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1999-04-13 第145回国会 衆議院 日米防衛協力のための指針に関する特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年四月十三日(火曜日)     午前九時開議   出席委員    委員長 山崎  拓君    理事 赤城 徳彦君 理事 大野 功統君    理事 玉沢徳一郎君 理事 中谷  元君    理事 中山 利生君 理事 畑 英次郎君    理事 前原 誠司君 理事 遠藤 乙彦君    理事 西村 眞悟君       安倍 晋三君    相沢 英之君       浅野 勝人君    石川 要三君       大石 秀政君    河井 克行君       瓦   力君    栗原 裕康君       小島 敏男君    阪上 善秀君       桜田 義孝君    田中眞紀子君       田村 憲久君    西川 公也君       萩山 教嚴君    平林 鴻三君       福田 康夫君    細田 博之君       宮腰 光寛君    宮島 大典君       八代 英太君    米田 建三君       伊藤 英成君    上原 康助君       岡田 克也君    桑原  豊君       玄葉光一郎君    土肥 隆一君       横路 孝弘君    赤松 正雄君       市川 雄一君    佐藤 茂樹君       山中あき子君    東  祥三君       井上 喜一君    達増 拓也君       木島日出夫君    児玉 健次君       佐々木陸海君    伊藤  茂君       辻元 清美君  出席国務大臣         外務大臣    高村 正彦君         大蔵大臣    宮澤 喜一君         運輸大臣    川崎 二郎君         自治大臣    野田  毅君         国務大臣         (内閣官房長官         )         (沖縄開発庁長         官)      野中 広務君         国務大臣         (防衛庁長官) 野呂田芳成君  出席政府委員         内閣審議官   安達 俊雄君         内閣官房内閣安         全保障危機管         理室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障・         危機管理室長  伊藤 康成君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         内閣法制局第二         部長      宮崎 礼壹君         防衛庁長官官房         長       守屋 武昌君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 柳澤 協二君         防衛庁装備局長 及川 耕造君         防衛施設庁長官 大森 敬治君         防衛施設庁総務         部長      山中 昭栄君         防衛施設庁施設         部長      宝槻 吉昭君         沖縄開発庁振興         局長      襲田 正徳君         外務省総合外交         政策局長    加藤 良三君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 竹内 行夫君         外務省欧亜局長 西村 六善君         外務省条約局長 東郷 和彦君         大蔵省主計局次         長       坂  篤郎君         運輸省運輸政策         局長      羽生 次郎君         運輸省航空局長 岩村  敬君         海上保安庁長官 楠木 行雄君         自治大臣官房総         務審議官    香山 充弘君  委員外出席者         衆議院調査局日         米防衛協力のた         めの指針に関す         る特別調査室長 田中 達郎君 委員の異動 四月八日               辞任         補欠選任   東中 光雄君     児玉 健次君 同月九日               辞任         補欠選任   土肥 隆一君     鉢呂 吉雄君 同月十二日              辞任         補欠選任   玄葉光一郎君     近藤 昭一君 同月十三日              辞任         補欠選任   相沢 英之君     栗原 裕康君   大島 理森君     田中眞紀子君   近藤 昭一君     玄葉光一郎君   鉢呂 吉雄君     土肥 隆一君 同日                 辞任         補欠選任   栗原 裕康君     相沢 英之君   田中眞紀子君     大島 理森君   玄葉光一郎君     近藤 昭一君   土肥 隆一君     鉢呂 吉雄君 四月九日  新ガイドラインに基づく周辺事態法などの制定反対に関する請願金子満広紹介)(第二二八七号)  同(木島日出夫紹介)(第二二八八号)  同(辻第一君紹介)(第二二八九号)  同(中路雅弘紹介)(第二二九〇号)  同(中林よし子紹介)(第二二九一号)  同(春名直章紹介)(第二二九二号)  同(山原健二郎紹介)(第二二九三号)  同(吉井英勝紹介)(第二二九四号)  新ガイドライン関連法案立法化反対に関する請願深田肇紹介)(第二二九五号)  同(保坂展人君紹介)(第二二九六号)  同(知久馬二三子紹介)(第二三五〇号)  同(前島秀行紹介)(第二三五一号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  公聴会開会承認要求に関する件  日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件(第百四十二回国会条約第二〇号)  周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案内閣提出、第百四十二回国会閣法第一〇九号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出、第百四十二回国会閣法第一一〇号)     午前九時開議      ————◇—————
  2. 山崎拓

    山崎委員長 これより会議を開きます。  第百四十二回国会内閣提出日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の各案件を一括して議題といたします。  この際、公聴会開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。  各案件につきまして、議長に対し、公聴会開会承認要求をいたしたいと存じますが、これに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  3. 山崎拓

    山崎委員長 起立多数。よって、そのように決しました。  なお、公聴会は来る四月二十一日水曜日開会することとし、公述人の選定その他の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  4. 山崎拓

    山崎委員長 起立多数。よって、そのように決しました。     —————————————
  5. 山崎拓

    山崎委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中眞紀子君。
  6. 田中眞紀子

    田中(眞)委員 おはようございます。自由民主党の田中眞紀子でございます。  本委員会関連のある事柄でございますからまずお尋ねをしたいと思いますけれども、つい先日、四月十一日でございますけれども次期東京都知事に選出されました石原慎太郎さんが、米軍横田基地共同使用、これを公約として挙げておられましたのですが、ところが昨日夜のNHKのテレビニュースを見ておりましたらば、外務省とそれから防衛庁事務次官が、ともにその可能性をはっきりと否定しておられました。  多くの方が、私は違いますが、石原さんに投票した中には、理由一つにこの横田基地の問題があるのではないかというふうに思います。私は、日ごろこの問題についてはなかなか、後方支援とかあるいは周辺有事とか、こちらが頭が悪いのか耳が悪いのか知りませんが、議論を聞いていますとなかなかあいまいでわかりづらいことが多いのに、今回のこの二人の事務次官発言は非常に明快でございまして、その発言ぶりを見て、ちょっと私はあきれ返っておりました。官僚主導の、予防線を張るお手本みたいなものだったのですけれども。  そこで、まず防衛庁長官に伺いたいと思いますけれども、この事柄の中身、横田基地返還というものの可能性があるかどうかについてが第一点。二つ目は、所管大臣よりも先に、国民に対して非常に明快に事務方意見の開陳をすることについて、その是非についてお答えいただきたいと思います。
  7. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 私どもとしては、東京都知事候補者としての石原さんの公約は存じておりますが、知事に就任して、知事の確たる方針を伺ったわけではございませんので、今の段階で明確に答えるわけにはいきませんが、結論からいいますと、私ども横田基地返還については今のところ考えておりません。毛頭考えていないと言った方が正しいと思います。  その理由は、横田飛行場は現在、在日米軍司令部、第五空軍司令部及び第三百七十四空輸航空団等が置かれておりまして、在日米軍司令部機能及び輸送中継基地機能を果たしております。日米安保体制を維持する上で極めて重要な施設として認識しておりまして、現在ここには軍人軍属が約九千名、家族を入れて居住しており、また同基地の管制の実績は平成九年度において年間約三万二千回という大変大事な基地でございます。また、大部分が国有地でもございますので、都に返還するといったような話にはならないと思います。
  8. 田中眞紀子

    田中(眞)委員 それからもう一点、事務方が先にこんなに明快に答えることについて、これはやむを得ないとお思いですか。二つ目質問です。
  9. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 防衛庁において日ごろそういった返還についての意向は全くありませんでしたから、次官がそういう情勢を踏まえた発言をしたものと思います。
  10. 田中眞紀子

    田中(眞)委員 同じ質問外務大臣にお願いします。二点です。
  11. 高村正彦

    高村国務大臣 最初の点につきましては防衛庁長官が述べられたと全く同じで、後の点について申し上げますと、外務省におきましては、私の定例会見が火曜と金曜ということに決まっていまして、昨日はたまたま次官定例会見の日でありまして、そしてマスコミから聞かれたわけでありますから、聞かれたことを知っているのに答えないということは事務次官としてもできなかったことで、たまたまそういうことになった、こういうことでございます。
  12. 田中眞紀子

    田中(眞)委員 わかりました。  それでは、防衛庁長官に次の質問を伺いたいのです。  去る三月二十一日から二十五日まで数日間にわたって北朝鮮のいわゆる二隻の不審船による我が国領海侵犯事件がありまして、この経緯等についてはもう詳しく伺ってもおりますしメディアも書いておりますから、どういうことがあったということについては事実関係は伺わないで結構なんですけれども、これは四月六日のニュースで、このことについて小渕総理金大中大統領に対して電話で説明をしたということが報道されました。それに対する金大統領のお返事が、抑制のきいた日本対応に対して感謝をするというものであったというふうに承知しておりますけれども、この数日間のてんまつを見ていまして、これは日本政府は、韓国の太陽政策協力するためにも初めから捕まえる気がなかったんじゃないかなという印象と、それからもう一つは、捕まえようと初めはしたんだけれども結果的には取り逃がしてしまったということなのか、どちらなのでしょうか、簡単で結構ですけれども。結果として作戦を変更なすったのかどうかです。
  13. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 そういうこと、初めから捕まえないようにと考えたなんということは毛頭ございません。  私どもは、命を張って自衛官が精いっぱい頑張ったのですが、捕まえることができませんでした。その理由はかねてから申し上げているとおり、警職法の七条の準用がありまして、正当防衛緊急避難行為に当たらない限り艦内の人命に危害を加えちゃいかぬということになりますので、そういう意味で、人に危害を加えないで船を沈めたり逮捕するには非常に困難があって取り逃がしたというのが真相でございます。
  14. 田中眞紀子

    田中(眞)委員 今回のケースにつきましては、私は結果として今のような状態になったことはよかったのではないかというふうに考えております。  と申しますのは、今までの、大韓航空機の金賢姫も服毒自殺をしようとして失敗したということもありますし、それから日本海等北朝鮮工作員あるいは兵士と思われる人たちの死体が上がったりしていて、こういうことがあって、北朝鮮の場合は発見されるとどうもやはり服毒自殺とか自爆とかいうようなことをするということがありますので、そういうことになるとまた、もしも結果として、日本が捕まえた場合にそれを口実として、戦争まではいかないまでも北朝鮮がアタックをしてくるという可能性が極めて高かったわけですから、結果としてはああいうことでやむを得なかったのかというふうに思っております。  ですが、防弾チョッキが十二分に用意してなかったとか、燃料切れであったとか、それからネットの作戦の問題とか、やはり本当にやる気があったら日ごろからそういう細かいことについてもシミュレーションをし、トレーニングを積んでしかるべきだろうというふうに思います。  ただ私は、今回のことで一番私どもアラートでなければいけないこと、最も守るべき大切なことは何であったのかということを考えましたのですが、あの日本海には柏崎原発という世界最大原発がありますし、それから、福井には立派な、敦賀の辺を中心として原子力立地の地帯になっております。その近くに、船があんなに近くまで近づいてきていたという事実を考えた場合に、日本原子力政策、安全第一でやっております、でありますけれども、やはりこういうふうな人たちが近づいてくるような状態であるということは、いろいろ事務方説明も聞きますと、不審船というのはたくさんあって、漁船もあるから、なかなかそれをアイデンティファイするのは難しいという説明事前に聞いてはおります。ですけれども、やはり日本の本当の危機管理ということを考えた場合に、あのような状態であってはならないというふうに思います。  特に、海岸線が長い我が国でございますから、工作員がたやすく、現在も何人かもちろんいるという数字、大体は公安関係からもちらっと聞きましたけれども、とにかく、そういう工作員が一番怖いことは、原発と、もう一つサリン事件のように大都会で細菌兵器ですとかあるいは危険物をまき散らしたりして、社会的なパニックを起こす可能性もないとは言えないわけですから、やはり、本当に日本国民の生命と安全、財産を守るのであれば、そういうふうなことについてもっともっと危機意識を高めていただきたいというふうに思います。  そして、そういう危機管理というふうなことの対処について、御意見といいますか、日ごろのお考えを防衛庁長官に伺いたいと思いますけれども周辺事態に対して、日本の平和と安全を確保するための措置を強化するために今回の新ガイドラインというものがあるというふうに私は思っております。すなわち、従来の日米安保の不備を十二分に整備をして強化をするという必要性があるというふうに考えます。  日米間の信頼関係を強化することが目的であって、日本は、同盟国としてのアメリカに対して、アメリカ対応しやすいような環境づくりをするということ、これは重要なことなんですが、対アメリカだけではなくて、今回の審議をずっと拝見していまして感じることは、大事なことは、我々日本国民に対してもっと判断しやすい、わかりやすい情報政府提供していくべきではないか。外交的な努力と同時に、国内向けにもう少しわかりやすいことを言っていくべきではないかと思うんですが、その辺、日ごろどのように大臣は考えていらっしゃるでしょうか。防衛庁長官、お願いいたします。
  15. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 御指摘のとおりでございまして、私どもも今、重要事態対応会議というものを設置いたしまして、かなりの回数これをやっております。その中の非常に大事な一つは、国民に対する情報についてもう少し公開するようなことを考えるべきであるという前提のもとで、これを全部公開するということは国の防衛政策上あるいは安保条約体制のもとでは困難でありますが、どこまで公開できるかということについてひとつ検討しようということで、今鋭意そういう検討を加えているところでございます。
  16. 田中眞紀子

    田中(眞)委員 できるだけ、今この議論の中でも後方支援ですとか周辺有事の範囲とかいろいろなことを言われていますけれども地理的概念云々とかいうことではなくて、もっとクリアカットに、国民はもっとしっかり関心を持っておりますし理解力も高いわけですから、ストラテジーとして守らなければならないこと、それはあります、何でもかんでも情報開示が必要とは思っておりません。ですけれども、この議論がもう少し見えやすくわかりやすくすることが結果として国民の支持を得ることにもつながると思いますので、同じような役人答弁的なお答えではなくて、政治家がもう少しわかりやすい、前に出た表現をしていただきたいというふうに感じております。  地方自治という問題について伺いたいんですが、自治大臣、お出かけいただきましたのですけれども、ありがとうございます。  地方自治法、基本的に、これは何度も何度もこの委員会であるいは予算委員会でも繰り返しされていることと思いますけれども地方自治を遵守するべき立場にある大臣として、周辺事態法の九条との整合性についてどのように考えておられるか。  すなわち、九条の一項では、地方自治体の長に対して必要な協力を求めることができる、そして二項では、民間に対して必要な協力を依頼できる、そして最終的には、何か損害が生じた場合には国が補償するんだということだと思いますけれども、この周辺事態法自体は、要するに自衛隊だけの問題ではなくて、私たち一般国民の生活にも直接かかわることであるんだということをもう少しあまねくわかりやすく説明をする義務はないでしょうか。この事柄自治大臣としてどのように地方自治体とか民間国民に説得、納得してもらおうというふうに考えていらっしゃるか、その心組みといいますか覚悟といいますか、そういうことについてお話しいただければと思います。
  17. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 御指摘のとおり、この法案の第九条におきまして、国から地方公共団体の長あるいは国以外の者に対する協力を求めることができるとか、それに関連する条項を設けておるわけでございますが、これは、特に自治体に対してはあくまで協力を求めるということで、地方団体に対していわゆる強制措置を伴うというものではないということ、それから、同時に、地方団体は正当な理由がある場合にはこれを拒むことができるんだということも申し上げてきたわけであります。さらに、損失が生じた場合には国において必要な財政措置を講ずるというような条項を設けておるわけであります。  ただ、こういう形で地方団体立場は十分配慮されておると私たちは考えてはおりますものの、自治体関心も大変高いということでもありますし、これまでそれなりにいろいろな議論が行われておりますので、住民の中にも不安感を持ったりというような方があることも承知をいたしておりますので、今日までできる限り具体的な説明を行ってきたと考えておりますが、今後とも、関係省庁との連携のもとで、地方団体への説明について、さらに要請があれば積極的に具体的な説明を申し上げていきたいというふうに考えておるわけであります。  ただ、多少必要以上に不安感が助長されるようなところもあるのではないかというふうに考えておりまして、具体的に基本計画をつくるという前提として、事前にその計画の作成に当たって当該自治体の方と事実上いろいろ相談をしながら基本計画がつくられていくということは当然のことでありますから、そういった中で、何か一方的に、有無を言わせず問答無用で押しつけてというようなことにはなるわけがないだろう、私はそう思っております。  それから、何よりも、何か日本民間のそういう港湾や空港をある種の発進基地として、そういう総動員的な形でやっていくような態勢ということには、とてもそういう形にはなるわけがない、私はそう考えておりまして、多少今の議論の中で、必要以上に国民自治体に対して不安をあおるような議論が一方であるということも残念なことだというふうに思っております。
  18. 田中眞紀子

    田中(眞)委員 必要以上に不安をあおるような議論があってはいけない、不安を助長してはいけないというお立場上の発言もわかりますし、定義もおっしゃっていることはよくわかるんですけれども、そしてまた、当該自治体事前相談もしてきているということ、今までにしてきているというふうに理解してよろしいんですね。
  19. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 今まで、もともといわゆる周辺事態法そのものがなかったわけですから、これに基づく相談というのが今日まであったわけはないわけであります、その点では。  ただ、この法案、いわゆる日米防衛協力ガイドライン、これに基づいて法案を提出しているわけですね。そういう点で、事態が発生した場合にどう対応するか。そのときに、直ちに基本計画を作成して所要の手続にのっとって措置がとられていくわけでありますが、その基本計画を作成するときに当たっては、当然のことながら机上のそういう計画をつくるわけはないわけであって、当然、必要な関係省庁とかあるいは関係機関とか関係自治体の方と相互に連絡をとり合いながら計画が作成されていくだろう、これは常識的に当然のことじゃないか、私はそのことを申し上げておるわけであります。
  20. 田中眞紀子

    田中(眞)委員 そうしますと、一九九四年の朝鮮半島の緊張が高まったときに在日米軍日本に対して求めてきたと報道されているものですけれども、この委員会でも何度も言われていることですけれども、千五十九の項目が支援内容として非常に具体的に言われてきていて、そのことは、各自治体だけではなくて、運輸省にしろ警察庁にしろ大蔵省にしろ厚生省にしろ、あらゆる省庁にまたがる事柄であるわけですけれども、そういうこともこの法律が成立すると同時に具体的に進めていかなきゃならないというふうに当然考えておられるわけですね。
  21. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 このことは、正確には所管であります防衛庁長官からお答えをいただくべきことかと存じますが、私が今申し上げておりますのは、事態が現に発生した場合に初めて基本計画というものがつくられるわけでありまして、今御指摘の話は、そこに至る前のいろいろな想定の上でのいろいろな研究がどこかで行われたという話であって、政府として、今日までそういったことに対するきちんとした形でのものをやったという話は聞いておりません。
  22. 田中眞紀子

    田中(眞)委員 事態が発生したときにやるんだということは、概念として事実そうなるんでしょうけれども、しかし、突然完璧な危機管理ができないということは、阪神・淡路にしろ、あるいはサリン事件を見てもわかるとおりでございますし、その比ではないことが起こるわけですから、かなりアラート状態で具体的なことをやはり練っておいていただくべきではないかというふうに思います。  野田自治大臣は、この連立内閣ただ一人の自由党出身者でいらっしゃいますので、ちょっと細かいことについて伺いたいと思います。  この周辺事態法定義についてなんですけれども、もちろん、日本の平和と安定に重要な影響を与える事態ということを定義づけているわけですけれども、自民党は安保条約の効果的な運用に資するという文言を追加するという方向で行っているわけです。これはすなわち、周辺事態対応は安保条約の枠内であるということを明確に位置づけようとしているわけですが、民主党や公明党、それは国会承認の対象を自衛隊出動に限定する条件として、周辺事態をもっと明確に限定せよということを迫っていると思います。そして、大臣の自由党の中にもそのような考え方をしていらっしゃる方がおられるやに伺っておりますけれども、そこのところを自由党員の閣僚としてどうお考えかということが一つ。  それから、国連決議についてなんですけれども、自民党は船舶検査の前提として、実質的には国連決議がなければ実施できないとしていますけれども、野党はあくまでも国連決議を明確にしろ、明記しろということを迫ってきているわけです。その場合、自由党のお立場としてどのように考えられるのか。国連軍への参加ということも自由党さんは言っておられたわけですから、その辺も含めてその二点、お答えいただけますか。
  23. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 二点。一つは、国会承認といいますか、国会の関与の仕方という問題であります。  この問題については、自由党としては、基本的に報告ということだけではよくない、したがって、国会承認を求めるということを要件とすべきである、ただ、具体的にどういう内容のものをどの時点で承認を求めるのかということについては両党間で協議をしてもらいたいということにしてあるわけで、今、その点が議論をなされておることだと思っております。余り細かいところまでいろいろやっておりますと、動きがとれない、即応力というものが阻害されるということであってはよくない。しかし、全く何にもそういうことなしに報告だけで済むかというと、そういうわけにはいくまい、シビリアンコントロールという角度からも必要ですというスタンスであります。  それから、船舶検査についての国連決議の問題でございます。  自由党の考え方は、船舶検査にはいろいろな形の船舶検査、あるいは臨検等々のジャンルがあると思います、国連海洋法条約に基づく臨検であったり。ただ、ここで想定し得る一つは、少なくとも国連決議に基づくという場合には、国連憲章の四十一条なり四十二条ということを当然頭に置くわけであります。国連決議という場合は、大体そのことを指すだろうと理解をしておるわけですが、特に国連憲章四十一条というのは、単なる対等の国の間の船舶検査ということじゃありませんで、明らかに、言うなら国連加盟国はその決議に従う義務を伴っておるわけであります。  そういう点で、日米両国だけが行う世界ではないはずだ。そうすると他の国々も一緒になってやる共同行動なんだ、そうなれば、そこで行われるべき行動というのは、あくまで国際常識というか、国際的な枠組みの中で行われるべき行動パターンであるべきである。ところが、日本だけが引っ込んでしまったりしておりますと、効果的な船舶検査という態勢に、逆に日本が足を引っ張ることになってしまうんではないか。そういう点で、そういう国連決議に基づいて行われる場合には、それにふさわしい国際社会における常識的な対応の仕方ということがあってしかるべきである、これが一つです。  しかし、本法案においては必ずしもそうではなくて、言うなら船長の同意であったり、あるいは警告を発する際に照明弾まではいいが威嚇射撃は云々とか、いろいろな話がありまして、それだったら、それがやれないということであれば、国連決議に基づくそういう行動とは違うんではないかという認識をすべきなのではないか、そういうようなことがありまして、その辺の整理をしないと、混同してはいけないんじゃないか。  これはあくまで、国連協力という枠組みでやるんではなくて、いわば日米安保に基づく、それがずるずる、周辺事態がさらに深刻化していきますと日本有事にさえつながりかねない、そういう延長線の、言うなら自衛権の世界に通ずるような問題としてとらえるべきであるということであるならば、当然、相手の船長の同意ということもあるものですから、そこさえあれば、国連決議にこだわるべきものではないのではないかということを党としては主張いたしております。  ただ、この点について、必ずしも与野党を超えて共通の認識に立ち至っていないということも承知をいたしておりまして、その辺が今現在、各党間で御協議をいただいておる事柄であるというふうに認識をいたしております。
  24. 田中眞紀子

    田中(眞)委員 与党にお入りになったら大変柔軟になられたなと思う部分と、それからまだまだこなれてないなと思うところとございますので、また閣内での御努力と濶達な議論を期待したいと思います。  朝鮮半島の問題、それから対中国、対米という外交の問題ですけれども日本アメリカ日本と中国、日本と朝鮮半島、南北トータルですけれども、これについて日本政府がどのような考えを持っているか。内閣がかわるたびに一貫しているのはあいまいであるということでして、非常にわかりづらくなってきているな、こんなあいまいな、アンビギュアスなことでいいのかいな、いいわけないんですが、そのことを常々感じておりますので、外務大臣に伺います。  要するに、朝鮮半島というものは、一九五〇年の朝鮮戦争が勃発して以来、日米安保ができて、そして冷戦が終えんして、湾岸戦争があり、北の核開発があり、テポドンがあり、今回のTMDがありというふうに五十年近くの間に推移してきているわけですが、日本は、私の個人的な印象ですが、どうもこの朝鮮半島の問題については腰が引けている、過去の経緯、歴史的経緯がもちろんあるんですけれども、いつもアメリカペースで引きずり回されてきているのではないか。本当の、真の隣国である日本としての毅然とした外交が、今、そろそろもう打ち出されていい時期ではないかというふうに考えております。  例えば、先ほど来言っています二隻の侵犯船の問題について、これは結果的には逃げられてしまって、そして日本政府が何かいかにもでっち上げでもしたかのごときプロパガンダを、逆宣伝をされていて、日本政府が抗議をしても、あんなものは効果がない、したということは証拠は残るという程度のものでしかなくて、隔靴掻痒であるというふうに思います。  それからまた、KEDOの問題ですけれども、これは十億ドル日本が分担金として持っておりますけれども、これも、アメリカ日本がGDPを両方足せば世界の四二%も占めるほどの経済力がある国であるからというふうなおおような考え方もあるかもしれませんが、私は、そうではなくて、この問題、非常にデリケートな、難しい、大事な問題だというふうに思っております。  それは、ついこの間も、査察に行ったIAEAでしたかアメリカでしたかに対して、北朝鮮側が言っているのは、炉心棒が紛失している、それを指摘されたときに、これは初めからついてなかったんだなんてばかなことを言って、そんなことはあり得ないわけでして、核の転用というふうなものを日本はどう考えてこの拠出金、分担金を出しているのか、この額の問題も。  何か日本人が連れ去られたりすると、あるいは食糧問題で何かあったりすると、ちょっとしばらく凍結しようかなというようなことを言ってみたり、常にアメリカから後ろをつつかれているという感じで、日本の外交の自主性が感じられない。これについてぜひ伺いたい、日本と朝鮮半島の問題。どのような見通しを立てておられるかということです。どのような平和的な解決があるのか、統一について。  二つ目は、中国外交の問題なんですけれども、これは御存じのとおり、TMDについては朱鎔基首相はすごくナーバスな発言をしていますけれどもアメリカはもちろん在外米軍の防衛のためであると。それから、日本も台湾のことを含むか含まないかは例によってあいまいなことを言っているわけですが、朱鎔基は台湾を含むのは絶対反対であるということを明確に発言しております。  一九七二年から、国交回復以来、そのときからですけれども、日中の問題というのは台湾問題そのものなんですよね。そして、これだけ長い月日がたっていますけれども、朱鎔基は、このTMDというのは、台湾のきょうだい、すなわち自分のことを言っているわけですから、台湾というのは中国の密接不可分の領土であるということを言っているわけですから、それを日本も当然認めております、そうすると、台湾のきょうだいに対して日本アメリカはミサイルを向けるのかいなというふうなことを言っているわけです。  この台湾問題というのは本当に日本にいて余り感じないようなことですけれども、日中国交回復のときに既にこういう発言を当事者は言っております。台湾は非常に難しい問題であり、日中問題の大半は台湾問題だと言ってよい。そういう困難な事態を認識しながら日中国交を開くべく努力をしてきている。それから同じようなことを、中国問題は台湾の問題と不可分の関係である、台湾の処置を棚上げにしたまま中国問題と取り組むことは不可能である、したがって、内閣の仕事として一番面倒なのはこのことだということを発言しているのを私は、公式文書とそれから本人からその場で聞いたこともあるわけでございます。  その後ずっと、二十七年ですか、時間がたっているわけですけれども、台湾海峡の問題がこの間ありました、一九九五年から六年にかけて。そのときに台湾でもちろん総統の選挙があって、そしてそれに対して中国はミサイルの演習をやり、米空母が二つでしたか行った。そうしたら、それが抑止力になって一たんおさまった。しかし、来春また総統選挙があるわけですから、そういう中で日本は中国に対してどういうメッセージを発信するのか。  これは、いつもいつもその場主義的な、そうではなくて裏でちゃんと中国とも通じています、アメリカとも通じています、国会でだけは国民に対していいかげんなことを言っているだけですから御安心くださいということはおっしゃらないと思うんですけれども、そうであっては全く困るわけです。要は、私は、日本の外交というものが努力不足だというふうに思っています。もっと知恵を出して、腹を据えて、胸襟を開いて、相手の目を見て、中国に対して日本は物が言えます、その努力をしないでいたという感じが否めません。  台湾は中国の領土の一部でありますし、これは絶対侵さざる事実であるということを踏まえて、台湾問題というのは、南北朝鮮よりも私はむしろ御しやすい面があると思います。  というのは、今の世代、中国の新しい世代は、アメリカ等でもって教育を受けて帰ってきて経済、政治を動かそうとしていますから、その世代になればいいわけですが、その以前の方たちがまだおられる。そういうジェネレーションギャップがありますから、あと十年、十五年たったら相当中国の指導者の考え方も違ってきて、香港と同じような形で、もちろん法律の面での契約等はありませんけれども、台湾は自然な形で融和というか融合というか、統一をされていくだろうというふうな見通しを私は立てているんです。  ですから、余り日本が極端なことを言わずに、むしろ日本が外交の面で言うべきことは、アメリカに対して台湾に武器を売るべきではないとか、それから独立をあおるような言動、行為をしない方がいいとか、そういう日本独自の立場での発言というものがあってしかるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
  25. 高村正彦

    高村国務大臣 いろいろなことを質問されたので全部覚えているかどうかちょっとはっきりわからないんですが、まず北朝鮮に対しては、我が国としては対話と抑止、この両方をきっちりしていく。相手が建設的な対応を示すのであればそれに対してこたえていくし、非建設的な対応をするのであれば私たちは毅然とした対応をとっていく。ですから、相手のやり方次第でこっちがちょっと動いているように見えますが、対話と抑止、両方ともきっちりやっていくということにおきましては、私たちは確固とした姿勢をとっているつもりでございます。  それから、北朝鮮の工作船、もう不審船と言う必要はないと思いますが、工作船でありますが、この工作船の問題についてもっときっちり根拠を示したらいいじゃないかということは、それは確かにそういうメリットもあるんですが、それと同時に、これはまさにインテリジェンスの問題ですから、どういうことでそれがきっちりそう断定されたかということを余りきっちり示すことによって新たな情報がとれなくなる、これは情報の世界で当たり前のことなんですが、その比較考量のもとで、私たちはきっちりした根拠は示していないわけであります。私が考えているところで言えば、北朝鮮国民を除いて、世界じゅうが日本の言うことを信じて、北朝鮮の言うことを信じていない。こういう中で、わざわざ新たなインテリジェンス、情報がとれなくなる危険を冒してまで示さなくとも、私たちはそれで十分だというふうに考えているということでございます。  それから、KEDOの話は、私たちは現存する最も現実的で効果的な北朝鮮の核を抑止する手段である、こういうふうに考えております。  確かに、既に燃料棒からプルトニウムを抽出したのではないかという疑問がゼロではない。ゼロではありませんけれども、それで核ができるのは一発、二発であろうと何十発であろうと同じだということではないわけでありまして、私たちはそういうのがあっては困ると思いますけれども、前の原発が動くことによってさらに幾らでもプルトニウムが出てくるということは、それは抑えなければならないでしょう。  それから、核疑惑施設。この核疑惑施設については、米朝協議で一応査察ができる、こういうことになっておりますが、いずれにしても核疑惑施設が仮にそういう核開発のために動いていたとしても、そちらは若干時間があるでしょう。しかし、黒鉛炉の方が直ちに動き出せば、プルトニウムが直ちにどんどん抽出できるような状況になるとすれば、今このKEDOの枠組みは守っていかなければいけないでしょう。こういう判断を日本もしておりますし、国際社会みんながしている。アメリカ、韓国、EU、あるいは南米の国なんかも、これはかつて日本がぜひ参加してくださいよといって入ってもらった国もあるわけですが、そういう国も含めてそういう判断をしている、国際社会全体がそういう判断をしている、日本もそういう判断をしている、こういうことでございます。  それから、台湾の問題については、日本政府立場田中角栄総理以来一貫をしているわけでございまして、まさに日中共同声明、これを私たちはきっちり守っていく、この精神を守っていく。そして、中国の方も、この台湾の問題は平和的に解決したい、こういうことを言っておりますし、私たちはぜひそうあってほしい、中国人同士が平和的に解決してもらいたい。  だから、そうならないときを想定してどうだこうだということは余り日本政府として、あるいは外務大臣として言うべき話ではないのではないかな、こういうふうに思っているところでございます。  とりあえずこれだけお答えしておきます。
  26. 田中眞紀子

    田中(眞)委員 にもかかわらず、なぜか日本は中国、特にアメリカにも大して、はっきり物を言っていないという印象を受けております。何かおっかなびっくり、へっぴり腰外交をやっているような印象を受けるのは私だけでありましょうか。もう少し自信を持った外交を日本政府は、今の内閣だけじゃありません、ずっとですけれども、やっていただきたいと思います。  最後に一言ですけれども、国防関係でございますから、現場の声をぜひお伝えしておきたいと思います。そして質問を終わります。  一つは、二月九日十日に、沖縄の嘉手納、普天間、両基地及び航空自衛隊の那覇基地を視察させていただきました。そこで、平均二十五歳ぐらいの若い方たちが、アラート部隊といって、ファントムでいざというときには出動をするという状態、それを見せていただき、また、じかにお話を聞かせていただきました。  その方々は、平成九年の数字でいきますと、何とスクランブルは五十四回、週にして平均一回発進している。これは、完全に領空が侵犯されていなくても、あるいはそのおそれのある場合に頻発していて、これだけ動いているということ。それから、平成十年度は減って三十六回になっているそうですけれども、これは台湾、主にミラージュを使っているそうですが、これが日本の外交努力もあって少し減ってきているんだという数字を伺いました。ですが、その若いアラート部隊の制服を着た方たちがスクランブルが起こったら五分間以内に発進するんだといいながら、私もファントムに乗せていただきました。  その方たちに、どんな要望が政府に対して、特に防衛庁長官にあるかと聞きましたら、多分、今の若者は、昇級とかお給料とか休みをくれとかいうことを言うんだろうと思いましたら、そうではありませんで、はっきりと目を見て彼らが言ったことが、正面装備をよくしていただきたい、装備の問題です、これをできることならば現職の防衛庁長官の耳に届けていただきたいという声を伺いましたので、私はメッセンジャーとして言いましょうということを申しましたのですが、F15、これは空自が三、四年以内にはそろえるつもりでおられるということですけれども、やはりこれを、現場で一生懸命守っている方の声を生かすという姿勢をぜひ、予算は限られているとはいいながら、やはりやりくり算段をしてぜひかなえてあげていただきたい。  もう一点、三月四日の日に、相模湾での米空母、キティーホークに視察に行ってまいりまして、厚木から米軍の飛行機で飛んで着艦するのに乗っけてもらいまして、おてんばなものですから死なずに帰ってきましたけれども、ちょうどそのときはタッチ・アンド・ゴーの練習をアメリカ側がやっておりました。そこでもやはり若い兵隊さんが極東の安全を保障するため、守るために一生懸命働いている。  そういう現場の方たちの声を聞いて大変感動いたしましたけれども、やはり本当に平和と安全、幸せのために若い人たちが真剣で前向きに、命がけで仕事をやっている、こういうさわやかな姿に接して感動いたしまして、やはり永田町、霞が関の議論だけではなくて、現場で一生懸命国防ということ、平和ということのために尽くしている、こういう方たちの期待にこたえるためにも、よい議論を積み重ねていきたいというふうに思います。  ありがとうございました。質問を終わります。
  27. 山崎拓

