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1999-07-27 第145回国会 衆議院 商工委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年七月二十七日(火曜日)     午前十時二分開議   出席委員    委員長 古賀 正浩君    理事 伊藤 達也君 理事 小此木八郎君    理事 小野 晋也君 理事 岸田 文雄君    理事 大畠 章宏君 理事 松本  龍君    理事 大口 善徳君 理事 西川太一郎君       荒井 広幸君    遠藤 武彦君       小野寺五典君    大石 秀政君       岡部 英男君    奥田 幹生君       奥谷  通君    木村 隆秀君       河本 三郎君    新藤 義孝君       竹本 直一君    武部  勤君       中山 太郎君    牧野 隆守君       水野 賢一君    村田敬次郎君       茂木 敏充君    山口 泰明君       山本 幸三君    奥田  建君       島津 尚純君    田中  甲君       樽床 伸二君    中山 義活君       藤田 幸久君    渡辺  周君       遠藤 乙彦君    中野  清君       福留 泰蔵君    青山  丘君       小池百合子君    二階 俊博君       大森  猛君    金子 満広君       吉井 英勝君    畠山健治郎君       前島 秀行君  出席国務大臣         通商産業大臣  与謝野 馨君  出席政府委員         公正取引委員会         事務総局経済取         引局長     山田 昭雄君         経済企画庁総合         計画局長    中名生 隆君         経済企画庁調査         局長      小峰 隆夫君         外務省経済局長         事務代理    横田  淳君         大蔵大臣官房審         議官      福田  進君         大蔵省主計局次         長       津田 廣喜君         文部省学術国際         局長      工藤 智規君         通商産業大臣官         房審議官    林  洋和君         通商産業省貿易         局長      佐野 忠克君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君         通商産業省基礎         産業局長    河野 博文君         通商産業省機械         情報産業局長  広瀬 勝貞君         通商産業省生活         産業局長    近藤 隆彦君         工業技術院長  佐藤 壮郎君         中小企業庁長官 鴇田 勝彦君         中小企業庁次長 殿岡 茂樹君         労働省労働基準         局長      野寺 康幸君         労働省職業安定         局長      渡邊  信君         建設省都市局長 山本 正堯君         自治大臣官房総         務審議官    香山 充弘君  委員外出席者         議員      松沢 成文君         議員      島津 尚純君         議員      島   聡君         議員      上田 清司君         商工委員会専門         員       酒井 喜隆君 委員の異動 七月二十七日         辞任         補欠選任   岡部 英男君     小野寺五典君   木村 隆秀君     大石 秀政君   中尾 栄一君     水野 賢一君   中山 太郎君     荒井 広幸君   樽床 伸二君     田中  甲君   金子 満広君     大森  猛君   前島 秀行君     畠山健治郎君 同日         辞任         補欠選任   荒井 広幸君     中山 太郎君   小野寺五典君     岡部 英男君   大石 秀政君     木村 隆秀君   水野 賢一君     中尾 栄一君   田中  甲君     藤田 幸久君   大森  猛君     金子 満広君   畠山健治郎君     前島 秀行君 同日         辞任         補欠選任   藤田 幸久君     樽床 伸二君 本日の会議に付した案件  産業活力再生特別措置法案内閣提出第一一六号)  起業家支援のための新事業創出促進法等の一部を改正する法律案中野寛成君外四名提出衆法第三〇号)     午前十時二分開議      ————◇—————
  2. 古賀正浩

    古賀委員長 これより会議を開きます。  内閣提出産業活力再生特別措置法案及び中野寛成君外四名提出起業家支援のための新事業創出促進法等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。荒井広幸君。
  3. 荒井広幸

    荒井委員 おはようございます。  それでは、時間がございません。ドッグイヤー通産省でございますから、早速質問に移らせていただきたいと思います。  産業活力再生特別措置法案でございますが、私は非常に高く評価をしております。与謝野大臣を初め関係皆様方の、この大変忙しい中、しかし今まで蓄積してきたものを発揮していただいたということで、御慰労を申し上げるのですが、がでございます。  問題は、今言われていますSOHO、この場合、私は、狭義の意味で、自宅や小さな事務所を拠点にして、パソコンやインターネットなどを駆使してビジネスを展開する独立した小規模あるいは個人事業者、こういうふうに今回は狭い意味で使わせていただきますけれども、特にこの創業のときのSOHO支援、これを用意していないような今回の措置法案では意味がないと思っております。  大臣、この点どういう対応をしていただいたか、お尋ねをいたします。
  4. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 我が国産業活力再生を速やかに実現するためには、中小企業活性化が必要であると考えますが、SOHO等の新しい就業形態が幅広く普及していくことも重要であると考えております。  この法案におきましては、創業者について、まず第一に、無担保保証限度額を従来より一千万円増額して二千万円まで可能とし、貸し渋り特別保証制度の二十兆円の保証枠を適用する特例措置、第二には、都道府県から設備資金を無利子で借りられるようにするとともに、その償還期間を七年間に延長する特例措置などを盛り込んでおります。  こうした特例措置は、SOHO方々にも大変効果的な支援措置であると考えております。
  5. 荒井広幸

    荒井委員 大臣の御見識と通産省の、言ってみればSOHOを認知していただいたという意味で、こういう措置をとっていただいているのです。  特に、大臣、私はありがたいと思いましたのは、この一年据え置きですね。これが非常にありがたいのです。やはり据え置いていただいておかないと、すぐ返せません。ジョブマッチ、いろいろなことがあります。  そういったこともあるので、これは、非常に新しい企業形態SOHO、この方々には大変福音なんですが、ここの問題点は、言ってみれば、野球に例えれば、日本はもう世界の立派な国々と野球で試合に勝たなきゃならない、そのためには、やはりバッティングピッチャーにいい球を投げていただいて、全員が四番打者になるようにトレーニングをする。その意味で、これだけいい球を投げていただいているのです。SOHO皆さんに、二千万まで借りられる、そして据え置きもあり、運転設備、こういったものも用意していただいているのです。  それを知っていただくということは、SOHO、やはり窓口がないということなんだと思うのですね。中小企業とかそういうとらえ方ばかりしている。大臣の御発言のように、SOHOを認知していただいているのですから、その辺の、バッティングピッチャーにいいものを投げていただいています。これを有効に使えるように、通産省にしっかり今後ともお願いを申し上げたいと思っているわけでございます。  そこで、省庁再編も含めていろいろと今回法案に上っておるわけでございますけれども、通産省が従来やってきました多極分散産業再配置などを含めまして、全国展開のバランスのいい国土づくり、そして、今大臣中心にお取り組みをいただいております経済活性化、そのためには産業構造改革が必要です。そして、地域産業も興ってこなければならない。地域振興、こういう意味ではSOHOは有力なビジネス形態だと思います。これは通産です。通信インフラ通信料金、こうした通信政策などは郵政省分野です。  また、SOHOワーカー、働いているという視点で考えれば、まさにSOHOというのはライフスタイルに合わせて働けるという利点もありますし、家庭の主婦あるいは障害を持った皆さん高齢者皆さんにとっても会社勤めというのは非常に難しい、こういう中での活躍の場が提供されるなど、意義が非常に大きいわけですが、働くという視点で見れば、これは労働省になってまいります。  しかし、大臣、残念ながら、省庁再編をしながらですが、新しいSOHOなどという取り組みについてはやはりばらばらになっている、この感が否めないのです。多くの方々にお話を聞かせていただきますと、やはり今が非常に重要な立ち上がりの時期であると。このときに、二次補正、そういったものも視野に入れてしっかりとした対策与謝野大臣初め対応していただきたい。  その一つが、SOHO支援につきましては、総合的に通産、郵政、労働を初めとして関係省庁一体になって強力に、しかも素早く、綿密に連携した対策をとるべきだと思っているのです。  そこで、大臣に御提案を申し上げたいわけでございますけれども、このように資金繰り、今まで信用がなかったので、これは大変ありがたいことでございましたけれども、同時に、経営指導情報提供苦情処理など、問題は山積みなんです。こういう山積みしている問題を、インターネットなどを利用してSOHO方々に対してそういった問題点をとってやるような、私はNPO形態も考えているのですけれども、SOHOナショナルセンター、こういったものを早期設立すべきと考えて提案をいたしますが、大臣、いかがでございますか。
  6. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 情報技術の革新が進む中で、新たなビジネス形態であるSOHOは、新規開業新規雇用の将来の大きな受け皿として期待をされます。  他方、SOHOは、先生指摘のように、典型的な小規模事業者でございまして、資金確保経営管理のノウハウ、営業、販売先確保等諸問題に対しまして、政策金融信用保証各種経営指導を重点的に実施していくことが重要でございます。  御提案がございましたSOHOのためのナショナルセンターについては、そうした機関設立取り組みが出てくることは新規開業新規雇用促進のためにも大変意義のあるものと考えられ、通産省としても、そうした取り組みとの積極的な連携を図りまして、各種施策に関するきめ細かい情報提供などを通じまして、支援を行ってまいりたいと考えております。  また、SOHOに関連しまして、本年六月にテレワークに関する関係省庁連絡会議が設置されたところでございまして、郵政省労働省等々の関係省庁との連携、それぞれの省庁が有している各種政策、これに関しましても、当省としても積極的に支援を進めてまいりたいと考えております。
  7. 荒井広幸

    荒井委員 私、思っていた以上に非常に大臣に踏み込んでいただいて、積極的にこのナショナルセンターといったものについての支援をする、こういうことでございます。大変ありがたいわけです。どうぞ各省と連携をしていただきまして、大臣、御配慮いただいておりますとおり、やはりこれはもう連携をしてやっていく。  それで、中小企業の中に、三百人ですが、小規模事業、これも十人、二十人ということでしょう、SOHOというのはもっと小さいという場合もあります。こういうところにきちんと目を見開いて支援をしていく、これをやらなければ、全くドッグイヤー時代日本は残れない、本当にこれは残れない。しかも、ライフスタイルに、いろいろな働き方がありますから、極めて重要で、SOHOにチャレンジしようという人も非常に多いのですが、踏み込めない理由もあったわけです。今大臣の御説明のとおりなんです。それが踏み込めない理由なんです。そこを踏み込んでもらうための支援センターをつくっていただくということは、極めて私はありがたいということを申し上げたいのです。  そういう中で、時間がなくなってまいりましたけれども、民主党案、例えば、いろいろな起業家支援法案ということで、税制措置を言っているのですけれども、例えば、このSOHOということを切り口にしてみましても、今のように、今回の法案はかなり漏れなく、そしてSOHOにも気を配っていただいた支援策なんです。SOHOというのは、いろいろな方々が調べておられますけれども、女性の方が非常に多いのです。専門的にやるということから内職的にやるというので、形態は分類すればいろいろあるのですけれども、まさに民主党が言っている女性による創業支援というのは、先ほどの大臣の話でも組み込まれているような話なんです。  そして、もう一つ申し上げたいところは、こういうSOHO皆さんもそうなんですが、民主党案で、税制で言っていますね、ストックオプション、それからエンゼル、これを言っているんですね、拡充。例えば、新規上場、公開時の譲渡益に係る優遇税制拡充を言っているわけです。これだけで言いますと、二年に短縮するんですね。しかし、これは二年に短縮するということは、投機的な投資家を優遇する効果はあるかもしれません。しかし、民主党が言っている起業家支援という意味では、むしろ長期的資金が必要なんです。そういう意味では、ベンチャー育成につながるのかなという、甚だ私は疑問に感じているわけでございまして、例えば、税制措置などを見ましても、非常に疑問点が多い。こういう意味でも、冒頭申し上げましたように、産業活力再生特別措置法案を私は高く評価している一人なんです。  しかし、やはりこれは通産省政府も下手なんだと思うのですね。SOHOというところに非常に多くの人が関心を持ち、実際やっているんです。そういう人たちにどう気を配ったかというと、全然わからないと言ってもいいぐらいなんです。  これは事務的な話で恐縮です。大臣にここまで踏み込んでいただいております。さて、事務的で申しわけありませんけれども、実務を担っていただくのは役所の皆さんでございます。重ねて、SOHOは新たな形態小規模事業者であって、我が国景気回復に向けて重要な役割を果たします。それだけでなくて、自分の働き方として、自分を生かせる、こういうものも考えれば、これはまことに有望な四番バッターです。この四番バッターにいい球を投げて練習させてあげなければならないわけです、支援もしなければならないのです、スカウトもしなければならないのです。あなたは技術がいいですよという評価もしてあげなければならない。こういうようなことが必要なんですから、どうぞ、SOHOにきちんと支援をする、そして、情報を一元的に展開する、これはネット会社ですから、堂々とネットで通知をしていただきたい。双方向でやっていただきたいのですが、通産省、事務的には今すぐに積極的に窓口を、大臣がおっしゃいましたけれども、整備すべきではないか、このように思いますが、これは近藤生活産業局長お尋ねします。
  8. 近藤隆彦

    近藤(隆)政府委員 先生の御指摘の点は大変重要な点だと思っておりまして、通産省でもいろいろな部局でSOHOの方にも十分使っていただけるような施策を準備しております。また、調査研究も進めておりますので、こういったものをSOHO方々にできるだけ簡便に、きめ細かく提供するための体制整備が重要だと思っております。ぜひこれにつきましては急いで前向きに考えたいと思っております。  具体的には、例えば通産省のホームページを活用するとか、関係機関におきまして一元的な情報拠点を置きまして、そういうところと、施策を実際提供している、実施している中小企業関連機関連携しまして、おっしゃいますとおり、ネットワークの活用等によって、SOHO方々に簡便に、かつきめ細かい提供ができるような、そういったものをこれから前向きに検討してまいりたいと思っております。また同時に、各省庁とも十分連携しながらこういった施策を進めていきたいと思っております。
  9. 荒井広幸

    荒井委員 なかなか具体的であるのですけれども、まだ具体的じゃないのですね。しかし、ここまで踏み込んでいただいているというのは大変ありがたいと思います。まさに早いピッチで通産省、やっていただいています。どうぞ、各方面の意見を早期に聞いていただいて、とにかく支援するということです、今。もう理屈は要りません、やるということです。これが非常に重要です。こういう意味で、SOHO、これが日本のみならず世界、そして働く人にとって、また企業にとっても、サテライト方式もありますが、双方にとってまさに結構なことでございます。そういうことで、どうぞ、大臣中心に各省庁政府一体となって、これは早期に、大臣の方からも閣議でぜひお願いします。各省庁連携して、早期対策を先ほどの御答弁のようにいただきますようにお願いしまして、時間となりましたので終わります。
  10. 古賀正浩

  11. 山口泰明

    山口(泰)委員 続きまして、同じく自民党の山口泰明でございます。私も中小企業ガス屋からこの世界に入りまして、開かれたわかりやすい国会ということですので、ぜひ答弁の方も平易に、わかりやすい言葉で御回答いただくことをまずお願いいたします。  我が国は、バブル崩壊後、三つの過剰があると言われています。債務、設備雇用であります。いずれもバブル時代の負の遺産であり、これを早期に解決することは申すまでもありません。日本経済再生のための政府における数々の政策に対して評価いたしておりますけれども、しかし最近では、民間企業等が国の援助を期待し過ぎるといった傾向があるように見られます。それら民間企業モラルハザードを招くといったことが考えられますが、これらについてどのような対策を考えているのか、また、本来淘汰されなくてはならない経営悪化企業市場に生かし、企業救済になってしまうということのない取り組みが私は必要ではないかと思いますけれども、その点についてお考えをお願いいたします。
  12. 江崎格

    江崎政府委員 今回この法案提案いたしましたその基本的な考え方でございますけれども、供給サイド構造改革を進めて生産性を図っていくというのは、あくまでも民間自主性を尊重する、それから市場原理に立脚するということが基本的な考え方でございます。こうした考え方に基づきまして、事業者自身の手による企業の再構築を円滑に進めるための環境整備をするというのが、この法案のねらいでございます。  具体的な措置内容に関しましても、欧米の諸国で広く取り入れられております会社組織の見直しに関する手続、あるいは税制措置など、これらはいずれも基本的にはグローバルスタンダードの範囲内のものというふうに考えております。こういうことでございますので、法案考え方あるいはその措置内容から見ましても、この法案モラルハザードを招くということはないと思いますし、安易な企業救済になるということはないというふうに考えております。
  13. 山口泰明

    山口(泰)委員 その辺しっかりとお願いいたします。  また、私の地元は埼玉の真ん中辺なんですけれども、いろいろ地元で聞かれる言葉は、この間の第一・四半期の実質経済成長率について、一・九%と発表されましたが、実体経済ではこの数字ほどの回復は実感できないという声を聞くわけです。産業活力再生措置法での実体経済に及ぶ影響と新規創業数はどの程度見込んでいるのか、客観的指標についての御説明をいただければと思います。
  14. 江崎格

    江崎政府委員 この法案によります効果についてのお尋ねでございます。  定量的にこの段階で明らかにするというのは非常に難しいわけでございますけれども、法案の中身、事業者による事業の再構築円滑化ですとか創業支援する、あるいは中小企業者によります新しい事業の開拓に対する支援技術開発活性化、こういったことを通じまして、我が国産業の体質の強化を図ろうということでございます。  これまでも政府が講じてきたいろいろな施策があるわけでございますけれども、こうした施策と相まちまして、我が国経済をはっきりとしたプラス成長に転換する、そして、民需中心の自律的な成長軌道に乗せるということを実現するために、今回提案をしておりますようなことを中心とした構造改革というのは不可欠だというふうに思っております。  我が国では、年間平均で十二万ぐらいの個人創業というのがございます。それから、会社設立ということで見ますと、四万ぐらいがございますけれども、今回提案しておりますような措置によりまして創業活動が一層活発になるということを期待しております。  ただ、申し上げましたように、定量的に今の段階で申し上げるというのは、ちょっと難しい状況でございます。
  15. 山口泰明

    山口(泰)委員 ありがとうございました。  次に、バブル崩壊以降の経済の低迷に対処するため、我が国は数々の景気対策金融システム安定化対策、そして、今回の産業再生対策など一連の施策を講じているところでありますけれども、さらに、今後、十年、二十年先を見据えた日本経済繁栄確保するためには、抜本的な産業構造改革を進めるべきであると考えております。  今後の産業構造改革の目指すべき方向、とりわけ世界的大競争が進む中で、我が国産業競争力を向上させていくための技術開発新規開発、そして新規産業育成等のあり方について、与謝野大臣にお伺いいたしたいと思います。
  16. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 世界的に大競争メガコンペティションと呼んでおりますけれども、大競争が進む中で、少子高齢化などの問題を抱える日本が十年、二十年先を見据えて繁栄確保していくためには、我が国の貴重な資源であります人材がフルに力を発揮して、新産業が発展するとともに、技術開発力の面で世界をリードしていくことが不可欠であると考えております。  このために、政府としては、まず第一には、規制緩和による高コスト構造の是正や民間の新分野への進出を容易にする、第二には、リスクの大きい技術開発にみずから取り組むとともに、民間技術開発促進のための制度を整備する、第三に、人材を初めとする経営資源が、より付加価値の高い分野にシフトすることを容易にする仕組みをつくるなどの課題に取り組んできております。  今回の産業活力再生法案は、こうした考え方に基づきまして、創業支援策強化技術開発成果である特許を受ける権利の民間への帰属、事業組織戦略的再編を迅速円滑に行うことを可能とするための商法や税制特例などの内容から成っております。  本法案の成立を得て、これまで累次講じてきております経済構造改革取り組みとも相まって、我が国技術開発力強化及び新規産業の発展を図り、産業全体の競争力の向上や産業構造改革を実現し、もって将来の経済繁栄確保するための基盤を強化してまいりたい、そのように考えております。
  17. 山口泰明

    山口(泰)委員 大臣、先頭に立って、お願いしたいと思います。  この法案で大切なことは事業の再構築雇用関係であります。  第十八条には、「認定事業者認定事業構築計画に従って事業構築を実施するに当たっては、その雇用する労働者の理解と協力を得るとともに、当該労働者について、失業の予防その他雇用の安定を図るため必要な措置」とあります。いわゆるリストラ対策であり、この十八条は五項目で構成されておりますけれども、基本的には過剰設備等を廃棄、縮小することがリストラにつながることから、認定事業者認定事業構築計画提出し新産業に転出する際には、リストラせず、現状で雇用を義務づける法的措置となっているのか、この点をお伺いしたいと思います。
  18. 江崎格

    江崎政府委員 過剰設備廃棄と雇用の問題でございます。  今回提案しております法案ですけれども、考え方としまして、一つは、従業員の知識など、そういった経営資源というものを企業の中でまず有効活用するということが第一でございますし、それとあわせまして、合併とか営業の譲り受け、こういう企業の枠を超えた資源の再配分を促進しまして、国全体としての経営資源の有効活用を図るということが法律のねらいでございます。  そういうことでございますので、個々の企業のレベルにおいて、その雇用の増減だけをもって経営資源の有効活用が図られているかどうかということを判断するわけではなくて、国全体として考えるということでございまして、この法案によりまして雇用の維持を個々の企業に義務づけるということは考えていないわけであります。  ただ、雇用の問題というのは、御指摘のように細心の注意を払う必要があるというのは、私どもも全くそのとおりであるというふうに思っておりまして、事業の再構築を行おうとする事業者が、雇用面にしわ寄せをしないようにして従業員の雇用の安定に努めるということは当然のことだというふうに思っております。今先生も御指摘になりましたけれども、この法案におきましても、その旨を明示しております。  それから、事業の再構築の認定要件としまして、従業員の権利を不当に害さないものであることということを明記してあるわけでございまして、雇用への悪影響を防止しながら、事業の再構築の円滑な実施を図るということにしております。  それから、失業の予防あるいは全体としての雇用の安定ということにつきまして、六月十一日に政府として緊急雇用対策というのを決めたわけでございます。この対策で講ぜられる措置を含めまして、企業内の配置転換に対する助成ですとか、円滑な人材移動を支援するための受け入れ企業に対する賃金助成、こういった施策を最大限活用しまして、雇用の安定に国としても万全を尽くしていきたい、このように思っております。
  19. 山口泰明

    山口(泰)委員 ありがとうございます。  私は昨年の商工委員会におきましても大学等の技術移転に関する法律の質問に立たせていただいたんですけれども、TLOの活性化には日本版バイ・ドール法が必要であり、今回位置づけがなされております産業再生を図っていくに当たり、TLOに関する検討課題と本法案に対する位置づけについて、お伺いしたいと思います。
  20. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 TLOについてのお尋ねでございます。  私どもは、産業再生に重要な役割を果たす新技術を創出する源といたしましては、特に基礎的研究の分野中心に、大学が非常に大切であるというふうに認識しております。そういう意味で、大学における研究成果を民間事業者に対して移転する事業者の育成の重要性が高まっていると思っております。  既に、大学等技術移転促進法の承認を受けました技術移転事業者、いわゆるTLOによる特定大学技術移転事業について、債務保証などの支援措置を講じておるところでございますが、残念ながら、資金繰りが苦しい、財政基盤がしっかりしないということから、十分な数の特許権などが確保できないというボトルネックが存在しておるのが現状でございます。  したがいまして、今回の法律案におきましても、TLOが権利の設定登録を受けるために納付すべき特許料あるいは特許出願の審査請求手数料について負担の軽減措置を講ずることとしておりまして、これらの措置を含めて、TLOの育成等を通じて、大学から民間事業者への技術移転をさらに促進していきたいと考えております。
  21. 山口泰明

    山口(泰)委員 ありがとうございます。  最後になりますけれども、私は自宅から通勤しておるものですから、地元でいろいろ会合へ出る機会があるんです。中小零細企業者と数多く話す機会があるんです。今までもいろいろな法案、いい法案が通っているんですが、実際、今回も非常にすばらしい法案だと思うのですけれども、そういうことを全く知らなかったとか、活用する基準について詳しく理解できない、そういったことを多々聞くわけでございます。  この産業活力再生特別措置法は二〇〇三年の三月までの時限立法でありますので、そういった意味では、経営者への法案に対する周知徹底、どういう方法が一番中小企業、零細企業、要するに起業家、いろいろな方にわかりやすいのか。その辺、通産省取り組みについてお伺いしたいと思います。
  22. 江崎格

    江崎政府委員 御指摘の点というのは、私ども、大変重要な課題だというふうに思っております。  この法案がもし成立いたしました場合には、各地の通産局それから関係団体とも十分連携をいたしまして、施策の利用者の立場に立ちまして、積極的な普及啓蒙に努めていきたいというふうに思っております。  特に、中小企業方々に対しましては、各都道府県の商工担当窓口というのが県にございますし、それぞれの地域の商工会あるいは商工会議所というのがございます。こういったところにも大いに協力をしていただきまして、この普及に努めたいというふうに思います。また、最近のことですので、テレビの番組ですとかインターネット、こういったものを使いまして、きめ細かくこの施策の周知徹底に努めたい、このように思っております。
  23. 山口泰明

    山口(泰)委員 ありがとうございました。  松沢さん、民主党さんにも聞きたかったのですけれども、先ほど荒井委員さんも、私もやはり若干いいなと思うところもありますけれども、全体の利益バランスが若干、私も企業経営出身なものですから、その辺が疑問符だなということを申し添えて、終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  24. 古賀正浩

  25. 中山義活

    中山(義)委員 民主党中山義活でございます。  衆議院の方の提案と、そして閣法について、両方よく対比をしながら質問していきたい、このように思うわけでございます。  最近、ある時期から、サプライサイド、要するに供給側の活性化といいますか、生産性を上げていくというようなことが加藤さんという方から出てきた、そのうち、何か総裁候補ということでなるべく出てもらいたくないというような意図があったかどうかわかりませんが、小渕さんが急に供給サイドの問題を表に出してきて、こういう法案を出してきたというようなことが、私が言ったのじゃなくて、新聞に書いてありました。そういうことを読んだとき、供給サイドだけ活力を持たせても、決して経済のパイは大きくなっていかないと思うのですね。  現在、一年間で三万人ぐらいの方が自殺をしている。これは皆さんサラリーマンじゃないから、中には電車で通っている方、お役人さんの方にはいらっしゃるでしょうけれども、よく朝電車がおくれる。何でおくれたんだというと、飛び込みがあった。本当に多いのですよ。私鉄でありJR、すごく飛び込み自殺が多い、これで会社におくれた。そういう世の中でございまして、三万人といったら大変ですよ、ある意味では内戦に近いような犠牲者が出ている。  つまり、リストラとか高齢者になってからの不安、いろいろな社会不安が、結果的には消費者がお金を使わないという現実だというふうに思うのですね。特に、高齢者の問題なんかは、これから年金の問題、介護の問題、医療の問題、大変不安だ。あのきんさん、ぎんさんでも預貯金をしているそうですよ。なぜしているかといったら、老後が不安だというのです。つまり、年とってからのことが不安だとか、いろいろなことが不安だからお金が使えない。  供給者サイドが幾らしっかりやっても、消費にはなかなかつながってこないという現実を見ながら私は質問をしなきゃいけないし、また、新しい企業を創出していく、生産性の低いところから必ず生産性の高いものをつくりながらやっていかないと、初めからリストラありきであるとか過剰設備をどんどん切っていくというような形ではなくて、新しい企業をつくっていくという視点から、私はまず質問をしていきたいというふうに思います。  私どもは、地方議員を長くやっていましたから、よく起業家に対して融資のことを随分考えてまいりました。しかし、結局融資には限界があるということがある時期にわかったのですね。やはり、あるお金を上げてしまわなきゃだめだ、上げるぐらいの気持ちでやってもらわない限り、ゆっくり新しい案をしっかり熟成させてすばらしい商品を生み出すことができない。  そういう意味では、エンゼル税制、これについて民主党案の方は大分言及しているというふうに思うのですが、まず民主党の方からこの点に対して答弁をいただきたい。そしてまた、これについて、先ほど荒井議員からもいろいろありましたけれども、政府案もエンゼル税制に対してはどういうふうに考えているのか、御答弁をいただきたい。
  26. 松沢成文

    ○松沢議員 民主党起業家支援法案提出者の松沢でございます。  まず、答弁させていただく前に、古賀委員長を初め理事会の皆さん、また委員皆さんには、私どもの起業家支援法も政府案と同時に審議をさせていただく機会をつくっていただきまして、本当にありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  今、中山委員からの質問でありますけれども、一つは、民主党案のエンゼル税制拡充といいますか、私たちは、ベンチャー支援税制を一つの起業家支援の柱に立てております。  もう言うまでもなく、ベンチャービジネスに投資する方、日本ではまだまだこれが少ないと言われていますけれども、こういう投資をできるだけ促進するように、税制面で支援ができないかということで、私たちの法案では、三年間にわたって、ベンチャー投資の損失、これは今までキャピタルゲインとキャピタルロスの相殺だけだったのですけれども、これを一般の所得と合算をして、ベンチャー投資で損が出た場合にも、三年間にわたって一般の所得と合算をして、所得税をできるだけ節税させてあげる、こういう方向でつくりました。  それは、やはり政府政策税制によって日本の新しい企業のテークオフを助けてあげようという目標があるわけであります。私は、余り税制あるいは政府支援策が過度になりますと、企業の自由な競争を阻害するおそれもあるので危険という考え方もよくわかりますけれども、日本にとって、今、エンゼル投資家をきちっと育てて、ベンチャービジネス資金が集まるような体制をつくるというのが非常に重要な方向だと思いまして、このエンゼル税制拡充というのを柱の一つにさせていただいた、こういうことであります。
  27. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答えを申し上げます。  私どもも、資金調達が困難ないわゆるアーリーステージのベンチャー企業に豊富な民間資金を投入させて、ベンチャー企業の創出、成長を促進させるということが大変大事なことだと思っております。そういう意味で、平成九年六月に、いわゆるエンゼル税制というものを創設いたしました。  ただ、このエンゼル税制について、さらなる措置が必要な場合には、むしろ中小ベンチャー企業への資金供給の一層の円滑化を図るために、源泉分離課税の廃止を含めた金融関連税制の見直しを踏まえながら、そのあり方について検討していくべきだというふうに考えております。
  28. 中山義活

    中山(義)委員 今の答弁と松沢議員答弁と、聞いていて、いろいろ違う点はあるのですが、松沢提出者として、ここが違うんだと、もっと強力にあるところ、これが違うんだよというところがあれば言っていただけますか、特に、税法について。
  29. 松沢成文

    ○松沢議員 エンゼルに投資をする投資家が、これまで、いわゆるキャピタルロスですね、損をしてしまうと、それはキャピタルゲインとの相殺はできたのですけれども、そのまま非常に大きな損をこうむっていたわけです。ところが、それを一般の所得と合算できるような体制にすることによって、大変に企業に対する投資のリスクが減ることになって、こういうインセンティブを働かせることが大変重要だというふうに思います。  ただ、私ども民主党にとっては、将来的には、個人の所得に対しては、今のように分離課税ではなくて、納税者番号制等の導入を含めて総合課税にしていくという方向を持っていまして、そのときにはまたこうした案は考え直すことが必要だと思いますが、やはり私は、総合課税にすることによってインセンティブを働かせるというのは今の政府案には全くないところで、税制を利用した投資意欲の誘発という意味では大変有効だというふうに考えています。
  30. 中山義活

    中山(義)委員 まさに新しい仕事を起こそうとする人を周りが援助していくという風土があって初めて意欲が出てくるもので、恐らくやっても借金だけしょってやめてしまう、またはそれを支援した人が、支援をしたけれども結果的には損をしちゃったという社会では、やはりやる気になっていかない。そういう意味で、今後新しい事業を創出していこうというような人が恵まれる社会じゃないと、決して新企業は生まれないし、とてつもなく大きなパテントを使った有意義企業というのはできてこない、そういう土壌をつくっていかないといけない、このように思うわけでございます。  もう一つ、うちの民主党の方で先ほどSOHOの話が出ておりました。女性に対して非常に、もっと企業を起こしてもらいたいというような意味合いの法律案だと思うんですが、それについて、ちょっと御説明と強い意欲を示していただきたい。
  31. 島津尚純

    島津議員 中山議員から、女性起業家、それにSOHOについてのお尋ねがあったわけでありますが、今日、アメリカにおきまして女性起業家というのは大変な活躍、役割を果たしているわけであります。例えばアメリカの主要五百社が抱える雇用者数は一千四百万人、それに対しまして、女性起業家が経営する会社雇用する雇用者数といいましょうか、これは一千八百五十万人、四百五十万人も雇用者数が上回っているというような状況にありまして、アメリカ経済の主役というものはスーパーマンではなくてスーパーウーマンではないか、このようなことが言われるゆえんであるわけであります。  そのようなアメリカで近年、起業家の、業を起こす人たちの三分の二が女性であり、そしてその半数が主婦だという状態であります。自宅もしくは小さな事務所でパソコンやインターネットを使って仕事をやるSOHOというものを志向する女性が年々急増しておるというのが、アメリカの状態なわけであります。  今我が国でも、在宅でパソコンなどを使って仕事をしたいので情報が欲しいというような問い合わせが各方面に寄せられているということであります。女性の仕事や企業関連のホームページあるいはSOHOに関連したホームページがどんどんふえているというようなことも、現在日本の中で起こっておるわけであります。子育てや介護などで会社をやめざるを得なくなってSOHOスタイルの会社をつくる女性も多いと聞きます。  もちろん、介護や育児制度を充実して女性を家に縛りつけるような社会を改革していくということも必要なわけでありますが、それとあわせて、女性起業家にとって多くの可能性をもたらしてくれますSOHO支援していきたいという考えを私どもは持っておるわけであります。SOHO支援について、もっときめ細かい政策につきましても今後取りまとめさせていただきたい、このように思っておるところであります。
  32. 中山義活

    中山(義)委員 民主党としてしっかりした、今言ったSOHOについて確立した考え方を打ち出してもらいたい、こういうように思うわけですが、現在ハローワークなんかに行きますと、本当に女性が勤めにくいという状況でございます。今の日本の社会の中では男性すらなかなか勤められない、こういうところで大変、女性が勤めたいという意欲があっても勤められない。今言ったような制度をどんどん利用して、本当に女性が社会の中で自立できるようにひとつしていただきたい、このように思うわけでございますが、これについて政府案の中には、このような考え方というのはどういうふうに盛り込まれているんでしょうか。
  33. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 近年徐々に、独立して事業を営む女性がふえております。ただ、それでも現在、創業者に占める割合は三・五%程度と極めて低い状況でございます。創業を一層促進する、あるいは経済活性化を図るという意味で、女性視点から事業を積極的に展開することは大変重要なことだろうと私どもも思っております。  他方、アンケート調査などによれば、女性であるがゆえに不利があると感じた方の割合が約半分にも達しております。その最大の理由が、金融機関からの借り入れ困難等融資に関することである。  したがいまして、私ども、本年度より、起業意欲のある女性のための貸付制度というのを新たに創設いたしました。四月からの実績でございますが、四月二十六件、五月六十五件と、まだこの二月の実績しかわかっておりませんけれども、こういう実績が出てきております。  こういう制度があるということを運用上広く皆さんに知っていただいて、こういう制度なども活用しながら、女性を含めた起業家の育成に取り組んでまいりたいと考えております。
  34. 中山義活

    中山(義)委員 ハローワーク等でも女性がそういうような仕事ができるようにしむけるように、いわゆる講習会であるとか、いろいろな方法でチャレンジできるようなシステムをどんどんつくっていただきたい、このように思うわけでございます。  次に、国立大学の教官の兼職といいますか、いわゆる企業に大学の先生が出向いていく、または逆のケースもあるでしょうし、いろいろな意味で官と学と業、一体感といいますか、特に業と学ですね、どういうような共同作業をやっているのか。これは民主党案でも相当言及されたと思うんですが、その辺はいかがでしょうか。
  35. 島聡

    ○島議員 お答えいたします。  産学官の連携産業競争力強化、ひいてはその一国経済回復させるというのは、アメリカのシリコンバレーに見るがごとく非常に重要な要素であると思います。中山委員も文教委員でもおられるのでよく御存じかと思いますが、日本の大学の状況が本当にそのような状況になっているかどうかということに関しましては、甚だお寒いような状況にあるのが現在の状況であります。  政府の方は、いわゆるTLO、技術移転機関でございますが、それと国立大学教官の兼職を来年四月ぐらいから始めるというような方向性を新聞報道で伺っておりますが、私どもの法案と比べますと、極めて中途半端な印象を受けるわけでございます。幕末の政治思想家で有名な横井小楠というのが「天下の策は常に第一等の策を用ふべし」という言葉を使いました。中途半端な策を用いますと、結局だめだという話であります。  小渕総理が鳴り物入りでスタートさせました経済戦略会議でも、国立大学教員の「兼業や産学共同研究の自由度を飛躍的に高める。」ということは提言をしておるのですが、これに対する政府の査定はA、B、Cとあって、実現する方向のAではなくて、よく考えて検討するというB評価なわけですね。先ほど申し上げたように、TLOというのは、要するに大学の中につくられた技術移転機関ですから、大学の中で一歩進んだ者だけの兼職を認める、極めて中途半端なものでございます。  民主党の方は、今経済戦略会議の提言にあるようなもので非常に重要であるということで完全にAという結論を出しまして、法案まで出してきまして、大学教官の兼職を認めるということになっております。これをすることによって、アメリカのシリコンバレーのように産学官の共同ができて、日本競争力回復して、産業再生していくというふうに確信しているわけでございます。  これからは、ビル・ゲイツが言うようにスピード経営の時代でございますから、政府決定のスピードの差が明らかになっているわけであります。先ほどのエンゼル税制についてでもございますけれども、何か政府の方は、やっているよと、エンゼル税制という言葉は使っているのでありますが、それがどうも似て非なるもので、中途半端なものに終わっている。ビジネス世界的規模で動いている今日であります。政策を小出しにして中途半端で終わるんじゃなくて、日本競争力の低下を完全に克服するために、TLOだけでなく民間企業の役員兼務を認める改革を早く打ち出すべきであると思いまして、私ども法案提出しておりますので、各党会派の御理解をお願い申し上げます。
  36. 中山義活

    中山(義)委員 後ほど文部省関係の質問を一括してやっていきたいと思いますので、今言ったような方向でいろいろ進めていただきたいとは思うんですが、政府案の方は、今言ったような方向でやっていけるのかいけないのか、またはそういう気持ちがあるのかどうか、質問いたします。
  37. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 まず最初の、TLOの役員兼業でございますが、これにつきましては、規制緩和推進三カ年計画に基づきまして、平成十二年四月一日から可能とするような措置が講じられる予定でございます。  それからもう一点の、民間企業の役員兼業についてでございますが、ことしの六月に、小渕総理の指示によりまして、国立大学教官等の民間企業役員兼業問題の取り扱いについて検討を行うため、内閣官房に国立大学教官等の民間企業役員兼業問題に関する連絡会議を設置したところでございます。  本年秋を目途として結論を得るべく検討中でございますが、この問題につきましては、一つには、大学などの研究成果を活用した新規事業の創出、あるいは産業界への技術移転を通じた我が国産業活性化に資するという面と、他方、的確で公正なルールがどのようなものであるべきか、この両面にわたっての検討が必要であると考えておりまして、この連絡会議の場における検討結果を待つ必要があると考えております。
  38. 中山義活

    中山(義)委員 とにかく、産学といろいろ協力して新たなものを生み出していく創造力をやはり大学や学校に求めていく、そこには若い人材がうんといるわけですから、そういう若い人材をやはり生かして新しいものを生み出していくという努力は絶対怠らないでもらいたい、このように思うわけでございます。  私、一つ産業活力再生特別措置法の質問をしたいわけですが、一九八〇年代に日本が製造業をどんどん拡大をしていって、とにかく日本の製造業の優秀性また日本の製品のすばらしさ、これによってアメリカにどんどん輸出した。結果的には、アメリカは貿易赤字で悩んでいろいろな苦労をした、何とかそれを変えなきゃいかぬ、こういうようなことがアメリカにあったと思うんですね。  同じようなことをさらにもう一度今、製造業に特化して、国が何か支援をしていく。特に鉄鋼業なんかは、日経によると、アメリカが、また日本が何か鉄鋼業を支援して、アンフェアな戦いをアメリカが強いられる、このような疑念を持っているやにこの新聞に書いてあるんですが、この現実はどう思いますか。
  39. 河野博文

