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1999-02-10 第145回国会 衆議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月十日(水曜日)     午前十一時二十四分開議   出席委員    委員長 村井  仁君    理事 井奥 貞雄君 理事 衛藤征士郎君    理事 鴨下 一郎君 理事 柳本 卓治君    理事 上田 清司君 理事 日野 市朗君    理事 石井 啓一君 理事 小池百合子君       江渡 聡徳君    大石 秀政君       大島 理森君    栗本慎一郎君       河野 太郎君    桜井  新君       桜田 義孝君    下村 博文君       新藤 義孝君    田中 和徳君       中野 正志君    平沼 赳夫君       宮島 大典君    村上誠一郎君       渡辺 具能君    渡辺 博道君       渡辺 喜美君    綿貫 民輔君       海江田万里君    末松 義規君       仙谷 由人君    玉置 一弥君       中川 正春君    山本 孝史君       大口 善徳君    谷口 隆義君       並木 正芳君    若松 謙維君       鈴木 淑夫君    西田  猛君       佐々木憲昭君    矢島 恒夫君       横光 克彦君  出席国務大臣         大蔵大臣    宮澤 喜一君         国務大臣         (金融再生委員         会委員長)   柳沢 伯夫君  出席政府委員         金融再生委員会         事務局長    森  昭治君         金融監督庁長官 日野 正晴君         金融監督庁検査         部長      五味 廣文君         金融監督庁監督         部長      乾  文男君         経済企画庁調整         局長      河出 英治君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主計局次         長       藤井 秀人君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省理財局長 中川 雅治君         大蔵省金融企画         局長      伏屋 和彦君         国税庁次長   大武健一郎君         国税庁課税部長 森田 好則君         厚生省健康政策         局長      小林 秀資君         厚生省児童家庭         局長      横田 吉男君         自治省財政局長 二橋 正弘君         自治省税務局長 成瀬 宣孝君  委員外出席者         通商産業大臣官         房審議官    岡本  巖君         通商産業省機械         情報産業局次長 林  良造君         建設大臣官房審         議官      風岡 典之君         参考人         (日本銀行理事         )       黒田  巖君         参考人         (日本銀行理事         )       小畑 義治君         参考人         (預金保険機構         理事長)    松田  昇君         大蔵委員会専門         員       藤井 保憲君 委員の異動 二月十日  辞任         補欠選任   河井 克行君     田中 和徳君   砂田 圭佑君     江渡 聡徳君 同日  辞任         補欠選任   江渡 聡徳君     新藤 義孝君   田中 和徳君     宮島 大典君 同日  辞任         補欠選任   新藤 義孝君     砂田 圭佑君   宮島 大典君     河井 克行君 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  経済社会変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税負担軽減措置に関する法律案内閣提出第四号)  租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第五号)     午前十一時二十四分開議      ————◇—————
  2. 村井仁

    村井委員長 これより会議を開きます。  内閣提出経済社会変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税負担軽減措置に関する法律案及び租税特別措置法及び阪神淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  両案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君及び預金保険機構理事長松田昇君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 村井仁

    村井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 村井仁

    村井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。末松義規君。
  5. 末松義規

    末松委員 民主党末松義規でございます。  大臣にはお忙しいところ、大変恐縮に存じます。  きょうは減税問題の前に、この前、二月四日の減税問題がテーマとなりました本会議でも質問させていただきましたが、そのときに小渕総理に対して富国有徳という概念をお聞きしまして、これからの二十一世紀の日本というのは、やはり有徳という概念が私自身も重要だなと考えています。  その中で、日本人の生活として、自己実現というか自己創造、そういった心豊かな人生を送れるための環境整備、これが重要だろうということで、NPOの問題につきまして指摘させていただきまして、そういった自分が好きな活動、あるいは自分の徳になるそういった活動に対しては、もっともっと社会としても支援を多くやっていくべきじゃないか、そういう観点から、このNPOに対しての寄附金控除すべきではないか、そういうことを私の方で質問させていただいたわけです。  これに対して、宮澤大蔵大臣から、小渕総理よりは一歩踏み込んで、大体三点ぐらいの内容で御答弁をいただいたかと思います。  まず、NPO活動というものを、実態面を見きわめてみたいというのが一点目で、二点目が、寄附公益性担保されるような仕組み考えますということ、そして三点目は、これらを通じて減税措置をしますという形の答弁をいただいたわけであります。  この御答弁がその翌朝の毎日新聞に載りまして、二月五日付ですが、これで、NPOへの寄附金について宮澤蔵相税制優遇措置を講じる方針を初めて表明したということで、新聞紙上等でも評価したという報道があったわけですね。これについては、私もNPO関係者にいろいろと話をしましたら、NPO関係者からも、非常に見識の高い御答弁であったということで、非常に高い評価を受けたわけです。  このNPO法律が今度実施されましたので、特に衆議院の附帯決議にも、法律施行後二年以内に、NPOに関し、その活動実態を踏まえつつ、特定営利活動の推進及び支援のための税制、これを含めた制度の見直しについて検討して結論を得る、そういう附帯決議がついておりますし、また同じくその横の項目に、公益法人制度、これは民法の三十四条で定められておりますが、これを含めて今後総合的に検討するというふうなことが述べられているわけなんです。  このNPO法律ですが、寄附金控除問題を含めて、大蔵省として、今どういう検討状況になっているのか、それをまずお伺いしたいと思います。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 基本的には、せんだって本会議で申し上げたように考えておるわけでございますけれども、法律が施行されたばかりでございますから、これからどういう団体が手を挙げられて、どういうことをされるかという実態を知ってみたい、それが第一と思います。  公益性というものをもちろん持っておられる活動団体が必ず出ると思いますが、それをどういうふうに認定するのか。普通ですと主務官庁とかいう話になるわけですけれども、そういうことがございませんから、その辺を客観的にどうやって認定するかというような問題が多分これから解決すべき問題であるだろうと思っております。  政府委員からも補足いたします。
  7. 尾原榮夫

    尾原政府委員 少し事務的に今の制度を含めまして、説明させていただきたいと思います。  現在、先生御承知のように、特定公益増進法人制度というのがございます。これにつきましては、特に著しく公益増進に資するものということで、教育とか文化とか例示がしてございます。そういうことで、この特定公益法人制度のもとで、今の公益法人制度のうちの一部につきまして優遇措置を講じているわけでございます。今の制度民法三十四条の法人でございますので、それぞれ監督官庁があるわけでございます。したがいまして、今の仕組みでまいりますと、監督官庁が責任を持って公益性認定し監督するということで成り立っております。  ところで、このNPOに対する寄附金取り扱いでございますが、私ども、この附帯決議、二年以内に結論を得るというのはよく承知しております。この十二月からこの法律が施行されたわけでございます。それで、まさに、NPO法人都道府県知事がこれから認証なさって法人格を取得されるものと思うわけでございますが、現段階で、どのような法人がどのような活動内容を目的として、このNPO活動、大変いいことだと思いますが、まだ把握できていない状況でございます。したがいまして、今の税法から見て何が公益なんだろうかということを、実は実態がわからないものでございますから、見きわめられない状況でございます。ただ、この辺は、今から設立されれば実態もわかってくるのかなと。  さらに、冒頭申し上げましたように、このNPO法人の特質は、公の関与からなるべく自由であるというところにまさに意義があるんだろうと思います。ところが、公益性をどう認定するかということになってまいりますと、実は、監督官庁のないもとで、やはり寄附金控除といいましても、ある面では補助金を与えるという面もないわけではないわけでございますので、その辺の判断を一体どうするのか。特に国税の場合でございますと、全国的に統一した、画一的なと言ったらいいでしょうか、全国的にバランスのとれた取り扱いをする必要がございます。  したがいまして、公益性担保といいましたとき、そのようなNPO法人の公から離れているという性格と実は公が関与しなきゃならぬ部分と、ちょっと相矛盾する部分がございまして、そこをどうするかというのがなかなか悩ましい問題だな、今後検討していかなきゃならない話だなと思っているわけでございます。  いずれにいたしましても、このNPO寄附金控除の問題でございますが、今申し上げましたように、実態がどうなんだろうか、それから公益性担保をどうやっているのかというようなさまざまな観点を踏まえまして、税制調査会の場においても慎重にこれから検討していただく問題であるというふうに考えているわけでございます。
  8. 末松義規

    末松委員 そうしますと、税制調査会等で取り組むべき問題だということなので、今実態としてはNPOで認可されている団体はまだないという話も聞いているのですけれども、経過措置を含めて十カ月以内にそれはぼつぼつ出てきて、今申請している団体は二けた以上あるとかいう話も聞いていますから、それを見ながらやっていくという話でしょう。  ただ、二年以内に結論を得るという話になれば、そうぐずぐずもしていられない。英米も含めて海外のいろいろな研究、これ自身はかなり進んでおられるのですか。
  9. 尾原榮夫

    尾原政府委員 海外の場合でございますと、我が国と異なりまして、宗教法人もこういう対象になっている例が多うございます。  アメリカの場合を例にとってみますと、実は州ごと法人格を付与する仕組みになっております。では、国税をどうしているかということになってまいりますと、IRS、アメリカ国税庁が個別に認定をしてその資格を与えるという仕組みになっているようでございます。  また、英国の場合で申し上げますと、これはチャリティーコミッションといいましょうか、いわばそういう認定をする特別の行政機関があるようでございまして、そういうところで認定を行っているというふうに承知しております。
  10. 末松義規

    末松委員 そうしますと、そういうような研究も今されておられる。では、あとは秒読みじゃないけれども、もう審議にのせる段階に入ってきているというふうに理解していいですか。つまり、スケジュール的には着々とやっているという位置づけでよろしいですか。
  11. 尾原榮夫

    尾原政府委員 各国の実態については私ども常日ごろ研究しているところでございますが、何分にも今度のNPO法人はいろいろなことをやれる法人でございますので、しかるべき時期が参りましたら、まずその実態をきちっと把握していきたいなと思っております。
  12. 末松義規

    末松委員 後でも公益ということについてちょっと概念的な整理をしますけれども、実態調査するというのは、基本的に、大蔵省が実際にいい活動なのか悪い活動なのかそれを判断するということですか。
  13. 尾原榮夫

    尾原政府委員 恐らく、今の特定公益増進法人制度との横の並びからすれば、同じような事業をやっているかどうかというのが一つ考え方になる、これもまた今後の検討かと思います。  ただ、その実態を把握する場合は、それにとらわれずに、何をやっているのかというのがまさにまだわからないものでございますから、これは主務官庁といいましょうか、厳密な意味での監督官庁ということではございませんが、経済企画庁がこの法律主管官庁でもございますので、どういうふうに実態を把握していくかということも経済企画庁とよく相談して実態把握に努めてまいりたいというふうに考えております。
  14. 末松義規

    末松委員 実態把握についても調査をやるという位置づけでよろしいですね。  アメリカデータなんかをちょっと見てみますと、日本と比較するとかなり大きな差がある。例えば、一九九〇年のデータ公益寄附金というものを見てみますと、一ドル百三十円で換算した形なんですが、アメリカ個人寄附というのが十三兆円強あるんですよ。そして、遺産寄附ということでNPOにみんな寄附されたものですが、これは一兆円強。あと財団寄附が一兆円弱。また、法人からの寄附が七千七百億円程度あるのですね。これに比べて、日本の場合を見ますと、個人からの寄附というのがたった三百四十二億円という状況なんですね。法人からの寄附が五千五百億円弱。これを見てみますと、アメリカ個人寄附状況は大体八十数%を占めているのに対して、日本の場合は大体一・三%ぐらいでしかない。  こういうふうな状況で、実は私は外務省時代にいろいろとほかの先進国人たちからそれで笑われた経験がありまして、何だ、日本というのは個人社会貢献というものが全くないのか、そういうふうなモラルが少し弱いんじゃないかとまで言われて、そんなばかなという話は一応はしておいたのですけれども、どうも日本経済成長をばあっと追っかけている時代に、やはり金、金、金という感じになってきまして、どうも物質主義的で、心をどこかに置き忘れたんじゃないか、そういうのが今の青少年の心の乱れとかそういう話にもなっているのかもしれません。これでは小渕総理の言われる有徳の国になりますなんということはちょっと恥ずかしいんじゃないかという気もするわけです。  有識者に聞いても、宗教上の理由とか社会的な理由そのもの以上に、やはり個人寄附税制控除も含めてそういうのは全くなくて、ある程度はそれはありますけれども、公益法人的なところはありますが、どうもそれが立ちおくれている、それが阻害要因になっているということまで実はあわせて言われたわけであります。  NPO活動については、今さら私が申すまでもなく、さまざまな効用、例えば個人の個性を伸ばして徳育とかそういったことを助長していくとか、あるいは市場の失敗とか政府機能とか、そういったものを機能的に補完していくとか、あるいは経済活動を活性化していって、これそのもの経済対策あるいは景気対策にもなり得るようなものだと言えるわけですが、そういった観点からどうもこの個人寄附というものが余りにも少ないという点について、宮澤大臣、そのお考えあるいは感想がございましたら、ぜひお聞かせいただけますか。
  15. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 しばらく前のことでありますけれども、私は、御存じのピーター・ドラッカーに、アメリカ人がいわゆるパブリックサービスに使っている時間、その数というのは驚くほど多いということを、統計もありまして、聞きまして、これは教会の活動を別にしましてそれだけある。ですから、これは我が国ともう際立って違うわけでございますね。  思うに、やはり自分コミュニティーというものがあって、そこから自分たちの代表を選ぶとか、それが自分の州なり国なりの仕事をする、同じような意味自分コミュニティーのために働く、そういう社会のでき方なんだろうと思います。日本も、明治以前にはそういうコミュニティーがあちこちにありましたけれども、ちょっと代議政体みたいなことではございませんから、やはり自然にそういうコミュニティーのために自分の時間を使う、そういうしきたりがなかったんだろうと思います。  しかし、それは過去のことであって、だんだん国民が自分の時間の余裕を持つようになってもきておりますから、我が国も、自然にコミュニティーのために働こう、福祉なんかはそういうところが見られますけれども、そういうふうになってきつつあると思います。NPOというのはその一つのはっきりした形だと思いますが、そういうことが奨励されるように社会を育てていくというか、育っていくことがきっと非常に大事なんだろうと思っております。  殊に、福祉とかいうことを考えますと、本当のボランティアみたいな部分がやはり一つありまして、その上に制度的に整備されるということと、そうでない場合は大変違いますものですから、そういうことがきっと要ると思いますもので、こういうNPOについての公益部分活動課税上の特例考えるというようなことは、恐らく私は大事なことなんだと思うのでございますね。  私どもの党にもいろいろな議論がございまして、これは私の意見じゃございませんよ、中には、NPOというのはしばしば政府を批判する、そういうことがございますね、そのことを大変気にする人がおったりいろいろなんですけれども、しかし、やはり市民がそういう自由な活動をする、それが公益的な部分はやはり税をかけないというようなことは、考え方としては、私はそうなっていくのが本当だろうというふうに思っております。
  16. 末松義規

    末松委員 今本当に、宮澤大蔵大臣の生のお声を、お考えを聞かせていただいたわけですけれども、私も全くそれに共鳴する一人ですね。  確かに英米の方は、クリスチャニティーというある意味でのフィランソロピカルな、横に広がるような形でコミュニティーができやすい。我々の日本というのは、神道と仏教がまじり合ったところなのでその辺の横の連帯的なところが少し薄いという社会基盤の違いがあっても、これからの社会イギリスのトニー・ブレアなんかも言っているように、コミュニティーというのが我々の心の安定にとって非常に重要な存在になっていくのだろうなと。特に、家族的なきずなが少しずつ核家族化で崩壊してきている現状をかんがみますと、やはり何らかの心のよりどころ、あるいは自分存在感自己尊敬というのですか、自尊心というか、それを高める上でも、そういう活動本当に重要になると思います。ですから、その御認識をそのまま行政の方で反映をさせていただきたいと思うわけです。  ただ、そこの問題点で、明治民法の三十四条ですか、今まで来た制度との整合性、これに大蔵省の方を中心に知恵を使っていただかなければいけない。その辺の制度的な整合性をいかに確保して、公益という概念を全体としていい形にやっていくか。それは、ある意味では法技術的なところも多くあるわけですから、そこをぜひ一生懸命にやっていただきたいなと思うわけです。  先ほど宮澤大臣が、政府を批判する人たちも当然出てくると。それはそれで、民主主義という中でマジョリティーの原則に従って最後には収れんされていく問題でもありましょうし、結局はそこで話し合いがどんどん行われていくことによって、コミュニティーとしての基盤がだんだんに固まっていくということもあるんじゃないかなという気がいたします。  そういった意味で、先ほど宮澤大臣の、ある意味では決意と受け取ってもよろしいでしょうか、NPOの減税問題について、これが述べられたことは私も非常にうれしく思います。今後ともこの検討状況を、大臣御みずからどうなっているんだということで、この問題意識事務方の方々にも強く御指導いただきたいと思いますが、その点について、ちょっと御決意を一言お願いします。
  17. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今お答えしていることを事務当局の諸君は聞いておりますので、一生懸命やってもらわなければならぬと思います。
  18. 末松義規

    末松委員 これはちょっと事務当局の方にお伺いしますが、余りこういうことをこういった場では言いにくいのかもしれません。  先ほどの寄附公益性担保するということですが、これの仕組みというのは、今まで私もそこはちょっと勉強をさせていただいておりますので大概は感じとしてわかるのですが、逆に、担保されないケースで、用心しなければいけない、あるいは非常に注意が必要なんだ、そういうケース、あるいは、そういうことに対してどういう対応を考えなければいけないのか、そういうことについて述べていただけますか。
  19. 尾原榮夫

    尾原政府委員 現在の仕組み参考に申し上げますと、まさにそのやっている事業が主たる部分教育とか科学技術の振興とか社会福祉とか、そういう事業をやっているか、これは冒頭申し上げましたように、政令で書いてある事業をきちっと、片手間ではなくてそういうものをやっているんだろうかというのが一つあろうかと思います。それから、何と申しましても、経理などがしっかりしておりまして、しかも、寄附金をいただいたのはいいけれども事業がうまくいかなかったということになりますと、これはまた大変なことになりますので、その事業体がきちっと持続して事業をやっていけるのだろうか。あるいは役員の方が、食い物にするという言い方はなんでございますが、そのような実態はないのかどうか。  実は今、そのような観点からも各省庁においてやっているところでございまして、実態を見きわめた上で、公益担保考える上で今のような点が重要な点になってくるのではなかろうかと思います。
  20. 末松義規

    末松委員 民主党の方でも、このNPOについて、税制問題、特に寄附金控除について法案を準備しつつあります。そういった意味で、お互いに意見を闘わせながらやっていっていいものをつくるということが一番望ましいことだと思います。  先ほどちょっと公益概念という話がありましたが、ちょっと私の方も、もしこれをある意味で取りまとめるという段になってまいりますと、ではどこが取りまとめるんだと。先ほど局長からお話がありました、例えば課税当局がやるアメリカケースとか、あるいはイギリスチャリティー委員会とか、そういう話になりますが、これは大蔵省公益を実際に判断できるのかということなんです。  例えば、各省に今まで任せていて、天下りの問題とか癒着の問題とか補助金絡みでいろいろあったり、そういう話があったわけなんですね。そこで社会的な信用というのは今はそれほどない、薄くなってきたわけなんです。ただ、海外の事例なんかを見ますと、そういうふうな課税当局がやる場合も何カ国かありますし、例えば非常にマニュアル化してそれで裁量の余地を少なくしていくこととか、あるいは世間から一段と厳しく見られている課税当局がやはりチェックをするということなのかなとも思うんです。  課税当局は、これを取りまとめるあるいは担当するということについてはどういうお考えをお持ちですか。まだこれは検討状況ですからわかりませんという話なのかもしれませんが、その辺、お考えがあったらお願いします。
  21. 尾原榮夫

    尾原政府委員 繰り返し申し上げておりますが、十二月から法が施行されたばかりで、まずその実態を見きわめたいと思っております。  では、その後の仕組みをどうするんだ、実は妙案が今のところございません。仮に国税庁、IRSのような仕組み考えたといたしますと、行政改革の流れが今一つあるわけでございますが、新たに仕事がふえることになってまいります。その場合の効率をどう考えるかという問題と同時に、どうやって画一性を担保するか、あるいは全国の公平性を担保するか。それぞれの税務官庁の判断によって違っては困るわけでございますから、まだ仮定の、今の先生の御質問に対して頭に浮かんだのでございますが、なかなかその辺、難しい問題があるなというのが今の偽らざる気持ちでございます。
  22. 末松義規

    末松委員 まだ検討し始めている段階なんで詳しくは言えないねというのはまさしくそうだし、だからこそ早くやってよねというのが私の立場なんです。  民法三十四条のやり方で、例えば特増法人だ、やれ公益法人だという話に余りにとらわれ過ぎて、それと何か序列を与えて、どうも少し過去の慣行との整合性を最大限にとって、何か座りよい形でこれを整理するという話になると、二十一世紀を見据えた社会の構築あるいは人間性の発揮という話になりますと、これはまた大きく道を間違えるという話になるのかな。ここは本当日本人の二十一世紀の若い方々を中心とした社会を逆につくっていくということから、大胆にやってもらわないと困ることだと思うんですね。そこをぜひ大臣には、何回も何回も恐縮ですけれども、そういった意気込みで私はお願いをしたいと思います。  これはお願いをさせていただいて、私これでもうこの問題は終わりますけれども、大臣に一言感想を再度お願い申し上げます。
  23. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 委員行政というものを御存じでございますから、今御心配になっていることはちょっと私もわかるんですね。  国税庁というのは税を取る役所でございますけれども、取る中にはまけることも含んでおりますから、そこはやはりそういうつもりで行政をしませんといけないと思うんです。やはりその他の公益法人と、人格なき社団とかいろいろなものが現実にたくさんございますから、それとやっていることを比較してみて、これはやはりそのぐらいはしないとおかしいじゃないかといったような、物差しが現実に全然ないわけじゃございませんから、そういう行政をしてもらえばいいんだろう。  確かに、おっしゃいますように、どこかが公益性認定してくれますと、これは、有無を言わさずというのはおかしい言葉ですけれども、まあそうするかということになりやすいんですが、自分のところでやるとなりますと、なかなかそれは気が向かないこともあるかもしれません。だけれども、物差しというものは既にかなり現実にございますから、そこのところは客観的に判断をして、与えるべきものは与えなきゃならぬのじゃないかと思っております。
  24. 末松義規

    末松委員 テーマを減税問題に移しますが、その前にちょっと経済状況の認識について、経済企画庁の方おられると思いますのでお聞きします。  昨日、日経新聞の夕刊ですか、堺屋長官が日本の景気について述べられておられまして、昨年秋が日本経済のボトムだった、それで、今はその景気の厳しさから脱しつつあるんだというふうな御発言があったと報道では書いてあるんですが、これは経済的な数字に裏づけられたものなのかどうか、そこのところをぜひちょっとお示しいただきたい。  例えば、輸出の落ち込みによる日本経済のマイナスの要因とか、あるいは、設備投資がまだまだ落ち込んでいますよね、それの影響とか、あるいは大企業なんかはリストラがこれから本格的に始まるというところで失業率もかなり落ち込んできている、今は過去最高ということでさらに更新する可能性というのはあるんだろうと思うのです。そういう貿易面、企業業績の悪化とか、あるいは雇用不安とか、そうなると二月、三月はかなり厳しいんじゃないかという個人的な見通しを私は持っているんです。  そういうふうなことじゃなくて、本当に何かだんだんとバラ色になってきているのかどうか、あるいはバラ色にしたいという政治的な発言、その思いがあるという政治発言であればわからぬではないんです。ただ、余りその思いが強過ぎると、昨年の桜咲くころ発言みたいな話にもなりますし、その辺について企画庁としてどう考えているのか、そこをお願いします。
  25. 河出英治

    ○河出政府委員 政府としての二月の正式の景気の判断につきましては近く決定する予定でございますが、最近の我が国の経済の動向でございますけれども、先生が御心配されておりますように、個人消費はなお全体としても低調でございますし、また、設備投資も大幅に減少しているということで、景気は低迷状態が長引いて極めて厳しい状況にあるということには変わりはないと思っております。  ただ、一層悪化を示す指標がある中で、一方で公共投資につきましては、今年度は過去最高のペースで前倒し執行が進んでおりまして、十年度の一次補正の効果などもあらわれてきております。また、企業倒産件数を見ましても、信用保証制度の拡充の効果もありまして、昨年末は非常に大幅に減少をしております。それから、個人消費も全体としてはあれでございますが、個別に見ますと自動車販売などに下げどまりの兆しも見られるということで、変化の胎動も感じられるようになってきているというような状況にあろうと思っております。近く正式判断をする予定でございます。  こういった事態を受けまして、私どもとしましては、昨年の十一月に緊急経済対策を決定しておりまして、まず景気の回復基盤を固めるために、金融システム不安、信用収縮対策につきまして、万全の対策を講じたところでございます。また、今年度の予算につきましても、公共事業について大きな伸びの確保、あるいは九兆円を超える大幅減税の実施、あるいは雇用面につきましても十分な予算の確保等をしたわけでございます。  こういった施策の実施によりまして、当面いろいろ厳しい指標が出る可能性もございますけれども、公的需要が十分下支えをしていって民間需要が緩やかに回復していくものというふうに考えておりまして、来年度〇・五%成長ということで見込んでいる次第でございます。
  26. 末松義規

    末松委員 そうしますと、二月、三月の統計が大体明らかになってくる四、五月ぐらいですか、そのころには経済は、先ほどの十分な雇用対策、十分ないろいろな経済対策、これが出てきて、本当意味で桜が咲いて散ったころぐらいにはかなりそれはよくなってくるというふうなものを、堺屋長官とともに事務方の方もそういうふうに見ているという認識でよろしいですよね。
  27. 河出英治

    ○河出政府委員 当面、雇用などにつきましては、リストラが進みますので一時的に失業率がさらに上がるということはあろうかとも思いますけれども、全体としては、年度の後半から民間部門につきましても緩やかに回復していくということを考えておりまして、今先生がおっしゃったように考えているところでございます。
  28. 末松義規

    末松委員 大臣にちょっとまたお伺いしますけれども、減税の効果についてでございます。  去年の七月、アメリカの連邦準備理事会のローレンス・リンゼーという前の理事が、減税の効果ということで、レーガン政権でアメリカでは実験済みだということで彼が言っておりましたのが、レーガンのときに減税をやって金持ち優遇だと言われたんだけれども、どうもアメリカの納税者のうち最も富裕な層の一%、一%の人口の方々が所得税金額全体の約一七・九%を八一年に占めていた、それが八二年には一九・三%に上がり、八五年には二二・三%、そして九八年には約四割ぐらい、四〇%ぐらいになっている、富裕層の方がどんどん税金を納めているということで、これは景気がよくなると同時にそういうふうになったという点と、あと、減税によって金持ちにこれからなりたいという層が非常にやる気を起こして、それで減税の効果が上がったんだということを日本に対してメッセージとして送っていたんです。  今回の日本の減税なんですが、〇・五%の成長率を達成するという中で、この貯蓄性向の高い日本人が、私どもの党から見れば一部の金持ち優遇税制じゃないかという点もあって、余り幅広い消費効果は期待できないんじゃないかと、これも申し上げましたが、そういうふうなことで、ちょっと私自身は信じられないんですが、本当に成長率にどのくらい寄与しているのか、大蔵省も別に数字で全部把握しているわけじゃないかもしれませんが、その辺は何か根拠みたいなものがあるのかどうか、それをまずお伺いします。  その前に、大臣に急にぶつけてもなかなか言いにくいのであれば経済企画庁の方に、その辺はどうなんだということをお伺いしたいと思います。
  29. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今経済企画庁にお願いをいたしますが、今我が国の経済で設備投資に期待することはとてもできないと思いますね。それから財政、これは私は皆さんがおっしゃるよりは公共事業というものは役に立っていると思いますが、しかし、これについてはどうも疑問を持っていらっしゃる方もある。そうすると、日本はかなりもう成長した成熟社会ですから、企業がだめ、IGがだめ、そうですとやはり消費に期待するしかない、引き算みたいな話を申しますけれども、どうもそうだと思うのでございますね。  消費を、限界消費性向を高めてもらうのは何だということになると、やはり税を納めている人に対しては減税だろう、こういうことに結局なって、しかし、それでも減税分が消費にどれくらい向くかということは、実際、そのときの国民心理にもよりましょうし、将来への国民が持っている未来観にもよりましょうし、きちんとしたことはなかなか本当は言えないんだろう。  ですが、設備投資に期待ができない、IGに限度があるとしますと、住宅はよろしゅうございますがそんなに大きいわけじゃありません、これも一生懸命いたしますけれども、やはり大きな減税で消費の伸び、限界消費性向が大きくなっていくことを期待する、それしかないと言うと妙な言い方ですが、それが一番大事なところじゃないかというふうに私は大まかに思うわけでございます。  それで、ちょっと企画庁にお願いします。
  30. 河出英治

