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1999-02-10 第145回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月十日(水曜日)     午前十時四十五分開議   出席委員    委員長 古賀 正浩君    理事 伊藤 達也君 理事 小此木八郎君    理事 小野 晋也君 理事 岸田 文雄君    理事 大畠 章宏君 理事 松本  龍君    理事 大口 善徳君 理事 西川太一郎君       岡部 英男君    奥田 幹生君       奥谷  通君    鴨下 一郎君       木村 隆秀君    河本 三郎君       新藤 義孝君    竹本 直一君       武部  勤君    中山 太郎君       林  義郎君    牧野 隆守君       村田敬次郎君    茂木 敏充君       山口 泰明君    安住  淳君       樽床 伸二君    中川 正春君       前田 武志君    松崎 公昭君       渡辺  周君    遠藤 乙彦君       中野  清君    福留 泰蔵君       青山  丘君    小池百合子君       二階 俊博君    金子 満広君       吉井 英勝君    前島 秀行君  出席国務大臣         通商産業大臣  与謝野 馨君         国務大臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     根來 泰周君         公正取引委員会         事務総局経済取         引局長     山田 昭雄君         公正取引委員会         事務総局審査局         長       平林 英勝君         経済企画政務次         官       今井  宏君         経済企画庁調整         局長      河出 英治君         経済企画庁国民         生活局長    金子 孝文君         経済企画庁総合         計画局長    中名生 隆君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         国土庁地方振興         局長      中川 浩明君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       岩田 満泰君         通商産業省通商         政策局長    今野 秀洋君         通商産業省貿易         局長      佐野 忠克君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君         通商産業省環境         立地局長    太田信一郎君         通商産業省機械         情報産業局長  広瀬 勝貞君         資源エネルギー         庁長官     稲川 泰弘君         資源エネルギー         庁石炭・新エネ         ルギー部長   北畑 隆生君         中小企業庁長官 鴇田 勝彦君         郵政省通信政策         局長      金澤  薫君         自治大臣官房総         務審議官    香山 充弘君  委員外出席者         文部大臣官房審         議官      若松 澄夫君         運輸省港湾局開         発課長     金子  彰君         商工委員会専門         員       野田浩一郎委員の異動 二月十日         辞任         補欠選任   山本 幸三君     鴨下 一郎君   奥田  建君     安住  淳君   島津 尚純君     中川 正春君 同日         辞任         補欠選任   鴨下 一郎君     山本 幸三君   安住  淳君     奥田  建君   中川 正春君     松崎 公昭君 同日         辞任         補欠選任   松崎 公昭君     島津 尚純君 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件     午前十時四十五分開議      ————◇—————
  2. 古賀正浩

    古賀委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤達也君。
  3. 伊藤達也

    伊藤(達)委員 伊藤達也でございます。貴重な時間をいただいて、質問させていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いをいたします。  昨日の通産大臣所信の中で、産業再生重要課題として取り組んでいくんだと決意を述べられたわけであります。先月末には、新事業創出による良質な雇用確保生産性向上のための投資拡大重点を置いた産業再生計画が閣議決定されたところですが、今日までの新事業創出のための政策効果と、産業再生計画を踏まえての今後の課題について、通産大臣にまずお伺いをしたいと思います。
  4. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 通産省としては、資金人材技術、こういう各側面から、総合的なベンチャー支援策ということを今までやってまいりました。  具体的には、資金面では、年金基金個人投資家等からベンチャー企業に円滑に資金供給が行われるようにする。人材面では、企業人材確保、またストックオプション制度導入して社員の士気高揚を図る、あるいは大企業退職者によるベンチャー企業に対するアドバイスの強化。技術面では、大学などの研究成果民間へスムーズに移転する。こういういろいろなことをやってまいりました。  産業再生計画におきましては、日本におきます新たな事業の展開と雇用機会創出、こういうものを目指しておりまして、さき臨時国会成立しました新事業創出促進法に基づくいろいろな施策個人による開業あるいはベンチャービジネス振興、こういうことをすべて支援するための総合的な施策を講ずることとしております。  今後の課題としては、店頭市場等資本市場ベンチャー関連税制の整備によりまして、ベンチャー企業にお金が行く、リスクマネーが供給される、こういうものをいかに円滑化するかということでございますし、また失敗から再びチャレンジするということも、社会意識として失敗した方には再びチャンスが来るというような社会的な雰囲気の醸成ということもまた大事でございますし、また倒産法制も今のままでいいのかということも、一つ重要な私どもに課せられている課題であると考えております。
  5. 伊藤達也

    伊藤(達)委員 今審議されております九九年度のベンチャー支援関連予算というのは四百四十億円、前年度と比較しても四〇%もふえている。政府としましては、ベンチャー企業育成していくために、これは相当重点を置いて取り組みがなされているわけであります。しかし、残念ながら、今のところ注目すべきベンチャーが次々誕生するような状況にはなっていないわけであります。  昨年も緊急経済対策で、二年間で百万人の雇用創出していくんだ、そのうち三十七万人をベンチャー企業によって創出をしていきたいと具体的な対策を打ったわけでありますが、ここで、一連のベンチャー企業育成政策効果というものをもう一度よく見直してみて、そして、そうした各種の支援策というものが十分に活用されているのか、活用していくためにはどうしたらいいのか、その改善を積み重ねていくということが非常に重要ではないかというふうに思っております。  そこで、まず店頭市場改革のことについてお伺いをさせていただきたいと思います。  日本が第二店頭市場を開設した一年後に、これは九六年の秋になりますが、欧州では共通の店頭市場としてEASDAQを創設いたしました。そして、この二年間で約四十社が登録をし、時価総額は一兆七千億円、日本店頭の五分の一まで成長したわけであります。しかし、残念ながら日本の第二店頭市場はその当初の目的を十分果たすような結果を出すことができなかった。そのことにプラス、店頭市場そのもの大変低迷をしていて、店頭市場改革ということを本当にやっていかなければいけない、こういう状況にあるのではないかと思います。  ついには日本証券業協会が、昨年の十二月には、NASDAQ型のマーケットメーカー市場に向けて店頭市場の抜本的な改革をしていかなければいけないと、その対策を明確にしたわけでありますが、この店頭市場改革について大臣としてどのような問題意識を持っておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  6. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 ベンチャー企業等への資金調達円滑化、また新規開業を促進するためには、店頭市場活性化して魅力ある市場とすることが不可欠であります。すなわち、店頭市場を通じて資本市場から直接資金が調達できるというその仕組みは大層大事でございまして、これは諸外国の方がはるかに私は進んでいるというふうに思っておりますし、それは先生の御指摘のとおりだと思います。  日本店頭市場を見てみますと、店頭市場には今八百五十三社が登録をしておりまして、オーバー・ザ・カウンターという形で取引をやっておりますが、株価も売買高も全体として株式市場低迷の影響を受けて、店頭市場低迷をしているというのが実情でございます。  昨年十二月に、日本証券業協会が、店頭市場活性化を図ろうということで幾つかのことを実施いたしました。一つ登録基準の抜本的な見直し二つ目マーケットメーク制度導入等、こういう活性化策が多分好影響を与えるものと私どもは考えております。  今後は、いわばマーケットメークの本格的な実施、二つ目は、企業の円滑な資金調達を阻害している公開前規制見直し三つ目は、市場参加者有識者等証券会社以外の者からの意見を反映させるための具体的措置検討、こういう活性化策を講じていく必要があると思っております。今申し上げました政策施策につきましては、一月に閣議決定しました産業再生計画、また経済構造改革のための行動計画においても言及されているところでございます。  今後とも、通産省といたしましては、店頭市場資金調達を行う者の立場に立って、店頭市場の抜本的な改革関係省庁及び関係機関に対し積極的に働きかけてまいりたい、そのように思っております。
  7. 伊藤達也

    伊藤(達)委員 ありがとうございました。先ほどお話をさせていただいたそのEASDAQの立ち上がりが成功した要因は、民間主導であったというふうに言われています。企業投資家とそして証券会社、すべてが、だれもがみんなもうかる仕組み、そして、店頭運営というものはビジネスなんだ、そういう感覚を持ってこの市場をつくり出してきたことが発展の一つの条件であったというふうに言われています。そういう意味では、日本店頭市場改革に当たっても、だれのための改革なのかということをやはり十分留意をしていく必要があるんではないかというふうに思います。  それと、今の店頭市場の現状を見た場合に大変気になるのは、マーケットメーカーが非常に少ない状況にあるということだろうと思います。NASDAQの場合には約五千社が登録をして、約五百のマーケットメーカーが値づけをしている。NASDAQに近い市場日本店頭市場がなるためには、現在の約八百五十社の登録に対してその一割、八十から九十のマーケットメーカーが必要になっていくわけでありますが、しかし、現在ではマーケットメーカーとして手を挙げたのはまだ五社、そして値づけの対象銘柄も二十社と極めて少ない状況であります。  したがって、これからできるだけ早くマーケットメーカーの数をふやして、値づけ対象となる銘柄をふやしていかなければ、いよいよ店頭市場というものはがけっ縁に立ってしまうのではないか、そういう危機感を非常に私は持っております。  さらに、NASDAQの場合には、このマーケットメーカーをしている人たちというのは、極めて専門性の高い、そして小さな証券会社なんですね。日本の場合にも九七年の夏にディー・ブレインという新しい証券会社が設立をされた。こういう新しい証券会社を次々に誕生させて、そのことも店頭市場活性化につながっていくんではないかというふうに思いますし、さらには、今の店頭市場に、競争的な関係にある新しい店頭市場をつくっていけるような措置というのも非常に重要なことではないかというふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  8. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 株式会社の株がどのように上場されていくかという問題が一つあります。これは、一部に直接行くのか、二部に行くのか、あるいは店頭に公開して取引をしてもらうのか。  店頭に参ります場合には、やはり二部よりも小さい会社が多いわけでございます。上場するということは、会社社会性を持たせると同時に、やはり資本市場を通じて直接資金を取り入れる、こういうことでございまして、株式市場投資するということは銀行に預金をするよりもはるかにリスクの面では高いわけでございますが、そういう中で大変有望な会社もどしどし生まれてくるというのは、例えばアメリカのNASDAQのような場合はそうでございます。  したがいまして、投資家意識も変える必要がありますし、また、店頭市場に上場するときのいわばいろいろな基準とか規制とか、こういうものも変える必要がありますし、また、店頭市場をリードする証券会社専門家の集団もやはりしっかり確保をする必要があると思います。  これから新しい事業をしようという人、また、多少リスクはあっても新しい事業投資しようとする方、こういう方の出会いの場がいわば店頭市場でございますので、やはり今後の日本の新しい産業事業企業を育てていくためには、こういう店頭市場を通じて、事業をやる方とそういうものに投資をする方の出会いの場というふうに考えていけば、先生のおっしゃるように民間主導という考え方もあるでしょうし、より重要な店頭での登録取引ということも課題になるんだろうと私は思っております。
  9. 伊藤達也

    伊藤(達)委員 今おっしゃられたように、店頭市場改革ということは非常に大切なことでありますし、それとあわせて、エンゼル育成ということも非常に重要なことではないかというふうに思っております。  特に、エンゼル税制というものを導入したわけでありまして、ただ、現在のところはロスが出た場合には繰り越してそれを引いてしまう、簡単に言ってしまえばそういう制度であります。これは予算委員会でも一つ議論になったところでありますが、大蔵大臣は、今のエンゼル税制について、ベンチャー企業育成していくに当たってはまだまだ非常に極めて消極的な存在だ、本当に個人や法人の力というものを引き出してエンゼルを育てていくためには通産大臣といろいろな話し合いをしなければいけないということもおっしゃられているわけであります。  そういう意味では、エンゼル税制のさらなる充実、そしてエンゼル育成していくということも極めて重要なポイントだと思いますので、大臣に、この点については強いリーダーシップを発揮していただきたいということをお願い申し上げます。  次の質問に移らせていただきたいのですが、これは一番最初に大臣お話しいただいた倒産法制の問題でございます。  日本の場合には、事業失敗してしまうと個人も破滅をしてしまうんだ、なかなか事業失敗することは許されないという環境ではないかというふうに思います。私は、新しい産業育成していくためにも、仮に事業失敗しても再びチャレンジできるシステムというものを法制面から築いていく必要があるのではないかというふうに考えています。  現行の倒産法制は、大正十一年にその骨格が制定されて以来今日まで基本的に維持されてきて、経済情勢の変化に対応できない状況になってしまっているのではないかというふうに思いますが、通産大臣倒産法制に対する問題意識、それから改正に向けての方向性について、お伺いをさせていただきたいと思います。
  10. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 倒産法制については、商法とか破産法和議法とか会社更生法といろいろございますが、いずれも大変手間のかかる、手続が煩雑な制度になっています。  これは、戦後つくられた法制というよりは、むしろ昭和十年代とかにつくられた法律で、いわば現在の経済的な状況にきちんと対応しているかどうかということはかなり私は疑問であると思っております。特に中小企業にとっては大変使い勝手が悪い。それから手続、特に債権者等合意決議、もろもろの関門がございまして、会社更生法ですら迅速に適用できないというようなことで、社会的ニーズに合っているかといえば私は多分違うんだろうと思いまして、法制自体を現在の経済社会に合わせたものに直していくということは、法務大臣にも実はお願いをしているところでございます。  それと同時に、私は、倒産法制の中で、手続が迅速、合理的であると同時に、やはり失敗した方に過重な社会的制裁を加えない、そういう側面もまた必要になってくるというのは先生の御指摘のとおりだ、そのように思っております。
  11. 伊藤達也

