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1999-04-20 第145回国会 衆議院 商工委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年四月二十日(火曜日)     午前十時一分開議   出席委員    委員長 古賀 正浩君    理事 伊藤 達也君 理事 小此木八郎君    理事 小野 晋也君 理事 岸田 文雄君    理事 大畠 章宏君 理事 松本  龍君    理事 大口 善徳君 理事 西川太一郎君       小野寺五典君    奥田 幹生君       河井 克行君    木村 隆秀君       熊谷 市雄君    河本 三郎君       新藤 義孝君    砂田 圭佑君       田中 和徳君    中尾 栄一君       中山 太郎君    萩山 教嚴君       牧野 隆守君    村田敬次郎君       村田 吉隆君    山口 泰明君       山本 幸三君    奥田  建君       島津 尚純君    樽床 伸二君       中山 義活君    渡辺  周君       遠藤 乙彦君    中野  清君       福留 泰蔵君    青山  丘君       小池百合子君    菅原喜重郎君       武山百合子君    金子 満広君       吉井 英勝君    前島 秀行君  出席国務大臣         通商産業大臣  与謝野 馨君  出席政府委員         環境庁企画調整         局長      岡田 康彦君         環境庁企画調整         局地球環境部長 浜中 裕徳君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君         通商産業省環境         立地局長    太田信一郎君         資源エネルギー         庁長官     稲川 泰弘君  委員外出席者         商工委員会専門         員       野田浩一郎委員の異動 四月二十日         辞任         補欠選任   遠藤 武彦君     萩山 教嚴君   岡部 英男君     小野寺五典君   奥谷  通君     砂田 圭佑君   竹本 直一君     熊谷 市雄君   武部  勤君     田中 和徳君   林  義郎君     村田 吉隆君   茂木 敏充君     河井 克行君   小池百合子君     菅原喜重郎君   二階 俊博君     武山百合子君 同日         辞任         補欠選任   小野寺五典君     岡部 英男君   河井 克行君     茂木 敏充君   熊谷 市雄君     竹本 直一君   砂田 圭佑君     奥谷  通君   田中 和徳君     武部  勤君   萩山 教嚴君     遠藤 武彦君   村田 吉隆君     林  義郎君   菅原喜重郎君     小池百合子君   武山百合子君     二階 俊博君 本日の会議に付した案件  電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案内閣提出第四二号)  特許法等の一部を改正する法律案内閣提出第三〇号)(参議院送付)     午前十時一分開議      ————◇—————
  2. 古賀正浩

    古賀委員長 これより会議を開きます。  内閣提出電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本幸三君。
  3. 山本幸三

    山本(幸)委員 自由民主党の山本幸三です。  電気事業法ガス事業法の改正は、私は規制緩和に沿った大変結構な流れであるというふうに評価しておりますが、せっかくの機会でありますので、ぜひ大臣にちょっと教えてもらいたいなと思っているんです。  最近、産業競争力会議というものがあったりして、そこで伝え聞いているところでは、設備過剰論というのがある。日本経済、今は設備が過剰であって、むしろそういう過剰な設備を廃棄していく、サプライサイドに立った対策が必要であるという形で議論されていると聞いているんですけれども、これは大変興味のあるテーマでありまして、そこのところを、ぜひ大臣のお考えを教えてもらいたいなと思っているんです。  では具体的に電力業界ガス業界設備過剰の状況にあるのかということと、そもそも設備過剰論というのはどういう状況、どういう問題意識に基づいて大臣は言っておられるのか、ちょっと教えていただければと思います。
  4. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 一昔前の設備過剰という概念は、国内だけの問題として設備の総量というものを考えることができたわけですが、今のように関税が大変低くなって、各国間の貿易が極めて円滑に行われるようになった場合に、設備というのは、いわば世界全体の供給力の源というふうにも考えていいわけですから、設備廃棄という概念を、いわゆる昔のように、ある工場の生産力を除却するという考え方で物を考えてはいけないと私は思っております。  今回、競争力会議考えております設備過剰というのは、実際、日本国内設備過剰を解消するということを通じて企業バランスシートをよくするということが主眼でございまして、例えばある石油製品設備幾ら国内でカットいたしましても、それがよその国からどんどん輸入されるということになれば、それ自体は、他の国の設備過剰がそういう貿易を通じて日本の国に持ち込まれるということでございます。  したがいまして、設備過剰、設備廃棄という概念の中には、昔のように単に設備を廃棄するということだけではなくて、やはり設備を廃棄する、過剰設備整理することを通じて、それぞれの企業財務内容と申しますか、財務体質と申しますか、あるいは貸借対照表上の健全性と申しますか、そういうものを改善し回復するという作業が伴わなければならないと思っております。  いわば、生産調整的な考え方よりも、個別企業バランスシートを回復させる。すなわち、バブル時代に、社債を発行してもすぐ消化できる、あるいは金融機関からも借り入れが簡単にできる、そういう時代には、やや経営者方々も気が緩んで、生産性の低い分野に投資をしたという傾向が十分見受けられますので、そういうものの全体の整理というふうに私はとらえております。
  5. 山本幸三

    山本(幸)委員 かつてのような設備廃棄と違って、企業バランスシート調整をねらうということなんですが、方向はよくわかりますが、ちょっとそのロジックがはっきりしないという気がするんです。企業バランスシートがどういう状況だから設備が過剰であるということになるのかというのが、よくわからないですね。  それで、ここは余りそういう議論を細かく言ってもあれですので、いずれ改めて行いたいと思いますが、ちょっと私の考えがあるものですから聞いていただいて、御感想をお願いしたいと思います。  設備が過剰といった場合に、何に対して過剰かというのが問題なんです。通常、経済理論で過剰だといった場合には、私の理解するところでは、潜在成長力に見合って当然行わなきゃいけない設備投資というのがある。それは潜在成長率、趨勢的な成長率に、経済資本財相対価格が変わってきますから、それに対応する資本産出係数というのがあるんですけれども、それと資本除却率、そういうのを全部含めて、ある一定の、経済成長すると考えられるその潜在成長率伸び方に応じた設備投資というのがあるはずだ。  問題は実際の設備投資がその水準を超えているかどうかというところで判断すべき話であって、それが潜在成長率に応じた設備投資よりも過大に行われれば、これは過剰設備と言えると思うんですね。しかし、そうじゃない、潜在成長率に応じた程度の中で行われている設備投資というのは、別に過剰とは言わないと私は理解しているんです。  それで、大変申しわけない、もっと簡単なものがあればと思ったんですが、これしかないものですから。それをこのグラフに書いているんです。  六〇年代の高度成長期というのは、上がフローの設備投資で、それがプラスされて、右側が資本ストック伸びなんですけれども設備投資が大きく伸びてそれが資本ストック伸びにつながっていくという形になっているわけです。高度成長のときというのは、設備投資ががあっと伸びて、資本ストック伸びるので、大きく右に旋回するんですね。それは、ある一定潜在成長率のラインに応じて、それが大きく右に伸びる。この右への伸び方が大きいときに過剰設備という状況があって、あるところまで行くと急速にそれが調整されて、また減ってしまう。  それで、七〇年代の後半から八〇年代は、まさに成長率の屈折があって、大体四・五%成長ぐらいのところに来ていて、そこを中心にぐっと旋回しているわけですね。これが、九〇年代に入って、成長率が明らかに二%成長ぐらいに屈折したと見られるわけでありまして、やはり九二年からバブルの崩壊とともに急激に設備投資調整が行われて、つまりバブルの前の調整は九二年から九四年に終わっちゃった。  今議論されているのは、伝え聞くと、バブルのときのものがまだ残っているじゃないかという議論をしているんですが、私は必ずしもそうは思わない。九二年から九四年で既にバブル資本ストック調整は終わって、そして九五年、九六年、少し回復するわけですね。これは、二%の潜在成長率があるとすれば、それに応じた形で行われていて別におかしい話ではないし、しかもそのとき、今回は右に大きく旋回していない。つまり、過剰設備という議論は余り当たらないんじゃないかなという感じ一つしています。  それは先ほど大臣もちょっと申されたんですけれども、じゃ、日本投資というのは生産性の低い投資に行ったかということを見ると、投資が効率的であるかどうかというのは、これまた大変申しわけない、数字が出て恐縮なんですけれども、要するに、下の方の、資本蓄積をしてもまだ消費ができるぐらいに余裕がある場合には効率的だと判断するんですね。それで、現実のものを見ると、資本限界生産力の方が明らかに潜在成長率を賄うに必要な設備投資数字よりも大きくて、プラスであって、それは消費が十分できる水準まで残しているので、こういう投資は、全体として見れば効率的に行われたというように判断できるのじゃないかなと思う。  問題は、そういう設備過剰というよりは、日本経済の姿が九七年の末から九八年に急速にまた落ちている、ここがなぜ起こったかというところで、この議論が正しい正しくないなんてことをやったってしようがないので、問題はなぜ日本経済がそういう状況に陥っているかというところだと思うんですね。  私はやはり、九七年から九八年にかけて、せっかく九五、六と回復してきたものが急速にしぼんでしまったのは、明らかに金融デフレ金融機関の体力が弱った。これは不良債権問題そのものですけれども企業バランスシート上、実質債務超過になった。私はその点では大臣問題意識は同じで、まさに企業バランスシート実質債務超過のところを消してやらなければいかぬ、それを受けて銀行が不良債権問題になっているので。  だから、私が言っているのは、銀行に債権放棄させろ、そして企業バランスシートからも銀行バランスシートからも両方早く落とせ。同時に、金融システムが不安で資金中小企業中心に回らなくなっているわけですから、これは通産省大臣が先頭に立ってやっていただいた信用保証は非常にきいたわけですね。まさにその政策こそが大変正しかったし、同時に、やはり日本銀行に潤沢に資金を出すように、量的緩和、そこをやらなきゃいかぬ。  だから、やはりここのところは、経済が今収縮しているのは、設備過剰というよりはむしろ需要不足。その需要不足のもとになっている金融デフレ対策不良債権対策バランスシートから落とすやり方、プラス日本銀行の潤沢な金融緩和政策、これが重要じゃないかなという問題意識を持っているんですけれども大臣、いかがでしょうか。
  6. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 まず、過去数年の景気動向でございますけれども、やはり、おととしの十一月に起きました、北海道拓殖銀行、山一証券、三洋証券の破綻というものが心理的に国民に与えたものは、我々が想像している以上に大きいものだったと思います。多分、後になっていろいろな学問的な研究をすれば、あの時点からちょうど景気は逆に低下していくというように恐らく判断されるんではないかと私は思っております。  私、先生のマクロ的なとらえ方のほかに、一つだけ、過剰設備と私が申しましたのは、過剰設備は、過剰債務を発生させているという点において過剰設備整理しなければならないということで、過去やりましたような生産カルテル的な設備廃棄というのは、現時点では我々、考え方としてとっておりませんし、ましてや独禁法上それが許されているわけでもありません。  それからもう一つは、先生のお考えの中には、資本蓄積をしてもなお消費をふやすことができれば、その資本蓄積、すなわち投資というのは効率的であるという考え方に基づいて御主張されているんだと思います。すなわち、投資をふやし過ぎて消費を減少させるようなことになれば、当該投資は非効率という整理をされているんだと思います。  ただし、私、余り経済学は詳しくないんですが、この考え方生産需要が一致することが前提になっております。生産需要は、中長期的には経済学的には一致するというふうに考えられておりますけれども、一時的には、産業間の生産資源の配分を含め、ミスマッチが生ずるということもあり得るわけだと私ども考えております。  したがいまして、通産省としては、生産性収益性を含めて、需要にマッチした生産への調整を円滑に進め、低成長のもとでも効率的な投資が行われることになるよう供給面取り組みを行うという考え方で、競争力会議に臨みたいと思っております。  それからもう一つは、九七年、一昨年の十一月に起きました、そういう、まさに先生が御指摘になった、金融デフレという言葉をお使いになりましたけれども、やはり実際に銀行経営内容がよくなくなってきた、そこに実際、証券会社あるいは銀行というもののまさかと思うような倒産が起きた。そういう面がまた金融デフレを加速させたということと同時に、国民消費生活の中で需要が一巡していたということで、とりあえず新しく可処分所得消費に回さなくても生活は維持できるという、消費の一巡という現象がやはりききましたし、また心理的な側面も大いにきいたんだろう、そのように思っております。  ですから、個人消費という面では、やはり消費マインドを回復させるために、日本の将来に対する不安を除去する。これは経済側面もありますし、年金とか健康保険とかその他の社会保障制度に対する将来の不安を除去するとか、そういう、経済そのものではなくて、外的な要因というものを除去するという努力を我々みんなでしなければならないという側面も、見逃してはならないと思っております。  設備に関しては、設備投資意欲が衰えたというのは、実際、設備過剰という面、あるいは国際競争力をなくしてきたという面のほかに、やはり経営者の将来に対する意欲とか起業家精神とか、そういうものが非常に失われてきたという心理的側面もまた、経済学という本来の学問の外で考えなければならない一つの大事な現象だろうと私は思っております。
  7. 山本幸三

    山本(幸)委員 大臣の御指摘、よくわかります。それで、ぜひ金融デフレ対策を、通産省からも私は声を上げてもらいたいというふうに思っているので、お願いしたいと思います。  もう一つ、二ページ目ですけれども日本経済の問題でちょっと指摘だけしておきたいんですが、日本経営者がしっかりした経営をしてきたかというと、私、ちょっと問題があるなとこれを見て思ったんですね。つまり、九二年から、日本の場合、非常に労働分配率が上がっちゃった。まあ、組合の機嫌をとった経営者が多くなったということでしょう。  それまでは恐らく、メーンバンク制があって、銀行が変なことはやらせなかった。ところが、資本自由化金融自由化ということで企業自分資金調達できるようになると、メーンバンクのそういう抑制が外れて、少し経営がゆるふんになってきた、これが出ているんじゃないかなと思っております。これと全く逆なのがアメリカとかイギリスでありまして、労働分配率はむしろ九二年水準から下げている。やはりここのところは、日本経営者はしっかり考えなきゃいかぬな、こういうふうに思っております。  では、電気業界ガス業界はどうかなと見たんです。下の方にありますが、これは九二年レベルにしていますから、それ自体が妥当かどうかというのがあるんですけれども、これで見ると、上の方、ちょっとパーセントの大きさが違うのでわかりませんが、電力会社によっては必ずしもちゃんとした経営をしているように見えないところもある、しかしよくやっているところもある。ガス業界は、全体としては労働分配率を九二年レベルからマイナスにしていますから、しっかり頑張っているのかなという感じがしております。  この辺もやはり経営者の方がしっかり考えないと、結局、労働分配率だけ上げておいて、株上がれなんていったっておこがましい話なんですね、株主を無視したような経営をやるわけですから。そこはどこかでバランスがあるんで、一方だけどんどん上がればいいというもんじゃないというふうに思っています。これはもう指摘だけしておきたいと思います。  それで、本題に移りたいと思いますが、私は、この電力あるいはガスの問題を考えるときに、非常な原体験がありまして、まだ役人時代に、一九七九年、第一回東京サミットがあったときに事務方でやっておりました。あのときに、日本石油輸入量を一気に数値目標を出して減らされるということが起こったんですね、六百三十万バレルから六百九十万バレルに。当時大平内閣田中六助官房長官で、もう内閣がつぶれるかもしれないというような決断を迫られたんですね。  そのときに大いに議論になったのが、これはいかぬ、石油に頼るわけにはいかぬということで、代替エネルギー議論が随分行われた。当然、原子力発電もどんどんやらなきゃいかぬ、あるいは自然エネルギー太陽光発電、あるいは間伐材を通じたようなものとか、風力発電とか、そういう石油に頼らないようなエネルギー源というものを求めていかなきゃいかぬという議論が相当なされて、そして、金が少しかかってもそういう方向を目指すんだという取り組みがなされたんですね。  私は、これは当然の話だなと思って、やはり流れは変わったと思っていたんですが、その後私も外国に行ったりして、そしていざ政治の場に出るようになりまして感じたことは、そのときの熱気はどうしたんだと。何か、あれから石油の値段がぐっと下がっちゃったものですから、また、のど元過ぎれば熱さを忘れるで、そういう危機感がない。  原子力発電なんて、あれだけやらなきゃいかぬと言っていた、フランスを見習ってというような議論をしていたのに、当時、原子力発電反対なんというのはそのときの雰囲気ではありませんでしたよ、にもかかわらず、今は全く反対ばかりの声が強い。あるいは風力発電とか太陽光発電とか、細々とやっているけれども政府政策として体系的にこれをちゃんと育てていくんだというような姿がどうも見えない。  あるいは、私の地元石炭の旧産炭地でして、今、石炭六法が期限切れを迎えてどうなるかという議論を一生懸命やっているところなんです。そのときに、じゃ、かつて石炭エネルギーで栄えたところだから新しい環境エネルギー産業を再生したらどうかという議論を起こして、まあ太陽光風力考えられるし、私はもう一つごみ発電もいいじゃないかというように思って、実際アメリカに見に行って、アメリカでは大量にごみを集めて、これを高熱で燃やして、そしてちゃんとペイしている。まさにそういうものを持ってきて、石油に頼らない代替エネルギーというのをちゃんと政策的にやっていくべきだと思っているんです。  そのときに、いろいろ調べてみると、例えばごみ発電でも、アメリカでは、電力会社はちゃんとそれを買わなきゃいかぬという法律ができて、それからごみ発電というのが大いに伸びたんですね。ヨーロッパでは、例えば太陽光発電風力発電、そういう自然エネルギー発電は、そういう電力電力会社が買わなきゃいかぬという法律があって、やはりそういうものが安定的に育つような環境にある。  私は、原子力の推進ももちろん必要だと思います。しかしこれも、では最終処分場問題どうするかという話も出てくるでしょうから、一定限界もあり得る。そうであると、やはりいま一度、代替エネルギー、新エネルギー自然エネルギーというものを政策的にこれからは育てていかなきゃいかぬ。必要があればコストの負担国民に求めるというのは、これは政治家がやらなきゃいかぬし、国民はある程度の負担は覚悟すると思います。私はぜひそういう方向物事考えてもらいたいなと思っているんですけれども大臣御所感をお伺いしたいと思います。
  8. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 確かに先生指摘のように、第一次石油ショック、第二次石油ショック、まあそういうものを経験した日本人は、脱石油というスローガンのもとに、あのころは、石油以外のエネルギー、あるいは化石燃料以外のところで自分たちの必要とするエネルギーを賄わなければならないということを真剣に考え原子力に行こう、新エネルギーに行こう、省エネをもっとやろうと、まああの熱気は今はないというのは御指摘のとおりでございます。  しかしながら、あの以降何が起きたかと申しますと、石油価格が大変高くなったために、各国石油を探そうという探鉱意欲というものが非常に高まって、その結果、世界石油供給力というのは、あの当時に比べましてはるかに大きくなったわけでございます。  あの当時は、OPECという組織が、まあ巨大な発言力を持っておりまして、OPEC動向に、私ども消費国としては一喜一憂していた時代もあります。しかし、物事は静かに進んでおりまして、日本が持っております原子力発電所は今や五十二基か三基になっておりますし、実際の発電量でも、ある会社をとれば、まあ五一%と半分以上原子力発電をしているということでございます。  今回、長期エネルギー計画というものの中で、さらに原子力をふやそうという意欲的な計画も我々持っております。ただ、これも大変難しいのは、やはり立地点における地元方々理解をいただきながら、秩序立ててこの原子力発電所の建設をやっていかなければならないという、大変時間のかかる仕事を通じてやっているわけでございます。  ただ、新エネルギー開発について計画的に大規模にやっているのかというお話がございましたが、太陽光発電風力も地熱も、そういう地道な研究はやっております。特に、家庭で利用いたします太陽光発電、これにつきましては相当技術が進んでおりますし、また、初期の立ち上がり段階では、そういう機器を製作する上での量産効果が出てまいりませんので、一部通産省中心となって、そういうものを導入される家には補助金を出すという制度もできております。  私どもとしては、従来の化石燃料による発電あるいはエネルギーの確保のほかに、原子力あるいは省エネあるいは新エネルギーというものの全体の組み合わせの中で、やはり日本人が必要とするエネルギーを確保していかなければならない。今は表に出てまいっております熱気はございませんけれども通産省あるいは資源エネルギー庁としては、黙々とその方向に向かって進んでいるということを、ぜひ先生に御理解をしていただきたいというふうに考えております。
  9. 山本幸三

