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1999-05-14 第145回国会 衆議院 商工委員会環境委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月十四日(金曜日)     午後一時三十分開議  出席委員   商工委員会    委員長 古賀 正浩君    理事 伊藤 達也君 理事 小此木八郎君    理事 小野 晋也君 理事 岸田 文雄君    理事 大畠 章宏君 理事 松本  龍君    理事 大口 善徳君 理事 西川太一郎君       岡部 英男君    奥谷  通君       木村 隆秀君    竹本 直一君       武部  勤君    中山 太郎君       萩野 浩基君    林  義郎君       茂木 敏充君    山口 泰明君       山本 幸三君    石毛えい子君       奥田  建君    島津 尚純君       中山 義活君    渡辺  周君       並木 正芳君    福留 泰蔵君       青山  丘君    小池百合子君       金子 満広君    吉井 英勝君   環境委員会    委員長 北橋 健治君    理事 石原 伸晃君 理事 鈴木 恒夫君    理事 福永 信彦君 理事 米田 建三君    理事 小林  守君 理事 佐藤謙一郎君    理事 田端 正広君 理事 武山百合子君       愛知 和男君    岩下 栄一君       尾身 幸次君    大野 松茂君       小島 敏男君    桜井 郁三君       戸井田 徹君    村上誠一郎君       山本 公一君    近藤 昭一君       西  博義君    丸谷 佳織君       藤木 洋子君    中川 智子君       武村 正義君  出席国務大臣         通商産業大臣  与謝野 馨君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 真鍋 賢二君  出席政府委員         環境庁企画調整         局長      岡田 康彦君         環境庁企画調整         局地球環境部長 浜中 裕徳君         通商産業省環境         立地局長    太田信一郎君         通商産業省基礎         産業局長    河野 博文君  委員外出席者         議     員 佐藤謙一郎君         議     員 近藤 昭一君         議     員 奥田  建君         議     員 石毛えい子君         議     員 小林  守君         衆議院法制局第         五部長     福田 孝雄君         商工委員会専門         員       野田浩一郎君         環境委員会専門         員       鳥越 善弘君     ————————————— 本日の会議に付した案件  特定化学物質環境への排出量把握等及び管理改善促進に関する法律案内閣提出第八八号)  特定化学物質排出量等公開等に関する法律案佐藤謙一郎君外四名提出衆法第一六号)      ————◇—————
  2. 古賀正浩

    古賀委員長 これより商工委員会環境委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が委員長の職務を行います。  内閣提出特定化学物質環境への排出量把握等及び管理改善促進に関する法律案並び佐藤謙一郎君外四名提出特定化学物質排出量等公開等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  本案の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付してあります資料をもって説明にかえさせていただきますので、御了承願います。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石原伸晃君。
  3. 石原伸晃

    石原委員 特定化学物質環境への排出量把握等及び管理改善促進に関する法律案、すなわちPRTR法律案につきまして、本日、商工委員会並びに環境委員会の両委員長また両筆頭の御尽力をいただきまして連合審査が行われることに、冒頭、感謝を申し述べさせていただきたいと思います。限られた時間でございますので、質問に早速入らせていただきたいと思います。  私は実は、この法律案、いつ出るのか、いつ出るのかと非常に心待ちにしていた感があるわけであります。と申しますのも、もう既に、OECD勧告が出た後、またその以前に、アメリカカナダ、またオーストラリア、そして東欧諸国のチェコなども、またメキシコなども着々と準備を進めてきた。若干遅いんじゃないかな、こんな感さえ持っているわけであります。  どちらかといいますと、ダイオキシンの問題にしてもそうですし、あるいは環境ホルモンの問題にしてもそうなんですけれども日本の場合は、環境行政、特に何か起こってからやる、そしてまた海外についていく。先頭ランナーに立とうという意気込みが欠けていたような気がするわけですけれども、その点につきまして、環境庁長官の御所見を賜れればと思います。
  4. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 先生指摘のように、我が国としては、OECD勧告を受けてからもはや三年になるわけでありますけれども、いまだにということで、今回このような法案づくりに着手したところであります。遅きに失したといえば失したわけでありますけれども、やはり準備期間等々がありまして、今日に至ったわけであります。  私思うに、やはり審議会あり方にも一つの問題があったのじゃないかと思うわけであります。通産省にいたしましては科学技術審議会答申を得てということで、もうはや二年前から着手されておったわけでありますけれども、我が環境庁には中央環境審議会答申が昨年に出たわけでありまして、その整合性をもってこのPRTR法案作成いたしたわけであります。先進国と比較すれば、というところもございますけれども、他の諸国と比較すれば遅きに失したわけではないということでございます。  せっかくこういう時期を迎えたわけでありますから、日本型で着手して、できればより早く効果が上がる、こう思っておるわけでありまして、ぜひそのような体制をつくりたいと思っておるわけであります。
  5. 石原伸晃

    石原委員 真鍋大臣のお気持ちを私も尊重させていただきたいと思いますが、注文として聞いておいていただきたいのです。  附則の方の施行期日の問題なんですけれども、ここについても、三年おくれぐらいな、ランニングでいいますとトラックを一周ぐらい先に走っている人がいるわけですから、大臣審議会等あり方等も問題であるというような率直な御意見も賜りましたので、これから法律が通った暁には、一日も早くこの法律案が運用され、そして情報収集されたものがだれでも簡単にアクセスできる形で、特定の有害な化学物質情報について情報をだれでもがとれるような方向で進んでいただきますように、お願いだけを申し述べさせていただきたいと思います。  今、大臣OECDのお話に若干触れられたわけでありますけれども、アジェンダを読ませていただきますと、PRTRガイダンスマニュアルによると、他の国のPRTR制度、もちろん環境問題に対する取り組みが国によって違うわけですから、なかなか一致させることは難しい。言葉をかえますと、PRTR水準調和というもの、ハーモナイゼーションというのは非常に難しいわけです。  この点についてももちろんのこと、環境庁並び通産省の方で、この法律案準備する中で、各国との制度あり方調和みたいなことに取り組んできたと思うんですけれども、その点について、どういうことをやってきて、またどういう方向各国水準整合性、そしてハーモナイゼーションを図っていこうとしているのか、お聞かせ願いたいと思います。これは事務方でも、通産省そして環境庁ともにお聞かせ願いたいと思います。
  6. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  私ども、この法案作成の途上におきまして、OECD国際会議東京に招致しまして、東京会議を開くことによりまして、国際的な議論の高まりの場を提供するとともに、私ども自身もその場で勉強させていただくというようなことをやってまいりました。まさにその意味では、ハーモナイゼーションのための場をつくり、自分たちもそれに共同参加した、そういうことでございまして、本法案にも、第一条におきまして、環境の保全に係る化学物質管理に関する国際的協調動向に配慮してと規定しているのも、そういう気持ちのあらわれでございます。  今後とも、OECDなどにおきまして、国際的な協調に積極的に努めてまいりたいと考えております。
  7. 河野博文

    河野(博)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま環境庁からも御答弁ございましたように、この法案の第一条で、国際的協調動向に配慮するということもうたわれているわけでございまして、私どもも、昨年、環境庁がお開きになりました国際シンポジウムにも参加させていただき、国際的な動向をフォローしているつもりでございますけれども、これからも、ハーモナイゼーションに主体的な役割を果たしてまいりたいというふうに思っております。
  8. 石原伸晃

    石原委員 法律の総則の第一の「目的」に書いてあるとおり、これからもそういう部分でイニシアチブをとって、OECDの中でデータというものが世界共通のものになるように非常に努力をしていただきたいとお願いを申し上げるわけでございます。  次の質問に移らせていただきたいのですけれども、これはまず環境庁長官真鍋大臣にお聞きしたいのです。  データを集めていって、データをはっきり発表するのは非常に重要になってくると思うのです。そして、環境庁通産省は、集計したデータをどのような方法国民環境団体が手に入るように準備をしていくのか。その点について、データ部分について、非常に重要なので御意見をお聞かせ願いたい。  アメリカは大きな事故がございましてこの問題について先行しているわけですけれどもアメリカの現状についてちょっと見させていただきますと、情報公開方法の中で、例えばコンピューターデータシステムTOXネットを通じて、休日も二十四時間市民がアクセスすることができたり、NGOもありまして、RTKネット、そういうものもあって、知る権利ネットワークということでございますけれども市民情報提供というものが割とできている。  日本も今回、情報公開法というものが通ったわけですから、ここの部分についても非常に開かれた情報提供ということを志していただきたいと思うんですが、御所見を賜れればと思います。
  9. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  私ども環境庁におきましては、既にこれまでも、もろもろの所掌事務につきましての情報提供の場ということで考えて、国立環境研究所環境情報センターというのを設置しております。  今回のこのPRTRにつきましても、データベースをつくって、それを国民に広く周知するということが非常に大事だと考えておりまして、本法案により得られますところの化学物質排出量等情報と、これまで環境庁が蓄積してきている化学物質に関する科学的知見環境モニタリング結果などの環境情報を、一体として利用できるようにすることが効果的かつ合理的であると考えておりまして、こうした観点から、現在その取り組み検討を始めているところでございます。
  10. 河野博文

    河野(博)政府委員 お尋ねの情報提供でございますけれども、この法案では、電子情報組織といいますかコンピューターを通じての届け出などができるようにもしておりますし、そういったコンピューター情報技術を使っての情報提供努力してまいりたいというふうにも考えております。環境庁同様、私どもも協力しながら、データベースの整備、そういった努力もしてまいりたいと思っております。
  11. 石原伸晃

    石原委員 大臣に、御感想なり個人的な御見解でも結構でございますけれども、このデータベース情報公開について何かお考え、特にアメリカの方はNGOも使ってこういうものがアクセスできるようになっているわけですけれども日本はちょっと、先ほど、言葉が悪いのですけれども周回おくれでスタートしておりますので、なかなかそこまでいくには時間がかかるかもしれませんけれども、ここがこの法律案一つのポイントでございますので、御所見がございましたら、御感想でも結構でございますが、お願い申し上げます。
  12. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 情報公開法によりまして、渡すべきは感ずるわけでありますけれども、やはりいつもデータ国民に広く知らしめなければならないと思っておるわけでありますけれども、その中においてNGO皆さん方の果たす役割というものが非常に大きくなってきたと思うわけであります。  ですから、国民にも、そしてまたNGO皆さん方にも、そして事業者皆さん方にも、この情報公開を正確になしていくということが大事なことであろうと思っておるわけであります。インターネット等々を通じてこれから情報公開をしていくわけでありますけれども、その利便性というものについての検討もしてまいらなければならない、こう思っておるところであります。
  13. 石原伸晃

    石原委員 大臣の強い決意と受けとめさせていただきたいと思いますので、ぜひ事務当局に御指導をよろしくお願い申し上げたいと思います。  それでは、ちょっと質問を進めさせていただきたいと思うのです。  この法律の二十三条でございますか、罰則部分なのでございますけれども、これは、日本のその他の法律罰則との兼ね合い等もしてこの二十万円以下の罰金というものが出てきていると思うのですが、海外とまた比較をして恐縮ですけれどもカナダでは同じような法律案違反としては二十万カナダ・ドル、一千六百万円程度だと思いますけれども、さらには六カ月以下の禁錮刑も科せられる。かなり厳しい国もあるわけであります。  この点について、この二十万円というものが本当にリーズナブルなものなのか、理にかなったものであるのか、どういうところからこの二十万円というものが出てきたのか、お聞かせ願いたいと思います。
  14. 河野博文

    河野(博)政府委員 お答え申し上げます。  届け出違反に対します二十万円の過料という金額は、最近の他の法律の例を踏まえて、先生指摘のようにそういうバランスで考えたものでございます。届け出不履行事業者あるいは虚偽の届け出事業者に対する直罰としての過料といいますものは、金額の多寡に必ずしもかかわらず、当該事業者にとっては社会的信用失墜を招く、あるいはひいてはそれが事業者経済的不利益につながるということで、抑止力として作用することになるというふうに考えております。  このように、我が国におきましては、届け出義務違反に対する罰則については、直接的な経済的負担効果というよりも、むしろ、それに伴います社会的信用失墜といったような社会的効果による抑止力に着目した担保措置とするのが一般的であるというふうに考えております。したがって、この法案に規定いたします罰則によっても、法律実効は十分担保されるのではないかというふうに考えているところでございます。  ちなみに、最近の例で申しますと、大規模小売店舗立地法届け出違反も、平成十年の立法例でございますが、二十万円以下の過料というようなレベルになっております。
  15. 石原伸晃

    石原委員 局長のおっしゃるように、他の法律案との兼ね合いということもあると思いますが、性善説、性悪説に立ちましても、この問題はやはりこれから一つの今後の課題として残っていくような気がいたしますので、十分気をつけて、そういう報告義務違反等があったことについても御報告をいただきまして、それが本当に適当であるのかということはフォローアップをしていただきますようにお願いを申し上げる次第です。  質問を移らせていただきたいと思うのですが、会社規模事業所規模によって報告義務というものが生じてくることになっておりますけれども、この点について、アメリカカナダの例をまた調べてみますと十人以上、日本の場合はこの法律案を読ませていただくと二、三十人規模ということになっていくように見られるわけでございます。  正確な化学物質データを集計するには、より細かくいろいろなところからデータを収集するということが必要になってくると思いますが、ここの点につきまして、一体この法案ではどのくらいの規模事業者あるいは会社対象にして行っていこうとしているのか。そしてまた、それが他の国々の状況と照らし合わせて妥当なのか。また、妥当であるならば、それはより踏み込んでいる法律なのか、それとも若干緩目の法律なのか、その点についての御見解を賜れればと思います。
  16. 河野博文

    河野(博)政府委員 政府におきましては、これまでに実施されましたPRTRパイロットプロジェクトですとか、あるいは化学物質取り扱いに関します実態調査などで、事業者化学物質取り扱い実態についてできる限り把握をしてきているつもりではございますけれども、この法施行に当たってすそ切りを決めるに当たりましては、さらに制度の開始前までにより詳細な実態調査を実施して、そのすそ切り基準を決めたいというふうに考えております。  こうした調査結果を踏まえると同時に、御指摘になりましたように、欧米諸国制度の実績も十分参考にいたしまして、実効が上がるようなすそ切り基準を策定したいというふうに考えております。
  17. 石原伸晃

    石原委員 局長、具体的には何人程度事業者、あるいはどのぐらいの事業所、その辺についてもう少し細かく、欧米と比べてどうなのか、日本の方が進んでいるのか、それともちょっと引けているのか、賜れればと思います。
  18. 河野博文

    河野(博)政府委員 今申し上げましたように、政令の基準はこれからの検討でございますので、今私が断定的にこうだということをお答えできる立場にはないわけでございますけれども、御参考までに、環境庁パイロット事業では、物によりまして百人または三十人。それから、御指摘のように、アメリカカナダでは十人。  しかし、人数だけではなくて、取扱量ども参考にしながら決めているというのが実態でございます。また、我が国のいわゆる小規模企業の定義では、これは中小企業基本法でございますけれども、二十人というのが一つのメルクマールになっているというような数字もございます。この辺を念頭に置いて決めていくのではないかというふうに考えております。そういう数字念頭に置きますときに、諸外国に比べて遜色のあるものだとは思っておりません。
  19. 石原伸晃

    石原委員 限られた時間で、実は民主党の方の対案も出ているわけでございますけれども、ちょっと時間がないので今回は質問ができないことを、佐藤先生、申しわけないと思っております。  最後大臣に御所見をお伺いしたいのですが、環境庁の、昨年ですか、つくられたこのパンフレットの一番最後のところに、「PRTRはこれから育てていくシステムです みんなでよりよいシステムをつくりましょう」こうおっしゃっているわけです。民主党の方の案も私は実は拝見させていただいて、なるほどなという部分もありますし、ちょっと目指しているベクトルが違うんじゃないかというようなところもありますが、いい部分も多々あると思うのです。そういうものを取り入れられるところは十分取り入れていただき、みんなでよりよいシステムをつくっていっていただきたい。  まさにこのパンフレットに書いてあるとおりであると私は思いますので、最後大臣の御所見を賜りまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
  20. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 先生、先ほど来からお話しいたしておりますように、PRTR法案というのは初めて作成するわけでありまして、最初から完璧なものがないわけであります。それでは先進国を見習ったらどうだという意見もあるわけでありますけれどもアメリカにいたしましても、また欧米諸国先進国にいたしましても、その国内体制相違があるわけでありまして、国情に沿った形でこの法案作成していかなければならない、私はこう思っておるわけであります。  そこで、PRTR法案にいたしましても、環境に対する有害特定物質がどの程度になるかという数の問題にもやはり相違があると思うわけでありまして、まず最初は、二、三百種類のところを対象にしてやっていきたいなと思っておるわけでありますし、またその中におきまして、新しい化学物質等も排出してくるものと思うわけでありまして、その都度、その時代に即応した体制をしいていかなければならないと思っておるわけであります。  いずれにいたしましても、この法案作成に当たり、また運用に当たって、さすがは日本PRTR法案だという称賛がいただけるように努力してまいりたいと思っておるところであります。
  21. 石原伸晃

    石原委員 これで終わります。大臣、頑張ってください。
  22. 古賀正浩

  23. 中山義活

    中山(義)委員 私は、今回補欠選挙で当選をしてまいりました中山義活でございます。  石原さんが今質問した後なので、たまたま私ども鳩山邦夫が、自然との共生ということで選挙を戦ってまいりました。私が質問したいのは、自然というものといわゆる経済というものは決して対立した概念ではないと思うのですね。ともに共生をして一緒にやっていくことがすばらしい経済発展につながると思うのです。  よく、エコロジー・イズ・エコノミーというような言葉もありまして、環境問題を大切にしながら経済発展させていく。つまり、商品をつくるときに、コストだけ下げればいいのだというのではなくて、そのコストの中に自然保護が入っているというようなことを考えなければいけないのではないか、このように思っているわけで、満を持してこの法律案ができたわけでございます。  多くの国が、日本の国は何を考えているのだろうと。一生懸命経済を立て直しながら、しかも国民の健康であるとか、または生態系であるとか、環境問題、こういうものをしっかり考えているのだ、こういうようなことを見ていると思うのですね。そういう意味で、まず環境庁長官、この辺について意気込みを聞かせてください。
  24. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 日本はかつて経済大国ということで、バブルの絶頂期が一九九二年前後にありました。その当時は、まさに大量生産大量廃棄という概念でもって事の処理に当たったわけでありますけれども、それが大変な公害をまき散らした結果になったわけであります。  しかし、公害対策を講じていく中に、スピーディーにその対応策が講じられたわけでありまして、日本公害対策というのは範たるものだという国に相なったわけであります。  しかし、環境との共生ということにつきまして、いま一つ理解が遅かったわけでありますけれども、今日になりましてその点に気がつきまして、環境共生の中に持続的発展を遂げていく経済体制ということを合い言葉にして、今日、日本経済とそして環境共生が図られておるわけでありまして、ぜひそういう体制の中に各国から畏敬される国になっていかなければならない、こういう意気込みでございます。
  25. 中山義活

    中山(義)委員 今の環境庁長官意気込みを聞いていますと、やはり本当は、この問題を全部所管するのは環境庁長官がしっかり所管していく方が望ましい、私はこんなふうにも今感じました。本当は通産大臣にこれを答えてもらいたかったのですが、今いらっしゃらないので、環境庁長官に答えてもらいましたけれども。  私どもは、例えば日本の国だけが環境を守っても、よその国が環境を守らなければ全般的には環境というのは破壊されていくと思うのですね。例えばアマゾンの熱帯雨林がどんどん刈られていく、これはアメリカ環境にも関係あるわけですね。そういう面でも、今回、OECD勧告によって日本の国が世界に先駆けてやるというならわかるのですが、大分おくれてやるわけですから、相当充実したものが必要だというふうに思うのですね。世界各国に、さすが日本だ、こう思わせるようなものでなければいけないと思うのです。どうも私ちょっと、主務大臣報告するとかなんとかで、所管大臣がいわゆる事業者把握していくために何かやっているような、そういう法案にもとれるわけですね。  本来、情報というのは、国民そしてまた事業者、消費者、それから自治体、多くの方たちがその情報を共有していく。その中で、モニタリングを初めとして、国民の中から事業者を監視していく、こういうような制度が一番望ましいと思うのですが、環境庁長官と、民主党の案も御説明いただきたい。よろしくお願いします。
  26. 近藤昭一

    近藤議員 民主党近藤でございますが、民主党の案について、今御質問の点についてお答えをしたいと思います。  まさしく私たちの国であり、私たちの環境であります。そういう意味で、私たちの民主党案というものは、とにかく、自分たちの健康、あるいは私たちが住むこの国、町の環境をどういうふうに守っていくか。そして、その守っていく主役は市民であるということが大前提であります。そういう意味で、情報はまさしく私たちのもの。  この法案の趣旨といいますのは、いわゆる環境汚染物質に対する十分な情報、そしてまた知識を得ることによって、それを私たち市民が得ることによって、環境リスク、まさしく環境問題で昔からは予想だにしなかったような問題が、環境ホルモン、ダイオキシンなどもそうだと思いますが、そういった予想だにしなかったようなことが出てくる、そういったことに対するリスクをいかに軽減をしていくか、そういったことであります。それはもちろん行政も責任を持つことでありますが、まさしくその一番大きな影響を受ける、それが市民になって監視をしていこうということが大きな趣旨であります。  そういう意味で、情報はできるだけ広く国民に浸透しなければなりません。ですから私たちは、企業秘密、こういった問題は除きまして、個別の情報最初から開示をしていく。そしてそれも、インターネットという今大変にいい方法、お金もかからなくて大変簡単に情報を取り出せる、そういう方法もあるわけですから、インターネットによって公開も義務づける。また、そういった情報をなるべくほかの方法でも利用しやすいように、市町村、都道府県あるいは国においてもそれぞれ情報を公開していくということであります。  ちょっと読まさせていただきますが、第三条において「化学物質による環境の汚染により生ずる人の健康に係る被害及び生態系への影響について国民が正しく認識することが現在及び将来の国民の健康かつ安全で文化的な生活の確保を図る上で不可欠であることにかんがみ、国民は、化学物質環境への排出量その他化学物質による環境の汚染の状況等に係る十分な情報提供を保障されるものとする。」ということを入れまして、情報公開、これが大変大切だということをうたわさせていただいております。
  27. 中山義活

    中山(義)委員 今のお話のように、この法案というのは、民主党案としてはあくまでも情報を公開していくんだ、情報公開法に近いんだというような理念があると思うのですね。  しかし、通産大臣、ちょっと今回の法案は、法律案の名称を見ても、何か、化学物質の状況を両所管庁が把握して管理するのが主眼ではないかというような感じもするのですね。つまり、お役所が事業者管理して、事業者の方はどうしてもお役所の顔色を見ながら何かやっていくというような一つのかかわりを事業者と所管庁と持っていく、そういうようなちょっと閉鎖的な感じもするのですが、そんなことはないでしょうか。
  28. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 先般、まず国会で情報公開法が長い間の審議を通じて成立をいたしました。したがいまして、この問題とは直接関係ございませんけれども、国の行政機関が持っております行政情報というのは、一定の条件のもとで、すべて国民に公開をする。国民に公開するばかりでなく、世界じゅうの何人にも公開するという制度を導入したわけでございます。  したがいまして、もちろん法律が直接これとかかわりがあるかどうかということは別にいたしまして、全般、日本の行政機構が持っている情報公開に対する姿勢というのは積極的に国民情報を公開するということでございまして、情報公開をためらうような姿勢なのかどうかという御質問の趣旨であれば、それは違うということでございます。  化学物質環境保全対策というのは、化学物質管理促進と一体として行うことが効果的であると我々は考えており、このような観点から、本法案作成に当たっては、環境保全対策を所掌する環境庁と、化学物質管理を所掌する通産省とが一致協力して取り組む、そうでなければならないということで、本法案お願いしているわけでございます。
  29. 中山義活

    中山(義)委員 今の通産大臣の答弁でございますが、民主党案では、何か今の答えに対して批判がありましたら、ちょっと言ってください。
  30. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)議員 提出者の佐藤謙一郎でございます。  先ほど通産大臣からお話がございました情報公開法についてでありますけれども情報公開法はあくまでも有料でございます。そしてまた、請求ベースでそうした情報をとるという枠組みでありますけれども、私どもが対案として今回提出しております法案は、これはあくまでも、有料制ではなくて、すべての人にひとしく、情報というものを国民のものとして考えていこう、そういう思想から成り立っている法律であります。  したがって、インターネットによる情報提供の義務化ですとか、それから、そういう意味では、無料で国民提供するというよりも、国民自身が持っている情報という発想からスタートしておりますから、情報公開法とは、私ども言葉では情報公開という言葉を使っておりますけれども、一歩進んだ本当の意味での情報公開に近いのではないかと考えております。
  31. 中山義活

    中山(義)委員 情報はだれのものか、こういうところで今まで論議をしてきたわけですが、もう一つ情報が、いろいろな情報が垂れ流されて、間違って不正確な情報が伝わると大変怖いということがあると思うのですね。そういう面で、ある程度情報は何でもかんでも出すというものではない、こんなようなことを先ほどちょっといろいろお話があったようでございます。  この間、四月二十九日に「ダイオキシン測定事業で談合」なんというようなことが新聞に出ていまして、このダイオキシンの問題についても、どの程度が非常に国民に影響を与えるのかとか、どの程度が住民に影響を与えるのかとか、こういう情報が正しく伝わっていないために、テレビ朝日でやった番組で大変大きな問題になりましたね。  一つは、汚染されているものが野菜だったかお茶だったか間違えたという、テレビ局側の大変大きな間違いがあったのですが、これは大変大きな影響がありましたね。最後に総理大臣がホウレンソウか何かを食べて、それで国民を安心させた、こういうことですけれども、もっと本当に客観的なデータというものが国民に知らされなければいけない。  こういう面におきまして、正確性について環境庁長官はどういうふうにお考えになっているのでしょうか。
  32. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 情報は公開していかなければならないことは言うをまたないわけでありますけれども、それがいかに正確性を持っておるかという認識を問い続けていかなきゃならないと思っています。  先般の埼玉のホウレンソウやお茶の件にいたしましても、安全基準値というのがまちまちであったわけでありまして、WHOの数値にいたしましても、十ピコグラムになってみたり、また環境庁の数値のように五ピコグラムになったり、いろいろするわけでありますけれども、その基準値というものも人それぞれによって違ってくると思うわけであります。  食品の中から吸収するということになりますと、安全基準値というものが、毎日とる量と毎週とる量と毎月とる量、その集合によって変化があるわけでありますから、その変化の中においても、この基準ならば安全だという数字だけはしっかりと出していかなければならないと思っておるわけであります。  そうすることによって、国民の食生活の面においても、またダイオキシンの摂取量においても、おのずから限度というものが示されてくる、こう思っておるわけであります。
  33. 中山義活