    山崎委員長 これにて田中眞紀子君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田克也君。
  28. 岡田克也

    ○岡田委員 民主党の岡田克也です。  官房長官の記者会見の御予定があるようなので、通告した順序を若干変えながら質問したいと思います。  まず、日米安保体制について、もう一度ちょっと議論の整理をしておきたいというふうに思っております。  外務大臣にお伺いをいたします。  一九九五年に、東アジア・太平洋地域安全保障戦略、EASRと言われるものが出されたわけでありますが、その中でこういう表現がございます。「アジア太平洋地域における米軍の前方プレゼンスは地域安全保障と米国の全世界的な軍事態勢にとって不可欠な要素である。太平洋における前方展開戦力は、世界規模の危機に迅速かつ柔軟に対応する能力を保障する。」こういう記述がございます。もちろん、これは日米合意したものではなくて、アメリカ政府の考え方あるいは国防総省の考え方を示したものだということでありますが、こういう太平洋におけるアメリカ軍、つまり前方展開戦力というのは世界規模の危機に迅速かつ柔軟に対応する能力を保障するという表現について、外務大臣としては同じような認識でおられるのでしょうか。
  29. 高村正彦

    高村国務大臣 米国の戦略でありますから、私が、それがどういう認識かと言われるのも、有権的にこうだ、ああだと言う立場にはないと思いますが、やはり安保条約というものは、我が国の安全と極東、これは条約地域としてまさにそういうことになっているわけでありますが、その平和と安全が保たれることによってアジア太平洋全体についても平和と安全、そしてグローバルな意味でも平和と安全に貢献しているということは、それは結果的に言えるだろうと思います。  それから、今の言葉の中にこういう意味が含まれているのかどうかよくわかりませんが、例えばアジア太平洋に展開している部隊が中東に展開するというようなこともあり得べしということを意味しているのかどうか、ちょっと私、今お聞きしてよくわかりませんが、仮にそういうことが含まれているとしても、それがけしからぬということでは全然ないだろう。私たちが特に日米安保条約、安保体制の中で求めていることは、我が国の安全と極東の平和と安全、こういうことでございますけれども、それ以上のことを米国の戦略として考えているからといって、それに対して、それは違うだろうとかそうだろうとか言う立場には必ずしもないのだろう、こういうふうに思っています。
  30. 岡田克也

    ○岡田委員 大臣、ちょっと先走って答弁されたと思うのですが、日米安保条約の問題はちょっと横に置きまして、アジア太平洋において存在している米軍の存在、プレゼンス、それが世界戦略、アメリカの追求する世界的規模での危機への対処ということに役に立っているんだというアメリカ政府の認識について、外務大臣としては認識を共有されるのか。けしからぬとかそういうことを私は聞いているわけじゃなくて、認識を共有されるのか、いや、そういう認識は違うということなのか、いずれなんでしょうか。
  31. 高村正彦

    高村国務大臣 必ずしも違うということではない。ただ、共有という意味で、極めて積極的に共有するかどうかという話でありますが、まさにそれはアメリカの世界戦略の一環であろうと思っていますし、日本とすれば、それは許容しているということでございます。
  32. 岡田克也

    ○岡田委員 これは日米安保条約とは少し離れた話だと思うのですが、このナイ・レポートの中に出てくる表現は、アジア太平洋における米軍のプレゼンスそのものについての考え方だと思います。  ただ、そういう表現と並んで、こういう表現もあるのですね。「日米関係は米国の太平洋安保政策と米国の地球規模の戦略目的の基盤となっている。日米の安全保障同盟はアジアにおける米国安全保障政策のかなめ(リンチピン)である。」こういう表現もあります。ここのところはこういう認識を共有されますか。
  33. 高村正彦

    高村国務大臣 共有ということ、意味がいろいろ広い意味でありますけれども、そういう認識をアメリカが持っていることは困ったことだとは毛頭思っておりませんし、ある意味で共有しているということでございます。
  34. 岡田克也

    ○岡田委員 今、共有しているという御答弁があったわけですが、少なくともアメリカは、アジア太平洋における米軍の存在というものが、場合によってはアジア太平洋を超える世界的な、例えば中東とかその他の地域も含めた世界戦略にとって重要な意味を持っているという認識をしている、そして、それを支えるものとして日米関係というものが、あるいは同盟関係というものがある、こういうことだと私は思っております。  そういう中で、では次に、先ほど大臣はちょっと先走ってお答えになったと思うのですが、日米安保条約とそういう米軍の存在というものをどう考えるか。  先ほども少し答弁されましたが、日米安保条約は日本と極東の平和の確保のためにある。しかし、在日米軍というのが、必ずしもその目的だけではなくて、それ以外の目的のためにも存在している、さっき言ったような広い意味で存在している。そこのところをもう一度ちょっと、どういうふうにお考えなのか御説明いただけますか。
  35. 高村正彦

    高村国務大臣 日米安保条約は、その最も重要な条文である五条、六条から見てわかるように、我が国及び極東の平和と安全のためにあるわけでありますが、現実に、我が国及び極東の平和と安全が保たれることは、アジア太平洋あるいはグローバルの平和と安全に貢献しているということにもなるわけであります。それは一般的な話としてもそうでありますし、そしてもう一つ在日米軍が、ある場合には中東その他世界に別の任務を与えられてそこに移動するということもそれは当然あり得る話だ、こういうふうに思っております。  ただ、日本にいる目的は、あくまで極東と日本の平和と安全のためにいるわけでありますが、場合によってはほかの任務を与えられてほかに移動するということは、それは、NATOにいる米軍だって逆にこっちに来ることだって場合によってはあり得るでしょうし、軍隊の一般的な属性としてそういうことはあるんだろう、こういうふうに思っております。
  36. 岡田克也

    ○岡田委員 今の御説明は、冷戦期における日米安保条約の説明としては私はよかったんだと思うんです。冷戦華やかなりしころはそういう形で、主として日本及び極東の平和のために在日米軍基地米軍が存在していると。しかし、冷戦期においてすらそれがだんだん、そのためだけではなくて、その軍隊が、移動するという表現をお使いになりましたけれども、別の目的に活用されることもあったと。  しかし、冷戦が終了して、もちろん朝鮮半島という冷戦の遺物が極東にはありますので、なお大臣がおっしゃったような意味での日米安保の役割というものは私はあると思います。ある程度の重要な意味を持っているとは思いますが、しかし同時に、アメリカとしてはより広い範囲での、例えばアジア太平洋であったり、場合によってはそれを超える範囲での米軍のプレゼンスを確保することが非常に重要で、そのために在日米軍基地というものがある、だんだんそういうふうに重点が変わってきている、今やもう相当重点が移ってしまった、こういうふうに考えるんですが、そのような認識はお持ちではございませんか。
  37. 高村正彦

    高村国務大臣 米軍のプレゼンスというものが抑止力になっているということは、それは冷戦期であろうと、あるいは冷戦が終了して相変わらず不確実性が残っている今の状況でも、やはりそれは、国際情勢が違うんですから全く同じに機能しているとは言いませんが、米軍のプレゼンスが抑止力として働いているということは、私は基本的に同じことなんだろう、そういうふうに思っております。
  38. 岡田克也

    ○岡田委員 今、アジア太平洋地域において展開している米軍というのは約十万、その中で日本に四万強、朝鮮半島を除けばほとんど日本ですね。これはいつの時点かということによって変わってまいりますが、大体日本に四万強、韓国に四万弱、そして洋上に一万強、その他はほとんどいない、こういう状況でありますから、朝鮮半島における米軍というのはもう非常に限定した役割のためにあるわけで、それを除けばほとんど日本だというのが現実であります。しかも、海軍に対する基地というか、港としてはもうこれは圧倒的に日本が重要な役割を果たしている、その機能をかわって担うところは基本的にはない、こういうことだと思うんです。  したがって、ナイ・レポートもそうですし、それから日米安保共同宣言もそうですが、アジア太平洋における米軍の役割というものが非常に強調をされるわけですけれども、それは、やはりそれに対する裏打ちとしての日本基地、こういうものが当然の前提としてあるんだ、そういうふうに私は認識をいたしますが、大臣はそうじゃないとおっしゃるのであれば、ではほかに、アジア太平洋における米軍のプレゼンスというものを維持するために、日本基地以外にどういうものを想定されておられるんでしょうか。
  39. 高村正彦

    高村国務大臣 質問の趣旨が必ずしも私理解できたかどうかよくわからないわけでありますが、いずれにしても、日米安保条約において日本の国内に米軍基地を持つ、その直接の目的は、あくまで日米安保条約の条約区域である日本の安全、日本そして極東の平和と安全、これを守るためにある、こういうことであります。そして、そのことがひいては四十年間まさにアジア太平洋の平和と安定のためにも役立ってきたわけであります。これからも役立ち続けるであろう、こういうふうに思っております。  特に冷戦構造が崩壊したとき、一部ではありますけれども、もう日米安保は必要ないんじゃないかとかいろいろな議論があった中で、これからも必要なんですよ、これからも今までと同様必要なんですよと、そういうことを強調していろいろ言ったということでありまして、必ずしも今までとこの意味が変わってきたとかそういうことではないんだろうと私は理解しております。
  40. 岡田克也

    ○岡田委員 冷戦が終了して、これからも必要であるということを強調するためにやや言い過ぎている部分があるというようなニュアンスの御答弁だったんですけれども、私は、冷戦終了前からもうそういう変化というのは次第に始まっていた、冷戦終結がそれを加速した、そのことについてナイ・レポートあるいは日米共同宣言というのは認めたものだというふうに理解をしております。  非常にわかりやすく言えば、今までは、自分の家を守ってもらうために自分の家の三畳一間か何かを貸して用心棒を雇っていた、ところがその用心棒が、最近は夜になるとどこかへ出かけていって隣の町を一生懸命警戒して回っている、時々三畳間に帰ってきて何か御飯食べたりしている、そんな感じになってきたんじゃないのかなというふうに思っております。  いずれにしろ、ここの認識がもし日米間で違う、あるいは、同じなんだけれども国内向けにいろいろな配慮があって言い方をぼかしている、こういうことになるといろいろな弊害が出てくるんじゃないか、そのことを私は非常に心配をしているわけでございます。  例えば、この周辺事態法における位置づけについても、アメリカはかなり幅広い範囲での、例えばアジア太平洋地域全体における米軍の活動について日本後方支援をするということを期待しながらこの法律ができてきたんじゃないか。ところが日本は、そうじゃなくて、日本の平和と安全ということで非常に限定した範囲を言っている。そこに認識のギャップがあるんじゃないか、今でも残っているんじゃないかというふうに思いますが、そういう懸念に対してはどのようにお答えになりますか。
  41. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態というのは、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態ということを法案の中にも明確にしているわけで、その点について米側から日本の平和と安全だけじゃないよなどと言われたことは一回もないわけで、ふだんから密接な連絡をとりながら、そういうギャップが少しでもあるとは思っておりません。
  42. 岡田克也

    ○岡田委員 大臣、そうお答えになりましたが、しかし、その日本の平和と安全というものは一体何なのかということについて、この国会でも議論が錯綜しているといいますか、我々も議論しながら、ぴしっと明確に伝わってこないわけであります。そういうあいまいさの中で米国に対しても説明をしているということではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  43. 高村正彦

    高村国務大臣 そういうふうには思っていません。まさに安全保障の問題で、非常に柔軟に対応できるために、表現を余り確定的に、この一線を越えたら一切ないとかそういうことにしないというのはむしろ通例でありますし、日米間で密接な協議をやっている中で、そこに日米の間で特に認識のギャップがあるというふうには考えていないということでございます。
  44. 岡田克也

    ○岡田委員 それでは、ちょっと話を戻しますが、日米安保体制とか日米同盟という表現と、それから日米安保条約という表現と、例えば日米共同宣言の中にもその辺を使い分けながら説明している部分が私はあると思うのですが、基本的に、そこの整理を外務大臣としてどのように考えておられますか。
  45. 高村正彦

    高村国務大臣 日米安保条約というのは、まさに条約そのものですから、これはきっちりしているだろうと思うのですが、日米安保体制といった場合に、日米安保条約を中核とした日本と米国の同盟による安全保障体制をいっているわけで、その中には、お互いに外交的に連絡をとり合ってこういう外交を展開しようよとか、もろもろのことが含まれると思いますが、その中核は日米安全保障条約である、こういうふうに考えております。
  46. 岡田克也

    ○岡田委員 日米安保共同宣言の中で、日米安保条約を基盤とする日米安全保障関係が、二十一世紀に向けてアジア太平洋地域の安定、繁栄の基礎である、こういう表現がございます。それから、米国の軍事的プレゼンス維持はアジア太平洋地域の平和と安定の上で不可欠であることで一致した、日米の安全保障関係は米国の肯定的な関与を支える極めて重要な柱の一つとなっている、こういうことで、アジア太平洋における米軍のプレゼンスというものを日米安保条約は支えている。それから、日米安保条約というのは、日米の安全保障関係日米同盟と言いかえてもいいと思いますが、日米同盟の基盤になっている。その日米同盟というものが、アジア太平洋の安定と繁栄のさらに基礎になっている。大体そういう整理でこの日米安保共同宣言というのは書かれているのかな。  つまり、日米安保条約そのものがアジア太平洋の平和と安定に資するというよりは、日米安保条約があって、日米安保条約を基盤として日米の同盟があって、広い意味の同盟ですね、その日米の同盟がアジア太平洋における平和と安定を維持するための基礎になっている。そういう関係だと考えてよろしいでしょうか。
  47. 高村正彦

    高村国務大臣 日米安保条約を基盤とする両国間の安全保障面の関係が、アジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基盤であり続けるということが、御指摘日米安保共同宣言でうたわれているわけでありますが、ここで言う両国間の安全保障面の関係とは、日米安保条約に基づく日米安保体制に加えて、そのほかの日米両国が行う外交努力、安全保障面での協力をも包含する、より幅の広い協力関係を総称するものでございます。  日米安保共同宣言において、このような日米間の安全保障面の関係が二十一世紀に向けてアジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎であり続けることを日米両国の首脳が再確認しているのは、アジア太平洋地域において依然不安定要因が存在する中、米国は、引き続きその軍事的プレゼンスを維持することにより、この地域の平和と安定を維持していく上で不可欠な役割を果たしていること、及び、日米安保条約に基づく日米安保体制は、過去四十年間、我が国及び極東に平和及び安全をもたらしただけでなく、結果としてアジア太平洋地域における安定と発展のための基本的な枠組みとして有効に機能していることを踏まえてのものであります。したがって、米国がアジア太平洋地域の平和と繁栄のために日本がより大きな役割を果たしていることを求めているというわけでは必ずしもないんだろう、こういうふうに思っております。  委員がおっしゃっていた、アジア太平洋の平和に日米安保条約じゃなくて日米安保体制が基礎になっているのか、こういうふうなあれですが、日米安保体制が基礎になっていて、日米安保体制の基礎が日米安保条約でありますから、日米安保条約が全体の基礎になっていると言っても、それは間違いではないのではないか、こういうふうに思っております。
  48. 岡田克也

    ○岡田委員 私は、いろいろ配慮した上でそういう二段階論をわざわざ採用しているのかなと思いましたが、大臣があっさり否定をされましたので、それはそれで結構なことだと思います。  そうだとすると、日米安保条約というのが当初の目的である極東及び日本の平和の確保のためにあるということから広がって、広がってというか、少なくとも基地の使用というものが、基本的には日本と極東の平和のためだけれども、しかしそれから移動していくというような形で別の目的で使われることは否定しない、こういうことは大臣が最初に言われたわけでありますが、そのときに問題になるのは、事前協議の問題だと思います。  従来のように、極東及び日本の平和と安全のために直接出撃行動をとるときには事前協議の対象になりますと。では、それ以外の、六条で予定していない移動のような場合、移動という表現を使うのは私は余り好まないのですが、六条以外の場合に結果として在日米軍基地が使用されるというような場合にも、これはやはり、日本政府としては全くそれに対してノータッチだということであっては私はいけないのじゃないか。やはりそのときにも、今の事前協議とは違うかもしれませんが、事前協議に類似するような、日本政府として何らかの関与というものが必要になってくるのじゃないか、こういうふうに思うわけでありますが、この点については大臣はどのようにお考えでしょうか。
  49. 高村正彦

    高村国務大臣 その点については、私は委員の考えと全く違う考えを持っております。政府は一貫して委員のおっしゃったような考えをとってきていなかったわけでありますが、これからもそういうことに、今の政府の考え方を維持していくことになるということでございます。  軍隊というのは、それは確かに今日本にいる場合には、日本の平和と安全、極東の平和と安全という任務を持っているわけでありますが、その軍隊は日本にいる限りにおいてはそういう任務を持っているのですが、その軍隊にほかの任務を与えてはいけない、与える場合には我が国の了承が必要ですよということまで同盟関係の中で要求するというのは国際的な常識に合うのかどうかという話なんだろう、私はそう思っております。  例えば、日本にいる軍隊が我が国の安全、極東の平和と安全に全く役に立たないということであれば、それは出ていってくれ、こういう話でありますが、いるときに役に立っている部隊がほかのところで働く必要がある、そこに移動しますよというときに、私たちは、そっちでやることはけしからぬから、日本の許可を得なければ行くことまかりならぬと言うのは、どこの同盟関係であってもそこまで言うことは国際的常識を超えるものだ、私はそう思っております。
  50. 岡田克也

    ○岡田委員 大臣は非常に私の質問を歪曲して極端なケースにしておられるんですが、私はけしからぬとは言っていませんし、もしけしからぬとか許可がなければという話であれば、今の事前協議制度は、まさしくけしからぬからやっているわけですか、違うわけでしょう。
  51. 高村正彦

    高村国務大臣 事前協議制度というのは、アメリカ側が提議をして、そして日本がイエスと言わない限りやってはいけないという制度なんですね。ただ普通でいろいろ協議しましょうよという制度じゃないんです。日本がイエスと言わない限りはやってはいけないという制度であるわけです。  ですから、アメリカの軍隊が例えば中東なら中東に移動しますよというときに、それは行ってはいけないというようなことを言う権限が日本にあるということは、私は、それは国際的常識に反するのではないか、こういうことを申し上げているんです。
  52. 岡田克也

    ○岡田委員 私は事前協議とは言っていないので、事前協議に類似するようなという表現をしているんですが、どの範囲でそういうものを設定すべきかということはこれはまた別の議論でありまして、大臣おっしゃるような中東のようなケースまで言うのか、あるいはアジア太平洋の範囲で言うのか、そこのところはいろいろな議論があると私は思います。  しかし、一般論として言ったときに、直接出撃行動だけが事前協議の対象であってあとは全くノータッチですよというようなことで、安保条約全体の中身が変わってきている中で、それで本当にいいのか、こういうことを私は申し上げているわけでございます。実態がそれだけ変わってきているときに、もともとの日本及び極東の直接出撃行動はいいですけれども、それ以外のものについては全くあずかり知らぬ、それはアメリカがやっていることで、日本基地を貸しているだけですからそのことについては関係ありません、そんなことが私はむしろ通らないんじゃないか、国際的な常識として通らないんじゃないか。それは、やはり日本という国家である以上、国が供与している基地がいかに使われようと私は関係ありませんなどというのはあり得ないように思いますが、いかがですか。
  53. 高村正彦

    高村国務大臣 安保条約第四条に随時協議というのもありまして、日本と米国ではいろいろなことを随時協議することもできますし、そういう安保条約四条を持ち出すまでもなく、日米同盟関係だってふだん外交的ないろいろな話をしているわけで、そういう中で、米国がどういう行動をとろうということについて我々の意見を申し上げるということは、それは当然あるわけであります。  そうでありますけれども事前協議という言葉で言われれば、事前協議というのは、日本がイエスと言わない限り一切やってはいけない、日本がイエスと言った場合だけやっていい、そういう制度でありますから、その事前協議の中に、一般的にアメリカがどこかに移動することについていけないというようなことをするのは私は常識的に合わないだろう、こういうことを申し上げたわけでございます。
  54. 岡田克也

    ○岡田委員 この議論はさらに深めていきたいと思いますが、最後に一つだけ、事前協議、移動という話をされましたが、日本基地から空母が移動して、そしてそこから航空機、爆撃機が直接出撃する、これは事前協議の対象にならないというのが従来の政府のお考えのように聞いておりますが、そういう考えを今でも維持されておられますか。
  55. 高村正彦

    高村国務大臣 まさに一般的に今までいろいろ国会で問題になっていたようなケース、航空母艦が中東に行きました、そしてそこで戦闘に参加するためにそこから戦闘機あるいは爆撃機が飛び立っていきました、こういうときは移動でならない、これは何度も答弁しているところでございます。
  56. 岡田克也

    ○岡田委員 今中東と言われましたけれども、例えばそれが極東である場合はいかがですか。
  57. 高村正彦

    高村国務大臣 それはケース・バイ・ケースで判断されるんだろうと思います。まさに、そのことが、我が国基地から直接戦闘に出撃したというように評価され得るかどうかということで考えられるんだろうと思います。
  58. 岡田克也

    ○岡田委員 評価されるという言葉は非常に不明確なんですが、もう一度言いますと、日本基地、例えば横須賀なら横須賀から空母が出て、そしてそこから直接極東のある地域に戦闘機なり爆撃機が飛び立った、こういうケースはいかがですか。
  59. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 これは従来から申し上げていることでございますので恐縮でございますけれども、いわゆる戦闘作戦行動と申しますのは、言うまでもなく直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動でございまして、そのような戦闘作戦行動のための基地としての日本施設・区域を使用する際に事前協議が必要とされるわけでございます。したがいまして、米軍がそのような、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動のために我が国施設・区域から発進する際に、当然事前協議の対象となります。  したがいまして、艦船について申しまして、今極東とかいう話がございましたけれども大臣から申しましたとおり、それは個々のケースによって判断する必要がございますけれども、一般的に申しますと、その戦闘作戦行動が日本国内の施設・区域を基地として発進され、その艦船がこの施設・区域を出ていくとき、その航行自体が既に戦闘作戦行動の一部として認められるというような場合、これは戦闘作戦行動の基地として我が国施設・区域が使用される場合に該当するということで、事前協議の対象となるということでございます。  それ以外の、こちらから、日本施設・区域から出ていきまして、移動いたしまして、後ほど戦闘作戦行動に従事するというようなことであれば、それは発進のときには戦闘作戦行動の対応として、そういうことで日本基地を使用していることに当たらない、こういうことでございます。
  60. 岡田克也

    ○岡田委員 ちょっとグアムにでも寄り道すればそれでいい、こういうことになっちゃうと思うんですね、今のお話ですと。この辺はもう一度きちんと見直した方がいいだろう、そういうふうに私は思います。  きょうは周辺事態法審議ですのでこの辺にさせていただきますが、日本アメリカの庇護下にあったというか、半独立状態にあった、その考え方をずっと引きずって今日まで来ちゃったという感じが私はいたします。ですから、直接戦闘行動という考え方そのものが適切なのかどうかということも含めて、ここはもう少しきちんとした方がいいように思っておりますので、また機会を改めて議論させていただきたいと思います。  それでは、官房長官がお見えになりましたので、もとに戻りまして少し御質問したいと思います。  まず、これはどなたに聞くべきか迷ったんですが、官房長官にちょっとお聞きしますけれども、この法律についての与党の中での、つまり自自間での、自民党、自由党の間での協議というものがいろいろ進んでいるということが報道されておりますし、先ほどの野田自治大臣の方からも、協議をしているという事実についてはお認めになった上での御答弁があった、こういうふうに思うわけですが、いろいろ報道はあるのですが、我々にはその中身が示されておりません。  法案というのは閣議決定されて出てくるわけでありますから、与党の中で意見が違うままで国会に出てくることは本来はあり得ない。たまたまこの法律の場合には、法案国会に提出された後で自民、自由の連立というのがあったためにこういう変則的な事態になっている、こういうことだと思うのですね。しかし、国会においていろいろ議論されている中で、まだ与党の中で意見がまとまっていないのにこういう委員会議論をするということは、私は本来的にはおかしなことだ、こういうふうに思います。  自民党、自由党でいろいろ議論されているのであれば、早急にその合意事項というものをきちんとこの場に示されるのが筋ではないか、私はこういうふうに思いますが、官房長官、いかがでしょうか。
  61. 野中広務

    ○野中国務大臣 それぞれ与党間でさまざまな政策について議論がされておると私どもも聞き及んでおるわけでございますけれども、このただいま御審議を賜っております周辺事態の安全確保法案につきましては、現在、国会において十分な御審議をいただいておるわけでございまして、その御議論を踏まえた上で、政府といたしましても誠実に対応をしていきたいと考えておるわけでございます。  今後、ぜひ本委員会におきまして十分な御審議を賜りますことを率直にお願いを申し上げる次第でございます。
  62. 岡田克也

    ○岡田委員 一般論としては、今官房長官の言われたことはわかります。しかし、それは、政府の案というのがかちっと政府・与党の案としてある場合に、それを委員会国会の場で議論して、そして修正をしていく、これならわかりますが、そのかちっとしたものがまだないのですね。政府案はあっても、もう今やそれはあってなきがごときもの、実際の与党間ではそれと全然違う議論をしている。修正含みの議論をしているわけですね。そこで、我々野党としては何を議論したらいいのか、こういうことになると思うのですが、したがって、今の御答弁では私は不十分だと思いますが、いかがでしょうか。
  63. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 御承知のとおり、この法案は、既に一年前に政府案として国会に提出をされておる法案であります。そこで、内閣の構成が変わったということにおいて、では中身も変えて出し直すべきかどうかについては、そこは考え方の問題だと思います。  ただ、少なくとも、両党間、この連立政権がスタートする前にこの問題の取り扱いについてかなり詰めた議論も行いました。その中で、両党合意事項の中で、「ガイドライン関連法案は、わが国の平和と安全に重要な影響を与える事態である周辺事態に対し、米国への協力を通じ、日米安保体制の実効性をよりよく確保するためのものである。」そして「政府が提出している周辺事態安全確保法案等については、かかる考え方を明確にするため、今後、両党間でさらに議論を深め、次の通常国会でこれらの早急な成立、承認を期す。」「具体的には、後方地域支援、後方地域捜索救助活動及び船舶検査について、このことを明確にする。」ということで、そこから先の具体的なところを両党間でさらなる協議を進めてきておるということが第一点。  それからいま一つ政府としては、今日まで、あくまで原案どおり通していただくのがベストであるということを言い続けてきておる立場である、政府としてはね。しかし、国会における審議という中で、単に連立与党間だけの協議でこの法案に関する取り扱いがすべて処理されてしかるべきものであるかどうかということについては、まさに今、本委員会で大変熱心な御議論をちょうだいしておって、実態問題として、与党内のみならず野党をも含めた各党間の中で事実上いろいろ御議論をいただいておるということも承知をしておるわけでありまして、そういう点で、与党内だけで決まればそれでいいということではなくて、野党をも含めた協議が今進行中であるということを受けて、その点について十分尊重をしなければなるまいというのが今日のスタンスであるというふうに理解をいたしております。
  64. 岡田克也

    ○岡田委員 もう一度繰り返しますけれども、いろいろ議論をしていく際に、まず、この委員会の場で、国民の見えるところで議論していって論点が整理をされ、そして、並行して例えば理事会において協議していく、こういうことだと思うのですね。ところが、委員会議論をする際に、政府の中が一本じゃない、ちゃんとした政府の考え方がまとまっていない、政府という言い方が悪ければ与党、連立与党の中で考え方がまとまっていないという中で、何を我々に議論しろというのですか。
  65. 高村正彦

    高村国務大臣 今、はっきりした政府案を国会に提案しているところでございますから、まさにこの案を審議していただきたいと思います。  これは、連立政権でなくとも、例えば自民党一党で法案を出した場合でも、野党からいろいろな意見があった場合に、それでは自民党の中でどう考えようかという、自民党の中でいろいろな議論をすることもあるわけで、たまたま今度連立政権でありますから、連立政権の与党の中でいろいろしているのかしていないのか、私よく知りませんけれども、そういうことがあっても、政府として出している案ははっきりしているわけでありますから、これについて御審議いただいて、そして国会全体でこれをどう処理するか決めていただければいいのだろう。処理するというのは、このまま通していただくのか、だめだというのか、あるいは何らかの修正を施して通すというのか、私たちはこのままできるだけ通していただきたいということを今申し上げているわけでございます。
  66. 岡田克也

    ○岡田委員 基本的にそこが違うと思うのですね。与党と野党をごっちゃにして議論されておりますけれども、与野党で議論してその後修正が加わる、それはわかりますよ。しかし、与党の中で違うのです。  本来であれば国会に出せないですよね、閣議決定というのがあるわけですから。たまたまこれはその前に閣議決定がされていたから国会に出てしまっているわけですけれども、本来審議してはいけないと僕は思うのですよ、そういう状態法案を。  なぜ閣議決定というものを法案について必要とするのか。それは、政府の中で考え方が一致しているということを具体的に示すために閣議決定という作業があるはずです。その政府の中での意見の統一というものが今ないのでしょう。自由党と自民党、違うわけでしょう。だから、そういうものをこの国会に持ってくること自身が私はおかしいと思います。いかがですか。
  67. 野中広務

    ○野中国務大臣 政府国会にお願いをしておる法案はこれ以外にないわけでありまして、政府が改めて訂正などして提案をする、あるいは修正して提案する立場にないわけでございまして、ぜひ本案をこの委員会初め国会において御審議をいただきたいとお願いを申し上げる以外はございません。
  68. 岡田克也

    ○岡田委員 野田大臣、いかがですか。
  69. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 政府としての立場は今官房長官から申し上げたとおりでありますし、先ほど私からも申し上げました。何といいますか、実際問題、この法案をぜひ早期に、できれば無傷に近い形で成立ができるということが、政府として一番望ましいことであります。  しかし、実際、この国会における熱心な御審議の上で、よりよい中身のものにしていこうという中で、与党内のみならず野党からもいろいろな御議論があることは周知の事実でありまして、そういう点で、与党内調整だけでなくて野党の意見をも十分にそんたくしながら、今論点整理などということで、いろいろ熱心な、委員会としても御努力をいただいておる最中でございます。  そういう点で、与党だけで、両党でまとまればそれでいいんだよ、さてそれについてイエスかノーかというような性格のものではないのではないか。したがって、これはこの審議を通ずる中で、もちろん与党内の意見のすり合わせは私はもう九九・九%でき上がっておると思いますが、しかし、それだけですべてが決着する話なのではなくて、今野党の御意見をも十分拝聴しながら協議をしていただいておるだろう、私はそう認識いたしております。
  70. 岡田克也

    ○岡田委員 議論をすぐすりかえられるわけですが、私は別に与野党の問題を言っているんじゃないんです。それは当然です。国会議論して、そしてよりよいものにしていく、これは当然のことだと思います。その前提として、やはり与党の中で一本化して出してくるべきじゃないですかということを私は申し上げているわけで、議論をちょっとすりかえないでいただきたいと思うんです。  それで、今、野田大臣は、今の政府案が無傷で通ることが望ましい、こういうふうに言われました。そうすると、野田大臣は、自由党に属しておられるが、今の政府案がベストである、こういうふうにお考えなんですね。
  71. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 小渕内閣の閣僚の一員としてはそういうスタンスであるということは、これは前から申し上げております。  しかし同時に、この点は、連立に至る過程の中で、内容について、国会審議の過程の中で十分に両党間の考え方を反映していくんだということを前提としてやっておるわけでありまして、その点は何ら問題はない、こう私は考えております。
  72. 岡田克也

    ○岡田委員 小渕内閣の閣僚の一員になったからこの法案賛成であるということになると、自由党の幹部としての立場というのは無視をする、こういうことですね。違うんですか。そっちはそっちで大事だというんなら、では、どっちなんですか。使い分けは、そんな、できないと思いますよ。
  73. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 たびたび申し上げておりますが、少なくとも連立がスタートする前において、先ほど読み上げました両党間のこのガイドライン法案関連するいわゆるポイントについて、両党間でさらに詰めていこうということまで申し上げておるわけであります。  ただ、少なくとも、この法案が一年前に政府案として提出をされ、この法案をもとにして今御議論をいただいておるということは厳然たる事実でありまして、この法案を御審議いただく過程の中でいろいろな御議論が出てきて、それが反映されていく、そういう過程の中で自自両党間の合意事項が反映されていくものであるというふうに考えておるわけであります。
  74. 岡田克也

    ○岡田委員 我々としては、何を相手に議論したらいいのかさっぱりわからないという事態になっているわけですね。政府案なのか、一方で自自の合意というものがいろいろ出てくる。
  75. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 たびたび申し上げておりますが、現在出されております政府提出の法律案に基づいて御議論をいただいておる。これ以上のものでもなければ、それ以下のものでもないというふうに私は思っております。
  76. 岡田克也

    ○岡田委員 それでは、具体的にお聞きしますが、例えば船舶検査ですね、国連安保理の決議が要らないという議論がございます。これについて、外務大臣、いかがお考えですか。
  77. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態安全確保法案における船舶検査活動については、国連安保理決議の存在を前提としているわけでございます。これは、周辺事態において、経済制裁の実効性を確保するために船舶検査を行うことが必要となることも想定され、そのような活動を我が国が行う場合に、国連安保理決議という根拠があることが有益であると考えられたためでございます。  すなわち、周辺事態に際し我が国が船舶検査活動を実施する際、船舶の検査を要請する国連安保理決議があれば、国連憲章第二十五条により国連加盟国は自国の船舶が検査を受けることを受忍しなければならないことから、旗国の同意を改めて確認することなく、公海上において他国の船舶を検査することができることとなります。このことから、周辺事態安全確保法案では、国連安保理決議の要請があることを前提といたしました。  これについては、政府としては、国会において十分議論を尽くしていただいた上で、周辺事態安全確保法案国会での審議を経て早期に成立、承認されることを強く期待しているわけでございます。  国連安保理決議がなくても、こういう場合にやった方がいいじゃないかというような点をこの委員会の中で指摘した委員もおられるわけでありますし、それはそれで一つの考え方だ、こう思います。  いずれにしても、船舶検査をやる場合には国際法上の根拠が必要なわけでありますが、政治判断として、これだけでは狭過ぎる、もう少し広げようというのか、いや、これでいいじゃないかと今の政府立場を理解していただけるのかという問題だろう、こういうふうに思っております。
  78. 岡田克也

    ○岡田委員 最後、非常にあいまいな言い方をされたんですが、例えば、条約とか国際的約束とか国際的な慣行に基づき実施する場合にも船舶検査を認めるべきだ、こういう議論がございます。  条約、国際的な約束、国際的慣行、これは例えば具体的にどういうものを想定しておられるのですか。
  79. 高村正彦

