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1999-03-19 第145回国会 衆議院 大蔵委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月十九日(金曜日)     午前九時二十三分開議   出席委員    委員長 村井  仁君    理事 井奥 貞雄君 理事 衛藤征士郎君    理事 鴨下 一郎君 理事 柳本 卓治君    理事 上田 清司君 理事 日野 市朗君    理事 石井 啓一君 理事 小池百合子君       安倍 晋三君    逢沢 一郎君       江渡 聡徳君    大石 秀政君       大島 理森君    河井 克行君       栗本慎一郎君    河野 太郎君       桜井  新君    桜田 義孝君       砂田 圭佑君    滝   実君       中野 正志君    中村正三郎君       平沼 赳夫君    村上誠一郎君       望月 義夫君    渡辺 具能君       渡辺 博道君    渡辺 喜美君       綿貫 民輔君    岩國 哲人君       海江田万里君    島津 尚純君       末松 義規君    仙谷 由人君       玉置 一弥君    中川 正春君       山本 孝史君    大口 善徳君       谷口 隆義君    並木 正芳君       前田  正君    若松 謙維君       鈴木 淑夫君    西田  猛君       佐々木憲昭君    矢島 恒夫君       横光 克彦君  出席国務大臣         大蔵大臣    宮澤 喜一君         国務大臣         (金融再生委員         会委員長)   柳沢 伯夫君  出席政府委員         金融再生委員会         事務局長    森  昭治君         金融監督庁長官 日野 正晴君         金融監督庁検査         部長      五味 廣文君         金融監督庁監督         部長      乾  文男君         大蔵政務次官  谷垣 禎一君         大蔵大臣官房長 溝口善兵衛君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省金融企画         局長      伏屋 和彦君  委員外出席者         参議院議員   塩崎 恭久君         参議院議員  日下部禧代子君         法務大臣官房審         議官      吉戒 修一君         法務大臣官房審         議官      渡邉 一弘君         参考人         (日本銀行理事         )       黒田  巖君         参考人         (預金保険機構         理事長)    松田  昇君         参考人         (日本銀行総裁         )       速水  優君         参考人         (日本銀行副総         裁)      山口  泰君         大蔵委員会専門         員       藤井 保憲君 委員の異動 三月十九日  辞任         補欠選任   大島 理森君     安倍 晋三君   河井 克行君     滝   実君   村上誠一郎君     江渡 聡徳君   渡辺 博道君     望月 義夫君   中川 正春君     岩國 哲人君   並木 正芳君     前田  正君 同日  辞任         補欠選任   安倍 晋三君     逢沢 一郎君   江渡 聡徳君     村上誠一郎君   滝   実君     河井 克行君   望月 義夫君     渡辺 博道君   岩國 哲人君     島津 尚純君   前田  正君     並木 正芳君 同日  辞任         補欠選任   逢沢 一郎君     大島 理森君   島津 尚純君     中川 正春君 三月十七日  特定融資枠契約に関する法律案参議院提出参法第九号) 同月十九日  土地の再評価に関する法律の一部を改正する法律案大原一三君外三名提出衆法第九号) 三月十二日  計理士に公認会計士資格付与に関する請願若松謙維君紹介)(第一一四五号)  同(若松謙維君紹介)(第一一七四号)  同(若松謙維君紹介)(第一二三五号)  消費税率三%への引き下げ食料品等の非課税に関する請願木島日出夫紹介)(第一一七三号)  児童手当大幅拡充、新たな子育て支援制度に関する請願赤羽一嘉紹介)(第一二二二号)  同(赤松正雄紹介)(第一二二三号)  同(池坊保子紹介)(第一二二四号)  同(石垣一夫紹介)(第一二二五号)  同(近江巳記夫紹介)(第一二二六号)  同(北側一雄紹介)(第一二二七号)  同(久保哲司紹介)(第一二二八号)  同(佐藤茂樹紹介)(第一二二九号)  同(田端正広紹介)(第一二三〇号)  同(谷口隆義紹介)(第一二三一号)  同(西博義紹介)(第一二三二号)  同(福島豊紹介)(第一二三三号)  同(冬柴鐵三君紹介)(第一二三四号) 同月十八日  消費税率を三%に戻すことに関する請願木島日出夫紹介)(第一三〇七号)  同(児玉健次紹介)(第一三〇八号)  同(春名直章紹介)(第一三〇九号)  同(不破哲三紹介)(第一三一〇号)  同(深田肇紹介)(第一三一一号)  配偶者特別控除の廃止に関する請願知久馬二三子紹介)(第一三一二号)  不況打開消費税率三%引き下げに関する請願佐々木陸海紹介)(第一三一三号)  消費税率引き下げに関する請願大森猛紹介)(第一三一四号)  同(志位和夫紹介)(第一三一五号)  同(中路雅弘紹介)(第一三一六号)  年金生活者に対する課税最低限度額引き上げに関する請願石毛えい子紹介)(第一四一七号)  共済年金制度の堅持に関する請願浜田靖一君紹介)(第一四五六号)  同(藤井孝男紹介)(第一四五七号)  同(武藤嘉文紹介)(第一四五八号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  特定融資枠契約に関する法律案参議院提出参法第九号)  金融業者貸付業務のための社債発行等に関する法律案内閣提出、第百四十二回国会閣法第一一七号)  金融に関する件     午前九時二十三分開議      ————◇—————
  2. 村井仁

    村井委員長 これより会議を開きます。  参議院提出特定融資枠契約に関する法律案を議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。参議院議員塩崎恭久君。     —————————————  特定融資枠契約に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 塩崎恭久

    塩崎参議院議員 特定融資枠契約に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明いたします。  一昨年来の信用収縮状況のもとで、企業資金調達機動性増大を図るため、融資枠契約、いわゆるコミットメントライン契約に対する需要が高まっております。融資枠契約とは、金融機関等手数料を徴求することにより一定期間にわたって一定融資枠を設定、維持し、その融資枠内で顧客の請求に基づいて融資を実行することを約する契約でございます。企業にとりまして、この融資枠契約は、手元資金流動性を確保する方法として、また社債コマーシャルペーパーを発行する際のバックアップラインとして大きな役割が期待されるものでございます。  しかしながら、融資枠契約手数料が、利息制限法及び出資法上のみなし利息に該当すると解され、設定された融資枠に対して実際の融資額が少額にとどまる場合には、制限利率を超過し、違法と評価されるおそれがあります。このため、銀行等金融機関は、融資枠契約を締結することに消極的であったと言われております。  そこで、経済的弱者を保護する利息制限法及び出資法趣旨も考慮しつつ、借り主が大会社である融資枠契約につきましては、その手数料利息制限法及び出資法上のみなし利息に当たるとされることがないよう、この法律案を提案した次第でございます。  次に、この法律案内容について、その概要を御説明申し上げます。  第一に、この法律は、特定融資枠契約に係る手数料について利息制限法及び出資法特例を定めることにより、企業資金調達機動性増大を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とすることとしております。  第二に、この法律において特定融資枠契約とは、融資枠契約であって、借り主契約締結時に商法特例法第二条に規定する株式会社であるものをいうこととしております。  第三に、利息制限法第三条及び出資法五条第六項のみなし利息規定は、特定融資枠契約に係る手数料については適用しないこととしております。  第四に、この法律は、公布の日から施行し、この法律施行後に締結される特定融資枠契約について適用することとし、この法律施行前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例によることとしております。  第五に、特定融資枠契約に係る制度あり方については、この法律施行後二年を目途として、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるべきものとすることとしており、この法律施行後の運用状況中小企業等の要望を勘案し、特定融資枠契約を利用できる範囲、必要となる保護策内容等について見直すことができるようにしております。  以上が、この法律案提案理由及び内容概要であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いいたします。
  4. 村井仁

    村井委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 村井仁

    村井委員長 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、これを許します。佐々木憲昭君。
  6. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 日本共産党佐々木憲昭でございます。  コミットメントライン契約というのは、今の提案理由説明にもありましたように、大手企業金融機関手数料を払って融資枠を設定してもらい、その限度内であればいつでも融資が受けられるようにする、こういうものであります。  幾つか問題点を感じておりますので、ただしたいと思います。  日本では、金利上限を定めました利息制限法出資法、これに抵触するという理由でこれまで事実上禁止されてきたものであります。そこで、コミットメントライン契約手数料、これをどのように見るのかという点についてお聞きをしたいと思います。  利息制限法第三条では、債権者の受ける元本以外の金銭は、礼金、割引金手数料その他何らの名義をもってするを問わず利息とみなすとされております。出資法にも同じ趣旨規定がございます。  まず法務省にお聞きをしたいのですが、このコミットメントライン契約で言う手数料、これも利息制限法などで言っているみなし利息に当たるのかどうか、これを確認したいと思います。
  7. 吉戒修一

    吉戒説明員 お答え申し上げます。  委員指摘利息制限法三条の規定でございますけれども、これは、手数料その他何らの名義をもってするを問わず、金銭目的といたします消費貸借に関して債権者の受ける元本以外の金銭利息とみなす旨規定をしております。同様の規定出資法五条六項にもあるところでございます。  出資法五条六項につきましては最高裁判所判例がございまして、その判例では、金銭貸し付けを行う者が受ける元本以外の金銭は、当該貸し付けに関するものと認められる限り、利息の実質を有すると否とを問わず利息とみなす趣旨であるとの解釈を示しております。  したがいまして、これらからいたしますと、利息制限法上もそれから出資法上も、融資枠契約手数料利息とみなされると解されるものと思います。
  8. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 利息とみなされると。  金利上限規定するこの規定は極めて重要でありまして、これは少しでも例外があっては意味のないものだというふうに思うのですね。なぜコミットメントライン契約だけは例外扱いとするのかというのが問われるわけで、これは法律に重大な穴をあけるものではないかと思うわけですが、この点はいかがでしょうか。
  9. 塩崎恭久

    塩崎参議院議員 今法務省から答弁がございましたように、利息制限法及び出資法に定めております上限利息にみなし利息として今回のコミットメントライン契約手数料が入るという解釈でありまして、それは、もともと出資法並びに利息制限法弱者保護ということでございますから、今までは、弱者を保護するためにいかなるものもすべて利息とみなすという解釈をしてきたためにコミットメントライン契約というのはできなかったわけであります。  ところが、その一方で、先ほど提案理由説明で申し上げましたように、このコミットメントライン契約欧米ではもうかなり一般的に行われている契約でございまして、言ってみれば、銀行コミットをする、そして借りる方はコミットをしてもらえば必ず借りられるという意味で、流動性確保では大変意味があるわけでございます。  そこで、今回、大企業については利息制限法並びに出資法に言われているみなし利息に該当しないようにしようということでございますが、あくまでも大企業についてこの弱者保護は該当しないということで、大企業についてのみ今回は適用除外をさせていただく、こういう趣旨でございます。
  10. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 欧米では一般に認められているということでありますが、しかし、日本には日本法律がありまして、今回、利息制限法出資法に対して初めて例外をつくるということでありまして、どう説明しようと、法律に穴があいてしまうということは事実だと思うのです。  確かに当面は弱者保護という線は辛うじて崩れていないように思いますけれども、しかし、将来中小企業にまで拡大する余地を残していないかどうか。中小企業は、大企業と違いまして、金融機関に対しては比較的弱い立場にあります。高金利を罰する利息制限法を緩和するということになりますと必ず高い手数料が設定されていく、そういう危険性があるわけです。  ことしの一月二十五日付の日経金融新聞によりますと、自民党は一月二十二日の法務部会で、借り手の範囲中堅企業に広げるべきだ、こういう意見が出た、ところが、金融機関に対する立場の弱い企業手数料を強要されると警戒する野党に配慮し、法案の変更はしないことになったと報道されております。今回の法案はそういう形で出てきた。しかし、与党の中にそういう声がある以上、これを突破口にして中堅企業中小企業に広げていくという危険性があるのではないか。  それだけじゃなくて、発議者塩崎議員参議院財政金融委員会答弁の中で、我々は今回はとりあえず大企業に限定した、こう言われております。それから、中小企業や個人についてはやはり弱者保護の観点からこのみなし利息を今適用を外すというのは余りにも早過ぎる、こう答弁されていますね。  ということは、将来中小企業にも広げていくことを検討するということを含んでいるのか、あるいは、そういうことはしないのだ、広げないのだ、こういうふうに断言できるか、まずこの点をきちっとさせていただきたいと思うのです。
  11. 塩崎恭久

    塩崎参議院議員 今佐々木委員指摘のとおり、私ども自民党の中で議論をしたときに、中堅企業にも広げるべきではないかということが法務部会で出たことは事実でございます。そして、財政部会議論をいたしましたときには、さらに中小企業にも広げるべきではないかという意見も出されました。  実は、アメリカなどの場合には、中小企業も含めてかなりこのやり方というのが定着をしているわけでございまして、通産省の調査によっても、我が国の中小企業の中で、このような形でコミットメントライン契約を設定できるということであるならば中小企業もぜひやらせてもらいたいという声も実はアンケート調査などでは出てきているわけでございます。  私ども自民党では中小企業団体においでを願って議論もいたしました。その際に出たのは、今、貸し渋りが進んでいる中で、コミットをしてくれるというプラスの面を考えてみれば中小企業もぜひやらせてもらいたい。ところが、マイナスの面として、今佐々木委員指摘のとおり、力関係でいけば、中小企業の方が銀行よりも圧倒的に弱い立場であるケースが多いわけであります。そこで、私ども中小企業団体からのヒアリングの中で得られたことは、やはり中小企業としてもこのようなコミットメントライン契約をやってもらいたいけれども、それはあくまでも弱者を保護する手だてがきちっと整ってからだということであって、二年間の見直し規定の中でそういった手だてが講ぜられるならばぜひ中小企業にも広げてほしいということでございました。  ただ、中小企業の問題についてはそういうことでございますが、今回の二年間の見直し規定については、ひとり中小企業だけではなくて、例えばSPCはどうなんだ、それから海外からも、今回の商法特例法の大会社ということでありますと、例えば外国法人日本における支店はどういう扱いになるのか。実は、法務省解釈では、今の条件を満たしておればこれは適用対象になるということになるわけでありますが、そういうことも含め、先ほど申し上げたSPCのような、株式会社ではないけれども三百万円の資本金でできるような、導管と呼ばれるようなものの場合にはコミットメントライン契約というのが可能なのかどうか。こういうことも含めて幅広くニーズを聴取しながら、この二年間の中で、弱者保護をきちっとできるような手だて、そして幅広いニーズにこたえられるだけの手だてというものを検討していこう、こういうことになったわけでございます。
  12. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 弱者保護ということであれば、利息制限法出資法を厳正に適用するというのが弱者保護でありまして、これを崩してしまうということになりますと弱者保護と矛盾してくるわけです。いかなる手段を講じようとも危険性は広がる、弱者に対する負担増というのが広がっていく危険性があると私は思います。どうも今の答弁ではそういう危険性が否定されなかった。附則の三で、二年間で制度あり方検討する中に中堅企業中小企業、さらに一定の子会社やその他の小規模の事業所まで含めていくというふうに検討対象を広げますと、その危険性が非常に広がっていくというふうに私は感じました。  次に、銀行審査あり方に関連してお聞きをしたいと思います。  これまでは銀行貸出審査というのは、個別の案件ごと使途貸出額返済条件、こういうものを盛り込んだ稟議書を回す形で行われてきております。それでもバブル時代には投機的な融資を防ぐことはできなかった。ところが、このコミットメントラインは、契約する際に企業銀行側が全体として評価する。その際には通常より厳しい審査が行われるということですけれども、一たん契約が行われた後は、契約期間内であれば、借り入れの申し出があった場合には必ず貸し出しを実行しなければならない、こういうことになると思いますが、その点はどうなんでしょうか。
  13. 塩崎恭久

    塩崎参議院議員 今佐々木委員指摘のとおり、一定期間契約でございますから、当初に契約をした期間内においては、基本的に、銀行貸し出しを要請されればこたえなければいけないということでございます。  ただ、これはあくまでも私契約の世界でありますから、まず第一にその期間をどれだけに設定するのかということがまさに銀行にとってはリスク管理の一番大事なものであって、例えば十年とか二十年いいなんということはあり得ないわけであって、今でも、海外で行われているものあるいは日本法律に抵触しないような形で行われていると思われるものについては大体期間一年ということでやっているようでございますし、ケースによりますけれども、毎回貸し出しを実行する際に、その使途あるいはその返済方法等について報告を一応出してくれというような契約が入っているケースもあると聞いておるわけでございます。  いずれにいたしましても、これは、どれだけの期間どれだけの額をコミットするのか、そして企業の側はどれだけの期間どれだけの額をコミットしてもらいたいのかという中で決まる契約の話であって、リスク管理は、銀行のサイドとして、今申し上げた期間そして融資額を含めてその企業の実態をよく見てやらなければいけない。そういう意味では、今までの金融機関に欠けていたリスク評価能力というものがまさにこれをやることによって問われていくということではないかと思っております。
  14. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 そうしますと、枠を設定する、一定期間、まあ一年程度、その枠の中であれば具体的に一回一回使途を明確にするということは必ずしも必要はない。場合によっては契約でそのたびに報告を出してもらうという御説明が今ありましたけれども、しかしそれは義務づけられていないわけですね。したがって、枠は決められたけれども、個別の融資が何に使われるかそこまでは、具体的なチェックは今までよりは軽くなる、あるいはフリーパスでそれが行われていくということになる、これは事実ですね。
  15. 塩崎恭久

    塩崎参議院議員 先ほど申し上げましたように包括的な契約でありますからケース・バイ・ケースで、一つ一つ何に使うのかということを徴求したとしても、そこでとめるということはほぼないのだろう、私が知る限りではそのように理解をしております。  ただ、先ほど来申し上げているように、あくまでもこれは一定期間の話であって、さらに、運転資金が中心でありますから、言ってみれば、銀行側がその企業のコーポレートガバナンスをどの程度評価するのかということにまさにかかっているわけであって、それは一件一件の審査でも中身はいろいろな問題があり得るわけでありますが、そこを包括的に評価をするというのがこの契約であろうかと思っております。
  16. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 個々使途あるいは融資規模そのものについては、枠内であれば拒否はできないと。  そうしますと、従来の銀行審査機能、これが形骸化するおそれが十分にある。従来もバブル時代に、使途がはっきりしていても、ともかく銀行もそれをやることを容認してどんどん投機的な資金がふやされていった。本来は、そういうことを反省した上でいろいろな新しい体制をつくっていくというのが筋だと思うのですけれども、どうもこのコミットメントライン契約は、審査機能が形骸化して、使途が明確にならなくても一度契約したらその枠ならどんどん使って結構というふうになりますと、投機的なところに回されても文句は言えない。事前に企業評価というのは厳密にやるとはいっても、しかし、個々融資内容についてチェックができないとなりますと、極めて投機的な分野にこの資金が回っていくという危険性を抑えることはできないのではないか、私はその点を危惧するわけでございます。  それから、何か貸し渋り対策になるというような御説明もあったように思いますけれども、これでなぜ貸し渋り対策になるのか、私はどうもよくわからないのですけれども、この点はどのように貸し渋り対策になるのでしょうか。
  17. 塩崎恭久

    塩崎参議院議員 先ほどのリスク評価のことにつきましては、繰り返し申し上げますけれども、過去のバブル反省をちゃんと教訓にして審査能力を高めろということにつきましては私も全く賛成であって、銀行が過去の反省から教訓をちゃんと得ていれば、むしろ、この契約をする際に自分がコミットをした額が不良債権になるかならないかということを本気になって考えるということではないかと思っております。そういうことでございます。  今お尋ねがございました貸し渋り対策になぜなるのだ、こういうことでございますが、まず第一に、大企業につきましては、これは当然、契約をしている大企業についてはコミットをしてくれるわけでありますから、銀行が、突然貸してくださいといってこのコミットメントライン契約範囲内でお願いをしても貸さないということがなくなるということで、むだなお金を事前に安心料を込めて借りなければいけないということがなくなるということでございます。  実は、昨年の三月末、ちょうどおととしの年末から去年の一—三月にかけまして非常に信用収縮が起こりました。その際、大企業は、優良企業はこぞって銀行に走って、年度末に向けてみずからの資金繰りあるいは関連会社あるいは取引先などのために、まあ安心料のためにかなりたくさんのお金を借りておったわけでございます。今も実は大きな会社であれば二千億とか三千億余分に借りているということでございまして、こういうことが銀行の自己資本比率を悪くする。そうしますと、結果として、中小企業が仮に後から貸してくださいといったところで、もう既に大企業が借りまくっていますから自己資本比率が既に悪いということで、それを理由に断るということも十分考え得るということでございまして、ダイレクトに中小企業の貸し渋りにきくということではありませんが、そういった貸し出しを抑える要因が減るという意味で、私としてはこのコミットメントライン契約が有効であると考えております。
  18. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 もう時間が参りましたので終わりますけれども弱者保護を外すという点でも、審査機能の形骸化の点でも、あるいは中小企業への貸し渋り対策になるという点でも、どうも納得できる答弁がなかったというふうに私は今思っております。  以上で終わります。
  19. 村井仁

    村井委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  20. 村井仁

    村井委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  参議院提出特定融資枠契約に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  21. 村井仁

    村井委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任いただきたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 村井仁

    村井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  23. 村井仁

    村井委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  24. 村井仁

    村井委員長 速記を起こしてください。      ————◇—————
  25. 村井仁

    村井委員長 次に、第百四十二回国会、内閣提出金融業者貸付業務のための社債発行等に関する法律案を議題といたします。  本案につきましては、第百四十四回国会におきまして既に趣旨説明を聴取いたしておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 村井仁

    村井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————  金融業者貸付業務のための社債発行等に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  27. 村井仁

    村井委員長 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。末松義規君。
  28. 末松義規

    ○末松委員 民主党の末松でございます。  きょうは、ノンバンクに関係するこの法案について、私の関心のある条項を中心に質問させていただきます。  基本的に、この法案は、間接金融に偏重している日本金融を直接金融の方にも向かわせるという意味で非常に意義がある法案であろうと思うし、ノンバンクにそういった社債発行等を認めること自体、より市中にお金が回っていくという、現状を認識しながらのいい方向であろうと思います。  好景気、不景気にかかわらず、いつの世にもサラ金地獄とかいろいろなトラブルがたくさん発生しております。市民の皆さんから見ると、サラ金を含むノンバンクに金集めの方だけ手当てをして、そして利用者があるいはトラブルが出るような形で困るのは、市民的感情からいっても大いに注目されるところであろうと思います。  そういった意味で、欧米の各国なんかを見ますと、金融サービス法という、ある意味では金融の消費者の立場から一括して保護をするような形で法律があるわけですが、日本でも、こういったノンバンクに関する法案と同時に、金融サービス法というものを早期に制定すべきではないかと思いますが、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  29. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いわゆる金融サービス法等の利用者の視点に立った横断的な法制度につきましては、昨年、金融審議会において検討を開始されまして、ただいま鋭意審議が行われているところと承知をいたしております。  今後、投資者や消費者の保護のため、横断的な法整備に向けまして一層精力的に取り組みますとともに、できるだけ早く法案提出をし、御審議を仰ぎたいと考えております。
  30. 末松義規

    ○末松委員 個人的な考えで結構なのですが、日本だけこういった消費者の立場からの法がないということ自身の理由といいますか、それはどうしてなのですかね。やはり消費者という立場がなかなか顧みられていなかった、そういうふうにお思いでしょうか。その辺、大臣の御認識をいただければと思います。
  31. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは私の観察でございますけれども、一般的に、金融全般につきまして、従来の行政がかなり、俗な言葉で言えば護送船団であるとか過保護であるとかいうふうに言われてまいりました。したがって、金融機関の間の競争もないかわりに、消費者としては選択の余地が少ない、しかし危険も少ない、そういう状況が結局いろいろな弊害を生み、また、自由化に伴いまして維持することが困難になった。  それは競争であり、消費者にとっては選択ということでございますけれども、かなり複雑な世界でございますから、消費者が選択をする上にいろいろ判断を必要といたしましょうし、また思わざる知が生まれることもあるでございましょうし、一般的に、自分で選択をしなければならない消費者の立場を将来に向かってどのように援護するか、あえて保護とは申しませんが、そういうことはこれからの問題であると思っておりまして、自由化になりますと、その必要は高まってくることは明らかであると考えております。
  32. 末松義規

    ○末松委員 実は、日本の消費者にとって、金融関係でもそうなのですが、ビッグバン以降、日本の金をとにかくもぎ取ってやろうということで、千二百兆あればこれは広大な市場であるということで、世界のつわものがどんどん来ているわけです。それは、ある意味では日本の消費者の保護をきちんとやっておかないと、供給者は日本の供給者だけじゃないわけですから、そういった意味でも、やはり早急にそれをきちんと打ち立てないといけないということが本当に急務であろうと思うのです。  ですから、その審議状況について、とにかく早急にやってほしいと。この見通しなど、大臣わからなければ、この審議会の状況も踏まえて、こちらの国会の方に大体いつごろ出そうなのか、どなたかそれをお答えいただける方がおられればいただきたいと思います。
  33. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  今先生言われました外国の法制も含めますと、現在我が国は、アメリカと同様に、基本的には、業法に基づきまして業態別に規制を行う体系となっておって、英国のような業態横断的ないわゆる金融サービス法がないわけでございます。  今後、金融システム改革が進展いたしまして、従来の業態の枠を超えた金融商品とかサービスが出現していく可能性を考えますと、幅広い金融サービスに対しての整合的な新たな法的枠組みを検討すべきであるわけでございまして、まさに先ほど大臣が答弁されましたように、できる限り早くの法案提出について努力してまいりたいということでございます。
  34. 末松義規

    ○末松委員 今国会とは言わないまでも、とにかくそのぐらいの形でやってください。そうでないと、もう金融自身はどんどん進んでいっているわけですから、損をするのは日本の消費者ですから、ぜひそこはお願いしたいと思います。  その中で、やはり重要になるのは、例えば社債を発行するにしても、投資家に対する市場メカニズムが当然きちんと働くような形にしなければいけない。そういった意味で、ディスクロージャーが極めて重要であるということなのですが、バブル崩壊で、ノンバンクについても、意図的にあるいは意図的じゃなくても、不良債権等を大きく抱えてきているという状況もありますが、ディスクロージャーについて、この法案でも一応厳しくやるのだみたいなことを言っておられますが、不良債権の開示等を含めて具体的にどこまでやるつもりなのか、お聞きしたいと思います。
  35. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  資金調達が直接金融による調達に自由化されるわけでございますが、市場からの資金調達を行うに当たりましては、今先生が言われましたように、これまで以上に充実したディスクロージャーが求められるわけでございます。  そのディスクロージャーにつきまして、投資者保護の観点から、この法律案におきましては会計の整理に関する規定を設けております。第九条、不良債権状況とか貸付業務の特殊性に着目いたしましたいろいろな項目のディスクロージャーを新たに義務づけることによってその充実を図って、今先生の言われる投資者保護に努めてまいりたいと考えておるわけでございます。
  36. 末松義規

    ○末松委員 その情報開示、不良債権もそうなのですが、銀行法の不良債権の開示と、レベルはどのぐらいなんですか、同一基準なんですか、それともそれよりも下になるのですか。その厳しさの程度について述べてください。
  37. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 新たにディスクロージャーが義務づけられます項目につきましては、この法律案に基づきまして定められます総理府令、大蔵省令により具体的に定められることとなっておりますが、今まさに先生に御議論いただいているような御議論を踏まえまして定めていくことになるわけでございますが、その際、趣旨といたしましては、貸付債権の価値はなかなか外部からは判断しにくいとか、事業規模が両建てで拡大していく可能性があることといったような貸付業務の特殊性に着目いたしまして定められるものであることから、やはり、今先生が言われました、同様の問題がございます銀行に求められているディスクロージャーの内容と同等の内容を定めていくことを基本としてまいりたいと考えておるところでございます。
  38. 末松義規

    ○末松委員 そのディスクロージャーの結果、これはかなりやばいなという話になった場合には、そのとき対応は何かやるわけですか、それともそれは市場に任せるわけですか。
  39. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 今先生がおっしゃいましたようにディスクロージャーに努めるわけでございますが、やはり一つは、これは法律によるものではございませんが、結局、通常、格付機関とか引受証券会社による審査など、市場による監視というものがこれから行われていくということに私ども着目しているところでございます。
  40. 末松義規

    ○末松委員 そうしますと、大蔵省としては、大きな指導といいますか、銀行に対する指導というのはほとんど、極力行わないという位置づけだという解釈でよろしいわけですね。  と同時に、各ノンバンクについて、やはり格付は促進していく動きが当然必要だろうと思うのですが、その辺についての見解はいかがですか。
  41. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 現在、金融業者につきましては、預金を受け入れていない点と、また決済システムを中心といたします信用秩序にも直接かかわっていないということから、やはりこの点は銀行等とは異なりますものですから、経営の健全性維持の観点からの規制、監督は行われていないわけでございます。  しかしながら、先ほどの話にもありますように、より銀行等金融仲介機能に類似したものとなるわけでございますので、投資者保護の観点から、まさにディスクロージャーの充実を図るとともに、いま一つは、一定の財産的基盤とか人的構成を要件とする登録制度を実施するということによって努めてまいりたいと考えております。
  42. 末松義規

    ○末松委員 格付の動きの方は。
  43. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 今先生言われました格付の話でございますが、通常、社債を発行しようとする場合には、引き受けを行う証券会社による審査が行われるほかに、格付機関による格付取得のための審査が行われているわけでございますから、その意味ではまさに先生の御趣旨にも沿いまして、これらのことを積極的に活用していく必要があると考えております。
  44. 末松義規

    ○末松委員 今の六条の登録制度ですけれども、確かに登録という制度を一つ設けることで投資家の保護とか消費者の保護という形になるのかもしれませんが、今言われた、資本とか出資の額でこれを限定するという位置づけですよね。  大蔵委員会調査室のつくった資料なんかを読むと、例えば出資額は五億にするとかいう議論があったり十億にするとかいう議論があったり、大蔵省は今は十億にして大体百四社ぐらいを対象にする方向で検討中という話もありますけれども、これは、三万社ノンバンクがあって、そのうち一万社は機能していないのかもしれませんが、僕なんかはもうちょっと緩やかに、五億とかそのくらいで、より広い範囲でやった方が直接金融という位置づけではよろしいのではないかと考えるわけですが、その辺について、どういうふうにお考えになりますか。
  45. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 今先生が言われましたように、投資者保護の観点から登録制を導入する。そのときに、最低資本基準は、登録の対象となります金融業者一定の財産的基礎を備えた金融業者に先ほど先生言われたように限定するために設けるものであるわけでございます。  この具体的な金額につきましては、現在お出ししております法案の第六条第一項第二号で政令で定めることとなっておりまして、この国会における御議論とかこれまでにいろいろいただきました各般の御意見を踏まえまして定めてまいりたいと考えております。  どういう具体的な金額かということになりますと、一つは、外部監査が義務づけられております商法特例法上の大会社資本金五億円以上というのがございまして、そういう中で、なおかつ相応の経営基盤を有すると思料される資本金というようなことを考えますと、先ほど先生も言われました十億以上というものも一つの考え方かとも思いますが、いずれにいたしましても、先ほど先生御指摘のようなそういう水準が妥当かどうか、いろいろな御意見を踏まえながら、いずれ政令で定めてまいりたいと考えております。
  46. 末松義規

    ○末松委員 国会の審議等を踏まえながらということは当然なのですが、その中で、こちらも、えっ、こんなに絞るのかとか、要するに裁量が余りにも大きいと国会で審議している意味がなくなるのですよ。そこのところをもうちょっとそちらの方で、こういう案なんだというような形、あるいは法律に書き込むという位置づけぐらいにしないと、後でこちらの方で決めさせていただきますというのは、これはやめてもらいたいと思うのですね。あえてちょっと注意をさせていただきます。  次に、もう一つの基準で、登録の拒否の要件の中で「政令で定める基準に達しない人的構成」というのがあるのですね。これの中身はどういうことなのですか。資格はどういうふうに考えておられるのですか。
  47. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  投資者保護登録制導入のもう一つの点が今言われました人的構成に関する基準でございますが、これは、登録の対象となります金融業者を、一定融資業務体制を有した的確なリスク管理が期待される、そういう金融業者に限定するために設けるものでございます。  この具体的基準につきましては、法案の六条第一項第三号によりまして政令で定めることになっておりまして、これも今御議論いただいているような御議論を踏まえまして定めたいと思っておりますが、的確なリスク管理体制を確保する、この点が大事でございますので、その観点からは、一定年数以上の融資業務の経験を有する者をやはり数名確保することを求めることが適当ではないかというぐあいに考えております。  今先生の言われました資格ということはないんでございますが、では具体的な経験年数、人数、どんなものが考えられるかといいますと、例えば、一つ参考になりますのは抵当証券業、これは「融資業務に三年以上従事した者が二名以上在籍していること。」とされておる例がございます。そういうものも参考にしながら、基本は国会での御議論を踏まえてまいりたいと考えております。
  48. 末松義規

    ○末松委員 ちょっと大臣にお聞きしたいんですが、人的構成、こういう人がいないとノンバンクとして登録できないよという人の構成が今話題になっているわけなんですけれども融資業務の経験者という話で、確かに一つの基準ということもあるかもしれませんが、バブルの崩壊のときに融資業務の経験者たちが一体何をやってきたかというと、ほとんど何もやってきていないじゃないかという状況になるわけですよ。意図的にあるいは意図的じゃなくても、要するに、実際に融資機能というもので安全性を考えたものではなかったというのがはっきりしてきたわけですね。その辺について、私は、銀行もそうですけれども、証券についてもそうだと思うんですね。ある意味では、みんなの流れに押されていいかげんにやってきたというツケを今払わされているんだろうと思うんです。  融資業務ということ、やはりここは、そういったリスク管理というものを新しい資格で、グローバルスタンダードかもしれません、そういうふうなものをきちんと、教育を受けた方がやらないとだめなんじゃないかと思うんですが、大臣の認識をちょっとお聞きしたいと思います。
  49. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 おっしゃいますように、バブル崩壊のときは全員総崩れみたいな感じでございましたが、殊にノンバンクにおいてその感は深うございました。これは将来に向かって全体的に反省をしなければならないことでございますけれども、この法律施行規則は、融資業務に三年以上従事した者が二名以上在籍していることということにいたしておりまして、これは自分のために気をつけなければならないことでございますが、十分こういうことが守られますように行政としても注意をしてまいります。
  50. 末松義規

    ○末松委員 そういった意味で、リスク管理ができるということは一体どういうことなのかというのを本当に真剣に検討していただきたいと思うんですね。その意味で、資格制度というのを一つの大きな形で考えていただきたいと思います。それを重ねてお願い申し上げまして、次の項目に入らせていただきます。  監督者なんですが、この法案を見てみると、権限の委任等で内閣総理大臣が金融監督庁長官に権限を委任していたり、例えば十五条大蔵大臣制度調査、企画立案のために必要があると思えば勝手に調査できる、報告を徴収できる、資料も提出できるという話になったり、どうもごっちゃになっているんですよ。  この辺の権限、実際に監督庁が監督するんであれば企画立案も監督庁でやればいいじゃないかと思うわけなんですが、その辺についていかがですか。裁量行政、ノンバンクに対してまた護送船団方式をやられたらかなわないという観点からお伺いします。
  51. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  第十五条規定がございますが、金融業者社債発行等による貸付資金の受け入れの実態が制度の企画立案に的確に反映されるように、金融制度の企画立案を担当いたします大蔵大臣制度の執行に当たる監督当局に対して、今先生が言われましたようにもともと事務が委任されているものですから、制度の企画立案につきましては必要な資料等を求めることといたしまして、さらに、企画立案のための補完的手段としては、限定的に、特定金融会社等に対してやはり資料の提出説明その他の協力を求めるということによって、これからいろいろな実態も見ながら企画立案に誤りなきを期してまいりたいというぐあいにこの条文の趣旨を私どもはとらえております。
  52. 末松義規