    伊藤(達)委員 今お話がございましたが、倒産法制改正に当たっては、諸外国の動向あるいは日本の現在の厳しい経済の実態を十分踏まえていただいて、透明で迅速な手続を確立していく。そして、先ほどお話をさせていただいたように、事業失敗したときのコストを軽減して、再びチャレンジができるようなシステムを確立していくということが非常に重要だと思います。  その中で特に、再建及び清算手続統合、オートマチックステイの導入手続開始要件の緩和、開始決定前における営業譲渡等の重要な課題が私はあると思いますが、こういったことも含めて、改正方向性について大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  12. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 例えば、破産手続をとってみますと、個人破産をするというような場合には、いわばその後経済活動が実質的にできないような制裁が加わっているわけです。それから中小企業等も、破産手続あるいは倒産手続をいたしますと、一つの問題は大変時間がかかるということがあります。今御指摘がありましたように、倒産手続を開始した途端にすべてがフリーズされて何事もできないというような状況になって、機動的な立て直しもできないというようなこともあります。  これは多分、今の法制というのは、倒産した途端に全部がぱたっと凍結をされると申しますか、フリーズされると申しますか、そこから一歩も動かないで、その中で物事を解決していくというのが今の倒産法制だろうと思いますし、それから、倒産したところには債権者がいっぱいおりますので、債権者合意ということに極めて重点が置かれているということもございまして、やはり先生指摘のように透明、迅速ということも必要ですし、私がさっき申し上げましたように、倒産手続をどの法律によってやるかは別にいたしまして、過重な社会的制裁を加えるということになりますとその企業もその個人もその経営者も二度と立ち直れない、そういうことになります。  余り甘過ぎるのもどうかと思いますけれども、今のような過酷な倒産法制ではやはり失敗が許されないということで、経営判断としては萎縮した経営判断方向物事が流れざるを得ない、多分そういう問題点があるんだろうと思います。  いずれにしましても、法務省も倒産法制を何とかしないと社会実情に合わないということに気がつき始めましたので、私も法務大臣お話をして、現在の倒産法制をより時代に合ったもの、より中小企業の方々に合ったものにするという観点からは、ぜひ先生がおっしゃるように検討を進めてまいらなければならない、またそういう時代になった、そのように思っております。
  13. 伊藤達也

    伊藤(達)委員 小さな企業であっても適切に法に基づいて処理が行える制度、そして機能する倒産法制の実現に向けて、大臣の力強いリーダーシップお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  14. 古賀正浩

  15. 松本龍

    松本(龍)委員 民主党の松本でございます。  与謝野通産大臣には初めて質問をいたしますけれども、私の義理のおじから、先生国会議員になられる前から、科学やさまざまなものに造詣が深い、政策通だということでお聞きをしておりましたので、これからまた大変難しい状況でありますけれども通産大臣として頑張っていただきたいということをまず申し上げておきたいと思います。  第一点目は、昨年の五月に、大規模小売店舗立地法、そして中心市街地活性化法都市計画法の一部改正等々のいわゆる町づくり三法が論議をされました。これは与野党を問わず熱心な議論で、商工委員会始まって以来という二十数時間に及ぶ連合審査を含めての議論がありました。最後にはまた当時の橋本総理出席をされて十八年ぶりに答弁をされるという状況の中で、成立をしたわけです。これは、まさに一人一人の議員が、商店街に元気がなくなってきている、文化や伝統や歴史を担ってきたものが衰退をしていくのは見るに忍びないという思いで議論をして、成立をしたわけであります。  最後に三枚、八項目にわたる附帯決議が出されました。私も九年間議員をしておりますけれども、八項目もある附帯決議というのは初めての経験でありまして、そういう意味では、さき堀内通産大臣からはこの趣旨を尊重するというふうに発言がありましたけれども、再確認のために、この委員会意思である附帯決議、また国権の最高機関国会意思でもあるというふうに私は理解をしますけれども、この附帯決議を尊重されるかどうかという再確認をまず申し上げたいと思います。
  16. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 堀内通産大臣が尊重すると申し上げましたことは、堀内大臣個人として申し上げたことではなくて、通産省として申し上げたことでございますので、附帯決議を尊重しながら施策を進めていくということに関しては、尊重すると一度申し上げた以上、それは通産省として尊重する、そのように御理解をいただきたいと思います。
  17. 松本龍

    松本(龍)委員 当たり前のことを聞いたようですけれども、まさにそういう発言をしていただくということはありがたいと思いまして、また、附帯決議趣旨を尊重してこれからもやっていただきたいというふうに再確認をした次第であります。  ことしの一月に、ヨーロッパの十一カ国が集まってユーロの新時代を迎えました。これは大変意義のあることだというふうに思っております。たまたまきのう、その話をある人としておりましたら、おもしろい話を聞きましたので、ちょっと御披露申し上げたいと思います。  「ローマの休日」という映画がありますよね。あの「ローマの休日」で、オードリー・ヘップバーン扮するアン王女が、各国を歴訪するのに二つスピーチを用意していたという話があるのです。その一つが青少年に対する夢を持たせるようなスピーチ、もう一つヨーロッパ統合に対しては私は労をいとわないという発言がある、その二つスピーチを用意していた。  つまり、あの映画は一九五三年の映画ですから、そういう意味では、もう当初からヨーロッパ統合ということを皆さんが目指して頑張ってこられたのが映画に象徴されていると思います。まさにこれは、ドルや円に負けない通貨をつくり上げるのだ、経済を頑張るのだ、そういう一面だけではない意味があるというふうに思っています。  今世紀は、まさに前半は大きな大戦二つあり、後半はまたそれからの復権を目指していくヨーロッパ状況があったわけで、きのう私は第二次世界大戦の戦禍の状況をちょっと調べたのですけれども、これは十一カ国に入っていませんけれども、ポーランドという国は、きのう調べましたら全国民の一五%近くが亡くなっている。さまざまカウントの仕方が違うのですけれども、ポーランド自身の発表によれば二割以上が亡くなっているという状況があります。これはまさに、自分の兄弟あるいは親、自分の子供、だれかが亡くなっているという状況であります。  日本も大変な戦禍に見舞われましたけれども、大地は荒廃し、人の命が奪われてきたことに対して、もう懲り懲りだ、戦争は御免だという思いからヨーロッパ統合ということがスタートし、司法裁判所ができ、中央銀行ができ、欧州議会ができ、ことしのユーロの通貨統合になったというふうに考えています。まさに不戦の誓いを、さまざまな困難を乗り越えて今日に至ったわけですけれども、そういう二十一世紀モデルについて、通産大臣、また経済企画庁長官、おられませんが、両大臣にお尋ねを申し上げたいと思います。
  18. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 ユーロの誕生ということに関しては、私は先生と同じように考えております。二十世紀の前半というのはヨーロッパにとりましては大変な時代でございまして、第一次世界大戦、第二次世界大戦ヨーロッパ大陸において戦われたわけです。その主役はドイツとフランスだろうと私は思っておりますが、一九四五年に戦争が終わって、ヨーロッパ復興の兆しが見えましたときに欧州鉄鋼共同体というのができて、鉄鋼に関して共通の歩みをとろうということから始まりまして、現在のユーロまで発展してきたのだろうと思います。  これは、通貨統合という側面もありますけれども、やはり、ヨーロッパ全体を大ぐくりな経済圏にして、経済的にも発展、繁栄するようにするとともに、政治的な一種の同一方向での形成ということを通じて、ヨーロッパ全体の平和を守ろう、二度と戦乱の地にしてはいけない、あるいは政治的な混乱の地にはしてはいけない、そういうヨーロッパの方々の強い決意が統一通貨というところまで今到達したというふうに私は考えております。
  19. 古賀正浩

    古賀委員長 堺屋大臣はあれですが、今井政務次官、お願いします。
  20. 今井宏

    ○今井(宏)政府委員 大臣がほかの委員会に出ておりますので、恐縮ですが私の方から答弁させていただきます。  御案内のように、今回のEUの通貨統合ということで、経済規模も米国に匹敵する規模を持つ単一通貨が誕生したわけでありますし、毎日の報道も、一ユーロ一・何ドル、こういうふうに我々も情報として目に接しているわけでございまして、このことは大変重要な意義を持つものだろう、こういうふうに思っておるわけであります。  また、私たちの円との関係におきましても大変重要なかかわりを今後とも持っていくわけですし、円が国際通貨になると考えることから、円も安定した使いやすい通貨にすることが世界経済にとっても日本経済にとってもとても大事なことだ、このように考えております。  したがって、ユーロが安定した通貨とされ、信頼される通貨となるよう、国際社会全体の利益となることを大変期待しているところでございます。  以上です。
  21. 松本龍

    松本(龍)委員 冒頭なぜユーロの話から始まったかといいますと、世界でいろいろな試みがなされております。そういう意味日本という国を見たときに、去年はいわゆる金融関連法案、あるいは財政構造改革法の成立、凍結等々、それぞれに大事な喫緊の課題であるのを百も承知で言うのですけれども、あえて言えば内向きの議論に終始をしたように思っています。もっと大きな、日本という国が二十一世紀にどう生きていくのか、あるいはアジアの中で、リーダーシップと、一方で謙虚さを持ちながら、そういったものをどう発揮していくのかという議論をやはりしなければならないのだろうと思うから、私はユーロの話から始めてまいりました。  恐らく二十一世紀は、国家とは何か、企業とは何か、また国家と個人、国家と企業というもののあり方が問われていく時代だというふうに思っています。グローバル化、ボーダーレス化、情報化等々さまざまな流れは、もう我々の想像を超える、よりすさまじいスピードで進んでいます。  象徴的なことで言いますと、昨年の五月にダイムラー・ベンツとクライスラーが合併協議を確認いたしました。まさにドイツとアメリカの会社が合併をするわけですけれども、そういう意味で、国と企業関係で言えば、産業再生計画等々が閣議決定されましたけれども、こういうグローバルな動きの中でこれからの日本産業の再生というものをどうとらえていかなければならないのか。まさにこれは市場に任せればいいという話ではありますけれども、そういったときに、日本という国がどうかかわっていきながら戦略を立てていくのかということをお伺いしたいと思います。
  22. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 まず、昨年から政府国会お願いしてとってまいりました経済対策というのは一体何だったのだろうかと申しますと、これは二つございまして、一つは信用収縮対策という側面、それからもう一つは需給ギャップが存在するので需要の側面を支えていこう、そういう対策でございます。それは、税制改正を通じて個人の可処分所得を維持しようということが一つ。それから、法人税制を通じて、法人税率を下げることによって法人の設備投資意欲を喚起しよう、いずれも需要サイドの対策でございます。  それから、需要サイドの最も典型的な対策は、補正予算等を通じての財政支出によって国の有効需要をふやそう、こういうことでございまして、いずれも共通しておりますのは需要サイドの対策であったわけでございます。こういう需要サイドの対策だけ続けていけば日本経済は本当によくなるのかといえば、決してそんなことはないと私は思っております。  それは、日本経済というのは、現象面ではいろいろなことが理由で日本経済は弱くなっていると言いますが、やはり根本的には、先端技術ではアメリカなどにはるかに引き離された、それから在来技術による産業も、東南アジアを中心とする国々の技術や勤勉性、人材等にほぼ追いつかれ、追い抜かれそうになっている。やはり日本経済は、そういう先端的な技術をやっているところ、在来型の技術で伸びているところの、いわば挟み打ちに遭っている状況だろうと私は思っております。そういう意味では、二十一世紀の日本を本当に豊かな社会にするために我々が何を考えなければならないかといえば、やはり供給サイドの改革ということだろうと思います。  供給サイドの改革というのは、資金とか人材とかいろいろな側面はありますが、根本的な問題としては、日本がきちんとした技術、きちんとした製品をつくれる、そういう企業の体制等々を備えるということが二十一世紀に我々もまた豊かな社会を維持継続できるという根本でありまして、やはり供給サイドの強化、改革、これは別の言葉で言えば、生産性の高い企業社会をつくるということでも表現できますし、また、競争力を強化するという側面でも表現できる。  いわば供給サイドの改革ということがことしの課題であり、また二十一世紀初頭の我々日本社会課題であろう、そのように考えて、政策を推進しているところでございます。
  23. 松本龍