    高村国務大臣 政府がこういうようなことを申し上げたことはないので、どういうことを想定しているのかと言われても非常に困るわけでありますが、私はこういう案を新聞で読んだことがありますので、どういうことを想定しているのかなと思って私なりに考えた。こういうことを言っている方がどういうことを想定しているのかわかりませんけれども、例えば、国連安保理の決議はなくとも、幾つかの国が集まって、お互い旗国としての権利を放棄するから、お互いの国の中でお互いに船舶検査をできるようにしようではないか、こういうようなことは一つあり得るのかな、こういうふうには思っております。  いずれにいたしましても、政府立場は、今の案で通していただくのがベストだ、こういうことでございます。
  80. 岡田克也

    ○岡田委員 幾つかの国が集まって、お互いその国の中で検査できるようにしよう、こういう話でありますが、ほとんど意味のない話だと思うんですね。その国の中だけですから、第三国に対しては検査できないわけですね。これはあくまでも国連決議が必要になる、こういうことだと思うんです。  例えば、日本アメリカと韓国の間でそういう検査をできるようにしよう。そうすると、日本と韓国とアメリカの旗を掲げている船に対してはそういうことができる、しかしほかの国にはできません、そういうことを議論することに意味があるんですか。自治大臣、もしあれば。
  81. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 自民党と自由党の間でさまざまな視点から議論が行われておりますそのうちの一つに、船舶検査に対する対応をどうするかというものが一つのテーマになっております。恐らく、それに関連して、いろいろな中でやりとりがあろうかと思います。  詳しくは、私もそこまで存じてはおりませんが、基本的な考え方として、外国の船舶に対する臨検なりあるいは検査ということについて、いろいろな角度から、例えば、国連海洋法条約の中でいわゆる臨検というものが規定されたり、あるいは国連憲章に基づいても、四十一条なり、あるいはさらなる強制を伴う四十二条なり、そのほかの国際条約というようなことがあることは、もう委員御承知のとおりであります。  そういった中で、今回どういうことをやろうとするのか。少なくとも、国連決議に基づいて行われるというのであれば、恐らく四十一条なり四十二条なりということに基づいて行われる検査になるんだろう。そのときには、二国間だけでやるような世界ではなくて、恐らく他の国々も参加をしてやっていく。それは国連憲章遵守義務というものが加盟国にはあるわけであって、そうであれば、通常の国際常識、船舶検査で行われるような対処行動というものを国際常識に従ったそういう枠組みの中でやらないと、日本一国だけが異なった対応をするということになれば、その実効性を逆に阻害してしまうのではないかというような懸念が一方ではある。  しかし、日本はそこまであえてやらない。あくまで船長の同意をも前提とするのであるというようなことを動かさないという中での検査をするんですということであるならば、むしろ国連決議ということではなくて、問題は、そのときに船長の同意だけではなくて、旗国の同意が要るか要らないかという部分もあるんだろうから、そういったことをもう少し柔軟に考えて、実効性の上がるようなやり方はないのかねという問題提起を自由党として行っておるというふうに私は承知をしておるわけであって、そういう物の考え方ということについては、自民党のその衝に当たられる方々も、個人意見としては十分なお互いの理解はし合っているように私は承っております。しかし、それは両党間だけで決着できる世界のものではなくて、当然のことながら、野党の皆さん方がこの点についてどういうふうな認識なり主張をしておられるかということをも十分頭に置いた上で、この問題について整理をしていかなければならないというふうな段階になっておるというふうに私は聞いております。
  82. 岡田克也

    ○岡田委員 いろいろ今、野田大臣お話しされましたけれども、いろいろ聞いているとか承っているとか、そういう話でありまして、伝聞なんですね、結局。自由党と自民党の間でこういう議論をしている、自由党はこう主張していると承知しているとか、承っているとか。つまり、この場では大臣としての発言で、そういった自由党の主張については直接はお話しにならなかった。それはそうでしょうね、ここで自由党と自民党の違いをそれぞれの大臣が出身の所属の党に基づいて発言し出したら、完全に閣内不一致になってしまいますからね。  ですから、そういう伝聞でお話しになる限りにおいて、我々議論できないのですよ、きちんとした詰めた議論が。だから、国会議論しないままこの法案が修正されてしまうということになりかねないのですよ、これは。  だから、私は委員長に御要望申し上げておきますが、自由党と自民党、つまり与党間の合意がきちんとできた段階で、この委員会にそれを出していただいて、その上で議論させていただく。そういう時間をきちんと確保していただかないと、これは国民が見ている国会の場で議論しないで決めちゃうことになりますよ。もし理事会でやったとしても同じです、それは。そこをきちんと確保していただけませんでしょうか。
  83. 山崎拓

    山崎委員長 岡田克也君に委員長として申し上げます。  この法律案周辺事態法でございますが、これに関しましては、累次の国会で継続審査措置がとられてまいりまして、この案件について国会審議をすることが各党合意でございます。  さらに、特別委員会が設置されまして、この委員会に付託されましたわけでございます。付託されまして、この法律案審議するということが合意されまして、審議が続けられているという状況でございまして、これは国会法上も、あるいはあなたがおっしゃる政治的な見地から申しましても、政府提出の法律案につきまして審議を進めたいと存じます。
  84. 岡田克也

    ○岡田委員 今お話しされたんですが、しかし、我々何を議論したらいいのかはっきりしないのですね。政府案はありますけれども政府案と違う議論が今や与党の中で、与党というのは政府を構成する与党の中で進んでいるわけであります。ですから、やはりどこかの段階で、きちんとした、与党としてはこういう考え方であります、政府案とここをどういうふうに変えましたというものが、本来であれば法案で示されるのが私は妥当だと思いますが、少なくとも考え方としてはきちんと出されて、それに基づいてこの委員会審議をしなければ、この委員会は何のためにあるのか。  もう今やほとんど変わってしまったかもしれない政府案だけを議論しているけれども、肝心の変わったポイントの部分については、審議しないままに委員会が終了してしまうことになりかねません。それは私は絶対認められません。いかがでしょうか。
  85. 山崎拓

    山崎委員長 岡田委員委員長に対する御質問と受けとめましてお答えいたしますが、委員個人のお考えであろうかと思います。  この委員会といたしましては、既に、三案件につきまして審議を行うことを決定いたしまして、日程を組み、審議を続けているところでございます。そして、政府提出の案件につきまして質疑が展開されてまいりましたわけでございます。その一環としてあなたも質問をしていらっしゃるという状況にございます。
  86. 岡田克也

    ○岡田委員 私が申し上げているのは、ですから、その政府案で与党の中の合意があると我々当然思ってこの審議に入っているわけです。それがいまだに、いろいろ違う意見が出てくるから申し上げているわけです。事情が違うんです、我々が想定していたことと。いかがですか。
  87. 山崎拓

    山崎委員長 お答えいたしますが、与党間で議論をするということはあり得ると思いますが、これは政府提案でございまして、政府提案の案件三件について審議をするということを与野党間で合意いたしまして、審議を進めているわけでございます。  あなたの御議論は、この特別委員会が設置される以前とか、あるいは設置されました後審議に入る直前までの御議論としてはあるいは議論の余地があろうかと思いますけれども、既にもう審議が始まっておりまして、かなりもう進捗いたしておる状況でございます。
  88. 岡田克也

    ○岡田委員 私は、この政府案を審議しないと言っているんじゃないのですよ。現実に審議しているわけです。審議しないと言っているんじゃありません。しかし、これだけを審議して、実は与党の間で違う案がもうほぼできつつある、今、野田さんも、九九%できているというふうなことを言われました。それがなぜ出てこないのですか。そのことについてもやはり議論委員会でできなければ、結局、国会を飛ばして、勝手に各党が、あるいはそのほかに野党も場合によっては入っちゃうかもしれません。与野党が勝手に談合してつくってしまうと、国民には全然そのプロセスが見えないということになりますよ。  だから、やはりきちんとしたものを出していただいて、委員会議論をして、国民に見える中で、お互いに修正協議、合意をしていかないと、これは本当に禍根を残すことになりますよ。いかがですか、委員長
  89. 山崎拓

    山崎委員長 お答えいたしますが、与党二党で法律案の内容を変えるというようなことはございません。
  90. 岡田克也

    ○岡田委員 この点は、引き続き理事会でも議論されることだと思いますし、私も問題意識を持っておりますので、もし仮に、この委員会の場にきちんとした与党の間の修正案というもの、あるいは考え方というものが示されないままにそれが採決されるということになれば、それは私は全く国会を無視した話になる、そのことをまず申し上げておきたいと思います。よろしくお願いをしたいと思います。
  91. 山崎拓

    山崎委員長 民主的に運営いたします。
  92. 岡田克也

    ○岡田委員 それでは、次に参ります。  日米安保条約との関係を少し議論したいと思いますが、日米安保条約の目的の枠内とかあるいは日米安保条約の枠内という議論がございます。目的の枠内と安保条約の枠内というのは基本的に同じだ、こういう御答弁が政府の方からはあったと思いますが、もう一度、安保条約の目的の枠内ということの意味について御説明をいただけないでしょうか。
  93. 高村正彦

    高村国務大臣 日米安保条約の目的は何かといえば、最も重要な条文である五条、六条から明らかなように、我が国及び極東の平和と安全、こういうことであります。そして、この周辺事態安全確保法案というのは、そのうち我が国の平和と安全ということに着目したものでありますから、安保条約は極東の平和と安全というのも入っていますが、この法案我が国の平和と安全ということに着目したものでありますから、その目的の範囲内であるということは明らかなことであるということを何度も答弁しているところでございます。
  94. 岡田克也

    ○岡田委員 そうすると、その目的の枠内という表現を法文の中に書かれるというお考えはあるのですか。
  95. 高村正彦

    高村国務大臣 政府といたしましては、今提案しているものがベストだと考えておりますから、このまま通していただくのが一番ありがたい、こういうことでございます。
  96. 岡田克也

    ○岡田委員 目的の枠内という表現、今の御説明なんですが、結局、目的が同じであるということを示しているだけで、日米安保周辺事態法関係については何も言っていないと思いますね。ベクトルが同じ方向を向いていると言っているだけで、それがどういう関係にあるのかということは言っていない、そういうふうに思いますが、いかがですか。
  97. 高村正彦

    高村国務大臣 私が申し上げているのは、目的というのは、極東と我が国の平和と安全である、そのうちの我が国の平和と安全に着目したのがこの法案であるということでありますから、まさに枠内である、こういうことを申し上げているので、委員がおっしゃっている意味が、ちょっと私わかりかねます。はっきり整理できないのですが、私が申し上げていることは、私が今言ったとおりでございます。
  98. 岡田克也

    ○岡田委員 例えば、日米安保条約の実効性を確保するためにこの法律があるんだということにした場合には、何か問題がありますか。
  99. 高村正彦

    高村国務大臣 政府の基本的立場とすれば、そういう言葉を、いずれの言葉であっても条文の中に書き込む必要はないと思っていますが、この法案が実効性を確保するためのものかと問われれば、実効性もしくは信頼性、そういったものを確保するためのものであると言ってもいいだろう、こう思っています。
  100. 岡田克也

    ○岡田委員 実効性を確保するためのものであるというふうに位置づけた場合に、この周辺事態法の中で、後方地域支援については米軍の存在というものを大前提にしておりますが、後方地域捜索救助活動と船舶検査活動については、これも大臣に前に御質問したところでありますが、そういう縛りがかかっておりません。したがって、非常に極端なケースを想定すれば、米国が周辺事態であると認識しない、あるいは認識したとしても米国としては関与しないということになった場合でも、先ほどの後方地域捜索救助活動と船舶検査活動については日本だけの判断で協力といいますか活動ができる、こういうことに、法律の立て方はそうなっていますね。そのことは、かつて国会でも大臣がお認めになったと思うのです。  そうしますと、日米安保条約の実効性を確保するためにやるんだということになると、そういった、米軍があるいはアメリカが全く関与しないというときに日本だけの判断でやるということについては、これは排除するということになりますが、そういう考え方でよろしいですか。
  101. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 周辺事態とは、先ほどから言っておりますように、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態でありまして、かかる事態に際して、我が国が主体的な判断によって自衛隊の活動を含む対応措置を講ずることはいわば当然のことでありまして、米国の関与があると否とにかかわらず、問題があるとは考えていないところであります。  なお、周辺事態に際しまして、ガイドライン法案に基づき自衛隊が実施する後方地域捜索救助活動や船舶検査活動は、今おっしゃるように、後方地域支援のように日米安保条約の目的の達成に寄与する活動をしている米軍の活動を前提としたものではございませんけれども、これらの活動も、周辺事態対応して我が国の平和と安全の確保のために実施されるものでありますから、我が国及び極東の平和と安全の確保という日米安保条約の目的の枠内にあると言うことができると思います。
  102. 岡田克也

    ○岡田委員 ちょっと、議論を混乱させないために少し整理したいと思いますが、私が申し上げているのは、この後方地域捜索救助活動や船舶検査活動について、それぞれ米軍の存在を必要とする、こう言っているわけではありません。それはなくていいのですね。  非常に極端な話をすれば、例えば米軍がどこかで武力行使をしている、しかし後方地域捜索救助活動や船舶検査活動については手が回らないからそれは日本だけがやる、そういう話であれば、これは、この法律日米安保条約の実効性を確保するという考え方に立っても十分成り立つ話だと思うのですね。  しかし、周辺事態全体について、アメリカとしてはこれは関与しません、こう言っているときに、後方地域支援というのはアメリカ軍がなければできませんが、後方地域捜索救助活動や船舶検査活動についてはこれは日本だけでできますから、全体について米軍が関与しないときに、日本が後方地域捜索救助活動や船舶検査活動を日本だけの判断でやるということがこの法律上は可能になっている、そういうことを認めることが先ほど言った日米安保条約の実効性を確保するという趣旨だと、この法律がそういう趣旨だとすれば、そうじゃないのじゃないですかということを申し上げているわけです。わかりますか、私の申し上げていること。
  103. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 周辺事態の判断そのものについては、これも何度も申し上げているところでございますが、日米それぞれ、おのおの主体的に判断をするということでございます。  しかし、実際の問題といたしましては、それに至るまでにいろいろな情報交換、協議等もございますので、日米双方で判断が異なることはまず考えられないということでございますし、そういう事態におきまして、日本の平和と安全に重要な影響があるという事態において米軍が全くそれに関与していないということも、実際上の問題としては非常に考えにくいのではないか、こういうふうに思います。
  104. 岡田克也

    ○岡田委員 実際上どうかという議論はそれはあると思いますが、しかし、それがどういう事態になるかということは一〇〇%想定できないわけですから、結局、法律の立て方がどうなっているかという議論をまずきちんとしておく必要があると思うのですね。  そういう中で、私はこれは基本的には根本の議論だと思うのですね、この法律の性格いかんと。日米安保条約の実効性を確保していくためのそういう法律なのか、あるいは、それをはみ出して、自衛隊日本だけの判断で活動するということも認めた法律なのか。ここは法律の基本的性格のところだと思います。  私は、自衛隊日本の判断だけで活動していくということが一般的にだめだと言うつもりはありません。例えば邦人救出とか機雷の掃海などは、自衛隊法の中で日本単独の判断でできることになっています。そういうものに準ずるものとして、もちろん事態は、日本の平和と安全に重要な影響がある事態という周辺事態に限られてはいますが、そういう邦人救出や機雷掃海に準ずるものとして、後方地域捜索救助活動とか船舶検査活動について日本だけの判断でできるようになっていると、この法律が。  私は、そういう議論はもう少し議論を深めて、自衛隊というものがどういう場合に活動をする、どこまで認めるべきなのかというきちんとした議論をした上で、自衛隊法の中で考えていくべき問題でありまして、このどさくさの中で、この周辺事態法の中でそういう余地を認めていくというのは避けるべきじゃないか、こういうふうに考えているのですが、防衛庁長官、いかがでしょう。
  105. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先ほども申し上げたところでございますが、後方地域捜索救助活動や船舶検査活動は、いずれにしましても、周辺事態対応しまして我が国の平和と安全の確保のために実施されるものであり、我が国の平和と安全に大きく貢献するものでありますから、これは我が国及び極東の平和と安全の確保という日米安保条約の目的の枠内であるということを先ほど来申し上げておるわけであります。  しかし、周辺事態は、前提として、各国がそれぞれの国益確保の観点から主体的に行うということになりますので、米国の関与があると否とにかかわらずできるということについては、法律上は私どもは何ら問題がないと思います。しかし、先ほど政府委員から答弁しましたように、そういうそごは実態問題としては起こらない、いろいろな協議を濃密にやっていきますので、実態上そごは起こらない、こういうことを申し上げておる次第であります。
  106. 岡田克也

    ○岡田委員 防衛庁長官に端的にお聞きしますが、この法律日米安保条約の実効性を確保するための法律であるという考え方はお認めになりますか。
  107. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 そのとおりであります。
  108. 岡田克也

    ○岡田委員 もしそうだとすると、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすような事態があって、しかしアメリカアメリカの国益判断に基づいて、これについて関与しませんということを言っているときに、日本だけが判断をして動いていく、この法律に基づいて活動していくということは、それがなぜ日米安保条約の実効性を確保することになるのですか。
  109. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員の御指摘は、あくまでもそういうそごが起こるという前提に立っての質問でございますが、私どもは稠密な協議を重ねて周辺事態対応するということになりますから、日本アメリカ周辺事態の認定においてそごを生ずることはあり得ない、こう考えておる次第です。
  110. 岡田克也

    ○岡田委員 そごが起こることはあり得ないという御答弁ですが、じゃ、そごが起こる、つまりアメリカが関与しないのに自衛隊日本の判断で活動していくことは望ましくないという判断をしておられるわけですか。
  111. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 法律上、単独の行為は、もちろん国益保護と主体的な判断によってできるわけですが、実際上、そごを来して日本が単独でやる、アメリカもまた単独でやるというような事態は想定されない、こういうことを申し上げておるわけであります。
  112. 岡田克也

    ○岡田委員 ここはこの法律の基本的性格のところでありますので、私は、ちょっと議論を整理して、次回答弁していただきたいと思います。防衛庁長官の言っておられることと外務大臣の言っておられることが少し違うのかもしれませんし、いずれにしろ、この法律日米安保の実効性を確保するためのものであるという前提に立てば、私は、日本だけの単独で行動するというのはそこから外れる話になる、こういうふうになると思います。それは実際には起こらないからいいんだとか、そういうのは答弁になっておりません。法律上できることになっているということについてどう考えるのか、その点についてきちんとした答弁をいただきたいと思います。もし今できないのであれば、この委員会の場にその考え方を示していただきたい、そういうふうに思います。
  113. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 何度も申し上げておるわけでありますが、たとえ日本が単独でやろうと、我が国の平和と安全に大きく寄与し貢献する行為でありますから、私は、日米安保条約の枠内における行動である、こういうふうに申し上げているところです。
  114. 岡田克也

    ○岡田委員 ですから、それは日米安保条約の目的の枠内という表現の中で、目的が共通しているという中で、非常にごまかしておられると思うんですね。我々が言っている日米安保条約の枠内という意味は、日米安保条約の実効性を確保するための法律である、そういう認識で言っているわけで、そのことはどうですかということを先ほどからお聞きしているわけでございます。  時間の関係でこの辺にいたしますが、ここは基本的なこの法律の性格の議論ですから、きちんとした答弁を次回はいただきたい、そういうふうに申し上げておきたいと思います。  それから、官房長官にせっかくおいでいただいておりますので、ちょっとお聞きしたいと思いますが、邦人救出のところであります。  前回もいろいろ議論いたしましたが、今まで御答弁いただいているのは、例えば今度の改正で艦船の派遣ということが認められるようになりました。その艦船には、武装した護衛艦なども場合によっては入る、こういうことでございます。これは、従来は主として輸送の用に供する航空機ということで非常に抑制されておりましたが、今回の場合には、艦船については非常に広がる。  私は、広がること自身について絶対にだめだ、そういう意見を持っているわけではありませんけれども、しかし、邦人救出を必要とするような事態というのは、かなり周辺で紛争が起こっていたりするわけで、そういうところに武装した自衛隊の船を出していくということは、ある意味では今までとは大分違う話。主として輸送の用に供する飛行機だけを出しておって、しかも閣議決定で九十五条適用も排除していた、そういう事態とは大分質的に異なる話だと思います。  したがって、少なくとも防衛庁長官ではなくて内閣の判断として、内閣総理大臣がそういうことを決定するということに私はすべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  115. 野中広務

    ○野中国務大臣 私が法律的に解釈してお答えするのが適切かどうか迷うわけでございますけれども委員が今御指摘のございました、在外邦人等の輸送を規定いたしております自衛隊法第百条の八の趣旨は、申し上げるまでもなく、外国における緊急事態に際しまして生命等の保護を要する邦人等を、外務大臣からの依頼に基づきまして防衛庁長官自衛隊により本邦への輸送をするというものでございまして、この法律の改正案によりまして、輸送手段として輸送に適する船舶が追加をされるといたしましても、さきに述べました自衛隊法の趣旨が変更されるものではないわけでございますので、現行のとおり、外務大臣からの依頼に基づきまして防衛庁長官が権限として行うことが適切であると考えておる次第でございます。
  116. 岡田克也

    ○岡田委員 従来の趣旨が変更されるものではないという御答弁ですが、しかし現実には、主として輸送の用に供する航空機から武装した護衛艦まで変わるわけですね。そこについて、それだけ実態が変わることについて、もう少し縛りを強くした方がいいというのが私の考えでありますが、官房長官はそうすると、そういう武装した護衛艦を紛争地域に非常に近いところに、たとえ邦人救出という目的のためであっても、出していくということについては何の心配もしておられないということですか。
  117. 野中広務

    ○野中国務大臣 法制局長官がお答えするのが道かもわかりませんけれども、私は、先ほど御答弁申し上げましたように、その内容において異なるものではございませんので、従来どおり、外務大臣の要請によって防衛庁長官が行う権限の範疇に入るものだと思っておるわけでございます。
  118. 岡田克也

    ○岡田委員 いつもハト派的発言をしておられる官房長官に若干期待をしたんですが、余り成果はありませんでした。  最後に、内閣法制局長官にお聞きして終わりたいと思います。  武器使用の問題で、前回議論しましたときに、自衛隊法九十五条は自然権的権利ではないというふうにおっしゃいました。従来、武器使用と武力行使について議論していく中で、自然権的権利だから、自己保存のための自然権的権利だから武器の使用は認められるという議論があったわけですが、その自然権的権利というのは、いわば憲法を超える存在としてある、あるいは当然の、憲法の規定の、条文の前提としてそういうものがあるから、九条があるにもかかわらずそういうものは認められるんだ、こういうふうに私は理解をしております。  今回は、自然権的権利ではないということになりますと、改めてやはり憲法九条との関係をきちんと説明する必要が出てくると思うのですが、この点について、長官、いかがお考えですか。
  119. 大森政輔

    大森(政)政府委員 憲法九条との関係を考えます場合に、自然的権利に当たるかどうかで憲法九条との関係を仕分けするということを従前から議論しているわけでございません。あくまで、やはり憲法が原則として禁止している武力の行使に当たるかどうかということがその仕分けの基準でございまして、その当たらない一例として、生命、身体を防護する目的による武器使用というのは自然的権利であるから武力行使に当たらないんだ、こういうふうにお答えしたにとどまるわけでございます。  したがいまして、あくまで憲法九条に言う武力の行使に当たるかどうかという観点から、正面から検討してみなければならないというわけでございまして、少し従前の答弁と重複いたしますけれども自衛隊法九十五条に基づく武器の防護のための武器の使用と申しますのは、我が国を防衛するための重要な物的手段である自衛隊の武器等の破壊や奪取から当該武器等を守るため、武器等の警護に当たる自衛官に極めて限定的かつ受動的な条件のもとで認められた最小限度の行為である、これは従前から御説明いたしているわけでございます。  このような行為というのは、憲法九条が禁止している武力の行使、すなわち我が国の物的、人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行動というものには当てはまらないのではなかろうかということでございます。
  120. 岡田克也

    ○岡田委員 この議論、続きは次回やりたいと思いますが、自衛隊という物的、人的組織、そして向こうが攻撃をしかけてきた、それに対して反撃をする、そういうことですと、私は、そこにぴたっとはまってくるだろう、その定義に入ってくるんじゃないかというふうに思っておりますので、この点について、次回また引き続き議論させていただきたいと思います。  終わります。
  121. 山崎拓

    山崎委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  122. 上原康助

    ○上原委員 民主党の上原ですが、きょうは少し具体的問題についてお尋ねをさせていただきたいと存じます。  まず最初に、去る三月二十日以降、大変問題というか、本委員会でも議論されましたし、また国民関心事でもありましたいわゆる北朝鮮不審船問題についてお尋ねをしたいと存じます。  これまで外務大臣あるいは防衛庁長官、また官房長官からもいろいろ御答弁があったわけですが、一点、確認というか明らかにしていただきたいことは、政府がここで御答弁した以上に、マスコミ等では、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮の工作船と見られる不審船舶二隻が領海を侵犯して逃走した、海自の護衛艦による追跡がほぼ終わった直後の三月二十四日朝、北朝鮮からミグ21と見られる戦闘機四機が発進をして、航空自衛隊はそれを受けてF15二機を日本海に発進させたことが六日、明らかになった、こういう報道がなされております。  防衛庁関係者によると、三月二十四日午前八時前、上空で警戒をしていた航空自衛隊の早期警戒機E2Cが北朝鮮の上空で四機の機影を発見した、速度などからミグ21戦闘機と判断された、うち二機は日本側の防空識別圏に近づくと確認された、北朝鮮軍が警戒態勢に入ったことを示す電波情報も、自衛隊というか航空自衛隊は傍受しておった、これを受けて、航空自衛隊北朝鮮機の領空接近あるいは侵犯という最悪の事態をも想定して、石川県の小松基地からF15戦闘機二機を離陸させて、日本海上空の警戒に入ったという報道がなされております。  こういうことについて防衛庁はどういうふうに事実関係を把握しておられたのか、また今私が指摘をしたことについてどうなのか、まず、防衛庁長官の御答弁を求めたいと存じます。
  123. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 私どもが相手方の飛行機の通信を傍受して防空識別圏から退去したというわけじゃございませんで、海上警備行動の発令を総理にお願いする以前から、どこまで追跡するかという限界を、防空識別圏が限度だろうというふうに決めておったわけでありまして、北朝鮮情報によって退去したという事実じゃございません。  なお、詳細につきましては政府委員の方から答弁させます。
  124. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 今先生御指摘になりました北朝鮮の航空機の動きとそれに対応する我が方の自衛隊の活動でございますけれども、海上における警備行動は、これは海上自衛隊を対象に当時発令をされておりまして、別途、そういう状況でもありますし、航空自衛隊の方は、本来持っております対領空侵犯の任務に基づいて、当然ながらいろいろ警戒態勢をとっておりまして、その中で、先生御指摘のE2Cも監視活動のために飛行をしておりました。そして、御指摘のような、当時の状況から申しますと北朝鮮方面からと思われる航空機が把握されましたので、当該航空機の領空侵犯に備えた形でF15を日本海上空に発進させたという活動は行っておりました。
  125. 上原康助

    ○上原委員 ちょっと内容がいまいち不明瞭な点があるわけですが、ではもう少しお尋ねしたいと思います。  私は、全般的に、けさも田中先生の方からも御質問があったんですが、政府全体として抑制的に今度の不審船問題に対処してこられたということは一定の評価をしているところなんです。  そこで、そういうことも前提にしながら、海上警備行動を自衛隊に命じたというのは今回が初めてなんですね。自衛隊の海上警備行動については、過去の国会答弁に照らしても、今度の措置というのは重大な政策変更だと私は思うんですね。一々過去の会議録までは申し上げませんが、これはかなり以前のことです、一九八一年ころの参院安保特別委員会で、当時の防衛庁の夏目官房長とかあるいは塩田防衛局長等が答弁をしている面がございます。  そこで、一点確認というかお尋ねしておきたいことは、今度の海上警備行動によって従来の政府対処方針というか政策は変更したのかしないのか、この点はぜひ明らかにしておいていただきたいと存じます。
  126. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 不審船の対処を初めとしまして、海上における人命や財産の保護または治安の維持につきましては、第一義的にはあくまで海上保安庁が担当すべき任務とされております。自衛隊は、海上保安庁では対抗が不可能または著しく困難といった特別の必要がある場合に、内閣総理大臣承認を得て海上警備行動をとることとされているのであります。  海上警備行動発令のタイミングとかあるいは自衛隊の具体的な対処のあり方は個々のケースごとに判断されることになると考えておりますが、防衛庁としては、今申し上げたような法的スキームのもと、先般の教訓を踏まえ、今後とも海上保安庁と密接に連携し、不審船事案に適切かつ迅速に対処してまいりたいと考えております。このスキームを変えるつもりは全くありません。     〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕
  127. 上原康助

    ○上原委員 スキームは変える考えはお持ちでない。これはまた運輸大臣にも後ほどお尋ねします。  今度の一連のことで、日本側として、防衛庁というかあるいは安全保障会議もそうかもしれませんが、政府全体と言ったのがいいかもしれませんが、米側との情報交換とか、あるいはマスコミ等の報道を見ますと韓国との情報交換というか、いろいろやりとりもあったという報道もなされておりますね。そこいらの点についてはどうなったのか、明らかにできる範囲でお答えいただきたい。
  128. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 これは先生御存じのところでございますけれども、私ども、いろいろな情報収集活動あるいはまた各国ともいろいろな情報の交換ということをやっているわけでございますけれども、その具体的な個々につきまして申し上げることは、それは私ども情報収集能力を明かすことにもなりますし、今後の情報収集ということにつきましても支障がございますので、その具体的な御説明は差し控えさせていただきたい、かように存ずる次第でございます。
  129. 上原康助

    ○上原委員 その御答弁は理解しないわけではないが、しかし、すべてそういうわけにはいきませんよ、それは。情報開示は必要ですし、包み込んでしまうというのは疑問が残ります。  なぜその点をお尋ねするかといいますと、防衛庁長官の御発言と現場指揮官の発言に若干食い違いがあるような気がするわけですね。長官は、交信にハングルを使ったかとの質問に対して、機密なので申し上げられないとお答えになった。今のようなあれで。指揮官は、朝鮮語と英語、日本語を併用したと明言をしておられるんですね。  これは、野呂田防衛庁長官の三月二十四日午前八時の記者会見。交信にハングル、いわゆる朝鮮語を使ったかとの質問に対して、重要な機密事項なので申し上げられない。だが、現場指揮官の吉川榮治海上自衛隊第三護衛隊司令、海将補は三月二十六日の記者会見で、停船命令は何語で行ったのかとの記者の問いに対して、朝鮮語と英語、日本語を併用した、こうおっしゃっているわけですよね。  一体どっちが正しいんですか。この程度は明確にできるでしょう。
  130. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 現地の司令がどこかで言ったとすれば、それは、我が方からの警告は日本語とハングル語と英語でやったという意味でありまして、私が御答弁申し上げたのは、北朝鮮側から、相手方からどういうものがあったかという反応に対して私は、そういうことについては御答弁をひとつ差し控えさせていただきたい、こう申し上げたんで、食い違いはないのじゃないかと思いますが。
  131. 上原康助

    ○上原委員 それじゃお尋ねしますが、今度の不審船の二隻あるいはミグ21と見られる北朝鮮戦闘機とも報道がある。日本側の警告に対して、あるいは何らかのそういう緊急事態における交信とかそういうことに対して、北朝鮮側からの何らかの反応はあったの、なかったの。
  132. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 海上警備行動、それ以前は海上保安庁が対応しておったわけでありますが、例の当時の不審船二隻を追尾し、あるいは停船を指示し、警告のための射撃を行えという段階で、もうこの船は基本的にはそれを無視して逃走を続けていたわけであります。  それからもう一つは、先生、ミグとおぼしき航空機のお話もされました。これが、二十四日の朝そういう事象は私どもとらえて、そして領空侵犯のおそれに備えたスクランブルもやったわけでありますけれども、私どもの持っている材料の中で、それが当時のいわゆる北朝鮮側の我が方の行動に対する直接な反応であるかどうかというのは、私ども正確には実は確認していないところでございます。
  133. 楠木行雄

    ○楠木政府委員 今ちょっと海上保安庁の名前が出ましたので。  私どもの海上保安庁の航空機から二つの船に対しまして立入検査等を行うための停船命令を実施いたしまして、日本語とか英語で働きかけましたが、何の反応もございませんでした。
  134. 上原康助

    ○上原委員 反応があったという答弁をするのにわざわざ出てこられたと思ったんだが、反応なかったんですね。  それで、もう一点確かめるというかお聞きしたいことは、今度の侵犯事件で、いわゆる防衛庁運輸省あるいは政府全体の関係省庁の初動行動からの横の連絡体制が十分であったかどうか若干疑問があるのですね。かつて、いろいろ、我々も与党におったころ、危機管理の体制がなってない、初動行動がなってないとさんざんおしかりを受けた苦い経験を持っておる。そういう積み重ねで、今度の対処の方法は国民の理解を得られておるという評価があるわけですが、どうもよくマスコミ等やその他のいろいろなこと等を聞いてみると、初動行動の面において、運輸省防衛庁政府全体の対処、危機管理のあり方について、まだまだ十分な体制ではなかったんじゃないかという気もするわけですが、その点について運輸大臣、官房長官の御見解があれば聞かしておいていただきたいと思います。     〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕
  135. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 私ども情報が入りました時点、今から思えばもう少し早い時点でお互いが連絡をとり合えばよかったなということで、お互いが反省事項として挙げながら、その後、不審船情報というのはいろいろありましたが、すべて間違い情報でございましたけれども、その後については、お互いがそうしたものの情報を得たときには連絡をとり合うような形に変えさせていただいているところでございます。
  136. 野中広務

    ○野中国務大臣 今運輸大臣からも答弁がございましたけれども、初めてのことでございますので、今から考えていろいろな反省もあろうかと存じますけれども、かつて、阪神・淡路大震災等を含めまして、その後の反省に立ちまして、内閣に危機管理監を設けまして、即応体制を整え、防衛庁運輸省関係機関連携の上で対応をいたしてまいりました。  後ほど、考えまして、まだまだ反省をし、連携を密にしてこういう事態に対処しなければならないと認識をしたところもございますので、現在、各セクションにおきまして、この反省点に立って今後の危機管理のあり方を今詰めておるところでございます。
  137. 上原康助