    ○末松委員 その観点、どうもまたこれも、何でも口を出せる形にはしておきたいな、ある意味ではそういう意図が感じられるわけですね。そこは自動的に悪いどうのこうのという話ではなくて、要は、実態としてこれがきちんと直接金融そして市民の方の役に立てばいいということが挙げられるわけなんです。  それでちょっと、護送船団の二の舞にはならないようにねという感じで、例えばノンバンクで今現に登録をしておられるところで大蔵省のOBというのは何人ぐらいいるんですかという話を聞いたら、大蔵省の方から連絡があって、これは金融監督庁じゃないと一切わかりませんという話があったわけですよ。そして、けさになって今度は、金融監督庁でもそれは把握できません、というのは、これは登録制度なんで、名前があればそれでもうあとはだれがどういうふうな人なのかわからないんですという話があったわけです。登録というのはそういうものかな、それはそれでいいかもしれませんね。  ただ、先ほどの登録の要件の中に融資業務を三年以上やっているとか、そういうふうな役員構成なんかもいろいろ調べるんでしょうね。では、そこはもう大蔵の関係者は全然わかりません、そして実は融資をどこまでやっているのかチェックはしますみたいな、一体どこまで人的構成について調べるのか調べないのか、その辺をはっきりしてほしいんですよ。そこをちょっと答弁お願いします。
  53. 乾文男

    ○乾政府委員 お答えいたします。  金融監督庁といたしましては、この改正を行いました場合、その法律及び政令の規定等に基づきまして適正に執行していくつもりでございますけれども、監督庁といたしまして法令の規定にのっとって対処してまいるわけでございますので、今御質問にございました特定の省庁からの出身者がどのようになっているかということは、この法律並びに貸金業規制法の報告徴収の要件に直ちには該当してこないのではないかというふうに考えているところでございます。
  54. 末松義規

    ○末松委員 私がきのう聞いたのは、実態として今十億円以上の百四社で大蔵省OBは何人いるのと言ったら、それはわかりませんという話だったんですよ。それは、この法律でないところではわからないんですか、あるいは天下りという観点からはノンバンクは世間に対して話も全くしなくていいという話なんですか。
  55. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 私ども大蔵省の方といたしましては、まず国家公務員法上の規制がございまして、退職後二年間につきましては国の機関と密接な関係のある営利企業に再就職する場合には人事院の承認を得ることになっております。そういう承認を得た人ということでございますと私どもで把握できるわけでございまして、これは平成元年からで五名でございます。  それから、現在、私どもの役所をやめられて貸金業等に就職されている人がどうかというようなことについて調査をしたことはございませんが、本人等のあいさつ状、連絡等で把握しているところでは七名ぐらいでございます。(末松委員「五名は含むの、含まないの」と呼ぶ)五名は人事院の承認を得た者でございます。それで、七名と申しますのは、本省の指定職等でおやめになった方で、本人からのあいさつ状、連絡等で私どもが把握している人が七名ぐらいいるということでございます。
  56. 末松義規

    ○末松委員 そういう数字がわかるのであれば、なぜ私の方に来なかったのか不思議なのですが。  そういった意味で、これからもそういった権限の関係は非常にセンシティブな話に当然時代の流れとしてなってきていますから、そこら辺はぜひ気をつけていただきたい。別に公務員の方の再就職を妨害する気は全くないし、そういった経験があるのであればそれは生かしていただいてもいい話ですが、それが護送船団方式のような形の、そういった大きな意味での過ちにならないように、時代の変遷とともに変わっていきますので、そこら辺をよく踏まえていただきたいということを最後に述べまして、質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  57. 村井仁

    村井委員長 次に、海江田万里君。
  58. 海江田万里

    ○海江田委員 民主党の海江田でございます。よろしくお願いを申し上げます。  今議題になっております金融業者でございますが、一部の金融業者、これはノンバンクと訳してもいいかと思いますが、これは、今末松委員からもお話ございましたけれども、多額の不良債権を抱えて大変経営に困難を来していると思うわけでございますが、他方、一部の金融業者、これは主に個人向けに融資を行っているということで貸金業者とも言われているようでございますが、こういう業者の中には大変利益を上げている業者もいるわけでございますね。  毎年発表になります法人税、法人所得のランキング、あるいは、今、個人の確定申告は終わりましたけれども、これから間もなく平成十年分の個人の所得税の高額納税者、大体五月ぐらいですか、公表になりますが、そこを見ましても、こうした貸金業者のオーナーがその上位に名前を連ねているということにきっとなるだろうと思いますが、大蔵大臣、一部の貸金業者がこの不況の時期にこれだけ利益を上げているというその原因は一体どこにあるとお考えでしょうか。
  59. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 複雑な問題でございますけれども、供給者の側からいえば、やはり銀行等々の、あるいは信用組合等まで、バンクと言われる部分でございますね、それが必ずしも正常に需要者の需要にこたえていないという問題があるだろうと思います。需要者から申しますと、しかしいわゆるバンクと言われるところに融資を申請するにしてはいろいろな欠陥がある。  必ずしも条件が十分でないといったようなことが両方にありまして、したがいまして、その間に多少ある意味で、これも語弊があるといけませんが、イージーマネーといいますか、銀行などのスタンダードからいえば緩い条件といったようなものの金融が、これはいい悪いでなくて、恐らく社会の必要として生まれているのではないかと思っております。
  60. 海江田万里

    ○海江田委員 これらの貸金業者の決算書を見てみますと、いわば業務純益でございますが、貸金業というのは、御案内のように資金を調達してきて、そしてその調達してきた資金融資して利ざやでもうけるわけでございますから、この利ざやが大変拡大をしているという事実もあるわけでございますね。これはお認めになりますか、どうですか。
  61. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 法に定められた範囲であろうと思いますが、そういうことはあると思います。
  62. 海江田万里

    ○海江田委員 まずそこで、法が一つ問題であります。  この法の問題にこれから入ろうと思いますが、法に入る前に、今度のこの法案では、貸金業者の、まあ金融業者資金の調達を多様化するということ、資金供給チャネルを多様化するということが大きな目的の一つに掲げられておりますが、現在、金融業者がどのくらいのコストで資金調達をしているのかということが、これは事前の通告をしてございませんので資料があるかどうかわかりませんが、例えば上位、中位、下位みたいな分け方があるのか。いずれにしろ、どのくらいのコストで、あるいはもっと端的に言いますと、どのくらいの金利でもって、今は間接金融でございますから金融機関からですけれども、とりわけ銀行からですけれども、どのくらいのコストで資金の調達ができているのかということを把握しておられますか。
  63. 乾文男

    ○乾政府委員 平均資金調達金利についてのお尋ねでございますけれども、消費者向け無担保貸金業者、これは通常の個人向けのローンをやっておるものでございますけれども、それの大手五社の平均資金調達金利調査いたしましたところ、次のようになっているわけでございます。  平成八年三月末におきまして三・四〇%、平成九年三月末で二・九四%、平成十年三月末で二・八〇%と、この二年間で見ますと若干の低下をしているということでございます。
  64. 海江田万里

    ○海江田委員 それでは、ついでに貸し出しの方の平均金利、これを教えてください。
  65. 乾文男

    ○乾政府委員 今申しました五社の平均貸出金利を同様に申し上げますと、平成八年三月末で二七・五七%、平成九年三月末で二六・七九%、平成十年三月末で二六・三六%と、これも低下をしてきておるということでございます。
  66. 海江田万里

    ○海江田委員 宮澤大臣、お聞きになっておわかりになったと思いますが、調達コスト、調達金利の平均が、大手五社ですけれども、平成十年で二・八%、それに対して貸し出しが平成十年で二六・三六ですか、二六%。つまり約十倍の利ざやを取っているわけですね。これは多過ぎると思いませんか、どうですか。率直に御感想を。
  67. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういう需要があり、そういう供給があるということが市場の事実でございましょうから、法に反していない限り、そのことについて十分分析をいたしませんとお返事が申し上げにくいと思います。
  68. 海江田万里

    ○海江田委員 これはそんなことはないと思うのです。私は印象を聞いているわけでございますから、これからどうするこうするということはまだこれからの議論でございますから、今の数字をお聞きになって、そのような数字はもう事前からわかっておったことで、当たり前のことなのか、それとも、これだけ開いておることに、一人の市民としてあるいは一人の納税者として、驚きを感じたか、平然としておられたかということをお聞きしたいのです。いかがですか、重ねて。
  69. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、冒頭にも高額所得者の申告の話をなさっておられまして、私もああいうものは見ておりますから、おっしゃるようなことがあるだろうという想像はできます。私は、特にそれが驚きだとは申し上げませんけれども、そのことにどう対応すべきかということは、よほどよく分析をいたしませんと申し上げにくいことであるし、印象だけを申し上げますと不用意になる心配があると思っております。
  70. 海江田万里

    ○海江田委員 それではお尋ねをしますが、先ほどから法律範囲内でというお話がございましたけれども金利の規制につきましては二つの法律があります。これはもう大臣つとに御存じだろうと思いますが、一つは利息制限法でございますね。普通、常識的に考えますと、利息につきましては、利息制限法という法律があって、この法律の第一条でございますが、元本が十万円未満の場合、年二割、二〇%、その超過部分につき無効にするという法律があるわけですよ。  今、金融監督庁からお話しいただきましたけれども貸し出し金利でございますが、大手五社でありましても、平成八年度末が二七・五七、平成九年度末が二六・七九、そして平成十年度末が二六・三六という形で、いずれもこれは、利息制限法で言いますところの制限利息をオーバーしているという事実があるわけでございますね。  それから、私は、もっと一般にいわゆる貸金業を利用する人たちがよく読む、サラリーマンの夕刊紙でございますけれども、これを買って調べてみましたけれども、ずらっと出ておりますよ、これは。  これを見ますと、大体年三六%、御徒町駅一分、どことは言いませんけれども。それから、安心、即決、人柄重視。人柄重視と言っているところが二四から三六・五%。まだ幾らでもございます。おもしろいのは結構いろいろあるのです。新しい店だから思いっ切りお貸ししますと言いながら、私は目が悪いものですから眼鏡がないと、とにかく小さく書いてあるわけでございますが、これが年利三六・〇%とか。これは三〇%以上。  今、監督庁からお話をいただきました数字というのは大手五社で二六・三%ぐらいということだから、これすらも利息制限法を超えているというところですけれども、一般の人たちが借りるのは、今御紹介をしましたように三六%、三十何%とか八%とか、そういうのが列挙されておるわけですね。そういうのが現実なんですね。これは、出資法との関係でおかしくはないんですか、どうですか。
  71. 乾文男

    ○乾政府委員 今、先生御指摘になりましたように、利息制限法の第一条第一項におきまして、金額によって違いますけれども、一五%から二〇%を超える利息につきましては、その超過部分につきましては無効とするというふうにされているところでございます。  それで、最後におっしゃいました出資法との関連で申しますと、出資法は、年利で四〇・〇〇四%を超えたときには刑事上の罰則を科すということになっているわけでございます。  刑事上の問題は別にいたしまして、先ほどの利息制限法と貸金業規制法との関係について御答弁を申し上げたいと思います。  利息制限法は、先ほどの例えば二〇%を超えますと無効としているわけでございますが、貸金業規制法が貸金業者についてのいわば特別法ということになってございまして、貸金業規制法の第四十三条によりますと、債務者が利息制限法の今の上限金利を上回る利息を任意に支払った場合におきまして、かつ、契約締結時及び弁済受領時に必要な書面の交付が行われているときには、利息制限法規定にかかわらず、有効な利息の弁済とみなすという法律がございまして、いわば特別法として利息制限法特例が設けられているということでございます。  ただ、私ども金融監督庁といたしましては、法律の問題は別にいたしまして、貸金業者の貸付金利引き下げにつきまして、資金需要者、借り手の利益の保護を図る観点から、私どもの事務ガイドラインにおきまして、出資法に定められた上限利率にかかわらず、みずからの経営努力によって可能な限り引き下げ、もって資金需要者の負担の軽減を図るよう努めることと定めておりまして、そういう観点から、貸金業界に対しまして機会あるごとに要請を行うなど、最大限の努力をしているところでございます。
  72. 海江田万里

    ○海江田委員 今、機会あるごとに要請を行うということですが、一番直近に行いました要請。  それから、もちろん、今議論をしておりますこの法律を利用して実際に社債などを発行するところと、今私が例示をしました金融業者とが、必ずしも同じじゃありません、これは規模なんかが小さいところもありますから。だけれども、やはり、このような法律がこれから通るに当たって、金融監督庁として改めて、金利が高過ぎるということを指導するおつもりがあるかどうか。  直近の例と、これからやるつもりがあるかどうか、お聞かせください。
  73. 乾文男

    ○乾政府委員 私ども、貸金業者の団体とかなり頻繁に、いろいろな問題につきまして、まさに国会での御議論あるいはマスコミ等で報道されるような問題について、あなた方、どう考えるのですかということの問題提起ないしいろいろなことをしておりまして、金融監督庁ができましてからも、平均いたしますと月に一回ないしは二回、そういう観点から接触をしております。最近の事例では二月下旬、あるいはその前でございますと一月ということで、関係団体を当庁に呼びましてそういう要請を行っているところでございます。  それで、この法律の改正後もそういう努力をすべきではないかとの御指摘でございますけれども、まさに先ほど申し上げましたような観点からの要請を行っておるところでございまして、引き続きそうした観点からの要請を業界に行ってまいりたいと思います。  ただ、御理解をいただきたいのは、貸金業規制法というのは、監督庁といいますか当局の権限というのが、いわば銀行などとは違って非常に限定されておりまして、そういうことから、貸金業者の貸付金利について、私どもが、命令はもちろんでございますけれども、強制的にどうこうせよということはできないことになっているわけでございます。  ただ、先ほど来の御議論等を踏まえまして、これまで同様に、業界に対し、貸し手の立場に立って、負担の軽減を図るよう努めることということを機会あるごとに要請をしてまいりたいというふうに考えます。
  74. 海江田万里

    ○海江田委員 貸し手の立場に立ってはいけないですよ。借り手の立場に立たなきゃいけないんですよ。まず、それは間違いですね。  それから、だれも私は命令なんということを一言も言っておりませんで、指導という言葉を使ったわけですよ。今、乾さんがおっしゃったのは、毎月一回か二回やっていると言うけれども、毎月一回か二回、本当に、あなたのところ金利高過ぎるよ、もう少し下げたらどうですかなんということを言っているんですか。これは本当にそう言っているんですか。私はそれを聞いておるんですよ。もう一回、答えてください。
  75. 乾文男

    ○乾政府委員 毎月一回ないし二回、当庁にお見えいただきましたときに、金利の問題に限らず、いろいろな問題が貸金業の問題について指摘されておりますから指摘しておりますけれども、そのときに、必ず金利の問題につきましても、こういう議論が国会あるいはマスコミ等で指摘されている、こういう問題について業界としてもさらに一段の努力をしていただきたいということを要請しております。
  76. 海江田万里

    ○海江田委員 国会の議論なんですから正確に言ってくださいよ。こういう議論が国会で議論されたりマスコミなどで報じられていると言うけれども、じゃ、この間、二月の下旬に来たとき、国会でそういう議論がありましたか。それからマスコミの報道が、そんなのがありましたか。今、初めてやっているんでしょう。金利が高いということはもちろん前にもありましたけれども、しょっちゅう同じような言い方をしているんですか。ただ時候のあいさつみたいに言っているんじゃないですか、これは。  それから、本当に言っていて、じゃ、そのとき、どういうような返事で、毎月毎月一度か二度言っているのに、何でそうしたら下がらないんですか。全く無視されているんですか、これは。正確にはどういうふうに言っているんですか。いつもいつも同じことを言っておったんではやはり意味がないんですよ。時期をとらえて、やはりきちっと言わなきゃだめ。本当に厳しく言っているんですか。  命令ができないなんということは百も承知ですけれども、時候のあいさつのとき、おはようございます、いや、それにしてもおたくはまだ金利が高いですね、あははとか、そんなような様子なんですか、それとも厳しく言っておるんですか。どういうやりとりですか、教えてください。もし記録があったら見せてください、それは。
  77. 乾文男

    ○乾政府委員 当庁に来ましたときに必ず言っておりますことは、最初に読み上げました私どもの事務ガイドラインでございますけれども出資法に定められた上限利率にかかわらず、経営努力によって可能な限り引き下げ、もって資金需要者、借り手でございます、失礼しました、借り手の負担の軽減を図るように努めることという趣旨を必ず繰り返して要請をしているところでございます。
  78. 海江田万里

    ○海江田委員 二月の下旬なんか国会で議論されていないんですよ。このことが国会で議論されたのは、私も全部繰ってみましたけれども、三月の三日か四日になって参議院の予算委員会でやっているんですよ。二月は、いつ直近に国会で議論がありましたか、教えてくださいよ。
  79. 乾文男

    ○乾政府委員 委員会の場での議論というのは、確かに今先生おっしゃるとおり三月初めということかもしれませんが、この法案のいわば事前説明に関係の先生方のところへ御説明に上がったとき等にそういう御意見をいただいているところでございまして、そうした観点からも、先ほど申しました事務ガイドラインの趣旨を強く要請しているところでございます。
  80. 海江田万里

    ○海江田委員 いいかげんなことを言っちゃ困りますよ。それを国会の議論と言うんですか。もっと言葉をちゃんと選んで発言をしないと、貸し手と借り手を間違えるとか、何事ですか。金融監督庁は貸し手の立場に立って指導をやっておるんですか。そこのところ、僕は指摘したけれども、あなたは認めないでしょう。貸し手と借り手間違いました、済みませんと言わなきゃだめじゃないですか。記録はそのまま残りますよ。そんなばかな、いいかげんなことを言っちゃ困りますよ、本当のことを言って。  こんなことをいつまで言ってもしようがない、もっとやりたいことはいっぱいあるから。まず、法務省の方は、出資法がつくられた趣旨というのがあるはずなんですよ。何で二〇%に決めたのかということ、このことについて。それで、これが現実に守られていないということについてどういうような見解をお持ちかということをお聞かせください。
  81. 村井仁

    村井委員長 ちょっと、海江田君。金融監督庁に再度発言を求めますか。(海江田委員「いいかげんな答えをやっているからだめですよ。求めません。法務省です」と呼ぶ)では、法務省吉戒議官
  82. 吉戒修一

    吉戒説明員 お答え申し上げます。  先生、制限利息二割とおっしゃいましたのでこれは利息制限法の話だと思いますけれども利息制限法の立法趣旨でございますが、これも御承知のとおり、金銭消費貸借の場面におきまして、貸し主が強い立場を利用いたしまして借り主から暴利をむさぼることがないようにするために、弱者保護を図るために制定されたというふうに承知しております。  元本の金額に応じまして制限金利が二割から一割五分まで開きはございますけれども、これは、元本金額の多寡といいましょうか多い少ない、それから金利及び貸し付けの実情等を考慮してこのような制限金利規定が設けられたもの、かように承知しております。
  83. 海江田万里

    ○海江田委員 当時は、やはり借り手保護といいますか、とりわけ、金融機関以外のところから資金を借りなきゃいけないという人たちはそれなりの弱みもあるわけでございますから、そういう人たちから余り暴利をむさぼってはいけないというのが趣旨だっただろうと思いますので、やはりそこが、罰則がないからといって守られていないということは、特に法務省所管の法律でございますから、法の番人が所管をしております法律でございますから、もちろんほかの役所が所管の法律もきちっと守られなきゃいけないんですけれども、こういう状況を余り放置しておいてはいけないんじゃないかなというふうに私は思うわけでございます。  そこで、どういうふうにすればいいのかなということでございますが、一つは、実際にペナルティーが出てまいりますのは、先ほど来お話のありますような出資法からのペナルティーを受ける金利で、これが四〇・〇〇四%ですか、たしかそういうふうになっておると思うんですが、この四〇%というのも、これも先ほど来お話がございましたけれども、長期プライムレートは二・六%ですから、この長プラレートの約十六倍とか短プラのレートで二十八倍、それから公定歩合の何と八十倍というのは、これはいかにも高過ぎるのではないだろうかということで、出資法のペナルティーの科せられます上限金利というのを少し下げるというようなことをお考えになっておられるのかどうなのか。何かそのようなお考えも大蔵省がお持ちだというふうにも聞いておりますので、いかがでしょうか。これは大蔵省にお尋ねをします。
  84. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、先ほどの御質問からもにじみ出ておりますように、いかにもこの金利は、こういうことがやむを得ないという説明があるにしても、やはり長期的にはだんだん下がってこなければうそだろう、それはそう思っております。
  85. 海江田万里

    ○海江田委員 今度の新しい法律が成立するのをきっかけに、それの見直しの作業というのをなるべく早く進めるというようなお考えはございますか。これと切り離してもよろしゅうございますけれども。やはり、こういう時期ですから、なるべく早くそういう作業に着手していただかなければいけないと思いますので、いかがでしょうか。
  86. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういうふうに心がけます。  やはり、人類の職業のうちでは一番古い職業の一つでございますので、なかなか扱いが難しゅうございますが、努力いたします。
  87. 海江田万里

    ○海江田委員 もう時間がなくなってしまいましたけれども、あともう一つお尋ねをしたい。いわゆる名簿屋というところに、これは大量にこういう金融業者からの利用者のリストが出回っているということがあるんですね。  これはもう御存じだろうと思いますが、品川区の業者のリストをとってみましたところ、ポルシェのオーナーとか慶応、テニス愛好家とか、こんなのはいいんですけれども、あえて会社の名前を言わせていただきますが、アコム利用者、千葉中心に四千百三十三名の名簿がある。サラ金利用者、一都三県二千九百二十二。準大手金融利用者、千葉、六千五百八十九。金融小口利用者、全国二千七百二十四。借り入れ大手金融三社、全国六千二百十一。幸福クレジット利用者、一都三県千三百十三。プロミス利用者、一都三県六千百三十二。これは何名分ということですが、こういうふうに、貸金業を利用されておる人の名簿を名簿屋さんで売っているんですね。  これはいいことなんですか、どうなんですか。これは法務省に聞きます。何か取り締まりをやっておられるのかどうなのか。
  88. 渡邉一弘

    ○渡邉説明員 お答えいたします。  一定状況を想定して犯罪の成否をお尋ねされているものと推察いたしますけれども、具体的な事案においてどういう犯罪が成立するか否かにつきましては、捜査機関が収集した証拠に基づいて判断すべき事柄でありますので、あらかじめ申し上げる性格のものではないということは御理解いただきたいと思います。  が、一般論として申し上げますれば、システム金融業者の行為が、例えば詐欺罪や出資法違反等、何らかの犯罪を構成し、名簿作成業者等がその犯行に加担したり、またはこれを容易にしたと認められる場合には、その犯罪の共犯が成立することがあり得ると考えられます。  また、多重債務者の情報に関しまして、公然と事実を摘示して人の名誉を毀損したと認められる場合には、名誉毀損罪が成立することがあると考えているところでございます。
  89. 海江田万里

    ○海江田委員 貸金業者の個人データの保護、これはどういうことになっているのかということをお尋ねすれば、恐らく金融監督庁は、業界の団体が、全国貸金業協会連合会が貸金業にかかわる個人データ保護のためのガイドラインをつくっておるというお答えがあるんでしょうけれども、これをよく読んでみたんですけれども、この程度のガイドラインで個人データが守られるとは、私は思わないのですね。  だから、時間が終わりですので最後に大蔵大臣に聞きたいと思うのですが、先ほど末松委員のお尋ねに対して、金融消費者保護法をつくるという御決意の披瀝がありましたが、そのときに個人データの防護、保護ということが大変重要な柱になるというお考えがあるのかどうなのか、それとも、個人データ保護については、金融消費者保護法とはまた別個のところに入ってくるというふうにお考えなのか、そのあたりのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  90. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど、金融審議会で検討していただいているということを申し上げましたが、ただいま海江田委員の御指摘の問題も一緒に審議会で御検討いただいております。
  91. 海江田万里

    ○海江田委員 まだまだ質問したいことはたくさんありますが、時間が来ましたので、これでお許しをいただきたいと思います。ありがとうございました。     —————————————
  92. 村井仁

    村井委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として日本銀行理事黒田巖君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 村井仁

    村井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  94. 村井仁

    村井委員長 次に、谷口隆義君。
  95. 谷口隆義

    谷口委員 本日審議をいたしておりますこの法案のポイントは、一定規模以上のノンバンクに対して多様な資金調達形態を認めてやろう、このようなことなんだろうというように思うわけでございますが、そこで、まず初めに概括的なことをお聞きしたいわけでございます。  先ほど末松委員の方からの質問にもございましたように、この法案対象となるノンバンクでございますが、これがまだ政令事項になっておるわけでございます。これは、先ほど資本金が十億円以上というようなことでございましたが、まずこれをお答えいただきたい。  もう一つは、社債の発行その他の政令で定める多様な資金調達形態ということでございますが、例えば社債発行等ということについては、どうもCPの発行であるとかSPCを通じた社債またCPの発行などが含まれておるというようなことでございます。その他、例えば転換社債であるとかワラント債であるとかいうような資金調達形態、また、もっと言うと、この法案で認められないような資金調達形態はあるのかどうか、これについてまず冒頭にお聞きいたしたいというように思います。
  96. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  最初の点でございますが、今回、社債発行等に伴いまして、投資者保護を図る観点から登録制を導入いたします。その際に、最低資本基準を、登録の対象となる金融業者一定の財産的基礎を備えた金融業者に限定するために設けるものでございまして、先ほども申し上げましたように、第六条一項二号によりまして政令で定めることといたしております。  これは、先ほどからも御議論いただいておりますこの国会における御議論や、これまでにいただいた各般の御意見を踏まえまして定めてまいりたいと考えておりますが、安定的な経営基盤の確保により投資者保護を図るという観点からは、例えば十億円とすることが一つの考え方ではないかと考えておるところでございます。  これは、先ほども言いましたように、先生御存じの、外部監査が義務づけられております商法特例法上の大会社、五億円以上の中で、なおかつ相応の経営基盤を有すると思料される資本金十億円以上ということが一つの考え方ではないかという考え方でございます。  それから、先ほど先生が御質問の社債等の等でございますが、これは、金融業者が貸付資金の受け入れのために自己の保有いたします貸付債権を、例えば特別目的会社SPC等の第三者へ譲渡いたしまして、その第三者が社債、CPの発行により資金調達を行うというようなことも考えられるのでございますが、いずれにいたしましても、社債発行のほかに登録を必要とする資金調達手段に係ります政令の具体的内容は、これもまた、この法案の御審議の御議論を踏まえまして検討させていただきたいと考えております。
  97. 谷口隆義

    谷口委員 もう一歩踏み込んで議論しないと……。多様な資金調達形態を認めてあげようということでございますので、これが、表に出ております社債の発行と、今伏屋局長の方からおっしゃったCPの発行であるとかSPCを通じての社債またはCPの発行ということのみならず、さっき私が申し上げました転換社債、また新株引受権つき社債、ワラント債、その他、もしこの法案でこの資金調達形態はだめだというようなものがあれば明確にしていただきたい。これは本法案のポイントでございますので、そのあたりは明確におっしゃっていただきたいと思います。
  98. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  先生がおっしゃるように、まさにそれは大事なポイントでございまして、転換社債社債でございまして、ワラント債もいずれも含まれております。(谷口委員「どういうものがだめなのか」と呼ぶ)今、ネガティブリストは手元にございませんが、とりあえず、先生が今言われましたような例はまさに社債そのものでございまして、含まれておるということでございます。
  99. 谷口隆義

    谷口委員 どのあたりまでの多様な資金調達形態が認められておるかというのは、これは一つのポイントでございますので、私が今例示で挙げましたが、それ以外に、しかし一方でこれはだめよというのがあればおっしゃっていただきたいのですが、それはないのですね。
  100. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  まず、今回の法改正によりまして、先生が言われました今の点で申し上げますと、基本的には自由化、自由になるわけでございます。  その上で登録を必要とするものは何かということで、先ほど申し上げましたような、例えばSPC等の第三者を通じた社債、CPの発行などは、ある意味では投資者保護のための措置を回避するための脱法行為として利用されるおそれがあるのではないかとか、際限なく事業規模が両建てになって広がってしまうのではないかということで、政令の具体的内容として対象とすることが適当であると今考えておるわけでございますが、いずれにいたしましても基本的には自由化されるわけで、自由でございます。こういうことで御理解いただきたいと思います。
  101. 谷口隆義

    谷口委員 ノンバンクといいますと、先ほどちょっとどなたかがおっしゃっていらっしゃいましたが、預金を受け入れない、また決済機能を持たない与信業務を営む企業のことをノンバンク、このようなお話でございました。  これは、貸金業規制法によりますと大体分類がなされておりまして、一つは消費者向け貸金業者、もう一つは事業者向け貸金業者、また銀行系クレジット会社、信販会社、流通・メーカー系クレジット会社、リース会社、その他、大きくはこのような七分類程度に分けられるのではないかというように思うわけでございます。  それで、これは大蔵大臣にお聞きいたしたいわけでございますが、今申し上げました多岐多様な分類の中にかなり様相の違うものが混在しているというように思うわけでございます。  例えばノンバンクの中にも、銀行系のノンバンクもあり、また独立系のノンバンクもございます。銀行系のノンバンクは、御存じのとおり、不良債権の問題が出てまいりましたときに、いわば銀行の別働隊として機能を果たしたところがございまして、そういう意味で大変不良債権を持っておるところがあるわけでございます。一方は、そういうことではなくて、独立系のノンバンクはそういう意味ではそのような動きはしなかったわけであります。  また、先ほど海江田委員の質問の中にもございましたが、消費者金融企業というのは、極めて収益性の高い企業がある一方で、その収益性の観点から見て大変厳しいところもある、こういうように混在しておるわけでございますが、この混在しておるノンバンクを一くくりにして、この業界一体として今回このノンバンク法案適用させるということについてどのようにお考えなのか、大蔵大臣に御所見をお伺いいたしたいというように思います。
  102. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 その前にちょっと、先生が今分類のことも言われましたものですからお答えいたしますが、ノンバンクは、いわゆる預金等を受け入れないで与信業務を営む企業を指す総称として使われております。先ほど先生が言われましたように、これは銀行等と異なりまして、法令等により専業義務が課されていないとか、業務運営面での自由度が極めて高くて、その形態が、先生御指摘のように、消費者金融会社とかクレジットカード会社とか信販会社、リース会社その他等、さまざまであるわけでございます。  どういうぐあいにこれを考えるかというときに、やはり一つ大事なことは、私ども法制を考える上では、ノンバンクはあくまで預金等を受け入れていないことと決済システムを中心とする信用秩序には直接かかわっていない、こういう点で銀行等とは異なります。したがって、現行でも、経営の健全性維持の観点からの規制、監督はノンバンクは受けていないわけでございまして、貸金業規制法に基づきまして、これは主として借り手保護の観点からの規制、監督を受けているわけで、そういうあたりが現在の法制の一つの仕分けになっていると思います。それらを基礎としながら考えていかなきゃなりませんのですが、その際にどういうぐあいに限定するかということで、先ほどの、先生も御質問されました、財産的基礎とか人的構成を登録制度の一つの要件と考えているところでございます。
  103. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今のお尋ねはちょっと難しくて上手にお答えできませんけれども、一つは、人からのお金を預からない、預金を受けないということ、もう一つは決済にはかかわらないという、その二つははっきりしておると思います。その上で、この際、いろいろな業態にかかわらずある程度の規模でこの法律については押さえておこう、それは、十億円でございますか何でございますか、そういうことにしておきたい、こういうようなことであろうかと思います。
  104. 谷口隆義

    谷口委員 それと、タイミングの問題なんですね、私が申し上げたいのは。  今ちょうど、金融再生委員会の方で金融機関に対する資金注入が決定いたしました。それで資金注入をされるわけでございますが、金融業界は、御存じのように大変厳しい状態でございます。そういう金融業界と与信業務という意味においていわば同じフィールドで戦っているというか、このノンバンクの業界が、より一層、銀行の貸し渋りの部分の補完を行うとか代替を行うというようなことが予想されるわけでございます。それが金融機関の収益に、より一層悪化させるというような影響を与えないのかどうか、こういう金融業界とノンバンク業界との関連の観点でどのようにお考えか、お聞きいたしたいというように思います。
  105. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 今先生が言われましたタイミングの問題ということで、一つこの法案の経緯的なものをお話しいたしますと、もともとこれは規制緩和の推進ということで政府の計画の中で検討するということを示されまして、それで懇談会等を開いて、金融制度調査会でも検討が行われたわけでございます。それで、既に先ほど委員長の最初のあれがございましたが、百四十二回国会に提出いたしまして継続審議になっておりまして、この時期といいますのは、一つは、昨年の十一月の政府の緊急経済対策におきまして金融業者貸付業務のための社債発行等に関する法律案の早期成立が求められるということが決められまして、その意味でも私ども、早期に成立をお願いしたいというのが、経緯から申し上げるタイミングでございます。  もう一つは、銀行との関係でございますが、これは、ノンバンクも国民経済において重要な役割を果たしているわけでございますが、今言われました、これから銀行も含めて全体として金融システムが構築されていくということを期待しているわけでございますが、それぞれの役割、それぞれの分野というのがあるかと思います。
  106. 谷口隆義

    谷口委員 よくわからなかったんですが、要するに、銀行業界からのヒアリングはされたんですか。
  107. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  金融制度調査会での検討の段階では、各界からの意見もいろいろ踏まえた上での答申をいただいたわけでございますが、先生が今言われる現時点でということになりますと、この最近時点では、ちょっとヒアリングをしたとか意見を聞いたということは、私、承知しておりません。
  108. 谷口隆義