    ○河出政府委員 所得課税の恒久的減税の経済効果でございますけれども、減税の効果というのはその時々の経済状況によって変わりますのでなかなか定量的に示すことは困難でございますが、あえて私どもの計量モデルによりまして機械的に試算をいたしますと、十一年度の所得課税減税約四・六兆の実質GDPへの効果は〇・四%というふうに見込んでいるところでございます。
  31. 末松義規

    末松委員 それは、特定のモデルか何かの式があるわけですね、ずばっと結論だけ言われましたけれども。
  32. 河出英治

    ○河出政府委員 私どもの経済研究所で策定をしております短期日本経済マクロ計量モデルというモデルがございまして、このマクロモデルの乗数、これは〇・四一でございますが、これを使って計算をいたしますと、〇・四%のGDPへの効果があるということでございます。
  33. 末松義規

    末松委員 そのモデルに、例えば設備投資の落ち込みとか、それは、多分一、二%ぐらいまでGDPを落とすマイナス影響とか、輸出面のマイナス影響とか、そういうふうなのを全部勘案して小渕内閣が掲げる〇・五%の成長ということを考えておられるんだったら、減税による〇・四%というのは余りにも小さいかなみたいな感じもあるんですが、その〇・五%という成長目標ということであれば、ほかの財政支出とかなんとか、その辺がかなり大きな強烈なブースターになって景気を引っ張っていくんだというお考えということですか。もう一回答えていただけますか。
  34. 河出英治

    ○河出政府委員 来年度の〇・五%の見通しとの関係で申し上げますと、〇・五のうち、公共投資などの公的需要だけで〇・八%押し上げるというふうに私どもは考えております。それ以外の民間需要、これはもう消費も設備投資も住宅もありますけれども、全体を足し合わせまして〇・二%の減というふうに見込んでいるところでございます。  ですから、設備投資などにつきましては、なお厳しく見た上で、実質GDPは〇・五ということでございます。
  35. 末松義規

    末松委員 では、一応私の午前中の質問はこれで終わらせていただきます。
  36. 村井仁

    村井委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十分休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  37. 村井仁

    村井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。末松義規君。
  38. 末松義規

    末松委員 引き続き質問をさせていただきます。  宮澤大臣は、きのう私もずっとここにいて大臣答弁をお聞きしていたのですが、いろいろな不良債権の処理とかさまざま解決して、来年度〇・五%の成長をすれば御の字だなという感じに私は受け取ったのですね。大臣は、同じように、二月四日の本会議で、抜本的税制改革をやろうとするときはいつなのだという私の質問に対して、今は景気が悪いから厳しいですねと数字をはっきりと挙げられて、二%ぐらいになってからですねというのをはっきりと言われたのですが、この状況でいきますと、抜本的税制改革というのはどうも数年先ぐらいになるのかなという感じがするのですが、その辺は、大臣が言われたお言葉との関係でどういうふうに整理されておられますか。
  39. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これからの経済の立ち直りの見通しは、正直申しまして、大変にその度合いなり時期なりが不正確、不明瞭でございますので、まずプラスの成長がなければならないわけですが、税収が今は実は減り続けておりますから、税収が少しでもふえる方に転じることがどうしても肝要だと思うのでございます。そうでありませんと、税制改革に本気になって取り組めませんので、税収がふえる傾向に入った、それは普通の言葉で言えば、成長がプラスになってということになると思うのでございますが、とにかく、税収というのがややふえ始めたという状況がどうしても必要だろうと思うのでございます。  それを確かにそうだというのは、一遍限りふえただけでは少し心もとないのでございまして、そんなことから表現をすれば、経済成長がまあまあプラス成長のサイクルに入った、それは二%ぐらいかな、こういうふうに思っております。その前に〇・五%ができるという段階がどうしてもあるわけでございますから、その次にそのぐらいになって、しかし、もうこれは一遍限りでないなという確信がちょっと持てませんといけませんですから、どうもやはりそのぐらいの時期を見てからでないと腹を決めて改革をすることができないかもしれないな、こんなようなことをぼんやり思っておるわけでございます。
  40. 末松義規

    末松委員 今の宮澤大臣のお話ですけれども、まさしくこの財政再建というものもすべて頭に入れられた中で、その中でやはり税制改革の抜本的な改革というスケジュールも入っておありだと思うのですね。そのためには、きのうの御答弁にもありましたけれども、今も言われました税収確保をまずやらなきゃいけない、そのためにはプラス成長が絶対に必要だ、そのためには今の大不況をとにかく脱出しなきゃいけない、それが宮澤大臣のお仕事のある意味では大前提ですね。きのうから繰り返し大臣が言っておられる。  そうしますと、大臣の言われている大体この一年以内に〇・五%の成長というのは、ある意味では宮澤大臣のお仕事の前提条件になるということですよね。というのは、もうちょっと言えば、景気対策を最大の仕事の一つとして掲げられている小渕内閣のある意味では国民に対する公約というのが〇・五%の経済成長だということですね。その財政再建との関係で、私もきのうお聞きしていて、宮澤大臣が、元気になれば、借金なのでしょうね、お荷物もまあ大丈夫ですよと言っておられたのに対して、やはり腹のくくり方が違うなと。やはり政治家というのは、こうあるべきだろうと私自身内心思ったわけです。  そういった意味で、何か大臣が、いや、財政再建も大したことない、元気になればいいのだという話であれば、何となく私もそういう気になってくるのですね。そういうある意味での明るさ、楽観性がないとなかなかこの政治という仕事はやってられないのかもしれません。  ただ、その腹のくくり方であれば、逆に、先ほど申し上げました〇・五%という数字が確保できなければ、それはすべての仕事ができないよという話にもなりますわね。またことしもマイナスでしたという話だとこれは許されないという話ですが、そこは、小渕内閣の試金石でもあり、あるいは宮澤大臣のお仕事の試金石でもあり、あるいは、もしそれが失敗した場合には職を辞すというぐらいの御覚悟があるのですよね。お答えください。
  41. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これ以上国債をふやすということが事実上私はできないに近いというふうに思っているものですから、そういう意味で、職を辞すると申しますか、むしろちょっともう財政も後ろがないという感じでおるわけでございます。  それで、今のお尋ねなのですが、結局、一—三月がどうなるかということは統計的には六月の十日ごろになりませんとわからないわけですが、その一—三月がプラスの成長になっておりますと、来年度のプラス成長というのは比較的やりやすいわけですし、一—三月が下を向きますと逆にやりにくい、そういう統計上の要素がございますから、それをちょっと捨象しまして、四—六、七—九、十—十二と、対前期、四半期ごとのプラスが出ていけばそれでいいのであろう。もう少し、つまり、偶然というか統計的な要素を排除して申せば、四半期ごとに対前期でプラスが出ていくような経済運営になったら、まあ〇・五%云々ということの実態的な意味になるだろう。  しかし、対前期比がマイナスになっていきますと、一—三月が仮にうまく上を向いていてくれても、どうも後の元気は余りないということになりますから、そのことの方が実際は大事なことだと思います。ただ、今のQEが済んでから三カ月たたないとわからないという問題が、この忙しい、変転きわまりない時期に大変に困るのでございますね。  もとへ戻りまして、四半期ごとにともかく少しでもプラスになっていく、マイナスにならないということが大事と思います。
  42. 末松義規

    末松委員 宮澤大臣も大変お困りになるでしょうね、上を向かないと。ただ、国民は本当にもっと困るわけですから。ここは本当に、個々の職業についている人間はそこは厳しいところだと思います。  そうすると、大体前半ぐらいである程度対前期が上を向くと。ではなくて、逆に下を向けば、ある意味では〇・五%の成長は無理だという位置づけになる。この数字がどうなるか、前半で大体勝負がつくのかなという感じが私はいたします。その意味で、経済運営に当たられるということで、大臣のお気持ちとそれから御決意はわかりました。  時間がなくなったものですから、一つ飛ばしまして、最後にややローカルな話になりますが、実は、相続税を国税から地方税へ移管すればどうだという提案でございます。最後にちょっとさわりをさせていただきます。  私が住んでいる小平という町、多摩地域にあるのですが、多摩は非常に緑が豊かだと言われたのが、どんどん緑がなくなってきて、大変住みにくい状況になってきております。どうしてこんなに緑が少なくなったのか。雑木林が何かどんどん切られていって、いわゆる開発が進む、あるいは乱開発が進むという状況に今なっているわけなのですが、大体二十年前に比べて緑が半分以上減ったのではないかというぐらいに厳しい印象を持っています。  その一つの大きな原因が、やはり相続税が払えないということで物納をされる。物納をされると、一応国は市に対して、どうですか、買いませんかと言うのですが、市の方は、もうお金がなくてとてもじゃないけれども買えませんと。そうすると、業者に売られて、またそこにばあんといろいろなマンションから何から建って、貴重なケヤキ林なんかがばんばん切られていくという状況になっているのですね。  これは何とかしなければいけないということで私も大きな関心を抱いているわけですが、田無に末木市長さんという方がおられて、坂口都議会議員という方といろいろ私にアドバイスなんかしてくれまして、全国の市長会でも大きな話題と決定にまでなっているという話を私は聞いているのです。相続税を国税から地方税に改めて、市なら市の、あるいは市町村の所有にできないか。国税、二兆円ぐらいありますが、これが市に、市町村に移ると、かなり大きな財源になるということもあって、しかも裁量ができますから、市の方で、ここは緑の地域なのだという話も、指定されていけば、これはかなりその地域その地域に合った状況になるのではないかという強い御提案を受けまして、私もちょっとその観点からこれから検討していこうと思っておりますが、その点についてお答えをいただければと思います。
  43. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今の先生の御質問、二つの側面があったかと思います。  一つは、相続税を地方税に移したらどうかということかと思います。  相続税でございますが、土地建物、有価証券、区分にかかわりませず、すべての財産の合計額を時価評価いたしまして、そこに累進税率により負担を求めているところでございます。これはもとより国の歳入を確保するという国税でございますが、資産の再分配機能も担っている税でございまして、所得の再分配とか資産の再分配というのは基本的には国が担うべき役割であろうというふうに考えているわけでございます。また、御承知のように、この相続税、全国各地のあらゆる資産を対象にしているわけでございまして、すべての資産を把握する必要があるわけでございますけれども、そういう意味でも、市町村税にはなじまないだろう。さらに、税源の偏在の問題もございます。  いずれにいたしましても、欧米諸国におきましても相続税は基本的に国税になっていると承知しておりまして、そういった点を考えますと、地方税ということにはなかなかなじみがたい税であろうと思っております。  それから緑地の話が出ました。  今申し上げましたように、相続税は、緑地であれ何であれ評価するわけでございます。それで、緑地の保全の問題といいますのは、実は税というよりも都市計画とか土地の利用規制をどうするかということではないのかというふうに考えるところでございまして、そのような私権制限がかかってまいりますれば、評価もおのずと相応の評価になるだろうと思います。  それから、なお最近の相続税の負担が重いというお話が出ましたが、実は平成になりましてから、元年、四年、六年と三回相続税の改正を行っております。大体、相続財産のうちの七割が土地でございまして、御案内のような、土地の価格がずっと連年下がっているものでございますから、今の改正とあわせて、相続税の負担は相当軽くなっている状況にあるということも、一言申し添えたいと思います。
  44. 末松義規

    末松委員 多摩に限らず、今全国の都市が、そういった意味で緑も下がっているという状況考えながら、人間に適した環境はどうあるべきかというところを大蔵省さんにもまた考えていただきたいと思います。私もこれからこの問題についていろいろと検討させていただきます。  時間がなくなりましたのでこれで終わります。どうもありがとうございました。
  45. 村井仁

    村井委員長 次に、玉置一弥君。
  46. 玉置一弥

    ○玉置委員 本当に久方ぶりの大蔵委員会での質問でございまして、よろしくお願いします。  昭和六十一、二年でございますか、宮澤大蔵大臣のときに連日質問させていただきましたけれども、あのときはちょうど財政再建元年と言われて、赤字公債発行ゼロでスタートしていこうという計画がありまして、それに沿っていろいろな始末をされてきたわけであります。私ども、将来のことを考えると、いわゆる財政を立て直して健全な形でやっていかなければいけない、当然の姿であるし、頑張っていただきたい、こういう気持ちで支援をしてまいりました。  しかし、今日の経済状況あるいは公債発行残高を見てみますと、そのときの計画が今かなり大幅に狂ってしまったというようなことになりまして、その原因をいろいろそれぞれの立場で分析し、対応をどうしたらいいかということでそれぞれがまた提案をしているわけであります。  一つには、バブルが一挙に崩壊をしたということがやはり一番大きな原因ではないか。こういう状況になった一つのきっかけは、土地売却の停止というのがございまして、いわゆる国鉄の遊休地でありますとか公共の土地を売ると土地の値段が高騰しているからだめだということで、土地売却の停止をされた。ちょうど中曽根内閣、宮澤大蔵大臣時代でございまして、当時、橋本さんも運輸大臣だったと思いますが、そのころから急激にバブル崩壊という方向に向かってきたということであります。そしてここ数年、平成七年くらいから、また赤字国債とか経済対策とか、緊急のための費用の拠出というのが出てまいりまして、それが今に至っているということであります。  一昨年来、景気が再び悪くなったとき、このとき以来、橋本前内閣は、財政再建のための路線を進めておられた。いわゆる財革法というものを無理やり通して、そして財政再建の糸口をつかもう、こういうことでございました。気持ちはわかるんですけれども、実際の景気は一昨年の四月、五月、六月とだんだん悪くなって、財革法が、たしか十一月だったと思いますが、それを無理やり通されたときは、かなり手にとるように景気の降下がわかっていた時代でございます。そして、去年のちょうど今ごろでございますが、与野党の攻防の焦点は財革法の廃止または凍結、自自連合を組んでおられます自由党さんも、その当時は凍結ということでやっておられたわけであります。  そういうことで考えていきますと、経済の大家でありますし財政の大家であります宮澤大蔵大臣、現大蔵大臣が、元総理としても経済運営なり財政運営をやってこられたのでございますが、どういう役目を果たしてこられたかというのは非常に私ども興味がございます。まず、経済が悪化した中で財政再建路線を進められてきた橋本内閣、このことに対してどういうふうな関与をされ、あるいは逆に言えばアドバイスをされ、あるいは逆に何も接触がなかったのかどうか、そして、宮澤さん自身はそのときどういうふうに考えておられたかということをお聞き申し上げたいと思います。
  47. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 平成九年の夏ごろに、タイを初めとして東南アジアの経済の為替危機が始まったわけでございますが、それからやがて、三洋証券であるとか山一証券であるとかあるいは北海道拓殖銀行であるとかいう問題が相続いて起こりましたころに、私は橋本総理に、ちょうど外国へお出かけになる前でしたから、ここは大変に変調が起こっているので、何か思い切ったことをおやりにならないと、総理も海外に行かれて立ち往生されるというような感じがいたしますということを、たまたま機会がありましたので申し上げたわけでした。  それで、橋本さんから、そのときはまだ山一の問題は起こっていなかったんですが、そうであれば、政府の方では間に合わないから、自民党の方で早く政策をまとめて対応を考えてくれというお話がありまして、老人の出る幕ではないと思いましたけれども、そういうお話がありまして、本部長というものになりまして、総理前歴者の方々などにもおいでいただいて、ともかく金融機関に公的資金を導入しないと、日本の信用が国際的に、ジャパン・レートが上昇したりしておりましたから、危ないのでということで。それで、昨年の一月早々に国会をお願いいたしまして、その法案が成立いたしました。そして、ともかく三月の資本投入ということはできまして、それで、一応ジャパン・プレミアムというのが改善をされたといったような経緯がございます。  そのときに同時に、年が明けまして、財政再建法というのをどうするかという議論が部内でございまして、実は私は、これはもうやめた方がいいということを議論いたした一人ですが、周囲はそういう雰囲気になっておりませんで、結局一部修正するということで、いっときそういう収拾をいたしたのでございます。  そういう意味では、幾つかのことは橋本総理大臣に気がついたことを申し上げましたけれども、しかし、さかのぼりますと、私自身も、平成八年度の経済というのは、いっときかなり好調であったものですから、そのころ選挙がありまして、やはり日本は二十一世紀のためにはリストラをしなきゃならない、財政再建もその一つであるというようなことで、橋本さんが各党の、村山前首相までお願いをして財政再建の会議をその翌年の一月からずっとなさいましたときには、私も参加しておりました。そして、その結果、医療保険であるとか、あるいは少し実施はおくれましたが、将来に向かっての年金のことであるとかいう御議論、あるいはキャップといったようなものは実際的に行われましたし、また、今にも影響を及ぼしておりまして、その部分は私は間違っていないと思いつつ、しかし、マクロで二千何年にはGDPの三%に国の財政赤字を食いとめようという、ECでやりましたようなことは、実は私は、本来そういうことが法律になじむものかどうかというような疑問を持っていたりいたしましたけれども、しかし、平成八年の経済がそうでありましたものですから、財政再建というあれに着手することは私も賛成をいたした一人でございます。  そういう意味では、私自身もその段階では、平成八年の経済、結局四%でございましたが、成長するわけですが、それが持続するであろう、そういう、自分自身がやはり間違った判断をしておったということは申し上げざるを得ませんで、比較的それがどうもそうでないという変調に気づくのは早かったかもしれませんが、やはり、平成八年度経済についての楽観的な見方という点では、私も誤ったように思います。     〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
  48. 玉置一弥

    ○玉置委員 バブルの崩壊のきっかけになったと私は思っているんですが、土地売却の凍結ですね。土地の流動性が低下したということが不良債権というものを大きくし、また生み出してきたというふうに思いますし、担保価値も下がってきて、片面では価格が下がるということはいいことなんですけれども、やはりそういう担保価値とか流動性とかという面では非常にふぐあいが生じてきているというふうに思います。今後も土地の流動性が今のまま低下したままであれば、債権処理という面では、逆に非常に大きな障害になるだろう、こういうふうに思うんです。  バブル崩壊の原因として私が見ている土地の流動性低下というものを宮澤さんはどういうふうにお考えになっているのか。それから、これからの不良債権処理の中で土地の流動性というものをどういうふうに見ているのか、そこの点をお伺いしたいと思います。
  49. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御承知のように、アメリカが八五年から後、金融危機の処理をいたしました段階で、SアンドLなどと言っているあの段階ですが、あれを経験いたしました今のグリーンスパン議長ですが、私にあのときの経験として言いますことは、とにかく国が取り上げた不動産を早く処理することが必要だった、それはもう言ってみれば過当に安く売るという非難を覚悟の上で売った、それで非常にもうけた人はいるんだが、しかし、それによってマーケットが生まれたということを言うわけでございます。底値が生まれた。だから、一見大変もうけたやつもいただろうけれども、それがもとになって不動産というものが売れるようになった。それで私に、この経験は日本と違うかもしれないが、高く売らないといかぬぞということをやっているとなかなか市場ができないということは、自分の経験だったからということをよく申しますが、やはりそういう心構えというのは要るのではないだろうか。多少後になって安く売り過ぎちゃったというようなことがあったにしても、そこでマーケットができて土地が動くということの方が全体の再建にははるかに得であったという判断は、やはり何かに私どもが学ばなければならないのじゃないかというふうに思っております。
  50. 玉置一弥

    ○玉置委員 今大変御苦労されています中坊さんとかにお聞きしますと、ともかく不良債権処理のためには、やはり土地の流動性確保というものが非常に大事だというお話をされておりますので、方向としてはそういう方の拡大をぜひお願い申し上げたいというふうに思います。  それで、そのときにというよりもバブル崩壊以降ずっと日本国内は低金利でございまして、今や公定歩合はもう〇・何%というような形になって、一般の預金金利はゼロみたいなものですね、普通預金は。定期でも二%を超えるのはごくわずかだというような状況であります。借りる側からすると確かに低い方がいいわけでございまして、二・七五とか三%を超えるというのは本当にまだ少ない状況でございます。  ということですが、一般の人たちにとりましては、バブルでもバブルでなくても余り自分たちの生活には影響ないという方が非常にたくさんおられます。そういう方にとって、今まで、例えば郵便局なりあるいは銀行なりに預貯金がある、あるいはいろいろな資産をお持ちの方も、自分たちの利益という面で見ると、本来得るべき金利なりあるいは信託の利益とかそういうようなものが非常に逸失しているのではないかというふうに思われるのですが、この辺について、別に国としては何も考えないんだ、景気が悪いんだから我慢してくれというのか、あるいはこれだけの利益を逸失したんだから何かの形で将来返さなきゃいけないと思っておられるのか、その辺をどういうふうにお考えになっているか、ちょっとお聞きしたいと思います。  というのは、今までは不良債権とか金融機関とかの話が主体でございました。だけれども、我々にしてみれば、本来得るべき利益を受けていない、あるいは基金を積んでその利息で運営されているようなところ、この辺が今状態として非常に悪くなっているわけですね。一般の方は、別に金利が安いから生活に困るという環境にはないわけですけれども、資産を形成しようとする方には非常に痛手だったと思うし、そういう運用益で今までカバーしてこられた、資金運用によって運営資金を出させてきたいろいろな機関がありますが、そういうところがみんな大変な状況になっているわけです。  この辺についてどういうふうにお考えになっているのか。これは突然の質問でございますが、もし考えがあればお聞かせ願いたいと思います。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 やはり私は、これは異常な状態で、いつまでもこういうことでいいとは思っておりません。  殊に、長期生活設計を立ててその金利で生活をしよう、あるいはそれに近い方々にとってはもう本当に非常な打撃でございますし、それから、今おっしゃいましたように、チャリティーだとかあるいは財団の基金だとかいうものは果実を生まないわけでございますから、そういうところがみんな非常に困っておられる。いわばそういう意味では金利というものが、設備投資意欲がまたございませんものですから、実は経済を動かす機能を半ば失っておるというに近いのではないかというふうに思いますので、日本銀行が今の金利を決めまして、三年前の九月でございましたか、随分たちますので、それをという意味ではなくて、やはりそれがそのままで動けないというか動かないというか、いろいろな金利がそれに右に倣っているという状況は、私はやはり正常な状況ではないと考えております。  願わくは、少しずつでも設備投資の意欲が出て、住宅もよろしゅうございますけれども、そこから資金需要が出て、金利が普通に少しずつ上がっていくということでもしませんと、金利生活をしていらっしゃる方にはまことにどうも、私ども、先生もそうだと思いますが、話すすべがない、わかってくれといって言うすべがないのは非常にやはり困ることではないかと思っております。
  52. 玉置一弥

    ○玉置委員 きのうの質問の中でも、長期金利が最近上がる傾向にあってどういう影響がありますかという質問がありましたけれども、私がいろいろな企業関係の話を聞いていますと、最近は金利といってもそう高くない、だから一%二%上がろうとも設備投資意欲とは関係ないんだ、将来に仕事があるかないかという方がむしろ大事で、今の仕事量をいかに確保するか、あるいはこれからどれだけ伸びるのか減るのかという見通しをつける方が大事だ、こういう話をされているのですね。  それで、いろいろな企業関係を見てみまして、強気に出ておられるところはやはりそれなりに業績がよくて見通しもしっかりしている。見通しのきかない、特に機械関係ですね、そういうところにつきましては本当に手控えている、自動化も今や非常に進歩が遅くなっている。  そういうふうなことを考えると、金利政策、低金利というのはまさに銀行や大手ゼネコンのためにやっているのであって、一般的な企業関係とかあるいは個人については低金利政策というのはほとんどプラスにならないということに思えるのです。そういう面から見て、是正をしろというのはなかなか難しいと思いますが、大蔵省としては余りさわれない部分ですけれども、やはり多少の誘導は必要じゃないかと思いますが、いかがでございますか。
  53. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今の低金利の公定歩合を中心とします問題については、承っていますと、日銀の政策委員会なんかでも時々御議論があるようでございます、殊に金利生活者等々の問題等も含めまして。  ただ、政策委員会あたりを承っておりますと、多数説は、やはりしかしここで金利を上げるということからくるデメリットというものの方がメリットよりも大きいだろう、殊に景気回復を期待しているときに、その兆しがないのに金利だけが先に上がっていくということは、やはりデメリットの方が大きいというのが金融当局の判断のように私は承っておりまして、まあ正面からいえばそういうことにならざるを得ないかなと。ただ、金利生活者等々にはまことに済まぬことだなという問題がどうしてもございますけれども、全体のデメリットがそうだということは、あるいはそうかもしれないと思います。
  54. 玉置一弥

    ○玉置委員 株価と金利とそれから為替、みんな大体連動しているという話が昔からあるのですけれども、状態がある限度を超えてしまいますと、逆に商品価値として余りさわれなくなる、期待感がなくなるということで、むしろ高い方が経済の中では金利面では有効に働いていくのではないかというふうな気持ちがあります。そういうことで、今までの理論がなかなか通じなくなっている。それから日本的な物の見方、例えばこれから金融界が外国企業との競争になりますね、そういうことからいくと、商品価値として高めていくには多少金利が動かないと余り商品として生きてこないのではないかというふうに思うので、ちょっとその辺の心配をして言ったわけであります。  それで、一番の心配は何かといいますと、景気対策といって昨年来物すごい金額が投入されているということであります。去年の当初予算、十年度末で、国の財政で、地方それから国の借金を含めまして国債の発行高といいますか国の借金が、地方、国のトータルが五百二十九兆円か三十兆円ぐらいだったと思いますが、十一年度末でまさに六百兆円。その中で公債として発行されている部分と、それから公債以外に国の借金ですね。予算書によりますと、二十七兆円が国の借金だとか、あるいは国鉄債務の未処理分が四十八兆円とかあるそうですが、トータルすると十一年度末で六百兆円になります。先ほどの話で、財政再建を目指してGDPの三%ぐらいでおさめようとしていたということでありますが、計算しますと、今一一・一%ぐらいということで、もう先進国の中でずば抜けて悪い状態になっているということであります。  それで、回復をされてきましたイギリスとか、それからアメリカ、カナダというのは、やはりそれぞれ経済にかなり力を入れて、あるいは行財政改革、これにも力を入れてやってこられて、それがうまく結びついたということで回復をされ、昔悪かった状態が今かなりよくなりました。  だから、あのころは日本はまだましだよという話を我々聞いて、この委員会でずっといろいろ勉強させていただいたんですが、今は一番悪いんだよというふうに大蔵大臣も認識されているでしょうか。  それから、いろいろな負担がふえてきた、GDPの中でもこれだけ悪くなったという状態の中で、これから本当に財政再建に向かうだけの日本の経済の中での余力、あるいは財政負担のための力、そういうものがあるかどうかということもちょっと踏まえてお聞きをしたいと思います。     〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
  55. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 我が国の財政というものが、単年度におきましても、累積といたしましても、また、国ばかりでなく地方を合わせましても、統計の整っております国の中で最も悪いということは、残念でございますけれども、そうだと思います。  ただ、将来のことをおっしゃいましたので、何しろ我が国の経済は、やはり五百兆という大きな経済でございますから、仮に二%成長いたしましても、それは非常に大きゅうございます。したがいまして、成長が正常な軌道に乗りましたら、そんなに各国に比べてこの荷が重いということはない。日本経済にはそれだけのバイタリティーがございますし、また、そういうときになれば、二%の成長といっても大きいものでございますから、プラスの成長軌道に戻ることができます限りは、私は、そんなに将来のことを悲観はいたしておりません。
  56. 玉置一弥

