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1999-07-28 第145回国会 衆議院 大蔵委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年七月二十八日(水曜日)     午前九時三十分開議   出席委員    委員長 村井  仁君    理事 井奥 貞雄君 理事 衛藤征士郎君    理事 鴨下 一郎君 理事 柳本 卓治君    理事 上田 清司君 理事 日野 市朗君    理事 石井 啓一君 理事 小池百合子君       飯島 忠義君    今村 雅弘君       大石 秀政君    大島 理森君       嘉数 知賢君    河野 太郎君       桜井  新君    桜田 義孝君       塩谷  立君    中野 正志君       中村正三郎君    古屋 圭司君       村上誠一郎君    吉川 貴盛君       渡辺 具能君    渡辺 博道君       渡辺 喜美君    石毛えい子君       近藤 昭一君    末松 義規君       仙谷 由人君    玉置 一弥君       中川 正春君    山本 孝史君       谷口 隆義君    並木 正芳君       福留 泰蔵君    若松 謙維君       鈴木 淑夫君    西田  猛君       佐々木憲昭君    矢島 恒夫君       横光 克彦君  出席国務大臣         大蔵大臣    宮澤 喜一君  出席政府委員         公正取引委員会         事務総局経済取         引局長     山田 昭雄君         大蔵政務次官  谷垣 禎一君         大蔵大臣官房総         務審議官    原口 恒和君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省理財局長 中川 雅治君         大蔵省金融企画         局長      福田  誠君         大蔵省国際局長 溝口善兵衛君         通商産業大臣官         房審議官    林  洋和君         中小企業庁次長 殿岡 茂樹君  委員外出席者         大蔵委員会専門         員       田頭 基典君 委員の異動 七月二十八日  辞任         補欠選任   河井 克行君     吉川 貴盛君   坂本 剛二君     塩谷  立君   桜井  新君     嘉数 知賢君   砂田 圭佑君     飯島 忠義君   平沼 赳夫君     古屋 圭司君   綿貫 民輔君     今村 雅弘君   海江田万里君     近藤 昭一君   玉置 一弥君     石毛えい子君   大口 善徳君     福留 泰蔵君 同日  辞任         補欠選任   飯島 忠義君     砂田 圭佑君   今村 雅弘君     綿貫 民輔君   嘉数 知賢君     桜井  新君   塩谷  立君     坂本 剛二君   古屋 圭司君     平沼 赳夫君   吉川 貴盛君     河井 克行君   石毛えい子君     玉置 一弥君   近藤 昭一君     海江田万里君   福留 泰蔵君     大口 善徳君 七月二十二日  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出第一一七号) 同月九日  共済年金制度堅持に関する請願小林多門紹介)(第六六四九号)  同(山中貞則紹介)(第六六五八号)  同(中山太郎紹介)(第六六九四号)  同(菅直人紹介)(第六七一二号)  同(小里貞利紹介)(第六七五〇号)  計理士に公認会計士資格付与に関する請願越智通雄紹介)(第六七〇〇号)  所得税基礎控除引き上げ課税最低限の百八十万円への改正等に関する請願佐々木  憲昭紹介)(第六七一一号)  大型所得減税消費税減税に関する請願吉井英勝紹介)(第六七四九号) 同月二十三日  共済年金制度堅持に関する請願持永和見紹介)(第六八〇四号)  同(持永和見紹介)(第六八一八号)  同(持永和見紹介)(第六八三二号)  同(堀之内久男紹介)(第六八五八号)  児童手当大幅拡充、新たな子育て支援制度に関する請願草川昭三紹介)(第六八五七号)  消費税減税に関する請願佐々木憲昭紹介)(第六八八一号)  同(瀬古由起子紹介)(第六八八二号)  同(平賀高成紹介)(第六八八三号)  消費税率を三%に戻すことに関する請願中路雅弘紹介)(第六八八四号) は本委員会に付託された。 七月十四日  共済年金制度堅持に関する請願(第六四七九号)は、「山花貞夫紹介」を「伊藤忠治紹介」に訂正された。 七月二十二日  児童手当制度抜本的改善に関する陳情書(第三一〇号) は本委員会に参考送付された。 本日の会議に付した案件  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出第一一七号)     午前九時三十分開議      ――――◇―――――
  2. 村井仁

    村井委員長 これより会議を開きます。  内閣提出租税特別措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。大蔵大臣宮澤喜一君。     ―――――――――――――  租税特別措置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案趣旨を御説明申し上げます。  政府は、最近における社会経済情勢にかんがみ、企業による事業の再構築円滑化に資するため、産業活力再生特別措置法に基づく事業構築計画認定を受けた事業者について、事業革新設備特別償却設備廃棄等による欠損金繰越期間等特例登録免許税税率軽減する特例等措置を講ずることとし、本法律案を提出した次第であります。  以上が、租税特別措置法の一部を改正する法律案提案理由説明及び内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 村井仁

    村井委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 村井仁

    村井委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小池百合子君。
  6. 小池百合子

    小池委員 自由党の小池百合子でございます。  産業活力再生特別措置法に関しましての税制上の措置について、幾つか伺いたいと思います。  まず、今回の法案でございますけれども、私は、思い出したこととして、昭和二十年代ごろにテレビがばっと世の中に出てきたときに電気紙芝居というふうにあざ笑った映画産業が、その後、各企業によってたどった道は違いますが、衰退となった。そして、そのテレビが、例えばネットワークの代表格と言われておりますアメリカNBCという大変大きなテレビ局がございますが、これが今度は、AOLというつい数年前にできたアメリカベンチャー会社、ヤフーに対抗するようなAOLアメリカン・オンラインという会社によって買収されたというニュースが先日ございまして、私は、読み間違いかな、NBCAOLを買ったのかなと最初思ったんですけれども、もう一度読み直してみると、AOLNBCを買ったということで、産業構造の激変ということをこのニュースで目の当たりにしたという感じがいたしました。  つまり、産業構造変化はそれほどすさまじいスピードであり、また、メガコンペティションはまさに世界、そして国内外を問わず起こっているんだということでございまして、ハンドルを切り損ねたと申しますか、もしくはアクセルを吹かし過ぎたためにクラッシュ寸前までにいった日本経済をどうやって立ち直らせるのか、それは経営者自身努力で行うのか、もしくは官民一体となってともに進んでいくのか、この辺が今回の法案の入り口に入るまでの議論でもう少しあった方がよかったのかなというふうに私は思うところでございます。  今回、さまざまな税制措置がとられ、買いかえの特例であるとか登録免許税軽減不動産取得税軽減、また分社化を進めるなどといった措置がとられていることは、これはグローバルなスタンダードから申しますと、経営者として各国の経営者が行っているようなつえを、魔法のつえではないですけれども、それを振るえるということでは意味のあるところだと思います。  こういうふうに材料が整ったときに、あとは私は経営者の資質が問われてくるのではないか。これだけのものをそろえると、GEのウェルチ会長という、すばらしく大胆な改革を行ったことで知られるわけですけれども、そういう人が日本に本当にあらわれてくるのかどうか。それは経営者自身の問題であるとして、今後大いに期待もしていきたいと思っております。  そこで、私がきょう伺いたいのは、一点に絞らせていただきます。今後こういった新規産業の出現を大いに期待するところではございますが、まずその資金調達の場としての証券市場、これもインフラとして整えていかなければならないのではないか。この法案が今後進み、新規産業がそれによって育ち、そしてIPO、公開をしていくというようなことは、我が国の証券市場整備が何としても欠かせないところでございます。一方で、間接金融から直接金融へという大きな時代の流れがある。それだけに証券市場環境整備ということは不可欠な問題だと思います。  このところ、広島新潟など各地方証券取引所がクローズをし、そして東証がそれにかわってという大きなうねりもございます。また、お米の先物というか、その先物世界世界で初めて行った大阪はまたそれなりに、昔から株先とか日経二二五とか新しい商品などを出して、そして独自性を出そうという努力はしているようでございますが、一方で、ソフトバンクの孫正義さんがアメリカとの合弁でナスダック・ジャパンをつくろうとしている。こういった国内外における市場間競争取引所間競争というのが起こっているわけでございます。  私は、取引所間競争というのを今後とも一層進めることによって市場そのものが元気をつけ、そしてまた、これまで東証一部、二部そして店頭公開というように、メジャーリーグがあって、マイナーがあって、草野球があるみたいな、そういうランクづけではなくて、市場間で競争する。まさに、ニューヨーク・ストック・エクスチェンジとアメリカン・ストック・エクスチェンジ、そしてNASDAQはお互いに競争しているわけでございまして、その理事長というか社長というか、それは天下りのポストではなくて、車つきポストという名誉職ではなくて、それぞれが営業をして回っている、トップ営業をやっているわけですね。うち証券取引所で上場しなさいということを営業をして回って、客引きじゃないですけれども、それをやっているのがアメリカでの取引所の所長、社長の姿でございます。ついでに言うならば、アメリカではそうやってNASDAQテレビコマーシャルまでやっている。この辺のところは全く日本とは、上場させてあげるとか、そういうこととはまた全く風土が違うということでございます。その前には自己責任の確立ということがあるわけでございますが。  そこで、伺わせていただきます。日本証券市場整備東証も新しい新規産業市場を二〇〇一年には立ち上げようというような動きもございますが、地方証券取引所の今後、そして日本証券取引所の今後、こういったことについてどういう計画、どういうイメージを立てておられるのか、御担当の方に伺います。
  7. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 計画ともおっしゃったし、イメージともおっしゃいましたし、そこのところをどうお答えするかということだと思いますが、今お話しになりましたことの中に大体答えは出ているだろうというふうに思います。  取引所というのは、頭の中ではマーケットでございますけれども、取引所という言葉、あるいは端的には場立ちというような言葉がございますが、何かそういう場所があって、人がいて、相対して何とかということがマーケットというものの始まりだろうと思いますけれども、今お話しになりましたように、確かに、マーケットというものが非常に抽象的に成立する、電子的に成立するようなことになりつつあるわけで、片っ方でそうでございます。片っ方で、しかしそうではあっても、でたらめにただディーリングが行われるわけでなくて、どこに属してそれが行われているかということがまたございますから、したがって、うち市場というようなことが企業として成り立つんだろうと思います。  そういうふうに変化してまいりましたから、かつての日本証券取引所、かつて、お役所であったことはないのですが、結構いかめしい存在であった、そのことがだんだんいろいろな意味変化をしてくるだろう。新潟にもあった、広島にもあった、札幌にもなきゃおかしいといったような一種のプレスティージみたいなものから、いやそれは、必ずしもそういうものがなくても、取引というものは広島でできるはずのものは東京でもできるわけでございますからというふうに変化していくことがまた同時にあるだろうと思います。ですから、場という観念がかなり変化をしてきたということ。  しかし、そうではあっても、取引が行われる限りは、取引に参加する者は保護されなければなりませんし、取引の公正は期さなければなりませんし、また記録等々は残らなければなりませんから、それなり制約がある。そういうことはまた事実で、そういう中で日本証券市場というものも進んでいくだろう。会員権が今度なくなるというふうな話はおもしろい話でございますね。結局、スペースの制約というものが要らなくなったことに関係があるんだと私は思いますけれども、やはりそういうふうに動いていくのではないかと思っております。  ただ、それを政府がそういうふうに誘導する必要は恐らくないんだろうと私は思いますので、したがいまして、推移とか方針とかいうどっちのお答えをするのかなと思いました。誘導することはないので、政府としては、取引の公正と取引関係する人たちの保護といったようなものに関心を置けばいいのではないかというふうに思います。
  8. 小池百合子

    小池委員 ありがとうございました。  ちなみに、アメリカNASDAQは、NASDAQ自身が上場する、株式公開するというような動きも出ておりまして、そういった動きが全体のアメリカでの投資活力を集めているのではないかと思います。若干私自身の考えを申しますと、やはり、特に、NASDAQもそうでございますけれども、今後のアメリカ経済の行方というのはちょっとはらはらどきどきして見ているところではございます。  それで、今回の法案でございますけれども、税制関連のところで、もう一歩進めてほしかったな、また、将来ぜひお願いしたいなと思っていることがございます。それがいわゆるエンゼル税制の点でございます。  現在では、個人投資家に対して、株式損失は翌期以降三年間、株式譲渡益との損益通算のみは認められているところでございますけれども、ほかの所得との通算を認めるべきではなかったか、また損益通算期間を延長すべきではないかというように思うわけでございます。この点、私は若干不十分じゃないかと思っておりますが、いかがでしょうか。     〔委員長退席柳本委員長代理着席
  9. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今回の法律の中で、エンゼル税制措置が講じられていないということでございました。  実は、いわゆるエンゼル税制でございますが、現行制度株式譲渡益に対する課税を見てみますと、実はまだ申告分離源泉分離課税選択ができるというふうに現在はなっております。したがいまして、源泉分離選択した場合には、売却価格の一・〇五%だけで所得税関係が終わるというふうに現在なっているわけでございます。  また、創業者の利益に配慮した制度も、つまり店頭登録それ以前に三年間持っていれば、店頭登録後一年間で売った場合はその所得は半分にするという制度もございまして、既に相当有利な制度になっているのではないかと思います。  そういう中で、今先生からお話がございましたエンゼル税制特例措置を講じているわけでございます。  この制度は、御承知のように、エンゼル税制適格対象株式になる場合は、株式譲渡損が出た場合には三年間繰り越して他の株式譲渡益から控除することを可能とする制度でございます。  この期間三年をさらに延長したらどうかとか、あるいは他の所得との通算を認めてはどうかという御提案がございました。現在、御承知のように、源泉分離選択あるいは申告分離が両方可能なもとで他の所得通算というようなことになってまいりますと、損だけ出てくるような税制になってございまして、その辺をどう考えるかという問題がございます。  それから、もう一点申し上げますと、所得税最高税率、今回三七%になっておりますが、申告分離においても二〇%でございます。ですから、二〇%の分野で出てきた株式の損を三七%までいただけるところの所得通算するということをどう考えるかというような問題もあろうかと思います。  あと、三年間の問題については、現在、所得税制暦年課税ということで、災害があったとかいろいろな場合も三年というのを限度にしておりまして、株式だけするということが税制上のバランス、公平の観点から考え得るかということがございまして、まさに、エンゼルといいましょうか、こういうベンチャー企業を起こすための施策というのは非常に大切かと思いますけれども、税制上、理論的にも実務的にもいろいろ考えなければならない問題があるなというふうに思って悩んでいるところでございます。     〔柳本委員長代理退席委員長着席
  10. 小池百合子