    松本(龍)委員 供給サイドの改革というのは所信にもありましたし、強く主張されておりますので、そこは理解できるというふうに思います。  経企庁長官がお見えになりましたので、九年前のクリントン政権の第一期のときの、当時ハーバード大学にいたロバート・ライシュ労働長官の問題提起がありますので、お二人にちょっとお聞きをしたいと思います。  ここに二つのケースがある。アメリカの国に会社があって、そこに株主もいて、研究開発等々をやっているけれども、生産拠点は世界にあって、合併、合弁会社等々でやっている、IBMとかモトローラとかいう会社がある。もう一つのケースは、米国以外に本社があって、株主もそこにいる、しかし米国で直接投資をして、生産拠点もそこに置いている、また雇用創出をしている、ソニーとかホンダとかいう会社です。  この二つのどちらが米国系企業なのかということを考えたときに、ロバート・ライシュ氏は、最終的には後者の、雇用創出している、米国に生産拠点を置いている会社が米国系企業だというふうに位置づけているわけですけれども、これから先こういう状況が到来をしているわけで、そういう意味で、このロバート・ライシュ氏の見解に対する両大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  24. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 企業がどんどん国際化してまいりますときに、どういう企業日本企業かアメリカの企業かというのは、だんだんわかりにくくなってまいることは事実でございます。  私個人の意見を言いますと、ライシュ氏とは必ずしも一緒ではございませんで、やはり、本社を日本に置いてくれている企業というのは、単に生産拠点を置いているだけよりも日本企業という感じを持つと思いますし、また、日本意思決定が行われる、どこに次を建てるか、どんな製品を出すかという本社機能、意思決定が行われるということは大事なことだと考えております。  そういう意味で申しますと、日本に工場や研究所等の生産拠点ができるような立地、あるいは社会資本の充実をすると同時に、日本の都市の国際競争力を高めまして、できるだけ日本で本社機能、あるいは金融、意思決定機能ができるようにすることも大切なのではないかという気がしております。
  25. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 生産拠点が海外に移りますとそれだけ雇用が減るというのは自明の理でございます。ここ十五年間ぐらいで日本はもう相当数の中小企業を含めた会社が海外に生産拠点を持ちました。嘆いてみてもこの傾向は続きます。相手の国にそういう生産拠点ができて現地で雇用が発生するというのは、例えば日本とアジアの関係で申し上げれば、悪いことではないし相手の国も喜ぶわけですから、長期的には、日本としてはアジアに対する協力関係がさらに強まったというふうに言えると思います。  ただ、それがいいんだといって、日本が資本家だけをやっていて国内に生産拠点を持たないという社会を想像してみれば、それは多分成り立たない社会でございまして、日本の国内である一定水準の雇用機会を維持するということは、日本国にとって、また日本社会にとって非常に大事な政策であろうと私は思います。  ただ、ここで申し上げなければならないのは、一つの物が生産されますときに、その生産コストに占めるいろいろな要素があります。税もその一つ、人件費もその一つ、土地代も一つ、物流コストも一つ、あるいは電力とかエネルギーのコスト等々、こういうもの全部見てみますと、日本は相対的に大変コストの高い国になっております。例えば倉敷料なんかも、日本とアメリカと比べますと百対一。電力も、例えばアジアの国の電力と日本の電力のコストを比べますと相当開きがある。  日本で生産拠点を維持するためには、技術的な側面もありますけれども、今申し上げましたようなあらゆる生産を構成するコストの要素を下げる努力を社会としてしなければならないと私は思っております。これは規制緩和を通じてもそういうことをやらなければなりませんし、競争をさせることによってそういうコストの要素を引き下げていく。  いずれにしても、我々が高コスト構造の是正と言っておりますのは、国内の生産拠点を守るためにはその生産を支えているいろいろなコストというものを下げていかないと、どうしても経済原理が働いて生産拠点はどんどん海外に行ってしまうということで、そこの基本的な部分を我々の社会はよく考えて、その部分をきちんとしていくということが国内の雇用を維持するための最も大事なことだろうと私は思っております。そういう文脈の中で例えば規制緩和なども論じられるということが必要だ、そのように思っております。
  26. 松本龍

    松本(龍)委員 期待したとおりのお答えが返ってきたわけですけれども、今、与謝野大臣がコストのお話をされました。私は、もう一つ大事な要素があるのだなというふうに思うのは、人づくりといいますか、人材育成だというふうに思っております。  つまり、今まで大企業はなかなか海外へ進出しなかった。十数年前までそういう状況があったわけですけれども、なぜかというと、物づくりというものが、日本のすぐれた技術者がいて、この技術者のそばにいないと大企業はやっていけない。つまり、中小企業が大企業が外に出ていくのを引っ張ってきたという状況が、さまざまな、例えば熟練した技術者の今までの功績によってそういうことができたというふうに思っています。  今、物づくりということが大変叫ばれておりまして、私は数年前に大田区の現状をずっと見ましたし、テレビでも一回放映をされましたけれども、今までは、物をつくる人たちというのは、すぐれた物をつくろう、丈夫で長もちする物をつくろう、絶対人に負けない物をつくろうという、いわゆる職人かたぎというものがあったわけですけれども、それが資本主義のちょっと矛盾かもわかりませんけれども、発注者は、逆に言うと、コストを半分にしてくれ、寿命も半分でいいというところから、やはり物をつくる人たちのやる気というものがそがれてきた。  つまり、ある工場で今まですぐれた物をつくっていたんですけれども、寿命は半分でいいからコストも半分にしてくれと言われたら、今までの自分の生きてきた方針というのが変わるわけで、そこが資本主義の最大の矛盾だろう。ヴェブレンという人が、製作者かたぎの本能に基づく産業的性向、つまりいい物をつくろうということと利潤最大化という営利との乖離、コストを削減して利潤を追求しようというそこの乖離がこれから一番深刻な問題だというふうに言われております。  さらに、最近ちょっと読んだ本でいいますと、寺島実郎さんという方が書いた「国家の論理と企業の論理」に載っておりましたけれども、「この国の進路の基軸とすべきことに言及したい。それは、アメリカがウォールストリート主導の金融経済に傾斜していきつつあるのに対し、日本はあくまでも「モノづくり」の分野を大切にするべしということである。軽々しく金融主導経済の論理に追随しないことが重要である。」かつて話題になった工業分野での技能オリンピックなどはほとんどメディアの対象にもならない、物づくりの再生こそ米国と画一すべき一線を浮上させる不可欠のアプローチであるというふうに書いておられます。  そういう意味で、物づくりというものがこれまでもまたこれからも大切な要素だと私は思いますので、通産大臣、その点につきまして御所見をお伺いしたいと思います。
  27. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 一時期、金融取引があたかも実体経済の中の最高のものだというふうに喧伝された時代がありますが、それは多分私は間違いだろうと思っております。金融自体というのはお金があっちこっち動くだけの話でございまして、それ自体は付加価値を生まないものだろうと私は考えております。  やはり、日本人が使う物やサービスというものをいかにつくり出していくか、とりわけその中でも物づくり、製造業というものの重要性というのは、本当に人々の生活を支える基礎的な物質、あるいは人々が必要とする物の供給、これはまさにサービスでもなければ金融業でもなければ、それを実際つくる方、またつくるために必要な技術人材、そういうものによって支えられているわけでございます。  一時期、金融業やらあるいはその周辺の産業がもてはやされた時代がありますが、金融もサービス業もしょせんは物づくりのインフラであるというふうに、ちょっと極端な認識ですが私は実はそのように思っておりまして、やはり、物づくりのために資金人材も科学や技術も投入していくということの方が長もちのする社会をつくり出すことができるのだろうと思っております。  虚飾に踊るのではなくて、しっかりと地に足のついた経済活動をやるというのがこれからの日本人の大事な物の考え方だろう、私はそのように思っております。
  28. 松本龍

    松本(龍)委員 私も今おっしゃったのに同感であります。虚飾に踊るのではなくというのは、まさにバブルが到来をして、ちょうど八五年から九〇年の五年間で廃業率と起業率が逆転をした。実需ではなくて、あのときはまさに仮需だったのだなと。住宅分野でも当時調べましたけれども、持ち家のシェアがあの当時だけ下がったわけです。つまり、財テクとかマネーゲームとかでさまざまな住宅を購入したり、またさまざまいろいろなことが行われたわけで、本当に地に足のついた政策をこれからやっていかなければならないというのはまさに同感であります。  そういう意味では、先ほど伊藤議員が言われましたけれどもベンチャーの問題でありますが、昨年の新事業創出法案のときに我々民主党の商工部会で話したんですけれども通産省でいろいろなツールができる。ツールができるけれども、それを周知したり広報したりするのが弱いのじゃないかというのが言われました。例えば、既成の商工団体を通じたり、さまざまなところを通じて縦の流れでそういうツールを紹介しているんでしょうけれども、私たちの話では、ハローワークでそういうことをちょっと一回やろうじゃないかという話もありました。  そういう意味では、まず第一点に、周知とか広報の部分で弱いという声が非常に大きいわけで、その辺のところの改善をどう試みられるのか、通産大臣にお伺いをしたいと思います。
  29. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 その周知徹底ということに関しましては、昨年十月一日から始めました信用保証協会の特別枠、これは制度をつくりましたときに議論を省内でいたしまして、つくっただけではだめなので、やはり新聞、テレビ、雑誌、あるいは都道府県、あるいは商工会議所、商工会、こういうところを通じて組織的にお知らせをする、PRをするということが必要で、それを中小企業の方々が知ることによってその制度が生きてくる、我々そのように決断をしました。ちょっと数日早く公告を打って参議院の先生にしかられたということもございますが、とにかく周知徹底ということを政策をやる上でしたわけでございます。  ベンチャーとかその他もいろいろな制度をつくっています。新規創出についてもいろいろなものをつくっておりますが、多分知らない方が多いのだろうと思いますし、また、こんないい制度があったのにという方もおられるでしょう。  そういう意味では、松本委員がおっしゃるように、政策はいいものをつくっても、そういうツールがあっても、使われないのでは意味がないし、お知らせをしないのだったら努力不足だし、これは大変よくわかる御意見でございまして、私どもとしてはあらゆるチャンネルがあるわけです。通産局もありますし、各県の商工部あるいは商工会議所、商工会、中小企業団体、あらゆるルートを通じてこういう新しい政策を積極的に、使い勝手がいいというか利用しやすいものにしていくということは、ただただ政策をちゃんと法律にするとか予算化するということのほかにもう一つ努力をしなければならない、そういう側面であると思っております。
  30. 松本龍

    松本(龍)委員 今お話がありました信用保険の枠の拡大は、昨年は貸し渋り等々でさまざまな中小の方々が御苦労をされていた。それをウの目タカの目で見られてあれができたわけで、そういう意味では、行列ができて、私も昨年末からそのことは人々から非常に喜ばれているというふうに思っております。  ただ、そういうことではなくて、私が言っておりますのは、ベンチャー支援に至るまで、きょうも朝ちょっと勉強会をしたんですけれども、その推進体制が省庁横断的な施策になっていない。書類が多過ぎる、あるいは時間がかかり過ぎるという意見が出ました。アメリカではSBA、日本で言う中小企業庁ですけれども、そこがワンストップサービスでやっているという状況がありまして、そういう流れをやはりこれからつくっていかなければならない。そこもあわせて、ちょっとお伺いをしたいと思います。
  31. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 手続とかそういう面で使い勝手のいい、過重な負担をかけない、余計な書類の提出を求めないとか、役所側でも常に工夫をし、きちんとした制度は維持しながらも、やはり使い勝手がいい、利用しやすい、そういうことを目指して努力をするべきだというのは当然のことだろうと私は思っております。
  32. 松本龍

