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1999-04-27 第145回国会 衆議院 商工委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年四月二十七日(火曜日)     午前九時三分開議   出席委員    委員長 古賀 正浩君    理事 伊藤 達也君 理事 小此木八郎君    理事 小野 晋也君 理事 岸田 文雄君    理事 大畠 章宏君 理事 松本  龍君    理事 大口 善徳君 理事 西川太一郎君       岡部 英男君    奥田 幹生君       奥谷  通君    木村 隆秀君       河本 三郎君    新藤 義孝君       田中 和徳君    竹本 直一君       武部  勤君    中尾 栄一君       中山 太郎君    林  義郎君       牧野 隆守君    村田敬次郎君       茂木 敏充君    山口 泰明君       山本 幸三君    奥田  建君       島   聡君    島津 尚純君       中川 正春君    中山 義活君       藤村  修君    渡辺  周君       中野  清君    並木 正芳君       福留 泰蔵君    青山  丘君       小池百合子君    鈴木 淑夫君       辻  第一君    吉井 英勝君       前島 秀行君  出席国務大臣         通商産業大臣  与謝野 馨君  出席政府委員         科学技術庁研究         開発局長    池田  要君         環境庁企画調整         局長      岡田 康彦君         法務大臣官房司         法法制調査部長         兼内閣審議官  房村 精一君         文部省学術国際         局長      工藤 智規君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君         通商産業省基礎         産業局長    河野 博文君         工業技術院長  佐藤 壮郎君         特許庁長官   伊佐山建志君  委員外出席者         議員      佐藤謙一郎君         商工委員会専門         員       野田浩一郎委員の異動 四月二十七日         辞任         補欠選任   遠藤 武彦君     田中 和徳君   樽床 伸二君     島   聡君   中野  清君     並木 正芳君   二階 俊博君     鈴木 淑夫君   金子 満広君     辻  第一君 同日         辞任         補欠選任   田中 和徳君     遠藤 武彦君   島   聡君     中川 正春君   並木 正芳君     中野  清君   鈴木 淑夫君     二階 俊博君   辻  第一君     金子 満広君 同日         辞任         補欠選任   中川 正春君     藤村  修君 同日         辞任         補欠選任   藤村  修君     樽床 伸二君 四月二十六日  特定化学物質排出量等公開等に関する法律案佐藤謙一郎君外四名提出衆法第一六号) 同月二十三日  中小企業支援策充実強化に関する請願(木島日出夫紹介)(第二七七九号) は本委員会に付託された。 四月二十七日  中小企業信用補完制度の拡充に関する陳情書(第一五五号)  個人情報保護に関する法律早期制定に関する陳情書(第一九〇号)  デポジット制度法制化に関する陳情書(第一九一号) は本委員会参考送付された。 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  特許法等の一部を改正する法律案内閣提出第三〇号)(参議院送付)  特定化学物質環境への排出量把握等及び管理の改善の促進に関する法律案内閣提出第八八号)  特定化学物質排出量等公開等に関する法律案佐藤謙一郎君外四名提出衆法第一六号)     午前九時三分開議      ――――◇―――――
  2. 古賀正浩

    古賀委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野晋也君
  3. 小野晋也

    小野委員 おはようございます。  もういよいよ二十一世紀も一年八カ月、目の前に迫ってきたこの時期でございます。  先日、この二十一世紀という時代をどうとらえたらよろしかろうかということを考えておりましたときに、ふと、昔、もう既に四半世紀も前のことになりますが、「二〇〇一年宇宙の旅」という非常に有名な映画がありまして、私も学生時代にその映画を見たことを思い出しました。  その映画は、火星を目指して人類宇宙ロケットをつくり、そしてそれに向かって旅立っていくという物語でありましたけれども、当時非常にわかりにくさを伴ったものでございましたが、今振り返ってみましたときに、非常に大切なテーマをこの著者でありますアーサー・クラークさんが私たちに投げかけていることに気づいたのであります。  とりわけあの映画の中で一度見たときに理解しがたかったのは、原始時代シーンが出てくることでございます。大臣もごらんになられたかもしれませんけれども、突如として原始人たちが獲物をとったり戦ったりするシーンが出てくるのであります。そのときに、石おのを振るいながら原始人戦いに向かう、その石おのがふっと空へ投げ上げられたときに、石おのの姿に二十一世紀最先端技術でありますところの宇宙ロケットの姿が二重写しになり、また物語が続いていくわけであります。  つまり、この物語が提起をしているものは、人類というものはその時代時代に有している道具によって進化を遂げてきたという主張であったのではないか、こんな印象を持ったわけでございます。  その中におきましては、決して問題もなく進化プロセスが進んでくるというわけではありません。この「二〇〇一年宇宙の旅」によりますと、その宇宙船の内部で、最新鋭のコンピューターでありますところのハル、そしてその乗員の間にいろいろな葛藤が生まれ、その戦いの姿も描かれているわけであります。  つまり、いろいろなテーマがあったのでありましょうけれども、要約して申し上げますならば、先ほど言いましたとおり、人類はその時代の最新鋭道具によってこそ新しい時代を切り開き、それが単に技術面進化を遂げるということのみではなくて、社会そのもの、人間の生き方、考え方というものまでも影響を及ぼしながらこの長い人類進化プロセスが進んできた。そのプロセスの中においては、いろいろな問題、葛藤というのが必然的に生まれてくるものである、こういう主張が含まれていたものと思うわけであります。  前段にちょっとくどいお話を申し上げたようでございますが、私は、この物語が今回提起されました特許法改正案と結びつき合うものを感じてならなかったわけであります。  と申しますのも、先ほど申しましたとおり、この人類進化プロセスにおける道具、それは、人類共通の言語としての科学技術というものの進化に負ってきた部分が非常に大きいと思ったからであります。この科学技術の進歩のために、人類が出した英知の結実として、この特許法を初めとする知的財産権保護の思想が生まれてきたというふうな気がするわけでございまして、私たちは、今改めてこの知的財産権というものが生まれてきた原点に思いをいたして、これからの時代社会の発展のためにこういう制度をいかにうまく、直すべきところは直し、そしてまた生かすべきところは生かしていくというような考え方をとらねばならないと思ったわけでございます。  そんな観点から見ました場合に、現在の日本におけるこの特許の問題のみならず、さまざまな知的財産権の問題というのは、非常に感覚的に申し上げますならば、取得された権利を生かすという発想よりも、むしろ保護的側面が非常に強いというような印象を持っております。  つまり、多くの人たち特許等知的財産権活用いただいて、広く、大きく発展していくということよりも、むしろ自分たちの権益をただ守るがためにこの特許を大量に取得をして、それでほかの企業人たち活用できなくしてしまうというような、ある意味閉鎖性を感じさせる要素が強かった点についてこれから改革をしていきながら、より大きく開発者発明者という人たちの利益を図りつつ、しかし同時に、人類全体としてこういう知的財産というものを活用していくという発想が求められてきているのではなかろうか、これが率直な私の印象でございます。  その点に立ちました場合に、質問に移らせていただくわけでございますけれども、二十一世紀という時代を考えました場合、やはり私は、知識時代という指摘がよくなされるわけでございますが、この知的財産というものが富を生み出す源泉としての位置づけがなされる時代であるというふうに位置づけができるのではないだろうかと思うわけであります。  そうすると、二十世紀時代にあって、工業生産におきまして石油がその富の源泉だと言われた時代には、石油化学コンビナートという形で原油を中心にいたしまして、生み出されてくるさまざまな生産物をいろいろな用途で利用し合う産業集積をし、そしてお互いが強い連携を保っていきながら全体の効率を高めていくような形で石油化学コンビナートというものが生み出されました。その少し以前には、むしろ石炭がエネルギーないし化学工業中心時代には、石炭化学コンビナートと言われるようなものが形成されてまいりました。  その脈絡から考えてまいりますと、少し唐突な印象を与えるかもしれませんが、知的財産というものが富の源泉となり、いろいろな方面影響を及ぼす時代がこれからやってくると考えてまいりますならば、石油石炭一つの大きな産業集積を生み出したと同じく、これからは、知的財産がそのような多様な産業集積源泉になってくる可能性を持つのではなかろうか。  そうすると、知的財産コンビナートとも呼ぶべきビジネス集団というようなものを構想しながら、知的財産活用という問題に取り組んでいかねばならないのではなかろうか、これがまさに日本の新産業創成につながってくる可能性を帯びるものではなかろうか、こんな思いを持ち始めたわけでございます。  その展望に立ってみました場合に、知的財産権中心に扱って、関連ビジネスを多様に広範囲に育成することを研究していこうというような取り組み特許庁内で始めてみられてはいかがだろうか、こういう印象を持ったわけでございますが、この点について、大臣の御見解をお尋ねしたいと思います。
  4. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 先生指摘のように、知的財産権は、国富を拡大することに関し、その源泉でございまして、技術開発とともに、知的財産権を事業化するための環境整備として知的財産権関連ビジネス育成が重要であることは、私どもとしても十分認識をしております。  こうした認識のもとで、特許庁においては、昨年来、次のような施策を実施しているところでございます。  第一には、特許流通市場整備に向けた仲介事業者育成、第二には、特許流通知的財産権担保融資活性化に向けた特許評価指標提案、第三は、企業における知的財産権活用促進のための知的財産権戦略指標提案、以上の三つのことをやっております。  今後は、先生の御指摘のアイデアである知的財産権コンビナート構想参考にさせていただきながら、知財関連ビジネス活性化する社会の構築に向けて、特許庁において引き続き所要の施策の推進に努めてまいります。
  5. 小野晋也

    小野委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。  それに関連しまして、今大臣御答弁の中で、仲介事業者育成ということにお触れになっておられました。  とりあえず第一段階というのは、仲介業育成をしていきながら、いろいろな可能性を探っていくという必要性があるというふうに思っているわけでございますが、残念ながら、知的財産権に関する仲介業というのは、その仕事を業として取り組んでいる方がいないわけではありませんが、まだこの日本の国の中では、広くその仕事が展開されていると言うには及ばない状況だろうと思うわけであります。一方、考えてみますと、土地や建物の取引におきましては、不動産取引仲介業というものが、かなり幅広く重層的に日本の国の中では展開されている。  その違いは一体どこにあるんだろうかというふうに考えました場合に、そのニーズの幅の広さ狭さという問題も一面ではありましょうけれども、同時に、不動産取引業の場合におきましては、いろいろな制度というものが確立されているという点が指摘できると思うんです。つまり、資格制度の問題もあれば、取引に伴う手数料の目安というようなものを大体定めていて、円滑にこの業がなせるような環境がつくられているわけでありますけれども、一方、知的財産権取引においては、そういう環境整備がおくれているがゆえに、なかなかこの仕事が業として成り立ちにくいという面があるような印象を持つわけでございます。  仲介事業者育成の方針を打ち出しておられるわけでございますが、この育成と、業界の社会的認知を高めると同時に、市場ルールづくりという面にもぜひお取り組みをいただきたいと願うわけでございますが、この点の御見解はいかがでございましょう。
  6. 伊佐山建志

    伊佐山政府委員 先生指摘のとおり、まだ日本におきましては技術一般についての取引をする場がございません。その理由といたしまして、今御指摘のような客観的な基準が十分にできていないということで、私どもといたしましても、知的資産を十分に持っております特許庁といたしまして、そのノウハウというものを何とか客観的に判断し得るような、そういう材料を提供できるのではないかということで、先ほど大臣から御紹介がございましたような、特許そのものを評価する、あるいは知的財産権というものを企業の中で、全体として企業経営をする中でどう考えるべきかということについての指標づくりをいたしておりまして、それを関係各位の御意見をいただきながら取りまとめたところでございます。  まだ必ずしも十分になれていないということもございまして、関係方面のいろいろな御批判、御叱正をいただきながら、そのさらなる客観化信頼性を高める、そんな工夫をしてまいりたいと思っております。
  7. 小野晋也

    小野委員 続きまして、法務省にお尋ねをさせていただきたいと思うわけでございますが、知的財産権政策というのは一面で権利の形成、つまり知的財産権取得の問題、それから合理的な運用が図られるという点が一方にあるとするならば、もう一方では、やはり権利が侵害された場合に適正な対処がなされるという部分が求められるわけでございまして、裁判における知的財産権問題というのは非常に重要な位置を占めていると思うわけでございます。  それを担われるのはやはり人でありますから、理解を十分される人がこの裁判に臨まれるという必要性、さらに、これから知的財産権をめぐる紛争が増加することが予想される中で、その体制を確立していくというような問題、いろいろな課題指摘されるわけでございますけれども、そのような様子を見ておりましたときに、弁理士のさらなる活用という側面対処がぜひ求められるだろう。  ついては、弁護士皆さん方弁理士皆さんの間でこのあたりの協議がなされるようでありますが、なかなかうまくその話が進展していきにくい状況があるというふうにお伺いしておりまして、一つ提案でありますけれども、むしろこの際、弁護士資格一種として、適用が限定される特許弁護士資格というものを創設して、弁理士がその資格を重ねて取得することによって、法廷における対応についても便宜を図れるというような状況をつくり上げてはいかがかと思うわけでございますが、この点についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  8. 房村精一

    ○房村政府委員 お答えいたします。  特許の特に侵害訴訟につきましては、訴訟を的確に追行できるだけの知識、能力が必要とされると同時に、極めて特殊な分野である特許に関する専門的知識も要求されるわけでございます。そういう意味で、現実侵害訴訟を担当するのは特許専門に取り扱う弁護士の方々が中心となって、弁理士の方と協力しながらその処理に当たるというのが実情でございます。そういう意味で、ただいま委員指摘のとおり、特許訴訟には極めて特殊性が強いという性質がございます。  ただいま御提案特許弁護士制度ということになりますと、特許関係事件処理のために、現行の弁護士資格の一環として、職務範囲を特に限定した新たな資格制度を設けるということを意味するのではないかと思われますが、このような新たな資格の創設につきましては、そのこと自体に対する国民ニーズを見きわめるということと同時に、資格法制全般のあり方にもかかわる問題でありますので、公的資格制度の見直しが求められている現状も踏まえつつ、種々の観点から総合的かつ慎重に検討をしていく必要があるのではないかと思われます。  いずれにいたしましても、特許関係事件を適正迅速に処理する体制を整えるということは極めて重要なことでありまして、法務省としても従来から取り組んでいるところでございますが、ただいまの先生の御意見参考にしつつ、さらに研究を続けたいと思っております。
  9. 小野晋也

    小野委員 知的財産権問題は、今まさに金融界が少し前にビッグバンを迎えたがごとく、これから先の日本にとって非常に重要な戦略分野であり、また同時に、非常に大きな変革も求められる分野になってくるだろうと思うわけでございまして、特許庁皆さん方ないし関連する皆さん方のこれからの御活躍をお祈り申し上げたいと思います。  なお、日本特許情報機構、PATOLISの運営上の問題ですとか、それから、出願時期をめぐって、情報出願になってきたことに伴って出願日日本アメリカでずれるというような問題ですとか、いろいろな問題が指摘されているところがありますので、そういう点も含め総合的にこれから検討いただいて、産業育成のできる整合性のある日本特許制度の設立に向かっていろいろと御尽力いただきますことをお願い申し上げまして、質問を閉じたいと思います。  ありがとうございました。
  10. 古賀正浩

