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1999-05-14 第145回国会 衆議院 商工委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月十四日(金曜日)     午前九時一分開議   出席委員    委員長 古賀 正浩君    理事 伊藤 達也君 理事 小此木八郎君    理事 小野 晋也君 理事 岸田 文雄君    理事 大畠 章宏君 理事 松本  龍君    理事 大口 善徳君 理事 西川太一郎君       岡部 英男君    奥田 幹生君       奥谷  通君    木村 隆秀君       河本 三郎君    新藤 義孝君       竹本 直一君    武部  勤君       中尾 栄一君    中山 太郎君       林  義郎君    村田敬次郎君       茂木 敏充君    山口 泰明君       山本 幸三君    奥田  建君       佐藤謙一郎君    島津 尚純君       中山 義活君    渡辺  周君       中野  清君    福留 泰蔵君       青山  丘君    小池百合子君       武山百合子君    金子 満広君       吉井 英勝君    中川 智子君       前島 秀行君  出席政府委員         環境庁企画調整         局長      岡田 康彦君         通商産業省基礎         産業局長    河野 博文君  委員外出席者         参考人         (社団法人経済         団体連合会環境         安全委員会地球         環境部会長)  寺門 良二君         参考人         (大阪大学名誉         教授         化学品審議会安         全対策部会・リ         スク管理部会合         同部会長         中央環境審議会         委員)     近藤 雅臣君         参考人         (愛知環境部         長)      山下 次樹君         参考人         (横浜国立大学         工学部環境安全         工学研究室教授         )       浦野 紘平君         商工委員会専門         員       野田浩一郎委員の異動 五月十四日         辞任         補欠選任   新藤 義孝君     萩野 浩基君   樽床 伸二君     佐藤謙一郎君   遠藤 乙彦君     並木 正芳君   二階 俊博君     武山百合子君   前島 秀行君     中川 智子君 同日         辞任         補欠選任   萩野 浩基君     新藤 義孝君   佐藤謙一郎君     石毛えい子君   並木 正芳君     遠藤 乙彦君   武山百合子君     二階 俊博君   中川 智子君     前島 秀行君 同日         辞任         補欠選任   石毛えい子君     樽床 伸二君 四月二十八日  中小零細企業などの地域産業振興策拡充に関する請願知久馬二三子紹介)(第二九七三号) 五月十四日  中小零細企業などの地域産業振興策拡充に関する請願春名直章紹介)(第三二九〇号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  特定化学物質環境への排出量把握等及び管理改善促進に関する法律案内閣提出第八八号)  特定化学物質排出量等公開等に関する法律案佐藤謙一郎君外四名提出衆法第一六号)     午前九時一分開議      ————◇—————
  2. 古賀正浩

    古賀委員長 これより会議を開きます。  内閣提出特定化学物質環境への排出量把握等及び管理改善促進に関する法律案並び佐藤謙一郎君外四名提出特定化学物質排出量等公開等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。  ただいま審査中の両案に対し、環境委員会から連合審査会開会の申し入れがありましたので、これを受諾するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 古賀正浩

    古賀委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、連合審査会は、本日午後一時十分から、また、来る十八日火曜日午前九時からそれぞれ開会いたしますので、御了承願います。     —————————————
  4. 古賀正浩

    古賀委員長 これより質疑に入ります。  なお、本日は、参考人として、社団法人経済団体連合会環境安全委員会地球環境部会長寺門良二君、大阪大学名誉教授化学品審議会安全対策部会リスク管理部会合同部会長中央環境審議会委員近藤雅臣君、愛知環境部長山下次樹君、横浜国立大学工学部環境安全工学研究室教授浦野紘平君、以上四名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、御発言の際は、その都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、御了承願います。  それでは、まず寺門参考人にお願いいたします。
  5. 寺門良二

    寺門参考人 経団連地球環境部会長寺門でございます。  本日は、PRTR法案国会審議に際しまして、参考人として産業界意見を申し述べる機会をいただきまして、大変光栄に存じております。  法案の中身に入ります前に、最初に、私ども産業界といたしまして、環境問題、特に今般のPRTR関係いたします化学物質の問題に対しましての、どんな取り組みをしているかにつきまして御説明をさせていただきたいと存じます。  産業界といたしましては、一九九一年に制定いたしました経団連地球環境憲章の精神にのっとりまして、国民の健康と安全に加えて、自然との共生をも念頭に置いて経済活動を行うよう努めてまいりました。特に、九七年には、多くの産業界参加を得まして、経団連環境自主行動計画を取りまとめました。  その着実な実施に取り組んでいるところでございますが、具体的には、地球温暖化防止についての具体的な目標と対策でございます。地球温暖化防止についてフォローアップを公表いたしましたし、循環型社会を目指した廃棄物対策実施、それからISO14000シリーズ策定への積極的な参加及び認証の取得など、こういうものを進めております。化学物質管理の面におきましても、そうした取り組みの中で、国による制度導入に先駆けまして、自主的にPRTR調査実施するなど、産業界といたしましても積極的に取り組んでおるところでございます。  具体的な化学物質問題に対します産業界取り組み状況について申し上げたいと思います。  まず、化学物質に最も関係の深い化学業界でございますが、一九九五年からレスポンシブルケア活動を行い、取り組んでおります。この活動の一環といたしまして、九五年には五十五物質、九六年には百五十一物質、九七年には二百八十六の化学物質対象といたしまして、化学業界としてのPRTR調査実施しております。  公表されました集計結果を見ますと、この自主活動成果が着実にあらわれてきております。具体的な例で申し上げますが、大気汚染防止法において指定されております有害大気汚染物質十二物質大気への排出は順調に減少しております。  このような化学物質問題への取り組み化学業界だけのことではありませんで、経団連では、産業界全体の立場から、PRTR導入について検討いたしました。九七年十二月より、四十五業界団体協力を得まして第一回経団連調査実施いたしました。その結果を昨年六月に集計いたしまして公表いたしました。  この第一回調査では、我が国で初めて日本全国産業活動による排出移動量を把握できたこと、そして多くの業界団体参加を得たということでございます。産業界の広範かつ自主的な取り組みとして初めて実施したということでございます。そういう意味では、初回といたしまして一定成果をおさめることができたと考えております。  引き続き、現在、第二回調査実施しているところでございます。前回調査で今後の課題とされました参加業界団体の数の拡大、データ精度の向上、データ解説実施など、改善を図るべきところを進めてまいりたいというふうに思っておりますし、集計結果の公表につきましても、前回公表よりも、より踏み込んだ形で、進んだ形で行えるよう考えていきたいというふうに存じております。  以上、産業界取り組み状況について御説明いたしましたが、私ども産業界は、国民の健康と安全及び環境保全に資することを目的といたしまして、さまざまな環境対策に取り組んでまいりました。  御高承のとおり、我が国では従来より、人の健康等への悪影響との因果関係が明らかになっている化学物質につきまして、大気汚染防止法水質汚濁防止法労働安全衛生法化審法などの種々の法律において厳しく規制がされております。産業界もこれらの法規制に従いまして、化学物質管理を厳正に、厳密に行ってまいりました。  しかしながら、化学物質の低濃度長期暴露によって人の健康等影響を及ぼすおそれについてはまだ未知の分野が多いわけでございます。私どもも、そうした化学物質につきまして、環境に及ぼすリスクについての科学的評価充実するとともに、事業者による自主管理改善促進し、環境保全上の支障を未然に防止することが基本であると考えております。今回の法律に基づきますPRTR制度もそうした目的から実施されるものと理解し、この法案の成立に賛同するものでございます。  したがいまして、私ども産業界は、PRTR制度法制化することによりまして、人の健康等影響を及ぼすおそれのある物質排出移動量データ行政に報告し、それを政府集計公表することは、公平性透明性客観性確保という観点から必要なことと考えております。また、みずからも排出移動量を把握し、適正な管理を進めていく上で、法に基づくPRTR制度を活用していきたいと考えております。PRTR法制化に当たりまして、産業界実施してきましたPRTR経験等を生かしていただきたいというのが基本的な要望でございます。  こうした観点から、次に、この法案の具体的な内容について、以下五点ばかり申し上げさせていただきたいと存じます。  まず第一点は、対象物質選定でございます。  これにつきましては、通産省環境庁、厚生省の審議会において審議を行うとのことでありますが、ぜひ、日常的に化学物質を製造し、取り扱っている産業界知見を踏まえていただきたいと思います。具体的な物質選定に当たりましては、科学的に評価されたデータに基づいて、当面実施可能な範囲内から始めまして、科学的知見の積み重ねに応じて見直していっていただければよいのではないかというふうに考えております。  第二に、法制化に当たりまして、国と地方公共団体役割についてでございます。  特に、PRTR制度への地方公共団体のかかわり方についていろいろ議論があることは承知しております。この点につきましても、私どもは、事業者からの技術的な問い合わせなどに統一的、一元的に答えていただきますよう望みます。  また、地域をまたがって複数の事業所を持つ事業者報告負担を軽減すること等からも、データの収集には国が一元的に携わるべきであるというふうに考えます。国にも地方公共団体にも届け出るようにしたらという意見もあろうかと存じますが、これは、届け出にかかわる負担を最小限にする観点からもいかがかと存じております。  第三に、営業秘密についてであります。  産業界は従来より、データ公表に際しまして、企業を取り巻く競争等を考慮しまして、営業秘密を保護するよう一定の配慮を求めてまいりました。万が一営業秘密が保護されない場合には、事業者に対する金銭的損害競争力への影響は甚大となることも十分予想されます。したがいまして、営業秘密の保護について御留意いただくとともに、その判断に当たりましては、所管行政責任を負う者により一元的に行われるべきであると考えております。  第四点は、データ公表方法についてであります。  事業者が報告した個別データを国が何らかの形で集計し、国民その他にわかりやすい方法公表することは当然必要であります。公表方法については、事業所ごとデータ開示を一律に義務づけるのではなく、国民からの請求に基づき、政府事業所別データ開示するのが望ましいと考えております。  最後に五点目といたしまして、いわゆるリスクコミュニケーションのあり方について申し上げます。  PRTR制度に基づいて公表されたデータにつきまして、正しい理解が得られるよう、事業者みずからが情報の受け手との円滑なコミュニケーションを図っていくべきであるのは当然と考えております。現在でも既に、環境問題に対します企業取り組みについて、例えば、地域住民との対話集会の開催や数値データを記載した環境報告書公表など、試行錯誤を重ねつつ、関係者との対話に努力している企業が徐々にふえているところであります。PRTR制度化されると、そうしたリスクコミュニケーション重要性がますます高まると思います。  したがって、PRTR法制化に当たっては、国など行政の側においても、有害性データの整備、リスク評価充実に努めるとともに、リスクコミュニケーションに当たる専門家育成等をぜひお願いしたいと存じます。  以上、PRTR法案について、私ども産業界が考えているところをいろいろ申し上げましたが、冒頭でも申し上げましたとおり、産業界は、経団連地球環境憲章以来、環境対策について、自己責任原則に基づく取り組みを中心に据えて取り組んでまいりました。化学物質管理は、化学物質取り扱い方法を熟知している事業者が主体的に取り組むことによりまして実効性が上がる性格のものでございます。経団連では、PRTRを人の健康等への悪影響のおそれのある化学物質管理促進に積極的に活用していき、その結果として、産業界自主的取り組みに対する国民からの信頼をぜひとも高めてまいりたいというふうに考えております。  産業界創意工夫を引き出し、尊重するようなPRTR制度の実現に向けまして、審議をお願いして、私の意見とさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  6. 古賀正浩