    ○玉置委員 成長力のあるときは、昔、七五三、七が名目成長率、五が物価、三が成長率ですか、七五三という言葉をよく聞いたんですけれども、確かに多いときは一二%ぐらいの成長とか、いろいろあったんですね。そういうときにさえも赤字の公債がふえている、建設公債もふえているという日本の政治体質というか行政体質という状態が続いてきた結果、六百兆円になったわけですね。  だから、宮澤大蔵大臣がおっしゃるように、景気が回復したら財政再建に向かうというのは、僕はあり得ないと思うんですよね。それはもう今まで何回もチャンスがあったわけです。私が大蔵委員会にいて、後で予算に移りましたけれども、その当時は、赤字公債の発行はもうやめましたと、確かに四年間ぐらい発行していなかった時期があります。それでも公債の残高はふえてきているし、地方はもちろん、そのときからもずっと継続してふえている。まして地方財政も、最近、毎年十七、八兆円の赤字がここ数年続いているわけです。  こういうような状況の中で、私は、これは景気回復をしても財政再建に向かうことはあり得ない、日本はどこかで破綻する、こういう心配を最近しているんですが、いかがでございますか。
  57. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 玉置委員が国政にお出になられまして二十年でございますね。私は、あのころは、日本がいわゆる高度成長時代で、そしてインフラストラクチャーが貧弱でございますから、外貨の心配がない限りは何とか成長しようというふうにしておったと思います。ちょっと外貨が怪しくなりますとストップをかけたりいたしましたが、あのころは、成長がための多少の債務というのはむしろ肯定的に考えられておったんではないかというふうに思っております。その結果、世界第二位の経済が築かれたと思います。  先ほどおっしゃいましたように、八五年のプラザ合意あたりからやはりいろいろなことが変わってきていて、そして今になりますと、もう債務はやむを得ず財政のバランスをとるために借金をせざるを得ないということでございますから、この部分は長く続けておってはやはりいけないんだろう。他方で、インフラは十分だとは思いませんので、そのための支出はしていかなきゃなりませんが、そうかといって、単純に財政のバランスを、税収の不足を埋めるための国債発行というのは、やはりこれはもうできるならば減らしていかなければメリットはないんだと思います。  ただ、今こういう不況脱出のときでございますので、やらせていただいておりますけれども、こんなことは長くやっていいことだとは思っておりません。
  58. 玉置一弥

    ○玉置委員 財政赤字が急に拡大をしまして、今や九・何%ぐらいですか。昔はそんなになかった、ほとんどはとんとんだった、税収との差はほとんどなかったと思うんですが、今は九・何%ぐらいということで、アメリカの一番悪いころの状態に今なってきているんではないかというような感じがするので、景気の悪いときに言う話じゃないんですが、将来のことを考えると、やはり基本的な考え方はちゃんとつくっておかないといけないというふうに思います。  財政再建の筋道として、今、中央省庁再編とか、あるいは今のいわゆる公共投資のあり方とか、そういう面での見直しをやはりぜひ進めていただきたいというふうに思います。  それと、この中央省庁再編につきまして、先般の自自連合としての合意事項というのがございました。そのときに、人員については十年間で二五%削減をしようというお話でございますが、費用面、要するに財政というか、人件費とかいろいろな事業費とかございますが、そういう面での話は全くお聞きになっていないでしょうか。
  59. 藤井秀人

    藤井(秀)政府委員 お答え申し上げます。  今先生おっしゃいました今回の中央省庁等の改革、これは内外のもろもろの情勢の変化というものを踏まえまして、国が本来果たすべき役割を重点的に担う、かつ、それも有効に遂行でき得るよう、簡素にして効率かつ透明な政府を実現するということを目標として行われるというように承知をいたしております。  したがいまして、今回の改革というのは単に歳出削減を直接の目的とするものではないと思われますこと、また、御案内のように、今後新たなる行政需要というものも当然出てこようと思います。そういうことから、現段階で想定することの困難ないろいろな要素というものがあろうかと思います。  もとより、財政資金の効率化というものは引き続き努力を図っていく必要があるわけでございますが、現在歳出の具体的な削減目標というものは立ててはいませんけれども、今後、このような改革を進める中で、行政事務全般を見直して、行政事務の効率化にさらに積極的に取り組んでいくということであろうと承知しております。
  60. 玉置一弥

    ○玉置委員 昭和六十一、二年、ちょうど宮澤さんの大蔵大臣時代から借換債が出ましたね。私はそのときに、赤字国債というか、要するに、公債発行残高を抱えたまま借換債を発行しますと、どんどんと次世代に借金を残してしまうんじゃないかという心配をしておりまして、そういうふうに申し上げました。ずっと見てみますと、やはりなかなか消化し切れずに積み残ってしまうというような結果で、また借換債の借換債みたいな形になりかねないということでございます。  借換債のあり方について、その当時は財政上やむを得ないんだということでの借りかえですけれども、本来は既発債に対する借換債で、今帰りましたけれども、仙谷さんが去年の予算委員会でも質問しましたように、既発債に対する借換債だけを認めている。既に出ているものについての借りかえだということであります。何か聞くところによると、国鉄の長期債務を借換債でやろうかという話があったというようなお話なんですよね。そういうことが可能かどうか。  というのは、借換債としてどんどん何でもかんでもやっていくという話ではなくて、やはり今出ている国債について、償還がある時期終わる、だけれども、消化する能力がないから残りを借換債ということの私は解釈をしていたんですが、この間国鉄長期債務の処理の方法についてお聞きしますと、長期債務に対して借換債で対応するんだというお話があったんですね。それを彼が質問したわけですけれども、そういうことができるのかどうか、それについて、技術的な面でまずお聞きしたいと思います。
  61. 藤井秀人

    藤井(秀)政府委員 お答え申し上げます。  先生の御質問、大きく二つあろうと思います。  第一点は、借換債の問題、要するに、六十年償還ルールという問題にあるいは帰着するんではないかというように思っております。  御案内と思いますけれども、建設公債の六十年償還ルール、これはその耐用年数等に従いましてその資産の平均的効用発揮期間というものを踏まえまして六十年ということになっているわけございます。  他方、これに対しまして特例公債でございますけれども、御案内のように、建設公債と異なりまして見合いの資産が存在しないということから、本来でき得る限り早くその残高を減少させるべき性格のものであるということは御案内のとおりだと思います。  ただ、いかんせん厳しい財政事情ということでございますので、短期間で仮に償還しようといたしますと、特例公債の増発につながるということであります。したがいまして、建設公債ともども特例公債につきましても、やむを得ない選択として、建設公債と同様六十年償還ルールを採用している、そういう中で借換債というものも運用が行われているということでございます。  それから第二点。昨年でございましたでしょうか、仙谷先生の方から、国鉄の清算事業団の一般会計に債務を引き継ぐという中での借換債ということが許されるかどうか、それはあるいは新発債ではないだろうかという御意見があったこと、私どもも承知しております。  そのときにも私どもお答えしたと思いますが、要するに、国鉄清算事業団の債務、これを法律上、法律の規定でもって一般会計にその債務を引き継ぐ、したがいまして、その中でその債務を今後どのように償還していくか、それはまさしく借換債でもって財源を充当してその債務を一般会計が承継いたしまして償還していくということでございますので、それはおのずから新発債とは異なる性格のものであろうということを御答弁したというように記憶をいたしております。
  62. 玉置一弥

    ○玉置委員 あのときは、私は、国対の方からいろいろ指示をするということで、そういう立場上仙谷さんといろいろ打ち合わせしたんですが、実際に私どもが認識しておりますのは、やはり今の赤字国債の償還ができないというための借換債という形でスタートした。これは確かに大蔵委員会での議事録でそういうような形で残っているはずなんですよね。それを、要するにもう既にある借金だからということで置きかえるというのはおかしいじゃないか、こういうことでございまして、安易に繰り延べをするということと、それから将来にみんなしわ寄せが行くということ、この両面を心配しておるわけであります。  それからもう一つは、例えば建設公債は一応六十年だということで償還が決まっておりますけれども、借換債が何年というのはもっと細切れにやってできるだけ早くやった方がいいんじゃないかというふうに思うんですが、その辺についてはいかがでございますか。
  63. 藤井秀人

    藤井(秀)政府委員 御案内のように、特例公債についてはでき得る限り早期にその残高の解消に努めるということで、制度発足当初そのような精神、現在も昨日御審議いただきました特例公債法の中でそのような精神がうたわれているわけでございます。そういうことからいいまして、でき得る限り早期の償還に努めるということで、現に財政事情よろしき時期にはそのような早期償還を行った例があるわけでございます。  そこで、そういう大前提のもとで、具体的な借換債の償還期間、借換債の発行期間といいますか、その期間を短縮したらどうだろうかということでございますが、これにつきましては、国債全体の発行市場あるいはそれをマーケットがどのように消化し得る状況にあるかということで、借換債を含めましてそれぞれの償還期間を設定し、そしてその消化に努めているということでございますので、あるいはマーケットの実態に応じた商品の設定ということになろうかと思います。
  64. 玉置一弥

    ○玉置委員 お話がかわりますけれども、昨年の三月に今の公的資金導入の話が決定をされました。審査委員会が一兆八千百五十六億の資本注入を決定されて、各銀行ごとにいろいろな割りつけといいますか、申請をされ承認をされた、こういうことになって、新たにまた追加、今度新しいお話がもう既に出て動いているわけであります。  もともと、金融機関の体質強化、そして貸し渋り対策、この両面で効果があるということで公的資金導入やむを得ずということになったわけでありますけれども、出たのはいいんですが、その後、だれがフォローしてどういう結果になっているのかということをやはりチェックしていかなきゃいけないということなんで、公的資金が導入された後、だれが、どこの部署がこういう管理をされているのか、あるいはその使途についてどういうふうに把握をされているかというところをちょっとお伺いしたいと思います。
  65. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  昨年三月の資本注入の後、各金融機関がその後の資産の状況とか経営の状況とか、また今先生言われました貸し出しの状況がどういうぐあいになっているかということに関しまして、個別のデータの話になりますと、これは監督庁の方で各金融機関別に調べれば調べることができると思いますが、全体的には、私どもといたしましては、そのときそのときの効果を上げて現在のような状況に至っているというぐあいに考えております。
  66. 玉置一弥

    ○玉置委員 体質がどう変わってきたかというようなことも、これから追加して今度出されますけれども、そういうことの検討がなされた後でなければ、追加する意味がないと思うのですよね。あるいは、貸し渋りがこのためにとまってこういう効果があったとか、こういうふうに公的資金を投入した後の効果をどこが把握されて、どういうふうに大蔵大臣に、あるいは金融監督庁長官に伝わっているか、そこをお聞きしたいと思います。
  67. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  今先生が言われました、昨年に引き続きまして、現在、金融再生委員会の方で、これは昨年に成立しました法律に基づいて、また、各金融機関の意向表明を受けた後で審査をしておられるわけでございます。その審査の過程で、それぞれの金融機関が、あの後のいわば経営の状況とか資産、負債の状況をその段階で再生委員会の方に説明されておりまして、それをもとに、今再生委員会の方で鋭意検討しておられるということでございます。
  68. 玉置一弥

    ○玉置委員 では、再生委員会の中で、効果があったとかないとかという判断ができるわけですね。再生委員会の中で判断された、その結果はどこに発表されるのですか。次の融資のときにそのまま継続して使われるだけなのか、あるいはどこかで公表されるのかということについてはいかがですか。
  69. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大まかなことしか私申し上げられませんけれども、こういうこととお考えいただいていいのではないかと思います。  昨年の六月以降、金融監督庁による検査が行われまして、これはメジャーバンクスは全部行われまして、その結果として、初めてと申していいのだと思いますが、大体それらの銀行の債務の処理の状況、引き当ての状況、分類と引き当てについて、ほぼ金融監督庁が正確な状況を把握いたしました。  そして、その後、再生委員会が生まれて、資金の投入が今議論されているわけですけれども、その際に、今度は初めて整理回収銀行の検査による内容が明らかになってまいりましたし、しかも明らかになりましたので、その分類並びに引き当てについて、今までは各行自分自身の判断でやっておりましたものを、分類の基準と引き当ての基準というものをかなりはっきり再生委員会が頭に持って、そしてそういう基準に沿って処理して、銀行は不良債務をきちんと、聞くところでは、もうこの三月末にもと言っているようですが、そういうふうにすべきである、そうでないと本当の競争力は生まれないということで、そういう話を各行としながら、各行に、どのぐらいの資金注入を希望するか、あるいはどのぐらいをすべきであるか。  あるいはまた、各行は、金融再生委員会、国ばかりでなく、民間からも募集するというところもあるようでありますが、一言で申しますと、今金融再生委員会がやっておりますことは、昨年の三月と違いまして各行の内容の把握ができておりますから、どのような分類を行うべし、分類を行った場合にどのような引き当てを行うべしということについて、かなりはっきり物差しを持って各行と話をし、そして投入すべき資金についての話し合いをしているようでございます。  詳しいことは存じませんけれども、したがって、銀行にとりましては、それはかなり厳しい審査を受けておる。そのかわり、しかし、これができたならば不良債権というものはこれで処理ができるんだ、そういう作業が行われているようでございまして、かなり作業は終局の段階に近づいておるようでございます。  そして、三月末注入といたしますと、そのために株主総会等々の公示とか、いろいろな時間が半月ぐらい要るのでございますか、かなり長く要りますので、事実上はもうしばらくの間に実際上の話し合いがほとんどできて、そして注入が三月の末日に行われる、こういうことのようでございます。  それで、先生のお話しになりました、去年の分はどうしたのかということでございますが、それは、各行は去年の公的資金注入の結果、ある程度資本内容はよくなっておるはずでございますから、その上で検査が行われ、その上で総合的に今度の注入が各行ごとに決められる、こういうことのように大まかには承知しております。
  70. 玉置一弥

    ○玉置委員 資本注入されている銀行ではないのですが、そのほかの銀行で最近新たにお金を借りようとしたら、自分のところは一番抵当でないと困るという、根抵当。片方でいろいろ入っていますね、順位が。ともかく、一番でないとだめだというふうなことを言われているというのが結構あるみたいなんですよね。みんな一番だったら貸すところはないわけですね。一行しか貸さないということになってしまうので。どうも貸し渋りというのは全然なくなっていないんじゃないかというふうに思います。  だから、貸し渋りについては、どこが管理されているか、どこがチェックしているか、それをちょっとお伺いしたい。
  71. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど申し上げればよかったのですが、今度、金融再生委員会がそういう分類と引き当てについて話をしておりますときに、将来に向かってその銀行が、ある一定の期間までに不良債権の処理をしてしまえといったようなこと、それから、あるいは入り用もないのに海外のいわゆる八%銀行である必要はないであろうとか、それからもう一つ、いわゆる貸し渋りについて、将来中小企業に対しての貸し出しというものを渋るようなことは認められないぞといったようなことをかなり厳しく条件につけておるようでございます。  貸し渋りの実態そのものは、従来でございますと金融監督庁が見ているわけですが、今度たまたま、公的資金の導入の条件というと少し言葉がきついのかもしれませんが、かなりそういうことを強く相手行と話し合って決めていっているように聞いております。
  72. 玉置一弥

    ○玉置委員 時間の配分がございますので、一応、その関係はこの辺にしたいと思います。  財政再建の計画も、今非常に難しいところだと思いますので、できるだけ固めていただいて、国全体の施策の中で、従来はどっちかというと大蔵省だけでこういう計画をして、聞きますと試算だという話で逃げてしまうというようなのがあったのですけれども、そうではなくて、各省庁に十分目標を与え、あるいは閣議の中で割りつけをして進められるということを希望したいと思います。  税金と社会保障負担、あと公債費と地方財源、こうあるので、余り時間がございませんので、ちょっと要約してお聞きをしたいというふうに思います。  今年度の税制改正の中で、所得税法人税の改正というものがうたわれて、大きく変化するわけでありますが、考えてみれば、毎年毎年減税要求をして、最初は一兆円の特別減税、二兆円の特別減税、こういうふうにやってまいりました。それで、一昨年の四月にその特別減税廃止、消費税上乗せ、こういうふうになったときに日本の景気ががたっと落ち込んだということであります。  そういうふうに見て、増税は確かに景気には大変大きく影響したということはわかったのですが、減税がどの程度大きく影響するのか。鈴木先生がおられなくなったのであれですけれども、こんなに減税するとこんなに景気がよくなりますよという話を鈴木さんは昔からずっとやっておられましたけれども、私ども、延々と要求をしておりますと、何だ今ごろかという意識で、決まってからでももう既に半年ぐらいはずれているわけですね。去年の九月からやってもらえるのかと思ったらことしの四月一日だという話で、それだけでも大分ずれ込んでおりまして、期待感というかそういうものが大分薄れてきたんじゃないか。それから、やるぞやるぞと言ってもう一年近くなるわけですね。そのうちやるみたいな形になりました。  ということで考えていきますと、やっているのか今からやるのかよくわからぬということで、国民が期待している割には経済的な面で効果が少ないんじゃないかという心配をちょっといたしておりまして、その辺について、この長引いた結果、大蔵大臣はどういうふうにお考えを持っておられるかお聞きしたいと思います。
  73. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに、所得税の減税について、小渕内閣が成立いたしました直後でございますから八月に、私は、自分の方の党の税制調査会の重立った人と話をして決めておるわけでございます。  もとより、これは国会の御審議が要ることでございますけれども、当時、平成十年分所得については、いわゆる定額減税という大きな減税が進行しておりますから、十年分の所得についてはそれで処理ができておる、これは理屈でございますよ。したがって、論ずべきことは、十一年分の所得について議論をすることになる、理屈でございますが、そうだと思うのでございますね。ですから、私が九月に申し上げましたときも、これは十一年分所得であるということは申し上げてございました。  それで、途中のことを省いて申し上げるわけでございますが、その所得税減税法案を今御審議をお願いしておるわけですが、新しく税制ができますと税額表が必要でございますが、その税額表の作成というのが、国会で可決をしていただいて、法案の内容が確定してから二月かかるのだそうでございます。非常に大きいところとか一人、二人雇っているところはいいんでございましょうが、中ぐらいのところで、税額表で本当に源泉徴収の計算をするのは二月かかると申しますから、それで、九月ごろ私が思いましたのは、そうすると、十一年分所得を初めから減税するのは、法律は十月に成立していないといけないわけかと、そうだということでございますから、それは到底できない、あのときに、十月に成立させていただくことはできないと思いました。  また、実際、地方税との関連でどういうふうに分けるかなんということは難しい問題だったものでございますから、結局、御審議をいただくのが今になっておるわけですが、その間にいろいろ御批判があって、十一年分所得も、税額表ができるとすればそれは四月からだろうから一—三月はどうするんだ、一—三月は十二月の賞与から引かせていただきますと。それではいかぬという御批判がございました。それで、事務当局がいろいろ苦労をいたしまして、一—三月分は六月、賞与の月でございますから、六月から引かせていただく、こういうことになりました。それは二割の定率でございますから、確かに、六月の賞与の中から今までより二割だけ引けばいい、そういうことだと。事実上できると言いましたので一—三月は六月にはお戻しできることになったのですが、それでも、この大事な一—三月というときにその減税がポケットに入ってこない、本人に来ないという悩みはどうしてもやはりございます。  そのためには、しかし、実際には昨年の十月に法案を成立させていただかなければならなかったということで、九月のときからこれは気になっておるんでございますけれども、どうもやむを得ない結果になっております。
  74. 玉置一弥

    ○玉置委員 私も、去年の減税の合意ができたときのお話を聞いておりまして、何で九月末に間に合わなかったかと。大体、九月末で処理してというか決めて、年内ぎりぎりと従来から聞いていたものですから、そういう話をしていたのですけれども、実際にはもう一カ月半ぐらいおくれてしまったということであります。  私たちがやはり心配するのは、先ほどのお話で、手元に入るのが非常に遅いということと、今や給料はほとんど振り込みでございまして、皆さんがおっしゃるには、振り込みの中で幾ら引き出すかはおれたちに権限はないんだ、むしろかみさんが力を持ってみんな握っているんだという話がありまして、それと、そのふえたものが実感として出てこないというのがあるんですね。だから、そういう支払いの方法もあるんじゃないかというふうに思うんですが、その辺はいかがでございますか。
  75. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今先生がおっしゃいましたように、日本の月々の源泉徴収で、なかなかわかりにくいというお話かと思います。  今度の恒久的減税、これはまさに恒久的減税でございますので、四月の月々からの源泉徴収で減税をすることになっております。間違いなく減税になっているわけでございますから、まさにその月々の税額の、会社から来る源泉徴収票とか常々税についての御関心を持っていただくということが一番大切だと思っておりまして、そういう面で、我々、PRその他に努めてまいりたい、そういうことを通じて減税の意義、金額がよくわかるように努力してまいりたい、こういうふうに思っております。
  76. 玉置一弥

    ○玉置委員 減税がどんどん進んでまいりました結果、課税最低限が繰り上がって、かなりのものになっています。まず一つは、この減税が含まれた中で、課税最低限がどのようになったかという変化をちょっとお教えいただきたいということと、あとは、大蔵大臣の方に、この課税最低限をいつまでこんなに引き上げていていいのか。私はむしろ、課税は低く広くスタートして、それでそこそこの納税者数をそろえてやるべきだという意見を持っておりまして、その方が政治に対する関心も強くなるだろうし、納税意識というのが国民の中に広まる、こういうふうに思うのです。  そういう面から見て、納税者の数も変化してきていると思うので、その辺も含めてちょっとまずお伺いし、その課税最低限の見方について、大蔵大臣は将来どういうふうにお考えになっているかということをお聞きしたいと思います。
  77. 尾原榮夫

    尾原政府委員 まず数字の方から申し上げたいと思います。  いわゆる改正前の課税最低限でございますが、夫婦子二人で、そのうちの一人は特定扶養親族に該当する子供さんがいらっしゃるという前提でございますが、三百六十一万六千円でございます。今回の税制改正後の姿でございますが、扶養控除の加算をやっておりますので、これは子育て、教育等に配慮したわけでございますが、三百八十二万一千円となっているわけでございます。  なお、昨年、十年分につきましては、緊急の景気対策ということで、定額減税でやらざるを得ませんでした。その結果、課税最低限ということではございませんが、結果的に税金をお支払いいただかなくてもいいという階層が四百九十一万七千円まで引き上げられることになったわけでございます。  それから、納税人員の推移についてお話がございました。  まず、源泉所得税の対象となった給与所得者の方でございますが、平成七年から、四千四百万、四千五百万、四千六百万となっております。申告所得税の納税者の方の数でございますが、八百二万、八百二十四万、八百二十七万、七年、八年、九年、ここまで実績が出ているところでございます。  なお、本来の納税者数は、源泉所得税をお支払いになる方でも申告所得税を申告されている方がおられますので、この調整をしなければならないわけでございます。  なお、定額減税の結果、納税者の方は七百万から八百万人減少したのではないかというふうに考えております。
  78. 玉置一弥

    ○玉置委員 これからの高齢社会の中で私ども心配しておりますのは、税負担率あるいは社会保障負担、こういうものを合わせてどんどん上がっていくのではないか。一つの限度をわきまえて、それに対してどう対応するのかということを考えていかなければいけない、こういうふうに思うわけであります。  そういう意味で、先般通産省の方から、日本の各産業がこういうふうに伸びていきますよという一つの方向を示したのが一応出ておりますので、それをちょっと御説明いただいて、逆に、私どもからいきますと、やはり日本のパイを大きくするということの中で一人当たりの所得をふやして、それぞれのこれからの社会保障負担なりあるいは税の負担を減らしていこうという方向をとらざるを得ないんじゃないか、こういうふうに思いますので、まず最初に、その十五分野の雇用規模、市場予測というものをちょっと通産の方から先に説明をお願いします。
  79. 岡本巖

    ○岡本説明員 お答え申し上げます。  私ども、平成九年五月に閣議決定されました経済構造改革のための行動計画において、先生今御指摘の、医療・福祉でありますとか情報通信、環境、バイオテクノロジー等々十五の新規成長分野について、二〇一〇年における目標をある程度定量的にお示しをして、各省連携してその実現に向けて今努力をしているところでございます。  現在、先般閣議決定しました十五分野の二〇一〇年における目標としましては、市場規模で、現状約二百兆のものが二〇一〇年に五百五十兆、それから雇用の規模で、現状千六十万人から二〇一〇年には千八百万人程度にまで成長する、そういう目標を掲げて、各般の施策を各省連携して推進しているところでございます。
  80. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどのお尋ねの最後のところ、私が申し上げなければならなかったわけです。  先ほど政府委員が申し上げましたが、我が国課税最低限は標準家庭で従来まで三百六十一万円であったわけでございます。これは、諸外国と比べますと、英国は百十万円ぐらいと言われますし、アメリカでも、州によって違いますが、二百数十万円であって、三百六十一万というのは、長いことベースアップが順調に来ましたので非常に高いところにあるとかねて実は思っておるわけでございますけれども、定額減税の結果、先ほど申しましたように、それが四百九十一万円までさらにはね上がりました。そこで、その間に七百万ないし八百万の納税者がリタイアした。  今度そのとおりのことをやるとすれば、四百九十一万円というものを追認することになりますから、将来に向かってこれは到底耐えられないといいますか、むしろ、やはり所得税というのは最低の方はそれはもう免除でやむを得ませんが、それ以上の方は少しずつの累進で、少しずつでも払ってもらうというのがやはり国のあるべき姿と思いますので、四百九十一万というものを固定することは将来に向かって大変に困ると考えております。  今回控除を二つふやしましたから、三百六十一万が三百八十二万になっております。これはやむを得なかった。しかし、これでもやはり高い。四百九十一万ではない、三百八十二万でも随分やはり高い課税最低限でございますから、将来に向かっては私はこれは何かをして正常化をして、もう少し多数の納税者に少しでもいいから所得税を払ってもらうように、抜本改正ではそうならなければならないのではないか。  学者の方々の間には、その三百六十一万あるいは三百八十二万を下げるべきだという御意見が当然ございます。これはしかし、政治としては、下げるということは、ほかに何かよほど別の工夫をいたさなければ難しいんだろうと思いますが、少なくとも上げてはならないというふうに私は常々思っておるわけでございます。  先ほど申し上げるのを落としました。
  81. 玉置一弥

    ○玉置委員 下げると低い方はただ単に増税になるだけだということになりまして、確かに抵抗は強いと思いますが、例えば児童手当が今話題になっていますね。児童手当の拡充あるいは子育て支援とか、それからほかの部分でありますけれども、高齢者、障害者の移送サービスがありますね。そういうようなところに充当するお金とか、いろいろな使い道があるわけです。そういうふうにある程度限定して、課税を対象とする人たちがどういう人たちかという調査をやはりやるべきだというふうに思いますし、少なくとも、課税最低限が引き上がるということは、逆の見方をすれば不公平なわけでありますから、そういう是正もやはりぜひお願いをしたいというふうに思います。  それで、今通産からいただいたお話でございますが、これは経済規模からいきまして約三百五十兆円経済が拡大をする、こういうことなんです。雇用人口も一・八倍になるということであります。だから、一人当たりにするとかなりの増収になるわけであります。こういうことが将来なかったら日本経済はもたない。  先ほど宮澤大蔵大臣が、プラス方向に向かえば財政がよくなっていくんだというお話をされましたけれども、確かに必要な社会保障、社会資本への投下というのは行われてきた、それが多少生きてくるだろうというのもありますし、制度的なものも拡充されてきたということで、投下するお金はむだではないとは思いますけれども、しかし既にもう消えてしまっているわけですね。  ということで、考えていきますと、やはりこれからの社会の中で、経済が拡大していろいろな産業対策にお金を出し知恵を出して、あるいは人材を育てということで、これからの、特に少なくなると言われております現職の方、高齢者がふえて、そして現職が非常に少なくなる。もう既に四分に一になったあるいは三分の一になったというような話になってくるわけでありますから、そういう人たちが将来の国を支えていく財源を稼ぎ出すわけでありまして、そういう意味で、今通産省から報告のありました新しい分野、これは十五分野に今限定されてやっているわけでありますが、これに対して大蔵大臣としてどういう姿勢で臨まれるのか、あるいは、これをどう活用すればいいのか、その辺の考え方をちょっと聞きたいと思います。
  82. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 近く総理大臣が産業再生会議のようなものを招集されると伺っておりまして、恐らくそういう場で、今の通産省の政府委員の話されました将来の産業のあり方についていろいろ御議論が当然あるんだと思います。  私としては、それがしたがって恐らく政府の公の方針になっていくでありましょうから、財政にしてもあるいは金融にしても税制にしても、それをどうやって支援していくかということを私自身大蔵省自身考えてまいらなければならない、当然のことながらそう思っておりますので、できるだけ早くそのようなコンセンサスが産業界にも経済界にも金融界にも政府にも生まれることが望ましい。私も懇談会に出席をさせていただくつもりですけれども、そのように考えております。
  83. 玉置一弥