    ○河野(博)政府委員 お答えいたします。  御指摘のような新聞報道もございましたわけでございますけれども、米国からこの産業活力再生特別措置法案につきまして、鉄鋼問題と絡めて懸念表明が行われたということはございません。  産業活力再生特別措置法案は、私ども、我が国経済生産性を高める観点から、抜本的な事業構築を行う企業に対しまして、合理性の範囲内あるいはいわゆるグローバルスタンダード支援措置を講ずるという考え方でございます。  この法案に基づきます支援措置は、例えば鉄鋼などのような特定の企業あるいは業種を支援するということで構成されているものではございませんし、むしろ企業事業構築の努力に着目するということでございまして、国際ルール上禁止された補助金ということでもございませんし、また、国際ルールにのっとって運用していくという考え方でございます。  また、こうした支援措置は、日本経済の力強い回復を図るという観点から不可欠だと考えているわけでございますけれども、これは昨年来の米側の要請にもそういう意味ではこたえるものというふうに考えているところでございます。
  40. 中山義活

    中山(義)委員 今回の法案は、大企業とか中小企業とか業種、そういうことを限定してないので、広くと思うんですが、大きな設備を廃棄してとか、いろいろな新聞なんか読んでいますと、どうも重厚長大、今まで言われている、一九八〇年代に日本が輸出産業としていろいろやってきたそういう産業にすごくプラスになるんではないかというようなことが日本経済新聞なんかによく出ているわけですね。足並みそろえて鉄鋼業や経団連が喜んでいるとか、いろいろここに書いてあるわけですね。製鉄会社なんかもこの産業再生法案についてうまく活用していきたいと。どうもそういうふうに言っているのが、重厚長大、そういう大きなものを扱っている会社のように見受けられるんですが、これからまたそういう企業再生して頑張ってくる、また一九八〇年代のようにアメリカへどんどん輸出をする、貿易黒字を上げていく。これはある意味では、貿易黒字がどんどん出るということは国内の消費が弱いということではないんですかね。  アメリカは貿易赤字がどんどんふえていく、しかし国内は景気がいい、株価は上がってくる。私ども、よくわからないんですが、一般的に言えば、赤字がふえるんだからアメリカとしては大変だと思うんだけれども、どんどん赤字がふえるたびに国内の景気はよくなってくる。日本は、こうやって活力を持って、鉄鋼だとか自動車だとかどんどん輸出がふえていく、貿易黒字はふえる、だけれども景気は後退していく。どういう相関関係なんだかよくわからないのですが、今度のこの法案の結果によって一九八〇年代みたいなことが起こり得るのかなとも思うんですが、その辺はいかがでしょうか。
  41. 江崎格

    江崎政府委員 この法案のねらいでございますけれども、今先生指摘のような重厚長大産業を特に念頭に置いて、それの輸出競争力をつけて黒字をためるということを念頭に置いているわけでは決してございませんでして、この法案は、あくまでもすべての業種を対象にしております。しかも製造業だけではなくて、流通業を初めとしたサービス産業、こういったものも全部含めております。これらがそれぞれ経営資源の最適配分によりまして生産性の高いところへ資源を移していくということをねらっているものでございまして、重厚長大産業の輸出競争力をつけるということをねらったものではございません。  ですから、御懸念のようなことがこの法律によって起こるということはないものというふうに考えております。
  42. 中山義活

    中山(義)委員 そういう面でいえば、先ほど来から出ているように、もっとソフト産業に力を入れていくような施策、例えばエンゼル税制であるとかいろいろな施策があると思うんですが、活力を持たせるためにいろいろな優遇をする、今回のこの法律を見ていると、やはり大企業が得をするというような、そうだろうと新聞報道ではいろいろ書いてあるんですが、どうもそういうことが危惧されているわけですね。  一九七〇から八〇年代に、日本の今言った重厚長大、いわゆる日本のすばらしい製造技術によって製品がどんどん外国に行った。一方、アメリカなんかは逆に半導体なんかも日本の製品の方がどんどん優位に行って、だんだん貿易の方でおかしくなってきた。そこで考えたのが、テキサス・インスツルメンツのキルビー特許、半導体に関する特許を出願して、いわゆる車でいえばエンジンに当たる、絶対この特許をとらない限りはその製品ができないというような、そういう知的な所有権を持って対抗してきたということがあるわけですね。周りを見れば、日本がどんどんそういう製品を持っていくことによって、アメリカはソフト産業しか逆に言えばできなかったというようなことで、今アメリカと日本との差があって、日本は相変わらず、じゃ製造業を生かしていこう、これは大切なことなんですけれども、もう一つやはり新たに知的なものを、もっとソフトを売っていくというようなことを積極的に、今度の法案の中にも取り入れてはいるんでしょうけれども、何か見えてこないし、日経なんかもずっと切り抜いておりますが、どうもそういう懸念が出ているんですね。  なぜ出ているのかというと、やはりさっき言ったような、大きな場所を持った、大きな設備を持った企業が得するような法律である、税法である、このように言われているんですが、その辺に反論がありましたら言っていただきたいと思います。
  43. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 日本の法人税制というのは、製造業であろうと、あるいは非製造業であろうと、全く法人税制というのは平等に適用されていまして、そこで製造業、特に装置産業に特に有利に働くということはあり得ない法人税制になっています。  それから、先生が先ほどから展開されている議論の中で、やはり私は、貿易摩擦を起こすぐらいの力強い経済、力強い国際的な競争力を持った日本経済でなければ雇用は維持できませんし、また二十一世紀の日本の豊かさも保障できないと思っております。  そこで、物の考え方ですが、しょせんはと言ったら怒られますが、例えば情報通信とかソフトというものは、物あるいはサービスを供給する面で効率性を高めるための周辺的なものでございまして、日本経済を支える中心的なものはやはり製造業であり、サービスの供給業であり、その本質を見誤ってその周辺部分だけに力を入れるということは、日本経済の衰退を招くだろう。やはり日本の得意な分野、特に物づくりをきちんとやるということが我々の将来を保障するゆえんであろうと私は思っております。
  44. 中山義活

    中山(義)委員 物づくりを大切にするというのは、もちろん当然のことだと思うんですね。  私どもも、この間工業団地へ行ってきましたけれども、実際に、パクリというシャベルの先端についているものを、そこの社長が何か水戸黄門を見て発想して、やげんというのを見てこういうものをつくったんだ、本当に涙ぐましい努力をしている中小企業のそういう社長がうんといらっしゃるわけですね。  ですから、日本は物づくりをやっていく、それは当たり前の話だと思うんですが、ただ、日本の国の中に需要が喚起されていないと、結果的には輸出をするということになっていくということで、やはり貿易摩擦が起こることは間違いない事実でありまして、貿易赤字が出ているアメリカが景気がよくて、貿易黒字がある日本が景気が悪い。では、もっと貿易黒字をどんどん進めていけば、活力があるというけれども、結果的にそれは日本経済の発展につながるのかどうかということは、大変私は疑問があるということを指摘しているので、例えば過剰設備と過剰の雇用とを同じレベルに並べること自身が間違っていると思うんですね。やはり経済というのは、物を買う人たちがいなければ、結果的には供給サイドだけで物を考えてもだめだ、こう思うんですね。あの振興券だって、なぜ振興券をああいうふうに配付したかといえば、物を買ってもらいたい、物を買う相手をつくるということだった、そう思うんですね。  そういう面では、雇用を創出するということと、その経済活力、これはある意味では、物を買う人をふやすわけですから、その方がいいという考え方もあるわけです。雇用措置法なんかでも、むしろ雇用をふやすような方向にもっと政府の目がいった方がかえって景気がよくなるんじゃないか、こんなことも考えるわけなので、今の指摘は、通産大臣のお話は、外国に比べても国際競争力をつける、そういう意味合いではわかるんです。しかし、経済という観点では、やはり国内のパイが、経済のパイが広がっていかないと、なかなか景気は回復しないということで、大変難しい問題でもあります。  そういう面で、私どもがちょっと心配しているのは、経済白書が出まして、雇用の過剰が二百二十八万人だなんて書いてあるんですね。大変これは無神経だと思うんです。無神経というか、それはありのままに書いたのかもしれませんが。または、過剰債務と過剰設備、これなんかについても、過剰設備は四十一兆円だと言っているんですね。では、これを償却してやっていくということは、相当なお金がなければもともとできないような、今の白書の、実態だと思うんですね。  それと同時に、ハイリスク・ハイリターン。でも、国民の皆さんはやはりローリスク、もっと安定した生活を望んでいるのかもしれませんし、経済的な見地から、雇用というものに対する考え方、今言った過剰設備雇用というのは相対峙しているものだと私は思うんですが、同じように、同列に並べるべきものじゃないと思うんですが、雇用と、今言った新しい産業活力とどのような関係にあるか、ちょっと御説明いただけますか。
  45. 江崎格

    江崎政府委員 この法案で何をねらっているかということなんでございますけれども、事業の再構築を推進するということだけではなくて、新しい産業、未来産業をつくり出す、そういうことに向けた技術開発活性化するとか、創造的な中小企業あるいはベンチャー企業の振興をするといった、幅広い施策を講ずる前向きな対策だというふうに思っております。事業構築の問題につきましても、新しい産業雇用の創出に向けた不可欠な取り組みということでございまして、この法案は決してリストラとか首切り支援といったようなものではないわけであります。  企業が従業員の雇用の安定に努めるということは当然なわけでございます。したがいまして、雇用にしわ寄せをしないようにということに最大限の重点を置いて法案をつくったつもりでございます。  それから、もちろん、国におきましても、事業の再構築への事業者取り組み支援する際にも、雇用の安定に十分配慮するということを明記したわけでございます。  具体的に、雇用の問題ですが、この法案に盛り込みましたことは、一つは、目的のところに、国が雇用の安定に十分配慮するということを明記しております。それから、認定の要件におきましても、雇用の問題を認定に入れておりますし、それから、事業構築計画などを実施する場合におきましても、認定事業者の責務としまして、雇用とか労働条件に影響がある場合に十分必要な協議などを行うという雇用への配慮を規定しているということでございます。私どもの法案におきましては、決して雇用を軽んじているとかそういうことではなくて、むしろ非常に細心の注意を払って、この問題を扱うということをうたったつもりでございます。
  46. 中山義活

    中山(義)委員 恐らく今、雇用確保するということは、言葉上は、ミスマッチの解消または労働力の流動化とか、新規事業の創出と職業訓練の強化、こんなような文言を並べてやっているんでしょうけれども、通産省としては、経済全体のかじ取りは非常に重いと思うんですね。もし過剰設備だ、過剰人員だというので、どんどんこれが、本当にリストラ法案みたいな感じで、首を切る、またはそういう社会不安を招くようなことがあったら大変怖い法律だと思って、私はすごい責任があると思いますよ。  この間の補正予算で雇用の予算がつきました。これだって、何だか知らないけれども、一カ月に十一万ずつ半年間出す。何か昔の、公園を失業した人が掃除している失対事業と同じような感じのものですね。半年の間、今言った雇用創出のための補正予算、こんなものはそういうものに関係があるんですか、関連されているんですか。ちゃんとした雇用を守るという姿勢で、今回の過剰設備、過剰人員、これはどういうふうに関連しているんでしょうか。
  47. 江崎格

    江崎政府委員 先ほども申し上げましたけれども、この法律でねらっていますことは、個々の企業においての不採算の部門といいますか、生産性の低い部門に張りついている経営資源というものを生産性のより高い部門に移動させよう、それによって国全体としての生産性を上げるということでございます。その際に、雇用の問題が当然伴ってくるわけでございますけれども、それについては細心の注意を払う必要があるということで、先ほど申し上げましたように、法文の中にも、目的規定ですとか認定の要件、あるいは実施に当たっての配慮規定等々を盛り込んだということでございます。
  48. 中山義活

    中山(義)委員 その認定の基準がわかりませんけれども、できる限り本当にそれじゃ分社化させて人を移動するとか、または流動化に対してどういうふうに考えているのか、これから逐次論議を見ていないと、非常に不安だと我々は思っているわけですね。  私たちはずっと下町にいましたから、中小企業の立場で大企業を常に見ていましたけれども、大企業というのは本当に、分社化一つにしても大変怖いと思うんですね。または多角化という言い方の方がいいかもしれませんが、大企業の力で、ちょっと中小企業とか小企業でやっているうまい仕事があると、よしこれはいい、ばっと資本力でやってきちゃう。  だから、私たちは、多角化とか分社化、そういうことだって中小企業を圧迫してくるのかなと思っているんですけれども、もっと怖いのは、今言った認定ですね。うちの企業はどうしてもこれだけの首を切らなければやっていけないとなると、じゃこれだけ人を切りますと言ったときに、その基準というのはあるんですか。人をやめさせる基準というのはおかしいけれども、その辺、何か認定の、今まで、例えば融資をすれば、月の売り上げの三倍までは貸すけれどもそれ以上は貸せないとか、ある程度融資なんかでは認定の基準があったけれども、この辺はどうなんですか。その企業がやっていけないと言ったら、これだけリストラしなきゃやっていけないというのを持ってきたら、そういうものだったら、その辺はどういうふうな基準で見るんですか。
  49. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 先生は認定に関して、私も先生の質問を十分理解しているかどうか自信がないんですが、これは、商法とか税法の特例を適用するわけでございますから、そうみんな、自分に適用してくれと言った人に全部適用することが果たして正しいかどうかという問題がありまして、やはり商法あるいは税法の特例を受ける以上は、その企業が新しい方向に向かっているということを判定はしなければならないわけです。  そこで、認定するときの基準でございますけれども、何か一部、行政の裁量の幅が非常に広いからという説がございますが、私どもは、別に恣意的な行政をやろうとしているわけではなくて、ある透明性を持った、公正な、公開された基準に従って認定をしていくわけですから、そこには大きな裁量の余地はない、そのように考えております。
  50. 中山義活

    中山(義)委員 今度の法案に関しましては、要するに通産省の権益が広がっていく、縄張りが大きくなっていくというような面が一面ありますが、大臣がお話しになったように、その権益というか力で、できる限り雇用問題というのはうまく解決してもらいたいと思うんですね。できるだけ分社化してそっちへ人を移動するとか、または新しい企業を起こしてそこへ人を持っていく、とにかくリストラで首を切っちゃえばいいんだというような、そうすればこの会社が楽になるという単純な図式というのは絶対あり得ないわけですが、何かやはり多くの方がそういう不安を持っていることは事実ですよ。  リストラ法だなんて何かのときに新聞に出ていましたから、非常に通産省の権益が広がって、そんなことがあれば通産省の責任ですし、今大臣が言ったような温かい言葉でやはり私はやってもらいたい。本当に労働者人たち雇用を失うことによって消費が停滞してしまうんだ、経済が停滞してしまうんだ、やはり雇用確保しない限りは日本経済はまずいぞ、失業者が多いということは結果的には経済のパイが小さくなる、こういうような考え方でできるだけいっていただくことであれば、そういうふうにやってくれるなら、通産省の権益が広がることはむしろ好ましい、私はそう思うんですが、ちょっともう一度大臣、ひとつよろしくお願いします。温かいお言葉をひとつ。
  51. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 雇用というのは、しょせんは経済が好調でなければマクロの問題としては雇用機会というものを確保できないと思っておりますから、経済全体をしっかりさせないと雇用機会というのはふえないということで、いわゆるテクニックの問題として雇用機会をふやすことができるかといえば、多分そうではないだろうと思っております。  そこで、先ほどから民主党の法律の提案者を初め皆さんのお話を聞いておりますと、何かアメリカの経済を賛美し、アメリカの状況がモデルのように言っておられますけれども、私は、本当にそうだろうか、その例をそのまま日本に引き写していいのかということを前から考えております。  特に雇用の問題については、欧米先進国ではレイオフという非常に厳しい制度があるわけですが、この法案で示されているとおり、やはり働く方々の理解と協力を得ながら物事を進めていくということが私は正しいんだろうと思います。日本労働組合は経営陣とよく話をされておりますし、現在まで進行しておりますいろいろな企業別の事業構築を初めリストラというものも、やはり従業員の理解と協力を得ながら進めているというのが日本的な風土であって、雇用問題については、ハードランディングではなくてソフトランディングが好ましいと思っております。そのために労働省もいろいろな社会的なセーフティーネットを考えておるわけでございます。  そういう意味では、日本には日本独自の、雇用に関する今までの積み上げてきたよきならわしがあるんだろう、私はそのように思っております。
  52. 中山義活

    中山(義)委員 今言った、単純な、押しつけられたグローバルスタンダードはやはりアメリカンスタンダードでもあり、必ずしもいいものじゃないというふうなお話があって、私もそのとおりだというふうに思います。終身雇用制の中にも大変いいところもありますし、愛社精神であるとか、会社のために命を投げ出しても一生懸命やる、そういう精神も日本人的であり、非常にいいと思うんですね。  それからまた、グローバルスタンダードの中でも特に間違っているのは、金融が一夜のうちに何千億ドルも動いたりなんかして、結局はグローバルスタンダードというのは、ああいう電子マネー、富の偏在をつくった、こんなふうにも思うので、我々はやはり、グローバルスタンダードよりも、日本が主体的に何をしたらこの景気が回復するか、日本のもっと主体的な考え方をつくっていかなきゃならないと思うんです。  そういう面で、雇用産業活力の問題、これについて民主党案でもいろいろ論じておりますので、島議員、ひとつ答弁がありましたら。
  53. 島聡

    ○島議員 お答えします。  今、何か通産大臣答弁に大きな誤解がありますので、それも交えてお答えしたいと思います。  アメリカ経済を賛美しているというのは誤解でございます。私どもは、一九九〇年代に一千九百万人もの新規雇用を生み出したアメリカ政府経済政策運営、これにつきましては賛美をいたしております。日本経済のように、小渕総理が昨年七月に就任された月に二百七十万人の失業者だったのが、三百四十四万人、七十四万人、島根県一県が七十二万人ですから、それよりもふやしてしまった経済政策運営は、決してこれはいいものではないと私どもは思っております。政策運営は認めるべきであって、その政策運営で日本がとるべき点は取り入れるべきだというふうに考えております。  当然、私ども民主党は、消費者であり、生活者であり、働く者の政党でございますから、セーフティーネットに関しましては、雇用問題に関しましては、恐らくは、この時点では、それを答弁するものではありませんので詳しくは申し上げませんが、セーフティーネットに関しましては、それ以上のものを用意して今提案をしようとしているところでございます。  何にも増しまして、当然これから二十一世紀に向けまして、経済戦略会議でも二〇〇一年以降は二%の経済成長に乗る潜在能力があると言っておるわけでありますから、そこにきちんと乗せるような政策運営をしていく。これから二年間で、きちんと起業家支援法案を通して、たくさんの起業家が起きる芽をつくっていって、現在の政府のような政策の失敗をするんじゃなくて、きちんと経済政策運営をして二%の経済成長に乗せれば、その芽がざっと開いて雇用もたくさんできるわけです。そういうような前向きな雇用をつくる政策、そして同時にセーフティーネットに関しては、私どもはきちんと準備をしております。ウイ・アー・レディーであるということを申し上げたいと思います。
  54. 中山義活

    中山(義)委員 今のお話を聞いて、大臣も御不満があるでしょうから、反論をしてもらいたいと思うんです。  一つ、サプライサイドという、供給サイド、そういう言葉ばかり出てきてしまっているわけですね。それに白書も、あれ、よくないと思いますよ。二百二十八万の雇用の過剰があるとか四十一兆円の設備過剰がある、そういうふうに書くから何でも切っていかなきゃいけないという気がするわけですね、変に。でもやはり、需要と供給があって、供給側と需要、そういうものを大きくつくっていかない限り経済は変わらないと思うんです。  今の島議員のことについて、大臣ちょっと反論していただいて、やはりいろいろな意見を言っていただいて、何かもうちょっと我々にわからせていただきたいと思うんで、よろしくお願いします。
  55. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 失業率が増加したということは大変残念なことでありますし、特に、失業者の中でも、いわゆる非自発的失業者というのは百万を超えておりますので、こういう方々は、それぞれ家族も持ち、自分の勤労によって家族を養っているわけですから、そういう方々に対する政策的な十分な配慮というのは私は当然であると思っております。  何か、経済政策がうまいと企業がどんどんふえるというふうにも聞こえますけれども、実際は、やはり日本経済が本当に持っている底力というものをつけていかなきゃいけないわけでございまして、そういう意味では、サプライサイドの改革というのは二つに分けて先生にお考えいただけないかと思っております。  それは、一つは、やはり過去、バブル時代に、どちらかといえば生産性の低い分野にお金を投じてきたという傾向があったわけでございますが、そういう過去の清算をするということがやはり第一段階であって、第二段階、あわせて行わなければならない、あえて第二段階と申しますが、その過去の清算プラス、やはり将来の展望を開くために、皆様方にお願いしております今回の、商法を初めとした経営の自由度を拡大するという方法も一つでございますし、また、日本の科学や技術の力をしっかりつけて新しい分野日本が二十一世紀に耐えられるようなリーディング産業というものをつくり出していける、本当に日本経済の力を強くする、どこの国の経済にも負けない本当の体力を持つことが実は重要であって、それは小手先のことでは多分できないのだろう、また、時間もかかる作業であろうと思っていますが、やはりそういう一連のことを我々サプライサイドの改革と呼んでいるわけでございます。供給側の改革ということは、そういう過去の清算と将来への道筋、この二つをやらなければならない、そのように思っております。
  56. 中山義活

    中山(義)委員 本当にサプライサイドと需要側とうまく連携がとれながらいけば一番いいわけでございます。要するに、物を製造する、それが売れるという社会でなければ困るなというふうに思うんですが、今のお話を聞いていまして大分わかってまいりました。  やはりあとは今の世の中が本当にお金を使えるような状況にするということが大事なんで、日本の将来像、近い、二、三年の将来像、六十五歳以上になっても安心して生活ができるとか簡単にリストラされない、安定した精神状況でお金が使えるというマインドの部分も非常に大事なんで、あの経済白書、何かちょっと国民に恐ろしさを与えますので、通産大臣からも注意しておいてもらいたいですね。あんな二百二十八万人も雇用が多過ぎるとか、国民にハイリスク・ハイリターンなんてことを言っていますけれども、やはりもうちょっと安定した気持ちで、我々はお金が自然に使える状況を政治でつくるということが一番大切だ、このように思っております。  それからもう一つは、債務の証券化の問題があるんです。これは今まで我々がいろいろ指摘してきた護送船団方式、または何かみんなでうまく銀行と一緒にやっていこうというような、そんな気がするんですが、当然この債務というのは、いわゆる製造する、または大きな設備を廃棄した会社であるとか赤字を持った会社と銀行との話し合いをして、金融機関と話し合いがついて初めてやることだとは思いますが、その辺にまた政府が介入して何かやる。余り大きな会社だからつぶせないというようなことはないと思うんですが、いかがですか。
  57. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  債務の株式化は、まさに今先生指摘のように、民間ベースで判断されるべき問題だと考えております。したがいまして、私どもの法律の中で債務の株式化についても触れておりますけれども、これは債権者、債務者間の合意が存在することを前提としております。したがいまして、御指摘のような懸念は当たらないのではないかと考えております。
  58. 中山義活

    中山(義)委員 これについては、とにかくまた護送船団方式が出てきて、国民の税金が変なところで使われやしまいかというような危惧を今質問、チェックしましたので、それはあくまでも銀行と企業との間で話をするということでよろしいわけですね。——はい。  あとは、先ほどから、大企業が大量の設備を持っていてこれを廃棄と言いましたけれども、やはり中小企業の立場に立って、この認定を受けるときに中小企業というのはやはりいろいろ書類をつくったりなんかするのは大変ですね。これは、地方分権との関係で、地方自治体にはどういう認定作業をさせたり、今まで二十兆円の中小企業の安定化のものの場合には市町村なんかが認定していまして、保証協会から保証してもらって借りたという形になっていますが、これは市町村もしくは都道府県はどうかかわっているんですか。
  59. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 お答えいたします。  本法案に基づきまして経営資源の活用の新事業計画の認定を受けますと、特別の保証とか無利子の融資制度の対象になります。  ただ、私ども、制度設計に当たりましては、まず、創業される方、新規開業あるいは開業後五年未満の方、これを創業者と定義をいたしておりまして、認定は不要にしてございます。また、中小企業支援法、各種法律ございますが、先生も御承知のような例えば創造法とか経営革新法、こういったものの計画認定を受けた者については、改めて認定を不要といたしております。いわゆるみなし特定中小企業者の扱いにしております。  ただ、今申し上げた二つの類型で落ちない中小企業者の場合には、新しい法律に基づいて計画の認定が必要になりますが、これにつきましては、一応地方自治体の自治事務という位置づけにこの法律ではなっておりますけれども、それぞれいろいろ計画の運用等につきまして、解釈論あるいはPRについて自治体とも相談の上で、円滑に進むようにしたいと考えております。
  60. 中山義活

    中山(義)委員 今のは、会社の規模とか資本金とかいろいろあるでしょうけれども、中小企業と我々が特に言っているのは、本当に十人とか十五人とか、こういうところが新しい認定を受けて、少しでも製造業が、これから知恵を絞ってやっていくそういう人たち活力になるというためには、本当に地方自治体でも一番身近な市町村、このあたりに相談窓口を置く、これが一番いい方法だと思うのですが、今言った、例えば資本が一千万円、これは株式会社でしょうけれども、これは通産省に来てもらう、または通産省の出先機関でやってもらう、それからもう一つは、このくらいの会社だったら都道府県、このくらいの会社だったら市町村、そういう分け方はあるのですか。
  61. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  先生御質問の計画が事業構築計画、これについて中小企業が申請をしてくるのか、あるいは、たしか法律の第二十二条で、中小企業経営資源活用新事業計画というのを出してくる場合、両方ございます。  前者につきましては、主務大臣提出をしてもらうということで、それぞれ主務大臣の本省、あるいは一定規模以下であれば地方支分部局ということになろうと思います。それから、二十二条の、中小企業者経営資源活用新事業計画を申請してくる場合には、都道府県知事に対して申請をする、こういうことになってございます。
  62. 中山義活

    中山(義)委員 きめ細かく、できるだけ中小企業地元でいろいろ相談を受けて、また、地元の一番わかる地方自治体がしっかりやっていただくということが大切だというふうに思っております。  今回の法律には、業種であるとか、大企業中小企業、分かれておりませんし、幅広くできている法律だと思うので、その辺、特に中小企業に対しても手厚くやってもらいたい、このように思います。  新しい事業ということで、ちょっと特許について。  日本は特許大国、アメリカ以上に特許の申請というのは多いわけでございますが、先ほど言いましたキルビー特許、これはアメリカの産業を支えていくために戦略的にキルビー特許を使ったわけですね。外国のやっているのはかなりそういう戦略的なものが多いわけです。いずれこれは、日本だけじゃなくてヨーロッパも全部使うぞとかいうようなことで特許を申請する。ところが、どうも日本の特許の申請というのは、いずれ使うだろうからとか、外国が特許をとったら大変だからということで大変防衛的な特許申請なんですが、もっと知的な所有権を使った戦略的な経済政策といいますか、そういうようなものについて、これは一番先端的なものだと思うので、特にベンチャー企業なんかは戦略的にそういうものを使っていってもらいたい、こう思うのですが、大臣、その辺は、新しい一つの考え方として、特許をどう戦略的に使っていくのか。  日本の場合は、特許申請してもなかなかできないというぐらい特許を申請する人が多くて、年間でも本当に世界一だ。このように新しいアイデアがどんどん生まれているわけですが、どうもアイデアがそのまま寝てしまう、使われていない、またはアイデアを使うような資本力がないとか、または融資、お金を持っていない、いろいろなことがあると思うのですね。もっと戦略的に新しい考え方をお示しいただきたいと思うのですが、大臣、ひとつ御答弁いただけるでしょうか。
  63. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 今、日本が直面している特許の問題というのは幾つかあります。  具体的なことから申し上げますと、今特許を持っておられる方がたくさんあって、いわばスリーピングの特許がたくさんあって、これを企業化できないかということで、これに対する情報アクセスを簡単にする、これを今特許庁では非常に充実したものにしようとしております。  もう一つは、特許を持っていること自体が大変な負担になっておりまして、特許を維持すること自体にお金がかかるという問題があります。  それから、特許の紛争が起きたときに、日本の裁判制度では非常に時間がかかり過ぎて、笑い話のように、特許権が終わってから判決が出たということがあって、最近では、笑えぬ話としては、日本会社同士で特許紛争があって、どうも日本の裁判所で訴え出ても時間はかかるし、損害賠償は取れないしということで、アメリカに行って裁判を起こすというような例があって、そのこと自体は笑えぬ話であるわけでございます。  もう一つ、今回の法律の中に入っております大変重要な考え方は、例えば国が委託研究をした場合に、大変いい研究をした、その結果、特許もとれるというような状況になったときに、その特許権はどちらに帰属するんだという問題があって、今回の法律では特許権を委託研究を行った側がとれるという道を開いております。これは日本の予算の使い方としては画期的な意味も持っておりまして、そういう意味では私は大変評価していただきたいと思うことでございます。  ただ、もう一つ、先生にぜひお考えいただきたいのは、特許のもととなるものはやはり研究であり、基礎的な科学あるいは技術、こういうものに相当お金をかけて、特許をとれる種の部分をしっかり育てないといけないわけでして、特許の制度だけで物事が救えるわけではなくて、むしろそういう地道な研究とか技術に対する追求心、そういうものが私は自覚的に必要になってきたと思っております。
  64. 中山義活

    中山(義)委員 大臣の見識、本当にいろいろお考えだなとわかるのですが、文部省の方もいらっしゃるので、今大臣の言ったようなことで、やはりゆとり教育の中で新しいものを発想する力とか、ある意味では中学生、高校生の方が特許みたいなものを発案するような、例えばゲームのソフトなんかありますね、十五とか十六の人がすごい新しいゲームを生み出したり、こういうものが眠っているという可能性もあるわけです。ですから、教育の中でも起業家精神というか、本当にこういうものを製品として出してみたいという意欲のある中学生、高校生がいるかもしれないし、それから、大学の中ではしっかり研究をして、今お話しのように、じっくり研究費を使ってそういうものが生み出されていく可能性がある。  ただ、こういうものが今度の新しい法律で、特に米国のベイ・ドール法に倣っていろいろな形でこれを活用するのでしょうけれども、もっともっと特許が寝ないでうまく活用される方法、特に学校教育の中でそういうものがどんどん研究されて、発案される、そういうようなシステムをやはりこれから構築していかないと、知的な財産を活用した戦略的な経済発展はないと思うのですが、その辺はいかがでしょうか。
  65. 工藤智規

    ○工藤政府委員 御指摘がありましたように、中高校生段階からいろいろな能力を身につけさせるというのは大事なことでございまして、私どもも学校教育の場でしっかりした基本を押さえながら、その上で、かつ個性や創造性をはぐくんでいくという教育を推進してまいっているところでございます。  そういう中で、特に特許等の関係で申しますと、総合的な学習の時間などでの活用でございますとか、あるいは専門高校などではインターンシップの導入を図っているところでございますし、ベンチャービジネスの具体的な事例なども行っているところでございます。また大学におきましても、御案内のとおり、今非常に大学教育が多様化してございます。そういう一環で各大学でもいろいろな工夫を凝らしているわけでございますけれども、ベンチャービジネスに関します授業科目を開設したり、あるいはインターンシップを行うのはもとより、民間企業等の研究機関連携した大学院の開設でございますとか、さまざまな手当てをしているわけでございます。  そういう中で、幾つか例を挙げますと、例えば九州大学におきましては、チャレンジ・アンド・クリエイション・プロジェクトという起業家支援のプログラムを実施してございまして、その中で、現に大学院生がシステムLSIの設計を行う会社設立したとかいう例も見ているところでございます。これは九州大学に限りませんで、慶応大学でございますとか大阪大学、東京工業大学等、幾つかの大学で実例を見ているところでございます。  いずれにしましても、大学の研究というのは、必ずしもすべてが実用を志向したものではございませんで、大事なことは、せっかくの大学発信のいろいろな研究成果が社会に還元される仕組みを整えることが大事であろうかと思います。そのために、昨年国会でお認めいただきましたTLOをぜひ活用いたしまして、通産省と私どもで協力しながら、その立ち上げ支援、さらには、今回の法律にございますように、また先ほど通産大臣から御説明がございましたように、いわば委託研究について受託者への技術移転が可能なように、あるいは個人有の特許につきましてTLOの特許料を減額しながらその支援をできるようにということなども含めて対応しているところでございます。
  66. 中山義活

    中山(義)委員 よくわかりました。  とにかく、ゆとり教育というので、新しい教育のシステムを持ち込むわけですから、やわらかい頭ですばらしいいろいろな特許が生まれる、または起業家精神というものも学校でも少し学ばせていただきたい。大企業へ行くだけが卒業した後の仕事じゃないのだ、中小企業自分で仕事を起こしてみろ、自分で何かやってみろ、こういう教育もぜひやっていただきたい。  それから最後に、サプライサイドという言葉が出てくると、どうしても、企業活力を持っていく、そしてまた輸出をする力もついてくる、よその国と伍して闘っても強い企業である。これはわかるのですが、とにかく労働者側、いわゆる需要または消費を喚起するために、多くの失業者が出ないようにひとつできるだけ配慮をして法律を進めていただきたい、このように思う次第です。  終わります。
  67. 古賀正浩

    古賀委員長 渡辺周君。
  68. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 民主党の渡辺周でございます。  中山委員の質問に続きまして、質問をさせていただきます。今回の質問、ちょっと私は変則的な立場でございまして、午前と、昼間の一時中断を挟みまして午後ということでございます。午前中の部分におきましては、政府案、この産業再生法案につきまして質問をさせていただきます。そしてまた、午後の部分におきましては、ベンチャー支援中心としまして、民主党案それから政府に対する質疑を続けたいというふうに思っております。  私は、先般の本会議での趣旨説明に対しまして、政府案に対しても質疑をさせていただきました。その中で私は指摘をさせていただきましたけれども、まず政府側に伺いたいのは、この政府案がいわゆる首切り法案になるのではないか。先ほど中山委員からも指摘がございました。どうしてもこの疑念というものを払拭し切れずに、今回これを審議せざるを得ない。いわゆる三つの過剰についても、従来指摘がございました。債務、設備雇用ということでありますけれども、この債務の部分、それから設備の部分、雇用について、これを同一視すべきではないのじゃないかということが今中山委員からもございましたが、まさに同感でございます。  私ども政治家の一つの務めは、政府と同様に、これは与野党を問わず、雇用の安定ということについて最大限に努力をしていかなければならない。従来言われておりますように、昨年の失業の数字を見ましても、最悪だった四月からは数万人減ったとはいいながら、大変な失業数が報告をされております。そして、残念ながら、みずからの命をあやめる、こういう痛ましいことも続いております。  ここであえて申し上げさせていただきますと、三百三十四万人の完全失業者、そして非自発的な失業者、勤め先の倒産や人員削減、これは、四月よりは五月の統計では減った。百六万人、それでもいる。自発的失業者も含めてこの完全失業者の中で特徴的なことは、三・六%、中高年男性が多い世帯主の失業率が非常に高い。まさに日本の国のGDPのうち、個人消費という部分が六割を超えて占めている、これを考えますと、設備投資とあわせて雇用確保がやはり日本経済の復活につながる、再生につながるということはもう論をまたないところでございます。何とか個人消費というものが回復するには、先ほど来言われておりますように、不安というものをどう払拭するか。さまざまな、これまでも言われてまいりました、老後に対する不安でありますとか、健康に対する不安だとかいうことにあわせて、今度はまず、目先のと言ってはなんですが、今働いている、確保されている雇用が、果たしてこれからどのような形で、構造転換の中で変わっていくのか。  私は現在、ことしで三十八歳になります。もう既に早い企業では、三十五歳以上から、あるいは四十歳から選択定年制度の対象になってきている。あと数年でありまして、妻がおります、そして両親がいる、子供がいる。その家庭の中でこれから自分が、あと数年後には果たして今の仕事と今の賃金を得ていることができるかどうかということを考えましたときに、例えば、親のためにも金を使わなきゃいかぬだろう、あるいは、子供のこれから、これは連合の統計ですけれども、おぎゃあと生まれて二十まで育てるに、女の子は大体二千二百万円ぐらいのコストがかかるというような発表がかつてございました。  今、少子化が言われていますけれども、私どもは今三十代の後半、働き盛りと言われる世代であります。高校を出て二十年、大学を出たら十五、六年、その年代が今会社の中で、これから企業の中で、将来定年と言われるところまで働いていかれるのかどうかということを考えますと、とてもじゃないけれども、子供をこれから育てて、あるいはいずれ老いるであろう、体を害するであろう自分の両親あるいはどちらかの親に対してもこれから考えていかなければならない。そのための何らかの蓄えも必要だ。そして、これから子供に対しても蓄えが必要だ。そんな中で自分の生涯賃金というものを考えていきますと、この生涯賃金すらも本当に、いわゆる定年と言われる五十八や六十まで確保できるかどうかわからない。  それならば、いっそのこと、今ここは子供を、弟や妹をつくってやるよりも、一人の子を大事に何とか育てながら、今いろいろなことに、もっと自分の自己実現や、あれもしてみたい、これも欲しいとあるけれども、住宅のリフォームでありますとか車の買いかえでありますとか、あるいは自分も夜間学校のようなところへ行って何か資格を取りたい、こういったところにもうちょっと自分も投資をしたいけれども、とてもじゃないけれども、今そういう心境にはなれないというのが現状ではないのか。これが今の、何とも言えないよどんだような、比較的沈滞したマインドというものにつながっているのだというふうに確信をしております。  そんな中で、今回の法案におきまして、企業が大手を振って、設備、あるいは先ほど申し上げた債務、そして雇用という点につきましても、言葉は悪いですが、切り捨てていくというようなことが非常に懸念をされるわけであります。  そうした中で、先般の本会議での質問におきましても、総理あるいは通産大臣から、事業の再構築を行うに当たって事業者雇用の安定に配慮するのは当然のことであると答弁をいただきました。これは首切りリストラ法案ではないかということについては、そんなことはない、雇用安定には配慮しているというようなことを答弁されました。これはもう当然のことであります。  先般成立しました第一次の補正予算におきましては、若干の雇用対策が行われております。中山委員指摘をされましたので重ねては申し上げませんけれども、確かに若干の雇用対策という形で行われました。しかし、この補正における措置というものはまさに一時的な雇用対策でございまして、産業再生法がもたらす、いわゆる、生まれるであろう常勤雇用者のリストラ、これに対する受け皿にはなっていない、あるいはなり得ないわけであります。この点につきまして、本会議に続きましてでありますけれども、きょうも大勢の方々労働界を代表して見えていると伺っております。重ねての質問になりますけれども、これがいわゆる首切り法案にならないというようなことを確約をいただきたいと思いますので、通産大臣のお答えをここで改めていただきたいと思います。
  69. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 非常に物事をダイナミックにとらえていただく必要があって、不必要な分野に資本と労働が固定をするというのは日本経済をマクロに見た場合には決して好ましくないわけで、やはり生産性の低い分野から資本や労働生産性の高い分野にいずれは移動せざるを得ないということは私はあるんだろうと思っております。  しかし、問題は、その移動する場合にどれだけの社会的コストが発生するかという問題でして、我々は、なるべく雇用というものは穏やかな形で着地させるべき問題だと思っております。いわゆる西欧でとられているような一方的なレイオフというような形は、日本がつくってまいりました穏やかな雇用環境というものには反しているんだろうと思っております。  そこで、社会的なセーフティーネットももちろん必要ですし、一方では、企業の中で新しい分野雇用を吸収していただくということが最も望ましいことでございます。また、グループ企業の中で、新しい分野に進出して、その中で雇用を吸収していただくというのが私は多分ベストなんだろうと思っております。  そういう意味では、今回の法律の中にも、働く方々の立場を不当に害するものでないということも書いてあります。また、働く方々との間で理解と協力が得られるということがやはり法律の精神であるわけでございますから、この法律を称してリストラ、首切り法案などと呼んでいただくのは、ちょっと我々立場がないな、そのように思っております。
  70. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 確かに、政府のお考えと私どもの考え方には、見解が異なる部分、だからこそここでこういうふうに質問をしているわけでございます。  それですから、確かに今おっしゃられたようなことはわかります。そして、新しい分野に進出をして、その分野によって何とか雇用を吸収するという部分に、確かに中長期的な面においては我々もそれを模索しているところであります。それが、政府でも言っておりますけれども、いわゆる高齢社会の中でシルバービジネスあるいは高齢、健康という分野なのか、それとも環境産業なのか、それから個人投資を支援するような分野なのかということについては、幾つか挙げられているとおりでございますが、残念ながら、今、なかなかその具体的な姿というのを自信を持って我々も見せられない。  確かに、環境という分野においては、何とか我々も、自動車産業にかわる、あるいは匹敵する世界のリーディングカンパニーとして環境という分野をこれから世界に、とにかく日本中心になって引っ張っていかなければならない。これは世界的な規模として出てくるわけであります。しかし、残念ながらまだまだ研究途上でもございましょう。そして、中長期的な目標というところは現実問題としては言わざるを得ないのかなと思いますし、これは、我々も努力をして、そのためには何ができるかということを模索しているところであります。  しかし、現実問題として、この法案に対して今大勢の雇用者あるいは労働者の団体の方々が思っていることは、まず当面の雇用確保されるかどうかということであります。これも代表質問でも伺いました。しかし、残念ながらそのときは明確な答弁がいただけませんでしたので、またあえてここでお尋ねをするわけであります。今、リストラ、首切りとこの法案が言われるのはまさに心外であるというような通産大臣答弁がございました。それならば、ぜひ本法案の目的に、雇用安定を確保しつつ行うといったようなことを明記する必要があると私は思うんですけれども、その点についてのお考えを聞かせていただきたいと思います。
  71. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 この法案は、事業構築の推進のほか、未来産業の創造に向けた技術開発活性化、創造的な中小企業、ベンチャー企業の振興など、幅広い施策を講ずる前向きなものでございまして、事業構築についても、新たな産業雇用の創出に向けた不可欠の取り組みであり、リストラ、首切り支援との御指摘には当たらないものと考えております。  そもそも、企業がその従業員の雇用の安定等に努めるべきことは言うまでもないことでございまして、雇用にしわ寄せすることなく事業構築を進めるとの観点から、国が事業構築への事業者取り組み支援する際にも雇用の安定等に十分配慮していくことが必要であると考えております。そこで、この法案においては、国が雇用の安定等に配慮する旨を法目的に明記するとともに、認定要件及び認定事業者等の責務として、雇用労働条件に影響がある場合には必要な協議を行うなど、雇用へ配慮する内容を規定しているところでございます。  法案の趣旨を踏まえ雇用面に十分な配慮を行っていることを、ぜひ御理解をいただきたいと考えております。
  72. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 従来の御答弁と同じような御答弁でございました。  しかし、これは、私どもがこの法をとらえている部分、そして提出者である政府の責任者ということでは、どうしても見解にまだ溝があるということも事実でございますので、ちょっと細部にわたって、これは本当に雇用の安定を重視しているのかということについてお尋ねをしたいと思います。  この法案において、今大臣がおっしゃられたように、認定事業者に対しまして、「計画に従って事業構築を実施するに当たっては、その雇用する労働者の理解と協力を得るとともに、当該労働者について、失業の予防その他雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」確かに努力義務が、今おっしゃられたようにございます。そしてまた、法案の中にも第三条あるいは第十八条において、そうした旨が記載はされているわけでありますけれども、今申し上げたのが十八条でございます。  その中で、具体的に努力義務を定めたとは、具体的にどういうことなのか。例えばこれは、労働組合でありますとか、あるいは労働組合未組織のところの場合は、労働者の半数以上の意思を占める、そこで雇用をされている方々の意思を占める何らかの労働側の代表者と計画の実行について合意をするということを要件とするのかどうか、その点について再度確認をしておきたいと思います。
  73. 江崎格

