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1999-03-23 第145回国会 衆議院 商工委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月二十三日(火曜日)     午前十時二分開議   出席委員    委員長 古賀 正浩君    理事 伊藤 達也君 理事 小此木八郎君    理事 小野 晋也君 理事 岸田 文雄君    理事 大畠 章宏君 理事 松本  龍君    理事 大口 善徳君 理事 西川太一郎君       遠藤 武彦君    大石 秀政君       大野 松茂君    岡部 英男君       奥田 幹生君    奥谷  通君       木村 隆秀君    小島 敏男君       河本 三郎君    新藤 義孝君       竹本 直一君    武部  勤君       戸井田 徹君    中尾 栄一君       中山 太郎君    林  義郎君       古屋 圭司君    牧野 隆守君       村田敬次郎君    茂木 敏充君       山口 泰明君    山本 幸三君       上田 清司君    奥田  建君       佐藤謙一郎君    島津 尚純君       仙谷 由人君    藤村  修君       前田 武志君    松崎 公昭君       渡辺  周君    遠藤 乙彦君       中野  清君    福留 泰蔵君       青山  丘君    江崎 鐵磨君       小池百合子君    金子 満広君       矢島 恒夫君    吉井 英勝君       前島 秀行君  出席国務大臣         大蔵大臣    宮澤 喜一君         国務大臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君  出席政府委員         金融監督庁監督         部長      乾  文男君         経済企画庁調整         局長      河出 英治君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         大蔵省国際局長 黒田 東彦君         通商産業省通商         政策局長    今野 秀洋君         通商産業省貿易         局長      佐野 忠克君  委員外出席者         大蔵大臣官房審         議官      八木  健君         日本輸出入銀行         総裁      保田  博君         参考人         (海外経済協力         基金総裁)   篠沢 恭助君         参考人         (海外経済協力         基金理事)   篠塚  徹君         参考人         (海外経済協力         基金理事)   林  康夫君         商工委員会専門         員       野田浩一郎委員の異動 三月二十三日         辞任         補欠選任   奥谷  通君     小島 敏男君   武部  勤君     古屋 圭司君   茂木 敏充君     戸井田 徹君   山口 泰明君     大野 松茂君   島津 尚純君     佐藤謙一郎君   樽床 伸二君     上田 清司君   渡辺  周君     仙谷 由人君   二階 俊博君     江崎 鐵磨君   金子 満広君     矢島 恒夫君 同日         辞任         補欠選任   大野 松茂君     大石 秀政君   小島 敏男君     奥谷  通君   戸井田 徹君     茂木 敏充君   古屋 圭司君     武部  勤君   上田 清司君     松崎 公昭君   佐藤謙一郎君     島津 尚純君   仙谷 由人君     渡辺  周君   江崎 鐵磨君     二階 俊博君   矢島 恒夫君     金子 満広君 同日         辞任         補欠選任   大石 秀政君     山口 泰明君   松崎 公昭君     藤村  修君 同日         辞任         補欠選任   藤村  修君     樽床 伸二君 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国際協力銀行法案内閣提出第三二号)     午前十時二分開議      ————◇—————
  2. 古賀正浩

    古賀委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国際協力銀行法案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として海外経済協力基金総裁篠沢恭助君、同理事篠塚徹君及び同理事林康夫君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 古賀正浩

    古賀委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 古賀正浩

    古賀委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前田武志君。
  5. 前田武志

    前田(武)委員 民主党の前田武志でございます。  きょうは、国際協力銀行法案に関連して、国際協力あり方であったり、あるいは、国際協力に伴う日本政府系金融機関統合でございますから、金融面を含めてお聞きをしたいわけでございます。  特に私が問題意識として持っておりますのは、当法案が提出されるに至る経緯というものは、もともとは行革議論から始まった、そしてまた財投議論があった、片一方で、国際協力そのものあり方日本戦略手段としてのODAあり方という議論もありました。そういう中で、ここ一両年の間、日本自身も、ビックバン等金融改革というものが大きく進んできたわけでございますが、アジア経済危機といったような、この国際協力銀行そのもの対象とすべきあるいは対象となるフィールドにおいて、非常に大きな国際金融のあらしが吹き荒れているわけでございます。環境が全然変わってきた、そういったことを踏まえて、どういうふうな位置づけ、そして将来を展望してやろうとしているのか、その辺の経緯を踏まえて展望をお聞きしたい、こういうふうに思っているんです。  特に問題意識としてあるのは、ボリュームは大きくなりましたが、片一方行革という全然違った観点からの、価値評価からの統合というものを出発にしているものでございますから、本来、戦略的な国際協力ということについては、援助対象となる国々の方々と一緒になってともに学ぶというようなことも通じて人材育成というようなものも図られなければならないわけでございますが、その辺のところがどうなっているのかなというような懸念があります。  また、こういうような日本援助ということに関しては、もちろん、本国会において情報公開法が制定されたという大きな動きの中で、こういう分野であればあるほど、国民の理解を得ると同時に、日本の若い人材国際協力等にも大いに貢献をしてもらわねばいかぬ、そしてまた、それを通じて顔の見える援助というものも実現していかなければならない。当然、情報公開というものが大きな根底として重要視されなければならないわけでありますが、そういう意識を持ってお尋ねをしたい、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、これは全然質疑通告をしておりませんので、ちょっと御見解だけを聞きたいと思うんですが、たまたまけさ出てくるときに、車の中で新聞を見ておりましたら、朝日新聞の一面トップに「ODA留学官僚特別枠」、こういう記事がでかでかと出ておりました。  要は、JICAの中に国際協力の人員を育成していくために枠をつくって、民間あるいは事業団プロパー、そして官僚、各役所から国際協力のための人材訓練のために留学をさせている。そういう中で、官僚特別枠というのが、まあ具体的にあるのかどうか知りませんが、かなりの枠があって、しかも、その行くのが全部先進国だというようなことが書いてあります。そのこと自体どうこうというのは、まだ実態が明らかにされておりませんので、余り云々はいたしません。  実は、その片一方で、同じようにこの朝日の一面のところに写真入りで、「紙面から」ということで、伊比恵子さんのアカデミー賞受賞というすばらしいニュースも載っているわけですね。この伊比恵子さんという方は、何かミス日本になられたような、ちょっとオードリー・ヘップバーンに似ているようなすばらしい方でございます。またこれは、私、朝宿舎を出る前にたまたまテレビをひねっていたら、ぱっとちょっと映ったんですね、時間だったので全部も聞かずに出てきましたが。  ただ、想像するに、この方は、ミス日本に選ばれて、本来ならば女優として大いに期待されていたところなんでしょうが、みずから、自分の向きといいますか自分個性というものを脚本、映画制作の方に求めて、ニューヨーク大学ですかに留学をして、随分と苦労をされながらも研さんを積んで、そしてその修士論文に当たる作品がアカデミー賞を射とめたということなんですね。  朝日一面のこの二つ報道というのは、何か象徴的なことを意味しているように私には映るわけです。どういうことかというと、やはりこの伊比さんというのは、みずからリスクを負いながらも、自分可能性を求めて、そして多分その負担もみずから負担して留学して、そして非常にプレッシャーのかかる中で勉強されて、こういうすばらしい創造的な成果を生まれた、世界的に評価もされている、こういうことなんですね。  もちろん、人材育成という意味においては、JICA等でやられるこういう高度の専門家育成というものも私は当然必要だろうと思うんですね。しかし、片一方は、リスクを負ってみずからやってこられた。そして片一方は、役所の方からJICA人材育成のそういうスキームに乗って、しかし役所そのもの給料等もいただきながら、このJICA特別枠を利用して先進国留学をして勉強する。このこと自体は、私自身は否定するものではありません。しかし、それが本当に国際協力という場で生かされるようなものであるのかどうか、その辺に疑問を感ずるわけですね。  まあ、通告もしておりませんので、具体的なことはお聞きしません。要は、必要であれば政府としてきちっと初めから、そういう公務員の国際的な研修という意味で、もっともっと人事院の枠をふやすだとか、あるいは各省庁専門家ということでこれを国際協力に生かすというなら、もっと制度的にきちっと位置づけをして、発展途上国に、まずはそういうところに行かせて経験を積ませて、それをもってさらに高度の、援助はいかにあるべきかというような勉強のために先進国に行かせるだとか、何かそういうことがあってしかるべきだと思うんです。この記事から見ると何か、ただ外国留学のためにJICA制度を特別にうまく利用しているというようなことにしか受け取れないんですね。  これはどういうことにつながっていくかというと、やはりこういう時代、みずからの個性を伸ばして、多少のリスクを負いながらもみずからの自己実現ができる世界を求めていくというような人材が育ってこなければ、本当の国際協力人材というものは出てこないんだろう、こういうふうにも思うものですから、その辺のところを実は、多分これはJICAということになると外務省になるんでしょうが、企画庁長官もおられますので、お聞きしたいわけです。  特に、後々議論をしたいわけですが、要は、人材育成ということについてもっと正面からとらえてやっていかないと、ただ効率論で数をこれだけ減らしましたと。これだけの数を減らして本当にやっていけるかというようなところと、そこは当然、ごまかしてと言っては語弊がありますが、こんな少ない人材でやっていけるわけがないので、どこかでつじつま合わせをやっているに違いないんですよ。  同じようなことをこの留学のところでもやっているんじゃないのかという感じがするものですから、その辺を、民間にもおられ、そしてまた国際協力にも間接直接に携わられた企画庁長官に、やはり人材育成という面から、若者にもう少し夢と、そして覚悟を持ってやらせる、そういうメッセージを含めて、冒頭お聞きをいたします。
  6. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 前田委員仰せのとおり、伊比さんがみずからの力でアカデミー賞短編ドキュメンタリー賞をおとりになったこと、大変慶賀の至りでございます。特に「パーソナルズ」という、高齢者実態をお撮りになったというのは、これからの日本にも参考になることかと思います。  お尋ね留学の件でございますけれども、私もけさこれを見ますまで、正確なデータを持っておりません。と申しますのは、これはJICAの話でございまして、本日御審議いただいております国際協力銀行、もしくはそれの二つ母体になります日本輸出入銀行及び海外経済協力基金と直接結びついておりませんので、調べておりませんでした。その点は手抜かりかもしれませんが、新聞によりますと、十一省庁から三百十八人の人が出ているということで、大体四割に当たるというようなことが書かれております。  私は、委員も御指摘のとおり、若い公務員がこういう制度海外留学して研さんを積むこと自体、必ずしも悪いこととは思いませんが、その制度が最適であるかどうか、それからまた、そこへ留学した人たちがこのJICAあるいは国際協力というテーマにふさわしい勉強をし、その後その能力が生かされているかどうか、これはいささか調査してみる必要があるのではないかと思います。  日本の立場を考えますと、これから国際的に協力事業に専念する人材をふやしていかなければいけないのは事実でございますので、どのような制度のもとでどのように明確にしていくのがいいのか、検討の余地があるのではないかという感じもしております。  正確なことにつきましては目下調査しておりますので、後で、この会議が終わるまでには詳しい数字もわかると思います。今のところ明確な数字はわかっておりませんが、それだけの意義があると言えなくはないのでございますけれども、本筋から離れたところもあったかもしれないというような気もいたしますので、後ほど正確に調べて委員に御答弁できるようにしたいと思います。
  7. 前田武志

    前田(武)委員 この国際協力銀行というものは、これに至った最初の契機は第三次行革審にあったと思うのですね。臨時行政改革推進審議会ですか、この中で、特殊法人合理化という中で出てきた議論であったと思います。  ルーツからいいますと、ここにその最終答申があるわけでございますが、それが細川内閣羽田内閣の中でかなり固まってきて、村山内閣に引き継がれて、当時の村山内閣はこれを一番大きな行革政策課題としたというふうに承知をしております。その後、平成七年に閣議決定されたということで、本来、経緯を聞きたかったのですが、余り時間がないので私なりにまとめて申し上げると、そういった経緯の中で、政府系金融機関統合ということで、かなり唐突にこの経済協力基金輸銀とが統合ということに決まったということを承知しております。  そして、さらにその後のこういう国際的な金融の大きな環境の変化というものがあるわけですが、まず一つお聞きしたいのは、臨時行革審最終答申というものがこの国際協力銀行にどういうふうに生かされているのかということをお聞きいたします。これは政府委員でも結構でございます、ごく短く。
  8. 河出英治

    河出政府委員 ちょっと今手元に行革審の資料は持っておりませんが、当時いろいろな特殊法人改革議論がございまして、最終的には、海外経済協力基金日本輸出入銀行が同じように国際的に資金供給を行う機関であるということで、この二つ統合するということに平成七年三月に閣議決定をされたものでございます。
  9. 前田武志

    前田(武)委員 要はスリム化というようなことであったのだろうと思うのですね。  それからその次に、具体的にはこれは平成九年の暮れにまとまっておりますが「財政投融資抜本的改革について」、資金運用審議会懇談会のまとめがあるわけですが、そういった中で一つ方向性も出ております。  まさしく政府系金融機関国際関係を担当するこの二つ統合したわけでありますから、例えば貸し倒れリスク観点から財政投融資対象としてふさわしいかどうかということについての議論が当然あったわけです。そして、民間ベースでの事業対象となり得る分野については基本的に財政投融資対象としないことが適当だというようなことも出ております。  さらに、融資債権はその融資実施機関が満期の到来まで保有し続けていることが通例であるということで、リスクのすべてを政府系機関が抱え込む必要はなく、リスクを分別してコントロールすべきである。要するに、証券化であったり保証であったり、そういうものに特化していくべきではないかというような結論も出されていると思います。  その辺のことがこの国際協力銀行にどういうふうに生かされているかということについて、これは大蔵大臣に、ごく概括的なお考えで結構でございますから、お聞かせ願えますか。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 輸出入銀行海外経済協力基金も、戦後かなり長い歴史を持っておりますけれども、現在両方とも非常に立派な仕事をしておるというふうに私は評価をいたしております。  長い歴史の中で、両者の間の権限調整あるいは分野調整というのはしばしば非常に難しい問題でございましたけれども、私自身は、たまたま偶然におのおのの所管大臣であったことが何度もございますので比較的公平に見ておったつもりでございますけれども、ようやく、長い間の経緯の中から仕事調整もでき、また不必要な摩擦もなくなってまいりまして、二つともいい仕事をしてまいったというふうに思っております。  が、前田委員の言われます、前田委員自身もまたその辺のことはよく御存じでいらしたわけでございますけれども、おっしゃるように行政改革ということで両方一緒にしよう。それは、対象となる国と申しますか地域と申しますか、先進国にしろ発展途上国にしろ、いずれにしても問題は経済に関する問題あるいは国民生活に関する問題等でございますから、対象は似ている。殊に、最近またグローバルな問題というのがいろいろ地球規模で、エネルギーであるとか環境であるとか貧困であるとか、そういう問題が出てまいりますと、二つ機関仕事は、かなりはっきり仕分けはされておりますけれども、しかし、グローブな問題になってきますとまた似てきているところも出てまいっておったと思います。  したがいまして、行政改革という目的を持って二つのものを一つ金融機関にして、今おっしゃいますように、融資もありましょうしODAもございましょうし、また保証もございましょうし、そういうものを一つ金融機関にして、しかし勘定は分けてであろうと思いますが、ODAODAでないものを一緒一つ金融機関で行おうというのは、私は、一つ考え方であろう、殊にグローバルな問題がだんだん大きくなりますとあるいは余計そういう必要があるかもしれない、こういうふうに考えております。
  11. 前田武志

    前田(武)委員 特にアジア金融危機等を踏まえて、言ってみれば日本の企業もどんどん出ていっているわけですから、相手国の貸し渋り、それから本国の日本の貸し渋り、そういった中でかなりファイナンスの上では苦しい状況にあるということもいろいろ新聞報道を通じて聞かされております。そういった中で、宮澤大蔵大臣のいわゆる宮澤構想、三百億ドルだったですか、出されたし、それからまた通産省の方は通産省の方で、タイドローンというような形で発展途上国に対する一つ援助というようなものを考えてきたというようなことも新聞紙上報道をされております。  要は、時間がないので結論的なことになるわけなんですが、国際協力銀行をつくるときの政策的な目標であったり判断の基準であったりそういったものが、現実にきょう上程されておりますこの国際協力銀行をこういう法案にまとめる時点でもう全く違ってしまったというところにかなり問題を含んでいる、私はこういうふうに思うんですね。  これはこれで、私は、大蔵大臣がおっしゃるように、こういう協力銀行というような非常に多様なツールを持った国際協力を実施していく主体、こういうものは日本としてあるいはうまく使えば戦略的には非常に有用な実施母体になる、こういうふうに思うんですね。  したがって、そこは何か余り建前主義に陥らずに、これから、私を初めとして始まるこの議論の中で、やるべきところはきちっと、それこそこれからの法改正も含めて政府の中で検討されて、人材の確保であったり顔の見える援助であったり、そして、今は緊急的にどうしてもローンをどんどん組まなければというところがあるかもわかりません、要は、国内においてはこれだけ貸し渋り対策というのができるわけですが、海外においてはそういう支援ができないわけでありますから、ここに頼っているという面が実質あると思うんですね。それが三百億ドル構想の中にも入っているかと思います。  それからまた、発展途上国そのものがこのままだと金融的に破綻してしまうということになると、それが翻ってアジア経済世界経済そのもの自体が非常に厳しい状況に追い込まれる。それを避けるために、日本がいわゆるブリッジローンであったりアンタイドローンであったり、そういったものを用意していく、これもわかるんですね。しかし、その位置づけというものが余りなされぬままにここへ来てしまっているような感じがいたしますので、宮澤大蔵大臣企画庁長官にそれぞれ、ここで一たん整理をされて方向性をきちっと示していただきたいわけです。ひとつ御答弁をお願いします。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたような背景があり、しかし、一昨年からアジア経済危機というようなものがございまして、アジア国々状況を見ておりますと、もちろんかなり先進国もございますし、またODA対象である、対象でないといったような問題もございますから、全体としてこれを見ていて、我が国として相手方との話し合いの上でどういう支援の仕方が適当かというのは、かなり総合的な判断を要する問題だというふうに考えております。  それは、政府部内でも各閣僚の間で、あるいは各省庁の間で話をいたしてやってまいりますが、これからこういう一つ金融機関ができますと、金融機関自身が、もとよりODA部門ODAでない部門とが二つございますけれども、具体的なケースをどのようにして取り扱うことが一番相手にとって好都合であるか、したがってお互いの関係でいいかという判断は、かなり私は高度な判断が要るだろうと思います。  それは監督官庁判断というよりは、恐らく銀行そのもの役職員判断にかかるのではないかと思っておりまして、冒頭に申しましたように、長い年月の間に両方の、基金銀行との仕分けかなり経験に基づいて上手にできてまいっておりますから、それを今度統合した上でどういうふうに具体的なケースにそれを使っていくかというのは、かなり高度な判断役職員に求められることになるのではないか、私はそういうふうに考えております。
  13. 前田武志

    前田(武)委員 後でまとめてまた御指摘をいたしますが、その前に、要は合わせると二兆円程度のものになるんでしょうかね、年間の融資額供与額というものが。一説によると輸銀以上のボリュームになる、こう言われているわけですが、その人材たるや、やはり行革議論を引きずってきて——今や恐らく観点は、行革スリム化議論でこの国際協力銀行をつくったとは思えないんです。日本政府の戦略的な考え方として、いや、あるかどうかは知りませんよ、国際協力を受け持つ非常に重要なボディーとしてこの国際協力銀行位置づけるなら、わずか八百数十人でこれだけのことがやれるわけがない。それこそ顔の見えない、もうその場その場の処理だけで追われるということになると思います。  OECFもあるいは輸銀も、職員たちは随分と過酷な条件の中で多分、恐らく休日返上でやっておられると思うのですね、アジア金融危機もこれある中でどんどん援助も出していくわけですから。それを政治の場で、政府の最高首脳が、相変わらずその議論の上だけにのっとって、御都合主義の上にのっとって、いやこれだけ支店を減らしただとか、人数はこうなりましただとかいうようなことで済まないと思うのですよ。もっと真っ正面から、専門家にしてももっともっと人材は必要になるわけでありまして、その辺のところが相変わらずその場しのぎというようなことでやるものですから、朝日新聞のきょうのようなああいう記事にもなっていくわけでございます。  その辺の、人材育成、確保、そういった面からいって、ちょっと短時間で企画庁長官の、総括については後ほど聞きます。
  14. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御指摘のとおり、輸銀基金統合というのは行革論議から出てきたものでございますけれども、私は、やはり統合すべき合理的な根拠がある、今もあると考えております。これを統合することによりまして、ODA、非ODA両方を迅速に、窓口を一本にして行える、また人材の活用も広く応用できる、そういうような利点が出てくると思います。  また、アジア危機に際しまして、輸銀基金の資金を合わせて援助を行うというようなケースも出てきております。さらにアンタイドローンというような新しい方法も出てまいりまして、これから多様化する中で、この銀行を、委員指摘のように、人材育成を含めて日本一つの重要な拠点に育てていくようなそういう行政指導あるいは銀行自身の覚悟があれば、これは非常に有用な方向に発展していくものだと考えております。
  15. 前田武志

    前田(武)委員 もう時間が参りましたので、それでは、この新しく発足する銀行が、まさしくこういう大きな世界経済の大変化、そして日本に期待される国際協力に対するニーズの変化等を踏まえて、例えば環境基準の問題であったり、あるいは人権重視の日本の二十一世紀の外交目標といいますか、そういったことを踏まえて本当に実のあるものになっていくように、その基本はやはり情報公開というのが非常に大きな観点だと思いますので、その辺を踏まえてしっかりとやっていただくことをお願いいたしまして、最後に長官の御決意だけお聞きいたします。
  16. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 この銀行統合されました場合には、二つの違った部門もございます、総括的な部門もございますので、あらゆる観点情報公開は重要だと思っております。その点につきましては、この銀行の法律にも細かい規定もございまして、公開することにもなっておりますし、また、インターネット等を通じて迅速に発表していきたいと思っております。  こういうことを通じて、情報公開を通じて、皆様方、全国民の批判も受けながら、さらに立派なものにしていきたいと考えております。
  17. 前田武志

    前田(武)委員 終わります。
  18. 古賀正浩

  19. 小池百合子

    ○小池委員 自由党の小池百合子でございます。  自由党を代表いたしまして、本案、国際協力銀行に関しての質問をさせていただきます。  まず、ただいま前田議員の方からも幾つかございましたけれども、私も新進党時代から、特殊法人につきましては、一たん全廃をした上で、機能そして有効性を考えて、本当に機能する形に持っていくべきではないかということを主張してまいりました。その意味で、今回のこの二つ特殊法人の問題でございますが、もう少し考えることができたのではないか、また、一たんゼロにしてもう一度やり直すといったような大胆な改革の方が本当は今の日本に必要なスピードではないかというふうに感じているところが、本心ではございます。  中には、基本的にようかんの切り方を変えただけではないかといったような批判も、マスコミ、世論などを通じて伝えられているところではございます。また一方で、それぞれの現場で活躍しておられるOECFそして輸銀の職員の方がぽろっと漏らされるのは、いや、この二つ統合しても何も変わりませんよといって実は豪語しておられるわけでございまして、そのあたり、今回の統合に向けて、そういったことを言われないためにも、業務の経済性、効率性、有効性をしっかりと確保していただかなければならないというふうに考えております。  この統合一つのモメンタムとして積極的にとらえるといたしましても、今後、主務官庁というか、また共管にまたがるわけでございます。輸銀はもともと大蔵、そしてOECFについては経済企画庁となっておりますが、今後、省庁再編によりまして経済企画庁が内閣府の方に移るということになっております。そこで、名称を何というのかまだわかりませんけれども、大蔵と経企の共管、これで責任の所在が分散するのではないかといったような心配もございます。そしてまた、先ほどもJICAの御説明もございました。外務省がこれにまた絡んでくるということで、このあたり今後の戦略的な、国際支援、この日本あり方、共管によって、先ほど申し上げましたように、責任の分散が行われてしまうのではないか、また、それを防ぐためには何をすべきなのか、経済企画庁長官から伺いたいと思います。
  20. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 もともと、この二つの組織でございますけれども、輸銀の方は一九五〇年、サンフランシスコ条約以前にでき上がっております。当時の、非常に輸入金融も貧しかった、輸出も難しかったというようなときから始まっております。  一方、基金の方は、たしか一九六一年、日本がやや豊かになりまして、国際的にもそれなりの貢献ができるだろうというようなとき、これは、当時ありました賠償とも関係がございましてでき上がったような経緯がございまして、それぞれ違った生まれ育ちをしてまいりました。  それがだんだんと巨大化、発展いたしまして、輸銀の方は、民間金融にそぐわない非ODA、グラントエレメントが二五%以下のものを担当し、基金の方は、それ以上の国際協力業務を担当するというように分かれて発展してきたのであります。  したがいまして、その過程においては、それぞれに存在意義があり、違いもあったものだと考えておりますが、だんだんとその境界線が重なってまいりまして、両方の機能の中に、共通の知識、共通の問題点などが生まれてまいりました。そういうようなノウハウの共有、効率化というような点も考えて、この統合ということが進められたものだと承知しております。  したがいまして、この統合は、単に看板をかけかえるだけではなしに、やはり内容的にも二つ一つになって効率がよくなり、窓口が一つになり判断基準が早くなったと言われるようなものでなければならないと思っております。もちろん、これはある種の理想論でございまして、統合組織がいろいろ問題を抱えることは十分承知しております。  したがいまして、次の問題として、委員指摘の所管の問題があるわけでございますけれども、この非ODA部門金融的な部分の大きい点につきましては大蔵省が所管し、そして、従来の基金がやっておりましたODA部門については引き続き経済企画庁が監督をする。双方にまたがります総務部門等につきましては、両方の共管でございますが、まず窓口といたしまして経済企画庁が所管する。これは、峻別することによって混同は避けられるものだと思っております。  なお、委員指摘のように、経済企画庁が内閣府の一部になることが予定されておりますけれども、その際にも、これは大蔵省に一括されるとかそういうことがございませんように、責任を持ってこの業務については内閣府の方で適切に所掌していきたい、適切な形で省庁再編成のところにも位置づけていきたいと考えております。
  21. 小池百合子

    ○小池委員 今回の特殊法人統合でございますが、もちろんスリム化ということも必要でございます。ただ、今回は職員が約二名減るというだけの話でございますが、しかし、私は、その数の問題よりも有効性、機能面を重視して考えていきたいと思っております。  その意味で、その機能から考えますと、円滑な対外経済活動を支援するための貸し付け、そして保証業務、これを見てまいりますと、現在の通産省の貿易保険と非常に類似、酷似してくるわけでございます。この貿易保険のあり方ということも論議はされているとは聞いておりますけれども、むしろ率直に、客観的に、機能ということでいうならば今後この貿易保険の統合ということも考えられるのではないかと思うんですが、いかがでございましょうか。
  22. 八木健

    ○八木説明員 お答えいたします。  国際協力銀行国際金融業務は融資業務を主体としておりまして、我が国の輸出入や海外における経済活動を促進するための金融面支援のほか、国際金融秩序の安定を図るための資金協力等を行っているものでございます。  貿易保険の方につきましては、戦争により発生するリスクなど、民間部門において救済することが困難な危険に対してカバーしておるところでございます。  我が国企業の貿易や対外投融資につきましては、これまでも輸銀融資業務と貿易保険とが密接な連携を図りつつこれを促進してきたところでございますが、国際協力銀行におきましても、引き続き的確に貿易保険と協調しながら対応してまいりたい、こう考えております。
  23. 小池百合子

    ○小池委員 それぞれが連携してということですが、であるならば、私は、むしろ統合を目指すべきではないか。この件については私、党の方でも担当いたしておりますので、今後も引き続き考えてまいりたいと思っております。  さて、それぞれ委員の皆様方のお手元にお配りいたしました資料がございます。これは、中国の国防予算、国防支出の推移を、一九八二年から一番最近の数字までを時系列で並べたものでございますが、ごらんのように、GNP、GDP、倍々ゲームでふえてまいりました。一方で国防支出の方も、前年比で、一番直近の数字で一五%の軍事支出増というふうになっております。ついこの間の全人代でこれが発表もされたわけでございます。  私の知る範囲で、ODA大綱というのがございます。四つの原則があるわけでございますが、その中の例えば二番目、軍事的用途への使用の回避、それから三番目の、軍事支出、大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入などの動向に十分注意を払うこと、こういうことがODA大綱の原則の中にも書かれていることは御承知のことだと思います。  かつての核実験であったり、それからこの軍事費の大きな伸び、また軍事費は、この一五%増ということだけではございませんで、中国の場合には国家財政支出の中に巧みに軍事に関連した費用も含んでいるということは、周知の事実でございます。  我が国は、せんだっての江沢民主席の訪日の際にも、多額の支援をするということが行われているわけでございますけれども、そもそもこういう軍事大国化を目指している中国に対してのODA日本からのODAが本当に必要なのかどうか、またODA大綱の原則として掲げてあることに、むしろ反対といいましょうか、違反しているのではないか、そういう思いがあるわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  24. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 中国はアジアの大変大きな国でございまして、国際経済にも重要な意味を持っております。そういう意味で、中国に対するODA日本にとって重要な、経済的にも、国際政治的にも重要な意味を持っていると考えております。したがって、ODA大綱の原則に十分注意しつつ対中援助を行っている次第でございます。  小池委員指摘のとおり、近年国防支出が増加しておりまして、それは金額だけではなしに、GDP比率で見ましても、一番少なかった一九九五年は一・一%あたりだったのが一・三二%にふえておりますけれども、もっと前へと見ますと、八〇年代を見ますと三%ぐらいの時代もございまして、それほどどんどん軍事大国化しているというふうには認識しておりません。かなり軍事に力を入れているという形跡はございますけれども、これで軍事大国化を目指していると一概には言えないのじゃないかと思います。  また、日本援助がそういう長距離ミサイルや核関係に使われているとは考えておりませんで、我々といたしましては、経済インフラ、農業、環境、健康、保健医療、人づくり及び沿海地方と内陸部との経済格差の是正というようなものを具体的に考えて援助しておりまして、それが簡単に軍事目的等に流用されているとは考えておりません。
  25. 小池百合子