    ○上原委員 今の御答弁も参考にしながら、後でまとめてこの点についてまたお尋ねしたいと思います。  そこで、もう一点は、この不審船問題は、実は三月十九日の段階で第一報が韓国から日本の公安調査庁へ電話というかそういうので入ったという、報道というか、いろいろなされておりますね。それは、北朝鮮の清津から二隻の工作船が発進したらしい、重要な物を日本に搬入させる計画を担っておりそうだと。第二報は、三月二十日、米国防総省から海上自衛隊のSF、いわゆる自衛艦隊司令部に、北朝鮮工作船、清津を出航というようなことが、一部の報道機関というか雑誌等で明らかにされているわけですが、これらの事実関係は一体どうなのか。  防衛庁が後日公表したいわゆるP3Cの活動は三月二十一日からとなっていますね。これはなぜ非公表にしておったのか。気になるのは、重要な物を日本にこの不審船二隻というのは上陸させたのかどうかということなんだが、そこいらのことについては、恐らく、軍事機密とか軍事秘密なのでとおっしゃるかもしれませんが、やはり国民としては非常に関心のあるところなんですね、このあたりのことが。ぜひ政府の調査とか、あるいは、こういう今私が指摘をしたことについて、これが間違いなのかどうかをお答えを願いたいと存じます。
  138. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今、不審船についての先生からお尋ねの、ある雑誌に書かれております第一報は、三月十九日、韓国の情報機関によって日本にもたらされた、韓国国家情報院から公安調査庁カウンターパートへの一本の電話だった。あるいは、第二報、これはアメリカ国防総省からの通報だった、あて先は海上自衛隊の自衛艦隊司令部に来た、こう書かれておりますが、自衛隊にこういう情報が来たということは全く事実無根で、そのようなことは全くございません。第一報の方につきましても、そういう重要な情報があれば私どもに公安調査庁からもたらされたはずでありますが、全くもたらされておりません。  しかし、その詳細は私にはわかりませんので、これは公安調査庁の方から御答弁すべきことだと思います。
  139. 上原康助

    ○上原委員 きょう、公安調査庁はお呼びしてありませんので、後ほどまた、いずれ機会があるかと思うので。  そこで、官房長官にもう一点お尋ねをしておきたいのですが、初めてのケースだったので、いろいろ今考えてみると反省すべき点もあるやに思うと。これは運輸大臣、あるいは、直接は今私が言ったようなそういう趣旨のことを両大臣おっしゃったような気がいたします。  一つ、持ち回り閣議でいわゆる海上警備行動を発令するというか、実施をする、実行する場合に、やったときに、これはいろいろ閣僚の皆さんだって日程がおありでしょうから、緊急の場合に、そうすべてうまくいくとは限らないというのは私もわかるわけですが、数人の閣僚に連絡がとれずに若干支障を来した、持ち回り閣議の運営方法の改善も含め、政府全体として今後検討していかなければならぬというような報道もなされているわけですが、これらの事実関係についてはどうだったのか。また、官房長官、実際にいろいろ御苦労なさって、今後どのように改善していかれようとするのか、お考えがあれば聞かせていただきたいと存じます。
  140. 野中広務

    ○野中国務大臣 当日、持ち回り閣議に対しましては、深夜でもございましたので、十分閣僚に短時間に連絡ができなかったことは事実でございます。ただ、秘書官を含めまして、約一時間程度で全閣僚の持ち回り閣議を終了することができたことを御報告申し上げておきます。  今後もなお、持ち回り閣議につきましては、敏速かつ的確に連携しこれが行えるようには万全を期してまいりたいと考えております。
  141. 上原康助

    ○上原委員 そこで、この質問のまとめに運輸大臣と官房長官にお尋ねしますが、先ほど防衛庁長官が、第一義的には、海上パトロールというか巡視については、運輸省、海保の責務だと。これは、私はこの基本的スキームはやはり大事にした方がいいと思うのですね。運輸大臣としては、今後、高速艇の問題等、あるいは今度の事件を教訓化してどう対処していかれようとするのか、その点についてのお考えをぜひお聞かせ願いたいと存じます。  それと、もう一点、官房長官には、今回の事件を詳細に検証して、取り締まり体制に不備や欠陥があれば早期に是正することが必要である、これは一般論としてそうだと思うのですね。  そこで、四月五日の参議院の沖縄北方特別委員会で官房長官が七項目を提示しておられます。一々読み上げません、時間の都合で。これらのことは、内容的に見てみると、現行法体制で十分カバーできる分野ではなかろうかと私は理解をしております、もちろん検討を要することもあると思うのですが。  この七項目について、具体的に政府として今どう作業を進めておられるのか、また結論を出すのはいつごろになるのか、こういうことについて、運輸大臣と官房長官からそれぞれ御答弁いただければありがたいと存じます。
  142. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 先ほど防衛庁長官から御答弁をいただきましたけれども、基本的には同じように考えております。  不審船の出現は、我が国周辺海域における治安、公共の安全を侵害するものであり、今後とも、海上における治安、公共の秩序維持に当たることを任務としている警察機関たる海上保安庁がまず第一に対処することになる。海上保安庁では対処することが不可能もしくは著しく困難と認められる事態が発生した場合には、内閣の判断を仰ぎ、状況に応じて海上自衛隊と連携をとる必要があると考えております。  ただその中で、領海侵犯全般ということになりますと、前にも御答弁申し上げましたように、例えば潜水艦が潜って入ってきた、この場合には、まず、我々がそれを発見する能力がございません。第二に、その潜水艦に退去命令を出す、これを伝える能力もありません。したがって、そうした場合にはやはり自衛隊の能力というものに頼っていかなければならない、こういう場面は当然出てくるだろう。その場合はやはり、申し上げているとおり、内閣の判断を仰ぐということになってまいると思っております。したがって、まず第一に私どもの仕事でありますので、捕捉能力をどうして上げていくかという問題と高速艇というものにどう対応していくか、この二つが大きな問題になってまいるだろう。  四月中を目途に、反省とそして対応方針を今急いでいるところでございます。その後、内閣全体の判断を仰いで、海上保安庁全体の能力アップのために努力をしてまいりたい、このように思っております。
  143. 野中広務

    ○野中国務大臣 今回の事態に対しまして対処すべき方針は、ただいま運輸大臣から答弁があったとおりでございます。  なお、今回の事態にかんがみまして、今政府が検討するべき七項目を先般私は例示して申し上げたことでございますが、詳細につきまして、今鋭意政府当局で検討をしておるところでございますので、必要とあらば政府委員から答弁をさせていただきます。
  144. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 ただいま官房長官からもお話がございましたように、いわゆる七項目でございますが、必ずしもこれに限られるものではないかもしれませんけれども政府全体として検討しております。  それで、ただいま運輸大臣から御答弁がございましたが、まず、海上保安庁あるいは運輸省の方で今月末を目途にという一つのお話がございます。また、防衛庁の方も、これは必ずしもはっきりとした目途があるわけではございませんが、詳細な検討を今していただいているというふうに承知をしております。  私どもといたしましては、それらを基本的には待つということではございますが、その間におきましても、それぞれの両省庁間あるいは内閣官房含めましていろいろ突き合わせをしながら、できるだけ早くというふうに思っておりますが、今ここでいつというめどをお示しはちょっとできる段階ではございませんけれども、そういうことで、目下事務レベルで大いに検討をしているというところでございます。
  145. 上原康助

    ○上原委員 せっかく御検討なさっているということですから、ぜひ、そういう内容については国会なりまた私たちの方にも御提示をいただいて議論をさせてもらうように御要望申し上げておきます。  次に、法案の第九条の地方公共団体等の協力問題についてお尋ねをさせていただきたいと存じます。  この件につきましても、これまで相当質疑応答が交わされてまいりました。しかし、まだ釈然としない面が多いんですね。政府は、義務規定ではないとか強権発動をする考えはないとか、正当な理由があれば拒否することができるとか、一般的な協力義務としては協力するのが当然で常識だと言ってみたり、拒否をしても、あるいは断ってもこの法案で罰せられることはないなどと防衛庁長官自治大臣は御答弁をしておられます。  私はこの件についてはこれまで余りお尋ねしなかったんですが、今、法案審議が大詰めを迎えた段階で、全国の米軍基地あるいは自衛隊基地所在市町村なり自治体が大変懸念や疑問や不安を持っている面が多いんですね。ですから、このことについてはぜひ、国会としても政府としても答えるべきだと私は思うんです。  そこでまず、この法案審議がなされて以降、関係自治体等の意見あるいは反応をどう政府としてとらえておられるのか。これは防衛庁なのか自治省なのかわかりませんが、それぞれあればお答えをいただきたいと存じます。
  146. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 私どもとしては、この法案が作成されて以降、全国の市町村に対しましてかなり密接な情報意見の調整をやっているところでありますが、今後ともこれは続けてまいりたいと思っております。  ところで、市町村議会から防衛庁に寄せられた周辺事態安全確保法案に対する意見書でありますが、いろいろな情報が来ましたが、現在までのところ、三千二百七十九の市町村のうち四十三市町村が法案に対して反対の意思表明をしております。これは、全体からいけば一・三%程度の反対だということになるかと思います。
  147. 上原康助

    ○上原委員 自治省は何かこの件についてやっていらっしゃいますか。
  148. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 今まで、防衛庁を初め関係省庁と連絡をとり合いながら、渉外関係主要都道府県知事連絡協議会あるいは各都道府県の東京事務所それから全国市議会議長会の基地協議会、これは総会で御説明申し上げ資料を配付、それからさらに全国基地協議会、防衛施設周辺整備全国協議会、こういったところで説明をし配付をして、極力、いろいろ内容等について知りたいという御要請があれば積極的に対応していきたい、これからもそういう対応をしてまいりたいというふうに考えております。  それから——これはこれでいいですね。後でまた次の質問があると思いますので、そのときに答えます。
  149. 上原康助

    ○上原委員 今答弁しにくかった方が大事かもしれないですね。それは後で教えてください。  そこで、防衛庁長官、何か三千二百七十九ある市町村自治体で、わずか四十三、一・三%だとおっしゃりたいような御答弁だったんですが、恐らくきょうのこのやりとりを聞いて、ぐっとふえるんじゃないですかね。私はそういう予感がしてならないんですね、正直申し上げて。  もう一点、それで私がなぜこの点を重要視しているかといいますと、この法案第九条の規定というのが極めてあいまいなんですね。不明確なんです。何回か同僚委員の方からお尋ねがありましたように、「地方公共団体の長に対し、その有する権限の行使について必要な協力を求めることができる。」これは依頼ですよね。あるいは、二項では「法令及び基本計画に従い、国以外の者に対し、必要な協力を依頼することができる。」というふうに簡単になっているわけですが、強制するものではないとか正当な理由があれば断れるんだとおっしゃるんだが、だがやはり国と地方の関係は、対等、平等あるいは地方分権の時代と言ったにせよ、やはり国に対しては相当地方はいろいろな面で協力しなければという気持ちがあることは間違いないと思うんですね。  せんだって、政府は十項目の例示をお出しになりました。だが、これに限られるものではないということになっております。ケース・バイ・ケースなんで、例えばこういうものがあるんだということなんです。このことについて、第九条についてはもう少し、地方自治体に対する政府協力要請あるいは依頼等は、民間を含めての依頼についてはこういう限度なんだ、あるいはこういう範囲のものである、法的拘束力はこういうことなんだという何か政府統一見解というか見解をきちっとお出しにならないと、なかなか地方の協力というのは難しいんじゃないかと私は思っているんですよね。  そのことについて、まずどういうお考えなのか。この法案がベストだと先ほどからいろいろなことでおっしゃっているわけですが、やはり国会には国会の権限がありますし、いろいろ今マスコミで報道されている修正条項だけで法案がまとまるとは私個人は思っておりません。そういう意味で、極めてこの第九条も重要な条文だという認識を持っておりますので、自治大臣なり官房長官の御見解があれば、基本的なことからお答えをいただいて、さらにまた具体的な問題を例示して、御質問したいと思います。
  150. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 基本的に、まずこの法案について各地方議会あるいは自治体の皆様に十分内容を御理解いただくような努力をさらに重ねていきたいと思います。  先ほど意見書等についてのお話がございましたが、防衛庁に出されているもの、あるいは自治大臣である私あてに来ているもの、あるいは官房長官あてに行っているもの、それぞれ数字が多少異なっておると思います。そういう点で、かなりの地方において、この問題について真剣にいろいろ御議論をいただいているというふうに受けとめております。  ただ、この問題は、基本的に、日本のいわゆる平和と安全に重要な、重大なる影響を与える事態である、そういう事態における協力要請であるということがまずあるわけでありまして、そういう枠組みの中で緊急事態にどう御協力をいただこうかということで事柄は発生するんですということをまず基本スタンスとして踏まえておいていただきたいということを、この大前提がどこかへ行ってしまって、何かすごく大変なことを米軍のために日本が総動員で協力しなければならぬというような受けとめ方で、必要以上の議論になるのはいかがなものか。  現に、私あてに提出されております意見書の中身を見ましても、法案について、例えば憲法九条云々とか、あるいは強制を伴うのはけしからぬとかいうたぐいの、言うなら法案に関する認識が十分まだ行き届いていないということを反映した内容になっておったりしているものもございまして、そういう点ではさらなる周知方を私も努力をしていかなければならないというふうに、まず考えておるわけでございます。  なお、具体的にどういうようなケースの場合にどういう協力要請が行われるのかということは、単に項目列挙ということだけで本当にいいのか。特に、事態の内容において、地域的な問題であったりあるいは協力要請の内容であったり、かなり幅が広いと私は思います。そういう点で、あらゆる可能性を排除しないということを前提にすると、随分大変な項目列挙みたいになり得るかもしれない。不必要に、何か大変だ、大変だということをあおりかねない側面もございます。  私は、そういう意味で、本当に常識的に当面考えられる事柄として十項目があり、あるいはそのほかに、強いて挙げれば、いわゆる権限行使ということではなくて、地方公共団体の有する土地や施設ということについての貸与、提供というか、そういうようなことも対象になり得るだろうというふうには考えております。  いずれにせよ、たびたび申し上げておりますが、基本的にこれは、正当な理由があれば拒否できるという意味で法的強制力を伴うものでもないし、これに基づいて何らかの損失が発生すれば、それに対する補償措置ということの規定もなされておるわけであります。  問題は、何が正当な理由なのかということだと思います。これは、前々から申し上げておりますが、いわゆる施設なりそういったものについての管理者としての権限行使、いわゆる正当なる権限行使、その法律に基づく管理者としての権限行使という枠の中で正当性が議論されるべき世界であるというふうに考えておるわけであります。
  151. 野中広務

    ○野中国務大臣 ただいま自治大臣から詳細に御答弁があったとおりでございまして、それぞれ地方公共団体の議会や労働団体等含めまして、意見書やあるいは御提言や御意見を賜っておるところでございますが、その内容を見てまいりますと、今回の九条を含める法案の中身を十分御理解いただいておらないという部門も随分見かけられるわけでございますので、先ほど来御答弁がございましたように、あらゆる関係団体に十分本法案の内容について御理解がいただけるよう、なお積極的に努力をしてまいり、我が国の平和と安全についての御理解が深まるようにやってまいりたいと存じておる次第でございます。
  152. 上原康助

    ○上原委員 ですから、ここでやりとりをして聞く国会議員の先生方とか、あるいはこの情報に接する方々は、ある程度理解するかもしれない。しかし、大方の国民は、むしろ日常の中央紙、マスコミであるとかいろいろな雑誌であるとかあるいは地方紙であるとか、そういうものにこのガイドライン関連法案で書き立てられることを日々読んでおられる。不安を持つ。そのことに対して、政府がきちっとした見解を表明していないところに問題があるということを私は指摘しているわけで、義務規定ではないとか、強権発動しないとか、正当な理由があれば拒否することができるとか、今も自治大臣おっしゃっている。また、防衛庁長官は、一般的な協力義務なのだから、こういう非常時に協力しないのは常識外だとおっしゃったりすると、やはり地方は不安を持ちますよ。だから、そういうことについてきちっと整理をして統一見解を僕は出すべきだと思うのですが、そのことについてぜひ御検討を願いたい。  皆さんいろいろおっしゃいますけれども、例えば沖縄県の場合、ガイドライン関連法案賛成か反対かという五十三市町村に対してアンケートをとっております。これはNHKさんがとったという報道があるわけであります。  賛成なさったのはわずか四人、反対十五、全面的に反対十六、どちらでもないというか今後検討したいというような意味……。理由としては、平和憲法の理念から、沖縄の戦争体験から、これは当然でしょうね。こういうことを挙げておられる。法案の沖縄への影響についてどう思うかということについて、ないと思うと答えた方はお一人、あるは三十三、どちらとも言えないが十七。周辺事態法協力することを求められた場合どうするかということに、従うと答えたのが三名、全面拒否六、場合による、中身によるというのが三十三。周辺事態定義についてもっと明確にしてほしいが三十一、わかりにくい十八、こういう状況になっているのですよね。  これは、沖縄だから特に意識が強いとか若干あるかもしれませんが、私は、基地所在市町村、地方団体というのは大方こういう懸念や疑問や不安を持っていらっしゃると思うのですね。これにどうこたえるか。これを解明しないと、この法案協力体制というのはなかなか難しいというのが私の認識なのですよね。  それと、日本の平和と安全に重大な影響を及ぼす事態、それは日本の有事に発展するかもしらないという事態ということであるならば、何も後方地域支援をする対象者だけがそういう事態に置かれるわけではないのですよ。日本国民もそういう事態に置かれる可能性がある。欠落しているのは、では、そういう基地所在市町村とか国民の生命財産を守るための後方措置は、政府はどう考えるの。全くないじゃありませんか。  私は最近真剣に、上原さん、本当に防空ごうを掘らなくていいのですかと沖縄で聞かれたことがありますよ。そういうことに、場合によっては核攻撃も当然予測される。今の事態というのは核の傘におるのだから。これに対してはみんな口をつぐんで、何も政策なり提言もしないで、ただ日本の平和と安全に重大な影響を及ぼす事態なのだから、国民協力するのは当たり前ではないかということでは、私はやはり国民的コンセンサスというのは得にくいと思いますよ。こういうことについては、皆さん、政府あるいは閣僚としてはどうお考えですか。
  153. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 随分本質に迫られた御議論を拝聴いたしました。  率直に言って、周辺事態ということにどう対応するかということでこの法案の御審議をいただいておるわけですが、本来、日本有事の事態にどう対応するか、そのときにどうするのですかという今問題提起が上原先生から行われた。本当は、そちらの方が議論が先だという話がいろいろなところで行われておるし、私も個人的にはそういったことを、まずそっちの方が順序からいえば先ではないかということを、党におりましたときに言ってきた経緯はございます。  本当はその辺まで含めて、まじめに日本の安全と平和というものをどうやって確保するかという議論が行われるべきである、私はそう思いますが、今回のこの周辺事態法案は、少なくともそういう日本列島全体の有事のときにどう対応するかという議論とは違って、周辺事態ということに限定した中で、しかもその中で、後方地域支援という枠組みの中でどのように日本対応協力できるのかという話でございますから、ある程度、問題点を広げないで、少し集約した形の中で一つ一つ答えを出していかなければ、余りにも議論が拡散していきますと、なかなか収拾がつかなくなってしまうのではないかということで、今問題提起されました上原先生の貴重な御意見は私も正面から受けとめさせていただきましたが、当面は、やはりこの周辺事態において、そういう日本の平和と安全にかかわる事態なんだ、周辺の事柄ではあるけれども、そういうことでありますから、各自治体協力を求められたという場合には、そういう前提の中で協力を求められるということを念頭に置いて、正当な権限の行使をしていただけるというふうに私は期待をいたしておるわけであります。
  154. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員に大変大事な御指摘をいただいたところでありますが、お話のように、我が国国民に対して直接攻撃が行われた場合は、これは周辺事態とは違いまして、まさに我が国に直接攻撃、武力行使があったということでありますから、これは海上警備行動なり治安出動なり防衛出動で対応するというその法律体系は整備、ほぼ大筋においてその骨格が形成されているというふうに思います。  ところが、周辺事態については、これまで何らそういう法体系の整備がなかったものですから、非常に欠けております周辺事態について今回国会に提出してお願いをしている、こういうことでありまして、国内に直接そういう攻撃が及んだような場合には、私ども自衛隊法等できちっと対処してまいりたい、こう考えております。
  155. 上原康助

    ○上原委員 私が今指摘をしたことは、国民にはそういう声もあるということを本当に政府なり——私はそれは絶対回避しなければいかないと思いますよ。二度と防空ごうに入ることなんか、私なんかそれはもう断じてだめだ、あの沖縄戦の体験からして。だが、周辺事態我が国の平和と安全に重大な影響を与える事態であり、国民協力するのは義務規定ではないが常識だというようにおっしゃる。だが、その後方の後方の対策はどうなっているかということをある面では問いかけられているのです。それが有事立法とすぐ結びつけられてはいかない、同時に。それをどう回避するかが、政府の外交であり行政であり、あるいは政治家のなすべきことだということを私は指摘をしておきたいわけですよ。しかし、そこまでこの法案関連においては問題点が出ているということは、ぜひ御認識をいただきたいと思うのですね。  そこで、これは運輸大臣にちょっとお尋ねします。  僕はせんだってもちょっと引用したわけですが、この間の参考人の御意見の場合も、陸海空、港湾、交通運輸関係労組の代表がここで意見陳述なさったわけですが、私は、これだけのいわゆる技能を持ち、実際に陸海空交通を預かる多くの労働団体なり関係団体が反対の意思表明をしているということは、そう軽く見てはいかぬと思うのですよね。単にこれは思想的なことがあるからということで、従来の安保論議とか、あるいは右か左とか、ハトとかタカとかいうような分け方でこういう問題は扱ってはいかないというのが私の理解なんですよね。事は非常に重大だと思うのですよ。  本当に、二十七万の皆さんが反対しておられる。十八単産単組。そういうことについて、一体、政府として、運輸省として、どれだけ真剣にこの団体や代表の皆さんの声も聞き、それに対して、政府としてあくまでこの法案が必要ということであるならば、理解を求める努力をしておられるのかどうか、そういうことについても真剣にお考えになっていただきたい。お考えがあればお聞かせください。
  156. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 組合等から御懸念いただいておりますこと、特に誤解に基づくことについては、私どもしっかり話をしていかなきゃならぬだろうと思っております。  一つは、物資の輸送等で危険な地域に行くのではなかろうか。これは再三申し上げておりますとおり、基本計画を組む段階におきまして十分そのことに配意をし、そして、その後の状況が変化してその地域が危険ということになれば当然すぐ情報連絡をして帰ってきてもらう、そこまでのスキームをしっかりつくらなきゃならぬだろうと思っております。  もう一つは、民間への要請というけれどもこれは強制じゃないかという御意見が多うございます。ここのところは、まさに民間への協力を依頼するわけでありますから、それも誤解でございますので、しっかり話をしてまいりたいと思います。
  157. 上原康助

    ○上原委員 その点は、意見が対立というか分かれることかもしれませんが、もっと努力が必要だと思いますね。  そこで、この点のまとめとして、協力を求められる自治体とかあるいは依頼される民間機関というのは、その他の機関ですね、これは事実上の強制力を伴うものだという受けとめ方がまだ強いと思うのですね。  それで、自治大臣は盛んに、この法案では罰則規定はないんだ、罰せられることはないということをおっしゃっている。これも聞きようによっては、この周辺事態確保法ではないけれども、成立した法ではないけれども、あるいは他の法案、港湾法であるとかその他あるかもしれません。あるとすれば、どういう法案が対象か。港湾法ですか。何かあれば具体的に挙げてください。そして、その対象になりそうな条文までわかれば聞かせてください。
  158. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 この九条の問題につきまして、委員に対して、必ずしも一貫した説明が少なかったと思いますので、きょうは少し時間をかりて申し上げたいと思います。  この九条において、一項では、地方公共団体の長に協力を求める旨、それから二項では、国以外の民間等に協力を依頼する旨が規定されているわけであります。  これは、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態である周辺事態対応する措置の緊要性あるいは公権力の行使に係る権限の公共的性格及び他に代替手段を求めることが困難であることを考慮しまして、地方公共団体の長と民間等による協力の規定に法律上の位置づけの差を設けたものであることは、読んで字のとおりでございます。  国に協力を求められた地方公共団体は、求めに応じなくてもそれだけで直ちに違法となるものではない、一定の行為をなすべき一般的な義務づけをするものである、こういうことはこれまでずっと説明してきたところであります。  これに対して、依頼するという用語は、相手方に義務を課さない要求であることを明示する趣旨で用いたものであり、国に協力を依頼された民間等はこれに応ずる義務を負うものでは全くございません。  そこで、公共団体について一般的な協力義務ということを申し上げましたが、この一般的な協力義務というのは何かということでありますけれども、この九条一項による協力の求めとは、地方公共団体の長の有する権限の公共的性格、他に代替手段を求めることが困難であるという事情にかんがみ、個別の法令、条例に基づいて権限を適切に行使することを求めるものである。一般的な協力義務というのは、地方公共団体の長がこうした求めに応じて権限を行使することが法的に期待される立場に置かれることを意味するものであります。  したがいまして、九条一項は、地方公共団体の長が同項による協力の求めに応じないことをもって直ちに違法とするものではなく、正当な理由がある場合はこれを拒むことを排除するものではございません。正当な理由であるか否かは、この法案の一項に基づく協力の求めを受けたということを前提としつつ、当該個別の法令、条例に照らして判断されるということになろうかと思います。  そこで、正当な理由というのはどういうことかというと、例えば港湾法の場合に、港湾管理者は適正な港湾の管理をする必要がありますから、船のふくそうしている場合に割り込んで停泊させるということは、これは港湾管理者としては拒むべきことであります。また、船の停泊が大変長期にわたるということも、港湾管理者としてはこれは拒否でき得る正当な理由であろうかと思います。あるいは、接岸施設から船が大きくてはみ出すような場合も港湾の適切な管理運営に反することだと思いますから、こういう場合は正当な理由として拒否できる理由だと私は思います。  逆に、正当な理由に当たらない場合というのは何かというと、これは不平等な扱いをする。例えば、船籍によって、国によって差別をつけるというようなことは正当な理由にはならない。それから、非常に船が込んでいて順番を待っているのに、その適当な順番が来たのに順序を狂わして後ろへ持っていく、こういうような場合は正当な理由に当たらない。こういうふうに考えております。
  159. 上原康助

    ○上原委員 この答弁はもう既になさっておられるのですね。私もそれをわかって、前提で、さっき、こうこう言うんだが、まだ疑問があるからお尋ねするということ。  そこで、防衛庁長官か官房長官かわかりませんが、今あなたが、大臣がおっしゃるようなことではまだ一般的に理解されていないのですよ、市町村自治体を含めて。だから、この拒否できるできないの話、あるいは正当な理由とはどういうものかという政府のきちっとした見解をまとめてくださいよ。これだけではわかりませんよ、絶対に。理解を得られませんよ。検討なさいますね。これは官房長官かな。
  160. 野中広務

    ○野中国務大臣 地方公共団体の関与のあり方につきましては、今日まで累次御答弁を申し上げておるところでございます。  ただ、この法案では、明確にいたしておりますように、周辺事態に対する措置の緊急性にかんがみまして、地方公共団体の長の有する権限の行使につきましては、その権限の公共的性格及び他に代替手段を求めることが困難であるとの事情を考慮いたしまして必要な協力を求めるものでございまして、この場合、あくまで協力を求めるということが前提でございます。  地方公共団体に対して強制するものでもなく、権限について定められた個別の法令に照らして正当な理由がある場合には地方公共団体の長はこれを拒むことができるのでございまして、我が国の平和及び安全に重要な影響を与えるという周辺事態対応する措置の緊急性にかんがみまして、地方公共団体、国、お互いに国民の平和と安全を守るために相協力していかなくてはならないと思うわけでございますので、今後さらに、この問題につきましては、政府側の考えを公共団体を初め関係団体にも十分理解をいただけるように努力をしてまいりたいと考えております。
  161. 上原康助

    ○上原委員 私のお尋ねには直截的にはお答えしてくださらないのは残念ですが、私は、これは御努力はなさると思うのですが、その程度で、程度と言ったら失礼ですが、今のそういう内容では不十分だと思います。  したがって、これから法案の扱いがどうなっていくかはよくわかりませんが、この第九条については、私は、政府のきちっとした見解なり、限界というようなものあるいは限度というか、個々の法令といっても港湾法だけなのか、ほかにもたくさんあるような気もする、そういうことについて精査をして、ぜひ統一見解を求めたい。注文をつけておきます。  委員長、これは理事会で検討してみてください。いいですね。
  162. 山崎拓

    山崎委員長 理事会で検討いたします。
  163. 上原康助

    ○上原委員 次に、もう一つ、これもけさの御質問にもありましたが、一点、確認しておきたいことは、船舶検査の件ですが、これは法案では安保理の決議を前提にしておりますね。この提案された法案がベストで、できるだけ無傷で通してもらいたいという御答弁がさっきあったわけだから、安保理決議というのは政府としては提案どおり尊重していく、そういう立場だと理解していいですね。はっきりしてください。これは外務大臣自治大臣
  164. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態安全確保法案における船舶検査活動につきましては、国連安保理決議の存在を前提としているわけでございます。これは、周辺事態において、経済制裁の実効性を確保するために船舶検査を行うことが必要となることも想定され、そのような活動を我が国が行う場合に、国連安保理決議という根拠があることが有益であると考えられたためでございます。  周辺事態に際し、我が国が船舶検査活動を実施する際、船舶の検査を要請する国連安保理決議があれば、国連憲章第二十五条により、国連加盟国は自国の船舶が検査を受けることを受忍しなければならないことから、旗国の同意を改めて確認することなく公海上において他国の船舶を検査することができることになります。このことから、周辺事態安全確保法案では、国連安保理決議の要請があることを前提としたわけでございます。  いずれにしましても、政府としては、国会において十分の議論を尽くしていただいた上で、周辺事態安全確保法案国会審議を得て早期に成立、承認されることを強く期待しているわけでございます。
  165. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 現に、現在この政府案を御審議いただいておるわけでありまして、政府としては、この法案を成立させてほしいということでお願いをしている、これはもう御承知のとおりであります。  しかし同時に、それに当たって、今現在、既に与野党を通じて、内容についてよりよきものを求めていろいろ御議論をいただいて、熱心にそのあたりを協議していただいておる、こう伺っておりますので、その結果を踏まえてよりよく改善されるということであれば、それはそれで結構なことであるというふうに思います。
  166. 上原康助

    ○上原委員 イエスとノーをはっきり言う方がいいという方が東京都知事にも圧倒的に当選なさったわけだが、今のお二人はイエスかノーなのかはっきりわからない。私は、法案でそうなっているのだから安保理決議というのは必要だということを申し上げているわけで、それが修正されたら、よりよい法案にはならないですね、自治大臣。その点だけ私の見解として申し上げておきます。  次に、防衛庁長官が大分長々と御答弁して、ちょっとこの問題もなんですが、中国外交問題をお尋ねしたいのですが、時間が……。  さっき申し上げたように、沖縄の基地問題とのかかわりあるいはガイドライン関連法案で、大変敏感に反応をしつつある。きょうも多分、県民大会が持たれるのじゃないかと思うのですね、反対という立場で。そこで、せっかくの機会ですから、安保体制あるいは関連法案とも関連をいたしますので、基地問題についてまずお尋ねしておきます。  官房長官、せんだって、大変お忙しい中、御苦労さまでした。沖縄開発庁長官というよりも内閣の中枢におられる官房長官、帽子を幾つもかぶっていらっしゃるわけですが、沖縄視察の感想と、今後の基地の整理縮小の推進とか振興策等々についての政府の改めての御認識、御決意をまず聞かせていただきたい。  といいますのも、きのう四月十二日、いわゆるSACO合意ができて、普天間を向こう七年以内に返還するという橋本・クリントン会談がなされて、もう満三年経過してしまったのですね。いまだにめどが立たない。もちろん、稲嶺知事が鋭意努力をしておられるということは私も理解をいたします。そういう面で、県民は、非常にもたもたした面も気持ちの上でないわけではない。  そういう点を含めて、今、今度の視察と今後のお考えがあれば、まずお聞かせを願いたいと存じます。
  167. 野中広務

    ○野中国務大臣 一月十四日の改造内閣において沖縄開発庁長官を命ぜられましたので、何とか早く沖縄県を訪問し、それぞれの関係の機関にごあいさつを申し上げたいと存じておりましたが、国会日程等、十分時間をとることができませんでしたので、お許しをいただいて、九日の午後、沖縄を訪問させていただいた次第でございます。  関係機関の皆さんとお会いをいたします中で、稲嶺知事が熱心に、今、基地の縮小整理を初めとする諸問題の解決のために、さらには沖縄県の均衡ある発展のために県内体制をお整えになって、お取り組みをいただいておる状況を目の当たりに見て、私どもも新たな感慨を深くした次第であります。  委員指摘のとおり、十二日は普天間の返還が決定をして三年を迎えるわけでございまして、宜野湾の市長さんはこの着実な実行の問題について声明を発表されましたし、あるいは、そのお心を、私も直接お会いをしてお伺いする機会もございました。また、名護の地域におきましても、新しい住民の意思の表明もございました。  また、那覇空港の取り扱いにつきましても、浦添商工会議所、市議会、市長さんの御意見も伺ったところでございまして、沖縄において、基地のありようについて政府と一体となって前進的に考えていこうとする機運がありますことを私どもも認識をしながら、しかし、政府として沖縄県の頭ごなしに何かを今しようと考えておるのではございませんし、県内に設けられましたプロジェクトチームの御検討の推移を見ながら、内閣といたしましても、これをそれぞれ、お手伝いできることがあればと思いまして、内閣にプロジェクトチームを組織したところでございまして、今後、両々相まちまして、この問題が早期に着実に解決するように一層努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  168. 上原康助

    ○上原委員 今までお述べになった域は出ないわけです。  さっき私、一つ訂正しておきます。橋本・クリントン会談と申し上げたのですが、四月十二日は橋本・モンデール会談です。失礼しました。  そこで、これは外務大臣防衛庁長官にも見解を少しお述べいただきたい。  今、官房長官からありましたが、基地の整理縮小についてはSACO合意が幾分動き出しました。私もその点はできる範囲で協力もしているつもりですが。今後、このSACO合意だけでなくして、やはり七五%もある、さっき指摘をしたことについても、新たなこの法案ができれば、基地所在市町村とか自治体とか、特に沖縄にはより大きな負担と、場合によっては犠牲もまた行くのですよ、こうむることになるのですよ。  そういうことを含めて、私は、政府基地問題に対しての認識を、緊張感を持続すべきだと思うのですが、そういうことについては、外務大臣防衛庁長官はどういう御認識ですか。一言ずつお答えください。
  169. 高村正彦

    高村国務大臣 委員の御協力もあって、わずかでありますがSACO合意が動き出したということは大変私たち喜んでいるわけでございます。そして、少なくとも当面はこのSACO合意を一生懸命実行することが一番大切なことだ、こう思っておりますし、そういう中で、稲嶺知事のお考えもよく聞いた上で精いっぱい努力していく所存でございます。
  170. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員の御協力等によりまして、伊江島へのパラシュート訓練の移転、あるいは楚辺通信所のキャンプ・ハンセンへの移転、それに伴う読谷飛行場の問題の進展、あるいは那覇軍港の受け入れの問題等、いろいろ兆しが出てきたことを大変私どもも喜んでいる次第でありまして、SACO最終報告というのは、完全にこれを実施することが沖縄の皆さんに対する負担を軽減するゆえんだと思います。移転等に伴っていろいろ起こる問題については、私どもとしても、補償その他適用法の範囲内において最大限のものを考慮していかなければいかぬ、こう思っております。
  171. 上原康助

