格の異なる自治体に協力を求めるなら、協力要請項目や内容を具体的に明示することが内閣に課せられた説明責任であります。こうした説明責任を果たさないで、第九条に関して内閣安全保障危機管理室、防衛庁外務省が示した想定される協力項目例を示すだけでは、自治体や当該地域の住民はどのような影響を受けるかさっぱりわからないのではないでしょうか。  今国会に提出された、いわゆる地方分権一括法案の最大のポイントは、自治体の自己決定権の保障と中央、地方の対等、平等な政府関係保障であります。同時に、内閣の説明責任が完全に履行しておらなくてはこの権利と関係は成立いたしません。その意味で、いわゆる周辺事態法案と地方分権一括法案との間に大きな乖離があるのではないかと思います。  一体、内閣はこの両法案、理念的、制度的関係をどのように認識しているか、または自治体協力の内容は状況次第と言われれば、住民の平和だとか安全、福祉に責任を持つ自治体の長は住民に説明がつかないのではないか。  そういう意味で、もっとこのことを具体的に当委員会文書をもって明示する必要があると思いますが、委員長において、ぜひ具体的な文書を当委員会に提出いただきたいということを要請いたしたいと思いますが、よろしくお願いをいたします。委員長、いかがでしょうか。
  274. 山崎拓

    山崎委員長 北沢委員の要求につきましては、その取り扱いにつきまして理事会協議いたします。
  275. 北沢清功

    北沢委員 よろしくお取り計らいをいただきたいと思います。  それでは、予想される協力例として、既存の法令の権限を適正に行使して協力するものの一つとして挙げられているのに、先ほどは空港の例がございましたが、港湾施設の利用について私は具体的に質問をいたします。  アメリカの軍艦の我が国港湾への入港は確かに安保条約によって認められております。しかし、このことは我が国のあらゆる港湾施設を自由に利用することを保障するものではありません。ある港湾施設を利用する場合、港湾法及び自治体の港湾管理条例に基づく手続を経て初めて利用し得ることになります。つまり、国際法と国の法律、自治体法としての条例は、法体系上一つのシステムとして構成、運用されているわけであります。外交は内閣の専管事項と幾ら強調しようが、この体系から自治体を除外することは私は許されないというふうに思います。  この点、運輸大臣そして自治大臣からの御答弁確認しておきたいと思います。
  276. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 周辺事態法案に基づく協力の求めを行い、米軍艦船が港湾を利用する場合においても、現行の日米地位協定、港湾法、港湾施設管理条例に基づく通常の手続がとられることとなります。
  277. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 今、運輸大臣米軍艦船について申されたとおりでございます。  一般的な問題としてこの周辺事態安全確保法第九条第一項というのは、周辺事態に対する措置の緊要性にかんがみ、地方公共団体の長の有する権限の公共的性格及び他に代替手段を求めることが困難であるとの事情を考慮し、国から必要な協力を求めることができることとしたものであるわけであります。  そこで、協力の求めがあった場合、地方公共団体は、その有する権限を適切に行使することが法的に期待される立場に置かれることとなるものでありまして、その権限について定められた個別の法令や条例に照らして正当な理由がある場合には協力を拒むことができるというものでございます。すなわち、周辺事態安全確保法案に基づく協力の求めは地方公共団体の権限そのものに影響を及ぼすものではない。  そこで、入港に対する決定権を知事が持っているかどうかというお尋ねについては、今運輸大臣が御答弁されたとおりであります。
  278. 北沢清功

    北沢委員 このことについては今まで非常に二転三転しているわけでございまして、とにかく外務省は、外交権の問題であるということでこのことは切り捨てされておるわけでありますが、しかし、運輸省の見解というのは、非常に前向きなものを持っているという理解を私は実は持っております。そうなると、港湾法及び港湾管理条例に示される自治体の自治事務に対する内閣の法的対応の妥当性ということが問題になります。  そこで、まず港湾法の性格について質問をいたしますが、そもそも一九五〇年に制定された港湾法は、それまでの、特に戦前の軍事優先の港湾利用の反省に立っているわけですね。国の営造物とする中央集権的港湾管理事務を自治体の自治事務にしたというところに私は最大の意義があると思います。  この制定過程を直視するならば、まず第一に言えることは、いわゆる周辺事態の際、港湾が後方支援の重要拠点となるような施設利用について、そもそも港湾法に想定していないということでありますから、港湾管理事務を自治体の自治事務にしたということです。また、制定時に、政府の規制、監督は地方自治の建前から必要最小限にとどめると政府答弁したのはこのためだというふうに私は考えます。  その意味で、周辺事態に対して自治体が協力するか否かははなから論ずる余地のないことと考えますが、以上について運輸大臣見解をお聞きしたいと思います。
  279. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 現行の港湾法におきまして、港湾施設の使用目的、何か特定しているかという話ですけれども、特段限定しているものではないと認識をしております。
  280. 北沢清功

    北沢委員 そのことの中で、先ほどの自治大臣答弁にも私は非常に承服しかねるものがあるわけです。仮に、百歩譲って平時の場合でも港湾法は適用されるものとして、港湾の施設管理は自治体の自治事務であります。  そこで自治大臣に聞きますが、自治事務たる港湾管理条例において、例えば、高知のような条例案文やあるいは函館市のような管理条例とは別に港湾の平和利用に関する条例を制定した場合、法律違反と言えるかどうか。自治事務に関する条例である以上、このような条文の新設あるいは新たな条例制定イコール法律違反とは言えないはずでありますが、自治大臣確認を得たいと思います。
  281. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 一般的な外国の軍艦の日本の港湾に対する寄港の問題という事柄と、日米安保条約に基づいて行われております米軍の艦船の寄港の問題とは、おのずから事柄は異なっているということは整理して考える必要があるということは、まず冒頭申し上げておきたいと思います。  その上で、今の港湾の平和利用のための条例を制定した場合どうかというお尋ねでございます。御指摘のとおり、地方団体は、地方自治法及び港湾法の定めるところにより、条例を定め、港湾の適切な管理及び運営を図る見地から必要な規制を行うことができるというものでございます。  一方で、例えば外国艦船の寄港の同意、そういう外交関係の処理に関することまで権限を行使するということは認められるものではないということは、たびたび申し上げておるところでございまして、お尋ねの港湾の平和利用のための条例なるものがいかなる内容の規制を行おうとするものなのか、今の御質問ではつまびらかでない、明らかでないということでございますので、確定的なお答えを申し上げることはできないのでございますが、仮に、外交関係の処理に係る国の決定に地方公共団体が関与し、あるいはこれを制限するような内容であるとするならば、これは地方団体の権能の行使としては認められないものであり、そのような内容の条例を制定することはできないというふうに考えております。
  282. 北沢清功

    北沢委員 いわゆる非核三原則は国是であるわけですね。それに基づいて地方自治体がそのことをさらに具体化することは当然のことでありまして、これは、自治体が港湾を平和利用に反するものとして施設利用を拒否した場合、内閣はどのように対応するかということが実は問われるわけです。恐らく、港湾法十三条及び四十七条をもって運輸大臣は是正措置の要求を行うものと考えますが、こうした措置要求を担保する実効的な手段があるのかないのかということをお聞きをしなきゃいけないわけですね。殊に、自治事務に関することであって、機関委任事務ではない以上、担保するには限界があります。これが第一点です。  しかも、アメリカの軍艦のみならず、すべての外国の艦船に同様に対応するわけでありますから、港湾法十三条に言う不公平取り扱いの禁止には当てはまらないというふうに私は考えますが、運輸大臣はいかがお考えでしょうか。
  283. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 仮にという話がございますけれども、仮に、港湾の適正な管理運営に支障がなく、非核証明書が提出されないという理由のみにより港湾施設の使用を拒否した場合には、港湾法第十三条第二項の不平等取り扱いの禁止に抵触することがあり得ると考えております。したがって、法第十三条第二項の不平等取り扱いの禁止に抵触するものと認められる場合には、法第四十七条に基づき当該行為の停止、変更命令を行うことができる。  米艦船だけではなくて、すべての国の外国艦船にするんだからいいじゃないかという、また仮の御質問でございますが、港湾法第十三条第二項は、「何人に対しても施設の利用その他港湾の管理運営に関し、不平等な取扱をしてはならない。」とされております。したがって、すべての国の外国艦船に対して、港湾の適正な管理運営に支障がなく、非核証明書が提出されないという理由のみにより港湾施設の使用を拒否する場合については、不平等取り扱いに該当するものと認識しております。
  284. 北沢清功

    北沢委員 これはやはり政府がやるべきことでありますから、日本への艦船の入港に原子力を持ち込まないということは国是でありますから、そういうものを実際に国として行わず、または地方でその地域の住民の生命財産にかかわることを責任を持つということは、先ほどの後方支援の問題を見ても、真っ先に侵害を受けるものはその地域の自治体なんですね。だから、そういうことを考えてみれば当然なことである、そういうふうに私は考えます。  それから、運輸大臣の是正措置もさることながら、内閣総理大臣の是正措置の要求も認められておりますが、これは非権力的な関与の一つであって、この制度は今まで一度も使われたことがないはずです。これほどに地方自治に関する国の関与は憲法及び地方自治法上から抑制されているのであります。  だからこそ、一九八四年に当時の中曽根総理は非核神戸方式について、神戸市は神戸市の固有の権限に基づいてそのような処置をしている、それをはっきり分けて考えるべきであって、これを混合することは地方自治を侵害されることも起きかねないと答弁をしております。中央政府の外交や防衛の立場と自治体の権限の調整を区別しているのではないでしょうか。  その点についても、地方自治体が拒否した場合、このような元総理の答弁や地方自治法二条第十二項の規定を無視して、たしか一度も行使されていない是正措置を要求するつもりでありますか、自治体を守る立場の自治大臣として、この点をまず明確な御答弁をいただきたいと思います。
  285. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 当時の中曽根総理の神戸市の条例に関する御発言は、今御紹介されましたが、それがまさに意味するところは、自治体は自治体としての固有の権限を行使してその役割を果たしていくということであり、国は国としての権限を行使し、そして国としてのみずから果たすべき事務をこなしていく、そういう意味で国と地方がそれぞれの役割分担の中できちんとした責任を果たしていくということにおいて真っ当な政策が遂行されるのである、こういう趣旨だと私は理解をいたしております。  そこで、今の御質問の趣旨は、地方自治体が周辺事態安全確保法案の第九条に基づく協力の求めを正当な理由なく拒否した場合に、地方自治法の第二百四十六条の二に基づく是正措置要求がなされるのか、こういう御質問であろうかと存じます。  この点につきまして申し上げます。法案の第九条第一項に基づき協力を求められた地方公共団体の長にあっては、適切な権限の行使が期待されるものであり、拒否するには正当な理由が必要であるということは、申し上げてきたとおりでございます。  正当な理由がない限り地方公共団体は求めに応じていただけるものと考えておりますが、あえて法律論としてお答えすれば、地方公共団体の長の対応が法令の規定に違反するような場合は、例えば地方自治法第二百四十五条に基づく助言または勧告の対象になり得る。さらに、個別法に基づく措置、例えば港湾法の第十三条で不平等取り扱いが禁止されており、これに反するような場合は、同法第四十七条に行為の停止または変更命令の措置ができる旨の規定がありまして、この規定による措置がとられることもあり得るということでございます。さらに、場合によっては地方自治法第二百四十六条の二に基づく是正措置要求の対象となることも、法律上はあり得るというふうに考えております。  もちろん、国として地方公共団体に対してこれらの規定を発動することを想定しているものではございませんで、あくまでも国は地方公共団体の実情も十分踏まえた上で協力の要請を行うものでありまして、また、地方公共団体の側も正当な理由がない限り求めに応じていただけるものと考えておるわけでございます。
  286. 北沢清功