    中山(義)委員 民主党案では、今の情報の正確性という点では、どのようにとらえているのでしょうか。
  34. 近藤昭一

    近藤議員 まさしく、データが正確であることが大変に重要なことでありまして、私どもといたしましては、中小企業に対するきめ細かな対応により未然にデータが不正確になることを防ぐことが必要だというふうに考えております。  そのために、データ提出先をまず市町村にいたしまして、現場レベル、なるべく排出しておるところに近いところできめ細かな対応をしていこうというふうに考えております。  また、データの正確性を担保するためには、事業者に帳簿の備えつけを義務づけするとともに、虚偽の届け出に対する罰則政府案よりも強くしているということであります。
  35. 中山義活

    中山(義)委員 今、市町村という話がありましたけれども、一番身近な自治体であるということは間違いありません。しかし、先ほど参考人のいろいろなお話を聞いていますと、若干、市町村ではちょっと対応できないんじゃないかという話もありましたね。私どもは、都道府県ぐらいがどうかなと思うのですが、民主党案の中で、市町村がいいのか都道府県がいいのか、この規模については論議はなかったのでしょうか。
  36. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)議員 私も先ほどの参考質疑質問をさせていただいたのですけれども、この法律、とりわけこのPRTR制度というのは、まさに生産点から生活点へ大きく場を広げる、そういう意味があろうと思います。  そんな中で、業所管官庁が届け出先になる政府案に対しまして、私たちは、地域のリスクコミュニケーションによって、上からではなくて、情報を共有しながら新しい有害化学物質を地域から少しでも低減をしていくという、そうした目標に向かってリスクコミュニケーションを有力な武器にしていこうということでありますから、業所管官庁中心の今までの管理、規制という手法から、地域というものを大切にした、市町村を母体にした、そうした地域での取り組みが必要であろう、そういうふうに考えてまいりました。  実は、私ども法律をつくり上げる過程において、市町村にはなかなか化学物質の専門家が乏しくて、また企業秘密の判断も難しい、そうした声があることも承知をしながら議論をしました。そんな中で、あくまでもこうした問題を今から三千三百の市町村が学習をし、そして地方分権のための核になる担い手としてどれだけ成熟していけるか。まさにこのPRTR制度は、それをきっかけにして地方分権を大きく前に進める可能性があるだろうというふうに私どもは考えてきたわけであります。  しかも、もしも市町村レベルで企業秘密等々の判断に批判、不服がある場合には、不服に対する申し立て制度を私ども大変いろいろな形で幾層にも取り上げておりますから、都道府県や国に対して不服審査をしていくことができるというような形で、市町村の判断を補っていくことができるというふうに考えております。  いずれにしても、都道府県がいいのか市町村がいいのかという議論は、私どもは市町村という結論を出させていただきましたけれども、今後の審議の中で大いに議論をしていただければというふうに思っております。
  37. 中山義活

    中山(義)委員 市町村に報告する、または国に報告する、どちらにしても柔軟な対応が必要だと思うのです。  今、石油化学というのはどんどん発達して、ある時期には、もう一日のうちに何百ものそういう化学物質ができてくるというような時代もありまして、だんだん広くなって大きくなっていくと思うのです。何か日本だけでも十万ぐらいの種類の特定化学物質があると言われておりまして、今後柔軟に対応するためには、十年という幅はちょっと長過ぎるのではないか。五、六年の間にある特定化学物質が出てきたら、やはり未然に事故を防止するためにもっと早く柔軟に取り上げたらいいのではないか。  この十年という長さはちょっと長過ぎるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  38. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  PRTR制度自体の見直しにつきましては、実際の制度運用の経験を十分踏まえて行う必要があると考えております。本法案では、周知徹底のために二年程度準備期間を実質的に置くことになっておりまして、私ども、十年といっても、PRTR制度が本格施行されてからの年数はそれだけまた少ないものになっているということが、まず一点申し上げたい点でございます。  また、このことは、制度の施行状況を見て、実際の運用に問題があっても施行後十年を経なければ見直しをしないというものではございませんので、逆でして、問題がなくても十年後には当然見直しをするという規定なのでございます。  なお、さらにつけ加えさせていただきますと、実は私ども、今、物質につきましては、十八条にも「政令の制定又は改正の立案をしようとするときは、」という規定がございますように、十年待つということではなくて、科学的な知見の集積をまちまして、物質の対象をふやしたりしなければならぬということになれば、迅速に政令を改正して対応していきたいと考えております。
  39. 中山義活

    中山(義)委員 たしか、この法案の趣旨は、国民の健康であるとか、生態系であるとか、または環境破壊であるとかということを未然に防止しようという意味合いがあると思うのです。そういう面では、できるだけ柔軟に早く対応していかなければやはり間に合わないと思うのです。  そういう面で、民主党案としては、柔軟な対応の仕方についてはどういう配慮をしていますか。
  40. 近藤昭一

    近藤議員 まさしく時々刻々と、本当に予想もしなかったような危険性を持つ物質が出てくるということがありますので、私どもとしては、先ほどもお話ししましたように、まず情報公開をとにかくやっていく、情報国民の皆さんが手に入れやすいようにしていく、その中から、いろいろな批判といいますか、その制度に対するお声をいただきながらやっていく。  ただ、見直しにつきましては私ども附則の第三条において書いておるのですけれども、「政府は、この法律の施行後七年を目途として、化学物質による環境の汚染の状況等を勘案し、この法律による制度全般について検討を加え、その結果を公表するものとする。」ということであります。それによって、七年ということでありますが、担保していきたい。  PRTRシステムをつくっていく中でのOECD勧告の原則があるわけでありますが、とにかく、実施途中の評価を可能にし、必要性の変化に応じて、関係する団体、そしてまた害があるかもしれないという国民の皆さんによる変更がまさしく可能な、柔軟性をなるべく持たせていきたい、そんなふうに考えております。
  41. 中山義活

    中山(義)委員 とにかく、未然に防止するわけですから、早目早目と疑わしいものはある程度どんどん柔軟に対応していくということが望ましいと私は思いますので、民主党案はそういうところを配慮しているのだ、このように思うわけです。  あともう一つ、先ほどOECD勧告の中に、この法案をつくっていく過程も透明性を持たなければいけないというようなことがあったやに聞いております。先ほど環境庁長官の意欲ある答弁を聞いたものですから、環境庁長官が一元的にこの問題について管理していくのが本当は一番望ましいと私は思うのですが、この法案作成の過程に、各省庁間でいろいろ覚書があったり、また業者と所管庁と話し合いをしたのではないかとか、業界の団体と話し合いをしたのではないかとか、何か私どもこんな疑いを持ってしまうのです。  たまたま佐藤委員の本会議での質問のときにいろいろな答弁が出ていて、さらにこういう覚書等も私いただきました。これを読んでいますと、若干そんなことがあるのかなというようなところも幾つかあるわけです。そういう面で、この法律作成する過程で、もっと透明でなければいけなかったのではないか、この覚書について何かおかしなことがあるのではないかという気もするのですが、その辺はいかがでしょうか。
  42. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 間違っていただきたくないのは、法案作成しているのはこの国会でございます。法案提出するに当たってこれらの事項に関連する関連業界、企業等々の意見を聞くというのは半ば当然のことでございまして、それをもってして透明性に欠けていると言うのは、その批判は当たらない。むしろ、皆様方の質問や、あるいは民主党の対案によって透明に法案作成されているわけですから、そのような批判をするということは国会議員がみずからの存在を否定することに私はなるのだろうと思っています。
  43. 中山義活

    中山(義)委員 そういうような答弁が返ってくるとある程度は予想はしておりましたけれども。実は、こういういろいろな覚書があるということは事実なのですね、こういうのが。ですから私どもは、そこで話し合いがされていて、むしろ国会で論議する前に業界や何かといろいろな話をして何か決まっていったような、そういう感じがするわけです。  よく、政官財の談合三兄弟だとかなんだとか前に新聞に出ていて、そういうことを一般の国民が考えているのではないかと思ったのであえて私は言ったので、国会議員としては当然国会を軽視してもらっては困りますし、やはりここで法案として出てきて、我々がしっかり審議をして、その結果が、法案が初めて世に出ていく、こういうことだというふうに思います。  そういう面で、私どもは今回の法案について、本来であれば環境庁が一元的に何でもやっていった方がいいのではないかと思っているのは、そういうところにあるわけです。ですから、環境の問題なのですから、業界や何かと全然関係がないのは、透明性という意味では、環境庁長官が一番そういう面では一元的にできるのではないか、そういうふうに思うのですけれども環境庁長官、その辺はどうですか。
  44. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 化学物質の問題につきましていろいろな情報提供を願うのは、私は、従来の省庁からいって通産省だ、こう思っておるわけであります。今回のPRTR法案につきましても、通産省の協力、そしてまた環境庁のイニシアチブを、いろいろな面で整合性を図ってきたわけでありますけれども、多くの示唆をいただいて、そしてここに提出法案ということに相なったわけであります。  幾ら環境面の負荷を少なくする法案だといっても、環境庁一省ではできる問題ではありません。ですから私は、通産省環境庁が一緒になって力を合わせてOECD勧告を受けた立派な法案をつくっていきましょうということで努力をいたしておるわけであります。ですから、業界との癒着とか変な勘ぐりは絶対しないようにしていただいて、ここの場でしっかりした審議をして、そして立派な法案をつくっていきたいと思っておる次第であります。
  45. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 以前ですと縦割り行政でございましたけれども、今政府が扱っている問題あるいは国会で扱っている問題は、一省の縦割り行政の中になかなかおさまらない問題が数多く出てきた、そういう時代になったと私は思っております。今般の行政改革の理念も、やはり、所管庁を大ぐくりにして、なるべく、各省の縦割り行政といって余り細分化しているものをもう少し統合しようという思想が入っております。  今回のPRTRも、どこの官庁が所管をするのかという縦割り行政的な考え方ではなくて、やはり複数の官庁が関係する問題については複数の官庁が、今までの縦割り行政的な縄張り意識を持った考え方を捨てて、省庁間で協力しながら国民の生活や健康のために努力をしていこうということで、先生の御質問を聞いておりますと、あたかも従来型の縦割り行政を容認するような御質問のように聞こえましたので、念のため御答弁申し上げる次第でございます。
  46. 中山義活

    中山(義)委員 実は私は大臣がいないときにエコロジー・イズ・エコノミーという話をしまして、いわゆる環境対策そのものがこれから経済対策になっていくんだと。東京の場合は、公害対策、条例とかいろいろやりましたね。公害を厳しくやることによって新たな、科学技術であるとか、またはいろいろな技術が生まれてきたのです。今でも、環境を大切にすることによって、ハイブリッドカーであるとか、新たな技術が生まれてくると思うのですね。  そういう面では、まさに大臣の言ったように、縦割りではなくていろいろ横とも考えていただきたい、こういうことだと思うのです。しかも、やはり商品をつくっていくときに、その商品の値段の中に環境を守っていくというコストが内在していなければいけない、そういう時代だと思うのですね。  そういう面で、私どもは、今度の法案というのはまさに環境庁通産省の合作ですばらしいものができればいいな、このように思っているわけで、若干、私どもの疑問がある点は民主党法案作成者からちょっと、もし今通産大臣の答弁に批判があれば言っていただきたいと思うのです。どうでしょうか。
  47. 近藤昭一

    近藤議員 批判と申しましょうか、まず、ちょっと戻りまして、先ほどの覚書のところからお話をさせていただきたいわけでありますけれどもOECDの原則には、とにかく、PRTRシステムを構築する全過程及びその実施、運営は、透明かつ客観的であるべきであるというふうにされているわけであります。そういうことでありますと、省庁間で覚書がなされていること、これはいかがなものかなと思うわけでありますし、今回のPRTR法案政府案を見ますと、大変に根幹的な問題で問題があるのではないか。  つまり、このPRTR法案の一番の大事なところというのは、やはり一般のというか、生活する国民が汚染物質について知る、その情報によってリスクを避けていくということだと思います。そういった意味で、健康あるいは環境を守るということが一番大きな根幹になってくると思うわけでありますが、どうも与党案を見ておりますと、どちらかというと、事業者による管理活動を改善強化し環境の保全を図るため。環境の保全を図るためという目的は出ているのですけれども事業者による管理活動を改善強化する、こういう手法が書いてあるわけでございまして、ここのところは、やはり根幹的に大きな問題があるのではないか。  そしてこの点が、縦割りがすべて悪いとは申し上げませんけれども、逆に言いますと、それぞれの省庁がこのPRTRの窓口をつくる、それぞれが活動するように一元的に、目的からしても環境庁が一括してやっていく、その方がいいと思います。
  48. 中山義活

    中山(義)委員 ただ、今言ったようにいろいろな所管庁がありまして、報告するところがうんとありますと、商売とかまた工場によっては、やはりいろいろなものに関係しているということがあり得ると思うのですね。例えば、通産省にも関係しているし、農林省にも関係しているし、ほかの省庁とも関係しているかもしれない、そういう業態というのはうんとあると思うのですよ。そういう面で私は、環境庁長官が一元的に報告を受けてやった方が、国の場合だったらいいのじゃないかと。  私は、これは国が受けた場合を言っているのです。国が受けた場合はやはり一元的な方がいいのではないか、こういうふうに思っているのですけれども、再度お願いいたします。恐らく業態によってはかなり幾つも、農林省と通産省とか、あると思うのですね。私はそういう業態もいろいろ知っておりますし、その辺で、環境庁長官、どうですか。
  49. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 省庁の多元性からいって、それを二つにまとめるだけでも大変なわざだと私は思っておるわけであります。  ようやくにして、通産省環境庁が一緒になってという法案作成にこぎつけたわけであります。最初から一元ありきというような考えでなくて、そういう二元性を持った中にも一元的な色彩を帯びてくるというのが理想的なこれからの処理方法ではないだろうか、こう私は思っておるわけであります。  いろいろな先生方の御指導をいただきながら、そういう面でいい体制ができればと思っておる次第であります。
  50. 中山義活

    中山(義)委員 今回、そういう意味でいろいろ、縦割りじゃないということで対象物質なんかもかなり、私どももこれは入っていいのじゃないかなというふうなものも入っていなくて、恐らく環境庁長官としては、これは当然入るべきだと思うものが入らなかったりしたこともあったのではないかと思うのですね。  例えばダイオキシンの問題なんかもそうなんですけれども、これははっきり、それ自身の法律ができれば、その法律をつくればいいのでありますが、その前の段階で、やはり疑わしいものが相当あるわけですね。  対象物質について、今回、何か非常に限定されたような気がするのですが、もっと幅広くとらえた方がいいのじゃないかと思うのです。それについてちょっと、まず民主党案から聞かせてください。
  51. 近藤昭一

    近藤議員 繰り返しになるわけでありますけれども、とにかく、本当に環境、健康を守るためにリスクを低減するということが第一の目的であります。そういった意味で、科学的な知見が十分に確立していない物質についても、社会的な不安のあるもの、そういうものについては積極的に定めるべきであろう、そういうふうに私ども民主党案では考えております。  ですから、第三十六条におきまして「環境の保全に係る化学物質管理についての国際的動向化学物質に関する科学的知見化学物質の製造、使用その他の取扱いに関する状況等を踏まえ、化学物質による環境の汚染により生ずる人の健康に係る被害及び生態系への影響が未然に防止される」未然にですね、「未然に防止されることとなるよう十分配慮して定めるものとする。」ということでありますし、また、その対象物質の選定において、その手続、どういったものを対象物質とするか、その透明性を確保するために、政令案を公告縦覧に付し、国民の皆さんから広く意見を求めて、その意見をもとに中央環境審議会において議論を行っていくということを定めております。
  52. 中山義活

    中山(義)委員 今いろいろ、どういうふうに選定していくかという問題で、先ほどお話ししましたように、満を持してできた法律案ですから、ほかの国に先駆けてやっていくためには幅広く対象物質を広げていった方がいいのじゃないか、こう思うのですが、諸外国ではこういうものはやはり所管大臣の方にみんな届け出るようになっているのですか。
  53. 河野博文

    河野(博)政府委員 お答え申し上げます。  諸外国の行政組織も、必ずしも日本とすべてが同じではございませんのでいろいろあるとは思いますけれども、本法案のように届け出先を所管大臣としている国があるというわけではございません。しかしながら、PRTR制度は、国によっても異なっているという面があると思っております。  しかし、化学物質といいますものは有用な基礎素材でありまして、多岐多様な形で用いられるものですので、事業者の生産活動に化学物質管理をビルトインするということによって初めて環境保全上の支障の未然防止が効果的に実現されるというふうに考えております。  そうした考え方に基づきまして、この法案では、事業者による化学物質管理改善促進することが環境の保全上の支障を未然に防止することにつながるものということを考えておりまして、環境保全行政を所掌する環境庁長官、そして化学物質管理を所掌する通産大臣、そしてそれに加えまして各産業を所管する大臣が一体となって、いわば政府一丸となってこの問題に取り組む体制とした、そういうことでございます。
  54. 中山義活

    中山(義)委員 時間がありませんので、最後にちょっと通産大臣にお聞きしたいのですが、先ほどお話ししたように、物を生産する、これは日本の場合は自由主義経済ですから、少しでもコストを安くしていい品物をつくろう、こういうときに、いろいろ競争があって、今までの一九七〇年から八〇年代ですと、買う方も、少しでも安いものを買おうという気があったと思うのですね。しかし昨今、国民の意識の中にも、例えば再生紙を使ったものを買ってみたり、環境にリスクを与えないものをなるべく買っていこう、そういう機運になっていると思うのです。  そういう面では、これから情報をどんどん公開して、国全体が環境を守りながら経済発展させていこう、こういう二つの大きな目的がなければいけないと思うので、今回この法律案をつくったに当たりまして、その運用の意欲と、それからこの法案をもっともっと先に、直すところは直してやっていくんだ、こういう意欲をひとつぜひ御答弁いただきたい、このように思うのです。
  55. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 日本の過去の経済を考えますと、環境問題にまだ十分意識が目覚めていない時期に、有機水銀中毒とかカドミウム汚染とか、大変悲しむべき体験をしたわけでございます。それと同時に、環境問題は実は世界的な問題でございまして、やはり地球環境という言葉が使われているとおり人類全体の問題でもありますし、また、日本人の国民生活、国民一人一人の健康の問題でもあるわけでございます。したがいまして、企業も政府も、環境や健康ということには政策立案の段階で以前よりははるかに注意深く慎重に対応しているということは、多分おわかりいただけると思います。  そこで、リストにどの物質を載せていくかという問題があります。それは、科学的知見という完全に確立した考え方もありますし、科学的知見が完全なものではなくても、これをどうするかというのは将来の判断の問題だろうと思いますが、我々は、その危険なものについて逃げることなく真正面から科学的に知見を深めていくという姿勢を持つべきでありますし、科学的知見が出れば当然のこととして対象物質に加えていく、そういう姿勢が当然のこととして必要であると私は思っております。
  56. 中山義活

    中山(義)委員 最後に、日本の国がしっかり環境に配慮した、そういう経済体制といいますか、世界環境日本が守っていくんだ、ひとつこういう意気込みお願いをいたしたいと思います。  質問を終わります。
  57. 古賀正浩

    古賀委員長 小林守君。     〔古賀委員長退席、北橋委員長着席〕
  58. 小林守

    小林(守)委員 民主党小林です。  中山委員に引き続きまして、政府案とそして民主党案、対峙されておるわけでありまして、このPRTR制度についての国民的な関心を盛り上げていくためにも、できるだけ、法案の性格や骨子、それが浮かび出るような観点に絞って質問させていただきたい、このように考えておるところであります。  九二年の地球サミット、リヨンにおけるサミットにおきまして、アジェンダ21が採択をされました。この第十九章にある、化学物質に対する情報提供システムを、データベースをつくるべきだ、そして広く国民の共有のものとして定着をさせていくことが、化学物質の有害性を、環境負荷を低減していく最大の有効な方式である、こんな提言がなされたわけであります。これを受けまして、九六年のOECD勧告があったわけであります。OECDの十四原則とかガイダンスマニュアルども示されておるわけでありますけれども、これらの原則やマニュアルに沿って、もちろん、当然のことながら日本の事情も踏まえながら法案がつくられてきたものというふうに思います。  全体的にこの政府法案を見ていきますると、どうも、省エネルギー法のときに見せた通産省のトップランナー方式、これを私は大変すばらしい発想だと思いますし、また、その方式で科学技術立国として厳しい環境基準というか、公害規制も含めたそういう厳しい規制をクリアしていく、技術革新を求めていく、これこそ日本が二十一世紀に向かって技術立国として生きていく道ではないのか、そのように省エネルギー法の考え方には賛成をしておったわけなんですけれども、このトップランナー方式という視点を、やはり環境基準についても当然当てはめていくべき問題ではないのかな、私はこのように考えているわけであります。  そういう観点から見るならば、いわゆる対象物質とか対象事業者とか、さらには公開のシステム、これらについても、先進のアメリカやEUその他の国の制度と比べて非常におくれをとっているのではないか、甘んじているのではないか、こんなふうに思えてならないわけであります。  特に、OECDの十四原則、理事勧告などを見ても、地域の市民の知る権利ということをしっかりと踏まえたデータベースをつくるんだ、その利用のシステムを考えるんだということも言われておるのですけれども、例えば、知る権利という観点に立って見るならば、政府法案は、個別企業のデータについては基本的には請求開示方式をとっているということですね。しかし、アメリカなどでは、もう個別企業は全部データベース、インターネットで即時に見られるというようなシステムになっております。  それから、このOECDの原則の中にも、データの正確性を確保することが最大の命だと言われておりますけれども、そして、そのことが環境リスクの削減につながるんだということなんですけれども、そのためには、住民に身近な、地域社会に身近なところにある自治体の役割が極めて重要だ、こんなことも勧告されておるわけであります。今日の政府法案ではそれがちょっと、その趣旨には沿っていないのではないか、こんなことも強く感じます。  それから、対象物質の範囲についても、柔軟な制度の枠組みがないのではないか。かつての規制法、個別的な有害化学物質に対する規制法の限界を超えていかなければならないのがこのPRTR制度なんだと思います。ところが、どうも政府法案については、化審法の考え方に沿って、いわゆる科学的に有害性が立証されたものしか規制できないという限界を超えていないのではないか、影響が残ってしまっている、こんなことで、OECD勧告はしっかり受けとめていないのではないか、このようにも思えてなりません。  それから、企業の秘密についても、もちろん企業秘密については厳正にチェックをする必要があります、守る秘密はあるのですけれども、統一的な基準を、そして不服審査のシステムを担保していく、こういうことがないと、やはり省庁間、縦割りの弊害が出てしまうのではないか、こんなこともこの法案では見受けられます。  私は、さっきも言ったように、対象物質や対象事業者や、さらにはその公開のシステムについてはトップランナーでやるべきだ。そういう観点に立つならば、OECD勧告政府案はしっかりと受けとめていないのではないか、このように言わざるを得ないわけであります。そういう点で、政府案と対案である民主党案、それぞれについて総体的な評価、考え方を示していただきたいと思います。
  59. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 私ども、これはよくできた法案だと思って皆様方に審議をお願いしているわけでございます。国民の声を聞きながらやるというのは民主主義の手続としては当然のことでございますが、憲法には、国民は正当に選挙された議員を通じて行動するということが書いてございますから、先生がまさに国民の代表であるわけでございますから、先生意見国民意見として我々は素直に、率直に聞かなければならないという立場でございます。  かてて加えまして、この種の問題は、科学の専門家、環境問題の専門家等の意見も聞くという手続もまた必要だということは、先生は御理解をしていただけると思います。かてて加えまして、今はパブリックコメントという制度ができまして、国会あるいは審議会のほかに、国民が直接物事に対してコメントできるという大変開かれた制度も導入されております。  そういう中で物事が決まっていくわけでございますし、また、対象物質を加える場合にも審議会等意見も聞きながらやっていくということで、行政が独善的になるとかそういうことには絶対にならないような仕組みが、法律自体の中に、また基本的には行政の物の考え方として情報公開を行うという、一般的にそういう制度に今変わりつつございますから、先生の御懸念は当たらないのではないかと思っております。
  60. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)議員 お答えいたします。  私どもは、今の時代を間接民主主義の機能不全の時代だというふうに考えております。  なるほどに私どもはこうやって国会議員として多くの人に票をいただいて選ばれてきているわけでありますけれども、政官財の癒着というものが激しく批判をされた時代を経て、いまだに国民の中に行政あるいは政治に対するいやしがたい不信というものが大変あるのだろう。そうであればあるほど、私どもが、李下に冠を正さず、瓜田にくつを入れずではありませんけれども、そうした国民との信頼性を取り結んでいく、そういうことが大事なのだろうと思います。  私どもが対案をつくったまず大きなきっかけが、OECD勧告でありました。内容と手続の両方について申し上げさせていただきますが、特に、OECD勧告附属書十三項に、目標、目的の必要性を最もよく満足するメカニズムについて、関係、関連団体と合意すべきである、各方面、市民グループも含め、そして業界もそうでしょうし、利害関係者との合意をしていくことが必要だということが書かれております。また、十四項には、PRTRシステムを構築する全過程及びその実施、運営は、透明かつ客観的であるべきだというふうにあります。こうした手続を、果たして今度の政府案はきっちりと踏まえていたのだろうか。  その手続からいいますと、去年の十一月の中環審の中間答申以来、閣議決定をし、提出をされたこの政府案は、その間の交渉あるいはその間どういうような議論がなされたかは一切非公開のままで、私どもには知らされていなかったという事実。そしてまた、市民グループを中心にして、まだ十分議論は尽くされていない、必ずしも理想的な内容にはなっていない、そうした声が世論満ち満ちているにもかかわらず、そうしたことをネグりながらこの法律案ができたこと。それに対する深刻な反省が私どもの対案に結びついたということ。  手続とは別に、内容的に言いますと、OECDの基本原則は、御承知のように、国民各層が情報を共有してリスクを削減するという大前提に立つわけでありますけれども政府案のどこを見ても、リスク削減という、そうした文言が見られないわけであります。  私どもは、「目的」の中に「化学物質環境への排出の削減を図り、」この文言を入れることがまずPRTR制度のまさに命であろうというふうに考えておりますし、それはそれぞれの条項に色濃く反映をされているわけでありますけれども、そうした意味合いが政府案には薄いのではないか。  さらには、OECD勧告附属書を踏まえて私ども作成しましたけれども化学物質の指定に当たっては、この附属書の四項にあります、人及び環境に潜在的な危害のおそれのある物質をできるだけ多く含むように私どもは設計をしてまいりました。具体的には、政府案にはない地球温暖化物質も対象になるようにいたしましたし、また、OECD報告書が強調している自治体、市民の参加にできる限り配慮をしたつもりでございます。  小林委員が先ほどお話をされたとおりでありますし、PRTRの基本的なねらいというものが、化学物質に関する情報を行政、事業者市民が共有して、お互いに協力し合って化学物質によるリスクを削減していくということ、そのためにリスクコミュニケーションという手法をとっていこう、自治体及び市民が積極的に関与できるようにしていく、そうしたことを私どもの対案の中に埋め込んだわけでありますが、これはOECDが一九九六年に理事勧告をされた内容に沿って、私どものこうした法律案に結びつけさせていただきました。
  61. 小林守

