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1999-02-23 第145回国会 衆議院 地方行政委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月二十三日(火曜日)     午後六時十一分開議   出席委員    委員長 坂井 隆憲君    理事 谷  洋一君 理事 平林 鴻三君    理事 宮路 和明君 理事 山本 公一君    理事 古賀 一成君 理事 土肥 隆一君    理事 桝屋 敬悟君 理事 鰐淵 俊之君       安倍 晋三君    小坂 憲次君       小島 敏男君    滝   実君       中野 正志君    西川 公也君       平沢 勝栄君    藤本 孝雄君       宮島 大典君    持永 和見君       保岡 興治君    桑原  豊君       葉山  峻君    細川 律夫君       松崎 公昭君    白保 台一君       富田 茂之君    西村 章三君       穀田 恵二君    春名 直章君      知久馬二三子君  出席国務大臣         自治大臣    野田  毅君  出席政府委員         自治大臣官房長 嶋津  昭君         自治大臣官房総         務審議官    香山 充弘君         自治省行政局長         兼内閣審議官  鈴木 正明君         自治省行政局選         挙部長     片木  淳君         自治省財政局長 二橋 正弘君         自治省税務局長 成瀬 宣孝君  委員外出席者         地方行政委員会         専門員     蓼沼 朗寿委員の異動 二月二十三日  辞任         補欠選任   石橋 一弥君     安倍 晋三君   藤井 孝男君     小坂 憲次君 同日  辞任         補欠選任   安倍 晋三君     石橋 一弥君   小坂 憲次君     藤井 孝男君 本日の会議に付した案件  地方税法の一部を改正する法律案内閣提出第一三号)  地方交付税法等の一部を改正する法律案内閣提出第一四号)  地方特例交付金等地方財政特別措置に関する法律案内閣提出第一五号)  地方財政拡充強化に関する件     午後六時十一分開議      ————◇—————
  2. 坂井隆憲

    坂井委員長 これより会議を開きます。  内閣提出地方税法の一部を改正する法律案地方交付税法等の一部を改正する法律案及び地方特例交付金等地方財政特別措置に関する法律案の各案を議題といたします。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。古賀一成君。
  3. 古賀一成

    古賀(一)委員 地方財政関連法案につきまして、きょう三日目の審議でございますが、途中の過程で先週もう終結という話もありましたけれども、これだけ大変な法案ということで、ぜひ二巡目というか、私は一巡目でございますけれども、各党の御理解を得ましてきょうは質問をさせていただきたいと思います。  論点はたくさんあるわけでございますが、私は、同僚議員が先週各般にわたりやられましたので、いわば総括的に今後の方向という点について、野田大臣の将来へ向けての、改革、改善へ向けての決意というものを本当はお聞きしたいなと思ってきょうはここに参りました。  まず地方税法地方交付税法等から入るべきでございますが、皆様も記憶にまだ新しいところでございますけれども、昨年議員立法ということで、質疑はいたしましたけれども、短時間の中に宝くじ関連改正をこの地方行政委員会で論議をし、直ちに採択した経緯があったことはもう御承知のとおりでございます。これについて、私もあのときちょっと、今後の収益金の使われ方についてどうなるのかなというメモを自分自身気になって残しておりましたけれども、一部週刊誌で、この宝くじ収益金の使われ方について実は記事が三度にわたり出たことがございまして、私どもも法案を通したばかりという立場から、この点、確認をぜひさせていただきたいと思うわけでございます。  御承知のとおり、あれは議員立法で、いわゆる宝くじ売り上げがこの数年落ち込みぎみだ、国民皆さんにやはり夢を与えるような宝くじにということで、議員立法の原案では五十万倍という話を、私も言い出しっぺでありますけれども、むしろそれなら思い切って百万倍ということで通った経緯もございまして、それが全部事実かどうかは私はまだ確認はしておりません、時間の関係で。しかしながら、指摘されたことも相当部分は当たっている面がございまして、私は大変気になるわけでございます。  宝くじ収益金の全体の使われ方、これにつきまして再度、前回の法案審議ではこの論点質問ございませんでした。ひとつこの点お聞かせをいただきたいと思います。
  4. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 今委員指摘のように、昨年の臨時国会宝くじ関係法律の一部改正を行っていただきました。  宝くじ仕組みは、都道府県それから政令指定市が発売をいたしまして、その中から当せん金購入者に返すものとそれから経費等を除いた額、それのすべてが収益金として発売団体に納付される、こういう仕組みになっております。売り上げの約四割ぐらいがそういう形になっている。この収益金の使途は法律で定められておりまして、道路でありますとかあるいは学校、福祉施設等のいわゆる公共施設整備に当てるというのが大部分、これはハードでございます。一部は国際交流推進でございますとか高齢者対策とか、あるいは芸術、文化振興等といったソフトに当てられる部分もございます。  そういうことになっておりまして、各発売団体におきましては、それぞれの団体予算におきまして、この収益金議会議決を得た上で今申しましたような公共施設整備あるいは一部のソフト事業に当てられて、適切に使用されているというふうに考えております。
  5. 古賀一成

    古賀(一)委員 今、いわゆる収益金の約四割、三九・五%だということのようですが、総額にして三千億円を超えるという巨大なる収益金がいわゆる公共事業にというか、公共的な事業、一部国際交流等もあるという話でございましたけれども、配分されるということで、都道府県に二千六百五十二億。この三千九十八億という数字本当に巨額な数字でございまして、今減税が問題になっておりますけれども、個人事業税とかをはるかに上回る巨額なお金でございます。  これについて、今の御説明分野というのは、私は全然問題がない、大いにこの収益金でやっていただきたい、構わない、こう思うわけでございますが、週刊誌指摘になった部分というものは、実は普及宣伝費という額がございまして、二・九%という額になっております。二・九というと小さく見えますけれども、総額にすれば二百二十八億という相当巨額な実は普及宣伝費というのがありまして、これが実はいろいろなところに回っている。まず、二%が財団法人日本宝くじ協会ということで、助成金として各団体運動等に配られている。〇・九%が財団法人自治総合センターということになっておりますが、そのほかにもいろいろな団体にこれが回っておることが指摘をされております。  その中で、地域創造という、私は非常にいい名前だな、こう思うんですが、これは公益法人でございますが、これにも、回り回ってでございますが、この宝くじ収益金、先ほどの都道府県、政令市に回った金のものが地域創造二百億円の基金造成に再度回っておるという話も指摘がありました。そして、財団法人自治体衛星通信機構という公益法人がございますが、これも指摘によれば、グリーンジャンボ売り上げから、年度はちょっと忘れましたけれども、五億八千五百万円が当機構に回っている。そして、地域創造にも同じくグリーンジャンボ収益金から二十八億円回っている。  こういうことになっておりまして、この点について、自治体宝くじ収益金でもらったものを再度こういう財団なり公益法人拠出させられるということについての実態を、もう少し局長の方から御説明をいただきたいと思います。
  6. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 今委員宝くじ普及宣伝のお話と、それから地域創造などの公益法人に対します地方団体からのいわば資金拠出のこと、二つを御指摘になりましたが、特にその後の方のことで申し上げておきますと、この地域創造でございますとか自治体衛星機構とかといったような財団法人でございますが、これらは、地域文化振興でございますとか、あるいは衛星通信網整備とかといったようなことを地方団体がいわば共同で行おうという目的で設置しております財団法人でございまして、それぞれの地方団体が、行政ニーズを踏まえて全国的な事業について共同で仕事を行おうということについての必要性の検討を行った上で、地方団体間の協議、合意を経て、具体的には知事会でございましたり、あるいは市長会でございましたりといったようなところの合意を経て出捐をして、設立されておるものでございます。  この資金につきましては、それぞれの公益法人で、各地方団体からどういう額を御協力いただくか、あるいはどうやって集めるかといったようなことについては理事会でそれぞれ判断をして決定しておるものでございまして、基本的には、地方団体公益法人からの要請を踏まえてそれぞれ団体ごと判断をした上で、地方団体予算を通じてそういうところに資金拠出しているというものでございます。
  7. 古賀一成

    古賀(一)委員 局長答弁のとおりだと思うのですが、先ほど言いました二百億の基金造成本当に大変巨額な金でございまして、もちろん知事会があっせんする、そして各自治体議決を経ている自主的なものである、それはもう確かにそうだと思うのですが、我々は、この法案を昨年そういう気持ちで、提案の二倍までして応援しておる立場からいうと、どうせやられるなら——本当自治体は、今いろいろなニーズがやはり吹き出していると思うのですね。だから情報化とか、あるいは衛星通信機構に金が出ておるわけでありますけれども、最近は特殊法人を新たにつくるとか、そういうことはもう御時世上許されない。しかし、地方行政ニーズは刻々と変わっていく。しかも、全体より知恵を集め、金を集めてやった方が効率的という分野もあるので、私は全部は否定はしません。  しかしながら、一方で、きょうは余り時間もないし、本テーマじゃないので詳しく言いませんが、これだけの宝くじ収益金があって、東京にこういう巨大な、巨額な基金を集めて一つ財団をつくる。自主的な判断都道府県が出すとはいえ、実際のところは全国知事会とか自治省からの依頼が来れば横並びの議論。あるいは、もっとうがった見方をすれば、強大な権限自治省は持っているわけですから、起債の許可権限あるいは交付税、とりわけ特別交付税、そういう権限を持っておるがゆえにやはりうさん臭く見られる可能性もまた大ということで、もうきょうは深くは申しませんけれども、意義あることは、私は大いにやっていいと思います。  しかし、それは本当ニーズに合った、例を言えば、自治体衛星通信機構というのは、やりようによってはこれは本当にすばらしいものになると私は思うのですよ。もう今、地上波の商業テレビというのは、どこそこの県でこういう県政振興の新しい施策をやったとか、あそこの町でこういう町おこしをやっているなんというのはほとんど乗らないのです。ところが、外国に行きますと、そういういい話ばかりがいろいろテレビにオンエアされる。日本の場合、そういう前向きの話は出てこない。  だから、そういうので、隣の県あるいは自分と同じような過疎地域がどういうことをやっているというような情報、こういうものを、せっかくつくったのであれば自治体衛星通信機構を通じて流していこうじゃないか、それがやはり地方市町村議会、どっちかというと閉塞的になっていると思うのです。非常に閉塞的な発想になっている地方自治体議会あるいは役場、そういうものに新しい情報の息吹を吹き込むことにもなる。そういう本当意味で危機に瀕する自治体、そういう分野本当は使うべきだと私は思うのですよ。  だから、私は、この点は、私も役人をやっておりましたし、いろいろな経験を実際知っております。都道府県にもいましたから、本省からのそういうお誘いがあったというか、それもよく知っております。詳しくは申し上げませんけれども、その点、国民の善意で集められたお金をしっかりと自治省がオーガナイズをして、そういう前向きなものに、きちんと国民皆さんにはっきり、こんなことをやってよくなっているんですと言える分野に堂々と使うということをぜひ今後肝に銘じていただきたいとお願いを申し上げたいと思います。  それでは次の、本題に移らせていただきたいと思いますが、今の拠出金の話ともちょっと関連しますけれども、やはりどちらかといえば、地方分権とか地方時代とかずっと言われてきたのですね。でも、今度の平成十一年度予算、たまたまきょうの新聞の夕刊、先ほど配られたもののようでございますが、私もさっきうちの秘書からもらったんですが、「十四都県がマイナス予算」、都道府県だけで地方債残高六十四兆円。そこの中の新聞のコメントに、「地方からは「もう国に付き合えない」の声が漏れる。」こういうような、悲痛とも言える声もございます。  そういう中で、地方の声というものは、本当自治行政、とりわけ本省において地方財政、あるいはもっと具体的に言えば来年度税制をどうするとか、あるいは固定資産税税制改正だとか、たくさんあると思うのですね、主従関係はもちろんあると思うのですが、実態については、もうこれは主従関係もないわけで、それを本当に聞いているんだろうかと、私は率直に最近疑問に感じます。  それで、大臣はこの前、介護保険関連桝屋議員質問に答えられまして、やはりもう少し地方の声を聞くべきだったというふうに私は受けとめましたけれども、そういう御答弁もされましたし、大臣答弁を引き出すまでもなく、ただいまも各都道府県、各市町村介護保険をめぐる悩み、不安が渦巻いていると思うのですね。  そして、そこで聞こえる一つの愚痴は、批判は、厚生省は要するに十分なるヒアリングというか、地方のいわゆる実態、声を聞かなかった、そういう声もある。しっかりヒアリングをしてくれたという話は、どこにも一つもございません。そういうことから見ると、やはりこういう轍を踏まないためにも、抽象的な言い方でありますが、やはりこの際、これからが本当意味での、後ほど申し上げますように、地方財政あるいは地方制度改革の好機だと私は思うのです、チャンスだと思うのです。  そういう面から見て、大臣、いかがでございましょうか。今後、地方の声というものを、地方団体ヒアリングをやったというだけではない、何か新しい試みで聞いていくという御姿勢というか、問題意識といいますか、私はあってしかるべきではないかと思いますけれども、まずこの点、何か御感想、御所見があれば、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。
  8. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 地方の、言うなら現場の生の声、いろいろな、そういうもっと肌で感ずるようなやり方はないか、こういうことだと思うのですが、今までも一応、地方団体とよく言われますが、知事会であったり、それぞれ県市町村、それぞれの首長さんあるいは議会、こういう形で、必要に応じ、結構定例的に自治省としては御意見を伺う場があり、特にまた、全国知事会では総理みずから、総理官邸で行われるわけですが、そういう場が設定されている。そういうような、今日まであるわけですが、特に、昨年秋は、直接総理市町村長さんの皆さん意見交換をする場を設けられたり、議会の方からも、地方自治法規定で提出されました意見書についても参考にしてきた、そういうこともございます。  また、今度この国会で御提案をしようと思っております、いわゆる分権推進計画を踏まえて出しますが、地方自治法改正の中で、地方団体からの意見申し出に対して、内閣遅滞なく回答するよう努める旨の規定を新たにするということを予定いたしておりますし、さらに、当該意見が、地方公共団体に対し、新たに事務または負担を義務づけると認められる国の施策に関するものであるときは、内閣遅滞なくこれに回答するものとすることを規定する予定にいたしておるわけであります。  この中で、自治省が直接自治体のいろいろな意見を聞くということだけでなくて、率直に感じますのは、関係各省縦割り自治体に直接いろいろな事務を要請していく、そういったことが、いい悪いは別として、現に今までも結構あるわけですね。そういう意味で、その関係をどういうふうに整理していくか。その点では、ただ単に意見を聞くというような形式的なことだけではなくて、やはり、権限そのもの移譲といいますか、そういったことをきちんとやっていかなきゃならぬという、そのことの必要性を特に痛感をいたしております。  それは、公共事業の系統であれ、あるいは今御指摘社会福祉に関する事柄であれ、もう少し、そういった意味で、地方権限そのものについての見直しなり、あるいは予算なり、補助金等の問題もありますけれども、そういったことまできちんと対応していかないと、今、古賀一成委員が御指摘になったような本当の実を上げるということはなかなか難しい、そのようにも思いますので、全力を挙げて努力をしてまいりたいと思います。
  9. 古賀一成