    谷口委員 今、とにかくこの三月末の決算をどのように乗り切るかということで、経済全体の大変大きな問題になっておりますし、株式市場も大変動向が気になるところでございまして、特に一番ポイントになっておるのは金融機関の収益状況でございまして、このような状況の中で、一方でノンバンクを元気づけると申しますか、金融機関の補完を認めていくということについて大きな問題がないのかどうかということをお聞きしたわけでございます。  その問題はこの程度にいたしたいというように思います。  それで、次に、今回のこのノンバンク法案も、いわば我が国がビッグバンを始めて、海外金融機関海外のノンバンクが我が国にどんどん参入をしてくる、国内において国内のノンバンクと海外のノンバンクと競合する、伍して戦うというような事態に今なっておるわけでございまして、そういう意味において、この規制緩和の大きな流れの中からは、今回の法案は正しいものではないか、私はこのように考えておるわけでございますが、一方、先ほど何点か申し上げましたような大変危惧するところもあるということでございます。  それで、ノンバンクの中のリース業界のことについて、税制の関連でお聞きいたしたいことがございます。  税制の立場でリースというのはどういうような見方をいたしておるのかということでございますが、リースにかかわる税務は、従来から、節税行為と申しますか、税の分野で極めて問題になっておったところでございまして、それが、リース業界、広い意味でノンバンク業界が我が国の金融全体の中で立場を占めてまいりまして、リース全体につきましても、いろいろな批判はあるわけでございますが、それはそれなりに根づいてまいったわけでございます。そういう観点におきまして税制の対応もそれに合わせた対応が必要ではないか、このように思うわけでございます。  それで、ちょっと具体的なお話をさせていただきたいわけでございますが、衆議院はもう今回通過いたしました平成十一年度の税制改正案の中に中小企業促進税制というのがございまして、その中にリースの税額控除というものがございます。このリースの税額控除の内容を見てまいりますと、大型貨物自動車、これがリース資産の税額控除の適用になるというような書きぶりになっておるわけでございます。  それで、現実にそれが適用できるのかどうかということを精査いたしますと、運送業者の所有しておる貨物自動車の耐用年数は四年になっておるわけでございます。今回のリース資産の税額控除の適用されるのが、耐用年数が五年以上、リース期間が五年以上のもの、こういうように規定されておりまして、実際、運送業者の所有しておる貨物自動車にリースの税額控除が適用できないというようなことになっておるようでございます。  一方、これを買い取りをいたしますと三〇%の特別償却ができるということでございまして、しかし一方で、税全体の構成を見てまいりますと、いかにもリースの税額控除ができるというふうに読めるといいますか、解釈ができるわけでございます。そういうことで、どうも市中においては、特別償却のみならず税額控除もできるということで考えておられる方が多いわけでございます。  まず初めに、主税局の方から、これに対する今の現状と考え方とを述べていただきたいというように思います。
  109. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 お答えいたします。  今先生から、中小企業投資促進税制におけるリースの取り扱いについてお尋ねがございました。  今、リースの投資促進税制として認めている制度として、七つほどございます。それで、実は、リースについて税額控除を認めるかどうか。つまり、リースの場合は取得するということにならないものでございますから特別償却の対象になりません。それで、いずれもリースの税額控除制度を認めさせていただいているわけでございます。  これは資産の取得と言えるかどうかという問題はございましたが、先生が今まさにお話ございましたように、リースというのは年々発達してきておりまして、いわば中小企業の設備投資をする上でも重要な存在になっているわけでございます。そういう機能に着目いたしましてこのような投資促進税制の対象にしてきているところでございます。  今回の中小企業投資促進税制でございますが、ちょっと昨年からの経緯を申し上げさせていただきますと、昨年、これは景気対策のために創設させていただきました。それで、車の関係について申し上げますと、車両総重量八トン以上ということで昨年度設けたわけでございますが、今の中小企業の実態に即しますと、やはり中小企業者の利用する三・五トンというものも追加すべきではないかという御議論がございまして、今回、その三・五トンというのを対象にしたわけでございます。  ただ、このリースでございますが、先ほど取得と言えるかどうかというお話がございましたが、一方、支払う中小企業者のサイドの方からいたしますと、大変費用が均等化して支払われるというメリットがございます。それから、それは年々損金算入になるわけでございますが、税務上も多少有利な点があったりいたしまして、それで、税制の考え方といたしましては、リースにつきましては、やはり中小企業者がなかなか取得することができないであろう耐用年数五年以上のものについて認めることが適当でないかということで、今回の措置におきましても同じように、三・五トン以上も五年の耐用年数のものについてはリースについても適用されるというふうになっているわけでございます。  それで、今先生から、ここの適用関係が、貨物運送事業者の場合には四年であるのに、今の一般の受けとめ方はこれも対象になると思っているぞという御指摘があったわけでございます。  確かに、今の制度を前提に三・五トンの車を追加したものでございますから、私どもこれまで、今回の措置について五年以上であるということは余り申し上げてこなかったわけでございます。先生がおっしゃいますように、誤解されて混乱を来すということも予想されますので、法案は今参議院で審議しておりますけれども、この点混乱が生じないように、私ども、関係省庁を通じて今回の制度適用関係をよくPRに努めていく必要があるな、こういうふうに考えているわけでございます。
  110. 谷口隆義

    谷口委員 今主税局長がおっしゃったように、昨年は八トン以上のものが今回の税制改正で三・五トンになったわけでございます。これは、仮に五年以上ということになりますと、運送業者の所有しておる貨物自動車がリースの税額控除の対象にならないということになりまして、いわばこの中小企業促進税制が、旗は掲げていらっしゃるわけでございますが、果たして実態が実をとれるような、経済対策となり得るのかどうかという観点でいったときに、これは私はやはりちょっと問題があるのではないかというように考えております。  今主税局長のおっしゃったように、現場においてはちょっと混乱もしておるところもありますので、そのあたりはきちっと説明していただくことと、今後はそのことも含めて、特別償却はできるが税額控除はできないというようなことがないように対応していただければ極めてありがたいというように考えておりますので、ぜひそういう混乱の生じないようにやっていただきたいと思います。  次にお聞きいたしたいわけでございますが、本日は日銀から来ていただいております。今回、先ほど私の質問の中にもございましたが、金融機関とノンバンクの業界の問題があるわけでございます。  金融機関融資残、これは平成八年の三月末現在の融資残でございますが、都銀が二百十六兆円、地銀が百三十五兆円、第二地銀が五十三兆円、信用金庫が六十九兆円、信用金庫以上のもので合わせまして四百七十兆円程度融資残があるわけでございます。これに対して、ノンバンク全体の融資残が六十八兆円というようなことになっておりまして、割合でいきますと金融機関融資残の七分の一程度ノンバンクの融資残があるというようなことでございまして、これはやはりかなり大きな金額になっておるということで、まずこの質問をさせていただきたいわけでございます。  今後、この法案が成立したという仮定のもとでお話をさせていただきますと、かなり金融機関の本来の融資機能を代替するといいますか、補完すると申しますか、伸びてくる可能性があるわけでございます。今現在におきましても融資残高の七分の一はこのノンバンク融資があるわけでございまして、整合性のある金融政策という観点で決して無視できないものがあるのではないかというように思うわけでございますが、まず初めにそのような観点での御見解、御意見をお聞きいたしたいというふうに思います。
  111. 黒田巖

    ○黒田参考人 お答えいたします。  私どもの観点から見ますと、短期金融市場は、国会でお決めをいただきました基本的な枠組みのもとで、各種の金融機関がその機能を発揮し、その結果として生ずる短期の資金余剰、資金不足が市場において効率、適正に調節されるという場、まず市場がございまして、それを前提といたしまして私どもはオペ等の手段によりましてこの市場に働きかけるようにいたしまして、この市場を通じてその効果が経済全体に及んでいくということを期待しているわけでございます。  そうした観点から申し上げますと、さまざまな経済的機能を負って活動している経済主体のニーズが適正に、広い範囲で、市場に金利等々の形でさまざま反映されるということは望ましいことであろうかと考えております。  ただ、もちろんその場合に、いろいろな取引には決済に至るまでさまざまなプロセスが必要でございますので、そういうことにつきましてきちんとした対応があわせてなされることが必要であり、それがまた市場から期待されることになるというふうに考えておる次第でございます。
  112. 谷口隆義

    谷口委員 ちょっと質問のしぶりが悪かったかもしれませんが、要するに、現行の状況の中においてもノンバンクはかなりの融資残高があるわけでございます。日銀の方で、これが金融政策全体の立場で影響があると考えていらっしゃるのか、また、あると考えていらっしゃったら現実にどのような対応をとられておるのか、このあたりをお聞きいたしたいというように思います。
  113. 黒田巖

    ○黒田参考人 お答えいたします。  この今御議論の新しいノンバンクの姿、これが市場においてどのような形にこれからなってくるのか、これは私どもも十分注意して見させていただきたい、そういうふうに考えます。  若干追加させていただきますと、金融機関の規模というものと市場における参加の度合いというものは、必ずしも比例はいたしません。金融機関の規模が大きくても、短期の資金の調節のニーズは必ずしもそれに比例して高くならないケースもございますし、これは、具体的なビジネスがどのような形をとって展開していくかということにも大きく依存するところでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、その様子をしっかり見ながら適切な対応をとっていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  114. 谷口隆義

    谷口委員 例えば窓口規制というような方法をとられる場合がございますね。今まではノンバンクは金融機関融資だけで資金調達をやっておったわけでございますが、このノンバンク法案が成立しますと、直接金融市場から資金調達を行うというような形になるわけでございます。そういたしますと、そのあたりも十分勘案しながら、私前に申し上げておりますように、金融政策全体の整合性をとっていかなければいけないのではないかというように今考えておるわけでございます。  現在、間接金融の比重が極めて高くて、全体の立場でいきますと、直接金融市場が拡大していくということについては、これは一方で好ましいことであるのではないかというように思うわけでございますが、一方で、そのような直接資金調達を行うノンバンクの状況を踏まえて、全体的に金融政策において影響があるのかないのか。また、そのような影響を予測し、それに対してどのように対応しようとされておるのかということについてお伺いいたしたいということでございます。
  115. 黒田巖

    ○黒田参考人 お答えいたします。  金融の調節との関連でございますけれども、私ども、先ほど先生から御指摘ございました窓口指導、貸出規制というようなことは現在廃止しておりまして、やっておりません。あくまでも現在、金融調節の主体としておりますのは、先ほど来先生御指摘の、金融市場におきますオペレーションというものを中心としているわけでございます。したがいまして、オペレーションでございますので、そこから先、どの金融機関がどの程度の額の与信をするかというようなことにつきましては、あくまでも市場の状況を反映して各金融機関が自主的に決められる、こういう仕組みになっております。  私どもといたしましては、そうした動きを全体、マクロで見て、どの程度の水準になっているかということを見ながら調節していく、こういうやり方でやらせていただいておる次第でございまして、今後ともそうした目で見ていきたいと考えている次第でございます。
  116. 谷口隆義

    谷口委員 ちょっと私は素人でわかりませんが、例えば短期金融市場、コール市場なんかに、資金の出し手、取り手でノンバンクが現在参加しておるわけでございますか。
  117. 黒田巖

    ○黒田参考人 お答えいたします。  ただいまコール市場の参加者について御質問でございますが、ここにはいわゆる銀行のほかに、例えば証券会社、投資信託、生命保険会社といった銀行以外の金融機関も参加いたしております。
  118. 谷口隆義

    谷口委員 ノンバンクは。
  119. 黒田巖

    ○黒田参考人 今のところ、先生御指摘のような主体は、少なくとも重要な役割を果たしている状況にはないと認識しております。今後の問題でございます。
  120. 谷口隆義

    谷口委員 いや、重要な役割を果たしているかどうかではなくて、現在、その参加者の中にノンバンクがあるのかないのかということをお聞きいたしておるわけでございますが、どうですか。     〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
  121. 黒田巖

    ○黒田参考人 お答えいたします。  金融市場への参加者というのは、あくまでも市場の取引の中において決せられてくるものでございまして、制度的にあらかじめ決められているものではございません。したがいまして、私ども悉皆的に認識しているわけでもございませんが、私の存ずる限り、今のところ、コール市場のような市場につきましては少なくともさしたる役割は果たしていないというふうに認識しております。
  122. 谷口隆義

    谷口委員 いずれにいたしましても、そのように、ノンバンクがいろいろ現在の状況とは異なるような動きが今後この法案成立後出てくるのではないかというようなことでございますので、金融政策全体の立場で、整合性のとれたことをやっていく必要があるというように申し上げたいと思います。  それと、まだ若干時間がございますのでお聞きいたしたいわけでございますが、先ほど海江田議員も若干触れられたわけでございますが、消費者金融の問題で、特に多重債務、自己破産というようなことについてお聞きいたしたいわけでございます。  この消費者金融が急成長をしたというようなことでございます。これは、一九八三年十一月に出資法と貸金業規制法が成立し、消費者金融会社が法的に認知され、悪徳業者が排除されたということがまず一点あるんじゃないか。それと、全国信用情報センター連合会を業界が設立し、貸し倒れリスクを低下させたということと、消費者金融の中に公開会社が出現するということにより企業イメージがアップしたということと、あともう一つ、自動契約機の登場というのがあって、九六年度に、契約時に非対面により抵抗感を弱め新規顧客を呼んだ、これが急激に消費者金融を成長させたと言われることがあるわけでございます。  それで、大変業況が悪いわけでございまして、直接この消費者金融融資と結びつくわけではございませんが、国民の中でこのところ自己破産が大変急増いたしております。平成九年度の資料によりますと七万件を超えた、ここ十年間で七倍に膨らんでおるというようなことでございます。  日本の家庭の持つ借金は住宅ローンを除いて七十五兆円になっておって、ある人がおっしゃるのは、潜在的自己破産者は百万人を超えるんではないか、このようなことさえも言われておるわけでございます。最近は、特に住宅ローンの自己破産が多い。当初の収入の状況が計算違いになって、減収によってローンが払えない、また、失業が起こってローンが払えないというようなことによる自己破産が急増いたしておるようでございます。  まず、こういう状況について、大蔵大臣の御見解をお聞きいたしたいというように思います。
  123. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  事実の点につきましては、大体先生が今御指摘になられたとおりでございます。先ほどから銀行との関係からも先生も御質問いただいておりますが、基本的には、ノンバンクは、その自由さとか機動力を生かしまして、銀行等にはないノウハウを生かした、今まさに御質問のある小口の分野とか専門性の高い分野に資金を提供しているところでございまして、それはそれとして国民経済において重要な役割を果たしているわけでございます。  しかしながら、特にバブル期におきまして不動産関連融資等に傾斜したとかいうことで多額の不良債権を抱えるに至っておりますことと、もう一つは、今の御質問の、消費者信用市場の拡大の一方で、景気の低迷等を背景にいたしまして、個人の自己破産件数が先ほど先生が指摘されたように増大しているわけで、多重債務問題等の関連でも、やはりノンバンクの業務運営のあり方が批判されることがあるわけでございます。  そういう意味で、今後ノンバンクは、融資姿勢の問題とかリスク管理を徹底するとか、多重債務を未然に防止するため消費者信用における与信審査を厳格化するなど、適正な業務運営が求められておりまして、先ほど御質問にありました自動契約受付機でも、やはりこれが過剰貸し付けを増長しているんじゃないかという御指摘もあることは承知しております。  自動契約受付機による貸し付けにつきましても、これは貸金業規制法による規制の対象となっておりまして、店頭貸し付けと同様に顧客の返済能力等の審査が行われているものと承知しておるわけでございますが、そういう規制も含めまして、貸金業に対する規制のあり方について、借り手の実態を踏まえながら引き続き検討していく必要があると考えております。
  124. 谷口隆義

    谷口委員 先ほど私が問題にいたしました自動契約機ですね、非対面で抵抗感がないということで急成長の一つの大きな要因になっておるというようなことでございます。特にこの無人契約機に関して対応をお考えなのかどうか。今極めてざっくりとしたお話でございましたので、具体的にどのようにお考えなのか、お聞きいたしたいというように思います。
  125. 乾文男

    ○乾政府委員 お答えいたします。  今、大蔵省の方からのお答えがございましたように、自動契約受付機におきましても、いろいろな過剰貸し付けの助長という批判があるわけでございます。自動契約受付機につきましても、店頭貸し付けと同様の手続によりまして審査が行われることになっているわけでございますが、イメージといたしましては、先生御指摘のように、対面でないことから、借り過ぎといいますか、簡単に借りることにつながりやすいという御批判があることは承知しているわけでございます。  そうしたことから、私どもといたしましても貸金業連合会といろいろな話をしました結果、業界におきましても、まず、自動契約受付機の広告に当たりまして、簡単であるとか楽々であるとの言葉を用いないということ、それから、先ほど申しました、自動契約受付機も店頭と同様の審査を行っていること等を契約機のところに明示する等の自主規制を行っているところでございます。さらに、全国貸金業協会連合会におきまして同様な自主規制を行うよう要請しておりまして、現在、広告の自主規制基準を改正する方向で検討中であると承知しております。  そうした最近のいろいろなことの中で、業界の方も非常にそういう点に注意を払っているようでございまして、大手業者から私どもヒアリングいたしましたところ、自動契約受付機を利用しようとした新規顧客のうち、約三割程度契約をお断りしているというふうなことにあるということも聞いているわけでございます。  引き続き注意を払ってまいりたいと考えております。
  126. 谷口隆義

    谷口委員 現下の自己破産が急増しておるという現状にかんがみ、このあたりの消費者金融あり方は極めて重要ではないかというように思います。  駅前に行っても、空室のところはほとんど全部ノンバンクの消費者金融が入っているというようなビルが林立しておるわけでございますから、果たしてそれがいいのかどうか、よくよく考えてやっていかなければいけないというように申し上げまして、時間が参りましたので、これで質問を終わらせていただきます。
  127. 鴨下一郎

    ○鴨下委員長代理 次に、西田猛君。
  128. 西田猛

    ○西田(猛)委員 自由党の西田でございます。  それでは、本法案について御質疑をさせていただきたいと思っております。  この法律案は、金融システム改革の一環として、投資者保護の観点からの措置を講じつつ、社債発行等によって金融業者と呼ばれる人たちの資金調達を自由化するものでございまして、時代の要請に基本的には合致した望ましいものであるというふうに私たちも考えております。  ただ、その中身を見てみますと、社債の購入者等の保護に資するために、これは大変結構なんでございまして、貸付業務のために社債の発行などを行う金融業者について、最低資本金基準などを要件とする登録制度を実施することとしております。それからまた、証券取引法に基づく有価証券報告書等に融資業務の特殊性に対応した貸し付け状況等の項目を明確に表示するための会計の整理、こういうことを義務づけておりまして、ディスクロージャーの充実を図っております。  こういうことは投資家保護の観点からまことに必要なことでございますけれども、他方、我が国の資本市場でこういう金融業者等が資金調達を行うわけでございますから、我が国の資本市場がこういう発行体にとって資金調達のしやすい、ありていに言えば使い勝手のよい市場であることが必要だと考えております。  したがって、投資家の保護を図るとともに、今回の措置が、グローバルな他の資本市場、世界じゅうの他の資本市場に比べて非常にがちがちで使いにくいものであってはならないというふうに私は考えておるのですけれども、そのあたりについて御見解はいかがでしょうか。
  129. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 基本的に申し上げまして、御指摘のとおりだと思っております。自由化ということは、向こうからも入ってくることでございますが、こちらも開くということでございますから、我が国がそういう市場になる、人が入ってきやすい市場になるという努力は、これは通貨の面でもそうでございますけれども、今まで十分行われているとも言えません。国内及び対外的に開かれていかなければならない、それはもうおっしゃるとおりだと思っております。
  130. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今、大臣の方から基本的な方向性を示していただきましたが、それでは、その市場の使い勝手のためにどういう措置を今東京市場に、専ら東京ですけれども、についてとってきているのか。  それから、今回の法律案によってそのことが損なわれることはないでしょうねという観点を、具体的なことで結構ですので、当局からでもお答えいただければと思います。
  131. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  投資家保護のためには、有価証券や発行会社内容につきまして、先生今言われましたように適正なディスクロージャーがなされることが必要でございまして、連結情報中心のディスクロージャーへの移行など、その充実に努めているところでございます。その一方で、会社側の負担も考慮いたしまして、可能な範囲内で簡素化の措置も講じるなど、効率化にも努めてきております。  他方、社債コマーシャルペーパーの円滑な発行の観点から、従来から累次の規制緩和を進めてきておるところでございまして、社債につきましては平成八年に、またコマーシャルペーパーにつきましては平成十年に、発行上の制限をすべて撤廃いたしまして、発行市場の自由化が完了したところでございます。  さらに、どういうような点がという御質問でございますが、コマーシャルペーパーの発行、流通につきましては、昨年十二月の規制緩和委員会の見解、また本年一月の閣議決定、経済構造の変革と創造のための行動計画におきまして、コマーシャルペーパー企業の短期の資金調達手段として一層、先ほど先生言われました言葉のとおり、使い勝手のよいものとする観点から、コマーシャルペーパーのペーパーレス化について早期に検討を開始すべきであるという指摘が行われております。  このコマーシャルペーパーのペーパーレス化に当たりましては、手形法制上の問題等をまだ検討する必要があることから、ペーパーレス化の方策について、法務省とともに検討してまいる所存でございます。  今おっしゃいました意味では、現状はそういうところでございまして、この法案とは両立できる話だと考えております。
  132. 西田猛

    ○西田(猛)委員 この法案とぜひ両立するものであっていただきたいと思っております。  それから、先ほど宮澤大蔵大臣は通貨の点も御指摘になられました。私はこの点は非常に大切なことだと思います。市場が、世界の発行体それから投資家、両方にとって使い勝手がよいものであるとともに、円自体が発行体にとってもそれから投資家にとっても魅力のあるものでなくてはならないというふうに考えます。  それから、統一通貨ユーロの誕生によりまして、どうも世界が米ドルとユーロに二極分化していって、もはや円がノー・ロンガー・キーカレンシー、もうアジアのローカルカレンシーになってしまっているのではないかという危惧も言われています。  例えば、数字で御紹介したいのですけれども日本証券業協会の調べによりますと、これはユーロ債の発行規模ですけれども、例えばユーロ円、ユーロ米ドル、ユーロ・ドイツ・マルクなどでございます。ユーロというのは御存じのように各国通貨が自国以外に環流している場合の通貨ですけれども、それによれば、例えば一九九五年にはユーロ日本円というのは米ドルの単位でいって六百四十五億ドルからの発行がなされていたというふうに言われておりますが、それが九七年に至りますと二百八十四億ドルにまで下がっている。二分の一以下になっております。  他方、米ドルでいえば、ユーロ米ドルは、九五年には千四百四十四億ドルだったものが一九九七年になると三千六百十六億ドルというふうに、三倍近くにふえている。それから、フランス・フランに至りましても、至りましてと言うとフランスにしかられるかもしれませんが、一九九五年には百二十七億ドルベースであったものが九七年には四百九十八億ドルと、円よりも多くなっているというふうなことが散見されるわけです。九七年においては、ユーロ・イタリア・リラの方もユーロ円よりも多くなっている。ユーロ市場における発行残高です。  このような状態になってきて、円による発行体が、調達機関が非常に少なくなってきている。私は、これはある意味で非常に驚いて見ていかなければならない数字でありまして、憂慮するべきことではないかなというふうに考えております。  このような中で、円が使い勝手のよいもの、魅力のあるキーカレンシーとしての地位を保っていくために、今後、政府におかれてもあるいは日本国全体としても頑張らなければいけない。当然、日本の経済が上向いて、日本経済が回復することが円に対する魅力を高めることでございますけれども、具体的にどのように考えて、どういうふうに行っていったらいいとお考えになられますでしょうか。大蔵大臣の方から基本的なお考えを伺って、当局から具体的なことを伺えればと思っております。
  133. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今、ユーロボンド市場の規模についてお話がございまして、おっしゃいますように、これはやはり基本的には日本経済のこのところの衰退の結果であるというふうに思いますから、基本的には、我々の経済が正常化し、プラスの成長を始めるということが大事と思いますが、同時に、今まで、戦後ほとんどと申し上げても間違いではないぐらい、我々としては円が他人に使われることについて余り積極的でなかったということがございました。むしろ意識してと申してもいいほど、やや消極的であったと思います。  それは、戦前のいろいろなこともございますけれども、むしろ日本経済にそれだけの重荷を背負わせるべきかどうかといったようなことについての議論もあったように思いますが、それがそうばかりもいかないというふうに政府として思い始めたのはつい先ごろのことでございますので、例えて申しますと、円建ての貿易、輸出につきますと多分三割五、六分と思いますが、輸入につきましては二割の台でございます。  そういうことも、仮に円建てでやりましても、先方が持った円をどうするのか、それを運用する市場がない。市場は我々が意識して実はつくろうとはしなかったというようなことがございますから、先方もなかなか円を持とうともしない。また、円がずっと上がってきたことも影響があったと思いますけれども、いろいろなことで、積極的に円というものを国際通貨に、あるいは他人様が使う通貨にしようという気持ちに欠けておりました。  ようやくここへ来まして、東京市場というものをつくろう、そして、政府の短期国債にしてもファイナンシャルビルのようなものにしても、その発行にしてもあるいは源泉徴収を免除するといったようなことにつきましても、ようやくこのたび税制を整備させていただこうとしておるぐらいでございますから、大変におくれております。  たまたまでございますが、一昨年来、東南アジアの通貨危機というものがあって、ヘッジをしていた人たちが、ドルだけにヘッジをすることは少し危険だというようなことに気がつき始めているといったようなこともあり、また、日本からこの通貨危機に際していろいろ援助しているということもありまして、円についての関心はそれらの国々でもようやく生まれ始めていると申しますか、そこでこちらも市場をようやく開くというようなことでございますから、これからのことであろう。  ユーロは、いろいろ申しましても、程度の差はいろいろ、まだわかりませんけれども第二の国際通貨になっていくわけでございますが、円はまだまだそれだけの、ようやくスタートにつけるかどうかといった程度でございますから、これからの問題として、これは国民全体がやはり意識して努力をすべきことではないかというふうに考えております。
  134. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  今大臣が答弁されましたように、円の魅力を高めていくことは極めて重要な課題でございまして、先ほど先生の言われました具体的な施策という意味では、先般、円の国際化の具体的推進策を発表したところでございまして、いわゆる政府短期証券の市中公募入札発行とか、今大臣も言われました税制の見直しとか、国債の繰り上げ償還条項の撤廃等、金融市場の環境整備について今後幅広く取り組んでいく必要があると考えているわけでございます。  この法案との関係におきましても、我が国国内で貸付業務を行う金融業者をこの法案対象としているわけでございますから、その貸付資金とか調達資金は円資金であると考えられるわけでございますが、円資金の直接金融による調達が増大いたしまして、社債とか、先ほどのコマーシャルペーパー市場の厚みが増すことによって、広く我が国金融市場の発展に資することが期待されるところでございます。
  135. 西田猛

    ○西田(猛)委員 大臣の方から大変御懇篤に力強いお話をいただきました。大臣も言われましたように、それから局長からも御説明がありましたが、政府短期証券を四月から市中公募するなどによって円が魅力ある通貨になっていくことを大変期待しております。  他方、外国のある記事などによりますれば、世界の主要国の外貨準備、外準の中に占める円の比率も、各国通貨当局はだんだん落としていっているというふうな記事もありまして、私は、これもまた非常にゆゆしい事態ではないかなと。外準に対しては、そういう政府短期証券などが調達しやすくなれば、それによって日本円の外準の比率が高まってくることが期待されていますので、そうなることを非常に心から願うものであります。  ここで一つ、大蔵省になると思いますけれども、お願いでございますけれども、世界の外貨準備の中に占める日本円の比率というか割合というか、これは大体どのくらいあるのか。今でなくて結構ですから、もしわかれば今でも結構ですが、教えていただければありがたいなというふうに思うのです。今おわかりになられますでしょうか、急なお尋ねで恐縮ですが。     〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
  136. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 今、手元の資料で申し上げますと、世界の外貨準備の中での比率といいますと四・九%という数字を手元に持っておりますが、また詳しくは後ほど先生に御説明に上がりたいと思います。
  137. 西田猛

    ○西田(猛)委員 わかりました。  それから、続きまして、起債のことについてですけれども、本法案に関連いたしまして、適格機関投資家のみを相手方として発行される私募債、いわゆるプロ私募債というふうに呼んでおりますけれども、というものがございます。これは、先ほど金融企画局長もおっしゃった、起債についてのいろいろな制限を撤廃したときに、いわゆる無担保などで債券を発行することができたわけですけれども、そのときでも、いわゆる適格機関投資家に対する私募債は金融機関に当面限られているというのが現状でございます。  せんだって大阪の経済団体団体の皆さんと懇談をしておりましたらば、自分たちだって金融機関ほど、あるいはそれ以上に信用力もついてきて、資金調達能力もあるのだけれども、なかなか今そういうプロ私募債を発行することが許されない、これは非常に自分たちの資金調達において問題だという指摘があって、ぜひこれを緩和してほしいという話がございました。こういういわゆるクオリファイド・インスティチューショナル・バイヤーズのみを対象として発行されるプロ私募債を発行できる発行体を規制緩和していくべきではないかなというふうに私は考えるのですけれども、これはいかがでございましょうか。
  138. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 おっしゃいましたように、証券取引法第二条第三項によりまして、「有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者として大蔵省令で定める者」である適格機関投資家のみを相手としている要件が今あるわけでございます。有価証券を私募として発行できることとされている、そういう要件を満たしている場合にのみ私募として発行できることとされておりまして、先ほど先生言われましたように、現在、大蔵省令では、この適格機関投資家として金融機関等が指定されているわけでございます。最近の規制緩和の流れの中で、適格機関投資家の範囲を、有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者と認められるような、まさに先生言われる一般事業法人にまで拡大することにつきまして、本年度中に結論を出し、早期に実施すべきであるという指摘を規制緩和委員会の方から受けておりまして、大蔵省といたしましては、これを踏まえまして、一定の有価証券投資を行っております一般の事業法人にまで適格機関投資家の範囲を拡大するための省令改正作業を現在進めているところでございます。
  139. 西田猛

    ○西田(猛)委員 わかりました。ぜひ進めていっていただきたいと思います。  それから最後に、ややざっくりとしたお尋ねなのですけれども、いわゆる二〇〇〇年問題というものがかまびすしく言われております。金融機関あるいは資本市場関係者においては、これはもう世界じゅうでオンライン化されておりますから、世界じゅうのどのような国あるいはどのような地域で問題が起こっても、これは日本のみならず世界の主要な資本市場において混乱を来してくるのではないかというおそれがございます。そこで、他の国や地域における対策を万全ならしめていただくとともに、少なくとも我が国から発するそういう問題が起こることなどないようにしなければいけないわけでございます。  そこで、我が国資本市場関係者あるいは金融機関等がいわゆるコンピューターの二〇〇〇年問題に対して万全に対処しているのかどうか、現状あるいは展望についてお聞かせ願いたいと思います。
  140. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  資本市場関係法人であります、例えば証券取引所、金融先物取引所、日本証券業協会、証券保管振替機構等におきまして、これは先生が言われるように、二〇〇〇年問題の重要性を十分認識しておりまして、政府の高度情報通信社会推進本部が昨年九月に決定いたしましたコンピュータ西暦二〇〇〇年問題に関する行動計画等に基づきまして、二〇〇〇年問題に積極的に取り組んできております。  最新時点での状況ということでございますが、三月一日時点の報告によりますと、これら証券取引所等におきましては、本年二月末までに売買システム、決済システム等のすべての内部システムについて二〇〇〇年問題への対応を完了したというぐあいに報告を受け、承知しております。  金融機関につきましては、監督庁の方から答えていただきたいと思います。
  141. 乾文男

    ○乾政府委員 お答えいたします。  金融機関につきましては、先生御指摘になりましたように、決済システムにかかわってくる、しかもその決済システムが全世界とつながっているということから、万一のことがありますと非常に重大な結果が生じるということを私ども強く認識しておりまして、金融監督庁が発足いたしましてから、この問題も金融監督行政の最重要課題の一つとして位置づけておりまして、金融機関に対しましていろいろな指導をしているところでございます。  私ども、この問題を金融機関に言っておりますのは、これは単に金融機関の中のコンピューター部門の問題ではなくて、まさに、何か万一のことが起きたときには経営にかかわってくる、経営リスクの話である。そうしたことから、経営トップみずからがこの問題を経営の最大の問題の一つとしてとらえるようにということを指導しておりまして、そうした観点から、昨年六月末以降、四半期ごとに金融機関等から本問題への対応状況法律に基づきまして報告を聴取しておりますほか、検査におきましても、二〇〇〇年問題に主眼を置いた検査を行っているところでございます。  昨年十二月末時点の報告を先般発表したところでございますけれども、これを見ますと、これら金融機関のうち七三%が昨年十二月までに重要なシステムの修正を完了している、そして本年六月末までに九八%のところが修正を完了する見込みとなっているというふうに聞いているわけでございます。また、そのうち最重要システムであります決済関係につきましては、日銀ネット、それから全銀システム、東証システム等の決済システムにおきまして既に二回共同接続テストが行われたわけでございますけれども、主要行のすべて、地銀、第二地銀等につきましても多くが参加して、問題なく終了したというふうに聞いております。  これまでの報告を見る限りおおむね順調に行われていると見られますけれども、当庁といたしましては、問題の重要性にかんがみまして、引き続き金融機関からの報告、検査状況によりまして対応状況を把握するとともに、おくれが認められる金融機関に対しましては、行政処分も含めまして厳正に対応することによって、二〇〇〇年が始まる時期までに、できましたならば本年の六月末までに、そうした修正事務が完了するように指導を行ってまいりたいというふうに考えております。
  142. 西田猛

    ○西田(猛)委員 証券取引所等の資本市場関係者についてはもう完了したという力強いお答えがございましたが、個々金融機関等については、これはもう個々の問題がございますので、個々の経営内容にわたることでしょうから、金融監督庁で所管していることと思います。まことに大変なこととは存じますが、万遺漏なきを期していただきたいと存じます。  時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。
  143. 村井仁

    村井委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時十三分休憩      ————◇—————     午後一時二十分開議
  144. 村井仁

    村井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。矢島恒夫君。
  145. 矢島恒夫

    ○矢島委員 この法律で、貸付資金受け入れのための社債あるいはコマーシャルペーパー、こういうものを発行できる金融業者というのは、内閣総理大臣の登録を受けたところの特定金融会社等となっております。その特定金融会社等には一定の財産的基礎も求めております。  午前中の質疑の中で、この最低資本基準をどのように考えているかという質問がありました。それに対して伏屋局長は、政令で定めることになっているが、例えば十億円以上にするのも一つの考え方、こういう答弁をされたと思うんです。それを確認したいと思うんですが、よろしいでしょうか。
  146. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  この法律案におきましては、貸付資金受け入れのために社債発行等を行う金融業者につきまして、安定的な経営基盤を確保することによりまして大事な投資者保護を図るとの観点から、今先生言われましたように登録制を導入することとしており、そこで最低資本基準は、登録の対象となる金融業者を、今御指摘のように一定の財産的基礎を備えた金融業者に限定するために設けるものでございます。  その具体的な金額につきましては、法案の第六条で政令で定めることとなっておりまして、この国会における御議論やこれまでいただいた各般の御意見を踏まえて定めてまいりたいと考えているところでございますが、趣旨が安定的な経営基盤の確保による投資者保護ということでございまして、おっしゃいましたように十億円とすることが一つの考え方ではないかと考えております。
  147. 矢島恒夫

    ○矢島委員 そこで、金融監督庁にお聞きしますが、ノンバンクは現在何社あって、そのうち資本金十億円以上のノンバンクは何社あるか、お答えいただきたいと思います。
  148. 乾文男

    ○乾政府委員 お答えいたします。  平成十年三月末現在で申しますと、ノンバンク、いわゆる貸金業者の登録業者数でございますけれども、三万一千四百十四業者でございまして、うち、資本金が十億円以上で、かつ貸付残高が五百億円を超えるものの数が百三業者というふうになってございます。
  149. 矢島恒夫

    ○矢島委員 それでは、百三業者のうち消費者向け貸金業者というのは現在何社あって、そしてその会社はどういう会社か、会社名もあわせてお答えいただきたいと思います。
  150. 乾文男