    山本(幸)委員 今は表に出ていないということですが、ぜひ表に出るように、場合によっては、そういう自然エネルギー電力電力会社に買ってもらうんだというような政策方向としてぜひ考えていただきたい、そのことを要望しまして、質問を終わります。
  10. 古賀正浩

  11. 島津尚純

    島津委員 民主党の島津尚純でございます。おはようございます。電気事業法及びガス事業法の改正法案につきまして、質問をさせていただきたいと存じます。  この二つの法律につきましては、先般の本会議の質問で総理と与謝野通産大臣に御答弁をいただきましたので、今回は、その答弁を踏まえまして、さらに詳細について質問をいたしたいと思います。  まず、細かい質問に入ります前に、通産大臣に、我が国の総合的なエネルギー政策についてどのようにお考えになっておられるかということをお尋ねしたいわけであります。  エネルギー資源を持たない我が国にとって、エネルギー政策は国の根幹をなすものであると思います。また、二十一世紀の世界において、地球環境問題は政治の最大のテーマになってくるだろう、このようにも考えるわけであります。地球温暖化防止、経済成長、そしてエネルギーの確保といったこの三つの課題を同時に達成するバランスのとれた総合的な対策が不可欠である、このように思うわけでありますが、このエネルギー政策大臣はいかなる構想を持って遂行されようとするのか、また、今回の電気・ガス事業法の改正がその総合的なエネルギー政策の上でどういう意味を持ち、位置づけをされるのか。  この二点について、まずお尋ねをさせていただきたいと思います。
  12. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 我が国のエネルギー政策においては、次の三つの要請を満たすことが重要であると考えております。  まず第一に、エネルギー資源の大部分を輸入に頼らざるを得ないという脆弱なエネルギー供給構造にかんがみ、エネルギーセキュリティーの確保を図ること。第二に、地球温暖化問題は、エネルギー消費と密接不可分の関係にあることから、気候変動枠組み条約第三回締約国会議、すなわちCOP3における合意を踏まえまして、エネルギーからよって立つ二酸化炭素の削減を図ること。第三には、経済構造改革等の観点から、エネルギー分野における一層のコスト低減を図ること。この三つでございます。  こうした三つの要請の同時達成を図ることを基本目標として、昨年六月に改定されました長期エネルギー需給見通しを踏まえまして、エネルギー需給両面における対策を総合的に講ずることとしております。  具体的には、需要面では最大限の省エネルギー対策を講じ、供給面では原子力、新エネルギー等の非化石エネルギーの導入等に最大限努力をするとともに、規制緩和によるエネルギー産業の供給効率化に取り組むこととしております。  特に、現在独占の認められている電気事業、ガス事業について、経済構造改革の一環として、平成十三年までに国際的に遜色のないコスト水準を目指すべく、一層の競争導入を促進すると同時に、料金引き下げ時に届け出制を導入する等の料金規制の見直しを行うこととしております。
  13. 島津尚純

    島津委員 私があえて冒頭にこういうふうな質問をさせていただきましたのは、近年、この商工委員会において、私は実は何度もこのような問題を取り上げて質問させていただいたわけであります。  例えば、電力において競争力の導入を図るべきだ、そのような話になってきますと、さあ、じゃIPPを入れよう、こういうことで、例えばIPP卸入札、もう始まっておりますね。電事審なんかのいろいろな話し合いの結果を見ますと、日本では五千万キロワットぐらいのIPPの導入が可能であろうというような数字で、積極的にやっていこう。今度はCOP3で京都会議がある、二〇一〇年までに六%のCO2の削減をやらなきゃいけないというふうになってきますと、それは大変だということで、二〇一〇年までに、とても私たちはできそうもないだろうというような、原子力発電所を二十基建設しよう。  こういうふうになってきますと、その時々で、言うならば場当たり的な政策を打ち出していって、本当に後ろにグランドデザインというものがあるんだろうかということを、よくいろいろな方に尋ねられるわけでありますので、通産大臣にこのようなお尋ねをしたわけであります。以前の委員会でも、私がこういう質問をしますと、そのとおりです、ですからぜひそのような整合性のとれた政策を必ず行ってまいります、このような御答弁を幾度もいただいておるわけでありますが、一向にそのような整合性のとれた政策というものを拝見することができないということであります。  そのようなことでありますので、ぜひ大臣、具体的な問題について今どのようにお考えになられるか、お尋ねをしたいと思います。
  14. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 まず、経済成長とともに、ある一定エネルギー消費が当然予想されるわけでございます。すなわち、両者の関係には一定の値の弾性値があるというのは、先生理解をいただけると思うわけでございます。  ただ、その弾性値を低くするための省エネということについては、我々は一貫して省エネ対策というものをやってまいりましたし、また、産業界でも、あるいは例えば家庭で使う電気製品についても、省エネという精神は非常に取り入れられております。資源的な制約をまずそういう省エネという点で乗り越えようということは、ここ三十年ほどの一貫した思想だと私は思っております。  それからもう一つ原子力の導入でございますけれども、当初と比べまして、原子力の導入というのは、技術の問題というよりはやはり立地の問題でございます。この立地について、当該立地地点の住民の皆さん、あるいは当該立地地点の周辺の市町村の方々の御理解をいただきながら進めるということを慎重にやっておりますので、それは長期エネルギー計画に掲げました目標の、例えば原子力発電所の基数を達成するためには、相当な努力が必要であることは言うまでもありません。  それと、かてて加えまして、ここ十年ぐらいは、やはり環境的な制約というものが出てまいりまして、先生が御指摘になったように、炭酸ガスの排出、温暖化に寄与すると申しますか、温暖化の方向で出てしまういろいろなガス等の規制に関しては、世界的にこれを抑えようということになっております。  我々が直面しておりますのは、一つは、日本人の、国民生活がよくなるに従って、エネルギー需要が今後も少しずつはふえていく、そういう経済成長との関係でのエネルギーの問題。あるいは、日本に資源がないということで、資源的な制約の中で、どのエネルギーとどのエネルギーを組み合わせることが最適な組み合わせかという問題。それと同時に、環境上の制約というものが出てまいりましたから、そういうもろもろのことを考えながらやっておりまして、決してその都度その都度通産省政策が変わってきているわけではありません。  大変残念なことに、日本は資源のない、特にエネルギー資源のない国でございまして、そういう中で、日本人生活に必要な、あるいは日本人経済活動に必要なエネルギーをどうやって今後も確保していくかということは、日本経済を支える最も大きな課題の一つだろう。私はそのように思って、エネルギー政策に取り組んでいるわけでございます。
  15. 島津尚純

    島津委員 いろいろな問題があるわけでありますが、整合性のとれた政策というものを実行していただきたいということをお願い申し上げて、次に進ませていただきたいと思います。  このたびの電気事業法の改正は、平成九年五月に経済構造の変革と創造のための行動計画が閣議決定され、その中で、電気事業については、平成十三年度までに国際的に遜色のないコスト水準を目指すというような方針が決定をされ、その後、そのための電力供給システムの見直しということで電事審に諮問をされ、約一年半の審議の結果を経て今回の改正となったものというふうに考えるわけであります。  自由化されて新規参入者がふえる、そのために競争が非常に促進されるということは歓迎をされるべきことであるというふうに思います。しかし、その自由化の流れの中で危惧されることは、我が国の高い供給信頼度が損なわれるのではないかということであります。  私は、平成九年の六月、この商工委員会において、電事審に諮問をされるちょっと前のことでありますが、このような同じ問題を質問申し上げたことがあるわけであります。そのとき、政府委員の方は、供給信頼度を損なうことなくして、オーバースペックや過剰な保安規制の見直しなどによってコストの削減を図っていく方途を追求すべきであると、私は立派な回答だと思いましたね、そのようなお答えをなさいました。  その後にお尋ねをした当時の佐藤通産大臣は、このようにお答えになったわけであります。確かに日本は安定供給をしてもらえるけれども、海外に比べて料金が高い、これでいいのか。停電が少ない、だから料金が高い、どちらがいいか率直に、国民にでしょうね、問いかけるべきだといった答弁をなさいまして、事務当局と大臣との間の考え方の違いに実は私は驚いたことがあるわけであります。  そこで大臣にお尋ねを申し上げたいわけでありますが、今申し上げた問題について大臣はいかようにお考えになられるか、お尋ねを申し上げます。
  16. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 電気というものにも実は質というものがございます。これは、一つは停電しないということは当たり前のことでございますが、そのほかに、電圧が安定している、周波数が安定しているということも必要な要素でございます。  そういうことでございますから、独立して卸売をやる電気事業者が出てきていただいても、これは大歓迎でございますし、今回は小売ということも、これも大歓迎でございますが、やはり供給を受ける側としては電気の質の問題もまた大事な要素であると思っております。  日本電力の歴史というのは、実は最初は乱戦ぎみでございまして、東京では多分二社ぐらいが、裏のうちは何々電灯から、隣のうちは何々電灯からといって、別の会社がその電力を供給していた時代もございます。その後、乱売合戦とかそういうことは決して好ましいことではないということで、地域独占という考え方ができてまいりました。地域独占の中の考え方は、独占はさせるけれども、料金はコストプラス適正報酬という形で電気料金を設定しろというのが基本的な考え方であったと私は思っております。  したがいまして、今回も、独立業者が卸売あるいは小売へと参入してまいりますけれども、やはり供給者としての責任、あるいは卸売、小売としての責任というものは当然供給者側にあるわけでございまして、そういうものを自覚的に考えながら卸売、小売というものをやっていただかないといけないと思っておりますし、卸売、小売といっても、既に過去に投資された送電線等を通じて供給するわけでございますから、送電線の建設の償却費等に応分の負担をするということは当然のことだろうと私は思っております。  しかしながら、独立したそういう業を始めようとされる方は、立地地点を有利なものを持っているとか、国民経済的には効率性を享受できるようなさまざまな条件を持っておりますから、そういう面で、独立した卸売、小売というものを今後大いに歓迎する気持ちでやってまいりたい、私はそのように思っております。  ただ、電力のコストというのは比較的厳密なものでございまして、大きく言えば、一つは固定費、一つは燃料費、一つは人件費という構成要素で成立しておりますから、過去行われた固定費というものは、もう既に行われてしまった投資でございますから、その部分を下げるということは極めて困難な問題を含んでいるということだけは、ぜひ御理解をいただきたいと思っております。
  17. 島津尚純

    島津委員 ただいまいろいろお話をいただいたわけでありますが、私の質問の核心といいますのはそうではありませんで、大臣は冒頭に、停電しないことは当たり前のことだというふうにおっしゃったのですね。実は世界から見ると、これは当たり前ではない話だと思うのです。日本が特異な例だ。  欧米は一年間に約八十分の停電時間。日本は七分ですね。例えばアメリカでは、カリフォルニアにおいて六時間の停電があった。ニュージーランドにおいては、私はこの前本会議で申し上げましたけれども、二カ月間の停電があったとか、輪番停電制をやるとか、そういうふうなことが何か当たり前みたいになってしまっている。我が国はそういう世界を目指すのか、それともそういう国が日本のような国を目指すのか、どっちなのだという質問を実は申し上げておるわけであります。
  18. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 電力の供給は、先般のニュージーランドの例を見ましても、長い間電気がとまるというのは大変なことでございます。やはり日本は質的に高い電気を国民も期待しておると思いますので、停電のない、そういう電力供給が行われるということは国民の期待でありますし、また供給者側の責任でもあると思っております。  ただ、それを行うためには、発電所の建設、あるいは送電系統の整備、保守点検、もろもろコストがかかることは当然のことでございます。
  19. 島津尚純

    島津委員 日本が誇ります安定供給ということについてひとつ配慮をしながら、やはり自由化促進ということに取り組んでいただきたいということを申し上げたいと思います。  次に行かせていただきたいと思うわけですが、プール制の導入、創設、この問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  本会議の質問に対して総理は、三年後の見直し検討のときに、このプール市場の創設についても検討をするという旨の答弁をされたわけであります。  これについてですが、一年半かかって話し合ってきた電気事業審議会の中では、中間的な取りまとめ、整理の中において、全面自由化あるいはプール制の導入は現状では不適切で、時期尚早である、このようにまとめられております。これは、プール制あるいは全面自由化が公益的課題と両立するような著しい情勢の変化、例えば国内において大規模なエネルギー資源の発見などがあったとか、そういう情勢の変化がない限りこれを採用すべきではないということを確認したものだというふうに広く理解をされているわけであります。  また、九〇年に英国でいち早くプール制を導入されているわけでありますが、英国の例を見ましても、今日、電気料金が思ったより下がらないというようないろいろな理由から今見直しが進んでおりまして、聞くところによりますと、遠からず現在のプール制は廃止をされるというふうにも聞いておるわけであります。  このような現状を踏まえたとき、総理が答弁されたプール市場の創設が、我が国において本当に将来有望なシステムになり得るのか否か、甚だ疑問に思っておるわけでありますが、このプール制の導入について、現時点で政府はどのような評価をなさっていらっしゃるのかをお尋ねしたいと思います。
  20. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 お答え申し上げます。  昨年五月の電気事業審議会の中間取りまとめの内容は先生指摘のとおりでございまして、現状では不適切で時期尚早、将来の検討課題という位置づけでございます。  この中間取りまとめにおきまして、理由としておるものが三点ございます。一つは、市場参加者が極めて膨大になるため、必ずしも安定的な供給を行い得ない主体が参入する可能性や、供給信頼度維持のためのシステム、ルールの設定について時間を要するというのが第一点でございます。また第二点は、発電・送配電設備運用システムの大幅な変更が必要になるという点でございます。それから第三点は、エネルギーセキュリティー、環境対策のために望ましい電源構成について、より強制的な特定電源対策など、さらに強固な対応が必要となるという点が指摘をされてございます。  したがいまして、今般の制度改革においては部分自由化を提案させていただいておりまして、いわゆるプール市場の創設につきましては、三年後の検証の段階で、先生指摘がございましたが、海外の自由化の動向あるいはこのプロセスの中での公益的課題への影響、そういったものを見きわめた上で客観的に検討することとしております。  現段階では、先ほど申し上げました審議会の中間取りまとめと同じような見解を政府としては持っております。
  21. 島津尚純

    島津委員 私、このプール制の導入についての質問をさせていただきましたのは、さきの本会議での質問におきまして、総理と通産大臣の御答弁の中に若干微妙な違いがあったから申し上げたわけであります。  総理は、まず、三年後の見直しのときに検討課題とするということを率直におっしゃった。通産大臣の方は、検討はするけれども、いわゆる遠い将来の課題であるというようなニュアンスのお答えをなさった。私は、電事審のこの中間的な取りまとめからいきますと、通産大臣のお答え、御答弁の方がそのとおりだろうというふうに思っておりましたので、きょう聞かせていただいたわけでありますが、稲川長官からそのような旨のお答えをいただきましたので、結構だ、このように思う次第であります。  次に、海外の国際機関の対日審査のいろいろな報告等々についてお尋ねをいたしたいと思うのです。  今回の一連の電気事業法改正は、九六年のOECDの規制改革に関する報告書が発端になっているということは間違いないというふうに思うのです。ことしの四月にOECDは、日本の規制改革に関する報告書というものを出しています。また三月にはIEAが、日本エネルギー政策に関する報告書を発表しております。この対日報告書を読みますと、相変わらず、発電、送電、配電をばらばらにすべきだとか、あるいは一般家庭まで自由化をすべきだというような内容になっているのであります。  少なくとも、先ほどから申し上げているような一年半の電事審の議論を見ますと、電力会社をばらばらにするとか、あるいは一般家庭まで自由化を進めていくというような話はどこにも出てこないわけでありまして、こういった対日審査の報告書が出てくるのは、政府あるいは通産省というのはそのような国際機関に対して、我が国のエネルギー政策の進むべき方向やあるいは我が国の事情といったものについて、十分に説明をされて、きちんと主張をされているのか疑問に思わなければならないというふうに思います。  ですから、これらの国際機関に対して、我が国の状況理解してもらうために今日までどのような努力をなさってきたのか、ぜひ聞かせていただきたいと思います。
  22. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 御指摘のございましたIEA、OECD対日審査報告の勧告部分でございますが、この勧告部分におきましては、今回の電事法改正による小売の部分自由化の導入につきまして、自由化部門及び非自由化部門の両需要家に利益をもたらすものとして一定の評価をいたしてございます。その上で、規制部門と非規制部門の会計の分離、あるいは非差別的なネットワークへのアクセス条件等の確保を勧告しているのが第一ステップでございます。  それから、御指摘のございました完全自由化、発送電分離につきましては、今回の御審議を賜っております部分自由化の後、一定期間を経た後に、この部分自由化の成果を見ながら、かつ、他の政策目的との整合性を図りながら、選択肢、オプションの一つとして検討すべき、かような指摘にとどまっているわけでございまして、決してこれを直ちに行うべきものとしている内容ではございません。  昨年、IEA、OECD共同で対日審査がございました。資源エネルギー庁のみならず関係省庁がこれに対応いたしたわけでございますが、その後、最終的な報告書の完成に至るまで、パリの事務局それから我々、それぞれOECD、IEA事務局側との意見交換を繰り返してございます。  こうした結果の内容を見ますと、我が国の立場、考え方につきましてそれなりに適正に反映をされた、少なくとも我々の今回の部分自由化の試みについては評価をするというところからスタートをしているということを御報告申し上げたいと思います。
  23. 島津尚純

    島津委員 稲川長官、御承知のように、我が国と欧米のエネルギーに関する国情というものは全く相違をしておるわけでありまして、日本は本当に、ウランも海外から入れているわけですが、それも除きますと、エネルギーの自給率というのはわずか六%というような状況であります。あるいは負荷率が日本は低いとか、そういうふうな特別な事情があるわけでありまして、私はやはり、日本型のエネルギー政策日本型の電力供給システムということは当然あってしかるべきだろう、このように思うわけであります。何も、多数がそういうことを言っていると、グローバルスタンダードに日本の根幹にかかわるような政策を合わせる必要は全くない、堂々と主張すべきである、私はこのように思うわけであります。  次に進ませていただくわけでありますが、このような自由化が進んでまいりますと、新規参入事業者というものが参入をしてこられるわけでありますが、その新規参入者に対するリスクへの対応ということについて御質問をいたしたいと思うわけであります。  自由化によって新しい参入者が市場に入ってこられるということは歓迎をすべきことであるわけでありますが、懸念されることは、新規参入者の大部分が、残渣油や石炭などを燃料としたいわゆる化石燃料中心として発電をすることによって参入するというようなことを検討されておるわけであります。  今後、アジアの経済が再び成長軌道に戻ったときに、エネルギー需要は大変増大をしてきて、需給関係というものはタイトになるだろうというようなことが専門機関で指摘をされておるわけでありますが、このような何らかの要因によって化石燃料価格が高騰をした場合に、新規参入者が本当に責任を持って供給をし続けることができるのかどうかということを不安に思うわけであります。  現実に、ことしの二月に、東京電力のIPP入札の落札をしていたゼネラル石油が、環境対策コストの負担増によって突然プロジェクトを中止するということを発表したのであります。五十四万キロワットの供給に穴があいたわけであります。このようなことがスタートしたもう今から始まってきておるわけでありますが、例えばこれからIPPだけではなくて新規参入者が多量に市場に参入したときに、このようなことが続いて起こらないという保証はないわけであります。このようなことになれば、恐らく大規模な国民経済への損失とか影響を与えることになるというふうに考えるわけであります。  これらの緊急事態に対するリスクマネジメントについて、どのようにお考えになっていらっしゃるのかをお尋ねしたいと思います。
  24. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 今回の制度改革は、電気事業の効率化のために、経営自主性の最大限の確保を図る、他方で行政介入の最小化を図るという二点でございますが、大口需要家の選択の機会を片方でふやし、新規参入者の創意工夫が発揮できるという制度の構築でございます。  御指摘のございましたゼネラル石油のIPP退出の例がございましたが、これは環境コストについていささかの配慮を怠ったという極めて異例な例であろうというふうな考え方をしてございますが、今回の制度改革の理念によりまして新規参入者の電力供給の確実性をどう見るかという点につきましては、一義的にはこれを決める需要家自身が自己責任で判断をして供給者を選択する、かような仕組みであるというふうに理解をいたしてございます。  他方でもちろん、こうしたリスクのある場合の需要家保護という観点も必要であろうかと思いますが、電気が必要財でありますことから、いずれの供給者とも交渉が成立しない需要家については、この改正法におきまして、区域の電力会社による最終保障制度を設けることを御提案させていただいているところでございまして、この制度のもとでは、区域の電力会社に最終保障義務がかかるとともに、行政による料金チェックを行い、必要最小限の需要家保護を図る、かような仕組みでございます。  ただ、いずれにしましても、御指摘のございました新規参入者の電力供給の確実性をどう見るかという点につきましては、一義的に需要家の自己責任による判断に基づくという考え方でございます。
  25. 島津尚純

