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1999-03-31 第145回国会 衆議院 日米防衛協力のための指針に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月三十一日(水曜日)     午前九時一分開議   出席委員    委員長 山崎  拓君    理事 赤城 徳彦君 理事 大野 功統君    理事 玉沢徳一郎君 理事 中谷  元君    理事 中山 利生君 理事 畑 英次郎君    理事 前原 誠司君 理事 遠藤 乙彦君    理事 西村 眞悟君       安倍 晋三君    浅野 勝人君       石川 要三君    大石 秀政君       大島 理森君    瓦   力君       栗原 裕康君    小島 敏男君       佐田玄一郎君    阪上 善秀君       桜田 義孝君    田村 憲久君       西川 公也君    萩山 教嚴君       福田 康夫君    細田 博之君       松本  純君    宮腰 光寛君       宮島 大典君    八代 英太君       吉川 貴盛君    米田 建三君       伊藤 英成君    上原 康助君       岡田 克也君    桑原  豊君       玄葉光一郎君    土肥 隆一君       横路 孝弘君    赤松 正雄君       市川 雄一君    佐藤 茂樹君       西川 知雄君    山中あき子君       若松 謙維君    東  祥三君       井上 喜一君    達増 拓也君       木島日出夫君    佐々木陸海君       春名 直章君    東中 光雄君       伊藤  茂君    辻元 清美君  出席国務大臣         内閣総理大臣  小渕 恵三君         法務大臣    陣内 孝雄君         外務大臣    高村 正彦君         大蔵大臣    宮澤 喜一君         文部大臣         国務大臣         (科学技術庁長         官)      有馬 朗人君         厚生大臣    宮下 創平君         農林水産大臣  中川 昭一君         通商産業大臣  与謝野 馨君         運輸大臣         国務大臣         (北海道開発庁         長官)     川崎 二郎君         郵政大臣    野田 聖子君         労働大臣    甘利  明君         建設大臣         国務大臣         (国土庁長官) 関谷 勝嗣君         自治大臣         国務大臣         (国家公安委員         会委員長)   野田  毅君         国務大臣         (内閣官房長官         )         (沖縄開発庁長         官)      野中 広務君         国務大臣         (総務庁長官) 太田 誠一君         国務大臣         (防衛庁長官) 野呂田芳成君         国務大臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君         国務大臣         (環境庁長官) 真鍋 賢二君         国務大臣         (金融再生委員         会委員長)   柳沢 伯夫君  出席政府委員         内閣官房内閣安         全保障危機管         理室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障・         危機管理室長  伊藤 康成君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         内閣法制局第二         部長      宮崎 礼壹君         防衛庁長官官房         長       守屋 武昌君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 柳澤 協二君         防衛庁人事教育         局長      坂野  興君         防衛施設庁長官 大森 敬治君         防衛施設庁総務         部長      山中 昭栄君         外務省総合外交         政策局長    加藤 良三君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 竹内 行夫君         外務省欧亜局長 西村 六善君         外務省条約局長 東郷 和彦君         海上保安庁長官 楠木 行雄君         労働大臣官房長 野寺 康幸君         自治大臣官房総         務審議官    香山 充弘君  委員外出席者         衆議院調査局日         米防衛協力のた         めの指針に関す         る特別調査室長 田中 達郎君 委員の異動 三月三十一日             辞任         補欠選任   相沢 英之君     栗原 裕康君   河井 克行君     吉川 貴盛君   平林 鴻三君     佐田玄一郎君   赤松 正雄君     若松 謙維君   山中あき子君     西川 知雄君   木島日出夫君     春名 直章君 同日                 辞任         補欠選任   栗原 裕康君     松本  純君   佐田玄一郎君     平林 鴻三君   吉川 貴盛君     河井 克行君   西川 知雄君     山中あき子君   若松 謙維君     赤松 正雄君   春名 直章君     木島日出夫君 同日                 辞任         補欠選任   松本  純君     相沢 英之君 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件(第百四十二回国会条約第二〇号)  周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案内閣提出、第百四十二回国会閣法第一〇九号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出、第百四十二回国会閣法第一一〇号)     午前九時一分開議      ————◇—————
  2. 山崎拓

    山崎委員長 これより会議を開きます。  第百四十二回国会内閣提出日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の各案件を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土肥隆一君。
  3. 土肥隆一

    土肥委員 おはようございます。  今回、周辺事態法案審議に入っておるわけでございますけれども、私は自分のことを少し申し上げたいんであります。  小渕総理は、六〇年安保時代にやはり学生で、少し距離を離れて、日米安全保障条約が大事なのに何でこんなに騒ぐのだろうというような視点で見ておられたようでございますが、私はこの国会をそのとき取り囲んでおりまして、安保反対で毎日毎日取り囲んでおりまして、まあ学生時代でございます。  私は、東京神学大学という牧師を養成する大学がございまして、三鷹にございますけれども、そこのいわゆる神学生でございます、神の学問を学ぶ学生というので神学生と言うんでございますけれども。そういう、将来、自分人生は教会に仕えるという思い学校に行っていたわけですけれども、六〇年安保になりまして、やはりこれは大変な事態だというふうに考えて、安保反対の運動に入ったわけでございます。それが一九六〇年ですから、それから四十年近くたつわけですね。  今回、この日米安保、あるいは周辺事態法、あるいはガイドラインニューガイドラインを見てまいりますと、どうしても戦後五十年四十年の自分人生を重ねないで考えることはできないわけでございます。いわば、その戦後五十年の重ねてきた私たちの暮らし、あるいは物の考え方、あるいは信念と申しましょうか、そういうものが色濃く私たちを支配しているわけですね。  これは国民の皆さんもそうだろうというふうに思います。割に年輩の方は戦前の軍人の体験もしていらっしゃる。そして、私どものような年齢ですと引揚者でございまして、六歳のときに満州から引き揚げてまいりました。残留孤児にならなくてよかったんでありますけれども。そういう経験、そして、戦後の新しい教育の中で小学校、中学校と過ごしていくわけですけれども。  今回の周辺事態法案が、あるいは新しいガイドラインがいいか悪いかというようなことは、これは、ある意味軍事同盟に関する、いわば軍事的な結びつきを述べているわけでございまして、したがいまして、普通の人にはなかなかわかりにくいわけでございます。私もこの法文を読み、かつガイドラインを繰り返し読んでおりますけれども、よくわからないところがたくさんあるんで、きょうはそういう点について質問をさせていただきたいと思うんであります。  つまり、この委員の中には一九六三年生まれとか、あの一九六〇年安保の後に生まれた方もたくさんいらっしゃるわけでございまして、だから私は、このごろ、頭を見まして、しらがの多い人には安心して語れるんですけれども、まあ黒髪の、黒々としていらっしゃる方とはなかなか話がかみ合わないというところもあるように、私が言いたいのは、この法案には、戦後五十年の日米安保の中で生きてきた、ある意味日本平和外交の中に生きてきた人がやはり六割、七割、七割はいませんかね、六割以上はいるということでございますね。したがいまして、その国民の気持ちを酌みながら新しいガイドラインを実施するための周辺事態法案を通していくということは、やはりそれだけ重い課題だというふうに思うんであります。  そういう視点から見ますと、何か、一国平和主義でありますとか平和ぼけでありますとかとよく言われるんですが、その辺の言葉の使い方についても私は後で質問したいと思っておりますけれども、やはり確かに平和だったんですね。そして、その平和を満喫してきたわけです。それは、戦後、五五年体制以降、自民党政府がとってきた一つの大きな方針だったわけです。日米安保体制を壊さない、そして、平和憲法のもとでぎりぎりの安全保障対策をとってきたということでございます。だから、国民がいろいろな考えを持つ、思いを持つということは、まあこれは言ってみれば、自民党政府国民をそういうふうにリードしてきたゆえんでございます。そう言って間違いない。そういう状況の中でこの法案審議されているわけでございます。  ですから、私も、若干そういうノスタルジックな考えと、しかし同時に、私が持っております人生観なり哲学なり、そして政治家としても、ここは譲れない部分、譲れる部分それぞれあることを前もって申し上げまして、質問に入らせていただきたいと思います。  まず、きのう、きょう、おととい、不審船の問題についてやはりどうしても私、理解できないところがありますので、きょうはその辺を押さえたいと思います。  事件が起きましたのは二十四日の未明でございます。これは、政府が公式に海上警備行動を発動したときでございます。ところが、新聞をいろいろ読んでみますと、実はこの事態は、二十三日ではなくて、もう二十一日の時点で把握していた、こういうふうに述べられております。私が持っております新聞は地元の神戸新聞でございまして、恐らく共同の配信だろうというふうに思うんですけれども、「満持して警備行動」に出たというのがタイトルなんです。「要請からわずか二十分 早かった政治判断」こういうふうになっております。二十一日からもう既に防衛庁はレーダーでこの船を追尾していて、追っかけていて、哨戒機も飛ばして探索活動を続けた、こうなっております。そして、海上保安庁側には知らせないで、二十三日になりまして、午前十一時、海上自衛隊から海上保安庁側に通告をした、こういうふうになっております。  この一連の経過、既にもう防衛庁は、この一隻かあるいは二隻ともでしょうか、追尾をしていて、もうウオッチしていたということなんですが、この事態は本当なんでしょうか。
  4. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 二十一日の時点で、少し不審に思っている船がありそうだということは常続的な監視活動の中で考えられたわけであります。そして、二十二日につきましても、さらにそれを確かめるべく、普通の監視活動を行っておったわけであります。二十三日の朝に至りまして、P3Cが、どうもやはり不審だということで護衛艦連絡をして追尾をさせて、これは海上保安庁等連絡する必要があるということで連絡をしたわけであります。  ここ二、三日も、何かきのうあたりも白い船が二隻あって、工作船じゃないかという情報があったり、その前の日もありましたが、いずれもゴムボートであったり日本の漁船だったということで、やはり私どもとしては、ある程度確かめてから海上保安庁等連絡するようにしているから、今委員が御指摘になったような経過をたどったわけであります。
  5. 土肥隆一

    土肥委員 そうしますと、二十一日から二十三日、丸二日あるいは三日、一体この二隻の船は何をしていたんですか。
  6. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 何をしていたかわかりませんが、時々視野に入ったということであります。
  7. 土肥隆一

    土肥委員 こういう不審な船が二隻、若狭湾のところをうろうろしている、何かわからないけれども、二日、三日かけてウオッチしていた、そしてその結果、これは海上保安庁連絡した方がよかろうということになったと。どうも何かそれは、私なんか素人的に考えても、そういう時間がどうして経過するんだろうかというふうに思うわけであります。  実は、いろいろな新聞を読みますと、自衛隊は、ここで書いてありますように満を持して待っていて、二十一日の夜は新月の後と書いてありますから、真っ暗やみに、言えば、待っていたんではなかろうか。そしてそれをずっと追っかけて見ていて、そして二十三日になって初めて海上保安庁に通告する。何か待ち伏せしていて、うまいぐあいに魚を追い込んだようにして、二隻が何かしていると。  例えば、新聞にこういうことも書いてあるんです。海上幕僚長山本安正さんという方が「日ごろから(海上警備行動の)訓練をしている。今回は実際の行動訓練の差はほとんど無かった。やるべきことはやった」と。つまり、このケースで訓練をしたんじゃないかというふうな感じもするわけであります。  この訓練をしていて、この山本安正さんが海上幕僚長としての名前を挙げておっしゃっていることは間違いないんでしょうか。
  8. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 山本海将はきょう引退されましたが、彼がそう言ったかどうか、私は確かめておりません。しかし、その真意は、この不審船を確かめるに当たってそういうことをやったというんじゃなくて、海上警備行動に移った際には、常日ごろ訓練していたとおりのことをやったという意味だというふうに解されます。
  9. 土肥隆一

    土肥委員 その訓練は、ほぼうまくいったというわけですね。  そうすると、その訓練というのは、拿捕するとか、網なんかを持ち出してスクリューに絡ませるとか、いろいろあったようでありますけれども、初めから拿捕する予定じゃなかったんじゃないですか、どうでしょう。
  10. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 拿捕するつもりで自衛隊も命をかけて頑張ったけれども、結果的には取り逃がしてしまったというようなことでありまして、最初から拿捕しないのが目的だったなんということは毛頭ございません。
  11. 土肥隆一

    土肥委員 しかし、訓練のとおりにやって実際の行動をとり、実際と訓練の差はほとんどなかった、やるべきことはやったと。そうすると、訓練のとおりうまくいかなかったと理解していいんですね。
  12. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 訓練のとおりやったんですが、あえて申し上げますと、自衛隊法の八十二条を発動する場合には警職法の七条が準用されますが、そこでは、武器は使っていいけれども人には危害を与えちゃいかぬ、正当防衛緊急避難のときに当たるときしか人に危害を与えちゃいかぬということでありますので、私どもとしては、もしそういうことになっちゃ困ると思いまして、爆弾とか五インチ砲とかで攻撃することはしなかったので、しかし、相手は幾ら停船を命じてもとまらないでひたすら逃げたものですから、取り逃がしてしまったということでありまして、武器を使わない限りにおいては、私どもは、日ごろの訓練どおりきちっと対応できたのではないか、こう思っております。
  13. 土肥隆一

    土肥委員 どうもその辺がしっくりいかないんです。あんなに若狭湾の奥まで入ってきて、そして結局は拿捕できなかったということですね。  防衛庁あるいは政府見解として、この二隻の船は、みずからに与えられた、何の使命かわかりませんけれども、そのミッションを果たしたんでしょうか、果たしていないんでしょうか。
  14. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 この工作船が何を意図して参ったか私どもにはわかりませんが、しかし、きのう政府見解を発表しましたとおり、この船は、いろいろな情報を総合的に分析しますと、北朝鮮の港へ入った工作船であったということが断定できたという次第です。
  15. 土肥隆一

    土肥委員 その北朝鮮の港に入ったという確認は、どうやってなさったんですか。
  16. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 日本及びアメリカ等の総合的な情報で断定したということでありまして、詳細につきましては、申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  17. 土肥隆一

    土肥委員 どうやって確認したかというのは言えないということでございますけれども、これだけの条件で北朝鮮抗議文を送る。そして、きょうなどは大変強硬姿勢が見えまして、新聞によりますと、政府としていつまでも不審船の国籍をあいまいにしておくわけにはいかなくなり、北朝鮮工作船と断定した上で強く抗議する立場に転換した、この背景には、工作船侵入事件をうやむやにできない内外政治状況があったと述べておりますが、これはどういうことでしょうか。
  18. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 ちょっと、今の委員の御質問は、それは報道にそう書いてあったということでしょうか。(土肥委員「いや、そうじゃなくて、新聞です」と呼ぶ)それは、政府見解でしょうか。(土肥委員政府見解に対してです。この背景について、工作船侵入事件をうやむやにできない内外政治状況があったと」と呼ぶ)これはむしろ、外務大臣の方からお答えした方がいいように思いますが。(土肥委員「はい、ではお願いします」と呼ぶ)
  19. 高村正彦

    高村国務大臣 それはむしろ、そう書いてある新聞社にお聞きになった方がいいのではないかと思います。
  20. 土肥隆一

    土肥委員 はい、結構でございます。  その後、野呂田防衛庁長官は、防衛庁医科大学校で卒業式の訓辞をなさいました。そして、平和や安全はただ願望するだけでは得られない、防衛力運用体制の充実に意を払うことが肝要だと言いまして、有事法制や新しいガイドラインなどが極めて重要だと、その必要性を強調した。例に挙げたのはテポドン発射でありますとか不審船事件であって、有事法制や新ガイドラインを急がなきゃならないというふうな趣旨のことをおっしゃったようでありますが、これは間違いありませんか。
  21. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 有事法制につきましては、長い間、二十数年間私ども研究してきたわけでありますが、これはあくまでも研究にとどめるという前提で研究してきたわけであります。  したがって、私は、このたびの国会が始まって以来、防衛庁としては、二十数年間検討してきたので、できれば法律が立法化されることが望ましいということは言ってきましたが、一部報道にありますとおり、この国会が終われば着手するとか、この国会で成立させるなんということは言った覚えもないし、今そういうことを考えてもおりません。
  22. 土肥隆一

    土肥委員 今すぐとは言わなかったという話でございますけれども、例えばテポドン発射がありました。不審船事件がありました。それで、なぜガイドラインを早くやらなきゃいけないのか。研究中の有事法制もそろそろ引っ張り出したらどうだろうか。私は、それは日本有事でもないし、あるいは周辺事態でもない、そういう突発的な事件でありますけれども、それがどうして即座にガイドラインやあるいは有事法制に結びつくのか。防衛庁長官、その辺はどうでしょうか。
  23. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 ガイドライン法案も、別にテポドンとか不審船があらわれたからやるのではなくて、これはそのずっと以前から検討されて、作業に着手されて、去年から国会に提出されているわけでありまして、テポドン不審船に触発されて出てきたものではありません。  有事立法につきましても、ここ二十数年間ずっと政府が一体となって研究してきているわけでありまして、テポドン不審船に触発されてこの研究を始めたわけではないということを、ひとつぜひ委員にも御理解いただきたいと思います。
  24. 土肥隆一

    土肥委員 ですから、最近起きたこの二つの、特に北朝鮮に関する情報を取り上げて、そして極めて大事な自衛隊医科大学卒業式にそれをくっつけてお話しになるというのは、私は、やや国民を誤った方向にリードするのではないかというふうに考えているわけであります。  私が冒頭に申しましたように、その都度起こってくる国内的、国際的事件状況を、すぐさま、何かこれが一大事のごとく考えて、そして日本の国をミスリードすることがないように、特に防衛庁長官でありますとか要職にある方々は影響が非常に強うございますから、もう少し御配慮いただきたいということをあえて申し上げたいと思います。  このようにして、政府は、これまでの二隻の不審船事件についてこれだけの結論をお出しになったわけであります。官房長官にちょっとお聞きしたいのですが、長官の御発言新聞に載っておりまして、いわば余り国際的事件などを軽々に取り上げて突っ走らないようにというふうな意味のことをおっしゃっているようでございますが、長官はどういうふうなことからこういう発言をなさったのでしょうか。御意見をお聞かせください。
  25. 野中広務

    野中国務大臣 今回の事件につきましてでございますが、委員御承知のとおりに、領域の侵犯につきましては、領空侵犯を除きましては、第一義的に警察機関、すなわち警察及び海上保安庁任務でございます。この任務を遂行する上で不可能な事態が生じたり、あるいは著しく困難と認められる事態が生じた場合に、治安出動やあるいは海上警備行動に対処することになっておるわけでございます。  我が国の基本的な法体系は整っておると認識をしておるわけでございまして、今回の事犯にかんがみまして新たに何かを考えるということじゃなしに、むしろ一つ一つを点検して、そして今度の問題の連絡の問題、あるいは出動に至るいろいろな経過を謙虚に反省をしながら、お互いにまた今度あるべき問題に対処できる状況をつくり上げていくということでありまして、法の整備が先にあるわけではないと考えております。
  26. 土肥隆一

    土肥委員 そうしますと、自衛隊法八十二条の海上における警備行動、それを読みかえるといいましょうか補足する意味で、九十三条ではその根拠を警察官職務執行法第七条に読みかえているわけでありまして、これで法の整備は十分だ、こういうふうにお考えだというふうに理解してようございますね。——ありがとうございます。  私は、ちょっと想像をたくましくしますと、もしこれに乗り込んで銃撃戦が行われ、そしてどこからか、北朝鮮かどこかわかりませんが潜水艦があらわれて、あるいは戦闘機が飛来してきて、いわば自衛艦なりあるいは海上保安庁の船を爆撃したというようなことになったときに、一体これはどういうふうに始末するのだろうか、こういうふうに思うわけであります。  ですから、これは非常に微妙な問題でありまして、単にけしからぬという話じゃなくて、まさにこれが有事に発展する可能性だってあるわけでございまして、我々はそういうことはよく注意しておかなきゃならないだろうというふうに私の感想を申し上げます。  それでは、次に移らせていただきます。  何度も申し上げておりますように、戦後五十年、そして日米安保が正式に六〇年で確定したわけでありますけれども、それ以来いろいろな事件がございました。日本は、平和外交あるいは憲法の原則にのっとって、自衛隊を外に出さない、個別的自衛権以外は行使しないということを言ってまいりました。  だけれども、いろいろな事件がありまして、そしてだんだん日本も経済的に豊かになってまいりまして、アメリカの十分の一ぐらいしか経済力のなかった時代から、もうアメリカを追い越すのではないか、追い越してはいませんけれども、もうアメリカに三割近く追いついていると言ったらいいのでしょうか、そういう経済的な成長もございまして、日本がこのまま日米安保体制のもとで平和主義に徹することがだんだん許されなくなってきたことは、私も認めるわけでございます。  特に湾岸戦争のときに、一九九〇年八月でございます。私も初めて国会に出てまいりまして途方に暮れたことを今も思い出しますが、百三十億ドル拠出いたしました。これはもう大変な額でございまして、それを評して、小切手外交であるとか、金は出しても人は出さないとか、血を流さない日本だとかというふうなことが、マスコミあるいは我々の口の端にのってきたわけでございます。  私は、百三十億ドルという巨額、そして、何か為替差益でその後七百億円追加したなんということも含めまして、これは納税者に対してどう説明したらいいんだろうかと思うのであります。税金を百三十億ドル拠出して、だれも褒めてくれない。まあ褒めてもらう必要はないかもしれませんけれども。  いろいろな資料を調べてまいりますと、クウェートが、湾岸戦争が終わりまして、参戦国に対して感謝の意をあらわしましたね。そのときに日本が入っていなかったのです。これでもう日本はがっくりきまして、言ってみれば、それ以来、血を流さない日本、金は出しても人は出さない、こういう状況というものがずっと言われ続けておりまして、一種の精神的なトラウマといいましょうか、安全保障上の心の傷になってしまっているんじゃないかと思うのですね。それがずっと引き続いてまいりまして、まあ一足飛びに飛ぶわけにもいきませんけれども、例えばカンボジアのPKOの派遣もございました。少しずつでありますけれども日本の貢献策を人の面から追求してまいりました。  ちょっと確認したいのですけれども、百三十億ドル出したときに、どこのだれに払って、そして、まあ国会で言えば決算書は見せてもらったのでしょうかね。領収書はどうなんでしょうか。
  27. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 ちょっと突然の御質問でございまして十分な資料を手元に持ち合わせませんけれども、ただいまおっしゃられた百三十億ドルの中の非常に多くの部分が湾岸平和基金への拠出ということになっております。その内容が、物資協力、資金協力ということで大宗を占めるものだと思いますけれども、その点については基金の事業として管理され、その報告を政府が受けて、国会にも報告が行われていると承知しております。
  28. 土肥隆一

    土肥委員 その基金は今どうなっているのですか。今もあるのですか、基金は。
  29. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 基金は今は存続していないと承知しております。
  30. 土肥隆一

    土肥委員 私、こういうことをいろいろせんさくしてももうせんない話だと思いますけれども、しかし、私たち日本人は、戦後あの廃墟の中から立ち上がって、ひたすらやはり平和のありがたみというものを十分認識しながら、体に受けながら一生懸命働いてきて、そして今日の極めて発展した経済社会を築いてまいったわけでございます。にもかかわらず、湾岸戦争のときにお金を出したのが何か悪かったみたいな、こういう言われ方というのは、私はどうしたことかと思うのであります。  政府当局も、どうなんでしょうか、小切手外交なんというのは考えてみたことがおありなんでしょうか。あるいは、金は出しても人は出さない日本というようなことを皆さんもお聞きになったと思うのですが、総理大臣、どうですか。この言葉、小切手外交とか、金は出しても人は出さないというような言葉が言われていたことは御存じですか。
  31. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 当時、そういう言葉が流布されておったことは承知いたしております。
  32. 土肥隆一

    土肥委員 だれが言い始めたんでしょうね、こういうことを。それももう今さら詰めても仕方がないわけでありますが、日米安全保障条約の構造を見ますと、自衛隊は領域内の防衛に当たります、領域外はアメリカがやってください、そのかわり基地を提供いたします、こういうのが日米安保の基本的な構造ですね。  つまり、日本有事になれば自衛隊も戦いますけれども、そのほかのことについては、基地を提供しますからどうぞあなたやってください、アメリカ軍が行くところに人は派遣しませんという話でございまして、そして、その駐留経費などを見ながら、まあ一説によると駐留経費の七割、これは人件費を除いた分だというふうに言われておりますけれども、アメリカ軍に我々はお金を出している。安全保障条約の枠からいえば、人と人の対比になっていないわけですね。人が、アメリカ人がいて、基地という物を提供しているわけです。こういう構造は全く変わっていないわけです。それでいいんですよといって今日まで我々は生きているわけでありまして、今日とて、新ガイドラインができても、周辺事態法案が提案されても、日米安全保障条約の枠組みは変わらないわけですね。  ですから、これからいくと、日本はお金を出す。しかし、そのお金はどういう考え方に基づいて、つまり、日本のあり方、日本の安全保障日本が願う世界平和、そこには平和の理念がなくて、つまり政府の姿勢が根本的に見えなくて、ただお金を出すからそういうふうに言われるのです。つまり、今日まで日本の外交は、日米という軍事同盟の中で、ある意味で我々政治家含めて、あるいは特に政府が、日本はどういう生き方をするんだ、これからも平和に徹して可能な限り戦争に加担しない、そういう理念で生きていくんだと。とするならば、お金しか出せないという場合だってあるわけです。  今度は、周辺事態法案によりますと、領域を超えまして公海まで自衛隊が出ます。いよいよ、今まで人と物という関係だったものが、日本側からいえば人、物と、アメリカに対峙するわけですね。初めて人が出るという状況だろうと私は認識しております。ですから、私が一番困るのは、あるいは国民が困るのは、あるいは戸惑っているのは、この新ガイドライン締結されて周辺事態法案が提案されている、一体今までの生き方とどう違うのですか、何が変わるのですかということです。  総理にお聞きします。  この周辺事態法案で我々の生き方がどう変わるのですか。あるいは変わらないのですか。
  33. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 戦後我が国は一貫して、日本国憲法のもと専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本理念に従い、日米安保条約に基づく日米安保体制を堅持し、節度ある防衛力整備に努めるとともに、我が国を取り巻く国際環境の安定を確保するための外交努力を行うことを安全保障政策の基本といたしてきております。  そこで、周辺事態安全確保法案は、このような安全保障政策の柱の一つである日米安保体制のより効果的な運用を確保し、我が国に対する武力攻撃の発生等を抑止することに資するものでありまして、また、これまでにも御説明いたしておりますとおり、同法案は、我が国の平和と安全の確保に資することを目的としており、我が国の安全に着目したものであることは、しばしば申し上げておるとおりであります。このように、同法案我が国及び極東の平和と安全の維持という日米安保条約の目的の枠内であり、法案日米安保条約の枠を踏み越えるものではないことは言うまでもありません。  したがいまして、この今回のガイドラインによりまして、申し上げましたように、戦後、日本の安全のために大きな役割を果たしてきた日米安保条約をさらに効果的に運用のできるようなことを考えて今回のガイドライン法案を提案しておるわけでありまして、より一層、日本の安全に対してこれを確保できるものと確信をいたしておるところでございます。
  34. 土肥隆一

    土肥委員 ですから、今まで国民考えてきた生き方、日本のあり方、日米安全保障条約のもとで、平和憲法のもとで営んできた営みは全く変わらない、そのように理解していいんですか。総理、どうぞ。
  35. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 日本国憲法のもとにおきまして日米安保条約も締結をし、これを実行いたしておるところでございますので、そういった意味合いにおきましては、何ら変わるものではございません。
  36. 土肥隆一

    土肥委員 今度は人が出るんです。自衛隊が海外に出ます、公海に出ますが、それはこれまでの方針とは随分違いますね。その辺はどう御説明なさるんですか。
  37. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 確かに、三つの活動で自衛隊が出ていくわけですが、今総理から御答弁ありましたように、日本の憲法のもとあるいは安保条約のもとでは、その枠内での行動をするだけの話でありまして、そういう意味では従前と全く変わらないと思います。
  38. 土肥隆一

    土肥委員 変わるんじゃないですかね。そこが国民の悩ましいところですよ。  やはり、政府は、変わらないとおっしゃるならば、変わらない、安心しなさい、日本は戦争に巻き込まれることはありませんよということを説得しなきゃいけないんじゃないですか。  法案を通せばいいというものではなくて、仮に、国民の三割、四割の人が反対の気持ちを持ちながらこの周辺事態法案なりガイドラインが認知されると、やはりこれは国民にとって余り喜ばしいことじゃないと思うんですね。やはり大多数の人が、ああ、これはいいことだというふうに言わなきゃいけない法案だと思うんです。  本当に変わらないんですか。国民の心配はこれで解消されるんですか。
  39. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 自衛隊が海外へ出ていくという意味では、既にPKO法もありまして、その活動もありますし、あるいはこの間、災害のためにホンジュラスへ行くというようなことで、自衛隊が海外に派遣されるということはたくさん出てくるわけで、これからも多くなると思います。  この事態は、日本の平和と安全に重大な影響を与える事態でありまして、日本の周辺においてそういう事態があって、日本の平和と安全に重大な影響を与える場合に、自衛隊が、日米安保条約や憲法の枠内において、いわゆる国際ルール等もきちっと守りながらそういう日本周辺事態に対処をして汗をかいておるアメリカに水や医療品や食料を送るというようなことは、私は当然なすべきことだと思っております。
  40. 土肥隆一

    土肥委員 災害救援やPKOの話じゃないんです。周辺事態なんです。周辺事態自衛隊を出すというんです。これはもう全く性質が違うわけです。ですから、これはよく吟味しなきゃいけないと思うんであります。  それでは、ちょっと視点を変えて申し上げますが、周辺事態というのは、マキシマムで、一番行き着いたところでは戦争状態を言うと思うんですが、いかがでしょうか。
  41. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 有事にならないようにこの法律を提出しておるわけでございます。
  42. 土肥隆一

    土肥委員 有事にならないようになんという、口先で言ってもしようがない。有事になるかもしれない。それはもう大前提ですよ、この法案のあるいはガイドラインの。  したがって、周辺事態というのは戦争状態もあり得るということですね。これは認めないんですか、防衛庁長官は。
  43. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 周辺事態のこのガイドライン法案は、我が国に対する武力行使を未然に防ぐために出しておるわけでありまして、しかし、万が一にもこの周辺事態を超えて外国が我が国侵犯してきたときは、ガイドライン法案じゃなくて自衛隊法によって防衛出動等により対処する、こういう順序になると思います。
  44. 土肥隆一

    土肥委員 私は何も本土が侵略された事態だけではないというふうに思うんです。  アメリカがもう既に前線に出て戦争状態にある、これは周辺事態一つのフェーズだと思うんです、段階だと思いますね。そこへ、一線を画してもいいですよ、あるいは数時間か二、三日、安全な時間があって、その間だけ自衛隊が出て、さまざまな捜索活動や輸送活動をやる。だけれども、向こうでは戦争をやっているわけです。そういう事態は当然周辺事態に入っているわけでありまして、その周辺事態を、戦争を未然に防ぐ、戦争にはならないんだというような保証はどこにもないんじゃないですか。  ですから、周辺事態というのは、最悪、戦争を想定した事態だ、こういうふうに理解するんですが、法制局長官、どうですか、その理解は。
  45. 高村正彦

    高村国務大臣 委員が御指摘になるように、我が国で戦争状態が起こった場合でなくて、我が国周辺で武力紛争が起こった場合というのは確かにあり得るわけであります。それから、我が国が侵略された場合は先ほど防衛庁長官がおっしゃったとおりでございますが、周辺事態とは、我が国周辺の地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であり、ある事態がこれに該当するか否かは、その事態の規模、態様等を総合的に勘案して判断するわけであります。  以上の前提で申し上げれば、周辺事態の典型的な例として、我が国周辺の地域において武力紛争が発生している場合であって、我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合が、まさに委員が御指摘になったように考えられるわけでございます。  そして、周辺事態安全確保法案は、日米安保条約に基づく日米安保体制のより効果的な運用を確保し、我が国に対する武力攻撃の発生等を抑止することに資するものであり、このような周辺事態の拡大の抑制、収拾のために国連憲章及び日米安保条約に従い行動する米軍に対し、我が国が後方地域支援を行うことは、私ども考えからいえばむしろ当然でありまして、国際法上も何ら問題がないわけであります。  さらに申し上げれば、法案で想定される後方地域支援は、それ自体、武力の行使に該当せず、後方地域において行われる行為でございます。したがって、米軍の武力行使との一体化の問題が生ずることは想定されず、憲法上も問題がないわけであります。  周辺事態が起こっている場合に、防衛庁長官、何度も繰り返して答弁されているように、我が国有事にならないように一生懸命やるわけで、頑張っても絶対ならないという保証があるかどうかは別にして、その可能性をできるだけ少なくするようにやろうという法案でございます。
  46. 土肥隆一

    土肥委員 だから可能性があるんですよ。だから、この法案はそういう可能性も含んで立てられている法案だということを、国民は、その理屈、国際法上どうであるとか、国連憲章がどうであるかよりも、直感的にそれを感じるんです。  ですから、我々政治家は、そういう事態があるよと言ったらいいんですよ。戦争に巻き込まれることもある、だけれども、それを極力防ぐんですと。そういうことをはっきり言わないから、国民は、周辺事態は戦争行為じゃないんだ、武力行使の範囲に入らないんだと言っている間に、素人は、そうじゃない、やはり巻き込まれると考えるのですよ。ですから、その辺も丁寧に、そして本当のことを言って、それは日本だって巻き込まれることはありますよ、それを丁寧に説明すべきだと私は思うのでございます。  さて、次に進ませていただきます。  今回のガイドラインで私が一番不思議に思うのは、これは軍事同盟の文書にもかかわらず、平素からという言葉が出てくるのですね。これは政治家がよく使う言葉ですね。あいさつするときに、平素からお世話になっておりますとか言って、よく使う言葉ですね。ある説によると、これは平時からと訳すべきだというふうに言います。そういう考え方、あるいは、英文のガイドラインから見れば、そう訳してもいい。  この平素という言葉と、それから二国間というか、英語で言うとバイラテラルという言葉が盛んに出てくるのですね。私は、きょうはもう時間はありませんので、平素からという部分で、皆さんに、大臣諸氏にお聞きしたいと思うのであります。  このガイドラインの中身は、まさに平素からというよりは平時から、日米が十分に計画を練って、そして協力一致して、あらゆる事態を想定して準備をします。そして、これはもう、今までのような、あるいは旧ガイドラインにも出てこないようないろいろな言葉も出てまいりますし、考え方も出てくるわけでありますけれども、要するに、私の感想としては、もう周辺事態ですねと総理大臣が認定したとき、それはもうずっと前から、この米軍と日本の、これは制服だけじゃないと思いますが、メカニズムによって違うと思いますけれども、その綿密な作戦計画があって、そして、有事となったときに、はいと総理大臣が認めれば、これは周辺事態になるわけです。そういうガイドラインのつくりになっているということを、私は非常に強く思うのです。  つまり、もう周辺事態発生の前からあらゆるシミュレーションをかけまして、特に制服組の綿密な日米の共同研究が行われて、そして、周辺事態でありますと総理大臣が認定したときには、この次にやるべき例えば基本計画というようなものは、国会がどうこうするとか、むしろ内閣もどうこうするとか、あるいは総理大臣や防衛庁長官が、あるいは外務大臣がこれは周辺事態ですねと認定する前に、もう既にでき上がっているのじゃないか。この新しいガイドラインを読みますと、水面下の数限りない努力というもの、積み上げというものが見てとれるわけです。  まず、日米両国の平素から行う協力というのはそういうふうになっていると思うのですが、防衛庁長官、どうでしょうか。
  47. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 相互協力計画についての検討は、日米両国政府周辺事態に円滑かつ効果的に対応し得るよう、平素から行うものであります。周辺事態に係る日米協力の考え方やあるいは協力の対象は、ガイドラインにも明記されているところであります。  この計画検討作業は、その結果が日米おのおのの計画に適切に反映されることが期待されるという前提のもとで行われているものであります。そして、その成果は、日米おのおのの所要の検討や準備等に反映されることになります。また、日米は、実際の状況に照らしておのおのの計画を調整することとされており、周辺事態に際し我が国が実施する対応措置の内容は、基本計画に盛り込まれることとなっております。この際には、計画検討作業の結果等を踏まえつつ、国益確保の観点から我が国が主体的に判断をするわけであります。  計画検討作業等においては、ガイドラインにもあるとおり、日米安全保障協議委員会、これは、外務大臣防衛庁長官、それからアメリカの国防長官、国務長官の2プラス2というメンバーで行われる委員会であるが、これが方針を提示し、作業の進捗を確認し、必要に応じて指示を発出する責任を有しております。その進捗及び結果は、節目節目に日米安全保障協議委員会に報告されるということになっております。  ですから、先ほど委員の御指摘で、総理大臣も防衛長官も知らない間に何かもうできていて進められるというお話でありましたが、防衛庁における作業は防衛長官の指揮監督のもとに実施されておりますので、先生が御指摘されるようにシビリアンコントロールに欠けるところはない、こう思っております。
  48. 土肥隆一

