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1999-02-17 第145回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月十七日(水曜日)     午後零時三十分開議   出席委員    委員長 村井  仁君    理事 井奥 貞雄君 理事 衛藤征士郎君    理事 鴨下 一郎君 理事 柳本 卓治君    理事 上田 清司君 理事 日野 市朗君    理事 石井 啓一君 理事 小池百合子君       岩永 峯一君    大石 秀政君       大島 理森君    河井 克行君       栗本慎一郎君    河野 太郎君       阪上 善秀君    桜井  新君       桜田 義孝君    下村 博文君       砂田 圭佑君    戸井田 徹君       中野 正志君    平沼 赳夫君       村上誠一郎君    渡辺 具能君       渡辺 博道君    渡辺 喜美君       石毛えい子君    海江田万里君       末松 義規君    仙谷 由人君       玉置 一弥君    中川 正春君       山本 孝史君    大口 善徳君       谷口 隆義君    並木 正芳君       若松 謙維君    鈴木 淑夫君       西田  猛君    佐々木憲昭君       矢島 恒夫君    横光 克彦君  出席国務大臣         大蔵大臣    宮澤 喜一君         国務大臣         (金融再生委員         会委員長)   柳沢 伯夫君  出席政府委員         人事院事務総局         給与局長    大村 厚至君         人事院事務総局         職員局長    佐藤  信君         金融再生委員会         事務局長    森  昭治君         金融監督庁長官 日野 正晴君         金融監督庁検査         部長      五味 廣文君         金融監督庁監督         部長      乾  文男君         大蔵政務次官  谷垣 禎一君         大蔵大臣官房長 溝口善兵衛君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主計局次         長       藤井 秀人君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省理財局長 中川 雅治君         大蔵省金融企画         局長      伏屋 和彦君         国税庁次長   大武健一郎君         厚生省児童家庭         局長      横田 吉男君         郵政省貯金局長 松井  浩君         郵政省簡易保険         局長      足立盛二郎君  委員外出席者         議員      岡田 克也君         議員      海江田万里君         議員      古川 元久君         参考人         (日本銀行副総         裁)      藤原 作彌君         参考人         (日本銀行審議         役)      三谷 隆博君         参考人         (預金保険機構         理事長)    松田  昇君         大蔵委員会専門         員       藤井 保憲君 委員の異動 二月十七日  辞任         補欠選任   村上誠一郎君     阪上 善秀君   渡辺 博道君     戸井田 徹君   末松 義規君     石毛えい子君 同日  辞任         補欠選任   阪上 善秀君     村上誠一郎君   戸井田 徹君     岩永 峯一君   石毛えい子君     末松 義規君 同日  辞任         補欠選任   岩永 峯一君     渡辺 博道君 二月十二日  有価証券取引税法及び取引所税法を廃止する法律案内閣提出第六号) 同月十七日  所得税法の一部を改正する法律案中野寛成君外三名提出衆法第二号)  児童手当法及び所得税法の一部を改正する法律案中野寛成君外三名提出衆法第三号) は本委員会に付託された。 二月十六日  消費税率を三%に引き下げることに関する陳情書外三件(第一三号)  消費税の廃止に関する陳情書(第一四号)  税制改正に関する陳情書外一件(第五七号)  住宅ローンに対する新たな減税に関する陳情書(第五八号) は本委員会に参考送付された。 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  経済社会変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税負担軽減措置に関する法律案内閣提出第四号)  租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第五号)  有価証券取引税法及び取引所税法を廃止する法律案内閣提出第六号)  所得税法の一部を改正する法律案中野寛成君外三名提出衆法第二号)  児童手当法及び所得税法の一部を改正する法律案中野寛成君外三名提出衆法第三号)     午後零時三十分開議      ――――◇―――――
  2. 村井仁

    村井委員長 これより会議を開きます。  内閣提出経済社会変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税負担軽減措置に関する法律案租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案有価証券取引税法及び取引所税法を廃止する法律案中野寛成君外三名提出所得税法の一部を改正する法律案及び児童手当法及び所得税法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  まず、有価証券取引税法及び取引所税法を廃止する法律案ついて趣旨説明を聴取いたします。大蔵大臣宮澤喜一君。     ―――――――――――――  有価証券取引税法及び取引所税法を廃止する法律案     〔本号末尾掲載〕     ―――――――――――――
  3. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま議題となりました有価証券取引税法及び取引所税法を廃止する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  政府は、最近における経済金融情勢変化等に対応するため、有価証券取引税法及び取引所税法平成十一年三月三十一日をもって廃止することとし、本法律案提出した次第であります。  以上が、有価証券取引税法及び取引所税法を廃止する法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 村井仁

    村井委員長 次に、本日付託になりました中野寛成君外三名提出所得税法の一部を改正する法律案及び児童手当法及び所得税法の一部を改正する法律案の両案について趣旨説明を聴取いたします。古川元久君。     ―――――――――――――  所得税法の一部を改正する法律案  児童手当法及び所得税法の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     ―――――――――――――
  5. 古川元久

    古川議員 私は、民主党を代表し、ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案並びに児童手当法及び所得税法の一部を改正する法律案について、提案理由及び概要を御説明申し上げます。  まず、二法案提案理由を御説明申し上げます。  民主党は、今日我が国が直面しているかつてない長期不況からの脱出のためには、とりわけ低迷している個人消費を思い切って刺激することが必要であり、昨年橋本内閣が行ったような場当たり的な定額減税や、小渕内閣が現在提案しているような最高税率のみの引き下げ定率減税を組み合わせた継ぎはぎの減税ではなく、将来の税制改革方向をしっかりと見据えた制度減税を前倒しで実現するという観点が必要であると考えております。  昨年十一月に民主党が策定した構造改革につながる景気雇用対策の中では、その基本的な考え方を次のように整理しております。すなわち、第一に、経済活力国民安心をもたらす抜本的税制改革方向に沿った減税を行うこと。第二に、総合課税化課税ベース拡大による不公平是正が不可欠であること。第三に、すべての所得階層対象とした税率引き下げ制度減税を行うこと。第四に、所得税の五段階の累進税率構造は維持すること。第五に、人的控除は可能な限り社会保障制度上の歳出措置に移し、税制を簡素化すること。そして第六に、所得減税所得税のみで行い、地方財政破綻を招く地方税減税は行わないということであります。  このような考え方に沿って、今般、民主党は、二つ法案政府案への対案として提出いたしました。  一つは、所得税法の一部を改正する法律案であります。  この法案は、今後の我が国経済活力を高める等のための抜本的な税制改革を実現することが緊要な課題であることにかんがみ、個人所得課税について、納税者番号制度の導入による総合課税の推進、各種人的控除等見直しによる課税ベース拡大を図りつつ税率引き下げを行うという抜本的な税制改革方向に沿って、その一環として、所得税負担軽減を図るため、税率の一律二割引き下げを行おうとするものであります。  他の一つは、児童手当法及び所得税法の一部を改正する法律案であります。  この法案は、現在の所得税における扶養控除等人的控除税制を極めて複雑にし、課税最低限を諸外国に比べて著しく引き上げているだけでなく、これが所得控除であるために、高い限界税率が適用される者ほど大きな恩恵を受けるという逆進的性格を有していること、子供などの家族の扶養に要する経済的な負担は本来社会保障制度によって考慮されるべきものであることなどにかんがみ、これらの抜本的な見直しに着手しようと提案したものであります。  すなわち、本法案は、児童手当制度を拡充し、子育てに係る経済的負担軽減するために、児童を養育している父母等に対し子育て支援手当支給すること等により、次代の社会を担う児童等のいる家庭における生活の安定に寄与することを目的とする子育て支援手当制度を創設するとともに、個人所得課税における各種人的控除制度見直し一環として、扶養児童等に係る扶養控除制度を改めようとするものであります。  次に、二法案内容概要を御説明申し上げます。  所得税法の一部を改正する法律案では、第一に、税率現行の一〇%ないし五〇%から一律二割引き下げて八%ないし四〇%とするとともに、最低税率区分の適用される所得金額の上限を現行の三百三十万円から四百万円に引き上げることとしております。  第二に、利子、配当、株式譲渡益等分離課税を廃止するとともに、納税者番号制度を導入するための法制の整備平成十四年三月三十一日までに行うものとする規定を附則の中に設けております。  第三に、この法律施行期日を本年三月一日とし、平成十一年分以後の所得税について適用することとしております。その他、経過措置等所要規定整備を行うこととしております。  児童手当法及び所得税法の一部を改正する法律案では、第一に、児童手当法の題名を子育て支援手当法に改めるとともに、目的規定制度拡充趣旨に沿って、子育て家庭における生活の安定に寄与することを目的とすることに改めております。  第二に、児童手当については、従前児童手当法における児童福祉の理念を継承しつつ、児童手当支給対象を、現行の三歳未満児童を監護する父母等から、十八際未満児童を監護する父母等に大幅に拡大しております。また、支給額現行の倍額の第一子、第二子一人月額一万円、第三子以降一人月額二万円に引き上げるとともに、父母等所得制限を子二人のサラリーマン世帯の場合で給与年収千二百万円程度に引き上げることとしております。  第三に、所得一定額以下の十八歳から二十三歳未満の子の生計を維持する父母等に対して、児童手当に準じた支給額所得制限による子育て継続手当支給することとしております。  第四に、右の児童手当及び子育て継続手当支給に要する費用の九九%を国が負担することとし、都道府県及び市町村の負担額従前負担額の範囲内にとどめることとしております。また、サラリーマン等についての手当支給に要する費用一般事業主負担を廃止することとしております。  第五に、所得税法扶養控除対象障害者及び年齢七十歳以上の扶養親族に限定することとしております。ただし、二十三歳以上七十歳未満扶養親族については、当分の間、扶養控除対象に含めることとしております。  第六に、この法律児童手当法改正に係る部分についての施行期日を本年十月一日とし、所得税法改正に係る部分についての施行期日平成十二年一月一日としております。その他、経過措置等所要規定整備を行うこととしております。  以上が、民主党提出した所得税法改正等法案提案理由及び概要であります。  何とぞ、御審議の上、御賛同を賜りますようお願い申し上げ、私の提案理由説明といたします。
  6. 村井仁

    村井委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 村井仁

    村井委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁藤原作彌君、日本銀行審議役三谷隆博君及び預金保険機構理事長松田昇君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 村井仁

    村井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  9. 村井仁

    村井委員長 これより各案を一括して質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川正春君。
  10. 中川正春

    中川(正)委員 民主党中川正春でございます。  まず最初に、先ほど提案をされました民主党案、それから同時に、政府の方の所得税法中心にした法律案、あわせて御質問させていただきたいというふうに思います。  きのう、経済企画庁から月例報告が出されました。その中身を見ておりましても、非常に堺屋長官のニュアンスとはまた違った、それこそ実質的な数字の上での厳しさというのが私は出ていたというふうに思うわけであります。その中でも、特にこの税制改正、これの最大の主眼としている個人消費をいかに上げていくかということ、これについては非常に厳しい数字が出ておりまして、私自身危機感を持って今の経済情勢というのを見ておる次第であります。  そんな中で、政府案は、この最初説明の中にもありますように、こうした個人所得課税及び法人課税あり方についての抜本的な見直しを行うまでの間の措置、まあ言うたら暫定的な措置として今回の政策を出してきたということであります。それだけに、税としての構造を理想的な形に持っていくのかというそこの論点と、それからもう一つは、今のそうした個人消費中心にした景気対策、それに対してどのようにこれが貢献していくかというそこのところ、それを兼ね合わせた形で見直しを行うまでの間の措置、そういう表現をしておるのだろうと思うのです。  しかし、私もちまたのそれぞれの国民反応あるいは経済専門家等々エコノミストの反応を見ておりましても、その二つを同時に満たすということではなくて、それぞれが中途半端になって結果的には効果を打ち消すようなことになってしまうのではないか。よく言われるのは、所得八百万以下は実質増税になるじゃないか、増税ということじゃなくても、去年と比べてことしは上がるじゃないか、こういうことであります。  そういうことも含めて、政府案に対して、まずは蔵相の方から、その辺のターゲットのつかみ方が間違えていたのじゃないか、はっきりさせるところ、優先順位をぴしっと決めて経済対策をやるのであれば、その部分について集中をしていくという政策がなければこれは効果がないのじゃないかということに対して、どのようにお答えされるのか、まずお聞きをしたいと思います。
  11. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもとかなり似たような問題意識に立ってお尋ねをいただいておりますので、そういう立場からお答えを申し上げますが、基本的にこのたびの不況というのは極めて異例なものでございますから、小渕内閣としては、あらゆることに優先してこの不況の打破を図ろうという政策を組閣とともに決定をいたしました。具体的には、従来、財政改革路線というものを持っておりましたけれども、それは極めて大切なことではございますが、今二兎を追うことはできないという一種の踏み切りをいたしたわけでございます。  ここからがお尋ねの点でございますが、しかしながら、将来いずれかの時期に必ず財政税制、あるいは中央地方関連等々、抜本的な手直しをしなければならないことは明らかでございますから、今いろいろなことをいたします、これは大事なことですが、しかし、将来抜本的な改革をするときに決定的に邪魔になるような要因として残るものは採用するわけにはいかない、こういうふうに考えてまいりました。それが基本の考え方でございます。  例えば、前内閣におきましていろいろなやむを得ない事情から定額減税をいたしました結果、実際上の課税最低限標準世帯で四百九十一万円になって、その結果として七百万とか八百万とかいう納税者が新たにリタイアされるという事態になりました。ただでさえ我が国課税最低限は高過ぎると考えておる者からしますと、この四百九十一万円というのは将来にわたって維持してはならない高い課税最低限だと考えましたので、もちろんそのほかの理由もたくさんございますが、この方法は採用いたしませんで、あえて定率減税をいたしたわけでございます。  その結果としては、ただいま中川委員の御説のように、平成十年分の所得について所得税を払わなかった人が平成十一年分については再び払うようになるというたくさんの人が生まれたではないか、それは減税というポリシーからいえば、前年対比では逆になるではないかという御指摘は、それはそのとおりであります。  ただ、理屈を申すようですが、前年のは一遍限りの減税でございますから、それがなくなれば、当然、課税最低限は三百六十一万円になっているはずであって、法律的にはそのとおりでありますから、そこから減税というふうに考えるということは筋の上では間違っていないというような理屈はございますけれども、将来に向かって四百九十一万円という課税最低限は私はやはり日本の将来に恐らく非常に問題を残すと考えておりますので、そのようなことをいたしました。これが今御指摘の一番中心の問題であろうと思います。  それと、もう一つ申し上げたいと思いますのは、最高税率を下げたことに関しまして、これはいわば金持ち減税である、そういう高いブラケットの納税者はそうたくさんいるわけではございませんから、その人たち減税をしたところで景気の動向に大きな影響はないであろうという御批判もありました。  この点も、実は長い目で考えますと、この六五%という税率はどこから見ても高過ぎる税率でございますから、これを、この際、将来に向かって下げておきますことによって、将来、累進のカーブをかけますときに、余りむちゃなカーブはかけない、五〇というようなカーブはかけないわけでございますから、そういうことでも将来に向かって私自身としては考えてやったつもりでございます。  お答えといたしまして、そのようなことが将来の抜本的な改正、これはちなみに日本経済がまず成長の順調な軌道に入ったと判断される時期、私は二%ぐらいの成長率は欲しいと思いますが、そういう成長のサイクルに入ったと間違いなく判定できる時期になりましたら、財政税制も、中央地方関連も抜本的にやり直さなきゃならないという、ターゲットとしてはその辺の時点を考えているわけでございますけれども、そのときまでまだ残念ながら多少の時間がございます。この不況を脱却してやがてそこに到達をいたしたい、そのために、決定的に邪魔になるような施策は今とるべきではない。  ですから、おっしゃいますように、二兎を追うことはやめたのですけれども、将来の日本ということを忘れるわけにはいかないという点では、何でもかんでもありだというようなわけには必ずしもいかないというようなのが今の立場でございます。
  12. 中川正春

    中川(正)委員 役人としての理屈であればつじつまがそれで合うのでしょうけれども、実際、国民としては、これは結果的に去年より税金を払うんですよ、そういう話でありますから、では、そこで政治が介在するとすれば、その上に立って一番消費傾向の高いというか、金が要る、金が出ていく、支出をしなければならないそうした所得層あるいはそういう世代に対して政治トータル施策というのが出てきて、それでいわゆる政府の意思というのがそこで生きてくるんだというふうに思うんです。そういう観点に立って民主党案がつくられてきたんだ、私たちも一緒になって考えてきたわけでありますが、そういうふうに私自身は解釈をしております。  そういう意味に立って、政府案における所得減税内容と比較をした上での民主党案の基本的な考え方、あるいは、先ほど景気対策というものに立った上でのトータルな施策というのを説明していただきたいというふうに思います。
  13. 古川元久

    古川議員 お答え申し上げます。  私ども民主党は、今のこの不況の状況、やはりこれは小手先の場当たり的な対策ではなく、この日本社会のいろいろな制度、仕組みを構造的に変えていく必要がある、そういう構造改革を伴ったものでなければ、幾ら景気刺激策財政を刺激しようと、あるいは財政支出をしようと、あるいは減税をしようと、将来例えば増税になるとか、そういう不安があっては、やはりそうした効果は十分に景気対策としてもうまくいかないのではないか、そのように考えておりまして、そういった意味でも、昨年から、構造改革につながる景気対策経済対策というものを打つべきであるというふうに主張をさせていただいております。  そうした中で、この所得減税につきましても、先ほど大臣から、今回のは、将来的に決定的な障害になるようなものは省いたというふうにお話がございましたが、しかしながら、中身を見てみますと、先ほどから、課税最低限が高過ぎるのではないかというのに対して、また今度の改正でも扶養控除額を引き上げるということが行われておりまして、これではまた課税最低限が上がっていってしまう。そういった意味では、将来、この課税最低限の問題に手をつけるに当たって大変にいろいろと障害のハードルを高くしてしまっている、そういうこともあるのではないかと思っています。  ですから私どもは、そうした将来に対する本当に抜本的な財政改革へ向けての方向づけというものをここでしっかり国民に提示することが、将来に対する税制安心感、そしてみずからが負担する税負担というものに対してもいわば予想ができるということもありますから、そうした形で将来にきちんと、税制の形はどういう方向に進むのか、そうしたものを明らかにする必要があるだろう、まずそのような考え方に立ちまして私どもは私ども減税案というものをまとめさせていただいたわけであります。  ですから私どもは、個人所得課税あり方抜本的改革につながるように、最高税率の五〇%だけを引き下げるのではなく、一律に二割カット、税率引き下げるという形で行っております。  また、控除制度におきましても、本来は、これは私の提案理由説明でも申し上げましたが、控除制度というのは、結局は限界税率の高いところの、そういった意味では高額納税者高額所得者にとってむしろ恩恵が大きいということを考えますと、むしろそうした扶養控除というような部分社会保障政策として歳出の方で行うべきではないか、そのような考え方から、子供手当というような形でこちらの方も扶養控除を変えていくということで考えておるわけであります。  また、それと同時に、今分離定率課税となっております利子、配当、株式譲渡益等総合課税化あるいは納税者番号制度の導入、こういったものも三年という期限を区切ってそれまでに導入する、そのような形でこの日本税制全体をこういう方向に変えていくんですよ、そういう方向をしっかり指し示す、それが回り回って今の景気にもいい影響を与えるんじゃないか。  また、先ほどからの委員の御指摘にもありました、一部、今回の減税では昨年度よりも負担が重くなってしまうのではないか。その点に関しましても、私どもは、そこを税だけではなく、手当の方の拡充という形でこうした人たち負担が重くならないように、そういうことにも配慮をする。まさにそういった意味では、難しい中で、景気対策と抜本的な税制改革、そうした二本の方向を両立をさせるような方向をとらせていただいた、そのように御理解をいただきたいと思います。
  14. 中川正春

    中川(正)委員 少し具体的に確認をさせていただくと、例えばサラリーマン夫婦子二人の標準世帯給与年収五百万円の世帯の場合、今の政府案では九八年と比較して九万三千円の負担増、こういうことになるわけですけれども民主党案ではこれは上がるんですか下がるんですか、下がるとすれば幾ら下がるんですか。
  15. 古川元久

    古川議員 私ども民主党案では、これは約四万七千円、負担軽減するということになっております。
  16. 中川正春

    中川(正)委員 民主党案ではこれが下がるということですね。  それからもう一つ扶養控除見直しとそれから児童手当の拡充といいますか、これをセットで提案をされております。それで、ここはこれまでの税方式、特に家族を単位とした税から、個人を単位にした、今の時代に合わせていくような税方式に切りかえていこうといういわば大義というか、その方向性の中で今回の制度が工夫をされたんだというふうに思うんですが、ここのところをもう少し詳しく説明をしていただけませんでしょうか。
  17. 岡田克也

    ○岡田議員 私どもは、先ほど古川さんの方からも説明いたしましたが、児童手当の拡充と扶養控除見直しということを言っておるわけですが、これは少子・高齢化対策一つの切り札として、もちろん当面の景気対策もありますけれども、より中長期的な視点で提案をさせていただいております。  扶養控除児童手当の議論というのは、私は二つ切り口があると思います。一つは理念的問題であります。扶養控除を現在とっているその理由として、子供を育てるための最低限の生活費用というのは担税力がないわけで、そこに課税するのはおかしい、恐らくそういう税の世界での議論があってのことだと思いますが、実際に現在の扶養控除の額では子供一人育てることはできないわけでありまして、いわばこれは一つのフィクションだと思います。  理念的に言えば、やはり子供を育てるということが、これが個人の分野の話なのかあるいは社会的な問題なのかということに私はなると思います。個人であればそれは税額控除ということになじむ。しかし、社会的にやはり子供を育てるということを応援していかなければいけないということになれば、むしろ税ではなくて手当だ、そういうふうに思っております。  少子化社会というのは、私どもが抱える、日本が抱える非常に大きな問題でありまして、これに対して政策的に何とかしていこう、これは非常に大きなテーマだと思います。そういう意味で私は、社会全体として、つまり手当制度でやっていくというのが本筋だ、理念的にはそういうふうに考えております。  それからもう一つは実際的な理由でありまして、税でやった場合には、先ほど来御指摘ありますように、所得の多寡に応じてその控除の額が変わる、減税の額が変わるということになります。手当ですと、そういった所得にかかわらず、もちろん上限などを設けることはありますけれども、基本的には同じ額ということになるわけであります。そこで私どもは、これはやはり、所得の多い人がより控除される、減税されるという考え方はなじまないだろう、そういうふうに考えているところでございます。  念のために申し上げますと、政府案民主党の案を比較したときに、年収が二百万の三人子供がいる世帯ということを念頭に置いてみますと、政府案では減税額はゼロであります、つまり所得税を納めておりませんから。私どもですと年間四十八万であります。七百万ですと、政府案では十五万、我々の案ですと四十八万。一千二百万で所得の上限を入れておりますので、例えば三千万の世帯を考えますと、政府案ですと五十九万の減税になりますが、私どもでは手当はゼロ、こういうことでございます。私どもは、私どもの考えた案の方がすぐれている、そういうふうに確信を持っているところでございます。
  18. 中川正春

    中川(正)委員 児童手当については、最近方々から、いわゆる民主党だけじゃなくてほかの党からも、これを創設すべきだという案、あるいはその幅を広げるべきだというような議論が出てきました。私は、これは元祖は民主党だというふうに思っておりまして、そういう意味では、みんながそういう流れになってきたというのは非常にいいことだというふうに思っています。  その上で、今の民主党案の他党との違いといいますか、それぞれこれから話し合いをしていく中でどのような特徴を持っているかということ、これを説明していただきたいというふうに思います。
  19. 岡田克也

    ○岡田議員 実は、公明党さんが非常に似た提案をされておられます。どちらが先かというようなけちな議論は私はしない方がいいと思いますが、たしか十一月の景気対策のときにそういうことを申し上げたわけであります。もとはといえば旧新進党時代に、ともに勉強しながらそういう方向がいいのではないかということで、私も年金や医療問題中心に責任者をさせていただいておりましたが、そういう議論の中で出てきた話だというふうに承知をしております。  公明党さんと私どもの違いというのはさほどございません。あえて言えば、私どもは三歳から十八歳だけではなくて、十八歳以上二十三歳未満についても手当がもらえるという仕組みを入れているというところが違うところかなというふうに考えておりまして、基本的な考え方あるいは骨格、そういうものについては私は同一であるというふうに考えております。
  20. 中川正春

    中川(正)委員 さらなる論議は同僚の山本議員が後引き受けてやっていただくというふうに心得ておりますので、この所得税に関しては、私からは以上にさせていただきたいというふうに思います。  それで、さらに気になるといいますか、最近の長期金利の上昇、これについてちょっと二、三ただしておきたいことがありますので、それに時間を割かせていただきたいというふうに思います。  一時上がって、きのう、きょうまた少し下がったりしておるようでありますが、この経過の中で、一番最初その引き金を引いたのは、これは、国債が今度の予算の中でしっかりあふれてきますよ、飽和状態になってきますよという、その底辺があるわけでありますが、直接的に国債の価格の下落のきっかけをつくったのは、去年の暮れ、大蔵省の資金運用部が既発国債の一月からの買い入れを停止する、こういう決定をしたことが直接の金利上昇の引き金になったわけであります。  それを発表したその理由というのが、景気対策に伴う財政投融資の拡大地方自治体への貸し付け増が国債の買い入れを停止していくという理由になっておったわけでありますね。この条件というのはまだ全然変わっていないということだと思うんです。ところが、ついこの間になりまして、もう一回これをもとに戻して、やはり買うんだ、二月、三月、二千億ぐらい買い増していくという発表がありました。  私は、この資金運用部のこうした非常に不透明な、そしてその根拠をあいまいにしたままで買うとか買わないとかというような話、これが今の金融市場の心理をかき乱している。それと同時に、この政策に対する不信というのが募っておるわけであります。  この際お聞きをしたいのは、お聞きをしたいというよりも、はっきりさせていく必要があるだろうと思うんですが、資金運用部が買い付けをやらないと言ったときの具体的な根拠、どういう根拠に基づいて、財投を見て金を使わなければならないからとか、あるいは地方自治体への配慮だとかというような、ただ単にそういう話じゃなくて、具体的な根拠は何だったのか、それをまずお聞きしたいというふうに思います。
  21. 中川雅治

    中川(雅)政府委員 昨年十二月に資金運用部による国債の市中買い入れを停止することといたしたわけでございますが、これは、今先生御指摘になられましたように、一つは昨年四月の総合経済対策及び昨年十一月の緊急経済対策の実施のための財政投融資の追加、これがかなりの額になったわけでございます。  具体的に申し上げますと、平成十年度の一次補正予算、三次補正予算の合計で、九兆八千三百四億円の資金運用部資金に対する追加需要が生じたわけでございます。同様に、資金運用部資金による国債引き受けも、合計で三兆二千億円の追加が行われました。また、十年度におきましては、地方財政対策のため交付税特別会計への短期貸し付けも、年度途中におきまして二兆九百五十六億円増加させたわけでございます。したがいまして、十年度の追加額の総計は十五兆千二百六十億円となっております。また、十一年度予算における交付税特別会計への短期貸し付けの増加額は、八兆四千百九十三億円というようになっているところでございます。  一方、原資の動向を見ますと、郵便貯金につきましては、九年度に大幅な預託純増となったわけでございますが、十年度はそれほど大きな伸びとなっておりませんで、一月末時点で預託純増額を比較いたしますと、九年度は十三兆三千七百二十億円となっているのに対しまして、十年度は十一兆六千六百二十億円ということでございます。厚生年金、国民年金の預託純増額につきましても、九年度の実績は七兆六千九百六十六億円でございましたが、十年度は減少する見込みでございまして、さらに十一年度の計画額では四兆三千百億円というようになっております。  以上に加えまして、平成十二年、十三年の両年度におきましては、いわゆる平成二年、三年に預入されました定額郵便貯金の集中満期問題というのがございまして、郵便貯金の大幅な純減が予想されているわけでございます。ただし、その程度につきましては、その時々の金利情勢等により左右されるものでございますので、確たることは申し上げられないわけでございますが、いずれにいたしましても資金運用部の資金繰りというのが、特に十二年度を考えますと相当厳しくなっていくということから、できるだけ流動性を確保しておきたいという判断で、昨年の十二月に国債の市中買い入れを停止したわけでございます。  しかし一方、資金運用部といたしましては、日々の資金運用を確実かつ有利にしていかなければならないということもこれまた務めでございますので、そういう意味では、最近の市場の状況あるいは資金運用の必要性等を考えまして、確実かつ有利な運用をするという観点から、二月、三月、国債の市中からの購入をいたすということにしたわけでございます。
  22. 中川正春

    中川(正)委員 ということは、これは、きのうの宮澤蔵相の発言では、二月、三月に各二千億ずつ買っていく、こういうことなんですが、さっきの説明を聞いておると、もうこれ以上はつき合うことはできないなというふうな前提の中でとりあえず二月、三月、こういうことなんですか。それとも、これから資金運用部というのは、日銀の資金をどう使うかという、もう一つ別な議論も踏まえていきながら考えていくと、どうしても資金運用部の資金というのを有効に使わなければいけないということを、やはりマーケットにもはっきり腹を据えて示していくというのか。それはどちらなんですか。
  23. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の立場は、片っ方で国債の発行者でございますが、他方で資金運用部資金の運営を適正に行うという、そういう意味では買う立場もあるわけでございますが、今局長が申し上げましたように、こういう補正予算を組み、あるいは大きな予算を組みましたので、資金運用部に対する資金需要が、財投ばかりでなく、地方財政が非常に悪いというようなことで短期に貸し付けるというようなことから、非常に苦しくなっておりますことは事実であります。  他方で、これも局長が申し上げましたが、いわゆる定額貯金、郵便貯金が平成十二年に満期になることからくる、どれぐらいの放出、償還があるだろうか。これはもう予測しかしようがないことでございますが、数十兆とか百兆とかいうことが今言われているあの数字でございます。  いずれにしても資金運用部に対する原資の提供というものはどうしても減ると考えるべきだろうということは常識的に考えられるわけですが、需要と供給と両方の面から資金運用部の運用が苦しくなるということで、昨年の暮れに、毎月二千億ずつ買っておりましたが、これをやめようということを事務当局としては一応決心をして、私もそれは一つ考え方だなということは申しました。  それはそういうことでありましたが、どうも市場がややこれに過剰反応したかなという感じが私はしておりまして、その後、様子を見ておりました。確かに、国債の発行量は多くなるわけでございますから。  しかしながら、私の発行者の立場から申しますと、シンジケート団に買ってもらう、その話はうまくまいりますけれども、発行条件というものはどうしてもやはり市中に影響されます。ですから、発行者としての私は、そこのところは、やはり発行量が多いだけのことをいろいろに考えなければならない。  バラエティーをつけることもよろしゅうございましょうし、いろいろな方法があると思いますが、少なくともこの暮れから起こりました長期金利の水準というものは、もとより、昨年の夏ごろ、九月ごろのような〇・六であったりすることは大変に異常な低い金利だとは思います。思いますから、二%そのものがとてつもない高い金利だということは国際的に言えないとは思いますけれども、いかにも反応が少し激しゅうございましたから、そういうことも考えまして、このところは市場がモデレートに生まれることの方が望ましいということと、かたがた、運用部の方にも、そういう状況であれば、将来の、平成十二年の原資というようなことには必ずしも一元的にこれというはっきり予測のつく数字でもございませんから、何らかの弾力性はないわけではない。こういうことから、このたびのような決心をいたしました。  それは、一つは国債のバラエティーを、十年物を二年物あるいは六年物に少し割愛したということ、あるいは二月、三月で二千億ずつの買い入れをしようといったようなことでございます。この程度のことであればできないわけではないということで決心をいたしました。  そこで、お尋ねは、これはいつまでやるのかということでございますけれども、私としては、やはり基本的にマーケットが余り過剰に大きく反応するということはいずれにしても好ましくないことであるということを思っておりまして、今としては、今回の措置で一応激しい動きは収拾するのではないかと考えております。  したがいまして、新年度になってどうするというようなことについては、ただいま、いずれとも申し上げる状況ではないと思っておりまして、市場の様子を見させていただきたいと考えております。
  24. 中川正春