    松本(龍)委員 最後に、経済企画庁長官にお伺いをいたします。  私は福岡の出身で、昨年の十一月に経企庁長官がお見えになって、川端通り商店街を歩いていただき、またキャナルシティーを見学いただいた。ことしの正月に私は上川端商店街の新年会に出ましたけれども、お見えになったことを大変喜んでおりまして、くれぐれもよろしくということを言われておりますので、まず御報告を申し上げたいと思います。  夢を持ちましょうという言葉が言われました。まさにその言葉に私も同感であります。私はこの年末年始、与党でもありませんが、ことしが正念場です、民間の皆さん頑張りましょうという言葉をずっと言い続けてまいりました。しかし、財政の状況を見るときに、今年度末には国債残高は三百二十七兆円に達する予定でありますし、その上に年末の補正、また今年度予算と大盤振る舞いがあったわけで、野党ではありますけれども、この景気の低迷の中で、ことしよくならなければ二〇〇〇年の予算というのは大変きついということを思っておりまして、その意味では、そこに向けて、ことしよくする方策、マクロも結構ですけれども、ことし一年が一番大きな正念場なんだろうというふうに私は思っております。  「これからの日本が目指すのは、夢と安心がともにある世の中です。」結びで書いておられます。「若者が夢膨らませる可能性があると同時に、高齢者や失敗者にも新たな挑戦の機会のあることが重要です。消費だけではなく、教育や住居や職業でも選択の幅を広げることが大切です。拡大する高齢者市場、歩いて暮らせる町づくり、育児や家事のアウトソーシングなど、これから広がると見られる分野は限りなくあります。」この結びの文は、私はさすがだなと実は思いました。  そういう意味で、これらのものも含めて、ことし一年の景気に対する経企庁長官の意気込みを最後にお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  33. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 まさに御指摘のとおりでございまして、二年連続でマイナス成長になりました。ことしも、次の平成十一年度もマイナスということになりますと、日本経済にとっては大変な痛手でございますので、政府といたしましてはあらゆる手段を講じて景気振興に努めております。  景気を悪くしている日本経済問題点の三つの重要ポイントがあると思いますが、その中で、金融システムの再生につきましては、昨年、金融再生法案、金融健全化法案を通していただきまして、今まさにそれの実行にかかっておりますので、遠からず健全化のめどが立つのではないかと考えております。  また、需要の面につきましては、昨年の緊急経済対策におきまして十一兆円の事業を実施するとともに、平成十一年度予算におきましても、前年度を一〇%上回る大きな事業を試みました。さらに税制の面では、個人税制で約四兆円、法人課税で二兆三千億、そのほかに住宅取得に対する税額控除あるいは情報機器に対する単年度償却など、いわゆる時期転換の、需要転換の方策をとりまして、景気の回復、需要の拡大に努めております。  また、雇用政策、さらに新しく企業を起こす対策等も通産省、労働省でとっていただいておりまして、私といたしましては、政府としてはできるだけのことをいたしましたので、この平成十一年度にははっきりとしたプラス成長が可能だと確信しております。
  34. 松本龍

    松本(龍)委員 お話をお伺いしましたが、金融市場について懸念があるのは、これから二十一世紀に向けて、国際会計基準あるいは時価主義会計の導入等々でさまざまな困難が予想されると思います。そういう意味では、もう護送船団方式が通用しないのは百も承知ですけれども、もっとグローバルな目でこれからの経企あるいは通産行政を見ていただくように心からお願いをして、質問を終わりたいと思います。
  35. 古賀正浩

    古賀委員長 渡辺周君。
  36. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 民主党の渡辺周でございます。引き続きまして質問をさせていただきます。  まず最初にちょっとお尋ね申し上げたいわけでございますけれども、一月の二十九日に閣議決定をされた政府産業再生計画がございます。この産業再生計画、そしてまた二月中旬にも経済戦略会議より提出されるとされる最終報告、あるいは小渕総理が経済審議会に諮問されました新経済計画と、我が国の現状の中で、今後、中長期的にどのような形でこの国の構造転換を図っていくのかといったようなことについては幾つものプランが出されているわけでございますけれども、今後の我が国の経済産業構造の展望という点について、まず通産大臣並びに経済企画庁長官の御意見を伺いたい。  そしてまた、この三つ、内容をちょっと読んでみますと非常に重なる部分も出てまいります。こうした中でどのように整理をするのか。別に整理しないまでも、一種の根底に流れている部分の思いは同じかとは思いますけれども、過去これまでいろいろな計画がございました。幾つも幾つも出てきて、実際いろいろな答申やら計画やらが出された中で、なかなか整理されないで、かつて混迷をきわめたこともございます。  そんな中で、この三つ、その関係がどういう形で明確につながっていくのか、その点について改めてここで御説明をいただきたいと思います。
  37. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 一体その会議が、どこが中心なのかということもありますし、どういう政策を今後推進していくのかということも実はあります。  産業再生計画というのは、もともと経済構造の改革ということの延長線上にありまして、昨年の九月、小渕総理から通産省に対して、産業再生に対して考え方を取りまとめろということで、通産省が中心になって、各省庁ともお打ち合わせをしながら一月の再生計画まで取り運んできたわけでございます。  産業再生計画を今後具体的にどうするのかということですが、民間の方と政府の間できちんとした会議をつくりまして、そこで物事を決めていこう。従来ですと、いろいろなものは最終的に報告書を出してそれで終わってしまう可能性がありますので、今回は一回ずつテーマを決めて、一回ずつなるべく結論を出すような会議にしよう。それから、テーマも絞ろう。  テーマは、競争力会議ということで、日本企業の国際的な競争力、そういうものに重点を置いていろいろな政策を打っていこう、こういうことになっておりますので、産業再生計画自体はそういう会議にのせて、民と政と官と力を合わせて一つ一つのテーマを具体的に片づけていこう。そういう手法で、今後、産業再生計画は具体化していくつもりでございます。  昨年いろいろ政府が打ちました景気対策、これは短期的、対症療法的な需要サイドの改革でございましたが、今回は、産業再生計画はむしろ供給サイドに立った改革でございまして、特にその中でも有望分野、十五分野というものを書いておりまして、そういうものに社会としての投資重点化していくとか、いろいろな日本経済の競争力の強化を具体的に進めていくということに重点を置いて、一回ずつ区切りのいい進め方をしたい、そのように思っております。
  38. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 いろいろな計画が出てきて、どういう関係になっているのか、こういうお尋ねでございました。  まず、産業再生計画につきましては、今通産大臣から御答弁がありましたように、日本産業を生産性の高いものにして、知的な生産性を高めていこう、そういう産業関係の再生のものであります。  近く最終報告が出ると予定されております経済戦略会議でございますが、これは、目下のこの厳しい経済情勢にかんがみまして、緊急に改善すべき点を洗い出しまして、緊急といいましても中長期的なテーマが多いのでございますけれども、中間報告の段階で百六十四の提言をいただきました。これを今月下旬にさらに整理いたしまして、どのような形で実現していくか、いろいろなジャンルに分けて提出いただけるものと思っております。  そして、この一月十八日に小渕総理大臣から諮問をいただきました経済審議会でございますが、この諮問は、現行の経済計画、これは平成七年にできたものでございますが、それが現実の経済状態とかなり違った形になってきておりますので、新たなる時代の姿と政策方針という形で諮問をいただいております。  従来、所得倍増計画以来ずっと経済計画という形で成長率あるいは各種の数値を盛ってまいりましたけれども、今度は単に経済の面だけではなしに、経済側面を超えて、文化、社会の面も含めた経済社会全般を展望し、二十一世紀初頭の我が国経済社会のあるべき姿を、今後十年間程度のとるべき政策方針とともに明らかにしていきたいと考えております。その中でこの産業再生計画は重要な一部になりますし、また、経済戦略会議でお出しいただきました項目も踏まえて、これを取り込んで、全体の形としての未来の日本をつくり出していきたいと考えております。  既に五つの部会を発足いたしまして、それぞれ異なる観点から幅広い御意見を賜っている次第でございます。
  39. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 大変御丁寧にお答えをいただきました。  先ほど、供給サイドに立った改革という言葉を通産大臣がおっしゃられました。産業再生計画でございますけれども、我が国の過剰な供給力、この点についての一つ指摘もございます。かつての右肩上がりの成長神話を信じて、過当競争体質、収益性を度外視して一斉に生産設備の拡充に走ったではないか。  そうした中で、例えば今、国際的な業界再編が進んでおります自動車の分野。数字を申し上げますと、国内生産は一九九〇年のピーク時が千三百四十八万台。ところが昨年、九八年には千四万台。ですから、三百四十万台、業界筋では少なくとも三百万台分の過剰生産能力というような指摘があります。もちろん、自動車に至るまでではなく、例えば石油業界、こうしたところでも二割が過剰ではないかといったような指摘もございます。  そんな中で、ある意味では企業の保有する生産設備や収益状況を分析するとともに、過剰な設備を整理縮小する、その点における税制上の優遇措置でありますとか、廃棄費用の補助といったものを出す方針だというように指摘もあるわけですけれども、本音の部分では、その背景には、次世代の基幹産業として育てる部分、そして使命を終えた分野といったものを線引きをしていく考えである、こういったことも一部報じられております。確かにそのとおりだと思いまして、今世紀あるいは新しい世紀に向けて、今、世界的な驚くべき業界の再編が起きております。  そんな中で、現在の日本国内でいいますと、大体の家庭に大方のものがもう行き着いてしまっている。ちょっと考えますと、かつてのようなシェア争いではなくて、ある意味では共存という部分、あるいは次の産業への転換といった問題が大変必要になってくるわけであります。中期あるいは長期的な目で見てこの点について考えますと、再生というよりも、私どもは、転換と先ほど申し上げましたけれども産業再生計画という産業の大きな転換であるというふうに考えるわけであります。その点についての大臣の御所見をもし伺えればと思います。