    古賀(一)委員 私は、大臣としても、各団体と折々のチャンネルで意見をお聞きになっているということですから、それはそうだと思うのです。  私が申し上げたかったのは、もちろん、縦割り組織が、国から県、場合によっては市町村の課まで、全部ばあっと貫かれているという実態があります。それを結局打ち破るという大問題があるわけでありますけれども、これは容易なことではない。少なくも、自治省そのものも、やはりそれに似通った、自治省知事会財政課と、こういうやはり一種の、ある面では縦割り的な、内にこもった、その中で、実は地方自治というのが霞が関の中で押し合いへし合いで進まない。  だから、私は、先ほどの自治体衛星通信機構の話をしましたけれども、これだって、自治省の中で議論したって、いい、おもしろいアイデアは絶対に出てこないと思うのですよ。もっと、一般の国民なり有識者なり、あるいは、地方自治の総括をされる自治省が、もっと広い分野意見を巻き込むような、そこまでの覚悟と仕掛けを持たないと、実際は、地方財源移譲であるとか、要するに身内で、知事会自治省市町村長でやっているんだろう。やはり、国民的なバックをつけるというところまでやらないと、私は地方分権というのは進まないと思うのですね。  だから、何度も私がこの委員会で御披露した、市町村合併のときだって、昭和二十八年に、自治庁のころに、ミス・ニュー・シティーコンテストをやって合併を促進したとか、ああいう殻を破った発想でやらないと、私はなかなか容易ではないと思うのです。  だから、さっきの宝くじの使い方というのは何か内にこもっている。だから、それを糧として、もっと外に、国民に訴えていく。国民の心を揺さぶる。あるいは、自治体だけではない、ほかの関係団体も巻き込んで分権しないと国は立ち行かない。私は、そのぐらいの、今までのやり方と違ったやり方というのが求められているのだと思います。これは、私の総括的な意見として申し上げておきたいと思います。  それで、時間は刻々とたちますので、急ぎます。  私はもう何度も聞いたのですが、まだ前向きの納得できる答弁を得られていない問題に、地方分権といいながら、地方時代が大切だといいながら、現に起こっておること、特に、今度の平成十一年度予算、これ一つ見ても、全部、言葉とは裏腹に、実際は中央従属構造大蔵省中心主義というか、そういうので現実に動いているのですよね。それについて、このやり方を続ける限り、幾ら言葉で言ったって、しかるべき地方分権時代は来ない、こう思うのです。  ちょっと私に言わせていただければ、地方財政の四本柱といえば、地方税地方交付税補助金地方債ですよね。  では、地方税は、もちろん三割自治で、三割強しかないので、これは地方分権には弱いという議論もありますけれども、その弱いと言われる地方税そのものが、今度の補正でも何でもそうですね、年末のぎりぎりに、国の方針で、突然、減税だ、地方単独幾らだ、減税規模はこうだ、いわゆる大蔵自治省霞が関の折衝の中で突然決まって、それがだあんと地方自治体に指導されていく。三割という額の小ささだけでなくて、中身についても、そのタイミングについても、そしてそれは、地方自治体意見も聞く余裕もなく、有無を言わさずというのが実は地方税自主財源実態だと思うのですね。  それで、地方債、これは言われているように、さっきの新聞じゃありませんけれども、国につき合うと地方債は雪だるまだ、もうつき合えないという声が出るほど、実は、諸般の国の方針に従って、来年度末、百七十六兆。そして地方交付税も、二十兆の総額のうち八兆円穴があいているわけですよ。八兆円あいているのです。地方交付税不足額も、自治省大蔵でやりくりして折半しようとか言っておるのですが、全部それは金利つきの、全部借金ですよね、特会借入金にしても。  そうして見たときに、言葉では地方自治が大切だ、分権だ、こう言いながら、刻々起こっておるそういう節目節目の現象というのは、すべて中央に引きずられておる。大臣は所信の中で、国と地方は車の両輪だとおっしゃったのですけれども、まさに今の自動車のように、右の車輪が行けばこっちもいや応なしについていくような構造になっているのですよね。では、ハンドルはだれが持っているかというと、やはり国が持っているのですよ。両輪とは格好よく言われながらも、ハンドルはしっかり持っていて、国の財政という右の車輪が動くと、地方もそれにつれて動かざるを得なくなるという仕組みになっている。  だから、私はこの際、こういった構造大蔵省中心主義あるいは国中心主義、こういうものを何とか突破口をあけなければならぬと思うのですが、それは何だろうといろいろ考えるのです。  さてそこで、私が持論として思うのは、地方財政について少なくも中期財政試算というものを、やはりこれを突破口にやるしかないと思うのですね。両輪といいながら、大蔵省が国の財政計画を決め、経済成長率についても本当は経企庁が決めるべきなんだけれども、大蔵の意向も強烈に聞いた中で修正をされ、法人税所得税の収入が描かれて、そして大蔵は五年後、十年後の歳入欠陥はこうなります、どうするのですかということで政治なりマスコミなり国民に訴えているわけです。  地方からは全然そういう試算がないわけです。これはもう全く独立した立場にないと思いますね。おまえは黙っておれ、うちが来年の単年度の収支をやるまでは黙っておけ、まして中期の、向こう五年間にわたる財政計画を立てるなんということは許さないと言われるのが、そういう立場に置かれているのが地方財政そのものだと私は思うのですよ、あるいは地財計画だと思うのですよ。  だから私は、この際大臣に、少なくも突破口はどこか。いろいろあります、分権推進計画とかいろいろあるでしょうけれども、少なくも、地方財政独立性を、自主性を確保するには、地方財政中期試算というものを絶対来年からは策定する、素案でもいいから策定する、そういうことに取り組むべきだと私は思いますが、大臣の御所見をお聞かせいただきたいと思います。
  10. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 地方財政自主性自立性を非常に憂えていろいろお考えをいただいておるということに敬意を表しますが、率直に言って、地方も百七十六兆になる借金を抱え、国、地方合わせて六百兆という借金を抱えておるわけで、言うならお互いが借金だらけ、こうなってしまっている。そういう点で、私は、今の財政の状況、どちらかが裕福でどちらかが貧乏だというようなことではなくて、あるいはトレードオフの関係ではないのじゃないか。ともに非常に大きな問題を抱えているという現実が一つある。  それから、今日まで、地方自治という中でいつも長年頭の痛い問題は、地方自治とはいいながら、同じ日本人で住む場所が違うことによって住民税のレベルが違うということはおかしいじゃないかという一方では議論があり、あるいはサービスのレベルにおいても似たような議論がある。おのずから税源そのものが偏在を免れない部分もあるという中で、どうやって本当意味での地方自治——地方自治ということは、一方で言えば、自立と自律だと思っています。みずから立つという自立と、みずからの規律ですね、自己規律という意味での自律、自己責任という言い方もありますが、それがやはり原点、キーワードだと思います。しかし一方で、それを達成することによって本当にみずから立っていけるというだけの背景がなければ意味をなさない。  そういう意味で、財源的な側面と役割分担という側面、この点についてもう少しきちんとした交通整理が行われないと、なかなか言葉だけが先走って実態がついていかない。その歴史が今日まで積み重なってきているというふうにも思います。  そこで、ここいらで中期的な財政の見通しをつくったらどうか、国の方も国会に出しているじゃないか、こういうことでもあるのですが、率直に言って、この点については、結論から言うと、大変難しい課題だなと。その発想を否定するものではもちろんありません、できればいいがなとは思うのですが、実際問題、国レベルにおいて、宮澤大蔵大臣答弁もしておられるように、率直に言って、出さなければならぬことになっているからこれをやっておりますがと。  それはなぜかというと、前提を幾つかアプリオリに置いているわけですね。そういう意味で、その前提そのものを、非常に動き得る前提あるいは政治的な意思によって動き得る可変的なものを前提にして、動かないという前提で計算していくものですから、現実とはかなり遊離したような試算が示される結果になってしまっている。国の中期財政見通しでさえそういう現状であるということがまず一つございます。  それから、いま一方で、地方においては、特に三千三百という個別の、個々の自治体が現にあって、それを総合しての数字が一体どこまでできるのかという、あるいは県と県内の市町村との関係でやりとりもあります。そんなことを考えますと、個別の歳入歳出項目、ある程度整合性を持たせた中で、単年度でいえば、地方財政計画ということで毎年御審議もお願い申し上げておりますが、中期的な展望ということになると、率直に言って、実践的な意味をもたらすような指標ができ上がるかどうかということについては、甚だ心もとないというのも偽らざるところであります。  そういう点で、そもそも古賀先生がそのことに思いを込めておっしゃられる最大の理由は、今日のかつてない地方財政の厳しい現状において、もう放置ができないのじゃないか、目先のびほう策じゃなくて、根本的なきちんとした展望のもとに大手術をした、そういうものを出さなければだめなんじゃないか、そういう発想だろうと思うのです。そういう問題意識は私どももそのとおりでありまして、これはこの前からこの委員会でもたびたび申し上げておるわけでありますが、それ以上は時間を食いますので遠慮いたしますけれども、そういう根本的な治療を地方財政についてもしていかなければならぬという思いは全く同感であります。  いずれにせよ、その中で、地方自立性自主性ということを最大限の眼目に置いた財源対策ということを講じていかなければならぬということは、重ねて、そういう決意でおりますということを申し上げたいと思います。
  11. 古賀一成