    ○上原委員 さはさりなん、前途は大変厳しいと私はまだ思っております。特に、目玉である普天間基地の移転というのは、県内であるならば余計に困難をきわめるでありましょう。そこいらの御認識も持ちながらひとつ今後もやっていただきたいということを要望しておきます。  そこで、官房長官、具体的な問題として二、三点申し上げておいて、御理解等、ぜひ政府として積極的におやりになっていただきたいのですが、私は、この間、嘉手納町の宮城町長さんや市町村の首長さんと時々意見交換をしているわけですが、島田懇の件、沖縄米軍基地所在市町村に関する懇談会の提言というのが九六年十一月十九日になされております。相当期間というのはどのくらいかということについて、七年くらいということになっております。  そこで、計画して既にもう三年を迎えようとしているわけです。例えば嘉手納町のタウン構想であるとか、沖縄市のこども未来館及びその周辺整備、今防衛庁長官からありましたキャンプ・ハンセンのある金武町ふるさと町づくり、名護市の人材育成等々の構想なりプランニングというのはまだ緒についたばかりで、とてもではないが七年という期限を切られたのではこれの推進はおぼつかないという関係首長さんは懸念を持っておる。  私も今すぐここでどうこうということは申し上げませんが、ぜひそこいらのことも十分御念頭に置いて、基地問題の解決については、ただSACO合意を推進するということではなくして、本当に長い負担と犠牲と閉塞感というものをどう脱却していくかということが大事でありますので、その点についてどういうお考えを持っておられるのか、私が指摘をしたことについてお考えを聞きたいと思います。  同時に、せんだって予算委員会でも、基地所在市町村と基地が所在しない市町村とはいろいろな面で大分格差がついている、そういうことについても、二十一世紀プランであるとか、あるいは今政府が考えておるいろいろの振興策等々で考慮していただかないとならない課題だと私は思うのですが、この点。  さらに、先ほどもちょっとお触れになりましたが、何か初めて政府の、沖縄開発庁長官として、那覇空港のハブ化を目指した県の要望に積極的にこたえていきたいと。これはまあ運輸省とも関連があると思うのですが、この三点について。  これは、こういう公式の場でのお尋ねでもありますし、一応私も重大な関心がありますので、御見解をお聞かせ願いたいと存じます。また、那覇空港の件については、もし運輸大臣のお考えもあればあわせてお聞かせを願いたい。
  172. 野中広務

    ○野中国務大臣 御指摘の島田懇のプロジェクトにつきましては、懇談会での活発な御論議をいただきまして事業の推進に必要な予算措置を逐次図ってきたところでございまして、委員御承知のように、伊江村の城山展望施設とか、名護市におきます留学生センターとか、金武町の街路施設の整備とか、既に完成をいたしましたし、また、名護のマルチメディア館につきましても、施設の完成とともに近くNTTの番号案内センターの事業が開始をされるなど、具体的な進展を相当見るに至ってきたところでございます。  一方、今御指摘がございましたように、事業の具体的な方向づけについてまだ検討中のものも市町村で相当あるわけでございまして、これらについては、フォローアップ機関であります有識者懇談会でも精力的な御審議をいただくことによりまして、関係市町村が適切かつ効率的な構想づくりを早く進めていただくことを私どもとしても期待いたしておるところでございます。  特に、御指摘ございました嘉手納タウンセンターが、平成九年度から十年にかけまして権利者の意向調査なり土地建物等の現況調査等を実施いたしておるわけでございますし、平成十一年度予算におきましては、事業を推進するための地区整備計画の調査を行うこととしておるところでございます。  しかし、この事業は、もう申し上げるまでもなく事業そのものが大規模でありますし、事業完了までには相当の期間を要するのではなかろうかと懸念もいたしておるわけでございますので、今後とも効率的な実施方法のあり方について引き続いて考えてまいりたいと思うわけでございます。  また、沖縄全土の均衡ある発展についてでございますけれども、沖縄経済振興二十一世紀プランにつきましても、政府といたしまして、二十一世紀に向けました、沖縄の依存型経済から自立的経済への移行をいかに図るかを考えながら検討を進めてまいりたいと思いますし、振興策のいわゆる圏域別ないし地域別の展開につきましても、今申し上げましたように、県全体の均衡ある発展という観点からこれからも沖縄振興開発計画の中で取り上げていきたいと存じておるところでございます。  また、御指摘ございました那覇空港は、国が設置いたし管理する三千メートルの滑走路を持つ空港でもございますし、現在、本土路線、県内路線、国際路線のネットワークによりまして、年間約千四百二万人が昨年も利用されたと聞いておるわけでございます。近年の観光需要の増大、利用客も順調に増加を続けておるわけでございます。  また、当面、ターミナル地域の統合、拡充、整備が重要な課題でございまして、新しいターミナルビルにつきましても五月には供用を開始することを目途に整備をされ、私も先般この状態を見させていただいたわけでございます。  平行滑走路の増設がこういう那覇空港の拡張につきましてはぜひ必要であると沖縄開発庁としても考えておるわけでございます。  今後、沖縄県ともよくお話をし、所管される運輸省とも関係省庁を連携しながら検討をし、ぜひ実現に向けて努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  173. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 ただいま沖縄開発庁長官から御答弁があった那覇空港の問題でございますけれども、滑走路増設問題、一つは航空需要がどのぐらい伸びてくるか、この観点が第一であります。第二の問題として、滑走路を共用している民航機と自衛隊機の飛行の態様の違い、この問題があると認識をいたしております。こうした見地から、沖縄振興策を担当する沖縄開発庁と十分連携をとりながら検討を進めてまいりたいと思います。
  174. 上原康助

    ○上原委員 もう時間もあと二、三分しかありませんので、これで終わります。  台湾問題というか日中問題と、地位協定あるいは事前協議のことについても少しお尋ねしたかったのですが、私が大変関心を持つのは、けさのNHKのラジオ報道によると、何か台湾国防部が新たに軍事訓練を、演習をするという計画が近々あるという発表をしておるようです。来年は総統選挙があります。周辺事態で台湾海峡、台湾地域が入るのか入らぬのかということについては、中国が大変な関心をお持ちのことは万人承知のことです。  そういう意味で、もし機会がありましたら、特に沖縄の海兵隊のプレゼンスとの関連等においていろいろ関心の持たれる、懸念されることでありますので、また次回に少し問題提起をしながらお尋ねをさせていただきたいと思います。きょうはこれで終わります。ありがとうございました。
  175. 山崎拓

    山崎委員長 これにて上原康助君の質疑は終了いたしました。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十二分休憩      ————◇—————     午後二時三十一分開議
  176. 山崎拓

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。遠藤乙彦君。
  177. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 公明・改革の遠藤乙彦でございます。  ガイドライン関連法案につきまして質問をさせていただきます。  ガイドライン特別委員会総括審議、三月十八日からスタートをしたわけでございますが、その後、北朝鮮のいわゆる工作船の事件、それからNATOのユーゴへの介入という非常に象徴的な事件が起こったわけでございますが、私は、特にNATOの介入に対する我が国の評価というところから質問を始めたいと思っております。  三月の二十四日にNATOはコソボ自治州における紛争に対して空爆を開始したわけですけれども、今回のコソボ紛争に対するNATOの介入は、紛争の拡大を人道的な理由から実力で阻止しようという人道的介入という観点から実行されたわけでありますけれども、皮肉にもユーゴスラビアによるアルバニア系住民に対する弾圧がかえって強化をされ、さらなる大量難民を生み出す結果となっております。  コソボ自治州の周辺国には既に多くの難民が殺到しているほか、ユーゴスラビア政府は同国から出国しようとしている難民に対して強制帰還を命じているとも報じられておりまして、本来救われるべき人々が逆に悲劇に遭っているという面もあるわけでありまして、そういったことを考えますと、NATOによる介入はむしろ失敗しているとの見方もあり得るかと思います。  これまでのNATOによる武力介入に対する政府の評価についてまずお伺いをいたします。
  178. 高村正彦

    高村国務大臣 昨年三月以降、欧米諸国は、コソボ問題の政治的解決を目指して、国連安保理、G8、ランブイエ会議、パリ会議等の場で粘り強い外交努力を重ねてきたわけでございます。しかし、欧米諸国のそのような外交努力にもかかわらず、ユーゴ政府はコソボ問題解決のための和平合意案をかたくなに拒否し、他方で国連安保理決議に反した行動をとり続けてきたわけでございます。三月二十四日以来のNATOによる武力行使は、そのような中で、コソボにおけるさらなる犠牲者の増加という人道上の惨劇を防止するために、やむを得ずとられた措置であったと理解しております。  委員が御指摘のように、少なくとも短期的に見ると、NATOの介入が大成功であったとはとても現時点では評価できない状況なのかな、こういうふうに思っております。
  179. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 やむを得ずとられた措置であるというふうに見ておられるということのようですが、では、続いて法的な側面からお聞きしたいんですが、このNATOのユーゴへの武力介入は、国連憲章上または国際法上正当化されるものですか。
  180. 高村正彦

    高村国務大臣 今回のNATOの行動は、ユーゴスラビア政府が和平合意案をかたくなに拒否して、他方で、過度な武力行使が続く中、ぎりぎりの外交交渉がとんざし、このまま放置すれば多数のさらなる犠牲者が出ることが必至という人道上の惨劇を防止するために、やむを得ずとられた行動であったと理解しているわけであります。安保理において、三月二十六日、日本時間では二十七日でありますが、ロシアが、今回のNATOの武力行使を国連憲章違反とした上で、NATOの武力行使の即時停止と交渉の再開を要求する決議案を安保理に提出したわけでありますが、賛成三、反対十二、棄権ゼロの大差で否決されたわけであります。  御指摘の人道的介入とは、一般的に、他国で行われている非人道的なことをやめさせるために、武力行使を含め当該他国に介入することを指すものと考えられますが、このような人道的介入については、学説上種々の意見があるというふうに承知をしております。  我が国としては、従来から説明を申し上げているとおり、人道的介入がいかなる状況でいかなる条件のもとでどの程度まで許されるのかという点は、いまだ国際法の問題としては形成途上の問題である、こういうふうに考えているわけであります。だから、物差しがまだはっきり国際法上として確定していないという状況の中にあるわけであります。  いずれにせよ、今回のNATOの軍事行動については、我が国が当事者ではなく、また、作戦面を含むNATOの軍事行動に関する詳細な情報を有しておらず、政府として法的評価を下すことができない状況にあるということを御理解いただきたいと思います。
  181. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 それでは、アジア太平洋地域で今後こういった人道的介入が行われた場合に我が国としてどう対応するかといった問題につきましてお聞きしたいと思うんですが、コソボみたいな状況は、アジア太平洋地域、特に東アジア地域でも起こり得る事態であると考えております。  コソボの紛争に対する人道的介入は、NATOという地域の相互防衛機構によって実行されたわけです。他方、アジア太平洋地域の安全保障体制は、NATOのようなまだ地域的な機構がなく、日米安保体制のような二国間の安全保障体制によって構築をされております。このため、もしこのアジア太平洋地域において人道的介入が必要な事態が起こった場合に、アジア太平洋地域における安全保障装置の一翼を担っている日米安保条約の有効性が試されると同時に、また、複雑かつ新しい形態をとる冷戦後の紛争に対する我が国の取り組みが問われることになると思います。  安全保障対策は、言うまでもなく万が一のための政策でありますし、あらゆる事態に対処できるよう平素から検討することが求められているわけでありますけれども、アジア太平洋地域でこういった人道的介入が行われた場合の我が国対応について、政府の見解を伺います。
  182. 高村正彦

    高村国務大臣 御指摘の人道的介入とは、一般的に、他国で行われている非人道的なことをやめさせるために、武力行使を含め当該他国に介入することを指すものだ、こういうふうに思いますが、御質問のような仮定のお話について我が国がいかに対応するかを予断することは非常に困難、甚だしく困難でありまして、いかなるケースにおいていかなる形の人道的介入が行われるかによってその事態への対応ぶりは異なるということを御理解いただきたいと思います。  仮に人道的介入を招来するような事態があるとして、その場合には、個々の事案に即してその都度いかなる対応を行うべきかを我が国として検討していくことになる、こういうふうに考えます。
  183. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今回のユーゴの問題の一つの参考にすべき問題は、コソボ紛争の例に見るように、地域紛争の発生が大量の難民を生じさせる可能性が高いということに着目をしておく必要があると思います。いまだに不安定要因の残るアジア太平洋地域において、地域紛争が発生をすれば、我が国にも大量の難民が押し寄せてくることは想像にかたくないわけで、ガイドライン周辺事態の中にもそういったことも想定をされているかと思います。  日米ガイドラインでは、周辺事態における避難民の取り扱いについて、避難民が我が国の領域内に流入してくる場合は、我が国がその対応のあり方を決定するとともに、主として我が国が責任を持って対応するというふうに記されておりますけれども、有事における大量の難民対策について基本方針は策定されているかどうか、お伺いをいたします。
  184. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 ただいま先生、有事においてという御質問でございますが、有事という概念が、先生御指摘の場合どういうケースかというのがちょっとあれでございますが、いわゆる日本有事の場合とは別だということで御説明を差し上げたいと思います。  政府といたしましては、橋本内閣以来、我が国の周辺地域におきます我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態を中心としまして、我が国に対する危機が発生した場合、あるいはそのおそれがある場合につきまして、我が国としてとるべき必要な対応策について、いわゆる緊急事態対応策ということで検討、研究を行ってきているわけでございます。  その中で、御指摘の大量避難民というものでございますが、この対策につきましても、関係省庁が共同で作業グループというようなものを設置いたしまして、政府全体としての対処の手順等につきまして整理を行っているというところでございます。  その具体的な一例を申し上げますと、そもそも避難民対策の体制はどうあるべきか、あるいはまたその基本的な要領、例えば身柄の保護ですとかあるいは上陸の手続、その際、だれでも上陸させればいいというものではないわけで、スクリーニングというふうに申しておりますが、そういったようなことについて整理を行っているというところでございまして、これは現在、こうすればいいという結論があるというものではございませんで、いわば不断に検討、研究を続けていくという体制でございます。
  185. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 しっかり研究をしてそういった事態には対応できるように、ぜひ方針を明確にしておくように望みたいと思います。  続いて、そういった大量の難民が到着した場合の体制の問題で、特に人員の確保ということにつきまして御質問をしたいと思います。  難民が我が国に到着した場合、上陸するには入国審査官の許可が必要となるわけですけれども、現在の我が国の地方入国管理局における入国審査官は約千二百名しかいないという状態でございます。日常業務に忙殺されていることを考えますと、大量の難民が到着した場合の対応は非常に難しいと思われます。  そのほか、治安の維持とか宿舎の確保、食糧の確保等いろいろな面が必要でございますし、警備等の面でも、都道府県警察や入国警備官、海上保安庁などによって担われるかと思いますけれども、絶対的にそういった人員が少ないというふうな状況にあるかと思っております。  そこで、大量の難民が我が国領域内に流入してきた場合に対応する人員について、どうやって確保するのか。これは決して将来、遠い先ということではなくて、いつでもあり得る事態であるという想定は持っておかなければならないと思いますけれども、そういった意味で、具体的にどのような人員を確保していくのか、この点につきまして、政府の見解をお聞きしたいと思います。
  186. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 大量の避難民が我が国領域内に流入してくるということは想定し得るわけでございますが、ただ、それがどの程度の規模になるか、またどういう態様であるかということをあらかじめ断定することは、なかなか難しいわけでございます。したがって、そういったことにつきまして、例えばそれが集中的な流入なのか、あるいは断続的なものなのか、またエリアはどうなっているのか、そういったようなことにつきまして、私どもいろいろ研究は行っているわけでございますが、当然、その態様によって、今先生御指摘の人の手当てといったことも違ってまいるわけでございます。  ただ、これを平素から大量に、こういう事態のために人員をあらかじめ配置しておくというのはなかなか難しいわけでございまして、したがいまして、私どもとしましては、例えばそういう大量な難民というのがあった場合に、どうやってそれを効率よく処理していくかということにつきましては、手続、あるいは先生御指摘の人員をどうやってやりくりするかといったようなことについてはいろいろと研究をしておるところでございまして、それぞれのところで、先生今御指摘のような、法務省あるいは海上保安庁等々の関係省庁におきまして手当てをしていくということにならざるを得ないというふうに思っております。
  187. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 もちろん、常時そういった人員を確保するのは難しいと思いますけれども、やはり緊急事態対応して、そういった人員を具体的にどうやっていろいろな部署から持ってくるかということを含めて、緊急事態対応についてもう少し踏み込んだ計画はぜひつくっておくべきだと思っておりますので、この点、要望として申し上げたいと思っております。  続いて、避難民支援に対する米国の支援の問題ということなんですが、我が国の領域内に流入してきた避難民に対する措置につきましては、日米ガイドラインでは、「米国は適切な支援を行う。」と記載されております。そこで、米国の支援とはどのような内容のものを想定しているのか。  また、主として我が国が責任を持って対応する旨が記されている以上、我が国が米国に対して協力を要請したとしても、米国は自国の判断等で支援を断ることもあり得ると思うわけです。現実問題として、米軍が軍事行動を実施している場合に、我が国の支援どころではなくて、事実上、我が国のみで対応せざるを得ないのではないかと考えられますけれども、この点につきまして、政府の見解をお伺いします。
  188. 高村正彦

    高村国務大臣 新たな日米防衛協力のための指針に記載されている避難民への対応のための措置につきましては、避難民の救援及び輸送のための活動並びに避難民に対する応急物資の支給といった活動が想定され、米国から受ける支援につきましても、このような活動に伴う支援を想定しているわけでございます。  米軍が軍事行動を実施している場合、米軍我が国の支援どころではなくなるという御指摘でございますけれども、新たな日米防衛協力のための指針では、避難民が我が国の領域に流入してくる場合には、我が国が主として責任を持ってこれに対応し、米国は適切な支援を行うこととなっており、日米両国が必要に応じて協力することによって対応することが想定されているわけであります。  その対応のあり方につきましては、我が国における受け入れ体制のあり方を含め、内閣を中心とする緊急事態対応策の検討の一環として、大量避難民対策の検討の中で実務面から鋭意検討作業が続けられており、日米間の具体的な協力の内容につきましても、今後の緊急事態対応策についての政府部内の検討作業の状況をも踏まえつつ検討してまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  189. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今度は、周辺事態の際における日米関係につきまして御質問したいと思います。  特に武力行使の必要性について、日米間で見解の相違が生じる可能性が当然あると考えられます。例えば、我が国周辺で発生した事態に対して、米国が軍事行動を含めどのような対処を行うかは、基本的には米国の独自の判断によって決定されると思います。そして我が国は、その事態周辺事態に該当するかどうかについて主体的に判断し、対米協力を行うか否かを決定することになると思います。  しかし、日米両国が互いに対等な独立国家である限り、我が国周辺において米国が独自の判断に基づいて行った武力行使を、我が国としては支持できない場合も当然あり得ると考えられます。国際法との整合性を別にしましても、米国と我が国には、それぞれの国益や問題の解決方法、考え方があってしかるべきでありまして、武力行使の必要性について、米国との間で見解の相違を生じる可能性は否定できないと考えられますので、そういった場合の政府の見解を伺いたいと思います。
  190. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 ある事態周辺事態に該当するか否か、周辺事態に際していかなる措置を実施するかにつきましては、日米両国が、御指摘のようにおのおの国益確保の見地から、その時点の状況を総合的に見た上で主体的に判断することになるわけでございますが、その際、日米両国間においては、随時密接に行われている情報交換、あるいは政策協議が一層緊密に行われ、このような事態について共通の認識に達するための努力が払われることになることから、このような事態に係る対応措置必要性について日米間でそごが生ずることは、現実の問題としては想定されないところであります。  また、仮に周辺事態が生起したとしても、米国は武力の行使を伴わない種々の活動、例えば情報収集とか警戒監視等を行いまして、まずは事態の拡大の抑制や収拾に努めることが想定されるため、周辺事態になれば米国は直ちに武力を行使するとの前提を置いて論議することは、必ずしも適当ではないと考えます。  したがって、御指摘のような仮定の状況について具体的に論ずることは適当ではないと考えますけれども、米国は、国連憲章のもと、違法な武力行使を慎む義務を負っておりまして、周辺事態に際して米国が武力を行使するのは国際法上の要件を満たす合法的な場合に限られることを前提として、あえて一般的に申し上げますと、米国の武力行使が当該事態の生起に影響があったことをもって、当該事態我が国の平和と安全に重要な影響を与えているか否か、対米協力を含むこの法案に基づく措置を実施することが必要であるか否かについての我が国としての主体的判断を直ちに結論づけることにはならないと考えております。
  191. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今防衛庁長官からは、日米間で緊密な協議をするので、そういったそごがあることは実態上考えにくいという趣旨の御答弁だったと思うのでございますが。  ただ、そこで先ほど冒頭御質問申し上げましたコソボ紛争の例が出てくるわけであって、今までの大臣防衛庁長官の御答弁は、米軍の行動は、国連憲章上、国際法上常に正当化される行動であるという前提でお話をされておりますが、まさにコソボ紛争の例のように、国連憲章上疑義のある、必ずしも正当化されると言えない行動が現にあるわけであって、こういった具体的な例をかんがみた場合に、やはり東アジアでも同じような事態は起こり得るということを想定しておく必要があろうかと思っております。  そういった意味で、まさにこのユーゴの問題、コソボ紛争と同じようなケースが起こったときに日本はどう対応するのか。米国が国連憲章上疑義のある、いろいろな問題、議論はあるかもしれませんが、国連憲章上正当化されると言い切れない問題について武力行使をした場合に日本はどう対応するのか、そこをぜひお聞きしたいと思います。
  192. 高村正彦

    高村国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、コソボの問題というのは、我が国から見て事実がわからない点が非常にあるわけです。例えば、民族浄化が行われているといった場合も、そこにいる人たちが追い出されているということと、あるいは場合によっては虐殺されている、そういうのが一部あるということははっきりわかっていますが、どの程度そういうことがあるのかというようなこともわかりません。それから、NATOの攻撃がどの程度的を絞ったものであるか、それはある程度報告は来ていますけれども、それについても正確な判断ができない。  そういったことから、日本とすれば、当事者でもなく、正確な判断ができないわけでありますが、周辺事態の場合は、まさに我が国周辺で起こった我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態で、我が国が主体的に判断できる問題で、そのことについてあらゆる情報を米側と交換するわけでありますから、そういう中において実態的な判断のそごがあるということはまず考えられないのではないかということが、防衛庁長官が答弁されているところなんだろうと思っております。
  193. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 重ねて伺いますが、日本がそういった米軍の出動に対して後方地域支援等を行う場合は、米軍が常に国連憲章上正当な武力行使をしているという前提のもとで今まで議論が来ているわけですけれども、今回のように、国連憲章上疑義のある形で米軍が武力行使をした場合に日本はどうするか、この点、やはり非常に大事な問題ですので、ぜひお答えをいただきたいんですけれども
  194. 高村正彦

    高村国務大臣 法理的には、日本が主体的に判断をいたしまして、そして国連憲章上問題がないという判断をしたときにするということになりますが、現実の問題として、日米間では緊密な協議をいたしますので、そのような疑義のあるようなことを米軍はしないであろう、そごが出てくるようなことはまずないであろう、こういうことを申し上げているわけでございます。
  195. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 これは押し問答になっちゃいますのでそれ以上議論をするつもりはないんですが、この周辺事態安全確保法案の趣旨からすれば、我が国が主体的に判断を行うことができるのは、その事態我が国の平和と安全に重大な影響を及ぼす周辺事態であるか否かによって決めるということであって、その事態の解決に当たって米軍による軍事行動が適切か否かということではないと思います。  そこで、しかし例えば、日米が武力行使の必要性について見解の相違を生じているにもかかわらず、米国が独自の判断に基づき武力を行使し、その米軍の行動によって逆に我が国の平和と安全に重大な影響を与える事態が生じた場合、我が国はこれを周辺事態と認定をして新ガイドラインに基づく対米協力を実施するのか否か、改めてこの点を伺います。
  196. 高村正彦

    高村国務大臣 ある事態周辺事態に該当するか否かにつきましては、日米両国政府がおのおの主体的に判断するものでありますが、周辺事態と考えられるような事態が発生している場合には、防衛庁長官が答えられたように、日米両国政府間の情報交換、政策協議が一層緊密に行われ、そのような事態について共通の認識に到達するため努力が払われることになります。したがいまして、日米間において周辺事態にかかわる共通の認識が成立しないということは、このような日米間の密接な協議、連絡にかんがみれば、実際の問題としては到底考えられないことだと思っております。  周辺事態に際して米軍日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行っている場合には、既に我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態が生じていることが前提でありまして、また、米軍の行動は事態の拡大の抑止や収拾を図るものでありますので、周辺事態における米軍の行動は御指摘のような事態を生じさせるものではないと考えます。すなわち、米軍がこう行動したことによって周辺事態になるということは、これもやはり想定できないのではないかと思っております。
  197. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 現実問題としては、そういった事態も全く排除はできないと考えておくべきだろうと思います。  確かに同盟関係でありますから、極力米国に対して信頼をし、共同行動をとることは当然であると思いますけれども、ただ米軍、米国の行動が常に正しいとは一〇〇%は言いがたい面もあるわけであって、米軍が特にフライングをした場合、そういった場合どうするのかということは、やはり現実問題として対応は考えておく必要があるかと思っております。ただ、これは押し問答になるので、これ以上議論するつもりはありませんけれども。  そこで、政府はこの周辺事態の具体例として四つの類型を既に答弁の中で出されております。しかし、あくまでこれは具体例といいますか類型であって、いまだこの周辺事態認定の基準が明確に示されたとは言いにくいのではないかと思っておりまして、我が国の平和と安全に重大な影響を与える事態とは、結局どのようにでも解釈できるのかなといった印象を受けざるを得ません。  例えば一つの仮定の例として、米国が武力攻撃の対象としている国が我が国に対して武力行使の意思を持たないことが明らかな場合あるいは否定しているような場合でも、我が国の平和と安全に重大な影響を与える事態として、周辺事態として認定することはあるのかどうか伺いたいと思います。
  198. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 御指摘のとおり、周辺事態我が国周辺の地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であります。ある事態周辺事態に該当するか否かは、その事態の態様、規模等を総合的に勘案して判断することとなります。  私どもは、具体例として四つの例を挙げてまいりましたが、軍事的観点を初めとするさまざまな観点から見て、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態を意味し、これまでかかる事態の例として典型的に考えられるケースを答弁してきたところでありますけれども我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態か否かについては、その事態の規模、態様等を総合的に勘案して判断すべきものでありますため、その具体例をあらかじめ概括的、包括的に示すことはできないところであります。  また、周辺事態のこのような性格から、御指摘のように、米国が武力攻撃の対象としている国が我が国への武力行使の意図を持たないことが明らかである場合であっても、それをもって周辺事態に該当するか否かの判断が直ちに結論づけられるものではなく、その事態の規模、態様等を総合的に勘案した上で、あくまでも我が国の平和と安全に重要な影響があるか否かという観点から判断を行うこととなると考えます。
  199. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて、この周辺事態の認定の際、国際社会の理解を尊重する必要性があるという点につきまして御質問したいと思います。  米軍の行動が常に国際社会の理解を得られているわけではなくて、国際法との適法性をめぐって国際世論が二分されるケースも見受けられるわけであります。コソボ紛争に対するNATOの介入に対しては、国連安保理常任理事国のうち中国とロシアが異議を唱えていることは、御承知のとおりでございます。  この周辺事態の際における対応措置とは、我が国が武力行使を受けていない段階での米軍への協力であるということですから、周辺事態を認定するか否かを決定する場合には、我が国協力する米軍の行動を国際社会が理解し、支持しているかどうかが非常に重要な意味を持つものと思います。また、専守防衛ということを安保政策の基本に据えてきた我が国米軍への協力を行うことについて、国際社会に疑念を持たれることがあってはならないと考えるわけです。  そこで、まずお聞きしたいのですが、我が国周辺事態を認定する場合には、米軍の軍事行動に対する国際社会の理解、特にアジア地域の諸国の理解に対する配慮が不可欠であると思いますけれども、これにつきまして政府の見解を伺います。
  200. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態が生起したとしても、米軍は常に武力行使するわけではないわけでありまして、武力の行使を伴わない種々の活動、情報収集だとか警戒監視等を行い、まずは事態の拡大の抑制や収拾に努めることが当然想定されるわけであります。したがいまして、周辺事態になれば米国は直ちに武力を行使するわけではないという点についてぜひ御理解をいただきたい、こう思います。  その上で申し上げますと、米国は、日米安保条約において明記されているとおり、これは第一条、第七条でありますが、国連憲章のもと、違法な武力行使を慎む義務を負っております。我が国としては、同盟国たる米国がこうした義務に違反して武力行使することはそもそも想定していないということは、何度も申し上げているところでございます。  そして、政府としては、従来から、指針に関し関心を有する諸国に対して透明性を確保することが重要である、こう考えておりまして、このような透明性の確保は、周辺事態が生起している場合でも重要である、その場合は余計重要かもしれませんし、認識しているところでございます。議員の御指摘も踏まえ、今後とも必要に応じ、関心を有する諸国に対ししかるべく説明を行っていきたい、こういうふうに考えております。
  201. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今の大臣の御発言は大変評価をするものですが、ぜひとも近隣諸国等の透明性はきちっと、透明性ないし説明責任ですか、そういったものはしっかりと維持していただきたいと思っております。  それからもう一つ、今の問題との関連ですが、我が国周辺における事態への対応について、日米間あるいは地域の意見をまとめるための枠組みの構築といいますか強化が必要であると思いますけれども、そういった点につきまして政府の見解はいかがでしょうか。
  202. 高村正彦

    高村国務大臣 日米両国政府間におきましては、安全保障協議委員会等、種々のレベルにおいて密接な情報交換、政策協議が随時行われており、周辺事態と考えられる事態が発生している場合には、これらが一層緊密に行われ、このような事態について共通の認識に到達するため努力が払われることになるわけでございます。指針に明記されているとおり、日米両国政府は、周辺事態が発生することのないよう、外交上のものを含むあらゆる努力を払うとともに、周辺事態が予想される場合には、事態の拡大を抑制するため、外交上のものを含むあらゆる努力を払うことになっているわけでございます。  さらに、政府としては、平素から、域内諸国間の信頼醸成を促進する観点から、二国間及び多国間のさまざまなレベルで安保対話、協力を促進すべく努力しているところでございます。  今後とも、政府としてはこのような努力を継続していきたいと考えており、また、このような外交努力の重要性は周辺事態が生起している場合であっても変わらない、こういうふうに認識しております。
  203. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 大臣の言われた周辺諸国に対する透明性あるいは説明責任ということは大変重要なポイントでございますので、特に今後この点は留意をして、努力をしていただきたい、これは要望しておきたいと思います。  続いて、船舶検査活動の問題につきましてお聞きしたいと思います。  まず、今回の日米ガイドラインの中では、国連安保理決議に基づく船舶検査活動についての協力が盛り込まれております。ということは、米国は、我が国が行う船舶検査活動についてはそもそも国連安保理決議が必要である、そのような認識に立っているのか、国連安保理決議がない場合にはやるべきではない、そういう認識に立っているのか、この点を確認したいと思います。
  204. 高村正彦

    高村国務大臣 新指針の策定は日米両国間の緊密な調整の上で行われたものであります。米国は、新指針において日米両国政府協力して行う活動として例示された船舶の検査は、国連安保理決議に基づくものであると認識しているものと考えております。  ただ、一般論として申し上げれば、新指針に挙げられている周辺事態における日米間の協力項目はあくまで例示でありますから、安保理決議がある場合以外の船舶検査活動を含めて、それ以外の日米協力を排除するという趣旨では必ずしもないとは思っています。  いずれにいたしましても、現在、国会にお諮りしている周辺事態安全確保法案における船舶検査活動は、国連安保理決議を前提としており、これは新指針の内容とも平仄が合ったものである、こういうことでございます。
  205. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 政府国会答弁等におきまして、周辺事態の際に行われる船舶検査活動に国連安保理決議が必要な理由としまして、一つは、公海上の船舶が旗国主義をとっているということ、それから二つ目に、国連安保理決議がある場合は、国際法上、旗国が同意しているか、あるいは同意していると同様に見られる場合と同じように扱われる旨の見解を示しております。しかし、この船舶検査活動につきましては、新聞報道等によりますと、自民党と自由党との間で、「国連安保理決議だけでなく、多国間の取り決めなどで実施が可能とするよう修正を行うことで基本的に合意した。」と報じられております。  そこで、仮に多国間による取り決めを要件とした場合、国連安保理決議を要件とした場合との比較において、国際法上、船舶検査活動に与える影響について説明をいただきたいと思います。
  206. 高村正彦

    高村国務大臣 これは旗国主義との関係で、安保理決議があれば各国は受忍義務を負うことになるので、旗国主義との関係をクリアすることができるということがあるわけであります。  今、もう一つ委員が例を挙げられた多国間の取り決めで、その多国間の中でお互いに、私は旗国であっても、うちの船を検査されても文句を言いませんよということを決めれば、その中でお互いに検査するということは、それは旗国主義があってもできることだ、こういうふうに思っています。  ただ、多国間で、十カ国なら十カ国で決めたからといって、その中に入っていない国の船について検査するということは、それは旗国主義の関門を突破することにはならないだろう、こういうふうに思っております。  安保理決議が必要か必要でないか、これはいろいろな議論があるわけでありますが、例えば多国間の取り決めで、その国限りの中でお互いに船舶検査をするような必要性がどの程度あるかとか、そういったことの判断でどっちがいいかなという問題になってくるのではないかなというふうに思っておりますが、政府としては、国連安保理決議があった方がいいのではないかと現時点で思っているところでございます。
  207. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 本来、この船舶検査、経済制裁の実効性を確保するということが大きな目的でありますし、そうしますと当然、安保理決議という普遍的なものがあって、普遍的に、無差別にそういった検査をすることによって初めて効果が上がると考えられるわけです。  そこで、逆にそれを絞ってしまって、周辺事態の際に国連安保理決議によらないで多国間による取り決めにより船舶検査活動が実施された場合、これは今大臣が言われたこととちょっと違いますけれども、多国間で協定して普遍的に、無差別にやろうとする場合には、米軍の敵対国から見れば、当然船舶検査活動に参加する我が国も米国と同一視されやすく、結果として船舶検査活動に参加する我が国の自衛艦等も攻撃の対象とされやすい。当然問題があると思われます。  国連安保理決議がない状態での船舶検査活動は、むしろ我が国を紛争に巻き込みかねない行為であるというふうに考えておりますけれども、この点につきましても政府の見解をお伺いします。
  208. 高村正彦