    小林(守)委員 政府案と対案の骨格的な違いのポイントが今示された、このように私は受けとめております。  先ほど通産大臣の方から、国民意見を聞く、国会議員の意見を聞くのも国民意見を聞くことだということでございます。そのとおりだとは思うのですが、例えば審議会意見を聞くといっても、関係三審議会になるのだろうというふうに思います。環境庁関係になろうかと思いますが中央環境審議会、それから通産省の関係になる化学品審議会、それから厚生省所管の生活環境審議会、こういう三つの審議会がございます。  例えば、対象物質について、国民の中から、世論の中からじわじわと大きく、ぜひこれは対象化すべきだというような声が上がったときに、当然、政府の手法としては審議会意見を聞くということになるのだろうと思うのです。ところが、では、三審議会がそろってそうだということになるならばいいのですが、三審議会がそれぞれ一致しないような場合にはどうなるのか、これをまずお聞きしたい、このように思います。  それから、もう一つ。先ほど、パブリックコメントの制度ができたということで、これはこれで評価していいと思うのですが、三月二十三日の閣議決定でその手続が定められたというようなお話、私もマスコミ、新聞等で読んだわけなんですけれども、このパブリックコメント制度について。今回の対象物質の政令化の過程の中でも当然取り入れて採用する、政省令の立案、対象物質の設定の中で、これからつくるわけでしょうから、今回も当然このパブリックコメント制度を導入して、即やっていくということになるのでしょうか。  この二点についてお聞きしたいと思います。
  62. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 まず、パブリックコメント手続ということについて御説明を申し上げます。  これは平成十一年三月二十三日に閣議決定をされたものでございまして、表題は「規制の設定又は改廃に係る意見提出手続」、これを略してパブリックコメント手続と言っております。  対象は、広く一般に適用される国の行政機関等の意思表示で、規制の設定または改廃に係るもの。  公表主体と公表時期は次のとおりです。本手続を経て策定する意思表示を行う行政機関は、最終的な意思決定を行う前に、その案を公表する。  次に、意見情報の募集期間。一カ月程度一つの目安として、公表時に明示。  意見情報提出方法。郵便、ファクシミリ、電子メール等の手段を公表時に明示。  適用日は、平成十一年四月一日以降の国の行政機関等の意思表示に適用。  これがパブリックコメント制度でございます。  今回の法案に関しまして、対象物質や対象業種の選定等、法の施行に当たっての政省令の立案に際しましては、ただいま申し上げましたようなパブリックコメント手続に従って、広く、国民NGO、産業界、学識経験者等の意見を聞くことにしております。
  63. 岡田康彦

    岡田政府委員 先生の御質問のもう一点の方の、審議会意見が違ってくるような場合どうするのだという御指摘の点がございました。  審議会では、化学物質の性状についての科学的知見及び化学物質の安全性の評価についての技術上の基準に関する内外の動向に配慮して、化学物質の性状及び取り扱い状況や、その環境中における挙動等の高度に専門的で技術的な事項について、科学的知見に基づいて審議されるということを期待しておるところでございまして、異なった結論が出るようなことは想定しにくいと思っておりますが、仮に科学的見解に差が存在するというふうな場合には、合同で検討を行うというようなこと等によりまして、専門家の間で科学的に議論を行うことにより調整を図ることが考えられます。  いずれにしましても、対象物質は政令で定めるということでございますから、最終的には政府全体として一本化が図られるというふうに考えております。
  64. 小林守

    小林(守)委員 それでは、もう一点。国と地方との関係という視点でこの法律を見ていきたい、このように思うのです。  OECD勧告などの中にも、やはり国レベルのデータの正確さ、精度の高さ、これを確保するには地方政府の関与が極めて重要であるということをガイダンスマニュアルの中で指摘しております。そういう観点に立って、さらにはさまざまなパイロット事業等の経験も踏まえて考えるならば、地方政府市民、自治体や市民役割は、極めて、このPRTR制度が成功かどうかを決めるポイントになるのではないか。  データは集まったわ、しかしほとんどが推計だったわというような結果になっては、これはもう失敗になってしまうわけであります。そういう点での正確さを、精度の高さをどう確保していくのか、これがこの情報の中身を決めていくことになるわけでありますから、そういう点で自治体、市民役割は極めて重要だし、このPRTR制度のかぎを握っている、このようにも思うわけです。  そこで、対象事業者対象物質についてやはりお聞きしたいんですけれども、この法律の中では、対象事業者については、一定規模以下についてはすそ切りをして、あとは推計をするんだというようなことになっております。しかし、それでいいのか。例えば百人規模事業所、三十人規模事業所というような切り方がある。しかし、先ほどのお話の中では、もっと細かく、精度を高めるためにも十人以上の事業所には報告義務をかけようじゃないかという国もあります。  私は、さっき言ったように、トップランナーでいかなきゃだめだということを訴えさせていただいたんですけれども、そういう点で、まあ仮に国レベルでは、ほかのいろいろな業務の関係、ほかの法律の関係からいってもどうしても日本ではこの辺が限度だというようなこともあろうかと思います。しかしそれは、自治体でやることについては結構ですよということはあっていいんだと思うんです。地方分権の趣旨からいっても当然のことながら、すそ切りされた部分については、自治体の方ではこのデータは地域の問題としてぜひ欲しい、単なる推計では困るというようなことが出てくると思うんです。  それから、対象物質にしても、これはいい例かどうかわかりませんが、例えば埼玉県ではこの問題が非常に深刻になってきているんで、国レベルでは対象物質ではないけれども埼玉県としては、所沢市としてはこの化学物質はぜひ指定しておいてほしいんだ、指定していきたいんだということの自治体の独自性。地域の事情を踏まえるならば、いい例ではないんですが、ほかの県や市の何かの事例のときにもそういうことはあり得ると思うんですね。  地域の特性、地域の事情、産業構造とか、そういうものもいろいろあろうと思うんです。そういうところには、政府では対象物質になっていないけれども報告対象物質として自治体で決めていきたい、こういうことも当然認められなければならないんだろうというふうに思うんですが、それについて、分権の視点も含めてお聞きしたいな、このように思います。  これは政府案と、対案の方の提出者の方でも、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  65. 河野博文

    河野(博)政府委員 お答え申し上げます。  すそ切りの件でございますけれども、先ほど石原委員の御質問にもお答えしたとおりでございますけれども、これから諸外国の数字ども勘案しながら最終的に政令で定めさせていただくことになるわけでございます。  例えば米国、カナダでは、十人が一つすそ切りでございます。ただ、同時に、取り扱い化学物質の量も勘案して、どちらかがその基準を上回った場合というような決め方になっているように思っております。我が国小規模企業の定義は二十人ということでございますから、企業としての負担能力と申しますか、そういった問題も考えなければならないだろうと思います。  そこで、これからそういったすそ切りを決めていくことになりますけれども、それを下回った企業の皆さんの排出量は、政府として推計によって日本全体の数字把握できるように、最大限の努力をしてまいりたいというふうに思っております。  そういった観点で、企業の負担能力なども考えて、非常に小さい企業の皆さんにどうするかということでございますから、もちろん地方の自治の原則がありますので、その範囲内で地方公共団体がどうおやりになるかという自由度はあろうとは思いますけれども、その辺の負担能力のことは、国でも地方でも両方一緒に悩み考える問題ではないかなというふうに思っております。  また、物質の指定でございますけれども、先ほど来の御議論のように、審議会の御意見も聞いて最終的に政令で定めるということでございますから、私どもとしては、あり得る最大の科学的知見をもって指定をするということになろうと思っております。また、今予期しております二百、三百というような数字の御説明もございましたけれども、これが国際的に遜色のないものであるというふうにも思われますので、地方自治体におかれましても、そういった国際標準といいますか、国際的に遜色のないレベルのものを尊重していただけたらなというふうに思うわけでございます。
  66. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)議員 ただいま御質問の件でありますけれども対象物質ですとかあるいは対象事業者につきまして政令で定める、そうした政府案があるわけですけれども、実はこの政令というのがブラックボックスになっていて、せっかくいい趣旨で法律をつくっても、それがなし崩しに国民から離れていくという経験を私ども何度もしてまいりました。  ついこの間、ダイオキシン緊急措置法を民主党提出したところでありますけれども、そこでも、政令で落とし込められる前に、我々は目標を法律の中に入れようという努力もしてまいったわけであります。私どもの対案の第三十七条には、「政令の制定」の中で、環境庁長官がそれを公告し、縦覧に供しなければならない、そして国民意見を広く受け取ろう、まさにパブリックコメントの先取りをこの法律で入れております。  そうしたことで、例えば対象物質ですとかそれから事業者すそ切りを初めとして、正確なデータが命であるにもかかわらず、そうしたものがどんどん希薄になっていくことを恐れておりますから、その辺をきっちりと私どもは担保するような、そういう法制度になっております。  それから、対象事業者につきましては、政府案と違って私どもは、すべての産業リストの中から、製造者と非製造業のすべての中から、ネガティブリストということで逆にすべてを対象にしたところからこの部分だけを外すという形で、かなり広範な対象事業者を確保したつもりでございます。
  67. 小林守

    小林(守)委員 先ほどの環境庁の方の答弁については極めて遺憾だと思います。  本当にPRTR制度を、官製のものではなくて市民がしっかりとこの問題について取り組んでいこう、国民的な課題として定着をさせていくんだ、環境リスクを削減していくんだという視点に立つならば、国で決めた一つの枠組みについて、いや、この地域ではぜひこういう問題が想定されるんだ、科学的知見の問題はあろうかと思うんですけれども、その地域性とかそれからすそ切りの問題について、先進的な自治体がしっかりとやっていくというところを抑え込むような発想は決して認められない。  もう一回答弁を願います。
  68. 河野博文

    河野(博)政府委員 先ほど申し上げましたように、すそ切りにつきましては、企業の負担能力も含めて考えて政令で定めるということになっておりますし、そのプロセスにおいて、先ほど大臣も御説明申し上げましたように、パブリックコメントなどなどの透明性のある手続を経てやっていくということでございます。  もちろん、先生指摘のように、地方自治の原則がございます。地方自治体がそれぞれの実態に応じてやっていく、そういった地方自治の原則がございます。それをもちろん尊重するわけでございますけれども、そういう国として定めてまいりますすそ切りの合理性があるならば、それを尊重していただきたいというふうに考えるものでございます。
  69. 小林守

    小林(守)委員 尊重という言葉の形、地方自治権、そして条例制定権、これについては尊重するということでもあるわけでありますから、これはまたの機会に議論をしたいというふうに思います。  次に、法の目的について、第一条関係について少し踏み込んだ議論をしていきたいなと思います。  今度の法律の大きな特色、かつての化審法とかさまざまな法律、大気汚染防止法とかさまざまな規制法では限界があった。科学的に有害性が立証され、人間への因果関係も立証されたとき初めてその規制をする、生産禁止を初め規制をすることができるというのが今日までの規制法の対策のやり方だったわけなんですけれども、それではどうも、地球レベルでの問題、それから科学的知見が及ばないような問題について対応ができない。わかったときにはもう遅かったという問題がかなり深刻になってきているという時代なんだと思います。  そういう点で、環境保全上の支障を未然に防止するという考え方が今回の政府法案にも明確に打ち出されたということは、私は、まあ遅きに失したとはいえ一つの大きな転換だろう、このように思います。  環境保全上の支障を未然に防止する、この中身をもう少し詰めていきたいなと思うのですが、しかし、未然に防止するということのためにはどういうことが考えられなければならないのか。例えば、定義の中に、化学物質、有害化学物質が人の健康を損なうおそれ、そして動植物、まあ生態系と言っていいと思うのですが、生態系に支障を及ぼすおそれ、初めてここで生態系という言葉が入ってきた。これも大きな前進、遅いのですけれども。  生態系までの支障ということ、規制法の中にはなかった言葉ですよ。規制法の中では人間なんですね、人間に支障がなかったならば規制の対象になかなかできない。因果関係が人間との関係だけのレベルで発動されていた時代だったのですが、今日では少なくとも生態系まで、動植物への影響まで考えられるようになってきたということが法律で明らかになってきたということは、遅きに失したとはいえ、評価していいと思うのです。  そこで、その「おそれ」という考え方の中で、支障を未然に防止する、おそれとは何なのか。  少なくとも、今度の法律は規制法ではないのです。情報を集めてデータベースをしっかりつくって、その情報国民共有のものにしよう、そして環境リスクを低減していこうということがねらいですから、おそれというのは柔軟に幅広く運用していい概念ではないのかな、このように私は思うのですが、政府法案説明によりますると、どうもまだ化審法の発想の段階、科学的に因果関係が明確に証明されていない限りおそれとは言えないと。そういうものが色濃く残っていると解釈の中で私は聞いているのですけれども、その辺について、おそれというものをもっと広く考える必要がある、この法律は規制法ではないのですよ、そういうことを念頭に置いて質問したいと思います。
  70. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  PRTRやMSDSの対象化学物質を選定する際に、一つには、人への健康への有害性は、動物実験等による慢性毒性や発がん性などの結果等によりまして、また二つに、動植物の生育等に係る有害性、まさに生態系に係る毒性につきましては、魚などの生態毒性試験結果等によりまして、有害性があることが科学的に判断されれば、その物質の環境中の存在状況と人の健康等への悪影響との間の因果関係の判明の程度を問わず、幅広く対象物質としていきたい、こういうことでございます。  このようなことから、化学物質の有する性状について、「人の健康を損なうおそれ」及び「動植物の生息若しくは生育に支障を及ぼすおそれ」というように規定したものでございます。
  71. 小林守

    小林(守)委員 おそれの問題について、ちょっと聞き漏らしたのかもしれませんが、科学的に有害性は明らかである、しかし人へのまたは生態系への因果関係はまだ不明確である、何とも言えない状況だ、物質そのものは有害性があるというのはわかっているけれども因果関係はどうも明確ではないというような問題について、おそれの対象になるのかどうか、それをもう一回、ちょっとはっきりしてください。
  72. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたように、それぞれの試験結果等によりまして有害性のあることが科学的に判明されれば、あとは、その物質の環境中の存在状況と人の健康等への悪影響との間の因果関係の判明の程度を問わずに、幅広く対象物質を選考していきたい、こういう趣旨でございます。
  73. 小林守

    小林(守)委員 わかりました。意味するところはしっかりと受けとめさせていただきます。  私は、テレビでミトコンドリアDNAというところのニュースを見て、大変感銘を受けたのです。少なくとも、化学物質による人や生態系への影響というのは、人と生態系というのは、もうまさに動植物、ミトコンドリアみたいなものさえ人間の命の細胞の一つにはちゃんと組み込まれている。三十六億年の命、生命の歴史が全部DNAに刻み込まれているというようなニュースだったと思います。  今日、その化学物質を考えていく上では、遺伝子生物学というのでしょうか、DNAのレベルで影響があるのだ、ないのだ、そういうことをやはり考えなければいけないのだろうというふうに思うのですね。遺伝子レベル、分子生物学レベルで因果関係というものをやはり考えていくことなんだろうというように思います。そういう観点に立つならば、環境ホルモンはまさにその問題なんだろうというように思うのですよ。  そこで、環境ホルモンは、今答弁されたおそれの概念の中に入る、対象物質になるんだというふうに理解していいのですね。
  74. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  環境ホルモンの問題に関する国民の不安を解消するためには対策を急ぐ必要があるということで、私ども真剣にもろもろの取り組みをしておるところでございます。  ただ、今の御質問につきましては、内分泌攪乱作用を判定する試験方法がまだ十分確立されていないという問題がございます。環境庁では、試験方法の研究開発や国際シンポジウムの主催などによりまして、科学的知見の充実を急いでいるところでございます。いわゆる環境ホルモンにつきましては、試験方法が定まりまして内分泌攪乱作用が科学的に確認され次第、PRTR対象物質に加えたいというふうに考えているところでございます。
  75. 小林守

    小林(守)委員 この問題について、民主党の方はどのように考えているかを、ちょっと。
  76. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)議員 当然のことながら、環境ホルモンにつきましては、私ども対象化学物質として指定されるものだというふうに考えております。  先ほど来、未然防止ということが言われ、そしておそれという議論の中で、私たちは、科学的な知見と国民の不安との間のグレーゾーンをどうしたらいいかが実はこのPRTR制度の根本になければいけないのではないかと考えております。まさにそれは、政治が一歩踏み込んだ判断をしていくこと以外、決断をしていくこと以外に、その国民の不安との距離を縮めることはできないのではないか。  特に、私どもが議論をする過程で、科学的な知見ということにつきましては、複合的な影響等を考えると十分な科学的知見の整備には時間がかかるということが、二つの審議会の中間答申や中間報告で述べられているわけでありますから、そうであればあるほど、なおさらに未然防止、そしてより広い対象物質を確保することがこのPRTRの基本になければいけないと思います。私どもは、この法律では、化学物質の製造や排出を規制する法律ではなくて、排出・移動量等の正確な把握を行うことを目的としているわけでありますし、国民の権利を制限する趣旨のものでないことから、対象化学物質についてもそのとおり広くとらえなければいけない。  私どもは、三十六条で、対象化学物質を具体的に定めるときには「環境の保全に係る化学物質管理についての国際的動向化学物質に関する科学的知見化学物質の製造、使用その他の取扱いに関する状況等を踏まえ、化学物質による環境の汚染により生ずる人の健康に係る被害及び生態系への影響が未然に防止されることとなるよう十分配慮して定めるものとする。」というふうにしているところでありますので、対象物質を法律上できるだけ広くとらえる趣旨であると解されることから、広く対象として、例えば環境ホルモンについても、その大部分について対象化学物質として指定されるものと考えているところでございます。
  77. 小林守

    小林(守)委員 それぞれの違いがはっきりしてきているなというふうに思います。  それではもう一つ。今回の政府案でも、特定フロンについては対象化されるというふうに読み込むことができます。これは当然入るのだろうというふうに確認したいと思いますが、それでは代替フロンは対象になるのかならないのか。  本会議佐藤謙一郎氏の質問に、総理は、入らない、代替フロンは温暖化対策推進法の方で対応するのだというような答弁をなされておりましたから、ここの席でも同じ答えになるのだろうというふうに思いますが、まず、特定フロンというのは、御承知のように排出量を正確に報告されても困る物質なんですね。排出してはいけない物質なんですから、排出量はこれだけ正確にデータがありますというのは、これはとんでもない話になります。間違われては困るのですけれども。しかし、対象物質であることは間違いないですね。ですから、どういう形で、移動量という形で報告されることになるのかなと。そうなってくると、MSDSという方式の中で取り扱われ、しかもその移動量が報告されることになるのか。  こんなことを、私自身フロンの問題をいろいろ考えてきた経過の中で、民間が自主的にやっていて、法律上規制はやめてくれ、そういうことをさんざん答弁を聞いてきました、自主的にやりますからと。それがちゃんとできるならばいいのですが、今回、MSDSにしてもPRTRにしても報告義務化をするような、規制法ではない、ですけれども報告を義務化した。MSDSも、自主的な取り組みに対して法的な義務化をかけた。  私は、少なくとも、自主的な民間の取り組み、これは大いに推奨しなければなりませんけれども、一定の限界がある。やはり公正な市場ルールを確保するためにも法的な規制なり義務化というものがないと、市場競争原理のもとでは環境保全のためのインセンティブは働かない、こういうことが明らかになったというふうに思うのですよ。  そういう点で、義務化することについてやぶさかではありません。しかし、特定フロンが今度報告義務化されたわけですけれども、そのことによって特定フロンの回収や破壊というものは相当画期的に進むのかどうか。進まないのだったらどうするのだということを問題提起したいし、お聞きしたいと思います。
  78. 河野博文

    河野(博)政府委員 先生指摘のように、政府案の第二条の定義、第二項第三号には、特定化学物質がオゾン層を破壊し云々という記述がございますので、御指摘特定フロンはこの対象になるものだというふうに考えております。したがいまして、PRTRでもMSDSでもフロンが取り扱われるということになろうかと思います。  これを通じまして、従来からもさまざまな自主管理が行われていると承知しておりますけれども、これをきっかけにさらにそういった自主管理が強化されることを、私どもも期待をしている状況でございます。
  79. 浜中裕徳

    ○浜中政府委員 代替フロンにつきましてお答えを申し上げます。  先ほど御指摘のとおり、地球温暖化対策推進法におきまして、国が我が国の総排出量を算出する、こういうこととされておりますし、事業者も、排出抑制のための措置に関する計画等を策定し、その実施状況を公表するよう努めるということになっているわけでございます。こうしたことから、この代替フロンの排出量把握し抑制する体制が整備されておるわけでございまして、重ねてPRTR対象とする必要はないというふうに考えております。  なお、アメリカにおきましても、本法案と同様、特定フロンはPRTR対象となっておりますけれども、代替フロンはPRTR対象となっていないところでございます。  現に、地球温暖化対策推進法におきまして、この総排出量を算定し毎年公表する必要がございますが、その算出のための必要な政令をこの四月に公布したところでございますし、また、この地球温暖化対策推進法の規定に基づきこの四月に地球温暖化対策基本方針を定め、事業者が排出抑制等のための措置に関する計画をつくり、その実施状況を公表するように努めなければならない、その具体的な裏打ちをしたわけでございます。  このように、代替フロンにつきましては、既にこの地球温暖化対策推進法という別の法律に基づいて排出量把握、公表し抑制する体制を整備しているところでございますので、私どもといたしましては、今後ともこの地球温暖化対策推進法に基づいてこの対策の徹底に努めてまいりたい、このように考えております。
  80. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)議員 私ども民主党案の対象化学物質の定義がなされております第二条二項の三号というのは、まさに代替フロンを頭の中に入れて、政府案がこれを外すおそれがあるのではないかという思いの中から、私ども、この三号に力を入れてまいりました。  温暖化物質は、地球温暖化により生態系に影響を及ぼす物質であり、まさに間接に生態系に影響を及ぼすおそれのある物質でありますから、当法案対象物質に該当するというわけであります。したがいまして、HFCやPFCなどのオゾン層を破壊しない強力な温暖化物質である代替フロンも、この法案対象物質に該当するものであります。  特に強調させていただきたいのは、本会議における政府答弁では、温暖化物質は地球温暖化対策推進法で排出量を算出するとして、そういう御答弁をいただいたわけでありますけれども、個別の事業所ごとの排出量ではなく、移動量も把握していないということでありますから、PRTR制度対象としない理由にはならないものと私どもは考えております。
  81. 小林守

    小林(守)委員 ここでも私は、今回の法案の中で対象物質、フロンの問題を政府が本気になって解決しようとしていないのではないかと指摘せざるを得ないと思います。  一つさらに聞きたいのですが、特定フロンは対象化するということなんです。それで、代替フロンは除くということなんですが、例えばHCFC、これは代替フロンなんですよ。通称としては代替フロンと言われていますね。CFCが特定フロンだ、そしてHFCが代替フロンだというならば、その間にあるHCFCというのは代替フロンというふうに言われているのですが、しかし、これはオゾン層を破壊する物質でもあります。CFCよりはその破壊係数は少ないのですけれども、間違いなく、オゾン層を破壊する物質には違いないのですね。  しかし、CFCの特定フロンにかわるものとしてHCFCがつくられたという経過があるのですけれども、この代替フロンと言われているオゾン層破壊物質でもあるHCFCは対象物質になるのかならないのか、お聞きしたいと思います。
  82. 河野博文

    河野(博)政府委員 先ほど来御説明しておりますように、対象物質自身は審議会の御審議などを経て最終的に決定されると思いますけれども、今御指摘のHCFCは、私どもの認識といたしましては、オゾン層破壊物質の一つであるというふうに考えております。
  83. 小林守

    小林(守)委員 それでは、HCFCは対象物質になるということですね。わかりました。  それで、もう一つ、さっきの質問の中で答弁されていないことがあります。  義務化して報告義務化する。しかし、さっきも言ったように、排出量の正確なデータをいただくためにこれがあるわけではありませんで、回収、破壊をどう進めるかということが特定フロンについては課題なんですね。  排出してはいけない物質なんですよ。その排出量を出せということにはなりませんから、当然、この報告の中で、回収や破壊の量がどれだけ進んだという視点から、それでもどうしても無理だったということはあり得ると思うのですね、漏れている部分は推計できる数値なのだと思いますけれども。逆に言えば、回収、破壊した量を報告してもらうことが対象物質化のねらいだと思うのですよ。ですから、これが画期的に進まなければおかしいのですけれども、この義務化によって特定フロンの回収は画期的に進むのかどうか、そこを答弁してください。
  84. 河野博文

    河野(博)政府委員 このPRTR対象物質あるいはMSDSの対象物質とすることがまた、先生指摘のような特定フロンの回収あるいはその取り扱いを従来以上に丁寧に行っていく一つのきっかけになることは、十分あることだろうというふうに思っております。  ただ同時に、回収、破壊を実際に行っていきますそのシステムをつくっていくということも非常に重要なことだろうというふうに思っておりますので、通産省といたしましては、そういったさまざまな分野でのシステムづくりに大いに力を発揮してまいりたいというふうに思っております。
  85. 小林守