  40. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 過去の日本経済、特にバブル期に何が起きたかと申しますと、やはりバブル時代経営者がやや安易な方向に走ったという傾向もあります。特に、資金も潤沢にとれましたし、また社会全体として非常に楽観的な見通しがあって、そういう中でやはり生産性の低い分野に投資を重ねて、その結果、資本も労働も、あるいは設備といってもよろしいのでしょうか、そういうものに対して過剰感が出てきていることは間違いないわけです。  一つは、やはり設備廃棄ということを考えなければいけない段階に来ております。昔ですと、不況になりますと生産カルテルというのを結んで、半ば強制的に生産調整をやったのですが、そういうことも許されない時代でございますので、やはり各企業が自主的に判断をして過剰設備を廃棄していく。ただ、これは丸々除却損になりますから、そのときに税制上あるいは資金的にどういうことが社会全体としてできるかということは大事なところでございまして、そのことは産業再生計画にも一部触れているわけでございます。  それからもう一つは、市場経済原理、自由競争の経済社会というのは何が本当は起きるかといいますと、資本と労働が不必要な部分から必要な部分に移動していくということになるわけですが、これはいわば弱肉強食の面もありまして、社会的には相当の痛みを伴うわけですから、やはり転換という先生が使われた言葉を実現するためには、会社の中で多角的な経営をするという転換もありますし、ある分野から他の分野に労働が移動するという転換もあるでしょう。  そのときには、転換に伴う相当の痛みを和らげるために、あるいは転換にふさわしい的確性を持つようにするために、やはり社会的なセーフティーネットというのは必要であります。これは、企業に対するセーフティーネットも、あるいは働く方々一人一人のためのセーフティーネットも必要でしょうし、また、企業を移るあるいは転換される方々に対する、再教育と言ったら少しおこがましいのですが、トレーニングの機会をもう一度つくるというような政策もこれから大事になってくる、そのように私は考えております。
  41. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 せっかくですので堺屋長官にもお尋ねをしたいんですが、昨日の所信の中に、我が国経済の現状の中で、今日の深刻な経済状況には、短期循環、長期波動、歴史的発展段階の転換、短期的には循環型である、長期においてはバブル期を境として安定成熟局面に入っているというようなお言葉を使われております。  そしてもう一つは、歴史的な発展段階、大変長いタームで見れば、規格大量生産型の近代工業社会から多様な知恵の時代へということになったといった中で、今通産大臣もおっしゃられましたけれども、もちろん短期的な景気対策経済対策、そして私は、大きな目で考えればやはり今新しい転換が必要ではないか。  まさに歴史的な段階、それが多分、恐らくですが、将来歴史の教科書をひもといたときに、二十年か三十年した後に、一九八〇年代の半ばから二〇〇〇年にかけて、この十年という期間は大変大きな転換期であったと。恐らく私は、歴史の近代史か何かの教科書の一単元になるぐらいの今我々はさなかにいる、その中で新しい方向を模索しているといった状況にいるんだと思います。  そうした中で、これは長官にお尋ねしたいのですけれども、この転換という中において、次世代の基幹産業、これは通告はしてございませんが今ここでお顔を見てお尋ねしたいんですが、これからの、次世代の新たな成長分野ということについては、先ほど、幾つかの計画の中に出てくる、それも既にいただいた資料の中にございますけれども、これからの、次代の新しい成長分野、基幹産業になり得るものは何であるか、その点についてもし御所見がございましたらお尋ねをしたいと思います。
  42. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 所信表明でも申し上げましたように、現在の短期波動、これは経済対策、緊急対策等で対処しております。また、中長期的に見ますと、少子高齢化等の問題もございますし、環境問題もございますし、日本が高度成長時代から成熟時代に転換してきたというのも事実だと私は信じております。  そして、今お尋ねの次世代ということでございますが、日本は明治以来、規格大量生産の製造業を育てるために全力を挙げて、あらゆる分野でそれに適した労働力、社会構造、地域構造をつくろうとしてまいりました。ところが、ここへ参りまして、規格大量生産だけでは人々のニーズに合っていかない。そこで、新しいソフトウエアであるとか技術、デザインあるいは経営ノウハウ、金融もそのうちの一つでございますけれども、そういったものがわあっと膨れ上がってきている。そして一方におきましては、家事のアウトソーシングであるとか、もっと単純なサービス業というのも大きく膨れ上がってきております。  基幹産業という点では、私は、やはりソフトウエア、技術開発を中心とした先端的な分野が重要だと思いますが、これからの就業数や高齢者、女性の職場という点を考えますと、家事のアウトソーシングとか育児の問題とか介護の問題とかいったような対人サービスも相当大きな規模になってくるのではないか。  そういう面で、日本の町のつくり方から産業構造まで大きな転換期になっている。先生指摘のように、まさにこの十年間が歴史に残るような時代だと私も認識しております。
  43. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 私も全く同感でございまして、今、高度情報化ということがもう本当にまくら言葉のように言われます。たしか大分県の平松知事さんだったでしょうか、何かの本の中でハイテクとハイタッチというようなことを書かれております。これは、ハイテクノロジー、先端産業あるいは高度情報化が進むと、その反面で、いわゆる人間対人間、いわゆるインターヒューマンというのでしょうか、ハイタッチ、高度な触れ合いがまた必ず求められるようになると。  確かにそのとおりでございまして、今もう手紙を書いて近況を伝えるよりも、携帯電話があれば、速ければ、メールで送れば電話の代金より安い料金で、非常に無機的ではありますけれども、できるようになってきた。その反面で、高齢者、あるいは都会に住む単身者、あるいは子供、少子化あるいは高齢化の中でだんだん人間対人間の関係が非常に薄くなってきている。そんな中で、こうした最も泥臭い人間対人間のビジネスが、ある意味では基幹産業と言っていいのでしょうか、一つビジネスとしてやはり勃興してくるのではないかな、私もそのような思いをしております。  もう一つ必要なことの中に、私はやはり起業家の育成ということも出てくるのだろうと思います。  ちょうどきょう私どもの党で、新産業と新雇用育成、四百万人の雇用創出といったようなちょっとプロジェクトチームがございまして、勉強会をしてきました。  これも今即席のお尋ねでございますので、そちらには答弁等は用意されていないと思いますけれども、新しい産業あるいはベンチャーというものの中で、私は、大学教育云々ということも所信表明の中にございましたけれども、アメリカのジュニアアチーブメントでしょうか、あるいはスコットランドでも同様な施策がある。それは、小学生に教材を提供して、そこで成功するあるいはした人間に対して非常に接触をさせる、そして小中学生ぐらいのうちから、自分は将来はああいうふうになりたいといったような、一種の知育教育といいますか、学校教育の中でそういう人材をつくっていく。  これは昨年いろいろ、大学で、TLOの問題でありますとか、研究開発の結果をいかに民間の知的所有権へと変えていくかということももちろんやりましたけれども、私はそのもとになるのはやはり人材ではないのかなと思います。こういうことを、商工委員会のマターかどうかちょっとわかりませんけれども、ひょっとしたらこれは文教や科学技術の分野になるのかもしれませんけれども、その点についての人材をつくる、これは通産省中小企業庁という省庁を超えた中で、時には地方自治体もあるいは文部省も入って。  そして、これから危惧すべきことは、こういうことを言ってはなんですけれども、やはり理科系の人間が今いなくなってくる、しかも少子化の中で、あと十四、五年すると、短大、四大にはだれもが大体入れるようになってくる。そうしますと、これはちょっと言いづらい言い方ですけれども、中にはどうしても学生の質というものが、余り基礎教育、基礎学習をしてこなくても高校に行き、あるいは大学に行く。そういう意味では、徐々にですけれども、名ばかりの大学生のような人間もふえてくるのではないだろうか。  そうなりますと、今から、中学生、小学生のうちから人材をつくる、これは大変大事なことだとやはり私は思うのですけれども、こうした中で、ジュニアアチーブメントといいましょうか、まずこういう人材育成、もちろんその後には、いろいろな税制の問題でありますとかあるいは中小企業の認定の問題だとかありますけれどもベンチャー育成をしていかなければいけませんけれども、そうした中で人材育成という点について、どちらの大臣でも結構でございますが、お答えをいただきたいと思います。
  44. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御指摘のとおり、人材育成は大変重要な問題でございまして、経済審議会でも国民生活文化部会をつくりまして、これからの世の中、人材を含め、地域社会の問題、家庭の問題、どうあるべきかということを検討したいと考えております。  特に重要なことは、今委員指摘のございましたように、新しい業を起こすという、そういった夢と闘志のある若者を育てることでございます。  世界じゅうの国々では中小零細企業で業を起こす人がどんどんふえておりまして、世界じゅうの事業所はふえております。アメリカあたりでは八十万近い新しい業を起こす人がおりまして、つぶれる方は六十数万、十万以上ふえるんです。ところが、日本はここ十年ぐらいどんどん減っておりまして、一年間に三万三千ぐらいできて三万六千ぐらい減るというような状況でございます。これは社会的な評価の問題もございますし、税制の問題もございますし、また教育の問題もあるでしょう。  これからは、みずからの力で新しい業を起こす人を育て、そういう人々がやはり尊敬されるような世の中にしていかなければいけない。だれでもかれでも大きな組織に入って人事の階段を上ればいいというだけでは、経済の活力は出てこないと思います。  そのほかに、私どもといたしましても、やはりNPO、企業以外の利益を追求しない団体、そういったものの活動も重要だと思っておりまして、善意で働く人々に対する世間の尊敬の目をつくる、それに合わせたより適切な税制その他も検討していきたいと考えている次第であります。
  45. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 今お答えをいただいた中で、これは私ども民主党の中の資料でございますけれども、日米の最近の開業率、廃業率を比較しますと、アメリカが開業率が一三・八、一九九四年です、廃業率が一一・四%。日本の場合は、開業率が三・七%、九四年から九六年の数字でありますけれども、廃業率が三・八%。もともと開業率も廃業率もアメリカは高いわけでありますけれども開業率が日本は下回っている、米国は上回っているといったような数字がございます。  そしてまたもう一つは起業家教育、アントレプレナーというんでしょうか、小中学生と申しましたが例えば大学ということを例にとりましても、これは通産省の資料でございますけれども、大学における起業家教育というのは、アメリカは一九四六年ごろにはスタートをしている。日本はおくれること四十年後、一九八六年。そして、講座を設置している大学の数だけで米国は五百、日本はおよそ三十と本当にショッキングな数字であります。専門課程を設置している大学院の数も、米国は七十八、日本はたったの五つぐらいである。  こんな中で、こうした分野についても経済計画の中で、供給サイドと通産大臣はおっしゃいます、そしてまた幾つもの諮問機関等でこれから出されてくる中でも、私は、人材育成と、そして何よりも今、これから小学校、中学校、ただ上の大学に行くだけが、それで大学を卒業して企業に入ったら夢が終わるようなそんな国ではなくて、常に抱いた夢が必ず実現できる、夢や希望はかなうという、そんなものをぜひとも進めていただきたいなと思います。  この点につきましてはここら辺にしまして、あと残りの時間で中心市街地の活性化法についてちょっとお尋ねをしたいと思います。  私もこの法律については審議時間を随分いただきまして、昨年、委員会質問をさせていただきました。今地元の、私の場合は沼津市というところ、あるいは御殿場市というところで、商店街の方々からも大変関心が高いものですから、どういうことだということで幾つか商店主の方々に質問をいただきまして、いろいろとお答えをしたり、あるいはミーティングを開いたりしております。そうした中で、中心市街地活性化法の施行、新聞等にも時折報道されておりますけれども、地域ではいろいろと各町で対応が進んでおります。  そうした中、本年度の予算では幾つかのメニューを合わせておよそ一兆円を超える予算が用意されているということでありますけれども、現状の地域におきます申請状況を教えていただければと思います。
  46. 岩田満泰