    古賀(一)委員 私はエコノミストでも何でもなくて、五年後の地方税収が幾らになるかとか十年後の地方財政がどれだけ赤字になるかという、その表が欲しいわけではないのです。  結局、地方自治行政あるいは地方財政というものが完全にいわゆる従属した形で、その日暮らしで迷走して、迷走したものにつき合わされた結果が今日あるわけでありまして、恐らくこれは、ほっておけばずっとなっていくと思うのですよ。  そしてそれを、当事者である自治体がそれに見合う危機意識を持っているかというと、実はそうでもない面があるのです。それは、将来に警鐘を発する部分自治省そのものになかったからだと思うのですよ。だから、大蔵省と戦争してでも、これは新聞に物すごく載ると思うのですよ、地方財政の破綻というのは毎日載っているわけですから、自治省ついに、これまでやったことないけれども、中期財政試算を示さずして地方分権とかそういうものはあり得ない、そしてまた地方分権推進する主体性もないと、そのけんかをしかける。  それが問題になることによって初めて自治体も、大変らしいと、そこに初めて国民のコンセンサスも生まれてくるわけです。大変だ大変だ、しかし、おらが県は地方交付税で将来見てくれて、地方債といえども、あれは実際はおれの借金じゃないと思っている首長さんだっているわけですから。そこに今の、財政のそういう厳しい状況を示されない中に、まんまと国、地方両方が、だれが最終的に責任をとるのかわからないという形でこれだけの状況になっておるわけですよ。  国と地方債合わせて六百兆、GDPの一二〇%、どうやってこれを解決するんだろう。その突破口は、私は、中期財政試算という数字が欲しいわけではないんです。自治体にそういう一つ一つの危機意識がまだ伝わっていないということ、そして大蔵省に従属している、しかもそれは単年度主義の、単年度じゃないです、一年じゃないですよ、もう数カ月も、政治的ないろいろな駆け引きもあるでしょう、それに振り回されて今日の景気対策がある、平成十一年度予算がある。どこかに警鐘を鳴らすには、中期財政試算本当にこの一年でできるかどうかは別としても、少なくも自治省は、中期財政試算、素案でもいいですよ、つくることをひとつ財政当局とやり始めたというぐらいのことがなくして、私は、この問題は絶対解決しないと思うんです。  そういうシンボルとして申し上げたわけで、ぜひとも、財政にお詳しい大臣でございますし、そして、自由党から唯一の大臣として入閣された大臣に、ぜひこれは頭に置いていただきたいと私は思うんです。  では、具体的に申し上げたいんですが、もう一つの問題です。地方交付税特会借入金、これは何度も質問に出ました、二十九兆ございます。これはちょっと局長にお聞きしたいんですが、この数年、残高及び利払いというのはどういうふうに推移してきておるのか、ちょっとこの委員会の場でお示しをいただきたいと思います。
  12. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 当初の段階から財源不足が出て特会の借り入れを行いまして以降のことで、ちょっと申し上げますと、平成年度末で借入残高が七兆四千億余りでございました。それが翌年の七年度末には十一兆六千億余りになりまして、八年度末が十五兆三千億余り、九年度末が十七兆一千億余り、十年度末が二十一兆一千億余り、それで、十一年度末見込みが二十九兆六千億余りでございます。  この間の利子でありますが、順番に申しますと、六年度が二千億少し、七年度が二千九百億余り、八年度が四千億ちょっと、九年度が三千八百億余り、十年度が三千億余り、それから十一年度の見込み、予算で見込んでおりますのは五千八百億余りという数字でございます。
  13. 古賀一成

    古賀(一)委員 例の国鉄債務も、結局処理がああいうことで、たばこだあるいは一般会計だということになったんですね。国鉄は資産を持っていたわけですね。資産を持った上で、売るタイミングについて、売るスキームについて、確かにやはり大失敗はあったと思うんですが、それはもう言いませんが、結局国民の負担になった。この地方交付税特会は、別に売るべき資産もあるわけではない。  大臣がるるおっしゃっていたように、これからの国家財政は大変だろう、自治体財政もこれからもっと大変になることは目に見えておる中で、今の数字を見たって、もう恐るべきスピードでこの特会借入金はふえてきているわけですよ。これは本当に将来どうするんだろう、こう思うんです。大臣、この交付税特会借り入れ二十九兆、基本的にできるかどうか、要するにどういう対策になるのでありましょうか。専門家でございますので、こういう案があり得るというのをぜひ私はお示しをいただきたいと思います。
  14. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 いや、そういう計画があれば一番いいんです。率直に言って、これだけのどん底になっているわけです、今の地方財政の現状は。そこで、破綻に瀕していると言った方がいいと思います。  では、これを具体的に何年計画で返済計画ができるのか。本当はそれが言えれば一番いいんですが、残念ながら、たびたび申し上げておりますが、前提になる日本の経済状況そのものがやはり極めて厳しい現状にある。何とかことしは〇・五%のプラス成長にして、その次からは二%の成長を確実なものにしていこう。まずはそれをはっきりさせていかなきゃだめだ。  ともかく、いわゆるバブル崩壊後、資産価格の喪失が千二百兆を超えておるわけでありますから、そういう中でどうやって日本の経済そのものを立て直していくのか、そこの道筋が見えないと、税収の道筋が見えてこない。その税収の道筋をある程度、国、地方、それぞれ現行制度でいくとどのような形での税収が見込めるのかということがまず出てこないと、とてもじゃないが計算の前提が成り立たない、そういうことはたびたび申し上げたとおりであります。  同時に、その税収の増を期待するということだけじゃなくて、やはり別途、役割分担、事務事業をどういうふうにきちんとした形で権限移譲するのか。同時に、国、地方を通ずる財政を簡素で効率的なシステムにすると同時に、むだな経費は当然のことながら切り詰めていくというか、経費の効率化を図っていくというのは、これまた当然のこと。そういうことが合わさって、そんなに遠くないときに、本当にきちんとした整理をしていかなきゃこれはだめだということに、率直に言って、今もう突き当たっているというふうに思います。  これは地方のみならず、国自身の財政を考えた場合でも、そういうところに直面をしているわけでありますし、同時に、それと連動する中で、国と地方が先ほど車の両輪と申し上げたんですが、まさにそれぞれがお互いの財政規律というか、貸し借りということだけでしのいでいくというのではなくて、ルールをきちんとつくって、その中で、自己規律の中で、安易に他を当てにしないというか、そこだけはそのルールをつくっていく、その中で本当意味での地方自主性自立性ということが確立をされていくんだ、そんな思いを持っております。  答弁が長くなって恐縮でありましたが、率直に言って、この二十九兆という交付税特会の借り入れについても、今のところ、当面、国も地方本当に呻吟しながらしのいでおるというのが偽らざるところだろう、私はそう思っております。
  15. 古賀一成

    古賀(一)委員 結論から言えば、わからぬ、それだけの解決策はいまだないと。それは悪く言えば、何か破れかぶれのような、地方はその日暮らしで後はもうどうなるかわからぬ、しかし借金だけは伸びていくということです。  野田先生が自治大臣になられたとき、しかも自自連立の中で改革を旗印にやってこられたわけでありますから、私は、この前、過去の新進党結党から今日に至ることについてはちょっと理解できないと申し上げましたけれども、きょうはもうとやかく過去のことは言いません。でも、これから先を考えれば、野田先生が自自連立のシンボルとして入閣されたわけですから、しかも、それが自治大臣ということならば、将来へ向けては、私は、大蔵とつき合うんじゃなくていいと思うんです、自治省の方から、地方の方からむしろ抜本的な粗っぽい提言をする権利があると思うんですね。  この間も申し上げましたけれども、三百市町村構想であるとか財源移譲であるとか介護保険施行延期、あるいは地方交付税のかねてより問題になっております例の六条の三の第二項ですか、交付税率の引き上げの問題等、山積しておるわけですよ。これについて、私は、野田大臣だからこそ総理にも言う権利があるし、しかも、時あたかも地方財政は、国のそういう流れの中につき合ってきた結果、こういう状況になっているということですから、自治大臣、どうでしょうか、本当に第二次政策合意というような形で、これだけ地方自治地方財源が大変になっておる折でございますので、すぐできなくてもいいんです、この機会に緒につける。私は、その責任もあると思うんですね。  大臣、何か地方財政が今直面しておる現状の中で、この在任期間中に、大臣としてこれは緒につけるという何かが私はぜひ欲しいし、今までの大臣とは違う、ここで一つ改革の芽を出したと野田大臣に将来も言っていただきたい。ひとつ何か、ぜひこれはやると、その所信をぜひ私は聞かせていただきたいし、それでなかったら、では自自連立で自治大臣が誕生したという意味は何だったんだろうと私は言わざるを得ないんじゃないかと思います。ぜひ私は野田大臣に期待したいと思いますが、いかがでございましょう。
  16. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 御激励をいただいて、ありがとうございます。いつまでやっておるか、まだよくわかりませんが。いずれにしても、私は、地方自主性自立性を重視した自主財源、これをどういうふうに強化するかということは本当に喫緊の課題でありますが、その中で、さっきいろいろな課題を合わせてと言いましたが、最優先の一つとして、やはり事業税についての課税標準を外形標準の要素を導入するということ、これはあらゆるものが全部ワンセットでなければできないというのではなくて、そういったところはぜひ御協力願えればありがたいなというふうには実は考えております。  もちろん、いわゆる現在の住民税そのものが、これは所得税の方もそうでしょうけれども、今は恒久的減税ということでそういう形になっておりますが、いずれ抜本的な税制改革という中で見直しもしていくというテーマは当然あるでしょうし、その際には、所得税と住民税との間を通じた見直しということもあり得るだろうし、地方税自身がより普遍的でより負担分任的な発想を取り入れるような、やはり住民に一番身近な仕事をするわけですから、そういう意味での安定性、普遍性というものをしっかりとベースに置いたような地方税体系というものをぜひつくっていきたい。  もちろんそれだけがすべてじゃありません。それを補完する意味での、一般財源を保障するという上での交付税の役割というのは、これまた当然別途必要なことであろうと思います。そういう意味で、所得あるいは消費、資産、そういう意味でのバランスを頭に置きながら、地方税をしっかりと位置づけていきたい。  同時に、それともう一つ、さっき市町村合併のお話もありました。あるいは国、地方の役割分担の見直しの話もございました。その中で、もう一つ、さっき非常に大事な指摘がありましたが、財政規律なりなんなりをお互いにつくっていこうという中には、今の個別の補助金でいくということについて、もう少し本当にこれは各党を超えてしっかりやっていかないと、今の姿では、結局地方団体にとって、なかなか財政のみずからの規律を追求するということになりにくい要素があることもまた偽らざるところであります。そういったことをも含めて、本当意味での地方自主性自立性を確立できるように全力を挙げて努力をしていきたいと思います。
  17. 古賀一成