    島津委員 ただいまの御答弁の中で、ゼネラル石油等々は本当にまれな、特異なケースだろうというようなお話がありました。しかし、自由化が進んでおる欧米の状況をつぶさに見ていますと、私は、決して少数のことではないというふうに思います。  といいますのは、欧米の新規参入者は、日本もそうだろうと思いますが、言うならば社会的な、公的課題を果たすとかそういうふうなことはわずかなことであって、ほとんどの参入者が、これはうまい事業だから利益を目的に入ってくる。ほとんどの人たちが、言うならば長期的な投資をやるという観点は全くなくて、短期的な利益そのものによって参入をしてくるということがほとんどの例だというふうに思います。  ですから私は、決してこれはまれな例ではないということを指摘させていただきたいのが一つと、先ほど申された最終保障をしておりますということでありますが、これに対してもちょっと疑問を申し上げたいと思います。  今回開放された、自由化された大口需要家に対しては、電事法の第十八条一項における、今まで電力会社が供給義務を法的に義務づけられておったわけでありますが、今回の改正において大口需要家に対しての供給義務は外されたのです。供給義務はもうなくなったわけです。そうすると、最終保障において何かあった場合にはカバーするということですが、最終保障と十八条一項の供給義務とは全く性格が違うと思うのです。  最終保障の場合は、例えば最終保障するために、その保障をするための予備の設備を法文上設けなさいというような条文は全くないということだし、また、そういうふうな規定をしたならば今回コスト削減をしようという意味が全くなくなるわけでありますから、ある意味では、電力会社の都合によっては、これは最終保障できませんということも言えるような規定になっているのではないかというふうに思うわけでありますが、長官、その辺はどうでしょうか。
  26. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 小口需要家に対する一般の供給義務と、大口需要家に対する最終保障義務との違いの認識でございますが、小口需要家は、制度上、電力会社以外の供給者を選択できませんために、需要家保護の必要性が強いという要素が当然ございます。他方で、大口需要家については、原則自己責任によって供給者を選択することが可能でありますが、電気という財の特性から、仮にだれからも供給を受けられない場合に、必要最低限の需要家保護を図るという意味での最終保障義務というものと、二つの性格の差がございます。  こうした必要最低限の需要家保護としての制度の趣旨にかんがみまして、電力会社に小口需要家と同じレベルの厳格な供給義務を課した場合には、御指摘のとおり、電力会社は過大な予備力を抱えざるを得ず、供給の効率性が低下をする。また、ひいてはその負担が小口需要家に悪影響を及ぼすこともあり得るということでございますので、大口需要家に対する予備率につきましては、小口需要家に対する予備率に比べて当然低いものになるという前提でございます。  そうした点を踏まえて、最終保障約款というものの扱いを考えていきたいと考えております。
  27. 島津尚純

    島津委員 わかりました。制度が始まればいろいろな問題がこれから起こると思いますが、先ほど大臣も御答弁いただきましたように、安定供給というような、供給に支障のないような体制をぜひおつくりいただきたいということをお願い申し上げておきたいというふうに思います。  では次に、時間が迫ってまいりましたので、ガス事業法に質問を移らせていただきたいと思います。  ガス事業法の場合は、電力に対しまして、三年前から実は自由化がスタートしておるわけでありまして、三年前、ガス事業法の改正によって二百万立方以上の大口需要家の自由化がなされ、今回、その三年後の見直しということになったわけであります。  この三年間の自由化の状況を見たときに、二百万立方の大口需要家に対する販売量というものは全体の三七%ということで、大変大きな市場というものを開放したことになる、思い切った改革であろうというふうに思ったわけでありますが、それに対して三年間にどのような新規参入の実績があったかといいますと、平成九年度の実績で、大口供給販売量が年間六十五億立方でありますが、それに対して新規参入の実績は一億八千万立方ということで、二・九%いうふうな数字になっておるわけであります。  お尋ねしたいのは、この新規参入の実績ということについてはそれぞれ評価が分かれるというふうに思うわけでありますが、政府としてはこの数字をいかように評価をなさっていらっしゃるかというのがまず一点であります。  もう一点は、今回、三年後の見直しということで二百万立方を百万立方までさらに拡大するということで、これも大変結構なことだろうというふうに思うわけでありますが、しかし、窓口を、市場を広げるということだけでは成果が期待されるわけでもないわけでありまして、まず私は、今までおくれておった問題に果敢に取り組んでいくということがやはり大事だろうというふうに思うわけであります。それは、一つは全国的な導管網の整備、そして二つは未整備であった託送ルールの明確化、整備、そして三番目に事業者間のガス種の統一というようなことがなされなければ、なかなか一定の成果というものは上げることができないのではないかな、このように思うわけでありまして、この点についてどう対処されようとしておられるのか。  この二点について、お尋ねをさせていただきます。
  28. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 大口ガス事業に新規参入をいたしますには、天然ガスの調達が前提になることは当然のことでございますが、多くの場合、導管の敷設が必要になる等、その他各般の条件が必要であることは事実でございます。  こうした中で、現在、一般ガス事業者以外の者による大口供給は、一般ガス事業者の供給区域内にかかわるもので五件、供給区域外にかかわるもので三件、合わせて八件が実現をいたしてございます。大手三社の新規大口需要家獲得数が合わせて四十三件という数字と並べ比較いたしましても、一定の実績を上げつつあるもの、かように認識をいたしてございます。  また、今後の普及につきまして御指摘がございましたが、導管あるいはガス種の問題についての努力は今後も続けたいと思いますが、さらに今回の改正法案におきましては、大手一般ガス事業者に関して、託送にかかわる約款の届け出、公表等の措置を講ずることといたしてございまして、新規参入者が、独自の導管を敷設せずに、大手一般ガス事業者の導管を活用して大口ガス事業に参入することが容易になるということで、さらなる活性化が図られることを期待しているところでございます。
  29. 島津尚純

    島津委員 ありがとうございました。三年の間に一定の実績を上げたというような評価だということでありますが、今私が申し上げたような三点、四点についての対策についてぜひ積極的に取り組んでいただいて、これから始まる三年の間に大きな成果を上げていただくことをお願い申し上げたいというふうに思います。  次に、公益的な課題の確保ということについてお尋ねを申し上げたいと思うわけであります。  先日の本会議において、総理及び大臣から、今回のガス事業法改正は公益的課題の確保を前提に一層の効率化の要請にこたえるものであるという旨の答弁をいただいたわけであります。しかし、ガス事業に関する公益的な課題である安全性や安定供給の確保ということを達成するための具体的な方法というものが、電気事業に比べると明確ではないというふうに思われるわけであります。  つまり、電気事業法においては、今回の改正におきましても、バックアップ体制であるとか給電指令であるとかそういった具体的な方法によって公益的な課題というものを確保していこうということで、より具体的に打ち出しているわけでありますが、どこを探しても今回のガス事業法の改正においてはこのようなものが見当たらないということでありまして、これでいいのだろうかというふうに私は思うわけでありますが、その辺をお尋ねしたいと思います。
  30. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 ガス事業におきます公益的課題は安定供給と保安の確保であるという御指摘はそのとおりでございまして、今回のガス事業制度改革に当たっても当然の前提としているところでございます。  具体的な手段につきましては、安定供給の確保につきましては、中小都市ガス事業者が天然ガス等の導入をする際の財政上、税制上の支援策を従来から講じてございますが、この措置をもってさらに熱量変換が進むことを期待しているところでございます。  また、保安につきましては、最近この保安のレベルが非常に向上してございまして、事故件数、死亡者数等々を見ましても、この二年間で大幅な減少をいたしてございます。こうした状況にかんがみまして、通商産業省関係の基準・認証制度等の整理及び合理化に関する法律案としてこの国会に御提案を申し上げてございますが、事業者の自己責任による安全確保を原則とする保安制度で全体的な見直しを行うこととしてございます。これは現在の安全水準を考慮したものでございますが、自己責任に基づいた保安体制によってさらにこの水準が向上されるものというふうに考えてございます。  こうした内容で、公益的課題達成のための仕組みを前提としながら、効率化との両立を図り得るものと考えてございます。
  31. 島津尚純

    島津委員 次に、天然ガスの導入促進といった局面の質問を申し上げたいと思うのですが、天然ガスというのは化石燃料の中で大変環境に優しいエネルギーであるということで、脚光を浴びておるわけであります。  例えば、電力発電の分野におきましても、天然ガスというのは恐らく二三%か四%ぐらいの比率を持った燃料なわけでありますが、この天然ガスにつきまして、やはり大幅な導入促進というものが、各方面で、環境を大事にするというような面からも期待をされておるわけであります。  二〇一〇年に向かっての長期エネルギー需給見通しが改定をされたわけですが、その伸び率を見ますと、こんなものかなというような印象を与えるわけでありまして、例えば原子力にいたしますと、現在、発電に占める原子力の比率というものは三四%で、二〇一〇年までにこれを四二%まで持っていくということなんですが、恐らく天然ガスにおいては数%しか比率の伸びがないというような状況だと思うのですね。  これで本当にいいのかな、期待されるエネルギーでありますから、もっと積極的に導入を図るべきではないかというふうに思うわけでありまして、政府は、我が国の総合的なエネルギー政策上、天然ガスをどのように位置づけて、そして積極的に導入を図っていこうとされているのか、その辺のことを聞かせていただきたいと思います。
  32. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 天然ガスが持つ特性につきましては、先生指摘の、炭酸ガス排出原単位が化石燃料の中では小さいという趣旨の環境に優しい側面がございますが、さらに、セキュリティーの観点からは、我が国への供給源が比較的安定した地域、政治的にも安定した地域であるというような供給の安定性の側面がございます。こういう観点から、天然ガスの自主開発をさらに推進しながら、安定供給確保に向けた取り組みを行っていくというのが昨年の長期需給見通しをベースとした物の考え方でございます。  この長期需給見通しにおきます天然ガスの一次エネルギーにおきますシェア、一次エネルギーの中のシェアでございますが、一一%から一三%に、二〇一〇年に向けて伸びる前提でございます。この一次エネルギーの前提の数字で見ますと、例えば原子力は一二%から一七%という数字でございまして、決して一一%から一三%の伸びというのが小さい数字ではなく、むしろ、LNGの形で日本に持ってまいりましたときの立地制約でありますとか、それから都市ガスで使う場合の各地で行われるべき熱量変換などの努力等を考えますと、かなり大きな数字と我々は理解をいたしてございます。  今後、この天然ガスの供給基盤の整備が課題でございますが、先ほど御紹介を申し上げましたガス事業者の高カロリー化の支援等、従来から予算措置や税制上の支援を行ってきているところでもございまして、こうした政策手段を活用して天然ガスのさらなる導入の推進に努めてまいりたいと考えてございます。
  33. 島津尚純

    島津委員 天然ガス導入に一生懸命頑張っていらっしゃるというようなお話なんですが、それに関連しまして、天然ガスについてさらに質問をさせていただきたいわけであります。  我が国が天然ガスを海外から買い付ける場合に、まず液化をして、そして船で運んで、さらに日本に持ってきて気化をして供給する、こういうふうなややこしい手順を踏むということがガス料金の内外価格差の最大の原因であるというふうに思います。こうした問題を解決するために、中長期的な視野で、海外から輸入パイプラインを引いて持ってくるということも大きな選択肢の一つだろうというふうに思うわけであります。  現在、シベリアであるとかサハリンであるとか、いろいろなプロジェクトがあるわけでありますが、そのようなプロジェクトの中で、エネルギーの安全保障の観点であるとか、経済性の問題であるとか、安定供給性であるとか、そういうようないろいろな分野のチェックをして、実現の可能性のあるようなプロジェクトというものがあるのかなというふうに思いますし、私は、ぜひあってほしい、積極的に取り組んでほしいと思っているのですが、その辺を聞かせてもらいたいと思います。
  34. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 天然ガスを利用するに際して、現在我が国はLNGの形を多く採用してございますが、これは輸送距離との関係でございまして、天然ガスの現在の供給地から、東南アジアあるいは中東まで考えますと、非常に遠距離の場合で、パイプラインにはむしろなじまないという前提でございます。  しかし他方で、近距離の場合には当然パイプラインという手法が有効でありますし、また、各種の供給手段、あるいはエネルギーの受け手としてのいろいろな手段という観点から、各種の手法を持つことが適当であろうか、かように考えてございます。  今、可能なプロジェクトというお話でございますが、一つはサハリンにプロジェクトがございます。また、構想の段階では東シベリアのところに、ロシア、中国あるいは韓国等々を含めてフィージビリティースタディーを進めているプロジェクトがございます。さらに、遠くはカスピ海の沿岸のプロジェクトがございます。  我が国として、日本国内にまでパイプラインを持ち込んでこようかという案は、サハリンのものが一つであろうかと思いまして、現在、コマーシャルベースで、それぞれ関係者がそのフィージビリティーを検討しているところでございます。
  35. 島津尚純

    島津委員 長官からサハリンやシベリアというお話があったわけでありますが、私は、このロシア・シベリアというのは、世界に残された最後の資源の宝庫であると思います。そして、ロシア経済日本経済を見てみますと、相互補完関係にあるのがロシアと日本経済関係だ。ロシアには資源はあるが技術も資金もない、日本は資源はないが技術と資金はあるということで、協力関係が結べる経済関係にあるというふうに思います。そしてまた、日本は資源の乏しい国でありますから、いろいろな国から資源の供給ルートをつくっておくということは日本の安全保障上大変重要なことだろう、このように思います。  そういうことで、ぜひ、サハリン・パイプラインあるいはシベリアといった問題を積極的に取り組んでいっていただきたいし、特に与謝野通産大臣には、その方面にも大変お強いと聞いておりますので、そういうふうな取り組みをしてもらいたいと思いますが、最後に大臣、いかがでしょうか。
  36. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 現在、日本に対して天然ガスを供給したいという国はたくさんございます。サハリン以外は遠隔地でございまして、これは液化して日本に運ばざるを得ないという問題がございます。恐らく、サハリンと日本の間は比較的距離が短いわけですから、仮に、経済性が高い、あるいはフィージビリティースタディーをやって可能であれば、そういう構想も私は注目に値すると思っておりますが、まだまだフィージビリティースタディーも初期の初期の段階でございまして、それが実現する方向に動くか動かないかというのは、にわかには御返事はできませんけれども、ある種の可能性を示しているプロジェクトであると私は思っております。
  37. 島津尚純