    ○岩田政府委員 お答え申し上げます。  現在の申請状況と申しましょうか進捗状況でございますが、昨年七月の施行以来、現在までに二十六の市区町におきまして基本計画が策定済みでございます。これらの計画につきましてそれぞれに支援要望が出されているところでございまして、政府としては、関係省庁連絡協議会におきます協議を通じまして、これらの計画についての支援というものの具体的な検討をしておるという状況でございます。  なお、現在、各地におきまして基本計画の策定作業が進められておりまして、私どもの見通しでは、今年度中に百数十の市町村から基本計画が提出されるものと見ておるところでございます。
  47. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 今、大変な数の地域から上がっている。そういう中で幾つか指摘をされる中に、やはり従来の支援策は各省庁にまたがっていて余りにもちょっと、これは委員会のときにも以前もお尋ねをしましたけれども、非常にメニューが多過ぎるではないか、これも質問の通告の中に触れていませんけれども。実際その点について私どもも、自治体でありますとかあるいはそういった商店街関係者の方々、あるいは地域の地権者の方々からも、非常にわかりにくい、煩雑であるというような指摘が多いわけです。  その点について、やはり申請のときにあるのか、あるいはどのような形でそれを指導しているのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。
  48. 岩田満泰

    ○岩田政府委員 昨年の国会の法案御審議の際にも御指摘を受けたわけでございまして、一つには、政府としては政府の統一の窓口をつくりまして、物理的な窓口を、統一的なものをつくりまして、そこでいろいろな御相談に応じるということをしております。同時に、それだけではなくて、各都道府県を通じて、この中心市街地対策関係省庁施策についての御説明と申しますかPRと申しますか、そういうものをさせていただいているわけでございます。  お説のように、この法律は国において計画を認定するとか承認するとかというプロセスのない、自治体においておつくりになればそれがそのまま計画になるということでございますので、各地域において、その町として望ましい再生計画と申しましょうか、そういったものをおつくりいただくということで、引き続き私どももそうした施策の内容のPR、御説明には努力をしていきたい。  また、十三省庁、多数の省庁にまたがりますので、連絡協議会というような場を通じて、引き続きこの施策のPRと、各自治体におきます計画づくりについての御相談には積極的に対応していきたい、このように考えておるところでございます。
  49. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 総額が一兆円、百五十以上のメニューをそろえるといった形で、各省庁から、省庁の利害を超えて対応するのだ、省益を超えた視点で助言を出していくというような意気込みはいろいろ伺っているわけでありますけれども、現場の声としては、地方自治体が大体中心になっていろいろな計画を策定していく上で非常に煩雑であるという指摘もございますので、その辺はぜひとも連携をとりながら、よりよいものを進めていただきたいと思います。  そしてもう一つは、この中心市街地の活性化の中で役割を示すのが、いわゆるタウン・マネジメント・オーガナイゼーション、TMOであります。この点についても大変私ども指摘をいただきますけれども、実際、このタウンマネジメントという非常に新しい概念をつくり上げなければならない。そうしますと、まず一つは、人材の問題がございます。  これは、例えば私どもの町でもこういう指摘があります。地元のことをよく知っている、あるいは歴史も含めてよく知っている人が一番いいのだけれども、かといってそれだけでは、例えば世界の諸事情などを見てこられた経験豊かな方も当然必要だ、しかしこの方は地域のことは全然わからぬ。例えば商店街の推移の問題でありますとか、あるいはコアとなってきた、例えばかつては港の周辺が栄えた、ところが港が栄えなくなってからだんだん中心地が移ってきて今は駅だ、ところが駅周辺も今寂れてきて、どんどん郊外に大型店ができてきて、その周辺でどんどん開発が進んでいる。そんな中で、そうした歴史を知っている人がいいのか、一種の人材という意味について非常に戸惑っているということも事実でございます。  その点につきまして、そうした人材をどういう形で確保していくのか、あるいは提供していくのかという点が一つ。  それから、商工会等が中心になって、あるいは第三セクターをつくって、葛飾区の例でありますとか佐賀市の例でありますとか幾つか紹介をされておりますけれども、こうした機関がどこまで、アメリカの例と比べますと一種の公権力というものが付与されていない、一種の町づくり提言団体みたいになってしまって、従来の商工会なんかがやっていることとこれからタウンマネジメントでやることとどれぐらい違うんだということも、現場においては大変な迷いがあるのも事実であります。もっと言えば、そんな大きな役割を担ってしまっていいのだろうか、権利の調整なんか一体どうするんだといったような現場の不安もやはりあるわけでございます。  その点について、今どのような形でタウンマネジャーあるいはタウンマネジメント、TMOを考えていらっしゃるのか、あるいはそうした地域に対して支援をしているのか、その中間的な状況についてお尋ねをさせていただきたいと思います。
  50. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 今先生指摘のように、中心市街地活性化対策、私ども小売商業振興策を預かる立場からしますと、新しい概念としてタウンマネジャー、タウン・マネジメント・オーガニゼーション、こういったキーになる組織、人を中心に組み立てをさせていただいております。したがいまして、そういった意味で、そういった需要にこたえられる新しい人材の養成なり確保というのが大変重要な問題になると認識をしております。  したがいまして、私ども中小企業庁といたしましては、一つには、現場、地場の状況に詳しい方につきましては、中小企業大学校というのがございますから、ここで新たにタウンマネジャーの養成研修事業というのを創設させていただいております。ここにおきましては、先ほど先生の御指摘もございました土地利用に関する権利関係等の制度に関して講習をしてさしあげるとか、あるいは都市再開発、土地区画整理法等の市街地再開発に関する制度あるいは法規制についても基礎知識を習得していただこうというように考えております。  ただ、御指摘にありますように、それだけでは必ずしもグローバルに物事を見るというのは難しゅうございますので、別途、やはり中小企業事業団に、各社会といいますか、流通関係、ディベロッパーあるいは都市設計、そういう関係で実績のおありになる方、ノウハウを持たれる方について、シニアアドバイザー制度というのがございます。こういった方を登録させていただいて、従来ですと短期の派遣をしておったわけですが、本対策を実効あらしめるという観点から、三カ月間の長期の専門家の派遣制度というものもあわせてつくらせていただいております。  現在、五カ所ばかり、TMOといいますか、こういった機関が各商工会あるいは三セク等を中心に既に組成をされております。こういった方々からのいろいろな御要請も承りながら、今申し上げたような支援策でカバーをしてまいりたい、そう考えております。
  51. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 特に商工会等の戸惑いといいましょうか現状は、例えばこういう経済情勢の中で、いろいろな相談窓口の業務もあります、そしてまた当然片方で地域の振興という形において役割が大きくなる。そんな中で果たしてそのような大きな、ある意味では町の心臓の再生をさせるような役割を担う。果たして将来、本当の部分で、我々だけでやっていけるんだろうかという現場の、特に小さい商工会団体になりますとやはりそういう声も出てくるわけであります。その点については、またひとつ勇気づけるような施策を、ぜひ積極的に続けていただきたいというふうに思います。  時間があと一分でございますので、最後一つだけ、別の項目でちょっと質問をさせていただきます。  これは新聞報道等に出ている話でありますけれども、いわゆる消費者保護の観点について、仮称消費者契約法ですか、これを今後考えていくといったようなことがございます。  当然のことながら、おくればせながらという気もしますけれども、過去幾つか改正をされながら、現在は随分消費者の権利というものが、あるいは不利益をこうむることが随分少なくなってきたとはいえ、幾つかの新しいビジネスの中で、あるいは法のすき間の中で、こうした消費者保護という点についてはこれから強化をしていかなければならないと思うわけでございますけれども、その点について、今の現状、取り組みについて、最後にお尋ねをさせていただきたいと思います。
  52. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 産業構造審議会消費者部会におきまして、その問題を検討いたしました。エステや外国語教室等、継続的な役務の取引の適正化のために、いわゆる個別の改正を視野に入れて審議していると承知しております。  一般に、消費者契約法と、各業界、業種別の個別法との関係につきましては、消費者契約法は、消費者と業者との間で締結される消費者契約を幅広く民事ルールで行うもの、各業法の方は行政レベルで行うもの、こう認識しております。  この法律につきまして、今国会に提出できるかどうか随分検討したのでございますけれども、目下いろいろと新しい業種、業態がたくさん出てまいっております。情報通信、金融の問題、電子取引、Eメール取引、そういったことを考えますと、重要事項とか不実記載とかいうことの具体的内容が大変難しいので、私といたしましては、もうしばらくこの具体的内容を勉強させていただきまして、実態に即したものをできるだけ早い機会に国会に提出させていただきたいと考えている次第であります。
  53. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 一般的に民間同士の取引というのは民法の原則によるというのが大原則であって、消費者を保護する法律というのは、割賦販売法もそうですし、訪問販売法もそうですし、PL法もそうでございますし、そのほか幾つか消費者を保護するという法律が既に存在しているわけでございます。金利に関しても、金利水準はある上限が設けられているということも、いわば消費者と金融機関との関係を適正にするというものでございます。  恐らく消費者契約法というのは、言葉としては大変聞こえがいいんですが、具体的な問題になったときに、どういう消費者保護の法律があるのか、分野があるのかということはなかなか難しい問題なので、堺屋長官がおっしゃったように、名前だけ先行するのではなくてやはり具体的な中身をむしろ検討していただいて、従来既に存在する法律との整合性とか、あるいは消費者もまた購入者として一定の責任を持っているわけですから、そういう契約者対等の原則から一体どういうことになるのかとか、相当幅広い検討をした上で物事の考え方を進めていくことが必要であると思っておりまして、名前が先行するというのは好ましくない、そのように思っております。
  54. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 ありがとうございました。
  55. 古賀正浩

    古賀委員長 午後一時二十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十九分休憩      ————◇—————     午後一時二十六分開議
  56. 古賀正浩

    古賀委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。樽床伸二君。
  57. 樽床伸二

    樽床委員 民主党の樽床でございます。昨日の両大臣の所信を受けまして、それに対して質問をさせていただきたいと思います。  昨日の堺屋長官の所信の中で、現在の経済状況を短期循環、長期波動、歴史的発展段階の転換という三つの波が重なり合っている、そういう現状認識がございました。この三つの波を同時に解消していかなければ現在の経済状況は打破できない、こういう御指摘が冒頭にあったわけでありますが、私はまさにそのとおりだというふうに認識をいたしております。  特に、歴史的発展段階の転換、こういうまさに時代の大変大きな過渡期という認識である以上、それに中期の波、長期の波、短期の波が重なり合っている、こういう状況を解決するに当たって、さらっと、来年度は〇・五%成長をできる、このようにおっしゃっているその根拠が甚だ不明確である、私はこのように認識をいたしておるわけであります。  実際、多くの国民の皆様方の皮膚感覚といいますか、そういう賢明なる国民の皆様方の感覚の中でいくと、昨年の十一月に発表されました緊急経済対策効果がないのではないか、こういう皮膚感覚をお持ちの国民の方が大変多いというような趣旨調査もあるわけでございまして、こういうようなギャップが存在をしております。  そういう中で、冒頭に、そういう状況を脱却するために、以下いろいろ幾つかおっしゃいましたけれども、〇・五%、つまりプラス成長に戻す確信がある、このようにおっしゃった根拠を私はどうしても理解ができない、このように考えているわけでありまして、その点につきまして通産大臣及び経企庁長官にさらなる見解をお聞かせいただきたい、このように思います。
  58. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 委員指摘のとおり、私は三重の波が重なっていると申し上げまして、〇・五%ということは、平成十一年度の見通しでございますから、まさに短期に属する問題でございます。  この短期政策につきましては、公共事業を初めとする緊急経済対策で十七兆円のかなり大規模な事業をやっております。また、減税の方、税制の方でも、所得課税四兆円、法人課税二兆三千億円、そして政策減税といたしまして住宅の取得に対する税額控除、それから通信機器に対する単年度償却等の政策を行いまして約三兆一千億、合計九兆円を上回るような減税政策をとっております。これによりまして、GDPが、まず公共事業を中心とする事業の方で実質一・九%、所得減税の方で〇・四%、合わせて実質二・三%ぐらいの押し上げ効果があるのではないかと思っております。  現在の経済状況が非常に低調でございますけれども、金融対策におきまして、長く日本のバブルが崩壊して以来日本経済の患いでありました金融不安定、金融収縮という問題を解決いたしますと、これだけの二・三%の押し上げ効果があれば、はっきりプラス成長になるだろう。〇・五%ぐらいの成長は確実に見られるだろうと考えております。そういうような需要項目の刺激度を積み上げた結果、そういう見通しが立っているということでございます。  もちろんそれだけでは足りませんで、日本国民、特に企業経営者、消費者の方々が将来の日本経済について自信を持ってもらわなきゃいけない、日本経済が必ず発展するものだという自信を持ってもらわなきゃいけないと思います。それにつきましては、経済戦略会議の提案もございますし、それを踏まえて経済審議会で、ことしの前半にも、将来のあるべき姿、日本経済のあるべき姿とそれに至る政策の大綱、大筋をお示しすることによって、皆さんが夢と安心を持っていただけるようにしたい。  この大きな循環に対する、大きな変化に対する提言と、そして目前の景気対策、これらが合わさってプラス成長になるものだと考えております。
  59. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 昨年の六月から政府がとってまいりました政策、幾つかに分けられますが、端的に申し上げますと、一つの領域では、やはり金融システムに対する対策でございます。これは、金融機関側も大変不安な状況になりまして、みずからの資産を圧縮するということで、結果的に信用収縮も起きましたし、国民の金融機関に対する懐疑的な目というものも非常に強くなったわけでございます。  しかし、昨年の臨時国会において幾つかの大事な法案が成立をいたしました。その中で、特別公的管理などという制度は、やってみましたら実にうまく機能しておりまして、金融機関が破綻の状態と認定されても信用不安は起きない、取りつけは起きない、こういうことが実証されたわけでございます。  したがいまして、十月から始めました信用保証協会の二十兆円の特別枠、あるいは政府系三金融機関の中小企業に対する融資、あるいは日本開発銀行の機能の強化等々あわせまして考えましても、金融収縮、信用収縮対策というのは相当のところまでいっておりますし、日本銀行も、債券に対して買いオペレーションをやり、あるいはCPなども購入しておりますから、キャッシュは市場に供給されているという状況が続いております。  一方では、日本経済の需要と供給を比べますと、供給力の方がはるかに上で、いわば需給ギャップが生じた。この需給ギャップを何によって解消するかという考え方でございますが、一つは、個人の所得税の世界で、消費に直結するかどうかというのはいろいろの論争があるところですが、所得税の減税をやって国民の可処分所得を維持向上させようという考え方、これも一つありますし、また設備投資につきましては、設備投資の見通しというのはそう明るいものではないわけですが、法人税を減税して国際水準並みの法人税率、実効税率にして、やはり期待収益率を上げて法人に設備投資を促す、そういう側面。住宅部門に関しましては、大変期待のできる住宅減税をやりました。  あわせまして、昨年十二月に成立した予算、そして今国会お願いしております予算、これを十五カ月予算と呼んでおりますが、この中では、やはり公的部分が景気の下支えをするという形になっておりますので、経済企画庁が言っておられる〇・五%という数字は達成できると我々は思っておりますし、また達成をしなければならない、そのように思っております。
  60. 樽床伸二

