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1999-07-29 第145回国会 衆議院 青少年問題に関する特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年七月二十九日(木曜日)     午前九時十一分開議   出席委員    委員長 石田 勝之君    理事 小野 晋也君 理事 河村 建夫君    理事 岸田 文雄君 理事 佐藤 静雄君    理事 田中  甲君 理事 池坊 保子君    理事 三沢  淳君       岩永 峯一君    江渡 聡徳君       大野 松茂君    奥谷  通君       奥山 茂彦君    倉成 正和君       小坂 憲次君    小島 敏男君       佐田玄一郎君    佐藤  勉君       実川 幸夫君    下村 博文君       水野 賢一君    目片  信君       石毛えい子君    坂上 富男君       山元  勉君    太田 昭宏君       旭道山和泰君    一川 保夫君       松浪健四郎君    石井 郁子君       大森  猛君    保坂 展人君  出席国務大臣         厚生大臣    宮下 創平君  出席政府委員         警察庁生活安全         局長      小林 奉文君         警察庁刑事局長 林  則清君         総務政務次官  阿部 正俊君         法務省民事局長 細川  清君         法務省人権擁護         局長      横山 匡輝君         文部省生涯学習         局長      富岡 賢治君         文部省初等中等         教育局長    御手洗 康君         文部省教育助成         局長      矢野 重典君         厚生省児童家庭         局長      横田 吉男君  委員外出席者         総務庁青少年対         策本部次長   川口  雄君         衆議院調査局青         少年問題に関す         る特別調査室長 大久保 晄君 本日の会議に付した案件  青少年問題に関する件(児童虐待問題等)     午前九時十一分開議      ————◇—————
  2. 石田勝之

    石田委員長 これより会議を開きます。  青少年問題に関する件について調査を進めます。  本日は、児童虐待問題等について質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河村建夫君。
  3. 河村建夫

    河村(建)委員 おはようございます。自由民主党の河村建夫でございます。  きょうは早朝より、宮下厚生大臣初め政府委員の皆さん、本委員会に御出席いただきましてありがとうございます。  当委員会は、御案内のように、青少年を取り巻くいろいろな問題について真正面からこれまで取り組んできたところでございます。この問題をずっと掘り下げていく中で、日本経済繁栄、物の豊かさに反比例して、青少年を取り巻く環境の悪化ということの中で、日本社会の心の貧困といいますか、何かそういうものがだんだん浮き彫りにされてきたような感じがしておるわけであります。  中でも、きょう議題といたします児童虐待の問題、これなんかは非常に深刻な問題でありまして、また、我々がごく最近まで気がつかなかったといいますか、そこまでこの問題を深く掘り下げてこなかった、こういう反省も含めながら、この問題をどういうふうな形で解決していけばいいかということで、これは非常に多岐にわたる問題でありますから、一省庁、一委員会だけでは対応できない、そういう面ではこの特別委員会で扱うべき大きな課題であろう、こう思っておるわけでございます。  先般、一週間前にも本委員会はこの問題について参考人質疑を行いまして、実際に現場でこの問題に取り組んでおられます大阪の児童相談所の副所長さんや、直接この問題にかかわっている弁護士の方であるとかボランティア活動でやっておられる方、そういう方々の声も聞かせていただいて、有意義な話し合い、議論をしてきたわけでございます。そういうことも踏まえながら、きょうは限られた時間でありますが若干の質問をしたい、こういうふうに思います。  特に、この児童虐待の問題、直接ということになりますと、児童相談所が直接この問題を扱うということもございまして厚生省ということになるわけでございまして、きょうは、そこの責任者であります宮下厚生大臣お越しをいただいたということでございます。  この問題については、児童相談所中心にして、厚生省がその最先端に立っておられるわけでございますが、大臣といたしまして、諸所のいろいろな問題がありますが、時間もございませんし、既に厚生委員会でもこの問題はこれまで議論をされてきたところでございますから前置きはおきまして、この幼児虐待現況をどういうふうにとらえ、またこの対応についてどのように取り組もうとされておるのかということをまず大臣に率直にお聞きいたしたい、こういうふうに思います。
  4. 宮下創平

    宮下国務大臣 児童虐待の問題は、近年非常に件数が増加してきております。私ども、大変重大な問題だと受けとめさせていただいております。  全国児童相談所における虐待相談件数というのをちなみに申し上げますと、平成二年に千百一件でございましたが、平成九年には五千三百五十二件に増加しております。また、死亡事故も後を絶たない現状でございます。  ちなみに、この中身を見ますと、身体的暴行が五二%くらいで、過半数以上を占めておるということ。あるいは、主たる虐待者がだれであるかというのを見ますと、何と実の母親が五五%、二千九百件を占めておる、それから実父も二七%で、千四百件を占めておる、これだけで八二%を占めておるということも衝撃的な数字だと私は思います。児童虐待に関する現状はこのようにゆゆしき事態でございますので、児童虐待早期発見とか早期対応がぜひとも必要な領域でございます。  御案内のように、保護を要する児童等を発見した場合には、児童福祉法によりまして児童相談所等へ連絡するようになっておりますが、関係機関国民に対しまして啓発活動を実施して、その通知等を的確に行うようにしたいと思っておるのが第一でございます。  それからまた、地域における児童福祉専門機関であります児童相談所が的確にこれに取り組むことができますように、体制機能強化を図ることも重要でございまして、具体的には、平成九年の児童福祉法改正におきまして、都道府県の児童福祉審議会というものを活用することによって、児童の最善の処遇を確保するための機能強化を行っております。  それから、児童相談所長とか児童福祉司等担当官任用資格に関する法の規定を的確に運用するように指導いたしまして、職員の資質、専門性の向上に努めるということも大切なことでございまして、取り組ませていただいております。  それから、児童虐待への取り組み強化のためのマニュアルをつくる、あるいは通知整備を行ってもおります。  さらに、児童相談所との緊密な連携のもとに、身近な地域において総合的に相談支援を行う体制整備が必要でございますので、地域子育て支援センター整備等々を初めといたしまして、地域体制をきちっとつくるということも極めて重要かと存じております。  今後とも、中央省庁関係団体との連携を深めるとか、児童虐待実態把握をさらに深めて進めていくとか、児童相談所機能強化いたしますとか、今申しました地域における関係機関連携強化等を図り、そして児童虐待実態に迫って、その改善を図るべく一層努力したいと思っております。
  5. 河村建夫

    河村(建)委員 今大臣に御答弁いただきましたように、一昨年だけで五千三百五十二件あったということですね。この問題についても、各紙新聞社もいろいろな形で取り上げておるわけでありますが、五千三百五十二件というのはかなり統一された数字になっておりますが、幼児虐待によってこれが死に至った、こういう数字になりますと各紙ともまちまちでありまして、まだこの問題がいかに内にこもっていて、なかなか実態が外に出ない、家庭内の問題でもございます、そこに難しさがあるわけでございます。  さきの、全国の大学の医学部の法医学あたりが病院で死んでいく子供たち実態を調べた数字では、一番大きい数字では、虐待と思われる子供の死が一九九二年から一九九六年の五年間で三百二十八人、特にその中でも間違いなく虐待だというのは二百四十五人ある、こういう指摘があるわけでございます。  これはやはり大変な数字でありまして、最近、学校現場ではいじめで死ぬ子供もいます。自殺をする子供がいる。これが一件出ただけでも、新聞等も大きな見出しになっていく現状があるわけでございますが、この実態数字なんというのは、何か内にこもっていて出にくいのでありますが、これまた大変な数字だと思うのですね。ということは、この何倍も、場合によってはこの十倍ぐらいの事件が実はもう家庭では起きているのではないか、ということは、死に至った中にももっとあるのではないか、こう言われておるわけでございます。  今大臣の御答弁児童福祉法にのっとって、児童相談所中心として対応をいただいておるわけでございますが、かつて戦前には児童虐待防止法というのがあったわけでありますし、またアメリカでもこうした法律を持っていて的確に対応しているということが指摘をされております。  これまでの児童虐待イメージといいますか、特に戦前イメージ、この前の参考人の御説明の中にもあったのでありますが、戦前児童虐待防止法は、子供に軽わざをさせないとかこじきをさせないとか障害児を見せ物にしないとか、要するに、子供から経済的な搾取をしないというようなところにむしろ、貧しかった日本社会現象といいますか、そういうものに対して虐待という形でとらえておりまして、親が子供のしつけをするのだ、その中には少々たたくことがあってもやむを得ないではないかというふうな雰囲気で、これまでそういう風潮の中でこの虐待の問題が内にこもって扱われた。  それがだんだん明るみに出て、実態が非常に大きい問題だということがわかってきたわけでございまして、子供に暴力を振るうというのはもうしつけではないのだ、一種の大きな犯罪なのだという考え方でこの問題に取り組んでいかなければいけなくなったのではないか、こういう指摘があるわけです。  そこで、大臣児童福祉法だけでこの問題が解決できる問題なのかどうなのか。場合によっては、もっとはっきりとした児童虐待防止法的なものをもう一つ持ってきちっと対応していく、いわゆる警察との関係等も含めて、そういう必要が生まれてきているのではないかというような感じを持っておるのでありますが、要するに、児童虐待というのは犯罪であるという考え方に立って取り組んでいく必要があるのではないか、こう思いますが、その点、大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  6. 宮下創平

    宮下国務大臣 児童虐待実態は、確かに、しつけとかそういうものの領域を超えまして、両親が主体になっておるというのは先ほど数値で申し上げたとおりでございまして、これはいわば犯罪的行為に準ずるものだと思われます。殺人罪になるかどうかというようなことは具体的な事例を見ないと何とも言えませんが、児童虐待というのはそういう境界領域にあるような感じがいたします。  したがって、今委員のおっしゃられたとおり、児童福祉法の世界だけでこれを本当に根絶できるかどうかということになりますと、これはなかなか、その領域は非常に各方面にまたがって関係しておりますから、教育面とかあるいは親の問題も大きな課題でございますし、それからまた、通知義務は課してはおるものの、これが必ずしも有効に働いているかどうか疑問なしとしない点も率直に言えばあると思います。  そんなようなこと等も含めますと、私どもとしては、児童福祉法でいろいろな手だてが講じられるようになっておりますから、この手段を使って各方面に有効に働きかけて、相互連携を一層緊密にしていくということで今考えておりまして、委員の御指摘のような、さらに包括的な、何か法的な措置その他が必要かどうかについてはなお検討すべき問題だというように考えております。
  7. 河村建夫

    河村(建)委員 今大臣答弁されましたように、この問題は非常に広範にわたる問題でありますので、この委員会としても、児童福祉法をさらに超えたいわゆる総括的な児童虐待防止法的なものを考えていく必要があるのではないかということを指摘して、我々もさらに研究課題にいたしたい、こういうふうに思うわけであります。  さて、きょうは関係官庁にもお越しをいただいておりまして、青少年問題の主管庁総務庁でございます。きょうは公務で大臣出席になりませんが、この問題について総務庁はどういう考え方で臨んでいるかということもお聞きしたい。  あわせて、これは教育との兼ね合いもございますから、きょうは文部省もお見えだと思いますが、とかくこれまで文部省はこの問題について正面から取り組んでいないのではないかという指摘もあります。  さきに小中学生の親に家庭教育手帳家庭教育ノートというのも配られました。私もそれを見ましたけれども、その中に、こういうことは幼児虐待につながりますよというような指摘でもあるかなと思ったのでありますが、どうもそういうことはないわけです。ノート性格からいってそういうことはなかなか入れにくかったということもあるかもしれませんが、むしろ、文部省がそういう実態についてまだ真正面から取り組んでいないのではないかという感じもするわけですね。  私は、特に学校現場がそういうことを一番最初に察知するところだというふうに思いますから、先生研修等々においてもそういうことをやる必要があると思いますが、文部省はどういうふうに考えておられるのかどうか。  それから、さっきも申し上げましたように、幼児虐待というのは犯罪であるということからいきますと、あわせて警察対応というものが非常に必要になってくると思っております。これまで警察というのは民事不介入だ、こういうことでありましたが、そんなことを言っておれない現況がありますので、立入調査のときにつき合うとかいろいろな問題があると思います。あわせて青少年対策本部、また文部省警察現状認識対応について、もう時間がありませんから簡潔にお願いしたい、こういうふうに思います。
  8. 川口雄

    川口説明員 子供が親から虐待を受けまして、その生命、身体が危険に脅かされる、そういった状況は、次代を担う青少年の健全な育成を図るという観点からも極めて憂慮すべき問題であると認識しております。  総務庁といたしましては、広く青少年健全育成という観点に立ちまして、政府青少年行政基本方針などを定めました青少年対策推進要綱におきまして、育児、家庭教育支援策充実等重点事項として掲げるなど、関係省庁の施策の総合的な推進に努めるとともに、十一月に行われております全国青少年健全育成強調月間の実施や青少年育成国民会議への支援等を通じまして国民運動推進に努めているところでございます。
  9. 富岡賢治

    富岡政府委員 子供虐待の問題はさまざまな要因によって生じるものだと思いますけれども文部省としましては、昨年六月の中央教育審議会答申で、要因一つとして、夫婦関係の不安定、互いに理解し合い支え合う性格が欠けているということを特に指摘されているわけでございまして、この答申等を踏まえまして、今先生指摘の、全国のゼロ歳から十五歳までの子供を持つ親すべてに対しまして配っております家庭教育手帳等におきまして、特に二点を取り上げて家庭の理解を求めているわけでございます。  一つは、夫婦間が一致協力して子育てに当たることが大事だということが一つでございます。もう一つといたしまして、親が完璧主義ということにとらわれまして、非常に小さなことに対しましても非常に過敏になるという状況がある、したがいまして、そういうことが幼児虐待につながるのだというようなことを特に指摘しまして、家庭の検討、見直しというようなことをお願いしているわけでございます。  また、その家庭教育手帳はすべての親に伝わるものでございますが、そこの情報編というところで、特に非行とか虐待等の問題がありましたとき各家庭からつなげるように、各地域ごと児童相談所等電話番号を、情報等を盛り込んでおるわけでございます。  それから、各地域にございます家庭教育カウンセラーというような制度におきまして、子育てに対します親のいろいろな不安とか悩みにアドバイスを行うような制度を始めたわけでございますし、今年度から新たに、子育てに関します親の悩みや不安に答えるための二十四時間の家庭教育電話相談子育てホットラインというようなものの全国配置を三カ年で進めるというような制度を進めておるわけでございます。  それからもう一つございますけれども、これは先生指摘のように、文部省だけでできることではございません。文部省は特に関係省庁との連携ということについても留意してまいりたいということで、平成十年六月から文部省厚生省連絡協議会を設けまして、共同行動計画をつくるというようなことを策定いたしました。その中では、特に児童非行とかあるいは児童虐待等の問題につきましても、学校等関係機関児童相談所等連携を進めるというようなことについて、両省が連携して進めようということで共同計画を立てて進めておるわけでございます。今後とも、そういうことで努力してまいりたいと思っております。
  10. 矢野重典