    小池委員 余り悩み続けないで、これはまさに、公平という税の大きな観点もございましょうが、また、国のあり方として、新しい産業を育てるんだということを税制の中に組み込むことこそが政治の役目であり、また、まさに国を挙げて、そういう新しい産業、これからの日本の飯の種を育てるという意思を持つことがまず重要なのではないかと私は思っております。  それから、最後に一言。  今回は民主党の方から女性による創業等支援ということが出ているわけでございますが、私の友人も結構女性ベンチャーの元気な経営者がたくさんおられます。見ていると、別に女性だからということじゃなくて、やることをやっていると申しましょうか、私はむしろ、こうやって女性だけのことを考えるというのは、本当に頑張ろうとしている女性に失礼なのではないかとさえ思うわけでございます。であるならば、ベンチャーそして新しい創業者を育てるという大きな観点から考えていく必要があるのではないかということを最後に申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  11. 村井仁

    村井委員長 次に、末松義規君。
  12. 末松義規

    末松委員 民主党末松義規でございます。  今年度の経済白書日本経済の持つ問題の中で三つの過剰という構造問題に言及していまして、過剰設備過剰雇用そして過剰債務、この三つの過剰が顕著である、これをもたらした原因日本経済及び日本社会構造の中にとても根深く潜んでいると。  そして、いろいろと民主党でも政調の皆さんを中心にそういう研究をされておられまして、この過剰の原因を調べていきますと、また別の三つの過剰に行き着くんじゃないかと言われているわけです。その三つの過剰とは何かというと、過剰なむだ遣いというのと過剰な行政介入、そして過剰なお上依存、そういう体質であるということを分析しているわけですけれども、これらだんご三兄弟みたいなものなんですが、こういう点をきちんとチェックしながらやっていくことがこれからの行政を進めていく上で必要なことだろうと思っています。  また、これらの過剰を乗り越えていくためには、行政からも、温かい目で見ながらも、クールな頭で自立を促すといいますか、民間皆さんが御自分の足で立てます、あるいは立って頑張ってください、それに対して最大限の環境づくりを行いますよという姿勢が政府にとって必要なんだろうと私も思っているわけです。  そういう思いの中でこの法案を具体的に見てみますと、今回の法律案ですけれども、大体、大企業事業構築要請というものに沿って、評価できる措置というものもある程度含まれております。さまざまな措置の中で、見てみますと、そういった評価するべき点もあるんですけれども、ただ、これらの適用は、これは通産省が基本的なペーパーをおつくりになったと思うんですけれども、この事業の再構築に関する計画を出させるという中で、面倒なペーパーワークなんかをいろいろと経て関連官庁認定を受けなきゃいけない、そういう構造になっているわけです。  限られた資源の中できちんと資源を使うわけですから、みんなにできるわけではない、だから、そこは何らかの選定を受けなければだめだよという理屈はわかるんですけれども、こういうペーパーワークが重い足かせとなって、ペーパーワークが得意でない人なんかもいますし、そういった中で実際に適用がかなり限定されて、ちょっと効果が薄くなるんじゃないかという懸念もあるわけです。  また、これに関連して、実際に選定という作業なんですけれども、役所、お役人というのを考えますと、別に営利行為を行っているところでもないし、商売に関してプロでもない、そういった方々が何か決裁書を見るような目で見ていって、本当に、ベンチャーとかあるいは業を起こす人たち起業家を育てることができるのかという懸念が私にとってあるわけですが、その点についてはいかがでしょうか。
  13. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今お話しになったこと、つまり産業活力再生特別措置法案、閣内でいろいろ議論しておりまして、これは確かに主務官庁にかなり大きな権限を与えるものであります、認定をするわけでございますから。  ただ、今の日本のこの段階というものが、恐らく、二十一世紀を迎えるに当たって、五十年間やってきたことをやはりいろいろな意味で転換しなければならない時期であることは御認識いただけると思うので、このときに当たって政府としてそういう民間における動きに参画すると申しますか、関与すると申しますかということは、非常に注意をしなければなりませんけれども、恐らく許されることではないだろうか。  それは、金融についても、ごらんのように同じことが言えるわけでございます。金融再生といったような仕事は、かなり大きな権限政府が現実に持つわけでございますので、同じことが言えると思いますが、本来ならば、市場経済において政府はそんな大きな力を持つべきではないんだろうと私は思いますけれども、今回は、五十年やってきた日本が新しい道に入るのに、それは不況が背景ではありますけれども、ある程度そういうことは許されるのであろう。  しかし、それはともすればおっしゃるように恣意的になりやすいわけでございますから、通産省としても、運用基準というものははっきりさせなきゃいけないということを考えておられる。ですから、ここはまさに、行政が恣意的にならないように、市場経済動きを阻害するようなことにならないように、国会がいろいろ関心を持たれるところだろう、私は当然そうあってしかるべきところだというふうに御質問を了解いたします。  と同時に、こういう場合に、免税の特権を与えるということでございますから、これはあいまいな認定をするわけにはいかないので、やはり税務当局としては、主務官庁があって、そこがはっきりこれについてはそういう特権を与えるべきであるという判断をしていただきませんと、今度は税務側認定が恣意的になりますので、この点はそういうふうに仕組んでいくしか方法がないだろう。ただ、主務官庁認定については、極めて客観的にそれを公表してだれでもわかるように、そういうことにしなければならないということは政府としても十分考えているところでございます。
  14. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  今回、私どもの法律、特にその中で事業構築の部分でございますけれども、基本的に次のような考え方をしております。  アメリカあるいはヨーロッパに比べて不利な制度をイコールフッティングにしてある、その中核になるのが、組織変更をスピーディーに行えるような商法の特例が一つ、それからもう一つは税制でございます。この二つの道具立てを整えて、あとはお決めになるのは各民間企業の判断である。そういう意味では、各企業の自主性の尊重というのが第一の原則だと思っております。  それから第二には、昔は、例えば石油危機とか円高のときには、共同行為的に、例えばこの業界はプロラタで一〇%とかそういうやり方をいたしましたけれども、私どもは、今回はそういうことはすべきでない、むしろ、どの設備が古くて能率が悪いのかというのはそれぞれがわかっていることでございますので、市場原理にのっとるというのが第二の原則だろうと思っております。  ただ、商法の特例にしても税制にしても、例えば商法の一般則であるならば、これは商法の改正ということになって時間がかかるわけでございます。今はそんな悠長なことは言っておれないという状況でございますし、税については今大蔵大臣が御答弁したとおりでございます。そういう意味である要件はかけざるを得ない、そのときにどうやって恣意性を排するのかということが御質問趣旨だと思います。  私どもとしては、第一には、原則として、申請から認定まで一カ月でやりたいと思っています。例えば、検査役の特例を設けるわけでございますが、これは迅速な組織変更をするためにやるわけでございまして、検査役の特例で現物出資の評価は早くできたけれども役所の手続が三カ月も四カ月もかかるというのは、これは本末転倒でございます。そういう意味で、一カ月で原則やりたいというのが一つ。  それから二つ目には、恣意性の入らない透明な基準を明らかにしたいということ。  それから三点目は、その過程で専門家の意見を聞くとかパブリックコメントを付するとか、そういう手続面でもきちっとしておきたい。  それから四点目は、企業秘密に属する部分を除いて、認定をいたしました計画を公表したい、こういうふうに考えております。
  15. 末松義規

    末松委員 大臣からもいただきましたし、通産省さんからもいただきました。非常に問題意識としてはきちんと考えておられるというのを私も非常に評価いたします。市場原理に従って、透明性を心得ながら公開していくということ、これは時代に合ったところであろうと思います。  私は、その中でちょっとだけコメントさせていただきたいのは、恣意性というのは、今の時代でいけば余りなくなってきているんだろうと思うんですね。問題は、逆の意味で、指導性があるかどうかという世界があるのかもしれないと私は思っています。  といいますのは、やはり商売とかにかかわっていない方々がやるとなると、どうしてもお役所仕事にならざるを得ないのです。これは当たり前の話なんですね。ですから、例えば役所の中にそういうベンチャー等に非常に理解と専門性を有する方々の何か委員会とか、あるいはそういう集まりの中でこれを通すとか、そういうふうな工夫もぜひ考えていただきたいなと思うわけです。  ただ、基本的なラインとしては、非常に市場原理を中心にして言っておられることについて敬意を表します。  宮澤大臣が言われたように、ある意味では五十年のあかが、逆に言えば、あかという位置づけじゃなくて、日本経済は成功してきたわけですから、その成功体験が逆に今度は足かせとなって次の時代に行けないという位置づけになってきていますから、そこのところを、多分一番おくれているのが役所の組織だと判断せざるを得ないところもあると思うのですね、その辺を見て、自分が足らざる思いの中でそういう専門家の意見に謙虚に耳をかすような形でお願いしたいと思います。  次に、この産業活力再生特別措置法では、私から見れば、大企業のリストラに関する税制上の優遇措置というのが目立って、今回は、創業支援といいますか、あるいは中小・ベンチャー企業支援についての租特法の措置がすっぽり抜けているような感じもするわけなんですけれども、その辺について大蔵大臣の御認識を賜りたいと思います。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 言われたところの最後の方がわかりませんでしたが、ベンチャーについての配慮が足りないと言われたのですか。
  17. 末松義規

    末松委員 要するに、創業支援ということについて租特の措置がないじゃないか。企業のリストラについてはいろいろな租特の措置があるのですけれども、創業支援について今回、税制上の措置がないじゃないかということ。
  18. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今回の税制上の措置がリストラ対策についてだけではないかというお話でございました。  実は、今回の税制上の措置が受けられますのは、ただいま議論になっておりました計画が前提になるわけでございますが、その計画も、いわゆる分社化とか設備を廃棄するという事業構造変化だけではなしに、事業革新、つまり新しい生産方式を入れるあるいは新しい商品を開発する、そういう事業革新計画をあわせて講ずるものについて税制上の恩典が講じられることになっておりまして、そういう意味で、後ろ向きの施策ということではない、まさに我が国に今必要とされている産業再生のため、新しい力が入ってくるところの計画をあわせ持っているところに今回の税制支援が行われるということだと思います。  それから、創業者支援ということでございますが、これは別途、今回の産業活力再生特別措置法の方で信用保証の枠の増大というようなことが考えられていると私どもは聞いております。  なお、税制面で創業者支援をさらに考えたらどうかということでございますが、先ほども申し上げましたように、現在、中小ベンチャー法でエンゼル税制というのを設けているところでございます。これ以上さらに拡大せよということになってまいりますと、現在の我が国の所得税の体系から、理論的あるいは実務的にもいろいろ検討すべき課題が多いというのが率直な感想でございます。
  19. 末松義規

    末松委員 私の次の質問を言っていただきましたので、エンゼル税制についてお伺いします。  今言われたように、さらなる拡大が必要じゃないかというのが私の立場なんですけれども、先ほどの小池議員と同じ問題意識を持っているわけです。具体的に言えば、例えば民主党は、今回提示させていただいているように、三千万円を限度として三年間、他の各種所得からも繰越損失控除ができるというような、そういったもっと幅広いエンゼル税制が必要だと思うのです。  先ほど局長さんの方からさまざまな問題点というお話がございましたが、その第一点目に大蔵省さんの方で言われていたのが、源泉分離課税申告分離課税、これの選択制がある、これを源泉分離課税の廃止ということと抱き合わせでエンゼル税制を考えるというようなことも何か言われているらしいのですけれども、その辺についてはどういうふうにお考えなんですか。
  20. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今先生からお話がございましたように、先生の党の方からいろいろな御提言がなされていることを私どもも承知しているわけでございます。  それで、このエンゼル税制について、申告分離源泉分離選択が一本化すればこの制度ができるのではないかというお話でございました。確かに、申告分離源泉分離申告分離に一本化すれば、一つのハードルといいましょうか、それがなくなることはそのとおりでございますけれども、さらに問題が残っておりますのが二点ほどございます。  一つは、申告分離、先ほども申し上げましたが、株式については二〇%で所得税を御負担いただく仕組みになっております。一方、他の所得は三七%まで最高税率がいくわけでございます。したがいまして、譲渡損失をほかの所得と相殺するということになってまいりますと、いわば三七%負担していただくところの所得が相殺されるというようなことになってまいりまして、その辺、所得税の考え方から一体どう考えるのかという問題があろうかと思います。  アメリカの例で申し上げますと、納税者番号制度のもとで総合課税ということになっているわけです。ですから、基本的な考え方としては、長期、短期での税率の差はございますけれども、最高税率をいただく所得というのは株式所得もほかの所得もほぼ同じであるという考え方に立っておるものでございますから、その辺、理論的にどう考えるのか。  さらには、先ほど納税者番号制度と申し上げましたが、所得の把握体制の問題もどう考えるのかというような点、いろいろあるように思っております。
  21. 末松義規

    末松委員 アメリカの例も出されましたが、所得税の考え方なんですけれども、これは例えば、小池議員も言われておりましたけれども、日本のこれからの飯の種を、あるいはみんなの生活をよくしていくという形での創業者を物すごくふやさなければいけないというのが今の時期だと思うのですね。そのときに、従来の税制所得税の考え方でいいと思っておられるのですか。その変更について、どういう検討の状況を今考えておられますか。
  22. 尾原榮夫

    尾原政府委員 私ども、税制というのはいつも固定的でいいというふうに思っているわけではございません。したがいまして、租税特別措置法ではございますが、エンゼル税制というような形で現行体系の中でできる限りの措置は講じているというのが今の姿かと思います。  それで、実は所得税、税全体の話になってくるわけでございますけれども、ある特定の分野について一つの租税特別措置を設けますと、それ以外の、先ほど三年間のお話で申し上げさせていただきましたが、災害で損失を受けたという場合は、三年間というのが限度でキャリーオーバーできるわけでございますね。世の中、例えば損失についてだけで言えば、確かに、株の損失に配慮をすればそういう投資がふえる、日本経済にとっていいということが期待できるかもしれませんが、他方、税は、税の公平というバランスの問題がどうしても出てくるわけでございまして、例は適当ではございませんけれども、それでは、災害に遭って家財道具をなくされた方の損失とのバランスをどう考えるかといった場合、税制としてどうあるべきかというようなところまで考えていかなければならない問題を含んでいるわけでございます。  いずれにいたしましても、所得税制といいますのは抜本的な改正をしなければならないわけでございまして、税制調査会でもワーキンググループを設けまして、どう所得税制はあるべきか、現在検討を続けているところでございます。
  23. 末松義規