    中川(正)委員 金融界の反応は刻々出ていますけれども、非常に冷ややかなものでありまして、いずれにしても、ベースが飽和状態というか、国債の増発というのは避けられない、それがもう目に見えているということであるだけに、完全にここの部分で手詰まりに来たということと、いわゆるケインジアン的なこの方式が続かないんだという、一つのシグナルでもあるんだろうというふうに思うんですね。だから、予算の構造を変えるということ、そこへ向いてどこまでメスが入るかということを恐らく市場もじっと今見ているんだろうというふうに私自身は解釈をしております。  その上に立ってもう一つ気がかりなことがあるわけでありますが、それは、金融再生委員会の方が七兆四千五百億資本注入をしていくということをほぼ決めてまいりました。これもまた一つの、ファイナンスの仕方によっては増発要因になってくるわけでありますが、このファイナンスをどうするのかということですね。お聞かせをいただきたいというふうに思うんです。
  25. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘の公的資金注入の問題でございますけれども預金保険機構金融再生委員会の認可を受けて調達を行うというふうに早期健全化法ではなっております。その調達の方法についてでございますけれども日本銀行、金融機関その他の民間からの資金の借り入れ、あるいは預金保険機構債券の発行をすることができることということになっておりまして、規定上幅広い調達方法が認められております。
  26. 中川正春

    中川(正)委員 認められていることはわかっているんですよ。どういうふうにするのかと聞いているんです。
  27. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 どのような調達方法が一番適切であるかという点については、これから実務的な検討を行うこととしております。
  28. 中川正春

    中川(正)委員 これについても、どっちにしたって大きく影響が出てくる中身なんですね、日銀借り入れにしたって、あるいは預金保険機構政府保証債を発行するにしても。やはり保証債を発行したら、またこれは同じように長期金利に響いてくる。あるいは日銀借り入れをやったら、日銀の中がどうなるのか、バランスシートがどうなるのかという話になってくる。  そういうことを前提にしながら、ちゃんとしたアカウンタビリティーというか、説明ができるような体制の中でこれをさばいていかなきゃいけないという議論なんですね。だから、これはいわゆるオープンで、それぞれに理解をしながらやはり決めていくということが、今の市場の状況から見ていると大前提だというふうに思うんですね。  もう一度答えてください。
  29. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘の点も踏まえ、今後実務的な検討を行ってまいりますが、いずれにいたしましても、預保機構が資金調達を行った際の金融市場に及ぼす摩擦的な影響ということだと思うんですけれども、これにつきましては、日本銀行の金融調節により、適切な対応が図られるものと認識しております。
  30. 中川正春

    中川(正)委員 ここで押し問答しても仕方ないんでしょうが、では、期日だけ確定しておいてください。いつ、どのような形で決めるんですか。
  31. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 今回の公的資金注入は、大手行につきまして、この三月期に不良債権の処理を終えるということを一番大きな目的にしておりますので、三月末までには払い込みを終えるというふうに考えております。     〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
  32. 中川正春

    中川(正)委員 三月末という期限があるだけに、これはどっちにしても非常に大きな影響になってくると思うんですね。そこのところ、これはもう一度大臣、どのようにお考えですか。
  33. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 お尋ねの前段でちょっと申し上げておきたいことがあったのは、ケインジアン云々と言われた部分でございます。  基本的に、今政府がこれだけの赤字財政をやっておりますのは、冒頭に中川委員が仰せられましたように、消費もだめ、設備投資もだめという、その設備投資もだめの部分と当然のことながら関係がございまして、民間の資金需要がない、それは設備投資意欲がないということと関係がございますので、いわゆる民間の資金需要と政府の金融調達とがクラウドアウトするという状況にないというのが私どもの基本的な判断でございます。  したがって、政府が国債を、六十兆ですか、七十兆ですか出すということは、それが幸か不幸かクラウドアウトしないと申し上げていいんだと思いますが、という状況において行われておりますので、したがって、それから長期金利がどんどん上がり続けるというような状況にはない、これも幸か不幸かと申し上げますが。しかし、もし民間の資金需要が出れば、政府はそんなに大量の国債を発行して経済を刺激しなくてもいいはずでございますから、理屈からいえば。そういうことがございますので、したがいまして、今長期金利がどんどん上がっていくという状況にはないというふうに基本的には考えております。  それで、今預金保険機構のお話でございますが、これから七兆数千億でございますか、今お話のありますことが確かに公的資金の導入になっていくわけですが、今預金保険機構や再生委員会の方からお話がございましたように、それをどうやって預金保険機構が調達するかということは、銀行もあり、民間もありということだと思います。民間も相当応募があるかもしれません。ただ、日本銀行としても、銀行のバランスシートが余りに悪くなるということには当然懸念を持っておられますから、そういうこともまたいろいろ考えられておやりになるであろうと思います。
  34. 中川正春

    中川(正)委員 その議論の延長線上に日銀の状況というのがあります。実は私、非常にこれは懸念をしておりまして、きょうの新聞も、整理回収銀行へ出資をした四百億円というのが八割強焦げついて、日銀も出資した分はこれで焦げついてしまいましたよ、こういう話がたまたま出ているんですけれども、こういうことも前提にしまして最近の日銀のバランスシートが非常に膨れてきている、こういうことですね。  それを、ちょっと時間的な関係もあって、一つ一つどのように考えておられるかというのをお聞きしたかったんですが、まとめて全部聞きますから、今どのようなスタンスでこれを見ていられるかというのを説明していただきたいと思うんです。  これは比較なんですが、拓銀、長銀あるいは日債銀が破綻をして、それを取り込んでくる過程とその前との数字の比較であります。トータルでいきまして、九七年九月、これはそれぞれの銀行の破綻前でありますが、これが五十六兆五千億、トータルの資産ですね、額がこれぐらいです。これが九八年十二月になると九十一兆二千億、これだけ膨れてきております。  その中で、まずそれぞれ御説明いただきたいのは、預金保険機構あての貸付金、それと日銀特融が八兆八千億円の増加をしています。それから、買い入れ手形、手形オペが八兆九千億円の増加であります。それから、国債残高自体も十一兆四千億円増加ということであります。だから、トータルで総資産が三十四兆七千億円の増加になって、率でいくと六一%膨れ上がってきている、こういうことであります。  この間、政策委員会で、日銀が新規の国債の買い取りをやれという圧力に対して、やりませんよという結論を出していただいたというのは、これは私は正しいことだというふうに思うんですけれども、そういう圧力が片方にありながら、実質は、特に国債なんかの膨れぐあいを見ていると、日銀自体がこれを引き受けているという流れがここに出ていると思うんですね。  さらに、この三月末のそれぞれ預金保険機構の決算を迎えて、こちらが貸し付けている資金の清算ということも一つは前提にあるでしょうし、それから預金保険機構が、もう一つは保険料率を決めていく、その基準になるものが、どこまで政府資金が当てにできるかということによって、それぞれ民間銀行が保険料として調達をしていく金額を確定していく基礎になっていくんだろうというふうに思うんですね。それだけに、私は日銀のスタンスというのが非常に大切なことになってきているんだろうというふうに思うんですが、その辺も含めてどのようにお考えか、聞かせていただきたいというふうに思います。     〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
  35. 藤原作彌

    藤原参考人 お答えいたします。  先生ただいま九七年九月末のバランスシートを起点にしてお話をなさいましたので、九七年九月末から現在にかけてどういうふうにバランスシートが変化してきたかという概要を簡単にまず御説明申し上げます。  九七年九月末から本年一月末にかけまして、バランスシートは約五十六兆五千億円から七十九兆七千億円と拡大しております。これは、基本的には、デフレ的な状況を回避するために潤沢な資金供給を継続してきたという政策努力の結果だと思います。決して、処分にコストのかかる不良資産がふえているという増大ではございません。  この間のバランスシートの変化をちょっと資産項目別に見てみますと、まず、CPオペを含む買い入れ手形の増加が挙げられます。CPオペ残高は本年一月末で約七兆一千億円となっておりますが、これは、企業金融の円滑化に資することをねらいとしまして積極的に活用してきた結果でございます。このCPオペの実行に当たりましては、信用力などの点から適格と認められるものだけを金融機関との現先方式によって買い入れることにしておりますので、企業サイドとそれから金融機関のサイドの二重の信用チェックによりまして安全性を補強しているところでございます。  一方、国債につきましては、買い切りオペは、御承知のとおり長い目で見て銀行券の増加に見合った金額に対応させるということで実施してきております。今回の政策決定会合におきましてもそういうことで対応しております。こうしたことなどから、国債の残高は、九七年十月から本年一月末までの間に約四十五兆六千億円から四十七兆三千億円と二兆円弱増加しております。  また、九七年十一月に開始したレポオペ、これは国債貸借を通じた資金供給の手段でございますけれども、レポオペは、バランスシートの上では実はこれについては会計上二重計上されておりまして、残高は四兆一千億円でありますけれども、これは現金を担保に国債を貸借するというメカニズムでございますので、保管国債とそれから国債借入担保金の金額が二重に計上されておるわけです。ですから、実態を見ますにはその辺を差し引いて勘案するのが至当かと存じます。  それで、今月十二日の政策委員会政策決定会合におきましては、買い切りオペはこれまで同様の頻度と金額で実施していくということと、それから、レポオペにつきましては従来以上に積極的に活用していくという方針が決定されたところでございます。  また、御指摘預金保険機構向けの貸し付けや特融といった信用秩序維持を目的とする貸し出しに対しましては、預金保険機構向け貸付残高が九七年九月末の約三千億円から本年一月末の約七兆一千億円と、その間約六兆八千億円の増加となっております。一方、いわゆる特融残高は、同じ期間の間に四千億円から六千億円へと増大しております。  これは、つまり預保向け貸し付け及び特融は、金融システム全体の安定維持にとって不可欠ないわゆるシステミックリスクの防止という観点から実施しているものでありますが、こういった信用供与を行う場合には、同時に日本銀行自身財政の健全性にも十分に配慮してやっているつもりでございます。  預金保険機構向け貸し付けや特融につきましては、今後とも、必要最小限の金額及び期間にわたってこれを行っていく方針でございます。  また、先ほど触れられました預金保険機構の資金調達につきましては、政府保証債の発行といった調達手段の多様化を含めまして、さらに民間からの資金調達の一層の拡充が図られるということを私どもとしましては強く期待しているところであります。  日本銀行といたしましては、今の日本経済が抱える問題の克服に向けまして今後とも中央銀行機能の適切な発揮を図っていく方針ですが、その際も、日銀のバランスシートもある程度は影響を受けかねない面もありますけれども、大事なことは中央銀行としての財務の健全性が全体としてしっかり維持されているということだと思いますので、そういう趣旨に従いまして、我が国の内外の信認を確保していく上で、今後とも十分細心の注意を払って運営していく方針でございます。
  36. 中川正春

    中川(正)委員 最後に一点だけなんですが、先ほど出ていました預金保険機構とそれから特融ですね、これは日銀として全体のバランスの中からいったらこれぐらいが限度ですよ、それはやはり公にはっきりしておく必要があるだろうというふうに思うんですね。その基準を決めた上でそれぞれの相手が判断をしていくということがあるんだろうというふうに思うんですが、それについてはどうですか。
  37. 藤原作彌

    藤原参考人 どのくらいが預保向けの資金及び特融の資金が限度かという問題につきましては、特に数量的に幾ら幾らまでといったことは現時点では言えないかと存じます。  もちろん、バランスシートの大枠がありますので、その中でどの程度のウエートを占めるかということは我々の非常に重大な関心事ではありますけれども、まず、日本経済の現状にとって必要なお金は十二分に安全性を検討した上で供給すべき面は供給する、しかしそれにはやはり日本銀行の健全性を一方で考えながら供給していくということでありまして、これから出ていくお金が幾らかはにわかに想定はできませんけれども、ケース・バイ・ケースで慎重に検討していくということかと思います。
  38. 中川正春

    中川(正)委員 もう一つ私にとっては釈然としない話でありますが、ぜひそこのところは、対外的にも日銀の動向というのが非常に微妙なものになってきているときでありますから、ぜひはっきりさせていただきたい。それで、限度はここまでですよと言うことによって、逆に、その対象になる金融機関、特に預金保険機構それから民間銀行が腹をくくれる、こういうことでありますので、希望として申し上げておきたいというふうに思います。  最終的には、長期金利、これはただの国内の話だけじゃなくて、もう一つは、やはり円のレベルがどうなってくるかということにも密接に結びついてきている、それが一つの循環として経済の動向を今上から抑えつけ始めてきている、ここに危機感を持たなきゃいけないんだろうというふうに私は思うんです。その視点からいくと、今手詰まりになったこの状況に対して、やはりしっかりとしたビジョンというか、こうした戦略で行きますよという、小手先じゃなくて基本的なビジョンをやはり示してもらう必要があるんだろう。そこがないから皆今不安になっておるということであります。  そこを指摘をさせていただきまして、私の質問を終わります。
  39. 村井仁

    村井委員長 次に、山本孝史君。
  40. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 民主党の山本孝史でございます。  宮澤大臣には毎日御苦労さまでございます。きょうもよろしくお願いを申し上げます。  多少質問の順番が変わっておりまして申しわけございませんけれども、きょうは、我が党民主党提出をいたしました法案児童手当の抜本的な拡充によって子供手当を創設するということが日本の将来にとって大変いいのではないかという点について、御質問をさせていただきたいと思います。  我が党の法案あるいは我が党の主張については、本会議あるいは他の委員会等を通じてたびたび主張を申し上げ、大蔵大臣からはお考えをお示しいただいております。こういう理由でだめだということを幾つかいただいております。  その点はまた後で話をさせていただくとして、扶養控除の持っている逆進性の問題ですね。先ほども我が党の岡田議員からも指摘をさせていただきましたけれども、まずは、扶養控除でやる限りにおいては、課税最低限以下の人には全く機能しないという点が一つある。もう一つ高額所得者には恩恵が多いけれども、低所得の方には余り恩恵が行かないという点で、扶養控除でもって何らかのことをやっていこうというのはなかなか難しいのではないかということが一番の論点になっているのではないかと思いますが、この点について、まず大蔵大臣の御認識をもう一度お聞かせいただきたいと思います。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席〕
  41. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 だんだん御所論を進めていかれるんだと思いますが、扶養控除というのは税の制度としてございますので、税という観点から申しますと、やはり基礎控除を初めいろいろな控除が、これはかなり何十年の間にだんだん変化いたしましたが、生まれてまいりました。  基本的にはやはり、殊に累進課税はそうでございますけれども、直接税に対して負担能力、応能負担というような物の考え方が当然ございますから、それによって税の公平性が保たれる、そういう意味。あるいはもちろん、一般的に所得を上げるためのコスト、生活のためのいろいろなコストといったようなこともございますし、基礎控除というようなものは基本的にそういうことだろうと思いますが、そういう意味で、税の観点からいって負担能力、応能負担を公平につくり上げるための考え方一つは、やはり私は扶養控除というものだろうと思います。  どういうことがいいか、それはいろいろ態様がございましょうけれども、少なくとも子供を持っているというようなことはそれだけ生活のコストがかかるわけでありますし、よほど富裕世帯は別ですが、子供の数が多ければそれだけ生活費がかかるのは当然のことでありますが、そういうことはやはり税の応能負担立場からいえば考えるべきだろうというのが、とりわけ扶養控除というものの持っている意味であろうと思います。  それは、もともと基礎でもって所得から何かを控除してしまうということは、それ自身は確かに累進的ではありません。逆進的でございますでしょう。しかしながら、ある程度みんなを能力でそろえるという意味で、やはり何かの控除は必要ではないかというふうに考えるのではないかと思います。  他方で、それならそれは、殊に児童の場合には、税制一環としてではなくて、むしろ歳出として考えるべきではないかというふうに思っている国もございます。アメリカには児童手当というようなものがたしかないと思いますが、今度はイギリスには扶養控除のようなものがない。日本はミックスになっておると思いますけれども。  ですから、扶養控除というものをやめて、そのかわりに児童手当支給することの方が、少なくとも扶養控除の持っている非累進性、逆進性というものはそれで問題が解決できる、それは確かにきっとそうだろうと思います。  同時にしかし、これはどういうふうに申し上げますか、正確に言えませんが、人によって、国から金銭をもらうよりは、児童の養育、扶養のための施設なりなんなりを給付された方が自分としては好ましいと仮に思われる人々にとりましては、それでしたら、別にそういう給付や金銭的な手当よりは、むしろ扶養控除扶養控除であって国の施策をしてもらった方がいいと考える人もありましょうし、その辺は個人差もあるし、あるいは国によって、経済の発展段階によって違うかもしれないと思いますので、その両方の代替性ということについてはいろいろ問題があるのではないか、十分勉強したわけではありませんけれども、そういうことをいろいろ考えたりもいたします。  他方で、冒頭に申しましたように、税は税の立場としての負担能力、応能負担といったようなものから、控除というものはやはり入り用だ、こういうふうに今まで考えてまいっておるわけであります。
  42. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 民主党としての考え方を岡田先生の方から後でまた言っていただきたいと思うんですけれども、今、私は、一番最後のところで、もう一遍主張しないといけないなと思ったんです。大蔵大臣の頭の中に給付というものに対しての非常に恩恵的なお考えがあって、見えない形でもらっているのはいいけれども、給付という形でもらうのはいかぬというのは、これは社会保障というものに対してネガティブなイメージをお持ちなんじゃないか。私、多分そうじゃないんだと思うんですけれども、そういう言い方に思うんですね。  諸外国においても控除制度もあれば手当でやっている部分もある、それは大臣指摘のとおりです。でも、扶養控除社会保障としての児童手当あり方は調整をしていこうという形がどの国を見ても今やっていることであって、首を振っておられるのは勝手に振っておられるだけだけれども、ここは各国ともにもっとちゃんとした研究を私はしていただきたいと思いますね。  今おっしゃっておられる、担税力をきちっと保たせるためにまず控除制度がありだという形のこの人的控除というものに関しての考え方は少し違うんじゃないか、もう少し考えていただきたいというふうに私は思っているんですが、岡田先生、今の大蔵大臣の御答弁をお聞きになっていて、私はちょっと違うと思うんですが、お考えはどうでしょうか。
  43. 岡田克也

    ○岡田議員 子供を育てる最低限の費用について、これに課税をするわけにはいかぬ、こういう考え方は税の世界だけを見たときにはあるいはあるのかなという気はします。  しかし、問題は、子供を育てる費用をどういう形で見るのが理念的にも実際的にもいいのか、そういう判断の問題だと思います。そういう観点で申しますと、先ほど少し中川議員のときに御説明いたしましたように、私は、手当制度の方が理念的にも実際的にもすぐれている、そういうふうに考えております。  なお、諸外国いろいろありますが、フランス、イギリスは手当制度、ドイツは控除と手当の選択制、アメリカは控除、こういうことでございますが、議員指摘のように、日本では三歳までは手当もありますので、手当と控除が併給のような形になっておりまして、私は、議論がきちんと整理されていない、そういうふうに思っております。
  44. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 今回いろいろ資料を読ませていただいて、大臣、実はこの児童手当扶養控除あり方というのはかなり古くて新しい問題だということに私も気がつきました。  まず新しい方で申し上げれば、社会保障制度審議会が平成七年に出しました「社会保障体制の再構築」という勧告がございます。この中で、児童手当について次のように触れておりまして、  我が国児童手当制度は、制度自体やその具体的仕組みについてしばしば見直しが求められるなど、いまだ必ずしも十分我が国に定着しているとはいい難い。今後育児環境の整備一環として児童手当制度の充実を図っていく必要があるが、その際児童手当税制児童扶養控除や企業による家族手当との調整に考慮が払われなければならない。 ということを言っていまして、ここは調整方が必要じゃないかということは、実は社会保障制度審議会が平成七年に言っている。  古い問題だというふうに申し上げたのは、昭和五十三年秋に設置されました児童手当制度基本問題研究会というのがあります。昭和五十五年にそこが報告を出しましたけれども児童手当はどういう形がいいのかということの報告を出した中で、二つの方策を言われた。  一つは、扶養控除をそのままにして、児童手当を低所得者に対してのみ第一子から支給する一種の救貧施策とする方法がいい。今、この形になってきたわけですね。もう一つの方法は、扶養控除にかえて第一子から児童手当を直接支給する方法をとったらどうかという二つの案を示されて、この問題の専門家の研究会は、後の方、扶養控除にかえて第一子から児童手当を直接支給する方法の方がいいんだという話を実は出したんです。  それに対して、その五十五年の秋、十一月に開かれました政府税制調査会の答申では、  扶養控除は基礎的非課税部分を構成する主要な要素であって、この部分だけを抜き出して児童手当という全く性格の異なる制度で置き換えるという考え方は、所得税全体の体系を無視した議論であり、とり得ない という話をしたわけです。だから、税制の世界では扶養控除に手をつけるなどということはだめだという話で、ずっとけ飛ばされ続けてきている。その延長線上でずっと大蔵大臣もこういう御答弁をされておられる。本当にそれがいいのかという話を今回はもう一遍考え直すべきなんだ。  いや、世界各国によっては児童手当でやっているところもあれば控除でやっているところもあるとおっしゃいますが、ドイツにしろイタリアにしろ、西欧の諸国においては、やはり扶養控除制度の持っている逆進性というものを考えるならば、ここは児童手当との間に一定の統合をとっていかざるを得ないということでいろいろ考えて、調整し始めているわけですね。  それはここで、フランスはこうやっています、あるいはドイツはこうやっていますというふうに御答弁をされたとおりで、そういう意味社会保障制度審議会も、やはりずっとここ二十年間問題になってきている児童手当の問題について、一番最後に出てきた児童手当という、残念ながら未熟児で生まれてきて、小さく産んで大きく育てようということでもちっとも大きくならない、そのままにほったらかしにされているこの児童手当制度をきっちりと、税制の問題と絡める中で考え直そうと言っているわけですね。  今回我々が提出している法案は、もう一遍ここを考えようということで出しているわけで、これは結論めいた話になりますが、そこを真摯に御検討を、まあ公明党さんも同じような案でお出しになっているわけで、大蔵大臣としても検討するに値するような御答弁をこの間来されておられますけれども、ここは余り税制の議論に引っ張られて、もともとその議論にまで乗れないというか、議論にも入れないという状況は私はいかがなものかというふうに思うんですけれども、いかがでございますか。
  45. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは私は余り先入観を持っておりません。そういうことを現にやっている国はたくさんあるし、国会でもだんだんそういう御議論になっていますし、そういう御議論があって、これから恐らく時間とともにどういうふうにすべきかという御議論が国会全体あるいは国内全体、各界に広がっていく問題であろう、そういう問題として私は考えております。決してこれはクローズドクエスチョンだというような頭でおるわけではございません。
  46. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 ここはやはり理念にしっかり基づいた制度をつくるという意味においても、まあ議論の入り口にも入らないというわけではありませんということなんでしょうけれども、検討するというふうにおっしゃっておられますので、しっかりとした検討をしていただかないといけないというふうに思っています。そういう意味でも古くて新しい問題ですというふうに申し上げているわけです。  ただ、検討していただく上において、児童手当というのが一体どういう制度なのかということをもう一遍ここはおさらいをしておきませんと、後々制度をつくっていただく上でも考え方がずれてしまうといけませんので、児童家庭局長も来ていただきました。済みません。きょうは予算の分科会があって、あちらこちら引っ張られておられるかもしれませんが。  先ほど来申し上げました、残念ながら未熟児で生まれてしまった児童手当ですけれども局長、まず厚生省としての御見解をお示しいただきたいと思います。この児童手当は何を目的としている制度ですか。
  47. 横田吉男

    ○横田政府委員 児童手当制度社会保障制度我が国の最後の制度といたしまして四十七年に創設されまして、その目的といたしましては、児童を有する家庭生活の安定と児童の健全育成を図るということに置かれております。
  48. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 今局長おっしゃったのは、児童手当法の第一条に目的として書いてあることをそのままおっしゃったわけですね。家庭生活の安定に寄与するとともに、児童の健全な育成及び資質の向上に資するという目的を考えれば、児童の健全育成、資質の向上を目指すと書いてあるのですが、そういう制度なのか、あるいは子供のいる低所得世帯が貧乏になる、貧窮するのを防ぐという制度なのか、これはどっちなんでしょう。
  49. 横田吉男

    ○横田政府委員 児童手当制度のねらいそのものとしては、児童を普遍的な対象といたしまして健全育成を図っていくということでございまして、当初、支給対象も三子以降ということでございましたのを、二子まで、さらに一子までというふうに対象範囲を拡大してきているということであります。  その一方において、財源の効率的な活用を図るという観点から、所得制限なり、年齢につきまして、当初は義務教育終了前でございましたのが、現在のように三歳までというふうに縮めてこざるを得なかったということでございます。
  50. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 そうしますと、ここは法技術上の問題としてこう書いてあるだけだとおっしゃっているのですが、第三条のところでは、児童とは十八歳に達するまでの子供をいうというふうに、児童の定義がきっちりしているわけですね。そうすると、冒頭おっしゃったように、子供たちの健全育成を目指すための制度としてこの制度はつくったんだ、だが、残念なことにお金の部分で限りがあるので、第一子、第二子と支給の範囲を広げると、支給の期間を短くする。要は、掛け数としては出てくるお金は一緒なんだからどっちかで調整をせざるを得なかったので、そういう形でこの制度は動いてきたという厚生省の弁解ですか。
  51. 横田吉男

    ○横田政府委員 対象範囲をできるだけ第一子から広く支給したいということで、そちらの方を優先してきた結果であるというふうに考えております。
  52. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 対象範囲をできるだけ広げたいということで第一子からにしてきたということですけれども、残念ながら所得制限がかかっていますね。  したがって、これはけさほど急いでつくっていただいたので、申しわけなかったのですが、本来、児童手当としては、児童の健全育成に資するためと思っているので、年齢対象としては十八歳あるいは十六歳程度のところまでを考えている。その人たち児童手当がどれだけの恩恵を与えているかという話になるんですが、いろいろなデータのとり方があるので、多少分母を小さくすると考えれば、制度発足当時、義務教育終了までの子供たち対象にして第三子以降出していたわけですね。  義務教育終了までの子供たちを分母に置いて、実際に児童手当を受けている子供の数を分子に置いたとき、すなわち対象児童として、制度発足当初の理念に基づいて対象児童を分母に、分子が幾らかという話を考えると、制度発足の昭和四十九年のときの支給割合は一〇%ですね。義務教育終了前児童の二千七百六十六万人のうち、児童手当支給対象児童は二百七十六万人で、ちょうど一〇%の子供たち児童手当恩恵を受けていた。その後制度が二子、一子と広がる、あるいは期間が短くなっちゃうわけですけれども、いずれにしても、その後も一六%、一二%、一一%、今一一%ですから、今の制度においても、一子からもらえるようになったけれども、やはり義務教育終了前児童の約一割しかこの児童手当恩恵は受けていない。  そうすると、児童の健全育成を目指しているにもかかわらず、余りにも対象範囲が狭過ぎるんではないだろうか。そこのところは、それもやはり財源がないからということでこういうふうに狭いという考えなんですか。
  53. 横田吉男

    ○横田政府委員 平成三年の制度改正におきまして、二子までだったのを一子まで拡大するとともに、三歳未満まで下げたわけでありますけれども、これらにつきましては、先ほど申し上げましたように、この三歳未満の時期というのは一つの人間形成の基礎として重要な時期である。それから、ちょうど三歳ぐらいまでは育児に大変手間がかかる、母親の就業率もそういったことで低くなっている実態にございまして、生活上もそれだけ制約が大きくなる。親の年齢も若いということで、一般的には収入も低い時期というようなことで、三歳未満というふうに重点化をいたしたわけであります。
  54. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 そうすると、最初におっしゃった児童の健全育成という理念でつくられた児童手当は、今や三歳未満児の育児支援策という形になっているという理解ですか。
  55. 横田吉男

    ○横田政府委員 欧米等におきましては、義務教育終了前あるいは十八歳等、我が国よりも高い年齢まで支給対象にしているわけでありますけれども、基本的な生活構造を見ますと、欧米諸国におきましては、職務給が中心ということで、我が国のように年齢が上がるにつれて賃金が上がるような年功序列型の賃金とは異なっております。  そういう意味におきまして、基本的なこの手当の役割というものを我が国において考えたときに、先ほど申し上げました理由によりまして三歳未満にしたわけでありますけれども、理念とする健全育成なり生活の安定に資するという点は変わっていないというふうに考えているところでございます。
  56. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 欧米では能力給で、日本のように家族の形態に着目したいわゆる家族手当のようなものがないので、幅広く児童手当という中でいろいろな対応をしておられる。でも、日本だと家族手当というものがあるから、ここのところはそこの力もかりながら児童手当はこの程度でいいという御判断なんでしょうか。
  57. 横田吉男

    ○横田政府委員 手当制度のねらいといたしましては、できるだけ広く対象としたいというのが一つ目的でございますけれども児童手当制度効果なりあり方につきましてはさまざまな議論がございまして、そういう議論を経て現在のような形になっているということでございます。
  58. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 いろいろな議論はわかるんですよ。いろいろな議論はわかるんですが、私が何回も申し上げているのは、児童手当とは一体何なんですかと。  一番最初スタートするときは、義務教育終了までの第三子に出すという形でスタートした。なぜ三子からなんだといえば、それは三人目ぐらいから要るし、しんどいからなという話になって、義務教育終了までお金がかかるしなという話になって、そういう制度でスタートした。それがだんだんと、義務教育に入る前だということにもなったし、今や三歳までという形になった。そのかわり、三子であったものが、二子も一子ももらえるようになった。  そうすると、制度がスタートした当時の厚生省がお考えになった児童手当というこの手当の性格、理念と、今、現行制度としてある児童手当制度、理念というものに大きな変容が生じているんではありませんか。  だから、今皆さんがやっておられるのは、児童の健全育成、資質向上のための児童手当として運営をされておられるのか、あるいは、所得制限がついていますから、貧しい家庭に対するものとしてやっておられるのか、三歳までですから、先ほどの御説明どおりに三歳までの子供への育児支援策なのか、あるいは子供をまた産んでくれたからという御褒美なのか、出産奨励金なのか、一体どういう性格に位置づけて児童手当というものを国民は理解をすればいいのですか。  そこは、児童手当とはこういうものだという話をしないと、今やっているこの扶養控除あり方との絡みも含めて、我々としては、あるいは国民としては、厚生省の子育てにかける姿勢なり政府考え方はわからない。だから何回も聞いているわけです、児童手当とは一体何なんですかと。
  59. 横田吉男

    ○横田政府委員 先ほども申し上げましたように、児童手当制度そのものは、児童を持つ家庭生活の安定と児童一人一人の健全育成を目的としたものでございまして、こういった目的は、当初からこの制度、変わっていないわけであります。  ただ、その支給対象なり所得の範囲、これはやはり保険制度のように拠出してその対価というような性格の給付ではないということもありまして、全額一般財源による給付であるということから、限られた財源をできる限り効果的にということで、現在のような重点的な給付を行う仕組みになっているということでございます。
  60. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 全額一般財源じゃないでしょう。事業主負担が入っているんじゃないですか。
  61. 横田吉男