    北沢委員 終わりますが、やはりこのことは制定する経過から見て、実は持論を述べたわけでありますから、いわゆる国の担保する力がないというふうに私は見ております。したがって、法律を改正するか、有事立法という分野に入るわけでありますから、これは私は地方の自治体の沖縄化である、国家総動員法の再現であるというふうに実は心配をしているわけでありますから、その点については十二分に配慮をしてやっていただきたいことを申し述べて、私の質問を終わります。
  287. 山崎拓

    山崎委員長 これにて北沢君の質疑は終了いたしました。  次に、西川公也君。
  288. 西川公也

    ○西川(公)委員 自民党の西川公也でございます。  この委員会も二月十六日の審議開始以来二カ月が経過いたしましたけれども、私ども地方に帰りまして、今地方選挙の最中でありますので、よく人と会います。その人たちが言うのには、どうもテレビを見ていても大分同じ話が続いているね、さらに、新聞等を読んでも同じような話が続いているね、こういうことを言います。大変口の悪い人は、土曜日のすし屋か、こういう話をするんです。私はそのときに、国の安全に関する話でありますので丁寧な審議をやっています、こんなことを申しながらその地元の人たち対応しています。  問題は、国会への報告の問題でありますけれども、私は、迅速性の確保という意味からすれば政府案が一番いいんだろうと思いますけれども、国会のことですからこの委員会を通らない限り法律にならない、実施はできない、こういうわけでありますから、当然各党間の修正協議が成立してくるんだろう、こう思っています。新聞報道等しか私どもはわかりませんが、もう間もなく終盤だ、こういう話も聞いております。  そこで、国会の報告が修正協議等で事後承認になる、こういう話が流れておりますけれども、迅速性の問題からすれば確かに先にやっちゃった方がいいわけですけれども、どうもそれでは通りそうもないということで変わってくるという話が聞こえています。これは長官にお聞きしても、原案どおりでいくのがベターだ、こういう話をしてくるんだと思いますけれども、仮定の話でありますけれども、報告じゃなくてこれが事後承認という形に変わってきますと、どのような影響が出てくるのか、その辺、お聞かせいただければと思うんです。
  289. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 同じことを言って大変恐縮でございますが、国会承認、事後承認にしたらどうなるかという仮定の問題についてお答えすることは、やはり差し控えさせていただきたいと思います。  何回も申しておるとおりでありますが、この法律に書かれた三つの活動は、やはり、武力行使に当たらない、国民の権利義務に直接関係するものじゃない、あるいは迅速性を要するという点から、私どもは国会報告は正しいという一つの原案を出したわけであり、なおまた類似の法律を見ても、海上警備行動とかあるいは要請による治安活動を見ても、これはみんな強制力を持つものでありますが国会承認になっておりません。何ら強制力を持たないこの三つの活動について国会承認を受けるのは法律の均衡上もおかしいというような理由から、私どもは原案を提出させていただいた。  しかし、累次申し上げているとおり、唯一の立法機関であります国会が今時間をかけて真剣に討議されているわけですから、そういった国会の討議の結果について私どもは誠意を持って対応してまいりたい、こういうふうにしか答弁できないことをひとつ御理解いただきたいと思います。
  290. 西川公也

    ○西川(公)委員 胸中よくわかりましたので、これ以上お聞きいたしません。  次に、船舶検査の活動でありますけれども、これまで、イラク制裁措置のときは、九〇年の八月六日からスタートして、西側諸国が一生懸命やって、一九九七年の二月までに二万隻以上の照会をやった、こういうことがありますね。それから、対新ユーゴの方では、一九九二年の五月から始まって、九六年の六月までの間に七万隻以上の船に照会をした、こういうことがあります。  そこで、今度この法案が通れば、日本も当然船舶検査に入ってくるわけであります。初めてやる仕事でありますけれども、その辺の対応に対する心構えというのはどうなっているか、お聞かせをまずもってお願いしたいと思います。
  291. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今委員からお話がありましたが、いわゆる国連憲章四十一条に基づく安保理の経済制裁決議があることということで、これまでの船舶検査で、対象は商船で、場所は基本的に公海上ということでありますが、船舶検査の過去の実績としては、照会をしたのが十万隻以上、あるいは乗船検査が一万七千隻以上、進路変更の要請をしたのが二千隻以上でありまして、航行不能化射撃というものは、つまり船体への実弾発砲はなし、警告射撃は極めてまれといったのがこれまでの実績であります。  そこで私どもは、こういう実績を見まして、この活動を実施した場合に、仮に検査対象船舶の船長等が停船の求めに応じない場合の対応については、法案の七条三項に規定されているとおり、この求めに応じ得るよう説得を行うこととしており、その際には、説得に必要な限度において、接近、追尾、伴走及び進路前方における待機といった措置をとることとしておりますが、これらはいずれも、我が国としては、これまでの諸外国における活動実績等にかんがみ、この法案に規定している範囲内で、実質的に有効に機能する船舶検査活動を行い得るものだ、こういうふうに判断しているところであります。
  292. 西川公也

    ○西川(公)委員 そこで、先ほども申し上げましたけれども、ユーゴの問題なんかは七万隻以上も一生懸命照会をして、NATOがこの紛争をなるべく解決したいということでやってきたわけですけれども、なかなか効果はあらわれなかったのではないかと思うのです。今度は日本でも、この法案が通れば第七条に基づいて、段階的にやりますけれども、呼びかけ、信号弾、照明弾、その後は、船舶の名称、船籍港、船長の氏名以下どんどん聞いていく。さらには、船長に停船を求める、停船の同意を得てから乗船して書類等を調べるとか。それから、航路または目的港もしくは目的地の変更を要請する、こういうことになっています。最後に何だ、こういうことになりますと、これらに応じるように説得をするんだ、こういうことでございます。  これは、全部やっても聞かない人は聞かないと私思うのですね。全部やって聞かないときはどうするんだ、こういうことをやはり考えておかなきゃならないんじゃないかと思いますけれども、長官の方ではどう考えられますか。
  293. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 そういう御懸念もあろうかと思いますけれども、私どもは、一つ手段として、旗国の同意を得ておくとか、あるいは地域間とか二国以上の取り決めによって同意を得ておくとかというような手段も有効ではないか、そういうことについても外務省を中心に検討していかなければいけないことじゃないかな、こう思っておる次第です。
  294. 西川公也

    ○西川(公)委員 この法律に書いてあることはお答えをいただきましたが、私がお聞きしたいのは、どうやっても言うことを聞かない、これをどうするかということをしっかりしておきませんと、この間の船のような状況になって、どうせ日本はたけみつだから、抜いたところで大したことない、こういう話になってくるわけでありまして、これでは抑止力、こういう話になりませんので、その先、恐らく検討はされてきたのだと思いますが、検討はないのですか、その後の状況は。
  295. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 私どもとしては、この法律に規定された体制で対応できると考えておりますが、委員が御心配いただいておりますように、そういう問題についてもさらに深く検討してまいりたい、こう思っております。
  296. 西川公也

    ○西川(公)委員 次に、後方地域支援の活動の中断の問題について伺いたいと思います。  この法案では、危なければ活動を中断しろとか、撃ち合いが始まったら戻ってこいとか、戻ってきた、攻撃が中断したらまた行け、こういう話で、危ないところには行きません、こういう話をしてあるわけでありますが、それで本当に同盟国と言えるのかという疑念が私はあります。私どもが政治活動をやるのも同じでありますけれども、仲間と思ってやってきましたが、勝てるか勝てないかわからないときには私はさようならよ、こういう話では同盟とは言えない、私はこう思うのですね。  また、日本の今の国民の、こういう責任感というのはどう考えているかというのにおもしろい調査があるわけでありますけれども、日本人の国家観といたしまして、一九九五年の一月に、世界の主要三十七カ国で世界価値観調査というのをやった、こういうことですね。呼びかけ人はミシガン大のロナルド・イングルハート教授だ、日本では電通総研と余暇開発センターが窓口となってやった、こういうことですね。  そこで、問いが大きく二つありまして、一つは、「仮に戦争になった場合、あなたは進んでわが国のために戦いますか」(発言する者あり)今、はいという話がありましたが、残念ながら、日本で「はい」と答えた人は一〇・三%でございます。中国は九〇%、韓国は八五%、アメリカは七〇%、戦争の苦い体験のある西ドイツさえ三〇%あります。こんな中で、日本は何と一〇・三%でございます。  さらに問いがもう一つありまして、「国民全てが安心して暮らせるよう、国はもっと責任をもつべき」だ、この問いに対しましては日本人はどう答えているかというと、さすがに数字が高くて六三・二%、最高の数字を示している、こういうことですね。ですから、戦争になったら我が国のために戦うという人は一〇%台だけれども、物事の処理は国に求めて、国が悪いんだ、こういう話が六三%ある、こういう状況にあるわけであります。  国には求めることはあるけれども国は守らない、こういう話の中で、五条の話でありますけれども、「防衛庁長官は、実施区域の全部又は一部がこの法律又は基本計画に定められた要件を満たさないものとなった場合には、速やかに、その指定を変更し、又はそこで実施されている活動の中断を命じなければならない」。そしてもう一点が、結局戦闘行為が始まっちゃった、そういうことであれば、「当該輸送の実施を一時休止するなどして当該戦闘行為による危険を回避しつつ、前項の規定による措置を待つものとする」、こういう話になっておりますけれども、これで米国との信頼関係を損なうことにはならないんでしょうか。また、その中断というのが許されるものなのかどうか、防衛庁長官見解をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  297. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 アメリカの国防長官、国務長官、それから日本外務大臣防衛庁長官でいわゆる日米安全保障協議委員会というものをつくっておりまして、ここで了承された日米防衛協力のための指針においては、後方地域支援は戦闘行動が行われる地域とは一線を画される場所において行われる旨が明記されているところであります。この法案に規定する後方地域支援に係る後方地域との要件は、この指針に明記された実施地域について法文化を図ったものであります。  このように活動が後方地域で行われることを担保するため、防衛庁長官は、今委員が申されたとおり、実施区域の全部または一部がこの法律に定められた要件を満たさないものとなった場合には、その指定を変更し、またはそこで実施されている活動の中断を命ずるという枠組みを用意すること及び中断を行うことについては、米側も十分理解しているところでありまして、これが日米関係を損ねるものではないかとの御懸念には及ばない、こういうふうに考えております。
  298. 西川公也