    樽床委員 今両大臣からお話を賜りましたが、整理をさせていただきますと、短期のことについては十二分にやっておるんだ、長期の、まさに堺屋長官がおっしゃった歴史的発展段階の転換、こういうところにおいては今後いろいろ考えていくんだ、このようなことに要約できるのかなというふうに私はお聞きをしたわけでありますが、私は、そういう発想そのものが、なかなか我が国の経済を元気にさせていない発想の根源ではないのかというふうに認識をいたしております。  短期的な、減税を幾らしました、公共投資を幾らふやしました、それでこれだけプラス幾らの需要効果があります、こういう話は我々何年来繰り返し聞いてきておるわけでありまして、そのたびにそのとおりに実績が上がっていないということの繰り返しがここ数年来の実績であるわけであります。にもかかわらず、同じような発想で同じようなことを我々聞かされましても、それはなかなかぴんとこない。元来、長期的な大きな流れ、大きな方向性というものをきっちりと指し示して、その中でこういうことをしていかなければいけない、私はこういうことでなければきちっとした経済政策にはならないだろう、このような認識を実は持っているわけであります。  ですから、堺屋長官が、私ども昨日お聞かせいただいた一番最後発言の中で「今、この国に必要なのは、みずからに対する自信と未来への夢、そして改革を実現する勇気ある実行です。」このようにおっしゃったわけでありまして、まさにそのとおりであります。長期的な流れをきっちりつくるためには、今ここで最後におっしゃった勇気ある実行というものが必要であり、改革が必要である、こういうことであります。  改革というものは、正直申し上げまして必ず痛みが伴うものでありまして、痛みが伴わなければ改革でも何でもなく、これは単なる現状維持にほかならないわけであります。ですから、勇気を持ってということは、実は痛みがあるけれどもそれを乗り越えていかなければいけないから勇気が必要だ、こういうふうに私は理解をしておるわけであります。  そういうような観点からいくと、両大臣の所信、堺屋長官のお話を聞いておりましても、そのような痛みが伴う話は一切出てきておりません。こういうことをするにはこういうような痛みはあるけれどもそれをこらえて頑張ろう、こういうような発想が全く伝わってこない。とにかくいいことばかりを並べ立てて、まあ適当によくなるからというようなことでお茶を濁しておられるようにしか見えない。  堺屋大臣がいろいろおっしゃっておられます近代の礎を開いたと言われる織田信長も、その改革を行うに当たってどれだけ社会に大きなハレーションを起こしたのか、それをめげずに勇気を持ってやったからこそ近代が開けた、このような御認識をお持ちであるというふうに私は認識をいたしておりますが、そういった観点からすると、余りにもいいことばかりの羅列であって、どういう痛みが発生するのかということを正直に国民に伝えていない。であるならば、国民はこれは改革はしないのだなというふうに認識をする。結局は何も効果があらわれない。こういうことの繰り返しになるのではないかというふうに私は考えておりますが、長官、いかがでございましょうか。
  61. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御指摘のとおりでございまして、改革には痛みを伴います。そして、その痛みは既にかなりの分野にあらわれているのではないか。現下、日本は大変不況でございますけれども、これも改革に先駆けて人為的に起こしたものか、自然に起こったものか、いろいろそれはございますけれども、既に相当痛みが出ているのではないかと思います。  政府が今行っておりますことで言いますれば、例えば金融システムでございますけれども、この金融システムは長らく護送船団方式で、大手二十行体制は変えないと言い続けてきたわけでありますけれども、これを大胆に、日本長期信用銀行あるいは日本債券銀行などを国有化して変革をする。これは恐らく、小渕内閣が口先だけではなしに本当に政治と行政の場で改革を行うのだ、市場において不適当なものは脱落するのだということを示した重要なメッセージだと私は思っております。また、市場もそう受け取ってくれているだろうと思います。  これから幾つかの企業で、たくさんの企業でリストラが起こるでしょうし、また、倒産あるいは事業の選別なども起こるだろうと思います。これに対して、例えばリストラに対しては雇用政策を充実させるとかそういったような手を考えてはおりますが、その中である程度そういった流動性が高まってくる。従来の形と違って、流動性が高まってくるということは、既に規制緩和の点でも、あるいは金融システムの点でもメッセージは出されているのではないかと思っております。それを市場もかなり敏感に受け取ってくれていると考えております。
  62. 樽床伸二

    樽床委員 堺屋長官の発言がどうもいつもの切れがないように感じてならないわけでありますが、先ほどからお話を聞いておりまして、二点のことについて私は申し上げたいと思います。  通産大臣も経企庁長官も、盛んに金融問題、金融の昨年の実績ということを殊さら中心的におっしゃっておられるわけでありますが、昨年の金融の問題につきまして振り返りますと、前半部分は私どもが主張した案を採用していただいた、こういうことでありますが、後半部分におきましては我々は全く意見が違うわけでありまして、うまくいっているという評価はあろうかと思いますが、私どもは、後半部分のことの結果うまくいっていない、前向きなことについてはうまくいっていないという認識を持っているわけでありまして、これにつきましては認識が全然異なるわけであります。  さらにもう一点申し上げますと、長官のお話で、経済企画庁というのは元来経済を企画するわけでありまして、現状追随をするための経済企画庁であればこんなものは要らないわけであって、我が国の経済をどういう方向に持っていくのかというのを企画をしていく省庁であろう、こういう認識を私は持っておりますから、そういうことであるならば、こういうような方向に向かっていくのだと明確な方向性を指し示していただかないと、せっかく民間から来ていただいた値打ちがない、このように考えるわけであります。  そういった点からいきますと、金融問題につきまして、私ども一つ認識が違う、こういう点につきまして、私はこれについて質問をするつもりはなかったわけでありますが、お二人の大臣とも金融問題が実績だ、こういうふうに殊さら強調しておっしゃるわけでありますから、それについては少しお聞きしたいということと、余り現状追随の発言ばかりしていただくと、長官、これからの目標を目指すという点におきまして少し私は物足りない、このように思うわけでありますが、二点、いかがでございましょうか。     〔委員長退席、小此木委員長代理着席〕
  63. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 現状を追認している、経済企画庁ではなしに経済分析庁あるいは解説庁ではないかという批判はかつてからございました。今回、十一月に出しました緊急経済対策あたりから、経済企画庁は非常に積極的に、全体として減税部分を含めて二十七兆円になろうかというようなスキームづくりなどに積極的に発言もし、対処もしておるつもりでございます。その結果、今日のような大規模な経済対策が行われている、それの一助を担っている、企画をしているつもりでございます。  まだ足らぬとおっしゃるかもしれませんが、余り世の中を政治的、政策的にいじくるのもいかがなものかと思いますが、この程度の企画ができたということは私自身としては相当頑張ったつもりでもありますし、満足もしております。  次に、金融問題でございますけれども、金融問題がうまくいっているかどうか、この評価は歴史にまたざるを得ないところだと思いますが、少なくとも、従来は護送船団方式と言われたものが、長期信用銀行、日債銀などがこういう国有化になりまして、かなり大胆な政策に転換した。これは恐らく、三年前あるいは二年前の金融政策を御存じの方には驚きの事態になっているのではないかと思います。  さらに足りないところがあるという御指摘があるかもしれませんが、今の状況としては、しかもそれがパニックを起こさないで進んでいるということは、私は、かなりうまいぐあいに進んでいるのではないか、こう考えております。
  64. 樽床伸二

    樽床委員 私はかねてより、堺屋長官は、時代の流れの中の位置づけでいくとハードランディング論者であろう、このように認識をしておったわけであります。大きな時の流れの中で、本格的に国のためにやるべきことは大きな断層をつくってでもそれをやっていかなければいかぬ、このような御認識をお持ちであろうというふうに認識をいたしておりました。実は、私はそのような認識を持っておるわけでありまして、私の考え方はそのような考え方であります。  そのような考え方でいくと、金融の問題につきましては、そういう方向性で進んでいきながら、最後にちょっと安全弁とか逃げ道をつくってソフトランディングの方向に持っていってしまった、そういうような認識を私は持っておるわけでありますが、その結果、前向きな話が結局はぐずぐずして前へ進んでいない、このような認識を持っております。  その一番根本の、ハードランディングかソフトランディングかということにつきまして、長官、御認識をいただきたいと思います。
  65. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 これはここでの所信表明では落ちていたかもしれませんが、経済演説では申し上げたのですが、金融問題の解決のためには四つの重要な原則があります。  第一は、金融問題を整理するときに、倒産や失業などの社会的コスト、これを最小にすること。二番目は、究極的に国庫の負担を最小にすること。そして三番目には、処理期間を最短にすること。そして四番目には、倫理をいかに確立するか、モラルハザードを起こさないこと。この四つが重要な原則だと認識しておりますし、いろいろな学説でもそうなっております。  それで、今委員の御指摘の点は、その中でどれを重視すべきかということでございますけれども日本の現在の経済状況、この不況の状況を見ますと、私は、社会的コストを最低にすることが第一だ。余り連鎖倒産その他がざあっと出るようなことになって失業が高まると、これは日本経済の再生を不可能にするほどの深い傷になるのではないか。そのために今とった政策は、まずまずよくできているのではないか、こう思っております。  ハードランディングというのは処理期間最短の方を重視する考え方でございますけれども、もう少し日本経済がしっかりしているときであればそれも可能でございましょうけれども、今ハードランディングをやりますと、連鎖的な貸し渋りあるいは貸しはがし等が非常に大きく出てくる可能性がありますので、ここはやはり現在の程度のやり方が最善と言えるんじゃないかと思っております。
  66. 樽床伸二

    樽床委員 この話をし出しますともう時間がございませんので、ちょっと本来の路線に戻りたいと思うわけであります。  今のお話にも若干絡んでくるわけでありますが、今のお話の中で派生して考えられるのは、所信の中で、財政の健全性は、まず経済の景気回復、不況からの脱出を先にしてから、その結果、ここにおっしゃった言葉をそのまま申し上げますと、その成果として生じる多様な選択肢の中で財政の健全性を考えていくべきだと。恐らく今おっしゃった後半部分とほとんど発想が同じようなところになってくるだろうと思います。  先ほど我々の同僚からの質問にもありましたように、三百二十七兆円という莫大な借金を抱え、これがまだ減る見込みが全くない、こういう状況でさらにアクセルを吹かしていっているというのがこの十一年度予算であるわけでありますが、そういうようなところでこういうさらっとした表現でやられますと、我々からすると、財政再建はまさに先送りをする、これまでの政治の流れからいくとそういうふうにとられるわけであります。  そうとられぬためには、長期的な形を今の段階から明確に示しておかないと、回復したらこうしますよということを言わないと、いや回復したらそのとき考えますということであるならばまた同じことの繰り返しではないかという懸念を私は持っているわけでありますが、その辺の御認識はいかがでございましょうか。
  67. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御指摘の点は大変重要な問題でございますが、今の経済状況において、まず不況を解決することが第一だ、これが私の認識でございます。  そうしたら、その後どうなるか。その後、一体、経済、財政はどうなるのかということでございますが、経済が回復してまいりますと、まず第一に自然増収、経済拡大による収入の増加、税収の増加、歳入の増加が期待できます。二番目には、ここが大事なところなんでございますが、景気対策のために行われている事業等を大幅にやはり縮小しなきゃいけない、それによって歳出削減をする。そして三番目には、日本政府が持っておりますような諸事業、国有財産、国有事業等をできるだけ民営化することによって収入を上げていく。この三つの選択肢があろうかと思います。そして、それで足りない分はやはり増税をしなきゃならないだろう、それもあると思います。  それで、今から、増税がどれぐらいだ。よく一部の経済学者などは、現在の財政状況に、一定の名目経済成長率と、それに伴う税収の増加、いわゆる租税弾性値を掛けまして、それに国債の金利を掛けるとこういうぐあいになるという数字を出しておりますが、この三つの数字、つまり名目成長率と租税弾性値と金利、この三つの関数がどうなるかが一番問題で、これを固定したら、あとは算術の問題にしかすぎません。  例えばアメリカでございますけれども、今から十年余り前、アメリカは三千億ドルの財政赤字でございました。そのときに、このアメリカの財政が十年後に八百億ドルの黒字になる、今の見通しではさらに黒字がふえるよと言っておりますが、そんなことはほとんど考えられなかったんです。  これは今から分析いたしますと、どうして三千億ドルの赤字が八百億ドルの黒字になったかといいますと、大まかに言いますと、三分の一は増税であります。これは、レーガン大統領のときに物すごい減税をいたしまして、増税を、減税幅に比べると増税の部分は少ないのでございますけれども、幾らか増税いたしました。例えば最高税率でいいますと、五〇%ぐらいあったものを一時二九に下げて、今度三九に戻したというような形であります。そういう増税もありました。  それから三分の一は、経済の成長による自然増収の増加でございます。  そして約三分の一ぐらいは、冷戦構造が終わったことによって、軍事費を中心として歳出を削減しております。歳出削減をしても極端な不況にならないという経済成長があったからできたのです。  私も、この経済が立ち直ってきたときには、歳入増加を見込めると同時に、やはり大胆に歳出の削減を考えなきゃいけないんじゃないか。この切りかえのタイミングを間違えるとまた不況になりますから、大変難しいところでございますけれども、それは注意深く見守って、そのときの削減の覚悟はしておかなきゃいけないと思っております。
  68. 樽床伸二