  11. 渡辺周

    渡辺(周)委員 民主党の渡辺周でございます。本日は、この特許法等の一部を改正する法律案につきまして、大臣並びに特許庁に対して御質問をさせていただきます。  いわゆる今回の知的財産、これに対しては、欧米のこれまでのいろいろな動き、特にアメリカに対しまして、日本はようやく国際的に肩を並べるところまで、プロパテントという形で追いつきを図ってきた。しかし、その反面で今度は逆に、一種の、アメリカ中心とする特に訴訟部分知的財産においては彼らはそれなりの蓄えをこれまで持ってきた、また特許侵害に対するいわゆるノウハウを持って、日本というところにある意味では宣戦布告をしてくる。ある意味では日本はまさに今、小野委員からもお話がありましたけれどもビッグバンというのは、国際競争の中で戦うその反面で、デメリットとして生まれてくる部分もあるであろう、また、それをどうしても克服しなければならないことになるであろう。そういう意味では、大変な今回の決断であったというふうに考えるわけでございます。  まず第一番目に、今申し上げたような我が国プロパテント戦略について、大臣の御認識を初めに伺いたいわけでございます。  今も大変な議論がありましたけれども我が国プロパテント戦略、これからの我が国にとって技術力知的財産が非常に重要な問題であることは論をまたないわけでございまして、資源もない、輸入に頼っている、これから日本少子高齢化という道のりをしばらく歩む中で、日本はこれから何で生きていくか。ある意味では頭脳とそれに基づく技術力によって日本は生きていかなければならぬだろう、それは論をまたないところでございます。  先般、政府がまとめられました産業再生計画の中でも、対策の二本柱の一つとして、今回のこの知的資産の倍増ということが掲げられました。知的所有権保護や先般施行されましたTLOの活用についても、一項目を割いているわけでございます。  これは比較しますと、かつてのアメリカ産業競争力強化委員会が発表しましたヤングレポート、これに匹敵するものかな、そのような認識を持っているわけでありますけれども、御存じのように、このヤングレポートから従来のアンチパテントプロパテント政策が明確に転換をされた、それが現在のアメリカ経済のいわゆる復興の礎となったということはいろいろな中で指摘をされているところでございます。  我が国を振り返って見てみますと、特許庁のおっしゃる中にプロパテントという言葉がるる書かれているわけでありますけれども、これが本当に国家戦略として、国の最重要課題として、先ほど申し上げたような、日本がこれから知的財産立国、あるいは頭脳立国という形で、本当に日本はこれを戦略物資としていくんだといったような認識というものが非常にまだまだ、日本国内はもとより、日本政府でありますとか政治家の中にも私は認識が薄いのではないのかなというような危機感を持っているわけでございます。  先般の国会審議の中におきましても、あるいは総理大臣の御発言の中にも、何か一つ迫力といいましょうか、日本はこれで生きていく、これが日本の生きる道だといった形での強い認識というものを感じるというまでには、やはりやや心もとない部分があったわけでございます。  そんな中で、これから、政府あるいは国を挙げて、これは特許庁あるいは通産省というだけでなくさまざまな分野において、日本戦略物資である知的財産、これをどのように認識してこれから日本戦略として位置づけていくのか。まずその点について通産大臣の御認識を伺いたい、そのように思うわけでございます。
  12. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 我が国のように国土が狭く、資源のない国にとりましては、国民が持っておりますいろいろな資質、あるいは人的な財産というのが大変大事でございます。  一つは、我々の先祖の時代から教育に対しては大変熱心であって、教育水準世界のいろいろな国々に比べまして相当程度高いところまで私はいっていると思います。そのほか、勤勉さとかあるいは仕事に対する熱心さ、忠誠心、いろいろなものもございますし、また、早くから技術重要性科学重要性日本人は気がついてまいったわけでございます。  そういう中で、一つは、科学技術に多くの投資をして、そこで生み出される新しい考え方発明発見等々、もろもろの新しいことをいたしましたときに、それがいわば知的財産権として保護される。これはもう昔から特許法がございますから保護されるのでありますけれども、やはりそれに関しましては、世界特許法との整合性の問題もありますし、あるいは特許運用上の問題もいろいろございます。  しかし、せっかく生み出されたそういう知的財産権が、やはり実際企業化され、それが富を生むということに関しまして、特許をとっただけではだめなんで、特許が富を生むという過程に入っていかなければならないわけでございまして、そのために特許庁もインターネットを通じて特許を公開するとかいろいろな工夫を今しております。  新しい考え方が出てきた、特許がとれた、それに対して多くの人のアクセスが可能なようにいろいろな工夫をする、できるだけそれが企業化する、あるいは外国によって不法に使用されない。いろいろな側面整備をしていかなければならないのですが、やはり、基本的な考え方は、日本人の糧はそういう知的財産権から生まれているという現実、あるいは科学技術に基づいたそういう我々の経験から我々の富は生まれているという深い認識が必要だろうと思っております。
  13. 渡辺周

    渡辺(周)委員 まさに認識は同じくしているというふうに思う次第でございます。  今も御答弁の中にありましたように、この知的財産、小国でしかも資源に乏しい我が国において、これから世界の中に日本が何で本当にその優位性を保っていくかということは、まさに我々の、あるいはこれからの世代が持つ発想、着眼点、あるいは勤勉な努力によってできてきたいわゆる頭脳である、そのような認識を持つわけでございます。  今後細かい点について、それではそのいわゆる知的財産がどのようになっていくか、どのように保護をされていき、また国際的な特許市場の中でどのような立ち振る舞いをしていくかという点については、後々細部にわたって御質問したいところでございます。  その前にもう一つ大臣にお尋ねをしたいわけでございますけれども、そんな中で、今申し上げたような資源に乏しい我が国が実はアメリカ以上に、この知的財産というのは今アメリカが大変進んでいるという思いを、確かに今の現状ではそう言わざるを得ないわけでありますけれども、しかし、資源のない我が国はもっとそれ以上に、知的財産ということについてはとにかく大きく戦略物資としていかなければならないわけでございます。ということは、アメリカ以上のプロパテント政策をとる必要がある。ある意味では、それが日本の優位性を保っていく活力になるわけでございます。  そんな中で、これから教育という立場においても、これからの次の世代、教育分野においてどのように育てていくかということも、大変な、これは国家として挙げていかなければならない国策であろうと思う次第であります。  特に大学教育において、ちょっと申し上げますと、本年、一九九九年でございます。今八歳の子供、この子供たちが、あと十年後、二〇〇九年には統計の上では日本じゅうのどこかの大学に入れる。いわゆる十年後には、それはいろいろな選択肢はあると思いますので一概には言えないわけですけれども、数の上では、北は北海道、南は九州、沖縄まである日本全国のどこかの大学と名のつくところに高校を卒業する子供たちがもう入れる全入時代が参ります。  その中でやはり危惧しなければいけないことは、今度は大学のある意味では質の問題がこれから問われてくる。今も私学が大変な定員割れを起こしている、あるいは志願者減が起きている。中には、一芸入学のようなことで本来と違う形で評価をされてとにかく大学へ入る。私はそれはそれで個性があっておもしろいのかなと思いますが、ただ、技術系に行く、理科系にしてみると、これは余り質を落としてしまうと、国際社会においては、大学は出たけれども余り質のよろしくない学生というものもそのまま社会へ出てくる時代になってしまうんではないかなというような危機感を非常に持つわけであります。  そんな中で、これから大学がいかに技術教育あるいは資質の高さという意味において、現状の水準を何とか維持をする。そして、国際社会の中で通用する人間をとにかくつくっていく。もちろん、通産大臣でございますので、文部省の管轄である大学のことについて大臣にお尋ねするのはお門違いかと思われるかもしれませんが、ただ、これはもう通産省であるとか文部省であるとかという行政の縦割りの垣根を越えて、人材を育成する。その人材が国をどう引っ張っていくか、これをつくる上においては大変な国として挙げていかなければならぬまさに国家的使命でございます。  先般、特に理科系大学を対象にしまして、企業であるとか学会が協力して技術者養成に関する認定制度を創設するといったような新聞報道もありました。つまり、ある一定の水準を持っている学生を客観的に評価しよう、今までそういった客観的な評価がなかった、まさに技術者養成認定制度世界に通用する人材を育てるといったようなことで、これは四月二十日の新聞に載っておりました。  アメリカではもう既に一九三〇年代から認定制度を設けている。いわゆるプロフェッショナルエンジニア、PEという、認定大学の卒業生が実務経験を経てこの資格を取る段取りになっている。ところが日本では、大学の水準を評価する認定機関がなく、技術者の資格も例えば建築ですとか機械、情報処理などに細分化されている。ですので、こういう方々がこれから米国で本格的にビジネスを行う場合には、現地でこのプロフェッショナルエンジニアリングの資格者を雇ったり、あるいは自社の社員をこうした認定大学に改めて留学させる。こういう回り道をしながら、あるいはコストをかけながらやってきた。  日本もおくればせながらこういう制度が認定されるということでありますけれども、ぜひともこのような動きに対しても側面から支援していく必要があると思います。その点についての御認識を、一点お尋ねをしたいと思います。  さらに重ねて申し上げますと、今も、小学校の高学年であるとか工業高校の生徒さんたちに、小学生高学年には発明という一種の着眼点の部分において、そして工業高校の生徒さんたち知的財産知的所有権という形で副読本等を配付して、かなりこれが全国から引きも切らず問い合わせが来ている、大変に好評だということであります。こういった子供たちに対しての一種の着眼点、特許制度ということも含めて、今後どのように取り組んでいかれるのかという点につきましても、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  14. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 まず、日本教育制度のあり方の問題にさかのぼって先生は議論をされました。私も同じような実は心配をしております。  それで、義務教育は全員受けることになっておりますが、今は義務教育を終えた方の大体九八%は高校に行っておりまして、高校の教育も大体義務教育化していると私は考えております。そのうちに、今から四年ほど前の統計ですら高校卒業生の約四六%、今は五〇%を超えていると思いますが、大学ないしは短期大学に進学をしております。残りの方は専門学校あるいは高等専門学校に進学されて、非常に、教育という面ではあらゆる機会が用意されているというのが日本社会であると思いますし、大学の定員割れのお話が今ありましたが、現実にますますそういう現象は起きてくるんだろう。むしろ、学校が積極的に募集広告を出しながら生徒を集めるというような時代になってしまうんだろう。  そのときの一つの心配は、やはり教育水準世界で通用する、いわゆる大学と言われる場所の教育水準とマッチするか、あるいはそれ以上行くことができるかという実は深刻な問題があって、実は大学は、Aクラス、Bクラスなんということを分けますとしかられますが、事実は、専門的に非常に高度のものをやっていくところと、一般的な教育をやっていくところと、やはり選別化せざるを得ないというようなことにも私はなってくるんだろうと思います。そうでないと、先生が心配されるように、世界で通用するような大学教育ができないというこの問題は、日本の国力を落とすもとになりますから、そこははっきり割り切って私はやった方がいいと思っております。  それと同時に、あのバブルの時代を振り返りますと、せっかく工学部、理学部を出た人が金融関係のところに就職したりということは、実は本人にとっても余り好ましいことではないし、日本全体の人材資源ということから考えればこれもまた好ましいことではないと思っておりますし、もう一つは、そういう理科系のレベルというのが本当に国際水準を行っているのどうかといえば、大学受験のときまでは日本が優秀なんですが、大学に入ってからの勉強の仕方、研究の仕方は欧米先進諸国に果たして比肩し得るかといえば、必ずしもそうでもないという現状はやはりよくわかっていなければなりません。  それからもう一方では、これだけの大きな文部省予算の科研費とかその他をいろいろ使っているわけですから、そういう大学で得られた成果というものがスムーズな形で民間に移っていって、そこで事業化されて、そこで富が生まれる、そういうシステムも、TLOというシステムをつくりましたけれどもまだまだ不十分でございまして、やはりそういう技術の円滑化とか、あるいは大学教授と企業の経営者との兼業ができるようにもっと幅広いものにするとか、そういう一連のことをやっていきませんと、まさに我が国は、砂上の楼閣ではありませんけれども、海の上に、狭いところで科学技術知識で生きている国でございますから、そういうことに最も重点を置いて物を考える必要がある。  特許というのは、そういう全体のみんなの権利を守る、国内でも守るし海外でも守るという制度ですから、これを使いやすくするということは一連の今回の改正の中にも含まれている物の考え方だろうと思っております。
  15. 渡辺周

    渡辺(周)委員 長々お答えをいただきました。思いを大変よく感じた次第でございます。  いずれにしても、人材を育てるというのは、これはもう中長期的な観点、あす、あさってに結論が出る問題ではありませんけれども、ただ、とにかく言えることは、アメリカの特に大学教育においては、その大学がどこの大学であるかではなくて、社会に出たときに、こんな社会に通用しないような人材をあの大学は送り出してきた、平気で世に出してきた、今度はその大学の信用が損ねられる、だからどうしても大学は一生懸命になってある意味では社会に通用する人間をつくり上げていく、そういうふうな一種の哲学のようなものに立っているところもあると聞き及んでおります。  いずれにしましても、こうした中長期的な観点からいえば、人材をつくるということはとにかく国としてやっていただきたいし、またその環境というのも、これは通産省の管轄ではないというのは承知でありますけれども、特に国公立等の研究機関なんかに対しては民間の企業に遜色のないような形で、とにかく人材を育てる、あるいは研究開発に励むことができる環境をぜひとも側面的に支援していくべきだろうということをつけ加えて、次の質問に移らせていただきます。  最初に申し上げましたように、知的財産の問題についてはアメリカにはるかにおくれをとっているわけでございます。これから我々が懸念する問題というのは、日米の知的財産にかかわる一種訴訟社会訴訟環境の差。  これは、私が地元で今回の質問に当たりまして幾つかの企業特許を担当している方々にお会いをしてきました。その中で、私の地元に明電舎という会社がございまして、そこの辻村さんという方といろいろお話をしたんですが、これからの新しい言葉、こういう言葉をつくっております。これからは訴訟市場というものができ上がってくるんではないだろうか。  その方の造語だと言っていましたけれども、ある意味ではアメリカというのはもともと訴訟社会、しかも特許侵害に対する損害賠償の額というのは大変な高額である。当然、そこにかかわる方々というものは大変な競争を今までしてきたわけですね。特に、あれはどこだったでしょうか、コダックとポラロイドだったでしょうか、国内の知的財産の侵害という形で双方がとにかく大変な額の裁判をやってきた。その負けた方は結果的には例えば四千人もの解雇をせざるを得ないぐらいの賠償を求められた、こんなようなこともございました。  そういう中で、それではこれから日本が、この訴訟社会の中において、アメリカ型のいわゆる訴訟について非常に力のあるアメリカ企業、あるいはそこについてきた法律家の特に弁護士の方々、実は訴訟における大きな市場を、マーケットを提供することになりかねないんではないかなというような話をしてまいりました。  実際問題として、アメリカ日本の特に特許侵害におけるやりとりの中で、大きな賠償額になる。その反面で、当然それぞれの訴訟制度というものの格差がこれだけある。その中で日本の国がこれからその環境をどう整えていくか。これは、日米の訴訟に敗れて、今度はその分を日本の国内で訴訟合戦が起きた場合、日本の国力を結果的には弱めていくことになるんではないだろうか。そのような危惧も抱くわけでありますけれども、国際舞台の中でアメリカ訴訟社会に対応してどれだけ日本環境整備していかれるのか、その点についてお尋ねをしておきたいと思います。
  16. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 御存じのように、まず、訴訟に関して言えば、日本弁護士の方の数はアメリカに比べて二けた近く少ないんじゃないかと思います。  そういう中で、アメリカでは訴訟が頻繁に行われる、これはあらゆる分野でそういうことになっておりますが、日本特許訴訟に関して言えば二つのことが実は問題になっておりまして、まあ三つだと思いますが、一つは、裁判に時間がかかり過ぎるということ。それから、裁判官、弁護士に、特許法に関して、特許法自体は御存じなんだけれども特許裁判所で審査しますのにはやはり技術的な背景が必要なので、法廷における弁護士の地位は当然きちんとした制度がありますが、弁理士の方にどう法廷で活動していただくか。これは業際問題でなかなか、弁理士会と弁護士会とのお話し合いがあるんだろうと思います。  それと、やはり損害賠償額が実際の損害とはかけ離れているという問題が実はあって、恥ずかしい話ですが、日本の会社が日本の会社を訴えるのにアメリカの法廷に行って訴える。裁判は迅速だし、賠償は余計とれる。こういう例は実は何件もございますし、有名な会社がそういうものをやっているケースがあります。これは大変嘆かわしい状況で、昨年あたりから最高裁もそういうことをよく気がついてくださって、東京地裁に特許だけを審査する部を一つ二つと新設してくださいました。しかし、これで十分かといえば、まだまだ十分でないわけでございます。  今回の法改正は、実際、日本裁判にせっかく勝っても少ないと言われた損害額、損害の補てんを可能にするということと、やはり挙証責任の問題、証拠収集の問題等がございまして、証拠収集の手段を拡充することによりまして訴訟審理を早める。要するに相手方からもいろいろ書面、証拠を出していただくというような新しい制度が入っているわけでございます。  これはやはり、発明者保護するということは、その後に続く発明者にインセンティブを与えるということでございますから、せっかく発明したのに正当な保護が受けられないということですと後のインセンティブがなくなりますし、全体としては、長い間そういうことを続けていきますと日本人の創造的な発明意欲というものをそぐわけでございます。  現在提案されておりますのは、今の法体系、民法、民事訴訟法、特許法等々にかかわるものを前提としながら制度の拡充を図りまして、裁判の迅速化、創造的技術開発の推進といった普遍的な問題を解決しようということを目指しておりまして、これによって日本が不利になるというようなことはないというふうに考えております。
  17. 渡辺周