    ○乾政府委員 ただいま申しました百三業者のうち、消費者向け貸金業者の数は十二業者でございまして、会社名をざっと申し上げますと、アイク、武富士、アイフル、アコム、プロミス、日本ホームファイナンス、ニッシン、クレディア、レイク、シンワ、日立信販そしてユニマットライフ、以上十二社でございます。
  151. 矢島恒夫

    ○矢島委員 それではもう一つお尋ねしますが、消費者向け貸金業者は全体で何社あるのか、そしてその貸付金残高は現在幾らになっているか、そのうち今答えていただいた十二社の貸付金残高は幾らで、その占有率はどれくらいになっているか、お答えいただきたいと思います。
  152. 乾文男

    ○乾政府委員 お答えいたします。  消費者向け貸金業者の総数は七千七百十業者でございまして、その貸付残高の合計は九兆四千七百四十億円でございます。そのうち、資本金十億円以上のもの、先ほど十二社と申しましたけれども、十二社の貸付金の残高は五兆七千二百七十四億円でございまして、ただいまの九兆四千に対しますシェアは約六〇%となっております。
  153. 矢島恒夫

    ○矢島委員 今お答えいただきましたように、消費者向け貸金業者、今回の法案社債等が発行できるのは十二社である、その十二社のシェアというのは六〇%ということが答弁にありました。つまり、消費者向け貸金業者というのは、いわゆる大手のシェアが非常に大きいということがあらわれていると思います。  同時に、この大手消費者向け貸金業者の経営が伸びている。というのは、別の統計で「貸付残高が一定規模以上のノンバンクの貸付金の実態調査結果の推移について」という資料を調査室の方からいただいておりますけれども、その資料によりますと、一定規模というのは貸付残高が五百億円超ということですが、平成二年から平成九年までの推移をまとめています。これによりますと、事業者向けだとかあるいは不動産業向け、さらには建設業向け、ここは伸びていません。むしろ低減していると見えるわけです。ところが、消費者向け、個人向けというのを見ますと、これは年々伸びてきているわけです。  つまり、この大手消費者向け貸金業者、いわゆるクレ・サラ金業者というわけですけれども、これは、この長引く深刻な不況、こういう中でいろいろ企業が倒産しております、また金融機関の貸し渋りによっても倒産が出てくるという状況のもとでも貸付残高を一貫して伸ばして、史上最高の利益を上げております。今や我が世の春を謳歌していると言っても過言でない状況です。  そういう状況の中で、「月刊消費者信用」という雑誌の昨年七月号ですけれども、この中に、消費者金融大手七社、これは武富士、アコム、プロミス、アイフル、レイク、三洋信販、アイクの七社ですが、この七社全社経常利益で過去最高益を更新した、こう報じているわけです。その中の記事で、決算期の異なるアイクを除く六社の貸付残高は、前年と比べ一一・二%増の四兆五千八百四十二億円。この六社の中核商品である無担保貸し付けの残高は全社で増加し、六社合計では一一・四%増の四兆三千六百七十二億円となっている、高水準の伸びを示している、こういうふうな記事もあるわけであります。  他方、国税庁が出しております「平成九年度決算大法人の申告所得上位五十社順位表」というのをいただきました。これを見てみますと、ここに、武富士が第七位、アコムが二十六位、プロミスが三十五位、アイフルが四十八位と出てきます。これらは全部前年度よりも申告所得を伸ばしております。この中に、過去には常連であった銀行というのは二行しか入っておりません。  大蔵大臣、このような統計資料というものを見てみますと、私、大手消費者金融業者というのはなぜこのように経営状態がよいのか、このように突出していていいのかと考えざるを得ないんです。これが正常なのかと思うわけなんですが、大臣、消費者金融業者の高収入の現状についてどのように認識されているか、また、御感想があれば承りたいと思います。
  154. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 必ずしも正常なこととは言いがたいように思います。やはり、いわゆる在来のといいますか、オーソドックスなといいますか、在来の金融機関がいろいろなことで正常な仕事がなかなかできにくいような状態に現実にございます。貸し渋り等々、いろいろまた出来事もございましたりしております。他方で、消費者の方は、こういう難しい経済状況でございますから、法人にしても個人にしても金がどうしても要る。その両方の、従来でございますと正常に機能すべき関係が機能しておりませんので、どうしてもそうでない、正常、不正常という言葉はよくないかもしれませんが、普通でないいわゆるバンク、ノンバンクに対してバンクと申し上げておきますが、そうでないノンバンクが間へ仕事を広げるような状況になる。  それは、そのこと自身悪いというわけではありませんで、需要がなければ広がらないわけでございますから、そのこと自身を悪いと申すのではありませんが、いわゆるバンクスが普通に働いておりますときには、こういうノンバンクスがこれだけ金持ちリストの上の方へ何人か出てくるということは、やはり私は正常ではないだろうと思います。
  155. 矢島恒夫

    ○矢島委員 確かに、多くの金融機関、例えば北海道拓殖銀行だとか、あるいは山一証券やそのほかの金融機関も破綻しているという大変な事態があります。中小企業も次々と今大変な事態が起きている。そういう中で、武富士は、九八年三月決算では、経常利益は千四百六十八億円、前年度の二〇・三%も伸ばしていますし、アコムについては、経常利益が千二十五億円、前年度の一五・七%、こういう増加であります。大変な事態の中でサラ金だけは駅前の一等地にビルを占領して、夜ともなりますとサラ金のネオンがこうこうと輝いている、どうもこのような会社、異常ではないのかなと思うわけです。  私は、大手の消費者金融業者、大手サラ金業者がこのように業績を伸ばしている最大の理由は何だろうかと考えてみました。これは、過剰与信の問題、あるいは無人契約機など非常に簡便な手続で金が借りられる、それともう一つは高金利貸し付けている、この辺が非常に重要な問題ではないか。過剰与信行為というものは、業界の過当競争、それと利益追求本位の体質に根本的な原因があると思いますが、この点はまたの機会に議論していくことにしまして、もう一つの高金利貸し付けの問題で幾つかお尋ねしたいわけです。  金融監督庁に伺いますけれども、消費者向けの無担保貸し金の平均金利、先ほど午前中、たしか同僚委員からの質問に答えていらっしゃったと思うんですが、もう一度恐れ入りますが答えていただけますか。
  156. 乾文男

    ○乾政府委員 お答えいたします。  消費者向けの無担保貸金業者の大手五社ということで答えさせていただきますと、その平均貸出金利は、この三年間を見ますと、平成八年三月末で二七・五七%、九年三月末で二六・七九%、十年三月末で二六・三六%となっております。
  157. 矢島恒夫

    ○矢島委員 大手上位五社ということでお答えいただきました。消費者向け無担保貸金業者の全体ですと、たしか平成八年の三月末で二八・四八%、平成九年の三月末ですと二七・六〇%、全体の方がもちろん五社よりも高くなっている、ほかの無担保貸金業者の方が高い金利を出している、こういうこともわかるんですが、今お答えいただきましたように、この消費者向けの無担保貸金業者の場合の金利がいずれにしろ非常に高い、いずれも利息制限法規定した利息の最高限度額を超えているわけであります。  同じノンバンクでも、金融監督庁からいただいた資料によりますと、例えばリース会社は、平成九年の三月末で四・三六%となっております。事業者向けの貸金業者の場合は、同じ平成九年の三月末で六・一一%、比較的高い銀行系のクレジットカード会社でも一七・四〇%、いかに消費者向けの無担保貸金業者の金利というのが高いかということがこの比較でも十分わかるわけですけれども、預金金利が下がる、あるいは住宅ローンの金利も下がっている、サラ金会社金利は高い水準を維持している、これは異常な高金利だと私は思うわけです。  そこで、金融監督庁にお聞きしますが、消費者向け無担保貸金業者の資金調達金利、これも午前中お答えいただいている部分があろうかと思いますが、もう一度確認のためにお答えいただきたいと思います。
  158. 乾文男

    ○乾政府委員 お答えいたします。  先ほど申しました消費者向け無担保貸金業者、上位五社でございますけれども、平均調達金利は、八年三月末が三・四〇%、九年三月末が二・九四%、十年三月末が二・八〇%となっております。
  159. 矢島恒夫

    ○矢島委員 今御答弁いただいたように、いわゆるサラ金業者の金融機関等からの調達金利、これと消費者への貸し出し金利、これが余りにも隔たりが大き過ぎると私は思うわけです。これが大きな一つの特徴じゃないか。サラ金会社は、調達金利と貸出金利とのこの大幅な利ざやで大もうけしているという現状だと思います。  そこで、大蔵大臣にお聞きしたいんですが、今回の法律を制定することによって、消費者向け金融業者社債やCP等を発行することになって資金調達が可能になるわけであります。これによって貸出金利が下がるというように見ていらっしゃるのか、もし下がるとすればどの程度下がると見ていらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。
  160. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは下がってくれなければ困るわけでございますし、下がるであろうとは思いますが、競争いかんと申しますか、どの程度かということはなかなか申し上げにくうございますし、かたがた、従来のいわゆるバンクスと言われる人たちがもう少し体制を整えてくれませんと、やはり借りたい人がいるわけでございますから、そのニーズをどこかがちゃんと受け取ってくれない限り、この人たちの高い金利に貢献をするということになってしまうんだと思います。
  161. 矢島恒夫

    ○矢島委員 大臣、今、希望的な見方というものもあるかと思いますが、金利が下がると思う、下がってもらいたいと思う、こういう御答弁だったわけですが、いずれも、とりわけ推測であるし、また実態調査というものの上に立った状況ではないだろうと思うんです。  私は、今大臣が御答弁されたようにうまく金利は下がらないんじゃないか。なぜかといいますと、非常に多重債務者が激増しております。自己破産に至る人もふえております。一九七〇年末でしたか、サラ金業者による高金利融資と取り立てが問題になりました。そして、第一次のサラ金地獄、こう言われておりますけれども、サラ金二法、これを一九八三年に制定いたしましてこのサラ金地獄というのは一定度緩和されたという状況がありました。現在、一九八〇年代以降、クレジットカードの利用というのが高まってまいりました。そうした中で自己破産者が増加するという事態も生まれてきて、再び社会問題になっているわけであります。  この自己破産について、一昨年五月十六日発表された「ノンバンクに関する懇談会報告書」、これを見てみますと、こういう文章があるわけです。「かつて多くみられたギャンブルや浪費、カードの濫用等を原因とする浪費型破産よりも、中高年層のリストラや住宅ローン返済の行き詰まり等を原因とする生活苦型破産が相対的に増えている、」、これが確かに実態だろうと思うんです。  だから、そういう人たちは結局、せっぱ詰まって借りるわけなんですね。生活費がなくなる、それを借りよう。もちろん、借りるときに金利は低い方がよいというのはだれでも考えることです。しかし、高金利でも借りざるを得ない事情というものがこういう人たちにはあるわけなんですね。  また、そういう人たちは自分の収入に見合わない高額なお金を借りちゃう。そうしますと、返済期限が迫ってくる、高金利でも別の業者からまた借りる、こういう自転車操業的な状態になっている部分が多いわけなんです。そうしますと高い金利でも借りざるを得ない、こういう事態に追い込まれるわけであります。  だから、社債によってコストの低いところの資金を調達できるようになってもなかなか消費者向け金利は低くならない。この部分をきちんとしないと、なかなか期待どおりの金利が下がるという状況がつくれないんじゃないかというように私は思うわけです。  そこで、こういう多重債務者をなくしていくということの一つに、金利を下げることが必要なわけなんですね。利息制限法金利上限引き下げる。利息制限法はもちろん罰則がありませんから、新たにこれに罰則を設けるかどうかを検討する。さらには、出資法の罰則が適用される上限金利も低くする。こういうことをしないと、社債やCPによって資金を調達しても、それは大手サラ金業者の一層のもうけを保証して体力をつけることになってしまうんじゃないか。  そして、他方、多重債務者、こういう人たちは、現在少なく見積もっても百五十万人はいるだろう、こう言われておりますけれども、さらにその中で個人破産申し立て件数といいますと、去年は過去最高になりまして、十万三千八百三件あったわけであります。そのような状況を判断しますと、サラ金業者に泣かされる人たちはさらに一層ふえていくんじゃないかなという心配を私は持つわけなんです。  大臣、その辺についてお考えがありましたら、お述べいただきたいと思います。
  162. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 何しろお金の専門家のバンクがあれだけ混乱したんですから、ノンバンクやそのお客様は本当にもっと大変だろうと思いますね。経済が仮に少しずつよくなるとして、そういう今まで借りている人たちのぐあいはどういうふうになるのか、ちょっと想像もつかないわけでございますけれども、まあまあバンクがだんだん正常な態勢に返り、ノンバンクもこういうふうなことも少しずつやって、態勢としては何とか、出資法上限金利だとかあるいは利息制限法だとかいうものがもうちょっと、法律の問題としてもそうですが、需給関係で緩んでくるようになりませんといかぬと思っていまして、十分私も見通しを持っていませんけれども、経済が少しでも正常化しましたらそっちの方に行ってくれるんじゃないかなというふうに思っているわけでございます。
  163. 矢島恒夫

    ○矢島委員 出資法金利引き下げについて、午前中の質問ですけれども、これに答えて大臣は、長期的には下がってこないといけないと思うという趣旨答弁をされました。「ノンバンクに関する懇談会報告書」、ここにも結論として同じ趣旨が述べられております。  この出資法金利引き下げの方向づけ、これを具体的に検討する場を設けることが必要だと私は思うんですけれども、その辺のお考えはいかがでしょうか。
  164. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 今言われました出資法金利につきましては、これはいろいろな指摘があるわけでございます。借り手保護の観点からの指摘とか、また他の金融へ流れるおそれがあるんじゃないかという指摘もあるわけでございます。  いずれにいたしましても、借り手側の状況それから貸金業者の実態等を勘案しながら、これは関係するところがいろいろありまして、法律を所管している法務省、それから今答弁していただいております貸金業の監督に当たっておられる金融監督庁、それからまた違法行為の取り締まりに当たる警察当局の関係省庁と、特定の場を設けるということも一つの案かとは思いますが、いずれにいたしましてもよく相談の上、検討していく必要がある問題であると考えております。
  165. 矢島恒夫

    ○矢島委員 やはり借り手側には、今日の状況の中で、先ほど私が申し上げましたように、生活費のその日のお金を借りてこようというような事態が起こるわけですから、なかなか借りる借りないの自由というものがないんですね。ですから、市場の競争原理に任せておけない部分がある。少々の過剰貸し付けをやっても、貸し倒れが生じた、しかし収益が差し引きプラスになればよいというような考え方で過剰貸し付けに走る、こういう点も十分注意しなきゃならない。  そういう点からいえば、今答弁がありましたが、実態調査、これは早急にきちんとやらなければならない問題だと思います。それから、関係省庁との間、特に出資法は大蔵省と法務省の共管になっているわけで、今局長は具体的に協議の場というところまでは言及されませんでしたけれども、私は、各省庁と連絡をとりながらというやり方、これもできるだけ早急にということになれば、協議の場を設けたらどうか。ぜひそのことについてもう一言御答弁いただきたい。
  166. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 おっしゃいましたように、借り手側の状況等、また貸金業者の実態等を勘案しながら、今ありました法務省金融監督庁それから警察当局等関係省庁と十分相談しながら検討していく必要があると考えております。
  167. 矢島恒夫

    ○矢島委員 ぜひそういう方向を早めてもらいたい。  時間が参りました。私たちはこの法案に対して非常な危惧を持っております。  反対の第一の理由は、私は今ずっと質問してきたわけですが、金融業者の高金利、こういうものを容認している現行の出資法の中で社債の調達を認めるということがどうなのか。さらに個人の破産だとか多重債務者がふえてくるという点。もう一つの点は、大量の貸し付けに道を開くことによって金融被害を一層広げるということと同時に、この法案目的に公共性というものが挙がっていない、あるいは監督官庁の立ち入り権限などの規制、監督のための規定が十分でないということを指摘いたしまして、私の質問を終わります。
  168. 村井仁

    村井委員長 次に、横光克彦君。
  169. 横光克彦

    ○横光委員 社民党の横光克彦でございます。質問させていただきます。  本法案趣旨にあります規制緩和につきましては、利用者、消費者の利便につながる可能性を有しているわけですから、私たちは前向きな評価をいたしたいと思います。  ただし、与党時代の協議で確認していただきましたこのペーパー、昨年の五月八日のペーパーですが、ここで明らかにいたしました、ここに書かれておりますいろいろな課題の前進が同時に図られることが不可欠の前提となっているということも、政府におかれましては御承知おきのことと思います。  そこで、このペーパーに即しましてお尋ねをいたしたいと思います。  ちょっと順序が前後するんですが、この二項目め、「強引な貸付け、暴力的取立て、その他悪質な行為に対する取締りを、警察庁と十分に連携をとりつつ徹底すること。」、こういうふうに私たち申し入れたわけでございますが、これらの悪質な行為に対する取り締まりについて、関係省庁との有機的な連携がどのように図られているのか、またどのような成果が得られているのか、そのあたりを具体的にお聞かせいただきたいと思います。     〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
  170. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  この法案を国会に提出させていただくに当たりまして、与党の協議の中で社会民主党より、今言われました「強引な貸付け、暴力的取立て、その他悪質な行為に対する取締りを、警察庁と十分に連携をとりつつ徹底すること。」という記述があることは承知しております。  これを受けまして、消費者金融問題、とりわけ出資法上限金利につきまして法律を所管する法務省、違法行為の取り締まりに当たる警察庁と話し合いの場を設け、昨年も協議を行ったところでございます。  また、金融監督庁設置後も、貸金業の監督に当たられる金融監督庁を含むこれらの関係省庁と必要に応じ連絡をとりながら、情報の交換、意見の交換を鋭意やっているところでございます。
  171. 横光克彦

    ○横光委員 当時ももちろん、今もそうでありますが、金融機関の貸し渋りの状況を受けて、構造的に借金地獄のわなに追い込むというか、そういったいわゆるシステム金融が暗躍しているわけですね。ですから、このような反社会的な行為を撲滅するためにも全力を挙げて取り組んでいただきたいということをまず要請させていただきたいと思います。  そこで、こういった取り締まり以外にも、やはり本法案の成立とともに、これをきっかけにして、私はもう一つ踏み込んだ体制がこれから必要になってくるんじゃなかろうか。  登録により社債の発行が認められましたノンバンクに対しては、その業務や経理の状況について報告を求めることができる、こういうようになっております。しかし、報告の徴収だけで、登録内容が正しいのか、あるいはまた登録後に変化はないのか、こういった問題を確実に把握することができるかどうか、非常に不安になってくるわけですね。やはり当局による立入検査が私は必要ではなかろうか。  現在、ノンバンクに対する立入検査権は貸金業法に一応規定されております。しかし、これは利用者の利益の保護を図るため、もちろん重要なわけですが、今の規定だけでは、事件にならなければなかなか発覚しないわけですね。そのためにも常日ごろから、社債を発行するノンバンクに対しては立入検査の制度化が必要だと思うわけです。責任とかあるいは信頼とか、さらに経営の健全性、こういったことも含めました銀行並みの検査権限の強化を図れないか、このように思うわけですが、大臣、いかがお考えでしょうか。
  172. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  金融業者につきましては、預金を受け入れていないという点とか、また決済システムを中心といたします信用秩序にも直接かかわらないということから、ある面で当然、銀行等とは異なりまして、経営の健全性維持の観点からの規制、監督は行われていないわけでございます。  ただ、今先生の御質問の中にもありますが、この金融業者社債発行等によりまして不特定かつ多数の者から資金を調達して貸付業務を行うこととなりますと、金融業者金融仲介機能はより銀行等金融仲介機能に類似したものとなってくるわけでございます。したがって、投資者保護の観点から、ディスクロージャーの充実を図るとともに、先ほどから御質疑いただいております一定の財産的基礎や人的構成を要件とする登録制度を実施することとしておるわけでございます。  一方で、登録制度のほかに会計の整理の義務づけ等、またそれを担保するために報告徴収があるわけでございますが、今先生の御質問の話でいきますと、貸金業者につきましては、借り手保護の観点から必要があると認めるとき、これは先ほど言われましたように、貸金業規制法に基づき立入検査を行うことが可能でございます。また、今度は社債等の発行に関しましては、有価証券届け出書、報告書の提出者に対しまして証券取引法に基づき立入検査を行うことが可能であるということで、現在御提案申し上げております法律案には立入検査の規定は設けなかったわけでございますが、いろいろな意味銀行により近いものになってきているという点は着目しながら行政の運営をしていかなければならぬということは感じております。
  173. 横光克彦

    ○横光委員 確かに、預金を預かっているわけではないということも一つの大きな理由でしょうけれども、こういった社債をこれから発行するわけですので、新たな責任が生じるわけですね。これまでの利用者の利益の保護だけではなく、いわゆる投資者の保護ということも考えれば、私は新たな体制も必要ではなかろうか。いずれこれが実際、現実に行われるようになりますと、いろいろな問題が生じてくるかと思うんです。そのときにまた改めてこの問題はしっかり対応していただきたい、このように思います。  次に、先ほどから多重債務あるいは上限金利の問題が質問されておりますが、ことしの三月三日の参議院の予算委員会審議において、我が党の大脇議員の上限金利引き下げあるいは自動貸付機の制限にかかわる質問に対して、一定程度の前向きな見解が示されました。これは評価したいと思うわけでございます。  多重債務問題の拡大というのは、これは社会全体の損失になるばかりか、何より貸金業においてもあってはならない経済的損失であることは明らかなわけでございます。  出資法金利引き下げた場合、やみの金融が横行する、こういうことを必ず言われます。確かにその可能性はありますが、その点はやはり取り締まりの強化で対応すべきことだと思うんですよ。今回の消費者の金融業者金利には相当のばらつきがあるわけですね。資本金十億円以上の消費者向け貸金業者、これの平均金利が二六%、そしてまた、出資法で四〇%と定められているんですが、これもすれすれの金利貸し付けているところもある。そういった中で、やはりこの問題は何らかの方法を考える必要があるんじゃないかと思うんですね。  今度の社債発行によって、有利な調達手段ということ、いわゆる直接的な市場からの資金調達ができる、そういう流れになろうかと思います。となると当然調達コストは軽減されるはずですね。ノンバンクが今社会的に負わなければならない責任を自覚するならば、このメリット、つまり調達コスト軽減というメリットを専ら内部留保するということは絶対に許されないと言わざるを得ないわけです。  ですから、この私たちのペーパーの一にございますように、社債発行ノンバンクの金利につきましても、より低利での貸し付けが行われることが道理である、このように考えるんですが、一般的に見ましてこの考えに同意していただけるかどうか、お聞きしたいと思います。     〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
  174. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ちょうど十何年前かに本院でもこの二つの法律についていろいろ御議論がありまして、そのときと本質的には余り変わらない御議論になっているなと思います。  それは、どうしても借りる人があるから貸す人があるというような関係の需給関係がなかなか直らない、その状況の中で、しかし、法律でそれを忍耐強く少しずつ下げてきているというような努力を結局しているわけでございますから、殊にバンクが非常にちょっと機能をおかしくしましたもので、余計経済状況も悪くて、貸し手も借り手もおかしくなっているということだと思うのでございますね。経済が少しずつ正常になりましたら、何とかこれは少しずつでも下げていって、自然に、余り需給から上っ離れるわけにはいかないものですから、その中でしかしやはり下げていかなきゃならぬだろうと思います。
  175. 横光克彦

    ○横光委員 長期的な考えでもこういった問題はしっかり取り組まなきゃならない。行政指導が御存じのように行えないようになったわけですから、立法府といたしましてもこういった問題は何らかのしっかりとした決意が必要であろう、このように考えております。  多重債務問題に非常に密接な関係があることの一つに、自動貸付機、これがあるわけですが、近年の自己破産件数の増加の一因に無人契約機の導入があると思うんですよ。現実に相手が無人契約機だと、これはもう自動販売機でジュースを買うような感覚で借金を重ねてしまうという意見もあります。  そもそも、この店頭審査も他の金融機関に比べると甘いと言われているわけですから、そういった中で対面を要しない無人契約機による貸し付けについてはこのまま野放しにしておいていいのか、そう思うわけでございます。何らかの制限が必要になってくるんじゃなかろうかと思います。  先般かなり前向きな評価をいただきましたが、どうかこの問題についてさらに踏み込んだ御見解を示すことこそが、貸金業の社会的地位の向上のみならず、本法案の成立の意義を一層高めることになろうかと思いますので、御決意をひとつお聞かせください。
  176. 乾文男

    ○乾政府委員 お答えいたします。  自動貸付機の問題につきましてもいろいろな御批判がありまして、過剰貸し付けを助長しているという指摘があることは承知しておるわけでございますけれども、業者の方も、そうした指摘を受けてだと思いますけれども、自動契約受付機におきましても店頭貸し付けと同様の手続によって顧客の返済能力等の審査が行われているというふうに聞いているところでございます。  私どもといたしましては、自動契約受付機の利用が増加していることは事実でございますので、それによって与信業務の適正化というものが損なわれることのないよう、今後とも適切な対応を行ってまいりたいと思いますが、業者におきましても、消費者金融大手六社に聞きますと、この自動契約受付機の広告に当たりまして、簡単であるとか楽々であるとの言葉を用いない、また、今申しましたように、自動契約受付機だからといって簡単に審査をやっているわけではなくて、店頭と同様の審査を行っておりますよということを明示するなどの自主規制を行っているところでございます。(発言する者あり)  今後、そういう業界に対しまして、引き続きそうした観点からの自主規制を行うよう要請をしてまいりたいと思います。
  177. 横光克彦

    ○横光委員 店頭と同じように、対面と同じような形でやっているというお話ですが、本当に、今お話ございましたが、相手がいないんです、機械なんですよ、これでどのような方法で同じシステムで貸し付けることができるか、非常におかしな答弁だと思います。もっともっと現実を見ていただきたい、相手だけの意見を聞いていたのじゃなかなか前向きに進まない、私はこのように思います。  最後に、金融監督庁は、個人の自己破産多発の温床とも言える消費者金融会社の過剰融資問題の実態調査に着手したということを聞いております。先ほどのことももっともっと実態調査してほしいんですが、過剰融資問題にも実態調査に着手した。利用者が複数の名義を使って多額の融資を受けているケースが非常に問題視されているわけですね。  この別人登録、いろいろ名前を変えていろいろなところから借りられる、そのことが全国で百万件以上あるんじゃないかと推定されておるんですね。こういった問題について、金融監督庁の実態調査の現状、そしてまた今後の対応をちょっとお聞かせください。
  178. 乾文男

    ○乾政府委員 お答えいたします。  一般的に、金銭の借り入れに当たりまして、氏名や生年月日を偽って別人に成り済まして融資を受けるということがございますと、これは詐欺罪の構成要件に該当するわけでございまして、貸し付けを行った貸金業者におきまして第一義的には適切な対応が行われるものと考えておりますけれども、当庁といたしましても、ただいま御指摘のございましたような別人名義によります借り入れにつきまして、全国信用情報センター連合会に対しまして実態調査を指示するとともに、全国貸金業協会連合会に対しまして顧客管理の適正化について指導したところでございます。  現在、信用情報センターにおきまして、いろいろな名寄せの方法をこれまでのものよりも充実したものにする等の検討が行われているとの報告を受けているところでございます。
  179. 横光克彦

    ○横光委員 私は、冒頭、この法案に対して前向きの考えであるということを申しましたが、先ほども言いましたように、同時に、抱えているいろいろな課題を前進させるということが前提なんですね。いろいろな問題がございますので、どうか御努力をいただきたいと思います。  終わります。ありがとうございました。
  180. 村井仁

    村井委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  181. 村井仁

    村井委員長 この際、本案に対し、井奥貞雄君外一名から、自由民主党及び自由党の共同提案による修正案が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。小池百合子君。     —————————————  金融業者貸付業務のための社債発行等に関する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  182. 小池百合子

    ○小池委員 ただいま議題となりました金融業者貸付業務のための社債発行等に関する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表いたしましてその趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付いたしてありますので、朗読は省略させていただき、その要旨を申し上げます。  第一に、原案では、登録、監督の主体が内閣総理大臣となっておりますが、これを金融再生委員会に改めることとし、これに伴う所要の修正を行うこととしております。  第二に、原案では、施行期日が平成十年十二月一日となっておりますが、既にその日が経過いたしておりますので、これを公布の日から起算して一月を超えない範囲内において政令で定める日としております。  その他、所要の規定の整備を行うこととしております。  以上が修正案の要旨であります。  何とぞ修正案に御賛同くださいますようお願いをいたします。
  183. 村井仁

    村井委員長 これにて修正案の趣旨説明は終わりました。     —————————————
  184. 村井仁

    村井委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出金融業者貸付業務のための社債発行等に関する法律案について採決いたします。  まず、井奥貞雄君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  185. 村井仁

    村井委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  186. 村井仁

    村井委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     —————————————
  187. 村井仁

    村井委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党及び社会民主党・市民連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。石井啓一君。
  188. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして案文を朗読し、趣旨説明といたします。     金融業者貸付業務のための社債発行等に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。  一 金融業者が発行する社債を購入する投資者を保護するため、金融業者の監督体制の強化やディスクロージャーの充実を図ること。また、本法律に基づいて金融業者が発行する社債については、償還確実性に関する社債一般に共通する性格を正しく認識した上で投資者が購入できるように、その趣旨の周知・徹底を図ること。  一 借手の保護を図る観点から、与信審査の適正化、過剰貸付の禁止、金利の引下げ等について金融業者に対し適切な指導・監督・要請を行い、多重債務問題の防止に最大限努力すること。 以上であります。  何とぞ御賛成賜りますようよろしくお願い申し上げます。
  189. 村井仁

    村井委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  190. 村井仁

    村井委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。大蔵大臣宮澤喜一君。
  191. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨を踏まえまして配意してまいりたいと存じます。     —————————————
  192. 村井仁