    矢野(重)政府委員 児童虐待問題についての教員研修でございますが、私どもといたしましては、初任者研修におきましてカウンセリング研修充実を図るための予算補助平成十年度から導入いたしてございまして、そういう形でカウンセリングについての教員研修充実に努めているところでございます。  文部省といたしましては、これら教員研修等を通じ、児童虐待問題の解決に少しでも教員が寄与できるように今後とも意を用いてまいりたいと考えているところでございます。
  11. 小林奉文

    小林(奉)政府委員 警察といたしましても、児童虐待人格形成期にある児童の心身に深刻な影響を及ぼす重大な問題である、このように認識しております。  最近警察に寄せられます児童虐待に関する相談件数増加傾向にございます。また、児童虐待が大きな社会問題となっていることから、警察といたしましても、従来に増して取り組み強化してまいりたい、このように考えております。  その場合に、具体的にどうするかということでございますが、警察関係部門連携して、警察の諸活動を通じまして児童虐待事案早期発見に努めてまいりたいと考えております。その上で、犯罪に該当するものにつきましては、事件として厳正に対処していくということでございます。  また、児童相談所等に通告を行うほか、児童相談所学校等関係機関連携を図りながら、少年相談専門職員等中心となって被害児童に対する適切な保護に努めてまいりたいと思います。  いずれにいたしましても、関係機関連携を密にすることが極めて重要なことと考えておりますので、そういった連携を密にして、児童虐待防止虐待されている児童早期発見とその保護等に努めてまいりたい、このように考えております。
  12. 河村建夫

    河村(建)委員 質疑時間が参りましたのでもうそれ以上聞きませんが、今各省庁取り組み等々も伺いながら、これは、国を挙げてといいますか、地域社会全体がこういう問題に取り組んでいく。  特に、大臣の御指摘にもありましたように、一番虐待をするのは実の母親だ、こういうことでありますから、そうした虐待に至る母親の孤独、孤立といいますか、そういうものを防ぐ手だて、それは、地域全体でやっていくという姿勢。ということは、省庁連携をとり合ってやっていくネットワークづくりというのがこれから非常に必要になってくるであろうというふうに思いますので、今御答弁をいただきました各省庁取り組みについてしっかり連携を持っていただいて、国を挙げてといいますか、地域ぐるみ、その地域地域がこうした虐待を監視し、そして防ぎ、それを直していく、そういう体制づくりにさらに力を入れていただきたいということを強く要望いたしまして、質疑を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  13. 石田勝之

    石田委員長 次に、佐藤静雄君。
  14. 佐藤静雄

    佐藤(静)委員 今河村委員からも質問がありましたので、重複を避けて少しお尋ねしたいと思います。  児童虐待というのは家庭内にあるわけですね。そこで、家庭という問題についてちょっとお聞きしたいのでありますけれども平成十年の人口動態統計を見てみますと、我が国の合計特殊出生率は一・三八に下がってしまった、過去最低であると。そして、総理府がことしの七月三日に発表いたしました少子化に関する世論調査を見てみますと、三十歳代までの女性の二〇%以上が、結婚しても子供を持つべきとは思わないと答えているわけです。また、子育てがつらいと答えているのですね。子育てのつらい理由としては、女性は、自分の自由な時間が持てない、四三%ぐらいの女性が、自由な時間が持てない、だから子供を産まないと言っているのですよ。男性は、将来の教育にお金がかかる、男性の約半分がそう答えている。  もう一つ調査があるのです。国立社会保障人口問題研究所の第十一回出生動向基本調査というのが一九九七年、ちょっと古いですけれども結婚利点がないと考える二十五歳以上の男女が増加していることがわかった。特に、三十歳から三十四歳の男性は二四・六%、二十五歳から二十九歳の女性は二三・六%、これは前回の九十二年の調査よりも大幅に増加してきている。結婚利点がないと答えている。  そして最近の調査を見てみましたら、昨年の離婚件数は二十四万三千組だ、かつてないくらい離婚が多くなってきている。  要するに、社会全体の中に、家庭をつくる、家庭を持つというその幸せ感だとか、子供を持つ幸せ感、そういうことが非常に希薄になってきているということがこういう調査を見てわかる。それがまた少子化傾向につながったり、いろいろなことにつながっていっているのですよ。また、そういう考え方、嫌々ながら子供を産む、そういうことがまた虐待につながっていっているということになっているわけですね。  こういう、家庭というものに対する社会一つの希薄さに対して、政府としてどういう見解を持っているか、お教えいただきたいと思います。
  15. 宮下創平

    宮下国務大臣 御指摘のとおり、特殊出生率が、史上最低といいますか、一・三八にことしはなってございます。  少子化問題ということの視点で、政府としては、事柄が極めて重大であり、二十一世紀に極めて深刻な影響を与えるという基本的な認識のもとに、少子化対策のためのいろいろ有識者会議を総理の指示に基づきまして設置し、それを受けまして、また閣僚会議等も設置いたしました。また、少子化対策についての国民的な世論を喚起する意味で、国民会議も立ち上げるというような大枠の内閣としての姿勢で臨まさせていただいております。  そして、この問題は非常に多角的な、多面的ないろいろの要因が重なり合ってきておりまして、基本的には、男女共同参画型社会を迎えまして、女性の方の職場進出もございましょうし、それからまた、いろいろ労働慣行等の問題もございます。また、何よりも、今御指摘のような、子供を持つことについての価値観といいますか、そういう変化もございます。  この原因は、いろいろの原因があると思いますけれども、今委員のおっしゃられる家庭崩壊といいますか、家庭に魅力を感じていない、こういう価値観というか考え方が若い方々に多くなっているというのは憂慮すべきことだと思っております。  そんな意味で、これからも私どもは、少子化対策は、単に子供の数が生まれればいいというだけではなしに、男の方も女の方も一緒になって、ともに責任を共有して子育てができるような環境整備をやっていかなければいかぬということを基本に据えながら今少子化対策に取り組むつもりでございます。  本年中にいろいろの角度からの検討を総合的に集約いたしまして、少子化基本方針を定めたい、そして国民的な論議を巻き起こしていきたい、このように考えておるところでございます。
  16. 佐藤静雄

    佐藤(静)委員 今大臣からお答えをいただきました家庭の問題については、後でまたちょっとお聞きします。  幼児虐待対応するためには、一体、実態がどうなっているかという調査をしっかりしないとだめですね。そして、どこにどういう原因があってこうなるのか、そういう調査をしっかりしないとだめだと思うのですね。  それで、平成十年度に、子育て支援基金の助成を受けて、社会福祉法人である子ども虐待防止センターが実施したこういう調査がございます。非常に細かく調査をしておりまして、内容としまして、どこに原因があって、そしてどういう方策がいいのかというようなことをこれから大分読み取れるのです。ただ、これは都市部の調査なんですね、大都市だけの調査なんです。  例えば、これを見てみますと、「まとめ」のところに、先ほど、母親が非常に虐待をしているというお話がございましたけれども、一般に男の子を持った母親虐待傾向が高いとか、それから、虐待群の子供の年齢は六歳前後が非常に多いとか、それから、非常に私は驚いたのですけれども子供に障害がある、未熟児であるとか、さらにまま子、子供に病気がある、そういう子供に対しての虐待が非常に高いということがこの調査を見るとわかるのですね。  そういう子供ほど親というものはかわいく大事に、何とか補ってやりたいという、普通の親はそういうことを考えるはずなんです。ところが、そういう弱い、不幸なというか、まま子でいかなくちゃならぬとか、そういう子供をいじめる、病気の自分の子供をいじめる、大変親として失格なわけですね。  そしてまた、さらに、こういうことが起きるのは、核家族化の傾向だとか相談する人がいないということがよく言われますけれども、確かに、これを見てみますと、子育てに援助が得られない場合が多いのですね。核家族で子育てのストレスがたまってしまって、それが子供に向けられていく。  それから、最近の傾向としては、夫の職業の変化、要するに、父親がリストラで失業してしまう、父親としての役割を果たせない、そうすると母親子供に向かってしまう、そういうことが多いとまで言われているのですね。  要するに、児童虐待防止する方法として、どういう実態なのか、私は、こういう調査をやはりこの機会に全国的に行っていくべきじゃないのか。これは都市部だけの調査ですけれども、早急にこれは全国的にやってみるべきではないのか。これは、地方によってもやはり傾向が違うでしょう。私らの北海道と、また九州や沖縄とか、そういうところとまた違うでしょうし、ぜひともそういうことをやっていただきたいと思うのですけれども、いかがなものでしょうか。
  17. 横田吉男

    ○横田(吉)政府委員 先生が今御指摘になりました社会福祉法人子ども虐待防止センターの十年度の調査につきましては、私ども子育て支援基金から助成をいたしまして、首都圏の一般家庭母親五百人を対象として調査を行ったものでございます。  調査結果は、先生も御指摘になりましたように、程度の問題はございますけれども虐待傾向が認められる母親は必ずしも例外的ではない。子供が双子や未熟児の場合などに虐待の割合が高い、あるいは子育てに協力してもらえる人がいない、家事とか育児への協力を希望するグループに虐待の割合が高いというようなことで、家族形態や父親の協力状況虐待の関係はかなりの相関関係が認められております。  一応の傾向は明らかになっていると思いますけれども、今後これをどうするかということにつきまして、直ちに全国レベルの調査まで行うことは考えておりませんけれども、こうした防止センター等、今後調査をさらに拡大するという計画等があれば、その協力支援等につきまして検討してまいりたいというふうに考えております。
  18. 佐藤静雄

    佐藤(静)委員 そんな、直ちに全国的な調査をする考えがないのじゃなくて、こうやってわざわざ委員会を開いて虐待という問題をこうして言っているわけなんだから、この機会にやはり全部の調査をやるべきだ。大臣、どうですか。
  19. 宮下創平

    宮下国務大臣 事実認識を客観的に把握するということは施策の前提でございます。今委員のおっしゃられているとおり、こういう特別委員会まで設置をいたしまして、児童虐待について集中審議が行われるというようなことは国会の関心の高さを示しておると存じますし、私どもとしても、この児童虐待の問題は今後さらに拡大するのではないかと私個人も感ずるようなところがございますので、よく実態調査するために、さらに、各省庁あるいは関係行政機関の連絡を得て、何らかの形で包括的な実態調査をすべく検討させていただきます。     〔委員長退席、池坊委員長代理着席〕
  20. 佐藤静雄

    佐藤(静)委員 本当は厚生大臣が答えるべき問題じゃないと思うのですけれども、それぞれみんな、きょうはほかの大臣がいないものですから、大臣がひとつ中心になって、ぜひともひとつお願いいたしたいと思います。  そこで、先ほど大臣からお話ありました有識者会議の報告の中に、これを読んでみますと、親や親となる者に対する親としての学習機会、親になるための学習機会の充実が必要だ、文部省厚生省連携してやるべきだ、こう指摘しているのですね。  冒頭お話ししましたとおり、家庭を持つということに対する重要性というか幸せ感というか、そういうものはどうも今の学校教育の中で行われていないんじゃないのか。やはり学校教育の中において、家庭を持つ幸せ、親となる幸せ、また、親となったときの、どうやって子供に接していくのか、そういうことがやはり今の学校教育の中で行われていないような気が私はしているのですね。  例えば、今、公立の高校などにそういう家庭教育論といいますか、そういうものを取り入れないと、どうも私は、本当の家庭をつくる、また、何か親になる気持ちもないままに親になってしまうからこういうことが起きるわけでありますから、どうでしょう、文部省
  21. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 お答えいたします。  家庭のあり方あるいは親としてどう生きていくかというようなことにつきまして学校段階で考えさせていく、極めて重要なことでございます。  小学校段階におきましては、道徳の時間に、父母を敬愛する、あるいは高齢者に思いやりの心を持つといったようなことから始めまして、家庭の問題を系統的に取り上げておりますし、また、とりわけ家庭科の時間、小学校五年生から高等学校を卒業するまで全員が学習をするということになっているわけでございまして、特にその中におきましては、家庭や家族の機能、特に中学校、高等学校におきましては、子供の発達と保育に関する内容といったようなものについて教えるということにしておるわけでございます。  とりわけ高等学校におきましては、もうすぐ社会人になるといったような生徒でございますので、本年三月に告示いたしました新しい学習指導要領におきましては、子供の健全な発達を支える親の役割と保育の重要性、親の保育の責任ということにつきまして特に重視をした改善を図っているところでございます。  今後とも、各学校段階、発達段階におきまして、家庭における親の責任や義務、役割、こういったものを含めまして、家族の適切なあり方、あるいは家庭のあり方におきます正しい認識と態度を身につけさせる学習に十分努力をしてまいりたいと思っているところでございます。
  22. 佐藤静雄