    古賀委員長 どうもありがとうございました。  次に、近藤参考人にお願いいたします。
  7. 近藤雅臣

    近藤参考人 近藤でございます。御指名によりまして発言をさせていただきたいと思います。  私は、主に中間報告作成経過を御紹介いたしますとともに、その間で私の意見を含めて発言をさせていただきたいと思います。  PRTR法制化につきましては、化学品審議会安全対策リスク管理合同部会、それから中央環境審議会環境保健部会におきまして、学識経験者を含む、産業界労働界消費者団体地方公共団体を含む幅広い利害関係者参加を得て審議実施いたしました。また、広く各層の意見を聴取させていただきました。その間、中央環境審議会環境保健部会長であられます井形部会長と私とで会合を開催いたしましたし、また、最終的には両審議会合同部会実施させていただきました。  このような審議過程におきまして、利害関係者からの意見の相違があったことも事実でございます。例えば、届け出先につきましては、海外と同様、効率的な集計公表を行って、企業秘密判断の一元化を図るためにも国に一本化した方がよろしいという意見が多かったのでございますけれども、一方では、地方公共団体届け出先として、地方公共団体届け出促進を行うとともに、地域におけるリスク管理に取り組むべきである、こういうふうな意見もございました。地方自治体委員からも、届け出自治体経由に関する意見もございましたけれども届け出先は国とする一方で、地域環境保全における地方自治体役割を明確に位置づけるということが重要であるという意見もございました。  このような意見とか、あるいは国が一元的な届け出先となる方が迅速かつ低コストで集計公表できるという他の委員意見も踏まえまして、国に直接届け出ることとする一方で、地方自治体はそれらのデータを自由に活用して地域環境保全に取り組めるよう位置づけることが適当と考えられたわけでございます。  国と地方自治体役割分担ということに関しましては、今申し上げましたように、国は全国における化学物質に関する環境保全観点から取り組む、地方自治体地域での環境保全観点から取り組むわけですが、国と地方自治体それぞれが協力して全体的な行政に取り組むということになろうかと思います。したがって、届け出られましたデータにつきましては、両者が共有いたしまして、事業者に対する技術的支援とかリスクコミュニケーション促進などについて協力することができるわけでございます。  国が実施する環境モニタリング調査とか生態調査などに関して、地方自治体はいろいろな面で意見を述べることもできますし、またその実施に関してはいろいろな参考あるいは協力というような体制もできるということ、そのほか、地方自治体の行うべきいろいろな協力事項に関しては明確にさせていきたいというふうに、その点を盛り込んだつもりでございます。  次に、個別データ取り扱いにつきましてですが、開示に関しまして、時期尚早であり、慎重に対応すべきであるという意見、これは産業界、マスコミなどからございましたけれども、その一方で、一律に公表すべきであるという意見もございました。しかし、審議におきましては、事業者自主的取り組みを促すためには事業者化学物質管理状況に関する情報提供を促すべきである、こういう議論となりまして、結果として、すべての国民に対するデータへのアクセスの確保及びリスクコミュニケーション促進重要性について意見が一致したわけでございます。  このようなことから、我が国における状況を踏まえつつ、欧州のPRTRと同様に請求開示方式基礎とする一方で、事業者は自主的に国民への理解の増進を図ることを責務として明らかにすることにいたしました。同時に、行政に関しましても、リスクコミュニケーション一定役割を果たすべきであるといたしました。  また、開示請求方式導入に当たりましては、開示請求を行う国民にとって利便性の高い仕組みにする必要があると考えておりましたけれども、このたびの政府案を見ますと、個別データデータベース化して、インターネットを通じた開示請求を可能とするというふうな利便性の高い仕組みとする方向で検討されているということでございますので、結構なことだと思っております。  営業秘密の判定に関しましては、個々の産業における技術事情に関する知識や各業界における競争環境などの専門的知見を踏まえた客観的な基準に照らして厳格に行う必要があるということでございまして、専門的知見守秘義務を考えまして、事業所管大臣に委任し、その結果を化学物質分類名をもって環境庁長官通商産業大臣に通知する方法が妥当とする、そういう意見が多うございました。  このような審議過程におきまして両審議会審議を通じて基本的に合意された考え方に基づきまして、環境庁通産省共同法案を作成されたわけでございます。このような、先ほど申し上げました審議会間の話し合い、それから、それに基づく両省庁の共同作業というのはまことに画期的なことでございまして、両審議会参加した者といたしまして喜んでいる次第でございます。  さて、基本的に合意された考え方といいますのは、PRTR健康被害に関する因果関係が不明確で、使用方法が千差万別の化学物質対象とするものでございますから、このような化学物質について未然防止観点から環境保全を図っていくためには、次の二つのことが必要であるというふうに考えられたわけでございます。  化学物質管理活動事業者生産活動に組み込むという、事業者の自主的な取り組み促進するような仕組みがぜひ必要であるということが第一点でございます。それから第二には、行政としましては、科学的知見充実PRTR結果を踏まえた環境モニタリング疫学調査などの実施に取り組むべきであるということでございます。  第一点に関しましては、従来の化学物質行政というのは、いわゆるお上主導でございまして、いろいろな規制をつくって環境管理というのを行ってまいりました。しかし、その規制というのは確かに功を奏してはおりますけれども規制値以内であればよろしいというふうな、そういう感覚が一般に出てきたのではないか。実際の環境汚染に関しましては、規制値以下であったらよろしいということじゃなくて、できるだけ少なくする、汚染物質の拡散を少なくする、そういうことが今後どうしても必要になってくるのであろうと思います。  そういう意味におきましては、法規制だけではなくて、事業者自体環境汚染に対する観念といいますか、これをしっかりとしていただかなくてはならない。そういう意味で、自己責任に基づく自主管理ということを何とかしていただきたい、こう考えているのが現状でございます。そういう意味におきまして、この自己管理というものを製造あるいは販売その他の仕組みの中にきちっとはめ込んでしまうということが一つ大きな効果を上げるものではないか、こう考えられたわけでございます。  行政といたしましても、この結果を踏まえて、環境モニタリングその他をやりまして、科学的な知見をきっちりと早急に固めてその裏づけをしていく、こういうことも必要ではなかろうか、この二点に関しまして意見が一致したわけでございます。  最初事業者の自主的な取り組み促進するということに関しましては、国際的な整合性並びにPRTR対象となる物質の性質から考えましても、地方団体排出削減計画を策定し、事業者対策を強いるというようなことではなくて、そういうことはむしろ逆に、先ほど言いましたような行政規制的な関与であって、事業者自己責任に基づく原則というものを損なうものではないかな、もっと自重しなくてはならないというふうに考えている次第でございます。  今回の政府案といいますのは、そういう意味では事業者自己責任原則を常に問い続けるというふうな仕組みになっておりまして、正直に言いまして、産業界にとりましては大変厳しい仕組みになっているのではないかというふうに私は考えております。  このような基本的考え方に沿いまして政府案は作成されているということでございますので、単なる排出量届け出義務規定だけではなくて、事業者が講ずべき化学物質管理指針の制定、事業者によるリスクコミュニケーション責務、非点源排出量の推計、環境リスクを評価するために必要な調査実施、こういうことを明確に位置づけるということで、海外PRTR制度に例のない先進的な制度になったと評価しておる次第でございます。  PRTR制度につきましては、以上、先ほど述べました基本的な考え方ということに基づいて行われておりますので、まずそれをスタートしていただくということが大事だと考えております。そして、もし何らかの問題点がございましたら、それを実施する中で適宜見直していけばよいのではないかなというふうに考えております。  全般的な事柄に関しましての経過報告並びに私の考え方といいますか、こういうものにつきまして御説明申し上げた次第でございます。  ありがとうございました。(拍手)
  8. 古賀正浩

    古賀委員長 どうもありがとうございました。  次に、山下参考人にお願いいたします。
  9. 山下次樹

    山下参考人 愛知県の山下でございます。  本日は、特定化学物質環境への排出量把握等及び管理改善促進に関する法律案及び特定化学物質排出量等公開等に関する法律案に関しまして、地方公共団体立場から意見陳述の機会をいただきましたことに対し、まずもって感謝を申し上げます。  愛知県における化学物質に対する独自の取り組みや、国側が実施をいたしましたPRTRパイロット事業への協力などを通じましての経験を踏まえ、いわゆるPRTR制度考え方、両法案に対する意見、要望などを申し上げたいと存じます。  まず、愛知県の化学物質に対する取り組みPRTR制度に関する意見等の背景などについてでございますが、本県におきましては、多種多様な化学物質を使用する産業の立地が進んだことから、先端技術に係る環境汚染未然防止のため、昭和六十三年以降、半導体産業等の環境保全指針や化学物質流出に伴う環境問題に係る環境保全指針を順次策定し、事業者による自主的な管理の徹底などの指導を実施してまいったところでございます。化学物質の安全管理については、県民から、潜在的に毒性等を有する多様な化学物質について包括的に管理するシステムの構築が要望されており、事業者自主管理基本理念とした新たな化学物質対策の手法としてのPRTR制度法制化に期待しているところでございます。  愛知県は、化学物質対策を先行的に実施していたことなどから、神奈川県とともに、平成九年度から環境庁PRTRパイロット事業の実施協力をしてまいりました。こうした経験を背景としまして、平成十年十一月に、中央環境審議会環境保健部会に対しまして、早急な法制化や、事業者化学物質排出量の削減につながる方法をみずから判断して努力できるシステムの確立が必要であること、地域におけるリスクコミュニケーションの手法を確立する必要があることなどについて、環境部長として意見を申し上げた次第でございます。  本県県議会におきましても、十年十二月にPRTRの早期の法制化を求める意見書が採択をされております。また、平成十一年二月には、全国知事会社会文教調査委員会から、環境庁長官及び通商産業大臣に対しまして、PRTR制度法制化に関して、地域住民への化学物質に関する情報提供等について、地方公共団体役割を明確化すべきであることなどの意見提出されております。  次に、地方の環境行政を積極的に推進する立場といたしまして、PRTR制度についての考えを述べさせていただきます。  化学物質について、これまで少数の物質による高濃度汚染に起因する健康影響の問題を中心に規制措置が講じられ、健康影響等の未然防止一定成果を上げてまいりました。しかし、それだけでは、今日問題となっている多数の化学物質による低濃度汚染に長期暴露されることによる影響に対し、適切な対応が困難な状況になってきております。こうしたことも勘案されて、PRTR制度が今回、御審議対象になっていると考えております。  この制度は、従来の規制制度と異なり、環境への排出規制する必要があるか否かにかかわらず、物質の有害な性状と環境中の存在の程度によって対象とする化学物質選定し、環境への排出や移動の状況を把握するというもので、事業者による化学物質の自主的な管理改善を促し、環境汚染未然に防止するという新たな手法であると考えております。この制度が実現すれば、地域における化学物質排出量等の把握ができるとともに、その傾向も明らかになることから、化学物質に関する環境施策を総合的に推進する上で、化学物質の優先度を見きわめ、どのような施策を講ずべきか等を検討するのに役立つ基礎資料が得られるものと期待をいたしております。  政府案では、全国統一的な手法で、さまざまな化学物質ごとに、全国的、地域的、業種別などの排出量移動量が把握、集計公表されることとなっており、その個別事業所ごとデータが入ったファイル記録事項は都道府県に通知されることとされ、国のみならず地方公共団体にとっても貴重な情報が得られるものと期待しております。このような化学物質排出量等を把握する前提となる事業者からの届け出が円滑に実施されますよう、法律の施行までの間に十分に周知徹底する必要があると思いますので、公布の日から二年六月以内とされていますが、この点につきまして要望をさせていただきます。  政府案では、先ほど述べましたように、事業者化学物質排出量の削減につながる方法をみずから判断して努力できるシステムが確立されると考えております。そのためにも、PRTRの結果の公表に当たっては、それによって明らかにされる化学物質排出量がどのような意味を持つのかという評価を同時に示していただき、地域住民がいたずらに不安感を抱かないようにしていただきたいと考えております。そして、国においては、法案に規定されているように、化学物質に関する科学的知見充実や、利用しやすいデータベースの整備などに努めていただき、地方公共団体がこの制度の結果を活用して、環境施策を推進しやすくなるような環境の整備を進めていただきたいと考えております。  次に、PRTR制度において地方公共団体が果たす役割などについてでありますが、政府案におきましては、個別事業者から統一的に国に届け出されたデータが扱いやすいように電子情報に変換された上で、事業所ごとのファイル記録事項として通知され、都道府県は地域の実情に応じて、集計公表に活用できることとされております。  この考え方は、届け出られたデータを迅速かつ効率的に集計することが求められていること、及び地方公共団体の限られた人員や予算の中で、事業者から届け出られたデータの入力作業等に多大な時間を費やすことなく、通知された情報を最大限活用することにより、環境施策の企画立案、事業の実施等に有効に対処できるという視点から、現実的で望ましいものと考えております。  また、事業者から届け出られた排出量以外のいわゆる自動車などの移動発生源や、農地、家庭などの非点源からの排出量の算定については、現時点における算出技術の状況から見まして、全国的に整備されている統計情報等を活用して行うことが考えられていることなどから、国において一元化して推計し、算出する方が適当であり、その集計結果を公表していただくのがいいのではないかと考えております。  次に、いわゆる事業者営業秘密判断につきましては、愛知県内に立地している企業が本県以外にも全国事業所を立地している実態を考えますと、全国統一的な考え方のもとに国が判断する方が効率的であり、現実的であろうと考えます。  仮に、市町村が届け出先になり、個別具体的に事業者営業秘密判断実施するとなれば、市町村によっては専任の環境担当者も配置されていない実態も見られますことから、限られた人的資源での対応は、その事務量を勘案しますと、相当な困難が予想されます。  また、市町村ごとの営業秘密判断が異なり、それを不服として事業者が所在地の都道府県に置かれることとなる審査会に持ち込むことになりますと、審査会を運営する都道府県の事務量も相当なものになると予想されます。  化学物質に関する都道府県の環境行政は、大気、水質、地下水・土壌、廃棄物等多岐にわたっており、地域における総合的な施策を推進していく役割を担っております。そのためには、PRTRに関する届け出事務や営業秘密判断等に事務を費やすのでなく、むしろ国から通知される情報を活用し、化学物質対策をより推進すること、事業者自主管理改善促進に関する指導助言、住民に対する環境教育、PRの推進や人材の育成などに積極的に取り組んでいくことが必要であると考えております。  政府案には、そのような地方公共団体役割が位置づけられており、全国知事会社会文教調査委員会でも要望した趣旨が考慮されているものと受けとめております。  国と地方の関係において、国が排出量等届け出先となり、届け出情報の電子情報化作業等を行い、都道府県が提供された情報を活用して地域化学物質対策を推進するというような役割分担が明確化されている政府案が、地方公共団体立場からは適当であろうと思います。  いずれにいたしましても、国と都道府県が同じ目的に向かって協力し合っていくということが、PRTR制度を円滑に運用していく上で必要なことであると考えております。したがいまして、国と地方公共団体が密接に連携してPRTR制度目的が果たせるよう、国からの適切な情報提供や財政的支援等が行われるよう要望させていただきます。  次に、その他若干考えていることを申し述べたいと存じます。  政府案に規定されております事業者による化学物質の性状及び取り扱いに関する措置、いわゆるMSDS制度についてでありますが、愛知県では、平成九年度から国のPRTRパイロット事業に協力しており、その過程で、事業者から、化学物質に関する成分情報の提供システムができないと、PRTR制度への対応が難しいという意見がかなり寄せられました。  そのため、同一法案のもとでPRTR届け出義務者がみずから取り扱っている化学物質についての情報を得ることができる仕組みが、事業者にとってもわかりやすく、かつ合理的であると考えております。  次に、事業所周辺の住民とのリスクコミュニケーションについてでございますが、これもPRTRパイロット事業に協力する過程の中で、一部の事業者から、リスクコミュニケーションに際して、中立公正な第三者として県が介在してほしいとの意見も聞かれました。こうした意見等に対処するためにも、国から、リスクコミュニケーションの手法などの技術情報や事例の紹介、人材育成への支援などを行っていただきたいと考えております。  なお、地域住民事業者リスクコミュニケーションを図りながら、地域における環境リスク対策を推進するためには、国と地方公共団体による事業者の自主的な管理改善促進するための技術的助言等の法的根拠が重要な位置づけとなるものと考えております。  最後になりましたが、このPRTR及びMSDSが制度化されますれば、事業者による化学物質の自主的な管理改善促進されますし、環境保全上の支障を未然に防止できるものと思っております。このことは、地域環境保全する立場にある地方公共団体にとっても望ましいことと考えております。  このため、できるだけ早く制度化を実現していただきますよう御列席の先生方にお願いを申し上げまして、意見の公述を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  10. 古賀正浩