    村井委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  193. 村井仁

    村井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  194. 村井仁

    村井委員長 次に、金融に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。鴨下一郎君。
  195. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 自民党の鴨下一郎でございます。  今回は、公的資金を投入するというような問題につきまして、国民の中ではいろいろと議論がありました。  金融再生委員会は、昨年の十二月の十五日に委員会が発足してから資本増強に関しましては合計三十二日を費やして検討してきた、こういうような話を承っていますし、今回の最終的な大手十五行に対します資本投入は七兆四千五百九十二億ということでありますけれども、今回の公的資金の投入でとりあえず足元の不良債権の処理の手当てはできたのか、こういうようなことについて、まず金融再生委員会柳沢大臣からお伺いをしたいというふうに思います。
  196. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 このたびの資本投入は、申すまでもなく国会で成立をいたしました金融機能早期健全化法に基づくものでございますが、この法律が資本投入の目的としているものは、大きく言って二つあったというふうに理解をいたしております。一つは、今先生がおっしゃった不良債権の処理を進めるということ、もう一つは、金融の疎通と申しますか、信用供与の円滑化を回復するということでございました。  私どもは、この目的に向かって今回、先生が今おっしゃったように七兆四千五百九十二億の資本投入を決定させていただきましたが、その金額を決めるに当たりましても、この不良債権の処理の問題というものを最も重視させていただいたということでございます。  考え方として、この三月期に、これまでおくれがちであったバブルの崩壊の後遺症として残った不良債権の処理を完了したい、こういう目標を立てましていろいろな手だてを講じさせていただきました。  一つは、今回の投入額を決定する基礎といたしまして、金融監督庁によって行われた昨年三月期の金融検査の結果を下敷きにさせていただいたこと。  もう一つは、引き当ての基準につきまして特別な定量的な基準を設けさせていただいて、国際基準並みの引き当てを今回お願いするという前提で投入をさせていただいたこと。  さらには、たまたまこの三月期から金融機関の決算が連結で行われ、子会社はもとより、関連会社につきましても、実質的に関連のあるところをすべて決算の中に取り込む、このことによって今までとかく一部でうわさされておったような不良債権の隠ぺいというようなものを無効化する、そういうことの効き目はなくする、こういうようなことをさせていただくことになりましたが、それらを前提にして投入額を決定させていただいたということでございます。  このようなもろもろのいわば裏打ちを考えますとき、今度のこの資本投入によって行われる三月期の決算において不良債権に対する手当てというものは十二分に行われたというふうに考えまして、その意味におきまして不良債権の処理は今期でおかげさまで完了させていただく、こういう認識を私ども持たせていただいておるところでございます。
  197. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 大臣から今大変心強い答弁をいただいたわけでありますけれども、確かにそれにこたえて市場は、例えば株式等につきましても、ここ一週間ぐらい、ある意味でかなり好転しているというようなこともあります。ですから、これでほぼ足元のところでは処理が済んできたのかなというふうにみんなは考え始めたんだろうと思います。  ただ、先ほど、七兆五千億になんなんとする公的資金があると。この公的資金というのは、国民が何か即税金のようだというふうに考えている方々もたくさんいるようでありますから、この際、大臣からはっきりと、これはどういう形のお金で、結果的に国はそれを銀行にくれてやっちゃったんじゃないんだ、こういうような話をぜひしていただきたいというふうに思います。
  198. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 鴨下委員の御指摘のとおり、国民の皆さんの間には、今回十五行に投入した約七兆五千億円のお金が、補助金と申しますか、そういう形で一方的に贈与をされたというような印象をお持ちの方もまだ多々いらっしゃるかと思うわけでございます。  これは、金融の現象というのが、専門的、技術的な面もありまして理解がなかなか容易でないというような側面もあろうかと思いますけれども、私ども説明も十分行い得ていなかったのかなというような感もいたしておりまして、私ども、努めて、今回の措置の枠組みと申しますか、真の姿というものについては、今後ともいろいろの機会に認識を徹底させていただかなきゃいけない、このように考えておるところでございます。  その意味におきまして今の先生の御質疑についてお答えするわけでございますけれども、今回の七兆五千億円のお金というのは、大体八割方と言っていいでしょうか、これは相手が発行する株式、優先株という特別な形の株式でございますけれども、これを政府が購入するということでございます。それから、劣後ローンとか劣後債という、またこれも技術的な資金の出し方をさせていただくわけでございますけれども、これは文字どおり債権であり、またローンでありまして、ありていに言えば貸し金というか借金を与える、借り入れをさせてやる、こういう意味にとっていただいて結構だということでございます。  そして、では、そういうお金というのはどこから出るんだといいますと、これは預金保険機構というところにある健全化勘定というものから支出をされるものでございまして、この健全化勘定には、少なくとも現在のところ、税金だとかあるいは将来税金で手当てされる国債のかわり金だとかというものは一銭も入っておらないわけでございます。それはすべて支出されたお金が回収されるという前提に立っているわけでございます。  そして、現実に今回行われる七兆五千億の資金というものはどうやって調達されるのかといいますと、一つは民間からの借り入れ、将来これは政府保証債というものに変わるかもしれませんけれども、いずれにしても民間から借り入れをこの勘定が行うということでございますし、またその足らず前がありました場合には日本銀行からの借り入れを行う、これはいずれも将来この勘定に返ってくるという前提でこの勘定自体が借り入れを行ってそのお金を一時出資をする、あるいは貸し付けを行う、こういう仕組みになっているということをぜひ御理解賜りたいと思います。
  199. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 まだ大臣の説明もなかなか難しくて、例えば、この速記録を中学生、高校生ぐらいの人間が読んだときに、ああ、確かにこれは、政府が公的資金を投入したというものの、優先株等を購入して最終的にはそれがもしかするともうかるかもわからない、こういうような話なんだということが国民の皆さんにぜひわかっていただきたいというふうに思うんです。  それからもう一つの大きなテーマは、ここの「基本的考え方」というところに、「信用供与の円滑化により、企業の活動又は雇用の状況などの経済の活性化に資するものとする。」、要するに、これは貸し渋りが改善しますよということなんだろうと思いますけれども、これにつきましても、大臣、わかりやすく説明をいただきたいというふうに思います。
  200. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 冒頭の御質問のときにもお答えいたしましたように、今回の資本注入の大きな目的に信用供与の円滑化、これは全く難しい言葉でございますけれども、貸し渋りというか、金融機関が、本来、お金を企業に向かって貸すということが仕事であるべきであるにかかわらず貸さないというようなこと、あるいは貸さないのみならず、前に貸したお金を取り返すというようなことが行われたという事態が起こったわけでございます。  信用収縮とも申したわけでございますが、これらの現象が何で起こったのかといいますと、昨今、金融につきまして、あるいは金融機関の健全性というものが非常にやかましく言われるようになりました。これは、そこここに金融機関の破綻が起こる、金融機関が成り立ち得なくなってつぶれるというようなことが起こりまして、そこから、どうしたら金融機関がつぶれない、あるいはつぶれても、みんなに、国民に負担をかけないようにするにはどうしたらいいかというようなことが各国の金融当局でいろいろ研究をされたようです。  結論的に言いますと、最終的には、貸し付け等のリスクを持つ資産に対して一定の割合で自己資本というものをちゃんと備えておく、それで、もしこの資産の側でいろいろ事故が起こった、あるいは貸し倒れが起こったというようなときにも、ある意味で自己資本でもって負担をすれば、それ以上、預金者であるとかあるいはその他からの借入金だとかというような先に迷惑をかけずに済む、こういうようなことから、自己資本比率を一定のレベルで持つということがいい方式ではないかというようなことになったようでございます。  それがひいては、一九八九年でございますか、BIS、国際決済銀行というところで、国際的にも、この自己資本比率による金融機関の健全性の保持ということを一つの共通のルールにしようというようなことになりまして、有名な八%ルールが決まったというようなことでございます。我が国の金融機関も、特に国際的な仕事をしている金融機関はこのルールのもとに置かれた。それからまた、これは大蔵省銀行局の指導でありますけれども、国際的な活動をしていない、国内だけの仕事をしているところは、その半分の四%の自己資本をリスク債権に対して持つ、こういうことがルールとして決められました。  そこで、いろいろ不良債権が起こり、そういう中で業務純益というものをもってできるだけ早くにそういう不良債権の手当てをしていくというようなことが起こりまして、また場合によっては、特に資本準備金なんかですらある程度不良債権の処理に充てなければならぬというようなことになりまして、日本金融機関というのは資本の充実の程度というものが非常に心細い状況になってきた。今までだったらどんどんある程度ふえていくというような状況にあったものがもうふえなくなった、あるいはさらに収縮するようなことになってきた。  そういうようなことで、では、この自己資本比率のルールを守るためにはどうしたらいいかというと、自己資本をふやすということは、資本金を今募集しても、株も安いというようなことでなかなか応募してくれる人もないというようなことになりまして、結局、資産の方を収縮させなければいけない。リスク資産を収縮させる、縮減していくということは、結局、お金を貸さなくすることがはっきり言って一番手っ取り早い方法だということになりまして、貸し出しに対して極度に慎重になっていった、こういうことでございます。したがって、逆に言いますと、今度、資本注入をして自己資本比率を引き上げるということは、それだけ貸し出しの力がつくということでございます。  したがいまして、今回の自己資本の充実を目指したところの資本注入というのは、信用供与の円滑化といいますか、貸し出しの増加につながるということにほっておいてもなるわけでございます。ほっておいてもなるわけですが、私どもは今回、資本注入に当たって、各行に求めまして経営健全化計画というものを策定していただきました。これはそのまま公表されております。国民の監視のもとに置かれたということでございますが、その経営健全化計画の中身として、貸し出しを増加するということにつきましても、各行それぞれでございますけれども、その計画を明らかにさせていただいておる次第です。  そういうことで、貸し出しの増加ということについても期待できる、そういう枠組みのもとで資本注入が行われたということを御理解賜りたいと思います。
  201. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 今大臣御説明いただいたように、十五行の自己資本比率はひとしく大体一〇%を超えて、横浜銀行だけが九・五ぐらいということのようですけれども、そこで問題は、自己資本比率を充実させるために公的資金を多量に投入せざるを得なかったということもあって、銀行によっては公的な持ち株比率が五〇%を超えているようなところも数行ある、こういうようなことであります。  さらに、優先株から普通株への転換ということの期日についても、三カ月という非常に短い期間で設定をされているところもあるわけでありまして、このあたりのところで、金融再生委員会の意図は一体何があるのかということについても、今私は貸し渋りと、それからもう一つは、後ほど大蔵大臣にもお伺いしたいのですが、例えば国際的な競争力という意味においてもまだまだ道半ばなんだろうというふうに思っておりますが、自己資本比率は一〇%を超えた、ところが公的な持ち株比率についてはそれぞれのところで大きく差がある、このあたりのところから、先にどうしていくのがいいのか、どうなさりたいのかということについて、差しさわりのない程度に御説明をいただきたいと思います。
  202. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 今回の資本注入によって公的な部門が持つ持ち株の比率が高いところがあるではないか、あるいは優先株といいながら非常に転換時期の早いものがあるのではないか、その意図は一体那辺にありや、こういう御質問でございます。  確かに、転換権が三カ月というように短いものもございますけれども、転換権でございまして、投資家としての政府のいわば権利でございますので、私ども、この権利が法律上厳然と存在しているということの認識は十分持ってございます。  ただ、こういうことにいたしたのは、政府が早く株主権を行使できるような立場に立って、株主として当該の金融機関の経営について何か政府の側が意図したところを実現していこうという気持ちがあったのかと申しますと、実はそうではございません。こういう早い時期の転換時期を定めたものが出ましたのは、この優先株の商品性を投資家たる国の側にとってできるだけ有利なものにすることによって優先株のいわば配当等の条件をそれなりに有利なものにして、当該の金融機関にとってこうしたコストが余り負担にならないようにということを企図したというのがありていに言って実態でございます。  私ども、そもそも今回の優先株の条件を決めるに当たりましては、三つばかりそのレベルについて基準を設けさせていただいたわけでございます。一つは、少なくとも公定歩合より上でないといけませんね。それからまた、これは瞬間的には普通株の配当利回りを下回るようなことも起こるケースもありますけれども、基本の性格としては普通株の配当利回りよりも上の配当利回りというか、そういう配当率になるように決めたいですね。それから三つ目に、当該の金融機関がその配当利回りを払うことによって運用しても逆ざやになってしまうというようなことでは、やはり事柄の趣旨を貫徹することにならない、したがいまして、私どもは、その金融機関が許容し得る調達コストとして妥当な、そういうものでなければいけませんね。大体、配当等の条件についてはその三つぐらいの基準を立てまして、そういう中におさまるようにということで配当等の基準を決めさせていただきました。  その過程で今言ったようなことも場合によって必要な金融機関が出たということであって、私どもといたしましては、今後、では金融機関に指導も何もしないのかといえば、それはそうではなくて、株主権の行使というようなことをしなくても、私どもには法律上の直接生ずるいろいろな手だてがございますので、そちらの方で金融機関に対していろいろ必要な働きかけ、適切な働きかけをしていけばいい、このような考え方に立っておるということでございます。
  203. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 今回の「基本的考え方」の「原則」というところの三番目に、金融機関の競争力、収益力が向上し、優先株式の市場への売却等により、できる限り早期に投下資本の回収をしたい、こういうようなことで、金融機関の競争力、収益力をどう向上させていくかということにつきましては、やはりある程度金融再生委員会もしくはそれこそ政府が主導してやっていかなければならないのだろうというふうに私は思っております。今、それこそ金融ビッグバンが急速に進行していくわけでありますから、ある程度、遠慮せずに再編を含めたプロセスを政府もしくは金融再生委員会が主導してやっていかなければいけないのではないかなというふうに考えているわけであります。  例えば、今、日本銀行が要するにコスト削減をしても、例えば人を減らしたり、その一行の中でのリストラというのをどれだけ努力してもなかなかままならない部分、もう既に相当ぜい肉をそぎ落とした形になっているのだろうと思いますので、それをある意味で再編していきながら、より効率的に、銀行をもう一度国際的な競争力の中で十分に戦っていけるような陣立てにしていく必要があるのだろうというふうに思うわけであります。  これはちょっと調べてみましたら、いわゆるグローバルな銀行の中でスーパーリーグと言われるような中には日本銀行は残念ながら入っていないということと、それからトータルの収益というようなことでいいますと、ちょうど今公的資金を投入したぐらいの金額が大ざっぱに言って日本銀行の収益なのだろうと思います。ところが、スーパーリーグに入っているような銀行は二兆近くの収益を持っているということになると、まあ三つか四つしか存在できないのかなというふうに思うわけであります。  そこまで極端なことは政府云々という話ではないのかもわかりませんが、私は、やはりこれから国際的な競争にさらされていく金融界において再編をどう急速に進めていくのか、それをどこが主導するのかというと、残念ながら、これは今回の資本投入、資本増強のときに各行の頭取さんたちがいろいろと言っていますけれども、業務提携はしていくけれども全面提携はする必要はないとか、これが再編になるかどうかは余りコメントしたくないとかそういうようなことで、なかなか自主的な再編というのは難しいのかなというふうに思っております。  今の段階では多分、相当金融再生委員会はイニシアチブをとれるのだろうと思いますから、そのことについて柳沢大臣のお考えと、最後に、今まで金融の、それこそ最もスペシャリストでいらっしゃいます宮澤大蔵大臣にも一言お考えを拝聴いたしまして、質問を終わらせていただきます。
  204. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 実は、日本金融システムの信認を回復する、そのために不良債権をちゃんと処理しなきゃいけない、金融の仲介機能も回復してもっと健全な活力のあるものにしなきゃいけないというのが法律趣旨でございますが、この金融機能早期健全化法には、いろいろな施策をするための原則というものが掲げられております。  それの中には、確かに先生が今おっしゃったように、「金融機関等の再編を促進すること等により金融システムの効率化を図ること。」ということで、この趣旨から見ますと、現在の日本金融機関あり方というか、そういうものをひっくるめての金融システムというものにはなお効率化を進めなきゃならない余地が多い、そしてそれを実現するためには金融再編というものもあえて促進しなければいけないという、その現状認識がいみじくもここににじみ出ているというか表現されている、こういうように私ども思うわけでございます。  ただ、先生、同じ法律のその隣の行に、そういうようなことをひっくるめて自主的な努力でもってやるようにというようなくだりも実は表現されておりまして、今先生がおっしゃるように、それを政府の主導で何もかもやれというふうには必ずしもなっていない、こういうことでございます。私どもも、それはそうだというふうに思っていまして、できるだけ民間の自主的な努力によってこの法律目的である再編による効率化というものも実現してもらいたい、こういうように考えております。  あと、宮澤大臣がおっしゃっていただけるかと思うのですが、私ども、宮澤大臣のもとでの金融審議会というところで日本金融システムのあり方というのを何か御議論するような報道にも接しておりまして、そういうものを参考にしながら、これから我々も何かお手伝いできることがあったら積極的に手伝っていきたい。だから、もし今後、再編というようなことがある、それがまた合併というような手段をとる場合には、この法律自体にそれを支援するような、資本注入というのができると書いてございますので、そうしたことも動員をさせていただいて、できるだけこの法律目的が早く達成されるように頑張ってまいりたい、このように考えております。
  205. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨年の夏に金融監督庁が発足しまして、その後にいわゆるマネーセンターバンクスの検査が行われることになりました。また、金融再生委員会も発足し、その間、国会では二つの法律をつくっていただいた。今になって考えますと、初めて我が国の銀行が本当に第三者的な厳しさと第三者的な正確さで検査を受けた、そうして分類にしても引き当てにしてもきちんとした基準を与えられた、これは初めてのことであります。  今から思いますと、今まで銀行は、検査もあったし公認会計士もおられたのでしょうが、自分がよしとする基準に従ってやっておられた。それが必ずしもうそだとは申しませんけれども、客観性を欠いておったことは事実であったと思いますから、ようやくここで日本銀行がアメリカ並みに近い検査を受けて、そういうスタンダードでこれから健康を回復しよう、そういうところぐらいかなと思っております。  しかし、柳沢大臣も言われましたように、不良債権というものは、これは客観的に大変にはっきりした。まだ引き当てであるかもしれませんし、バランスシートに残っているものはあるかもしれませんけれども、客観的に、国際的にも今までのところのものははっきりいたしましたから、国際的にもその点がわかって、ここで信頼を何となくみんなが取り戻しつつあるということではないだろうかと思っております。  ただ、そんな程度でございますから、かつては、ビッグバンが始まったら、日本銀行がどこ、証券会社がどこ、一つか二つは世界に乗り出していけるかと思いましたが、それは残念ながらスタートではおくれております。永久にないとは私は望みを失っていませんので、必ずどこかが何かをやるだろうと思っておりますけれども、その点はスタートがおくれた。これは仕方がございません。ただ、やる気があってやってくれそうなところもあるし、また、違うところに特化しようとしているところもございますから、それはそれでいいのではないか。  他方で、ビッグバンに従って外国からいろいろな銀行活動、投資銀行活動等が入ってまいりまして、日本の消費者はいろいろな選択を与えられておるわけでございますから、これはまことに大きな目で見て、競争は激しくなりますけれども日本の消費者一般にはいいことである。願わくば、日本銀行あるいは外国系の銀行、あるいは一緒になるものもあるかもしれませんけれども、そういう意味で、消費者のために、またあるものは世界市場に進出して仕事をしてもらえばいいな。  とにかく、長いこと私ども銀行行政というものは批判を受けて、いろいろなことがありましたが、今考えてみて、批判を受けるのもそれだけの理由があった、今度は新しいステージに立てる、こういう感じを持っております。
  206. 鴨下一郎

    ○鴨下委員 終わります。     —————————————
  207. 村井仁

    村井委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として預金保険機構理事長松田昇君、日本銀行総裁速水優君及び日本銀行副総裁山口泰君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  208. 村井仁

    村井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  209. 村井仁

    村井委員長 次に、岩國哲人君。
  210. 岩國哲人

    岩國委員 民主党を代表いたしまして、今回の公的資金の投入について質問させていただきます。  まず最初に、今回、七兆四千五百億円余りが十五の大手銀行に資本注入されることになりましたけれども、この決定までに三カ月にわたって審査が行われたわけであります。しかし、本当に国民の理解が得られる審査であったのかどうか。前科があるだけに、納得のできる説明がされる必要があると思います。  昨年の三月に、旧金融安定化法に基づきまして、大手二十一行に対しまして、銀行救済のためでなく貸し渋り対策のためであるという大義名分のもとに、総額一兆八千億円の資本注入が行われました。その際、大手二十一行はすべて、金融危機管理審査委員会、通称佐々波委員会によって、自己資本比率八%以上の健全な銀行であるという認定、お墨つきが与えられ、その結果、それだけの公的資金の投入が行われたわけであります。  しかし、その結果はどうであったか。結果は、その説明は偽りであったのか、あるいは誤った判断であったのか、あるいは、判断は誤っていなかったけれども、誤った数字に基づいた判断であったのか、そのいずれかであったということが明々白々となっております。  今回、資本増強の申請がありました大手十五行について、債務超過の銀行、あるいは特に著しい過少資本の銀行、著しい過少資本の銀行、既に過少資本になっておる銀行に該当する銀行はなかったのかどうか、まずお尋ねしたいと思います。委員長、お願いします。
  211. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 私ども今回、十五行に、今先生御指摘のように七兆五千億円になんなんとする資本注入をさせていただきましたが、この資本注入の基礎にある法律は、先ほども申しましたけれども金融機能早期健全化法でございます。  その金融機能早期健全化法に、今先生の御指摘の健全性なりについてどういう規定があるかと申しますと、法律の七条でございましたか、一つは、経営が健全であることということがございます。それからもう一つは、存続が極めて困難であると認められる場合でないこと、こういう要件が規定されております。  私どもは、この経営の健全性につきましては、資本充実の程度による区分というものが規定されておりますので、これを決算ベースで判定するというのが求められていることではないか、このように考えまして、平成十年九月期の決算、この決算に基づく自己資本比率でもって健全性というものを判定させていただきました。その結果、我々が考えておりました優先株あるいは劣後ローンの投入のための区分としては、第七条二項の一号、「健全な自己資本の状況にある旨の区分」というものに該当するというふうに認識をいたしたわけでございます。  加えまして、先ほどちょっと申し上げた点ですが、もう一つの基準であるところの存続が極めて困難であると認められる場合でないことという要件の認定につきましては、私どもは、私どもが今回資本投入をするその直前の状態、つまり、業務純益が見込まれておる場合にその業務純益、あるいは資本の自己調達が見込まれている場合にはその自己調達、そういうものすべてが、資本に勘定されるものすべてが勘定されて、最後に我々の公的資本が注入されるという考え方をとりまして、その資本が注入される直前の状態での自己資本比率というものをはからせていただきまして、そのことによって存続可能性が極めて困難ではないということを認定させていただいたということでございます。
  212. 岩國哲人

    岩國委員 佐々波委員会と今回の金融再生委員会審査は、一番大事な点、基本的にどこが違っていますか。その点を御説明いただけませんか。佐々波委員会と今回の委員会との違いです。
  213. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 私ども、今ここでにわかにどこがと、こういうふうにすべてを言い尽くすことができるかどうかちょっとおぼつかない面もありますが、今先生の御質問を受けてまず念頭に浮かんだのは、私どもは、金融監督庁検査部による平成十年三月期の金融検査、このものにつきまして、金融検査の検査結果通知書そのものを資料として提出をしていただいて、私どもがそれを実際に目にし、必要ならば質疑応答の形で中身を確認することができた。この点は、今までの国会での御論議での佐々波委員会のこれらのことをめぐるいろいろな応答、これと比べて私どもはちょっと違うなということを頭に浮かべた次第です。
  214. 岩國哲人

    岩國委員 それでは、佐々波委員会は、今おっしゃったようなことをやっておらなかったということですね。松田参考人、御答弁をお願いします。
  215. 松田昇

    ○松田参考人 事実関係につきましては、当時、金融監督庁のように一斉検査というのがございませんでした。検査資料はばらばらでございまして、中には古い銀行の資料もございました。  そこで、自己査定を当該期日に合わせてとって、あとはラインシートを大蔵省と日本銀行に見ていただいてその信憑性を確かめた、こういう経過でございました。
  216. 岩國哲人

    岩國委員 一斉検査はなかったということかもしれませんけれども、日債銀、日長銀については直前にそういった立入検査なりなんなりしておられたわけですけれども、今柳沢委員長が言われたような検査通知書を、実際の実物を見てと強調されました。としますと、佐々波委員会においては検査通知書の実物を見ることなしに判断されたということでしょうか。その点だけ。
  217. 松田昇

    ○松田参考人 事実関係の調べはすべて大蔵省と日本銀行にお願いしていましたので、審査会の席上でそういう検査通知書それ自体を広げて検討するということはいたしておりません。
  218. 岩國哲人

    岩國委員 ところで、この佐々波委員会での審査内容はどのようなものであったのか、その議事録の提出を我々何人もの国会議員が要求しておりますけれども、いまだに実現しておりません。  佐々波委員会審査議事録というものを、その業務を引き継がれた柳沢委員長は実際にごらんになったことはありますか。つまり、以前とは違っておったということは、以前はどうであったかということを知らなければさっきの答弁はできないわけですから。議事録をごらんになりましたか。
  219. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 正直申しまして、私、先ほど御答弁申し上げましたように、どうもそこらあたりのことについての国会での応酬が非常に多かったように私には頭にとどまっておりましたので、その点をお答えしたということであります。  私自身はもちろん、佐々波委員会の議事録そのものを見ておるわけでもありませんし、また私、立場上、当時そこに全く無関係の者でございましたので、したがって、今の先生の御質問に対しても、私が比較においてどこが違うかということについて本当に答えられるのかどうかというのはわからない、そういうことを前提にした上で、しかし、国会での応酬を聞いておるとここらあたりが違うところかもしれないというような、まことに恐縮ですけれども、その程度のことでお答えさせていただいたということでございます。
  220. 岩國哲人

    岩國委員 柳沢委員長は、当時、大臣席に閣僚の一員として座っていらっしゃったわけですから、そういう内閣の一員としても責任を感じながらその議論をお聞きになっておったはずだと思います。  それから、日野長官、この議事録はお読みになったことがありますか。
  221. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  金融監督庁の長官は、その職務上、佐々波委員会のメンバーの一人ということで位置づけられておりました。ただ、金融監督庁が発足いたしましたのが昨年の六月でございまして、私が実際にその委員会に出席いたしましたのは、委員会が廃止されることに決まりまして一番最後の委員会でございますが、その委員会に出席させていただいたのが一回、それ限りでございます。その最後の委員会の審議の状況はもちろん承知いたしておりますが、それまでの委員会の議事録は私自身は見ておりません。要旨というものが要約された形で出ておりますので、それは再三再四参照させていただいております。
  222. 岩國哲人

    岩國委員 議事録は存在するのですか。はっきり見たということをおっしゃる方がどなたもいらっしゃらないわけです。これだけ大量の公的資金の投入に、審査され、責任を持っておられる閣僚級の方々が一人も、議事録は厚さ何センチで確かに私は見たことがあると、今まで一遍も国会の審議の中でおっしゃる方はおられないのです。  しかも、本当は、国民の立場からいえば、ぜひその審議内容の欠陥を直して、次はそういう過ちを犯してほしくないという願いのあるときに、だれもその義務を果たされた人がいない。議事録をだれも読んでいらっしゃらない。どこにその審査の欠陥があったのか。審査の欠陥があったのかということも十分御承知のないままに今度の審査のやり方の方がベターでありますというのも、また大臣の思い入れが少しきつ過ぎるのではないかと私は思います。どなたか議事録をごらんになった方がいらっしゃいますか、この部屋の中に。  あるいは、要旨というものは何回も何回も見たとおっしゃいますけれども、その要旨を何回も何回も見て、疑問なりなんなりがあれば議事録そのものを見るのが普通のお役人の仕事のやり方だと私は思いますけれども、要旨というのが非常に満足すべきものであって、もうこれ以上議事録そのものを見る必要はないというぐらいだったのか。議事録を請求しても出てこなかったのか。あるいは、議事録がないどころか審査そのものも行われておらなかったのか。議事録がなければ審査が行われたという証拠はどこにあるのですか。松田理事長、お答えいただけますか。
  223. 松田昇

    ○松田参考人 まず、議事録の点でございますけれども、現在これは、前の安定化法を引き継いで再生法になっておりますけれども、私が保管をいたしております。議事録は確かにございます。  それから、議事がありましたときに、その都度委員長から記者会見もいたしておりますし、議事の概要と議決の内容も公表いたしております。同時に、議事録は、いろいろな点で前の法律に書いてございまして、委員会が相当と認める期間後に委員長は公表しなければならないと書いてございますので、先ほど日野長官もお話ございましたけれども、最後の委員会でその結論を出しまして、二〇〇一年の三月までは相当期間とする、こういう結論を出したわけでございます。それに従いまして、再生法ができましたときに、旧安定化法の今の条文は生きている、有効であるとみなされた上で私が引き継いでおりますので、預金保険機構としても、その期間を尊重して、現在その相当期間経過まで議事録の公表を差し控えている、こういう段取りでございます。
  224. 岩國哲人

    岩國委員 私は、そうした大事な議事録の公表はできるだけ早くすべきであるという意見を申し添えまして、次の質問に移りたいと思います。  先ほど柳沢委員長は、金融監督庁の検査部が十年三月期にそうした検査を行い、その検査通知書を十分に見て判断の材料として使ったということでありますけれども、資料をお配りしていただけますか。  金融監督庁が作成したという資料が雑誌に掲載されております。この金融監督庁作成の資料というのは、内容が非常に深い分析に基づいたものでありまして、金融監督庁、なかなか立派な仕事をしておられるなということを私は感じた次第ですけれども、これを見ますと、十年三月期の決算データに基づいた正味自己資本比率を見ますと、債務超過の銀行が五行も六行も出てきておるのです。もちろん、今度の公的資金投入の対象になっております。  これは一体どういうことなんですか。資本増強を行った十五行には健全な銀行は一つもありません。つまり、柳沢委員長がごらんになった検査通知書と同時に、金融監督庁がつくったと言われておりますが、まずその前に、日野長官、この資料は金融監督庁の手によってつくられたものかどうかを御確認いただけますか。
  225. 日野正晴

    日野政府委員 この資料につきましては、以前当委員会でも御質問がございまして、私から御答弁させていただきましたが、私はこの雑誌の記事を見るまで、こういった資料を見たことはございませんでした。私の写真がここに写っておりますので、いかにも金融監督庁が作成した資料であるかのように見えますけれども、私はこういう資料を見たことはございません。  一つ、まずその根拠として申し上げさせていただきたいと思いますが、一番上のページの左の一番上に「要償却・引当率の前提」という欄がございます。ここに、三分類七〇%とか二分類二〇%とかいった一律の数字が載っておりますが、こういった数字は金融監督庁としては全く関知していない数字であるということをまず申させていただきたいと思います。
  226. 岩國哲人

    岩國委員 ということは、金融監督庁の事務所の中にはこういう資料は一切存在していないというふうに理解してよろしいですか。つまり、長官はごらんになっていなくても、しかるべき部署でいろいろな判断の材料として、部内資料としてそういうものがつくられておったという可能性は全くありませんか。
  227. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  少なくとも長官私自身はこういった資料があるということを知りませんでしたし、それから仮に金融監督庁かというお尋ねですけれども、これは先ほど申し上げましたように、金融監督庁としてはこういった三分類七〇%とか二分類二〇%といったような基準を使ったことは一度もございませんので、私は金融監督庁でつくったものではないというふうに申し上げさせていただきたいと思います。
  228. 岩國哲人

    岩國委員 これは内容的に見ますと、正味自己資本比率というものが非常に劣化しておるわけでありますけれども、柳沢委員長、今回の公的資金投入の際に、これに類するような分析というものを再生委員会自身で、あるいは外部の第三者に依頼してそういうことを参考にされたということは全くなかったんでしょうか。あるいは、委員長自身がこういう雑誌をごらんになって、これほどひどかったかということでびっくりされたのか、あるいは全くこの資料は根拠がなさ過ぎて信用するに値しないというふうにお考えなのか、御所感をお願いいたします。
  229. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 私は、こんなものが出ましたということでこの雑誌が出たときにすぐにコピーをスタッフから見せられたのですけれども、何しろ灰色ですし、私も最近は目が非常にもう老眼であれなものですから、それで、間違った資料ですという口添えもございましたので、さしてそのこと自体を問題にするという心境にはなりませんでした。  ただ、こうしたことを本当にまじめに、縦横十文字にいろいろ数字を分析するというようなことは当然我々の作業の過程でも必要だというふうに思っておりまして、これとは全く関係ありませんけれども、それなりにいろいろ分析をさせていただいて私どもの結論を導かせていただいたということは申し上げさせていただきたい、このように思います。
  230. 岩國哲人

    岩國委員 柳沢委員長は十二日の会見で、佐々波委員会の失敗を繰り返さないかとの質問に、絶対防げると答えておられます。佐々波委員会の失敗は何だったのか、どういう認識のもとにそれを防げるとおっしゃっているのか。  その失敗は何だったのか、端的にお答えいただけますか。
  231. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 私が失敗と申し上げたのは、やはり資本注入をしながらそれを毀損させてしまったということが一番私の頭にあることでございまして、その意味で今回の資本注入、今まだその過程にあるわけですけれども、行った上には絶対そのようなことを起こしてはいけない、このように私自身深く心に決めておりますし、また私ども制度の上で、この法律が与えていただいた健全化計画の報告を徴する、しかもそれを公表する。現にもう公表されておりまして、これを見たい国民はだれでも見ることができるということでございますけれども、そういう意味ではいわば国民監視のもとにあるという仕組み。  それからまた、法の二十条に規定されております銀行法を引っ張って、この履行状況の推移によっては銀行法上の業務改善命令その他の措置をとることが可能である、こういう制度的な枠組みを我々活用させていただきまして、その仕事に当たる体制といったようなものについても、特に責任を持つ体制をぜひ監督庁の方でしつらえさせていただく、こういうようなことの中で二度と再びあのようなことが起こらないように万全を期してまいりたい、このように深く心に期しているところでございます。
  232. 岩國哲人

    岩國委員 国民監視のもとに当大蔵委員会としてもこれからも十分なフォローと監視をしていかなければならないと私は思いますし、また、委員長自身かたい決意を持っておられるということですから、公的資金がまたむだになるということが決してないように、今後もきめ細かいフォローアップをしていただかなきゃならないということを申し添えて、次の質問に移りたいと思います。  こうした公的資金の投入というのは、また行われてまた行われるのか。四年前の六月、大蔵大臣は、銀行不良債権は四十兆円である、そういうことを国民に説明されたわけです。四十兆円ということになれば、あと二十兆円かそれぐらいつぎ込めばもう不良債権はきれいになってしまうということでしょうか。さらに次の公的資金の投入というのは十分あり得るというふうに委員長はお考えになっていますか。それらしい報道に対するお答えを二月の終わりにしておられますけれども、追加公的資金投入はあり得るのか、あるいは絶対にもうないと言えるぐらいの十分な判断を今しておられるのか、その点を簡潔にお願いします。
  233. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 今度の公的資金の投入によってカバーされるものはどういうものかといいますと、現に存在している不良債権についての定量的な基準による引き当てということと、もう一つは、昨年九月末における株式、有価証券の含み損に見合う資本勘定、そういったものをきちっと投入できたということでございます。  そして、その後どうなるかといいますと、金融活動、貸し付けというようなことをしていけば、これはもうリスクが伴うことは必定でございますので、それが顕在化して不良化していくということも通常ベースでは起こり得る。そういう意味では、不良債権の処理というのはもう金融という仕事が続く限りずっと続くわけでございますが、そのレベルは通常のレベルに落ちついたものになるであろう、このように我々は展望し、また、大方の金融機関の今後の展望もそのようになっておると思います。直後のところで若干まだ余韻が残っているという展望を持っている金融機関もございますが、基本的には定常状態になるという展望を持っておるということでございます。  その意味では、私どもは追加投入ということが必要になってくるとは考えておりません。おりませんが、ただ、一つ私が申し上げたいのは、先ほど鴨下先生の御質問のときにありましたように、再編による効率化というものが十分にできておるかというと、その点については今回のことで十分なし終えたという感じを私はまだ持っておりません。ちょっと時間が短過ぎて、もう少し再編についての努力の余地はあるというふうに思っておりますので、そういうような再編が、合併とかその他、この法律が要件として規定している形態をとっていただく場合には、場合によってこの法律による資本投入というもので支援することがあり得る、このように申し上げたいと思います。
  234. 岩國哲人

    岩國委員 そうした再編に伴う公的資金の投入ということについては、私は慎重であるべきだと思います。  なぜならば、ここまで公的資金を投入し、今度は、どうも判断が間違ったらしい、あるいはリストラ計画が不十分だったらしい、だから悪いところのAとBを一緒にさせる、こういったような筋書きのもとに、結局行政のミスをカバーするような再編というものが行われるとすれば、結果的には今回の公的資金投入の判断に欠陥があった。その欠陥のしわ寄せとしてどこかの銀行が合併させられ、合併のための支度金か持参金を持たせる。ところが、合併しても結果的にはまた日債銀、日長銀のようにうまくいかなくて、支度金、持参金のつもりが御仏前か御香典になってしまった、そういうふうなことを我々としては見たくないわけでありますから、こうした再編のための公的資金投入ということを安易に今の段階から考えられているということは、私は若干期待が裏切られたような感じがいたします。  次に、優先株を普通株に転換した場合の持ち株比率について、これは十二日に発表された公的資金投入のときの説明資料の中にあったものですけれども、資料の(B)をごらんいただきたいと思います。この資料は金融再生委員会がつくられたものですから、当然委員長は御存じのものと思います。  十五行のうちの四行、すなわち大和、三井信託、東洋信託、中央信託銀行には、三カ月で普通株に転換できる優先株により資本注入を実施されるわけです。三カ月です。そのうちの三行、大和、三井信託、中央信託については、優先株を普通株に転換いたしますと国の持ち株比率が五〇%を超えることになります。つまり、事実上の国有化であります。  三カ月たてばいつでも国有化できる、これは、この三行は破綻のおそれがあるからすぐに国有化できるようにしておくということですか。明快な御答弁をお願いします。
  235. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 お答え申し上げます。  この資料で、確かに五割以上のところが三行あるわけでございますけれども、見させていただきましたところ、ある仮定に基づいているということかと思います。  すなわち転換価格、これは、今回転換型優先株を出した場合に、引き受け条件がいろいろあるわけですけれども、その際の最低転換価格で転換した場合、そうした場合にはこの程度のシェアになる、こういうことかと思いますので、三カ月後の株価がどういうふうになっているかにもよりますけれども、そのときの株価が最低転換価格になっていれば別でございますけれども、最低転換価格になるような株価の状況じゃなければこういうようなシェアにはならないというふうに思われます。
  236. 岩國哲人

    岩國委員 当然、公的資金の投入額を決定されるときに、それが普通株に転換されたならば国としてどれだけの株主になるかということは、いろいろなシミュレーションにかけて何度も何度も試算されたはずだと私は思います。それでなければ、投入してみて、優先株を買ってみて、ある日思いついて普通株に転換してみたら、あっと驚き、国有化しておった、こういうふうなお粗末なことではないと私は思いますから、このような投入額と、そのときにあり得るであろうその株価、転換価格で計算されて、そしてこういうところについては三カ月と。  この三カ月という据置期間、ほかのものより非常に短いわけですけれども、なぜこういった四行については三カ月という判断をしておられるんですか。
  237. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 お答え申し上げます。  転換権の行使開始時期あるいは引き受け条件の決定におきましては、基本的には各行が申請してきたものをベースとしているわけでございます。その際、特に転換開始時期が早く設定されますと、極めて普通株に近くなる、極めて資本性が強くなるということで投資家にとって有利になるということで、これはいわば市場の慣行でございますけれども、当然、配当利回りも下がるということでございまして、各行においてこうした経済合理的な商品設計を行った結果いろいろな転換開始時期が出てきて、その中に三カ月という短いものも出てきたというふうに理解しております。
  238. 岩國哲人