    渡辺(周)委員 これから徐々に、いろいろな形で訴訟社会というものになっていくのかなという、実は非常な危機感、危惧を持つわけであります。  これは、知的所有権に対する考え方、特に訴訟のあり方においても日米では違いがある。知的所有権の中にも米国特有な、例えばサブマリン特許というようなものもございまして、御存じのように、長いものでは三十八年間潜伏をしている。つまり、ありとあらゆるものが抵触をするようにできていて、そこからは逃げられないようにして、実は和解に持ち込んで多額の金額を取る。これは、よくアメリカの方は、パテントマフィアというような方々もいらっしゃるようでございまして、またあるいは訴訟のやり方についても陪審員を納得させる。これはアメリカのあり方、こういうものも実は大変な問題がある。  それから、特許の解釈においても、日米においてかなりの開きがある。つまり、日本では人間の思考過程と解釈されて、例えば、これは数学の計算式の問題ではないか、思考過程の問題であるというようなことが言われていても、アメリカでは特許として成立することがあるんだと。いかに違いを、双方本当にというよりも、日本がその点についていかに研究開発を重ねてそしてまたやっていっても、最後にそこで侵害ということになる。  これは私の思いなんですけれども、そういう中で、法律世界においても、あるいは今大臣がおっしゃられたような弁理士の方々の中においても、ぜひともこの訴訟社会にたえられるような、あるいは勝利できるようなそういう方々に対しての支援というものもつけ加えてお願いをしたい。また、そういう環境整備をしていかなければならないと思います。  そこで、こうしたいろいろな環境の中で、特許庁のあり方ということについてもお尋ねをしておきたいわけであります。  こういう日本の重要な戦略分野である知的財産権、これが、省庁再編の中では経済産業省の外局という立場に置かれる。私は、ある意味では、こうした戦略部門については、より政治に近い位置づけというものをしていくべきではないのかなというふうに考えるわけでありますけれども、その点についての大臣の御認識はいかがでしょう。
  18. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 特許庁というのは普通の役所と違いまして、審査という非常に厳密なことをやるわけですし、裁判はやりませんけれども特許で争いが起きましたときにある種の考え方を示すというような、他の役所とは違うような部分がございます。  特許行政は、工業所有権四法や諸外国の例にかんがみまして、経済産業行政の一環として経済産業大臣戦略的な観点から実施するということが我々は適切であるというふうに考えておりまして、今度の行革でもそのように扱われておりまして、それは適切なことだろうと思っております。諸外国について申し上げますと、工業所有権が貿易や産業と密接に関連を持つことを考慮しまして、経済産業省に相当する省の外局として設置されることが通例になっております。  また、特許庁の独立行政法人化についてですが、工業所有権行政は、次のような業務の特質を有することから、今回の省庁再編においても、国みずから行うべき業務とされております。第一には、排他的権利の設定のための高度で専門的な判断を伴うこと。それから第二は、特許庁の行う審判が第一審機能を有しているとともに、権利侵害等に対して民事上、刑事上の責任を問われること。第三には、経済のグローバル化を反映し、制度の国際的調和等を図るための国際交渉が重要であること。  いずれにいたしましても、先生指摘のとおり、知的財産我が国にとって重要な戦略分野一つであるとの認識のもと、工業所有権行政を遂行していく、これは大変大事なポイントだろうと私は思っております。
  19. 渡辺周

    渡辺(周)委員 今後、知的財産をめぐる問題というものは政治課題として、とにかく日米交渉であるとか世界の中でもいろいろな形の中で出てくる、そしてまた企業同士においても大変な、ある意味では伝家の宝刀にもなる、しかしある意味では本当に危険な交渉材料ともなり得るであろう。そのような認識の中で、ぜひとも政府としても、国として、日本の重要戦略物質である知的所有権について、これからさまざまな法制度整備はもちろんでありますけれども側面的な支援、あるいは人材育成についても、とにかく国民挙げて、国を挙げて進めていただきたいというふうに思うわけでございます。  今回の法律の個々の問題についても触れなければなりませんので、次にちょっと進むわけでございます。  まず、幾つかございますけれども一つには、出願公開期間の短縮についてという点で、ちょっとお尋ねをしたいと思います。  審査請求期間が大幅に短縮される中で、出願公開までの期間をそのまま据え置くことには、いろいろな関係する方々の意見の中には疑問を感じるという声もあるわけでございます。まさに時は金なり、タイム・イズ・マネーでございまして、とにかく一年という時間は大変に貴重な期間でございます。そんな中で、十八カ月の間、申請された特許についてだれも知り得ることができない、これでは長過ぎるのではないだろうかというような指摘もあるわけでございます。特許庁から先般お話を伺いましたところでは、十八カ月間がいわゆる国際基準、グローバルスタンダードである、我が国だけが調和を欠くと特許の申請人の方の公平性が保てないということでございました。  ただ、今後日本がこれからやっていく中において、将来的には十八カ月より短い期間を各国に働きかけていくように、そしてまた先ほど来お話ししていますような、知的財産立国技術立国とする我が国において、この方が実は国益にかなうのではないだろうかといったような認識を持つわけでありますけれども、その点について、個々の法律論の中でお尋ねをしておきたいと思います。
  20. 伊佐山建志

    伊佐山政府委員 先生指摘のとおり、現行、出願から十八カ月後に公開するという制度をとっておりまして、これはパリ条約の一つのルール、国際的に確立されたルールになっております。したがいまして、内外におきまして共通の公平性を保つという意味で、制度は原則としてこういう形で存置させるのが望ましいかと思います。  ただ、今回の法改正によりまして、出願する者の方が希望する場合におきましては、出願から一年六カ月経過以前でありましても出願公開をするということを認めていただく、そういう法改正を入れていただいております。  つまり、出願した後同じものがコピーされて出されてしまう、あるいは出願されたものと類似のものが世の中に出回り始めるというようなことがあったときに、不要な訴訟を回避するという観点からも、金銭的な補償金請求権というものを出願する者に与える必要があるだろうということもございまして、出願人の権利保護を確保するという観点から、十八カ月前であっても、出願人が希望する場合にはそれを認めるというようなことにさせていただいております。
  21. 渡辺周

    渡辺(周)委員 そのような御意見も承りました。私も伺ってきたわけでございまして、これから取り巻くさまざまな環境の中においては、日本がとにかくイニシアチブをとるときもこれから来るであろうといった中で、ぜひともリーダーシップを発揮していただきたいと思うわけでございます。  それから続けてちょっと、個々の分野におけるところでありますけれども、電子特許図書館です。  今回、このような形で、先月の三十一日ですか、電子特許図書館が開設をした、そして一日一万件のアクセスがあるというふうに聞いているわけであります。この機能拡充ということについて、あるいはインフラ、通信基盤の整備ということについて、中には、企業においては一企業当たり何千万もの大変な負担を余儀なくされているというところもあるように聞いております。こういう中で、一層の努力を期待される。  あるいは、例えばヨーロッパの特許庁のデータベースには世界主要十五カ国の特許が収録されている、米国の国際特許情報センターには世界五十数カ国のデータも収録されている。これから日本も追いつかなければならないわけでありますけれども、その機能拡充あるいは通信基盤の整備という点について、特許庁から今後のお考えを聞いておきたいなというふうに思うわけであります。
  22. 伊佐山建志

    伊佐山政府委員 私どもにおきましても、この三月三十一日から特許図書館を開設いたしまして、内外の情報を提供させていただいております。特に外国の特許情報につきましては、アメリカ特許明細書の過去十年分、六十七万件ほどがその中に入っております。  また、今年度予定いたしております海外の特許情報につきましては、アメリカの情報をさらに三百七十七万件収録する、あるいは今先生指摘のヨーロッパ、EPOの場合だけでも、そのEPOが設立された後の情報を七十六万件、あるいはイギリス、フランス、ドイツ、スイスといったような主要国の特許情報につきましても、百万件前後ずつ収録いたしたいというふうに思っております。またさらには、それ以外の国につきましても、平成十二年度以降に順次拡充してまいりたいというふうに思っております。  また、情報基盤の拡充の御指摘でございますが、私どももその必要性については十分認識いたしておりまして、ただ単にインターネットによりますサービスで十分であるかどうか。特に地方にいらっしゃる方々にとりまして、込んでしまったときに必ずしもすぐにアクセスできないというようなケースが現実の問題として起こっておりますものですから、この辺を重点的に拡充する必要があるだろう。  そういうことで、各地方の通産局九カ所に専用線によります情報提供ということを考えていきたい。それから、各都道府県に知的所有権センターというのが全国四十七カ所ございます。そこにおきましても同じように専用線を導入いたしまして、今年度中にもこういう情報がより迅速にアクセスできるというような形にいたしたいと思っております。  また、大手の企業にありましては、それぞれの部署におきまして独自のデータベースを構築するというようなことをやっております。こういう方々のことをも考慮いたしまして、これまでにも、公報類を初めといたします特許情報、これをCD―ROMのような形でもってマージナルコストで提供するというようなことを通じまして、それぞれの企業内での社内のデータベースの構築を容易にするというようなことをやっていただいておりますけれども、これにつきましても、利便性のさらなる向上といったことに今後努力してまいりたい、こんなふうに思っております。
  23. 渡辺周

    渡辺(周)委員 今、これから拡充、機能強化を図っていくというようなことでございます。そういう意味では、いかに利便性を図るかということをぜひともこれもまた御尽力をいただきたいと思うわけでございます。  今度は、TLOについてもひとつお尋ねをしたいと思うわけです。  実は、TLOについては、昨年の国会で私もこの場で質問をさせていただきました。その後、いろいろな大学で続々と立ち上げられているようでありますけれども、反面、この経済環境の中で、民間企業の側は、TLOを活用した新たな商品開発というようなところにはまだなかなか踏み切れないというのも、先般法律が国会で成立して以来、その認識といいましょうか、ギャップがまだまだあるというふうに聞き及んでおります。  もちろん、昨年八月が法施行でありますから、実施期間が短いのは承知でございますけれども、この制度において、幾つかの課題といいましょうか、問題点というものも明るみになってまいりました。  例えば、国の特許を国立大学のTLOに渡す場合はただであるけれども、私学が設置したTLOの場合は特許料を支払う必要がある、私学側の不満でありますとか、あるいは、なかなか商品化に結びつかない。当初立ち上げをしていく上で、企業に例えば会員制で会員を募ってみても、こういう経済情勢だからなかなか最初のスタートダッシュがうまくいかない。今いろいろな指摘があるわけであります。  そういったいろいろな指摘がある中で、この法が施行されて以来、どのような課題が出てきたか、また、どのような形で国は支援をしてきたかということについて、お尋ねをしておきたいと思います。
  24. 江崎格

    ○江崎政府委員 TLOのお尋ねでございますけれども、今御指摘のように、幾つかの大学で設立の準備が行われ、現に設立をされました。昨年の十二月に四つの大学を中心にスタートをしておりますし、さらに、今年に入りまして四月に二件をスタートするということでございます。  その後どういう課題が出てきたかということでございますけれども、今申し上げましたように、まだTLOがスタートしまして時間が短うございまして、課題を判断するには少し早いかというふうに思っております。ただ、事業の立ち上がり期間におきまして、こうしたTLOが資金的な困難に遭遇するということは十分考えられるわけでございまして、そういうことのために助成金ですとか債務保証、こういったことを準備しておりまして、今後もこれについては最大限の力を注いでいきたいというふうに思っております。  御指摘特許料の免除の問題でございますが、大学における研究成果のうちで特に国に権利が帰属するもの、これを譲り受けてTLOが事業を行うという場合に、法律の認定を受ければ確かに免除措置を受けられるわけでございますけれども、それは扱う権利が国有のものかどうかということの違いでございまして、設立されたTLOが国立大学によって設立されたか、あるいは私学によって設立されたかということの違いはございませんでして、例えば私立大学が国有の特許を扱う場合には同じように免除措置を受けられるということでございます。  ただ、いずれにしても、一般的に言いまして、今の制度のもとでは国に権利が帰属する場合というのは非常にまれでございまして、今の制度のもとでは実は大部分は、国立大学あるいは私立を問わず、個々の研究者に帰属するというケースが相当多くなってきております。そういうことですから、TLOにおきましては、むしろ特許権の免除を受けられずに、必要な対価を払ってこれを取得するということが多いわけでございます。  したがいまして、これについて、先ほど申し上げましたが、資金的な支援をすることが必要であるというふうに思っております。  平成十年度の実績でございますが、二千三百万円の助成措置を講じております。それから今年度でございますが、四億円の助成措置を確保しておりますが、これはまだこれからということでございます。
  25. 渡辺周

    渡辺(周)委員 いずれにしましても、資金集めの問題も含めて、あるいは意識の中にも、特許を取るということよりも論文を書くことの方に、まだ大学の先生方の中にはそちらの方を大事だと思っていらっしゃる方もやはりいらっしゃるわけであります。そんな中で、このせっかくのTLOでございます、これからいろいろな産学連携の中で、今の要望でありますとか問題点、こんな中で、ぜひともよりよいものにしていっていただきたい。  そして、とにかく最初から一貫して申し上げていますような、人材づくり、そして日本知的財産による国家戦略、これを進めていくべくぜひとも支援をお願いしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  26. 古賀正浩

    古賀委員長 大畠章宏君。
  27. 大畠章宏

    ○大畠委員 民主党の大畠でございます。商工委員のメンバーが少し少ないような感じもしますが、私の方から特許問題について質問をさせていただきたいと思います。  先ほど与謝野通産大臣からもお話がございましたが、特許を取り巻く環境については、国際的な、経済戦争といいますか、大競争時代の中において、大変重要な経済競争における環境をつくるもとにもなっておりまして、ここら辺について何点か御質問させていただきます。  先ほど与謝野大臣からもお話がありましたが、日本特許に関する訴訟において、日本裁判所というのはまだまだ不十分な体制にある、したがって、日本に訴えるのじゃなくてアメリカに訴えるような、そういう事態も生まれてきておるという話もございました。この問題は確かに私自身も何人かの関係の方から聞いております。  今回の特許制度そのものの改革については、従来の問題点を改革しようということで努力した経過がうかがわれるわけでありまして、その内容については評価をするところでありますが、この今回の法改正で、今のいわゆる大競争時代における日本企業といいますか、日本産業界の求める十分な体制に至っているという認識にはちょっと同意しかねるところがございます。  最初にその端的なところを、要するにアメリカ日本の間のこの特許戦争といいますか、かなり激しくなってきておりまして、これは与謝野大臣からも先ほどお話があったとおりでありますが、特に日米間の特許にかかわる問題について最初にお伺いしたいと思っているんです。  一つは、先ほど渡辺周さんからもお話がありましたが、サブマリン特許の問題、それからもう一つは、特許裁判所というものをアメリカでつくったという、この二つにちょっと最初に的を絞ってお話を伺いたいと思うんです。  一九八〇年代、いわゆる日本の貿易黒字が大変攻勢をきわめていた時代でありますが、アメリカとしては、何とかしてこれをはね返そうという基本的な考えがあったと思うんです。そして、国家戦略として、特許というものを使って何とか崩せないか、そういうことでさまざまな対策をしていったということを、二週間ぐらい前にNHKで特集をしていましたね。私もたまたま見ましたけれども、あっ、そんな戦略でもって対応してきたのかということで、私自身も改めて特許に関する認識を新たにしたところであります。  アメリカはよく、フェア、オープン、グローバリーと言いますね。しかしながら、実際問題、このサブマリン特許といいますか非公開制度というものを維持するというか、アメリカの行政側としてはやろうとしていますが議会が反対をしてなかなか公開制度に踏み切れないという話がありましたけれども、私は、フェア、オープン、グローバリーというものを日本にどんどん押しつけているアメリカの基本的な政策として、議会が反対をしているからといって、言ってみれば、グローバルスタンダード、グローバルスタンダードと言いながら内部にそういう問題をずっと持続している、問題を持続してしまっているというところに大変大きな問題があると思うんです。  特許庁として、このいわゆるサブマリン特許、いわゆる非公開制度、いわゆる特許を申請した時点で公開しないというものをアメリカ側がいろいろ理屈は言いながらもずっと堅持してしまっているという問題に対して、どういう取り組みをされているのか、まず最初に特許庁お話を伺いたいと思います。
  28. 伊佐山建志

    伊佐山政府委員 先生指摘のとおり、アメリカが主要国の中で唯一公開制度というものを採用していない国でございまして、それにつきましては、二国間、あるいはWIPO、WTOといったようなマルチの国際的な機関の場でも、私ども、早急な是正というものを要求してまいってきているところでございます。  特にサブマリン特許問題の是正のための早期公開制度につきましては、日米間の包括経済協議の場におきましてアメリカ政府の方がその是正方を約束し、九六年までにその実現を図るということになっていたにもかかわらず、それがまだ実現されていないということにつきましては我々も大変重視いたしておりまして、昨年の場合にも、例えばアメリカの第百五議会がその改正法案を廃案にいたしましたその時点で、与謝野大臣からデーリー商務長官、バシェフスキー通商代表あてに、極めて遺憾である、早急に合意の履行というものを図るべしという書簡をお出しいただいております。  それからさらに、米側からは、その問題については日本政府の懸念を自分たちも共有する、この問題については議会の協力も得なければいけないということで、上下両院の院内総務にその旨を送達するということで、そういう措置はとっていただいております。  そういうことがあるからというわけではございませんけれども、この一月に開催されました百六議会におきまして、この部分におきます合意の実現を図るという意味合いもありまして、アメリカ上下両院におきまして関連の法案を提出されておりまして、今それが審議されている最中であります。  そういうことでもございますので、私どもは、一刻も早くこれを議会において成立を見た上で、政府としての約束というものを対外的にきちっとした形でもって果たしていただきたいということを、その実現に至るまでの間は言い続け、要求を続けてまいりたいと思っております。
  29. 大畠章宏