    古賀委員長 どうもありがとうございました。  次に、浦野参考人にお願いいたします。
  11. 浦野紘平

    浦野参考人 ただいま御紹介にあずかりました浦野でございます。  私は、三十五年間、有害な化学物質関係の研究、教育を行うとともに、環境庁PRTRパイロット事業を初め、国や地方自治体行政にも携わってまいったものでございます。また、企業との有害化学物質対策についてのいろいろな共同の仕事もたくさんやってまいりましたし、市民との関係、特に正しい知識の普及などにも努力してまいりました。  これらの経験を踏まえまして、現在、政府及び民主党から提案されております法案に対しまして、私、専門家立場として、二十一世紀の日本の国民あるいは産業行政のよりよい形での発展のためになる法律の制定を願って、主に次の四点について意見を述べさせていただきます。  お手元に資料を事前にお配りしてございますので、それを参考にしていただきたいと思っております。  お話しすべきことは、地方自治体の主体的関与がぜひとも必要である。地方分権あるいは今後の、企業と地元住民との関係等のトラブルの削減等についてもこの点が必要である。それから、個別情報が利用しやすい形で国民に公開される保証が必要である。それから、営業秘密審査の公正さを担保し、中央官庁の権限強化や縦割りの弊害を避けるようなことが必要である。それから、内分泌攪乱性、いわゆる環境ホルモンと言われるものなど情報が不足しているものでも、国民不安の大きいものについては国民意見を取り入れる制度が保証される必要がある。その他ということでお話をさせていただきます。  初めの地方自治体の主体的関与についてでございますが、現在の政府案でも、技術的支援あるいはリスクコミュニケーションに自治体等も関与することは書いてございます。  この点でございますが、特に規模の小さ目の事業所あるいは化学系でない製造業や、全く製造していない非製造業も今回の対象になります。これらのところでは、化学物質についての知識が非常に乏しいところもございます。特に複雑な化学物質の片仮名で書いた名前や報告の方法というのは、かなり面倒なところもございます。  これらに対して、地元自治体の化学物質担当者、この人材が有効に機能することが保証された制度とすることは、事業者負担を少なくし、正しいPRTR報告あるいは適切な有害物質管理を効率的、経済的に進める上で非常に重要だと考えております。  また、化学物質といいますのは、経団連さんが調査をしたところは多分かなり大企業が多いと思いますが、そういうところだけではなくて非常に小さなところでも大変たくさん出ております。環境庁のパイロット事業でも、規模と排出移動量との関係というのはほとんどない、非常に小さい規模でもたくさんのものが出ているということがわかっております。  この制度が正しく機能するためには、制度理解を十分進めて情報が確実に集まること、それから情報が正しいというこの二点がないと、PRTR制度そのものが意味を失ってしまう。これを周知させるためには、事業官庁が外郭団体や業界団体等を通じてPRをしていただくことは大変いいことでございますが、これだけでは全国津々浦々の事業者に対して指導助言を徹底することはなかなか難しい、自治体の、都道府県等の人材を有効に活用するべきであると考えております。  特に、報告率の高さと公正な、誤りの少ない報告ということが非常に重要で、今回の法案でも罰則がついておりますが、これをチェックする機能というのが全く明記されておりません。アメリカでTRIが実施されてから既に十年以上たつわけですけれども、いまだに違反で高額の罰金を受けるケースもございます。日本の中でも、できるだけ正しい報告を集めるためには、自治体の主体的な関与、指導助言と同時に、不明な場合、調査あるいは悪質な場合の勧告等をする責務と権限が自治体に与えられる必要があるというふうに考えております。  このことについては、中央環境審議会の自治体からの公述人意見で神奈川県の森谷技監が、埼玉、千葉、東京、岐阜、愛知も入っておりますが、大阪、横浜、川崎、北九州の意見を聞いた上で出された資料にも、地方公共団体を通じてできれば報告をすることが望ましい、あるいは立入検査、立入調査等を行うことが不公正さをなくすためには必要であるという意見が述べられております。  実際に環境庁が二年間パイロット事業を行ってきましたが、この場合は説明会等をかなり多数行いまして、助言指導、問い合わせあるいは督促等も行ったにもかかわらず、報告率はおよそ五〇%。この報告率と申しますのは、事業所の名前あるいはどういう業をやっておるという程度のごく簡単な、様式一というものでございますが、これでも半分ぐらいしか戻ってこない。従業員数三百人以上の大きな企業でも出されないところがかなりの数ありましたし、実際に間違いも非常に多かった、かなりの間違いと思われることがありました。  これらのことを今度は法制化してきちっとやらなければいけないわけで、このときに正しい情報あるいは高い報告率がなければ、非常に熱心に報告した企業だけが、あるいは熱心に報告した地域だけが環境汚染をたくさんしているというふうに見られて、正直者がばかを見るような制度になりかねないので、これらを避けるためにも、地方自治体調査、勧告等の責務と権限を明確にする必要があると考えております。  また、PRTRの報告のチェックが今非常に明確でないわけでございまして、政府案ですと明確でないものですから、このまま情報が公開されますと、当然、市民団体がチェックをするという役割を果たすことにならざるを得ない。そうしますと、国や地方自治体業界団体あるいは個別企業に対して市民団体だけが問題点のチェックをするということは、対立的関係をむしろ助長するおそれがある、このことは地元住民にとっても、地元企業にとっても余り好ましいことではないというふうに私は思います。そのためには、自治体が助言指導と同時に何らかの調査、チェックする機能を持つということが必要であるというふうに考えております。このことは、今後の、地元の住民、企業と一体になった地方自治が発展するためにも必要であるというふうに考えております。  また、OECDの勧告あるいは地球サミットの宣言等にも書いてございますが、市民団体にも十分な情報責任を持たせることによって、むしろ、地域住民や一般国民の正しい理解を促し、行政企業との相互理解を深める、いわゆるリスクコミュニケーション役割の一部を担ってもらうことも必要であるというふうに考えております。  またもう一方、全国地方自治体が現在、規制を中心にした、いわゆる基準値を守らせるという規制を中心とした環境行政を従来はやってきたわけですが、このPRTR制度は、規制ではなく、関係者全体が協力して予防的に化学物質管理をする制度でございます。こういったことが必ずしも地方自治体でも理解を十分されていないのが現状でございます。もちろん、愛知県、神奈川県等進んだ地域ではかなりの理解が得られておると思うわけですが、全国大変広いわけでして、いまだに、規制をする、基準を守らせることが中心だと考えておる自治体もあるわけでございます。  そういう意味では、このPRTR制度地方自治体が主体的に参加をする形、情報をもらってそれを公開する、あるいは国のやることに対して意見を述べられるということではなくて、主体的に参加することが、規制中心でない環境行政を定着させる、規制で動く企業活動でない形をつくる、あるいは地域住民と自治体と企業とのコミュニケーション促進する上で、今後、日本の新しい自立した日本社会を築くためにも非常に重要であるというふうに考えておるわけでございます。すなわち、PRTR制度を、地域住民国民の安全を守る形で定着するには、地方自治体の関与が非常に重要であるということです。  二番目のことが、個別情報が利用しやすい形で国民に公開される保証が必要であるということでございますが、これについてはかなり、政府案もインターネットでやれるというふうなことは近藤先生がおっしゃいましたので、それが保証される、無料あるいは非常に安価にできることが保証されれば、それは非常にいいことだというふうに考えております。  また、この分野の科学技術は非常におくれている状態にありまして、学術審議会等でもこの分野の充実がうたわれ、また政府案、民主党案でもその旨述べられておるわけですが、この分野の科学技術を有効に進歩させるためにも、情報の利用が自由に、加工できるような形で、安価にあるいは無料で入手できることが極めて重要であるというふうに、私ども科学関係者、いろいろな学会で既にこの準備に入っている状況にあるということもお知らせしておきたいと思っております。  また三番目は、営業秘密の件でございますが、現在は政府案では所管大臣が審査をするということになっております。これは、所管大臣といいますのはコーチあるいはマネージャーでございまして、コーチやマネージャーが審判をするというのは、仮に不正がないとしても周辺からはやはり不正を疑われる非常にまずい制度だというふうに私は思っております。ぜひ、第三者による審査会で審査をしていただきたい。そのことが、企業がもし営業秘密を認められないときの異議の申し立ても、担当のお役人さんに申し出るというのではなくて、きちっとした組織に申し出られるということが必要だというふうに考えております。  また、事業所管大臣に出すということでございますが、こういったことは世界的には例のないことでございまして、スウェーデンがヨーロッパ十三カ国にアンケートしたものでも、ほとんどの国、アイルランドと英国以外はすべて、地方自治体と国、あるいは地方自治体経由で国という形の、しかも環境行政に報告をするという形になっております。アメリカでも国と地方自治体に、地方自治体というか州に、両方に報告するようになっておりますし、韓国でも自治体に委任をしております。台湾でもそうでございます。そういった形で、地方自治体が報告を受け取るという形が非常にこの制度充実するためには必要であるというふうに思っております。  四番目は、新しい制度でございますので、非常にまだ不明確なところが多い。国民の不安がある物質は、対象とするようにしなければいけない。規制でない、予防的なものであるということもありまして、国民不安のあるもの、国民意見を聞いて、対象物質あるいは対象事業所、含有量等のすそ切りも決めていく必要があるかと思いますが、政府案の中では余り明確にされていないということで、この点をさらに明確にする必要がある。  それから、非常にたくさんの化学物質の有害性についての情報が非常に不足しておりまして、今後さまざまな情報が次々と追加されてくる可能性がある。あるいは、制度も社会の大きな変化に合わせるために、法律の見直し期間も現在、政府案は十年となっておりますが、五年ないし七年程度で見直す必要があるのではないかというふうに思っております。  その他としまして、非点源の移動量というのが、環境庁PRTRパイロット事業では推計しておるのですが、今回の法案には抜けておる。この点についても、非常に今後重要なことなので、何らかの処置が必要であろうというふうに思っております。  また、取扱量等の報告、これはパイロット事業で昨年度行ったのですが、余り事業者の抵抗もございませんでした。また、誤った報告のチェックには非常に有効でございました。これはアメリカも韓国もこれを報告させておるわけで、こういったことも今後検討をしていただきたいというふうに思っております。  以上、今回の法律を、地方公共団体PRTR報告の受け取りやチェックの責務と権限を与えられ、個別情報の公開を無料または安価とし、公正な営業秘密審査を行い、事業所管官庁の裁量権限の強化を避けて国民意見を反映する法律とすることが、今後二十一世紀の日本の発展のために不可欠であり、行政改革あるいは地方分権、情報公開、国際化の促進といったことにも非常に重要であるというふうに考えております。議員の皆様方が真に国民と国の将来を考えて、この法案審議を行ってくださることをお願いいたします。  なお、参考のため、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の社説等及び日本弁護士連合会の意見書をつけさせていただいておりますが、主要な論点、主張はほとんど私の述べたものに近いというふうに考えておりますので、御参考にしていただきたいと思います。  以上です。
  12. 古賀正浩

    古賀委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  13. 古賀正浩

    古賀委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新藤義孝君。
  14. 新藤義孝

    新藤委員 自由民主党の新藤義孝でございます。  今ちょっと頭が混乱しておりまして、四人の専門の方から大変にそれぞれ意義ある御意見をいただいたわけでございます。順次質問させていただきますが、私も専門ではございませんので、もし言葉の言い違い等があったら、しんしゃくしてお酌み取りいただければありがたい、このように思っております。  そもそも化学の物質の分野でございますから、なぜそれが商工なんだ、こういう話があるわけなんですが、私は、これからの産業活動というのは、環境にどう適応させていくか、それをどう産業活動に取り込んでいくかということが最も大事なことである、それが世の中を便利にすることである、生活の利便性を向上するとともに、やはりそれが生活の一番根幹をなすところになるだろう、こういう観点で、これはもうぜひ私どもで取り組んでいこう、このように思っております。  しかも、いろいろ資料を調べますと、化学物質と言われるものが世界じゅうに千八百万種もあって、我が国では五万から十万種のものがある、そして、年々数千種ずつふえていっているんだ、こういうような、もちろん、我々の周りは全部化学物質で囲まれているわけなんでございます。しかし、それに対して、規制をすべき化学物質というのは数十物質しかない。それ以外のものについては、どこで何が使われているのかわからない。私は、これは本当に不思議なぐらい、今一体日本で、いい悪いではなくて、化学物質と言われるようなものがどれぐらい使われているのかというのを把握していないこと自体が不思議だったなと、私たちの世代から言わせていただくと。だから、これは非常に意義あることだろう。しかも今回のは、規制に至らない化学物質を、その排出量を把握するとともに管理改善をするんだ、まさにここに私は今回の法律のコンセプトがあるのではないか、こういうふうに思うわけなんでございます。  ちょっと時間がございませんので、そういう中で、これはもうぜひ推進すべきという観点から、各参考人の先生方にお話を聞かせていただきたいと思います。  まず、産業界で中心となってお取り組みをいただきました寺門参考人さんにお尋ねをいたします。今回の案でいきますと、PRTR実施が、二〇〇一年の排出量を二〇〇二年の夏までに届け出よというのが一番早いスタートかな、こういうふうに思うのでございます。二年半です。しかし、これは全然今までそういうことを考えずにやっていた産業者が、特に中小企業者がこれに対応していくというのは、届け出事務の手続から、化学物質の計量、推計、そういう作業をしていかなければいかぬ。これはかなり負担がかかるのかなという気がするのですが、それについて産業界としてはどんな要望があるか、この制度実施に際しての産業界からの要望があれば、お聞かせいただきたいと思います。  それと、さらに、インターネットの活用、私は、こういうものはもうどんどん電子申請をすべきだと思っておりまして、各事業所が共通フォーマットのもとで、例えば、インターネットを使うと自動計算してくれますとか、数量をこことここに入れれば自分たちで計算しなくてもコンピューターが計算してくれる、そういうソフトを国が無料でフリーダウンロードしてあげればいいのですね。それで、事業者にこれを使ってくださいと、そうすれば、国の方も一発で計量できてしまうわけですから、そんなようなことを使った方がいいのではないかと思っておりますが、産業界でそんな意見があるのかどうなのか、ちょっと状況を教えていただきたいと思います。  さらには、データ取り扱いでございますが、住民、関係者との理解を深めるというリスクコミュニケーション、これはよその国の法律では入っていない規定だそうでございますね。ですから、こういう新しいリスクコミュニケーション、まさに企業の自主的な取り組みを促すんだ、こういう観点で入れたということなんですが、この辺、実際、事業者リスクコミュニケーションとの責務関係はどんなふうにお考えになるかということを、あわせてお尋ねをしたいと思います。  それと、届け出だけじゃなくて、今度は情報公開のときもインターネットを使った方がいい、行って来いでやった方がいいなと思っているのですけれども、その辺も産業界での御意見があれば、お聞かせいただきたいと思います。
  15. 寺門良二

    寺門参考人 今三点ほどの御質問がございました。  最初に、二〇〇二年の夏にデータが出てくる、その期間にどんな努力が要るのかということだと存じますが、一昨年、私どもは自主的なPRTRをやったわけですが、先ほどもお話があったように、それは大企業だけじゃないのかというお話もあったわけでありますが、それでもなお大変努力が要るわけでございます。  実際にデータをとるマニュアルといいましょうか、そういうものを決めて、そして、各発生のプロセスに応じたマニュアルというものを一つずつつくり上げて、そこから出るデータをサムアップして、それで正しいかどうか、そういうものをつくり上げていって、初めてそのデータが最終的にまとまってくるわけでございます。  中小企業の方々にとりましては、それぞれの企業によりましてやっている作業の内容が大変違いますから、それにマッチするように自分たちで考えていかないとできないわけでございます。そういう意味では、十分なマニュアルというものをつくって、その理解活動というものを進めていくということが必要であるわけでございますので、二〇〇二年に百点満点がとれるかということになりますと、とれないということも、またこれは逃げでございますけれども、とれるように努力するということしか申し上げられないわけですが、中小企業の方々にとりましては、大変負担のかかることであるということだけは申し上げさせていただきたいと思います。  それから、インターネットの活用についてでございますが、私どももインターネットの活用というものを通じてでないと、この作業というものはできませんし、データ集計もできませんし、膨大な資料をだれが見るのかということも、これは結局限られた人になってしまう。やはりインターネットの中から選択されたデータというか、自分の意思で選択できる、これは地方公共団体の方々にとりましても同じようなことだと思いますが、インターネットの活用というものがぜひ必要でございます。これらも、どのような形でインターネットを構築していくのか、今後十分検討していただきたいと思います。私どもも、それに早くマッチするような方法を早く事業者の方に伝達して、みんなでやろうというふうに取り組んでいきたいと思います。  それからリスクコミュニケーション、これは常にPRTR制度導入のときから議論があったものでございます。この中で、私どもは、データを出せばいいという問題ではないわけで、そのデータ意味といいましょうか、そういうものをやはり理解していただくというコミュニケーションというものは非常に大事でございます。そういう意味では、地方公共団体の方々とともに、地域の方とやはり我々は前向きに円滑な情報交換といいましょうかそういうものを進める、これはやはり自主的に自分たちでやるという、隠すという意味での意思ではなく、自分たちでやっていく。  しかし、ここには限界があるわけでございます。この物質の、常に言われております健康等への影響のおそれ、そのおそれというものは言葉では簡単でございますが、定量化がなかなかできない。そういうところでは、やはり心を通じていくということしか結局ないわけでございます。そういう意味では、信頼関係確保しつつやっていく、こういうことだと思いますので、私どももこのPRTR制度ができます前から、そういうことを志してまいりたいというふうに存じております。  以上でございます。
  16. 新藤義孝