    末松委員 災害の損失とここはちょっと一緒にしないでいただきたいんですよ。それはそれでまた別途対策を立てるべき問題だろうと思うんですね。  私が申し上げたいのは、株式とかそういうのは確かにリスクマネーというのがあるわけですね。リスクをとらないと新しいものはできない。日本人の哲学で抜けているのは、リスクをとるということに対して非常にみんな憶病か、あるいはとらないという前提に立った税制をやっていると思うんですね。そこをどう税に生かすかというのが今一番難しいし、今一番求められてもいますし、そこにやはり玄人の腕のさえが見せられるところだと思うんですよ。そこのところを加味していただかないと、所得税は従来こうです、だからあとは変わりませんという話をされちゃうとこれ以上議論が進まないんですよ。  あと最後に、税調でやられるということできれいにおまとめになられましたけれども、その期限はどういうふうに考えておられるんですか。
  24. 尾原榮夫

    尾原政府委員 いわゆる所得税を含む税制の抜本改革をいつ実施するかというお尋ねかと思います。  まだ率直にいつというふうには税制調査会でも議論にはなっておりませんが、来年、実は中期答申というのをまとめる年になっておりまして、その中で今後の所得税制のあり得べき姿をお示しいただけるのではないか、こういうふうに思っております。(末松委員「来年何月ですか」と呼ぶ)まさに政府税調がこれからどういう審議日程になるかでございますが、来年の春といいましょうか、もう少し時間がかかりましょうか、それはこれからの審議にかかっておりますが、そういうふうに中期答申でお示ししたいというふうに思っております。
  25. 末松義規

    末松委員 そうやっている間に日本経済がまたどんどんずぼずぼとはまっていったら、そこは大蔵省の責任と考えてよろしいんですか。  私は思うんですけれども、抜本的な改革をすべてやるということで、それは先になりますよ、一年先です、二年先ですといったら、今の状況はだれが救ってくれるんですかと申し上げたいんですね。だから、非常にきれいにおまとめになられるのはいいんですけれども、そこのところはやはり随時作業していただかないといけないし、学者さんのスケジュールに合わせるわけにもいかないし、そこは本当にそういった必死の思いでやっていただきたいと思うのですよ。  特にこのエンゼル税制、もし例外的な特例ということであれば、そこを本当にもう一歩、もう一段考えていただきたいと思います。私もいろいろなベンチャーの方々とも接していますけれども、そこのところのリスクマネーをきちんととらえられる、あるいは配慮した形の税制をもっとやっていただきたいということを真摯な要望として出されておりました。  そういった意味で、先ほど宮澤大臣が言われたように、五十年の改革、意識を改革するというのがこの国の国民にとって一番重要なことなんですから、そこをまず大蔵の方で示していただきたい。それで初めて、リスクマネーに対して日本はこれからこたえるんだということをぜひお考えいただきたいと思います。  これだけやっていますと時間がなくなってまいりますので次に進めますけれども、最後に言っておきます。本当に、まず期限を決めて、それで進むような形でお願いしますね。それをやっておかないと、ずるずるやってだれも責任をとらないんじゃ、これこそ日本民族の方が困りますから。頼みます。  次に、今のとも関連するんですけれども、日本で何もそういう配慮をしなければ、行き着く結果は一つなんですよ。日本を捨てて海外に出ていく、要するにキャピタルフライトが起こるだけの話なんですね。それを大蔵省さんの方では本当に意識されているのかどうか。今ボーダーレスという話になって、日本も外為法を改正して、そうなってきますとどんどん自由に流れていくわけですから、ここの税制は非常に悪いなと思ったらそれはほかのところでやりますね。現に日本ベンチャーでもどんどん日本を見捨てて行っている人が数多くいるんですから。そういうふうなことをこれからも同じように続けていくんじゃなくて、ぜひそこは、まず知恵を絞っていただきたい。  そのこととの関係で、小池議員も指摘されておられました、ナスダック・ジャパンというのが日本で開業するということですけれども、この新しい資本市場動きに対して、まず宮澤大臣の御認識を伺いたいと思います。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先般、ニューヨークのNASDAQの方と志を同じくする日本の財界人が東京で記者会見をされまして、ある時期にナスダック・ジャパンというものをつくるというお話をしておられました。ただ、もちろんそのためにはまず証券業協会をつくらなきゃなりません、その協会員が新しい登録市場の開設、管理について責任を負うわけでございますが。まだその協会の設立、市場の開設はもとよりですが、そういうことについて法的な動きはございません。認可を求めてこられるということもまだございません。その準備をしておられるというふうに承知しておりまして、恐らく証券業協会に参加される方がどれだけとか、そういう働きかけをしておられるんだろうと思います。  基本的には、私は、先ほど小池議員にも申し上げましたけれども、取引というものはそういうものになってまいりますものですから、取引が公正であって、そして投資者が保護される、そういうことが確保されるのであれば新しい形態が生まれてもそれでいい、積極的に考えていくべきであろうというのが基本の考えでございます。ただ、今言われております現実のNASDAQ動きは、まだそこに至らない、恐らく準備段階であろうと思います。
  27. 末松義規

    末松委員 このナスダック・ジャパンについてまだ不明な点が多いですし、アメリカで成功したからといって日本でどうかという話もあります。確かに、宮澤大臣が言われたように信用性の問題、投資家の保護といいますか、投資家が自由に信頼を持って取引できる場所であるかどうか、そこのところがチェックをされるんだろうと思うわけですけれども、政府委員の方でこれについて知識をお持ちの方で、その辺の信頼性についてコメントをされる方はおられますか。
  28. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 直接の答えになるかどうかはちょっと自信ございませんが、今大臣が申し上げましたように、店頭登録市場の開設は証券業協会が行うことになりますので、いずれにしましても、NASDAQのような方々が進出される場合にはまず証券業協会をつくっていただくということでございますし、それから、そのでき上がった協会が店頭登録市場を開設されようとするときには、その証券業協会の規則におきまして登録基準とか売買価格の報告、発表、決済方法などを定めて、投資家の保護に欠けることのないような内容として大蔵大臣の認可を受けなければならないことになっておりますので、まだその辺の具体的なお話は私ども伺っていないということでございます。
  29. 末松義規

    末松委員 先ほど宮澤大臣が、前向きに受けとめたい、そういった意味で公正でしかも信頼できる市場であればいいじゃないかということ、これは私も非常に前向きに評価したいと思いますが、ただ、その前に反省なんですね。第二店頭市場というものをつくって、どうも活発に商売がなされていなかった、この辺について日本側の反省点、あるいはどういう教訓を学び取ったのか、ちょっとお聞きしたいと思います。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席〕
  30. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 お答えいたします。  御指摘の店頭特則市場というものでございますが、これは平成七年の七月に、ベンチャー企業のようなものの公開を容易にするために、従来の基準を緩和した特則基準を設けることにより開設したものでございますが、どうもその登録基準の中で、事業の新規性という基準でございますが、その判断が困難であったというようなこと、それからベンチャー企業にとって純資産額といった基準は必ずしも適当でなかったというようなこともございまして、開設したわけでございますが、その後、登録会社数が三社にとどまっているということでございます。  そこで、そういうような状況を踏まえまして、証券業協会も十年十二月には、その特則基準をもう少しベンチャー企業の利用しやすいように直す必要があるということで、例えば設立経過年数が十年以下の企業を対象とするとか、あるいはさっき申し上げました純資産額基準は廃止するというような手だてを講じております。それ以外にも、店頭市場の活性化に向けまして、インターネット開示システム、すなわち店頭登録市場の適時開示情報を迅速に投資家に提供するようなシステムを導入いたしましたし、登録銘柄の流動性を高めるためのマーケットメーカー制度というようなものも導入しておりまして、店頭登録市場が御指摘のようにさらにニーズにこたえられるように改善を加えているところでございます。
  31. 末松義規

    末松委員 その改善を加えて、三社が何社にふえたんですか。
  32. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 現在のところ、その後一社登録されたところでございます。
  33. 末松義規

    末松委員 つまり、このことは何を示しているかといいますと、先ほど大臣が言われた公平性とあとクリアリング機能、これだけでは市場は育ちませんということだろうと思うんです。しかも、時代に合っていなかった。だから、私は、実はNASDAQ関係者と会ったときに個人的にもちょっと聞いたことがあるんですけれども、きのうもまた関係の方からも聞きましたけれども、日本にもいろいろとアプローチをしてきたという話で、そこで東証はそれをけったという話もあるんですね。だから、多分これも五十年の考え方の凝り固まった古さがそういうことをさせているんだろうと思うんですけれども、それをやっている限り、それはかたくて、信頼できる市場ができた、でもだれも入らなかったというのじゃ、大きな部分を見落としていませんかという話になるんですね。  ですから、私はNASDAQというのは黒船だと思っているんですけれども、これを機に日本市場を、時代に合った形で本当に投資家が利用しやすい、あるいは企業もそれから資金を得やすい形に再度見直してもらわないと、システムそのものが機能しない、あるいはしていかない、二十一世紀に全く太刀打ちできないということで、場合によってはNASDAQ日本東証になっちゃうんじゃないかというほど向こうの方が勉強していますよ。  だから、政府がやっているんじゃないから、それは東証の方がやっているからという話には当然ならないんでしょうけれども、ぜひそこのところをもっともっと、新しさということを求めるのなら、市場の新しさをまずそちらの方からモデルを示していただきたいと思います。そうじゃないと、資金的に全部吸われちゃって結局海外に日本の金が流れる、そこでまたショックが起こったらその日本の金が断たれるということであれば、日本人は泣き切れないですよ。何かおっしゃりたいことはありますか。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席
  34. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 お答えいたします。  先ほどの特則基準緩和後に一社追加されたということにつきまして、さらに今協会と相談中の会社も幾つかあるということでございます。  それから、現在、東京証券取引所におきましては、今申し上げました現行の特則市場の見直しにとどまらず、現在と全く異なる視点から、新しい基準で異なるコンセプトの新市場を設けることについても積極的に検討中であると聞いております。  私どもといたしましても、今後も東証独自性を発揮して、創意工夫による効率的なサービスを提供できるように対応を進めていくように期待しているわけでございます。
  35. 末松義規

    末松委員 もう時間がなくなってきましたから、そこのところはよろしくお願いします。  そして最後に、この前、NPOの寄附金控除税制について二月に宮澤大臣にもお伺いして、大臣の方から非常に前向きな御答弁をいただいたわけですが、その後、検討状況はどうなっていますかというのをちょっと御説明いただけませんか。
  36. 尾原榮夫

    尾原政府委員 NPOに対する寄附金の問題でございますが、今まさにNPOの法人が設立しつつある状況でございます。したがいまして、これまで、どのような活動が展開されるかまず実態を見きわめる必要があるというふうなことを申し上げてまいりました。  このNPO法を所管している経済企画庁でございますが、NPO法の附則もございます、それから附帯決議もいただいております。そういうことで、本年の四月から、経済企画庁におきまして調査審議を開始したというふうに聞いております。私どもも、経済企画庁と連絡をとりながら検討を進めていかなければならないというふうに思っております。  いずれにいたしましても、実態が把握された上で、寄附金の公益性をどのように担保していくか等々さまざまな観点を踏まえ、さらに税制調査会の場においても検討していかなければならない、こういうふうに思っております。
  37. 末松義規

    末松委員 役所の答弁としてはそれが限度なんですね。ただ、私は、宮澤大臣にお伺いしたいのは、このNPO、これを経済の活性化の一助と考えるかどうか、そういうふうに位置づけるかどうかということなんですね。確かに今尾原局長が言われたのは、経済企画庁が主管しています、実態を見ます、そして審議します、その後で大蔵省が税制調査会でやります、そしてやっていきます。役所間のプロセスはそうなんでしょう。ただ、これを戦略的に見るかどうかによってそのプロセスのスピードが全然違うんですよ。つまり、雇用拡大、それから経済活性化、その参加をさせるということを本当に国で戦略的に考えているならば、今の答弁は出てこないはずなんですよ。  私が申し上げたいのは、そこは宮澤大蔵大臣にもう一度申し上げますけれども、その位置づけをしていただきたい、そういう中からNPOの活性化をも考えていただきたい。もともとNPOというのはそういうことじゃなくて、自分の人生をより価値のあるものにしよう、そういった自由な環境をつくっていこうということがそもそもの趣旨だと思いますし、それは今でも変わっていないと思うんですけれども、ただ、景気対策あるいは経済活動の活性化についても極めて大きな形になり得るんじゃないかということの中で準備を進めていただきたい、そういうことなんですが、大臣の御見解を賜りたいと思います。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府の仕事の役に立つので何とかしたらいいという発想は私どもしたくないものですから、そういうことはしたくないと思っておりますけれども、しかし、現実の問題として、こうやって雇用状況や何かが難しくなって、そして地方に何かの雇用をつくり出したい、地方団体は役所でございますからなかなかそんなことが上手にはできない、そういうときにNPOがいろいろな意味で役に立ってくれるということは、大変に私ども実は思っていますし、また、期待もいたしておるわけです。ですから、だからどうという発想をしようとは思いませんけれども、そういう意味で考えないかとおっしゃれば、そういうことは確かに私どもわかっておりますし、やはり正直言って、そういうこともこの問題を考える上に大事な要素ではないかというふうに私は思っています。ですから、おっしゃっていることは私は決してわかっていないわけではありません。
  39. 末松義規

    末松委員 ちょっと最後に一言。要するに、政府の補完をNPOがやれというふうな発想じゃないんですよ。NPOがわあっと活動してくればこれが経済にとって実は大きな貢献をなすだろうと言っているんですから、そこはお間違えのないようにしていただきたいと思いますが、どうかNPO法をぜひよろしくお願い申し上げます。  では終わります。
  40. 村井仁