    ○横田政府委員 そういう意味ではちょっと説明が不足で申しわけございませんでしたけれども、財源といたしましては、事業主の拠出金、それから地方負担、国費、三者から成り立っております。
  62. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 ほとんどのお金を事業主に実は負担をさせて、一種賃金のかわりのような形で彼らに出させておいて、そのお金でどういうふうな運営をするかということですから、ここも性格を形づける上で非常に重要な問題なんです。  だから、冒頭大蔵大臣にもお願いしたように、税制あり方児童手当あり方は十分に調整をしなければいけないということは事実そのとおりで、それはやっていただきたいのですけれども、その中で事業主負担はどうあるべきなのかという部分と、それからさらに言えば、自営業者の人あるいは農家の人たちはそこのところにどうかかわっていったらいいのかということも含めて、もう少し児童手当の財源については大いに議論する必要があるんではないか。我々は、その財源の一つとして、控除制度をやめて、その控除制度の持っている逆進性じゃない、きっちりとした手当という形で出した方がよっぽど理にかなっていませんかということを申し上げているわけですね。いまいちやはり厚生省の説明が不十分だと私は思うのです。  ここに、目的に書いてあるように、児童の健全育成、資質の向上を念頭に置くのであれば、なぜ三歳までに限定をするのだ。もし一人っ子でいたとしたら、月額五千円ですか、年間に六万円、三年間で十八万円。十八万円三年間にもらって、一体そのお金というのは何なんですかというのは、いまいちよくわからないんですよね。  扶養控除の中で控除されておられるということがあったとしても、私、これからの政策というのは、多分政府がやる政策としては、もっと目に見える形の政策を打たないと少子化社会に対応はできないんじゃないか。そういう意味でいけば、扶養控除の形でああいう目に見えない制度でやるよりも、もっと目に見える形でやった方がいいはずだし、そこに、給付だからということの、お上がくれてやるんだというか、上から下に上げるんだというような、そういうネガティブなイメージを持たせるのでない形のものをつくらないと、何やっているんだという話になるわけで、そこは大蔵大臣、目に見える施策をとった方がいいんだというふうにはお考えになりませんか。
  63. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういうこともあると思いますし、考えようによっては、しかし、国が一遍歳入に納めたものを歳出として出すよりは歳入として取らないでおく、そういう方がいいという考え方もあるでございましょうね、徴税費と歳出のコストが両方ございますから。いろいろなことの総合があるんだろうと思います。
  64. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 大蔵大臣の御答弁は、後で議事録を読み返してみるとどっちをおっしゃったのかよくわからないという話がよくあります。そういうのらりくらりの答弁でなければ、こんなずうっと国会の中で委員会のおつき合いはしていただけないんだろうとは思いますけれども、大変に大きな影響力を持っておられますし、税制なり予算の組み立て、執行という中で大変大きな権限を持っておられるわけですから、ここは、大蔵の論理の中だけでいきますと税はこうあるべきだという話になってしまって、やはり入り口でとまってしまうんだと思うんですよ。各国の制度もいろいろありますし、そこはしっかりとした議論をしていただかないといけないと思うんですね。それで、人的控除制度がどうあるべきかというのはこれから先大いに議論されるべきではないかというふうに私は思っています。  そういうふうに思いながら、たまさか、今になりますと確定申告の時期ですから、ことしこういう新しい税制ができて、あるいはこういう控除制度があってということで、国民の皆さんもいろいろな税の仕組みに対しての興味なり御関心を高められる時期だと思うんですが、一点、これはどういう形でおつくりになっているのかというふうに思ってお聞きをしたいのです。  特定扶養親族控除ですね。十六歳から二十二歳を対象にしておりますけれども、この特定扶養親族控除、これを持っておられるねらい、政策意図はどこにあるんでしょうか。
  65. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 特定扶養親族控除のねらいでございますが、平成元年の抜本改正のときに創設された控除でございます。  それで、この特定扶養控除といいますのは、それぞれの人のライフサイクルを考えてみますと、働き盛りで比較的収入の多い階層ではあるけれども、教育費を含みましていろいろの支出がかさむ世代の所得者の税負担軽減を図るという趣旨で設けられたわけでございます。その場合、その扶養親族につきましては、年齢十六歳以上二十三歳未満のいる場合には、その方を特定扶養親族として控除額の割り増しを認めている、こういう制度でございます。  なお、今回の税制改正で御提案しておりますのは、まさに少子・高齢化も進んでおり、現下の景気の状況も踏まえまして、教育費を含めてもろもろの支出のかさむ所得者層への配慮ということで、この控除の額を五万円加算いたしまして、現在、六十三万円ということで御提案しているところでございます。
  66. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 教育費が非常にかかる世帯なんだ、十六歳から二十二歳の子供を持っている世帯というのは非常に教育費がかかるんだ、したがって、その教育費で苦しんでいる世帯に多少なりとも恩恵を及ぼしてあげたいということでこの特定扶養親族控除というのがつくられたんだという御説明ですよね。それでよろしゅうございますか。
  67. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 代表例として教育費を申し上げましたが、ねらいといたしましては、この十六歳から二十三歳の方をお持ちの方というのは、ちょうど会社でいえば係長とかだんだん上の方に行っておられる方で、教育費も当然かかるわけですけれども、全体として見れば、住宅ローンを含めそこの階層の方がいろいろな意味で掛かり増しの経費がかかっているだろうというような趣旨も含まれております。
  68. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 私、二回目の説明でわからなくなりました。  十六歳以上二十三歳未満の世帯というのはいろいろな世帯がありましょうね。今おっしゃったように係長という方もおられるだろうし、あるいは工員の方もおられるだろうし、いろいろな方たちがおられる。でも、いろいろな世帯類型を持っているにもかかわらず、この年代層のところだけ、子供を持っている世帯だけ控除をするんだというのは、僕は一番最初説明を聞いて、教育費でお困りになっているからそこは控除するんだという理屈だと思ったんですが。  もう一遍ちゃんとした説明をしてください。
  69. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 いろいろな働いている方のライフサイクルを考えてみますと、だんだん収入がふえてくるわけですね。それで、ちょうどこの十六歳から二十三歳未満ぐらいの人になってまいりますと、これはみんなが全員当てはまるということではなしに、一つのパターンを考えてみますと、給与は非常に大きくなっています。そこへ累進がかかってきます。収入がふえていきますからそういうふうになってくるわけですが、一方において、そういうお子様を持っている方といいますのは教育を含め種々の掛かり増し経費がかかってくるというようなことで、この世帯の所得者の税負担軽減を図るという趣旨で設けられたものでございます。  つまり、全体として勤務年数が長くなるにつれて収入がふえてまいります。お子様も大きくなってまいります。ちょうどそういう層の方といいますのは、もちろん教育費も、大体高校、大学ということになりますとかかってまいりますし、さらに加えて、そのような方はいろいろな意味住宅ローンを含めて種々の経費がかかるだろうという趣旨も込められている、そういう意味でございます。
  70. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 非常に平均的なライフスタイルというものに着目をすれば、このぐらいの子供を持っている世帯というのはちょうど係長級クラスで累進課税が高くなるところで、しかも住宅ローンがあったり教育費があって大変だろうというお話ですね。  では、その考えをもうちょっと広げて、新婚さんを考えてくださいよ。非常に収入の少ない中で子供が生まれて生活が非常に苦しいという話と、今おっしゃっている教育費や住宅ローンで苦しんでいる世帯とは、世帯の収入は違うかもしれませんよ。しかし、苦しみの度合いは、子供を持ってその子供を養育しているという中の苦しみにおいてはほとんど同じなんじゃないですか。
  71. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 今、まだ若い、子供さんのいないあるいは小さい方のお話をなさいましたけれども、この所得税制でございますが、それぞれの個人単位の課税を主体としつつも、その世帯構成によってある程度の配慮ができるというところによさはあるわけでございますが、そこには限度がございまして、ある客観的な切り口で配慮をするというのが所得税考え方であろうと思います。  そこで、この特定扶養控除の階層、ねらいとするところを申し上げますと、所得税というのは一つの暦年課税でございます。それで、どうしても勤務年数が長くなってくると、所得税考え方からしますと、その年でどれだけの収入があるかということで累進税率が当然適用されるわけです。今の働いている方のそのライフサイクルを見てみますと、収入が七百万、八百万、九百万と仮に上がっていったとして、それは、所得税制の世界から見ますとそれ相応の累進がきいてくるわけでございます。  ところが、ライフサイクルという切り口から、では、そういうところに実際には掛かり増し経費がいろいろかかるわけでございますから、もちろんつき合いもございましょう、そういう意味で、中堅といいましょうか、このまさに働き盛りの階層に所得税制でどういう配慮ができるかというようなことから、まさにライフサイクルから見れば、そういう階層は年齢十六歳から二十三歳未満ぐらいを持っている方であろうということで、この特定扶養親族控除を設けているわけでございます。  したがいまして、今設例といたしまして、まだ新婚間もない、子供さんの小さい世帯というのがありましたが、それとはちょっとライフサイクルの観点からすれば考え方が違った切り口をしているということかと思います。
  72. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 所得がふえてくれば、累進課税でたくさん税金を取られるというのは当たり前の話なんです。それはそれでいいんですよ、累進課税制度なんだから。  ところが、それがたまさか、今おっしゃっているように、子供が非常にお金のかかる時期になってきた。ちょうどその辺の世代でしょう。だから特定扶養親族控除という制度をつくってそこを応援しているんだというのであれば、私が申し上げたように、ちっちゃな子供を抱えて苦労しておられる家庭も一緒なんですよ。  私が言わんとしていることは、特定扶養親族控除がなぜ低年齢の子供を持っている家庭には恩恵が及ばないのか、それでいいのかと。そういう、いいという整理の仕方なんですか、大蔵大臣
  73. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 まさにこの制度自体、ライフサイクルから見て、会社なら会社でもだんだんと働き盛りに入ってまいりますと、それこそおつき合いから冠婚葬祭、実はこれは平成元年の税制改正のときに議論したわけでございますけれども、いろいろな意味での、若い世代とは異なるいろいろな出費が出てまいるわけでございます。ですから、この十六歳から二十三歳未満のお子さんがいらっしゃる世帯を考えてみますと、収入はなるほど高い方に入ってくるけれども、一方において教育費を含めてもろもろの支出がふえる世代でございまして、まさにこういう世代に対して、ライフサイクルの観点から所得税負担の面で配慮できないかということで設けられたわけでございます。
  74. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 私が最後に申し上げたように、特定扶養親族控除を十六歳から二十三歳未満子供のいるところにかけるとおっしゃるのであれば、そこは小さな子供がいる家庭であっても同じじゃないですか、扶養控除という考え方の中でいけば同じ考え方ができるはずじゃありませんか。  本来的には、住宅ローンでお金がかかるというのは、それは住宅税制の中で考えればいい話、教育費がいっぱいかかるというのは、そこは奨学金の世界で考えた方がいい話だと私は思うんですよ。我々、かねてからそういう主張をしているわけですけれども、まず大蔵大臣と、我が民主党のそれぞれのお考えを言っていただきたい。  まず大蔵大臣、僕は教育費なんというのは奨学金でやった方がよっぽどいいと思います。教育費にかかるからその家庭にこういう扶養控除制度をつくるというよりは、奨学金を十分に出してあげて、その奨学金でもって学校に行きなさいという方が子供の自立にとってははるかにいいんですよ。それは、公明党の主張も多分同じお考えでそうおっしゃっているんだと思うけれども、そういう形に変えた方が私は子供のためにもいいと思う。  そういう意味で、教育費がかかる、住宅がかかる、だからその世帯に着目して、ライフサイクルに着目して特定扶養親族控除という制度で対応するんだと。そうすると、片方で申し上げているように、小さな子供を抱えているところにはそういう恩恵はいかない。非常にそこにまた控除制度の中での不公平が生じてしまう。そういう形じゃない、住宅は住宅、教育は奨学金という形で対応した方が、よほど国民にとっては公平だし、私は対応としてよろしいと思うんですけれども、いかがでございますか、大蔵大臣
  75. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 こういう場でそういう全体の問題を、ちょっと私、自分の意見を申し上げるほど考えてもおりませんし、知識もありませんので、これはいい場かどうかと思いながら、こういうことはあるんじゃないかとは思いますね。  いずれにしても、近代国家でございますから、国としていろいろな施策をすることは当然でありますけれども、やはりその中に大きな政府と小さな政府という物の考え方はないわけではなくて、そういう近代国家の中でも、なるべく個人に資力と財源を残しておいて個人の創意でこなしてもらおうという考え方と、いや、それよりもやはり国としてミニマムすることがあるんだということで、多少の税金は取ってもそういうことにするという考え方がきっと大きく分かれていまして、アメリカなんかが、これはまあ運のいい国ですから、そういうことができるのでもありますけれども、前者であろうと思うんです。  先ほど主税局長が、人のライフサイクルの中でいろいろ入り用になる時代というものがあるという物の考え方の中には、やはりそれは自分で基本的にはやっていこうという物の考え方があると思うのでございますね。教育なら奨学金があるとかいうことは、もう一つ、何といいますか、そういう制度が備わった社会のことかもしれませんが、いや、それはなるべく自分の力でやっていこう、もちろん世の中の助けはかりるけれども、そのためにはなるべく可処分所得というものを大きくしておいてほしいという考え方というのは私はあるんだろうと思います。  一概にどっちがいい、どっちが悪いということは言えないだろうと思いますけれども、そういうこともあるのではなかろうかと思います。
  76. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 今の大蔵大臣の御答弁ですけれども、我々民主党としての一つ考え方があります。岡田先生に……。
  77. 岡田克也

    ○岡田議員 今の大蔵大臣の御答弁ですが、ちょっと私は意見が違います。  大きな政府か小さな政府かということを形式的に見るべきでないというふうに基本的に思います。減税であればそれは小さな政府であり、手当を出せば大きな政府になる、確かに金額で見ればそういうことになるのかもしれませんが、そういう金額の単なる多い少ないで大きな政府、小さな政府ということを考えるべきでないと思います。  大きな政府か小さな政府かというのは、政府の果たす役割がどういうものであるのかという観点で見るべきで、そういう意味で、先ほどの手当か減税かという議論、これは機能的には同じでありますから、私は、そのことで大きな政府、小さな政府の議論につなげる話ではないというふうに考えております。  それから、委員指摘の奨学金の話でありますが、基本的に奨学金を充実してやっていくということは賛成であります。もちろん、我々の現在の案では、十八歳以上二十三歳未満子供についても子育て継続手当ということで手当も出すことにしておりますが、もちろんそれでは十分でないわけで、基本的に奨学金の制度を充実していく、これは公明党さんも言っておられますが、そういう考え方に賛成であります。  なお、一言付言させていただければ、これはまだ党の中で十分議論しておりませんが、私は、大学の授業料はかかったコストだけ上げて、そしてそれを奨学金で賄っていくという形にすることが、大学そのものの消費者といいますか、学生を向いた取り組みということにもつながってくることであって、国が余りそういう意味で助成を大学にするということは好ましいことではないと思っております。
  78. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 大蔵大臣、私はずっと、ほかの院内テレビであるとか、あるいは御答弁されておられるのを聞いておりまして、制度を所与のものとしてお考えになっておられて、余りそこを変えていこうというお気持ちが感じられないんですね。改革をするというのは、橋本内閣小渕内閣もずっと方針は変わっていないと思う。  これはこういうものでなければいけないというものを前提に置いてしまいますと、なかなかそこは議論が進まなくて、しかも税制などというのは、私が言うのもなんですけれども、あちらこちらに手を入れられて今こんなになってしまっている。もっと簡素化された税制にすべきだというのは前からずっと主張があって、そうならないというのもいかがなものかと思います。  いずれにしましても、公明党もそうですし、我が党もそうです。自民党の中でも恐らくそうだと思います。政府も、検討するというふうにおっしゃっておられるので、同じ考えじゃないかと思いますけれども税制の、とりわけ扶養控除あり方ですね。親族の扶養控除あり方児童手当あり方、この調整というものをぜひともに考えていって、よりいいお金の使われ方というか、もらった側も、そうだ、社会がきっちりと子育て支援をしてくれているんだという形になるような制度にここは変えていきたい、変えるべきだというふうに思っておりまして、その点について我々民主党としては、与野党を問わずにぜひともそういう議論をしていくべきだし、させていただきたいというふうに、もちろん政府も交えて、思っているわけですね。  ぜひそういう検討を、これは政治の世界だけじゃなくて、ぜひ国民サイドにもわかるように、この児童手当、一〇%しかもらっていない、もらっても余り額が少ない、ありがたみもないというような中において、議論すべきだと思います。まあ厚生省がおやりになるお仕事かもしれませんけれども。  厚生と大蔵の間でこれは非常に長年、税の世界と手当の世界ということで、綱引きといいますか、間に大きな壁がありますので、ここは壁を破って、厚生省、大蔵省でしっかりこの点についての議論を進めていくという御答弁をぜひ御期待申し上げたいのですが、いかがでございましょうか。
  79. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いろいろ御議論が、殊にここへ来まして各党の間で交わされていることを存じておりますので、政府としてもそういうことにはもとより無関心であるわけではございません。いろいろ御議論を承ってまいりたいと思います。
  80. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 私がお願いしたのは、政府の中でも厚生省と大蔵省の壁を破って、ひとつ大いに議論をして、それを国民の側にも目に見える形でやっていただきたいというお願いなんでございますが、いかがでございましょうか。
  81. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 あたかも今児童手当ということと扶養控除とを結びつけて、それは一つのお考えでありますけれども、必ずしもそうでなくてもいろいろな方法があり得るでございましょうし、そういうことはいろいろに政府の中でも、殊に国会で御議論が大変に行われるようになりましたので、政府部内でもよく検討をいたします。
  82. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 よろしくお願いをしたいと思いますし、我々も国民と一緒に外からしっかりと見守らせていただきたいと思います。また、申し上げましたように、与野党の垣根を越えて、ぜひこれは議論をさせていただきたいと思っています。  残りの時間、もう一つぜひお聞きをしておきたいのは、きょうはこうして児童手当についての御質問をさせていただきましたけれども子育て支援というのは児童手当と育児休業と保育というふうに三本柱でやってきているわけですね。  そういう意味において、この保育の問題なんですけれども、来年度になりますか、平成十一年度が最終年度になります緊急保育対策等五カ年事業なんですけれども、これは厚生、自治、大蔵の三省合意で進めておられる保育対策整備事業であります。残念ながら最終年度、平成十一年度の予算をつけた限りにおいても、延長保育の推進ですとか放課後児童の健全育成事業については何とか目標に達するんですけれども、一時保育の推進ということでは、三千カ所目標に対してことし予算をつけても千五百カ所と、半分しかいかない。特に一番ひどいのは地域の子育て支援センターで、三千カ所を目標にしているのに、事業内容を若干縮小してやってみても千五百カ所というふうに、半分ぐらいまでしかこない。  大蔵省がお金を出さないからだといって大蔵省を一方的に責めるつもりはありませんけれども、一応三省の合意でやっておられる保育対策事業、子育て支援の三本柱の一つであるはずの保育事業が随分とおくれているのではないかということで、しっかりとした取り組みをしていただきたい。  児童手当の額も非常に少ない、保育所も全然整備が進まないということでは、少子化対策というものが、せっかく総理のところで有識者会議をおつくりになっても、これは政府として空念仏に終わってしまうのではないかというふうに思いますので、厚生省としてはしっかりやりますという御答弁、大蔵省としてはしっかりお金を出させていただきますと、あるいは三省合意として目標達成できなかったけれども、今後これをどういうふうに考えていくのかという点についての両省からの御答弁をいただきたいと思います。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  83. 藤井秀人

    藤井(秀)政府委員 お答え申し上げます。  今先生おっしゃいましたように、子育て支援に関しましては、単に福祉、教育のみならず、雇用とか住宅とか総合的に施策の推進を図っていく必要があるわけです。そういう中で、エンゼルプランというものが既にございますし、具体的にはその一環といたしまして緊急保育対策等五カ年事業というのがございます。今先生おっしゃいましたように、十一年度予算におきましても、この緊急保育対策等五カ年事業に基づきまして、待機児童の完全解消を図るとか、あるいは延長保育の推進を図る、さらには多機能保育所の整備の推進を図る等々を行ったところでございます。  全体といたしましては、予算額で十一年度予算二千九百十三億円、一一%強の増加になっているということでございます。  そこで、具体的な緊急保育対策等五カ年事業の中で、今先生おっしゃいました一時保育の促進とかあるいは地域子育て支援センター、これが残念ながら目標値に到達していないというのは事実でございます。これはむしろ厚生省からあるいはお答えがあろうかと思いますが、私どもといたしましては、それぞれの施策のいわば地域への浸透というのが残念ながらいまだ不十分であるというようなこともありまして、地域の実情からそういう要請が必ずしも出ていないということであろうかと思います。したがいまして、厚生省ともども、このそれぞれの施策内容について、さらなる地域へのいわば浸透というものを引き続き行っていく必要があるのではないだろうかというように思っております。  いずれにいたしましても、この子育ての問題につきましては、極めて重要な問題でございますので、十一年度予算に限らず、引き続きよく厚生省とも検討してまいりたいというように考えております。
  84. 横田吉男

    ○横田政府委員 緊急保育対策等五カ年事業につきましては、十一年度、最終年度でございますが、目標として掲げました諸事業のうち、主要な事業についてはほぼ目標を達成し得ると考えておりますけれども、御指摘いただきましたように、子育て支援センターなり一時保育につきましては残念ながら半分程度の達成率ということでございます。  これは、子育て支援センター等、二名の職員を配置して、地域の子育て相談なり子育てサークルの援助、あるいは乳児保育等の特別保育を積極的に行うというような要件を課しておりまして、現実には二名でやるほどの需要がそれほどなかったということもございますので、小規模のものを認めるとか、そういった要件を緩和いたしまして、できる限り目標の達成に努めてまいりたいと考えております。  また、一時保育につきましても、どうしても日々の変動が大きいということで、リスクも大きいということで、なかなか目標どおりの需要が出てこなかったという面もあろうかと思います。  こういった点につきましても、いろいろな条件を緩和する等いたしまして、できるだけこういったものが整備されやすいような努力をしてまいりたいと考えております。
  85. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 きょうは、我が民主党提案をさせていただきました児童手当抜本的改革による子育て支援手当というものをつくっていった方がいいんだということで、手当それから控除のあり方についていろいろと御質問をさせていただいたわけですけれども、最後に大蔵大臣に、随分難しいお答えをお願いしているのかもしれませんが、少子化対策というもの、子育てというものに対して今後どういうふうにお取り組みをしていくのか、どういうところに理念の中心を置いていくのかということについてお話を聞かせていただいて、質問を終わりたいと思います。
  86. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題は本来は個人的な、人間としての問題として本当はスタートしなきゃいけないお話だろうと思いますけれども、今の我が国日本社会から申しますと、いわば社会的な問題、国としての問題に非常に身近くかかわってまいりましたから、そういう意味でも政府としても国としても無関心であり得ないという部分が非常に強く出てまいっております。そのことはこれからの、殊に次の世紀に向かっての我が国政治、行政あるいは社会政策全体のあり方の非常に大事な部分になってきつつあるという認識を持っております。
  87. 山本孝史

    ○山本(孝)委員 よろしくお取り組みをいただきたいと思います。またの機会に御質問させていただきます。ありがとうございました。
  88. 村井仁

    村井委員長 次に、日野市朗君。
  89. 日野市朗

    日野委員 三十分という短い時間で御質問をさせていただきます。とんとんといきたいと思いますから、答弁の方も簡潔にひとつお願いをしたいというふうに思います。  まず、所得税法人税といえば、これは税制の根幹ということになります。それで、今度は法人税所得税をいじるわけでありますが、法案の名称が、経済社会変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税負担軽減措置に関する法案、こうなっておりまして、これはなかなか難解な法案であるな、こうタイトルを見ただけで思うわけでありますね。  そして、大蔵省が説明に来られたところを伺いますと、これは恒久的な減税でございます、こういう話であります。そして、その説明の中で、経済社会構造的な変化、国際化の進展等に対応するとともに現下の著しく停滞した経済活動の回復に資するよう、個人所得課税及び法人課税あり方についての抜本的な見直しを行うまでの間の措置として、所得税及び法人税減税を実施する、こうなっておるんですな。私は、ここに、税制上の観点から見て矛盾した言葉が随分並んでいるように思えてしようがないんです。  まず、経済社会等の変化に対応してということと恒久的な減税ということ、それから言うなれば、現下の著しく停滞した経済活動の回復に資するよう、これは景気対策でございますね、これらは私は必ずしも両立し得ない、これは鼎立になりますかな、鼎立し得ないと思っているんでございますよ。どこにポイントがあるんでしょう。  まず、今、経済社会構造的な変化、それから国際化の進展、これは非常に顕著なものがあります。そしてスピードも速い。これに対応しなければならない。そのための税制改革というのは必要なことでありますね。そうすると、これは必ずしも景気対策としての減税と相入れるものではないのではないか、私はこういうふうに思うんですね。  景気対策といえば、目の前に今進展しているこの不況、これに対応していくための税制というものを考えていく、一般的にはここのところにウエートを置いて皆さん考えておられるようですね。しかし、経済社会構造的な変化、国際化の進展、こういったものに対応するということになれば、構造的な税制改正が必要、改革が必要、こう思うんですよ。これは一体どっちにウエートがあるんですか。いかがでしょうか。
  90. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういうお尋ねを承るのは私はごもっともだと思ってお答えを申し上げます。  かなり私どもとしても、複雑な局面でいろいろなことを考えながらこういうことをいたしておるわけですが、まず最初に、こういうことを申し上げさせていただきたいと思うんです。  今我が国はこういう非常な不況の時代にありますし、経済ばかりでなく、国民全体が何か二十一世紀に向かって、つまり今まで戦後五十年の努力というものは、これを新しい展開をしなければいけない、そういう一種の大変に苦しんだ局面にある、こういう事実認識は日野委員も恐らく御同意いただけると思うんですが、そこで、片っ方で、いずれの日にか、二十一世紀のそんなに遠くない時期に、我々はどういう国家として何をしなければならないのか、グローバリゼーションのことなどもあって、そのときに新しい我が国あり方というものを一遍考え直さなければならないだろう、そういう一種の予感と申しますか、予知を持っております。  それは、いっとき財政改革というようなことをやりかかりましたが、とてもそんなことではなくて、財政税制社会も、あるいは国と地方の関係も、国と国家の関係等々、新しい国、新しい社会にならなければいけないだろう、そういう一種の予知がありまして、そのときにはいろいろなことを一遍全部考え直さなければならない、そういうときがなければならないという意識を持っております。  したがって、今ここで国会に御提案をし、お願いをしていることは、そこに至る今の段階において我々が考えておりますことをごらんになっていただきたい、これでずっと先々いけるという種類のことではございませんということが一つでございます。  しかしながら、同時に、それならば前内閣がやったように一遍限りの減税みたいなことを繰り返していいかというと、いろいろな意味でそういうわけにはまいらないし、またそれをやりますと、せんだっても申し上げましたが、将来への可能性を、あるいは将来への障害になるおそれすらございますから、今として、この苦しい間を切り抜けていく間は、毎年毎年違ったことではなくて、それはそれなりに一貫した税制というものをやはり考えていかなければならない。毎年毎年一遍限りの税制をやるというようなことは、将来に向かってもよくないし、国民にも不安を与える、これが第二の問題意識であります。  第三の問題意識は、しかし、たまたまその時期が我が国の非常なピンチにございますが、いわゆるグローバリゼーションというようなものとぶつかりまして、ブームの後、こういう破裂したバストの中で、しかし、もういやも応もなくグローバライゼーションを迫られる、あるいはリストラクチャーを国際的な理由から迫られるというようなことがございます。それにもこたえていかなければならない。  つまり、グローバライゼーションとかあるいはリノベーションとかいうことは、経済あるいは国が好調であればそんなに難しくないんだろうと思いますが、好調でないところへそういう荷物を担がなきゃならないというのが今の我が国の姿でございますから、そういう意味で三つぐらい違った局面に、今こういう法律をごらん願うことによって対応していかなければならないと考えておるわけでございます。  最初に、ですから、我が国経済社会構造的な変化、国際化という部分は、そういう時点に今我が国があるということ。それは例えば、今回法人税を四〇%という国際並みにいたしました。これなんかは、どうも世界どこへでも法人の主たる事務所が置けるという今となっては、やはり国際的な配慮をせざるを得ない。あるいは、所得税最高税率引き下げにもそういうところがあろうかと思います。あるいはまた、ノンレジデントには非課税にするとか、政府の短期証券につきまして、償還差益について所得税を源泉課税をやめるとかいったようなこと、これもそういうグローバライゼーションに対応したものとしてお考えいただくべき問題であろうと思います。  しかし同時に、現下の著しく停滞した経済活動云々というあたりは、これはもうまさに一種の、この際とにかくここを脱却しなければならないという意識からお願いをしておりますので、これは幾つかの例を申し上げることができると思いますが、ともかく、今としてはやはりこうお願いせざるを得ないだろうというような部分がございます。  それから第三に、しかし将来を展望する問題としましては、これは大変にせんだって以来御批判のあるところですけれども、十年分所得税のように課税最低限を四百九十一万円にするというようなことは、これは将来の我が国所得税あり方からいって必ず将来に累を及ぼす、できるだけ従来どおりの課税最低限に近づけておきたいといったようなことは、これは、今だけのことを申しましたら定額減税をやってしまえばいいかもしれない。しかしそれは、本格的に我々の将来を考えるときに必ず害になると考えておりましたし、あるいは、これは大変語弊があることを存じておりますけれども、今景気に一番いいのは消費税をやめちまうことだというようなことも、なるほど、それは当面景気にいいかもしれないけれども我が国の百年の大計を考えるとやはりにわかに賛成できないといったような部分は、今度は、将来あるべき、来るべき本格的な二十一世紀の日本というものを考えるときを思いますとそういうことはいたしたくないといったような、そういう三つの目的意識が一つ法案に盛られました結果として大変長い名前になりまして、一体これは何を言っているのかなとおっしゃる御批判を招くことはいかにもそうであろう。第一条に書いてありますことは、しかし、ほぼそのような思いでございます。
  91. 日野市朗

    日野委員 何か苦悩の独白でございますな。  今長々とお話しいただいて、それはわからないではないんです。私はわかっていて言っている話でございます。ただ、景気を回復しよう、これはわかるんですよ。しかし私は、今景気対策としておやりになるときに、やはり構造改革的な観点を忘れてはいけないと思う。  だれが見ているんだろう、この税制改革を。もちろん納税者、市民、これは見ています。日本社会全体がこれを見ている。それから、こういうグローバライズした世界の中で世界の各国が見ています。そして、いろいろなマーケットもこれを見ているわけですね。日本はこの税制改正を通して立ち直りのきっかけを本当につかもうとしているんだ、今までの日本経済における病根、これを取り除こうとしているんだという姿勢が見えれば、私はそれの方がはるかに景気対策になる、こう思っているんでございますよ。  しかし、この法律を見ておりまして、景気対策として法人税にしてもそれから個人の所得課税にしても税率引き下げた、それから、一部先ほどから問題が出ておりましたが、扶養控除、これを若干上げるというようなことをやった。残念ながら、私はこれで景気対策になると実は思わないんです。  日本の消費者というのは、先の自分たち負担、これを見越して自分たちの消費性向、消費マインドと言ってもいいですかね、それを決めていくわけですね。先に重い負担がぶら下がっていますよということで、ではその景気をよくするために少しお金を使おうかということにはならぬのだと思うんです。ちゃんとしたビジョンが見えている、政府が示した、それならばこれからよくなるかもしれぬ、こう思うことによって個人消費の方も拡大するであろうし、それから法人なんかについては、では設備投資も少しやってみようか、こういうふうになるんだと思うんですよ。いかがでしょう。  そういうふうに何でもかんでもごちゃごちゃと入れてしまって、まあ、ごちゃごちゃというのは失礼かもしれませんが、いろいろな要素を入れてしまって、そしてこの景気に対して立ち向かおうとするのは私は愚かな手段だと思われてしようがないんですが、いかがでしょうか。
  92. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は今一部触れたと考えておりますけれども、このたびのこの所得税制が、一遍限りのものではない、これでいかせていただきますというのは、納税者に対しては、これ以上の増税になるということはない、また、去年のように大きな減税平成十年分よりは少しふえたそういう方はたくさんおられるが、しかしこれで先々やっていくんだ、こういうことは思っていただけたと思いますし、法人税についてはそれはもっと明らかと思います。  それから同じような意味で、消費税について、これを政府がにわかに動かすということもないというふうに、そういうベースのもとにこの所得税法人税税制が考えられているだろうということも多分多くの国民の方が考えておられるのではないかと思いますので、そういう意味で、将来の負担がにわかにふえるということは多分今国民はお考えでないだろう。むしろ国債の負担というようなことをお考えかもしれませんけれども、そういう意味では、今度の税制を恒久的なというふうに思いましてつくったわけでございます。
  93. 日野市朗

    日野委員 この文章を読みますと、恒久的といっても、次の抜本改正までだというふうに読めますですね。  次の抜本改正はいつごろおやりになることでしょうかね。これは、二%ぐらいの回復軌道に乗るまでというふうなことをここの委員会でも何度も何度も大蔵大臣の口から伺っておりますから、大体そこいらまでの不確定期限かな、こう思っているんですが、私はそんな余裕はないと思うんですよ。日本の諸改革をやって本当に安定した回復軌道に乗るためには構造改革というのは必要ですから、そんなに長い間待っているわけにはいかぬのだろうと思います。  大体の見通しをお聞かせください。
  94. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いつぞやも申し上げましたが、平成十一年度の国税収入の見積総額は昭和六十二年と同じ水準でございますから、十何年後ろへ倒れてしまったという状況で、これは、成長率がマイナスであればどうしても歳入欠陥が出るのはやむを得ないことでございます。減税もございましたが、しかし、十年も前に後戻りしてしまったということは、もし今年、平成十一年に成長率がマイナスであれば政府の見積もっている税金は恐らく取れない公算の方が大きいわけでございますから、そういたしますと、なかなかプラスの成長軌道に乗るというのが、急ぎたい気持ちでございますけれども、うまくいって〇・五%というのが私どもが申し上げていることでございますから、それが平成十一年度の経済運営であるといたしますと、税収はまあまあ欠陥が出なければよかったということではないか。  そういたしまして、その上で成長軌道に乗って、総理大臣のよく言われますことは、順調な成長軌道に乗るということは多分私は二%ぐらいでないと言えないだろうと思いますから、そういたしますと、今年が仮に〇・五として、来年すぐに二%の、つまり順調な軌道に乗れるというのは少し欲が深過ぎて、平成十二年度に二%はできるかもしれませんけれども、しかし、それで大丈夫だ、もうこれでいけるなということはすぐには私はきっと言えないだろうという思いがいたすんです。  そうしますと、二%の成長軌道に乗ったな、こうお互いに思えるのはやはりそれだけの時間がちょっと入り用で、その上で初めて恒久的なことが考えられるのではないか。待てないとおっしゃるのは確かにいろいろな意味で待てない思いがしますけれども、ともかくその成長を確保できませんと、いろいろな条件が整ってこないように思っておるわけでございます。
  95. 日野市朗