    古賀(一)委員 もう時間があとわずかになりましたので、きょうはオーバーしないように、もう質問ではございませんが、この三法についての質疑が終わるわけですが、大臣のあるいはこれまでの自治省の御答弁の中で感じた本質的な点を私は問題提起をしておきたいと思います。  まず一点は、前大臣もそうだったんですが、そういう改革あるいは中期的見通しに立ったアクションを起こす、こういう話のときに野田大臣もよくおっしゃったのは、当面はこの経済状況、景気状況だから、体力をつけることが先、こういう話がずっと一貫してあったと思うんですが、これは確かにもっともな話ではあるんですが、これをやっておると結局いつまでも緒につかないということになると私は思うんですね。だから、緒につける、検討を始める、それが国民に伝わるということは、結論を出さなくたっていいわけですから、それはもう今をおいてほかにないと私は思うんですね。  だから、さっき言った中期財政試算でもいいし、地方交付税の抜本見直しでもいいし、今お話にございました外形標準課税の問題ももちろんやっていただきたいんですが、もっと基本的なスキームについて、私は、今をおいて国民に、地方自治体に、対財政当局に問題を発する時期はないと思います。これはそういうことで、今の景気動向とそれは関係ないと思うんですね。それはぜひ私は御理解をいただきたいと思います。  それともう一点でありますけれども、実は行革が、中央省庁再編が本当にどうなるかということもまだわかりません。でも、流れとしてはもうシナリオは一応決まっておるわけです。その中で、自治省はその名前が消えるわけですね。総務省に統合されると言ったら語弊があるかもしれませんが、要するにその中に組み込まれる。そうしますと、そこには郵政関係もおられれば、いろいろな巨大なる行政業務が一つ大臣のもと、総務省という名のもとになっちゃうんです。  そうしたときに、これだけの自治省という省があってなおかつ地方分権というのが困難であったという厳然たる事実があって、私は、そういうことから見ると、地方分権とか地方財政改革とかは消えてしまうんじゃないか。だから、地方自治の根本問題について、今の時期に自治省として、つまり政府として、この問題は検討を始める、この問題はもう既定の路線として検討するんだ、そういう仕組みを注入しておかないと、総務省になったら、私は、これは大変なことになるんじゃないかと思うんですね。  だから、五年かかろうと十年かかろうと構わない、まあ十年は長過ぎますけれども、いわゆる自治あるいは地方分権地方財政に関する根本問題について、自治省という役所が、責任ある官庁が存在するときに仕込んでおいて、それを何年かけてでもやっていくという仕掛けを打っておかないと、総務省になったらこういうのはワン・オブ・ゼムになって、自治とかこんな巨大な問題、大問題は雲散霧消するんじゃないかという心配を私は非常にしておるわけですよ。  そういう面においても、今野田大臣がなられた、課題は山積しておるわけですから、だからそういう新しい骨太の巨大な問題に立ち向かう、それは審議会がいいのか、そういうのじゃ私はだめだと思うんだけれども、少なくとも省内の若手に、こういう根本問題を全部洗い出せ、ほかの各省庁の補助金、そういうのは気にせぬで、地方自治の再生というか、それを目指して検討しろ、そういうことを今仕組んでおかないと、行革のどたばたで総務省になったけれども、今までのルーチン的に、金は足りぬらしいけれども交付税を配分すればいいんじゃないのというような程度で総務省がこれを受け継いだら、私は大変なことになると思うのです。  だから、そういう面で、私は野田大臣に大変期待するものも多いし、歴史的にも、大げさですけれども、将来総務省になったときに、地方自治がその後どう扱われるかわかりませんけれども、私は、あのときに野田大臣がこれだけのものを仕込んでいったというものはやっていただく責任があるのではないか、かように思います。  これで終わりますけれども、御決意がありましたら一言述べてください。
  18. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 地方主権といいますか、地方分権地方自治への熱い思いを拝聴いたしまして、本当にありがたく、敬意を表する次第です。  この問題については、御指摘のとおり、私も全力を挙げて取り組んでまいりたいと思いますし、決して事柄を先送りするのではなくて、少なくとも将来の方向性についてはいろいろ申し上げておるつもりでございます。そういう点で、ひとりよがりであってもいけません。そういう意味では、これからもいろいろな考え方もお聞かせをいただきたいと思います。  また、幸いにして、自治省のすばらしい有能なる皆さんが一生懸命努力をし、いろいろ汗を流して、また知恵を出して、日本地方自治の確立のために日夜努力をいたしておるわけでありまして、これからもよろしく御指導をお願い申し上げたいと思います。  総務省になったとしても、地方自治はますます強化される方向に動くであろうという確信を持ちながら、答弁にさせていただきます。
  19. 古賀一成

    古賀(一)委員 終わります。
  20. 坂井隆憲

    坂井委員長 次に、富田茂之君。
  21. 富田茂之

    ○富田委員 公明党・改革クラブの富田でございます。  民主党の古賀理事の方から交付税特別会計借入金について最後の方で御質問がありましたが、私もそこの関係を何点か尋ねたいというふうに思って質問通告をさせていただきました。その前提となります地方交付税法第六条の三の二項、また、それに対する対応についてお尋ねをしたいと思います。  地方交付税法六条の三の二項はこういうふうに書かれております。「毎年度分として交付すべき普通交付税総額が引き続き第十条第二項本文の規定によつて各地方団体について算定した額の合算額と著しく異なることとなつた場合においては、地方財政若しくは地方行政に係る制度の改正又は第六条第一項に定める率の変更を行うものとする。」  毎年この点を質問して、二橋財政局長とやり合っているのですが、なかなか話が進まないので、ことしはちょっと角度を変えて聞きたいと思いまして、過去の財源不足の状況について資料をいただきました。平成六年は財源不足は三兆円だった、七年は四・三兆円、八年が五・八兆円で、九年が四・七兆円、十年が四・六兆円、十一年度は十・四兆円の財源不足になるというふうに予想される。物すごい大幅な財源不足であります。そうすると、平成年度から四年間、この六条の三の二項が予定するような状況がずっと続いている。  この六条の三の二項については、考え方として、まず、地方財政対策を講じる前に、通常の例により算出される歳入歳出におけるギャップ、財源不足があって、その額が国税の定率分で計算した普通交付税の額のおおむね一割程度以上となり、その状況が二年連続して生じ、三年以降も続くと見込まれる場合というふうに解釈されております。先ほど財源不足額をずらずらと言わせていただきましたが、平成年度以降、四年間連続でこの条文に該当するというのは、だれが見ても間違いない状況であります。  それに対して、政府、自治省の方でどういう対応をしてきたか。平成年度には、単年度の措置として、財源不足額のうち、地方交付税の増額措置により対応する部分については国と地方が折半するんだ、いわゆる折半ルールを出して、これを法定していった。九年度は、それをそのまま継続した。ところが、十年度になって、もうそれでは立ち行かなくなって、財政構造改革の集中改革期間ということもありまして、地方交付税特別会計借入金の償還を平成十三年度以降に繰り延べる、財源不足のうち地方交付税対応分については、国と地方が折半して補てんする、これはそのまま継続するというふうにされました。  私は、昨年のこの委員会で、こういうふうに三年間繰り延べしたらとんでもないことになるんじゃないかというお尋ねをしまして、十二年度末に交付税特会の借入金が一体どのぐらいになるんだというふうにお尋ねしましたら、財政局長は、去年の状況が続くと仮定して約二十二兆円だろうというようなお話がありました。ところが、先ほど古賀理事の方からの質問に対して、十一年度末で二十九兆だろうというようなお話で、全然予想が狂っている。  こういう予想が狂う、その前提として、地方交付税法六条の三の二項に対する対応、これまで八年度は単年度でやり、九年度も単年度でやり、十年度はちょっと様相を変えてきた、これで本当に誤りがなかったのか。財源不足額地方交付税特会借入金の残額が平成六年以降ずっとふえてきているのに、こういう対応で本当によかったのだろうか。  毎年、この委員会地方税法地方交付税法が議題になるときに、これじゃだめだ、もう少し抜本的改革をしろと各党の委員が言ってきたわけですね。それでも、ことしの様子を見て、いろいろな状況がありますから、国も大変だ、先ほど大臣が言われていましたけれども、地方だけが大変なんじゃないということで、ずっとそれを続けてきて、毎年毎年議論しても結局変わりない。ちょこちょこ手段を出して、とうとう立ち行かなくなって、今年度の対応になったんじゃないかなというふうに思わざるを得ません。  その点、財政局長は、ここのところ二年続けてこの件について答弁されているので三年目の答弁になると思いますけれども、どういうふうに思われていますか。     〔委員長退席、山本(公)委員長代理着席〕
  22. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 平成年度以降、六条の三第二項の規定に該当しておりまして、当委員会で富田委員からも何度も御質疑をいただいております。そのときには、もっと抜本的な制度改正とか、あるいは交付税率の引き上げといったような恒久的な措置をとるべきではないか、こういう御指摘でございました。  私どもが申し上げてまいりましたのは、国も地方も両方とも絶対的な財源不足が生じておるものですから、抜本的な制度改正、あるいは交付税率の引き上げというふうに恒久的な財源移転を行うということは、結局、片方はもちろんそれで恒久的な財源手当てになりますが、動かされた方がそれだけ財政赤字がもちろん大きくなるわけでありまして、両方を通じてとにかく財政再建を図らなくちゃいけないような絶対的な両方財源不足の時代であるので、なかなか難しいということを申し上げてまいりました。  十年度のときには、しかし、単年度ということを毎年毎年やっていくというのは、幾ら何でも余りに応急的ではないか、また、私どもなりにもそういうふうに考えまして、三年間という一応のルールをつくる。これは、折から構造改革法ができるということもございました。そういうことで、三年間のルールをつくりましたけれども、中身は、そのときにも申し上げましたように、率直に申し上げて応急的な対策でございまして、恒久的なものではございません。  そこで、十一年度は、私が昨年、十一年度はどうなるかというふうにお聞きされましたときに申し上げましたときに比べますと、はるかにまた経済の状況が悪くなってきたことに加えまして、その当時でいえば全く思いもかけておらなかった恒久的な減税が、しかも相当大きな金額で出てまいりました。このことの影響が、地方税分と、それから交付税への影響分で大きく出てまいりましたものですから、十一年度の財源不足というのが非常に大きくなった。両方合わせて、減税分と合わせて十三兆というふうな金額になったわけでございます。  そこで、私どもは、十一年度財政対策を講ずるに当たりましては、少なくとも恒久的な減税を行うものについては、この六条の三第二項の趣旨からいっても恒久的な財源手当てをすべきであるということを基本にして、各方面といろいろな話し合いをし、また折衝をいたしたわけでございまして、その結果、この恒久的減税分につきましては、たばこの移譲でありますとか、交付税率の引き上げでありますとか、特例交付金といったような形で、四分の三については手当てすることができたということでございます。  その他の通常収支の分につきましては、昨年の今ごろ思っておりましたより相当大きくなりましたけれども、基本的な対応の仕方としては、十年度に設けましたその三年間のルールを適用させていただいて、応急的な手当てにはなりますが、交付税の対応分を折半するというそのルールをそのまま適用させていただいたというのが実態でございます。  十一年度の地財対策全般を通じましては、恒久的なものについては六条の三の二項の趣旨にのっとって恒久的な財源対策を講じたということは御理解いただきたいと思います。
  23. 富田茂之

    ○富田委員 いつも、御理解いただきたいと言われても、理解できないと答えているのですがね。  今財政局長言われた、恒久的な減税の実施に伴う当分の間の措置というのは、これ、約一・八兆円程度ですよね。折半の負担により補てんする措置に一・四兆円、この措置をされたのはわかるのですけれども、十二年度末で交付税特会借入金総額が二十二兆ぐらいと予想していたのが、今回十一年度末でもう二十九兆だ、これは途中でまた税収減とか必ず出てくるわけですから、そうすると、今の見込みで二十九兆ということは、これまでの例からすると三十三、四兆ぐらいまで膨れ上がる可能性が十分ありますよね。  そういう状況で、今回の税制改正に伴う地方財政措置で、恒久的な減税の実施に伴う当分の間の措置として、たばこ税の税率改正法人税交付税率の上乗せ、地方特例交付金、減税補てん債、これだけで本当に大丈夫なのか。この二十九兆が本当に三十何兆に膨らんでいって、もう返せなくなる。この六条の三の第二項の対応を今本当にもう一歩踏み込んで考えないと、これまで八年、九年、十年とやってきたものが結局生きてきていない。十一年でちょっとその恒久減税の実施に伴う当分の間の措置というのを組み入れてきたけれども、結局来年またこの委員会で、あんなのやっても意味なかったじゃないかというような話に私はなるんじゃないかと思うのですけれどもね。  このたばこの税率改正にしても、それほどの大きな金額じゃありませんし、地方特例交付金というのは本来これも税源移譲できちんとやるべきじゃなかったのか、いろいろ制度を考えたのはいいのですけれども、何となく中途半端で終わっているのじゃないかな。地方交付税法六条の三の二項の趣旨に沿ってじゃなくて、その条文どおりにきちんと対応していくという姿勢が必要だと思うのですけれども、そこはどうですか。
  24. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 今回とりました恒久減税の措置につきましても、それはこちら側の都合を言えばなかなか切りがないところがございまして、私どもと大蔵省の方と相当シビアなやりとりをした段階では、私どものいろいろな主張がございましたけれども、そういう中で両方の財政状況全般をにらみながら、ぎりぎりのところとして、私どもとしては地方の方に何とか評価をいただけるような形になったのではないかというふうに今思っております。  今委員法律規定に従ってちゃんとやれというふうにおっしゃいまして、そのことは私ども十分わかっておるつもりでございますが、これも前に答弁申し上げたことで恐縮でありますけれども、六条の三の第二項の規定意味するところ、求めているところはどういうことかということにつきましては、昭和五十三年に六条の三第二項の事態になりましたときに、内閣法制局長官の方からこれについて、この規定の考え方ということについての答弁がございまして、行財政制度の改正というのは恒久的な制度改正だけではなくて、経済情勢が変動期にあるようなときに暫定的な特例的な措置を講じて、それを法律規定して手当てするといったようなことも、ここで言う地方財政制度の改正に該当する、いわば幅の広い対応の仕方をこの六条の三第二項というのは規定上許しているというふうな考え方がございまして、そういう意味で、私どもはこの規定に今外れているというふうには考えておらないわけでございまして、その点は、繰り返しで恐縮ですが、改めて申し上げたいと思います。
  25. 富田茂之