    ○玉置委員 通産省だけでなくてやはり各分野があるわけでありますから、それぞれの役所が本気になって動いていただかないとなかなかこういうものが推進できないというふうに思いますので、特に財政当局としては、将来の財源ですから、大いに頑張っていただきたいというふうに思います。  それで、時間がございませんので、ちょっと限定してお話を申し上げたいと思いますが、緊急の経済対策一つとしてお聞き願いたいのです。  実は、交際費課税というのをちょっと調べておりました。今、交際費の市場といいますか、使われた中身からいきますと、各社の交際費の合計というのが、大体、平成八年度で五兆四千億、平成九年度で五兆三千億というような金額になっております。これは損金不算入分も含めての話で、交際費としては全額ということなんですが、そういうことになります。  ということで、昨今、特に去年から、いろいろな指標を見ておりますと、小売業が急激に大幅な落ち込みを示した、あるいはゴルフ場の利用客が激減している、飲み屋さんが閑散としているというようなことを見ますと、やはり交際費がもっと減るだろうという予測はできるわけですね。これは九年度まででございますから、十年度というのはもっと減るだろうというふうに思います。  いろいろな企業の方に聞きますと、やはり多少交際費を自由にしてもらえれば、まあもうかっているところしかだめですけれども、少なくとも営業活動をもっと大っぴらにやって、いろいろな面でもうちょっと経済活動としてにぎやかになるようにしていきたいというお話があるということで、交際費の認定の枠を広げれば多少の効果は出てくるのではないか。これは非常に簡単なことだと思うのです。その辺をやるためには、その前にまず何をやるかということ。  大蔵省は、昨年、一昨年といろいろ不祥事がございました。それについて、まずどう処理されたのかというのをちょっと簡単にお聞きしたい。要するに、いろいろあったでしょう、大蔵省不祥事と言われる部分ですね。去年、予算委員会がとまったり、いろいろありました。そういう中身が、結果どうなったか。  だから、金額の是非もありますが、運用さえしっかりしていれば、監視と言えば怒られますけれども、管理さえきちっとできれば、交際費というのは昔から日本で慣習としてあるわけですが、これで世の中おかしくなったというのは今まで余りなかったのですね。そこが問題なので、そこさえちゃんとやれば、交際費というのは、日本の経済のある程度の部分を支えてきたというふうに言われるのじゃないか、そういうことですね。  そういう意味からいくと、今すぐできるものとして考えたならば、交際費課税のもうちょっと柔軟な対応ということで、枠を緩めればそこがもうちょっと動くのじゃないかというふうに思うのです。  だから、二つあります。大蔵省として、去年の決着はどうなりましたかということと、今の交際費課税について、簡単にできる景気対策という意味で見てどう思いますかという、この二つでございます。
  84. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 昨年の不祥事に関する処分がどのようになったかということのお尋ねでございます。  御承知のとおり、昨年、一連の報道されるようなことがありまして、私ども厳重な調査をいたしまして、その結果、昨年四月、不適切と思われる行為があった者について公務員法上の懲戒処分を含みます処分を行いました。  その際、今交際費ということとの関連でお尋ねでございますので、恐らくいわゆる金融機関との交際に不適切なところがあったということと絡んでのお尋ねかと思いますけれども、そういう中身につきましても、交際そのものがどうこうということではなくて、公務員として不適切な関係があったかどうか、そういうことに重点を置いて調査をし、不適切な者は処分した、こういうことでございます。
  85. 尾原榮夫

    尾原政府委員 現在の交際費課税制度でございますが、中小企業の定額控除制度というのがございますが、原則として課税ということになっております。  仮に、これを経費として、損金として認めるということになりますと、従来から言われていましたように、どうしても公正な取引を阻害する可能性があるのではないか、また企業によるこういう交際費支出が正常な価格形成をゆがめているのではないかということが指摘されてきたことを背景に今の制度になっているわけでございます。  なお、アメリカでも同様、交際費についての損金算入については厳しい制限を設けております。イギリスも原則損金に算入しないという形になっておりまして、やはり交際費課税景気対策観点から緩和するというのは本筋ではなく、今回御提案しておりますように、税率の引き下げを図っていくというのが本筋の考え方ではないかと思っております。  なお、執行面につきましては、国税庁の方からお答えさせていただきます。
  86. 森田好則

    ○森田(好)政府委員 国税庁としましては、一般論でありますが、現行の取り扱いを御説明したいと思います。  一般論として申し上げますと、個人が他人から経済的利益を受けた場合には、その利益を提供した者が法人あるいは個人によって、その態様によって、所得税または贈与税の課税関係が生じるということになっております。ただ、個人が経済的利益を受けた場合におきまして、その中には、社交上の必要によるもの、社会通念上相当と認められる、そういう場合もあろうかと思いますが、そういう場合には直ちに課税することが困難な場合もあるということが一般論でございます。  いずれにしましても、国税当局としては、常に納税者の適正な課税を実現するということを目的といたしまして、あらゆる機会を通じて、課税上有効な資料、情報の収集に努めまして、課税上問題があると認められる場合には税務調査を行うなどしてきたところであります。  今後とも、そのような基本的な考え方に基づきまして対処してまいりたいというように考えております。
  87. 玉置一弥

    ○玉置委員 交際費の使われ方がやはり問題で、交際費を発生させることがけしからぬとかいうようなことではないと思うのですね。  去年も、大蔵省さんの話を中心に、国会の中ではいろいろ論議してきたのですが、大体、要求する人がいること自体がおかしいという話とか、それから、例えば我々でもいろいろ雑談をしながらお茶を飲むとか食事をするとかというのはあり得ることなんで、そういうようなものでその人の判断が狂うとは思えない。ですから、度を越したこととか、それから相手も直接利害の絡む相手とかいろいろありますけれども、それでも影響される金額とかチャンスとか回数とか、いろいろあると思うのですね。そういうようなものを勘案するとどうなるかという話の方が大事だと思うのですね。  だから、疑わしきは全部やめろということになって、役所がやめた、銀行がやめたということで、日本経済がおかしくなっているというところもあると思うのですね。逆に言えば、それほどたくさん行っていたということなんですよ。銀行も山ほど行っていた、商社も山ほど行っていた、建設業者も山ほど行っていた。おかしくなったところはみんな交際費をたくさん使っていたということになるわけですね。だから、決められた範囲で使っているかどうかという、累計にはあらわれていませんけれども、実際には経済的な影響力はやはり大きかったということであります。  だから、悪いから何もかもやめろということじゃなくて、その悪いのをどうチェックするかという方が大事だというふうに思うのですね。何もかもやめる必要はありませんので、ぜひ復活しろとは言いにくいのですけれども、やはりちゃんとルールを決めて、それをどう守って、どう管理するかということさえやればいいんじゃないか。むしろ、企業なんかで、使途不明金だとか、あるいは交通費だとなかなか目が届かないから交通のチケットを買って換金して、あるいは切手を買って換金をして裏金にするとか、いろいろな手はあるのですよ。その方が悪いんですよ。  だから、使途不明金をもっと明快に精査して、絶対だめだというものをやはり厳しく追及する。場合によっては背任横領とか、いろいろな形で追及する方が大事でありまして、片方で使途不明金で逃げて法人税さえかければいいやということじゃなくて、あるいは所得税をかければいいということじゃなくて、やはり厳しくするというのは一方にあって、やはりいい部分についてというか、日本の経済の円滑剤と言われた交際費ですよね、だから認めてきたのですから、やはりそれを廃止するという方向じゃなくて、日本日本なりの今までの風習があるんですね、文化があるんですから、それは大いに活用すべきだと思うのです。  さっきの金融機関の八%基準、自己資本比率、あれも、日本の金融機関は固定的な、要するに預貯金が結構あるわけです、外国と違って。そういうものをどう見るかというのは外国と違うんですから、そのぐらいは言ったらどうだと私はいつも思っているんですね。だから、八%じゃなくて六%で日本は十分安定できますよとかいうぐらいのことをやはり大蔵省がもっと主張すべきだというふうに思います。だからそれを、外国が評価するから八%に合わせろということ自体もちょっとおかしな話なんですね。  ということで、やはり日本の文化というものをぜひ大事にしていっていただきたい。それだけに日本の経済の中で今まで何らかの地位を得てきたということでありまして、その辺をもう一回ぜひ見直してみる。今本当にちょっと交際費を緩めれば景気は浮上するんですよね、簡単に。そのことをぜひ御検討いただきたい。大臣、いかがでございますか。
  88. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 おもしろいお話なんですね、承っていて。  今、政府は消費をとにかくふやそうふやそうとして、みんなの財布のひもがかたくて一向に消費がふえないんだ、しかし、いわゆる法人接待なら、あるいは企業接待なら、交際費を少し緩めたらこれはふえるだろう、こうおっしゃっているわけなので、やはり政治というのはそういう部分があると私は思います。そうしたら、多分消費はふえるのじゃないかと思います。  それで、少しここからは理屈になって、お返事しなきゃならないからお返事申し上げるのですけれども、法人にしてみると、黒字になりそうだといったらこれは交際費を使えばいい、経費ですから。というようなことになると、これはもう税収にすぐ響くんですね、といったようなつまらないお答えをしなきゃならないのですが、そういう問題もございます。  しかし、おっしゃっていることは、この際とにかく税を取らなければいかぬから交際費をこれ以上引き締めようというようなことは要らぬことと思いますね。許されている交際費は許したらいい。そこまでのところはお答えしても多分だれにもしかられないのですが、非常におもしろいお話とは思って伺いました。
  89. 玉置一弥

    ○玉置委員 交際費で締めても、今さら締めてもせいぜい何百億円の程度だと思うのですね、あるいは何千億円の下の方だ。何兆円も経済対策をやって効果が出ないなら、そのぐらいやっていいじゃないか。税収との見合いで考えたら、必ず最後は返ってくるはずなんですよね。そういう面でぜひお願いをしたいと思います。  それから、地方財源でございますが、もう時間がございませんので一言だけ。  景気対策としていろいろ昨年来あるいは一昨年来やっておられますけれども、地方財源がないからなかなか進まないというふうに私たちは思っているわけですね。あるいは、地方自治体からは、ともかくおれたちが手当てしないといけない、だから、国はばっとやれという話をするけれども、地方財源について何ら保障がなく、国の方は赤字補てんでいろいろ公債で裏づけしていますけれども、地方について今まで起債はだめだととめられてきた、急にやれと言われている、こんなばかな話があるかという話をよく聞くのです。  地方財源が原因と私ども見ているのですけれども、今、公共事業等の景気対策の進捗率が非常に低いというお話でございました。この辺についてお聞きをしたいと思います。時間がありません。もうあと一分しかないので。
  90. 藤井秀人

    藤井(秀)政府委員 簡単にお答え申し上げます。  今先生おっしゃいましたように、何回かの総合景気対策経済対策におきまして、地方の財源にも、苦しい国の財政事情ではございますけれども意を用いているということであります。  具体的に申し上げますと、昨年四月の対策におきましては、公共事業あるいは地方単独事業の追加分、これに対応をすべく、地方交付税を四千億円増額した上で、さらに補正予算債により足らざる部分の財源手当てをすることといたしております。なお、これに係ります元利償還は後年度の交付税で措置することといたしております。  また、引き続きます十一月の第三次補正予算、これにつきましても、公共事業に係ります地方負担分につきましては、その全額を補正予算債で財源手当てをし、同様に、その元利償還は後年度の交付税で措置することといたしております。  また、十一年度予算、これにおきましても、極めて厳しい国の財政事情でございますけれども、地方の財政事情も非常に厳しいということでございます。そういう中で、例えばたばこ税、これにつきまして地方に一部移管するとか、あるいは法人税率について暫定的な引き上げを行う、あるいは地方特例交付金を特に講ずる等々といった、地方の財政運営にいわば支障の生ずることのないよう、国としては最大限の努力を行っているということでございます。
  91. 玉置一弥

    ○玉置委員 自治省の方にも来ていただいているんですが、実は東京都の低公害車に対して自動車税が減免をされる、こういう話がありまして、減免するのはいいんですけれども、逆に、十年以上経過した車については一〇%自動車税を付加するというような形になるということで、トータルすると増税になる、こういう話があります。  それぞれにお聞きしますと、いやこれは東京都のことだから我々はノータッチだと大蔵省も自治省もおっしゃっているということなんですね。我々からすると、自動車関係諸税から見ると、大体そもそも自動車にかかり過ぎだという話を私も二十年間してまいりましたけれども、そういうときは何にも言わないで、今度地方税だから知らないという話はとんでもない話でございまして、大蔵大臣はぜひ野田自治大臣とお話をしていただいて、トータルでやはりお話をぜひお願いしたい。  各自治体が勝手に決めていったときに、では我々の方は当然ふえた分だけ国の方の減税を要求するということになってくるので、税制としてはゆがんだ形になってくるのですね。そういうことでございますから、幾ら地方財源といえども、地方財源を最初から国は、ではこの部分を地方財源にしなさいというふうに手放してもらえばいいわけですから、そういうふうな形でやっていかないと、地方でどんどん簡単に決めます。例えば、そのうちまた地方消費税も出てくると思うのですね。地方消費税をやるところとやらないところと出てくるとかいろいろな形が将来出てくると思うのです。  だから、そういうふうにトータルで見ていかないと、ある部分の人に集中してかかるという可能性だってありますから、その辺も含めて、国と地方の財源配分について、見直しもそうですし項目についてもぜひまた御論議をいただきたいというふうに思います。  時間がないので一方的に言いましたけれども、お答えだけいただいて。
  92. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 では、簡単にお答えいたします。  先ほど政府委員が申し上げましたが、平成十一年度の予算編成でやはり一番難しかったのは地方と中央の財政のことでございまして、地方も本当に中央と同じように困っていらっしゃるので、今度はあらゆることを私はいたしたつもりなんです。  しかし、同じようなこともまた次の年やれるかなというぐらい思い切ったことをいたしましたが、その中で今のような問題がやはりございますから、またよく相談をいたしておきます。
  93. 玉置一弥

    ○玉置委員 では、終わります。ありがとうございました。     —————————————
  94. 村井仁

    村井委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  両案審査のため、本日、参考人として日本銀行理事黒田巖君及び日本銀行理事小畑義治君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  95. 村井仁

    村井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  96. 村井仁

    村井委員長 谷口隆義君。
  97. 谷口隆義

    ○谷口委員 公明党の谷口でございます。  再生委員会の柳沢委員長に来ていただいておりますので、まず初めに、公的資金の注入に関する審査状況についてお伺いいたしたいというように思います。  私も昨年、金融安定化特別委員会の理事として審議に参加させていただきまして、再生法案並びに早期健全化法案が成立したところでございます。この早期健全化法案は、前向きの資金として二十五兆円を現在ある金融機関に資金注入する、こういうようなことで、どうも状況をお聞きしておりますと、大変精力的に金融再生委員会の方でやっていただいておるということで、これも大変喜ばしいなというように思っておるわけでございます。金融再生委員会は、現在申請しておるのが大手十五行でございますね、それに関して、経営健全化計画が不十分な金融機関においては最終審査までに計画の練り直しをやりなさい、このようなことをおっしゃっていらっしゃるようでございますが、このあたりの具体的な状況について、まず初めに委員長の方から御報告をお願い申し上げたいと思います。
  98. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 ただいま谷口先生が御質疑の中でおっしゃられたとおり、昨年、日本の金融システムを再構築すべく、再生法と早期健全化法を制定していただきました。私ども、この両方を適切に運用して、一刻も早く日本の金融システムを立て直し、金融機関を健全化いたしたいと思って、正直申して、再生委員の中の一人でございますけれども、私から見ましても、再生委員各位、本当に精力的に、誠実に、いろいろなことについて御審議、御奮闘いただいておるということをまず委員各位にも御報告申し上げたい、このように思います。  そこで、具体的に資本注入の審議状況でございますけれども、大体昨年の十一月ごろ、九月の中間期の決算が終わったころから、各行から政府の資本注入を受けたいというような内意がそれぞれ金融監督庁の具体的な事務をやっている窓口にも伝えられておりまして、事実上そこから予備的な検討を始めさせていただいておる、こういう次第でございます。  これもほぼもう終局に至っております。正式な申請、それから我々による正式な審査というものを終了して、年度末の決算時の前までには払い込みを終了しなければいけない、こういうようなことになっておりますので、どうしても前広に臨時の株主総会を開いていただかなければならない。こういうことを考えますと、もうそろそろ臨時の株主総会の開催の通知というものを発送しなければならない時期にも当たってきている、こういう次第でございます。  したがって、私ども、この予備的審査につきましてはそろそろ終局の検討を終えて、少なくとも現段階で臨時の総会を開いて、政府のあるいは民間で独自にやる増資あるいは優先株の発行について株主総会からの授権を得ておく、こういうようなことをしていただくことになるわけでございますが、少なくともそういうことをしていいですよというような内々のことは伝えてやらないとこれはむだになってしまう、またいたずらに会社を混乱させるということになってしまいますので、正式な申請を待って、正式の審査が行われなければ結論は言えないけれども、しかし、そういうことを前提とした株主総会の開催については政府側として異存はない、こういうことを伝えてやらなくちゃいかぬ、こう思っております。  現状はどうかということでございますが、最終的にはもう一日二日いただきたいというようなところの審議状況でございますので、ここで確たることを申し上げるのは、谷口先生の御質問でありましても、ちょっと差し控えさせていただきたいと思います。いずれにしても、そのくらい審議が深まっておるということは御報告できようかと考える次第であります。
  99. 谷口隆義

    ○谷口委員 大分進んでおられるようでございますが、先ほども委員長自身がおっしゃったように、三月末までにやっていかなければいかぬと。そんなに時間的余裕がないわけで、現下の景気低迷の一つの大きな原因が金融機関の不良債権が処理できなかったことにあるわけでございますので、そのあたりの状況にかんがみますとそんなに時間的余裕がない、私も同じように考えておるところでございます。  ですから、あの昨年の審議の折には強制的に注入するというようなことすら議論されたわけでございますので、かなりそういうように今やっておられるということでございますので、これは大変喜ばしいことであると私は思うわけでございます。  一部報道によりますと、不良債権処理を本年三月期で完了させるため、一部行には申請額の上積みを求め、総花的思想の金融機関には、これらを捨て、海外や証券業務から撤退をしたり、リテール、信託などに特化するように要請しておるというような報道もございますが、このあたりの状況ですね。それとまた、本日の産経新聞の状況によりますと、これは具体名を出してあれなんですが、東海とあさひに海外撤退を要請したというような報道もあります。  このあたりまで突っ込んでやっていらっしゃるのかどうか、大変答弁しにくいことであるとは思いますが、一言お願い申し上げたいと思います。
  100. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 審議の中身にわたる御質疑をいただいたわけでございますけれども、私ども、まず公的資金、これは民間の自主努力による第三者割り当て等による増資をちょっとわきに置かせていただきますけれども、この公的資金の投入というものをどう考えているかと申しますと、まず基本的に、必要度というか、必要額というものは一体どういうものかということから考えを固めようとしているわけでございます。  それには、今先生もお触れになられたように、まず第一に、不良債権の償却を終えるような、そういうことをしてもらわなければいけない。それから第二番目に、近々予測されるようなほかのリスク、これに対しても備えられるようなものでなければならない。こういうようなことから、基本的には、現に彼らが有している資本をそこに割り当てるとすると資本不足が起こるから、それを公的資金によって補てんしてやろう、こういう考え方から、必要性の面からどういうことがあり得るかということが論議される、これが一つの面でございます。  しかし、それだけではなくて、では、多ければ多いほどいいじゃないかということになるわけで、確かにそういう面もあるわけです。しかし、この公的資金というのは、企業にしてみますと、いつまでもいつまでも政府のお金を自分の一番大事な資本として抱えておるということは必ずしも望ましいことじゃない、これは当然のことでありまして、彼らはそう考えるわけであります。そこで、市場を通ずるなり、あるいは劣後ローン等の場合には償還なりというようなことで、政府の側からすれば回収、それから民間の金融機関の側からすればとにかく償還ということが必要になってくるわけでありまして、その原資はどこから来るかといえば、これは彼らの利益、収益からしか来るところはないわけでございます。  そういたしますと、彼らの収益の見通しということから、今度は返済可能性、償還可能性というものにおのずから限度というものが出てくる。我々は、できるだけ潤沢にこの際資本力を持ちなさいよということを言うわけでありますが、それには、彼らが償還のための収益というものをできるだけ向上しないとそのようにはならない、こういう仕組みになっているわけであります。  そこで、私どもとしては、潤沢な資本力を持つためにはどうしても収益力の向上を図らなければいけない。収益力の向上というのは、ではどうして図られるかといえば、これは、むだな、特に効率の悪い諸活動あるいは諸資産というものをもうやめてしまうということで収益を生み出していく。それからまた、どちらかというとそういう消極的な面ではなくて、積極的にもっと収益の上がる分野に対する事業を拡大していく。こういうような両面の努力によって収益を引き上げる、そのことによって償還能力を上げて資本を潤沢に持つようにしてもらいたい、こういうような仕組みで議論が展開されているというわけであります。  これ以上のことにつきましては個別具体的なケースにわたらざるを得ませんので、そのあたりのところでぜひ我々の論議の概要というものを御理解賜りたい、このように思う次第であります。
  101. 谷口隆義

    ○谷口委員 考え方はよくわかりました。  それで、自主的な再編を促すこととか特化することは、確かにこれは極めて重要なことでございますので、今までの預貸で何にも経営努力をやらなかった金融機関が、それなりにこれは自立していかなければいかぬわけでございますので、大変これから大きな激動の時代になるのではないか、このように思うわけでございます。  これもまた、委員長の方からは大変言いにくいことなんだろうと思いますが、現状の中で、大手十九行が資金注入額の申請としてどのくらい、これはマスコミの方からも聞くところではございますが、どの程度注入の申請があり、一方、金融再生委員会の方はどの程度の、これは各行まちまちでございますが、トータルとしてどの程度の注入額が最低必要なんだろう、ある程度安定するためにはどの程度の資金注入が必要とお考えか。このあたりについて、ちょっと突っ込んだ御発言、御答弁をお願いできればありがたいというように思っております。
  102. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 具体的な投入金額というものについてのお話になるわけでございますけれども、率直に言って、先ほどちょっと冒頭触れました、十一月ごろそれぞれ発表された九月期決算の発表の際に、多分自発的にそういうことに触れたところはなかったのかもしれませんが、とにかく、記者団との応答の中で若干のニュアンスをお話しになられたところもあるし、その意向のみの表明ということで、金額にわたる発言まではしなかったところもあるというところではなかったかと。我々も、やはりこれは新聞報道等でその程度のことしか知ることはなかったわけでございます。  その後、先ほど申したように、事実上、いろいろ制度の説明等を求めてくるといったようなことで、監督庁の事務当局との接触の中で、それぞれの腹づもりみたいなものを語り合うこともあったかもしれませんけれども、現在はまだ、本当にそういった意味におきましては事前的な検討段階ということでございまして、それぞれの金融機関が、自分たちの経営の今後の行く末といったようなものを描きながら、しからば一体どのくらいを政府側に依頼すべきかということについて、いろいろ考えをめぐらせているというところが実態ではないかというふうに思う次第でございます。  それから、ちょっと、あえて申しますと、最終的にはもう一つ、商品性と申しますけれども、その商品性との関連で決まる配当だとかあるいは償還の期限だとかというようなところも非常に金額と密接な関係が出てくるわけでありまして、それらのことも総合的に決めるというのが金額の決まり方のありようだということをぜひ御理解いただきたいわけでありまして、その意味では、最終的にはこれからのいわば正式な段階、この段階を待って金額の方はだんだん明確になってくる、こういうことであるということをぜひ御理解いただきたい、このように思います。  マクロ的に、トータルで一体どうかというようなことをマスコミ等は非常に関心を持って、そのあたりを云々することが多いわけでありますが、事は個別の金融機関の問題であるというのが私どもの態度である、こういうことでぜひ、我々がそういう考え方をしておるということについて御理解をいただきたい、このように思います。
  103. 谷口隆義

    ○谷口委員 まさに今おっしゃるように個別金融機関の問題でございますので、そのあたりは大変言いにくいところではないかと思います。  民間シンクタンクの調査結果と申しますか、データによりますと、やはり十兆円程度は最低入れなければいかぬだろう、安定するためには二十兆円ぐらいは入れなければいけないのではないかというデータすらあるわけでございます。そのあたりは十分各行の状況を勘案されながら、先ほども申されましたその金額だけではなくて、これは公的資金注入だけではありません、各行がみずから資金調達をするところもあるわけでございますので、そういう合計でこの資金注入をやるわけでございますから、そういう観点で、この三月末までの大変限られた時間ではございますが、ぜひ頑張っていただきたいというように思います。  それで、金融監督庁に若干お聞きしたいのですが、今度、第二分類に一五%の引き当て率、また第三分類に七〇%の引き当て率、このようなことのようでございます。この第二分類、要管理債権というような分類をして、従来の第二分類を一五%を引き当てるものとそれ以外に分けてやっていらっしゃるということで、一瞬私は、一五%といったら大変な引き当て率をされるのだなというように思ったのですが、どうも聞くところによりますと、金融機関側からするとそうそう大変な率ではない、絶対額におきましたらそれほど積まないのではないか、このようなことが言われておるわけでございますが、このあたりについて、金融監督庁の方から御答弁をお願い申し上げたいと思います。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席〕
  104. 日野正晴

    日野政府委員 ただいまの御質問の趣旨が、分類あるいは引き当ての率につきまして注入を前提としたものだということになりますと、これは金融再生委員会の方の職務ということになろうかと思いますので、私の方から御答弁することは適当でないと思いますが、一般的に金融機関の分類あるいは引き当てをどうすべきかということは、これは従来からやっていることをそのまま今もやっているだけでありまして、別に変わるところはございません。また、引き当て率につきましても、決して、第二分類を一五%、第三分類を七〇%というふうに、これも固定的に決めているわけではございません。  現に、前回の一斉集中検査におきましても、決してそういった一律の引き当て率で検査をしたわけでもございませんで、それぞれの公認会計士と御相談なさって決められたそれぞれの分類あるいはその引き当て率ということを前提にして検査もさせていただいているところでございます。
  105. 谷口隆義

    ○谷口委員 では、今の件については金融再生委員会の方がいいわけですか。では、ちょっと……。
  106. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 お答え申し上げます。  今先生がおっしゃられました一五%あるいは七〇%という引き当ての目安なんでございますけれども、これは、今回、国際基準行が資本注入を申請するに際しまして、不良債権処理、これを三月期に終了させるということが大きな目標なものでございますので、一般の会計基準とは違いまして、申請した銀行につきましては、要管理先債権につきましては一五%、破綻懸念先債権につきましては七〇%、こういう目安を持って、まず自行の不良債権の処理額といいますか引き当て額を計算し、それを三月期に引き当てするということをいわば資本注入の要件にさせていただいた、こういうことでございます。
  107. 谷口隆義

    ○谷口委員 私が申し上げたのは、第二分類を分類してその引き当て対象になったものとならないものとを分けた結果、最終的には、第二分類、全部引き当てるわけじゃないですから、全体額においては大した金額を積まないのでしょう、こういう趣旨の質問をしたわけでございまして、そのあたりのところは、まあ答弁もしにくいでしょうからこのあたりで結構でございますが、先ほど申し上げましたように、三月末まで期間が残っておりませんので、ぜひまた頑張っていただきたいというように思っております。  柳沢委員長の方はもう時間がないようでございますので、どうぞお帰りください。  次に、平成十一年度税制改正の件についてお伺いをしたいわけでございますが、その前に、国税局、税務署の機構の充実ということについて申し上げ、お聞きいたしたいわけでございます。  御存じのとおり、一昨年に外為法の自由化が行われまして、海外取引の量も拡大したようでございますし、かなり複雑な取引が出てまいったようでございます。また、昨年は電子帳簿保存法という法案が成立いたしまして、電磁化されたファイルが帳簿として認められるというようなことになったわけでございます。また、近時、電子マネー決済と言われるような大変複雑な決済方法が行われるようになっておるわけでございます。  そういう意味におきまして、税を取り巻く状況、会計を取り巻く状況は大変情報化が進んでまいった、高度情報化の時代に入ってきたわけでございまして、私は従来から国税庁の方にも申し入れをしておったわけでございますが、国税局においてはそういう複雑な国際環境に対応した専門官ポストが必要ですよ、また、機械化に関しては機械化の専門官ポストが必要ですよ、このように申し上げておりまして、昨年度の予算においても、また本年度の予算においても、かなり突っ込んだ対応をしていただいたようでございますが、そのような専門官ポストの問題。  御存じのとおり、近時、大変景気が悪化いたしておりまして、そういう状況の中で税金の滞納がふえておるというようなことでございます。お聞きしますと、平成九年度末には二兆七千八百三十億円というような税の滞納になっておるようでございまして、税の徴収の現場にいらっしゃる方は大変な御苦労をされておられるようでございます。そのような観点での処遇の改善もまた見ていかなければいけないのではないか、このように思うところでございます。  このようなことに関しまして、国税庁の方から御見解をお述べいただきたいというように思います。
  108. 大武健一郎