    小林(守)委員 時間も限られてまいりました。  最後に、今日、先ほど来お話が出ておりますけれども化学物質が市場で五万種類から十万種類出回っている、そして毎年新たに三百種類ぐらいの化学物質が開発され、市場に参入しているというような状況でありますけれども、これに対する化審法の製造、輸入許可、使用用途の制限のあり方を考えるならば、少なくとも、環境への影響、支障の未然防止という考え方に、もうそういう時代になったということに立つならば、化審法のあり方、審査のあり方、リスク評価のあり方は変わらなければならない時代が来ているのだと思うのですね。  要は、人への影響だけではだめなんですよ。生態系、DNAへの影響まで考える時代なんですね。そういうことを考えるならば、化審法のあり方を改正しなければならないことになるのではないでしょうか。三百物質について、今までの有害性の概念だけでどんどん野放しで流通させてきたこの責任を早急にとってもらうためにも、やはり化審法の改正が必要ではないか、このように考えますが、これについて、政府とそれから民主党の考え方についてお聞きして、終わりにしたいと思います。
  86. 河野博文

    河野(博)政府委員 化審法でございますけれども、化審法は、過去のさまざまな経験を経まして、累次改正を経て、特定の毒性に関する化学物質管理といいますか製造等の規制を行っている法律、御承知のとおりでございます。  むしろ、今回提案させていただいておりますこのPRTR法案は、化審法の規制という具体的な規制に入る前の段階で、ある種予防的に広範な化学物質について排出あるいは移動量を把握して、将来もしその化学物質について、例えば、今回提案させていただいております法案では、十二条で、環境モニタリングあるいは科学的知見の集積などの規定がございますけれども、そういった努力によりましてさらに科学的知見が積み上がった場合に、必要があれば化審法も含めた種々の規制制度による具体的な規制に入っていく、そういうことが適当だろうというふうに思っております。
  87. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)議員 私どもも、化審法というものは大変大切な法律だと位置づけております。MSDS自身を私どものこの対案の枠組みから外したのは、実はそうした思いがあったわけでありますけれども、去年の化学品審議会でも、このPRTR制度は化審法の延長線上に位置づけられるものだという言い方をしているところから、実は我々の対案づくりが始まったわけであります。  化審法と、そしてこのPRTR法というのは、ともに大変大事であり、車の両輪と考えなければいけないものでありますけれども、その中で、全く違った法体系——この化審法の基本となるものは、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律、いわゆる規制法的な意味合いを持っておりまして、制定当初は画期的なものでありましたけれども、先ほど小林委員が御指摘のとおり、生態系に対する影響を考慮していないことや、新たな知見が明らかになった場合の再審査の規定が全くない、先進国化学物質法制と比べても見劣りがするわけであります。  私どもとしましても、先ほど申し上げましたMSDS制度をこのたび切り離しておりますから、次期国会までにこうしたMSDS制度を化審法の中に位置づけるとともに、生態系などへの影響も考慮した規制が可能となるような法律をできればつくってまいりたいというふうに考えております。
  88. 小林守

    小林(守)委員 ありがとうございました。終わります。
  89. 北橋健治

    ○北橋委員長 次に、石毛えい子君。
  90. 石毛えい子

    ○石毛委員 民主党石毛えい子でございます。  PRTR法の質問を具体的にさせていただきますのに先立ちまして、現代の社会で化学物質過敏症等に苦しんでおられる方はもう決して少なくないという状況になっております。生活者そして市民の視点でこのPRTR法を一日も早く成立することがいかに大切かということを申し上げまして、早速ですが質問に入らせていただきます。  私は、大きく分けて、排出量等主務大臣への報告ということをめぐって、それからもう一つは地方自治体の関与についてという内容で、質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、率直に端的にお尋ねさせていただきますが、通産大臣、この法律事業者からの排出量等報告届け出を業所管の主務大臣に定めたということはどういう理由によるのでしょうか、それをお尋ねいたします。
  91. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 PRTR制度におきましては、届け出を全国統一的なルールで行い、集計の迅速かつ効率的な実施を確保するとともに、窓口として各事業における化学物質取り扱いや工業プロセスなどに関する専門家が必要となります。また、営業秘密の判断も、専門的知見をもとに統一的に行う必要がございます。かかる理由から、届け出先を国である事業所管大臣としております。
  92. 石毛えい子

    ○石毛委員 迅速という点では身近な基礎自治体の方が迅速ということが言えるのかとも思いますし、それから、工業プロセスとおっしゃられましたでしょうか、そこの過程で専門家、あるいは営業秘密の点でそれぞれの所管にかかわって専門家が必要という御答弁であったと伺いましたけれども、それぞれの専門家が果たす役割を、どのディメンションといいますか、どの次元で位置づけるかということと、届け出の先をどう決めるかということは、必ずしも同じ範疇で考えなくてもいいことではないかというふうに私は判断しております。  例えば、営業の秘密というのは、日常的にその秘密の決定の仕方にかかわって相談をさせていただくシステムがあれば、そこであらかじめ決めていって、届け出は市町村というふうにするということも実務的に決して不可能なことではないというふうに思っておりますので、そのことを申し上げさせていただきまして、次の質問に移りたいと思います。  先ほどの中山委員質問にダブるところがありますので、通告をいたしておりました二番目の質問は割愛をいたします。  環境庁長官にお尋ねをさせていただきますが、それぞれの所管大臣届け出を出すということは、それぞれの所管でそこに集中してこられる業種に対するコントロールをふやすということになっていくおそれはないでしょうか。  必ずしもそれはこれまでのような規制ということではなくても、何らかの意味で、助言ですとかあるいは相談という形で指導というようなこともあるかもしれません。コントロールをふやすということになるのではないかという、そうした点を、環境庁長官にお尋ねいたします。
  93. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 PRTRは、事業者による化学物質の自主的な管理改善促進しまして、そして環境の保全上の支障を未然に防止することを目的として行う措置であり、事業者に対する規制を目的としたものではないわけであります。  また、事業所所管大臣は、事業者から届け出を受理するにすぎず、PRTR届け出先を国とすることが国による民間のコントロールを強めるものであるとは言えない、こう私は考えておるところでございます。
  94. 石毛えい子

    ○石毛委員 ただいまのお話で、届け出を受理されるという、その役割に限定をされるのでしたら、それぞれの業所管省庁である必要はないのではないでしょうか。環境庁届け出を一元化するということでもよろしいのではないか。端的にそういう感想を持ちますけれども環境庁長官、いかがでいらっしゃいますでしょうか。
  95. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  本法案におきましては、先ほど来お話が出ておりますように、企業を取り巻く競争環境であるとか技術状況等を熟知しております事業所管大臣によりまして営業秘密の判断を適正に行っていくといったことも、事業所管大臣届け出先としている一つの大きな要因になっております。
  96. 石毛えい子

    ○石毛委員 時間もありませんので余り同じ議論を繰り返したいとは思いませんけれども、私は政府案を拝見しておりまして、基本的に、企業秘密、営業秘密を判断するということと届け出のルートをどう勘案して考えるかというときに、それを一体化して業所管省庁でなければならないということではないのではないか。  仮に営業秘密はそれぞれの所管の省庁で統一ルールを考えられたとしましても、民主党案は異なりますから仮にでございますけれども、としましても、それはそれとして、日常的な相談活動の中で決めておいて、届け出届け出としてきちっとルートを決めてしていけばいいということですから、先ほど来、専門家がいらっしゃることとか、それから技術状況と営業秘密、届け出、これを全部同じにしてお答えをいただいているというふうに私は聞かせていただいておりますけれども、そこは区分けをして考えることも可能ではないかということを申し上げたいと思います。  私はそういうふうに思うわけでございますけれども環境庁長官、いかがでございましょうか。
  97. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 民主党の案を拝見しますと、届け出先が市町村になっております。それは、技術的な問題としては、専門家が多分窓口で必要だろうと思うのです。  そういう問題は別にいたしまして、一体こういう問題が国の事務なのか地方の事務なのかという、制度の根幹にかかわる部分が実はあるわけでございます。今、国の事務、地方の事務ということで、地方分権が言われてる中で、国の事務を機関委任事務として地方に出しているというのはおかしいということで、なるべくその部分を少なくしようということでございます。  化学物質をいわばある種のコントロールのもとに置くということは、国全体にかかわる、国民全体の健康にかかわることでございますから、これはやはり国の事務として考えた方が私は自然だろうと思っておりまして、個々三千三百の市町村の固有の地方事務というふうには考えられないなと。したがいまして、国の事務として法律が構成されているということが今回の法律であると私は思っております。
  98. 石毛えい子

    ○石毛委員 いろいろと議論があるところかと思いますけれども、例えば、これから審議が始まります地方分権推進法の中で、これは私見でございます、民主党意見ではございませんので前もってそこをお断りしておきたいと思いますけれども、例えば法定受託事務としまして要件を定めて、スタンダードはここまでということで設定をして、それに対して地方自治体がどれだけ付加をするかというようなことをあわせて進めていくというようなあり方もあると思いますし、そういう意味でいえば、そうしたことを定めながら届け出先を市町村に決めていくということは私は当然あり得る制度ではないかと思っておりますけれども、ただいまの通産大臣の御答弁と私の質問とのかかわりに関しまして、突然でございますけれども、提案者側で御意見がございましたらお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  99. 奥田建

    奥田(建)議員 国の事務論、地方の事務論というものが出てきましたけれども環境問題を考えるにおきまして、地方あるいは市民といった方々の関与を抜きにして行動が起こせないということを私は思います。過去においても、これから未来においても、環境問題の解決に向かって行動するときには、やはり現地をよく知るということ、現場を見るということ、そして生活者の生の声を聞ける、現地を本当に知り尽くしている人たちが行う対策が本当に有用なものであると思っている次第です。
  100. 石毛えい子

    ○石毛委員 それでは、質問を先に進めさせていただきます。  大変素朴で率直な質問になるのかもしれませんけれども、業主管の主務大臣届け出をしていくということから考えますと、例えばですが、酒造メーカーは恐らく大蔵省に届けていく、それから医薬品メーカーは厚生省に届け出をしていく。昨今、お酒をつくりながら薬をつくっているとか、業種内容が多岐にわたる企業、事業所がふえてきている、そういう実感があるわけですけれども、例えばお酒と薬を両方つくっているメーカーは、大蔵省と厚生省とにそれぞれ届け出をするということになるのでしょうか。だとすると、非常に事務負担が煩雑になってくるのではないかという感じがいたしますけれども
  101. 河野博文

    河野(博)政府委員 そもそも、業種をこれから指定するという作業がございますけれども、それぞれの業種に属します事業者の皆さんにどの主務大臣届け出ていただくかというのは、これからの作業でございます。ただ、通常そういった場合に用いられております手法に倣いますれば、複数の事業を営んでいる場合には主たる事業の所管大臣届け出るというのが通例のように思いますけれども、そういったことを今後検討してまいりたいというふうに思っております。
  102. 石毛えい子

    ○石毛委員 ちょっと申し上げにくいのでございますけれども、ある企業がAとBという二つの商品といいますか事業内容を営んでいて、今の御答弁ですと主たる方に届け出をしていくというふうになってまいりますと、先ほど来の御答弁では、業所管省庁に届け出を一元化するのは、専門的知見ですとか営業の秘密ですとかさまざまな理由があって一元的に届け出るというふうにおっしゃったわけですから、今の御答弁では矛盾する部分が随分出てくるのではないか。例えば鉄鋼メーカーさんが養殖をされているとすると、鉄鋼の方が主でしょうからそれは通産省さんになるのでしょうか、そちらに出すとして、矛盾が出てくると思うのです。そもそも整合性がない設定のされ方がこの政府案ではされているのではないか、私は今の御答弁でそういう思いをいたしました。  やはり、そうしたことを含めてトータルに把握できるのは地域だと思うのですね。地域で、自治体で、Aの企業が営まれている事業内容A、B、Cというようなものを自治体の市町村の窓口に届け出てくださって、それを最終的に中央にきちっと情報としてボトムアップしていくという考え方の方が、いろいろな意味整合性がとりやすいし、それから、私どもPRTR法から出していただく情報を活用していろいろなことを判断していきたいという生活者の視点から見ましても、自然にその方が了解しやすいというふうな思いをして今の御答弁を伺いましたけれども、お答えがございましたらどうぞお願いいたします。
  103. 河野博文

    河野(博)政府委員 先ほどお答え申し上げましたような考え方も一つの実際上の運用の方法だというふうに思っておりますが、いずれにいたしましても、この法案を将来成立させていただきますれば、関係の事業所管大臣の間では緊密な連絡をとるように対応してまいりたいというふうに思っております。
  104. 石毛えい子

    ○石毛委員 時間も残り少なくなりましたので、もう一点、地方自治体の関与について質問をいたします。  政府案では、例えば八条五項で都道府県知事の公表ですとか、十七条で地方公共団体の措置として努めるというようなことで教育のことですとか技術の指導というようなことが何点か書かれておりますけれども、地方自治体の役割とか責任、義務というようなものが政府案の中にはほとんど登場してきていない、そういう受けとめ方をしております。  私が申し上げるまでもなく、環境問題はアクト・ローカリーということで、地域で、地方で、それぞれその問題に遭遇した市民が、生活者が発言をしていくというようなことが非常に大きなスタートになるわけですし、それから、解決をしていく見通し等々のところでも大きな役割を果たしていくわけです。そういうことは、先ほど来、小林委員質問等々にも出されておりました。  そこで、一般論として環境庁長官にお尋ねをいたしますけれども環境問題を考えていくとき、とらえていくときに、地方自治体の役割、地域における市民役割はどのような位置を持つというふうにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。その御認識を承りたいと存じます。
  105. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 先生指摘環境問題に対しては、やはり国、地方自治体、事業者国民のおのおのが協力して取り組みを進めて、そして解決を図っていくということが重要であると考えております。  そこで、政府案では地方自治体の関与が少ないとの御指摘がございましたけれども事業者に対する技術的助言とか、環境教育等を通じた住民の理解を増進いたしまして、人材育成などの重要な役割を果たしていただくことが大切ではないかと思っております。また、国が電子情報化して提供する個別事業所データを、地域の環境保全施策の企画立案などに活用していただけるようになっていくことも、大切なことではないかと思っております。
  106. 石毛えい子

    ○石毛委員 対案の提案者にも同じ質問をさせていただきたいと思います。  PRTR法を制定するそのバックボーンといいましょうか、非常に重要な基軸としまして、アクト・ローカリーということ、あるいは地方自治体の役割、地域における市民役割をどのように受けとめておられるかということを御答弁いただければと思います。
  107. 奥田建

    奥田(建)議員 今、アクト・ローカリーという言葉が出ましたけれども、地球環境問題の標語という形で、シンク・グローバリー、アクト・ローカリーという言葉が、世界に共有される環境問題に対する取り組みの基本的な原則かと思います。漢字文化の世界でいえば、着眼大局、着手小局ということになるかと思います。  先ほども環境問題に対しての地方自治体の関与が必要だということは述べましたけれども、今のPRTRについての場合ですと、基本的な理念として、自治体そして企業、市民、三者が情報を共有し合うことによって、化学物質のむだなといいますか余分な使用を減らす、あるいはやめて、環境への排出を削減していくということにあるかと思います。一言で言いますと、地方自治体あるいは住民、市民といったものがこの制度に関与できないということは、この法の致命的な欠陥になり得ると考えております。
  108. 石毛えい子

    ○石毛委員 それではもう一度、地方の役割ということについて、OECDPRTRに関する勧告を少し参照いたしまして、政府提案の法案についてお伺いしたいと思います。  PRTRについて、環境汚染物質排出・移動登録というその内容では、PRTRの具体的な適用における地方自治体と地元住民の役割、例えば地域に対応した詳細な内容の決定、地方当局による認可の交付や、施行の際に当該地方のPRTRデータを利用することなどを具体的な内容として挙げております。これと比較をしてみまして、政府提案の内容では、地方自治体の役割につきましてどのような規定がされているか。  先ほど環境庁長官がお触れいただきましたけれども、もうちょっと具体的に御指摘をいただければと存じます。
  109. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  本法案におきましては、地方自治体が地域の環境保全、化学物質管理施策の推進に資するため、個別事業所データを含めまして、当該都道府県の管轄の地域に係る排出量等データを都道府県に提供し、自由に活用してもらうこととしていることについては再三これまでも議論のあったところでございます。  また、地方公共団体が地域の環境保全、化学物質管理を推進するために、まず一つには、事業者による化学物質管理改善促進するための技術的助言等を実施すること。二つには、教育活動、広報活動等を通じて化学物質に係る国民の理解を増進すること。三つには、化学物質管理化学物質に係る理解の増進のために必要な人材を育成すること。さらには、国が行う調査の実施に関する必要な資料提供の要求あるいは意見具申。それからさらには環境保全、化学物質管理の政策を企画立案、展開、これは当然していただくわけですが、さらに、制度の周知徹底、普及啓発等といった重要な役割を自治体に期待しているところでございまして、条文上も、十七条に幾つか列記をさせていただいておるところでございます。
  110. 石毛えい子

    ○石毛委員 十七条を拝見しますと、「国及び地方公共団体は、」ということで幾つか具体的に法文化されております表現は、法文の末尾が全部「努めるものとする。」というふうになっておりまして、必ず自治体がやらなければならないというふうには読めるものではないというのが、法律に余り精通していない私の受けとめ方でございます。これでは自治体は、やればいいでしょうけれども、やらなくてもいいということにならないかと私は思うのですけれども、再度お答えをいただく時間がもうありません。  大変恐縮ですけれども、この点に関しまして、先ほど来、佐藤議員、OECD報告ですとか原則ですとか御指摘になりながら御説明をされておられますので、トップダウンで制度をつくるということではなく、ボトムアップ方式をとってPRTR制度化を図っていくというときに、市町村が届け出の窓口になって、施策の市民との接点に立って情報の実質的なコントロールを進めていくということの有用性がどこにあるかということを、少し市町村というところに焦点を当てながら御指摘、御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。
  111. 奥田建

    奥田(建)議員 午前中にも、参考人の方々のお話でも、あるいは各党の方の質問でも、窓口がどこだということはたくさん御意見が出ておりました。  民主党案の方では、市町村を窓口にしてはどうかということで法律案作成させていただいております。その中は、パイロット事業の結果などを見まして、きめの細かな指導というものがこの浸透には必要であるということ、あるいは、正確なデータをつくるために、回収率の向上あるいは記載内容の正確さといったものがなければ集めたデータが活用できるものにならないのではないだろうかという視点が入っております。  また、地方自治体の業務として、政府案の方にもリスクコミュニケーションという言葉が入っておりましたけれども、こういった事業者、あるいは住民の方という、時によっては対立あるいは過剰反応といったものが起き得る立場の方の間に、中立の立場で物事を判断したりあるいはそういった会合の場を持つという中で、行政、特に地方自治体というものの役割が大きく、また適しているのではないかと考えておる次第でございます。
  112. 石毛えい子

    ○石毛委員 実施主体としまして地方自治体、公共団体と表現する場合、きょうも午前中から、都道府県それから市町村というような、どちらに注目するかというニュアンスの違いもございました。  それで、市町村にした場合に、化学物質に関する専門家がおられなくて、実際にこの業務を推進していくのは難しいのではないかというような不安、危惧の念もあるかと思いますけれども、この点に関してはいかがでしょうか。対案提案者の方にお答えいただいて、私の質問を終わります。
  113. 奥田建

    奥田(建)議員 確かに、市町村あるいは町村というレベルでは化学物質の専門家といった方は豊富だとは思えないという指摘は、午前中もありましたし、私自身もそういった懸念はあるつもりでございます。しかしながら、報告シートを拝見させていただきますと、それほど記載内容の方に難しいものが入っておるわけではございません。どういった化学物質がどのくらいの量、どこの川に排出されたか、あるいはどこに出荷されたかといったことが中心になっておるものでございます。  先ほどからも、企業秘密の判断ということが難しいのではないかといった観点もございましたけれどもアメリカの例でも、〇・〇一八%ですか、そういう頻度での企業秘密の認知というものが行われているということで、それは本当に相談の量からいっても少ないのではないかとも思えます。  あるいは、民主党案の方では、企業秘密については、市町村の判断で不服であるときは国あるいは都道府県に対して不服審査を申し出ることができるという一文を設けて、そういった部分を補完しておるつもりでございます。  さらには、企業秘密の判断ということでございますけれども民主党の方では、公表することにより事業を行う法人または個人の基本的な権利、その競争上あるいは事業運営上の地位その他正当な利益を害することが明らかであるものを営業秘密とし、ただし、公表しないことにより保護される事業者の正当な利益よりもその事業活動により生ずる危害または侵害から人の生命、身体あるいは健康を保護するため、公表することが必要であると認められるものは除くと、長くなりましたけれども、要は今の行政に求められております情報公開の判断基準といいますか判断要因というものを企業秘密の規定とさせていただいておるところでございます。
  114. 石毛えい子

    ○石毛委員 時間が参りましたので終わらせていただきますけれども、今、生活者、市民は、規制法では生活は守られ切れないというそうした不安、遺伝子組み換え食品の問題ですとかさまざまな部分でそういうことに遭遇しているのが現代の生活だというふうに考えます。ぜひとも市民が身近に参加できるシステムを、私も提案者の一人でございますので、民主党案につきまして御検討をいただきますよう要請させていただきまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  115. 北橋健治

    ○北橋委員長 西博義君。     〔北橋委員長退席、古賀委員長着席〕
  116. 西博義

    ○西委員 公明党の西博義でございます。  初めに、民主党の皆さん、大変御苦労なされて対案を提出されました。先ほど来、そのことに関して聞きながら、大変な御苦労に対して敬意を申し上げたいと思います。残念ながら、時間の都合もありまして、きょうは私は内閣提出法案についてのみ両省庁からお伺いをするということを御理解願いたいと思います。  戦後の日本の急速な経済発展の要因は、各分野における日本の工業の発展にあるということはほぼ間違いない事実だろうと思いますが、その中で急速に発展を遂げた化学工業は、新しい物質だとか素材を提供してまいりました。今では私たちの、ここでもそうですけれども、身の回りの品々といいますものは、化学製品なしでは考えられない時代に入っているということは御承知のとおりでございます。私自身も、約二十年、工業高専で工業化学科の教官として新しい科学技術者の養成に、今まで、この仕事につくまで力を注いでまいりました。  しかしながら、私たちが享受したこの化学製品の利便性とは裏腹に、新しく地球上に出現した化学物質の一部が、人体や自然に有害な物質として、公害問題等社会問題を引き起こしてきたというのもまた事実でございます。  そんなところで、今回提出されました特定化学物質環境への排出量把握等及び管理改善促進に関する法律案では、その目的でございますが、このように書かれております。「事業者による化学物質の自主的な管理改善促進し、環境の保全上の支障を未然に防止する」、こういう目的が書かれているわけでございます。もう少し立て分けますと、一つは、事業者による化学物質の自主的な管理改善する、それからもう一つは、後段部分は、環境の保全上の支障を未然に防止する、こういう目的が掲げられております。  私は、このことを突き詰めますと、前段の、事業者の自主的な管理改善、これも一つの大きな今後のこの法律を通じての目標でございますが、どちらかというとその目的は、二つ目の、環境保全上の支障の未然防止という目的を達成するための有力な手段である、こういうふうにとらえるのがいいのではないか、こう考えておりますが、それぞれの両大臣に御見解をお聞きしたいと思います。
  117. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 先生の御指摘のとおりだと思いますが、本法案においては、事業者による化学物質の自主的な管理改善促進することと、環境保全の支障を未然に防止する、この二つの目的を目的として掲げております。先生指摘のとおり、事業者による化学物質の自主的な管理改善促進を図ることが環境の保全上の未然防止につながるものであり、この二つの目的はまさに表裏一体というふうに考えております。  先生は化学の御専門家でございますが、化学物質は極めて有用な基礎素材でございまして、また多岐多様な形で用いられるものであり、事業者の生産活動に化学物質管理をビルトインすることによって初めて環境保全上の支障の未然防止が効果的に実現される、そのように考えて法律を提案しているわけでございます。  このような観点から、先生指摘のように、さきの二つの目的は表裏一体のものであって、したがって、表裏一体のものとして掲げたものでございます。
  118. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 先生も長い間、研究者としていろいろな問題に取り組んでこられたわけでありまして、それもこれも、この法案も、そういう結果が今日法案として提出されておるのじゃないだろうか、こう考えております。  今通商産業大臣から御答弁された意味とほぼ同然でございますけれども化学物質による環境の保全上の支障を未然に防止するためには、その対策を化学物質管理と一体として行うことがより効果的である、こう私も考えております。  そこで、事業者による化学物質の自主的な管理改善促進は、ただいま申しましたように、環境保全上の支障の未然防止のために有力な手段ということが言われておるわけでありまして、両々相まった形で処理をしていかなければならない、こう考えておるところであります。
  119. 西博義

    ○西委員 そういう意味では、製造業の主な所管大臣でいらっしゃる通産大臣も、先ほどの環境保全上の支障の未然防止ということに対して事業者の自主的な管理改善を通して協力をするという、この二つの両省庁の関係が車の両輪のごとく相まって新しい今回の法律の万全性が期されていくのではないかという意味で、しっかり頑張っていただきたいということを期待申し上げます。  次に、具体的なことに入るのですが、対象となる化学物質の範囲についてお伺いを申し上げたいと思います。  PRTRの技術検討会が、大変な御努力をされまして、平成十年九月にパイロット事業の評価報告書をまとめておられます。その中で、この場合には対象化学物質という名前を使っているのですが、その物質の選定の基準として、環境規制の対象化学物質及びそれに準じる物質、これが一点でございます。それから二点目は、それ以外の物質で、いわゆる有害性の物質、さらに暴露可能性の物質、こういう物質を選定いたしまして、合計すると百七十八の物質を選定しているわけでございます。  本法案では、PRTR対象となる第一種指定化学物質は政令で定めることになっております。しかし、この指定化学物質基準は、パイロット事業対象化学物質の選定基準とどう違うのかということについて、環境庁の方から御答弁を願いたいと思います。
  120. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  環境庁では、先生指摘のように、PRTR制度の円滑な実施を図る上から必要な技術的検討の一環として、平成九年度からパイロット事業を行ってまいりました。  このパイロット事業におきましては、化学物質が有する有害な性状と、それらの環境中における存在可能性等を勘案して対象物質を選定しているところでございまして、先ほど先生がお述べになったとおりでございます。  私ども法案の第二条の第二項に規定する第一種指定化学物質及び第二種指定化学物質の定義におきまして示す有害な性状に関する要件は、基本的にはこのパイロット事業の考え方と同様のものとして定めたものでございます。もちろん、先ほど議論がございましたように、パイロット事業では対象としなかったオゾン層破壊物質等を新たに加えているということはまた別でございます。  なお、PRTR対象となります第一種指定化学物質の存在可能性の要件につきましても「相当広範な地域の環境において継続して存すると認められる」という考え方を示しておりまして、この考え方もパイロット事業と共通しているものだと思っております。
  121. 西博義