    ○大畠委員 政府の方が約束をした。平成六年の八月十六日には、米国が早期公開制度を導入することなどを約束した合意が交わされている、今のお話だと思うんですが、平成六年に交わされながらなおかつ、もう五年たった今も履行されていない。この問題については私は、もちろん行政といいますか、日本政府もそうでしょうけれども、私ども議会としてもそういう問題に対してはっきりさせなきゃいかぬと思うんですよ。  常にアメリカは、日本のルールは特殊でおかしい、おかしい、日本のルールを直せ、直せといろいろ言いながらも、こういう問題を五年もほってあるということ自体に対して、これは行政府がなかなかやらないかもしらぬけれども、私ども衆議院としても商工委員会としても、そういう問題に対して明確に院の意思として、我々も内部で一生懸命改革するように努力している、しかしアメリカの方でも改革しなさいということを、私は衆議院の商工委員会としても明確に表現して、何らかの形でアメリカの議会に対して是正を求める、そういうことでもやってもらわないと、ちょうど今大臣おられませんけれども、大不況の中で、日本産業界が大変な状況の中で、こんなアンフェアなルールのもとに、製品化すると突然これは昔アメリカ特許なんだといって、特許侵害というので賠償金を求められるわけですよ。いつそういう賠償金を求められるかわからない。相手がどんな特許を持っているかわからないのに、あなたは特許侵害ですと言われても困るんですよ。  だから、まさにアメリカが言うようにオープンだったら、みんなオープンにしてもらいたい。アメリカはこんな特許を持っています、したがってそれを侵害しないようにしてくださいねというならわかりますが、自分のところは隠し玉持っておいて、何かやろうとすると、はい、あなたの製品はアウト。これはまさにアメリカが求めている基本的な姿勢と全く違うものでありますから、私は特に強く、この商工委員会としてもそういう是正に向けて何らかの形で努力というか、行動をしなきゃならないんじゃないかと思うんですね。  大臣が戻ってこられましたけれども、まあ今戻ってきたばかりでありますからあれですが、いわゆるサブマリン特許の問題、私はぜひ通産大臣にも、アメリカに行ったときに、こういうアンフェアな、先ほどのお話によると平成六年の八月十六日にアメリカは早期公開制度を導入することを約束した、合意したと言っているんですが、五年たっても議会等々の反対でなかなかできないというんだけれども、この問題についてはやはり看過できないと思うんですよ。  通産大臣、常に、日本はアンフェアである、日本国内のルールが日本独特で我々はなかなかあなたの国に商品を納められない、日米間の貿易黒字の問題も結局日本のルールがおかしいから公平なルールにしてくれたら我々アメリカの製品が必ず売れるはずだ、だからもっと日本市場をオープンにしなさい、オープンにしなさいと言うんですが、その一方で、自分の国の中にこういうサブマリン特許、要するに、特許を申請した時点で非公開ですよ。それで、特許を申請していつ取得するかどうかというのはまだわからないわけですね。日本で製品化した場合に、突然、いやいやアウト、あなたの製品はアメリカ特許にひっかかっていますというので賠償金を求められるんですね。  こんな制度をずっと置いておくこと自体がおかしいので、大臣、ぜひこの次といいますか、とにかく何かの交渉のときにはこんな問題出してくださいよ。あなたの国はいつもフェアを求めるけれども、あなたの国はこの特許問題についてはアンフェアじゃないか、すぐ是正しなさいと言うぐらいに。大臣、こういう問題についてはぜひ大臣の日米交渉のときには取り上げていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  30. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 日米の間での特許制度の一番大きな違いというのは、我が国が先願主義をとっているのに対して、向こうは先発明主義をとっております。それ自体、世界の中では大変異例な制度をとっているんだろうと私は思います。  今先生が御質問になられましたサブマリン特許でございますが、これは既に日米間で約束ができているわけです。確かにアメリカの行政府は、約束をした以上国会にはそのための法律改正の法案を提出しているようでございますけれども、一向に成立のめどが立たないということは、大変我々にとっては遺憾きわまりないことでございます。  私も、米側の代表と会う機会はことしもしばしばあるだろうと思いますので、先生指摘のように、我々も約束を履行しているわけですから、先方様もやはり約束された合理的な内容のものは早速法改正をして実行していただかないと、それこそフェアでないという気がいたします。
  31. 大畠章宏

    ○大畠委員 私も、アメリカに行く機会があったら、民主党とか共和党の議員にはこの問題を話をしたいなと思っているんですよ。ですから、ぜひ通産大臣としても、そういういわゆるアンフェアなルールについては改善するように、さらに努力をしていただきたいと思います。  それからもう一つ、先ほども特許裁判所の話がありましたが、やはり、今七年ぐらいのものを三年ぐらいにするという審査請求期間もありますが、特許裁判がなかなからちが明かない。  日本裁判所に提訴しても、正直言って私自身も特許は随分、何件ぐらい持っていますか、十件か十五件ぐらいは出した経験がありますが、特許を理解するというのは、やはり弁護士の人は難しいんだと思うんですね。図面をまず読めなきゃなりません。どういうところが特許なのかということも理解しなければなりません。かつ、それが世界特許と比べて何が違うのか、これは非常に複雑でありまして、なかなか大変なんですね。したがって弁理士制度というのができているんだと思うんです。  ところが、その弁理士さんが裁判所に立てない。さっき渡辺周さんからもお話がありました。したがって、もう日本裁判所に訴えても、国際特許裁判というのは大概英語で行われることが多いですから、だからアメリカ裁判所にやった方が早いということなんだと思うんです。  このNHKの報道によると、特許裁判所をつくったのも、迅速化を図ろう、そして諸外国の特許制度にどうやら余りたけていないという企業に対しては非常に揺さぶりをかけて賠償金を取る、そういう意図があるんじゃないかというニュアンスの報道がされていました。今回、一連のさまざまな、おとり捜査とか何かもありました、そういうのも含めて、どうも私は、アメリカの国としての基本的な戦略として、経済戦略の一環としてこの特許制度を使っているんじゃないかというような感じを持つ者の一人なんです。  この特許裁判所についても、今のような、時間がかかる、そして実際の法廷に弁理士が立てない、こういう問題を放置しておいていいのかどうか。これは、日本裁判所がだんだん相手にされなくなって、アメリカとかヨーロッパの裁判所に行く可能性が強いと思うんですが、先ほど周さんからもお話がありましたが、実際、法務省としてこの問題はどういうふうに受けとめているのか、改めてちょっと伺いたいと思うんです。
  32. 房村精一

    ○房村政府委員 特許裁判専門的知識が必要とされるというのは、先生指摘のとおりでございます。日本では、そういう意味で、東京地裁と大阪地裁にそれぞれ特許専門部を置きまして、そこに特許事件に通暁した裁判官を配置する。あわせて、東京地裁、大阪地裁にそれぞれ特許関係の調査官、これは特許庁からおいでいただいておりますが、この方々を配置いたしまして、裁判官と調査官が協力しながらその専門的知識を要する特許裁判処理に当たっているというのが実情でございます。  ただ、そうしますと、東京、大阪以外のところで特許裁判を起こしたいというときに、せっかくある専門部が利用できないという問題点がございますので、先年改正をお願いいたしました民事訴訟法におきまして、特許事件については東京地裁と大阪地裁に競合管轄を認めました。例えば、北海道の当事者が、通常訴訟ですと北海道で起こすわけですが、これを東京地裁に起こせるというような競合管轄の制度を設けまして、全国どこにいても、その気になれば東京、大阪の専門部で裁判を受けられるという体制にいたしました。  裁判が遅いという点でございますが、特許事件というのはどうしても複雑なものですから、通常事件に比べますと時間がかかっております。地裁の一審の通常事件は平均いたしますと十カ月ぐらいで判決が出ているわけでございますが、特許事件になりますと二十二カ月程度ということで、通常事件に比べると相当時間がかかっているのは事実でございます。  これを早く処理するためには、今言ったような裁判所の体制をさらに整備していくということ、それから当事者の問題ですね。  ただいま先生の御指摘にもありましたように、当事者にとっても特許事件というのは専門的知識が要る。そういう専門知識を持った弁護士の方あるいは弁理士の方をふやしていくということが、これもまた同時にされる必要があるだろうと思っております。現実に、東京地裁等に起きております特許事件につきましては、特許専門とする弁護士の方が弁理士の方と協力しながら訴訟の追行に当たっているというのがほとんどの事件でございますが、そういう当事者の充実強化も必要かと思います。  また、訴訟の運営につきましても、特許事件につきましては複雑な事件が多いものですから、なかなか運用がスムーズにいかない面もございます。これも、裁判所と当事者が協力しながらスムーズな運営を図る努力をしていただくことが必要かとは思っております。そういう、それぞれの立場での迅速化、適正な解決を早く得るということのために、協力しながら改善に努めていく必要があろうかとは思っております。  法務省としても、従来からこの問題についてはそういう意識で種々工夫をしてきたところでございますが、さらに今後も適正迅速な解決を得るということのために研究を進めていきたいというぐあいに考えております。
  33. 大畠章宏

    ○大畠委員 今の説明で、そうすると、弁理士の方も法廷に立つことはできるのですか。
  34. 房村精一

    ○房村政府委員 侵害訴訟につきましては、弁理士の方は訴訟代理人にはなれませんが、弁護士の方と一緒に法廷において活動することはできますし、現実にそうされております。
  35. 大畠章宏

    ○大畠委員 今の日本法務省裁判制度もそうですし、特許問題もそうですが、過日、これもテレビ報道ですが、GEと東芝のCTスキャンの開発競争についての報道がありました。  GEは、早く開発をする、開発期間を短縮して早く市場に出すということを重視した。そぎ落とせるものは全部。東芝の方は性能を重視した。やはり性能をある程度高いものにしようということでやったんです。それで、東芝は半年間おくれたわけですよ。GEはその半年間に七十機のCTスキャンを日本国内に売りまくってしまったというような話がありました。そのくらい、半年間でも一カ月でも一週間でも早く製品を投入するというのが勝負の決め手だと。これはGEの会長が、今経済界でも注目されているというんですが、言われていますね。  それに対して、日本特許制度あるいは日本特許裁判問題は、追従することができなくなっているんじゃないですか。産業界はそれだけ熾烈な戦いをやりながら、物をつくる、日本の製品というものを世界の大競争の中で生き抜こうと考えているのにもかかわらず、特許に関する裁判所の体制、あるいは特許庁もそうなんですが、そういう熾烈な戦いを行っている産業界の実態というものを踏まえて、もうちょっと大胆な改革をしていかないと、正直言って、さっきの通産大臣の話にもありましたけれども、もう日本裁判所は相手にしない、特許裁判についてはアメリカへ行くんだ、そういう事態になってしまうと思いますよ。現実産業界といいますか、経済界のそのくらい熾烈な戦いというものに対して、もっと真剣に考えてもらわないといけないと私は思いますね。  通産大臣、時間が大分なくなってきましたけれども、この問題について通産大臣として、いろいろなものもあるでしょうけれども、かなり突っ込んだ形でリーダーシップをとってもらいたいと思いますし、特に、アメリカだけでなくヨーロッパもそうでしょうし、これからアジアというものが非常にいろいろな意味特許というものを通じてねらわれているんだと思うんですね、アジアの新しく立ち上がってくる国々の産業界が。  そういう問題も含めて、私は、日本が、アジア全体の特許あるいは知的所有権というものを、構成する社会の中でもうちょっと踏み込んだリーダーシップをとって、アメリカについてもきちっと対応する、そして日本産業界が必死になってもがいているものをもうちょっと真剣にサポートしていただかないと、何のための日本特許制度か、何のための裁判所なのか、何のための行政なのか、わからなくなるような感じがするのですよ。  ぜひ大臣からそこら辺に関する御所見をお伺いしたいと思うのです。
  36. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 先般、法務委員会で、司法制度改革に関する審議会の法律が一応衆議院の段階では可決しておりまして、恐らく、裁判制度、特に裁判の迅速化等のことは、この司法制度改革の中の重要な一環だろうと思っております。  弁護士の皆様方が法律の大専門家であるということは疑いのないことですが、例えばサービサーに関する法律を我々通しました。これは要するにお金を取り立てる業務をだれがやっていいのかということですが、今までは弁護士しかできなかったのですが、今後はそういうものも、法務省の認可を受ければサービサーという取り立て会社を設立することができるということで、現に多分四社ですか、そういうことになっております。  弁理士特許裁判の話ですけれども弁護士法律専門家ですけれども、実際、特許裁判というのは技術とか発明の内容そのものを審査していかなければならないわけで、相当技術的素養がありませんと実は特許裁判自体を進めるということができないと思っております。  私は、これは個人的な持論でございますけれども、やはり弁理士の方々が、例えば民事訴訟法等をきちんと勉強された方は法廷に立って法廷活動をやっていただいていいんじゃないかと実は思っております。それの方がやはり訴訟当事者にとって利便性が高い。法律のことしかわからない弁護士の方にまず技術のことを理解していただくというのは相当難儀なことでございまして、そういう側面もまた特許裁判をおくらせている。  一方では、日本は恒常的に裁判官不足でございまして、一人の裁判官が何百件という案件を抱えてやっているという実情がございます。そういう意味では裁判官の数の充実ということも、特許にかかわらず、民事、刑事にかかわらず、裁判官の方の数の充実ということもこれからまた必要になってくると思っております。  日本も、アジアに対して範を垂れるような特許制度あるいは知的財産権制度を運営するということが必要な時期に来たと私は思っております。
  37. 大畠章宏

    ○大畠委員 終わります。ありがとうございました。
  38. 古賀正浩

    古賀委員長 吉井英勝君。
  39. 吉井英勝

    ○吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。  きょうは特許法について最初に、早い、強い、広い保護を目指すということで、今回の法律改正に当たってもいわゆるプロパテント政策を進めていくということで法案の提出ということになっているわけであります。  そこで、少し最初に伺っておきたいのは、日本アメリカ出願に伴う審査請求の数、それから、審査官の数が八五年と九五年で見たときにどういうふうになっているのかということ。それから、調査室が出していらっしゃる資料を見ていますと、九七年と九八年でアメリカでは審査官が四百七十二名ふえている。日本の場合は同じ九七年から九八年の一年間でふえた数が十三人ということになりますが、実際に早い保護ということを目指したときに、それに対応する審査能力と体制が現状はどうなっているのか。  この辺のところから伺っていきたいと思います。
  40. 伊佐山建志

    伊佐山政府委員 アメリカ、ヨーロッパ、日本におきます、八五年、九四年の審査官の数と一人当たりの審査処理件数についてお答え申し上げます。  アメリカの場合ですと、審査官数は八五年に千四百七十七人、これが九四年に千九百四十三人になっております。審査官一人当たりの処理件数につきましては、八五年八十二件、九四年八十九件でございます。  欧州特許庁の場合は、審査官数が八五年で四百十一人でございましたところ、九四年が九百五十二人になっておりまして、一人当たりの処理件数は八五年が五十七件、九四年が七十三件でございます。  それに対しまして、我が国の場合は、審査官数は八五年が八百六十五名、九四年が一千六十六名でございまして、一人当たりの審査処理件数は八五年で二百二十件、九四年で二百四十三件でございます。
  41. 吉井英勝

    ○吉井委員 今お聞きした数字を見ても、アメリカの場合でいえば大体八五年から九五年にかけて五割増し近くなっている。日本の場合には二割増しぐらい。ヨーロッパについても審査官の方が二倍を超えている。明らかにこの体制が強化されているというのが特徴じゃないかというふうに思うのです。  アメリカが八〇年代に入ってからプロパテント政策で前進したということの背景には、やはり審査する能力とか体制を強化するということが非常に強められているのではないか。これは、八五年と九八年で見ますと、九七年から九八年にうんとふやしていますから、アメリカでも約二倍近く審査官の方がふえているというわけですね。  先にお答えいただきましたが、審査官一人当たりの処理件数ということで見ても、今お話しいただいた数字から見ると、最近の数字で大体、日本の審査官の方の一人当たり処理件数ということで見ていきますと、アメリカの二・五倍、ヨーロッパの三倍の処理をしていらっしゃる。  まず、現在の日本の審査官の方の処理件数の実情をもう一遍確認しておきたいのですが、アメリカの二・五倍、ヨーロッパの三倍の処理をしていらっしゃる、こういうふうに見ておいていいですね。
  42. 伊佐山建志