    ○西川(公)委員 アメリカとこれで大丈夫だということでありますが、頼りにする方は、危なくなったら先に逃げますよとか危なくなったら支援に来ませんというのじゃ、これは頼りになりませんよね。しかし、今の状況の中では、これしか答えようがないということでありますので、私は了承しておきたいと思います。  次に、自衛隊の武器使用の規定を見直すかどうかの話でありますが、三月下旬に発生した北朝鮮の工作船、このぐらい国民の眠りを覚ましたものは私はちょっとないと思うんです。それはなぜかというと、現実の追撃の状況がテレビを通して入ってきますので、臨場感といいますか、本当にこういうことがあるんだな、こういうことは国民は理解をしたと思うんです。  しかし一方で、我が国の防衛に対する法律はいかに整備が不十分か、こういうこともある程度国民にわかってもらえることができたと思うんですね。しかし、国民が求めることは、今回は取り逃がしたけれども次は大丈夫なんですね、次のものが来たときに本当に押し返せるか、あるいは捕らえることができるか、しっかりやってくださいよ、そのための法律の整備は私どもも理解しますよ、こういうのが国民の本音ではないかと私は思うんですね。  今回の事件の追撃状況を見ておりまして、報告事項でありますけれども、今回、私は、海上保安庁の皆さんも自衛隊の皆さんも現行法で対応できる範囲内では最大限の努力をしたろう、こういう評価をしています。結果的に逃すことになったわけですから、国民としては残念な気もしますけれども、あれを捕まえちゃって沈めたり何かしまして、その後の拡大を考えますと、一回目はこれでよかったのか、こういう気がする人もたくさんいると思うんです。  ただ、先ほども言いましたように、日本の防衛は、今の法案は不備だから何度入ってきても大丈夫だ、こういう考え方を相手国に持たれてしまったら本当に国民の不安を解消することができないだろう、私はこう考えております。でありますので、今回何としてもこれらを整備する、整備をしてそれで足りなければまた整備をする、こういうことで取り組んでいただきたい、こう思っています。  そして、今度の事件がありましたけれども、日本抑止力、こういうことを考えた場合に、これは本当にしっかりした形ができてきませんと抑止力になりません。またどうせ逃げられるんだから大丈夫だ、こういう話になってまた来ますので、その辺で現行の武器使用規定を見直すことは必要だ、私はこう思いますけれども、防衛庁お話をお聞かせいただければと思います。
  299. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先般の事案の際には、法的には人に危害を与えずに航行不能化のため船体に射撃を行うことは可能であったのでありますが、不審船の船体が小さい、約百トン程度のことでありますから、私どもが持っておった現有の火砲等で航行不能化射撃を行うことは結果的にはやはり人に危害を与えることになると判断し、人に危害を与えれば、現行法上認められている領域を出たということになりますので、これを行わなかったというものであります。  こういうことから、残念ながら不審船を停船させることはできなかったわけですが、自衛隊創設以来初めて海上警備行動を発令することによりまして、不審船対処に係る我が国の断固たる決意を内外に示し、今後、この種の事案に対する大きな抑止力になったと私どもは確信しております。  この種の事案に対しては、私としましても、今後の対応に万全を期するために、まずは現行法の範囲内で人に危害を与えずに停船させる方法など、今回の教訓に基づいて先般も重要事態対応会議も開きまして検討し、また月末には現地へ参りまして、追跡をした護衛艦に乗ってさらにその検討を深めたい、こう思っている次第でございます。
  300. 西川公也

    ○西川(公)委員 防衛庁長官がお乗りになってまた再現をしてくれるということになれば、どこが不備かというのをさらにまた認識ができると思いますので、ぜひそれを実施していただきたいと思います。  捕まえなかったけれども、捕まえようとして捕まらなかったわけではない面もあるかもしれませんが、問題は、日本の能力が相手の船に追いつけないとか、それから北朝鮮の領土まで往復できないとか、油の関係とか、こういう状況では、抑止力は大丈夫だ、こういうことは私はなかなか言いにくいだろうと思うんです。そして、これまでにも検討は何かされたということを聞いておりますけれども、やはり相手の三十五ノットとか四十ノットとか、これを超えるような高速艇がなければ、なかなか抑止力というのを発揮できないと私は思うんです。  聞くところによりますと、高速艇を早急に導入する、こういう話も聞こえてくるんですけれども、その辺の装備等につきましての今後の計画をお聞かせいただければと思います。
  301. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先般の不審船につきましては、最高三十五ノットの速度で警告を無視して逃走したということから、不審船の船体が小さいことから、我々としては、人に危害を与えずに航行不能にすることは困難であったということを反省いたしまして、今委員から御指摘がありましたとおり、高速艇の導入について、既に平成十一年度予算において、小型で高速のミサイル艇、これは約二百トン型でありまして四十ノットの速度を有するものでありますが、これを二そう建造することとしており、これらの艦艇の機関銃の搭載等の装備の充実のため、現在検討しているところであります。
  302. 西川公也

    ○西川(公)委員 次に、警察と自衛隊の協力関係についてお聞かせをいただきたいと思います。  私は栃木県に住んでおりますけれども、栃木県には、そう原子力に関係する重要施設はございませんが、原子力発電を利用した揚水発電所が二カ所あります。これは東京電力がつくったものでありますけれども、大規模で非常に力も強いということでございますが、私も現地を訪ねてみましたら、何でこんな連絡道路なのかなと思うようなつけ方をしているんです、発電所まで。一方、県営等の水力発電所は、もう道路っぷちで発電しますからすぐ見える、こういう状況ですが、東京電力はやはりこの辺も考えながらやったということを聞いてまいりました。  しかし、確かに、下流から入ってきて、その発電所が見えない場所につくってありまして、長いトンネルをくぐっていかなければその発電所にたどり着けない、こういうことでありまして、非常に警備を考えた構造にはなっていますけれども、逆に、工作員が来て壊すということになりますと、人に見える方の県営発電所等の方が守り切れるな、こういう話もあるんですが、現実には見えないところにつくってあります。  経費の問題等もありますけれども、これは集中管理ですから、そこに警備員はおりません。警備員はおりませんけれども、そういうところがそういつまでも襲われないということであればいいんですけれども、やはりそういう事件が発生するということを前提に危機管理体制をつくっておかなければならない、私はこう思うんです。  そのときに、警察が当然出てくるんでしょうけれども、壊そうと思って来る人たちは警察の力よりもその銃器等は強いものを持ってくると思うんです。これが、防衛出動という命令が下れば自衛隊が来てくれますから結構なんですけれども、そうちょっとやられたぐらいで自衛隊が来てくれるわけはありませんので、やはり事前にお互いに連携をとっておく、自衛隊にもこういう現場を見てもらう、こういうことをやっておかなければならないと私は思うんです。  それで、聞くところによりますと、大きなところはもう既に、重要なところの原子力発電所とか航空管制塔、こういうのはもう想定に入れてやっているんだ、こういう話も聞こえてきますけれども、私は、連携を警察と自衛隊がやっていく、こういうことが一番いいんだろうと思うんですけれども、長官の見解をお聞かせいただければと思います。
  303. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員指摘のとおり、第一義的には、今挙げられたようなことに対処するのが警察機関の任務であります。また、警察機関で対処することができないと認められる事態が発生した場合には、治安出動により自衛隊が対処することとなるわけであります。さらに、武装兵士等が日本の国内に侵入するという事態我が国に対する武力攻撃判断される場合には、防衛出動により対処することになると考えます。  これらの場合、今委員が御指摘なさったとおり、自衛隊と警察等の関係機関の緊密な連絡が大変大事であります。重要施設の警備や事態の鎮圧のための必要な行動というのはこういう緊密な活動のもとに行われなきゃいかぬ、こういうことで、私どもも、重要事態対応会議でこういうものは何回か検討を加えておりますし、さらに、そういうことに基づいて警察機関との対応をきちっとしてまいりたい。  また、防衛庁としては、橋本内閣以来政府として進めている緊急事態対応策の検討などを通じまして、今後とも関係機関との一層密接な連携体制の構築に努めてまいりたい、こう考えている次第です。
  304. 西川公也

    ○西川(公)委員 ここで角度を変えて質問をしたいと思いますが、堺屋長官には、お越しをいただきましてありがとうございます。  それで、日本の安全、平和をどうやって確保するかというときに、正面から装備をして抑止力をもって、あるいは攻められるときに必ずやり返す、こういう方法もあると思いますけれども、一方では、外交努力を重ねて、要は日本に危害が及ばない、こういう形をつくることもまた大切だと思うんです。それには、日本がどういう国家観を持ってどういう理想のもとに国づくりをやっていきますよ、こういうことを内外に示す必要があろうと私は思うんです。  私は、国会に来ましてまだ二年半ちょっとでありますけれども、残念ながら、何といいますか、夢がなかなか見えにくい、こういう状況にあると思うんです。地方ですと、今度は人口二百万を目指してやるとか、工業出荷額を五割増しにやろうとか、こういうことで具体的にやってきましたけれども、国全体のあるべき姿というのはわかりにくい、こういうことがあります。ですから、近隣の諸外国にも示せる、あるいは日本国民にも、こういう夢でやるぞ、こんなことを示していただければと考えています。  日本で私らが一番わかりやすかったのは、所得倍増計画とか日本列島改造論とか、これは非常にわかりやすかったです、結果はどうといたしましても。今回、小渕総理が、富国有徳ということを言ってくれました。富国強兵はすぐわかりますけれども、富国有徳というのはなかなかわかりにくい、おぼろげながらはわかりますけれども。どうも有徳の方は、清貧、清く貧しく我慢していく、こういう話になるかもしれませんが、個人の所得が世界一の日本が清く貧しくなんて言ったって、所得の低い国から見れば、何を言っているんだ、バブルの反省でも言っているのか、こういうことになるのかと思いますけれども、それはそれで大事なことでありますので、富国有徳ということを進めていっていただければと思いますが、具体的にはどういう目標でやっていくべきだと長官は考えておられるか、その辺をひとつお話しをいただければと思います。
  305. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 大変広範な問題でございますけれども、さきに経済審議会に対しまして小渕総理大臣から、経済社会のあるべき姿と経済新生の政策の方針について諮問がございました。私たちの審議会で今この問題を討議しておりまして、五つの部会をつくっていろいろと研究しております。  その中で、対外的な点で申しますと、やはり日本はしっかりとした経済力を持って、日本が諸外国から輸入する自由なマーケットを提供する、これが一つ重要なことだと考えております。それからもう一つ日本がやはり世界の平和、秩序づくりに貢献できる国でなければならない、今まではずっと日本外国のつくりました国際秩序を利用させていただく立場でありましたが、これからは積極的にそういうものをつくり出す立場でなきゃいけない、そういう両面の、経済とそして世界秩序に対する責任と、これをあわせ持った国になろう、こういうことが基本ではないかと考えております。
  306. 西川公也