    新藤委員 ありがとうございました。  恐らく中小企業者に対しては何らかの技術的な支援ですとか、金融関係制度充実させていかなければいけないのかな、こういうふうに思っておりますので、そういうときはどんどん私どもにまたお申しつけいただければ、ありがたいと思っております。  ちょっと時間がございませんので、申しわけございませんが、引き続きまして、浦野先生にお尋ねをしたいと思います。  浦野先生の御主張というのはかなり明確なものがございまして、国の一元管理、国に集約させるのではなくて地方自治体をもっと使っていくべきだ、幾つもお話がございましたが、私はそういうところがまず一番ポイントだなというふうに思いました。  実は、私は市の職員だったんです。これをやったことがあるんです。埼玉なんですが、地元の市会議員もやったことがあります。そういう自治体のこともよくわかっているつもりなんですが、一番恐れるのは、やる気のある自治体、それからできる自治体と、そこまでなかなかできない自治体がある。三千三百、自治体があるわけです。それで、先生がお話をされたように、情報が確実で正しくなければ意味がない。だから、一律のレベルで集まらないと意味がないんですね。それから、全国津々浦々にPRが難しいんだよ、こういうお話がありました。  そうすると、それは逆に、まさに熱心な地域がばかを見るのは、あってはならないことです。でも、不熱心な地域がもしあったとして、そこの不熱心な地域の不熱心な自治体によって、それがもし発生してしまったら、これは逆説的な話になっちゃいますが、かえって危険になるのかな。ましてや、パイロットプランをやったときにも、なかなか趣旨が徹底していなかったというようなお話もございました。  であるならば、別にこれは国にやらせておいて、自治体が知らぬ顔をするということではないと私は思っているんですね。また、そんなことをさせるつもりはありませんし、データは一元的に国が集めるんだ。しかし、それをそのまま丸ごと自治体に出しちゃうわけでしょう。だから、そこで自治体にしっかりと、もし危険があったり、それからモニタリングをしなきゃいかぬ、さらに追跡調査をしなければいけないとか、そういうようなことが発生したら、それはそこで自治体にやらせればいいのじゃないか。  むしろ逆に、今度は資料の収集、データを一元管理するという観点からすると、自治体ごとでまとめられちゃうと、市役所でまとめました、はい、それを県庁に持っていってください、県が、また四十七都道府県集めて、それを国になんというようなことをやったら、時間がかかっちゃってしようがないのじゃないか、私は逆にそんなふうに思っているんですね。だから、この制度は国も県も市も全部同じ立場でやらなくちゃならないんです。させなくちゃならないんです。ただ、その手続というか窓口、どういう流れをつくるかということを私は思っておりますから、その辺、先生、もしお考えがあったらどうかなと。  ごめんなさい。本当はちょっとやりとりをしたいんだけれども、時間がないんだ、もう終わらなければならなくなっちゃうから。  それと、あともう一つ、中小企業でたくさんの物質が出ている、こういうお話がございました。であるならば、これは大変な問題だと思うんですね、中小企業の皆さんは五人とか十人とかでやっているんですから。そういうところに今度は新しい制度をかけて、あなたたちはやっていることをちゃんと報告しなければいけないんだと。  そうすると、先生、逆にこの中小企業の皆さんに、どんなお手伝いを国なり我々はしなくちゃいけないのか、対策は。中小企業に必ず出させろ、出させなければだめだよというお話もわかるけれども、逆に、では、そういう企業に出してもらうためにはどんな対策が必要だとお考えになるのか、もしあったら、参考に教えていただきたいんです。
  17. 浦野紘平

    浦野参考人 ただいまの御質問は大きく二つあったと思っております。自治体の関与の件と、中小企業の支援の件だと思っております。  私は国に一元化することに反対しているわけではございません。現在の政府案では、事業所管官庁ということで非常に窓口が多くなっている。事業者は特に多業種になっておりますし、業種も、業態も非常に変化が激しくなっております。今回のパイロット事業でも、この業種ということで報告を求めたところ、一割が業種が違っておったという事実もございます。そういった中で、少なくとも国でも窓口は一ないし二省庁に絞るべきであるというふうに私は考えております。  それから、自治体に出すという場合に、民主党案では市町村を経てという形になっております。私は、おっしゃるとおり、少し市町村は無理だというふうに考えておりまして、都道府県レベルで集める、あるいは事業者が、アメリカのように、そのほかの国のように、同じものを二つ国と都道府県に出すという形も、これは弁護士会が提案している案でございますけれども、非常にいいのではないか。都道府県が国と市町村との間に入るということは、非常に有効であるというふうに思います。  先ほど来話がありました、非常に熱心に取り組むところと、そうでないところがある、これは私も非常に心配しております。  自治体というのは、熱心なところはどんどんやるから問題ないのですが、熱心でないところをどうやって動かすかといいますと、一番は、法律的に何らかの責務や権限が与えられると、自動的にそのようなセクションができて対応するのでございます。それが不明確ですと、やる、やらないが非常に差が出るということで、地域で問題を生ずる。ですから、都道府県レベルには少なくとも、もう少しきちっとした権限あるいは責務をつけるべきだ、それが私の主張でございます。  それから、自治体に情報が行けば当然やるのではないか、やらせなければいかぬということになるわけですが、今の政府案で自治体がもらったときに、果たしてどこが自治体にやれと言えるのか。あるいは、自治体が企業者に何かを言うときに、どういう権限で言えるのか。あるいは、間違いがありそうだ、報告をしてなさそうだというときに、どうやってそれを言いに行くのか、調査しに行くのかというと、できないわけです。  それは、自治体が環境庁ないしは事業所管官庁にまず問い合わせをしなきゃいけない、問い合わせをしたらどういう返事が来るか、その先わからないわけですね。それでは自治体もちゃんと動けないのではないか。もちろん、動くところは動くのですが、動かないところは動かないだろう、そこを非常に心配しているというのが事実でございます。  それから、中小企業についてでございますが、中小企業といいますのは、この制度は、一応従業員数あるいは化学物質の取扱量で、すそ切りという形を多分行われる、パイロットでもそうでございます。ですから、非常に小さいところは直接報告をする必要がない制度に多分なる。  しかし、すそ切りより上ではあるけれども、小さいところで知識のないところというのは当然あるわけですから、そういうところに対して、当然、業界あるいはその他で指導もされると思いますが、きめ細かな指導や助言、手助けをするのはやはり地元自治体であるというふうに私は思っております。その自治体がまずレベルが上がって、その上で中小者にもいろいろな支援をするということが、自治体自身も予算をとったりしてやらなきゃいけないと思うのですね。そういった根拠をつくることが非常に重要であるというふうに私は申し上げておるわけでございます。
  18. 新藤義孝

    新藤委員 ありがとうございます。  本当は、もう少しお話をやりとりした方がわかってくるのかなと思いますが、先生のお考えも大体よくわかりました。ただ、私は、一点、自治体に法律を課すことによってやらせる、やるようになりますよというのは、まさにそうだと思うのです。ただ、それは限りなく規制法に近づいていってしまう、こういううらみもあるような気がするのですね。ですから、自主的な改善を促すという意味からすると、かなりの工夫をしなきゃいけないものはあると思います。どちらがということではないと思うのですが、結局、仏つくって魂入れずでは意味がないということですから、これはきっちり我々も監視していきたい、このように思っています。  申しわけありません、山下参考人さんには、お尋ねしようと思っていたのですけれども、ちょっと時間が、私が長話をしちゃったものですから、足りなくなってしまいました。自治体として、とにかく、これは国が所管になるからではなくて、まさにパイロットで御苦労いただいた先達として、逆に国がこういう全国データベースをつくるのだから、それを生かして、いかに地方自治体がしっかりと取り組んでいくか、これの先頭の旗振り役になって御活躍いただきたいと思います。  最後に、近藤先生にちょっとお尋ねをしたいのでございます。それも、一点だけ申し上げさせていただきたいと思います。  いろいろとこの法律についても御検討いただいて、随分と詰めていただいた、御苦労いただいたというふうに思っておりますが、この専門家として、今回の話が、事業者と、国であり市町村であり行政と、市民もしくは市民団体、きょうも御関心ある方がこうやっておいでいただいておりますが、この方たちが心配をして、どうしようか、こうしようかとやっております。でも、そもそもこの化学物質が安全であるかどうか、それともその危険性がどの程度影響が出てくるのか、ここの部分を決めるのは、事業者でも行政でも市民団体でもないのだと思うのですね、やはりこれは科学界のことですから。ですから、基礎研究なり科学的な研究にしっかりと取り組んでいく必要があるのじゃないか。それが、きちんとした指針が出れば、何も皆さん心配することなく、そして危険も未然に防げることもあるということだと思うのです。  そういう意味で、先生は第一人者で御活躍いただいております。ですから、逆に、今、国の体制で、こういう化学物質の研究をするときに、もし必要だ、またこういうものをやってほしいんだというような御要望がありましたら、ぜひこれは政治の場に、我々に入れていただきたいのです。  日本の産業がこれから世界に伸びていくために、環境問題に適応できなければ死活問題になります。ですから、そういう意味でも、逆に今度は学術的な研究にももっと金を出したっていいじゃないかと僕は思っているのですけれども、その辺で先生方からの御要望があれば、これはぜひお聞かせいただきたいと思います。
  19. 近藤雅臣

    近藤参考人 ありがとうございます。  今おっしゃいましたこと、前半に関して、全く同感でございますし、後半に関しましても、ぜひお願いを申し上げたいと思います。  こういう化学物質の問題に関しまして、一番大事なことは、正確なる科学的知見を得るということでございます。それをもとにして論議がなされるべきである、こう考えておりますので、その科学的知見をより多くの化学物質に関して、より詳細にこれから決めていかなくてはならないと思います。  そういう意味におきましては、大学研究機関、それから政府の研究機関その他いろいろなところで協力をして、いち早く化学物質の毒性、生体影響あるいは人に対する被害、影響といいますか、こういうものを突きとめていただきたいと思いますけれども、研究費というのが何しろ足りませんので、非常に皆さん難儀をしておられるというところで、各省庁の機関でもそうだとは思います。  それからもう一つは、環境モニタリングというのはぜひ必要になってまいります、その毒性等に応じての話でございますね。この環境モニタリングは、環境庁が大いにやっていただいておりますけれども、一件に対する費用というのは大変たくさんかかりまして、年間の調査物質が数少ないわけでございます。したがって、もっと数多くこれが検討できるような予算配慮というものはぜひ必要かと思いますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
  20. 新藤義孝

    新藤委員 では、質疑時間が終了しておりますのでこれで終わらせていただきますが、今のお話ですと、要するに政治の場に求められているのは予算だ、こういうことだと私は思っておりますけれども、商工委員長、これはぜひ皆さんで相談して、しかるべきお手伝いをさせていただきたい、このように思っております。  大変ありがとうございました。
  21. 古賀正浩

    古賀委員長 次に、佐藤謙一郎君。
  22. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 民主党の佐藤謙一郎でございます。  きょうは、参考人の皆様方には、大変お忙しいところをお出ましいただいて、ありがとうございました。  若干の質疑をさせていただきたいと思います。  実は、私ども民主党では、このPRTR制度というのは本来、環境における情報公開法だというような位置づけで対案を出させていただきましたが、その根底にありますのは、政府案が、化学物質環境への排出の削減という、削減という言葉が一向に入ってこなかったことに大変な危機感を持たせていただきました。  化学品審議会中央環境審議会議論を概略見させていただいたのですけれども、それぞれの中間報告と中間答申を近藤先生がおまとめになられたわけでありますが、私が考えるところ、全く似て非なる、全く違う議論を一つの法律に溶け込ませていくことの難しさが如実に感じられております。  と申しますのも、化学品審議会議論をされたことというのは、産業政策としての位置づけ、これは当然のことながら、前段で、去年の段階では、化審法の延長線上にPRTR制度というものを位置づけようとされていた。現に中間報告でも、化審法の背景にある基本的考え方の延長線上にあるものとしてPRTRを考えておられる、そういう言い方、つまり、目的事業者による化学物質の自主的管理促進というところにあったというふうに聞いております。一方、中央環境審議会は、明確に有害性を持つ化学物質による環境への負荷の低減対策の一環としてこれは急務なんだというところからスタートをして、あくまでも国民が主語になっております。  リスクコミュニケーション重要性というものをそこで語っておられるのも、その証左ではないかと思うのですけれども、今、日本全体の社会が価値観の大きな変動期にあろうかと思います。その中で、生産点に偏重していたそうした物の考え方が、今生活点にその重心を移そうとしている。その過渡的な変動のまさに中心に、このPRTR制度というのを据えなければいけないのではないかというふうに思っております。  冒頭の質問は、化学品審議会を中心とした成り立ちであります政府案では、事業者による自主的な努力、自主的な管理ということが中心に据えられていて、先ほど近藤先生も、事業者自己責任原則を貫いていくということは経済界にとって極めて厳しいことなんだというふうに言われておりますが、この自主的、自主的という、我々も嫌というほど聞かされてきたわけでありますけれども、これは裏返せば業所管官庁の規制強化につながっていることにほかならない現実というのがあるわけです。  そこで一点目は、今度の法律化学物質環境への排出の削減、削減というような最も基本的な目的が入らなかったということに対して、どういうお考えをお持ちかということ。それから二点目には、自主的ということでこれがもしもできなかった場合に、事業者が社会的にはどのような責任をとるべきなのか、その辺についてお聞かせいただきたいと思います。
  23. 近藤雅臣

    近藤参考人 第一点の削減というお話でございますけれども、中間報告で考えましたことは、まず第一に、先ほどおっしゃいましたような事業体の自己責任といいますか、自己管理という問題と、それを通じて環境汚染未然防止という観点からつくられたものだ、こういうふうに思っておりますので、それがきっちりと運用できれば削減につながっていくものと私たちは考えております。  それから、もしそういうことができなければどういう責任があるのかとおっしゃいましたけれども、例えば個別事業所データその他が公開されるということでございますけれども、もしそれが公開された場合にそういうデータ提出しなかったところは、社会的罰則といいますか、もちろん課徴金、罰金を取られるということ自体ではなくて、社会的な批判を受ける、同業他社からの批判も受けますし、NGOあるいは地方自治体からもその点が指導助言をされるというようなことになりまして、その会社自体の営業ということに関しても甚大な影響を与えてくるということにおきまして、それができなかったときの責任というのがおのずから会社の方に帰していく、こういうふうに私は考えております。
  24. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 化学品審議会でも、化学物質環境中への排出をできるだけ抑制していくことを促進するために新たな枠組みの整備を図るというふうに書いてあるわけでありますが、予防的なそうした施策を通じて削減というものはなっていくんだということを御説明されるのであれば、目標に削減ということを大きく書き込むべきではないだろうかというふうに私は感じております。また、今の企業責任というものも非常にネガティブなそういう責任論ということで終わってしまうのではないか、もっとポジティブな責任のとり方があるのではないかというふうに私は感じております。  次に、パイロット事業が神奈川県と愛知県とで二年間続けられたわけでありますけれども、先ほど浦野先生からもお話がありましたように、第一様式、すなわち事業者の名称、住所、従業員の数ですとか、本当にまず当たりさわりのないそうした第一様式の報告でさえ、四八%が未回答であった。これはやはり深刻に受けとめなければいけないと思いますし、業種が不明であったり、業種の間違いが随分あったというふうに先ほど御指摘がございました。  ここで次に御質問申し上げたいのは、多業種企業、先ほどもお話がありましたけれども、具体的な例で申しわけございませんけれども寺門参考人にこういう個別の話に対するお答えをいただきたいと思うんです。例えば化学薬品と農産物から食品や栄養剤をつくって、さらには住宅販売も手がけているような企業があるとします、寺門さんがもしも企業人であるとするならば、これはどこに報告を提出したらいいとお思いになりますか。
  25. 寺門良二