    島津委員 長時間ありがとうございました。これで質問を終わらせていただきます。
  38. 古賀正浩

    古賀委員長 渡辺周君。
  39. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 民主党の渡辺周でございます。  ただいま我が党の島津議員より質問がございました。私も実は昨年に、島津議員、さらには商工委員会にかつておりました吉田治議員と一緒に、ニュージーランドあるいはオーストラリアというケーススタディーを、他国の例を見てまいりました。日本の今回の法改正と、もともとが民営化を進めてきたニュージーランドと、また若干事情が違うわけでありますので、その点につきましてはもちろんわかった上で、幾つかの点につきまして、重複を避けて御質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、政策実行のタイミングについてお尋ねをさせていただきます。  平成七年、電気事業法の第一次改正が行われました。入札によりますIPP、いわゆる独立系発電事業者、卸供給者の発電部門への参入が始まったわけでございますが、効率化、合理化に伴いまして、設備投資も、ピークであった平成五年の、重電力と電発を合わせて四兆九千三百四十億円、おおよそ五兆円が、五年後の平成十年度は三兆六千七百七十億円、およそ三兆七千億円にと、一兆二千七百億円圧縮されました。  これだけでも電力会社の効率化が相当促進されてきたということになるわけでありますが、資材、機材購入コストの低減や事業運営の合理化などもさることながら、計画の繰り延べによることも大きいのではないか、そのように考える次第でございます。電力会社の効率化もさることながら、そこに製品を納入している製造企業のコストダウンも求められたわけでありまして、くしくもこの独立系発電事業者、IPPの参入で熾烈な競争があったと聞いているところであります。  そのために、電気産業の重電部門は、発注量の減少とともに収益率が悪化しました。日立、東芝、三菱、いわゆる御三家が、折からの景気低迷に加えまして、これまで不況の際には重電部門があるから何とかしのいでくるということができたわけでありますけれども、それが期待できなくなっている、そのことがなかなかトンネルを抜ける見通しが立たない一因になっているということを聞き及んでいるわけでございます。今さらこの質問を取り上げて後戻りはできないわけでありますけれども、この景気低迷の中、これは日本経済の足を引っ張っていることは間違いないだろうと思うわけでございます。  従前やっておられたような政府景気浮揚策への協力要請、あるいは自由化、コスト削減が一方で叫ばれておりますので、なかなか協力要請ということも厳しくなっている。官庁の中には今いろいろな思いがよぎっているのではないかなと思っているところでございますけれども、ある意味では、政策の実施時期、タイミングという点につきまして、まずは大臣、どのようにお考えになっていらっしゃるのか。そしてまた、今回の改正において経済景気に与える影響というものはどのように見通していらっしゃるだろうか。  その点について、まず冒頭大臣にお尋ねをしたい、そのように思います。
  40. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 電力設備投資につきましては、基本的には今後の需要見通しに依存するものでございまして、近年においては景気の低迷等を反映して圧縮ぎみに推移していることは事実でございますけれども、中長期的に見れば、電力需要の堅調な伸びが見込まれる中で、電気事業全体として需要伸びに応じた一定投資が見込まれるということでございます。  一方、前回平成七年改正において、発電部門における競争の導入、すなわち卸入札制度が導入されましたが、過去三回の入札の結果、合計五百万キロワットを超える新規参入がございました。電力会社の効率的な電源調達が可能となっただけでなく、新たな事業機会の創出という点でも成果があったと認識をしております。  今回の改正につきましても、経済構造改革の一環として電気事業全体の効率化を図り、我が国の産業活動や国民生活に強靱な活力を生み出すことを目標としており、高コスト構造是正とともに、新たな事業機会の創出が期待されると考えております。  具体的には、まず今回の制度改革によって、自由化対象需要家に対する供給については自由に参入が可能であることから、電気事業に新たな参入が見込まれているところであります。  また、電力会社においても、今回の制度改正を契機として、需要家のニーズに対応した新たな事業機会を活用し、前向きな経営を行うことが期待されるわけでございます。
  41. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 今大臣の御答弁の中に、高コスト構造の是正というような言葉が触れられました。今回の電気事業改革の目的に、国際的に遜色のないコスト水準を目指す。橋本政権時代から、日本の電気料金を、二〇〇一年をめどに当時の水準から二割下げて国際水準並みにする、高コストを是正すると。私も当選以来二年半、ずっとこの商工委員会に籍を置きまして、この問題も含めまして前々任の佐藤通産大臣のときにも質疑をしたことがございますけれども、そんな中で、いろいろ我々も諸外国の例等を見まして、高コストという中でよく出てくるのが、公共料金の国際比較でございます。  国際比較というものは、例えば欧米に比べて、電力料金のみならず、日常の日用品においてもあるいは食料品においてもよく比較をされるわけでありますが、この点につきましては、国の違いでありますとか、あるいは流通経路でありますとか、あるいはそこに係る安全性それから安定供給といったような部分において、どのものも一概に比較をすることができないというのは私も重々承知の上でございますけれども、電気料金について、特に日本の場合は資源のない中、しかも大変に安定して安全であるというエネルギー供給、そして保守管理に至る電力会社方々の日夜を問わぬ仕事ぶり、いろいろな我が国特有のエネルギー事情があるわけでございます。  そうした中で、公益サービスの料金の国際比較、この割高感というものが当然これまでも電気事業審議会等で再三指摘をされてきたわけでありますけれども、為替レートによる単純な比較ではなく、各国の物価水準、いわゆる購買力平価、そしてさきに申し上げましたような我が国特有のエネルギー事情、こういうものを考えますと、総合的に勘案したいわゆる指標が必要ではないのかなと考える次第でありますけれども、この点についてどのような御見解をお持ちか、お尋ねをしたいと思います。
  42. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 今回の電気料金の比較が、高コスト構造の是正、あるいは国際的に遜色のないコスト水準というような発想からまいっておりますために、電気事業審議会では、この比較の指標として、標準的な需要家が海外で電気を使用した場合にどの程度になるかという、使用形態あるいは規模を定めた標準モデルによりまして、キロワットアワー当たりの単価を為替レートで換算して比較する方法を採用いたしてございます。  また、経済企画庁による物価レポート、あるいは当省による産業の中間投入に係る内外価格調査などにおきましても、一般的には為替レートによる比較が行われるのが通例でございます。  今回の電気事業審議会では、議員御指摘各国の購買力を勘案した指標も参考としてお示ししたところでございますが、冒頭申し上げました高コスト構造是正、こういった発想からこの問題を議論しておりますために、やはり基本的な指標としては為替レートによって御議論をいただくことがいいのではないかということで、電気事業審議会でもそうした議論をしていただいたところでございます。
  43. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 もちろん、為替レートの指標というものが決してすべてにおいて優先するわけではないということは、今お答えの中に行間の意味を酌み取ったわけでございますが、しかしぜひとも今後、この質問はまた改めて経済企画庁長官等がいらっしゃるときにぜひ質問したいなと思いますが、つけ加えてちょっと言わせていただければ、経済企画庁の発表する物価レポート、過去のものを見てみますと、円高局面で国際比較、公共料金の料金水準の高さを指摘しておりまして、見方を変えると、何か社会の割高感を、言葉はちょっと過激ですが、扇動しているようにも思えるわけでございます。  そんな中で、これからこの法改正を進めていくに当たって、今回のこの改正については、エネルギー問題については、我が国特有のいろいろな諸条件の違いといったものをぜひとも勘案しながらある意味では見解をまとめて、指標というものをいろいろな形で多角的に示していただきたい、そのようなことをつけ加える次第でございます。  時間がございませんので、次の質問に移らせていただきます。  次のお尋ねでございますが、先ほどちょっと冒頭申し上げた、ニュージーランド、オーストラリアに我が党の同僚議員の方々とケーススタディーに行ってまいりました。規制緩和により成功されたと言われる、特にニュージーランドで、昨年の二月に大停電が発生したのは御承知のとおりでございます。昨年の二月でございます。日本では冬ですが、向こうでは真夏でございまして、電力会社の中長期的な設備投資の抑制、保守、メンテナンスがおろそかになったといったことがこのニュージーランドのオークランドの大停電を引き起こしたとレポートもされております。もう当然ごらんになって把握はされていらっしゃると思いますけれども。  島津議員の質問と若干ダブるかもしれませんけれども、御案内のようにオークランド市でございますので、東京でいえばこのあたりが大停電を起こした、東京の丸の内を中心にして千代田区であるとかあるいは港区あたりの心臓部が全く機能が麻痺したという中で、その点についていろいろな要因を挙げてきたわけでございます。  本当に、この大災害の原因というのは、先ほど申し上げたような電力会社の中長期的な設備投資の抑制である、あるいは保守、メンテナンスがおろそかになった、それからまたその後の復旧作業に大変時間がかかったということについての原因も、実は復旧作業の要員不足があったのではないかというふうに指摘がされたわけであります。  もちろん公式なレポートにはそのようなことは触れておりませんけれども、私どもがお会いした電力産業に働く方々あるいは学者の方々、それから学識経験の方、消費者団体の方々、いろいろな分野の方とお目にかかって、当然会社側の方ともお目にかかることがありましたけれども、そのような幾つかの意見が出されました。ある意味では、先ほど島津議員も申されましたけれども、公益事業が利益を優先してしまうとどういうことが起きるかという一つの原因を見てきたわけでございます。  そんな中で、事業の効率化あるいはコストダウンということを考えた場合に、今申し上げたような保守点検要員でありますとか、こういった方々が人件費削減のために雇用削減された。そして、それがある意味では最も手っ取り早い企業にとってのスリム化の手段であるというような一つの例は、日本に限らず、ニュージーランドでも同じことが例示されたわけでありますけれども、先ほどもお話ありましたが、短期的な利益を最優先に考える、そして中長期的な設備投資を抑制、こういったことが、結果的には保守、メンテナンスをおろそかにし、そして技術者、技能者が解雇されたことによって要員が不足をした。こういうことが実は今回の問題であらわれた、自由化あるいは規制緩和による光でない影の部分として端的にあらわれたのではないだろうかなというふうに思っているわけであります。  そうした中、規制緩和という問題が、今回のニュージーランドの例でいいますと、メリットを享受できたのはまさに光の部分、これは大口需要家でありまして、影の部分、先ほど申し上げたようなサービスの低下ということ以外にも、一般の生活者にとっては電気料金が実は上昇したんだといったデメリットを甘んじて受けた、こういう状況指摘されたわけでございます。  そうした中で、今回の日本電気事業法改正、このポイントの中には電力会社経営の自主性を尊重するということが挙げられているわけでございますけれども、このような最低限必要な、先ほど申し上げましたコストの部分、これを適正に回収するためにどのように具体的な制度設計を考えていらっしゃるのか。中長期的な需要想定に基づく設備の強化、再投資、そして保守、メンテナンスに必要な要員、そしてその技術者の育成でありますとか技能の継承といったような必要なコスト、この点についてどのように考えるのか。  そしてもう一点は、このニュージーランドの例で指摘されました電気を利用する消費者の公平さ、公正さを担保するためにはあわせてどのようにお考えになっているか、その点についてのお尋ねをさせていただきたいと思います。
  44. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 二つの点についてのお尋ねがございましたが、冒頭の設備形成の関係では、三つの段階で、制度設計としての、あるいは制度としての担保をとってございます。  第一の段階は設備投資にかかわるものでございまして、電力会社が毎年作成をいたしております供給計画において、中長期的な観点から、一定需要想定のもとで、我が国全体の需要に照らして必要十分な設備が形成されているかどうかという観点から通産省においてチェックをいたしてございます。  また、保守、メンテナンスにつきましては、定期検査等の保安規制によりまして、事業者に必要な措置を行うことを法律上求めておりまして、これが第二段階のものでございます。  さらに第三段階のものとしては、必要な設備投資あるいは保守、メンテナンスのための費用、あるいは仮にやった場合の復旧作業のコスト、そうしたものが適切にコストとして回収できるような電気料金あるいは託送料金の設定を行ってまいりたいということでございます。  それから、小口需要家の公平な取り扱いにかかわる部分でございますが、今回の自由化に伴って小口需要家に悪影響が及ばないようにするために、規制料金の改定の際に全体の費用を大口部門と小口部門に適切に配分をするということが第一でございます。また、大口部門の収支の赤字を補てんすることを目的とした小口部門の料金の値上げは認めないという原則をとっております。  また、こうした悪影響の防止のための措置に加えまして、効率化によって得られたノウハウ、成果を機動的に料金に反映するという別の側面での措置をとってございまして、具体的には、今回の法改正案におきまして、小口需要家の利益拡大に資する場合には届け出による料金改定を可能とする、また小口部門の料金メニューの多様化を図るための選択約款の要件を緩和する、かような措置をとることによりまして、小口需要家への迅速かつ自主的な料金への反映ということが実現できるようにしてございます。
  45. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 いずれにしても、諸外国の例、一概には比較をすることはできませんけれども、ぜひともこうした例をまた参考としながら、今おっしゃられたような中でぜひとも反映をしていただきたいなと思います。  また、今のお答えに若干関連してお尋ねをしますと、一般電気事業者の最終保障約款について、こうあります。社会的経済的事情に照らして著しく不適切であり、また最終保障約款により電気の供給を受ける者の利益を著しく阻害するおそれがある場合には変更を命じることができる。そのようにされております。  どこからも電力の供給を受けられない特定規模需要家のために結果として一般電気事業者が最終の供給責任を負っている、このように受けとめるわけでありますけれども、そうしますと、あらかじめ供給に必要な設備を形成する必要はないにしても、一般電気事業者には一定の予備力が当然求められてくるものである、そのように考えるわけであります。そうすると、そういったところに必要とされるコストについてはどのような御見解をお持ちなのか、関連してその点をお尋ねしておきたいと思います。
  46. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 御指摘の最終保障義務、これに基づきます約款につきましては、必要財という電気の財の特性にかんがみまして、自由化対象需要家のうちで、いずれの供給者とも交渉が成立しない需要家、あるいは一たん電力会社以外の供給者と契約したもののその後電力会社からの供給を望んで戻ってきた需要家、こうした需要家に対する供給途絶を防ぐということを目的とした制度でございまして、当然、その料金につきましては、不適切な場合には通産大臣としての変更命令を用意しているというものでございます。  この最終保障約款につきましては、こうしたミニマムの保障という趣旨を踏まえまして、電力会社におきましても、十分な予備力がない場合には供給要請に応ずることを要しない、正当な理由として拒絶していいという建前をとってございまして、これによりまして、新規参入者との競争条件、それから非自由化対象需要家に対する供給に悪影響が出ないように配慮したものとして定めてございます。  そうした意味で、ある一定の供給予備力は最終保障義務の観点から持ちますが、それは一般の供給義務を持つ小口需要家に対する予備力と比べて、この当該部分については、経営判断によりますが、僅少なものという意味で、コスト面での配慮がなされたものと思っております。
  47. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 コスト面においても配慮がなされたというようなお答えがございました。  ちょっと時間の関係で、この問題はこのまま、最後の質問とさせていただきますけれども、本制度が発足をした後おおむね三年後をめどにして、自由化の範囲及び自由化に関する制度内容、いろいろな形で、今私ども質問してまいりましたいろいろなことの検証をしていく、その上で、部分自由化の範囲の拡大でありますとか全面自由化及びプール市場の創設の是非について検討を行うこととなっています。その際、電気事業並びにその関連する企業の従事者の方々の労働条件でありますとか安全環境の変化についても十分な検討がなされなければならないだろう、こう考えるわけでございます。  一つの例を挙げますと、電力自由化の先進国であります英国においては、六年間に五万人の雇用が削減した、労働力が三分の一になった、そしてまた多くの技能職の労働時間は週六十時間から八十時間に増加したという報告もあるわけでございます。  競争は明らかに効率化を促すことになると考えるわけでありますけれども、その反面で、所得格差の拡大、それから一部の勝者と大多数の敗者、ある意味では勝ち組と負け組がどんどん明確になっていく。そういう意味で非常に、競争社会というものの、そこに現実にいろいろな格差の拡大というものが生まれてくる。そこに我々としてはどのような形でセーフティーネットを張るかというような社会を考えていかなければならないわけでありますけれども、いずれにしても、競争原理が進むということはそういう危険性を同時にはらんでいるわけでございます。  今回の電力の部分自由化の導入によって競争が促進されて、先ほど御答弁の中にありましたように、多くの需要家にメリットが行き渡る、こういうことが結果として起こることを期待するわけでありますけれども、先ほど申し上げましたように、反面で、短期的な近視眼的な利益追求に陥り、本来の公益事業、特に電力という公益事業において安全レベル、サービスレベルというものが低下することがあってはならない。また、起こり得るであろう無節操な設備投資の抑制、そして先ほど申し上げた保守でありますとかメンテナンスに係る人員の削減といったような労働コストの削減、こういう点について配慮をしていくことが必ずや必要になってくるだろうと思うわけでございます。  この制度の導入後おおむね三年後に検証を行うというわけでありますが、この点について十分に検証し、そしてまた今後、将来の電気事業のあり方についてまた改めて議論がされていくと思うわけでありますが、この問題のおしまいに通産大臣のお考えをお尋ねしておきたい、そのように思います。
  48. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 電気は国民生活に密接にかかわる財でございますだけに、制度の実施後も制度改革の成果については入念に検証することが必要であると考えております。  具体的には、電気事業審議会の報告に沿って、新制度の開始後おおむね三年後を目途に、新制度における自由化によってもたらされる成果及び課題について十分に検討した上で、さらなる部分自由化の範囲拡大や内容などについて検討することとしております。  こうした制度改革の検証を行う際には、まず第一に新規参入の状況電力会社経営効率化の程度など部分自由化の実績、第二には海外の自由化の状況、第三には系統安定等に関する技術の状況、第四には公益的課題への悪影響の有無などの視点に基づいて、御指摘の点も含めまして、今回の自由化の成果を十分に検証してまいりたいと考えております。
  49. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 電力の部分について御質問をしました。  最後の質問、ガス事業法の改正についても、通産大臣に二点お尋ねをしておきたいと思います。  一つは、天然ガスと並ぶもう一つの主要なエネルギーでありますLPガス、御存じのように国民の半数が使用している。今回の改正によって、導管供給を主とするガス事業の競争環境整備も推進されると思われるわけでありますけれども、これを契機に、ボンベ供給を主とするLPガスについても、競争環境の整備、消費者利益の向上策、この点について検討する必要があると思います。この点についてどう通産大臣はお考えなのか、まず一点お尋ねをしたいと思います。  そしてもう一つ、第二点目としましては、当然この法改正によって経営の自主性も促進されることになります。これは前向きな経営者にとっては非常によいチャンスであるというように考えるわけでありますけれども、これによって逆に責任が当然重くなるわけでございます。この法改正に当たりまして、経営の自主性や活力を引き出すという規制緩和の本来の趣旨、これをどのように担保するのか、そして今後の法運用の考え方ということにつきまして、もう時間がございませんけれども、最後にガス事業法の改正に当たりましてのこの二点につきましてお尋ねをしたいと存じます。
  50. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 まず、第一点をお答え申し上げます。  いわゆるLPガスは、全国の総世帯の約五五%に当たる二千五百万世帯の家庭用燃料として使用される国民生活に密着した基幹エネルギーでございます。したがいまして、競争環境の整備、消費者利益の保護は重要な課題と認識をしております。  かかる認識のもと、平成八年に液化石油ガス法が改正され、液化石油ガス販売事業を許可制から登録制へと規制緩和が図られるとともに、消費者への情報開示の充実等により消費者利益の向上が推進されたところでございます。  今後とも、液化石油ガス法の厳正な運用により、液化石油ガス販売事業者の競争環境の整備及び消費者の利益の向上に努めてまいる所存でございます。  次に、規制緩和本来の趣旨をどう担保するのか、法の運用に関する御質問がございました。  先生指摘のとおり、ガス事業者の経営自主性を最大限尊重することによりまして、ガス事業者が需要家利益の増進に向けた対応を積極的に講じていくことができるための制度環境整備を行うことが今回の法改正の重要な趣旨の一つであります。  かかる観点から、料金引き下げの場合の届け出制の導入、料金メニューの多様化のための選択約款の届け出制の導入等をガス事業法改正案に盛り込んでいるところでございます。  御指摘のように、経営の自主性が促進されることにより経営者の責任が重くなる側面があることも事実でありますが、通産省としては、ガス事業者が需要家ニーズにこたえるべく、今回の制度改正の趣旨を最大限に生かして前向きに対応することを期待しております。  通産省としても、こうした事業者の活力が最大限発揮できるよう、法運用に当たっても配慮してまいる所存でございます。
  51. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 短い時間でございましたけれども一つだけ言わせていただければ、この規制緩和に伴います競争原理の導入、その点について、そこにある光の部分と影の部分、そしていろいろな、価格の問題のみならず、そこに生まれるサービスの分野でありますとか、あるいは雇用条件の問題でありますとか、そういった点にも政府としても配慮をされまして、そこに視点を当てていただいて、多くの利用者がメリットを得るような、ぜひともそういう運用につなげていただきたい。そして、我々もそのためにやってまいりたいという思いでございます。  質問を終わります。
  52. 古賀正浩

    古賀委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五分休憩      ————◇—————     午後一時十分開議
  53. 古賀正浩

    古賀委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。大口善徳君。
  54. 大口善徳

    ○大口委員 明改の大口でございます。電気・ガス事業法改正につきまして、質問させていただきたいと思います。  まず、大臣にお伺いしたいと思います。  今回、電事審において答申が出まして、そしてその中で、二〇〇一年までに国際的に遜色のないコスト水準を目指す、こういうことであるわけです。そういう電力コストの削減ということと、それに対して、ユニバーサルサービス、供給信頼度維持、エネルギーセキュリティーの確保、そして環境保全、こういう公益的な課題との両立、これが大きな課題であるわけです。そういう中で、大臣にお伺いしたいのは、こういう両立させなければいけない課題に対して、今後の電気事業改革のあり方についてお考えをお伺いしたいと思います。
  55. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 先生の御質問の御趣旨は、今後の電力改革の方向性についての通産省考え方全般を説明しろ、こういう御質問だったと思います。  電気は産業経済活動の基盤的な財であることから、電気事業に対しては、低廉な供給のための効率化という常に変わらない要請に加えまして、ユニバーサルサービスの達成、安定供給の維持、エネルギーセキュリティーの確保、地球環境の保全といった公益的な課題への対応が要請されております。  今回の制度設計に当たりましても、このような公益的な課題の確保を図りながら、一層の効率化の要請にこたえることを基本的な考え方としておりますが、このような電気事業に課された要請は今後とも変わらないものと考えておりまして、三年後の制度見直しに当たっても、こうした観点から検討してまいりたいと考えております。
  56. 大口善徳

    ○大口委員 長官に聞きたいのですけれども、そういう点で、二〇〇一年に一つの国際水準、こういうことを目指しているわけですけれども、これは可能性として、その水準を達成することができるのかどうか、そこら辺についての見通しをお伺いしたいと思います。
  57. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 現在、国際水準と比べて、為替レートを勘案して二割程度のコスト差があるというふうに評価をされておりまして、これに対して、各種の制度改善、あるいは投資サイドにおける競争入札などによってこの差を埋めていきたいというふうに考えてございます。経済情勢、為替情勢等々がございますので、その二割の差というものを数値目標にしているわけではございませんけれども、そちらの方向に向けた効果及びコスト構造の構造的な変化というものが実現できるよう努力したいと考えております。
  58. 大口善徳