    江崎政府委員 雇用にしわ寄せをしないで事業構築を進めるという観点から、この十八条で、今御指摘のように、計画の認定時だけではなくて、計画を実施するときにも雇用の安定に十分配慮するということで、認定事業者の責務を明確化しているわけでございます。具体的にこれはどういうことかということなんですが、雇用に影響が及ぶ場合に、労働組合などと必要な協議、合意等、労使間で十分な話し合いを行うことによりまして、雇用者の理解と協力を得ることを認定事業者に求めているわけでございます。  失業の予防その他雇用の安定を図るために必要な措置というのは、例えば、企業内の配置転換などを行います場合に必要となる教育訓練を行っているかどうかとか、新しい事業を実施する場合の関係事業者、これは子会社と言っていいと思うのですが、そういうところへの出向といったような措置をとっているかどうかということでございます。  それから、合意を条件とするかどうかという点でございますけれども、この法案においては、考えております中身というものが、一つが、事業の再構築には、企業の買収ですとか債務の株式化といった、いわゆる経営権に属する事項、あるいは新しい事業の開拓といったようなことが含まれておりますし、雇用とか労働条件に全く影響を与えない場合についてまで協議とか合意を求めるのは妥当でないという判断もございます。それから、そもそも、どういう事項を協議の対象にするかというのは、労使の合意によりまして自主的に定められているという、いわば労使自治にゆだねられるべき問題でございます。  こういう事情をかんがみますと、一律に労働者の合意、あるいは労働組合との合意というものを要件にするというのはいかがなものかというふうに考えているところでございます。
  74. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 今御答弁をいただきました。これは先般の本会議での質問に対するお答えよりは若干具体性があるのかなというふうに思うわけでありますけれども、もう一つ、今御答弁をいただきました政府委員にもちょっとお尋ねをしたいのですが、今申し上げたこの法案の第三条の事業構築計画の認定という中で、従業員の地位を不当に害するものではないというようなところが第三条の六項にございます。  そうしますと、これは具体的に今はどういうこととしてとらえていらっしゃるのか。関係労働者雇用確保、あるいは雇用契約、労働協約の継続ということを意味するというふうにとらえていいのかどうか。その点についても御答弁をいただいておきたいと思います。
  75. 江崎格

    江崎政府委員 今後段におっしゃった、雇用の契約ですとか労働協約の継続に関する問題でございますけれども、これは基本的には、労使の話し合いで処理されるべき問題だというふうに私ども認識しておりまして、その内容について政府が口を挟むということは差し控えるべきだというふうに思っております。  政府としては、こういう立場に立っているわけですけれども、この事業の再構築雇用の安定に影響がある場合には、事業構築にかかわります事業所において労働組合などと必要な協議を行うというようなこと、労使間で十分な話し合いが行われているということが非常に大事だというふうに思っております。不当に地位を害するものでないことというのは、そういう必要な協議が行われているかどうかとか、労働者に対する配慮を十分に行って計画というものを実行しようとしているのかどうかというようなことを、その計画の認定の時点において確認をするというものでございます。
  76. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 大変くどい質問で、またかというふうに思っていらっしゃる方もいるかもしれませんが、あえてもう一つ重ねて伺いたいのですが、この必要な協議がまとまらなかった場合は、どういうふうな結論が待っているのか。そしてまた、まとまらなかったということを客観的に、先ほど、政府が口を挟むべきではない、労使の話し合いについてまで口を挟むべきではないというようなことを今おっしゃられました。  しかし、もし協議がずっと進行中である、この協議が進行しているばかりに、なかなか事業認定という形において、例えば経営者サイドからすると、これは大変に時間が足りなくなってきた、協議がまとまっているか、まとまらなかったということは、あるいは、ひょっとしたら企業側が一種の、何とかして認定を受けるために強引にといいましょうか、かなり一方的な解釈のもとで協議が調った、あるいは意見の合意を見ているというようなことになった、しかし、残念ながら実はそうではない、今継続中である、あるいは労働者の代表の方が弱い立場で、どうしても納得がいかないといったような場合においては、もしできなかった場合は、認定をされないということと理解をしてよろしいわけですね。
  77. 江崎格

    江崎政府委員 協議がまとまって、その合意が得られるかどうかということを条件にするかどうかということでございますけれども、労使間で協議をすることになっていた事項について協議を行った場合に、組合との合意があることは望ましいというふうには思っておりますが、労使間のそれまでの話し合いで、この事項については必ず合意を必要とするんだということになっている場合を除きまして、労働組合と十分協議を行っていれば、必ずしもその合意に至らない場合でも認定する場合もあり得るというふうに判断しております。
  78. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 今大変重大なお答えがございました。まとまらなかったけれども、認定する場合もあり得るというふうに今お答えをいただきました。  実は、内閣総理大臣は、先般の私の質問に対しまして、客観性のある基準に基づいた透明な運用を図ってまいりたいというふうに言ったわけでございまして、客観性のある基準、透明な運用というふうなことがございますが、もし、そのような形で、今政府委員から答弁がありましたような結論に至った場合は、それに対してもある程度透明度を持って、あるいは客観性を持って、こういうわけでやったということは当然外から何らかの形で知ることができる、あるいはその運用の手法について何らかの説明責任を持ってされるというように考えてよろしいのでしょうか。
  79. 江崎格

    江崎政府委員 協議を怠ったかどうかということは、かなり客観的に判断できるというふうに考えております。
  80. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 わかりました。  そうしますと、この問題は、先ほど来指摘しているように、やはり企業サイド、経営者サイドにどうしても肩入れをした結論が出るおそれがある。何よりも、働いている方々あるいは労働者代表に、ひょっとしたら協議がまとまらなくても、まさに認定を受けられるということになってしまうと、これは正直言いまして、やはり雇用者に対して、労働者に対して、どうしても不安を植えつけざるを得ない、そういうふうに考えざるを得ないわけでございます。そこの点において、今後この法案の審議を進めていく上で、やはり労働者の権利の保護というものをとにかく明確にすべきではないか。そして今、現状ではそのようなお答えをいただきましたけれども、やはり協議や合意を義務づける、協議というよりもやはり合意を義務づけるということが必要ではないかと思うわけでありますけれども、その点につきまして大臣のお考えをいただきたいというふうに思います。
  81. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 先生は今、働く方々の不安ということをおっしゃいましたが、まさにそのとおりだと思いますが、リストラをする側からすれば、事業構築をする側からすれば、もともとその事業の将来に不安があるから事業構築をするわけですから、もともとその不安というものはそこに内在をしていたというふうに考えざるを得ません。  しかし、そうやって事態を放置したままその企業が沈没していくのかどうかという瀬戸際に立てば、やはり事業構築をして企業として生き延びていこう、これは当然のことでございまして、そのときに、労働組合あるいは労働者との間でいろいろ理解を得るために努力をいたしますけれども、そこには一定の経営判断というものあるいは経営者の決断というものもまた必要になってくるわけでございまして、それが絶対的な条件であるというところまでいくということは、むしろ不自然なことだろうと私は思っています。
  82. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 絶対的な条件ではないというふうに今お答えがございました。しかし、先ほど来申し上げていますとおりに、確かに、企業があってこそ雇用が生まれるわけでありまして、そこで働く方々がいるからそこに当然消費も生まれ、富の蓄積も生まれていく、そして経済が発展し、拡大をしていく、これは私も百も承知であります。  しかし、今この大変厳しい時世において、さらに、先ほど数字を申し上げました、今企業内失業者と言われる方々が、最近では、書店に行っても、あるいは駅のキヨスクへ行っても、週刊誌やら夕刊紙やらの見出し、とにかく、どこが何万人を削減する、そして、今企業の中でどうやって生き残っていくかということについてはもう連日のように書店に新しい本が並びます。とにかく、どうやって今の状況を生き延びるか、そしてそのためには、どういう形で自分たちは例えば資格のようなものを身につけたらいいかといったノウハウまで随分あちこち、たくさん出ているわけであります。  そして、企業内失業者と言われる、首切りされるというかリストラをされる予備軍の方々の数、先ほども中山委員からもありましたけれども、もう大変な数が発表されているわけであります。そして、民間のシンクタンクによっては、政府の発表とまた違う形の、もっと大きい数字が出ているところもあります。  残念ながら、しかし、今その受け皿がない。そしてまた、受け皿もなければ、再教育を受け、何らかの資格を身につけていくような時間的な余裕もなかなかないという中で、今この時点でこの法案が出てくるということは、まさにそれにお墨つきを与え、先ほど申し上げました、大手を振ってやってしまうことになるというような、まさにどうしてもこれは経営者サイド、企業に偏重した、あるいは配慮をした法案と言わざるを得ないのかなというふうに考えているわけでございますし、また、そう言わざるを得ない厳しい状況だというふうに思っております。  そんな中で、この雇用が今後どのように変動をしていくのかということを、この事業構築の計画に当たっては私どもは明らかにしていく必要があるのではないのかなというふうに考えます。  法案の第三条の第三項四号に「事業構築に伴う労務に関する事項」ということで触れておりますけれども、例えば、この内容に、事業構築に伴う雇用数の変動を明らかにするために、計画前、この計画の雇用数を部門ごとに示すといったような規定を入れていくことも必要ではないのかと思いますが、大臣のお考えはいかがでしょうか、お尋ねをしたいと存じます。
  83. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 この法案の第三条第三項第四号に規定する「事業構築に伴う労務に関する事項」として事業構築計画に記載すべきものとしては、事業構築の開始時期、終了時期の従業員数、事業構築に充てる予定の従業員数、事業構築に伴う新規採用、出向者数などを想定しているところでございます。これによりまして、事業構築に伴う雇用数の変動等を把握し、事業構築雇用に影響を与えるか否かをまず判断することとしております。その上で、事業構築計画雇用へ影響を与える場合には、労使間で十分に話し合いを行ったかどうか、労働者に対する配慮を十分に行って計画を実施しようというものであるかどうかという点を確認することとしております。
  84. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 そのようなお答えなのですけれども、第十八条に「失業の予防その他雇用の安定を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」というふうに触れてございます。その後の第二項、第三項といったようなところで、失業の予防等雇用の安定を図るため必要な措置、就職のあっせんその他職業及び生活の安定に資する措置、職業訓練の実施その他能力の開発及び向上を図るために必要な措置といったようなことが触れてあるわけです。  それを考えますと、企業側にしてみますと、この文章だけ読みますと、いろいろなことに対して協議が調わなくても実際に認定を受けざるを得ない、そして、国としては、何らかの形で、失業の予防であるとかその他雇用の安定を図るための諸制度をやらなければいけないといったようなことが、必要な措置という形で触れてあるわけであります。  とりわけ、この失業の予防措置といったようなことをセーフティーネットとしているのであれば、どのようなことを措置として考えていらっしゃるのか。午前中の時間もややなくなってまいりましたので、その点について的確にお答えをいただきたいというふうに思います。
  85. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 この法案の十八条には、雇用の安定に関する規定としまして、まず、認定事業者の努力義務と、二項以下で国、都道府県の義務ということが規定してあるわけであります。私ども、まず、この雇用の安定につきましては、事業者の努力というものを第一に考えていただきたい、雇用の安定について最大限の努力をしていただくということがまず第一義ではないかというふうに考えております。  この法案提出されます前にも、いろいろと大企業によるリストラ計画というのがマスコミで随分発表されました。また、私どもの把握したものもございました。それで、三月から四月にかけまして、私ども、大企業中心に三十社くらいについていわゆるリストラ計画についてのヒアリングを行ったわけですが、まず解雇をするというのはほとんどありませんで、配置転換や自然減、それから系列会社への出向で対応するというものがほとんどでございます。現在におきましても、我が国企業というのは、従業員の雇用については、事業の再構築を行うに当たっても最大限の努力をしているのではないかというふうに考えておりますし、また、そういった努力を継続していただきたいというふうに思っているわけであります。  二項以下、国の責務として、訓練、再就職あっせん、いろいろ規定をしてございますが、少し具体的に申しますと、今般の雇用の補正で認めていただきました新規・成長十五分野でのいわゆる前倒し雇用、こういったものについて、どうしても解雇が出るというようなときには、そういったところへ採用していただくこと、あるいは、人材移動のための助成金制度というのを設けておりますが、従来は四十五歳以上の方というふうにしておりましたが、この年齢要件も撤廃いたしまして、失業を経ないで事業主が他の企業への就職のあっせんをする、出向させるというときには、採用する企業への賃金助成、あるいは、再就職のあっせんをする前に企業内において訓練をするときの訓練の経費の助成、こういった措置も用意をしております。  それから、職業のあっせんについては、全国の安定機関を通じて、もちろん最大限努力をするということであります。能力開発につきましては、例えば、再就職のために能力の再開発が必要だというときには、安定所長が能力開発の受講指示というものを出しまして、その間は雇用保険の給付期間も延長するというふうな措置もございます。  不幸にして解雇が出るというようなときには、こういった現在の機能をフル動員して対応したいというふうに考えているところでございます。
  86. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 今、細かいところまで御説明をいただいたんですが、今回の計画の認定というのは主務大臣が行うわけです。  主務大臣となり得るのは、今の省庁の閣僚の名前でいいますと、通産大臣、建設大臣、厚生、運輸、農水、郵政といった方々が主務大臣となるわけですが、今、労働省の方からお答えをいただきました。そうすると、労働省と、あるいは労働大臣とこういう場合に協議することというのがあり得るのかどうか。そして、労働大臣からこの雇用確保ということについて、当然のことながら主管大臣でありますから、どのような役割を果たしていくのか、そして、折に触れてどんな意見を挟んでいくのかということについても、再度お尋ねをしたいと思います。  もう一つ、先ほど来説明のあります、雇用安定の実効性というふうに私どもはずっと言ってきておるわけですけれども、そうした事業者の行動を事後的にチェックする必要があるのではないか。やはり、計画が実施された後どのような計画になっていくのかは、後ほど午後、ちょっと時間が、あと五分で終われということでございますので、はしょって申し上げますと、この認定事業者に対して、計画の実施後、どのような形で計画の実施状況として行われているか、そして雇用数の変動というもの、あるいは何らかの動きがどうあったかということについて、これは義務づけていく必要があるのではないかというふうに考えるわけであります。  その二点をお尋ねして、午前中の質問を終わりたいと思います。
  87. 江崎格

    江崎政府委員 今の後段の、事後チェックの問題でございますけれども、この法案におきまして、認定事業者に対しまして、雇用者の理解と協力を得つつ再構築事業を行うということで、そういった責務を規定しているわけでございまして、計画の作成段階だけではなくて、その事業の実施段階においても労使で十分な話し合いを行っているかどうかといったようなことを確認することになっております。法案の三十五条に報告の徴収という規定がございまして、必要があればこの条文に基づく報告の徴収を行うことにしておりまして、法の運用に万全を期せるというふうに考えております。  それから、主務大臣労働大臣との協議の問題でございます。これは、法案の三十六条にございますように、主務大臣労働大臣は、労働者雇用に関する事項について相互に密接に連絡、協力しなければならないということを規定しているわけでございます。計画の認定に当たりましても、この条文に基づきまして必要に応じて労働大臣と連絡などを行いまして、労働大臣から御意見が提出されることもあるというふうに考えております。
  88. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 午前中の質疑はここで一たん終了させていただきますけれども、とにかく質問を通しまして、やはりこれはどうしても、雇用されている方々は、またさらに不安を高めざるを得ないのかなというふうに思います。  不採算分野から逆に得意分野に移るということでありますけれども、働いている方の中には、事業の拡大あるいは多角化とともに、その中でその方も、非常に不得手な部分に対して人事異動があった、あるいは新規部門で責任者を任されてきた、そして、そのために自分たちの自助努力といいましょうか、自己改革をしながら新しい分野でやってきた。  そうした方々が、何か企業の大きな理屈の中で不利益をこうむることがないように、まじめな、普通に働いてきたサラリーマン、勤め人が常にこうしたことのしわ寄せを最初に受けるような世の中であってはならないというようなことを申し述べさせていただきまして、後ほどまた、午後に質問をさせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  89. 古賀正浩

    古賀委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十五分休憩      ————◇—————     午後一時十分開議
  90. 古賀正浩

    古賀委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。渡辺周君。
  91. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 午前中に引き続きまして質問を継続させていただきます。  午前中の質疑の最後に申し上げたわけでありますけれども、今回の法案がリストラ、首切り、そもそもリストラ、リストラクチャリング自体は首切りを意味する言葉ではなかったわけであります。再構築という意味が今では首切りという言葉に、同義語のようにされているわけでもありますけれども、今回の法案が出てきたいろいろな背景を考えてみますと、なぜ過剰な設備が発生をしたのか。  これは私の知っている方々の中にも、あるいはきょう出席の委員各位の周辺にもいらっしゃると思いますが、将来を見通して本業を仕事としてやっていたならば、いわゆるバブルに踊っていなかった経営者、本業を一生懸命やっていた方々は、今、それでもまだ堂々としている。そしてまた、この構造転換の中で、先を見ながら事業構築をしているはずであります。今回の法案の出た背景、そして、その目的でありますとか趣旨を考えますと、自己責任原則でこれまでやってきた経営者たちのある意味では不公平感というものは否めないのではないだろうか、そのような思いがしているわけでございます。  今回の法案で、先ほど私も申し上げましたけれども、あるいは本会議でも取り上げさせていただきましたが、設備の廃棄ということに関してでございます。必ずそこに人がいるわけでありまして、結果的に、過剰設備の縮小ということが税制の優遇措置につながる、ということは、その過剰設備にいる方々が過剰人員かといったら、そうではない。不本意ながら今そこにいる方々もいる。そうした方々がここで削減をされるということになれば、ある意味では、人員整理に優遇措置があるということも言えるのではないかと思うわけでございます。このリストラ法案、再構築が先ほど申し上げました人員整理ということと同義語としてとらえられ、そしてまた、そうではないかと言われるゆえんではないのかなということを、まず冒頭申し上げたいと思います。  そして、今回の法案の対象となりますものについて私、本会議質疑でも質問をさせていただきました。その中で、なぜ設備や機械ということを対象にするのかということであります。  これをもう一つ確認をさせていただきますと、今申し上げましたようなバブルのさなかに、私は当時、新聞記者をしておりました。大変なマネーブームが起きまして、土地ブームが起きた。その中で、高級車を、例えば若い方々も、シーマ現象と呼ばれる言葉がございまして、国産の高級車が、製造が追いつかないぐらいのスピードで販売されたわけでございます。そしてまた、今でこそ夢のような話でありますけれども、いわゆるリゾート法。あれも、どちらかといえばマリーナを、私の地元は静岡県の、伊豆の入り口である沼津というところでございますが、例えば、そこの海に面したところにクルーザーであるとかヨット、そういったレジャー施設、個人事業者事業主であればそういうものを買い、高級な車に乗り、そしてまた会員権であるとかセカンドハウス、別荘を持つ。大変うらやましい中にいたわけでございます。うらやみながら、私はサラリーマンをしておったわけであります。  ちょっと考えてみますと、企業でありますと、そのころに買った、これは静岡県に限らず日本全国に、いわゆる優良な保養地といいましょうか観光地に、例えば社員用の研修センターでありますとか健康保険施設、あるいは何らかのセミナーハウス的なものであるとか迎賓館のようなものをつくったり、いろいろな施設を持ってきたわけであります。それも大体が一等地の中に持ってきた。そして当時は新産業に進出しようということで、新分野に進出しようということも含めましていろいろなところに、土地等に手を出したわけです。例えば、いわゆるバブル時代の資産、こういったものは今回の対象になるのかなということを思うわけであります。その点についてちょっとお答えを冒頭いただきたいと思いますが、どなたかお答えいただけますでしょうか。
  92. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  恐らく、設備廃棄などをするときに、バブルの際に投資をしたものが設備廃棄の対象になるのかどうか、こういう御質問だろうと思います。  具体的にどういうケースがあるのか、そのケースに即して判断はされるのだろうと思いますけれども、一般的に申し上げれば、過剰設備の廃棄というのは、俗にそう言われていますけれども、我々の理解では生産性の低い、古い老朽化した設備というふうに考えておりますので、その設備がそういうものであれば、当然、事業者がみずからの判断において廃棄するということがあろうと思います。
  93. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 今そのようなお答えをいただいたわけですが、ここで、事業構築円滑化という中で、この点についてちょっと話を進めていきますと、キーコンセプトというのは選択と集中であるというふうに言われております。ここに、本会議からずっと各委員も含めまして指摘をしてまいりましたが、行政に大きな裁量性が与えられている。この法案が成立してまいりますと、行政のまさに選択と集中が行われる。本末転倒ではないかという指摘もあるわけでございます。  そうしますと、生産性を相当程度向上させる、あるいは経営資源が有効に活用されるといったような点につきまして、一体どういうふうな形でそれをさすのかという点について、ここで改めてお答えをいただきたいと思います。
  94. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  生産性を相当程度向上させる、あるいは経営資源が有効に活用される、この具体的な基準は何なのかという御質問だろうと思います。  私どもといたしましては、事業者が目標とすべきメルクマールとして客観的かつ明確な基準を設け、恣意性のない透明な運用を図っていく必要があると考えております。したがいまして、例えば生産性を相当程度向上させるといった点につきましては、株主資本純利益率、ROE、あるいは従業員一人当たりの付加価値額等の指標を考えており、幾つかの具体的な指標を示すことを考えております。  いずれにいたしましても、できるだけ早期に具体的かつ客観的な基準を作成いたしまして、事業者が計画策定において事前に十分確認をできるものとするとともに、主務大臣の計画認定に際しまして、恣意性のない透明な運用に努めてまいりたいと思っております。
  95. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 今そのようなお答えをいただいたわけですけれども、生産性を相当程度向上させる、あるいは経営資源が有効に活用されるというのは、そもそもは経営者が判断すべきものではないのかな、そのように思う人間は私のみならず、各界の方々から、あるいは政府・与党の中からもそういう声が上がったというふうに聞いております。  経営者が、今回のこの法案による優遇措置を受けたいがために、行政当局といいましょうか、所管官庁の意に沿った計画をつくる、そういう可能性もあるわけでございます。そうしますと、本来の意味での事業構築計画にならなくなってしまうのではないだろうかという疑念がまた生まれるわけであります。そして、この計画によって事業構築がうまくいかなくなったときに、経営責任の所在というものもあいまいになってしまうのではないだろうか。モラルハザードという言葉がございますが、まさにそうなりかねないということも指摘ができるわけであります。こうした点についてどうお考えか。  最初に申し上げましたとおり、そもそも何をもってして、例えば経営資源であるかということについて、一体どなたがその点について判断することができるのか。ましてや、失礼な言い方かもしれませんが、行政当局の方々、官庁の方々は、ある意味では、実務をしてきた、経営の経験を果たして持っていらっしゃるのだろうか、どのようなノウハウを持って、あるいは外部からの何らかの、経営者の方々の知恵をかりて、そういう形で判断をされるのかどうなのか、そういうことも含めまして、この判断を一体どのような形でどうやって行っていくのかということについて、二点。  一点目は事業構築がうまくいかなくなったときの経営責任の所在に対する懸念、ぜひ通産大臣にお答えをいただきたいと思いますし、後段の部分につきましてもぜひお答えをいただきたいと思います。
  96. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 本法案においては、事業者が無目的な事業雇用の縮小を進めるのではなく、将来に向けた経営目標を明確にしつつ、意味のある事業構築を進めていくことが望ましいとの観点から、生産性を相当程度向上させるなどの要件を求めたものであります。こうした具体的な経営目標は、委員指摘のとおり、行政が強制するのではなく、事業者がみずからの将来像に照らして設定すべきことは言うまでもないことであります。  したがって、認定条件における数値基準は、さまざまな事業者が標準的に設定し得るような指標を、事業者にとってのメルクマールとして明確にしようとするものであります。事業者においては、計画策定時において、あらかじめ明確化された数値基準をクリアする形で目標を設定し、将来の展望を描いていただくことが肝要であり、このような方法により、認定の際の裁量の幅を狭め、恣意性を排除し得るものと考えております。  いずれにせよ、そうした具体的な数値基準については、産業実態等を踏まえながら、関係省庁とも十分に協議をしつつ、早急に策定していきたいと考えております。
  97. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 大臣の御答弁の後段の部分、関係省庁とも考えながらというのですが、私が申し上げておりますのは、行政官の方々がいわゆる経営の経験がない、この方々に、果たして生産性向上であるとか経営資源の有効活用、こうしたまさに大きな、その企業の命運、あるいは先ほど来申し上げておりますようなそこで雇用されている方々の命運を決めることが本当にできるのかどうかといったようなことを、まさに我々は疑問視せざるを得ないわけでございます。  この法案のスキームをそのまま維持するということであるのであれば、どうしても行政が企業を選択して、支援を集中させる。そしてまた、今行政が経営の点についてはあれこれ言うべきではないということをおっしゃっていらっしゃいますけれども、ここに主務大臣の認定というものが必ず入ってくるわけでありまして、まず、まさにこの認定がなければ一つの支援措置も受けられないわけであります。ある新聞のどこかに、正論だなと思うような点について指摘がございましたけれども、まさにそうした形で、そこまで行政が介入をして、まず認定をしなかったら、同じ支援を受けたいところであっても、受けられるところと受けられないところがあるではないか。  ここにあるのならば、今後この計画の中に、ある意味では、計画に必要事項を明示して、これをクリアする計画については届け出制にするくらいの修正を図って、そしてまた、今回のこの法の審議あるいは採決の中でどのような結果になるのかわかりませんけれども、実質的には届け出制に近いような形で、特例というよりも一般的に適用されるような形で今後運用を図っていくべきではないだろうかというふうに私は思っているわけでありますが、その点につきましての大臣のお考えをぜひともお聞かせをいただきたいと思います。
  98. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 頭から裁量行政はいかぬという御主張はとても私には理解できないところでございます。我々国会議員は立法をいたします。その後政省令はできますが、ある程度の行政裁量の幅を残しておくということは、行政を円滑に進めていく上で、一般的に言って必要なことだろうと私は思っております。  今回の認定も、やはり商法とか税法の特例を受けるわけでございますから、ある一定の範囲内で、そういう事業者が前向きの姿勢、将来に向かっての姿勢をとっているかどうかということはやはり確認をする必要があります。いわば先生が想像されるような許認可というものとは少し違うのではないかと私は思っておりますし、ましてや、日本のように情報が公開されております、また一方では民間事業者が当事者でいるわけでございますから、恣意的な行政というのはもともと、そういう意味からは当然のごとく自然に排除されていくと私は考えております。
  99. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 時間が迫ってまいりましたので、この点につきましては、当初、本会議での質疑から、先ほど来の、午前中の質疑も含めまして、私どもと政府側との意見が異なるということをあらかじめ申し上げながら進めてきたわけでありますので、今後また同僚議員の質問の中でその点についても触れられればと思います。この問題につきましてはまだまだこれから議論する余地はあるだろう、そしてまた、実際、この法がどのような形で運用されていくかということについては厳しく見守っていく必要があると考える次第でございます。  この質問のおしまいにちょっと申し上げたいわけでありますけれども、先ほど申し上げました、過剰な設備を廃棄するということが人減らしに決してつながることがないように、常に私は思うのですけれども、こういう言葉がございます、大きい者、強い者の自由が弱い者、小さき者の自由を奪うことがあってはならない、私はまさにそのとおりだと思います。企業の論理で一生懸命に働いてきた方々の人生を狂わせるようなことがないように、政治家は責任を持ってそういうことがなきように考えていかなければならないわけであります。  かつて、過労死という言葉世界の中でも通用する言葉となりました。エコノミックアニマルとも言われましたし、ウサギ小屋に住んでいるというようなことを欧米からやゆされたこともございました。しかし、その中で歯を食いしばって一生懸命働いてきた方々、私の親の代よりももっと若い方であります。そして、何よりも、家庭を支えて、あるいは地域社会に貢献をしながら一生懸命生きている方々が今、この時代にこういう法案が出されるということでやはり不安の目というものを持たざるを得ない。  その点に対して、我々は政治家として、こうしたことが決して加速することのないようにということをここで約束をし、さらにさらに改善していくべき点については勇気を持って改善をしていくということを、私は、道理の通る世の中をつくりたい、そんなことを思いながら、また今後もこの法については訴えてまいりたいと思います。  残った時間が十分ほどでございますが、本来この法案自体も、先ほど来申し上げておりますように、受け皿を用意すべきである、そしてまた、中小企業に対しても支援をしていくべきであった。これまで政府の幾つかのベンチャー支援策あるいは中小企業支援策といったものが打ち出されてきているわけでありますけれども、なかなか現実問題として、雇用を吸収するという段階までには至っていない。  そんな中で、民主党起業家支援、いろいろな方々から賛否両論の声が確かにございますけれども、この点につきまして二問ほど質問をさせていただきたいと思います。  先ほど通産大臣が何かアメリカかぶれだというような趣旨のことをおっしゃられましたけれども、そうは言いながらも、大手五百社が三百五十万人の首切りをした。しかし、その五倍に当たる千七百万人の雇用をベンチャー企業中心とした五百人以下の中小企業が受け皿となった。受け皿じゃありませんね、あふれることもないぐらいに大きな大きな受け皿をつくりました。この点については、私たちは見習うべき点は見習うというふうに率直に考えるわけでありますけれども、守るべきものと変えるべきものというのは両論あると思います。  そんな中で、まず一つ、民主党の今回の起業家支援法案制度の柱の中の一つとしまして、やはりどうしても税制度という問題は避けて通れぬ問題であろう。抜本的な税制度の強化という中でストックオプション制度について拡充ということを盛り込んだわけでございます。本来ならば政府についても質問をしたいわけでありますけれども、民主党ストックオプション制度拡充ということについて、政府案とどこがどう違うかということにつきまして提案者の方にお尋ねをしたいと思います。
  100. 上田清司

    ○上田(清)議員 お答えします。  御承知のとおり、ストックオプション制度は、平成九年度に経営者や社員のやる気を促進するためにつくられた制度であります。  私どもの法案の中身では、税制限度額を一千万円から三千万円に引き上げる、そして、待機期間を二年から一年に短縮するというような形で大幅に、いわばやる気、流動性を促進するような仕組みに考えておりますが、政府案は、御承知のとおり、対象を子会社の取締役、使用人に拡大するという内容で、それはそれとして評価できる部分もあるんですが、全体の法案の枠組みの中では、制度的にも、認定された事業者、この部分に特定されるという限界があります。私たちの案は、普遍的なもの、一般的なものを確実に社会の中に定着させる、こういう点で、幾らかというよりはずっと進んだ話ではないかというふうに考えているところであります。  やはり、同じようにストックオプションをしっかり社会の中に定着させるのであれば、限定的なものではなくて、一般的なもの、普遍的なものに変えていくという姿勢こそが、いわば企業活性化につながるというふうに考えております。
  101. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 今、まず最初に、税制、特にストックオプションにつきまして、政府案のやり方はどちらかというと中途半端ではないか、実施させるのであれば、政府案と違って、すべての企業に分け隔てなく適用させるべきではないだろうかといったような趣旨での答弁がございました。この問題についても、また後々同僚の樽床委員の方から質問があると思います。  そこで、時間がございますので、あとできる限り御質問するとすれば、最初に申し上げました、いわゆるこれから雇用を吸収するであろうと思われる分野政府でも言っておりますが、私どもも、例えば環境の分野でありますとか老人、健康、いわゆるシルバーと言われる方々への公的なサービスの補完というよりも取ってかわるぐらいのビジネス、それからいろいろ、情報通信等は挙げられているわけでありますが、そんな中で、例えばエネルギー部門についても、これは世界的に大きな問題になってくると思うんです。  脱炭素社会といいましょうか、不安定な、海外に原料を依存している我が国の現状として、そしてまた、この分野においては大きな市場雇用の拡大が期待をさせられる分野だというふうなことが言われているわけでありますけれども、今後、企業あるいは新事業について、例えばエネルギーならエネルギーで、この分野で伸びる余地があるというようなもしお考えがございましたら、お尋ねをしたいと思います。
  102. 島津尚純

    島津議員 渡辺周議員からのお尋ねは、エネルギー部門における新事業についてのお尋ねだったというふうに思います。  私どもは、省エネルギー国家の構築というような基本的な考え方、そして、環境を重視するというようなエネルギー政策というものをこの一年かかって党内で取りまとめてきておるわけであります。その中で、ただいま御質問がありましたような、エネルギー部門における今後の新事業について可能性の高い部門についての施策というものも打ち出しておるわけであります。例えば風力、太陽熱、太陽光、バイオマス、燃料電池あるいはRDF発電といったような部門といいますのが今後大きな発展を期待できるものであり、私どもは、有望な産業として育成していくべきである、このように考えております。  さらには、よく言われます、資源循環型社会の確立を目指すという立場からも、新エネルギー分野と環境関連分野とをあわせて育成していくべきであるというふうに考えます。  政府の新規・成長十五分野を見ましても、二〇一〇年までに、新エネルギーあるいは省エネルギー関連分野、環境分野、双方において、雇用は六十八万から百五十三万人に拡大されていく。あるいは、市場規模は十七兆から四十四兆に拡大をされていくというような試算もあるわけであります。  本法案の成立とあわせまして、新エネルギー、環境関連分野産業の育成に大いに力を入れて努めていくことは我が国にとって重要な、意義のあることである、このように考えているところであります。
  103. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 今回の質問でずっと一貫して申し上げてきたことは、やはり不安を取り除くという政策だろうと思います。何よりも雇用不安に対しては、今失業者が、先ほど来申し上げましたこれだけの数がいる、そして、これから恐らく失業の可能性が高いと言われる、失業予備軍とされる企業内の失業者と言われる方々、次はおれか、次はどこの業種だ、次はうちの会社かと思っている方々に対して、現状はこうであるけれども、三年後には、例えば今おっしゃられたような二〇〇五年にはこの分野で百万人の雇用が生まれます、そして、今、日本の中でこの分野が最も力をつけてきて、物すごい研究が進んでいるんです、ここで必ずや五十万人なり百万人なりの雇用が生まれます、ですから、それまでには、苦しいけれども、みんなで頑張りましょうよと。何か暗い、暗い道ではなくて、その先にだんだん今見えてきているものがあるじゃないですか、だからもう少し頑張れと。  やはり一種のゴール、かつてアメリカのケネディは人類を月にと言った、ニクソンはがんを撲滅すると言った、ナショナルゴールという言葉があった。国としての見える先がある。これが一種の夢である。これが見せるべき国としての姿勢である。  やはり、私は、日本にはこういうものが欠けているのではないだろうか。そして、何よりもこの分野新規産業が生まれている、これが何年後かには間違いなく大変な数の雇用を生みます、今は厳しいけれども大丈夫だといった姿勢を政治が示していくべきときだろうと思います。今おっしゃられたようなエネルギー分野につきましても、まさにそうであります。そんなことを我々はまさに政党の垣根を越えてやっていかなければならない渦中にいるのだろうということを申し上げまして、質問を終了させていただきます。  ありがとうございました。
  104. 古賀正浩