    日野委員 いっぱい聞きたいことがあるんですが、時間がもう半分以上経過してしまいましたので、ポイントだけちょっと聞きます。できれば、イエスとかノーとかでお答えいただければありがたいんですがね。  景気対策も、やはりこういう形だと、今政府案提出されている形だとなかなか景気にはね返りが薄いんじゃないか、こう私は思うんですね。むしろ、民主党で出している二〇%ずつずっと引いていくという案の方が、一律二〇%ずつ下げるという方が私は景気には有効ではないか、こんなふうに思っております。しかし、これは我々が出した法案でありますから、大臣お答えになるとすればそれに対する反論が出てくると思いますから、答えはあえて求めません。  それで、私、税収を上げるという方法、これは税収を上げなくちゃいかぬですから、税収を上げるときに、いかにそれを徴収する体制をちゃんと整えておくかということは必要なことだと思うんですね。税金をちゃんと払ってもらいましょう、公平に払ってもらいましょうという方法というのは、きちんと手当てをしなくちゃいかぬと思うんですよ。  恐らく、そちらに並んでおられる大臣を初め大蔵省の皆さんは、税務署から自分の事務所、事業所に訪問されるということは今まで御経験ないと思うんですが、私はあるんですよ。弁護士事務所に税務署の方がおいでいただきまして、いや先生、どうぞお暇なときで結構ですからと言って、応接間でお茶を飲んでいかれる。これだけで大分違うんですな。納税者の態度というのは大分違う。  それは無理に取り立てろとは言いませんよ。しかし、そういうことで、ちゃんと人を配置しておいて、そして、今は三年か四年に一回事業所に訪問という形になるんでしょうけれども、毎年訪問させていただいて、経営の状態を教えていただいて、そういうことをやったら、これはもう私は税収は飛躍的に上がると思う。そういうお考えをぜひとっていただきたいと思うんですね。  最近は、事務量がどんどん増大しておりまして、そして人手不足です、税務署、国税の世界は。それから国際化、高度情報化、こういうことから非常に煩雑な業務をこなしていかなくちゃいけない。こういったことから、やはり増員、定員をふやしていく。内閣の方針として二五%減だとか、そういうことは知っていますが、やはりお金が入るところはちゃんとした手当てをして、減らせるところは減らす、そういうことをむしろ考えるべきなんであって、私は、そういった人員の増、いろいろなポストの増、それからそこで働く人たちの職場環境、こういったものを整えることが必要だと思うんですが、いかがでしょうか。
  96. 大武健一郎

    ○大武政府委員 お答えさせていただきます。  ただいま先生の言われました税務行政を取り巻く環境、国際化ですとか情報化の進展ということに加えまして、不正手口の巧妙化あるいは納税者数の増大ということがございまして、質量ともに厳しさが増してきているという状況にございます。  こうした中で、国税庁としまして、事務運営の合理化、効率化等に努める一方で、ただいまお話ししたような税務の困難性、あるいは歳入官庁としての特殊性ということを関係当局に説明してまいりまして、所要の定員の確保等に努めてきたところでございます。  今後とも、国税職員の増員等につきまして、関係方面の御理解が得られるよう一層努力していきたいと考えているところでございます。
  97. 日野市朗

    日野委員 聞きたいことはいっぱいあったんですけれども、持ち時間五分という紙が回ってまいりました。  では、消費税のことについて伺います。  消費税を三%に戻すとかそういうことは考えておられない、国家百年の大計からいったらそれは考えるべきでないという趣旨お答えを何回も大蔵大臣から伺っているんですが、ちょっと私、気になることが最近ありました。  自民党と自由党との間で政策協議が行われましたね。最初は自由党の方から、消費税税率引き下げろというような話が出ておりましたね。あのときは食料品なんかの無税化ということも言っていたんでしたかな。  ところが、すうっと消えたんですよ。自自政策協議の中からすうっと消えたんです。どうもこれは私、あれだけ強く小沢一郎さんが主張していたことがすうっと消えたということが気になってしようがない。こういうのは嫌な予感がするんですな、私の経験からしますと。これはひょっとすると、小沢一郎さん、大蔵省の方でそれをやがて実現するという何かサインでもあって、またはそういうにおいをかぎ取って、それについては余り多くを語るまいということになったのではないかな。  実は私もいろいろな経験をしておりまして、そういうことを何度も、煮え湯を飲まされるといいますか、そういう思いはしておりますので、これは嫌な現象だなと実は思っておるんです。どうでしょう。
  98. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 両党の政策協議の過程に私はタッチしておりませんでしたので、正確には申し上げられませんけれども、結果として、でき上がりで私が感じておりますことは、ちょっと正確でないかもしれません、想像が入りますので間違っておりましたらお許しいただきたいのですが、先々、年金の基金部分であるとか、あるいは老人医療であるとか介護であるとかいうもののコストは非常に大きくならざるを得ない。そういう問題が一つあって、他方で、消費税というものは国民の間で必ずしも、今のところ落ちついているかどうか、しかし、将来いろいろ御意見がある。  この両方のことが結びついていかないとなかなか両方の政策とも難しいという御意識があって、つまりほかの言葉で申しますれば、従来のように狭い意味での直間比率、所得税を下げますからそのかわり消費税率を上げますというような説得では、これはとても世の中通るものでない、そういう物の考え方はもう通用しない。もし消費税を上げなきゃならない理由があるとすれば、それは今申し上げたような特定の福祉の政策のためであろう。所得税は減らしてかわりに消費税というような発想はだめだという基本が自民党のお考えであったのではないか。お一人お一人で御意見が違うかもしれませんが、総合的にはそういうことであったのだろうと思います。  したがいまして、このたび予算総則で消費税の使用目的を明記いたしましたのは、私どももそういう気持ちはございましたから、そういうことで意見が一致したということだと、私は、ちょっと間違っておるかもしれませんが、観察しております。
  99. 日野市朗

    日野委員 あと三十秒ほどありますが、なかなか景気浮揚のための諸施策効果がない、最後の切り札で、えいっということで消費税税率引き下げとか消費税の撤廃などということにはよもやなるまいと私は希望をいたしますけれども、非常に心配をするということも間違いないところであります。そんなことのないように要望して、質疑時間が終了いたしましたので、終わります。
  100. 村井仁

    村井委員長 次に、上田清司君。
  101. 上田清司

    ○上田(清)委員 民主党の上田でございます。  参考人の皆様方には、お忙しいところ、ありがとうございます。順番を組み立てておりましたが、お忙しい方ばかりですので、短い質疑時間で済む方々から先に片づけさせていただければと思っております。  柳沢金融担当大臣、早速で恐縮ですが、一つだけ確認でございます。  私ども民主党の国会議員の中で、長銀を告発する国会議員の会という会をつくっておりまして、刑事、民事の責任以前にやはり基本的な責任を果たすべきではないかという考え方に立って、例えば高額退職金を返還することなどを早急にやって、むしろ旧経営陣の社会的責任を果たしてほしい、こういう思いでしばしば行動をさせていただきました。十二月にも大臣、また国有化されました長銀の安齋頭取のところもお訪ねして、このようにしてできるだけ大臣の方からも高額退職金の返還をお願いしたいということも要請しました。私どももお手紙を全員に出しまして、全員から返事はいただきました、できるだけそういう返還をしたいという。  しかし、昨年の八月に長銀みずから過去の経営陣に対してそういう要請をしてからもう半年になりますが、いまだに一円もお返しになった人がいないという現実について、担当大臣として、我々の申し出の以降にどのような交渉をなされ、そして今日どういう状態になっているか、把握された段階を、御見解をいただきたいと思います。
  102. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 長銀の元経営陣のうち一定の期間以後に御就任になられていた方々の退職金について、長銀のその後の行方、あり方との関連で道義的な見地から退職金の返還を求めたい、こういうことは、現経営陣も同様に明確にその意思を持っておりまして、その方向で働いているということを私も報告を受けております。  現在の状況はどうかと言われますと、口頭での話として私が聞いておるところは、杉浦元頭取が御自宅を処分するなどしてその返還に充てたいというような御意思の表明があった、しかしながら、なかなか物件の処理というようなものが思うに任せていないんだ、こういうことでございました。いろいろそういうように、現金でないというようなことからすると、今日の世情もあって、その報告を聞いたときには、それではできるだけ早くしていただくようにというような話で終わっておるというのが現況でございます。
  103. 上田清司

    ○上田(清)委員 私もきのう安齋頭取をつかまえようと電話をいたしましたところ、ちょっとつかまらなくて、西田企画部長に現況を聞きましたけれども、お話はさせていただいたけれども目下一人も高額退職金の返還をした人はいない、引き続き御案内をしているところだということでございます。昨年の八月がこの話でございますので、結局、半年たっても何もしない人たちだ、これが世上の反応であります。  こういうことでございますので、どういう神経をしているのかと私は思っておりまして、仮に私だったら、もし一千万預金があれば、とりあえず一千万だけでも、手付金じゃありませんけれども、先に出しておくなと思いますね。  率直に言って、世論の感覚として、柳沢大臣は、半年待ってもまだぐずぐずしていると思われるのか、いや、やむを得ないだろうと思われるのか、どちらですか。ぐずぐずだと思いますか、それともやむを得ないと思われますか。
  104. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 世論の動向等からしますと、私の考えておるところは上田議員とそんなに違っているわけではありませんが、しかし、私も一、二度は御本人に、昔でございますけれども、お会いしたことがあるような記憶がありますが、そこから推定した年齢等を考えますときに、さあ、若い人のように処分等についてもはしばし動いてそうした処分をし、お金をそれに充てるというようなことが手際よくできるかということについては、昔の面影をちょっと頭に浮かべつつ、お年を召しておられるのでというような感じも、率直に私自身感じておるというのが現在の私の気持ちであります。
  105. 上田清司

    ○上田(清)委員 せっかくのお言葉でありますが、抜群の人脈を持ち、現大蔵大臣もお元気でございますし、そういう人脈もあります。ありとあらゆる人脈を使えばそういうことはたちどころに、優秀な弁護士もついておられます。そういう対応がきちっとできているんですね。返事だけは弁護士を通じてさっと書ける。  私はそう思いません。半年もぐずぐずして、どこに返す意思があるんだと多くの人から見られます。普通の方であれば、もう夜逃げしたり首をつっていますよ、こういう事態のときには。私はそれだけ申し上げておきます。  引き続き、私どもに対するお約束でしたので、ぜひ何らかの形で対応していただきたいというふうに思っております。  続きます。  それでは、まず金融監督庁長官、「選択」の二月号に正味自己資本比率一覧という論文がございます。サブタイトルに「債務超過がゴロゴロ」と。  ちょっと前段の部分だけ読み上げさせていただきますが、資料で3という数字を打っております。  「政界有力者に金融監督庁が作成した「恐ろしい資料」が出回っている」――。こんなきなくさい噂が市場関係者の間に流れたのは昨年十一月のことだった。昨年末、編集部はこの噂の火もとと見られる政界筋と接触し、金融監督庁から漏洩したとされる資料の一部を入手した。その関係者は「元大蔵官僚を名乗る人物が役所から持ち出した極秘資料。元大蔵大臣の代議士の周辺に流れている」と言う。   次頁以下に掲げる「正味自己資本比率」 それが3の資料でございます。それで、ちょっと真ん中は通り越しますが、最後に、  不良債権を厳格に引き当て、有価証券の含み損を考慮したうえでの真の自己資本比率というわけだ。  要するに、この3の資料で出てきている正味自己資本比率でありますが、例えば破綻しました長銀や日債銀は、自己資本比率では本当は最も高いレベルに実は九八年の三月時にはあったんですけれども、正味自己資本比率でいきますと、長銀にしても日債銀にしてもマイナスになってしまうという、そういうデータが出ているんですが、これは金融監督庁で作成されたんでしょうか。
  106. 日野正晴

    日野政府委員 この「選択」という雑誌、実はうかつにも、私はこういった雑誌が、書店では販売されていませんが、何か特別な契約をした方のところに配達されるという、そういうシステムの雑誌だということを、この雑誌が出たことによって初めて知ったわけですけれども、実はこの雑誌を見て大変びっくりいたしました。  なぜびっくりしたかといいますと、そこに私の写真が掲げられておりまして、そこに全銀行正味自己資本比率一覧というのが出ておりました。私は、この雑誌を見て初めて、一体どうしてこういう資料というのでしょうか、こういうものが出たのかというか、あるいはこういうものがこの世の中に存在してこの雑誌に掲載されるようになったのかということは、私自身がこの雑誌を見て初めてこういった数字にもお目にかかりました。  そういうことでございまして、よくよく見てみますと、例えば分類の償却・引き当て率のところを見ますと、三分類が七〇%、二分類が二〇%ですか、といったような数字が書かれております。この資料全体としては、先ほど申し上げましたように、私自身、この雑誌で初めて見る資料なものですから、金融監督庁として何らかのこれに対してのコメントのしようがないわけですけれども、あえて申し上げますと、例えば第二分類債権の引き当て率が二〇%といったような数字になっていますけれども、こういった数字がどこから出てきたのか。  先般、金融再生委員会の方で決定されました引き当て率は、担保保証で保全されていない要管理債権については一五%を目安にする、こういうふうに決められていることでもありますし、ちょっと、我々といいますか、再生委員会とかあるいは金融監督庁の考えているところと違った数字なのかなということを感じた次第でございます。  そういうことで、とりあえず御説明申し上げたいと思います。
  107. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。  これはなかなかよくできているなというふうに私は思っておりますので、後でまたちょっと使わせていただきますので、お含みおきをいただきたいと思います。  それでは、参考人の方々、できるだけ早くお帰りいただくということでございますので、柳沢大臣、どうぞ、御退席いただいても結構でございます。ありがとうございました。わずかなことで申しわけありません。  それでは、日銀の皆様方にもお伺いしたいと思います。  先般、二月五日の予算委員会で私の質疑に答えていただきまして、小畑理事が、大蔵省と日本銀行とは常に事務レベルで意見交換等をやっております、債務超過でない認識は共有し続けていた、これは日債銀の問題についての質疑の中の答弁の一こまであります。  大蔵省と日本銀行は常に事務レベルで意見交換等をして債務超過でないという認識を共有していた、このような御発言をいただいておりますが、常にそうした意見交換の場というのがあるんでしょうか。副総裁、お願いいたします。
  108. 藤原作彌

    藤原参考人 お答えします。  大蔵省と日本銀行の間では、例えば先生が今おっしゃった日債銀の問題等については、それぞれの担当部局の担当の者が意思の疎通を図り、場合によっては情報を交換し、協議もいたしております。
  109. 上田清司

    ○上田(清)委員 ぜひ与党の皆様方にも理解していただきたいんですが、4という時系列的なものを追いかけた資料でございますが、一番のポイントは、一昨年の九月十一日に大蔵省の示達で日債銀の最終検査を通知しておりまして、第三分類が一兆一千二百十二億だという数字をきちっと出しておられるんですね、九月十一日に。しかし、九月十九日に日債銀の東郷当時の頭取が日銀を訪問されて、当時の信用局長に第三分類は七千億だという虚偽の報告をしてこの問題がスタートしております。  これは大変なことでございまして、事務レベルで認識を共有しているということと、こういう実際違う話が日銀の中に持ち込まれる。これは日債銀の話でありますが。しかし、少なくとも大蔵省の示達が終わった後に、そういう事務レベルの共有の認識というのはないんだろうか。特に、債務超過であるかないかとか、これは当然中身の中であってもおかしくないというふうに私は思っておりますが、副総裁、いかがですか。
  110. 藤原作彌

    藤原参考人 お答えします。  九月十九日は東郷元頭取が日本銀行に訪ねていらっしゃいまして、同行とバンカーズ銀行の提携などの経営再建策の進捗状況とか資金繰りの推移、見通しについて状況の説明をなさいました。そのとき、日本銀行側では、大蔵省の検査のこともこれあり、それを踏まえまして同行の資産内容について伺ったわけです。  これに対して、回収に懸念ある債権、第三分類の金額については七千億円という説明を私どもは受けたわけです。そういうことです。
  111. 上田清司

    ○上田(清)委員 それでは、日銀の認識としては、日債銀の報告だけしか知らなかったということでよろしいでしょうか。
  112. 藤原作彌

    藤原参考人 その間、大蔵省との情報の交換はしておりましたけれども、私どもの認識は、債務超過じゃないということで聞き知っておりました。
  113. 上田清司

    ○上田(清)委員 それでは、佐々波委員会に出された自己査定の金額について、大蔵当局はどのように把握されておられたか、お伺いしたいんですが、日債銀の自己査定、何億だったのか。
  114. 乾文男

    ○乾政府委員 佐々波委員会に出されました個別の計数につきましては、危機管理審査委員会の方で個別のことについては議事録も含めまして発表をある時期まではしないということになっておりますことから、私どもの方からちょっとお答えできないことを御了解いただきたいと思います。
  115. 上田清司

    ○上田(清)委員 ちょっと待ってください。ばかなことを言っちゃいけないよ。もうだれでも言っているじゃないですか。きのうだって松田理事長、言ったじゃないですか。なぜ大蔵だけが言えないんですか。冗談じゃないですよ。委員長、注意してください。  きのう松田理事長はきちっと言っておられますよ、六千億だったと、日債銀の報告は。そうですね、理事長
  116. 松田昇

    松田参考人 六千億前後と申し上げたんですが、まあ六千億ぐらいと申しますか、そういうことでございます。
  117. 上田清司

    ○上田(清)委員 この間、日銀の小畑理事は七千億とちゃんと言っておりますよ。なぜ金融監督庁、大蔵省だけが言えないんですか。言えないんだったら審議なんかできないよ。ばかなことを言うなよ。
  118. 乾文男

    ○乾政府委員 今、あるいはこの間から預保の理事長お答えになりましたとおり、日債銀が佐々波委員会に報告されました十年三月見込みの第三分類の金額は、その後金融監督庁が発表いたしました十年三月末の日債銀の自己査定額にほぼ近い六千億円程度であったと承知しております。
  119. 上田清司

    ○上田(清)委員 日銀は七千億という報告を受けている。そして大蔵は六千億前後、まあ六千億、松田預金保険理事長は六千億。これは一千億差があるんですけれども、なぜそうなっているんでしょうか。
  120. 三谷隆博

    三谷参考人 お答えいたします。  先般小畑理事の方からお答えしたときには、その前から七千億という数字を伺っておりまして、それとほぼ平仄のとれた数字であるというふうに申し上げたわけでございまして、正確に七千億と申し上げたわけではございません。  それで、私どもとしては、その七千億という数字をあらかじめ聞いておりまして、その後九月期末とかそういった時期に償却、引き当て等も行っているわけでありますので、その七千億との時系列で見てそう不思議な数字ではないというふうに考えた次第でありますが、今お答え預金保険機構理事長及び金融監督庁監督部長からありましたように、その際出てきた、三月の佐々波委員会に日債銀の自己査定として提出された数字は六千億円前後の数字だということで私ども承知しております。
  121. 上田清司

    ○上田(清)委員 この間小畑理事が言われた七千億というのはそういう認識なんですか。――いやいや、あなたじゃない。副総裁に聞いているんですよ。
  122. 藤原作彌

    藤原参考人 私どもも約七千億円と伺っておりましたけれども松田理事長の約六千億円という数字の差異については、今三谷審議役から御説明したような概況だと承知しております。
  123. 上田清司

    ○上田(清)委員 一千億も違う話で大体同じだというふうに理解していいんですか。そんなに日銀というのは数字についていいかげんなことを言うところなんですか。
  124. 三谷隆博

    三谷参考人 お答えいたします。  先ほど申し上げましたとおり、七千億円というのは平成九年三月末の基準値、三月末、正確に言うと四月十五日だったと思いますが、四月十五日を基準とした査定の数字と我々理解しておりまして、その後日債銀におきましては引き当てとか償却とかいうことをやっておりますし、中には三分類から四分類に移るようなものも恐らくあったのかと思われますが、一千億円程度の違いというのはそういったことで理解し得るものであったというふうに考えております。
  125. 上田清司

    ○上田(清)委員 非常に納得ができない話であります。日銀総裁も七千億という数字を出されております。時系列的な問題はともかく、ちょっと納得がいかない部分がありますが、こればかりにこだわっておれませんので。  それでは、佐々波当時の委員長は、とにかく日銀と大蔵に自己査定の信憑性を確かめていただいた、最後のいわゆる資本注入のときの自己査定の部分に関して信憑性を日銀と大蔵に査定していただいた、こんなお話を私は金融特で伺いましたので、これについて松田理事長、間違いありませんか。
  126. 松田昇

    松田参考人 段取りとして、最初に事務局の予備ヒアリングをやった後、委員長から日銀総裁と大蔵大臣に、申請内容の事実関係について誤りがあるかないかお確かめいただきたい、なお、留保の、注意すべき事項があったらあわせて御指摘いただきたいというお願いをしまして、それを受けて御発表の後頭取のヒアリングをして、さらに審議をして決めた、こういった仕組みになっております。
  127. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。  それでは日銀にお伺いします。  当時だれがそういう信憑性を確認されたんでしょうか。あるいはどの部署、どの責任者がそういう信憑性を確認されたんでしょうか。
  128. 藤原作彌

    藤原参考人 お答えいたします。  日本債券信用銀行が金融危機管理審査委員会提出した書類につきましては、平成十年三月五日から十日にかけまして、限られた時間でありましたけれども日本銀行の担当の者、専門知識を有する職員が同行から提出された「経営の健全性の確保のための計画」という計画書の内容の適切性及びその自己査定結果の正確性等につきましてラインシートを精査する、ラインシートというのは貸出金調査表なんですが、そういったものをチェックしたりなどの方法によりまして可能な限りのチェックをいたしました。
  129. 上田清司

    ○上田(清)委員 ちょっとはっきりしなかったんですが、考査局でやったということですか。
  130. 藤原作彌

    藤原参考人 お答えします。  当該問題を担当しております当時の信用機構局及び考査局の担当者がチェックしました。
  131. 上田清司

    ○上田(清)委員 それでは、日銀総裁にどなたが代表して御報告されたんですか、信憑性について。
  132. 藤原作彌

    藤原参考人 お答えします。  そういった問題を担当している信用機構局長、考査局長及び担当理事が報告したと思います。
  133. 上田清司

    ○上田(清)委員 それでは大蔵大臣、当時は大蔵大臣じゃなかったということですから大臣じゃなくても結構でございますが、これは金融監督庁じゃなくて大蔵省の方が答えてください。当時、大蔵ではだれがその信憑性を確認されていたんですか、どの部署が。
  134. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  大蔵省におきまして、審査に先立ちまして、金融管理審査委員会委員長の方からの依頼によりまして、各申請金融機関が自己査定に使用いたしましたラインシート等を徴求いたしまして、検査部局がそれまでの過去の検査結果等に基づきまして精査して、それを事務当局が松永大蔵大臣に当時報告したというぐあいに聞いております。
  135. 上田清司

    ○上田(清)委員 おかしなことを言われますね。きのう日野長官は松永大蔵大臣に報告しなかったと言っていますよ。どうなっているんでしょうか。  伏屋局長、もう一回答えてください。
  136. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 監督庁長官がお答えになられましたのは、九月の検査結果そのものを大臣には報告していないというぐあいに答えられたと私は記憶しております。
  137. 上田清司

    ○上田(清)委員 それでは、伏屋金融企画局長、大蔵省は何を報告したというのですか。
  138. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 各申請金融機関が提出されましたラインシート等を検査部局が過去の検査結果等に基づいて精査した、その内容を報告したということでございます。
  139. 上田清司

    ○上田(清)委員 その精査された中身、特に日債銀についてはどういうふうな御報告になったのですか。
  140. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 当時の精査の結果、債務超過ではないということを御報告したということで、さらに詳しいことは監督庁の方から答えていただきたいと思います。
  141. 上田清司

    ○上田(清)委員 七千億という自己査定があって、大蔵の示達で一兆一千億という数字が出ていて、債務超過であるかないかというのはいろいろな議論がありますから、この数字の違いはどう理解されたのですか。これは伏屋金融企画局長でいいんじゃないですか。数字の違いをどう理解したのか。
  142. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 今上田先生の言われました点でございますが、大蔵省の方で事務方から大臣に対しまして、日債銀が提出した資料について、これは昨日も監督庁の方からお答えしておりますが、関連会社に対する自己査定が甘いのではないかとの報告が行われまして、大臣委員会におきましてその趣旨の御発言をされまして、そのことが議事要旨にも出ているというところでございます。
  143. 上田清司

    ○上田(清)委員 委員長、御注意をいただきたいと思います。このぐらいの簡単な質問にきちっと答えられないようでは困ります。数字の違いをどうされたんですかと聞いたのです。極めて易しい質問です。
  144. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 当時日債銀から出されました資料について、その適切性についてのいわば精査をしたわけでございますので、その点で、過去の検査結果と照らし合わせて精査したという、比較したわけではございませんので、その適切性について精査して大臣に御報告したということでございます。
  145. 上田清司

    ○上田(清)委員 その程度のことでよろしいのですか、大蔵省というのは。それじゃ幾ら検査しても意味がないじゃないですか。何のために示達書を出したんですか。日債銀から出た自己査定の七千億と大蔵の示達で通達した一兆一千億とこんなに数字が違うのに、比較も何もしない。それはだれが責任をとるのですか、この四千億の差を。  では、この資料をもとにして六百億、公的資金を出した責任を、大蔵省の幹部みんなで分けて弁償でもするというのですか。ちゃんと言ってください。これでは納得できません。
  146. 乾文男

    ○乾政府委員 もう一度整理をしてお答えさせていただきたいと思うのですけれども、当時求められておりましたことは、日債銀に限りませんけれども、申請行から出されております三月末の自己査定見込みが審査基準に照らして適正であるかどうかということがまさに審議対象であったわけでございまして、そのことにつきまして、危機管理審査委員会委員長から、当時の大蔵省と日本銀行に対しまして、その確認と申しますか、そういうものを求められたということでございます。  それで、当時の大蔵省におきまして、過去の検査結果等に照らしまして、また日債銀から提出を求めたラインシート等を踏まえまして、それについての適切性の検証を行ったということでございます。  そして、その結果、先ほど伏屋局長の方から御答弁がありましたけれども、これは議事要旨で特定はされておりませんのでちょっと言いにくいのですけれども、すなわち、日債銀から出ております自己査定における数字につきまして、関連会社に対する査定が甘いのではないかという判断というものが出てまいりまして、そのことを大蔵大臣が審査委員会の場で述べられたというふうに承知をしております。
  147. 上田清司

    ○上田(清)委員 甘いというものじゃないんだよ。間違いなんですよ、完璧な。よくそういうことが言えますね、平気な顔をして。どういう顔をして言っているんですか。鏡を見てくださいよ。冗談じゃないですよ。それで世の中が通るんだったら気楽なものでしょう。  大蔵省の示達があって、そして間もない時期に、当然それを踏まえて七千億という数字も言われたものだと、小畑理事だってそう言ったじゃないですか。検査があって、それを踏まえた形で、当然日債銀からのこの七千億というのもそういうことだと。当然、そんなふうに関連づけて物事を考えるのですよ。小畑理事が正しいですよ、考え方は。当たり前じゃないですか。近く検査があったら、その検査をもとにして判断するしかないじゃないですか。何を精査したというんですか。冗談じゃない。私は納得できません。  これでとめたいところですけれども、夜遅くなったら困るという話も多いですから。委員長、私は、こんなことがまかり通るような質疑だったらやりません、はっきり言って。ばかなことを言わないでくれと言っているんですよ。  日債銀から出てきた七千億に対して、大蔵の検査で一兆一千億が出てきて、なぜその数字との比較をしないのですか。当たり前じゃないか、そんなのぐらい。なぜそんなことがわからないのか、なぜそんなことをしようとしないのですか。とんでもない話ですよ、あなた方は。本当にだれが責任をとるのですか。  宮澤大蔵大臣、今のお話の中で御感想ございませんか。おかしいと思いませんか。
  148. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 感想がございます。  今御質問と答えを伺っておりますと、ラインシートを大蔵省は専門家が精査をして、その結果を、銀行局ですか、大臣に申し上げた、何を申し上げたかといえば、日債銀の自己査定は甘いように思います、こういうことを申し上げたということを今ここで申し上げておるわけです。  それで、その背景にどういう数字とどういう数字の比較があったとかいうことは申し上げてありません。恐らく、関係者でありませんからそこはわからないのでしょうが、少なくとも、大蔵省が精査をして、評価をして、その評価を大蔵大臣に申し上げた、大蔵大臣はそれに基づいて佐々波委員会で発言をされた、そういう筋道は大変はっきりしておりますので、うそとかインチキとかいう言葉は私は当たらないと思います。
  149. 上田清司

    ○上田(清)委員 いみじくもうそとかインチキという、何か心当たりがあるからそういう言葉が出たんじゃないですか。私は一言もうそとかインチキという言葉は使っていませんよ。ひょっとしたら胸に当たったんじゃないですか。申しわけないですけれども、失礼な言い方ですよ、今のは。うそとかインチキなんて私は一言だって言っていないのですよ。
  150. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、私の聞き違いでございましたらおわびいたします。  ただ、少なくとも、政府委員お答えしていることに甚だ不信の念を持って批評されたのは私は当たらないと。
  151. 上田清司

    ○上田(清)委員 それではもう一回聞きます。  検査部局で精査されたと言いましたね。銀行の検査というのは検査部局でやるのですか、そうじゃないのですか、伏屋金融企画局長
  152. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  各申請金融機関が出されました自己査定に使用したラインシート等、検査部局がそれを見まして、みずからが持っております過去の検査結果等に基づきまして精査したということでございます。その意味では、これはまさにそういうものの検査また分析できる専門家でございますので、その部局がやったということでございます。
  153. 上田清司

    ○上田(清)委員 委員長委員の皆様方も聞かれましたように、見た人たちはみんな一緒だ。示達を出した人たち、実務をやった人たちは検査部局の人たち、そして自己査定のラインシートを見た人たちも検査部局だ。それで、甘いという表現で片がつけられる。そんな甘いところなんですか、大蔵省というのは。それは片がつけられませんよ。  私はこれは納得できません。これは、やはり関係者にきちっと聞くしかありません、本当の話かどうかということを。  私は、予算委員会でも問題になりました証人並びに参考人の要請をお願いしたいと思います。具体的に名前も挙げさせていただきます。  山口公生元銀行局長、それから日債銀の増資を束ねた形になっておられます岸銀行協会会長、この方も参考人にお願いしたいと思います。  あとは、民主、共産、社民で共同要求をしております二月五日の理事会の五人の方々をお願いしたい、このことを委員長に申し上げます。  お名前を申し上げれば、三塚博元大蔵大臣、佐々波楊子審査委員会委員長、松永光前大蔵大臣、松下康雄前日銀総裁、東郷日債銀元頭取、以上であります。
  154. 村井仁

    村井委員長 委員長から申し上げます。  ただいまの上田委員の御要請につきましては、改めて理事会で協議をさせていただきます。
  155. 上田清司

    ○上田(清)委員 まだ納得はできませんが、若干、参考人の方に申しわけないと思いますので、先を急がせていただきます。  佐々波委員会で、大蔵、日銀でそれぞれ総裁、大臣を補佐する人が陪席されておられたのでしょうか。もしおられるとすれば、その陪席の方は、資料を渡したり、あるいは時々後ろの方からささやかれたりしたのでしょうか。松田理事長、お願いいたします。
  156. 松田昇

    松田参考人 審査会の席上でテーブルに着いておりましたのは、審査委員の六名と、それから事務局の局長と次長、これは説明役でおりまして、周りにそれぞれ部下の人たちというのはいたと思いますが、具体的に大蔵大臣やその他にどんなことをささやいたかどうかというのは、ちょっと覚えておりません。
  157. 上田清司