    佐藤(静)委員 今御手洗局長から答弁がありましたが、もっとやはり家庭教育というもの、家庭の必要性というもの、親になる心構えというものを本当に真剣になって教育の中に入れてほしいのです。  これはイギリスの調査なんですけれども家庭崩壊児童虐待という調査があるのですけれども、今この日本においても、離婚だとか、それから結婚しなくても同棲をしているだとか、非常に多くなっているのですね。平気でそういうことをしてしまう。ところが、離婚あるいは再婚家庭子供は、六倍虐待に遭いやすい傾向にある。母子家庭、片親家庭子供は、一般の家庭に比べて十四倍虐待に遭いやすい。さらに、母親が同棲をして子供を産む、結婚して子供を産むのじゃなくて、同棲して子供を産んだ場合には三十三倍虐待を受ける傾向がある。通常の、普通の家庭を持たせるというか、若い人たちが普通の家庭を持つ、その幸せ感、必要性というのをしっかり教えないとこういう傾向になるということがはっきり出てきている。  日本ではまだ調査をしていないからよくわからないのであって、だからそういう意味で、しっかりした調査をしないとだめだということを私は先ほど申し上げたのであって、家庭教育というものを学校の中にぜひとも取り入れていただきたいし、さらにまた、全国的な調査をして、日本の傾向というものを見ながらひとつ対応の仕方をみんなで考えていくべきだ、そう思います。  時間がありません。最後に、児童福祉法の第二十五条に、保護者のない児童または保護者に監護させることが不適当と認められる児童を発見した場合には、これを福祉事務所または児童相談所に通告しなければならない、こうあるのですね。  この通告義務ということが国民にほとんど知られていないと私は思うのですよ。ですから、今こうやって児童虐待というものがこれだけ深刻な状態になってきているときに、政府としまして、こういう児童福祉法があるのだということ、そしてまた、そういう子供家庭を見たときにすぐ知らせるということをやはりもっとPRする必要があると私は思うのですね。  そうでないと、さあ発見をした、ところが対応しているうちに死んでしまったとかというのがたくさんあるんですね、統計を見てみますと。ですから、即座に知らせてもらって即座に対応していくということが必要だと思うのです。そのためにこの辺のPRをもっとしっかりとしていただきたい。そして、せっかく通告されてもそのうちに死んでしまったとか、そういうことがないようにしたいと思うのですけれども、最後に、私のこの考えに対しての御意見を聞きたいと思います。     〔池坊委員長代理退席、委員長着席〕
  23. 横田吉男

    ○横田(吉)政府委員 虐待を受けている児童を発見した場合の通告義務につきましては二十五条に定められておりますが、これにつきましては、私ども、その周知徹底を図るべく広報活動等を行っているところでございます。  市町村等に対しましても、そうした「聞こえますか?子どもからのSOS」というような広報の事例まで示してその周知徹底を図りますとともに、通知等も出しまして、一般国民に課された義務ではございますけれども、特に医師、保母、弁護士とか等につきましては、その履行が強く要請されているということでその周知徹底を図っておりますが、今後とも努力してまいりたいと考えております。
  24. 佐藤静雄

    佐藤(静)委員 終わります。
  25. 石田勝之

    石田委員長 次に、一川保夫君。
  26. 一川保夫

    ○一川委員 自由党の一川でございます。  本日話題になっております児童虐待の問題は、割と歴史の浅い分野でもあろうかと思いますし、また、考え方によっては、その実態が割と範囲が狭く感じられるわけですけれども、その要因としては相当幅広いものがあるというような感じがしまして、質問する側としては重複するような部分が割と多いわけでございます。  先ほど来のいろいろな質疑の中でも出ておりましたけれども、こういった虐待のいろいろなデータ、そういうものが物によっては非常に数が違うということもお聞きしております。特に虐待によって死亡した事例、そういうもののデータというのは、厚生省サイドとして今現在正式に発表されているのは幾つかあると思いますけれども、もう一度ここで発生件数説明していただきたいと思います。
  27. 横田吉男

    ○横田(吉)政府委員 虐待によって死亡した児童数ということでございますが、児童相談所に相談がありまして死亡した事例につきましては、九年度中に発生した件数で申しますと十五件ということでございます。  このほか、相談がないまま死亡したというケースもあろうかと思いますけれども、これにつきましてはなかなか実態が把握しにくいということでございますが、一つの報告といたしましては、先ほど御指摘いただきましたように、全国の法医学教室において解剖した子供の死亡事例から調査したものでございますが、これによりますと、四年から八年の五年間で、確実にそうだと言えるものが二百四十五件、疑いまで含めますと三百二十八件、年間大体五、六十件というような数値が出ております。  また、民間団体の、子ども虐待防止ネットワーク・あいちというところが、全国新聞等に掲載されました記事等をもとに調査したものがございます。これにつきましては、無理心中とか発作的殺人というものも含みますけれども平成十年度で百三十一件というような数字が出ております。  それから、このほかに、私ども厚生省の人口統計というものがございまして、死因統計別に十五歳未満の死亡数ということで見ますと、これは必ずしも全部虐待かどうか、加害に基づく傷害及び死亡という死因に基づくものでございますが、九年度で百十四件というような数字が出ているところでございます。
  28. 一川保夫

    ○一川委員 今ほど御説明がありましたように、死亡に至ったそういう実態にしましても、いろいろな見方によって違うかもしれませんけれども、非常に数がまちまちであるということが、この事の性格上非常につかみづらいということだろうと思います。しかし、もっとそのあたりを正確に把握された上で、なぜそういうふうに至ったかというその要因別といいますか、原因をもっともっと分析をされることが、これから未然に防止するためにも、また、そういう通告等があった場合の処理に対応する場合でも、非常に大事なことではないかというふうに思っております。  そういう面で、なぜ今日こういう虐待のケースが非常にふえてきたかということに対する要因でございますけれども、先ほど来の質疑の中で、大きく言えば、そういった経済社会全体の背景がいろいろな面で影響しているということも言えるでしょうし、狭い範囲内で言えば家庭内の問題にもなるわけでございましょう。  これはちょっと大臣にお聞きしたいのですけれども、こういった時代のいろいろな変遷と、今回の虐待の問題というのをどのように御認識されておりますか。そのあたり、ちょっと御所見をお伺いしたいと思います。
  29. 宮下創平

    宮下国務大臣 虐待件数が非常に増加しているのは先ほど御報告申し上げたとおりでございますが、その原因としては、今委員のおっしゃられるように、社会全体として考えなければならない要因、つまり日本社会が核家族化して、家族単位の構成からだんだん離れていく、あるいは個人の結婚家庭に対する価値観の変化、特に重大なのは、子育てに対する責任感のないままに結婚するなりなんなりしていくという、子育て責任の欠如というような問題もございます。  したがって、この問題は非常に社会的な、地域社会全体でチェックしていかなければなりませんし、また、児童相談所だけで完全に対応できるものでもございません。あらゆる行政機関の連携をとりながら、しかも通報義務というのは児童福祉法二十五条にございますけれども、これの周知徹底を図って、問題を顕在化させるといいますか、わからないままにやみからやみへ葬られるような形を防止していかないと、なかなかこれは防げないと思います。  そんなようないろいろな要因がございますので、一々細かなことは申し上げませんが、全体として取り組んでいくということ、それから、基本的には教育の問題が背後にあるだろうと私は思うのでございます。そんなことを含めて、総合対策がぜひ必要だというふうに考えております。
  30. 一川保夫

    ○一川委員 今大臣の方からの所見をお聞きしまして、私自身も大体同感でございます。  厚生省がこういう虐待問題の責任窓口という官庁とすれば、関係省庁というか各省に対して、こういう事態に対してしっかりと周知をしながら、やはり協力要請といいますか、各省のいろいろな施策の中で、こういうものに少しでもプラスになるような施策に対しては徹底的に前向きに取り組んでいただけるような、そういうアピールをぜひまたお願いをしたい、そのように思います。  先ほど答弁の中でちょっと出ましたけれども、これはこの前参考人が出されたのですかね、子ども虐待防止ネットワーク・あいちの資料を見ておりまして、各都道府県別の死亡の一応整理されたものが出ておりまして、これのトータルが先ほどおっしゃいました百三十一人になっているのかもしれませんけれども。要するに、大都会と称する、例えば愛知県、大阪、神奈川、埼玉、東京ですか、こういったところが非常に虐待死の数が多い。これは人口も多いですから当然こういうことになるのかもしれませんけれども。  一つのこのデータの傾向を見ておりまして、私の推測として考えられますのは、そういう大都会と地方で大分こういう問題に対するあれが違うのではないか。というのは、一つは、日常生活上、親の方もそうですし、子供さんの方もそうでございますけれども、割と自然環境に触れている、触れやすい、そういう地域で育っている皆さん方と、大都会の、非常にコンクリートの塊みたいなところで生活されている方々と、何となくやはりその精神的なものにこういうことが影響するのかな、これは私の個人的な思いでございますけれども、そういうことをちょっと感ずるわけでございます。  そういった都会と地方、どっちかといえば農村地域でございますけれども、そういう地域性と虐待という問題との相関、こういうことをどのようにお考えですか。
  31. 横田吉男

    ○横田(吉)政府委員 平成九年度の都道府県別の児童相談所における虐待の処理件数で見ますと、先生指摘のとおり、大阪とか東京、神奈川、福岡、愛知、埼玉など都市部において多くなっておりまして、一方、北海道とか東北、北陸、四国地方等につきましては件数も少ないということでございます。  人口比で見ましても、全国平均は一万人に一・七人でございますけれども、都市部、東京とか十二政令都市部を見ますと平均二・二人に対し、それ以外の都市で見ますと一・五人ということで、かなりの差があるということで、先生指摘のとおり、自然環境の問題、あるいは地域における人間関係を含めた社会環境家庭における親子関係等が大きな影響を及ぼしているのではないかというふうに考えております。
  32. 一川保夫

    ○一川委員 今ほどのお話のように、地域性からくる、若干のヒントでございますけれども虐待防止のためには、そういったいろいろな環境を整えていくという観点、できるだけ自然環境に触れさせるというような機会をつくっていくということとか、日常的ないろいろな人間関係、そういうコミュニケーションを深めていくという面では、割と地方の方では、日常生活上、隣近所を含めて地域の人たちとのおつき合いというのは相当強いものがあります。一方ではそれを煩わしいと言う方もいらっしゃるわけですけれども、そういうことが地方としての一つの特色だろうというふうに思います。  また、この夏でもそうでございますけれども、いろいろなイベント等が町内会とかいろいろな団体の主催でたくさん開催されておりますね、季節ごとに。そういうものを通じて大人と子供の世界が触れ合うとか子供同士が触れ合う、そういう中で、自分のいろいろな悩み事を相談しやすいような雰囲気をつくっていくということは、割と地方の方はそういう環境があるのではないかなという感じがいたすわけです。  そういうことをいろいろと考えますと、こういう虐待というような非常に悲しい出来事が起こっているわけですけれども、これからこういうものを防止するためにも、自然環境の問題なり、また人間関係をうまく構築していくような方向にできるだけ対策を向けていくといいますか、政府全体のいろいろな施策をそういう方向に誘導するようなことも非常に大切なことではないかなというふうに感ずるわけです。  先ほど来のいろいろな質疑を聞いておりましても、こういった児童虐待防止という観点から見れば、早期発見なり早期対応というのは、そういうことが発見された段階が一番大切なことではありますけれども、そういうことが起こらないようにするということがまた一方では最も大事なことでございまして、それにはやはり地域社会全体、医療機関なりいろいろな保育所関係なり学校等がお互いに情報交換をし合うというようなネットワークシステムをつくり上げていくという中で、できるだけ事前にそういう情報をキャッチしておくということが大変大切ではないかなというふうに思っております。  ちょっと時間の関係もございますので最後になりますけれども、これは大臣に御答弁願った方がよろしいのか、事務局がよろしいのか、あれですけれども。  現在、児童福祉法という法律に基づきましてこういった児童虐待の問題に対処いたしているというふうに聞いておりますけれども現場においては、実際のいろいろな児童虐待の発見や通告があった場合でも、親の権利とのいろいろな調整とかそういう主張に対して、虐待されている児童保護というものを臨機応変に的確になかなかできないケースが非常に多いというふうにもお聞きするわけです。  それからまた、児童福祉法の二十八条によっては、親の同意がなくても家庭裁判所の承認を得てもろもろの手続をとることができるということになっているわけでございますけれども家庭裁判所の調査等に相当時間を要するということがあって、児童相談所等の意見等がこれまた臨機応変になかなか対応しづらいというケースもあるというふうに聞いているわけです。法律的には一応物事が処理されるような手続が組まれているわけですけれども、実際の現場としては非常に対応しづらいというか歯がゆい面が出てきているというふうに聞いているわけですね。  そうした場合に、現在の法制度そのものが全くこれでいいというふうに考えておられるのか、あるいは、もう少しこのあたりを手直しした方がいいという問題意識を持っておられるのか。私は、現場のいろいろな声を聞く限りにおいては、もう少し現場の皆さん方の声を反映して、現行の法制度をもう少し手直しすべきじゃないかなという感じを受けるわけですけれども、そのあたりはいかがでしょうか。     〔委員長退席、池坊委員長代理着席〕
  33. 宮下創平

    宮下国務大臣 現行の児童福祉法に含まれておりますいろいろな諸措置につきましては、ここで詳しく申し上げる必要はございませんが、通告義務を課するとか、あるいは児童相談所職員立入調査をするとか、あるいは施設への入所措置をできるようにするとか、あるいはまた親権喪失の申し立て請求ができるというような、いろいろな規定がございます。  現行の児童福祉法で完璧かどうかということになりますと、これは御指摘のようないろいろな実態があるわけでございますので、私としては、こうした児童福祉法の精神に基づいて、各行政機関の連携、あるいは地域社会の連帯感、そういうものを養成して、運用をもっと活発に活性化していく必要があろうかと思っておりまして、なかなか今直ちに立法措置でどこをどう変えればいいか、的確であるかというようなことは、正直申しまして申し上げにくい、こういう事例だと思うのです。  基本的に、先ほど来委員がおっしゃられたような、都市部と農村部といいますか、そういうところの違いというのは、さっき局長説明されたように、やはり数字にもある程度あらわれておると思います。そんなことで、家庭地域、あるいは地域社会が、環境その他、広い意味の自然環境を含めてコミュニケーションがよく行き届いているとか、そういう風通しのいい社会といいますか、そういうものでないとなかなか顕在化しないということもございます。  そんないろいろのことが背景に原因としてございますから、それらに対応していけば、とにかく虐待防止ということに相当重点を置いて行政が取り組んでいくということが何よりも重要でございまして、今直ちに立法措置をどうしていいかということは、ちょっとこれは、ずっと検討課題ではございますけれども、申し上げにくい状況だと率直に申し上げさせていただきます。
  34. 一川保夫

    ○一川委員 今大臣の率直な気持ちをお話しされたと思いますので、今の法制度そのものも、当然どんな法制度もそうでございますけれども、完璧なものは確かにないわけでございまして、いろいろなこれからの時代の動きに合わせて、また見直すところはしっかりと見直しをかけていただきたいというふうに思っております。  私がきょう特に質問もし、お話をしたかったのは、先ほど言いましたように、人間が住んでいる環境なり人間関係そのものが、何というんですか、余り殺伐たる、一時期「東京砂漠」という歌もあったように、一種のそういう潤いのある人間の触れ合いというものが非常にこういったものを防止する、環境づくりが割と大切な問題ではないかというふうに思いますので、我々も、当然ながらいろいろな面で努力しなければならないと思います。  また、厚生省におかれましても、先ほど言いましたように関係省庁に対して、人間の心を豊かにするような施策が各省で最近キャッチフレーズとしては非常にふえているわけですけれども、そういったものが現実の施策としてしっかりと展開されるように、厚生省の方から、こういう児童虐待防止するという観点で働きかけをよろしくお願いを申し上げたいということを言いまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  35. 池坊保子