    ○大口委員 前の両委員からもありましたように、公益的な課題というものをクリアしながら今後国際水準を達成するというのは、大変いろいろな困難があると思いますが、両方が両立できるように努力をしていただきたい、そのことを大臣にお願いしたいと思うわけでございます。  そういう中で、諸外国の状況につきましても、今同僚議員の方からもお話がありました。イギリスの九〇年の春からの電力の民営化、そして発電と送電を分割する、こういうことでありますが、これについて、九〇年以降、プール価格が年約六%上昇しているというような意外な結果になっているとか、あるいはカリフォルニア州でも、ここはアメリカの平均よりも三割から五割料金が高いわけでございますけれども、そういうようなところとか、いろいろ、海外における電気事業、ガス事業制度の改革の状況を簡単に、通産省の認識としてお伺いしたいと思います。
  59. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 諸外国における電気事業、ガス事業制度改革の状況についてお尋ねでございます。  電気事業につきましては、アメリカでは、一九九〇年代半ばから幾つかの州で小売自由化が実施されております。カリフォルニア州では、昨年四月から全需要家を対象とする自由化を実施しております。また、連邦レベルでも小売自由化のための法案を準備する動きがあります。ヨーロッパでは、九〇年代初頭以降、御指摘ございましたようにイギリス、北欧で小売の自由化が実施され、九九年以降、EU指令に基づき、加盟国で段階的な部分自由化が実施されているところでございます。  ガス事業につきましては、アメリカにおいては九三年に州際パイプライン会社の輸送部門と販売部門との分離がなされまして、九五年以降、幾つかの州で小売の部分自由化が実施されております。また、ヨーロッパにおきましては、イギリスで九八年に小売の完全自由化がなされ、EUにおいては、九八年のEU指令によりまして、部分自由化の実施に向け加盟各国が九九年中に国内法改正などの所要の措置を実施することとされております。  今後、こうした海外の動き、その成果も含めて、注視してまいりたいと考えてございます。
  60. 大口善徳

    ○大口委員 そして、そういう諸外国の流れ、欧米の流れ、そういう改革への流れというものも背景にあって、先日OECDが我が国の電気事業の制度改革に対するレビューを行った。その中で、競争に向かっての第一歩としての変化は始まったが、小売りの自由化後、そのパフォーマンスを注意深く監視しなければならない、もし実質的な競争が発展しなければ政府は追加的手段をとることをちゅうちょしてはならない、こういうふうに、かなり早いレビューといいますか、法案が今審議されている状況であるわけですが、早くもこんなレビューがあって、この国会審議にぶつけるような形でこういうOECDの意見が出てきた、こういうことなわけです。  それに対しまして、日本の電気事情というものがあります。欧米にも欧米の電気事情というものがあります。そしてそれは、日本型のいろいろな要素というものがあります。そういうことから、このOECDの意見に対して日本としてどういう考え方を持っているのか、そしてまた、それに対してどういうふうに主張していくのかについてお伺いしたいと思うのです。
  61. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 OECD対日審査報告の勧告部分でございますが、御指摘のように、三段階に分かれておりまして、自由化部門、非自由化部門の両需要家に利益をもたらすものとして、今回の小売の部分自由化については評価をいたしてございます。  また、部分自由化後、一定期間を経ても市場が競争的でない場合、次のステップとしてさらなる改革が必要であるということで、自由化対象の拡大、電力会社に対する競争促進のための実施可能な分離オプション、こうしたものを検討すべきであるとしておりますし、さらに第三段階として、以上のようなステップを踏まえた上でなお電力規制の効果を検証し、必要があれば、日本エネルギー政策目的との整合性を確保しつつ、さらにいかなる規制改革、構造改革が必要かを検討すべき、かような指摘をしてございます。  こうした指摘に対しまして、電気事業における規制改革というものは、エネルギーの自給率あるいはネットワークの形成状況など、各国の電気事業を取り巻く状況に応じて異なるのは当然でございまして、各国ごと、その置かれている状況を踏まえて、効率化と公益的課題を両立させるためにさまざまな努力をしているところでございます。  OECDにおきましても、こうした各国エネルギー事情を理解して、公益的課題との両立の必要性も認めているところでございます。我が国に対しましても、エネルギー政策の基本的な考え方には理解を示した上で、部分自由化に一定の評価を与え、とるべき政策について、今後の段階的なとるべきことを勧告しているというものでございます。  いずれにいたしましても、本報告は、被審査国が、例えば日本でございますが、参考とするものでございまして、今後、制度開始後おおむね三年後に行うこととしております制度見直しの際に、この勧告を参考の一つとして考える、かような認識でございます。
  62. 大口善徳

    ○大口委員 次に、今回の制度改革については、大口需要家に対するもので、部分自由化ということであるわけでございますが、一般の家庭におきまして、要するに小口の需要家にとって、電力会社あるいはガス会社経営の効率化ということが小口の需要家の利益にもつながる、そういうように設計をされたもの、こう理解をしているわけでありますが、小口の需要家に対してどのようなメリットがあるのかということについて、具体的に御答弁願いたいと思います。
  63. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 今回の改正は、部分自由化の導入、またあわせて火力電源の全面的な入札の導入ということを行いまして、競争的な刺激の中で電力会社が多様な経営効率化努力を行うインセンティブを与える制度ということで理解をいたしてございます。  その上で、全需要家にその効率化の成果をどういうふうに行き渡らせるかという観点から、この効率化のノウハウ、成果というものを機動的かつ自主的に規制部門の料金に反映するということが可能であるよう、料金制度そのものを見直してございます。  今回の改正案では、小口需要家の利益拡大に資する場合には届け出による料金改定を可能とする、引き下げの場合には届け出で料金改定が行える、また、小口部門の料金メニューの多様化を図るための選択約款の要件を緩和する、多様な小口部門のニーズに応じた選択約款を工夫し得る、そういった改正を提案させていただいているところでございます。
  64. 大口善徳

    ○大口委員 届け出で、要するに任意に引き下げをする。別にだれかに命令されてやるわけでもないわけですから、電力会社の自主的な主体的な判断によって、小口の需要家にメリットが行くかどうかはゆだねられている、こういうことなんですね。  ですけれども、そういうことで電力会社の自主性にゆだねられるということが本来のあり方だというふうにお考えなんでしょうけれども、それによって本当にスムーズに小口の需要家にメリットが及ぶのか。そこら辺の担保といいますか、また、そういうインセンティブといいますか、それはどうなんでしょうか。
  65. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 今回、料金引き下げが届け出制になることは、事業者の経営の自主性が拡大をするところではありますが、あわせて、料金の合理性につきまして市場で十分に説明ができるか、またその説明について市場がどういうふうに評価をするかという要素が他方でございます。  事業者がより進んで経営効率化努力を行うことが期待されているわけですが、例えば、その場合、どういう原資からどういう引き下げを行ったかということが問題となるわけですが、定期的に公表されます経営効率化計画などにおいて、需要家や株主に対して、何を原資としてどの程度料金を引き下げるかということについて積極的な説明を行う、そうした説明責任の過程で自主的な届け出による料金引き下げが担保されるもの、かように考えてございます。
  66. 大口善徳

    ○大口委員 ルールを明確にし、そしてまた情報開示をし、それによって、そういう市場からの圧力といいますか、そういうものによってやっていこう、そういう考え方であると理解しているわけであります。そういう中で、規制部門である小口の需要家から回収した料金を自由化部門に内部補助をするようなことがないようにしなければいけない。それについては先ほども答弁がありました。赤字の転嫁による値上げを認めない、こういうことがあったわけです。  また、電事審の答申でも、一つは配分方法のモデルをきちっと審議会で設計して省令で定めるとか、配賦基準の届け出を公表するとか、あるいは公認会計士による中立的第三者のチェックをやるとか、あるいは自由化部門の収支の赤字についてはその赤字額だとか事業者名を公表するとか、そういうことによって、内部補助をしないように、そういうふうに制度が設計されている。これは前の答弁でもそういうことでありましたのであえて聞きませんが、そういうことがきちっとなされていくということは非常に大事なことだ、こう思っております。  そういう中で、今回、電気事業、ガス事業について接続供給制度が導入される。要するに託送が導入され、これによって新規の参入者が既存のネットワークを利用する。これによって、小口の需要家に、そこから供給が途絶したり、あるいは料金が上がる、こういう悪影響があるのではないかという不安があるわけです。それについてはいかがでございますか。
  67. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 新たに市場に参入した新規参入者が、新たな需要者に電力を供給するに際しては、御指摘のとおり既存のネットワークを利用いたします。これは接続供給制度という名前で新たに制度を起こしてございますが、これにより小口の需要家への供給に悪影響が及ばないように、技術的な側面では系統安定の観点から、新規参入者も電力会社の給電指令に従うということをルール化することとしてございます。  また、料金の面では、この接続供給料金について、電力会社の総コストのうち接続供給にかかわるコストを明確に特定をした上で、そのコストを大口需要家と小口需要家との間で適切に配分をするということをいたしてございます。  こういう制度によりまして、接続供給制度の導入と小口需要家への悪影響の防止、この二つを両立させてまいりたいと考えてございます。
  68. 大口善徳

    ○大口委員 次に、料金の引き下げの届け出制によって、電力会社ガス会社が届け出た料金について、今までであれば引き下げの原資というものは即料金の引き下げに使わなければいけなかったわけですが、今回から、経営の効率化の成果を財務体質の健全化のために使うこともできる、こういうことになったわけですね。  そういうことで、今までも経営効率化計画という中で説明責任ということをやっていたと思うのですが、今度はその説明が非常に、財務体質についてもきちっと説明をしなければいけない。それからまた、私は再生可能エネルギーの開発研究とかそういうことにもこの原資というのを使えると思うのですけれども、そういうことについても積極的にやっていくべきであろうし、そういうことについての説明もしなければいけない、こう思っておるわけでありますが、こういう電力会社ガス会社の説明責任についてお伺いしたいと思います。
  69. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 御指摘のとおり、料金引き下げが届け出制になることに伴いまして、経営の自主性が拡大することの裏返しで、説明責任は非常に大きな位置づけになってくる、かように考えてございます。  特に、引き下げの原資を何に使うかという点で、今後定期的に公表されます経営効率化計画におきまして、需要家のみならず、財務体質の関連で株主等に対しても、何を原資とし、料金をどのように引き下げ、あるいはその原資を一部財務体質の改善に充てた、そういった内容を資料をもって積極的に説明することが非常に重要な位置づけになってくると理解してございます。
  70. 大口善徳

    ○大口委員 また、小口需要家との関係でいいますと、小口需要家の間で著しい格差が生ずるということが出てこないかが一つ心配なわけであります。そういう点で、料金の算定ルールの設定といいますか、これが非常に大事になってくるわけです。  やはり、料金の算定ルールの設定をきちっとする、そしてそれをきちっと公表していく、そういう点で、料金の算定ルールの設定をどういうふうに今後考えていくか、そしてその場合の料金算定ルールのポイントといいますか、こういうことについてきちっと決めていきたいと考えているのか、お伺いしたいと思います。
  71. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 今後の算定ルールにつきましては、従来、料金査定に際して査定要領なるものを事務的に持ってございましたが、これを省令のレベルに改めまして、世の中にいわば公表するということを考えてございます。  料金算定ルールでは、当然に、全体的なコストをどういうふうに需要者間で配分するか、そうしたルールを定めることとしてございまして、こうしてあらかじめ設定された料金の算定ルールに従って、料金の引き下げの届け出に際して計算をする、かような手続でございます。
  72. 大口善徳

    ○大口委員 そのルールの一つの中身というのはこれから審議会で検討するわけでしょうから、ワーキンググループで検討するわけでしょうから、その中身の詳細はこれからということなのでしょうけれども、料金設定のルールによって小口需要家の権利を守っていくべきである、こう考えるわけであります。  次に、これまでは電力会社というのは全社一斉に料金改定を行っているのが通例であったわけです。ところが、十電力会社は規模も体力もそれぞれ違います。また、今回部分自由化というものが導入されましたことによって、自家発電の多いところと少ないところによっても自由化の影響というのは違ってきます。そういう点で、これからは一斉に値下げとかそういうことにはならないのではないか。適時適切に値下げをどんどんしていく、そういう点で、電力会社の料金改定の横並びというのがなくなるのではないか。東京電力の社長も、金太郎あめではないのだ、こういうことを言っているわけです。  それと、もう一方で、これまで電力会社間の料金の格差というのは間接競争を行うことによって二%か三%程度の範囲に抑えられていたわけですね。それはヤードスティックの査定があって、効率化についてのチェックがなされていてそういうことになってきているわけでありますけれども、今度はそういうことになれば、逆に格差が拡大する可能性が出てくるわけです。体力勝負だ、それぞれの地域の事情によって料金の格差が拡大する、それはそれでもう仕方のないことなのだ、こういう考えも成り立つわけです。  一方では横並びがなくなる、他方で格差が拡大する、その両面についてどのように通産省では考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  73. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 原理的には、引き下げ時期が横並びという事態はなくなるかと思いますが、ただ他方で、届け出制をいたしますと、行政による料金の査定というものはありませんが、事業者の経営判断がマーケットや需要家によってより直接的な評価を受けることになります。そういう意味で電力会社間の競争が促進をされるというわけでございますが、そうした競争状態のもとでは、適時適切な料金改定というのが時点を大きく異にして発生をするということは余りないのではないか。万が一にも電力会社が適時適切な料金改定を行わずその料金水準が結果として著しく不適当と考えられるような場合には、通産大臣はその電力会社に対しまして料金変更認可の申請を命令する、かような位置づけでございます。  他方で、料金格差が拡大するかどうかでございますが、御指摘のとおり電気料金の水準は各社の需要動向設備投資状況によって当然に異なるものではありますが、現在までの傾向を踏まえてみますと、各社が効率的な経営に取り組む中で、中長期的には縮小の傾向にあるのが現実でございます。  平成八年料金改定から導入をしておりますヤードスティック査定、これは電力会社間の間接的な競争を促す制度でございまして、結果といたしまして引き下げの方向電力会社間の料金格差が縮小されることが期待されておりますし、また、競争と市場の監視に対応するためのコストダウン、財務体質の強化、メニューの多様化というようなことを進めますと、中長期的に料金格差が拡大するということは予想されない、かように考えてございます。
  74. 大口善徳

    ○大口委員 今、予想されないということをおっしゃっていたのですが、やはり体力の差ですとか地域的な、地域によって全部バリエーションが違うわけですよね。ですから、自由競争の中で格差が出てくるのが当然自然ではないかな、こうも思っておるわけです。  また今の、変更命令ですか、申請をさせるということについても、どういう基準で申請を命令されるのか。どうも、通産省がおっしゃっている、一方では横並びではない、他方では競争によって効率化が進んでみんな同じような状況になるというわけですけれども、果たしてそうなのか、各電力会社で相当体力が違うのではないか、こう思っておるのですが、いかがですか。
  75. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 各電力会社の体力の違い、需要動向の違い等々非常に差がございますから、あるいは原理的には各社の間で電力料金の差というものは拡大する場合もあり得るかということではございます。  ただ、現実の、現在までの電力会社間、九電力のそれぞれのヤードスティックを用いた料金改定の中での競争の実態といたしまして、例えば電灯料金が、昭和六十三年改定では一番高い会社と一番安い会社の間の比が一・一九五、要するに一九%程度の差でございました。それが平成十年度改定では一・〇五五、五%の差でございます。  自由競争の結果、その体力差に基づいて非常に衰えるような会社が出てくればあるいはこの逆の結果になるかと思いますが、現在までのような競争の結果で見れば格差が大きく拡大することは予想されない。先ほどの表現を使わせていただいたとおりでございます。
  76. 大口善徳

    ○大口委員 ただ、格差が拡大することについて、要するに体力に応じた形で料金が出てくるわけですから、その会社が置かれている状況によって合理的にちゃんと料金の設定ルールは出てくるわけですから、料金の設定ルールに従って出てきた金額というものが妥当であれば、通産省としては、格差が広がってももうやむを得ない。料金ルールに従って格差が出てきた、格差が出てきたがゆえに、では変更命令を出すのかというと、そうではないんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  77. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 御指摘のとおりでございます。格差拡大したなるがゆえのみをもって料金改定を命令するようなことはございません。
  78. 大口善徳

    ○大口委員 次に、今回の部分自由化についての新規参入の見込みなんですが、産業用の場合は一キロワット時に十円、それから業務用は一キロワット時十五円、こういうことで、特に産業用については、ある記事によりますと、発電コストは七円以下が必要だ。しかも、安定的な売電先が確保されていなきゃいけない。業務用につきましても、これは一キロワット時十五円でありますが、夜と昼の差があって、負荷率が非常に高い。そういうことで、これもまたデリケートな電力供給が必要であって、なかなかリスキーである。  こういうことで、産業用も業務用も、特に今回の部分自由化によって九割が産業用になってくるわけでありますが、そこへ新しい会社が参入することが見込まれるのかということがあると思います。また、そういう点で、自家発電をしているところが余剰電力を供給したり、あるいは設備の増強をしてそこに参入する、こういうことが考えられるわけですけれども、そういう場合に、どれぐらい参入が見込まれるのか。それから、電力会社が区域外に出ていってそして供給する、そういうような可能性があるのかどうか。その三種類というのですか三類型について、新規参入の見通しといいますか、それがどうなのかお伺いしたいと思います。
  79. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 現時点でどの程度の新規参入者が参入してくるかは必ずしも明らかではございませんが、先生指摘の第一類型のものでは、平成九年にIPPの潜在供給力調査を行ったことがございますけれども、入札制度に参入可能であるとしたIPPは三千万キロワット程度でございまして、潜在供給力としてかなりのものがあるのではないかというのが一つでございます。  それから、全国の自家発のうち約三分の二を占める事業者団体、大口自家発電懇話会というのがございますが、こちらで会員事業者に対して行ったアンケート調査によりますと、全体の約九割が新規参入者からの購入を検討し、また七割の事業者がみずから新規参入をしたい、あるいは検討するというデータがございます。  電力会社自身が地域外に供給をするかにつきましては、制度上はあり得ることにしてございますけれども、今現在そういう希望があるかどうかについては承知をしておりません。むしろ、近未来では余り起こり得ないかもしれません。  いずれにいたしましても、いわゆるIPPと異なりまして、小売をいたしますことについては、需要の変動もありまして、リスキーな側面が御指摘のとおりございます。ただ、こうした事業者が、さまざまな実態を持っております大口需要家の獲得に向けて、それぞれ創意工夫を発揮して参入を検討してくることになるのではないかと考えておる次第でございます。
  80. 大口善徳

    ○大口委員 さらに、参入に当たっては、接続供給料金をどう設定するか、これが一番大事な問題になってくるわけですが、ただ、接続供給料金が小口の需要家に悪影響を及ぼさないということ、そういう範囲内でできるだけ安くするべきである、こういうふうに考えるわけであります。この点についてどうなのかということを聞きたいと思います。
  81. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 この接続供給料金につきましては、電気事業審議会で次のような原則が提言をされてございます。  第一の原則は、接続供給料金に含めてコスト回収すべき設備や関連するサービスを具体的かつ明確に特定をいたしました上で、そのコストを適正に回収することが必要ということでございまして、その実績については中立的な第三者がこれを確認することとされてございます。その上で、こうして決まりました接続供給コストを、大口需要家と小口需要家で公平に負担をするという建前でございます。  それから、第二の原則は、この接続料金は、ネットワークの所有者、運用者であります電力会社、供給区域外の電力会社、新規参入者にとりまして同一である、競争条件として同じであるということが必要というものでございまして、この事業者間での託送料金負担の同一性の確保について、例えば、負荷率、供給区域をまたがる託送などの評価、あるいは電気の使用形態などを勘案することが必要かと考えてございます。  こういう考え方に基づきまして、コスト回収すべき設備、サービスの特定方法、あるいは実施の確認方法、それから電気の使用形態の勘案方法などにつきまして詳細な検討を、現在、電気事業審議会、総合エネルギー調査会において実施中でございまして、こうした検討を踏まえて御指摘の点に対する対応としたいと考えてございます。
  82. 大口善徳