    ○小池委員 もちろん、中国の存在がアジアにとって、そして日本にとっても重要な国であるということについては、私も異論を持たないところではございます。しかしながら、先ほどから私が挙げさせていただいた数字、それから、経済インフラの建設を支援するということでございますが、日本と違いまして、例えば空港の建設というのは、空港はすなわち軍事にすぐ転用するのが中国でございます。また、広い道路についても、これも軍事利用ということも即考えられる国家でございます。そういうことを考えますと、もっと慎重に、私たち納税者、そして財政投融資のお金を使うべきではないのかということを指摘させていただいているわけでございます。  それともう一つ、今、納税者の観点ということで申し上げましたけれども、これまでの中国に対しての巨大な我が国の支援でございますが、中国においては、病院の建設であるとか橋の建設であるとかそういう建設が、竣工の際に、全くと言っていいほど、これが日本援助でできているということは国民、人民には知らされていないという大きな問題があるかと思います。  私たち日本日本支援を、はい、これ、日本ですよ、日本ですよということで余り大きな、ハイプロファイルというか、これは日本がやりましたという押しつけでは、これもまたみっともないことになるかもしれませんが、しかしながら、問題はそのバランスだと思うんですね。  これまで多くの日本のお金が、たとえ歴史的な経過があったにせよ、私たち日本人が一生懸命働いてためたお金を、中国の方に支援をし、それが日本支援であることを人民が知らないということについては、納税者としては愕然とするばかりでございます。また一方で、それを報じてこなかった両方のマスコミの責任も、中国、そして日本の責任もあるのではないかと思うわけでございますが、長官、いかがでございましょうか。
  26. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御指摘のとおり、日本援助が顔の見えない援助という点につきましては、私も痛感しております。  私も、かつて七年間、「あすの世界日本」という番組をやりまして、三百五十本海外取材をいたしました。そのうちの百本以上がこの海外協力事業でございましたが、ほとんど日本援助と知られていない、あるいは日本以外のそれを施工した会社、あるいは設計した会社、あるいはそこに長くいて人民のために尽くした個人の属する国、そういったところの援助と思われている例も結構たくさんございまして、私もがっかりしたことがございます。  この顔の見えない援助という中には、三つの定義があると思います。これが日本援助だと知られていない、これが第一の問題。相手国で知られていないというのが第一の問題です。第二番目は、何か日本援助らしいけれどもという程度でございまして、日本のだれが、どの会社が、どんな人が、どういう苦労をしてこれをやったかという物語性がないという問題がございます。第三番目には、今度は日本人の側が、日本が一体どこでどんな援助をしているのか余り知っていない。こういうような三つの問題があろうかと思います。  第一の問題につきましては、相手国におけるパブリックアクセプタンスといいますか、PRもある程度しなきゃいかぬと思いますが、これが恩着せがましくならない程度にやるということも大事な点で、その辺の兼ね合いの問題はあろうかと存じます。  第二の顔の見える援助ということになりますと、やはりこれをやっただれそれさんという個人なり会社なり、そういったものが大事でございますので、人材育成ともあわせて、一つのプロジェクトに非常に力を入れて、極端に言えば生涯をかけるような人を育てていくということも日本にとって大事なことではないかと思っております。  そして第三に、やはり日本国民がこぞって参加するという意味で、NGOとか草の根運動とかいうような方々との話し合いも広げていきまして、日本がこういう援助をしているんだということを広く国民に、特にNGO、NPOをやっておられるような方々にも知っていただけるような施策をとっていきたい。この協力銀行ができますれば、そういうような活動もしていただきたいと思っております。
  27. 小池百合子

    ○小池委員 冒頭におっしゃいました、知られていないということですが、知らせる努力をすべきであるというように思います。  また、中国では、たまに日本支援のことが伝えられても、中国語では合作という言葉が使われる。日中合作。日本語と中国語では、同じ漢字でも、日本語の手紙は中国ではトイレットペーパーに変わるというほど意味が違ったりもしますけれども、この合作という言葉は、中国人には、結局日本にもうける機会を与えてあげているというような、そういう印象があると聞いております。  ですから、日中合作というと、何か協力しているような日本語のニュアンスが若干あるようにも思われますけれども、そうではなくて、日本支援であるということを明確にわかるような努力をしていただかなければ、やはり納税者として、特に国内の景気がこういう厳しい状況にある中で海外支援はいかになどという議論も残念ながら出てくるきょうこのごろでございます。よって、先ほどおっしゃいました知られていないというところを、知らせる努力をするということに努めなければならないのではないかと思っております。  また、顔の見えないということについては、これまでいろいろな、国内の談合の延長でODAが行われるというようなこと、それから、世界各国からのいろいろな批判を受けてタイドからアンタイドということにこれまでしてきたように思います。  しかしながら、一方、私も各国を回りますと、いわゆるODAなど、もう各国がまさに国益をかけて競争しているような場面は多々あるわけでございます。そして、片仮名に変わればちょっとニュアンスが変わる、先ほどの合作ではありませんけれども、変わるだけで、タイドかアンタイドかというのはひもつきかひもつきでないかという日本語になるわけでございますけれども、国際的なルールの中で、そして透明性を持たせた上で、アンタイドというのからタイドにもう移していく必要もあるのではないか、これが一つ顔の見える方法となるのではないか。これまでのような批判などを招かない範囲でこれを行うべきではないかと私は考えるのでございますが、いかがでしょうか。
  28. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 小池委員がおっしゃるとおりでございまして、日本はアンタイド化するという国際的な傾向でずっとやってまいりました。このアンタイド化するということが必ずしも顔を見えなくするということとも限らないのでございまして、日本の特別な技術、あるいは日本に特有な方法というものが生かされてくれば、アンタイドであっても日本の企業が参加する機会がふえますし、それ相応の効果もあろうかと思われます。国際的ルールの範囲内でタイドローンも拡大していきたい。そして、なるべく顔の見えるようなプロジェクトをとるということも必要だろうと思います。  また、昨年十二月に設けられました特別円借款というルールがございまして、原則として日本タイドで供与されることになっておりますが、その透明性を高めるために、まず、第三者機関、これは外国の機関であるとか国際機関とかでありますが、そういうものによって定期的、事後的に監査を導入する、あるいは、今度できます協力銀行の担当分野におきます調査活動を活用いたしましてプロセスをチェックする、公正性につきまして問題が発生した場合には再入札等を行う等の点を入れて、特別円借款の枠をつくりました。これから三年間に六千億円ぐらいのものをやっていこうというようなことも考えております。  そういうような両面を通じて、委員おっしゃいますような顔の見える援助、そして日本国民に納得されるような援助を拡大していくことが重要かと思っております。
  29. 小池百合子

    ○小池委員 ありがとうございました。  最後に伺わせていただきます。特に、あれは何年ごろなんでしょうか、ベストセラーとなった「油断!」を書かれた長官に伺いたいのでございます。  ODAの範疇には入らないのが中東の産油国でございます。今、金融分野、自動車産業とともに、大変グローバルな再編が行われているのがエネルギーの分野でございます。我が国は、少資源国家であり、またODA白書の一番冒頭にも、海外に資源と市場を依存する我が国にとってODAは大変重要だというふうに書いてもございます。今後のエネルギーの安定供給という意味では、幾つかの方法が考えられるとは思います。しかしながら、やはり中東の資源を持つ産油国との協力、これが単に、石油を買いますというだけの話ではなく、複雑な、いろいろな協力関係が構築されることが必要ではないかと考えているわけでございます。  この新しく設立される国際協力銀行、そして、これまでのJICAなどの人材面での支援、研修なども含めて、総合的にこの対中東協力ということを戦略的に考えるべきときに来ているのではないかというふうに思うわけでございますが、長官のお考えはいかがでしょうか。
  30. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 アラブ文化に詳しい小池委員のさすがの御質問だと思いますが、エネルギーにつきましては、今、石油はたまたま大変過剰でございまして値段が下がっておりますが、これが果たして十年、二十年この状態が続くかどうか非常に問題がございます。  ただ、中東産油国にODAを使うとなりますと、中東産油国というのは非常に所得が高いものでございますから、それにのるかどうかという問題は別途ありますが、エネルギー政策、エネルギー対策全体にとりまして、これは、JICAその他を通じても、また日本の外交全体を通じましても、あるいは民間企業を通じましても、大きな戦略を練る必要はあろうかと思います。  ちょうど一九六〇年代の中ごろから終わりにかけまして、石油危機が比較的近くに迫っているときでも、日本では、石油危機、石油が足りなくなるなんということは夢にも思っていなかったのですね。あのときのことを思い出しますと、やはりエネルギー戦略の総合的な立案、長い目で見た考え方、そしてそれにどう対応していくかという外交、商業両面での発想というのは、今も極めて重要な問題だと考えております。
  31. 小池百合子

    ○小池委員 まさに、二十一世紀に向かっての国家戦略が今必要な時期だと考えております。その意味で、もちろん、産油国でございますからODA対象にならないわけではございますが、総合的な戦略でもって、資源の確保、そして各国との支援、協力ということを強力に進めていっていただきたいと思っております。  日本というのは、どうも戦略的に考えることが苦手といいますか、あえて控えてきたところがあろうかと思います。それも、今、よく西暦二〇〇〇年問題でコンピューターの問題がとらえられておりますけれども、欧米各国は実は、二〇〇〇年というとミレニアム、千年紀ということでお祝いのムードもあるわけでございます。  それで、考えてみたら、日本語には千年という単位をあらわす単語はないのですね。百年だったらセンチュリー、世紀というふうにありますけれども、あともう一つ、英語で言うならば、十年のことをディケードというふうに一つの単語で言いあらわす。片や日本は、十年とか四半世紀でようやく言葉があるのかどうか、数字が入っちゃうのですよね。ですから、その辺のところというのは、私は、発想として日本と欧米の違いということを感じざるを得ません。あるとすれば元号かもしれませんが、これは日本の場合は結果的にかわるのであって、なかなか単位として確実なものではないというようなこともございます。お答えは結構でございます。  いずれにいたしましても、そういう時間的な観念と、それから国家の戦略ということを含めた上での国際協力銀行の活動ということを見守って、またいろいろと注文もつけさせていただくということで、終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  32. 古賀正浩

  33. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 民主党の佐藤謙一郎でございます。  きょうは、新しい国際協力銀行法の審議に際しまして、本論につきましては後ほど同僚議員からの質問があると思いますが、私は、環境ガイドラインを中心にして、環境問題をテーマに質問をさせていただきます。  今回の法案で、日本輸出入銀行、そしてOECFともどもに、とりわけ環境というものがどうも見えてこない、そんな気がしてきょうはやってきたのですけれども、先般の参議院の予算委員会で、私ども民主党の福山委員に対して、堺屋長官並びに宮澤喜一大蔵大臣からは、環境のガイドラインを積極的につくっていこうというような、そうした御答弁を、お約束をいただいたわけであります。  私ども、一九九二年にODA大綱を閣議決定し、その中に、環境重視、それから人道的配慮といった文言が加えられて、環境立国ということを強く打ち出してきているわけでありますけれども、残念ながら、今回の法案国際協力銀行法の中に、例えば人権の尊重とか環境の保全、あるいは社会的公正に基づいた国際協力を行っていくという理念が法律の中にはあらわれていない。その辺が、NGOを中心として市民の方々から、どうも環境問題に対して後退的なのではないかという批判が出ているように私ども伺っておりますが、最初に、そうしたことに対してお答えをいただければと思います。
  34. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 国際協力銀行における環境配慮ガイドラインというものにつきましては、その策定の過程において、国際的にも環境への配慮が重要になっていることにかんがみまして、国際水準に劣らないよいものを策定したいと当庁でも考えております。  現在までのところ、基金の方には環境チェックリストがございまして、お金を出すときに環境問題をチェックするような形になっております。そして、輸銀の方は環境ガイドラインというような形になっておりまして、一定のガイドラインに沿って行うことになっております。  御指摘のOECDの開発援助委員会が出しました「望ましい実践」というのがございます。グッドプラクティスということだそうですが、政府の開発援助の実施に当たりまして、配慮すべき環境や住民の移転等についてのアセスメントに関する指針でございます。基金環境を配慮をするためのガイドラインにつきましては、その内容を踏まえてこれからもやっていきたいと考えております。  また、国際協力銀行、これをつくりますと、環境配慮ガイドラインの策定につきまして、これは必ずつくるつもりでございまして、よりよいものが策定されるように、内外の情報、意見等を伺いまして、具体的な方法を今後誠実につくっていきたいと考えております。
  35. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 今、ガイドラインについては、世界銀行、それから今長官からお話がありましたようにOECDの開発援助委員会のガイドライン、これがかなり厳しい環境配慮型のガイドラインになっているわけです。  特に世銀がこうした環境基準を厳しくしてきたその背景には、私どもの失敗の背景、これは、インドでナルマダ・プロジェクト、インド西部のナルマダ川に三千近い大中小規模のダムをつくろうという、およそばかげたダム建設計画があったわけであります。これが、住民移転あるいは環境に関するガイドラインを遵守していたかどうかという、そうした世銀による調査委員会の調査結果によって、これはどう見ても、当初十万人とされていた立ち退き住民が実は二十四万人であったとか、いろいろな環境に対する問題がはっきりとわかりまして、こうしたプロジェクトに結果として撤退を勧告するということになったわけです。それを一つの奇貨として、世銀はさらに厳しいガイドラインをつくってきたわけであります。  私は、三年前に、中国の三峡ダムの問題にかかわってまいりました。大体、規模からすると東京と姫路間、六百キロメートルを百メートルの高さで水没させるという巨大なプロジェクトであります。洪水調整あるいは発電、水運改善といったこうしたプロジェクトに、日本の企業が日本連合による発電機の応札をしようということで、一九九六年の十二月でありましたけれども、この発電機の入札締め切り直前に、日本輸出入銀行日本連合による発電機の応札をバックアップするために融資を決める、同時に通産省も、日本企業向けの貿易保険を適用するということを決めたわけであります。  そのときに、クリントン政権はこうした三峡ダムに対して厳しい方向を打ち出しました。これはどう見ても環境への配慮あるいは移住計画が不整備だということで、公的資金の供与を差し控えるべきだという決定を下して、それを受けて、アメリカ輸出入銀行でも自国企業への融資を差し控えることを表明したわけでありますけれども、日本は、輸出入銀行を通じてそうした融資がなされるということになりました。私はこれは大変大きな過ちを含んでいるなというふうに考えているわけですけれども、それで、結果として翌年一九九八年にこの発電機、日本連合は失注をいたしました。つまり受注を逸したということであります。  この三峡ダムについて、その当時から、輸出入銀行では例えばお話がありましたように「環境チェックリスト集」、そしてOECFにはOECFガイドライン、こういうものがあるわけですけれども、この薄っぺらな「環境チェックリスト集」の中に、輸銀はこういうチェックリストを書き込んでおられます。  水力発電プロジェクトについて、住民補償、NGO。移転を余儀なくされる住民及び周辺住民への説明がなされ、かつ女性を含む住民の同意は得られているか。また、住民に対する正当な補償、移転後の生活基盤の確保等その影響を最小限とする努力がなされているか。NGOの動向はどうか。  こうしたリストがあるわけですけれども、三峡ダムのこうした融資について、どのような調査結果からこうした結論を導き出されたのか、御答弁をお願いいたします。
  36. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 さっき輸銀の方と基金をちょっと間違えまして、輸銀の方がチェックリストで、基金の方がお示しのガイドラインでございます。  このナルマダ・ダム、それから今の三峡ダムの問題につきましては、それぞれ輸銀基金から、政府委員参考人からお答えさせていただきたいと思います。
  37. 保田博

    ○保田説明員 お答えをいたします。  中国の三峡ダムに対しまして、本行が融資に際しての関心表明を御指摘の時期に行ったわけでありますが、その前提といたしまして、本行の持っておりますチェックリストに従いまして、環境面あるいは社会面における影響の度合い、そして、それに対する中国政府、さらには中国の人民政府等の対策をどのように考えておられるかということの確認をいたしました。  環境面に関しましては、水質の汚濁、動植物あるいは文化財への影響、また、人権問題に関しましては、先ほど申し上げましたような移転に対する補償、あるいは同意取得手続に不備がないかといったような点についての調査であります。  調査に際しましては、中国政府あるいは人民政府を含めまして、そして、要すれば外部コンサルタントも活用いたしまして、本行としては、本行の持っておりますチェックリストに従った対策がとられている、とられるということを確信して関心の表明を行った、こういうことでございます。
  38. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 そのチェックリストが非常にいいかげんだなというふうに私は感じるんですね。このいろいろとチェックをされた調査の結果はほとんど公開をされていないわけでありますし、現実に、百二十万人という水没を予定されている方々の移住計画というのが、私どもNGOを通じて知る限りではほとんどできていない。現実に、四百億元と言われている住民移転費の大半は、地方自治体のインフラ整備や工場や鉱山移転に使われる。農民に対する個人補償については、輸銀の調査によると、一部高齢者に反対する者もいるが、ほとんどは発展を望んでおり、喜んで移転をするというふうに書かれているわけでありますけれども、輸出入銀行としては、この三峡プロジェクトに環境問題や人権問題は存在しないということでいいんですね。
  39. 保田博

    ○保田説明員 関心表明をいたします前の段階から、新聞あるいはNGOの皆さん方からの本行への意見表明等々によりまして、問題の所在は十分承知をいたしておりました。したがいまして、先ほど申し上げましたような手続を非常に慎重に進めてきたわけでございます。  環境問題、社会的な側面も含めましてその重要性は非常によく承知をしているつもりでございますし、本行としましては、このチェックリストの活用、それから本行に設けております環境室の機能を活用いたしまして、従来も努力してまいりましたし、これからも十分意を尽くすつもりでございます。
  40. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 百二十万人の移住民の中には、そうした補償がないままに大変危機的な状態に陥っているという情報が私どもの方に入ってきているわけですけれども、その移住計画について、その後どういう方向になっておられるかは御承知でしょうか。
  41. 保田博

    ○保田説明員 本件に関しましては、先ほど佐藤先生がお述べになりましたように、日本連合、残念ながら失注をいたしましたので、その後の経過は本行としてはフォローいたしておりません。
  42. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 私はそこが問題だと思うんですね。失注をしたからその後のことは承知していないという御答弁ですけれども、例えば通産省、この貿易保険に関係しております通産省は、今後住民移転に関して大きな問題が発生するなど予期できない状況が生ずることも考えられますので、当省といたしましても引き続き状況を注視し、適時適切な対応をとっていく考えだというふうに我々に言っているわけです。  失注したから、だから後は、移住計画も何もチェックリストできっちりと判断をしていくということはもうやめよう、後はもうどうなってもいい、そういう考え方というのが、実は今の、日本経済協力に対する大変大きな不信感を育ててしまっているような気がしてならないわけでありますけれども、失注しちゃったらもういいのか。現実に、この後、送変電設備の発注があるように聞いておりますけれども、失注はそれで、後は何も知らぬ存ぜぬでいいんですね。
  43. 保田博

    ○保田説明員 御指摘のように、これから新しい内談が本邦企業に寄せられ、そして本行に対して融資の相談が寄せられるということになりますと、通常の本行の金融判断に加えまして、先ほど来議論になっておりますような諸問題について改めて検討をする、これは当然のことであると考えております。
  44. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 世銀では、一九八六年から一九九三年の間に世銀が融資、貸し付けを行ったプロジェクトにおいて、約二百万人以上の人々が非自発的な移転を強いられた。その後にも、現在まで二百万人以上の立ち退きが予測されている。  こうした人権問題というのは、我々日本の、せっかく国民の税金あるいは公的資金を使って世界の発展に、とりわけ途上国の発展のために尽くしていこうとする我々国民の善意が、全く逆の方向に評価をされてしまいかねない重要な問題だというふうに思っております。  特に、非自発的移住ガイドラインとか先住民ガイドラインとか、そうしたきめ細かなガイドラインが、今度の新銀行になってOECFと輸銀とが一つになったときに、ガイドラインとして本当にどこまで積極性を持つのかということが大変私どもにとっては心配なところであります。こうしたガイドラインが世界銀行やOECDのそうした先進的な取り組みに照らして遜色のないものになっていくのか、本当にそうしたものになるのか、決意をお聞かせいただきたいと思います。
  45. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御指摘のように、これから環境問題というのは発展途上国の開発との兼ね合いで大問題になってくると思います。したがいまして、これから、合併いたしました協力銀行におきましてもこれは重要な問題だと考えております。  OECDの開発援助委員会が出しました「望ましい実践」、グッドプラクティスを見ましても、いろいろな点が書かれておりまして、特に環境影響の程度に基づくプロジェクトの分類、いわゆるスクリーニングの問題、あるいは環境影響評価項目の選定、スコーピングの問題、あるいは環境保全対策に関する事項、ミティゲーションの問題なども細かく書いておりますが、それぞれのものに当たってまいりますと、これまた千差万別、委員指摘のように、果たして住民の同意はとられているのか、その国の政府はとったと言っているけれども本当なのか、それをNGOの方々、NPOの方々が調べたらどうなのかというような問題、たくさんございます。  また、過去におきましても、委員のお挙げになりましたインドの例もあれば、エジプトの例もございますし、いいと思ってやったら実は環境には悪影響が出てきたというような例もございます。昔、モハメド・アリというボクサーが善意で井戸を掘りました。このときは大変なお金を寄附して井戸を掘ったんですが、そのために、その井戸の周囲に遊牧民が定着して、周囲の森を切って目玉の砂漠ができた、非常な善意がそういうことになった例もございます。  したがって、これについては非常に慎重に考えていかなければならないと同時に、このガイドラインの中でそれを定める、その運用に当たりましても適時注意していく、そういうようなものにつくりたい、つくれるように指導したいと思っております。環境問題につきましては、まだまだわからない点もございますから、一つの方法あるいは一つの計画にこだわらずに、その都度最適のものを選んでいくように指導していくことが必要かと考えております。
  46. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 いろいろな援助については、我々が当初よかれと思ったことが全く予期に反することになってしまったというようなお話もあるわけですけれども、それは、そういう人たちというのは、人生をかけて、それこそ我々が信じられないような苦しみの中に立っているわけです。そうした方々のためにも、本当に日本の善意が、ガイドラインというものを通じてしっかりと環境立国への道を進んでいくべきであるというふうに思うわけでありますけれども、ここで私ども、ガイドラインについて必要なものは、やはり情報公開と住民参加、市民参加なんだろうと思うんですね。  気候変動枠組み条約の第三回締約国会議、おととし京都で行われましたけれども、環境NGOを中心として、気候フォーラムというグループが集まりました。その質の高さに私はびっくりしたわけですけれども、環境NGOがますます成熟をして、恐らく行政と対等な情報量を持つようになる、その中で彼らから得られる情報というのは非常に大きく、意味のあることなんだろうと思うんですね。  今、私、公共事業をチェックするということで、国内を随分あちこち回って公共事業のチェックに走っているわけですけれども、どうも情報源が全く違う。行政側がとる情報と環境NGOがとる情報源が全く違うために、どうも話がかみ合わないケースが非常に多くなってきています。その辺を、フレキシブルな、情報源を共有化することによって議論が成り立つような、そうした前提に情報公開というのはなくてはならないものだろうというふうに思いますし、市民参加というものがなくてはならないものだと思うわけです。  今までの輸出入銀行の場合、性格がOECFとは違うわけですから、どうも、借り手に対する守秘義務があるという民間銀行の論理というものに支配され過ぎていなかっただろうか。公的資金をもって援助融資をしているわけでありますから、輸出入銀行の経営内容の不透明性がそのまま今度の新銀行に移行されるとなると、これまた我々にとって大変心配事でもありますし、そうした点で、このガイドラインをつくるに当たっては広く市民やNGOの意見を求めるべきだろうと思いますが、そうした手はずというものを具体的にお示しいただきたいし、また、ガイドラインに、その調査結果を公表するという公表の義務づけというものも大事だろうと思います。  その辺、私の聞き及ぶところによると、業務方法書、そういうものでいろいろと規定がつくられるというふうに聞いているわけですけれども、その中で情報公開と市民参加が担保されているのかどうかをお聞かせください。
  47. 八木健

    ○八木説明員 ただいま委員から御質問がございました点につきまして、環境ガイドラインにつきましては、できるだけ統一したものを作成して公表していくべきであると考えております。新銀行の定めます業務方法書の中におきまして、当該ガイドラインを遵守し業務運営を行う旨、記載する方向で検討中でございます。  また、当該環境ガイドラインを作成する過程におきまして、国際的な環境配慮の潮流を踏まえ、NGOも含めます内外の情報、意見の徴取等を行いまして、よりよいものが作成されるよう、政府及び輸銀基金の両機関と努力していきたいと考えております。  他方、輸出信用機関政府開発援助を行う機関とでは、委員指摘のとおり、違った側面もございますし、また、国際的にも異なる取り扱いが見られているということにつきましては、御理解いただければと考えております。
  48. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 ちょっと当たりさわりのない御答弁のような気がして、いま一つ環境に対する決意というものが感じられないのが非常に残念でありますし、市民参加と情報公開というものを、これからさらにきっちりとしたもの、市民が拍手されるようなものをぜひともつくっていっていただきたいというふうに考えます。  そこで次に、今回のガイドラインが実効性を持つために、私はそれこそ優秀な輸銀やOECFのスタッフを何人も知っているわけでありますけれども、どうも、いろいろとプロジェクトを策定する、あるいは審査をする、その融資決定における最終的な意思決定が一体どの辺にあるのだろうかということが非常に心配なわけでありますけれども、環境社会専門のスタッフとか組織をもっと強化する必要があるんじゃないか。  世銀では二、三百人のスタッフがおられるわけですけれども、専門スタッフというのがOECFで九人、輸銀で六人。これはもう、けたが違っているわけであります。一方で人員の削減というのはテーマではありますけれども、その中でも専門スタッフを増員すべきであると思いますし、特に環境室がこれから権限をどこまで持つことができるのか。プロジェクトに、環境社会影響評価の結果これはストップすべきであるというようなそうした判断が加わった場合に、環境室の権限でそれをストップすることができるほどの権限があるのかどうかも含めて、御答弁をお願いしたいと思います。
  49. 保田博

    ○保田説明員 輸出入銀行の場合について申し上げますが、本行では、一九九二年に既に環境室を審査部の中に設置をいたしました。  人員は確かに、御指摘のように少のうございます。少のうございますが、これらの職員は、日ごろ世界各国とのそういうふうな情報の交換、収集あるいは調査研究をいたしますとともに、具体的な融資案件について営業各部がこれは専門家の意見も聞きたいといったような案件を持ち込まれますときには、環境自身が、現地調査も含めまして環境面のチェック、プロジェクトに対するチェックをいたします。  その結果は、本行の場合は役員会におきまして、私ももちろん出席をいたしますけれども、各部の融資判断を聞きますと同時に、環境室の意見、これも同席の会議の上で聞きました上、全員で討議をし、結論を出します。環境室だけでノーと言うわけではありませんが、輸銀全体としての意思決定をいたします際に、彼らの意見、環境室の意見を十分取り入れて、最終的な決断をいたしております。
  50. 篠沢恭助

    篠沢参考人 円借款におきまして、先生御承知のとおり、環境案件というものが非常に高いウエートを占めるようになっております。二割あるいは二割五分ぐらいのウエートを持つようになってきておりますが、その切り口とは別に、先生がおっしゃいますように、すべての案件について環境という側面をチェックしていくという必要が今日の課題だろうと思います。  現在、基金におきましては、すべての円借款案件につきまして、環境社会開発室に必ず合い議をするというルールにしております。先ほどおっしゃいましたように、まだ非常に少人数の部局でございますので、したがいまして、大変な繁忙状態であるわけでございますが、全体の数が限られております中でございますので、そのようなロードを強いておるというのが実情でございます。
  51. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 このOECFのガイドラインに「環境配慮に関する基本的事項」というのがあります。その中に、「プロジェクトは、借入国の環境保全にかかる法律、借入国が加入している国際条約等に定められた規定を遵守したものでなければならない。」とあるわけで、これは一定の評価をするわけですけれども、時間がなくなりましたので一言だけ申し上げさせていただくと、これから環境問題というのは、ある面で内政干渉を含んだものにならざるを得ない。これは、そうした中で、どれだけ援助国とぎりぎりのところまで詰めていけるかということなんだろうと思います。我々日本がきっちりと定めている環境基準を、紳士的に、高圧的にならないでどう援助国に伝えていけるか、我々、それがやはりこれからのソフトとして一番大事なことなんだろうと思います。  どうか、これから新しい銀行が、そうした援助国に対して我々が考えている価値観をどう上手に伝えていけるかということを、一言お願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  52. 古賀正浩

    古賀委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時三十七分休憩      ————◇—————     午後二時二分開議
  53. 古賀正浩