    ○池坊委員長代理 次に、田中甲君。
  36. 田中甲

    ○田中(甲)委員 民主党の田中甲です。どうぞよろしくお願いします。  この特別委員会は、与野党が一体となって、児童虐待、きょうはそのテーマでありますけれども青少年問題に関するさまざまな問題に、とにかく、現実の社会に立法府の対応がおくれてはならないという思いを持って、結束して審議を行っている委員会である、そういう認識をまず持っておりまして、ぜひきょうは、立法府としてどのように今対応しなければいけないのかということ、出席をされている全員で、傍聴の皆さん方も含めて、話をしていければと思っています。  最初に、自己反省から入りますが、厚生省のお考えですと、「育児をしない男を、父とは呼ばない。」ということだそうでありまして、私は、二十代から選挙ばかりやっておりまして、ほとんど育児は家内に任せたという状況の中で、二人の子供がおりますけれども、振り返ってみますと、ほとんど育児をしてこなかった男でありまして、多分、皆さん方から見ると、父という呼ばれ方をしない対象のものだろうというふうに思っております。  前回、参考人を呼んでお話を聞いたときに、立法府の対応ということがおくれている、国会議員の先生方にも大きな責任感じていただきたいという参考人の御意見がありました。このことも肝に銘じて、父とは呼ばれない私ではありますが、きょうは精いっぱい、大臣にもいらしていただいていますから、問題の解決に向けての具体的な法の改正や、あるいは新しい法の立法ということもお話しさせていただければと思っています。  どちらかといいますと、アジアは、個人主義の進んでいる欧米とは違って、家族の結束、連帯感ということが強い、家庭内暴力も少ないというような、そんな推理もされていた時期があったやに聞いています。しかし、どうも最近の調査を見てみますと、それは全くの誤りであるという新たな認識を持つ中、少し古い話ですが、「菊と刀」という著書を書かれた社会学者のベネディクト氏が、恥の文化と日本指摘していたように、どうも自分たちの恥というものを外部に出さないということが日本はかなり強かったのだろう、そして今もそれが継続しているのではないか、そんな認識を持つようになっています。  潜在化している、表面になかなか出てこない、解決困難な児童虐待の問題ということをいかに明らかにして、どのように子供たちの命を救っていくかということが私たちの命題であろうかと思います。  そこで最初に、児童福祉法の改正という点で、厚生省さんに対して御質問させていただきたいと思っています。  最近、毎日新聞で随分と連載に力を入れておりまして、「殺さないで」という特集で、三カ月前に左足の骨折で入院した二歳の男の子がまた運ばれてきたときには、今度は意識不明といいますか、昏睡状態のまま救急車で運ばれてきた。虐待に気づいた医師が保健所に通知し、毅然とした態度で親に、児童虐待です、子供保護しますという告知をしたため、二歳の命は救われたという記事が載っておりました。  逆に、同じ新聞の特集記事でありますけれども母親虐待で肩の骨がねじれ折れた生後三カ月の男の子ですが、親から、もう一度チャンスを下さいと言われて、医師が家庭に戻したところ、四カ月後には頭蓋内出血で男の子は虐待死をしたという話も載っておりました。  この命を守るという点において、児童虐待早期発見の重要性ということと、それから、通告義務が現在の児童福祉法の中で徹底しているのかどうかということをもう一度見詰め直していく、確認をしておく必要があろうかと思います。  委員の皆さん方にくどくど申し上げることは逆に失礼かもしれませんが、これは児童福祉法の二十五条でありまして、国民全体に通告の義務を課しているわけでありますけれども、これは罰則もなく、国民全体に課すということで逆に実効性がない。これは私の意見ではありませんで、裁判官をやられ、現在は弁護士さんであります、参考人でいらしていただきました平湯参考人がそのように言い切って、断言をされていたのであります。  この通告をしない例が非常に多い。それが結果的に命取りになっているということを考える場合に、日本児童福祉法に、今よりも通告義務というものを専門家に、もちろん対象を限定してそこに課していく、違反した者に罰則を科す。たとえ間違って虐待の事実がなかったとしても、通告を受けて、それを調べていく中でなかったとしても、それは訴訟の対象にならないなど、免責する規定を加える、こういう細やかな児童福祉法の法改正というものが私は必要になってきているというふうに考えます。  随分細部にわたるところまで指摘をしての御質問で恐縮でありますが、大臣、いかがお考えでしょうか。
  37. 宮下創平

    宮下国務大臣 児童福祉法二十五条の規定によりまして、児童相談所等への通告を関係機関及び国民にお願いをするという法体系になっております。  したがって、私どもとしては、今痛ましい事件委員がおっしゃられましたが、こういう事案は、一義的には国民一般の通報義務ではございますけれども、やはり保母とか民生委員だとかあるいは児童委員等々、あるいは医師、児童福祉に関係の深い職にある者に強くその履行が求められているとも存じます。そういう方々への周知徹底はまず第一義的に行わなければならないと存じます。  そして同時に、国民一般もこの通告義務についてさらに認識を深めていくということが必要でございまして、必ずしもこれが徹底を期しておられるかどうかは私も自信は多少ございませんけれども、さらにさらに努力していかなければいかぬと思っています。  ただ、通告義務に罰則を設ける点につきましては、日常生活とかあるいは業務の中で知り得た事実を行政機関に通告しなかったということを犯罪として処罰の対象とするということになりますと、なかなか、その構成要件その他難しい問題があって、社会的な同意が得られるかどうかなという点があります。  それから、同時に、刑法の暴行罪とか傷害罪等に当たらないような、すれすれのような広範囲の虐待というのが事実存在しておるわけで、親権の行使との関係で区別が非常に困難な事例もあるのではないかと思われますし、それから、処罰の対象となる通告の不作為ですね、やらなかったことに対する不作為を立証する、あんたはこれを通告しなかったではないかという立証が、罰則ということになりますと、これはかなり困難な問題等もあるのではないかと容易に想像されます。  したがって、厚生省としては今引き続き、児童相談所等に対する通告についてはさらに周知徹底を図るということで、国民に対する啓蒙開発運動を進めるということで対応していきたいと考えておりまして、今直ちに立法措置でやることは大変難しい問題があるなと、御指摘ではございますが、そんな感じを率直に述べさせていただきます。
  38. 田中甲

    ○田中(甲)委員 余り積極的な御答弁はいただけなかったと受けとめております。  一九九五年の全米児童虐待・遺棄データシステムが全米各州の児童保護局に報告された児童虐待の集計によりますと、アメリカでは三百万件という通告があった。認定されたものはそのうちの百万件に上るという、これだけの数が挙げられて、報告として出されています。こうした実態を見てまいりますと、医師などの通告義務を課す児童虐待通告法なるものが法整備として進んでいるという背景がございます。  ですから、一概に運用で対応するとか周知徹底を図るということだけではなくて、やはり検討をしながら新しい法整備を進めていくということを厚生省では進めていただきたいと、改めて私は要望させていただきます。  これはそれほど法文的に難しいものではありません。児童福祉法にしても、後ほど質問させていただきますが、民法にしてもそうです、刑法にしてもそうですが、なかなかいじりたがらないというところがやはり私はあるように思いましたね。命を守ることと法改正をちゅうちょするということとどちらが重要視されなければいけないかということを考えますと、やはり命を守ることなんだろうと思います。私は、突き詰めて言うならば、政治というのは命を守ることというふうにも思っておりまして、ぜひとも厚生省には積極的な法改正の姿勢というものを持っていただきたいとお願いを申し上げます。  議員がただこんな生意気に質問をするだけではなくて、私も議員立法ということで準備をしてみたいと思います。ぜひ、またそれを見ていただいても結構ですし、その前に、厚生省さんの方でも検討して、こういう改正がいかがだろうかということをこの委員会に、せっかくの特別委員会で、青少年問題を扱っている委員会ですから、ここにかけていただいて、私たちに議論を交わしていく機会というものを与えていただきたい、そのようにも思っております。  後ろの方で苦虫をかみつぶしたような顔で聞いていらっしゃいますが、こういうことを申し上げました。議員立法で用意をしますので、そのときに厚生省さんも慌てないように、しっかりと対応しておいてくださいという点を申し上げます。  内容はかわります。  予算の点で厚生省さんに質問をさせていただきますが、今年度から初めて児童虐待対策費としてつけられている金額が二億七千万円、間違いないと思うのですけれども。これは、いろいろ資料を見ていきますと、岩手県の児童相談所、三カ所ございますけれども、その半年分の予算でしかないのですね。  先ほど、ポスターを作成したときのその例を挙げましたけれども、あれは五億円かかっているとも聞いておるのですけれども厚生省が掲げた今年度の児童虐待対策費が二億七千万円という金額、これはやはり、これだけ問題視されている児童虐待に対して、余りにもお粗末と言わなければいけないのだろうと思います。  厚生省調査によれば、虐待の通報を受けても迅速に対応できない児童相談所児童虐待多発の状況下で三割にも上り、このような中で、申しわけございません、これは新聞の調査でしかないのですけれども、都道府県と政令指定都市の六割が児童相談所の予算を削減しているという実態が伝わっています。また、児童相談所の定員が削減された県もあるということでありますけれども、これは問題をお感じになりませんか。大臣、お願いします。
  39. 宮下創平

    宮下国務大臣 児童福祉法の趣旨に従って、児童相談所等中心にこうした問題に取り組んでおるわけでございますが、財政がいかに困難とはいえ、こうした問題が委員の御指摘のように削減対象であるとすれば、私どもよく実態調査いたしまして、こうした予算こそやはりきちっとすべきだと私も思いますので、なお調査をし、的確な対応をしてまいりたいと思います。
  40. 田中甲

    ○田中(甲)委員 大臣、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、法務省に対しての質問に移りたいと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。  民法改正並びに刑法の改正という点で御質問をさせていただきたいと思います。  これまでの児童虐待のケースというものは、親子が、長期分離といいますか、別れている時間を必要とするという判断が持たれるケースでも、親が自分の子に対する権利、親権というものを強調し、そして最悪の結果を迎えるというケースが例として多くあると思います。  全国家庭裁判所に対する親権及び管理権の喪失宣告の申し立ては非常に少ないのです。異常に少なくて、平成十年には百十二件しかありません。  このように、親権を強調して、親権及び管理権の喪失宣告の申し立てということがなぜ少ないのかということを見てまいりますと、これは結局、法的にかなり雑な現状の中からこのような状況が生まれてきているということが考えられます。つまり、現行法制度に問題点ありという点でありますけれども、親権というものは、専門家に申し上げるのは大変に失礼でありますけれども、釈迦に説法でありましょうが、財産管理権と身上監護権、監護とは、いわゆる未成年者を監督し、保護するということ、この二つに大きく分類ができると思います。  現行民法では、八百三十四条で親権全体の喪失という規定になっておりまして、民法の八百三十五条では、財産管理権だけの喪失規定というものがつくられています。  しかし、今私が申し上げたいのは、身上監護権だけに限っての喪失規定というのがない。ここが問題でありまして、まさに児童虐待で問題になっているのは身上監護権、あなたは親として子供を監護するとか保護するという、その権利というものはありませんということをしっかりと申し立てできる。  今までの申し立て理由というのは、親権というものが、監護権というものが切り離されていませんから、親の人格というものを完全に否定してしまう。すべてを否定してしまう。言うならば、親が悪者というか悪役になってしまうというために、児童相談所は申し立てというものをためらってきました。こういう実態があります。家庭裁判所も親権の喪失の認定をためらうという事態があったように思います。それが、先ほど申し上げましたように、平成十年には百十二件しかこの申し立てがなかったということなのだろうと思うんですね。  そこで、親権全体ではなくて、身上監護権というもの、その一部だけを喪失させる規定というものを法改正してつくれないだろうかという私の意見でありますけれども、どのようにお受けとめになられているか、御答弁いただければ、お話しいただければありがたいと思います。
  41. 細川清

    ○細川政府委員 親権のみの喪失、監護教育権のみの喪失の制度についてのお尋ねでございますが、親権者は、子供に対して監護教育する権限を持っているわけですが、これは親と子の間の関係の最も根幹的、基本的なものでございます。それだけに親と子の間にとっては不可欠なものでございます。  これに対して、財産管理権は未成年の子の財産を親が管理するというものでございますので、これは常に不可欠に存在するものとは言えず、監護教育の権限に比して副次的な権限であるというふうに考えられております。  そこで、現在の民法は、財産管理権のみの喪失ということを定めておりまして、監護教育権のみの喪失というものは定めていないということになっているわけでございます。  ただいま御指摘のような監護教育権のみの喪失の制度を設けるとすれば、最も本質的、基本的な権限である監護教育権を行使することが適当でないとされた親が財産管理権のみを有するということになりますので、そうした事態が適当であるかどうかというところがまず問題になるかと思います。  本質的な権利、権限である監護教育権限が著しく乱用されているという場合に、財産管理権のみを残しておくというのは適当ではないのじゃないかというのが現在までの私どもの検討の結果でございます。
  42. 田中甲