    寺門参考人 例えば、今何種類かの事業をやっている事業者がどこに届け出るのかというような御趣旨の御質問だったかと思います。それは今後、その企業が一番どれを代表としてのコア事業であるかというふうな観点から、一カ所の行政に出すケースもありましょうし、あるいはそれが三種類の行政とかかわるのなら、三種類に分けて出すということもあるのではないか、やり方はいろいろな方法があるのではないか、それは御指示をいただければよろしいのではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  26. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 非常にこれは混乱をすることになろうと思うんですね。通産省がこうしたPRTRを先導的に考えてこられた省庁であることはわかりますが、そういう意味では、業種というものからPRTR制度を進めていこうというところに、実は無理があるのではないか。業種という考え方自身がもはや実態にそぐわない、古い発想になってきつつある。もちろん、これは経済界をいろいろと分類するためには、手法としてそうした産業リストというのは必要であるかもしれませんけれども、今我々、地域住民の人体並びに生態系、健康や安全、環境対策というところからこの法律を真剣に考えていくとするならば、生産点にしがみついた業種別のそうした届け出の手法というのは、大変多くの混乱を招くことになりかねないというふうに私は考えます。  現実に今五万カ所程度と推定されている対象事業所があるわけですけれども、この法律が施行されますと、多種多様な対象事業所が本当に混乱なく事業所管大臣に報告ができるんだろうか。私もあちこちいろいろと聞いてまいりました。統一地方選挙がありましたので、いろいろな場所で、工場に聞いてみましたけれどもPRTRを知らない工場が大半、それから業界の努力だけでできっこないよという意見の中で、この業種だから通産省、この業種だから農水省、この業種だからという業所管官庁との連携が、果たして生活点中心の新しいリスクコミュニケーションを生み出す制度としてふさわしいものかどうか、その辺が本当に混乱なくいくかどうか、寺門参考人にもう一度お聞きしたいと思います。
  27. 寺門良二

    寺門参考人 先ほど申し上げましたように、一カ所で構わないと思うわけです。それは行政の中で整理をしていただきたいと思います。どの行政もそれを受け入れるというふうにしていただければ、一カ所で構わないというふうに思います。
  28. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 先ほどから私どもは、中小企業負担を軽減するためには、自治体の関与というのが、もうこれは避けて通れないものだというふうに考えておりますが、先ほど来、何人かの先生方は、自治体関与というものが非常に自治体に負担を、あるいは事業所負担を増すことになるというふうなお話がありました。しかし、実態的に、これから中小事業所あるいはこうしたデータの乏しい非製造業を中心として、どこに相談をかけたらいいかということになると、我々、やはり地方自治体の担わなければいけない役割というのは非常に大きいものなんだろうと思うのです。  ここで、愛知県の山下参考人にお聞かせいただきたいのは、先ほどから、事務量や負担が非常に大きくなるので、地方自治体がこうした制度を受け入れるにはなかなか厳しいものがあるというトーンで、私は実はびっくりしたのですけれども、大変及び腰の、先ほどの御意見の開陳であったというふうに聞かせていただきました。環境庁の幹部の方が、この間、地方自治体でこの制度をウエルカムで自分にやらせろというような自治体は一つもないというようなことを言われて、私はそれに対して激しく反論をしたのですけれども、今の山下参考人のお話を聞くと、なるほど、そんなことなのかな、そんな思いがしてならないわけであります。  現実にパイロット事業というものを二年間経験をされた中で、地方の中小零細の事業所あるいはそうした非製造業等々が実際に一体何に悩み、何を求めているかということを考えた場合、例えば、政府案の場合で申し上げますと、地元の企業が報告をしない、あるいは報告に誤りがあったり、虚偽の報告をしたということが推定されたときに、自治体として一体どのように対応されるおつもりなのか、また、その法的根拠というものが私は見当たらないように考えるわけでありますけれども、法的根拠をどこに求められるのか。政府案の場合、自治体が事業者に直接何か意見を言ったりというような仕組みがないように思われるわけですけれども、督促をしたり、あるいはいろいろな形で相談をする場合、本当に積極的に地元の企業のために取り組んでいただけるのかどうか大変不安になりましたので、その辺の法的根拠も含めて、対応についてお聞かせをいただきたい。その一点だけお聞かせください。
  29. 山下次樹

    山下参考人 自治体の役割につきましては、このPRTRの把握と登録ということにつきましては、制度の効率性あるいは統一性というような観点から、国の方でやっていただくのがいい。  ただ、自治体は、国から得られた基礎的な情報をもとにして、自治事務としていろいろな施策を展開してまいるわけでございますので、ただいま御指摘の、もし報告をしなかった、届け出をしなかったとか届け出に偽りがあったとかいうような企業が出てくれば、これは、制度の普及、啓発、周知を図るというのは自治体の役割として当然あるわけでございますので、自治体としても、その是正、指導には取り組んでまいることになる、このように考えております。
  30. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 より具体的な、どういうふうにそうした事業所に対して的確な意見を言い、そして、そうした相談に乗ることが、結果としてこのPRTR制度をより精度の高い情報を得ることにつなげていくのだろうと思うのです。  私どもの対案では、三十五条に立入検査、質問、そうした役割を書き込ませていただきましたけれども、正確なデータというものがこの法律の命であるとするならば、山下参考人、ぜひともより具体的に自治体の役割をお聞かせいただきたいと思いますのと、それから、全く同じ質問を浦野参考人にもお聞かせをいただきたいというふうに思います。  あわせて、浦野参考人には、パイロット事業の成果としていろいろな御経験をされたと思いますけれども、一つは、パイロット事業でのいろいろな意見集約の中で、どういうものがこの政府案にきっちりと入れ込まれて、そして、どうした問題が置き去りにされたかということを整理していただく、特に、データの正確さを担保するその観点。  それから特に、負担というところで、先ほど来いろいろと負担の問題が出ておりました。アメリカのように、届け出先を国と州にするというのは二元化になって負担が大変重くなるというような御意見もありましたけれども、本当にそんなに事業者にとって負担になるものなのか、その辺も含めてお聞かせをいただきたいと思います。
  31. 山下次樹

    山下参考人 地方公共団体のより具体的な取り組みについてでございますけれども事業者化学物質管理改善を推進するための技術的な助言というのは、この法律で、自治体の役割として定められておるわけです。これに基づきまして、今後、政令あるいは省令等で具体の策が示されてくるだろう、あるいは、国からの指導もされてくるだろうというふうに思っております。  今、私どもがもし御質問のケースに対応するとすれば、既に環境に係る企業の意識というのは非常に浸透しておりますので、例えば、問題が生じた都度、関係業界の方々との意見交流をするとか、定期的に行うとかいうようなことが一つ考えられると思います。  なお、立入検査等のお話もございましたが、これは、今回のこの法律が、あくまでも自主的な改善、自主的な管理を進めることによって管理改善を図るというところをねらいとしておるわけでございますので、個別規制の、従前の法にございますような立入検査というようなことについてはちょっとなじまないのではないだろうか、こんなふうに考えております。
  32. 浦野紘平

    浦野参考人 私は、神奈川県も愛知県もパイロット事業の推進委員会の座長を務めていたわけでございますが、各自治体さんは非常にたくさん努力をされました。公式の会合、講習会等を数回ずつやりましたし、またそのほか細かな説明会を二十回、三十回ぐらいやっております。また、報告書の様式を送り、様式の記入方法も全部書いたものをお送りして、相談窓口もつくり、そしてまた、来ないときの督促等も行いました。それでも残念ながら五〇%程度しか報告がなかった。しかも、九年度、十年度、続けてやりました地域でも報告率は上がっていないという状況が見られました。  このことは大変残念なことでございますが、今の政府案ですと、事業所管大臣に出すということになりますと、事業所管大臣が各担当の企業に報告様式を送付したり、記入方式を送付して、あるいは相談窓口をつくるということは、私は不可能だというふうに思っておるわけです。この点で事業者が非常に困るのではないか。当然、愛知県のように、あるいは神奈川県のように相談に応じる県もございましょうが、自治体の方で、いや、それは国がやることだから、窓口にはそんなのできないというところも出ないとは限らないということが、私が先ほど来申し上げている心配事でございます。  それから、負担の件でございますが、パイロット事業での負担はどのぐらいですかというのを二年間聞いておりまして、大体一事業者当たり十万円とか二十万円程度というふうな感じになっております、これは人件費と分析費等を合わせて。それほど大きな負担ではないんですが、実際はわからないという部分が非常に多い、それが負担になる。その相談をいかにうまくやっていくかというのが非常に重要だと思っております。  それから、両方に報告を出すということについては、同じものを出す、あるいは自治体経由環境庁ないしは少数の事業官庁に回るということであれば、事業者負担は特にふえることはない。それは各国でもみんなそうやっておるということでございますし、立ち入り権限等については、本来、自主的にやるのが主でございます。当然でございますが、罰則もあるように、やはり全部が全部はいかない。いかない場合にはやはり何らかの調査が必要である。調査をするのはどこか、事業所管官庁ではできない。そうすると、自治体にその役割が当然義務づけられていなければ、報告率を上げる、あるいは正しさをチェックすることができないというふうに私は思っております。
  33. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  34. 古賀正浩

    古賀委員長 福留泰蔵君。
  35. 福留泰蔵

    ○福留委員 公明党・改革クラブの福留泰蔵でございます。  本日は、四名の参考人の方々におかれましては、お忙しいところ当委員会においでいただきまして、貴重な御意見を賜りまして、心から御礼を申し上げます。  今回のPRTR法案について、私どもの公明党・改革クラブとしても党内でさまざまな議論を行っているところでございまして、基本的にはこの法案については賛成という方向で今考えているところでございます。  化学物質環境への排出量等を把握し、そして公表をこれからしていくという制度でありまして、化学物質による環境の汚染の状況等に関する事業者及び国民の的確な理解を得て、事業者の自主的な努力等を通じて、化学物質環境への排出の削減を図って、化学物質による環境の汚染により生ずる人の健康にかかわる被害及び生態系への影響未然に防止することを目的とするというこの法案でございますので、この目的については私どもも賛同しているところでございます。  きょう四名の参考人の方々においでいただいて貴重な御意見をいただきましたけれども、特に私、先ほど来お伺いしているところ、寺門近藤山下参考人におかれましては政府案に賛成というような御趣旨かと承って聞いておりました。浦野参考人におかれましては、問題点を種々御指摘なされまして、修正をすべきであるという御主張のように承ったところでございます。  初めにまず確認しておきたいんでありますけれども、私どもの政党としても、今、この委員会審議を通して、必要であれば修正もあり得るべしという態度でございますので、ぜひともその参考にさせていただくためにも御意見を賜りたいと思っているところでございます。  浦野参考人にまず端的にお伺いいたしますけれども政府案に反対、そして、修正をすべしという立場でよろしいでしょうか。
  36. 浦野紘平

    浦野参考人 反対というのは、そのままでいいということではないという意味ではそうでございます。修正すべきものは修正すべきだというふうに考えております。
  37. 福留泰蔵

    ○福留委員 それでは、もし修正案が通らなくて政府案も否決されるような事態は、それについては、その際はやむなく賛成というふうなことでよろしいんでしょうか。
  38. 浦野紘平

    浦野参考人 大変難しい御質問をいただきましたけれども、私としては、この制度が早く日本で実施されて定着することを願っておりますので、できるだけ皆さんが合意して、いい形で、政府案あるいは民主党案その他の合意を得て、法律が制定されることを願っております。
  39. 福留泰蔵

    ○福留委員 私どもとしても、現実の判断を下さなければならないということでもございます。  先ほど近藤参考人の方から、この法案作成に至るまでの審議会経過等の御報告がございましたけれども、利害関係人のさまざまな調整を経て今回の審議会の報告がなされ、その延長上でこの法案の作成となっているというふうに私は理解しているわけでございます。これまでの皆様の努力を多として、OECDの勧告等からすると、大変遅きに失した感はあるんですけれども、この際はスタートすべきであろうと私ども判断しております。そのスタートをするに当たっては、浦野参考人がおっしゃる問題点ができるだけなくなるような形でスタートさせたいというのが我々の考えでございます。  そこで、若干お伺いいたしますけれども基本的に私ども浦野参考人がおっしゃった問題点については同じような認識を持っておりまして、その点についてはできるだけ改善されるべきであるという認識でおるわけでございます。私どもとしては、問題点としては、やはり環境ホルモンというものをしっかり明示できないかということが一つでございます。それから二点目が、届け先の問題でございまして、やはり地方自治体の関与というものをもっと強めるべきであるという考え方を持っております。そして三点目が、やはり見直しという部分について、今の十年というものは長過ぎる、できれば五年か、ぐらいに短くできないかというふうな考え方でおります。  そういうことを踏まえまして、届け先の問題でございますが、地方自治体の関与という観点から、まず市町村は、先ほどからさまざま議論がありましたけれども、ちょっと難しいのか。そうすると、都道府県を届け先とすることについて、我々は可能かどうかということを今検討しているわけでございますけれども、都道府県を届け先とすることについても、都道府県が主体として届け先となるのか、あるいは都道府県を経由して国に届け出するのか、国と都道府県との関係性の問題について、我々はちょっと今議論をしているところでございまして、その点について、浦野参考人山下参考人から御意見をお伺いできたらと思います。
  40. 浦野紘平

    浦野参考人 私は、当然、これは国が一括して最終的にはいろいろ整理をすべきと思っておりますので、都道府県を経由して国に上がってくるという形が一番望ましい。しかし、今の政府案は、国に、事業所管官庁に出すということになってございますので、そういう場合にはやむなく両方に出すという形で、県は県で独自に把握する義務を持たせるということがよろしいかという提案を先ほどいたしたわけでございます。
  41. 山下次樹

    山下参考人 まず、都道府県を届け出先とするということについてでございますけれども、これは先ほど公述のときにも申し上げたんですが、PRTRのこの制度を効率的に、効果的に進めていくためには、やはり全国統一的なルールのもとで進められることが大事である。したがいまして、これは、国に届け出るということが現実的な対応策であるというふうに考えます。  それから、都道府県を経由してということでございますが、確かに、従来さまざまな法制度におきまして、国と都道府県との関係において、都道府県が国の機関として位置づけられまして、国への文書等の進達を行うといったような機関委任事務と称するものがございました。仮にそういった仕組みをつくっていくということになると、これはちょっといかがなものかなというふうに考えております。  以上でございます。
  42. 福留泰蔵