    ○大口委員 次に、小口の需要家に対する供給義務、十九条ですね、それと、十九条の二の大口需要家に対する最終保障義務、この違いについては、先ほど答弁で、小口需要家については選択不可であるから保護が必要だ、大口需要家の場合は自己選択が可能であるから必要最小限度の保護でいい、こういうお話でありました。  しかし、この義務違反は、聞きますと、小口需要家の場合は義務違反しますと罰金三百万、大口需要家の場合は罰金が百万。確かに罰金の程度においても差がついております、そういうことなわけでありますが、ただ、大口需要家に対する最終保障義務、こういうものも義務であることは変わりないわけであります。  ではそういう中で、戻り需要家に対して、罰金ということもあるわけですから、供給予備力というのをどの程度確保する必要があるのか。それから、それを確保すると今度は小口に影響してきますから、そこら辺はどうなのか。  それから、供給力不足を理由に断ることができる、こうなっておるわけです。これは正当な理由があるということなわけですけれども、断る正当な理由というのはこの供給力不足ということだけなのか。この辺はっきりしておかないと、罰金になってくるわけですから、正当な理由とは一体何なのか。  それから、短期間に次から次へと供給先を変える需要家に対して何らかのペナルティーはないのか。  そのあたり、お伺いしたいと思います。
  83. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 供給予備力につきましては、電力会社、供給義務、この二つのタイプの供給義務を実現する上で必要なものとして、しかるべく計画の中で予備力を持っていきますが、その予備力を計算するに際して、いわゆる規制対象分野の小口需要に対する予備力の計算と、大口需要に基づきます最終保障を行うための予備力の計算とは、当然に差がございます。どの程度の差にするかについては多分に周辺の大口需要の存在等々の経営判断によるところもございますが、いずれにしても、この予備力についての持ち方の差は両者において当然にございます。  そのときに、予備力不足を理由として供給を拒むことが可能かということでございますが、それを理由として供給を拒むことは、まさに正当な理由というふうな位置づけをいたしてございます。  その返り需要に対するペナルティーの御議論でございますが、この最終保障約款というのは、需要家が現実にだれからも供給を受けられない状況にある場合のミニマムの保障でございまして、供給を受けられない事由があっち行ったりこっち行ったりということであれ、現在の状況がだれからも供給が受けられない場合には、この最終保障約款の対象になる。そのときに、ペナルティーという議論でございますが、ペナルティーとしての考えは持っておりませんけれども、出戻りにすべて対応するために過大な予備率を保有することは小口需要家に対する悪影響を及ぼしますものですから、したがって、十分な予備率がない場合には、最終保障を拒む正当な理由として位置づけるということで対応したいと考えてございます。
  84. 大口善徳

    ○大口委員 次に、ガスの方に行きます。ガス料金の情報公開ということについてお伺いしたいと思います。  電気につきましては今、省令で料金算定ルールを決めて公表する、こういうことであったわけですけれどもガスについては、料金に関する情報公開はどうなっているんですか。     〔委員長退席、岸田委員長代理着席〕
  85. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 ガスにかかわります情報公開の部分でございますが、現在、大口及び一般小口のそれぞれの販売実績等につきまして、中立のメンバーの監査を得た上で通産省に届け出を出していただいてございますが、その内訳については、競争上の立場を害するということの懸念もございまして、公にはいたしてございません。
  86. 大口善徳

    ○大口委員 ただ、審議会の答申に、算定要領については公表する、こういうことになっていると思うんですが。
  87. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 御指摘のように、今回、都市熱エネルギー部会で議論をいたしました結果、大口供給を行っている一般ガス事業者が、ある種の、競争に阻害を、影響を与えない形での適切な形で情報を開示していくことも重要であるという認識が示されまして、現在、この部会におきまして、大口供給にかかわります平均の価格、それから標準モデルケース価格、あるいはその他の指標について情報を開示していくべきであるという御提言のもとに、ガイドラインをつくることを進めているところでございます。
  88. 大口善徳

    ○大口委員 次に、地球環境問題を考えますと、やはり太陽光とか風力などの自然エネルギーの活用が非常に必要になってまいりました。欧州では、二〇一〇年までに自然エネルギー倍増政策が発表され、これは十兆円の投資で百万人の雇用が見込まれる。また、シェル石油とかブリティッシュ・ペトロリアム社が、風力だとか太陽光発電の大規模な投資を始めている。また、アメリカでも太陽光発電産業が四年間連続して二けた成長をしている。こういう状況であるわけです。  日本は、風力発電につきまして今二・五万キロワットという水準にまでいっているわけでありますけれども、いよいよこれは、やはり世界流れの中からいきましても、またCOP3ということからいきましても、自然エネルギーの普及ということを、これは電力会社だけに負担させるということじゃなく、広く社会全体でこの負担を引き受ける形の中で、導入の促進をしっかりと積極的にしていかなきゃいけないと思うんですが、大臣のお考えを伺います。
  89. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 太陽光風力等の新エネルギーにつきましては、地球環境問題への対応及びエネルギーセキュリティーの確保の観点から、その導入を積極的に推進していくことが重要であります。  このため、平成九年六月に施行されました新エネ法等の規定に基づきまして、太陽光発電風力発電等新エネルギーの開発や、民間事業者、地方自治体等による導入に対する支援を行っております。平成十一年度予算においても、これら支援について、平成十年度に比べ約百二十六億円増額の八百七十五億円を新エネルギー対策関連予算として盛り込んでいるところでございまして、今後とも、新エネルギーの導入促進を図るため全力を挙げて取り組んでまいります。
  90. 大口善徳

    ○大口委員 次に、これは平成七年度に閣議決定した率先実行計画ということで、国の事業者・消費者としての環境保全に向けた取り組みの率先実行のための行動計画の平成九年度における実施状況が取りまとめられたわけでございます。その中で、政府の公用車における低公害車の導入状況について、これは目標を平成十二年、二〇〇〇年ですね、おおむね一〇%に高める、こういうことになっておるわけです。  ところが、大臣も出席されました平成十年十二月十八日の閣議において、環境庁長官が、この政府の公用車における低公害車の導入状況について、平成十二年度において導入が見込まれる低公害車の台数が二百九十六台、一・八七%へ上積みされた、そして相当数の省庁において取り組みが進捗しているが、目標値がおおむね一〇%ですので、一・八七%との間に大きな乖離があるわけです。  これにつきまして、大臣もその閣議に出席されておって、これをどう受けとめられるのか、そしてまた、低公害車の推進ということを大臣としてどう進めていかれるのか、お伺いしたいと思います。
  91. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 環境庁長官より、昨年の九月の閣僚懇談会におきまして、低公害車の積極的な導入を図るよう要請があったところでございます。  通商産業省においては、この要請も踏まえ、平成十年度に低公害車を新たに五台導入し、低公害車導入を積極的に進めているところでございます。これに加えまして、通産省においては、低公害車の普及のため、運輸省、環境庁とも協力しつつ、エコステーションの設置の促進等を図っているところでございます。  通産省といたしましても、今後とも、他省庁にも働きかけながら、低公害車の導入、普及の促進に努めてまいる所存でございます。
  92. 大口善徳

    ○大口委員 最後に、液体噴射式LPG自動車についてお伺いしたいと思うんです。  LPGは、化石エネルギーの中ではクリーンエネルギーとして位置づけられているということが、総合エネルギー調査会の需給部会の中間報告でもなされているわけです。そして、液体噴射式LPG自動車について、朝日新聞の平成十一年四月八日のところに、この方式について、もうヨーロッパでは利用されていて、そしてまたこれは、燃料供給装置が燃料ボンベのLPGを一度加圧してエンジンに供給する、燃費を一割近く高めることができるし、また排ガスに含まれている炭化水素などの有害物質も減る、こういうことで、環境に優しいものなわけであります。  これにつきまして、今これを開発しておる会社から照会があるようでございますが、通産省としての取り組みについて、そして結論をいつごろまでに出されるのかをお伺いして、私の質問とさせていただきます。
  93. 太田信一郎

    ○太田(信)政府委員 お答えいたします。  LPG自動車の燃料供給の新しい方式、従来は液体から気体にしてエンジンに送り込むというやり方でしたが、新方式は液体噴射方式ということで、ポンプによりLPGを加圧し液体のままエンジンに供給するということで、先生からお話ありましたように、関係業界団体等から、これについて、高圧ガス保安法上の高圧ガスの製造に該当し規制を受けるおそれがあるかないかという問い合わせを受けているところでございます。  私どもの方としては、これはヨーロッパで、特にオランダ等を中心に普及しておりまして、この方式についての技術的な情報を今収集中でございます。あくまでも、保安の確保というのは大変大事なことだと思っておりますので、高圧ガス保安の確保を大前提としつつ、ヨーロッパ等での利用実績等も踏まえ、日本国内での利用に無用な支障となることのないよう、法律上の判断について現在鋭意検討を行っているところでございます。  本件については、先月三十日に閣議決定された規制緩和推進三カ年計画においても、本年度上期中ということですから九月三十日までに、解釈を明確化すると記載されているところでございます。できるだけ早期に結論を出したいと思っているところでございます。
  94. 大口善徳

    ○大口委員 質問は以上で終わります。ありがとうございました。
  95. 岸田文雄

    ○岸田委員長代理 青山丘君。
  96. 青山丘

    ○青山(丘)委員 私からも、少し根幹的な点で質問をさせていただきたいと思います。  ただ、私は、難しく言うつもりはないんですが、仏教の無常観を強く感じるものでして、今盛んであっても、そこに適正な競争環境がないとやはり思い上がりや油断が出てきて、やがてそれは非常に厳しい状況に陥っていかざるを得ない。しかし、今厳しいからといって、必ずしもそれは将来にわたって夢のないものかといえばそんなことはない。という意味で、現在の法改正というものが非常に意味があるという点で少し触れたいと思います。  特に、バブル経済が華やかなりしころは、日本経済が我が世の春を謳歌してきました。しかし、それはやはりバブル経済でありまして、現実に戻った場合、現在の例えば失業率四・六%、失業者数三百十三万人、これは政府が統計をとって以来、戦後最悪、最高の厳しい経済社会情勢。とはいえ、日本は戦後のあの荒廃を乗り越えてきましたし、また二度にわたるオイルショックを克服し、あのプラザ合意後の深刻な円高不況をみんなの努力と創意工夫で乗り切ってきました。  そして、昨年は、特に通産大臣中心となって努力していただいた、午前中の質疑の中にもありましたが、信用保証の枠を拡大していただいたことによって、倒産件数が著しく少なくなってきております。  先ほど数字を見ておりましたら、昨年の八月は千四百件ほどの倒産、九月が千五百件、十月が千六百件を超えて、百件ずつ一月ごとに数値が上がっておりましたが、信用保証の枠を拡大して保証の実績が上がってきますと、十一月からは千三百件、十二月は千百件、一月、二月は千件を切って九百件台、先月の三月は少し上がって千二百件ほどに戻っておりますが、これも必ずしも上がり調子ばかりではない、努力をすれば下がり基調になってきて、しかし、それもいつまでも下がっていくものではない、どこかまた厳しい状況になっていく段階に今また来ておるかもしれません。  問題は、今我々がなすべきことは、飽くなき創意工夫をこの際凝らしていって適正な競争環境をつくり上げていくということが大事でありまして、その意味では、今回の制度改正、とりわけ電気事業の部分自由化というのは時宜にかなったものと私は理解しております。しかし、電気もガスもそうですが、日本経済を支え、日本国民生活を支えてきた重要なエネルギーでありますから、この両事業が、適正な競争環境の中で、力強くその事業を進めていっていただくことが経済国民生活にとって非常に重要だと思いますので、少し根幹的なことをお尋ねします。  私は、電気事業もガス事業もまず第一に安定供給が非常に必要だ、そういう立場で物を考えております。安定的に供給されてくることが、やはり経済の持続的な発展にもつながるし、国民生活の実質的な豊かさにも必ずこれはつながってくる。ただ、ここから先が大事なことですが、安定供給の名のもとに、それでは料金はどうであったかといいますと、ここにはやはりいささかの油断があったような気が私はいたします。  業界における思い上がりとまでは言いませんが、例えば、安定供給が十分でなかったときは安定供給のために本当に努力をしてくださった。私はそのことを子供のころに強く感じた記憶がありまして、ああ立派だなと思ったことがありました。そして、安定供給がだんだん充実してよくなされてくるようになってきますと、やはり安定供給の名のもとに料金は高くてもよいというような点がいささかあったのではないかと今のこの段階では私は理解しております。  この料金の問題はこれから当委員会で私は折々ぜひ触れていきたいと思っておりますが、きょうはそういうことではなくて総括的に、まず、電気事業、ガス事業の現状を政府はどのように受けとめておられるのか、そして、実態として改革はこうすべきであるという考え方を持っておられたらひとつぜひ聞かせていただきたいと思います。
  97. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 電気事業というのは二つ視点がございまして、日本人経済活動をしていく上で、効率性の高い事業として一定の競争力のある電気料金で電気を供給するということのほかに、やはり供給義務を初めとする幾つかの公益的な使命が実はございます。  今回の制度改正に当たりましては、現在の日本経済の厳しい状況を克服するために、高コスト構造の是正が経済構造改革の主要課題として認識されている中で、電気及びガス事業に対しさらなる効率化が要請されていること、これが第一点です。第二点は、電気及びガスは、ユニバーサルサービスの達成、これは供給義務と言ってもいいんですが、それから安定供給の維持、エネルギーセキュリティーの確保、地球環境の保全などの公益的課題への対応、こういうことが要請されております。これらの要請を今回の法律改正は基本的な認識としているわけでございます。  このような認識に基づきまして、公益的な課題との両立を図りながら、さらなる競争原理の導入等によって国際的に遜色のないコスト水準を目指し、我が国の産業活動や国民生活に強靱な活力を生み出すことが可能となるよう、本制度の改正を行おうとしているところでございます。
  98. 青山丘

    ○青山(丘)委員 大臣もおっしゃられたように、効率化をもっと進めていかなければいけない、それから公益性を高めていっていただかなければならない。私は、その役割を、かなり今日まで努力して、電気事業、ガス事業として取り組んでこられた点を一定の評価をしております。  しかしながら、電気事業もガス事業も、やはり地域独占という環境の中で、経営は比較的恵まれたといいますか、許された状況にあったことは事実でして、問題は、自由化を進めていくときは、何といっても、料金の設定やメニューがだんだんと多様化してきておりますから、それらに対応していくためには、どうしても電力会社ガス会社が相当な創意工夫をこれからしていかなければならない。また、創意工夫をしていかなければならない環境に来ておるという認識を持っていかなければならないと私は思っておるのです。  そのあたりを、政府の見解をまず聞いておきたいと思います。いかがでしょうか。
  99. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 電力会社ガス会社の創意工夫についてのお尋ねでございますが、今回の制度改革は、事業者の経営の自主性を最大限尊重するということを一つの理念といたしてございます。  具体的には、自由化部門におきまして原則交渉によって自由な供給が行われることになります。需要家と交渉することを通じて経営の自主性を発揮し、さまざまな創意工夫が行われることと考えてございます。実際、ガス事業におきましては、先行いたしまして平成六年に前回の法改正によりまして大口の自由化が既に行われておりますが、需要家による供給者選択機会が拡大してきているところでございます。  また、規制部門におきましても、料金引き下げの届け出制の導入によりまして、事業者の経営判断によって機動的な料金改定を行うこと、さらに、事業の効率的な運営に資する選択メニューを設定することなどを可能としているところでございます。  他方、こうした制度改正の動きの中で、電力会社ガス会社におきましても、現在、エネルギー市場における今後の競争環境あるいは資金調達環境を踏まえまして、いわば普通の会社、そうしたものとしてより自主的な経営を行う方向を志向しているという動きがございます。こうした動きを通じまして、今後、事業者の個性を生かした創意工夫、これが料金、サービス面での新たな成果を生むものと期待をいたしてございます。
  100. 青山丘

    ○青山(丘)委員 今回の法改正の目的の一つは、地域独占であった電力会社ガス会社が、これまで比較的薄かったと言うべきでしょうが、競争の意識を持って、国際社会の中で通用する安定供給とコスト意識を持ってもらいたいということだろうと私は思っております。  しかし、新しくこうした事業に参入しようとする新しい電力供給者、ガスの供給者、そういう人たちが、既存の電力会社ガス会社と公正な競争環境にあるのか。それは、かなりの制度考えていかないと、なかなかそんな簡単なものではない。既に先行しておる部分と後発事業者との関係は相当な開きがあるわけですから、何らかの公正な競争ができる環境というものを具体的につくっていく必要がある。そのあたりはいかがでしょうか。
  101. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 今回の制度改正では、新規参入者は電力会社の送電ネットワークを利用いたしまして電気を供給することになりますために、電力会社と新規参入者との対等かつ有効な競争関係を確保するということが大変重要な点になります。このため、今回の制度設計におきましては、電力会社の送電ネットワークの利用、いわゆる託送に関する公平かつ公正なルールを定めることといたしてございます。  具体的には、託送料金設定に当たりまして、ネットワークの維持運用に必要な費用を過不足なく回収すること、また、電力会社と新規参入者との間で公平な料金負担を確保すること、この二つを原則といたしてございます。こうした原則に基づきまして、どのような託送料金設定ルールとするか、新規参入者に対してどのような技術的要件を課すかといった詳細な制度設計につきましては、現在、電気事業審議会において中立的かつ客観的に御検討をいただいているところでございます。  また、ガスの託送につきましても、通産大臣が指定をいたします一般ガス事業者については、託送に係る約款の届け出制を導入することとしてございまして、独自の導管を持たなくても大口供給に新規参入しようとする事業者が、一般ガス事業者と公正かつ有効に競争することができる環境を整備しているところでございます。
  102. 青山丘

    ○青山(丘)委員 新規の参入の事業者はなかなか厳しいかもしれないという面と、今回新たに自由化の対象となってくる大口の需要家も、大きな企業である電力会社ガス会社と対等な交渉ができるのかというと、現実はなかなかそうではないであろう。具体的に見ていけば、かなりハンディを負った交渉や話し合いになっていく。  そういう意味では、大口の需要家と電力会社との取引が適正になされていくためには、やはりこれも政治的に何らかの取り組みが私は必要であろうと思います。そうでなければ、それこそ適正な競争にはなかなかならないという気がしますが、いかがでしょうか。
  103. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 適正な取引の確保に関するお尋ねでございますが、今回自由化の対象となります需要家は、原則として供給者を選択することが可能な、すなわち、供給者に対して一方的に弱い立場に立たされることのない需要家を前提といたしてございます。また、この自由化対象需要家は、現在供給を受けている電力会社のみならず、新たに、新規参入者あるいは他の電力会社からも電気の供給を受けることが可能であります。したがいまして、委員指摘のように、必ずしも常に需要家が電力会社に対して対等な立場に立って交渉することが難しくなるというようなものではないと理解をいたしてございます。  ただ、制度実施当初におきましてはなお電力会社の市場シェアも高く、自由化対象需要家が電力会社に対して交渉上弱い立場に立たされることも念頭に置きまして、まず、自由化対象需要家に対する最終保障義務を区域の電力会社に課す制度を設けまして、必要最低限の需要家保護を図る。第二に、経済取引一般に適用されます独占禁止法とも整合のとれた適正な電力取引のあり方につきまして、現在、電気事業審議会において御検討をいただいているところでございます。
  104. 青山丘