    ○上田(清)委員 それでは、日銀副総裁にお尋ねします。  先般、とにかく東郷頭取からそういう七千億だという信用局長に対する報告、そして今日、大蔵省の示達が一兆一千億だということが事実として判明してから、日債銀の東郷頭取に対しては、これはだまされたと思われたのでしょうか。それとも、どういう認識でしょうか。
  158. 藤原作彌

    藤原参考人 お答えします。  私どもは、当時、日債銀は債務超過の状況にないということの報告を受けておりまして、約七千億円という金額も伺っておりましたけれども、今先生がおっしゃった一兆一千億円という数字はつまびらかにしなかったものですから、その二つ数字の関係について考えるということはいたしておりませんでした。
  159. 上田清司

    ○上田(清)委員 質問に正確にお答えになっておりませんので、お答えいただきたいと思います。  よくわからなかったのかもしれませんが、要するにだまされたと思われたのか、こういうことであります。
  160. 藤原作彌

    藤原参考人 お答えします。  そういう表現で感想を持ったことは特にございません。
  161. 上田清司

    ○上田(清)委員 それでは、告発される可能性というのはありますか。
  162. 藤原作彌

    藤原参考人 今先生が事実をつまびらかにするように提案をなさいましたし、予算委員会の方でもさまざまな意見が当該案件に出ていると思います。関係の委員会等でその問題を今究明されようとしているということを深く受けとめております。
  163. 上田清司

    ○上田(清)委員 回答にならないのですが、本当に私はだめだと思うのですよ、そういう態度が。実際、あなた方は損をしているわけですよ。国民は損したのですよ、大変な損を。  先ほど申し上げましたように、この正味自己資本比率の中でも、日債銀の比率はマイナスです。そして、この後やる予定のみどり銀行の問題についても、御承知のとおり阪神銀行と合併するのですが、この阪神銀行も、この資料によるとマイナスの自己資本比率なんですよ。そういうことがどんどん行われながら、だれも責任をとらないままに国民の税金が使われていくのですよ。そういうことに関して深刻な反省が余りない、私はそんなふうに思います。委員会質疑だけ逃れればそれで済む、そういうふうな感じを私は受けております。  ぜひ、実態の解明に協力していただきたい。証人喚問や、また参考人の招致をお願いいたしますので、ぜひ協力していただきたいということをお願い申し上げまして、どうぞ参考人の方々はお帰りください。どうもありがとうございました。  それでは、日債銀の問題はちょっとおきまして、2の資料を見ていただきたいと思います。  兵庫銀行が破綻して、みどり銀行が受け皿銀行となって二年でまた破綻して、近々阪神、みどり銀行の合併で発足するわけでございますが、その都度さまざまな形で損失が出ておりまして、そして、その都度預金保険機構から贈与等がございます。  この問題について、私はずっと前から関心を持っておりまして、大蔵省を信頼するには、元兵庫銀行の頭取を何らかの形で、民事、刑事できちっと告発するか、もしくは、全く不良債権の実態的な金額を把握することができなかった大蔵省の検査能力の弱さを恥じて、ラインの責任者を何らかの形で、事後でも結構ですから処分しなければならない。なぜならば、検査時に不良債権が六百九億だったのが、三カ月後の破綻したときには一兆五千億になった。二十四倍にもなっているのはないですよ。木津信とこの二つだけ。その他の銀行は全部三倍から四倍です。  なぜ二十四倍になるのか。これは何回も私は申し上げていますが、偶然なんかでなったりはしません。だれが見ても粉飾決算ですよ。いまだに民事、刑事、問われていないじゃないですか、五年もたっても。なぜ大蔵省は告発しないんですか。大臣、いかがですか。前にも一度言いましたけれども、もう五年たちましたよ。
  164. 乾文男

    ○乾政府委員 旧兵庫銀行時代の経営責任につきましては、みどり銀行におきまして、旧兵庫銀行時代における与信等に関する刑事、民事上の責任を明確にするため、社外弁護士を含む与信調査委員会というものを設置いたしまして現在調査を行っているところと承知しておりまして、金融監督庁といたしましても、そうした委員会の調査活動を通じて必要な責任追及が行われていくものと承知しております。
  165. 上田清司

    ○上田(清)委員 大体、いいかげんな、お金を出すときはさっさと出すくせに、民事、刑事の責任を追及するという話になってきたらゆっくりやる、とんでもない話ですよ。よくそういうふうにしてゆっくりやれるものだ。五年たっているじゃないですか。文句だけ言っておきます。  それから、みどり銀行が破綻したときに、最終の累積損失額は幾らになっていますか。
  166. 日野正晴

    日野政府委員 お尋ねは、みどり銀行がというふうにお聞きいたしました。形式的なことを申し上げて大変恐縮でございますが、これは破綻しておりませんで、阪神銀行に吸収合併ということになるわけでございます。  ただ、最終的な資本金としては結局七百億円残りまして、私の方の理解では、繰越損失が計上されておりまして、その繰越損失が七千八百億円強になるかなというふうに理解しております。
  167. 上田清司

    ○上田(清)委員 今お聞きのとおり繰越損失が、私はちょっと七千七百億と書いてクエスチョンマークがついているんですが、百億ちょっと少なかったみたいです。  このみどり銀行の発足のときに、御承知のとおり官民挙げて、地元の財界そして地元の金融機関、そしてそれを束ねる形で日銀も大蔵省もバックアップをいたしました。御記憶のとおり、日銀から一名、大蔵から一名、常務取締役を出していただいております。こういう経緯の中でみどり銀行が発足したんですが、事実上二年で破綻だ。形式上破綻していないという言葉も言われましたけれども、実質的に破綻状態に陥ってしまった、こういう理解じゃないかと私は思っております。こういう状況にすぐなってしまう、一体何なんだと私は思います。  当時の日銀と大蔵が指導的にこの受け皿銀行を現実につくったんです。そして、常務取締役でそれぞれ一名ずつ派遣もされている。こういう責任について、責任を感じているのかいないのか、お伺いしたいと思います。
  168. 日野正晴

    日野政府委員 お答えします。  先ほど形式的に破綻していないと申し上げましたが、先ほどお話がありましたように、実質的には破綻しているというふうに理解していただきたいと存じます。  なぜこういうふうな形になったかということは、もう大変御高承だとは存じますが、結局、この兵庫銀行が破綻いたしましたときには、現在のようなペイオフコストを超える預金について預金保険法上保護する仕組みにはなっておりませんで、その部分を損失として立てずに、回収不能、要するに実質は損失なんですが、損失を立てるとペイオフコストを超えてしまいますので、その部分を資産として計上してみどり銀行にそれを引き継いだという形になったわけでございます。したがいまして、実質的にはもう不良債権なんですけれども、形式的には正常債権のような形でみどり銀行に引き継がれましたために、それともう一つは、御案内のとおり、兵庫県におけるあの大震災の影響などによりましてその後の経営が非常にうまくいかなかったということと相まちまして、大変苦しい経営状況になったのではないかというふうに理解しているわけでございます。
  169. 上田清司

    ○上田(清)委員 私も同情はいたしますが、さりとて、鳴り物入りでやったみどり銀行がこういう形になるというのも、当時の日銀、大蔵も不見識に尽きる、私はそう思います。  それから、今度、阪神とみどり銀行が合併して新しく発足するわけですが、当然ここに預金保険機構からの申請に基づく贈与がある。この金額だけ勝手に新聞紙上を歩いておりますが、まだ正式な申請もないのに言うのもいかがかなという答弁が聞こえるのはもう目に見えておりますので、殊さら申し上げませんが、やはりこの贈与についてもきちっと、では、みどり銀行の役員の人たちの責任追及というのもきちっとできた上でお金が出されていくのか、このことだけ確認をしておきたいと思います。
  170. 松田昇

    松田参考人 先生御指摘のとおりで、あしたあたり正式な資金援助の申請が出る予定になっております。  私どもとしましても、経営者責任の問題では、現在おられる役員が全員退いてもらう、これは第一でございますし、退職金ももちろん払わないで退いてもらう。株主責任についても、一般論としては全部持ってもらいたいんだけれども、特殊な事情で集まったことでもあるから、みどり銀行になってから起きた損失だけは株主責任としてとっていただきたいということで、二百億は補てんをしてください、持っていただきたいというようなことで、今そういうスキームで動いております。  さらに、民事、刑事の責任追及の問題につきましては、預金保険機構も、預金保険法の改正がございましたので、責任解明委員会を持っておりますから、さらに引き続いて、民事、刑事それぞれ、経営者についても、違反行為があれば民事賠償請求をしたり告発をしたり、そういうふうに努めていきたいと思っております。
  171. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。極めて誠実な答弁だったと思います。  ちょっと時間がなくなって申しわけありません。大蔵大臣、1の資料を見ていただけませんか。過日の大蔵委員会でお話をした内容と基本的にはダブってまいるのですが、これは国際証券がまとめた資料の一部なんです。  各先進国の公共事業の投資規模並びに平和の配当に基づくいわば防衛関係の費用が激減していっているという中で、それぞれの国がそれなりにいい経済のパフォーマンスを持っている。我が国は、絶対額においても比率においても公共事業がこれだけ多くてなぜ経済のパフォーマンスが悪いのか、私にはちょっと理解ができないので、このような比率においても絶対額においても多額の公共事業をぶち込んでもなぜ経済のパフォーマンスが悪いのか、率直に大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。
  172. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これだけからはちょっと申し上げかねますが、一般的に言えとおっしゃいますならば、GNPの六〇%を形づくるものは消費でございます。そして、好調、不調のときによって違いますけれども、その次に民間の設備投資が二〇%前後、大きいときにはございます。したがいまして、その二つがうまく機能していかないときには経済成長というものはやはり難しい。公共投資はそれを助けますために、もちろん公共投資はそれ自身のインフラストラクチャーを整備する目的を持っておりますけれども成長の要因としては、公共投資はGNPにおけるシェアはそんなに大きくございませんので、やはり市場経済においては、消費と設備投資というものが不振のときには経済のパフォーマンスはなかなかうまくいかない。公共投資が踏ん張りましても、それが消費か設備投資につながっていかない限りは一段ロケットで終わってしまうというのが、ここまでの現状ではないかと思います。
  173. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。全く私の見解と同じなんですね。しかし、やはり予算の中身はそうなっていないというところに日本経済のパフォーマンスの悪さというものがあるような気がいたします。  ぜひ、予算配分の中で公共事業の見直し、とりわけむだな公共事業の見直しについて、今からでも遅くありませんのでどんどん再考していただきたいということを申し上げまして、終わります。ありがとうございました。
  174. 村井仁

    村井委員長 次に、大口善徳君。
  175. 大口善徳

    ○大口委員 公明党・改革クラブを代表いたしまして質問をさせていただきたいと思います。  まず、中川委員も質問されました国債の長期金利に関連して質問をさせていただきたいと思います。  大蔵省の方で一兆八千億の十年物の長期国債の発行の予定を四千億圧縮した。それから二千億、資金運用部で国債を買っていた、それをもう一度、二月、三月再開する。こういうようなことと因果関係があるのでしょうか、長期金利が昨日二%台を割った。こういうことで、中川委員の方から、資金運用部がなぜ十二月までは続け、そしてそれが中止をし、また再開をしたのかということについて議論があったわけであります。  その中で、大蔵大臣は、この資金運用部の国債の買い入れを中止したことがこんなに影響があるものだというふうには思わなかったという趣旨のことを答弁されたと思います。そしてまた、その議論の中で、定額貯金の満期の問題ですとか、あるいは第一次、第三次の緊急経済対策ですとか、いろいろなことによって資金運用部のやりくりが苦しい、こういうことで中止をしたと。  では、今のこのやりくりが苦しいということと、二千億、資金運用部で買い入れるということとの関係ですが、二千億ぐらい毎月買い入れることは、現状このやりくりからいってどうなのか。二千億を買い入れること自体大変なことなのかどうか。そこら辺の認識はいかがでございますか。
  176. 中川雅治

    中川(雅)政府委員 先ほど申しましたように、確かに、財政投融資の十年度における追加あるいは交付税特別会計に対する短期の貸し付け等々、資金運用部からの資金需要が大変出てきたということで、いわゆる資金運用部の財政投融資に充てる以外の資金につきまして余裕が少なくなってきたということは事実でございますけれども先ほど申しましたように、平成十二年、十三年に定額郵貯が大量の満期を迎えてかなりの金額が流出するということが予想されることを踏まえまして、十二年度に向けての流動性を確保していく必要があるという判断で、昨年、資金運用部の国債買い切りを停止したわけでございます。  しかし一方、いわゆる足元の資金ということを考えますと、これは現実に日々運用していかなければならないことも事実でございますので、私どもといたしましては、現下の債券市場の状況、そして預託その他全体の資金運用部資金の状況を考えまして、確実かつ有利な運用を図るという観点から、市中からの国債買い切りをいたしたということでございます。
  177. 大口善徳

    ○大口委員 そこの答弁の仕方が私の質問に真正面から答えていただいていないのですね。  要するに、十二、十三の満期もあって窮屈だ。ただ、二千億ぐらい毎月買うということは、窮屈であるけれどもできることだ。それが一兆とか大きな額になれば別ですけれども、今の窮屈度合いからいって、毎月買い続けるということはそんなに大変なことなのかどうかということについて、私は質問しているわけですね。  ですから、今の御答弁だと私の質問にまともに答えていただいたことにならない、こう思うのです。
  178. 中川雅治

    中川(雅)政府委員 御指摘のとおり、現時点において、あるいはここしばらく、月二千億円の買い切りをする余裕がないということは全くございません。  むしろ私どもとしましては、さっき申しましたように、平成十二年度の財政投融資計画を組むことを考えまして昨年十二月にそういった判断をしたわけでございますけれども、預託の状況とかあるいは各財投機関からの回収とか、いろいろな資金の出入りがあるわけでございますので、それは日々運用していくということが私どもの責務でございますので、そういった意味で、日々の余裕金というのはそういったオーダーでは当然運用されているわけでございます。
  179. 大口善徳

    ○大口委員 そういうことであって、毎月買っても二千億ぐらいであれば十分余裕はある、はっきりとそういうお話がありました。  大蔵大臣も、中止したことによって結構その影響が大きいということでありますと、国債の金利をある程度落ちつくところへ落ちつかせようというお考えもあるようですから、そういうことからいきますと、二月、三月というだけではなくて、当分の間、毎月二千億ぐらいは買うおつもりがあるのかどうか、そこについて大臣のお考えをお伺いいたします。
  180. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最初の大口委員の御質問は、本当に二千億ぐらい、七十兆も出しているのに大したことないじゃないか、まことに数量からいえばそう申せることですが、やはりこれは相場でございますから、暮れにそれを中止するといったときに、私は、過剰反応だなと思いましたし、かたがた、一%にも満たない金利が長いこと続いているのはこれも普通でないことと思いましたから、私も大口委員のおっしゃるように当初思いましたが、しかし、そういう反応があって相場がそんなに動くようなら、これは本来よくございませんからと思いました。かたがた、資金運用部の方も、平成十二年度の定額貯金のことをいろいろ考えてのことでまだ先のことでございますし、しかし資金が減るかもしれないからならしておこうというような、そんなようなところでございますから、二、三月買うのならそれは買ったらよかろうと。幸いにして、それは幾らか市場がその結果静穏になったということでございます。  ですから、新年度になってどうするんだとおっしゃいますが、市場相手のことでもございますから少し様子を見させていただきたい、今はそのぐらいに思っております。     〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
  181. 大口善徳

    ○大口委員 次に、今回の減税についてお伺いしたいのです。  所得税、住民税の四・三兆円の減税、規模としては大きな規模である、こう思うわけでありますが、我々現場を回っておりますと、年収が五百万の場合は昨年に比べて九・三万円の負担増になる、それから年収が五千万円の場合は昨年に比べて三百万強、それだけ楽になるということについて、現場の感覚からするとどうも余り評判がよくない。  ただ、評判がいい、悪いというだけであればいいのですが、今回の所得税、住民税の減税というのは、危機的なこの不況を克服するということで思い切ってやったわけでありますから、今回のような減税が本当に景気を浮揚するのにどの程度インパクトがあるのかという観点でいきますと、例えば消費に対してどの程度インパクトがあるのかということからいきますと、七百九十三万円以下については負担増というのは、景気との関係でいえば効果が薄いのじゃないか。  確かに、恒久的、その後もずっと続きますよ、こういうことについては一時的なことよりはいいかもしれませんが、ただ余りにも今底であります。そして、経企庁長官も底ばいと言って、底をはっている状況ですから、そういう景気対策ということからいっても、ここはやはり景気がよくなるまでの措置として、我々公明党では二兆円の戻し税、こういうことを主張しているわけでありますけれども、やはりそういう措置なり、歳出的な形では児童手当なり、そういう措置をとっていかないと、景気回復という観点からいいますとちょっといただけないんじゃないか。  確かに、課税最低限をもう昨年までのように四百九十一万というような形にしたくないという気持ちはよくわかるのですが、激変緩和という観点があるわけでして、ここら辺の落差についてやはり措置をされるべきじゃないかな、こういうふうに考えるのですが、大臣、いかがですか。
  182. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それだけおわかりの上でお尋ねいただいておりますから、確かにそれは、同じ定額減税をいたしましたら十年分所得と同じになりますから、そういう不満を訴えられる方はおられないはずで、戻し税減税というのもそういう効果を持つことはそうであろうと思います。  ただ、おっしゃいますように、四百九十一万円という課税最低限を将来に向かって我が国税制のベースにするということになれば、数百万人の納税者がおられなくなって、それは、税のためばかりではない、日本のために少しでも納めていただける方には納めていただく方が大事なことだという思いからいたしますと、やはりここは将来を考えて、ちょっと残念だがそういうわけにいかないなということをいたしたわけでございます。税だけのことからいえばおっしゃるとおりでございます。
  183. 大口善徳

    ○大口委員 これは我が党も、今政審会長以下要求をしておりますので、我々の要求、主張にとどめておきます。  次に、今回の平成十一年度の税制改正の中で、法人税税率引き下げによって平年度で約一・七兆円、初年度で一・一兆円ぐらいの税の減収ということになる、こういう計算をしておられます。この計算はどのようにして計算をしたか、お伺いをしたいと思います。
  184. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 今先生から御指摘がありましたように、平年度減収額は法人税率の引き下げにより一兆七千億、初年度は約一兆一千億と見込んでおります。  法人税率の引き下げによる平年度の減収額から説明させていただきますと、今回の税率引き下げは、四月以降開始する事業年度ということにしてございます。したがいまして、現実に十一年度中に減税になる額としては、初年度ということで一・一兆円でございますが、平年度概念はいわば、あらゆる法人に十一年度聞いたら減収額は幾らかという概念で、一兆七千億となっているわけです。  現実の出し方でございますが、税務統計がございます。これは平成九年分が既に出ているわけでございますが、これによりますと、普通法人、中小軽減税率の適用を受けるいわゆる軽減税率適用所得分と区分が挙がってまいります。この所得をベースにいたしまして、平成十年、さらには平成十一年度の経済見通しをもとにいたしました十一年度ベースに推計をいたしまして、これに現行税率改正案によるそれぞれの税率の差を乗じて算出した数字が一兆七千億円でございます。  繰り返しになりますが、初年度の一兆一千億円といいますのは、いわば全法人が十一年度には現実に適用になるということにはなりませんので、その実際に影響を受ける法人の税収ウエートを勘案いたしまして初年度一兆一千億円、こういうふうにしてございます。     〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
  185. 大口善徳

    ○大口委員 減税をした場合としない場合で平年度の税収の減がそんな機械的に算出されるということはいかがなものか。法人税減税をしますと、それだけ税の負担の減少によって企業の内部留保というのが大きくなるわけですから、それに対して設備投資に向かうということ、それから実効税率引き下げに伴って期待収益率というのが増加するわけですから、そういう点で、例えば平成十一年度こういう方向になるということになれば、では、その平成十一年のしょっぱなから設備投資をしようというような、そういうインセンティブも働くわけでありますね。  だから、減税をやるということによって設備投資等が増加するというようなこと、そしてそれが名目GDPを押し上げたり成長率を押し上げたりする、そういう効果というのは全く捨象して機械的に平年度の減収額を算出していく、これはおかしいな、私はこう思うのですが、いかがですか。
  186. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 先ほど、平年度減収額なり初年度減収額を試算するに当たっては十一年度ベースということを申し上げました。この十一年度ベースというのは、もう少し詳しく申し上げますと、十一年度の政府経済見通しによる生産、物価、消費の指数がどうなるかということを用いて法人税は推計をしているわけでございまして、そういう意味でいいますと、来年度法人税引き下げにより、好感もございまして、経済成長率〇・五というふうに言っておりますが、その一連の資料を用いて平成十一年度の推計をやっているわけでございまして、そういう意味でいえば、全体の景気が上向きになる計数はこの中に入っているとも言える、入っているというふうに言って差し支えないだろう、こういうふうに思っているわけでございます。
  187. 大口善徳

    ○大口委員 ただ、過去を振り返ってみましても、バブルの時代に、税収の見込みが現実の見込みと増収のあれが非常に幅があったり、またバブル後に、税収の見込みと減収の幅があったりということで、経企庁のモデルを使っておられるわけですが、税収の見込みについて、果たしてこれでいいのか、そういうモデルでいいのか、こういうことが言えると思うのですね。  そういうことからいきますと、やはりもう一度大蔵省も、経企庁のモデルをお使いになるのもいいのですが、本当に、法人税減税することによってどれぐらい経済効果があって、それがプラスになってくるのか、こういう見込みというのを計算すべきだと思うのですね。  それで、政府の方でも中期財政試算というのを出しているわけです。平成十五年まで出しておるわけですけれども、これは、名目成長率を一・七五%ということを前提にした場合に弾性値を一・一という形にやって、こういう形で税収が見込まれる、こういうことなんです。  これは、名目成長率が一・七五とした場合、こういうことでありまして、本当に減税がどう成長率にはね返っていくのかとか名目GDPにはね返っていくのか、そういうことから、試算ではなくて、中期的な見通しをやはり示していかないと、減税というのは、大蔵省から言わせれば減収以外の何物でもない、増収につながっていくかどうかということはなかなか見通せない。だから、減税に対して、減税のプラス効果、増収効果に対してきちっとした数字を持っていないと思います。  ここが、財政を預かる大蔵省として、そういう減税による増収へのプラス効果について中期的に見通していくということを持たないでただ単に減税をやるというのは、余りにも無責任じゃないか。私は、そういう点で、単なる試算じゃなくて、大蔵省の中期的な見通しというもの、これをしっかり持っていなければいけないのじゃないか、こう思うわけですが、大臣、お願いいたします。
  188. 藤井秀人

    藤井(秀)政府委員 お答え申し上げます。  今先生おっしゃいましたように、今国会にも提出させていただいております中期財政試算、これは、平成十一年度予算を発射台として、一定の仮定のもとで機械的な試算という位置づけになっております。  例えば、具体的に申し上げますと、成長率につきましては、今先生おっしゃいましたように、経済計画に基づきます一・七五%の場合、そして三・五%の場合、二つのケースをお示ししているところでございます。その上で、税収で申し上げますと、名目成長率と税収弾性値一・一を用いて機械的に将来を展望している、試算を行っているということでございます。  先生おっしゃいましたように、減税による成長率の上昇、これが税収のベースを上げることも視野に入れて中期の財政見通しを示すべきであるというのは、一つのお考えとして私どもも理解し得るところではございます。  ただ、残念ながら、今の中期財政試算といいますものは極めて機械的に試算を行っているという状況でございまして、減税によりまして成長率がどの程度押し上げられるのか、あるいは、それによりましてさらにどれくらいの税収増がもたらされるかという推計を行うことはなかなか難しい、今の試算でいいますとおのずから限界があるということで、御理解を賜りたいと思います。
  189. 大口善徳

    ○大口委員 私は、財政を預かる大蔵省として、やはりこれは、数字はいろいろ変化しますから、ある一定の条件づけをして、こうこう、こういう条件つきであれば、法人税をこういうふうに減税した場合、確かに一年目、二年目はこうだけれども、三年目、四年目、五年目にはこうなるということを、大蔵省なりの計算を世間に示すことによって、大蔵省が財政についてこうやって見通しを持っていますよ、ですから安心してください、そういう部分も大事だと思います。これは、景気が悪いから、そして政治的にそういうふうになってきたから、だから渋々減税、後のことは知らないよでは余りにも無責任だ、私はこう思っているのです。  そういう点で、今なかなか見通しは難しいということですけれども、他省庁でも試みにそういうことをやっているところもあります。それが正しいかどうかはともかくとしまして、その意気込みはあります。大蔵省もそういう見通しをこれから持っていかなきゃいけないのじゃないか、私はこう思うわけですが、大臣、ちょっと御意見をお伺いしたいと思います。
  190. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大蔵省がいわば中立的な立場からそういう経済見通しを持つということは有意義なことだと思いますが、実は、中立的な立場と申し上げました意味は、今政府では経済企画庁がそういう仕事をしておるわけでございます。それが政府経済見通しになるわけでございますが、大蔵省は、その中で、例えば予算とか税とかいうものを主管しておりますから、そういう意味では、経済研究所的な中立的な作業をするのにはなかなかやりにくい部分がございます。  モデルをつくるのでございましたら、だれがつくっても本当はモデルができるはずでございますけれども、なかなかそうなりませんし、また、そういう立場からつくったものが各省庁に対して十分説得力があるかと申しますと、現実にはなかなかそうはいかないという問題がございます。  ただ、そうは申しましたが、法人統計等々は大蔵省が自分で持っておるわけでございますから、それなりに自分の立場から財政を交えた経済の姿というのを試算をしていくというようなことは、それはやはり十分意味はあるだろうと私は思います。
  191. 大口善徳

    ○大口委員 今大臣から、非常に大蔵大臣としての責任を日々感じておられる、そこからくるところのお話がございました。  昨年、大蔵省も、独自の経済モデルをつくろうということで勉強会も始めておられるようです。  そこで、大蔵省が独自の経済モデルを開発と、毎日新聞の昨年の七月十八日ですか、報道されておりますが、この動きについてどうなのか。そして、本格的に、そういう点では大蔵省がみずから財政のまさしく責任者としてこういうモデルをきちっとつくって、大蔵省としての一つの予算の編成に当たっての物差しをやはり持つべきじゃないかと思うのですが、独自の経済モデルの開発について、どうでしょうか。
  192. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 昨年、大蔵省の行政のあり方について有識者にいろいろ御議論をいただきまして、その中の一環といたしまして、中長期的な視点に立った総合的な政策の立案を行うように心がけるべきであるといったような御指摘をいただきました。  ただいま御指摘のありました昨年七月というのはそれが公表されたときなんでございますけれども、私どもも、このような取り組みの一環といたしまして、計量経済分析の技能を向上させると同時に、何とか政策効果分析を行うようなそういう研究をしたいという観点から、現在、マクロ経済モデルについて研究をしているところでございます。  これはあくまでも内部の担当部門におきまして担当者が今一生懸命研究しているところでございますが、先ほども御議論がございましたとおり、現実の政策にどのようにそれを生かすかということになると、なお研究すべき課題が多々ございますので、今一生懸命研究しているところでございます。
  193. 大口善徳

    ○大口委員 細々とやっておられるようですが、これは本格的にしっかり取り組んでいただきたいな、こういうふうに思っております。  次に、エンゼル税制についてお伺いしたいと思います。  我が党の坂口政審会長も予算委員会で質問をさせていただいて、そしてベンチャーについて大蔵大臣も前向きの答弁をいただきました。今回、基準税率といいますか基本税率といいますものが下がったりしているわけでございますが、ベンチャー税制についてはやはりしっかり拡充をしていかないと、今後の日本がこれからさらに、ベンチャーというのは一つの苗床ですから、いろいろな技術だとかそういうものの苗床であって、そこから芽を出して花を咲かせるということで、やはり日本が技術立国として生きていくためにエンゼル税制の拡充というのは大事だと思うのですね。  そこで、今、創業者利益の特例というようなことがなされていたり、公開後一年以内の期間の制限があったりと、創業者利益の場合は、所得の圧縮率が二分の一なんですが、それの拡大ですとか、公開後一年以内という期間の要件ですが、これを緩和するとか、そういうことが考えられます。  それから、よく言われているのは、投資株式の損失について、株式譲渡益以外の所得との損益通算を認めるべきではないか、あるいは、イギリスのように株式投資に係る税額控除の制度を導入すべきではないか、こういうことも経済界等からも言われております。  大蔵大臣が、ベンチャーについていろいろ考えなければいけない、こういう前向きの答弁でございましたので、それとの関連で、今私が言ったようなことについてどう考えておられるか、お答え願いたいと思います。
  194. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 坂口委員の御質問がございまして、やはり、これから日本の将来を考えますと、ベンチャーキャピタルをどうやって育てるかというのは極めて大事な問題だと私も思っていますものですから、大抵のことはやったらいいなぐらいには思っております。  それで、主税局でもそのことはわかっておりまして、例えば創業者利益の課税の軽課とか、あるいは損をしましたときの後ろ向きに引きます控除を広げておる、いろいろなことはしておりますが、株式によって生じた損失をほかの所得に広げるというところだけは、これはどうもなかなか論がございまして、いろいろ議論があるように思います。  主税局長がこれからお答えいたします。
  195. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 まさに大臣からお話がございましたように、新しい企業を育てるというのは大切な政策課題だと思います。今、株式の方についての税制お尋ねがございましたが、今年度でも、いわば繰り戻し還付を新設企業に認めるという形で税制面からのお手伝いをさせてもらっているわけでございます。  なお、株式譲渡益課税に関連いたしまして、株式の税制関連いたしまして何点か具体的な御提言がございました。  一つは、創業者利得の特例を拡充すべきではないかということで、いわば現在、店頭登録一年以内の場合には半分にしておるわけでございますが、それをもっと広げたらどうか、さらには一年という制限をとったらどうかというお話かと思います。  実は、この制度、店頭登録になる場合に、恐らく額面の十倍、二十倍というものになりまして、何億、何十億、何百億となりかねない話でございます。やはり、そういう新しい事業を起こした人に対する一種の報酬といったらおかしいんですが、やる気を起こすということで現在やっているわけでございますが、これ以上の優遇ということになってまいりますと、それじゃそれ以外の税制との公平をどう考えるかというような問題もどうしても出てくるわけでございます。  なお、公開後一年以内にというふうにしておりますのは、現在まだ源泉の選択分離課税が残っておりまして、そちらの方へ行けるというようなこともあって、現在一年にしているわけでございます。  それから、もう大臣から既にお話がございましたが、現在あるベンチャーの三年の繰越控除を他に広げられないかということでございますが、御承知のように、譲渡損失といいますのは、いろいろなときに納税者の任意に出せるようなところもございまして、実は、総合課税を行っているアメリカでもそれは一定額に制限しておりますし、ではほかの国はどうかというと、それは認めていないようでございます。  したがいまして、この譲渡損失の取り扱い、実は、所得税の抜本見直しをする場合の一つの、この辺どう考えるんだというのはあるわけでございますけれども、現状ではなかなか難しいなと思っているわけでございます。  それから、イギリスで行われているような税額控除というようなお話がございました。これもいわば所得税課税ベースを著しく侵食するというようなことにもなりますし、なかなか仮装的な取引を禁ずるのも難しいなというようなことがございます。ただ、そういう意味でいいますと、私ども、現在も税制で考え得ることはやっているつもりでございますが、あわせまして、ベンチャー援助のためには、融資の面からあるいは予算面から技術支援等々を含めまして総合的にやっておりますので、私どももなお課題があるとは思っておりますが、やはり財政全体でベンチャー支援を考えていかなければならないなと思っているところでございます。     〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
  196. 大口善徳