    ○富田委員 財政局長から法制局の見解を教えていただいたのですが、それはもう十分わかった上で、実は、地方交付税法逐条解説には、こんなもの持ち出して申しわけないのですが、こう書いてありますよ。  「「制度の改正」の内容については、法文上は何らの制約は付されていないが、それによって構造的に生じている地方財源の過不足を解消できる程のものでなければならないというのが本来の趣旨と解する。本条第二項の適用に当たっては、地方財政制度の改正によって財源不足が解消されることがのぞましいというのが同項の規定の趣旨であり、これによっては地方財源の過不足が恒久的に解消されない場合に、交付税率の変更を行うことになる。なお、交付税率の変更を行う場合には、その変更幅は財源過不足の状態を解消するに足るものでなければならない」、こういうふうに逐条解説しているのですね。  法制局の見解も見解として、それは解釈ですからわかりますけれども、本来の条文解釈としてはこの本筋に従うべきであって、本当にこれに従ったこの十一年度の措置なのかなと、ここは本当に疑問だと思うのですが、大臣、そこはどうですか。  もう一歩踏み込んで、ここでできなくても、大臣在任中にやはり抜本的な解決に向けて、先ほどいろいろ言われていたのはよくわかります、国と地方関係とか外形標準課税等、大臣がずっと言われてきたことを何とか導入したいという気持ちもよくわかりますが、この交付税法六条三の二項のここの部分で、もう一歩突っ込んで、抜本的な改正の道を開くという重大な使命が、もうこの時期に大臣をやられているわけですから、私はあると思うのですが、その点どうでしょうか。
  26. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 いや、いろいろ本当に心底御心配いただいておりまして、ありがとうございます。  御存じのような今日の経済環境、国、地方財政事情、そういった中で、当面今度の予算なりで何を重視するか。やはり個別の地方団体がその財政運営に支障を来さないようにどうやって配慮するか、それには一般財源をどう確保するかという、ここがやはり最大のポイントであるという点で言えば、今度は一応曲がりなりにも一・四%増という一般財源の確保はできていると。  問題は、そこで国と地方の間のいろいろ貸し借りの世界が今までもあったわけであります。そういう点で、交付税における借り入れをふやしたりいろいろなことがありました。しかし、今財政局長から申し上げましたとおり、もちろんいろいろ不満はあると思います、一〇〇%完全にできてないじゃないかと言われればそのとおりでありますが、今日の状況の中でやはりそれなりに、たばこ税について地方移譲する、あるいはそうでなくても法人税自身が相当落ち込んでいるという環境の中で、その法人税についての交付税率を引き上げるというのはそれなりの勇断であっただろう。あるいは特例交付金という制度を地方税にかえるという、その代替的措置という趣旨でこれも導入をする。  私は、そういう点では、まあいろいろ見方はあろうが、ぎりぎりのところで知恵を出してでき上がったのが今回である。では、これで満足していいかというとそういうわけにはいかないので、ある意味では緊急避難的な姿になっている。だから一刻も早く、できればきちんとした形で交通整理を、仕分けをしてやらなければいけないという思いはそのとおりでありまして、気持ちの上では御指摘のとおりの気持ちを共有しているということは申し上げたいと思います。
  27. 富田茂之

    ○富田委員 地方交付税総額を確保するというのは大事なことだと思うのですね。アップしたということは本当に大事だと思うのですが、今のように交付税特別会計借入金をふやし続ける形でやるということは、結局将来の地方交付税を先食いしているわけですから、将来の総額確保が本当にできるのか、こんなことずっとやっていたらできなくなるのじゃないか、そうなったときに、今こういう制度をとっていることが将来地方にとってとんでもないことになるのじゃないかなという懸念があるから、各党の委員はみんな質問するのだと思うのですね。  それを考えると、やはり地方財政について今の借入金体質というのを抜本的に改めて、去年もこの委員会で言わせてもらいましたけれども、五十九年度に立ち戻って、五十九年度のときには十一兆円であそこまでの決断をしたわけですから、もう借りないという決断をしたわけですから、今回二十九兆になるというのですから、やはりもう一度原則に立ち戻る、そういう姿勢を政府として、また自治省として新たにする必要があるのじゃないかなというふうに私は思います。  この点、何度やっても同じようになってしまいますので、大臣、ぜひその点検討していただきたいというふうにお願いしまして、ちょっと次の質問に移らせていただきます。  あと残り十分ちょっとありますので、この法案からは離れますが、現行の衆議院選挙制度について、いろいろ問題があるのじゃないかとマスコミ等でいろいろ報道されております。ここ何日か、本当にこの点に関して、新聞の社説あるいは新聞報道はずっとそこに集中してきていますので、その点ちょっと、何点かお尋ねしたいと思います。  ある新聞の社説にこういう記事がありました。大きな表題をつけて、「議員辞めて議員になる怪」ということで、「現職の衆院議員が、衆院議員になるために、衆院議員を辞めて補欠選挙に立候補するという不思議なことが起こりそうだ。」都知事選に現職の衆議院議員がお二人立候補するということで、その補欠選挙が当然予定される。その補欠選挙に対して、現職の比例区で当選されてきた衆議院議員が補欠選挙に立候補をもう表明されている。そうすると、衆議院をやめて衆議院議員に立候補するという不思議なことが起こるという、今御紹介した社説のようになるのですが、これに対して国民の理解が得られるのかな。自治省にお尋ねしても、選挙制度上問題ない、多分そういうふうに言われると思います、制度上はそういうことが当然起こり得るのだと。  ただ、この社説は非常に問題点を鋭く指摘していまして、「問題は二つある。一つは、なぜ比例代表選挙から小選挙区選挙にくら替えしなければならないのか、という点である。比例選出議員が辞職してもその政党は議席を減らさないですむ。」繰り上げ当選があるからですね。補選で当選できれば一議席ふやせる、ふえる、そういう計算もしているのかもしれない。比例名簿の順位はその時々の情勢で変化して不安定だから、現職が強いと言われる小選挙区型選挙に移って地盤を固めた方が将来の選挙に有利というふうな意図もあるのかもしれない。しかし、考えてほしい。衆議院に比例代表制度を導入したのは、出たい人より出したい人を選ぶためであり、党中心、政策中心の選挙にするためではなかったのかと。  これは、大臣も新進党に一緒にいたときに、こういうことを一緒に議論した覚えもあります。間違いなくこういうことで比例代表の議員を選ぶ、当時新進党は重複立候補をできる限り認めなくて、こういう考えでやったというふうに私は覚えております。私も比例の方で出させていただきましたので、この考えで出たというような思いがあります。  ただ、それは今の選挙制度で、議員を辞職して立候補するのは制度上構わないのだというふうに立候補表明されている方は言われるかもしれませんが、実は「議会法」という国会法の条文解釈をした本がありまして、ぎょうせいの方から出ておりますが、松沢浩一先生という方が書かれておりますけれども、この中で、国会法百七条、「各議院は、その議員の辞職を許可することができる。」この条文の解釈として、このような解釈を述べられております。  そもそも議会の議員は、それぞれ国民の信任を得て選出されるのであるから、その任期中在職して活動することは、国民との関係においては、議員の権利でもあるが、同時にその義務であると言うことができよう。しからば、その進退は軽々に決せられるべきものではなく、当然に正当な理由がなければならないから、各議院の意思に係らしめることとされたのである。国会法で各議院にその議員の辞職の許可権が認められたのは、選任権者である国民にかわってその辞職についての正当な理由の有無を判断せしめるためであるから、この規定形式によれば、議員の恣意的な辞職は許されないとする趣旨は一層明らかになると言えよう、というような解釈を述べられております。  このとおりだと思うのですね。今回都知事選挙に立候補されるという方は、それは別の制度、首長さんを目指して出られるわけですから、それはもうそれで結構だと思うのですが、衆議院議員が衆議院をやめてまた衆議院議員になるというようなことは、この国会法百七条の趣旨からいってもちょっと許されないのじゃないかなというふうに私自身は思います。  大臣という立場を離れて、自由党元幹事長でいらっしゃいますが、自由党の議員さんもこういう形で今出馬されようというふうに、表明されているようです。実は、先ほどこの委員会に来るときに、同じ階におりますのでばったり会いまして、制度上も問題であると私は思いますけれども、どうですかというふうにお尋ねしましたら、いや何も問題ないよ、応援してねと言われたのですが、非常に複雑な気持ちでこの委員会室に来たのです。  大臣はこの点について、この社説が言われるように、本来の比例代表制度というものが目指したものと違ってしまう、また、国会法百七条の規定する、任期中はやはり国民のために尽くすべきだ、そういう趣旨から議院が辞職を許可するというような規定ぶりになっている、こういう点を考えられて、衆議院議員が衆議院をやめて補欠選挙に出てまた衆議院議員になるという、この点について、問題がないというふうに言い切れると思われますか。どうでしょうか。
  28. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 今御指摘のように、比例代表で衆議院議員である現役の衆議院議員が、今度は小選挙区の方の選挙に出るために衆議院を辞するという、その点について、有権者というか国民感情から見てわかりにくいという指摘があることは、私もよく承知をいたしております。  建前論と言うとなんですけれども、これは制度的に言うと、今御指摘のとおり、一応小選挙区における選挙とそれから比例区における選挙は別々の選挙であるということでありますから、そういう点では、法律論として問題はないのだろう。ただ、この問題は、衆議院の今度の選挙制度だけにあるものではなくて、選挙区と比例代表と並立制をやるというこの制度そのものにあるのであって、参議院の選挙でも実は似たような問題はあり得るわけでありまして、現にそういう事例もあったわけであります。  そういう点で、これは、そのこともあえて議論をされた上でこの制度になったという経緯を考えますときに、この点について価値判断を下すことは、自治大臣としては少し遠慮させていただきたい。それはやはり、各政党間でいろいろ議論をしていただいて、意見が集約されたところで出口を見つけていくということになるのではないかというふうには思います。私から今申し上げることができるのはその点だろうと思うのです。  それから、任期を全うすべきであるというのは、一般論として言えば、少なくともその職務にありたいと思って立候補して選挙したわけですから、その任を果たすのは一般論としては当然のことであって、それはほかの、今回の衆議院から衆議院にかわるということのみならず、衆議院から参議院になるなり、あるいはほかの選挙に転出をするなり、同じような一般論としての事柄は言えるのではないかというふうに思います。     〔山本(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  29. 富田茂之

    ○富田委員 大臣としては言えないという部分は理解できるのですが、一点ちょっと確認させていただきたいのですが、自自連立合意で選挙制度についても合意された。  自由民主党さんのホームページをちょっとあけさせていただきましたら、「「定数削減に関する協議会合意事項 平成十一年一月十二日」、自自連立合意に基づいて実務者でやられたのだと思うのですが、その中に、「衆議院議員の比例代表定数を、五十人削減する。」というのが一項目ある。また一項目、「現行の小選挙区比例代表並立制の制度は変更しない。」というような項目もありました。  こういう方向で自由民主党さんと自由党さんは今後協議を続けていくということだと思うのですが、先ほど申し上げました、衆議院議員が衆議院を辞職して衆議院の補欠選挙に出て、当選すれば衆議院議員になる、こういう、ちょっと国民から見たらわかりにくいような、選挙制度上の欠陥と言ってもいいと思うのですね、こういうものについて、今後、自由民主党と自由党の合意に基づいた協議の中で、こういうものもきちんと検討していく。与野党で選挙制度について協議機関をというような報道もされております。  政府・与党を形成される自由党と自由民主党の方で、こういう問題点がいろいろ出てきて、今マスコミの方でいろいろ、どうなんだ、国民からわかりにくいと言われていることについて、それは制度上の欠陥があれば、国民の代表ですから、当然議会で各党が相談して直していくことだと思いますけれども、自自連立合意の当事者であられた大臣ですから、そういうことについても、この協議事項の各項目にはそういうことまで入っていませんので、そういう欠陥があれば、そういう点についてもきちんと自由党さんとしては直していく意思はあるんだという、その点、ちょっと御確認させていただきたいと思います。
  30. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 重複立候補というやり方、あるいは法定得票数に達しなかった場合だとか、あるいは欠員が出るたびに補欠選挙ということがいいのかどうか、この制度をめぐってさまざまな角度から指摘があることは承知をいたしております。  したがって、両党間でそれらの点も含めて今後協議があれば結構なことだと思いますし、両党間のみならず、この問題は両党だけで決められる世界のものではないと思いますから、さらに各党間で十分相談をした上でないと、これは衆参を両方クリアして制度として改正をするということは至難のことだろうと考えております。
  31. 富田茂之