  105. 樽床伸二

    樽床委員 民主党樽床でございます。  ただいま渡辺議員から質問がありました。その最終盤におきまして、特に中小企業、ベンチャーということにつきましての私どもの意見のさわりがあったわけでありますが、私はそれを引き継ぎまして、特に私どもは、今回の政府提出法案に対しまして、新規ベンチャー企業支援が甚だ不十分である、このような前提に立ちまして質問をさせていただきたいと思います。  まず、私の個人的な見解を申し上げるならば、ことしの一月から三月の四半期の成長率が思いのほか高い数字を示したわけでありますが、いろいろな方の御意見を、一般の企業経営に当たっておられる方々、そして企業で働いておられる方々、そういった方々の意見を聞きますと、率直な意見として、本当なのかという声が大変強くあります。私は、そういうときに、幾ら何でも政府が数字をごまかしているわけではないでしょう、このように政府側に立った弁明を実は国民の方にさせていただいておるわけであります。  そういう中でも、私、個人的に思いますのは、不謹慎な発言になるかもわかりませんが、経済社会というのが、我々の人間の体に例えますと、かなり重い病を患って床に伏せっている、まだ床に伏せなければならない一歩手前のような状態であるかもわかりません。こういうときに、本来でありますならば、体の基礎的体力をつけること、さらには悪い病巣を手術して取り除くこと、こういうことをするために点滴でブドウ糖を打ってそのつなぎをする、こういうことに相なるわけでありますが、基礎的体力をつけることを怠り、そして悪い部分を除去する、手術をすることを怠り、ただブドウ糖を投入し続けてきて何らかの対処をしている、私はこのように思えてならないわけであります。  今回の一月から三月の思いのほか高い数字というものは、その期間に集中的に大量のブドウ糖を投入して、若干ブドウ糖のおかげで元気が出た、このような状況ではなかろうかというふうに私は考えているわけであります。これはあくまで私の個人的な見解でありますが、私は強くそのように確信をいたしております。  そのような私自身の現状認識に立って申し上げますと、与謝野大臣からせんだってこの委員会で提案理由説明がございました。その原稿は我々に配られたわけでありますが、お話をお聞きをし、そしてこの原稿を読む中で、私は少し基本的認識が足らないのではないかという感じがいたしております。  というのは、発言をされましたものが私どもの手元に三ページにわたって来ておりますが、この前段でいろいろ基本的認識を申し上げられた後に、以上のような認識のもと云々かんだらということで、第一に、事業者が選択と集中を進めるための云々かんだら、二番目に初めて創業者及び新規事業に対する取り組み、そして三番目に技術に関する研究活動を云々かんだら、こういうことになっております。  この後の三つは具体的な話でありますが、その具体的な話に行く前の基本的認識のところで、一行たりとも、一言たりとも、新規起業、業を起こすということを支援していく、ベンチャー云々という話が全く入っておりません。常に既存の大企業中心とした経済を見ているという意識しかないように私は思えてならないわけであります。基本的認識の中にそのような発想が全く欠落をしているというふうに私は思っております。  個人的な見解をさらに申し上げますと、ベンチャー企業というのは小さな企業でありますから、スモールビジネスと英語に訳してもいいかと思いますが、スモールビジネスにとってよいことは国家にとってよいことである、このような認識に私は立つものであります。  先ほど渡辺議員が申し上げましたように、確かに時の流れに合わなくなって、万やむを得ず日本経済市場から撤退をする企業が出てくる。しかし、それを上回る雇用確保する新しいものが生まれてくれば、これは全体としては大変望ましいことであって、そういう状況の中でこそ初めて政府がおっしゃる過剰雇用とか過剰設備というものがどんどん解消されていくのではないかというふうに私は考えているわけであります。  人の体に例えて申し上げましたので、もう少しそのことについて例えて申し上げますならば、よく経済は生き物だと言われております。生き物だとすると、生き物が元気なのはなぜなんだ。それは、私どもの家にも小さな子供がおります。大変元気であります。よくそれだけ一日じゅう走り回って疲れないなと思うぐらい元気であります。その子供が我々に比べて大変元気であるのは、恐らく新陳代謝が大変激しく起こっているから元気であろうというふうに私は結論づけているわけでありまして、生物体というものは新陳代謝が激しく起こるときは元気いっぱいであります。  それが、人間の体でもそうでありますが、年をとるに従ってどんどん新陳代謝が減退をしていきます。それとともに老衰が始まっていくわけでありまして、新陳代謝がなくなってしまえば、これはもう死に至るしかない、こういう状態になるわけでありまして、どうも新しいものが生まれてくるということを妨げるような施策我が国経済政策の中に根強くあり、それを除去する努力がまだまだ不足をしているのではないかというふうに思えてなりません。  そういった中で、我が民主党法案の中には、その基本的な認識のところに、ここにちょっと、前回提出者が読まれましたことをもう一度復唱いたしますが、「民主党は、国民にビジネスチャンスが十分与えられ、容易に新規事業を起こすことのできる社会の建設こそが政治に課せられた最重要の課題の一つであると確信しております。」国家の経済社会のあるべき姿をこのように端的に表現をしているわけでありますが、政府案では全くそういうものは考えられていないというふうな認識を持っております。  そのことにつきまして、与謝野大臣及び提出者に対して、まず基本的な認識をいま一度教えていただきたいと思います。
  106. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 趣旨説明の全文を読んでいただきますと、その中には新規産業の創出という認識もございますし、中小企業に対する支援という言葉も入っておりますから、基本的な認識というのは先生と違わないと私は思っております。  それから、新規産業を容易にと言われますけれども、新規産業などというものを創出するというのはそう容易な話ではございません。人が自分の人生をかけてやるわけでございますから、そんな簡単に新しい事業が人にとってできるはずもないわけでございます。ただ、我々が考えておりますのは、そういう決意をされた方が一たび行動を起こしたときに、やはり税制とか資金とかあるいは人的関係とか技術とか、そういうことがよりアクセスが容易であった方がいいという考え方に基づいていろいろなことが考えられ、制度としてお願いをしているわけでございます。  それと、新規産業とか新産業の創出とかベンチャーとかということは、それは、従来あるアイデアを組み合わせて仕事をする場合ももちろんありますけれども、やはり基本的には、新しい科学、新しい技術に根差した新しい地平線に向かって進むというのが多分これからの日本の目指す方向だろうと思っておりますから、その部分は相当地道な努力をしなければなりませんし、国としても研究開発等に高い比率の財政支出を行っていく必要がある、そのように考えているわけでございます。
  107. 松沢成文

    ○松沢議員 樽床委員の質問にお答えをいたします。  今、大臣の方から政府案の考え方のお話がありましたが、政府案の方はやはり、日本の今の停滞した産業を再活性化するには事業のリストラを助けるのが第一だ、ここにウエートが置いてあると思うのですが、私たちは、それも必要だけれども、むしろ日本経済社会の将来を考えると、やはり、どんどん新しいビジネス事業が生まれてくる、こういう社会にしていくことが日本経済を根本から強くする、だから起業家支援に最大のウエートを置くべきだということでこの法案をつくりました。  起業家支援というのは、確かに、例えば税制支援をするとかあるいは特定補助金で直接的に支援するとか、こういう方法もありますし、今回の私たちの法案の中にはその具体化されたものも入っておりますが、委員指摘しておりましたけれども、やはり日本社会全体が起業家が育ちやすい風土あるいは国民の価値観にしていかなければいけない、そこから育てていかなければ起業家が育ってこないんだと思います。例えば、今の日本の社会というのはどちらかといったら管理型社会で、官僚機構が国を管理する、あるいは大企業が従業員を管理する、こういう色彩が強いですけれども、これをできるだけ人々が自立をしていく社会に変えていく、こういう価値観の転換も必要だと思います。  また、もっと広く言えば教育。大学教育の中でもっとカリキュラムを、起業家をつくるようなカリキュラムにしていくこと。あるいは、日本のこれまでの社会の中で、古い価値観でいいますと家の中に閉じこもっていた女性女性をもっとどんどん外に出して、あるいは起業するような支援をしていくこと。あるいは、仕事をかえてもやり直しがきくように、社会保障のセーフティーネットを例えば年金のポータブル化みたいに、そういう整備をしておくこと。社会全体を起業家が生まれやすい風土にしていかなければいけないというふうに思います。  最後になりますけれども、そういう社会にするには、私は成功例をつくっていくべきだと思います。例えば松下幸之助さんが大松下電器をつくったように、あるいは最近では稲盛さんが京セラをつくって国際企業になっているように、こういう成功例をどんどんつくれば、若い人たち自分もこういうことをやってみたいというチャレンジ精神が芽生えるんじゃないかと思います。そんな意味で、一つの成功例をつくることが大事なのではないかなというふうにも思っております。  以上です。
  108. 樽床伸二

    樽床委員 私どもが所属しております民主党から提出をされておりますこの民主党の案につきまして、今松沢提出者からお話がありました。基本的に私と同じ考え方でございます。これはもちろんのことであります。同じ考えのもとにおいて出していただいていることは当然のことであります。  そういう前提に立ちまして、与謝野大臣の方から、新規産業を起こすのは容易ではない、こういうお話がありました。私は、まさにそのとおりだと思います。容易でないことをどのようにして実現していくのかということ、これは大変重要なことであります。  それについて、容易でないからということで政府が取り組むとなかなかうまくいかない。これは、政府がこれまで取り組み方が間違っていたのではないかというふうに私は思うわけでありまして、新規産業を起こすのは容易ではない、こういう御発言のもとには、これまで通産省もベンチャーについてはいろいろなことを考えてやってきておるんだ、やってきておるけれどもなかなか成果が上がらない、なかなか新しい企業も雨後のタケノコのようにはどんどん生まれてこない、これまでいろいろな施策をやってきたけれども難しいんだ、こういう通産省なりの体験に基づいての御発言も実は含まれているのではないかという気が私はいたしております。  私は、元来、ベンチャー企業というのは千三つの世界であると思っておりまして、これは極端な話でありますが、ほとんどのところはそううまくいくはずがないわけであります。そういう中で、今松沢提出者からお話がありました、いかに成功例をつくり、そして若い人たち企業を起こしていこうという夢を持ち得る対象になるのか、こういうことが大変重要なことでありますが、今申し上げましたように、大臣のお話の中で、これまでやってきたことに対して成果がなかなか上がっていないのではないか、だから新規産業を起こすのはそう簡単なことじゃないよ、あなたはそう言うけれども簡単なことじゃないんです、こういうお話があるんだろうと私は思います。  なぜ、通産省がこれまでベンチャー支援施策を行ってこられたにもかかわらずうまくいかないのか。それは単純に、企業を起こすことが難しいのか、それとも通産省施策にこれまで落ち度があったのか、どのようなお考えであるのか、少しお聞かせいただきたいと思います。
  109. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 まず、成功例をつくれ、松下電器、京セラみたいな成功例をつくれと。これは天才たちがやった話でございまして、そう簡単に出てくる話ではない。成功例というのはもう少し小さな規模で、本当に自分のアイデアと技術それから努力で勝負してきた人たちがたくさんいるわけでございます。  ベンチャーというのは、アメリカなども、ベンチャーが生まれている過程を見ておりますと、やはりそこには、例えばバイオ関係のベンチャーですと、基礎を支える学術研究というものがあって、その学術研究の派生としてベンチャーが生まれるということに気がつくわけでございます。決して、個人のアイデアでベンチャーがどんどん生まれてくるというわけではなくて、やはりそこには、国や民間が組織的に研究開発に資金を投入して、そういうものの成果がじわじわと社会に広がっていくというのがベンチャーの生まれ方だろうと私は思っております。そういう基礎的な部分を怠って、ただベンチャーという名前にほれて物事をやっても、実は何にも生まれてこないのだろう、やはり基礎的な部分をきちんとするということが一番大切なことだろうと私は思っております。
  110. 樽床伸二

    樽床委員 基礎的な部分ということにお話がありましたので、であるならば、それについてもう少しお聞かせいただきたいわけであります。  政府案の第三というところの具体的なところで、大きな柱の中で、要するに、私が説明するまでもない、技術の移転の問題について政府案としては提出をされているわけであります。これにつきまして、我が民主党の方では、恐らく提出者が考えておられることは、政府案のこのことは当然のこととして、実は国立大学の教官の方の民間企業の役員の兼務ということをそれにプラスしておっしゃっているのではないかというふうに、別に打ち合わせをしているわけではありませんが、そのように私は推察をするわけであります。  昨今、ある大学の先生民間企業の役員を兼ねる、兼ねないでもめて、いろいろ物議を醸し出しておることもあります。私はあの先生にかつて大学時代に授業を受けまして、成績は余りよくありませんでしたが、可ということで通していただいたことを懐かしく今思い出しております。  そのことは別にいたしまして、政府案につきましては、技術の移転はやりましょう、しかし、大学の先生民間企業の兼務というところまでは踏み込んでいない。私は、これは車の両輪だ、基礎的な部分、官と民の連携だ、基礎的なベースが要るんだということで今おっしゃいました観点からすると、この両輪のうちの片っ方が政府案では落ちている、その落ちているところを我が民主党案がさらに追加をしている、このように認識をいたしております。  民主党の案につきまして、私は国立大学というところに限定したところに対しましては甚だ不満足で、提出者に後で文句を言いたいわけでありますが、それはおいておきまして、特にこの民主党案の、国立大学の教官が民間企業等の役員を兼務できるという項目につきまして、大臣の先ほどのお考えの中でありますならばこれは認めてもいいような方向だと私は思いますが、御意見、いかがでございましょうか。
  111. 江崎格

    江崎政府委員 御指摘の問題については、政府でも大きな問題というふうに受けとめておりまして、先ほども質疑がございましたけれども、政府の中でこれを検討する場ができておりまして、極力早く、できればこの秋ぐらいに結論を出したいというふうに思っております。  一方におきまして、大学の研究成果を極力早く民間事業に移転するということを考えるのは非常に大事なのですが、他方、公務員の全体の奉仕者の問題ですとか職務専念義務、こういった要請もまたございまして、それとの調和をどの辺で図るかということについて検討する必要があるというふうに考えております。
  112. 樽床伸二

    樽床委員 今の発言では、とりあえず前向きに、秋ぐらいまでをめどにやるけれども、いろいろな制約があるので難しいですよ、このようにおっしゃったというふうに理解していいのでしょうか。
  113. 江崎格

    江崎政府委員 今申し上げましたように、大学の先生といえども公務員でございまして、公務員である以上、職務に専念する義務ですとか、あるいは全体の奉仕者としての役割というのがあるわけでございまして、そういった要請と、一方、技術の移転を速やかにするというものの調整をいかに図るかということで検討する必要がいろいろあるということでございます。
  114. 樽床伸二

    樽床委員 もう一度確認いたしますが、今の発言でいきますと、ことしの秋までに答えは出す、こういう発言が冒頭にありまして、その後、実はいろいろな、大学の制度の中では難しいことがあるのですよ、こういうお話でありました。そんないろいろな難しいことがあるような問題が、この秋に結論が出るのでしょうか。必ず秋に結論を出していただけるのでしょうか。いかがでしょうか。
  115. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  小渕総理の指示でことしの六月に連絡会議というものが設置されておりまして、私の記憶でございますと、小渕総理の指示で、本年秋を目途としてできるだけ結論を得るべく検討を進めてほしい、こういう指示が出ているところでございます。私どももここに一部参加しておりますけれども、今後具体的にいつということまでは、この連絡会議で決めることでございますので、私どもが今ここで断定はできません。  以上でございます。
  116. 樽床伸二

    樽床委員 常に何かあれば、上部の審議会のような、上部か下部かわかりませんが、横につくって、いや、総理がこういうものをつくってそこで議論をするからというようなことは、どうも私ども野党が長いものでいじけているかもわかりませんが、逃げ文句のような気がしてならないわけであります。そういうことにならないように、秋までに結論を出すとこの国会の場でおっしゃった以上は、秋までにちゃんと結論を出していただきたい。  基礎的なものを官民が協力してつくり上げて、それでかなり時間がかかるんだ、それをじっくりと時間を練ってやらないと、きょう言ってあしたできるようなものじゃないですよ、こういう発言が今大臣からあったわけでありまして、私もまさにそのとおりだと思います。そういうようなものであるならば、難しいからといって、いや、結論が先に延びるのです、難しいからといって先へ延ばすのです、こういうようなことになると、なおさら、難しいことがさらに難しくなってしまう、私はこのように思っているわけであります。実行するのが難しい問題であればあるほど、また、時間がかかる問題であればあるほど、極力前に倒して早く始めないと間に合わない、このように思うわけでありまして、そういった点につきまして、格段の御努力をお願いしたい。  再度このことについて、何か話が非常にわかりにくかったものですから、もう一度端的にお返事をいただきたいと思います。
  117. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 総理の指示で、この六月に設置されました国立大学教官等の民間企業役員兼業問題に関する連絡会議において、本年秋を目途として結論を得るべく検討が進められております。その結論を待ちたいと思っております。
  118. 樽床伸二

    樽床委員 そうしましたら、恐らく秋に臨時国会があるのだろう、私がこのように申し上げるのもおかしな話でありますが、そのように推測をされますものですから、また秋の国会できちっとお答えをいただくように私も質問をさせていただきたいな、このように考えております。よろしくお願いをいたします。  続きまして、先ほど来よりの新規産業の話でありますが、とにかく容易ではないのです。新しい企業が、雨後のタケノコとは言いませんが、いろいろなところからどんどん出てくる。そしてそれが、先ほど渡辺議員がおっしゃった、一千七百万人の雇用をアメリカはつくっているじゃないか、このような意見がありました。それは確かにアメリカの例であって、日本の例ではないことはよくわかっております。しかしながら、渡辺議員も申し上げましたように、いいところは、学ぶべきものは学ぶという努力は必要であります。  少し話が横にそれますが、私は、戦後長い間、我が国の対米姿勢といいますか、アメリカが言うことはまず受け入れてから物事を考えようという日本のこれまでのアメリカに対する姿勢というのは甚だ満足がいかないという認識を実は持っておるわけであります。我が国も独立国でありますから、言うべきことははっきり言う、その上で協調するところは協調する、このような独立国と独立国との関係というものをきっちり打ち立てるべきだという認識を持っておりますから、アメリカを礼賛するつもりは全くありません。しかしながら、アメリカのいいところはどんどん学んでいいじゃないか、このように思っておるわけであります。  そういう点からいきまして、新規企業を起こすのは難しい、こういう状況の中で、特に税制という話が先ほど松沢提案者からございました。そのことについて、民主党案提出者に対して、民主党の案の中で、特にエンゼル税制ということについて書いてあるわけでありますが、文章を読めば、それはそれなりに理解はできるわけでありますが、もう少し詳しく、その基本的な考え方等々を御説明いただきたいと思います。
  119. 上田清司

    ○上田(清)議員 よく聞いていただきました。  御承知のとおり、現行のエンゼル税制は、個人投資家が、一定の要件を満たすベンチャー企業への投資で、上場前日までに不幸にして損失をこうむった場合に、その年の株式譲渡益と通算し、損失が残る場合、一定の損失を繰越控除ができるという仕組みであります。ここを、今回私たちは、よりこの制度強化するために、株式譲渡益だけでなく、他の所得からも繰越控除ができるような仕組みをつくり、画期的な制度に組みかえた、こんなような認識であります。  御承知のとおり、ベンチャー企業、私どもは、今政府案が出しています過剰設備の廃棄を中心とするような中身も大事かもしれません。現に迫っている危機を何らかの形で救わなければならないという認識も、必要欠くべからざるような認識になってもやむを得ないと思っております。しかし、それ以上に大事なのは、日本企業の廃業率が開業率をはるかに上回って、新しい企業がなかなか進んでいかない。むしろ、新しい企業を育てて、それをいわばセーフティーネット雇用の受け皿にするという仕組みをつくることの方が実は一番大事だということを強調しているのが我が民主党の案であります。  中でも、このエンゼル税制について言えば、やはり、アメリカの例でも見られますように、決して天使のような、そういう援助ではありません。それ相応にリスクがあります。そういうリスクのある投資に対して、いわばそのリスクをカバーできるような仕組みをきちっとつくっておこう、こういうことが実は大事なんだということを強調しているわけであります。  なかんずく、日本の社会というものをもっともっと開けた、あるいは個人の創意や工夫が社会に貢献できるような仕組みをもたらすためには、例えばNPO税制、単に、大蔵省に税金を集めて、そして大蔵省がその配分を決めるのではなくて、自分たちが望むところにお金を提出できる、この企業を育てたいなと思ったらきちっと支援ができるようなエンゼル税制、あるいはこのNPO団体を育てたいなと思ったらそこに寄附ができる、そして寄附控除ができるというような、そういう仕組みをつくることが実は一番大事だということを強調しております。  政府の案も、それは一歩前進かもしれませんが、何よりも、本質をどう見るかということに関してやや欠ける面があるということを指摘しながら、ぜひ私どもの案に御賛同賜りたいというふうに考えております。
  120. 樽床伸二

    樽床委員 上田先生の今のお話、仕組み的にはよくわかるんですが、そうなると、実際どのような効果が具体的に出てくるんでしょうか。投資者、要するにリスクマネーを投資しようとする人がなぜそういう形でふえていくんでしょうか。もう少しわかりやすい説明をお願いいたします。
  121. 上田清司

    ○上田(清)議員 要するに、新規企業に対するリスクをどのように考えるかということでありますから、リスクを減らしてあげる、あるいはリスクを後で回復させてあげる、このことが一番のポイントだというふうに考えております。現行の制度では、単年度という形ですので、この部分をいっぱい広げるというのが基本的な仕組みじゃないかというふうに思っております。  そこで、関連することを思い出しましたので少しつけ加えさせていただきますが、政府案のというよりも、さきに経済戦略会議の答申に盛られた二百三十四項目、この中で、政府がきちんと実現する方向で考えるべきもの、それからまた、内容についてよく検討した上で結論を出すもの、今申し上げました「実現する方向で検討するもの」はAという項目で分類をしております。そして、「内容について、よく検討した上で結論を出すもの」をBという項目で分類しております。  この政府案にしても、あるいは民主党案にしても共通する部分があるんですが、この政府案の考え方の中にベンチャー育成についての試みが弱いということに関して言えば、やはりこの答申の中の部分で、例えば百五十七項目に、「ベンチャービジネス支援税制等起業に対する税制面からの支援」という、この項目が経済戦略会議から出されておりますが、実はBという評価になっております。こうした点においても、政府案の踏み込みが、あるいは姿勢というものが理解できるというふうに私は思っておりまして、できるだけ民主党案を側面的に賛成することによって、この政府案の欠陥をしっかりカバーできるのではなかろうかというふうに思っております。
  122. 島聡

    ○島議員 エンゼル税制につきましてどんな効果が実際的に行われるかということでございますが、基本的には、樽床委員御存じのように、千二百兆円とも言われる個人金融資産の一部を、いかに税制をてこにしてベンチャーに振り向けるかというような観点から出されたものでありますが、これは私どもの資料ではなくて、通産省がエンゼル税制という観点から効果を試算したものがございます。  ただ、私どもとちょっと内容が違います。通産省は、二〇%の税額控除を認めるとした場合、当初、制度導入後一時的には税収は減ります、減税ですから。ところが、ベンチャー企業への投資が純増すると通産省も強調しておりまして、年間九百億円の新規投資が実現し、最終的には年間十万人の雇用創出効果が見込めると、二年ほど前だと思いますけれども主張をしておりましたので、十分そんな意味でのエンゼル税制効果はあると思っております。
  123. 樽床伸二

    樽床委員 今の島提出者の通産省の意見というのは、出所はどこでございましょうか。
  124. 島聡

    ○島議員 九七年度税制改正のころのものでございますので、ちょっとすぐ、今手元には持っておりませんが、通産省に後でお尋ねいただければと思っております。
  125. 樽床伸二

    樽床委員 提出者を困らせたようでありますが、そうしましたら、通産省の方で今の出所は確かでありましょうか。ちょっと、もし御確認ができますならば。
  126. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 突然のことで、確認をいたしておりません。必要ございますれば、調べます。
  127. 樽床伸二

    樽床委員 突然のことでまことに申しわけないと私も思っておりますが、別にそれを責めるつもりはありません。  私が今確認したかったのは、通産省がそのようなことを対外的に明確に一つの試算として出しておられるということであるならば、通産省としては、我が民主党提案のエンゼル税制、俗にエンゼル税制と言っているんであろうと思いますが、この案についてどのようにお考えでありましょうか。これまでの通産省の趣旨にのっとったものであるとお考えなのか、それとも通産省のお考えとは違う、このようにお考えなのかも含めて、少しお聞かせいただきたいと思います。
  128. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  私ども、一言で申し上げまして、いわゆるエンゼル税制ベンチャー育成のために大変効果があるというふうに思っております。  ただ、恐らくこの民主党提案によるものは、ベンチャー企業の株式の譲渡損失を他の一般所得と通算可能なものとする案だろうと思います。実は、私どもも、平成十一年度税制改正要望におきまして、これと同様な措置を要望いたしました。ただ、株式譲渡益に係る源泉分離課税の廃止とあわせてでございます。  これはなぜかと申し上げますと、現在、株式譲渡益に係る課税については、申告分離と一・〇五%の源泉分離の選択制になっております。通例のケースであれば、この一・〇五の源泉分離課税をとる方が多いわけでございまして、これをそのままにしまして株式譲渡損失を他の一般所得と通算可能なものとすることは納税者の恣意的な選択による租税回避行為を招きかねない、こういうことがございます。  したがいまして、今回、私どもは、この源泉分離課税のところがまだはっきりしておりませんので、私が今まさに申し上げた、効果があると申し上げたようなエンゼル税制について、この中には入れていないということでございます。
  129. 樽床伸二

    樽床委員 今の、ちょっと専門的な用語があって理解に苦しむところも若干あるのですが、要は、全体の分離課税、総合課税というような流れの中で位置づけなければ意味がない、民主党案は片落ちだ、このようなことをおっしゃっていると理解していいのでしょうか。確認をさせていただきたいと思います。
  130. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  源泉分離課税を含めた金融関連税制全体の見直しの中で考えるのが一番いいと思います。仮にそうでなくても、その源泉分離課税の問題は避けて通れないと思います。
  131. 樽床伸二

    樽床委員 そういう難しいことをおっしゃるから、なかなか国民の皆さん方に伝わらないのですね。もっとわかりやすい表現で、もう一度お願いしたいと思います。
  132. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 今、株式を売却いたしますと、株式の売却代金の一・〇五%を納税いたしますれば、売却益が上がろうとも、それは総合課税にならないというものも選択できますし、年間を通じて源泉分離で、たしか二五%を選択することもできるという、株式売却代金あるいは利益について、そういう選択ができるわけでございます。  今審議官が御答弁申し上げたのは、そういう制度が残っているときに、民主党のような案は通産省も考えているんだけれども、そういう制度を残したままで民主党の案を導入しますと、税金逃れが、あるいは租税の回避行為ができることになってしまう。でありますから、やはりこういう税制全般を見直す中で民主党の案が仮に出てくるとすれば、それは妥当な案だというふうにも申し上げているわけでございます。
  133. 樽床伸二

    樽床委員 ある意味で我が党の案に御理解をいただいているというふうに思っておりますが、そういう中でいくと、いつごろまでにそのような環境、我が党の案が生きるような環境整備が整うのでしょうか。効果があると思っておられるのであるならば、一刻も早くその環境整備をしていただかないといかぬと思っておりますが、今後の見通しはいかがなものでございましょうか。
  134. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  たしか源泉分離課税は平成十三年までにやるということになっていると思いますが、できますれば、私ども、可能であればそれよりも早く正式な税制改正要求をすることも検討したいと思っております。
  135. 樽床伸二

    樽床委員 大変ありがたい話でありますが、正直申し上げまして、大変いろいろなところからの抵抗もまたあるのではないかなと。私は、別に通産省サイドに立つわけではありませんが、いいと思ってやろうとすることも、またいろいろなところの抵抗もあって前に進まぬという中で御苦労もされているのだろうとは思います。思うのだけれども、しかしながら、そういう難しい抵抗があることというのは、可能な限り前へ倒しますということは、結局は可能な限りしませんということになるわけでありまして、やはりやるときにはしりをぱちっと切って、ここまでには絶対やる、このように言い切ってやらなければ物は進まない。  その大変よい例が、古い話になって恐縮でありますが、笑われるかもわかりませんが、まことに古い話であります。細川さんが総理大臣のときに、もう十年ぐらい、選挙制度を変える変えないというのでごたごたされていたように、私ども、当時は国会の外におりましたが、そのように見ておりまして、それが、細川さんが総理になって、年末までに答えを出す、できなければ責任をとる、こういう表現をしました。  当時、私は当選一回で、まだ右も左もわからないときに、先輩の議員方々が、大勢の方、私ども、当時、細川先生と同じ党におりましたから、いろいろな言葉が耳に入ってまいりました。樽床君、細川さんはちょっと物がわかっていない、こういうことをおっしゃる。なぜか。そんな、しりを切っていつまでにやりますという約束なんてするものじゃない、あんなことはばかだ、みずから政治的生命を絶つ方向にしか行っておらぬ、あんなことはもうさせるな、こういう表現で、我々によかれと思ってアドバイスをいただいた先生方がたくさんおられたわけでありますが、しかし、今から考えると、あのような期限を切ったからこそできたというふうに私は思っているわけであります。  そういうことで、平成十三年ということでありますが、可能な限り前へ倒すということでありますが、できるだけもうちょっと前に、可能な限りではなくて、前へ倒すことは、事務的に、またいろいろな段取り的に可能なのかどうか。ちょっとしつこいですけれども、お聞かせいただきたいと思います。
  136. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 ちょっと正確に申し上げますと、平成十三年三月末に予定されている源泉分離課税の廃止を含めて金融関連税制の見直しを踏まえながら、このエンゼル税制について検討をしていきたいということでございます。その平成十三年三月末というのも、でき得れば一年ぐらい前倒しをして、何とか実現にこぎつければ幸いだというふうに思っております。
  137. 樽床伸二

    樽床委員 今の言葉をかえて言いますと、平成十二年の三月末までに努力をしたい、こういうふうにおっしゃったというふうに私は聞きましたものですから、平成十二年三月末ということは来年の三月末ということでありますから、ぜひともそのような方向で、通産省方々の霞が関における御努力を心から御期待を申し上げる次第であります。  続きまして、昨今、新規事業、ベンチャー絡みの話でいきますと、マスコミ等々世間を騒がせておられるかもわかりませんが、NASDAQの問題につきまして、これはやはり外しては考えられない問題であろう、このように思っております。  こういう場で個別の方の名前を言うのは避けますが、ある方がナスダック・ジャパンというのを日本に持ってきたい、こういうことでいろいろな方が振り回され、いろいろな話が出ているようでありますが、私は、方向としては大賛成であるというのが個人的な見解であります。まず民主党提案者に対して、時期的なものがあって抜けているのかもわかりませんが、提出されている法案の中にはこういうものが一切入っておりませんが、どのようにお考えでしょうか。まず、提出者にお聞きいたします。
  138. 島聡

    ○島議員 お答え申し上げます。  今回の法案になぜ入っていないかということにつきましては、私どももこのベンチャーの支援、起業家社会を支援するというものは、デモクラット起業家倍増プランというのを別に持っておりまして、そこには、こういう直接金融のことについてもきちんと書いてございます。今回の法案につきましては、その一部を取り上げたということでございます。  ただいまのナスダック・ジャパンについての認識でございますが、御存じのように、米ネット店頭株式市場、NASDAQを運営いたします全米証券業協会とソフトバンク社が、日本におけるネット店頭株式市場、ナスダック・ジャパンの創設に向けて提携された、二〇〇〇年末までにナスダック・ジャパンでの取引を開始すると伺っておるわけでございます。  これについてどう評価するかということに関してでございますが、基本的に、起業家を倍増するという立場から極めて歓迎すべきことであるというふうに考えております。これが実現いたしますと、NASDAQに公開している約五千銘柄に日本から投資がしやすくなるわけでございまして、もちろん日本のベンチャー企業もそこに登録することができる、創業したてで資金力のない日本ベンチャー企業が株式公開を通じて必要な事業資金を手に入れることもできるということになっていると思っております。  日本の今までの株式市場といいますと、株式公開まで大体二十年ぐらいかかったのです。二十年ぐらいかかりますと、例えば昔ですと、子供のために木を植えて、成長したころに木が売れるぐらいのスピードなわけですね。ところが、NASDAQは大体平均四、五年でございますので、そういう意味で、ベンチャーキャピタル市場というのもこれで育つのではなかろうかというふうに思っておる次第であります。  特に重要なのは、ナスダック・ジャパンに刺激されまして、日本証券業協会や東京証券取引所が自己改革に着手し始めたことであります。非常に遅きに失したとはいえ、ベンチャー育成にとって非常に好ましいことだと考えております。私は、どの証券市場でありましょうと、例えば新規企業やベンチャー、つまり起業家というのが育ってくればいいと考えております。  先ほどから通産大臣が難しい、難しいと。当然でございますが難しいわけでありますけれども、そういう難しいのに挑戦するチャレンジスピリットがあってこそ日本経済が今まで発展してきたわけであります。その環境を整えるという意味でこの証券市場、ナスダック・ジャパンというのは一つの大きく歓迎すべきことでありますし、このNASDAQを例えば一軍とか二軍とかいうふうにするのではなくて、よく言われる例でありますが、いわゆるアメリカンリーグとナショナルリーグのような形で同様に成長していくことが起業家倍増になって、日本を起業家社会にしていく非常にいい機会になると認識いたしております。
  139. 樽床伸二

    樽床委員 提出者の島議員にもう少し教えていただきたいのですが、なぜNASDAQにおけると期間が短いのですか。その原因はどのように御認識されているのでしょうか。
  140. 島聡

    ○島議員 基本的に、もちろん各種規制がございますけれども、基本的にはアメリカの企業社会全体が、税制も含めまして、あるいは証券市場でお金が集まってくる部分も含めまして、早く成長をするような形になっているということが大きいと思います。  このナスダック・ジャパンは、あくまでベンチャーの資本を集めるところですね。資本を集める場所でありますから、そこに投資する投資家がいないといけないわけです。さらに、そこから出た人が、起業家たちが起業家として活躍されて、そしてそれがまた新たな投資ができるような、起業家に優しい税制システムを持っていないとまたそれは成長しないわけであります。  日本の証券市場というのがやはり二十年ぐらいかかるというのは、日本全体が起業家に優しい社会になっていないからであります。それは、先ほどから通産大臣もおっしゃっているように、難しい、難しいという前提で全部の枠組みをつくっておりますから、それがあって今の段階では二十年と四、五年の差が出てくるのであるというふうに私自身は思っております。
  141. 樽床伸二

    樽床委員 なかなか難しい話でありますが、通産省とされましては、アメリカではうまくいっているんだが、日本で果たしてこういう取り組みがうまくいくのかどうか。それが日本のベンチャーを、ベンチャーといいますか、日本経済社会のすそ野を広げていく一つのいい手段に、日本の国内において日本の風土に当てはまるのかどうか。もし当てはまるとすればどのような制約条件が今の制度の中ではあるのか。そういうようなことをもし御認識であるならばお話しいただきたいと思います。     〔委員長退席、岸田委員長代理着席〕
  142. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 ナスダック・ジャパンという話がありましたけれども、私は話だけの話として聞いておりまして、アメリカのニューヨーク市場で取引されているいいものから悪いものまで含まれている銘柄を東京で何も取引する必要はなくて、取引したいのであれば証券会社につないでもらえばニューヨークの株は買えますから、そういうふうにやればいいと思います。日本日本でそういう店頭公開を初めとした日本市場を整備すればいいのであって、マネーゲームに東京において参加する必要はないと私は思っております。
  143. 樽床伸二

    樽床委員 話としては非常に明快なお答えであろうと私は思っております。与謝野大臣の今の考え方は、いろいろ賛否両論はあるのでしょうけれども、私が今聞く限り非常に明快であります。それはそれで一つの考え方であろうと私もその見識について心から敬意を表する次第であります。  であるならば、ナスダック・ジャパンは必要なくして、要は、例えば私が買いたかったら私が証券会社に言ってニューヨークのあそこで買えばいいじゃないか、こういうことですね。それは物理的にも恐らく可能なのだろうと思いますから、それでいいわけであります。そのかわりに店頭市場の整備、こういうふうにおっしゃったわけでありますが、日本において現在の店頭市場の整備の状況というのは恐らくまだまだ十分でないから、このようなナスダック・ジャパンを持ってこいというような話が出てくるのではないかというふうに私は思うわけであります。  そのようなことで、先ほど島提出者の方から、ナスダック・ジャパンの話に触発されて、東京証券市場ですか、規制緩和等々、規制緩和とか数々の改革を着手されているように島提出者の方からのお話もありましたし、私もそのようなことは若干漏れ伝え聞いておりますが、それは間違いない事実でありましょうか。通産省、よろしくお願いします。
  144. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  東証、東京証券取引所では、平成八年一月以降、ベンチャー企業向けの市場、これは二部の特則市場と申しておりますが、これを創設いたしました。しかしながら、現在まで上場実績がございません。  その後、ナスダック・ジャパンの発表が直接の契機なのかどうかは別といたしまして、東証ではベンチャー企業向けの新市場の創設を検討しているという報道がなされ、私どもが聞いているところでは、八月中にも東証の新市場の創設についての検討が発表をされると思っております。  私ども、ナスダック・ジャパンに触発されたかされないか、それは直接はわかりませんが、東証にしても店頭にしても、改革を掲げて、いい意味でのライバルになろうという試み自体は大変すばらしいことではないかなというふうに考えております。
  145. 樽床伸二

    樽床委員 いろいろ技術的な問題もあろうと思いますが、与謝野大臣の見解も私は一つの卓越した見方、わかりやすい見方であると思いますし、また一方においては日本でやってもいいじゃないか、こういう考えも成り立つわけでありまして、わざわざニューヨークまで、今は電話一本でいける、インターネットでいけるのでしょうから、このグローバルの時代の中で別に国境の壁はないから関係ないということもありましょうが、また一方では、だったら日本で同じようなものを、会社で言ったら支店のようなものをやっても何ら差し支えないじゃないかという考え方も私は成り立つと。これは、どちらがいいのか悪いのかというのはこれからの議論にまたなければならないと思っております。  基本的に、ベンチャー企業というのは、一番問題は、初期における資金の不足、立ち上げ時期における資金の不足というものが最も根本的な脆弱性の原因だというふうに私は思っております。大体、ベンチャー企業に、ベンチャーといいますか、新しく企業を起こした、そこに投資をする人というのは非常に奇特な方でありまして、投資をする人は、万やむを得ず投資をするという方が大半だと私は思っております。例えば親であるとか、例えば親戚であるとか、例えば大変世話になったからここで投資をせざるを得ないとか、そういう、前向きな投資よりも、まあしようがない、あいつが言うんだったら今回は投資をせにゃしようがないなという感じで投資をされる方が大多数であるのが我が国の現状であろうというふうに思います。  こういう現状であるならば、確かに与謝野大臣がおっしゃったように、新規の企業を起こすことは容易ではないというのはまさにそのとおりであります。しかし、基本的には、そういう顔の見えない、そういう義理もかまないところでリスク的な投資をしてもいいと思う人がふえることによって、実は新しい企業の最も大きな脆弱性である初期における資金の不足というものは解消される。そのためにとるべき施策であるならば、基本的には前向きにどんどんすべてのことをやっていく、そして、その中で不都合なところがあれば、それはその都度直していく、そういうふうに敏感に対応してもいいのではないかと私は思っております。  そういうふうに申し上げますと、政府がやることにそんなに失敗は許されない、こういうふうにおっしゃるかもわかりませんが、政府のやることも失敗だらけであります。これは人間がやることでありますから同じでありまして、私は、失敗がないという前提で物事をやるということそのものがもはや発想が間違っている、このように思っておりまして、政府も、失敗したときには失敗しましたとはっきり言えばいい、そしてやり直すとはっきり言えばいい。そういうことの中でこそ初めて前向きな、新しい時代に向けての取り組みができていけるのです。  これをやれば失敗するのじゃないかと思っておったら、いつまでたっても何もできない。こんなことをしておったのでは、日本経済はまさに老衰をして死んでしまう、我々の子供たちに我々はとんでもないものを残してしまう、こういうことになってしまう。もっと前向きに取り組んでいく必要があろう、このように思っているわけであります。  実は私、当初二時四十分までの時間でありましたが、スタートがおくれたものですから、十分ほど後ろへ延びております。まことに申しわけございませんが、先ほど渡辺議員が私の前に質問をしておりました。時間の関係で少し漏れた質問がございましたので、お許しをいただきますれば、私から質問をさせていただきたいと思っております。  要は、設備を廃棄するに当たって、あるAという企業設備を廃棄する。それに当たって、そのAという企業がほかにぜいたくな設備を持っておる。会社が苦しいのに立派な本社ビルがどんとある。そして最近は、社員旅行へ行くといっても、若い人はみんなで上司と一緒に行ってもおもしろくない、我々は勝手に自分のポケットマネーで行きますよ、その結果として、非常にすばらしい保養所がそのままがらがらになって遊んでおる。こういう例が多々ある。そういうのを全くそのままにしておいて、設備の廃棄、人員整理だけが先行しても果たしていいのだろうか。  事業認定に当たって、そのようなぜいたく施設というか、何と申し上げていいのか、言葉が不適当でありましたら申しわけありませんが、そういう死んでいる、元来苦しい中に本当はそこから先に処分したらどうですかというようなものを残したままで、このような今回の法の認定を受けるということはあるのでしょうか、そういうようなことを考慮されるのでしょうかということを一つ質問させていただきたいと思います。
  146. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  私ども、過剰設備の廃棄をした場合に、税制上の恩典、すなわち損金の繰り越しあるいは繰り戻し、この税制上の恩典を受けるためには、廃棄という後ろ向きのことだけではだめであるというふうに考えております。効率の悪い非生産的な資産というものを前向きのものに転換する、この法律では事業革新と言っておりますけれども、前向きな投資をした場合に初めて設備廃棄をした税制の恩典も受けられるというふうに考えております。  以上でございます。
  147. 樽床伸二