    ○大口委員 日本は資源がないところですから、とにかく技術の革新のためにやはり相当これから力を入れないと大変なことになると危機感を持っていただきたい、こう思っております。  次に、住宅ローン利子所得控除制度というものは今回導入されませんでした。これは、借入金に比例して減税額が大きくなるということで、投資の刺激効果というのは結構あって、良質な住宅ストックの形成ができると思いますし、また、ローンの全返済期間を通じた減税制度でありまして、これは利子分を控除することで将来の金利上昇負担が緩和されるということもございます。なかなか買いかえが促進されていないということで、これをやることで買いかえ促進にもなる。  私は、この利子所得控除制度ということが課税ベースを狭める、大蔵省にとっては一番嫌な制度であることはわかっておるわけですが、しかし、これだけ住宅が落ち込んでいる場合は、今回大幅に住宅ローン税制が拡充されましたが、さらにこういうオプションも用意して、全力で住宅の建設を促進するということであってしかるべきじゃないかな、そんなことを思っています。また、既にローン返済をしている者に対する税制措置ということなんかもここに組み入れていったり、いろいろ工夫ができるんじゃないか、こう考えておるのですが、いかがでございましょう。
  197. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 来年の経済回復には、やはり住宅投資を促進するということが極めて重要な課題と認識しているところから、今回御案内のような住宅ローン税額控除制度を大幅に拡充したものにしたわけでございます。私ども、建設省その他からもいろいろ話を聞いておりますが、この制度の創設もあってお客さんが大変来ているというふうにいろいろ聞いているところでございます。  いずれにしましても、十一年、十二年の期限を切って思い切った措置を講じたところでございまして、ぜひこの機会に住宅投資がふえるということを我々大いに期待しているわけでございます。  なお、先生の方から、まさにローン利子控除をとった方がもっといいのではないかというようなお話がございました。  これは、実は所得税の基本的な問題、長々しく申し上げませんが、所得税に利子控除制度を持ってくるというのは、所得税制の考え方にどうしてもなじまないところが一つあるわけでございます。  それからもう一つは、税額控除に比べますと、いわば中堅所得者層以下では累進税率が低くなってきますから、かえって利子控除の方が負担軽減効果が小さくなるという問題がございます。  また、所得や金利水準いかんによっては、逆に今の制度よりも促進効果が低くなるのではないかというようなことがございまして、これは実は政府等の税制調査会で最後の最後まで大いに議論になったわけでございますが、今回の措置が各般の面から見て適切であるということになったわけでございます。  なお、既往の住宅ローンをお借りになった方のお話がございました。一般的に言いますと、今回の制度景気対策ということでございますので、このような過去に住宅を取得した人がそれをお売りになってまた新たに取得するような場合には、損失の繰越制度と同時に本制度の併用を認めるというような形で、この面でもできるところは対策をとらせていただいているところでございます。
  198. 大口善徳

    ○大口委員 時間もあと五分というようになってまいりました。きょう実は予算委員会におきましても、企業財務二〇〇〇年問題ということで、二〇〇〇年度から、退職給付の債務、費用を顕在化させる、こういうことで新会計基準が適用されるわけであります。  そういうことで「退職給付に係る会計基準の設定に関する意見書」というのが企業会計審議会から出まして、そして公認会計士協会が実務指針を今策定しているところである、こういうように聞いておるわけです。  この退職給付に係る会計基準が設定され、基準が適用されることになりまして、これは野村総研の調査室の主任研究員の試算ですが、退職給付債務と費用について試算しておりまして、これは金融機関を除く資本金一億円以上の企業、これについて計算をしますと、割引率が三%の場合でも積み立て不足が四十五兆円ということ、そして割引率を二%にすると積み立て不足が五十九・七兆円。八十兆ぐらい積み立て不足があるんじゃないか、こういうふうにも言われているわけですね。  そこで、企業が持っている株式というもの、これを厚生年金基金や税制適格年金に現物移管をする、これは法改正が要るわけですけれども、こういうことについてどう考えておられるのか。  そしてもう一つは、企業会計原則という観点からいって、労使が合意をして、そしてその合意に基づいて信託銀行へ退職給付という限定した目的のために株式等を信託する、信託方式というふうに私は名づけておるわけでありますが、こういう信託方式をした場合に、それが年金資産として取り扱いがこの企業会計基準でできるか、こういう二つの課題があると思います。  ソニー等はこの信託方式によって対応しているようでございますが、この二つのことについて、大蔵大臣も予算委員会で厚生大臣と私のやりとりを聞いておられたんじゃないかと思うのですが、どうお考えでございましょうか。
  199. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう御議論がだんだん現実性を帯びてきているように拝見していますので、当然のことながら関心は持っております。  承るところでは、従来、掛金というのは現金をいうのであって現物は意味しないそうでございますので、それは法律改正が必要であるとか、あるいは、その信託というようなことはうまくいくのかな、いろいろ私ども勉強しなければならないことが多うございまして、当然そこに税がまた関係をしてまいると思いますので、いろいろ御議論の進展に関心を持って見ておりますけれども、ちょっと帰趨もわかりませんので、今先へ進んで、こう考えますと言うことは控えさせていただきたいと思っておりますけれども、関心は持っております。
  200. 大口善徳

    ○大口委員 きょう厚生大臣も、法改正をしてでも受け入れる用意がございますとか、あるいは信託方式についても同時にいろいろ考えていいのではないか、こういう答弁もございました。  そういうことも踏まえまして、厚生省、大蔵省で、この問題は非常に喫緊の二〇〇〇年問題、もう一つの二〇〇〇年問題と言われていますので、早急に検討して結論を出していただくようにお願いいたしまして、私の質問とさせていただきます。どうもありがとうございました。
  201. 鴨下一郎

    ○鴨下委員長代理 次に、若松謙維君
  202. 若松謙維

    ○若松委員 公明党の若松謙維でございます。  先週の予算委員会では、大蔵大臣初め大勢の御答弁をいただきましてありがとうございます。きょうは引き続き、そのときに質問できなかった点も含めて、金融問題について触れさせていただきたいと思います。  まず、これは柳沢委員長への質問になると思うのですけれども、御存じの景気対策景気を浮揚するには早急に不良債権処理を完了することが絶対条件、これは大方の認識だと思います。  それで、質問通告していますから若干前後関係がずれますけれども、まず柳沢委員長に、一月二十五日に金融再生委員会から「資本増強に当たっての償却・引当についての考え方」が発表されました。そこで、ことしの三月期決算で、いわゆる第三分類と呼ばれる破綻懸念先債権については七〇%の引き当て、そして第二分類と呼ばれる三カ月以上延滞債権及び貸し出し条件緩和を行ったリスク管理債権は一五%引き当てを行う、こう述べております。  そうしますと、平成十年九月期、昨年の中間決算ですけれども、大手主要十七行のリスク債権金額は十八兆二千億円あるわけですけれども、この九月期の決算のときは、この七〇%、一五%ルールは適用されておりません。  そうしますと、ことしの三月期の決算で、この金融再生委員会の一月二十五日ルール、これにのっとって不良債権処理を行う、こういうことをしっかりやって、この大手行の金融機関の不良債権を一括処理して今期決算で決着する、そういう理解でよろしいですか。     〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
  203. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 先生おっしゃるとおりでございまして、私ども景気対策はもとより、日本の金融システムに対する信認が揺らいでいる、こういう事態を一日も早く克服するためには不良債権の処理が一番大事である、このように考えておる次第でございます。  その場合に、不良債権の処理とは一体何かということでございますけれども、もちろん、破綻先あるいは実質破綻先の言ってみると一〇〇%引き当てを要するような債権について、直接償却をしてバランスシートからこれを消し去るということが大事であるわけですけれども、同時に、先ほど先生が言及されたような、例えば要注意先の管理債権あるいは要注意先債権というようなものの引き当てについても、これまでよりも手厚い、外から見てどうも引き当てがいいかげんではないかと言われるようなことは全くないような、そうした十分な引き当てをするということもまた同時に大事である。  こういうような考え方をとりまして、会計基準は会計基準として尊重するとしても、今度の資本増強に当たっては、これに関する限りは、今言ったような若干会計基準を離れた引き当てをして信認を確立するということを考えたい、このように考えまして、先生御言及のとおり、去る一月二十五日に償却と引き当ての考え方を明らかにし、これによって三月末の決算を行って、そして今言った不信を払拭したい、こういう考え方をとるということに決定したということでございます。
  204. 若松謙維

    ○若松委員 やっとこれで大手銀行の不良債権が一つめどが立ったということで、これはぜひしっかりやっていただきたい、それを強く要望いたします。  それでは、続きまして、この一月二十五日方針の公表前に各行が発表しておりました本年三月期の決算の不良債権処理額、これが七兆一千四百二十億円という予測がそれぞれの銀行の自己申告で出てまいりました。この一月二十五日の方針を適用すると、先ほどのいわゆる二十五日発表前と比べて厳しい、七〇%、一五%というのは厳しいルールですから、当然最終的に引き当て額の予想もふえますでしょうし、それに伴う不良債権の処理というのですか、それもことしの三月期は、先ほど言った一月二十五日前に発表した、各行が自己申告して集計した七兆一千四百二十億円、これをかなり超えると思うのですけれども、ことしの三月期での不良債権の処理額及び引き当て額というのですか、これが幾らになるか、大体予想がつきますか。
  205. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 率直に申し上げまして、今私ども資本増強あるいは資本注入の手続の真っ最中にございます。そういうようなことでございまして、例えば東京三菱さんと固有の名前をあえて挙げさせていただきますが、こういうようなところについては、実は今回はどうも申請がなさそうでございます。  そういうようなこともありまして、今先生が御言及になられたようなベースでにわかに今ここで数字を申し上げるような、ちょっとそういう状況にないものですから、大変恐縮ですが、お答えをいたす準備はございません。
  206. 若松謙維

    ○若松委員 手続論からいうと、委員長の答弁もわからないでもありません。  では、ちょっと事実関係を確認させてください。  今度は公的資金注入と経営合理化という観点から同じく委員長にお聞きしたいのですけれども、そうすると、いずれにしても、三月期の引き当て額もしくは不良債権の処理額が幾らになるか、今のところわからない、答えられないという話で、恐らく各行とのやりとりも継続中だと思います。  そうしますと、公的資金注入のスケジュールですけれども、五日までに申請、かつ三月三十一日に資本注入が行われる、大体こういう予定ですね。その前提となる、いわゆるどのくらい公的資金を導入するとか、そういう内示が二月十二日に行われました。  そこで、私どもの方から金融再生委員会の方に、翌日の十三日、マスコミにでかでかとかなり個々に具体的な数字が出まして、お話を聞いたら、これは全くの推測記事ですと。あれだけべたべた出て、金融再生委員会は全く発表しておりませんという、何かこういう事実も、この国はどういう国かなと疑わざるを得ないのですけれども、それはおいておいて、いずれにしても二月十二日に内示が行われたわけですが、このときには具体的に各行に公的資金投入の金額は述べているのですか。
  207. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 金額について内示をしたなどというようなことは全くないわけでございまして、その日に行いましたことは、公的資金導入、この金額はまだ不明でございますが、この導入を前提として、大方の金融機関につきましては、臨時の株主総会等で優先株の発行等についての授権を得る必要があると申しておりますので、この臨時の株主総会等が必要な金融機関におかれてはそういうものを開いていただくことは差し支えありません、こういうことを申し上げたというにとどまっております。
  208. 若松謙維

    ○若松委員 あれだけのいろいろなマスコミが、少しずつ数字が違っている面もありますけれども、そうすると、あれは各行から直接聞いた一つの集計としてマスコミに載せたのですかね。  こういう事実に対して、ただ漠然と金融再生委員会として眺めているというのも適切じゃないと思うのですよ。何をその場で言って、何を言わなかったのかというのをしっかり整理していかないと、大蔵と日債銀、二つの関係者、当事者だけでいろいろやって、最終的に大勢を巻き込んで、みんな知らなかった、そんな二の舞になる可能性がありますので。これは何を言ったのですか、この内示のときに。
  209. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 言ったものは、文章にして多分事務当局の担当官が読み上げておると思います。その文章を私今手元に持っておりますのでお伝え申し上げますと、「経営健全化計画や引受株式等の商品性については引き続き検討を行うが、公的資金による資本増強を前提として、今後の株主総会等の手続きを進めることとして差し支えない。」以上を申し上げたということです。
  210. 若松謙維

    ○若松委員 なるほど。そうすると、では、言い方をかえれば、将来、公的資金を投入する予定はこちらにもあります、それをあえて、ちょっとまどろっこしいですけれども、今の表現として発表されたわけですね。そういう理解でいいと思いますけれども、特に違いありませんね。  そうしますと、では、要はそういう公的資金投入の一つのシグナルというものを、その日、各行を呼んで同じ文章を恐らく官僚の方が読んだと思います。  いずれにしても、今後この早期健全化措置におきましては、経営の合理化というのが大変重要だと思うんですね。ところが、マスコミ報道等で漏れ伝わるのが、金融再生委員会と各行とのやりとりの中で、いわゆる金融機関が考えている経営合理化努力、これについてまだ非常に不十分だ、そういう認識が伝わってくるわけですけれども、では、どの程度各行が経営合理化努力をすれば公的資金を投入するのか、そういったところは大変重要な一つのメルクマールというか基準になると思うんですね。それをぜひわかりやすく説明していただけますか。
  211. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 先ほど私が申し上げましたように、経営健全化計画やあるいは商品性については今後まだなお検討するがと申し上げておりますのは、これは実は金融再生委員会の議決第一号の優先株等の配当率等に関する基本方針というものが議決され、発表されておるわけでございますけれども、そこにございますように、経営健全化計画の内容によって信用のリスクの低下というものが見込まれる場合には、それを配当等に反映させるということになっております。つまり、経営の健全化がより一層進むということが見込まれる場合には、投資家としての国の目から見て、リスクがそれだけ低下をいたしますので、それを条件に反映させることができる、こういう仕組みになっておるわけでございます。  さらに、商品性についても同様でございまして、商品性というものの性格づけいかんによっては、私どもの方の条件を有利にも不利にもそれに応じて変更するという立場を私ども既に明らかにいたしておりますので、そういう意味合いで、今後最終の、つまり正式の申請、これらに関する経営健全化計画あるいは商品性に関する申請内容いかんによって条件が定まってくる、こういうことを申し上げているわけでございます。  既に内々に経営健全化については、その内容も各金融機関、一生懸命努力をして、こちらにその内意を伝えてきておるわけでございますけれども、今後、正式手続、つまり株主総会を終えてそれぞれの金融機関が権限を持って申請をしてこられる、この申請内容によって私どもがいろいろ判断をさせていただく、場合によってはその示された判断について、それを見てもう一度彼らが再考するということもあり得ようかと思いますけれども、いずれにしても、そうした正式の手続は今後に行われることになっておるということでございます。
  212. 若松謙維

    ○若松委員 そうしますと、今の説明を前提に確認をいたしますと、三月五日までに正式申請があって、五営業日の後、三月十二日、金曜日までに正式審査、承認と。承認については早期健全化法第五条第二項でその内容を公表するということで、当然各行の経営合理化努力も公表される、そういう理解でよろしいわけですね。
  213. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 五日までにというのは事務当局が内々に腹案として定めているスケジュールでございまして、別にこれが拘束力を持って云々というようなものでないものですから、まずその点をお断り申し上げておきたい、こういうように思います。  それで、その後につきましても、私どもまだスケジュールを確定しておるというわけではございませんので、今後いろいろなお互いのやりとりの中で、三月末までに注入は行われるということになろうか、このように思っております。
  214. 若松謙維

    ○若松委員 承認された経営合理化努力、これは公表されるのは事実ですね。
  215. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 失礼いたしました。  経営健全化計画については、これは法律にございますとおり、基本的に公表するということになっております。先生がおっしゃるとおりでございます。  ただし、企業の利益を害するとか、そういう特定の事項については除外の規定法律上盛り込まれておりまして、私どもそれに従って適切に処理いたしたい、かように存じております。
  216. 若松謙維

    ○若松委員 わかりました。  それでは、この経営合理化努力の内容についてお伺いしたいんですけれども、恐らくことしの三月末に公的資金の金額が、マスコミ報道では七兆後半台、そんな話がありますけれども、いずれにしても八兆前後のお金がつぎ込まれるわけです。  それで、本来、この早期健全化措置ですけれども、いわゆる八%以上という前提ですけれども、実際にこの考え方なんですけれども、いわゆる償却がありますね。さっき七〇%、一五%ルールなりを三月までに適用すると、適用した後の自己資本比率をやると、恐らく八%以下になると思うんですよ。そうすると、今度は、この場合には経営合理化努力じゃなくて強制的なリストラになるわけですよ。それを、事前に公的資金を導入して、それで償却した後の八%以上ですから、公的資金をもって、いわゆる甘い、非常に手厚い介護なんですよ。それは、金融システムが大事だという観点から仕方がないと思うんです。  ところが、では、今の民間金融機関が経営努力をやっているかというと、私はどうもそう見えないんですね。  その一つの参考に、これはほかの委員の方も資料をお配りしておりますけれども、この産業間の賃金格差、九七年度の棒グラフを見ていただきたいんです。これは、労働省の賃金構造基本統計調査をもとに、性、学歴、年齢、勤続年数を同一条件としてパーシェ式という方式で算定した年間賃金指数、九七年ですけれども、いわゆる産業名は中分類でやっております。  これについて見ますと、全産業の平均を一〇〇とした場合ですけれども、見てください、一位放送業、NHKを含みますよ、保険業、電気業、銀行信託業、証券商品取引業、この上位五社は全部規制業種ですよ。それで、輸送用機械器具製造業、いわゆるトヨタ、日産、本田とかという車のメーカーですね。さらには、電気機械器具製造業、ソニーとかパナソニックとか、こういう三十一位、三十二位というところが日本の戦後の高度成長を支えてきたまさに主役社なんですよ。  ところが、賃金格差を見ますと、九七年で比較しますと、例えば先ほどの車のメーカーの九八・六と比較しますと、銀行信託業が一二〇・九。そうすると、この比較でやると二三%も銀行信託業が高いんですね。これは地銀等も含んでおりますから、いわゆる今回の公的資金投入の対象となる大手行を含むとそれ以上なんですよ。恐らく五割近い差があると思うんですね。  これを、では、製造業のいわゆる工場でまさに油まみれで働いていらっしゃる、そして日本経済を支えてくれた方々に対して、八兆前後の公的資金を投入しながら、最終的にこういう賃金格差がいまだに改善されないで、みすみすと十兆円近くの公的資金が投入される、これはどうしても納得できないと思うんですけれども、これについて大蔵大臣はどう認識されますか。大蔵大臣としてまず御認識をいただけますか。いいです、官僚の方が言ったって、何答えるんですか。どうぞ大蔵大臣、心情的な質問で恐縮ですけれども
  217. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 きちんとしたお返事は申し上げられませんけれども、一昨年あたりから金融界に非常な異変が起こりまして、早期是正措置があるというようなうわさもあり、貸し渋りなどが起こってまいりましたのですが、その辺からかなり金融界にリストラの空気が流れておりまして、今御批判のような批判は世間的にも随分強くなってまいりましたから、リストラに含めて、今の給与の問題などもかなり真剣に議論になっておったのは事実と思います。ただ、私見ておりまして、そうではあるけれども、まだまだそのころの認識というのは、どうだろうかなというようなところを残しておりました。  その後、昨年国会でかなり具体的な銀行についての御議論があったりいたしましたものですから、そのあたりから給与についてはかなり、人員につきましても厳しく、いわば自衛の問題としておのおの考えるようになっておられるようですが、何分にも長年の積み重ねがありますし、下から上へ給与というものは積み上がっておりますから、恐らくそうはいってもまだかなり高く残っているんではないかと思います。ただ、かつてのようなことは確かになくなっております。  そして、金融監督庁あるいは再生委員会がどういう御注意をなすっていらっしゃるのか、具体的には伺っておりませんけれども、当然そういうやりとりの中で、いわゆるリストラクチャリングの話としてそういう話は出ているのだろうと想像いたしますし、また金融界自身も、殊に、おっしゃいましたように、今の計数は多分全国金融機関かあるいは第二地銀ぐらいまで入っている数字ですから、マネーセンターバンクスはあの中でかなり高いんではないかと私は思います。それは、御当人方々もかなり厳しく感じておられて、そういう努力が続けられておるというところではないかと私は見ております。
  218. 若松謙維

    ○若松委員 今の大蔵大臣の答弁は、要はかなり高く残っていると。やはり大先輩の表現は格調高くてすごいなと思うんですけれども、いずれにしても、リストラをやりながらもまだ大きな差が残っているというお話でした。  それでは、二つの点から指摘しながら、今度は柳沢委員長にお聞きしたいんですけれども先ほどのいわゆる輸送業とかそういったところ、一部不況業種ということで国では雇用調整助成金の対象になっております。  まず事実関係ですけれども、こういった産業に対する国の助成金ですけれども平成十年度が五百四十二億五千九百万円、平成十一年度の予算額が六百十一億一千六百万円ということで、金融機関の公的機関と二けた違うんですね。まずそれが一点。  それで、もう一つ目が、先ほどの要は経営合理化。恐らく金融再生委員会立場から金融機関の収益率、いわゆるROEですね、そういったところをもっと高めようということで、そうしたら従来の人員を維持することもできない、従来の給料を維持することもできない。そういうことで、現在の給料レベルを維持するならば人を減らすしかないわけですよ。現在の人を維持するには給与を下げるしかない。正方形ですから、どっちかしかないわけですよ。  本当にROEを高めながら、かつ公的資金という巨額の、金融機関にいわゆる金融システムの確保、安定化という観点から巨額のお金が投入される。これはやはり国民の目から見て、本当に金融機関のリストラというものが、まさにこういった製造業並みの、具体的には製造業の組合は何をやるかというと、経営者側からいついつまでに二百五十人リストラしてくれ、それに対して組合側として交渉して、同じ仲間を首切っているという現状で今何とかしのごうとしているんですね。それから比べれば、今金融機関の特に大手の十五行のリストラ案というのは完全に甘いですよ。  こういう事実関係をもとに、柳沢委員長として今後どういうふうに経営合理化努力を要求して成果を得ていくのか、それについて答弁いただけますか。
  219. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 今回、金融の信認を回復するために資本の増強が必要であるという見地から公的資金を注入させていただくわけですけれども、これはある意味で私ども、特に今株式形態を進めさせていただいておるという観点からいたしましても、実は資本のダイリューションというか希薄化というものも起こるわけでございます。それだけに、ほっておいても、実はROEを維持するだけでも大変ということになるわけでございまして、そういう大きな資本を持ちつつ一定の収益率、ROEを上げていく、しかも、できればそれを維持するだけではなくて上昇させていかなければならないということからいたしますと、金融機関に係るリストラクチャリングの必要性というか、そういうものは非常に強い、高いものがあるということは、先生は専門家でもう釈迦に説法かと思いますけれども、そういう状況に立たされておるわけでございます。  そこで、人件費の問題ですけれども、リストラの分野各面において行われなきゃならないということの中でも、やはり人件費というのは大きなファクターとして既に意識されておりまして、彼らも彼らなりに努力をして、今までの年功型の給与体系からできれば職能体系への転換を徹底してやりたい、こういうようなことを既に申し出ているような次第でございます。  ただ、もちろん、今先生が引用になられた雇用調整助成金等の支給を受けているような企業がある中で私がこういうことを申してはいかがかとも思いますけれども、私は、できれば職能的な給与体系にするということが非常に大事であって、押しなべて全員の給与をカットするというようなことをやった場合、今の日本の金融業界に一番必要とされる革新、イノベーション、こういうようなものの能力をそいでしまうおそれもあるじゃないか。このあたりについても配慮しながらその問題は進めなければならない、こういうように私としては考えている次第であります。
  220. 若松謙維

    ○若松委員 先ほど何か資本のダイリューションとかいうお話がありましたけれども、要は、今の年功序列はもう持てないわけですよ、これは公務員の皆さんも含めて。職能給ということは当然のごとく。ただ、金融機関の今まで犯してきた、ある意味ではバブルの張本人。ですから、まずそこは最低全員応じて負担しなくちゃいけないんですよ。その上で職能給なりをベースにしてやる。  もう一度確認したいんですけれども、いずれにしてもこの金融リストラというのは、私は国民の監視というのは非常に厳しいものがあると思います。その上でリストラをどんどん厳しくやってもらいたい、本当にROEを高めるために、ダイリューションにならないように。さらに、そのリストラ案が、これはちょうど大和総研でいろいろとまとめているのがありますけれども、本当に厳しいところだけが、例えば給与、行員一〇%カットとかいっていますけれども、この表から見ますとそれも三分の一ぐらいで、またほかの三分の二はどこかの話だなという感じですよ。  そうじゃなくて、三月の資本投入をする際にリストラが不徹底な場合、まさに製造業並みに、比較していただいて不徹底の場合にあくまでも資本投入しない、そういうはっきりした強い意思を持って、金融機関の資本注入を申請するための経営合理化努力、これを強く求めていっていただきたいと思うのですけれども、柳沢委員長、答弁願います。
  221. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 先生のおっしゃるお気持ちはよく理解をいたしております。正式申請があった場合の審査に当たっては、ROEの維持向上、そういうようなことのためにもリストラを強く求めていくということは、これはもう当然の前提として取り組まなければならない、このように私どもも考えております。
  222. 若松謙維

    ○若松委員 これはまた公表されますので、先ほどのリストラ案、経営合理化案、それについて、それを見ながらまたこの委員会でしっかりと追及をさせていただきたいと思っております。  時間があと十分強になりました。ちょっと質問の観点を変えて、今日本の企業で資金調達的に、これは金融システムも関係するのですけれども、バブルが起きてリカバーがなぜ遅いのかというと、結局は間接金融に頼り過ぎなんですよ。いろいろな技術がありながらも、いわゆるベンチャービジネスをやろうとしてもお金が出ない。当然、銀行からの借り入れですけれども、やはり自己資本なり最低のものが金融機関もシステム安定のために必要なわけですから、ましてや普通のベンチャービジネスの方、アントレプレナーの方も必要だと思います。  ところが、それに対して、欧米は大変ドライな金融機関と企業との関係がありまして、企業が、いわゆる企業継続能力、英語でゴーイングコンサーンと言っておりますけれども、この企業継続能力に危険が、いわゆる黄色信号が、黄色ランプがついたときにその事実の情報を決算書に開示しなくちゃいけない、そういう会計基準が、これは国際会計基準だけではなくて、アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、ドイツ、フランス、これはちょうど資料を各委員にもお渡ししておりますけれども、そういうものが要求されております。  ですから、例えば去年、日本リースがつぶれました。これは、長銀の支援の結果によってつぶれるかつぶれないかという話です。本当は去年の三月決算期で、この日本リースについては、その決算書の情報として、まさに長銀の支援の結果によって企業継続能力が危ない、そういう情報提供を普通の国の会計基準では求めているんです。かつ、公認会計士、監査法人もそれに対しての意見を述べるということです。  私も八三年にアメリカに行ったときに、日系企業、子会社ですけれども、ほとんどが過少資本で債務超過で、それに対して、普通ならば銀行借り入れはないわけですから、本社の支援がなくては企業は継続できない。必ず、このゴーイングコンサーン、企業継続能力は注記を求められます。それで、会計士もそれに対して意見を述べます。  これが実は日本にはありません。非常にみっともない話です。それが、いわゆる間接金融にずっと頼ってきて、銀行金融に頼ってきて、ある意味で金融機関に対する甘えの構造が今まで改善されていなかった。これは早急にゴーイングコンサーン情報を日本でも導入すべきと思うんですけれども、まず大蔵省、これについてどうですか。
  223. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  今先生が言われましたいわゆる企業の継続能力に関する情報の開示の問題でございますが、先生、これは極めて詳しく御存じのように、我が国制度におきまして今二つ一つは証券取引法第百九十三条に基づく規則、そこの中で、「この規則において特に定める注記のほか、利害関係人が会社の財政及び経営の状況に関する適正な判断を行うために必要と認められる事項があるときは、当該事項を注記しなければならない。」とされております。いま一つは、やはり先生が指摘されました公認会計士の監査についても、企業会計審議会の定めました監査報告準則におきまして、「重要な偶発事象、後発事象等で企業の状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにするため特に必要と認められる事項は、監査報告書に特記事項として記載するものとする。」とされているわけでございます。  したがいまして、先生がおっしゃった意味での水準がということになりますといろいろあるかもしれませんが、現行制度におきましても、企業の継続能力に問題がある場合には、経営者や公認会計士の判断により注記や特記事項として開示されるというぐあいに考えられるわけでございます。  今、先生がお示しになられました資料で、確かに各国の監査基準とか国際的な基準等におきまして企業の継続能力に関する監査基準が設けられていることは承知しております。しかしながら、これはまたいろいろ各国の商慣習等も踏まえなければなりませんので、今後ともそれらも踏まえながら検討してまいりたいと考えております。
  224. 若松謙維

    ○若松委員 では、大蔵省、今証券取引法でいわゆる利害関係人に関係するものはすべきだと。全く、逃げないでください、そういういいかげんな答弁で。日本リース、ちゃんと情報開示しましたよ、これ。世界の標準なら開示すべきでしょう。いいですか。有価証券報告書を届けるとき、あなたたちチェックするでしょう。何か言いましたか。それがなかったら、今の答弁を訂正してください。
  225. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 今先生が言われました具体的な会社のことについてのその記述があったかどうか、ちょっと私今手元に資料がございませんので、お許しいただきたいと思います。
  226. 若松謙維

    ○若松委員 これは委員長、後でその事実を委員会にちゃんと書面で報告させて、それで、日本リースでさえもそういう事実がなければ、このゴーイングコンサーンの事実がなければ、もうあなたたちの怠慢ですから、わび状をちゃんとこの委員会に出してくださいね。  委員長、ひとつ取り扱いをお願いします。
  227. 村井仁

    村井委員長 委員長から申し上げます。  扱い方につきましては、また改めて理事会で協議させていただきます。
  228. 若松謙維

    ○若松委員 ぜひほかの先生方も、このゴーイングコンサーン情報というのがどれだけ大事かということを認識していただきたいのです。これが今までなかったから、あいまいに企業の決算書というのがただ出て、ただ使われて、最終的に資本市場というリスクをとる市場が育たなかったということなんですよ。大蔵省、ちゃんと考えてくださいね。  大蔵大臣に答弁を求めたいんですけれども、時間がなくなってしまいますから、もう一つ、企業会計設定主体の強化と国際会計基準委員会への対応ということで聞きたいんです。  今これだけ、日本のバブルのいわゆる戦後処理で、結果的にその処理もおくれている。決算も会計書類も後手後手で出てくる。例えば時価会計、これからは導入されますけれども、八〇年代前半のとき、欧米では常識でしたよ。時価会計というのは、含み益も出すし、反対に含み損も出すという、もう裸にさせる会計処理です。二十年後になってやっと導入するかしないかというこの程度です。  なぜこれだけバブル処理をおくらせたか、日本の会計基準がある意味で世界のグローバルスタンダードにおくれたかというと、結局は、今日本には企業会計審議会というのがありますけれども、例えばFASBというのがアメリカにありますけれども、何百人といるんですよ、日本はこの企業会計審議会に常駐の委員がだれもいないんですよ。今、大蔵の金融企画局ですか、そこがパートで事務局を受けている、その程度なんですよ。ですから、最終的にいわゆる機動力のある対応ができないで、会計原則が後手後手で出て、やっとバブル処理を何とか間に合わせているということが最大の原因なのですね。  一方、これもしていただきたいのですけれども、国際会計基準委員会というのがございます。これはIASCという、今話題になっております。これが、昨年の十二月に、戦略作業部会公表という形でIASC、国際会計基準委員会の将来像というディスカッションペーパーが発表されて、ことしの四月までにこれに対する回答を関係諸団体が出さなくてはいけない、こういう状況になっております。  このペーパーですけれども先ほどの国際会計基準委員会理事会というものをもっと強くして、それぞれのG7並みのそういった大国が人もお金も出して、ここでいわゆる会計基準をつくって、それがそのまま各国に適用される、そういう一つの戦略プランです。  それに対して、質問が二つあるわけですけれども一つはまず、先ほど言いました日本の場合の企業会計設定主体である企業会計審議会、これをやはり体制強化をするために、経済団体、日本公認会計士協会、こういったところも人、物を出すべきだ。いつまでも大蔵省がパートタイムでそういう事務局をやっているのはもう卒業すべきだ。それが一点。  そして二つ目は、この国際会計基準ペーパーですけれども、これに対してどう対応していくか。当然、いわゆる大蔵省として――これは通産省も実は問題なのですね。今まで会計基準を大蔵省に預けてしまって、通産省は何も産業に対して物を言ってこなかった。そういう面もあって、先ほどの大口議員の退職金とか企業年金とか、いろいろと負の遺産が出てきます。大蔵省として、このIASCペーパーに対してどう対応するか。  この二点について、大蔵省の答弁をいただけますか。
  229. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今のお話は、要するに、仮に銀行について申しますならば、護送船団行政の時代には、役所も楽、銀行も楽、公認会計士さんもある意味で少しお楽だったのだと思いますが、しかし、そういうことはもうできなくなりました。  そこで、銀行は自分で自分のことをしなければならない。ただ、自分の監査は自分でできませんから、それはやはり監査法人にお願いをしなければならない。それで間違いがあれば監査法人にもそれなりの責任をしょっていただくわけです。それは恐らく、今おっしゃいましたように、やがてゴーイングコンサーンの判定まで、基準がはっきりすれば、きっとしていただくことになるのではないでしょうか。それがないものですから、けさほどからいろいろな、どこまでがだれの責任ということがはっきりしなかったのが昨年来のケースです。  同じように、さっきおっしゃいました財務会計基準審議会、それなんかにもやはり入っていって、国際的なスタンダードで日本もやっていくしかやりようがない。そうでないとグローバリゼーションはできないわけですから、そういうことになってまいるのは必至だと認識しています。
  230. 若松謙維