    ○西川(公)委員 堺屋長官にお答えいただきましたけれども、抽象的で、ちょっと夢がなくて、国民に、こういう国にしますよ、こういうことがわかりにくいと私は思うんですよ。せっかく専門家が経済企画庁長官になられたんですから、先ほども言いました、わかりやすいものが二つも三つも過去に日本にもありましたと。しかし、今は借金を返すのにきゅうきゅうしていますけれども、こういう国を目指していきます、こういうような話をぜひつくり上げていただきたいな、こう思っています。  最後にお聞きをしたいと思いますが、今もお話がありましたけれども、四月十三日の経済審議会基本理念委員会で、「経済社会のあるべき姿」、そこの中で、「検討すべき政策課題」ということを述べられていまして、労働力人口の減少をどうやって補っていくのかとか、日本の労働力はどういうふうに行くんだとか、こういう話が書いてありました。私も興味を持って見させていただきました。  日本もやがて人口が減ってきます。人口が減ってくるときにGDPも同じく減ってくれば、一人当たりの所得は変わらないから豊かさはそう変わらないんだろうと思いますけれども、現実の話、そんなにうまくいくかどうかわかりません。開発途上国との差はどんどん縮まってくるはずでありますので、そうはうまくいくかどうかわからない。その中で、移住計画、移民を考えた話だ、こういう話がありました。  私も昨年、ちょっと本を書きまして、その中でも書いておいたんでありますが、やがて日本の人口減が来ましたときに、日本民族だけで活力のない国になっていく方向をとるのか、それとも、活力を持つために、今日本にかかわりのある国の皆さん、働きに来てくれておりました人たちを移民として認めて日本国民、こういう話にしていくのか、これから検討を迫られる時期に来ている、こういうことを申し上げてきたんであります。  ここでは、検討をしていく、こういう話でありますが、その辺の考え方を長官からお聞きしたいと思います。
  307. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 先生の御指摘のとおり、大体二〇〇五年ぐらいに人口がピークを打って、だんだんと減ってまいります。特に、労働適正人口と言われる六十四歳以下の人口をとりますと、もうことし当たりがピークでございまして、減少していく。そうすると、高齢者、女性などの働く環境をつくるということも大事でございますが、長期的に見ると、やはりずっと減っていきますから、これは、何らかで補わないと活力のない国になっていく。  御指摘になりました経済審議会の「「経済社会のあるべき姿」を考えるにあたって」という文章を出しましたときに、ただ労働力の不足を補うだけのために外国人を入れるということはいかがなものか、やや疑問に感じております。むしろそれよりも、日本に働きに来てくれる人がいることによって日本文化が世界に広がる、その人たちが持って帰っていただく文化や言葉が広がる。また、いろいろな、多様な人々が日本に入ることによって、刺激になりまして、複数の発想が生まれて活力ある社会となる。日本一つのそういう、世界の話題を集めるような、文化をつくるような、混合国家になっていくような方法はいかがなものか。こういうような意見を出しまして、広く国民の皆様方から今御意見を伺っておる段階でございます。  私といたしましては、日本が活力ある国として、また世界の人々から尊敬されるような国として成り立っていくためには、ある程度そういった出入りも、複数の文化もあっていいんではないかという感じを持っております。
  308. 西川公也

    ○西川(公)委員 わかりました。  質問を終わります。
  309. 山崎拓

    山崎委員長 これにて西川公也君の質疑は終了いたしました。  次に、小島敏男君。
  310. 小島敏男

    ○小島委員 自由民主党の小島敏男です。  きょう、私は国会の初質問ということになりまして、今まで国会の中継というのをテレビでずっと見ておりました。委員長席とまたその答弁席とこんなに近いとはゆめゆめ思っていませんで、この席を見て、非常に緊張を深めているわけでありますけれども、外務大臣並びに防衛庁長官におきましては、その意味も含めて、わかりやすく答弁をしていただきたいと思っています。  周辺整備の問題、それから後方支援、武器使用、船舶の検査という形で、いろいろな角度から各委員さんが質問をされているわけでありますけれども、これだけ議論を積み重ねて法案が通るのかということを、改めて認識したわけであります。きょうは、国民の側から見て、私どもが思っている問題について、少し御質問をさせていただきたいと思います。  本法案が国会に提出されてからもう一年、そういう長い期間が経過をしているわけでありますけれども、委員会ではさまざまな角度からの質疑がなされ、マスコミが非常に大きく取り上げているということは、国民の側からすれば、大変に関心を上げるのに役立っているのではないかというふうに思います。  しかしながら、いろいろな活字を見ますと、これが戦争の協力法案とか、または小渕首相が日本米国に売るとか、極端な表現を使っている新聞等もあるようでありまして、これは、いささか文化国家として恥ずかしいと言わざるを得ないわけであります。  過日、私は福岡の方の公聴会に出席をさせてもらいましたけれども、そのときにも質問の機会が与えられましたので、私は沖縄の代表の方に質問いたしました。見ると、どうも五十年前のことが列記されている。しかも、戦争の協力法案であるということがあるから、私は、それは戦争の協力でなくて抑止法案でないかというような発言もさせてもらったんですけれども。そもそも、五十年続いた平和に対して、もう少し国民が考えを新たにしなければならないのではないかということを率直に感じております。  過日もこの件について、委員質問に対して、野中官房長官が、現行憲法日米安全保障条約のおかげで日本の平和が長いこと保たれてきたというような発言がありましたけれども、このことにプラスして、やはり政権が安定していたということは見逃せない事実であって、自由民主党が安定した政権を維持してきたからこそこういう平和が続いたということも、大きな要因ではないかと私は考えております。  外国から見ると、日本人というのは平和と水はただであるというようなことをよく言われているわけでありますけれども、平和ぼけを皮肉った論評というのがあちこちで目につくわけであります。  しかしながら、現在の日本の国際情勢は、特に米ソの冷戦状態が変わってから、急激に変化の兆しを見せております。周りを見ますと、宗教、領土、民族の問題を抱えた国々、また、国の浮沈をかけてせっせと核開発をしている、そんな国など、世界の平和に対する足並みはそろっていないということも実情であるようであります。  私は、戦争に対する考え方として、自分の体験を申し上げたいと思います。  私は、埼玉県の熊谷というところで生まれ育ちました。そして、私の一番大事な時期、そのときに八月十四日、二十年の八月十四日と言えば、ああ、あのときかということがわかると思うんですが、終戦の前の日です。しかも、夜の十一時半、そのときに空襲を受けました。熊谷の町の大半が焼け野原になったわけでありますけれども、戸数としては三千六百三十戸が燃えてしまった。そして、二百三十四名のとうとい命を失ってしまったということでありまして、私の家も当然焼け出されてしまったわけであります。  ですから、次ぐ年が私の小学校一年生ということでありますけれども、今はぴかぴかの一年生とかということを言われていますが、私の場合には、うちがなくて、電器屋さんの倉庫の、窓一つしかない、そんなところが私の小学校の出発ということになったわけでありまして、その実体験を含めますと、戦争は二度と起こしてはならない、一貫して私はその気持ちを持ち続けています。  ですから、今写真報道等でユーゴの問題、コソボの問題が出てまいりますと、あの幼い子供たちは何のためにこの世の中に生まれてきたんだろうかと私は素朴な疑問がわくわけでありますけれども、そういうコソボの難民の子供たちのところで、幾ら文化を、経済を、教育を語ったとしても、それは何にもならない、大変な事態であるということを私は新聞を見ながら考えているわけであります。  我が国の平和社会にどっぷりとつかっている大人から子供たち、この問題を見ますと、やはり目的意識がないまま、世界に向けて発言するニュースには、余りにも恥ずかしい事件が多発をしているように見受けます。ここでいま一度、国民のコンセンサスを求めて、政府として確固たる対応をしなければならない重大な時期を迎えていると思います。  そこで、私の方の質問に入るわけでありますけれども、コソボ問題、この問題については今非常に大きく取り上げられております。まず心配なことは、コソボの中にセルビア人とアルバニア人が同居しているわけでありますけれども、民族浄化というのをうたっている大統領、その中で同居している民族同士が今どのような状態になっているのか、非常に心配なこともあるわけでありまして、この問題について、知っていれば、今こういう状態だということをお話しいただければありがたいというふうに思います。
  311. 高村正彦

    高村国務大臣 外務省から調査団を派遣いたしまして、その調査団はマケドニア及びアルバニアを訪問し、現地においては、政府関係者、国際機関関係者と意見交換を行うとともに、難民収容施設を視察したわけでございます。  調査団の報告によれば、マケドニア、アルバニアいずれにおいても、危機的な状況はとりあえず回避されているものの、多くの難民は難民キャンプ、一時的収容施設、一般家庭に収容されており、その生活条件は依然として悲惨な状況にある、こういうことでございます。また難民受け入れでは、マケドニア、アルバニア両国はいずれも経済上多くの問題を抱えているわけでありまして、今回の大量難民の流入により、一層の困難に直面しているとのことでありました。  こういう状況でありますが、欧米諸国を中心とする各国及び国際機関は、このような難民に対する人道支援と、難民受け入れ国に対する支援を活発に行っております。我が国もまたコソボ難民に対する支援策として、既に、食糧、医薬品、生活必需品等を提供するために、国連難民高等弁務官事務所、UNHCR等を通じた千五百万ドルの支援を決定し、またテント一千張りを同事務所に譲渡したところでございます。  コソボ自体、今どうなっているかということでありますが、もともと二百万人ぐらいの人口でありまして、そのうち百八十万人がアルバニア人、二十万人がセルビア人、こういう構成であったわけでありますが、その中で、毎日ふえておりますので現時点でどのぐらいかちょっとわかりませんが、百万人程度のアルバニア人が国外に難民として出ているということだと思います。     〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕
  312. 小島敏男

    ○小島委員 今外務大臣の方から百万人以上の難民が流出しているだろうというようなお話があったわけでありますけれども、アメリカはいち早くキューバにおいてアメリカの支配地に難民を受け入れる用意があるというような新聞報道もされました。日本の方では、野中官房長官が避難民の一時受け入れを前向きに検討しているとの報道がありましたけれども、日本の状態についてはやはり遠隔地であるということで、難民の受け入れというのは非常に容易でないということもあります。外務大臣お話のように、食糧支援、医療品の支援、こういうものは積極的に進めていかないと、後で小出しということでなくて、今すぐにでもできる限りのことをやってあげたいというふうに思います。  四月十四日の日経新聞でしたが、コソボの周辺国に流出した難民五十一万七千人のうち、約半分が十五歳未満の子供だったということが報じられています。女子供が、大変な数が出ているわけでありますけれども、突然家を追い出されたり治安部隊による殺人を目撃したりして、はかり知れないダメージがあり、口を開かず静かな子供たちが非常に多いということに気づき、精神的にショック状態にあることがわかったということであります。  今の日本のこういう状態の中では考えられない状態が現在起きているわけでありますけれども、そういう野中官房長官が発言したこと等についてはどのように考えているか、そのことをちょっとお聞かせいただきたい。
  313. 高村正彦