    土肥委員 防衛庁長官の役割を少し低く見てごめんなさい、失礼いたしました。  だけれども、日米両国政府は、平素からの協力、情報交換、政策協議、安全保障協力、対話・交流、軍備管理、PKO、大規模災害、日米共同の取り組みとしては、共同作戦計画、周辺事態相互協力計画、包括的メカニズム、調整メカニズム、そして共同演習・訓練の強化、それが日常的に平素から行われているわけです。  そして、周辺事態が予想される場合には、情報交換及び政策協議の強化、日米間の調整メカニズムの運用を早期に開始、日米共同調整所の活用をする、そして、両国が合意によって選択された準備段階に従い、必要な準備をする、こうなっております。その後は、情勢の変化に応じて、情報収集や警戒監視、即応態勢を強化して、そしていよいよ、どおんと周辺事態だという発表をなさるわけです。  この準備段階というのは、軍隊用語で言えばフェーズですね。要するに、いよいよやるよというところにどんどん、ずっと上げていくわけですね。それで、もう準備できたね、英語で言うとレディー、大丈夫ねというところまでいくわけですね。そこを防衛庁長官がのぞいて御指導なさるのだと思いますけれども、私が言いたいのは、米国がみずからの主体的判断で、いわばある種の武力行使に入る。ある場合には、戦争ですから開戦をする。それとほぼ一致して日本周辺事態も同時並行的に行われていて、そしてどおんと発表されたときには、ほぼアメリカの動きと日本の動きが一体化していくのじゃないか。そういうふうに読むのですが、御答弁をお願いいたします。
  49. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先ほど私は、2プラス2、つまり日米安全保障協議委員会での仕組みをお話ししましたが、その前には防衛協力小委員会というものが行われます。その前には共同計画検討委員会というのが行われる仕組みになっているわけですが、詳細につきましては運用局長の方から答弁させます。
  50. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 ただいま大臣が申し上げたようなスキームの中でこの作業を行っております。  そして、先生御指摘の共通の準備という点についても、まさにガイドラインに基づく日米の協力を実効性あらしめるために、平素からいろいろ、お互いに詰めておくところは詰めておくという趣旨でやっておるものでございます。  それが、先生言われたような、アメリカが急に行動を起こすというようなことは、平素からのまさに日米間の情報交換や政策協議の中で認識をすり合わせながら、まず事態の生起あるいは悪化を防ぐための共通の努力という、外交面の努力も中心になりましょうし、そういうことを重ねながら、それでも、いろいろ協力をやっていく際に、これは本当に、具体的な部分というのはかなりスタディーが必要でございますので、そういうことは大臣級、あるいは必要により総理に御報告しながら、御指示をいただきながら双方でやっていくということになるわけでございます。
  51. 土肥隆一

    土肥委員 最後にいたしますが、要するに、我々は基本計画を事前承認にしたらどうかということを言っていたんですけれども、どうももうそのときにはでき上がって、きれいにでき上がったものでございまして、それについてもうとやかく言う余地もない。したがいまして、ここでいわゆるシビリアンコントロールをかけるということはちょっと難しいなという感じを持っております。  したがって、私が最も大事にするのは、やはり平素から行う協力の中にどれだけ政治が、あるいはシビリアンがコントロールできるかということが最も大事じゃないかということを申し上げまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  52. 山崎拓

    山崎委員長 これにて土肥君の質疑は終了いたしました。  次に、浅野勝人君。
  53. 浅野勝人

    ○浅野委員 新しい日米防衛協力のあり方につきましては、橋本内閣の久間防衛庁長官のもとで政務次官をさせていただいていた折に、アメリカ側との具体的な折衝に入り、その後、安全保障委員会で一年半ほどいわば事前審議の役割を果たしてまいりましたので、思い入れの深い法案であります。こうして特別委員会で質疑の機会を与えられ、貴重な時間に恵まれたことをありがたく思っております。  最初に、総理の御所見を伺います。  今求められている大切な政治理念は、奪い合った二十世紀から分かち合う二十一世紀へ転換する意味合いを内外の政策に反映させることだと思っておりますが、いかがでございましょうか。
  54. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 浅野委員のお考えを十分詳しく承っておりませんが、基本的にはそういう方向で次の世紀を迎えたいというふうに考えております。
  55. 浅野勝人

    ○浅野委員 今回の立法は、三年前の日米安保共同宣言の中で、一九七八年の古いガイドラインの見直しを開始することで橋本、クリントン両首脳が一致し、日本周辺地域の事態に協力して対処することを確認したことがきっかけとなりました。同時に、この共同宣言は、冷戦後の安全保障のあり方について、防衛計画の大綱に従い、自衛隊の適切な防衛能力と日米安保体制との組み合わせが日本防衛の最も有効な枠組みと指摘をしております。  したがって、共同宣言の五カ月前に策定された新しい防衛計画の大綱に注目をしてみます。そこには、「我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合」という表現を初めて使って、周辺事態に対処することが明記されております。  私は、周辺事態についての問題意識の源をここに求めたい。理由は、自分の国を守るためには周辺事態の安全が不可欠とした上で、日米安保体制の円滑な運用を目指すだけでなく、自衛隊がみずから周辺地域で応分の責任を果たす決意を示したものと受け取ることができるからであります。  昭和五十一年十月に決定した防衛計画の大綱を廃止して、二十年ぶりに、時代に即した今のこの新しい大綱を平成七年十一月二十八日の安保会議に続いて閣議決定したのは村山内閣です。  総理、どんな感想をお持ちでございますか。
  56. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 平成七年の十一月二十八日に安全保障会議及び閣議で決定された防衛大綱におきまして、今後の防衛力の役割の一つであります「大規模災害等各種の事態への対応」の中で、今浅野委員御指摘のとおり、我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重大な影響を与えるような事態が発生した場合には、憲法及び関係法令に従い、必要に応じ国際連合の活動を適切に支持しつつ、日米安全保障体制の円滑かつ効果的な運用を図ること等により適切に対応することとされております。  今般御審議をお願いしておる周辺事態安全確保法案は、防衛大綱において防衛力の役割としてのこのような内容が記述されたことをも踏まえ、我が国の平和と安全の確保に資することを目的とするものであり、日米安保条約に基づく日米安保体制のより効果的な運用を確保し、我が国に対する武力攻撃の発生等を抑止することに資するものと策定されたものでございます。  政府としては、防衛力整備、維持及び運用に当たり、防衛大綱に示された役割を適切に果たすよう努めてきたところであり、かかる考え方に何ら変更はございませんし、この防衛大綱決定をされました当時の村山内閣でありましたことにどのような感想を持つかということでありますが、政府の基本的な今日までの日本の安全を確保するための努力につきましては、こうした考え方に基づいて、この内閣といたしましてもその方針に従って努力をしておるところでございます。
  57. 浅野勝人

    ○浅野委員 結構でございます。  後方地域支援は、おおむね在日米軍基地を中心に日本の領域の中で米軍に協力するのが柱になるものと予想されますが、戦闘が行われていない公海とその上空でも輸送だけならできることになっています。特に、自衛隊の自主的な活動としては、公海での船舶検査活動をするほか、捜索救助では、公海だけでなく、相手の国の了解を得てその国の領域まで行って活動できることにもなっております。つまり、日米安保体制を一層有効に機能させることと自衛隊独自の活動とを組み合わせた両輪でこの周辺事態法案は構成されていると理解をしております。  そういう理念、概念の中から構成されているこの法案の中に、日米安保条約の目的の枠内という表現を加えるべきだという指摘があるんですけれども、そうすると、自衛隊が自主的に活動する分野との整合性が、長官、失われることになりませんか。
  58. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 周辺事態に際しまして周辺事態安全確保法案に基づき自衛隊が実施する後方地域捜索救助活動あるいは船舶検査活動は、後方支援のように日米安保条約の目的の達成に寄与する活動をしている米軍の活動を前提としたものではないのでございますが、これらの活動も、周辺事態に対応し、我が国の平和と安全の確保のために実施されるものであり、我が国及び極東の平和と安全の確保という日米安保条約の目的の枠内にあると言うことができると思います。
  59. 浅野勝人

    ○浅野委員 その両輪というのは原則として非常に重要なことだと思っておりますので、きちんと堅持していくことがこの法案の骨子にならなきゃならぬと考えて、受け取っております。  周辺事態は、日本の平和と安全に重要な影響があるかどうか、事態の中身に着目したものだというこの基本概念は理解していますが、それでもなお、周辺地域が無限に広がることを懸念して、日米安保条約の目的の枠内を歯どめにしたいと考えているとしたら、日米安保条約とその関連取り決めは一切変更しないというこの立法の基本方針を改めて明確にすれば、地理的にもおのずと制限があることが、外務大臣、わかるんじゃないんですか。
  60. 高村正彦

    高村国務大臣 日米防衛協力のための指針に明記されておりますとおり、指針及びそのもとで行われる取り組みにおきましては、日米安保条約及びその関連取り決めに基づく権利及び義務並びに日米同盟関係の基本的な枠組みは変更されないわけでございます。したがって、指針の実効性を確保する本法案によって、日米安保条約及びその関連取り決めが一切変更されないということは、今委員が御指摘になったとおりであります。  周辺事態安全確保法案に言う周辺事態とは、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であり、ある事態周辺事態に該当するか否かは、その事態の規模、態様を総合的に勘案して判断をいたします。したがって、その生起する地域をあらかじめ地理的に特定することはできません。  他方、周辺事態我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態である以上、現実の問題として、このような事態が生起する地域にはおのずから限界があるわけでございます。この点は、これまでも繰り返し説明し、明らかにしているとおりでございますが、現在国会に提出している法案等につき、十分御審議いただくことを強く期待しております。
  61. 浅野勝人

    ○浅野委員 事態の中身に着目して、その内容におのずと制限があるのは当然ですけれども、あわせて、やはり地域ということは、地球の裏側まで行くわけではない、ペルシャ湾、インド洋は入る入らないということ自体がもう地理的な概念でして、地理的にもおのずと制限のあるものだということを改めて指摘をし、今御答弁をいただいたというふうに私は理解をさせていただいておきます。  厄介なのは、周辺地域がどこからどこまでかということではなくて、台湾地域をどう扱うかということだとずっと私は思っております。  あれから二十年近くなりますけれども、日中平和友好条約の折、覇権条項を入れる入れないで大もめにもめたことがあります。  中ソの対立が際立っていた時代でしたから、覇権というのは、ソビエトの強権大国主義を指すものと当時は解釈をされておりました。中国側は、当然条約の中心に据えて、日中が共同してソ連の覇権主義に立ち向かう姿勢を明らかにすべきだと主張をしますし、ソ連は、日中条約に覇権を入れるのは、日本も中国と同じようにソ連を敵視するもので、許容できない、許すことはできないと言い張って、中ソの谷間で困り果てました。中国とソ連の双方に独特な人脈を持っていた当時の参議院議長の河野謙三先生が、あちらを立てればこちらが立たず、こちらを立てればあちらが立たず、両方立てると身が立たずと嘆いたのを覚えております。  その折、福田内閣の園田外務大臣でしたが、クレムリンへ出向いてコスイギン首相と談判して、決してソビエトを敵視するものではない、日本と中国が仲よくすることはアジアの平和と安定にはかり知れない利益をもたらし、ソビエトにも大きなプラスになると懸命に説得に努めました。先方は納得せず、何一つ合意できずに、プレスリリースも出せないまま帰ってまいりました。  ソノチョク後に、ソノチョク後に——ちょっとわかってくれましたか。園直さんの話ですからその直後と言ったのですが、しゃれが長官に通じて安心しましたが、その直後に覇権条項を条約の中に入れましたけれども、何事も起きずに今日に至っております。私の霞クラブ時代の思い出の一つであります。  与那国島から百キロと離れていない台湾は、日本の近しいお隣さんです。しかも、同盟国のアメリカと深い関係にあるお隣さんのことですから、その動向に私たちが関心を持つのは当然のことであります。  しかし一方では、日中正常化で、台湾は中国の不可分の領土と理解し、尊重し、その上で日中条約で子々孫々の友好を誓い合ったわけですから、中台関係は専ら中国の国内問題で、何が起きても当事者間で平和裏に解決をされるものと期待するしかありません。ただ、そのあたりで我が国の平和と安全に重大なかかわりが生ずるようなことが起きた場合には、私たちは無関心ではいられないと申し上げているわけであります。  この法案の目的は、アジア太平洋地域、なかんずく北東アジアの平和と安定を確保することがすべてで、半永久的に発動されないのが最も望ましいと思っている日本政府のスタンスをもっと中国側に語りかける必要がある。その努力が足りない。外務大臣、いかがですか。
  62. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態安全確保法案につきましては、これまでも累次の機会に、首脳レベル、大臣レベル及び外務事務当局から中国に対し、それぞれ説明を繰り返しているところでございます。  その説明の内容は、日米安保体制は全く防御的な性格のものであり、特定の脅威を前提としたり、特定の国に向けられたものでないこと、周辺事態は、その生起する地域をあらかじめ地理的に特定できないという意味で地理的概念ではなく、事態の性質に着目した概念であること、我が国としては、日中共同声明において表明された台湾問題に関する基本的立場を堅持した上で、台湾をめぐる問題が当事者間の話し合いにより平和的に解決されることを希望していること、こういったことを何度も何度も繰り返し繰り返し説明しているわけであります。  二十八日には、ASEM外相会談の際、ベルリンで行われた日中外相会談の場におきまして、今述べた三点、もちろん説明したわけでありますが、私からトウカセン外交部長に対して、専守防衛、非核三原則等、日本が戦後とってきた政策には何ら変わりはなく、日本としては平和的な発展の道を今後も歩んでいく決意であり、全く懸念には及ばない旨述べたわけであります。我が国としても、議員御指摘の点も踏まえつつ、必要に応じ、さらに説明を行っていく用意があるわけであります。
  63. 浅野勝人

    ○浅野委員 そこにおいでのお三方は、我が国防衛、外交のトップであることは言うまでもございません。総理はゴールド・ファイブ・スターズで、昔流で言うと大元帥でありますから、どうぞひとつ外交、防衛の最高責任者のお三方を先頭にあらゆるレベルで、この法案が成立した後も引き続き、聞き飽きた、もういいと言ってもなお説明をする、そんな姿勢が特に中国に対しては必要だと痛感をさせていただいております。  能登半島の沖合から脱兎のごとくロシアとの国境に近い朝鮮民主主義人民共和国の清津に逃げ込んだ北朝鮮工作船をめぐって百家争鳴であります。中でも、海上自衛隊創設以来初めて海上警備行動が発令され、護衛艦出動して、なお逃げられてしまったことについて議論が集まっています。  現行の自衛隊法は、長官たびたびおっしゃっておられるとおり、警職法を準用しておりますから、武器を使用して人に危害を与えることが許されるのは、凶悪犯が逃亡した場合も対象になっていますけれども、実態的には、正当防衛緊急避難に限られているわけですね。そうしますと、相手が撃ってこない限り撃ち返せない。現に、防衛庁長官工作船を捕獲せよと命令していながら、同時に、現行法は、相手の船を大破して乗組員に危害を加えてはならないと相矛盾する内容となっております。  相手は、日本の法令を熟知して、よく勉強して研究しているに違いありませんから、ゆっくりと安心して逃げておいでになります。手足を縛っておいて、うちの中に入ってきた泥棒を捕まえよと言っているのに等しいわけですから、長官の心中お察しいたしますが、されど、法は法です。厳格に現行法を守って、結果として逃げられてしまった今回の政府の判断を、私はあえて評価したいと存じます。去年十二月、対馬沖の韓国の領海で韓国海軍に撃沈された北朝鮮の半潜水艇のように、今回その気になれば、護衛艦の五インチ砲でもP3Cオライオンからの爆弾の投下でも、数分で決着をつけられることがわかっている者たちにとってはなおさらであります。したがって、問題は、領域警備の規定さえ決めてこなかった立法府の側にもあると私は思っております。  周辺事態は、瞬時にして日本有事に変質する可能性がありますから、表裏一体の関係にはありますが、本来、日本有事の法制を整備してから周辺有事に備えなければならないのに、手順が逆さまになっているからこんなことが起きる。幸い、この手つかずになっている有事法制のあり方について早急に取り組むべきだという内外の環境が整ってきたように感じますが、総理の御判断はいかがでございますか。
  64. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 防衛出動が命ぜられるという事態における自衛隊行動にかかわる有事法制の問題につきましては、その研究は当然必要なことであり、政府としてこれまで研究を続けてきたところであります。  現実に法制化を図ることは高度な政治判断にかかわる問題であり、今直ちに法制化することを考えているわけではありませんが、政府といたしましても、有事法制は重要な問題と認識いたしておりまして、今国会における御審議国民の世論の動向等を踏まえて適切に対処いたしてまいりたいと思っております。  今般の事犯が起こる以前から、今国会でも私は衆参両院の予算委員会等でも申し上げておりますが、この有事立法のうち、自衛隊法第七十六条に関する、いわゆる自衛隊行動に関する法制につきましての研究は、既に第一、第二分類につきましてはかなり進んでおられる、こう聞いて承知をいたしております。  したがいまして、こうした問題についての法整備につきましては、今御答弁申し上げましたように、いろいろ政治判断もあろうかと思いますが、こうした取りまとめをいたしてまいりました準備が十分整ってまいりますれば、これは国民世論の動向も配慮しなければなりませんが、この問題につきましても、真剣に考えていくことは必要じゃないかと思っております。
  65. 浅野勝人

    ○浅野委員 おっしゃるとおり、防衛出動が下令された場合を扱っている第一分類と第二分類は、総理が政治判断を下せばいつでも法制化できる状況にあるんじゃないですか。あわせて、今回の経験を踏まえて、各省庁にまたがる第三分類のいわゆるグレーゾーンを詰める指示を出す時期に参ってきているな、私はそう存じます。その意味合いを込めて今総理から御答弁を賜ったと受け取らせていただきます。  今回の立法作業と一連の国会審議で欠落している重要な点がございます。  周辺事態が認定され、発令した場合の主役は、陸海空の自衛隊員です。日本の領域だけでなく、戦闘が行われていない水域や空域とはいえ、公海まで足を伸ばしますし、捜索救助では紛争国の領域まで出動することがないとは限らないわけですね。見方を変えると、危険が全くないとは言い切れないとも言えるわけです。事態の変化によっては命にかかわるようなことがあるかもしれません。  この法律に従って任務につく自衛隊員の待遇は、したがって、十分考慮されるべきだと存じます。どのように厚く待遇するおつもりなのか。不幸にして死傷するに至ったような場合の補償はどのようにお考えになっているのか。その中身はどこに書いてあるんですか。政府の責任は極めて重い。はっきりお答え願いたい。
  66. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今委員から御指摘なされた点は、私たちも大変大事なことだと思っております。  自衛官が周辺事態に対応して我が国が実施する措置に係る業務に従事中、戦闘に巻き込まれる事態は想定しがたいところでございますけれども、一般的に申し上げますならば、自衛官が公務上の災害を受けた場合には、防衛庁の職員の給与等に関する法律第二十七条の規定により国家公務員災害補償法が準用され、遺族補償、療養補償、障害補償等が行われることとなります。  また、この公務災害補償とは別に、賞じゆつ金に関する訓令というのがございまして、これに基づきまして、隊員が殉職または障害の状態になった場合には、隊員の功労度及び事件、事故の危険度等を勘案いたしまして、賞じゅつ金を授与する制度がございます。自衛官が殉職等をした場合には、この制度により、賞じゅつ金の授与が検討されることに当然なります。さらに、国際平和協力業務に従事して殉職などした場合には、内閣総理大臣から特別ほう賞金が授与されることにかんがみ、特別ほう賞の授与についても検討してまいりたいと思っております。  自衛官が、その生命または身体に対する高度な危険が予測される状況において、人または財産の保護の職務に従事し、そのため、障害の状態または死亡に至った場合には、通常の補償の五割増し程度の特別公務災害補償が行われることとなります。
  67. 浅野勝人

    ○浅野委員 承りましたが、今のお話ですべて十分かどうか、私どももしっかりとさらに研究をさせていただきます。  人は石垣、人は城でございますから、どうかひとつお忘れなく、肝に銘じていただきたいと存じます。  少しく話題を変えます。  千歳のF15が日本一の訓練環境と言われるアラスカのアンカレジ公海のエレメンドルフ空軍基地のコープサンダーに参加すると仮定します。北海道からアリューシャン列島沿いに単独で飛ぶとして、防衛局長、ゴー・ノーゴー・ポイントはどこですか。
  68. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 今先生からお話のございました、千歳からアラスカにある米空軍のエレメンドルフ基地まで、これ自体は千歳から二千九百マイルございます。それから、F15の航続能力でございますけれども、これは先生も御存じのように、いろいろな条件によって変わってまいりますけれども、例えば、武器等を搭載しない、あるいは非常に効率的な条件で飛ぶというようなことを前提にいたしますと、F15の航続距離は約二千五百マイルでございます。  したがいまして、今お話のございましたゴー・ノーゴー・ポイントということになりますと、その中間点ということになりまして、千二百五十マイルの地点までにその判断をする必要があるということになろうかと思います。
  69. 浅野勝人

    ○浅野委員 私が知りたいのは、F15がエレメンドルフに行くには、途中、セミア島のエリクソン米空軍基地で給油を受ける以外に方法はないのですよ。ゴー・ノーゴー・ポイントは、この給油地点のエリクソン基地よりその千二百マイルというのは北海道側にありますか、それともアラスカ寄りですか。結論だけおっしゃってください。
  70. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 エリクソン基地は千歳から千五百八十五マイルでございますので、したがいまして、ゴー・ノーゴー・ポイント、その判断をするのはその手前でございます。
  71. 浅野勝人

    ○浅野委員 北海道寄りの二百五十マイルぐらいの計算になるのですね。  折り返し点がエリクソン基地の手前では、天候の急変ということを考慮すると、単独では危険過ぎる、無理だということになるかと思います。安全に行くには、途中、空中給油機から給油を受けるしかない。このことは、空中給油機を導入してF15に給油をすれば、空中で待機するCAP時間を大幅に延ばすことができますから、空中警戒管制機、AWACSからの情報を得て、有効な防空作戦、国土の守りが容易になることを教えています。  今の中期防衛力整備計画の中に、空中給油機導入の可否について結論を出すと明記をしております。長いこと検討してきた課題で、必要な事柄でもありますし、そろそろ決めないと、予算の手当てもありますから、間に合わなくなります。  長官、現行中期防の最終年度に当たる来年度予算の中に盛り込むお考えはございませんか。
  72. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 平成十二年度の予算要求の概算要求を間もなくつくらなければいけない時期に来ると思いますけれども、そのころまでには何とか結論を得て、適切な対処をしたい、こう思っております。
  73. 浅野勝人

    ○浅野委員 事ここに至って今の答弁では、私は物足りない。結論を出すということは、お察しはいたしますけれども、はっきり言ってください。
  74. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員御指摘のとおり、現中期防におきましては、「空中給油機の性能、運用構想等空中給油機能に関する検討を行い、結論を得、対処する。」ということになっておりますので、来年度の予算要求がこの夏から始まりますので、そのころまでに何とか結論を得たい、こう申し上げているわけでございます。
  75. 浅野勝人

    ○浅野委員 十分理解をさせていただきました。結論の方向は相通ずるものがあると理解をさせていただきます。  時間が参りましたので、最後の質問になるかと思いますけれども、指摘だけさせていただきますが、半世紀ぶりに日米安保体制を見直し、アジア太平洋地域の平和と安定、なかんずく北東アジアの新しい状況に対応するという意味で、誤解をされるといかぬけれども、そういう意味合いで、北東アジアの平和と安定、それを最優先とする基本的な日米防衛協力のあり方という意味で、日米新安保とも言える立法措置ですから、その運用に国会が重大な関心を持つのは当然であり、その行方に責任を共有するのも当然であります。まさにそれがシビリアンコントロールの大原則でもあります。  防衛出動治安出動を下令する場合は、国会承認を必要としております。周辺事態の認定についても、国会に報告するだけでなく、承認を条件とする必要を私も感じております。ただ、この一連の法案の大きなねらいの一つは、周辺事態を発生させないための抑止効果でありますから、あらかじめ国会ががんじがらめにしてしまっては抑止効果が半減してしまいます。周辺事態の認定は政府が決定し、実行に移した後、できるだけ早く国会承認を求めることとして、基本計画については速やかに国会に報告する、二段ロケット方式をとってはいかがかと思っております。  これは、今後、当委員会、山崎委員長を中心に理事の先生方がお骨を折られるテーマでございますので、政府からの答弁は必要ありませんけれども、十分各党の意見を調整しながら、政府におかれましても柔軟に対応していただきたいと存じます。  以上で終わります。ありがとうございました。
  76. 山崎拓

    山崎委員長 これにて浅野君の質疑は終了いたしました。  次に、米田建三君。
  77. 米田建三

    ○米田委員 まず冒頭、これは総理にお答えをいただきたいわけでありますが、政治の最大の責務は、国家の安全を図り、国民の生命財産を守ることにあるというふうに思います。ところが、安全保障政策につきましては、これまで我が国におきましては、さまざまなタブーに縛られまして、必要な議論が行われてこなかったというふうに私は認識をしているわけでありまして、今こそタブーなき議論を行わなければ、我々政治家はその使命を果たせないというふうに考えております。  そこで、今回の周辺事態安全確保法案でありますが、あくまでも我が国の平和及び安全の確保を目的とし、かつまた実施につきましては、我が国の主体的判断及び意思決定が前提となっているわけであります。それにもかかわらず、一方的に、米国の戦争に巻き込まれるかのごとき法案だというふうな、事実をねじ曲げた、私は大変国益に反する悪質なキャンペーンだと思いますが、そういうキャンペーンが展開されておるわけであります。  私の事務所にも随分いろいろな方からはがきや手紙がどっと来ますので、何かと思って見ますと、なぜかみんな同じ文章で、アメリカの戦争に巻き込まれるような法案を廃案にしてください。同じ文章だ、全く判で押したように。つまり、これは組織的なキャンペーンなんですね。私は、これは極めて悪質だと思います。  そこで、総理にまずは冒頭、重ねて今回の法案の本質について国民に対して言明をしていただきたい、明言をしていただきたいというふうに思います。
  78. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 御指摘のとおり、周辺事態安全確保法案は、我が国の平和と安全の確保を目的とするものであり、この事態周辺事態に該当するか否か、また、これに対して我が国が後方地域支援等の対米協力を行うか否かにつきましては、我が国の国益確保のための見地から我が国が主体的に判断を行うこととなっております。したがいまして、米国の戦争に我が国が巻き込まれるものであるとの主張は全く当たらないものでありまして、委員御指摘のように、政府といたしましても、このことにつきましては、さらに一層国民の理解を求める努力をいたしてまいりたいと思います。  委員御指摘のように、こうした問題につきましてタブーなき論議がされてまいりましたことにつきましては、私も長きにわたって国会に籍を置かせていただきまして、振り返って三十年、四十年前のことを考えますと、その点では国民の理解も大変深まっておると思います。しかし、御指摘のように、いろいろな意見が錯綜しておりますので、政府としてのきちんとした対応につきましては、今後さらに努力をいたしていきたいと思っております。
  79. 米田建三

    ○米田委員 ありがとうございました。  さて、周辺事態安全確保法案の後方地域支援でありますが、私はどうしても腑に落ちない点が一つあるわけであります。それは、第十一条に武器使用の規定があるわけでございますが、これは後方地域捜索救助活動及び船舶検査活動について限定されているわけでありまして、後方地域支援活動についてはないんですね。私は、これは重大な欠陥ではないかというふうに考えているわけであります。  例えば、我が国国内において、対米支援の物資輸送中の自衛隊車両等が、反米、反日の武装テロ勢力等によって襲撃される事態も私は否定できないと思うんですね。それに対抗できないじゃないですか。隊員個人の、私人としての正当防衛及び緊急避難の権利で対抗することは考えられますが、武器使用規定が最初からない任務において、必要十分なる武器を携行しているはずはございません。素手で対抗しろというんでしょうか。  ゲリラ的攻撃に対抗できる武器の携行と使用が、私は他の二つの活動と同様に許されてしかるべきだと思います。少なくとも、他の活動と同様に、自己または自己とともに職務に従事する者の防護のための武器使用、この程度は最低限必要だと思いますが、防衛庁長官、いかがでしょうか。
  80. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員御指摘のように、後方地域捜索救助活動とか船舶検査活動のうち、一定の場合においては、その職務を行うに際し、活動の実施を命ぜられた部隊等の自衛官の生命等に関する危険が生ずるという不測の事態が発生することは否定できないわけですから、このような場合には、自己の生命等を防護するための必要最小限度の武器の使用を行えるように措置をしたわけでございます。  これに対して、後方地域支援は、後方地域、これはもう申し上げるほどのことでもありませんが、我が国領域、並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦争行為が行われることはないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲を後方地域と言っているんですが、そこに存する米軍に対して、米軍の艦艇への人員、物品の輸送や補給等を実施するものでありますから、この場合には当該職務に従事する自衛官の生命等に関する危険が生じていることは想定されないから、武器使用についての規定を置かなかったわけであります。  また、国内で対米輸送支援を行っている自衛隊が反米やゲリラ等に襲撃されるときはどのようになるかということでありますが、これは、国内においては警察機関により治安が維持されるというふうに考えられますから、それで対処するということになると思います。
  81. 米田建三

    ○米田委員 そうすると、長官、物資輸送中に襲われる、これはあり得ますよ。想定していないとおっしゃるけれども、では、あり得たらどうなんだ、こういうことになるわけで、あり得ますよ。万一の可能性に備えるのが安全保障政策の基本じゃないでしょうか。私はそういう視点で申し上げているんです。これはあり得る。そうしますと、自衛隊が一一〇番か何かするわけですな、襲われたら。間に合わないじゃないですか。  また、もう一つ、加えて私は伺いたい。  自衛隊の輸送部隊の防護もさることながら、例えば高速道路上等で、襲撃してきた部隊が、武装勢力があわせて自衛隊車両近辺の民間人や車にも銃弾を浴びせるような事態だって想定できるわけですよ。しかし、現行法では手が出せない。  民間人防護ということも考えるならば、後方地域捜索救助活動や船舶検査活動について認められている武器使用、この権限だけでは実は足らなくなるわけでありますけれども、私は、こういう事態があり得ると、少なくとも全くないとは否定できない。そのときに、国内の治安は警察に任されているんだということで一体済むのか、政治の責任が果たせるのか、このことをお尋ねしているわけであります。
  82. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 後方地域支援の中でもしそういう武力行使に巻き込まれるようなことになれば、行為を中断したり休止をしたり実施区域の変更をやることによって、安全を確保するという措置防衛庁長官がとらなきゃいかぬという法律になっているわけであります。  また、後方支援を行う場合において、仮に御指摘されるようなプロの戦闘集団が襲撃するような場合等においては、自衛隊法九十五条の要件を満たす場合に武器の使用を認められているところでございます。
  83. 米田建三

    ○米田委員 いや、九十五条は基本的に武器等防護のための武器使用なんですよ。もともと、後方地域支援においては武器弾薬の輸送は省かれておるでしょう。そうなりますと、一般の物資そのものが襲われているときに九十五条は適用されないんじゃないですか。
  84. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 何度も繰り返すようになりますけれども後方支援活動におきましては、武力と一体にならないという地域で実施しているわけで、もしそういう事態が発生するということになれば、法律の要件を満たさなくなるわけですから、実施区域を変更して、そして、行為の中断あるいは休止をやり、実施区域を変更するということをやって安全を確保するというのが法律の建前でございます。
  85. 米田建三

    ○米田委員 そういう事態になったら区域の変更を云々とおっしゃいましたが、そういう事態になったらということは、例えば民間人等も襲撃を受け大変な事態になるという惨劇、この惨劇を一たんは黙視する、こういうことになるわけでありまして、私は、そういう可能性が否定できない以上は、これは意見として重ねて申し上げますが、後方地域支援における武器使用について、真剣に改めてひとつ再検討をお願いしたいと思うわけであります。  次に、今は輸送中の自衛隊車両等への襲撃について申し上げたわけでありますが、自衛隊の部隊そのものあるいは駐屯地等も襲撃の対象となる可能性が私はあると思うわけであります。したがって、九十五条でありますが、武器等防護のための武器使用を定めておりますが、私は、やはりこれは、部隊そのものあるいは施設、これらに防護対象の拡大をすべきだと思うわけであります。これは後方地域支援に係るだけでなく、恒常的な課題であるというふうに常々考えておったわけでありますが、長官見解を伺いたいと思います。
  86. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 隊法の九十五条の規定の趣旨は、自衛隊武器という我が国防衛力を構成する重要な物的手段が破壊、奪取されることを防ぐために、武器等の警護に当たる自衛官に武器の使用を認めたものでありまして、部隊や施設自体については同条の防護対象とはされていないというのが現状でございます。  このような自衛隊法九十五条の趣旨にかんがみまして、現段階において、同条を改正して部隊や施設の警護を行い得るようにするということは考えていないところでありますが、せっかくの御指摘でありますので、私たちも勉強していきたいと思っております。
  87. 米田建三

    ○米田委員 これから勉強していただくというお答えでありましたが、まことに私は現行の九十五条は不十分であるというふうに考えております。  つまり、武力組織において武器だけが重要であるわけはないわけでありまして、まさにその武力組織を構成する人員の組織であるところの部隊、これは、もし我が国に敵対する勢力が攻撃を加える場合、まさに重要なターゲットになることは間違いがないわけでありまして、武器を守るための、その付随するところの人員の身を守るための武器使用規定などというのは、私はまことに笑止千万であるというふうに考えておりますので、どうか早急な検討を行っていただきたいというふうに思います。  次の質問に移ります。  やはりこの周辺事態安全確保法案についてでありますが、第九条に、国以外の者による協力等が定められております。協力を求める、あるいは依頼することができる、こういうふうに規定されているのみでありまして、協力を確保する担保がありません。  冒頭、総理にお答えをいただきましたように、今回の法案我が国の平和と安全を確保することが目的になっているわけであります。一体、我が国国民にして、あるいは我が国の地方自治体にして、我が国の平和と安全を確保するためのそういう措置に協力をしない、こんなことがあり得ていいのか。それは、すなわち我が国の平和と安全の確保を否定することにつながるわけでありまして、私は、日本国国民として許されるべきことではないというふうに考えます。協力の依頼ではなく、義務とするべきであります。  ちなみに、災害対策基本法におきましても、都道府県、市町村住民の責務を明確にうたっております。災対法でうたっているんですよ、災対法でも。それとも、安全保障にかかわる政策は災害対策よりも優先度が低いとでも言うのでしょうか。そんなはずはないわけでありまして、この点についてひとつ長官見解を伺いたいと思います。
  88. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員御指摘のとおり、九条一項は、関係行政機関の長が地方公共団体の長に対し、その有する権限の行使について必要な協力を求めることができる旨を規定しております。これは、周辺事態に対する措置の緊要性にかんがみまして、地方公共団体の有する権限の公共的性格及び他に代替手段を求めることが困難であるという事情を考慮し、一般的な協力義務を定めたものであります。地方公共団体の長は、求めに応じて権限を適切に行使することが法的に期待される立場に置かれていることになります。  いずれにせよ、政府としては、周辺事態という我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対しての協力であり、国以外の者におかれても、こういう趣旨を十分理解し、適切に対処していただけるものと考えております。私も、委員の御質問には大変共感するところがございます。
  89. 米田建三

    ○米田委員 協力していただけるものと考えているというお答えでありましたが、私は、少なくとも災対法と同様に責務を明確にうたうべきではないかというお尋ねを申し上げたのですが、では、その点についてはいかがなんですか。
  90. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 災害基本法におきましては、地方公共団体や住民等の責務が御質問のとおり明記されております。従事命令等の規定が設けられているわけでありますが、隊法においても、防衛出動時においては従事命令等の規定が設けられているところであります。  周辺事態は、事態の緊要性においてかかる事態とは異なるものであり、このような観点から、この法案では災害基本法や防衛出動のような規定は設けず、現行法令の枠内での協力を要請することにした次第でございます。
  91. 米田建三