    ○青山(丘)委員 少し観念的になるかもしれませんが、私は、日本人の性向として、部分自由化が実際に動き出すのには相当な時間がかかっていくのではないかという気がします。周りばかり見ていて、さてコストは本当に下がっているのか、安定供給はできるのかどうかとか、部分自由化にはいささか慎重な国民性向ではないかと思っております。  しかし、一たび自由化の流れが大きく動き始めたときは、予想を超えて大きな自由化の流れがどっと押し寄せてきたときに、これは五年あるいは十年先の話になるでしょうから今まだ触れるべきではないかもしれません、しかし今考えておかなければならないと思うから私は申し上げるのですが、もし自由化の流れが大きく動き出したときは、例えば電力会社ガス会社過剰設備の段階に今度は入ってくる。そうすると、自由化で大きな痛みを事業所としては感じるときがやがて来るかもしれない、来るであろう。  それは適正な競争環境であったらやむを得ないことで、そのためのまた政治的な施策は必要であろうと私は思いますが、そうした痛みを今既に考えて取り組もうとしておられるのかどうか、そのあたりはいかがでしょうか。
  105. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 自由化により発生をいたします電力会社ガス会社の痛みを和らげるための措置についてのお尋ねでございますが、今回の制度改革によって直接的な競争が導入される部分は、電力消費シェアにして約三割でございます。加えて、我が国の電力需要ガス需要は今後とも比較的着実に増加することが見込まれてございまして、この二つから、直ちに現在の制度改革が今後の過剰設備を発生するというような影響が出るとは考えておりません。  また、今回の制度改正を契機といたしまして、需要家ニーズに対応した新たな事業機会が創出をされ、事業者がさらなる効率化に努め、より前向きな経営を行うというようなことも期待をされてございます。  ただし、今回の改革は産業活動や国民生活に大きな影響のあるものでございますので、制度実施後も入念にその成果を見きわめる必要がございます。御指摘のような点も踏まえまして、制度実施後三年後をめどにレビューを行う考えでございます。
  106. 青山丘

    ○青山(丘)委員 私は、誤解していただくといけませんが、適正な競争環境をつくっていくことが必要だと思っておるんです。したがって、過剰な反応をする必要はないかと思いますが、しかし先々月こんなニュースがありました。  アメリカで、バスにくっついた機械が実は発電機であった。新しい動力源、電気モーターにミニ火力発電機を組み合わせた、電気を起こしながら走るバスがある。恐らく、バスで電気を起こして、そして充電されたものは家庭用で五軒の電力を賄うことができる。そういう発電機、マイクロタービンが開発をされた。実際の大きさは例えば人間の背丈くらいの、冷蔵庫くらいの大きさで、五世帯分の家庭用の電力を賄っていく。しかも、排出される窒素酸化物は五ppmと極めて低い。これは価格的にも一台二万五千ドル、日本円で二百九十万円くらい。量産すれば値段はもっと下がっていくであろうと言われております。  実は、これが本当に市場に出回ってくると、中国の三峡ダムは必要がなくなってくるのではないか。三峡ダムで使用される総工費約六百億ドル、日本円で六兆九千億円、その六分の一で総発電量を賄うことができる。マイクロタービンという機械を六十四万台使えば、三峡ダム分の電力発電することができる。こういうような事態がもし仮に出てくるとすれば、これは日本電力事業制度の中に非常に大きな変革をもたらすものだ。  ただ、さりとてしかし、私は、政治は余り市場に介入すべきではない。介入すべきではないが、起きてくる現象についてはやはり冷静に見て、対処しなければならないときは対処していかなければなりませんから、そういう幅広い思考の中で、このような新しい技術革新というもの、開発というものをどう受けとめておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  107. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 行政の市場への介入を最小化すべきという御指摘でございますが、今回の制度改革は、経営の自主性の最大限の尊重と並びまして、行政介入の最小化をその理念といたしてございます。  具体的には、自由化部門においては新規参入者に対する参入規制を行っておりません。また、電力会社、新規参入者ともに原則交渉による自由料金制といたしてございます。まさにさまざまな創意工夫を凝らした競争が行われるものと期待をいたしてございます。  さらに、電力会社に対しましても、料金引き下げ時の届け出制の導入、選択メニューの要件の緩和、拡大、あるいは兼業許可制の廃止などを行うこととしてございまして、こういう意味で、行政介入を最小化し、民間企業経営の自主性を最大限尊重する環境を整えることといたしてございます。  こうした中で、御指摘のございました各種の技術開発につきましても、それなりの成果をもたらすことを期待しているところでございます。
  108. 青山丘

    ○青山(丘)委員 今申し上げたような革新的な技術開発は、新たなマーケットを創出するもとにもなって、日本経済が再び大きな力を持つことになる、そういう起爆剤にもなるかもしれない。また、資源という立場から見ても、資源の少ない日本から見れば、エネルギーセキュリティーの視点から見ても重要な問題であります。  これまでの燃料電池に関する技術開発など、分散型電源の導入によって電気事業制度のあり方を大きく変えるものではないか、変えてくるかもしれない可能性を持っている。そうした新しい技術開発に対して私は支援をする必要があると思っておりますが、いかがでしょうか。  そのときに、例えば電力会社も、そうした新しい技術開発に対して反感を持つような感情で見るのではなくて、むしろ、みずからそうした分散型電源の開発についても積極的に取り組むような姿勢が私は必要であろうと思っておりますが、まず、新しい技術開発に対する支援について政府はどのような考え方でおられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  109. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 まず、燃料電池を初めといたします革新的なエネルギー技術についての考え方でございますけれども、従来の技術では実現し得ない効率性あるいは環境負荷の低減などを達成し、御指摘のありましたような新たな電力供給形態を提供する可能性も持った技術でございますので、その開発、導入については通産省としても大きな力を入れているところでございます。  燃料電池や太陽光発電、超電導応用技術、これらの研究開発を推進いたしますとともに、実用段階にあるものについては、新エネ促進法などに基づきまして、各種導入支援措置を講じているところでございます。  また、お尋ねの電力会社の対応でございますが、太陽光発電あるいは燃料電池等々でみずから実験もし、またしかるべき共同研究ども行いながら、この新たな技術についての対応をとっておるところでございます。  また、分散型電源としての太陽光発電あるいは風力発電については、その発電をされました電力をみずから購入しているというような支援措置も講じているところでございます。
  110. 青山丘

    ○青山(丘)委員 質問を終わります。
  111. 岸田文雄

    ○岸田委員長代理 吉井英勝君。
  112. 吉井英勝

    ○吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。  きょうは私、まず、九五年に卸電力の自由化というのをやって以降の問題を最初に少し見ておきたいと思います。  せんだって四月一日の朝日新聞なんですが、「各社が「卸電」安値にゃ感謝 でもどないしょ近所に発電所」というので、実はこれは神戸製鋼神戸製鉄所のところの問題について、三十四歳の主婦の方がちょうど新聞に投書をしておられて、その問題から問題提起をしてマスコミ等でも紹介されたわけですが、私、そこでまず、神戸製鋼の発電所について、主婦の方が御心配しておられる向きもありますので、若干最初に伺っておきたいと思います。  環境庁に伺いますが、現在の神戸製鋼神戸製鉄所からのSOx、硫黄酸化物の年間排出量は、九六年実績で七百三十トンであると思いますが、まずこの点から確認をしておきたいというふうに思います。
  113. 岡田康彦

    ○岡田政府委員 お答え申し上げます。  平成八年度の数字は、私どももそういう数字だと承知しております。
  114. 吉井英勝

    ○吉井委員 そこで、資源エネルギー庁の方から資料も送っていただき、レクチャーも受けましたが、ここで新規に百四十万キロワットの発電を開始した場合に、SOxの年間排出量がどうなるかという問題なんですが、一千百トンになるというふうにお聞きしました。これは、神鋼と神戸市の環境保全協定でも一千百トンというふうに示されているんですが、そうするとかなりSOxはふえるなというふうに思います。  エネ庁にまず確認しておきたいのは、年間排出量一千百トンということでいいですか。
  115. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 御指摘のとおりでございます。
  116. 吉井英勝

    ○吉井委員 硫黄酸化物については、一・五倍にふえるんですね。  それで、二酸化炭素の年間総排出量の方を見てみますと、現在、高炉が三基あったのが、一号炉、二号炉をもう既にとめていますから、三号高炉だけなんです。そうすると大体、これはエネ庁の方からもいただいておりますが、三号炉だけで見ると、まだそのほかの施設が残っているのがありますが、現在約六十三万トンのCO2の総排出量、ないしはもう少し高くなるかもしれませんが、これが、発電所の運転開始で、エネ庁の方でつかんでいらっしゃる数字では二酸化炭素は約二百六十三万トンになる。六十三万トン強から二百六十三万トンになるというふうに示しておられるんですが、こういうふうにふえると理解してよろしいか。     〔岸田委員長代理退席、委員長着席〕
  117. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 過去の実績は、既設製鉄所で百六十万トン、今後の姿は、既設製鉄所分六十三万トン、発電所分二百万トン、計二百六十三万トン、かような数字でございます。
  118. 吉井英勝

    ○吉井委員 今おっしゃった過去の数字というのは、現在休止している一号、二号高炉がまだ稼働していたときの実績値なんですよね。一号高炉、二号高炉は既にとまっているんです。ですからそれで見ると、残るは三号高炉だけですから、大体六十三万トンプラスアルファ、それが今の時点での二酸化炭素の総排出量ということになるかなと思いますが、そういう理解でいいですね。
  119. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 九〇年度における排出量は八十三万トン、これは一、二号高炉を含まずでございますので、先生のおっしゃいました六十三万トンプラスアルファという意味で、御指摘のとおりでございます。
  120. 吉井英勝

    ○吉井委員 ですから、現在、神戸製鋼の場合には二酸化炭素の年間排出量についていえば六十三万トン強、これが発電所運転開始になりますと二百六十三万トンというふうになるわけです。  そうすると、COP3では二酸化炭素を六%削減すると約束した日本なんですが、神戸製鋼神戸製鉄所のIPPで二酸化炭素の排出量が四・二倍、あるいは若干プラスアルファということを考えますと約四倍ですね、約四倍ふえる。SOxの方で一・五倍ふえる。  九五年三月二十八日の本委員会で附帯決議を行いましたが、分散型電源の導入が都市環境への負荷を高めることのないよう配慮するというふうにしてきたわけです。しかし、現実にはSOxで一・五倍、CO2で四倍と大幅に負荷を高めるというのが事実ということになりますので、もっと厳しい対策をとるということが前提にならなかったならば、このまま行くと附帯決議というのは全くないがしろにされてしまう、無視されてしまうということになるんじゃありませんか。
  121. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 SOxの点と炭酸ガスの点と二点ございますが、SOxの将来の年間排出量を現状の七百三十トン程度に抑制することにつきましては、NOxとあわせ、環境庁の御意見に十分留意をして今後神戸製鋼を指導するということになってございます。  これに対応しまして、昨年の十一月五日付で、環境審査の結果及び指導事項に従いまして環境保全に努めるという回答を会社から得てございまして、SOxにつきましては、高性能の排出ガス処理技術を導入することによって、既設製鉄所を含め排出低減対策を講じて、年間排出量を現状程度になるよう可能な限りその抑制に努めることとしてございます。  また、この経緯につきましては、今後、工事計画認可など電気事業法に基づく一連の手続で、さまざまな機会をとらえてその確認を行っていくということでございます。  また、炭酸ガスの問題につきましては、この神戸製鋼の石炭百四十万トンの発電は、関西電力の全体的な電源構成における炭酸ガスシェアの内枠として理解をいたしてございまして、この神戸における炭酸ガスの増量はございますが、関西電力全体として、九〇年比、二〇一〇年まで発電中の炭酸ガスの原単位を二〇%抑制する等々の自主的な努力目標の中で吸収をしていくという理解でございます。
  122. 吉井英勝

    ○吉井委員 神戸市の場合に、総量規制という面での条例にはなっていないようですが、川崎市の場合は、非常に古い時代からの総量規制という立場に立った環境条例があって、ですから、ゼネラル石油が五十四万七千五百キロワットの発電所を計画したわけですが、脱硫装置などの設置を考えると大幅な設計変更が必要となる。その結果、総事業費が五割増しになるとして断念した。  ゼネ石の場合は、まずこういう経過があったのではありませんか。この点だけ一言聞いておきたいと思います。
  123. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 ゼネ石の場合には、環境アセスを踏まえた詳細設計の段階で所要費用の見込みが当初の計画を大幅に上回ってしまうという通常では考えられない事例でございましたが、御指摘のとおりでございます。
  124. 吉井英勝

    ○吉井委員 我が党は、九五年の改正のときに、御承知のようにIPPに賛成をしました。ですから、IPPに反対しているということで言っているわけじゃないんです。IPPを進める立場であれば、SOxの総排出量が一・五倍になるという状況はやはり放置できないと思うんです。  現状程度にとどめるように努力するということなんですが、それならば最初から七百三十トン以下にすると明記をして、それに合わせて脱硫装置の改良など環境投資というものをもっとやらせて、現状よりも本当に低い排出総量に低減させる、そのことは当然だと思うんですね。当初の段階では一千百トンです、七百三十トンは努力目標だという扱いと、七百三十トンをクリアするために最初から環境対策をきちっとやっていくということとは随分話が違うわけですね。  先ほどのお話じゃなしに、ゼネ石が取り組んだように、結果としてゼネ石は断念ということになっていますが、本当に環境投資をやってでも環境問題をクリアする、その立場に立つように求めていくということがエネ庁として必要だと私は思うんだが、この点はどう考えているんですか。
  125. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 千百トンという数字は、運転調整のための運転開始時の一時的なSOxの数字でございまして、先ほど申し上げましたように、これは高性能の排出ガス処理技術を導入いたしますので、当初の調整運転期間を過ぎた後は七百三十トン、現状程度で推移をするものと我々は考えてございます。
  126. 吉井英勝

    ○吉井委員 環境庁の意見では、立地予定地の周辺地域は、二酸化窒素及び浮遊粒子状物質に係る環境基準が達成されておらないと指摘している地域ですね。大気汚染防止法の硫黄酸化物に係る総量規制地域に指定され、かつ公害健康被害の補償等に関する法律の旧第一種地域であることから、事業の実施に際しては、既設製鉄所の対策も含めて大気環境への負荷低減対策を推進する必要があるとして、硫黄酸化物については、最新の排出ガス処理技術の導入等により、年間総排出量が現状程度となるよう可能な限りその抑制に努めるという意見を述べていて、通産省は、さっきもおっしゃったように、環境庁の意見に留意せよと審査結果を通知しているわけです。  だから当然、最新の排出ガス処理技術の導入などで、運転開始の条件は、SOxは年間総排出量を七百三十トン以下に抑えさせるんだ、こういうことなんですね。
  127. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 新しい脱硫設備を入れますために当初の調整運転期間がございますが、平常運転のもとでは現状の七百三十トンという数字でございます。
  128. 吉井英勝

    ○吉井委員 ですから、それは運転条件で、七百三十トンを超えるようなことになればさらに脱硫装置等の強化とか、それなしにはこれは認めないということですね。
  129. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 事業者としてそういう努力をするという確約をとってございますので、今後の動きを注視したいと思います。
  130. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、石炭火力であれ何であれ、化石燃料による火力がだめだとかそういう立場に立っているものじゃないんです。脱硝、脱硫も、これは公害反対運動や世論の成果として随分日本で改善が進んできたというふうに思っています。それから、炭酸ガスについても固定化技術とか、あるいは石炭そのものを水素ガスにして水素ガスとして燃やすとか、その過程で先にカーボンを除去する、そういう燃料転換の道とか、現に研究も進められているわけですし、私はそういう技術開発というのは非常に大事だと思っているわけです。  ただ同時に、特にSOxなどに関して言えば、もう技術的には随分可能性は出てきている時代なんですよ。問題は環境投資になると思うんですが、せんだっての朝日では、IPPで神戸製鋼年間百億円の利益を見込むというのが紹介されておりました。だから、IPPで大きな利益を上げるわけですね。電気はもともと公益事業という性格を持っています。ですから、この利益の半分を環境対策に回したとしても、十年分で見れば大体五百億円ぐらいになってくるわけですから、やはり徹底した環境対策をやって、SOxにしても二酸化炭素にしても対策をとらせるということが非常に大事だというふうに思うわけです。  健康や環境を無視して、とにかくIPPでもうかりさえすればいいというのは、これは制度導入時の趣旨とか国会の附帯決議に反するものだと思います。神戸製鋼の発電所にきちっとした対応ができないようでは、全国のIPPで環境悪化を招いてしまう。しかも、十五万キロワット未満はアセスの対象外ということになっておりますから、現在IPPで計画に上がっているのが十八件とか、もっと細かいのを入れたらあるんでしょうが、IPPのアセス案件として上がっているのは八件というふうに伺っております。  そういうふうな中で、やはり神戸製鋼のIPPについて、SOxについては七百三十トン以下に確実に抑えさせる。そして、抑えられないときはさらに改善対策をとらせて、そのめどがつくまではそれは認めない。やはりそれぐらいの厳しい環境対策について臨む姿勢が、これからのIPPの問題を考えたときに、そのことが求められてきているときだと私は思います。  そこで、大臣に伺っておきたいんですが、IPPをやるんだったら環境対策を徹底して、NOxもSOxもCO2なども総排出量を現状よりも削減させていく。企業がそれが嫌だと言うのならば、これはゼネ石のように計画断念という判断をすることにもなろうかと思いますが、まずこの問題というのは環境対策の徹底を企業に求める、このことが通産省としても必要だというふうに思うわけです。  この点だけは大臣のお考えというものを聞いておきたいと思います。
  131. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 環境対策は当然重要でございますし、どこのだれが電気を供給しようとも、その発電所は当然環境水準をクリアしていなければならないわけでございます。  利益が出ているからもっと環境対策をやれという議論が通用するかどうかというのはもう少し考えなければならないところでございますけれども、やはり神戸製鋼のケースでとれば、既に持っていた土地、あるいは一部港の施設を持っていたとか、そういう有利な条件の中で電気の供給事業を始めたわけでございますから、果たして、過去そういうものの整地とか港湾とかに投資したお金を考えれば、百億が本当に実際の利益かどうかということは少し考えてみなければならないことだと思っております。  いずれにしても、環境庁を初め政府として決めた、あるいは国会として決めていただいている環境のあらゆる基準をきちんとクリアするということがやはり仕事の第一歩でございまして、そのほか、周辺の住民との折り合いをよくするということもまた電気事業をやる方々の責任ではあるという点は、私はそのとおりだと思っております。  ただ、利益が上がっているからといって、国あるいは地方自治体が決めた基準以上のことを要求するというのは、理屈に合っているかどうかということは少し考えてみたいと思っております。
  132. 吉井英勝