    ○大武政府委員 お答えさせていただきます。  ただいま先生の言われましたとおり、税務行政を取り巻く環境につきましては、経済取引の国際化、複雑化、あるいは会計処理の情報化の進展、あるいは納税者数の増大というようなことによりまして、質、量ともに厳しさが増大しているという状況にございます。  こうした中におきまして、ただいま先生からお話がありましたとおり、国税庁におきましても、経済取引の国際化、会計処理の機械化、情報化への対応の必要性、重要性につきまして、各方面への理解を得て、国際調査専門官、あるいは機械化調査専門官などのそうした専門官ポストの新増設等所要の機構の整備に努めてきたところでございます。  今後とも、一層そうした国際化、機械化が進展する中で、税務の困難性及び歳入官庁の特殊性等を訴えまして、所要の機構整備につき、関係方面の御理解を得て、今後とも一層努力していきたいと考えているところでございます。  それからまた、ただいまお話のございました滞納につきましても、それぞれ滞納がこうした景気状況の中で累増する、その一方で、滞納の整理につきましても連年を上回る努力を重ねているところでございます。そうした厳しい状況下でございますので、処遇面におきましてもできる限りの努力を払ってきたところでございまして、給与面では、毎年上位級の定数の確保、あるいは機構面では、適正、公平な課税の実現に資する観点から、必要なポストの新増設にも努力してきたということでございます。  今後とも、関係当局に対し、税務の重要性、困難性を強く訴えまして、職員の処遇に十分配意し、必要な上位級定数の確保等、引き続きできる限りの努力をしていきたいと考えているところでございます。
  109. 谷口隆義

    ○谷口委員 ぜひそういう観点で進めていただきたいというように思います。  それで、ちょっと個別の問題に入りたいというように思いますが、今、御存じのとおり、市中におきましては大変景気状況が先ほど申し上げましたように悪いわけでございまして、最近、債権放棄をするという事態が大変多いようでございます。  これは、今までの法的な債権放棄ではなくて、私的な整理であるとか取引先の売掛金を債権放棄してやろうというような形で、そうしなければ事業として継続できないというような状況の中で債権放棄をする。債権放棄を受けた方は債務免除益が立つわけでございます。ところが、この債務免除益が立って、これは利益でございますから、ここにまた税金がかかってくるということになりますと、本来、債権放棄をする意味がかなり薄くなってしまうわけでございます。  現行税法におきましては、例えば、役員がみずからの会社の債権を放棄する、私財を提供する、こういうような場合におきましては、ある一定の条件のもとでの損金を認めてやろうというようなことがございます。  それで、今私が申し上げました、市中で一般的に最近行われておるような債権放棄につきまして、現下の状況をかんがみますと、これに課税をするということは極めて酷ではないか、こういう観点で、私財提供益、債務免除益に対して課税をする際に、この認めておるような状況を私が申し上げている一般的な債権放棄等におきましても認めることがいいのではないか、認めてはどうかという観点で申し上げたわけでございますが、このあたりの御見解をお願い申し上げたいと思います。
  110. 尾原榮夫

    尾原政府委員 お答えいたします。  先生のような御専門家の方にあれでございますが、今先生おっしゃられましたように、法人税法では、無償による資産の譲り受けというのが資本等取引に該当しない限り益金の額に算入するということになっております。したがいまして、法人の再建のために債権者から債務の免除を受けた金額というのは、益金の額に算入されるわけでございます。  ただ、一方、現行法人税法では、一定の場合を例示いたしまして、具体例を申し上げますと、商法の規定による整理開始の命令があったこと、破産法の規定による破産宣告があったこと、和議法の規定による和議の開始決定があったこと、いわば一種の倒産法制絡みのものを列挙いたしまして、さらに四番目といたしまして、これらに準じる事実ということが書いてあるわけでございます。政令で規定がございますが、前三号に掲げる事実に準ずる事実または金融機関の更生云々、こう書いてあるわけでございまして、要は、この債務免除益が、過去の欠損金との相殺を認めるためには、この第四番目のケースにおいて、まさに経済から見て合理的な免除であるかということが恐らく実質の要件になっているというふうに書いているわけでございます。  したがいまして、そのような一般に債務を免除した場合という先生のお尋ねの場合、よくわからない点があるわけでございますが、まさにその債務免除が経済面から見て合理的なものであり、債務超過の状態にある会社の再建などの目的で行われるということでありまするならば、再建計画をつくっていただいて、税務上まさに欠損金との相殺が認められるのではないかというふうに考えております。
  111. 谷口隆義

    ○谷口委員 今局長おっしゃったのは法人税法施行令百十七のところでございまして、おっしゃるように、準ずる事実の場合を適用したらどうかということなんです。だけれども、これは破産債権等の特定のものに限られるという前提があるわけでございます。  それと、多分これに対する通達があるのではないかというように思うわけでございますが、ちょっとそこまで確認はしておりません。最近の通達はどうも限定列挙になっておらないで、通達を解釈しなさいというような現場での状況に今なっておるようでございます。本来通達というのは、個別具体的に、このときはだめよ、これはいいよというように書いてやるのが通達なわけで、そういう状況の通達も先日ございましたので私もちょっと申し入れたことがあって、最近はこの通達の変更がなされたようでございます。  この場合も、大変そういう意味においてはざっくりとした話で、はっきりわからないので、ここはきちっと明確に、幅広に適用できるようにぜひお願い申し上げたいというように思います。余りこればかりやっていると時間がないものですから。  次は、利子税等でございます。  利子税につきましては、現下の公定歩合が〇・五%でございますから、七・三%の利子税は余りにも酷じゃないかと従来から言われ続けておりました。今回の税制改革案におきまして、この利子税につきましては、前年十一月三十日を経過するときにおける公定歩合に年四%を加算した割合というような形で、公定歩合をベースにした利子率の割合にされたようでございます。  しかし、一方で、この利子率ともう一つ、延滞の際の延滞税というのがございますね。これもかなり、納税に際して誠意が見られない滞納者に強く納付を要求するという延滞税、これが今一四・六%ということになっているわけです。これは七・三%のちょうど倍になっているわけでございますが、これもやはり、全体の整合性観点から見ると、利子税をこのような形にしたわけでありますので、延滞税もそのようにしたらどうかと思うわけでございますが、これについてどのようにお考えですか。
  112. 尾原榮夫

    尾原政府委員 お答え申し上げます。  今回、当委員会からも、審議の中で、利子税が高過ぎるということで、公定歩合に加算させていただくようにして引き下げを図っているわけでございますが、お尋ねの点は、延滞税についても考えるべきではなかったかという点かと思います。  どういうふうに言ったらよろしゅうございましょうか。利子税は通常の約定の金利なんだろうと思います。それで、延滞税といいますのは、やはり納付期限を遵守した者としない者との負担の公平を図る必要がございます。それから、滞納防止を図る目的がございます。それからまた、滞納となった税金でもできる限り早く納付していただきたいということを目的として課されるものでございまして、いわば一種の損害支援金とでもいいましょうか、それに近い、利子税とはおのずと違っているというのが延滞税であろうというふうに認識をしているわけでございます。  それで、この一四・六%、日歩四銭ということになっているわけでございますが、ただ、延滞税につきましても、延滞に陥った、しかし誠意を持って税金を払っていただくんだということになりますと、一四・六%というものの二分の一を免除するという形になっておりまして、実はそういう意味で申し上げますと、現実に一四・六%の割合が適用される場合というのは、税金が滞っている、税務署の方からも何度か、相談に来たらどうですか、そういうのに一切応じない、こういう方について一四・六%がかかってくるわけでございます。  そういう意味では、ましてや災害とか病気に遭ってしまったというような場合にはその期間の延滞税は全額免除ということになっておりますし、一四・六%という数字だけ見ると高いかというふうなお話があろうかと思いますけれども、実はそういう全く誠意を示していただけない納税者についてのみ適用されているということでございまして、今回、そういうようなことから、この引き下げは行わないということにさせていただいたものでございます。何とぞ御理解いただければと思います。
  113. 谷口隆義

    ○谷口委員 全体的な整合性観点から考えると、これはやはり連動して考えるべきではなかったかというように私は思います。  次に、ちょっと連結のことを申し上げたいんですが、御存じのとおり、この三月から金融機関の連結決算が始まります。他の業種に先駆けて、一年先駆けてやられることになっておるわけでございます。  その際に、連結の範囲をめぐって市中では大変いろいろあるようでございまして、例えば、今回、この連結の範囲を決めるのに、実質支配力基準というような方法が入れられたわけでございます。これは、持ち株だけではなくて、形式的な基準だけではなくて、実質的に支配しているかどうかという判定基準なんです。  これで見た場合に、例えば金融機関と極めて近しいゼネコンがあった。ゼネコンの資金繰りは全部金融機関が面倒を見ておる、役員も派遣しておる、言ったとおり、右向けと言えば右を向く、左向けと言えば左を向く、こういうようなゼネコン、商社。もう大変この業況は厳しいと言われておるわけでございますが、このようなところは当然ながら入るのではないかというように思います。このあたりの御見解をお願い申し上げたいと思います。
  114. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  今先生が言われました連結の際の子会社及び関連会社の範囲が従来は持ち株基準によっておりまして、持ち株比率五〇%超を子会社、二〇%以上を関連会社としておったわけでございます。  これを、先ほど先生も言われましたが、持ち株比率が、これは従来の基準を下回っていても、株主総会等を支配している場合を子会社、財務等の方針の決定に対して非常に重要な影響を与えることができる場合を関連会社とするということで、実質的な支配力基準、影響力基準が導入されたわけでございます。  金融機関につきましては、特に早期に内外の信認を高めるために、先ほど先生が言われましたように、一般企業より一年早く本年三月期から導入をすることとしているわけでございますが、その際に、先生が今言われましたような融資先の話で、金融機関がある会社の経営支援を行っているような場合でございますが、そういう場合でも、これは経営支援考え方にもよるわけでございますが、債権の回収を円滑に行うとともに、やはりその会社との営業取引関係を維持すること等によるものであって、必ずしも傘下に入れる目的で行われていないことが明らかなような場合のときには、これは子会社とか関連会社に該当しない、これはもう先生一番よく御存じの話でございまして、そういう取り扱いをすることもできるわけでございますので、その時々の判断かと思います。
  115. 谷口隆義

    ○谷口委員 今おっしゃったのは、傘下に入れる目的で行われていないことが明らかにされたときには該当しないわけでございますが、これが明らかにされない場合には入る可能性もあるということではないかというように考えております。  御存じのとおり、今回この三月決算から連結が入る、そうしますと、多分、金融機関を取り巻く関係会社、子会社は、業況の悪いところが多いものですから、どうしても自己資本比率が落ちてくる、低下する。一方で、今回税効果会計というやり方を、これはどれだけ税金を払ったのかということではなくて、幾ら税金を払わなければいけないのかという観点での税効果会計を導入することによって自己資本比率を持ち上げる。そういうことで若干プラスになったような話は伝え聞くところでございますが、しかし、御存じのとおり、この税効果会計というのは、戻入をし取り崩し、戻入をし取り崩しということで、損益に大きな変動がなければほぼ初年度だけの効果に終わるわけでございます。  そういう観点でまいりますと、先ほど私、柳沢委員長の方に申し上げましたが、金融機関の本体だけの問題ではなくて、連結グループ全体をある程度きちっとやっておかないと、仮に税効果会計を今回導入しないということになりますと、かなり自己資本比率が低下するということになっておったはずでございますので、このあたりは大変注目し、やっていかなければいけないことなんだろうというように申し上げたいと思います。  また、この連結につきましては、税制のところで若干今回も触れておられるようでございますが、連結納税を早くやってあげなきゃなかなか連結を主体的に進んでいかすことはできないというように思っておるところでございます。  例えば、今NTTにおきましては、租税特別措置で連結を行ったと同じ効果を与えておるわけでございますが、ぜひ連結納税を進めていただきたい。自民党の党税調の方には、この連結納税を早くやるべしという声もあるようでございますが、ぜひこれも前向きにやっていただきたいというように思うところでございます。  それで、先ほど私申し上げました自己資本比率、BIS規制の問題について、戻って申しわけないんですが、ちょっとお話をさせていただきたいわけでございます。  宮澤大蔵大臣が、前回いつ大蔵大臣をやられたのかちょっと私はっきり覚えていなかったわけでございますが、バーゼルのコンコルダットがありまして、その後、いろいろ協議がございました。その折に、私が聞いておりますのは、もう既に我が国の金融機関はいわゆる国際基準の八%を割り込んでおったというようなことがあって、我が国の方から株の含み益をこのティア2に入れたらどうかというような申し出をし、それが採択されて今現在に及んでおるというようなことをお聞きするわけでございます。  今、金融機関の八%をクリアしなければいけないという基準は、これはもう大変なものでございまして、経営とは全く本来なら関係のない株式市場の動向を勘案しなければ極めて金融機関が危ない状態になってしまうというようなことになったきっかけがこのあたりにあったのではないか。私は、その後の状況をずっと見ておりますと、ある意味においては、構造的な側面に入っておらないで、極めて小手先の対応ではなかったのかと。  例えば、株式市場がどんどん右肩上がりでいっておったときはよかったわけでありますが、横ばいないし、このように大変な下降局面におきましてまず考えられたことは、昨年の原価法の選択適用の問題であるとか、例えば土地の再評価の問題であるとか、また、今現在話題に上っております株式買い取り機関の問題であるとか、このような問題一つ一つが本来の、本質的なところにメスが入っておらないで、もういたし方ない今の金融機関の持っておる株の含み益の状況を勘案しながらこういう小手先の対応をやらざるを得ないという、大変私はこのあたりに対して何とも言えない怒りみたいなものを感じるわけでございますが、大蔵大臣、いかがお考えでございましょうか。
  116. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 バーゼルで株式の含みを半分入れるという決定ができましたときのいきさつを私は存じません。いろいろな説をなす方がおられますけれども、詳しいいきさつを私は存じませんので申し上げることができません。それからもう一つ、一昨年の十一月の金融の変調から、いわゆるキャピタルレシオを維持するためにいろいろ苦労をしたことの中で、株式の市場価格というものが非常な問題になったことも、これも事実でございます。  余り正常な問題意識ではなかったと思いますけれども、しかし、三月の末の状況というのは非常に気になったものですから、どうしてもああいうことがありました。それで、少し事態が落ちつきました後であれば、ああいう評価というのは一体どういう基準でやるべきかという会計基準というものもやがて決まってこなければいけませんし、それから他方で、持ち合いというものも異常な状況であって、殊に金融機関が株をあれだけ持っているということは本来ではないんだろうと思います。  そういう意味で、今急場で何か申し上げますといろいろ影響がございますので申し上げませんけれども、こういう問題も、やはり少し遠い将来まで考えれば、再検討をすることになっていくのではないかと思っております。
  117. 谷口隆義

    ○谷口委員 私は、その裏に大変なモラルハザードを惹起したのではないか、我が国が右肩上がりを続けておった折とは全く違う、金融業界、またその他の業界におけるモラルハザードを出来したのではないか、このように思っておるわけでございます。  私は、議員になる前に公認会計士をやっておりまして、その折に、ある紙のメーカーでございましたが、株に大変投資をいたしておりまして、株の売却益を売上高に上げさせてくれ、こういうようなことを言った企業さえあるわけでございます。もうこの段階で私は正常じゃないなというように思ったわけでありますが、紙という性格上、市況産業でございますので大変変動が激しい、だから損益が落ち込んだときに株の含み益を出して損益を平準化したいんだ、だから、大変な量にもなっておるのでこれを売り上げにさせてくれ、このようなことを言われたことがあります。企業の中においても、いわゆる企業努力をしないで株の含み益で利益を上げる、こういう考え方が蔓延しておる、モラルハザードの典型ではないかというように思うわけでございまして、このあたりの状況が広く企業の中に浸透しておるのではないか、このように考えております。  特に金融機関の今の行為は、金融機関は人間の体に例えますと心臓でございますので、これは倒すわけにいかない。そういう状況の中で、含み益を落とさないように、株の状況を悪化させないように、株式市場の状況を悪化させないように、政府が一生懸命その環境を整備してやるということが最終的に今のそのような状況に陥ったのではないか。私はそのあたりを大変危惧するところでございまして、昨年も私は申し上げたわけでございますが、自然淘汰されるべきところはいたし方ない、このように考えておるわけでございます。  先ほど幾つかの例を出しました。原価法の選択適用の問題であるとか、今大きな話題になっております株式買い取り機関の問題であるとか、これもよくよく考えますと、産業構造の転換という構造的側面に入っておらない。そういう観点での今の買い取り機関の問題の議論は全くナンセンスである、このように私は申し上げたいと思います。  また、昨年やりました土地の再評価の問題につきましても、この再評価がBIS基準をクリアできるということのためにのみ使われたということに私は大変大きな憤りを感じるわけでございまして、二十一世紀の我が国が立ち直っていくためには、今こそそういう構造的側面に入っていかなければいけない、そういう構造的な側面から解決していかなければいけない、このように強く考える次第でございます。  それで、若干時間がございますので、もう一つ。  昨日、日銀総裁との間での国債の引き受け論議、既発債、新発債の引き受け論議がございました。私は、結論から申し上げますと、そういうことは全く財政規律を失うものであり好ましくない、こういうように考えるわけでございます。  昨日、大蔵大臣もおっしゃっておられましたように、ポール・クルーグマンの調整インフレ論等々、いろいろそういうことを誘発するような議論があるわけでございますが、ここはしっかり、また先ほども申し上げました、それがモラルハザードに陥らないように、今こそやっていかなければいけない、このように考えるわけでございます。  長期金利が上昇した一つの大きなきっかけは、大臣御存じのとおり、大臣も記者会見をされておられましたが、昨年の十二月に大蔵省の資金運用部が国債の買い切りオペを停止したということの発表がこの長期金利の上昇になったわけでございます。ですから、その当時には既に国債の増発はもうわかっておったわけでございますから、その結果長期金利を上昇させたということより、私は、むしろそのときの大蔵省の対応がまずかったのではないか、このように考えておるわけでございますが、大蔵大臣の御見解をお願い申し上げたいと思います。
  118. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国債の増発はわかっておったわけでございますし、資金運用部云々も、せいぜい月に二千億円ということでございますから、新規が六十兆、全体なら千二百兆なんという話の中で、そう大きな話ではなかったはずでございますが、タイミングが悪かったとおっしゃられればあるいはそうかもしれません。本来なら、普通に考えて、ああいう結果になるはずでもないと思いましたから、そうなのかもしれません。ちょっと、売りたい、あるいは金利が上がりたい、価格が下がりたいというような背景があって、それをはやしたといいますか、少し過剰反応したかもしれません。  ただ、私は、その後、思っておりまして、国がかなり大量の国債を発行するわけでございますから、その発行の仕方とかなんとかというのは、やはりいろいろ細かい工夫をした方がいいだろう。それはシンジケートの話で、売れることに問題はないにしても、やはり発行額が大きくなればいろいろ細かい注意をすることが必要だなということは、最近事務当局と話をいたしておるところでございます。
  119. 谷口隆義

    ○谷口委員 長期金利が上昇した結果、御存じのとおり、債券相場が暴落したというか債券が落ちて、その結果、企業が今度この三月に企業決算を行うわけでございますが、株の含みも、先ほどの議論の中で申し上げたように、今含み損になっているところが多いようでございます。  また、債券相場も下落いたしたわけでございまして、含み益が圧縮されたということで、本業の方もうまくいかないということで、この三月は金融機関のみならず一般企業も大変な状況にあるわけでございますが、企業の損益状況に与える影響について、長期金利の上昇がどの程度影響しておるかという観点で、御見解がございましたらおっしゃっていただきたいと思います。
  120. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどからのお話の続きになりますが、長期金利というのは、確かにあれを機会にちょっと上がり、また下がり、少し上がりというようなこと。私は、基本的にはこれは債券の相場の話でございますから、マーケットの出来事だというふうに思っております。  もっとも、〇・六とか一とかいう金利がずっと続くのも異常だとは思います。そのことも異常でありましょうが、急に最近のように動くのも、これはマーケットのことだろう。  ですから、他方で、クラウディングアウトするほどの民間の資金需要があるわけでもございませんから、一種の過剰反応はありましたけれども、それがどんどん上がり続けるというふうには思われませんし、また、今、谷口議員から株との関係がございましたが、これは、場合によっては株と債券とは逆の動きをすることもしばしばございますものですから、その辺の含みにすぐ続く話かどうかもわからない。  まあ、押しなべて金利が少し上昇し始めておることはわかっておりますが、それがマーケットの動きである限り、企業決算にそんなに今この時点からすぐ影響を与えるというようなことは、ないとは申しませんけれども、そう大きなことではないのではないかと思っております。
  121. 谷口隆義

    ○谷口委員 本日は日銀の方からも来ていただいておりますが、ただいま私が大蔵大臣とやりとりをしたわけでございますが、これに対して御意見がありましたら。
  122. 黒田巖

    ○黒田参考人 お答えいたします。  長期金利の最近の上昇につきましては、もちろん私どもも強い関心を持って見ております。  ただいま御議論のございましたように、長期金利の動きは、このところややもすると非常に動きが激しゅうございます。  例えば、仮にでございますが、たまたま高くなった金利が、そのまま長い間続くというようなことがあれば、これは実体経済にもマイナスがあることかと思います。逆に、先ほど大臣から市場の動きということでお話がございましたが、これがまた落ち着くところへ比較的早くに動くということであれば、それなりのことかなというふうに考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、注意深く見守っていきたいと考えております。
  123. 谷口隆義

    ○谷口委員 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。
  124. 井奥貞雄

    ○井奥委員長代理 次に、若松謙維君
  125. 若松謙維

    ○若松委員 公明党・改革クラブを代表いたしまして、約一時間、平成十一年度税制改正に関する質問並びに、日ごろ納税者または税務の専門家、税理士とか公認会計士等から御意見を承っている点について、大蔵大臣を中心に質問をさせていただきます。  最初に、質問する前に、いよいよ三月十五日までが確定決算の期日であります。大蔵大臣にお聞きしたいのですけれども、税制というのは、簡素、中立、公平という言い方がありますけれども、やはり簡素というのが非常に重要となっております。日本税制について、そういった点からどういう認識を持っていらっしゃるのか、まずそれをお答えいただきたいのと、もう一つ宮澤大蔵大臣みずから自己申告書を書いたことがありますか、もしくは書けますか。ちょっとその点について、最初ですからゆっくりとスタートしたいと思います。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そんなに詳しく税制を私知っているわけではございませんけれども、随分いろいろなことが積み重なって難しくなっている、複雑になっていると思います。しかし、通達なんかもいろいろ整理したりして、それはわかりやすいようにする努力はしておられるのでしょうが、なかなか難しいなと思います。  申告書は、私は書いたことがあります。二度ぐらいありますけれども、このごろは公認会計士さんとか税理士さんとかに書いてもらっております。
  127. 若松謙維

    ○若松委員 意外な答弁でしたのでびっくりしましたけれども、私も昨年、年末調整ですか、あと、半年に一回の源泉徴収票、あれを書いたわけですけれども、去年は二度ほど特別減税がございまして、現場の人は大変複雑なんですね。私も一応公認会計士、税理士の資格を持っておりますけれども、いつもやっているわけではありません。それで久しぶりにやってみたら、こんな難しい作業を国会の政治家は簡単につくるのかと改めて反省もしながら、もっと簡素化に力を入れなければいけないのかな、そう思った次第でございます。  それでは、住宅取得資金の贈与に対する特例の概要というところの、今回の平成十一年度の税制についてお伺いいたします。  これは建設省と大蔵省にお伺いしたいのですけれども、今回の住宅取得資金贈与税額の特例、これが一千万から一千五百万に引き上がりましたけれども、この措置が、今不動産、なかなか流通が悪いようですけれども、この不動産取引に対してどんなプラスの影響があるのか。もし数値化できればありがたいのですけれども、建設省そして大蔵省、両省からお答えいただけますか。
  128. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今回の、住宅資金の贈与を受けた場合の特例措置でございますが、まず、今年度の改正におきましては、住宅ローン控除を大幅に拡充したというのが一つございます。同様に、この住宅ローン控除と同じように、この二年間で住宅投資を何としてでもふやしたい、そういう意味でいろいろな施策を考えたわけでございます。この住宅資金の贈与税額の特例、今まで一千万円でございました。これを一千五百万円と上げれば、これまた自己資金となって、より容易に住宅取得、住宅建設に資する、景気対策に資するのではないかと考えた次第でございます。  計数的にどの部分がどうというふうな計算はしておりませんが、全体として百三十万戸をねらっているわけでございます。
  129. 風岡典之

    ○風岡説明員 お答えをいたします。  住宅取得資金贈与の特例につきましては、ただいま御説明がありましたように、今回の措置によりまして特例計算の限度額一千五百万ということでお願いをしているところであります。  私ども、住宅金融公庫のデータで見ますと、現在、住宅資金の贈与を受けている方々、これは大半が一千万までというのが実態でございまして、今回こういった拡充措置が行われれば、一千万を超えるような贈与ということも期待できて、若年層の自己資金の拡充という意味では非常に効果があるのではないかというように思っております。  この措置のみによって住宅投資がどれだけふえるのかということについては、なかなか数字をもってお示しすることはできませんけれども、今回の税制、思い切った拡充措置、それから、私ども住宅金融公庫の融資の改善ということに伴いまして、住宅投資、今後大きく拡大できるのではないか、このように期待をしているところであります。
  130. 若松謙維

    ○若松委員 先ほど大蔵省が、今年度は百三十万戸にしたいと。一千万から一千五百万に上げて、これは何万戸ぐらい影響があるか、そういう試算みたいなものはございますか。
  131. 風岡典之

    ○風岡説明員 この措置によって戸数がどれだけふえるのかということについては、正直言って試算をしておりませんが、今申し上げましたように、全体の税制の拡充、それから融資の拡充ということで、私ども、十一年度、二十万戸ぐらいふえて、何とか百三十万戸台を確保していきたい、このように考えているところであります。
  132. 若松謙維

    ○若松委員 わかりました。二十万戸増ですね。ぜひ頑張ってください。  それでは、これは昭和五十九年から本年までですけれども、五分五乗特例、これは贈与税のいわゆる非課税枠、これをちょっと特殊変形して納税者の負担を減らしたというやり方ですけれども、今までの五分五乗特例の効果はどういうものだったか、総括するとどういうことになりますか。
  133. 風岡典之

    ○風岡説明員 先生御指摘のように、この制度、五十九年にでき上がりまして、その後数次にわたって改正をされたわけでございます。特にこの制度は、若年層の住宅資金の不足を補う、そういう意味で積極的に活用されてきておりまして、ここ数年の状況を見ましても、利用者が飛躍的にふえてきているわけでございます。  また、住宅金融公庫のマンションを購入した方々の手持ち資金がどれぐらいあるのかということについて、私ども平成九年度で調べてみますと、平均ベースでございますが、八百三十七万円という数字が出ておりまして、そういった自己資金の拡充という意味から、この制度が相当効果があったのではないかというふうに思っております。  申しわけございませんけれども、具体的にどういう数量的な効果があったのかということについてはちょっと計算が困難であるというように思っております。
  134. 若松謙維

    ○若松委員 今おっしゃった若年層、そこの自己資金の手当てには効果があった、そういうお話です。  それでは、これもやはり税理士の先生方等から要望があるのですけれども、いわゆる贈与税の基礎控除額、これは毎年六十万円という制度がありますけれども、今回五分五乗でちょっとやり方を変えておるわけです。この基礎控除六十万円というのは、昭和五十年当時と全然変わっていないんですね。これは大蔵委員会等でも何度か取り上げられましたけれども、現場の税理士の先生方からは、あの当時の物価水準と比べたら、今これは百八十万円ぐらいにすべきだ、そんな御意見もいただきました。  たしか、税理士もしくは会計士の諸団体は、恐らく倍額の、六十万から百二十万の基礎控除に増加してくれということですけれども、大蔵省のいつもの御答弁は、この六十万円というのは相続税の補完税だから変えられないんだ、そういう御説明です。そうであれば、今、昭和五十年当時の基礎控除額があるわけですから、それをベースにして、今の物価水準なり、そのくらいは増額してもいいのではないか、そう考えるのですけれども、その点についてはいかがですか。
  135. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今先生からお話がございましたように、この贈与税の基礎控除でございますが、昭和五十年に六十万円ということで定められたことはそのとおりでございます。  ただ、この数字でございますが、これは税務当局にとってもここまではやる必要はないのではないかというような、まさに少額不追求の水準でできているわけでございます。したがいまして、本来であれば、税制の趣旨からすればこういうものはないという考え方もあるのでしょうが、まさにこの少額不追求の観点から設けているということが一つでございます。  これを引き上げたらどうかということになるわけでございますが、仮に引き上げたといたしますと、例えば、何人の方の御親族がいらっしゃいましょうか、仮に五人いるとすれば、百万円であれば年間五百万ずつというようなことになるわけでございます。そういう意味では、この引き上げは継続的な相続税の負担軽減の道を広げるというようなことで、やはり贈与税が相続税の補完税ということを考えますと、この引き上げというのはなかなか難しい、まあ六十万というのはいい水準であろうというふうに考えているわけでございます。
  136. 若松謙維