    ○米田委員 私は、この辺を明確にしておくことが今回の法の趣旨にとって必要であるということを確信しておりますので、重ねて意見として申し上げておきます。  次の質問に移らせていただきます。同じくこの周辺事態安全確保法案の後方地域捜索救助活動についてであります。  法案の第六条四項の規定は、「後方地域捜索救助活動を実施する場合において、実施区域に隣接する外国の領海に在る遭難者を認めたときは、当該外国の同意を得て、当該遭難者の救助を行うことができる。」こうなっているわけであります。  そこでお尋ねをするわけでありますが、遭難者が米国及び我が国に対抗する国の領海にあった場合、あるいは、対抗する国に友好的な国の領海にあった場合、それらの国が自国の領海内での捜索救助活動を行うことを容易に認めるとは思えないわけであります。その場合は、遭難者を見殺しにするのでしょうか。日本の平和と安全のために戦闘し遭難した者に対し、私は、もし見殺しにするというような事態があるならば、余りにも不誠実なことであろうかと思います。国家としての恥辱である、品位ある国家の姿ではないというふうに思いますが、そのような事態、いかなる対応をするのか、お尋ねしたいと思います。
  92. 高村正彦

    高村国務大臣 後方地域捜索救助活動は、基本的には後方地域、すなわち、我が国領海並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲の中で指定される実施区域において実施されるものでございます。したがいまして、そもそも他国の領海における捜索救助を我が国が実施することを第一義的に念頭に置いているわけではありません。  他方、実施区域に隣接している外国領海内においても遭難者の救助を行うことが必要な場合も絶対ないとは言えないわけでありまして、このような場合には、当該外国の同意を得て当該遭難者の救助を実施し得ることは法案第六条第四項に規定しているわけでございます。  具体的には、この規定は次のようなケースを想定しております。  遭難者が当初は外国領海と隣接している実施区域である公海上に所在していたが、潮流の影響等によって、救助を実施する時点では実施区域に隣接する当該外国領海に移動するに至った場合。救難機が実施区域である公海上に遭難者が所在するとの連絡を受け現場に赴いたところ、当該遭難者は実際には実施区域に隣接する外国の領海に所在していた場合。  当該外国の同意を得るに当たっては、人道上速やかな同意の取りつけが期待されますが、同意を得られない場合には、法律上、遭難者の救助を行うことはできません。その際には、遭難者等をすべての場合に尊重し、保護しなければならないという国際人道法上の確立した原則に従って、領域国自身によりしかるべき措置がとられるべきものでございます。  実際には、委員御指摘のように非常に悩ましい場合があるかと思いますが、これは国際法上こういうふうに整理されざるを得ない、こういうことでございます。
  93. 米田建三

    ○米田委員 外務大臣の悩ましいお答えでありましたけれども、長々と御説明いただきましたけれども、要は、私の質問を何かそのまま繰り返されたような気がするわけであります。つまり、仮に私が御指摘申し上げたような事態があった場合には、当該外国の意思を無視して我が国が主体的に救助活動をすることはできない、こういうことになるわけでありまして、私は、これは重大な問題であるということを重ねて御指摘申し上げ、ひとつ今後の課題にしていただきたい、また、私どもも、このことをこれから考えてまいりたいというふうに申し上げておきます。  次の質問に移ります。  同じく周辺事態安全確保法に関してでありますが、船舶検査についてお尋ねをいたします。  これまた私は大変腑に落ちないわけであります。船長等の同意を得て乗船検査が行い得ることとなっております。しかし、これが明記されていることによって、実は、逆に我が国の検査区域が検査の対象となるべき船舶の安全な抜け道、通り道になりませんか。まさに、我が国の検査区域をお通りになる場合は同意を得た場合に限りますと、最初から安全の約束をしているようなものだというふうに私は思うわけでございます。  本来、事柄の性質からして強制執行力を付与してしかるべきだと私は思っておりますが、もしそれができないというのであるならば、少なくとも、我が国の検査活動の限界を法の文言の中で相手に明示するような規定は削除すべきだと私は思います。そうでなければ抑止力が全くきかない、そう考えますが、防衛庁長官見解を伺いたいと思います。
  94. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 この法案に基づく船舶検査活動は、周辺事態に対し、我が国の平和と安全の確保に資するものとして、国連安保理決議に基づく経済制裁の実効性の確保のため、状況に応じて必要と考えられ得る一定の措置をとるものであります。  我が国としては、仮に検査対象船舶の船長等が停止の求めに応じない場合には、法案の第七条三項に規定されているとおり、その求めに応じ得るよう、まず説得を行う。その際には、説得に必要な限度において、接近、追尾、伴走及び進路前方における待機といった措置をとることとなっております。  我が国としては、これまでの諸外国における活動実績等にかんがみまして、この法案の七条三項に規定されている範囲内で実質的に有効に機能する船舶検査活動を行い得るものと考えております。  念のために、国連憲章四十一条に基づく安保理の経済決議がある場合、そして対象は商船とか、場所は基本的に公海である場合、今までの船舶検査の過去の実績は、照会したのが十万隻以上あります。乗船検査をしたのが一万七千隻以上あります。進路変更を要請したのは二千隻以上でありますが、航行不能化射撃、これは船体への実弾発砲等でありますが、これは一件もありません。警告射撃も極めてまれである。こういうのが世界の実態でありますので、私どももこういうことを考えながらこの規定を設けた次第でございます。
  95. 米田建三

    ○米田委員 いや、長官、そうおっしゃいますが、私もいろいろな、世界での類似の今までの統計を持っているんです。手元に今あるんですが、確かに、例えば対イラク禁輸執行の場合、船体射撃はゼロ回であった。テークダウンが、これはイラク船のみが十一回、警告射撃十一回とさほど多い数字ではない。しかし、これは抑止力が最初からきいていますから、実力できちんと検査されるということがわかっているから、最初から来ないんですよ。  私がお尋ねをしたのは、我が国は最初から抑止力がきいておりませんよということをみずから宣明してこの船舶検査活動の規定を行っておる、だから抜け道になってしまうのではないかということを申し上げておるわけであります。世界の他の例というのは、あらかじめ実力行使もあり得べしという抑止力がきいたことを前提にした、その例はその結果であるということを私は申し上げておきたいと思います。  それでは、ちょっと時間もありませんので、次の質問に移ります。  日本有事の際の有事法制について、先ほど同僚の浅野議員も触れられました。私も重ねてお尋ねをしてみたいと思うわけであります。  新ガイドラインには、日本に対する武力攻撃に際しての対処行動がうたわれております。周辺事態もさることながら、浅野議員も指摘されたとおり、私は、本来この日本有事についてこそ先にあるいは同時に議論され、法整備が行われるべきであったというふうに考えております。  周辺事態日本有事に発展する可能性があることは既に当委員会のこれまでの議論でもはっきりしておるわけでありますが、先般の不審船の領海侵犯事件も、ミグ戦闘機の発進もあったというような報道も一部にはございましたように、その後の事態の推移によっては有事に発展する可能性というものがあった、否定はできないだろうというふうに私は考えます。  新ガイドラインの「日本に対する武力攻撃がなされた場合」の項では、防勢作戦の主体は日本であって、米国がこれを補完、支援すると明示されております。まさに防勢の主体にふさわしい法整備を行うことが急務であるというふうに私は考えるわけであります。  先ほどの浅野議員の質問の御答弁で、総理は、研究は必要と考えておるが今すぐ法制化ということではない、世論を配慮して、こういうふうなお答えでございました。  しかし、必要があるならば世論をむしろリードするのが私は政治家の責任ではないかと思うわけでございます。有事法制整備、さらにはまた、重要な点でありますが、ACSAにつきましても、現行は共同訓練、PKOに限定されている。今回は周辺事態にも適用されることとなっております。まさに有事の際が欠落をしているわけでありまして、有事ACSAの整備も急務であります。  また、さらには、日米共同で防勢作戦を行うような場合、有事の際の米軍の我が国国内における行動の規定も設けなければならないわけであります。加えて、しばしば課題になっておりますが、自衛隊の交戦規定の整備も急務であります。  以上につきまして、総理及び長官見解を伺いたいと思います。
  96. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 まず有事法制につきましてでありますが、国の安全と繁栄を維持し、国民の生命財産を守ることは、政府の最も重要な責務であると認識をいたしております。政府としては、我が国危機管体制を一層強固なものにするため遺漏なきを期するとの観点から、必要な対応についてさらなる検討を行っていく考えでございます。  有事法制につきましては、先ほど浅野委員にもお答え申し上げましたが、段々の経緯の中で既に検討を始め、勉強いたしております。これを実際に法制化するということにつきましては、国民世論の動向もありますが、米田委員は、この問題について政府が率先して国民の理解を求める努力をすべきだということでございますが、この点につきましては、それぞれの政治家の御信念に基づきまして、世論の喚起につきましても恐らくなされておられると思っておりますので、そうした観点に立ち、国民的合意もやはり大変大切なことでございますので、この必要性といいますか、なぜ研究をしてきたかというようなことにつきましての理解も求めていきました上、最終的には政治的な判断を下さなきゃならぬと思っております。  それから、有事ACSAについてでありますが、平時のACSAにつきましては既に実行いたしておるわけでございますが、我が国有事に適用されるACSAの整備の問題及び米軍の行動にかかわる法制につきましては安全保障上の課題であると認識をいたしておりまして、その取り扱いにつきまして今後検討いたしてまいりたいと思っております。  最後に、交戦規定の整備についてでありますが、諸外国のいわゆるROEにつきましては、その概念、内容、必ずしも明確になっているわけではありませんが、我が国に対する武力攻撃等に際して自衛隊が対処する場合の要領について申し上げれば、防衛庁の防衛、警備等に関する計画により、自衛隊が対処する場合における基本的事項等について定めているほか、部隊等の行動に関する各種の規定を有しているところであります。  いずれにいたしましても、米田委員御指摘の諸点につきましては、重要な点でございますので、さらなる検討を加えてまいりたいと思っております。
  97. 米田建三

    ○米田委員 御答弁ありがとうございました。  有事というのは、これは地震と同じでして、起きてから、さあ何とかしようじゃ間に合わないわけでありまして、万が一に備える、こういうことであるのは当然でありまして、私は一刻の猶予もならない課題であるというふうに考えておりますので、ぜひ急いでいただきたいということを重ねてお願いをしておきます。  最後に、もう一つお尋ねをいたします。  不審船の領海侵犯事件についてでありますが、海上保安庁が、平たく言いますとお手上げになって、初めて自衛隊の海警行動が発令をされた、そして結局不審船を取り逃がした、この事実経過は、これは私は間違いのないところであろうかというふうに思います。  この実態を目の当たりにして、常識ある国民は、現行の制度に極めて大きな不満と不安を抱いております。防衛出動あるいは治安出動を下令するに至らず、しかも、警察や海保では対応できないグレーゾーンの事態というのが現実にあるわけでありますから、これに対応するため、私は、平時からの領域警備の任務と権限を自衛隊に付与すべきだというふうに考えます。  自衛隊の権限拡大を避けるためなのでしょうか、昨今、海保の機能強化優先論が政府部内にあるという報道もございますが、もしそうであるならば、私は見当違いだと思います。長年膨大な国家予算を投入して形成してきた我が国唯一の武力組織である自衛隊を、平時からの領域警備に使わない理由が逆にあるのでしょうか。使わない理由があるわけはないわけであります。海保の機能強化を否定はいたしません。これも当然でありましょう。しかし、それと並行して、自衛隊の領域警備の任務が必要であるということも主張したいわけであります。  なぜならば、海保での対応が不可能な場合、即座に自衛隊にスイッチができない事態が、平時から領域警備の権限と任務を与えていなければあり得るからであります。国家の安全のため、万全を期して何が悪いのでしょうか。  領域警備の任務と権限の付与について早急に具体的な検討を行っていただきたいと思いますが、防衛庁長官見解を、お答えを求めます。
  98. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 領域警備を含むあらゆる有事の事態に対応する問題につきましては、政府としては、橋本内閣以来、検討を種々重ね、その対応について検討、研究を進めてきたわけでございます。  防衛庁としても、あのような不法行為が発生した際の適切な対応を期するために、今般の経験も踏まえまして、その対応のあり方について今後も鋭意検討する必要がある、こう考えて、私のもとで重要事態対応会議というものを開きまして、そこで今論議を重ねている次第でございます。
  99. 米田建三

    ○米田委員 ありがとうございました。  以上、質問を終わります。
  100. 山崎拓

    山崎委員長 これにて米田君の質疑は終了いたしました。  次に、達増拓也君。
  101. 達増拓也

    達増委員 自由党の達増拓也でございます。  私は、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律について質問をいたします。  予定していた総理への質問をする前に、まず周辺事態とは何かということについて、法文に沿いましてちょっとおさらいをしながら、幾つか確認していきたいと思います。  この周辺事態というのが一体何なのか、これがどうもわかりにくい、国民的なコンセンサスまで今の時点で至っていないんじゃないか、そういうふうに思います。  そもそもこの法律で出てきた新しい概念でありますので、そういう意味でわかりにくいというところもありますけれども、第一条で「我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」だと定義されているわけであります。これは政府からの答弁の中でも繰り返し言われていることでありますけれども、これだけではまだよくわからないわけであります。  第二条に進みますと、周辺事態においては、適切かつ迅速に、後方地域支援、後方地域捜索救助活動、船舶検査活動その他の対応措置を実施しなければならないということで、ああなるほど、何か新しいそういう措置をしなければならない事態なんだなとわかるわけであります。  それも、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態だけれども、その事態の大もとに何か直接働きかけるようなことではなく、それこそ周辺的な活動措置をとらなければならない事態なんだなというふうにわかってくるわけであります。  第二条第二項では、武力による威嚇または武力の行使ではないと書いてあるわけであります。これで、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態にもかかわらず、武力による威嚇または武力の行使、自衛権の発動でありますとか国連のもとでの活動ですとか、そういう正当化され得る武力行使をする事態でもないということがわかるわけであります。ないない尽くしで、何々じゃない、何々でないという形で進んでいくわけであります。  第三条に入りまして、第二条の一項で挙げられた、ここで新しく出てくる言葉、対応措置の三つについて説明されているわけであります。  まず、後方地域支援というものは、周辺事態に際して日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行っている合衆国軍隊に対する支援措置だということで、ここで法文上初めて米軍というものが出てきて、この周辺事態というのは、基本的に、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態の大もと部分に直接迫っていくのは米軍なんだなということがわかるわけであります。  第二号、後方地域捜索救助活動で、ここでは戦闘行為とか国際的な武力紛争という言葉があって、そういうことが起こっているような事態も含まれるのだなというふうにわかってまいります。  三、船舶検査活動。ここで国連安保理決議に基づく経済制裁ということが出てきまして、そういう国連の集団安全保障システムが発動されているような事態も含まれるんだなということがわかってまいります。  ですから、武力紛争が起こっているときとか国連安保理の集団安全保障システムが発動されているようなときとか、そういうかなりいろいろなケースがあるのだなというふうになってきまして、結局何でもありなのかなと思われてくるわけです。  ガイドラインそのもの、この法案の前提になっております日米の新ガイドラインそのものに戻ります。  そうしますと、この新しい指針の目的は、「平素から並びに日本に対する武力攻撃及び周辺事態に際してより効果的かつ信頼性のある日米協力を行うための、堅固な基礎を構築すること」と書いてあって、ですから、そもそもこの周辺事態平和安全確保法案というのは、日米防衛協力を効果的、信頼性あるように行うためのものだったということが思い出されるわけであります。  つまり、米軍を支援すべきときが周辺事態という整理になるのかと思うのですけれども一つ防衛庁長官に確認したいんですけれども周辺事態日本がいろいろな措置をとるときというのは、これは米軍が既に何かやっているときであって、米軍が動いていないときに日本だけで周辺事態の関連の措置をとるということはあるのでしょうか。
  102. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 まさに周辺事態我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態でございまして、これに対する対応ということでございます。  また、この判断はおのおのの政府が自主的に行うわけでございますけれども、それに至る前で両国政府で政策協議等いろいろな情報交換等も行いますので、実質的には、こういう事態において米軍が活動していないというようなことは実際上は余り想定されないのではないか、こんなふうに思います。
  103. 達増拓也

    達増委員 結局、周辺事態とは何かと考えていったときの隠れた要件として、それは米軍の行動が必要とされる事態ということなんだと思います。つまり、米軍の行動が必要とされるくらいの事態でなければ、例えばテポドン発射ですとか今回の不審船の侵入、これは一見我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態のようにも思われるんですけれども、米軍が出動しなければならないほどのことではないということで、今回のようなことは周辺事態には当たらないのかなと思うわけであります。  こう考えたときに、これは外務大臣一つ確認させていただきたいんですけれども、米軍が行動すべきかということは、米軍が最終的には米軍自身の行動については決めることなので、アメリカがこれは周辺事態だと判断しなければ周辺事態にはならない。すなわち、日本単独で、日本限りで周辺事態とはこういうものだというふうに定義できない。そういう本質的な構造がこの周辺事態ということにはあり、それで政府側からも、周辺事態はこういうことだという明確な定義というのが出てこないのかなと思うのですけれども、そういう認識でよろしいでしょうか。
  104. 高村正彦

    高村国務大臣 防衛局長が、実際の場合は日本が動く場合は米軍も動いているということが想定される、こう言いましたが、法理論的に言えば、三条の一項二号、三号、これは日本独自でやる場合もないとは言えないんだろうと思うのです。ただ、実際日米で常に話し合っていますから、実際問題とすれば、両方がそういう場合も動くということが圧倒的に多くなるということは言えるんだろうと思います。  ただ、今、あらかじめ特定できるという意味の地理的概念でない、こういうことを私たちが申し上げているのは、これは本質的にそうだということであって、何も米軍が決めるから日本がそういうことは勝手に言えないんだとか、そんな話ではないということはぜひ御理解をいただきたいと思います。
  105. 達増拓也

    達増委員 このガイドラインやその関連法案をめぐる非常に通俗的な理解としては、米軍の行動が求められるようなそういう地域の事態があって、そのときに日本が、憲法上の制約のもとで米軍の行動を支援できる、いろいろな協力を米軍の方が求めてきたときにどこまでできるか、どういうことをできるか、そういう話なんだ、そういう通俗的な理解があると思うのです。  これは、新ガイドラインの成立からその後の展開、また、そもそも日本が独自の安全保障政策、独自の安全保障の基本原則というようなものを持たないまま、時代の新しい要請にこたえる形で、特にアメリカとの協力という、いわば自分の中から出てくるような形ではなく、他者との関係の中で新しい安全保障をめぐるそういう仕切りをつくろうとしているところでわかりにくいところが出てくるんだと思います。  それで、結局、何をやるのかという国家としての安全保障の基本原則がないまま、明確になっているのは憲法上の制約という九条の文言だけが明確で、本来は安全保障基本法のようなものを国が持っていて、あるいはそれは安全保障基本宣言でもいいんですけれども、国としてこういうことをやるという方針があって、その中で位置づけていけば周辺事態というものもうまく位置づけていけるんじゃないかと思うわけであります。  そこで、自由党は安全保障に関する三原則というものを提案し、これを国全体の安全保障の原則にしようと提案しているわけであります。内容は簡単でありまして、我が国の安全保障は、厳格な意味での自衛、そして国連平和活動への積極的参加、この二つによって我が国の安全保障を追求しよう、そしてその我が国の自衛のために日米安保体制を堅持していこう、それが三原則になっているわけであります。  それで、予定していた質問に入りますけれども、こういう安全保障三原則の立場からいきますと、まず、周辺事態における対応措置、これは自衛権の行使になるのか、あるいは国連平和活動になるのかという疑問がまず浮かぶわけであります。周辺事態対応措置には、三つの種類、その他とあるわけですけれども、ここでは、その中で最も重要と思われる後方地域支援について伺いますが、この後方地域支援というのは、自衛権の行使あるいは国連平和活動という、そのどちらかに入るのでしょうか。
  106. 高村正彦

    高村国務大臣 本法案に基づき実施することを想定している後方地域支援は、日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行っている米軍に対して行うものでございます。  周辺事態が生起した場合、米軍は、武力の行使を伴わない種々の活動、例えば情報収集活動だとか警戒監視等を行い、まずは事態の拡大の抑制や収拾に努めることが当然想定されます。したがって、周辺事態になれば米軍が直ちに武力を行使するとの前提で議論を進めることは、必ずしも適当でないわけであります。仮にそのような、米軍が武力を行使するとすれば、自衛権の行使に当たる場合、あるいは国連安保理決議に基づく行動である場合、両方が想定されるわけであります。いずれにせよ、米軍がとることのある行動は、国際法の基本原則、国際憲章等の国際約束に従ったものになると認識をしております。  国連の集団安全保障になるのか、あるいは自衛権の行使になるのか、こういうことでありますが、いずれにしても、それが問題になるのは、相手の侵略を実力によって阻止する場合にどっちですかという話になるわけでありまして、今日本が行う後方地域支援は、日本自身が実力を持って阻止するということは一切含まれていないわけですから、その前提でどっちだと言われても、なかなか、なかなかというより答えられないわけであります。  この法案全体は、もちろん日米安全保障条約、そのガイドライン、それを受けて実効性あらしめるためにやるものだということは言えるわけでありますが、その場合場合によって国連の集団安全保障的なことが入ってくるということは、それはあり得ることなのだろう、こういうふうに思っております。
  107. 達増拓也

    達増委員 憲法九条があって、とにかく武力による威嚇または武力の行使ではないという縛りがまず前提にあるので、自由党の安全保障基本原則は、そういう武力行使が正当化し得る場合として自衛権の行使と国連のもとでの平和活動という整理をしていますから、それに該当しないということになるんだと思いますけれども。  では、次に、果たして周辺事態をめぐる対応措置、特に後方支援が武力行使にならないようにということで緻密に法律は組み上げられているのですが、実際にその任に当たって自衛隊隊員が出動するときに、やはりこれは命がけの任務ということなんだと思うのですね。そこは、大丈夫、これは武力の行使でも武力による威嚇でもなく、およそ戦争とか戦闘行動とかそういうことではない、全く別種の、新しくこの法律で根拠づけられる、そういう措置にすぎないといって自衛官を送り出すのか。また、その自衛隊の隊員、彼ら、彼女らを送り出す親、兄弟も含めた国民の側も、これはただのそういう措置にすぎないのであって、危なくないから大丈夫、気軽に行ってこい、そういう形になるのでしょうか。この点、伺いたいと思います。
  108. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 この法律に基づく後方支援は、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える周辺事態に対して、日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行っている米軍に対する補給等の支援措置をすることを指しておりますが、我が国の平和と安全の確保のために行われることは大変大事なことであると思います。  自衛隊法におきましては、防衛出動等の本来の任務以外にも、これまで自衛隊が有する技能や経験に着目しまして、国際平和協力業務のほか、在外邦人等の輸送や、あるいは米軍との間での物品役務相互提携など、各種の活動を行うことが規定されております。  後方支援につきましても、周辺事態安全確保法においてその内容、手続を定め、これに基づき自衛隊が活動を行うこととしているところでありますが、我が国の平和と安全に重要な影響を与えるこの周辺事態において、事態の拡大の抑制あるいは収拾のために国連憲章や日米安保条約に従い行動する米軍に対し、この法律に基づき自衛隊が行う後方支援は、冷戦終結後も依然として不安定、不確実な要因が存在する中で、我が国の平和と安全を確保するため重要であると認識しており、このことは任務に当たっております自衛官諸君にも十分理解していただけるものである、こういうふうに考えているところであります。
  109. 達増拓也

    達増委員 今のようなことを実際にこの任務出動する自衛官やその家族の前で、恐らく壮行会というのがやられるのだと思うのです。PKOに行くときもそうですし、そういう壮行会の席上でそういう説明をしても、全然ぴんとこないと思うのですよ。ふだんからプロの自衛官の皆さんにそういう教育を徹底するのはわかるのですけれども、ただ、今この法律を決める作業は、プロだけで物を決めようという話ではなく、国民全体で物を決めようということですから、もっとその核心に迫るような説明が欲しいと思うのですね。やはり、とにかく武力行使にならないようにという憲法文言上のつじつま合わせのために、かなり法律上無理をしているなと思うわけであります。  私は、この点については共産党さんとか、あと社民党さんの議員の先生方と認識を一にするのですが、やはりかなり危険な任務だと思うのですね。実際に攻撃を受けたり、あるいは、戦争に巻き込まれるという言葉を私は使いませんけれども、不測の事態が多々あり得る、そういう非常に危険な任務である。それは、攻撃を受ければ直ちに自衛権の発動というような事態に発展する、そういう軍事行動のはずなんですけれども、そういうことは絶対にないんだ、そういうことがないようにするんだという建前のために、もうほとんど丸腰で自衛隊をそういう危険なところに送り出すような法律になっている。  これは、一つは、それはもうほとんど相手の攻撃を誘う挑発のようなものではないかとも思うわけですね。ある程度武装して、相手からの攻撃に対しては効果的な反撃ができるような形で行けば、かえって相手も攻撃できない。そこを丸腰で、お宝を積んで米軍のそばまで行くわけであります。その米軍と交戦しているような相手から見れば、もうそれは攻撃するしかないというような、かえってそういう挑発を引き出す、挑発するような行動ではないかと思うのですけれども、この点、いかがでしょうか。
  110. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先ほどから出ております後方支援は後方地域において行うものでありますから、相手国からの攻撃が想定されるような区域で活動することはありません。また、外部からの攻撃を受ける蓋然性を極力排除した条件のもとで行われるものであるということであります。  この法案に基づいて実施することを想定している地域支援などは国連憲章、日米安保条約に従って行動する米軍に対して行う我が国の協力でありますが、すべて国際法の基本原則に合致し、国際法上許容されるものであり、他国の我が国への武力の行使が国際法上正当化されるものではないということは累次御説明しているところであります。  しかしながら、後方地域支援を実施する場合において、委員が御心配いただいておりますように万一不測の事態が発生することが否定できないことから、必要最小限度の武器は使用できるように措置しているところであります。このような対応が、自衛官の命を軽視するものであったり、また相手の攻撃を挑発するものではないと私ども考えております。
  111. 達増拓也

    達増委員 私は、やはり憲法九条の文言にこだわる余りに、戦争放棄とか武力威嚇、行使をしないといった文言にこだわる余りに、平和を脅かす国際社会のさまざまな現象の実像とか、そしてそれを克服するために諸外国がどういうことをやっているのか、日本がどうすべきかといった、そういう現実的なリアリティーのある議論がされなくなってしまっているのではないかと懸念いたします。憲法九条の文言にこだわる余り、かえってそこで任務に当たる自衛官やその関係者の個人の尊厳であるとか基本的人権まで脅かすようなことでありますし、また本当に平和を追求しようとする国際正義にももとることになっているのではないかと思うわけであります。  ちょっと憲法論をさせていただきたいと思うのですけれども、私は、憲法の平和主義は非常にいいものでありますし、九条がうたう平和の理念というのは守っていかなければならないと思うのですけれども、ちなみに、日本以外の国々で九条に当たるものを持っている国というのは、たしか聞くところによるとナミビアがそうだとか聞いていたんですけれども、ほとんどないわけであります。  それで、これはそもそも論なんですけれども、九条に当たるものを持っていないにもかかわらず、普通の国というのは侵略戦争を引き起こしたり、九条が禁止しようとしている、日本がかつて、いわゆるあの戦争の最中にやったいろいろないけないことをほかの国は九条なしでやらないでいるわけであります。ほかの国は九条なしでも、そういういわば日本国憲法の理念である平和主義というものを守っていると思うのですけれども、その点について、どう考えますでしょうか。
  112. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 それぞれの国はそれぞれの国の成り立ちの中で憲法を定めて、その憲法によって政治が行われておると思っております。  我が国は、この憲法第九条というものを設けておりましたのは、やはりさきの大戦に対する反省と再び戦争を繰り返さないという決意のもとで、平和主義の理念を具体化するものとして制定されたものでありまして、政府としては、この理念は今後ともこれを高く評価し将来にわたって堅持していくべきものであると考えており、また、この規定は日本国憲法が制定されてから今日まで一貫して国民の支持をされておるものと認識をいたしております。  この九条を含めました日本国憲法全体の理念によりまして、このガイドライン法案もすべてそこに立脚して成り立っておると認識いたしております。
  113. 達増拓也

    達増委員 私も一九六〇年以降の生まれでありまして、そういう若い世代に属して、髪の黒い世代に属しているんですけれども、それなりに歴史に学ぼうといろいろ勉強しているのであります。  日本がいわゆるあの戦争という不幸な歴史を経験するに至った理由の本質は、明治維新、それまで鎖国していたところから開国し、当時の国際社会が帝国主義の競争の時代であって、もう弱肉強食、そういう帝国主義的な闘争の時代であった。とにかくそれに何とか自分を適応させないと生き残れないということで、明治、富国強兵をやって、日清、日露の両戦争を戦って何とか国の独立を保った。  それで、国際社会の当時のゲームのルール、そういうグローバルスタンダードに適応させるのが余りにうまくいき過ぎて、そこで若干慢心し、その後第一次世界大戦を経て、世界のゲームのルールが、もう帝国主義的な闘争はやめましょう、ケロッグ・ブリアン条約、いわゆる不戦条約、そういう戦争を悪とみなして国際的な協調でやっていこうという潮流になっているにもかかわらず、明治独立以来の帝国主義的な闘争の発想で国のかじ取りをした、そういう時代。国際社会のグローバルスタンダードと日本国内の意識のギャップこそが日本にとって一番危険なものだと思うわけであります。  それで、第二次大戦が終わった後、日本は、そういう帝国主義的な闘争はやめましょうということで、いわば不戦条約のところに戻ってしまったと思うんですね。ところが、世界は冷戦というものがあり、そして冷戦後の新しい時代に入り、民族紛争、内戦での人道上の侵害、あるいはテロリズム、そしてそのテロを支援する国家、そういったものに対して国際社会としてどう対応していこうか、そういう現実が目の前にあるにもかかわらず、日本人の意識は戦前の不戦条約の時代にまだとどまっている。  今回のガイドライン周辺事態関連法案は、戦後の冷戦の時代のルールにようやく頭がスイッチしてきたかなというくらいだと思うんですね。そういう国際社会の現実と日本人の意識のギャップというものこそ、悲惨な歴史につながった一番警戒すべきでことあって、私は九条の文言にこだわるということが、そういう現実の国際社会のリアリティーを直視しないということにつながっていると思うのです。  ですから、あえてスローガン的に言わせていただければ、かつて書を捨てて町に出ようというスローガンがありましたけれども、私は、九条を捨てて世界に出ようというスローガンを言いたいと思います。それによってこそ、本当に九条が理想としている国際平和、正義と秩序を基調とする国際平和というものを日本が追求できるというふうに思うわけであります。  再び総理にお伺いしますけれども日本以外の多くの国はそういう九条の文言なしできちんとやっているわけでありますが、日本は、その九条の文言というものがなければ再び邪悪な侵略国になってしまう、そういう国なんでしょうか。
  114. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 九条がなければ日本が邪悪な云々ということ、そういう行為に及ばないかということでございますけれども、先ほど申し上げましたように、我々は新しい憲法のもとで日本の安全を確保し、同時に世界に貢献をするという決心をしてこれをいたしておるわけでございますので、他国の例は他国の例といたしましても、日本としてはこの憲法のもとで日本としての正しき道を歩んでいくということが必要なことではないかと思っております。
  115. 達増拓也

    達増委員 私が九条を捨てろと言っているのは、文言にこだわることによって九条の理念を見失うなという趣旨でありまして、恐らく、九条の文言にこだわらないで、国際社会の現実、日本を取り巻く現状を見据えて、必要な体制整備、法整備を行っていけば、結果として九条の文言に反しないような行動日本がとれるのじゃないかと思うわけであります。  特に、今回の周辺事態における対応措置についてでありますけれども、これはやはり武力行使にも進み得る、そういう軍事行動だというふうに位置づけるのが適当ではないかと思うわけであります。  例えば、純粋な自衛権の発動のことを考えても、相手が攻め込んで、急迫不正な侵害があって初めてそれまで平時の態勢だった日本自衛隊がいきなりそれに反撃を加えるということはないのでありまして、そういう攻撃がありそうだと思ったら、事前にいろいろな準備をするわけであります。  そういう準備というのは、動員でありますとか、そういった準備行動というのは、それ自体軍事行動でありますから、挑発的、刺激的で、それに対して相手が攻撃をしてきて初めて自衛権の発動ということになるかもしれませんが、そういう自衛権の発動という事態に容易に進み得るような軍事行動だ、そういう現実を見据えて、法的には武力行使にならないように、そういうドンパチやっているところには絶対行かないから、それへの反撃というのも基本的に最小限でいいとか、そういう整理をするのではなく、やはり自衛権の発動の一つの関係の行動であるとか、あるいは船舶検査の部分については国連の平和活動の下に位置づけることもできるかもしれません。  ですから、そういう自衛権の発動なり国連のもとでの平和活動なり、武力行使が正当化し得るような枠組みの中で整理することが必要だと思うのですけれども、この点いかがでしょうか。
  116. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 この周辺事態におきます対応につきましては、累次政府側から答弁してございますように、これ自体、武力の行使に該当する行為ではございませんし、また武力の行使と一体化するものでもないということで、そういった意味で、今先生お話しのこの自衛権なりなんなりのこういった整理とは別の観点から私どもは整理させていただいているということでございます。
  117. 達増拓也

    達増委員 先ほど私は九条を捨てて世界に出ようということを言いましたけれども、まさに同じ趣旨のことをイギリスのエコノミスト誌二月二十七日号が、日本を船出させよというタイトルで書いておりました。それは、憲法の見直しも含めて、日本に国際社会においてきちっとしたことができるようなふうにさせようという、これは、エコノミストというのは比較的バランスのとれた雑誌だと思うのですけれども、このように言っております。  民主的な価値を守るということは、時には、非常に残念なことではあるが、軍事的な手段を必要とするものである。それは、武力行使という言葉をめぐって、入る、入らないとか、そういう議論を引き起こすようなことではあると思うのですが、その議論にかまけて、そういう民主的な価値を守ることから身を引いていたのでは、いつまでたっても日本国憲法が理想とする平和というものは、達成はおろか追求すらできないのではないかと懸念するわけであります。  さて、次に話題をかえまして、例の周辺という言葉に関連して、その周辺事態の対象にどの国が入る、どの地域が入るということの関連の質問外務大臣にしたいと思います。  自由党小沢一郎党首が、中国に行ってこういう議論をしてきたわけでありまして、私も同行し、中国の、首脳級から若い新進気鋭の人たちまで、いろいろな人たちと議論をしてきたわけであります。  その中で、私たちが言っていたことは、ある国なりある地域なりが日本の平和と安全にとって重大な事態、重要な事態を絶対引き起こさないということを明言し、かつそれを守ってくれるなら、定義上その国なり地域は周辺事態の対象には絶対ならないんだよと。それは、日本の側が周辺事態の対象になるかどうかを決めるという話じゃなく、実は、相手国といいますか、日本を取り巻く国や地域の方が決める話なんだということを言ってきて、中国政府としては正式に認めませんけれども、人によっては、ほうほうという感じで聞いていたわけでありますけれども、この点について、政府見解はいかがでしょうか。
  118. 高村正彦

    高村国務大臣 何度も何度も申し上げているところでございますが、周辺事態というのは、あらかじめ特定できるという意味での地理的概念ではないということでありますから、台湾に限らずどこの地域でもどこの国でも、入るとか入らないとかいうことは言えない、こういうふうに整理をしております。
  119. 達増拓也

    達増委員 中国側の意見としては、中国として、中国と台湾のそういう領土的一体性、こういうことを侵すようなものは一切認められないということでありました。  それに対して、私たち考えは、いろいろな政治的な事情や、さらには歴史的な経緯とかいろいろあるのであろう、それに基づく外交的配慮というものもあるのであろうけれども、事安全保障の基本原則に係るような事柄は、まずは歴史的、政治的なものを捨象した抽象的なものとして確立し、それで、すなわち、日本を取り巻く国や地域であれば、それは周辺という意味では周辺には違いないけれども周辺事態になるかどうかは別問題だというような、そういう極めて抽象度が高い原則としてまず説明し、そして、それを踏まえた上で、日本が主権国家として、日本の平和や安全に重要な影響を及ぼすような事態については、やるべきことはやるという基本原則を言った上で、あとは政治的な配慮、外交的な配慮に進むのが順番ではないかと考えるわけでありまして、最初から政治的、外交的配慮でそういう基本原則をあいまいなままにしておくのはよくないという立場で議論してきたわけであります。  当然、中国は、公式には政府としてはそれに賛成はできないのでありまして、でも、だれそれは賛成していたとか言うとその人の中国国内でのお立場が危ないのではっきり言えないのですけれども、ただ、個人的には、そういう毅然とした、国家を代表する立場で話をするということは、通じるなという感触は得たということを話させていただいて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  120. 山崎拓