    伊佐山政府委員 件数としてはそういう形になろうかと思いますが、先生御案内のとおり、申請された、出願された書類の中にどれだけの審査をすべき項目が入っているかということも実は大変重要な要素になっておりまして、日本の場合には、どちらかというと、発明の数が平均いたしますと六項目ぐらいでございます。それに対しまして、アメリカあるいはヨーロッパの場合には十四項目とか十五項目というようなことがございますので、処理件数だけですと先生指摘のようになりますけれども、実際に時間をかけるものになりますと、それだけではなかなか判断できないような要素もあることも御理解いただければと思います。
  43. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、そういう点で、伺っておりますのは項目の数というよりも、まず実出願件数という点でいえば、日本の実出願件数そのものは結構多いわけですね。だけれども今、審査請求件数ということで見て、それに対する数字で言っておられるわけですから、それでいいますと、アメリカの二・五倍、ヨーロッパの三倍の処理をしていることになることは、お認めにもなったようにこれは事実なんですから、そのときに、審査官一人当たりの処理件数がふえているということは、これは出願一件当たりの審査官のいわばサービス量の低下ということになりますか。  私は、審査官の方に専門分野の学習とか研修とか学会やシンポジウムに出席する機会をうんと保障していくことが、本当の意味で強い保護ということにつながっていくと思うのですが、そういう機会が、とにかく抱える案件がふえるということは物理的に時間が限られますから、減少するわけですね。だから、この点では、早い、強い、広い保護ということに今の現状というものは反するものじゃないか。  これは根本的な検討を要するところじゃないかと私は思うのですが、この点はどうなんですか。
  44. 伊佐山建志

    伊佐山政府委員 先生指摘のように、全体として見た場合に処理件数そのものは相当膨大な件数になっておりますので、これを十分な時間を持って対応できるかという点については、必ずしも今の体制のままでは十分でないということもございまして、御案内のとおりいろいろな、審査官の数をふやしていただくにとどまりませんで、いわゆるペーパーレス計画等の総合的な政策を進めさせていただくことによりまして、何とかこれをしのいでいるというところでございます。
  45. 吉井英勝

    ○吉井委員 長官よく御存じのように、ペーパーレスといっても、ペーパーレスによってできることというのは、パソコンを使っての直接申請とかあるいはフロッピーで申請できるということであって、特許庁の電子図書館での公開をするための作業というのは確かにそれで大分簡素化されるかと思うのです。しかし、審査案件の審査そのものは審査官の方が行うわけですから、それはペーパーレス化ということによって解決できるものじゃないということは、きちっと見ておく必要があると思うのです。  そこで大臣、早い、強い、広い保護、これを目指すからには、その体制としては、審査官の方が現実に一人当たりアメリカの二・五倍、ヨーロッパの三倍というふうな余りにも膨大な処理量を抱えますと、これは言葉は悪いけれども、手抜き審査になってしまうか、水増し認定になるか、あるいはその後のトラブルの増加につながりかねない要素を持っているということは、だれもが認めざるを得ないところだというふうに思うわけです。  だから、強い保護プロパテント政策ということを考えるからには、できる限りの増員の努力というよりも、やはり実際に何人の人が必要なのかという根拠のある数字を明らかにして、その実現を目指していくということを真剣に取り組まなかったら、強い保護ということにはつながらない、政策の実現につながらないと私は思うのですね。  この点は、大臣として、一般的なできる限りの努力ということにとどまらないで、では一体何人必要か、それを目指してどうするんだということ、これをひとつお聞かせいただきたいというふうに思います。
  46. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 特許庁の増員の問題でございますけれども、私ども特許庁の審査官を中心とした方の増員は必要だと思っておりまして、毎年相当、通産省の中では優先的な定員増をお願いしております。  ただ、これは全体の政府の総定員法との関係もございますので、査定はなかなか毎年厳しいということはおわかりいただけると思いますが、こういう時代になりまして知的財産権保護というのは、先生指摘のように、強いばかりじゃだめで早いとかそういうほかの要件もあるのだよと、それはそのとおりでございます。それと同時に、やはり特許審査というのはただ人をふやすだけではだめで、ある一定のレベル以上の方が審査官になっていただくというようなことも必要なわけでございます。  そういう意味で、万般、国会の議員の皆様方でこういうことを理解されている方のお力もおかりしながら、特許庁の内容の充実を図っていくということが我々の仕事だろうと思っております。
  47. 吉井英勝

    ○吉井委員 大臣も努力したい、しかしなかなか総定員その他の要因があってと、そういうところなんでしょうが、しかし、アメリカがやはり八〇年代以降進んだとかその議論というのは、本当に私は、八〇年代だけじゃなくて九七年から九八年にかけて、調査室の方で資料をまとめていただいておりますが、二千百七十八人から二千六百五十人へ、一年間に四百七十二人の審査官をふやしているわけですね。同じときに日本はどうか、日本は十三人なんですね。  アメリカに負けちゃならないとかいろいろ言っていて、言うからにはやはりこの分野で本当にその体制を強める、私は大臣のおっしゃった後段は賛成なんです。一定のレベル以上ということをおっしゃった。そのためには、研修の機会とか、かなり時間的余裕も上げて自分でしっかり研究もされる、シンポジウムに出られるとかあるいは国際学会へも行かれるとか、やはりそういうことを保障しないと本当に早い、強い、広い保護ということにはなっていきませんから、私はその点特に強化されるように重ねて申し上げておきたいと思います。  次に、外注の拡大の話です。ペーパーレス化とか、審査経験のあるOBの活用とか、これは実はレクチャーのときにお聞きしておりましたが、大体年間七十億円ぐらいの外注費があると思うのですが、これは約一千人分ぐらいの人件費に当たるわけですね。そうすると、何をどこに外注するのかとか、外注のコストは幾らかということも問題になってこようかと思うのです。これについて、守秘義務の問題についてはほかの方の質問等でもありましたので、重ならないということでいえば、私はそういうことも伺っておきたいと思います。
  48. 伊佐山建志

    伊佐山政府委員 先生指摘のとおり、私どもも、平成二年に工業所有権に関する手続等の特例に関する法律というものをつくっていただきまして、一定のタイプの業務につきましては外注することも可能にする制度をつくっていただいたもとで、現実のところ、工業所有権協力センターという財団法人に幾つかの業務を外注させていただいております。  審査官業務のうちで、必ずしも審査官が行わなくても定型的な業務ということで第三者にお願いできるようなものを厳選いたしておりまして、具体的には、先行技術の検索キーでございますFタームの付与、あるいは先行技術に関する調査、それから出願書類への国際特許分類の付与を行う分類付与業務、こういうものを外注いたしております。  それらにつきましては、平成十年度におきまして、例えばFターム付与は九十七万テーマにつきまして二十六億円の予算を使わせていただいております。サーチの外注につきましては十二万件、六十四億円の予算をいただいてやっております。それから分類付与につきましては三万件で五億円の予算をいただいて、こういう業務を外注いたしたところでございます。
  49. 吉井英勝

    ○吉井委員 そうすると、全部合わせますと七十億どころじゃなくて、まあ九十五億ほどですか、かなりの外注だと思うのですが、私は、その外注の中で、きょうは時間がありませんから残念ながらお聞きしたいところでさらに触れられないのですが、この出願料、審査請求料のいわばピンはねという表現がいいかどうかは別として、そういう問題とか、丸投げ問題とか、そのセンターから別なところへ丸投げですね、やはり安易な外注については検討し直すべきじゃないか。  分類付与の外注といいますが、公正中立、専門的な能力なしにやれるのか、少なくともそこについての検討は必要だと思います。検討されるかどうかだけ、一言伺っておきたいと思います。
  50. 伊佐山建志

    伊佐山政府委員 私ども、先ほど申しましたように、平成二年の工業所有権に関する手続等の特例に関する法律に基づきまして、客観的な手続によりまして資格のある者にこういう業務を外注することができるということでやっておりまして、現行は工業所有権協力センターにお願いいたしているところでございますが、将来にわたってここだけに依存するのか、ほかのところに依存するのか、この辺については厳正な法律運用を進める中で考えていきたいと思っております。
  51. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、そのセンター経由で事実上の丸投げとか、いろいろな問題について残念ながら時間がないからきょうは触れられないけれども、まあ、厳正なということをおっしゃったけれども、本当に厳正な検討が必要だと思います。それを指摘して、次の問題に行きたいと思います。  プロパテント政策で言われてきましたのは、要するに、新しい産業を起こすとか、その活性化とかいうことが言われてきました。要するに環境整備の問題なんですが、ただ、この環境整備の基本というのは大学、国立研究所等の基礎研究をもっと重視することが大事だということが、実は報告書が出ておりまして、科学技術基本計画のフォローアップについての中間取りまとめというのが、科学技術会議政策委員会から、せんだって四月二十二日に出されました。その中では、「基礎研究の成果は国家の広範な活動の基盤をなし世界人類知的資産の拡充に貢献するものであるとともに、時として全く新しい技術体系の出現をもたらす無限の資源である」との考え方のもとに、そこへもっと力を入れなければいかぬ、これは科学技術会議の報告でもあるわけです。  実は、昨年の三月に私は科学委員会の方で紹介したのですが、通産省の大阪工業技術研究所の炭素繊維の発明は、これは非常になかなかのものでありました。ところが、せっかくの成果を上げたのだけれども、これはPAN系炭素繊維の開発に成功したのですけれども、一九六〇年から六七年までの八年間で経常研究費が総額二千万円、年々それは本当にわずかな経常研究の中で成果が上がって、成果が上がるとプロジェクト研究費がどかんとつくというものであったわけなんです。これは科学技術庁長官賞も得たような成果なんですけれども。  つまり、最近のやり方というのは、経常研究費とか基礎研究費は非常に軽く見られて、成果があったらどかんとつける。そういうやり方では必ずしもうまくいかないんだということが今科学技術会議の方からも中間報告で出ておりますから、私は、そこのところへもっと目を向ける必要があるというふうに思います。  なお、科学技術白書で見ましても、研究費の政府負担割合を見ますと、九六年度で、日本は二一・二%、フランスは四三・二、イギリスは三三・三、ドイツは三七・一、アメリカは三三・六と、いずれも一・五倍から二倍を超えるほど、研究費の中で政府負担割合は非常に高いんですね。ところが、日本は低い。  同時に、この白書や総務庁の調査にありますが、九〇年から九一年のちょっと古いデータしか海外との比較ができないんですけれども、大学や国立研究所での基礎研究費について見たときに、日本は一一・五%、ドイツは二一・〇、フランスは二〇・三、アメリカは一四・九と、やはりこの面でも一・五倍から二倍、欧米諸国は基礎研究に手厚くしているんですね。  だから、成果の上がりそうなものにだけお金をつけて、それを早く特許化してと、そういう短兵急なやり方ではやはり長期的にはうまくいかないんだというのが指摘でもありますから、最後に私はこの点で大臣に伺っておきたいんですが、大畠委員なんかともあのとき一緒だったかな、別の委員会だったかな、アメリカに行ったときに下院の科学技術委員会で、センセンブレナーさんが委員長をやっているところで、国家科学政策の検討の中で最近指摘していることなんですが、やはり基礎研究に特別の高いプライオリティーを連邦財政の中で与えるべきだ、こういう指摘があるんですね。  私は、本当にプロパテント政策を進めることをお考えになったときに、やはり環境整備という点では、今日本が弱いこの分野にうんと力を入れる、政府としてそのことに全力を挙げるというその姿勢を示していただくことが大事じゃないか。姿勢だけじゃなくて実際に予算をつけなきゃいけませんが、基礎研究をもっと充実することについての大臣の決意だけ伺って、時間が参りましたので終わりにしたいと思います。
  52. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 基礎研究分野先生指摘のように大変重要だと思いますが、日本の予算が単年度主義であるということも一つの壁になっておりますし、基礎研究をやっていると、そんなものをやって何の役に立つのかというような考え方で予算が抑制される場合もあります。  ただ、私は、技術のブレークスルーというのは、そういう地道な基礎研究の積み重ねが、ある日一つのブレークスルーを起こすということで、こういう連続したカーブとして技術の水準が上がっていくのではなくて、やはり技術というのは、あるところまで基礎研究が行われて、そこで階段状に不連続曲線で進歩していくのだろうと私は個人的には思っております。  私ども科学技術基本計画などを立てて、何とか予算をふやそうということを国会議員としても随分やってまいりました。基礎研究重要性は、十分かどうかはわかりませんが、理解をしているつもりでございます。  今後もやはり基礎研究分野の予算確保、人員確保、それから施設の整備、こういうことには、通産省のみならずあらゆる分野、例えば大学、他省の研究所等々で行っている基礎研究は、日本の将来の豊かさを確保するための重要な、かつ地道な研究であって、とかく、何のためにそんなむだなことをやっているんだとか、あるいは一年ごとに何の成果が上がったんだ、紙に書いてこいというようなことで、むだな紙の山になるというようなことが単年度主義の欠陥でございますので、そういうことを十分財政当局にもわかっていただく必要があるのだろうと思っております。
  53. 吉井英勝

    ○吉井委員 終わります。
  54. 古賀正浩

    古賀委員長 大口善徳君。
  55. 大口善徳

    ○大口委員 明改の大口でございます。  私の方からは、まずバイオの問題について。今、日本においてこのバイオテクノロジーの問題は特許戦略も含めまして極めて重要である、こう思うわけです。  それで、特にゲノムの塩基配列解析については、当初、アメリカ、イギリスは二〇〇三年に詳細なシークエンスを完成する、こういうことであったわけですが、それを二〇〇〇年の春までにヒトゲノムのドラフトの九〇%を作成するということで、このゲノム解析がすごく進んでいるわけです。こういう状況について、非常に危機意識を日本研究家も持っております。  と申しますのは、遺伝子というのは数が有限で、かつ特許化が可能なことから、遺伝子を押さえることはバイオの研究開発それから事業化の両面で競争力に強く影響して、世界じゅうで遺伝子の陣取り合戦の様相を呈している。限りある遺伝子資源に対する戦略というのが非常に大事になってくるわけでございます。  そういう中で、財団法人かずさDNA研究所所長の大石さんを初め、これは一九九八年四月七日に「日本のゲノム解析総合戦略を考える」という緊急提言を出されておって、その中で非常にショッキングな部分があります。  つまり、ゲノム研究のおくれの代償は高価なものとなろう。外国に特許の独占を許したら、将来、国民医療費の支払い、省エネ・低環境負荷プロセス技術環境浄化技術技術料などほとんどが外国への特許料支払いになる可能性もある。現在、既に、日本でつくられている主要な医薬品の中には売り上げの約二割が外国への特許料として支払われているものもある。そういうことで、逆に、総合的国家戦略のもとにゲノム解析が進められるならば、日本独自の産業基盤技術の開発が行われ、新産業の創造、雇用創出、医療費の低下、環境の一層の改善に結びつく可能性が高い。こういうことでございます。  そういう点で、日本がバイオ戦略がおくれているということもあって、この一月に、バイオ創造に向けた方針というのを関係五省庁でまとめられたということです。また、通産省においても、二十一世紀のバイオ産業立国懇談会ということで報告書を昨年の十月二十二日にまとめられておるわけでございますが、大臣において、今後のバイオに関する国家戦略について見解をお伺いしたいと思います。
  56. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 三十億の塩基を読んでいくわけですから、相当手間も暇もかかるわけですが、アメリカはそれをやっているわけでございます。これは日本でも方々でやっておりますけれどもアメリカには相当立ちおくれるということは先生指摘のとおり。  あわせまして、ある特定の遺伝子がこういう働きを持っているということを見つけますと、他の国ではそれを特許を取ろうといたします。今のところ、そんなものは特許の対象にならないということを主張しているわけですが、やはりそういう主張をしているだけでは多分間に合わないはずで、やはりみずからが、人のゲノムであれ、他の植物のゲノムであれ、日本人がどんどん読めるような研究設備を私は持つべきだろうと思っております。  遺伝子を読むシーケンサーも相当値段が安くなってきましたし、何も超専門家でなくともその機械を動かせるということで、物量を投ずればゲノムは読める、基礎的なデータは収集できるということですから、この分野にはやはり惜しみなくお金をつぎ込んでいきませんと、我々が持っている遺伝子、DNAが特許の対象になって、それがお金になるということを放置しておく、そんなことはないはずで、やはりこの分野は、いろいろな、医療、食糧その他、非常に大きく貢献する可能性のある分野ですから、それこそまさにどんなにお金をかけても、私個人は、どこかで年次を区切ってばたばたと全部読んでしまうというのは本来日本が得意なところじゃないかなと実は思っているわけです。
  57. 大口善徳