    樽床委員 政府については、そういう状況で例えば事業認定を求めている企業があるとすれば、それをどのように、望ましいこととお考えになるのか、もうちょっと努力をしてから言ってきてほしいとお考えになるのか。言いにくいかもわかりませんが、御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  148. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  私どものこの産業活力再生特別措置法、「目的」にございますように、生産性の向上を実現する、新規の中小企業等による開拓をする、あるいは研究活動を活性化するということでございます。  今御質問の部分はこの事業構築にかかわるものだろうと思いますが、私ども、第二条の第二項で事業構築の定義を行っております。「当該事業者が行う他の事業に比して現に生産性の高い事業又は将来において高い生産性が見込まれる事業強化を目指した事業活動であって、次に掲げるものをいう。」ということでございまして、この法律上対象になるかどうかというのは、今申し上げたようなこの法律の規定に沿って判断されるべきものであって、豪華な保養施設を持っているかどうかとか、そういうことはこの判断の中には出てこないのではないかというふうに私は思っております。
  149. 樽床伸二

    樽床委員 実は、一番冒頭に私が申し上げた認識でありますが、要は、新陳代謝がなければならぬということを私は申し上げました。新陳代謝ということは、いろいろな皆さん方の、おまえそこまで言うな、そういう意見もあるかもしれないと思って、あえてそこの部分は言わなかったわけでありますが、新陳代謝というのはどういうことかというと、要らなくなった細胞が死んで、新しい細胞が生まれるということであります。つまり、この経済の中で、時代の、社会の変化の中でもう対応できない企業というのは、たとえ大企業であってもつぶれてしかるべきだ、このように私は考えておりまして、それにかわるべく新たなものが生まれてくるということが社会の活力を持つ、このように思っております。  そういう前提に立って、実は企業の中でも、懸命なリストラを、血のにじむようなリストラをして、そしてこの厳しい時代に生き残ろうということで努力をしておられる企業もたくさんある。そういう企業こそ生き残っていただきたいと思うわけであって、そういった努力をしておる企業が横にあるにもかかわらず、そのような立派なものはまあ資産として置いておいて、そしてそのまま温存しながらぬくぬくとやっていこう、こういうところは元来滅びてもしかるべきところではないか、言い過ぎかもわかりませんが、極論、厳しく言えばそういう見方もできるわけであります。  今の答弁を聞きますと、私は甚だ不十分だと思いますのは、今の発言でいきますと、そういう血のにじむような努力をしている企業の努力を無にして、不必要な施設があるものは残しておいてもいい、そういうふうに聞こえたのでありますが、いかがでございましょうか。
  150. 江崎格

    江崎政府委員 私ども、認定に際しまして、生産性の向上がどの程度図れるかということが認定の基準でございます。ですから、どの設備を選んでどういうふうにそれを廃棄するか、あるいはどこに経営資源を集中するかというのは、あくまでも企業の判断でございます。  ですから、企業の外部の者が見て、それはいかにもぜいたくじゃないかというのが仮にあったとしても、それを非常に有効に活用してその企業として生産性を非常に向上できるということであれば、そういうこともあり得るだろうというふうに思います。よそから見てそれが非常にぜいたくだから、つぶさないと認定をしないとかいう一律の判断はできないというように思っております。  あくまでも企業生産性を向上するのにどういう手段を使うかということで、それはまず企業の判断がありまして、私どもは、それがそのとおり実現するかどうかというのを認定基準に従って判断するということでございます。
  151. 樽床伸二

    樽床委員 企業の判断であるということはもちろんであります。私は、小さな政府、自由貿易といいますか、マーケット重視の考え方を元来持っておりますから、企業のいろいろな中のやることを政府が一々口出しするべきではないというのが私の基本的な認識であります。  そういう認識から、そういうものを国が一々考えるのはおかしい、企業に任す、それはそのとおりであります。であるならば、こんな認定は必要ないんです。こんなことをする必要はない。つぶれるところは企業の責任でつぶれたらいい。理論的にはそのようになるわけでありますが、いかがでございましょうか。
  152. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 例えば、設備を廃棄するというのは、税法上は除却という考え方、除却損と言いますが、除却損を何年間持って歩けるのかといいますと、今は五年間だけはそれを持って歩けて、その間に自分の出した利益の中から償却することができる、こういうことになっております。  今回は、五年を七年に延ばしただけでございますし、また、繰り戻し還付も一年というのを導入したわけでして、そう大きな特典を企業に与えたわけではありません。ただ、除却損を立てるときに、将来その除却損を償却できるという見通しがある程度立てられるという範囲内でそういうものを認めたわけでございまして、政府が、あれをやれこれをやれと言うようなつもりは毛頭ないし、また、そういうところに、説明できない特典を与えたというわけではありません。  元来、法人の損金というのは理論上はいつまでも持ち歩けるはずでございまして、例えば、諸外国の税制ですと二十年ぐらい持ち越せるというところもございますから、今回の五年を七年にしたというのは合理的な範囲内で物事を決めたということでございまして、政府企業に向かってあれをやれこれをやれということではなくて、企業が自主的に自分たちの企業としての行動を決めた場合にその行動をとりやすくなるような環境を少しでも整備しよう、そういう意図のもとで皆様方に税法並びにこの法案をお願いしているわけでございます。
  153. 樽床伸二

    樽床委員 時間が参りましたので、これ以上やることは当初のルールに反することになりますのでこのあたりでやめさせていただきたいと思いますが、本日のいろいろな議論を通じて感じておりますのは、税制環境整備も、できるならば一年前倒しして頑張ろう、こういう通産省の決意もお聞きをいたしまして、そういったことで考えると、民主党提出の案も今国会ではどのような形で終結を向かえるのか、我々最大限の努力をいたしますが、これからいろいろな形でお互いの案をすり合わせる中で、日本経済活性化のために努力をしていく一つの道筋も若干かいま見られたかなということを心から喜びまして、喜んではいけないんですが、そういうようなことで、政府の案はまだまだ不十分であるということを最後にもう一度申し上げまして、私の質問を終了させていただきます。  ありがとうございました。
  154. 岸田文雄

    ○岸田委員長代理 大口善徳君。
  155. 大口善徳

    ○大口委員 公明・改革クラブを代表いたしまして、本案について質問をさせていただきます。  まず、日本産業競争力は今どうなっているのか。スイスのローザンヌにありますIMD、そこで世界競争力報告というリポートが出ております。その中で、八九年から九三年までは一位である。それが九九年には十六位である。その中で、起業家精神、これは民主党さんもおっしゃっておりますが、四十七カ国中四十七位、こういうことであります。  しかしながら、一方、日本が一貫して優位に立っている項目がございます。まず、GDPが二位である。それから、小売市場の売り上げの大きさ、これは一位。識字率一位。それから、世界で使用されているコンピューターのうち我が国で使用されているものの割合も二位、こういうことでございます。日本は、まだまだ潜在的には非常に大きな産業競争力というのを持っている。しかしながら、それが、ボタンのかけ違いでありましょう、政策のある意味では失敗というものもあります、こういう形での評価がされているわけでございます。  そういう中で、産業競争力ということを考えますと、一つは、労働者が、ある意味ではその将来に対して、安心して、安定した環境の中で働いていくということも非常に大きな産業競争力の基盤であろう、私はこういうふうに思いますし、また中小企業が元気であるということが、産業のすそ野をしっかりと支えて、そして、日本がこれまで産業競争力が強かった原因であろうと思うのです。ところが、労働者の方の将来に対する不安、あるいは中小企業が非常に今大変な不況の中で苦しんでおられる、そういうようなことと日本産業競争力が今揺らいでいるということは大いに相関関係があるんじゃないか、私はそう思うわけでございます。  そこで大臣に、我が国における産業競争力についての御認識と、競争力がアップするために今いろいろ取り組んでおられるわけでございますけれども、その方向性についてお伺いしたいと思います。
  156. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 現在、我が国においては、内外の厳しい経済環境の中で、経済の中長期的なトレンドを決するとも言える供給面における競争力バブル期後大きく落ち込んできているという現状にあります。また、我が国の近年の生産性の上昇率は、OECD諸国の平均を下回る状態にあります。  例えば、一九五〇年から七三年の間、全要素生産性の伸び率は、日本は四・六%、OECDは二・七%と、はるかに上回っておりました。また、一九七三年から八七年は、日本はまだ一・一%伸びておりましたが、OECDは〇・八%でございまして、この時期はOECDの平均をまだ若干ながら上回っておりました。しかし、一九八七年—九三年は日本は〇・八%でございまして、これはOECD平均の〇・九%より低い状況にございます。  こういう状況でございますので、この法案におきましては、我が国に存する経営資源の効率的な活用を通じた生産性の向上及び競争力強化を実現するため、事業者が実施する事業構築円滑化創業及び中小企業者による新事業の開拓の支援事業者経営資源の増大に資する研究活動の活性化を図ってまいりたい、そのように考えております。
  157. 大口善徳

    ○大口委員 そこで、今回の法案でございますけれども、この経営資源、これを選択と集中によって生産性の低いところから生産性の高い分野へ移動させる、こういうねらいであるわけですね。そのねらい自体、私も決して否定するものではなく、むしろ評価をしたい、こう思っておるわけでございます。  しかしながら、一方におきまして、経営者が、それこそ生産性の低いところに大量にお金を投入する。そういうことで、ある意味ではバブルにあおられた愚かな経営者、その経営ミスによりまして非常に生産性が低くなった。こういうことについて、本来からいえば、みずからの責任でみずからのミスについてまた責任をとる、こういう自己責任からいきますと、私は、本当に公的支援というものによって後押しすることが果たしていいのか、非常にこれは悩むところなわけでございます。そういう点で、きちっと何らかの形で経営者の責任というのが問えないか、そういうことを考えておるわけでございます。  これは、本会議でも私は質問をさせていただきましたが、努力をする者に対して責任を問えない、総理はそういう答弁でございました。そこで大臣に、この点についてもう一度お伺いしたいと思います。
  158. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 この法案は、民間自主性の尊重及び市場原理への立脚を基本的考えとして、事業者自身の手による事業構築を円滑に進めるための環境整備に資するものであり、かつ、措置内容も基本的にはグローバルスタンダードの範囲内であって、この法案において経営責任を問うのは適当でないと考えております。  また、バブルで間違えたのは経営者ばかりでなく、政治家も経済評論家も官僚もみんな間違えていたわけでございまして、あのときは社会の趨勢として、限りなき日本経済の上昇というものを皆さん想定していたわけでございまして、そのころの経営判断を今の時点で責任を問うということは、多分そういう面からもできないのだろうと私は思います。
  159. 大口善徳

    ○大口委員 当然、経済の見通しということを全国民が誤っていったということは確かにそうかもしれません。しかしながら、バブルの時期において、ちょっとこれは尋常でないというところもありました。そこはやはりきちっと反省すべきではないかな、私はこう思います。通常の程度であればいいのですけれども、本当に常識から外れるような、そういうバブルにあおられた経営者もいたということはこれは厳しく問われなければいけない、こう思うわけでございます。  そういう中で、今回、事業の再構築というものについて計画を認定する、主務大臣がこの認定をするわけでありますけれども、これについて、第三条とか十七条を見ましても、相当程度とかあるいは重要な変更ですとか、そういうことで非常にあいまいな要件が規定されている。そういう点で、やはりこれは行政がその計画を認定するという行為の中において、産業に対していろいろと介入をするということについては、私は時代に対しては逆行をしているのではないか。  そんなことで、これも本会議で総理にお伺いしましたが、総理は、客観的な指標を策定して恣意性のない透明な運用をしていく、こういうことでございます。そういう点で、具体的にこういう客観的な指標を策定していく、それはもう大臣が責任者でございますから、しっかりやっていただきたいと思うわけですけれども、それについてお伺いをしたいと思います。
  160. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 私は、もともと行政というのはある一定の裁量の幅を持った方がいいと思っておりますし、裁量の幅を持ちませんと具体的妥当性のある行政判断はできないと思っております。しかし、この法案の施行に当たっては、先生御心配のように、恣意的な行政を行ってはいけないということは確かでございますし、やはり我々としては、この法律の透明な運用に努めなければならないと考えております。  このため、御指摘の点を含め、具体的認定基準については、法律の施行時までに経済実態や専門家の意見等を踏まえつつ客観的な指標を策定し公表することといたしたい、そのように考えております。
  161. 大口善徳

    ○大口委員 これについてはいろいろと新聞でも報道をされております。例えば生産性の相当程度の向上をさせるという、この相当程度というものはどういうものなのか。例えばROAあるいはROE、あるいは実稼働率等の向上だ、あるいは相当程度の設備の廃棄、こういうことについても五%とか数字が出ておるわけでありますけれども、指標を立てて数値目標化していくということが、やはり恣意性を排除する非常に重要な要素であると思うのです。  そういう点で、これについて、ある程度この委員会で具体的にこういう方向性を考えているんだということを言っていただかないと、これは後で申し上げますが、減税等の規模を予想するに当たってもなかなか予想しづらいと思うのですね。そういう点で、ある程度の指標というものをこの委員会で、方向性といいますか、それを明らかにしていただきたい、こう思っております。
  162. 江崎格

    江崎政府委員 御指摘生産性の相当程度の向上ですとか、あるいは相当程度の設備の廃棄ということでございますけれども、今先生まさに御指摘の方向で考えておりまして、例えば生産性の向上を具体化する指標としては、今おっしゃいましたような株主資本利益率ですとか、あるいは従業員の一人当たりの付加価値の額、こういった数値を使っていきたいというふうに考えております。  それから、設備の廃棄につきましても、相当程度というものの具体化につきましては、廃棄する設備の額が保有する設備の額に対してどのぐらいの比率になるのかというようなことを、これの一定の比率以上というような方向で考えたいというふうに思っております。  具体的な数値をどういうふうに設定するかという点につきましては、経済の実態ですとか、あるいは専門家の御意見を踏まえ、また各省ともいろいろ相談をいたしまして、さらにはパブリックコメントなどを経た上で設定をしていきたい、このように考えております。
  163. 大口善徳

    ○大口委員 そういうことで、認定については、恣意性の入らない客観的な数値指標といいますか、それでもって判断するということですから、時間的にはそんなにかからないであろう。また、迅速な対応ということも必要であろう。余りまた認定期間が長いと、そこにまた恣意性が入ってまいります。そういう点で、認定をするに当たってどれぐらいの時間を見込んでいるのか、そしてまた、さらにどういうふうに迅速化を図るのか、ここら辺をお伺いしたいと思うのです。
  164. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 迅速に行う必要がございまして、原則として一カ月以内に認定を行うということにいたしたいと考えております。
  165. 大口善徳

    ○大口委員 一カ月以内、こういう答弁でございました。従来の認定のいろいろなことからいきますと早いのではないかな、こう思いますけれども、その一カ月以内にきちっとやっていただくということをお願いしたいと思います。  今回の産業活力再生特別措置法案において、企業がどの程度減税におけるメリットを受けるのかということについて、当初は、例えば一兆円とか数兆円とか、そういうことを前提とした批判もあったわけでございますが、前回の本会議における答弁では三百億円程度、こういうことでございます。  そこで、こういう三百億円と試算した根拠、それを税目別に、また申請件数の見込みとともに示されたい。ひとつお願いします。
  166. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  まず第一に、欠損金の取り扱いでございますが、事業者を二十社程度と見込んで、平年度百億円程度の減税額でございます。  それから共同出資子会社への現物出資及び買いかえに関する特例でございますが、やはり同じく二十社程度と見込み、買いかえの場合の圧縮割合八割等を乗じて試算したところ、平年度百億円程度の減税でございます。  それから設備投資関係でございます。特別償却あるいは税額控除でございますが、千件程度を見込んでおりまして、平年度五十億円程度かと思います。  それから登録免許税でございますが、百五十件程度と見込みまして、本則税率と軽減税率の差、例えば会社設立でありますれば、〇・七マイナス〇・三五のこの〇・三五を乗じて試算をすると、平年度二十億円程度でございます。  それからストックオプションでございますが、五十件程度、平年度三十億円ぐらい。  以上、合計をいたしますと、三百億円程度と試算をいたしております。
  167. 大口善徳

    ○大口委員 よくわかりました。  ただ、件数としては、欠損金等二十社あるいは現物出資二十社、かなり限られた会社なのかな、こういう印象を受けました。  そういう中で、前回も、大蔵大臣にも、国として税収がどれだけ減るのか、そういう減収の見込みについてお伺いしましたら、四十億円、こういうことでございました。しかしながら、なぜ四十億円になるのかということについての説明がはっきりしなかった。  そして、企業が受ける三百億円というメリットに比して減収が四十億円、これも一般の方にはなかなか理解できないんじゃないかな。企業が受けるメリットが三百億程度であって、それで税収の減というのは四十億程度だ。なかなか理解しがたいわけでございます。  その点につきまして、大蔵省にお伺いしたいと思います。
  168. 福田進

    ○福田(進)政府委員 お答え申し上げます。  産業活力再生特別措置法に係ります税制上の措置による減収額につきましては、税制上の措置の項目別に、現段階において通産省が調べられた適用会社数あるいは対象とされる設備投資の取得価格の見込み額等の基礎係数に基づいて試算いたしましたところ、大蔵大臣が御答弁申し上げましたように、平年度四十億円程度の減収と見込まれるところでございます。  その内訳といたしまして、まず法人税関係といたしましては、特定の新規設備投資に係る特別償却の創設が十億円程度、中小企業者の新規設備投資に係ります特別償却あるいは税額控除制度の創設が十億円程度、それから登録免許税関係といたしまして、認定事業者等の計画に基づく登記に対する軽減税率の特例制度の創設が二十億円程度でございます。  私ども大蔵省の減収額の試算と申しますのは、税制改正によりまして平年度にどの程度国の税収が減少するかという税収見積もりを行う観点から行っているところでございます。したがいまして、今回の税制上の措置には、例えば、買いかえ特例等のようにこの特例制度が土地税制であること、また、この制度が創設されることによりまして初めて取引が出てくる等の理由により、従来から、平年度の減収額を計上しないものもございます。  ただ、これにつきましては、個々の企業等にとって効果を有すると考えられるものが含まれているわけでございます。通産省はプラスの影響額を三百億円程度と試算しておりますけれども、これは、今申し上げましたような税制上の措置を含めて、税制措置自体が個々の企業等に与えるプラスの影響額を試算したもの、こういうふうに承知しております。
  169. 大口善徳

    ○大口委員 どうもなかなか理解しがたいわけですけれども、ネットかグロスかというようなイメージなんでしょうけれども、やはりここら辺もわかりやすく説明する必要がある、こういうふうに思うわけでございます。  次に、今回、公正取引委員会との関係がございます。今回、法案の三条六項第七号の競争政策に関する認定がございまして、適正な競争確保、あるいは一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれのないこと、こういう形で規定をされているわけでございます。  この競争政策についての認定要件の基準、これもやはり非常に客観性のあるものでなければならない、こういうふうに思うわけでございます。これについてどう考えているか。  そしてまた、この策定に当たって公取委員会との連携を図るべきである、こう思いますが、いかがでございますか。
  170. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  法第三条第六項第七号の競争政策に関する認定要件の御質問でございますけれども、要件の明確化の観点から、過去の公正取引委員会の審決事例などを踏まえまして、主務大臣の告示により策定をしたいと考えております。  当然、その策定に当たっては、公正取引委員会と十分に連携を図ってまいりたいと思っております。
  171. 大口善徳

    ○大口委員 そこで、公正取引委員会の方にお伺いをしたいのですが、まず、競争力強化するということは、ある意味では、公正な取引を確保するということが大事であるということなんですね。そういう点で、我が国競争力強化、これをするに当たって公正取引委員会の果たす役割ということをまずお答えいただきたいと思います。  それから、主務大臣から三条六項七号の認定の要件について具体的基準を策定するに当たって意見を求められたとき、公正取引委員会としてどういうふうに対処するのか、基準の客観性についてどういうふうに手当てするのか、お伺いしたいと思います。
  172. 山田昭雄

    ○山田政府委員 お答えいたします。  先ほど通産大臣からもお話がございましたように、この法案は基本的には市場メカニズムを通じて我が国産業活力再生の実現を図るということでございますから、先ほど来お話がございましたように、法案の中でも、五条で、事業構築計画が二以上の事業者による合併や新商品の共同開発、生産などを内容とする場合に、公正取引委員会は、主務大臣から当該計画認定申請書の写しの送付を受けたときは、当該計画の実施に係る独占禁止法上の問題の有無についての意見を主務大臣に述べることができる、このように規定されているわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、公正かつ自由な競争が阻害されることにならないよう的確に対処してまいりたい、このように考えております。  二番目の御質問でございますが、通産省といたしまして、認定の基準につきまして、基準を明確にするということで私どもに御相談がありました場合には、必要に応じまして、先ほど申しましたような公正かつ自由な競争促進するという観点から適宜調整をしてまいりたい、このように考えております。
  173. 大口善徳

    ○大口委員 いずれにしましても、これについても恣意性が入らないようにしていただきたい、こう思うわけでございます。  次に、債務の株式化についてでございます。  債務の株式化、金融機関事業会社が株式と債務を交換するということでありますが、金融機関がかなり株式を取得する、株価の変動というのは金融機関のいわゆる金融不安につながりかねないということで、アメリカでは金融機関が株式を持つことはできない、こうなっているわけでございます。  また、債務の株式化について、要するに、特に公的資金を投入されている金融機関、これが債務の株式化ということで債務を免除して株式を取得するということは公的資金のおすそ分けじゃないか、こういうことでございまして、これについては、モラルハザードが起きるのではないか、こういうことも本会議指摘をさせていただきました。  総理からは健全化計画においてきちっとしますということでございましたけれども、この債務の株式化について、特に株主の責任というのは一体どうなるのか。そして、そういうことを踏まえた場合、株主の責任をしっかりととらせた上でこの債務の株式化をやるという場合、いわゆる債務の株式化についてどういうケースを想定されているのか。これについてお伺いしたいと思います。     〔岸田委員長代理退席、委員長着席〕
  174. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  債務の株式化、まず第一点、株主の責任の問題でございます。私どもは、債権者と債務者との間に明確な合意があることを前提としております。この合意の中において、減資などを通じて既存株主の責任の明確化というものを求める方向で検討をいたしております。  それから第二に、具体的にどういうケースが想定されるのかという御質問でございますが、これはあくまで一般論でございます。すべてこのケースが妥当するということではなくて、ある意味では、私が頭で考える、あるいは過去の事例から推測をする、こういうケースに適用されるのではないかという例でございますが、一つは、親会社の子会社がございまして、その子会社が経営難になるという場合、親会社が減資をして子会社の債務を株式にして増資をするというケースで、その子会社の再建をやるというケースが恐らくあるのではないかなと思います。  それから第二のケースは、何らかの事由によって有利子負債が非常に多くなってしまったというケースであって、収益を上げられる中核的事業が割ときちっとしている、今後五年、十年かかればその株価は債務さえ少なくしてやれば上がっていくに違いないという、中核事業で収益を上げられるようなケース。  それから第三のケース、これは第二のケースと一緒になるようなケースもあるのかと思いますけれども、通常の場合、仮に大企業でありましても、二千億円を二百円でやりますと十億株が出てまいります。そういう意味では、非常に膨大な株が出てまいりまして、株式の希薄化という現象になるわけでございます。  そういう意味では、通常のケースよりもむしろ過少資本のような会社、例えば同族経営とかいろいろな理由で過少資本のような会社、こういうケースにも使える場合があるのかなということで、恐らくは今申し上げたような三つのケースぐらいで、いっとき打ち出の小づちのように言われたこともございますけれども、必ずしもそうではない、有効に機能するのは限定された場合でないかなというふうに思っております。
  175. 大口善徳

    ○大口委員 減資となると、商法上の特別決議が要るわけですね。特別決議が得られるようなケースということはかなりレアケースじゃないかな、こういうふうに思います。  それと、親子関係会社で子会社について、金融機関が子会社に対する債務を免除するという場合は、親会社と子会社は別人格でありますけれども、むしろ親会社がきちっと金融機関との関係を対応すべきではないかなと思うのですが、その点いかがですか。
  176. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  あくまで一般論でございますけれども、通常のケースは、親会社と子会社に対するメーンバンクおのおのが、それ相応の負担をお互いにし合うというケースが多いのではないかと思います。
  177. 大口善徳

    ○大口委員 いずれにしても、債権者と債務者が合意をする、それで、株主代表訴訟というものも視野に入れて行動をするということなのかなという感じがいたします。  次に、私も本会議でかなり質問をさせていただきましたが、要するに、雇用確保という問題であります。今回の法案設備の廃棄というものを伴うリストラの側面が強いわけでありますので、そのことによって雇用に対する不安を非常に皆さん持っておられるわけです。  そういうことがせっかく、改善の兆しがあるのかないのかよくわかりませんけれども、数字的には出てきた、月例報告なんかでもあらわれてきた。そういう中にあって、この法案雇用不安そして社会、国民に対する不安を引き起こすことがあっては大変なことになる、こう私は思うわけです。  そういう点で、この法案においてきちっと雇用面における配慮をしていますということを明確に答弁していただきたい、こう思うのです。
  178. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 この法案においては、雇用にしわ寄せをすることなく事業構築を進めるという観点から、第一に法目的、第二に事業構築計画の認定要件、また第三には、事業構築の実施における認定事業者や国等の責務において、雇用へ配慮する内容を規定しているところでございます。  具体的には、事業構築計画の認定要件の一つとして、従業員の地位を不当に害するものでないことを設け、雇用に影響がある場合には、労使間で十分に話し合いを行ったかどうか、労働者に対する配慮を十分に行って計画を実施しようというものであるかを確認することとしております。  また、認定事業者事業構築を実施する際にも、当該事業者労働者の理解と協力を得るとともに、失業の予防など雇用の安定に努めることとあわせて、国等も必要な支援措置を講ずることをその責務として規定しているところでございます。六月十一日に決定した緊急雇用対策等を最大限活用いたしまして、雇用面での配慮に万全を尽くしてまいりたいと考えます。
  179. 大口善徳

    ○大口委員 今大臣もおっしゃいました目的規定、それから認定における第三条の規定、そしてまた計画を実施するに当たっての規定、こういうことであるわけですけれども、民主党の同僚議員の方もこの点について非常に丁寧に質問されておりました。しかし、我が党におきましても、この問題はきちっと質問して明らかにさせていただきたいということで、重複はいたしますけれども、あえて問わさせていただきたい、こう思います。  第三条の六項の六号でございますが、「従業員の地位を不当に害するものでない」ということはどういうことなのか。告示で運用の基準の明確化を図る、こういうことでございますけれども、具体的にその中身についてどうか、お伺いしたいと思います。
  180. 江崎格

    江崎政府委員 「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」ということの意味でございますけれども、事業の再構築計画というものが雇用の安定に影響がある場合でございますけれども、事業構築にかかわる事業所における労働組合などと必要な協議を行うことなど、労使間で十分に話し合いを行ったかどうか、それから労働者に対する配慮を十分に行って計画を実行しようとしているものであるか、こういった点を計画の認定時点において確認しようということでこの規定を入れております。  こうした計画の認定要件につきましては、主務大臣の告示におきまして定めまして運用の明確化を図りたい、このように考えております。
  181. 大口善徳

    ○大口委員 次に、三条の三項の四号で「労務に関する事項」ということで、計画の中に雇用者数の変動を明記させるべきではないかということ、これにつきましては答弁がございました。そして、労務に関する事項として、きちっと報告の徴収を行っていく必要があるのではないか。これは三十五条の報告の徴収。そして、それによって報告を受けて、現実が認定を行ったときと違う場合においては、計画の変更とか取り消し、こういうことも毅然として行うということについて答弁を願いたいと思います。
  182. 江崎格

    江崎政府委員 認定事業者が当初の計画に従って適切に事業構築というものを実施しているかどうかというのを確認するために、主務大臣は毎年年度末に計画の実施状況について報告を求めるということを現在考えております。  それから、さらに必要がある場合には、いつでも三十五条を適用いたしまして、報告の徴収を求めることができる、そして、仮に認定要件に適合しないという事態が発生している場合には、計画の変更を指示するとか、あるいは認定を取り消すといったような運用を考えていきたいと思っております。
  183. 大口善徳

    ○大口委員 また、十八条の一項で、「労働者の理解と協力」ということはいかなることなのか、よろしくお願いします。
  184. 江崎格

    江崎政府委員 「労働者の理解と協力」の具体的な内容でございますけれども、事業構築を実施するに当たりまして、当該事業構築にかかわる事業所における労働組合などと必要な協議を行うこと、労使で必要になっている合意を成立させることなど、労使間で十分な話し合いを行うことでありまして、その旨をまた主務大臣告示におきまして明確化したいというふうに思っております。
  185. 大口善徳

    ○大口委員 それから、第六条の三項でございますが、要するに特定活用事業者による活用事業が従業員等に押しつけられないかどうか、これについていかがですか。
  186. 江崎格

    江崎政府委員 活用事業計画の認定でございますけれども、要件として考えておりますことは、一つは、活用事業者が円滑かつ確実に事業を実施するということ、それから二番目に、特定活用事業者認定事業者の経営者、従業員などの知識などの経営資源を有効に活用するかどうか、それから第三点として、当該特定活用事業者認定事業者の役員または従業員の自主的な判断に基づくものであるかどうかといったようなことを確認したいと考えておりまして、これらにつきまして告示で明らかにしたいというふうに考えております。  したがいまして、およそ事業として立ち行く見込みがないものですとか、あるいは会社から特定の事業部門につきまして買い取りを強要されたというようなことで従業員の意思に基づかないもの、こういったものは当然支援の対象にならないというふうに考えております。
  187. 大口善徳

    ○大口委員 次に、創業者支援そしてまた中小企業支援、これが今回入っているわけでございます。  その中で、第二十二条の経営資源活用新事業計画の認定に際しまして、事業を利用する中小企業方々に対して、助言だとかアドバイスをきちっとして、認定が受けられやすいようにしていただかなければいけないと思います。みなしのものもありますけれども、新規にこれから認定を受けようとする方に認定を受けられるような助言、アドバイス、そういう体制をきちっとしていく、それからまた、地域の実情というものも反映させていただきたい、さらに、認定に当たっては迅速に認定をしていただきたい、こう思うわけですけれども、これについての取り組みをお伺いしたいと思います。
  188. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 御指摘、三点伺ったと思います。  法の認定に係る中小企業者の負担の件でございますが、先生も既に御指摘のように、創業者及び他の中小企業関係支援法の認定を受けたあるいは計画を受けた者については、みなし等で新たな認定は不要になっております。  ただ、その他の者の方で新たな事業の開拓を行われる中小企業者につきましては、私ども、認定事務をやるのは都道府県でございますので、都道府県の商工関係窓口はもちろん、私どもの通産局あるいは諸機関窓口を利用しながら適切な指導を申し上げたいと思っております。  認定につきまして、地域の実情を踏まえること、それから迅速に行われるべきこと。前者につきましては都道府県知事の方にそれをやっていただくつもりでございますが、迅速性の観点から申し上げますと、法の運用、解釈等についてできるだけ情報提供を図って、迅速な認定手続がなされるよう我々も努力をしたいと思っております。
  189. 大口善徳

    ○大口委員 迅速なというのは、今事業構築については一カ月というお話でございましたけれども、これについては大体どれぐらいを考えておられますか。
  190. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、申請から認定まで原則一カ月というのを考えてございます。
  191. 大口善徳

    ○大口委員 これも一カ月ということで確認させていただきました。  次に、本法案というのは、附則の第二条で、平成十五年三月三十一日までに廃止も含めて見直す、そうなっているわけでございます。しかしながら、この中には非常にいいものもあるわけです。例えば研究活動の活性化に係る措置、こういうものは恒久的な措置が必要であろう、こういうふうに思うわけですね。そういう点で、きちっと吟味をする必要があると思いますが、この点いかがか。  それから、税制措置に関する部分、これは平成十三年三月三十一日までの時限、二年間、こういうことなわけでありますが、計画申請に係る部分は平成十五年三月三十一日まで、こうなっているわけですね。でありますと、税制措置の時限は二年間、ただ計画申請の方は四年間、こう食い違いがあるわけです。これにつきまして、税制措置についてなぜ平成十三年三月三十一日までとしたのか、平成十五年三月三十一日としなかったのか、そして期限が切れましたときに、さらに二年間延長されると考えてよいのか、まず大蔵省にお伺いします。
  192. 福田進

    ○福田(進)政府委員 今回の税制上の措置は、企業による事業の再構築円滑化に資するため、産業活力再生特別措置法に基づく事業構築計画の認定を受けた事業者につきまして講じるものでございます。その適用期限は、先生今御指摘のとおり、平成十三年三月三十一日までとされているところでございます。  租税特別措置は、特定の政策目的を実現するための政策手段の一つとして位置づけられているものでございまして、税負担の公平等の税制の基本理念の例外措置でございます。そういう例外措置として講じられているわけでございますので、適用期限を定めて措置しているところでございます。  今回の税制上の措置の適用期限につきましては、企業による事業の再構築円滑化という政策目的ができるだけ早期に実現される、そういう早期実現に資する観点から平成十三年三月三十一日までとしているところでございます。  なお、租税特別措置の適用期限の延長についての御質問がございましたが、一般論として申し上げますと、先ほどもお話しいたしましたように、租特は特定の政策目的を実現するための政策手段の一つでございます。今回もこの措置支援するのは税制上の措置だけではございません。租特はその一つでございますが、先ほどもお話しいたしました税負担の公平等の税制の基本理念の例外措置として講じられておりますので、適用期限の延長につきましては、期限が到来した時点で、政策目的、効果を十分に吟味して判断しているところでございます。  今回の措置、十三年三月三十一日までとしているものでございますが、企業による事業の再構築円滑化という政策目的が早期に実現されることを期待しているところでございます。
  193. 大口善徳

    ○大口委員 では、通産省、御答弁願います。
  194. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  まず第一に、研究活動の活性化の部分についての時限のお話がございました。  私ども、第二章あるいは第三章のように、本則中に平成十五年三月三十一日までという期限を第四章については付しておりません。これは、研究活動の活性化といったものは、産業活力再生に当たって環境整備的な性格が強い、よって、より長期的に取り組むべき課題だという認識でございます。  こういう意味から考えまして、第四章の「研究活動の活性化等」の部分につきましては、附則第二条に規定する見直しを加えてのことでございますが、現時点においては、基本的に恒久的な措置として残すことを考えております。  それから、第二点目の税制の問題でございます。お尋ねの適用期限の延長については、その時点で必要性等を十分検討してまいりたいと考えておりますけれども、今の私の気持ちを申させていただければ、ぜひ延長の御要望を出したいなというふうに考えております。
  195. 大口善徳

    ○大口委員 次に、この前、商工委員会におきまして、千葉まで中小企業の実態について視察に行ってまいりました。中小企業方々は、ああいうベンチャー型のものだけじゃなくて、従来型でも非常に工夫をされて、頑張っておられます。  しかしながら、一つ言えば、ほとんど設備等の資金は公的な融資になった、都銀等はもう全部貸してくれなくなったので公的な融資という形になった、そしてまた、いいものをつくっているわけでありますが、なかなか売り上げがよくない、むしろ非常に落ちているというような状況、現場の声を聞かせていただきました。  私どもも、地元に帰りましても、中小企業方々、町工場の方々、いろいろな方々にお話をお伺いするわけでありますけれども、本当に中小企業が置かれている状況というのは大変厳しいものがある、そしてまた貸し渋りといいますか、なかなか民間がお金を貸してくれない、こういう状況も相変わらずある、こう思っておるわけでございます。そう感じておるわけでございます。  大臣に、中小企業の置かれている経済状況等についてどのような認識をされているのか、お伺いしたいと思います。
  196. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 平成十一年七月に発表された調査によれば、本年四—六月期における中小企業の業況判断は、二四半期連続して改善しております。しかし、別の調査においては、売り上げの状況等からは、四月から六月の間はほぼ同じ水準で推移しているところでございます。中小企業の業況については今後も注視していく必要があると考えております。  また、平成十一年一—三月期の中小企業設備投資額は、減少幅が平成十年十—十二月期の対前年同期比三八%減から同七%減へと改善したものの、依然として減少基調が続いております。中小企業の生産については、底固めへの動きが見られるものの、在庫率は依然として高水準にあります。  このように、中小企業の景況については依然として厳しい状況にあるものと認識をしております。
  197. 大口善徳

    ○大口委員 そういうことで、我が党も基本政策の中で、昨年の十月一日にスタートして、倒産の件数をストップしたという二十兆円の貸し渋り特別保証制度、これは来年の三月三十一日で期限切れになるわけでありますが、これにつきまして、この期間を一年延長して、そしてまた金額も十兆円きちっと追加をして、そして安心していただく。そしてまた、据え置きが一年でありますけれども、大体現場におきましては、すぐ払っていただきたいとか、あるいはよくても半年ぐらいの据え置きしかないというような状況で、もう返済が始まっております。  そういうことで、追加ということと、返済が始まっておって、そしてその返済圧力が非常に高まっている。これにつきましても、中小企業庁から信用保証協会には指示をされた、こういうことでありますけれども、現場の金融機関が返せ返せということになった場合はどうなるのか。  そういうことで、返すものは返さなければいけない、それはわかっておるわけでございますけれども、今大臣もおっしゃったように、中小企業を取り巻く状況は厳しいわけでございまして、この対応についてお伺いしたいと思います。
  198. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 御指摘をいただきました貸し渋り対応特別保証制度ですが、昨週、七月の二十三日までに、十月から約八十九万四千件の御利用をいただいております。金額にしまして十六兆二千億円となっております。ただ、四月以降は一月当たり五千億円程度とかなり落ちついた指標の傾向になっているところであります。  第一点の保証枠の追加についてでございますが、本委員会で先日大臣からも御答弁申し上げましたが、総理の御指示も得ておりますし、現在の二十兆円の保証枠に加えて、今後、必要かつ十分な額の保証枠を追加するということになっておりますので、その具体的な規模につきましては、今後の指標の推移を見ながら、資金需要動向も引き続き注視しながら決定をしていきたいと思っております。  第二点の据置期間、一年が切れるということで返済圧力が高まってくるのではないか、あるいは、個別のケースにおいては金融機関からそういった圧力が強くなるのではないかという御指摘でございます。  これにつきましては、運転資金で五年、先生も御承知のように設備資金で七年の返済期間を制度として持っておるわけですが、実際に保証をする際に、個々の中小企業者の返済可能性、能力も踏まえてこの返済条件については決定をしているところでございます。  累次大臣の方からも御答弁申し上げていますように、中小企業庁、私どもから、昨年の十月でございますか、各金融機関、保証協会に対して、個別に弾力的に返済猶予等については対応するようにと指示をしてございます。今後もちろん、必要があれば保証協会窓口での、いろいろな中小企業者の事情も踏まえながら、こういった指示の徹底についても考えていきたいと思っております。
  199. 大口善徳

    ○大口委員 また、商工委員会で視察をさせていただいて、現場の方々からの要望ということで、設備資金に限って無担保無保証の特別保証枠、据置期間を大体三年ぐらい、そして返済期間を十年から十五年、こういう新たな施策を講じてほしい、設備投資をしたいのだけれども、全部公的な金融でさせていただいているわけですけれども、そういう中で、ぜひともこの特別保証制度というものを、こういう設備投資に限ったものを創設していただけないか、こういう陳情がございましたので、それについてお伺いしたいと思います。
  200. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 信用保証制度につきましては、設備資金、運転資金、いずれにも対応することになっております。今回の特別保証制度ではありませんが、信用保証協会の運営しております三種の保証保険制度につきましては、協会によって大分差がありますけれども、十年以上の長期の保証を取り扱っている協会が多々ございます。  なお、今御指摘のございました本件特別保証制度並みの設備資金に眼目を置いた制度云々というお話でございますが、一応この制度につきましては、もう先生も御承知のように、未曾有の貸し渋りという実態がございまして、それに対して臨時異例の措置で来年三月まで制度を設計しているものでございますので、私どもとしては、より中長期的な課題に対してそういった制度をつくるのはなかなか難しいのではないかという認識を抱いております。
  201. 大口善徳