    高村国務大臣 難民の受け入れということにつきましては、UNHCRは、最終的には難民のコソボへの自発的帰還を目指すべきである、そのためには難民は周辺諸国にとどまって支援を受けることが望ましい、基本的にこう言っているわけであります。  日本も当初若干の難民を受け入れることも検討いたしましたが、UNHCRの意見もそういうことでありますし、今はともかく、当初は危機的状況であったわけでありますが、その危機的状況をともかく救うことだ、そういう状況は辛うじて脱して、ただ、今でも悲惨な状況、こういうことでありますから、できるだけのことはしたい、こういうふうに思っておりますし、日本政府とすれば、国際機関のアピールがある前に千五百万ドルの支出ということは決めているわけでございます。  さらにこれからも日本政府としてやるべきこと、これは難民に対する直接支援ということもありますし、まあ直接といってもUNHCR等の国際機関を通すわけでありますが、そういうこともありますし、それと同時に、難民受け入れ国、アルバニアとマケドニア、この二カ国が今大変な状況にあるわけで、その国に対してどう支援していくかということがあります。  それから、一応平和的解決が見られた後にコソボの復興にどうお手伝いしていくかということがありますが、そういうことも含めて、お金、物、場合によっては人、当初私たちはお医者さんの派遣ということを考えたわけでありますが、調査団の報告によればお医者さんは今足りている、日本からも民間の方が若干行っておりますし、かなりのボランティアの方たち等でお医者さんは一応足りている、ただし医薬品は足りない、こういうことでありますから、そういうことも見ながら、ニーズのあるものを積極的に提供してまいりたい、こういうふうに思っております。
  314. 小島敏男

    ○小島委員 ユーゴの関係、コソボの関係外務大臣お話でよくわかりました。いずれにしても、戦闘状態が最悪の状態に入っていることも、新聞報道でどんどん拡大していることも報道されておりますが、我が国としてできることは積極的に取り組んでいただきたいということを要望しておきたいと思います。  それでは、朝鮮半島という形に移りたいと思いますけれども、先ほど百万人という話が出ましたが、朝鮮半島の問題を考えると、ベトナムの難民の問題というのが百万人ということで非常に記憶に新しいところでありますけれども、万一朝鮮半島に不測の事態が起きたらば難民がたくさん出るのではないかというような心配もされているわけであります。現在の朝鮮半島の情勢を分析いたしますと、過去のベトナムや現在のコソボも他人事とは言っていられない、そういう状況にあるわけであります。  これも新聞報道によりますと、中国と北朝鮮国境で行った千六百九十四人の聞き取り調査をいたしたところ、その家族というのは九千二百四十九人、そして九五年の大洪水から始まって、死亡した人が二千六百五十三人で二八・七%。生存する六千五百九十六人について、三千三百五十六人、五〇・九%が病気か栄養失調に苦しんでいたとのことであると。職業別で見ますと、軍人も六%いたとのことであり、食糧難は危機的状態にあると見られます。  ここで問題なのは次のアンケートの結果ですけれども、生活が苦しくなった理由として、自然災害による食糧生産のストップが五四・七%を占めたものの、国家政策のためが一二・九%、指導層の官僚主義的失政が一二・三%、指導者の責任と言った方が一一・四%と、三六・六%が現体制に批判的な意見を述べている。国民の内に秘めた感情がいつ爆発するか知れないという恐ろしい状況にあるわけであります。  この北朝鮮からの大量難民が流出する可能性も否定できないわけでありますけれども、既にアメリカと韓国で、北朝鮮が崩壊したときに備えて封鎖計画を作成中というのが三月二十三日の報道でわかりました。朝鮮日報が報道したわけでありますけれども、「米韓両軍が北朝鮮の急激な崩壊に備えた「米韓連合対備計画」を作成中」と報じました。ことしの夏の完成を目指し、北朝鮮からの難民発生に備えた陸海封鎖作戦も含まれていると伝えています。  まず第一に北朝鮮脱出住民対策、二番目として長距離ミサイルと生物化学兵器などの大量殺傷兵器無力化作戦、三番目として北朝鮮内の人道主義的支援作戦、この三つで構成されております。  情勢急変による北朝鮮からの難民は十万人から二百万人と予想されているということが新聞で出たわけでありますけれども、外務省外務大臣の方では、この事実をつかんでおり、今我が国としての対応はどのように考えておられるのか、この辺をちょっとお聞きしたいと思います。
  315. 高村正彦

    高村国務大臣 米韓両国におきましては、従前より、朝鮮半島で発生し得る幅広い事態に対処できるよう検討を実施してきており、その一環として、委員指摘の米韓間の協議も行われているものと承知をしております。  委員指摘協議内容の詳細については明らかにされておりませんが、九八年韓国国防白書によれば、米韓両国は、一九九七年十二月の第二十九回定例安全保障協議会の合意に基づき、予想される北朝鮮状況について能動的な対策を立てており、その中で、大量の北朝鮮の脱出住民に対する計画や北朝鮮に対する人道主義的な支援作戦等が含まれていると記述されているところでございます。
  316. 小島敏男

    ○小島委員 概略わかりました。  しかし、一説には、十万人もの難民が我が国に押し寄せるのではないかというようなことを言っておられる方もいます。難民発生という事態が起こらないことが最も望ましいことでありますけれども、政府米国等と協力し、KEDOに対し千百六十五億円の貸し付けを表明し、対北朝鮮外交に努力をしておりますが、それに反して北朝鮮では、テポドンを飛ばしたり、またはノドンを実戦配備している、こんなニュースが入っております。  防衛庁長官にお聞きしたいのですけれども、ノドンの配置とかテポドン、そして、テポドンが昨年の八月に日本上空を越えたわけなんですけれども、この越えた後に、アメリカの方としては、今度撃ったら強い態度に出るぞということを北朝鮮政府の方に申し入れたというようなことを私は何かで読んだような気がするのですけれども、そういうテポドン、ノドンの関係について、現状とアメリカ対応等についてわかっていたらお聞かせをいただきたいというふうに思います。
  317. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 お尋ねの北朝鮮のノドン・ミサイルにつきましては、昨年八月末に発射されたミサイルの第一段目に使用されていたと見られることや、発射台つきの車両から発射するわけでありますが、発射台つき車両等、ノドン本体に付随して使用されると考えられる車両が既に多数調達されているという情報等、これら種々の情報を総合しますと、北朝鮮がその開発を既に完了し、その配備を行っている可能性が大変高いと防衛庁としては判断しております。  この点につきましては、先般の日韓防衛首脳会談において、私が千容宅韓国国防長官とお会いした際も同じ認識を持ったところでありますし、さらに、コーエン米国国防長官と会談した際にも同じ認識である旨の発言があったところであります。  一方、配備場所とか配備数など配備状況の詳細については、関連する情報を鋭意収集、分析、評価しているものの、現在、確たることを申し上げる状況にはありません。  いずれにしましても、北朝鮮のミサイルの開発、配備動向につきましては、引き続き細心の注意を払ってまいりたいと思っております。  一方、テポドン一号について申し上げますと、昨年八月に発射されたミサイルの基礎となったものと見られ、その開発は急速に進展しているところであります。そのテポドン一号の射程距離は千五百キロ以上と推定されますから、我が国の全域をくまなく覆うということになります。さらに、三千五百キロから六千キロと言われるテポドン二号の開発も相当進んでいると見ることが、これも韓国の千国防長官と認識を共有したところであります。  また、化学兵器とか生物兵器とか、あるいは、アメリカの国防総省の見解によりますと、既に一個の核兵器に十分な量のプルトニウムを製造されたと信じられている。こういう点も、ペリー米国前国防長官もNBCのテレビのインタビューで同じようなことを言っている。  こういう状況でありまして、私どもは、このような大量殺りく兵器が拡散していることについて大変憂慮し、重大な関心を払ってその対処を考えなければいけない、こう思っているところであります。
  318. 小島敏男

    ○小島委員 テポドン、ノドンの関係について、防衛庁長官から現在知り得る範囲内ということでお話がありましたけれども、私は、過日、我が党の委員会で、テポドンがもし中国の上空そしてロシアの上空を通過したらば、こんな悠長なことを言っていられるか、日本は完全になめられているのではないか、日本の国民の安全と平和を踏みにじるものだということを指摘したのですよ。しかも、不審船が二そう堂々と来ているということで、海上も上空も大変な事態が起きているということを私は言いました。  理事の皆さんは、それよりも君、今は日米安保条約のもとでそれを解決していくことが一番いいんだということで私は答弁をいただいたわけでありますけれども、そういう日米安保条約に基づくガイドライン法案は、そういう意味からしても一日も早く通して、そして国民が不安に思っていることを解消する、そういう役目があるのではないかというふうに私は感じています。  今、不審船二そうのことについて触れたわけなんですけれども、文芸春秋等には、今月号に生々しくその状態が載っています。真っ暗な荒海の中、大変に海が荒れていたようでありますけれども、それを、レーダーに基づいて突進をしていく、最大出力で突進をしていく。暗やみの中でのことなんというのは、我々は想像ができません。そういう中を、日本の国土の安全のために、ともかく防衛庁の指令のもとに、海上保安庁並びに自衛隊が出動したわけでありますけれども、そういう任務を命令した中で、防衛庁長官、いろいろと聞いたと思いますけれども、その辺の、命がけで戦った、命がけで命令に従ったその隊員の気持ちをわかっていたらお知らせをいただきたいというふうに思います。     〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕
  319. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 現場で指揮に当たった指揮官などから、不審船の状況や自衛隊対応の詳細、さらには今回の教訓事項について直接報告を受け、今後の対応のもととしていきたいと考えているところであります。  三月三十日には重要事態対応会議を開催し、現場で指揮に当たった第三護衛隊群司令から不審船の状況や自衛隊対応についても詳細に報告を受けているところであります。  ただいま委員から、命がけで頑張っていただいた自衛隊に対するねぎらいの言葉をいただきまして、自衛隊にかわって私からも心から御礼を申し上げるところであります。  私としては、今月末にも舞鶴に赴きまして、直接不審船に対処した護衛艦「はるな」に乗船し、対応の具体的詳細や先般の対応を通じて認識された教訓事項の報告を受け、今後の不審船対処について検討を進めていきたいと考えております。さらに、その訪問の際には、自衛隊創設以来初めて海上警備行動を行った隊員諸君に対して、ぜひとも私からもその労をねぎらいたいと考えているところであります。  いずれにしましても、今自衛隊の諸君は日本の平和と安全と独立、国民の財産、生命を守ることが最大の使命であるという信念に基づいて頑張っているということだけを申し上げて、御理解を得たいと思います。
  320. 小島敏男