    ○福留委員 山下参考人からお述べになりました経由の問題については、今、地方分権の流れに若干逆行するのかなという思いも私どももありますけれども、都道府県に報告をまず一義的にするということの問題点の一つとして、営業秘密の問題があるのではないかと思っております。  営業秘密を、やはり都道府県でそれが判断できるのかどうか、その際に、都道府県に届け出たときに、国と都道府県との営業秘密に対する協議をどうしていくかという仕組みが一つ課題ではないかという議論を我々はしているところでございまして、営業秘密という観点から、再度、都道府県の関与のあり方について、浦野参考人山下参考人と、今度は寺門参考人にも御意見を伺いたいと思います。
  43. 浦野紘平

    浦野参考人 営業秘密については、当然統一した考え方でやる必要がございますし、地方自治体を仮に報告書が経由するとしても、統一した方式、化合物等を対象にすることになろうかと思います。  営業秘密については、私の意見では、自治体で判断をするのではなくて、やはり国の一つの機関、いろいろな関係者が入った第三機関で判断をする、それで、自治体に報告をする際に、これについては営業秘密として扱ってほしいということで国にその旨申し出ていますという形で、化合物の具体的な名称ではなくて、化合物のグループで自治体には報告をしておくという形で十分対処できるものというふうに考えております。
  44. 山下次樹

    山下参考人 営業秘密について自治体でまず判断できるかできないかという点についてですが、判断できると思います。判断できると思いますが、都道府県は四十七都道府県でございますので、実態としまして区々の判断が出る、それはもう十分考えられます。したがいまして、私は、国で統一して判断をしていただきたい、このように考えます。
  45. 寺門良二

    寺門参考人 事業者にとりまして、企業秘密営業秘密は大変重要な問題でございます。これは、いわゆる経営的判断というものも加わるわけでございますので、当然、一事業所と一地方自治体との関係のみによって判断をするということはなかなか難しいと思います。専門的な知識を持つ全国的な統一された基準のもとに判断していただくことが望ましいと思います。そういう意味では、国で一元的に取り組んでいただきたいというふうに思います。
  46. 福留泰蔵

    ○福留委員 寺門参考人に再度お尋ねいたしますけれども営業秘密の問題であります。  私どもも、この法案を勉強する過程の中で、法案の説明を受ける過程の中で伺ったことの一つとして、アメリカでこのPRTR制度があって、それでも営業秘密にかかわる問題がある、しかし、その営業秘密にかかわる問題として物質名を公表しない事例というのはほんのわずかであるというふうなことを教えていただいて、あっ、それほど少ないものなのかというふうに思ったところでございます。  寺門参考人にお伺いしたいのは、この法案ができましてこの制度ができた際に、産業界としてこれを報告する際に、営業秘密というのはそれほど大きな問題になるのかどうか、それについてどの程度の認識をなされているのか、報告の量の中でどの程度を占めると今お考えになっていらっしゃるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
  47. 寺門良二

    寺門参考人 営業秘密がどの程度出るかということについて、今予測をすることはできません。これは、個々の産業といいましょうか、個々の技術のレベルによって違うと思います。そういう意味で、多いか少ないかということは判断できません。  ただし、私は、これは、一つしか出ないとかあるいは二つしか出ないとかいう問題ではなくて、一つの企業にとりましては重大な問題であるわけでございます。ですから、数の多さとか、そういうことは議論対象にはならないというふうに思います。そういう意味では、ぜひ精神だけは生かしていただきたいということをお願いしたいと思います。
  48. 福留泰蔵

    ○福留委員 ちょっと別の観点から御質問をしたいと思うんですけれども、その届け先の問題の中で、浦野参考人の方から、やはり地方自治体の関与を主体的にすべきであるということの中の一つとして、報告率の問題が出ました。今の省庁別に主管省庁が吸い上げるやり方では、報告率が低くなってしまうんじゃないか、それから、公正な報告がなされないのではないかというふうな御心配がなされているわけであります。これは、後ほどまた委員会等の審議政府にただしていきたいと思っているわけでございますけれども、やはり地方自治体が主体的に関与することによって、きめ細やかな対応ができるということは確かだろうと思います。  それから、もう一つ私が思っているのは、化学物質による人体への影響、そういう問題は、全国一律で起こる問題ではないのではないか。所沢のダイオキシン問題みたいに、所沢というある一定地域に集中的に起きる問題というのがさまざまあるんだと思うんですね。それにきめ細やかに対応するためには、やはり地方自治体の主体的なかかわりというのは必要になってくると思うんです。  これは、浦野参考人がよろしいんでしょうか、今私、ダイオキシンの問題をちょっと言いましたけれども、そういうふうなある地域に偏在して起こり得る可能性のある、影響があるような物質とか、そういう事例というものは何かあるんでしょうか。それがありましたら、教えていただければと思います。
  49. 浦野紘平

    浦野参考人 当然、化学物質というのは非常にさまざまなところで使われておりますし、また、ダイオキシンのように、つくろうとしないでできてしまう物質もあるわけでございます。これも当然ながら、地域の格差というのは非常に大きくなっております。例えば、今回パイロット事業で川崎市をやりましたけれども、川崎市特有のもの、あるいは川崎市でも海寄りのところと山寄りのところで非常に大きく違っておるわけでございます。そういった地域特性というのは非常に大きくなっております。工業用のかくかくしかじかのものを製造するプロセスがあるというのが、全国で数カ所しかないというようなものもございます。そこから有害なものがある量出ているということもございます。したがいまして、地域ごとにさまざまな対応、指導が必要だというふうに私は思っております。  これは、先ほど来申し上げておりますが、本来自治体が主体的にやるべきことでございますが、やはり自治体が本当に動けるようにするためには、法的根拠というのが、予算をとる上でも、立ち入る、調査をする、勧告をする、あるいは問い合わせ程度でもやはり必要で、それが何もないで自治体が自主的にというのは、裏返して言うと、裁量行政というふうな形になりかねないと私は思っております。したがいまして、全国で、しかも大きな工業都市があるところ以外でも問題が起こり得るわけです。例えば、土壌、地下水汚染なども全国の非常に小さなところでたくさん起こっております。こういった問題に主体的に自治体が取り組める位置づけが必要だというふうに考えております。
  50. 福留泰蔵

    ○福留委員 時間がなくなり、最後の質問をさせていただきます。近藤参考人にお伺いいたします。  リスクマネジメントの問題が言われ、リスク評価のための人材育成が大切であるというふうなお話であります。この問題について端的に御質問いたしますけれども、アメリカと比べて人材育成がどの程度おくれているのか、諸外国と比べて日本のリスク評価のための人材というものが今どのレベルにあるのか、それを教えていただきたいと存じます。
  51. 近藤雅臣

    近藤参考人 御承知のように、リスク評価において、それを正当に解釈してわかりやすく皆さんにお伝えする、こういうことは大変大事なことになっております。残念ながら我が国におきましては、たくさんのNGOの方々もおられますけれども、実際に、それ以外のところ、例えばいろいろな業界団体とかそういうところでの人材育成というのは、まだ正式にはできていないと私は思っておりますので、早急にそういう方々の育成をお願いして、この準備期間の間に十分準備をしていただいて、この法案がもし通過するとしましたら、その実施において忌憚のないような形にぜひしていただきたい、こう思っております。
  52. 福留泰蔵

    ○福留委員 終わります。どうもありがとうございました。
  53. 古賀正浩

    古賀委員長 次に、武山百合子君。
  54. 武山百合子

    ○武山委員 自由党の武山百合子でございます。  きょうは、参考人の皆様、お忙しい時間おいでいただきまして、ありがとうございます。  早速ですけれども、我が自由党は、環境部会で議論したときは、よい制度、内容の充実した制度をつくりたいということで、全員その方向で議論をいたしました。  まず、きょう皆さんのお話を聞いておりましたら、届け出制のところで、今、政府案の方は所管官庁ということで事業官庁になるわけですけれども、やはり地方公共団体地方自治体、都道府県ですね、そこにもやはり必要じゃないかなと思いまして、先ほど自民党の新藤議員が話されましたように、同時に国と県に届け出をした方がいいんじゃないかなと皆さんの意見を聞いていて思いました。その同時の届け出制に対しまして、近藤参考人はどう思いますでしょうか。
  55. 近藤雅臣

    近藤参考人 同時ということは、一つの同じ事業が二つのところに分けて同時に提出するということでございまして、手続上非常に煩雑になるということもございますし、また、先ほど申し上げましたけれども、国に一括して届け出る、そして、そのデータは各都道府県にすべて移されるといいますか、移管されるということでございますので、それをもとにして、地方自治体は自由な発想で環境汚染未然防止というようなことに関していろいろな行政を行っていただける、こういうことに私たちは考えております。
  56. 武山百合子

    ○武山委員 どうもありがとうございました。  山下参考人にお聞きしたいんですけれども、例えば県がそれを一括して届け出制を担った場合、今の、愛知県でパイロット事業をされたということですけれども、どのくらいの人員が必要でしょうか、規模として。それについてお答えいただきたいと思います。
  57. 山下次樹

    山下参考人 今の時点ですと、どのぐらいの件数が出てくるのか、これもちょっとわかっておりませんので、この時点で、どのぐらいの人員が届け出を受けるに当たりまして必要になってくるかというのは、ちょっと申し上げられません。わかりません。
  58. 武山百合子

    ○武山委員 パイロット事業をされて、予測として、先ほど浦野参考人のお話によりますと、報告をされてきたのは実際に行った結果五〇%ぐらいだったというお話を聞きましたけれども、今後この制度が浸透していくにつれて、多くの対象事業者、また非点源の部分でもかなりの数が私は上がってくるんであろうと信じておりますけれども、そういう視野を入れても全く今のところわからないという意味なんでしょうか、ある程度の青写真も描けないというような状態なんでしょうか。山下参考人に今の質問で、恐縮ですけれども、突っ込みまして。
  59. 山下次樹

    山下参考人 パイロット事業をやりまして、確かに御指摘のとおり五〇%程度の報告率でございましたが、その五〇%の母体の事業件数が、これから対象事業所がどの程度になってくるのかというのが、パイロット事業をやったときと同じ程度で済むのかどうなのか、ちょっとそのあたりがわかりませんので、申しわけございませんが、事務量あるいはそれに必要な所要人員というふうなことになると、ちょっと御勘弁をいただきたいと思います。
  60. 武山百合子

    ○武山委員 事情はわかりました。  寺門参考人にお聞きしたいと思いますけれども、このPRTRを活用した事業者取り組みなんですけれども生産活動が今まで中心だったわけですが、これから生産活動の中に化学物質の自主的な管理活動取り組みさせるPRTRなわけですね。これを、自主的に化学物質管理に取り組んでいく産業界取り組みとして、今、活動を大企業だけでなく中小企業にもこれから広げていくと思うのですけれども、その対策としては、どのようなことを考えておりますでしょうか。
  61. 寺門良二

    寺門参考人 産業界といたしまして、環境問題に取り組んでおるわけでありますが、規制的なものがあって後追いをしていくということではいけないということで、自主活動取り組みを前向きにやろう、こういうわけでございますけれども、その場合に、自主活動というものがどのように進むのか、こういうふうな御趣旨だと受けとめるわけでありますが、私どもは、これは実際にやってみながら、そしてそれを改善していって、それを公表し、第三者でもいい、いろいろな方々からの御意見をいただく、そういうやりとりの中で成熟していくものというふうに考えております。  そういう意味では、着実に皆さんがやる気を出すというふうにやっていけば、明るいんではないかというふうにしかお答えできません。
  62. 武山百合子

    ○武山委員 では、もう一つ寺門参考人に、やる気を出すための方策をひとつ御披露願いたいと思います。
  63. 寺門良二

    寺門参考人 やる気を出すためには、やはり自分たちの周りの業種でもできるということが少しずつ見えてきたときに、初めてやる気が出るんだというふうに思います。  ですから、先ほど五〇%の議論もございましたけれども、これは、五〇%のやる気のある人がおれば必ずあとの五〇%もやる気を出してくるというふうに思って、その五〇%を生かすように、皆さんが、よき公表といいますか、リスクコミュニケーションをやりながらしていけば、この五〇%が七〇になり、一〇〇になっていくというふうに私は考えております。
  64. 武山百合子

    ○武山委員 どうもありがとうございました。  浦野参考人にお聞きしたいと思います。  私は、先ほど浦野参考人のお話を聞いておりまして、私はいろいろなしがらみがないものですから、業界団体とかそういうしがらみがないものですから、国民の代表ということで、国民の目という立場で非常に考え方が近く、共鳴できた部分、大変多いなと思って聞いておりましたけれども、これまでの規制法と比較して、この制度はどんな点がすぐれているか、また、この有害化学物質対策にどのように活用していったらいいか、お答えいただきたいと思います。
  65. 浦野紘平

    浦野参考人 この制度は、規制ではなくて、本来、国民各層、各利害関係者が全部情報を共有して、協働して化学物質管理をしていくという点で非常に画期的なものでございます。  それが、事業者が自主的に削減をするということがちょっと政府案では強くなり過ぎているというふうな感じが私はしておるわけでございますが、この点を生かすためには、やはり自治体の方も主体的になる、なぜ自治体がというのは、やはり地域住民は、あるいは地元企業は、自主的にとか協働でやりましょう、リスクコミュニケーションをしましょうといっても、具体的にどうしていいのかわからないということが非常に多いわけでございます。それを、全国の自治体が間に入ってうまく動かしてもらいたい。それでないと、このPRTRはうまく動かないだろう。  例えば、事業所の自主的管理で、先ほど寺門参考人から、化学工業はレスポンシブルケアというのをやっております、これは百社余りでございますけれども。化学工業全体は、会社の数はもっと莫大な数がございます。  経団連のパイロット事業でも千四百社余りが回答されていますけれども、私、今度の対象になる事業所の中での割合というのは、多分一〇%から二〇%ぐらいではないかというふうに思っておりますので、全国の自治体と企業と住民がうまく回るようにするための制度をぜひつくっていただきたいというふうに思っております。
  66. 武山百合子

    ○武山委員 どうもありがとうございました。  また浦野参考人にお聞きしたいと思いますけれどもPRTRのいわゆるデータですね、これを国民公表するわけですけれども、このデータは単なる排出量データであるわけです。必ずしも排出量が大きいから有害かどうかというのはわからないわけですね。きっと国民は、排出量が大きいからこれは有害じゃないかと、ぱっと瞬間的に思ってしまうんじゃないかと思うのです。その辺、実は私もわかっていない一人なんですけれども公表されるデータを見れば、恐らく、住民、すなわち国民は不安になるんじゃないかなと思っているんです。不安にならないようにするために、データ公表に当たって、国はどのような点に留意したらいいか、ちょっとお話しいただけますでしょうか。
  67. 浦野紘平

    浦野参考人 今回の政府案でも、その点についての配慮の文章はかなり書いてございまして、それは非常に評価されると思います。ただ、これを具体的にきちっとするためには、わかりやすい情報を提供するというのは、国あるいは事業者がやる、あるいは自治体がやるということもあるわけですけれども、一般住民からしますと、国や事業者が言っているからといって安心できるかというと、必ずしもそうではないのでございます。そのときに、皆さんにうまく話をしていくためには、科学者あるいは信頼できるNGOのようなものが育たなければいけないわけでございます。  このデータを使ってどうやってわかりやすい情報提供をするか、正しい情報提供をするかというのは、今、私のやっております独自の研究会、あるいは国立の研究機関の仲間たちと今準備をしております。いろいろな形でその情報が正しく伝わるように、わかりやすく伝わるようにということを既に準備を始めておりますし、そのことはすぐには全員に理解されるとは限りませんが、国あるいは事業者の努力ももちろんのことながら、やはり科学者、NGO等の理解あるいは対応も準備をしていただくことが必要です。そのためにも、情報が無料に近い形で、加工利用しやすい形で提供されることがぜひとも必要であるというふうに考えております。
  68. 武山百合子