    村井委員長 次に、上田清司君。
  41. 上田清司

    ○上田(清)委員 連日御苦労さまです。上田でございます。  NPOの話が少し出ましたので、いずれやる予定でしたので、ちょっと先に出させていただきたいと思います。  大臣も御承知のとおり、経済戦略会議で二百三十四項目の提言が出されました。そこで、政府が検討した結果、それぞれA、B、Cの三つのランクに分けて政府の意見を集約されたのが十一年六月四日。御承知のとおり、Aは「実現する方向で検討するもの」、Bは「内容について、よく検討した上で結論を出すもの」、Cは「実現のためには、乗り越える問題が多いと考えているもの」、こういう判断をそれぞれ二百三十四項目について政府が六月の四日に出しております。  先ほど末松議員のお話に出てきていますNPOの扱い、私ども埼玉県でありますが、実は法人格を取ったのはわずかに二であります。なぜそうなのかといいますと、お金を集めることができるような団体は、ついでにと言っては大変に恐縮ですが、法人格も取っておいた方がいいだろう、こういう考え方で取られる団体もあります。しかし、もともと余りお金もない、それで法人格だけあってもしようがないという形で、例えば埼玉県なんかはたったの二で終わっている。全国的に、経済企画庁が主管で、NPOの問題については法案成立過程の中でいろいろな議論が出ましたが、予定を多分百分の一ぐらいに下回った登録しかしていない。それはなぜなのか。やはり税制の裏づけがないからだというふうに思っておりますので、これを早急に上げていくことが日本の社会をまた新たなる活力を持った形に変えていく、これは末松議員と同じ認識でありますが。  しかし、宮澤大臣も以前に前向きに御答弁されました。尾原主税局長もいろいろ経企庁と相談しながらということですが、要は、今の話はほとんど進んでいないという話なんですよね。それと同じように、政府の位置づけも、項目番号三十七の「寄付金に対する免税措置の大幅拡大」がBになっているのですよ。こういう部分に関して、必ずしもこれはNPO全体と言っているわけじゃありません。しかし、NPOも含まれていることは事実でありますので、まだまだ位置づけがいかがなものかと私は考えております。この経済戦略会議の答申を受けて、政府内部で検討されてA、B、Cというランクをつけられた、このBというランクが、NPOの将来というものを政府が必ずしも十分認めていないのではないかというような危惧を私は持っておりますので、この点についてぜひ大臣の決意をいま一度お伺いして、ぜひ大蔵当局においても経企庁で一生懸命研究をさらに促進していただきたいということを望むものでありますので、御答弁をよろしくお願いします。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 行政はニューカマーに対しては常に消極的であるわけでございますけれども、今度の場合、殊に公益法人と違いまして、公益法人なら主務大臣が認可をしてくれる、その認可に乗って、それじゃ特権を与えようと行政が動くわけですけれども、認可を与える人がいないものですから、そこで、どういうときに特権を与えていいか悪いかという判断がなかなかできないという問題がございます。  国税庁長官が、アメリカは多分そうじゃないかと思うのですが、そういう認可権を持つというような仕組みもあり得るのでしょうが、どうも日本ではそれは余りやりたくないことでございますから、それでしようがないから経済企画庁と言っては悪いですが、どこの役所にもなかなか属さないものですからそこへ持っていったのだろうと思うのです。それは、確かにニューカマーに対してちょっと消極的な感じがいたしますよね。  ですから、私は、NPOというのは将来日本のためになかなかいい仕事をしてくれるのだろうと思うので、なるべく公の権力と本当はかかわらない方がよろしいのですが、免税ぐらいはメリットによって差し上げてもいいのじゃないかという気持ちがしていますので、余り狭く考えてはいかぬなというふうに思っています。
  43. 上田清司

    ○上田(清)委員 大臣の答弁を大変好意的に私は受けとめたいと思います。アメリカでも、NPO団体に勤めておられる方々は、給与は低くても社会的に意味のあることをやっているという誇りで一生懸命仕事をしているというようなことも私は伺っております。そういう意味でも、これからの日本の社会のあり方について大きな変わりようをつくるものであるというふうに認識しておりますので、どうぞ事務方におかれましても、主税局長、ぜひよろしくお願いします。  それでは、本論というのでしょうか本案について少し質疑をさせていただきます。  これは商工委員会でも、私、昨日、民主党提案者の一人として席に座っておりまして、各議員の議論をずっと聞いておりました。また、政府の議論も聞いておりました。とりわけ与謝野通産大臣のお話の中に、行政にはそこそこ行政裁量権があった方がいいのだ、こういうお話も承っておりましたが、私なりのつたない知識によりますと、立法府の仕事はできるだけ行政裁量権を減らすことにあるのだ、結果として残る分には構わないのだけれども、立法府の仕事というのは行政裁量権を減らすことにあるのだ、こんなことを以前学んだことがありまして、ちょっと困るなというようなイメージを持っておりましたが、一番議題になっておりましたのは認定の問題でございました。  もちろん、ここでは租特の問題が中心でありますが、通産の方にも来ていただいております。なぜ私がそれを気にしているかと申し上げますと、この法案をつくるのに忙しくて、結果的には何を定めるとか、例えば政令で定めるだとか、そういうことまで検討する余地がなかったのじゃないか。それで最終的には、運用の基準などは大臣告示で定めるというような形をとっておりますが、私も少し苦い経験を持っております。  宮澤大蔵大臣も御承知のとおり、一昨年の十月から十二月にかけて預金保険法の改正がございました。ここでは、特定合併をさせるに当たっては大蔵大臣のあっせんのみというのがメーンでありまして、何ら一つの基準も出されませんでした。  この間、どんなに議論をしても、ケース・バイ・ケースであります、例えば預金高がどのくらいだとか、あるいは地域経済においてどれだけの規模を持っているかとか、そういう一種の基準があってしかるべきではないかという議論を私は何度もしておりましたが、とうとう最後まで当時の三塚大蔵大臣あるいは関係局長皆さんから確たる答弁はいただくことができませんでした。その結果、幸福銀行があのとおりであります。あるいは、余り名前を出すと語弊が出てきますから、ほかのところでもいろいろと問題が起きております。  そういうことを考えると、やはり認定基準というものをきちっと政令で定めていく。あるいは大臣告示にしても、しばらくたってからわかるということじゃなくて、事前に最小限度役所の方でこういう方向ですよということをこの委員会に提示していただかなければいけない。たまたまこれは租特の分野で審議をしておりますので、商工の方でやはりきちっと基準を提示していかなければならないと私は感じております。  そこで、通産の方々にお伺いいたしますが、なぜ後で大臣告示になるのか、なぜ事前に基準が明確に出せないのか、あるいはアウトラインでも、こんなふうに考えていますということを明確に言えないのか、この辺についてお伺いしたいと思います。
  44. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  この法律、なかんずく事業構築の部分は、先ほども御答弁申し上げましたけれども、商法の特例税制というグローバルスタンダードにのっとった二つの道具立てを整えて、各企業が自主的にマーケットメカニズムにのっとって事業交換とか営業譲渡あるいは分社化事業の譲り受け、設備廃棄等々をやっていくというものでございます。そういう意味で、商法の特例あるいは税制というものを考えると、一定の要件は定める必要があろうと思っております。そういう意味認定制度を導入しております。  ただ、恣意性が入ることはよくないということで、第一には、できるだけ客観的な基準を設けて告示において明確化をしたい。第二には、その基準を定めるに当たりまして、私ども役人で商売のことがわかるのかという御批判もございます、そういう中で、例えば社会経済生産性本部、これは優良企業認定とかそういうこともやっております、そういったところの意見なんかも聞きながらよりよいものにしていきたい。正直申し上げて、この法案が通る前に皆さんの意見を公に聞くわけにもまいりませんので、専門家の意見、それからパブリックコメント、こういうものを経た上で告示で出していきたいと思っております。それから三点目には、その計画認定した際には公表をしたいということ。四点目には、変な指導というような御意見もございましたけれども、そういうことがないように申請から認定まで原則として一カ月でやる、そういうことによって透明な恣意性の入らない運用に心がけてまいりたいというふうに思っております。
  45. 上田清司

    ○上田(清)委員 必ずしもお答えをされておられません。  二番目に言われました基準の部分が例えば国会には見せられないわけですね。だって、認定が一番肝心なんでしょう、受ける企業にとってみれば。この部分が認定されて初めてそうした優遇を受けるわけですから、どういう状態だったら認定を受けられるのかということを国会に提示していただく、その基準を明確にしていただく、それが本当に正しい基準なのかどうか国会に見せていただくことが、この法案についていえば一番大事なことではなかったのかな、私はそう思っております。  その点について、いや、時間が間に合いません、これから聞きます、本当にそれでいいのかどうか、法案の提出者としてそんなことでいいんだろうか。例えば私ども民主党は、この提案までに二十八回会議を開いて、十四回外部から講師を招いて議論をさせていただいています。我々の法案もそういう経過のもとに出てきているんです。だから、いかにも拙速ではないかというふうに思っておりますが、この点についてもきちっと答弁してください。
  46. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  例えば生産性を相当程度向上させる、ここが一つのポイントだろうと思いますが、この点につきましては、例えば株主資本純利益率、ROE、あるいは従業員一人当たりの付加価値額、こういったものを考えております。  ただ、業種あるいは個別企業、業態によりましてそれぞれ相矛盾するような基準もございます。そういう意味では、今申し上げたようなものも含めて、もうちょっと幅広く考えて、具体的に例えばROEであれば何%ぐらい事業構築によって改善するのかとか、そういうような基準を一つのメルクマールとして出したいと思っております。  ただ、私ども、現実に再構築計画をつくり、実行するのは企業でございますし、ある意味では決断をする企業経営者自身が一番よく考えているという面もございますので、変にハードルを高くするつもりはございませんし、かといって、モラルハザードになるようなものも好ましくないと思っております。そこの実態に即して、かつ今申し上げたようなことを考えながら、意味のある数字は一体どれぐらいなのかというのは、先ほど申し上げたように、専門家や皆さん方の御意見を参考にしながらつくってまいりたいと思っております。
  47. 上田清司

    ○上田(清)委員 例示的に今二つ出されましたけれども、もちろん、その二つの基準というんでしょうかメルクマールみたいなものが業態、業界によって違うということもよくわかりますので、だからこそ、逆にいろいろなタイプ、Aタイプ、Bタイプ、Cタイプ、Dタイプという形の中で、こういうことをきちっとした基準にしていくんだというアウトラインをやはり国会に事前に示していただく、そのことで英知を結集していく方が私は基本的に正しいのではないかというふうに思っております。  最小限度資料等で出していただきたいということを強く、もう今さら要望してもしようがないんですが、これからの課題にしていただきたいというふうに思っております。余りにも拙速ではないかということを指摘させていただきたいと思います。  今回の再生法に関連する租特の部分で、当然数字は出ないものだというふうに私は思っております。一応、減額部分については、主税局長、どのくらい考えておられますか。
  48. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今回の税制措置によります平年度の減収額でございますが、これは、大蔵省のこれまでの減収額の考え方でまいりますと四十億円というふうに見込んでおります。  なお、大蔵省の考え方ではというふうに申し上げたのは実はわけがございまして、今回の税制措置の中には欠損金の繰り戻し還付あるいは買いかえの特例、これは性質上従来から平年度の減収額としては計上していないものが含まれております。しかし、そうはいっても、個々の企業にとってはプラスの効果があるわけでございますから、通産省においてそれを試算すると全体で三百億円程度のプラスの影響がある、こういうふうに聞いております。
  49. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。  ちょっと先ほど忘れておりました本案の部分ですけれども、中小企業に関して知事の認定ということでありますが、これは通産の方で、知事に対する基準値みたいな形あるいは何らかの形で指導要綱的なものを政府として用意をしておられるのか、あるいは今後用意をされるのか、その辺の関係についてはどうなっているんでしょうか。
  50. 殿岡茂樹

    ○殿岡政府委員 中小企業計画に関する件でございますけれども、御承知のように、本法案におきましては、既に創造法等の計画認定等を受けたものについては知事の認定があったものとみなしております。  そうした要件を経てないものについて、これは県としての自治事務だという位置づけでございまして、基本的には、県知事におきまして計画が妥当であるかどうかという認定をすることになりますけれども、それに際して県サイドからの御疑問等がございますれば、これに対して一応アドバイスをするというような考え方で全体の法の運用というのを考えているところでございます。
  51. 上田清司

    ○上田(清)委員 ちょっとわかりづらかったんですが、基本的には、まだすり合わせとかそういうことはしてないということですね。
  52. 殿岡茂樹

    ○殿岡政府委員 認定に関しましては基本的に知事にお任せするということでございますけれども、計画認定を行う都道府県と中小企業庁が連携いたしまして、必要に応じてわかりやすい説明資料を作成する等の中小企業者への支援ということもあわせて考えていきたいというふうに思っております。
  53. 上田清司

    ○上田(清)委員 国の法律で決めたものを、中小企業関係においては経営資源活用新事業計画認定に関して都道府県知事がやるという仕組みができておりますが、やはりきちっとしたすり合わせがないと機能が不十分じゃなかろうかというふうに私は思っておりますので、その辺もぜひ注意をしていただきたいなというふうに思っております。何かまだまだ、もちろん法案策定作業そのものが相当スピーディーにやられて、大変御苦労をかけたというふうに思っておりますけれども、さりとて、この法案趣旨がこのままだと生きないかなというふうな懸念を持っておりますので、ぜひ注意をしてもらいたいと思います。  そこで、アメリカの俗に言うSBIRでありますが、これが実は、初年度は日本円に直すと多分五百億ぐらいで、現在、昨年度レベルで一千三百億ぐらいのいわば支援の費用をかけております。経済の規模が向こうは二倍ですので、日本円的にいえば六百五十億ぐらいお金をかけなければならないというふうに考えておりますけれども、今年度のベースでは百十億というような計画が出ております。  それで、これも実際、先ほど申し上げました経済戦略会議の答申の中では、政府としてはAにされております。非常にいい見方をされておりまして、「三十八の特定補助金等を指定し、中小企業者等に対する支出目標を約百十億円とする」という、これを年度計画に入れておられます。これは大変いいことでありますが、この中身がアメリカと比べると約五分の一あるいは六分の一という形で、いかにも小さい金額ではなかろうか、こんなふうに私どもは考えております。  こういう方面についての包括的な支援体系というものを、やはりスモール・ビジネス・イノベーション・リサーチという過程の中で新しく企業が育ってくるというふうに理解しておりますが、この点について、私は、答弁というよりはアメリカとの比較、何でも比較すればいいというものでもないのですが、どのような形でこういう金額を決めてこられたのか、このことをもしわかるようであればお答えいただきたいと思いますし、私もこれは包括的に質問しておりますので、必ずしもこのことを通告していないと思いますので、今の時点ではその経緯はわからないということならそれでも構いませんが、このことを強く意識しているという指摘があったということを関係のところにもお伝えしてもらいたいと思いますが、次長、わかりますか。
  54. 殿岡茂樹