    ○大口委員 ただ、設備投資がなかなか厳しいということを言われているわけです。消費と設備投資なわけですね。中小企業の中にそういう思いがあるということを、やはり長官はしっかりと、現場から出てきたことだし、これは通産省から御案内いただいたところですよ、そこから訴えがありますので、これはしっかりと検討していただきたい、こう思うわけでございます。  次に、私ども、ベンチャーが育っていくには、やはりスタートアップ、アーリーステージにおいてしっかりと、万が一失敗しても返さなくていい、いわゆる投資といいますか、ベンチャーキャピタルといいますか、それによって資金を調達をして、要するにエクイティーによる資金調達、これが非常に有効だ、こういうふうに考えるわけでございます。中小企業事業団による投資事業有限責任組合に対する出資、こういうこともあるわけですけれども、非常に微々たるものであるわけでして、私は、ことし予定されているもののさらに十倍ぐらい拡充すべきではないかな、こういうふうに考えておるわけでございます。  そしてまた、やはりもう一つ大事なことは、アーリーステージの段階で、企業の成長性といいますか、これを見抜ける目ききが必要だな、こういうふうにも思うわけでございます。なかなか民間金融機関というのは、そういう目ききがいないのか知りませんが、そういう点での投資というのは厳しいわけでございまして、そういう点でも中小企業事業団等によるこの投資事業有限責任組合に対する出資の拡充が必要である、こういうふうに考えておりますが、いかがでございましょう。
  202. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 中小ベンチャー企業に対する資金調達の円滑化のために出資による形態というのは大変効果的な政策であるということは、先生おっしゃった点、そのとおりでございます。  そしてまた、中小企業事業団、昨年の秋の法律改正によりまして、新たに出資業務ができることになりました。有限責任組合制度の発足にも相まちまして、この中小企業事業団の出資機能というのを活用して、これからベンチャーに対する資金供給をやっていこうというのが我々の考え方でございます。  具体的には、今その枠を大変大幅に、十倍程度に増額せよというお話でございましたが、今年度三十億ぐらいで考えておったわけですが、今回、産業競争力強化対策の一環といたしまして、十倍にはなりませんが、百億円程度ぐらいまでは今年度実現できるようにしたいと思っております。  この実施を通じまして、具体的にベンチャーキャピタリストといいますか、こういった組合の中において実質的に実際の投資業務に携わることによって、目ききの能力、そういった点の能力アップも図ってもらえるように我々は期待をしているところでございます。
  203. 大口善徳

    ○大口委員 もう一つは、ベンチャー企業ですぐれた技術力を持っている、そして、そういう点ではこれから全国展開をしていこうという場合に、ベンチャーキャピタルでもって資金調達をするというと、会社の経営権というもの、支配権というもの、これがある意味では影響を受けるということで、できれば融資によって、貸し付けによってその事業拡大について使いたいという希望が非常にあるわけです。  それで、現行におきましても、新事業育成貸付制度、これは六億円ですか、それから先端産業育成特別融資制度四億円、こういうものがあるわけなんですが、その担保の免除というのが七五%、しかし、その限度額八千万円ということで、これでは、大体、このベンチャー企業というのは担保がないわけです。そして、いまだに担保主義をとっている民間の金融機関というのは貸してくれないわけです。だからこそこの政府系の金融というものが意味があるわけでして、本当にその企業がすばらしいものを持っているのであれば、担保というのはとらないで、もうどんと貸すということぐらいやらないと経済は元気にならないわけですよ。  そういう点で、この新事業育成貸付制度だとか先端産業育成特別融資制度、設けるのはいいのですけれども、この担保については限度額を外していただきたい。そして、しっかりと見ていただいて大胆な融資を行っていただきたいと思いますが、いかがですか。
  204. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 政府中小企業金融機関においては、融資審査を行うに当たりまして、貸付申込企業からの情報に加えまして、当該企業の取引先、取引銀行、業界関係者等からも情報を収集し、その成長性、発展性という長期的観点にも立って判断をしております。  また、例えば中小企業金融公庫においては、民間金融機関が通常対象としない機械設備等の動産やソフトウエアを担保の対象とするなど、担保範囲の設定や担保評価を弾力的に行っております。特許権の担保化に関しては、技術面、権利面からの評価について特許庁が支援を行っております。さらに、担保が不足しがちなベンチャー企業の育成を目的とした新事業育成貸付制度等において、一定の条件のもとで貸付額の四分の三まで担保徴求を免除する特例を設けております。  以上のように、現行の政策金融においても御指摘のような方向での対応に努めているところでありますが、当省としては、今後、政府中小企業金融機関の融資制度において無担保で融資が受けられる条件や限度額等について、中小企業のニーズにより一層適合した資金供給を図る観点から鋭意検討してまいります。
  205. 大口善徳

    ○大口委員 本会議また当委員会におきまして、大臣からかなり前向きの答弁があったと思います。ですから、私は非常に期待をしておるわけでございますが、今お金が欲しいということで必死になっているベンチャー企業があるということですから、できるだけ早く結論を出していただきたい、そう思うわけでございます。  そこで、民主党皆さん、大変お待たせをいたしまして、法案を見させていただきました。先生方の研さんの跡が非常に如実に出ておるということで、我が党の基本政策とも、全部ではございませんが、方向性としては一致するところもございます。  その中で、若干気になったところが今回の法案でございます。一つは、創業者のキャピタルゲインの優遇税制拡充について、この期間を三年から二年に短縮する、課税対象を二分の一から五分の一にするということでございます。  これについて、先ほども私が述べましたように、アーリーステージにおけるベンチャー企業に対する投資ということが日本の場合は非常に厳しい、そういうことでございますので、株式公開に近い段階における投資というものにインセンティブを与えるものを果たして認めるのはどうなのかな、そういう疑問がございます。これにつきましてお伺いしたいと思います。
  206. 松沢成文

    ○松沢議員 大口先生の御質問にお答えいたします。  新規上場また店頭登録株に係る譲渡所得の特例の保有期間を短くすると投機的インセンティブが高まるのではないかという御指摘だと思いますけれども、まず投資と投機はある意味では表裏一体のものであって、必ずしも別の概念としてとらえる必要はないというふうに思います。ベンチャー企業が発展するには、ある意味でギャンブル的な要素も十分あることを認識すべきだと思います。さまざまな点でリスクの多いベンチャー企業創業者にとって、いわゆる創業者利得の獲得も起業のための大きなインセンティブになるというふうに考えます。  特例の要件を三年から二年に短縮することは、他の株主への譲渡が促進されて株式の流動化が高まって、ベンチャー投資の活性化につながるメリットの方がはるかに大きいのではないかという考えで私たちはこの法案をつくったわけでございます。  以上です。
  207. 大口善徳

    ○大口委員 ただ、だんだんおいしいころになって、色づくころを見てお金を投入するということより、まだ色づかなくても必ずいい実になるという方にもっと向いてほしいな、私はそういうふうに思っているわけでございます。  次に、現行のベンチャー企業支援策についてでございますが、これはある学者もおっしゃっていましたけれども、それは中小企業、ベンチャー企業専門の学者でございますが、非常に複雑過ぎると。昨年の暮れも創業についての法律ができましたし、ことしもまた新しい法律ができましたし、そしてさらに今回の法案で積み重ねていっておるわけでございます。  そういう点で、相談を一つの業としておられる方は、一般の人にわかりにくいから、その分相談をしてあげる方の価値が高まるということが逆説的にあるかもしれませんが、このあたり、政策効果についてはレビューをして、制度の体系化を図るべきではないかと当委員会で私は何回か、かつても同じ質問をさせていただいたのですが、大臣の御答弁をいただきます。
  208. 江崎格

    江崎政府委員 ベンチャー企業支援体系が複雑過ぎるという御指摘でございます。  我が国経済活力を維持して良質な雇用機会を確保するというために、ベンチャー企業の育成というのは大変重要だというふうに私どもも認識をしておりまして、これまでさまざまな支援策を講じてきたわけでございます。こうした支援策がもたらした政策効果を踏まえながら、資金人材及び技術の各面でのベンチャー企業に対する支援策というものを有機的に連携することが必要だというふうに考えておりまして、総合的なベンチャー支援策を積極的かつ体系的に講じているわけでございます。  通産省としまして、地域産業再生会議などを通じまして、ベンチャー支援策の積極的な普及を図っておりまして、これからも利用者の立場に立ちまして、わかりやすい体系的な支援策構築施策の普及に努めまして、数多くのベンチャーが輩出するように努めていきたいというふうに思っております。
  209. 大口善徳

    ○大口委員 次に、ベンチャーの育成の中で、新事業創出促進法、いわゆる日本版SBIR制度について、昨年法案が通って二月からスタートしているわけでございますけれども、そういう国の特定補助金ということは非常に有効であろうと思います。  ただ、さらに国の委託研究につきましても中小企業に十分配慮すべきだ、私はこういうふうに思うわけでございます。中小企業だって、技術力のあるところもたくさんございますし、もっともっと国の委託研究について中小企業に配慮すべきである。これについてはいかがですか。
  210. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 先生指摘のSBIRの対象の特定補助金という制度がございますが、これは特定補助金等という呼称になっておりまして、委託費も認められてございます。具体的には、平成十一年度に指定された三十八種類の特定補助金等がございますが、そのうち二十は委託費になってございます。今後とも、この特定補助金等の種類をできるだけふやして、また中小企業向けの支出目標額の増額を図るなどSBIRの充実に努めてまいりたいと思います。
  211. 大口善徳

    ○大口委員 これも民主党さんにお伺いをしたいと思いますが、今回の民主党さんの案におきましては、要するに特許権の取り扱いについて、通常実施権の無償許諾ということを規定されている、あるいは時価よりも安い額で許諾というふうに規定されているわけでございますが、政府法案の中にバイ・ドール条項というのがある。これはその実施権ではなくて、特許権自体を民間企業に保有させる。こういうことで、どちらかというと、やはり特許権そのものを移転させた方が国の委託研究ということの活性化にはいいのではないか、そういうふうに思うわけです。  そしてまた、民主党さんのように通常実施権だけ与えるということでありますと、民間とそのほかの研究委託を受けたところと別の民間のライセンスとのやりとりとか、そういうことに参加できないという部分もございます。  そしてまた、第三者によって侵害された場合、実施権の場合には侵害訴訟を起こすことができないということもございますので、むしろこの点は、政府案とそれから民主党さんの案とどちらがいいのかというと、政府案の方がいいのではないかな、こう思うんですが、いかがでございましょうか。
  212. 松沢成文

    ○松沢議員 大口委員指摘のとおりだと思います。  SBIRに指定された企業政府から委託される、あるいは特定補助金をもらう、それによって得た技術の特許権の処遇、私どもの方では国が持って、その中で民間事業者が使う場合には無償あるいは安く使わせてあげる。政府案は、ある意味で一歩進んで、アメリカのバイ・ドール法に倣って民間事業者に所属させるということでありまして、確かに一歩政府案の方が進んでいるのです。  私どもは、今回の法案は、起業家支援の見地から、議員立法として取り急ぎまとめたものでありまして、民主党の商工部会の中に知的財産権戦略小委員会というのを設けて、この特許権の問題についてはずっと議論をしてまいりました。今回、SBIR制度をより充実させるということでこういう法案にしたのですが、率直に申し上げまして、政府案のいわゆるバイ・ドール条項の部分については評価をしております。  したがって、まず我々の案をどうにか成立させていただいて、そして、かつ政府案とうまく整合性を図っていただいて、前向きのベンチャー支援策、研究活動の活性化を実現させれば、日本経済にとっても産業競争力強化にとっても最大の効果が得られるというふうに考えておりまして、ぜひとも、公明党の皆さんにおかれましても、我が党案についても御理解を示していただいて、賛成をしていただければと思います。
  213. 大口善徳

    ○大口委員 非常に率直な御答弁でございまして、本当に人柄をしのばせる答弁でございます。そういう点では非常に好感を持つわけでございますが、いろいろ検討をさせていただきたい、こう思っております。  また、中小企業やベンチャー企業の振興に当たって、一万六千とも言われる国有特許があるわけですね。そのほかに、休眠中の、大臣もおっしゃいましたが、四十万件ぐらいの特許があるわけですけれども、せめて国有特許について中小企業が活用できるようにすることが非常に大事だと思うのです。工業技術院だけでも一万件あるわけでございますから、ぜひともこれは積極的に取り組んでいただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  214. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  研究活動の活性化、そしてその成果の活用の観点から、中小企業、ベンチャー企業を含む民間企業に広く国有特許の活用を促すことは極めて重要だと思っております。このため、本法案において、従来、国に帰属することとなっております国の委託研究開発から生ずる特許権等を受託者に帰属させ得ることといたしたのが第一点でございます。  それから第二点、国立試験研究機関自身の研究成果にかかわる特許権等については、民間企業における事業化をより一層促すために、政府として、国立試験研究機関の研究者個人への権利の帰属を認めるとともに、国立試験研究機関と共同研究を行った民間企業に対して特許の優先的な実施を認める措置を講じております。  また、通産省におきまして、既に工業技術院の試験研究所の研究成果として国有特許となっているものについて、民間への移転を促進するため、新たに特許流通に精通した者を本年八月一日より配置することといたしております。このようなリエゾン機能の充実を含めて、民間への国有特許の情報提供に万全を期してまいりたいと思っております。
  215. 大口善徳

    ○大口委員 次に、我が党も、基本政策におきまして、二十一世紀は女性の世紀だということで位置づけております。そして、その中で、女性が持っているすばらしい特性、そういうものを生かしていただいていろいろな業を起こしていただきたいな、そう思っておるわけでございますが、実際、今までの質疑にもありましたように、女性であるということに対して、半分の方が不利であると感じておられるわけでございます。それは、いろいろな専門知識だとか技術の問題もあるでしょうし、また資金調達において非常に厳しい部分がある、こういうことが現実の姿であります。  男女共同参画社会基本法、さきに成立したわけでございますけれども、その精神に立って、アファーマティブアクションといいますか、やはり現実の格差というものに対して、ある程度この格差を是正するために、あえて女性創業者あるいは創業を希望する女性に対して、いろいろな情報提供ですとかそういうことも当然として、さらに、ファンド等をつくってエクイティーによる投資、あるいは公的な融資はことしからされているということでございますけれども、さらにその融資の特別保証枠、そういうことも大いに進めていただきたい、私はこういうふうに思うわけでございます。  民主党皆さんも、方向性としては、この部分は非常に同じような方向の部分がございます。このことについて御答弁を願います。
  216. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 先ほども御質問ございましたけれども、創業をしたいという女性はふえてきておりますが、それでも創業者に占める割合はまだ三・五%でございます。  他方、アンケートによれば、女性であるがゆえに不利だと感じた方は四四・五%。さらに、その内訳を見ますと、金融機関からの借り入れ困難等融資に関することが三〇%、さらに、女性であるために仕事への信頼度が低い等信用に関すること、これが二六・九%。ともに同じような障害ではないかと思います。  今年度から女性のための貸付制度をつくりました。これは、借り入れ時より一年間は利息の支払いを据え置く制度でございます。この四月から始めまして、四月に二十六件、約一億円、五月に六十五件、二億五千万円と出ております。  こういう制度、それから、当然社会の雰囲気といったものもございましょうけれども、私どもとして、女性を含めた起業家の育成に引き続いて積極的に取り組んでまいりたいと思っております。     〔委員長退席、岸田委員長代理着席〕
  217. 大口善徳

    ○大口委員 せっかくですから、民主党さん、短目でちょっとお答えになってください。
  218. 島聡

    ○島議員 女性起業家支援の必要性は、本当に今公明党さんがおっしゃったことと私ども全く軌を一にしておるわけでございます。  政策の一致がまず基本とたびたびあちこちで言われているわけでございますが、ぜひともこの法案を通させていただきまして、せんだって私どもで起業家支援シンポジウムというのを行いました。そのときに、女性起業家の方がたくさんお越しいただきまして、きょうこの場所でこのような答弁をするということを、私の方からインターネットのメール、ファクスを通しましてお知らせをいたしました。その際にも、私どもと公明党の基本政策が一致しておりますので、きっとそれは賛成の方向に行って実現するでしょうというふうに伝えておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
  219. 大口善徳

    ○大口委員 一部一致をしておるということは認めますが、全体としてはいろいろな部分で議論しなきゃいけないことがある、こういうふうに思っております。ですが、方向性は一致しているということは認めたい、こう思うわけでございます。  もう時間もそろそろなくなってまいりました。今回、この法案ができる前、いろいろと重厚長大産業救済というようなことが言われ、また、過剰な土地について、企業救済するための仕組みをつくるのではないか、こういう話もございました。しかしながら、先日の本会議におきまして、総理が明確に、企業救済のために土地を公的資金で買い取ることは適当でない、こういうふうに明言をされましたので、私はこの発言を重く受けとめてまいりたいと思います。  そこで、これは建設省にお伺いしたいと思いますが、住都公団、今度新しい公団になりますが、住都公団そして民都機構、民間都市開発機構における土地の取得の状況、特に工場跡地における土地の取得の状況についてまずお伺いしたいと思います。
  220. 山本正堯

    山本(正)政府委員 お答えさせていただきます。  住宅・都市整備公団は、都心部の細分化されました虫食い地などを取得いたしまして、これらを整形、集約化し、基盤整備を行った上で民間等に売却する、いわゆる土地有効利用事業を平成十年度より開始をいたしております。十年度に、件数といたしまして七十件、総面積で二十一・三ヘクタール、総額約一千九十億円の土地を取得したところでございます。そのうち工場跡地等は、件数で五件、総面積で八ヘクタール、総額で約百十億円となっております。  また、民間都市開発推進機構につきましては、平成六年三月の業務開始以来十年度末までの累計でございますが、件数で百六十二件、総面積で二百七十四・二ヘクタール、総額七千百八十億円の土地を取得したところでございますが、このうちの工場跡地等につきましては、件数で二十五件、面積で七十六・四ヘクタール、総額約一千二百七十億円となっておるところでございます。  以上でございます。
  221. 大口善徳

    ○大口委員 いずれにしましても、こういう土地の取得については、真に都市開発、町づくりの推進に有効なものだけを対象にすべきであろう、こういうふうに思いますが、それが一点。  それから、工場跡地で有効利用をするに当たって、用途地域の変更について非常にネックがございます。それについては、当然、地元の意見といいますか、それを尊重していかなければいけないわけでございますけれども、そういう有効活用についての新しい試みといいますか、そういうことについてスタートされたようでございますから、その二点についてお伺いしたいと思います。
  222. 山本正堯

    山本(正)政府委員 一点目でございますが、先ほど申し上げましたように、住宅・都市整備公団の土地有効利用事業、虫食い地や公共施設が不十分な低未利用地など、現状では民間事業者による都市開発事業を行うことが困難なものにつきまして、公団みずからが整形、集約し、公共施設等の基盤整備を行いまして、当該土地の有効利用が可能となるような条件を整えまして、具体的な都市開発事業を実施しようとする民間事業者に譲渡するなどの市街地の整備改善を図るために取得したものでございます。  また、民間都市開発推進機構による土地取得業務につきましても、その土地が優良な民間都市開発事業の適地で、事業化の見込みが高いものについて取得するものでございまして、いずれも、具体的な事業計画、事業構想があるものについて対象にしておるということでございます。  また、企業救済のため公的資金で買い取るというようなものではございませんでして、将来の優良な民間都市開発事業の適地となり得るような土地かどうかを厳正に判断いたしまして、あるいはまた、その価格につきましても価格審査会等の適正な価格の審査を経まして、適正な価格で先行的に取得しておる、こういうことでございます。  今後とも、公団あるいはまた機構の土地取得業務につきましては適切に活用してまいりたいというふうに考えているところでございます。  それから、二点目の土地利用転換のためのいろいろな手続でございますが、御案内のとおり工場跡地の有効活用のためには、いわゆる都市計画法によります工業専用地域等の用途地域の変更等が必要になってくる場合がございます。  このため、先週七月二十三日に、知事及び政令指定市長あてに通達を出させていただきました。中身でございますが、用途地域の変更を円滑に行うこと、あるいは用途規制の特例許可の活用を十分図ること。二番目には、新たに用途変更先導型再開発地区計画というようなものを活用するといったようなこと。あるいは、必要に応じまして、国、地方公共団体、土地所有者等で構成する協議会を設けるとともに、都市再構築総合支援事業等の活用を図るといったようなことを要請したところでございます。  特に今先生が御指摘いただきました新しい制度ということで、今回、用途変更先導型再開発地区計画という制度を創設させていただきましたが、従来、開発計画が未確定な土地につきましては用途規制の緩和が非常に困難であった、工業専用地域の用途変更が難しかったということでございますが、この運用を改めまして、国、企業、地方公共団体等で協議いたしまして、将来の大まかな土地利用について合意が得られた場合には、用途地域の変更に先立って幅広い用途の建築を許容しようということで、実質的な土地利用転換を図ることが前倒しで可能になった、こういう制度でございます。  今後、地方公共団体においてこれらの制度の十分な活用が図られることを私どもも期待し、努力してまいりたいというふうに思っておるところでございます。  以上でございます。
  223. 大口善徳

    ○大口委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  224. 岸田文雄

    ○岸田委員長代理 中野清君。
  225. 中野清

    中野(清)委員 公明党・改革クラブの中野清であります。  産業活力再生特別法案につきましてお伺いいたしますが、今我が会派の大口委員が広範に質問いたしましたので、私は特に中小企業問題に絞ってお伺いをしたいと思います。  今回の法案は、いわゆる産業競争力会議の結論を踏まえましてやっておるわけでございますけれども、大企業優先とか裁量行政の復活とかいう批判もございますし、特に、計画策定能力に劣るところの中小企業が本当に利用できるかという疑問がございます。  そこでお伺いいたしますけれども、本案での中小企業の位置づけはどのようになっているか、お伺いいたします。  また、中小企業産業活力再生対策として、具体的に今回の法案では、第二章において、中小企業者及び中小企業への支援、開拓のためのスキーム、または創業者及び中小ベンチャーに対する特別保証と設備近代化貸付制度対策の追加が主なものだと言われておりますが、そう認識してよいか。これらの点についてはなるべく簡単にお答えを願いたいと思います。
  226. 江崎格

    江崎政府委員 この法案を立案しましたときの基本的な認識でございますけれども、我が国中小企業は全事業所の九九%を占めておりますし、また従業員でも約三分の二を雇用しているということで、我が国経済において極めて重要な役割を果たしているという認識でございます。本法案では、このような中小企業の重要性にかんがみまして、中小企業に対して強力な支援策を講ずるということにしているわけでございます。  具体的に申し上げますと、まず第一に、この法案では、事業者による事業の再構築円滑化するための各種支援策を講じているわけでございますけれども、中小企業につきましては、この法案に基づく施策を初めとしまして、他の法律などに基づく施策もあわせまして、必要な施策を総合的かつ効果的に推進する旨の規定を設けております。  それから第二に、中小企業の新事業開拓というものを支援するために、今先生指摘でございますが、信用保証制度それから無利子融資制度拡充などを中心としました支援策を講ずることにしております。  いずれにしましても、この法案に基づく支援措置と、既存の各種中小企業施策をあわせまして、中小企業者に対する施策に万全を期してまいりたい、このように考えております。
  227. 中野清

    中野(清)委員 いろいろ伺ったわけですけれども、では少し具体的に中身についてお伺いをしたいと思うんです。  今おっしゃるとおり、特に信用保証関係設備近代化資金の貸し付けという問題がありますし、特に特例を設けておりますね。産業活力再生というために、新規開業そしてまたいわゆる中小企業、ベンチャーの活性化をする上で、特に昭和三十一年以来の長い歴史を持つところの設備近代化資金制度というものを活用して、例えば期間を長くするとかいろいろ条件をつけましたけれども、これを活用しようとした理由は何か。  例えば、無利子制度なんだから五年を七年にしたというこの根拠は何か。そして、今回の施策で大体何件ぐらい中小企業に対して適用をして、全体でどの程度を考えているか。また具体的に、これは申し込みから貸し付けを実行されるまで大体何カ月ぐらい考えていらっしゃるか。これはちょっと大事な話ですから、答えてください。
  228. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 先生御質問の第一点でございますが、設備近代化資金制度をなぜこのベンチャー対策に使うことにしたのかという点でございますが、これは既に御高承のように、無利子の融資制度でございますので大変有利な制度でございます。これを中小ベンチャー、創業者に活用できるような道を開いたというのが我々の思いでございます。  それから、具体的に本施策でどの程度の企業が適用になるかという点でございますが、これはなかなか推測が難しい世界ではございますけれども、仮に算数計算でいろいろ予測をしてみますと、過去の貸付実績とか原資に当たる特別会計の状況から見ますと、二千件弱ぐらいの利用が可能ではなかろうかと考えております。  それから、実際、申し込みから利用可能になるまでどのぐらい手続に時間がかかるかということでございますが、昭和三十一年以来やっております本制度の今までの実態からしますと、三カ月程度かかっております。本制度の趣旨もかんがみまして、できるだけ早期にその利用が可能になるように迅速化を図ってまいりたいと考えております。
  229. 中野清

    中野(清)委員 私は、特に大臣に聞いていただきたいんですけれども、今のこの活用については、近代化資金制度を決して悪いと思っていない、非常にいい制度だと思っていました。しかし、今回のいわゆる産業活力再生、こういう緊急のテーマにおいては、ちょっと私は問題があるんじゃないかと思うんですよ、はっきり申し上げまして。制度は悪くないんですよ。  具体的に申し上げますと、今二千件ぐらいとおっしゃいましたけれども、まさに今日までの貸し付けの実績というのは、例えば貸付枠というのが五百十二億一千七百万円ぐらいだと言われておりますよ。ところが平成七年の貸付件数は三千七百六十一で、八年が三千五百四十五、九年が二千六百八十五。そして貸付金額も、三百四十八億から三百四十七億、そして平成九年には二百八十五億七千五百万円というふうに、件数も金額も減っている。これは、ある意味ではこれと一緒に考えなきゃいけないのは、同じ目的でいわゆる設備貸付制度というのがありますけれども、これは今回関係ありませんけれども、そういう点があります。  ですから私は、先ほど言ったように、この近代化貸付制度が悪いと言っているんじゃない。非常に意味があった。しかし、今回の産業活力再生という立場において見ると、いわゆる生産効率の追求のみでもって本当にいいんだろうかと考えますと、もう一回お伺いしますけれども、長官、この制度が持っている現状を本当に把握したのかどうか、欠点はあるんじゃないんですか。それでまた、これはあなた方だって審議会等で今検討しているはずだと思うんですけれども、いつまで続けるつもりなのか、この際はっきりしてください。
  230. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 設備近代化貸付制度、昭和三十一年、大変古くに設立された制度でございます。それなりに制度的に見直しをする時期になっておりますので、現在、六月から中小企業政策審議会で、先生も御高承のように中小企業政策全般の見直しをやっておりますが、その一環で、本制度についても新しい血を導入したいと考えております。  ただ、今御指摘のように、再生法の中でこの設備近代化資金制度を使ったのはどうもいかがなものかという御指摘がございましたが、私ども、実績が落ちてきてはおりますけれども、例えば特定ベンチャー中小企業につきましてはこの融資割合を三分の二に引き上げるとか実効金利を実質的に下げる、そういった形で改善をしながら本制度の活用を図っておりますので、本制度につきましては多くの中小企業者から活用いただけるものと期待しております。
  231. 中野清

    中野(清)委員 今長官がおっしゃいましたけれども、それじゃ、五年から七年で本当にいいんだろうか。それは先ほど御答弁がありませんでしたけれども、答えていただきたいと思うんですよ。  それから、貸付限度額も四千万でしょう。そうしますと、これで本当にいいんだろうか。しかも、二分の一は自己資金と決まっているわけですよ。これはどうなんですか、答えていただきたい。  それから、あえて言いますと、これは基本的には、業種別にこういう設備が必要だという、全部細かく決まっていて、それをやるわけでしょう。それで、先ほど、このいろいろな事業の中に、そうじゃないんだというので、中小企業とみなすという事業者の定義があって、いわゆる新事業創出促進法ですか、それから創造的事業活動促進に関する臨時措置法とか、それから経営革新支援法とか総合事業団法とかというふうにありますよ。そういうのを入れたって、現在わかっているだけだって、その一番最後のものが約五百件、それから中小企業の創造的事業活動に関する臨時措置法、いわゆる中小創造法で約五千件だ、あとはこれからやりますという話ですね。そうしますと、では今のこの四千万の額が本当にいいのかどうか。それから、業種的な枠がどうなんだろうか。  それから、特に申し上げたいのは、この制度は全部地方公共団体に丸のみでお願いしているわけですよ。そうすると、先ほど私はちょっとお伺いしたんだけれどもお答えがありませんから言いますけれども、本当に何カ月かかるんだという話だってあるわけですよ。しかも、無利子でもってやるということは、国とすれば補助金並みの会計監査が必要だ、これは当然なんですよ、実際の話。そのことは悪いことじゃない。だけれども、産業活力再生する立場でもって、本当に大丈夫なんですかということが今の話なんです。  どうかその点については、今のこの法律を使うことが必ずしも、今やむを得なかったというのは無利子という概念だけじゃないですか。そういう点でちょっと問題がありますので、その点は、簡単で結構ですからはっきりさせてください。
  232. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 幾つか御指摘をいただきました。  一点としましては、貸付限度額の四千万、これがもう少しないと足りないんではないかという話でございますが、これはもちろん、今、中政審で議論をしている最中でございますけれども、その関係で申し上げますと、最近の一企業当たりの平均貸付額、これは約一千万円となっております。また、実際運用していただいている都道府県からの御意見でも、貸付限度額については適切であろうというお話もいただいておりますので、決して四千万が少ないということにはならないかと思います。  それから、償還期限、現行五年を再生法案絡みにつきましては七年にするということでございますが、これは、七年が、六年がいいのか九年がいいのか十年がいいのか、いろいろあろうかと思いますけれども、今までの相場といたしまして、設備近代化制度償還期間特例につきましては、七年物というのは、先生も御高承のように一般化しております。こういったことによって中小企業者の償還負担を軽減しようという考え方でございます。  ただ、以上のように申し上げましたが、設備近代化資金制度につきましては、今まさに中政審の中で、先生の御指摘も踏まえて、今後の中小企業者のために、より有意義制度として生まれ変わらせようということで議論をしております。その経過も今後また見守っていただきたいと思います。
  233. 中野清

    中野(清)委員 私は、今長官がおっしゃいましたけれども、せっかくそういうような制度を見直そうという機運の中で、それを使おうということについては理解できない。  特に、この産業再生という感覚の中には、当然、借入依存度というものが、日本の国は欧米に比べても高いんですよ。この間もちょっと申し上げましたけれども、五八・八%だ。アメリカが一二・九でイギリスが一二・三だ。非常に高い。しかも、自己資本比率だって、逆に、当然の話ですけれども、中小企業が一三・三%だ。大企業でさえ二五%だ。それで、イギリスは三七でアメリカは三六だということになってくれば、これは基本的な話なんですよ。そうすると、単なる一制度の話じゃないんだ、そのことだけはひとつ御理解を願いたいと思うんですよ。  そういう中で、これは実は大臣に特にお伺いしたいんですけれども、先ほど我が党の大口委員さんからも、設備融資制度の新設についてのお伺いがございました、長官からは必ずしもいい返事がなかったわけでございますけれども。  私は、今お話を伺っている中小企業庁の認識というのは、一千万とかというお話でございましたけれども、非常に甘いと考えております。中小企業が今いわゆる投資マインドが低い、それも事実です。ですけれどもその中には、この間堺屋長官もおっしゃいましたけれども、やる気がある、当然投資をしたいという企業とそうじゃない企業といわゆる二元化されている。  そういうふうになったときには、やろうという方についてはもっともっと応援しなきゃいけないだろうと考えるんです。ですから、そういう意味での中小企業産業活力というものを投資によってやらなきゃいけない。特に、御承知と思いますけれども、政治が中小企業対策をやる場合には金融対策というのが最大のものなんですよ。それが一番大きいというのはもう大臣御承知のとおりなんです。  そうしますと、私は先ほどの大口さんの答弁についてははっきり言って了解しておりませんから改めて言いますけれども、大口先生は無担保無保証とおっしゃいましたけれども、私は無担保じゃなくてもいいと思います。しかし、できれば保証はやってもらった方がいいと思うんです。ですから、保証協会がつけてもらっていいと思うんです。しかも期間も、十五年とか二十年とかという期間だとか、それから、これは後ほど申し上げますけれども、なるべく低利でもって、それから、貸付限度額も大きくなきゃ困るという話は現実にあるんですよ。  例えば中小企業公庫だって限度がありまして、四億八千万が中小公庫ですよ、国金の世界では四千八百万ですけれども。そうすると、特に今回の場合においていえば、この中小公庫、商工中金というものを中心とした設備投資という感覚があるわけです。もう一つは零細企業さんのいわゆる国金の世界というのがあります。  ですから、そういう中で一千万だという感覚は、先ほど私は冒頭に、中小企業対策というものを今回のこの産業再生という大きなスキームの中で何か矮小化しちゃっているのじゃないか。はっきり言って、中小企業に対する対策は何だったんだ、極端な話がなかったんじゃないか、そういうふうに言わざるを得ないというような状況と思いますけれども、そういう意味で、この新しい資金制度について御検討する気があるかどうか、大臣にお答え願いたいと思います。
  234. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 我々が持っております中小企業に対する感覚よりも、私は、先生が持っておられる中小企業に対する感覚の方がより実情を反映しているというふうに先ほどから先生の質問をお伺いしながら感じておりました。  今回出しました近代化資金というのは必ずしも時代の要請にこたえているかどうかということはもう一度問い直す必要がありますし、また、中小企業支援するための資金面からのどういう新しい制度を今後構築していくのかということを含めまして、少し時間をいただいて検討させていただきたいと思います。
  235. 中野清

    中野(清)委員 大臣が御検討いただくと言うんですから、お願いしたいと思います。  私はもう一回大臣に申し上げたかったのは、今通産省が、例えば経営革新支援法というので、新しい支援貸し付けというものを七月の十五日から始めました。これは、七億二千万円というのを中金でやっていますよ。それから中小企業事業展開支援資金、これは三人以上の雇用というのでやっていますけれども、二億七千万円だ、評判がいいと言われていますよ。それから、もっと評判がいいと言われているのが最近では、先端産業育成事業というんですか、これは、今の二つはいわゆる低利といいますか財投並みの二%だ、それが一・五%、超低利でもってやっているので、これなんかは物すごく評判がいいんです。  私が申し上げたかったのは、今まで通産省は一生懸命やってきたんですよ。ところが、全部ばらばらでもって、業界別とか対象別とかで全部やってきて、国民にとってこんなにいい制度があったって、それはベンチャーの一部だけとかこれはどこだけですとかという話でもって、はっきり申し上げて、大臣が本当に英断でもってやられた過日の特別保証のように、本当に助かったという印象がないんです。  ですから、私は、この際ぜひ大臣にお願いしたいのは、こういういろいろな制度もある、しかしこれは、やっているといったってそれぞれの業界でありそれぞれの特定の局面だけなんだ、それでは国民、中小企業全体が投資マインドが上がるわけはないですよ。  ですから、だったらこういうものも全部もう一回御検討いただいて、もう一度、この法律があったから、この部局があったから、この課があったからというようなことじゃなしに、もう一回特別保証のような、今のこの時期に大変なんだ、それだったらばこの投資意欲というのを、投資マインドを高めるにはどうしたらいいか。当然それは金融なんです。そうなれば、それができるときには、申しわけないけれども、さっき言った五年が七年だとかそんな程度じゃだめなんですよ。それから、金額も四千万じゃ話にならないんです。  ですから、それを考えたときに、こういう意味での総合的な対策というものは、ぜひ大臣、今与謝野大臣が、少なくとも運転資金世界ではやってきた、ですから今度は設備資金世界でもこのようなもので、ああ、なるほどやってくれたんだな、政府が本当にやる気なんだということをやるべきだと私は思いますけれども、いかがでございましょうか。ぜひ大臣の御見解を伺いたい。
  236. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 実は、中小企業資金については制度が非常にたくさんございまして、都道府県の窓口に行きますと、中小企業関係の融資の手引書を下さるくらいいろいろな種類のものがございます。それはそれなりに重要な役割を果たしてきたと思いますが、やはり時代のニーズに合っているかどうかということは、先生指摘のように一度考える必要がありますし、中小企業基本法等も中小企業庁長官が私的な諮問機関で随分勉強してまいりましたので、やはり中小企業制度自体、また中小企業に対する融資制度、貸付制度等万般、総合的にもう一度見てみる必要があるというのは先生のおっしゃるとおりだと思いますので、少し時間をいただいて検討させていただきたいと思っております。
  237. 中野清

    中野(清)委員 大臣、ではよろしくお願いいたします。  それと、今金融で必要なのは、今言ったそういう努力と一緒にもう一つの側面があります。それは、過日私が申し上げたんですけれども、いわゆる融資審査制度の確立といいましょうか、これがあると私は思うのですよ。当然これは、先ほど来いろいろNASDAQの話もございましたけれども、直接金融のいわゆる格付機関、そういったものも連動するはずでございますけれども、この必要性をどういうふうに考えていらっしゃるか、またいつまでにつくるべきか、今やるべきことは何だということをお伺いしたいと思うんです。  私は、これは少なくとも国金のベースじゃないと思いますから、少なくとも中小公庫や商工中金以上の取引企業でこれは当然だと思いますし、担保至上主義からの脱却、当然なんですよ。そういう審査の能力というものをつくらなければいけない、そういうことについてこれは考えなければいけないと思いますけれども、御見解を伺いたいと思います。  特に私は、そういう点については、保証協会とか中金だとか商工中金とか興銀だとか、そういういろいろな人たちがまず研究会でもつくってそういう機関をつくる、スタートをしてもらわなければ困ると思うんですけれども、いかがでしょうか。
  238. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 先生の御質問は、健全な中小企業の育成、直接金融の環境整備という御質問と理解してお答えいたしますが、中小企業の財務情報については、大企業の場合に比べまして、金融機関投資家が信頼性の高い情報を低いコストで入手することが困難でございまして、このことは中小企業資金調達を困難ならしめる大きな要因の一つとなっております。今後、中小企業資金調達手段の多様化、円滑化を図るため、中小企業の財務評価やリスク情報提供のための基盤整備は重要だというふうに考えております。  しかしながら、我が国の金融機関等においては、中小企業向け貸出債権の貸し倒れ率等に関するデータの蓄積がほとんど行われておらず、現時点ではインフラが極めて未整備であるため、本格的な財務評価情報提供の実施が可能となるまでには相当の時間を要すると考えられます。また、個々の中小企業の財務内容の格付を行うことは多大のコストを要し、ビジネスとしても公的サービスとしても余り現実的でないと考えております。  以上を踏まえまして、金融機関等の審査機能の強化に資するデータベース等のインフラ整備を図ることが重要であると考えており、今後積極的に研究を進めてまいりたいと考えております。
  239. 中野清

    中野(清)委員 時間がありませんから、先ほど来中小企業基本法の話がございましたから、二点だけお伺いをしたいと思います。  もう御承知のように、製造業が一億から三億とか、従業員の問題とかいろいろとありますけれども、私は、今までの中小企業基本法の考え方の中には、いわゆる範囲というものに対して、資本金とか従業員といういわゆる量的規定にとどまっている、そういうのが実態になかなか対応できないと思っております。  そこで、アメリカの小企業法では、中小企業は独立的であるとか市場支配的でないといった質的要件、そういうものについて話があるわけでございまして、例えば、中小企業は大企業の関連会社や子会社じゃなくて、別に独立した所有と経営がされるものだとか、中小企業を定義する場合には従業員と売上高を基準として使われるとか、または基準が産業別にいろいろと変わってくるはずだということを言っております。このような考え方が基本法の議論にあったかどうか、このような考え方で改正するお考えがあるかどうか、まずお伺いをしたいと思います。もう一問したいと思いますので、なるべく簡単に御答弁をお願いします。
  240. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 中小企業の定義についてでございますけれども、現在の状況を踏まえまして、現在、中小企業の定義については、独立性といった質的要件を含めまして、中小企業政策審議会において議論が進められているところでございます。その議論の結果を踏まえまして、引き続き検討を進めてまいりたいと思います。
  241. 中野清