    ○吉井委員 いずれにしても、当初出されているままではSOxと二酸化炭素に関してはかなり大幅に、一・五倍とか四倍とかふえるということで、環境問題がもともと指摘されている地域でのことですから、これは厳しい対策をとらせる。利益を上げても、もうけのために環境に手抜きということはいささかもないようにきちっとやっていくという姿勢が、全国に今出てきているIPPの案件にすべてかかわってまいりますので、最初の姿勢が非常に大事だというふうに思いますから、重ねて申し上げておきたいと思います。  次に、三年前のガスの自由化後の大口供給と家庭用ガス料金を単価で比較してみることをやったんです。  実は、これはデータを求めたんですが、なかなか通産省の方がお出しにならないので、有価証券報告書ではじき出してみますと、東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの大手三社で見たときに、家庭用は、九四年の百五十一円六十銭、九五年の百四十九円五十銭、九六年の百五十一円四十銭、九七年の百五十六円二十銭、これはそれぞれ立米当たりですが、その他業務用というのは、それぞれ四十九円七十銭、四十九円十銭、五十円九十銭、五十三円十銭。つまり、家庭用は大口供給の三倍の料金であるというのが実態なんですね。  そこで、ガスの自由化をやったんだけれども、その結果として家庭用の料金が下がったとか縮小に進んだのかといったら、そういうふうには言えない。この点では、実は前通産大臣の堀内さんの論文の中で、  大手ガス会社の損益計算書や有価証券報告書などを独自に集めて調べてみました。すると、約四九パーセントを占める一般家庭のガス料金は「燃料費・原料費調整制度」によって三カ月に一度値上げされているのに、年間契約約二百万立方メートル以上の大口需要者や、卸売、業務用といった残り五一パーセントについては自由契約で、この制度による料金の変動を受けないようになっている。しかも、大口需要者に対しては、一般需要者の二割五分程度の金額でガスを供給しているのです。つまり、一般の消費者からは取れるだけ取り、大口需要者である大企業を儲けさせているわけです。 これは堀内通産大臣が文芸春秋の昨年の十一月号で紹介しておられることです。  私は、ガス自由化によって、大口と家庭用のガス料金が、その差が縮小していくとか家庭用が安くなるとか、自由化の効果があったのかどうなのか。そういうことをやはり検証することが、今回ガス事業のやり方を電力に広げようとしてきている、まさにその改正であるだけに、非常に大事になってきていると思うんです。  ところが、このガス自由化の検証が大事なのに、必要な資料をお願いしてもさっぱり出てこない。これはやはり、情報を、個別企業の機密だ何だということじゃなしに、ガス料金が高いのか低いのか、直接消費者にかかわる問題について、少なくともガス事業者全体のデータにしても全面的に開示をして、きちんとわかるようにするということが非常に大事だと思うのですが、私はこの点について、情報公開を徹底する姿勢というものを大臣の方から示していただきたいというふうに思います。
  133. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 大臣からお答え申し上げます前に、若干の事実関係について御報告を申し上げたいと思います。  大口料金の料金単価が、一般契約、いわば家庭用に比べて低いという御指摘でございますが、これは、大口需要が一般契約の需要に比べまして、まず使用量が高負荷、高稼働でございまして、こういったため単位当たりの固定費が低くなる、こういう結果でございまして、いわば経営上は当然の結果でございます。例えば検針費用、集金費用、保安関連費用、これは需要の規模にかかわらず一件当たりのコストはほとんど差がございません。一件当たりのガス消費量が一般家庭用数千件分以上に相当するような大口需要では、単位当たりのコストが極めて僅少になるというものでございます。  ほかにも、大口需要が中圧以上でガスを供給しますために、低圧導管部分の費用負担が少ない。あるいは製造供給設備等についても、大口の場合には負荷が極めて良好で、設備利用率が相当に高い。かような事情から、単位当たりの費用は一般需要に比較して著しく小さいという御評価になっているものでございます。  また、業務用需要等々についての原料費調整制度についての御指摘がございましたが、この制度は、業務用、大口、また一般、すべてについて現在適用になっているところでございます。  また、データでございますが、大口部門の詳細データにつきましては、大口部門にかかわります競争上の位置づけを阻害してはならない、また、特に大口部門につきましては関係企業ガスの大手三社等々でございますので、わずかな数字が全体的な競争状況を示してしまうというようなこともございまして、現在のところ公表はいたしておりませんが、総合エネルギー調査会都市熱エネルギー部会中間報告におきまして、大手三社など相当件数の大口供給を行っている一般ガス事業者は、その競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがない限りにおいて、自主的な取り組みとして、大口供給に係る平均価格、標準モデルケース価格あるいはその他の指標に関する情報を開示していくべきである、かような提言をいただいたところでございまして、現在、この部会の下に設置された制度設計等小委員会におきまして、情報公開への取り組みに関するガイドラインの作成を行っているところでございます。
  134. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 現在、相当件数の大口供給を行っている一般ガス事業者を対象として、大口供給にかかわる適切な情報公開のあり方に関するガイドラインの作成等に向けた検討を進めているところでございます。
  135. 吉井英勝

    ○吉井委員 大口のコストを小口、家庭用に転嫁するということは許せるものじゃありませんし、やはり情報公開なしに一方的な言いわけというのは通用しないと思うのです。私は、全面的な開示というものを求めて、時間が参りましたので質問を終わりたいと思います。
  136. 古賀正浩

    古賀委員長 前島秀行君。
  137. 前島秀行

    ○前島委員 二、三点、基本的なところを伺いたいと思います。  一つは、今度の部分自由化によって競争条件をつくり出したり、ひいては課題である国際的な電力料金を引き下げる、こういう目的が果たして可能だろうか、達成できるだろうかという点であります。  といいますのは、御案内のように電力業界というのは非常に巨額の設備産業設備を伴うものでもあるし、同時にまた、現在の体系が沖縄を入れると十社の体系になっている。その巨大な設備を伴うものが、発電と送配電というところが一体になって組み込まれている。こういう状況の中で部分的に自由化という形をしても、本当の意味の競争条件をつくり出せ得るのか、ひいては国際的な料金体系をつくり出すということについてはちょっと無理がある、限界があるんではないだろうか。やはりその辺のところまで切り込んでいかないと、なかなかその目的というのは達成し切れないのではないだろうか。  そんなふうな気がしますので、今回の法改正に伴うどの程度の効果といいましょうかを期待でき得るのか、またそのことによって、三年後に見直しということは既に言っているわけでありますから、将来的にはさらに自由化といいましょうか、そういう構造的なところに踏み込んでいくという必要があるような気がするわけでありますけれども、その辺のところの基本的な受けとめ方について考え方を聞かせていただきたい、こういうふうに思います。
  138. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 お答えを申し上げます。  今回の電気事業法の改正は、我が国経済の高コスト構造是正というテーゼがあって、そこから出発したものでございますが、その中で、競争の導入による効率化という要請と、供給信頼度の維持、エネルギーセキュリティーの確保、あるいは環境問題といった公益的な要請を両立させるという趣旨で行っているものでございます。  具体的に申し上げますと、供給者と料金、サービス面で交渉する能力のある需要家、これを自由化対象需要家として供給者の選択を認め、そこに小売供給の部分自由化、またこれに伴う電力会社と新規参入者との対等かつ有効な競争環境の整備を行うという点が第一点でございます。また、自由化対象需要家以外の規制部門の需要家に対しましては、電力会社の供給について、料金引き下げ時の届け出制の導入、あるいは選択メニューの拡充という意味で、いわゆる規制緩和を行ってございます。  こうした改正によりまして、電気事業全体の効率化が図られ、かつすべての需要家に効率化の成果が行き渡るということを期待しているものでございます。  もちろん、御指摘のとおり、将来の構造的な問題にも踏み込み、今後、三年たちました後でのレビューを行う考えでございます。
  139. 前島秀行

    ○前島委員 この部分的なことをやるだけで、今日の基本的な構造的なものに切り込まずして物事は解決しないだろうという基本的な認識を私は持っているのでありまして、将来の電力事業の方向性という一定方向性を定めていく中で具体的にやっていかない限り、小出しに部分的にやっても、この改革の方向というものが明確になっていない限りなかなか期待できるものではないだろう、私はこういうふうに思っています。  企業のそれぞれの努力の範囲の中での改革、前進ということはあり得るだろうな、私はそこは評価をしますけれども、その枠を超えて、基本的な課題、基本的な要請にこたえていくかということになりますと、やはり構造的な問題に向かっていかなくてはいかぬではないだろうかな、こういうふうに私は基本的に思います。  そこで、大臣に伺いたいのは、将来の方向性みたいなものをどう構えていくか、こういうことだろうと思います。私は、原発を含めて日本エネルギー考えたときに、一定の原発の存在というものも否定できるものではないだろうし、現に設備投資等々でやったものについての位置づけというのはちゃんとあるわけでありますから、原発を含めて否定するものでも何でもないわけで、原発を含めて将来のエネルギーの供給システムというものはどうあるべきなのかというところをぴしっと描いた上で、必要な改革、メスを入れていくという形だろうと思いますね。  そういう面では、私は、それぞれの役割、任務分担みたいなものを持っていく中で、それぞれの地域性だとか地域の持っている課題なんかを受けとめていく体制をつくっていく、こういう考え方が必要ではないだろうかな、こう思います。そういう面で、私は、地域分散型エネルギー供給システムをどう加味していくかということが非常に必要だろうと思いますね。  例えば、私のところはちょうど東電と中電の境目なんです。そして、数年前から東電の東の端のエネルギー不足で困っていた。それで今度は、境ですので、中電が清水の方に二百万キロワットの発電力をつくろうと思ったけれども結局できなかった。最初から中電がつくるんだけれども、この発電力のエネルギーの大半は東電に売ることを前提にしているわけでして、なかなか、今議論のあったさまざまな環境問題等々があって、結局当時の静岡県知事がノーということになってつぶれてしまった。  こういう側面があるわけでして、やはり私は、さまざまな地域の状況あるいは地域におけるエネルギーの必要性等のその性格なんかを見て、もっと地域分散型のエネルギー供給システムというふうなものを考えていくべきではないだろうか、余り大型だけでいいという形はどうも無理のような気がいたします。  私は富士山ろくにいますから、あの富士山のすそ野を、新潟の原発から東京へ持ってきているわけですね、送電。それから、昔から富山の方だとか等々の送電線が延々と富士のすそ野を東京に向かって関東のエネルギー供給として走っているという歴史を見る。それを見ると、やはり転換効率の問題だとか長距離配送のむだみたいなものを考えるわけでして、私は、すべて地域分散型ということについては無理も限界もあるだろうと思うけれども、それぞれの要求に応じた配電システムみたいなもの、送電システムみたいなものということは考えるべきではないだろうか。  そうするとやはり、すべて大型だとかすべて十社体制という形だけではなくして、さらに規制緩和だとか競争条件等々入れる中で、地域分散型の、地域の実情に合ったエネルギー供給システムをきめ細かくつくっていくという考え方がどうしても必要になってくるんではないだろうか。そういう将来的な改革の方向、イメージというものを片っ方でつくりながら、それに向かっての改革点というものをいろいろやっていく。  こういう考えでないと、今のような基本的な構造がばしっとでき上がっている中で、間を縫って部分的に小出し的に規制緩和をやっても限界があるような気がするのでありますけれども、その辺のところの大臣考え方といいましょうか、将来方向性みたいなものを聞かせていただきたい。
  140. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 ちょうど昭和二十年にどういう体制で電力が供給されていたかということになりますと、そのころは日本発送電という一社体制で発電と送電をやっておりました。もちろん地区では、例えば関東配電とか、あるいは大阪は関西配電が配電をやっていたわけでございます。その後、日本発送電が持っておりました発電施設等を九社に分割いたしまして、今の体制がスタートしたわけでございます。その後、電源開発促進法ができまして、電源開発株式会社ができまして、九社プラス配電を行わない一社ができたわけでございます。  電発の歴史も、最初は水力、次に石炭火力、石油火力、また原子力に今手を染めているわけでございまして、徐々にではございますが、日本電力の体制も変わっております。  ただ、発電、送電のところは変わり得るわけでございますが、実際家庭に配電をするところというのは、さっき先生電力設備産業だからとおっしゃったように、なかなか配電のところの体制を変えるというわけには多分いかないんだろうと思っております。  ただ、三年前に、卸売電気事業と申しますか、こういうものを自由にしたことによって、先ほども数字が出ておりましたけれども、相当数の方がこれに参加をするようになりました。今、日本電力会社が抱えております最も大きな問題というのは、発電所を立地するということでございます。これは原子力だけでなく、石炭石油火力のときもそれなりの難しさがあるわけでございまして、既に土地を持っておられる方、あるいは石炭を荷揚げするような設備を持っておられる方が発電に参加するということは、ある意味では、既に過去行った投資を有効に利用するという意味では大変意義のあることだったと思っております。  そこで、そういう体制の問題のほかに、今回は小売の自由化ということで、電力会社の電線を使って一つの地点から一つの地点に電気を売るということ、これも新たな試みとしてどう発展していくかということを見守らなければならないわけですが、先生が後段に言われました地域分散型というのは、大変私は大事だろうと思っております。  これは、小さな水力といってもばかにしてはいけませんし、また太陽光あるいは風力、こういうものにはやはり相当の研究開発費を使い、特に、家庭が導入いたします太陽光で一般家庭の需要をみずから賄うというような方向に対しては、研究開発においてもあるいは一般家庭が採用される場合にも、初期の段階においては国が相当の支援をするということも大事です。  また、コージェネレーションがどこまで成功したかというのは議論のあるところでございますが、やはり大きなものにも投資をするということも必要ですし、地域分散型のそういうエネルギー供給システムの重要性ということも、国民も、あるいは地方自治体も国も、やはり認識をしていかなければならないことの一つだと思っております。
  141. 前島秀行

    ○前島委員 原子力に限らず火力でも、大型中心の体制というものには限度があることだけは間違いない。発電立地という面から見ても限界があるなということがありますから、今大臣も言われましたように、小さな水力でも使い方によっては地方では非常に有効に経済的にも使えるという側面はいろいろあるだろう、私はこういうふうに思っていますので、その点の配慮をぜひお願いしたい。  その地域分散型、それから地方自治体等々とのさまざまな協力の中で、どうしてもこれからもう一つ追求しなくてはというのは、新エネルギー自然エネルギーですね。再生可能エネルギーをどう今後やっていくかということも私は重要な一つの視点だろうと思います。  そこで、時間がありませんから、基本的には、この新エネルギー自然エネルギーの配電技術、電力をつくり出すという技術、太陽光でも風力でも日本は相当進んでいる、ある意味では相当進んでいるというふうに私は認識している、そういうふうに聞いています。問題は、それを普及する手段、方法がおくれている。ある意味だと、それについてさまざまなブレーキ部分もなきにしもあらず、こういう認識だというふうに思っているわけであります。  そういう面では、技術はあるのでありますから、それを普及させるさまざまな手だてということが、これは政府の姿勢といいましょうか、今後の行政にかかっている部分でもあるだろうな、私はこういうふうに思いますし、既存の電力事業者の協力といいましょうか、理解というものが絶対に必要だろう。その点が今、この自然エネルギーのさらなる充実という面で必要な課題ではないだろうかなという認識を持っているのであります。すなわち、技術は進んでいるけれども、普及とそれのためのさまざまな協力、支援体制というものがないのではないか、そんなふうな認識を持っています。  そういう意味で、その認識と、これからこの自然エネルギーに向けての必要性についてちょっと大臣に最後に意見を聞かせていただいて、終わりたいと思います。
  142. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 先ほど申し上げましたように、例えば屋根にパネルをつけて太陽光を電気に変えるという技術は、日本は相当いいところまで行っております。ただ、工場でこういうものをつくりましても、量産ができない。これは需要がないから量産ができないということで、量産効果のないうちはやはりどうしても値段が高くなります。したがいまして、先生がおっしゃるように、普及をするためには初期の立ち上がりの段階においてやはり国が支援をするという必要がございまして、そのための予算を国会で先般も御承認いただいたわけでございます。  こういうことと電力会社電力の供給義務との関連において、接続、接続というのは物理的な接続ではなくて、両方のシステムがうまく動くように物事を取り決めるという部分も大変大事であると私は考えております。
  143. 前島秀行

    ○前島委員 終わります。
  144. 古賀正浩

    古賀委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  145. 古賀正浩

    古賀委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。吉井英勝君。
  146. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、日本共産党を代表して、電気事業法及びガス事業法の一部改正案に対する反対討論を行います。  反対理由の第一は、大口部門の小売自由化によって料金の引き下げを図るとの政府の自由化政策に根拠がないからであります。既に四年前に先行実施されたガス事業の大口供給の自由化によっては、一般家庭料金を含め、料金引き下げにつながった事実はありません。むしろ、大口部門の低料金のしわ寄せを小口部門にかぶせているのが実態です。ガス事業の大口料金自由化の影響を検証する情報すら非公開としたまま、今回、電気事業において同様の自由化を進めようとすることは、到底国民理解を得られるものではありません。  第二に、出資等で他分野の事業に進出し赤字を出すなどの現状があるもとで、兼業規制を廃止することは、電気、ガスという公益事業に責任を持つべき事業者のあり方を一層ゆがめることになりかねないからです。  第三に、料金引き下げを届け出制にすることによって、引き下げ原資が内部留保に回され、一般消費者、国民に還元されないおそれがあるからです。  なお、卸電力自由化による新規参入者がコスト低減のため環境対策をおろそかにし、大問題になっている実態があります。そのもとで自由化を拡大することは、環境悪化の促進となりかねません。  以上、本案に対する反対理由を述べて、討論を終わります。
  147. 古賀正浩

    古賀委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  148. 古賀正浩

    古賀委員長 これより採決に入ります。  内閣提出電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  149. 古賀正浩

    古賀委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  150. 古賀正浩

    古賀委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、伊藤達也君外四名から、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。松本龍君。
  151. 松本龍

    ○松本(龍)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の諸点について、適切な措置を講ずべきである。  一 国民生活産業活動の基盤となる電気及びガス事業の制度改革が、エネルギーセキュリティーの確保と地球環境問題等に配意したエネルギーのベストミックスや高度な供給信頼性の維持等の公益的な課題への取り組みを損なうことがないよう、競争と公益的課題の達成の両立を図りつつ推進すること。  二 今改正において導入される諸制度の詳細設計に当たっては、新規参入の拡大が有効な競争を促進し業務の合理化・効率化に資するものとなるよう、公正かつ公平なルールの整備を行うこと。    特に、電力会社が保有する送電ネットワークの開放については、料金算定条件等について対等な競争条件が確保されるものとするとともに、系統運用やベースロード電源の活用に支障を生じることがないよう適切な制度構成を図ること。  三 制度改正により期待される一般電気事業者及び一般ガス事業者の経営努力等の成果が、小口需要家の料金等に適切に反映されるよう制度の運用を図ること。  四 地球環境問題への対応等の観点から、発電分野における自由化の拡大が地球環境への負荷の増大を招くことがないよう、太陽光風力発電等の自然エネルギーを利用した電力の売買を促進するための施策について、引き続き積極的に推進すること。  五 施行後三年経過時に予定される今改正の検証と制度の見直しに向けて、電力ガス事業における我が国に適合した制度改革のあり方等について、十分な状況把握に努めること。 以上であります。  附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、省かせていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  152. 古賀正浩

    古賀委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  153. 古賀正浩

    古賀委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、与謝野通商産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。与謝野通商産業大臣
  154. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、本法律案の実施に努めてまいりたいと考えております。     —————————————
  155. 古賀正浩

    古賀委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  156. 古賀正浩

    古賀委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  157. 古賀正浩

    古賀委員長 次に、内閣提出参議院送付特許法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより趣旨の説明を聴取いたします。与謝野通商産業大臣。     —————————————  特許法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  158. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 特許法等の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  国際的な大競争時代において、我が国の経済産業の活性化を図るためには、創造的技術開発を促進することが重要であります。このため、技術開発の成果である知的財産の法的保護を迅速かつ十分に付与することにより、その経済的価値を国際水準にまで高めることが必要であります。また、企業の活発な国際展開に対応し、商標の国際的保護を図るための制度を構築することが求められております。  本法律案は、かかる情勢を踏まえ、特許法その他の工業所有権関係法律について、権利の強く早い保護、標章の国際登録に関するマドリッド協定の議定書の実施、特許料の引き下げ等を図るために所要の改正を行うものであります。  なお、本件につきましては、昨年十二月に工業所有権審議会より特許法等の改正に関する答申が提出されており、本法律案はこの答申を踏まえた内容となっております。  次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。  第一は、特許権の早期取得を図るため、審査請求期間を現行の七年から三年に短縮することであります。  第二は、特許権等の侵害に対する救済措置を拡充することであります。具体的には、文書提出命令等の拡充による侵害の立証の容易化、鑑定の手続の整備による損害の計算の容易化や、裁判所の認定による実質的規模の賠償額の実現を図るものであります。  第三は、商標の国際的保護を図るため、マドリッド協定の議定書を実施するための手続を整備することであります。具体的には、我が国の商標登録出願等に基づく国際登録出願や、国際登録に基づく我が国での保護を求める商標登録出願に係る手続を新たに設けることであります。  第四は、出願人や権利者の負担の軽減を図るため、特許料、審査請求料を引き下げることであります。具体的には、基本発明重視の観点に立脚した特許料等の引き下げを図ること、及び特許料の納付を猶予し、または減免する特例措置の対象に資力に乏しい法人を加えることであります。  第五は、その他権利の迅速かつ十分な保護、工業所有権制度の国際的調和等を図るために必要な事項について、所要の改正を行うものであります。  以上が、本法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  159. 古賀正浩

    古賀委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  次回は、来る二十七日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時二十四分散会