    岩國委員 それぞれの頭取は、こうやって国有化されるであろうということを十分念頭に置いて公的資金投入を受け入れたということですね。いろいろな計算の仕方があろうかと思います。  しかし、幾つかの試算を前提に置けば十分にこれは国有化される銀行になる。しかも、できるだけ早く国有化してほしいと思っておられるかどうかはわかりませんけれども、三カ月後には早くも国有化されるということを十分念頭に置いて、それでもなお公的資金の投入を仰がなければならないということは、これは私は健全な銀行の経営者の判断ではないと思います。いかにバランスシートが、あるいは柳沢委員長がおっしゃったように去年の三月期のいろいろな数字は健全であるということであっても、経営者の頭、考え方が不健全であってはこの銀行は不健全銀行じゃありませんか。  何か御意見はありますか。
  239. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 先生の御指摘のとおり、私どもも、今回の資本注入に当たって、経営者の気概というか経営に対する考え方というものが大事だという認識は強く持っておりまして、今回の審査に当たっても、双方とも大変忙しい中でありましたけれども、二度ほど、私ども再生委員会、五名でございますけれども、この再生委員五名と経営トップとの会談、面談というものをさせていただきました。それはひとえに、今先生がおっしゃったところと我々の認識が共通であったということだとぜひ御理解を賜りたいと思います。  そういうことと、今申した、国有化と先生おっしゃいましたけれども、再生法のもとでの国有化、特別公的管理等とはおよそ様相は違うと思いますけれども、持ち株比率が非常に高くなるということは、そこに経営的な問題があるんではないか、こういう御指摘でございます。  私どもといたしましては全くそういうことはなくて、今事務局長が言ったように、商品性の設計からやむなくそういうようなことになったというところでございます。そして、私どもとしては、できるだけ早くに業務純益を積み上げてもらいまして、そして買い取り消却の原資を蓄積してもらって、スケジュールはスケジュールとしても、スケジュールよりも早くに完全民営化に向けて経営を推進してもらいたい、このような気持ちを強く持っている次第です。
  240. 岩國哲人

    岩國委員 次に、質問を変えさせていただきます。  最近、単価調整のことが問題になっております。このことは金融監督庁はよく御存じだと思いますけれども、証券業協会においては、債券取引価格をあるべき価格から一〇%上げてみたり一〇%下げてみたり、これはフィナンシャル・タイムズで取り上げられ、そして私も予算委員会で質問いたしました。損失を先へ延ばす、そして決算を粉飾するための取引技法であります。こういう外国の業者はやらないことを日本の業者がやり出したということで、十二月に制限が撤廃されてから一月、二月、公的機関でさえもこれをやっております。簡保あるいは厚生年金、つまり、国民のお金の決算さえも、こういうエイズのような、ばい菌に侵されて粉飾決算が行われている。私はこのことを取り上げました。  しかし、これは流通市場における粉飾だけではなくて、私がきょう金融監督庁にお伺いしたいのは、日債銀、日長銀の場合には流通価格と発行価格とが乖離しておった。これは予算委員会で私は質問させていただきましたね。二年前の六月から日債銀の金融債は約一〇%安いところでしか取引されておらない、にもかかわらず発行価格は額面で発行されておる。これは、流通段階における単価調整ではなくて、組織ぐるみ、国家ぐるみの単価調整が日本では行われてきたということなんです。丸の内の値段と秋葉原の値段とが一〇%違っているのです。これは、電気製品ではなくてれっきとした銀行金融債についてこういうことが行われておる。  これについて今証券業協会では、値幅制限といって、二%内というもとのところへ返そうかという動きが見られます。しかし、これは流通段階であって、発行段階での単価調整というのを政府が関係してやっておったということの責任をどのように感じておられるのか、お答えいただきたいと思います。日債銀、日長銀の発行価格は、流通価格の実態価格を無視して、だれも買ってくれないような値段でその発行が強行されておった。これは単価調整と全く同じことではありませんか。
  241. 乾文男

    ○乾政府委員 日債銀、長銀の発行しておる金融債につきまして、それの流通価格と新発債の発行利回りとの開差の問題についてのお尋ねでございます。  これは以前にもお尋ねいただきましてお答えをしたかと思いますけれども、募集債と言われるいわゆる機関投資家が購入する債券につきましてそうしたことの現象が見られているわけでございますけれども、これは基本的には発行体とそれを購入する投資家の問題であるというふうに考えておるわけでございまして、流通利回りがある中で、いろいろな取引関係等を考慮してそういうふうな投資行動も行われているのではないかというふうに推測しております。
  242. 岩國哲人

    岩國委員 時間が参りましたので、最後に意見だけ申し上げますけれども、そうした発行会社と投資家とが合意すればそれでいいんだという考え方は少しおかしいと私は思います。監督庁というのは、その他の投資家がどういう値段で買っておるのか、投資家の間に不公平はないかどうか、投資家間の公平、公正を担保する、保証するのが金融監督庁のお仕事ではありませんか。買う人は納得しておるといっても、条件が全然違う、そういう不公平な値段で買わされている投資家の立場から見れば、そのような発行価格で大蔵省が有価証券発行を認めておることに問題があると私は思います。  この点については、機会があればまた御質問したいと思います。どうもありがとうございました。
  243. 村井仁

    村井委員長 次に、仙谷由人君。
  244. 仙谷由人

    仙谷委員 初めてと言っていいぐらいのいわば集中した、この間の金融再生委員会のお仕事についての国民に対する説明の場とでもいいましょうか、そういう時間帯でございますので、主として柳沢委員長にお伺いをいたしたいと存じます。  昨年の秋、大変な国会の中で金融再生法と早期健全化法が成立をした。そして、日本債券信用銀行の特別公的管理ということで金融再生法が早速使われた。あるいは、立ち上がる直前でありましたけれども、この特別公的管理を金融再生委員会に進めていただく、こういうことになったわけであります。  そして、そのころから、不良債権を抱えたままで、脆弱な体質のままで、そしてまたオーバーバンキングの中で、どうも日本銀行が不安定だ、第二、第三の長銀、日債銀が出ないとも限らないという懸念のもとで過ごしてまいったわけですが、その中で金融再生委員会が、いろいろな批判を浴びながら、大変精力的に作業を続けてこられたということに敬意を表したいと存じます。  ただ、全く問題がないかというと、私の目から見ますと、どうも画竜点睛を欠くとでもいいましょうか、国民が知りたい、知らなければならないことについて少々まだ情報が明らかになっていない。あるいは、巷間聞こえてくる雑誌等の報道によりましても、これはまずいんじゃないかというふうなこともあるのではないかという懸念もございます。  そこで、柳沢委員長、この間、行政庁としては、ある種、いわゆる国家行政組織法第三条、三条委員会の組織を行政機関として持ってくるということで懸念する声もあったわけでありますが、この日債銀の特別公的管理の進め方、数日以内に株価算定委員会も開かれるようでありますけれども、その作業、あるいは今回の資本注入についての作業、これについて、合議制機関である金融再生委員会、どういうプラスとマイナスがあったのか、その点をまずお聞かせいただきたいと思います。
  245. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 私、少しばかり独任制の閣僚をやらせていただいた後に、横滑りしまして三条委員会委員長としての閣僚を務めるというようなことを今させていただいておるわけでございます。  私は、三条委員会委員長になるに当たりまして、自分自身の個人的な思いでありますけれども、本当にこれはお互いが専門知識を出し合って、緊張の中にもお互いに存分のことを言い合うような、そういう雰囲気の委員会にしようというふうに心がけました。  正直申しまして、私がそういう態度をとらせていただくのが一番いいというように考えまして、委員長たるものが最初に発言するとか、あるいはまだ段階が早いうちに自分の個人的な意見を発言するというようなことはしないのが常かと思うんですが、あえて私は意識してそういうことをさせていただいて、皆さんの意見を引き出すというようなことに努めさせていただいたりいたしました。  私の努力は、成果としてそれが大きな貢献になったとは毛頭言うつもりはございませんけれども、今現在の我々再生委員会の仕事におけるチームワークというのは、率直に言ってどなたに聞いていただいても恥ずかしくないような状況にあるというふうに私は考えております。  しからば、そうした行政委員会による仕事が今我々が担当している仕事とどのような関係を持つか、特にどのように有効に機能しているか、あるいは欠点を持つかというお尋ねかと思うわけでございますけれども、少なくとも再生法の世界の運営については、かなりの程度司法的な側面を持った仕事であるというふうに私は思いまして、この点については非常にいい仕組みではないか、このように思っております。  他方、健全化法の方についてあえて申し上げますと、私は先ほど来口にさせていただきまして、これは担当閣僚としてはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、今回法律が期待したような再編ということがどうも十分にいかなかった。これはどうも、行政にクリエーティブな面が求められる側面だということを言うことを許していただくならば、まさにその点ではちょっと行政委員会というのはそぐわないかなという感じがしております。  全くの印象でございますけれども、お聞き取りいただきましてありがとうございました。
  246. 仙谷由人

    仙谷委員 私も高く評価をしておる者の一人でありますが、ただ、三月十八日、昨日の毎日新聞、そして夕刊で日経新聞が後を追った記事でこういう記事がございます。「長銀、日債銀向け劣後ローン 税金で穴埋め 生保の七千四百五十億円、全額保護」という記事でございます。  私どもは、例の部分について、つまり九七年の大蔵省銀行局の奉加帳による劣後ローンの優先株への移しかえ、そこから推測すると、日債銀が生保等についてこの程度あるだろう、これは大体わかるわけでありますが、長期信用銀行が生保各社に劣後ローンを借りておったということは全然わかっていないわけでありますが、こういう記事が載っておるわけですね。  これは再生委員会あるいは監督庁、どちらでもいいわけですが、長銀、日債銀のいわゆる金融機関、生保、銀行等々から受け入れている劣後ローン、劣後債というのは存在するのかどうなのか、どのくらい存在するのか、あるいはこの一覧表をお出しいただけるかどうか、まずお答えをいただきたいと思います。
  247. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 お答え申し上げます。  確かに、特別公的管理下に入りました長銀、日債銀の負債の中にそういう劣後ローン等があることはそのとおりでございますけれども個々具体的な数字につきましては発言を控えさせていただきたいと思います。
  248. 仙谷由人

    仙谷委員 日債銀は、例の永久劣後ローンの振りかえが九百七十億でありましたから、これが半分だと言われておりますから、全部で現在九百七十億の劣後ローンが残っておる。あるいは、優先株の第三者割り当て増資については、四分の一を優先株に振りかえたということが言われておりまして、劣後ローン振りかえ分が四百三十六億ですから、その三倍、一千三百九億、これが劣後ローンとしていわゆる日本生命以下、住友、大東京火災海上保険までそういうふうになっていることはわかるのですね。長期信用銀行はわからない。  なぜこういうものを開示することができないのですか。つまり、資本項目なのか負債項目なのかわかりませんけれども、こんなものはバランスシート上、注書きでもすべきような事柄だと私は思うのですよ。ましてや、今まで自己資本比率計算上、この劣後ローンあるいは劣後債を含んで計算してきたのに、それを明らかにできない。ましてや、今特別公的管理に入っている銀行について明らかにできない。そんなことはあり得てはならないと私は思うのですよ。いかがですか。
  249. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 お答え申し上げます。  先ほどお答えを控えさせていただきたいと申しました私の趣旨は、劣後ローンなり劣後債を、要するに借り手と貸し手があるわけでございますけれども、貸し手の側のいわば取引額がわかってしまうということについての影響を考慮して控えさせていただきたいということでございます。  ただ、これが有価証券報告書等にもし載って公表されているものでございましたら、当然公表すべきものでございますので、その点をチェックいたしまして、後刻お答えさせていただきたいと思います。
  250. 仙谷由人

    仙谷委員 御存じだと思いますが、金融再生法の五条という項目があるのですね。「政府は、おおむね六月に一回、又はその求めがあったときは直ちに、」「その求め」というのは国会という意味ですが、「破綻した金融機関の処理のために講じた措置の内容その他金融機関の破綻の処理の状況を国会に報告しなければならない。」、これはちゃんと法律になっているのですよ。六カ月に一回はやらなきゃいかぬ、あるいは国会が求めたときは直ちにその破綻処理の状況を国会に報告しなければならないと書いてあるのですよ。  ところが、今の事務局長のようなお話だと、何にもわからないという話になるじゃありませんか。これは、今すぐとは言いませんけれども、直ちにとまで言いませんけれども、速やかにこれについては明らかにしていただきたい。  そこで、柳沢委員長に聞くわけですが、再生委員会の方針で、劣後ローンを要するに特別公的管理に入った日債銀なり長銀が支払うということがこれだけ堂々と新聞に書かれておるということでありますが、こういうことが方針として決定をされたりあるいは検討されたりしておるのですか。いかがでしょう。
  251. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 お答え申し上げます。  方針として決定したとかあるいは審議したということはございません。と申しますのは、劣後ローン契約における劣後事由が破産宣告または会社更生手続の開始決定がなされた場合となっておりまして、特別公的管理がこの劣後事由に該当しないと考えられることから、法的にこれらのローンについては、いわば劣後しないローンということで公的管理銀行の負債として認識されている、こういうものでございますので、報道にあるような政策的な意図を持って金融再生委員会が決定するとかしないとかいう性格のものではないと考えております。
  252. 仙谷由人

    仙谷委員 今事務局長がお答えになったけれども委員長、今のようなむちゃくちゃな解釈を再生委員会はとっているのですか、法解釈として。つまり、契約条項の中には、会社更生法と破産宣告、その場合は劣後するけれどもそれ以外は劣後しないんだ、一般債務と同じだ。  あなた、冗談じゃないですよ。金融商品としても経済的にも、劣後ローンの意味はハイリターンでハイリスクじゃないですか。だから劣後しているんじゃないですか。そんな商品を、つまり金利をそれまで稼いだ会社が、一たん銀行がつぶれたときに、破綻したときに、それをそのまま従来の高い金利を取り込んで、さらに債権元本満額取れるなんて、そんなことが経済的に許されると思いますか。法律解釈は、目的論的に解釈したら、あなたみたいな解釈は出てきませんよ。昔の大蔵省の適当な行政的解釈ですよ、今のようなのは。裁判所に持っていったら通用しませんよ、今みたいな解釈は。そうでしょう。破綻した銀行の整理の手続を進めるとして特別公的管理があるんじゃないですか。そんなことは審理の中で明らかじゃないですか。ましてや、長銀も日債銀も破綻認定をして特別公的管理に入れたんでしょうが。それ以外に何があるんですか。  どうですか、柳沢委員長委員会でそんなことを決めたんですか。事務局で勝手に決めるのは、それは勝手にやったっていいけれども委員会でどうやって決めるかが問題ですよ。
  253. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 この問題は非常に悩ましい問題なんです。悩ましい問題というのは、今事務局長から答弁をしたような契約の条項が明記されておるということが一つあり、またさらに加えて、内閣総理大臣の談話を日長銀の破綻のときに出させていただきましたけれども、それには、公的管理に置くこととなるが、「この結果、長銀の預金、金融債、インターバンク取引、デリバティブ取引等の負債は全額保護され、」、こういうように談話を発表しておるというようなことが片方にございます。と同時に、今仙谷委員指摘されるようなこともある。  一体、特別公的管理ということと会社更生法の手続というようなこととの類似性というか、そういうものをどの程度と考えるべきかということが問題の焦点かと思うわけでございまして、一部には、契約があるから再生委員会の議に付するまでもないではないかという意見もあるし、また、やはり実態的な審理をするために再生委員会の議に付するべきだという意見もある。その議に付した結果は、まだこれは私がここで申し上げるには時期尚早ということになるわけですけれども、それやこれやいろいろ大変私自身は今悩んでおるところであるということでございます。
  254. 仙谷由人

    仙谷委員 劣後ローンの性質は、ティア2に、自己資本に繰り込むことができる、出資金、株式と同様に扱えるものだ、こういう性格になっているわけですよ。何でそんなものが一般債務と同じように扱われるのですか。これこそ、もしこんなことを許したら国際的に笑いものになりますよ。モラルハザードきわまれりということになりますよ。つまり、倒産直前の会社に高い金利でどんどん貸し込んで、あとは国家が面倒見てくれるという話になるじゃないですか。これこそモラルハザードの極致ですよ。こんなことを許してはならない。  今委員長は、いわゆる民事法的解釈についてお悩みのようなことをおっしゃった。これは完璧に民法的解釈ですよ。いいですか。破産宣告と会社更生手続の開始決定があったときと。では、会社整理の決定があったらどうするのですか、特別清算の決定があったらどうするのですか。そうでしょう。そういうのは全く同視されるべき、今の我々の言葉で言えば破綻という概念はもう一つ上の抽象概念なのですよ。全部入ってしまうのですよ、そんなものは。こんなものは抽象化の階段を上がれば全部入ってしまうじゃないですか、具体化の階段をおりれば一つ一つ言葉は違うけれども。それが法律というものですよ。例示の中に書いていないからなんて、そんな御都合主義的な行政解釈をやられて、公的資金の一部をどんどん七千五百億円も払われたらたまらないですよ。これだけは許せない。  そこで、これについては、もし生保の方が請求されるのであれば、ちゃんと訴訟を受けて立って訴訟で決着をつけてください。そのことを強く要求しておきます。どうですか。
  255. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 ただいま仙谷委員の御議論も十分念頭に置いて、私どもしばらく時間をかりて検討いたしたい、このように思います。
  256. 仙谷由人

    仙谷委員 次の問題なんです。  きょう資料をお配りしてございますでしょうか。  金融再生委員会あるいは監督庁も大変厳しい資産査定、検査監督、査定をされておるということは仄聞しておりまして、銀行業界の方から怨嗟の声にも近い声が私のところにも聞こえてきましたものですから、ある意味では頼もしく期待をしておりました。  これは、私の考え方が絶対的に正しいという前提で申し上げるのではないのですが、先般、金融再生委員会の資本注入に当たっての考え方といいますか、決定をお述べになった部分と参考資料集というのをお配りいただいております。その資料の六のところに、「自己資本の状況(公的資金申請額算入、十一/三月末見込み)」というのがございます。ちゃんと自己資本比率まで出ております。  これを素人なりに公的資金を除いて計算をしてみたらどうなるのだろうか。つまり、厳しい資産査定をし、引き当てをした結果、その時点でのここに書かれておる十五行の自己資本比率を計算してみるとどうなるのだろうか、こう思ったわけですね。やってみました。私どもの計算では、八%を切る銀行は二つある。第一勧業銀行と富士銀行。  この計算は間違っておりますでしょうか、正しいでしょうか。まずお答えください。
  257. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 お答え申し上げます。  実は、我々、こういう数字の計算はしておりませんでした。ただ、ただいま仙谷先生からお配りいただいた資料を見ますと、確かにティア1、ティア2、公的資本前という状況、つまり、ティア1にも公的資本がないということでございますと、ティア2について、劣後債とか劣後ローン等、入るべき金額に制限が出てきますので、そういう関係から自己資本比率は変わってくるということで、この数字自体、正確なものではないかと思います。  ただ、私最初にこういうものは計算しておりませんでしたと申しましたのは、我々、先ほど大臣が御答弁されたとおり、健全性の認定というのは直前期、直近の決算期、すなわち昨年九月の中間決算期の自己資本比率を採用いたしましたもので、それは各行とも八%を超えたものであったわけです。  それでは、八%超えたものが、たとえ二行とはいえなぜ八%を切ったかと申しますと、昨年九月の中間決算期における自己資本比率というのは現行会計基準でやっております。それに対して、その後、我々は資本注入をするに際して現行会計基準とはかけ離れた定量的な引き当ての目安というものを定めまして、各行にその条件を満たしてもらうようにいたしました。そうなりますと、当然、不良債権処理の要処理額は大きく上回ることになるわけでございまして、それによって自己資本勘定の中の内部留保が当然流出する、そういう結果から自己資本比率が低下したものだと思います。
  258. 仙谷由人

    仙谷委員 それではあれですか、これは間違っていましたからやり直しますという話にならないですか。  つまり、森さんが責任を持ってお答えになるのだったらあえて言うけれども、あなたはこの金融健全化法の三条の二項というのをちゃんと読んでいますか。  国会審議の中で、私どもは入らなかったけれども、私どもがより厳しいことを言っていたために、多分公明党さんだと思いますが、当時の平和・改革さんが要求して追加修正になっている項目と関係があるのですよ。覚えていませんか。「金融機関等は、金融再生委員会がこの法律に基づいて施策を講ずる前提として、次に掲げる措置を行うことにより財務内容等の健全性を確保するものとする。」「前提として」となっているじゃないですか。前提は何かというと、金融再生法第六条二項に規定する基準に従い適切な査定を行うこととなっているじゃないですか。前提が査定なんですよ。  それで、あなたは何か得意げに言ったけれども、現行基準じゃなくて、九月に各金融機関がやったんじゃなくて、金融再生委員会が独自に決める基準に基づいて査定を行うというのは当たり前の話なんです。前提なんです。やってみたら八%切れていましたというのであれば、これは話が違ってくるんじゃないですか。
  259. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 ただいま先生がおっしゃいました三条二項、先生のおっしゃるとおりでございますけれども、ここで「金融再生委員会が定めるところにより、適切に資産の査定を行う」となっていますけれども、そこでの基準というのは現行会計基準でございまして、決して一五%、七〇%、一〇〇%という我々の定量的目安ではございません。  したがって、直近期の九月のBIS基準による自己資本比率によって健全行かどうかを定めたわけでございますけれども、それはその定量的目安とは関係のない現行基準によっておりますので、それで八%以上であることを確認して我々は健全行だとしたわけでございまして、今回の先生のおっしゃる定量的目安に基づいて八を切ったところが二つあると言いましても、それはちょっと法律からすると、だから健全行ではないということにはならないと思うのでございます。
  260. 仙谷由人

    仙谷委員 森さん、それは、あなたは法律をつくっているときに国会にいなかったからよくわかっていない。いいですか。  では、金融再生法六条二項に規定する基準に従いというのはどう読むのですか。金融再生法六条二項に返るのですよ、資産査定は。今度は再生法ですよ。「前項の「資産の査定」とは、金融再生委員会規則で定める基準に従い、」、何でこれが現行基準になるのですか。九月決算で各銀行が行った基準に何でなるのですか、こんなことが。「再生委員会規則で定める基準に従い、」と書いてあるじゃないですか。何でこんなことになるのですか。
  261. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 御説明がわかりにくくて誤解をお与えしたかと思うのでございますけれども、三条二項あるいは六条で言っている査定の基準というものは、現行会計基準、すなわち公認会計士協会の実務指針というのを我々は変えておりません。それと、不良債権の要引き当て額を算定する際の目安、これは目安でございます、会計基準ではございません、目安としての引き当て率というものは我々は違うものだというふうに理解してやっております。
  262. 仙谷由人

    仙谷委員 そんなダブルスタンダードみたいな話はだめですよ。佐々波委員会であれだけの失敗をしたから、今度の資本注入をするときには再生委員会規則で定める基準、ちゃんと資産査定について定めましょうということを決めたんじゃないですか。そんなことを無視して言うようだと、これは審議できないですよ。とめますよ、これは。
  263. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 仙谷先生の御指摘は、非常に私どもの苦心いたしたところをずばり質問の形でそこに焦点を合わせたお言葉だというふうに存じます。  金融機能の早期健全化のための法律第三条第二項に基づき資産の査定等を行うための基本的な指針を定める件ということで、当時この仕事の代行をいたしておりました内閣総理大臣が告示をいたしておるわけでございますけれども、その告示は実は公認会計士協会の実務指針そのままでございます。ただし、私は、この引き当てのところはこのままでは自分は満足できないということで、その告示の第二条のただし書きのところに、別途引き当てを定める場合にはこの方法によるのだということを書かせていただいたわけでございます。  しかし、実際に私どもが償却、引き当てを行うに当たっては、私と事務当局の間でも相当議論がございまして、そして、結局この告示のただし書きを具現化したものとしてではなく、別途に「資本増強に当たっての償却・引当についての考え方」というものを金融再生委員会名で決めさせていただいて、そして資本注入に当たっての事実上の準拠すべき規範と言っていいかと思うのですが、それも、しかも目安というような言葉も使っておるわけですけれども、そういうものとして定めた。だから、いわばデファクトスタンダードというか、そういう形式にとどまって事務を推進させていただいた、こういうことであります。  したがって、この引き当て基準そのものは何なのか、どこに書いてあるのだといえば、ただいま私が申し上げたような告示そのもの、それは公認会計士協会の実務指針というものから出ていないということで、しかし、実際私どもが資本注入に当たって準拠したのは、先ほど来の私の答弁でも申し上げているようなデファクトスタンダードとしての別途に定めた高い基準、国際基準に合致するような基準、法律形式的に言うとそういうことになっておるということであります。
  264. 仙谷由人

    仙谷委員 柳沢委員長、二重の意味でそれはまずいですよ。  あなたがおっしゃるのだと、法律に基づかない行政、裁量行政を法律よりもより厳しいことをあなたは要求したということになりますよ。結果として正しかったというだけの話になるじゃないですか。それは、もしそうだったら、金融業界、銀行業界は怒りますよ。私はそう思いますよ。  それで、もう一つは、法律に全然基づいていないことをやったということについて、金融早期健全化法違反になるじゃないですか。まだ、できてほやほやの法律ですよ。そんな苦しい言い逃れをしない方がいい。苦しい言い逃れをしないで、むしろ、金融再生委員会が定立した基準に基づいてやったけれども、それは、ちゃんとここで金融健全化法の三条二項を受けたり金融再生法六条二項に基づいてつくった基準に基づいてやったと。そして、前提として、資産査定、引き当てをやってみると七%、七・三%、そういう銀行があった。それは本来ならば過少資本行に区別すべきであったけれども、現在できていない、もう一遍健全化計画をやらせる、こういう話にならないとおかしいじゃないですか。  これは過少資本行ですよ、七%であれば。法律に基づくとそうでしょう。いかがですか。
  265. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 この点は、私の見解をあえて法律論として言えといえば、先ほど言ったとおりであります。  ただ、この件については、当然、監督庁の検査部も関係しておるところでございますので、監督庁長官はいらっしゃいますけれども、きょうは検査部を帯同しているというわけでもありませんので、ちょっとそれとの打ち合わせをしないと。その位置づけについて、もしこれ以上の答弁を申し上げるということになりますと、打ち合わせが必要だということでございます。
  266. 仙谷由人

    仙谷委員 時間がございませんので、これはまた時間をとっていただくように、理事の皆さん方にお願いをいたしておきます。そういうことでいいですか。
  267. 村井仁

    村井委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  268. 村井仁

    村井委員長 速記を起こして。  仙谷委員、質問をお続けください。
  269. 仙谷由人

    仙谷委員 一点だけ、先ほど岩國さんの方から転換価格の問題が出ました。私も、健全化計画の中の転換条件、転換価格を拝見してみたのですが、先ほど、岩國さんの表の中で下限が書かれておりました。それで、上限のところを幾ら読んでも、頭が悪いのか、わからない。  これをぜひお示しいただきたいということと、この転換価格の下限の話は、実は、ほとんど時価とスライドさせてあるわけですよ、計算上。きょう私が出しました「資本注入を受ける大手銀行の株式時価総額と資本増強申請額」の一覧表をごらんいただければわかるのでありますが、各銀行の時価総額をカウントしますと、時価総額よりも公的資金の資本注入額が多いところが大分あるのですね。  ということは、本当ならば、TOBをかけて株式を全部買い取ってやれば、国有化されてみんなが身軽になっていたという話でございまして、転換条件いかんによっては、またまた長銀や日債銀のように株式が紙くずになることもある。あるいは、反対に言えば、ある時期だけ既存株主がもうけることがある、売り逃げできた人はもうけることがある、こういうことになるわけであります。  したがいまして、転換条件あるいは時価総額というふうなことを留意しながら資本注入をやっていただきたい、こう思います。つまり、減資の問題というのが出てきておるのじゃないかということも重ねて留意をしていただきたいと思います。  終わります。
  270. 村井仁

    村井委員長 次に、石井啓一君。
  271. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 きょうは、日銀総裁にお越しいただきましたので、まず、日銀の金融政策につきましてお伺いをいたします。  特に、二月十二日の日銀の金融政策決定会合におきまして金融緩和方針を決定されました。そこで、無担保コールのオーバーナイト、このレートをできるだけ低目に促していく。総裁は、ゼロでもいい、こういうことをおっしゃっているわけでございますけれども、それ以降の今日までの金融市場の動向についてどう評価されていらっしゃるのか、まずお伺いをしたいと思います。
  272. 速水優

    ○速水参考人 二月十二日以降の金融市場の動向という御質問だと思います。  まず、オーバーナイトのコール、無担物の金利は、日本銀行による潤沢な資金の供給を受けまして、昨日は〇・〇三%まで低下しております。また、それよりやや長い一カ月物、三カ月物、ターム物ですが、やや長目の短期金利もかなり低下してきております。さらに最近では、邦銀に対する上乗せ金利、いわゆるジャパン・プレミアム、かつて一%近くありましたが、これがほとんど解消したというのは喜ばしいことだと思います。  一方、長期金利や円相場、株価、これには金融緩和以外の要因が数多く作用しているに違いないと思いますが、金利引き下げもきっかけとなりまして大きく動いております。  長期国債の利回りは、ピークで二・三%ぐらいまでいっておりましたが、現在は一・七%前後まで低下しております。円相場も、総じて言えば円安方向へ動いている。株価は、一万四千円前後、二月十日時点で一万三千円台だったと思いますが、それがここへ来て一万六千円前後まで回復してきておるということで、私どもとしましては、こうした金融・資本市場全体の変化が、投資採算の改善とか金融機関企業資金繰りの緩和とか、特に期末を控えましてそういう企業へ明るさを与えて、企業や家計、民間経済のコンフィデンスの改善につながっていく、そのことが実体経済に好ましい影響を与えていくものということを期待いたしております。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席〕
  273. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 総じて他の金利も下がり、また為替相場あるいは株式市場もいい動向だ、こういうお話かと思いますが、私、懸念をいたしますのは、コールマーケットの動向でございます。このマーケットの規模が縮小して機能が低下するのではないかという懸念がございます。  事前に日銀の方から教えていただいたデータでは、昨年の二月末では、マーケットの残高が約三十兆八千億であったのが、ことしの二月末には二十四兆二千億ですか、それで三月の十七日には十七兆六千億まで縮小してきております。ただ、そのマネーが預金に行っているようでございますから、資金の出し手と借り手の関係はルートが変わっただけだ、だから心配はないんだという御説明も伺いましたけれども、そういう状況が本当に今後も続くんだろうか、ちょっと懸念があるんですね。  特に、普通預金の金利が下がりましたから。〇・一から〇・〇五になるわけでございますからね。本当にコールマーケットに行っておったマネーがどこに行くんだろうか、そのことによって特に都銀の資金繰りというのが本当に支障ないのか、あるいは、日々のものは日銀がちゃんとチェックをされているんでしょうけれども、突発的な事態に対応するとき、やはりある程度の規模のマーケットがないと資金がとれないというような危機管理的な意味で懸念はないのか、そういった点で若干私は懸念がございますけれども、その点についていかがでございましょうか。
  274. 速水優

    ○速水参考人 先月の金融緩和措置以降、オーバーナイトコールの低下に伴いまして、コール市場の方は今御指摘のように残高が二割ぐらい減少しております。しかし、これは主に生保、投資信託等の機関投資家がコール資金の一部を銀行の普通預金にシフトさせたというものでございます。  日本銀行としても、市場での円滑な出合いがつきにくくなってきて日々の資金決済に支障が生じたり、あるいは金利形成が不安定になっていくといったような事態はぜひ避けなければならないと考えております。この点は、先月決定しました金融市場調節方針の中でも、短期金融市場に混乱を生じさせないよう、その機能の維持に十分配意するということをディレクティブの中に明瞭に書き込んでおります。  幸い、これまでのところは市場が混乱するといった事態はまだ見られておりません。しかし、市場における資金の流れには大きな変化が生じておりますことだけは事実でございますので、この点は動向を十分注意して見てまいりたいというふうに思っております。  日々の市場の調整につきましては、第一線で長年日本銀行のいわゆるセントラルバンカーとしての経験を十分積んだ人たちが、各種のオペを使いながら市場の拡大、安定化に尽力しております。彼らの発想や勘に大いに期待し、信頼しておる次第でございます。
  275. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 これで余り突っ込んでやるつもりはないんですけれども、総裁、二割じゃなくて実は四割下がっているんですよ。十七兆六千億までですからね。ですから、相当実は小さくなっているという御認識をぜひ持っていただいて、注意深く動向を監視していただきたいと思うんです。  そこで、本論の方でございますけれども、この無担保コールレートがゼロに近づいたことによりまして日銀としては誘導目標を失った、そういうふうに評価されているわけですね。日銀の政策意図がどういう手段で今後伝えられるのだろうか、こういったことを考えますと、従来のコールレートにかわる新たな金融政策指標の必要性というのが相当出てきているんではないか。市場もそういう期待が随分あるようでございますけれども、後ほど具体的なことはお聞きしますが、まずその必要性についてどうお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。
  276. 速水優

    ○速水参考人 今後の政策運営の指標としまして、無担保コール、オーバーナイト金利に加えまして、やや長めの短期金利や量的な金融指標をターゲットとしてはどうかといったような議論があちらこちらでなされておることは私も十分承知しております。もちろん、政策運営の指標につきましては、中央銀行として、常日ごろから基礎的な研究を加えております。政策委員の間でも議論が行われております。このような議論は、今後とも続けていくつもりでございます。  ただ、先週末の金融政策決定会合では、最近の金融経済情勢、すなわち、景気が下げどまりの様相を呈し、金融・資本市場も景気を下支える方向での動きとなっていることを踏まえまして、あくまで現状維持ということが決定されたわけでございます。  私どもとしましては、こうした調節方針に従って、オーバーナイト金利をできるだけ低く推移するように促しながら、今後とも市場の動向を慎重に見きわめていくというのが現在のスタンスでございます。
  277. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 私は、そうならないことを祈りたいとは思うんですけれども、今後、経済状況によってはこれ以上のもう一段の金融緩和措置が求められるような事態があり得るとしたらどうするのだろうか。そうならないことは祈りたいとは思うんですけれども、そうなるとすると、今のオーバーナイトのレートを指標に使っていたのではもう手がないわけでございますから、どうするんだろうかという問題意識のもとにお聞きをしているわけです。  今総裁もちょっとおっしゃいましたが、まず一週間から三カ月のいわゆるターム物の金利をターゲットにしてはどうか。選択肢の一つとしてこれは私は十分考えられると思うんですけれども、この点についてどういう御見解を持っているのか、伺いたいと思います。
  278. 速水優

    ○速水参考人 金融政策の運営を考えます場合に、二つのことが大事だと思うのです。一つは、中央銀行がそうした操作の対象をどの程度コントロールできるのかということ、それからもう一つは、そうした操作の対象と実体経済との関係はどのようなものになるか、また、どの程度安定的なものかといったような検討が課題となってくると思います。例えば、御指摘のターム物金利をとってみますと、オーバーナイトレートに比べればさすがに私どもがコントロールできる程度は落ちると思いますけれども、それをどの程度評価するかといった問題があると思います。  そういった技術的な点も含めまして検討を続けていくことになろうと思いますが、先ほど申しましたように、先週の決定会合における政策判断は、あくまでも二月十二日の金融緩和方針を維持していくというものでございます。
  279. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 確かに、総裁おっしゃるように、オーバーナイトに比べればコントロールの程度は落ちるのは、それはそのとおりでございます。ただ、まだコントローラブルな範囲ではないか、コントロールのきく、コントロールの及ぶ範囲ではないか、私は今、総裁の答弁を聞いて、恐らく日銀もそういうふうに御認識をなさっているんであろうと受けとめましたけれども、ある意味検討の有力な手段の一つになっているのかなという印象を受けました。  もう一つ、いわゆる量的な目標でございます。これは私もなかなかコントロールがきかないというのはよく承知をしておるわけでございますが、ただ、世上、量的な目標ということもよく言われておりますものですから、一応総裁の見解を確認しておきたいと思います。
  280. 速水優