    ○若松委員 その補完税というお考え方ですけれども、これは私の知っている限りでは、昭和五十年当時より相続税の申告数が現在五倍ぐらいたしかふえていると思うのです。そういうことであれば、もう相続税の補完税という考え方をおやめになって、相続税は相続税としてしっかりとした税制なりをつくって、そこできちんとした基礎控除なりをもうつくるべき時期に来ているのではないかと思いますけれども、そういった観点から、いかがですか。
  137. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今、この贈与税なり相続税をどう組み立てるかという問題かと思いますが、仮に贈与が完全に自由に行われる世界を考えますと、その場合の相続税というのはまさにゼロに近くなるわけでございまして、そういう意味では、私どものこの現在の贈与税というのは相続税の補完税である、そういう意味で贈与税の御負担をいただいているということだろうと思っております。
  138. 若松謙維

    ○若松委員 なかなか変えようとしませんね。いずれにしても、現場の納税者及び専門家は、大変これはおかしいという現場感覚の認識があります。ぜひ、大蔵省の認識の変化、それを期待して次の質問に移ります。  今回、情報通信機器の即時償却制度の創設ということで、一台の取得価格が百万未満ということで、私も昨年の本会議でパソコン減税的な主張をさせていただきました。非常に、よくやったなと率直に評価いたします。実は私は去年買ってしまいまして、早くインサイダーの情報をいただければちょっと違った動きをしたのですけれども、ことしはことしでしっかりいい物を買ってきたいと思っております。  それで、これは通産省、大蔵省にお聞きしたいのですけれども、私が去年の本会議で主張したのは、どちらかというと、会社は会社でこの百万円の即時償却制度をつくるにしても、大事なのは、自宅に会社とのリンクというかSOHOというか、そういうような自宅での取得、個人取得、これに対して何らかのパソコン減税、取得金額の一割を所得控除なり、また税額控除なり、そういった形を同時並行すれば、会社と自宅と一体となって、特にこの情報機器に対する需要が高まると思うのですけれども、どうでしょうか。それを考えるべきだと思うのですけれども、お考えください。
  139. 尾原榮夫

    尾原政府委員 お答えします。  今回の情報通信機器ですが、まさにこれからの日本、先生が今おっしゃられましたように、この情報化というのは大切な課題であるということで、設備投資の中でも百万円までのものを即時損金にするという期限を切って思い切った措置をとったわけでございます。これは対象は、やはり事業をやっているということで、法人事業者が対象になるわけでございます。  先生の今のお尋ねは、個人についてもやるべきではないかということでございます。個人、それぞれの家庭での情報化というのも重要な課題だと思っておりますが、実は、これを所得税から何らかの恩典措置をとるということになっておりますと、消費あるいは貯蓄に回される総体にやはり課税ベースを広くして課税するというのが所得税だといたしますと、特定の消費について、このパソコンの情報化というのは大切だというのはわかっておりますが、やはり所得税課税対象から外すことはいかがかな、所得税制の基本に反するのではないかというふうに思っているわけでございます。それからまた、これを個人ということになりますと、恐らく税務執行上も到底ついていけないような形にもなるのではないか。  いずれにいたしましても、個人について、今のパソコンの取得費を所得控除することは、これはなかなかとりがたいなというふうに考えているところでございます。
  140. 林良造

    ○林説明員 今先生から御指摘がございましたように、今回、パソコン等の情報機器につきまして、産業の効率化あるいは経済全体の効率化と経済構造改革といった観点から、思い切った措置をとっていただいたわけでございます。また、その結果、需要の創出も通して非常に大きな効果があるものと思っております。  個人、家庭レベルでの情報化でございますけれども、税の関係では、今、主税局長の方からお答えございましたが、家庭の情報化というものの重要性、あるいはその中でパソコン等の情報機器を使える人が広がっていくということの重要性というのは我々十分認識をしております。  ただ、現在の段階では、むしろその情報活用能力の基盤をふやすという意味で、情報リテラシーの能力の向上でありますとか教育の情報化というところに力を入れているところでございます。これは、通産省と申しますよりも政府全体として、高度情報通信社会推進本部におきまして、各省全体としてそういうことを進めているというところでございます。
  141. 若松謙維

    ○若松委員 先ほど大蔵省の方が、所得税法に反するからとおっしゃいましたけれども、正直言って、日本の基礎控除、いっぱいありますよね。かつ、今景気低迷ということで、可能な限りいろいろやっていこうということで、今回もさまざまな基礎控除がふえております。  そういう状況で、何かわかっているとおっしゃいましたよね。わかっているなら考えてもらいたいんですよね。考えていないというのがわかっているという答えだから、全然身が入っていないような答弁なんですけれども。  あわせて語学教育も、宮澤大蔵大臣も語学ということで大分売られました。では、大蔵大臣にお聞きしますけれども、日本はまさに人間、人材立国ですよね。そうすると、この語学とそして情報、インフラというんですか、これはもうかなり重要というかまさに国家の最大の資産ともいうべきものだと思うのですね。それに対して何らかの税の配慮をしても決して所得税法に違反するわけではなくて、かえってそれをやるべきではないかと思うのですけれども、大蔵大臣、どういうお考えですか。
  142. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 二人の専門家のやりとりを興味を持って伺っているのですが、私なんかちょっと伺うといい考えかなと思いますが、しかしすぐ、うちの専門家に聞けば、これは絶対だめだと、恐らく目の黒いうちはやらせない。  それはやはり、所得税というものがそういうものであるというふうにどうしても伝統的に考えられていますから、恐らく資産になるのでございましょうね、買いますと。それについてその所得税を減らすというようなことは、営業をやっているわけじゃありませんから、それはもうとてもとても、恐らく何百遍おっしゃってもこれはできそうもない話じゃないですかね。
  143. 若松謙維

    ○若松委員 ということは、総括すると、大蔵大臣は、お考えは、大臣のお立場で幾ら言ってもだめだ、そういうことですね。
  144. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 多年の経験からしまして、言ってできることと到底できないこととございますが、これはもう到底できないことの方に入ると思います。
  145. 若松謙維

    ○若松委員 わかりました。なかなかかたいですね。  せっかくこうやって法人が、今回百万円即時で、減税額三千億円でしょうけれども、GDPの押し上げが五千百億円、非常に即効性もあります。現実に今マーケットは、本体は大体持っているのですよね。大事なのは本体ではなく、アンシェラリーといいますか、付随の、でもこれは結構お金がかかりまして、そういう広がりを持って初めて情報機器を使いこなす時期に今来ているのです。  そういった観点から、もっと大蔵省は頭を、別に二百年前の所得税考え方を今語っているわけではないのです、もっと考えてもいいと思うのです。  通産省、余り大蔵省に遠慮しないで、どうですか、個人の。法人が、いきなり百万円とはある意味では異例ですよ、なぜ所得税はできないのか。ちょっとお答えください、率直な思いを。どうせ言ったって変わらないというのですから、安心して言ってください。
  146. 林良造

    ○林説明員 一つ、先ほど申し上げましたように、産業の、経済構造改革のためのという観点からの措置というのは、我々は専門家でございますから、議論させていただきました。ただ、家庭の情報化、個人レベルの情報化というのは相当広がりがある話でもございまして、税の部分につきましては残念ながら主税局長に対抗する能力を持ち合わせておりません。  ただ、先ほど申し上げましたように、流れといたしましては、まず、使える人の広がりを広げていくという意味で、教育でありますとかあるいは情報リテラシーの向上のための種々の施策を各省広くいろいろな形で進めていくというのがまず今は重要かなということで取り組んでおるというふうに承知をしております。
  147. 若松謙維

    ○若松委員 わかりました。  では、かなりぶっちゃけて言いますと、日本の少額資産の損金算入を二十万から十万にしました。これは経済界なり実務家としては反対ですよ。だけれども、諸外国から見ると、たしかイギリスなんかですと、資産は資産で経費は経費だということで、そういう基準がない国もあるわけなのですね。そういう厳しい面がある中、やはり法人税所得税、それなりの措置というのですか、その時期に応じた効果というものがもし認められるのであれば、何らかの採用をすべきだと私は思うのですよね。特にパソコンがかなり今小型化して、まさに去年から十分いいものが出てきて、ことしはそれにかわる層の厚い形の製品が一挙に出てくると思うのですね。これはぜひ引き続き検討をお願いしたいと思っております。これ以上聞きませんから、ぜひ。  ところで、大蔵大臣、済みません、また私的な質問で。  大蔵大臣の御自宅には、自分用のパソコンはお持ちですか。そして、それはインターネット対応になっていますか。
  148. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 全然ございません。
  149. 若松謙維

    ○若松委員 先ほどの答弁の背景が明確になりました。ありがとうございます。  ひとつ買ってください。せっかくあるのだから。あわせて、個人所得税の何らかの配慮も一緒にしましょうよ。一緒にこれは考えましょう。よろしくお願いいたします。  それでは、次の扶養控除制度、これは民主党さんも同じ提案をされておりますけれども、児童手当ですね。日本の場合には、基礎控除の中にいわゆる十六歳以下とかそういった特別な配慮をしておりますけれども、主要先進国は、この児童手当制度、私なりにも資料を持っておりますけれども、いわゆる所得控除方式か給付方式、これはどちらがメーンなのですか、ちょっとお答えいただけますか。
  150. 尾原榮夫

    尾原政府委員 諸外国の所得税制と児童手当との関係かと思います。  アメリカはそれぞれ人的控除がございまして、児童手当制度はございません。イギリスの場合でございますが、これはまた、所得税については、いわばどのような世帯構成であろうと本人についての控除を基本的には認める、どんな御家族がいるかは余りそれは見ない、一種の収入金課税的な考え方になっておりまして、児童手当はございます。フランスの場合には、世帯に対する配慮という意味では、N分のN乗方式になっているわけでございまして、児童手当がそれ以外にある。そういう意味では、両方考えている。ドイツは、人的控除がございますけれども、児童手当との選択制になっている。  恐らく、それぞれの税制で、それぞれの考え方をとっているということかと思います。
  151. 若松謙維

    ○若松委員 それでは日本の手当ですが、給付の方ですけれども、これは今おっしゃったような国と比べて、日本の方が多いですか、それとも少ないですか。私なりには一応資料を持っていますけれども、どういう御認識ですか。
  152. 横田吉男

    ○横田政府委員 日本の児童手当につきましては、一子、二子につきましては一月五千円、三子以降、一万円ということになっております。  諸外国を見ますと、日本円に換算いたしまして、例えばイギリスでございますと約一万円弱、ドイツで申しますと一万五千円から二万円、フランスでいきますと、これは二子以降でございますが、一万四千円なり一万八千円、スウェーデンの場合、一万一千円から二万円程度というふうなことで、区々さまざまでございます。
  153. 若松謙維

    ○若松委員 本当は厚生省に結論を出していただきたかったのですけれども。大体、聞いておわかりだと思うのですけれども、日本の児童手当は少ないわけですね。それは基礎控除があるからというところでお考えなのか、これもかなり複雑な話になりますから、簡単に比較というわけにもいかないでしょう。  私も基本的には、所得税法人税含めまして、イギリス制度というのは、所得税率も三段階ですし、控除もかなり簡素化して、こういったものにすべきだなと思っているわけですけれども、厚生省としては、この児童手当を、いわゆる所得控除方式か給付方式か、どちらがいいとお考えですか。
  154. 横田吉男

    ○横田政府委員 児童手当と扶養控除につきましては、先生御指摘のとおり、児童を有する家庭に対しまして一定の経済的効果を持つという点では類似している点があろうかと思いますけれども、児童手当制度につきましては、児童を有する家庭の生活の安定と児童の健全育成ということを目的といたしました手当を支給する福祉制度ということで、扶養控除制度につきましては、所得課税上、一定の人的控除を差し引くことによって担税力の調整を行う制度ということで、趣旨を異にしている面もあるかと思います。  諸外国につきましては、先ほども申し上げましたように、各国で、単独のところもあれば併用のところもあり、また選択制のところもございます。ドイツ等におきましては、選択制になっておりますけれども、当初は併用制ということでございまして、その後人的控除を廃止し児童手当制度だけになったわけでありますが、その後また議論があって、人的控除を復活して併用とした。現在においては選択制というようなことで、さまざまな変遷を経ております。  いずれにしましても、両制度の関係につきましては、子育て支援全体のあり方あるいは税制全体のあり方、財源構成をどうするかといった、さまざまな角度から検討する必要があると考えておりまして、一概に、どちらが優先すべきものというふうに申し述べるのはなかなか困難であるというふうに考えております。
  155. 若松謙維

    ○若松委員 恐らくドイツもこれだけ試行錯誤しているというのは、あそこもかなり少子化で今たしか悩んでいる国ではないかと思うのです。ちょっとうろ覚えで恐縮ですけれども。  そうすると、日本の少子化はまさに大変重要な問題でありまして、いわゆる二十一世紀の中ごろというかそれ以降の日本の姿を本当に大きく変えるくらいの問題があるわけで、その点を考慮して、かつ諸外国等を含めてもいわゆる児童手当が少ない面は否めないということで、今第一子、第二子五千円、そして第三子一万円というところを、その倍額を給付にしまして、そして先ほどの基礎控除、今、日本の場合にかなり高くなっておりますので、諸外国並みにするためにも、基礎控除の方を整理してすべて給付で対応しよう、こんな提案をしているわけです。  これは何度か議論されておりますけれども、私どもの党としてはそういう提案をしております。民主党さんもかなり近いような提案をしていると思いますけれども、それについて厚生省としてはどんなお考えですか。
  156. 横田吉男

    ○横田政府委員 少子化対策なり子育て支援対策といたしましては、現在、政府といたしまして四省庁でエンゼルプラン、あるいは厚生省としてこれに基づく緊急保育対策等五カ年事業というのを設けておりまして、福祉教育、雇用、住宅等さまざまな施策を総合的に推進していくという考えに立ちまして、関係省庁連携して取り組んでいるところでございます。  現在、最近における子育て、少子化を考える有識者懇談会の方からも提言がなされ、それに基づきまして、今後、国民会議なり閣僚レベルでの取り組み体制ができるということになっておりますので、厚生省といたしましては、そうした動向等も見ながら、子育てについて総合的な施策を推進してまいりたいと考えております。  御指摘の児童手当につきましては、これまでも発足以来さまざまな経緯がございまして、現在第一子支給年齢については三歳未満というような制度になっておりますが、これをさらに御指摘のような拡充を行うにつきましては相当な財源を要する。あるいは、現在の財源構成につきましても、事業主の拠出金というのがかなりのウエートを占めておりますけれども、そういった財源構成の問題もございますし、また税制を廃止するということになりますと税制上の問題も出てくるというようなことで、慎重な検討が必要であるというふうに考えております。
  157. 若松謙維

    ○若松委員 そうしますと、大蔵大臣、もしお答えいただければと思いますけれども、今の基礎控除は、それなりに所得が多い方は当然税率構造もいいわけですから、いわゆる税の基礎控除方式というのは所得が多い方はかなり利用できる。ここら辺のアンバランスというのも、いわゆる控除制度と給付制度の併用でのまた問題があると思うのです。  先ほど言いましたように、日本の少子化というのは大変深刻、重要な問題でもありますし、この際、そういう税の不平等さというものをなくして、給付という形で一本化、平等化すべきではないか、私どもの意見はそういう理解に立っているわけですけれども、そういった観点から大臣はどのようにお考えですか。
  158. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 殊にこの国会でそうでございますけれども、公明党の皆さんからいろいろな機会にそういう御主張は非常に明快にありまして、私も、そういう一貫した党の御主張を持っておられるなということを、いろいろな方からこの御質問ありますので。  それで、先ほども政府委員が申し上げたと思いますけれども、アメリカみたいに全然児童手当がない、そのかわりみんな控除でいく。イギリスはその逆でございますね。我が国は中途、半々ぐらいなことをやっておると申しますでしょうか。税の人たちは、やはり所得税というのはどうしても応能負担あるいは担税能力ということがございますから、税自身の理論として、子供を持っているあるいは扶養家族を持っているというところは、それだけのことは負担能力としてやはり控除をしなければならないという、それは確かに私は一つの理屈だなと思います。  ですから、仮に児童手当がどうあろうとと言うと言い過ぎですけれども、どうあろうと、税としてはそういう控除というものを持っていないと、殊に累進がございますから、やはり応能負担ということはしなければならぬ、こういう主張のように思われます。それももっともと思います。  児童手当に全部移してしまうとそのコストは何か二兆円とか、今千八百億円と余り大きくないんですが、そういうことでとてもそれは振りかえはならぬとかそういう議論をいろいろ私も聞いて申しておりますが、仮にしかし、先ほども、イギリス課税最低限が百万とか百何十万とかいうことは、恐らくそういう控除がないからではないかなと。それで、我が国が三百何十万のところで将来これを下げられないといって困っているときに、もし今のような問題を展開すると少しは違う展開になるかもしれないというようなことをちらっと思うことはございます。控除をやめてしまえば、それはそれだけ課税最低限が下げられますから。それは今のことじゃございません。  しかし、そういうこともあるかなと思いましたり、しかしそれは、扶養控除以外にいろいろな控除所得税にはございますから、控除をみんなやめるということではないでしょうねというような議論もあるかもしれないので、いずれにしても、一貫して大変御熱心に御主張になっておられることに気がついておりますから、それはそれなりにやはり検討させていただかなければいかぬのかなと思っております。
  159. 若松謙維

    ○若松委員 ぜひ引き続きお考えいただいて、平成十年度ベースですと、この扶養控除廃止だけで一兆二千七百億円、さらに十一年度のさまざまな手当てがありまして、それを合わせると一兆五千億円セーブできるのですね。当然プラスの要素もありますけれども。それはぜひ大決断をいただいて、少子化というところにいかに平等に対応できるかという観点から引き続き御検討を要請する次第でございます。  続きまして、次に住宅取得促進税制ですけれども、我が党は、いわゆる税額控除方式と金利の所得控除方式の選択制を言っております。——部会長に確認しました。これは、こういう制度もあってしかるべきだと思うのですけれども、これは大蔵省ですか。この選択制というものは一応検討に値する制度ではないかと思うのですけれども、いかがですか。御見解はどうですか。
  160. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今回住宅取得促進税制を大幅に拡充いたしましたが、今先生お尋ねのような利子控除制度の導入あるいはその併用制というのはとらなかったところでございます。  といいますのは、このような一つの政策税制でございますが、一体何をねらうのかということが一つございます。  それから、今のローン利子控除問題点というのは、これまでもいろいろ申し上げておるのでくどくどと申し上げませんが、今、日本の全体としての住宅政策といいますのは、どちらかといえば中堅以下といいましょうか中所得者以下の取得をどうするかという体系で出てきていると思います。所得税制の問題、理論上の問題、いろいろございますけれども、利子控除ということになりますと、そこのところが大きく損なわれはしないかということかと思います。  その他いろいろ申し上げたいことがございますが、今回、そういう意味で併用制というのは入れておりません。
  161. 若松謙維

    ○若松委員 確かに、税額控除方式の住宅取得促進税制、随分拡充いたしました。これは一応自分で計算しましたけれども、現行ですと六年間で最高百七十万円ですか。これが今度合計で五百八十七万五千円、間違っていないですよね。  それで、これは九五年ですけれども、一人当たりの日本の居住面積というのが三十一・七平米なんですね。それに対してイギリスが三十八平米、ドイツが三十九平米、フランスが三十七平米。また、アメリカから欧州へ行きますと小さな家ばかりだなと思うのですけれども、日本からヨーロッパに行くと、かなり近いなと。  とはいいながらも、こうやって統計で見ますと、まだ三割近く、二、三割ヨーロッパの方が大きいということで、少なくとも欧州並みに一人当たりの居住スペースが一致するというのは、あと少なくとも十年、二十年かかると思うのです。その間、金利控除なりそういった制度は認めるべきではないか、何らかの方法を使って認めるべきではないか。  例えば、一つの提案なんですけれども、これは建設省にお答えいただきたいのですけれども、例えば現在住んでいる家、それに対しては今の税額控除方式の促進税制でいいと思うのですけれども、例えば二つ目の家ですね。アメリカのいわゆる住宅金利控除、今までは幾らでも、ローンを借りればすべて所得控除できたということで、それが節税の道具に使われてきた。いろいろな税制改正で、持ち家、住み家プラスもう一軒という形になってきました。  少なくとも日本も、自分の住んでいる家は先ほどの税額控除、だけれどももう一軒。国立公園の中に家を建てるのは私は反対ですけれども、実際にリゾートマンションというのは結構残っているのですよね。そういったところに対して、いわゆる別荘というのですか、そういう家に対してのみこういう金利控除制度なりを設けることによって、また違った経済波及効果が生まれるのではないかと思いますけれども、建設省としてどうですか、この考え方。ぜひ後で大蔵大臣も、御感想もいただければと思います。
  162. 風岡典之

    ○風岡説明員 確かに、最近の住宅ニーズを見てみますと、例えば週末居住用の住宅とか、あるいは別荘とか、二軒目に対するニーズというのもあるわけでございます。  ただ、全体的に住宅事情、相当よくなってきてはおりますけれども、先ほど先生御指摘のように、まだまだ一人当たりの居住面積も低いということで、どこを優先的に拡充すべきか、こういうことかなというふうに思っております。  私ども、今回導入をお願いしております住宅ローン控除制度ですけれども、これは確かに、今御指摘のようなローン利子控除みたいなメリットが出るような仕組みになっているわけです。例えば、期間も非常に長い、それから限度額も大幅に、対象のローンも引き上げていただいております。それから、控除率も、借入額が多くなるに従って減税額がふえるような、そういう仕組みになっておりますので、住宅ローン利子控除制度でねらっているような効果も、今回お願いしている制度でそういったものが大いに期待できるのではないかというふうに思っております。  ただ、御指摘のように、別荘とか二軒目までやるのかどうかというところにつきましては、私どもとしては、とりあえず自己居住用をまず拡充するというところから進めるべきではないかということで、こういうような形にさせていただいているところであります。
  163. 若松謙維

    ○若松委員 大蔵大臣アメリカの経験もございますから、どうでしょうか、大臣としてのお考えは。
  164. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 なかなかいろいろ難しいことがあるらしくて、今度は、この問題については私どもの党内でも随分議論がありまして、両方やったらいいじゃないかというのもありました。  ですが、結局、衣食住という話になりますと、暮らしということになるのですが、そのために借りた金の金利が引いてもらえるようだ、それは住宅に限らぬだろうという話が、一つどうも怖い話らしいのですね。それはわからないではない、そうかなと思ったりしました。  今のセカンドハウスは、確かにアメリカは野方図なのをセカンドハウスまででとめましたが、我が国で、今まだそこまでちょっといきにくいのじゃないでしょうか。いろいろな、国民感情というのはあいまいな言葉でございますが、消費奨励でも、セカンドハウスまでちょっといきにくいなという感じがいたします。
  165. 若松謙維

    ○若松委員 そういう認識ですからしようがないと思うのですけれども、今回も商品券もやる、地域振興券ですね。さまざまな地域のイベント等もできて、その波及効果があったということで、まさにバブルのあの再来は私も当然あってはならないと思います。まさに別荘、セカンドハウスという形のニーズもかなりありましたけれども、でも、持ってはいけないことではないわけなんですね。  そういうふうに考えますと、そこでの金利控除というか、わずかなレジャーに対する税制なりの措置というのはあってしかるべきだと思います。ぜひ検討をしていただきたいと思います。お考え、変わっていないですよね、大蔵大臣。ではわかりました。それで結構です。  それでは、これも税理士の先生方がこれを何とかしてほしいという御依頼があったわけですけれども、今回の十一年度の税制改正でも、新たな事業活動促進という形で、設立後五年以内の中小法人のいわゆる前一年間の欠損金、これの繰り戻し還付措置、これが導入されました。  本来、繰り戻し還付制度というのは日本にはあるわけですけれども、これは大蔵省の税収不足ということでいわゆる凍結しております。ですから、今までもうかったけれどもこの不景気で損したといっても税金還付できない。これが、実はこういう不景気で資金繰り面で中小企業に非常に大きな負担になっているのですね。  では、諸外国はどうやったかといいますと、ちょうど英国が、八〇年代は非常によかったのですけれども、九〇年代になってちょっと景気の陰りが出てきたときに、還付制度というのは、あそこは一年が原則なんですけれども、それを九一年ごろでしたか、三年間に延ばしたのですよ。それで景気が回復して、もう一度一年に戻した。これがたしか二年前ぐらいだと思いましたけれども、そういう形でこの繰り戻し還付措置、これをぜひ本則に戻してもらいたいと思うのですけれども、これは大蔵省ですか、お考えいただけますか。
  166. 尾原榮夫

    尾原政府委員 現在、欠損金の繰り戻し還付制度につきましては、先生お話がございましたように、適用が停止されているところでございます。  実は、これは平成四年から始めているわけでございますが、一つは財政状況の話がございました。あともう一つは、バックグラウンドといたしまして、赤字法人が非常に我が国の場合多過ぎるじゃないかというようなこともあったかと思います。この点についても、法人課税政府税制調査会の小委員会でも検討がなされたところでございます。  一方において、各年各年の税金というのは確定しているんだからさかのぼってまでやる必要はないではないかという意見がありましたが、一方においては今先生がまさにおっしゃられたような意見もあったわけでございます。  いずれにいたしましても、景気対策という点から申し上げますと、今回、法人税の基本税率を大幅に下げているわけでございまして、それが本筋だろうと思います。  今先生のお尋ねの話、これも一つの問題ということを私ども認識しておりまして、いずれこの法人課税につきましても抜本的な改革というのを目指さなければいかぬと思っておりまして、そういう中でさらに議論を続けていくべき課題であるな、こう認識しているところでございます。
  167. 若松謙維

    ○若松委員 ぜひ早急に本則に戻していただけることを、全事業者というか、経営者を代弁して主張いたします。ぜひ引き続き検討してください。  それでは、この平成十一年度税制改正とはちょっと外れますけれども、日ごろさまざまな御意見をいただいている中で二、三点、時間の許す限り質問させていただきたいと思っております。  まず、これも大蔵省にお伺いしますけれども、納税者権利宣言、こういうのがカナダで実は行われました。これは何かといいますと、カナダ歳入庁、日本で言う国税庁です。ここが納税者権利宣言、英語で言うとデクラレーション・オブ・タックスペイヤー・ライツというのですか、こういうものができました。それで、その背景には、これはカナダの税制ですけれども、一九一七年ですか、ちょっと説明が長くなりますけれども、当時は所得税法が十一ページしかなかったのが今は三千ページあるそうです。それで、やはり見直そうという中で、今回三つカナダとして改正に当たって考慮した。  まず一つは、低所得者に対して、タックス・クレジット、いわゆる税金を徴収するだけじゃなくて低所得者の人に税金を逆に支給する、いわゆる歳出、給付という考え方じゃなくて、税金を支出する、こういう制度を導入いたしました。  それと二つ目が、先ほど大蔵大臣にお聞きしましたけれども、あそこの国は自主申告が原則になっておりますので、非常に申告書の様式を簡単にということで改革をした。  それで三つ目に、世界に先駆けて作成された納税者の権利宣言というのが、今紹介させていただいたものです。  それで、その内容ですけれども、これは八五年の二月です。大分前になりますけれども、こういう趣旨で行いました。税法について完全でタイムリーな情報を提供し、公平に、そして、礼儀正しく接し、秘密保持を守ってこそ、自主申告制度が成り立つ、こういう理念で、正式に、先ほどのいわゆるインランドレベニュー、カナダ歳入庁が納税者の権利宣言をみずから発表した。  そこの最初の部分を読みますと、   カナダ憲法と法律は、所得税法に関してあなた これは納税者ですね。  あなたを守る多くの権利をあなたに与えています。あなたには自分の権利について知る権利、主張する権利が与えられています。あなたは、主張を聞いてもらい、公平に取り扱ってもらう権利があります。   税務署や税務省地方事務所の職員にとって、あなたが自分の権利を行使できるよう手伝うことが重要な業務であります。   不服申し立てを公正に取り扱ってもらうということは、あなたの持つ大切な権利のひとつです。   あなたが、税務省との交渉において公正な取り扱いが受けられるということは、以下に記載されている大切な権利を保有していることを意味しています。 これをかなりくどく、納税者、あなたは大切なんですと。  ところが、日本国税庁の税務署の税務調査の現場に立ち会ったことが私は二回ほどあるんですけれども、こういう税務署の何か札みたいなのがあるんですね、札というか証明書というんですか、身分証明書みたいな。はい、こういう者です、はい、よろしくお願いします、それだけなんですよ。それで、いろいろな質問をするから、それはどういう趣旨で聞くんですかと言うと、税務署の調査の人が、いや、私たちは、すべてにおいて知る、調査する権利がありますからそれをさせてください、こういうアプローチなんですよ。ところが、国が変わると、これは反対のことを、納税者をいかに守るかというところをみずから税務署が述べている。  確かに、税務署に聞きますと、日本のいわゆる税務署の立場から、立証責任は税務署側に与えられている、だから、私たちは分が悪いからそういう対応になるんだ、かつ、現場では納税者の不満はそんなにありませんよと言うんですけれども、とんでもない誤解だと思うんですよね。  そういうことを考えますと、納税者権利宣言なり、そろそろ検討してもいい時期ではないかと思いますけれども、大蔵省、どういうお考えですか。
  168. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今先生がおっしゃられましたように、カナダで納税者憲章を制定したということで、そのように我々も承知しております。  ただ、その納税者憲章の項目、あるいは法的位置づけとしての納税者の権利、必ずしも各国さまざまなものではないかと承知しているわけでございます。OECDという先進国の集まりがございますが、納税者憲章がなくても、納税者の権利は同様に尊重されているというふうにもされているわけでございます。  我が国について申し上げますと、実は租税法律主義のもとに、それぞれ各税法に規定がございます。先ほどプライバシーというお話がございましたが、税務職員については過重な守秘義務が課されておりますし、また、当然のことながら、更正するに当たっては、青色申告であれば云々、その他それぞれの税法に規定がございまして、その趣旨は税務行政でも生かされているわけでございまして、もちろん、これからいろいろPRする必要はあろうかと思いますが、改めて納税者憲章を制定するということはどうなのかなと思っているところでございます。  それから、先生、立証責任の話をされました。これは、実は税務執行にとって大変な話でございまして、現在、我が国制度では、いわば税務署サイドがここがおかしくないですかということを証明する形になっております。ところが、カナダ等の制度では、いきなり、こうだ、おかしいならそちらで証明してみろというような法制になっておりまして、そのような点も、実はカナダの納税者憲章にも反映されているのではないかというふうに思っているところでございます。
  169. 若松謙維