    ○西委員 続きまして、第一種指定化学物質と第二種指定化学物質相違点についてお伺いしたいと思います。  この法案によりますと、第一種指定化学物質PRTRとMSDS、この両方が対象となる。それから、第二種につきましてはMSDSのみが今回適用される。この違いがあるようです。このMSDSは、今回の法案ではそんなに多くの部分を占めていないのですが、PRTR制度にとって大変大事なものである、こう考えられます。  パイロット事業評価報告書では、MSDSの内容について、物質名や含有量が不明である、こういう不満が報告書の中で記載されていますが、その記載内容は通産省令でこのたびまた決められるということでございますけれども、ぜひとも有効な情報がきちっと提供されますように、ここが今回のPRTRの正確さにも大きくかかわってくるというふうに思われますので、ぜひともよろしくお願い申し上げたいと思います。この点が一点でございます。  さらに、今回またMSDSの対象となる第二種指定化学物質を選定されるわけですが、これは、将来、製造量、輸入量または使用量の増加等により、相当広範な地域の環境において継続的に存することが見込まれる化学物質。ここも第一種とほぼ同じなんですが、どちらかというと第一種指定化学物質の予備軍かなと、将来的なことを考えますとそういうふうな位置づけじゃないかと思われる内容ですが、第二種に指定される化学物質の種類はどれくらいと考えておられるのか。  第一種も、もし答弁願えればお願いしたいんですが、第一種、第二種の指定されそうな数をお伺いしたいことと、それから、第二種から第一種への指定、つまりPRTRと両方かかる基準ですね、どのような状態になれば第一種になるのかということをあわせてお伺いしたいと思います。
  122. 河野博文

    河野(博)政府委員 まず、MSDSの記載内容についてのお尋ねでございます。  御指摘のとおり、化学物質を受け取りました事業者PRTR制度に基づく排出量などを把握することはもちろん、化学物質管理を的確に実施していくためには、化学物質の性状と取り扱いに関する情報の一環として、含有しております物質の物質名あるいは含有量、成分情報などが提供されることが必要であるということを認識しております。こうした考え方に基づきまして、MSDSの記載内容を定める通産省令を定める際には、化学物質管理PRTRを的確に行う上で必要な情報が有効に提供されますように工夫してまいりたいというふうに考えております。  それから、第二種指定化学物質の指定の数あるいは第二種から第一種への移行といいますか、その点についてのお尋ねがございました。  まず、第二種指定化学物質は、第一種指定化学物質と同様の有害性を有しますけれども現状ではその製造量あるいは輸入量または使用量が少ないものの、今後、先生も「見込まれる」と法文を御引用なさいましたように、それらの量が増加したり、あるいは開放系の用途が増加する、そういったことで、相当広範な地域の環境において当該化学物質が継続して存することとなると見込まれる化学物質対象とすることとしておるわけでございます。  これも政令で指定されますので、審議会の議を経てのことでございますから、余り予断を申し上げるのは僣越かと存じますけれども、現時点で私どもが腹づもりしておりますのは、おおむね三百あるいは四百といったような数に上るのではないかというふうに考えているところでございます。ちなみに、第一種の化学物質につきましてもお尋ねがございましたので、これはあるいは既に環境庁から御答弁があったかと思いますけれども、二百とか三百とかそういったオーダーの数字になろうかというふうに考えております。  そこで、今後でございますけれども法案が成立いたしましたならば、第二種指定化学物質も含めまして、定期的に化学物質の製造あるいは輸入量などの調査を行っていきたいというふうに考えております。そして、その結果、化学物質の分解性などの性状も踏まえまして、例えば製造とか輸入とかそういった量が増加するということが見えまして、相当広範な地域の環境において継続的に存在すると認められるようになりました場合には、第一種指定化学物質の要件に該当するわけでございますので、審議会にお諮りをした上で、政令によって随時、第一種指定化学物質として指定の変更をする。そういう仕組みになっているのでございます。
  123. 西博義

    ○西委員 今の答弁からしますと、第一種が大体二百ないし三百、それから第二種、一種がダブりますからその差し引きで百から二百程度というふうに大まかには考えていいのではないかと思いますが、何か御意見がありましたら。
  124. 河野博文

    河野(博)政府委員 失礼いたしました。ちょっと説明が不十分でございましたけれども、第一種で二百ないし三百、これもMSDSの対象になりますけれども、第二種としてMSDSだけの対象になりますものがさっき申し上げたような数字というふうに考えているのでございます。したがいまして、第一種と第二種を足したものは、その合計ということになります。
  125. 西博義

    ○西委員 ありがとうございました。では、次に進ませていただきます。  先ほどの質問にも申し上げましたように、この法律は、環境の保全上の支障を未然に防止する、こういう側面から、事業者の負担はもちろん考慮する必要はございますけれども、可能性のある化学物質をできるだけ多く選定するということが法律の趣旨ではないかと思います。そのことも踏まえて、先ほどの御答弁、数の上ではあったんだろうと理解しております。  中でも、近年、世界的に生殖毒性が大きな話題となっております、いわゆる内分泌攪乱物質と言われる一連の物質は、今までの化学物質の毒性に対する考え方を大きく変えたように思います。すなわち、がんが引き起こされるというある閾値、つまり濃度ですね、最低濃度よりもさらに低い濃度で生物の内分泌機能を破壊したり、免疫を抑制したり、神経機能の阻害などが起きる可能性がある、こう指摘されております。この内分泌攪乱物質を指定化学物質に選定する、先ほどからも随分議論が、午前中からもあったと思いますが、これがやはり国民の切なる要望と私は考えておりますが、いかがでございましょうか。  環境庁環境ホルモン戦略計画SPEED98によると、内分泌攪乱作用を持つと疑われる物質分が約七十種類、その中には既に生産、使用が禁止されたり、環境保全に関する法令上の規制を受けて、本法律案に指定化学物質に既に選定されそうな物質もございます。また、現在、そのすべてにわたって内分泌機能への悪影響がはっきりと証明されているというわけではない物質もあるということは書物等で見ております。しかし、たびたび申し上げるとおり、環境保全上の支障の未然防止というこの法律の精神からして、現在、我が国に存在する内分泌攪乱物質すべてをこの指定化学物質に選定していただきたい、これが私の要望でございます。  また、その指定した後に、たとえ、製造取扱量が他の指定化学物質基準と比べて極端に少ないから提出要件にひっかからない、こういうことがあり得ると思うんですが、その際も、若干のすそ切りは必要かもしれませんが、少なくとも排出・移動量を報告すべきである、こう思いますけれども環境庁長官、いかがでございましょうか。
  126. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 内分泌攪乱化学物質、いわゆる環境ホルモンでございますけれども、これは環境保全上重要な課題であり、また、この問題に対する国民の不安を解消するためには対策を急がなければならないわけであります。  そこで、環境ホルモン世界会議を昨年京都で開催いたしました。私も参加しましたけれども、そのときの各国意見相違点を見ましても、まさに百八十度の差異があるわけであります。事ほどさように、これが環境ホルモンのすべてであるというような知見が出てこないわけであります。そこで、ことしも神戸で第二回会合を開くことになったわけでありますけれども世界の知見者にぜひ出席をいただいて、トップ的な知識を披瀝していただきたい、こう思っておるわけであります。  そこで、環境ホルモンに対しまして、それらをすべて今回のこのPRTR制度対象物質にしてはいかがかという先生の御意見でございました。しかし、まだそのような状況にあるわけでありまして、我が国の国内的にも、国立環境研究所に総合研究棟を今つくばにつくっておるところでありまして、建物ができてもまだ内容が伴っていないというような状態でもあるわけであります。早く内容の充実した体制の中にこの環境ホルモン意見の集積を図ってまいりたいと思っておるわけであります。  もちろん、人体に悪影響を及ぼすような知見が究明されたときには、すぐさまこのPRTR制度対象物質に加えていくべきじゃないか、かように思っておる次第であります。
  127. 岡田康彦

    岡田政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げたとおりでございますが、先ほど先生の方から私どものSPEED98にもお触れになられましたし、パイロット事業にもお触れになられましたので、若干補足をさせていただきます。  私どものSPEED98で、六十七物質を、内分泌攪乱作用を持つと疑われるものということでリストアップしております。これは、世界的に文献等で疑いがあるというふうに言われているものをリストアップしたものでございますが、その中でも、既に先ほど先生のお話にも若干出ておりましたが、私どもパイロット事業でも十七物質については調査対象としたところでございます。  一方、この六十七物質の中には、現在我が国には生産使用実態のない物質も二十七種類ぐらいはございます。それからまた、残りのものにつきましても、例えば有害性がある程度はっきりわかっているものもございます。  問題は、先ほど大臣から申し上げましたように、内分泌攪乱作用としての有害性ということについて科学的知見がまだ十分でないという点がございますものですから、我々としては一生懸命、鋭意取り組み、一刻も早くはっきりしたものから取り組んでいきたいということでございますが、現在も、ほかの毒性、発がん性であるとか変異原性であるとか等々でつかまえ得るものはどんどん対象としていこうということでございまして、決して消極的に考えているわけではございませんので、その点については御理解賜りたいと存じます。
  128. 西博義

    ○西委員 再三申し上げるのですけれども、未然防止なんですね、未然防止。もちろん、毒性のないものまでリストアップする必要は何らございません。  しかし、疑わしいものも未然に事前にやはりリストアップをして、その動向、増加の傾向、ましてや排出、移動の傾向というものを調べていってこそ今回の法律の趣旨に合致するのではないか、私はこう思うわけです。リストアップしたものがすべて犯人であるというような決めつけは、この法律の性格上必要ではない。先ほどの六十七種類の疑わしき物質という範疇の中で、やはり積極的に指定物質の中に取り入れていく必要があるのではないか、こう思います。  もう一度具体的に、この六十七物質の中で、もちろん初めから製造されていないものは別にして、外れそうだという数はございますか。もう少し具体的になりますが、もう一度ちょっと答弁してください。
  129. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  やや繰り返しにもなりますが、六十七物質の中で順番に、やや差し引き的になりますが、現在、生産使用実態のない物質は二十七物質というふうに承知しております。それから、もう既にPRTRパイロット事業対象とした物質は、先ほど申し上げたように十七物質でございます。それ以外のものは二十三物質になるわけでございますが、その中のうちでも何らかの有害性があるということがわかっているものが十七物質でございまして、この辺については有害性の程度の問題ということになろうかと思います。  あと、最後に残りますのが六物質でございまして、これにつきましては、内分泌攪乱作用に起因する有害性の程度をできるだけ早く把握したいということで、先ほど申し上げたように、できるだけ早く取り組みをして、はっきりさせた上でその対応を考えたいという対象になります。
  130. 西博義

    ○西委員 大体の輪郭がわかったように思います。  次の項目に移らせていただきます。  新しい化学物質の出現や、化学物質の影響に関する研究の進展にあわせて、対象物質の見直し、これは随時行うということは当然のことだと思います。  この法律案では、施行後十年を経過して検討する。先ほどから、助走期間がございますから実質は七年ぐらいというお話がございましたが、それはそれとして、私は、十年後に一回見直しをするという規定ではなくて、この十年後の見直しのことについて、指定化学物質の選定などもちろん両省庁協力して次々とやっていただくのですが、私どもの方でもといいますか、立法府の方でも、やはり五年ごとの見直しという条項は入れていくべきではないかというふうに思っております。  例えば、第百四十二回国会で新しい感染症法が成立いたしました。この法律では、感染症の範囲及びその類型を少なくとも五年ごとに見直す、こういうことが規定をされております。これと同様の趣旨の規定が今回の法律でもぜひ必要である、こう思いますが、この点について、通産省の方にお願いしたいと思います。
  131. 河野博文

    河野(博)政府委員 御指摘のように、対象化学物質につきましては、随時見直しをしていく必要があるというふうに考えております。  この法案におきましても、第二条第四項に規定しておりますように、科学的知見の充実や、あるいは化学物質の安全性の評価についての技術上の基準に関する内外の動向に十分配慮して、随時見直すということでございます。  また、十八条をごらんいただきますと、「制定又は改正の立案をしようとするとき」ということで、当然のことながら頻繁に改正も行い得るということを前提としたような条文にしているつもりでございます。  それから、制度そのものの見直しにつきましては、御指摘のように、附則第三条によりまして、施行後十年を経過した場合とされております。これは、準備期間に二・五年ほどいただいておる、そういう案になっておりますので、報告の頻度といたしましては約七回程度報告が出て、その状態を見きわめて見直すということを念頭に置いたものでございますけれども、ただ、これは政府が義務的に見直すということでございますから、もちろんその以前におきましても、実際に制度を運用してまいります中で問題あるいは不都合が見つかるということであれば、御指摘のように、十年を待たなくても随時見直していくことが私どもの責任であるというふうには心得ております。
  132. 西博義

    ○西委員 時間がだんだんとたってきましたが、次の内容に進ませていただきます。  次に、先ほどからも議論があります届け出先の問題でございます。  私は、事業者の立場に立って考えてみたときに、届け出の窓口は都道府県の方が便利だ、これはもう午前中からいろいろな議論もあったようですが、こう思います。都道府県は届け出の窓口として集まった書類を環境庁通産省提出して、もちろん他の省庁もあるわけですが、集計作業は原案どおり環境庁通産省が行うという形であろうかと思います。その際、都道府県の知事は両省庁に意見を述べるというようなことももちろん付与していいのではないか、こう思うわけでございます。  都道府県が窓口になることについては、いろいろ考えられますけれども特に、まず一つ目は、身近なところで技術的な疑問、問題点に対応していける。二つ目には、書類作成の際に、事業者をきめ細かにサポートできる。それから三点目には、書類の回収率を向上することができる。これは先ほども若干御意見がございました。そのようなことが挙げられると思います。現に、午前中の参考人の先生方から、都道府県レベルの自治体の積極的な取り組みが重要であるという趣旨の指摘があったようにお聞きをしました。  環境庁通産省はもちろん努力をしていただいて、記入に対する説明会もしくは講習会などを開催する、また啓蒙に努力するということでございますけれども、今三つ述べましたが、どのようなサポート体制をつくってサービスを行うのか。全国たくさんのところから直接データが集まってくるわけですから、質問や、またデータの誤りの修正、大変な作業だと思います。現場がなかなか見えない中での作業ですから、本当に正確な数字が担保できるのかということについても私は疑問があるように思います。中央官庁だけではこれらの最低限の必要なサービスが十分できない、私は内容を見せていただいてもそういう感じがいたします。  現に、経団連がつくっておりますPRTRの指針というのがございます。具体的に業者の人がそれをもとに計算をするようになっておりますが、相当複雑な式でございます。その中に数字を入れれば、答えは計算すればもちろん出てくるのですが、けたを間違ったりということは私の目から見ても十分あるなというレベルの、相当、式の内容がわからないのに数字を入れて答えを出さないと仕方がないというようなものも非常にたくさんありました。  業界団体なんかにもちろん協力をしていただいてこれを作成するわけですが、私は、制度を運用する上で都道府県の協力、関与というのは不可欠であるということを、具体的な作業を見ながらしみじみと感じました。届け出先など、窓口は身近な都道府県にするようにぜひ主張をしたいと思います。長官、いかがでございますか。
  133. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 先ほど来、いろいろ議論をいたしておるところでございます。地方の市町村窓口がいいのか、中央官庁で統括した方がいいのか、意見の分かれるところでございます。両々、いいところと悪いところがあるわけでありますけれども、現段階におきましては、やはり中央の方で処理していくのが妥当じゃないだろうか、私もこう考えておるわけであります。  国は、化学物質に関するデータベースの整備、本制度の周知徹底、排出量の推計方法に関するマニュアルの作成などの措置により、事業者への支援を行うことといたしております。  次に、PRTR制度の円滑な運用には地方公共団体と国との連携と協力が重要と認識しておりまして、このために、環境庁としましても通商産業省と協力しつつ、法の公布後、早速にも都道府県との連携体制の整備を図るとともに、都道府県の協力を得て事業者に対する制度の周知徹底を図ってまいりたいと思っております。また、地方公共団体のほか、事業所管官庁、業界団体等さまざまな機関の協力を得て、事業者からの問い合わせに対する対応をしてまいりたいと思っておるところでございます。  先ほど来お話がございました、本法案では、国が届け出を受理して、情報を電子ファイル化する等の作業を行った上で、都道府県に対して個別事業所ごとのデータを扱いやすい電子情報として提供することになっております。この仕組みによって、都道府県は、効率的かつ低コストPRTRデータを利用して、地域の実情に応じた環境保全施策を進めることができると考えております。  PRTR届け出は、電子情報により行うことも可能とすること、さまざまな地域に存在する事業所届け出を本社が一括して行うことも可能とすることなどから、事業者の利便を考えても国が届け出先となることが適当である、こう考えておる次第であります。また、PRTR制度の円滑な運用を図るためにも、地方公共団体との連携は重要でありますので、法案成立後は早速にも都道府県との連携体制を整備してまいりたいと考えておるところでございます。
  134. 西博義

    ○西委員 中央ですべて計画どおりにいけば、私はそれ以上のことはないと思います。しかし、そんなたやすいことは実際には起こらないだろう、提出も大変これは率が悪くなるだろう。もちろん、その分は都道府県が努力せよということでしょうけれども、やはり、でき上がったものをこれですよと見せられて、それに対して対策をしろ、対応を考えろ、技術を向上させろというその発想というのは、もう完全に中央的、いわゆる官僚的発想ではないかと私は思います。  まず、地方自治体がみずから汗をかいて、ともに考え、そしてともに計算を手伝いながらというか、必ずしもそうじゃない、尋ねてくる場合が結構多いと思いますから、そういういろいろなデータ自分たちがまず手に入れて、それを環境庁なら環境庁に回すことによって、自治体の皆さんも、私たちが責任を持ってやっているという意識が初めて生まれるわけであって、できましたからといって白書のようにデータ集が下におりてきて、それを見て何か考えろという、そういう考え方では、私は、地方自治体は本気になってこのPRTR法を、また報告されたデータをどう活用するかというところまでの領域にはいかない、こう思います。  各県においても、実情はそれぞれ技術的にはさまざまだと思います。しかし、地方分権の時代を迎えて、やはりこのことについても、少なくとも都道府県レベルではこういうことができるような人材をそれこそ育成していくという意味においても、皆さん方から見てもう少し充実していただかなければと思う側面もあるかもしれませんけれども、そのことはぜひ、初めは単なる通過点になるかもしれないけれども、やはりその中で少しずつ育成していくという気持ちがなければ、本来の意味の地方分権は成り立たないんじゃないか、私はこう思うわけでございます。  環境庁長官、御感想がありましたら、もう一度お願いしたいと思います。
  135. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 私も、終局的には先生のお考えと同様であります。しかしながら、現段階におきまして、この制度を運用していくためには、中央において、データベースなんかがインターネットによって処理されるときでありますから、そのような状態でしばらく運用をしていくべきじゃないだろうか、こう思っておるわけであります。  将来にわたっては、やはり、地方分権の意義を尊重しながら、私は方向性としてはそういう方向でいくべきかなという感じもいたしておるわけでありますけれども、現段階では今の体制でぜひやらせていただきたい、決して中央集権な発想でもってこの処理をしておるわけではございません。
  136. 西博義

    ○西委員 時間がもうございませんので、最後に一言だけお願いしたいと思います。  先ほどから、従業員の規模約二十人というのが大体見えてきたように思いますが、それはそれでもちろん、私もパイロット事業のグラフを見せていただきますと従業員が少なくなったからといって取扱量が減るわけでは決してなくて、かなりのばらつきが、二けた三けたの取扱量のばらつきがあるんです。  それで、今回の目的が、排出量、移動量をつかまえよう、これが目的です。そのために何が近いかといいますと、取扱量が多いところが排出、移動も多いだろう、こういう発想になっております。取扱量が多いということは従業員でもってやったら一番つかまえやすい、レベルがはっきりつかまえやすいのではないかというところから従業員二十人という線を引いているんだろうと思うんですが、これは、それ以下のところでもかなり取扱量の多いところがありますから、私は一つの案として、従業員二十人以下の事業者でも化学物質取扱量が多い事業者には、報告義務はもちろんございません、しかし自己申告をして協力していただく、こういうことも若干取り入れていったらいいんじゃないか、こういうふうに思います。  小規模事業者にも、このPRTR制度を理解していただいて、普及していただく、こういうふうなことをぜひこの際やっていただきたい。それがまた、少しでも多くの実際のデータを集積するという意味では非常に、自己申告制度というふうな形になるんですが、支援措置も若干要るかもしれませんが、できるだけ多くの人に自主的にも集めていただければというふうに思います。  この点について、一言御見解お願いしたいと思います。
  137. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 先生の御質問の趣旨は、従業員規模が二十人以下であっても化学物質取扱量が多い事業者には自己申告をして協力してもらい、国の支援措置を講ずることを検討すべき、こういう御質問だったと思うんですが、今後、これまでの実態調査に加えまして、より詳細な実態調査結果から得られる情報をもとに、PRTR制度実効性を損なうことのないようなすそ切り基準を策定する方針であることから、取扱量の多い事業者は相当程度カバーされると思いますし、また、対象とならない事業者については、国が非点源として推計して把握することとしております。  これに加えまして、ただいま御提案いただいた届け出対象とならない事業者に対して、義務ではなく、自己申告という形で報告を願うというアイデアは、任意のPRTRへの取り組みの拡大という観点から、大変有意義な御意見と拝聴いたしました。
  138. 西博義

    ○西委員 どうもありがとうございました。
  139. 古賀正浩

    古賀委員長 並木正芳君。
  140. 並木正芳

    ○並木委員 改革クラブの並木正芳ですが、公明党・改革クラブとして質問させていただきます。お疲れのことかと思いますが、どうぞよろしくお願いします。  また、民主党佐藤先生には、今回、時間もありまして、内閣提出のもののみに限らせていただきますけれども、いろいろ御苦労いただきましたことは敬意を表させていただきたいと思います。  それでは、両大臣おそろいのところで初めの質問でございますけれども、我々は多くの化学物質をつくり出して、飛躍的に生活も改善されたわけでございますけれども、一方、健康被害等大変な問題も持ち上がっているわけです。私の地元の所沢地域でも、ダイオキシン問題等々、大変な事件的な問題にもなっているわけでございますけれども、そうした点にも、今、国の方でもいろいろな対策をとっていただいています。そうした中で、このPRTR制度、まさに時宜を得たものではないかというふうに評価はいたしております。  ところで、PRTR制度の運用全般の主管ということですけれども、私は、これはあくまで環境庁、将来的には環境省になるということですけれども、この環境庁が当たるべきだというふうに考えるわけです。両方力を合わせてということでもあろうかと思いますけれどもパイロット事業環境庁において行われ、先ほど来のお話のとおり特に支障がなかった、こう理解しているわけです。それが何ゆえに通産省に中心が移ってきたのかなというふうな点が、疑念があるわけなんです。  その理由として、これまで化審法、こういった製品として製造、販売、使用される化学物質を規制する法律、こういうものがありますけれども、これを運用してきたのは通産省が中心だった、こういう経緯によって、いわゆる省庁の縄張りとよく俗に言われるところですけれども、それを離したくない、こういうことなのかな。あるいは、あくまで事業者サイドからの、製造、販売、使用する側の自主的管理改善だ、こういうところに眼目を置いた結果なのかな。この辺ちょっと疑問に思うわけなんですけれども、いかがしてこういう経緯になっていったのでしょうか。
  141. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 まず、通産省環境庁が昔ながらの権限争議をした、縄張り争いをしたということでは決してありません。  先生御承知のように、日本の縦割り行政はそれなりの役割を果たしてきて、日本の行政効率というのは世界の中でも相当高い行政効率を持っているわけでございます。しかし、社会が進展し、経済が複雑化していきますと、一つの省では解決できない問題というのがたくさん出てまいります。これは、したがいまして、縦割り行政ではなく、二つの省なり三つの省なりが権限を越えてやはり協力をするという体制をつくらなければならないと思っております。  今回も私はその例であると思いますし、また、小渕総理が言っておりますバーチャルエージェンシーという考え方は、頭の中で一つの役所を想定して、我々は一つの役所になったんだと考えていろいろな役所が協力をしなさい、そういう考え方も出てきております。  化学物質に関しましては、環境保全上の支障を未然に防止するためには、その対策を化学物質管理と一体として行うことが効果的でありまして、また、化学物質管理改善促進するためには、事業者による化学物質管理活動を生産使用活動にビルトインすることが重要であるというふうに私ども考えているわけでございます。  このように、環境保全上の支障を未然に防止することと、事業者化学物質管理活動の改善とは、まさに表裏一体の関係にあることから、本法案作成に当たりましては、環境保全行政を所掌する環境庁と、化学物質管理を所掌する通産省とが、省益などという古臭いことは全く考えずに、一致協力して取り組んでまいったところでございます。
  142. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 ただいま通産大臣からお話がございましたように、やはり各省にわたる問題でありました。  この法案作成するに当たりましても、通産省環境庁のみならず、農林省とか厚生省等々が関与してつくり出した法案でございます。そういうことで、他省庁との調整を図りながら、この化学物質に関する諸問題につきましては、やはり知見の多い通産省の御意見をいただきながら、また、今日的な問題を解決していくためには環境行政というものが必要であるわけでありまして、それが相まって今回の法案作成に相なったと私は考えておるわけであります。  決して省庁間の縄張り争いじゃなくて、いい法案にしていこうということで各省等が力を合わせてつくり上げた法案でありますので、そのような御理解をいただきたいと存じます。
  143. 並木正芳