    ○小島委員 今の防衛庁長官の話で、自衛隊の士気の高揚というものについて理解をいただいてありがとうというお話がありましたけれども、ぜひ今の士気を保ちながら、これからも隊員に激励してやっていただきたいというふうに思います。  次に、原子力の関係につきましては、たびたび出ているわけでありますので、まとめて政府委員の方から答弁をいただきたいのですけれども、原子力の発電、今の二そうの不審船が来たのが海岸でありますし、原子力の発電所もみんな海岸にありますので、原子力発電の管理体制はどうかということで、これが万全であるかどうか、そして同時多発のテロに対しての対応も大丈夫かということですね。  原子力発電は、もし何かあったときにはすぐ連絡すれば大丈夫だというような発言がありますけれども、ではほかにまた何かがあったらどうかということで、テロというのは向こうも非常にテロ対策というのを考えていますから、そういう関係についてはどうかということ。  それから、新聞で世界じゅうを非常に騒がせたあのチェルノブイリの原子力発電の爆発ですけれども、あのことが大きく報道されて国民が非常に不安に思っているわけでありますけれども、チェルノブイリのことと日本の原子力発電とはこういうところが違うのだということをお示しいただくということであります。  そして、安全性の確保についてなんですけれども、これまた原子力の関係では、安全性を改ざんしてやったということで信用失墜ということでありますけれども、そういう記事が載ると皆さんが一生懸命説明してもそれを信用しなくなってしまいますので、やはり原子力の発電所の安全管理等については万全であるということで自信を持って言っていただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  321. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 原子力発電所の破壊防止対策、テロ対策についてでございますが、基本的には、原子炉等規制法に基づいて各原子炉設置者ごとに核物質防護規定を定めまして、対策を厳重に実施しているところでございます。  具体的には、原子炉敷地内を三段階に分類をいたしまして、それぞれ厳重さにおいて差を置いておりますが、基本的には侵入センサーあるいは監視カメラ等を備えた防護フェンスで発電所建屋を多重に取り囲んでおります。また、発電所の建屋につきましても、強固な扉を設置し開閉検知装置を置く、かような装置によりまして不審者の侵入はかなり困難な構造にいたしてございます。また、出入管理につきましても、身分証明書の厳密なチェックあるいは金属探知器などによる持ち込み品物品検査等を多重に重ねて行ってございます。また、二十四時間体制で巡回パトロールを実施いたしてございまして、設備状況の確認及び不審者の侵入に迅速に対応しているところでございます。  御指摘のとおり、我が国では武器の所持制限があるという事情がございますので、実際に発電所が襲撃をされました場合には防護設備等の物的な手段をもって攻撃を阻止し一定の時間遅延をさせる、おくらせる、この間治安当局に迅速に通報をし対処をするという体制をとってございます。  最近の内外の動向、御指摘のございましたような動向にかんがみまして、対策をより厳重に行うことが重要という認識を持ってございます。当面、不測の事態に備えまして、今月にも重ねて行いましたが、社長会、副社長会などで電力会社に防護体制の再徹底を指示いたしております。  また、治安当局との密接な情報連絡体制でございますが、これも今月も重ねて行いましたけれども、東京の本部のハイレベルまた現地の警察と発電所、それぞれの間で連絡体制の確認をとり行っているところでございます。  チェルノブイルの件についてお尋ねがございましたが、非常に簡潔に申し上げまして、暴走型、暴走があり得る設計と、日本の軽水炉、いわば一たん事があればすべて原子炉がとまる形の設計と非常に大きな設計思想の差がございます。そういう意味で、チェルノブイルがゆえに日本の原子力の安全性について疑問があるかという点につきましては、明確にさようではない、これは明確な設計思想の差でございます。  また、データ改ざん事件についての御指摘があり、おしかりがございましたが、まさに我々この原子力の問題につきましては、いわゆる技術的な安全性のほかに、電力事業者及び国を含めた信頼性の問題がある、かように理解をいたしてございまして、こういう信頼性の問題について、さらに厳重な品質管理体制その他を含めて反省をし、さらに十全の体制をとってまいりたい、かように考えてございます。
  322. 小島敏男

    ○小島委員 原子力発電所の関係については、日本は一説にはスパイ天国ということが言われております。そういうことで、今のままであれば万全であるということでなくて、やはりこれからも会議を重ねながら国民が不安を抱かないような、そういう原子力施設でありたいと思っています。気にかかっているのは、やはり管理を民間に委託しているというところでありますけれども、この辺のちょっと心配はありますけれども、ぜひこれからも会議を重ねながら、治安当局との連携を密にしながらやっていただきたいということを思います。  あと、自治大臣がいませんので、地方自治体の対応ということで考えていたわけなんですけれども、これは時間の関係で割愛をいたします。  最後に、私は、ちょうど東西ドイツが、壁が壊れたときがありました。その壁が壊れて東西ドイツがちょうど融合したというか結合したというのですか、そういうときに私はたまたま立ち会ったわけでありますけれども、二週間前に私は西ドイツから東ドイツに入りました。  それで、ベルリンの壁が壊れるということはゆめゆめ思っていませんで、この十字架の名前の人がこの狭い川を渡りながら撃たれた人だということで、撃たれた後に遺体を引き取ることもできない、国連軍が行く以外には手も足も出ないのだということであって、私は下へおりていって水を手で触りました。この温度なら全く冷たくないし泳いでこられるのにと思ったのですが、たまたま向こうに三人の兵士が銃を持って歩いてきました。顔の表情もわかります。非常に緊張感を覚えました。  そして、東ドイツに入るときに、バスが入っていきますと、下も鏡、上も鏡、そして兵隊さんが、全部下も上も確認をして、乗り込んできて、私たちのパスポートと顔を全部見比べてオーケーを出すわけでありますけれども、そういう状態を私は経験いたしましたし、通訳の人はこの状態は当分続くだろうということを言われていたわけでありますけれども、それから二週間後にベルリンの壁が突如として崩壊をしたわけであります。  そういうことから見ると、そういう事態というのは急激に起きるのかなということを私の方でも思ったわけでありますけれども、ユーゴの問題は非常に複雑な要素を含んでいますし、それから宗教、民族の問題も含んでいます。  ですから、私がここで言いたいことは、南北朝鮮というのは宗教も民族も変わらないのです。何であんなふうになってしまったかということは、非常に私としては、同民族であって、一番近い国であって、そういう状態に置かれていることに本当に気の毒だなという気がするわけであります。この南北対話を一番優先してやるべきであろうということなんですけれども、現在の北朝鮮とそれから韓国の対話、このことについての現況をお知らせいただきたいと思います。
  323. 高村正彦

    高村国務大臣 突然のお尋ねでありますが、韓国の金大中大統領は、いわゆる太陽政策、包容政策というもので、一方で抑止力はきっちり持ちながら、できるだけ対話、経済的支援等も含めてきっちりやっていこう。そして、そういったことは包括的アプローチということで、一つ一つの問題を一つ一つ机の上にのせて交渉していたんじゃ幾ら時間があっても足りないんだ、これは直接金大中大統領が私に言った言葉でございますけれども、そういったたくさんの問題を、それは直面する安全保障上の問題と中長期的な南北問題、そういった問題も含めて、一遍にテーブルの上に置いて、包括的アプローチで解決をしていこう、こういうことでやっている、こういうふうに承知をしております。  北側がそれに対してどういうふうに対応しているのかということは、そういう太陽政策にこたえているという面も全然ないわけではない、こういうふうに思っております。まさに、私の感覚からいえば、全然ないわけでもない、こういうような感覚でございます。
  324. 小島敏男

    ○小島委員 時間が来たようでございます。  一つだけ外務大臣お話をしておきたいと思いますけれども、新聞報道によりますと、今度ユーゴの関係について、外務大臣国会のお許しがいただければ向こうの方に行きたいというような新聞報道もなされましたけれども、私どもとしては、ぜひ皆さんの了解を得て、直接足を運んでもらいたいという気がいたします。  しかしながら、あちらの方は、空港も使えませんし、道路事情も悪いし、それから非常に環境も劣悪であるということでありますので、もし行かれる場合があったら、つぶさにその視察をしていただくと同時に、これからのコソボ支援に対しての積極的な対応をしていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  325. 山崎拓

    山崎委員長 これにて小島敏男君の質疑は終了いたしました。  次に、達増拓也君。
  326. 達増拓也

    達増委員 自由党の達増拓也でございます。  今から二年前、新ガイドラインの策定作業が佳境を迎えていたころでありますけれども、平成九年五月、新ガイドラインのまだ中間報告も出ていない段階ではありましたけれども、その平成九年、二年前の五月に、アメリカの外交評議会のもとにつくられました約四十人の研究グループ、この研究グループの検討をもとにある報告書が出されました。  報告書の名前は、「ザ・テスツ・オブ・ウオー・アンド・ザ・ストレインズ・オブ・ピース」、「戦争の試練と平和の重圧」というタイトルでありますけれども、これは、日米関係日米安保関係、また安全保障体制というものを見直しまして、今後どのような形にすればいいかを検討した報告書であります。  したがいまして、政府間で行われておりました新ガイドライン協議、その直接の担当者が政府の責任でつくった報告書ではないのですけれども、リーダーを務めているのが、ハロルド・ブラウン元国務長官やリチャード・アーミテージ元国防次官補、そしてアメリカの実務者及び有識者、さらには日本人も加わりまして、非常に手厚い体制で検討したものでありまして、アメリカ側の新ガイドラインに対する期待、どういう考え方で新ガイドラインガイドラインの見直しを行って、どういう日米安全保障体制をつくっていこうかというアメリカ側の考え方がよくわかるペーパー、報告書であります。  この報告書の中にこういうことが書いてあります。日本語に訳しますけれども、日米の同盟を強化するに当たっては、日本は集団的自衛を禁止する解釈をやめて、自衛権の定義を拡大して、地域的な非常事態のための広範な支援を拡大することとなろう。日米の安全保障体制をより確実なものに強化していかなければならない、そのためには、日本は集団的自衛を禁止する解釈をやめて、その結果、地域的な非常事態に対しての広範な支援を拡大していかなければならない。これはウッドという単語を使っておりまして、もしそうしたいのであればそうしなければ、そうすることになろうといういわゆる仮定法でありますが、そういう表現を使っております。  さらに、こういう記述もございます。その日米の安全保障体制をより確実なものに強化していくに当たっては、日本があらゆる危機において常に直接の戦闘をする必要はない。こういう支援をすればよいのだということで具体的に挙げております米軍への支援が、戦闘部隊への便宜供与支援でありますとか、シーレーンの監視と警備、掃海活動米軍の空輸、陸上運送、また医療支援、緊急脱出支援、さらに燃料の補給、補修、メンテナンスですね、補修活動。  それで、ここには新ガイドライン周辺事態で行う後方地域支援の中に含まれているものもあれば、含まれていないものもあります。明らかに後方地域じゃない、より前線に近いところでやるようなものもここには含まれているのですが、同時に後方地域支援の中身も含まれております。こうした、こういう支援をしてほしい、するべきだという列挙をした後にこう書いております。しかし、現段階では日本政府は、憲法が集団的自衛を禁止しているとして、これらの措置をとらないだろうというふうに書いております。  この報告書全体を読んで感じるのは、アメリカ側は、結局日本集団的自衛権行使を認めていないがゆえに後方地域支援のようなこともできないのだと。これは、裏を返しますと、後方地域支援、これは武力行使に至らないわけでありまして、政府は一連の答弁の中で、この後方地域支援というのは、急迫不正の侵害に対して武力をもってそれを排除、反撃する、そういう自衛権の行使ではないのだ、だから集団的自衛権行使には当たらない、日本政府はそう説明しているのですけれども、どうも国際的な常識としては武力行使に至らないような同盟国を支援する後方地域支援活動のようなものも集団的自衛権行使とみなされているようなのですけれども、この点いかがでしょうか。
  327. 高村正彦