    ○若松委員 いつもそこら辺になるんですよね。  ところが、諸外国で見ても、例えば、移転価格税制については税務署の方が立証責任があるとか、税制によって随分違うんですよね。ですから、一概に、日本だけが何か税務署が大きなハンディがあって、その中で税務調査を強いられているような言い方をしておりますが、それも正しくないと思うんですよ。  それで、今、とにかく納税者の不満というのがすごいんですよ。何であんな態度をされなくてはいけないのかと。まさに税金不納運動でも起きるような雰囲気ですよ。ですから、そういう状況をぜひ感じていただいて、こういった宣言というのを、例えば再度お邪魔したときに、調査するに当たって、納税者はどういう権利があるのかということを、相手もど素人ですから、そういう一枚というものを差し上げたって、それは当然のサービスじゃないんですか。そのくらいやってくれますか。
  170. 大武健一郎

    ○大武政府委員 お答えさせていただきます。  税務調査に当たって、納税者に調査理由を開示するという御質問なのかと思いますが、今、尾原主税局長答弁しましたように、日本の場合、申告額のどこに誤りがあり過少申告になっているかということを税務署サイドが挙証しなければならないという意味で、調査をして初めて明らかになるものでございますから、調査前に事前にこれを明示するというのは難しいということも御理解いただきたいと存じます。
  171. 若松謙維

    ○若松委員 いえ、そうじゃなくて、先ほど言った努力はされますかということを聞いているのです。例えば、少なくとも、そういう立証責任が税務署にあるというのはいいのですけれども、反対に、納税者としてこういう権利がありますよというのを皆様方から配ってもいいんじゃないんですか、そういうことです。  納税者というのは、ある意味でカスタマーですよね。お客さんですよ。そこに対して、納税者の権利というものがあるわけですから、何か文句があったら不服審査制度とか、そういう措置もありますよ、そういう通知も調査のたびに渡してもいいと思うのですけれども、それについてどうですか。
  172. 大武健一郎

    ○大武政府委員 先生御指摘のように、現在不服審査制度が確立しておりますので、そういう御異議がある場合にはそちらへ出していただくということは、当然、御相談がある場合にはお答えしておりますし、また、一義的には、クレームがある場合には、税務署の総務課が窓口になっておりますので、そちらの方に申し出ていただくという対応をさせていただいているところでございます。
  173. 若松謙維

    ○若松委員 そういう漠然とした話では納税者に伝わらないんですよ。だから、その場でやってもらいたいんです。では、検討してくださいね。  それで、最後になりますけれども、当然税務調査をやる背景には脱税があります。私は、個人的には脱税の日本の罰則というのは甘いと思っております。もっと厳しくやってもいいかな、それは本音で思っております。  所得の捕捉率を高めるためにも、これはぜひ大蔵大臣にお聞きしたいのですけれども、納税者番号、納番ですね。これは、長年議論していて、何でこういうことさえもできないのかなと。一方、株の課税も非常にゆがんでいますし、納税者番号と総合課税、こっちの制度改革から捕捉率を高めて、税務調査をもっとジェントルにと。そういうのがスマートだと思いませんか。どうですか、大蔵大臣。そろそろ考えましょうよ。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  174. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そろそろではなくて、これは随分長いこと議論になっているわけでございますね。  税というだけからいえば、これはもう本当にこれがありますといろいろなことができますし、場合によっては還付もうまくできるかもしれないというメリットが多いと思います。ただ、従来何年間かの議論のいきさつというものは、やはりプライバシーの問題があるとか、あるいは、ほかの類似の制度とどういう関係に立つのか、代替できるのかとか、それから、取引というものにどういう障害といいますか、その辺のコストとベネフィット、費用と効果との関係はどうかといったようなことで、なかなか議論が詰まりません。税のことだけからいえば比較的事は簡単だと思いますけれども、やはりこういうことはもう少し、もう少しといいますかかなり時間がたっているのですが、世論の成熟を待つべきではないかというふうに思います。
  175. 若松謙維

    ○若松委員 時間が来ました。まだ質問通告した項目はございますけれども、また次の機会に質問をさせていただきます。ありがとうございました。
  176. 村井仁

    村井委員長 次に、佐々木憲昭君。
  177. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。  現在、日本経済というのは、個人消費が大きく落ち込みまして先が見えない、そういう状況にあります。他方では、国も地方も財政破綻が極めて深刻でございます。まさに景気後退と財政破綻の二重の危機に見舞われているということで、これにどう対応するかというのが今問われているのだと思います。  政治の信頼というものは、国民の支持を得ることを、国民が期待することをやってこそかち取られるというふうに思います。とりわけ税というのは、国が強制的に徴収する性格を持っておりますから、納税者との信頼関係というのがないとうまくいかないと思います。  ところが、今、政治不信が非常に広がっておりまして、昨年大蔵省の不祥事を初めとして、大蔵行政に対する信頼が揺らいでいると思います。特に、最近の日債銀問題、これは大蔵省行政そのものの不信を広げるという要因になっておりまして、透明な行政と言われますけれども、正確な情報を伝えていなかったのではないか、あるいは必要なデータを明らかにしていなかったのではないか、その結果、膨大な税金がむだになったのではないか、こういう疑問が広がっております。この日債銀の問題を解明し、正さなければ、税の執行についてもやはり国民の信頼を得ることはできないと思うのです。  そこで、国税関連法案の質問に入る前に、これらの点について幾つかただしておきたいと思います。  二月五日の当大蔵委員会で我が党の矢島恒夫議員も質問をしましたけれども、大蔵省は、二年前の九七年四月一日午前、銀行十行、生損保二十二社、長信銀二行、計三十四の金融機関の役員を集めまして、日債銀に対して、支援をしてほしい、こういう要請をし、その額の各行への配分を示したということでありますが、そのとき大蔵省は、日債銀は債務超過ではない、第三分類の債権は約五千五百億円だと説明したと言われております。  監督庁にお聞きしますが、この事実は確認してよろしいでしょうか。
  178. 乾文男

    ○乾政府委員 今お尋ねの、四月一日に大蔵省が、今お話しになりました関係の金融機関にお集まりいただいて、日債銀に対する出資に対しまして協力の要請をしたというときに説明をしました数字は、日債銀から当時の大蔵省が報告を受けていた自己査定結果のうち、三分類の額が四千七百億円であると聞いている、そういう説明をしたと承知しております。
  179. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 四千七百億円だったという、これは、日債銀が自己査定の結果、そういう報告を大蔵省にし、大蔵省はそれを説明した。当時、出席した大手銀行のある役員は、審議官の言い方はまるで恫喝だったと述べたという報道もあります。  大蔵省は、関係金融機関に幾らの負担を要請したのでしょうか。その際、大蔵省はどんな条件をつけましたでしょうか。
  180. 乾文男

    ○乾政府委員 日債銀の策定されている再建計画におきまして、関係金融機関に二千百億円を要請することになっておりましたので、その二千百億円について協力要請といいますか、そういうことを言ったと承知しております。  そのときに特段の条件を言ったと私ども聞いておりません。
  181. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 二年間は売らないという条件をつけていたというお話を聞きましたが、そうではありませんでしたか。
  182. 乾文男

    ○乾政府委員 その二年間の転売制限というのは恐らく東証のルールの話だろうと思いますけれども、四月一日のときの大蔵省の説明においてそのことに言及したとは聞いておりません。
  183. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 東証のルールだということなんですが、当時、大蔵省は、増資を要請した以上、日債銀が再建可能でなければならないわけでありまして、そうでなければこれは引き受けてもらえないわけですね。金融機関も、増資に応ずるかどうか、これは六月の株主総会で承認をもらわなければならない、そういう状況にありました。そこで、その再建可能性を証明するために、九七年四月十六日から日債銀に対する大蔵検査が行われたと思います。  大蔵省は、五月中旬になりまして、第三分類が七千億円だったということを速報値あるいは中間報告として、日銀には五月十九日に、各金融機関にも五月二十日ごろに電話連絡をしたと言われておりますが、これは事実でしょうか。
  184. 乾文男

    ○乾政府委員 大蔵省の検査につきましては、検査の示達は、従来もお答えしておりますけれども、同年の九月十一日でございまして、それまでに検査の結果というものはないわけでございます。  それで、五月の十九日、二十日ごろの話といたしまして、日債銀は、途中段階でありました大蔵省検査につきまして、同行としては、今お話がありましたように、その増資要請先の金融機関に何らかの説明を求められていたという状況にあったわけでございまして、そういう状況の中で、同行として把握していた資産の状況につきまして、将来の回収に懸念があるもの、いわゆる三分類が七千億円程度であるという説明を増資先にしたというふうに認識をしております。
  185. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 きょうの報道によりますと、全銀協の岸会長は昨日記者会見で、七千億円という数字は大蔵省査定の結果として日債銀から連絡を受けた、当行の担当者が大蔵省にも確認した、このように述べておられます。ですから、これは、日債銀が勝手に七千億という数字を言ったのではなくて、大蔵省がいわば確認をした数字だったということではないんですか。
  186. 乾文男

    ○乾政府委員 ただいま申し上げましたように、当時まだ検査途上でございまして、検査結果は出ておりません。ただ、日債銀が、同行の認識として七千億円という数字を関係先に説明したことはあるようでございまして、日債銀がそのように言っているということは、例えば当時の大蔵省日本銀行との間でのやりとりとかではあったということは聞いております。
  187. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日銀と大蔵省との間のやりとりで、日債銀がそういうことを言っているねという程度の情報交換があったとおっしゃいましたけれども、その際に大蔵省は、日債銀が七千億と言っているそのことについて、それを否定しましたか。
  188. 乾文男

    ○乾政府委員 日債銀が七千億と言っていることについて否定はしていないというふうに聞いております。  今、日本銀行との間でと答えましたけれども、関係金融機関との間でもそういうことがあったようでございますけれども、そのことについても同様であったと聞いております。
  189. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 否定をしていないということですね。ですから、七千億という数字がいわば当然の常識として日銀にも関係金融機関にも行き渡っていたということだったと思います。  七月には、日銀が八百億円、三十四の各金融機関が二千百億円、合わせて二千九百億円の増資を引き受けておりますね。ところが、九月十一日に大蔵省が日債銀に提示した示達書には、第三分類は一兆一千二百十二億円、このようになっていた。実に四千二百億円も膨らんだ。これは、七千億円と比較してそれだけ膨らんだ。これは大変な膨らみ方であります。  大蔵省が否定をしなかった七千億円、これと比べてそれだけ大幅に膨らむわけでありますから、これは極めて異常な状況なんですね。なぜそういう食い違いが生まれたのか。私は、そこには大蔵省の意図的な操作があったのではないか。例えば、三塚大蔵大臣は四月に、わざわざ記者会見をしております。検査に着手した、こういう発言をしております。それから、検査が終了していない段階で日債銀の自己査定が検査結果とずれる可能性はないと発言をしております。これも異例のことですね。  九月の時点で、大蔵省は第三分類を一兆一千二百億と認識をし、日債銀は七千億と主張をしていた。大蔵省は、みずからつかんでいた一兆一千二百億円という数字を、増資に応じた日銀や他の金融機関には伝達していないわけですね、当然。ですから、日銀と他の金融機関は、当然七千億円という数字しかその段階では知らなかったということになります。日債銀は、示達を受けた後の九月十九日、日銀に対して、第三分類は七千億円だ、こう説明をしているようであります。  そうなりますと、九月の時点で、大蔵省と日債銀の間で明確な食い違いがあるわけです。日債銀は、これは大蔵省の示達を納得していないということになるんじゃありませんか。
  190. 五味廣文

    ○五味政府委員 示達をいたしましたときの第三分類の金額は、今お話のありましたとおり一兆一千億円余りでございますが、これといわゆる七千億円という金額とがどういう関係にあるかということにつきましては、そもそも七千億円という数字は、先ほど乾部長が御答弁申し上げましたように、検査途中の一時点で恐らく日債銀として把握しておられたというものであろうと思いますので、当方から、正確にこういうところが違うんだというところをなかなか申し上げられないということでございます。  ただ、あえて、推測でございますけれども申し上げますと、今、日債銀が納得していなかったというお話でございますけれども、日債銀側の主張と申しますのが、日債銀の関連会社に対する債権、これが検査結果の三分類の一兆一千億円余りの中に含まれているわけでございますけれども、この関連会社につきまして、日債銀は、これらの会社は日債銀が支援を継続する限り倒産することはなく、債権の回収は可能である、こういう理由から、そうした先に対する債権は基本的に要注意先の二分類であるということで御主張をなさっていたということでございます。  したがいまして、この部分を納得なさっていないということでその差となってあらわれていたのかなということになろうかと思います。
  191. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 関連会社に対する債権の評価、これが大きく日債銀側と大蔵省側の認識の差となってあらわれたと。  ですから、七千億という数字そのものについても、当時、資本増強に協力をするかしないかの判断の上で大変高い数字でありまして、これ自体、ちゅうちょせざるを得ないほどの金額だったわけでございます。最初は四千七百億と言っていたのが、七千億になった。ところが、大蔵省は、そうではなくて一兆円を超える数字を把握していた、そう認識していた。最初から、一兆円を超える数字を関連の日銀並びに増資を引き受けた金融機関が知っていれば、当然、そういう増資には応じないというのを結論づけるということになるのではないか。この点で私は、大蔵省の責任というのは非常に大きいと思います。  そこで、次に問題になりますのは、昨年の三月の公的資金の資本注入の際に、この日債銀がどのように審査されたかという点でございます。日債銀に対して日銀が九七年に投入したのは八百億円。政府が昨年三月に投入したのは六百億円。合わせて一千四百億円でございます。これで優先株を購入したけれども、結果として、経営破綻でその価値が事実上ゼロになった。長銀も破綻をしました。国有化されましたが、一千三百億円が紙くずになりました。この日債銀と長銀の二つの銀行だけで二千七百億円、そのうち、財政負担は一千九百億円でございます。  この数字は大変な数字で、来年度予算を見ますと、中小企業の予算、これとほぼ同じ金額でありますが、それがまさに一瞬にしてゼロになったと言っていい状況であります。私は、これは、政府の責任は非常に大きいと思うんですね。危機管理審査委員会というのはどんな審査をしたのか、これが改めて問われていると思います。  宮澤大蔵大臣はこの委員会には出席されておられませんでした。そこで、実際に出席をされていました預金保険機構松田理事長にきょうはおいでをいただいております。  審査のやり方は松田理事長が繰り返しこれまで国会の中でも答弁されておりますけれども、例えば昨年三月十一日に、石井啓一議員の質問に対しまして、審査に当たっては、例えば不良債権であれば自己査定の資料も取り寄せて、なおかつ、検査、考査をしておられる当局側の委員からも意見をいただいていろいろ審査をして、真実かどうかの判定の材料にいたして慎重にやっているわけでございます、このように答弁されていますね。  つまり、審査委員会の審査のやり方というのは、申請を出した銀行の自己査定の資料、これを取り寄せる、その資料が真実かどうか、これを判定しなければならない、どのような基準でこれを判定するか、それは、実際に検査や考査を行っている大蔵省や日銀の委員から意見を聞いてそこで判断するということだ、こういうふうに私は理解をいたしました。松田理事長は、その答弁の中で「そういう私どもの審査委員会の仕組みと、御当局の監督や考査の成果と申しますか、その仕組みが相まって健全性が保たれていく」、このように答弁をされておられます。大体このような理解でよろしいでしょうか。
  192. 松田昇

    松田参考人 大体そのようなことでございます。
  193. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 要するに、考査や検査の内容を知っている日銀それから大蔵省委員が、それを踏まえて意見を言うことによって初めて審査の健全性が保たれるというわけでございます。  そこで、松田理事長は、二月一日の予算委員会で、我が党の木島議員の日債銀の審査についての質問にこのように答えておられますね。一昨年九月に大蔵省がやった検査の結果、その資料は審査委員会の席上には出ておりませんと。  この意味を確認したいわけですけれども、九七年四月の大蔵検査の結果は、第三分類は一兆一千二百十二億円ということでありましたが、この数字が審査の段階で出ていなかったということなのでしょうか。大蔵大臣から審査に基づく説明がこの点ではありましたでしょうか、それともなかったでしょうか。
  194. 松田昇

    松田参考人 若干繰り返しになりますけれども、ごく簡単に事実関係の精査といいますか、その手順についてお話をしたいと思います。  まず、審査会としては、非常に限られた五日間という時間の中で、どのようにして申請行が出してきた計数の信憑性を判定するかということで頭を悩ませました。  そこで選びましたのが、各申請行から、資本注入をするのが十年の三月末でございますから、そのときを見込んで、もう三月の十日になっておりますのである程度の数値が出ていますから、そのときの、例えば不良債権であれば自己査定の結果を、見込み値になりますけれども、ある程度まとまっておりますから、その見込み値を出してくださいと。それをいただきました。それから、健全性確保計画の中でも、公表済みの不良債権あるいはSEC並みの不良債権、これについても、資本注入をする日にちを基準にした数値を出してくださいと。  出してもらったものをではどのように信憑性を確保していくかということで、そこで、先ほどお話がございましたように、たまたまメンバーの中に大蔵大臣、日銀総裁がおられますので、検査、考査の権限をお持ちで、かつ実績をお持ちになっている、各省庁には専門家もおられるということで、あの短い時間で、審査会の席上で一つ一つのラインシートを見て個別企業の貸出先を六人の審査委員が見るのはちょっと非効率ではないか、むしろ専門家にお任せしようというような見地から、委員長からあらかじめ大蔵大臣と日銀総裁に協力要請をいたしまして、審査基準にかかわる事実関係の正確性について、事実に誤りがないかどうか、そういうことについてあらかじめ御検討いただきたい、その結果を審査会の席上で申し述べていただきたい、こういうお願いをいたしました。  その結果、大蔵省日本銀行では、相当量の申請行のラインシートを取り寄せられまして、昼夜兼行で専門の係官がごらんになって、そこで抽出検査をして、そこで一定の成果といいますか精査の結果を得られて、その過程の中では、当然のことながら、これまでやってこられた検査とか考査とか、それから当局としてお持ちになっている情報とか、そういうものを念頭に置かれて、それで、そういう精査をした結果を審査会の席上で、各個別行ごとに大蔵大臣日本銀行総裁から個別に御意見をちょうだいしまして、事実関係の正確性について確定をした後にまた議論をいたしまして、審査基準に合うかどうか、そういうことを議論した上で資本注入を決めた、こういう経過、事実関係でございます。
  195. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日債銀の出された申請の中で不良債権がどのようになっているかということの信憑性、それを判断できるのは、今おっしゃったように、大蔵検査の結果を把握している大蔵大臣しかいないですね。つまり、日銀は考査はずっと別の時期にやっておりますので。  そうしますと、大蔵大臣がこの日債銀の不良債権の実態について、みずから把握している情報に基づきましてどのような発言をするかというのが決定的だと思うのですね。これは審査の健全性が保たれるかどうかという点での試金石になると思いますが、この日債銀についてはどのような発言をその当時されましたでしょうか。
  196. 松田昇

    松田参考人 まだ議事録の公表はやっていない段階でございますので余り立ち入ったことは申し上げられませんけれども、日債銀が申請してきました自己査定の中の問題の三分類の数値というのは、この間金融監督庁が御発表になった自己査定値、私ども見込み値と言っておりましたけれども、実際に十年三月値で出しておりますから、あの数字にほぼ近い数字を我々審査委員会に日債銀は出してまいりました。それについて日本銀行と大蔵省とでいろいろ精査をしていただいた結果はいただいたわけですが、これは日債銀に限りませんけれども、大体事実関係については特段の誤りはないという御返事であったように記憶しています。
  197. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 つまり、大蔵大臣は特段の問題がないという報告をされたようでありますね。そうしますと、昨年の日債銀破綻に関連をした大蔵検査で、第三分類が一兆三千億円でありますね。これは監督庁の検査結果であります。先ほど私が申しましたのは、一昨年の四月の段階では一兆一千二百十二億円、つまり一兆円を超えている第三分類でありますが、大蔵省はこの事実について、昨年の十一月の検査結果はもちろん出ておりませんが、しかし、一昨年の検査結果を把握しておられるわけですね。その事実に基づいて、日債銀が自己査定として出されました約六千億円、半分程度の数字しかないわけです、この第三分類。  ですから、こういう食い違いについて何の発言もなかった、大体よろしいんじゃないか、大蔵大臣がもしそういう報告をしていたら、これは極めて重大だと私は思います。  昨年九月九日、金融問題の特別委員会で私質問いたしまして、そのとき宮澤大蔵大臣は、「下の組織がきちんと資料を正確にそろえて、上部に報告をして、上部がそれを判断するということだと思います」「ちゃんとした報告がなされているかどうかということが大事なんだと思う」というふうに答弁をされました。  実際には、この日債銀の問題についてはちゃんとした報告が出ていなかったんじゃありませんか。
  198. 五味廣文

    ○五味政府委員 昨年の三月の資本注入のための審査委員会の審査の際に、大蔵大臣が審査委員会のメンバーであるということがありますので、大蔵省として審査に十分協力をする、こういう視点から、その当時、日債銀から提出をされました健全性計画、あるいは今お話がありました自己査定、さらにはその他行政としてその時点で把握をいたしました資料、そして過去の検査結果、こういったようなものに照らして大蔵省として検討をし、それを踏まえて、その正確性、適切性などについて大蔵大臣委員会に御参加になったということだというふうに聞いております。
  199. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 答弁になっていないですね。日債銀が出してきた約六千億円という自己査定の第三分類の数字、この数字が、大蔵省がつかんでいる一兆円を超える数字と余りにも大きく違っている、にもかかわらず、大蔵大臣はその点についてまともな指摘もしていない、大体いいんじゃないですかということで、税金がこれほど投入されて全部紙くずになってしまう。これは大蔵省極めて、大蔵省だけじゃないですよ、これは政府自身がこの資本注入の最終的決定者であります。閣議で決定されているわけです。そういう点で、私は、この問題は極めて重大な問題で、この国会でも引き続き予算委員会も含めてさらに追及をしていくつもりであります。  松田理事長、一応この点については質問を終わりますので、御退席いただいて結構でございます。  そこで、次に、今第二回目の資本注入の申請を受け付けようとしております。報道によりますと、再生委員会では、もっと使ってほしいということで、申請額を引き上げるようなことをやっている。最初の予定よりも上積みされて、現在六兆六千五百億円、こういう申請がなされようとしております。  私は、こういうやり方は、いわば税金を密室で分け取りするようなやり方だというふうに感じますが、再生委員会からいただいた資料によりますと、一月二十六日以後は、原則として連日開催して、資本増強について事前審査等をやっているということだそうであります。運営の基本方針というのを見せていただきましたが、「行政においても、従来型の護送船団方式と決別し、明確なルールの下で透明性を確保していくことが必要である。」このように書かれております。  事前審査の中で本当にそのことが、銀行との間でどんな折衝をやっているのか、公開性、透明性というのが確保できるのかどうか、私は非常に疑問に思いますので、今やっていることの事実について、これは再生委員会として正式に事前審査というのをやっているわけですから、再生委員会を開いてやっておられるそうですから、この議事録は当然残っているし、いずれかの日にこれは公開されるということでよろしいですね。
  200. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 議事録についてのお尋ねでございますけれども、その点だけに絞ってお答えいたします。  三年後に公表することとしております。
  201. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 三年後ということでありますが、今まさに国民の注目のもとで、国民注視の中で、毎日毎日、新聞に、どの銀行が幾ら上積みした、こういうことが書かれている。そういうことが実際には国会には何にも報告されない、三年後にどうぞごらんください、これでは本当に透明なやり方だというふうに私は思えません。この点は根本的に改めていただきたい。いかがですか。
  202. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 今先生から、直ちに公表してはというお話でございましたが、一つは、我が国金融システムへの内外の信頼回復がまだ途上にある現在、個別銀行やその取引先の経営の根幹にかかわる事項が多々含まれております議事録の公表というものが信用秩序に不測の影響を与えかねないという点。もう一つは、直ちに公表ということになりますと、委員の皆様方の自由濶達な意見表明が期待できない。そういう観点から、先ほど申した期間を定めたものでございます。
  203. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今の答弁を私は全然納得できません。そういう姿勢でやってきたから、あいまいな形で、事実関係も具体的な調査もやらずに、今までどれだけのお金がむだに使われたか、国民の税金がどれだけむだに使われているか。私たちは六十兆という枠組みそのものに反対でありますけれども、今のやり方を見ていると本当にそら恐ろしくなる、この点を指摘しておきたいと思います。  それでは次に、提案されている税制問題について入りたいと思います。  地方税も含めて九兆三千億円、過去最大だ、こういうふうに言われているわけですが、この減税は、昨年の自民党総裁選で小渕総理が六兆円を超える減税を公約し、それが七兆円に膨らんだ後、自民党税調やあるいは自民、自由両党の協議を経て、さまざまな減税措置を追加して規模が膨らまされてきたものでございます。  この中には、住宅ローン減税のように初年度にはほとんど効果のあらわれないものもあり、初年度の減税額は、国、地方を合わせますと六兆七千億円にすぎないわけであります。しかも、所得税について、九八年は四兆円の定額減税を行いましたが、九九年はこれを廃止して、最高税率を六五%から五〇%に引き下げ、これを定率減税と組み合わせるものになっております。そのために、大多数の国民にとっては増税になる。減税規模は四兆三千億円とされていますけれども、九八年に行われた二回の特別減税が打ち切られるために、実質的にはほとんど減税にならない。それどころか、高額所得者に減税の恩恵が回される結果、中低所得者には逆に増税になる。  例えば、夫婦、子供二人、片働きの四人家族の給与所得者の場合、年収七百九十四万以下の層が差し引き増税になります。増税額は所得が低いほど多くなりまして、年収五百万円の場合には九万円の増税ということでございます。つまり、七、八割のサラリーマンの納税額が前年に比べてふえるという結果になるわけであります。大蔵省もそのような試算をされております。  景気に最大限配慮しと言いながら、この消費不況のもとで大多数の国民に増税を押しつけるということになりますので、景気に最大限配慮というよりも、これは景気対策にはならないんじゃないでしょうか。逆行するんじゃありませんか。この点、大臣いかがでしょうか。
  204. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 しばしば申し上げておることですが、平成十年分の所得について定額の減税が行われました、そのことはおっしゃるとおりであります。その結果、課税最低限は四百九十一万という非常に高いところになりました。それが平成十年のことであります。  増税とおっしゃいますけれども、それは一年限りの減税でございますから、ほっておけばもとへ戻るわけです。三百六十一万円になる、それが普通でございますよね。それではいけませんから今度は定率減税をいたしたわけです。ですから、それは増税でも何でもないのです。三百六十一万円に戻る、それを今度は別の方法の減税をやったわけなのです。共産党は言葉を大変正確におっしゃいますから、増税とおっしゃらぬでくださいまし、ほっておけばもとへ戻るんですから。  しかし、おっしゃることはわかっているんですよ。問題は、しかしそれをほっておきましたら、もう一遍四百九十一万円という課税最低限をそのまま置きましたら昨年どおりの負担になりますが、それによって七百万、八百万という納税者が日本所得税の対象から外れてしまう。所得税というものは、その最底辺の方は別ですけれども、そうでない方は少しでも、累進課税で下の方は少しでも払っていただくというのが本則でございますから、七百万や八百万の人が二十一世紀に向かっていなくなったのでは、とてもこれは日本所得税はもちません、累進だってもちませんので、それで、もう一遍原則に返っていただいて、そして定率の減税をさせていただいたということでございます。  おっしゃいますように、前の年に比べたら、一人一人では今度は九万円ぐらいの負担増になった。せっかく自分はもう納税者でなくなったと思った方がなられるわけですから、それは御不満はおありだろうと思います。そのことは認めないわけではありませんけれども、しかし、それは増税の結果ではなくて、我々が恒久的に今度新しい減税のスキームをつくった結果だというふうに申し上げておきます。
  205. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 一年限りのものであった、だからもとに戻るのは当たり前、こういう説明ですが、しかし、家計の方からいいますと、前の年に比べて納税額がふえるのか減るのか、これが消費にどう結びついていくかということに関連してくるわけでございますので、これは、理屈ではおっしゃったとおりの理屈で実行されているのでしょうけれども、現実には、景気対策として効果はどうかといえば、これは前の年に比べればそれだけ税負担がふえるわけですから、ふえた分、当然支出が抑えられ、消費が減るわけでありますから、当然これは景気対策としては逆行するということになるわけですね。  私たちは、もちろん、そういう昨年一年限りのやり方、これが終わった後に、どういう体系で全国民が減税になるかという点の提案をしております。これは消費税の減税プラス所得税の下に厚いやり方の組み合わせという提案をしておりまして、そういう私たちの提案に基づいて、今やろうとしている政府のやり方についての問題点、それと景気に対して逆行するという性格について指摘をしているわけでございます。  この実質的に増税になる階層、これは消費税増税で一番打撃を受けた階層なんです。消費税の増税で、中所得層、低所得層の世帯が大変被害を受けました。消費性向がこの部分は大変高いわけでありますので、これが消費減退の大変大きな要因になったわけでございます。  この増税になる中低所得層から減税となる高額所得層に、一体総額幾らの税金が移転する計算になるのか、我々は、この点を国税庁の平成九年度分税務統計から見た民間給与の実態を使って試算しました。そうしましたら、増税となるのは約二千四百万人、減税は一千二百万人で、約九千億円が移転する計算になります。この統計に含まれない公務員、それから申告納税者の分を考えますと、移転額は約一兆円ということになるわけでして、いわば中低所得層に一兆円の増税で追い打ちをかけて、その一方、最高税率の引き下げと定率減税で高額所得者を中心に一兆三千億円の減税を行う。つまり、多数の納税者から増税でお金を吸い取って、高額所得者を中心とする減税に回す。結果としてそうなるのですね。  どう考えてもこれは景気対策とは言えないし、また、財政の持つ所得再分配機能、これも弱めることになるんじゃないかと私は思うわけです。特に、最高税率の引き下げの対象になるのは年収にして三千五百六十五万円以上のごくごく一部の高額所得者でございまして、総理は答弁で、最高税率の引き下げは国民の意欲を引き出す観点から行うんだ、最高税率の問題について申しますとこういう答弁をされました。  この六千万人近いサラリーマンのうち、最高税率五〇%が適用される階層、これは一体何人いらっしゃるか、ちょっとその数字を示していただきたいと思います。
  206. 尾原榮夫