    高村国務大臣 旗国主義というのがある以上、多国間で合意をして、その合意をした国以外の船に船舶検査をするという選択肢はないのではないかと思っております。ですから、国連安保理決議がある場合、プラスアルファとして多国間の約束があって、その国の中同士でこういうことをやった場合にどのくらい有意義かというようなことは、一つの問題点となり得るかと思っています。
  209. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 国連憲章の四十一条に基づく非軍事的強制措置の決定は、憲章二十五条によりまして国連加盟国全体を拘束するものとなっております。したがって、国連安保理決議に基づいての船舶検査活動は、我が国周辺諸国の懸念を生じさせることは極めて少ないと考えられます。  一方、多国間による取り決めに基づいて行う船舶検査活動は、国際社会の信認を得ているとは考えられませんので、特に我が国周辺諸国がこういった活動を行うことに反対している場合、我が国に対して無用な疑念を抱かせて外交関係が悪化するなどの悪影響が予想されるわけであります。  こういったことから、船舶検査は国連の権威のもとで行われることが必須要件であって、法案を修正するに際してもぜひとも、国連決議は必ず前提としなければならないということが私たちの見解でございまして、改めて政府の見解をお伺いしたいと思います。
  210. 高村正彦

    高村国務大臣 ですから、すべての国の船を船舶検査をするということであれば、これは国連安保理決議のようなものが必要になってくるだろう。ただし、幾つかの国が話し合って、我々はお互いに自分たちの国の船を検査し合うことを認めようではないか、こういうことは一つの選択肢としてはあるのではないか、あり得るというふうに思っております。  現時点で政府としては、国連安保理決議のもとにやるということを申し上げて、今御審議をいただいているところでございます。
  211. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 ぜひとも原案のままでいくことを強く要求したいと思っております。  続いて、若干別の側面ですが、船舶検査活動に際して、不測の事態に備える必要性ということでちょっとお伺いをいたします。  我が国が実施する船舶検査は、実弾による警告射撃を実施しない等の点で強制の要素を排除しておりますが、国連安保理決議によるものであったとしても、制裁対象国からすれば、国際法上の議論はともかく、我が国を敵視することは十分あり得るわけでありまして、そういった場合に制裁対象国が十分な航空または海上兵力を維持していた場合には、船舶検査活動に従事している我が国自衛隊艦船に攻撃をしかける可能性も全くないとは言えないと思います。  こういった不測の事態対応するための手段をやはり検討していく必要があるかと思いますけれども、この点につきまして政府の見解をお伺いいたします。
  212. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先ほども議論がありましたが、いわゆる船舶検査に際しましては、国連加盟国が検査を受けることについて受忍義務を負っております。また、過去の諸外国の船舶検査の活動実績においても、軍艦等がかかる活動を妨害するために攻撃を行ったとの例は承知しておらず、軍艦等が攻撃をしてくることは一般的に想定しにくいものと考えております。  他方、一般論として、自衛隊の艦船の行動中に不測の事態が発生した場合には、当該艦船は当該危険を回避するための行動、例えば現場からの退避等でありますが、これをとることとなり、また、万が一危険を回避する努力を払っても回避し得ないような事態が差し迫った状況においては、いわば最後の手段として、自衛隊法九十五条に基づき当該艦船等を防護するための武器を使用することは可能となるわけであります。  いずれにしましても、委員指摘のとおり、船舶検査活動を実施する際には、不測の事態が発生した場合の対応について十分に検討するとともに、隊員に対する教育訓練等を行って万全を期してまいりたいと考えております。
  213. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 次に、ガイドラインに記されております我が国が主体的に行う活動ということの意義につきましてお聞きをしたいと思います。  日米ガイドラインにおきましては、周辺事態安全確保法案に明記されている周辺事態の際における我が国の活動、すなわち後方地域支援、後方地域捜索救助活動、船舶検査活動のうち、後方地域捜索救助活動と船舶検査活動は日米両国がおのおの主体的に行う活動として位置づけられております。  しかし、ガイドライン自体は日米安保体制を強化するものでありまして、我が国がこの二つの活動を行う場合には米国との協力によって行われることからすれば、事実上米軍の出動を前提としていると解することができるわけでありまして、したがって、形式的には主体的に行う活動と記されていたとしても、実際に主体性が確保されるかどうか疑わしい点があるわけでございまして、この点につきまして政府の見解を伺いたいと思います。
  214. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今御指摘の後方地域捜索救助活動それから船舶検査活動は、後方地域支援とは異なりまして、日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行っている米軍に対する支援として行われるものではない、法律上これらの活動については米軍の活動は要件とされていないものであります。このことは周辺事態安全確保法の各条文から明らかであります。  周辺事態に際して我が国としていかなる措置を実施するかにつきましては、先ほどから議論が出ておりますように、日米両国政府がおのおの国益確保の見地から主体的に、その時点の状況を総合的に見た上で判断するということになります。このことにつきましては、指針にも明記されているほか、私ども累次説明しているところであります。  後方地域捜索活動や船舶検査活動において日米間の協力が想定されるゆえに我が国の主体性の確保が疑問であるとの御指摘は、必ずしも当たらないものと私どもは考えております。
  215. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて、「我が国周辺の公海」という用語が使われておりますけれども、これにつきましてお伺いをします。  周辺事態の安全確保法案の第三条では同法案における用語の定義づけがされておりまして、この定義の中には「我が国周辺の公海」という文言がありますが、これが何を指すか極めて不明確でございます。この文言は後方地域の定義にも使われておりまして、範囲が不明確なままでは自衛隊の活動範囲に歯どめがかからず、近隣諸国に不要な疑念を抱かせる可能性もあると思われるわけです。  我が国周辺の公海ということですと、常識的に解釈すれば、政府見解で示されている極東の範囲よりは狭い地域になるのではないかと考えられるわけですけれども、具体的には我が国周辺の公海がどの程度の範囲まで指すことを想定しているのか、御説明をいただきたいと思います。
  216. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 周辺事態における自衛隊の活動範囲につきましては、周辺事態が地理的な概念ではなく、その生起する地域を特定し、あるいは一概に画することができない、こういうことを常々に申してきたところでありますが、したがいまして、これに対応して実施される自衛隊の活動の範囲につきましても、地理的範囲の枠を設定することはできないというところであります。したがって、周辺事態に対して自衛隊が活動を実施する場合、我が国周辺の公海についても地理的に一概に画することができない点について、御理解願いたいと存じます。  なお、周辺事態に際し具体的に船舶検査活動等を実施する区域については、基本計画に従いまして、防衛庁長官内閣総理大臣承認を得て指定することとされておりますが、このような周辺事態対応するための自衛隊の活動は、我が国の平和と安全の確保のために行われるものであり、その範囲が無限定に広がるということはなく、おのずと限界があることは当然であると考えております。
  217. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 周辺の意味は相変わらず難しくてわからないので、これは延々と議論になりますのでこれ以上追求するつもりはないのですけれども。  では続いて、自衛隊が主体的活動を行う場合の活動範囲につきまして、さらにお聞きしたいと思います。  小渕総理は一月二十九日の予算委員会で、「周辺事態安全確保法は、日米安保条約の目的の枠内であり、日米安保条約を超えるものでない、これが確たる答弁とさせていただきたいと思います。」と答弁をされております。  この答弁からすると、米軍の活動に対する支援である後方地域支援のみならず、我が国が主体的に行う後方地域捜索救助活動及び船舶検査活動についても、日米安保条約の目的の枠内ということになると思います。論理的に当然そうなるわけですね。しかし、日米安保条約の目的自体は、何度も答弁から伺っておりますけれども我が国及び極東の平和と安全の維持ということになっております。日米安保条約の目的の枠内とすれば、特に我が国が自主的に行う活動について、米軍の活動という前提もなく、我が国の平和と安全の維持だけではなくて極東の平和と安全の維持にも参加できるとも解釈されかねない面があります。  そこで、専守防衛という自衛隊の基本方針を超えて活動範囲が広がることのないように、自主的活動を行う場合における自衛隊の活動範囲につきまして、政府の明確な見解を求めたいと思います。
  218. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態は、あくまで我が国の平和及び安全に重要な影響を与えるか否かとの観点から判断すべきものでありまして、主体的活動と言われるものもまさに周辺事態のときに行われるということは、これは当然かかっているわけでありますから、あくまで我が国の平和及び安全に重要な影響を与えるかどうかという観点から判断されるわけであります。  ですから、安保条約の目的というのは我が国及び極東の平和と安全でありますが、この周辺事態の場合は、我が国の平和と安全に重要な影響を与える、こういう観点から言っているわけでありまして、極東の平和と安全に関する概念である極東というところとこの周辺事態、これは主体的活動の場合でも全く同じでありますが、それとは一概にその範囲がどうだということを論ずることはできない、こういうことをぜひ御理解いただきたいと思います。
  219. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 その答弁は何度も実は伺っているわけでありますけれども、総理が言われた、周辺事態安全確保法は日米安保条約の目的の枠内ということを一面で言われ、もう一方では、周辺事態と極東との間の地理的な関係を一概に論じることはできないといった答弁もあるわけでございまして、これは一見矛盾するような響きを持っております。その場合どう整合性を考えるかということなんですけれども、改めて、この点につきまして重ねて答弁をお願いします。
  220. 高村正彦

    高村国務大臣 今申し上げたつもりなんですが、あくまで我が国の平和と安全ということに着目したのが周辺事態という概念でありますから、我が国の平和と安全だけでなくて、極東と我が国の平和と安全という日米安保条約の概念の枠内ではありますが、それと全く同じということではないということでありまして、その関係を一概に論ずることはできないということを、先ほど委員がもう何度も聞いているとおっしゃいましたが、もう一度言わせていただきます。
  221. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 では、続いて邦人救出の問題に進みたいと思います。  今回の周辺事態安全確保法案と同時に自衛隊法第百条の八の改正案が提出をされておりまして、在外邦人の救出に関して、輸送手段や安全を確保するための措置の上で改善がなされているとは思います。特に、改正法案第三項で武器の使用の規定を設けたことは、輸送の安全確保の見地からその意義が認められるところでありますけれども、こういった規定が有効に機能するためには、現場の司令官に対して具体的にいかなる場合にいかなる程度の自衛措置が許されるか、いわゆる交戦規定ですね、ROEを策定する必要があるかと思いますけれども政府はこの点どう考えておられますか。見解を伺います。
  222. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 在外邦人等の輸送に従事する自衛官の派遣先国内における武器の使用につきましては、本改正案百条の八の第三項にその要件が定められているところでありますが、防衛庁においては、武器の使用は、その性格上慎重な上にも慎重を期す必要があることから、在外邦人等の輸送に従事する自衛官の武器使用等の手続について要領を策定し、遺憾なきを期す所存でございます。
  223. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 自衛隊法の第百条の八の改正案は、輸送手段とか安全確保措置の上でも多くの改善を行っていると思いますけれども、一方で、輸送の安全が確保されている場合というこの派遣要件は維持されたままであるわけです。このため、危険地帯からの武力救出はもとより、危険地帯への派遣そのものが否定されているというふうに解されます。それゆえ、自衛隊による在外邦人の救出を成功させるためには、安全地帯まで邦人自身が避難、集結するか、あるいは、当該領域国あるいは米軍などによる安全地域までの輸送が必要となってくるわけでございます。  ところで、新ガイドラインでは、非戦闘員の避難につきましては日米両国政府がおのおの主体的に行う活動として記述されておりまして、最終的に米軍協力が得られることは担保されていないわけであります。果たして、これで在外邦人の安全は確保されるのか。政府の見解をお伺いいたします。
  224. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 自衛隊法百条の八におきまして輸送の安全が要件とされておりますのは、派遣先国の空港、港湾等において当該輸送の安全が確保されない場合においてあえてこれを実施しようとしますれば、当該輸送の対象である邦人に大きな事故等が起こることにもなりかねない、在外邦人の安全確保というそもそもの目的を達成することができなくなりかねないためでございまして、当該輸送の任務を行う上でのいわば当然のことを規定したものと考えております。  したがって、防衛庁としては、輸送の安全要件を削除することは考えておらないところでございます。
  225. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて、準備行為の問題につきましてお伺いをいたします。  自衛隊法百条の八による邦人輸送は、当然、周辺事態以外の場合でも適用される規定であります。周辺以外の遠隔の地で在外邦人の救出、輸送の必要が生じた場合についても、検討する必要があると考えております。昨年の五月、インドネシアの暴動が起こった際に、政府は、シンガポールへ自衛隊機を、自衛隊法百条の八の発動の準備行動として派遣をしたという経緯があります。  しかし、こういった準備行動による派遣は、本来の派遣に必要な閣議決定が要求をされていない状態であります。特に、改正法によりまして、艦船と航空機の統合運用による規模の大きい派遣が可能となる以上、こういった準備行為の必要性を認めるにしても、やはりこの準備行為を行う手続的な規定を整備する必要があるのではないかと考えるわけでございますが、この点につきまして政府の見解をお伺いいたします。
  226. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 隊法百条の八の趣旨は、外国における災害、騒乱等の緊急事態に際し、生命等の保護を要する邦人等を、外務大臣からの依頼に基づいて自衛隊が派遣先国から本邦等へ輸送するというものであります。  防衛庁としましては、自衛隊航空機、船舶の速度、航続距離、任務地までの距離等を踏まえまして、在外邦人等の輸送の任務を適切に遂行し得るよう、準備行為として自衛隊航空機、船舶等を隣接国等まで移動、待機させることは可能と考えております。その場合、外務大臣より当該輸送の依頼をする可能性があるとの判断が示されることを、当該移動、待機の前提としているわけであります。  なお、自衛隊が活動する際、種々の準備を行うことは当然のことでありますが、自衛隊の活動の準備といっても、輸送手段の移動から必要な物資の集積など、その内容はさまざまであります。その一つ一つを明文で規定することは困難であると考えます。また、そのうち一部を法文上明記、明文で規定した場合、その反対解釈として、明文で規定していない準備については実施できないのではないかという疑義を生む可能性もあると考えます。  したがいまして、在外邦人等の輸送を規定した自衛隊法の百条の八の準備行為のみ取り出して手続的規定を整備することは、他の自衛隊の活動の準備との整合性という観点から考えても必要なこととは考えられないということを申し上げて、御理解を賜りたいと思います。
  227. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 これは政治判断の問題だと思うんですが、こういった今回の改正では、艦船と航空機の統合運用による大規模なそういったオペレーションということになりますので、やはり、それの持ついろいろな政治的意味、また派遣国に与える影響等も考えられますので、そういった意味では、ぜひ手続規定を明確にした方がいいのではないか。これはこちらの政治判断でございますけれども一つの要望としてこれは申し上げておきたいと思っておりますので、今後の検討をぜひお願いしたいと思っております。  続いて、地方公共団体及び民間協力の問題に移りたいと思います。  この九条一項に基づく協力要請について、政府としては、正当な理由があれば断ることができると答弁をしておられます。ただ、地方公共団体が九条一項による協力要請を拒否した理由が正当であるかどうかを判断する際、どういった基準によって判断するかということは明確に示されてはおりません。したがいまして、基準が不明確なままでは、協力を求められた地方公共団体としては混乱を生じ、いざというときに無用の時間を費やすことが予想されるわけでございまして、そういった意味では、やはり、何が正当な理由に当たるかの明確な基準、ガイドラインといったものをきちっとしておく必要があるのではないかと考えますけれども、この点につきまして、政府の見解を伺いたいと思います。
  228. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 御指摘のとおり、第九条に基づいて地方公共団体に対して協力を求めることができるということを規定しておるわけですが、この場合に、正当なる理由があるかどうかということについては、まず第一に、何よりも自治体が、管理者としてのいわゆる正当な権限の行使という範囲の中でその正当性を考えてもらう、こういうことが一番の基本だと思っております。  ただ、たびたび申し上げておりますが、この九条に基づく要請というのは、周辺事態が発生して、それに対する措置の緊要性ということがまずある。その上で、地方公共団体の長の持っている権限の公共的な性格と、そして、他に代替手段をなかなか求めることが困難であるというような事情を考慮した上で国から必要な協力を求めるのでございまして、そういう際におけるそれを拒むべき正当な理由というのは、やはり、管理者としての個別の法律に基づく権限行使の上で、その拒否する理由が正当であるかどうかということを個別法で判断をするということにならざるを得ない、こう思っております。
  229. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 そこで、ちょっと一つ具体例を質問したいと思うんですが、リコールの可能性といった問題ですね。ある県、地域において、非常に住民が周辺事態協力することに反対している、強い、もし首長があえてその住民の意思に反して周辺事態協力を強行した場合にリコールがなされてそれが通る可能性が高い、そういった地方政治の政治的状況があった場合、その首長としては、リコールの可能性一つの拒否する正当な理由としてこれは言うことができますか。
  230. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 率直に申し上げて、リコールの可能性があるか否かということは、正当なる理由があるか否かの判断基準にはならないものだと考えております。  それは、あくまで、さっき申し上げましたが、いわゆる権限の行使、公共的な施設の管理者としての権限行使の上で正当であるかどうかということが問題なのであって、リコールが行われるかもしれない、いや、行われないかもしれないというようなことは、権限行使の正当性の判断の理由には当たらないんじゃないかというふうに考えております。
  231. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 されるかどうかという不確実な状況はそうだと思いますが、ほとんどされる可能性が高い、そういう事態はどうなりますか。もうこれをやったら間違いなくリコールになってそれが通るという状況に直面した場合、首長としてはそれを理由に拒否できますか、正当な理由として拒否できますか。
  232. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 くどくて申しわけありませんが、法令に基づく権限の行使ということにおいてそれが正当であるか否かということが大事なことでありまして、リコールが行われるか行われないかということは、この際は法令に基づく話ではないということでございまして、リコールの話は、専ら住民等のいろいろな角度からの政治判断に基づいて行われるわけでありますから、逆に言えば、権限行使を正当に行使されないということがリコールの対象になることだってあるかもしれませんし、あるいは正当なる権限行使を行われることがリコールの対象になるかもしれません。そういう意味で、リコール云々の話はこの際はちょっと横へ置いて、やはり拒否すべき正当な理由があるか否かというのは、法令の執行という、法令に基づく権限の行使ということにおける正当性があるか否かということに絞って考えていただきたいと思います。
  233. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続きまして、物資の運搬等の際における情報公開の必要性ということでお聞きをしたいと思います。  周辺事態における米軍への後方地域支援では、関係政府機関の長が国以外の者に求める協力として、地方公共団体の管理する港湾施設、空港の使用及び民間の運送事業者、廃棄物処理関係業者、企業の有する物品及び施設の貸与等が掲げられておりまして、この中には軍需物資の運搬や貯蔵も含まれるものと理解をしております。  ただ、一つの例として、昨年、沖縄の嘉手納基地の中におきまして、一九六〇年代から七〇年代にかけて、ポリ塩化ビフェニル、いわゆるPCBですね、これの入った変圧器の廃油がため池に投棄されていたという問題が明らかになったわけであります。米軍基地の跡地の環境汚染といった問題は、我が国のみならず、アメリカ本国、ドイツ、パナマなど海外の米軍駐留地などでも大きな社会問題になっているわけであります。軍需品の中には、弾薬はもちろんのこと、化学物質や有毒物質を含むような危険な物資もあるわけでございまして、運搬に携わる人や貯蔵場所周辺の住民の不安を生じさせないような努力が必要であると考えられます。  そこで、米軍基地云々は別として、一般論として、軍需物資の運搬及び貯蔵を行うに当たり、対象物資の中身を公開するなどの方策をとるべきではないかと思いますけれども、この点につきまして政府の見解をお伺いいたします。
  234. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 ただいま御指摘の物資の輸送等は、法文で申しますと、九条二項で一般の事業者に協力を依頼することができるということになっておるわけでございまして、これは累次申し上げておりますように、いわゆる義務ではなくて、それに応ずるか応じないか、応ずるのであれば契約によるということになるわけでございます。  また、この法律案で、既存の各法令でいろいろ安全に関する規定があると思いますが、それらについて一切改正をするとか特例を設けるというものでもございませんので、当然のことながら、物資の輸送あるいは貯蔵等を民間業者にお願いする場合に、現行の法令の定める安全基準、そういったものに従ってやっていただくというお願いをすることになるわけでございます。したがいまして、一般的には、安全上の問題が生ずるということは、ちょっと想像しにくいのであろうというふうに私ども思っている次第でございます。  ただ、そこで当然のことながら、民間の方に輸送をお願いする、中身がわからないでお願いするということはこれはあり得ないんだろうと思います。したがいまして、相手方は当然どういうものを輸送するなり貯蔵するなりということは理解した上で引き受けていただくということになるわけでございますが、それを一律に一般に世間に広く公開する必要があるかどうかということになりますと、そのときのいろいろな事情、例えば治安上の問題といったようなことも考えなければいけないと思いますので、これは一律にはいかないんだろうというふうには思っておりますが、最初に申し上げましたように、現行の安全関係の規制法令を遵守していただくということでございますので、業者はもちろんでございますが、周辺住民にも万一にも被害の生ずることのないように措置をしていきたいというふうに思っている次第でございます。
  235. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今度は、基地外の地域で物資を貯蔵する場合の安全対策につきましてもお聞きしたいと思います。  周辺事態で、もし日本周辺で米軍が軍事行動を展開するとなれば、我が国提供する物品のほか、米国本土からも輸送物資がかなりの量に上るだろうということは、さきの湾岸戦争の際の兵たんを見ても明らかでありますし、在日米軍及び自衛隊基地内だけでの貯蔵は困難になると考えられます。そういった場合、軍需品の貯蔵は、港湾、空港の民間倉庫あるいは公有地等を使用することにより需要を満たさざるを得ないと思われるわけであります。  しかし、基地以外の場所での貯蔵は、基地内の貯蔵と異なりまして、一般の人々と近い距離にあること、また貯蔵場所の安全対策が万全であるとは言い切れないことなどを考慮しますと、事故防止のマニュアルを事前に定めて、万が一事故が発生した場合の対処方法及び補償についても検討すべきではないかと考えますが、この点につきまして政府の見解を伺います。
  236. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 先生御指摘でございますが、周辺事態というものはどのようなものになるか、今から確定的に申し上げるわけにはいかないわけでございまして、またその量等についても、当然のことながら、予断を持って申し上げるわけにはまいりません。  したがいまして、先生おっしゃられるように、民間にたくさん依頼をすることがあるかどうかということも必ずしも確定的に申し上げられないわけでございますが、民間の事業者に今のような物資の一時的な貯蔵と申しますか、格納といったようなことをお願いするということももちろん否定はできないわけでございます。  ただ、これも先ほど申し上げましたように、現行の各安全関係の法令を遵守してやっていく、その範囲でお願いするしかないわけでございまして、そういう意味におきましては、安全上の問題ということは基本的には生じないのであろうというふうに思っている次第でございます。  また、先生御指摘の事故防止のマニュアルといったようなことにつきましても、そういう危険物等の貯蔵を行うことに関しましては一般的に設けられているのではないかと思いますけれども、そういったものが、周辺事態だからといって特別なものを要求するということではないのであろうというふうに思っております。
  237. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて、国会承認の問題に移りたいと思います。  政府は、周辺事態安全確保法案に基づく基本計画につきまして、周辺事態への対応が武力の行使を含むものではないこと、国民の権利義務に直接関係するものでないこと、かつ迅速な決定を行う必要性があること等総合的に勘案すれば、基本計画は必ずしも国会承認を得なければならないものではなく、国会に遅滞なく報告し、議論の対象とすることが妥当であるとの見解を示しております。  しかし、例えば、地方公共団体は地域住民へあらゆる公共サービスを提供するのが仕事でありますし、地方公共団体が対米支援を行う場合の住民への影響は非常に大きいと考えられるわけです。そういった場合に、住民の権利義務に直接関係しないとは言い切れないわけでありまして、あるいは関係しないかどうかは不明確でありまして、多くの国民が理解できない状況にあるのではないかと思われるわけです。  そこで、政府は、国民の権利義務になぜ直接関係しないのか、明確に説明をする責任があると思いますけれども、この点につきまして見解をお伺いいたします。
  238. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今委員から御指摘がございましたとおり、三つの活動はいずれも武力の行使を含むものではなく、あるいは国民の権利義務に直接関係するものではなく、また迅速な決定を行う必要があるものであるということを私どもは累次御説明してまいったところであります。  私は、この問題を考える場合に、やはり他の法律とのバランスを考えていくことが妥当じゃないかというふうに考えます。例えば、自衛隊法に定められております海上警備行動や要請による治安出動が、警察官職務執行法の武器使用規定が準用されるような強制力を伴う活動であるのにかかわらず、国会承認が必要とされておりません。そういうことを考えれば、何ら強制力を伴わない周辺事態安全確保法案に基づく自衛隊の諸活動を行う際に策定される基本計画については、必ずしも国会承認を得る必要がなく、基本計画を遅滞なく国会に報告し、国会での議論を踏まえつつ対応措置を実施していくことが適切であるというふうに考えているところであります。  また、本法案に基づき行われる自衛隊の活動の性格を、例えばPKF本体業務等の他の法律に定められている自衛隊の活動との比較で申し上げますと、武力の行使を含むものではないという点で自衛隊法に定める防衛出動と異なっております。また、国民の権利義務に直接関係するものでないという点で、同法に定める命令による治安出動と異なっております。さらに、迅速な決定を要するという点で、国際平和協力法におけるPKF本体業務とはそれぞれ異なる性格のものであるというふうに考えております。  以上のように、他の法律及び活動の性格との均衡といった点を勘案しますと、基本計画については、事前にせよ事後にせよ必ずしも国会承認を得る必要はなく、遅滞なく国会に報告し、国会での論議を踏まえつつ対応措置を実施していくことが適切と考えているところでありますが、これらにつきましては、立法府におきまして十分な御論議をなさった上で、もしそういういろいろな結論が出てくるとすれば、私どもとしても、誠実に対応していかなければいけない問題ではあると考えております。
  239. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今、国民の権利義務に直接関係しない、また強制力を持ったものではないという御説明ではございますが、形式的には強制力はないにしても、実態的に自治体あるいは民間に膨大な項目につきまして幅広い協力を求めるとなれば、当然、国民生活へ大きな影響が出ることは間違いないわけであって、それは国民の権利義務に影響がないとはやはり言い切れない。特に生活には大きな影響をもたらすということを考えるのが当然でございまして、そういった意味では、やはりそういう要素を十分に考慮してこの国会承認問題を考えることが大変重要だと思いますけれども、改めてこの点につきましてお伺いいたします。
  240. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 国民の権利義務に密接な関係がありますのは九条の二項の民間協力だと思いますが、これにつきましては、委員がよく御賢察のとおり、全く義務規定でもなし、いつでも拒絶できるものでありますし、拒絶しても何ら罰則規定もないということでありますから、そういう意味で、私ども国民の権利義務に大きな縛りをかけるものだとは全く考えておりません。公共団体の協力という点でも、正当な理由があればこれは拒否できるということでありますから、私どもは、何ら強制力を持ったものではない、こういうふうに考えている次第でございます。
  241. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 形式的には確かに強制力を持ったものではないにしても、国民生活に重大な影響を与える、大きな影響を与えるということは認められますか。
  242. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 国民の所有する土地を多く使うとか収用するとか、そういうものじゃございませんし、何か強制的にその仕事に従事させるというものでもないし、私ども国民の権利義務に重大な縛りをかけるものだとは考えておりません。
  243. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 強制力があるかないかじゃなくて、国民生活に重大な影響を与えるかどうかということをお聞きしたんですけれども。改めて、しつこいようですが。
  244. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 必ずしも大きな影響を与えないのじゃないかと考えております。
  245. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 これは今後やってみなければわからない問題ですけれども、この点は特に重視しておりますので、さらに今後議論していきたいと思います。  それから次に、迅速性、迅速な決定の必要という点につきましてお聞きしたいと思います。  この基本計画について、国会報告にとどめる理由一つとして、迅速な決定が必要であるという理由を挙げておられますが、そのために、国民の代表で組織される国会の行政府に対するチェック機能を無視してもいいというわけでは当然ないと思います。また、この周辺事態安全確保法案では、対応措置を実施する際には基本計画及び実施計画を作成することになっておりますけれども基本計画はいわば大綱でありまして、行政府の活動を監視する立場にある立法府が当然関与していく必要があるかと思っております。  そこで、この緊急性については、原則として事前承認を求める、緊急時には事後に国会承認を得るということにすれば緊急時の迅速な対応ができるわけでございますし、まさに防衛出動等もそういう形になっておりますので、この点につきまして、改めて緊急の必要ということに関する政府の見解をお伺いいたします。
  246. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 私どもは、先ほど来申し上げておりますように、国民の権利義務を拘束するものじゃない、武力を使わない、迅速性を要すという前提に立って、この法案が最上の法案として国会にお諮りしているわけでございまして、委員にこれ以上聞かれても、この法案を修正するというような考えを今私どもが申し述べることはできないことであります。先ほども申し上げましたが、国会において十分御論議をしていただければと思います。
  247. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 私は迅速性の必要という問題につきまして絞って議論しているわけで、防衛庁長官としてどう考えるか、個人的な見解でもよろしいんです。迅速性、迅速の必要ということであれば、原則事前、緊急の場合には事後承認ということにしておけば、これは防衛出動もそうなっておりますけれども、迅速性の要求はもう十分満たされるのではないかと思いますけれども、この迅速性の点に絞ってお考えをお聞かせいただきたいと思います。  迅速性の要求は、迅速性だけにもし絞っていえば、原則事前承認、緊急の場合には事後というメカニズムで十分対応できるではないかということなんですけれども
  248. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 政府の判断としては、最高の迅速性は国会に対する報告であると思っております。
  249. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 そうはいいましても、防衛出動ですら原則事前承認という形をとっているわけですよね。やはり実力組織が動くという場合には、当然慎重には慎重を期するというのが民主国家の基本的な考え方でありますし、そういった点では、迅速性という点で見れば、やはりこの原則事前、例外的に事後ということで十分対応できると考えております。これは押し問答になりますので、これは今、強く主張したいということで申し上げたいと思います。  最後に、国会への報告の問題、これはいわゆる基本計画の報告ということではなくして、周辺事態が終わって、対応措置がとられて、終了した後の国会への報告でございます。私たち立場は、基本的には、原則事前承認基本計画事前承認ということを考えておりますけれども、それとは別に、周辺事態が終わった後、とった対応措置につきまして国会に報告をする義務ということも、当然これはあってしかるべしと考えております。  現在の周辺事態の安全確保法案では、国会報告は基本計画の決定または変更があったときのみに義務づけられておりますけれども、実施状況の中間報告とか、いつ終了したのかを含めた最終報告は義務づけられておりません。国会の行政府に対する監視機能を徹底させるためにも、例えばPKO法第七条のような国会報告の規定を盛り込むことが必要であると考えておりますけれども、この点につきまして政府の見解をお伺いいたします。
  250. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 先生御指摘のとおり、ただいまのお願いしております法案では、基本計画を策定し、あるいはそれを変更したときには直ちに国会に御報告するという規定を設けておるところでございます。したがいまして、その後、中間的な実施状況でございますとか、あるいはまた、その周辺事態が終わったというときにおきまして国会で御議論をいただくことは、これは当然のことなんだろうと思います。  したがいまして、そういったときに適宜私どもも御説明をすることを考えておりますし、また国会の方からも御要望があるのであれば、きちんとした報告をするということは、いわば当然のことではないかというふうに思っております。したがいまして、あえて法律上そのような条文を置かなかったということでございます。  今、PKO法でそのような規定があるではないかという御指摘でございますが、PKO法の場合は、国際平和のための努力に積極的に寄与するために海外において実施するという性格を持っております。特に海外というところでございまして、周辺事態の場合は我が国及びその周辺でございますので、そういったところの違いというものもありますし、性格的にも異なるのではないかというふうに思っている次第でございます。
  251. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今、PKO法の場合は海外であり、周辺事態の方は領域及び周辺ということなので、その違いがあると言いましたけれども、やはり国民から見れば、また立法府から見れば、必ずしも全体像や詳細を把握できない状況にありますので、やはり立法府による検証の意味も含めて、ぜひとも詳細な事後報告、対応措置の全体像、並びにできる限り詳細について報告を求めたいと考えておりますけれども、どの程度まで詳細に出せるのか、この点につきまして政府側の見解をお聞きしたいと思います。
  252. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 先ほども申し上げましたように、政府といたしましては、対応措置の終了後はもとよりでございますし、実施中においても、適宜その対応措置について国会に御説明することは当然というふうに考えておる次第でございます。  ただ、その内容でございますが、今から、その事態もまだ起こっていない現段階におきまして、これこれこうだと確定的に申し上げることは大変困難でございますが、一般的には、基本計画で御報告をした内容について、どういう結果になったか、やったものがあるのかないのかといったようなことは当然入るものと思っておりますし、また、差し支えのない限り詳細に御報告するのは当然というふうに考えておる次第でございます。
  253. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 では、具体的な事項で申し上げますと、後方地域の設定という問題ですね。これは事前には示せないと思います。手のうちを明かすことになりますので、後方地域をどこに設定したかということは事前には示すことは適当ではないと思いますけれども、事後的に、できるだけ詳細に、そこら辺の後方地域の設定について情報開示ができるのか否か、やるかどうか、その点につきましてお聞きします。
  254. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 先生御指摘のとおり、実施地域につきましては、なかなかあらかじめということは困難でございましょうが、事態の終了後であれば、それは通常、御報告の中に含まれるというふうに考えております。
  255. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今の問題、私もちょっと重要であると考えておりますので、後方地域を含め、重要な項目につきましてはできるだけ詳しく国会に報告するということで、防衛庁長官の確認を得たいと思うのですが。
  256. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 この問題は内閣安全危機管理室の方で所管しておったものですから、室長がお答えをしておったところでありますが、委員の御指摘は大変大事なことでありますから、私たちもできる限りの情報公開に努めたいと思っております。
  257. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今の防衛庁長官のお言葉は多としたいと思うのですが、立法府による検証という意味で、ぜひとも詳細な情報を事後的には開示していただきたいということ、それからまた国会報告につきましては、ぜひこの項目についても法律に盛り込むべきであるという私たちの主張を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。  以上です。
  258. 山崎拓