    ○並木委員 両大臣のお言葉にありました、そうあるべきと心から期待するところでございますけれども、若干違うんじゃないかなという、私の私見というか受けとめ方かもしれませんけれども。  というのは、今、環境庁が中心となるべきだというふうに考えていますと申し上げたのですけれども、まさに、事業者の自主的管理改善、これと、人の健康及び生態系への影響を未然に防止する、これは表裏一体だというふうにおっしゃられたわけなんですけれども、結果が出ているか出ないかというような中で、事業者的考えと、国民の側といいますか、もちろん事業者国民なわけですけれども、若干違ったところがある。  御案内のとおり、リオ宣言等、これは日本も参加しているわけですけれども環境問題というものについて、完全な科学的確実性の欠如が環境悪化を防止するための費用対効果の大きな対策を延期する理由として使われてはならない、こういうふうに、環境対策における予防方策適用の原則、こういうものがうたってあるわけです。そういうような観点をむしろ推進していくというのが環境庁側ではないかなと私は考えております。  そういうふうなことを考えますと、いわゆる環境庁等が扱っている環境中へ放出される化学物質に関する規制、こういうものを、今のような観点で、あるいは世界じゅうの環境問題情報、こういうものに照らして厳しく点検していく、そして化学物質の製造、使用も必要なものは規制していく、こういう形が好ましいというふうに考えるわけです。  ですから、事業者というものがその中心になると、結果がまだ出ないという中でついつい、自主的管理改善、やはり自主的も改善もともにいい言葉でございますけれども、そういった美辞のもとに緩慢な対応ということにとどまってしまうんじゃないか、すなわち環境対策におくれをとる懸念があるんじゃないか、こういうふうに考えるところであるのですけれども、そのような見解についてはいかがお考えでしょうか。
  144. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 先ほどお答えの中に、やはりシステムをその中に埋め込んでおくということ、これをビルトインと言ったわけでございます。そういうことによって、いわばそのシステム自体によっていろいろな管理が行われるということが望ましいということが一つあります。  それともう一つは、やはり化学物質を扱う場合に、あれが危ない、これが危ないという今まで確立された科学的知見によるものと、あれが危なそうだとか危ないかもしれないというものには、随分大きな差があります。我々は幅広くそういうものを扱ってまいりたいと思いますけれども、やはり、環境に対する影響等々は単なる推測だけでは十分ではなくて、きちんとした科学的知見、医学的知見、あるいはその他自然に対する影響、そういうものをきちんと一方では行うという体制が私は必要なんだろうと思います。  でありますから、化学物質をつくる場面と、それが出ていく場面と、それが環境や健康に影響を与えるという場面、そういうすべての場面をやはりとらえるということであって、これは、役所の縄張りとか役所の権限とか、そういうこととはかかわりなく、そういう全体をとらえるために、現在ある日本政府の仕組みの中でどういう組み合わせでそれをやったらいいのかという、省庁横断的な行政のあり方を追求した法律である、私はそのように考えております。
  145. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 環境庁のここ二十八年の歴史をひもといてみましても、今までは公害問題の後始末というような形で環境行政を遂行しておったような感じがいたします。もちろん、水銀禍であるとかイタイイタイ病、ワクチン禍の問題、いろいろ処理せなければならない大きな問題があったわけでありますけれども、ここに参りまして、環境庁が主導権を発揮しなければならない問題が多々出てまいりました。  先生の地元であります埼玉県のこの前のお茶やホウレンソウの問題もそうでございます。これも、ダイオキシン問題ということで、一省や二省でなくて十三省庁が一緒に協力してやっていこう、そしてまた最高の権限を持ちます内閣においてその対策協議会をつくって問題処理に当たるということに相なったわけであります。  ですから、環境行政の変遷ということも念頭に置きながら今回の法案の問題にも取り組んだところでありまして、この法案が将来的に中央省庁の再編成と相まっていい形で遂行されるように私は頑張ってまいりたいと思っておるわけでありまして、ぜひ御協力をお願いいたしたいと思う次第であります。
  146. 並木正芳

    ○並木委員 多少繰り返しになるかもしれませんけれども、中環審とか化学品審議会、こういう中間報告を見ますと、やはりかなりニュアンスが違う。化学品審議会の方は、科学的根拠に基づき有害性があると判断される、こういうふうに言い切っているわけです。  結局、環境問題についてこのような従来的な考え方にとどまるということになると、いわゆるリオ宣言等の予防原則、そういうものから考えても、十万種類ぐらい世界には化学物質があるというふうに言われております。これを今のような十分な科学的根拠に基づいて有害性を判断するというふうにしていくには、極めて長い時間を要するし、また被害と規制物質との明確な因果関係、こういうことを科学的に証明するのは現実にかなり大変なことなわけです。  そういうふうな考え方でいって、今この化学物質の中では、生殖障害とかあるいは催奇形性とか発がん性、こういう人類存亡の危機とも言われるような大きな害が出るものがあるというふうにいろいろ判断されているわけです。こうした中で、手おくれになりはしないかと。  そういった点で、先ほど与謝野大臣が、やはり事業者的な立場で、どうしてもその根拠をきちっとしないとなかなか改善あるいは規制がしにくいというようなニュアンスもあったんですけれども、そこにもう一歩をぜひ踏み込んでいただきたいというふうにも思うわけなんですけれども、与謝野大臣の方から、もう一度見解をお聞かせいただきたいと思います。
  147. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 科学的知見を持つというのは当たり前のことでございまして、科学的根拠なしに人を説得するということはできません。したがいまして、あらゆる問題に、基礎研究を含めまして、一体、自然に対してどういう影響があるのか、人間の健康にどういう影響があるのかという研究を常にやっていなければなりませんし、そういう科学的知見に基づいて行動するということが人間の理性であると私は思っております。  ただ、その危険が完全に立証されない段階であっても、おそれがあるという考え方はこの法律の中に出てきているわけですから、私は完璧な科学的知見ということを言ったわけではもちろんございませんけれども、やはり人間の理性で判断する以上、科学的な根拠や基礎がなければならないということは、私は当然のことであると思っております。
  148. 並木正芳

    ○並木委員 言葉としては当然だと思います。当然、そのいろいろな調査研究を進めていただきたい。しかし、余りにも多い物質をすべて完全にこうやっていくのは難しいことだろう、それも御案内のとおりだと思います。  ところで、そうした中で、今、自然生態系にこうした物質、いわゆる環境ホルモンというものの影響じゃないかと言われているような、イボニシという巻き貝が雄化するとか、あるいはカモメが同性で巣ごもりする、あるいは日本でも多摩川のコイの精巣が退化する、こういうような現象、極めて奇妙な現象でありますけれども、あらわれているわけです。  今回のPRTR法には、こうした環境ホルモンについて、これはほかにも意見がいろいろ出ていると思いますけれども、不明確と思われますけれども、これについていかがでしょうか。
  149. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  先ほど来お答え申し上げておりますように、いわゆる環境ホルモンの問題につきましては、環境保全上の重要な課題であるというふうにまず認識し、真剣に取り組んでいるところでございますが、このために、PRTR対象物質の選定に当たりましても、内分泌攪乱作用そのものが判断指標の一つであるというふうに私ども認識しております。  ただ、先ほども申し上げましたように、現時点では科学的に不確実な点が多いということがございまして、関係省庁と連携いたしまして、国際的な協調のもとに、各種の調査研究、内分泌攪乱作用の試験方法の開発を進めるなど、数多くの物質について科学的知見の充実を急いでいるところでございます。  先ほどもちょっとお答えで申し上げましたが、環境庁といたしましては、特に内外の文献において内分泌攪乱作用を有すると疑われる物質につきましては、それを優先的に取り上げまして、内分泌攪乱作用が科学的に確認され次第、PRTR制度対象物質とする方針でございます。
  150. 並木正芳

    ○並木委員 もう少し時間がかかるような、そういうニュアンスでございますけれども環境ホルモンという通称のものについては、日本において約七十種類ぐらいあると言われております。対象となる化学物質の数が大変多いわけですね。それと、これ以下だったら被害はないだろうという、ちょっとそういう値が見つかるのかどうか。つまり、ごく微量でもそれなりの被害が出る可能性がある。しかも、これは大変便利なものといいますか、さまざまな製品に幅広く使われているわけです。  こういうようなことで、代替物質がないということでは結局は使用禁止になってしまうということで、その現況の産業界への影響を考えて不明確な表現を使っている、こういうことはないのかな、あってはいけないんじゃないかなというふうに考えるわけです。そういうふうなところでまだ科学的知見がはっきりしないんだというふうなことでの認識でしたら、ちょっと違うんじゃないかというふうに考えるんですけれども、再度、もう少し明確に環境ホルモンを含める表現を使うべきかと思いますが、いかがでしょうか。
  151. 岡田康彦

    岡田政府委員 二点お答え申し上げたいと思います。  まず、本法案におきましては、人の健康を損なう等のおそれがある物質を幅広くとらえるために、個々の毒性を法律上明示しておりませんけれども、これらは現在の条文で、内分泌攪乱作用が科学的に確認されれば当然対象物質に指定できるということでございまして、私どもとしては、先ほども申し上げましたように、科学的に不確実な点が多いことは事実でありますので、この調査解明を急いでいるのが実態でございまして、内分泌攪乱作用が確認され次第PRTR対象物質として指定する方針だということを先ほどお答え申し上げたわけでございます。それがまず一点でございます。  もう一点は、先ほど約七十物質とおっしゃいましたが、私どもがSPEED98に掲げました六十七物質のことを御指摘なんだと思いますが、実はこれは、学者の協力を得まして世界的に文献をあさりまして、文献上疑いがあると言われているものをとにかくすべてリストアップしてきた結果がその段階で六十七でございました。実は、その程度についてはまだ必ずしも解明が十分進んでおりません。また、日本に生産使用実績のないものもそのうち二十七物質がございます。それから、実際問題として私どもがもうPRTRパイロット事業対象物質としたものも十七物質ございます。  こういうことで、決していわゆる環境ホルモン物質を対象としないということではございませんで、きちんと見きわめをつけて、ついたものからは取り組んでいこうという取り組みでございます。  なお、さらにつけ加えますと、実はただいま、スクリーニング方法というのは国際的に協力して考えよう。アメリカが今提案していますのは、一万五千の化学物質につきましてとにかく簡便方法で、とりあえずこれは環境ホルモン作用がおよそないか、少しある可能性があるか、まず最低そのスクリーニングをやろう。これはアメリカ一国ではできないので、OECDに諮って、日本も協力して、アメリカ、ヨーロッパ、日本、共同してそれに取り組もう、こういうことも言っておりまして、いわゆる環境ホルモンという物質についてはまだまだこれからというところが随分たくさんあるという点も御理解賜りたいと思います。
  152. 並木正芳

    ○並木委員 より積極的な対応を望んで、期待しておきます。  ところで、届け出の問題ですけれども、国に届けるという形でございますけれども、地元の中小企業等が扱うものも多いと思います。そうしたところからして、地域の事情により精通している、なおかつ地域住民の健康と環境を守る責務がある、まず身近でそういういろいろな声を聞いている地方公共団体、民主党案では市町村等々ということですけれども、私ども規模から考えて都道府県でいいんじゃないかなというふうに考えるわけなんですけれども、都道府県にすべきではないかと思うわけです。  この事業者届け出る数値について、いわゆる事業者にわかりやすい算出マニュアルの作成などを行うというふうにも言われているわけですけれども、その正確さや、不正がないか、こういうチェック体制、これは国としてはどう考えているのか。今申し上げたように、むしろ都道府県に任せた方がそういったことに機能が発揮できるんじゃないか。  都道府県等が窓口にならずに、中小事業所等への指導、勧告、立入調査、これも行えないという仕組みだと、やはり、事業者届け出ない場合とか虚偽の届け出がなされた場合などに、果たして国がそこの中小事業者等の実態把握して適切な措置が行えるのかという懸念があるわけなんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  153. 河野博文

    河野(博)政府委員 御指摘がございましたPRTRにおきます排出量の算出、これは、できるだけ統一されたルールによりまして可能な限り高い精度で行われることが望ましいというふうに考えております。  そういう点から、環境庁あるいは私ども、そして事業所管官庁の共同で、排出量の算出方法をできるだけ明確にいたしまして、また、事業者の皆さんにもわかりやすいマニュアルを作成しまして、必要に応じて技術指導などを行って、この算出の支援をしてまいりたいというふうに考えております。  また、国におきましては今後もさまざまな調査を実施いたしますけれども、既に保有しております全事業所、全企業のリストと、届け出予定対象化学物質取り扱い調査の結果とを照合いたしつつ、同業種間あるいは同規模企業間のデータ、あるいは届け出データと既存のデータ、こういったものをさまざま比較検証を行うことによりまして、その数値の正確性などを検証していく方法を考えているのでございます。  もちろん、そういったプロセスの中で、この法案でも地方公共団体の責務を国と並んでいろいろ書かせていただきましたけれども、こういった面で、地方公共団体あるいは業種ごとの業界団体、また地方の中小企業の団体、商工会等々、さまざまな組織に全面的に御協力をお願いしながら、こうしたダブルチェック体制をつくっていきたいというふうに考えているわけでございます。  また、この法律におきましては、届け出られましたデータは開示されるわけでございます。他の事業者データと比較されるわけでございますから、事業者にはなかなか不正を行おうということにはならないというふうにも思っておりますし、そういった点から算出の精度を向上するような努力の動機づけが働くというふうにも考えております。もちろん、最終的には罰則で担保されているということでございます。
  154. 並木正芳

    ○並木委員 営業秘密云々の判断とかは国で一元的にやりたい、そういう意味でも届け出は国にというようなお話もあるわけですけれども、むしろ、企業を保護育成するべき事業所管省庁が行っていくということでは公正性が確保されるのかという懸念もあるわけです。  アメリカでも、一九九五年のデータですけれども、七万三千件のうち、営業秘密に限定されたものがわずか十三件しかなかった、こういうことを考えますと、主務大臣と協議の上でまた都道府県でも判断していけるんじゃないか、こういうふうにも考えているので、ぜひその辺、むしろ地方公共団体が今現状でもいろいろな規制、管理指針を出しているわけですけれども、それに後退しないようにぜひ考えていただきたいというふうに思います。  最後に、両大臣いらっしゃいますので、日本環境先進国あるいは環境大国としてこれから進むべきであると私は考えるわけです。そのためには、国内外の環境リスクコミュニケーションの促進を図り、国際的には、国際有害化学物質登録制度、こういうものへの、国際的環境対策へのイニシアチブを日本が発揮していく。そしてまた、通産省的な考え方でいえば、環境技術の開発あるいは環境産業の育成、こういうことによって日本の産業基盤構造をシフトチェンジしていく。そして雇用拡大、かつ国際的環境問題解決への貢献をしていく。こういう役割を大いに果たすべきだと考えますけれども大臣の御見解をお聞かせいただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。
  155. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 日本環境基準は、世界の中で誇るべき環境基準だろうと私は思っております。それから、例えばCOP3では、CO2の削減ということは、先進国の中ではほぼ日本だけと言ってもいいぐらい我々は愚直に例えば炭酸ガスの削減に取り組んでいるわけでございますし、また環境技術というものも、国も民間も大変な研究をしておりますし、また、我々がつくり出した新しい環境技術というのは進んで発展途上国等に提供をしておりますし、今後とも世界人類や地球といった規模で物を考えていきたいと考えております。
  156. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 いろいろな国際会議に参加しまして感ずることは、日本環境問題についてはもはや先進国であり、リーダー国であるという認識を持つものであります。その意識に基づいてこれから行動をとっていかなければならないということでありまして、今までの追いつけ追い越せでなくて、やはり途上国の指導に当たるという観念を持っておかなければならないと思うわけであります。  また、国内的には循環型社会を形成していくわけでありますから、エコビジネスというのが当然生まれてくるわけであります。そういう産業によって新規産業を振興させていくということが大切なことだろうと思っておるわけでありまして、内閣で行われておりますこの戦略会議におきましても、そういう提言をし続けていこうと思っておるところでございます。
  157. 並木正芳

    ○並木委員 ありがとうございました。
  158. 古賀正浩

  159. 武山百合子

    ○武山委員 自由党の武山百合子でございます。それでは早速質問に入りたいと思います。  午前中、参考人のお話を聞きまして、神奈川県、愛知県で環境庁が二年間行ったパイロット事業のお話を聞いたわけですけれども、地元自治体が対象事業者報告様式と報告方法説明資料を個別事業別に送付して、多数の説明会を行って助言指導を行い、問い合わせや督促を行ったにもかかわらず、その報告率は五〇%でしたというわけですね。また、従業員数三百人以上の大企業でも報告しない企業が多数あった、また、明らかな間違いもたくさんあった。  このような事実から、多数の事業者への報告様式や報告方法の記載書類の送付や督促も難しく、今回の法律は所管の官庁への自主的な報告を待つ政府案ですよね、この報告率を上げ、誤りを少なくすることは非常に難しいのじゃなかろうかと浦野参考人が話されたわけですけれども、このお話も事実の一端であろうかと思います。やはりこの制度がある程度根づくには時間がかかるかなといった思いをいたしております。  これとかかわりますけれども、本法案において、都道府県に所管官庁がファイル記録事項を通知することとしておりますけれども、都道府県がこれをどのように活用することをまず所管官庁は期待しているのでしょうか。     〔古賀委員長退席、北橋委員長着席〕
  160. 河野博文

    河野(博)政府委員 私どもの予定しております通知ファイル、これは、電子計算機を使いますとさまざまな分析が可能になるだろうというふうに考えております。管内の業種別の分析あるいは地域別の分析、そういった数字をそこからまたはじき出してくることができますし、加えて、経年変化をその中で把握することもまた可能になるわけでございます。  そういった経年変化等さまざまな分析を経て、地方公共団体の皆さんが私どもと全力を挙げて協力をいたしまして、それぞれの事業者の皆さんに対する技術的な指導、あるいは地域の皆さんに対するさまざまなそういった化学物質の排出動向に関する説明などに生かしていくこと、またさらに進んで、これは環境庁からもお答えあろうかと思いますけれども、さまざまな面での環境行政に生かしていただくことを期待しているのでございます。
  161. 武山百合子

    ○武山委員 そのお話を聞きますと、届け出の官庁は地方公共団体すなわち都道府県でもよかろうかと思いますけれども、どう思いますでしょうか。
  162. 河野博文

    河野(博)政府委員 先ほど来御説明をさせていただいているとは思いますけれども、全国統一的な仕組みでこの制度を発足いたしまして、かつ効率的にこの登録を処理する、また企業秘密について専門家の判断をいたしていくという視点から、国が当事者になることが適当だというふうに考えたところでございます。
  163. 武山百合子

    ○武山委員 そうしますと、都道府県は、もちろんよい意味でですけれども、削減をするためのいろいろな方法事業者と話し合ったり、住民に情報提供したりして、やはりきちっと国と同じような立場で活用してもよいというふうに判断してもよいのでしょうか。
  164. 河野博文

    河野(博)政府委員 例えば、この法律の第十七条には「国及び地方公共団体の措置」という条文がございます。これは、国と地方公共団体、両方を並べまして、今後果たしていくべきある種の役割といいますか、さまざまな措置を記述したものでございまして、地方公共団体の皆さんからも地方公共団体の役割を明確化してもらったという評価もいただいているというふうに思っております。  そこでは、例えば国では技術的手法の開発あるいはデータベースの整備というような措置が責務として書いてありますけれども、技術的な助言、それから国民の皆さんの理解を深めるように努める努力、そして人材を育成するような措置、こういったことが国と並んで地方公共団体の役割としてうたわれているのでございます。
  165. 武山百合子

    ○武山委員 それでは、同等という立場で解釈したいと思います。  その次に入りますけれども、そうしますと、都道府県が市町村に対し同じようにファイル記録事項を提供することは可能なのでしょうか。
  166. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  都道府県が市町村に対してファイル記録事項を提供することは可能だと考えております。ただ、それは、あくまで都道府県が自治事務として市町村に行うということになると思いますので、法律上の特段の規定はございません。
  167. 武山百合子

    ○武山委員 法律上の規定はないということですけれども、自主的にファイルが提供されて、市町村が都道府県と同じようなことが行えると解釈もできるのでしょうか。
  168. 岡田康彦

    岡田政府委員 そういう事態になれば、もちろんそういう活用の仕方をされることになると思います。  午前中の参考人の御意見にもございましたように、都道府県も国からファイルを、いわば生データをそのままそっくりファイル化してもらうわけですから、それをフルに活用したいという意欲はお持ちですので、いろいろな活用の仕方が工夫されるものだと思っていますし、私どもも、積極的にその活用方法につきまして協議の場等をつくりまして、周知徹底あるいはお互いの意思の疎通をより図っていこうと考えております。
  169. 武山百合子

    ○武山委員 そうしますと、国も、地方公共団体、都道府県ですけれども、また市町村も同じ立場でできるというふうに解釈しまして、そういう立場ででしたらやはりいろいろとできるのじゃなかろうかと思っております。  それから次に移ります。  本法案において、排出量の集計情報については公表するとしております。個別事業所排出量情報については請求開示によるとなっておりますけれどもアメリカにおいては個別事業所排出量情報についても公表していると聞いておるのですけれども、この請求開示の方式をとったのはなぜなのでしょうか。
  170. 岡田康彦

    岡田政府委員 我が国におきますところのPRTRは、事業者による化学物質の自主的な管理改善促進し、環境の保全上の支障を未然に防止することを目的としているところでございまして、アメリカで、緊急対処計画及び地域住民の知る権利法と申します現在の法律は、化学工場の事故等が出発点になりまして、ヨーロッパのいわゆるPRTRと結果的に同じような機能をしておりますが、出発点が全然違っておったというような点がございまして、法整備の背景、趣旨、内容が異なるものでございます。  PRTR制度の趣旨に照らして考えますと、個別事業所データに関心を有し、それを必要とする者に対して開示がなされれば、本法律案の目的は達成すると考えられるところでございまして、このため、国民からの請求によって個別データを開示する制度を採用することとしたところでございます。
  171. 武山百合子

    ○武山委員 先ほどお話ししました、午前中の参考人のお話からなのですけれども、いろいろパイロット事業の中でしましたら報告率が五〇%だということで、この制度が根づくにはしばらく時間がかかるかなと思っております。あくまでも、今のところ政府案では見直し十年後ということですけれども、自主的な事業者報告はずっと続けるつもりでしょうか。
  172. 河野博文

    河野(博)政府委員 見直しの規定は、御指摘のように、十年後、政府が義務的に見直すことということでございます。先ほどもちょっと触れさせていただいたかもしれませんが、準備期間が二・五年ほどございますので、報告にいたしますと、七回程度報告状況を踏まえた見直しということでございます。  ただ、繰り返しになるかもしれませんが、対象物質については、国際的な動向に配慮しながら随時見直すということが当然でございまして、政令の改正等はそれを予定したような条文になっているのは御承知のとおりでございます。  また、この運用を通じまして問題が十年を待たずとも明らかになった場合に、それを的確に反映して見直していくことは、私どもの務めだというふうに思っております。
  173. 武山百合子

    ○武山委員 パイロット事業の二年間のデータもありますし、その前に、今お話しのように七回のいろいろな機会があるということですので、それを踏まえて、やはり試行錯誤の中で制度というものはいいものに育て上げていくんだと思いますけれども、その中で、こう決めたから、十年だから十年というのではなく、いわゆるパイロット事業の中のデータ、それからその七回のいろいろなデータをもとに、スパンとしては十年先ですけれども、それを土台に、途中で変えていくという柔軟な考えもぜひ持っていただきたいと思います。  次に移ります。  本法案において、集計情報の公表ですけれども、個別情報の開示を通して国民に広く化学物質環境への排出実態を知らせるわけです。これはもう国民が望んでいることですけれども、一方で、PRTR対象物質は有害性のあるものであるわけですね。ですから、いたずらに国民の不安を招くおそれもあるわけなんです。  ですから、政府は、国民に対してこの結果をわかりやすく説明すべきだと思いますけれども、その方策はどのように考えておりますでしょうか。その都度やはり説明を、わかった時点で逐次わかりやすくデータベースで、インターネットで報告するとか、記者会見するとか、各地方公共団体でするとか、その辺、細かい方策を考えていらっしゃるかと思いますけれども、わかりやすく説明すべきという視点でお話しいただきたいと思います。
  174. 河野博文

    河野(博)政府委員 今後、集計いたしました結果をどのように説明をつけながら公表していくかという点は、いかにわかりやすくしていくかという私どもの課題だというふうに思っております。  具体的には、もちろん、年度ごとに集計されたものについての説明をできるだけわかりやすくさせていただきたいというふうに思っておりますけれども、同時に、先ほども触れましたように、この法案では、国が化学物質に関しますデータベースを整備することもその責務の一つとしてうたわれているわけでございまして、こうした情報が、さまざまな情報ネットワークを通じて供給されることも含めまして、国民の皆さんにうまく伝わるように努力をしてまいりたいというふうに思っております。  また、御指摘がありましたような地域地域での説明会等々、地方公共団体あるいは地方の中小企業団体、さまざまな組織を通じて協力をしながら説明会を設けるのも一つのアイデアだというふうに思っております。
  175. 武山百合子

    ○武山委員 化学物質というのは横文字が多いわけですけれども、ぜひ横文字の後に日本語で、わかりやすい簡潔な言葉でつけ加えていただきたいということを、ちょっとつけ加えたいと思います。  その次に移ります。  この法案において、PRTRデータの結果を見まして国が環境モニタリング調査などを行うとしているわけですけれども調査の結果はどのように環境保全の政策、対策に活用されるのか、その辺、青写真を描いておりますでしょうか。
  176. 岡田康彦

    岡田政府委員 今後、PRTRによりまして得られますところの排出量データ等を勘案することによりまして、環境モニタリング調査その他の科学的調査の重点化を図りまして、これらを総合的に実施することによりまして、化学物質と人の健康等への影響等に関する科学的知見の充実を迅速かつ効率的に図ることが可能になるとまず考えております。  このようにして得られました成果は積極的に公表いたしまして、また、人の健康等に被害を生ずるおそれがあると判明した場合には既存法令等で迅速に対応するなど、その成果を活用して環境保全施策に速やかに取り組むことによりまして、環境保全上の支障を未然に防止していくことが可能になると考えております。
  177. 武山百合子

    ○武山委員 ぜひ言葉どおりスピーディーに、本当に速やかに対応していただきたいと思います。  それでは、次に移ります。  対象物質について伺いますけれども、現在、化学物質の有害性について、これは、通産省では化審法で千百二十三物質ですか、厚生省は化学物質毒性試験報告で百六十七、そして労働省が、既存化学物質変異原性試験データ集というのがあるんですね、これで四百五十三物質を公表しているわけですけれども、各省庁間でかなりのばらつきがあるわけです。  法案対象物質は、まずこの中から選ばれるんであろうと考えますけれども、先ほど、たしか西議員が質問されているときに、一種、二種とかというふうに分けてお話しされていたかと思いますけれども、これらの中からまず選ばれるんでしょうか。
  178. 河野博文