    山崎委員長 これにて達増君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  121. 山崎拓

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。玄葉光一郎君。
  122. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 民主党の玄葉光一郎です。  本委員会が始まって、私にとりましては最初の質問でありますから、日米安保条約あるいは日米安保体制の総論について議論したいと思っておりますが、きょう午前中聞いておりますと、大分総論の話が出てきましたから、各論から入らせていただきたいと思っております。整理すべきと思われる点がまだ多々あろうと思いますから、そのことについて質問をいたします。  ガイドラインは日米の取り決めであることは言うまでもありませんけれども、実際の周辺事態という問題を考えたときに、実際は、何らかの形での多国籍軍とか国際社会全体で対応する可能性があると思います。そういう意味で、まず朝鮮国連軍の問題と多国籍軍の問題を整理したいというふうに思います。  まず、朝鮮国連軍の問題でありますが、重複を避けるために、これまでの政府側の答弁を整理させていただきますと、大体四つぐらいあるんだろうと。  一つは、国連軍地位協定は今日なお有効かという問いに対しては、現時点でも有効であり必要であるという答弁でありました。  次に、朝鮮国連軍として行動する米軍はガイドラインのもとで支援対象となるかという質問に対しては、周辺事態法三条の後方地域支援の定義に該当するような場合は支援対象となるということであります。  三つ目は、朝鮮国連軍創設の基礎となった安保理決議は今も有効か、これは有効であるという答弁でありました。  最後に、四つ目。朝鮮半島で有事が発生した場合に、朝鮮国連軍は一九五〇年当時の安保理決議に基づき武力行使を行うことができるかという問いに対しては、朝鮮有事が具体的に明らかでないから断定的なことは言えないが、理論的可能性としては、安保理決議は有効であるから、それに基づいて行動することが正当化されるような場合が完全に排除されるものではない。大体こういう答弁で整理できるのじゃないかというふうに思います。  この四つの整理のうち、後者二つについて少し議論したいというふうに思っています。  特に、新たな決議なしで朝鮮国連軍が武力行使を行うことができるのかということについてであります。結論から言うと、残念ながら、残念ながらと言うと語弊があるかもしれません、手足を縛るという意味でもありますけれども、残念ながら、新たな決議がないと朝鮮国連軍はなかなか動きにくいなというのが私の率直な印象であります。  以下、先般の答弁で、朝鮮有事が具体的に明らかでないから断定的なことは言えないということでありますから、大きく二つに分けて具体的に想定をしてお聞きしたいと思いますので、お答えをいただきたいと思います。  一つ目。これは議論の余地がないのではないかと私は思いますが、例えば北朝鮮が、NPT条約の加盟国としてそれに違反して核開発を行った、あるいはIAEAの査察を拒否した、そういう国際違法行為のケース、さらにいえば、国内の経済的混乱から難民が大量に発生した、国内が混乱した、こういうケースにおいては、新たな決議なしで朝鮮国連軍は武力行使を行うことはできますか。いかがですか。お答えください。
  123. 高村正彦

    高村国務大臣 また申し上げて申しわけないんですが、仮定の事態に対する御質問について断定的なことを申し上げることは適切でない、こういうふうに考えております。  あえて一般論として申し上げれば、朝鮮半島において何らかの事態が発生した場合、当然国連において、発生した事態状況を踏まえ議論が行われるものとなると思います。  いずれにいたしましても、その際国連がいかなる対応をとり得るかについて、問題となる事態と関連の決議、休戦協定との関係等を慎重に判断する必要があり、一概に申し述べることはできません。  したがって、現段階で仮定に基づいてお答えすることはできませんが、これまでも述べているとおり、純粋に理論上の問題としては、国連安保理決議八十二、八十三及び八十四号は現在も有効でありますので、かかる決議に基づいて行動することが正当化され得るような場合が完全に排除されるものではないと考えます。完全に排除されるものではないというのは、先ほど委員がおっしゃった、気持ちとしては、かなり古い決議ですので、この決議が生きて、そのことでどうということがそう簡単にあるということを積極的に想定しているわけではございません。
  124. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 条約局長でも結構ですから、答弁してください。
  125. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 ただいま大臣が申し上げたとおりかと思います。  朝鮮戦争当時に採択されました三つの国連決議、これは法理的に死んではいないということはこれまで繰り返し述べてきたところでございます。しかし、死んだとは言い切れないこの決議が、新たに発生しました事態の中でどのように適用されていくか、適用され得るかということにつきましては、まさに大臣が申し上げましたように、その新たな事態の中で国連自身によって判断されるということしか現時点では申し上げられないということかと思います。  以上でございます。
  126. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 今申し上げたようなケースは、普通に考えればなかなか、かつての決議八十二、八十三ではどうしても読むことはできないんだろうと私は思いますし、恐らく、本音のベースでは外務省もそのように考えておられるだろうというふうに思います。  私は、むしろ問題なのは、これから聞こうとしたことが若干問題になるのかな。例えば北朝鮮が明らかに休戦協定違反をした、例えば北朝鮮が南進をした、あるいは非武装地帯に武力を展開した、そういうケースだったら問題になるのかなというふうに思うわけであります。しかし、そのときでも、休戦協定とは一体何なんだということを考えていくと、現実にはなかなか難しいな、そのように思うわけであります。つまり、新たな国連憲章のもとでは、休戦協定というのはいわば講和を意味するわけでありますから、そういう意味では、休戦協定違反ということに対しての反撃というのは、残念ながらなかなか難しいんだろうなというふうに思います。  だから、今まで、たしか草川議員やこの間の佐藤議員からの質問に対して——つまり、三木外務大臣だとか重光政府委員だとか、その方々があのように答弁されているのはそういうことだろうというふうに思うのです。  では、佐藤委員が、先週ですか、三木外務大臣のこれまでの答弁を引き合いに出されて質問をされました。あのとき、たしか加藤局長はこのように答弁された。「休戦協定締結によって戦闘行為が停止されている事実、これを踏まえまして、従前の安保理決議のうち特に武力行使を授権している部分が現実には用いられていないということを御指摘になられたような言い方で表現したものでございまして、決議自身の法的有効性について述べたものではないわけでございます。」ということを答弁しておられます。  問題は、法的有効性よりも、新たな決議なくして朝鮮国連軍が動けるのか動けないのかということであります。その意味ではいかがですか。加藤局長で結構です。
  127. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 御質問の点についてのお答えは、先ほど外務大臣が答弁申し上げたとおりでございます。
  128. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 これは質問にならない。  当時の三木外務大臣が、これは昭和四十三年四月十六日の外務委員会の質問でありますが、休戦協定ができたわけでありますから、三十八度線を越えて国連軍が行動するときには、新たな安保理による決議がなければ三十八度線を越えることはできない、このように答弁をしておられます。同時に、昭和四十四年二月二十七日、重光政府委員法律的には有効であっても、その武力行使に関する事項は、休戦協定の成立によって事実上消えている、こういうものと考えております、こう言ってしまっているわけであります。  私は、いろいろつじつま合わせをするのは国民へのわかりにくさにつながりますから、変更するんだったら変更するとおっしゃっていただいて結構なわけでありますが、この点、いかがでありますか。
  129. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員御指摘の二つの答弁は、私どもの理解しますところ、休戦協定が成立した、その休戦協定が基本的に有効に機能している、その間何らかの活動をとるというのであればこれは新たな決議が必要になるんではないかという趣旨のことを申し上げた。当時、条約局長の方からは、もしも休戦協定違反、完全な違反のような行為が行われればこれは当然反撃し得ることになるということをあわせ御答弁申し上げていると記憶しております。
  130. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 このことについてはいかが整理されるんでしょう。  例えば、一九五〇年の国連決議の有効性の問題でありますけれども、この点について、残念ながらと申し上げたらこれも恐縮でありますが、北朝鮮は国連に加盟をしているわけであります。例えば、福田外務大臣は一九七二年四月二十七日の答弁で、一九五一年の中国を侵略者として非難した国連決議は、とにかく中国が国連に加盟したということで当然消滅したものだという解釈をとるということをおっしゃっているわけでありますけれども、こういうことを考えていくと、残念ながら、あの当時の決議が本当に有効なのかというふうに疑問を持たざるを得ないと思いますが、その点についてはいかがですか。
  131. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  国連の決議が採択されました後に、その後の国際情勢の変化に応じてその決議がそれなりに生々流転していくということは、当然あることでございます。その中で、委員御指摘の、例えば朝鮮戦争に絡まる中国の非難決議は、中国が国連に加盟するということになって事実上その意味を失っていくということも当然あることと思います。  しかしながら、朝鮮半島の基本情勢に関しましては、北と南が対立しており、その対立との関係で朝鮮国連軍というものが派遣されている、北と南のそういう意味での緊張状況が続いているということは厳然たる事実でございます。北朝鮮と韓国が国連に加盟した後も、その状況が続いておるわけでございます。したがいまして、そういう文脈におきまして、朝鮮戦争の際に採択されましたこの三つの決議というものは法律意味はまだ失っていないと私ども考えており、これが国連社会の基本的な認識であるというふうにも考えております。
  132. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 実は、この議論はかなり用意をしてきて、先ほど余り答弁いただけなかったのでありますが、用意をしてきたのでありますが、余り詰めていくと手足を縛るということにもなりかねませんから、余り今回はいたしません。  では、今の議論はおいておいて、例えば、新たな決議があって朝鮮国連軍が動くという事態になった、その事態において我が国は朝鮮国連軍を構成する米軍に対しては後方支援を行うことができる、これは既に答弁がありますし、私も当然のことだというふうに思います。では、米軍以外の朝鮮国連軍を構成する他の国の軍隊に対しては何をどこまでできるのか、国連軍地位協定あるいは吉田・アチソン交換公文あるいは岸・ハーター交換公文等々により何がどこまでできるのか、この件について御答弁願います。
  133. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 玄葉先生御指摘のとおり、朝鮮国連軍に関します我が国での地位、待遇につきましては、国連軍地位協定が現在も有効でございます。したがいまして、基本的にそれに従った待遇と申しますか、地位が与えられるということでございます。  ちなみに、そうなりますと、米軍以外の朝鮮国連軍につきましては、当然のことながら、現在政府から提出しております周辺事態安全確保法に基づきます後方地域支援ということは行うことはできないわけでございます。これらの米国以外の朝鮮国連軍に対する我が国における支援の代表的なものと申しますれば、定められております施設の使用それから免税措置、いろいろ調達する際の免税措置等がこの協定に定められているわけでございます。  なお、あくまで一般論として申し上げれば、当然のことでございますけれども、米軍以外の朝鮮国連軍であろうが、我が国の施設を使用するに際しまして、みずから必要な物資、役務をみずから調達するということは当然可能でございます。
  134. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 実際にあり得る事態なんで、少し整理をしておきたいと思いますけれども、今おっしゃった施設の使用というのは一体何なのか、あるいは国連軍地位協定二十五条の合意議事録に、十分な兵たん上の援助を与えることができる、こう言っているわけでありますけれども、これは具体的には一体何なんですか、あるいはその施設というのは一体何なんですか、御答弁いただけますか。
  135. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 米軍以外の朝鮮国連軍の我が国におきます地位につきましては、国連軍地位協定我が国における施設の使用が一定の範囲で認められているわけでございますけれども、この協定に関します合意議事録の地位協定第五条に関する規定からも明らかなとおり、想定されておりますのは、朝鮮国連軍の活動はすべて我が国において兵たん上のものであるということでございます。したがいまして、当然のことながら、その施設の使用の態様というのは、朝鮮国連軍たる米軍が我が国の施設・区域を使用する場合とは異なっているわけでございます。  それから、現在国連軍地位協定のもとで米軍以外の朝鮮国連軍に対して使用が認められておりますのは、七つの在日米軍施設・区域でございます。現在のところ、朝鮮国連軍専用の施設というものは、実際問題としてはございません。  七つと申しますのは、キャンプ座間、横須賀の海軍施設、佐世保海軍施設、横田飛行場、嘉手納飛行場、普天間飛行場、それからホワイト・ビーチ地区ということでございます。
  136. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 今御答弁あったように、米軍以外の朝鮮国連軍の他の国の軍隊に対しても七つの在日米軍基地の使用を認めるということでありますけれども、基本的なことですけれども、具体的に聞きますね、わかりやすく整理したいと思いますから。  例えば、では、傷病者の医療とか給油、給水、これは米軍以外の朝鮮国連軍を構成する他の国の軍隊に対してはできるんですか、できないんですか。
  137. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 お尋ねの具体的な点につきましては、それぞれ具体的なケースで協議、調整を要することかと思いますが、基本的に申しますれば、国連軍地位協定上、米国以外の国連軍が認められておりますのは、施設の使用、それから日本におきます兵たん上の物資の調達、役務の調達等ということでございますので、今のお尋ねの、例えば水であるとか何か、そういう補給につきまして、兵たん上の行為をみずからの調達行為として行うということは可能なわけでございます。  それから、傷病といいますか医療につきましても、これはその時々の状況によって異なる点があるかもしれませんけれども、通常の医療のサービスを受けるということは可能であろうと思います。
  138. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 ちなみに、施設の中には自治体が管理する空港も含まれているというふうに考えてよいのですか。
  139. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 ただいまの御質問を正しく理解できたかわかりませんけれども、現在、米軍以外の朝鮮国連軍が使用を認められておりますのは、先ほど申しましたキャンプ座間以下の七つの地区でございます。これは、日本と国連軍の間の合意、それから、これは在日米軍施設でございますので、日米合同委員会の合意というような手続を経て認められているわけでございます。  その他の朝鮮国連軍の専用の施設というものはございませんが、法律的に申しますと、協定上は合同会議の合意によって提供施設というものが決められる、こういうことでございます。  ただし、具体的に自治体の施設がどうかということにつきましては、そのようなケースはこれまで検討対象となったことはございませんと私承知いたします。したがいまして、ちょっとその辺については、もう少し検討の要があるかというふうに思います。
  140. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 国連軍地位協定の五条の二項、あと日米地位協定の二条の四項の(b)で考えると読むのかなというふうに思ったのですけれども、これはまだ含むとは限らないというふうに理解してよろしいんですか。確認の意味で、済みません、もう一度御答弁願います。
  141. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 委員御指摘の日米地位協定の二条四項(b)というのは、一定の期間を限って米軍の使用を認めるものでございますけれども、そのような規定は、この国連軍の地位に関する協定については、五条にも見当たらないと存じます。
  142. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 はい、わかりました。では、含まないというふうに基本的には理解して、ただ、具体的なケースは合同委員会を通じて協議をしていくということだというふうに整理をしたいと思います。  次に、多国籍軍への後方支援の問題でございます。  このときの多国籍軍というのは、議論の前提として想定したいと思うのは、イラクのクウェート侵攻によって編成された国連安保理決議による多国籍軍であります。その多国籍軍が周辺事態において編成された、そう想定して議論したいと思います。  これまでの政府の統一見解を読ませていただきました。改めて確認をいたしますと、「多国籍軍に対しての後方支援等については、この多国籍軍の概念そのものがまず明確ではありません。そこで、これに対する後方支援については、周辺事態安全確保法案にあるいわゆる後方地域支援とは異なりまして、いまだ法案も作成されておらず、具体的関与のあり方については今後さらに検討を進める必要がある。」  その上で、「一般論として申し上げれば、憲法上、多国籍軍にいかなる後方支援をなし得るかにつきましては、個々の具体的ケースにおいて武力の行使と一体化するかどうかとの観点から判断されるべきものでございます。さらに、実際に多国籍軍に対し武器弾薬の輸送を含めいかなる後方支援を行うかにつきましては、憲法解釈上の問題を加えまして、諸般の情勢を総合的に勘案した上で慎重に判断すべきものと考えております。」そのように理解をしております。  そうすると、例えばこの周辺事態安全確保法案国会を通った、その時点周辺事態が起きて、先ほど申し上げたような湾岸型の多国籍軍が編成された、そのときに、多国籍軍を構成する米軍に対しては、我々は、既に答弁があるように、日米安保条約の目的の達成に寄与している米軍であれば、それは後方支援を行うということでありますけれども、それでは、米軍以外の国の軍隊に対しては何がどこまで行えるのか、このことについて整理をしたいと思います。御答弁願います。
  143. 高村正彦

    高村国務大臣 一般の多国籍軍に対する後方支援については、委員が先ほど政府統一見解はこうですねと読み上げられたとおりのことでございます。
  144. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 ということは、現時点において、つまり、例えば米軍との間には、このようにガイドライン関連法案法律整備をして法律の根拠を置くわけですよね。そうすると、先ほど私申し上げたように、この法案が通った後、湾岸型の多国籍軍ができた、しかし、多国籍軍に対する後方支援については、憲法解釈上は可能だけれども法的整備はなされていない。その段階で、後方支援というのはどこからどこまでやれるんですか、そういう話ですよ。法律の根拠なくしてやれるんですか。
  145. 高村正彦

    高村国務大臣 ですから、法律の根拠がないことはできませんから、自衛隊法等で何かあることはあるかもしれませんが、周辺事態安全確保法案において整備もされない、既存の法律にもない、こういうことは当然できないことになります。
  146. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 では、法律の根拠なくしてはできない。だから、例えば防衛庁長官が、多国籍軍への後方支援について、米軍にはやるけれどもイギリス軍にはやることがないという記者会見をどこかでされましたけれども、そういう整理でいいわけですね。  ただ、一般的に、あの政府の統一見解を聞いていると、憲法解釈上可能だ、その時々の内閣の判断によってケース・バイ・ケースで対応するんだというような解釈を何かしたくなるような政府の統一見解だと私自身は思っておりますから、その辺については整理したいんですね。  ちなみにイラク、これは一九九〇年ですか、イラクのクウェート侵攻のときに、我が国は閣議了解で、水とかあるいは食糧とか医療品を送っていますよね。あれもいわば広義の意味では後方支援なのかなと私などは思いますが、何がどこまで法律の根拠なくしてできるという整理をしたらいいのか。その件について、いかがですか。
  147. 高村正彦

    高村国務大臣 私がお答えすべき範疇に入るのかどうかよくわかりませんが、いやしくも自衛隊を動かすような場合には法律の根拠がなくしては動かせない、そういうことを申し上げたつもりでございます。
  148. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 それでは、この件はわかりました。  あと、せっかくなので一つ宮澤大蔵大臣にお尋ねをしたいと思いました。  実は、総論のときにと思ったのですけれども、先ほどこれを読んでいたら、このような記述がございました。宮澤先生と中曽根先生の「改憲護憲」という対談であります。この中に、「多国籍軍なんかでも、どんな決議があっても参加することはできないと考える。」その上で、「私は湾岸戦争のとき、後方支援というものが武力行使に結びつかない形で可能かどうか、かなり具体的に検討しましたが、それはもう非常に危ないなと思いました。」と素直に言っていらっしゃいます。  これと、私が不思議だなと思ったのは、自自の合意の中に、いわば国連の平和協力活動については、武力行使と一体化しない限りとは書いてありますけれども、積極的に参加、協力するんだとおっしゃっていて、宮澤大蔵大臣はどのようにその自自合意をごらんになられたのかなと。この機会にお聞かせいただきたい、そのように思っております。
  149. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いろいろ考えは持っておりますけれども、所管事項でございませんので、詳しくは申し上げるべきでないと思うのですが、湾岸戦争のときに、いわゆる後方活動の中で、通信とか輸送とかいうことになりますと、日本の周辺でございませんから、少なくとも敵からは敵対行為と見られる可能性は非常に強くはないかということを思ったのは事実でございます。しかし、この間の自自両党の間のお話というものは、当然のことながら、そういうふうな外国における武力行使をしてはならない、そういう我々の持っている憲法の解釈の中のものであろう、それをはみ出すものではない、私はこういうふうに考えております。
  150. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 いろいろ考えがありますがというところに、いろいろ含まれているのかなというふうに思いました。  次に参ります。  今回の質問は、私はかなり懇切丁寧に、事例まで挙げて質問通告をいたしました。残念ながら余り答えてもらっていないというか、先ほど答えてもらえなかったわけでありますが、きょう新聞の記事を読んでいて、聞こうかと思ったことが一つございます。このことは通告していませんが、お尋ねをしたいと思います。なぜかというと、今後の国会における修正協議とかかわる問題なので、けさの新聞に出ていたことについて、その関連でお尋ねをしたいというふうに思います。  もし、国会承認事項に、基本計画全体が、あるいは自衛隊出動全体がなったというふうに仮定をします。そこで周辺事態が起きて、国会に基本計画全体あるいは自衛隊出動全体がかかってきた、それが否決をされた。そのときに、例えば防衛庁長官が、基本計画の中には機雷掃海も盛り込みます、そのように答弁をされましたけれども、本来、自衛隊法九十九条あるいは百条の八でできるであろうはずの機雷掃海や邦人救出、これは、基本計画全体あるいは自衛隊出動全体が否決をされたことによって不可能になるのかどうか。この点についてはいかがでありましょう。  防衛庁長官にということではありません、だれかお答えできる方がいらっしゃれば答えていただきたい。これは国会の修正論議にかかわるので、あえてお尋ねをしたい、そのように思います。
  151. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 基本計画には特に重要な事項を書くということになっておりまして、ですから、在外邦人の救出の問題とか機雷の除去の問題も書くのでありますが、承認されなくなったからといって、自衛隊法で認められている機雷の除去ができなくなるということにはならないと思います。
  152. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 わかりました。今のことを踏まえて国会の修正論議に臨みたいというふうに考えております。  それでは次に、その国会承認問題でありますが、今までの議論の中で、一つというか、特に気になった点であります。  野呂田防衛庁長官は、国会承認事項としない理由として、その重要なものの一つに、治安出動との関連でおっしゃったんだと思いますけれども、他の法律との均衡を考え国会承認事項としない、そうおっしゃったわけでありますけれども、しかし、だったら、PKO本体業務については国会承認事項になっております。また、その二年を超える継続については国会承認事項となっております。そのPKO法案との均衡といった点については、いかがお考えになられますか。これは通告していますから。
  153. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 私がしばしば、他の法律とのバランスを考えて報告が妥当であるという考えを述べているところでありますが、自衛隊法に定められている海上警備行動や、あるいは要請による治安出動が、警察官職務執行法武器使用規定が準用されるというような強制力を持っている活動であるにかかわらず国会承認が必要とされていないことを考えれば、この法律に基づく活動はいずれも何ら強制力を伴わないものでありますから、これを行う際に策定される基本計画については必ずしも国会承認を得る必要はなく、基本計画を遅滞なく国会に報告して、国会の議論を踏まえつつ対応措置を実施していくことが適切であると考えるというふうに答弁してまいりました。  また、委員から今ありました、さらに、本法案に基づき行われる自衛隊の活動の性格を、PKF本体業務等の他の法律に定める自衛隊の活動との比較で申し上げますと、武力の行使を含むものでないという点で自衛隊法に定める防衛出動とは異なるということ、それから、国民の権利義務に直接関係するものではないという点で命令による治安出動と異なるということ、さらに、迅速な決定を要するという点で国際平和協力法によるPKF本体業務とはそれぞれ異なる性格のものであるということを考えまして、そのような答弁をしてきたところであります。  このように、他の法律及び活動の性格との均衡といった点を勘案しますと、この法案における基本計画については、事前にせよ事後にせよ、必ずしも国会承認を得る必要はなく、基本計画を遅滞なく国会に報告し、国会での議論を踏まえつつ対応措置を実施していくことが適切であるということを、これまで申し上げてきたわけであります。
  154. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 今おっしゃった、一つは迅速性だ、もう一つ国民の権利義務との関係だ、もう一つは武力行使との関係だということでありますけれども、まさに長官が頻繁におっしゃる他の法律との均衡、整合性、これは私も、おっしゃるように大事だと思います。  だったら、このPKO法案とのバランスというのを考えたときに、どうでしょう。PKO、PKF活動というのは、国連の枠組みによる活動であります。基本的には遠隔地で行われます。国民の権利義務とどちらが関係あるか、周辺事態と。それは周辺事態の方が重いんじゃないか、そう考えるのが普通じゃないでしょうか。  あるいは、おっしゃった武力行使の話にしても、それは、今まで議論があるように、あるいは外務大臣もお認めになられたように、武力行使と一体化する危険性というのは、それは現実には危険性はあるわけであります。しかし、PKFというのは、基本的に中立的な立場で入っていくわけですから、敵対行為と見られることは、可能性としては周辺事態よりは低い。  迅速性の問題については、これは、事後承認を一部例外的に認めれば済む話でありますから、そういうことを考えたときに、PKO法案とのバランスを考えたときに、どう考えてもそのバランスという観点からはおかしいのじゃないか。つまり、国会承認事項とPKO法案がなっていて、しかし今回の法案についてはなっていない。どうですか。
  155. 高村正彦

    高村国務大臣 ちょっと、防衛庁長官がお答えする前に、私は、武力行使と一体化する可能性があるなどと申し上げたことはございません。
  156. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 国際平和協力法におけるPKF本体業務というものは、特に迅速性を必要とされているものではないという点において、私どものこの法案とは異なるものである、こういうふうに考えて申し上げているわけであります。
  157. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 ですから、何回も申し上げているように、例外的に、緊急の場合は事後承認を認めるということを言っているわけでありますから、その答弁は通用しないというふうに思いますが、いかがですか。
  158. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 この法案国会審議において変更することがあり得るならともかく、私どもは、この法律である限りはそれでいいと思っております。
  159. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 PKO法案との関連でいえば、つまり、これとの法的整合性ということを考えたら、法的バランス、法的均衡ということを考えたら、今、全く反論できなかったわけでありますから、まさに国会承認事項とせざるを得ないということがわかったかなというふうに思います。  ちなみに、小渕総理、先週だと思いますけれども山中委員の御質問に対する答弁の中で、国民は賢明であるというふうにおっしゃったことを記憶しているんじゃないかと思います。議事録を読みましたから、そのように間違いなくおっしゃっておられます。  国民が賢明であるということであれば、国民を信じて、またその代表者である国会を信じて、国会承認事項とされたらよいのではないかというふうに思いますが、総理、いかがですか。
  160. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 我が日本国民は非常に賢明だというふうに認識しておりますが、国民によって選ばれた国会議員によって選ばれましたのが、また内閣を構成しておるわけでございますから、その内閣として提案いたしております法案でございますので、その点も御理解をいただきたいと思います。  修正の問題については、いろいろと国会で、今もお尋ねの中に、御主張の中にまたございますが、これは、国会においていろいろ御議論をいただくことでなかろうかというふうに考えておりまして、要は、最終的に、我が国の平和と安全を守り得るようなものとして、国民自体が御納得のいただくようなこととしてこの法律を制定していくわけでございますので、政府といたしましては、今、防衛庁長官が答弁申し上げましたように、この法律案につきまして、ぜひ御理解をいただきたいということでございます。
  161. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 議院内閣制の論理はそうでありますけれども、直接国民に選ばれているのは国会議員でありますから、私は、国民は賢明であるとはっきりおっしゃるのであれば、今までの議論からしても、国会承認事項としなければならないというふうに思います。  次に移りますが、船舶検査のことで一つだけ確認をしておきたいというふうに思います。  船舶検査は、三条の三項で、国連安保理決議があって、その結果行われる経済制裁があって、さらに国連安保理決議の要請があって行われるということでございます。私は、むしろ、その実効性という観点からどうなのかなと思うときがあるわけでありますけれども。  お聞きをしたい、あるいは確認をしたいと思うのは、安保理決議というのは、どこかの国が拒否権を発動すればそれで行われないということなんだろうと思いますけれども、一方、大分前でありますけれども、平和のための結集決議というのがあったかと思います。つまり、国連安保理が機能しないというときに、それに準ずるものとして、国連総会の決議というものを充てるというものでございます。  これは、この三条三項で言う国連安保理決議にかわるものになり得るのかどうか、その点について確認をしておきたいと思います。     〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕
  162. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態安全確保法案における船舶検査活動とは、周辺事態に際し、国際連合安全保障理事会の決議に基づく貿易その他の経済活動に係る規制措置の厳格な実施を確保するために必要な措置を要請する国際連合安全保障理事会の決議に基づき行われる活動とされておりまして、この法案のもとで、安保理決議のかわりに総会決議に基づき船舶検査活動を行うことはできません。(玄葉委員「できない」と呼ぶ)できません。  周辺事態安全確保法案における船舶検査活動については、周辺事態において、経済制裁の実効性を確保するための船舶検査が必要となることも想定されたわけであります。その際には、旗国主義との関係から、国連安保理決議があれば、国連憲章第二十五条により、各国に受忍義務が生ずることもあり、政府としては、周辺事態において国連安保理決議による要請があることを前提としたわけでございます。  一般論として申し上げれば、加盟国は、憲章第二十五条の規定により、安保理の決定を受諾し履行する義務を負っておりますが、総会決議については、このような義務について、国連憲章上、特段の規定はなく、仮に総会決議で船舶検査活動を行うことが求められたとしても、直ちにそのことで旗国主義との関係が解決されるわけではない、こういうふうに考えております。
  163. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 了解しますけれども、そうなると、実効性という観点からするとかなり心配だなというふうに思います。  次に移ります。一つ、これも確認であります。  周辺の範囲については、もう余り言うつもりはありません。イエス、ノーで結構ですから、一言で答えていただきたいと思います。  よく、これまでの議論の中で、いわゆる米軍が、あるいは自衛隊がどこまでいくかわからない、少なくとも、その線引きについて理論的可能性は排除されない、つまり、無限定であるという理論的可能性は排除されないという話が大分出ています。そういう意見が質問の中で出ています。私は、私なりの整理は、基本的に米軍については限界というのは理論的にはあるんだ、それは日米安保六条と今回の周辺事態法三条において必然的に限界というのがあって、当然、周辺事態において活動する自衛隊もその結果として限界がある、そのように私は理解をしていますけれども、イエス、ノーで結構でありますが、外務大臣いかがですか。
  164. 高村正彦

    高村国務大臣 私は、この問題については、全く観念的なことを述べることは余り意味があるとは思わないので、現実問題としてそんな遠くまで行ってしまうということは想定されない、こういうことだけはっきり申し上げておきたいと思います。     〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕
  165. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 各論で邦人救出のことも通告をして用意をしてきたのですけれども、あと十分もありませんので、総理と宮澤大蔵大臣に総論的なことを一つ二つだけ、私も初めてのここでの質問なので、お聞かせいただきたいと思います。  なぜこういうことを聞こうと思ったかというと、先週ですか、東委員日米安保について御自分の御主張をなされた、そのことを聞いて、ぜひ一度総理と、また宮澤元総理にお尋ねをしておきたいなというふうに思ったわけでありますが、それは、同盟とは何かという話でありました。  同盟という問題を考えるときに、軍事的に双務的でなければならない、それが本来あるべき姿である、あるいは日米安保という問題を考えたときもそうである、そういう議論あるいは意見があるわけでありますが、この点について総理と宮澤大蔵大臣はどのようにお考えになられるか、お尋ねをしたいと思います。
  166. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 軍事的な意味での双務性ということはなかなか難しい問題でございますが、日米安保に関する限りは、この体制の中で、過去四十年間、我が国及び極東の平和に安全をもたらしただけでなく、アジア太平洋における安定と発展のための基本的枠組みとして有効に機能いたしてきておることは事実でございまして、この点について、九六年の日米安保共同宣言におきましても、日米安保体制が二十一世紀に向けてアジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎であり続けることを再確認いたしておるところでございまして、政府としては、今後とも、日米安保体制の堅持を安全保障政策の重要な柱の一つとして維持し、その信頼性を一層向上させていかなければならないと考えております。  世に、この日米安保条約は片務的でないか、むしろアメリカの議会においてそういう主張をされる方々が若干おることは承知をいたしております。  しかし、軍事的に双方がその国の安全保障、すなわち、米国は日本に対して、日本が米国にという形になっておりませんことについて片務性だということを言われる向きにつきましては、この日米安保条約というものが存在をすることによって、もちろん日本の安全は確保されておるということであると同時に、極東における平和と安全に対しての責任も果たされておる、そのことは広く言えば世界の平和につながっておるという観点から考えますれば、この日米安保条約というものにつきましては、その果たしてきた役割というものは、世界のいろいろな条約の中にありましても、当然この条約の意義というものは理解をされておるものと認識をいたしており、このことは、同時に日本と米国の利益にも相通ずるものだ、こう私は考えております。
  167. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 日米の平和条約ができましたのは昭和二十六年の九月でございますが、私も全権団の随員として参っておりました。講和条約が調印された同じ日に、吉田首相が一人だけ別のところで日米安保条約というものを調印せられたわけでございます。  その後、六〇年安保等々いろいろございましたけれども、きょう考えますと、この日米の関係、安保条約というものはただ安全保障の面だけのものではありませんで、お互いが知っておりますように、広い意味で政治、経済、文化等々価値を同じくした二つの国が、その価値を守るために、お互いに幅広い、いわゆるそれを同盟と呼んで私は差し支えないと思いますが、そういう関係に入っている。  そのことは、我が国にとっても大変に利益のあることでありますけれども、アメリカも同様に考えておりますことは明らかでございますし、また狭い、そのセキュリティーだけの面におきましても、いろいろな意味で、かつてこの条約が初めて結ばれましたときにアメリカにバンデンバーグ決議というものがございまして、自分自分を守る力のない国をアメリカは守る必要はない、そういう議論がございましたけれども、今だれもそういうことを言う人はおりません。明らかにこの関係から両国とも利益を感じておりますし、その利益は非常に幅の広いものでございます。  殊にまた、きょうこうやって御審議いただいておりますような措置が現実になりますと、ますますそういうセキュリティーの面でも信頼関係が深くなると思いますが、同盟関係というのは、両国について言えば、そのように大変幅の広い、深いものであって、いわばお互いの国がお互いを支えている大切な柱であるというふうに考えております。
  168. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 私自身も今、冷戦後いまだにアジアには脅威が存在をして残念でありますが、同時に、欧州と違って我々は、いわば集団的なといいますか、地域的な安全保障の枠組みがない。こうなると、好むと好まざるとにかかわらず、日米安保の将来というものをいかに大切にしながら考えていくかというのは我々考えざるを得ないと思っています。  そのときに私も大事だなというふうに思うのは、結局、確かに幅広い、今おっしゃったように幅広い、深いところでの関係だということでありますが、全体としての負担のバランスであったり、全体としての負担の均衡であったり、あるいは全体としての負担の公正なのかなというふうに思っています。  きょうはもう時間がありませんからこれ以上質問いたしませんけれども、とはいえ、その負担の公正がこれからも保たれていくのかというと、それぞれに問題を抱えておりますから、私自身は、今トータルとしてかなりの程度負担の公正というのは保たれていると実は思っております。  この間、東アジア戦略報告を読んでいましたら、基地もアメリカは、東南アジアも含めて、日本の基地負担を軽減するためにということもあるのでしょう、アクセスをかなりふやしています。我々はガイドラインをやっていきます。お互いに政策の対話というのもふやそうということであります。私はまだまだ不満な点がありますけれども、ただ、これからこの将来を考えたときには、その負担の中身というのはどうしてもお互いに変化をしていくということはあるのだろうというふうに思っています。  これについては、また別途の機会がありましたら、ぜひ議論させていただきたいなというふうに思います。  以上で私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  169. 山崎拓

    山崎委員長 これにて玄葉光一郎君の質疑は終了いたしました。  次に、桑原豊君。
  170. 桑原豊

    ○桑原委員 民主党の桑原でございます。  今まで、周辺事態というものは日本の平和と安全にとって大変重要な事態である、国民はもちろん、諸外国もその点をぜひ理解してほしい、そして、国民の皆さんにはそのことについての理解と協力を求めていきたいというような立場からいろんな議論があったわけですけれども、私は、ともすれば、この問題は国の平和と安全にかかわるんだから、いかなる、いろんな意見があっても、最終的には生命財産にかかわる問題なんだから、それには国の意向には従わなきゃならぬというような方向での議論というのがどうもかなり目立ったような気がいたします。  私は、国の方はそういう理解に立って説明をするわけですけれども、それを受けとめる国民の側であるとかあるいは日本の周辺の国々の皆さんにとっては、必ずしもそういうふうには映っていないと。言うならば、そのことによって逆に平和と安全に大変な問題が生じたり、あるいは平和と安全を考えていく上でまだまだそういうやり方では問題があるんではないかというふうな批判があったりするわけでございまして、そういった、少し立場を移しながら私は質問をさせていただきたいな、こういうふうに思っております。  そこで、最初から各論に入っていきたいと思いますが、周辺事態法案の第九条でございます。周辺事態に際して、地方自治体あるいは民間に協力を求めていく、依頼する、この条文でございますけれども、まず一つは、この周辺事態法の四条の二項七号でございますが、いわゆる基本計画の中に、こういった自治体や民間の協力事項の種類であるとか内容であるとか、あるいはそれに関する重要事項について盛り込まれる、こういうことになっておるわけでございますが、具体的に、基本計画の段階で盛り込まれるものはどういうものなのか。  例えて言うならばどこどこの港のどういう種類の業務について協力を求めたいというような、具体的な中身までそういった計画の中に盛り込まれるのかどうか。基本計画の段階で示されるのはどういうものなのかということを、これは防衛庁長官になるんでしょうか、まずお聞きをしたいと思います。
  171. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 周辺事態安全確保法の基本計画につきましては、内閣官房の方で、私どもの方で作成することになっておりますので、私の方からお答えを差し上げます。  九条によりまして行うその協力の求めあるいは依頼につきましては、今委員御指摘のとおり、基本計画におきましてその種類あるいは内容等が定められることになります。閣議決定をする際におきましては、例えば艦船の具体的な使用、例えばその使用期間ですとか隻数といったようなところまで、そういった協力の詳細まで確定的にお示しすることは実際問題としては非常に困難ではないかというふうに私どもも思っておりますが、基本的には、その協力の種類ですとかあるいは内容といったことについて一般的に記載をいたしたいというふうに思っておる次第でございます。  なお、今御指摘の基本計画を閣議決定する時点におきましての協力を求める具体的な内容のうち、例えばおおよその港湾の地域、規模といった主要な事項については、個別具体的なニーズ等にもよるわけでございますけれども、できる限り具体的に明らかにしたいというふうに考えている次第でございます。
  172. 桑原豊