    古賀委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山本幸三君。
  54. 山本幸三

    ○山本(幸)委員 自由民主党の山本幸三です。  きょうは、せっかくの機会でありますので、堺屋長官の対外経済問題に関する見解をぜひ聞かせていただきたいなと思って、大変期待いたしております。よろしくお願いします。  まず、この国際協力銀行というのは、我が国の金融面での対外経済関係の重要な一環を担うわけですね。それは、ODAであり、あるいは非ODAであり、お金の流れという面で非常に重要な意味を持つ、つまり対外経済政策そのものであります。したがって、それは他の対外経済問題と密接に絡むわけでありまして、そういう意味で、対外経済問題全体についてのお話を伺わせていただきたいと思っております。  まず、この国際協力銀行融資、貸し付けを行った場合、ODAであろうと非ODAであろうと、資金の拠出を行った場合に、これは国際収支表上はどういうふうに記載されるのでしょうか。
  55. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 国際協力銀行による円借款、輸出入金融、アンタイドローン等の融資のうち、対外貸し付けの分は、国際収支統計では、資本収支のうちの投資収支勘定に計上されることになります。
  56. 山本幸三

    ○山本(幸)委員 つまり、金融取引、長期資本収支の方に入ると思いますが、それはどういう意味を持つかというと、政府が意図的にそういう貸し付けをやり、ビロー・ザ・ラインの長期資本収支の流出という形にした場合に、これはいろいろな調整が行われて、その結果、国際収支表上の上の方では経常収支の黒字という形になってあらわれるはずでありますけれども、この点はそれでいいですね。
  57. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 長期資本収支でございますから、経常収支の上では黒字ということになってくると思います。
  58. 山本幸三

    ○山本(幸)委員 そこで問題は、では、この経常収支の黒字ということについてどういうふうに考えるかということなんですね。  私は、これまで特にアメリカ政府から、日本は経常収支の黒字けしからぬと、ローレンス・サマーズなんかからしきりに言われて、そして、その経常収支の黒字を何とか減らさなきゃいかぬ、そういうことをこれまでずっと日本はやってきたように思います。一九八六年には前川リポートというのが出て、まさに経常収支の黒字はいけないものだからぜひとも縮小しなければいけないという観点からいろいろなことが書かれて、それが高く評価されるという面がありました。私はこれは間違っていると思っているのです。  そういう意味で、もしアメリカのローレンス・サマーズが、ルービンさんはもうすぐやめると言われておりまして、サマーズさんが後を継ぐと言われておりますので、仮に、経常収支の黒字、それじゃなくてもふえているじゃないか、私の計算でいえば、昨年の暦年でGDPの三・三%ぐらいになったと思いますが、それでなおかつ、この国際協力銀行を充実させて、活動をやればやるほど経常収支の黒字というのはふえるんだけれども、いずれにしても、日本の経常収支の黒字がそんなにふえるのはけしからぬ、何とかしろとローレンス・サマーズさんが言ってきたときに、長官はどのようにお答えになりますか。
  59. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 問題は、貿易及びサービス収支でございまして、貿易黒字が計上され、サービス収支で黒字が出てしまう。そうしますと、残った黒字をどういうぐあいに使うかということになります。  アメリカが批判しているのは、日本にもっと貿易やサービスでお金を使えということでございまして、その結果として経常黒字が残った、では、これは一番いい使い方は何だといいますと、長期的に見て、世界的な均衡が回復する方向で使えばいいということだと思います。  その点で申し上げますならば、長期資本の流出になりますけれども、これが相手国の産業を開発し、社会資本を充実させることによって経済を開発させるのに役立つならば、例えばアメリカの財務証券を買っているよりはずっと効果的ではないか、こういうように考えられます。また、一時はこの点につきまして、長期資本を投資しますと相手国の市場を開発して、それによって先進国の商品輸出市場を拡大するという意見もありました。ところが、近年におきましては、比較的、投資をしてから輸出産業なり輸入代替産業なりが育つのが早うございますので、そういうような問題でもこの投資の効果は評価されていると思います。  また、開発効果ということが強調される反面、確かにメキシコ危機、アジア危機など、資金の流動についての反省の声も上がっていることも事実でございますが、この国際協力銀行が明確な開発プロジェクトを持って行うならば、そんなことはないだろうと思っております。  今日の現実におきましては、むしろ国際協力銀行は、我が国の経常収支の黒字を活用して資金管理を行い、発展途上国等の資本流入を促し、それで、産業、社会の開発に役立つものだ、こういうことは広く認められるところではないかと考えております。
  60. 山本幸三

    ○山本(幸)委員 そうすると、長官は、黒字は出ているかもしれないけれども、それはこの国際協力銀行のような形で、投資金融というような形で海外に還流させているから問題ない、むしろ財務省証券なんか買うよりはいいんだということで、サマーズさんの批判については、はっきりと、そういう理屈で黒字を縮小しろという要求が出てくるのを拒否する、そういうことでいいですね。
  61. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 黒字の発生自体、つまり、日本が内需が低くて輸出が多過ぎる、この日本自体が不均衡であるという事態はそれとして解決する必要がある、縮小する必要があると思います。しかし、それでも、日本が貿易黒字の発生する体質であることは今急に変わるものではございません。  それであれば、その資金をいかに活用するかとすれば、この国際協力銀行などを通じて発展途上国の振興に役立てる、あるいは輸入金融に役立てるというのが次善の策といいますか、その使い道としては最もいい方法ではないか、こう説明したいと思います。
  62. 山本幸三

    ○山本(幸)委員 内需が少なくて輸出に頼っているということについては直さねばいかぬ、それは日本の独自の問題、それはそのとおりだと私も思います。  その際に、整理をするときに、いわゆる貯蓄・投資バランスというのがあります。貯蓄と投資のバランスというのがありまして、今おっしゃったことは要するに、貯蓄、マイナスの投資が経常収支の黒字になるという式を頭に置いてそういうことを言っておられると思うんですけれども、おっしゃったように、そういう意味日本の、それはまあ経済の好況、不況で、あるときには内需がちょっと低いというような、現状はそうだろうと思いますが、そういうことがあるかもしれないけれども、そういう循環的な部分と、それから、趨勢的に日本経済の段階で恒常的に貯蓄、投資のインバランスが出てくるというのはあると思うんですね。その両方が相まって今その差が出ていると思うんです。  その意味では、私が今お伺いしていることを整理をすれば、要するに、日本の貯蓄・投資バランスというのは恒常的にプラスなんだから、そこは差があるんだから、それをすぐ縮小しろと言っても今無理な話だ、その部分については黒字が出るのは当然のことであって、むしろそれをこういう長期資本収支、投資金融という形で還流させて有効に使うことの方が意味がある、したがってあなたの言っている批判は受けるわけにはいきませんよ、そういう理解でいいんでしょうか。
  63. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 ほぼそのとおりでございます。  日本がいつから経常黒字が定着したかと申しますと、石油ショックを克服した後なんですね。第二次石油ショックのときにちょっとまた交易条件が悪くなりましたのでとんとんになりましたが、すぐそれから、ずうっと八〇年代から黒字傾向が続いております。  それで、これはいろいろ問題点がありまして、日本の産業構造にも問題があるだろうし、日本人の生活にも問題があるでしょうし、日本人の貯蓄の高さ、あるいは人口構造の問題で将来が少子化になるから今のうちにためておかねばいかぬという心理的な不安の問題もあるでしょうし、それから、しばしばアメリカ等が批判しますような、規制の問題で外国の商品が売れにくい等の問題もあるでしょう。これらの問題が解決しなければいかぬことは、先生御指摘の前川レポート以来繰り返し言われてきたことでございますので、それはその問題として別途解決しなきゃいけない問題だと思います。  しかし、現在日本は循環的にも不況でございますし、発展段階といいますか、大きな波動から見ても今お金がたまるような人口構造にもなっておりますし、精神構造にもなっております。そういう段階で考えますと、やはりこの際、ある程度の貿易黒字が発生いたしまして、それを海外協力、海外投資に充てていく、その中の民間で投資する部分と、そしてこういうODA、非ODA等公的な機関を通じていくもの、こういうぐあいに分かれてくると思うんですね。  これができるだけ相手国の産業開発に役立ち、やがてそれが輸入代替産業を興し、さらには輸出産業を興すようになってくれれば、日本にとっても、輸入品がふえてきて日本人の好みの商品が登場するということになれば、よい循環になる。ちょうど日本はそういう段階に来ていると思うんです。かつてアメリカも一九二〇年代にはそうでございましたし、五〇年代にもそういう時期がございました。  だから、今の日本にとっては、やはり国際協力銀行がなそうとしておりますODA、貿易金融というのは極めて重要な役割を果たすものだと理解しております。
  64. 山本幸三

    ○山本(幸)委員 大変心強いお答えで私は意を強くしておるんですが、今後、サマーズさんが変なことを言ってきたら、何を言っているんだ、黒字で何が悪いということをぜひ言い返してもらいたい。  私は、ずうっとこのところの我が国の対外問題を担当する方々は、アメリカから黒字でけしからぬ、内需拡大、市場開放しろと言われたら、唯々諾々と従って、理論的に反論することなんか何もなくて、そして公共投資をぶち込んで、あるいはああでもないこうでもないと規制緩和をやらされて、場合によっては輸出自主規制なんというのもやらされて、そして、いかにも世界じゅうに日本はおかしなことをやっているという印象を振りまいた向きがあると大変遺憾に思っているんですね。  そういう意味では、いや、黒字で結構だ、何が悪い、そしてそれを有効に使うことの方が意味があるんだというように長官がはっきりと言っていただけるということでありますから、私は、大いに意を強くして、ぜひ頑張ってもらいたいなと思います。  そこで、今ちょっとその中で一、二気になったことがあるので、少し伺いたいんですが、規制緩和をやれば経常黒字が減るというようなニュアンスで言われたんですね。前川リポートにもそういうことが書いてある。経常収支黒字を減らすために規制緩和を大いに進めなきゃいかぬというように書いてあるんです。  私は、規制緩和それ自体は大変結構なことだと思いますが、経常収支黒字を縮小するために規制緩和をやるというようなことではないと思っているんですが、長官、その点は、規制緩和というのは経常収支黒字縮小に結びつくというふうに考えておられるんでしょうか。
  65. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 規制緩和の中にも経常収支の黒字に結びつくものがあると思いますが、規制緩和自体が、主たる目的が経常収支の黒字を減らすためだ、いわば輸入をふやし輸出を減らすためだというのではないと思うんです。  やはり日本国民が、日本の消費者が本当に欲しいものを選べる、例えば買い物をするとすれば、大型店でも、専門店でも、近所の店でも、通信販売でも、無店舗販売でも選べる、あるいは、おもちゃを買うなら外国品でも日本品でも選べる、日本の消費者が最も好みのものを最も安く買えるという消費者主権というものが大前提にございます。こういう自由経済市場をつくるということが第一でございまして、その反射的効果として、経常収支も輸入品もふえるだろう、日本の消費全体が盛んになるだろう、その結果、消費が盛んになった分、貯蓄が減りまして、ISバランスが改善するだろう、これが本筋だと思うんですね。  だから、専らこの商品で幾ら輸入がふえるからという言い方は本末転倒でございまして、やはり何といっても、日本国民が消費生活として楽しめる、自分の好みを満たせる、そういう市場メカニズム、消費者主権を確立する。その中で、経常収支を均衡していく。日本人が喜んでお金を使う、お金で買う楽しみがどんどんふえる。それがなければ、外国品を買えとか貯蓄をするなとか言っても、これはせんないことだろうと考えております。  だから、規制緩和というのは、あくまでも日本の消費者の好みを達成するために実現するものだろう、その結果、対外均衡も近づいていくんじゃないか、これが日本経済の成熟化の過程ではないかと考えています。
  66. 山本幸三

    ○山本(幸)委員 ちょっとそこのところが気になるんです。もう一回問題を整理し直しますと、アメリカのサマーズさんなんかの批判は、経常黒字を減らすため内需拡大しろということと、もう一つは、日本の市場は閉鎖的である。日本の市場が閉鎖的であるから輸入がふえなくて経常収支の黒字が日本にたまるんだという議論を何回も繰り返してきて、日本はいかにも閉鎖的な市場を持った大変不公正な国だという印象をまき散らしてきたんですよ。  そこで、市場が閉鎖的か閉鎖的でないかによって経常収支の黒字というのは変わるんでしょうか、変わらぬでしょうかと、そういう議論なんです。
  67. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 先生の御指摘になる市場という、サマーズさんなんかも加えてアメリカの貿易関係者が言っている問題は二つございます。  一つは、市場というときに、企業の系列みたいな、部品であるとか材料、あるいは工場のものを輸送する陸運とか建設、そういういわば企業が発注するものについて非常に閉鎖的だ。アメリカの部品を売ろうと思っても、ここは何々会社の系列だから必ずその系列から高い部品でも買っておるじゃないか、アメリカの部品が入札でなかなか売れないじゃないか、こういう一面がございます。  それからもう一つは、消費財、食料を含んだ消費財について、日本は閉鎖的だから売れない。例えば、たばこでもお酒でも店が限られておるとか、そういうような理屈があるわけです。  前者につきまして、系列につきましては、確かに最近急速に緩んでおりますが、ある時期までそういうことはございました。たとえ安くとも、何十年つき合っている子会社あるいは関連会社が信頼ができる、いざというときには徹夜でもやってくれるからというんで買い取るというところがありまして、これは日本の産業社会といいますか、ビジネス慣習に対する批判として、確かに一理はございます。日本側にももちろん理屈はあるんですが、これは最近の状況で価格競争が激しくなってきたことでかなり緩んできておるだろうと思いますが、まだ相当あるでしょう。  もう一つの消費市場の方につきましては、先ほど私が申し上げましたように、本当に日本の消費者が好むものなら売れる、それを妨げている流通機構であるとかあるいは各種の基準、認可、そんなものがやはり妨げになっているところが少なからずあるんじゃないか。  この二つでございます。この後の方では、やはりそういうにぎやかな消費、好みの消費ができることによって消費性向自体が上がって貯蓄が減りますと、経常収支の黒字が減少してくる効果はあろうかと思います。
  68. 山本幸三

    ○山本(幸)委員 貯蓄性向自体が変わってくれば、それは変わるんですね。ですが、私はちょっと、長官が言われるようにそういう議論をし出すと、アメリカに対して説得力がない、系列はおかしいじゃないかという話になっちゃうんじゃないかなという気がしているんですね。だから、そこは、むしろこういうぐあいに議論した方がいいんじゃないかなと思っているんです。  つまり、市場は閉鎖的であるとしたとしても、もしそれを全部取っ払いました、では何が起こるかというと、一斉にその部分の輸入がふえるでしょうね、まず第一に。輸入がふえる、そうすると次に何が起こるかというと、その輸入競争産業はやられちゃってつぶれてしまうでしょうね。つぶれてしまうと、そこで不況が生じて、ある意味でいうと国内の投資支出水準が下がるわけですから、不況の状態になって、金利水準が下がって、金利水準が下がったら何が起こるかというと、あるいは不況の状態が起こったら何が起こるかというと、為替レートが変わるんですね。為替レートが円安になる。円安になったらその次何が起こるかというと、円安になった分で輸出がふえるんですよ、ほかの部分で。そして結局、最初に起こった、取っ払った分で輸入がふえたのを相殺しちゃうんです。  つまり、規制があろうとなかろうと、規制を外したからといって経常収支は何も変わらない。これは通常の経済学の理論で、そういう反論をすべきじゃないかなというふうに思うんですね。  おっしゃったように、もう一段進んで、貯蓄行動が変われば、あるいは投資行動自体が変われば、まさに貯蓄・投資バランスが変わりますから、それは減るように動くでしょうからおっしゃったようになるんでしょうが、恐らくそのときには少し時間がかかるんじゃないかなという気がするんで、短期的には、あなた方が言っているように市場が閉鎖的とかなんとかいうことと経常収支は関係ないんだ、つまらぬ議論するなというように言った方がいいんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。
  69. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 為替変動が本当に金利と購買力平価とに単純に動いてくれればおっしゃるようなこともあるかもしれませんが、かなり思惑が働いておりまして、現在の為替がそれほど明確にファンダメンタルズをあらわしているとは限りません。  仰せの点でございますけれども、それはアメリカと議論としてはあり得ると思うんですね。議論としてはあり得ると思いますが、我が国の経済政策として考えますと、長期的には規制を緩和して、消費生活の楽しい、新規参入ができて、それで効果が上がっていく、そういうような経済構造をやはり目指すべきだ。  だから、アメリカとの今の議論として、短期の議論としては先生のおっしゃる手も一つはあるかと思いますが、日本自身がとるべき道としては、やはり、日本の構造をより自由化し、新規参入と消費者主権を認める。そして、その間にたまります黒字、これは発展途上国への還元に、全部ではございませんが、かなりの部分を入れ、また、民間企業がアメリカなりヨーロッパなり各地に投資する、そういうようなものにも使っていって、日本の黒字を世界じゅうの発展に役立てていくという形になるのが理想ではないかと考えております。
  70. 山本幸三

    ○山本(幸)委員 よくわかりました。おっしゃるとおり、為替レートは短期には予想で動きますから必ずしもそういうわけにはいかないですけれども、通常の議論をするときには、中期的にはそういう動きがあるだろうということで申し上げたわけです。  ただ、私が気にしているのは、私は、日本はそんなに閉鎖的な経済と思っていないのですね。アメリカ以上にむしろ輸入障壁なんというのは少ない。にもかかわらず、向こうから言われっ放しで、いかにも日本の市場は閉鎖的だという印象を持たれていること自体が大変心外で、そもそも、規制、そういうこととは関係ない話をするなと言っておかないと、彼らはあくまでも、日本の市場が閉鎖的だからそうなっているというロジック、これは一般の人には受けますからね、それで議論してしまうので、そこはちゃんと気をつけておいていただきたい。  ただ、おっしゃったように、消費者主権になるような規制緩和をやるということが、日本自身にとって、日本国民にとって大変重要だということは、私はおっしゃるとおりだというふうに思います。  長官がおっしゃったように、私は長官は大変重要なことを言われたと思うのですね、そういう意味で、黒字が出てきた場合に、これを途上国を中心に十分に活用して、そうした途上国の産業を育て、あるいは金融システムの安定等に資するようにやっていくということは、ある意味でいうと、豊かな国、先進国の責任なんですね。先進国、豊かな国が、それ以上に金を使い過ぎて、自分たちの生活だけを安穏として楽しければいいというようにしていったら、まだまだお金が足らなくていろいろなことができないでいる途上国はたまったものじゃないのですね。  むしろ彼らは、産業を育てたい、自立したい、そのときにはお金が要る、そのお金をまさに豊かな国、先進国から協力してもらいたいということだろうと思うのですが、私は、日本は十分にその責任を、この銀行を含めて果たしていると思います。アメリカはどうもその自覚がないんじゃないかと思っているのですが、その点についての長官の所感をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  71. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 アメリカが日本にいろいろと文句を言うのは、発展途上国との関係よりも、アメリカ対日本の貿易赤字というのが相当効果というか、心理的に圧力になっている、それが失業の原因にもなっている、そういう政治的な問題がいろいろあろうかと思いますし、またアメリカは、日本とは全く別に、安全保障の点でえらい責任をとっているという自意識もあります。そういうことがいろいろ重なっておることだと思います。  先生御指摘のように、このODAを初めとして、日本経済あるいは文化、日本人の心と形というものをもっと世界じゅうに知らす必要があると思います。幸いにして、インターネットあるいは衛星放送等が出てまいりましたので、そういうものも活用しまして、日本からの情報発信量をうんとふやしていきたい。これは、これからの日本政府の大きな課題だと思っております。言葉の問題もございますし、いろいろあるのでございますけれども、やはり、日本日本の主張を世界に、世界の人々に直接訴えられるような、そういう方法をとっていく必要がある。この国際協力銀行の問題にいたしましても、これは極めて重要なポイントだと心得ております。
  72. 山本幸三

    ○山本(幸)委員 ありがとうございました。
  73. 古賀正浩

  74. 上田清司

    上田(清)委員 民主党の上田清司でございます。  きょうは、参考人の皆さん、ありがとうございます。  早速ですが、この国際協力銀行法案のポイントは、何といっても、国際社会への機動的、効率的貢献のための執行体制の確立を図ることと、もう一つは、特殊法人整理合理化観点からの、どのような形で内部合理化が進むかという、この二点に尽きるのではないか。  とりわけ、最初に述べました、国際社会の中での機動的な、効率的な貢献のための執行体制はどのようにしてできるのかという点が問題でありますが、従来、基金輸銀で行っておられました業務の中で、具体的に、機動的でなかったとか効率的でなかったという点についてどのように総括をされておられるのか、この点をまずお伺いしたいと思います。
  75. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 日本輸出入銀行海外経済協力基金は、それぞれ別個の経緯で生まれました。輸出入銀行は、昭和二十五年、一九五〇年に発足しておりまして、まだ当時としては、貿易黒字どころか、何とか輸入をする金融をつけたいということで発足いたしました。海外協力基金の方は、一九六一年、そろそろ日本が復興いたしまして先進国の仲間入りをしようかというようなときにできました。  それで、円借款については、当初は戦後賠償というのがございまして、その一環として輸銀が扱っていたのでございますけれども、これはそろそろ賠償だけの話ではないということになりまして、基金もこれを扱うようになる。そして、一九七五年に両機関の業務調整が行われた結果、円借款を基金が専務的に扱う、こういうような経緯をたどってきたわけでございます。  その中で、問題といいますか、いろいろ出入りがございまして、例えばこの問題はどちらで行うかというときに、後議、先議というような議論がありまして、まず一番普通には商業銀行でできないか、その次には輸銀でできないか、それから基金でどうするか、それで無償になるかというような、段取りを分けるのに非常に時間がかかる。相手国から見ても、どちらの方に頼みに行ったらいいのかというのも迷うというようなことがございまして、いろいろと手間がかかるというような状況がございました。  そこへ、昨今、アジア経済危機のようなことが起こりますと、わっと一遍に出てきたときに、どちらがどう対応するか、安定した社会なら時間をかけていてもよかったのですが、そういうような問題もございまして、これは窓口をできるだけまとめて効率的に使った方がいいのではないか、こういうことでございます。  統合が決まりましたのは平成七年でございますから、そのときの行革で決めたので、今から見ると効果がないのじゃないかという議論もございますけれども、むしろ、アジア危機なんかで複合的に資金を使わなければいかぬという例が出ておりますので、そういう意味では、これは非常に効率よくできる改革になってきている、そういう意味で積極的に評価できるのではないかと考えております。
  76. 上田清司

    上田(清)委員 総括的には長官の言うとおりだと思います。  事実関係として、輸銀総裁基金総裁に、どんなところで、個別の案件を扱っている中で、お互いにこれは一緒の方がいいなというふうに考えられたのか、具体的に教えてください。
  77. 篠沢恭助

    篠沢参考人 お答え申し上げます。  先生御承知のとおり、私どもは主として円借款を開発途上国に供与いたしております。また、輸銀の方では、輸出金融、投資金融を初め、また国際収支援助という観点からのいわゆるアンタイドローンを供与するといったようなことで、それぞれの持ち場に極力特化いたしまして、それぞれがしかるべく効率を追求している、そして業務を拡大発展させているというふうに考えております。  それから、私どもには海外融資の業務がございますが、海外融資の業務になりますと、輸銀の投資金融等と比較的近い部分でございます。もちろん、私どもがいたしますので、これは基本的にODAの範疇に入るような案件に協力をするわけでございますが、この辺につきましては、やはり案件ごとにその辺の整理、仕分けが必要でございますので、輸銀基金の間で恒常的にきちんと打ち合わせ、協議をして仕分けをするようにいたしております。
  78. 上田清司

    上田(清)委員 余り質問にお答えになっていない。  私が気にしているのは、いわば男女別学校だったものが一緒の学校になる。男女共学になって、学校内に入ってしまったら意外に男子ばかりのクラスと女子ばかりのクラスに分かれていた。こういうふうになっては統合意味がないということで、具体的に案件としてどんなところで統合の必要が出てきたのかということを聞きたかったんですよ。だから、全然お答えになっていない。
  79. 篠沢恭助

    篠沢参考人 私どもは、開発援助という大きな柱を持っておると思います。それから輸銀は、ただいま申し上げましたように、幾つかの柱があろうと思いますが、例えばその中では、今日の段階で国際金融秩序安定への貢献という大きな柱があると思います。  そういった大きな柱をあわせて、諸外国側から見ますと、ワンストップと申しましょうか、一つのいわゆる公的資金援助機関にアクセスをすれば、それに対して、私どもの機関統合されまして備えますもろもろの手段、そういうものを十分——相手国の、まず経済状況でございますとか、あるいは個別の要請事項でございますとか、そういうものを徴求しながら、私どもの方で、公的資金の援助としてどういうような援助を提供するのが一番適当であるかという答えを出してさしあげるということができる。  相手側の要請がもちろんポイントでございますけれども、私どもの方からも統合によって統一的な公的資金援助が提供できる、このように考えておりまして、これが、今日時点におきまして、国際協力銀行という形で統合いたしますところの最大のメリットといいますか、効果ではなかろうかというふうに認識をしております。
  80. 上田清司

    上田(清)委員 輸銀総裁にも同じことを。
  81. 保田博

    ○保田説明員 ただいま篠沢基金総裁が大変上手に説明したと思いますので、時間の節約のこともあり、私から重ねて申し上げることは差し控えますが、彼の申したとおり、両機関が合体しました後は、今までは協力の関係でありましたが、今度は、一体となって、より効率的、使用者にとって利便が上がるような運営を図りたいと考えております。
  82. 上田清司

    上田(清)委員 どちらかといえば、どういう弊害があったか、海外からの求めの部分にポイントを置かれた統合へのメリットを言われたような気がいたします。  そこで、先ほど篠沢総裁も言われましたように、基金の中に二%分、海外融資の部分がある。融資業務がある。この部分をODAと言っておられるわけですが、輸銀あるいはその他の非ODAとどう違うのか。私に言わせると、同じような部分があるのではなかろうか。  輸銀でなかなか融資できないものを基金で受けるというような形になってくると、当然その回収も含めて今度は基金の方がリスクを負担しなくてはいけないというようなことにも相なるわけですけれども、そもそも堺屋長官、OECF、基金の方で融資業務を受ける意味が本当にあるのかどうか。わずか二%。この部分はもう今度の統合のときにはカットされるのでしょうか。過去の部分とこれからの部分と、両方お答えいただきたいと思います。
  83. 河出英治

    河出政府委員 海外融資業務につきましては、新国際協力銀行におきましても、従来と同じように存在するわけでございます。
  84. 上田清司

    上田(清)委員 そうしますと、今の二%の部分をODA業務の中にそのまま残す、こういう理解でよろしいんですね。
  85. 河出英治

    河出政府委員 そのとおりでございます。
  86. 上田清司

    上田(清)委員 長官、これは大蔵大臣にもぜひ聞いていただきたいんですが、二%で年間、いろいろ言い方はありますけれども、最近では件数で四件とか、金額で百億台とか百億前後の海外融資業務、基金の中でやっている部分を、ODAの業務としてそのまま協力銀行の方に残していくということが本当に意味があるのかどうか。  本来ならば、商業銀行で、輸銀で、輸銀でだめだから基金でというような分け方の中で、これはODA業務、これは非ODA業務という形で本当に海外融資事業が分けられるのか。むしろ、ODA業務の部分では、円借款の形の中できちっとそれだけに限定した方がわかりやすいんじゃないか、こんなふうな考え方を持っております。ぜひそうすべきではないかと思いますが、長官、いかがでしょうか。
  87. 篠沢恭助

    篠沢参考人 御指名をいただきましたので、お答えをさせていただきます。  海外に対する企業融資業務の分野でございますが、現在、基金法上、この融資につきましては、開発途上国における開発事業であって、リスク、収益性の観点から、輸銀から融資を受けることが困難なものについてのみ基金海外融資対象とされるということになっております。したがいまして、手続上は、法律的にも輸銀が先議権を持つというふうにされておるわけでございます。  今後統合されました中では、一つ機関でございますから、輸銀基金、その先議云々ということはもちろんございませんが、精神といたしましては、非ODA的な企業融資という部分以外に、やはりどうしても、今申し上げましたようにリスク、収益性等の観点から、非ODA勘定ではない、いわばODA勘定で考えてあげることが至当なのではないかという案件も出てくるのではないかというふうに考えられます。したがいまして、そういうものにつきましては、ODA勘定に所属する海外融資事業として、円借款以外にやらせていただきたいというふうに私どもは今願望を持っております。
  88. 上田清司

    上田(清)委員 必ずしも私はそう思いません。四件とか八件とかという件数、百億前後の、円借款と比べたときに余りにも差がある業務をやっておられる。円借款の業務は円借款の業務としてきちっと位置づけて、そういう海外融資に関しては輸銀的業務の中でけりをつけていく方がわかりやすい。そういう意味では、区別をつけるのが難しいぐらい困難であります。その辺もう一度考えていただきたい、こんなふうに思います。  それで、お手元にお配りしておりますが、「政府関係金融機関の延滞債権の状況」。輸銀から開銀、国民公庫、住宅公庫、ちょうど基金の部分が抜けておりましたので、ちょっと基金の部分も別個に入れております。  見てわかりますように、基金の延滞債権額が政府関係金融機関の中で一番多いんですね。年間ベースで一千億を超える。一番多い国民金融公庫、これは小さな商店等のところがリスクが多いわけですから当然だと思いますが、それなりに優秀な方が集まっておられますこの基金の延滞債権がなぜこんなに多いのか、こういうことであります。そしてまた、貸付残高の比率においても圧倒的に多い。これも下に注意書きで書いてありますように、いわゆるパリ・クラブにおける公的債務の繰り延べ金額、ここに書いてありませんけれども、これは約九百八億ですね。これも入れた四千七百八十一億で、一番多いところよりも二倍近く多い延滞債権額を持っているんですね。  政府間の貸し借りですから、政府が貸しているものは不良債権はなしということになっているみたいですけれども、私にはそうは思えません。不良債権もあれば回収できない債権もあった、こういうことでありますから、なぜこうなっているのかということについて、一言、基金総裁から簡単に、簡潔に述べてください。
  89. 篠沢恭助