    ○殿岡政府委員 お答えいたします。  これは、新事業創出促進法という中で日本版のSBIRの制度を設けたわけでございますけれども、委員御指摘のように、アメリカに既にそれに類似の制度があるということでございまして、日本の中小企業の現状を考えましても、今後、中小企業が経済活力の源となるという意味におきまして、中小企業自身が研究開発をして技術レベルを高めていく必要性が日本においても極めて高くなっているという認識のもとに、そうした法案を提出させていただいた経緯がございます。  その際、研究開発に対する国からの資金の供給でございますけれども、私ども中小企業庁におきましては、従来からそうした問題意識を持ちながらそうしたものに予算を配分していくという努力をしてきておりましたけれども、何といっても、いろいろな事業分野がある中、各省においてそれぞれ中小企業事業をいわば所管しておるということで、そうした省庁自身がそれぞれその分野の中小企業の技術水準を高める努力をしていただくことが日本の中小企業全体の技術に対する意識あるいは意欲を高める上で極めて重要であるということで、各省連携しての制度として発足したいということでつくらせていただいた制度でございます。  そういう意味におきまして、全体で額が百十億見込んでおるということでございますけれども、私ども、初年度としては相当多数の省庁に、極めて新しい制度ではございましたけれども、参加していただけたと思っております。  なお、私どもとしては、重要事業分野を所管している省庁においてまだこれに参画されていない省庁があるということも事実でございますので、そうしたところへ参加をお願いするとともに、額全体としても、この制度の有用性の状況を見ながら拡大していくような努力を続ける必要がある、そのように認識しております。
  55. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。  最後に、ストックオプション税制について主税局長にお伺いします。  もう釈迦に説法で恐縮ですけれども、御承知のとおり、民主党は、役員のやる気や社員のやる気を起こさせるためにこの制度があるというふうに認識しているわけでありますが、どうせやる気を出させるのだったら、ある意味ではもっとニンジンをぶら下げた方が、しかも大きい方がいいのじゃないか、こんな考え方で、限度額をふやしたい、あるいは待機期間の二年を一年に短縮するというような提案をしておりますが、この点について、法理論的にも税体系からしてもさほど難しい話ではない、そんなふうに考えますが、どのように考えておられるか。
  56. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今まさにどうやって経済に元気を出させるかという民主党のストックオプション税制の拡充案は、承知してございます。  第一点は年間の権利行使価格、現行一千万円でございますが、これを三千万円にしてはどうかということかと思います。  これは年間の権利行使価格でございますから、上場する前の価格が一千万円ということでございますから、十倍になれば一千万掛ける十、二十倍であればそのような金額になってまいります。三千万、多ければ多いほど確かに刺激をする面もあろうかと思いますが、アメリカでも十万ドル、英国では三万ポンドというようなことを考えますと、国際的に見てもそう遜色のない水準に来ているのではないかと私どもは考えているわけでございます。  限度というのは、確かに理論的にこうだと一義的に決められる基準はないわけでございますけれども、やはりこれが何十倍になるものであるということを考えますと、課税の公平という面からいろいろ考えなければならないだろうと思います。  それから、権利行使期間の短縮でございます。  現在は二年というふうになってございますが、これを一年にしてはどうか、権利行使ができない期間を二年を一年にしてはどうかと。これは税制上の特例措置でございまして、その目的とするところは、このようなインセンティブを与えて会社の業績にぜひ反映させていただきたいというインセンティブ効果をねらっているわけでございます。そうしますと、一年の努力ですぐ株価に反映させるというのは、その辺どういうふうに考えるのかという問題があるように思います。また同時に、雇用の問題もあって、やはり一年というのはどうかなというふうに率直に我々は思っているところでございます。
  57. 上田清司

    ○上田(清)委員 このあたりは、社会をどう変えていくかという視点を考える立場と、過去の経緯だとかそういうことを重んじる行政の立場との幾らか食い違いになっていくのではなかろうかと思っております。  何よりも宮澤大蔵大臣にぜひ最後に申し上げたいのですが、最初からずっと出しております、経済戦略会議の答申に基づいて政府がA、B、Cのランクを決めた、この同じベンチャー企業に関する部分、先ほどエンゼル税制の話も出ました、この新規の部分に関してやはりBなのですね、一般的に。Aじゃないのです。実現する方向で検討するものがAなのですね。Bは、内容についてよく検討した上で結論を出す。もっと早くやらなければならないものを、私は何か遅いなと。  これは政府が決定したものですから、ある意味では大蔵大臣は総理を超えるようなお立場で内閣の重鎮として入っておられる、そのことも考えると、今の日本の状況から考えると、経済政策のいいものほど早くやっていく、そういう仕組みをもっともっとやっていただきたい、こんな思いで私たちは、特に中小企業ベンチャー企業支援策を、対案、あるいは対案じゃないかもしれない部分もありますが、研究して出してまいりました。ぜひそういう点も含めてしっかり考えていただきたいというふうに思っております。  それから、景気下げどまりということでありますが、与野党を通じて景気対策に関しては極めて大事な問題だというふうに思っておりますので、今回出された法案は、大企業を中心に設備過剰だとかもろもろの問題について少しは寄与するものだというふうに思いますが、どうも普遍的なものではない、そんな感じがします。認定された企業だけが何らかの形で救済されていくあるいは何らかの形で支援を受けられるというのじゃなくて、全体として支援を受けられるあるいは普遍的な税制につながるような、そういう仕組みをもっとしっかり考えていただきたいということを申し述べまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  58. 村井仁

    村井委員長 次に、若松謙維君
  59. 若松謙維

    ○若松委員 公明党の若松謙維でございます。改革クラブともあわせて質問させていただきます。  まず、これは通産省だと思うのですけれども、いわゆる民間金融機関の信用保証二十兆円の枠組みですか、これで従来の自分の、金融機関の貸出金を政府保証枠で貸しかえようという形で、現場ではいまだに資金回収が行われております。そういったところをある方から私どもの事務所に陳情として出てきましたので、それをそのまま読ませていただき、私の質問とさせていただきます。  「さて公明党さんが連立政権参加の条件として信用保証協会の十兆円増枠を上げておられるとのこと新聞で読みました。ついては中小企業事業者として次の二点を陳情致したく、先生にもよろしくお取り計らいくださいますようお願い申し上げます。」  一点目が、「昨年の安定化資金で調達した資金が、結果的にその銀行の貸金回収に充てられてしまった企業の救済(保証枠増額など)を検討していただきたい」ということです。これが一点目。  二点目ですけれども、「もしそれが無理なら、このような場合にかぎり例外として他の銀行による一括肩代わりを認めてもらいたいと思います。」これが二点目です。  さらに続いておりまして、「現在保証協会付き借り入れの肩代わりは原則として認められておりませんが、してやられてしまった我々当事者としては、安定化資金で既存の貸金を回収するような銀行に、今後五年間も利息を払いつづけてまで取引を続けたくない、できれば支援を続けてくれている銀行に保証協会付きの貸出を増やしてやり、中小企業向け貸し出し目標の達成に協力してやりたい、と思っております。」率直な意見だと思うのですね。  今二点要望がありましたけれども、それについていかがでしょうか。
  60. 殿岡茂樹

    ○殿岡政府委員 お答え申し上げます。  御指摘の金融安定化特別保証でございますけれども、この制度は中小企業に対する円滑な資金供給を目的とするものでございまして、金融機関が信用保証つき融資を自行の旧債の資金回収に充てるという旧債振りかえについては原則認めていない状況でございまして、このことにつきましては、各信用保証協会に対して周知しますとともに、新聞、テレビ等々によりまして、その貸し付け、保証を受ける方々に対しても広報してきたところでございます。  具体的に、信用保証協会に対しましては、中小企業者の意図に反する旧債振りかえというのは代位弁済の対象にならないんだということを金融機関に警告すること、さらには、銀行のみが旧債振りかえを含む保証案件を持ち込む場合には、中小企業者本人に対しまして本人の意思を確認するということを指示してきたところでございます。  さらに、こうした措置にもかかわりませず、中小企業者の意思に反する旧債振りかえというものが行われているかどうかということにつきましては、この確認のために信用保証協会を通じまして実態把握のための調査を行うということにしておりますし、また、御指摘のような個々のケースにつきまして、非常に中小企業者の方の苦情が高い場合につきましては親身に御相談に応ずる、場合によっては御指摘のような取引銀行をどうするかということを含めまして応ずるということにしておるところでございます。  今後とも、銀行に対する監督、金融監督庁のお仕事でございますけれども、こことも連携をとりながら、引き続いてこの保証制度というものが中小企業資金調達に役に立つような運用を心がけていきたいというふうに思っているところでございます。
  61. 若松謙維

    ○若松委員 今、相談に応じるということですけれども、具体的にどういうふうに応じられるのですか。  私どもは、最終的に政権入りは、意思を表明しましたけれども政策合意はしておりませんのでまだ野党、ユ党なんでしょうかね、という状況で説明させていただきますけれども、与党の議員も、貸し付け側からすれば、資金の貸しかえというのですか、これについても非常に問題が多いということを言われておりました。ですから、私どもは、金融監督庁なり、その相談に応じる苦情の窓口をちゃんと設けてもらいたい、こういう話をさせてもらったわけです。  きょうは金融監督庁来ていますか。――それでは通産省にお聞きしたいのですけれども、具体的にどう相談に応じてくれるか、どういうふうに窓口を設定されているか、苦情者にわかりやすく説明してもらいたいのですけれども、いかがですか。
  62. 殿岡茂樹

    ○殿岡政府委員 中小企業金融一般に関しましては、もちろん中小公庫等々ございますけれども、今御指摘のようなケースは、既に保証協会と一定の御関係をお持ちの方であるとすれば、やはり信用保証協会におきまして御相談いただくのが一番適切な道かというふうに思っております。
  63. 若松謙維

    ○若松委員 ところが、実は私どもに、とある保証協会からこれはどう考えても貸しかえだという話があったわけですよ。直接金融機関に話はしているのですけれども、保証協会の中小企業の意見の代弁というところがなかなか通らない面があるのですね。それについてもうちょっと親身にお答えいただきたいのですよ。通産省としても、意見があったら直接本庁に来てくれ、具体的にこの電話番号にかけてくれと。どうですか。
  64. 殿岡茂樹

    ○殿岡政府委員 どこに相談すればということでございますけれども、保証協会はそれぞれ県別にございます、こちらはもちろんございますし、また、私ども中小企業庁あるいは各地の通産局におきまして、こうしたことに対する相談窓口を設けてございます。  中小企業庁でございますれば、東京〇三―三五〇一―四六六七というところがこうした場合の相談窓口になっておりますし、また、信用保証協会プロパーの問題として、全国的な団体がございます、ここでもそうした苦情というのを専門的に受け付けておりまして、これも東京〇三―三二七一―七二〇一というところで具体的に御相談に応ずるという体制を組んで万全を期しているところでございます。
  65. 若松謙維

    ○若松委員 ありがとうございます。これは残念ながらNHKのテレビ中継つきの委員会ではありませんので、ただ、この事実は大変大事だと思いますから、問い合わせがあったら、ぜひしっかり対応していただきたいと思っております。  ところで、今の電話番号に苦情はどのくらいあるのですか、もしわかれば。大体で結構ですから。どういう状況なのか。
  66. 殿岡茂樹

    ○殿岡政府委員 手元に具体的な件数を実は持ち合わせてきておりません。  ただ、全般のことを申し上げるとしますと、昨年、大変貸し渋りという状況があったときには、こうした各地の窓口を含めまして、大変多数の苦情なり御相談があったことは事実でございます。ここのところに来て、こうした制度が整い、また周知もされたという中で、現在では徐々に減っている状況というふうに認識しております。
  67. 若松謙維

    ○若松委員 減っている事実はあろうかと思いますけれども、かなりの現場でいまだに苦労している面があるということもぜひ再認識していただきたいと思います。  それでは、これは通産省の御答弁の後に大蔵省にお聞きしたいと思うのですけれども、今回の産業活力再生特別措置法案、ちょうど商工委員会でこの法案の議論が行われておりますけれども、これについてもこういう御意見がございました。ちょっと読ませていただきます。  「これはそもそも「産業活力再生特別措置法案」自体の問題点としていろいろな方が指摘していますが、いくつもの事業部門を有する一定規模の企業、特に製造業の企業にしか、あまりメリットのないものだと思います。なぜなら現在の日本の経済を支えている中小企業にとっては、本業以外の事業部門などほとんど存在していないからです。」いわゆる単一事業が中小企業そのものだと。ですから、「このような中小企業にとっては、今回の法案が成立しても、法案にある「経営資源をより高い生産性の見込める中核的事業」は本業そのものであり、そこへのシフトのための設備処理などは発生しません。」当然といえば当然ですね、一つしか事業がないわけですから。  「現在の不況の中苦しんでいるのは、今法案の想定している業種・企業群はもちろんですが、それ以外の業種・企業群も同じであることがわかっているのでしょうか。私にはとてもわかっていて作成された法案とは思えません。」これは実は、現場で中小企業の相談等を抱えている公認会計士の方の御意見です。  さらに続いておりますけれども、「具体的には、例えば小売業で言えば、法案にある「事業構築計画」にある「生産性向上の目標の明確性」など、日々幾つもの店舗のデータをとっている大規模店では算出が可能だとしても、中小小売り店が表現することは極めて困難です。」要は、そこら辺の管理能力がないのも中小企業の実態ということですね。  そこで質問なんですけれども、まず、これはこの方の意見ですけれども、「現行の税制の中には大規模製造業優位の制度がかなりありました。にもかかわらず、そのような一部の企業に対しての優遇税制が更に拡充されるとなると、税制に対する信頼感が揺らぎかねません。」これは、税制に対してやはり公平、公正、中立ということがあるわけですけれども、恐らく現在の状況からやむを得ないかなという観点からの今回の優遇税制措置ではないかと思いますけれども、こういった指摘に対して、まず通産省にお伺いします。なぜこういう優遇税制がさらになされなければいけないのか。  またあわせて、先ほどの御指摘ですけれども、中小企業、要は単一事業しかやっていないところに対して今回の優遇税制というのは余りプラスになっていない。それに対してはどのようにお考えなのか。この二点についてお聞きしたいと思います。
  68. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  私ども、この法律、なかんずく事業構築の部分が大企業あるいは特定の製造業のためではないかという御批判をよくちょうだいいたします。  ただ、例えば法第二条の第二項第二号を見ていただきますと、製造業のみならず、かつ大企業のみならず、中小企業についても妥当するような事業革新というものを定義しております。例えば新たな役務の開発とか、あるいは商品の新たな販売の方式の導入とかでございます。  それから第二点、法律の第十九条で、「国は、活力ある中小企業者の事業構築が我が国産業の活力の再生を実現するために重要な役割を果たすことにかんがみ、」云々ということで、中小企業者がこの事業構築をやるのをできるだけ応援したいというのも書いてございます。  それから税制でございますが、本法案に基づいて新たな投資を行った場合に、中小企業については七%の税額控除と三〇%の特別償却選択を設けております。大企業の場合にはそれが一八%ないし二四%でございます。そういう意味でも、中小企業税制面で配慮をしているというふうに考えております。
  69. 尾原榮夫