    高村国務大臣 集団的自衛権とは何かということについては学説がたくさんいろいろあることは承知しております。しかし、国連憲章ができるときに、どういう場合が武力行使が許されるかというようなことの中で、こういう個別的自衛権とか集団的自衛権とか、こういう概念が形成されてきた経緯から見ても、自衛権というのは侵略に対して実力をもって反撃するというそのことが中心となった概念であるということは、もうこれは国際法上の通説であると、委員のような説がないとは言いませんが、通説であると。  それから、私の聞き方が悪かったのかどうかわかりませんが、今の有識者のお話を見ても、私が今委員がお読みになったことをお聞きした限りにおいて、それが、集団的自衛権実力をもって反撃する権利だということではないといったようには私には聞こえなかったということを申し添えます。
  328. 達増拓也

    達増委員 今紹介した報告書の中での議論、また、そのほかのところでもそういう議論はあると思うのですけれども、アメリカ日本に対する要望として、集団的自衛権行使の一般的禁止はやめてほしい、集団的自衛権行使できるという解釈をしてほしい、ただ、武力行使のようなそういう直接戦闘は要らないので、集団的自衛権行使の中でも後方地域支援的なところをやってほしいという意味で、そういう後方地域支援も集団的自衛権行使一環と考えているのではないかと思われるわけです。  確かに国際法というのはいろいろな学説がありまして、そういう多様な解釈が生まれるような中で、いかに国益を損ねないような形で国の外交政策をやっていかなければならないかということを考えなければならないので、集団的自衛権をめぐる過去の実例についてちょっと検証してみたいと思います。  ただ、実は、集団的自衛権というのは国連憲章の中で初めて使われたといいますか、一般的に使われるようになった言葉で、それまでなかった概念なわけですね。ですから、集団的自衛権行使ということが行われたかどうかというのは戦後の歴史を見てみないとだめなのですけれども、ただ、戦後の国際政治の歴史の中でも集団的自衛権がはっきり行使されたケースというのは余りないのです。  そもそも一番最初、国連憲章ができるときに、最初は集団的自衛権なんという言葉は入る予定がなかったのですが、中南米諸国が、外敵からの侵略に対して中南米諸国は共同防衛しようと、それを、国連の平和活動が始まる前は各国の固有の自衛だけじゃなければだめだというふうになると他国を助けることができなくなってしまうので何とかしてほしいという要望で、アメリカあたりが工夫したのがこの集団的自衛権という概念。  ただ、その後中南米でそういうものが使われたケースはなくて、むしろ戦後の歴史で集団的自衛権が担ってきた役割というのは、NATOとワルシャワ条約機構の、米ソ対立の中で米ソ東西両陣営が、そのブロック内のどこか一つの国にでもよそから攻撃があれば、ブロック全体で集団的自衛権行使で反撃するからという抑止の論理に使われていた。ですから、集団的自衛権は抑止のためのメカニズムとしてずっと戦後の国際関係の主流では使われてきているので、なかなか実例がないのですね。  若干の例として、例えばベトナム戦争。あれは北ベトナムと南ベトナムの戦争に対して、アメリカがその同盟国である南ベトナムの側に立って戦ったのですけれども、そういう場合も超大国が後から参加するような、東西対立のすき間の地域紛争に超大国が参加する場合の論理として集団的自衛権というのが援用されたケースはあるんですね。  ただ、今日本がこの周辺事態安全確保法案が集団的自衛権になるかどうかというのを検討するに当たっては、ジュニアパートナーと言ってもいいかもしれませんけれども超大国じゃない方の同盟国が、アメリカならアメリカがやっている戦争というか紛争、そこに後からその同盟国が集団的自衛権といって参加した、そういうケースがあるかどうかなんですけれども、この点、政府はどのように把握しているでしょうか。
  329. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 委員の御質問につきまして、紛争当事者の定義の問題があると思いますし、同盟国が集団的自衛権行使したということをどういう基準で判定するのかという問題があろうかと思いますので、確定的にお答えすることはなかなか難しいと思います。  他方、国連加盟国は、御承知のとおり、国連憲章の五十一条で、個別的または集団的自衛権行使に当たって当該国がとった措置について、直ちに安保理事会に報告しなければならないこととなっておりますが、この点について、私ども国連事務局に照会いたしました。先方からは、委員指摘のような、冷戦期に米ソの同盟国が米ソを支援するため集団的自衛権行使したということで国連憲章第五十一条に基づいて国連に報告されたケースがあるという回答はございませんでした。
  330. 達増拓也

    達増委員 それでは次の質問をいたしますけれども、この周辺事態安全確保法案の中身に沿って考えますけれども、集団的自衛権と言っている言わないにかかわらず、同盟のパートナーが、他のパートナーが紛争当事国となっている場合に、武力行使はしないで、つまり戦闘には参加しないで後方地域支援のみでその戦っているもう一つのパートナーを支援した、そういうケースは戦後あるんでしょうか。
  331. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 一般に、冷戦中に行われたものも含めまして、戦後の武力紛争において、一方の紛争当事者と何らかの関係にある第三国が、みずからは武力行使は行わないが、当該紛争当事国に対して武器を含む物品の供与や輸送等の各種の支援を行った例は多いのではないかと考えられますが、紛争当事国と第三国との法的な関係とか、あるいは支援の態様、枠組みといった詳細については具体的に承知していないため、御質問に対してケースを特定してお答えすることは大変困難であることを御理解いただきたいと思います。  まあ、これは正確かどうかわからないので、お断りした上で申し上げたいと思いますが、第三国による物品の供与の例としては、例えば、公刊資料によりますと、フォークランド紛争の際、米国は当時最新型の空対空ミサイルを同じNATO加盟国の英国に提供したとされており、関連の部品及び構成品も提供されたものと考えられますけれども、提供の枠組みとかその引き渡し地とか輸送の態様といった細部については承知しておりませんので、正確に御質問のケースに当たるか否かは必ずしも明らかにできないところであります。
  332. 達増拓也

    達増委員 戦後の国際関係の歴史の中で、その集団的自衛権をめぐり、あるいは同盟国への後方地域支援のようなことをめぐり、その法的解釈について余り確定していないということが言えるんだと思います。  私が心配いたしますのは、日本国内の議論においては集団的自衛権というものについてかなりの議論の蓄積もあり、政府解釈の蓄積もあり、これは集団的自衛権行使に当たる、これは当たらないというのが、かなり詰めた議論が日本国内では行われているんですけれども、それがそのまま国際社会で通用するのかどうかというと、国際社会では、今の答弁を聞いていましても、まともな議論が国家間で行われたり、国連の場で行われたり、そういう主張がされたりしたこともないので、いざ日本が後方地域支援をやって、これは集団的自衛権行使ではないと言っても、いや、行使だと言って、それに対して攻撃をしてくる可能性というのはやはりあるのではないかと思うわけです。  別の観点からその危険性について質問をいたしますが、伝統的な中立の概念からすれば、後方地域支援というのはこれは明らかに中立義務違反なんですね。その紛争当事国のどちらかに有利になるようなことをしないというのが中立の基本でありますから、その片方の、しかもその戦闘行動をサポートするようなことは中立義務違反。  これについて、きょう午前中の審議の中で同様の質問があり、政府からは、今の国連憲章の体制では中立という概念はもうなくなっていて、国連憲章に違反する違法な行為は、それはもう中立であろうがなかろうがだめだし、国連憲章に照らして正当な行為であればそれは正当、中立かどうかというのは国連憲章上は問題にならないという趣旨の答弁があったかと思いますけれども、ただ、国連憲章に照らして正当か違法かということが決まらないまま、ずるずる紛争が長引き、紛争の当事国となっている相手側からすれば、日本の後方地域支援を、伝統的な解釈で、これは中立違反だと言ってそれを攻撃してくるということは極めてあり得ることだと思うんですね。この点について、いかがでしょうか。
  333. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 午前中申し上げたことも踏まえまして補足させていただきたいと思います。  中立という概念、これは午前中も申し上げましたように、戦争自体が国家政策の遂行手段一つとして認められていた伝統的な戦時国際法のもとで発達したものでございます。したがいまして、武力行使が原則的に禁止され、国際法上の戦争が違法化された国連憲章のもとにおいては、戦争が違法でないということを前提とした中立という概念がそのまま適用されるわけではないということでございます。中立という概念が全く死んでしまったということではございません。伝統的な国際法で言っていたところの中立という概念がそのまま適用されることはなくなったということでございます。
  334. 達増拓也

    達増委員 そうしますと、ますます日本の後方地域支援活動に対し、米国日本が共同して、例えば紛争の場合に、第三国が日本に対して武力攻撃をしてくる可能性は極めて高いのではないかと思われるわけでありますけれども、改めてこの点、政府認識を伺いたいと思います。
  335. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  我が国との関係で現実に将来何が起きるのかということを確として申し上げることは、これはなかなか難しいわけでございますけれども、私どもの認識としましては、日本がかりそめにもとる行動、この問題に関しまして、現下の国連憲章のもとで他国が我が国行動を違法であると断ずるようなことは、これは断じてあってはならないし、あり得ないことというふうに考えております。したがいまして、他国がかりそめにも我が国行動を違法と断じて攻撃するということはないというふうに考えておりますし、そういうことがないように政府としては万全を期してやっていくということだろうと思います。
  336. 達増拓也