    ○若松委員 ぜひ大蔵大臣、そのお考え、御認識をしっかり官僚の皆様に伝えて、実効あるものに仕上げていただきたいと思います。  本当は、局長なりの答弁を求めようと思ったのですけれども、それは筋違いですから、この点についてはこれで終わりますけれども、いずれにしても、この二点、日本の二十一世紀のまさに企業のあり方を本当に問うものですので、ひとつ大蔵大臣、これはしっかりと見ていただきたい。これは切にお願いをいたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。若干オーバーいたしました。
  231. 村井仁

    村井委員長 次に、石井啓一君。
  232. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。  まず、公的資金注入について柳沢大臣にお伺いをしますが、今若松委員とのやりとりの中で、私の当初予定していました質問と若干ダブりますので、なるべく重複を省いて質問をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  まず、二月の十二日の夜に、公的資金による資本注入申請を予定している十五の銀行に資本注入の内定を通知した、この件を確認しようと思いましたが、今のやりとりの中で御答弁がございましたので、ちょっと私の方から確認したいと思います。  経営健全化計画や商品性については引き続き検討するが、公的資金導入を前提として株主総会を開いていただいて結構だ、こういうことを文書でそれぞれの銀行に通知した、こういうふうなことでございます。  そういたしますと、公的資金注入を前提として株主総会を開いて結構だというこのところは、要するに、公的資金注入を行うことを金融再生委員会として担保したのか、約束をしたのか、そういうふうに受けとめていいのか、あるいは最終的な申請内容によっては、今後資本注入に応じない可能性も残されているのか、その点についてまずちょっと確認をしたいと思います。
  233. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 先生のおっしゃった内容については全く異存を申し上げるつもりはございませんけれども、ただ、その形式につきましては、文書を手交したというような事実はございませんで、口頭で申し上げたということでございます。  そこで、中身にわたっての御質疑でございますけれども、資本増強を前提としてというのは約束をしてしまったのかというお話でございますけれども、これはそういう趣旨ではございません。前提として、株主総会をお開きになることを差し支えございませんということを言ったにとどまっておるわけでございまして、これから今、先生も御言及になられた経営健全化計画とかあるいは商品性によっては条件が変わってまいりまして、その条件で折り合わないということは予想されないわけではありません。我々の方が断るということはなかなか考えにくいかもしれませんけれども、我々が提示する条件のもとでは彼らが注入を望まないということは十分あり得るということを申し上げておきたいと思います。
  234. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 今の御答弁で大分わかってきました。ですから、最終的な申請内容によってはかなり厳しい条件がつくこともあり得る、それは通常からいくととても金融機関は応じられないような条件になるかもしれない、ですから、そういうことをもって、逆に、各銀行が申請してくる最終的な内容がいいものになることを期待している、恐らくこういうことではなかろうかとそんたくをして考えますが、そんなことでよろしいのでしょうか。
  235. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 おっしゃるとおりでございます。
  236. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それから、報道の中に、一部の銀行に対して、一層のリストラ計画だとかあるいは追加の収益強化の策を求めた、こういう報道もございますけれども、この辺についてはいかがでしょうか。
  237. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 もちろん、内々に金融機関の意向が伝わってまいりまして、そのときにいわば下相談というか、そういうときに示された経営健全化計画等についても、こちらの方から評価をした場合には当然高低がございました。したがって、低い方の方々には今後さらにいろいろな形で、リストラの内容について、より濃密なものにしてもらいたいというような希望を持っていることも確かでございます。
  238. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 そうしますと、それが今後の最終的な申請内容でそういった注文なり要望なりがどう反映されるか、それを審査していく、こういうことになろうかと思います。  先ほどの若松委員とのやりとりの中にもございましたけれども、では、今後の具体的なスケジュールがどうなっていくのか。先ほど、三月五日に正式申請の受け付け開始、三月十二日の正式承認というのは内々事務局の腹案だ、こういうお話もございましたけれども、片や一方で、三月末までに注入を行わなければならないという時期的な制約もあるわけでございますから、逆算をしますと、実務上いつごろまでに正式承認をしなければいけないのかということは出てこようかと思います。その点について、いかがでございましょうか。
  239. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 お答え申し上げます。  先生のおっしゃるとおりでございまして、三月末、すなわち三月期に資本増強をするということから逆算しますと、商法上の制約がございますので、正式審査をして承認するのは三月十二日までにということはそのとおりでございます。
  240. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 わかりました。  それでは、いずれにしても三月の上旬に正式申請がなされて、その最終審査といいますか、正式申請の内容いかんによって最終的に条件を決めていく、こういうふうに受けとめさせていただきました。  それでは、これまで柳沢大臣が、各申請予定金融機関からの経営健全化計画の案の中身を評して、個性がないというふうにおっしゃったと伝わっておりますけれども、どういうことでそういうふうにおっしゃったのか、その真意をぜひお伺いしたいと思います。
  241. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 実は、私どもしょっちゅう新聞記者に追いかけられておりまして、全部の銀行についての話を聞き終えるまで待ってくれないわけでございます。当然、事柄は重大でございますので、一日で全行についてのヒアリングを終わるとかそういうことでは我々の手続は進んでおらないわけでございまして、正直言ってごく一部のヒアリングでその日を終えるというようなことがある。そして、その後においても、どうしてもということで感想を求められることがございます。  そういう際に、たまたまでございますけれども、私のヒアリングのグループが大体似たり寄ったりのことを言われた。今や全行聞いたところでは、必ずしもその評は当たっておらないわけでありますけれども、例えば、先ほど若松先生のお話にありましたように、我が国は間接金融に偏しております、直接金融のウエートが極めて低い。こういうようなことで、それらについても我々は修正していかなければならぬという感じを強く持っておるわけでございますけれども、そういうような大転換を図るというようなことはなかなか言ってくれなくて、間接金融の中で、例えばリテールに力を入れますというようなことを、ある日、ヒアリングをした全金融機関が異口同音に言ったというようなこともありまして、つい私として愚痴が出てしまったというのが真意というか、私の気持ちであったということでございます。
  242. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 そういう話を聞くと、なかなかまだ横並び体質は本当に変わらないなという思いがいたします。  そこで、ちょっと抽象的な質問になるのですが、今まで大臣は、リストラが不十分なところには資本注入しないという御発言も伝わってまいりますけれども、恐らくこれは、そういう発言を通じて銀行により一層のリストラ努力、経営健全化の努力を促そう、そういう御趣旨であろうかと思いますが、そういうプレッシャーをかける。そういうのと同時に、逆に全く別の観点から言うと、実際に恐らく資本注入しないと現在の金融不安は解消しない。金融機関にプレッシャーをかけつつ、なおかつ、実際にやらないとこれはなかなか大変なことになるだろうな、恐らくそういうせめぎ合いの中で今回内定ということが行われたというふうに私は観察といいますか、そういうふうに見ておるわけでございますけれども、その辺についてのバランスといいますか、そういった点はいかがなものでございましょうか。大変抽象的な質問で恐縮でございます。
  243. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 先生御賢察のとおりでございます。実は、私どもが今直面している問題というのは、よくよく考えてみると、そもそもそのファクターの中に自己撞着的な部分があるのではないか。  例えば、金融の健全化と貸し渋りという問題も同じでございます。貸し渋りはいけないといいましても、健全化をしようとすればいいところというかそういうところだけに貸して、あるいは自己資本比率というようなものを念頭に置いた場合には、資産の圧縮をした方が自己資本比率が上がるというようなこともあって、実は、資本の増強ということと資産をたくさん運用してたくさん貸付金債権を持てということとの間には、かなり厳しいせめぎ合いがあるということはおっしゃるとおりでございます。  それをどうやって解決するかということの中で私どもが考えたのが、結局、収益力を上げていくしかないということでございまして、収益力を上げるためにはどうしたらいいかといったら、それはリストラであるということに行き着きまして、勢い、リストラというものを私がつい強調し過ぎることもあるくらいに強調せざるを得ない、こういうところに我々が置かれておるということ、先生の御指摘のとおりでございます。
  244. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは、今後の具体的な審査、具体的なといいますか、もう既に事前審査でおやりになっているわけですが、最終審査に向けてどういう点に重点を置いておやりになっているのか。  今いみじくも大臣がおっしゃったように、資産の健全化と貸し渋りの解消というのはある意味で矛盾する事項でもありますが、一方で、やはり公的資金を入れるからには貸し渋りの解消につながるような公的資金導入でなければならないという期待は大きいわけでございまして、私は、ある意味で、いかにこういった貸し渋りの解消につながるか、特に、信用保証協会の特別融資枠は設けたとはいえ、やはり依然として中小企業への貸し渋りは厳しい状況でございますので、そういった中小企業向けの貸し渋り、資金回収というのがどういうふうになっていくのかというのが一つのポイントであろうと思いますし、また、今おっしゃったような収益力の向上、それにつながるリストラをきちんとやる、こういうこともポイントだと思います。  また、もう一つ、若干気になりますのは、「金融再生委員会の運営の基本方針」の中にも若干触れていらっしゃいますが、債権放棄です。債権放棄をする場合についても、合理性を有して、経営責任の明確化等を行えばそれも大丈夫だというふうにされていますが、こういう事前の審査の中で、どういったところに債権放棄を行うのか、そういったこともきちんと把握されるのかどうか。そういった点もやはり私はポイントになると思いますが、これは私の方が感じている点でございますけれども、そういった点を踏まえまして、今後最終審査に向けてどういう観点に重点を置いて審査をなされるのか、その点についてお尋ねしたいと思います。
  245. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 これから最終の審査において私どもが特にどこに重点を置きつつ審査をさせていただくかと申しますと、それは、先ほど来申し上げておるように、経営健全化計画の内容と商品性のところだということに尽きます。  しかし、その中で、今先生が御指摘になられたような中小企業への貸し付けあるいは貸し出し全体の伸びというものについては、これはもう私どもが示しました経営健全化計画におけるフォーマットの中でも特に今重視をしておる点でございまして、その点については十分今後も見させていただくということは当然だと申し上げさせていただきます。  特に大企業の融資については、先ほど若松先生の御質疑にありましたような、これからはむしろ直接金融による調達というようなことが本来的な姿になっていくだろうというふうに展望されておりまして、この点は、各金融機関とも同じような認識に立っているやに見受けられるわけです。  私、ちょっと先ほど、画一的で個性がないというような御質問の中でも触れさせていただきましたように、これからは、間接金融機関としては、リテール、個人の貸し付けであるとかあるいは中小企業向けの貸し付け、これに重点を置かざるを得ないということでありますし、また、収益力を上げるという点でもそのことは免れない、こういうようなことでございまして、中小企業への貸し出しというのは、我々が非常に重視している審査のポイントであるということでございます。  また、債権放棄についてお尋ねがありましたが、この点については、実はこれもまたある意味で非常に難しいことでございますけれども、不良債権の最終処理、実質処理ということの一つの形態であることは、これは紛れもない事実でございます。  そういうようなことで、しかしそこにモラルハザード等を起こさないようにしながら、そうしたことについて国民の皆さんにも理解をいただきながら実行させていただくにはどうしたらいいかということを我々考えまして、今度の基本方針の中にも明らかにしておいた方がいい点だろうということで、一つには、債権放棄をした方が、その後の残余の債権の確保というような点でも得失の面で得の方が大きい、こういうような条件がなければならない、あるいは、債権放棄をする先の企業、債務者の地域社会での社会的、経済的な影響が非常に大きくて、そういうことをすることによってその地域社会経済の安定を守る、こういうようないろいろな条件が満たされたときにはあえてこれを否定しないということで申させていただいたというところでございます。
  246. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 よろしくお願いしたいと思います。  今、大臣の答弁の中で、私も大変共感したのですが、中小企業に対しては、適切にリスクをとれば、これはかえって収益の向上につながるということでございますし、またニュービジネス等もそうでございますので、ぜひそういった点、お願いしたいと思います。  それから、債権放棄については、おっしゃる趣旨はよくわかりますが、ゼネコン救済だとか、とかくそういう観点から見られがちでございますので、そういった不透明な部分がないように、ぜひこれはお願いをいたしたいと思います。  それから、今不良債権の処理というところがございましたが、次の質問では、運営の基本方針の中でも、「大手行については本年三月期において不良債権問題の処理を基本的に終了することを目指す」、こういうふうにされているわけですが、今回の資本注入で、不良債権の抜本的な処理といいますか、基本的に終了する、こういうことが本当にできるのだろうか、その根拠はどういったところにあるのか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  247. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 私ども、今度の公的資金の注入が行われるのは、もう全くもって日本の金融に対する信認の回復のためである、このように考えております。  その場合、一番問題になることの一つは、今御指摘の不良債権、特に八〇年代の後半でございますが、我が経済に生じたバブル現象、これが崩壊して、九〇年代の初頭から起こったバブルの後遺症と申しますか、金融機関においてはこれがまさに今不良債権化したという事態が起こったのでございますけれども、これを何としても今度の公的資金注入を機に解消したいということを、私ども、強く念願をしておるところでございます。  しからば、それをどういうような方法でやろうとしているかということでございますが、これは結局、先ほどもちょっと申し上げましたように、引き当てというものを十分に行う、その前提として債権の、あるいは資産の査定というものを厳格に行う、こういうようなことを行うことによって不良債権の問題を解決したい、このように考えておる次第でございます。  ちょっと長くなりまして恐縮ですが、従来、日本の金融検査というものは、資産の査定を専らにしておった。引き当てについてはむしろ金融機関の自主性に任せておったというようなことでやってきた。もちろん、金融機関はいいかげんにやったとだけ言うわけではありませんで、これは一般に公正、妥当と認められる会計基準にのっとってやるということにはなっておったのですが、基本的には金融機関任せであったというのがこれまでの実情であったやでございます。  そこで私どもは、今回この資本注入に当たっては、あえて引き当て率というものを定量的に示させていただく、そういうことをやらせていただきまして、それもかなり高いレベル、アメリカにまさるとも劣らないレベルで引き当ての基準を決めさせていただくということをさせていただいた次第でございます。これによって私どもとしては不良債権の問題の解決ということができる、このように確信をいたしております。  ただ、よく誤解があるわけでございますが、そうなると、これからは貸し倒れなどというものは起こらないのかというようなことを言われることもままあるわけでございますが、これは、金融とか貸し付けというものにはリスクというものはつきものでございまして、そのリスクが顕在化するということは今後ともある。ただし、その発生というものが、昨今は非常に不況が強うございますので、これが終わったとしても若干高い水準ではないかなということの懸念はございますけれども、基本的には通常の貸し倒れの発生ということにとどまって、その手当てだけすれば常に金融機関の財務状況を健全に維持できる、こういう時代を迎えることができる、このようにいたしたいと考えている次第であります。
  248. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは柳沢大臣、最後の質問になると思いますが、今回の申請銀行の中では地銀は横浜銀行だけでございますけれども、その他の地方銀行あるいは第二地銀等がどうなのか。申請主義という建前からすれば、お答えは、いや、申請してこないのだということになろうかと思いますけれども、一方、再生委員会審議の事務量等もございますでしょうから、恐らく今回のこの三月期は大手行を中心にということだったのだと思いますが、今後の地銀あるいは第二地銀の公的資金注入についてはいかがお考えか、お答えをいただきたいと思います。
  249. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 実は、資本注入につきましては、この法律の制定の過程等でいろいろな国会の論議がありました。特に厳しい論議がありまして、それらが伝わったままでちょっと法律についての正確な理解に事欠くというような側面もあったように私ども見受けておりました。  したがいまして、この法律が制定された後におきましては、法律趣旨というものを十分徹底させる必要があるというふうに考えまして、監督庁の方で気遣ってくれまして、監督庁長官が、全銀協であるとかあるいは地銀協であるとかあるいは第二地銀の協会というような方々に呼びかけて、会合を開いて、そこで法律趣旨を徹底するというようなことをやっていただきました。  そのときに申しておることは全く同一でございます。申請主義と今先生おっしゃられましたけれども、そのとおりでございまして、申請があれば、我々がしっかり審査をさせていただいて必要な資本注入を行うということでございまして、別に、全国銀行、主力行と地銀あるいは第二地銀を分け隔てするというようなことを私どもの方から申したことは一度もございません。  ただ、いろいろな、先ほど先生もちょっと触れました横並びというか、ほかの方をちょっと目配りするというようなこともあるのかどうか、その辺はつまびらかではありませんけれども、現在のところ、地銀において横浜銀行のみが申請をしてこられておるということでございます。  我々としては、三月期決算の状況等を見まして、地銀、第二地銀等からも積極的にいろいろな形の働きかけがあり、それが申請に結びつき、必要な場合には適切な資本注入が行われることを期待いたしておるということを申させていただきたいと存じます。
  250. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 柳沢大臣、大変ありがとうございました。  それでは、あともう十分ぐらいでございますので、残りの質問、用意していましたが、ちょっと簡単に御質問したいと思います。  まず、特定扶養親族控除でございますけれども、実は、これは、同じ学年の生徒でも早生まれの方とそうでない方とでは適用の年限が一カ年違ってくるということがございます。  といいますのは、例えば現在の高校一年生を考えてみますと、早生まれの方は昨年時点では対象になっていないんですね。昨年時点ではまだ十五歳なんですよ、早生まれの方は。対象になっていないわけです。ところが、卒業時を考えてみますと、卒業してすぐ働くということを考えてみますと、そこで年収百三万円以上を得ると、そもそも扶養親族でなくなってしまうわけであります。  ですから、早生まれの人は、高校卒業後すぐ働くとなると特定扶養親族控除を受けられる期間が二カ年しかないということになりまして、同じ学年の生徒でも、早生まれとそうでないのでそういう差が出てきているというのが、ちょっと私は問題意識を持っておりまして、これはいろいろ工夫して改善をすべきじゃないかというふうに考えているんですが、その点いかがでしょうか。
  251. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 今この控除、いわば一種の、高校に行っておられる方を対象にした控除というと、何となく変だなということになる先生のお気持ちがよくわかるわけでございますが、この特定扶養控除は、先ほど申しましたので長々と申しません。ライフサイクルから見て、要は、教育を含んで種々の支出がかさむ世代の所得者の税負担軽減を図るということになっております。  それで、おっしゃるように、扶養親族のうち、年齢十六歳以上二十三歳未満という者を対象としておりまして、就学しているかどうかは、その有無は問うていないのが今の制度であるわけでございます。  それで、この特定扶養親族の判定をどこでやるかといいますと、これはもう先生御承知のように、年齢の判定はその年の十二月三十一日にやります。なぜ十二月三十一日にやるかといいますと、年分課税でございますから、扶養親族かどうかの判定は一年のところでやらなきゃならぬ等々のことからそうなっているわけでございます。  そういうことで、その方が高校を卒業することで自立されるということでございますが、制度論的に就学の有無というのは問うていないわけでございます。ある意味によっては、早く親から自立していただけるという面もあったり、あるいは仮に大学へ進まれるときに、一年余計に道をというような場合もあったりいたしまして、要は、先生のおっしゃられるようなお気持ちはわからないわけでもないんですけれども、やはり税制、画一的に一種のモデル的なものを見てこの制度をつくらざるを得ないということでございまして、なかなか今のようなケースについて配慮するというのは難しいということを御理解いただければと思います。
  252. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 なかなか後ろ向きの答弁をいただきました。きょうはちょっと時間がありませんのでここでやめておきますが、また別の機会に申し上げます。  それから、相続税についてお伺いします。  私の問題意識といたしましては、今回、所得税法人税は大変税率が下がったわけでございますけれども、中小企業の方にお話を聞きますと、確かに所得税法人税も大変やる気を起こさせてもらえるけれども、実は、相続税について、特に中小企業の事業承継という面で相続税の配慮というのがもっとなされれば、中小企業の社長さん方はもっともっとやる気を出して仕事ができるというお話をつとに伺っておりまして、その点について私は問題意識を持っているわけです。  実例を挙げますと、例えば、個人事業から法人成りをしましても、土地あるいは建物等が個人名義のままというケースが大変多うございます。そういたしますと、相続の際それが評価をされまして、実際的に、今も事業用宅地の課税の配慮というのはありますけれども、大変大きく御商売をされている方については、そういったところの相続税がネックになってなかなか子供さんが事業を継いでくれない、そういう例が間々見られるということで、こういった点を私は何か工夫すべきではないかという問題意識を持っております。  特に、農地について納税猶予制度が設けられているわけでありますが、これはそもそも、戦後の農地解放に当たって、基本的に自作農ということで農地はやるんだ、あるいは、やはり相続で小さく農地が細分化されるとかえって農業の効率化には逆行するといった点から農地の納税猶予制度が設けられているというのは承知しております。  私は、今の日本社会構造を考えてみますと、農地でそういった納税猶予制度、大変農業の事業継承に配慮がとられているとすれば、中小企業も、同等のとは申しませんけれども、事業を継承するという点では大胆に配慮を充実させるべきではないか、こういう問題意識を持っておりまして、ぜひ大臣の御答弁をいただきたいと思います。いかがでございましょうか。
  253. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このお話は、一九八〇年代の後半にいわゆるブームになりまして、土地の値段がとめどもなく上がり始めまして、殊に都会で中小企業をやっていらっしゃる方は、親御さんから引き継がれた自分のお店あるいは土地というものを相続で失わざるを得ないというような状況が余りにひどくなりましたものですから、それで、事業用小規模宅地ですか、二百平方メートルまでとか、今聞きますと、これは課税価格から八〇%減額しているそうですね。おまけに今度三百三十平方メートルのところもある。八〇%減額とは、よくそこまで来たな、こういう感じがいたしますけれども、しかし、そういう問題があることはやはり、あのころほどではないと思いますけれども、今でもございますようですね。  それから、上場していない株式の評価におきましても似たようなことがあって、これも大分やわらかくしておるように思いますが、そうですか、まだ足りませんでしょうか。よく研究はいたしますけれども
  254. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 確かに、相続の可能性のある件数のうち実際に課税されている件数は五%ぐらいですから、恐らく政治的には余り多くの方が声を上げてはいないと思うのです。ですから、中小企業の中でも、どちらかというと中堅企業に近いところなんですね。中堅企業で、特に法人成りをしたような、一代で自分が中堅規模まで大きくした、その社長さんが、では息子さんに継がせようとすると、これは税金で持っていかれてしまうということでなかなかいかない、そういう事例もあるようでございまして、そういう問題点を指摘しておきたいと思います。  最後の質問でございますけれども、今回の税制改正の中では、いわばグローバルスタンダードということで、法人税の実効税率が下げられたり、あるいは所得税、住民税あわせて最高税率引き下げられたりという議論があると思いますが、現行最高税率七〇%というのは、いかにもこれは高いなという気がします。二十億円以上ですから、私も全然関係ない人間でございますけれども。実効税率からいくと、海外の事例から見るとそうでもないというような議論もあるようですが、今回の税制改正の中で相続税についてどういう検討がなされたのか、また、今後の見直しはどうなっているのか、最後にお尋ねをしたいと思います。
  255. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 相続税の最高税率七〇%ということで、高いのではないかという指摘は前からいろいろいただいたりしているところでございます。それで、この相続税といいますのは所得税の補完税という役割があるわけでございますから、今回の税制改正に当たりましても、税制調査会で個人所得課税最高税率に合わせて税率引き下げを検討すべきではないかという意見がございました。  結局、先ほど大臣の方からお話し申し上げましたが、最近の三度の改正と土地の連年の引き下げにより相当負担は緩和されているんじゃないか。あるいは、経営者のやる気ということでございますが、景気対策との直接の結びつきが少ないということで、ことしの税制調査会の議論では、富の再配分という役割はあるわけでございますが、まさにこの相続税についての役割はどう考えるか、それから、今後、個人所得課税の抜本的な見直しというのを検討することになっております。したがいまして、税率だけではなくて、相続税の課税ベースもあわせましてその機会に幅広く今後検討を行ってまいりたい、こう考えているところでございます。
  256. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 時間が参りましたので、終了いたします。
  257. 村井仁

    村井委員長 次に、矢島恒夫君。
  258. 矢島恒夫

    ○矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。提案されております法案に対する質問の前に、税務職員の問題について質問したいと思います。  大変深刻な不況が進んでおります。こうした中で今年度の租税収入の進捗割合がどうなっているかということで、大蔵省から資料をいただいてみました。それによりますと、前年度と比較して大変落ち込んでいる。十二月末の数字でございますが、消費税については、これはいいようであります。所得税につきましては、前年度が六五%、それに対して今年度六一・五%。法人税につきましては、前年度四七・四%、これに対して十二月末現在の状況を見ますと四六・九%。租税と印紙収入両方合わせた進捗率を見ますと、十二月末の方が約〇・九%落ちている。前年度が五六・六%、今年度が五五・七%、今こういう状況になっていると思います。その上に、国税の滞納なども大分増加している。こうした中で、内国税の賦課徴収に責任を負うところの国税職員の苦労もやはり大変だろう、このように思うわけであります。  大蔵大臣、当委員会では毎年、国税職員の処遇改善を求める附帯決議がされております。このような税務職員の労に報いる点で、大蔵大臣、どのように考えておられるか、お伺いしたいと思います。
  259. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 税務がまことに複雑になっておりますし、また、それに備えて機械化等々も進んでまいりますので、職員みんな大変だろうと思っております、伝統があるからやってくれるのだろうと思っておりますが。そういう中で、給与であるとかあるいは中のいろいろな構成であるとかというようなことにはやはり絶えず気を使っていかなければならない。まさに伝統がありますからこれだけの仕事をさばいてもらっているのだと思っていまして、それが崩れましたらなかなか再構築は難しいと思いますから、大事にしていかなければならないと考えております。
  260. 矢島恒夫

    ○矢島委員 税務職員というのは、新約聖書に出てきますレビやあるいはザアカイなどといういわゆる取税人、税の取り立て人、この例を見るまでもなく、その時代からやはり世間ではどうしても嫌われるという状況にあるわけであります。それだけに、税務職員の労に報いるような、具体的にこの処遇改善、こういうものにぜひ努力していただきたいと思うわけです。  さて、昨年は国会で、大蔵省の検査官や局長クラスの幹部も含めて、いわゆる金融機関との癒着が大きな問題になりました。逮捕された人も出ましたし、あるいは行政処分を受けた人も数多くあります。同時に、その中で問題になったことの一つとして、若い、社会的に経験の少ないキャリアと言われる官僚が税務署長に二十代後半でも就任していくということが問題になりまして、当時の松永大蔵大臣が検討することを約束された。その後、若干是正されていると聞いております。  なぜこういうことを申しましたかといいますと、税務署というのは、国民から疎まれたり嫌われたりする、また、しばしば国民の批判の対象になったりあるいは注目されている、こういうところであります。ですから、この税務行政というのは、民主的で公平、公正でなければならないと思うわけです。同時に、その公平、公正な税務行政というのは、税務署内でもそうでなければならないと思います。  そこで、きょうは人事院にも来ていただいていると思うのですが、国家公務員法の第二十七条には「すべて国民は、この法律の適用について、平等に取り扱われ、人種、信条、性別、社会的身分、門地又は」「政治的意見若しくは政治的所属関係によつて、差別されてはならない。」こういうのがありますし、また、同じ国家公務員法の第百八条の七「不利益取扱いの禁止」という規定がございます。「職員は、職員団体の構成員であること、これを結成しようとしたこと、若しくはこれに加入しようとしたこと、又はその職員団体における正当な行為をしたことのために不利益な取扱いを受けない。」とあると思います。  そこで、人事院にお伺いしたいのですが、我が国の公務員制度において、昇任とか昇格、こういうものの発令に当たって、労働組合の加入の有無だとかあるいはその所属によって差別発令されることは認められない、このように考えますが、それでよろしいでしょうか。
  261. 佐藤信

    ○佐藤(信)政府委員 御指摘の国家公務員法第二十七条は、公務員制度の基本的な原則として職員の平等取り扱いの原則を定めておりますし、また、国家公務員法第百八条の七によれば、今お読みいただきましたように、組合の構成員になったこと等を理由に不利益な取り扱いを受けないという旨規定されているところでございまして、労働組合への加入の有無やその所属によって差別されてならないことは当然のことでございます。  私どもとしては、各省庁における人事管理は、法令の定めるところによって、各任命権者において厳正、公正に運用されているものというふうに承知をしているところでございます。
  262. 矢島恒夫

    ○矢島委員 人事院の答弁だろうと思います。  ただ、どうも、今御答弁いただいたような状況になっていないように思うわけです。それは、国税庁内部には労働組合が二つあります。その一方の組合、つまり全国税労働組合、これに加入していることによって差別している事例があるわけです。  済みません、資料をお配りいただきたいと思います。  資料を配っていただいている間に、引き続き人事院に質問していきますが、昇格とか昇任、これに当たる新しい職務の級につくには資格が必要だろうと思うのですね。つまり、採用後の経験年数、必要経験年数といいますか、それから一つ前の級に何年いたかといういわゆる必要在級年数といいますか、このどちらかを満たしていないと新しい職務の級につくわけにいかない。  そこで、税務職の場合ですけれども、大学卒の国税専門官もいますけれども、高校卒業後税務大学を卒業した方が多いですから、その人たちのことで聞きたいと思うのです。高校卒で国税局やあるいは税務署に就職した場合、八級ポスト、八級ポストというのは、税務署でいえば統括官または特別国税徴収官などの職責だと思いますが、一般公務員の課長職あるいは課長と同地位の職責と考えられます。この八級ポストにつくには、必要経験年数、これは何年で、それから必要在級年数が何年か、お答えいただきたいと思います。
  263. 大村厚至

    ○大村政府委員 職員を昇格させるためには、先生おっしゃったように、昇格させようとするその職務の級に格付け得るポストにつくということが前提となるわけでございます。その上で、職員の職務の級を決定するに当たりましては、給与制度上、級別資格基準表による基準を満たしていることがまた必要になります。  先生の今御質問の高卒III種職員を税務職俸給表八級に決定するためには、最低限、経験年数では二十年、または七級における在級年数二年のいずれかの要件を満たしていることが必要となります。
  264. 矢島恒夫

    ○矢島委員 今お答えいただいたわけですが、わかりやすく言えば、八級ポストにつくには採用後二十年の経験が必要だ。両方の条件を満たしているということになると思いますが。  今お配りした資料の一枚目、資料一です。その表を見ていただきたいと思います。「所属組合による八級ポスト昇任差別実態」と上に書いてあると思います。  その表は、八級ポストにつく最低条件がある職員について調べてみたわけです。一番左側に男性職員という欄があります。この欄の一番左側が標準年齢となっておりますが、その欄のちょうど中ごろになります五十一歳、二十六期生であります。資格を持っている、つまり今人事院でお答えいただいたような条件にある人は八百九十七名、全国税組合員以外であります。そして、八級ポストについている方が八百四十七名。ポスト在職率というのがありますが、九四・四%の人が八級ポストについている。  隣に全国税組合員という欄があります。資格を持っている方が二十七名、それに対してポストに在職している人は一人もいません。もちろん、ポストの在職率はゼロであります。ただの一人も昇任していないということですね。それで、それよりも若い全国税の今のポスト在職数を見ますと、ずっとゼロが、四十一歳、三十六期のところまで並んでいるわけであります。その一番下の三十六期生、既に全国税組合員以外の方で六十六名、一三・九%が八級ポストに発令されている。  この表を見ますと、全国税の組合員への発令が、どの採用年をとってもいずれも低いわけです。露骨な差別が行われているということをこの表は示しております。余りにもひどい差別です。  そこで、国税庁に聞きます。次長がおいでだと思いますが、なぜこのようなことが起こっているのか、ひとつ納得のいく説明をお願いしたい。
  265. 大武健一郎

    ○大武政府委員 お答えさせていただきます。  人事に当たりましては、御存じのとおり、従来から、公務の要請に基づいて適材を適所に配置し、あるいは行政効率を最大限に発揮できるという考え方をもとに、職員個々に適性、能力、勤務実績等を把握して、これらを総合的に勘案して適正、公平な人事の確保に努めてきているということでございまして、職員団体加入の有無とか所属職員団体のいかんによって人事は行っていないし、またそういう管理もしていないということでございます。
  266. 矢島恒夫