    ○田中(甲)委員 今答弁を聞いていて、ふと、お金が大事なのか命が大事なのかというふうに私の頭の中で動いていたのですけれども……。  命を守っていくために監護権ということを喪失させる、つまり親から離して守っていく、そのために親権の喪失、身上監護権のみ喪失させるということでありますから、私は、それの方が優先されるべきことなのではないかなと。児童虐待において問題視されている今、このことははなからできないというような御答弁だと思いますので——いいです。首をどうぞかしげなくても結構です。胸を張って、どうぞ。これも議員立法でつくってみます。  ただ、この特別委員会全体が一体となって協議するためには、積極的に法務省も、今までのように、自分たちのつくったものは絶対にもう間違いがなくて、これはこのままがベストなんだというお考えではなく、どのようにあるべきか、児童虐待ということを、子供たちの命を守るためにはどのようにしていかなければならないかということを考えてみてください。私たちも、議員立法というのが議員の本来の役割でありますから、法をつくっていきます。できれば超党派でつくっていきたいと思っておりますので。  ドイツでは、一九七九年に民法を改正して、親権の言葉を廃止し、監護としているんですね。親が有責ということでなくても、裁判所が柔軟に監護権を部分的、一時的に制約できるという制度にしました。やはりこれは現状を見て対応したということだろうと思います。  私は今、喪失のことを先に申し上げましたけれども日本においては、親権を一時的に停止させたいと思っても、裁判所に対して親権の喪失の申し立てを行って、喪失の保全措置、仮処分という形でなければ停止させることはできないということだろうと思いますけれども、これも、申し立ての際に理由として、親の人格を完全に否定してしまうということになりかねませんので、親子関係の断絶ということを恐れて児童相談所は申し立てをためらっていくという傾向があるように思います。  そこで、私が二点目に申し上げたいのは、民法、ほかにも関連してきてしまいますが、関係法令を改正して、親権あるいは身上監護権というものだけを一時停止させる規定を、完全に喪失させるのではなくて一時停止させる規定というものもつくっていく、段階をつけるというか、そういう細やかな対応というものを法的につくり出していかなければいけないのだろうというふうに考えるんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  43. 細川清

    ○細川政府委員 親権の一時停止についてのお尋ねでございますが、現在の民法は、親権または財産管理権の喪失の効果を恒久的なものとしているわけではございませんで、親権または財産管理権喪失の原因がやんだときは、家庭裁判所は、本人、その親族の請求によって、失権の宣告を取り消すことができるものとしているわけでございます。現行制度の運用により、状況に応じた弾力的な親権等の制限が可能であるというふうに考えております。  なお、親権喪失の手続が進行している間に、緊急の必要があるという場合には、審判前の保全処分として、家庭裁判所は親権者の一時的な職務の執行を停止するということができるわけでございます。  それで、仮に、御提案のように一時的に停止するという制度を設けるとすれば、家庭裁判所でその親権を停止する期間をどう定めるかということが問題になるわけですが、あらかじめ親権者の親権を停止する期間、つまり親権を回復する期間というものを定めておくのは大変難しいだろうというふうに思うわけでございまして、こういったことを考えますと、現在までの検討の結果では、親権等の一時停止を設けるについては消極的ということになるわけでございます。  ただ、私どもは民法が不磨の大典だと考えているわけではございませんで、必要があれば見直していくということは常にやっているわけでございまして、今国会でも成年に関する後見制度については大きな改正案を提出いたしまして、現在参議院で御審議いただくことになっているわけでございます。     〔池坊委員長代理退席、佐藤(静)委員長代理着席〕
  44. 田中甲

    ○田中(甲)委員 ドイツの改正についてはどう認識をしていますか。一言で結構です。
  45. 細川清

    ○細川政府委員 こういう基本法の改正につきましては、やはり世界的な動向がどうなっているかというのを常に把握しておかなければならないというふうに考えておりまして、そういったものは当然私どもといたしましても参考になることですから、ドイツの運用等についても、今後注意して見てまいりたいというふうに考えております。
  46. 田中甲

    ○田中(甲)委員 わかりました。ぜひそうしてください。  刑法学会が五十年の歴史で初めて児童虐待の問題を取り上げて、刑法の領域で何ができるかということを検討されたそうであります。ことしの五月三十日という記録でありますけれども。といいますのは、児童虐待死させた親の判決のうち、八割が懲役五年未満という軽いものでありまして、傷害致死罪が多いのです。  フランスは、刑法の規定で、十五歳未満の未成年者に対し故意に虐待死をさせたときには、自分の子供の場合であっても三十年の懲役、故意でなくても死亡させた場合には二十年の懲役刑が科せられるという、日本とはかなりの違いがあります。  法務省は、私が指摘させていただきました民法の改正部分だけではなくて、刑法の領域でも何ができるかを考えていくべきだと私は思うのですが、その点についての御所見をいただければありがたいと思います。
  47. 細川清

    ○細川政府委員 大変恐縮ですが、きょうは刑事局長が参っておりません。私、民事局長でございまして所管ではございませんが、ただいま御指摘があったことを持ち帰りまして、所管の局長にお伝えいたしたいと思っております。
  48. 田中甲

    ○田中(甲)委員 市民団体は市民団体としての役割、また行政は行政としての務め、役割、立法府においては立法府として最善の措置をとっていかなければならない。もう具体的な行動をそれぞれにどうやってとっていくかという段階に入っていると思います。  今の御答弁で結構です。ぜひ私が質問した内容を担当の部署に、所管に投げてみていただきたい。また、個人的なといいますか、直接私の事務所の方でも結構ですから、どういうお考えを持っているか、御返答いただければありがたいと思います。  新法といいますか、新規立法の必要性ということも、やはりこの児童虐待を考えていく中で必要になってきていると私は思っています。たしか、これは、きょうは残念ながら大臣出席しておられないのでどなたの御答弁になるかわかりませんが、青少年育成基本法というものを総務庁の中で既に検討を始めているということを、私の秘書の方ですけれども、情報をキャッチしまして、まず最初に、これが今どういう状況にあるのか、どこまで検討されて、これからどのぐらいの時期までにこれを発表されていくといいますか、実際のものにしていきたいというお考えの中で進めていくか、御答弁いただければありがたいと思います。
  49. 阿部正俊

    ○阿部政府委員 総務庁の政務次官の阿部でございます。  今委員からお話のありました、いわば青少年基本法といいましょうか、というものでございますが、このきっかけになりましたのは、ついせんだって、七月二十二日でございますけれども青少年問題審議会というのがございまして、そこの答申の中で触れられてございます。その制定に向けて検討すべきだということ、あるいは、関係方面において具体的な検討が進められることを強く期待する、というふうな指摘で触れられております。  それを私ども受けまして、形式的には総理大臣への答申でございますけれども総務庁青少年についての総合的な施策の展開及び総合調整というお役目でございますので、そうした点を真正面から受けまして、これから検討したいという段階でございます。認識先生の方が少し先に行っておられるようでございますけれども、まだ受けたばかりでございますので、これから検討に着手するということだと思っております。  その中で、特に青少年育成について、諸外国等々の基本法の例も御参考にしたいと思っておりますし、あわせて、一つの法律的なことだけで、あるいは行政だけでやるというよりも、かなり幅広いいろいろな合意形成というものが必要だと思います。  あるいは先ほど先生がおっしゃられたように、例えば一つの議員立法というのも、過去の基本法の例としては議員立法でなされている例もございます。あるいは、子供の権利の保護という意味では、せんだって、目立った動きとして、最近では例の援助交際についてのいわゆる児童買春処罰法というふうなものも議員立法でなされたりしておりますので、その辺の動向も十分見きわめながら、どんなふうな基本法があり得るのか、あるいはどこがつくっていったらいいのかも含めて幅広く検討していきたい、こんな認識でおります。  以上でございます。
  50. 田中甲

    ○田中(甲)委員 阿部総務政務次官には、たしか参議院の方で法務委員会の審議が委員としておありになるという中を御出席いただきまして、ありがとうございます。  今までの民法初め日本の法令というものは、親権といいますか、親の権利というものが中心であって、子供の権利というものは十分に考えられてこなかったということはやはり言えるのだろうと思います。一人一人、個人を尊重していくという個人の尊厳ということが我が国の憲法の中では最高の価値とされているにもかかわらず、子供たちというものは外されていた、そう言ってもよろしいのではないでしょうか。  尊属殺の重罰規定を廃止したということは私も認識をしています。しかし、これはつい四年前でありまして、やはりそこで一人一人の人間としての対等な関係という法文には日本の場合には長い間なってきていなかったのだろうというふうに思わざるを得ません。  私は、この児童虐待ということを考えていく場合に、国際的に子供の権利に関して、日本が、これは九四年に批准をしているものでありますけれども子供の権利を第一に考え、子供を権利行使主体ととらえていく、それが基本だと思いますが、児童の権利に関する条約、子どもの権利条約を批准した我が国日本が、どのようにそれに沿って対応していくのか。もちろん、立法府がどのように対応するかという意味も大きく含んで、これは重大なことなんだろうと思っています。  子どもの権利宣言という一九五九年の段階から、国際的な取り決めといいますか、約束の交わされ方も、単に子供保護するというその対象としてとらえていたものから、繰り返しになってしまいますが、子供の権利を第一に考え、権利行使主体ととらえているというところが、私たちが認識しなければいけない大きな点なのだろうと思います。  子どもの権利条約の意義というのは幾つかあると思うのですけれども子供を権利行使主体として尊重したこと、親権による保護を受ける客体から、権利をみずから行使する主体になった。くどいようでありますが、権利行使主体性を認めたことに伴って、子供と親の関係について新たな問いかけがなされた。親権関係の民法規定の改正というのはこの辺からも必要になってくるのではないかというふうに私は思っておるのです。  それから、何よりも、この批准国としてその環境整備ということを着実に進めていく必要があると思いますし、実効的な法整備ということが必要になってくるのだろうと思います。  私、まさか、こういう発言はいけない発言かもしれませんが、韓国が進んでいるのですね。対応が早いのです。援助交際は日本から韓国に流れていったというか伝わっていった、そんな話も一部聞いておるのですけれども、すぐさま援助交際を禁止する改正案というのが出されて、九八年十二月に成立を見ている。今月の一日から施行されるということなんですけれども、その規定というものも、三年以下の懲役、二千万ウォン、日本円で二百万円の罰金を科すというもので、すぐに対応をされているということです。  それで、やはり批准した国として、青少年保護法というものを一九九七年の三月七日に成立をさせています。私も、韓国からちょっと取り寄せまして、中を、駆け足ですが読んでみました。  青少年の権利保護のための制定であって、総則で、家族、社会、あるいは地方自治体、国家の青少年に対する役割を定めて、さらに、薬物対策、テレビ番組、映画、出版物、テレビゲーム等の有害な媒体の青少年向けの流通の規制なども細かく規定している。隣国の韓国では、そういう法案を早速つくり上げて施行している、もう既にスタートさせているという状況にあるんです。  これは再度総務庁、政務次官はお帰りになってしまったようですけれども、こういう状況を見た中でも、すぐさま日本青少年基本法に取り組んでいくという姿勢は持たなければいけないということを思うんですけれども、今度は担当のどなたになりますか、重ねて御答弁をいただければありがたいと思います。
  51. 川口雄

    川口説明員 児童権利条約の関係につきましては、現在外務省が関係省庁の連絡会議を開催しておりまして、各省庁におきまして、それぞれ所管事項につき今検討しているところでございます。  総務庁としても、従来から青少年健全育成非行防止という観点から、児童を含む青少年に関する施策の総合的推進を進めてまいってきておりまして、今後とも、そういった立場から関係省庁との連携を図りつつ、条約の趣旨も踏まえた施策の総合的な展開を図りたい、そういうふうに考えております。
  52. 田中甲

    ○田中(甲)委員 ちょっとよく聞き取れなかったのですが、先ほどの政務次官の御答弁ともあわせて理解をさせていただくならば、たしか政務次官は、議員立法という形でおやりになるというたぐいのものなのかもしれませんというようなことも発言の後段に言われていたように思いますので、これもどういうものをつくり上げていくのか、これはちょっと時間がかかると思います。二カ月ぐらいかかるのかもしれませんが、ぜひ総務庁もこの問題を積極的に、新たな法をつくって、現在の子供たちが置かれている状態から守っていくために懸命の努力を行っていただきたいと思います。  やわらかく申し上げているつもりですが、私の腹の中は、結局、前に進めようとしていないということにでもなったならば大変な問題だと思っているんです。これはもう立法不作為ですよ。今の状況というものに立法府がどうやって対応するかということを真剣に、主管なんですから、きょうは主管大臣は、三重の大会の方が大事だという御判断をされたようですけれども、私は、今国民の中からも、この特別委員会が非常に重要な、まだまだ一部かもしれませんけれども、こういう国会の対応ということが行われていて、どういう方向で進んだかということは必ず記録として残っていくと思いますから、力を合わせてこの問題に対応していかなければいけない、そういう私の考えを伝えさせていただきます。  もう一点だけ、法律にかかわる点で、これは意見として述べて、そして私の質問を終わります。  やはり韓国なんですが、家庭内暴力の刑事訴訟法に対する特別法という形で既にでき上がっています。ドメスチックバイオレンスと言われる家庭内暴力に対しても、しっかりとその対策プログラムがつくり上げられているということを、私たちは、まあ諸外国の対応ということにそんなに、だからこうしろということではないんですけれども日本の場合も、しっかりとした立法府の対策ということがとられて、国民の皆さん方が安心して生活できる、子供たちの命が守れるという状況をつくっていかなければならないと考えております。  いろいろ御質問をさせていただきましたが、言いっ放しではありません。私どもも党として対応してまいりますので、どうか協力し合いながら、国民の期待にこたえてまいりたいと思います。ありがとうございました。
  53. 佐藤静雄

    佐藤(静)委員長代理 次に、池坊保子君。
  54. 池坊保子

    ○池坊委員 明改の池坊保子でございます。  私は、二年前、児童福祉法が改正になりましたときにも前小泉厚生大臣質問もいたしましたし、児童虐待については深い関心を寄せていただきたいということを願ってまいりましたし、また、宮下厚生大臣にも先日もお願いをしたと思います。  私は、少子化対策の最優先課題は、生まれてきた子供をいかに健やかに育てるかということではないかと思っております。結婚したくない、出産したくないという女性に、産みなさい、結婚しなさいと言いましても、それは幾ら対策を練ってもできないことでございます。子供が生まれてきたらそれを大切にする、その子供たちを健やかに育てるということが少子化対策であるということをまず厚生省方々認識していただきたいというふうに私は思っております。  刑法二百十九条でも、弱者を傷害や致死にした場合には一般よりも刑が重くなっております。弱い者を虐待するのは人間として一番許されないことであり、先ほど佐藤議員がおっしゃったように、教育一般にもかかわってくる問題だというふうに思っております。  きょうは、まず児童虐待現状と問題点についてお伺いしようと思っております。  厚生省は、本年三月、全国児童相談所に対する調査結果として、初めて児童虐待実態を明らかにされました。私は、これが初めてだということに、厚生省がどれだけ児童虐待に対しての認識が薄かったかということを如実にあらわしているのではないかと思っております。私は、それまでは民間の調査機関の調査でいろいろとお話し申し上げてまいりました。  昨日の新聞にも出ておりますように、全国の法医解剖例から、虐待死が年間で三百二十八人いたということが初めて出ております。さき厚生省実態調査によりますと、九七年度中の相談・通報件数は五千三百五十二件、うち二割が施設入所措置の対象となっております。また、児童相談所が関与したにもかかわらず十五人の子供虐待によって死亡したという報告もございます。  児童相談所に相談に来られても、児童相談員が何をしたらいいかわからないというのが今までの現状でございました。言い続けてまいりましたために初めて児童相談所のためのマニュアルができたという、これも大変にお粗末な現状でないかと私は思っております。  この児童相談所における相談、通報に対する対応実態についてお尋ねしたいのですけれども、相談、通報を受けた児童相談員は、まずどのようなことを具体的にしているのでしょうか。そして、これだけ多くの虐待死があるということを厚生省はどういうふうに認識していらっしゃるかを大臣にお伺いしたいと存じます。
  55. 横田吉男