    尾原政府委員 ただいま先生から、今回の税制措置が中小企業に不利になっているのではないかということでございます。  ただいま通産省からお話がございましたように、今回の税制上の措置は大企業に限定した措置ではございません。すべての企業適用対象としてございまして、また中小企業につきましては、母法といいましょうか特別措置法の方でも、中小企業への配慮の規定もございます。  税制といたしましては、新規設備投資をした場合、大企業の場合には特別償却でございますが、中小企業の場合は税額控除と特別償却選択ができることになっている。税額控除は七%でございますし、特別償却は、大企業の場合は二四%であるのに対し、中小企業の場合は三〇%というふうにしてございます。  それからまた、対象となる設備投資でございますが、大企業の場合は、事業革新に資する設備ということで設備を決める形になってございますが、中小企業の場合は、設備投資であれば原則として何でも対象になる、こういう姿になっているわけでございまして、今回の税制上の措置が、大企業優遇ということではなしに、中小企業にも配慮した姿になっていることを御理解いただきたいと思います。
  70. 若松謙維

    ○若松委員 それでは、税制関連の中身について質問いたしますが、これは大蔵省ですね。  大規模な設備廃棄に係る欠損金特例についてですけれども、現行の欠損金控除五年間というものがありますけれども、この七年と五年の区別というのが、当然、監督官庁の恣意性が介入してしまうのではないか。ある企業の大規模設備廃棄については五年しかできない、またあるところは七年、これは公平性に欠けると思うのですけれども、公平性をいかに担保するかということについてどのように考えていらっしゃるか、答弁願います。
  71. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今回の法律で、特定設備の廃棄を行った場合の欠損金の取り扱いについてのお話かと思います。  今回の税制上の措置は、事業構築計画というものをつくっていただきまして、まさにその計画が承認され認定されたものでございますので、しかも、それが今後告示において示される客観的な基準に基づいて行われるわけでございますから、私ども聞いているところでは、例えば設備廃棄でございましたら、現存する設備に対して何%ぐらいの割合のものを廃棄するかというような基準をつくることも考えておられるようでございますので、各省庁の取り扱いによってその辺がまちまちになるということはないものと考えております。  もとより税務執行でございますので、そこで出されました証明書をもとにこの適用が行われているということになってまいります。
  72. 若松謙維

    ○若松委員 それでは、通産省にお聞きします。  今言った認定の公平性は、要は、今の主税局長のお話では、通産省認定したものは基本的に七年適用するということですね。それで、証明書か何か付与されると。  では、認定する側の通産省として認定の公平性をどう確保するか、これについてこの際御答弁いただきたいと思います。
  73. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  設備廃棄における相当程度の具体的要件でございますけれども、廃棄する設備の額の保有する設備の額に対する比率が政策支援に値するだけの一定以上の比率になる方向で検討をしております。具体的な数字を出したいと思っております。
  74. 若松謙維

    ○若松委員 済みません。その具体的な数字はいつごろ出るんでしたっけ。もう一度教えていただけますか。
  75. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  この法案成立後、できるだけ早く政省令とか告示の作業に入りまして、私どもは遅くても、中小企業の創業の部分は九月一日から、それ以外の部分は十月一日にはできる限り施行したいと思っております。したがいまして、それに間に合うべく、かつ一定の周知期間が必要であるということを考えると、できるだけ早くつくってまいりたいと思っております。
  76. 若松謙維

    ○若松委員 ちょうど夏で暑いですけれども、ぜひ作業の方を頑張ってください。  それでは、これは通産省にお聞きしたいのですけれども、中小企業に対する事業構築計画の要件緩和について、これは要望なんですけれども、中小企業はこの法案にあります事業構築計画を立案して、それを通産省認定するわけですけれども、先ほど言いましたように、中小企業はそういう作成能力等が非常に限られているということで、当然企業にかわって外部のコンサルティング等が立案を代行するという感じになると思います。そこで、またかなりの作成料等をコンサルティングなりに払うと、結果的に今回の法案のメリットがなくなってしまう。  そういうことを考えますと、事業構築計画の記載要件を本当に簡略化して、いわゆる認定の情報というものを本当に絞ったものにしてもらいたい、そういうことを要望するわけですけれども、いかがですか。
  77. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  先ほども御答弁申し上げましたが、法律の第十九条に中小企業者の事業構築について配慮をするという規定がございます。こういう規定も踏まえて、中小企業者の負担を軽減するために、事業構築計画の申請書については極力簡易なものとしてまいりたいと思っております。  また、本法案の施行後には、当然中小企業者でこういう事業構築をおやりになろうと思っておられる方、これは余りないのではないかというようなことをおっしゃられる方もございますけれども、提携とか合併とかそういうことも当然ございますので、そういうことも含めて広く周知徹底を図り、あるいは申請様式の記載事例なども実例をつくって広く広報をしたいと思っております。
  78. 若松謙維

    ○若松委員 申請書の簡素化、認定手続、そういったところは、本当に中小企業がやりやすいような配慮をぜひ引き続き検討をお願いしたいと思います。  それでは、大蔵省にお伺いします。  資産売却益に係る同族会社の留保金課税の免除ということで、これも事業者または税の専門家の方からかなり要望があるわけです。例えば企業が借入金圧縮またはリストラ資金の捻出のために資産を売却した場合、同族会社の場合には繰越欠損金があっても、単年度の留保所得が一定額以上になった場合には留保金課税が発生してしまうのですね。特に繰越欠損金がある場合には、留保所得と相殺できないため、法人税、住民税の金額がゼロになる、要は還付できない、そういう話になるわけですけれども、これは、いわゆる単年度の留保所得金額が結果的に課税対象になってしまう、税金がかかってしまうということなんですね。  これでは、当然日本の大部分の企業は中小企業なわけですけれども、そしてかつ同族会社、この同族会社企業の再生を図ろうとして資産を売却する、でも結果的に税金が取られてしまう。やはり留保金課税という現制度が、中小企業がまさにリストラ、会社の再生を図るためのネックになっているのではないか、こう思うわけです。  ですから、少なくとも中小企業が再生を行っているときの資産売却益に対しては留保金課税は免除していただきたい、そう思うのですけれども、いかがですか。
  79. 尾原榮夫

    尾原政府委員 この留保金課税の問題は、先生からたびたび御指摘を受けている問題でございます。  この留保金課税制度の趣旨は、同族会社の場合は株主が大変少数でございますので、配当をどうしても抑制して個人の累進所得課税を回避するというような問題が予想されることから、税負担の公平確保の観点から設けられているわけでございます。また、この制度がございますことによりまして、間接的に配当支出の誘因として働くであろう。そういたしますれば、法人形態と個人形態との税負担のバランスがとれるのではないかというふうに考えて、昔からある制度であるわけでございます。  それで、先生の今のお話の措置は、欠損の繰り越しがある場合、当期たまたま黒になっても、欠損金があるのだからその部分は留保金課税の対象にすべきではないというお尋ねかと思います。  実は、この点についても法人課税委員会で議論が行われたところでございまして、留保金課税趣旨を突き詰めてまいりますと、その期その期で着目していかなければならない。そういうことからいたしますと、欠損金がございましても、その制度の筋といたしましては留保金課税制度の対象とすべきではないかというような議論がございました。そういうことで御理解いただければというふうに思うわけでございます。
  80. 若松謙維

    ○若松委員 この留保金課税もいろいろな委員の方が何度も聞いておりますけれども、アメリカの留保金課税は、基本的に財テクというかいわゆる事業関係しない所得に対して留保金課税をやっておりますけれども、日本の場合には事業所得、実際の事業に係る所得に対しても留保金課税で、これはやり過ぎじゃないかと思うのですよね。ですから、ぜひそれを検討していただきたいのですね。  ちょっと違う観点からこの留保金課税についてまたお聞きします。  創業期における同族会社の留保金課税について、ぜひこれを免除してもらいたいということなんです。創業期の企業は当然借入担保になるべき資産は不足している。当然です、創業当初ですから。この時期に高額の税金が課されることは自己資金の確保の上で極めて高負担となりますので、少なくとも創業期については同族会社の留保金課税は免除していただきたい。例えば三年とか五年とか。これはどうでしょうか、主税局長
  81. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今先生のお尋ねの件は、創業期の中小企業は内部留保の充実が大変大切であるという観点からのお話かと思います。  留保金課税制度の趣旨は申し上げました。創業期であっても、留保金課税が発生する場合はやはり留保金課税を行うということではないかと思うわけでございます。  なお、実はこの留保金課税については、もう先生御承知のように、所得基準、あるいは準備金の二五%までの基準、定額基準とございまして、恐らく創業期の場合にはこれにかかってくるケースはまず少ないのではないかというふうに思いますが、また先生に教えていただければと思います。  なお、創業期における支援措置でございますが、今回も講じておりますが、設立後五年以内の中小企業者の方については、欠損の繰越期間を七年にする、あるいは繰り戻し還付停止の適用除外にしているというようなことを行っているところでございます。
  82. 若松謙維

    ○若松委員 何か留保金課税は全然そっけないので、やはり野党に戻ろうかな、そう思いたくなるぐらいの全く関係ないような答弁ですが、留保金課税はやはりもっと配慮すべきですよ、少なくとも事業所得については。  本当は大蔵委員長に答弁いただきたいなと思っているのですけれども、大蔵大臣、今の話を聞いていてどうですか。もうちょっと留保金課税の緩和を考えてもいいのではないかと思うんですけれども、宮澤大蔵大臣、いかがですか。これは政策協議に入れようかなと思うんですけれどもね。
  83. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そうむごい気持ちで申し上げたのではないのだと思うんですが、いろいろ考えてみてもらいます。
  84. 若松謙維

    ○若松委員 大臣、委員会ですから、ちょっとこの考えを披露していただけますか。
  85. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ですから、今おっしゃったような気持ちで申したのではないと思いますけれども、いろいろ考え方もございましょうから、また部内で議論もいたしてみます。
  86. 若松謙維

    ○若松委員 ぜひ議論してください。  それで、主税局、かなりかたい。たしか以前の委員会でも、ダイヤモンドよりかたい主税局という言葉を私披露させていただきましたけれども、今かたい発想というのは余りはやりませんので、産業再生のためにこの留保金課税を、少なくとも事業所得については検討していただきたい。また、それでだめでも、創業時三年とか五年とか、それについて検討していただきたい。主税局長、再度お願いします。
  87. 尾原榮夫

    尾原政府委員 当然のことながら、大蔵委員会を含め国会で議論された事項については税制調査会にすべて報告することになっておりますので、税制調査会においてまた議論させていただきたいと思っております。
  88. 若松謙維

    ○若松委員 今度は税制調査会に行きました。では、参考人招致ですね。ぜひ、本当にまじめに検討してくださいよ。切に願います。  それでは、これも欠損金の繰り戻しなんですけれども、これは平成四年から凍結されたままということで財源を理由に凍結状態が続いていると思いますけれども、企業再生、産業再生に関するものだったら、例えば先ほどの産業再生のために土地を売却して資金を得る、それについては新しい投資をしようとかというところに対して、まさに土地の譲渡損とか出た場合には欠損金を繰り戻すとか、産業再生の観点から欠損金の繰り戻しの一部適用というもので緩和していいのではないか、そう思うんですけれども、いかがですか。
  89. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今まさに先生がおっしゃられましたように、そもそも欠損金の繰り戻し期間一年というのが本法の制度になっているわけでございます。平成四年度にこの欠損金の繰り戻し停止をさせていただいているわけでございまして、現在この制度適用期限は平成十二年、来年の三月三十一日ということになっております。  それで、これをなぜ停止したかというのは、先生からお話がございましたように、財政上の問題もございました。それから、実はもう一つございましたのは、国税の分野でも最近赤字法人の割合が非常に高まっているわけでございまして、国税の分野でも何らか工夫できないものかといったようなことでこの適用停止が行われているわけでございます。  いずれにいたしましても、平成十二年三月三十一日にこの一般的な適用期限が参りますものでございますから、今のような停止措置趣旨やいろいろな御指摘を踏まえながら検討してまいりたい、こういうふうに思っております。
  90. 若松謙維

    ○若松委員 それでは、今赤字法人の話がありました。いわゆる外形標準課税、これも議論になっておりますけれども、この外形標準課税もやはり結論を出さなくてはいけない項目ではないかと思いますね。今おっしゃった平成十二年三月三十一日が一つの期限ということで、それを前後に、この外形標準課税というものは何らかの形で意見なり結論なり出される御意向ですか。
  91. 尾原榮夫

    尾原政府委員 先般、外形標準課税についての専門的な報告書が、地方法人課税委員会という税調の委員会から報告されたところでございます。  これは実は地方税でございまして、これをどうするかというのは、まさに自治省でお考えいただくべきことだと基本的には考えております。ただ、税調の議論では、これをどうしていくかということについてはまた別途の場で議論していかなければならない課題であるというふうになっていると承知してございます。
  92. 若松謙維

    ○若松委員 それでは、通産省にお伺いします。  会社の分社、合併、こういうときに会社の財産評価、いわゆる値決めですか、これをする必要があるわけですけれども、現在は裁判所の検査役ですね。合併については検査役は不要で、分社は必要だと。では、だれが実際にこの値決めをしているか、評価をしているかというと、弁護士、公認会計士。  これも、税理士の方々も現実に市の評価鑑定委員とかなって、この値決めについて、評価について非常に実務経験を得ておりますので、別に弁護士、公認会計士だけではなくて、税理士も日常的に株式とか土地の評価というものについて参加させてもいいのではないか、私はそう考えるのですけれども、いかがですか。
  93. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  今回、私どものこの法案では、裁判所の選任する検査役にかえて、弁護士、公認会計士あるいは監査法人がその評価を行うことができるというふうにしております。  これは、なぜそうしたかということでございますが、現行商法上、現物出資を行う場合に、取締役が裁判所に検査役の選任を請求いたします。そういたしますと、裁判所において弁護士あるいは公認会計士が検査役として選任をされまして、弁護士が選任された場合には公認会計士の補助を得て調査を実施する、こういうやり方が一般的だと承知しております。  したがいまして、こうした現行商法上の実務を踏まえまして、私どもも、今回の法案では検査役にかわって企業の選任する弁護士、公認会計士または監査法人が調査を実施することができる、こういう形にしております。
  94. 若松謙維