    ○矢島委員 今の答弁では、次長、到底この差別されている人たちは納得できないと思うのですよ。  つまり、この人たちは、あなたの答弁からいえば、すべて能力、適性、勤務状態がだめだ、こういうことなんですか。しかも、この表を見て、明らかに差が生じているということはお認めになりますね。差別という言葉が嫌いならば、このように差は生じているのですよ。  私は私なりに調べてみました。昇任していない職員の仕事ぶりについて、他の職員から聞いてみたのです。そうしますと、こういう話が返ってくるのです。全国税労働組合員は、職場の中心になって若い職員などの仕事の相談に乗り、職場で頼りにされていますよ。あるいは、全国税組合員は皆まじめに仕事をしていて、八級ポストについていないのは、全国税労働組合に加入していること以外には考えられない。こういう話が返ってくるわけなんです。  そこで、今お配りしている資料一の最上段、五十九歳、十八期生男性職員、この欄を見ていただきたいと思います。全国税の組合員で、一人、八級ポストにつかないで七級に残されている人がいます。この方は、大阪の枚方税務署の沢田兵五郎さんという方なんです。来年三月に定年を迎える方であります。  次の資料二を見ていただきたいと思います。「全国税組合員の賃金損失例」とあります。例の一、普通科十八期生男性Sさん、このSさんという方が沢田兵五郎さんです。この表は、上に普通科十八期生の標準例とありますが、この人たちはほとんど署長になって退職しておりますので、沢田さんと同期生なんですが、平成九年で比較するよりほかないというので、平成九年までの比較になっております。下が沢田さんの収入であります。過去十年間ということになります。平成九年からさかのぼって十年間ということになります。  その表でおわかりいただけると思うのですけれども、上に年収合計というので、一億五百十七万六千円というのがあります。これが標準です。それに対してSさんの場合、八千六百七十九万九千円という額が書かれております。差し引きどれだけ損失をこうむったかというのが右上の肩のところに三角で記されております。千八百三十七万七千円、このように出ています。これだけの損失を受けたという勘定になるわけであります。  大蔵大臣、国家公務員の職場でこのような差別が行われるということを許してよいのかと私は考えるわけなんです。国税庁はなぜこのような人事を行うのか。長年、税収確保に奮闘している職員ですよ。そういう人たちの気持ちがあなた方にはわからないのか、こう私は言いたいのです。  先ほどの次長の答弁では、私、どうしても納得がいかない。これでは行政執行に悪い影響を及ぼすのじゃないですか。重大なことだと思いますよ。国税庁はこのことをどう考えているのか。  実は、この沢田兵五郎さん本人からも、組合からも申し立てがあったと思います。八級ポストにつけない納得のいく説明を国税庁はしているのか。本人は、一切説明を受けていないと言っています。納得のいく理由を明確にしていただきたいのですよ。明確にできないのなら、直ちに八級ポストにつけるべきだと思うのですよ。沢田さんの件について、どういうふうになっていますか。
  267. 大武健一郎

    ○大武政府委員 お答えさせていただきます。  当庁としまして、もともと、職員団体の加入の有無あるいは所属職員の団体のいかんによって人事を行っておりませんし、行う考えはありませんので、今拝見したような、グループに分けて観察するということ自体考えられないことでございます。  要は、いずれにしても人事の基本というのは、先ほどの繰り返しになりますけれども、あくまでもそれぞれの適正、公平な人事ということに努めておりまして、例えば八級昇格についても、それぞれ、税務署の統括国税徴収官等のポストについている方々の中から、法令の定めるところに従って、その範囲内で、職務内容、経験年数、勤務成績等総合勘案して実施しているというところでございます。
  268. 矢島恒夫

    ○矢島委員 そういう理由では到底納得できないんですよ。差別されている人たちは、周りの人も言っているように、全国税組合に加入している以外に八級ポストにつけない理由はわからない。本人にも説明しない、指導もしない、そんなことで職員間の信頼がつくられるわけがないですよ。どうしてこうなっているのかというのを本人にも説明しない。やはりこういうことはきちんと、本人との信頼関係の上からも、なぜそうなっているかという理由を明確にすべきだと思うのですね。  今申しました沢田さんの一年後輩、また一枚目の資料一に戻りますけれども、十九期生、五十八歳、この欄で全国税組合員、八名残されているわけですね。この人たちも多大な損害を受けているわけですよ。  組合員による差別だけではなくて、男女差別というのも歴然としているわけですね。  資料一の右側の女性職員の欄を見ていただきたい。例えば、昭和三十四年採用の女性職員の場合です。これは、男性と比較しますと、十九期生の方々と同じ年の採用ということになります。  以下、表の説明は省略します。先ほど見ていただいたのと同じ見方をしていただきますとわかりますが、全体で三十六名残されているわけですね。この意味からいきますと、女性の差別と同時に組合の差別もある。全国税労働組合の中の女性は、この性による差別と同時に所属組合による差別、二重の差別を受けていることになるわけです。  全国税組合員の場合、三十四年採用の女子の場合に、十八名資格者がいて十一名ポストについておりますから、差し引き七名、七級に据え置かれているわけですね。この人たちは、あと一、二年で定年を迎える人たちですよ。このまま定年を迎えると、退職金はもちろんのことですけれども、年金にも多大の影響を受けるわけですね。  また、二枚目の資料二の方を見ていただきたいと思います。例の二、昭和三十四年採用女性Fさんの場合とあります。この方は、東京の江戸川北税務署の藤ヶ谷幸子さんという方であります。この人は来年定年を迎えると聞いております。この方は、今日まで、八級ポストについている人と比較してみると、上の段、標準の年収合計一億一千四十万一千円というのが書いてあります。では、この藤ヶ谷さんの場合はどうかというと、下の欄を見ていただければ、八千八百七十二万二千円という額が年収合計にあります。差し引き、右肩の三角のところにありますように、十年間の年収差額というのは、何と二千百六十七万九千円、こういう損失を受けている勘定になるわけです。  さらに、そのすぐ下、例の三というのを見てください。昭和三十四年、同じ年に採用された女性Tさんとなっております。この方は、名古屋の刈谷税務署の田中嘉子さんという方であります。同じようにずっと見ていきますと、十年間に二千六百三十四万五千円、こういう損失をこうむっている勘定になるわけであります。  そこで、こういうことが国家公務員の職場で許されてよいのだろうか、異常ではないかと私思うわけですが、人事院に聞きます。  国家公務員法の第三条に人事院の仕事の内容が明記されています。第三条二項を見ますと、「人事院は、法律の定めるところに従い、給与その他の勤務条件の改善及び人事行政の改善に関する勧告、職階制、試験及び任免、給与、研修、分限、懲戒、苦情の処理その他職員に関する人事行政の公正の確保及び職員の利益の保護等に関する事務をつかさどる。」とあります。  そこで、人事院は、国家公務員の期待にこたえて公正の確保だとかあるいは職員の利益の保護、こういうことを考えていく必要があると思いますが、国家公務員法の第十七条、ここでは、人事行政については調査することができるという条項になっていると思います。それから、同じく国家公務員法の二十二条には、人事行政の改善を関係大臣あるいはその他の機関の長に勧告することができる、こうなっていると思うんですね。  どうですか。今私が示した資料によって、女性差別の問題をこの国家公務員法によって調査すべきだと私は思うんですが、いかがですか、人事院。
  269. 大村厚至

    ○大村政府委員 職員の昇任とか昇格につきましては、その官職の職務と責任において、勤務成績それから能力、適性等に基づいて決定されていくことになっております。  実際にどういうふうにやられているかと申しますと、各省庁における職員の昇任、昇格につきましては、このような考え方に基づきまして、各官職の職務内容や職員の能力等の実情を最もよく知る任命権者により的確に行われているものと承知しております。  なお、人事院といたしましても、機会あるごとに各省に対しまして職員の勤務成績等に基づく昇任、昇格を行うように指導してきたところでございまして、今後ともこのような趣旨を徹底してまいりたい、そのように考えております。
  270. 矢島恒夫

    ○矢島委員 いろいろ指導をしてきた、あるいは各省庁への調査などもしているのかと思いますが、どうも今の御答弁を聞いていますと、税務の職場の実態といいますか、こういう差別の実態、こういうのを人事院は本当に把握しているのかなと思わざるを得ないんです。よく調べたり実態というものを把握していただきたいと思うんです。  とりわけ、昨年十一月に男女共同参画審議会、そこでは「男女共同参画社会基本法について」の答申を発表いたしました。政府もことし三月上旬に男女共同参画法案提出すると聞いております。この法案中身は問題があるようですが、それは別の場で論議するとして、女性の地位向上推進委員会、この本部長内閣総理大臣になっている。つまり、男女平等の推進というのは国策になっているわけですね。  そういうときだけに国税庁は、組合差別も私はずっと言いましたけれども、男女差別においては、これは全国税の組合員以外にも明らかに男性との違いがあらわれているんですよ。こういう差別、これは直ちに是正すべきだと思うんですが、国税庁、今までの論議を聞いてきてどんなふうに思いますか。
  271. 大武健一郎

    ○大武政府委員 ただいま御質問のございました昇格等につきましては、先ほども申したところでございますが、法令の定めるところに従って、それぞれ定数の範囲内で職務内容、経験年数、勤務成績などを総合勘案して適正に実施させていただいているところでありまして、女性であるということを理由に差別は行っておりませんし、今後とも能力のある女性職員について積極的な登用に努めてまいりたいと考えているところでございます。
  272. 矢島恒夫

    ○矢島委員 何回も同じ答弁を次長は繰り返しているわけです。そういう答弁、全然私納得できないんですよ。こういう国税庁に勤務する職員、まことに不幸だと私は思わざるを得ない。  次に、それならばなぜこのような差別がいつまでも横行しているかという問題です。  国税庁には、牢固としたというよりも頑迷固陋と言うべきかと思いますけれども、全国税を敵視する方針がある。そこで、国税庁、最近大阪国税局において全国税労働組合員に対する不当労働行為、これが問題になっていると聞いていますが、どうなっているか、簡単に説明していただきたい。
  273. 大武健一郎

    ○大武政府委員 当庁としましては、従来から職員団体との間に正常な労使関係が保持されるように努めてきたところでございますし、職員団体の健全な発展を望んでおります。したがいまして、職員団体の正当な活動に制限を加えたり、あるいは介入したり、あるいは不利益な取り扱い等は行っていませんし、また行う考えもございません。  大阪国税局におきましても、同じように、従来から職員団体との間に健全な労使関係を維持するように配意していると承知しておりまして、御指摘のようないわゆる不当労働行為が行われているとは考えておりません。
  274. 矢島恒夫

    ○矢島委員 次長、大阪国税局で起こっている問題について、報告を受けて聞いているだけじゃなくて、積極的な調査をお願いしたいんです。  というのは、お配りした資料の三から六までを見ていただきたい。資料三、資料四、資料五とずっとあります。一番上のが「税務署決議書」、こうなっております。もちろん、公式文書だと思います。判がそれぞれ、次の資料四、資料五ともに印影がはっきりしております。  資料三もそうですし、四、五もそうですが、いずれも大阪国税局の正規の書類だ。決議書の書式、これによりまして、一番最初の資料三を見ますと、泉佐野税務署長から大阪国税局の人事二課長あてに報告されたものになっています。件名は「指導対象職員管理指導(写)の提出について」、こう書いてあるわけですね。  国税庁、このような報告を税務署から上げさせているわけですか。
  275. 大武健一郎

    ○大武政府委員 出所が明らかでございませんので、いわゆるこのいただきました書類についての答弁は差し控えさせていただきたいと思いますが、大阪国税局において御指摘のような組合員を管理しているという事実はないと承知しております。  ただ、服務規律維持といった観点から、指導を要すると思われる職員につきまして、その身上を的確に把握して、これに基づいて適切な指導を行うために、必要に応じて指導の記録をとるということは行っているものと思います。  ただ、こうした記録は、あくまでも指導を要すると思われる職員について必要に応じて行われるものでございまして、いわゆる組合員の管理というために行うものでは全くございません。
  276. 矢島恒夫

    ○矢島委員 私が示した資料三、四、五、六というものは、いずれもこれは正規の書類だということはお認めになりますね。出所がどこかわからないからということで答弁を避けられましたが、はっきりした税務署の正式の文書だということだけはお認めになると思います。  さてそこで、この文書、田中幸治さん、こういう方の指導記録カードというのが四からずっとつながっております。もちろん、在職中は全国税の組合員。この方は、長い間差別されて定年で退職された方であります。  資料四を見ていただきますとわかるように、職員を指導対象とした理由、選定理由、こういうところに、「国家公務員法の義務規定に違反し職場秩序を乱すおそれのある者」、こういうふうなことが書いてあります。そして、その下に指導事項がずらっと並んでいるわけです。その中身を見ますと、ほとんどが労働組合の情報宣伝紙の配布だとかあるいは署長交渉出席だとか要求書提出、そういう項目が次々と並んでまいります。  つまり、これは組合活動として自然であり、当然の活動なんです。このような活動がなぜ国家公務員法の義務規定に違反し職場秩序を乱すおそれがある者ということになるのか。なぜ田中さんの組合活動を監視したり指導するというのか。これは、田中さんの全国税脱退の機会をうかがう、全国税労働組合を弱体化しよう、こうねらったものではないのかと思うんですよ。不当労働行為に当たるんではないですか。  この捺印している判が、井口それから藤田、千葉、山本、それぞれの判がずっと押されておりますが、この人たちは当時の管理者ですよ。お配りした資料の七というのを見ていただきますと、田中さんがそれぞれ勤務していた税務署、岸和田から始まって退職するまでがあります。岸和田のときには井口という判が押してありますけれども、その人は署長であるし、藤田という判の人は統括官ですね。直属の上司ですよ。はっきりとしているわけですね。その後ろに、資料の八、九、十というところにそれぞれ職員録を載せておきました。私が今申しましたような形でそれぞれはっきりと出ているわけです。  国税庁は、全職員に対してこのような監視記録をしているわけではないんでしょう。つまり、全国税組合員だけをこのように毎日監視し記録しろ、こんな指導をしているわけですか。
  277. 大武健一郎

    ○大武政府委員 今拝見させていただきましたこの資料につきましては、やはり繰り返しになりますけれども、出所が明らかでございませんので、その書類についての答弁は差し控えさせていただきたいと存じます。  ただ、服務規律の維持等の観点から、やはり、指導を必要とする職員について適切な指導を行うために、必要に応じて指導の記録をとるということは行っておりますけれども、ここに拝見するような、組合員を管理するために記録するというようなお話は、我々は行っていないということでございます。
  278. 矢島恒夫

    ○矢島委員 全然私納得しません。そういう言い逃れをしてもらっちゃ困るんです。  いいですか。指導というのは、本人に対して、あなたはこういうことをやっていますね、だから八級ポストには行けないんですよとか、それぞれあなた方が監視して記録したことについて、職員に対してちゃんとその中身を伝えること、それなくして指導なんて言えたものじゃないですよ。これは、本人は全然何も知らされていないんですから、まさにこれは監視のための書類であり、引き継ぎのための書類であることは一目瞭然じゃないですか。  このような資料は、全国税の労働組合員一人一人に作成していて、その組合員が転勤しますとその書類も転勤先の税務署に送付する、こういうことになっているんじゃないですか。この書類は永久保存になっているんじゃないかと私は思うんです。  実に答弁は、まさに出所がどうのこうの。そういう事態についての具体的な納得のいく答弁は得られていない。そういうまさにしらを切るような態度というのは、私は絶対許されないと思うんです。  私は、同じような資料で別の人の資料を独自に入手いたしました。  資料の十一と十二を見ていただきたい。これは何の資料かということで調べてみましたところ、現在、高松国税局の徳島税務署に勤務する吉田行雄さんの行動を逐一記録したものだそうです。しかも、これは大阪国税局において作成されたものである。吉田さんが昭和四十年に全国税に加入した日から記録が始まっております。  そして、資料十二、こちらの最後のところ、昭和六十一年二月、ここで終わっているのは、これは大阪国税局から高松国税局の方に転勤したことによるわけであります。この文書は、何らかのカードのコピーと見られますけれども、高松局へ転勤の際に作成されたもの、こう考えられるわけです。  この中身を見てみますと、統一行動への参加あるいはメーデーへの参加などなど、びっしりと記録されているわけです。少なくとも大阪国税局は全国税とその組合員を監視し、そして差別してきた。これは重大な証拠だと私は思うんですよ。  驚いたことには、この今記録されている中身を見ますと、統一行動あるいは早朝ビラまき、プレート着用、国公労連、こういったところはゴム印までつくっているんですよ。そうまでして全国税組合員を毎日監視するのは一体なぜなのか。余りにも異常な行動だと私は思わざるを得ません。この文書を確認できないなどとはおっしゃらないと思うんですね。  高松局に転勤したこの吉田さんは二十三期生です。同級生は九一・三%が昇任、昇格しております。ところが、この吉田さんは今も上席徴収官です。差別がずっと継続しているんですよ。昭和四十年からの記録が残っているんだから、今も記録され、保存されていると考えるのが自然であります。  こうした全国税への監視、敵視、こういう姿勢、これは組織的に人権を侵害すると言ってもよい行為だと私は思うんですよ。国税庁はなおもこういう行為を続けるのか。職務の遂行を率先すべき幹部が、この一部全国税組合員の監視に神経を使うなどということはとんでもない。とても正常だとは考えられない。国税庁、断固改めるべきだと思いますが、改めるつもりはありますか。
  279. 大武健一郎

    ○大武政府委員 初めて拝見する資料でございますが、いずれにせよ、出所が明らかでございませんので、繰り返しですが、答弁は差し控えさせていただきたいと存じます。  ただ、いずれにしても、このように組合員を管理するための記録をとるというようなことは行っていないものと承知しております。
  280. 矢島恒夫

    ○矢島委員 私が提出いたしましたこれら資料、いずれも国税庁として確認していただくということが必要かと思いますが、こうした行為は直ちにやめるべきだと思うんですよ。だって、そうでしょう。いや、組合の加入そのほかによって差別はしていませんといったって、現実の問題としてこういう事態が起こっているんですよ。その事実はお認めになると思うんですね。行政の内部にこういう差別があって、国民に向かって公正な行政というのはできるんだろうか。  今日、国民は税に大きな関心を持って見守っているわけです。最初に私が申し上げたような状況です。この税制が適正に実施される、このことのためには税務行政が公正であることが担保となるわけです。国民の期待にこたえる税務行政が執行されるためにも、直ちにこういう差別が是正されるよう国税庁に求めます。再度、こういう差別については是正すると、次長、言えませんか。
  281. 大武健一郎

    ○大武政府委員 いずれにしましても、今初めて拝見する資料もございますし、具体的な出所もわかりませんので、答弁を差し控えさせていただきますが、いずれにしましても、大阪国税局におきましても、職員団体との間における健全な労使関係の維持に配意しているところでございますし、正当な職員団体の活動に介入するというようなことは行っていないと承知しております。
  282. 矢島恒夫

    ○矢島委員 私、証拠のある資料をお配りして説明いたしました。間違いなく国税当局の文書だと思います。  大蔵大臣法案に対する質問の前に大分この問題で長い時間をとりました。ただ、私は、このような問題は放置できない問題だと考えているから、これだけ時間をとったわけであります。  このような問題は、過去にも我が党の正森議員が問題にいたしましたし、私自身もこういう問題を取り上げました。今日まで何度もこの種の問題が提起されてきているわけですね。国税庁には、一向に是正する姿勢がないように見えるんです。  最初に、処遇改善の問題で大蔵大臣にお聞きいたしました。このような点も含めていろいろと改善が行われるべきだと私は思います。ぜひ、この是正の措置をとるよう指示すべきだと思いますが、大臣、今までのやりとりをお聞きになっていかがでしょうか。御感想を承りたい。
  283. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 冒頭に申し上げましたとおり、処遇の改善はぜひ努めたいと存じますが、ただいまの資料につきましては、政府委員がその性格を確認できないと申しておりますので、これについてのお答えは申し上げません。
  284. 矢島恒夫

    ○矢島委員 次に、残りの時間が少なくなりましたけれども所得税最高税率の問題で質問したいと思います。  まず、大蔵省にお聞きしますが、夫婦と子供二人、こういう世帯で、片働きの給与所得者で所得税最高税率を適用される人の給与年収、これは幾ら以上になりますか。
  285. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 夫婦子供二人で片働きの給与所得者のケースですが、このうち、一人が特定扶養親族というふうに置かしていただきます。現行所得税最高税率の五〇%でよろしゅうございますか。それの適用を受ける者の年収は、三千五百六十五万二千円超ということで承知しております。
  286. 矢島恒夫

    ○矢島委員 それでは、課税所得三千万の場合、所得税がどれくらいになって、その所得税は給与収入額に対して何%になるか、お答えいただきたい。
  287. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 今の給与収入が課税所得三千万円に当たる場合ですが、その場合の国税である所得税額だけで申し上げますと、八百九十七万円、給与収入に対する割合は二五・二%となっております。
  288. 矢島恒夫

    ○矢島委員 今大蔵省に示していただきましたが、現行税制でいきますと、年収が三千五百六十五万超、二千円というのはありましたけれども、これ以上の給与所得者が課税所得三千万円以上になっている。所得税最高税率が適用されるようになるわけですね。しかし、この課税所得三千万円の給与所得者の所得税、これは今お答えいただいたように八百九十七万円です。給与年収に対しては、約二五・二%というお答えがありました。課税所得三千万に対しては二九・九%の負担率になるかと思います。  これは、当然のことといえば当然のことなんですね。最高税率五〇%が適用される納税者も、納税する所得税負担率は五〇%になるわけがないわけです。いわゆる超過累進税率というわけですね。適用する税率に属する所得にのみ影響するわけですから、最高税率より下の四〇、三〇、二〇、一〇%という、この部分の税額は動かないわけですから、無限大に所得が大きくならない限り、全体の課税所得に対する税額の比率が五〇%になるということは絶対にあり得ないわけですね。  そこで、大蔵省に聞きますが、やや現実的でないかもしれませんが、現行で夫婦子供二人で片働き、この給与所得者で、所得税負担率、つまり実効税率が五〇%に近くなる給与所得者の年収と課税所得額、大変な高額になるかと思いますが、お答えいただきたいと思います。
  289. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 今のお尋ねの設例のケースで、給与所得控除が適用になりますので、例えば実効税率が四七%ということで計算させていただきますと、給与収入は十五億九千百七十五万円、課税所得金額は十五億八百二十九万円ということになります。
  290. 矢島恒夫

    ○矢島委員 今御答弁いただいたように、五〇%というのは限りなく無限大のものですから、四七%でお答えいただいたわけですが、年収が十五億、約十五億九千万円ですか、これ以上の納税者ということになる。国税庁、おわかりですかね。このような給与所得者は何人おられるか、数はわかりますか。
  291. 大武健一郎

    ○大武政府委員 そのようなデータはつかんでいないものですから、ちょっと申し上げることはできません。
  292. 矢島恒夫

    ○矢島委員 確かに、年収が約十六億円以上というのは、まずいないか、いたとしてもごく少数だろうと思いますが、このような人がようやく四七%以上の負担率になるわけですね。つまり、大蔵大臣、超過累進所得税はこうなっているわけです。  ところが、このような仕組み、どうも一般の国民は十分知っているだろうか。大臣、どのようにお考えになりますか。超過累進所得税ということになっておりますので、五〇%といったって、一億円取った人が五千万円取られちゃうんだというのじゃなくて、こういう仕組みになっているんですよということを一般の国民はよく知っているだろうかと私はいつも思うのですが、いかがですか。
  293. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 私どもも、折に触れ、この税制の御理解をいただくための努力をしているところでございまして、この超過累進の話はいろいろな意味で相当広く知れ渡っていることかと思います。  なお、委員、実効税率で申し上げましたが、実は、事業意欲とか勤労意欲という話は、いわば追加的な所得にどういう税率が適用されるかという限界税率の概念でございまして、今回の改正は、実効税率ももちろんございますけれども、それよりも、限界税率最高税率がどうかという観点で事業意欲を引き出そう、こういうことでございます。
  294. 矢島恒夫

    ○矢島委員 その後半については、これから税制を変えるに当たってどう変わっていくのかというあたりもお聞きしたいわけですが、何しろ私の持ち時間はどんどん少なくなっております。また別の機会にこれらの問題についてもお聞きしたいわけですが、主税局長、一般の人たちは知らない人が結構多いのですよ。  よく宣伝していると言うけれども、例えば、私は先日こういう人に会ったのです。税務署で、課税所得が三千万円を超えた場合は五〇%の税率が課税され、課税所得が三千万円なら千五百万円の税額を納めなければなりませんよと聞いた。私はこれは伝え聞いたわけですが、結局、五〇%全部持っていかれちゃうんだ、こういう意識なんです、この人は。このことは税務署の方にも聞いたのですが、知らない人が結構いるんだなと私は驚きました。  先ほどお聞きしましたが、年収が三千五百六十五万二千円、夫婦子供二人、給与所得で片働き、この人たちは今回の税制改正案で計算しますと税額は幾らぐらいになるのですか。現行の八百九十七万円、これと比較してどれぐらい減税になりますか。
  295. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 今の三千五百六十五万円の方ですが、税額は改正後八百三十六万円となりまして、軽減割合が六・八%でございます。
  296. 矢島恒夫

    ○矢島委員 もう一つお聞きしたいのですが、同じ条件にしまして、夫婦子供二人の給与所得者で年収が四百万円の方、それから七百万円の方、比較的その階層が多いわけですけれども、こういう人たちの税額は今度の新しい改正によってどれぐらい減税になりますか。
  297. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 四百万円のケースで申し上げますと、改正前二万八千円の所得税額が一万四百円になりまして、減税割合は六二・九%でございます。  年収七百万の場合は、二十六万一千円から十九万六千八百円となりまして、減税割合は二四・六%、こういうことになるわけでございます。
  298. 矢島恒夫

    ○矢島委員 これはこの委員会でも、また予算委員会でも終始問題になってきたことですけれども、いわゆる定額減税を打ち切るという状況の中で、私はちょっと計算してみたのです。昨年の特別減税を含めて考えますと、年収四百万円の場合は、昨年は所得税あるいは住民税、これはともに課税最低限の問題で今までいろいろと論議されてきたことですけれども、課税されておりませんから、改正後は丸々と所得税増税になりますね。一万四百円ですか。それから、個人住民税を含めて考えますと三万六千三百二十五円の増税になる。  それから、年収七百万円の方の場合は、昨年の所得税は十六万六千円、個人住民税が十五万五千五百円となっておりますから、改正後は、所得税が三万八百円の増税、それから個人住民税については九千四百円の増税。合計しますと、七百万円の方は、昨年の自分の状況と比べてみると、つまり特別減税を含めて考えますと、四万二百円の増税になってくる。  大蔵省は、昨年の特別減税を含めたものと比較することは、これは比較しようがないんだと嫌がっておるようでございますけれども現行税制分と改正案とを比較してみただけでも、これは明らかに、年収が四百万円あるいは七百万円、こういう人よりも、先ほどの三千五百六十五万二千円の方、この方の方が減税額は多くなってきている。これが、今回の最高税率引き下げ、それと一律二〇%減税、この組み合わせの結果だと思うのですね。  つまり、大蔵省や政府のねらいというのは私ははっきりしていると思うのですね。大蔵大臣にお聞きしたいのですが、政府の最高税率引き下げの答弁を予算委員会等で聞いていました。総理は、国民の意欲を引き出す観点からと、先ほど局長も言われておりました。これは一月二十一日の衆議院本会議のことです。大蔵大臣は、いかにも最高税率が高いということは、累進をかけますときに非常に高い累進をかけるということになりますので、どうしても将来の税負担が重くなりやすい、これはただ金持ちだけの問題ではない。きょうの午前中もこの趣旨のことを答弁されていたかと思います。  大蔵大臣、この大蔵大臣のおっしゃられる見解というのは総理と同じなのか、それとも、いわゆる意欲を引き出すという観点でそういうふうなこともおっしゃっておられるのか、もし違っていたらどのような違いがあるのか、説明していただきたいと思います。
  299. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いえ、大したことを申し上げたつもりでは実はなかったのでして、総理の言われるように、余り高い税率というのはやはり意欲を損ないますし、これからは外国人も日本で仕事をするなんという人が出るでしょうから、余り高くない方がいいじゃないですかと申し上げたのと、国税だけで申し上げますと、仮に五〇という最高税率、それと四〇がトップでしたら、やはり累進の度合いは五〇の方がきつくなりますでしょう。ですから、その人だけの問題ではないんだということを申し上げたかった。
  300. 矢島恒夫

    ○矢島委員 大臣は、ブラケットのいわゆるグループごとによる収入の区分、こういうものについての答弁もされて、累進をできるだけ緩やかにしていくということをおっしゃられたかと思います。  さてそこで、国民の意欲を引き出すという観点からの問題なんですが、私は、今度の税制改正を見まして、先ほど御答弁いただいた給与所得で三千万円以上、約二万人ぐらいいらっしゃるそうですが、この人たち、あるいはその少し手前の予備軍に当たる人たちも加えていいと思うのですが、いずれにしてもこういう人たちは、三千万円以上の年収のある方というのは、国民の中からいえば少数です。  すると、国民の意欲を引き出すという観点からいきますと、こういう高額所得者の意欲を引き出すための所得税の最高税率引き下げ、こういうことになるかと思うわけなんですけれども、つまり、最高税率引き下げ高額所得者の意欲を引き出す、これがどうして景気回復に役立つのかという、この点なんですよ。  まさに政府は、最重点課題として景気対策だ、財政構造改革との問題では、二兎を追ってはだめだから今は一兎でいくのだ、将来状況がよくなればということを何回もおっしゃっている。ところが、今度の税制の問題でいくと、減税についてだけは将来を見越して最高税率を下げておくことが将来の税制改革に非常に重要なんだ、阻害にならないようにする、障害にならないようにする、こういう答弁もあったわけです。どうしてこういうのが景気回復につながるのか、大臣、私はわからないのですが、少し教えていただきたい。
  301. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今最高税率を下げたからといって、幾らも人がおらないのですから、確かにそれ自身はそんな景気回復にならないかもしれませんが、先ほど申し上げましたようなことはございますし、それに、最高税率の人が、そういう人がいてその人が得するのじゃなくて、だれでもそこへ行けるように、そうしたときに得になるような、そういう社会をつくりたいというわけでございますから。
  302. 矢島恒夫

    ○矢島委員 年収三千万円のところを目指して意欲的に働くのだということが国民の意欲を引き出させる今度の改革というあたりかと思いますが、今までずっと論議してまいりましたけれども、今回の減税法案恩恵を受けるのは、やはりどう見ても低所得者ではなくて高額所得者納税者であること、これはこれではっきりしたわけです。  これを一口で言いますと、数少ない金持ちのやる気を起こすための減税景気の問題は二の次、こういうことではないか。これでは、景気回復に役立つどころかかえって消費を冷え込ませる、こういう事態になるのじゃないか。納税者がやる気を起こすというわけですけれども、本当に景気は回復するのか。その景気という点でもう一度大臣に御答弁を。景気にどう影響してくるのかということです。
  303. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その一番の、六五%のところだけをごらんになりますと、そういう所得者はほとんど数は少ないのでございますから、その方々が多少どうされようと、それ自身はすぐ景気に影響を及ぼすわけではないと思いますけれども、しかし、高い税率を低くするということは、やはり国民全体の所得税負担を軽くするということでございますから、そう申し上げたらおわかりいただけるかと思います。
  304. 矢島恒夫

    ○矢島委員 どうも十分私は納得できない部分もあるのですが、ある雑誌の鼎談で、加藤寛政府税調会長がこういうことを言っていらっしゃるのですね。最高税率人たちは、何となく努力をしても報われないとみんな思っている、無気力な状況を打破しなければならない、そのための最高税率引き下げであった、このように理解していますと。林義郎自民党の税調会長さんですが、宮澤さんにもお話をいたしましたが、減税をやって国民に刺激を与える、それは単に消費をふやすということではなくて、国民の意欲をつくるのだというようなお話がありました。  まさに今度の減税中身は、本当に一部の高額所得者に意欲を持たせること以外の何物でもない。多くの、国民の七割、八割の人たちは結局差し引き増税という中で果たして景気が回復できるのか。その辺を私指摘しまして、質問を終わります。
  305. 村井仁

    村井委員長 ただいま議題となっております各案中、内閣提出経済社会変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税負担軽減措置に関する法律案租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案及び有価証券取引税法及び取引所税法を廃止する法律案に対する質疑はこれにて終局いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時三十五分散会