    ○横田(吉)政府委員 児童相談所等に相談があった場合の対応でございますけれども、まず最初に、家族関係なり虐待状況を聴取いたしまして、虐待のリスクがどの程度あるかというのを把握するのが最も重要かというふうに考えております。その対応によりまして、どのような措置が必要になるか、中で判定会議等を開きまして決定するということでございます。
  56. 池坊保子

    ○池坊委員 私が問題にしたいのは、児童相談所対応なんです。児童相談所の担当者は、相談、通報を受けた場合、受理会議を開いたり、それぞれに適切な措置を行うことが必要であると存じますけれども調査報告では、三十一もの児童相談所でこうした対応がとられておりませんね。そして、それはどこに原因があるのかとお考えですか。
  57. 横田吉男

    ○横田(吉)政府委員 三十一の児童相談所でそういった対応がとられていないというのは、ちょっと私どもも把握していないのでその点についてはお答えできないわけでありますけれども児童相談所対応につきましては、このたび、先生も御指摘いただきましたように、三百ページ近い対応のマニュアルも作成いたしまして、全国所長会議を開き、周知徹底等説明会も図っているところでございますので、それに従いました適切な対応が行われるよう、もしそういう事態があれば指導してまいりたいというふうに考えております。
  58. 池坊保子

    ○池坊委員 つまり、児童相談所の相談員が、相談を受けましてもどのように対応していいかわからないというのが現状なんだと思います。初めてマニュアルができたということですけれども、ただマニュアルをお渡しになるだけでなくて、速やかに会議を持つとか研修会を開いていただきたいと思います。  そのことについて宮下厚生大臣、どうお考えでございましょうか。
  59. 宮下創平

    宮下国務大臣 マニュアルを作成した時期がちょっと遅きに失したのではないかという御指摘は、そのとおりだと思います。したがって、マニュアルをつくった以上は、その実効性を確保するために、今までもある程度会合をやっているように私も聞いておりますけれども、さらに徹底を期して、せっかくつくったマニュアルが実行されないとこれは絵にかいたもちになりますから、そのような努力はさせていただくつもりでございます。
  60. 池坊保子

    ○池坊委員 このような対応のおくれによって数多くの子供たちの命が失われたり虐待が続いたりする恐ろしい現実に対して、やはり本腰を入れて厚生省は抜本的な改善を行っていただきたいと思います。  私、何度も申し上げておりますけれども虐待を受けた子供は大人になったときにまた同じことを繰り返すと言われておりますので、これは社会問題だと思います。社会問題だという認識をぜひとも私は厚生省の方に持っていただきたい。今もこうやって命が奪われていく。ゆっくりとした時間をかけてやるべきことではなくて、迅速にしていかなければならない問題でございますので、そのことの認識を再度お願いしたいと思います。  私は、児童相談所対応が不十分なのは、専門職員の配置がきちんと行われていないからではないかというふうに思っております。朝日新聞の調査平成十一年二月六日の調査でございますけれども全国百七十四の児童相談所所長のうち、福祉職、心理職などの専門職と呼べる人はわずかに六十七名でございます。さらに、児童福祉司千二百九名のうち専門職は五百五十二名と、半分にも満たない現実がございます。驚くべきことに、専門職がゼロという都道府県、政令都市が十以上あるのです。具体例を挙げれば、東京都は十一名の児童相談所長、百六名の児童福祉司のすべてにおいて専門職がいないというのが現状でございます。  総務庁は、昨年五月の行政監察の結果、福祉行政の経験のない児童福祉司が多いことを指摘し、児童福祉司の専門性を高めるよう勧告したはずでございますが、その後どのように改善され、専門性を高める方策が講じられたのか、具体的に説明していただきたいと思います。
  61. 横田吉男

    ○横田(吉)政府委員 児童相談所所長の資格につきましては法律で定められておりまして、医師であって精神保健に関して学識経験を有する者、それから、大学におきまして心理学を専攻する学科を修めて卒業した者、二年以上児童福祉司として勤務した者というようなことで定められております。ただ、「前各号に準ずる者であつて、所長として必要な学識経験を有するもの」というような規定もございますので、地方公共団体のそれぞれの判断によりまして、この四号を活用して、一—三号以外の方がなっている場合があるかと思います。  それから児童福祉司につきましても、それぞれ資格が定められているわけでありますが、やはり「準ずる者」という規定がございまして、その規定によって、都道府県の人事配置で、経験が十分でない方が配置される場合があるというふうに承知しております。  私ども、こういった点につきましては、この法律の規定を厳格に適用するように再三にわたって都道府県に対して指導をいたしております。そういったことで、今後とも、児童相談所の運営に必要な資質の高い者が配置されるようなことを都道府県に対してお願いしてまいりたいというふうに考えております。  それから、現在いる職員につきましても、各種それぞれのレベルに応じまして研修を行いまして、その資質の向上に努めてまいりたいというふうに考えております。     〔佐藤(静)委員長代理退席、委員長着席〕
  62. 池坊保子

    ○池坊委員 今まで徹底的に都道府県に勧告していらっしゃったということでございますが、にもかかわらず、現実は、この東京都でさえ、十一名の児童相談所長、百六名の児童福祉司のすべてにおいて専門職がいない、こういう事実があるわけでございます。  くどいようですが、先ほど申し上げましたように、専門職がゼロという都道府県、政令都市が十以上あるということは、徹底してそのように指導してきたとおっしゃるにしては、これは徹底とは言えないと思いますので、これを今後とも改めるようちゃんと指導なさるおつもりか。こういうことをなくしていただきたいというふうに思っておりますので、もう一度お答えいただきたいと思います。
  63. 横田吉男

    ○横田(吉)政府委員 それぞれの法律の規定に従って適切な人が配置されるような指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  64. 池坊保子

    ○池坊委員 私どもが徹底という言葉を使いますときには、完全にできますことを徹底というふうに申しております。言葉で幾ら言っていただきましても、現実に対応ができなかったら子供たちにとっては何のプラスにもなっていかないという現実をしっかりと認識していただきたいというふうに私は思っております。  先回も参考人をお呼びいたしましたときに、児童相談所職員が転勤が多過ぎて、それと専門職がいない、ようやっとなれたらまた違う部署に行くのでというような問題が指摘されましたけれども児童相談所に行きます職員を、徹底して何か勉強会とか研修会を開くということはできないのでしょうか。これは厚生大臣に方針としてお伺いしたいと思います。
  65. 宮下創平

    宮下国務大臣 今委員のおっしゃられた法律に基づく資格者の配置がないという件は、これは調べて、どういう対応ができるか、府県と相談いたします。  なお、それ以外の今の点についても、やはり実効性が上がらないと法律というものは本当に生きたものになりません。  えてして、地方にある程度権限を委任して、実際県の組織としてやっておりますので、厚生省としてもちょっと間接的になるものですから、それから全国的な規模で行われるものでございますから、多少受け身にならざるを得ない点がありますが、これは委員の御指摘のように、やはり積極的にこちらが出ていく。そして職員がこういう児童福祉あるいは児童保護の問題についてさらに熱意を持って取り組むように、厚生省としても研修会を開くなり、あるいは担当課を集めるなりして、機会あるごとに徹底をさせるようにいたします。
  66. 池坊保子

    ○池坊委員 大変力強い御答弁をいただき、これは子供の命がかかっておりますので、厚生省もぜひ積極的に対応していただきたいと思います。  今度は、児童虐待防止するための法整備についてちょっとお伺いしたいと思います。  今までもさまざまな委員の方から、通告の義務ということが出ておりました。児童福祉法第二十五条には、要保護児童発見者の通告義務が明記されております。でも、福祉や教育関係者が通告をしなくても罰則規定というのがございません。  今までもいろいろな委員がおっしゃっていらっしゃいますけれども、罰則がないというのは実効性がないのではないかというふうに私は思っております。アメリカでは、医学、福祉、教育関係者はもちろん、一定の範囲で児童虐待を知り得る立場の人が通告しない場合、刑事罰を受けたり、あるいは教育免許や福祉看護士などの免許の取り消しというのが行われております。我が国も、このような実効性を伴い、関係者の自覚と責任をはっきりさせた法整備の見直しが必要でないかというふうに私は強く思っております。  きょうは文部省の方いらっしゃいますでしょうか。私は、家庭内の虐待を学校で察知することはできるのではないかというふうに思っております。  広島の弁護士からの通達がございまして、学校に通っているヤマギシの子供たちが朝御飯を食べていないのではないか、調査をしてほしいという依頼がございました。それはどうしてあったかと申しますと、先生児童たちの様子を見ていて、どうも子供たちの生活態度が不審である、それで注意をしたところそういう実態がわかりまして、それを校長に言い、ほかの学校との連携もとって、校長が弁護士会に通達したという結果になってまいりました。  つまり、先生方が子供に対して注意深くそういうことを見守るということは、児童虐待防止に役に立つと思いますのとともに、今問題になっておりますいじめの問題にも関係してくるのではないかと私は思っております。  いじめで自殺しますと、学校で大概、そういう事実はなかったとか、そういう事実を知らなかったと先生方はお答えになります。それは、先生子供たちの生活態度や日々の行動をごらんになっていないからではないかと思いますので、私は、ぜひ文部省も、教育委員会を通して学校に、児童虐待が行われていないかどうか、子供たちに対してのきちんとしたチェック、愛情を持ったチェックをしてほしいという旨の通達をしていただきたいと思っておりますが、それについてはどのようにお考えでございましょうか。
  67. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 御指摘のとおり、学校生活のみならず、児童の日常の生活面について十分な観察、注意を払いながら教育活動をしていくということは教育活動基本でございまして、これは生徒指導とか児童虐待とかそういう場面に限らず、まず教員としての基本的な資質の問題として、生徒にどう対応していくか、あるいはカウンセリングの具体的な方法等も含めまして、さまざまな場面で教員研修等に努めてございます。  また特に、文部省といたしましては、いじめを含めました児童生徒の問題行動への対応にかかわりまして、とりわけ、家庭との綿密な連携、それから関係機関との連携のあり方、大変重要な問題であるということで、折につけさまざまな指導を繰り返しているところでございます。  具体的に、虐待というようなことで、文部省全国一斉にチェックをするようにというようなことはなかなか難しいかと思いますけれども、常日ごろから児童を観察し、そして児童からきちっと相談を受けられるような体制づくりということにつきましては、これはさまざまな機会に、あるいは研修会等で具体的な方法まで含めまして、今後とも、十分趣旨の徹底をしてまいりたいと思っているところでございます。  特に、関係機関との関係につきましては、学校におきましては、連絡先の関係機関機能や組織、あるいは担当者名、所在地、あるいは連絡先の一覧、こういったものを全教職員に具体的に配付して、共通理解を図るようにというところにつきましても通知をしているところでございます。  児童福祉法の二十五条に基づきます通告義務につきましても、平成九年六月二十日の厚生省児童家庭局長通知を受けまして、全教職員に具体的に通知するようにということで指導の徹底を図っているところでございますので、御理解をいただきたいと存じます。
  68. 池坊保子

    ○池坊委員 学校の先生でもこの通告の義務を御存じない方もございます。夏休みも終わりましたら、ぜひ新学期に向けて再度その通達をしていただければというふうに私は願っておりますので、これはぜひしていただきたいと思います。  同様に、児童福祉法二十九条には、児童委員または児童の福祉に関する事務員が家庭への立入調査をすることができることとなっておりますが、実際にどの程度の立入調査が行われているのか、また、立入調査の結果どのような措置がとられているのか、昨年度の具体的件数とその措置の内容についてお伺いしたいと思います。  私が調べましたところ、一昨年はたったの十六件しかそういう事例がございませんでした。ということは、こういう法律があるにもかかわらず余り実効性を伴っていないのではないかというふうに思いますので、お伺いしたいと存じます。
  69. 横田吉男

    ○横田(吉)政府委員 二十九条に基づきます立入調査につきましては、九年度につきまして調査を行ったものがございまして、全国で十六件、八カ所ということでございます。  これがこれまで少なかったという点につきましては、どちらかといいますと、これまでの児童相談所対応というのは親との関係を重視するということで、強制的な立ち入りにわたるようなものは避けてきて、実際上の説得なりそういった形での指導というものに重点を置いてきたという結果ではないかというふうに考えておりますが、私ども、こうした点につきましては、今回作成いたしましたマニュアルにおきましても、適切に行うような指導をしているところでございまして、今後は必要に応じて増加していくものと考えております。
  70. 池坊保子

    ○池坊委員 実際上の説得があったにしても、少なくともこの五年間で三百二十八人の虐待死を呼んだ、これは虐待死というよりも本当に殺人そのものだと思います。これだけの殺人が行われたということなので、立入調査ということも、もっと私は、強制というとおかしいですけれども、強行してやってもいいのではないかというふうに考えております。  こういうことも含めて、児童虐待防止の法整備というのが私は近々必要なのではないかというふうに思っております。アメリカやスウェーデンではこういうことも行われておりますし、これは本当に人権そのものではないか。人権というのは、まず、自分の力で立ち上がることができない、あるいは生きることができない立場にある人間に私たちが手を差し伸べるということですし、行政とか政治家はそういうことのためにあるのではないかというふうに思っておりますので、これはもっと私も真剣にちょっと考えさせていただきたいというふうに思っております。  時間もございませんので、最後にちょっと児童養護施設のことでお伺いしたいと思います。  先日も、参考人をお招きしたときに、児童養護施設が大変に粗末だというお話がございました。虐待を受けた子供児童相談所なりに相談に来る、その子を親から離さなければならないとしたら、当然これは児童養護施設に入れるということになっていくと思います。  児童養護施設を拝見しておりますと、例えば、直接指導職員は、三歳未満の子供に関しては二人に対して職員一名、三歳以上から就学前は四人に対して職員一名というふうに書いてございますけれども、本当にこれだけの配置がなされているのかなと思っておりますので、その点について一点伺いたいのと、入所者一人当たりの部屋は三・三平方メートル、ということは一坪でございますね。これは余りにも狭過ぎるのではないかというふうに考えておりますので、そのことについてお答えいただきたいと思います。
  71. 横田吉男