    中野(清)委員 中小企業をめぐる環境というものは、多様な、いろいろな中小企業の増大とか経済のグローバル化とか、いろいろ要因がありまして大きく変化しているというのは私どもも承知しております。  ですから、経済的弱者という画一的な中小企業観を根底とした不利の補正の政策の妥当性とか有効性については、市場原理の尊重とか、経済的規制は自由、社会的規制は必要最小限という視点のもとに再度検証をして今後検討したいというのが中小企業政策研究会の最終報告ではなかったかと思うんです。これに基づいて、市場参入の確保とか適正な取引条件の確保について、施策のあり方として、例えば組合カルテルの見直しとかを打ち出しております。  そこでお伺いしたいのは、大企業を一〇〇としますと、中小企業の賃金格差は六五なんです。付加価値生産性は五一です。それから、資本装備率は五七でして、依然としてこの格差は大きいのです。中小企業経済的弱者じゃないという中小企業観というものはどういう理由からなってきたか、私はお伺いしたいと思うんですよ。  それから、むしろ規制緩和とか金融ビッグバンによって新二重構造とも言えるような、例えばグローバル化とか情報の問題とかいろいろありますね、ということで現象も起きておりますけれども、中小企業に対する御認識というものを改めてお伺いをしたいと思うんです。  もし時間がありましたら、今、そういう立場でもって、組合に対しても相対的な意義を失っているという認識があるようでございますけれども、私は、これは事実認識に欠けているんじゃないかと思うんですよ。最近、過去十年間の組合の設立なんかを見ますと、設立が解散を上回っているんです。ところが、企業は御承知のように廃業が開業を上回っている。そうなってきますと、組合に対する期待というものは非常に大きい、この点についてはどう考えているかお伺いしたいと思いますし、その関連では、当然、中央会の指導体制の強化があるわけでございますけれども、これも御答弁いただければありがたいと思います。     〔岸田委員長代理退席、委員長着席〕
  242. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 まず初めに、五月に発表されました中小企業政策研究会の最終報告の内容につきまして、中小企業をこれまでのように弱者として見るのではなくて、日本経済構造改革を進めるキーパートナー、キーパーソンであるというとらえ方をしろという議論でございます。  これは、正確に申し上げますと、近年の中小企業を取り巻く環境の変化等を踏まえまして、中小企業をこれまでのように画一的に弱者としてとらえるのは不適切であるという認識のもとに、ことしの白書でも指摘をしてございますが、多様性のある存在として位置づけることとしているわけでございます。  その上で、中小企業全体を平均としてとらえて一律に施策を講ずるのではなくて、多様な中小企業が持ち前の機動性と創造性を発揮できるように、資金面、技術面、人材面、情報面などの経営資源確保について競争条件を整備して、環境変化に対応して経営の向上を図ろうとする中小企業者の自助努力を積極的に支援していきたい、そういう考え方でございます。  第二点にございました組合制度についての評価の問題でございますが、私どもも、中小企業等協同組合は中小企業が内外の経済環境の変化等に対応していくために大変重要な役割を果たしてきたものと認識をしております。  特に最近では、異業種の交流事業とか情報提供事業、あるいは異なる経営資源の相互補完を図る事業などを行う組合が増加してきております。政府としても、これらのニーズを踏まえて、中小企業の交流、連携等による経営革新等に向けた取り組み支援していきたいと考えているところでございます。  また、これらの組織化支援策を的確に遂行するためには、指導員の研修事業などを通じまして、有効な組織化を推進するための中小企業団体中央会の指導体制についても充実を図ってまいりたいと考えております。
  243. 中野清

    中野(清)委員 時間が来ましたので質問を終わりますけれども、今定義が仮に拡大されたとした場合、当然中小企業に対する予算はふえると思いますけれども、ぜひ、そういう意味で、これは今までの中小企業に対して光が弱くならないようにお願いをしたいというのを特に大臣に希望したいと思うんですよ。  と申しますのは、今回ふえるとすれば大体一万五千五百社ぐらいだろう、〇・三%ぐらいなんですね。ところが、従業員の数は一〇%ぐらいなんですよ。ですから、今までの中小企業が一企業当たり五・八人だったらば百八十五人と、三十倍なんですよ。ですから、中小企業がふえることによって、中小企業対策という名のもとに中小企業に、その人たちに光が当たることは結構です。しかし、それでもって、逆に、いわゆる零細な企業に対して、これは経済的弱者だからだめだとか、画一的だとおっしゃっているけれども、現実に存在するんですよ。  現実にそういう企業がある以上は、今までだって国の方で、この間の特別保証のときは本当によかったと言われたけれども、特別にそんなにやってもらえないというのがはっきり申し上げて一般の小さな零細企業人たちの本音ですよ。ですから、ぜひそういう点でこれからも頑張っていただきたい、特に大臣に御期待を申し上げて私の質問を終わります。
  244. 古賀正浩

    古賀委員長 吉井英勝君。
  245. 吉井英勝

    ○吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。  私は、最初に、産業活力再生特別措置法案の目的について、供給面の体質強化として、「経営資源の効率的な活用を通じて生産性の向上を実現するため、」というふうにしておりますが、まず、これに先立つ議論の方を少ししておきたいと思うのです。  ことし一月二十九日に閣議決定した産業再生計画の中では、今日の日本経済の問題を「民間需要の大幅な落ち込みによる有効需要の減少に起因する実体経済の悪化が金融システムの機能低下を通じて実体経済をさらに悪化させるという悪循環の中にあり、需要面が経済活動のネックとなる状況」だと指摘をしておりました。  この法案でもそうですし、九九年版経済白書でも三つの過剰ということを問題にしているわけですが、設備の過剰について見れば、これは需要を上回る過剰な設備投資をやり過ぎて過剰設備になったものなのか、それとも需要が落ち込んだことによるものなのか、まず過剰設備という問題から順番に質問に入っていきたいと思います。
  246. 江崎格

    江崎政府委員 今の先生の御質問に直接お答えするということになれば、今、我が国の中で不採算な部門に張りついている設備の中には、景気循環によりまして需要が落ち込んだために稼働率が落ちている、過剰になっているという部分もありますし、それから、構造的な要因によりまして、かつては需要がかなりあったものが構造的要因で需要が低迷いたしまして、それで全体としては過剰感、需給ギャップが生じているという両方のものが入っているというふうに思っております。
  247. 吉井英勝

    ○吉井委員 両方のものとおっしゃるんだが、要するに需要の落ち込みとバブル期の過剰設備投資、基本的にはこの二つということですね。そのほかのことはまた改めて議論しますが。
  248. 江崎格

    江崎政府委員 その二つの要因でございます。ただ、それがどの程度量的に要因を占めているかというのはなかなか難しいわけでございます。
  249. 吉井英勝

    ○吉井委員 第一生命経済研究所のレポートでは、九八年七—九月期の企業の過剰設備ストックは百十五兆円と見て、需要要因は八十七兆円、過剰投資などの分を二十八兆円と試算して、過剰ストックの発生原因は、全体の四分の三が需要要因、すなわち景気低迷による総需要不足によるものだ、残りがバブル期の過剰投資などによる構造要因によるものだとしております。  アジア開発銀行研究所の吉富勝所長も、今の過剰設備は、マクロ的には過大投資の結果でなく需要不足が原因だと指摘をしております。さきの第一生命経済研究所の方は、現局面では総需要刺激策の継続がより重要だという結論を述べております。  今日、成長率を問題にするなら、私は、GDPの六割を占める個人消費の拡大が必要だし、それにつながる対策を何よりも緊急にとるべきだというふうに思うわけですが、問題は、今回のこの法案によって、国がいわば旗を振ってリストラをどんどんやらせていく。大量失業が進めば、当然消費マインドはますます冷え込むことになりますし、個人消費はさらに後退をする。これは大臣がことし二月の予算委員会での私の質問のときにもおっしゃったことですが、やはり不況大運動をやるのと同じことになるんじゃないかと思うわけです。  そこで、大臣のおっしゃる、合成の誤謬を生ずると言ってきたことに、この法案を進めてリストラが進めば、それは結局、合成の誤謬を生ずると言ってきたことになっていくんじゃありませんか。これは大臣に伺っておきたいと思います。
  250. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 これは個人段階の家計でも同じことが言えるわけですが、一家の家計を健全にするということは何を意味するかというと、例えば耐久消費財をまだ使えるからといって大切に使うとか、そういう個人個人の家計を健全化しますと全体としては消費が落ち込むということもあります。ですから、例えば個人の家計の健全化と全体の個人消費の大きさというものは逆の方向に実は行ってしまうわけでございます。  しかし、そうだからといって個人個人の家計を健全化しないかといえば、やはり個人は、自分の将来のことも考え、社会の状況も考え、当然家計の健全化をするでしょう。それは否定できないことであると思っております。  そこで、二つのことをお答えしなきゃいけないのですが、一つは、日本のGDPの中に占める個人消費というのは六〇%から六二、三%だろうと私は思いますが、やはり大きな部分を刺激するということが需要が出てくるということでございまして、とりあえずのこととして公的な資本形成の部分を刺激するということは非常に大事なことであったわけですが、これは一割を切っている部分の話でございますから、八%の部分をどんなに刺激してもそんなにはドラスチックにはふえないというのは、私は、先生の御主張はそのとおりだろうと思います。  ですから、最終的には、需要という面では、当面は住宅とかあるいは公的な資本形成の部分を刺激しておりますけれども、やはり個人の消費マインドが変わりますと、その部分の大きさからいいますと、ここが少し改善されますと需要というのは相当大きく出てくるんだろうと思います。  ただ、昨年からことしにかけて我々が心配していたのは、いわゆるデフレスパイラルに陥るのではないかということを大変心配しておりまして、昨年の十二月の補正予算あるいは今年度の当初予算において財政支出を行うという決断を小渕内閣はしたわけでございまして、その財政支出だけですべて事成れりというふうには実は考えておらないということでございます。
  251. 吉井英勝

    ○吉井委員 公的需要の分野政府の緊急経済対策などその財政支出をふやしても、それはおっしゃったように比率が少ないわけですから、やはり緊急にやるべきことはGDPの六割を占める個人消費そのものを拡大するように取り組むということが大事であって、それを逆に、個人消費もさらに冷え込ませる、国民所得も冷え込ませるようなリストラがどんどん進むということになれば、私は、これは合成の誤謬を生ずるとおっしゃった、まさに大臣指摘したとおりのことになるだろうというふうに思います。  さて、労働の過剰ということも言われておりますが、生身の人間を道具か何かのように過剰と言うのは、私はこれは非人間的な表現だと思うわけですが、いずれにしても、政府、財界が言ってきた労働過剰というのは、これは消費不況で物が売れないために生産活動が停滞して、だから労働力が生かされないという状況なんですよね。  そのことと、もう一つは、これは社会経済生産性本部も指摘しておりますが、やはり過労死を生み出したほどの長時間労働の結果であって、ですから、需要拡大で生産が軌道に乗るということと、生産性本部の方は残業ゼロで二百六十万人の雇用ということを言っておりますが、残業をゼロにするなどで雇用拡大が図れる。本来、労働が過剰だと言っている問題もそこにこそメスを入れて切り込んでいくべき問題じゃありませんか。
  252. 江崎格

    江崎政府委員 私どもが今回提案しております法案で考えておりますことは、それぞれの企業におきまして、非常に生産性の低い不採算の部門に設備なり人が固定化している、張りついている。このことが、企業にとってもまた全体としての日本経済にとっても非常に効率を悪くしている、生産性を低くしている、これが日本経済の中長期の発展ということを考えると非常に大きな問題で、それを生産性の高い部門に、企業の中であるいは企業の枠を超えて移そうということを考えているわけでございまして、何か一定の過剰雇用というものを念頭に置いてそれを何とか解消するということを目標にしているものではないということを申し上げたいと思います。
  253. 吉井英勝

    ○吉井委員 生産性の問題よりも、やはり需要の落ち込みによって本来の労働力が生かされていないというところこそ、私はもっと考えなければいけないと思います。  債務の過剰ということも言っておりますが、これははっきり言って、バブル期の過剰な設備投資と、それから、あの時代も含めて、本業以外の財テクなどの投機に走って失敗したことがこれを生み出したことは明らかです。だから、その責任は結局バブルに踊った経営者の責任であって、私は、本来これは今リストラの対象にされようとしている労働者にはないと思いますが、この点はどう考えているのですか。
  254. 江崎格

    江崎政府委員 この法案提案しております各種施策の中で、債務を直接減らす部分にかかわる部分というのは債務の株式化という点でございますが、これは国が何か音頭をとってやるということではなくて、まさに当事者であります事業会社とそれに資金を融資している金融機関との間で再建ということを考えた場合に、債務を株式化した方が将来を見ていいという場合に初めて両者が合意をして行われるということでございまして、あくまでも民間ベースで行われる。それに対して環境の整備をしようというものでございます。
  255. 吉井英勝

    ○吉井委員 今おっしゃったことはまた改めて議論しようと思います。銀行への公的資金六十兆円の迂回したものによって借金の一部棒引きという形がとられるわけですから、その議論はまた改めて行おうと思っております。  次に、今回この法律を考えていく上で、産業競争力強化だということが随分言われてきました。今もおっしゃった生産性の問題もそうなんですが、それじゃ、この日本の大企業競争力はないのか。今それが非常に落ち込んでいるのかということを少し資料で見ていきたいと思うのですが、お手元に資料を配らせていただいております。  その最初のページの表一ですが、大企業輸出上位三十社の表を載せました。お届けしております。これは、九八年度で一番新しい数字で見ても、トヨタ自動車、本田技研、ソニー、日産自動車、松下電器など、こういう企業が上位三十社に入ってくるわけですが、その競争力というのは一九九五年当時に比べて、九八年で、輸出額と、輸出総額に対する上位三十社の輸出額及びその占める割合は、輸出上位十社で総輸出額の三三%、上位三十社では五二%。数字をきっちり言いますと三二・九%と五一・七%です。  通産省その他の資料もいただきながら私の方で取りまとめをいたしましたところではそういう比率になろうかと思いますが、まずこの点について、数字で余り食い違っておってはいけませんから、認識を一致させる上で確認をしておきたいと思います。
  256. 佐野忠克

    ○佐野政府委員 お答えをいたします。  通産省におきましては、各企業ごとの輸出額に関するデータはとっておりませんので、各企業の有価証券報告書に記載されている輸出高というのをもとにいたしまして、委員と同じような形でとりましたところ、上位十社の輸出額をまとめ、そしてこれを大蔵省の貿易統計の輸出総額と割り掛けた数字を算出いたしましたところ、吉井委員のおっしゃる数字どおりの、九五年度三〇・三、九六年度三一・三、九七年度三一・九、九八年度三二・九%という数字になりました。  なおつけ加えて申し上げますと、有価証券報告書の輸出高というものについては統一の定義はございません。各社の判断にゆだねられておりますので、これと貿易統計の輸出額との定義とは一致するものではないということについて申し添えさせていただきます。
  257. 吉井英勝

    ○吉井委員 今おっしゃった前提条件は当然私たちとも考えた発想が一緒でやっている話ですから、今御確認いただいたように、我が方で計算しても一致しているものです。  そこで、この表でよくわかるわけですが、バブル崩壊後、しかも円高が進行して中小下請企業が切り捨てられたりして、そして産業空洞化が進行していったというあの九五年の時期と比べても、上位十社合計で見ますと、輸出額は、十二兆七千四百億円から九八年には十六兆二千六百億円へと三兆五千二百億円ふえております。総輸出額に占める割合でも二・六ポイント伸ばしております。上位三十社合計で見ると、ここに書いてある数字のとおりですが、九八年と九五年を比べたらすぐ出てきますが、五兆二千三百億円伸ばし、三・三ポイント伸ばしております。  つまり、これは輸出大企業競争力というのは低下したどころか、輸出額の面でも占有率の面でも着実に伸ばしている、これは競争力強化しているというのが今日の現実の姿なんじゃないですか。
  258. 江崎格

    江崎政府委員 企業競争力というものをどういう指標で見るかということかと思いますけれども、御指摘我が国全体の輸出量に占めるシェア、上位の三十社のシェアが上がったということで、国際場裏において三十社の競争力強化されたというふうに考えていいのかどうかという点はちょっと疑問があると思います。  例えば、輸出上位十社の当期利益の合計というものを九八年度と九五年度を比べてみますと、九八年の場合には九五年に比べまして七割ぐらいという、かなり低水準になっている、これは有価証券報告書で調べたものでございますけれども。  それから、例えば今の上位十社の輸出額でございますが、これもドルベースで見ますと、むしろ九五年度よりも減少しているということも言えるわけでございまして、ですから、必ずしも今おっしゃった、シェアがふえている、あるいはその輸出額が円ベースで増加しているということから、直ちに競争力強化されたというふうに判断していいかどうかはちょっと疑問があると思います。
  259. 吉井英勝

    ○吉井委員 余り為替レートなどでもって、その議論を始めますと、また別な議論があるのです。野村総研のトヨタ自動車研究でも出されました悪魔のサイクルという議論ですね、これは野村総研が言っておりますが、そういう議論も含めて為替レートの問題を議論しなければいけませんから、その問題でもって話をすりかえることはできないということを言っておかなければならぬと思います。  実は、産業競争力会議参加メンバー十六社の中で、この上位三十社の中に入っているのが、トヨタ、ソニー、日立製作所、富士通、新日本製鉄の五社ですが、上位五十社となれば旭硝子や三菱化学の二社も入ってきます。  そこで、この五社について、私、九五年と九八年の内部留保と、それから九五年三月と九九年三月時点での従業員数というのを調べてみました。そうすると、トヨタは、九五年の内部留保四兆二千三百四十二億円が九八年には四兆七千八百三十六億円へと利益を五千四百九十四億円積み増ししている。一方、従業員の方は六万九千七百四十八人から六万七千九百十二人へと千八百三十六人の減です。  これは、大臣は、グループで見れば本当はふえるのではないかということをお考えかもしれないから、実はそれもちゃんと調べてあるのですが、グループで見れば、トヨタグループでいえば、本体よりもはるかに大きくて、約十倍ぐらい雇用の減少というのが見られますから、グループで見たって、この傾向は変わりません。  ソニーは、一兆二百九億円から一兆二千三十二億円へ千八百二十三億円内部留保をふやし、二万二千八百四十一人から二万一千三百八人へと千五百三十三人の雇用の減。  日立製作所は、一兆五千八百六十一億円が一兆六千七百三十五億円へ八百七十四億円内部留保を積み増しして、一方、七万六千六百七十九人から六万六千四十六人へ、実に一万人を超える一万六百三十三人の雇用の減。  富士通は、八千九百十二億円から一兆二百九億円へ千二百九十七億円の積み増しをやりながら、五万一千二百八人から四万四千百九十一人へ七千十七人のリストラがやられました。  最後に、新日鉄を見ておきますと、五千八百五十四億円から六千四十七億円へ百九十三億円の積み増しをした上で、三万一千七十二人から二万一千四百十四人へ九千六百五十八人の人減らしをやっております。  この産業競争力会議参加メンバー十六社の中の輸出上位三十社に入っている五社合計だけで、実は、三年間に九千六百八十一億円の利益の積み増しと三万六百七十七人のリストラ、人減らしをやっているわけです。だから、雇用を減らして過密労働を激しくして、輸出を伸ばして利益をふやし、内部留保を積み増ししてきた企業ですから、競争力は十分にあるわけです。経営責任も社会的責任も十分果たせる、私はこれらの企業というのは体力のある企業だと思いますが、この点はどうなんですか。
  260. 江崎格

    江崎政府委員 今、各社のリストラの実態というのが御紹介ありましたけれども、各社の雇用数の増減、何をグループ、どこの範囲までとらえるかというのがいろいろございまして、子会社との転出入まで入れますと、全体としての比較というのはなかなか難しいわけでございまして、必ずしもどんどんリストラをして減らしているということばかりでもないというふうに思います。  いずれにしましても、我が国企業は、国際的な非常に激しい競争にさらされておりますし、また景気の面でも非常に長期の低迷が続いている、あるいは金融機関のリスクの負担能力が低下するということで、いろいろ厳しい経済環境の中にありまして、そういう中で、雇用の問題にも配慮を払いながらさまざまな経営の努力をしているというのが実態だというふうに思っております。
  261. 吉井英勝

    ○吉井委員 グループという点では、新日鉄は、九二年から九九年の七年間で、グループ全体では五万九千六十四人の人減らしをやっております。本体と合わせると七万四千七百十二人。これは、全部関係のものを拾っていけばわかるわけです。ですから、通産省の方も、やはり法案提出するからには、競争力という問題についても徹底した分析というもの、調査分析を進めた上で考えてもらいたいと思います。  この中の新日鉄について見てみますと、実は、産転法の時代、八七年から九〇年の中期経営計画の目標というのを見てみますと、コスト競争力確保でした。これが、九一年から九三年の中期総合経営計画の目標は、競争力を一段と強化するでした。九四年から九六年の第三次中期経営計画の目標は、国際競争力の再構築。九七年から九九年の中期経営方針の目標は、大競争時代に生き残り。  つまり、この十三年間、経営目標は一貫して競争力強化なんです。そして、競争力強化のかけ声でやってきたのが、国のリストラ支援を受けて、高炉五基の廃棄と労働者の大量解雇であった。そして、その中で実際に強大な競争力を身につけてきたというのが現実の姿じゃありませんか。  私は、この点では、九九年版の通商白書というのも目を通しましたが、「世界の多国籍企業のグローバル化は近年更にその規模を拡大し、深化しつつある」と記載しています。リストラで大企業生産性の上昇率が上がったとしても、大企業は多国籍企業として海外への展開を進めているのが今の姿です。  それは、先ほどお手元にお配りしました資料の三枚目の方の、海外展開がどれぐらい進んでいるかということは、表の三、図の二、海外生産比率もそうですし、これで九〇年から九七年にかけて電機、自動車、製造業が約二倍海外生産比率が伸びているということははっきり出てまいりますし、表の四によれば海外直接投資の増加と国内設備投資の減少、表の五でそれによる国内従業員の減少と海外従業員の増加というのを見ることができると思います。  それで、九一年と九七年の六年間に、電機でいえば、国内で八千九十億円の投資を減らして、海外で五千六十億円も設備投資をふやす。自動車は、国内で一兆二百億も設備投資を減らしながら、海外では八百六十億円の設備投資の増加で、その間、電機と自動車を合わせますと、国内で三十五万四千人人減らしが行われて、海外雇用は五十五万四千人ふやしております。  そして、二ページ目の表を見ていただくとおわかりいただけるわけですが、実はそうした中で、我が国の輸出額と我が国企業の多国籍企業として海外展開した現地法人の売上高を見ますと、これは製造業についてですが、実は九六年からは逆転して、海外の現地法人の方が売り上げがぐっと伸びてきている。九八年のデータでは、現地法人が五十六兆六千億、我が国からの輸出額は四十九兆五千億ということになります。  私は、これを見ていると、通産省が通商白書の分析に使ったデータとこの資料と比べていただいたときに、まずこの資料そのものについては、認識の上では、これまたもともと通産省などの資料をもとにまとめておりますから変わらないと思っておりますが、この点、最初に食い違いがあってはいけませんから、この資料と基本的には大体見方は一致ですね。
  262. 江崎格

    江崎政府委員 海外直接投資からまず申し上げますと、数年の傾向を見てみますと、確かにここのところふえてきたのですが、ただ九八年は相当減りまして、前年に比べて三四%の減ということになっております。これは恐らく、我が国企業の投資余力がかなり減退したということを反映しているし、また海外の景気なども反映していると思います。ですから、必ずしも一本調子でふえてきているというわけではないと思います。  一方、海外生産比率でございますけれども、これは経済のグローバル化ということを反映いたしまして、九八年度には前年に比べて一・四%ポイント上がりまして、全体で一三・八%ということで、高まってきております。ただ、これも、米国とかドイツといった先進国と比べますと、こういった国は製造業全体で三割程度ということでございますので、そういったところと比較しますと、我が国の海外生産比率は、まだそれらに比べれば低い水準にとどまっているということが言えるかと思います。
  263. 吉井英勝

    ○吉井委員 大事なことは、リストラで大企業生産性の上昇率が上がったとしても、今どんどん多国籍企業として海外展開を進めている時代だということです。  九二年版の通商白書でも言っているように、これは通商白書の言葉ですが、「第一に、ある国の資本による企業の利益がその国民の利益と一致する度合いが減少しつつある。」また、「第二に、国家の産業競争力が当該国企業産業競争力と厳密に一致しなくなっている。」通産省はこのように指摘してきたと思うのですが、これは考え方が変わったのですか、今もこのとおりの見方ですか。
  264. 江崎格

    江崎政府委員 その点については、白書に述べられているとおりの考え方でございます。
  265. 吉井英勝

    ○吉井委員 今江崎さん認められたように、通商白書が指摘しているように、国が大企業のリストラ支援をどんなにやっても、その結果大企業競争力強化しても、それは国の産業競争力を強めて国民生活につながるということには必ずしもならない時代になってきておる、逆に、リストラで中小企業雇用が失われるということは、これは国民経済地域経済にとって大きな損失が生まれてきている。今そのことにきちっと踏み込んだ、切り込んだ産業政策へと、根本的な見直し、転換というものを考えていかなきゃいけない、私はそういうところへ来ているというふうに思います。  そこで、この産業再生法案内容について少し見ていきたいと思いますが、この法案で言う事業構築とは、中核的事業への集中と、設備廃棄や営業譲渡による事業の縮小、廃止という選択を行う事業構造変更ということと、新商品開発や新事業分野への進出など、事業革新のことだとしております。その事業構築の計画を主務大臣に出して認定を受けると、分社化などの手続の簡素化であるとか、債務の株式化、金融上の支援税制優遇、遊休化した資産の買い上げなどを含めたさまざまな支援を国やあるいは公団その他から受けるということになっております。  そこで、この法律で言う事業構築とは、競争力強化するということがねらいであって、破綻寸前の企業の経営危機を打開する手段ではない、そういうものだなということだけは最初に確認しておきたいと思うのです。
  266. 江崎格

    江崎政府委員 この法案で定義しております事業の再構築ということでございますけれども、これは、企業の組織の変更あるいは新しい事業への進出などを通じまして、企業の中で、あるいは企業の枠を超えまして、生産性の低いところに張りついている経営資源というものを生産性の高いところへ移動することによって、企業全体としての生産性を上げる、そういう行為を事業構築というふうに呼んでおります。
  267. 吉井英勝

    ○吉井委員 もう一度確認しておきますが、ですから、競争力強化するということがねらいであって、いわば破綻寸前の企業の経営危機を打開する手段として考えているものじゃないということ、この点はそのとおりと理解していいですね。
  268. 江崎格

    江崎政府委員 先ほど申し上げましたように、あくまでもその企業生産性を向上させるということでございまして、今おっしゃいました経営危機、破綻に瀕した企業を救う、そういう趣旨とは違っているものと理解しております。
  269. 吉井英勝

    ○吉井委員 それから、選択と集中というのは、事業の縮小、廃止によって中核的事業へシフトするということですが、さきに挙げた自動車、電機などの例で言えば、国内工場を閉鎖して海外に拠点を集中するとして、事業構造変更というのは、中核的事業の開始などと同時に事業の廃止または縮小というのは、これはアンドじゃなくてオアだというふうに説明をいただきました。ですから、海外のことは、これはこの法の枠外としても、国内工場閉鎖、つまり事業の縮小、廃止の場合でも、こういう場合はリストラ支援は受けられるわけですね。
  270. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  中核的事業強化によりまして生産性の向上を図るものであれば、事業の縮小、廃止のみでも事業構築計画の認定の対象となり得ます。その場合には、検査役の手続の簡素化等、商法の特例措置を受けることができます。  これに対しまして、産業整備基金による債務保証につきましては、事業の縮小、廃止ばかりでなく、中核的事業の開始、拡大、能率の向上というのをあわせて行う場合に限り支援することとしております。  さらに、特別償却あるいは欠損金の繰り越し、繰り戻し等の税制上の支援措置につきましては、事業構造変更にあわせて、加えて新商品開発等の、ここで言う事業革新を行う場合に限り支援することといたしております。
  271. 吉井英勝

    ○吉井委員 ですから、この産業再生法案で進める事業構築計画を国に出せば、要するにリストラ計画を国に出せば、リストラに対して支援が行われる。事業の縮小、廃止の場合にもそうなんですから、かなり大きな事業体において事業の縮小、廃止ということが行われるならば、それは非常に大量の解雇を現実には進めることになる。私は、この点では、この産業再生法案は、国が旗振りをしてリストラ、大量解雇を支援する、そういう意味を持っている、ここに最大の問題、特徴があると思うんですが、こういう特徴を持っているのじゃありませんか。
  272. 江崎格

    江崎政府委員 事業の再構築というものが雇用に影響を与えるというのは私ども承知しておりまして、この法案におきましては、雇用に対する影響を極力少なくする、あるいはむしろ前向きのものにするということに努めたいということで、法律の目的にも雇用に対する配慮というのを明記しておりますし、それから、従業員の地位を不当に害するものでないということも認定基準に明記をしております。それから、計画の実施に当たりましても、労働者の理解と協力を得ながら進めるということで、雇用の問題につきましては細心の注意を払ったつもりでございます。
  273. 吉井英勝

    ○吉井委員 労働省に来ていただいていると思いますから、私、ここで労働省に伺っておきたいんですが、労働法制で禁じられている解雇というものにはどういうものがありますか。
  274. 野寺康幸

    ○野寺政府委員 個別法によりまして禁止されている解雇ということだというふうに理解させていただきますと、例えば、労働基準法によりまして、業務上の傷病による休業期間あるいはその後三十日間の解雇が禁止されております。また、産前産後の休業期間さらにその後の三十日間の解雇が禁止されております。また、国籍、信条等を理由とする解雇も禁止されております。別の法律では、例えば男女雇用機会均等法によりまして、女性であること、あるいは女性が婚姻、妊娠、出産したというようなことを理由とした解雇も禁止されているわけでございます。  なお、このほか、解雇に当たりまして合理的な理由を欠いて、社会通念上相当でないと解される場合は、これは当然解雇は無効でございますし、こういった判例法理は既に確立されております。  また、いわゆる整理解雇でございますけれども、これもやはり、判例上、四つの要件が必要であるといったような例がございます。
  275. 吉井英勝

    ○吉井委員 そこで、今、整理解雇四要件とおっしゃった問題ですが、これは四要件のすべてがクリアされる場合に解雇が認められるというもので、またそれは経営の危機に陥った場合のことですね。つまり、その解雇を行わなければ企業の維持存続ができないほど差し迫った必要性があることなど、そういう、本当に経営の危機に陥った場合の、そして四要件すべてがクリアされる場合だ、これが四要件の意味ですね。この点、もう一度確認の意味で聞いておきたいと思います。
  276. 野寺康幸

    ○野寺政府委員 四要件の中身を少し申し上げれば今先生の御質問に答えたことになると思います。  整理解雇をする場合の要件でございますが、まず、人員削減が必要であるというようなこと、それから、人員削減の手段として整理解雇を選択することの必要性があるということ、それから、解雇の対象者の選定が妥当であるといったようなこと、それから、解雇の手続が妥当である、こういった四要件がすべて満たされる場合に整理解雇が許されるというふうに考えております。
  277. 吉井英勝

    ○吉井委員 それは、その解雇を行わなければ企業の維持存続はできないほどの差し迫った必要性がある、今おっしゃった部分に関係してなんですが、つまり、通常の解雇の場合とは違うわけですよね。これは、その解雇を行わなければ維持存続できないというほどの経営の危機に陥った場合、しかもそれは四つの要件をすべてクリアしなければいけない、そういうことですね。これはもう一遍ちゃんと確認しておきたいと思います。
  278. 野寺康幸

    ○野寺政府委員 先ほど申し上げましたように、人員削減の必要性ということは、例えば特定の事業部門を閉鎖しなければならないといったようなことでございまして、先生のおっしゃるとおりであるというふうに考えます。
  279. 吉井英勝

    ○吉井委員 ですから、今認められたように、これは本当に差し迫った問題、経営の危機に陥った場合の話なんですよ。その場合も、まず役員報酬の減給は当然として、自然減の不補充とか配転、出向、希望退職など、あらゆる努力を尽くしてそれでも人員削減の手段として解雇はやむを得ない場合だけ、こういうことでこの四要件を考えているわけでしょう。もう一度、そこだけちょっと確認しておきたいと思います。
  280. 野寺康幸

    ○野寺政府委員 おっしゃるとおりであると理解しております。
  281. 吉井英勝

    ○吉井委員 そこで、私、今度の法案の第三条六項六号の問題なんですが、従業員の地位を不当に害するものではないという問題ですね。労組と協議しても解雇することに合意が得られないとき、労組としてはリストラ反対を決めたとき、それでも解雇するという第三条三項による事業構築計画が出されたときに、これを受け付けるのかどうか、これをまず聞きたいと思うのです。
  282. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  認定を受けようとする事業者政策支援を受けて事業の再構築を行う以上、整理解雇を行う場合に当該整理解雇の四条件を遵守していくことは当然だと思います。しかしながら、事業構築計画の認定段階で果たしてこれを判断できるかといいますと、私どもは判断できないのではないかと思っております。  それはなぜかと申しますと、解雇権の乱用法理は、個々の争訟案件を通じて形成されました判例法理でございまして、四条件を満たしているか否かの判断は、個々のケースにおいて司法が判断すべきことであろうと思っております。  それから、事業構築に伴う整理解雇というのは恐らく認定段階では起こっておらずに、申請事業者が明確に四条件を満たさないことを行政府が明らかにすることは不可能なのではないかと考えております。
  283. 吉井英勝

    ○吉井委員 経営危機に陥っている場合でもない、それはもともとこの法案には当てはまらないわけですね。競争力強化を目指したリストラ計画を出したときだけこれを認めるんだというのが先ほどの話ですね。  それでいながら、労使合意がない、労働組合がリストラ反対だということを決めているときに、これは当然のことながら、経営危機じゃありませんから整理解雇四要件は全然当てはまらないわけですが、それで、解雇するという第三条三項による事業構築計画が出されたときには、はなから受け付けることさえ拒否する、認定などというのは論外、承認などというのは論外だというのが、この三条六項六号を読めば当然の話だと思うのですが、違うのですか。     〔委員長退席、小野委員長代理着席〕
  284. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたけれども、例えば整理解雇の必要性という四要件の中の一つでございますが、経営が危機的状況にあり、解雇により人員削減が必要であること、これはまさに個々の争訟案件を通じて形成されるべきことだと思っております。  したがいまして、私どもがこの計画の申請を受けたときに、先ほど申し上げましたように、恐らく認定段階では整理解雇というのはまだ起こっておらないわけでございます。申請事業者が明確に四条件を満たさないということを私ども行政府が明らかにすることは不可能だろうと思っております。
  285. 吉井英勝

    ○吉井委員 もともと、経営危機に陥った場合の話なんです、整理解雇というのは。これは逆に、競争力強化のための事業構築計画なんですよ。全然次元の違う話なんです。しかも、四要件の一つというお話があったが、整理解雇については四要件全部をクリアしなければいけないのです。  ですから、労使合意がもともとなくて、リストラ反対ということを決めているときに、解雇するということ自体がこれは不当、不法なんですよ。だから第三条六項六号に、従業員の地位を不当に害するものではないと書いていらっしゃるんじゃないですか。これは単なるおまじないじゃないでしょう。まじないじゃなしに、三条六項六号がまじめに従業員の地位を不当に害するものではないということを言っているんだったら、そのことをきちっと答えるべきじゃありませんか。
  286. 林洋和

    ○林(洋)政府委員 お答え申し上げます。  法第三条第六項第六号、「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」という点でございますが、事業構築雇用の安定に影響がある場合には、事業構築にかかわる事業所における労働組合などと必要な協議を行うなど、労使間で十分に話し合いを行ったかどうか、労働者に対する配慮を十分に行って計画を実行しようというものであるか否かを事業構築計画の認定時点において確認するために本要件を規定しております。
  287. 吉井英勝

    ○吉井委員 当然協議をして、しかし労働組合としては、経営危機でもないのにそれは応じられない、リストラ反対だということを決めたときに、協議はあったとしても合意に達していないわけですね。それで、これを強行するとなれば、これは明らかに従業員の地位を不当に害するものになるわけですよ。  だから、これは合意に至らない、この場合については認定しない、そのことをはっきりさせないならば、この第三条六項六号というのは、ただ書いてみたというだけで、何の意味もないんじゃないですか。
  288. 江崎格

    江崎政府委員 ここの認定基準の意味ですけれども、これは、そもそも認定を求めてくる企業というのは、労働法に決めておりますいろいろな義務についてきちっと守っているということは当然の前提だというように私ども考えております。  それから、法律だけではなくて、健全な労使慣行とかあるいは労使合意、こういうことに基づく経営者に与えられた遵守義務を守っているというのは当然の前提でございまして、その上でそういったものを遵守しているかどうかということについて、私どもとしては、必要なプロセスを踏んでいるかどうか、そういった義務を履行するために例えば協議などをしているかどうかという外形的な行為で判断するということでございます。  今先生がおっしゃいましたように、例えば不当な解雇を明らかにするというようなことが非常に明白な場合、これは労働法制上の法理に違反している、あるいは判例によって確立された慣行に違反しているということがはっきりしている場合ですから、その場合には認定しないという可能性が高いと思います。
  289. 吉井英勝

    ○吉井委員 今おっしゃったのだが、もともと整理解雇四要件というのは経営危機に陥った場合のことなんですよ。そもそも四要件に当たらないのに、四要件に反するものであるのにそれで解雇を行う、それはもともと認められない話なんですよ、労働法制の上では。それを、協議をやったかどうかを見るというのだけれども、一回、二回の協議はだめだが十回協議しておったら承認する、そんなことになってしまったら、これは文字どおり、三条六項六号は全く意味のない、本当にただのおまじないでしかないということになるのじゃないですか。  私は、やはり、労働法制に違反、経営危機でもないのに経営危機のときの整理解雇四要件にさえ違反という場合は、その解雇というのは従業員の地位を不当に害するものそのものだというふうに思うわけです。  ですから、この三条六項六号、従業員の地位を不当に害するものではない、これに違反するものは事業構築計画を受け付けない、承認しない、その立場を私はやはりここできちっと明言をしてもらわなきゃならぬと思うのですよ。それが明言できないのであれば、まさにこの法案はリストラ解雇支援法という性格そのものをむき出しにするのじゃありませんか。
  290. 江崎格

    江崎政府委員 この法案の規定は、労働法制によります各種の経営者に対する義務、あるいは既に確立しております労使間の慣行、こういったものについて何ら変更を加えるものではないわけでございまして、この法律ができたからといって、そういったものが緩められて、リストラが容易に行われる、首切りが容易に行われる、そういうことはないのでございます。ただ、主務大臣の確認の仕方として、きちんとしたプロセスを踏んでいるかどうか、例えば必要な協議を行っているかどうかという点で見るということでございます。
  291. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、そこまでおっしゃるのだったら、一九八七年の産業構造転換円滑化法のときのリストラ承認基準というのを見ておきたいと思います。  このときも、やはり従業員の地位を不当に害するものであってはならないとしていたのですよ、産転法の方でも。このときの国会答弁では、法文上、従業員の地位を不当に害するものであってはならないとあり、そうした事態は起こらないものでありますと通産省答弁しておりました。それからまた、「むしろ」「気持ちの上では産構法、特安法以上に雇用の問題については配慮し、中小企業問題についても重要視したつもり」、あくまでもこの第一義的な責務というのは国にあるというのが私たちの基本的な考え方でございます、通産省皆さんはこういうふうにはっきり答弁していたのです。  しかし、現実はどうだったか。この八七年から九六年にこの法律が廃止されるまでの九年間に、鉄鋼大手五社だけで四三%、六万九千人の人減らし、大リストラが強行されたというのが事実でありませんか。その事実はつかんでいらっしゃるでしょう。どうですか。
  292. 江崎格