    ○桑原委員 ちょっとわかりませんでしたが、例えば、港は何々港というようにもう既に地名を特定するのかどうかということと、それから、そういったことも含めて、今お話しになられた具体的な、例えば、何隻だとかどういう業務に協力を求めたいとかという具体的なことまでほぼ確定的に決定をされるのは、ではどの段階なのかということをあわせてお聞きしたいと思います。
  173. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 具体的な計画を立てる際のニーズ等によるわけでございまして、今確定的にこうだというお答えをすることは甚だ困難ではございますが、今先生御指摘のような、個別具体的なその港湾の名前というものが確定的に挙げられるかどうかはちょっと自信がないところでございます。むしろ、一定の地域ですとかあるいはその規模といったような程度のところまではできればお示しできるんではないかというふうに思っております。  しからば、どの時点で具体的なものが決まっていくかということでございますが、これはそれぞれ、その実際の必要が生じた場合におきまして、それぞれの関係行政機関の長から関係の地方公共団体、あるいは民間の場合でしたら民間にお願いをするという格好になっていくわけでございます。その時点で具体化していく、こういうことでございます。
  174. 桑原豊

    ○桑原委員 どうも、私はそういう答えではよくわかりません。国民の皆さんに協力を求めていく、自治体に協力を求めていくということになれば、やはりそういった内容については国民全体に見えるような形で、しっかりとどこかの時点で協力内容はこういうことなんだということがそれなりにわかるような仕組みになっていないとおかしいと思うんですけれども、それはどうなんですか。実施計画とか例えば実施要領とか、そういったことで国民の皆さんが知ろうと思えば知れるというような状態になるわけですか。そこら辺をちょっと教えてください。
  175. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 これまで累次御答弁申し上げておりますように、地方公共団体等に対しまして求める協力の中身の具体的な例としましては、あるいは空港ですとか港湾ですとか、あるいはまた危険物貯蔵所の設置の際の許可ですとかといった例をこれまでも挙げてきておるわけでございます。そういったことにつきましては、基本計画の中で書いていくということになろうと思います。  ただ、ではそれが具体的にどこの市町村のどこだ、こういうことになりますと、これは、計画というよりはその時々の必要に応じて決まっていくものでございますので、先ほど申し上げましたように、それぞれの行政機関の長からお願いをしていくという格好になります。もちろんその時点では、秘密にすべきことではありませんので、そのお願いをしたこと自体は明らかになる、こういうことでございます。
  176. 桑原豊

    ○桑原委員 そういった内容のことがやはりそこの自治体に生活をする人々にもちゃんとわかって、我が町の我が港にはこういった協力が求められておるんだというようなことがやはり理解をできるような仕組みにぜひ考えていただきたいと思いますし、それがなければ、いつの間にか協力が求められていつの間にか応諾がされた、こんなことでは、私は、理解と協力を求めていくという基盤がやはり大変問題だというふうに思いますので、その点はぜひきちっとした配慮をしていただく必要があると思います。  そこで、自治体でも国民の場合でもそうですが、特に自治体の場合ですが、国は協力を求めるけれども、自治体はそれについては異議があってノーと言わざるを得ないというケースもあろうかというふうに思います。そういったことがちゃんと、ある意味では正当な権限に、理由に基づいてそのようなノーというようなことになったということであれば、それがちゃんと保障されなければいけないというふうに私は思うんですけれども、あくまで国とそれから自治体が争うようなこともあろうかというふうに思います。決着がつかない。  今度の地方分権の法案の中では、そういう際に、国と自治体の係争を処理していく、そういう第三者機関がつくられるということになって、その結果、勧告の機能を持つ、あわせて、それで不服ならば高等裁判所へもさらに訴えることができるというような制度ができてくるわけでございますけれども、そういった問題について、そのような機関で調整をしていくというようなことが想定をされているのかどうか、その点について、これは自治大臣ですか、お願いいたします。
  177. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 周辺事態というのは極めて緊急事態であると思いますので、そのようなことを調整機関で行ったり来たりしておるような余裕はないと思います。  それから、先ほどいろいろ御指摘もあったんですが、自治体に具体的にどの港、どの空港の使用についての協力を要請するかということは、おのずから、発生する事態の内容によって日本側の自治体における協力の内容そのものも変わってくると思います。少なくとも、緊急、短期間の間に大量の避難を受け入れる体制が必要になるというようなことであるならば、あらかじめ云々という、その空港なり港湾の数にしたって異なるであろうし、そういう意味で、どういう事態が現実に展開されるかというのは、まさにそのケースにならないと、その基本計画そのものの内容においても異なってくるだろうというのは、私は常識論だと思っております。  そういうような状態の中で今御指摘のようなことをどう判断をするかということでございますが、そういうような緊急事態であるということであれば、本法の第九条に基づく地方公共団体に対する協力を求めるというこのことは、私は、一般的な義務を伴うものであるという今日までの政府としての答弁、そのとおりだと思います。しかし、それはあくまで一般的な義務ということであって、いわゆる本法に基づく制裁的な裏づけがあったりという意味での強制力はない、正当な理由があればこれは拒むことができる、こういう性質のものでございます。  なお、論理の世界として、今御指摘の地方分権一括法案との関係ということで、本法の第九条の条項ということに、言うなら、法律論の世界で展開するとすれば、この九条に基づく協力の求めというのは、地方公共団体に対して国が命令とか指示とかいうような形で行われるということではない、ということであれば、国として地方団体に対して行う処分という範疇には属さないものである。そういう意味で、国としての処分というようなことでないということであるならば、この協力の求め自体ということは、新しい国と地方の間の紛争処理といいますか係争処理手続としての対象にはならないということが言えるのではないか。  ただし、これは本法九条という論理の展開であって、別途、他の港湾法等々に基づくその種の世界ということであれば、これは管理者としての立場についての国と地方の権限関係ということは、おのずから今申し上げたこととは別の問題としてあり得るということは申し上げたいと思います。
  178. 桑原豊

    ○桑原委員 法理論的といいますか、そういうことでは、例えで今例にお挙げになった港湾の管理権の行使をめぐってそういったことが争いになるということはあり得ることだということでございますけれども、ともかく緊急事態なんだから、協力とはいえ一般的義務なんだということになれば、これはもう私は、残念ながら、現状において国は地方に対してある意味でのいろいろな権限を行使し得る立場にございますし、財政的な面でも補助金などを通じていろいろな支配が及んでいるのが現実でございますから、なかなか地方がそういったことに逆らってノーと言うのは、現実では極めて難しいということになるわけです。  そういう意味で、私は、地方の長にしても、そこに住まう住民の生命と財産については最大の責任を負うことに変わりはないわけでございますから、そういう立場で違った主張もあり得ると思うんです。そこら辺、やはり配慮しながら対応していかないと、ともかくこれは国の一大事なんだ、大変なことだ、何でもかんでもこれはもう最後は従ってもらわないとだめなんだというようなことでは、それはなかなか、この先いろいろな問題を対応していくときに、そういったことでは問題が逆にこじれてしまうことになりかねないということで、一般的義務と言われましたけれども、ぜひそこら辺は慎重な対応をしていただきたいということを重ねて申し上げておきたいと思います。  それから、今度は民間の場合でございますね。民間の場合は、私は、この種の協力の依頼に対しては、これは一〇〇%民間の自由な判断、意思に基づいて、応ずるあるいは応じないと言うことができるというふうに思いますけれども、この点についてはどうでしょうか。
  179. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 法案の九条第二項でございますが、「前項に定めるもののほか、関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、国以外の者に対し、必要な協力を依頼することができる。」ということで、第一項の場合の「求めることができる。」という文言とは違う表現をしております。  この趣旨は、かねて申し上げておりますように、あくまで民間側とのいわば契約等によって最終的には決定されることでございますので、これについて何ら民間側に義務を負わせるものではない、こういうことでございます。
  180. 桑原豊

    ○桑原委員 まさにそのとおりだと思うんですが、ただ、民間の協力を依頼していくというのは、国民の一人一人に依頼していくわけではございません。いわゆる会社との契約とか団体との契約とか、そういったことで民間に協力をお願いする。結果的に、そこに働く人たちにとっては、その会社との契約に沿って仕事に従事をしていくということになるわけですから、私は、そういう意味では、契約をして応諾をすれば、そこに働く人たちは半ば強制をされてそれに従っていかざるを得ないというのが現実だというふうに思います。  例えば、武器弾薬を空輸したり、あるいは陸上の輸送でもそうですが、そういうふうな仕事に携わる場合に、そういったことが武力行為と一体化をしていなくても、いわゆるテロの目標になったりということで、大変な危険を感じながら仕事に従事をしているという現実があるわけでございまして、そういった人たちが、我々は、会社ではそういう契約はしたけれども、私はそれにとても従う気にはなれないということで、国民の一人がそのことに反対をするというようなことがあったとしたら、そういったことについて、不利益な待遇を受けないというようなところをきちっとある意味では保障して初めて、民間の国民の自由意思が尊重されるというように私は思うわけですけれども、その点について、そういったことまで配慮しているのかということをお聞きをしたいと思います。これは防衛庁長官でしょうか。
  181. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 法案の九条二項で、国以外の方々についていろいろ依頼することができると定めておりますのは、それは当然法人等も含むわけでございますし、事業主体を指しているのだと思います。  その中で、実際に国なりあるいは米軍なりと契約を結んだ事業者とその従業員との関係についてまでこの法律で何かを言っているわけではございませんし、それはそれぞれの法律関係で規律されるべきものではないかというふうに存じます。
  182. 桑原豊

    ○桑原委員 そういったことで、これからそれぞれの企業の中で労使関係などを通じて私はいろいろな問題が生じてくるというふうに思うんですけれども、そこら辺、本当に国民の側に立って、そういった判断というものが尊重されるような仕組みというのを本来的にきちっと保障すべきではないか、こういうふうに思うことを意見としてつけ加えておきたいというふうに思います。  それから、自治体の話にちょっとまた戻るわけでございますが、現在、「協力を求める」ということで、周辺事態になったらいろいろと求めていくわけですけれども、例えば、今度の地方分権一括法の中でいわゆる特措法が改正になっております。そして、例の、新規の基地の使用、収用などに関して、従来の手続を変更して、最終的に国の強制力が担保されるような仕組みに変えられておるわけでございますけれども、一方で協力を依頼する、しかし一方ではそういった問題について国の強制力が働くというような形で、私は、この法律では協力依頼なんだが、別の角度からはかなり強制的だというようなことが随所にこれからもし同じように出てきたら、これはもうこの周辺事態法の協力依頼などというのは余り意味をなさないというふうに思うわけですけれども、そういった点について、周辺事態ということに関連して一体どの関係が優先されるのかというようなことなども一つの法理的な問題としてはあるのではないかというふうに思うのですが、その点についてお伺いしたいと思います。
  183. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 今回国会に御提案申し上げます地方分権一括法、この法案におきまして駐留軍用地の特別措置法の改正案を盛り込んでおることは御指摘のとおりでございまして、この部分は、地方分権推進委員会の第三次勧告を受けて、国が安全保障の義務の履行を行う、国が最終的なその責めを負うという仕組みに改めるということでそういう改正案になっておるわけで、この点は、土地調書などの署名押印等の代行の事務は国の直接執行とするとともに、緊急裁決あるいは代行裁決の導入を行うこととしておるわけでございます。しかし、これはあくまで駐留軍用地の取得、確保の話でございます。  今御審議をいただいておる問題は、この問題とは異なって、まさに周辺事態にどう緊急対処していくかという極めて緊急性の高い世界でございまして、先ほども、国と地方の間の考え方の相違をどう調整するかということで、いわばその調整機関における役割などの御議論ございましたが、この点においても、周辺事態が実際に発生してからさて具体的にどのような対応をするかということで、その段になってからこの特措法の適用をどうのこうのということをやっておったんではとてもこれは対応できるような世界の話ではないので、私は次元が違う世界なのではないかというふうに判断をいたしております。  なお、別個の問題であるとしても、この駐留軍特措法は、少なくとも最終的には、私有財産の尊重という要請に配慮して、土地の使用や収用裁決の事務については収用委員会で処理がなされるということでございますし、何よりも、適正な手続を確保することあるいは適正な補償を確保するということにおいて、私はこの個人の私有財産の保護という基本的な原理は守られておるというふうに判断をいたしております。
  184. 桑原豊

    ○桑原委員 余り長い議論はこの問題でできないわけですけれども、ともかく、協力を依頼するあるいは求めていく、そういったことで、国民のあるいは自治体の正当な権限の手足、自由意思、そういうものを制限したり傷つけたり、そういうことのないような配慮は最大限していただきたいと思いますし、それから、周辺事態というものがともかく緊急の事態なんだということはわかるんですが、しかし私は、一方では、周辺事態が起こり得るようなことを想定をしてあらかじめいろいろな意味での準備を進めていくということのために、アメリカ側と日本側のいろいろな段階での協議というものが制度化をされているわけですから、そういった段階でいろいろな絡みのものが私は必ず出てくるというふうに思うので、そういった中でもこういった問題については慎重な配慮をしていくということが絶対に必要だということもあわせて申し上げておきたいと思います。  次に、自衛権の問題と武力行使に関連をしてひとつお聞きをしたいと思います。  自衛権というのは、これはもう国際法規、国連憲章の中でも認められておるわけでございますが、ただ、その自衛権の中身が一体どういうものなのかというのは、相当いろいろな考え方の相違というものがあるように思います。日本考えて今までやってきた自衛権の中身というのは、専守防衛だ、あるいは、集団的自衛権の行使はできないんだというような、憲法から来る一つ考え方、そういうものを踏まえて日本の自衛権というのは組み立てられておるというふうに思うんですが、今度の周辺事態法で相協力をして対処しなければならないという、一方の相手国であるアメリカの自衛権に対する考え方というのは非常に幅広ではないのか、こういうふうに私は思います。そして、現実に、アメリカが世界の至るところでいろいろな行動をし展開をしておりますけれども、そういうものを見れば、とても日本考えている自衛権の考え方とは一致をしないというふうに思うんです。  私は、そうした世界最強の軍隊で、かつそういった幅広の自衛権に対する考え方を持っているアメリカと、そして、憲法のもとで制約された自衛権というもので立国している日本とが協力をしていくということの、ある意味では不安と難しさといいますか、そういうものがこの周辺事態法の中でいろいろな形で反映をしてなかなか議論がかみ合っていかないといいますか、なかなかつじつまが合わないといういろいろな面にそれが出ているのではないかというふうな気がしてならないわけです。  アメリカの場合は、例えば、まだ攻撃をされていなくても、それを脅威と認めるならば先制的な攻撃をしかけるとか、あるいは、テロなども含めて、間接的な侵略に対応していくんだというようなことも含めて、自衛権の範疇で考えているようでございますけれども、これは必ずしも、私は、アメリカの考えではあっても、世界全体がそうだというふうなものにまではなっていないようにも思います。  そういう意味で、まず、アメリカと我が国との自衛権に対する考え方の相違、違いがあるのかも含めて、その点をぜひお伺いしたいと思います。
  185. 高村正彦

    高村国務大臣 日米両国は、国連加盟国としてともに国連憲章を遵守する義務を負っておりまして、こうした義務の遵守を日米安保条約において二国間の義務として確認しているところでございます。  また、新指針においても、日米両国のすべての行為は、国際法の基本原則、国連憲章の基本原則、国連憲章を初めとする関連する国際約束に合致するものであると明確に記されているわけであります。したがって、国連憲章下、自衛権の行使がいかなる要件のもとで認められるかについても、日米両国の間に考え方の本質的な相違があるとは考えておりませんし、その旨は従来から申し上げてきているところでございます。  米国は先制自衛など認めるじゃないか、こういうふうにおっしゃいましたが、国連憲章上、自衛権の発動が認められるのは武力攻撃が発生した場合であり、単に武力攻撃のおそれや脅威があるだけでは認められない。したがって、先制攻撃、予防戦争などということが認められないことは従来から申し上げているとおりであります。米国も、自衛権発動のための厳格な要件のもとで初めてこれを行使できるとしているものでありまして、単に武力攻撃のおそれや脅威があるだけで自衛権行使ができるということではありません。  いずれにいたしましても、日米両国は国連加盟国として国連憲章を遵守する義務を負っており、国連憲章下での自衛権についても双方の考え方の間に本質的な相違があるとは考えておりません。
  186. 桑原豊

    ○桑原委員 どうもそこら辺がよく私は理解ができないんですが、それでは、具体的にお聞きをしますと、今度のガイドラインの中でも、例えばテロ的な行為があったような場合、そういう場合での対応というのは決められておったかというふうに思います。  それから、具体的に、例えば日本有事の際、日本有事の際というのはまたちょっと厳密に言うとそこら辺が難しいところですけれども、アメリカが、集団的な自衛権の発動ということで、先制的な攻撃を日本に武力攻撃をしかけている相手国にやるというようなことを想定した場合に、それは日本の自衛権の考え方からしてどういう場合に可能なのか、どういう場合にそういうことはできないのかという考え方の整理というのはされておられるんでしょうか。
  187. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  後者の方の御質問でございますけれども、大臣から申し上げましたように、米国が先制攻撃というような理念は持っておらないというのが私たちの基本的な理解でございます。したがいまして、安保条約及びこの周辺事態法の適用におきましても、米国が先制攻撃をするという前提で議論をする、物事を考えるということは、私どもとしてはいたさないということでございます。
  188. 桑原豊

    ○桑原委員 先制攻撃はしないという考え方、アメリカはそういう考え方だから、我々も、日本有事の際にアメリカがそういうことをやるというようなことはあり得ないし、もしやるとしてもそれは認められない、そういうことでよろしいわけですね。
  189. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 先生御指摘のような状況というのは、恐らく安保条約で申しますと第五条の事態と関連があるんだろうと思います。  それで、先生の提示された例で申しますと、日本に対する武力攻撃が迫っているという状況で米国が先制攻撃を行うということがあるんではなかろうか、こういう話だと思いますが、安保条約の五条も、もちろん国連憲章、国際法に従った武力の行使、自衛権というのを前提としておりますので、先ほど条約局長からも申しましたとおり、武力攻撃が差し迫っているのみということでは安保条約第五条の発動要件とはならないわけでございますし、我々としましては、米国が、単に攻撃のおそれがあるとか差し迫っている、そういうような状況で先制攻撃という形で、我が国を防衛するためであろうが、違法な武力行使を行うということは考えられない、こういうことでございます。
  190. 桑原豊

    ○桑原委員 それじゃ、先に少し進ませていただきますが、周辺事態という事態についてのイメージをいろいろ凝らしてみるんですが、どうも自分の頭がいま一つすっきりと整理をされないので、そこら辺をお聞きしたいと思うんです。  周辺事態というのは常にアメリカ軍が何らかの活動をしているのか。先ほど、幾つかの支援活動の中には、理論的にはといいますか、法律的にはそういうものが前提にされていないようなものもあるが、現実にはそういうことはなかなか考えられないというような話もございましたが、ともかく米軍が何らかの活動をするということが具体的な問題として常に前提になっているのかどうかということをまずお聞きしたいと思います。
  191. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態が生起した場合、米国は武力の行使を伴わない種々の活動、例えば情報収集とか警戒監視とか、そういったことを行い、まずは事態の拡大の抑制や収拾に努めることが当然想定されるわけであります。したがって、周辺事態になれば米国が必ず武力を行使するということではないわけであります。  また、周辺事態に際していかなる措置を実施するかについては、日米両国政府がおのおの国益確保の見地からその時点状況を総合的に見た上で主体的に判断することになります。  ただし、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える周辺事態が生起している際に、米軍がこれに対応して日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を何ら行っていないということは、実際の問題としては余り考えられないことだろう、こういうふうに思います。  法の体裁とすれば三条一項二号、三号、船舶検査だとかあるいは救難活動とか、そういったことは自衛隊が主体的にできるということになっていますが、そういう場合であっても、実際は、米軍は何らかの安保条約の目的の達成に寄与する活動を行っているだろうということが想定されるということです。
  192. 桑原豊

    ○桑原委員 具体的な活動として米軍の存在、活動があるということが常識的な線だといいますか、具体的にはそういうふうに考えられるということだということですが、今おっしゃった中に、必ずしも武力行使に及ばない段階でも米軍はいろいろな活動をしている、その段階で既に、我が国が、活動しているその内容が我が国周辺事態に当たるというふうな判断をすることはあるわけですね、武力行使以前の段階ででも。それをちょっと確認したいと思います。
  193. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態安全確保法案に基づいて、周辺事態において我が国は、日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行っている米軍に対して後方地域支援、第三条の第一項一号でありますが、これを行い得ることになっているわけであります。  周辺事態が生起した場合、先ほど述べましたように、米国は、武力の行使を伴わない種々の活動、情報収集だとか警戒監視等を行い、まずは事態の拡大の抑制や収拾に努めることが当然想定されるわけであります。したがって、このような武力の行使を伴わない活動を行っている米軍に対し、この法案に基づいて後方地域支援を行うことは当然あり得るわけであります。
  194. 桑原豊

    ○桑原委員 そういう、ある意味では具体的な武力行使に至らない、準備的な段階といいますか、そういう前段でも、周辺事態というふうに認定をして、日本が種々の協力をするということはあるということでした。  そこで、私は、アメリカが武力行使に踏み切る場合というのは、これは言うならば、アメリカにとって、自分考える自衛権の行使としてそういうことがあるんだろう、当然それがなければ武力行使に踏み切れないわけですけれども、そういうことになるだろうと思うのです。周辺事態の中にアメリカの武力行使というものがその内容としてあるという場合は、日本のために武力行使をするということではなしに、日本のためにという場合はできませんね、日本はまだ日本有事という段階ではございません、周辺事態ということですから、アメリカが武力行使をするのは日本のためということではございません。むしろ、アメリカの同盟国のために、同盟国に何らかの攻撃が加えられて、あるいはそういう事態が想定されてアメリカが武力行使をするとか、あるいは国連の何らかの決議に基づいて行動するとか、あるいはアメリカ自身の自衛のためにやるとかというようなことがアメリカの武力行使になると思うのですけれども周辺事態の際のアメリカの武力行使はそういう内容だというふうに考えてよろしいのでしょうか。
  195. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態というのは、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態でありますから、少なくとも日本のためではあるわけです。日本のためだけであるかどうかといえば、それは、米軍自体が攻撃されて個別的自衛権を行使する場合も、あるいはほかの国が攻撃されて集団的自衛権を行使する場合も、あるいは御指摘のように国際的安全保障、国連の決議に基づいてやる場合もあるだろうと思いますが、それは、日本のためでもある場合、周辺事態でありますから当然に日本のためでもある、こういうことでございます。
  196. 桑原豊

    ○桑原委員 私の言っているのは、武力行使に踏み切るのは、自衛権の発動がなければ武力行使には踏み切れないわけです。その自衛権の内容というのは、日本のために武力行使をするということではなしに、結果的にそこによって生じた問題が日本の平和と安全に影響は及ぼしますけれども、武力行使そのものは、同盟国に対するそういう攻撃があって反撃をするとか、あるいはアメリカ自身が個別的な自衛権に基づいてやるとか、あるいは国連の決議でやるとかということで、武力行使そのものはむしろ、日本有事ではないわけですから、日本のためであるということではないということですねというふうに聞いたわけです。
  197. 高村正彦

    高村国務大臣 委員がおっしゃったことを基本的に否定いたしません。それは、米軍が武力攻撃をやることが許される国際的法的根拠は、まさに個別的自衛権か集団的自衛権か集団的安全保障か、どれかに当たる場合でありますからそういうことでありますが、日本がそれに対して後方地域支援等をするのは、これが日本のためであるからそういうことをするわけで、米軍のそういう行動も同時に日本のためにもなっている、こういうことを申し上げているわけであります。
  198. 桑原豊

    ○桑原委員 私は、日本のそういったアメリカに対する協力というものが、武力行使をしているアメリカに協力をするということになれば、結局は、アメリカに協力をするということを通じて、アメリカの同盟国のために戦ったということであれば、特に日本周辺というようなことで考えていきますと、アメリカ自身の個別的な自衛権というよりも、むしろそういったアメリカの同盟国であったり国連決議であったりというようなことになると思うのですが、結果的に日本の協力が、アメリカの同盟国なりそういった国々に対する協力ということになるというふうに思うのですが、それはどうなんですか。
  199. 高村正彦

    高村国務大臣 委員がおっしゃったようなことになることも私は一概に否定をいたしませんが、それもまた同時に、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態の中で、しかも、米国が国連憲章等国際約束に従って行動しているときに日本が後方地域支援等を行うわけでありますから、これは国際法上全く問題もない行為でありますし、それと同時に、我が国自体が有事にならないように、事前に抑止するためにそういうことをやるということは、それは政治的に当然あり得ることだ、こういうふうに思っております。
  200. 桑原豊

    ○桑原委員 武力行使に踏み切るアメリカの主な動機というのは、言うならば、自分の自衛権の発動ですから、例えば同盟国のためにやる。結果的にそれが日本のいろいろな問題に、平和、安全に影響を及ぼしてくるという意味で、ある意味では、アメリカが踏み切ったこの行動の主の部分ではなしに、その結果の従の部分として日本にいろいろな影響がある、そのことに協力をする、どうもそういう仕組みになるのではないのかなと私は思うのです。  そうであるならば、大体、日本周辺でそんなことがやられるとすれば、結局は、ほとんどの日本の協力行動というものが、そういった第三国に対する支援というようなことも含んでくるのではないか。これはアメリカに対する協力なんだからこの部分までしかやれないとか、ここはほかの国にもいろいろな支援になるんだからそれはやらないとか、そんなことは事実上できないわけですから、そうなると、結局その行動というものが、いわゆる日米安保というものの枠内に本当におさまり切れるのかどうか、日米安保の目的から外れるのではないかというふうに私は思うのですけれども、その点はどうでしょうか。
  201. 高村正彦

    高村国務大臣 日米安保の目的は、五条、六条に書かれておりますように、日本及び極東の平和と安全でありますから、この法案は、周辺事態日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態ということで、その日米安保の中の目的の中でもより絞ったものがなっているわけで、そういった観点から、日本が何をするかということについても常に国益に照らして判断をする、こういうことでございます。もちろん、その前提として、日米両国が密接な協議をしながら、共通の認識を持ちつつやっていくわけでありますが、いずれにしても、主たる目的、従たる目的と委員はおっしゃいましたが、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすような事態の中で、本当に有事にならないような形に役に立つようなことは米国と協力して日本もやっていく、憲法の許す範囲でやっていく、こういうことを申し上げているわけでございます。
  202. 桑原豊

    ○桑原委員 振り出しに話は戻りますけれども、やはり世界最強の軍事力を持ち、ある意味ではいろいろな世界の諸問題について積極的に抑止力を働かそうとする、そういうアメリカの物の考え方、自衛権の考え方、そして、精いっぱい抑制的に、自分の手足を縛るという表現もございますほどに自衛権を考えようとする日本、その二つが協力をして一つ事をなしていく、日本の平和と安全という目標ですけれども、そこら辺に私はやはりいろいろな意味で危惧も感じますし、また難しさも感ずるわけでございます。  どうも世評の中に、これは日本の平和と安全を守るということなんだけれども、そのことを通じて日本が要らざる争いに巻き込まれてしまうのではないかというような危惧があるというのも、やはりそこら辺のきちっとした整理、そこら辺のことに対する日本の主体性といいますか、そういうものがしっかりと見えないというところに一つの問題があるのかなというふうに思います。  これは、また引き続きの議論でさせていただきたいというふうに思います。  最後に、もう時間も本当に差し迫ったわけですけれども、総理に一つお伺いをしたいと思います。  私の石川県のすぐ近く、能登半島の沖で、不審船のああいう事件が起きました。従来からいろいろなことが取りざたをされております。大変な不安というものがあるわけでございますけれども、ともかくこの北朝鮮の問題というのは、周辺事態に当たるとか当たらないとかは別にして、日本の周辺における非常に大きな不安定要因の一つだろう、こういうふうに思います。  我が国との間におきましても、さまざまな疑惑、問題、そういうものが生じてきておるわけでございまして、いろいろなことを考えてみますと、一番近いところにある国といまだに国交が結ばれていない、ましてやいろいろな交渉事も行われていない、そういった不正常さというのは、ともかく戦後五十年もたっているわけですから、本当に言葉の意味どおり解決をしなきゃならぬ、私はそんな問題ではなかろうかというふうに思っております。  我が国政府は、対話と抑止という基本的な考え方をもとにしていろいろと努力をされておるわけですけれども、私は、残念ながら、努力をされているようですが、対話の部分がなかなか見えてこない。見えてくるのは、抑止で、TMDを研究開発していくとか、あるいはいろいろな対応を厳しくしていくとかというような、ガイドラインの関連の議論も北朝鮮側から受け取るとそんなふうに見えるわけですけれども、そういった力の議論、抑止の議論というのがどうも見えるだけで、なかなか対話の話が進まない、こういうふうに思うんです。  そこで、私は、北朝鮮が現在の状態にあるというのも、これは北朝鮮自身の問題であると同時に、やはり一つの歴史的な現実だというふうに思うんです。  朝鮮がかつて我が国の植民地支配を受けていて、そこから解放された、そのプロセスの中で、東西の冷戦構造があって南北に分断をされたという一つの歴史があると思うんですけれども日本の植民地支配がなかりせば、そういう不幸というものは恐らくなかったのではないかというふうに私は思うんです。そういう意味で、私は、決して日本と無縁な問題として北朝鮮の今現実があるのではない。  それからまた、冷戦後にいろいろとございました。そして、冷戦が崩壊をして新しい時代に入ったわけですけれども、残念ながら北朝鮮はその周辺の変化についていくことができなかった。そして、孤立感を深め、大変硬直的な姿勢に変化をしてきている。そのことも、ある意味では一つ距離を置いて我々はしっかりと見ていかなければならないのではないか。大変な孤立感にあるのではないか。後ろ盾を失ったというようなこともあろうかというふうに思うんです。  そういったふうに北朝鮮を見ていくときに、なおのこと、力での抑止を掲げるということは、一つのあり方としては必要なんですけれども、しかし我々とすれば、対話というものをどう打ち出していくのか、そのことにともかく心を砕いていく必要があるのではないかというふうに思うんです。  なぜ、北朝鮮の方から対話を求めているのに、さしたる反応はないのか。その点についてどう考えておられるのか、そこをまずお伺いしたいと思います。
  203. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 我が国は、北朝鮮が国際的な懸念や日朝間の懸案に建設的な対応を示すのでありますれば、対話と交流を通じて関係改善を図る用意があることは常々申し上げておるところでございます。  ただ、この呼びかけに対しまして、これまでのところ、北朝鮮側が前向きの反応を示しておるとは言いがたいことでございまして、まことに残念であります。  このような対応をとる北朝鮮の真意を推しはかることは困難でありますが、北朝鮮がミサイルの開発、実験、またこれを発射することは、主権国家の自主的権利に属すると主張し、我が国北朝鮮にこのような問題等に建設的な対応を求めていることにつき、関係改善の前提条件を持ち出すものとして批判的であると承知をいたしております。  桑原委員、私ども日本といたしましては、申し上げましたように、常に対話をいたしてまいりたいということを申し上げておりますし、また、最近の幾つかの事例を見ましても、日本としては北朝鮮との間の国交回復につきまして極めて誠意を持って対応しておると思っておりますが、にもかかわりませずということで、ミサイルの発射とか、あるいはまた今般のこうした工作船の問題等の問題がございまして、率直に申し上げますと、我々が北朝鮮に対して積極的な対話を求めていることに対してのお答えとしては、大変納得いきがたい点もあります。  しかしながら、私ども日本として、最も近くて近い国であります。朝鮮半島、いわゆる韓半島におきましては、しかしながら韓国におきましては御案内のような経済発展をし、そしてまた日本との関係も極めて友好でございますので、ぜひ北朝鮮におきましても、日本のこうした気持ちに対してこたえていただくよう、我々はなお積極的に対話を求めて努力をいたしていきたい、このように考えております。
  204. 桑原豊

    ○桑原委員 時間が終了しましたので終わりますが、重ねて、建設的な対応とか、いろいろなことを考えておられるわけですけれども、ある意味では私は、対話を優先させて、いろいろな意味での解決はそれからだというくらいの気持ちにならないとなかなか進まないのではないかということも申し上げて、質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  205. 山崎拓

    山崎委員長 これにて桑原豊君の質疑は終了いたしました。  次に、若松謙維君
  206. 若松謙維

    若松委員 公明党の若松謙維でございます。  公明党・改革クラブを代表して、引き続き今回の周辺事態法案につきまして、さまざまな質問をさせていただきたいと思います。  最初に、この周辺法案以前に、私もちょっと気になるのがやはり今回のユーゴの問題でありまして、ここ数日のNATOの空爆、それによって結局ユーゴがコソボ住民に対して圧政を行っている、その結果難民がかなりふえている、こういう状況を見ておりまして、これからどうなるのかと。  実は、私も四年半前に、当時の公明党の一期生で、コソボと、マケドニアの、当時アメリカがPKOを展開しておりました、そこに行っておりまして、何もならなければいいなと思ったわけですけれども、ここに来て、やはりあそこのいろいろな人種問題は難しいな、今そんな実感をしながらいるわけです。  総理、現在のユーゴ問題について、今の進展についてどういう見解を持っておられるか、また、今EUもたしか二千五百万ユーロの資金援助、いわゆる難民支援、またアメリカ等はもう出したようですけれども我が国としてどういう支援策を考えているのか、その二点についてまず初めに御答弁いただけますか。
  207. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 委員と同じく、ユーゴあるいはコソボをめぐりましての状況については、大変残念な状況でありまして、一日も早くユーゴ側が合意を認めて、平和的解決に向かって決着を見まするように、努力を期待いたしておるところでございます。  二十四日以降、NATOにおける空爆が行われておりますが、この武力行使は、ユーゴ政府がコソボ問題解決のための和平合意をかたくなに拒否し、他方で国連安保理決議に反した行動をとり続けている中で、コソボに対するさらなる犠牲者の増加という人道上の惨劇を防止するため、やむを得ずとられた措置であったと理解しております。我が国といたしましては、この事態、推移を重大な関心を持って見守るとともに、ユーゴ政府に対し、和平合意案の受け入れを強く求めております。  また、現在、コソボにおきまして、ユーゴ軍及びセルビア治安部隊によるコソボ、アルバニアに対する大規模な抑圧が行われており、ここ数日だけでも、けさの報道によりますと、十万人以上の難民が発生しておる。重大な懸念を持って受けとめております。  我が国は、これまでコソボの難民等に対する支援を積極的に行ってきましたが、国連難民高等弁務官事務所等のアピールを待って、さらなる支援につき迅速に検討していきたいと考えております。今申し上げた国連難民高等弁務官、御案内のように、緒方さんがそのハイコミッションになっておられるわけでございます。  我々としては、この状況をこのままに下瞰することはできません。ともかく、コソボの難民がアルバニアその他の地域に全く身柄一つで、今その地を離れて他の地区に移転しているという状況をこのままにしておくことはできませんので、我が国としては、全力を挙げて、今申し上げたような趣旨で、どういう支援が可能であるかを含めまして、今最善の努力を傾注して努力をしていきたいと思っております。
  208. 若松謙維

    若松委員 これは総理でも外務大臣でもどちらでもいいんですけれども、ブレア首相ですか、イギリスの首相が、きのうでしょうね、述べた言葉に、非常にこれは考えさせられる、だけれども非常にまた問題もある言葉なんですけれども、難民流出の原因は民族浄化であり、これに対する回答は空爆の強化である、いわゆる民族浄化を阻止するには空爆しかないと。それに対してはどう理解されますか。これは、我が国も非常に似たような面もございますので、ちょっと、認識というか、これに対してどうお考えか、お答えいただけますか。
  209. 高村正彦