    ○速水参考人 まず申し上げておきたいことは、金利と量というのはあくまでもコインの表と裏という関係にあることでございます。したがいまして、私どもは、現在の政策はオーバーナイト金利をターゲットとするものでございますけれども、二月における金利引き下げは、銀行行動や資金需要の変化を呼び起こしております。量的指標の拡大にもこれはつながっていったというふうに期待していることには変わりはございません。  その上で、そうした量的指標を操作の対象とすることをどう考えるかということでありますけれども、これを本当にコントロールできるのだろうか。あるいは、実体経済とマネーサプライやマネタリーベースなどの量的指標との関係が我が国でも海外諸国でも極めて不安定なものになっているのが現状でございます。この事実をどう考えるか、今後もそうした点を含めまして検討を続けていくことになろうかと思いますが、現在のところは、繰り返しになりますが、あくまでも二月十二日の金融緩和方針を維持して、そのもとで市場の動向を慎重に見きわめていくというところでございます。
  281. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 目標にすることは困難だ、ただ、結果としてマネーサプライが増大することは期待していると。目標は難しいけれども結果は期待しているんだ、そういうお話であろうと思います。  今度は、ちょっと全然別の観点からの議論なんですが、そもそも今の日銀の金融政策というのは、公定歩合〇・五%という大変異常な低金利政策でございますけれども、今行っている政策というのは、さらにコールレートをゼロに近づけるという、ある意味で世界でも例のない試みをやっているわけでありまして、異常の上にまた異常がつくような、そういう超低金利政策を行っているわけであります。  経済活動の低迷だとか、あるいは昨年末国債の長期金利が急上昇した、そういうような事情がございますので、私もやむを得ない面はあるというのは十分理解をしておりますけれども、しかし、その一方で、やはりその弊害というのは十分認識をしていかなければならない。特に、預金者へのしわ寄せは、これは〇・〇五%でございますと、百万円を一年間預けても五百円にしかならない、こういうことでございますから、ある意味で本当に預金者をばかにしているような、そういう金利でございまして、これもある意味で消費低迷の一因になっていることは確実でございますね。また、資金を運用する例えば生保なんかは大変な逆ざやに悩んでいる、こういうこともございます。  私は、もちろん日銀も、今のこの低金利政策をいつまでも続けるというおつもりではないと思いますけれども、やはりそういった弊害についてどうお考えになっているのか、確認をしておきたいと思います。
  282. 速水優

    ○速水参考人 私ども金融政策は、あくまでも経済全体を視野に置くものでございまして、企業や家計といった個々のセクターに焦点を当てて運営するものでないことは申すまでもございません。しかし、私どもといたしましても、特に金利収入に多くを依存しておられる家計が大変厳しい状況にあることは十分承知しておるつもりでございます。  御指摘のように、中央銀行の歴史、三百四、五十年になると思いますけれども、こんなに低い金利は前人未到の領域に私ども入っておるわけでございまして、それだけに十分慎重にやっていかなきゃならないことは、これまた承知をしております。  最近の経済情勢を見ますと、景気の低迷が雇用所得の悪化を通じて総体としての家計部門にもマイナスの影響を及ぼしているように思います。家計部門の給与所得というのは総収入の約八割でございまして、その点を考えますと、家計部門全体が元気を取り戻すためには、日本経済全体をできるだけ早く回復軌道に乗せていくことが重要なんではないかというふうに考えております。  ただ、特定の定められたインカム、年金生活者というように定められた収入しかないという方々にとりましては、金利の収入が低いことも確かに問題かと思いますけれども、むしろ彼らが、私どもの仲間や先輩でもたくさんいるんですけれども、私に注意をしてくれることは、これで物価が上がったら我々はどうしてくれるんだということを非常に言われるわけでございます。そういう意味でも、今大事なことは資金を潤沢に供給していくことでございますけれども、それをしながらも、将来にインフレの種をまくようなことは絶対にしてはならないということを十分心がけてまいるつもりでございます。  私どもとしましては、先般の金融緩和措置が政府の諸施策の効果などとも相まって我が国経済の回復につながっていくということを期待しております。そのことが国民経済全体に必ずよい影響を与えていくものだというふうに信じております。
  283. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 日銀総裁としては、常にインフレの種をまかない、そういう使命であることはよくわかりますけれども、ただ、今デフレが非常に懸念されているときでありますから、余り総裁の発言が効果的にはきかないんですね。それで、インフレとおっしゃるんだったら、この際日銀も、インフレを手段にすることは私は避けなければいけないと思いますけれども、インフレの目標を設定するようなことぐらいはおやりになったらもっと総裁の発言のインパクトがあるんじゃないか、このことは申し上げたいと思います。答弁は求めません。  総裁、ありがとうございました。結構でございます。  では、続きまして、公的資金注入につきまして柳沢大臣にお尋ねをいたしたいと存じます。  まず、今回の公的資金注入で、不良債権処理についてでございますけれども、運営の基本方針でも、不良債権処理は基本的に終了するというふうにうたっておりましたし、また今回、注入を決定した後の大臣の記者会見等でもそういうふうにおっしゃっているようなんですけれども、そこで、私は確認をしたいことがございます。  一つは、確かに今回、資産査定をきちんとやって、償却、引き当ての基準を決めて、それにのっとった償却、引き当てはちゃんとやりました。そういう意味での不良債権処理というのは確かにできたというふうに私も思いますけれども、ただ、今後の経済状況によっては、現在正常債権であったものが不良債権化するということもあり得る、あるいは従来の分類でいえば二分類であったものが三分類になる、三分類であったものが四分類になるということもあり得るわけでありまして、今後不良債権が拡大する可能性は常にあるわけですね。そういったところでは、きちんと動向を見守る必要があると思いますし、もう一つは、不良債権処理の終了という言葉をお使いになるのであれば、本来的には、引当金を積むだけでなく、きちんとバランスシートから落として、そこまでいって初めて本来の意味での不良債権の処理の終了ということになるんではないかと思うんですね。  その点についてどう御認識されているのか、伺いたいと思います。
  284. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 今後、経済の動向によっては不良債権が新規に発生するということがあり得るんではないかというのは、もう先生のおっしゃるとおりでございます。私も答弁の都度申し上げておりますように、貸し付けというものには常にリスクが伴う、そのリスクが顕在化するということはあり得るわけでありまして、その意味では、不良債権の新規発生ということも否定しないわけでは毛頭ないわけです。  ただ、そのレベルが、今までバブルの崩壊ということによって巨額に発生した不良債権の処理がおくれておった、これを今回十分な引き当てをすることによって終了する、こういうことを申しているわけであります。これが第一点でございます。  それから第二点の、いわゆるバランスシートからの消去をするということが終わらなければ終了という言葉は不適切ではないかということでございますけれども、私どもの文章、口頭でのお話のときには、基本的に終了したという文章上の表現を使いますと、とかく数量的にまだ実は未完成の部分があるんではないかという誤解を招きがちだということもありまして、一々そういうことを申し上げるのをむしろ控えておるわけですが、文章の上ではそこのところをおもんぱかりまして、基本的に終了したという表現をとらせていただいておるわけであります。  ただ、私、もう一つ指摘をいたしたいのは、アメリカの例なぞでも、最近になりましてライトオフとかあるいは流動化というようなことを必須のこととして私どもにもよく言われるわけでありますけれども、アメリカの当初の不良債権が発生したときの処理というのは、例えばチェースマンハッタン銀行が巨額の引き当てをしてウォールストリートを震撼せしめたというようなことであるとか、あるいはシティバンクの危機のときの対処なぞも、これは中南米の債権が不良化したときの方法でございますけれども、これらも少なくとも当初は十分なる引き当てということでもって対処したということであります。  そういうようなことで、やはり引き当ての措置の値打ちというか、そういうものをいたずらに軽んじるのはいかがかなということは私として申し上げたい点でございます。
  285. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 わかりました。  続いて、今回の公的資金注入によって企業への貸し出し増加が十分なのかどうかという点について私は確認をしたいと思うんですが、今回、再生委員会の事務局からいただいた資料によりますと、十五行合わせて、ことしの三月末と来年の三月末を比べた増額で、国内の貸し出しはインパクトローンを除いた分が合計で六兆七千億円、そのうち中小企業向け貸し出しが三兆円、こういうことでございます。  確かにふえていることはふえているんでございますが、ちょっと私が危惧いたしますのは、経営健全化計画を読んでみますと、貸し出しの動向についてきちんと記述されているのが十二年三月末までの数値しか拾っていないんですね。それ以降どうなるんだ。経営健全化計画で約束していなかったら、ある意味で、それ以降貸し出しが下がっても、金融機関としては別にそれを約束したわけじゃないからいいということになりますね。本来は、十一年度で伸びて、さらにそれ以降も伸びることを期待したいわけでありますが、それがどういうふうに担保されるのかしらと。今回の経営健全化計画の中では、一年間の貸し出し増加額しか書いていないじゃないか。その点について私はちょっと不十分じゃないかと思うんですね。その点、いかがでしょうか。
  286. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 お答え申し上げます。  今回の資本注入の大きな目標は不良債権の処理と金融の円滑化ということでございまして、その金融の円滑化の中でも特に中小企業への貸し付けということを重視して、その結果、経営健全化計画の中に各行に盛り込んでいただいているわけでございます。その際、貸出計画そのものは、極めてその時々の資金需要等によって左右されるものでございますので、各行といたしましては、やはり確実なところは一年の見通しということしかなかなか見込めないということで一年になった次第でございまして、当然、この一年が終わった後、少なくとも優先株等の全部が償還されるまでの間は、経営健全化計画をまた立てていただきまして、その次の年はどうなるかということを聞いていくことになると思いますし、それは報告を受けて公表するという形で適切にフォローアップされていくということでございます。
  287. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 そうしますと、今回の分はとりあえず一年分の貸出枠しか記述していないけれども、それは毎年、少なくとも公的資金が存在している限りはきちんと把握する、そういうことでよろしいんですね。
  288. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 そのように認識しております。
  289. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 わかりました。  それで、もう一つ懸念をいたしますのは、中小企業への貸し出しもふえているわけでございますけれども、いわゆる優良企業だけ選別して貸し出すのではないか。選別貸し出しといいますか、そういう懸念といいますか、ある程度世上でも云々されております。確かに、経営健全化計画でどれだけ貸し出したかという量のチェックはできるでありましょうけれども、私は、やはり優良企業だけでなく、幅広く中小企業に貸し出すべきである、そういった意味で貸出先の内容もぜひ見ていただきたいなと思うんです。その点についていかがでしょう。
  290. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 石井先生の御発言の趣旨はよくわかるわけでございますけれども、私は、中小企業に限らず、貸し出し全般について、現下のやや供給過剰と言われている経済の中で、経済の主体全般にわたって構造改革というか構造調整が必要だという時期でございますから、貸し出しを受ける側の皆さん方も、どうしたら自分たちの経営を強化していくことができるかということについて、構造改革というか健全化計画というか、そういうものを訴えながら必要な資金融資を仰ぐということが必要だろう。  融資をする側も、いたずらにただ危険を避けるということではなくて、自分たちの融資先に対していろいろ金融機関として持っている情報等も提供して、そして一緒になって構造改革の方法というものを練り上げて、そこで融資をしていく。そういう共通の目的に向かっての共同作業みたいな形で経済全体を活性化していく、そういう態度が今望まれているのではないか、このように考えております。  少なくとも、今までの自己資本比率が非常に低くなった当時にとったようなああいう態度でもって金融機関の側が経済の活力の足を引っ張るということはいたさない。そういうことは我々も強く求めてまいりますけれども融資の第一線、局面では、私が冒頭申したような双方の態度が必要であろう、このように考えています。
  291. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 もちろん、どこでもやれということを申し上げているわけではございませんけれども、とかく実績とかあるいは財務の健全性ばかりに目が行きますと、新しい事業をやろう、育成しよう、そういったところの芽を摘みかねない、こういった点もやはり懸念されますから、ぜひそういった点、注意をしていただきたい。よろしくお願いしたいと思うんです。  もう一つ、貸出金利の引き上げの問題なんですが、経営健全化計画、私も全部細かくチェックをしたわけじゃないんですけれども、見ますと、銀行によっては利ざやの拡大によって収益を非常に拡大しようという銀行もありますし、むしろ利ざやの拡大は余り予想していないようなところもございまして、これはどうなるんだろうなと。銀行によっては、金利はどんどん上がっていくようなことを予想させるかのような記述もございまして、その辺、若干懸念がございますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  292. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 お答え申し上げます。  一般的に言えば、我が国の特に大手行と海外のそれに相応する銀行とを比較した場合には、日本金利スプレッドの方が低いと言われているのではないかと思います。そうした中で、これから四年間、各行がいろいろな計画を立てているわけですけれども、その中で、一つ、業務純益を拡大しようとする、業務純益の収益向上の柱としてそういうスプレッドを広げるということが書いてある銀行もあるということかと存じます。  その場合は、一つの要素として言えることは、やはり貸し出しには当然リスクを伴う貸し出しがあるわけでございまして、そのリスクを伴う貸し出しについてはそれに相応する引き当てを積まなきゃいかぬということからして、どうしてもスプレッドを高くしなければいけないということもあるのではないかというふうに思います。  いずれにしても、今後、いわばリスクの低い大手企業への貸し出しというものが直接金融に変化していく中で、間接金融の中ではリスクを伴う貸し出しというものが当然ウエートとして大きくなっていくでしょうし、それに伴う引き当てということを考えますと、一般的に言えば、どうしてもスプレッドの拡大ということを考える銀行が出てくるのではないかというふうに思われます。
  293. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは、業務再構築の点でございますけれども、今回、申請十五行のうち、五行は完全に海外業務から撤退をするということでございますが、十行は残る。東京三菱さんを含めますと大手行でまだ十一行あるわけでございますね。私は、この十一行という数がどうなんだろうか、まだもっと徹底した方がいいのではないか、こういう認識を持っております。  もう一つは、いわゆる業務の特化、得意分野への業務の絞り込みという点でございますけれども、これも、経営健全化計画を読んでみますと、確かに一部の銀行では特徴的な業務運営をやるようなところもございますけれども、どうも非常に横並びといいますか、依然として何でもかんでもやろうというような、フルバンク志向が非常に根強いのではないか。こういう点で、業務再構築、私はまだまだこれは不十分ではないかという認識を持っておりますが、その点、いかがでしょう。
  294. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 リストラクチャリング、業務の再構築の中身についての先生の御意見をいただきました。  業務の再構築が全般的に十分ではないのではないか、特に私ども思っているのは、再編絡みの業務の選択と集中というようなことでは、ややというか、まだかなりやれる余地を残しているのではないかという認識、共通の面がございます。  ただ、今具体的に御指摘のありました国際化のことにつきまして申しますと、確かに、撤退したのは五行で、あと十一行あるじゃないかというようなお話ですけれども、中身を読んでいただきますと、海外の支店を持っているところも、いわゆるワールドワイドに活躍する、そういう銀行として残るということを言っておりません。むしろ、アジア等、自分たちの国内でのお客さんが現地に工場をつくって、あるいは現地法人をつくって活動しているので、それとのおつき合い、いわば日系企業とのおつき合いを続けていくためにこういったことが必要だというような記述が多いことをお気づきいただけるかと思います。  そういう意味では、いわゆる、よく言われるマネーセンターバンクというか、世界のマネーセンターに拠点を置いて、もう全くインターナショナルに他国の人たちとも、あるいは他国の企業とも顧客関係を結んでいくというような、そういうところは、逆に日本の場合、ちょっと貧弱に過ぎるのじゃないかとさえ思っております。そういう意味合いでは、これからいろいろなエレクトロニクス関係の装置がさらに開発されてまいりますと、今言ったような海外に進出したお客さんとだけのおつき合いということであれば、また別途のやり方があるではないかというようなことでは改善の余地があろうかと思っておりますが、とりあえずこういう姿になったということも御理解を賜っておきたい、このように思います。  それからさらに、業務の選択と集中ということについて足りないじゃないかということは、私も同感の面がございます。しかし、概して言うと、リテールこそがということで、個人あるいは中小企業への特化ということはそれなりに努力をして、そこを主として今後の収益源にしていこう、こういう姿勢が見られるということも御留意賜れればありがたい、このように思います。
  295. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 確かに、委員長おっしゃることも書いてありました。私も読みました。ただ、その銀行は、よく読むと、たしかリージョナルバンクを目指していたのじゃないのかなと思うようなところがまだそこに結構残っていたりしまして、そんな思いがしたわけでございます。  それから、コスト削減の方でございます。特に従業員数、人件費、この点についてでございますが、再生委員会の事務局の方でまとめていただいた資料によりますと、従業員数は、十五行合計で、来年度以降四年間で一三・九%減になる、人件費で一一・九%減になる、こういうことでございますけれども、ただ、四年間で一三・九%ということは、年率に直してみますと約三・五%なんです。恐らく、三・五%というのは新規採用を相当抑えれば十分達成できる程度なんじゃないのだろうか。私は、そういう意味では、本当にこの従業員数の削減というのが厳しいリストラに値するのかという点では疑問を持っておるわけでございます。  もう一つ、職員の平均給与、これを見てみますと、やはりこれはほぼ横ばい、銀行によってはふえるところもございまして、今国民の間では、そもそも銀行員の給与は高いという認識があるところに、公的資金を注入してもらっておいて、なお依然として給与水準が高いことについては、やはり釈然としない思いがございます。  そういった二つの点で私はこのコスト削減は正直言って不十分ではないか、こういうふうに思っておりますが、その点、どうでしょうか。
  296. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 お答え申し上げます。  まず、コストの点でございますけれども、先生御指摘のとおりの数字の減と我々も認識しております。  これが甘いのではないかという御指摘かと思うのでございますけれども、基本的に、我々が求めていますのは収益の向上でございます。収益の向上といった場合の一つの要素は、リストラによってコスト減に、コスト減に持っていくことによる収益の増と、それから、それ以外のいろいろな戦略的な業務を考えての収益の増、この二つを足したものが収益増でございまして、四年間の先を見通した十五行合計の数字で見ますと、この四年間の収益増のうち、コスト減による収益増は約三割という程度でございます。  そして、この数字が甘いんではないかということでございますけれども、我々、基本的に各行の経営陣がどういう戦略を立てるのかというのを評価してまいりました。その中で先生御指摘のような点についてももちろん我々は指摘しているわけでございまして、そういうリストラ計画を思い切って進めるところ、そうとも思えないところ、いろいろあるわけですけれども、我々は、思い切って進めるところについては経営健全化計画の評価という面で高い評価を与え、それが配当利回りが低くなる、つまり向こうにとってはコストという面では有利になる、そういう一つのポイントにするという形でリストラを慫慂してきて、その結果がこういう形であるというふうに認識しております。  もう一つの人件費の点についての御批判でございますけれども、各行ともこれから給与体系の見直しということに本格的に取り組んでいくわけでございまして、一言で言えばメリット主義の導入ということかと思うんでございます。そうした中での数字的な今後四年の推移というのは、先生おっしゃるとおりほぼ横ばい、平均給与月額という点で全体として少し減少という程度かと思いますけれども、これも各経営者からすれば、相当程度リストラした結果、そうは言いながらも、例えばメガバンクになろうとしている銀行を例にとれば、人材面でも海外銀行との競争があるわけでございますので、大胆なメリット主義導入による人材の確保ということも重要なポイントなので、そういう面で一概に平均給与という点でなかなかはかれない面もあるということかと思います。
  297. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 ただ、数字を眺めていますと、本当に銀行が真剣にみずから危機感を持ってコスト削減に取り組んでいるのかという、私はそういうせっぱ詰まったような感覚を受けないんですね。その点については私はやはり残念だと言わざるを得ません。  また、確かに収益も上がっておりますけれども、この収益率で見ますと、欧米の主要国並みの収益率にするにはまだ相当コストを削減しなければならないはずです。そのことも指摘しておきたいと思うんです。  それで、これ以上コストを削減するとすると、私は、先ほどから柳沢大臣がおっしゃっているように、再編、合併に伴う業務の切り込みといいますか、それがやはり避けられないんだろうな、各行にゆだねていたのでは恐らくこれ以上はなかなか出てこないんだろう、やはり思い切った再編、合併等によらないとこれ以上のコスト削減はできないのかなという思いもあるんでございます。  最後の質問になると思いますけれども、今後、金融再生委員会としては、この金融再編にどういうふうにかかわっていくのか、リードしていくのか。特に今回は転換権つき優先株というのが非常に特徴でございますけれども、先ほどから、三カ月という非常に期間の短いものもあるということで質問も何回かございましたけれども、これを普通株に転換して国が経営に関与するという形で再編を促していくということがあり得るのかどうか、このことも含めて最後の御答弁をいただきたいと思います。
  298. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 再編に対する政府のかかわりのあり方いかんということでございますけれども法律もうたっておりますように、再編の促進による効率化ということを一方で言いつつも、他方で、自主的な努力を促せ、こういう建前を法律自体がとっておることを我々やはり強く意識しております。  しかし、私のところに訪ねてきましたある外国の有数の銀行家とおぼしき人物でありますけれども金融機関が弱気になっておるときに再編を自分たちだけでやらせると、非常に惨めな結果になるぞということを言われました。そういうことは十分留意していかないと結果が非常に悲惨になりかねないということでございました。公的にも十分の配意をしていかないといけないということを訴えられたわけでありますけれども、私ども、その辺のことも十分留意し、また、大蔵省の金融審議会で論議されるいろいろな金融機関日本でのあり方、こういうようなもののお考え等も参考にしながらいい道を選んで、そして日本金融システムの立て直しのために努力をしたい、このように考えております。
  299. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 終わります。
  300. 井奥貞雄

    ○井奥委員長代理 次に、鈴木淑夫君。
  301. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。  日銀の副総裁、お忙しいところありがとうございました。  御承知のように、私ども、夏の第百四十三臨時国会で金融再生法と健全化法をつくりまして、再生法及び再生勘定に基づいて日本長期信用銀行あるいは債券信用銀行という大型の金融機関の倒産をシステミックリスクを表面化させることなく今処理しているわけでございますし、また、先ほど来議論しておりますように、七兆四千五百億ほどの公的資本を十五行に注入して、不良債権の早期処理あるいは経営のリストラを促進するということが今始まっているわけでございます。さらに、先月、二月に長期金利が上昇しましたときは、日本銀行がまた一段の金融緩和政策を実施に移す、大蔵省も、柔軟な国債管理政策で長期国債の発行を絞り、中期の国債をふやす、こういうことをいたしました。この一年弱の間にかなり金融危機を克服するためのフレームワークができ、また政策が打たれたというふうに私は思っております。  それで、これは御承知のように海外でもそのように評価されているわけでございまして、先ほど速水日銀総裁が言われましたように、ついにジャパン・プレミアムはほとんどゼロになりました。また、御承知のように、海外、ヨーロッパそしてアメリカ、両方の投資家から日本の株式市場に金が入ってきておりまして、きのうは下がりましたが、きょうはきのうの下げを取り戻しておつりが来るぐらい上がったようでございます。六百六十円も上がって、もう一万六千円台を確保したということであります。  そういう意味では、昨年の夏からいろいろ苦労しながらみんなで議論をし、法律をつくり、また、大蔵省、日本銀行が政策を実施した、金融監督庁も金融再生委員会も頑張ったということで、かなりの程度成果が出てきたというふうに私は思っております。したがって、これから先はこの成果を継続させて、そして一、二年のうちに本当に日本金融危機は去ったと私どもも言えるように、欧米からもそのように確認してもらえるような状況へ持っていかなきゃいけないと考えている次第でございます。  きょうは、今、非常にうまいぐあいに動き出したが、これをずっと持続させるためにはどこに注意したらいいかな、そういう観点から質問をさせていただきたいと思います。  まず、これは金融再生委員会の御所管になる、あるいは預金保険機構の金繰りの話になると思うんですが、先ほども言いましたように、十八兆円の金融再生勘定あるいは二十五兆円の健全化勘定、いよいよ動き出しております。そこで、ちょっと技術的なことを伺いますが、それぞれ十八兆円あるいは二十五兆円のうち、既にどれだけをお使いになったのか、あるいはもう使うことが確定しているのかということと、そのファイナンスがどういうふうになっているのか、どうやって資金調達しているのかということについてお答えいただきたいと思います。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  302. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 お答え申し上げます。  現時点の金融再生勘定の借入残高は、五兆五千百九十八億円でございます。そして、この金融再生勘定の借り入れは、基本的には日銀借り入れ及び民間からの借り入れでやっております。  金融健全化勘定につきましては、御指摘のとおり、今回、七兆四千五百九十二億円を三月三十日に払い込みまして、その資本増強効果が三月三十一日にあらわれるわけでございます。したがいまして、三月三十日までに七兆四千五百九十二億円を調達しなければいけないわけでございますけれども、これにつきましては、既に二回、民間ローンの入札をやっておりまして、第一回が三月十五日、二兆円行いまして、総調達コストは〇・三五%でとれました。第二回目につきましては三月十八日に行いまして、総調達コストは〇・二五%でとれました。これを合計しますと三兆八千億円でございますけれども、残余の部分につきましては、これからの金利情勢の動向等を勘案しつつ、民間かあるいは補完的に日銀からの借り入れを行うか、いずれにしても円滑な資金調達を行うようにしていきたいと思っております。
  303. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 再生勘定については日本銀行から五・五兆円借りている。それから、これから健全化勘定、これは七兆四千五百億調達する必要があって、とりあえず三・八兆円だけ民間から調達したということですから、まだ同じぐらい調達しなきゃいけないわけですけれども、これも日銀からの借り入れか民間からの調達というふうに考えておられるようです。  私は、日本銀行の資産勘定を見てちょっと驚いたのであります。私の手元にあるのは二月末の数字ですが、もう既に、これらの勘定に対する日銀貸し出し含めて、預金保険機構に対して合計で六・二兆円金が出ています。貸し出しをしております。この後またさらに、恐らく金融健全化勘定の関係で貸し出しが出ていくというふうに思うんですね。  これは、お金の性格から考えて、そう簡単には戻ってこないと思います。健全化勘定の方は戻ってこない。それから再生勘定の方は、これは使いっ放しになる金ですから、別途手当てしないと戻ってこない。さらに、預金保険プロパーの、つまり預金者保護プロパーの部分でも保険料だけではとてもやれないので、私は今の六・二兆円という日銀からの借り入れがずるずるずるともっとふえていくことになりゃせぬかと心配をしているんですが、柳沢大臣、ここのところはどういうふうにお考えでございますか、日本銀行からこういう調子で借りていくということについて。
  304. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 この点は、私、速水総裁ともいろいろ連絡をとっておりまして、速水総裁の御意向も十分承知をいたしております。特に預保への貸し出し、これについてはいろいろな考え方があるということもよく承知をいたしておりまして、先ほど事務局長がお答えしましたとおり、私どもの今度の健全化勘定の所要資金についてもできる限り日本銀行さんに御負担をかけないように、特に市場の状況が先ほど言ったようにいいようにも見えますので、その場合には、特にそういったコスト面も考えまして、できるだけ御負担にならないようにというふうに考えてもおります。  また、再生勘定の方ですが、再生勘定の方についても、長銀も日債銀も割と今市場で金融債がはけているというようなこともありまして、多分長銀の方は七千億ぐらい三月末までに返せるんではないかというような見方もございまして、できるだけそうしたことで御負担にならないようにというふうに考えております。  しかし、また一方、ラストリゾートとしての日本銀行の意義ということもやはり日本銀行の皆さん方には十分御理解をいただいておかなきゃならぬ点だと私は思っておりまして、そういう前提で両方にらみながら、全体として日本の中央銀行の面目についていろいろ他から言われるようなことのないように我々も協力をいたしてまいりたい、このように考えております。
  305. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 柳沢大臣から大変適切なお答えをいただいたというふうに思います。中央銀行というのは、おっしゃるように、レンダー・オブ・ラスト・リゾートとして金融システムに混乱を起こさないように適時適切に融資をすべきだということですが、それはやはりラストリゾートでございますから、それぞれの機関がまずベストを尽くして調達した上で、調達できなかったものに対してラストリゾートとしてつなぎ融資をするというのが基本でございますね。短期の融資をするというのが中央銀行の基本だと思います。  私ども、再生法あるいは健全化法、御一緒につくらせていただいたときには、資金調達の手段というのはちゃんと政府保証をつけてとかいうふうに考えておるわけでございますし、大臣御自身も、おっしゃいましたように、今は超低金利ですからある意味じゃチャンスなんで、どんどん市場から調達すべき時期だというふうに考えております。したがって、私は、なるべく日本銀行から借りないで、預金保険機構はできるだけこのチャンスに市中から借りちゃうということがいいのではないか、適切な政策ではないかというふうに考えております。  それから、山口副総裁、なぜ私が預金保険機構に対する日銀の貸し出しを気にしているかというと、同じ二月末の日本銀行のバランスシートを見ると、完全に長期の信用供与といっていい長期国債が二十九・八兆円、約三十兆円ありますね。これは、現先売却中の、流動性のある長期国債なんかを除いてしまった部分です。全部入れると、何か長期国債は、国債は四十八兆円もありますけれども、その中で長期のもの、それもレポに使っていないもの、これが二十九・八兆円、約三十兆円もある。銀行券は五十一兆円ですから、銀行券のうちの六割ぐらいがそういう長期の信用供与と見合っている。中央銀行としては余り格好のいいものじゃないのであって、やはり短期の資産がもう少しないと格好悪い。  それから、格好だけの問題じゃなくて、言うまでもなく市場調節は短期の資産を使ってやるわけですから、だんだん長期の資産がふえてきてしまうと、そういう意味では市場調節に使いやすい短期の資産が相対的に少なくなっていくに違いない。そこが私心配なものですから、余り預金保険機構への貸し出しがふえていくと、長期国債とあわせて、短期の資産が少なくなって金融調節がやりにくくなるぞという懸念を持っておるのですよ。  日本銀行としては、預金保険機構への貸し出し、それからそれを含めて長期の資産がふえていくということについて心配をお持ちですか。
  306. 山口泰

    ○山口参考人 日本銀行のバランスシートの現状につきましては、ただいま数字を挙げて御指摘をいただいたとおりでございます。  預金保険機構向け貸し付けあるいは国債というような形で、日銀の資産内容のいわば長期化あるいは固定化ということがじわじわと進んでまいっておりまして、こういうことが著しくなってまいりますと、一つには、日銀のバランスシートというのは本当に健全なんだろうかというような疑念がいずれ生じないとは限らないということをまず心配いたしております。  それからもう一つは、ただいま御指摘いただきました金融調節上の問題でございまして、私どもは、できるだけ機動的、弾力的にオペレーションを日々行ってまいりたいと思っておりますものですから、そういう目的のためには、やはり短期の流動的な資産を売ったり買ったりいたしながら市場の流動性を調節するということが基本であろうというふうに思っております。そういう意味で、資産の内容につきまして重大な関心を当然のことながら持ちながら、なるべくそれが長期化あるいは固定化しないように努力してまいりたいと思っております。  そういう観点から、金融再生委員会あるいは預金保険機構にもお願いを申し上げております。それは、先ほども議論がございましたように、日銀の資金というのは、やはり基本的には一時的なつなぎ資金であろうというふうに思っておりますので、預金保険機構におかれましても、極力マーケットで調達するということを優先していただきまして、日銀からの借り入れというのは、本当のラストリゾートとしての借り入れというふうに限定していただきたいとお願いを申し上げているところでございます。
  307. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 柳沢大臣それから日銀副総裁、双方から大変適切な御答弁をいただきまして、私も安心をいたしました。  それで、ややだめ押しで恐縮でございますが、皆先進国は預金保険制度を持っていますが、先進国で中央銀行が預金保険機構に金を貸しているという例は余りないのじゃないかと私は思うのですね。もちろん、大臣御指摘のようにラストリゾートが使命ですから、いよいよとなったら先進国に例がないからだめだなんて言っていてはいけないと私も思いますが、たしかそういう国はないのじゃないかと思うのです。  大臣でも事務方でも結構ですが、たしか先進国にはそういう例はございませんね。
  308. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 我々が調べたわけではないのですが、最近書物で、最近においては先進国では預金保険機構が中央銀行からの借り入れあるいは資金調達ということがなくなったというふうにあったのは覚えておりますし、先生御指摘のとおりなのかと思います。  ただ、金融再生法あるいは金融早期健全化法の法律の中で、まさにラストリゾートとしての日本銀行に期待し、日本銀行金融機関からの借り入れという言葉になっておることも、先生御承知のとおりかと思います。そういうような現況にあるというふうに認識しております。
  309. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 極めて正確なお答えでして、私どもがつくってしまったのですね、日本銀行金融機関と。日本銀行と民間金融機関というのは全然違うのに、一緒くたに書いてしまったのがあるいはまずかったのかなと反省をしておりますが、今お答えのように、先進国には例がないのですよ。私の手元に七カ国ぐらいあるのですが、やはりないですね。ですから、おっしゃるように、私どもがそういう法律をつくってしまったので、何か、どっちから借りてもいいような気分になられたら困るのですが、でも、ぜひそういう気分にはならないで、これはまとめてあるが意味が全然違う、片っ方はラストリゾートだということで法を運用していただきたいというふうに思います。  さて、そういうことで、日本銀行の資産内容が長期固定化する、劣化するということはなるべく避けていただいて、円滑な金融調整をしていただきたいわけですが、この金融調節に絡んで、先ほども石井委員が速水総裁に聞いておられたことなんですけれども、オーバーナイトのコールレートをゼロ近傍に下げてしまった。そのために、出し手は、普通預金金利の方が高いから普通預金に預けた。マクロ的に見れば、コール市場を通っていたお金が直接相対で普通預金に行ったのだから、別に借り手側は金繰りに困っているわけではないよ、資金の流れるチャネルが変わったわけではないよということは一面の真理ですが、実は重大な相違があると思うのですね。  市場であれば、借り手がオファーして選択できますが、相対の普通預金に預けるという話ですと、貸し手の方が一方的に預けちゃうのであって、お金が要る銀行に預金が来るとは限らない。むしろ、逆になるのでしょうな。そうすると、そこでやはりもう一回お金をぐるっと回さないと、お金が要る銀行が短期で調達できない、ターム物でなければ調達できないということになってきてしまう。これはやはりちょっと問題があるのじゃないかと私は思っているのですが、山口副総裁はどう思われますか。
  310. 山口泰