    達増委員 今の政府答弁の論理は、論理としては一貫性があり、国内における議論としては、国内の人を説得することはできると思うんですが、紛争というのはやはり相手があること、しかも外国でありまして、その論理に従ってくれるかどうかはわからない。  これは今までの委員会審議の中でも、日本相手にとって一見中立義務違反に見えるようなことをしていたとしても、日本がやっていることは国連憲章上何ら違法なことではない、国際法上全然違法なことをやっていないのだから、仮にそれをもし攻撃したとしたら、それこそが国際違法行為であって、その国はそんなことはしてはいけない、できないはずだということなんですけれども、あえて理屈をこねて、後で、例えば国際司法裁判所にかければ違法となるようなことでもしちゃう国というのはあるわけですね。サダム・フセインのイラクがクウェートに侵攻したときにも、侵攻した側には過去の領土の回復であったとか自衛を言っていたかもしれません。何か理屈をつけてやるわけであります。  たとえ、そういうことを第三国がやってきた場合でも、日本は正義の観点、法の観点からは勝てるかもしれないけれども、ただ、そういうことをやられて、実際日本側に人的な被害が出たりしたら、やはりそれは外交防衛政策としてはまずいと思うんですね。ですから、そういう法的正義の観点と同時に、やはりたとえ違法なことでも相手にさせないという抑止の観点、そういうことも必要だと思うんです。  そこで、論理的に考えられることは、今回のこの周辺事態に関する後方地域支援についても、この際、集団的自衛権という考え方を徹底させて、あくまで集団的自衛権行使としての後方地域支援だ、したがって、これはもう集団的自衛権、自衛ですから、日本武力行使にエスカレートする可能性もあるというところをあらかじめ明確にしておくことによって、そういう日本の輸送ですとかそういう活動に対して攻撃をしてくることを抑止する、仮に攻撃してきそうになった場合には、それを効果的に撃退するということが一つの考え方としてあると思います。  この考え方を取り入れれば、例えば輸送艦が後方地域支援で輸送活動をする場合に、相手からの攻撃可能性が高ければ護衛艦等を護衛につけまして、そうすると、相手が第一撃をする誘惑に駆られにくくなる、そういう狭い意味での抑止効果もあると思います。今の政府案のままですと、ほとんど丸腰の輸送艦が米軍の方に進んでいくということで、一か八か、その作戦自体は攻撃することで粉砕できるかもしれないという誘惑を相手に与える危険性があると思うんですね。  ただ、今の議論は集団的自衛権を徹底させればということでありまして、私は個人的にはそれがいいのじゃないかと思うんですけれども、自由党は現在この考えをとっておりません。自由党は、党内にはいろいろ議論はありますけれども、今自民党と連立与党を形成するに当たりまして、政府の現在の憲法解釈をひっくり返すことはしない。仮に集団的自衛権というのは憲法が禁止していないという解釈に立っても、政策的にそれを凍結して使わないということはあり得るということですので、いずれ政府がやらなければならないことは法の執行であって法の解釈ではございませんから、法の執行のレベルでは自自連立には何らそごがなく、集団的自衛権行使はしませんということで合意しております。  そこで、自由党としては、個別的自衛権の問題としてこの周辺事態における後方地域支援活動もとらえなければならないのではないかということになるわけであります。  ちょっと一方的な、話が長くなって恐縮なんですけれども、自衛の問題として後方地域支援等の周辺事態対応措置をとらえることに対しては、そもそも武力行使をするわけじゃないから自衛権の行使には当たらないだろうという指摘があります。しかし、それは準有事ということを今まで日本では余り詰めて考えてこなかったからでありまして、自衛権の行使には当たらないとしても、その自衛権の行使をいつでもできるようにするための自衛のための準備といいますか、まさに準有事としての自衛のための活動というとらえ方がこの際必要なのではないかと考えます。  例えば日本に対する武力攻撃が差し迫っている事態の場合、日本はさすがに動員をかけるわけであります、自衛隊の部隊が戦闘配備についたり、戦闘機や護衛艦等が公海上にまで進んで列をつくって相手攻撃が来ないようにする。それは自衛権の行使そのものではありません、まだ相手攻撃もないし、武力で反撃するわけでもないですから。ただ、それは自衛のための活動ではあるんですね、準備活動。ですから、いざ自衛権の行使をするのに必要な武装はそのときしている。ですから、後方地域支援についてもそういうことが可能な法的枠組みにしておかなければならないのではないかということです。  もう一つ、そういう考え方に対する批判で、日米の新ガイドラインで規定している周辺事態というのには、日本に対する直接の武力攻撃には決してならないような軽いものも入っているので、そういうものに関する協力をこの際排除することは日米関係にとってよくないという議論があります。確かにそれはそのとおりでありまして、この周辺事態という概念の中には準有事と平時とその二つが入っているんだと思うんです。  それは新ガイドラインそのものにも書いているように、日本に対する武力攻撃が差し迫った事態に移行し得ることも周辺事態の中に入っているし、決してそうはならないような、例えば純粋な内戦、もう戦闘というほどもないような社会的混乱で難民が大量に出るような場合、そのときにはその国が日本攻撃してくることはまずあり得ないということもあると思います。そういうときも周辺事態には含まれておりまして、そういう日本に対する武力攻撃に絶対つながらないような事態というのは、これは平時なんですね。ですから、国内法的にはあえて周辺事態という新しい観念をつくらなくても、ACSA、日米役務協定の枠組みをちょっといじればそういう平時の問題には対応できると思うんです。  この政府案の問題は、そうした平時的な観点で本当は準有事武力攻撃に発展するようなことも起こり得るような周辺事態全体を平時的な考え方でくくって、武器使用とか武装についてもあたかも準有事というものがあり得ない、純粋平時のような体制にしている、そういうところにこの法案の基本的な問題があり、そこはやはり修正する必要があるということを自由党は主張しているわけであります。  ということで整理をさせていただきましたけれども、続いて、周辺事態のほかにもう一つ重要な論点があります。後方地域支援のほかに重要な論点がございます。船舶検査でございます。  これは確認したいんですけれども、この法案の規定では、船舶検査について、通常の国際法上、慣習上、国連の経済制裁を守るために各国が行う船舶検査、警告射撃等も認められているそういう船舶検査に比べ、非常に限定的な、縛りをかけた行動しか認めないような規定ぶりになっております。これはアメリカと一緒にやる活動だから、たとえ日本が効果的に船舶検査ができなくても、逃げた船が、アメリカがチェックしている領域に入ってそっちでアメリカがきちっとチェックしてくれるだろうから、日米のこの周辺事態をめぐる協力の中に位置づけられる船舶検査だから、あえて国連の活動に関するものでもそういう縛りをかけた規定にしているのかどうか。  その趣旨からいえば、周辺事態にかかわるものじゃなければ、例えば湾岸戦争のとき、中東ですとかおよそ周辺事態に入らないようなときに我が国が国連のもとでの船舶検査に参加する場合には、この法案のような縛りのない、普通の国が普通にやっているような形でそういう活動に参加できるという趣旨なのか、この点を確認したいと思います。
  337. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 御指摘のとおり、周辺事態安全確保法案における船舶検査活動は、あくまでも周辺事態に際して我が国の平和と安全の確保を図るための措置一環としての船舶検査について規定したものでございまして、したがって、この法案のもとでは、周辺事態以外のケースにおいて船舶検査を実施することは予定されておりません。  また、周辺事態のケースでも、船舶の検査を要請する国連安保理決議がない場合には船舶検査を実施することはこの法案のもとではできないわけでございます。  それに、今までの実績というものを見ましても、イラクの場合であれハイチの場合であれユーゴスラビアの場合であれ、日本には委員が御指摘になられたような意味での一般的な船舶検査を授権する法律というのはございませんでしたから、日本はそういう意味での行動をとっていないわけでございます。
  338. 達増拓也

    達増委員 自由党が懸念しているのは、日本が、国連憲章の趣旨とまた日本国憲法の平和主義の理念に従って正義と秩序を基調とする国際平和を希求するため、国連のもとでの平和のための活動にいろいろ参加していくことを法的に整備していくに当たって、こうした国連の経済制裁を実現するための船舶検査にも、必ず参加しなければならないということではなくその都度その都度参加するかどうかの政策判断はするんですけれども、適当であれば、ほかの国がやっているような形で普通にそういうことに参加する、そういう法律をやはり別途つくらなければならないと考えているわけであります。  もしそういう法律が別にあれば、日米で協力しながらやる際にのみ、日本が非常に制限のある、縛りのかかった形でしか船舶検査ができないというのは非常におかしな格好になるので、国連の決議のもとでの船舶検査をこのような規定にするのはそもそも論理矛盾ではないかと指摘しているわけであります。  例えば掃海活動、これもきょうの午前中からいろいろ質問が出ておりましたけれども、日米周辺事態と呼ばれる地域のいろいろな事態対応する場合、この掃海活動というのは非常に重要なポイントで、アメリカ側日本に対する期待が大なんですね。また日本としても、これについては非常に高い水準の技術を持っております。  ただ、この周辺事態安全確保法案には掃海活動に関する法律はないわけでありまして、なぜかというと、既に自衛隊法の中で、掃海活動というのはやろうと思えば世界のどこででもできるようになっている。したがって、将来、船舶検査ということも、別途法律の定めがあれば、掃海活動と同様な位置づけで、周辺事態であるかどうかにかかわらず、普通の国がやるようにやれるようになるはずと思うわけですけれども、確認ではありますが、掃海活動については、周辺事態であろうがなかろうが、既に存在する法的な根拠に基づいて世界のどこででもやれるというふうに今なっているということでありましょうか。
  339. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 掃海活動について御答弁申し上げたいと思いますが、指針におきまして、周辺事態に係る運用面における日米協力の項に規定されております機雷の除去については、現行自衛隊法九十九条に規定される機雷等の除去とその趣旨、目的を同じくするものであります。周辺事態でも他の場合でも同様でありますが、同条に基づく機雷の除去を行うことは可能であると考えております。
  340. 達増拓也

    達増委員 最後に、少し理念的な質問を幾つかさせていただきたいと思いますけれども、今回の法案は、今の日本国憲法九条の文言そのものにこだわり過ぎる余り、とにかく何々しない、あれもしないこれもしないというような縛りだけが強くなっていて、本来、この法律によって日米の安保体制をより確かな、強いものにし、特に抑止効果、地域における、そもそも周辺事態なるものが起きないようにするという抑止効果を、もっと工夫すれば高められる抑止効果をあちこちで阻害している、そういう懸念を受けるわけであります。  地域の、今も非常にホットポイントとなっております朝鮮半島、ここはかつて朝鮮戦争という大きな戦争が起こったんですけれども、その朝鮮戦争勃発の決め手になったのは、当時のアチソン国務長官が、アメリカが極東において防衛すべき地域を明確にするに当たって、朝鮮半島をそのラインから外してしまった、そういうことを明言してしまったがために、北朝鮮が、アメリカがここでコミットしないんであればやってしまえということで南進したということが学説として非常に有力であると思います。  したがって、何々しない、これは一見平和主義的なことなんですけれども、そういう平和主義的な言葉でかえって抑止を損ね、平和を損なうことがあるという教訓だと思うんですけれども、これについてどう考えるでしょうか。
  341. 高村正彦

    高村国務大臣 今委員がおっしゃったようなことを複数の学者が言っておられるということはよく承知をしております。そういうことはあり得ることだとは思いますが、また同時に、そのことは確実に検証されることではないわけで、可能性とすればそういうことはあり得るということは言えるでしょうが、それが確実にそうであったかどうかということはわからないので。例えば、いろいろ、平和を唱えることによって平和になることもありますし、また、場合によっては、今委員が御指摘になったような可能性があることも否定できない。余りどっちかに決めつけて、平和主義者が戦争をつくるなどということを極端に言う必要はないんだろう、こういうふうに思っております。
  342. 達増拓也

    達増委員 この法案に即して言いますと、やはり抑止効果というのをかなり念頭に置いて、できるだけそれが十全に発揮されるようにした方がいいと思うんですね。それで、日本国憲法の平和主義というのはやはり現実的な平和主義であって、そういう抑止というものについても念頭に置いた平和主義だと思うんです。実際、アメリカの核抑止というものと不可分なものとして日米安保体制が戦後のこの地域の平和を守ってきたということもあり、そうした実績を踏まえての今回の法改正だと思います。  したがいまして、文言の理想主義的な部分にこだわって、かえって目の前にある軍事バランスを損ねたり、あるいは野心的な国や地域等に、抑止すれば抑止できるようなそういった行動をかえって誘発させてしまう、許してしまう、そういうことを日本国憲法がやれやれと言っているわけではない、そういう趣旨だと考えるんですけれども、この点いかがでしょうか。
  343. 高村正彦

    高村国務大臣 委員がおっしゃるように、野心的な国を唆して、あの国は無防備だから何でもしてもいいぞと、そういうことを思わせるために日本国憲法があるわけではなくて、やはり本当の意味の平和主義、国際協調主義ということはそういうことではないというふうに私は思っております。
  344. 達増拓也

    達増委員 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
  345. 山崎拓

    山崎委員長 これにて達増君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十一日水曜日午前八時理事会、午前九時公聴会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時六分散会