    ○富田委員 ぜひ各党で議論して、国民にわかりやすい制度に直せるものなら直していきたいと思いますので、大臣としてもぜひ御協力いただきたいと思います。  終わります。どうもありがとうございました。
  32. 坂井隆憲

    坂井委員長 次に、春名直章君。
  33. 春名直章

    ○春名委員 日本共産党の春名直章です。  法案審議の前にちょっと、私も高知県出身なものでして、例の非核港湾条例の問題についてお聞きしていきたいと思います。  きょう、県議会で知事がこれを出すということで記者会見もしているわけですが、政府は、非核証明書の提出を、外務省にこれを求めるという高知県のこの条例の制定を阻止するという立場で、私から言わせれば圧力をかけていらっしゃるということになっております。高知県民はもとより多くの国民から、この政府のやり方に怒りや驚きが上がっているという実態であります。その理由なんですが、外交は国の専権事項で、それを制約する自治体権限はないというのが、せんじ詰めればそういう趣旨だろうと思います。  そこで、地方行政委員会ですので、地方自治の原則との関係でその点が本当にいいのかどうか、私は誤りだと思うんですけれども、その点を議論してみたいと思います。  まず、これは自治大臣でなくてはならないということではないですけれども、お聞きをしておきます。  港湾法に基づく港湾管理の事務の性格は自治体の固有事務、公共事務ともいいますけれども、港湾管理の事務自治体の固有事務であると思いますけれども、これは間違いありませんね。
  34. 香山充弘

    ○香山政府委員 いわゆる港湾の管理は自治体団体事務というふうに我々解釈をいたしております。
  35. 春名直章

    ○春名委員 港湾の管理権が自治体の長にあることは、港湾法を提案した政府の提案理由の説明からも非常に明らかなんですね。そのとき、一九五〇年四月二十六日、運輸委員会大臣説明になりますけれども、ここでは「港湾の管理運営に関し、最大限の地方自治権を与え、かつ国家的及び地方的利益に最も適合する形態の港湾管理者を設定する権能を、地方公共団体に与える」「国は港湾管理の第一線から退き」、このようにはっきり述べているんです。少し前の話でありますけれども。  その点から見ましても、これは自治体の固有の事務であります。橋本高知県知事は、この事務である港湾法に基づく港湾管理権を行使しようとしているわけであります。この自治体の固有の事務の遂行には国は何の指揮監督権もないと思います。だから、そもそも今回の条例改正に対して国が介入するということは原理的にできない、こう私は考えます。  自治大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  36. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 高知県は独立国ではございません。やはり日本国の一部なんです。そして、少なくとも軍艦の寄港を許すかどうか、軍艦の日本への立ち寄りを、領海内への立ち入りを初め、それを認めるか認めないかは日本の政府としての外交権の一つであります。そのことが、自治体判断によってイエス、ノーについて影響力を行使されるということになれば、これは次元の違う話ではないか。  まさに、知事が認められている港湾の管理運用についての権限、まさに管理運用に関してのところから、そこに着目して出てきた権限なのであって、外交まで含めた、政治判断まで含めた包括的な権限を与えられているのではないんです。そこのところは少し誤解があるんじゃないんでしょうか。
  37. 春名直章

    ○春名委員 私は、外交関係の処理が国にあることは当然そうだと思うんです。しかし、同時に、岸壁の使用だとか、おのおのの港を使ってもらうとか使わせないとかいうことについてはすべて自治体にゆだねられているのであって、その固有の事務であって、長の権限ではないですかと聞いているわけであります。それを制約する権限をそもそも国は持ち合わせていないんじゃないですかとお聞きしているのでありまして、その自治体権限を奪うということになるんでしょうか、制約してしまうということになるんでしょうか、そのことの関係を私は聞いているわけであります。
  38. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 ですから、港湾管理者としてその施設の利用を許すか許さないかということの判断基準が、まさに港湾の良好なる管理あるいは運営上支障があるからということが判断になってくるのであって、外交問題等を判断の中の一つに入れるということになれば、それはまさに港湾管理者としての権限を逸脱するということになりますよ、こう申し上げておるわけです。
  39. 春名直章

    ○春名委員 良好な運営に支障がある、その場合に判断できるというふうにおっしゃったんだけれども、その見地に立って、住民の安全、港湾の安全、そういう立場から判断しようということが今の趣旨であります、今度の条例制定の趣旨であります。  私は、今のお話を聞いていますと、権限、外交を制約してしまうと言うけれども、自治体の固有の事務を国の方から制約しよう、そういうふうにしか聞こえません。どうしても納得ができないのであります。  その点で、私もう一点別の角度から聞いておきますけれども、今おっしゃっているような中身は以前の政府の立場からも逸脱しているんじゃないかなと思うんです。以前は、国は、非核証明書を国自身が発行するなどということはやりませんが、地方がやることについては地方自治の観点から認めるという態度だったんじゃないですか。  一九八四年三月十七日、参議院の予算委員会で、日本共産党の立木洋議員が、神戸市が、入港する外国の艦船が核を積んでいないという証明書を提出しない場合は入港を許可しないという扱いをしていることについて、これについて質問をいたしました。当時の中曽根総理大臣はこう答えました。「それは地方自治の本旨に基づいて神戸の市長及び市議会がとっておる一つやり方でありまして、それはそれとして我々はよく理解できるところであります。」このように述べております。議事録がございます。  この見解は今も変わりがないんじゃないかと私は思っておりました。違うんですか。
  40. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 まさに、先ほど来の御議論を伺っておりますと、国の外交権をむしろ自治体の方から制約を加えようという趣旨でお話しになっているようにどうも思えて仕方がありませんね。私は、論理が逆だと思います。  それから、神戸の方式と今度の高知の方式との違いということもあると思いますが、神戸の場合は条例を制定しているということではないものでありますから、これは、そういう意味での権限の云々という話にはならないのですね。そういう意味で、市議会における決議であるし、それから、そのことによって、法理論として、法体系として、そういったことが港湾の管理運営の上で決定づけられるという条例なり法律の体系の中に入っていないということも事実であります。  その点で、今回の場合は、まさに条例としてその県の港湾管理者としての意思決定に反映をさせようという話でありますから、結局、国の外交権にまさに制約を加えるということになるわけであります。だから問題だ、権限を逸脱している、こう言っているわけです。
  41. 春名直章

    ○春名委員 神戸の市議会の決議は、証明書を提出してもらおうということで、運用でやっているわけですね。今まで十七回あったようですけれども。そういうことをやって、証明書を直接提出してもらっているのですよ。最初は高知県もそういうふうにしようと思ったけれども、外交権が云々と言われるので、そういうやり方を少しやめて、外務省にその証明書を確認していただこう、こういう対応を今しているのですよ。  その当時の神戸の議論でも、当時の中曽根総理大臣は、よくわかる、理解できる、自治体の固有の事務で、その権限でやっていることだからよく理解できる、このように八四年当時御答弁をされているのであります。野田大臣が今おっしゃっていることと正反対じゃないかと私は思うのですね。  いつ、その中身が変わったのでしょうか。固有の事務を認めないというふうにいつ変わったのでしょうか。私は、政府のそういう変化、何が変わっているのか、どうしても理解できません。私は、当時中曽根総理の言っていることが、地方自治の本旨に基づいて当たり前のことを言っているように思います。そうじゃないんでしょうか、自治大臣。見解を聞きたいですね。
  42. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 たびたび申し上げておりますが、神戸市はそういうことを条例で制定しているわけではないのです。それは、議会で御決議になったことは、それはそうでしょう。  今回の場合は、まさに条例で制定しようとしている。そのことによって、それと同時に、その条例に基づく要綱で、政府に対して文書を要求し、その文書の中身いかんによって、返事いかんによって、港湾管理者としてその施設利用についてイエスかノーかの決定を下そう、こういうことが一体となって行われようということであるならば、まさに、いわゆる管理運営という権限を越えて、外交権の世界に立ち入っていこうというそのこと以外の何物でもない。だから逸脱である、こう申し上げておるわけです。
  43. 春名直章

    ○春名委員 それは全然違いますね。これは非核三原則を補完しようということなんですよ。非核三原則を破るつもりですか、あなたは。非核三原則を国是として実行していることについて、それを補完しようと言っているではありませんか。だから矛盾はないと言っているのです。  きょうの記者会見でも、橋本知事の記者会見をちょっと読みましたけれども、協力関係ができ上がる大事なことだというふうに言っていますよ。むしろ、非核三原則を国是としている国が、外務省が、率先して自治体に非核証明書を出してくれれば、もっともっと国に対する外交の信頼が高まるだろう、私は全然矛盾しないというふうに思いますと言っておりますね。協力関係が前進する、こういうふうに言っていますね。  私は、そのこともよくわかります。非核三原則という国是を本気で守ろうという立場に立っているからこそ、こういう方向が示されているのじゃないですか。何でそれが外交を制約するのですか。私は全く理解できないですね。何か別の、そういう問題じゃないことをもし制約するようなことがあれば検討するべきことでしょう。しかし、その中身は全く制約を与えるようなものではないと私は思いますね。
  44. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 何か話が随分平行線になってしまっているように感じますけれども、理由はどういう理由をつけようとも、国の外交権に制約を加える、地方自治体が制約を加えるということは、それは権限を逸脱していることであるということを申し上げておるのであって、非核三原則がいいとか悪いとかいう話をしているのではないのです。そのことが一つ。  それからいま一つ、日米安保条約では、いかなる核の持ち込みも事前協議の対象であって、核の持ち込みについて事前協議が行われる場合は政府として常にこれを拒否するものである、こういうことでありますから、政府の責任において非核三原則は堅持されているものであると承知をいたしております。そういう点で、今回の高知県のその条例による御協力をいただかなくても、日本国の非核三原則はちゃんと堅持をされておるというのが政府の立場であります。
  45. 春名直章

    ○春名委員 一九六七年の十一月に、国権の最高機関である国会で非核三原則決議が行われました。それまで政府も非核三原則を守ると言ってきましたけれども、政府の政策だけでは核に対する国民の不安や不信は払拭されないということで決議がなされた経過があります。  そして、事前協議が義務づけられていると言われました。ところが、核の寄港は事前協議の対象外、こういう事実も発覚をしました。マッカーサー氏は、事前協議の対象となる持ち込みとは貯蔵を意味する、これが米国の立場だ、核兵器の搭載の有無にかかわらず艦船寄港は事前協議の対象にならない、こういうふうに強調したという新聞の記事。  ラロック証言は有名ですけれども、七四年の九月十日、アメリカの上下両院原子力合同委員会の軍事利用小委員会で、核兵器積載の能力を持っているすべての船は核兵器を積載しているということだ、それらの船が日本など他の国の港に入るときも核兵器を外すことはありません、こういう証言をいたしました。大変な衝撃を呼びました。  だからこそ、非核三原則を国是としている国だからこそ、その実効性を、国も頑張るし、地方からもそれを補完してつくっていこうじゃないか、この立場ではありませんか。(発言する者あり)余計な話ではありません。  地方自治体の条例制定権の侵害という問題についても私は聞いておきたいと思います。  憲法九十四条には、条例制定権は法律に違反しない範囲で許される、こういうふうに言っております。今、野田大臣は、条例を制定しようとしていることが許されないんだ、神戸と違うんだと言われました。  それでは聞きます。高知の条例は国のどの法律に違反しているのでしょうか。はっきり答えてください。
  46. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 法律上明示しなければならない話ではないと私は思います。それは、国の外交権が政府に属することはあなたも認めるのでしょう。そうでしょう。(春名委員「はい」と呼ぶ)その国の外交権に制約を加えるということもあなたは認めるのでしょう。(春名委員「制約を加えるは認めていませんよ、私は」と呼ぶ)だけれども、非核三原則を政府だけでは心もとないから、こうやって地方自治体も御協力しようとするのが何が悪い、こういうお話であったと思うのです。(春名委員質問に答えてください、質問に。どの法律に違反しているのかと聞いているのです」と呼ぶ)ですから、私は、そういう点で論理の立て方そのものから随分と平行線ですね、こう申し上げておるわけです。
  47. 春名直章