    ○武山委員 どうもありがとうございました。  また浦野参考人になんですけれども、このPRTRデータの結果からリスク評価を行いまして、何らかの形への法整備みたいなものにつなげていける可能性があるかどうか、いろいろかかわりを持った中で何かお考え、お感じになったことをお話しください。
  69. 浦野紘平

    浦野参考人 当然、この対象物質が、パイロットですと百七十幾つでございますが、アメリカは六百数十ということで、数字が非常に多くなってまいります。こういったものが、大気に出ているものが非常に多いわけでございます。  したがいまして、これが広がっていくときに、呼吸でどのくらい取り込まれるか、あるいはダイオキシンのようにそれが食品等にまた行ってしまうものかどうかということを評価して、およそでございますが、危険度の評価を当然していかなければいけないし、それもできる形で、実は、事業者の方も、情報公開されるということでその辺を非常に心配されております。幾つかの大きな事業所さんなんですけれども共同で、その辺の周辺への影響がどのぐらい出るのか、あるいは出ないためにはどの辺までに排出量を抑えたらいいのかという方法論をつくって、具体的に今、私どもと幾つかの企業でそういうリスク評価のトライアルもしてございます。そういったものの中で、非常に問題がありそうだというのが、全国的に見えれば、当然法規制の方へ持ち込まれる、あるいは要監視項目というような形で持ち込まれることもあり得ると思いますが、それは比較的少ないだろうというふうに、私は今のところ思っています。  なぜかといいますと、そういう問題が生じそうだということが表に出ると、やはり事業者はそれなりに努力して減らしてくださるということを、私は信じております。ただ、事業者も、どのぐらいまでなら本当に許されるのか、全くゼロにするということは非常に困難でございますので、どういうものをどの辺まで減らせばいいのかというのをわかりやすく情報提供してほしいというお気持ちは非常に強い。それに対しての支援も、私の研究室もそうですが、いろいろな関係者で準備をしているというふうにお答えしておきたいと思います。
  70. 武山百合子

    ○武山委員 どうもありがとうございました。  浦野参考人に、MSDSの法制化という形でもう一つお聞きしたいと思います。  環境庁のパイロット事業で、浦野参考人も関与されてきたということですけれども、この事業の経験で、例えば塗料なんですけれども、製品中にどんな化学物質がどれだけ含まれているかということがわからないと、事業者対象物質排出量を推計することは難しいんじゃなかろうかと思うんです。製品中の化学物質の成分の情報を提供してもらいたい、国民はそう願っているわけですね。その辺、PRTRの円滑な実施のために必要じゃないかと思いますけれども国民は、結局、化学物質の成分の情報がほとんどわからないものですから、やはり情報を提供してもらいたいと思っているわけなんです。その辺についてお聞きしたいと思います。
  71. 浦野紘平

    浦野参考人 実際にパイロット事業をいたしまして、各事業者が一番苦労をされたのが、自分たちが購入して使っておる原材料に何が入っているのかの情報がもらえない、それをまず知るために、MSDS等を問い合わせをする、そのほかの情報入手をするというところに、先ほど申し上げましたけれども、実は一番負担がかかっているということが、アンケートその他で答えられております。そういう意味で、MSDSをきちっとした形で全国普及をして入手しやすくするということは、必須のことだと私は思っております。  ただ、これが余り細かいことまですべて決められて、変更を全部届け出る、細かいところまで届け出るということになりますと、かえって事業者が、状況次第でどんどん製品の中身というのは変わってきますので、それにどう対応するかというフレキシビリティーもかなりないといけないというふうに思っております。  それからもう一つは、一般国民あるいはNGOの方たちが見るときには、MSDSというのを全部入手してどうこうというのはなかなかできないわけですから、この制度とは別に、いろいろなものについて成分表示の義務づけのようなもの、特に有害性の高いものについての表示の義務づけ等も、今後、ほかの形で整備をしていくことが必要である。また、それに対する疑問があったときの問い合わせ先、窓口、そういうものがきちっと業界の方で準備されるということが必要かと思っております。
  72. 武山百合子

    ○武山委員 どうもありがとうございました。  以上で私の質問を終わりにいたします。
  73. 古賀正浩

    古賀委員長 吉井英勝君。
  74. 吉井英勝

    ○吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。  私は、四人の参考人の皆さん方に、順番にお伺いしたいと思いますが、初めに、浦野参考人にお伺いしたいと思います。  いろいろな書籍、雑誌等にいろいろ書いていらっしゃるのも読ませていただきまして、非常にわかりやすいお話で始まったものとしては、昨年十一月の週間東洋経済の方に書かれたもので、読んでおりまして、PRTRの出発としては、そもそも絶対安全な化学物質などはない、だから、化学物質は、強弱の差はあれ本質的に有害性というリスクを持っていることをしっかり認識し、企業も、安全性を疑われたら経営危機に陥るということを自覚して、自分の使う化学物質情報を把握し、公開し、消費者と情報を共有して、化学物質によるリスクを消費者と一緒に減らすパートナーだという考え方が重要だ、そういうお考えだなということをまず私は理解いたしました。  だから、逆に言いますと、そういうことだからこそ、化学物質についての情報公開がまず必要なんだ。何といっても、消費者と企業と、行政もそうですが、情報を共有しないことには、化学物質によるリスクを消費者と一緒に減らすということはできないわけですから、そういう点での情報公開というものをきっちり保障し、貫いていく、そのことがこの問題を考える上で最も大事な一つなんだ、そういうお考えだなということを感じたんですが、最初に、そのことから伺いたいと思います。
  75. 浦野紘平

    浦野参考人 全くおっしゃるとおりで、私が書いたものを読まれておられるということで、書いている者でございますから、当然、私の意見であるというふうに御理解いただきたい。  ただ、情報の共有という場合に、化学物質の細かい毒性データ、MSDSなんかを見ますと、例えばLD五〇が幾つ、これは半数致死量なんですけれども、そういう数字で出ているわけですね。それをわかる人というのは、必ずしも多くないわけでございます。かなり詳しい人ならとにかく、事業所の方でもわからない情報というのはたくさんあるわけです。  したがいまして、これをいかにわかりやすい形で情報提供をするかということについても関係者が一層努力する必要がある。それを制度として、あるいは予算としてこれから充実していく必要があるというふうに考えております。
  76. 吉井英勝

    ○吉井委員 引き続いてお伺いいたします。  従来の化学物質管理が、人に対して何らかの被害が出て、因果関係がある程度以上証明された特定物質について、排出濃度を行政的に規制するというやり方をとってきたのに対して、PRTRでは、人だけではなくて生態系についても配慮するということ、被害や因果関係が証明されていなくても、潜在的に有害な多数の物質対象とするということ、排出濃度の方でなくて排出量移動量を把握する、規制値を守らせるという発想から、自主的に報告したものを公表して、世論を背景にして自覚的に有害化学物質の抑制に進ませていく、そういう発想の転換が根底にあるかなというふうに思うんですが、この点についても伺っておきたいと思います。
  77. 浦野紘平

    浦野参考人 この点につきましても、当然、私はそのとおりであるというふうに思っておりますが、実際にそれを具体化するためには、先ほど来申し上げましたように、情報の共有と、それぞれが理解できる形の情報をつくっていく。それから、企業の側もやはり意識改革をしていただいて、どうも住民は信頼できないとか、専門知識がないからわからないんじゃないかというふうな態度ではなくて対応することが必要でしょうし、行政、特に地方行政も、基準値を守らせる警察的な役割をするだけではなくて、企業と地元住民との間に入って全体の発展を図るという体制づくり、意識もそうですが、体制づくりが必要だというふうに思っております。
  78. 吉井英勝

    ○吉井委員 引き続いて、浦野参考人にお伺いします。  そうすると、有害化学物質の抑制に進んでいくということを考えた場合に、対象化学物質について、法律上どう扱うかということが大事な問題になってこようかと思うんです。この点では、環境に残留するもの、必ずしも地理的概念にとらわれないで広く環境に残留するものとか、人の健康を損なう疑いのあるものというふうに、やはり疑わしいもの、それから、安全性の証明のないものについては、基本的には対象にしていくというもっと枠を広げた考え方が大事ではないかと思うのですが、この点についても御意見を伺っておきたいと思います。
  79. 浦野紘平

    浦野参考人 政府案でも民主党案でも、法律の条文としては非常に広くとらえられるようにも解釈できる文章になっておるというふうに、私は理解しております。  ただ、これが具体的に決められるプロセスでございますが、現在三つの省庁の審議会を経て決めるという形になっております。この三つのうちでどれか一つでも反対したら入らない。あるいは、国民意見等を聞けないということでは困る。今、国民意見をといいますと、インターネットで意見を求めました、だから、求めたんですという形をとっておるのですが、具体的にそれに対してどう対応をしたかという返事がないという形の意見聴取は、実質的に意見を聞いたことにはならないというふうに私は思っております。  化学物質については、先ほど来お話がありましたように、非常にたくさんのものが市場に出回っております。残念ながら、そのうちで信頼できる毒性情報があるものが二、三千程度でございます。ただ、動物実験等で発がん性があるとか奇形を生ずる可能性があるというのは、報告があるというだけですと、物すごい数がございます。しかし、一つ報告があったからといって全部対象にするというのも、これまた正しくないというふうに思われます。  今回のパイロット事業で行ったものは、私ども情報を整理してランキングをしたものを御参考にして選んでいただいておるわけですけれども、今現在の対象物は、かなり問題なものというのが主に対象になっておりまして、どの辺までを対象にするかというのは、今後いろいろな関係者意見で決めていく。社会が発展すればするほど、より有害性の低い方まで対象にしていくというのが当然正しいことで、一番最初はやむを得ず少数でということもあろうかと思います。  ただ、ちょっと心配しておりますのは、専門家判断するんだといいますと、毒物、薬学等の専門家というのは、その因果関係とかメカニズムを全部解明したいと考えますので、それが解明されていないと、もう対象ではないというふうに言われてしまうおそれがある。この点が、私は、余りそれを科学的に厳密にやると、結局、従来の規制対象物質を決めるような話になりかねない、国民の要望と離れてしまうおそれがあるということで、広い関係者が入った一つの委員会議論がされて決められるのが妥当ではないか。あるいは、三つの審議会が必要であれば、三つの審議会のどこかで入れるべきだと言われたものは、みんな入れるというやり方もあろうかと思っております。
  80. 吉井英勝

    ○吉井委員 毒性の判断というのは、おっしゃったように、因果関係とかメカニズムの究明とか、なかなかそれは時間のかかる、あるいはかなり究明しなきゃいけないものがあると思うんですが、逆に安全性の証明のないものとなりますと、それはもっと広く考えやすくもありますし、要は、発想がもともと有害化学物質による人の健康を損なうおそれのあるもの、疑いのあるものということで考えていくならば、できるだけ広く考えるというのは当然のことかと思うのです。  最後に、浦野参考人にもう一点伺っておきたいのは、排出量移動量とともに、貯蔵量とか取扱量というものは、差し引きしてどうなるかとか、出てくるものがあれば、これをまさに明らかにすることによって、実は未解明であったんだが環境に出ておったんだとか、その判断の道も開かれるわけですから、私は、貯蔵量や取扱量についても報告を求めるということも大事な点ではないかと思うのですが、この点についての御意見を伺っておきたいと思います。
  81. 浦野紘平

    浦野参考人 私ばかりが返事をするので多少あれですが、私個人としては、取扱量も貯蔵量、あるいは保有量という言い方もありますが、それも報告対象にした方がいいというふうに考えております。現時点でそれを各利害関係者で合意が得られるかという点ではなかなか難しいところがあるのかもしれないということで、パイロット事業でも貯蔵量は入っていない。あるいは、貯蔵量については消防その他のところで別途対応がされるかもしれない。  しかし、取扱量については、私の先ほどの説明にも書いてございますが、平成十年度の環境庁のパイロット事業では取扱量も報告をいただいております。これについて事業者から抵抗があったかというと、抵抗は余りありませんでした。それで、間違いのチェック等には非常に有効でございました。というのは、例えば取扱量より多い排出量があったりするという報告がありまして、そういうのはもう明らかに間違い、あるいは、取扱量に比べて極端に排出量が少ない、これも用途から考えてあり得ないというふうなことで、チェックがかなり行われました。そういう意味では、できるだけ早い機会に、本来なら取扱量あるいは保有量等も報告対象になることが望ましい。  ただ、ちょっと疑問になるのは、これは本当に全部公開すべきものかどうかというあたりは、まだ議論が必要なのかもしれない。排出量というのは、周辺住民に影響のある、安全性にかかわるものであるから、これは必ず公開をするということですが、取扱量等は、アメリカの知る権利法に基づくTRIでは、事故時の安全ということを非常に重視しておって、事故時のことを考えれば当然保有量、取扱量が問題になるということになろうかと思います。ですから、この法律を事故時の安全まで含めた議論にするのか、定常的な安全を考える法律にするのかは、皆様方の御判断だというふうに思っております。
  82. 吉井英勝

    ○吉井委員 次に、寺門参考人に伺いたいんですが、私は、今四点お伺いした浦野参考人のお話を聞いておりまして、これは経団連の皆さんとしても基本的に同じ立場で臨むということで矛盾が生じてこないんじゃないかと思うんですが、この点、一言伺っておきたいと思います。
  83. 寺門良二

    寺門参考人 私ども経団連といたしましても、今二回目のPRTRをやっておるわけでございます。そういう意味で、政府案の立法ができますれば、それと同じような形でやり、そして相互の啓発を通じて、このPRTR法案の趣旨が生きるように経団連として取り組んでいきたいという意味で、法案の成立が成り、それが具体的な形として見えるような姿になれば、私ども、その形に早く合わせていきたい、こういうふうに考えております。
  84. 吉井英勝

    ○吉井委員 先ほどの浦野参考人のお話を聞いておりましても、そういう内容がさらに盛り込まれたとしても、寺門参考人のお立場として、企業の側でもそれに合わせて積極的に取り組んでいかれても、矛盾というものはないように私は感じました。  さて、近藤参考人に伺いたいんですが、医学者の立場からの御意見も伺っておきたいと思うんです。環境ホルモン、生殖毒性ということを考えると、化学物質影響の解明と対策については、どういう化学物質がどうつくられて、移動し、貯蔵し、使用され、体内に蓄積していくか。さらには、どのようにDNA損傷などさまざまな影響を引き起こしていくのかということについては、かなり長期にわたる実態の把握、解明が必要ではないかというふうに思うわけです。  また、もう一つの点から見れば、化学物質の安全性の証明というものは、逆にそういう立場から見れば、短期間に簡単にはできないということになるのじゃないかと思うのですが、この点についての御意見を伺いたいと思います。
  85. 近藤雅臣