    ○若松委員 要は、税理士の場合には弁護士、公認会計士、監査法人の指揮のもとに活用されるべきだ、そういう御意見ですね。実は、そこまできつくなくてもいいのかなと思います。今後も、税理士の参加要件というものもぜひ認めるべきではないかと私は個人的に思っておりますので、引き続き検討をお願いしたいと思います。  これが最後質問になります。  計理士という方がおります。これは日本に今百名前後いらっしゃるわけですけれども、「計理士に公認会計士資格付与に関する請願」ということで、私も紹介議員にさせていただきました。  この計理士というのは、昭和二年ですか、計理士法が制定されまして、まさに日本産業化、先進国入りのときに、我が国の企業の経理面または経営面の大変な功労者なわけですね。いわゆる職業会計人なわけですけれども、これにつきまして、公認会計士法が制定されたのはたしか昭和二十五年、そのときからこの計理士という道が実際断たれました。  しかし、大変長年の経験をお持ちの計理士、そして日本の経済発展のために貢献したという観点から考えても、この計理士の方に再度公認会計士の道を与えてもいいのじゃないか、例えば法定講習等そういうような手法をとりまして。それについてはどのように大蔵省としてはお考えでしょうか。
  95. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題につきましては、請願も出ておりまして、御示唆がありまして、大蔵省の立場をできるだけ明快に申し上げることがいいのではないかということでございますのでお答えいたしますが、たまたま公認会計士法が制定されましたのは昭和二十三年でございまして、占領中でございます。私、大蔵省におりまして、そのことにかかわり合いました。  占領の人たちの主張は、アメリカにおいてCPAというものが大変に資格付与が厳しくて、したがって社会的な地位も高い。日本には無論計理士さんはおられるけれども、今後日本の経済のことを考えると、日本にもCPAの制度をつくるべきではないかということでありました。  いろいろやりとりはございましたけれども、結局、今おられる計理士さん方に、いわば既得権と申しますかどういう待遇を与えるべきかというような問題と絡めましてこの法律が成立をいたしました。そして、計理士さん方は、計理士の名称を用いることはいい、あるいは監査、証明以外のことはなすってもいいというような決着になりました。それまでは、おっしゃいますように計理士法、昭和二年の法律に基づきまして、計理士は検査、調査、監査、証明等を行っておったわけでございます。  しかし、そういう事情がございましたから、従来計理士であられた方々にはやはり何らかの救済措置と申しますか、特例を設けることが入り用だというふうに当然我々も考えましたので、したがいまして、計理士さんに対しては、通常の公認会計士の試験とは別に特例試験を行うことにいたしまして、そのことは昭和二十四年から昭和四十二年まで行われました。  記録によりますと、二十四年から二十九年の間に十一回の試験がございまして、千名余りの方が合格をしておられます。それから、三十九年から四十二年に五回の特例試験がありまして、千二百人の合格者がございました。  そういういきさつがございまして、いわば計理士さんに対してもできる限りの道を講じてまいったと思いますが、たまたま昭和三十九年のこの特例試験に関する法律案の国会審議におきまして、昭和四十二年三月三十一日を期限として特例試験の実施を五回に限ることとする、そうして計理士制度を廃止することとされまして、しかも、これらの期限は決して延長されるべきではないという附帯決議がございました。それは昭和三十九年の衆議院大蔵委員会でございます。  したがいまして、昭和四十二年を限りまして、この特例試験を実施することを廃止することにいたしました。と同時に、長い間の計理士という社会的な存在を持っておられる方々ですから、また第三者の保護等もございますので、計理士の名称使用に関する法律というものを昭和四十二年に制定いたしまして、一代限り計理士の名称の使用を恒久化する、こういうことになったわけでございます。  そういういきさつがございましたので、言ってみますと五十年ちょっとたちましたケースでございますので、ここらあたりで計理士さんのために特別の試験を行って公認会計士の資格を改めて付与するといったようなことは、国会の御決議もありまして適当なことではないのではないか。たまたま私は当時のことを記憶しておりますが、長い年月がたっておりますので、そういう感じを持っております。
  96. 若松謙維

    ○若松委員 今の御答弁だと思います。  後ろにおられる方は計理士の方々ですか。長年御努力された、日本の経済に寄与された、大変貴重な先輩の方々です。大臣としてそういうお答えですけれども、可能な限りまた再考も促して、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  97. 村井仁

    村井委員長 次に、佐々木憲昭君。
  98. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。  提案されております租税特別措置法の一部改正案は、産業再生法案に関連する税制上の措置を講ずるものであります。そのことによる減収は、先ほどの御答弁でも四十億と言われておりますが、その内訳を初めに確認したいと思います。
  99. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今回の税制上の措置による減収額、平年度ベースで四十億円でございますが、その内訳を申し上げますと、いわゆる法人税関係といたしまして、特定の新規設備投資に係る特別償却制度の創設が十億円の減少、それから中小企業者の新規設備投資に係る特別償却または税額控除制度の創設で十億円、それから登録免許税関係で二十億円、計四十億円というふうに考えております。
  100. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 その登録免許税の減収の一番大きな部分を占めているのは何でしょうか。
  101. 尾原榮夫

    尾原政府委員 登録免許税関係二十億円のうち、大きなものを申し上げますと、債務免除に伴う増資が約半分弱を占めているものというふうに考えております。
  102. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 債務の株式化に関連をする部分が一番多いと。この債務の株式化といいますのは、金融機関が債権放棄と引きかえに経営不振に陥っている企業株式を取得するというものであります。不良債権の株式化と言ってもいいと思うのですね。  そこで、宮澤大蔵大臣にお聞きしますけれども、三月二十九日の第一回産業競争力会議の議事録によりますと、大蔵大臣は、設備廃棄の問題に関しては、金融機関も参加して話し合う仕組みをつくれないか、通産大臣にも考えてもらいたい、このように発言をされております。これに対して与謝野通産大臣は取りまとめの発言で、総理、官房長官、大蔵大臣、今井会長と相談していきたい、このように締めくくっております。  宮澤大蔵大臣のこの発言によりまして債務の株式化に一気に火がついたというふうに報道されておりますけれども、大蔵大臣のこの発言というのはどのような意図のもとで行われたのか、まずお聞きをしたいと思います。
  103. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 多分ことしの一月か二月であったと思いますが、ある非公式な席で、財界人もおられ、金融人もおられましたが、昨年の小渕内閣発足以来、この不況脱出に関しまして、大きな財政支出もいたしましたし、減税もいたしましたし、また金融機関に対する公的支援もいたしましたし、また今年もいたそうと当時しておったところでございますが、それで、この不況脱出の最後の段階は、どうしても、産業のリストラクチャリングとそこから起こる雇用の問題、これに対応しなければならないと政府として考えているというようなことを非公式に私から申しました。  そのことは、産業界は当然予知はしておられた、問題意識は持っておられたところですが、しかし、企業側が過剰設備あるいは不用設備を廃棄いたしますと、それは金融機関との関係が当然のことながら出てまいりますし、しかも、一対一でございますと関係は簡単でございますが、協調融資の対象になっておるということが大部分と思われますので、したがいまして、大規模な設備廃棄あるいは産業のリストラクチャリングというものは、金融機関の協力がなければ、金融機関との相談がなければなかなかなし得ないということを申し上げましたし、関係者もそれはそうだろうというお話であったわけでございます。  それで、第一回の産業競争力会議がございましたときに、もし産業のリストラクチャリングが必要であれば、私は必要だと思いますが、それについては金融界との相談、協力がなければなかなかうまくいかないように思うということを私から申しまして、与謝野大臣もそのような発言をされ、また現実には、四月になりまして、経団連と金融機関のトップとがこの問題について会談をされ、方向についての一つの合意を見出されたというふうに承知をしております。
  104. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 産業競争力会議金融機関は入っておりませんので、そういう大臣の御発言があり、また大臣自身もかなり積極的にこれを推進するという立場で行動されたようでありまして、例えば日経金融の四月三十日付によりますと、東京三菱銀行の岸頭取に宮澤大蔵大臣が電話を入れて、経団連の話を聞いてやってほしいと申し入れたというふうに報道されておりますけれども、こういうこともありましたでしょうか。
  105. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 岸さんが全銀協の会長でいらしたと思いますが、そういうことは私からお願いをしたことがあると思います。
  106. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 その後、五月十八日に経団連が、「わが国産業の競争力強化に向けた第一次提言」を発表しまして、その中に「債務の株式化に係る法制の整備」という項目を設けておりまして、その中で独占禁止法、銀行法の特例に関する提案を行っております。六月十一日に政府は、「緊急雇用対策及び産業競争力強化対策について」という決定を行いまして、この経団連の提言を実質的に取り入れております。  政府の決定の内容を見ますと、企業過剰債務問題を解決するための選択肢として、債務の株式化を活用できることとするための環境整備を早急に図る、こうしまして、金融機関による株式保有制限の弾力化、運用の明確化というのを盛り込んでおります。以上が事の経過でございますね。  次に、公的資金による銀行に対する資本注入の関係についてお聞きをしたいと思います。  与謝野通産大臣は、四月十九日付日経でインタビューに答えまして、「個別企業の苦境に対応する機運がようやく金融界に出てきた。公的資金による資本注入で金融機関が助かり、今度は金融機関が企業の面倒をみる番だ」、こういうふうに述べておられますけれども、大蔵大臣も大体こういう認識でしょうか。
  107. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと私はコンテクストが違います。  いわゆる公的資金の投入ということによって我が国の金融機関に対するシステミックリスクをなくそう、そして不良債務の処理をしてもらおうということはございますが、その仕事のさらに延長線において、企業のリストラクチャリングが行われるならば、さらに金融機関はそれに対応するだけの債権の処理をしなきゃならないということになるはずでございますから、その場合にどうするかなと。  そうすると、アメリカなんかで見ますと、いわゆるデット・エクイティー・スワップということがあって、債権の一部を優先株にするというケースはあるわけでございますから、そういうことも日本でも考えたらどうかなと。私の考えの展開はそういうふうに展開をいたしたわけでございます。
  108. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 ことしの一月二十日の金融再生委員会の運営の基本方針を見ますと、「債権放棄を行う金融機関に対しても資本増強を行うことを可能とする。」という条項が入っておりまして、これは柳沢委員長の決断でこういう項目が入ったと言われております。  それは、日経の解説によりますと、公的資金で不良債権の引当率を高めても金融機関が実際に債権放棄しなければ企業の債務負担は軽くならない、公的資金注入が産業再生につながらないことになるからだと。ですから、公的資金が入ったということで銀行に償却余力が生まれる、企業がそのおすそ分けにあずかるという仕組みがつくられるということだと思うんですね。  銀行が公的資金を受けているから、当然、償却原資には間接的に税金が含まれていくわけであります。関係者の合意があれば合理的再建計画だということで、債権放棄をした銀行には今度は損金算入で減税が行われる、債務を免除された企業にはその免除益の非課税扱いで減税が行われるということで、二重三重に、財政的な支えということによって金融機関と企業の側が救われていく、支援される、そういう仕掛けになっているわけですね。その結果、最終的な負担者は国民になるわけでございます。  それで、通産省にお聞きしますけれども、債務の株式化という場合、これを利用できる企業というのはどういう企業なのかという点。当然、株式会社以外の法人、個人事業者はこれを利用できないと思いますけれども、その点、どのようにお考えでしょうか。     〔委員長退席柳本委員長代理着席
  109. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  まさに債務と株式を交換して株式を発行するわけでございますので、株式会社がこれを利用できるというふうに思います。上場、非上場にかかわらず、株式会社であれば利用できるのではないかと思います。
  110. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 日本企業、これは通産省の中小企業白書の統計を見ましても、非一次産業企業数は五百十万社ありますね。そのうち株式会社は約百十万社でありますから、活用できるのは、対象になり得る企業は全企業の二割にすぎないわけであります。特に、この利用が非常に可能だ、実質的に可能になるというふうに考えますと、上場されている株式会社が一番利用しやすいわけでございます。上場企業は約二千五百社でありますから、全体の〇・〇五%程度でございます。  企業経営者が経営が危うくなるほど過剰設備を抱えた、その原因は当然、経営の見通しに失敗をして設備投資を過剰にやってしまったということにあるわけであります。再生委員会の運営の基本方針には、公的資金注入との関連で、債権放棄をする場合には当該企業の経営責任の明確化というのを掲げております。では、この債務の株式化を利用する経営者はどのような経営責任を問われるのか、この点を通産省にお聞きしたいと思います。
  111. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  私どもの法案で債務の株式化に関するのは第十三条でございます。その中で「当該株式の発行について債権者との間に合意を有することその他の主務省令で定める要件に該当する旨の認定を主務大臣から受けたもの」、こういう形になっておりますが、私ども、例えば減資というような形で、既存株主の責任の明確化について、主務省令の中で書く方向で検討しております。そういたしますと、当然、既存株主が減資という形で責任を問われるわけでございますから、既存の経営者もこの既存株主によってその責任を問われることになろうと思っております。  なお、金融再生委員会と今回は基本的に違うと私どもは思っております。前者の場合には国が株主となるわけでございますけれども、今回の場合にはむしろ、自主的な事業構築民間企業が行う場合に商法の特例税制という道具立てを整えてやって、その中で各企業が自主的に行うという形でございます。そういう意味で違うのではないかというふうに思っております。
  112. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 自主的に行うということで違うと。減資という形で間接的に経営者も責任が問われるかのような説明がありましたが、しかし、明確なルール規定はないんですね。明文の規定はないですね。今度の仕組みでは、結局経営の見通しに失敗して過剰設備を抱えた大手の企業が大規模な設備廃棄をして大きな欠損を出した場合には、過去に納めた税金を還付してもらうということも入っておりますし、また、将来利益が出てもそれが欠損金を上回らなければ七年間にわたって税を納めなくてもいい、こういう内容も入っておりますね。  債務の株式化で国民の税金が間接的に銀行と企業に流れていく、こういうことも先ほどの仕掛けから言えると思うわけでありますが、こうなりますと、結局、過剰設備をつくり出した責任のない国民の側は負担をする、しかし、投資戦略に失敗して過剰な設備をつくり出した経営者は明確な責任を問われるという規定がない、それが今度の仕組みであります。私は、ここに非常に重大な問題があるのではないか。私たちは、大企業の経営の失敗をいわば国民の税金でしりぬぐいするような、そういう性格のものがこういう仕掛けの中に入っている、これは極めて重大な問題であるというふうに指摘をしておきたいと思います。  さて次に、債務の株式化ということになりますと、銀行は新たに株式を保有しますね。公正取引委員会に聞きたいのですけれども、独占禁止法には銀行の株式の保有を制限する条項があります。この条項はなぜつくられたのか、その理由を説明していただきたいと思います。
  113. 山田昭雄