    山崎委員長 これにて遠藤君の質疑は終了いたしました。  次に、西村眞悟君。
  259. 西村眞悟

    西村(眞)委員 再度、国際法という観点から御質問をさせていただきます。  と申しますのは、我が自衛隊は、国内では何と言われようと、海外ではレギュラー・アームド・フォーシズであることは確かでございまして、例えば練習艦隊が、我が自衛艦が海賊船を現認すれば、海洋法百条及び百七条によってそれを抑止または拿捕する権能と義務を有しておるわけですね。  こういう観点からなぜ申し上げるかと申しますと、前回も申し上げたように、我が国の防衛、国防議論というものが国際法の観点を余りにも軽視しておって、それによって全体像がわからなくなっておるのではないか、こういう問題意識であるからです。  ちなみに、国際法の観点から見ますと、国内法で行き詰まっておるいろいろな論点が見えてくるわけでございます。  例えば、集団的自衛権の問題。我が自由党は、この周辺事態における対応措置というのは集団的自衛権の行使の一つであるという認識から議論しておりますが、我が国が集団的自衛権を固有のものとして、権利として保有しているけれども行使できないというこの解釈の破綻は、国際法上も明らかでございます。つまり、国際法上、例えば一九七四年の国連総会における侵略の定義における総会決議、これを反対から読みますと、基地提供すること自体が既に集団的自衛権の行使なんですね。  したがって、日米安全保障条約は、第六条において、日本国の安全並びに極東における平和と安全を維持するためのアメリカ軍の行動に対し基地提供するということを書いておる。なぜこれを書けたかといえば、その安保前文における、日米両国は集団的、個別的の固有の権利を保有するという前提を設けているからでございます。  我が国は、我が国の国内法的な弁明はともかくとして、国際法上は既に集団的自衛権の行使はしておるという前提で見ますならば、今ここで、集団的自衛権を、あるけれども行使できないという行使の、何が行使できないのかというふうな緻密な限定した議論をするべきときだ、国際法上はそれをしておくべきだということになるわけですね。  例えば、情報一つとっても、我が国の国内法の体系からして、国際法上固有の権利として認められるものを我が国国内法で否定することが、果たして我が国国内法体系において正しいのか否かという議論もあります。私はこれは正しくないと思うのですが、百歩譲って行使できないという議論をするならば、例えば、前線においてドンパチすることが行使できない、これは明確にして、百歩譲っていいだろう、今の憲法解釈を維持する限りは。しかし、そのほかのすべてが行使できないということは、今申し上げた観点から矛盾を来しておる。  また、国際法で我が国の行動を律するといたしますならば、例えば台湾問題。中華人民共和国は台湾を実効支配したことは一度もないわけでございます。しかし、台湾と中国は、中国は一つだということを言っておる。それは話し合いをしていただければいいのです。これは中国と台湾の国内問題です。しかし、一度も実効支配したことのないところに中国が武力で侵攻して併呑しようとするならば、これは国連憲章一条、二条、つまり人民の同権及び自決の原則の尊重を踏みにじる行為であって、つまりこれは国際問題になる、こういうことになるわけでございます。  さて、その前提から、もう一つ申しましょうか。国際法の観点を抜きにしては我が国防衛も成り立たないということ。  つまり、三月二十三日、四日の北朝鮮工作船による事例、あれで領海警備行動というのがクローズアップされました。我が国は領海警備行動ができないのだ、なぜなら国内法にその規定が明記されていないということでできないという前提に立っておりますけれども、私の調べたところでは、国内法において軍隊の領海警備行動を規定しておりますのはスウェーデンだけでございます。  しかし、他国においては、軍隊の日常の平常業務としての領海警備行動は当然としてそれを行使しております。その法的根拠は何かといえば、国内法ではなくて、国際法において軍隊の領域警備は当然の業務であるという前提に立っておりますから、国内法を整備しているのはスウェーデンしかない。国内法を明記してない国でも領海警備はやっておるという事態ですね。  さて、前提から申し上げていきます。時間が十分短縮されて三十分になったので、三十四分までですから、余り本の引用は差し控えていきますけれども、一般的な国際法と国内法の関係においては、主権国家の存在という国際社会の現状において、国際法を国内法にいかに受け入れるかという点について二つの態度に分かれると思います。イギリス流に、変容して受容する、つまり国際法を国内法化することによって初めて国際法が国内法で効力を有するんだという前提と、アメリカ合衆国及び我が国憲法九十八条のように、国内法的手続なく受容するんだというやり方がございまして、我が国は、憲法九十八条によって国際法は我が国の国内的効力を認めております。したがって、裁判所も行政も国際法を受け入れた上での判決を書いておるし、また行政もそのように執行しております。  さて、その自然に国内法化した国際法の国内における効力問題でございますけれども我が国は、憲法よりも劣る、しかし法律よりも優位するという国内法化した国際法は、憲法、条約、法律という順で優劣が決まっておって、法律は憲法と条約に反することはできない、反するならばその法律は無効である、このことは御確認した上で御質問したいんですが、いかがでございましょうか。
  260. 高村正彦

    高村国務大臣 憲法、条約、法律、そういう順で優位性があるというふうに理解をしております。  それからもう一つ、出発点が委員とちょっと違う点を指摘しておきますと、集団的であれ個別的であれ、自衛権というのは基本的に侵略を実力で阻止する権利というふうに、国連憲章上もそうでありますし、私たち日本政府としてもそう考えているということでありますから、基地提供することとかそういったことは集団的自衛権に入るということではないというのが私たちの考えであります。  その集団的自衛権の定義が違うところから、その後の、行使も許されるけれどもそれが制限されるんだとかそういう議論が、その出発点の定義が違うところから出てくるんだろうというふうに理解をしております。
  261. 西村眞悟

    西村(眞)委員 集団的自衛権のことに関しては、私は国際法上はそうだということを申し上げて、国内法上のいろいろ政府答弁は承知した上で御質問させていただいております。  ここから、前回御質問したのは、部隊の武器使用について、正当防衛、緊急避難等個人的な要件を国内法で課しておるのは国際法違反ではないか、つまり、国際法を受容した憲法違反ではないかという観点から御質問させていただいた。その答えは、国際法規、慣例の範囲内で国内法で自由に決めればいいのだ、それは何ら違反ではないという御答弁をいただいたわけです。  今回は具体例からケースワークをさせていただいて、では、国際法で適法であり、例えば海賊船を銃撃して拿捕して、例えば撃沈して、海賊に襲われているフェリーを救うという行為は、国際法上は賞賛されるけれども、国内法上では違法とされる事態我が国法体系は許せるのか否かという観点から御質問させていただきます。  ケースワークは、三月二十三日、二十四日の事態に関して、防衛庁長官は、停船せしめ、そして検査せよという命令を発せられたのであります。もし、部隊がその命令を誠実に迅速に実行して——あの命令が発せられるまでは停船命令を無視されてかなりの時間がたち、威嚇射撃を無視されてかなりの時間がたっておりますから、その命令が現場に到達するや否や直ちに行動を起こして停船せしめるために威嚇射撃を発する、威嚇射撃は効果がないということは実証済みだから、直ちに機関を破壊して停船せしめ、銃撃戦を経てその抵抗を制圧して、その船舶を検査して、明確にその船が北朝鮮工作員であるという物証をつかんで任務を遂行した、こういう事態になったといたします。  当然、北朝鮮からは抗議が来て、損害賠償等を求めてくるかもわかりません。そのときに、我が外務当局としては、あの行為は国際法上適法であるという答弁を日本国としてはされると思います。まあケースワークですから、こうお聞きしておるんですが、そのときに、国際法上適法であって何ら日本国に賠償の責任はない、むしろ領海を侵犯せしめた北朝鮮こそ日本国に謝罪すべきであるというふうな応対をなさるとして、さて、これは国内法上では違法になるわけですね、防衛庁長官の前の御答弁から聞けば。国際法上は適法であるという抗弁をしながら、国内法上は艦長を処罰しなければならない、艦長の首を切らねばならない、このような法体系に我々は今あるわけです。これは袋小路なんです。  こういうことになるんでございましょうか。国際法と国内法は一致して適法である、また違法であるという体系になっておるんでしょうか。ちょっと御答弁をいただきたいと存じます。
  262. 高村正彦

    高村国務大臣 国際法上合法な行為であっても、授権法がなくて国内で法的にできないということは、それはあり得ることだと思います。  ですから、この前の工作船の話で、国際法上許された行為をしたことによって国内法上できないことをやったとしても、国際法上よその国から損害賠償をされることは一般的にあり得ない、こういうふうに思っております。  それから、先ほどのをもう一度。集団的自衛権にこだわりますけれども委員がおっしゃるような説があることは事実でありますが、国際法上の集団的自衛権、個別的自衛権もそうでありますが、基本的に、侵略に対して実力をもって阻止することであるというのが通説であるというふうに国際法上もそうだと私は思っております。
  263. 西村眞悟

    西村(眞)委員 大臣の御答弁をいただきました。しかし、その前提に、我が国国内法の効力として、憲法、次に国際法、その下位に法律があるということは御確認していただいた上で今の御答弁をいただいているわけですね。  したがって、今我が国の国内法のことを申し上げておりますが、国際法上合法であったことを我が国法律が違法だと決めつけることは国内体系の破綻であって、先ほど確認しました、法律は憲法と条約に反することはできない、反するのならばその法律は効力を有しない、国際法上合法であるといって対外的に我が国が対処することにおいて、国内法で違法であるからという事態を、我が国法体系は、大臣前提として御確認していただいた法体系は許すことができないのではないか、このように思うんですが、いかがでございましょうか。
  264. 高村正彦

    高村国務大臣 国際法上許されないことを国内法上授権を与えても、その限りで、国際法上で許されない限り無効である、それはまさに条約、法律ということでそうでありますが、国際法上許されていることであっても国内法上で授権が与えられていなければそのことはできないということは、これは必ずしも条約優位ということに反することではない、こういうふうに思っております。
  265. 西村眞悟

    西村(眞)委員 これを放置しておけばゆゆしき問題が生ずると私は思っております。  これは、古くは東郷大佐が高陞号を撃沈する、それは国際法上非常に有効であって、我が国を救っておるわけですね。しかし、我が国政府はびっくり仰天した。伝統的にそうなんです。例えば海賊船一つとっても、フェリーが銃撃され金品が奪われている現場を国内法に縛られて、海賊船が、我が国の護衛艦も軍艦ですからそれに対して刃向かっては損だ、しかし、我が国の護衛艦は刃向かわない以上何もしないんだといって殺し続けているという事態を見過ごして通過したときに、我が国は国際社会からいかなる批判を浴びるかということでございます。  やはり、自衛艦の艦長には、公海上は国際法の覊束のもとにあるわけですから、我が国の国内法も国際法的な適合性を持つものに改めておく必要があるのではないかという問題意識を私は強く持っておるんですね。  したがって、先ほど冒頭申し上げたように、警察予備隊という名前から始まったその名前どおりに自衛隊法、防衛二法は内務官僚の警察的発想でつくられておって、これが、国際法規、慣例に基づいて行動するという観点は隊法八十八条にかすかに出てくるだけでございます。  今回においても、対応措置においても、武器使用も含めてこの対応措置の行動は、国際法規、慣例を遵守するという一項目をやはり私は入れるべきではないか、このように思っておるわけですが、大臣の御見解はいかがでございましょうか。
  266. 高村正彦

    高村国務大臣 国際法規、慣例を遵守するということは私は当然のことだと思っています。場合によって入れる場合と入れない場合がありますが、入れなくとも、国際法に反すると言うことはこれはできないわけでありまして、ただ、反するというのはどういうことかということは、国際法で許されていることが全部できなければ反しているというふうにはならないだろうということを先ほどから申し上げているわけであります。
  267. 西村眞悟

    西村(眞)委員 私も、先ほどから申し上げておるのはその反対側なんですね。国際法で合法であるけれども国内法で違法だという立場に、我が自衛隊を置くのかということですね。それで、やはりそういう立場に置いておいてはいけないだろうという思いから、隊法八十八条のあの規定の仕方、国際法規、慣例を遵守しという規定の仕方はやはりこの対応措置についても必要だろう、このように思っておりますので、御検討をお願い申し上げたいと思うのでございます。  さて、時間があと九分ほど残っておりますから、地方自治体の長に対する要請に関して御質問申し上げます。  これは、この法案の二条の国家機関の長の相互協力義務、これは義務なんだろうと思います。ただ、九条の地方公共団体の長に対する協力を求めることができるけれども、これは義務ではないという規定がある。  これは前提から御質問いたします。この法律は、我が国の安全に重大な影響を与える事態に対処することである、我が国家と国民の安全に重大な影響を与える事態に対処するのはまさに国の責務であって、それは、その責務は国家の判断、国の判断に基づいてその責務を遂行するんだという前提は否定なさらないと思います。  それで、先ほども問題になっておりましたけれども協力を要請するだけで、それに協力するかどうかは自治体の長の判断にゆだねるということは、国の判断と責任において遂行するという前提からするならば、その部分においては自治体の長に責任を転嫁して、その判断にすべてゆだねてしまうということであって、私は、結論から申し上げるならば、国防について、国家と国民の安全について責任を負わねばならないのは国なんですから、平時においては地方分権はいいんです、しかし、こういう事態においては中央集権的に国家が一元的な責任を負い、判断の主体となって、地方自治体の長は義務があるんだと義務化すべきだと思うんですが、この点はいかがでございましょうか。
  268. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 法案第九条一項につきましては、もうしばしば申し上げておりますように、地方公共団体の長に対しまして、その有する権限の行使について必要な協力を求めることができるという規定でございまして、これは、言葉遣いはいろいろあろうかと思いますが、地方公共団体の長はこれに応ずることが期待される、それをもって一般的な義務であると私ども説明申し上げているところでございます。  この規定の趣旨につきましては先ほど来防衛庁長官からも詳しく御説明がございましたので、重複は避けたいと存じますが、この九条一項に基づく協力というのは当然法令及び基本計画に従って行われるものでございます。したがいまして、内閣の判断と責任において基本的にはなされるものということでございます。  それからまた、では、これにつきまして義務づけすべきではないかということでございますが、まさに現行法令で持っております権限の適切な行使ということでございまして、いわば、これは、通常各地方公共団体の長が当然行うべきことであろうと思います。そこで、したがって、その各法令の趣旨にかんがみまして別途正当な理由がある場合には拒否できるということで御説明申し上げているわけでございまして、この法律において、特に何が何でもこれをしなければならないという規定を置くことは必ずしも必要ないのではないかというふうに考えた次第でございます。
  269. 西村眞悟

    西村(眞)委員 先ほど自治大臣の答弁でも、協力要請を受けたことによってリコールの対象になることもあるし、受けなかったことによってリコールの対象になることもあるという御答弁。それは、協力要請を受けるか受けないかで自治体の長がリコールの対象になるという立場に置いてはならぬのだという観点から私は質問しておるわけです。  また、我が国の実態、地方自治体というのは政治的な力学が千差万別ですね、職員組合がどの政党の色が濃いのかも含めて。選挙になれば午後三時には仕事をやめてどこかのデモに行っているというところもあるんですね。こういうふうな千差万別な自治体を抱えておるわけです。そして、力関係は千差万別、もう当然千差万別。ある自治体においては、外国人に参政権を与えるというようなことを言っている自治体もある。外国人、日本で一番多い外国人はどこかということを考えていただければ、そのような苦渋の選択をすべき板挟みの立場に今回の事案で自治体の長を立たしめることがいいのか悪いのか。私は、結論から申し上げるならば、そのような立場自治体の長を立たすことは国家の責務としてできない。  防衛庁長官、これは周辺事態において計画等々を立てられて、そしてそれが迅速に機能して、そしてもって日本国の安全と日米関係の信頼、ひいてはその対象地域である方々の平和を維持するために、自治体の長が一つのネックになって判断がおくれるとか、板挟みになってリコールを受けるとか、これはそういう事態を容認することができる事態でしょうか、防衛庁長官計画される事態において。この法案ではそうなるんです、それはそうなるという可能性があるんです。それはいかがクリアしていこうかというのがこれからの課題でなければなりません。  その点については、問題意識、また御答弁をいただければありがたいんですけれども
  270. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 周辺事態への対応は、内閣の判断と責任においてなされるものであると思います。地方公共団体の長にその責任を押しつけるということは、やはり行き過ぎじゃないかと思います。だから、本法第九条の協力要請を義務づけの規定に変えるということは、私どもは望ましいとは考えておりません。
  271. 西村眞悟

    西村(眞)委員 時間が余りましたけれども、今のお言葉で、やめさせていただきます。  ありがとうございました。
  272. 山崎拓

    山崎委員長 これにて西村君の質疑は終了いたしました。  次に、伊藤茂君。
  273. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 まず、日米地位協定のことで質問をさせていただきたいと思います。  私は、日米地位協定の現状、それと新ガイドライン、重ねてみますと、非常に懸念を感ずるわけであります。  まず第一に伺いたいんですが、よく言われますが、日米地位協定とNATO軍地位協定、ボン補足協定との比較論というのがよくあるわけであります。比較をいたしますと、非常に大きな格差があります。なぜ日本の場合とドイツの場合と違うのだろうかという疑問があるわけですが、その点をどう認識しておりますか。
  274. 高村正彦

    高村国務大臣 日米地位協定は、日米安保条約の目的達成のため我が国に駐留する米軍の円滑な活動を確保するため、米軍の駐留に関するさまざまな側面について詳細に規定したものでございます。  受け入れ国の同意により駐留する外国軍隊の構成員に対し一定の特別な法的地位を認めることは、一般国際上の確立した原則となっておりまして、このような地位協定締結した例は、米国とNATO諸国、韓国、豪州等の間にも見られますが、その規定ぶりは、一般的に言って、日米地位協定と相当程度共通したものとなっております。  日米地位協定とNATO地位協定やボン協定との比較については、おのおのの協定の実際の運用のあり方等も検討する必要があるので一概に論ずることは困難でありますが、日米地位協定がこれらに比べて日本側にとり不利であるとは考えておりません。  これらの事情を勘案すれば、現時点で日米地位協定の改定が必要であるとは考えていないところでございます。
  275. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 外務大臣、それは違うと思います。  時間がございませんから、二、三の例だけ申し上げますが、例えばボン補足協定関連で見ますと、例えば軍事演習に関する規定がございます。地位協定には具体的な明文規定がございません。ボン協定四十五条、地上演習、四十六条、航空演習など、訓練につきましても詳細に規定をいたしております。低空飛行問題でさまざま問題が起きておりますが、低空飛行に関する協定締結が、四十六条の三にボン協定はございます。あるいは、被害を受けた土地の三カ月間の不使用という項目もございます。  施設・区域の設置、使用、返還に関する規定もございます。最小限の限定のための土地需要の点検、四十八条五にございます。ボン協定ですね。それから、一定期間ごとの計画申告、要するに必要であるかどうか厳しくチェックをする。ボン協定では四十八条の一にございます。  国内法の遵守義務がございます。地位協定では十六条に日本法令の尊重という言葉がございますが、ボン協定では、ドイツ法と同等の、またはより厳しい内容を有する派遣国の国内法規を適用することができる、五十三条の一などがございます。  さまざま、それについては例がたくさんございまして、私の方も、これは自社さ連立の当時に共同でやったことなんですが、詳細な比較一覧表などを協力を得てつくっているということでございました。余り違わないのではありません、非常に違うというふうに思いますが、いかがですか。
  276. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 先ほど大臣から御答弁申し上げましたのは、NATO地位協定、ボン協定で改正されたりいたしておりますけれども、両者を比較いたしまして一概にどちらが有利かということを論ずることにはなかなか困難な点があるだろう、適当ではない点があろうということでございます。  それで、先生今例を挙げられました。確かに、そのような規定がボン協定にあることは、NATOの地位協定にあることは承知いたしております。  ただ、いろいろな運用というものもございます。例えば、刑事事件に関します被疑者の拘禁の問題ということを例にとってみますと、これは、NATOよりも我が日米地位協定の方が日本側にとって有利と申しますか、拘束について日本側にとって有利な規定ということになっております。  それから、もう一つ例を申し上げますと、例えば、今先生挙げられました低空飛行訓練に関する規制でございますけれども、確かに、日米地位協定には低空飛行に関する規制そのものは、規定はございません。確かに、法令尊重義務ということで日米地位協定では扱っているわけでございますが、これも御案内のとおり、最近、低空飛行につきまして、日米の合同委員会で公表文書を取りまとめました。  その中におきまして、日米間の申し合わせといたしまして、米軍が低空飛行訓練を行います場合にも、国際民間航空や日本の航空法により規定された最低高度基準、これは、人口密集地では三百メートル、その他の地域では百五十メートルでございますけれども、こういった基準を用いているということで、米軍としてもこれを適用しているということになっているわけでございます。  それに比しまして、ドイツにおきましては、五百フィート、すなわち百五十メートル以上の飛行訓練は原則としてドイツの全土で訓練が可能であり、また、特定の空域においては七十五メートル以上の訓練が可能であるというようなこともあると承知しております。  ちょっと長くなりましたけれども、いろいろ規定ぶりについて、大体似通ったことが大部分でございますけれども、それは、規定ぶりは違うところはございます。ただ、どちらが有利かということについては、なかなか一概に比較はしにくいであろうということでございます。
  277. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 認識が非常に違います。  申し上げますが、こういうことがございました。  平成七年十月二十四日、私ども連立与党を組んでおる当時ですが、沖縄で大きな事件が起こりまして、地位協定をどうするのかということにつきまして、専門家会議をつくりまして協議をしたことがございます。ふつつかですが私がその座長を務めましたから、よく覚えております。  そのときに、自由民主党座長中山太郎さんから、新党さきがけから、社会民主、当時社会党から、それぞれ文書で提案をいたしました。そして、こういうことにつきましてどうしていくのかということを議論いたしました。外務省の答弁がございますけれども、私どもは、例えば国会図書館とかいろいろなところの協力を得まして、あるいは専門家の意見も聞きまして、NATOとかボン協定の場合と日本の場合と、詳細な一覧表を何種類かつくりまして、随分勉強したわけであります。場合によっては、それではドイツに与党共同で行こうじゃないかという議論もいたしました。  そのときに、各党が出しましたが、自由民主党から出されました文書の中には、一つは、当時問題でしたから、十七条、刑事裁判手続の改善の問題がございます。もう一つは、そのほかのさまざまな問題について、これからの課題である、真剣に自由民主党として取り組むことにするという書面が残っております。したがいまして、今のままでいいという認識とは違う共通の議論が実はあったわけでございます。  私は思うんですが、今度の新ガイドラインでもさまざまな議論がございますけれども、やはり、主権国である日本として主体的にどういう判断をし、どう対応するのかということが非常に大事なことだろう。また、イコールパートナーシップでございますから、はっきりノーというとちょっと選挙を思い出しますけれども、やはりそういうのは非常に大事だということなので、主権国の権威として、こういう問題について、国際的に立派な国だと言われるだけの発言対応をしていくというのが、ある意味では日米間の本当の信頼の道ではないだろうかというふうに思うわけでありまして、そういう書面も残っておりますから、大臣、今のままで結構ですというだけではいかない、不断にさまざまの改善、改革の努力をするというのは当然のことではないだろうかと思いますが、いかがでしょう。
  278. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 その点は、先生御指摘のとおり、いろいろな改善に取り組むべきことはそのとおりだろうと考えておりまして、政府としては地位協定の運用の改善に従来から取り組んできているところでございます。  ちょっと例を挙げますと、例えば平成七年十月に、先生御指摘事件の後でございますけれども、刑事裁判手続を改善いたしまして、被疑者の身柄を起訴前に引き渡す道を開いたということがございます。さらに平成八年十二月のSACO最終報告におきましては、さまざまな改善措置を盛り込みまして、それを実施しているところでございます。  日米両国政府とも、このSACOの最終報告に明記されているとおり、今後とも地位協定の運用の改善のために努力を継続することといたしておりますし、新たな指針の策定によってこのような政府の努力を怠るようなことになるということは決してございませんで、努力は引き続き続けていく必要があるということでございます。
  279. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私どももさらにこの問題を取り上げてまいりたいと思いますが、真剣な努力を強く要望していきたいと思います。  要するに、この新ガイドラインという問題の機会に改めてさまざまな制度について思うわけでございまして、この前の平成七年の協議のときには、沖縄問題について、自動車のナンバープレートとか、若干の部分的な改善は確かに私ども共同でやったわけでありますが、また米側もそれに応じたわけでございますけれども、不断に努力をするということが求められているということだと思います。  それから、防衛庁長官に次に伺いますが、包括的メカニズム、調整メカニズムという問題がございます。さまざまな議論がございました。  私が一つこれで懸念を感ずるのは、包括的メカニズムが具体化をし、幾つかの段階に分かれましてそれぞれ始まっているということになるわけでありますが、その内容を見ますと、例えば一番上にはSCC、2プラス2、それからSDC、BPCというふうな仕組みがございますし、日本政府関係省庁局長クラスの会議、十七省庁というのもございます。  ただ、私はそれを見ますと、つまるところ対応措置なりプランをどうつくるのかということは、どこかでつくって上に上げる。やはり一番ベースになる部分というのは、結局BPCという、自衛隊の統幕会議とか陸海空の幕僚監部とか在日米軍司令官とか太平洋軍代表とか、要するに武官のところですね。武官のところが結局ベースになって物事が決まって上げられていくということになるのではないだろうか。  したがいまして、私は、あらゆる部面でやはり国会の報告だけではない国会承認というのが非常に大事なことではないだろうかというふうに思いますし、何か武官のところが中心で決めるところがベースになるという懸念を感ずるわけですが、いかがでしょう。
  280. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今委員から御指摘ありましたとおり、指針のもとで日米共同作業を実施するための包括的なメカニズムは、自衛隊及び米軍関係者により構成される共同計画検討委員会のみならず、日米安全保障協議委員会を初めとするそれぞれの政府の他の関係機関が関与しているわけであります。  ガイドラインにおきましては、日米安全保障協議委員会が包括的なメカニズムにおける作業についてまず指針を提示し、作業の進捗を確認し、必要に応じて指示を発出する責任を有する旨明記されておるところであります。  このように、BPCの作業は、日米両国の防衛外交関係閣僚から構成される日米安全保障協議委員会の示した指針や指示に従って行われるものであり、両国の軍事専門家の決定がベースになっているとの御指摘は必ずしも当たらないのではないかと考えます。
  281. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 防衛庁長官、当たらないと申されましたが、つまるところ、言うならば最終的には閣議決定、統幕会議の決定、基本計画、この国会とのかかわりはただいま各党間でも議論されているとなるわけでありまして、ところが、そういうプランをつくる一番の原案というものは、結局日米間の今までの御相談と今の進んでいる仕組みの中では、何段階かございますけれども、だれが考えてもその仕組みをずっと見れば、2プラス2、一番上のSCCのところが最初に決めるわけじゃないわけですから、どっちにしたって具体案をどうつくるのかという原案はBPCでできるということになるだろうと私は思うんですね。ですから、そういう不安とか懸念というものは感ずるところだと思うので、心配ありませんというだけではなくて、そうではない証拠をもうちょっと説明してほしいのです。
  282. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 ただいま申し上げましたとおり、包括的なメカニズムにおける作業については日米安全保障協議委員会が方針を提示するわけであります。まず方針を提示するわけであります。そして作業の進捗状況を確認して、必要に応じて指示を発出する責任がある、こういうふうになっておるものですから、私はそれによって、単に軍事専門家の決定がベースになっているというだけではないという趣旨を申し上げたわけでございます。
  283. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 もう一つ防衛庁長官に私の懸念する心配事を質問したいと思います。いわゆる有事立法の動きでございます。  小渕総理も再三にわたりましてその必要性発言されていることをマスコミでも拝見をいたしております。また、先ほど来、当委員会議論の中でも、自治体民間協力、第九条関連につきましてさまざまな議論がございました。私はこれから先、強制はしないと言っておりますけれども、何かやはり、もっとそういうことが強制的にというのか思いどおりにというのか、行われるような方向への動きというものが、いわゆる有事立法の内容という危険性があるのではないだろうかということを思うわけであります。  実は私の思い出になるわけですが、ベトナム戦争当時に横浜で村雨橋の事件というのがございまして、国内の道路交通法関連の車両制限令に違反をして、米軍の修理した戦車がノースピアからベトナムに出ていく。これは法律違反ですから、法令違反ですから、これはおかしいということでストップさせたことがございます。当時の横浜市長と当時の建設大臣と何遍か協議をして、結局、一番最後は政令の方を改めたというふうな経過になっております。  そんな地元の思い出がございまして、振り返りますと、何か有事立法の研究、それから今さまざま問題になっている自治体への協力依頼の関係などについて、より日米の軍事関係が優先して国内法の方を直すとかいう動きになるのではないかというふうな懸念を感ずるわけですが、有事立法で防衛庁が中心になって研究している全体までは申しませんが、そういう視点のところで一体どういう研究をして、そういう懸念がないのか。いかがですか。     〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕
  284. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 有事法制というのは、例えば防衛出動を命ぜられるという事態において、自衛隊がその任務を有効かつ円滑に遂行する上での法制上の諸問題に係る法制について有事立法というふうに私どもは理解しておりますが、先生御指摘のとおり、二十二年間私どもはこれを勉強してまいりまして、昭和五十六年四月、それから昭和五十九年十月、それぞれ中間的な報告を行ったところであります。  私は、二十二年間の蓄積に基づいた研究でありますから、単に研究にとどまらず、法制化されることが望ましいということをこの委員会でも申し上げてきたところであります。  そして、これは私だけの発言じゃなしに、例えば平成六年の六月十四日に国務大臣神田厚君が、防衛庁としては、「一般的にはこれらの検討結果に基づいて法制が整備されるのが望ましいと思っております」と答弁しておられますし、平成九年、平成十年それぞれ、「防衛庁としては、有事法制については、当然のことながら、研究に止まらず、その結果に基づき法制が整備されることが望ましい」というふうに防衛白書でも書かれているところであります。  内容につきましては、例えば、今先生からも御指摘ありました道路の場合でいえば、道路が欠落して穴があいたのに、道路管理者は何カ月もかかる、自衛隊ならば即日直せるというような場合に、そういうことを認めてほしいとか、あるいは、海岸に相手国が上陸してきた場合に、海岸に簡単な構築物の陣地をつくりたいという場合に、今のままでいけば三週間もかからなければ許可が建設省や運輸省や農林省からおりないということでは、これは対応できない。あるいは、簡単な指揮所をつくる場合に、建築基準法で三カ月の許可の期間がかかる、こういうようなことでは防衛出動では全く役に立ちませんから、そういう問題について直させてほしいというようなことがこれまでの研究の成果である、こういうことを申し上げておきたいと思います。
  285. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 防衛庁長官、そういうことが先に来るから僕はおかしいと。  私は、気持ちの一端を申しますと、五年前の北朝鮮核疑惑をめぐる非常な緊張状態がございました。最後にハリソンさんとか、それからカーター・金日成会談で収拾をされ、ジュネーブ協定になり、米朝合意になるという経過で来たわけであります。  私は、五年前のあのときのあの緊張状態の中の半分ぐらい、内閣の一員でございました。しかも海上保安庁を担当しておりました。社会党出身の閣僚でございますから、万々一何かあったらどうしたらいいんだろうか、どうなんだろうか、自分の考えと、自分の見識と申しましょうか政治信条と、大変な深刻な思いの議論を随分したことがございます。  結局、カーター・金日成会談などで収拾されまして、そのとき思ったことは、やはり我が国は昔と違ってアジアでも非常に大きなポジションを持つ国でございますから、さまざま、いろいろなコストがかかっても、やはりそういうことが起きない努力を日ごろ、外交、経済含めてやるということがまず大事だ、それから、何かやる場合でも、しかし日本の憲法とかのりを越える、日本の国のビヘービアを越えるようなことをしてはならぬというふうな思いがあの経過でございます。  そういう努力がまず先なので、私どもも、ですから、そういう議論とそういう大きなグランドデザインの議論をどうするのかということをやるのが政治家の使命だろうというふうに思うわけでございますけれども大臣の最後の答弁で気になるのですが、何かガイドラインとかこういう案件が、周辺有事とか起こった場合どうするのかということが先行して、現在の国内法のさまざまの法的、政令的な秩序を変えるということが先に出てくるというのは、私は非常におかしいんじゃないだろうかと思うのです。  やはり、端的にお答え願いたいのですが、現在の国内法のさまざまの秩序、それは、具体的には道交法もあるでしょう、航空法もあるでしょう、港湾法もあるでしょう、港則法もあるでしょう、いろいろありますが、ということについて、国内法の秩序を変えるというふうなことをお考えなんですかどうなんですか。否定していただきたい。
  286. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 私も、委員が御指摘されたように、まず外交努力が一番重要で先行すべきことだということは、当然のこととして理解しております。私が短兵急にこういうこと、有事法制が望ましいと言ったのではなくて、二十二年間研究してきたわけですから、そういう成果についてどういうことを考えているかと言われたのでさっきの事例を申し上げたわけでありまして、私どもとしては、このガイドライン法とは全く関連なしに、もうガイドライン法の二十年以上も前に始めたことでありますから、もうそろそろこの研究から立法化されるような方向へ行くことが私としては望ましいと。これは歴代の防衛庁長官みんなそう答えているわけでありますので、そのことを御理解いただきたいと思います。
  287. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 さらに論争しましょう。  大蔵大臣、お越しいただきましてありがとうございます。外務省にもあるのですが、時間もあれですから、宮澤さんにお伺いさせていただきたいのですが、思いやり予算の問題でございます。  二つございまして、一つは、ほかの国と比べましたら、韓国、ドイツ、その他いろいろな国と比べましたら、何十倍とか、もっと多いとかいうようなことが言われてまいりました。この数十年間に急増したわけであります。  それから、よくマスコミに紹介されておりますけれども、非常に気前がいい日本であるとか、さまざまのアメリカ側の責任者の発言がございます。有名な前の国防次官補のナイさん、カリフォルニアに駐留させるよりも日本に部隊を駐留させる方が安上がりである、日本は受け入れ支援で最も気前のいい同盟国である、一九九五年には、日本の負担は給与を除いた米軍経費の七割を上回っているなどとか、あるいは、これも同じ、沖縄問題でも角を突き合わせました前のロード国務次官補のアメリカの議会での証言でございますけれども日本米軍部隊への直接の財政支援は年間ほぼ五十億ドル、経費の七〇%、これは他のすべての同盟国を合わせたよりも大きい。大変大きな評価を受けているということになるわけであります。  私は、さっきも申し上げましたように、外交、経済を含みまして、より平和的な戦略を執行するためのことについては費用を惜しまないというぐらいの気持ちを持って我が国はやるべきだろうというふうに思います。しかし、軍事予算の面で、ほかの国と比べてみましてもえらく突出したことをやっている。また、こんな言葉遣いでアメリカの責任のある方々が表現をされている。  二面ございまして、一つは、きのうも赤字財政を憂える会という勉強会がございまして、何か武村さんが一生懸命ですから、百人以上の国会議員が集まって勉強で、みんな心配しているわけでありまして、国民的な心配ですね。そういう状況の日本のピンチの中で、こんな状態が続いていいんだろうか。財政再建で、宮澤さんに御質問させていただきました議論の中では、どこにも聖域はないということを申したわけでございますけれども、妥当なんだろうかということと、それから我が国対応として、アメリカの議会に責任ある政府の方々がそういう発言をするということでいいんだろうかという疑問を感ずるわけでありますが、特に財政を担当なさる責任者としてどうお考えでしょうか。
  288. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 お尋ねくださいましたので、お考えと違うことを申し上げるかもしれませんけれども、どうぞお許しをいただきたいと思います。  いつぞやこの委員会でお尋ねがあって申し上げましたが、安保条約が締結されましたのは昭和二十六年、サンフランシスコでございますが、私は全権随員として参っておりました。そのころの日本の国力と今日と比べますと、もうもとより申し上げるまでもない今日の日本でございますから、殊にアメリカが途中で財政赤字があったりしたこともございまして、いろいろ要請があって、日本として筋道の立つものなら負担をすることがいいのではないかと私自身は考えてまいりました。  昭和五十二、三年ごろからでございますが、協定の枠内、それから特別協定というふうにだんだんふえてまいりましたが、私は、我が国が国力からいってできることはやはりした方がいいという気持ちを終始持っておりまして、殊に、御承知のように、この安保条約が片務的だという問題がございまして、いわば日本のただ乗り論というのが時々アメリカの中で横行するという現状もございまして、そういうことは、我が国としてはやはりよその国とは違う事情にあるということを私は考えてまいりました。  それから、今ジョセフ・ナイあるいはウィンストン・ロードのことをおっしゃいまして、確かにアメリカの軍としては、軍に金を使うことに、国内にもちろんもう少し縮小できないかという批判がありますし、海外に派遣することはいわんやむだではないかという議論がしょっちゅうございますので、そのときに彼らが、ホスト・ネーション・サポートと言いますが、日本はそういうことをしてくれているんで、日本に派遣することによって決してアメリカにとっての過剰な負担になっているのではないということを国内的に話しておる。国内的に話しておる限りで、それは我が国にとって決して不利な説明ではないというふうにずっと私は考えてまいりました。  財政は確かに厳しゅうございますけれども日本の安全に関することであったら、やはり削減するのはそれは一番最後だ、ほかに削るところがあったら削らなきゃならないぐらいに私は考えております。  お言葉に逆らって申しわけありません。
  289. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 時間ですから終わりますが、宮澤さんほどの人だからもうちょっと問題意識を持ったいい御答弁をいただけるのかなと思いましたんですが、ちょっとがっかりいたしました。  ただ、何か起こるに備えて軍事的にお金がかかるというよりも、やはり何か平和な時代をつくるためには金を惜しまないというのがあるべき気持ちではないだろうかというふうに思いますので、さまざま御検討、御努力をお願いしたいと思います。  以上で終わります。
  290. 中山利生