    篠沢参考人 ただいま先生おっしゃいましたように、平成九年度末の残高ベースで、円借款関係の私どもの延滞は合計で三千八百七十三億ということでございます。貸付残高に対して四・二%ということでございます。  これは、基本的に、要請ベースで私どもが供与いたしております円借款の中で、当該借り入れ国の政治経済情勢の悪化ということに伴いまして、どうしても一時的に延滞が発生するというのが現実問題として生じておる。その国の投資環境をつくっていく、あるいは経済、政治環境をつくっていくということで各国が要請をきちんとしてくる、それに基づいて我々が審査をして、これに対して円借款を供与するというプロセスで進みますが、例えば今日のごとく政治経済情勢の悪化というようなものが出てまいりますと、どうしても延滞が少しふえてくるというような事態があると思います。  ただ、先生がただいまおっしゃいましたように、この返済につきましては、最終的な返済ということで見ますと、これは国と国の合意に基づいてやっておるものでございますので、その返済については問題がないという認識を持っているわけでございます。  いずれにしましても、相手国に対しましても、これは借金であります、したがいまして債務であります、あなた方の債務でありますから、これについては慎重の上にも慎重を期してこれをとっていただきたい、私どももそれに対して供与したい、こういう態度でいつも折衝しておるわけでございます。
  90. 上田清司

    上田(清)委員 おっしゃる部分もよくわかる部分がありますが、しかし、アジア金融危機以外にも、ずっと以前から多いんですね。むしろ円借款の問題があるというふうに理解しなくちゃいけないと思うんですよ。例えばダムをつくる作業の中で、現実に稼働しない、だから、相手国経済に稼働しないものを一生懸命さまざまな形で協力していく、したがってお返しするだけの富をつくり切れない、こういう問題点があることも事実なんですよ。その辺を総括していかないと、その都度何か理屈はつけられますよ、しかし、ずっと多いんです、一貫して。去年、ことし、九年度、八年度の問題じゃないんです。ずっと多いんです。  私は、やはり円借款、まさにこの法案の中でも触れておられますけれども、顔の見える国際貢献になっているのかどうか、本当に事業ベースになっているのかどうかということを総括していかないと、同じことの繰り返しになるというふうに思います。ここで、顔の見える国際貢献、ODAということですが、これは、不思議だな、なぜ基金がこれをやっているのかなというふうに実は円借款を思っておりました。  ちなみに、ODAの主な項目を確認いたしますと、無償資金協力が外務省ですね。それから技術協力が、JICAを中心に外務省の管轄のもとにやっておる。それから、円借款が基金である。そして、国際機関への出資、拠出金は、関係個別の機関は大蔵、そして国連関係が外務。実は、この基金だけが別枠でぽんと来ている感じがいたします。  私はたまたま、お手元に配付させていただいておりますが、経済企画庁の設置法と外務省の設置法を読み返してみました。経済企画庁の第三条の「任務」の中に、海外経済協力が載っかっていない。外務省の設置法の中の第三条の「任務」の中に、第三条の三号にちゃんと「外交政策上の経済協力(技術協力を含む。)の推進及び本邦からの海外投資に関する利益の保護」。外務省の方にはODAをやりますよと「任務」の中に書いてある。しかし、経済企画庁の方には「任務」の中に書いてない。もちろん「所掌事務」の中にあります。四条の「所掌事務」の中にはあります。しかし、「任務」の中で、あえて外務省にはきちっと書いてあるけれども、経済企画庁には書いてない。  これはまさに、ODAの物事の考え方がどこにあるかということを暗にここの中で示しているんではないかというふうに私は思っております。ODAの一元化ということがよく言われておりますが、むしろ基金の業務を、この円借款の部分も場合によっては大蔵なり外務に移した方がいいんじゃないかというぐらいに私は考えておりますが、この点について長官はどのようにお考えでしょうか。
  91. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 いろいろお尋ねでございましたので、まとめて申し上げたいと思います。  この基金が、円借款、部分的に民間融資もしておる、これは、社会資本事業の中にもそういう必要のある部分がちょっとついてくるようなこともございまして、そういう部分を念頭に置いてやっておることでございます。だから、全体のプロジェクトが社会開発であるといたしますと、それについているものが例えば鉄道とか発電でありましても、本体の方が危ないということになりますと、なかなか民間に乗りません。そういうときには、民間事業がやっていても基金がやるのが適切だ、そういう意味でくっついていると御認識いただけるとわかりやすいかと思います。  国別の延滞でございますけれども、これは、先ほど総裁がお答えいたしましたように、日本の大きな外交戦略として、この国はどうだ、この国はどうだということもございます。単にそれぞれのプロジェクトだけではなしに、日本の外交戦略から見てこういう国は重要だからひとつ援助してやろうじゃないか、それがたまたま政治の問題とか経済の問題で悪くなって延滞しているという事態がございますが、相手の国を信用していずれ返ってくるものだというふうに考えておりまして、決してこれは、所管の問題で延滞がふえているなどとはつゆさら考えてはおりません。これは、そういうような外交、日本の戦略の中で重要な問題だと思っております。  この国際協力銀行法でございますが、これは、輸銀に当たります部分、輸出金融についての部分は今後とも大蔵省が、そして基金にかかわる部分は経済企画庁が所管することになります。将来、経済企画庁が内閣府に入りましたときにはどのように考えるべきか、内閣府という全体の日本の方針を考える部門の中でどう扱っていくかということはこれから検討すべき事項でございますが、この二つははっきりと分けて、そして総務に関するところは共管、窓口は経済企画庁に現在なっておりますので、これを内閣府にするのかどうか、これからの省庁再編の中で検討すべき事項の一つだとは思っております。
  92. 上田清司

    上田(清)委員 担当大臣が経済企画庁に置いておくのがおかしいとはとても言えないとは思いますが、ODAの一元化ということでいえば、もう少し統合された方がいいかなというような考え方を持っているということを申し上げておきたいと思います。  それから、円借款の延滞債権の部分に関しては、やはり返せない事情をつくっておる、なかなか浮上させ切れない。それにはやはり海外協力事業の中での中身がいろいろな点で問題が起きているということも、いろいろな御報告がありますから、その辺もやはりきちっと総括された方がいい。だからこそ、この法案の解説の中でも、円借款の供与について、対象の重点化とか、供与国たる我が国の存在がより明らかになる改善措置をしなければならないというようなことを言っておられるわけです。  では、この対象の重点化だとか改善措置というのは一体どういうことを総括して出てきたのか。そういう部分もやはり国会の場に明らかにしなくちゃいけない。いいところだけはずっと流して報告して、悪い話はみんな伏せたままというのが役所世界ですからね。だから、どういう点が総括されたのかをぜひこの円借款の部分に関して、総裁、簡潔にお答えしていただきたいと思います。
  93. 篠沢恭助

    篠沢参考人 やはり最近の傾向で見てとれますように、いわゆる昔からのプロジェクト物、大きなプロジェクト物が、現在、環境案件でございますとか、あるいは社会保険関係のセクターへの援助でございますとか、いろいろな形で重点が移り変わってきております。  私ども、やはり従来のような大きなプロジェクト物の押しつけといったようなことには決してならないように、相手国のニーズをとことんよく聞き、またそれに伴いましては、世界銀行を初めとする国際金融機関でございますとか、あるいは相手国の地方政府、NGO、いろいろな意見を持っておられる部分がございますから、そういういろいろな意見にできるだけ耳を傾ける。もちろん、最終的には相手国政府の要請に従っていろいろ仕事を進めるわけではございますが、私どもの情報能力というものをもっと高めて対応していくということが大切であろうかと思っております。
  94. 上田清司

    上田(清)委員 どうも抽象的ですね。一点ぐらい何か具体的な事例で総括ができたことはないんでしょうか。  例えばダムなんかの協力事業の中で、やはり日本のダムの技術を現地に持っていくと、巨大過ぎて管理者がいない、現実に。だから、故障したり管理業務がうまくできないというような事例も幾つか報道でも出たこともあります。そういう具体的な事例を国会の場で明らかにしながら、我々は今度はこれを乗り越えるためにこういうことをするんだというようなことをやはり具体的に言ってほしいと思うんですよ。抽象的なことだったら文書を読めばわかるわけですから、丸のみするわけじゃありませんので、一つ一つ具体的に、何か一件でもありませんか。
  95. 篠沢恭助

    篠沢参考人 案件ごとにそれぞれいろいろな評価が出てこようと思いますが、まさに案件ができ上がります、あるいはやっております最中でも、いろいろな形でフォローアップをし、評価をしていく、この活動に今私どもは非常に大きな精力を割いておるわけでございます。SAPROFとかいろいろ言っておりますが、私どもの費用で案件形成から、またあるいは案件の実際の促進から、そういったことを私どもも相手国政府、実施者のところへ入っていって一緒に、できるだけ成果のはっきりと上がるような形に持っていくという活動に非常に多くのエネルギーを割いているということを申し上げておきたいと思います。  また、個別の案件につきまして、例えばこの案件はこういたしましたということにつきましては、ただいま材料を持っておりませんが、また機会を改めまして御説明させていただけるというふうに考えております。
  96. 上田清司

    上田(清)委員 この機会ですので、資料の要求をぜひ理事会でも諮っていただきたいと思います。昨年度の海外融資の四件についての中身について、先ほどちょっと申し上げましたように、それがODA業務になるのか非ODA業務になるのかどちらなのか、あるいは区別がつかないけれどもODAでやったんだというような、そういう部分を私なりにチェックさせてもらいたいので、ぜひ資料として、昨年の海外融資の四件、平成九年度の四件について資料の提出をお願いしたいと思います。  それから、ずっと批判的なことばかり言っておりますので、少しは肯定的なことも言わないと申しわけないなという思いがあります。  唯一、唯一と言ってはおかしいか、私は、それぞれクラスが男女別になっている男女共学みたいな気がしてならないんですけれども、円の国際化ということに関して言えば、円借款、この実績、円建てでやっているわけですから、やはり今日的な課題の中で、ドル支配という言葉がよく言われておりますが、ドルとリンクし過ぎるがゆえにアジア金融危機もあったというふうに、私も昨年の暮れにタイなどに行く機会をいただきましたけれども、そういうお話も多く聞いてまいりました。あるいはインドネシアでもそんなお話を聞きました。  ユーロと円とドルがバランスよく国際通貨の中できちっとした対応ができていればああいう形にはならなかったのではないかというようなことで、一種の円の拡大、円圏の拡大ということをアジアの諸国の一部のリーダーから望まれたことが私には記憶に新しいところであります。そういう点では、輸銀基金一緒になって大きな海外協力銀行になることによって、業務の拡大の中で円建ての実際的なものを確実に実績を重ねていくということに関しては、メリットの部分ではなかろうかということを申し上げておきたいと思います。  この点について、長官、また大蔵大臣、御感想があればお受けしたいところです。
  97. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 仰せのとおり、この二つ機関が一体になりますと、かなり巨額の資金を扱うことになりまして、これはアジアを初めとして世界的に影響力は強くなると思います。あわせて、人材の面でも、いろいろな育成等が進められると思います。初め、委員の御指摘のとおり、ことし合併した女子校と男子校でございますと、やはりそういうことがあると思いますが、だんだんこれがミックスしていくように我々も指導していかなきゃいけない。  もう一つ、やはり輸銀の業務なり基金の業務なり今やっていることを考えますと、委員指摘のように焦げつきになっておるものには政治的な配慮というのがかなりあるわけですね。だから、経済的に大蔵省なり企画庁が見ていることと、それから外務省の観点というのはございますから、その点はどっちがどういうぐあいに持てばいいのか、これも慎重に考えていかなきゃいけないことだと思います。  委員指摘のように、まさにこの機関を大きく、そして人材育成相手の国にも知られるような、顔の見えるものに育てていくのがこれからの務めだと思いますので、ぜひ御支援をお願いしたいと思います。
  98. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 だんだん時間の経過の中で結果としてそうなってくれればいいと思っておりますが、正直のところ、円をどうやって運用するかというマーケットもここでようやくできようとしているばかりでございますから、だんだんやっていくうちにそうなってくるということは望ましいことだと思っておりますけれども、余りそのことを急いで意識に持ってやるよりは、本来の銀行仕事をしていくうちでそうなってほしいというふうに思っております。
  99. 上田清司

    上田(清)委員 それで、第二のポイントでありますが、行革、いわゆる整理合理化観点から、この二つ政府系金融機関統合というものがどのような合理化意味での効果があるのか。ずばりお聞きすると、どんな形で合理化できたのだろう。人数が二人減っただけ、あるいは役員が少し整理された、いろいろございます。  しかし、小渕総理から、一〇%削減から二〇%削減の話も出ております。そういうことも含めて、そういう形がこの法案の中に盛り込まれているふうに私には思えません。小渕総理の二〇%削減の問題も含めて、そういう視点がこの法案の中に盛り込まれているのかどうか、この点について長官からお伺いしたいと思います。
  100. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御指摘のとおりでございまして、役員の数が二つ合わせて十七人、これを十二人にする、これはまあこんなものだと私も思いますが、その次に、職員の数が八百九十一人が八百八十九人に、二人減るだけ。実は私もこれを聞いたときはがっかりいたしまして、余り効果がないんだなという感じがいたしました。しかしながら、だんだんとよく聞いてみますと、部局の数は六十二から五十三になる、海外支店なども三十五から二十八に減らす。それにもかかわらずなぜ二人しか減らないんだ、逆にそういう疑問が余計わいてくるわけでございます。  一方、先ほどからも議論がございますように、海外協力、海外経済関係日本は非常に手薄でございまして、人材が乏しゅうございます。他の国々、あるいは世銀とかアジア開発銀行などに比べましても、日本の人員は非常に少ないですね。したがって、むしろこれからそういった専門家を育てていくということに重点を置いて、人を入れかえるといいますか、強化していきたい、訓練していきたいというように思っております。  今、直前で見ますと、確かに現在の行革のテンポに比べて小さいのでございますが、もしこういうことがなかりせば、やはり日本としては海外協力のために欧米並みあるいは国際機関並みの人材育成しなきゃいけない、むしろ増員しなきゃいけないところを、総務その他を減らしまして、専門家を育てていくというような形でお役に立てたいと考えております。
  101. 上田清司

    上田(清)委員 確かに減らすべきところは減らし、ふやすべきところはふやさなければならないという考え方は私も大賛成であります。  大蔵関係なんかでも、税関の職員が大変少ない。実際、案件を見て、それに対する増員の関係を相対的に見れば、明らかにこれは大変だ。比べて、例えば食糧事務所の人数が、専業農家の減少から比べればはるかに減少率が低い、もちろんこれは採用の問題もあります。  ただ、私に言わせれば、私自身一つこの基金の問題で、私の顔を見るともう嫌になる方々が多いはずですけれども、十億五千万の中国の合弁事業の中で、一円も現地に届いていないことがよくわからなかったこととか、十数回ミッションを出しても現地の養鰻池がにせものであるということに気づかない、そういう融資のプロが十数人行ったり来たりしている、一体何なんだ、この人数はと。一素人が一日行って見抜けるものが、なぜ融資のプロが何回も行って見抜けないのか。  そういうことを考えれば、私には、まだまだ整理合理化考え方というのはできるということをあえて申し上げておきたいというふうに思っております。本当に削減できないのかどうか。
  102. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御指摘の中国の養鰻業の話は、私も、就任前の話でございますが、聞いてあきれ返ったようなことでございまして、数の中にはそういうこともあるのかなという感じでございますけれども、絶対今後起こらないように厳しくやらなきゃいけないと考えております。  現在、輸銀基金を合わせまして、職員数で、世銀グループなどと比べますと十分の一ぐらいしか職員がおりません。それは職員が少ないからいいというわけではございませんで、やはり本当にプロとして、ここに、この地域に、このプロジェクトに真剣になる人を育てていく、そういう信賞必罰な態度というのは大切だと思います。委員の御指摘、本当にありがたいむちだと思って受けとめております。
  103. 上田清司

    上田(清)委員 それでは、恐縮ですけれども、またこれもぜひ委員長にお願いしたいのですが、給与、退職金手当の支給基準の明細について、当委員会に資料としてぜひ提出していただきたいというふうに思っておりますので、取り扱いのほど、お願いいたします。  お返事を聞かないと、委員長から。明細を出していただきたいという……
  104. 古賀正浩

    古賀委員長 これは理事会にお預けください。
  105. 上田清司

    上田(清)委員 はい、ありがとうございます。  それでは、時間も迫りましたが、最後にお伺いしたいのです。  二十二条関係海外経済協力業務運営協議会、この中身について、法案の部分ではよく理解ができません。この権限が一体どうなっているのか、具体的に権限があるのかどうか。審議するということでありますが、その審議の結果はどの程度業務全体に影響力を、あるいは包括的な意味でやっているのか、それとも個々に具体的に勧告をしてそれが具体的に実現していくのかどうか、そういう問題についてぜひお伺いをしたいと思いますので、まず整理して申し上げます。  具体的に、これは権限があるのかどうか、まずお聞きしたいと思います。
  106. 河出英治

    河出政府委員 これは新しい国際協力銀行法の二十二条で規定をいたしておりますが、総裁の諮問に応じまして、業務の運営に関する重要事項について審議をするということでございます。
  107. 上田清司

    上田(清)委員 審議したらどうするんですか。
  108. 河出英治

    河出政府委員 審議結果につきましては、総裁の方で、今後の業務につきまして十分配慮されるものと考えております。
  109. 上田清司

    上田(清)委員 関係職員十五名以内ということでありますが、どのような省庁からどのような割り振りで設けられる予定なんですか。
  110. 河出英治

    河出政府委員 これにつきましては、現在、海外経済協力基金の運営協議会というものがございまして、これは十省庁の事務次官がメンバーでございます。こういったものを踏まえながら、新しい機関につきましても、今後増員をすることも含めまして検討していきたいというふうに考えております。
  111. 上田清司

    上田(清)委員 検討するということは、まだいまだに検討されてないということですか。
  112. 河出英治

    河出政府委員 現在のメンバーは十省庁すべてメンバーに入っていただくものと考えておりますが、それ以外にも、今入っていないところで重要な関係のあるところにつきまして追加を今考えているところでございます。
  113. 上田清司

    上田(清)委員 現在の関係省庁の事務次官というふうにお伺いしましたが、この二十二条の部分もそういう方々になるということでしょうか。
  114. 河出英治

    河出政府委員 関係行政機関の職員のうちから選ぶということになっておりますので、一番事務的に責任のある職員ということで事務次官を予定しているところでございます。
  115. 上田清司

    上田(清)委員 それではもうちょっと確認をさせていただきます。  審議の内容、重要事項ということでありますが、どのような事項をこの部分にゆだねていくのか、この点について、項目別に明らかにされているんでしょうか、それともまだ全く明らかにされていないのか、その点お伺いしたいと思います。
  116. 河出英治

    河出政府委員 現在の海外経済協力基金の運営協議会につきましては、基金の予算要求その他重要事項について行っているところでございますが、今回の国際協力銀行につきまして、ほぼ同じような考え方でやるのか、さらに、先ほど申しました業務実施方針のようなものも含めてこの運営協議会の御意見を伺うのか、その辺を今検討しているところでございます。
  117. 上田清司

    上田(清)委員 時間が来たので終わりますが、当然、関係省庁との関係もございます。したがって、この種の協議機関も必要かもしれませんが、むしろこういう安易な運営協議会みたいな形にゆだねることなく、関係のそれぞれの省庁関係機関がきちっとそのための協議の場を設ける仕掛けの方がわかりやすいということを私は申し上げたいと思います。やや責任回避の形になっていくんではなかろうかと私はちょっと心配をしておりますので、そのことだけ御指摘させていただきます。  どうもありがとうございました。
  118. 古賀正浩

  119. 仙谷由人

    仙谷委員 堺屋長官は、小渕総理と韓国に行かれたんですね。行っていない、ああそうですか。何かそういう新聞報道を見たような気がしたんですが。  実は、三月一日に私、ソウルへちょっと行ってまいりました。行く寸前まで思い出さなかったのでございますが、三月一日という日は韓国では休日なんですね。いわゆる三・一万歳事件といいましょうか、独立闘争発祥の日ということで、休日であるということをうかつにも忘れて韓国を訪問したわけでございますが、この独立というのは当然日本からの独立ということでございます。  一年ぐらい前まで、つまり金大中大統領が就任されるまでは、この三・一の記念日というのは抗日というのが頭についておったわけでございます。ところが、昨年の金大中大統領の訪日、日本に来られて、文化の開放までメッセージされた。ことしの三・一記念日の金大中さんの演説には、抗日とか反日とか、日本という言葉が一切出てこないんですね、一切出てこない。三・一救国精神という言い方で、いわばこの独立への韓国国民の偉大な精神が今のIMF体制という苦境を克服しようとしているという論理立てになっておりました。これが金大中大統領の三・一独立記念日の演説であります。  その中に出てくるわけでありますが、IMFからの借金のうち四十八億ドルを既に返済した、ことしじゅうにも七十七億ドルを償還する予定である。通貨危機当時、つまり九七年の十二月でありましょうが、三十八億ドルにすぎなかった外貨保有高は、現在五百二十億ドルという史上最高額の外貨準備ができたんだ、こういうことを言っていらっしゃるわけであります。貿易収支も、八十七億ドルの赤字から三百九十九億ドルの驚くべき黒字に回復し、為替レートも金利も安定してきた。それから、外国人投資が九八年には八十九億ドルに増加をして、ことしは百五十億ドルに達する見通しである。それから、世界三大信用評価機関は、韓国の信用等級を投資適格へと再び復活させた。こんな言い方をされておるんですね。  相当この韓国の状況も底を打ったというふうな兆候が出ておるのではないかと思いますが、しかし、何といっても、対外債務自身をドル建てで計算をしますと、これは大変重いんじゃないか。そのことは、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、いわゆる今回の金融クラッシュから始まる経済危機で大変な経済的な苦境に陥ったアジアの五カ国でありますが、この五カ国の対外債務の大きさとGDPの収縮、そして金利レートの逓増といいましょうか、金利高、こういう状況の中で、今のアジア全般どういう状況なのかという点についてどういうふうにお考えでしょうか。
  120. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 一昨年の七月、ちょうど香港の返還がありました翌日から、タイ・バーツを初めとしてアジアの通貨が総崩れになりました。それによって大変な金融危機、それがさらに実体経済の危機になりまして、各国とも大変な事態になったわけです。その中で、ようやく為替レートが落ちついてまいりまして、安定傾向が出ているということが言えると思います。  九八年の経済成長率の見通しを見ますと、アジアNIESではマイナス二・六、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンのASEAN四カ国ではまだマイナス一〇%というような厳しい見方をされております。  御説のございました韓国でございますが、韓国も一昨年の秋から猛烈なデフレーションになりました。そして為替も大幅に下がったんでございますけれども、最近はこれがかなり戻ってまいりました。一番悪かったのは、おととしの暮れから、九八年、去年の一月ぐらいでございますが、最高のとき、九七年一月を一〇〇といたしますと四〇ぐらい、半値ぐらいに下がったんでございますが、最近は大体七〇ぐらいに回復してきている。そういう点ではすぐれた点が非常に出ていると思うんでありますけれども、この外貨の収支の改善は、主として輸入が減った方で、輸出が伸びたんではなくして輸入ががた減りしたという引き締め政策で出ておるものでございますから、失業率その他が大変大きくなっております。  韓国につきましても、まだことし、来年もなかなかプラス成長にならないんじゃないか。九八年はマイナス七・〇%、そして九九年もマイナス一・〇%ぐらいの見通しというのがIMFの見方でございます。  韓国がこれだけ大胆に輸入を引き締め、その結果失業者もふえておりますが、改革をやっておられますので、これからしばらく失業その他が厳しい時期が続くでしょうけれども、遠からず立ち直ってくるのではないかと期待しておりますが、なお厳しい時代は続くだろうという気がしております。
  121. 仙谷由人

    仙谷委員 アジアに対する日本の輸出でありますが、日本の地域別輸出という大蔵省関税局がおつくりになっている資料を拝見しますと、大体、全体の四三、四%がアジアに対する輸出であった、これは一九九六年ベースであります。そしてまた、対GDP比で見ますと、アジアに対する輸出だけで約四%弱といいましょうか、そのぐらいがアジアに対する輸出の対GDP比の割合だというふうに言われておるのではないかと思います。  このアジア金融クラッシュ、それから為替レートの大幅な低下といいましょうか、本国通貨においては低下ということになるわけでありましょうが、こういう事態でシミュレーションをシンクタンクですると、このことでどうも二四、五%の影響があるのではないか、つまり、対GDP比約一%ぐらいは確実に日本アジア向け輸出が引き下がるのではないか、こんな議論があるわけですね。  現に、関税局からことしの輸出入の統計をいただきますと、大変、二けた台の輸出のマイナスになっておるようでありまして、やはり私は、アジアがある種回復してこないと、日本の景気とか経済の成長にも結びつかないということは極めて確かなのだろうと思うのですね。  そこで、一つ経企庁長官にお伺いしておきたいのは、このアジア経済の現在の後退というか停滞は、原因は何でございましょうか。つまり、ソロスとか何か、投機筋が悪さをしかけてこうなったということが主たる原因なのか、あるいはもうちょっと違うのか。  昨年ですか、韓国に参りましたときに、ソウル市長をした趙淳という人がおります、経済学者さんですね、この方とお話をして、話を聞きましたら一言、いや、過剰投資だよ、こういうふうにおっしゃいました。  どうも、韓国とかタイとかインドネシアも、設備投資といいますか投資自身が、不動産に対するバブル的な投資以外の本当の意味での実体経済あるいは実体的な産業というところの部分も、相当やはり過剰だったのではないかという気がするわけでありますが、それがある種、何というのですか、経常収支の関係と長短資本の流入の関係で投機筋のつけ入ることになって、きっかけとしては投機筋の為替のスペキュレーションだと思いますけれども、どういう分析をなさっていらっしゃいますでしょうか。     〔委員長退席、小此木委員長代理着席〕
  122. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 お説のように、日本経済にとりまして、アジアとの貿易は非常に重要なポイントでございます。現在のアジア国々、少し回復に向かっているとはいえ、来年も厳しい状況でございまして、私どもの平成十一年度の経済見通しでも、対外余剰はやはりマイナス〇・二と見ておりまして、まだ厳しい状態が続くと思っております。  さて、仙谷先生の御質問でございますが、どういうことが原因であったか。ちょっと詳しく説明させていただきたいと思うのです。  従来、私たちが大学で習ったころの開発理論というのは、まず第一に、発展途上国が工業化するためには、その国のインフラストラクチャーを充実して、市場を統合して、その広域化した国内市場に輸入代替産業を興す。肥料であるとか繊維であるとか、輸入代替産業を興す。これがどんどん発展していって、やがて輸出になり、もっと高度なものができる。こういう理屈だったのですね。  ところが、八〇年代に入りまして、アジア諸国、韓国、台湾、香港、シンガポールなんかが出てきたときにどういう現象が起こったかというと、まず外国から資本を引いて、それで輸出産業を興しまして、そしてコンピューターを入れて、外国の技術を入れて、それを外国に売る。主として北米市場、アメリカやカナダに売る。こういう現象を起こしたのですね。だから、外国の資本で、外国の技術で、外国の市場で、自分の国の労働力、こういう組み合わせで成功したのです。これがどんどんと発展してまいりますと、やはり労働賃金も上がりますし、工業化が進むにつれて、インフラストラクチャーも要るようになるし、環境対策も要るようになるし、コストがどんどん上がり出したわけです。  それで、コストが上がり出したのに対しまして、ドル安が進んでいるときには、ドルにリンクしておりますとアジアの通貨も下がりますから、それでよかったのですが、逆に今度はドルが高くなり出した。九五年ごろからドルが高くなり出した。そうすると、アジアの、コストがただでさえ高くなる国々の国際競争力が、ドルとアジア通貨をリンクしておりますと、急速に低下し出したわけですね。したがって、九五年ごろから経常収支の赤字が始まります。  これを、資本収支、要するに外国からの投資で埋め合わせようと。外国から投資を呼ぶためには、どうしてもドルとリンクしておかないと、どんどん下がるような国には投資をしないからというので、無理やりといいますか、かなり無理をしてドルとリンクしていたのです。それで、来る資金が、そういう状態でございますから、経常収支が赤字でドルとリンクしている状態ですから、だんだんと短期資金になり出した。  これがヘッジファンドが批判されるところなんでございますが、短期資金が銀行に入って、それが不動産に行ったり株に行ったりし出すわけなんでございますけれども、そのもとは、外国資本を直接導入して設備投資をどんどんやって輸出をふやすという、かなり、十年以上続いた善循環にあった。それを、最終段階へ来て、段階的に為替を調整すべきところをドルとリンクいたしまして保ったところにかなりの無理があった。それを、足元を見透かされたといいましょうか、短期資本の方が、これでは危ないぞというので、ある日突然逃げ出した。それで、物すごい勢いで外貨が流出して、あっという間に外貨保有高がなくなるし、為替が下がるし、パニック状態を引き起こした。  確かにそういう意味では短期資金が急に逃げ出したのにも責任がありますが、それ以前に、外国からの資本で過剰投資をして輸出を対象にしてやっていたことにも問題があるし、その状態でドルとアジア通貨とリンクしていた役人にも問題がある。そういう点が種々重なって、この一昨年から去年にかけてのアジア問題が起こったものだと認識しております。
  123. 仙谷由人