    近藤参考人 化学物質行政において一番根幹になりますものは、正確なる科学的な根拠ということでございます。  したがいまして、例えば、今、環境ホルモンの問題が出ましたけれども、これが果たしていわゆる毒性があるのかないのかということは、まだ世界的に統一した見解が出ていないというのが現状でございまして、三月末のいろいろな報告においてもそういうことになっております。  今回のPRTRが通りまして、各会社がリスクコミュニケーションを実際に直接おやりになる場合に、そういうふうな科学的根拠がないものとして、果たして正確な議論ができるかどうかということが一つ大きな問題になろうかと思いますので、その辺のところは慎重に取り扱わなくちゃならないと私は思っております。よろしゅうございますでしょうか。
  86. 吉井英勝

    ○吉井委員 統一した見解は出ていないということとともに、それはまた、逆な見方からしますと、安全性の証明というのはできていないということでもありますから、環境ホルモンの問題、生殖毒性が非常に問題になっているときに、とりあえずは、安全性の証明がされるまでは、やはり対象化学物質については広くとらえて取り組んでいくということが大事ではないかなというふうに思うわけです。この点についても近藤参考人の方から御意見、一言で結構ですから、お聞きできたらと思います。
  87. 近藤雅臣

    近藤参考人 ただいま申し上げましたように、議論していく場合には、例えば生体毒性とかそういうものがはっきりしておれば、毒性ということに関して正確なデータは出ているということになりましょうから、それはそれなりの判定ということになって結構なんですけれども、いまだにそれが諸説紛々といいますか、正確に落ちついた成果というものが上がっておらないというのが現状でございます。それだけじゃないのですけれども、そういうものに関しましては議論対象にしない方がよいかというふうに考えております。
  88. 吉井英勝

    ○吉井委員 次に、山下参考人に伺いたいと思います。  私も大阪府の関係者の方から聞いているわけですが、七〇年代の公害規制の前進における自治体の果たした役割をよく見てほしいと、国より早く規制に取り組んで、地方の実情に合わせて独自に厳しい規制をやって成果を上げてきたんだ、この経験からして、自治体の立入調査や自治体独自の上乗せ、横出し基準のつくれる制度にしてほしいというお話を伺っております。  また、そのことなどを通して、地方自治体に必要な指導の権限を付与することで、個別事業所データ地域の実情に詳しい自治体として十分生かせるようになっていくし、そういうふうなものになるように期待しているんだということを伺っておりますが、同じ自治体のお立場からのお考えというものを山下参考人から伺っておきたいと思います。
  89. 山下次樹

    山下参考人 確かに、公害行政の時代から、自治体と地域における企業あるいは住民との関係で自治体の果たしてきた役割というのは、私も重要な役割を果たしてきたというふうに認識をいたしております。  ただ、今、御審議されております法案につきましては、先ほど来申し上げておりますように、企業の自主的な化学物質管理制度を確立することによって、管理改善を図っていこうというものでございますので、上乗せあるいは横乗せ、そういう自治体ごとに違った取り扱いをするのではなくて、やはり統一的にやっていただいた方がいいというふうに思っております。
  90. 吉井英勝

    ○吉井委員 時間が参りましたので終わります。どうもありがとうございました。
  91. 古賀正浩

    古賀委員長 次に、中川智子君。
  92. 中川智子

    中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  きょうは座ったままでの質問を許していただいてありがとうございます。やんごとなき事情でちょっと申しわけございません。  まず、きょうは四人の方、お忙しい中、大変ありがとうございました。  私ども社民党は、昨日、参議院の方にPRTR法の対案という形で法案を出させていただきました。その中で特に政府案と違うところは、環境ホルモンをきっちりPRTR対象として明示すべきということと、届け出先地方公共団体にすべきというところ、そして、いま一つは、データ開示に対してもっと市民が簡便にアクセスできるような形にすべきというところにこだわりまして対案を出しました。そのような立場をもちまして、参考人の皆様方に質問したいと思っております。  政府案は、化学物質環境ホルモン作用は、有害性が判明していないとして、PRTR制度対象としていないというふうに、今現在私ども理解しております。ダイオキシンに対しては対象とするようですけれども、それは直接暴露した人や動物に生じるがんなど判明している有害性があるからであって、人や動物が子宮内の胎児の時期などに暴露した場合の子供への影響ですとか、それはすなわち、環境ホルモン作用については有害性が判明していない、ただいまの近藤参考人のお話に立脚するようなところであります。しかし、私は、このような別の有害性をもって環境ホルモン作用のある化学物質対象とする、いわゆる別件逮捕というような形のこそくな対応をするのではなくて、環境ホルモン作用が疑われている化学物質はきっちりとPRTR制度対象として法律上明記すべきであるという認識を持っております。  そこで、出番が多い浦野参考人にまず最初に質問をしたいと思いますが、WHOの専門家会合の結果を受けて、政府審議会でもただいまダイオキシンのTDIの見直しが行われています。そのWHOのTDIの値が一から四ピコというふうに厳しくなったのは、暴露を受けた動物の発がん性よりも、その子供に生じた精子の減少などの影響などが確認されたからだというふうに聞いておりますけれども、実際それがどうだったのかということ、いま一つ、子供への影響の原因として、ダイオキシンの環境ホルモン作用は疑われていないかどうか、そこに対して、科学的な見解についてまず伺いたいと思います。
  93. 浦野紘平

    浦野参考人 ダイオキシンについてのTDIについては、TDI自身が小さな数字、いわゆる厳しい数字に動いた理由は、内分泌攪乱作用がある程度疑われるということで厳しくなったというふうに私も聞いております。ただ、実際の審議の細かいことは全部を把握しているわけではございませんが、そういうふうに聞いております。  このように、TDI、ほかの毒性につきましても、時代とともに変わってくる、特に厳しい側に動いていくというのが常でございます。ですから、ダイオキシンについても、以前はもっと緩いTDIで、国もそれを頼りにして余り対策をとってこなかったということでございます。  いずれにしても、今回の法案は、疑わしいものを事前に、予防的に対処するというものでございます。環境ホルモンにつきましても、確かに情報が非常に不足しております。しかし、国際的な条約の一部でもこれをランキングすることが今検討されているようですし、アメリカのある州でもランキングをしてございます。それから、国立医薬品食品衛生研究所というところでも、これは機関としてではございませんが、研究者が環境ホルモン物質のランキングをしてございます。どの程度本当に環境ホルモン作用、正確に言うと、内分泌攪乱作用があるかどうかというので情報量のレベルでランキングしてございますので、そういうものを参考にして今回の法律対象にすることは可能だというふうに考えております。
  94. 中川智子

    中川(智)委員 ありがとうございます。  次に山下参考人にお伺いしたいんですけれども山下参考人は、県の環境部長として環境汚染から住民の健康を保護する責任を負っていらっしゃるお仕事についていらっしゃいますが、先年、名古屋市でも化学物質による地下水の汚染ですとか土壌の汚染が発見されて、名古屋市はその実態解明をされたやに伺っております。このように大防法などで規制されている化学物質や、また、規制はされていないけれども、有害な化学物質による環境汚染があって、住民の方々からいろいろ要望があった場合は、その汚染実態や発生源の調査というのは、現在ではまず地方公共団体が行うことになっていますよね。そこのところのお話を伺いたいんですが、現在のところはどうでしょうか。
  95. 山下次樹

    山下参考人 それぞれ大気汚染防止法水質汚濁防止法、法で個々に規制されておる場合には、法で地方公共団体責務が定められておりますので、これは地方公共団体でそれに基づきまして調査等も行ってまいります。
  96. 中川智子

    中川(智)委員 それで、法律規制されていない、法律で定められていない有害物質などに対して問題が起きたときはどうされているんですか、現在。
  97. 山下次樹

    山下参考人 具体的にそういうケースが私の経験ではございませんので、その時々の対応になると思いますけれども、やはり、制度的な構えがない場合には関係者の話し合いをよく進めていくしか方途はないというふうに考えます。
  98. 中川智子

    中川(智)委員 最初参考人のお話のときに、山下参考人は、今、地方自治体ではやはりとても無理だというふうなお話がありました。そして、それに関連して委員からのさまざまな質問があったときに、やはり法的にこれが地方公共団体として位置づけられて、いわゆる責務とその権限というのが明示されて、それに伴う予算、人的な確保というふうなものが担保された場合はできるかどうか、それは山下参考人の個人的な御答弁にならざるを得ないと思いますが、いかがでしょう。
  99. 山下次樹

    山下参考人 できるかできないかといえば、構えができれば私はできると思います。  できると思いますが、今御審議いただいておりますPRTR、つまり、化学物質排出量の把握、移動量の把握というようなことを進めていく上で、自治体が中心になってやっていくのがいいのか、政府案のように、国に届け出がされて国で一つの情報としてまとめられて、都道府県に提供される、こういう方途がいいのかといえば、政府案の方が効果的でいいというふうに思っております。
  100. 中川智子

    中川(智)委員 山下参考人、何度も申しわけないんですが、例えば、私も市民運動をやっておりまして、やはり環境問題、大阪府の能勢町も近くて、この間ずっとかかわってきているんですが、住民の運動がある。それで、やはりすぐ地方自治体に私たち市民としてはいろいろな話を聞きに行く。そして事業者、三位一体となってその地域の問題をみんなで解決していく中で国の助言を受けたり、いろいろな形で関係してくるというふうなのが、非常に市民にとっても、いつも守ってくれる、いつも話しやすいという存在は地方公共団体なんです。  今回、先ほどもお話をちょっと聞いていたら、山下参考人はあの藤前干潟のことでも随分頑張られたということですが、そういうふうな環境問題、さまざまな問題があったときに、住民に一番近いというのはみずからのお立場だというふうな認識はおありですよね。山下参考人にお願いします。
  101. 山下次樹

    山下参考人 そのように私も思っております。今先生がおっしゃいます点は、自治体の一つの使命であるというふうに思っております。  ただ、藤前のお話が出ましたので申し上げますと、藤前のような、ああいう多くの方々の保全をすべきだという意見がありまして、そして自治体、当局である名古屋市においても、いろいろな悩みの中でどうしたらいいかということで悩んでおられた、そういう状態にあったから、あれが保全をされたというふうに私は思っております。
  102. 中川智子

    中川(智)委員 わかりました。  では、続いて近藤参考人寺門参考人にお伺いしたいんですが、OECDでは、PRTR制度の決定に当たっては、国民、各主体の合意と制度決定の透明性確保を勧告していますけれども、今までの、通産省環境庁が行ってきたPRTRやMSDSに関する国民意見企業意見の求め方、特に企業意見ですが、寺門参考人には企業意見の求め方についての御感想を伺いたい。  近藤参考人には、国民的な意見というものに対しての対応は万全であったかどうか、それに対して、こんなつもりじゃなかったという意見が、日弁連を初めとして各新聞の社説、そしてNGOの方々からかなり出されているということに対して、どのようにお考えかということをそれぞれにお伺いしたいと思います。
  103. 寺門良二

    寺門参考人 私ども経団連といたしまして産業界PRTRを具体的に実施してまいりましたので、その経験を発表するという形で、そういう中で、PRTR実施におきましては、こういうことをやっていただきたい、こういうことは守っていただきたい、そういう意見を順次述べてまいりました。そういうものをしっかりと受けとめていただいたというふうに私は理解しております。
  104. 近藤雅臣

    近藤参考人 インターネット、ほかのマスメディアを通じてお願いしたわけでございまして、その後、各方面から御意見をいただいております。それは意見表ということでまとめておりますので、また御参考にしていただいたら結構だと思います。
  105. 中川智子

    中川(智)委員 近藤参考人、もう少し質問があったと思うんですが、いわゆる新聞の社説ですとかNGOの方々からのいろいろなメッセージ、それは、このPRTRは自分たちが求めて、意見も述べてきたものがかなり反映されていないということだったんですが、それに対してどのようにお考えかということを伺いたいと思います。
  106. 近藤雅臣

    近藤参考人 私ども審議会は、一番最初に申し上げましたように、各種団体の代表の方とかマスコミの代表の方、いろいろな方が入って論議を尽くしていただいております。その中でこういう結果が出たということでございますので、よろしく御理解いただきたいと思います。
  107. 中川智子

    中川(智)委員 承服しかねますが、わかりました。  寺門参考人にお伺いしたいんですけれども浦野参考人から先ほど、いわゆるパイロット事業の中で、報告する企業が四八%、五〇%を切るという状況だということに対して、どのようにお考えなのか。それが今後きっちりと、この法律が施行された後に、企業としての責任、事業主体としての責任ということに対してどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。
  108. 寺門良二

    寺門参考人 先ほど陳述でも、このPRTR実施するに当たりまして幾つかの準備が要るということを申し上げたわけでございます。中小企業者もデータをしっかりとみずから把握していくというためには、少なくとも、その算定の仕方、推計の仕方、そういったマニュアルなどを十分につくっていただいて、それをもって事業者が的確に推計できる、そういう御支援を政府として進めていただきたいというふうなことを申し上げたわけでございます。ぜひそういう点を今後進めていただければというふうに思います。
  109. 中川智子

    中川(智)委員 浦野参考人に伺いたいと思います。  私どもは、環境ホルモンが明示されるということがなければ、未然防止ということはとてもあり得ないというふうに考えております。浦野参考人意見陳述の中でもそれはしっかりとお話しくださいましたが、今週のアエラにCNPのことが載っておりました。  結局、これがどこに販売されて、どこに貯蔵されたか、一切、今どこにそれが、危険なものが置いておかれるか、置いてあるかどうかさえもわからない、移動が全く確認できないという状況、そのときに有害性が判明していなくても、きっちりとした、おそれのあるものに対して、もっと具体的に未然防止ということがこの法律の中にしっかりうたい込まれているかどうか、そのような印象をお持ちの今回の政府PRTR制度かどうかというところを、最後にお伺いしたいと思います。  そして、環境ホルモンがしっかり明示されるべきだという根拠をもう一度お話しいただきたいと思います。
  110. 浦野紘平

    浦野参考人 先ほどもお答えしましたように、この法律では対象物質におそれのあるという表現をとっております。おそれのあるということは、私は未然防止だというふうに読めるわけでございますが、そのときに、どういう人たちがどういうふうに決めるかということが一点ございます。  それから、未然防止という意味であれば、当然、国民が不安を持っているものについて情報を集めておくというのは、行政役割だというふうに思いますので、環境ホルモンとしてもある程度の疑いがあるものについては、国民不安にこたえる制度としては入れるべきだ、具体的にどの物質とどの物質を入れるかは、また別途検討すべきだというふうに考えております。  特に、私ども農薬類についてもいろいろ研究をしてございますけれども、これらの中で、従来、情報はないけれども、私ども情報で、もしかしたら非常に危ないかもしれないというようなものも出てきております。そういったことも含めて、既存のある程度の権威のある機関での毒性情報はまず優先するとしても、それ以外にも、いろいろ深刻な影響を将来与える可能性がある、特に次の世代あるいは環境、生態系に大きな影響があるかもしれないというものについては、情報をできるだけ収集しておくということが必要であるという意味で、この制度がうまく生きることを期待しております。
  111. 中川智子

    中川(智)委員 ありがとうございました。これで質問を終わります。
  112. 古賀正浩

    古賀委員長 これにて参考人に対する質疑は終わりました。  参考人の皆様には、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  参考人の皆様はどうぞ御退席いただいて結構でございます。  この際、申し上げます。  本日の連合審査会の開会は、午後一時三十分に変更になりましたので、よろしくお願いいたします。  次回は、来る十八日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十七分散会