    ○中山(利)委員長代理 これにて伊藤君の質疑は終了いたしました。  次に、木島日出夫君。
  291. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  自衛隊の行動の一つ周辺事態法では後方地域捜索救助活動というのを挙げられておりますので、きょうは一般質問の最初ですから、それに集中して御質問申し上げたいと思います。  法案第三条一項二号は、後方地域捜索救助活動の定義をしております。周辺事態において行われた戦闘行為によって遭難した戦闘参加者を捜索救助の対象として、その捜索、救助、輸送を行う活動であって、後方地域において我が国が実施するものということであります。  最初にお伺いいたしますが、防衛庁、捜索救助の対象は、法案によると「周辺事態において行われた戦闘行為によって遭難した戦闘参加者」ということでありますが、それだけしか書かれておりません。捜索救助の対象はだれなのか、米軍の戦闘員だけなのか、米軍の同盟軍の戦闘員も含むのか、そこだけは答弁願いたい。
  292. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 法案の六条に規定します後方地域捜索救助活動を実施する場合、人道的な見地から、平和及び安全の回復のための活動に従事する米軍以外の戦闘参加者も救助の対象としているところであります。  また、この戦闘参加者には民間人は一般に含まれないと解されますけれども、後方地域捜索救助活動を実施する場合において、戦闘参加者以外の遭難者があるときは、人道的な観点から本活動を実施するという趣旨にかんがみ、これを救助するものとしているところであります。     〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕
  293. 木島日出夫

    ○木島委員 この法によって戦闘参加者に対する捜索救助活動をしている部隊がたまたま民間の遭難者を見つけたときは、これは救助できるという仕組みになっているわけでありまして、これは基本計画でまず定めて出動するわけですから、その基本計画ではだれが捜索救助の対象になるのかというのは基本的に大事なことでありまして、それは米軍の戦闘員であり、同盟軍の戦闘員である、そう聞いていいわけでしょう。
  294. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先ほども申し上げたとおり、後方地域捜索救助活動において捜索救助の対象となる戦闘参加者は、法律米軍人に限定されていないところでありますから、改めて基本計画において米国の交戦相手国の戦闘員を救助すべき旨を特記するということは、現在のところ考えておりません。
  295. 木島日出夫

    ○木島委員 次に移りますが、戦闘行動と、それによって遭難した兵の捜索救助というのは、もう事実上、軍事上一体不可分のものだろうと思うんです。なぜ、戦闘行動をともにしていない日本自衛隊の部隊が、戦闘行動によって遭難した米兵あるいは同盟軍の兵員の捜索救助をしなきゃならぬのでしょうか。
  296. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 周辺事態における武力紛争に際しては、各国によって、この事態により影響を受けた平和及び安全の回復のための活動が実施されるような状況が想定されます。この場合、戦闘行為により、これらの活動に従事する各国の戦闘参加者が被害を受けることが想定されます。  我が国周辺の海域でこのような被害が発生している場合には、我が国がみずから捜索や救難活動を実施するとともに、沿岸国たる我が国が、その周辺の海域において戦闘参加者を救助する活動を実施することが期待されているわけであります。そして、これを実施することが、我が国の平和と安全に寄与することになろうと考えます。
  297. 木島日出夫

    ○木島委員 まともに質問に答えていないんですね。  戦闘行動と、戦闘行動によって遭難した隊員、兵員の救助というのは、もう一体不可分ですよ。一番近いところにいなきゃ、そんな救助はできるはずないんですよ。だから、米軍が戦闘行動をやって、撃墜されてパラシュートで落ちた兵員を米軍がみずから救助に出ていくのならわかるんですよ。そういうことをやらないわけでしょう、やれないわけですよ、日本自衛隊は。何で救助のためにのみ、こんな前線まで行かなくちゃならぬのか、そこを聞いているんですよ。
  298. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 今先生、前線に近いところという言葉をお使いになりましたけれども、この法案で申し上げております後方地域捜索救助活動は、まさに後方地域において実施することを予定しているものでありまして、まさにその戦闘地域に、戦闘部隊と一緒に行動して行うというような活動は想定しておりません。
  299. 木島日出夫

    ○木島委員 後方地域であるんだなんというのがいかに現実離れしているかについてこれから私は質問していくつもりでありますが、これは、自衛隊がやる活動です、同時に米軍がやる活動です、それで協力するという法律の仕組みになっております。  そこで、米軍の方は、戦闘行動で遭難したみずからの兵、米兵の救助活動を、どんな理念とどんな目的のもとに行っているのか、それを防衛庁外務省はつかんでいるでしょうか。つかんでいたら、ここで答弁してください。
  300. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 戦闘参加者でその戦闘によって負傷したり遭難したりしたその構成員を救助するというのは、これはもう各国どこでも、ある種当然の行動であると我々は思っております。
  301. 木島日出夫

    ○木島委員 当然なんて言っておりますが、答えませんので、私の方から示しますわ。  ここに、昨年九月三十日付のアメリカ空軍の冊子があります。「エアフォース ドクトリン ドキュメント 二—一・六 コンバット サーチ アンド レスキュー」です。戦闘捜索救助と題する冊子であります。ここに、米軍は、戦闘行為によって遭難した米兵を何の目的で、どういう利点を持って活動するのかというのが明確に書いてあります。  示しますと、「用語の定義」として、米軍のマニュアルでは、戦闘捜索救助は、「戦争または戦争以外の軍事作戦中に遭難した兵員の奪還を行うため、救出部隊によって遂行される特定の任務。CSARとも呼ばれる」  そして、第一章の概観、「戦闘捜索・救助の有益性」、そういう欄があります。こう書いてあります。  「空軍の戦闘救助の哲学は、戦闘乗員及びその他の孤立した兵員を奪還するための能力を維持することを基本としている。この哲学は、救出部隊が、他の戦闘部隊と同様、兵員を救出する際に危険な状態におかれることを想定している。空軍の戦闘捜索・救助を成功させることは、少なくとも三つの点で統合軍司令官の戦闘能力を高める。」三つの有益性があると明確に指摘しています。  「第一は、戦闘捜索・救助作戦は、重要な兵員を味方(友軍)のコントロール下に奪還し、再び彼らを戦闘できるようにすることである。」奪還して、再び戦闘できるようにすることなんだ。  「第二は、戦闘捜索・救助作戦は、拘束された兵員のもつ諜報的・宣伝(プロパガンダ)的な価値を利用する機会を敵に与えないようにすることによって、国内的、国際的な政治の動向に影響を及ぼすことである。」今回コソボの、米軍のステルスが撃墜されて救出した。またその後、三人の米兵がユーゴ軍によって捕虜になった。それを取り戻すためにいろいろ折衝をやっている。そういう経過を見れば、この第二の有益性は非常に鮮明になっていると思うわけです。  「最後は、強力で実行可能な戦闘捜索・救助部隊の存在は、士気(モラル)を高め、結果として作戦遂行能力を増強させることである。」  こういう三つの目的を持って米軍は救助に行くのですよ。これは軍事行動そのものですよ。戦闘行動と一体不可分、その有益性も一体不可分、これを日本自衛隊が一緒にやる、こういうことをこの法案は規定しているわけですね。米軍がこういう三つの戦闘捜索救助の有益性を位置づけてやっているということは、日本政府としても承知の上で一緒にやりに行くのですか。
  302. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員アメリカの例を引いてお話しされたのは、アメリカがそうやっているという事実でありまして、そのとおりだと思います。  この法律によりまして私どもが行う後方地域捜索救助活動は、あくまでも後方地域において我が国が実施するのでありまして、我々は、後方地域という区域を設けまして、我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることはないと認められる我が国周辺の公海について行うわけでありまして、アメリカの場合と、私どもがこの法律定義をしている後方地域捜索救助活動とは全く別のものである、こういうふうに考えております。
  303. 木島日出夫

    ○木島委員 全く別物だとおっしゃいましたが、実際に、戦闘行動をやった米軍が敵から撃墜されて、その兵員を救助に行くなんというときに、別だ、ばらばらでやるんだなんということで有効に捜索救助ができないということは、もう軍事上の常識であります。  そこで、こういう捜索救助活動が米軍の戦闘行動、軍事活動と一体不可分ではないかということについてこれから幾つか指摘してまいりますが、最初に、実施区域の問題について法案に即してお聞きいたします。  第三条一項二号、四号によれば、実施区域は、我が国領域と我が国周辺の公海及びその上空であります。そして、その区域の範囲は基本計画で定められます。さらに、法案第六条四項によりますと、実施区域に隣接する外国の領海でも、当該外国の同意を得て、捜索救助できることになっています。  周辺事態法の中で、武装した自衛隊が外国の領海内で行動することを認めているのは、いろいろ後方支援なるものはありますけれども、この捜索救助活動だけであります。公海だけではなくて他国、外国の領海にまで自衛隊の行動範囲を広げたのはなぜなのでしょうか。
  304. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 この後方地域捜索救助活動は、他国領域内に仮に遭難者があった場合には、当該領域国の同意を得た上で、これを救助することをも想定しております。  これは、基本的に、予定しますいわゆる後方地域、その中の実施区域を防衛庁長官が定めて行うわけでありますが、しかし、海上の遭難者等を考えてみますと、当初はそういう実施区域の中にいたとしても、潮の流れの影響等で移動していくようなケースもありますし、あるいは、位置が必ずしもピンポイントで正確にわかっているとは限らないわけでございまして、後方地域というか、他国の領域内でないと思って出動したところが実際には他国の領域内にあった、じゃ、そうだからといって、そのまま見捨てて帰ってくるようなわけにもまいりませんので、そういう場合には、当該国の同意を得て、これを救助することもできるようにしておるわけであります。
  305. 木島日出夫

    ○木島委員 当初の基本計画は、我が国領海と公海であると。しかし、そういう捜索救助活動をやっているときに、たまたまそれに隣接する他国の領域、外国の領域に救助者がいるときに、見過ごすわけにいかないから、そういうときには外国の同意を得て助けに行くんだ、そういう答弁であります。  そうしますと、外国の同意を得る時期というのはいつなのですか。見つけてから急いでその国の同意をとる手続をとって、入り込んでいくのですか。
  306. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今お話しになられております当該外国の同意につきましては、後方地域捜索救助活動が人道的な側面を有するわけでありますから、通常、外交ルートを通じて速やかに同意が得られるものと考えておりますが、迅速に同意が得られるように、必要に応じ、事前に所要の調整を行うことは十分あり得ると思います。
  307. 木島日出夫

    ○木島委員 これまでもそういう答弁はあるのですよ。所要の調整を行うと。所要の調整を行うというのは、要するに、あらかじめ外国の同意をとっておくということなのでしょうか。はっきり言ってください。
  308. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 そういうことが中心になると思います。
  309. 木島日出夫

    ○木島委員 それなら、そういうことが想定されるのならば、外国の領海に日本の武装した軍艦が行くのですよ、何で事前基本計画の中に書かないのですか。書かないわけですね、外国の領海は。
  310. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 これは、先ほど来申し上げておりますように、あくまでも基本計画あるいは当初の実施区域は後方地域の中というのがこの法律のスキームでもありますし、その範囲で実施することを当然予定するわけでありますが、そういうケースでも、先ほど申し上げたようなことで、仮に他の国の領域の中に遭難者があった場合にはそうするということであります。  また、その状況に応じて事前の了解というのをとるケースもあると思いますし、また、救助に行っているときに、その救助の目的のみを持って自国の領域に入るというケースは、国際法的にも当然速やかに了解がおりる、そういう性格のものであるというふうに承知しております。
  311. 木島日出夫

    ○木島委員 あらかじめ外国の了解をとって入れるようにしておくこともあるが、基本計画には書かないということがはっきりしました。  これまでの政府の答弁によりますと、想定される周辺事態、四つの形態を挙げていますが、その四つの形態の一つの形態として内戦が挙げられております。  そうしますと、内戦というのは政府軍と反政府武装集団との闘争ですね。そういう場合に、その闘争の一方の当事者に米軍が介入する、そういうパターンだと思うのです。  仮に米軍政府軍側に立って軍事介入した場合に、米軍の戦闘機が反政府武装集団の反撃で撃墜される、そして米軍パイロットがパラシュートで海上に脱出する、そういうことが想定されます。ベトナム戦争ではこのような事態が多数発生したわけでありますが、こういう形態の場合でも、では政府は、場合によっては、あらかじめ外国の政府、要するに反政府武装集団と戦闘中の政府米軍と同盟して反政府武装集団と戦闘している外国の同意があれば、自衛隊はその領域内で戦闘員の捜索救助ができるということになりますが、そのとおりですか。
  312. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 ちょっと具体的にどういうケースか、なかなか個別の状況に応じて千差万別の要素はあると思いますが、要すれば、救助のために当該国の領域に入るに当たって、当該領域を、何と申しましょうか、実効的にというか、あるいは法的に支配している当該外国の同意を得て行うということでありまして、基本的には、人命救助といったことについては、当該沿岸国が実は第一義的にその責任を負うべきものでもありますし、そういう立場にある当該外国の同意を得て行うということであろうと思います。
  313. 木島日出夫

    ○木島委員 人命救助、それは人命救助でしょう。しかし、目的は決して人道的なものではなくて、先ほど米軍のCSARの冊子を引用しましたが、もう明確な軍事目的を持って捜索救助に当たっているわけですよ。  ここに、米軍のベトナム戦争のときの米空軍SAR部隊の戦闘記録がずっと、「航空情報」の九八年の三月から十一月まで八回にわたって、非常に細かく詳細に記されているのです。「一九六四年一月から一九六六年十二月三十一日までの三年間に、米四軍の在南東アジアSAR部隊は、総計六百四十七名を救出した。六百四十七名のうち搭乗員は二百七十七名で、うち二百二十二名がCSARによる救出であった。」「米空軍のSAR部隊が救出した搭乗員は百六十一名であった」「一方、米海軍のSAR部隊の搭乗員救出人数は六十一名であった。」こういうのがあるわけですね。  後方支援なんという概念ではとても説明できないでしょう。戦闘行動を米軍政府軍と一緒になってやっている。その領域内にある反政府ゲリラか反政府武装集団とやっている。そこで米軍用機が撃墜されて、地上に落ちればこの法律の建前は米軍が救出に行くことになっています。しかし、海上に落ちれば自衛隊が行くことになるのですよ。行くことになるのでしょう。そうでしょう。  ですから、言ってみれば、そういう戦闘行動地域ですよ、この救出する場所というのは。それで区域というのが非常に大事になるわけですよ。ですから、そういうことになるのでしょう、防衛庁長官
  314. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 この救助活動を行うときは、戦闘行為が行われている地域と一線を画した後方地域について行われるわけでありますから、武力の行使、戦闘行為と一体とはならない、こういうふうに我々は考えております。
  315. 木島日出夫

    ○木島委員 この前のユーゴのコソボの救出劇について、ことしの三月三十一日の毎日新聞が書いておりました。「墜落ステルス機救出 間一髪、ユーゴ軍より早く」「各種情報を総合すると、ユーゴスラビア領内での救出作戦には米軍の空中警戒管制機や戦闘機など約四十機が参加、捜索チームの護衛や敵機の接近警戒に当たった。墜落機のパイロットが携帯無線機で位置を連絡した後で、NATO軍は捜索地域の空爆を一時緩和する措置も取った。」後が、大事なことが書いてあります。「捜索は現地午後九時ごろから約七時間に及んだ」非常に早く、七時間後には救出しているのです。「パイロットを捕虜にしたいユーゴ軍も米軍の捜索地域に迫っていた。ポスト紙によると、米国防総省当局者は「まさに救出チームとユーゴ軍との競争だった」と語っており、一つ間違えばユーゴ軍と米軍部隊との交戦に発展しかねなかった。」  戦闘行動によって敵陣から撃墜される。そして、パイロットが飛び出す。そのパイロットを、米軍の方は、友軍の方は救出に向かう。敵軍の方は、捕虜にとるために、捕虜として確保に来る。そういう場合なんですよ、この戦闘捜索救助というのは。  だから、ユーゴの場合は陸上でしたが、海上だって同じこと。しかも、今、私、内戦の場合を挙げました。相手国の、外国の政府と反政府武装集団が戦闘しておる。それで米軍が戦闘に入って撃墜されて、公海ではないですよね、公海ではない、領海、その政府の管轄している領海に落ちる。そこへ救助に行くことだってこの法律は想定しているわけでしょう。そうでしょう。  そういう本当に一触即発になるような可能性を常に秘め続けているのがこの戦闘捜索救助。日本法律は戦闘という言葉を取ってしまってごまかしておりますが、明確にこれは戦闘捜索救助ですよ。そういうことになるのではないのですか。アメリカ軍のやっている武力攻撃と一体不可分にならざるを得ないのではないですか、そういうことを想定したら。防衛庁長官、どうですか。
  316. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 この法案で行う後方地域捜索救助活動は、戦闘行為と一体にならない後方地域で行うわけでありまして、戦闘行為と一体になるようならば、救助活動に行かないことになるだけの話であります。
  317. 木島日出夫

    ○木島委員 だから、一体になるかならないかなんかわからないのですよ。救助に行くときには、確かに爆撃されてない地域でしょう。それをこの法律は想定していますよ。しかし、救助作戦最中にいつ何どき敵軍が、捕虜にとられたら大変ですから、向かってくる可能性が大いにあるわけでしょう。そういうことが想定されているわけですよ、この活動は、本質的に。だから、そんな答弁では説明できないのですよ、この活動は。どうですか、防衛庁長官
  318. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 何度も申し上げておりますが、この法律に基づいて自衛隊が予定しております活動は、いわゆる米軍の言っているところのコンバット・サーチ・アンド・レスキューとはかなり性格の違うものでありまして、まさに、もちろん、戦闘による遭難者の救助ということを考えますと、戦闘が終了した後の公海上において、後方地域において実施するというのが基本的なあり方でありまして、そういうことを想定した活動であります。
  319. 木島日出夫

    ○木島委員 防衛庁説明は、この法律で我が自衛隊がやる捜索救助と米軍がやる戦闘捜索救助とは性格が違う、別物だなんて、そんな答弁は全然通用しないのですよ。  先ほど指摘しましたCSARの基本、この第五章「戦闘捜索・救助の計画と支援の検討」「作戦上の検討」というところにどう書いてあるか。  「戦闘捜索・救助は、戦闘作戦と不可分なものであり、軍事作戦の全局面にわたって検討しなければならない。戦闘捜索・救助作戦は非常にダイナミックで柔軟性を必要とするので、航空作戦に注意深く統合し、航空任務命令に明確に規定しなければならない。」  米軍は、戦闘に入るときには必ずこの捜索救助計画を結合して、いつ何があっても対応できるようにしてから戦闘に入っていく、そういうことを意味しているのですよ、これは。そういう救助に、その一部分を今度日本自衛隊も持ちなさいということが昨年の新ガイドラインであり、それを法制化したのがこの周辺事態法じゃないのですか。そうなんでしょう。
  320. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員がおっしゃっているアメリカの事例と私どもの方は全く違うのでありまして、私どもは、「我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海」において、つまり、そういった後方地域においてこの救助活動を実施するのでありまして、戦闘行動と一緒になるようなおそれがあれば、それは帰ってくればいいだけの話でありまして、戦争と一緒に行動するということにはならない。  あなたがおっしゃっている部分は、アメリカ人がアメリカの兵隊を救助する場合をおっしゃっているわけでありまして、私どもはそのようなことは毛頭考えていないわけであります。
  321. 木島日出夫

    ○木島委員 そんなばらばらでやるようなことは想定されていないのですよ。  これは、九二年四月の米国防総省「湾岸紛争の遂行」、ノーマン・シュワルツコフ大将が記述した「特殊作戦部隊」という本の一部であります。  特殊作戦一つがこの戦闘捜索救難、これは救難という言葉を使っておりますがCSAR。湾岸戦争で「撃ち落とされた多国籍軍機は三十八機で、撃ち落とされた搭乗員も多数に上った。墜落機の搭乗員数人はイラク内深く入った地域の厳重に防備を固めたイラク陣地の上空または付近で航空機から脱出していたので、遠方であったことと敵の状況のために救出を試みることは不可能であった。」  三十八機撃墜されて、そしてこう書いてあります、「七回のCSAR任務飛行が行われた。」。三十八機撃墜されたけれども七回しか行けなかったのですよ、相手敵軍がいるから。そのうち「三回が救出に成功、救出された搭乗員はすべてアメリカ人であった。」これはこういう活動なんですね。そういう活動のうちの救出、捜索を支援するというのです。  それで、今防衛庁長官法律に書いてあることをお述べになりました。戦闘が行われる場所には行かない、それが想定されるところには行かない、あるいは法律には、そういう場合に、近傍でそういう状況になったら活動を中止するということまで書かれています。  そんなことはどうやってわかるのですか。救助に入り込んでいった、救出のために相手国の領海にまで入り込んでいった、そして、救出活動をまさにやっている真っさなかに攻撃されることは大いにあり得るわけですよ。ベトナム戦争のときにはそういうことがたくさんあったわけですよ。そうすると、この法律では活動ができることになるのですよ、相手国の領海内でも。敵襲というのは急に来るわけなんでしょう。予告して相手が来るわけじゃないわけですよ。何でわかるのですか、そんなこと。
  322. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員は先ほど私が法律に書いてあることを言ったと言いましたが、法律審議をやっているわけですから、法律に書いてあることを言っただけの話でありまして、その点はひとつ御理解をいただきたい。  それで、この後方地域捜索救助活動を実施する場合、「防衛庁長官は、実施区域の全部又は一部がこの法律又は基本計画に定められた要件を満たさないものとなった場合には、速やかに、その指定を変更し、又はそこで実施されている活動の中断を命じなければならない。」これは六条五項に準用される法案第五条第四項によるわけであります。  この法律等に定められた要件につきましては、防衛庁長官が、自衛隊が収集した情勢、それから外務省から得た情報米軍から得た情報等を総合的に分析することにより、事前に判断することが十分可能だと思っております。
  323. 木島日出夫

    ○木島委員 待ったなしの状況で、米軍は命がけの救出に向かうわけです。恐らく自衛隊もそれをやるのでしょう。相手敵軍は、それは命がけで、捕虜にとられたらまた大変な政治利用をされるから、捕虜にとられまいとして向こうも救出に来るのですよ。そんなのは当たり前ですよ。当たり前だから、米軍は先ほど言ったような基本をつくっているわけですよ。これでその活動の一端を担うのですよ。やるときには確かに戦闘行為はないでしょう、ないところでやるという建前になっていますから。  しかし、いつ飛んでくるかわからないじゃないですか。そんなときにどうするんですか。中止して逃げ帰っている間に相手が撃ち込んできますよ。攻撃してくるのじゃないですか。攻撃が想定されるでしょう。どうですか。攻撃が想定されるでしょう。
  324. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 自衛隊は現地において体を張ってやっておるわけでありますから、どこまで行ったら危ないか、どういう状態になったら危ないかということはみずからが知っているわけでありますから、危なければ帰ってくるだけの話であります。
  325. 木島日出夫

    ○木島委員 そんなものが通用する場面ではないということを指摘して、まさに米軍の航空作戦と統合されたこの活動の持っている、本質的にこれは憲法の禁じている武力行使そのものになると私は思うわけです。  次に、武器の使用と武力の行使について話を進めます。  本法第十一条は、捜索救助活動に際しての自衛官の武器の使用を認めております。自衛隊はどんな武器と装備を持ってこの捜索救助活動を行うのでしょうか。自衛隊が持っていく武器や装備に制限はあるのでしょうか、ないのでしょうか。護衛艦も出動できるのでしょうか。法律上はどうなっていますか。
  326. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 先生言われたのは、この法案の十一条の武器の使用だと思いますが、これで申しますと、遭難者の救助の職務を行うに際し、自己または自己とともに職務に従事する者の生命身体ということでありますので、この場合の装備として予想されますのは、小銃、機関銃、けん銃といったようなことであります。  それで、これは、十一条の条文にもございますように、「やむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用する」ということでございまして、こういうケースの「合理的に必要と判断される限度」と申しますのは、申し上げたけん銃、小銃、機関銃といったようなことが想定されるわけであります。
  327. 木島日出夫

    ○木島委員 この法律自衛隊が持っていく装備の限度はあるのかと聞いているのですよ。限度はないでしょう。防衛庁長官、ないでしょう。何でも持っていけるのでしょう。それだけ答えてくれればいいです。
  328. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 武器の種類等については、法文上明記されているわけじゃありません。使用できる武器の種類は、今運用局長から答弁したとおり、その事態に応じ合理的に必要と判断される範囲のものに限られる。だから、一般的にはけん銃、小銃、機関銃程度が中心になろうと思います。
  329. 木島日出夫

    ○木島委員 一般的にどう使うかを聞いているのじゃないのです。何でも持っていけるということを今御答弁になりました。  周辺事態法の十一条では、武器の使用を認めている自衛隊の活動というのは、この捜索救助活動と船舶検査活動だけであります。公海での活動を認めている活動には後方地域支援のうち輸送というのがありますが、先日も同僚委員質問しておりましたが、輸送については武器の使用を認めておりません。捜索救助と船舶検査だけ武器の使用を認めたのはなぜですか。端的に答えてください。
  330. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 まず、基本的に、武器の使用については必要最小限の規定を置かせていただきたいということを前提に考えておりますが、後方地域支援のケースを考えますと、これは先生今言われましたように、米軍艦艇に対する輸送ということでありますので、後方地域支援のその輸送の業務、その職務をまさに行うに際してということはどういう場面かといいますと、まさに米軍艦艇の近傍に到着をして、そこで一定の輸送してきた物資の受け渡しをするというような場面でございますので、そういうケースに、基本的に自己防衛のための、自己防衛といいましょうか、自己またはともに職務に従事する者の生命、身体の防護のためのケースというのは想定されないであろうということで、後方地域支援については十一条を適用させないようにしてあるものであります。
  331. 木島日出夫

    ○木島委員 真っすぐに答えませんが、要するに、今の答弁を解釈すると、捜索救助活動は相手から攻撃を受ける可能性があるから武器使用を認める法律にしたということですね。そうだと思うのですよ。要するに、この法律は、捜索救助活動は必ず相手からの攻撃を受ける可能性が大いにあるということを想定してつくられている、だから十一条で武器使用を認めている、そういう構造になっているわけですね。  それで、一点だけ聞いておきますが、その武器使用が認められているのは、臨検、船舶検査とこの捜索救助だ、その二つだけ。ところが、第四条によりますと、船舶検査活動の基本計画には、この活動を行う自衛隊の部隊等の規模及び構成を定め、閣議決定を求めなければならないとなっております。ところが、どういうわけか、この捜索救助活動についてはそれがありません。捜索救助活動については、どんな部隊の規模、構成、どんな装備を持っていくのか書かないのですね。なぜですか、それ。なぜこんな大事なことを基本計画に書かないで閣議決定ももらわない、国民にも示さないで伏せておくのですか。その理由は何ですか。
  332. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 後方地域捜索救助活動につきましては、米軍の活動や遭難者の発生の状況等のその時々の状況に応じ、活動に従事する自衛隊の部隊等の規模、構成も変化することが考えられることから、あらかじめ後方地域捜索救助活動を実施する自衛隊の部隊等の規模及び構成については基本計画について定めることとはしないとしたところであります。
  333. 木島日出夫

    ○木島委員 本当にこれは危険きわまりない話なのですね。その捜索救助については基本計画にのせない、国民に見えないようにする、そして持っていく武器は何でもいいというわけです。小火器に限らないのですね。護衛艦も持ってくるわけですね。そして、やる活動はまさに相手国の領海にまで入れる、相手国から攻撃される可能性が非常に高い。PKO法によりますと、自衛隊が海外で使用できる武器装備は、二十四条によって小型武器、あるいは六条四項によって国連事務総長が必要と認める限度という縛りがかかっています。これは憲法九条一項の武力行使の禁止との関係で縛りをかけたわけです、PKOは。  ところが、本周辺事態法には自衛隊が海外に持ち出せる武器装備について何らの制限がない。自衛隊の海外出動ということではPKOと同じです。しかも、PKO活動は停戦が前提です。本周辺事態は停戦が前提ではありません。いつ何どき敵陣営が、敵の米軍を捕虜にして獲得するために攻撃することは十分に想定される。まさに戦闘行動が行われる可能性が大いにあるということが前提になる活動。PKOは武器の限度を定めたのに、この捜索救助活動については使用する武器装備に限度を設けなかった理由は、本当の理由は何でしょうか。
  334. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 最初に、前段の方で言われましたことについてお答えしておきたいと思いますが、後方地域捜索救助活動につきましては、先ほど申したとおり、基本計画において自衛隊の部隊等の規模及び構成を定めることとはしていないが、例えば、法案四条二項三号等においてその実施の手続、実施する業務の内容が明確に定められており、また、基本計画において実施地域の範囲等について定めることとなっていることから、私どもは、シビリアンコントロールの観点からも特段の問題がないと考えているところであります。  今、PKO活動との関連での質問でありましたが、法案十一条は、後方地域捜索救助活動、船舶活動のうち、一定の職務を行うに際し、自己または自己とともに当該職務に従事する者の生命または身体を防護するための必要最小限度の武器使用を行い得るよう措置したものであります。このような法案第十一条の武器の使用の目的を達成するための武器の種類は法文上明記されているわけではありませんが、その趣旨からいえば、先ほど申したとおり、けん銃、小銃、機関銃程度の武器を想定しております。  また、自衛隊法九十五条に基づき武器等を防護するために武器を使用する場合も武器の種類は法文上明記されているわけではありませんが、使用できる武器の種類は、その事態に応じ合理的に判断される範囲のものに限られることとなり、一般に、さっき申し上げたような小火器になると思います。
  335. 木島日出夫

    ○木島委員 時間の関係で急ぎますが、防衛庁長官、先回りしてPKO法とのもう一つの違いを言いました。武器等の防護のための武器の使用、自衛隊法九十五条の適用問題であります。PKO法ではこれを除外したのですよ。なぜか。憲法との関係があるからであります。  ところが、周辺事態法のこの捜索救助、船舶検査については除外規定がない。そして、護衛艦を出せるわけでしょう。護衛艦を出して捜索救助に当たる、敵軍が護衛艦をねらってくる、そうしたら、この九十五条を発動して応戦することができるということにこの法律はなるわけです。それでいいですか、防衛庁長官
  336. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 九十五条についてはたびたび御答弁申し上げておりますけれども、まず、その当該武器等の退避ということをまず真っ先に考えるべきものだと思います。その退避によってもやむを得ない場合に初めて一定の武器の使用をするわけでありますが、これも正当防衛、緊急避難に当たるケース以外は人に危害を与えてはならないといったような非常に受動的、限定的な武器使用であります。  さっき先生触れられましたPKO法のケースで外してございますけれども、これは憲法上不可能であったということで外したということではございませんで、PKO業務の特性からしまして、紛争後の混乱が終息していない派遣先国の領土の上で行う活動であります。期間も長期間だし、業務の内容も幅広く、地理的にも広い範囲で行うということで、あえてこの規定によりまして武器を使用することによって事態の一層の混乱を招くおそれもなしとしないということで外したということであります。  これに対して、この周辺事態法のケースは、それぞれ基本的に戦闘行為と一線を画するいわゆる後方地域によって行うわけでありますし、その業務も、PKOと比べますと、永続的なものというよりは非常に限られた業務を行うということで、これを外す必要はないと考えているところであります。
  337. 木島日出夫

    ○木島委員 とんでもないごまかしを言いなさんな。  衆議院の国際平和協力特別委員会平成四年六月十日、宮澤総理の答弁にはっきり言っているじゃないですか。  私どもは武力の行使というものを厳密な意味の武器の使用というものとを分けて考えております。自分の身の危険があったときにのみ武器使用が認められるようにしているんだ。わざわざ国連の標準コードよりも極めて厳しく武器の使用を認められる場合を限っておるわけでございます。それは五原則の一つとして御承知のとおりでございます。これは、万一にも自衛のための武器の使用と思われるものが武力の行使にわたってはならないという配慮からなされております。御承知のとおりであります。  この九十五条を使うということは、個人個人の命を守るなんというレベルじゃないんですよ。そういう概念じゃないわけですよ。護衛艦が攻撃されたときに、護衛艦を守るために応戦する。こんな個人個人の自衛官の命を守るなんというレベルの話じゃないわけでしょう。それを除外したのは、やはりそれは戦闘行動になって憲法九条違反になるからだ、そういう配慮があったわけですよ。  しかし、今回は外している。十一条の規定によると、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用する、これは逆に比例の原則といいまして、相手、敵側が護衛艦を攻撃してきたら、逆にそれに相応する反撃ができるという意味ですね。まさに応戦ですよ。それはまさに戦闘行動。まさにこれは憲法九条の言う武力の行使そのものじゃないですか。どうですか。  後方地域だからとか、そういうところではやることを想定していないとか、恐らく反論が来るんでしょう。そんな反論が通用しない場面でのこれは活動である。先ほど答えられなかったでしょう。いつ何どき攻撃が来るかわからない。間に合わない。応戦せざるを得ない。  平成三年九月二十七日の武器の使用と武力の行使の関係についての政府統一見解、どういう場合に憲法違反になるか、武力行使になるかの三要素。一つは、我が国の物的・人的組織体による行動。二つ目には、国際的武力紛争の一環、外部性ですね。そして三つ目には、戦闘行為。この三要素をみんな備えている活動なんですよ。  だから、これまでの政府の憲法解釈からいっても、この活動はそういう憲法違反の武力行使を想定せざるを得ない。もう明々白々にこれは違憲の立法であるということを指摘いたしまして、時間がもうなくなりました。法制局長官をお呼びして、答弁の時間がなくなって恐縮でありますが、終わります。
  338. 山崎拓

    山崎委員長 これにて木島君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る十五日木曜日午前八時理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十三分散会