    江崎政府委員 今ここで正確な人数は承知しておりませんが、鉄鋼の各社において従業員の数が減ったということは承知しております。
  293. 吉井英勝

    ○吉井委員 従業員の地位を不当に害するものではないと法文上は書いたけれども、おまじないだったのですよ。  総理は、この間本会議答弁で、この鉄鋼産業を含む承認企業の中で、従業員の地位を不当に害する事態は起こっていないとはっきり答弁したわけですが、それは皆さんの方から小渕総理へのレクチャーが私は欠けておったと思うのですね。九年間にはこういう事態があり、だから新日鉄の労働者労働基準監督署への申告や訴訟なども起こっているわけですよ。  私は、次に外務省に伺っておきますが、ヨーロッパでは、企業または事業の全部または一部が譲渡される際の労働者の権利の保護に関して、いわゆる既得権指令が制定されています。その第二章で、労働者の権利の保護として、その第三条では、企業または事業の全部または一部の移転、すなわち営業譲渡などに際して、雇用契約や雇用関係から生まれた権利義務は移転先に引き継がれる。その第四条では、企業または事業の全部または一部の移転は、それ自体としては、移転元及び移転先による解雇の理由とはならない。つまり、営業譲渡等は全く解雇の理由にならぬということがはっきりしていると思います。  フランスでは企業譲渡の際の労働者の権利の保護に係る指令の発効に関する法律、ドイツでは営業譲渡の際の権利の保護に関する法律、イギリスでは企業譲渡の際の雇用保護規則など、国内法になっているのじゃありませんか。これをまず外務省に先に聞いておきたいと思います。     〔小野委員長代理退席、委員長着席〕
  294. 横田淳

    ○横田(淳)政府委員 念のためお答え申し上げます。  御質問のいわゆる既得権指令、すなわち、EUの企業譲渡等の際における労働者の権利保護の近似に関する指令は、欧州におきます市場統合の進展に伴う企業合併の増加を背景に、企業または事業の全部または一部が譲渡された場合に、労働者の権利を保護することを目的といたしまして一九七七年に制定されまして、また、九八年には改正されたものと承知しております。  先生指摘のように、この指令は、企業譲渡の際の労働者の権利義務の移転、それから企業譲渡等を理由とした解雇の禁止、労働者に対する事前の情報提供等について規定しております。さらに、七七年に制定されました指令の内容は、イギリス、ドイツ、フランスを含むすべてのEU加盟国において法制化されておりまして、実施されております。また、ついででございますけれども、九八年の改正指令も、遅くとも二〇〇一年の七月までにEU加盟国において法制化される予定となっております。
  295. 吉井英勝

    ○吉井委員 そこで、法案第三条六項六号で、私は、ヨーロッパでは当然となっている営業譲渡などの際のリストラ、解雇制限の内容、これは、解雇の禁止とか雇用契約と権利義務の継続が守られない場合には、日本でも従業員の地位を不当に害するものに当たるということはもう明白だと思うのですよ。だから、事業構築計画をその場合には受け付けない、認定しない、その態度を私はとるべきだと思います。  同時に、今グローバル化ということを盛んにおっしゃるのだが、グローバル化と言うのだったら、アメリカンスタンダードをグローバルスタンダードにするべきじゃなくて、ヨーロッパでは当たり前になっているような、まさにそういうものこそグローバルスタンダードとして日本でも考えていくべきだ。そういう点では、せめてヨーロッパ並みの解雇の規制と、それから、営業譲渡などに当たっては、解雇を禁止し、雇用契約や権利義務を継続する、そうした既得権指令の内容を持ったそういう法制化というものを内閣として私はやるべきだと思います。  内閣として、そういう法制化を考えること、それから、法案第三条六項六号で、ヨーロッパでは当然となっているこのことを日本で守られないならば、従業員の地位を不当に害するものになるものは事業構築計画を受け付けない、大臣として認定しない、そのことについて最後に大臣に伺いたいと思います。
  296. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 企業譲渡等の際の解雇や労働条件の変更、労働者代表の地位の承継等については、労使間でよく話し合われるべきものと考えており、一律に規制を設ける等の立法措置を講ずることは適当でないと考えております。(吉井委員「それからもう一つの方は、三条六項六号」と呼ぶ)  その部分だけヨーロッパの条件を取り出して論ずることは適当でなく、その中には、他のいろいろな労働条件、労働協約等々もろもろのことが書いてありまして、全体の中の一部であろうと私は思っております。
  297. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、今の御答弁では、三条六項六号は本当におまじない程度のものにすぎない、それではこの産業再生法案の本質というのは、これは結局、リストラ大量解雇促進法じゃないか、そういうやり方は進めるべきじゃない、このことを指摘して、質問を終わります。
  298. 古賀正浩

  299. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 今いろいろと御議論を伺っておりますと、無理からぬことでありますけれども、マクロ経済政策産業政策を混同しているような感じの議論もうかがえるんですね。  ちょうどこういう時期ですから、マクロ経済政策に踏み込まざるを得ないんでしょうけれども、基本的には、この産業再生法はいわゆる産業政策の法律であることは間違いない。私どもとしては、適当な間隔を置きながらも、いわゆる産業政策というものは、日本産業のあるべき姿またはポテンシャリティー、そういうものについてもきちっと調査をし、チェックをし、立て直していく、こういうことが非常に大事だろう。しかし、ここへ来て、もっと包括的な、特定の産業だけじゃなくて日本企業全体を包括的に見て、何とかしよう、こういうことから産業再生特別措置法が上程をされてきた。  我々は、自己責任の原則というのを党の原則の基本に置いて政策を立案し、また、いろいろと活動している政党としては、大企業の経営者の判断の誤りが、またはその方々の経営者としての能力の問題がこういう結果を招来した、そういう企業を、公的な資金、直接間接、または税制等で救うことが適当であるかどうかという疑問は率直に言って持っております。これについては、またいろいろと党としての議論を別の機会にも展開をしてくるだろうと思います。それで、私はきょうは、であるからこそ、中小企業、特に零細企業も含めて、こういった分野に温かい光を当てていただきたいという観点から、お尋ねをさせていただきたいと思います。  中小零細企業は、生産額、雇用技術地域経済の発展維持、さまざまな点で我が国経済中心、主役になってきた。しかし、長い不況の中で、貸し渋りに遭ったり、後継者難に遭ったり、または世界的な大競争に直面して、呻吟懊悩していると言っても言い過ぎじゃない。政府はいろいろな中小企業振興策を切れ目なく実施してきていることは、私も、六年間この商工委員会に籍を置いておりますから、よく承知をいたしております。  私どもは、この法律が施行されることによって、中小零細企業がその活力や潜在的能力を十二分に発揮して我が国産業の主役となり続けるよう、総合的な、かつ効果的な施策を推進するべきだという考え方になりまして、政府に対して、この案を決定される際も私ども自由党の主張に耳を傾けていただき、これを取り込み、「国は、」「中小企業者事業構築我が国産業活力再生を実現するために重要な役割を果たすことにかんがみ、その円滑な実施のために必要な施策を総合的かつ効果的に推進するよう努めるものとする。」という十九条の条文を追加されたわけでありますけれども、改めて通産大臣に、立法に当たりこの点について、つまり、中小零細企業者に対する思いを込めてこの条文を加えていただいたことについての見解を冒頭に伺いたいと思います。
  300. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 先生お話しのとおり、我が国中小企業は、全事業所数の九九%を占め、全従業員数の約三分の二を雇用するなど、我が国経済において極めて重要な役割を果たしております。先生指摘のとおり、中小企業は現在非常に厳しい状況に置かれておりますが、政府としては、こうした中小企業の重要性にかんがみ、諸般の施策を強力に進めていく考えであります。  今般の産業再生特別措置法案においては、自由党のお考えを十分に踏まえさせていただいており、とりわけ中小企業方々への施策の適用ぶりについては、先生の御指摘を踏まえ、施策の総合的かつ効果的な推進を図る旨、法案上明示して御提案させていただいた次第であります。  本法案が成立した後には、政府としては、本条文の趣旨を遵守し、中小企業者事業構築に対して十分な配慮がなされるよう努めてまいりたいと考えております。
  301. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 産業活力再生特別措置法案、これを提案される際に、大臣は、自律的な成長軌道に乗せるために経済の供給面の体質強化に取り組むことが不可欠であると。そして、通産省の中にはサプライサイド対策室というようなものもきちっとつくられて、一生懸命やっておられるわけでございます。しかし、経済がどうも振るわない、生産性の伸びが特にOECD加盟国の平均を下回っている、こういうことにかんがみて、日本の、企業の規模を問わず、または産業の種別を問わず、全体に活力をということでこの法律案が出されて、そして、選択と集中という一つの概念が提示をされてきました。  このこと自体は、私は、経営資源が大いに活用されるという観点からも、また、いわゆる国際的な競争力確保という点からも、非常によいことだと思うわけであります。これはいつも私の意見として言わせていただきますが、この種の問題に欠くことのできない高コスト体質に対する是正ということについては、なかなか率直な、また有効な手だてが見られないでいるという感じは、この法律案を見ても若干感じるわけであります。  しかし、それを忘れずに、ぜひ通産省としてはこの問題に取り組んでいただきたいということを、この機会に私から特にお願いをしておきたいと思います。高コスト体質というものを放置しながら、生産性を上げて国際競争力をつけよう、よってもって無資源国家である日本が、よそから持ってきた資源付加価値をつけて、そして、通商で飯を食っていくというこの宿命的な仕組みの中では、この問題を抜きにして議論はできない、こう私は思っているわけでございまして、これは毎回申し上げますが、今回もこのことについては意見として申し上げておきたいと思います。  質問の第二は、法案十九条に、「国は、」「中小企業者事業構築我が国産業活力再生を実現するために重要な役割を果たすことにかんがみ、その円滑な実施のために必要な施策を総合的かつ効果的に推進するよう努めるものとする。」くどくなりますが、こういうふうにあるわけであります。「必要な施策」と簡単におっしゃっているわけでありますけれども、これにはもちろんメニューがあるはずでございまして、どのような施策をおやりになるのか、お聞かせいただければありがたいと思います。
  302. 江崎格

    江崎政府委員 初めに、最初に触れられました高コスト体質の是正の問題でございますが、これは私どもにとりまして非常に大きな政策課題だというふうに受けとめておりまして、経済構造改革に関する行動計画というのを毎年フォローアップしておりますが、その中で毎年、これを進めるべく、そのフォローアップに際しまして、各省に対する規制緩和などを中心にしました高コスト体質の是正というのを働きかけております。また、先般来開かれております産業競争力会議におきましても、この問題を非常に大きなテーマとして近く議論するということになっております。  それから、この法案の十九条の「必要な施策」ということでございますけれども、これは一つは、この法案に基づきまして中小企業に対して講ぜられる施策がございますが、それに加えまして、ほかの法律によりましていろいろな施策が用意されておりますが、それに該当する場合、この二つをあわせまして、融資ですとか信用保証、あるいは税制にかかわります支援策を総合的、効果的に展開していくということだというふうに思っております。  具体的にほかの法律で関係の深いものを申し上げますと、中小企業経営革新支援法に基づく支援策中小企業創造活動促進法に基づく支援策、あるいは新事業創出促進法に基づく中小企業技術革新制度、これはいわゆるSBIRでございますが、それとか中小企業総合事業団による新事業開拓への助成、こういったようなことが挙げられると思いますが、これと本法に基づく施策につきまして総合的に施策を講ずるという趣旨でございます。
  303. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 今のような法律を並べて、これが総合的な必要な施策であるという御説明を裏返せば、その法律に盛られている支援策がすべてである、こういうふうにもとれるわけですけれども、実際に日本の中小零細企業にいわゆる産業政策としてバックアップをしてやるためには、先ほど来議論が出ております直接金融の問題であるとか、または株式にかかわるいろいろな問題、株式の持ち合いの解消だとか資本準備金の特例を延長するとか、いろいろな方法があるだろうと私は思うわけであります。  それはそれとして、今のような法律を具体的にどういうふうに適用したら中小企業の体質が強くなるのかということをやはりきちっと広報をしていただいて、鳴り物入りで出てきたこの活力再生法が、会期を延長してまでやるわけでありますから、これは国民から見てなるほどすばらしい法律なんだ、こういう具体的なバックアップが受けられるんだ、しかも、それは根拠法があってのことなんだ、精神規定だけではないんだということがわかるような広報の活動もぜひやっていただきたい、そういうふうに思うわけであります。  そこで、第三問を局長、または審議官に伺うわけでありますが、総合的かつ効果的に推進するために、具体的にどのような段取りで施策を講じていかれるのか。ただいま私が若干個人的な見解を申し述べましたけれども、それも含めて御答弁いただければありがたいと思います。
  304. 江崎格

    江崎政府委員 先ほど各種の法律を列挙いたしましたが、これはあくまでも例示でございまして、そのほかに中小企業関係施策をいろいろ講じておりますが、そういったものをすべて含めて総合的に講ずるということでございます。  それで、今先生も御指摘になりましたが、こうした施策を総合的に講ずるやり方でございますけれども、今おっしゃいましたように、いろいろな支援策というものをまずよく知っていただく、わかりやすい広報活動というのは非常に大事だというふうに思っておりまして、今までももちろんいろいろな機会を設けてやっておりますが、さらにこうした点を特に十分踏まえまして広報活動に努めたいということでございます。  それから、施策の適用の問題でございますけれども、これも個々の中小企業のニーズに応じましていろいろな施策効果的に組み合わせてやるということでございますが、何といいましても現場のニーズを踏まえるということで、各地の通産局あるいは都道府県、それから各地に商工会とか商工会議所、中小企業団体中央会などのいろいろな中小企業関係の団体もございますし、その他の各種支援機関がございます。こういったところと連携をとりまして、総合的な施策の適用に最大限努めたいというふうに思っております。
  305. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 局長税制上の支援措置が今回含まれているわけですけれども、その作成に当たっても当然、中小企業、零細企業のために配慮された点があるだろうと思うわけでありますけれども、それはどんな点なのか。  それから、買いかえ特例だとか共同出資子会社に対する現物出資特例の適用というのがあるわけですけれども、特に零細性が顕著であるというか、そういうような業種というものは結構あるわけですね。例えば、東京なんか一番の地場産業は印刷関連業種でございますけれども、大きい立派な会社もあれば親子でやっているようなところもあるし、その数はおびただしいものがありますね。  私の地元なんかにはメリヤスだとかニット、これは金額にすると相当な、何千億という商売をやるんですけれども、しかし零細なものが多い。私はやはり、業種をある程度絞り込んで面倒を見ていく、そういうことも大事じゃないかと思うんですけれども、この点についてどんなふうか、お答えいただければありがたいと思います。
  306. 江崎格

    江崎政府委員 税制改正に際して中小零細企業向けにどういう配慮をしたかということでございます。  まず、欠損金の繰り越しとか繰り戻し、あるいは買いかえ特例などについてですが、すべての税目で事業者の規模を問わずに適用できるというのは当然なんですが、それに加えまして、特に中小零細企業に対しまして今回考えておりますことは、一つは、投資減税の関係でございます。中小零細の場合に限りまして特別償却と税額控除をまず選択できるようにするということと、特に中小零細企業の方が特別償却を選択した場合には、その率を大企業に比べまして二割から六割ぐらい高くするということで、三〇%までの特別償却ということを考えております。  それから、対象設備につきましても、この特別償却ですが、大企業の場合には特定の設備に限定をされるわけですが、中小零細の場合には、機械装置であれば種類を問わないということにしたいと思っております。  それから、今御指摘の買いかえ特例あるいは共同出資子会社に対する現物出資の特例の問題ですが、これらは中小零細性の高い業種に特に配慮するということで、今挙げられましたけれども、一般的には下請とか孫請の形が多い業種が考えられるわけでございます。例えばニット関連ですとかタオルの製造業、あるいは印刷とか製版、製本関係、こういったものが一般的にそれに当たるのではないか、このように思っております。
  307. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 今、四問の質問を通じて大臣並びに政府委員の御答弁をいただいたわけでありますけれども、この法律が、私たちの提案を受け入れて、中小零細と呼ばれる範疇のサイズの企業に対しても全般的にバックアップの体制をしっかりとつくって、日本産業活力を復活させていく、こういう道筋が明確になってきたというふうに思うわけでありまして、ぜひこのことに期待をいたしたいと思います。  何度もくどくて申しわけありませんけれども、私どもは、今度の法律が単なる公的資金注入の大企業版だというような認識ではもちろんありません。その証拠に、十九条、新たに中小企業対策についてもこの法律で万般の対策を講じていくということを宣言せられたわけでありますから、この法の精神にのっとって、総合的でまた効力のある施策を切れ目なく中小零細企業のためにやっていただきたい。  苦しいときにお金を貸すことももちろん大事だし、それによって階段の踊り場で一服するようなことももちろんあるのでございますけれども、やはり基本的には、中小企業人たちは仕事が欲しい、仕事をする腕はあるんだ、その腕が後継者難で空洞化してみたり、そんなことを情けなく思っている物づくりの名人たちは大勢いるわけで、私は、かつて橋本通産大臣当時に、通産大臣に、暇地獄という言葉を知っていますかということを申し上げたことがある。アリ地獄に例えて暇地獄、仕事がなくて暇で暇で、それはもう物づくりの人たちにとっては苦痛この上もない、こういうようなことではいけない。  そういう人たち経営資源としての力が、いわゆる公的な資本財として、公共の資本財としてそれが活用されて、日本産業が堂々たるものになるように総合的なことをぜひやってもらいたい、こういうふうに私は要望いたしまして、この法案に限らず、今後とも中小零細企業の苦しい立場にしっかりと目を、光を当てながら頑張っていくという通産大臣の御決意を伺って、最後にしたいと思います。
  308. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 先生の最後の点は当然でございまして、この法案が扱っている中小企業の部分は限られております。したがいまして、本法案に限らず、小規模企業振興のための対策に今後とも力強く取り組んでまいりたいと考えております。
  309. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 終わります。
  310. 古賀正浩

  311. 畠山健治郎

    ○畠山委員 私は、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、議題となっております産業活力再生特別措置法案について、内閣の産業政策の基本にかかわる幾つかの問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  極めて限られた時間でございますから、答弁に対する議論は後回しにさせていただきまして、できるだけ答弁は簡潔に、要を得た答弁をしていただきますように、まず冒頭にお願いをしておきたいというふうに思います。  第一問は、さきに公表された経済白書に示すマクロ経済政府の役割によれば、マクロ的リスクに対して国は国民経済の中で最大のリスク負担能力を持つとされております。国のリスク負担なくして我が国経済産業構造改革はできないと読み取れるが、これは、内閣や経済界が事あるごとに口にする規制緩和とどのように両立なさるんですか。  また、この白書の考えからすれば、今回の法律案は、国のリスク負担の一環として産業再生を誘導する性格を持つ法律ということになると思いますが、その場合、国民に向けてはしきりと自己責任を強調する今日、バブルを含めた過剰資産、負債等を抱えて活力再生を怠ってきた経営陣の自己責任は一体どうなるんですか。  いずれにしても、この法律の性格は、これまでの内閣の言動とは大いに矛盾を来しているんではないかと考えられます。この点についての通産大臣並びに経済企画庁の見解をお尋ねいたします。
  312. 小峰隆夫

    ○小峰政府委員 経済白書についてお尋ねがございましたので、作成者としてお答えをさせていただきます。  先生お尋ねの国のリスク負担と規制緩和との関係ということでございますが、今回の白書でリスクを、一つの章を設けまして、「新しいリスク秩序の構築に向けて」という章で取り上げました趣旨は、近年の経済活動が停滞している一つの背景として、また、それを脱却する一つの有力な手段として、従来型のリスク処理のやり方を改めて、新しい時代にふさわしいリスク負担システムをつくっていく必要があるというふうな趣旨で取り上げたわけでございます。そのためには、リスクマネーの供給等と並びまして、規制緩和、これは参入障壁、競争制限的な慣行をなくしていくという規制緩和がやはり重要だ、そういう位置づけになっております。  また、先生が御指摘になりました国のリスク負担ということでございますが、これは、国が最大のリスク負担能力を持っているということは事実でございますが、国が対応すべきリスクとそうでないリスクがあるということでございます。今回の白書では、例えば景気変動のようなリスクは、国民、企業一人一人で対応するというのは非常に難しいわけですので、国が対応すべきリスクである、であるからこそ、現在各種政策を動員して景気の下支えを行っているということでございます。  ただ、国の負担はいずれは国民全体の負担となるということでございますので、いつまでも国がリスクを負担し続けることはできないということでございまして、こうした意味からも、規制緩和等を通じて民間活力が十分発揮できるような環境を整えていくということは大変重要なことではないかというのが白書の主張でございます。  それから、本法案との関係につきましては、今回の白書で特に法案について議論をしているということはございません。ただ、一般論としては、当然過剰設備の廃棄等は基本的には経営判断によるということでございまして、公的支援が自己責任の原則をゆがめることのないようにするということは、白書でも一般論として述べているということでございます。
  313. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 まず第一点でございますが、経済白書においては、マクロ経済リスクでの国の役割等について言及がなされております。新規産業の創出や産業動向の効率化、活性化等を図るための規制緩和の推進や、経済情勢を踏まえた柔軟かつ機動的な経済運営については、何ら白書と矛盾しないと考えております。  次に、自己責任等についての御質問でございますが、この法律案では、民間自主性の尊重及び市場原理への立脚を基本的な考え方として、事業者自身の手による構造改革を円滑に進めるための環境を整備するものであり、あくまで企業の自助努力を前提とする措置であります。
  314. 畠山健治郎

    ○畠山委員 白書の矛盾点をもう一点だけ述べさせていただきたいというふうに思うんです。  それは、公共投資の堅調な推移によって景気の下支え効果を強調しておるにすぎないんですね。公共投資のあり方は、産業再生の外的条件を左右する重要な要素であり、白書に言う少子高齢化社会の到来や経済構造の変化など、将来の環境変化に対応する公共投資のあり方について言及されてしかるべきではなかったでしょうか。  この点について、経企庁の見解をお伺いいたします。
  315. 小峰隆夫

    ○小峰政府委員 お答えをいたします。  本年度の経済白書では、先生指摘のように、公共投資の景気下支え効果という点について述べております。一方、今回の白書では、公共投資の中身についての明示的な議論はございませんが、これは白書の性格上、毎年の白書は政策課題を必ずしも網羅的に述べるというわけではございませんで、ある程度テーマを絞って述べていくということで御理解をいただきたいと思います。  ただ、九年度、十年度の経済白書におきましては、公共投資の効率化、事業評価のあり方等について記述がございますので、先生おっしゃいました公共投資の中身についての問題意識は十分共有しているということでございます。
  316. 畠山健治郎

    ○畠山委員 大いに不満がありますが、時間がございません。それは、時間があれば、先送りにさせていただきたいというふうに思います。  次に、自治省を含めて、少し確認をさせていただきたいというふうに思います。経済構造改革と財政支出との関係についてお尋ねをいたします。  私の手元にある自治省の行政投資実績調べから計算いたしますと、一応一九六三年からの資料でありますが、六三年から九六年までの投資総額は、七百八十九兆四千六百七十二億円となるはずであります。投資内容を見ると、この間、累積投資総額と産業基盤並びに生活基盤投資額は、ほぼパラレルに増加しております。  ただ、配分割合で見ると、産業基盤投資は八三年を最低に、以後緩やかですが、回復から上昇に転じておる一方、生活基盤投資は全体として高原状態になっております。これは、一九九一年以降の公共投資基本計画による自治体の単独事業の拡大が一因と考えられます。絶対額では、生活基盤投資は産業基盤投資を上回っておりますが、両者の投資総額に占める割合では、この三十四年間で産業基盤整備投資割合は九%下がっており、その分生活基盤投資がアップしております。三十四年間でわずか九%というのは、単純に言えないかもしれませんが、単純に割り切って言えば、およそ四年に一%にすぎないわけで、九六年以降の景気対策を加味すれば、産業基盤投資は再び拡大しておることと容易に推察ができます。これらの数値について、まず自治省に確認をいただきたい。  マクロレベルで見れば、公共投資の配分構造がこのような現状にある限り、白書に言う少子高齢化社会の到来や経済構造の変化など将来の環境変化に対応する構造改革、またそれを促進する産業の活性、再生は難しいのではないかと思われます。そういう視点から、通産、大蔵、経企庁の見解をお伺いいたします。
  317. 香山充弘

    ○香山政府委員 お答え申し上げます。  私どもの行政投資実績調査では、便宜上、市町村道、都市計画、福祉衛生、文教等に係る投資を生活基盤投資、また、国県道、港湾、空港等に係る投資を産業基盤投資というふうに分類をいたしておりますけれども、御指摘のありました、それぞれの両分野のシェア等につきましては、おっしゃるとおりの数字でございます。
  318. 津田廣喜

    ○津田政府委員 公共投資につきましては、経済社会情勢の変化に対応しまして、その重点化、効率化の取り組みを不断に行っていく必要があると思っております。  まず、国としての取り組みについて申し上げますと、国の予算では、従来から特別枠というものを活用いたしまして、予算配分の重点化に努めております。例えば、平成十一年度の公共事業予算の配分に当たりましても、環境、高齢者福祉、情報通信といった二十一世紀の経済発展基盤と見込まれます分野、それから物流の効率化などによりまして経済構造改革に役立つ分野、生活関連の分野、こういった将来の我が国経済社会の活性化に不可欠と考えられます分野に重点的に配分をしております。  簡単に数字を例として申し上げますと、例えば、市街地整備事業につきましては、一年前と比べまして五割以上の増加をしておりますし、自然公園で二七%増、空港は一〇%増と、全体の公共事業の平均が五%の伸びでしたので、物によってはかなりめり張りをつけているということでございます。今後とも、二十一世紀を展望しまして、戦略的、重点的な配分に努めてまいりたいと思います。  ただ、こうしたことは国の努力だけでは実は十分ではございません。今委員がおっしゃいましたように、今や補助事業よりは地方単独事業の方がはるかにたくさん行われておりますので、地方公共団体におきましても、こうした努力をぜひお願いしたいと思っております。
  319. 中名生隆

    ○中名生政府委員 お答えを申し上げます。  平成九年の六月に改定されました公共投資基本計画の中で、御指摘がございましたような生活関連の社会資本への配分というものに重点を置くということを確認いたしておりますし、また、経済構造改革関連の社会資本については、物流の効率化対策にも資するものを中心として優先的、重点的に整備をするということにいたしております。  また、去る七月八日に閣議決定されました経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針におきましても、二十一世紀における多様な知恵の社会を形成するために、高速大容量の情報通信ネットワークの形成あるいは国際空港、港湾等、高速交通ネットワークの整備による国際競争力強化等の施策を実施するということを決めております。  さらに、豊かで活力ある少子高齢社会を実現するため、経済社会全体の生産性を高めていくということが重要である、こうした観点から、移動時間の短縮あるいは物流の効率化のために、交通円滑化のための総合的な対策を進めるということを言っております。このほか、二十一世紀初頭の経済社会のあるべき姿を実現していくためには、環境との調和という課題が重要であると認識をいたしております。  こういうことを踏まえて、二十一世紀を展望しつつ経済構造改革を進めていくため、戦略的、重点的な投資を行っていくことが必要であるというふうに認識をいたしております。
  320. 江崎格

    江崎政府委員 公共投資の中身の問題でございますけれども、今企画庁の方からもお話がございましたけれども、平成九年六月に公共投資基本計画というのが改定されたわけでございますが、この中で、生活環境とか福祉とか文化機能、こういった分野にかかわるものにつきまして重点的、効率的に配分するということが決められております。  それから、例えば本年度予算でございますけれども、ここにおきましても二十一世紀先導プロジェクトを推進するということになっておりまして、環境とか教育、福祉、こういった国民生活に密接に関連いたします我が国経済活性化に不可欠な分野に戦略的、重点的な配分を行っている、こういう努力を行っているというふうに私どもも理解をしております。
  321. 畠山健治郎

    ○畠山委員 法案の中身に移らせていただきたいというふうに思います。  三十九条にも及んでおる、外形からすれば内容豊富に見受けられるわけでありますが、実際何のことはない、少し言葉はきついかもしれませんが、税制などの優遇措置とこれを担保にする主務大臣の認定制以外何ら実益は見当たりません。むしろ事業構築によって付随的に生ずる首切りこそ、この法律の隠れみのではないだろうか、そう思われて仕方がございません。  通産大臣の見解をお尋ねいたします。
  322. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 この法案では、事業構築の推進のほか、未来産業の創造に向けた技術開発活性化、創造的な中小企業、ベンチャー企業の振興など幅広い施策を講ずることとしております。  また、事業構築は、経営資源の最適な配分を通じて我が国経済生産性を向上させていく取り組みであり、事業構築自体が、人材の有効活用、新たな産業雇用の創出を通じた雇用の安定に向けた不可欠のものであり、事業構築の推進と雇用失業対策は密接な関係にあるものであります。  また、事業構築に当たっては、雇用にしわ寄せをしないとの観点から、雇用の安定に十分な配慮を行うこととしており、六月十一日に決定した緊急雇用対策で講じられた措置を含め、企業内配置転換や人材移動の円滑化のための支援措置を最大限活用して、政府としても雇用の安定等に万全を尽くしてまいりたいと考えております。
  323. 畠山健治郎

    ○畠山委員 税制上の優遇措置について、少しお尋ねをいたします。  大規模な設備廃棄にかかわる欠損金の特例措置でございますが、設備廃棄するに当たって、仮にそれが担保設定されている場合、事業者は担保の解除ないしつけかえをしなければ廃棄はできないはずであります。小規模資産廃棄ならいざ知らず、大規模資産の廃棄となれば、担保の解除ないしつけかえには相当な資金が必要となるはずであります。そうした資金調達ができるような事業所に、果たして欠損金の特例措置を講ずる必要があるんですかという疑問があります。  また、欠損金の繰り延べを七年に延長することは果たして妥当な措置であると言えるかどうか。さらにまた、七年間赤字を生む事業がこの法律に言う産業活力再生と合致するのかどうかという疑問もあります。経済界の強い要請にこたえての措置と見えて仕方がありませんが、この一事をもってしても、恩恵を受けるのは相当な大手の事業所だけではないのかと思われて仕方がございません。  通産大臣並びに大蔵省の見解をお伺いいたしたいと思います。
  324. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 大蔵省から税の考え方答弁があると思いますけれども、これはもう大中小分け隔てなく同じ法律を同じように適用する、こういう考え方でございます。
  325. 福田進

    ○福田(進)政府委員 欠損金の繰越期間の特例についての御質問でございますが、御指摘設備廃棄欠損金に係る特例措置は、産業活力再生特別措置法に基づきまして、設備の廃棄等の事業構造変更に加え、新しい商品の開発や新たな生産方式の導入等の事業革新をあわせて行う旨の事業構築計画の認定を受けた法人が、その計画に従い特定設備の廃棄等を行った場合において、その廃棄等により生じた欠損金額について、繰越控除期間を五年から七年間とする措置と、前一年間の繰り戻し還付との選択適用を認めることとしたものでございます。  本特例措置は、それぞれの企業が保有する資産に占める廃棄する資産の割合が一定程度以上であること等を念頭に置くものでございまして、いわば大規模という言葉が絶対的なものじゃなしに、各企業にとってのそれぞれの相対的な概念でございまして、大企業のみを対象とするものではなく、すべての企業を適用対象としており、当然中小企業者についても対象とされているところでございます。  それから、繰越控除期間を七年間とした理由でございますが、今回の設備廃棄欠損金に係る繰越控除期間につきましては、帳簿の保存期間それから除斥期間といった基本的な法制との整合性、さらには、現在講じられております他の設備廃棄欠損金に係る特例措置とのバランスも勘案いたしまして七年間としたところでございます。
  326. 畠山健治郎

    ○畠山委員 同様なことは、債務の株式化についても言えると思います。  債務を株式化することは、不良資産を投資対象に転換するわけで、そうしたことができるなら、事業者は自己努力で該当事業再生は可能ということではないだろうかと思いますし、登録免許税の軽減というのは、いわゆる隠れ補助金と言われても仕方がないというふうにも見られてもいいと思いますが、時間がございません。これは答弁要りません。  先へ進みます。  そこで、雇用失業問題についてお尋ねをいたします。  確かに、第一条の目的で雇用の安定等に配慮することをうたい、第三条においては「当該事業構築計画が従業員の地位を不当に害するものでないこと。」と規定しております。しかし、この法律の最大の目的が、生産性の向上そして競争力強化にある以上、雇用失業問題の発生は不可避ではないのでしょうか。しかも、主務大臣事業構築計画を認定する仕組みとなっているため、失業が、個々の事業者対従業員との関係から、主務大臣及び事業者対従業員との関係となるわけで、言いかえれば、政府奨励の首切りとなりかねません。  そこで、お尋ねをいたしますが、先般の第一次補正による緊急雇用対策は、この事業構築計画から生じる失業を想定しておるのかどうか、労働省の見解を承ります。
  327. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 現在の雇用失業情勢は大変厳しい状況にございまして、五月の完全失業率は四・六%、実数でいいましても三百三十四万人というふうになっております。  先般の緊急雇用対策、これに関連します補正予算でございますが、これは現下の大変厳しい失業情勢に対応する、そのための緊急雇用対策として決定をいただいたものでございまして、直接にこの事業構築計画との関連でこれを設けられたというものではもちろんございません。  事業の再構築に当たりましては、企業において訓練をして新しい職場へ転換をする、あるいは関連企業に出向する等によって、従業員、労働者雇用の安定に最大限努力をしていただくということが、まずもって大事であろうというふうに思いますし、どうしても離職者が発生するというときには、当然この緊急雇用対策の対象として上がってくるものというふうに理解をしております。
  328. 畠山健治郎

    ○畠山委員 法第十八条からすれば、雇用の安定と就職のあっせんその他雇用措置を規定していることは、失業を想定していると言っていいでしょう。緊急雇用対策では想定していない。この法律では失業もあり得る、こんなことでは、政府雇用失業対策とは一体何でしょうか。改めて労働省の見解をお伺いいたします。
  329. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 今御指摘がありましたが、この法案の十八条に、雇用の安定ということで、認定事業者の責務、それに続いて国や都道府県の責務ということは規定をしてありまして、それぞれ失業の予防、その他雇用の安定を図るために必要な措置を講ずる努力義務を課しているわけでございます。  先ほども御答弁申し上げましたが、この事業の再構築に当たりましては、まずもって事業者自身による雇用の安定努力が必要であると思います。そのための最大限の努力を傾注していただくということを私どもは期待をしているわけでありますが、その過程においてどうしても離職というような事態が発生することがあるであろう、それは、この法案自身がやはり想定はしておろうと思います。  その際には、職業のあっせんなり必要な再訓練、あるいは生活の保障、そういったことによって国や都道府県も雇用の安定に努力をする、こういったことを規定しているものだというふうに考えております。
  330. 畠山健治郎

    ○畠山委員 さきの共産党の論議の中にもありました、重複をいたしますが、あえてお尋ねをいたします。  法第三条六項の六号に定める「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」とは、具体的には一体何を意味するんですか。  第一条の「目的」との関係からすれば、雇用、賃金、勤務、労働条件に一切変更を含むものではないと理解するのが当然と考えるが、そのように受けとめて間違いありませんね。  そのように理解できるとすれば、十八条の「事業構築を実施するに当たっては、その雇用する労働者の理解と協力を得るとともに、」とある規定は、雇用する労働者の合意が前提となる見解は一体どうなのか、この点を承ります。
  331. 江崎格

    江崎政府委員 法案第三条六項に言う「従業員の地位を不当に害するものでない」ということの意味でございますが、今委員は、労働条件、賃金等に一切変更がないと考えてよいかということでございましたが、労働条件とか賃金などにつきましては、御案内のように、労働協約ですとか就業規則にのっとりまして、労使の話し合いで処理されるべき問題でございまして、その内容について政府が口を挟むべきことは差し控えるべきだというふうに考えております。  政府は、基本的にこういう立場に立っておりまして、この事業の再構築雇用の安定に影響がある場合には、事業構築にかかわる事業所における労働組合などと必要な協議を行うことなど、労使間で十分な話し合いを行ったかどうか、あるいは労働者に対する配慮を十分行って計画を実行しようとしているかどうか、こういうことを計画の認定時点において確認するということでこの六項を入れているわけでございます。  それから、労働者の理解と協力ということでございますけれども、これも、この法案におきまして、雇用にしわ寄せをすることなく事業構築を進めるという立場から、認定要件あるいは認定事業者の責務として、雇用とか労働条件に影響がある場合には必要な協議を行うなど、雇用への配慮をする内容を規定しているところでございます。事業の再構築には、企業買収とか債務の株式化といったような、いわゆる経営権に属する事項がございます。  それから、雇用とか労働条件に全く影響を受けない場合についてまで協議とか合意を求めるというのも妥当でないというふうに考えておりますし、そもそもどういう事項を労使の協議の対象にするかというのは、その労使の合意によりまして、自主的に決められているわけでございます。  こういうことを考えますと、一律に労働者の合意を前提にするというのは適当でないというふうに考えております。
  332. 畠山健治郎

    ○畠山委員 「従業員の地位を不当に害するものでないこと。」このことから、通産省は、事業者による事業申請に対し、この規定が満たされないと考えられるとき、あるいは従業員や労働組合から異議申し立てがあった場合、当然申請は受理しないと理解していいはずでありますが、この点はいかがでしょうか。  もう一点は、この法律によって生ずる失業者は、雇用保険上、すべて非自発的失業者とみなすのが当然と考えますが、いかがでしょうか。
  333. 江崎格

    江崎政府委員 前段の御質問についてお答えいたしますと、第六項で言っております「従業員の地位を不当に害するものでない」という要件を満たさない場合には、申請を受理しないということではなくて、認定をしないということになると思います。
  334. 渡邊信

    ○渡邊(信)政府委員 雇用保険上の取り扱いでありますが、事業主から解雇されたというときはもちろんでありますが、事業主から退職の勧奨を受けてこれに応じた場合、あるいは希望退職の募集に応じた、こういったケースもすべて非自発というふうに取り扱っております。
  335. 畠山健治郎

    ○畠山委員 最後に一問だけ、事業構築計画、ベンチャー企業育成などの新事業開拓によって、直接的失業者及び新たな雇用者数について、実態把握による行政評価は当然なされるものと考えられますが、そう理解してよろしいですか。
  336. 江崎格

    江崎政府委員 この事業構築計画によります雇用者数の数の把握の問題でございますけれども、この計画が雇用へどういう影響を与えるかということにつきましては、事業構築計画の認定に当たりまして、労務に関する事項というものを計画に記載をしていただくことになっておりまして、これによりまして従業員の変動を把握するということになっております。  それから、雇用にしわ寄せすることなく事業の再構築を進めるという観点から、事業の再構築雇用の安定に配慮しつつ行われるか否かということを判断することにしておりまして、その計画が雇用に影響を与える場合には、労使間で十分話し合いを行ったかどうか、あるいは労働者に対する配慮を十分行って計画を実施しようとしているかどうかということについても確認をするということにしております。
  337. 畠山健治郎

    ○畠山委員 行政評価をやるんでしょうねと求めているんです。答えになっていません。
  338. 江崎格

    江崎政府委員 法律の認定基準に従いまして、今の雇用の問題などにつきましても、もちろん十分評価をして認定をするということでございます。
  339. 畠山健治郎

    ○畠山委員 そうじゃないです。そんな意味じゃないです。よく聞いて、答えてください。
  340. 江崎格

    江崎政府委員 この政策によります結果につきましては、私ども、絶えず把握をいたしまして、その政策の適否については、もちろん判断をしながら政策を進めるということでございます。
  341. 畠山健治郎

    ○畠山委員 時間がありませんからやめます。  大臣が言いたそうにしているようですから、大臣どうぞ、そうじゃありませんか。  では、時間になりました。終わります。ありがとうございました。
  342. 古賀正浩

    古賀委員長 次回は、明二十八日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時五十八分散会