    仙谷委員 それほど認識は違わないようなので安心をしておるわけですが、にもかかわらず、非常に悩ましい問題があると思いますね。  つまり、国際市場が自由化することによって、何というのですか、短期ではなくて長期の投資を民間資本に要請をするというわけにもいきません、これはもう資本の方の自由気ままということになるでしょう。そうなってきますと、特にアジアでクラッシュが起こってからは、民間金融機関は特に長期の資金を貸すことに後ろ向きになっておるのではないか、むしろ引き揚げる方が先行しておるというふうなことになっているのではないかと思うのですね。  マーケットというのはそういう意味では勝手なところがある、それがマーケットだと思わなければいけないのだと思うのです。反対に、今度はそれをカバーするために今議論しております国際協力銀行あるいは輸銀、借款というふうなものの登場の場面だ、こういうことに今なっているのだと思うのです。だから、平成七年にいわゆる行政改革と称する統合を決めたときと、物事の発想が相当逆さまになっている。  私も議席を持っていませんでしたので、何でこんなばかなことを決めたのかという気もしないでもないのですが、平成九年九月二十四日の閣議決定というのを拝見しますと、日本輸出入銀行については、「一般投資金融について減量化することとし、」というふうに書いてあるのですね。「政策緊要度の高い案件に限る」、それから「製品輸入金融対象品目を見直すこととし、貿易摩擦回避、対外収支不均衡是正及び国民生活に不可欠な物資サービスの供給に資する案件に限るものとする。」「輸銀融資について、原則として民間銀行保証を求めることを廃止する。」つまり、官民の役割を大幅に見直して、民間活動が中心で、輸銀は今まで以上にその補完に徹すべしだ、そんなことが方針として示されておりますね。  ところが今やっていることは、対政府のみならず、どうもカバーじゃなくて、どっしりと真ん中に輸銀が座って、そして輸出入なりあるいは対政府なりの金融を支えろと言わんばかりの雰囲気になってきているのではないか、そんな気がするのですね。  今そういう話を進める前提としまして、今の邦銀、日本金融機関アジアに対する債権の残高というものがどのぐらいあるか、大蔵省かあるいは経済企画庁でも結構ですが、国別にお答えいただけますでしょうか。
  124. 黒田東彦

    ○黒田政府委員 国別の数字をちょっと今手元に持っておりませんが、東アジア地域全域に向けての邦銀の融資残高は千八百六十六億ドル、円に直しまして約二十六兆三千億円であるということでございます。この数字は、御指摘のように、アジア通貨危機の直後というよりも、その前後から若干減少しておるというふうに承知しております。
  125. 仙谷由人

    仙谷委員 先ほど韓国についてはちょっと申し上げたのでございますが、韓国、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピンの五カ国だけでも、今国際局長がおっしゃったが、二千六百十一億ドルというのがどうも九六年、九七年あたりの数値のようでございますし、利払いだけ見ても五カ国で一年間で約二百七、八十億ドル、利息を一〇%ぐらいで計算すると払わなければならないという計算になるんですね。  GDPとの大きさで見ますと、これは大変な比率でありまして、つまりGDP比五、六%の比率の利息を払うという話になりますから、GDPの成長がマイナスであるのに、利息だけの支払いで六%とか五%払うというのが今のアジア国々が置かれた状況だと見ますと、相当不良債権化するといいましょうか、当分棚上げにしないとどうにもならないということなんだろうと思うんですね。邦銀が貸し与えた債権でそういう状態だということだと思うんですよ。  邦銀は、できるところから回収をまず優先し、そして後は輸銀さん頼みますよとか、借款頼みますよということになっておるのじゃないかという危惧をしています。そのことが今回の国際協力銀行法案の二十三条、二十四条にならないかなということで、つまり輸出入銀行がばばを引かされるのではないかということで、私は大変心配をしておるわけであります。輸出入銀行といたしまして、この辺は全然問題がないというお考えなのでございましょうか。いかがですか。
  126. 保田博

    ○保田説明員 先生御承知おきのように、アジアの諸国は一昨年来の通貨危機で、大変実体経済が落ち込み、かつ、そこに展開をしております日本企業もまた、いわゆる貸し渋りによる資金繰り難に悩んで苦しんでおるわけでございます。そういうことに対しまして本行は、昨年初めからことしの三月までということで、大体一兆二千三百億円程度の投資金融を、主として日系企業向けということで融資の承諾をいたしております。  直接的な日本企業向けの支援はそういうことでありますけれども、そのほかに、ただいま先生が御心配になっておりますように、今回の統合法案におきまして、輸出入銀行が本行と協調融資をしている銀行等の債権を買い取ることができる規定が入る、それが本行の不良債権の増加につながるのではないかというふうに御心配をいただいておるということは職員から常々聞かされておりますが、もしそういうことでありましたら、今ここでお答えをいたした方がよろしければいたします。  今回の譲り受けの規定は、国際協力銀行、そのスタートは十月一日とされておりますから、その前は現在の輸出入銀行ということでございますけれども、それを含めました国際協力銀行と協調融資に参加いたしました銀行等が海外業務から撤退をする、あるいは海外資産を圧縮しなければならないといったことで融資が継続できないといったような場合に、この債権を国際協力銀行が譲り受けることができるという規定でございます。この譲り受けの対象となります債権と申しますのは、御承知おきのように、先ほど申し上げましたが、本行との協調融資でございます。  我々輸出入銀行はこれまでも、償還確実性の原則を踏まえまして、借入人の信用力や対象事業について十分な審査を行っておりますし、その後も、債権保全の観点からフォローアップを常々行っておりまして、我々の口から申すのもいささか口幅ったいのでありますけれども、市中銀行さんの持っておられます債権のうちでも良質な債権であろうというふうに考えております。  しかも、これを譲り受けようという判断をいたしますときには、またその時点での借入人の信用力とか事業の遂行状況といったようなことを十分勘案いたしまして、償還確実性の原則に反するというようなことであればこれはお断りをするということでございますので、御懸念のようなことにはならないと思いますし、我々、そういうことにならないように十分慎重な運営を図ってまいりたい、こういうように考えております。
  127. 仙谷由人

    仙谷委員 この協調融資というのが輸銀の現在の出融資保証残高の中で各国別にどのぐらいの比率を占めるのか、あるいは、対政府とか対民間企業あるいは対金融機関とか、どのぐらいの額で存在するのかというのはお示しいただけますか。
  128. 保田博

    ○保田説明員 本行の債権全般についての調査はちょっとまだ行き届いておりませんけれども、非居住者向けの債権の民間銀行による協調融資は約六千六百億円程度というふうになっております。そのうちで、ソブリン、外国政府に対するものは四千七百億円。したがいまして、残りの千九百億円あたりが一流銀行あるいは一流企業向けというふうになっております。
  129. 仙谷由人

    仙谷委員 どこまでが確たる情報なのかわかりませんけれども、邦銀がもう早く海外の取引を手じまいして日本に帰ってきたい、これは自己資本比率の問題もあるでしょうし、海外での営業がそれほど収益を上げない、格好をつけて行っていただけだみたいな話が、地銀レベルとか第二地銀レベルでは相当あるのだろうと思いますし、都市銀行レベルでももうそろそろおやめになったらいかがですかという話なのですね。つまり、都銀十九行、現在十五行のようですが、そんなに猫もしゃくしも海外に行ってやらなくてもいいのではないか、こういう議論はあります。ところが、特にアジア向けについては、手じまいをしようにも、そこである種の損切りをしなければいけませんから、それをやると、またまた本社の不良債権といいますか償却がふえて収益を圧迫する、だからできないのだというふうな話まで聞こえてくるのですね。  どうも、アジア向け債権の劣化といいましょうか不良化というのは、国民にはほとんど見えていません。先ほど私が申し上げましたように、マクロ的には、日本のここ数年、つまりバブル崩壊後の不良債権化よりもはるかにひどいはずであります。これは、対GDP比を見れば一目瞭然の話であります。ところが、そこは全く見えていない。見えていないところで、輸出入銀行に何か肩がわりさせるみたいな話が出てきますと、特に輸出入銀行は政治の場と近うございますから、政治的な圧力とか、何かいろいろややこしい話があってしようがなかったんだよみたいな議論になるのではないかという懸念を持っておるのですね。  したがいまして、先ほど言いました、輸出入銀行独自のその時点での審査というふうなことがあると思いますし、債権を評価して、どのぐらいで譲り受けるかという譲り受け価格の問題も当然出てくるでしょう。あるいはそれが妥当な価格であれば、邦銀がほかの銀行に売っても売れるはずなのですね、本来は。別に輸出入銀行が譲り受けをしてあげなくても譲渡できるはずだと思うのです。ところが、輸銀が肩がわりするといいましょうか、私に言わせれば、抱くような譲り受け規定が入ってきた。本当にこれは、少々まゆにつばをつけながら見ていかないと、せっかくの輸出入銀行の財務内容が、気がついてみたら悪化しておったなんてことになるのではないかという心配を、懸念をしておるわけであります。  したがいまして、この協調融資分の譲り受けのディスクローズについてはどういうふうにお考えですか。
  130. 保田博

    ○保田説明員 本行が当該債権を買い取ります前に、当然、ほかの民間金融機関がこれを引き受けない場合にのみ本行が買うということで、その意味では本行は補完の立場にあるということだけ、先ほどの答弁につけ加えさせていただきたいと思います。  なお、譲り受けた債権の開示ということにつきましては、やはり商取引でございます、相手国政府あるいは政府関係機関、あるいはまた日本関係の事業の業務上の秘密ということも念頭に置きながら検討させていただきたいと思います。
  131. 仙谷由人

    仙谷委員 しつこいようでありますが、そうしますと、現在的に言いますと二千億円弱、そこから、この二十三条の規定によって譲り受ける債権の額というのは二千億円弱からは上回ることは絶対にあり得ないわけですね。
  132. 保田博

    ○保田説明員 先ほどお答えいたしましたように、先ほどの数字は、本行の輸出金融の直接借款の部分とアンタイドローンの部分であります。投資金融につきましては、時間の制約もございまして、非常に件数が多いものですから先ほどの数字には入っておりませんので、そこは御容赦をいただきたいと思います。
  133. 仙谷由人

    仙谷委員 協調投資もあるという意味ですよね、今のは。協調投資分もほかにあるということですね。  つまり、この輸銀融資についても、当分といいましょうか、五年、十年くらいは、アジア民間事業会社に融資した分も含めて、相当の部分が塩漬けになる可能性があるな、私はこう見ておるのですね。マクロ的にはそうとしか考えられない。個別企業の中で非常に優秀な企業があって、例えば南米に輸出が大量にできて、そこでのもうけを、輸銀に対する利子支払いとか元本支払いができるというケースもあるでしょうけれども、どうもマクロ的には、この状態でそうそううまく返済ができるとは思わないものですから。  どうかひとつここで、私に言わせれば、ある種のミニAMFみたいな役割を、タイの危機から始まって、担わされておるのではないかという気もしないものでもないものですから、余り政治的圧力に惑わされることなく、きちっとした審査をしていただきたい、このことを要望しておきます。  宮澤大臣にお話を少々伺いたいんでありますが、先般も年末、アジア、私はシンガポールとマレーシア、その二カ国しか行きませんでしたが、他の民主党の議員がタイ、インドネシアへ行って、歩いていろいろな方々の意見を聞いてきたわけでありますが、新宮澤構想が大変評判がいいんですね、アジアで。この三百億ドル、日本銀行の不良債権処理に最近使っておる金額からいいますと、やや金額的には一けた小さいのかもわかりませんけれども、しかし、アジアの今の苦境を脱するためにこの三百億ドルが大変評判がいいということであります。  アジア金融クラッシュが起こったときに、大蔵省のどこかの部局でAMF構想というのがぶち上げられたというか漏らされたというか、そういうのがございましたね。ところが、アメリカの横やりで挫折をした、こういうふうに言われておりますね。その後に新宮澤構想が出てきた、こういう時系列になっておるわけでございます。  宮澤大蔵大臣は、国際的な金融マーケットの中における円の役割、その中で、AMF構想のような、あるいは日本のまだ存在する高い貯蓄を背景にした金融力で、安定的な金融秩序をつくるために日本が何をしたらいいかということでありますが、どういうふうにお考えでございましょうか。
  134. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのお尋ねは私はごもっともだと思います。私が三百億ドルの金ということを考えましたのは、先々そういうことにつながるかもしれませんけれども、それよりももっと、当面、これらの国が困っておりますから、それに対して我々が何ができるかということを考えたわけでございます。ちょうど昨年の十月か、IMFの総会がありましたときに、各国の蔵相と中央銀行総裁が見えましたので、会議をして皆さんの御意見を聞いて決めたのです。  つまり、各国ともちょうど我が国と同じと申しますか、非常な不況になりましたから、公共事業もしなきゃならない、セーフティーネットも要るだろう、いろいろな国内施策というものが大事なわけですが、その金がないわけでございますから、その金を、まず三百億ドルを半分に分けまして、百五十億ドルの方はそういうことに使ってもらったらどうだろう、それを使ってくれてもいいし、あるいはそれらの国がどこかから借りるときに我々が保証に立ってもいい。いずれにしても、そういう国内的な立て直しのために使ってもらうのが百五十億ドル。  残りの百五十億ドルは、みんな輸出をしたいわけでございますけれども、原材料の輸入ができないという為替上の苦労がございますから、その百五十億ドルは為替の方に使ってもらおう、そういうふうに考えたわけでございます。  ですから、為替の方は比較的短い金になりますし、あとの百五十億ドルは長い金になる。そういう形でおのおのの国が、失業の対応をし、他方で貿易、殊に原材料を買って国民に与える、あるいは輸出に向ける、そういう二つの目的にとりあえず使ってもらおう。五カ国おのおのですから、対応がいろいろございますが、今ちょうど半分コミットしたところでございます。残りの半分が、これから一年とかいうことでございます。  お尋ねの趣旨は、そういうことをやっているうちにだんだん円というものがこの人たちの国の経済になじんできて、やがてはもう少し円というものについてのこれらの国の関心が高まるだろう、その末には何か一つの仕組みのようなものに発展していけないか、そういうことがよくまた言われるわけでございますが、それは、もともとドルだけにペッグをして、これはしまったなと思っている人もございますから、そういう意識は向こう側にもないわけではないと思います。  ただ、円をさあ東京のマーケットでこうやって運用しなさいといっても、今になってそういうマーケットがこうやってできるわけでございますから、そういう点でも急にできるわけではない。ただ、これが契機になってそうなればいいことだと思っておりますけれども、この援助というものをそういう何か一つの到着点を考えてやったというわけではございません。
  135. 仙谷由人

    仙谷委員 時間がなくなったようでございますのでやめますが、先般、小渕総理が韓国へ行かれたとき、自由貿易協定も視野にというふうな新聞報道がございます。経済協力についての新たな宣言ということも構想されておるようでございまして、やはりこれ、三年、五年、十年、二十年という単位で考えておかなければならないのかもわかりませんが、多分、現在の金大中大統領は相当のボールを投げてきている。つまり、日本はどうするんですか、うちは文化も開きましたよ、日韓自由貿易協定もこれから協議する用意がありますよというふうなメッセージを投げてきておるわけでございます。  私はどうも、アジア全域の経済的な、よく言われる持続的な発展といいますか、余りにもクラッシュとバブルを繰り返すようなことじゃない経済システムをつくるとすれば、やはり相当日本も覚悟をして国境の垣根を低くすると同時に、そこである種の相互互換性があるような仕組みを考えなければならない。特に金融の面でそのことが大きな揺れを防ぐんではないかという実感というか、直観みたいなものがするものですから、なおそういう方向性で努力をしていただけたらと思います。  時間がございませんけれども、経済企画庁長官、お考えございましたら。
  136. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 アジア諸国もそうでございますけれども、日本も今大変不況でございまして、当面の対策に追われているところでございますが、来年度、平成十一年度からは日本アジア諸国もやや落ち着いてくる。そうなりますと、委員指摘のような長期的なビジョンということも考えなきゃいけないと思います。その中では、貿易あるいは金融だけではなしに、人の問題というのも出てくるかもしれません。  私ども今、小渕総理大臣から経済審議会に、十年程度の先を見た日本のあるべき姿を描いてそれに至る政策をという諮問を受けておりますので、その中で慎重に今の問題も考えていきたいと考えております。
  137. 保田博

    ○保田説明員 先ほどの答弁に一言補足をさせていただきます。  先ほど六千六百億円という数字を申し上げましたが、そのほかに投資金融についての協調融資分、数字がわかりましたのでお知らせしますが、それは約三百億円でございます。したがいまして、先生の御懸念のようなことにはならぬと思いますが、金額が少ないからといって心を緩めることなく、償還確実の原則にのっとりまして気を引き締めて事の処理に当たりたいと思っております。     〔小此木委員長代理退席、委員長着席〕
  138. 仙谷由人

    仙谷委員 どうもありがとうございました。
  139. 古賀正浩

    古賀委員長 福留泰蔵君。
  140. 福留泰蔵

    ○福留委員 公明党・改革クラブの福留泰蔵でございます。  本日は、今議題となっております国際協力銀行法案に関して、この所管であります経済企画庁長官並びに関連して大蔵大臣日本輸出入銀行総裁参考人として御出席海外経済協力基金総裁質疑をさせていただきます。  本法案は、日本輸出入銀行海外経済協力基金統合いたしまして国際協力銀行を設立しようというものであります。これは、行政改革の一環として特殊法人を整理合理化するという目的と、さらに、激動しております国際経済社会へ機動的にまた効率的に貢献していこうという目的で行うものであるということで理解をしているところでございます。  我が党といたしましては、特殊法人の整理合理化につきましては、サンセット方式での見直しを主張しているところであります。つまり、一たんすべての特殊法人は廃止を前提として三年間見直しを行う、その上で、民営化できるものはできるだけ民営化を行っていく、民営化できないものについてはその機能を政府に移管していく、それ以外はすべて廃止するというものでございます。基本的に今この立場でございまして、その観点から、本法案につきまして、今回の統合の妥当性、そして国際協力銀行のこれから行っていきます業務の役割と必要性に関連いたしまして、以下質疑を行いたいと存じます。  輸銀基金統合して国際協力銀行をつくるということでございますが、まず長官に、今回の輸銀基金統合するに至った経緯についてお尋ねをしておきたいと存じます。
  141. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御説のように、この直接のきっかけは特殊法人の見直し、統合でございますが、そもそもは、輸銀は一九五〇年、基金の方は一九六一年にできました。輸銀は、当初日本の輸出を何とかふやそうというような業務でありまして、やがて賠償などもやるようになりました。その中に基金ができてまいりまして、賠償だけではなしに広くODAを行うようになった。  そういう設立の経緯がございまして、これを平成七年、村山内閣のときに、特殊法人の見直しとして見たときに、国際金融関係のものが二つあるのを統合した方が有利ではないかというようなことを検討されました。そして、平成七年三月の閣議決定で、両機関統合という結論に達したものと承知しております。この閣議決定後の平成八年十二月及び平成九年九月に、統合の方針が閣議決定により再確認されました後、業務についても減量化、効率化が行われるということで、統合作業が進められてまいりまして、今日、このように法案を御審議いただけるような段階になっているものと思っております。
  142. 福留泰蔵

    ○福留委員 今答弁ございましたけれども、一九九三年の十月の第三次行革審最終答申に基づきまして、一九九四年二月に行政改革大綱が策定されたわけでございます。その後、一九九五年に村山内閣閣議決定が行われて、九十二特殊法人のうち十六法人の統合、五法人の廃止、民営化が決まった。その一つが今回の日本輸出入銀行海外経済協力基金統合であるということでございますね。  それで、当初、私の聞き及ぶところによりますと、連立与党内でこの議論がなされた。そのときには、輸銀を分割解体して、業務のうち、輸出金融と輸入金融を開銀に移す、そしてアンタイドローン融資などを協力基金に移す方向で調整をしていたというふうに新聞等にも書かれているわけでございます。輸銀の分割を避けたい当時の武村大蔵大臣が、輸銀と協力基金統合を妥協案として提示して決着をしたというふうに説明されている部分もあるわけでございます。  今、長官の方からも御説明がありましたけれども、その後、一九九七年の行革の論議の中では、政府系金融機関の見直しが行われているわけでございます。その際にも、実は政府系金融機関の見直しの議論に当たっては、開銀の民営化、開銀と輸銀統合、それから輸銀を分割して開銀と海外経済協力基金にそれぞれ統合、さらに開銀と輸銀海外経済協力基金の三機関統合等、さまざまな案が浮かんだというふうに聞いているわけでございます。大蔵省が最終的には抵抗いたしまして、当時の橋本首相も閣議決定見直しに難色を示したということでございまして、結局、開銀は廃止、北東公庫と統合し新機関をつくることで決着したというふうに言われているところでございます。  そこで、再度お尋ねいたしますけれども、政府系金融機関改革の中で、今回の統合をどのように位置づけるかという点についてお考えを伺いたいと思います。
  143. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 お説のように、特殊法人改革につきましてはいろいろな選択肢が検討されたようでございます。その中で、輸銀基金統合するのは一番合理的だ、それから、お説のように、開銀、北東公庫等もございますが、この海外金融部門統合するのが合理的だという結論になったと伺っております。  その理由といたしましては、まず第一に、資金供与相手国経済状況あるいはプロジェクトの特性等に応じて資金を供与できる体制が確立できる。要するに、ノウハウが蓄積され、調査が進み、資金供与がより効率的になるというのが第一でございます。  第二番目は、かねがね問題のありました輸銀基金の間の融資に当たっての先議、後議関係、どちらが先にということでございますけれども、原則として民間金融に近い輸銀からまず審査をしてというような、いろいろなことがございました。そういうことを見直し、案件の内容によって非ODAODAかという目的に合致した対応ができ、迅速で効率的な処理ができるだろう資金供与が可能になるということ。  そして第三には、両機関において重複しております管理部門あるいは海外支店といったようなもの、それから、これからますます顔の見える援助ということで重要になってくると思われます調査研究、専門的な技術支援部門、そういったものが統合できるというようなメリットがあるということでこの案が選ばれたのだろうと考えております。
  144. 福留泰蔵

    ○福留委員 今長官の方から、輸銀基金統合することについての合理性についての御説明がありました。私がちょっとお尋ねしたのは、多分長官にではなくして大蔵省にだったと思うのですけれども、政府系金融機関あり方についての見直しの中での位置づけということでございますので、これは大蔵省から答弁をしていただきたいと思います。
  145. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大蔵省と言われましても、実はその間の経緯を知っている者は、主導的な役割をしておりませんからわかりませんし、私も実は外から見ておりましたので正確には申し上げられないのですが、やはり特殊法人の整理統合をするという一つの至上命題があって、これは国民的な世論でもございましたから、どことどことでどういう合理的な組み合わせができるだろうかということがいろいろに議論されたと思うのでございますね。  それで、一つは、開発銀行と北東公庫というのは比較的筋の簡単なことでございます。  それから、輸銀基金というのは何十年の経緯があったことで、いろいろ権限調節を何度も何度もやりましたが、結局、基金経済企画庁の所管ということで話が落ちつきまして、うまくいくようになった、この二つは。  でございますから、一種のすみ分けができておりましたから、したがって、この二つ一緒にするならば、かなりの権限問題のすみ分けは何十年のいきさつの中でできておりますから、比較的問題が少ないのじゃないか、きっと当時の内閣がそういう判断をせられたものというふうに、私は外から見ておりましたのですが、判断しております。
  146. 福留泰蔵

    ○福留委員 これがベストだというのはなかなか難しかったんだろうと思います。さまざまな案があり、その中で、今宮澤大蔵大臣からも御説明がありましたけれども、今回は、輸銀基金統合というものが比較的問題が少なくて自然に行われる形になっていたというふうな御説明があったかと思います。  私、また後でこの問題については引き続きお話をしたいと思いますけれども、その前に、一つ経企庁の方にお伺いしたいのです。  こういう国際的な金融機関の中でさまざま、IMFとか世界銀行アジア開発銀行等々あると思いますけれども、今回輸銀基金統合して、かなりの資金量それから人員を擁する、世界的にはかなり大きな存在になっていくのではないかと思うわけでございますが、国際協力銀行の今後の国際金融機関の中での位置づけ、どのように今お考えでございましょうか。
  147. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 まず、規模でございますけれども、単純に両機関を足しますと、人員は八百九十三人で非常に少ないのでございますが、この期間中に承諾した金額などを見ますと、三兆一千五百億などというかなり大きな数字になります。これに比べまして、例えば世界銀行グループでございますが、これは、人員は五千四百四十三人もおりますが、金額でいいますと二兆三千億、アジア開発銀行は千九百五十六人でございますが、一兆一千三百九十億というようなことでございまして、大変規模の大きなものになります。  したがいまして、日本経済力が立ち直ってまいりますと、これが非常に世界でも有力な援助機関、最も有力な機関になってくるのじゃないかという気がいたします。その意味では、この機関に蓄積されるノウハウも含めまして、日本にとって非常に大事なものができるのではないかと期待しております。
  148. 福留泰蔵

    ○福留委員 再度この件で長官にお尋ねいたしますけれども、これまでは輸銀基金という形で別々にやっていたわけですね、それぞれの二つ機関があって。今御説明があった人数にしても融資額にしても、基本的にはこれまでやってきたものを足し算するという形になろうかと思います。これまでは基金基金としてやってきた、輸銀輸銀としてやってきたことを、今の出融資額等の存在の意味もありましたけれども、それだけの存在感が出てくるということによる国際的な影響力というのがあろうかと思いますけれども、その点についてはいかがお考えですか。
  149. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 確かに、その点はかなり大きなものになると思います。  日本は御存じのように、大変貿易黒字も大きゅうございますし、援助額も大きゅうございます。もっとも、その援助額の中には、日本は有償が多いものですから返済がまた回るというようなこともございますけれども、それにいたしましても、世界最大の援助国の大宗を一元化するということになりますので、非常に大きな作用が出てくると思います。また、この機関が一元化しますことで、情報、ノウハウの一元化ということも考えられます。  したがって、本行が今後国際貢献に非常に役立つ、うまく役立てていきたいと思いますし、役立つ機関であろうとも確信しております。
  150. 福留泰蔵

    ○福留委員 今回統合して、一つ機関として影響力がかなり目立ってくるわけでございます。ある意味では、日本のこういう国際経済支援の中での存在感をますます示していくのではないかと私は感じているわけでございまして、そういう意味では評価しておりますし、今後の業務の運営についてやはりきちんとした目的をしっかり持って、それに基づいて行っていただきたいと思っているところでございます。  基金総裁がお見えですから、若干基金のことでお伺いします。  基金の一九九八年の年次報告書がございまして、一番冒頭のあいさつのところでございますけれども、総裁のお言葉の中でも今後のことについて書いてございます。「今後は、従来の経済社会基盤整備に加え、環境保全、人材育成等の分野への支援、円借款と技術協力や無償資金協力などとの連携が一層重要な課題となるでしょう。」というふうに述べてあるわけでございます。  これは当然、従来言われてきているところでございまして、やはり人的な支援とか技術協力というのは大変重要な分野であり、これからますますそれが必要になってくるんだろうと思っております。  これまでも、この基金の業務の中ではそれを十分認識されて、具体的にその業務を遂行してこられたと思うわけでございます。特に、技術協力等、技術支援等に当たってはやってこられたと思いますけれども、そういう観点からすると、実は先ほども、今回の統合あり方の中で、輸銀基金JICA、この三つをやはり統合すべきではないかというふうな意見も一部あったということでございます。  今回は、輸銀基金統合というものは、海外の資金の融資、お金の面からひとつまとめて輸銀基金統合という形をとられたというふうに聞いておるわけでございますが、技術協力という今まで基金としても重要にして行ってきた業務については、JICAとの連携というのがかなりあったんじゃないかと思う次第でございます。総裁に、これまでのことでございますけれども、OECFとJICAとの連携というのをどのように進めてこられたのか、お伺いしたいと思います。
  151. 篠沢恭助

    篠沢参考人 お答え申し上げます。  有償資金協力を担当しております私どもと技術協力を担当いたしますJICAは、従来から、我が国のODAをより効率的、効果的なものとするべくいろいろな形で協力をし連携をし、それをまた推進、強化しようと努力をしてきたところでございます。  いろいろな形があるのでございますが、たまたま平成十年度、ODA予算を抑制せざるを得ないという話が財政的に出ました際、そうであれば、中身の高度化が必要であるということで、平成十年度から、特に我々OECFとJICAとの間で、四つの連携スキームというものが予算で定められたわけでございます。  その一つは、我々の円借款事業がスタートいたしますときに、詳細設計という開発途上国にとりましてはかなり金のかかる作業があるわけでございます。その詳細設計について、すべてではございませんけれども、ある程度の案件について、JICAの、国際協力事業団の開発調査という技術協力の予算を使って、JICAにおいて円借款事業の詳細設計をつくってくれる。  それから二番目には、資金協力連携個別専門家派遣ということで、JICAの技術協力の予算で私どもの円借款の専門家を幾つかの開発途上国に送り込んでいただける。それによって、ペルー等幾つかございますが、それぞれの政府に我々の職員が、専門家として、JICAの負担において入れていただけるということで、円借款の案件形成の中身を高めていくということが可能になったわけでございます。  三つ目は、開発途上国の円借款事業実施機関の職員に対する研修の実施でございます。円借款は、いろいろ御批判を受けることもございますけれども、非常に慎重な手続のもとで進めているつもりでございます。それが開発途上国にとりましては、その手続が煩雑でなかなか大変だという思いを持たれることもあるのでございますけれども、そういうことに対して、それに習熟していただくような研修をJICAの負担でやっていただける。  最後の四つ目でございますが、完成後の円借款事業のリハビリテーション。もう完成して何年も使ったいわゆるプロジェクトも、アフターケアが必要になる、リハビリテーションが必要になる、そういう段階になるわけでございますが、このリハビリテーションを、JICAの技術協力の予算あるいは無償資金協力という形でこれを埋めていただけるというような、技術協力あるいは無償資金協力と我々の円借款との連携措置が定められました。  このような形で、現在、基金JICAの連携をより一層強化いたしまして、ODAの質の一層の向上を図っていきたいというふうに考えておるわけでございます。実際の具体化に着手いたしますと、やはりそれぞれ難しい問題も現実には、現場では出てくるのでございますが、これを克服して、有効な連携関係をつくっていきたいというふうに考えております。
  152. 福留泰蔵