    ○山田政府委員 お答えいたします。  独占禁止法十一条は、金融会社事業支配力の過度集中を防止するために、金融会社が他の国内の会社株式を五%を超えて保有することを禁止しているわけでございます。  他方、この十一条のただし書きがございまして、第一項各号の規定に定められている特定の場合、それとただし書きの規定によりましてあらかじめ公正取引委員会の認可を受けた場合には例外的に五%を超えて株式が保有されるということとなっております。
  114. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 独禁法の第十一条、これは、銀行が産業を過度に支配する、過度集中の防止という意味で設けられているということであります。銀行法の場合も、他業務禁止あるいは産業集中、産業支配防止のために五%を超す株保有をしてはならないという規定があります。  そこで、宮澤大蔵大臣にお聞きしますけれども、大臣は、昨年十月十三日の衆議院予算委員会でこのような答弁をされています。「銀行が株式を持つということは、アメリカの例にかんがみましても、またその評価益の処理の問題につきましても、私は、問題がやはり非常に多いのではないか、傾向としては、銀行がたくさん株式を持つということは余り好ましくないことだ」と答弁されていますね。その翌日、十月十四日には参議院の本会議でこのようにおっしゃっています。「どうもやはり日本の銀行は株を持ち過ぎている、それは率直に言って私はそう思います。もうアメリカなんかと比べるとそれはまことに違いますので、やはり先々は、銀行は原則として株式は持たないという方向の方が私はいいんだと思っております」、このように答弁されています。  それで、株式の保有の状況なんですけれども、これは事実をちょっと確認したい。銀行の株式の保有の比率、日本アメリカの数字を示していただきたいと思います。     〔柳本委員長代理退席委員長着席
  115. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 お答えいたします。  お尋ねの計数でございますが、我が国につきましては全上場株式保有金額、米国については全公開株式時価総額に占める日米の銀行の株式保有比率について見ますと、我が国の場合は直近の平成十一年三月末で二一・一%でございまして、米国の銀行の場合は十年十二月末の計数で〇・〇%でございます。
  116. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 今挙げられた数字のように、日本の場合は銀行が二一・一%、アメリカは〇・〇%、これはほとんどないということであります。  日本の銀行の保有率が大変高いということがさまざまな問題を生み出しているわけであります。この間も、金融機関の経営危機、その背景には株の保有という問題があったわけでございまして、債務の株式化で銀行が株式を新たに保有するということになりますと、大臣がおっしゃっていましたように、好ましくないことをみずから実行するということになるのではないか。この点、大臣の認識をお聞きしたいと思います。
  117. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 我が国の場合、金融機関が事業会社の株をたくさん持っているということは、私は、やはりよくない、これはだんだん直していかなきゃならないと思っておりますことに違いございません。今でもそう思っております。  今回の場合、ただ、大きな債務について、リストラに伴って金融機関がどういうふうに対応するかということをいろいろ考えてまいりますと、いろいろな対応もありましょうけれども、アメリカなんかでやっているデット・エクイティー・スワップは一つの方法だなと私は当初から思って、申したりしていたんですが、それはやはり永久的な姿ではないと私は思います。  また、いっとき債務を生じた場合に、事業会社としてはいつまでもそんなものをしょっておるわけにいかないわけでございますから、考えてみますと、私は、多分優先株の場合が多いんだろうと思いますが、いっときのこととしてやむを得ない、独禁法との関連もあるし、これが永久にいつまでもそういう姿でいるということでは恐らくあるまいな、法律の制定、起案をした人たちも、また金融機関も企業も、いわばいっときのこういう場合の処理の方法として考えるべきものではないかな、私は法律の詳しいことを存じませんけれども、そういうふうに思います。
  118. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 今、一時的なものだというふうにおっしゃいました。  それでは、制度的に、例えば法律上の改正ですとか、あるいは保有の現状の規定を改正するとか、そういうことは考えていないという理解でよろしいですか。
  119. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私がお答えしていいかどうか、まあ恐らく優先株だろう。そうすれば、その性格上、やはりそういうふうなことになっていくのではないかなと思います。
  120. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 五%条項というのは、優先株であろうがどういう株であろうが、これは株の性格には関係ない規定でございます。  それで、金融機関による株式保有制限の弾力化という政府の方針ですね。これは日経の七月二十五日付によりますと、大蔵省は、「八月中に銀行法施行規則を改正する方針だ。取引銀行が経営不振企業の再建計画を「合理的」と判断すれば、」つまり銀行が自主的に判断すれば、「発行済み株式数の五%を超す株式保有を禁じる五%ルールの例外として、五%を超す株式を取得できるようにする。」こういう報道がありますが、今大臣は、これは一時的なものであって、恒久的な措置として制度を変えるということはあり得ないというふうにおっしゃいました。  そうしますと、この日経の報道というのは誤報であるということでよろしいですね。
  121. 福田誠

    ○福田(誠)政府委員 そのような報道がなされていることについては承知しておりますが、大蔵省としての債務の株式化のための環境整備の取り組みといたしましては、やはりその趣旨として、債務の株式化による結果的な貸付金の回収可能性の向上等の合理性が必要でございますし、それから、銀行法に書いてございます他業禁止の潜脱防止というような点も留意する必要がございます。  いずれにしましても、大臣の答弁のように、恒久的にそういう状態が永続するということは考えておらないわけでございますが、債務の株式化のための環境整備そのものにつきましては、ただいま申し上げましたような点も念頭に入れつつ具体的な検討をしたいと考えております。
  122. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 どうも今の説明ですと、恒久的なことは考えないけれども、しかし緩和するという措置をとると。そのことの危険性が私はあると思うのですね。  五%を超えて保有することを認めるということになりますと、原理原則はあるけれども、しかし、それを否定することを実行するわけであります。従来の施行令その他のルールがある、そのルールをさらに緩和するというわけですから、私は、これは極めて危険な方向に踏み出すのではないか。  銀行の株式保有の増大というのは、それだけ新たな株が市場に出回るということにもつながりますから、株価全体を下げる圧力になってまいります。また、銀行の株式保有が高まりますと銀行の経営自体が非常に不安定になっていく。株式の持ち合い解消という方向にも逆行する。ですから、債務の株式化というのは、一時的に何か企業に対する支援であるかのような形態ではありますが、全体として経済の基本を非常に大きくゆがめていく可能性が私は非常に強いと思います。  しかも、債務の株式化ということになりますと、設備廃棄とセットで行われるわけであります。設備廃棄が大規模に行われるということは、これは人員整理、人減らしにつながっていくわけであります。  ですから、企業が単独では進めにくいという理由で、政府が乗り出して金融機関を巻き込んでこういう処理をつくる、私は、こういうことは、残念ながら護送船団の復活ではないかと言わざるを得ないわけでありまして、その危険性について指摘をしまして、質問を終わります。
  123. 村井仁

    村井委員長 次に、横光克彦君。
  124. 横光克彦

    ○横光委員 社民党の横光克彦でございます。  今国会に提出されております産業活力再生特別措置法案、この主眼と申しますか主軸は事業の再構築にあるわけです。つまり、過剰設備過剰債務過剰雇用の事態を打開することにあると思うのですね。したがって、税制上の対応も、おのずと企業が持つ負の遺産、もっと言えば企業がみずからつくり上げてしまったとも言える負の遺産、この過剰部分の清算を進めるための支援策に重点が置かれてしまったと言えると思うのです。  しかし、営業の譲渡あるいは譲り受けにかかわる買いかえ特例の拡充や、あるいは登録免許税軽減などは、過剰設備の廃棄後の跡地等の流動化を進めやすくしてほしいとの強い要請を受けての、消極的選択のなせるところであろうと私は思うのです。立地するときに税制上の優遇措置を受けておりながら、今度、これを撤収するときにも税の優遇措置を与えなきゃならないのかというやるせない思いを、税に携わる主税局の第一線の皆様はそういったお気持ちを正直に言えば持っているのじゃなかろうか、私はそんな気がいたしております。  また、債務の株式化促進に当たっての登免税の軽減、あるいは債務の株式化自体が債権者にとっては債権放棄の甘味剤にすぎない、こういった指摘も銀行界から出ているわけです。つまり、大口債務者に対する深情け的な側面が余りにも強過ぎるのではないか、そう思わざるを得ません。  しかし、そうはいっても、ここまでは何とか私も許容の範囲かもしれないと思っております。つまり、官民共同で、本来ならば民間で自助努力でやるべきところですが、これが非常に厳しい中、緊急避難的措置として官が手助けをする、そういった意味からも、先ほど申したところまでは許容の範囲かもしれない。  しかしながら、この過剰設備の廃棄促進を結果的には国が出張ってまで支援することになる欠損金の繰越控除の延長にまで手を染めるに至っては、なぜそこまでという思いをどうしても禁じ得ないのですね。工場撤退などの設備廃棄が進めば、地域経済に与える影響、また関連する中小企業に与える影響、とりわけ雇用問題には深刻な打撃を与えることはもう必至の状況だと思います。  ですから、政府原案のままでは、雇用安定の確保が明確にされなくても事業構築計画を主務大臣が認定することができるようになっている。確かに、主税局が言うとおり、税制上の優遇措置を得るためには二重の関所を越えなくてはなりません。しかし、雇用安定の明確な確保は要件となっていないのです。つまり、雇用安定の明確な確保が要件とならない欠損金特例とは、残念ながら、このリストラの加速の潤滑油となることで、失業率の悪化を通じた景気への悪影響という負の連鎖、本来ならば景気回復の目的を持っていながら結果的には景気への悪影響という負の連鎖を招く役割を果たしかねないという気がしてならないのです。  景気が順調なときであればこのような副作用は低く抑えられるかもしれませんが、しかし、御案内のように、現在、雇用失業情勢は底割れ懸念すら払拭できない現状にあるわけです。一進一退の踊り場的な状況にあるわけですね。他方、今回緊急雇用対策として組まれました補正予算は五千億円という規模にすぎず、雇用不安の解消という国民的要請にこたえられるものになっているとは思えないわけです。  そこで、大蔵大臣にお尋ねいたしますが、今の現状から見て、つまり失業率が過去最悪の現状の中、雇用対策として組まれた補正予算とセットで提案されましたこの事業構築支援の一環としての欠損金特例措置が、果たして景気回復に向け前向きな相乗効果を望めるとお考えなのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
  125. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 雇用関連の補正予算が五千億円であるということを言われまして、そのとおりでございますけれども、それは、平成十年度の補正予算、十一年度予算におきましていわゆる一兆円の施策というものをいたしておりますので、この五千億だけが雇用に関する直接の対策だというわけではございません。もとより、大きな財政支出全体が雇用に関係いたしますことは申すまでもないことです。  さて、そこで、しかし、このような企業のリストラというものが雇用に影響するということはもうおっしゃるとおりで、それは否定することができません。しかし、企業として余剰の雇用を抱え、また雇用としても余剰と言われる状態で抱えられていることがいつまで続けられるのか、果たしてそれは雇用にとってもいいことなのかということは、やはり問われなければならないだろうと私は思います。  我が国の不況脱出の最終段階において、やはり雇用の問題は避けられないし、また、企業が二十一世紀に向かって生きていくためにはここでのリストラは避けられない。これに手を触れませんといつまでたっても不況の脱出というものはできないというこの段階で、確かにリストラをすれば雇用に悪い影響がある、それはおっしゃるとおりと思いますけれども、そうかといって、過剰な雇用を抱き、抱かれるという状況はやはりできるだけ脱却しなければならないだろう。そのための雇用についての配慮は十分でなければならない、ここらが政府の判断の決着点でございまして、先ほども、ここまでは許せるかなというような表現で物をおっしゃいましたが、私どもも、ここまではまあお認めいただけるのではないかといったような気持ちを持っております。
  126. 横光克彦

    ○横光委員 確かに大臣のお話のように、両方を得るということは非常に難しいわけです。しかし、雇用のかなりの確保に対する安心感というものがなければ、どうしても国民の不安というものを払拭できないことにつながっていくわけですね。また、このような税の優遇という手助けなしに、既に血のにじむような思いで設備廃棄等に取り組んできた企業も少なくないのですよ。そしてまた、こういった恩恵からはほど遠いところで不況に苦しんでいる中小企業や個人事業皆さんもおられるのですよ。  そういったことから見ますと、これらの方々が当然今回のことに対しては大いなる不満を抱きますよね、不公平感につながるわけですから。何より、結果的には、特定の大企業あるいは業界、そういったもののみに活用されることがほぼ明らかな措置を強行することによって生まれてくる税制に対する信頼感の喪失、これも見逃すことはできないと思うのですね。つまり、公平、簡素、中立という税制の三原則を脅かすようなことになってはやはり困るのではなかろうか。税制の不信を生むこういった欠損金特例措置というのは、私は今回は必要ないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  127. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もとより、中小企業に対しましてもいろいろな施策が必要でございますし、それはそれなりにいたしてまいったつもりでございますが、この法律の対象になる大きな部分と申しますか、今お話し関係で申しますれば、特定の企業という考えでおるわけではございません。日本経済の一番中心になっておる部分、ここがリストラをしなければ日本経済全体のリストラというのはやはり現実の問題として困難だということはお認めいただけると思いますので、それに対して政府として支援し得ることは何であろうか、こういうことを法律をもってお願いしようとしておるわけで、特定の企業会社といったような考えから出ているものではございません。
  128. 横光克彦

    ○横光委員 先ほど、事業の再構築と雇用の問題の兼ね合いの難しさというお話がございました。確かに、企業事業構築と同様に、私は、雇用不安の克服こそが景気回復の何よりの良薬になり得る、このように考えております。  ですから、こういった手法は産業再生にも私は活用できると思うのですよ。遠回りなようでも、失業を生まない、あるいは失業者をつくらないために不可欠な要素となるのが、労働時間の短縮等によるワークシェアリング効果を通じた雇用創出を図ることだと思うのです。ですから、不況産業の抱えるお荷物を軽くする、いわゆる今回のような後処理的な税制対応ではなく、ワークシェアリングの促進など、いわゆる先を見通した政策に対する税制上の優遇策こそ今求められていいのではないか。  今すぐにとは申しませんが、中長期的な展望に立った上でのワークシェアリングの促進など税制上の優遇策について、どのように大蔵省としてはお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
  129. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 従来いろいろやってまいったつもりでございますが、その上に今新しく、にわかにはお答えができませんけれども、御主張の点は十分これからも努力をいたさなければならないと思います。
  130. 横光克彦

    ○横光委員 どうぞよろしくお願いいたします。  終わります。ありがとうございました。
  131. 村井仁

    村井委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  132. 村井仁

    村井委員長 本案につきまして、日本共産党から討論の申し出がありましたが、理事会で協議の結果、御遠慮願うことになりましたので、御了承願います。  これより採決に入ります。  内閣提出租税特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  133. 村井仁

    村井委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  134. 村井仁

    村井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  135. 村井仁

    村井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十二分散会