○
小野委員 きょうは、両
大臣御臨席のもとでの
委員会で、どうかよろしくお願い申し上げたいと思います。
青少年問題審議会の
答申「「戦後」を超えて」、全文を読ませていただきましたが、
青少年問題について、表面的な事象をとらえての
議論ばかりではなくて、広く
社会全体の問題、また深くこの時代というものへの考察も含まれていて、非常に秀逸なる
答申が出されたなというような
印象でございました。
それを読ませていただいていたときに感じましたのが、陽明学の大家でございます
安岡正篤先生が「思考の三
原則」ということを言っておられるのでありますが、世の中が混乱すればするほど、変化が激しければ激しいほど、私
たちは
原理原則を大事にしなければならない、それについては
三つの点に留意すべきだということで、
一つは、目先にとらわれず長い目で見ること。
二つ目には、物事の一面だけを見ないで、多面的、全面的に観察すること。
三つ目には、
枝葉末節にこだわることなく、根本的に考察すること。特に
青少年の問題というのは、これらの
原則を当てはめながら
考えていかねばならない
テーマだなということを改めて感じさせていただいたわけであります。
そのようなことを
考えておりましたときに、もう
一つ本を思い出しました。それは、
グループ一九八四年という
グループが昭和五十九年に出した「
日本の自殺」という本で、これは当時非常に有名になった本でございますから
皆さん方ももう御存じかもしれませんが、この地球の上に多くの
文明がこれまで起こり、そして
絶頂期を迎え、いつの間にかそれが
衰亡期を迎え消えていく、これを繰り返しながら人類の歴史というものが展開されてきているわけでありますが、この諸
文明というのがいかにして起こり、いかに滅びていくかということを総合的に研究してみました結果、特にその
没落の
原因ということについて、こういうことが書かれているわけであります。
諸
文明の
没落の
原因を探り求めて、われわれの到達した結論は、あらゆる
文明が外からの攻撃によってではなく、内部からの
社会的破壊によって破滅するという
基本的命題であった。トインビーによれば、諸
文明の
没落は宿命的、決定論的なものでもなければ、天災や外敵の侵入などの災害によるものでもない。それは根本的には「魂の分裂」と「
社会の崩壊」による「自己決定能力の喪失」にこそある。
こういう
指摘をされまして、さらに、では、
文明が
没落していくときにどういう事象を呈するのか、そしてさらに、そこから教訓を引き出すとすると、どういう教訓が引き出せるのかということで、五つの視点が提起をされているわけであります。少し長文にはなりますけれども、非常に大きな教訓を提示していただけるものでありますので、ここで御紹介を申し上げておきたいと思います。
諸
文明の
没落の歴史からの第一の教訓は、
国民が狭い利己的な欲求の追求に没頭して、みずからのエゴを自制することを忘れるとき、経済
社会は自壊していく以外にないということである。消費者にせよ、勤労者にせよ、あるいはまた
政治家にせよ、経営者にせよ、利己的な衝動に押し流されることなく、自己抑制しつつ、どこかに調和点を見出そうとすることを学ばない限り、際限のないエゴは放縦と堕落に至るほかはない。
第二の教訓は、国際的にせよ、国内的にせよ、
国民がみずからのことはみずからの力で解決するという自立の精神と気概を失うとき、その国家
社会は滅亡するほかはないということである。福祉の代償の恐ろしさは正にこの点にある。
第三の歴史の教訓は、エリートが精神の貴族主義を失って大衆迎合主義に走るとき、その国は滅ぶということである。
政治家であれ、学者であれ、産業人であれ、あるいは労働
運動のリーダーであれ、およそは
指導者は
指導者たることの誇りと
責任とをもっていうべきことをいい、なすべきことをなさねばならない。たとえ、それがいかに大衆にとって耳の痛いこと、気に入らないことであったとしても、またその発言と行為ゆえに孤立することがあったとしても、エリートは勇気と自信をもって主張すべきことを主張せねばならない。
没落の歴史からの第四の教訓は、年上の世代は、いたずらに年下の世代にこびへつらってはならないということである。若い世代は、古い世代とのきびしいたたかいと切磋琢磨のなかに初めてたくましく成長していくものである。古い世代がやたらにものわかりよくなりすぎ、若者にその厚い胸を貸して鍛えてやることを忘れるとき、若者はひ弱な精神的「もやしっ子」になるほかはない。
没落の歴史からの第五の教訓は、
人間の幸福や不幸というものが、決して賃金の額や、年金の多い少ないや、物量の豊富さなどによって計れるものではないというごく当り前のことである。
人間を物欲を満たす動物と
考える限り、欲望は際限なく広がり、とどまるところを知らないであろう。
この五点の
指摘でございまして、今回出ました
答申と、この本の論じておられる主題というものを重ね合わせてみました場合に、私は、今、
日本社会というものが、
青少年を通して、
一つの
文明社会の崩壊過程に入りつつあることを示唆しているのではなかろうか、こんな
印象を実は持った次第でございます。
非常に大きな
テーマではございますが、先ほど、
青少年の問題は
政治家の
立場からということを
総務庁長官が言われましたが、
政治家の
立場から、
総務庁長官というところについておられます
太田長官の御見解、御見識をお伺いさせていただきたいと思います。