    ○福留委員 今総裁から御説明いただいて、四点にわたるOECFとJICAとの具体的な連携のお話を伺いました。円借款に関して、OECFがJICAかなり密接にかかわりを持ちながらやられているという実態を伺ったわけでございます。今後の連携のとり方については、かなり困難な状況もあるけれども、うまくやっていきたいというお話だったんだろうと思います。  そこで、先ほどもお話し申し上げましたけれども、一九九五年の三月ですか、村山内閣の連立与党の政府系金融機関の統廃合を検討していたワーキングチームがあって、ここが、輸銀海外経済協力基金国際協力事業団の業務を整理統合するとの方針を一たん決めた。ところが、当時の村山首相と武村大蔵大臣と自由民主党の加藤政調会長との協議で、統合対象から国際協力事業団を除くことで決定したというふうに報道されているわけでございます。  だから、考え方によっては、今のお話を伺ってもそうでありますけれども、輸銀基金事業団というもの、やはり三つ統合した方が、今回の目的である特殊法人の整理合理化という観点からすると、そしてまた今回の統合によって得られるさまざまなノウハウの共有化という面からしても、より自然であるし、よりその所期の目的を達成するんではないかというふうに、私、素人なりには自然に考えられるのであります。  今回は国際協力事業団は除いてあるわけですけれども、今回は今回として仮にこれを認めるにしても、これからの方向性として将来的に、今回の国際協力銀行はできることになろうかと思いますけれども、これとJICAとの統合というのは将来あるのかないのか、その方向性でいくのかどうか、これは経企庁長官にお伺いしたいと思います。
  153. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 今、基金総裁も説明いたしましたように、基金輸銀とは金融機関でございます。JICAは技術機関でございます。早く言えば、金融機関と、人材派遣あるいは技術コンサルタントの会社でございまして、統合いたしますと確かに大きくなり、ノウハウの交換ができる部分もございますけれども、やはり全く業務が違う存在でございます。  例え話になって恐縮でございますけれども、銀行がバブルのときにいろいろプロジェクトを持ち歩いてやったのは大体失敗しておるんです。だから、金融機関はやはり金融機関の目で見ていただいて、そして技術援助機関は技術援助機関、コンサルタント機関としてやっていただく方が正確じゃないか。金融観点から技術がゆがめられる、あるいは技術的観点から金融が無理をするというようなことがあってはならないと思いますので、この二つはやはり別々の方がいいのじゃないかと私は思っております。
  154. 福留泰蔵

    ○福留委員 引き続き長官にお尋ねいたしますけれども、先ほど来の御答弁の中でも、国際協力銀行というのは、その融資の額から見て、世界金融機関の中でかなり大きな存在になっていくと。それで、先ほどの民主党の仙谷委員質疑の中にもありましたけれども、統合を決定した段階からその後の世界経済の情勢の変化がある、特にアジアの通貨危機がこれあり、そういう観点からの今回の国際協力銀行の役割というものが増してきている状況があるわけでございます。  そういうふうな現状を踏まえながら、国際経済の動向もこれからますます複雑な状況になってくるんではないかと思うわけでございますけれども、先ほど長官の御説明の中で、世界銀行それからアジア開発銀行等の融資額の御説明もありましたが、人員の御説明もありました。実は、人員については私も承知している部分がありますけれども、かなり少ない人数でやってきているという現実があります。その融資額に比べますと、その人員というものははるかに少ない人数でやっているわけでございます。しかし、統合したけれども、役割はますます大きくなっている。  先ほど来の御説明の中でも、やはり専門家集団を育成していくというか、その人員の中の質を変えて高めていくというふうな御答弁もありましたけれども、今後、世界経済情勢の変化の中で、今回の国際協力銀行というもの、融資額も含めて、それから人員の体制も含めて、将来的にはどのようになっていくべきであるとお考えなのか、長官にお尋ねしたいと思います。
  155. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 余り先のことまではちょっと申し上げかねますけれども、まず第一に、現在の日本が占めております国際的な地位、そしてアジアにおける経済の影響力から考えますと、やはり経済協力というものは重要だろうと思います。したがって、この規模は拡大していくんだろうと思います。  ただ、現在のように有償主義で日本の国がいくのか、あるいは一部無償をふやしていくのか、そういうような選択がございますので、単純にこの銀行がすべてを持つかどうかというところはまだ検討の余地があると思いますが、いずれにしても重要な役割を果たすと思います。  それから、人員でございますけれども、今日本では非常に社会科学系統の人材が払底しております。地域を開発するとなりますと、その地域の経済の事情あるいは社会の状況等にも詳しくなきゃいけない。JICAの方は技術的な問題を持っておりますけれども、そういう世界経済水準、経済動向などを把握する。IMFにいたしましても、世銀にいたしましても、OECDにいたしましても、そういう研究開発分野かなり持っているわけでございまして、それがまた次のプロジェクトをする予備軍を育てるというような循環が行われております。  そういうことを考えますと、この機関にやはりそういった人材プールのある程度のものが必要であり、これを通じて日本発展途上国の情報が入ってくる、あるいは世界経済の情報が入ってくるというような方向性も必要だろうと思います。もちろん、予算の限られた範囲内でございますから効率的にやらなければいけませんので、現在ある分野を整理統合しながらそういった専門家を育てて、日本あるいは世界に役立つような機関にしていく、そういう専門家集団を育てていく、プロの集団にしていくということが大事だ。そうなってくれることを私は強く期待しておる次第でございます。
  156. 福留泰蔵

    ○福留委員 私も、今回この統合に当たって初めて、世界銀行アジア開発銀行等々と比べて扱う融資額というものは膨大であるにもかかわらず、数少ない職員の方々でこれが行われているという実態を知りまして、びっくりした次第でございます。行政改革という大きな流れがあり、なかなか人員をふやすということは難しいかもしれませんので、今長官の方から御答弁がありましたとおり、職員の方々はかなり大変だと思いますけれども、質の向上、専門家集団の育成といった点に力点を置いていただいて、経済支援の所期の目的を達成していただけるよう念願をする次第でございます。  引き続きまして、今回、統合に当たりまして、国際協力銀行が行う円借款等のODA業務は、この銀行があわせて行う非ODA業務との間で勘定、経理を明確に区分するということが、法文上規定されているわけでございます。開発途上国の経済社会開発と福祉向上を目的とするODAと、旧輸銀の輸出入金融、投資金融等を典型とする資金供与とは、本来明確に区分されるべきであるというふうに考えます。  従来、我が国ODAは、円借款に基づく対象国のプロジェクトを我が国企業が落札し、利益を上げる例などがこれありまして、輸出や海外投資の振興につながる面が大きく強調され、諸外国からも批判を受けたことがあったわけでございます。現在は、我が国の援助におけるアンタイド率はほぼ一〇〇%にまで高まっているわけでございますが、一部の先進国等からの誤解はいまだに解消されていない面もあるということでございます。  今回の輸銀基金統合につきましては、我が国の国内政策に基づくものではございますけれども、それによります円借款等のODA業務と旧輸銀から引き継ぎます非ODA業務とが、国際協力銀行という単一の主体によって運営される結果となっているわけでございます。  このため、特に本法案では、ODA業務と非ODA業務との区分を行うことになっておるわけでございますが、このことを、我が国ODAに寄せられた過去の批判や誤解を払拭する意味でも、業務区分の実際を対外的に十分周知させる必要があろうかと思います。これを踏まえて四年間の経過があったんだろうと思いますけれども、その具体的な取り組みと、その理解が得られたかどうかをお尋ねしたいと思います。
  157. 河出英治

    河出政府委員 今先生おっしゃいましたように、輸銀基金統合することを決める際に一番大きな問題になりましたのは、今おっしゃいましたようなODAによる輸出促進、あるいは自国企業の海外における活動を支援するためではないかという懸念が海外からないかということであったわけでございます。そのために、平成七年の三月の閣議決定では、統合期間を四年後ということにしまして、その間に、国際機関あるいは関係国の理解を得るように努めるということが決められたわけでございます。  これを受けまして、OECDですとか世界銀行ですとかIMFですとかといった、関係の国際機関あるいは関係政府に対しましても、今回の統合の意義を説明する機会をこれまで設けてきたところでございます。おおむね理解が得られているものと思っておりますが、今後も、このような機会を積極的に設けていきたいというふうに考えております。  また、今国会でこの法案を成立させていただきました暁には、正式にまた関係国あるいは関係国際機関に十分説明をしてまいりたいというふうに考えております。
  158. 福留泰蔵

    ○福留委員 十分な理解を得られるように、今後とも努力をお願いしたいと存じます。  ODAに関して若干ちょっと、この法案と離れるかもしれませんけれども、この際、御質問させていただきたいと存じます。  昨年の六月、ブータンに対する政府の途上国援助事業をめぐる約六億四千万円の援助資金が不正に支出されていたという問題が発覚いたしました。総額六十一億円に上るブータンに対するODAで、現地で事業を担当していたコンサルタント業者が、無許可で工事内容を変更したり、勝手に機材を削減したりするなどして経理操作をしたものであるとのことであります。  無償資金協力の仕組みは、被援助政府からの要請がまずある。その上で、JICAとコンサルタント業者による事前調査を行い閣議決定されるというふうな流れであるようでございます。閣議決定されて、その後、被援助国と交換公文を締結し、入札後に被援助国が業者と契約し、外務省が契約を認証する。着工、完工を経て、事業経費の支払いとなる。これはJICAが絡んでいる話でございまして、問題は、こういうふうな権限と仕事がコンサルタント業者、民間のそういう業者に集中し過ぎているということを意味しているのだろうと思います。  国際協力銀行ではこういうことはないと思いますけれども、ODA関係の、これは国際協力銀行とちょっと離れるんですけれども、ODAに対するこういう不正支出に対するチェックの仕組みというものを、やはり国民がもっと理解できるようにつくる必要があると思います。これは大変なレアケースだろうと思いますけれども、この再発防止のチェックシステム、情報公開を含めてお考えがあればお伺いしたいと思います。
  159. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 お申しになりましたこのブータンのケースは、無償資金協力の問題に関連しておりまして、今の基金もしくは輸出入銀行とはちょっと別になっております。  この海外経済協力基金ODAに関しましては、かなり綿密なチェックをやっている形になっております。これが必ず現実に作用するかどうかという問題はもちろんありますが、まず、入札や契約といったときには、その手続の各段階で事前に調査をしておりますし、貸し付けにつきましては、借款契約上の必要な書類を提出させ、加えて事業完成までの進捗報告等を出させております。また、途中で監理ミッションを派遣し、チェックシステムもしております。  もちろん、これが間違ったことも一度だけございまして、まことに申しわけないことがあったのでございますが、重々それは注意しております。  それで、国際協力銀行に移行後も、このようなチェック体制は厳正に運用したい、しなければならないと当庁でも考えておりまして、委員仰せのとおり、この点は国民に一点の疑惑もないようにやりたいと思っております。
  160. 福留泰蔵

    ○福留委員 この問題は、この銀行関係ない話でございますので、それは十分理解をしているつもりでございます。  もう一つ、ちょっとこれもこの銀行関係ない話でありますけれども、ODA絡みの話ということで、せっかく大蔵大臣も長官もお見えでございますので、お尋ねをしたいと思う次第でございます。  昨年の六月三日の衆議院の決算委員会で自民党の河野委員質疑をしたということでございますけれども、世銀の奨学金を大蔵省の幹部職員の研修に使っていたということが判明しました。この件については、私きょう実は質問をするつもりはなくて、事前に質問通告をして、そんなことは大蔵省としてはやめましたという事前の答弁をいただいておりますので、質問する予定ではございませんでした。  ちょっと紹介を申し上げると、大蔵省所管のODA資金で世界銀行に設置されている途上国向けの日本世界銀行奨学金制度に、本来は対象外の日本人枠が設けられている、この枠内で奨学金を支給される日本人の六割を大蔵官僚が占めていたことがわかったということで、これは今後やりませんということで質問するつもりはなかったのですが、実はけさの新聞を読みまして、今度は、これも国際協力事業団の枠でODA留学官僚特別枠が設けられているということが報道されたものですから、昨年大蔵省としてはやめたということが国際協力事業団ではやられているし、国際協力事業団の話では、これはやめるつもりはないというふうに、この新聞記事によると、JICA国際協力総合研修所所長の話としてそんな趣旨のことが書いてあるわけであります。  これは、大蔵省の方がJICAにこういうようにお話ししたのかどうか承知しませんけれども、過去五年間で、このJICA海外長期研修制度を利用して毎年三十四人から四十一人が各国の大学院や研究所に派遣されている。官僚特別枠というのがあって十から二十人が割り当てられている。この五年間で、一般五十四人、JICA職員五十人に対して、七十四人の官僚が派遣された。省庁別では農水二十二人、通産十八人、建設十一人、環境、運輸、厚生各五人等々、大蔵と経企庁も各二人ずつということでございます。  これは、JICAの行う国際協力事業にできる限り協力するという趣旨でこの枠でやられているのであれば理解はできるけれども、この研修が終わった後に帰国した官僚二百四十四人のうち、途上国で働いたのは四十二人にしかすぎない。研修先も、発展途上国は中国に行った一人だけで、あとは全部アメリカ等の先進国へ行って、研修というか、各有名な大学へ留学してくるのだろうと思いますけれども、そういうことで、こういうJICAODAの資金が使われていると。  大蔵省は昨年、こういう問題を世銀の奨学金の枠のことについて指摘を受けてやめたということでございますけれども、JICA、今この関係と外れますけれども、こういうのが残っているということでございます。これは、大蔵省からも既に毎年人を出されていることでもあります。経企庁からも人を出されて、これを使っている立場でございますので、そういう観点から大蔵大臣と経企庁長官、この問題についてどうお考えか、お伺いしたいと思います。
  161. 黒田東彦

    ○黒田政府委員 御指摘のように、世界銀行のプログラムの中に、奨学金の資金を出すというものがございます。その奨学金は、もともと途上国の人も入っておりますが、日本人も、途上国のいろいろな援助関係仕事をしてもらおうという趣旨で入っておったわけですが、そのうちの一部に大蔵省の職員も入っていたということで御指摘をいただきまして、今後大蔵省の職員をこのような制度留学生として派遣するということは行えないことにしたということが事実でございます。
  162. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 今の世銀の問題とJICAの問題とはちょっと関係が違いまして、国際協力事業団JICAでは、海外に派遣する技術専門家などの養成のために、海外長期研修員派遣制度というのを制度として持っております。したがって、これは規模あるいは人数その他につきましては議論があるかもしれませんが、制度としては何らおかしいものではないと思います。  我々といたしまして、経済企画庁といたしましては、国際経済協力の企画立案、総合調整など、経済協力に関する事務を担当するような能力を蓄えるためにこういう研修をやっております。  これが、発展途上国よりもアメリカ等に行く人が多いではないかという御指摘もございますが、これはやはり、理論とか事務とかそういうことを考えますと、アメリカの研究所などにすぐれたノウハウが蓄積されている、学者もたくさんいるというようなこともございまして、どうしても、留学先を選ぶとすれば、こういう事務担当者として、あるいは技術専門家として養成していくために、汎用性のある人材を養成するにはそういうことになるかと思います。こうしたことから、経済企画庁の職員も同制度に応募いたしまして、厳正な選考を経てこれに参加しているということでございます。  今後、こういった研修に参加した人材がより活用できるようにどのように生かしていくか、こういったことも、この機関統合を機会に十分に研究して、より有効なものにしていきたいと思います。
  163. 福留泰蔵

    ○福留委員 世銀の奨学金の枠のことはわかりましたし、今の長官の、JICAの枠の研修制度については現状で妥当性があるという趣旨の答弁については、若干理解がしがたい部分がございます。  御答弁の中にありましたけれども、やはり発展途上国で研修を受ける人たちがいないし、その後の業務がそれとかかわりのないところで業務をなされている人が多いという実態は、各省庁人材育成、こういう経済協力だとかそういう形ではなくて、一般の人材育成観点からJICAのこの奨学金の枠を財布がわりに使っているのではないかという指摘は、やはり国民からされるんだろうと思うわけでございます。そこについては、もっとしっかり国民に納得できるような説明が必要になろうかと思います。  今回の国際協力銀行につきましてもさまざま、ODAあり方、非ODAも含めて、海外への経済協力支援あり方については国民のさらなる理解が得られますよう、これも税金だとか財政投融資制度を使って行うわけでございますので、さらに、この重要性、有益性について国民の理解を得られるように努力されることを望みまして、私の質問を終わります。
  164. 古賀正浩

    古賀委員長 中野清君。
  165. 中野清

    ○中野(清)委員 公明党・改革クラブの中野清でございます。  私は、近時のアジア通貨危機対応に係る我が国の対アジア資金協力実施の中核的機関とも位置づけられます国際協力銀行について、また、宮澤大蔵大臣の提唱に係りますところのいわゆる新宮澤構想、また、海外における中堅、中小企業対策について、特に宮澤大蔵大臣自身のお考えも承りたいと思っております。  アジアの通貨危機に際しまして、政府は、昨年四月の総合経済対策、十月の新宮澤構想、そして十一月の緊急経済対策に基づきまして、通貨危機の影響を受けたアジア諸国の経済構造改革、社会的弱者救済、中小企業育成のための円借款を含む積極的な資金協力を行おうとしていることは、よく存じ上げております。  新宮澤構想がいわゆる三百億ドルの規模の資金スキームだ、それはよくわかりますけれども、特に、流動性危機回避のための当座の資金供給以外は全般的に緊縮策が先行することとなっていますところのIMFのプログラムと比べますと、宮澤構想で供給される資金については、社会的弱者対策から金融システムの安定化対策まで使途が広範囲に及んでおりまして、いわゆる受け入れ国にとっては使い勝手のよい援助である。これは先ほど仙谷委員もおっしゃっておりましたけれども、それは私も同感であります。そのことが実は、逆に、アジアへの甘さとかモラルハザードの温床になるんじゃないだろうか。この資金協力に当たっては、供与国においてその使途が明らかになる等、最低限の担保が必要になると私は考えているのです。  そういう意味で、資金協力を行う我が国の基本的姿勢というものをどうお考えになっていらっしゃるか。また、資金協力に当たって、受け入れ国にどのような経済努力体制というのを求めているのか。また、モラルハザードの防止に向けた措置をどのように講じていただくつもりなのか。その三点をお伺いしたいと思いますが、あわせて、大臣の感想で結構なのですけれども、アジア通貨危機がございましたが、これについて、どのような教訓といいましょうか、御認識をお持ちになっているかもお話を願いたいと思います。
  166. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今の、IMFとの関連でモラルハザード云々というのは、確かに、おっしゃるように非常に大事な点でございます。実は、一昨年の七月にタイで通貨危機が発生いたしまして、それが次々に転移をしていきましたときに、IMFは、その対応に立ち上がりまして、いろいろなプログラムを書いて各国にその遵守を求める、そしてIMFも、我が国なんかが一番先に立った方ですが、金を出して、そして、そのプログラムを遵守するならば応援をしよう、そういういつもの型どおりの態勢に入って、これは非常に大事なことであったわけでございますけれども、必ずしもそれがはかばかしくいかない、あるいは、ちょっとして、国情に合わないというような、数カ月たちますとそういう批評がかなり出てまいりました。  我が国は、しかし、それまでこういうことを無論しようとはいたしませんでした。今委員がおっしゃいますように、せっかくIMFがかなり苦い話をしようとするのに、甘いものをやったのじゃいかぬわけでございますから、それは非常に気をつけておりました。  しかし、どうもIMFも一生懸命やったのだがちょっと見当が外れたんじゃないかな、国によって様子は違うのですが、そういうことになりまして、一年たつ、たたぬごろから、IMFも手直しをしたいということも素直に申しましたが、それらの国々も、一生懸命やっているのだが、どうもそれだけではなかなかいけないというようなことを言い出しておりました。  ですから、私がこの話をしましたのはIMFの総会でみんなが集まったときでございますので、IMFはよく知っているわけでございます。それまでの間に、最初の、先ほどおっしゃいましたようなモラルハザードとか、IMF側の一種の疑い、あるいは、やっかみというのはいい言葉ではございませんけれども、そういう面倒くさいものは、大体、それはそう、これはこうというようなことになってまいりましたので、それで、それじゃ五カ国に、現実に、先ほどおっしゃいましたような失業対策だとか公共事業だとかはみんな金が要りますものですから、そのための金を百五十億ドル、それから、あと、食い物も輸入しなきゃなりませんし、輸出のための原料も輸入しなきゃならない、その為替の方の金を百五十億ドル、こういうことでいきましょうということで、おのおの多少需要は違いますけれども、ここで百五十億ドルほどコミットいたしました。  残りがあと一年残っておる、そういうことでございますので、まず、そういうモラルハザードには陥らないような配慮をいたしたつもりでございますし、そのうちに、IMFも少しずつ現実的なアプローチも始めましたので、まあまあ今その話は落ちついていると申し上げて、多分よろしいのだろうと思います。  それから、そういう意味で、IMFはもちろん感謝されておるのですが、我々の金も、現実に政治的な、当座の、何とか緊急にしたいような、役には立っておるという意味で、比較的うまく使われているし、IMFの邪魔にもなっていないと思います。  ただ、これはこれから先、それならば、アジアの国が円というものに非常になじんできて、だんだん円というものが、アジアの通貨の少なくともある助っ人ぐらいになれるかということになりますと、我が国の方の体制がまだ十分でございませんし、困っているのに援助をするわけですから、そのかわりというようなことはどうも言いたくもないし、それでは本当の話にもなりませんし、しかし、そういう方に動いていけば、それはそれで結構だなと。  我が国としてはせんだって、ファイナンシングビルを今度、全部公募をいたしまして外国資本が買えるように、そして、利付国債の利子も、現実には外国人に免除しましたので、源泉徴収も行わないということで、そういうマーケットができつつございますから、それやこれやで少しずつ円になじみが出てくればいいことだというふうに考えております。
  167. 中野清

    ○中野(清)委員 私は、大臣、この新宮澤構想を本気になって、アメリカが何を言おうと頑張ってやってもらいたいと思っているのですよ。  そういう意味で、今度の法案の中で、国際協力銀行についていわゆる追加の措置がありましたね。一つは、先ほど御発言がありましたけれども、海外業務からの撤退に伴うところの邦銀等の貸付債権の、これを買い付けといいましょうか、それを買っていいという話ですね。それともう一つは、ソブリン債の保証についてございました。伺いますと、現在、大蔵省が、例えばタイとかマレーシアとの間で、具体的な保証あり方についてもう折衝が行われているという報道を伺っておるわけでございます。  まず第一に、今、大臣から円の国際化のお話がございましたけれども、ソブリン債の保証は結構だと思うのですけれども、今日、いわゆる、円がローカル通貨とか、またはユーロとドルの二極化とか、今はそうじゃなくて、もうアメリカ一極集中だとか言われております。その中で、円の国際化という問題を考えたときに、ソブリン債の保証だけで、この程度でもって本当に円の国際化とか、さっきおっしゃった問題ができるのだろうか、そういう疑問が一つありますけれども、そういう点をどうお考えか。  それと、ついででございますから、あわせてお伺いしたいと思うのですけれども、ソブリン債保証に対する我が国の基本的な姿勢もお伺いしたいと思います。また、実際に保証を行われる場合の保証の限度といいましょうか、それとか保証の組み合わせとか、それから具体的な保証条件とか、具体的にどこのところがどう、それはもうこういう場所で言えるわけがありませんけれども、基本的な方向として、やはりそういうものをきちっと、せっかく国際協力銀行の新しい業務になるのでございますから、はっきりしていただきたいと思います。  この三点についてお伺いをしたいと思います。
  168. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 円の国際化というお話を、いずれつながるのですが、ちょっと置いていただきまして、私の名前で宮澤構想とかいって大変言われておりますが、実はこの大きな部分は、今御審議願っております日本輸出入銀行とかあるいは協力基金の力をうまく組み合わせてやっておるにすぎないのでございます。  比較的我が国で知られないことの一つに、これらの二つ金融機関が実は非常に大きな世界的な仕事をしているということについては、御本人方も余りPRをなさらないからかもしれませんが、割に知られていない。ですから、先ほど輸銀の資金量というのは世銀より大きいのだということを言って驚いていらっしゃる方がありましたが、そうなんでございますね。発展途上国ばかりでなく、先進国にもいろいろなファイナンスをやったりしておりまして、我が国の国際的な地位の向上にこの二つ金融機関は尽くしてくれていることが大変に大きい。今度のことも、大体三百億ドルなんという金はほぼそういう種類の、百五十億ドルは輸銀によることが多いし、百五十億ドルは為替の資金を出す、こういうことでございますから、意外にそういう働きが多い。  それで、そのソブリン債の話は、これは輸銀総裁はよく御存じのはずなんですが、現行上輸銀は大抵の保証はできる。ところが、不思議なことに、国債の保証だけができないということになっているのですね。ですから、今現に東南アジアの国でうちの国債を保証してくれといったときに、輸銀のそれができないものですから、今度こうやって法律も変えていただく。  それからもう一つは、アジ銀に私ども金を出しまして、そのファンドでアジ銀にいろいろなものを保証してもらおうとも思っておりまして、本当はそういうことが実際三百億ドルの内容なんでございまして、今あっているそういう金融機関が非常によく働いていてくれる。したがって、やがてそれが円のもう少しみんなになじんでもらう動機になるかもしれないし、それはそれで喜ばしいことだと思っております。
  169. 中野清

    ○中野(清)委員 今大臣がおっしゃるように、世銀やアジア開発銀行は今までもそういう国債買い入れができたわけですね。ですけれども、これが今度できるということで、私はそういう意味で、これからの国際協力銀行の役割、そういうものについては大いに期待したいと思っておりますし、もし時間がございましたら、また最後にこの問題についてはさせていただきたいと思います。  それで、時間もございませんから、中小、中堅企業対策を中心に特にお伺いをしたいと思っております。  プラザ合意以後、我が国の急激な円高というものは日本企業の海外進出を促進いたしまして、企業の国際化を促進したわけでございます。そして近年、国内から海外への生産拠点というのは、従来の政策地域重点型から東南アジア地域重点型へと移行をしているということはもう御承知のとおりであります。NIESからASEANへ、さらに中国へと投資先が変遷するようになった要因といたしましては、産業インフラストラクチャーの整備状況や産業技術のレベル、賃金レベル、通貨価値、投資規制緩和や外国企業参入に対する優遇策など、進出国の政府経済政策の転換が挙げられると思うわけでございます。  そこで、まず第一に、アジア諸国への企業の海外投資や海外進出は、大企業の傘下にある下請中小企業であったり中小企業独自のものなど、主役はこれから中堅、中小企業であると私は思っております。海外進出の中小企業に対しましても、一層の支援策、例えば貸し渋り対策等が必要と考えておりますけれども、この具体的な中小企業支援策の内容についてお伺いをしたいと思います。  あわせまして、海外投資や海外へ進出する中小企業に対して、投資相談を初めとする進出国についてのすべての情報を提供できるシステムの構築がぜひとも必要と考えております。同時に、海外に進出した中小企業に対する資金援助支援策について、国際協力銀行はどう対応しようとしているのか、お伺いをしたいと思います。  この二点。
  170. 今野秀洋

    ○今野政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、経済のグローバル化が進展する中で、海外の事業展開、海外との取引というのは、中小企業にとりましても重要な経営戦略の選択肢の一つになってきております。  そのような動きに対応いたしまして、中小企業の海外進出を支援するという観点から、従来から、ジェトロ等を中心といたしまして、情報提供あるいはさまざまなアドバイス、それから人材育成等の施策を行っているところでございます。また昨年から、海外進出の日系企業が現地で非常に資金繰りに窮しているという情報が頻々と入っているものでございますので、それに対応いたしまして、中小企業金融公庫等によりまして融資制度を創設いたしました。また十一年度からは、中小企業事業団等によります海外投資アドバイザー制度の強化あるいは国際化のマッチング事業の創設など、種々の手を打っているところでございます。  そういう事業が相互にシステムとしてちゃんと組まれておるのかというところでございますけれども、平成十年の七月からでございますけれども、ジェトロ、中小企業事業団あるいは経済技術協力関係の諸団体に連絡会議をつくっていただきまして、これは通産省も入っておりますけれども、中小企業支援機関連携推進事業というものをやっております。そこの中で、例えばワンストップショップサービスというのを実施しておりまして、どこかの中小企業国際関係機関に来た方には、たらい回しなどしないで、どこに行けばどういうものがありますよということがわかるような体制を組むということを推進しているところでございます。  今後、国際協力銀行ができました折には、国際協力銀行とも十分連携をとってまいりたいと考えておるところでございます。
  171. 中野清

    ○中野(清)委員 今ちょっと御説明いただきましたけれども、一言で結構ですからもう一回答えてもらいたいのですけれども、そうすると、皆さん方は海外における中堅、中小企業対策は十分だとお考えですか。それだけ一言。
  172. 今野秀洋

    ○今野政府委員 アジア通貨危機が起きまして以来、私どもは鋭意諸制度の拡充に努めているところでございます。ただ、状況は極めて深刻でございますので、なお努力が必要であると考えております。
  173. 中野清