    ○春名委員 憲法は、法律の範囲内で条例制定権を憲法上の機能として保障しています。九十四条です。それから地方自治法では、法令に反しない限りにおいて条例制定権を保障しています。自治法の十四条の一項です。いいですか。「都道府県は、」「法令に特別の定があるものを除く外、条例で必要な規定を設けることができる。」十四条の三項です。こういう規定をしているのですね。  だから、これをまともに素直に読めば、自治大臣、国が地方の条例制定に介入できるのは、これに反する何らかの特別の法律上の権限が存在する場合に限られる。だから、その法律は一体どこにあるのですか。条例制定を阻止すると言うのであれば、その条例を制定できない法律上の根拠、そこのところをはっきり答えていただきたい。そうでなければ納得できませんよ。
  48. 香山充弘

    ○香山政府委員 お答え申し上げます。  条例改正案そのものは特定の行為を義務づけるものではない、いわゆる宣言的な条例というふうに読めるものと思います。そういう意味で、法律的効果を全く伴うものでないというふうにすれば、これは、改正自体をもって直ちにどの法律に違反するとか、そういうことは言えないというふうに率直に思います。  ただ、今回の高知県の場合は、要綱を同時に発表いたしまして、要綱とセットにいたしまして、国に対して外交関係にかかわる文書の提出を求めまして、その結果に基づいて港湾施設の使用に関して決定を行うということを検討いたしておるわけでありまして、その全体の流れをもちまして相当に問題があるというふうに私ども申し上げておる次第でございます。
  49. 春名直章

    ○春名委員 では、そのセットにした部分の中身は何に違反しているのですか。もう一回言うてください。
  50. 香山充弘

    ○香山政府委員 高知県が発表いたしました要綱によりますと、非核三原則を踏まえて、政府に対しまして外国艦船が核兵器を積載していないことを証明する文書の提出を求めまして、その回答によって港湾施設の使用そのものに係る決定を下すという運用を行うというふうに表明がなされておるわけであります。  先ほどから大臣からも御答弁申し上げておりますとおり、国と地方公共団体は相互に異なる次元でそれぞれの事務を処理しておるわけでありまして、地方公共団体は港湾の適正な管理及び運営を図るという観点から、そういう意味では地方自治の原則を持っておるわけでありますけれども、一方で、この地方自治の原則というのは無原則に働くという意味ではありませんで、それは当然に国の外交関係の決定に関与することまでを認めるという趣旨ではありませんで、その意味では、地方団体がそこまで踏み込みますと、地方自治法第十四条に言う地方公共団体事務とはいえない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  51. 春名直章

    ○春名委員 外交関係に関与するところまで踏み込んではならないと言いますけれども、それでは、八四年の中曽根答弁はどうなんですか。非核証明書を今出しておられる神戸はどうなんですか。その点、はっきり答えてください。
  52. 香山充弘

    ○香山政府委員 お答え申し上げます。  今引用されましたのは、五十九年三月の参議院予算委員会における立木議員に対する中曽根総理の回答であろうと思います。私どもこれは承知いたしておりますけれども、総理は、地方団体地方自治の本旨に基づいてそういう対応をするということは、それはそれとして理解ができるというふうに御答弁されたんだろうと思います。  ただ、私どもは、呉市の場合もそうでありますけれども、国と地方公共団体が相互に異なる次元においてそれぞれの事務を処理しておる、国として責任を有する外交関係の処理に対しまして、地方団体がそれを妨げるようなことがあってはならないというのは終始一貫した考え方を貫いておるつもりでございます。
  53. 春名直章

    ○春名委員 制約するということを、結局最初から最後までそのことだけを言い続けているのですけれども、非核三原則という一番大事な国是という問題をまず抜きにして語ったらいかぬのですよ。それを、地方自治体が非核条例をつくることによって、大いに励まして補完しよう。自治省自治大臣だったらそのことを激励する立場に立たなければだめですよ。そうじゃないですか。私は本当に信じがたいですね、答弁が。私は本当につらくてしようがないですけれども、そういう話をしていると。  唯一の被爆国ですよ、日本は、唯一の。そして非核三原則を国是にして、世界に高らかに宣言している国です。そして、今度の国会では地方分権推進一括法案提案されます。対等・協力の国と地方関係をつくるんだと言われる。対等・協力じゃないじゃないですか。条例制定権を剥奪するようなことをやられる。地方自治の本旨を踏みにじるようなことを平然と言われる。私は、これはどうしても納得することができない、そのことを厳しく申し上げておきたいと思います。  最後の質問になりますけれども、地方財政の問題に一言触れておきたいと思います。  十兆円を超す財源不足の補てんが、今度特別会計の借入金と財源対策債の増発ということでやられるようになりました。これは、昨年、一昨年の方法を踏襲しております。  ところで、この交付税特別会計の借入金で補てんするというやり方は、一九八四年に一たん廃止されたものなんです。七八年にこれが導入されたのですけれども、この方法が地方財政の体質の悪化を招くということで、八四年に廃止されました。  その当時、自治省財政局長さんはこう言いました。「これ以上従来のような形での借入金による特例方式を漫然と続けるということは不可能である、財政体質を一層悪化させてしまうという問題意識から、」これを廃止すると述べています。八四年四月十七日、衆議院地方行政委員会での答弁でございます。  そこで、数字を一点だけ確認しておきます。  その当時、廃止すると言った当時、八三年度末の借入金残高が当時の地方財政計画の中で占めていた額と割合、今回の借入金残高が今回の地方財政計画の中で占めている額と割合、それぞれ示してください。
  54. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 交付税特会の借入残高と財政計画の規模との対比でありますが、八三年度末、昭和五十八年度末は、残高が十一兆五千二百十九億でありまして、財政計画に対しましては二四・三%に当たります。それから九九年度末、平成十一年度末でありますが、二十九兆六千五十億というのが特会借り入れの残高でございまして、財政計画に対します比率は三三・四ということになります。
  55. 春名直章

    ○春名委員 今御報告いただいたとおり、借入金残高の地方財政計画に占めている割合は、当時と比較しますと約一〇ポイント増加をするということになっております。借入金全体の残高は今のような傾向にありますけれども、その額を国と地方のどちらがどれだけ返すかを見たら、一層驚く事態になっているのですね。これは調べてみて驚きました。  八四年に、借入金残高を国と地方で分けて、それぞれ返還するということにいたしました。国の五兆八千億円何がしは地方交付税特別会計から引き揚げて、国が直接資金運用部に返還するようにつけかえました。  ところが、地方の場合はどうなったでしょうか。八七年からは徐々に借入金が減っていったのですが、九二年から年度途中の税収不足などをすべて地方負担による特別会計借り入れ方式で適用されてきましたので、どんどん地方の負担の借金が膨らんでいったのであります。びっくりします。  地方が返済する分、今どうなっているか。八三年度末の借入金残高で地方が返済する分は五兆七千億円程度でした。九九年度末は、見込みですけれども、二十一兆九千九百九十八億円であります。地方が返済する分は、五兆から二十一兆、三・九倍に急増であります。  国が返済する分はどうか。八三年度末は五兆八千億円余り、九九年度末は七兆六千億円余り。同時期ですよ。八三年から九九年、国は一・三倍の伸びにとどまっています。地方は国の三倍の伸びになって、返還しなければいけない借金がどんどん膨らんだ、こういう事態になっているので、私は調べてみて非常に驚いたわけであります。  これ以上借金を続けることは財政体質を悪化させるとして廃止したものを再び復活させた。借入金残高も当時よりも大きく上回ってしまった。地方財政計画に占める割合も一〇ポイントもふえてしまった。そして、その負担のおもしが地方に大きくシフトしている。どこから見てもこの方式がもう破綻していることが私は明らかになっていると思います。  この借入金方式が地方と国の財政関係を複雑にしているという要因ともなっています。これは自治大臣もおっしゃいました。あの例の覚書なんかを見ると、なかなか複雑でよくわからない、こういう御答弁も率直にされていました。  そこで、時間が終了しましたので、一点聞きます。こういう財政体質を悪化させる要因ともなっていて、からくりが複雑で国民にもよくわからないようになっている、そういうやり方をもう改める、もういいかげんに別の方法に改めるときに今来ている、先ほどの御質問もありましたけれども、私はそのことを結論的に自治大臣に問いたいわけであります。その点の御認識を聞いて、私の質問を終わりたいと思いますので、よろしくお願いします。
  56. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 この点は、もう既に先ほど来いろいろ申し上げました。ともかく一刻も早く地方自治体自立性自主性を保障するような、そういう地方税の姿をきちんと立て直さなければだめだということが一つ。それと同時に、交付税措置についても、それを補完するという形での見直しも必要でありますし、いわゆる国と地方の仕事の配分、あるいは、市町村合併をも通じた一つの国、地方を通ずる行政の簡素効率化、そういう財政の健全化の努力、さまざまなことを含めてきちんとした整理をしなければいけない、もう一刻の猶予も許さない状況になってきているということは、先ほど来申し上げたとおりであります。そのために、全力を尽くして頑張りたいと思います。
  57. 春名直章

    ○春名委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  58. 坂井隆憲

    坂井委員長 これにて各案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  59. 坂井隆憲

    坂井委員長 これより各案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。鰐淵俊之君。
  60. 鰐淵俊之

    ○鰐淵委員 私は、自由民主党、自由党を代表いたしまして、政府提出の地方税法の一部を改正する法律案地方交付税法等の一部を改正する法律案及び地方特例交付金等地方財政特別措置に関する法律案の三案に対し、賛成の討論を行うものであります。  まず、地方税法の一部を改正する法律案は、個人所得課税及び法人課税について、我が国の将来を見据えた抜本的見直しを展望しつつ、現下の景気の状況に最大限配慮して、恒久的な減税を実施することとし、個人住民税の最高税率の引き下げ及び定率減税の実施、法人事業税の税率の引き下げ等を行うこととしております。また、景気回復に資するための住宅及び住宅用土地に係る不動産取得税の特例措置に係る要件の緩和、環境対策に資するための低燃費自動車に係る自動車取得税の特例措置の創設等の措置を講ずるほか、固定資産税の価格等に係る審査申し出制度の見直し等を行うとともに、非課税等特別措置の整理合理化等を行うこととしております。  これらの改正は、最近における社会経済情勢、住民負担の現状等から見て、いずれも当面の課題に的確に対応するものであり、適切かつ妥当なものと考えます。  次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案は、恒久的な減税による地方税の減収を補てんするため、当分の間、法人税に係る地方交付税率を引き上げるとともに、平成十一年度分の地方交付税総額について特例措置を講じ、あわせて、所要の財源を措置するため単位費用を改正するとともに、交付税の算定方法の簡明化の一環として、一部の経費について、新たに法律で定める単位費用として算定することとしております。  これらの措置は、恒久的な減税の実施、現在の経済情勢の動向、地方財政状況等から見て、地方財政の円滑な運営にとりまして極めて適切であるとともに、地方分権推進に資するものであると考えます。  次に、地方特例交付金等地方財政特別措置に関する法律案は、恒久的な減税による地方税の減収を補てんするため、当分の間、地方公共団体に対し、地方特例交付金を交付するとともに、地方債の特例措置を講ずるなどの特例を設けることとしております。  これらの措置は、恒久的な減税により地方税が減少する地方財政の状況等から見て、地方公共団体財政の健全な運営にとりまして適切かつ妥当なものであると考えます。  以上のような理由によりまして、三法案に賛成の意を表するものであります。  政府におかれましては、地方分権推進し、新時代にふさわしい地方自治を確立されるよう強く希望するものであります。  以上で政府提出の三法案に対する私の賛成討論を終わります。(拍手)
  61. 坂井隆憲