    尾原政府委員 現行制度によります所得税の最高税率の適用者でございますが、七万人程度と見込んでおりますが、このうち、給与所得ということでございますれば、そのうち二万人程度と見込んでいるところでございます。
  207. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 二万人程度だとしますと、六千万人のサラリーマンのうち、三千人に一人でございます。  具体的に聞きますと、国家公務員は百十六万人でありますが、そのうち最高税率五〇%が適用されている人は何人いますか。
  208. 尾原榮夫

    尾原政府委員 先ほどの数字の計数の中には国家公務員も含まれると思いますが、最高税率が適用される者の推計を職業別にはしておりませんので、何とも申し上げかねるところでございます。
  209. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 そういうことも答えられないようでは、これはどうしようもないと思うのですね。  大体、我々が調べたところによりますと、衆参両院議長、総理大臣、最高裁判所長官、四人以外にはございません。そうじゃありませんか。あったら言ってください。
  210. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今詳細に承知しておりません。先生の御指摘もございますので、なお、お幾らなのかを。ただ、何人かというのはちょっと推計しかねるかなと思っております。
  211. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 四人というのはほぼ正確だと我々は確信をしております。  国民の意欲を引き出すのが最高税率の引き下げの目的である。三千人のサラリーマンに一人、その意欲を引き出す。国家公務員では三権の長の意欲を引き出す。そこに減税が集中するということを見て、増税になる七、八割の国民は一体意欲がわくのか。あなた方がやろうとしているのは景気対策ではないですよ。国民の意欲を引き出すことにもなりません。  宮澤大蔵大臣は、昨年の十二月十六日、大蔵省で連合の笹森事務局長などとお会いになったそうですけれども、新聞報道によりますと、この最高税率の引き下げについて次のように述べておられます。この時期にやるのがいいとは思わないが、総理・総裁の公約なのでやった、このように報道されています。大蔵大臣の本音は、この時期にやるのがいいとは思わないということじゃありませんか。
  212. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと違うのです。  おっしゃいますように、最高税率を引き下げる、これで消費がふえるなんて知れたものです。そのブラケットにいる人は少ないのですから。  ですから、最高税率を引き下げましたのは、そういう意味ではなくて、かねて税制調査会でも言っているし、外国に比べて日本というのは最高税率が非常に高いということは、やはり日本のためによくないし、そして、もう一つ申し上げておかなければいけませんのは、将来、抜本改正をいたしますときに、頭が下へ下がっておりますから、余りスティープな税制というものはできない。そういう意味もありまして、やはりここは下げておくことがよかろうと。  これが消費刺激になるかとか、大衆のためになるかとかいえば、そういう目的ではもともとありませんで、直さなければならないときに思い切って直してしまおう、こう思ったわけでございます。  ですから、両院議長か最高裁長官か存じませんが、その方々にいいことをしてさしあげようと別段思ったわけではございません。
  213. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 国際的に見て日本が高いというふうにおっしゃいました、六五%というのが。しかし、日本では、土地や株の売却益あるいは利子配当といった資産所得が分離されておりまして、ここの部分には低い税率が適用されております。この税制のせいで、資産所得が高い高額所得者は高い税率を免れている。これを総合課税課税しないまま最高税率を引き下げると、今回の税制では著しい金持ち減税になる。これは、本当に国民がやる気を起こすという形にはならない。多くの先進国では資産所得も入れて総合課税にしております。この点を除いて今おっしゃったようなことをやると、これはますます金持ち優遇ということになるわけでありまして、課税ベースを拡大する、総合課税にする、こういうことがないと、これは諸外国と比べてどうのこうのということにならないわけであります。ほかの国とそろえるというなら、総合課税にするということをやらないといけない。それはやるつもりがない。  ですからどうもつじつまが合わないわけで、日本の分離課税というのは、貧乏人から金持ちへの補助金だという指摘も最近の新聞でなされているわけでございます。私は、今回のこの減税の中身を見まして、消費を冷やし、景気にマイナスの影響をもたらすという上でも、また、所得再分配機能を弱体化させるという面からも、こういう方法には反対でございます。  次に、法人課税についてお聞きをしたいと思います。  昨年、政府は、法人課税の実効税率を四九・九八%から四六・三六%に引き下げました。減税総額は二兆円近くあったわけですが、課税ベースの拡大が同時に行われまして、平年ベースで約四千億円の減収、減税でありました。ところが、今回の減税案では、法人税を四〇・八七%にまで下げようとするわけでございます。  そこでお聞きしますけれども、法人税のこの減税の総額、幾らになるでしょうか。
  214. 尾原榮夫

    尾原政府委員 国の法人税の減収額でございますが、平年度ベースで申し上げまして、かつ中小軽減税率、公益法人も引き下げておりますから、これを合わせて一兆六千九百四十億円と見込んでおるところでございます。
  215. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 ことしは課税ベースの拡大がありませんので、昨年よりも減税額が極めて大きくなっております。問題はどのクラスの企業にそれが集中するかという点でありまして、当たり前のことですけれども赤字企業は減税にならない。赤字企業は企業全体の六割を占めております。四割に減税の効果が及んでいくということですね。減税になる黒字企業のうち、例えば資本金二千万円以下の中小企業は、企業の数では圧倒的で九五%を占めるわけですが、その部分に何割減税が回りますか。
  216. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今の数字をもとに資本金一億円と一億円以下と分けますと、資本金一億円以上については一・一兆円、いわゆる資本金一億円以下の中小企業分については〇・六兆円と、それぞれの現在の所得の大きさに応じた減税になっているわけでございます。
  217. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 資本金二千万円以下の中小企業の数字はございませんか。
  218. 尾原榮夫

    尾原政府委員 突然のお尋ねで、ただいま手元に持ち合わせてございません。
  219. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 大体二割台しかいかないと思うのですね。  黒字企業のうち、この資本金十億円以上の企業にどの程度の減税が何%回るでしょうか。
  220. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今の、資本金十億円以上ということで、平成九年分の会社標本調査から推計してみますと、約八千六百億円、五五%ということになるわけでございます。  ただ、委員御承知のとおり、基本的に法人税率というのは所得に対するフラット税率でございますから、税収の割合に応じてその減税額も決まってくるわけでございます。十億円以上の、今五五%と申し上げましたのは、五五%ぐらい現に法人税をいただいているということの裏返しでございます。
  221. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 そういうことは知っているわけです。ですから、今回の法人税の減税でどの部分にこれが集中するかということを見ますと、二千万円以下の中小企業の場合には二四%しかいきませんが、十億円以上の大企業には五五%、百億円以上の大企業になりますと、これは企業数では一千百三十四社でありますが、ここには四一・六%というふうに、上に厚く回るということになるわけでございます。結局、圧倒的多数の中小企業にはスズメの涙程度しかいかないということであります。これが実態でございます。  所得減税では、圧倒的多数の国民には増税だ、高額所得者に減税が集中する。法人税では大企業に減税が集中する。こうなりますと、この経済全体の土台を支えていく圧倒的多数の国民と中小企業、ここにまともな減税はいかないばかりか、国民の七割、八割には負担がふえるというまさに景気対策とは逆行する税制になってしまうわけでございます。  日銀が今月の四日に発表しました生活意識に関するアンケート調査というのが手元にございますが、それによりますと、一年前と比べて支出を減らしていると答えた人は四二%でございます。その理由として、不景気やリストラ等による収入の頭打ちや減少からという人がふえておりまして、これについて日銀では、将来不安への予防だけでなく現実の収入減に伴う対応といった色合いも濃いと分析しております。そして重要なのは、この日銀調査でも、支出をふやすための条件として何が必要か、この問いに最も多かった回答は何か、これは複数回答でありますが、消費税の引き下げ、五七%であります。  大蔵大臣は、先ほどの質疑の中でも、消費に期待するしかないというふうな発言もされましたけれども、今こそこの消費税の税率を緊急に三%に引き下げる、そして下に厚い所得減税を組み合わせ、七兆円程度の庶民減税を実施すべきだというふうに私は思います。こうしてこそすべての階層で減税になるわけでありまして、そのことが景気対策としては最も効果的だというふうに思うわけですけれども、大蔵大臣のお考えはいかがでしょうか。
  222. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでしたら、消費税はむしろゼロにしてしまったらもっといいのでしょうが、そういうわけにはいきませんでしょう、国の経済財政全体は。
  223. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 我々はゼロを目標にしておりますが、しかし、緊急の経済対策として直ちに三%に下げる、これが圧倒的多数の国民の声であり、かつまた多くの皆さんの合意が得られるそういう緊急措置だということで我々提案しているわけでございます。もちろん消費税は将来ゼロ、これが我々の目標であります。  以上で質問を終わります。
  224. 村井仁

    村井委員長 次に、横光克彦君。
  225. 横光克彦

    ○横光委員 社民党の横光克彦でございます。本当大臣、連日大変御苦労さまでございます。  きょうも、今回のこの減税法案に対しまして大変厳しい意見が出ております。私も厳しい意見をちょっと言わせていただきたいと思っております。  九九年度の税制改正の最大の目的は、この未曾有の不況をいかにして克服していくか、そしてまた、中低所得者層に顕著に見られる可処分所得の低下傾向にどのように対処していくかに私はあったと思うのですよ。ところが、この税制改正法案、これは財源の手当てもないまま個人所得課税の最高税率の大幅圧縮を強行している。これは大多数の国民の要望に私は背を向けた形になった、こう批判せざるを得ないわけでございます。  ここ十年前後、制度減税実施の主な論拠は負担累増感の解消にあったと思うのですよ。この制度減税を実施する場合、やはりやらなければならないことがある。それはやはり、現行の不公平税制をいかに是正していくか、これをやってからであれば我々も理解できるのですね。ところが、それはまだできない。要するに、不公平税制の最たるものと言えるのが利子所得に係る一律分離課税ですよ。これの解消のめどさえも立っていない。そして、もう一つの所得の適正把握に欠かすことのできないのが納税者番号制度ですよね。これの時期も明確にされない。  そういった直さなければいけないところには一切まだ手をつけない中で今回のような高額所得者優遇の恒久減税をごり押ししたということは、私たちはやはり納得がいかないという気がするのですね。これは、個人所得課税の存立基盤とも言える公正さとか公平感とかこういったものを著しく私は傷つけたと思うのですよ。  ですから、今回定率減税が同時にやられておりますが、要するに、四兆円もの減税を費やしながら、先ほどから言われております国民の八割強、大多数の方々にとっては去年に比べたら税負担が上がる、こういった仕組み、これが果たして減税案と言えるのかどうか。減税案という資格を有しているのかどうか、非常に疑問に思うわけですね。  今回のこの減税案で景気回復に大きく効果があるのだ、そういうふうに本当大臣はお思いなんでしょうか。
  226. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、定額減税をやりました結果、数百万人の納税者が一遍納税者をやることをやめられたわけです。それは十年分所得についてであります。ほっておけば、これはもう十一年分所得は三百六十一万のところへ返るわけですから、これはもう大変に大きな負担になります。それではいけませんから、やはり何かをしなければならないということで、所得税の一番の大事な部分は累進でございますから、この累進という一番大事な部分、公平感の一番大事な部分を殺さないためにはやはり定率がいい。これはおわかりいただけると思うのですが、それでいたしたわけです。  ですから、定額で平成十年分について納税者であることがなくなったのですから、それは大きな減税に違いありません、その方々には。しかし、その方々とそれより下の方々との間にはやはり累進というものがあって、幾らかでも税金を納めていただいておった、そういう方が数百万人いなくなるということは、やはり将来を考えますと、それは私はよくないことだと思いまして、それで定率ということをお願いいたしたわけです。  確かに、十年分を払わなかったのに、今度は十一年分をまた払うのかねというお気持ちのあることはそれは理解ができますけれども、しかし一遍限りであったのですから、これをずっと将来そのままやりますと申し上げておいて今度変えたのではないのでございますから、そこは御理解をいただきたいというふうに思うのです。
  227. 横光克彦

    ○横光委員 いや、今度の減税は、その目的は景気回復というところに大きなウエートがあったわけでしょう。それは今、定率ということでこういうふうな制度減税をやったというお話ですが、景気対策に果たして今回のお示しになられた減税案は効果が発揮できるかどうかということをお聞きしておるのです。
  228. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、全く減税をしなければ大変なことになりますから、やはりこれだけの減税をしたということ、それはプラスになるのじゃないのでしょうか。  もちろん、昨年と同じぐらい、全部定額でやってしまえといえば、それはもっと減らすことができますけれども、それは日本の将来を考えますと、やはりよくないことだろうというふうに判断をいたしたわけです。
  229. 横光克彦

    ○横光委員 私は、時期の問題だと思うのですね。確かにそういった制度改正は必要だと思いますが、果たしてこの時期だっただろうかという思いを非常に持っております。  これも各委員がおっしゃっておりますように、国民は今不安を持っておるわけですね。例えば、景気回復の一つの柱が公共事業であるとします。大変な積み増しをしております。これだけしたのですから、何としても景気回復の下支えをしてもらわなければなりません。いま一つが消費の拡大でございます。ところが、国民は不安を持っておる。現在の景気状況あるいは国の財政危機状況あるいは将来の社会保障、いろいろな分野で不安を持っている。  では、購買力がないかといえば、私は、一概にそうとも言えないと思うのですね。消費税の還元セールをやりました、期間を限って。大変な人たちが消費に向かった。そしてまた、東急の日本橋店が閉鎖されたときに大バーゲンセールをやった、期限を限って。これも大変な消費につながった。最終日には十六万人の人たちが押し寄せたというのですね。もちろん、限られた期限。これはしょっちゅうあるわけではありませんよ。消費税の還元といえば、経営者の体力が落ちるわけですから、そう長くはやれませんよ。日本橋の東急の閉鎖も、そうあってはならないことでありまして、珍しいことなんです。  でも、ああいう現象を見れば、国民は何かの機会、チャンスというものがあれば消費に動くということがある程度示されたのじゃなかろうか。そして、その動いた方たちの大半は、やはりいわゆる中低所得者層ではなかろうか、高額所得者層ではなくて。そういう人たちが購買に動かなければ、消費の拡大につながらない。ところが、そういう人たちが購買に動くようなマインドじゃないのですね。  この法案が示されたときに各新聞にでかでかと出たのが、今年度より増税になるということ、これは事実なんですが、打ち立てるわけでしょう。そうすると、国民は、減税案が逆に増税になるということで精神はすうっと萎縮してしまう。  そういった意味で、私は、大変景気回復に心配しておるのですね。この減税案で効果があるかどうかということを心配している。ですから、そういった意味で時期の問題ではなかったろうか、あるいは定額減税、特別減税をもう一年、景気回復するまで続けるべきではなかったであろうか、このように思うわけです。  それと同時に、今回、消費税を目的化していますね、福祉に使うということで。これは、私は大変いいことだと思うのですね。消費税を目的化する。要するに福祉財源として使う。先ほどの意見では消費税を下げろという意見もございましたが、これはなかなか難しいと思うわけですね。そういったところで、消費税の使途を限定する、そしてこの消費税の持っている逆進性を緩和する。このことが、福祉目的化する場合、必要になってくるのではなかろうかと思います。  つまり、使途が限定され、それも福祉財源に使うということ、あるいは逆進性が緩和されれば、国民の皆様方は消費税に対する理解がより深まると思うんですね。今までは、消費税というのは福祉に使うんだと言いながら、どれだけ使われたかわからない。それを、今度はこういうふうに使うんだという目的がはっきりわかれば国民は安心する。そうすると、その役割というのは、私は理解も深まる上に大きくなってくる、このように思うわけでございます。  そういった中で、我々が強く言っておりますのが、逆進性緩和のためにぜひこれは必要であろうというのが、飲食料品に係る消費税額の戻し金制度です。  消費税の逆進性というのは、やはり同じパーセントですので低所得者層には負担が重い、中でもとりわけ重いのが、私は飲食料品に係る消費税だろうと思う。要するに、高所得者はその生活を維持するために消費する分は選択できる、低所得者、中所得者層も、自分の生活に合わせて消費というのは選択できる。ただ、食料だけは、これは高額所得者だろうが低額所得者だろうが皆同じように要るわけですね、選択できないわけです。ここのところに非常に消費税の逆進性が強い。それを緩和することは、国民にとっては非常にわかりやすい、逆進性を直していく一つの道であろうと思うんですよ。  私たちが申し上げておりますのは、全世帯の飲食料品の年平均支出額が約九十二万円と算定されておる、約百万円ですね。これに現行の消費税率の五%を乗じますと五万円ぐらいになります。これを年収一千万以下の方々に世帯単位で払い戻そうという結局案なんですが、このことによって、消費税の持つ最大の欠陥を是正することができますし、低所得者層に対する逆進性も緩和することができるわけなんです。  こういった一つの案と、そして免税点の適正化あるいは益税の解消、さらにインボイス方式の導入など、こういった消費税にかかわる諸問題を改正すれば、先ほど言いましたように、私は消費税に対するアレルギーはだんだんなくなっていって、本当に必要な税財源だという国民の認識が深まると思うんです。ですから、飲食料品にかかわる税額の払戻金制度につきまして、大臣のお考えをお聞かせください。
  230. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのことは、消費税が始まりました最初から広く御議論があるところでございますし、したがって、関係者がみんな、私どもも含めまして検討しているところであるのは事実なのですが、いろいろな問題がありまして、例えば、食料品とは何かというところでもなかなか話がうまくまとまらない。あるいは、今の税率は五%でございますから、欧米のように非常に全体の税率が高いというのと違いまして、免税になりましたときに、そこまでの段階でかかった税金をどこへ持っていくか。持っていきようがないということになっていきますと、そういうわずか五%ぐらいの税金でそういうことが起こりますと、結局そのためのいろいろな工夫というものがかえってコストを高めちゃうだろうというふうに言われる方が多いのです。頭で考えますと、消費税だけ減っちゃえばもうきれいにいくようなんですけれども、実際にはなかなか動かなくて、かえって累積した税金の持っていき先がない、非課税になりますと。そういったようなことを、税率が高ければともかく、これだけ低い中でうまく処理できるかというようなことをどうも疑問にされる向きが多いんじゃないかと思います。  主税局長がおりますから、もう少し御説明いたします。
  231. 尾原榮夫

    尾原政府委員 消費税の逆進性の緩和策として戻し税をやられたらどうかという御主張でございました。  この御主張は、所得の水準に応じて飲食料品に係る消費税負担を給付する仕組みというふうに私ども承知しているわけですが、このような仕組みを講ずるためには、本人確認の話から、それから対象者の所得が果たしてどうなのか、これは、つまり納税者番号制度のような仕組みがないと現状において制度化することは困難だと実は考えているわけでございます。  また、これはそもそも論を申し上げなきゃいけないわけでございますが、消費税といいますのは、所得だけが税金をいただく尺度じゃなくて、所得から見れば消費税の負担が逆進的というのはわかりますが、新たな尺度として消費の量というのを入れようじゃないか、担税力をはかる仕組みとして消費を入れたらどうかという考え方があったように思います。  つまり、少子・高齢化という中で、社会共通の費用を全員が広く公平に分かち合うことがこれまでの税制改革の理念であったように思います。そういうときに、消費税の負担、所得から見れば逆進性の話があるということでございましょうけれども、消費から見ればまさに比例的な負担を求めているわけでございまして、そこの負担のみを取り出して補てんするというのは、広く負担してもらうという理念からいたしますと、なかなかなじまない問題ではないかなというふうに思っております。
  232. 横光克彦

    ○横光委員 私は、消費税をなくせとかそういうことを言っておるんじゃないんです。そしてまた、非課税にして、じゃ食料をどういうふうに分けるかという問題が難しい。ヨーロッパあたりではやっていますけれども、難しいわけです。ですから、そういった飲食料品に係る消費税というのは大体わかるわけですので、それに掛けたパーセントの分を、全員でなくて、要するに逆進性です、消費税の持つ逆進性を緩和するために、収入一千万以下の方々にそういった形で戻すことによって逆進性は緩和されるしという思いで言っているわけです。  難しい課題もあろうかと思いますが、ぜひこのことは、これから消費税の問題がいろいろ論議される中で避けることのできない問題だと私は思いますし、ひとつ御努力をお願いしたいと思います。  また、もう一つ、先ほどこれもお話が出ました、大変な少子・高齢化が進んでおります。高齢者の対応、もちろん大事でございます。それと同時に、少子化対策、これまたそれにまさるとも劣らない重要な問題です。これは大げさじゃなくて、二十一世紀の我が国の存亡にかかわるんじゃないかというぐらいの私は問題だと思うんです。ですから、こういった少子化対策に手間や金をかけないというようなことになれば、私は、二十一世紀の展望はなかなか開けないんじゃないかという気さえするわけでございます。  ですから、今回扶養控除あるいは特定扶養控除等の案も出されましたけれども、そういったこれまでの税という形じゃなくて、給付という形でやはり子育て支援をすべきじゃないかと思うんですね。本当に、働く人が安心して産み育てることができる環境をいかにつくっていくか、そしてそれを社会全体でどのようにバックアップしていくかという時代に来たと思うんです。そういった意味では、これまでのような少子化対策ではなかなか追いつかないだろう。  これは本当に国の将来にかかわることですし、子育て支援給付という形で、何としても義務教育を終わるまでは安心して産み育てられるという環境づくり、このことは逆にいろいろな分野で、先ほど言うプラスの効果も出てくるわけですね、消費とかいろいろな面で。そういった安心感。不安感があるから縮こまってしまう。こういったことがこれから非常に大事であろうと思うのですが、この子育て支援給付、義務教育を終わるまで国の方でいろいろな形で支援していこうではないかというお考え大臣はお持ちでしょうか。
  233. 藤井秀人

    藤井(秀)政府委員 お答え申し上げます。  少子化等の状況を踏まえまして、現在、エンゼルプラン等を中心に各種の施策の充実を図っているところでございます。  そこで、お尋ねの児童手当の拡充の問題でございますけれども、既に御議論はあったかと思いますけれども、私どもといたしましては、昭和四十七年、この制度発足以降幾たびかの改正が行われました。その結果として、現在、三歳未満の児童に対しまして給付を行うという重点化が既に行われたという経緯、それから、子育て支援策としまして、各種の調査があるわけでございますが、その調査によりますと、現金給付というよりも、むしろ保育所等の子育て支援サービス、現物給付というものの充実が優先されるべきであるという意見が相当多かったという状況にあろうかと思います。さらに、それに加えまして、仮に扶養控除等の廃止により財源を捻出いたしたといたしましても、さらに巨額な財源が必要であるということで、具体的財源の確保という非常に大きな問題があるということ等を考慮いたしますと、慎重な検討がどうしても必要ではないだろうかというように考えております。
  234. 横光克彦

    ○横光委員 今のような形での子育て支援対策では、結果的には厳しい結果につながるんじゃないか。これは各党がみんな望んでいることなんですよ。そして、財源の問題がありますが、これをやることによって、先ほど言いましたようにまず安心感が広がる。安心して子供を産み育てられる環境づくりを国がやってくれるわけですから、そのことでいろいろな波及効果が逆に出てくるということもお考えいただきたい。  最後にもう一つお聞きいたしたいと思います。  地価税の件ですが、現在、バブルのときから一段落したということで凍結をいたしております。この地価税の主な政策目的は、有効利用されているか否かを問わず、公共的性格を有する資産としての土地保有に対し一定の負担を求める、ここにあるわけですね。これは要するに、資産価格に着目できる地価税ほどあるべき課税ベースの拡大手法としてまさるものはないと私は思っているのですよ。以前はこれは七千億ぐらいあったと聞いておりますが、現在では地価が下落して一千四百億ぐらい、もっと下がっているかもしれませんが、これは大きな税収ですよね。  大蔵省は常々、法人税減税の意義を、単なる景気対策として位置づけるのではなく、国際的大競争時代に伍していけるだけの強靱な体質づくりを目指す経済構造改革のためと力説してきましたよ。この考えを具現化していくためには、土地基本法の理念に最も忠実な地価税復活、これは私は必須要件だと思うのです。景気回復の足取りが着実なものになった段階での課税ベースの拡大メニューとして、この地価税復活こそ私は最優先されるべきであると思っておりますが、大蔵大臣のお考えはいかがでしょうか。
  235. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 税金の理想的な姿は、所得と消費と資産にバランスよく課税すると言われておりますから、地価税も私はそういうものだと思います。いろいろな事情で今こういうことになっております。これはこういう状況でございますからで、いろいろ事態が、順調な経済になりまして、税制の抜本的改正というようなことになりますと、当然また議論になるべき問題だと思います。
  236. 横光克彦

    ○横光委員 どうかひとつよろしくお願いいたします。  終わります。ありがとうございました。
  237. 村井仁

    村井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十五分散会