    ○中野(清)委員 それでは、今の状況が深刻だというお話の中で、私は、国際協力銀行というのは海外における金融ビジネスのただ一つの資金的協力の中核的な機関だと考えているのですよ。そうすると、実はアジア諸国に特に接点の多い中堅、中小企業について、私が調べましたら、輸銀の中に海外融資相談室というのが確かにありますね。何か、人によると、通産省なんかに聞きますと、相談は年間にいっぱい、四百件ぐらいあったけれども、実際は十社とかという、これは相談室じゃないかもしれませんけれども、そういう例も聞いております。そうしますと、本当にこれからいわゆる国際協力銀行が発足したときに、私は、今のままでいいんだろうかという率直な疑問を持っているんです。  大臣にちょっとお伺いしますけれども、これは、もしあれだったら後ほど数字を申し上げますけれども、むしろ、新しい国際協力銀行の中に、例えば中小企業・中堅企業投融資促進事業部とか、よく顔の見えるODAと言いますけれども、とにかく、顔の見える中堅、中小企業対策というのがなければ困るわけです。聞いてみると、何か、第五部とかにあって、業務部とか総務部とかという話を聞きますけれども、この点については、私は、この国際協力銀行の発足というものは一つのチャンスだと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  174. 保田博

    ○保田説明員 海外で活躍しております中小企業に対する本行の支援についてまず簡単に御説明をさせていただきまして、その後でお答えをしたいと思います。  輸出入銀行海外で活躍しております中小企業への対策は、大きく分けますと三つの柱になろうかと思います。  第一は、もちろん本行による融資でございます。中小企業に対しましては、大企業に比べますと、適用の金利あるいは融資割合等を高めるというような優遇措置をとっておりますし、それから、協調融資銀行についても逐次拡大をするということで、本行の直接融資をまず大きくするということに努めておりまして、ここ三年ぐらいの平均をとりますと、全貸出高の約一五%程度が中小企業向けであるというふうに御理解をいただきたいと思います。  それから、融資という面では、本行による融資のみならず、現地の国々における機関を通した間接的なツーステップローンの活用ということにも努めておるつもりでございまして、今後とも、審査能力の一層の強化を図りますとともに、こういう現地金融機関との提携網の拡大に努めたいというふうに考えております。  それから、相談事業、情報事業等についても、中小企業にとっては大変重要なことでございますので、今後とも、一生懸命努力したいと思いますし、統合後は、ODA業務に関連した進出先の情報も新たに加わるということでございます。これらを総合的に活用して御協力を申し上げたいと思っております。  それから、第三の柱が環境整備でありまして、これらの企業が……(中野(清)委員「やるかやらないか答えてくださいよ」と呼ぶ)はい。  最後に、機構のお話、現在我々の持っております海外融資相談室を拡充強化してはどうかという点でございますが、厳しい行革の中でここで私が大きく胸を張るわけにもまいりませんけれども、必要に応じまして、専門部局を新設するということも含めまして、関係当局と今後努力をしてまいりたいと思っております。
  175. 中野清

    ○中野(清)委員 今御答弁いただきましたけれども、私の認識は、先ほど何か融資のあれが一五%とおっしゃっていますけれども、私の持っている資料では、中堅、中小企業向け投融資承諾状況というのが、平成八年で、全体が五千三十六億の中で、中小、中堅企業向けが二百四十三億で四・八%。平成九年が、六千四百七十五億のうちで、十五億ですよ、〇・二%ですよ。それで、平成十年が、一兆二千四百三十六億のうちで、五百七十二億で四・五%だというのが私の持っている資料ですけれども、いかがですか、今の一五%とどういうふうに違うんだか、説明してください。
  176. 保田博

    ○保田説明員 言葉足らずでございましたが、件数においてということでございます。件数で一五%ということです。
  177. 中野清

    ○中野(清)委員 件数でやったら大企業が件数が少ないのは当たり前の話で、やはり金額で話をしてください。  ですから、先ほどのお話の、今すぐに、行革の時期ですからすぐつくれとは言えないかもしれませんけれども、ぜひこの機会に、国際協力銀行が発足したという中で、中堅、中小企業向けの対策というものをしっかりお願いしたいということをお願いしたいと思います。  そういう意味で伺いますと、例えばアジア諸国への進出に当たっての課題も多いわけですよ。例えば、インフラストラクチャーの未整備とか、環境問題とか、労働争議とか、カントリーリスクとか、法的規制とか、海外パートナーの選定の問題とか、課題がいっぱいありますね。そうしますと、これらの課題についてやはり、私は国際協力銀行というのが本当にやるべきだと思っているんです。  それから、先ほど要望をいたしましたけれども、大蔵大臣、いかがでしょうか、先ほどの問題を含めて、輸出入銀行の方に言うだけじゃなくて、大臣としてこの中小企業対策としての取り組みについてはいかがでしょうか。
  178. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 中野委員は本当にもう御先祖から御自分の企業を大事にしていらっしゃるので、今のように、それが海外に進出する姿をごらんになってそうお思いになっていらっしゃるんだと思う。私はごもっともだと思うんですが、しかし、例えば、アメリカからアメリカの中小企業が日本に進出してまいりますね。その連中は日本銀行からファイナンスをまず受けるのが本当ですし、在日のアメリカの銀行からも受けるし、アメリカの輸出入銀行からファイナンスを受けるということは実は非常に少ないんだろうと思うんです。  ですから、日本の企業が東南アジアに行きまして、まだ行ったすぐでございますからそうばかりもいきませんでしょうが、この間まで、ごたごたしないうちは、やはり現地の日本金融機関あるいは現地の銀行が、これはしばしば日本輸銀から金を借りますけれども、そういうことで賄うのが本当は行く行く本則だろう。  ただ、そうなりますまで、やはり、殊にこういう異変がございましたから、国際協力銀行には特に気にかけてもらいたい。今、殊にちょっと、こういう中途半端になって、現地には行った、金は借りられない、きっとそういう状況ですから、そのことは総裁によく考えていただかなきゃいかぬなと私も思います。
  179. 中野清

    ○中野(清)委員 大臣のお考え、ぜひこれからもよろしくお願いしたいと思いますけれども、現実に、例えば通産省で中小企業海外投資協力資金なんてやっておりますけれども、これなんかも年間で十社ぐらいだという報告が来ております。前は三社か四社だと。そうしますと、基本的に枠組みが少ない。おっしゃるとおり、海外については現地のあれもあるだろうと。そういうときの、いわゆる信用といいましょうか、そういうものは当然、日本の国が中小企業や中堅企業対策としてやるべきだと思っているんですよ。  ですから、例えば、これはもう一回お伺いしますと、今通産省が中心になりまして、昨年十二月から、中小企業金融公庫や国民金融公庫によって、国内の親企業を経由した現地法人向けの融資制度がスタートしておりまして、それでまた、商工中金も同様の制度をやっていると思うんですけれども、これについてきちっと、もう一回よく説明をしてもらいたいと思うんですよ。  といいますのは、親企業を経由するということはある意味ではよくわかるんですよね。債務保証といいましょうか、そういう意味で、現地のことはちっともわからない、だから、調査もわからないから親企業を経由してやるんだと。ですけれども、そんな程度の姿勢でもっていいんだろうか。  現実には、現地の企業についてもやはり相当勉強をしてもらってそれをやるような体制を立てなければ、それは何のための国際協力銀行だろうという、さっきおっしゃったとおり、現地へ行って見殺しにされては困るんだ、そういう立場で考えたときに、これはむしろそういう問題はあるのじゃないか、むしろ貸し渋りが起きるのじゃないかということを含めまして、お考えを願いたいと思います。
  180. 今野秀洋

    ○今野政府委員 中小企業の海外子会社に対します融資制度について御説明申し上げます。  昨年十二月から、中小企業金融公庫、国民金融公庫それから商工組合中央金庫、これら三つの中小企業機関によります本邦親企業経由の融資制度を創設いたしました。これは、海外子会社の経営基盤強化などのために必要な資金を融資するというものでございます。早速既に多くの相談が寄せられてきているところでございまして、貸付実績も、徐々にでございますけれどもあらわれてきている状況でございます。  それで、どうして転貸という仕組みをとったかということでございますけれども、中小企業基本法、それから中小企業金融公庫法、それから国民金融公庫法、この法律の解釈上、海外の子会社に直接融資するというのは法律の条文からして困難であるということでございましたので、親企業を経由する制度ということになったわけでございます。  直接融資は、それでは全く日本政府の中にはないのかと申しますと、商工組合中央金庫、これは転貸に限らないでできる制度でございます。当然のことながら、現在の輸出入銀行、将来の国際協力銀行、これは直接融資もできることになっておるところでございます。
  181. 中野清

    ○中野(清)委員 そういう意味で、大臣、さっき言った、新しい国際協力銀行の中に、中堅企業とか中小企業の投融資の対策室というか促進室というか、部といいますか、そういうものが何としても必要だと思うのですよ。そうしませんと、今おっしゃったように、商工中金はできるけれども中金や国金はだめだという制度的な制約もあるはずなんです。ですから、そういう意味では、やはり国際協力銀行の役割というのは非常に大きいと思っております。  そういう意味で最後にお伺いしたいのが、ジェトロや中小企業事業団が中小企業の海外展開に向けてのいろいろな事業をやっておりますけれども、これを国際協力銀行が、どちらかというとどういうような支援をしていくかということだと思うのですね。率直な話、いろいろ中小企業の団体から話を聞いてみますと、必ずしも今までの輸出入銀行の評判は、私はいいとは言えないと思います、はっきり申し上げて。結局それはなぜかといえば、どうしても大きなプロジェクトばかりに目を向けていたと思うのですけれども、そういう意味で、その関係がどうなるのかということが一つ。  それから、先ほど来人手不足の話が出ました。私は、何もこのODAにしても、人が二人減ったからいいとか、そんな気はありません。むしろそういう点では、当然必要なものはふやすべきだと思っておりますけれども、その中で、特にこれからのプロジェクトが、大規模なものから、むしろ地についた、小規模といいましょうか、そういうプロジェクトになってくる可能性がいっぱいあろうと私は思うのですよ。当然、そこには件数増もあるだろうし、それから担当者の負担が多いという中で、実施機関における海外スタッフの充実については、経済企画庁長官、どうお考えか。  それから、特に中小企業への指導スタッフについては、ジェトロを含めて現状をどう認識していらっしゃるのか。また、これを今後どうするのか。  それからもう一点、あわせてお伺いしますと、堺屋長官、よく専門家の養成と言います。その場合に、専門家というのを日本の国だけでもってつくっていいのだろうかという話があろうと思うのですよ。現地における受け入れをしてもらう、消化をしてもらうという専門家については、どう考えているか。  この三点について、簡単にお願いしたいと思います。
  182. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 まず第一点の、これからますます中小企業あるいは中小規模のプロジェクトがふえるだろうという御指摘は、そのとおりだと思います。環境問題から考えましても、また我が国の経済発展から考えましても、まさにそういう中小企業が行うような中小プロジェクトは重要度を増すだろうと思うのです。  二番目の問題でございますけれども、先ほども申し上げましたように、担当者の数が大変少ない。これは財政の中でそうふやすわけにはいきませんが、やはり総務部門等を合理化しながら、充実していく。それから、海外の拠点も、二つ一つに合わせますから、三十五拠点が二十八拠点になります。その中では、専門的なスタッフ、特に中小企業の方々が相談できるようなスタッフを育てていきたいと思っております。  そして、最後の問題でございますけれども、これは、日本全体として、今まで日本の企業が海外に進出するときには、必ず日本人が行って日本式なやり方をしなきゃいけないというところがありました。これは、むしろ外国人を養成するというのは先生御指摘のように大変重要なことだと思います。日本人の、特にこの日本の中小企業の心を知った外国人を養成する。これは、JICAさんともジェトロさんとも協調してそういう人材をつくり出して、それを現地にもあるいは日本国内の事務所にも配置するようなことで、中小企業の方々をお助けできるようなことがあれば、非常にありがたいと思います。
  183. 中野清

    ○中野(清)委員 もう質問時間がございませんから、要望だけ申し上げます。  昨日の日本経済新聞に、「大合併ブームに危うさ」という記事がありました。規模の論理を見直すべきじゃないかという特集ですね。その言おうとしているところは、市場の勝者というものは、合従連衡によって巨大化した企業じゃなくて、機敏に消費者をつかんだ、リーンというのでしょうか、むだのない企業だということがありまして、私もそのとおりだと思いました。なぜならば、そういう企業でなければ、市場の変化に対応できないと思うのです。  まさに先ほど来私が、中堅、中小企業がこれから主役になる、これが大事だということを申し上げたわけでございますけれども、海外の中堅、中小企業のあり方については、政府としてぜひとも大事に、真剣に取り組んでいただきたい。要望を申し上げまして、終わりたいと思います。
  184. 古賀正浩

    古賀委員長 吉井英勝君。
  185. 吉井英勝

    ○吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。  私、最初にアジア危機の原因について質問しようというふうに考えておりましたが、先ほど堺屋長官の、質疑への、八〇年代以来の、かなり御丁寧な答弁も聞いておりましたので、それで、端的に伺っておきたいと思いますのは、経済企画庁の「アジア経済一九九八」で、真実の成功と見せかけの成功ということを指摘して、金融システムの強化を図ることなく対外資本の流入規制を緩和した、規制緩和によって短期資本中心の流入が起こり、バブル的不動産投資、過大投資、その後外資が一挙に逆流し、巨額の不良債権の発生、通貨の下落、通貨・金融危機によって経済困難に陥った、こういう指摘があります。  今日のアジアの通貨危機と言われているものについては、基本的に、企画庁の方でまとめられたこれと大臣のお考えはこの点はまず一緒だろうと思うのですが、最初に簡潔に確認しておきたいと思います。
  186. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 私、先ほど八〇年代以来のアジアの発展について申し上げまして、その最後の段階で、まさに企画庁が書いておりますように、金融システムが非常に脆弱であった、そこへ短期資金を取り入れた。これを、ほとんど不用心といいましょうか、どんどん取り入れちゃったんですね。しかも、銀行だけじゃなしに、日本で言いますノンバンク、各国それぞれ呼び名が違いますけれども、ノンバンクみたいなところにどっと入りまして、これが韓国の場合には総合金融とか何か、いろいろ各国言葉が違うんですが、それがさらに不動産投資とか株式投資とか在庫投資とか、いろいろなところに回った。  だから、最終段階においてこの短期資金を野方図といいますか不用心に入れたことは、アジア経済の危機を拡幅した大きな原因だと思います。それに至るまでの経緯もちょっと先ほど説明させていただいたわけです。
  187. 吉井英勝

    ○吉井委員 経企庁の先ほどの「アジア経済一九九八」でも、規制緩和によって短期資金の出入りが非常にやりやすくなった、そういう状況はつくられたということも触れての上の話ですが、この点では、大蔵省外為審議会の「アジア通貨危機に学ぶ」は、九六年と九七年でアジア五カ国において一千億ドルを超える資金の流れの逆転が生じたことを指摘して、今回のアジア通貨危機は金融・資本市場のグローバル化や巨額の資本移動を背景として生じた二十一世紀型通貨危機である、こういう指摘もしております。私は、ここのところに、今日の一つの特徴といいますか、あるいは考えておかなきゃいけない問題があるというふうに思います。  その点では、ではアジア危機はだれが引き起こしたのか、その責任はどこにあるのかということが、そうするとまた問われてくる問題が一つあると思うんです。この点では、金融の規制緩和を推進した政策当局、政府にあると見ているのか、あるいは金融の規制緩和をチャンスとして短期、大量の投機資金を動かしたヘッジファンド、投機筋にあるというふうに見ていらっしゃるのか、あるいはその両方が問題だと見ていらっしゃるのか、その辺のところ、長官のお考えを伺っておきたいと思います。
  188. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 私の考え方を端的に申しますと、まず第一に、コストがどんどん上昇している世の中でドル・リンクをしたという、これは官僚の失敗だと思うんです。ドル・リンクをしているものですから、投機資金にとっては非常に、もっけの幸いのような状況ができまして、それで金利が上がったものですからどっと短期資金が行った。短期資金の方も必ずしも成功しなかったわけで、それが一たん崩れ出すと慌てて出たんですけれども、出損なって相当損をしたのもあるわけなんです。  だから、第一回目、最初に外資を導入しようとしてドル・リンクをした官僚の失敗、それからそれを利用してヘッジファンドが傷を大きくしたという、この二重の失敗がやはりこの問題には重なっているんじゃないかという気がいたします。一つだけに原因があるんじゃなしに、最初にドル・リンクを無理に続けたところがやはり大きな原因だったような気がいたします。
  189. 吉井英勝

    ○吉井委員 ただ、この点では、そういう短期の資金移動を可能にした、そちらの背景がやはり大事な問題としてあると私は思うんですが、ちょうどことしのお正月に、「NHKスペシャル」の「資本主義はどこへ行くのか・マネーの時代の選択」という、元旦の日の放映でしたが、なかなかおもしろくて、長官もひょっとして、あるいは宮澤大蔵大臣もごらんになられたかもしれません。  この中で、「グローバル化に秘められたウォール街の戦略」として、グローバル市場を舞台にウォール街を中心としてマネーの大動脈が築かれたのです、ウォール街がマネーを運用する市場として早くから注目していたのがアジアでした、アメリカなどからの資金は三年間で四倍に膨れ上がりました、しかしその三分の二は期間一年以内の短期資金でした、こうしたマネーは不動産投資や株式の購入に向かいタイにバブル経済を引き起こしましたということで、番組では、いろいろな映像を映しながらナレーションが入った。  一九九四年、当時のベンツェン財務長官がタイを訪問、金融のさらなる自由化を要求しました。自由化が不十分に終われば両国の関係は悪化すると強く迫りました。これに対してタイのウィラポン前副首相の、ウォール街の圧力はあったのです、あらゆる国に対して金融市場や資本市場を開放するよう圧力がかけられました、こういう発言などがあって、私はこのテレビを、アジア危機を生み出した背景の問題としてなかなか重要な証言だなというふうに感じながら、見ておりました。  各国の歴史的発展段階とか、あるいは経済や社会の仕組みを無視して、アメリカの方はこうした金融・資本自由化の圧力をアジア各国にかけていっていたというのがやはり一つ問題じゃないか。  そのとき、日本政府もそれに対して、アジアでそういうやり方は合わないんだとかそういう意思表示をきちっとするんじゃなくて、日本政府自身がやはりそういうやり方というのは認めていたということも私は見ておかなきゃいけないんじゃないかと思うんですが、この点では、大蔵大臣の方がやってこられてあれかと思いますが。
  190. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 戦後、自由化ということがありまして、物の自由化、人の移動の自由化、金の自由化、移動の自由化でございますね。長期資本の自由化。したがって、短期資本の自由化も、それがいいことだというふうに何となく多くの人が信じて動いてきて、それはそれなりの成果を得たわけですけれども、今おっしゃったような事態を見ていると、本当に短期資本の完全な自由化というのはいついかなるときにでもいいのかということは、今になってどうだかなと思う人はたくさんございます。  また、受け入れる方も、全体をチェックしていませんでしたし、短期に受け入れてスペキュレーションになればいつかはだめになるというようなこともチェックができていませんから、そういうことはありましたけれども、ただ私は、アメリカ帝国主義はそこのところでとりません、それはそうじゃないと思う。
  191. 吉井英勝

    ○吉井委員 今日の為替を考えたときに、リスクヘッジとしての意味とかいろいろな意味があったという面とともに、しかし、自由化によって短期の資金が移動することによってさまざまな問題を生み出してきたということは、大臣の今のお話を伺っておりましても、問題としてとらえていらっしゃるということは感じたわけです。  国際金融情報センター理事長で元大蔵省財務官の大場氏は、昨年六月十七日の国会内での研究会に来られたときの講演で、我々先進諸国は開発途上国の大蔵大臣に対して規制緩和、金融・資本市場の自由化を絶えず迫ってきました、これに対してASEAN諸国の大蔵大臣は、先進国の関心は成長にあるのでしょう、我々に対しては規制緩和を盛んに言う、しかしタイとかマレーシアに二十億ドルのお金が短期に入ってくると株価は倍になり自国通貨は強くなる、逆にそれが出ていくと株価は半分になるし通貨は弱くなる、こういう反論をして抵抗を続けてきましたというお話をされた後、硬直的な為替システムのもとでドル高と金融・資本市場の自由化を進めてきたことがタイ問題を引き起こしたのですという指摘もしております。私は、この点はなかなか大事な指摘じゃないかなというふうに、この話については受けとめておったものです。  話はまたちょっと飛びますが、アメリカ・コロンビア大学のジャグディシ・バグワティ教授は、私はアジア危機はアジアでなくワシントンでつくられたと思っている、米財務省やIMFは何度も道を誤った、第一の間違いは発展途上国に資本市場の開放を強要したことだ、背景には私の用語で言うウォール街・財務省複合体があると指摘しておりました。このウォール街・財務省複合体が、今おっしゃったアメリカ帝国主義というのは大臣はそういう意味でおっしゃったのかと思いながら伺っておりましたが、これは、なかなか事実を説明しているものではないかなというふうに思っているのですが。  そういう中で、ではヘッジファンドと言われるものについて、その規制をどうしていくかということが次に問題になってくるんじゃないかと私は思うのです。  大蔵大臣が先月のボンのG7会合の直後の参院予算委員会でヘッジファンド規制の問題について答弁された会議録を、ちょっとここに写しておきました。大臣は、昨年のLTCM破綻の問題を引き合いに出して、多くの銀行がこれにかなりの金を貸しておる、あるいは出しておるものもあるかもしれない、金融機関はそれは責任を持たなければならない、国際機関も我々もG7もそういう金融機関に対しては少なくとも取り締まりをきちんとすべきである、ここまでは合意がございましたと答弁されました。  先ほどの大場氏が主宰する国際金融情報センターは、ことし一月に、「九八年に発生したヘッジファンド危機が世界金融市場及び金融機関に与えた影響」というレポートを発表した。  これを見ていると、この中で、イギリス、スイスを除くドイツ、フランス等欧州主要国では、元来、ヘッジファンドの設立がいまだ認められていないこと、ヘッジファンドの募集が規制上行えないことを挙げて、アメリカ系銀行等に比べ欧州系の銀行はヘッジファンドの破綻に伴う損失が比較的軽かった。アメリカ系の金融機関というのはヘッジファンドに対して約千七百億ドル程度融資していた事実を紹介するとともに、アメリカ金融機関自身が自己勘定による約二千億ドル前後のヘッジファンド型運用を行っていたこと。この模倣運用による損失額は少なくとも二百六十六億ドル、大体三兆数千億円ぐらいになるかと思いますが、にも上るということを、この金融情報センターでは明らかにしていたわけです。  そこで大蔵大臣に伺っておきたいのは、このヘッジファンドに出融資している日米欧の金融機関実態をまず解明する、それから日本としては、各国皆どうするかというのはそれは各国間の協議があるにしても、日本としては、まず日本金融機関のヘッジファンドへの出融資を規制するとともに、これは資金がないとヘッジファンドも投機的な、いわば背広を着たばくち打ちと言われるようなやり方はできないわけですから、今度はこれらの金融機関が行うヘッジファンド同様の投機活動についても規制をする、こういうことについて進めていくということが大蔵省としてもやはり必要じゃないかと私は思うんです。  大臣が外国でお話しされたり国内の記者クラブでお話しされたりしたことを聞いていても、そういうこともかなりお考えなのかなと思うんですが、この点、宮澤大蔵大臣のお考えを聞いておきたいと思います。
  192. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 各国で議論をしておりますし、我が国の政府の中でも皆さんがいろいろ議論していらっしゃるんですが、私が、さっき引用していただきました、ここまでは来ましたと言ったところは、金融機関のところでございますね、その意味は、金融機関は当然そのバランスシートを報告する義務がございますしいたしますから、それは当然ディスクロージャーの中で出てくるはずのものである。バランスシートの外でやれば、これはこれで明らかに一つの問題でございますから。ですから、そこは規制するとか罰するとかいう前に、金融機関については少なくとも事実を把握することができるはずであって、そこははっきりそうしなければならないではないか、そこまではみんなが一致できる、こう思っておるわけなんです。  しかし、今度は、ヘッジファンドというものはいわばノンバンク、最大のノンバンクみたいなものでございますから、実体のないもので、これに何かの義務を課すことが本当にできるのかできないのかということが、どうもだれにもなかなかつかめない。脱税をしておればこれは別でございますけれども。ヘッジファンドというものが、何人かの人が千万ドルずつ持って集まって何かやっているときに、これに何か規制がかけられるかといえば、恐らくヨーロッパでは、多分そういう習慣が余りありませんからそういうものがそう簡単にできないんでしょうが、アメリカは、それはだれに迷惑かかるかねというような話でございますからなかなかそこのところがつかめない。  もちろん、そこへ銀行から金を出していればこれはここでいけるというところまでわかっているんですが、それから先がわからなくて、ヘッジファンドはディスクローズすべきだと言っても、それはだれにそういう義務を課するのかわかりませんし、それこそケイマン島へでも行ってしまってやればそれまでだという話もあるし、どうもそこのところがうまくつかみ切れない。  昨年からいろいろ議論しておりますけれども、ことしの、ケルンのサミットあたりまでに何かもう少し気のきいたことは言えないのかなと、銀行のところは大丈夫だと思っておりますけれども、今そんなところだと思います。
  193. 吉井英勝

    ○吉井委員 まじめに物をつくって貿易をしているその取引の一年分がわずか三日や四日の取引でという、これは余りにも異常なことであって、しかも、今、何か数人の方たちがやってというお話ですが、それが一国経済を破綻させてしまうとか、それはだれが考えても余りにも異常なものであって、まず、その人たちに資金を出している銀行の方、貸し手の方の規制は可能なはずですし、それは銀行本来の目的に照らしても、法律上もきちっとできるはずです。  銀行自身がまた、それに類すること、いわゆる長期にわたる取引の中でのリスクヘッジのようなそういうものとは性格の違うものとして、明確に短期的な資金の移動によって投機的に、もうまさに背広を着たばくち打ちみたいな感じでやられることについての、銀行のやり方についての規制というのは、私はやはり考えていかなきゃならないと思います。  そういう仕掛けについて、ちょうど一昨日も毎日新聞で、大蔵省がヘッジファンド規制策について極秘研究会というのが出ておりました。これはやはりこそこそと研究するよりも、本当は国際的世論をつくって堂々とやっていった方が効き目のあるはずのものですから、もう少し突っ込んで、「六月のサミットで提案目指す」ということで紹介されておりましたが、どういうふうなことをお考えになっていらっしゃるのか、これを機会に伺っておきたいと思うのです。
  194. 黒田東彦

    ○黒田政府委員 御指摘のヘッジファンドの研究会と申しますか、勉強会でございますが、これは先ほど大臣から申し上げたとおり、銀行の方からの間接的なアプローチは従来の銀行監督行政の一環として各国としてその強化が図れるわけでございますが、ヘッジファンド本体のディスクロージャーあるいはそれに対する規制という問題につきましては、なかなか手がついていないわけでございます。したがいまして、私どももいろいろな議論をする中で、実態をよく知っている方あるいは法律家、経済学者等の方々からお話を伺って、何らかの新しいアプローチができるのかどうかということを、サミットまでというか、サミットも一つのターゲットでございますけれども、勉強していきたいということでございます。  したがって、今の時点で具体的に、ヘッジファンドに対する直接的なディスクロージャーあるいは規制について定まったアイデアがあるというものではございません。幅広く勉強していきたいというふうに思っております。
  195. 吉井英勝

    ○吉井委員 このヘッジファンドの問題については、IMFのヘッジファンド報告書、「ヘッジファンド・アンド・フィナンシャル・マーケット・ダイナミクス」の昨年五月のものでも、銀行とヘッジファンド、境界は非常にファジーなものであるということで、銀行とヘッジファンド、両方とも、どういうふうにきちっととらえてそして規制をしていくかということについて研究中ということですが、本当に、まず資金源を断つところから始まって、やはりこれをやっていかないと、今後今回のアジア危機のような事態が繰り返されることになりかねない問題ですから、これは研究会で研究されるというのは当然のこととして、政府としてもきちっとした対応策というものを、方向は私は大体はっきりしていると思いますから、進めていくべきだというふうに思います。  次に、IMF主導のアジア支援策のあり方の問題について伺いたいと思います。  アジア通貨危機に対して、IMF主導のもとで、一昨年八月から十二月にかけて日米など参加国との協議を経て、IMFとタイ、インドネシア、韓国との間でそれぞれ合意がされましたが、その総額は千二百億ドル弱、日本円で約十四兆円に及ぶ巨額なものでした。二国間支援では、日本が百九十億ドル、約二兆三千億円などで最大の支援国となっています。  しかし、IMFの支援策は誤りであった、通貨危機を経済危機に発展させてしまったということは、さまざまな識者の指摘もありますし、今日では周知の事実になっていると言っても言い過ぎじゃないと思うのです。  大蔵大臣自身も、昨年十二月十五日の外国特派員協会でのスピーチにおいて発言されたことは、その部分を少し持ってきているのですが、余りに野心的な政策調整を求めることが時には逆効果になることもあり得ます、余りに厳し過ぎる金融財政政策が実体経済の収縮、市場の信認の一層の悪化を招いたことを指摘して、IMFが、危機の際に、余りに広範な、もしくは野心的な構造改革を求めることを自制することも必要なのではないでしょうかと、かなり抑えぎみといいますか、遠慮ぎみに指摘しておられます。大体IMFの問題についてはこういう見方をしていらっしゃるというふうに理解をしておいていいでしょうか。
  196. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今の時点で二つのことが申し上げられると思うのです。  IMFがあの直後に、おととしでございますね、これはやはり国が腐敗しているとか、配給制度政府が独占しているとか、大統領の親類がみんなこうしているとかいうことを言いましたけれども、しかしそんなことはずっと昔からやっているわけだから、それで結構うまくやってきたわけですから、だから今そんなことを言ったってそれが全部かい、そういう物の見方というのは当時からありまして、それが、先ほど委員の言われるようにほかにも原因があったのではないか。それはまさに短資、マハティールの言うような話でございますから、両方の問題があったのではないか。  ただ、IMF自身は、きょうになりますと、韓国はもう確かに成功したではないか、タイだってうまく来ている、インドネシアの問題はすぐれて政治の問題じゃないのかというふうに言っています。ただ、そう言いますけれども、しかし、最初のアプローチはやはりちょっと間違えちゃったな、銀行を閉めたりしてみんな金がなくなっちゃうといけないので、やはりあのときに少し金を渡しておいた方がよかったんじゃないか、クレジットクランチというものが結果としてはよかったのかなという、これは前に向かって私は反省しているように思います。
  197. 吉井英勝