    ○大口委員 そういう点で、かなり財政において投入をしていかなきゃいけないと思うのですね。ところが、バイオについての予算がアメリカに比べたら十分の一だとか、あるいはゲノムに関しても四分の一とか、こういうような大変おくれた状態であるので、ここは大臣、しっかりと予算要求におきましても推進をしていただきたい、こう思っております。  次に科学技術庁にお伺いしますが、そういう点で、欧米におけるゲノム科学研究取り組み状況、それから、今も指摘しましたように、日本のゲノム研究が非常におくれている。しかしながら、挽回できないものか。特に、日本にはいろいろ関連技術にしても非常に優秀なものもありますし、イネのゲノムについては集積もございますし、日本が挽回し、また日本の特色を生かしていくことによって、このゲノム研究で欧米にしっかり対抗していかなきゃいけないと思うのです。そういう戦略も含めてお伺いしたいと思います。
  58. 池田要

    ○池田政府委員 欧米におきますゲノム科学研究取り組みについてのお尋ねがございました。  欧米各国、中でも米、英でございますけれども、近年、ゲノム科学研究につきましては特に重要な研究分野として位置づけておりまして、重点的な取り組みを行っております。  米国におきましては、国家の戦略といたしまして、ライフサイエンスを行政府、議会ともに二十一世紀科学技術であるとして位置づけておりまして、特にその中でもゲノム研究を重視しております。世界でも最も厚い研究者層を背景にいたしまして、ゲノム大量塩基配列の解析、これのみならず、それらの解析結果をもとにして行います遺伝子機能の解明でございますとか、いわゆるポストゲノムの研究におきましても、世界の最高水準の科学的成果を上げようとしているところと認識してございます。また、企業におきましても、各種ベンチャーによります遺伝子特許の獲得競争を中心としまして、戦略的な取り組みを行っているというふうに承知しております。  また、イギリスでございますけれども、高い基礎科学水準を背景にいたしまして、質的にも世界水準のゲノム研究を展開してございます。特に、こうした基礎科学研究の基盤としての大量な塩基配列の解析、これを重視していると承知してございます。  いずれにしましても、この主要各国はいずれも、ゲノム研究を将来のすべてのライフサイエンス分野研究、応用の基盤となる重要な研究領域と認識して、独自の戦略によって国際競争の主導権をとるといったことで取り組んでいるというふうに承知しております。  日本取り組みについてのお尋ねがございました。  ゲノム科学につきましては、平成九年の八月でございますけれども科学技術会議の議を経まして内閣総理大臣が決定いたしましたライフサイエンスに関する研究開発基本計画がございます。この中に、ゲノム科学研究につきましては国として取り組むべき最も重要な研究開発領域であるとしているところでございます。  また、先ほど通産大臣からも御紹介がございましたけれども、ことしの一月には、関係五省庁大臣の申し合わせによりまして、バイオテクノロジー産業の創造に向けた基本方針、これにおきましても、ゲノム研究の加速的促進に向けまして関係省庁が一丸となって取り組むこととしております。  こうしたゲノム科学につきまして、我が国としまして具体的かつ強力に推進してまいりますために、科学技術会議ではゲノム科学委員会というものを設置しております。昨年の六月には、この委員会におきまして、我が国のこれまでの研究の特色、世界に先駆けることを目指しました我が国独自のゲノム科学戦略といたしまして、「ゲノム科学に関する研究開発についての長期的な考え方」というものを決定したところでございます。  この戦略におきましては、我が国として戦略的に取り組むべき重要な研究開発領域としまして、先ほど先生からも御紹介がございましたけれども我が国の特色を生かせるイネ、それからヒトモデル動物のゲノム構造解析、それからこれに加えまして、いわゆるポストゲノム時代に備えまして、ゲノム、遺伝子、たんぱく質等の機能を体系的に解析するようなゲノム機能の解析、それから、ゲノムの構造と機能の関係を情報科学観点から解明、応用しようとするゲノム情報科学、それに、新たな解析技術のブレークスルーによって次世代の全く新たな科学的展開を引き起こすための次世代解析技術開発、こうした推進を定めたところでございます。  現在、このゲノム科学委員会の指導のもとに、関係省庁、通産省それから私ども科学技術庁、文部省、厚生省、農水省でございますけれども、連携を図りまして、ゲノム科学関連研究を体系的に推進しているところでございます。  なおちなみに、平成十一年度の予算におきましては、関係省庁の総額を合わせますと前年度比約三四%ぐらい増になりますけれども、約二百七十億円という額の研究開発費を投入して取り組んでいるところでございます。
  59. 大口善徳

    ○大口委員 そしてまた特許についても、我が国の遺伝子特許出願数というのが千七百四十五件、そのうち外国から出願が千六十九件、こういうふうになっておるわけですね。そういう点で、この遺伝子工学分野における我が国と欧米との特許に見る格差についてどう考えているのか、長官にお伺いしたいと思います。
  60. 伊佐山建志

    伊佐山政府委員 先生指摘のとおりの実態でございますが、若干詳し目に申し上げますと、一九七一年から九八年八月までに公開されました特許出願の統計を見ますと、全分野の平均では外国人によります出願割合というのは八%未満でございますが、遺伝子工学分野だけとってみますと五四%で、欧米が中心となっております。  それから、出願人の内訳を見ますと、大学、研究機関、ベンチャーといったようなところの占める割合というのが、日本人出願人全体では一四%でございますけれども日本出願されました外国人出願の中を拝見いたしますと約半分がそういう方々だということでありまして、出願におきます日本と欧米との違いというものがかなり明瞭に出ているかと思っております。
  61. 大口善徳

    ○大口委員 そして、今危惧をしておりますところはアメリカの動きでありまして、遺伝子断片、遺伝子の配列、これをESTと言いますが、これについて、日本の場合は、あるいはヨーロッパの場合においても、遺伝子配列に加えて産業上の利用性というものを解明したことが特許を認める要件になっておるわけですが、アメリカの場合、ただ単に遺伝子の断片の発明だけを出願し、遺伝子の機能は解明されないものについてもこれを認めようとする動きもあります。  こうなってきますと、それが特許が認められるということになってきますとこれは大変なことでありまして、日米欧の三極の議論もございましょう。こういう権利の付与の要件の緩和、アメリカにおける要件の緩和についてどういうふうに日本として対応するのか、ヨーロッパと連携をとってやらなきゃいけないとも思うのですが、いかがでございますか。
  62. 伊佐山建志

    伊佐山政府委員 先生指摘のように、機能が、構造はともかくといたしまして機能が明らかでないような遺伝子断片に特許が付与されるという形になりますと、その後の研究開発でありますとか、あるいは関連する産業の発展に悪影響を及ぼすのではないかというのが、私どもそれからヨーロッパ、アメリカの中でもそういう見解を持っている人がいるというふうに理解いたしております。  御案内のとおり、昨年十月にアメリカが、遺伝子断片、ESTの出願に対しまして特許を付与いたしました。その際、私どもそれからヨーロッパ両特許庁におきましては、若干権利の付与の仕方に問題があるのではないかということで疑問を提起いたしまして、昨年の十一月に、私ども提案によりまして日米欧の三極特許庁間でESTの特許性について比較研究をしようではないかという提案を行いまして、それが合意されました。その結果、現在三つの特許庁の間で意見交換を行っている最中でございます。  昨年の末からことしにかけまして何度か、日本特許庁の方から質問書をつくりまして、日本、ヨーロッパの方にそれへの回答をお願いし、それが今ほぼ集まりつつあるところでありまして、五月に三極の特許庁専門家が集まりましてそれぞれの比較をする。望むらくは、今後のある種の方向づけ、特許というものを考えた場合にどういう要件を必要とするかというようなことについて大まかな方向づけができたらというところで、議論を重ねている最中でございます。
  63. 大口善徳

    ○大口委員 次に、今回の法案に関連してお伺いしたいと思うんです。  今までも同僚議員からいろいろ挙げられておりますが、NHKで最近「特許世界を制覇せよ」、こういう番組がございました。それこそ、アメリカは貿易赤字に苦しんでいて、一九八三年の九月に、レーガン大統領が、コンピューターメーカーのヒューレット・パッカード社の会長だったジョン・ヤング氏に議長になってもらって産業競争力委員会というものが発足して、そしてその中でいろいろと検討された結果、ヤング・リポートという形で、アメリカというのは今まで国内ばかりに目を向けていて、外国の競争相手がアメリカの発明を取り入れて大きな利益を上げていることに余りにも関心を払っていなかったということで、私たちはそれを直ちにやめさせる必要がある、またそうしないとアメリカ企業研究開発に投資をしない、投資をしても回収できない、こういう趣旨のことを発言しているわけであります。  そして、外国の企業による技術の模倣あるいは侵害を防ぐために、知的財産権保護の一層の強化ということを国家戦略としてやってきたわけであります。いわゆるプロパテント政策を実施した。  日本日本版のプロパテント政策というものを策定し、昨年そしてことしと法案が改正されてきた。早く、強く、広い権利保護、そしてまたパテントに対する意識のレベルアップ、そしてまた世界共通特許へ向けた一つ戦略というものを持っているわけでございます。  日銀の国際収支統計月報の中で九六年の技術輸出に関するものを見ますと、日本は輸出が七千二百五十七億、輸入が一兆六百八十四億。それに対してアメリカは、輸出が三兆二千六百十二億、そして輸入が七千九百六十六億。アメリカは大きな輸出超過であるのに対して、日本はかなりの輸入超過、八六年から九五年の十年間をとってみましても、技術貿易収支については日本は四・一兆円の赤字、アメリカは十七・五兆円の黒字、こうなっているわけです。  こういう現状も踏まえて、二十一世紀における特許戦略についてお伺いしたいと思います。
  64. 伊佐山建志

    伊佐山政府委員 先生指摘のように、私ども科学技術創造立国という国是を実現するためにも、特に今御指摘のありましたような技術貿易の実態というものを、少しでも日本にとって誇れるような数字を実現することこそが重要だという思いで、各種の政策を進めているところでございます。  具体的には、日本版のプロパテント政策といたしまして、今も御指摘ございましたように、まずは日本特許を初めといたします知的財産権制度というものが米欧と比べまして十分同じような制度になっていること、同じ土俵にしていただくということが何よりも大事でございまして、昨年、ことしと二度にわたって大幅な制度改革をお願いし、実現をさせるべく御尽力いただいているところを私ども大変評価しているわけでございます。それをさらに日本がリードできるような状況に持っていきたいというのがまず第一でございます。  それから第二は、やはり先生指摘のとおり、一つ研究開発を権利化するそのプロセスというものが今ですと各国でそれぞれのルールに従って権利化するという形になっておりますのは、ほかの分野と比べましてまだまだ改善の余地があるのではないか。私どもで申します世界特許という制度をもっと積極的に考えていく必要があるのではないかということで、現実の問題といたしまして、日本アメリカ、ヨーロッパが世界特許の約九割を占めておるという現実を踏まえまして、まずはこの三極間で特許制度のハーモナイゼーション、特許運用を含めましてのハーモナイゼーションというものを進めることによってそういうことを実現していこうではないか。  それからさらには、アジア等の発展途上国がまだ必ずしも十分な知的財産権制度というものを構築しておりませんので、そういう面におきましては、私どもの経験等を供与する。制度的な問題で私どもが知恵を出せるようなものについては積極的に支援するという形で、世界全体の知的財産権をめぐる土俵というものをさらに私どもにとって進めやすい環境にしていく。  それから三つ目は、アメリカ、ヨーロッパと比べまして日本特許等技術をめぐる市場というものが必ずしも十分にできていないということで、特許市場といったようなものをつくるべく、それぞれ関係の方々の御支援を得ながら進めていくということが我々のとりあえずの日本版のプロパテント政策ではないかということで、進めているところでございます。
  65. 大口善徳

    ○大口委員 その一環として、日本世界に誇るというように特許庁から説明を受けております特許戦略の中で、ユーザーにとって重要な政策であるペーパーレス計画についてお伺いしたいと思います。  ペーパーレス計画については着々と、これは昭和五十九年から開始され、もう十五年を経過しているわけですけれども特許、実用新案の出願、審査、登録、これについて達成をし、平成二年に世界初の電子出願受け付けをやった。そして二〇〇〇年一月には、意匠、商標の査定の不服審判についてのオンライン化をやる、そういうことなわけでありまして、一つの山を越えたとも言われております。  平成十一年度について言えば、特別会計九百九十三億のうちの三百四十四億がこのペーパーレス計画の費用として使われているわけです。特別会計のうち三分の一がペーパーレス、そして三分の一が人件費、三分の一がその他、そういうふうにも特許庁に説明を受けているわけですけれども、このペーパーレス計画の今後の見通し、そしてどれぐらい今後費用がかかってくるのか、ここら辺についてお伺いしたいと思います。
  66. 伊佐山建志

    伊佐山政府委員 今先生指摘のとおり、一九八四年以来のペーパーレス計画によりまして、必ずしも役所に来なくとも権利取得するという手続が実現しているわけでありまして、我々といたしましては、大変画期的な段階に至っている。それを諸外国も十分認識いたしておりまして、アメリカを初めといたしまして、ほかの国々におきましても、日本のようなペーパーレス計画というものがやはり一つの不可欠な方向だろうという評価をいただいているわけであります。  ただ、今後私どもといたしまして、今先生指摘のような、予定されております来年一月以降の意匠あるいは商標といったようなところについてのペーパーレス化のみならず、検索システムについての使い勝手というものをもう少しよくしてくれないかというようなこともございますし、インターネット出願というのもいずれ考えなきゃいけないということもございますので、まだ途上にあるという認識でございます。  今後どれだけの予算を必要とするかということにつきましては、私ども特別会計をいただいておりますものですから、収支相償の原則にのっとりまして、大体の見通しでこのくらいの収入を見越せるということを前提にしながらさらなる電子化、ペーパーレス化というものを進めていかなきゃいけないということでございますので、きちっとした数字を今手元に持っているわけではございません。
  67. 大口善徳

    ○大口委員 特別会計ということですから財源は確保されているわけですけれども、特別会計の財源を確保して、この特許行政についてどんどん、そういうインターネットの出願も含めたものをやっていこうということ自体私も大いに賛成なんです。ただ、そのために、費用について一つの計画的なものがないと、それこそこれは国民の税金ですので、そういう見通しについてきちっとした答弁はなかったわけですけれども、きちっとこれは、どれぐらいかかっていくのかということ、もう十五年もたっているわけですから見通しをやはり立てるべきじゃないかな、私はこう思うわけです。そのことについてが一点。  そして、今回の改正によって特許料そして審査請求料が減免されたわけでありますけれども、剰余金といいますか、これが十一年度五百二十二億ということで、かなりの金額でございます。ですから、もっと引き下げたらどうだ。九八年、九九年、六十億ぐらい削減されているわけですが、もっと引き下げたらどうか、こういう意見もございます。  そこで大臣に、今言いましたように、特許庁長官の答弁ではちょっと私は、費用に対する見通しとしては余りにも甘いんじゃないか、もう少しきちっとしたものを出すべきじゃないかと思うとともに、特許料そして審査請求料というものをもう少し下げるべきじゃないか、こういう意見も出ているわけですから、その二点について大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  68. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 特許特別会計の平成十一年度予算におきましては、年度末の剰余金が約五百二十億円と見込まれております。しかしながら、これは過去において剰余金の蓄積がなされたことによるものでございまして、平成十一年度単年度の収支を見ると、ペーパーレス計画実施のための歳出の増などにより、歳出見込みが歳入見込みを上回っております。加えまして、特許関連料金について、昨年と今回の二カ年の料金改定により、年間約六十億円の歳入減となっているところであります。今後、その累積的影響を見守っていくことも必要であります。  こうした状況を踏まえつつ、特許関係料金については、今後とも中長期的な観点から、出願等の動向等を勘案しつつ、健全かつ効率的な特別会計の運営を図るべく十分な注意を払ってまいりたいと考えております。
  69. 大口善徳

    ○大口委員 あと大臣、ペーパーレス計画の関連もあって、費用の見通しについてやはり打ち出した方がいいんじゃないかということも質問したのですが。それはもう長官が答えているのでありますけれども、どうも不十分だということで。
  70. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 ペーパーレス計画というのは非常に事務的には能率のいいことなんですが、高いんじゃないかという声ももちろん聞くわけです。  ペーパーレス計画自体は、出願人や特許庁等に対し次のとおり多面的な便益をもたらすものでございまして、極めて重要な特許政策の柱の一つとなっております。  まず第一に、事務所等にいながらパソコンを通じて簡便に出願ができるオンライン電子出願を実現することで、ユーザーの利便性が向上しております。第二に、コンピューターを利用した先行技術調査及び事務処理の効率化により、審査処理期間の短縮に寄与しております。第三に、公報情報の電子化を実現することにより、特許情報の普及が促進をされます。  今後の目標といたしましては、いまだペーパーレス化が図られていない意匠、商標、審判及び国際出願の一部の手続についても、特許や実用新案登録出願と同様、パソコンによる出願や書類閲覧を可能とするペーパーレス化を平成十二年一月より実施する予定であります。  平成十一年度にはペーパーレス関連予算として三百四十四億円の計上を認めていただいたところであり、特許庁といたしましては、今後とも庁内外のニーズにこたえつつ、二十一世紀の情報化社会に適応するよう、機能の向上、所要のメンテナンス等、ペーパーレスシステムの一層の拡充に積極的に取り組んでまいる所存であります。
  71. 大口善徳