    高村国務大臣 私、ベルリンのASEMの会合に行ってまいりまして、外相会談でございましたが、そこでドイツの外務大臣なんかは、緑の党の出身の方でございますが、まさに苦悩に満ちた、本当に人道上の問題で、一日一日難民が出ていく、そういう状況の中で、もともと武力行使というようなことを最も嫌っているような方が、せざるを得なかったということをるる私たちに説明をしたわけでございます。  私たち、遠く離れていて、果たしてこれが民族浄化ということまで断定できるのかどうか、ちょっと具体的な事実をきっちり持ち合わせているわけではありませんが、少なくとも断片的にはそういった傾向が見られないことはない。本当に、そういう中で、まさにこういうことをやらざるを得なかったことに対して理解するというのが我が国政府の姿勢でございます。
  210. 若松謙維

    若松委員 ぜひ、引き続きコソボ情勢についても重大な関心を持って、また迅速な対応も含めてお願いしながら、この周辺事態法案についての質問に移らせていただきます。  とにかく、きょうは総括質疑三日目で、総理、外務大臣防衛庁長官、本当に御苦労さまです。特に防衛庁長官、こういう、ある意味で大変重要な時期ですので、もう二十四時間、三百六十五日、大変気を張っていると思いますけれども、ぜひ頑張っていただきたいと思います、大学の先輩なので。  それでは、まず、抑止と対話という言葉が我が党の遠藤議員からもよく出るわけですけれども、先ほど桑原議員も触れましたけれども、昨年の秋、米国国防省が発表しました東アジア戦略報告、これによりますと、不確実性の続く区域が依然存在し、新たな挑戦も生まれてきた、こういうふうに指摘しておりまして、当然北朝鮮テポドン発射を第一に挙げて、朝鮮半島など極めて重要な局地的敵対行動を阻止しなければならない、こう規定しているわけです。  この報告を引用するまでもなく、我が国の安全保障上最も懸念される中の一つに朝鮮半島情勢があるわけで、この半島の安定、和平実現こそが直接我が国の安全につながるということは当然のことです。  それを前提にしたいのですけれども、残念ながら、昨年八月末、テポドン発射されまして、今我が国北朝鮮に対して大変懐疑的な見方が強くなっている。こういう中、韓国の金大中大統領もいわゆる太陽政策をとり続けていて、総理は、先日の韓国訪問の際に、この政策を支持すると明言したわけです。しかし、二十三日、いわゆる政府発表の北朝鮮工作船、これがあらわれて、我が国の領海侵犯事件が起きたわけです。  長年この北朝鮮に関して我々は議論していましたけれども、結局、不透明で予測不可能、こういう国に対して、やはり対話を進めなくちゃいけないんですけれども、では実際どう対話を進めていくのかというのは、我が国もちょっと隘路に入っているのかなという気がするわけなんです。この不透明な国に対してどう対話を進めるのか、それに対して総理はどうお考えですか。
  211. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 政府といたしましては、北朝鮮に対して対話と抑止の双方により対応していくとの方針であり、安全保障の備えを確固たるものにすることと並行して、対話と交渉により北朝鮮との間に存在する諸問題を一つ一つ解決していく考えでありますが、御指摘のように、国交のない国との間の話し合いというものの難しさをひしひしと感じておるわけでございます。  一方、朝鮮半島におきましては、韓国という国として日本との関係は昨年来とみに良好な関係が増進いたしておると思っております。そういう意味で、先般も韓国金大統領と私もお話を申し上げて、北に対してはまさにこの抑止と対話を続けていく、あらゆるメッセージを出そう、こういうことで努力をいたしておるところでございます。  この点につきましては、一方で米朝間におきましていわゆる核施設疑惑をめぐりましての対話が進んでおりまして、そういう中での交渉といいますか話し合いが持たれているということも一つの大きな前進であろうかと思いますので、そういった意味では、米国あるいは韓国、こういう国々とも十分協調しながら努力をしていきたい。  特に、韓国の太陽政策といいますか、そういう政策に対してはこれに賛意を表しておるところでございますので、そういった形でそれぞれの国々が十分北との関係を進めることができるようにということでございますし、一方、中国あるいはロシア、関係の深い国々もございますので、そういった国々とも連携を密にしながら、北朝鮮に対するアプローチについて全力を挙げていきたい、こう考えております。
  212. 若松謙維

    若松委員 総理にまたお伺いするのですけれども、確かにこの周辺事態法案、アジアの安定にはやはり寄与すると思っております。  さらには、総理はいわゆる北朝鮮問題の四者協議にプラスアルファツーで六者協議というものを提言しておりますけれども、ところが、なかなか恐らく総理の思いどおりにいっていないという認識もあろうかと思います。  それで、一方、ARF、ASEAN地域フォーラム、これは、北朝鮮が九六年に参加希望を一度表明しているんですね。そのときはかなり話題になったんですけれども、最終的にそれが消えちゃった。そういう状況であるわけですけれども、結局、北朝鮮との対話の機会をつくる意味で、このARF加盟というんですか、こういった選択肢も含めた冷静な外交、これをやはり進める必要があるのではないか、そう思いますけれども、総理の認識はいかがですか。
  213. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 委員お話しのように、ARFに北朝鮮がかなり関心を示したという時期がございました。しかし、ARFに対して非公式な参加の意向の打診がなされたものの、現時点ではその意向を示していないと承知をいたしております。仮に北朝鮮による正式な参加申請がありますれば、当然これは真剣に検討されるべきものであると考えておりますし、我が国としてはこれはもとより歓迎することでございます。  しかし、なかなか簡単に、ここに参加をして、ともどもに共同してこの地域の安定に寄与しようということで積極的な姿勢が見られないことは、まことに残念でございます。  それから、繰り返しますが、先ほど六者会談のお話がございました。私といたしましても、事あるたび、先ほど申し上げたように、ロシア・エリツィン大統領あるいは中国の江沢民国家主席が参られたときにもこのことを御提案申し上げておるところでございますが、現下のところ、なかなかこれに全面的な賛意を得ることは困難な状況でございますが、何よりも北朝鮮自身がこのことについての理解が得られない限りにおきましては、周辺の五カ国が一緒になりましても、こういいましても、この問題はなかなか困難であります。  いずれにいたしましても、その努力を継続していくということに大変重要なことがありますので、さらに努力をしてみたいと思っております。
  214. 若松謙維

    若松委員 確かに難しいのは私も同感であります。しかし、やはり、我が国のアジア地域のいわゆる平和戦略というんですか、その平和戦略の確立ですけれども、本来、この周辺事態法案よりも、いかにアジア地域の平和戦略を我が国として明確にしながら、明らかにしながら築くのかというのが当然優先課題だと思います。  その上で、いわゆる紛争を未然に防止するシステム、これを今いかにつくるか。そのためには、結局、不安定要因を抱える国々との対話の場をつくるということで、御存じのアジアには核保有が、中国だけではなくて、インド、パキスタンもあるわけなんですね。そういったところも含めてのいわゆる対話の場をつくるために、やはり日本も何らかの継続性ある、粘り強い一つの施策というものを、政策というものを突き進めなければいけないんではないか、そう思うのですけれども、総理、どうお考えですか。
  215. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 基本的にはもう全く同感でございます。ただ、北東アジアと、今お話にありましたように南の方にも、いわゆるインド、パキスタンにおける核実験が行われまして、この地域のある意味の不安定性も増してきておるのではないか、こういうことでございます。  その中で、日本としてどのようなことが可能かということでございますが、いずれにいたしましても、アジア太平洋地域における新たな対話の枠組みを構築していかなければなりませんが、アジア太平洋地域におきましては発展段階、政治経済体制、さらには文化的、民族的な多様性が存在いたしておりまして、各国の安全保障観が非常に多様であります。そういう意味で、この地域の安全保障考えました際に、このような地域的な特徴も踏まえてアプローチが必要であると考えております。  このような観点から、同地区で種々の二国間、多国間の対話の枠組みを重層的に整備していくことが現時点では大変現実的かつ効果的でありますし、先ほど御指摘ありましたASEAN地域フォーラム、ARF、こういう場所というものは、これが効果を発揮いたしますれば非常にこうした地域の安定のために必要なことでございますので、こうした多国間の枠組みというものを最大活用させていただくように日本としては努力していきたい、こう考えております。
  216. 若松謙維

    若松委員 ぜひ、いわゆる平和戦略の確立というか枠組みづくり、これは口で言うほど簡単じゃないんですけれども、ややもするとというか、結果的に日本のそういった面での外交はどうだったかというと、結局どこかでやはり日本の外交努力というのは、総理がかわるたびに何か方針も変わるような、場当たり的というか、大変きつい言い方ですけれども、そういう面があって、最終的にアメリカにおんぶにだっこになっちゃうという連続だと思うのですね。  ぜひそこら辺をしっかり、簡単じゃないことはわかっています。でも、それをあえて粘り強い、かつ連続性ある、ある意味日本のアジア地域における平和戦略の確立のために頑張っていただきたい。これだけ続けるわけにいきませんから、一応次の質問に移らせていただきますけれども、ぜひそれをお願いしたいと思います。  それでは、先ほどのコソボ自治区の話にも似るわけですけれども、万が一、極東、朝鮮半島等で何らかの紛争等があれば、当然数カ月また一年してやはり大量難民という話が出てくるわけでございます。ちょうど、三月十八日のこの委員会で、高村外務大臣、こう答弁しておりますけれども、ある国の政治体制の混乱などにより避難民が発生し、我が国に大量に流入する可能性が高まっている場合に周辺事態になると答弁されております。  そういうことで、ちなみにインドネシア難民等で、昭和五十年、たしか百二十六名からずっとあって、五十四年以降一千名台、そういうかなりの難民が日本に入ってきた過去があるわけですけれども、それでは外務大臣にお聞きしますけれども、どのくらいの難民が発生したら、我が国にどのくらい流入する可能性があって、それのどういう状況周辺事態に当たるのか、これについてぜひお答えいただけますか。
  217. 高村正彦

    高村国務大臣 一般論として申し述べますと、ある国における政治体制の混乱等により、その国において大量の避難民が発生し、これが我が国に大量に流入する可能性が高まっている状況においては、例えば国際的な緊張が高まり、不測の事態に発展するようなことも予想されるところ、そのような場合には我が国の平和と安全に重要な影響を与える可能性がある、そのようなことを申し上げたので、大量難民が我が国に入りそうになったらすぐ何でもかんでも周辺事態だ、こう申し上げたわけではないわけであります。  我が国周辺の地域において大量の難民が発生し、我が国に大量に流入する可能性が高まっているからといって、直ちに周辺事態に該当するわけではありませんし、また、一定規模の大量の避難民が発生すれば必ず周辺事態に該当するということをあらかじめ決めておくことも不可能だろうと思います。  いずれにしましても、周辺事態は、その事態の規模、態様等を総合的に勘案して、あくまで我が国の平和及び安全に重要な影響を与えるか否かとの観念から判断されるべきものでございます。
  218. 若松謙維

    若松委員 難民の件については、後で時間があれば質問させていただきます。  それでは、朝鮮半島、周辺事態というところを想定して質問通告をさせていただいておりますけれども、今、これから——想定じゃございません。一般論で、まず朝鮮半島に向けて頻繁に出撃している状況を実は前提としているわけですけれども、その際、外務大臣にお聞きしたいのですれども、三月十八日、やはりこの委員会で、我が党の遠藤議員の質問に対して、外務大臣は、我が国周辺の地域で武力紛争が発生していて、我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合、これを周辺事態ということで例示をいたしました。  この朝鮮半島有事に際して、では、死傷者数や倒壊家屋数等、いかなる規模とか態様の武力紛争があれば周辺事態と認定するのか。例えば、二、三人、そういう死傷者が出たとか、そのくらいが周辺事態ということになるのか、やはり千人とかそういう形になるのか。そこら辺はいかがですか。
  219. 高村正彦

    高村国務大臣 大変申しわけありませんが、三人出たらならないかとか、五十万人ならなるかとか、そういう数字でもって線引きするということは不可能だと思います。  何度も申し上げて申しわけないのですが、周辺事態とは、我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態でありまして、ある事態周辺事態に該当するか否かは、あくまでその事態の規模、態様を総合的に勘案して判断をいたします。したがって、ある事態周辺事態か否かを判断する基準をあらかじめ定量的に設定し、これを個別の事態に当てはめた上で判断することは不可能であります。また、あらかじめ地理的に特定できないということも、前々から申し上げているとおりでございます。
  220. 若松謙維

    若松委員 それでは、先ほど外務大臣も、この周辺事態ということで、武力紛争の発生と、ほかにも三例、いわゆる四つの例ということで御説明されました。そこら辺がいわゆる言葉による判断基準にはなるのではないかと思いますけれども、でも、実際にこの判断基準を例えば国民に言っても、当然、非常に主観が伴う話ですので、やはり国民にわかりにくいと思うのですね、一般には非常にわかりづらいし。ですから、もっと、国民の皆さんに、この周辺事態と認定する状況というのですか、事態とはどういうことなのかというのをちょっとわかりやすく言っていただけますか。
  221. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員、先ほどは、大変激励をいただきまして、ありがとうございました。  周辺事態は、我が国における武力攻撃ではないけれども我が国周辺の地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であるということは、先ほど来説明のとおりであります。ある事態がこれに該当するか否かは、これまた先ほど来出ているように、その事態の規模とか態様を総合的に勘案して判断するわけでございます。  これは、軍事的な観点を初めとする種々の観点から見て、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態意味している。このような事態として、これもまた従来から申し上げているところではありますけれども、典型的に考えられるのは、我が国周辺の地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような武力紛争が発生している場合とか、あるいはその武力紛争の発生が差し迫っている場合とか、あるいは、今ありましたように、大量の避難民が発生して、我が国に大量に流入する蓋然性が高まっている場合とか、あるいはある国が国連安保理決議に基づく経済制裁の対象となるような国際の平和と安全に対する脅威となる行動をとっている状況でありまして、私どもとしては、これらが我が国の平和と安全に重要な影響を与える周辺事態に当たるもの、こういうふうに判断しているところであります。
  222. 若松謙維

    若松委員 やはりそういう抽象的な言葉で、恐らく両大臣ももう百回くらい言っていると思うのです。言いながら、みずから次の、何か新しいことを言いたいなという衝動に駆られているのではないかと思いますけれども。  では、そういう恣意的というか、例えば朝鮮半島で二、三人の、一つのドンパチがあって、これは本当に周辺事態になるというと、かなり拡大解釈で、すぐ自衛隊出動という話にもなるわけですね。ですから、やはりどこかでシビリアンコントロールがきかなくちゃいけないという議論になると思うのです。  たまたまきょうの読売新聞の朝刊を読んでいますと、「自衛隊出動国会承認」に 自自が修正合意」、恐らくこれはちょっと書き過ぎだと思うのですけれども、こんな話があるわけですけれども、やはり何らかの、周辺事態認定にしろ、また自衛隊出動にしろ、事前国会承認が前提ですけれども、そうじゃなくても、一つの、周辺事態認定が終わって二十日以内とか、そういう早期に国会チェックというものをしっかり手続で法的に入れて、それでその恣意性のあるものを、やはり一定の幅というものを、またシビリアンコントロールというものを導入すべきではないか、そう思うのですけれども、これは総理でしょうか。総理、どうお考えですか。
  223. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 基本計画の国会承認につきましては、これもしばしば申し上げておりますように、三つの要件、周辺事態の態様が武力行使を含むものでないこと、国民の権利義務に直接関係するものでないこと、迅速な決定を行う必要性があること等を総合的に勘案すれば、周辺事態政府としての対応は防衛出動やPKF本体業務等の実施とは異なるものでありまして、政府としては、今回の法案における基本計画について、必ずしも国会承認を得なければならないものではなく、国会に遅滞なく報告し、議論の対象としていただくことが妥当であると考えております。  いずれにせよ、周辺事態に際しての国会の関与につきましては、国会において十分御審議をいただき、その議論を踏まえた上で、政府としても誠実に対応していきたいと考えておりまして、政府といたしましては、提案をさせていただいております本法案の成立を心から期待いたしておるところでありますが、まさに現下、国会での御議論をお願いいたしておるところでございますので、十分それぞれの御意見につきましても、今お聞きをし、御答弁を申し上げさせていただいているということでございます。
  224. 若松謙維

    若松委員 国会の場での論議というのは、何かもう一つ永田町というのがあるのですか、どこかに、日本に。ここ、国会ですよね。これを言っているわけですか。そういうことですか、総理。何か国会の場での論議と改めて言われると、あれ、私何だっけな、そういう感じがしてしまうのですけれども、ちょっと、国会の場というのはどういうことなんですか。ここですか。官房長官、何か御意見ありますか。
  225. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 申すまでもなく、この特別委員会を設置されまして、真剣な御討議をちょうだいいたしておりますので、政府といたしましても、法案を提案申し上げておりますけれども、先ほど来お話しのように、国民を代表する国会であるということにつきましては、十分承知をして対処いたしております。
  226. 若松謙維

    若松委員 また、国会承認については後ほど触れます。  それでは、今ちょうどNATO軍が、最終的にいわゆる国連決議なしにユーゴに対する空爆が始まったわけです。これは、この極東においても同じようなケースがある可能性大だと思います。  いわゆる安保理決議のないまま、万が一朝鮮半島有事に対して——まずその前に、朝鮮半島有事において、北朝鮮への経済封鎖の決議がアメリカなり国連に提出される。ですけれども、やはり今の状況考えると、恐らく中国の拒否権が執行されるのではないか、可能性として非常に高いと思うのです。ですから、その際の国連決議というのは実際にできないのではないかと思うのですけれども、それに対する認識はいかがですか。
  227. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 特定の国、地域を念頭に置きまして、全く仮定の事態における国連や米国の行動を想定する等、多くの前提条件を設けた御質問でございまして、こうした仮定の設問に対し、具体的にお答えすることは極めて困難だと思います。ただ、あくまでも一般論として申し上げれば、米軍の活動が周辺事態において、法案第三条第一項第一号に言う、日米安保条約の目的の達成に寄与する活動に該当するのであれば、本法案に体し、後方地域支援の対象となり得ると考えております。  そういう意味で、今申し上げたように、仮定の事態における国連あるいは米国の対応につきまして、この際御答弁申し上げることは甚だ困難でございます。
  228. 若松謙維

    若松委員 では、確認なんですけれども、船舶検査活動、これは三条の三ですね。これにつきましては、安保理決議が前提になっているんですね。万が一安保理決議がない場合にはこの船舶検査活動は行えない、こういう理解でいいわけですね。
  229. 高村正彦

    高村国務大臣 今政府が提案している法案については、まさにそのとおりでございます。
  230. 若松謙維

    若松委員 これは、やはりどんなにアメリカから、安保理決議がなくて、例えばユーゴ空爆のような形は、今の外務大臣では、あり得ない、その断定の答弁だと私は解釈いたしました。  それでは、事実確認をしたいのですけれども、これは防衛庁長官ですか、現在の北朝鮮のノドン、テポドンの配備状況についてお聞きしたいのです。  これは二月二十五日ですか、米国国防省弾道ミサイル防衛局長が、北朝鮮が既に中距離弾道ミサイル・ノドン一号、大体これは千キロから千三百キロ距離が出るわけですけれども、こういうミサイル・ノドン一号の配備を完了したことを公式に確認しております。また、三月五日の報道によりますと、ノドンは全体で二、三十基配備されている、こうも報道されておりますけれども政府として、今北朝鮮がどの程度ノドン、テポドンを配備していると分析されていますか。
  231. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 防衛庁といたしましては、北朝鮮のノドン・ミサイルにつきましては、いろいろな情報を総合しますと、北朝鮮がその開発を既に完了しており、その配備を行っている可能性が非常に高いというふうに判断しております。これは、先般韓国へ参りまして、千国防部長官と会談したときもその話が出て、その認識を共有しておりますし、また、先般アメリカのコーエン国防長官が参った際も同じ認識でございます。  また一方、配備場所や配備数など配備状況の詳細につきましては、関連する情報を鋭意収集し、分析評価をしているわけでありますけれども、このミサイルは、発射台つき車両によって搭載され、移動して運用されるものとされていることもありまして、一般に正確に把握することが非常に難しく、現在、確たることを申し上げられない状況にあります。  また、テポドン一号ミサイルについて申しますと、その開発が急速に進展しているという段階にあるものと考えており、さらに、テポドン二号ミサイルのように長射程のミサイルも開発されているという状況であります。特に、本年二月に発表された九九年版の米国国防報告によれば、北朝鮮は、米国本土まで射程内に入れた大陸間弾道弾ミサイル、ICBMを従来の予想よりも早く開発するかもしれないと指摘しているところであります。  いずれにしましても、北朝鮮のミサイルの開発、配備動向につきましては、私どもも引き続き細心の注意を払ってまいりたいと思っております。
  232. 若松謙維

    若松委員 これは事務方というか政府委員の方の答弁で結構なんですけれども、それでは、今具体的に何基どこにという正確な情報は難しい、そういう認識ですけれども、いずれにしても、国防省もいわゆる配備は完了したということで、二つ確認したいのですけれども、そうすると、少なくともノドン一号なりはやはり日本本土にもう照準されているということなのか。これが一点ですね。  もう一つは、いよいよ、不穏な動きというか、ミサイルのボタンというか、やるまでに、そういう動きがあればあるほど、まずミサイルが、当然移動車両に載っけてやるわけですね、今の場合には。そういう動きがあると、偵察衛星でかなり日常的に監視する。いよいよさらに動きがあるという形で、どんどん具体的にウオッチしていくわけですね。そうすると、こういう質問は大変きついのですけれども、では、こういうノドンなり、例えば発射行為まで時間的にどのくらい余裕があるのか、もしわかりましたら、今の二点、ちょっと答えていただけますか。
  233. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 まず、ノドンの開発状況でございますが、先ほど防衛庁長官からお答え申し上げましたように、私どもといたしましても、配備段階にある、こういうふうに思っております。  それから、あと、発射の兆候といいましょうか、それが事前にどのくらいわかるのか、こういうことだろうと思いますが、例えばテポドンタイプのような、固定サイトでもって発射するようなものにつきましては、これは把握が割合可能であるということは言えると思いますが、一方、ノドンのように、お話にございましたように、これはTELという車両に乗せてそれでいろいろ移動するわけでございますし、このTELで起立をさせて撃つということになりますので、事前にこの兆候を把握するのは非常に難しい、こういうことだと思います。
  234. 若松謙維

    若松委員 そうしますと、いずれにしても、ノドンというのは配備完了ということでありますと、日本海、公海も含めて、結局北朝鮮のミサイル配備によりまして、日本海には攻撃されない可能性のある公海はないということなんですね。当然ですよね。  そうしますと、改めて確認なんですけれども、ちょっとくどいかもしれませんけれども北朝鮮のミサイル配備によりまして、いわゆる戦闘と一線を画される地域、これが日本海には存在しないと考えるわけですけれども、そういうことですよね。
  235. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 ノドンは、委員がおっしゃるとおり千三百キロの射程距離を持っているわけで、観念的には、我が国の全域がこれに入るというふうに考えていただいてよろしいかと思うのであります。  しかし、今の御質問については、周辺事態というのは特定の国や地域を念頭に置いた概念ではないのですから、特定の国の装備を前提とした仮定の御質問にお答えすることはいかがかと思いますけれども、一般論として申し上げますと、単にミサイルが一発飛来したことのみをもって、直ちにそこで戦争行為が行われているとの判断に至り、戦闘行為と一線を画される地域がなくなるわけではない、私どもはこう思っております。  すなわち、防衛庁長官は、法律によりまして、自衛隊が収集した情報や外務省から得た情報、米軍から得た情報等を分析することにより、合理的に後方地域か否かを判断し、実施区域の指定や変更、縮小、活動の中断を行うことになっておりますが、当該地域が特定の国のミサイルの射程範囲内であることのみをもってこれが一概に後方地域になり得ないというわけではないということを、ひとつ御理解いただきたいと思います。
  236. 若松謙維

    若松委員 防衛庁長官、恐らくこういう議論というのは当然関係諸国にも伝わるわけで、一発発射されてもそれが周辺事態にならない、そういう言い方で大丈夫ですか。大丈夫ですか。
  237. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 今防衛庁長官から御説明いたしましたのは、まず、射程がこれだけあるからその範囲内のものは戦闘地域かというと、そういうことではないわけでございます。それからもう一つ、実際の場面におきまして、仮にミサイルがどこかに落下したということの一事をもって、それが戦闘地域、こういうふうに判断されるわけではないということでございまして、先生ちょっとお話しのような、何か周辺事態がどうだとかこうだとか、こういうお話とは別に、要するに、その地域がそういった後方地域としての要件を満たしているかどうか、その場合の戦闘地域かどうか、こういうふうな判断の関係で御発言があった、こういうふうに理解をしているところでございます。
  238. 若松謙維

    若松委員 それでは、公海上のアメリカの戦艦とかそういった船に対して武器弾薬の補給をした場合の合憲性について、これは防衛庁長官ですか、確認したいのですけれども。  周辺事態法案の第三条の第二項、ここで、「後方地域支援として行う自衛隊に属する物品提供及び自衛隊による役務提供」、これは別表第一に掲げられているわけですけれども、この別表第一の備考一に、いわゆる物品提供には武器弾薬の提供は含まない、こう規定されているわけですね。さらに、後方地域捜索救助活動、船舶検査活動、これを行う際にも、やはり別表第二で同じような規定がなされております。  しかし、輸送につきましては、例えば武器弾薬を輸送することはいいとか悪いとかというのは書いてありません。ですから、武器弾薬が米軍に帰属する場合の輸送については、これは可能なのかどうか、これについてちょっと答えていただけますか。特に、米国の国内法ではNATO相互支援法、そういうものがありまして、武器システム、弾薬の排除が明記されていて、かつ、今回は米側からの要求がなかった、そういうことで書いていないのかなと思うのですけれども、輸送についてはいかがですか。
  239. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員御指摘のとおり、補給についてはだめでありますが、輸送につきましては、後方支援として自衛隊が行う輸送の対象を限定しておらず、御指摘の武器弾薬も対象として排除されていないところであります。
  240. 若松謙維

    若松委員 そうすると、輸送はあり得るということですね。  それでは、今度はアメリカの艦船。戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対して給油は除外しております。明確に除外しております。それでは、戦闘作戦行動準備中の米艦船を除外しなかった理由、これは何なのですか。
  241. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 除外しなかった理由、こういうふうなお尋ねでございますれば、要は、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する油であるとか、整備であるとか、そういったものについては、ニーズがないからこちらは外した、艦船についてはそういう状況にないので外していないということかと思います。
  242. 若松謙維

    若松委員 そうしますと、米艦船に対して、もしニーズがあれば給油を行う可能性はあるという理解になるわけですか。
  243. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 まさにそうでございますし、それから、今申しましたように、艦艇につきましては、ここにこういう記載がございませんから、もちろんそれに対する給油、整備ということは排除されていないということでございます。
  244. 若松謙維

    若松委員 長官、確認しますけれども、ということは、武器弾薬の輸送は、さっき言ったように、これはオーケーです、やります。さらに、米艦船に対して、給油を求められたら、飛行機はだめだけれども艦船はやります、そういうことですか。
  245. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 艦船につきましては、巨大なものでございますから、一般的に、艦船は、比較的長期間にわたって継続的に行動するという特性を持っております。だから、艦船に補給される燃料は、基本的にはかかる長期間の行動全体の必要性を満たすものであるわけでありまして、実際の運用上も、艦船については、艦船の特性から、個々の作戦行動のたびに燃料補給するのではなくて、一般的にはその積載量が一定の水準を下回った場合に補給している、こういう形であります。  これらの点について考えてみますと、周辺事態に際して我が国が行う米軍艦隊に対する燃料の補給は、直接にこれらの艦船の個々の作戦行動のために行われるものではなくて、長期間にわたる艦船の行動全体の必要性を満たすために行われるものであると考えられます。  したがって、この法律に基づいて自衛隊が米軍艦船に対し給油等の支援を実施しても、かかる燃料補給は、これらの艦船の個々の作戦行動と直ちに結びつくものではない、また、艦船に対して個々の発進準備のための給油を行うということにはならないから、あえて規定しなかったものであります。
  246. 若松謙維

    若松委員 そこについてもうちょっと聞かせてください。  そうしますと、例えば兵たんとかといういろいろな補給、そういう行為があるわけですけれども周辺事態、とりあえず日本海、日本国の領土内でそういう艦船に対して給油をやる。そうすると、当然、私も軍事的な専門家じゃありませんので、どうかわかりませんけれども、いろいろと御専門家の指摘には、まさにそういう補給のときに、いわゆる敵からの空爆なり攻撃を一番受けやすいというようなことを指摘されるわけですけれども、そういうこともあえて認めた上で、今の艦船補給も行う、そういうことですか。
  247. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 私どもとしましては、あくまでも、いろいろな情報を総合いたしまして、現に戦闘が行われていない、それからまた、そういった給油等の活動をする期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる、そういう状況のもとでやるということでございます、あくまでも後方地域の中でやるわけでございますから。
  248. 若松謙維

    若松委員 とりあえず、艦艇については行われるということははっきりいたしました。  いろいろとそのほかに具体例を想定して質問を用意してきたのですけれども、時間がありませんので、最後に、国会承認のことについて再度質問させていただきたいわけです。  総理、防衛庁長官外務大臣、やはり事態、そのときに応じて、特定できるものでもない、性質に応じてとか、いろいろ言葉が何度も言われていたわけでございます。ですからこそ、やはり何らかの国会チェック、シビリアンコントロールチェックが必要ではないか、ますますそう思うわけなんですね。  三月十二日の本会議で、これは我が党の遠藤議員ですけれども質問されまして、国会承認は、自衛隊法第七十六条及び七十八条並びにPKO法第六条との整合性からいっても、当然必要であると考えるが、総理の見解はいかん、こういう質問に対して、総理は、周辺事態への対応は、武力行使を含むものではないこと、国民の権利義務に直接関係するものでないこと、迅速な決定を行う必要性があること等を総合的に勘案すれば、防衛出動やPKF本体業務の実施とは異なるものであるということで、基本計画を国会に遅滞なく報告し、議論の対象としていただくことが妥当、こういう答弁をしているわけですね。  十二日以降も、この委員会でも同じような趣旨の質問があったわけですけれども、一時期総理は、国会承認について、たしかあれは池田政調会長ですかの発言に理解するような、いわゆる柔軟な対応とも受け取れるような発言もしておりますし、現時点においては原案を何としても通してほしいというような御主張ですけれども、大分揺れているなという気がするのです。  では、この国会承認を求める対象というのですか、先ほど自自修正合意なる言葉があったわけですけれども、この自自修正合意を記事の上で読みますと、あくまでも自衛隊出動の可否を国会承認事項とするということですけれども、これは答えてくれるかわかりません。まず周辺事態、当然、手続的には、周辺事態ということで、国会で報告された基本計画をもとに、万が一周辺事態が起きた場合に、それを認定するための閣議決定が行われるわけですね。その閣議決定が行われていわゆる自衛隊出動等が伴うわけですけれども周辺事態を認定した閣議決定、本来やはりここが一番大事だと思うのです。  そのときの状況に応じて、もうばたばたと、さらにこの周辺事態から日本の有事につながるような形だけれども、閣議決定でとりあえず周辺事態で済まそうとか、何が起きるかわかりません。ですからこそ、閣議決定ではなくて、やはり周辺事態の認定について国会承認にすべきだと思います。それは当然事前が望ましいのですけれども、事後もあり得るでしょう。そこら辺はある程度想定されることを考えながらやらなくちゃいけないわけですけれども、いずれにしても、周辺事態の認定、これについては国会承認というものをすべきではないかと私は思いますけれども、総理、どのようにお考えですか。
  249. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 若松委員の御主張といいますか、お考えにつきましては承りました。  政府といたしましては、一貫して、実は委員御指摘の点につきましては先ほど来も重ねて御答弁申し上げさせていただいております。池田政調会長のテレビでの御発言につきましては、あのときも申し上げましたが、私、韓国へ行っておりまして、実際それを拝見しておりませんでしたので、与党の政調会長の言でございますのでこれを無視することはできないと言いましたが、その内容については、実は修正というようなことを申し上げておらないと後ほど聞いておりますので、このことにつきましては、政府としては一貫しての態度でございますので、御了承いただきたいと思います。
  250. 若松謙維

    若松委員 一貫してということですけれども、政調会長の言葉はかなりメッセージを送っていますよ、総理。  ぜひ、まさに憲法九条等もある我が国の、第二次大戦後の、ある意味で平和というものを地球規模的にも使命として与えられた我が国にとっても、こういう周辺事態、有事につながるようなところでのシビリアンコントロール、国会承認というのはやはり大事だと思います。我が国の立場であればあるほど、私は、国会承認というのはこれは可能な限り実現すべきことではないか、そう主張いたしまして、時間が来ましたので、終了いたします。  ありがとうございました。
  251. 山崎拓

    山崎委員長 これにて若松謙維君の質疑は終了いたしました。  次に、西川知雄君。
  252. 西川知雄

    西川(知)委員 西川でございます。  きょうは、今まで余り議論の対象にならなかったことを二つ、そして問題点を整理するために一つお尋ねをしたいと思います。  今までに余り論議の対象とならなかったことと申しますのは、基本計画の案を策定するその前提要件としての周辺事態、この認定について、発生原因の適法性、妥当性、これはどういうふうに加味されるかということが一点です。  もう一点は、周辺事態について高村外務大臣は、日米間で綿密な事前の打ち合わせを現在進めている、そういうふうにおっしゃっていたわけでございますが、周辺事態の定義等についてどういうふうな論議をされているのか、これが一点でございます。  そして、確認と申しますのは、地方公共団体の長の義務について法律的な整理がなされていないような気がしますので、それを整理させていただきたい。  この三つの点について主にお尋ねをしたいと思います。  そこで、最後の方からいきますが、九条の一項は、一定の行為をなすべき一般的な義務づけをしたという程度のもので、地方公共団体の長が求めに応じて権限を行使することを法的に期待される立場に置かれる、こういうふうに解釈されております。  そこで、野呂田長官は、正当な理由があれば拒否できる、協力しない場合に直ちに違法とするものではない、こういうふうに発言されているわけですが、正当な理由がない、正当な理由が見つからないという場合でも拒否できるんですか、まず。
  253. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 九条一項の規定につきましては、再々申し上げていますように、一般的な義務ということでございます。したがいまして、通常、特段の理由がない限りこの求めに対して応じる、必要な協力をしていただくことを期待しているものでございます。  したがいまして、先生今御指摘のような正当な理由がない場合に拒否するというようなことは、この法律の想定するところではございません。
  254. 西川知雄

    西川(知)委員 全然話にならないので、法制局長官、正当な理由がない、こういう場合に拒否したといったときには法律違反になりますか。  野呂田長官は、正当な理由があれば拒否できるということを書いてあるとこの九条一項についてはおっしゃっていたわけですね。そうすると、正当な理由がないと拒否できないというような言い方である、法律解釈であるというふうにも読めるんですが、この法律の条文の解釈として、正当な理由がない場合でも拒否できるんですか。
  255. 大森政輔

    大森(政)政府委員 なかなか頭の体操を要する御質問でございまして、答えに困るわけでございますけれども、要するに、九条第一項の趣旨は、いろいろな立場からお答え申し上げておりますように、正当な理由のない限り協力することが法的に期待される、そのような意味で一般的に協力義務を規定したものであるということでございます。したがいまして、論理的必然として、正当な理由がない場合には法的には協力に応ずることが期待されるわけでございまして、一般的協力義務という言葉を用いてお答えいたしますと、一般的に協力義務がある。  したがいまして、拒否できるかどうかというのは、事実として協力しないかどうかというのとは、これは別問題でございまして、法律的には、協力を拒否することはこの法律に抵触するということが言えようかと思います。
  256. 西川知雄

    西川(知)委員 ということは、正当な理由がなくて拒否した場合、この場合は強制はできないが違法となる、こういうことですか。
  257. 大森政輔

    大森(政)政府委員 いろいろな言葉で答えを求められるわけでございますが、要するに、そのような場合には一般的義務の不履行状態にあるということまでは大きな声で言えようかと思います。
  258. 西川知雄

    西川(知)委員 法制局長官、法の番人としての解釈ですから、ちゃんと答えてください。  それは違法となるんですね。
  259. 大森政輔

    大森(政)政府委員 私が違法という言葉をあえて避けましたのは、違法というのは、要するに実体法に違反するという法的評価をあらわす言葉であると一般的には言われているものですから、この九条第一項のような規範に抵触した場合に、すなわち正当な理由がないのに協力義務の不履行状態にあるというのを違法という言葉で評価するのが適切であるかどうかについて、私はいまだちょっと自信がない、こういうことでございます。
  260. 西川知雄