    河野(博)政府委員 今御指摘がありましたさまざまな法律によって指定されております化学物質が、すべてこのPRTR法案対象としての要件と合致するかどうかは疑問だと思います。全く違った、開放系の用途で全く使われないような化学物質も、その目的に照らして規制されている物質があるというふうに思いますので、一致するかどうかはわかりませんが、また逆に、既存の規制法で対象になっていない、そういう意味では、有害性は科学的に判明したけれども、人の健康あるいは生態系への影響についての因果関係が必ずしも判明していないという、既存の規制法では対象とし得ていない物質をむしろこのPRTR対象物質として積極的に取り上げていくというのが、私どもの考え方でございます。
  179. 武山百合子

    ○武山委員 わかりました。その次に移ります。  国際機関、アメリカ、ECなどが収集したハザードデータ我が国データベースに蓄積されて利用されておるわけですけれども欧米諸国などと比べるとかなり整備がおくれているというのが現実なんですね。しかしながら、化学物質を扱う業者からいろいろな有害化学物質データを入手する要請は年々高まってきておるというのが現実だと思います。  今後、このデータベースの普及を図るために、まずどのような対策を考えていくのか、その辺をお聞きしたいと思います。
  180. 河野博文

    河野(博)政府委員 かねてより環境庁も私どもも、化学物質データをできるだけ整えて国民の皆様方に提供できるように心がけてきたつもりではありますけれども、今回の法案では、第十七条で「国は、化学物質の性状及び取扱いに関する情報に係るデータベースの整備及びその利用の促進に努めるものとする。」ということをうたっております。  この条文を頭に入れまして、一層具体的に化学物質に関するデータベースの整備に努めまして、これを、インターネットなども含めてできるだけ国民の皆さんからアクセスしやすい状態に置くことによって、化学物質に関する情報提供を拡充してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  181. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答えします。  環境庁におきましても、環境に関するさまざまな情報を適時適切に提供できるようにすることの重要性にかんがみまして、国立環境研究所環境情報センターを設置し、取り組みをしているところでございます。  本法案に基づき整備しますところのデータベースにつきましては、化学物質排出量等情報と、これまで環境庁が蓄積してきているところの化学物質に関する科学的知見や、環境モニタリング結果などの環境情報を一体として利用できるようにすることが効果的かつ合理的であると考えておりまして、その観点から取り組み検討を始めておるところでございます。
  182. 武山百合子

    ○武山委員 通産省は、そうしますと、かなり欧米に近づけるというような方策を考えておるのでしょうか。中身がちょっと今、そういうことを考えて行動するというのはわかったのですけれども、細かいこういうことをする、ああいうことをするというのはお話ししていただけなかったものですから、欧米に比べてかなり近づけるのかどうか、その辺をちょっとお聞きしたいと思います。
  183. 河野博文

    河野(博)政府委員 先ほど一般論としてデータベースの整備というふうに申し上げましたけれども、例えば平成十一年度の予算におきましては、科学的知見の充実あるいは試験方法データベースの整備、こういった分野に要する経費として十億円を予定しております。これは、例えば有害性データベースの整備に関して二・五億円を投入する、こうしたことを、例えば私どもの製品評価技術センターという組織がございますけれども、ここのコンピューターデータベースを大規模に整備をするというようなことを企図しているところでございます。
  184. 武山百合子

    ○武山委員 もうちょっと詳しくお聞きしたいと思いますけれども、五〇%ぐらい近づけるのですか、それとも七五%ぐらいですか、一〇〇%ぐらいですか。
  185. 河野博文

    河野(博)政府委員 ちょっと私もどのようにそのパーセンテージを計算してよいのか迷いますけれども、とにかく、限りなく追いつくように整備を進めたいというふうに思っております。
  186. 武山百合子

    ○武山委員 お金だけかければいいというわけではありませんので、中身の、質の問題だと思いますので、おくれているというのが事実なものですから、ぜひ頑張っていただきたいと思います。  次に移ります。  現在、商業的に製造販売されている化学物質は七万から八万種類あると言われておるわけですけれども、毎年、千から二千種類ふえているということを聞きまして、非常に多いのだなと思っております。こうした化学物質について、有害性のリスク評価を行うために膨大なマンパワーと時間が必要とされておりますけれども、それに対して、リスク評価を行う人材が決定的に不足しているのじゃなかろうかと思いますけれども、その辺はどうでしょうか。
  187. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  化学物質の安全性評価に係る専門家につきましては、その数が欧米諸国と比べて少ないと言われていることから、そのための人材育成とリスク評価のための体制づくりは重要な課題だと考えて取り組んでいるところでございます。  本法律案におきましても、化学物質に関しまして、事業者管理の技術的助言を行える人材や、国民の理解の増進を行えるような人材の育成に努めることとされておるところでございまして、環境庁といたしましても、環境研修センターにおける研修の実施などを進めてまいりたいと考えております。  さらに、先生指摘のリスク評価の成果につきましては、従来からデータの蓄積に努めているところでございまして、その充実を、引き続き、急ぎ取り組んでいきたいと思っております。  ちなみに、平成十一年度の私ども環境庁化学物質環境リスク評価推進費は五億三千八百万円でございます。
  188. 武山百合子

    ○武山委員 分野も、発がん性、神経毒性などに限られているというのが実情ですけれども環境ホルモンに見られるように、リスク評価は広範な観点からなされなければならないというのは周知の事実なんですね。  今後、我が国として、リスク評価を行う人材の育成、体制の整備というのは本当に国民全体が必要だと痛感しているわけですけれども、今の人数で足りるのでしょうか。それとも、どのくらいふやしたらできるのでしょうか。
  189. 岡田康彦

    岡田政府委員 実は私ども国立環境研究所がございまして、もちろんこれだけではないのですが、こうした課題にも積極的に取り組んでおるわけでございますが、今の陣容ではどうにも足りないということを日ごろ言われておりまして、私どもも、定員の充実であるとか優秀な人材確保であるとかいうことに努力しておるところでございます。  研究者に言わせますと、通常の各年度の予算要求で定員をふやしてもらうくらいではとても足りないというふうに言われておりますので、一生懸命頑張っていきたいと思っております。特にこの後、独立行政法人化の問題も抱えておりますので、そうした局面もつかまえて、もう少し拡充を図りたいと考えております。
  190. 武山百合子

    ○武山委員 これは政治の場ですから、ぜひはっきりと腹の中を言っていただきたいと思います。これは大変な問題なんですね、今この問題というのは。ですから、実際に今どのくらいの人がいたらこういうものに対してマンパワーが充実できるのか。ぜひある程度の数値を、これはまさに政治の場ですので、両大臣もいらっしゃることですので、ぜひ数字で示していただきたいと思います。
  191. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 先般も、つくばの国立環境研究所を訪問しましたら、まず何よりも人員増と申しましょうか、専門的な仕事に従事できる人を採用してほしいということでございました。  と申しますのは、やはりいろいろ仕事が多いわけでありますけれども、アルバイトでお手伝いをしておられる方々が非常に多いわけであります。御案内のように、つくば周辺には科学者が随分おられるわけでありますから、その奥さん方を活用して仕事の補足をしてもらっておるという実情であるわけでありまして、年間の稼働率というのが非常に高いわけであります。そんなことを考えると、ただ短絡的なアルバイト仕事でなくて、専門的に本当に従事できる人を送り込んでほしいということでありました。  ダイオキシン問題等々について、それではどの程度の研究がなされるかというと、またこれ数が非常に少ないわけでありまして、そうしたら、その人たちをすぐに養成できるかというとなかなかできないわけでありますから、そういう専門家の育成ということで、若い人たちの新規採用ということも考えてもらいたいというような要望でございました。  何名かということになると、多ければ多いほどいいというような意見にはなるわけでありまして、それがただ単なる数合わせでなくて、そういう本当に仕事のできる人を採用して現場につけてほしいというのが心からの要望であったわけであります。
  192. 武山百合子

    ○武山委員 本当に、お話を聞いておりますと、経済大国という名にふさわしくない言葉だと思うんですね、アルバイトを現実に使わざるを得ないというような。環境問題というのは今まさに襲ってきておりまして、何とかいろいろな意味で対策を考えていかなきゃいけない。その環境リスクを、いわゆる排出量を削減するという一つのこの制度なわけですけれども、この制度自体に対しても人材がいない、本当にお粗末という、貧しい発想というか悲しい状態のように思うんですね。まさに試行錯誤して、この人員は何とか確保していただきたいと思います。  それでは次に移ります。  化学物質環境安全管理という分野で、生物や抗生物質を用いて化学物質の生物への悪影響を評価するバイオアッセー法というのがあるのですけれども、毒性の評価ということですけれども、これが大変注目されまして、この役割についてお聞きしたいと思います。
  193. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答えします。  化学物質の人や動物に及ぼすさまざまな影響を定量的に判定するために、生物学的検定法、すなわち先生がおっしゃるところのバイオアッセーが果たしてきた役割は極めて重要でございます。  例えば、いわゆる環境ホルモンによる人や野生動物の内分泌攪乱作用を判定するために、現在OECDではバイオアッセーによるスクリーニング試験方法が開発されておりまして、我が国もその早期確立を切望し、かつ、その開発に積極的な貢献をしてきているところでございます。  バイオアッセー法にもさまざまなものがございまして、例えば試験管内実験によって短期間で結果が得られる場合もあれば、ラットなどの動物を用いて、一年以上の長期的な実験を行った上で結果を得る場合もございます。こうしたバイオアッセーの役割を高めるためには、手法を一層高度化するとともに、実験施設等の整備等も必要であると考えております。  ただ若干、この問題につきましては、一方で、動物愛護の観点から、使用する動物の数を最小限にするための努力も同時に求められているという問題もございます。  いずれにいたしましても、バイオアッセーの役割の重要性ということは確かでございますので、これを踏まえまして、その効果的な活用と普及のために努力してまいりたいと考えております。
  194. 武山百合子

    ○武山委員 まさに時代のニーズだと思いますので、役割を大変評価されておりますので、普及を図って、今後の整備計画などをぜひ急いでつくっていただきたいと思います。  それから、今回の法案についてですけれども、多くの市民団体、NGOから、この法案についての実効性に対して疑問が投げかけられております。私の部屋にも、私は連立与党の自由党ですけれども、私のところにもいろいろ来ております。その中にも耳を傾けるものというのは現実にあるわけです。私、政治家として、やはりこれは正しいことを言っているなということもあるわけですね。その批判に対してどのように受けとめられているのか、各大臣にお一人ずつお聞きしたいと思います。
  195. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 まず、先ほど申し上げたのですが、憲法に書いてありますとおり、国民は正当に選挙された議員を通じて活動するということですから、私どもにとりましては、第一義的に、国民というのは先生そのものでございます。  しかしながら、最近はNGO等のいろいろな団体が、いろいろな専門分野においていろいろな有用な提言を行っております。先ほど申し上げましたように、ことしの三月に、閣議決定においてパブリックコメントという制度ができました。そういうものを通じて自由に意見を言っていただき、また自由な意見の中に、先生が今いみじくも御指摘になったように、なるほどという意見があれば、それは当然のごとく採用するということでございます。  私どもは、情報公開といって政府の有する行政情報も公開いたしますし、また、パブリックコメントという制度を通じて広く国民の声を聞くということもするわけでございますが、何よりも大事なのは国会での議員の意見でございまして、議員の意見というのは、制度上、国民意見をある部分集約して発言されているということですから、国会での議論というのは最も重要な、最も正当な制度としての議論であると私は思っております。
  196. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 NGOの人たちのPRTRに対する御意見というものをいろいろとお聞きしたり、また仄聞をいたしておりますけれども、私自身は、この問題につきまして参考意見として聴取はいたしたいと思いますけれども、しかし、やはり政治家というものがこの問題について専門的に取り組んでおるわけでありますから、参考としての意見にとどめさせていただきたいと思っておるわけであります。  今までNGO皆さん方の御活躍を見てまいりました。地球温暖化のCOP3、4の活躍の問題、そしてまた干潟の埋め立ての問題等々からいただいた意見というものは貴重なものであるというふうに考えておりますけれども、総合的には関係省庁すなわち大臣が判断をしていくものであって、それは広角的な知見を得た判断だ、こう考えておるわけでありまして、その点は御理解をいただきたい。  PRTR法案というものは決してNGO関係の皆さん方から非難されるような法案ではないと私は確信をいたしておるわけでありまして、ぜひ御協力をお願いいたしたい次第であります。
  197. 武山百合子

    ○武山委員 どうもありがとうございます。  化学物質についての知識や技術の乏しい非製造業や中小製造業者について、事業者負担が少ない形で正しい化学物質管理ができるようにするためには、地方自治体の指導、助言が必要なわけです。さらに、農林業、自動車、家庭などのいわゆる非点源と言われているもの、これらを含めた多種多様な発生源について、総合的、効率的な化学物質環境リスク管理を進めるためにも、自治体の積極的な協力はもう本当に不可欠なわけですね。  ここの部分で、この点はこの法案でどのように担保されているのでしょうか。
  198. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  本法律案では、まず、再三これまでも申し上げましたように、事業所ごとの排出量情報を国が電子情報化した上で都道府県に提供するわけでございます。先ほど先生からも御指摘があったように、それを都道府県において有効活用していただくということですし、その場合には、今お話がありましたように、届け出排出量だけではございませんで、いわゆる非点源からの排出量についても算出し、公表し、地方自治体に活用していただくということになっております。  さらにその後の御質問でございますが、本法律案では、地域の環境保全、化学物質管理を推進するために、一つには、事業者による化学物質管理改善促進するための技術的助言等を実施していただくこと、二つには、教育活動、広報活動等を通じて化学物質に係る国民の理解の増進に協力してもらうこと、三番目に、化学物質管理化学物質に係る理解の増進のために必要な人材を育成すること、四つ目に、国が実施する調査に関する資料のうち、必要な資料提供を求めたり、逆に意見具申をしたりすることをお願いすること。  それから、当然のことながら、一番最初に申し上げましたような、私どもの方でまとめてお渡しするということにしていますので、そうしたものを環境保全、化学物質管理の施策に活用して、企画立案、展開していただくことは当然なのでございますが、そのほかに、制度の周知徹底、普及啓発といった面でも協力をいただけるということで、重要な役割を地方自治体に期待しているところでございます。  その点につきましては、法律では十七条等に主に掲げられております。
  199. 武山百合子

    ○武山委員 どうもありがとうございました。  最後にもう一つお願いいたします。  この法律の第一義的な目的は、事業者が扱っている化学物質を安全に管理するということにあるわけですけれども、問題は、有害化学物質をどのように今後削減していくかということにあるかと思います。  この点はこの法案の目的を離れたところにあるわけですけれども、例えばアメリカでは、TRIと呼ばれる、いわゆるPRTR制度に基づいて企業による自主的な化学物質の削減プログラムというのがあるのですね。三三%を削減するとか五〇%を削減するとか、プログラムが何かあって、それが実施され、大きな効果を上げているということを聞いているわけです。  我が国においても、この制度の導入に合わせて、化学物質のリスクを低減する、有害化学物質を削減する体制をつくる必要があるかと思いますけれども、今後この計画について、あるかどうか、またどういう計画かをお聞きしたいと思います。
  200. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  今般のPRTR制度の導入によりまして、化学物質環境への排出状況が把握できる、これがまず今までおよそなかったことでございますので、こういうことができるようになれば、環境庁としてはもちろんこの成果を生かして、関係者との協力のもとで、必要な環境政策の企画立案の推進を図ってまいるわけでございます。その中では、先生指摘のように、自主的な化学物質管理改善といった点につきまして、関係省庁間の協力、地方自治体との連携体制の整備等を私どもとしても積極的に取り組んでいきたいと思っております。
  201. 武山百合子

    ○武山委員 それは、削減する体制を各省庁間でつくっていくというふうに解釈してよろしいんでしょうか。
  202. 河野博文

    河野(博)政府委員 この法律の目的として、化学物質管理促進ということを何度も御説明しておりますけれども、それは、結果におきまして、化学物質環境への排出あるいは廃棄物質としての移動の量を抑制する効果を持つものだというふうに期待をしながら、この制度の導入を環境庁とともに企画してまいりました。  具体的に、例えばこの法律の第三条には「化学物質管理指針」という項目がございまして、これは、環境庁通産省で、しかも御指摘のように他の関係省庁の協力を得て、幾つかの指針を策定するということでございます。  例えば第三条の第二項第一号には、指定化学物質等の製造、使用その他の取り扱いに係る設備の改善その他の指定化学物質等管理方法に関する事項、つまり簡単に言ってしまいますと、排出を抑制し得るような管理方法について指針となるようなことを定めるということがうたわれております。  第二号には、指定化学物質等の製造の過程におきますその回収、再利用その他の指定化学物質等の使用の合理化に関する事項という項目がございまして、これは、回収あるいは再利用を通じまして化学物質の使用量そのものを減少し得るような方法についての指針でございます。  第三号には、リスクコミュニケーション等々を定めることになっておりますけれども、こういったことを環境庁通産省そして関係省庁が協力して策定をして普及していくことによりまして、先生指摘のような効果が生まれることを期待しながらこの法案を提案させていただいております。
  203. 武山百合子

    ○武山委員 どうもありがとうございました。これで終わりにいたします。
  204. 北橋健治

    ○北橋委員長 藤木洋子君。
  205. 藤木洋子

    ○藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  この法案は、事業者による化学物質の自主的な管理が主体となっておりますけれども、各企業の自主的な取り組みだけでは化学物質のリスク管理は必ずしも機能いたしません。そのよい例が有機塩素系化合物による土壌、地下水汚染で、事業者の自主的な取り組みの限界を示しております。土壌、地下水汚染は、当時、問題にはならないだろうと企業が判断をした使用方法で行ったものであって、その化学物質のずさんな管理が引き起こしたリスクです。  この土壌、地下水汚染の問題での教訓というのは、一刻も早く汚染原因の究明、汚染の浄化などの汚染対策を進めるためにも、正確な汚染情報を地域市民に公開するということです。  私も、東芝や松下電器などの地下水、土壌汚染を見てまいりましたけれども、そこに共通しておりましたのは、企業が汚染を発見してから一年半以上も市に報告をせず、ないしょで浄化対策を行っておりました。その間、長期にわたって周辺住民は何も知らされないまま危険にさらされていたことになるわけです。正確な汚染情報を地域市民に公開するということが、市民が汚染を回避でき、事業者の汚染対策が進むことになるわけです。  PRTR制度のもとになった米国の有害化学物質排出目録、TRI制度というのは、緊急対処計画及び地域住民の知る権利法第三百十三条の中に規定されたものでございます。地域住民の健康と安全を守るために、市民の知る権利を基本にした化学物質情報公開制度、つまりPRTR制度とすべきではなかろうかと思うのですが、通産大臣にお答えをいただきたいと思います。
  206. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 本法案においては、地域住民はもちろん、何人であってもその関心を有するデータについて開示請求できることを法律の第十条で明確に規定をしております。化学物質排出量等にかかわる情報公開をこのように実現しているわけでございます。  なお、知る権利については、これは情報公開法のときの議論にもたくさん出てまいりましたけれども、学説上諸説が存在し、最高裁判決においても行政情報の開示を請求できる積極的な権利として認知されていないことから、行政情報公開法と同様に、いわゆる知る権利を本法案に明記しないこととした次第でございます。
  207. 藤木洋子

    ○藤木委員 この市民の知る権利は、PRTRに関するOECD国際会議の最終ステートメントでも、各国PRTRシステム及び市民の知る権利プログラムを構築することを奨励しているわけです。ぜひ市民の知る権利を認めた制度とすべきだということを、私、重ねて申し上げておきたいと思います。  土壌、地下水汚染問題での二つ目の教訓でございますけれども、これは、被害が発生した場合の対策コストが予防コストに比べてけた違いに大きくなるということでございます。汚染診断だけで数千万円から数億円、汚染が判明して浄化する必要が生じた場合には数億円から数十億円の対策費用を投じなければなりません。さらに、中小企業が独自に対策を進めることが極めて難しいという点がございます。ですから、数多い中小企業が化学物質のリスク管理への認識を深め、行政が必要な予防措置を行う必要がございます。  このことから言えることは、予測できない将来のコストを考えるならば、PRTRでの報告だとか公表に関する負担は、一企業にとっても、また社会全体にとっても十分見合うものだということです。ですから、通産省は、事業者がその報告に要する負担を避けることなく正確な報告をするように指導すべきだと思いますけれども通産省、その点はいかがですか。
  208. 河野博文

    河野(博)政府委員 御指摘のとおり、化学物質管理改善促進し、環境の保全上の支障を未然に防止することの必要性と正確な届け出の重要性、これは重要なものだというふうに認識しております。  この法案におきましても、PRTRを実施いたしますに際しまして、排出量、移動量の算出方法を定めたマニュアルを作成する、あるいは地方公共団体や中小企業団体などの各種団体を通じて算出方法の周知徹底を図る、そうしたことを通じまして事業者による排出量の推計の精度の確保を図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
  209. 藤木洋子

    ○藤木委員 いろいろ対策を講じられるようでございますけれども、もちろん、正確な報告をしてもらうというためにも、特に中小企業への負担軽減、これが必要だと思うんですね。ですから、中小企業への負担軽減などの支援策、その措置をもこの法の施行に伴って講じていただくべきだと思うのですが、その点はいかがでございましょうか。
  210. 河野博文

    河野(博)政府委員 例えば化学物質を少量しか扱っていない事業者の方、あるいは排出量把握届け出義務をかけることは過剰な負担となるというような小規模事業者の方を除きまして、中小企業の皆さんもこの対象事業者になっていただくということを考えているわけでございますけれども、先ほど御指摘のように、正確な報告お願いすると同時に、できるだけそうした企業の皆さんの負担も軽減できることならば軽減していきたいというふうに考えているわけでございます。  中小企業者の皆さんに対しましては、環境庁と私ども一体となりまして、排出量の推計方法に関しますマニュアルですとかあるいは推計ソフトのようなものの開発、さらに届け出の統一様式などを作成いたしまして、地方公共団体はもとより、地域の商工会あるいは商工会議所などの中小企業団体、あるいは中小企業に関連いたします諸業界団体の協力を得まして、中小企業を営む対象事業者に対しましてきめ細かな周知徹底や技術指導を行わせていただくことによりまして、できるだけ負担を軽減させていただきたいというふうに考えるところでございます。
  211. 藤木洋子

    ○藤木委員 負担の軽減はぜひ実行していただきたいと思います。  このPRTR制度では、事業者が正確な報告を履行する、このことが何よりも重要でございます。正確な報告を履行してもらうためには、パイロット事業でも明らかになったように、事業者に対する自治体のきめ細かな助言指導がぜひとも必要になってくるわけですね。報告の履行率が三割から四割程度だというのでは、この制度の趣旨が全く生かされたことにはなりません。  しかし、この法案には自治体のさまざまな責務は規定されておりますけれども、その権限は十分なものではございません。特に中小企業の報告を履行してもらうためにも、自治体に立入調査を行うなどの十分な指導権限を与えることが必要だと思うのですけれども通産省、どうでしょうか。
  212. 河野博文

    河野(博)政府委員 PRTRの円滑な実施の観点から、自治体を含めたさまざまな機関の協力を得ることが重要であるということは認識をいたしております。  特に中小企業の皆さんに対しましては、届け出に関しますきめ細かな相談、指導を行うべく、事業の所管官庁、それから業界団体あるいは関係の中小企業団体、もちろん地方公共団体、さまざまな組織の協力を得るとともに、御指摘のように、地方自治体による制度の周知徹底とか普及啓発、個別事業所からの排出量届け出のフォローアップというような役割を期待しているわけでございまして、先ほど御指摘のありました十七条の第三項におきまして、国のみならず地方自治体が、事業者化学物質管理改善促進するために、技術的な助言その他の措置を講ずることを規定しているところでございます。  さらに、届け出をできるだけ正確に、また義務者の皆さんに完全にということで、最終的には罰則担保という法制をとらせていただいたところでございます。
  213. 藤木洋子

    ○藤木委員 確かにこの法案では地域のニーズに応じて集計、公表するということになっておりますけれども、地方自治体の責任と権限が不明確で、事業所データが十分生かされない、そういうおそれがあるわけです。  既に、北海道、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府など地方公共団体におきましては、化学物質環境安全指針などで事業所に対する行政指導が行われております。  中でも、先日お話を伺った大阪府では、化学物質適正管理指針で、百二十三物質について使用量、製造量の報告を求め、製造事業所対象に適正管理や排出抑制の行政指導を行っております。実際、九十六年度の報告事業所数は五百六十三事業所でございまして、約三百六十八万トンの使用・製造量の報告がされているわけです。大阪府などでは、事業所からの正確な情報報告してもらうために、それはそれは大変な努力をしておられました。まして、報告されている事業所の多くが大手企業なんですね。中小企業からの報告が少ないというのが実態でございます。  しかし、自治体が指導助言などを通じて関与すれば、情報の収集も上がってくるわけですよ。地域の環境リスク管理もできるわけですし、市民環境意識も高くなっていくわけでございます。地方自治体の責任と権限を明確にして、自治体を届け出の当事者とすべきだと思うのですけれども、できないものでしょうか。できるのではないでしょうか。通産省、いかがですか。
  214. 河野博文

    河野(博)政府委員 PRTRの円滑な実施という観点から申しますと、業界団体ですとかあるいは商工会議所、商工会のような中小企業団体のさまざまな機関の協力を得ていくということが重要と考えておりますけれども、特に制度の周知徹底、技術指導、あるいは個別事業所からの排出量届け出のフォローアップといった点につきまして、先ほども申し述べましたこの法案におきます十七条の、事業者に対する技術的な助言その他の措置を地方自治体の皆さんにやっていただくことによりまして、協力を得たいというふうに考えているところでございます。  しかしながら、届け出を全国統一的なルールで行いまして、集計を迅速かつ効率的に実施をするということを確保していかなければならないということもございますし、また、先ほど触れましたように、営業秘密の判断を全国統一的な判断で行っていくということから考えまして、この点から考えますと、届け出先につきましては、何度も申し上げておりますように、国が適当であるというふうに考えたところでございます。
  215. 藤木洋子