    ○吉井委員 現実を、その後の経過を少し見ますと、アジア三カ国とIMFによる経済構造調整プログラムを見ていきますと、単に厳し過ぎる政策というふうな生易しいものではなくて、各国の経済実態や実情に合わない金融の引き締めと財政政策が共通して押しつけられたということにとどまらないで、やはり構造改革の名で付加価値税の引き上げとか国民生活に直結する各種の公共料金の値上げが強行されてきて、加えて、金融セクターの改革や労働法制の改変など一国の内政に及ぶ政策が強要された。これはやはり内政干渉というべき問題があったと思うのです。  その結果として、各国とも景気の後退、工場閉鎖とか生産の大幅な縮小、休業とリストラ解雇が荒れ狂って、韓国などでは失業者が一挙に百万人もふえて三倍加するとか、深刻な不況に突き落とされてきている問題がありますし、タイの製造業の生産指数を見ましても、九六年のプラス八・六%が九七年にマイナス〇・六になり、九八年一—三月期はマイナス一六・八%と、随分生産も落ち込み、失業率の方も、九六年の一・五%から九七年には三・五%と非常に大きな失業を抱える。  こういう国民の苦難というものを見たときに、やはり私は、IMFのやり方について、最大の資金拠出国としての我が国の対応なり責任というものについても改めて今みずから点検するということが求められてくるんじゃないかと思うのですが、この点、大臣、どうでしょうね。
  198. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどちょっとおっしゃいましたコロンビア大学のバグワティの考えていることは、やはりそういうウォール・ストリートの短期資本が国をつぶす、倒してしまったというような、ちょっと極端な言い方でございますが、IMFはまさかそれを意図したとは思いませんけれども、必ずしもすぐその国に合う処方せんを出さなかったということはIMF自身が反省していると私は思いますし、そういう意味で、最初の年には私どもの言おうとしたことも少し間違って受け取られましたが、昨年秋に申しましたことは、IMFもそういう反省をしているものですから、我々の意図もよくのみ込めてもらった、こういうことになっていると思います。
  199. 吉井英勝

    ○吉井委員 マーティン・フェルドシュタインの方のIMF批判、今の人とはまた違いますが、その方で見ておきますと、IMFの最大の誤りは、伝統的な機能から踏み出し、アジア国々に構造改革を課す機会として危機を利用しようとしたことだ、IMFは、インドネシアに補助金の撤廃を要求したり韓国に雇用関係法改正を求めるなど、国家主権に不当に介入した。  こういう指摘はほかにもいろいろな識者からあるわけですが、大臣もそういう点は反省しているんでしょうというお話ですが、私は、こういうIMFなどの国際機関が、さまざまな国の歴史的経過とか社会的な仕組み、いろいろなものを度外視して、それで干渉的なことをやれば、やはりそれはまた別な問題を起こしてしまって成功しないということで、今後これは非常に重要な指摘として受けとめておくべきものじゃないかなというふうに思うわけです。  次に、政府アジア支援策の合計八百億ドル、約十兆円ですね、アジア各国の不良債権とその処理策について伺いたいと思うのです。  昨年十月三日に表明された総額三百億ドルのアジア通貨危機支援に関する新構想、いわゆる新宮澤構想では、アジア諸国での金融システム健全化のための資金需要にこたえるということで、アジア諸国の発行するソブリン債を輸銀保証する所要の法改正が必要だ、所要の法改正を行って保証するんだ、こういう支援を行うということにしているわけですが、本法案はまさにこの新宮澤構想の具体化ではないかというふうに思うわけです。  そこで伺っておきたいのですが、今アジア各国の不良債権がどうなっているのか、その実情について事務方の方から先に伺いたいと思います。
  200. 黒田東彦

    ○黒田政府委員 いわゆる新宮澤構想対象国は五カ国でございまして、タイ、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピンでございます。  それぞれの国はそれぞれのやり方で不良債権処理等を進めておりますが、最も典型的な例といたしましてタイと韓国を申し上げますと、タイにつきましては、いわゆる不良債権処理につきまして、各銀行ごとに不良債権の買い取りのための子会社を設立させるというようなことをしているわけでございます。一方で、自己資本の強化、資本注入ということもやっておりまして、これはかなり大胆な施策ですけれども、国債と株式を交換するという形で資本注入をするスキームを発表しているということでございます。それから、韓国の場合は、不良債権の買い取り機構というのが既存のものがございまして、これを活用する。それから、自己資本の強化という面では、公的資金による資本注入を行うということでございます。  それぞれの不良債権の額につきましては、各国ごとに定義が違いまして必ずしもぴったりとはまいりませんけれども、例えばタイでは、二・三兆バーツぐらいの不良債権があると言われておりますし、韓国では、六十兆ウォンぐらいの不良債権があるというふうに言われているわけでございます。その他のマレーシア、フィリピン、インドネシアにつきましても、それぞれ相当な額の不良債権が金融機関に累積をしておりまして、一方で不良債権の買い取り、あるいは立ち行かない金融機関の閉鎖というようなこともやると同時に、存続可能な金融機関については、政府が自己資本の強化を行うということをいずれの国もやっておるという状況でございます。
  201. 吉井英勝

    ○吉井委員 今お話ありましたように、かなりの不良債権額になるのですね。ちょっとこちらで計算してみましたが、GDP比でいきますと、今おっしゃったタイについては四七・六%、韓国は一四・三%ということで、これらの不良債権はいずれも公的資金によって処理されるということになっております。  東京三菱銀行の「調査月報」九八年十月号を見てみますと、タイは、金融システム安定化のための国債発行について、GDPの一八%に相当する八千億バーツが投入されることとなった。インドネシアは、金融安定化対策に充当する公的資金として、IBRAの原資とされる八十兆ルピアを含め百五十五兆ルピア、GDP比二五%の国債発行が予定されている。韓国については、韓国政府は五月にGDPの一二%に相当する五十兆ウォンの政府保証債発行を決定したというふうに紹介されております。  報道等によると、不良債権額はさらに膨れ上がって、例えばインドネシアについて言えば、二百八十八から三百三十六兆ルピア、対GDP比で四六・〇から五三・七%にも上って、昨年末、インドネシア政府は、当初計画に比べて約七割増しの二百五十七兆ルピアの国債発行を行うということを発表しています。  ですから、今度の法案第二十三条第一項四号などによって、この不良債権の処理を支援するということになるのではありませんか。
  202. 黒田東彦

    ○黒田政府委員 まず、いわゆる新宮澤構想のもとで民間金融システムの安定化、健全化のための各国の施策を支援するということも目的に入っているわけでございます。  ただ、先ほど大臣が申し上げましたとおり、これまで、三百億ドルのうちほぼ半分程度がコミットされているわけでございますが、その中には、現実問題として、金融セクターの強化のためのものというのはほとんど入っておりません。タイの場合について、世界銀行との協調融資経済金融構造の改革のための融資がございますけれども、その部分が若干金融セクターの強化ということで入っておりますが、これまでのところはむしろ、貿易金融支援とか貸し渋り対策支援とか社会セクター支援とか公共事業その他による景気対策支援というようなものでございまして、金融セクターの強化のための支援というのはこれまでのところ行われておりません。  しかし、先ほど申し上げたように、この新宮澤構想の中では、当然そういうことも含めて支援を考えているわけでございます。その場合に、具体的にどういうふうに行われるかということでございますが、この問題は非常に大きな問題で難しい問題でございますので、特に世界銀行アジア開発銀行が、金融セクターのリハビリテーションと申しますか、強化のためのいろいろな政策を各国で行っているわけでございます。したがいまして、そういうところと協力して、協調融資をするというようなものが一つの形だと思っております。  御指摘保証とか、あるいはその他の仕組みというのも今回の法律でお願いしているわけでございますが、この保証という形のものがそういうものに使われる可能性は絶対ないということはもちろんないわけでございますが、いずれにいたしましても、保証であれ、輸銀あるいはこの新しい国際協力銀行が直接融資する場合であれ、何よりも、適切な金融セクターの強化のプログラムがあるかどうか、それが特に世銀やアジ銀と十分に協議されたものであるかどうかというものも踏まえまして、適切な形での支援ということになろうというふうに思っております。
  203. 吉井英勝

    ○吉井委員 皆さんからいただいたIMF合意の経済調整プログラムの中には、例えばタイは金融セクター改革の中に公的資金の導入というのが明記され、インドネシアも金融再編庁のもとに銀行への資本注入、合併等を促進と明記されていて、ですから、今おっしゃったように、要するに入るわけですよ。  問題は、さっき議論しました外国のヘッジファンドなどの短期投機資金が引き起こした不良債権の処理に、一切責任のない日本国民に最終的には負担が回ってくる。やはりそういうやり方というものはするべきじゃない。私はそのことを指摘しておきたいと思うのです。  ここで、金融監督庁に来ていただいておりますが、金融監督庁からは、邦銀のアジア向け貸出額が幾らなのか、公的資金の投入が決まったさくら銀行など都銀、信託など十五行と東京三菱の不良債権額の合計が昨年九月末で十七兆六千五百六十九億円になっていますが、そのうちのアジア向けなどの国外分の不良債権が幾らなのか、これを示していただきたいのです。  というのは、なぜこれを聞くかといいますと、先ほど他の委員の方の質問にもあったのですが、アジア向けなどの国外分の不良債権ですね、邦銀のアジア向け債権は大体十六兆ぐらいに上るわけですが、報道によれば、日本の都市銀行の協調融資プロジェクトは次々と見直しを余儀なくされてきております。このため、債権が不良化し銀行の屋台骨を揺るがしかねないのに債権が巨額に過ぎて身動きがとれない状態に陥っている、あるいは、アメリカ大手証券によると都銀全体の損失率は七%に上る、アジア経済の低迷が長引いてこの損失率の上昇は避けられない雲行きだという報道があるのですね。そうすると、外国での不良債権が幾らになっているのかということをまずはっきりさせておく必要があるわけです。  そして、その点では、法案では、国際協力銀行の業務として、協調融資相手方の銀行等の貸付債権を譲り受ける業務を追加しておりますが、これは、邦銀の海外業務からの撤退等に伴う信用収縮に対応するものだというのが大蔵省の説明です。そうすると、当該プロジェクトの債権を他の金融機関に売却できなかったり、買いたたかれた場合、そのときに国際協力銀行が肩がわりをしてその債権を買おうということになるのじゃないですか。  しかし、もともと輸銀に対して、協調融資の案件としてこの当該プロジェクトを持ち込んできたのは、実はその銀行自身なんです。だから銀行は、もうからないか損が出るために、撤退するから後は頼むよと。これでは余りにも虫がよ過ぎると思うのですね。国際協力銀行に不良債権を押しつけることになるのじゃないか、これが私は大事な問題点だと思うのです。  そこで大蔵大臣に、安易な肩がわりは大銀行のモラルハザードを助長して、その後始末になるのじゃないか、この点についての大蔵大臣のお考えというものを、金融監督庁の説明の後に伺いたいと思います。
  204. 乾文男

    ○乾政府委員 今回の資本注入を受けました主要十五行で見ますと、いわゆる不良債権、リスク管理債権でございますけれども、その総額は十七兆六千五百六十九億円となってございますけれども、この中でアジア向けが幾らかという統計はとっておりませんので、御了解いただきたいと思います。  他方、今申しました主要十五行のアジア向けの債権額は、十年九月末で、十五行の総与信額は十五兆八千六百二十四億円となってございます。
  205. 黒田東彦

    ○黒田政府委員 国際協力銀行による債権の譲り受けの点でございますが、これは幾つかの要件がございまして、一つは、国際協力銀行との協調融資に参加したものについてのものでございます。御承知のように、一般的に国際的な融資におきましては、融資債権をいわゆるセカンダリーマーケットで売却するとか、あるいは融資の肩がわりを違う金融機関にするということは常時行われているわけでございますけれども、あくまでもこれは、国際協力銀行民間金融機関と協調融資している場合に、その協調融資先の民間金融機関が貸し手の方の理由で資産の圧縮その他の必要等から協調融資から外れていくというときに、これを買い受けることができるということになっておるわけでございます。(吉井委員「だから、私の指摘したとおりですね」と呼ぶ)  したがいまして、一般的に幅広くこういうものをやろうということではございませんし、今申し上げたように、借り手側の事情、つまり借り手の状況がおかしくなったからどうこうということではなくて、あくまでも貸し手側の事情でこういう買い受け、譲り受けが行われるということでございます。  それから、当然でございますけれども、二十五条第三項の償還確実性の原則というのはかかってきておりますので、債権の回収が確実であると認める場合に限りこうしたことが行われるということでございます。
  206. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今政府委員の申し上げたとおりですが、先ほども輸銀総裁が言っておられますように、確実でない債権を引き取るということはしない、したがって損失が及ぶということはないというふうに考えます。
  207. 吉井英勝

    ○吉井委員 時間が参りましたので、終わります。
  208. 古賀正浩

    古賀委員長 前島秀行君。
  209. 前島秀行

    ○前島委員 時間もたってきていますので、運営上の問題を二、三点聞きたいと思っています。  一つは、二十六条の海外経済協力業務実施方針の項ですが、現行の基金法案の方では出ていなくて、新たに今度の国際協力銀行の出発に当たってこの項目が出てきたという面では、基本的な方針がここで出てくるのかな、こういう面で前進だろうというふうに思っているわけでありますが、この実施方針、いわば基本方針というものが、どういう中身といいましょうか、どういう内容をもって基本的に書かれるのか。あるいは、これからのODA業務の位置づけ、あるいは時間的に中長期的な方針的なものをこの業務実施方針の中でされるのかどうなのか、その辺のところを一つ確かめておきたいと思う。
  210. 河出英治

    河出政府委員 今回の法律によりまして新しく行うことになりました業務実施方針でございますけれども、平成九年の九月に特殊法人の整理合理化に関する閣議決定がございまして、その際に、「円借款の供与について、より一層国民の理解と支持を得るため、対象の重点化等、供与国たる我が国の存在がより明らかになるための改善措置を講じる。」とされているわけでございます。これを受けまして、今回、この国際協力銀行法案につきましてこういったものを設けたわけでございます。  どういったものを定めるかということにつきましてはまさにこれから検討するわけでございますが、内容といたしましては、円借款業務の実施における基本的な目標ですとか、あるいは、先ほど申しましたように、円借款業務におきまして重点を置くべき地域ですとか分野とか、あるいはその他業務運営上の重要事項というものが想定されるわけでございまして、今後、具体的内容につきましては詰めてまいりたいというふうに思っております。
  211. 前島秀行

    ○前島委員 この実施方針の中身、それから位置づけ、そしてまた、この実施方針がどういう手順で決められていくかというところが非常に大事だろうな、そのことがまた、国内的にもあるいは国際的にも日本経済支援業務というものが理解される、あるいは日本の国際的地位というものが評価されていくということになるだろうと思っています。  そういう面で、この実施方針の作成に当たって、例えば専門家だとか関係者だとか等々の意見というのは聞いていくのか。あるいは、よく基本法等々の中で、この種の基本方針を決めるには審議会設置とかというふうな方法もとっているだろうし、あるいは基本方針を国会等々への報告なり、あるいは議論というものでまた明確にしていったりという方法があるだろうと思います。この海外経済協力業務というのは非常に大事であると同時に、また国内的にも、あるいは被援助国の理解というものも必要なので、この基本方針、実施方針をつくる、どういう方法でつくるか、その過程がどう公開されていくのかということは非常に大切なことだろうな、私はこういうふうに思います。  この新たな国際協力銀行の出発に当たって、そのことを非常に大事にすべきではないだろうかと思いますが、その辺の策定の方法といいましょうか、あり方の問題についてどの程度議論されているのか、考えているのか、お聞きをしたいと思います。
  212. 河出英治

    河出政府委員 この業務実施方針の策定のプロセスでございますが、新しい国際協力銀行総裁が策定をして主務大臣が承認をするということになっておりますが、総裁が策定されるに当たっては、関係省庁それからまたいろいろな内外の専門家等の御意見も十分踏まえて策定をされるというふうに、私どももこれから新銀行とも十分相談をしていきたいというふうに考えております。
  213. 前島秀行

    ○前島委員 その中身あるいはその過程、同時に、この種の国際協力業務、ODAの業務というのは常にフォローアップしていくということが非常に大切だろうなと。この基本方針が何年間の単位で築かれていくのか、これからの問題だろうと思いますけれども、やはりこの方針というのは一定の期間を持って常に見直される、あるいはここで決められた基本方針というものが常にフォローアップされていく、こういうことが非常に大切だろうとも思うし、また、この業務そのものが常に見直されていかなくてはいかぬだろう、こういうふうに思います。  この実施方針、基本方針のフォローアップ的なものはどういうふうに考えているのか、あるいは、常に一定の期間をもってこの種の基本方針というのは見直されていくのか、その辺の基本的な考え方をお聞きしておきたいと思います。
  214. 河出英治

    河出政府委員 あらかじめ何年後に見直すということはまだ決まっておりませんが、当然、その時代時代の情勢に応じて必要があれば見直しを行っていくべきものと考えております。
  215. 前島秀行

    ○前島委員 大臣、この種の問題は、私は、この二十六条が新たに項目として設定されたということは非常に意味のあることだろうと思います。同時にまた、それが形式的ではなくして、ちゃんとその作成過程でもさまざまな専門家等々の意見というものが反映される、そして、それは常に公表されたり、あるいはフォローアップされたり見直されたり、こういうことが結果として質の高い経済協力というものに発展をしていくのだろうか、こういうふうに思っているわけであります。  この二十六条に伴う基本方針の策定ということについて、非常に意味があるだけに、また重視をしてもらいたいなと。また、このことを非常に大切にすることが、日本国際協力における評価にもなっていくだろう、こういうふうに思いますので、その辺の大臣の認識をちょっと聞いておきたいと思います。
  216. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 具体的な手続等につきましては、銀行が設立され、その総裁が決定することになりますが、経済企画庁に承認を求めてくることになっております。それにつきまして、やはり時代によって世界の風潮も変わりますし、必要も変わります。特に、人権の問題、環境の問題、そういったことをODAでははっきりと重視していかなければいけない。これは大綱にも定められていることでございますけれども、そういった観点から、仰せの方針は重要な問題として受けとめていきたいと考えております。それで、常に時代に合ったものにしていくことが大事だと思います。
  217. 前島秀行

    ○前島委員 ぜひ、入れた意義はそれなりにあるだろうと思いますので、そのことをちゃんと実行していってほしいというふうに思います。  それから、次の二十七条の業務方法書についてでありますが、ここは、いわゆる具体的な事業をやっていくに当たっての記載項目をどうしていくかということだろうと思います。  午前中の議論の中でも、環境にかかわるガイドラインの作成ということが議論になって、そこは誠実にやっていくという大臣の答弁等々もあるのでありますけれども、今問われている環境への配慮、環境の保全だとか、業務をやっていくに当たっての人権への配慮だとか、あるいは社会的な公正というところをこの業務方法書の記載項目の中に明確にしていくこと、そのことを政令、府令で今後はっきりしていくということが、今ODA業務の中で問われているさまざまな問題に答えていく具体的な方法ではないだろうか。  NGOの関係者等々の意見で私たちの耳に届いているのは、その辺のところを目的であるとか基本的なところで明確にしてほしい、こういう意見もありますけれども、それをより現実的に具体的に可能にするのは、この業務方法書の記載事項の中に、環境への配慮だとか人権だとか社会的公正ということを重要な事項として絶対記載する観点として政省令の中で明確にしていくということが、さまざま言われている声に対して具体的に答えていく道ではないだろうかな、こういうふうに思っています。  そういう面で、その種のことをこの二十七条の業務方法書に記載すべき項目として府令なり省令の中で明確にするかどうか、その辺のところの考え方をお聞きしておきたいと思います。
  218. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 統合後の国際協力銀行におきましては、環境配慮、住民移転の際の配慮等も含めまして、手続、指針としてのガイドラインを今後策定し、かつ公表する予定でおります。その際には、これを遵守して業務運営を行うことを明確にするために、今後、国際協力銀行で定めることになっております業務方法書の中でその旨を記載する方針で検討しております。
  219. 前島秀行

    ○前島委員 環境への配慮、人権の尊重について、うちの土井党首なんかも、官邸の方にその種の要請としてNGOの関係者と申し入れに行っている経過がありますので、ぜひその辺のところを何らかの形で明確にしていってほしい、こういうふうにお願いをしておきたいと思います。  それから、基金総裁なり理事の方にお聞きしたいのですが、現在の職員等の中で、大蔵省だとか外務省等々の本省の方からいわゆる出向という形の中で多くの人が来られている、こういうふうに伺っているところであります。必要な側面は認めると同時に、やはり専門的なスタッフを養成する必要もあるだろうし、そういう面で内部登用という必要性もあろうかと思いますが、基金の中でその種の出向というのはどの程度いるのか、どういう課が中心なのか、あるいはそれぞれの皆さんの在任期間というのはどの程度なのか。あるいは、内部のこの種の専門的スタッフを養成するといいましょうか、そういう者を育てるという意味の何らかの手だては今日やっているかどうか。  ちょっと細かな点でございますけれどもお聞きをしておきたい、こういうふうに思っております。
  220. 篠沢恭助

    篠沢参考人 お答えいたします。  官庁から私どもに派遣をしていただいております者でございますが、管理職は十人おります。部長が一人、次長クラスが二人、課長クラスが七人ということでございます。課長クラス七人のうち、直接いわゆる業務担当をしております課長は二名でございます。それから、管理職十人のほか、一般職員が二十六人ございます。合計三十六人出していただいております。  基金での配置でございますが、この三十六人のうちちょうど半分の十八名は、開発技術部でありますとか環境社会開発室におきまして、主として融資案件の技術的側面の審査を行う、技術的知見を活用させていただくという形の出向を得ているわけでございます。  在任期間は、おおむね二、三年ということでございます。  また、それらの分野におきまして、内部の職員の育成ということにつきましては十分意を用いておりますので、これは逐次、内部の者でも充実をしていくというふうに考えております。
  221. 前島秀行

    ○前島委員 この種の業務における専門的スタッフの重要性というのは、よく問われていると思います。そういう面で、業務上、本省といいましょうか、役所の方の出向というのも、必要な側面を認めつつも、専門的スタッフをつくっていく、養成していくということの重要性からも、ぜひその辺のところの配慮をこれからの運営の中でお願いをしたい、こういうふうに思っているところです。  時間もありませんので最後に伺いますが、今度の統合というのは、いわゆる特殊法人統合という要請の中で出てきた一つの方法、政策だろうと思います。そのことは否定はしないのでありますけれども、やはり非ODA業務とODA業務には明確な目的、違いがあるし、そのことの混同といいましょうか、やりようによって必ずしも、今日、日本に対する評価というものもいろいろあった。こういう面から見ると、統合をしてもまだそのまま任務を引き継いでいますから、基金の方が海外融資的な方もそのまま継続しているという、まだ未整理の部分もあるようであります。  やはり、その辺のところは、非ODAODAの単なる経理区分だけではなくして、業務上の区分ということを明確にしていくことが必要ではないだろうか、だからこそ五十年に輸銀との間での業務整理も過去あったのだろうな、こういうふうに思っているところであります。その辺の区分を、単なる経理区分だけではなくして、ぴしっと整理をしていくということも大事ではないだろうかな、こういうふうに思っています。  同時にまた、先ほど来の議論のように、日本アジア経済における役割、国際貢献ということもあるわけでありますから、一概に言えない側面もあろうかと思いますけれども、ともかく、この種の問題の国内的な理解、あるいは、被援助国あるいは関係国への理解があって初めて日本の役割もあるだろうし、またそのことによって評価も違ってくると思いますので、その辺の区分の問題、これからの国際貢献における役割の問題等々、長官に最後にその辺の考え方を伺って、終わりたいと思います。
  222. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 ODAと非ODAの区分の問題でございますが、これはやはり明確に区分すると同時に、密接に協力しなければいけない、この辺が非常に微妙なところだと思います。人事、組織、業務等の面で、区分するものは区分し、総務等の問題は一括してノウハウを高めていく。  また、人事の面につきましても、役所から必要な者もございますでしょうけれども、また民間の方々、大学の方々あるいは外国の方々等も活用できるように、広く専門的な知識を集めていきたいと考えております。  そういう意味で、海外事務所の統合、重複等を避けつつ効率的な状況をつくるとともに、専門的な知識を高め、ノウハウを積み上げいく、そういった形で日本海外協力に役立つような立派な組織に育てていきたいと考えております。
  223. 前島秀行

    ○前島委員 終わります。
  224. 古賀正浩

    古賀委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  225. 古賀正浩

    古賀委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。吉井英勝君。
  226. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、日本共産党を代表して、国際協力銀行法案に対する反対の討論を行います。  反対理由の第一は、新たに国際金融秩序の安定に寄与することを目的とする国際協力銀行は、今日のアメリカ主導のIMF、世界銀行による経済支配体制を補強するものだからであります。  現在、IMFを中心として、アジア通貨危機支援経済構造改革の名で、韓国、タイ、インドネシアにおいて行われていることの実態は、付加価値税の引き上げによる庶民増税、国民生活に欠かせない各種の公共料金の値上げなど、過酷な融資条件の押しつけであり、さらに、大量解雇をもたらす労働法制の改変を初めとする一国の内政全般に及ぶ干渉と統治、途上国の経済主権の侵害そのものであります。その結果、大量失業と国民生活の状態悪化をもたらしました。  今求められているのは、マネーゲームで世界経済と各国の国民生活を混乱に陥れたヘッジファンドとその背後の多国籍銀行の投機活動を規制し、資本と金融の自由化を押しつけるグローバリゼーションをやめさせ、日本世界の諸国民の願う、対等、平等、互恵の新たな国際経済秩序の構築を目指すことであります。  第二に、国際協力銀行に、日本政府アジア支援策である三百億ドルの新宮澤構想の実行部隊の中核を担わせ、外国の抱える巨額の不良債権の公的資金による処理を支援したり、我が国都市銀行などのアジア向け債権の回収と撤退に伴うツケを肩がわりする業務を行わせることは、大銀行を救済してモラルハザードを助長し、こうした問題に一切責任のない日本国民に間接的にその負担をかぶせるものであり、容認することはできません。  第三に、我が国の政府開発援助ODAあり方を一層ゆがめ、発展途上国の自立的発展と生活の向上という経済協力の本来の立場に逆行するものだからであります。  我が国のODAは、他の先進国とは逆に、医療、保健、教育等の社会インフラに比べ、道路、港湾、ダム、エネルギー等の大規模な産業・経済インフラに異常に偏ったものとなっており、そのことがまた、我が国大企業の海外進出を促進するという基本的な性格を持っております。今回の統合は、数合わせであるばかりか、こうした我が国のODAの性格をより一層強めることとならざるを得ません。  今必要なのは、国民的批判に真摯に耳を傾け、円借款の利権をめぐる談合疑惑などの密室的な体質に根本的なメスを入れるとともに、これまでのODAあり方についての国民的な総括と反省こそ先決であります。  このことを申し述べて、私の討論を終わります。(拍手)
  227. 古賀正浩

    古賀委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  228. 古賀正浩

    古賀委員長 これより採決に入ります。  内閣提出国際協力銀行法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  229. 古賀正浩

    古賀委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  230. 古賀正浩

    古賀委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、伊藤達也君外四名から、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。大口善徳君。
  231. 大口善徳

    ○大口委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     国際協力銀行法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。  一 日本輸出入銀行及び海外経済協力基金二つ機関統合に当たり、その効率的な事業推進に努めること。  二 国際協力銀行の組織及び業務については、統合の実をあげるため、積極的な人材育成と内部登用の促進を図り、併せて民間からの有能な人材の登用等を通じて、経済協力に関する役職員の専門的な知見とノウハウが組織及び業務の運営に充分反映される人員配置とし、もって業務の一層の活性化を図ること。  三 国際協力銀行が行うODA業務及び国際金融等業務については、国民の理解を得るため、その情報公開に努めること。  四 ODA海外支援の決定については、国民に充分理解できるよう、その透明性を確保すること。  五 ODA海外支援については、実施後の状況を適確に把握し、その効果等を充分検証すること。また、その際は適切な情報公開の措置を講ずること。  六 ODA海外支援の決定は、当該国の国民の理解を得て行うこと。  七 ODA海外支援については、当該国の自然環境に与える影響を充分考慮し、環境配慮のため国際水準に照らして充分な内容を持つ統一ガイドライン等を策定の上、充分な調査を行い決定すること。  八 国際協力銀行の設立後三年を経過した時期に、運営状況を勘案し、その業務について検討を加え、その結果に基づいて措置を講ずること。 以上であります。  附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解をいただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
  232. 古賀正浩

    古賀委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  233. 古賀正浩

    古賀委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、堺屋経済企画庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。堺屋経済企画庁長官。
  234. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 第百四十五回国会衆議院商工委員会における国際協力銀行法案についての附帯決議に対しまして、私といたしましては、ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、本法律案の実施に努めてまいりたいと思います。平成十一年三月二十三日。  以上でございます。     —————————————
  235. 古賀正浩

    古賀委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  236. 古賀正浩

    古賀委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  237. 古賀正浩

    古賀委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十九分散会