    西川(知)委員 そんな自信のないのは困るんです。法律を今つくっているわけです。  それで、財革法のときにも何か法的効果のないような法律をつくられまして、では法律を破った場合にどういう効果が生まれるのかというときに、法的効果はない、しかしながら政治的責任、これは発生するというのが財革法のときに私と法制局長官が議論したときの法制局長官のお答えでした。  そこで、今、違法ではない、違法とは言い切れない、こんなようなニュアンスのお答えだったわけですが、ではちょっと聞きますけれども、例えば、この法律は憲法違反である、または本法に単純に反対である、だから協力しないといった場合に、これは、協力しなかったわけですから例えば損害が発生したといった場合に、それは損害賠償の請求の対象になりますか、長官
  261. 大森政輔

    大森(政)政府委員 この法律が憲法違反であるということを理由に云々、こういうことの説明でございますけれども、これは歯切れよく、この九条は憲法違反じゃないということは大きな声で確言できるわけでございまして、それを前提とするような仮定の事案について、損害賠償請求権が生ずるとか生じないとかということまでも考える気持ちはございません。
  262. 西川知雄

    西川(知)委員 それは、仮定のというか、いろいろな場合を想定して考えるというのが長官の役目でして、私の言っているのは、違反をしないということは長官としてはわかっていても、そういうことを言う人がそれを理由として拒否した場合、そしてそれを使えなかった場合にいろいろな損害が拡大していったといった場合は、これは、その長に対して損害賠償の請求なんかをできるんですかということを私は聞いているんです。  それで、もう一つ言いますと、さっきの、野呂田長官が、協力しない場合に直ちに違法とするものではないというふうにおっしゃっているんですね。直ちにというのは、私は法的な意味はわかりますけれども、ということは、直ちにではないけれどもいつか、それとかほかの行為と相まって違法になるんですか、野呂田さん。
  263. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 少し前のくだりの方から御答弁申し上げたいと思いますが、委員が引用されている私の答弁は、この法律の九条第一項は、地方公共団体の長が同項による協力の求めに応じないことをもって直ちに違法とするものではなく、正当な理由がある場合にはこれを拒むことを排除するものではない、正当な理由があるかどうかについては、本法案の九条一項に基づく協力の求めを受けたということを前提として、当該個別の法令、条例に照らし判断される、例えば船のことに関して言えば港湾法その他がある、こういうことを私は言っているわけであります。  そして、直ちに違法となるものではなくと述べたのは、協力の求めに応じない、例えば不許可処分を行うことをもってこれが直接に違法となるものではなく、あくまでも、本法案に基づく協力の求めを受けたということを前提として、個別の法令に照らして判断されることになるという趣旨を述べたものでありまして、協力の求めに応じないことと違法性の判断との時間的な近接性を述べたわけではないということを御理解いただきたいと思います。
  264. 西川知雄

    西川(知)委員 長官の御意見、ちょっと私よく理解できないのですが。  それで、ちょっと法制局長官にお尋ねをしたいのですが、正当な理由がなくて長がこれを拒否した、その場合に、もう一回確認ですが、その違反の法的効果というものは何なのか、はっきりとお答えをお願いしたいのです。どういう責任が長に生ずるのか、または全然生じないのか。長はそれによって訴追をされるとかいろいろな損害賠償の対象になるのか、それとも全くならないのか。その辺をお答えください。
  265. 大森政輔

    大森(政)政府委員 所与の前提だけで今のお尋ねに確定的に答えを出すことはなかなか難しいわけでございますけれども、要するに、まず、一般的義務の不履行状態にあるということは言えましても、その義務の履行を強制するという強制履行の方法は予定されておらないということは、これはまたはっきりしているわけでございます。また、もう一つ考えられる、そういう不履行に対して制裁を科するということも一般的には予定していないわけでございます。したがいまして、そういう効果は生じない。それ以上に、では一体いかなる効果が生ずるのかと聞かれましても、今のところは、余りそれ以上の手だてはないのじゃなかろうかなとは思います。  ただし、正当な理由のない限り協力の求めに対して応ずる、すなわち、協力義務を履行することが法的には期待されるわけでございますから、やはり法的な期待に反するという非難は免れないと思います。
  266. 西川知雄

    西川(知)委員 それは法的効果として非難を免れないのか、政治的な責任として非難をされるのか、それを一点お答え願いたい。  それから、長としては、どうして拒否するんだという理由を自分の方から言わないといけないんでしょうか。その二点、長官、お答えください。
  267. 大森政輔

    大森(政)政府委員 なかなか難しい御質問でございます。  何と答えたらいいのか、言葉がなかなか出てこないのでございますけれども、要するに、強制履行の方法はない、そして制裁はない、しかし、法律が期待することには反するという非難は受けるということでございますので、それ以上に例えば政治的責任が生ずるかどうかというのはこの法律の範囲外の問題、すなわち、例えばその地方公共団体の首長が地域住民からそれについて選挙その他の機会に審判を受けるということがあるのはまた別問題でございます。  委員の念頭には財革法の法案審議の際の議論のやりとりがおありなんだろうと思いますけれども、あのときは、国は財政構造改革を推進する責務があるという規定があったわけですね。万が一いろいろな事情で財政構造改革を推進できないということになったときにはどのような責任があるのかという御質問がございまして、あのときは、政治的責任はあると言えるだろう、このようにお答えしたわけでございますが、あれは議院内閣制のもとにおいて国あるいは内閣がどういう責任を負うかということでございます。  ところが、今回は、地方自治権を有する地方公共団体の長がどういう効果を受けるのかという問題でございますので、あのときとは少し次元の異なる問題であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  268. 西川知雄

    西川(知)委員 もう一問ありまして、長としては、何で拒否するんだという理由を言わないといけないんでしょうか。
  269. 大森政輔

    大森(政)政府委員 この規定からは、求めに応じないときにはその理由を明示しなければならないということを規定しているわけではございませんけれども、やはり国と地方との基本的な信頼関係と申しますか、そういうことから、それは、せっかくの国の協力の求めに、しかも、その事柄自体は我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態でございますから、そのような事態のもとで求められた協力に応じられないということになりましたら、その理由を一応開陳するというのが自然の姿ではなかろうかと思います。
  270. 西川知雄

    西川(知)委員 長の義務についてはこの辺にしますが、この議事録は多分全国の地方公共団体の長が読まれるわけです。そして、法制局長官が、この法的効果はよくわからない、答弁に困ったということでありますと、これは大変な影響を与えるというふうに思うのですが、次の問題に行きますので……。  自治大臣、それは後で時間があったら必ず自治大臣とやりますので——では、自治大臣、何か短くコメントください。     〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕
  271. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 今の後の言葉を聞かなければ黙っている予定だったんですが、そのように言われると困るんです。  今のやりとりを聞いておりまして、二つほど申し上げておきたいことがあります。  それは、本法案の第九条に基づくいろいろな制裁なり強制措置はない、そういう意味で一般的義務にとどまる。したがって、正当な理由がなくて求めに応じない場合であっても強制するという法体系にはなっていないということ、これはそのとおりであります。しかし、別途、例えば港湾管理というそちらの方の世界から、逆に、命令なりいろいろなことを行うことができるという法体系があるということも厳然たる事実であるということは申し上げておかなきゃならぬ。  それから、いま一つ。実際の場合を考えますと、これは私から申し上げるのは多少出過ぎた言い方になるかもしれませんが、基本計画をおつくりになるようなとき、いわゆる周辺事態に対応して極めて迅速性を持って対処していかなければならない、そういったときに、具体的にどこの港をどうするとかいうようなことをおやりになろうとするときに、当然、いろいろ事実行為として御相談をされながら、いろいろなことの中で具体的なケースに即応して計画をつくられるというのは当然の常識のことであって、全く何の相談もないままに、いきなり、すぐ法的にできるから、権利、権限があるからどうだとかという一方通行でやるような事態にはならぬのじゃないでしょうかというのが最も常識論ではないんでしょうか。  このこともあわせて申し上げておかないと、一方的に嫌がる地方団体に無理やり国が権力的に押しつけるんだ、何かそういうような物のとらえ方で議論をするということは極めて不幸なことであるということは申し上げておきたいと思います。
  272. 西川知雄

    西川(知)委員 私、そんなことを申し上げていませんで、それは当然のことですが、法律を見て、それを拒否した場合どういうふうなことになるのかというのを当然やはり知っておかないと、これはだめなことでございます。  そこで、次に参りますが、周辺事態というのは、英語でもシチュエーションズ・イン・エリアズ・サラウンディング・ジャパンというふうに書いて、ガイドラインのところで日本語と英語と対比しているわけです。  これは、それぞれ認定については各国が主体性を持って行う、こういうことでございますが、いずれにしろ、共同していろいろな行動をとらないといけないということですから、綿密な事前の協議をするということになっています。綿密な事前協議をするときは、周辺事態というのは一体何なんだ、大体どういうことなんだということをお互いにわかっていないとその事実の当てはめができないというのは、これは当然のことでございます。二人で契約を合意するときに、その意味がどういう意味かということをそれぞれ違ったふうに思っていては全然協議もできないし、合意にも達しない、こういうことは当然のことでございます。  そこで、外務大臣または野呂田防衛庁長官、アメリカ側で、周辺事態というものは一体どういうふうに解釈するのかということの公式的な声明とか、また政府見解とか、そういうものはあるんでしょうか。
  273. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態とは、何度も繰り返すようでありますが、我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態であり、ある事態がこれに該当するか否かについて、あくまでもその事態の規模、態様を総合的に勘案して判断することになります。したがって、その生起する地域をあらかじめ地理的に特定することはできませんというのが日本でありますが、この点について、新たな日米防衛協力のための指針の策定過程において、日米両国が十分協議を行った結果としてこの指針に明記されているわけでありまして、日米間の認識は完全に一致しているわけであります。
  274. 西川知雄

    西川(知)委員 この委員会で、周辺事態というのはどんなことが予想されるのかとか、典型例も四つぐらい挙げられました。そこで、そういうふうな同様な議論が、アメリカの国会、コングレスの方でもなされておったんでしょうか、外務大臣
  275. 高村正彦

    高村国務大臣 米議会において、新たな指針及び指針関連法案との関係で、周辺事態に関して、御指摘のような特定の国、地域において生ずる具体的事案への対応等、ここで随分いろいろ問題になりましたが、そういったような議論はなされていないというふうに承知をしております。
  276. 西川知雄

    西川(知)委員 これは外務大臣でしたか、周辺事態の認定について、実態上両国の判断がそごをする事態は全く想定されない、こんなことをおっしゃっていたわけでございます。これは、今の状態ではそういうふうにお思いになりたい、または今の内閣ではそごを来すことは想定されないのかもしれませんが、例えば、日本で政権交代が発生した場合とか、向こうでもそういうふうになった場合に、一定の了解というものがないと、それは理解にそごを来すということは当然のことでございます。  そこで、これは野呂田防衛庁長官に聞いてもよろしいんですが、総理にお尋ねをしたいのです。  総理、こうやって二国間で重要なことを話す。周辺事態というのを話す。片一方は周辺事態であると思っていた、片一方はないと思う。それで両方とも話す。しかし、それは共通の認識といいますが、一定の定義があって初めて、どういうことが主に含まれるかということの共通の認識があって初めて合意に達するというふうに思うのです。この点、アメリカの周辺事態というのは、一体どういうことを考えているのか、どういう事態なのか、どういう地域なのかというようなことを確かめないといけないというふうに私は思うのですが、総理としてそういうことはやられないんでしょうか。  また、もう一つは、四つの典型例を挙げられましたが、それはアメリカの方でもそういうふうに認定されるということについて、アメリカの方に通知なりそういうことを既にもうされているんでしょうか。その二つをお答えください。
  277. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 ちょっと、二番目の前提になる点でございます。  周辺事態の定義につきまして、日米間の認識の問題でございますが、アメリカ側において明確にそれを定義したことがあるかどうかというようなお尋ねが前提であろうと思います。それにつきましては、当然のことながら、このガイドラインを日米間で協議いたしましたときに綿密な協議をやって、それでガイドライン周辺事態の定義をしたというのが一つございます。  それからもう一つは、今国会にこの周辺事態安全確保法案とともに提出させていただいております、日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定というのがございます。それの第二条に周辺事態の定義が日米間の合意として定められておるわけでございまして、それによりますと、これはいわゆる改正協定の第二条の、一項のbでございますけれども、「「周辺事態」とは、日本国の周辺の地域における日本国の平和及び安全に重要な影響を与える事態をいう。」ということが、日米間の共通の認識として定義されているところでございます。
  278. 西川知雄

    西川(知)委員 もう一回質問をしますと、今の周辺事態の定義、今の話は、それはそういうふうに両方に英語でも日本語でも書いてある、そんなことはわかっているんです。  そうじゃなくて、私のお尋ねしたいのは、それが一体具体的にどういうことかということについて、主な事例とかについて両方で協議をしたはずです。そうじゃないと、お互いに一体何を言っているのか、具体的な事態になったらわからないということで、それは困るから、当然のことながら、あらかじめどういうコンセプトかということを具体的にお互いに話しているはずですが、それはどうもないようだというようなお話なので、それじゃ困るんじゃないですか。それはちゃんともう一回、この法案が通ってからお役人同士がお話をされるというんじゃなくて、ここで、この国会の場で、この委員会の場で、一体具体的にどういうことをお互いに考えているのかということを、向こうの意見はどんなものなのかということを我々も知っておく必要があるんじゃないかということで、私は総理にお尋ねをしているんです。
  279. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今、北米局長が答弁申し上げましたように、ここに至る間におきまして、日米間で十分な話し合いをし、共通の認識をしてあればこそ、こうして日本側としては責任を持って提案、提出をさせていただいておるということだろうと思います。
  280. 西川知雄

    西川(知)委員 それは、外務大臣がさっき言われたこととちょっと違うんじゃないですか。周辺事態というのは一体どういうことかということについて、その議論というのをされてこういうガイドラインの形になっているというのは、それは当たり前なんですが、具体的にどういうことが想定されるからこういうふうな定義にしましょうというようなことは今まで日米間で話されたことはないんですかということを、もう一回、外務大臣、お答えください。
  281. 高村正彦

    高村国務大臣 ガイドラインの文言そのまま、抜粋でありますが読みますと、「周辺事態は、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態である。周辺事態の概念は、地理的なものではなく、事態の性質に着目したものである。」このことについては日米間で全く一致しているわけであります。そして、周辺事態が予想される場合には、日米両国間はその事態について共通の認識に到達するための努力を含め情報交換及び政策協議を強化する、こういうふうに決められているわけであります。  そして、我々は、まさにこの周辺事態の概念は地理的なものではなく事態の性質に着目したものである、こういう日米間の共通の認識に到達するまでにさまざまの議論を行って、そして、そんなにお互いが全然違ったことを考えるというふうには想定しておりませんが、そういう中でも予想されるような場合には両方で協議をして共通の認識に至るようにする、こういうことになっているわけでございます。
  282. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 周辺事態に該当するか否かについては、日米両国政府がおのおの主体的に判断するものでありまして、日米両国政府間において、安全保障協議委員会等種々のレベルにおいて密接な情報交換、政策協議が随時行われておりまして、そこで、周辺事態というのが考えられるような事態が発生している場合にこれらが緊密に行われ、このような事態について共通の認識に達する努力が随時行われる、こういうことだろうと思います。
  283. 西川知雄

    西川(知)委員 余り時間がないので、よく結論はわからなかったのです。  要するに、具体的にどんなことが主に想定されるのかどうかということが、やはり協議で最終的に、いざというときに合意に達するためには、そういうお互いの、どういうコンセプトを持っているのかということをあらかじめちゃんとやっておかないと、これはいざとなったときに法文の解釈、そういうのが違ったら困るから、そういうことはちゃんとやっていただきたいということを私は申し上げたわけです。  そこで、最後の課題でございますが、ちょっとほかの方も聞かれているのですけれども、内容についてもう少し詰めたいのですが、例えば周辺事態ということの認定をした場合に、その発生原因の適法性、妥当性も加味されるのかということをお尋ねしたい。  高村外務大臣は、例えばアメリカは国連憲章とか国際法に違反することはないというようなことをおっしゃっているのですが、それは、ないということが好ましいには違いない。だけれども、万が一という場合にどうするかというのを議論するのが立法府の役割でございますからちょっとお尋ねしたいのですが、もし国連憲章、国際法に明確に違反をした、例えばアメリカが。この場合で、周辺事態という日本の平和と安全に日本の周辺地域で重大な影響を与える事態が発生した、こういうふうに仮定すると、その場合は基本計画をつくって、そして今までおっしゃっているように、後方支援等の対応を日本はすることができるのか、できないのか、お尋ねします。
  284. 高村正彦

    高村国務大臣 同盟国に対して外務大臣が、国際法に明確に違反するなどということを想定して言うことはどうかと思いますし、そういうことは想定しておりませんが、日本は主体的に判断するわけでありまして、国連憲章に違反したようなことをお手伝いするようなことは法理的に言えばありません。
  285. 西川知雄

    西川(知)委員 ちょっと、質問するのを外務大臣よりも法制局長官にした方がよかったのかもしれませんが、法制局長官、明確に違反する場合、これは今のお答えでいいと思うのですが、明確には違反しないけれども、違反の程度が相当程度の合理的な疑いを持って存在するというような場合にはいかがですか。
  286. 大森政輔

    大森(政)政府委員 明確ではないが相当程度合理的に疑われる場合というのが一体いかなる場合なのか、もう一つよくわからないのですが、私は、委員のような質問というのはおかしいと思うのです。  といいますのは、法案によりますと、閣議で、後方地域支援の実施及び対応措置に関する基本計画を策定する前提として、生起した事態周辺事態に該当するかどうかということが判断されるというのが法案の枠組みなんですね。そして、後方地域と申しますのは、周辺事態に当たると判断される事態に際して、安保条約の目的達成に寄与する活動を行っている米軍に対して行うという性質のものでございますから、お尋ねのように、国際法上違法であることが明白なとか、あるいは、明確ではないが相当程度合理的に疑われる米軍に対して後方地域支援を決定するということは、そもそも法案は予定しておらない。  したがいまして、米軍の活動が国際法上違法であるか合法であるかということと、周辺事態に生起した事態が当たるかどうかということを関連させて論じたり、あるいは、その活動の違法、合法と周辺事態の適応認定の相関関係を論ずるというのは、この法案の枠組みのもとでは考える必要がないと私は思っております。
  287. 西川知雄

    西川(知)委員 そうすると、長官は非常に抽象的におっしゃるので、具体的にいきます。  具体的に、例えばアメリカ軍の行為がありました。そこで、国連で非難決議が採択をされた、またはアメリカと何カ国かを除いては全部それを非難決議をした。そういう場合にも、この周辺事態の認定というものと、今の発生原因の事実とは無関係というふうに思っていいのか、やはり関係する、そういうことについては協力しないのだというふうにするのか、いずれでしょうか。
  288. 大森政輔

    大森(政)政府委員 今の問題を私の立場からお答えするのが適当かどうか、あるいは外務大臣からお答えいただいた方がいいんじゃないかと思いますけれども、国連安保理で非難決議が行われるようなアメリカの行動というものに対して、我が国が、そういう活動を行っている米軍に対する後方支援活動を閣議で決定するというようなことはこの法案は予定しておらない、想定されないということでございます。
  289. 西川知雄

    西川(知)委員 想定されないというのは、そういうときには基本計画をつくって後方支援等の活動をしないというふうに理解してよろしいですね。
  290. 大森政輔

    大森(政)政府委員 そういうふうに私の発言を御理解いただいても結構でございますが、そもそもこの法案においては、そのような場合に閣議で後方地域支援を含む基本計画を決定するということはあり得ないという意味で想定されないということを申し上げたわけでございます。
  291. 西川知雄

    西川(知)委員 ほかの問題をやってもいいのですが、ちょっと時間がないので、これをもう少しやります。  要するに、ちょっとよくわからないのですが、ではそういう事態ではなくて、米軍の行動自体が、国連憲章とか国際法に違反しているか否か、これは全く判定が不可能であるというような場合、これについては基本計画をつくって閣議決定して後方支援等をすることはあり得る、こういうふうに理解してよろしいですか、長官
  292. 高村正彦

    高村国務大臣 いずれにいたしましても、米国は、日米安保条約において明記されているとおり、国連憲章のもと、違法な武力行使を慎む義務を負っており、米国が武力を行使する場合、国際法上の要件を満たす合法的な場合に限られていることは当然であって、米国が国際法上違法な武力の行使を行うことはそもそも想定していないわけであります。米国がこのような義務を守ることは安保条約の大前提であり、米国が仮にもかかる義務に違反した行動をとることはないとの信頼関係なくしては安保条約は成り立たないわけであります。  でありますが、あくまで日本は最終的には主体的な判断をいたします。
  293. 西川知雄

    西川(知)委員 質問時間が来ましたので終わりますが、ちょっと誤解をされるとあれなので申し上げておきます。私は、米国がそういう国際法に違反したり国連憲章に違反するというようなことを言っているわけじゃなくて、前提としているわけじゃなくて、万が一そういうことになった場合にどうなるかということを議論しておかないと、やはり何のためにこの法律を議論しているかわからないから、一々ぴしっと詰めないといけないということを申し上げたかったわけでございます。  これで終わります。
  294. 中山利生

    ○中山(利)委員長代理 これにて西川君の質疑は終了いたしました。  次に、東中光雄君。
  295. 東中光雄

    ○東中委員 私は、周辺事態において米軍が武力行使を行うのはどういう事態なのかということについてお聞きをしたいわけです。  この周辺事態法案を見ますと、例えば法案三条にありますが、周辺事態において行われる戦闘行為は「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。」こういう定義をしています。あるいは同じ三条関係の別表の中では、戦闘作戦行動を行うアメリカの航空機に対する整備、支援というのが条文の中にありますね。だから、周辺事態において戦闘行動をやっている、武力行使をやっているということがこの法案の前提なんです。しかし、この法案、どう見たって、米軍が周辺事態で武力行使をやるのはどういう事態にやるのかということについては、どこにも何にも規定がないのです。  それで、外務大臣は、周辺事態だからといっていつも武力行使をするわけではない、周辺事態の米軍の行動は直ちに武力の行使だというわけではない、武力行使をやることもあるし、やらないで情報収集をすることがある、こういうことなんですが、結局、周辺事態で武力行使をやるのは、米軍はどういう事態にやるのですか、お伺いしたいと思います。
  296. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態が生起した場合、今委員もおっしゃったように、米国は武力の行使を伴わない種々の活動、情報収集、警戒監視を行い、まずは事態の拡大の抑制や収拾に努めることが当然想定されるわけであります。その上で、一般論として申し上げれば、米国に限らず、ある国が合法的に武力を行使する場合とは、国連憲章第七章のもとでの国連安保理の決定に基づき加盟国が武力を行使する場合を別にすれば、基本的に、国際法及び国連憲章上の自衛権の行使として武力を行使する場合でございます。
  297. 東中光雄

    ○東中委員 それは周辺事態における武力行使じゃなくて、一般的に言えば自衛権を行使する場合だとあなたは言われているだけで、周辺事態でどうなのかということについて聞いているのです。ガイドラインではその点、どういう場合に武力行使するかということを、規定があるようでないようなんですが、その点は外務大臣どうですか。
  298. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態であろうがなかろうが、一般論として、ある国が合法的に武力を行使することができる場合は私が今申し上げた場合でございます。
  299. 東中光雄

    ○東中委員 ガイドラインには何も規定がないんですか。あなたはガイドライン承認してきた2プラス2の当事者じゃないですか。そこにどう書いてあるか知らないんですか。外務大臣に聞いているんですよ。日米安保協議委員会に出席したのは外務大臣でしょう、了承したんでしょう。それにどう書いてあるかということを聞いているのです。
  300. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 ガイドラインの基本的な前提としまして、日米両国のすべての行為というものは国際法の基本原則並びに国連憲章を初めとする関連する国際約束に合致するものであるということ、これが大原則とされておりますので、米国の武力の行使ということにつきましても、先ほど来大臣が申されております国際法上の原則というものが当てはまるわけでございます。
  301. 東中光雄

    ○東中委員 全く教科書に書いてあることだけ言っておるのですね。具体的なケースについて言ってない。  ガイドライン周辺事態に対する対応という項目がありますね。周辺事態に対する協力という項があって、その中で、二、周辺事態に対する対応というのがある。その中の三番目に、日本文では「運用面における日米協力」というわけのわからぬことが書いてある。正文は、ガイドラインは英文だと言っていますね、これは和訳なんだと。だから、日本語は討議したものじゃないんだということを、これは私の質問で答弁が出ています。  そこに書いてあるのはUS・ジャパン・オペレーショナル・コオペレーションという項目でしょう。それを日本語としてわけのわからぬ「運用面における日米協力」というふうに訳しているんですよ。実際、素直に訳せば日米共同作戦じゃないですか。普通に訳せばそうですよ。そう訳している、その中に書いてあるのです。  どう書いてあるかといえば、「周辺事態は、日本の平和と安全に重要な影響を与えることから、自衛隊は、」云々と書いて、最後はマルを打って、その次に「米軍は、周辺事態により影響を受けた平和と安全の回復のための活動を行う。」と書いています。  ところが、これは非常に奇妙なガイドラインの中身です。この中間報告、中間まとめで出されたガイドラインではそこはそうなってなかった。どうなっておったかというと、「米軍は、日本周辺地域における平和と安全の回復のための活動を行う。」こう書いてあったのです。そこを私追及したことがあるのです。そうしたら、わけのわからぬことが書いてあるのです。それで、それについて、これは九七年の十一月二十日です、久間さんのときにいろいろ聞きました。北米局長も久間さんも、中間報告のときに書いてあるのと、今度表現を変えたけれども、書いてあることは意味が変わるものではありませんという答弁をしています。だから、平和と安全の回復活動、それは武力行使を含む軍事行動ということじゃないかと言ったら、「そのとおりでございます。」と言うのですよ。  だから、ガイドラインによれば、周辺事態日本の平和と安全に重要な影響を与えることから、米国は武力行使を含む平和回復行動を行うというふうに書いてあるのですよ。それに合意してきたのです。それに基づいてやるんでしょう。だから、米国は周辺事態になったらどういう武力行使をやるのか。日本の平和と安全に重要な影響を与えることからやるというのだったら、今言っている一般的な原則からいったらまるっきり違うじゃないか。どうなんですか、その点。     〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕
  302. 高村正彦

    高村国務大臣 質問の趣旨がよくわかりません。これは私だけじゃなくて、そちらもみんなが、質問の趣旨がわからない、こう言っています。
  303. 東中光雄

    ○東中委員 それでは、久間さんが平成九年十一月二十日に答えたのは、この規定が、今先生の言われたのは、まさにそのとおりでございます、周辺事態によって影響を受けた平和と安全を回復するためには、武力を含むそのような活動を行う場合があります、そのことを規定したのですということを言っているのです。私の言うているとおりだというのは、私は、「米軍は周辺地域における「平和と安全の回復のための活動を行う。」、平和と安全の回復活動というのは、戦闘行動を含む、武力の行使を含む、そういう軍事行動であることは、」異議がありますかと。異議がありませんと。  だから、周辺事態において日本の平和と安全に重要な影響を与えることから、米軍は周辺事態でそういう軍事行動を行う、こういう協定を結んだから、それに基づいて米軍は行動を起こすということになるんじゃないですかということを聞いているのです。
  304. 高村正彦

    高村国務大臣 私も、従来から、この答弁で米軍が武力の行使を含む行動を起こすことを否定したことはありません。  ただ、それだけではなくて、その前提として警戒監視活動だとか情報収集をやることもありますよ、当然に武力の行使だけではありませんよということを申し上げているし、そして、それと同時に、武力の行使をする場合には、先ほど申し上げたように、一般的に国連憲章と国際法を守ることは当然である、こういうことを申し上げているわけであります。
  305. 東中光雄

    ○東中委員 だから、武力行使をするときはどういうときか。  では、こう聞きましょう。  周辺事態への対応として武力行使をすることがある、こう言うているのですな、対応ですから。だから、周辺事態ということについては、あなたの方で、この間の答弁で政府間で確認しているという四つの事態を言われましたね。そのうちの第一のケースというのは、我が国周辺の地域において武力紛争が発生している場合であって、その上で、我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような場合、これが周辺事態の第一のケースだ、こう言われているのですね。  こういうケースが起こった場合に、米軍は武力行使に入るのですか、入らないのですか。
  306. 高村正彦

    高村国務大臣 入る場合も入らない場合も両方あるだろうと思いますが、入る場合には、当然ながら国連憲章そして国際法に違反しないような、そういう状況において入る可能性もある、こういうことです。
  307. 東中光雄

    ○東中委員 この、我が国の周辺地域において武力紛争が発生している場合というふうに政府間で確認したということです。そういう表現がとられています。我が国の周辺地域において武力紛争が発生する。  この武力紛争は、国際的武力紛争と、それから国際的なものではない国内の武力紛争と、両方とも含まれるというふうに読めるのですが、そう読んでよろしいか。
  308. 高村正彦

    高村国務大臣 純粋に国内紛争として国内だけの問題にとどまる場合には、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態ではありませんから、そういう場合には周辺事態には当たらないわけでありますが、もともとが国内の紛争であっても、それが国際的に拡大して、そして不測の事態が起こるような、そういう状況我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような場合には、それは周辺事態に該当する場合もあるわけであります。  そういうような場合には、まさに、さらに米軍が行動する場合に、当然のことながら、国連憲章だとか国際法だとかそういうものの範疇の中でどう判断するか、そういう話になってくるのだろうと思います。
  309. 東中光雄

    ○東中委員 先ほども引用しましたが、周辺事態法の第三条の定義のところで、周辺事態において行われた戦闘行為の定義があります。「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。」これは条文の規定ですね。  あなたの方の言われたものによると、今度は国際的なという部分をわざわざ落としているわけです。政府統一して、言うたケースの第一は。国内的なものも国際的なものになっていく、国際的なものになったら国際的なものになるのですね。それをわざわざ、国際的なというのは条文に書いてあるけれども、言うたところでは外してある、ケースとしては、ということがまず一つ。なぜ、そういうことをしたのかということ。  それから、もう一つは、武力紛争があるわけでしょう。日本の周辺地域において武力紛争があるのでしょう。それは、国と国との紛争か、あるいは国内の紛争かは別にして、その紛争があって、それが日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすということで、なぜ米軍がそれに加わるのですか。それに介入するのですか。軍事行動に入る場合もあるとおっしゃった。入らない場合もあると。  入る場合というのは、どうして入れるのですか。アメリカは関係ないでしょう。周辺地域における武力紛争なんだから、日本に対する武力攻撃があった場合とは違うのですから。日本の領域ではない、いわゆる周辺地域における武力紛争じゃないですか。いわば第三者同士のことですね。それに対してアメリカが入る、自衛権の発動だということでアメリカが入れることがあるのですか。どういう場合ですか。言うてください。
  310. 高村正彦

    高村国務大臣 どういう場合とか、余り具体的なことを申し上げるのは必ずしも適切でないと思いますが、そういう場合であっても、国連憲章上、国際法上、米軍が行動することが許されていて、そして、それが極東の平和、まさに周辺事態法で言えば我が国の平和と安全に直接にかかわるような、そういう事態の場合に米軍が行動するということはあり得ない話ではない、こういうふうに言っているわけでございます。
  311. 東中光雄

    ○東中委員 日本の平和と安全に直接、そんなことは条文にありませんよ。あなたがつけ加えただけですよ。条文にないでしょう。今、直接とわざわざ言うから、条文によるとと言うて引用しているようなことを言いながら、直接というようなことを入れるというのは、これは公式の場所ですからね。まあ、いいです。  問題は、周辺地域における武力紛争でしょう。そう書いてあるんだから。そうでしょう。それは米軍とは関係ないわけでしょう。周辺地域で、武力紛争を米軍自身が起こしているのだったらまた話は別ですけれども、米軍に関係のない極東地域における武力紛争に対して、それが国内紛争であっても米軍が介入するということになるじゃないですか。  あなたは、それは国連憲章に従ってとか言うけれども、国連憲章に、二つの国がやっておったら、国連で決議したら、それはまた話は別です。だから、そこらの点はこれは説明がつきません、どうして米軍がそれに関係してくるのか。米軍が審判者で入っていくというわけにいかぬでしょうが。どうですか。
  312. 高村正彦

    高村国務大臣 今委員がおっしゃったように、国連が決議した場合は別ですとおっしゃったが、まさにそういう場合が一つあります。そのほか、集団的自衛権を行使する場合もあり得ます。そしてさらに、米軍が攻撃されて個別的自衛権を行使する場合もないとは言えない。理論的にはいろいろな場合があり得ます。
  313. 東中光雄

    ○東中委員 冗談じゃないですよ。それは、アメリカが自衛権を発動して、あるいは国連決議によって行動を起こした場合、起こすというだけの話であって、問題は、周辺事態における対応として米軍が動くというんでしょう。その周辺事態は何かといったら、周辺地域における武力紛争だ、こう言っているんだから、それに対する対応だということなんだから、明らかに米軍が介入していくということですよ。  ところが、これはまだ一応武力紛争が起こっている場合なんです。挙げられた二番目を見ると、第二のケースは、このような武力紛争の発生が、要するに第一項で言っている、周辺地域における国内あるいは国際的な、両方ある、武力紛争の発生が差し迫っている場合で、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす場合、こう書いてある。これが第二のケースなんです。だから、武力紛争は起こっていないんです。  武力紛争が起こっていない、差し迫っているということの判断というのは、武力攻撃を受けた場合に五条で共同対処をする、これは明白ですね。しかし、差し迫っている、周辺地域で、ほかの国の間で、あるいは内戦状態でそれが差し迫っているということで、どうして日本に、普通の場合なら日本に対する影響なんてあり得ないんです。ところが、差し迫っているという場合であって、日本に重大な影響があった場合は、それは周辺事態だ、だから、武力紛争は何も起こっていないけれどもそうなんだ、その場合でも武力行使を含む介入をする、米軍が入ってくるということになるんですか。米軍が入っていかなかったら、周辺事態の対応として入れるのか入れないのかということが問題なんですから。どうですか、入れますか。
  314. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  まず、大臣より既にお答え申し上げておりますけれども委員御指摘の、我が国周辺の地域において武力紛争が発生している場合であって、我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合、この武力紛争が発生している場合における米軍とのかかわり、これについて御質問があったかと思いますが、大臣の申し上げたことの確認でございますけれども、この武力紛争の当事者として既に米軍が行動している場合もあり得る、ケースとしてあり得るということを申し上げたいと思います。  それから第二のケース、このような武力紛争の発生が差し迫っている場合であって、我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合、このケースでございますが、ただいま委員は、このケースは、我が国に対する武力紛争が差し迫っている場合、すなわち五条事態のことを言及しておっしゃられましたけれども、武力紛争の発生が差し迫っているというこの武力紛争、つまり、ただいま私ども御説明しているところのこのような武力紛争というのは、第一のケースであるところの、我が国周辺の地域において武力紛争が発生している、そのような武力紛争でございますので、これは、一義的に日本に対する攻撃が想定されているというような、そういう武力紛争ではございません。  以上でございます。
  315. 東中光雄

    ○東中委員 これは大変なことを今承りました。  日本周辺地域における武力紛争が発生した場合で、日本の平和と安全に重要な事態が及ぶ場合のその日本周辺地域における紛争に、米軍がその武力紛争に入っている場合もあり得るということを言いました。これは大変ですよ。アメリカが周辺地域において戦争をやり出した、そうしたら、それが日本に影響するからといって、周辺事態だということでその米軍を今度は日本が支援するということになるんですから。今大変な発言があったということだけ申し上げておきます。  それからもう一つは、今ここで私が言うたのは、第二のケースというのは、このような武力紛争の発生が差し迫っている場合。周辺地域における武力紛争はまだ発生していない、差し迫っているというだけで、何も武力紛争が起こっていないのに差し迫っているという判断をして、それが日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすという判断をしたら周辺事態だというと。それに対して周辺事態の対処の措置をとるということになっておるから、これでは、武力紛争も何もないのに米軍がそれで武力行使をやれば、まさに、今度は、周辺事態という、差し迫っているというような判断をしただけで米軍が行動を起こしていく。これは自衛権の発動とかなんとかというものでは全くないですね。まさに先制武力行使をやるということであります。だから、その事態周辺事態だ、周辺事態に対する対応として、先ほど申し上げたような、平和と安全の回復のための行動ということで米軍がとってしまうということになるわけであります。  武力行使をやる場合、米軍が武力行使をやる、やる場合もあるし、やらない場合もあるということを外務大臣は言いました。やる場合のことについて聞くんですが、外務大臣、さっきそう言いましたね。第一のケースで、米軍が武力行使をやる場合もあるし、やらない場合もあるとおっしゃいましたね。だから、やる場合、武力行使をやる部隊は、やるということを決定するのは米軍であって、どういう編成、どういう程度の部隊を持っていくかということを決めるのも、これは米軍だと思うんですが、そうじゃございませんか。
  316. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 今のお尋ねに対しましては、米軍が、米側の分析、政策、いろいろなことを検討して、米側が決めることである、主体的に決めることであると考えます。
  317. 東中光雄