    ○藤木委員 実は、環境庁も当初は中環審答申に基づきまして自治体の役割を重視しておられたわけです。しかし、産業界は、条例をつくって法律を上回るやり方をやりかねないと抵抗をいたしまして、事業者がまず都道府県に報告をし、その後国に上げるという環境庁の案は退けられました。これは法制化の経過を見れば明らかですけれども、少なくとも自治体の責任と権限を明確にすることが必要だということを、私は再度ここで強調させていただきたいと思います。  そこで、先日、大阪府の化学物質適正管理指針による事業者に対する行政指導の状況を伺ったところ、この法律によって自治体の条例等による上乗せ、横出しができなくなるのではないか、こういう危惧の念が寄せられたわけです。確かに、この法案には自治体の条例との関係について何らの規定もございません。大阪府では、各業種の中小企業も多く、しかも薬品関係の企業が多いという特徴がございます。どうしても自治体独自の上乗せ、横出しが必要となっているわけです。  この法案が成立いたしましても、この法律に基づいた自治体独自の条例による上乗せ、横出しが拘束されることはない、上乗せ、横出しによって事業者に行政指導ができるものだ、このように解釈してよろしいのでしょうか。通産大臣にお伺いをいたしますが、いかがでしょうか。
  216. 河野博文

    河野(博)政府委員 先ほども同種の御質問にお答えさせていただきましたけれども、地方自治の視点からの自主的な指導等あることはあろうかと思います。ただ、この法律によります指定物質は、できるだけ幅広く、先ほど御紹介しましたようなさまざまな手続を経て知見を集積して、幅広く指定をいたします。そういう趣旨から考えますと、さらにこれに加えた物質の指定が必要かどうか疑問に思っているところでございます。  そういう意味では、すそ切りあるいは指定物質については、国の政令で定めます指定物質あるいはすそ切り規定を地方においても尊重していただきたいというふうに考えているところでございます。
  217. 藤木洋子

    ○藤木委員 既に化学物質の適正管理指針でそれぞれの自治体が行っていることを低めていくというようなことになるのだったら、何のための法律かということになります。やはり、地方自治体が届け出の当事者となって、実情に即した独自の上乗せ、横出しができるようにすべきだということを私は主張したいと思います。  次に、環境庁パイロット事業にも参加したある企業の化学物質管理システムを拝見いたしますと、そこでは三つの基本機能を掲げております。  その三つの基本機能では、サプライ製品環境安全で、サプライ製品の環境安全の開発時の事前評価をこのシステムで行う。これで、化学物質規制の改訂や発がん性リスト等の追加に対して、どの製品が新たに規制対象となるのか検索が容易になります。二つ目が機器製品環境安全で、部品に含まれる化学物質の含有率や部品重量を管理する。三つ目が事業所環境安全で、事業所で使用される化学物質の購入、使用、在庫及び廃棄の量と、使用場所の排気装置の状況を管理するとしております。この企業では、規制対象物質や発がん物質リスト等に該当する化学物質が登録されているわけです。  そこで伺いますが、日本では発がん性物質の分類が一般的にシステム化されているのかどうか、環境庁にお答えをいただきたいと思います。
  218. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  発がん性の観点からの化学物質の分類は、国際的に著名なものだけでも、IARC、国際がん研究機関、それからEU、それから米国の環境保護庁、米国NTP、これは米国毒性プログラムといっています、などのものがございますが、これらは必ずしも整合性のとれているものではございません。一方、御質問我が国における代表的な分類といたしましては、日本産業衛生学会における発がん性の分類がございます。  このように、我が国でもないわけではないんですが、現時点では、国際的に統一された分類システムが構築されている状況にはないという状況にございます。
  219. 藤木洋子

    ○藤木委員 いろいろあっても、それは政府機関として認知をしているというものではないですね。IARCにも参加をしているということなんでございますけれども、それでいいというわけじゃないと思うんですよ。化学物質法律をつくるたびにIARCであるとかEPAなどを参考にするというようなことでは、十分な責任と対応ができないということを申し上げたいと思います。  アジェンダ21の第十九章に従ってOECDが行った調査報告書によりますと、日本は発がん性物質の分類について一般的なシステムを持たず、ケース・バイ・ケースで行っていて、このような国は我が国以外にはスイスとトルコぐらいとしております。また、発がん性分類に基づく表示を規制により定めていない国は、日本以外にわずかハンガリーとスロバキアくらいしかないとも記されております。アジアの近隣諸国でも、韓国などは発がん物質と表示することが定められております。  日本も、化学物質管理の後進国の汚名をこの際返上して、発がん物質の分類システムと表示を早急に実施すべきだと思うのですが、環境庁長官、先ほど先進国だと言われましたけれども、その意気込みで今回これをぜひ実行していただけますか。
  220. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 まさにこういう問題についても、日本の知見というのは高い水準にあるわけであります。  発がん性などの化学物質の有害性の分類システムとラベル表示については、現在、OECDとILOを中心にいたしまして、国際的な調和を図るために検討が進められておるところでございます。そして、環境庁としましては、関係省庁と連携をしながら、今後も、こうした国際的な統一性を持つ分類と表示システム検討に積極的に貢献して、その実現に寄与してまいりたいと思っておるわけであります。決して後進的なものではございません。
  221. 藤木洋子

    ○藤木委員 やはりそうは言えませんね、政府として統一したものをきちんと持っているということはどうしても必要だと思います。責任を果たすという対応が、それでは国民に示されているとは思えません。最小限、発がん物質の分類くらいは早急にやるべきだということを申し上げたいと思います。結局、そういうものができていれば、分類のリストを見れば市民も企業も容易に判断ができますし、リスクの回避を行うことや代替物質への転換を図ることができるというような仕組みをつくる必要があるというふうに思うわけです。  この企業の化学物質管理システムでは、事業所で使用される化学物質の購入、使用、在庫及び廃棄の量と、使用場所の排気装置等の状況を管理しております。そこで、特に取扱量を含む使用量と、貯蔵量を含む在庫量の報告と公表が大事だということです。なぜかといいますと、この企業では、国内外の全事業所対象に、二〇〇一年までに、一九九七年度比で対象物質の使用量を二〇%以上、排出量にして五〇%以上削減するとしているからです。  このように、対象物質に対する目標値を設定している企業はほかにもたくさんございます。例えば、環境庁パイロット事業にも参加した東芝のPRTRでは、四十一の対象物質の年間全使用量を公表いたしまして、特にジクロロメタンは二〇〇〇年三月までに全廃するとしています。また、同じくパイロット事業にも参加したトヨタ自動車では、鉛使用量を二分の一に低減し、アジ化ナトリウムも九七年度末までに全廃としてやってきました。  排出量がどれだけの使用量によって出てくるのかということが明らかになり、どれだけ使用量を削減しなければならないかが明瞭になる。ですから、排出量、移動量とあわせて取扱量報告させるべきだと思うのですけれども通産省、いかがですか。その必要はございませんか。
  222. 河野博文

    河野(博)政府委員 事業者によります化学物質管理改善促進されます結果として、排出量や移動量が減少し、それにより環境の保全上の支障が未然に防止されることがこの法律案の目的でありますから、事業者届け出義務を課すのは、環境との接点であります排出量、移動量だけで必要にしてかつ十分であると認識をいたしております。  しかし、この制度の導入を契機といたしまして、先ほど先生指摘になりましたような企業の自主的な活動がさらに一層進むということは私ども最も望むところでございます。ただ、制度としての報告義務対象は、今申し上げた二つで十分ではなかろうかというふうに思っているところでございます。また、PRTR制度を実施しております諸外国のPRTR制度あるいはOECD勧告におきましても、取り扱いについての届け出というものは求められていないというふうに考えております。
  223. 藤木洋子

    ○藤木委員 企業が進むのはいいけれども、国はその後をついていくというのでは、いかにも心もとないと言わなければなりません。特に大阪府の化学物質適正管理指針では、「事業所で使用又は製造される管理物質の量を把握しておくことは、物質収支の観点から工程管理や排出抑制対策を検討するうえで重要」、このように明記しています。ぜひ取扱量報告に含めるべきだということを私は重ねてここで申し上げておきたいと思います。  また、在庫量、貯蔵量、これも報告をさせて公表すべきです。  例えばPCBの問題があるんですけれども、PCB機器の保管状況というのは、九二年の厚生省の調査によりますと、変圧器など約十万七千台、感圧複写紙七百六十八トン、廃油を含む廃PCB五千三百三十四トン、これが全国で保管されておりました。  厚生省は、昨年の廃棄物処理法改正で焼却以外に化学処理法が認められたということを受けまして、改めて全国の保管状況や紛失の有無などの調査を行っております。ここに、九五年十二月に公表された、私の地元でございます兵庫県尼崎市の「電気絶縁物処理協会リストによる事業者のPCB機器に対する意識調査等に係る調査結果報告書」というのがございます。  この報告書によりますと、協会のリストでその所在を確認できなかったPCB機器は四百七十七件で、全体七百五十六件の実に六三・一%を占めております。散逸などの拡散が非常に進んでいる可能性があるとしているわけです。また、協会への変更報告をした事業者というのは百三十五件にとどまっておりまして、協会リストのデータ更新は進んでおらず、PCB機器の実態と必ずしも一致していませんし、時間の経過に対しても全く対応できないということを指摘しております。  そこで、協会リストが更新されず、全く実態に対応できないのであれば、この法案による対象物質にして、貯蔵及び保管扱いで報告させるということはできないものでしょうか。協会を所管している通産省にお伺いをいたします。
  224. 河野博文

    河野(博)政府委員 御指摘のPCB廃棄物につきましては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づきまして、保有者に対しまして、法律に基づきまして適正な保管と都道府県知事等への所要の報告が義務づけられているというふうに考えております。  一般論として申しますと、先ほど御答弁申し上げたことと重複いたしますけれども事業者による化学物質管理改善促進される結果として排出量や移動量が減少して、環境保全上の支障が未然に防止されること、これがこの法律の目的でございますので、事業者に対する届け出義務といたしましては排出量と移動量が適当だろうというふうに考えているところでございます。
  225. 藤木洋子

    ○藤木委員 それができないのでしたら、PCBについて、化学処理等の際に排出するおそれがあるものとしてこの法案対象物質にすべきではないかと思うのですが、これは環境庁に伺いたいと思いますが、どうですか。
  226. 岡田康彦

    岡田政府委員 お答え申し上げます。  先ほど来いろいろな機会に御答弁申し上げておりますように、本法案におきましては、PRTR対象物質は、人の健康などへの影響があるかどうか及び環境に広く存在すると認められるかどうかを勘案し、審議会意見を聞いて政令で定めることとしているところでございますが、PCBについては有害性を有することは明らかであります。現に化学物質審査規制法の第一種特定化学物質に指定されて、製造、使用等が厳しく規制されているわけでございますので、その点は明らかでございます。  他方、今先生指摘のように、PCBにつきましては、昨今の廃棄物処理法に基づく処理基準の改正を契機として、その化学処理の実現が図られようとしておるところでもございます。  環境庁といたしましては、こうした状況を見きわめつつ、PCBをPRTR対象物質とするか否かについて検討してまいりたいと考えております。
  227. 藤木洋子

    ○藤木委員 検討していただくということは大変結構なことでございます。今の状況では、環境に排出をされているわけですから、これはもうゆるがせにできないと思います。  いずれにしても、PCB機器を二十七年間放置してきた、そして一般環境への拡散を見逃してきた、そういう国の責任は極めて重いと言わなければなりません。ですから、製造メーカーへの返品ルートの確立、あるいは早急な一括保管と処理の対策の確立、また処理費用の国庫補助などをぜひ実施すべきでございます。これはもちろん、通産省、厚生省、環境庁、協力をしてやっていただかなければならないことだというふうに思うのですけれども、国としてPCB対策を一刻も早く進めなければならないのではないかという思いがしてならないわけです。  これはぜひ、検討されると言われましたけれども環境庁長官にひとつ、御検討いただくという確約のお返事をいただきたいと思っております。お答えいただきたいと思います。
  228. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 国民が安心できる安全な方法で、できるだけ早くPCBの処理を行うために、環境庁では関係省庁と連携しながら新たなPCB処理技術の実用可能性を評価してきたわけであります。その結果、廃棄物処理法の施行令等を改正しまして、従来から高温焼却によってやっておりましたけれども、昨年六月からは化学的分解法によりましてこれを処理すべき道を開いたわけであります。  環境庁としては、保管中のPCBの処理がこうした新しい処理技術の導入によって今後促進されることとなるよう、関係省庁とも連携しながら引き続き国民の理解の増進に努めてまいりたいと思っているわけでありまして、これはもう早急に処理してまいりたいと思っています。
  229. 藤木洋子

    ○藤木委員 そうです。PCB問題でも極めて深刻なのは、中小企業が抱えていた分が放出されている可能性があったり紛失していたりということになっておりますので、ぜひとも今のお返事のとおりに実行に力を尽くしていただきますように重ねてお願いをして、私の質問を終わらせていただきます。
  230. 北橋健治

    ○北橋委員長 中川智子君。
  231. 中川智子

    ○中川(智)委員 社会民主党市民連合の中川智子です。  私で最後ですから、もう少し頑張って、よろしくお願いいたします。私も病院から抜け出して、頑張って来ておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。  今回のPRTR制度というのは、私も当初、とても期待はしておりました。しかし、私も足を骨折してつくづく思うのですが、骨というのは大事だなと思います。そして、PRTR法が本当に骨抜きにならないように、しっかり、国民が待っていた、そのような制度になるようにお互い頑張っていきたいと思っておりまして、そういう立場から質問をさせていただきます。  国民の間で今、化学物質への非常な不安というのは、特にダイオキシンと環境ホルモンというところが非常に深刻でございまして、二月十七日、二百十四人の衆参の国会議員が入会してくださって議員連盟もできまして、私もさまざまな活動を今しております。ダイオキシン問題につきましては、参議院で現在政党間の協議が進んでおりまして、今国会中にも議員立法が出される方向で進んでいて、それに大いに期待を寄せているところでありますが、環境ホルモン問題に関しましては、環境ホルモンの有害性を主張する学者に対しまして、主として環境ホルモン物質を使用している業界からの反論が行われるなど、科学論争が続いていて対策の方向さえ見えないというのが現実です。  調査研究は非常に必要だと思いますけれども、その成果が対策にきっちりと生かされなければ国民の健康や生態系は守れないと思います。私は、このPRTR制度こそ環境ホルモン調査研究の成果を対策に生かしていく制度的枠組みだということ、そのようなものにならないと意味がないとまで言い切れる、そのように確信しております。  最初質問は、真鍋環境庁長官、五月一日、五月の初めでしたか、水俣にいらっしゃいました。あの水俣病というのは私にとってはまだまだ過去のことではございませんで、ずっと水俣病の方々との運動の中での出会いがあり、私も十数年前から何度も水俣を訪れました。実際、水俣病の本当にあの悲惨な状況を生んだのは、無限の科学論争が原因だったのではないか。無限の科学論争がいかに悲惨な結末を迎えるかということを、あの水俣病は私たちにしっかりと教訓として残したものだというふうに認識しております。  水俣病事件では、昭和三十一年の水俣病発見から数年を経ずして、その原因がチッソ株式会社の排水にあることが明らかになったにもかかわらず、当時の化学工業界は、多くの権威ある学者を動員して科学論争の泥沼に引きずり込み、その原因が明らかでない、いわゆる因果関係が明らかでないというふうに主張されました。また、胎児性水俣病は子宮内で胎児が水銀に汚染されたものであって、当時は水銀にそのような有害性があることが科学的に証明されていませんでした。胎児性水俣病は、今日の環境ホルモン問題の前ぶれ的な事件であったと私は思っております。  真鍋環境庁長官は、水俣にいらして率直にどのようにお感じになったか。そのような御見解をぜひとも、時間が十八分で短いものですから、お聞かせいただいて、質問のスタートにしたいと思います。よろしくお願いします。     〔北橋委員長退席、古賀委員長着席〕
  232. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 五月一日の慰霊祭に初めて参加させていただきました。水俣病にかかわる皆さんのところにも立ち寄らせていただきました。大変御尽力をいただいた川本さんの遺霊、お位牌にも合掌させていただいたわけでありますけれども、それから以降、水俣病に携わる研究者の方々等も意見を交換させていただき、最終的には、語り部である皆さん方との意見交換もいたしたわけであります。  大変悲惨な状況をいろいろと説明いただいたわけでありますけれども、再びこのようなものを繰り返してはならないということが最終的な結論でございました。経済成長盛んなりしころとはいえ、こういう問題を放置した責任というものは感じていかなければならないわけでありまして、今日まだ苦しんでおる方々にできる限りの配慮をしてさしあげるべきだ、こう感じた次第であります。
  233. 中川智子

    ○中川(智)委員 私は、環境庁長官の行動力とかいろいろな姿勢に対しては敬服しております。でも、その反省なり、二度と繰り返してはいけないというふうなことがあるならば、今回のPRTR制度政府案のような枠組みにはなっていなかったというふうに私は思います。  続きまして通産大臣にお伺いしたいんですが、通産大臣、ただいまの水俣病のいわゆる科学論争ということに対してどのようにお考えかということと、これは「戦後五十年」、NHKの取材班が出したNHKスペシャルの本ですが、この中にこのように書かれていることに対してどのようにお考えかということを伺いたいと思います。  水産庁を抱える農林省からの出向者は、チッソの排水をとめるべきだという主張もしていた。だが、その担当者は通産省の官房に毎週のように呼び出され、強い指示を受ける。「「頑張れ」と言われるんです。「抵抗しろ」と。止めたほうがいいんじゃないですかね、なんて言うと、「何言ってるんだ。今止めてみろ。チッソが、これだけの産業が止まったら日本の高度成長はありえない。ストップなんてことにならんようにせい」と厳しくやられたものね」。  このようなことがあって、この水俣病の反省があるならば、私は、届け出先が事業所管官庁になるということはならないというふうに感じるんですけれども通産大臣、いかがでしょう。
  234. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 水銀がある種の毒性があるということは戦前からわかっていたことでございます。有機水銀中毒がああいう形で発現したということに関して、その当時の通産省がどういう指導をしたかは手元に記録もございませんしわかりませんけれども、何か、通産省はまだ高度成長を追っている役所というイメージを持っておられるとしたら、それは少しお考えを変えていただきたいと思います。  我々もいわゆる持続可能な成長ということを目指しておりまして、持続可能な成長というのは、資源の問題でも環境の問題でも、やはり、国の経済の成長が持続するためには、そういう資源の問題や環境の問題と絶えず調和をしていきながら、そういう資源の問題、環境の問題を考えながら経済を進めていかないといずれ持続しなくなる、こういう考え方を持ってやっているわけでございまして、決して、その当時どのような指導がなされたかわかりませんけれども通産省の持っている成長に対する物の考え方というのは持続可能な成長ということですから、環境、資源の制約の中での成長、こういうことだろうと私は考えております。
  235. 中川智子

    ○中川(智)委員 そうしたら、通産省は、あの水俣病の反省、その後に続いたさまざまな公害に対する反省というのがしっかりあって、その精神、魂というのを今回のPRTR制度にきっちり入れたという御認識、そのように受けとめてよろしいでしょうか。
  236. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 まず、昭和四十八年三月、水俣病判決を受けまして、当時の通産大臣は次のような談話を発表しております。「企業責任、行政措置に抜かりがあったと反省する。」こう言っておりますから、既に昭和四十八年の段階でそのような通産省としての態度はきちんと表明をしているわけでございます。  当時の公害の原因究明について振り返ってみますと、十分でない、あるいは企業と行政の姿勢に反省すべき点があったというふうに私は考えておりますし、また、この反省を生かし、企業が環境汚染の未然防止に万全を期すことが企業存立の大前提であるという考え方に立って、政府としても環境保全のための諸施策に取り組んでまいるというのが現在の立場でございます。
  237. 中川智子

    ○中川(智)委員 そうしたら、もう一度確認したいんですが、今の大臣の御答弁の中では、持続的なもの、資源を守るということの中で、今言葉の中に一言も、国民の命と健康を守る、では、疑わしきものはしっかりと対象として、国民の側に向けてのお言葉というのはちょっと酌み取れないんですけれども、想像力が余り豊かじゃないものですから。そこのところ、はっきり御答弁でいただきたいんです。  疑わしきものはきっちり対象とするというのがPRTRの意義で、科学論争、この間の大臣の答弁を聞いていますと、科学的な知見が確立ということを何度もおっしゃられました。そこで、やはり疑わしきものに対してもきっちりと縛りをかけていくということがPRTRの中に明示されているというふうに考えてよろしいんでしょうか。
  238. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 科学的知見が済んでいる、あるいは進んでいる、疑わしいものがあるという判断基準をどこに求めるかというのはなかなか難しいわけでございます。  疑わしいものというのは、ある程度科学的知見の初歩的な段階かもしれませんし、私どもとしては、科学的知見が一〇〇%済んでいないと物事をやらないと言っているわけではなくて、これはリスクがあるぞとか、あるいは疑わしいぞというふうに合理的に推認される限りにおいては、やはり用心深く行動するということは今の時代では当然であろうと思っております。
  239. 中川智子

    ○中川(智)委員 私も質問通告していた分でかなりいろいろな議員が質問されて重複しますので、通告と外れた質問になることをお許しください。  SPEED98のことで伺いますが、先ほどの環境庁の答弁の中では、六十七の物質のうち十七が対象、二十七がもう既に禁止されている、残り二十三のうちの十七が有害性が判明している、あとの六つに対して早く対応したいというふうにおっしゃいました。  この六つのうちの、早く対応したいというのは、大体タイムでくくりますとどれぐらい早く対応したいということになるんでしょうか。具体的にちょっと簡単にお願いします。
  240. 岡田康彦

    岡田政府委員 先ほどの御答弁の中でも一部触れましたが、検査方法そのものがまだ現在OECDと協力しながら取り組んでいる最中という面もございますので、極力早く対応はしたいのでございますが、いつまでということが明確に申し上げられる状況でもないということでございます。  私どもとしては、先ほど申し上げたように、決して環境ホルモン作用や内分泌攪乱作用そのものの対象物質とすることの基準として考えていないというわけでもありませんし、できるだけそのように考えてはまいりたい。今のところ、できるだけ早く対応していくためには、先生が先ほど午前中おっしゃったところの言葉を使わせていただければ、別件逮捕と先生おっしゃいましたが、そういう形ででも実際に有害性があれば拾っていこうということでやっていまして、そういうつもりで、なおかつできるだけ早く取り組んでまいります。
  241. 中川智子

    ○中川(智)委員 そんなふうに、六十七のうちもう既にあと六つは早く対応したいということだったら、きっちりこの中に環境ホルモンという言葉で明示して、そのような形で骨をきっちり入れるという法律にしたらいいのに、どうしてそこで書き込まないのかなと思うのです。  これは通産大臣に伺いたいのですが、議員の意見国民意見だというふうにおっしゃいました。でも、既に、席を見ていただいたらわかると思いますが、きょうは金曜日で、午後遅くなったので議員先生方はお帰りになられた方がほとんど。しかし、傍聴席にあれほどNGOの方たちが遅くまでしっかりとこの議論を聞いてくれているという状態の中で、それはちょっと余談ですけれども国民意見が議員の意見に反映されるというならば、私はこの間審議をずっと聞いていて、やはり環境ホルモンをきっちり明示すべきだ。  そして、これからもやはりどんどんふえていくだろう。それに対して一々三つの審査会を通して、またパブリックコメントを求めて何だかんだとやっていたら、いつも後手後手に回って、何かもう最後には裁判しかないとか、公害で苦しんでいく人が多い、いろいろな汚染物質の犠牲になっていくというのはもう見たくないというのは同じ思いだと思うのです。  この議論の中で、環境ホルモンを明示すべき、疑わしきもしっかりと入れるべきだという議員の主張がすごく多かった。二つ目は、やはり届け出先を地方公共団体とすべき、なぜしないのか。ここまでみんなすべきだということでこの質問台に立っているのに、やはりそれはできないというところがどうも本当にわからないんですね。  この二つに対して、与謝野通産大臣の御答弁をお願いします。
  242. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 いわゆる環境ホルモン物質については、現在、関係省庁が連携して、科学的知見の収集、試験方法検討環境中の存在状況にかかわる実態調査などに取り組んでいるところでございます。また、国際的にも、OECDを中心に、国際的に統一された試験法の開発、評価方法検討が進められ、我が国でも積極的に参加しているところでございます。  今後も、内分泌攪乱作用にかかわる試験法の開発及びその試験の実施に積極的に取り組み、その結果、内分泌攪乱作用が科学的に確認された化学物質については、速やかに本法の対象物質として指定してまいりたいと考えております。欧米においても、現時点では、内分泌攪乱作用によるPRTR対象物質にされているものはないという現状でございます。  なお、内分泌攪乱作用が疑われている物質について、発がん性や生体毒性など、他の有害性の観点からPRTR等の対象とすべきものがあれば、内分泌攪乱作用という観点からではなく、他の有害性の観点から当然対象物質となるわけでございます。  届け出官庁の件につきましては、先ほどから繰り返しお話を申し上げておりますが、私から申し上げておきたいことは、国というものが存在しますときに、いわば地方自治と中央の政治というふうに二つ分けております。こういう物質を対象に行政を行うときに、これが国の事務なのか地方の事務なのかという観点から考えますと、これは明らかに私は国の事務であろうというふうに思っております。  そういう観点から、先ほど市町村には専門家がいないとかいろいろな議論ももちろん当然のこととしてございますけれども、行政は、国の本来の事務であるのか、地方としての固有の事務であるのかという峻別をつけてやることがやはり責任の所在を明確にすることだろうと私は思っております。  補足の答弁は、基礎局長からいたさせます。
  243. 河野博文

    河野(博)政府委員 届け出事務の件に関しましては、繰り返しの御説明をさせていただくことになりますけれども、全国統一の仕組みをつくり上げること、そして、迅速に集計をしてできるだけ早く国民の皆さんにこの情報提供するようにしていくこと、またさらには、企業秘密について、これも全国統一した、あるいは国際的競争も視野に入れた判断をなさねばならないことなどから、国で行っていくことが適当だというふうに考えたわけでございますけれども、このことが、先ほど来大臣も申しておりますように、地方公共団体との協力をしないなどということでは一切ございませんで、むしろ、地方公共団体の皆さんと、この法律にも書いてありますように、さまざまな協力を実現していくことが私どもの強い希望でございます。
  244. 中川智子

    ○中川(智)委員 時間になりましたので終わりますが、私は、国民の不安というのを払拭するために、これではやはり納得できないだろうということを最後に申し述べて、終わりにいたします。  ありがとうございました。
  245. 古賀正浩

    古賀委員長 次回は、来る十八日火曜日午前九時から連合審査会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十五分散会      ————◇—————   〔参照〕  特定化学物質環境への排出量把握等及び管理改善促進に関する法律案  特定化学物質排出量等公開等に関する法律案商工委員会議録第十一号に掲載