    ○大口委員 大臣、後で議事録を見ていただければと思います。大臣の答弁が必要であったのかということがわかりますから。  次に、司法の空洞化について、今までいろいろ議論がございました。その中で、日本と欧米の企業特許訴訟において、外国で争っているのが九三%、日本が七%、こういうようなことでもありまして、相当司法の空洞化というのが進行している。平成十年度においても、審理期間が二十五・七カ月ということで、アメリカの場合は大体一年、特に輸入品に関するものはITCでもって一年以内に結論を出しているわけでございますので、そういう点で、このままいきますと大変なことになる、こう思うわけでございます。  この点については、裁判所はきょうは出てきておりませんので、いろいろな体制は組んでいただくということでなきゃいけない、こう思いますけれども、特に特許庁として、裁判の期間の短縮について連携を強化して迅速にしていくということをやはりしっかりやっていただきたいな、こういうふうに思っております。それは私の意見としてとどめておきます。  次に、ベンチャー企業等の中小企業育成に向けて、これもまたプロパテント政策における中小企業に対する施策はどういうふうに考えておられるのか、それをお伺いしたいと思います。
  72. 伊佐山建志

    伊佐山政府委員 先生指摘のとおり、ベンチャー等の中小企業日本で活躍するというのは社会経済のダイナミズムを証明するものだということでございまして、我々としてもその育成に十分配慮していかなきゃいけないというふうに思っておりまして、私ども特許庁といたしまして可能な限りの施策を講じさせていただいているところでございます。  具体的に申し上げますと、一つは、情報を収集するという上で、先ほど来御関心をいただいておりますIPDL、電子図書館、これがオープン成ったということによりまして、現在開発中の技術というものが果たして商業化にふさわしいものかどうかというようなことをある程度チェックできるようになったということがございます。それ以外にも、社団法人発明協会によります無料のサーチレポートを作成するというような形によります情報提供というような事業も行っております。  さらには、研究開発をする段階で、どうやったら一番望ましい特許が取れそうかということについては、極めてテクニカルな部分もございますので、その部分について特許アドバイザーという形でもって知見を提供させていただく。これは、日本テクノマートというところに登録いたしております弁理士等の方、学者を含めまして、そういう方々の知見というものも十分に御利用させていただきながら、それを中小企業の方々に御利用いただくというようなこともやっております。  さらには、今回の法律改正によりまして、資力に乏しい中小法人、個人じゃなくて法人におきましても、何がしかの特例措置を講じさせていただくことによりまして、発明をし、あるいは新しい事業を起こすというインセンティブに少しでもなればということで我々支援をしているところでございまして、今後とも、必要に応じましてこういう支援策というものを強化してまいりたいと思っております。
  73. 大口善徳

    ○大口委員 今その中で、特許流通アドバイザーというのですか、要するに知的財産特許の目ききです。しっかりとそれを評価して、アドバイスを的確に与えていく。この人材の育成というのが非常に大事になってくると私は思います。この人材の育成がなされなければ、中小企業を含めたベンチャー企業において特許流通というのはなかなかならないと思うのですね。  それからまた、日本には四十万件も休眠特許等があるわけでありまして、こういう四十万件という休眠特許活用していくということがまた特許市場活性化することになるわけですね。  そういう点で、特許がどれぐらいの値打ちがあるのかということを評価する指標をきちっとつくって、そしてそれについて民間に格付会社ができるぐらいの、そういうことがないと、そしてまた、同僚の委員からも指摘がありましたように、仲介業者等が活発にそういうものを発掘していろいろと事業化に結びつけていかなきゃいけない、こう思っているわけです。  そういう点でやはり、特許流通アドバイザーとか仲介業者ですとか、そういう目ききの育成、これが非常に大事になってくると思います。時間もありませんので、それは指摘にしておきたいと思います。  次に、大学における特許と発明との関係がやはり非常に大事だと思います。  これは、サローさんの「経済探検」というところに出ておりますけれども、MITは、教授、卒業生が四千の企業をつくって百十万人を雇用することになり、また総売り上げが二百三十億ドルと。こういうことで、大学が果たしている役割、事業創出、雇用創出の役割というのは非常に大きい。アメリカのハイテク産業を見ましても、西部のシリコンバレーにおいてはバークレー大学とかスタンフォード大学がそういう働きをやっている。東部においては、ルート一二八ということで、ハーバード大学、またMITがやっているわけでございまして、大学のこういう産業に対する役目というのは非常に大きいわけです。  そういう点で、TLOというものが設立をされる、そしてまたそういう中で日本の大学が新しい段階に今来ている、こういうように思うわけです。  ただ、大学での特許取得というのはこれまではなかなか進まなかった。その原因といったら何であろうか。そしてまた、こういうTLOを円滑に推進するためには、先ほど申しましたような、大学のいろいろな特許、そういうものをTLOを舞台にしていろいろ産業化していく、そのためのアドバイザーあるいはコーディネーターというような目ききの育成というのが非常に大事になってくると思います。  そういう点で、文部省にこれらの点についてお伺いしたいと思います。
  74. 工藤智規

    ○工藤政府委員 御指摘のように、特にアメリカと比べまして日本の大学関係者の特許取得状況は必ずしもよろしくないという現状にあるわけでございます。  若干それぞれの制度が違うので一概には言えませんけれども、私ども、いろいろ関係者にも聞いてみますと、なぜ日本の場合にこれが進んでいないかということでのお尋ねでございますが、御案内のとおり、大学の研究者というのはほとんどの場合が基礎研究でございまして、研究の成果の世の中への活用、公開の方法としましては、一つには、論文発表でございますとか学会での発表でございますとか、いわば無償でその成果を公開する、これが主流でございます。  他方、近年のように、知的財産権特許を初めとして、もう少し、一定の収益に結びつけてかつ研究費にバックしてくる、そういう仕組みの開発というのも整備が進められてきておりまして、おかげさまで、昨年、大学等の技術移転促進法が成立されまして、TLO機関もこれまで六機関認定されているところでございます。徐々にこれから日本でもこういう意味での特許関係の意識が進んでいくものだと思います。御案内のとおり、アメリカの場合は一九八〇年にベイ・ドール法が制定されまして、それで十年、二十年たって物すごい活況を呈しているという状況でございます。  私ども文部省だけではございませんで、特許庁あるいは科技庁とも、関係省庁と御相談しながら、大学研究者の方々の特許マインドを涵養し、あるいは、今まで特許取得というのは必ずしも研究成果の評価に結びついていないという部分もございますので、そういう活躍の状況について一定の評価をしていただくようなことのインセンティブも与えながら、大学関係者のせっかくの研究成果が産業活性化あるいは新産業の創出等に寄与いたしますように、今後とも努力してまいりたいと思っております。
  75. 大口善徳

    ○大口委員 最後に、今回、審査請求期間を七年から三年にしたわけでありますが、欧州では審査請求期間は二年である。世界特許の国際ハーモナイゼーションということからいきますと、その点は欧州並みにすべきじゃないか、こういうふうに申しましたところ、欧州にはサーチレポートというのがあって、先行技術がよくわかる、ですから二年でいいんだということでありました。  ただ、今回電子図書館というのができましたものですから、この利用が一層進んできたときに、この三年をさらに二年に短縮するということを考えてもいいんじゃないかな、こういうふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  76. 伊佐山建志

    伊佐山政府委員 私どもも、現行の七年というのを何年にすべきかということについては、内部でも議論いたしましたし、審議会の場で関係の方々の御意見をいただきました。  その結果、直ちに審査請求期間を二年にするという形になりますと、日本の場合には今御指摘のようなサーチレポート制度というものはできていない、出願されたうちの半分は現実のところ審査もされないという実態がございますので、その辺の実態というものが、今御指摘のようにIPDLがうまく機能することによってむだな出願が下がっていくということになりますと、今やっている仕事以外の仕事もあるいはいずれは可能になるかというふうに思いますので、私ども、将来の課題といたしまして、その問題について検討いたしたいと思っております。
  77. 大口善徳

    ○大口委員 以上です。ありがとうございました。
  78. 古賀正浩

  79. 小池百合子

    ○小池委員 自由党の小池百合子でございます。今次の特許法の改正に関しまして、幾つか御質問させていただきたいと思います。  まず、メガコンペティションがますますグローバル化、そして加速する中にありまして、今回の特許法の改正、これにつきましては、資力に乏しい法人を対象にして、特許料の減免、そしてただいまの審査期間の短縮など、こういった措置が行われていることは適切な方向であるというふうに思っております。  しかしながら、まだまだ世界のスピードとそして我が国のスピード、ある部分は大変突出して加速している部分もございますけれども、全体で考えますと、我が国の今の経済状況が示すがごとく、次なる飯の種、そして知的な財産ということについてはもっと改善をしていかなければならないのではないかと考えているところでございます。  そういったことで、グローバル化、スピード化、こういった日本の抱えております課題、今回の改正でそれが十分なし得ているのであろうか、それともまだ足りない部分があるのではないか、その点につきまして担当の方にお聞きいたしたいと思います。
  80. 伊佐山建志

    伊佐山政府委員 今回の法改正をしていただくことによりまして、従前と比較いたしますと、かなりのスピードアップが図れるのではないかというふうに期待いたしております。  つまり、侵害が起こった場合に、その侵害の状況について立証するのにかなりの時間がかかります。あるいは、侵害が行われたということがわかった後で、どの程度の損害額があったのかということについても、従前の場合ですとなかなか簡単に結論が出ないような、そういう制度でございましたが、今回の法改正によりまして、例えば侵害が起こったときの立証の仕方で文書提出命令をかけていただくことができるようになるとか、あるいは損害額の確定に当たっては、外の専門家にお願いして、計算鑑定人という方々の専門知識を導入することによりまして、裁判する側の負担をかなり軽減するというような形になりますものですから、これによって相当程度のスピードアップが図られるのではないかというふうに期待いたしております。  それからまた、私ども特許庁裁判所との間の連携の強化ということも今回図らせていただいております。  事件が起こったときに、関連する情報をお互いが交換し合う、あるいは権利の侵害に該当するかどうかという点につきまして、私どもが持っております知見を御利用していただく、鑑定という形でもって御要請いただいたときには、私どもが積極的に素早く資料等を提供する、見解を述べるという形になりましたものですから、こういった面での改正が相まちまして、かなりのスピードアップになるということを期待いたしております。
  81. 小池百合子

    ○小池委員 特許の侵害などに対しての審査が我が国は大変長いということで、その問題もこれからの大きな課題にさらに引き続きなっていくことと思います。  司法改革ということもこれから取り組まれていくわけでございますが、国家として何を優先すべきなのかという観点から、そういったスピード化を図れるように、総合的な司法改革をしていく必要があるということを私も認識しているところでございます。  さて、組織の四原則といいますか、四元素と申しますか、それは言うまでもなく人、物、金、そして最近は情報ということでございます。今後の特許のスピード化、そしてグローバル化にも、人、物、金、情報ということは欠かせないわけでございます。  我が国の場合、これから省庁再編という大がかりな改革が行われるわけでございますけれども、その中で私ども自由党は、十年間で二五%の定員の純減ということをうたわせていただいているところでございます。そこで重要なのは、今省庁におられる方々を、単にようかんの切り分けをするのではなくて、国家的に何が最も必要なのかということを踏まえた上での重点的な人員の配分ということをしていかなければならないというふうに認識をいたしております。  その人、物、金、情報、これらを今後の我が国にとっての飯の種ということで、私は最優先すべき項目の一つであるというふうに思っております。  ところで、先ほども大畠議員の御質問の中にいろいろとGEの話なども出てまいりました。私も、せんだってGEのウェルチ会長の戦略などを報道する番組を見ておりまして、やはり、一つ企業戦略、そしてまたもっと大きくは国家戦略という形で、この特許についても我が国はとらえていく必要があるのではないかと思っております。  ちなみに、GEの番組を見ていてぞっとしたのは、例えばボーイング社じゃないかな、ちょっとわかりませんけれども、GEのエンジンをつけた航空機は、何か不都合が起こったときには飛んでいる最中でも遠隔操作でエンジンが直せるというような話。これはメディカルな器具についても同じ戦略をGEがとっているということでございまして、これからGEのエンジンがついた航空機を買うと、逆にどこかで国家的な問題が起こったときには落とされちゃうのかなというふうにも思うような、GEの遠隔操作によって落とすことさえできるんだな、それくらいのことも考えた上での戦略を練っていかなければならない、そういう観点から番組も拝見させていただいたわけでございます。  そこで、古くはミノルタのAFカメラの訴訟の問題も含めまして、アメリカ国家戦略として、特許そして知的財産ということをその戦略の中に組み込んできたことは既に知られているわけでございますが、しかしながら国際的な統一ルールという観点から申しますと、むしろ米国が特殊な形で残っているわけでございます。  ハーモナイゼーションということも先ほどから出ておりますけれども、国際統一ルールの設定は必要なのかどうか、そしてまたその実現性はあるのかどうか、そこで我が国としてイニシアチブがとれるのかどうか、この辺の見通しについて伺いたいと思います。
  82. 伊佐山建志

    伊佐山政府委員 先生指摘のとおり、私どもといたしましても、経済のグローバル化が進むという中で、我々が共通のルール化を目指して制度運用していかなければいけないという意識を十分持った上で、関係諸国と必要な交渉等をやっているつもりでございます。  御指摘のとおり、特許分野にありましては、アメリカが唯一と言ってもいいくらいに他国と違った制度を保有しているがゆえに、なかなかハーモナイゼーションが進まないという問題もございます。  ただ、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、行政府にありましては、そういう状況は必ずしも好ましいものではない、コストという観点からも、手続を簡素化させるという観点からも、そしてまた世界的なレベルでの保護水準というものを達成するという観点からも、アメリカの先発明主義、非公開制度というようなものをずっと持っていたままではアメリカが優位に立てない、こういう危機感アメリカの行政府は持っているところでございまして、そういう実態がございますものですから、特に私どもは三極あるいはWIPO、WTOといったような場におきまして積極的に働きかけをいたしまして、まずは可能な分野からハーモナイゼーションを進めていく。  それから、将来非常に重要になるであろう分野についてのハーモナイゼーションについては、例えばバイオでありますとかソフトウエアといったような分野について、まだ技術の方がどんどん進む、そういう実態がございますので、特許化するルールというものが必ずしも十分に各国間で調整がとれていないという問題も抱えておりますので、二国間、多国間の場を通じましてハーモナイゼーションということを目がけまして、着実にやれるところからまずはやっていくというふうにしていく必要があるのではないかと思っております。
  83. 小池百合子

    ○小池委員 今後必要になってくる分野など、私は、日本はやはり先を見る目を十分養った上で、そして国家戦略ということも踏まえて、むしろ日本がイニシアチブをとれる部分はどこなんだということを一度洗いざらい出してみる。そしてその上で、最も日本が得意にできるところというのは、むしろ日本がデファクトスタンダードをつくれるぐらいの体制をとっていくべきだと考えております。  最近、金融の分野では、S&Pであるとか、ムーディーズとか、格付機関が我が国の金融に対しましての大変シビアな格付を、ある意味ではそれは投資家にとっては最も必要とする情報だったと思いますが、これらを駆使してまいりました。一方で、最近はやりのISOでございますが、むしろヨーロッパ勢が非常にイニシアチブをとっている。  これらに共通するのは何かというと、国が決めたルールではなくて、むしろ民間の企業が、民間の組織がそういったイニシアチブをとっている。我が国の場合は、これまでは、JIS規格であるとか、むしろ役所側がつくった基準ということで、それをこれまで、相手国からすればむしろ我が国の非関税障壁のような形にしかとらえられていなかったのではないかと思っているところでございます。  ですから、こういった新たなデファクトスタンダード、基準づくりというのは、官の発想を離れて、むしろ例えば消費者の利便性であるとか、人類にとっての環境であるとか、そういったまことに普遍的な分野、そういったことも踏まえた上で、官が誘導するのではなくて、むしろ民が世界を納得させるような普遍的な基準でもって、結果として我が国世界のイニシアチブをとれるというような状況に持っていくべきではないかと私は考えております。  最後に、先ほどからも何度も質問が各党から出てまいりましたけれども、先駆けて特許庁が実施しておられますオンライン申請、大分完成の域にたどり着きつつあるというふうに聞いております。実際に、特許庁でのオンライン申請の方法、それからどのようにして出願がキープされているのかなど、拝見させていただきました。  今後の省庁のリストラ、それは人員だけではなくて、物理的そして時間的、空間的。空間的というのは、もう山ほどある書類を倉庫に保管するだけでその空間のお金がかかるわけでございますから、それをいかに圧縮して、そしてきっちり改ざんされないようにキープをしていくかというのは、行政コストを大幅に下げることにつながるわけでございます。  そういった観点から、特許庁の現在の試みというのは大変注目に値いたしますし、今後とも特許庁でのそういった電子化、ペーパーレス化が進むことが、霞が関全体を動かす、そして地方の行政も動かす、そしてそれはすなわち国民にとって利便性があるというような形につながっていくことを期待いたしているわけでございます。  なかなか数字は出しにくいでしょうけれども、以前と比べて、ペーパーレス化、電子化によって、特許庁の方ではトータルな意味でのコストがどのように削減されたのか。そしてまた、今後それをどのような形で日本の行政システムに応用できるのか、そういった見通しについても伺いたいと思います。
  84. 伊佐山建志