    ○横田(吉)政府委員 先生指摘になりました児童養護施設における職員の配置基準でございますが、御指摘になりましたように、満三歳に満たない幼児は二人に一人とか、三歳以上は四人に一人とか、これは最低基準でございますので、実際の配置につきましてはこれ以上されているということでございます。  それから、基準面積でございますが、これも最低基準として一人頭三・三平米、これは確かに狭いということかもしれませんけれども、他の社会福祉施設とのバランスでこういうふうな規定になっておりますけれども、現実の予算補助としてはこれより広い基準面積でやっておりますし、現在の入所者一人当たりの施設整備の基準面積といたしましても、二十三・五平米、これは居室以外のほかの施設の面積も入っておりますけれども、居室におきましても、三・三平米以上、五平米近いものが確保されております。現実にも五・一平米ということでございます。
  72. 池坊保子

    ○池坊委員 書面だけでなく、ぜひ横田局長には、養護施設に行ってその現状を把握していただきたいというふうに思っております。  今、高齢者の問題は、いろいろな方面からみんながいろいろと注意を払っておりますけれども、幼児の問題に対しては、物言わぬ幼児でございますので、なかなかいろいろな人の意見というのが酌み取れずに今日まで来たと思います。これは、本当に行政のお粗末を露呈したのではないかと思っておりますので、ぜひ今後は、この児童虐待について力を入れていただきたいというふうに願っております。ありがとうございました。
  73. 石田勝之

    石田委員長 次に、石井郁子君。
  74. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。  子供虐待死の多さにつきましては、これはたまたまきのうの夕刊でございますね、この新聞報道を見て、私は改めてショックを受けたところでございます。九二年から九六年の五年間で三百二十八人だということを厚生省の研究班が調査として発表されました。その中で、三歳以下の子供が四分の三、それから実母が虐待をするというのが四分の一を占めているという点も大変私はショックだったわけであります。  先日来、当委員会におきまして参考人質疑も受けまして、子供虐待というのは緊急の課題だということの認識を私自身も大変深めたところでございます。  最初にまず、そういう認識の問題として、ぜひこれは大臣に伺いたいのでございますけれども、子どもの権利条約も十九条、二十条でこの問題は明記しているところでございますし、日本政府の第一回報告書でも、政府としての施策についての一定の取り組みが述べられたかというふうに思うんですね。  今、私どもが必要なことは、権利条約というのが現にありまして、その実施をしていくことが課題だというふうに思うんですね。政府報告書は、権利条約と国内法、政府の施策との調和というか一致というか、そういうことについて報告する義務があるわけでございますから、それが一体どうなのかという問題と、その政府報告に対して国連の子どもの権利委員会からは、大変厳しい勧告がなされているということがございますね。  私は、やはり子供の問題は今世界的な問題でもありますし、日本政府としてどういうふうにこれに立ち向かっているかということを、国連から問われなくても、もっと積極的に進めていくということが大事かなというふうに思っているところでございますから、まず大臣に、この勧告をどのように受けとめていらっしゃるか。  そして、幾つか具体的な指摘がございますね、この勧告では。「虐待及び不当な取扱いの事案に関する詳細な情報及び統計を収集すること」、あるいは、その「事案が適切に調査され、加害者に制裁が加えられ」たかどうかというような問題、それから、私はここら辺が新しいと思うんですが、「児童にとって容易に利用でき親しみやすい不服申立手続が確立されるよう」にというあたりの具体的な指摘もございますので、どう受けとめ、そしてこの勧告にどのように対応されるおつもりか、されていらっしゃるかというあたりのことをまず伺いたいと思います。
  75. 宮下創平

    宮下国務大臣 我が国は、平成六年に児童の権利に関する条約を批准いたしました。そして、八年の五月にこの条約の実施状況を国連に報告いたしております。この報告に基づきまして、平成十年の五月に国連の児童の権利に関する委員会が審査を行いまして、同年六月に最終見解を採択いたしたところでございます。  この最終見解におきましては、まず第一に、条約の趣旨をより具体化した平成九年の児童福祉法の改正につきまして言及されておられますが、これは、この改正を評価するという見解を表明する一方、児童虐待に関しましては詳細な実態調査をすることが必要である、それから、児童からの相談や不服の申し立てが容易にできるようにすることというようなことが求められております。  今委員の御指摘のように、提案と勧告の中には、ただいま申しました、詳細な情報、統計を収集することを勧告する、それからまた、児童にとって容易に利用できやすい、親しみやすい不服申し立て手続が確立されるように勧告するというようなくだりもございます。  この実態調査につきましては、まず、私どもとして、平成二年度以降、全国児童相談所における児童虐待にかかわる相談状況を把握するということに努めておりますが、昨年度は、この詳細な取り組みについて把握するために、特別な業務報告を求めまして、立入調査件数、死亡事例等の虐待実態を把握するべく努力をしておるところでございます。  相談を必要とする児童児童相談所機能や業務をよく理解する、いつでも相談ができるようにするというようなことが大変重要でございまして、この福祉施設における児童への対応とか、あるいは学校への協力依頼については徹底を期するように児童相談所を指導しているところでございます。  まさに、児童の権利に関する条約第三条にも、児童の最善の利益が主として考慮されなければならないということが書かれておりますので、私どもといたしましても、今後とも、児童の最善の利益の確保のために必要な施策の推進に当たってまいりたいと思っております。
  76. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 どうもありがとうございました。  虐待問題は本当に緊急を要するということが今強調されているわけでございまして、私もそういう角度から、以下、具体的な質問をきょうはさせていただきたいと思います。  私、ことしの春、年明け早々なんですけれども、たまたまというか、大阪市内の社会福祉法人の一つの養護施設、池島寮というんですけれども、そこと、そして、そこの子供たちが通学する小学校があるんですね、そこをちょうど視察する機会がございまして、いろいろなことを伺ってまいりました。  きょうは、その中身でいろいろ御質問するんですけれども、そこでは、昨年度の入所児童の六九%が虐待を理由として入ってこられたというふうに聞きました。その子供たちは精神的にも肉体的にも大変不安定であったりする、不登校とか虚弱体質とかいろいろあるわけで、何らかのケアが必要だということはもう言うまでもありません。  そこで、特に施設の職員の皆さんの御苦労を、子供たちにはなかなか会えないものですから、お聞きしたのですけれども、本当に大変な御苦労をされているわけです。まず、そういう施設は二十四時間体制ですね。病院への引率をするとか、学校への対応、就職問題、さらに地域からの子育ての相談等々がありまして、職員自身がもう日常的に慢性的な残業になっているというわけであります。  そこで、最初の質問なんですけれども、私は、やはり虐待では、未然に防止するという観点から、相談活動というのは大変大事だというふうに思うんですね。この点で、児童福祉法改正に伴って、厚生省も、児童家庭支援センターを設置する、ことしは二十五カ所というふうに聞いていまして、大阪にも一カ所できました。  この計画、これから毎年二十五カ所というふうにふやしていくおつもりなのか、それとも、どこまでをどのように拡充される御計画なのか、そのことをまず伺いたいと思います。
  77. 横田吉男

    ○横田(吉)政府委員 児童相談所は、全国で百七十四カ所ということで、一県頭平均三カ所で、これは少ないということで、私ども、九年度の児童福祉法の改正の際には、できるだけ身近なところで相談が受けられるように児童家庭支援センターというのを養護施設等に附置するという計画を立てまして、この施設を法制化したところでございます。  十年度におきまして十カ所、十一年度で十五カ所の予算を確保したところでございますが、今後のあり方につきましては、基本的には、当該地域で一番利用しやすい相談体制をつくっていくということが基本であると考えております。児童相談所あるいは基幹的な児童福祉施設の配置状況を踏まえまして、それぞれの地域の実情に応じて配置してまいりたいと考えておりまして、現時点で、毎年何カ所というふうに定まった計画はないわけであります。
  78. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 私は、相談窓口ということで、一つ児童相談所に併設される児童家庭支援センターのことをお聞きしたのですけれども、もう一つ養護施設の関係でいうと、厚生省は、都市家庭在宅支援事業というのをなさっていますよね。都市家庭在宅支援事業も今全国で二十五施設かと思っていますけれども、その一つに、大阪市内の、私が今例に申し上げています池島寮というのが当たっているわけでございます。  そこのことで聞いたのですけれども、この在宅支援事業でいいますと、週二回このためのパートの方がいらっしゃる、その予算がつけられるという話なんですね。しかし、この都市家庭在宅支援事業というのは、二十四時間体制で電話相談を受け付けますよというどうもふれ込みのようでありまして、私が伺ったときにもいろいろ説明を聞いたのですけれども、一人で悩まないで電話してくださいということで地域にPRをしていらっしゃるわけでしょう。そうすると、やはり大変地域からの相談が多い。この施設では一年間に六百七回の相談を受けた、多いですよね。  こういう相談というのは大体夜中にかかってくるんですね。例えば、子供からすると、親が寝静まった、母親からすると、夫も寝静まってだれも聞いていない、だから、人に聞かれたくないからこそ電話する。そして、その電話というのは大体一時間、時には二時間にもなる。だから、夜勤の方というのは本当に眠れない状態になるという話も聞きました。  私は、これを強調しますのは、養護施設というのはふだんも二十四時間体制で、皆さんこの職員配置で、先ほど池坊議員の質問もございましたけれども、もう既に目いっぱいというか手いっぱいしていらっしゃる。この上に二十四時間の地域からの相談を受けるということになると、パートの方は週二回しか来ない、そのあいている時間は常勤の方がしていらっしゃるということになるわけでしょう。それはもう大変なオーバーワークになるわけですね。こういう実態はいかが把握されていらっしゃるか。  私は、本当にこれを進めようと思ったら、もっとこの実態に合う人の配置と予算措置が必要ではないかというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  79. 横田吉男

    ○横田(吉)政府委員 児童養護施設等に置かれております都市家庭在宅支援事業というのは、そういった子育て不安なり虐待の問題に対応するために、民間の児童養護施設の専門性を活用いたしまして電話相談等に応じる事業でございます。  これにつきましては、先生指摘のように週二回ということではございませんで、非常勤職員一名を予算化しておりますけれども、各施設におりまして、それぞれの計画を持って実施されているというふうに考えておりますが、意義はそれなりにあるということでございますので、今後ともその活用を私どもとしても図ってまいりたいと考えております。  これとは別に、先ほど御指摘されました児童家庭支援センターというのは、これは地域に密着した幅広い相談等を行っていくというものでございます。これも養護施設等に附置されるということでございまして、二十四時間の対応も可能ということで、職員の方も三人ぐらい考えております。  どういったものをどういうふうにつくっていくかは、それぞれの地域の実情に応じましてそれぞれ配置していくことが必要であるかと考えておりますけれども、こういった民間施設の専門性を活用いたしまして、総合的な虐待対策の効果が上がるように私ども進めてまいりたいというふうに考えております。
  80. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 私は、養護施設も児童相談所も、地域の中に開かれた施設として、あるいは地域の中に密着をして、本当に地域の相談に答えていくという体制をとらなくちゃいけないというふうに思うんですけれども、それにしてもこれは余りにも追いついていないという感じがするんですね。  ここの池島寮の皆さんは、やはり厚生省がやっていらっしゃるわけですから、都市家庭在宅支援事業というのはどういうものか、こういうチラシもつくって地域にお知らせしているわけで、こういうふうに言っていますね。「「こどものなやみなんでもでんわそうだん」は、孤立した家庭が追いつめられる前に共同子育てのネットワークに結びつけるきっかけを作り出す事業です。」と。  だから、必死に努力していらっしゃるということですね。現に、相談件数は本当に多いということでも大変役に立っていると私は思うんですけれども、それに見合うもっと積極的な人の配置、予算、これをぜひ強く要望しておきたいというふうに思います。  きょう私はもう一点、この虐待問題というのはやはり親の問題だというふうに思うんですね。とりわけ今、若い母親が、これは父親もそうなんですけれども子育てが難しく感じられたり、あるいは悩んだり不安だったりするということが多いわけですよね。それから、参考人方々からもたくさん伺いましたけれども、やはり家庭が孤立化しているという問題があるということや、現代社会のさまざまな背景があるというふうに思うんです。  そこで、親へのカウンセリングというのは主として児童相談所が行っているかと思うんですけれども、しかし、児童相談所がそれをやるというのは余りにもやりにくいという話が先日の津崎参考人から出されたと思うんですね。一方では、母子分離をしなきゃいけない場合が出てくる、そうすると、親と敵対関係になる、児童相談所がその親をケアするのは難しいという、やはりそういう立場に立つかと思うんですが、では、この親へのカウンセリングというのを厚生省としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、それから、児童相談所が一体それでどこまで役割を果たせるのかという問題を伺いたいと思います。
  81. 横田吉男

    ○横田(吉)政府委員 虐待問題の扱いの場合につきまして、施設への入所措置のほかに、在宅のまま家庭訪問をしたり、あるいは通所による指導等もございますので、できる限り保護者と密接な連携をとりながら、それにふさわしい支援を行っていくということが必要だと思っております。  こういった意味で、保護者に対しましても、児童相談所で、親等から相談があればカウンセリングを行うということは当然あるわけでありますけれども、確かに敷居の高いという点もあろうかと思いますので、児童養護施設等におきまして、親への助言あるいは家庭環境等の調整というのを行っていただくことになっております。  また、情緒障害等の場合もございますので、そういった場合には、情緒障害児短期治療施設というのが専門施設としてございますが、家族全体を対象といたしました、泊まり込みで心理療法を行うとか、そういったことも実施しているところでございまして、こういったさまざまな施策を通じまして親へのケアというのも充実してまいりたいというふうに考えております。
  82. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 もう少しその点で伺っておきたいのですけれども、今そう御答弁されましたけれども、現実に、本当に親が救われているのかどうか、ケアをされているのかどうかというあたりは、どういうふうにつかんだらいいかというのはあるんですけれども厚生省として何か実態をつかんでいらっしゃるのかどうか、そこら辺が伺いたいところでございます。  そして、児童相談所や養護施設、今申し上げましたように、ここももう手いっぱいになってやっている、本当にここでできるんだろうかということもあるんですね。ですから、民間の方々がいろいろな形で親へのケアをされる、虐待防止センターなどをつくって取り組んでいらっしゃることもあるかもしれませんけれども、私自身は、何かもっと新規のことも、親へのケアということで立ち上げる必要があるのではないかということも考えているんですけれども厚生省、もう少しお聞かせください。
  83. 横田吉男