    ○東中委員 だからそれは、米軍は、日本におる第七艦隊あるいは第三海兵師団だけじゃなくて、その事態によっては太平洋軍三十万を投入するというふうにするかどうか、これは全部米軍が決めることであって、日本は関与しようがありませんね。そういう性質のものだということを確認していただきたい。
  318. 高村正彦

    高村国務大臣 米軍がやることは米軍が主体的に決めるのでありますし、日本がやることは日本が主体的に決めるのでありますが、お互いに密接な連絡、協議はする、こういうことでございます。
  319. 東中光雄

    ○東中委員 だから、周辺事態だと判断を米軍がして、武力紛争があるということで、重大な影響があるということで武力行使するということになった場合は、どれだけの部隊を投入するかというのは米軍が判断するんだと言われました。だから、太平洋軍三十万を、前方展開しておるのは十万ですからね、日本におるのは四万余りですから、これを三十万にするかということにもなります。それで今度は第五艦隊から空母を持ってくるということだって、ニミッツが来ましたね。そういうふうなことも、それを決定するのも、米軍がその状況の判断でやるということは、今言われたとおりであります。  そういうことになったら、その部隊は周辺事態の対処として米軍が行動するんだから、この法案でいくと、それに対する支援をやる、後方地域支援をやるということになるわけですね。そうじゃございませんか。
  320. 高村正彦

    高村国務大臣 理論的に言えば、米軍の行動は米軍が主体的に決めるのでありますし、日本行動、まさに後方地域支援をやるかどうかは日本が主体的に決めるわけであります。  しかし、日米、同盟国でありますし、この地域でいろいろなことが起こっているときには密接な協議をいたしますから、米軍の行動についてだって日本考え方の影響力はあるでしょうし、お互いに密接に協議をしてやるということでございます。  それからもう一つ申し上げますと、米軍の行動にいたしましても、日本の基地を使用して戦闘作戦行動になるときには、当然、事前協議が必要になってくる。日本がノーと言えば、日本の施設・区域を利用して、基地として使って戦闘作戦行動は行えない、こういうこともあるわけでございます。
  321. 東中光雄

    ○東中委員 そんなの、制度はそうなっているけれども、この法律によりますと、戦闘作戦行動に発進準備中の航空機に対しては給油、整備までは行わないと。それは要請がなかったからだと法制局長官もこの前答えられました。だから、発進準備中の戦闘作戦行動戦闘機、発進準備中までやったらいかぬけれども、その前の段階では日本整備をするというのはこの法律に書いてあるわけですから。そういう建前になっている。  そして、その支援の範囲ですね。どういう支援をするかというのは、米軍から要請がなかったら支援なんかできませんね。米軍の要請があったら要請に従って支援するんでしょうね。その点はどうでしょう。
  322. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 先ほど先生、周辺事態と米軍の武力行使との関係で、周辺事態であるから米軍が武力行使を行うということを何度かおっしゃられました。  米軍が武力行使をする場合には、周辺事態だから、すなわち日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす、まだしかし日本の国土に対する武力攻撃は行われていない、そういう状況日本のために周辺事態のもとで武力を行使するということを申し上げているわけではございませんでして、周辺事態というのは、ある事態があって、それが日本の平和と安全に対して重要な影響を与える事態であるという場合であるということでございまして、米軍が武力を行使するか否かということは、先ほど来申し上げておりますように、国際法上それが合法的な場合であるかどうか、そういう基準で考えられるものでございます。
  323. 東中光雄

    ○東中委員 何を言っているんですか、あなた。話が全然違うじゃないの。僕が言うているのは、周辺事態への対応ということで、あの三項に、日米共同作戦という項目の中で、米軍が、周辺事態日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすものであるから平和回復の活動を行う、これは武力行使だと。その武力行使について言うているんじゃないの。そんな一般的な話をしているんじゃないんだ。もう定義からいって明白です。北米局長が出る幕じゃないんです。  今聞いているのは、この法律で支援をするということになっているけれども、その支援は、後方地域支援は、防衛庁長官、米側から要求したことについてやるんでしょうね、米側から要求がないのにやりようがないわけですから。その点はどうですかということを聞いているんです。防衛庁長官、それぐらい答えられないのですか。
  324. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 もちろん米側のニーズということも聞くわけでございますが、我が方としてどういうことをやるのか、どの程度やるのか等々につきましては、我が方の判断で行うわけでございます。
  325. 東中光雄

    ○東中委員 この法律によると、別表に書いてあることは要請があればやる。それから、部隊をうんとふやすということになれば、三十万体制ということに仮になったら、それを受け入れるための施設の提供を適時適切に行うと書いてあるじゃないですか、ガイドラインで。そして、空港や港湾の使用を確保すると書いてあるじゃないですか。そういう体制、向こうから要求されたことは全部やる。  しかも法案では、例えば補給については、給水、給油、食事の提供、ここまで書いていますね、条文に。そういう場合に、食事の提供、例えば三十万の米軍が展開するということになった場合、それに対する食事の提供というのは何万食なのか、何十万食なのか。そういうことも、あの規定でいえば、食事の提供をやるというのが周辺事態でのこの法律じゃないですか。そうなっているでしょう。何ぼ以上はだめだとか、そんなこと書いていないでしょう。際限がないんじゃないですか。  例えば、戦死者が何万人起こる。朝鮮戦争のときに死傷者というのが随分起こりましたよ。それの医療を、何万床要るのか、何千床で済むのか。日本の医療援助ですよ。それも全部この法律によって、アメリカが決定した行動についてそれを受けるということになるじゃないですか、この法律は。制限がありますか。上限、制限、ここまではやるけれども、ここからはやらぬというようなことが法律にありますか。
  326. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 累次、政府側の答弁でございますように、我が方としてどういうことをするかということは、あくまでも我が方として自主的に判断をするということでございます。
  327. 東中光雄

    ○東中委員 米軍から救助の要請がある。その場合には、三条関係の別表第一に、その部分はやると書いてあるんですから。それについて制限があるか。法律上は制限ない。その事態でどうするかは、それはやれなかったらやれぬと言わざるを得ないかもしれぬけれども、この体制としては無制限にやることになっているんですよ。向こうが決定するのは、日本の平和と安全に重要な影響があると言いさえすれば、何ぼでもやらないかぬように法律はなっている。  こういう無制限な、ガイドライン自体が、これは安保条約の決めている枠と違う枠だよ。周辺事態というのは、安保条約上何もないんです。米軍の戦闘行動に対して日本が支援するというのは、安保条約のどこにもないです。  安保条約にあるのは、武力攻撃を日本が受けた場合の共同対処と、そしてそうでない、極東における平和と安全の、よく平和と安全のためにと言うけれども、極東における国際の平和と安全の維持ですよ、維持に寄与すると書いてあるんです。ピースキーピングのことなんですね、平和の維持なんだから。ここでやっているのは回復なんだから、全然違うんですよ、概念が。それを、平和と安全のためにと、もう全くラフな話でこれを通そうとする。非常に危険なやり方であるということで、私たちはこれは断じて許せないということを申し上げておきます。  時間がなくなってきたので、あと一言どうしても聞きたい。この法律では、我が国の周辺の地域ということを言うています。ガイドラインでは、日本の周辺地域というふうに言っている。その日本の周辺地域はどこなのかということは、幾ら各議員が議論をしても一切、周辺地域について聞いているのに、周辺事態はという答弁しかしないんです。そういう状態になっています。  しかし、そういう中で、これは二十六日のときの答弁ですが、外務大臣は、アメリカ軍の行動の範囲は極東の範囲及び極東周辺の範囲という外縁だということかという質問に対して、極東周辺の範囲内が日米安保条約の枠内であるとすれば、その範囲を拡大するものではない、こういう答弁をされました。要するに、日本周辺地域というのははっきりせぬけれども、極東及び極東の周辺地域の範囲を超えない、極東の周辺地域というのは限定されているわけじゃないから、こういう趣旨のことを言われた。  それで、そのことを今論議するわけじゃありませんが、問題は、極東の範囲と極東周辺というのはどういうことなのかということについて外務大臣も各大臣も、これは一九六〇年の岸内閣の統一見解だということを何遍も申し上げていますということを言われた。  そこで、その統一見解はどう書いてあるかということをきっちりと読んでみました。こう書いています。  極東は、別に地理学上正確に確定されたものではない。地理的概念じゃないなんてそんなラフなこと言うていないんですね。地理学上正確に確定されたものではない。しかし、日米両国が、条約に言うとおり共通の関心を持っているのは、極東における国際の平和と安全の維持ということである。この意味で両国共通の関心の的となっている極東の区域は、在日米軍が日本の施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域である。かかる区域は、大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺の地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域もこれに含まれている。  こう言っています。これは、岸さんが直接言うて会議録に載っている言葉です。  そこで、結局極東の範囲というのは、フィリピン以北だと。フィリピンは入るわけですね。そして、日本と言うんですから、日本国も極東の中だと。それから、その周辺の地域、要するに日本周辺地域であって、韓国と中華民国の支配している地域が含まれる、そう書いているんですよ。だから問題は、フィリピンはいいですが、日本のその周辺の地域というのはどうなのかということが問題になりました。  そこで、日本の周辺の地域といえば、例えば北海道のすぐ隣は千島列島であり、サハリンであり、そして沿海州、ロシアの地域ですね。これはどうなんだということがあのときも議論になって、それは日本の周辺の地域であるかどうかは別として、それは極東の範囲内ではないということを岸総理が答弁しているのです。  その点、これは岸総理の統一見解だから、総理大臣、どうです、今もそうなんでしょうね。千島列島や樺太やロシアの、当時のソビエトの地域、これは極東の範囲内に入らない、今も入らないということでいいんですか。
  328. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  まず、今委員が御指摘になられました地域の中での北方四島、これは条約の構造上は我が国の固有の領土でございますから、入るわけでございます。  その北方四島ではないソ連邦の領域に関しましては、委員がお読みになられましたように、この統一見解というのは、両国共通の関心の的となる極東の区域、すなわち極東における国際の平和及び安全の維持という観点から両国共通の関心を持つ地域ということでございますので、共産主義諸国というのは入っていないということでございます。
  329. 東中光雄

    ○東中委員 そういうことで今度は朝鮮半島ですが、朝鮮は韓国と北朝鮮があった。それで、北朝鮮は極東の中へ入らない。それから中国、当時は中共と言っていた。中共が支配している中国大陸は入らないということを言いました。そして、台湾のことには一つも触れないで、中華民国の支配しているところは入るとこう言うたわけであります。  ところが、今や中華民国がなくなって、それから、中華人民共和国の不可分の領土の一部であるということを理解し、尊重すると共同声明でも言っているわけだから、その台湾は中国の支配するところに今なりましたから、これは、先ほど条約局長が言うた論理でいけば当然極東の範囲から出なきゃいけないというふうに思うのですが、外務大臣、いかがですか。
  330. 高村正彦

    高村国務大臣 日米安保条約に言う極東につきましては、昭和三十五年の政府統一見解で述べられているとおりでございます。そして、昭和四十七年の日中国交正常化後の国会において、中華民国を台湾地域と読みかえる旨、当時の田中総理が述べておられます。  いずれにせよ、日中国交正常化は日米安保条約にかかわりなく達成されたものであり、昭和三十五年の統一見解を含め、日米安保条約及び同条約に係る我が国の立場に変更はないということでございます。
  331. 東中光雄

    ○東中委員 あなた、壊れた蓄音機みたいにいつも同じことばかり言っていたらだめですよ。論理をちゃんとしなさいよ。  それじゃ、北朝鮮は極東の範囲外である、それから中国大陸は極東の範囲外である、ここまでは認めますわね。それで、それは何で極東の範囲内かと。地理的概念といえばそれは入るかもしれぬけれども、違うんだと。それなら、中華人民共和国の大陸は入らぬけれども、台湾は中華人民共和国の、中華民国のときは別ですよ、台湾は中華人民共和国の支配の不可分の領土だということを日本政府が認めていたら、これは外さなきゃ論理上合わないじゃないかということを聞いているんですよ。そんな、七二年にどう言うたかというのはそんなこと知っていますわな。そうじゃなくて、昭和三十五年の統一見解を現在どう見るのか、その考えはどうなんだということを聞いているんですよ。  どうですか、外務大臣
  332. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  委員御指摘の、台湾をどのように今読むべきかという御質問に関してでございますが、繰り返しになって恐縮でございますが、日中共同声明の際、我が国は、日中共同声明において、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認した上で、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとの中華人民共和国政府の立場を十分理解し尊重する旨を明らかにいたしたわけでございます。  自後、我が国といたしましては、中国政府が台湾をめぐる問題は中国人同士の問題として平和的解決を目指していると称しており、このような基本的立場、我が国の立場を堅持した上で、台湾をめぐる問題が当事者間の話し合いにより平和的に解決されることを強く希望している、これは一九七二年の日中国交正常化以来一貫して政府がとっている立場であり、そのように国会に対しても御説明しているわけでございます。  そこで、この極東の定義との関係では、そのような政府の基本的立場を踏まえて、当時、田中総理が「中華民国の支配下にある地域」というのを「台湾地域」というふうに読みかえたということでございまして、以上の基本的立場を以来堅持しているということでございます。  これが、この非常に難しい問題に関しまして政府としてとり得る最善の政策ということで、国会に対しても、委員に対しても、御理解を得るべくずっと御説明してまいった次第でございます。
  333. 東中光雄

    ○東中委員 七二年当時から、当時の社会党も、それからたしか公明党もそうだったと思いますが、それはおかしいぞということを皆言うていますよ。一貫してとっているんじゃないんです。  それは、中国大陸が極東でないというのは、それは当時の中共の支配していたからだと。台湾は、中華民国が支配していたからそれは入ると言ったのを、中華民国がなくなったら中華人民共和国の不可分の領土だということを認めた以上は、これは外さなきゃいかぬのですよ。論理からいったらもうなっちゃいない。読みかえたと田中さんが言うたことがおかしいんであって、だから、その点について、もしそれを極東の範囲内にすれば、だから台湾は、その平和と安全を維持するために在日米軍が行動を起こす、台湾防衛のために行動を起こすということになるわけです。この間のあれもそうでした。台湾危機のときに米軍が行動を起こしたというのもそうです。だから私たちは、そういう台湾地域を日米安保の防衛の対象にするという極東条項についての今の政府の解釈は、これは極めて論理的に合わないことだということを申し上げたい。  それについて、こういうことがありました。九八年五月八日の、久間さんが中国を訪問したときの、向こう側の遅国防部長からこういう発言があったということを国会で報告されています。台湾を日米安保の範囲に入れることは中国の主権侵犯であるということを向こうから言われた。それから、この間の十一月二十六日の江沢民主席の発言も、日米安保協力に台湾を含めることは内政干渉だと言っている。それから、きのうですか、つい先日、外務大臣が行かれたときの唐外相の発言も、日米の防衛の範囲に台湾が含まれることは絶対に反対するという方針を発言したということが報道されています。  台湾を極東の範囲内に入れて、安保条約の防衛の範囲内にするというその態度は、これは中国に対する主権侵害だ、私は本当にそう思います。改めるべきだということを強く要求して、質問を終わります。
  334. 山崎拓

    山崎委員長 これにて東中君の質疑は終了いたしました。  次に、伊藤茂君。
  335. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 社会民主党の伊藤でございます。  きょうも大変長時間の審議でございますが、いただきました時間、幾つかの質問をさせていただきたいと思います。  先般来議論を伺っておりまして、一つだけ実は思うことがございます。前、このガイドラインに関連してなんですが、尊敬する外交評論家である船橋洋一さんが「同盟漂流」という分厚い本を書かれまして、読ませていただきました。それを要約して新書版で「同盟を考える」という本を出されまして、参考になる本でございました。  友人として、いいことを書いているなと思っていましたが、その前書きにこういうことが書いてございました。冷戦後ほぼ十年を経ようとしているのに、日本安保論議の特質はそれほど変わらないように見える。かつてのようなイデオロギー的な議論が姿を消したのはいいが、まあ全部姿を消したかどうかはあれですが、今度は骨太の安保論議そのものが国会論議から姿を消してしまった。冷戦後、日本は今までにない大きな試練の時期に立っているという言葉がございます。  今、ポスト冷戦の時代に私どもが必要なのは、船橋さんの言葉で言えば、骨太の、次の時代の安全保障をどう考えるのか。ポスト冷戦の時代ですから、昔のように、安保自衛隊といえば自社相交わらざる対決の構図みたいな時代を越えて、お互いに真剣に議論をして、次の時代を共同で開発するというのが今の時代の政治家に求められている気持ちではないだろうか。それに対する立派な回答にもなりませんが、そんな気持ちを持ちながら努力をしていきたい、また議論をしていきたいというふうに思っております。  幾つか、限られた時間ですから御質問させていただきたいと思いますが、その前に、山崎委員長にお願いがございます。  というのは、この間、我が党の土井党首が質問の最後で、十二条、政令の問題を指摘されまして、私も、こういう非常に複雑な、問題の多いといいますか、またこれから知恵を絞らなければならない大変な法律でございますから、普通ですと、消費税法とか大きな法案のときには、私ども野党第一党のときには、政令の骨格を出して、それも含めて責任ある議論をしようではないかということでお願いを政府側にしてきたというのが習慣でございました。  これは、こういう内容ですから、どの程度まで政府が用意をされているのか、どこまでできるのか、骨格がどうなのか、私も定かにはわかりません。まあしかし、こういうものの執行がどうなるのか、幅広い議論を聞きましても非常に大事なことだろうというふうに思うわけでございまして、これから総括質問、一般質問に入っていく、それで、ほかの野党の先生方ともそんな相談をちょっと始めさせていただいておるのですが、ぜひ政令委任、十二条に書いてあるその中身の骨格はどうなるのか、政府側とも詰めまして、責任ある内容の議論をすることが必要ではないだろうか。  ぜひ、一般質問の段階から先のことだろうと思いますが、理事会で御相談をさせていただくようにお願いしたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
  336. 山崎拓

    山崎委員長 釈迦に説法でございますが、法律あっての政令でございますし、大法案でございまして、しかも修正含みだとされております。そのような状況下におきまして、政令の準備がどこまでできますことか大変心配いたしますが、いずれにいたしましても、せっかくの御提案でございますので、本件についての取り扱いを理事会で協議させていただきます。
  337. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 北朝鮮の不審な船という問題につきまして、二つだけお伺いをいたします。  この事件に対してどう今後対応するのか、さまざま議論がございます。報道で伺っておりましても、包括的な領域警備の法律が必要ではないかとか、あるいは海上保安庁の能力をレベルアップすべきではないかとか、それから海上保安庁自衛隊の緊密な連携が必要であるとか、さまざまの議論がなされております。  私はこう思うのですね。これから先考えますと、やはり当然ですが、警察行動の分野が一つあると思います。海難救助は当然優先、当然のことなのですが、保安庁の大事な仕事で一生懸命やられているわけですが、密輸とか密入国とかなんとか警察的な部面、それから軍事的な部面というものとあって、これが混在することはやはりまずいので、きちんとそこは建前をつくって、そしてまたもっと安心できるようにどうしたらいいのかということではないだろうか。私の考えでは、今の段階ですぐ自衛隊法を改正して云々ということよりは、海上保安庁の能力をレベルアップしていただく、それから、海上自衛隊海上保安庁などさまざまの連携マニュアルとか、勉強していただくというようなことが当面まず必要なんじゃないだろうかというふうに思いますが、これはいかがでしょうか。  これは外務、防衛、運輸。では、一言ずつお二方、運輸大臣防衛庁長官
  338. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 治安出動海上警備行動等は自衛隊が実施するものでございますけれども、いずれもこれは警察行動でありまして、自衛権の発動として行う、例えば武力行使の行われる防衛出動のようなものとは厳しく峻別されているわけであります。  我が国の沿岸の警備につきましては、第一義的には海上保安庁任務でありまして、自衛隊は、海上保安庁では対処することが不可能もしくは著しく困難と認められる事態が発生した場合に海上警備行動により対処するという基本的な枠組みが定められておりますので、私どもとしては、この枠組みの中において行動したい。今回のような事態に対してどう対応するか、今、私たちも鋭意検討を重ねているところであります。  なお、政府としては、橋本内閣以来、こういった危機的な状況にどう対応するかという研究を進めているところでありまして、そういう研究の成果を待って我々としても検討してみたい、こう思っております。
  339. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 防衛庁長官からも御答弁がありましたけれども、まず現行法の枠でどこまでできるか、お互いに連携をとりながら進めなければならないだろう、こう思っております。  既に伊藤委員御承知のとおり、海難救助の場合も、私ども自衛隊連絡、こういうことでいろいろな形でやらせていただいているところであります。  今回の事案を考えてみますと、まず、例えば漁船とか商船、正規の船が不正行為を働いた場合、これはまさに警察行動そのものでありますから、一〇〇%我々の領域だろうと思っております。  一方、我々の能力を考えましたときに、例えば潜水艦が無害通航で御承知のとおり旗を上げて領海へ入ってくる、これは無害通航で認められております。しかしながら、潜って入ってきた場合、この場合は、我々はまず探知する能力がありません。それから、外へ出ていけ、退去命令、これを相手側に伝える方法も我々は持っておりません。したがって、潜水艦が潜って入ってきた場合、基本的には自衛隊の能力に頼らざるを得ないだろう。そういうときは内閣の判断を求めることになるだろう。  今回の不審船は、ちょうど間の事項であろうと。見つけられたのは自衛隊、そして私ども警察活動として入った、我々の能力を超えたということで自衛隊が内閣の判断のもとで海上警備ということで出ていった。こういうことで、やはり、いろいろの場合を想定しながらお互いが連携をとりながらやっていくということが非常に大事だろうと思っております。
  340. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 こういう事態のもとでの対朝鮮半島政策につきまして、総理にお伺いいたします。  昨年八月以来非常に難しい問題が相次いだわけでございますけれども、このしばらくの間、米朝関係のさまざまの努力、ミサイル協議はこれから大変な苦労だと思いますが、韓国金大中大統領のさまざまな努力、それから先般の小渕総理がソウルを訪問されました首脳会談、その中身も私ども前向きに肯定的に評価をしているわけでございます。  ただ、こういう大きな流れ、一つの戦略的な判断と申しましょうか、その前にさまざまの出来事が起きる。今回のことにつきましても、何でこんなことが日本海の我が領域内で起こるのか、こんな行動がどうして起きるのか、まさに私もこんなことは理解できないですね。問題でございます。  ただやはり、最近のことにつきましても、例えば金大中大統領が、潜水艇事件とか何かあって、これらについてどうするのか、問題が非常に大きい、しかし朝鮮半島全体の、自分の大統領としての信念あるいは戦略というものを持って政策を進められている。私も大変敬意を表しているわけであります。  やはりそういうことが非常に大事なんじゃないかというふうに思うわけでございまして、官房長官の会見とか、それから総理の今までの答弁を伺っておりますけれども、改めてその気持ちを総理からお伺いしたいというふうに思いますし、こういう事態ですから、やはり日本国民の大方の意見などを代表して、政治家、政党が与野党問わずいろいろな努力をするということも適切なことではないだろうかというふうに私は思いますが、総理の御見解はいかがでしょうか。
  341. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 改めて今般の二隻の不審船について種々の情報を総合的に勘案した結果、我が国政府として、北朝鮮当局の工作船であると判断するに至り、北朝鮮側に抗議を行うよう北京及びニューヨークの我が方在外公館に指示したところでございます。  一方、政府といたしましては、北朝鮮に対して対話と抑止の双方により対応していくとの方針であり、安全保障の備えを確固たるものにすることと並行いたしまして、対話と交渉により北朝鮮との間に存在する諸問題を一つずつ解決していく考えであるとの基本的考え方に変わりはないわけでございます。今、伊藤先生御指摘のように、金大中大統領と私との共同宣言におきましても、今後、北朝鮮に対しましても、この申し上げましたような抑止と対話の方針について徹底をしていくということでございます。  ただ、金大中大統領も申されているように、単なる宥和政策ではない、きちんとした自国の安全保障に対する確固たる体制は持ちつつも北に対していわゆる太陽政策を推進していくということにつきましては、私もそれに賛意を表しておるところでございます。  こういう時点に立って、正直申し上げれば大変残念なことが起こってきておるわけでございまして、やはりこうした政府の政策を遂行する上にも、我が国国民においても北朝鮮に対するこうした不信感というものが醸成されないような行為につきましても、ぜひそうした対応をしていただくこと、前段申し上げました事柄につきましても誠意ある回答をいただけるというようなことになりますと、政府としての対話の政策を推し進めるに国民的理解が深まるのではないかということで、我が国としてのメッセージにつきましてもぜひこれを建設的に受けとめていただきたい、このように念願しておる次第でございます。
  342. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 実は、本三法案に関連をいたしまして、安保再定義という角度から議論をしたいと思っておりましたが、小さい政党の悲しさで本当に時間がございません。一点だけ、集中して議論をさせていただきたいというふうに思います。  それは、事前協議と極東の範囲。この二つは、六〇年安保改定、あのときの特別委員会の議論の概要なども改めて読み返してまいりましたが、根幹はその二つの重要なテーマだったというふうに思います。その後、これについての政府見解が公式に変わったというふうには聞いてはおりません。しかし、現実どうなっているのかということを思うわけであります。  まず、外務大臣にお伺いしたいのですが、前のガイドラインには、前提条件ということで三つ掲げてございました。事前協議、憲法、非核三原則ですね。今回は、事前協議という言葉が消えております。外務委員会で伺いましたら、いや、それは、その意味合いは中身に含まれてずっと継続しておりますということでございましたが、三つの文字があって、一番最初に事前協議というものがあったが、消えたと。消えたということは、そこだけが何で消えたのかという意味を普通持つだろうと思います。何か、事前協議自体を非常にレベルダウンするみたいなことになっているんじゃないかというふうな懸念を持つわけであります。これが一つ。何で事前協議が消えたのですか。  もう一つは、極東の範囲。いわゆる安保条約六条の米軍の行動の範囲にかかわるわけでございまして、私から申し上げるまでもなく、繰り返されている政府統一見解、変わっていないわけであります。日米共同宣言など、これは与党当時にも三党で、ガイドライン協議も十何回、山崎さんも含めてやりまして、結局結論を得ずという残念なことでございましたが、大変に真剣な議論は随分いたしました。その中の一つでもあったわけであります。それは変わったんでしょうか、変わらないんでしょうか。広がったんでしょうか、広がらないんでしょうか。  素朴であり、かつ非常に重要な問題だというふうに私は思いますが、その二点、どうお考えになりますか。
  343. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 第一点についてお答えを申し上げます。  旧ガイドライン、ここは、「前提条件」の第一点といたしまして「事前協議に関する諸問題、日本の憲法上の制約に関する諸問題及び非核三原則は、研究・協議の対象としない。」という記載がございます。  他方におきまして、新ガイドラインの冒頭の「基本的な前提及び考え方」といたしまして、累次御説明しておりますように、三点提起しておりまして、その第一点が「安全保障条約及びその関連取極に基づく権利及び義務並びに日米同盟関係の基本的な枠組みは、変更されない。」という点でございます。  ちなみに、第二点が「日本の憲法上の制約の範囲内」、第三点が「国際法」ということでございまして、この二つを比較いたしますと、旧ガイドラインの方で一つの文章で書いてあることを新ガイドラインの方で三つの点に分けまして、より詳細に記載したというふうに理解しております。  その第一点の中に「安全保障条約及びその関連取極に基づく権利及び義務」というふうに書いたことによりまして、むしろ安保条約というものを明示的にきちんと書いて、その「関連取極」という中に事前協議の岸・ハーター交換公文も記載したということで、実質は変わっていないというふうに考えております。
  344. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 実質は変わっていないと言いましたが、私は、重大な変化が起きているということを申し上げたい。理屈の論争ではなくて、私の最近勉強したことで幾つか申し上げたいと思います。幾つも例がございますけれども、古い例、それからしばらく前の例、最近の例と、絞って幾つか申し上げてみたい。  ちょっと古くて新しい話題なのですが、例えば六五年十二月五日に起きた事件で、八〇年代に当国会でも随分議論になったことなのですが、タイコンデロガ事件がございました。沖縄沖で水爆とパイロットと飛行機が航空母艦からおっこちて、その二日後にその航空母艦が横須賀に入港したという事件でございまして、非常にセンセーショナルに報道された問題でございます。  八〇年代にさまざまな議論があり、外務省あるいは条約局長などの外務委員会における答弁なども読んでみましたが、その当時は、まだ情報公開法で出される航海日誌などが出されていない段階。最近、その航海日誌とかそれから司令官報告とかいうものが、やはり情報公開の国ですね、私もうちに帰ると、ペンタゴンとかにインターネットでつながるようになっていますから、いろいろなものが入って、さすがと思いますけれども、はっきり出てまいりました。  それを読みますと、私はびっくりいたしました。水爆とパイロットをおっことして、二日後に横須賀の十二号バースに着いた。その中身もさまざまですね。司令官報告六六年度分、それから、おっこちた飛行機が第五十六攻撃飛行中隊とあるのですが、それの報告書などを読みますと、つまり、いつでも核戦争に対応できる能力を持っている。これは、ブッシュ大統領が核兵器を船に載っけるのですね。潜水艦以外はやめたという前のことですから、能力を持っている。核兵器というかかわりの文章は、すべて複数になっております。Sがついている。  そして、横須賀寄港、それからさらにベトナムで北爆、当時ですからヤンキーステーションに帰るのですが、その間にどこにも寄り道をしておりません。航海日誌から地図に落として、全部私どもやってみましたが、どこにも寄り道はしていないですね。横須賀に来るまで寄り道はしていない。行くときも真っすぐ行っている。それから、ほかの船に荷物を積みかえたということも、記録には全然ございません。  と申しますと、一体何だろうか、非核三原則、事前協議。事前協議に該当する三つの岸・ハーター交換公文の取り決めというものは何だろうかというふうに思います。これが、重大な問題として私も非常に痛感しましたが、一つであります。  二つ目には、外務大臣には実は再三申し上げてきたことなのですが、昨年一月に、インディペンデンスが湾岸に出撃をするということで、NLP訓練がございまして、これは事前通告なしで、コーエンさんも陳謝をされたと総理からも伺っております。  それはそれなのですが、実はその後、二十二日に横須賀から四隻でペルシャ湾に出動をいたしました。その前の日にコーエン国防長官が横須賀基地をヘリで訪れまして、インディペンデンスの甲板の上で兵士を激励いたしました。その演説の内容、これも私ども、米軍のアメリカンフォーシズ・インフォメーションサービスから取り寄せまして、向こうのでありますが、相当激しい演説をいたしまして、重要な任務でこれから中東に出動する、アメリカの力を見せつけなくてはならぬ、諸君、しっかりやれというふうなものですね。  母港であり、それから第七艦隊の旗艦もある、その場所で、現物の航空母艦の上で最高司令官が言うのですから、直接の出動に何らの疑いもありません。いや、私は、政策的なことを言っているのじゃない、ルールを言っているんです。ルールはしっかり守ってもらわなくてはならぬと。  そういたしますと、今条約局長も言った、事前協議はさらに守りますだの何だのと言っているのは、何をやっているんだという気がするわけでありまして、きちんとした日米間の話があって、お互いにやって、やれることはやれる、やれないことはやらないというのが同盟というものだろうと私は思います。  最近のことでもう一つ申します。  海兵隊を乗っけて、上陸とか作戦に出るための船が、実は佐世保にベローウッドとかジャーマンタウンとか三隻ございます。御承知のとおりであります。最近、その三隻が沖縄のホワイトビーチに寄港をいたしまして、海兵隊員二千人を乗っけまして中東に参りました。  そしてその後、イラク攻撃に関連をいたしまして作戦行動がございまして、四カ月ぶりに、つい最近、三月の十四日にホワイトビーチに帰還をいたしました。報道をいろいろ見てみますと、フルトンさんという大佐の司令官なのですが、湾岸での作戦行動にしっかりやったと、即応態勢の重要性を強調したと、必要な弾薬などはほとんど沖縄から供給をされたと。直接出動だろうと思うのですね。  こういうふうなことが、いろいろと報道その他を読んでおりますと、例えば三沢の飛行場からF16が直接飛んでいったであろうとか、確かめるあれはありませんが、いろいろなことが実は出てくるというわけでございます。  安保の根幹として、六〇年安保のときでも、私どもの先輩が議論したのは、事前協議と極東の範囲という問題でございました。言葉では、それは変わりませんとか、さまざまな御説明がございます。しかし、事実は重大な変化が起きている。この事実を一体どう考えるのか。  十分な時間がございませんので、私は、外務大臣に、この前の、原子力空母が横須賀に来るかという議論のときにも突然申しまして、空中戦をやって、その後落ちついた議論をいたしまして、私は満足はしておりませんが、一定の詰めた話まで国会でもさせていただきました。やはり、こういう議論をきちんとやっていくということが必要なのではないだろうかというふうに思いますが、これらの事態について、外務大臣ですか防衛庁長官ですか、どうお考えになりますか。
  345. 高村正彦

    高村国務大臣 前にもお答え申し上げましたが、日米安保条約第六条の実施に関する岸・ハーター交換公文に基づく事前協議の主題となる「日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用」に言う「戦闘作戦行動」とは、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動を指すわけであります。  御指摘の、空母の中東湾岸地域への派遣のように、米軍の運用上の都合により米軍艦船及び部隊を我が国から他の地域に移動させることは、事前協議の対象とするものではありませんし、このような解釈は従来より一貫しているわけでございます。  コーエン国防長官がインディペンデンス艦上において乗組員に対していろいろ激励したというような発言、これは承知しておりますが、この発言は、国防長官として乗組員に対し一般的な激励を行ったものと承知しており、かかる発言をもって、当時のインディペンデンスの中東湾岸地域への派遣が事前協議の主題となるものではない、こういう見解は一致しているわけであります。  タイコンデロガ号の件については、非常に古い話ですので、政府委員に答弁させます。
  346. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 先生御指摘のタイコンデロガ号、報道によりまして一九八〇年代になって明らかにされたのでございますが、事故は一九六五年のことでございました。当時、日本政府におきましても米側に対しましていろいろ照会をいたしたことはございますし、国会でも御説明を申し上げたところでございます。  米国の方からは、最終的には二つのことを言ってまいりまして、エネルギー省の報告書も出ましたけれども、我が方の照会に対しましては、一つは、米国防省の対外説明といたしまして、米国は核兵器に関する日本国民の特別な感情を承知しており、日米安保条約及び関連取り決めのもとでの義務を誠実に遵守してきており、今後も引き続き遵守するということが述べられておりました。それから、さらに米国政府よりは、この件に関しましては、従来日本側にいろいろ情報提供してきたけれども、これ以上の議論は軍の運用上の政策を危うくするものであるというような最終的な回答を寄せてきたというところでございます。  いずれにしましても、先ほど先生、ブッシュ・イニシアチブにちょっと触れられましたけれども、我々の岸・ハーター交換公文に関します立場というのは、従来どおり変更はございません。
  347. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 時間ですから、残念ながら問題提起をしただけで詰める時間がございません。  ただ、申し上げておきますが、外務大臣、国防長官として一般的なスピーチをしたんだろうとおっしゃいますが、横文字のものでも国内の報道でも、国防長官がとにかく目的地、出動を明らかにしたというのが見出しで報道をされております。認識が大分違うと思います。  それから、外務省に申し上げましたが、このタイコンデロガ事件、いろいろなものを調べてみました。航海日誌とかアメリカ軍が公開した資料なども取り寄せて調べたらどうだという国会での質問に対して、当時の条約局長はやれませんと答弁しているのです。そんなことがありますか。物事はやはりフェアに明らかにして、真相を詰めて、そしてこの現状をどうするのかとやるのが私は行政の責任であり政治の責任だと思います。  時間がございませんから終わりますが、私の考えは、事前協議は完全に空洞化している、在日米軍は湾岸までこれで自由に出撃しているのは事実ではないか、やはり安保条約は変質しつつある、この現状をどう考えるのかという議論をしなくちゃならぬ。  したがいまして、何かマスコミを見ますと、安保条約の範囲の中であるとかいう修正をしようなんという、どこか知りませんが記事が出ましたが、そんな言葉を挟んだってナンセンスではないかという気が私はするわけでありまして、今申し上げたことは、問題提起になりましたので、私どもも事実に基づいたきちんとした勉強と整理をして、いずれ政府に問いたいと思います。そういうことをきちんとどうするのかということが我々議員の仕事ではないだろうかというふうに思います。  以上で、時間ですから、質問を終わります。
  348. 山崎拓

    山崎委員長 これにて伊藤茂君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  349. 山崎拓

    山崎委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案件審査のため、来る四月七日水曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  350. 山崎拓

    山崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、明四月一日木曜日午前八時理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三分散会