    坂井委員長 次に、土肥隆一君。
  62. 土肥隆一

    ○土肥委員 私は、民主党を代表しまして、地方税法の一部を改正する法律案地方交付税法等の一部を改正する法律案地方特例交付金等地方財政特別措置に関する法律案について、反対の立場から討論を行います。  討論に先立ち、一言申し上げます。  我が党は、機動的な自治体運営のため、地方交付税総額を早期に確保すべきであると考えますが、同時に現下の地方財政の深刻な事態を解決するためには、緊急対策とともに制度の根本的改革が不可欠であり、その方向性を示すことなく応急措置にとどまっている政府案には賛成できないことを、まず強調しておきたいと思います。  以下、具体的に各案の反対の理由を申し述べます。  第一は、地方税法改正案でございますが、個人住民税の最高税率の引き下げと定率の税額控除を行う点であります。地方税財源確立の観点から、地方自治体の基幹的税である個人住民税の減税は行うべきではないと考えます。景気対策としての減税は国の責任と負担で実施すべきであり、これ以上地方の自主財源を減らす方法は、地方分権の精神にも逆行し、到底容認できるものではありません。  第二に、地方交付税法等改正案についてでありますが、地方財政の通常収支不足の補てん策が、地方交付税法に規定された制度改正の名に値しない、従来の手法を踏襲した借金のやりくり策に終わっていることであります。通常収支の不足は十兆三千六百九十四億円に上り、交付税総額の五割を占めています。一九九四年以来、この巨額の通常収支不足が続いており、もはや構造改革なしに地方財政危機を克服することは不可能であることは明らかです。また、基準財政需要額の算定方法の改正が行われていますが、簡素化、透明化にはほど遠く、とても地方分権推進委員会の要請にこたえているとは言えません。  第三は、地方特例交付金等特別措置法案についてでありますが、恒久的減税による減収への対応策が不明確、不十分な点であります。当分の間の措置とは将来の税制の抜本的な見直し等が行われるまでの間と説明されていますが、地方税の税収は果たして確保、拡充されるのか、見直しの方向が何ら示されていません。また、減収の四分の一は減税補てん債の借金で補うこととなっております。地方特例交付金の交付など制度改正法人税交付税率の引き上げなどが行われているとはいえ、地方の自主財源が縮小する対策は納得できません。  以上、反対理由を述べましたが、民主党としては、改めて訴えたいのは、現行の地方財政制度を抜本的に改革し、国から地方への税源移譲が緊要であるということであります。それによって、自前の財政自治体運営が可能となる不交付団体を大幅にふやし、その上で、財政調整制度については地方自治体意見反映を保障する仕組み改革すべきです。  今回の三法案の中には、法人税交付税率の引き上げや、低燃費、低公害車への特例措置、高金利時代の政府系資金の繰り上げ償還など、民主党が従来実現を主張してきた措置も盛り込まれており、その点は評価いたしますが、先ほど述べましたように、地方の税財源の確立という大黒柱を欠いた欠陥建築となっていることを申し上げて、本三法案に反対することを重ねて申し上げ、私の討論を終わります。  以上です。(拍手)
  63. 坂井隆憲

    坂井委員長 次に、春名直章君。
  64. 春名直章

    ○春名委員 私は、日本共産党を代表して、三法案のいずれにも反対を表明し、討論を行います。  まず、地方税法改正についてであります。  今回の恒久的減税は、九八年度と比べてようやく標準世帯で年収七百九十四万円を超える階層が減税になるだけ、その内容も高額所得者ほど減税額も率も大きくなるものであり、金持ち優遇減税であります。一方、低中所得者層を中心に住民税所得割納税者の七割近くという圧倒的多数の納税者が、九八年度と比べて差し引き増税になるのであります。景気回復にむしろ水を差すものであることを指摘しなければなりません。  また、諸外国に比べて日本法人税率が高いということを理由に、法人事業税の税率引き下げが実行されようとしていますが、税負担が重いか軽いかは容易に判断できないというのが政府税調の見解であります。今回の税率引き下げは、こうした検討結果を無視するだけでなく、法人関係税の落ち込みによって苦労している地方自治体の足を引っ張るものであり、容認できるものではありません。  なお、住宅等の不動産取得税の特例措置の拡充、低燃費自動車取得税の特例措置、固定資産税の審査申し出制度の改正など、個々の部分には賛成できる内容も含まれていることを申し添えておきます。  次に、地方交付税法の改正についてであります。  九九年度の通常収支の財源不足額十兆三千六百九十四億円という数字は、昨年の財源不足額の二・三倍、交付税の法定額の八四%に匹敵する巨額なものであります。こうした交付税制度始まって以来の財源不足という新たな事態にもかかわらず、政府のとった対策は一年前の財源補てんの方法を踏襲するというものであります。  しかも、この交付税特別会計の借入金で財源不足を補てんする方法は、政府自身が地方財政の体質を悪化させる要因になるとして一たん廃止をしていたものであります。それを再び復活された結果、借入金が激増し、その内容も、地方負担の借入金が国の借入金以上に大きく増加するという事態を生み出しています。この方法では、地方の借入金を増大させるだけ、地方財政の財源不足を解消する方法になり得ないことは既にこれまでの経緯から明らかであります。交付税法の趣旨にのっとって、税率の引き上げこそが求められているのであります。  最後に、地方特例交付金法についてであります。  地方税の減収に応じて、交付税の交付、不交付団体の区別なく交付することは、地方団体からも一定の評価を受けていることは承知をしています。しかし、法案には、減収額の四分の一を減税補てん債で補てんするとの内容が盛り込まれていることは重大です。減税補てん債は赤字地方債であり、こうした仕組みが当分の間続けられることは、地方財政の健全性の上からも、容認できるものではありません。  以上、各法案の反対理由を申し述べ、討論を終わります。(拍手)
  65. 坂井隆憲

  66. 知久馬二三子

    ○知久馬委員 社会民主党・市民連合の知久馬二三子でございます。  私は、社会民主党・市民連合を代表し、地方税法の一部を改正する法律案地方交付税法等の一部を改正する法律案地方特例交付金等地方財政特別措置に関する法律案につきまして、政府案に反対の討論をいたします。  全体として政府の予算案は、失敗に終わったアメリカのレーガン税制改革を後追いするとともに、景気回復を建前に税財政の節度をかなぐり捨てた何でもありきのものとなっています。しかも、高額所得者優遇の恒久的な減税の結果、減税の恩恵に浴さない多くの庶民が将来の増税のツケを負担することになり、税負担の公平の確保の観点からも大変な問題を抱えているものです。このような新自由主義的政策の誤りが地方税財政にも大きな影響をもたらすことを憂慮せずにはいられません。  反対の第一の理由は、第三の地方財政危機への対応でございます。  今回の地方財政計画の大きな課題は、直面する財政危機にいかに対応するかでありましたが、私は、何よりも歳入の自治の観点から、自主財源である地方税を強化していくべきであり、税源移譲にも踏み込んだ抜本的な改革が不可欠であると考えます。しかし、過去最大規模の巨額の財源不足について、結局は、地方交付税特別会計借入金や地方債の増発と、地方借金に依存した対応がなされ、全体の借金は百七十六兆円にも達する見込みとなりました。いわゆる折半ルールについても、制度としては一定の改善は見られるものの、内容的には当然国が繰り入れなければならないものの前倒しにとどまっています。借金に依存し、歳入歳出の構造改革に手をつけない政府の対応は、地方財政危機の根本的な解決策とは到底言えません。  反対の第二の理由は、恒久的な減税への対応についてでございます。  今回の恒久的な減税の実施は、財政危機下の自治体に大きな打撃を与えるだけでなく、地方における歳出規模と地方税収入との乖離をできるだけ縮小するべきであるという地方分権推進計画の方向にも逆行したものです。法人事業税の税率引き下げや住宅ローン減税等の政策減税のような理念なし、つじつま合わせの税制改正のツケは、今後に大きな禍根を残すものと言わざるを得ません。  交付税率の引き上げや特例交付金の創設は一定の評価をできるものでありますが、自治体から要望の強い地方消費税の配分割合の拡充や法人事業税の外形標準課税化も先送りとなっています。たばこ税の税源移譲についても、規模は極めて不十分であり、抜本的な地方財源拡充強化にはほど遠いものとなっています。  以上の理由から、政府案には賛成できないことを表明し、討論を終わります。(拍手)
  67. 坂井隆憲

    坂井委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  68. 坂井隆憲

    坂井委員長 これより各案について順次採決に入ります。  まず、地方税法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  69. 坂井隆憲

    坂井委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  70. 坂井隆憲

    坂井委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、山本公一君外四名から、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。山本公一君。
  71. 山本公一

    ○山本(公)委員 私は、この際、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党及び社会民主党・市民連合の五会派を代表し、地方税法の一部を改正する法律案に対しまして、次の附帯決議を付したいと思います。  案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。     地方税法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、地方公共団体財政需要の増大、引き続く厳しい地方財政の状況等にかんがみ、左の点についてその実現に努めるべきである。  一 地方税地方公共団体の重要な自主財源であることにかんがみ、地方公共団体地方分権推進等に伴って増大する行政需要に的確に対処し、地域の実情に即した自主的・主体的な行財政運営を行えるよう、税源の偏在性が少なく税収の安定性を備えた地方税体系の構築に努め、地方税源の充実強化を図ること。  二 景気対策としての減税に当たっては、地方税については、厳しい地方財政の状況や地方分権推進に伴う地方税財源の充実確保の要請等を踏まえ、対処すること。  三 地方の法人課税については、税収の安定化、事業に対する応益課税としての税の性格の明確化等の観点から、事業税の外形標準課税の早期実現に努めること。  四 固定資産税は、我が国の資産課税の根幹であり、自主財源としての市町村税の基幹税目であることを踏まえて制度の整備充実を図ることを基本とすること。また、平成十二年度の土地の評価替えに当たっては、負担水準の均衡化・適正化を推進するとともに、最近における地価の変動をより的確に評価額に反映させるよう努めること。  五 税制の簡素化・税負担の公正化を図るため、非課税等特別措置については、引き続き見直しを行い、一層の整理合理化等を推進すること。   右決議する。 以上であります。  何とぞ皆様方の御賛同をお願いいたしたいと思います。
  72. 坂井隆憲

    坂井委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  73. 坂井隆憲

    坂井委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、野田自治大臣から発言を求められておりますので、これを許します。野田自治大臣
  74. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を尊重し、善処してまいりたいと存じます。     —————————————
  75. 坂井隆憲

    坂井委員長 次に、地方交付税法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  76. 坂井隆憲

    坂井委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、地方特例交付金等地方財政特別措置に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  77. 坂井隆憲

    坂井委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 坂井隆憲

    坂井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  79. 坂井隆憲

    坂井委員長 次に、地方財政に関する件について調査を進めます。  この際、山本公一君外四名から、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党及び社会民主党・市民連合の共同提案による地方財政拡充強化に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。桝屋敬悟君。
  80. 桝屋敬悟

    桝屋委員 この際、地方財政拡充強化に関する件につきまして決議をいたしたいと存じます。  本件につきましては、理事会等におきまして、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党及び社会民主党・市民連合の五会派で協議が調い、お手元に配付してあります案文がまとまりました。  案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。     地方財政拡充強化に関する件(案)   極めて厳しい地方財政の状況と財政需要の増大にかんがみ、政府は次の諸点について措置すべきである。  一 平成十一年度末において百七十六兆円に上ると見込まれる巨額の借入金が地方団体財政運営を圧迫し、諸施策の実施を制約しかねない状況にかんがみ、地方の一般財源の充実強化により、地方財政の健全化を図ること。  二 地方分権の進展を図り、地方団体自主性自立性を高めるため、税源の偏在性が少なく税収の安定性を備えた地方税体系を構築し、地方税の充実強化に努めること。  三 地方交付税の中長期的な安定確保を図るため、地方交付税法第六条の三第二項の規定に従い、通常収支不足を解消するための方策を講ずること。また、地方交付税地方団体共有の固有財源であることを明確にするため、国の一般会計を通すことなく国税収納金整理資金から直接交付税及び譲与税配付金特別会計に繰り入れる制度を検討すること。  四 地方団体が、社会経済情勢の変化、地方分権の進展及び増大する行政需要に的確に対応するため、市町村合併や広域行政の推進など行政体制の整備や、自主的かつ計画的な行財政改革の一層の推進を行うよう支援すること。  五 平成十二年度から実施される介護保険制度について、安定した財政運営と円滑な事務が遂行できるよう、地方団体意見を十分尊重し、適切かつ十分な準備措置を講ずること。  六 地方団体の自主的・自立的な行政運営の実現に資するため、国庫補助負担金の整理合理化を進めること。整理合理化に当たっては、その内容、規模等を考慮しつつ、対応して地方税地方交付税等一般財源の確保を図ること。  七 今回の恒久的な減税は国の景気対策の一環として実施されることにかんがみ、将来の税制の抜本的な見直しに際しては、地方分権推進の要請、高齢社会の到来に伴う財政需要の増大等を踏まえ、地方税源の拡充を図ること。   右決議する。 以上であります。  何とぞ皆様方の御賛同をお願いしたいと思います。
  81. 坂井隆憲

    坂井委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  82. 坂井隆憲

    坂井委員長 起立多数。よって、動議のとおり地方財政拡充強化に関する件を本委員会の決議とするに決しました。  この際、自治大臣から発言を求められておりますので、これを許します。野田自治大臣
  83. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、その御趣旨を尊重し、善処してまいりたいと存じます。
  84. 坂井隆憲

    坂井委員長 お諮りいたします。  ただいまの決議についての議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 坂井隆憲

    坂井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時三十七分散会