    伊佐山政府委員 数字でお答え申し上げる点は非常に難しいわけでございますが、例えばペーパーレスを開始いたしました一九八四年と比べますと、特許の平均処理期間というものが、当時は約三十五カ月かかっておりましたが、それが現時点では約十九カ月に短縮されております。  あるいは、従前は紙によります公報というのをやっておりました。それがCD―ROM化することによりまして、紙公報のときの印刷費と単純に比較するのはいかがかと思いますけれども、予算面で考えてみますと、当時は六億八千万円ぐらいかかったものが、今ですと一億二千万円ぐらいで済んでいるというような数字もございます。  いずれにしましても、私どもが今後ともペーパーレス化というものを進めることによって、業務の実効性を上げる、それから、それがいい意味世界にインパクトを与えているということで、ほかの国も同じようなペーパーレス計画を導入することによって、特許に関連する方々の負担がかなり減るという若干計算するに難しい部分の効果も出ておりますので、我々としてはいずれにしましてもペーパーレス化というものを予算の範囲内でどんどん進めていかなければいけない、こんなふうに考えております。
  85. 小池百合子

    ○小池委員 行政だけでなくて、この国会の法案も、地方分権法案、省庁再編の法案、何千ページとわたるものですからCD―ROM化をぜひしていただきたいということを希望いたしまして、終わりとさせていただきます。ありがとうございました。
  86. 古賀正浩

    古賀委員長 前島秀行君。
  87. 前島秀行

    ○前島委員 十分余の短い時間ですので、特許流通とベンチャー、中小企業育成というその点だけちょっとお聞きをしたいと思います。  この数年、特許流通対策ということを進めてきたというふうに聞いています。いろいろな手だてはやってきているようでありますけれども、なかなか成果が上がっていないというのが現状ではないだろうかなと、こういうふうに思っています。特にこの特許流通対策、どんな手だてをしてきたのか、今後どうしようとしているのか、ここ数年の実績はどうだったのか、また今後の課題はどうとらえているのか。その点をちょっとお聞きをしたいと思います。
  88. 伊佐山建志

    伊佐山政府委員 先生御案内のとおり、日本には非常に多くの特許がありながら必ずしも十分に活用されていないということに目をつけまして、平成九年度より、その活用方について各種の施策を展開いたしております。  まずは、開放の意思のあります特許提供者、その特許情報、あるいは特許の導入を希望する情報を、インターネットを通じまして情報提供するということをやっております。これによりまして、特許に関するデータベースというものがだんだんとつくられてきているというのが実情でございます。  それから第二に、中小ベンチャー企業等を特に意識いたしまして、そういう人たちに対しまして、特許のつくり方、あるいは使われ方、使い方といったものについて専門的な知見を有する人間を派遣することによりまして、私どもの言葉で特許流通アドバイザーと呼んでおりますけれども、そういう方々を派遣することによりまして、少しでもお役に立てればということをやっております。  それから三つ目は、特許を提供する側と特許を導入する側との出会いの場をつくろうということで、特許流通フェアという形で地方展開をさせていただいております。一年余りの経験でございますので、まだ必ずしも十分なデータがそろっておりませんけれども、例えば特許流通アドバイザーを通じまして、約六千件ほどの相談が寄せられる。それから、特定の技術のライセンス成約というものが約三十三件になったというような成果が上がっております。  ただ、これで十分とはもちろん思っておりませんで、今後とも、特許流通アドバイザーを増員する、あるいは特許権の評価について必ずしも客観的な評価基準がございませんので、そういった問題について、我々の知見を利用していただいて、こういうふうに見たらいいのではないかというような提案を行いつつございます。  それからまた、知的財産権取引を仲介、あっせんする事業者を育成するという観点から、私どもの場合にはまだ十分な経験がないものですから、アメリカやヨーロッパでそういうことを経験した方々をお呼びいたしまして、そういう人たちにコーチしていただくというようなことを今年度からやりたいと思っております。
  89. 前島秀行

    ○前島委員 今我々日本の中で、日本を取り巻く経済状況、情勢の中で、新しい産業をどう起こしていくかというのは大きな課題だろうと思います。  そういう面で、特許流通の問題について、特許庁特許行政という形で今いろいろ御努力をしている。その点は私は認めるし、それなりの一定の役割を果たしているなとは思いますけれども、問題は、それが具体的に企業化されていく、事業化されているのかというところに、今日の日本が抱えている課題との兼ね合いでこの特許流通という問題を見る必要があるのではないだろうかな、私はこういうふうに思っています。そういう面では、御努力をしながらも、具体的に事業化されていくか、あるいはそういうふうになっているかという点についてはまだまだ課題があるな、こういうふうに思います。  それで、私が大臣にお聞きしたいと思っていますのは、この特許流通特許の行政として、眠っている四十万余の特許をどう活用していくのか、事業化させていくのか。そのことがまた、日本の経済の、新しい産業を起こし、中小企業、ベンチャービジネスをどう活性化させていくかという課題で、この眠っている四十数万件余の特許をどう活用していくかという視点でとらえることが私は必要ではないだろうかなと。単に行政上の、特許行政という形ではなくして、新しい産業をどう起こしていくのか、中小企業、ベンチャービジネスをどう育成していくのかという観点で、特許流通、四十万余の眠っている特許をどう活用していくかという視点が大事だろうと思います。  そういう面で、ここ数年来やってきた中身と今言われた今後の課題というのは、特許を知らしめるといいましょうか、情報を提供する、こういう特許がありますよ、こういう評価がありますよという意味での御努力はなさっているなということは認めますけれども、問題は、この特許、眠っている特許活用する、事業化するというここの手だてが今十分なのか。この手だてをするのは、一特許という行政だけではなくして、もう少し幅広いところが積極的にそこを引き出す努力が必要ではないだろうか。  そういう意味での特許行政、それが今日日本の大きな課題である新しい事業を起こしていく、ベンチャー企業、中小企業を大いに育成させて活性化させていくダイナミズムな日本の経済、企業の展開を図っていくという視点でこの問題をとらえるべきではないだろうか。  だとすると、一特許行政だけではこたえ切れない問題がそこには存在するので、もっと大きな高い次元でそれを積極的に展開していくことが、通産省、大臣として求められているような気が私はします。そういう意味での特許流通と、新しい産業を起こす、中小企業、ベンチャービジネスを育成するという観点で、その辺のところの考え方をちょっと聞かせていただきたい、こういうふうに思います。
  90. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 新しい業を起こさなければならないというのは、二十一世紀を迎える日本にとって最も大事なことでございます。  先生指摘のように、ここでは今特許流通の話だけを議論しておりますが、特許流通するだけではしようがないので、それに基づいて新しい技術を使った新しい企業が生まれる、あるいは中小企業でもそういう新しい分野に踏み込む、そういうことがなければ新規の雇用も生まれてまいりませんし、また中小企業の発展もない。  そういう中で、従来からいろいろな政策を国会に御承認いただいております。それの共通に貫くものは何かといいますと、やはりベンチャーが一番困る、まず考えるのはお金をどうやってつくろうかという話でございまして、そういう意味でのお金の問題。それから、もう一人か二人技術屋さんがいればうまくいくのにというようなケースもありますから、人材の問題。それから、今、特許の利用を含めました技術が例えば大学から中小企業に移転するとか、そういう新しい技術の移転、これは特許流通を含めてですが、そういうことを確保することだろうと思っております。  ですから、特許流通だけではだめで、資金あるいは人材、技術等々、あらゆる側面から新規産業、ベンチャービジネスというのはとらえていかなければならないと思っています。そのほかに、やはり販売能力とか販路とかマーケティングとか、もろもろのことがもちろん組み合わさる必要があると思っております。
  91. 前島秀行

    ○前島委員 先週議論しました電気・ガス事業法の改正の問題も、私がぜひお願いをしたいのは、電力、エネルギー対策という側面だけではなくして、日本の新しい産業をどう起こしていくかという意味で、第一次エネルギー、自然エネルギーを今後どう展開していくかという視点が大事だというふうに思っていますし、そのことを私は大臣にお願い申し上げたい。  それと同じように、特許が四十万件眠っているわけでありますから、一特許行政、プロパテントというだけではなくして、新しい産業を起こしていくんだという観点でこの問題をとらえて、積極的に通産省としてそれを推進していくという視点をぜひお願いしたいということを重ねて要望して、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  92. 古賀正浩

    古賀委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  93. 古賀正浩

    古賀委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出参議院送付特許法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  94. 古賀正浩

    古賀委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  95. 古賀正浩

    古賀委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、伊藤達也君外四名から、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。大口善徳君。
  96. 大口善徳

    ○大口委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     特許法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。  一 特許権等の侵害に対する救済措置拡充の改正内容の周知徹底と、知的財産権に関する国民的意識を涵養するための啓発活動に努めるとともに、侵害に対する抑止力の強化や適切な賠償の実現に向け、知的財産紛争に関する紛争処理体制の確立に努めること。  二 経済の国際化にかんがみ、各国の主権の尊重を前提に、工業所有権制度について、二国間、多国間の場を活用し、長期的には世界共通特許制度構築を目標に、公開制度の導入等、国際的制度の調和に積極的に取り組むこと。    また、我が国出願人等の利便性の一層の向上を図るため、マドリッド協定議定書未加入国に対し加入を促すよう積極的に努めるとともに、アジア諸国等における工業所有権制度整備について国際協力を積極的に進めること。 以上であります。  附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解をいただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  97. 古賀正浩

    古賀委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  98. 古賀正浩

    古賀委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、与謝野通商産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。与謝野通商産業大臣
  99. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、本法律案の実施に努めてまいりたいと考えております。     ―――――――――――――
  100. 古賀正浩

    古賀委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  101. 古賀正浩

    古賀委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕      ――――◇―――――
  102. 古賀正浩

    古賀委員長 次に、内閣提出特定化学物質環境への排出量把握等及び管理の改善の促進に関する法律案並びに佐藤謙一郎君外四名提出特定化学物質排出量等公開等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  これより両案について順次趣旨の説明を聴取いたします。与謝野通商産業大臣。     ―――――――――――――  特定化学物質環境への排出量把握等及び管理の改善の促進に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  103. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 ただいま議題となりました特定化学物質環境への排出量把握等及び管理の改善の促進に関する法律案について、その理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  現代では日常生活や経済活動に用いられている化学物質が数万種類に及ぶと言われており、近年では毎年約三百種類の新規の化学物質が開発、販売されております。一方、化学物質の中には、人の健康や動植物の生息などに有害な性状があるものもあり、特に近年、テトラクロロエチレン、ダイオキシン類等の環境への排出に関する社会的な関心が高まっており、化学物質への対策の強化が政府の急務となっております。  こうした現下の状況に対応するためには、有害性がある化学物質について、環境への排出規制や製造・使用規制を中心とする従来の対策に加え、化学物質の管理の改善を促進するとともに、環境保全の一層の推進を図るための新たな制度の導入が必要であります。このように、化学物質の管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止するという考え方は、平成八年のOECDによる勧告等に見られるように、国際的にも共通の認識となり、主要先進国で実施され始めていることから、我が国としても、国際的協調の動向に配慮しつつ施策を進めることが必要となっております。  そのため、特定化学物質環境への排出量把握等及び管理の改善の促進を図ることを内容とするこの法律案提案した次第であります。  次に、法律案の主要事項について、その概略を御説明申し上げます。  第一に、この法律は、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障の未然防止を図ることを目的とするとともに、国が定める化学物質管理指針に留意して特定の化学物質の取り扱い等に係る管理を行うこと等を事業者の責務とし、国及び地方公共団体は、事業者に対する技術的助言、必要な人材の育成等の措置を講ずることとしております。  第二に、事業者にその事業活動に伴う特定の化学物質の排出量把握等及び国への届け出を義務づけるとともに、国はその届け出られた事項について集計し、集計結果を公表することとしております。さらに、個別事業所の排出量等の情報につきましても、営業秘密を確保しつつ、国民の請求に応じて開示することとしております。また、届け出義務を課されない中小の事業者、家庭等からの排出量につきましては、国が当該排出量を算出、集計し、その集計結果を事業者から届け出られた排出量等とあわせて公表することとしております。  第三に、事業者は、特定の化学物質等を譲渡し、または提供する場合、その相手方に対して当該化学物質等の性状及び取り扱いに関する情報の提供をしなければならないこととしております。  このほか、国による調査の実施、必要な罰則等に関し、所要の規定を設けることとしております。  以上が、本法律案提案の理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  104. 古賀正浩

    古賀委員長 次に、佐藤謙一郎君。     ―――――――――――――  特定化学物質排出量等公開等に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  105. 佐藤謙一郎

    佐藤(謙)議員 ただいま議題となりました特定化学物質排出量等公開等に関する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  現在、全世界で十万種を超える化学物質が製造、使用されていると言われております。これらの化学物質は、私たちの生活に恩恵を与える一方、有害な物質や有害性が疑われる物質も数多く存在し、製造、使用、廃棄の過程で環境中に排出され、生態系や人の健康に悪影響を及ぼす可能性を有しています。私たちは、過去の事例や一九九二年の地球サミットにおけるアジェンダ21の採択を通じ、住民が化学物質のリスクを認識することが問題の解決につながるという教訓を得ました。  しかしながら、政府が今国会に提出した特定化学物質環境への排出量把握等及び管理の改善の促進に関する法律案、いわゆるPRTR法案では、住民が地域における化学物質によるリスクを認識する仕組みが十分に確保されておりません。PRTR制度は既に欧米各国でも導入され、日本はより先進的な制度を構築できる立場にあるにもかかわらず、政府提出した法律案は、中央集権、縦割り行政の枠を出ないものとなっております。  そこで、私たちは、市民との連携や地域的なリスクコミュニケーションの推進などの視点に立ち、政府のパイロット事業の成果や市民団体の意見も踏まえて、PRTR制度を創設することを目指しております。  以下、この法律案の要旨を申し述べます。  まず、この法律案は、特定化学物質環境への排出量等の把握及び公表の措置を講ずることにより、事業者及び国民の的確な理解のもとに、事業者の自主的な努力等を通じて、化学物質の環境への排出の削減を図り、もって化学物質による環境汚染により生じる人の健康に係る被害及び生態系への影響を未然に防止することを目的としております。また、化学物質による環境の汚染により生ずる人の健康に係る被害等について国民が正しく認識することが、現在及び将来の国民の健康かつ安全で文化的な生活の確保を図る上で不可欠であることにかんがみ、国民が、化学物質の環境への排出量等に係る十分な情報の提供を保障されることを基本的理念として作成されております。  次に、この法律案によるPRTR制度の特色について御説明申し上げます。  第一に、特定化学物質排出量等の届け出先は、特定化学物質等取扱事業者の事業所所在地の市町村としております。  第二に、届け出事項は、排出量、移動量、貯蔵量、取扱量及び最大貯蔵量としております。  第三に、企業秘密かどうかの判断は、第一次的には、届け出先の市町村において判断することとしております。  第四に、排出量等の届け出事項は、届け出先の市町村において公表するほか、都道府県及び環境庁長官においてもそれぞれ公表措置を講ずることとしております。  第五に、いわゆる非点源からの排出量及び移動量は、都道府県が国、事業者等の協力を得つつ算出し、公表することとしております。  このほか、この法律案では、企業秘密の判断に対する不服申し立て制度、事業者による化学物質の基礎的な情報の整理、事業者と地域住民とのリスクコミュニケーションの促進、市町村が策定する環境の保全上の支障の防止に関する計画、対象化学物質を定める政令を制定する際の当該政令案の縦覧及び意見申し立て制度、インターネットによる情報の提供、必要な立入検査等について定めることとしております。  以上が、本法律案の要旨であります。  議論を尽くして、国民に納得していただける制度を構築したいと考えておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
  106. 古賀正浩

    古賀委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。     ―――――――――――――
  107. 古賀正浩

    古賀委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま趣旨説明を聴取いたしました両案について、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 古賀正浩

    古賀委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十八分散会