    ○横田(吉)政府委員 児童相談所で取り扱った例だけでも、これは必ずしも虐待だけではございませんが、十七万件ぐらいございます。  それから、親へのケアをそれ以外にもどうしていくかということでございますが、確かに現在、子育てを行う家庭地域から孤立している、あるいはそれによって育児不安とかストレスを感じているというような点が問題だと思いますので、私ども、こうした点につきましては、一つは、保育所というのは身近な施設として多数ございますので、そういった保育所に地域子育て支援センターというのを、これは五カ年事業によりまして三千カ所を目標にやっておりますが、そういったものを整備していくということによって、虐待に至るまでの間の育児不安等の相談に対応するような仕組みをつくってまいりたいと考えております。  また、児童相談所、養護施設、保育所のそういった子育て支援センターのほかにも、現在、主任児童委員、これは民生委員が普通は児童委員を兼ねるわけでございますが、この民生委員自身、児童委員は二十万人ほどおりますけれども、ほかの仕事もございますので、その中で特に児童関係を取り扱っていただく児童委員を主任児童委員といたしまして、一種のボランティアでございますけれども、これの活用を一層図ってまいりたい、その研修等も行うというようなことで、それぞれの地域ごと関係機関が協力し合った一つのネットワークというものをつくりまして、子供を育てる家族というものが地域の中で孤立しないような体制整備していくことが重要であると考えております。
  84. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 時間が参りましたので……。  どうも厚生省のをいろいろ見ていますと、何かメニューがいろいろあるようには思うんですよね。あれもやっている、これもやっているという形はあるんですが、しかし本当にそれが機能しているのかどうか、実態とどうかみ合っているのかというあたりは、私はやはりもっときめ細かに見ていかなくちゃいけないように感じたものですから、そういうことで質問をさせていただきました。  終わります。ありがとうございました。
  85. 石田勝之

    石田委員長 次に、保坂展人君
  86. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。きょうは、宮下厚生大臣中心にこの虐待問題について質問をしていきたいと思います。  まず、一口に虐待というふうに言いますけれども、例えば、おもちゃを片づけない、泣きやまない、お漏らしをするなどささいな理由で、両親が六時間にわたってビール瓶で二歳児の頭や顔を数十回殴り、真冬に全裸で翌日まで放置し死なせた例だとか、あるいは、実母ら三人が一日半にわたって五歳児を殴る、ける、床にたたきつける、たばこの火を押しつけるなどして死なすという、大変な事例なんですね。  厚生省のこの手引も詳細に読ませていただきましたけれども、緊急保護を検討すべきチェックポイントで、全部は読みませんけれども、例えば、「乳幼児を投げる、頭部を殴る、高い所から落とす」「腹部を蹴る、踏みつける、殴る、木刀などで叩く」「首を絞める、水につける、布団蒸しにする」「乳児、未歩行の幼児に打撲傷がある」「骨折、裂傷、目の外傷、火傷がある」「熱湯をかける」「慢性的にあざやたばこの火を押しつけたような痕が見られる」「裸にして寒い屋外に出す」、ずっとこのほかもあるんですけれども、こういうことで子供が死に至る。  ちょっと大臣に率直に伺いたいのですが、私、以前に虐待死の切り抜きをしたことがあるんですね。そうすると、大体見出しにはせっかん死というふうに出てきます。このせっかんという言葉をちょっと調べてみると、これは中国の多分故事に基づく言葉だと思うんですけれども、宮殿の手すりにしがみついてまで皇帝をいさめようとした方が役人に引きおろされたときに手すりが折れたということに基づく言葉らしくて、厳しく意見すること、そして責めさいなむことというような意味が辞書を引くと出てくるんですね。  どうでしょう、大臣、せっかんというと、親として子供をいさめるんだというような、当然のしつけの範囲に入る言葉として我々には響くんですね。日本社会でせっかんという言葉はそういうふうに使われてきたと思うんですが、どうでしょうね、こういう子供虐待の今の現状を見たときに、せっかん死というような言葉が非常に子供の死を簡単に印象づけるというような役割を果たしているような気がしてならないんですが、せっかんという言葉についてどういう印象をお持ちでしょうか。
  87. 宮下創平

    宮下国務大臣 せっかんというと、率直に私の感じを申し上げますと、何かその背後に正当性が認められ、そして教育的な見地からというような感じが多少におっているような感じがいたします。したがって、今委員の御指摘のように、厳しく意見をすることは親として当然の場合もございますから、虐待死をせっかんとして表現することはいかがなものかという感じはございます。  したがって、最近では厚生省の方でも、虐待による死亡というように表現をさせていただいているようでございますが、今申されたような事例は、人間の道に反するわけでありますし、何ら教育的な意味はないわけですから、これはきちっと対応していかなければいけないというように感じます。
  88. 保坂展人

    ○保坂委員 これは本当にまじめないい内容の、画期的な、今の厚生省の中では極めてすぐれたガイドラインだと思って読みました。ですから、決して揚げ足取りとかそういう意味ではなくて聞いていただきたいのですが、最後のところで、関係機関がかみながら対応に失敗した事例が出てくるんですね。  六歳の男児で、両目にあざ、円形脱毛ありということで、いろいろこれは児童相談所に通告があって、家庭訪問に向かうや、暴力団員だったような印象があって、結局入れなかった。「内縁の夫の折檻により本児死亡。」と。もう一つせっかんという言葉が出てくるんですけれども、これは、やはりマスコミも含めて、虐待死というふうにはっきり位置づけていくべきだと思うんですが、いかがでしょうか。一言いただければ。
  89. 宮下創平

    宮下国務大臣 その中身によると思いますが、今おっしゃられるような点はまさに虐待死だと思います。
  90. 保坂展人

    ○保坂委員 次に、立入調査、たびたび問題にされましたけれども、この五十年間でわずか二十件だったと。昨年は、先ほど報告があったように、十八件ですか、十七件ですか、かなりやったようなんですけれども。  これも、では大臣に伺いますが、五十年の中でわずか二十件のうち十四件が東京都と川崎市だったようなんですね、これは毎日新聞の報道によるとなんですが。そうすると、ほとんどの児童相談所が、立入調査という権限は持っているものの、体験がないという実情かと思うのですが、これは事実でしょうか。
  91. 宮下創平

    宮下国務大臣 今御指摘のように、過去五十年間に二十件という報道の事実関係は、私どもとして確たるものとして把握はいたしておりませんけれども平成九年度だけについて言いますと、十六件というような状況になっておるようでございます。
  92. 保坂展人

    ○保坂委員 実は、去年の統計からあるようなんですよね。それ以前は統計すらなかったというのが実情で、そこは去年からやり出したということで、大いにこれからやっていただきたい。  そこで、問題なんですが、このガイドラインにもありますけれども、つまり立入調査ということで児相の職員が入っても、ドアやかぎを壊して強制的に入るという権限はありませんと。そして、相手がだめだと拒否した場合に、事後的な処罰はあるけれども、強制執行という趣旨ではないんですね、これは。それから、執行に当たって保護者が暴力的に抵抗するなどのことも考えられるため、警察官とともに行くのが望ましいんですが、しかし、これは警察官も強制捜査ではないので、不測の事態に備えて一応いていただくということにすぎないわけですね。  大変いろいろ細かい工夫をされていますよ。例えば、出前でドアがあいたときにさっと入るとか、あるいは管理人の方とよく話をしてそのかぎをもらってさっとあけるとか、いろいろな工夫をされているんですが、ただ、児童相談所職員の方の言葉を聞くと、特にやはり警察の方と一緒に行っていただくということが大変大事だと思うのです。  しかも、今始まってきた、全国的に見るとほとんど体験のなかった職員の人たちが、今この虐待の問題でとめるのは児相だということで入っていくわけですから。その中で、警察の協力度が地域によって違うというのですね。場合によっては立ち会ってもらえないケースもあるというような訴えもあるのですが、これは大臣として警察の方に十分協力を求めていただきたい、こう思うのですが、いかがでしょうか。
  93. 宮下創平

    宮下国務大臣 事案が深刻であり、ほっておけない状況でありますれば、これは警察に要請をして立ち会いを求めていくべきものだと考えますので、そういう趣旨も手引書その他では書かれているとは存じますけれども、なお徹底を期していきたいと思います。
  94. 保坂展人

    ○保坂委員 警察の側にもちょっとお聞きをしたいのですが、協力体制ということはこれから徹底していいものにしていかなければならないと思うのですけれども、一方で、子供虐待死、あるいは死に至らないまでも大やけどをしたとか大けがをしたという場合は、これは警察としても、具体的な数値など把握されているでしょうか。死亡した事例あるいは大けがをした事例、例えば去年どのぐらいあったかなどの統計はあるでしょうか。
  95. 小林奉文

    小林(奉)政府委員 具体的なケースにつきましては、突然のお尋ねでございまして私の手元には持っておりませんので、ちょっと御容赦いただきたいと思います。  ただ、私どもといたしましては、児童虐待が刑法等の犯罪行為に触れる場合であれば、それについては厳正に対処していかなければならないし、またそうしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  96. 保坂展人

    ○保坂委員 一応事前に相談件数としてはいただいたのですね。昨年、四百十三件の相談件数があったようです。しかし、相談件数はいわゆる事件の発生件数とはまた違います。それから、家庭内で大けがをしても把握がしづらいという実情があると思うのですね。  そういうところで、今厚生大臣に求めた点ですが、警察としても、立入調査児童相談所が余り経験のない中で、例えば先ほどの失敗した事例のように、その保護者が暴力団員かもしれないというような身の危険を感じる場合も多々あろうかと思いますが、そういうときに、速やかに、しかも柔軟に協力していただくというようなところで一歩踏み出していただけるかどうか。お願いいたします。
  97. 小林奉文

    小林(奉)政府委員 先ほど、平成十年度の相談件数が四百十三件とございましたけれども、必要に応じまして、そういった事件の内容に応じまして児童相談所等に通告を行って、それぞれ適切な対応をしていると思います。  ただ、そういった中で、児童虐待の問題について私ども考える場合に一番必要なことは、関係機関連携をとってやっていくことだと思います。そういった観点で、警察としても積極的にそれに対応していきたいと思っております。  その連携の中で、特に、委員指摘の部分についてでございますが、児童相談所職員等が立入調査を行ったり一時保護を行う際には、児童相談所からの要請等に基づきまして、保護者等による児童または児童相談所職員に対する加害行為等に対しまして迅速な援助が行えるように、警察官が現場でもって待機するなどの形をとってまいりたいと思います。  いずれにいたしましても、この問題は極めて重要なことでございますので、児童相談所との連絡、そういった体制をよくとってまいりたいと思います。
  98. 保坂展人

    ○保坂委員 今の大臣局長答弁で、全国の児相の職員の方が、いわば自分の身を十分守りながら、しかし、子供の安全を最優先で動いていただくというふうにしていきたいものだと思います。  そこで、法務省の人権擁護局長にも来ていただいているのですが、厚生省のこの手引を見ると、どうも法務省の人権擁護局というのはちょっと登場しないみたいで、この虐待問題に対して法務省は一体何をやってきたのか、何かパンフレットかポスターでもあったらお持ちいただきたいとお願いをしていたのですが、どうでしょうか。ちょっと影が薄いような気がするのですが。
  99. 横山匡輝

    ○横山政府委員 法務省としましても、児童虐待は、心身ともに健全に育成されるべき子供の人格や名誉、身体等を傷つけるものであり、その人権を著しく侵害するものと認識しております。  そこで、法務省の人権擁護機関では、具体的に児童虐待の事案につきましては、情報を認知した場合には人権侵犯事件として立件して調査し、その結果に基づき、加害者である親等に対し啓発を行って虐待行為を中止させる、また必要に応じて、児童相談所等に連絡しまして、人権擁護の観点に立った的確な対応を要請する、またこれらの機関にも協力しましてその解決に努めるなど、児童虐待問題の解決に向けてこれまでも積極的な対応に努めてきたところであります。  今後ともこのような取り組みを一層充実させてまいりたい、このように考えております。
  100. 保坂展人

    ○保坂委員 法務省人権擁護局に対して、法務局に対して人権救済の申し立て等できるわけですから、やはり国民に見えるように、ポスターをつくったりパンフレットをつくったりやってください。ぜひ要望しておきます。  最後に大臣に再び。  先ほど、議員立法を含めて早期にこれは立法すべきだと、大変な大テーマだと私自身も思います。同時に、立法までの時間があるわけです。きょうのこの事例も、本当に震えるくらいの話が書いてありますよね。子供を逆さに持って、ベランダからこうやっていた。それを見ている人が通報したけれども、結局その子は死んじゃうのですね。そういうことが今日本で、きょうもまた起きているだろう、あしたも起きるかもしれないというときに、やはり政府が一体となって、我々、これは与野党問わず、こういう問題はだめなんだよ、そして子供たちは守られるんだよというメッセージを発する必要があると思うのです。  例えばテレビコマーシャルを思い切って、子供たちが見るわけですから、虐待というのはだめなんだよ、そしてここに電話すればいいんだよというような、非常にスピーディーに、この虐待の問題を放置しないという社会姿勢を示す必要があろうかと思いますが、その点についていかがでしょうか。
  101. 宮下創平

    宮下国務大臣 委員の御指摘はごもっともな御指摘でございます。私どもはSAMさんを使って広告はいたしましたが、これは児童虐待だけに絞った問題ではなく、子育てという視点でかなり反響を呼んだようでございます。したがって、今仰せられたような、虐待防止のためのメッセージをきちっとやるということも含めて検討させていただきます。
  102. 保坂展人

    ○保坂委員 ありがとうございました。  時間になりましたので、ぜひきょうから力を合わせて、子供たちに向けて届くメッセージをお願いしたい、重ねて要望して終わります。
  103. 石田勝之

    石田委員長 以上で質疑は終了いたしました。  次回は、来る八月五日木曜日午前九時理事会、午前九時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時五十八分散会