    ○山口参考人 二月十二日に私どもがオーバーナイトコールレートのいわゆるゼロ金利というものを誘導するように決定し、開始いたしましてから直近のところまでで、コール市場の残高が約二割ほど減少しております。この資金はどこに流れたかといいますと、ただいま御指摘がございましたように、主として普通預金の方にシフトしているというのが現状でございます。  こういうことがかなり短い期間の中で著しく進んでしまった場合には、私どもは、あるいは金融市場の中で資金調達に困難を来すような金融機関が出てこないとも限らないというふうに心配をいたしまして、そういう金融市場の混乱が万が一にも生じないように細心の注意を払いながら、しかしできるだけ低目の金利を演出してまいりたいというふうに考え、今日に至っております。幸い、ここまでのところは、金融市場の中で私どもが懸念しましたような混乱というのは生じておりませんし、日銀の金融調節もおかげさまでスムースにやってまいっております。  ただ、二月十二日の措置を決定し、実行し始めましてから、何分まだそれほど時間がたっているわけでもございません。また、申し上げましたように、コール市場の資金が着実に減少しつつあるということも事実でございまして、マネーマーケットはかなり大きな構造変化を起こしつつあるという状況ではないかと思っております。  したがいまして、こういう変化のもとで金融機関資金繰りあるいは市場全体の秩序というものが余り混乱を来さないようにということにこれからも十分注意を払っていきたいと思っているところでございます。
  311. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 ぜひそのようにお願いしたいと思います。やはりオーバーナイトの市場取引ができないようなシステムというのはやや異常であって、よほど中央銀行が注意しないと、弱い銀行あるいは急に資金ショートした借り手銀行がターム物しかありませんと言われて困るということが起こり得ると思いますので、ぜひとも十分これからも注意していただきたいと思います。  また、私自身は、この姿は異常だと思っています。緊急避難的にやったという感じを持っておりますから、そうそう長いことやらない方がよろしい、できれば早く景気回復させないと、これにいつまでも頼っていてはまずいなというふうに思っています。  次に、これも先ほど速水総裁のお答えの中にちょっと出ていたのですが、マネーサプライとの関係なんですね。  総裁も言っておられたように、金利と量というのはコインの裏と表だ、表裏だ、それはそうなんですが、この裏と表の関係が時としてずれるのですね。これは安定しているわけではない。それから、さっき速水総裁は、量的な指標、マネーサプライと実体経済の関係というのも余り安定していないとおっしゃったのですが、それはそうだが、金利と実体経済の関係だって安定していないですね、こんな低金利をやっているのに景気がよくならないのだから。だから、両方とも同罪で、金利をターゲットにしようがマネーサプライをターゲットにしようが、実体経済との関係が安定していないというのは同じ話なんだと思うのですね。だから、そこらじゅうの関係が安定していないので、今大変難しいと思うのです。  ただ、こういうことを以前日本銀行がある局面で言っていたと思うのですよ。マネーサプライというのは基本的には最近は実体経済を反映している、だから、実体経済が悪いときは、資金需要がないときはマネーサプライをふやそうと思ってもふえない、量的指標はふえないんだ、大体そのときの取引量に左右されるということを一時期言っておられたと思うのですが、私は、今でもそういう考えを持っているとしたら改めていただかなきゃいかぬなというふうに思います。  これはもう副総裁十分御存じのように、実体経済はマイナス成長を五四半期続けているが、マネーサプライの方は伸びているわけですよ。先行してマネーサプライが伸びている。それは、あなた方の御努力で金利を下げ、何とか量的指標の方は拡大しているわけですね。暦年でいって、去年のマネーサプライは平均四・〇%ふえた。おととしはたったの三・一だから、平均で見てマネーサプライの伸び率は高まっているのですね。ところが成長率の方は、おととし一・五%プラス成長で、去年はマイナスの二・五%成長ですから、明らかに実体経済から離れて先行的にマネーサプライが伸びている。そのマネーサプライの先行的な伸びこそが、超低金利と表裏の関係になって、大量の国債発行のもとでクラウディングアウトの発生を避けているし、これからじわっと景気回復にきいてくるんだというふうに私は思います。  だから、そういう意味で、副総裁に確認の意味を込めて聞きますが、マネーサプライというのは実体経済の反映、資金需要の反映なので動かせるものじゃないというような考えはもう、もうというか、以前も持っていないと言われるかもしれない。それは日本銀行は持っていないでしょうね。先行的にマネーサプライをふやすことによって実体経済をリードするというつもりでないといけないと思いますが、いかがですか。
  312. 山口泰

    ○山口参考人 難しい御質問でございまして、マネーサプライもマネーという資産に対する需要と供給の結果として決まってまいりますので、需要の方、その背後にある実体経済というのがやはり一つの影響を持っているというふうには考えております。  ただ、御指摘のとおり、昨年は、経済はマイナス成長でございましたが、マネーサプライは年間で三ないし四%ぐらいの伸びを維持したわけでございまして、その背後には、やはり低金利のもとで、企業が例えばコマーシャルペーパーを発行するとかあるいは社債による資金調達増大させるとか、そういうマーケットの中での資金の調達がかなり円滑に行えたというようなことが響いていたと思います。  現在は、資金の供給サイド、つまり金融システムの方に大きな問題が生じておりますので、金融政策の力だけでマネーサプライの伸びをどんどん高めるというのは必ずしも思うに任せない事情があるわけでございます。ただ、幸い資本注入の効果が、例えば金融・資本市場における信用リスクあるいは流動性リスクの軽減というような形でかなり明瞭にあらわれてきているということで、一つの変化が生じてきておるところだと思います。  したがいまして、私どもといたしましても、当面、現在の低金利をしっかりと維持しながら、願わくばこれが景気にいい影響が及んでほしい、早く及んでほしいと思いますし、そういうことを通じましてマネーサプライも着実にふえていきますように全力を傾けたいと思っております。
  313. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 今のお答えは非常に適切だったと思うのですね。金利を低く維持することによって景気を回復するということと、その結果マネーサプライを伸ばして景気回復するということはコインの裏表ですから、ぜひマネーサプライを伸ばすということを、金利の低水準を維持するということと同時にアナウンスをし続けてほしいというふうに私は思います。  もう時間になってしまいました。一つだけ要望をしておきたいのですが、さっき石井委員の質問でインフレターゲティングの話がちょっと出たんですね。インフレターゲティングのことを日本では調整インフレと訳してしまった人がいて、それが新聞で一般の使い方になってしまったもので、昔の調整インフレのイメージで、とんでもない話だといって片づけているのですが、外国ではインフレを起こして調整しましょうなんて議論をしているのじゃないんですね。インフレ率をターゲットしましょう、それも一、二%のインフレ率が一番いい状態だ、マイナスインフレも一、二%を超えるプラスインフレも両方よくない、中央銀行たるものは一、二%のプラスのインフレ率をターゲットすべきだ。なぜなら、物価指数というものは常に上方バイアスを持っている。それは質の向上が入ってないから、同じ値段でも中身はよくなっている、しかしそれは物価指数を下げない、だから一、二%のプラスのインフレ率をターゲットするぐらいで適切に物価は安定するんだという議論に基づいていると思うのですね。  だから、調整インフレを否定するのは大いに否定してもらいたいと思うけれども、インフレターゲティングというものに対しては一定の理解を日本銀行は示してほしい。物価安定が自分の目標だ、すなわち、これは物価指数ではかると、ひょっとすると一、二%プラスインフレかもしれない、それにしてもずっと最近のマイナスインフレはよろしくない、こういうことをはっきり言うようにしていただきたいと思います。これは要望です。  ありがとうございました。
  314. 村井仁

    村井委員長 次に、佐々木憲昭君。
  315. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 昨年の一兆八千億円に続きまして、ことしも十五行に対して約七兆五千億円もの公的資金投入が決められました。昨年、日債銀、長銀に投入した二千三百六十六億円、事実上これは紙くずになってしまったわけであります。  私ども日本共産党は、銀行に自己責任を求める、国民に負担させてはならない、こういう立場銀行への公的資金投入には反対してまいりました。これがいよいよ実行されるということになっているわけですが、内容を見てもやり方を見ても、到底これは認められるものではございません。  第一に、資金の使われ方、ここに重大な問題が含まれております。「金融再生委員会の運営の基本方針」、一月二十日に出されましたが、これによりますと、「債権放棄を行う金融機関に対しても資本増強を行う」、このように述べております。ゼネコンに対する巨額の債権放棄を算定の中に含めるということを明らかにしたものだと思うんです。これは極めて重大でありまして、再生委員会が三月十二日に公表した申請金融機関に対する資本増強の基本的考え方という文書にも、「債権放棄が予想される先については、予め十分に引当を行っておくことが望ましい。」、こう書かれております。  そこで、お尋ねしますけれども、再生委員会は、これから行われる債権放棄を算定の中に含めて資本注入額を決定した、このように理解してよろしいですね。
  316. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生が御指摘なされましたとおり、当方の委員会の運営の基本方針には、金融機関が債権放棄をする場合、どういう債権放棄であるならば資本注入に対して差しさわりにはならない、どういう債権放棄でなければ差しさわりがあるということについて、一つの指針を出したわけでございます。  それは三つの条件から成っておりまして、まず、残存債権の回収がより確実になるという合理性のあること、それから当該企業の経営責任の明確化が図られるということ、そして最後に、当該企業が破綻した場合の社会的影響、この三つを考慮して考えますということを運営の基本方針でうたったわけです。  これを受けて各申請行はそれぞれ、各行とも、債権放棄についての考え方、すなわち当委員会の考え方にフォローした考え方というのを示しておりまして、それに従って債権放棄できるものについては債権放棄することとして、それを不良債権の要処理額の中に入れてきているというふうに認識しております。
  317. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 入れてきたものを承認した、こういうことになるわけですね。  今回、青木建設が経営再建計画を出して、それが合意されたと報道されております。これは、当初一部の関係金融機関が猛烈に反対していた債権放棄が一転して合意に達したというところで実現をしたということであります。  三月十六日の日経によりますと、「政府の大手金融機関に対する公的資金を使った資本注入が背景にある。」と指摘されております。債権放棄計画の八割、公的資金投入を受けた主力二行の興銀とあさひ銀行の分だと言われております。日経では、ゼネコン救済の「元手となっているのが「公的資金=税金」であることは紛れもない事実だ。」、このように指摘をしているわけでございます。  青木建設に引き続きまして、フジタも二千五百億円、長谷工コーポレーション三千五百億円、佐藤工業一千二百億円、藤和不動産二千五百億円など、合わせて兆単位の債権放棄が計画されております。これらは、いずれも公的資金を入れた銀行に債権放棄を要請しているということであります。  こういうところに公的資金を投入することは、私は容認できないと思っております。それだけじゃありません。有価証券の含み損について、「有価証券含み損の処理を行わない場合でも、資本増強の審査に当たっては、これを考慮する。」、このように書かれております。十五行の経営健全化計画では、約一兆円の損失処理を実施する見通しだと言われております。  このように、債権放棄をする、ゼネコン救済になる、そこに公的資金を入れる、さらに、有価証券が含み損が生まれた、しかも、まだ処理が行われていないのに、これを想定して資本増強の算定を行う。私は、これはまるで丸抱えで野方図なやり方だと言わなきゃならぬと思うんです。  それで、審査あり方審査のやり方、この問題について次にお尋ねをしたいわけですけれども、個別の銀行に対して審査を行ったというのはいつの時点からか、この点をお知らせいただきたいと思います。
  318. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 お答え申し上げます。  昨年の十二月十五日に金融再生委員会が発足いたしまして、その後、いろいろな基準あるいは運営の基本方針について審議し、議決をしてまいって、具体的に各行への予備審査と申しましょうか、そういうのを始めましたのは一月二十六日からでございます。
  319. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 三月四日に正式な申請が出されているわけですが、予備審査が一月二十六日ということですから、予備審査というのは一体どのような性格かというのが問われるわけですが、私は、これは正当なやり方だとはどうも思えない。  もっと問題なのは、基本的な部分というのは、この予備審査に入る以前、既に昨年の十一月から銀行との交渉が頻繁に行われていたという事実がございます。昨年十一月十日に、金融監督庁が資本注入の審査基準を決めて公表しております。十三日にはその説明会を開き、経営健全化計画に盛り込む項目について各銀行説明をしております。その結果、十一月末、申請予定行が名乗りを上げております。申請予定額は、合わせてその段階で約五兆円程度だったと思うんですね。ところが、金融監督庁はその後、資本の増強が不十分だ、このように指摘をして、監督庁と準備室の事務局が各銀行に対して公的資金の上積みを促し始めた。この時点で金融監督庁が各銀行との間でどのようなやりとりをして上積みを行っていったのか、これが問題になるわけであります。  例えば、新聞報道によりますと、ある銀行幹部はこのように言っている。経営計画のインパクトが足りないと指摘され、再三書き直しを命じられた、このように報道されております。また、公的資金による資本注入に関し、金融再生委員会金融監督庁と大手銀行のせめぎ合いが続いていると。つまり、予備審査のずっと以前に、十一月から十二月にかけまして事前の交渉が頻繁に行われ、ある目標に向かって金額の積み増し、経営健全化計画の内容についての書きかえ、こういうことが行われていた。  これは事実だと思うわけですけれども、こういう形で最初予定していた申請額がどんどん積み上がって変化が生まれていった、変更されていった。つまり、監督庁とのやりとりの中でそれが行われたわけですね。私は、この点が非常に肝心だと思うわけです。  このやりとりの内容はいつ公開されるんでしょうか。議事録はあるんでしょうか。
  320. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  早期健全化法とそれから金融監督庁のあるべき姿といいますか、これにつきましては、もう御案内のとおりだと思いますが、早期健全化法の第三条だったと思いますが、早期健全化法と私どもが所掌しております早期是正措置との間には効果的な連携を図る、こういう規定がございます。  この効果的な連携を図るということの意味でございますが、これは、金融再生委員会が発足いたしました昨年十二月に私が直接総理のところに呼ばれまして、小渕総理からは、この点は十分にしっかりやるように、文書でもってこういう御指示をいただきました。この効果的な連携ということ、これは法律解釈ですから、私なりに解釈しているわけですが、同じ貨幣の表と裏の関係になるのではないかな。つまり、表は早期健全化法という貨幣でございますが、同じ貨幣でございますから金額は同じでなければなりません。しかし、どこの国の貨幣でもそうだと思いますが、表と裏のその図柄というのはおのずから違ってまいります。裏の図柄は早期健全化といいますか銀行法といいますか、金融監督庁といってもいいかと思いますが、そういったふうに、これは私が解釈しているわけでございますけれども、そういった意味で効果的な連携を図る。  効果的な連携を図るためには、どんな表現を使ったらいいかちょっとわかりませんが、プリリミナリーヒアリングと申しますか、そういったものが必要だということで私どもが実施させていただいたということは事実でございます。ただ、それはあくまでもプリリミナリーなヒアリングでございますので、議事録もございませんし、個別行との間で順次行ってまいったわけでございまして、それを金融再生委員会におつなぎしたということになろうかと思います。
  321. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 透明性の確保を標榜しているにもかかわらず議事録もない、公開の予定もない、どうしてこれで透明と言えるんでしょうか。私は全く不透明だと思います。つまり、金融監督庁が、予定されていたそれぞれの銀行の申請額をどういう基準で判断をし、どのような積み上げ額を要望したのか、銀行側がそれに対してどう対応したのか、どういう考えだったのか、何も明らかにならないじゃないですか。  ことしに入って議事録が存在する、そういう期間審査というのは、これはいわば最後の微調整の段階であります。一番肝心なのは最初の段階でありますが、それについては全く経過がわからない。これはおかしいじゃないですか。私は、これは報告していただく必要があると思いますが、いかがでしょうか。
  322. 日野正晴

    日野政府委員 早期健全化法に基づく公的資本の注入はあくまでも申請主義をとっているわけでありまして、私どもも、もちろんこちらの方から金額を提示したこともございませんし、先ほど申し上げましたように、あくまでも早期是正措置との間の効果的な連携を図るといった観点から、その個別の銀行につきまして、それぞれの銀行が一体幾らの公的資金の注入を希望しておられるかといったことや、あるいは、その他早期健全化法のもろもろの要件を満たすかどうか、それがひいてはその早期是正措置との間の果たして効果的な連携になるかどうかといった観点から、個別に審査といいますか、事前に、予備的にいろいろお話を聞かせていただいたということでございます。
  323. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 ただ予備的な話を聞いただけじゃありません。例えば、日経の十二月三日付には、監督庁は先週末、監督部の課長補佐を総動員して大手各行の資本増強計画の聞き取りを開始した、現段階での調査目的は資本増強計画が腰だめの数字になっていないか確認することである、そういうようなことも報道されております。腰だめかどうか、どういう内容か、こういう点について調査をし、もしその内容が不十分であれば是正をさせている、だからどんどん積み上がっていったわけであります。そういう点を公表しないというのは極めて問題があるという点を私は指摘しておきたいと思います。  次に、審査内容についてお聞きをします。  昨年の七月から秋にかけて、主要十七行に対して金融監督庁と日銀は集中的に検査を実施しておりますが、その概要はここにございます。この検査、考査の結果を今回の審査でどう扱い、どう生かしたか、これが大事だと思うんですね。  再生委員会にお伺いしますけれども個々の検査結果について委員会のメンバー全員が見て、その上で結論を出したのかどうか、この点をまず聞きたいと思います。
  324. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、今回の資本増強の審査は、昨年七月から各行に対して行われました一斉検査、その結果を十分踏まえて行ったものでございます。  具体的には、資本増強の申請を行った各金融機関の財務内容の健全性等につきまして、金融監督庁及び日銀から検査、考査結果の書類の提出を受けまして、それぞれの担当者から具体的かつ詳細な説明をとり、かつ濃密な質疑を行いました。こうした厳密な審査に基づきまして申請各行の財務内容等審査したわけでございます。
  325. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 そうしますと、この報告を見ますと十七行の合計が出ておりますが、当局査定それから自己査定、この二つの数字が並んでおりまして、その差額が出ておりますが、第二分類から第四分類で検査結果の方が自己査定を大きく上回っております。第二分類が三兆五千八百四十二億円、第三分類が一兆五千七百八億円、第四分類が二千五百十一億円、こういう食い違いが出ております。これは大変な違いだと思うんですね。これは総額で示されているわけですけれども個々銀行で見ますとこういう食い違いはもっとあるはずだと思うんですね。  再生委員会としては、公的資金の注入に当たって、自己査定と検査の結果、この食い違いをどのように判断して結論を出したのか、答えていただきたいと思います。
  326. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘の自己査定と当局査定の食い違いというのは、十年三月末の償却、引き当て後のものでございます。それから後、申請行につきましては、九月の中間決算期におきまして、この四月において、当局、すなわち金融監督庁検査部から査定を受け、指摘された点を踏まえて是正した中間決算を出しておる次第でございまして、今回、不良債権の要処理等は、こうした是正した分類債権に基づいて、それに引き当て率を乗じまして各行出してきているわけでございます。
  327. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 是正したと。  そうしますと、この概要の中にはこういう部分もあります。「関連会社等について、その財務内容を勘案せずに、正常先、要注意先としたり、債務者区分を行わず「その他」としたりしている。」、こういう指摘があります。日債銀の九七年の検査結果と自己査定が食い違ったときと同じような問題がここにも指摘されているわけです。  この点については具体的に再生委員会でどのように取り上げられ、どのように改善させたのか、この点についてはっきりさせていただきたいと思います。
  328. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 先ほど申しましたとおり、金融検査部から報告書その他の書類を提出いただきまして、いろいろとこちらは質疑をさせていただきました。ただ、先生御指摘のような点を含めまして、具体的な点についての御開示は御容赦願いたいと思います。いずれ議事録は公開されます。  ただ、いずれにいたしましても、厳密な検査につきまして、さらに我々がいろいろな角度からその信頼性を図り、最終的には委員の皆様がそれにつきまして納得したということでございます。
  329. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 どうもはっきりしない答弁ですが、改善をさせたのかどうか、改善をさせた上で結論を出したのかどうか、この点について。
  330. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 先生、どういうことをイメージされて御質疑になっていらっしゃるのか、ちょっと私もはかりかねておりますけれども、要するに金融検査というのは、自己査定を基礎として、それの改善すべき点を指摘して改善しなさいということをするわけでございます。したがいまして、改善が当然行われたということでございまして、九月末の決算は、そのような具体的な指摘とともに、その趣旨を踏まえた決算になっておるはずだ、こういうように考えられるということでございます。     〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
  331. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 では、次に聞きたいことは、投入資金の回収問題でございます。  各行は、経営健全化計画を提出しまして公的資金の返済計画を示しているわけですね。それは、毎年の業務純益の半分を返済資金として出して、何年か後には返済できる、こういう計画になっていると思うんです。ところが、そこに、昨年三月に一兆八千億円を投入したわけですけれども、投入された側がどうこれを返済するかというものはどうも出ていないように思うわけですけれども、これはどういうことになるんでしょうか。
  332. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 先生御指摘の旧金融安定化法に基づく資本注入につきまして、今回の仕組みの中には入っていないという御指摘かと思うのでございますけれども、その点については、前回の資金注入につきましては前回の資金注入の枠組みの中で償還されていくものということでございまして、今回の経営健全化計画等、その中に特に盛り込んでおりません。
  333. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 おかしいじゃないですか。前年に入れた公的資金の返済は別枠だと。しかし、銀行の側から見れば、同じ公的資金が投入されているわけですね。昨年は、例えば大和銀行は一千億円の資本注入を受けた。今回は四千八十億円の公的資金を受け取った。前回の一千億円についてはどうするのか。健全化計画全体にこれが影響するというのは当然じゃないんでしょうか。昨年の分はどうでもいい、そういうことにはならないと思うんですね。  受け取った公的資金をどういう形で返済していくかというのは、何もことしの分だけじゃなくて昨年の分についても当然返済計画をつくらせる、当たり前じゃありませんか。なぜそういうのをやらないんですか。     〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
  334. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 旧安定化法が廃止になりまして、現在、回収の際には預保の承認という仕組みに前のものはなっておるわけでございます。  そして、先生御指摘の、回収についてきちんと各行はやっているかということでございますけれども、我々は、各行の経営健全化計画の今後の収益見込み、その中には、当然前回の金融安定化法の枠のもとで借り入れた劣後債、劣後ローンあるいは優先株についての償還財源も積んでいく、それをも含めた各行の経営健全化計画だと理解しております。
  335. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 どうも理解できないですね。預保がやっているということですけれども、それは全然筋が違う話であります。つまり、銀行の側から経営健全化計画を出した、この経営健全化計画の中に資金返済計画というのは当然入るわけですから、今回だけじゃなくて昨年の分の返済計画、当然これが入らなければまともな健全化計画とは言えないんじゃありませんか。それは別だと。収益の計画についても、当然その収益も昨年の分を入れれば影響が出てまいります。何年で返済できるかというのは、ことしの分は数字が出ていますね。去年の分を入れた数字はないじゃないですか。健全化計画は変わってくるんじゃありませんか。なぜそれが入っていないんですか。おかしいじゃないですか。
  336. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 お答え申し上げます。  我々が参考資料で公表いたしましたいわゆる回収見込みというものの年数等につきましては、前回の資本注入と今回の注入を分けてございますけれども、各行がつくり、提出し、公表しています経営健全化計画の優先株式がどうかとか、あるいは永久劣後債、永久劣後ローン、これは実は前回と今回と合計額で出ておりまして、そういう面では、今度の経営健全化計画の中の劣後債、劣後ローンには前回のものが、前回は劣後債、劣後ローンが八割以上だったわけですけれども、それが含まれているというふうに言えると思います。
  337. 佐々木憲昭

    佐々木(憲)委員 数字が入っているというのは、それは現在の残高が入っているというわけで、ただ問題は、それをどのように返済していくかという計画が大事であって、その計画が一方はあるけれども昨年の分はない。これはおかしいじゃないですか。  もう時間が参りましたから私は質問を終わりますけれども、引き続きこれらの問題については追及をしていくつもりであります。  以上で終わります。
  338. 村井仁

    村井委員長 次に、横光克彦君。
  339. 横光克彦

    ○横光委員 社民党の横光克彦でございます。  きょうは、長時間にわたり、本当に御苦労さまでございます。質問をさせていただきます。多少重複するところがあろうかと思いますが、確認の意味で御理解をいただきたいと思います。  先般の早期健全化緊急措置法案の成立に当たって我々社民党が強く主張してまいりましたことは、緊急措置法案が貸し渋り対策を通じて地域経済あるいは雇用対策に資するものであること、これを国民に鮮明に示すこと、これが第一点でございました。いま一点は、個別銀行の救済だと国民的批判を受けるものであってはならないということ。この二点を強く主張してきたのですが、この二つの眼目に照らして、今回の公的資金の注入はどのような意味、どのような意義があるのか、明らかにしていただきたいと思います。
  340. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 お答え申し上げます。  まず、貸し渋りの点でございますけれども、今回の資本注入につきましては、いわば法律的な要件として、今後一年間の貸付残高は少なくとも維持する、特に中小企業向け貸し付けについては増加させるという要件を盛り込みました。その結果、各行ともこの要件をクリアして健全化計画を出してきておるわけでございまして、その総額が、全体の貸し出し増が約六兆七千億程度、そして中小企業だけをとりましても三兆程度増額するということになっております。  これは、各行のいわば経営健全化計画にのせて、それを公表したわけでございますから、今後、各行は当然この貸出額を守るべく懸命の努力をするということでございましたので、貸し渋り対策という面でも十分効果があるものと思っております。  それから、今回の措置が個別銀行の救済ということを目的としていないという点でございますけれども、今回我々が目的としたのは、まず不良債権の処理、そして信用供与の円滑化、そして最後に、これから発生するかもしれないリスクに対応できるだけの資本増強ということでございまして、金融システムの安定の中での個別銀行の財務の強化ということでございまして、決して個別銀行自身を救済するということを目的としたものではございません。  そして、各個別銀行の財務内容を強化、具体的に言えば自己資本比率を増強することによって貸し渋りなどをしないように持っていくということが我々の大きな目的でございます。
  341. 横光克彦

    ○横光委員 今、貸し渋り対策中小企業向けの貸付枠を増大するというお話でございました。経営健全化計画の提出、また確実な実行、今回これは不可欠なことだと思うのですね。  なぜ我々はこの課題に執着するかと申しますと、御案内のように、中小企業は大企業と異なって、地場、いわゆる地域に依拠することなくしてなかなか存在し得ないのですね。ですから、中小企業の皆さんが元気にならなければ地域の活性化というのは到底展望が開けない、そういった意味からでございます。  今回、それが担保されているというお話でございました。これから各銀行とも中小企業向けの貸し出しを大幅に積み増すということになろうかと思いますが、その場合、ちょっと心配なことがあるのですね。  現在のこういった状況下において、優良な中小企業というのはそんなに多くありません。ですから、融資の奪い合いになる可能性がある、あるいはまたもう一つ、危ない会社貸し出した結果、新たな焦げつきのリスクにつながる可能性がある、これらのために貸し出しの選別が行われるのではないかという心配。  もしそのようなことになりましたら本当の意味での中小企業貸し渋り対策にはならないわけで、もちろんつぶれようとしている会社は無理でございますが、今苦しくても将来可能性があるんだ、頑張っているんだという会社には、こういった選別をすることなくしっかりと対応していただきたいと思うのですが、その点はいかがでございますか。
  342. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 先生御指摘の点は十分理解できます。要するに、単に増加額というものが確保されるだけでなく、その中身の問題だということで、選別等が起こるのは好ましくないという先生の御指摘はもっともかと思います。  ただ、我々が要件としていますのは、基本的に増額というところまででございまして、その中身まで対象行の経営陣に手を突っ込んでいろいろやるというのはなかなか難しい面があることも御理解いただきたいと思います。  ただ、一般論で申し上げれば、これからの銀行業というのは、大手企業がだんだん直接金融に移行していく、そうした中でどう貸出業を、間接金融をしていくかという問題でございます。  そうした中ではどうしても貸付先が、今までの日本のある大手行の貸付先をとった場合、リスクが少ない方から大きい方までいろいろな濃淡があるだろうと思いますけれども、それでも傾向的には一番上の方でもリスクがある程度ある。逆に言えば、リスクがある貸し出しを積極的にとって、それに見合うスプレッドを取り、業務粗利益をとっていく、そういう積極的な活動をしていかないとコマーシャルバンクの将来はないという点もあるかと思いまして、今後は、銀行が縮こまってリスクのないところあるいは小さいところにしか貸さないということだけでもなくなっていくのだろうというふうに期待しております。
  343. 横光克彦

    ○横光委員 確かにリスクとの接点のところは大変難しい判断が迫られるかと思います。また、実際にこれから貸し出しが始まりますといろいろな問題が起きるかと思います。今、なかなか個別のところまで指導はできないのだというお話でございましたが、いろいろな問題点が起きたときには対応できるように体制を整えていただきたいと思っております。  次に、債権の放棄についてちょっとお聞きいたします。  債権放棄に当たっては、残存債権の回収がより確実となる等の合理性、借り手企業の経営責任の明確化、及びその企業の社会的影響等を考慮するもの、こうあります。  今後、各金融機関が、安易な債権放棄、つまり、言われておりますように、国民の税金を使った銀行経由のゼネコン救済というようなことにならないように、安易な形での債権放棄に走らないようにどのように担保していくのか。これは柳沢大臣も大変心配されている点であろうと思いますが、この点について御意見をお聞かせください。
  344. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 債権放棄が安易に行われるときにモラルハザードという問題が起こるということで、私どもも、今先生が御指摘になられたような条件をはっきり確認した上でバランスシートからのライトオフの一つの手段として債権放棄することをやむなしとする、こういう方針を打ち出させていただいたわけでございます。  今先生もちょっと言及になられたように、金融機関による債権放棄が行われた場合、その金融機関にいわゆる公的資金を注入したときには銀行経由の資金援助になるのではないか、こういうようなことがよく言われるわけでございますけれども、それはそのような仕組みにはなり得ないわけであります。  それはどうしてかといいますと、その金融機関は、私どもが入れた公的資金を返済する義務を負っているわけでありまして、したがいまして、そこでいずれにしても切れた関係になる。つまり、債権放棄は金融機関の責任と負担によって行われるということはどこまでも貫かれているわけでございまして、まあ、そこのところ、ちょっと誤解が起きがちなんですけれども、ぜひ御理解を賜りたい、このように思っている次第です。
  345. 横光克彦

    ○横光委員 どうかよろしくお願いしたいと思います。公的資金使途の適切さ、これもまたやはり非常に大事な金融再生委員会の役割であろうと思っております。  次に、今回国が公的資金で引き受ける優先株などのうち、普通株への転換ができる転換型優先株の発行条件を見ますと、その転換開始時期が各行で格差がございます。これまでいろいろな議員が質問されました。最長が富士銀行の七年六カ月、最短が大和銀行、三井信託、中央信託、東洋信託の三カ月となっておりますが、この四行に対しまして、三カ月という転換開始期間が来ましたら転換権を行使するんでしょうか。
  346. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 転換権の行使についての御質問でございますけれども、転換権というものを資本注入後は持つということ、その転換権の行使開始時期が三カ月から七年半にいろいろ多様化したばらばらのものになっているということを十分認識しております。  ただ、前にも大臣御答弁なされましたとおり、この転換権の開始時期を早く設定するということはそれだけ投資家にとって有利である、すなわち市場慣行として配当利回りが下がるという関係がございまして、そこに着目して各行は転換開始時期を下げ、配当利回りを低いもので申請するということの関係にあったわけでございまして、現時点において、我々は転換開始時期に来たときにすぐ転換権を行使するということは考えておりません。そういうことをすることなくして各行がこの経営健全化計画のとおりに今後経営をやっていってくれるものというふうに期待しているわけでございます。
  347. 横光克彦

    ○横光委員 今、そういう転換期間が来てもすぐ行使することはないだろうというお話でございます。この四行が、もし優先株を普通株に転換した場合、国の持ち株比率が過半数を超える見通しです。今そういった御答弁でございましたが、実際、時期が来れば、転換しなくても事実上国の管理下に置かれていると同じような状況になるのではないか。つまり、これは金融再生委員会の方からすれば、今お話ございましたように、配当負担を軽くするとか、あるいは銀行に経営の早期改善を促すとか、またさらなるリストラを進める。先ほどこの件では御質問ございました。  今回の大手銀行のリストラ策、これは一般産業界に比べたらまだまだ甘いという声は多いんですね。各銀行、給与の引き下げを考えているのはたった一行というふうに聞いております。こういった面ではまだまだ非常に甘い。あるいは、業務の集中あるいは再編、合併、こういった道を開く効果もいろいろあろうかと思います。  しかし、これは裏返して言えば、この四行は危ないんだということを公言していることにもつながると思うのですよ。となりますと、長銀やあるいは日債銀のようにいずれ国有化される、あるいはその結果、今回の公的資金、四行合わせますと一兆一千五百八十二億円、これが全額戻ってこなくなるのではないか、あるいはそのツケは結局また国民に回ってくるのではないかという心配、危険性があろうかと思います。この点について、大臣、どうお考えですか。
  348. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 まず、給与等のリストラが不足ではないかというようなお話がございましたけれども、例に挙げられた給与で申しますと、ほとんど押しなべての銀行が給与体系を変える、つまり年功型の給与体系から職能給、能力給に変えるということを申し出ておることは、先生、健全化計画をごらんになっていただきますと御理解いただけるのではないか、このように思います。そうしたことを考えて、有能な人材を雇用するにはどうしたらいいかという、いろいろ総合的な事項を勘案してこうした結果になっているということについてもひとつ御理解をお願いしたい、このように思います。  そこで、もう一つは、今お触れになられた、その転換開始時期が非常に短期のものについては危ないのではないかというようなお話がございましたけれども、これは、私どももしそういうことを認識した上で資本を投入したとすれば、これは法律違反ということに相なります。それは、我々が投入するに当たっては、法律上の要件として、存続可能性をよく吟味しなさい、存続が極めて困難である場合でないことというような、非常に持って回った言い方でございますけれども、そういうことを守らなかったということになるわけでありますので、ひとつその点についても、私ども、そこをよく吟味した上で今回の措置をしようとしているということを御理解賜りたい、このように思います。  それから最後に、毀損が起こって長銀、日債銀のような例を繰り返すのでは、そういう懸念はないのかということでございますが、私どもは、これからこの健全化計画のフォローアップという法律上の措置でもってそれぞれの投入行のこれからの経営の推移というものをよく監視していくということを考えておりますし、また、場合によっては、法律の二十条で銀行法を引っ張っておりまして、銀行法上の業務改善のいろいろな措置を命ずることができる、こういうような措置も動員しまして誤りのないようにしてまいりたい、こういうように考えておりますことを申し上げておきます。
  349. 横光克彦

    ○横光委員 どうもありがとうございました。今の御答弁で国民は大分安心したのではなかろうかと思っております。  最後にお聞きします。  金融機関からの政治献金の件でございます。これも国民が大変注視している問題、いわゆる公的資金を注入した、その金が還流して政治資金になるようなこと、こういうことがあっては国民の理解は絶対に得られないわけでございます。このことに対して小渕総理も、過去の金融機関からの借入金に対する返済資金も含めて資本注入金融機関等からの献金は辞退したいと、これまで以上に踏み込んだ見解を発表されております。  しかし、これは各党のそれぞれの姿勢の問題でございます。金融機関を所管しております大蔵大臣にお尋ねいたしますが、金融機関全般が今こういう状況下にあるだけに、国民の批判や誤解を受けないためにも、大蔵大臣金融機関からの献金についての御見解をお示しいただきたいと思います。
  350. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私は、党の方の資金関係に疎いものですから、御通告がありましたので調べておきましたところ、ただいまお話しのように、昨年の十月に参議院で御質問がありまして、総理大臣から、従来、銀行業界からの借入金の返済に充てるものがあるので、それを除いては政治献金を自粛してきたが、これからはその返済分も含めて、当分の間、公的資金が投入される銀行からの寄附は辞退する、こういうふうなことを党として決めたということを聞いております。  実は、その他の銀行につきましては、私、つまびらかでございませんが、ただいまお話しの趣旨は党の方によく伝えておきます。
  351. 横光克彦

    ○横光委員 こういうときですので、今こそ我々政治家が襟を正すべきときであろうと思います。  終わります。ありがとうございました。
  352. 村井仁

    村井委員長 次回は、来る二十三日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十一分散会