    樽床委員 ぜひとも御期待を申し上げたい、このように思うわけであります。  とはいいましても、未来永劫、堺屋長官が経済企画庁長官をされ続けているという保証は、現在我が国の政治情勢では予測できないわけでありますから、在任中にきちっとした将来に対するレールをぜひともお引きいただいて、三年後なのか一年後なのかわかりませんが、そのときまでにきちっとしたそういうレールをぜひとも経済企画庁として引いていただいて、それを国民の皆さん方がきちっと納得をして認知をする、そしてそのレールから外れることがなかなかない、そういうような方向に向けて、理想論かもわかりませんが、ぜひとも御努力をいただきたい、このように心からこいねがうものであります。  そして、最後であります。  皆さん方の質問の中にもありました、そして大臣の御答弁の中からも、私とほかの質問者に対する答弁の中にもあったように思いますが、経済戦略会議のことでありますけれども、私は、漏れ伝え聞くところによりますと、結構思い切ったこともおっしゃっているように認識をいたしております。詳細につきまして逐一存じておるわけではありませんが、あらかた、これまでの中ではかなり思い切った方向に向けて努力をされておられるように見受けるわけでありますが、そういうようなことについては全力でもっとサポートしていただきたい、私はこのように考えるわけであります。  にもかかわらず、「十年程度の間に達成すべき我が国の経済のあるべき姿と、それに至る道筋を指し示していただけるものと期待しております。」と。私は、期待をする程度では非常に物足らぬ、このように考えておるわけでありまして、期待をするのではなくて、一緒にやっていくぐらいの決意はいかがかということをぜひともお聞きいたしたいと思います。
  69. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 経済戦略会議は中間報告をいただきまして、近く最終報告をいただきます。今、十年程度のものを指し示していただくというのは、経済審議会の方でございます。  この経済審議会につきましては、私どもの総理大臣の諮問機関でございますが、これから十分検討して、経済戦略会議の提案も踏まえて、それも含んで十年程度のものを審議会の方から答申していただくことになっておりますから期待という言葉を書いたのでございますけれども、現実の問題としては、私自身を含めて、一体となってこれはやっていくものだと心得ております。ぜひ委員の期待にこたえられるようにやりたいと思っております。
  70. 樽床伸二

    樽床委員 生意気なことをるる申し上げてまいりましたけれども、私は、たまたまの暦の上かもわかりませんが、西暦二〇〇〇年をまたぐという今この時期、それから今後十年間、まさにこの十年間が我が国の新たな時代に向けての勝負の十年間であろう、このように考えておるわけでありまして、この十年間をとにかくいろいろなことを前倒し前倒しでやっていかないと、いろいろなハレーションが起こるから上手に上手にやっていくと結局はその期間がどんどん先へ延びて、それだけ我が国にとっては大きなマイナスが出る、私はこのように認識をいたしております。  我々の身の回りの問題につきましてもまさにそうでありまして、我々一人一人の老後にかかわる年金の問題におきましても、そうさほど遠くない時期に大きなハレーションが起きるという予測もあるわけでありまして、悠長なことを言っていることは許されない、こういう時期であろうというふうに認識をいたしております。  本日は、個別の法案についての質問ということではなくて、所信に対する質疑ということでありましたので、私の考えも申し上げながら、ぜひとも、この十年間、特に解散があって政府がかわらない限りは今この十年間のスタートを小渕内閣で切っていかれるわけでありますから、そのスタートラインが、スタートの方向性が間違いなき方向に行かれるように、民間から入られました大臣としてぜひともその高い識見を生かしていただいて、政府を導いていただきたいと心からお願いを申し上げまして、私の質問を終了させていただきます。  どうもありがとうございました。
  71. 小此木八郎

    ○小此木委員長代理 次に、大口善徳君。
  72. 大口善徳

    ○大口委員 公明党・改革クラブを代表しまして、質問をさせていただきたいと思います。  時間もありませんので、早速本題に参ります。  まず、経企庁長官は、テレビ等で非常に表現豊かに最近の景況につきましてお述べになっておられます。そしてその中で、景気は昨年九月の末から十月くらいに底に到着し、定着したという感じは持っている、あるいは底入れの感はあるが、そこをもって反騰すると見るのは尚早だ、こういうようなこと。そしてまた、昨年秋底入れして、十月以降底ばいが続いている。こういう、底入れ、底ばいというお言葉を非常に使われているわけであります。  これに対して、通産事務次官が、これも新聞で見たわけでありますが、景気の底入れの判断を下すのは時期尚早である、そしてまた、横ばいなのか底入れなのか現時点では判断できないと。だから、通産事務次官は底入れと横ばいあるいは底ばいというのは区別しているのじゃないかと思うのですが、そういうことで、一般消費に手ごたえがないというような声も聞いておるしまだ時期尚早である、これが通産事務次官の考えなわけであります。  そこで、経企庁と通産省で底入れについての考え方が違うのか、そこについてまずお伺いしたいと思います。
  73. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 私の景気判断といいますか、現状の景気認識について申し上げますと、現在も景気は大変厳しいと思います。引き続き厳しいと思います。しかしながら、昨年の十月、十一月ごろからは、より悪化するような数字もございますが、改善の兆しも見えてきている。そして、前年度に比べるとかなり下がっているが、前月に比べると低下幅が小さくなる、あるいは逆に良化している、そういったものが入りまじってまいりました。  いつ景気が底入れしたかというようなのは、実を言いますと、経済企画庁でも相当後にならないと諸数字をもとに判断できないのです。したがって、今私の持っておる感じでいいますと、昨年の十一月ぐらいに大体下がるものと上がるものとが入りまじってきて底になったのじゃないか、それ以後は下がるものもあれば上がるものもある、こういうような感じを持っております。  例えばどんなものが上がっているかといいますと、第一は公共事業のベースでございますが、これはやはり、第一次補正予算が出てまいりましてかなりふえております。あるいは倒産件数も、信用保証制度の拡充等で去年の暮れは予想外に少なかった。個人消費の点でも、自動車販売の下げどまり、あるいは電気製品、特に白物家電とかそういったものの売れ行きは好調になってまいりました。半導体の値段も大体下げどまりになっているというようなこともございます。それから、ことしになりましてからは住宅減税等の効果もありまして、かなり住宅相談あるいは展示場に来られる方も増加しておりまして、新しい胎動が見られるのじゃないかと思います。  通産事務次官がどのような認識を持っておられるか直接伺っておりませんが、それほど違ったものだとは思っておりません。
  74. 大口善徳

    ○大口委員 では、この点について通産大臣の方は。
  75. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 私どもはいろいろな数字を見ておりまして、また、企業の在庫の状況ども詳しく観察をしております。また、各企業が行おうとしている設備投資等についても調査をしております。その結果、堺屋長官がおっしゃった感じとほぼ似ておりますけれども、まだ昨年の十—十二月で景気は底を打ったというところまでは断言はできないだろう。ただ、十一月には個人の家計調査はプラスになっておりますが、十一月を過ぎて十二月はマイナスになっております。ただ、マイナスも思っていたよりも小さいというふうにも考えておりますが。  私どもとしては、この一—三月、公共事業を中心とした財政支出によって景気が下支えをされる、あるいはいろいろな今までやってまいりました住宅減税等の効果が具体的なものとしてあらわれてくるだろうとか、いろいろなことを期待しておりますが、まだまだそう楽観的な見通しは立てられませんが、ただ、日本経済はプラスの方向に向かって着実に歩んでいるということは多分間違いないだろうと私は思っております。
  76. 大口善徳

    ○大口委員 もちろん、景気は気からということもあります。しかしながら長官、やはり口ばかり幾ら言っても国民は信用しません。そういう点で、引き続き、いろいろ数字を見ておられてその上で御答弁されていると思いますが、しかしながら、我々としてはやはり最悪のことも考えて、本当に脱したかどうかということを見きわめながら、次の手、次の手ということをどんどん打ち出していかなければならない、私はそういうふうに考えております。  その中で、気になるのが長期金利の上昇でございます。いい長期金利の上昇と悪い長期金利の上昇がございますが、これにつきましては悪い長期金利の上昇、こういうふうに言われておりまして、これに円高、そしてまた株安というようなことが連動してまいって、トリプル悪、こういうことも言われているわけでございます。  そこで、二月の十二日、日銀の政策委員会に経企庁長官出席をされる、こういうことでございますが、これまで出席してこられなかった。今回、この長期金利の抑制の問題について、これは大きなテーマになる、こういうこともあって出席をされるのかな、こう思うわけでございますが、そういうことと日銀の独立性、もちろん日銀法では長官が出席することは認められておるわけでございますけれども、そこら辺の観点、そして出席の理由、そしてその中で長官としてどういうことを発言しようとされるのか、そこら辺についてお伺いしたいと思います。
  77. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 日銀政策委員会には経済企画庁長官が出席するのは当然になっておりまして、前任者は九カ月の間に数回出席しております。私もなるべく出たいのでございますが、臨時国会等が重なっておりまして、たまたま時間がとれなかったから今まで出なかっただけで、今度出るのに特別な理由があるわけではございません。どうやらちょっと国会の方もその時間、始める時間があかしていただけるようでございますので、出席しようかと考えておる次第でございます。  そのときに、長期金利の問題でございますが、これは委員指摘のごとく政府よりも日本銀行が責任を持って行う政策でございまして、政府がこれに今どう言うというようなことは考えておりません。政府といたしましては、経済の動向に悪影響を与えないように日本銀行が円滑なマネーサプライをやってくれることを期待している次第でございまして、日本銀行も十分その点は理解を持ってやっていただいておるものだと思っております。私の方から特に日本銀行にこうしてくれという注文をつけるとかいうようなつもりはございません。
  78. 大口善徳

    ○大口委員 この長期金利の上昇というのは、企業の金利負担が増する、あるいは住宅ローンの負担が増する、銀行の収益等を悪化させる、こういうことであるわけです。そういう中で、日銀も、長期金利というものをコントロールすることはなかなか日銀すらできない、こういうことも大蔵委員会等でも日銀総裁等は答弁をされておりますし、また大蔵大臣も同じような趣旨のことを発言されております。  そういう中で、オプションとして新発の国債の引き受けをすべきか、既発の国債の買い切りオペを拡大するか、あるいはツイストオペレーションをやるか。あるいは、大蔵省におきまして、今十年物に偏っている、だから中期国債の発行額をふやすというようなことも検討されているようでございます。  こういうもろもろのオプションといいますか、についてどう考えておられるかということと、そして、私はむしろ、今まで国債を発行してきたわけですが、それが二十一世紀にとってどれだけプラスになる投資であるのか、そういうような観点、そしてまた、財政のビジョンといいますか、そういうものがマーケットから信頼されるかどうか、そこが一番のポイントじゃないかな、こう思っておるわけでございます。この点について、いかがでございましょうか。
  79. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 国債の発行につきましては、いろいろと幅広い選択肢がございます。  今委員指摘になりました新発債の引き受けというのは、これは私はやるべきでない、やはり日銀法でも禁止されておりますからやるべきではないと思いますが、買い切りオペレーションはある程度今もやっておるところでございますから、これは、その程度がどのぐらいか、あるいは短期金利と長期金利の差がどれぐらいが適切か、これも金融専門家として日本銀行は注意深く見守っておるはずでございますから、それは、どの程度がいいのかを判断して日銀が適切にやっていただけるものだと思っております。  国債の発行につきまして、今十年物に偏っているのを、中期物、特に五年物を発行したらどうかというような議論もございますが、これは我々よりもやはり大蔵省の御検討にまつ方がいいのではないかという感じがしております。  それで、委員指摘の、これだけ財政を赤字にして、三十一兆五百億円の国債を発行してやる事業が果たして将来の役に立つのかどうか、これは大変重要な御指摘でございます。私どもといたしましては、例えば公共事業でございますが、これを今景気対策として考える場合に、やはり景気対策としての即効性、あるいはそれが需要に与える波及性、そして未来社会にどれだけ貢献するかという未来性、この三つを尺度といたしまして選んでいくつもりでございます。  もちろん、この三つを共有するプロジェクトがあればいいんでございますけれども、三つ全部そろっているものだけでは景気を支えるほどの額にならない。そういう意味では、即効性、波及性を重視したプロジェクトも入っておりますが、約五千億円の未来型プロジェクトを組んで将来に備えていくという点も評価していただきたいと思っております。
  80. 大口善徳

    ○大口委員 日米の通商摩擦について通産大臣にお伺いをしたいのですが、今までは輸出によって景気を回復する、非常に影響があったわけですけれども、輸出という点において、いろいろアジアの方も厳しい。そういう状況の中で、日米の通商摩擦という問題が起こりつつある。  特に鉄鋼につきまして、昨年の九月に熱延鋼板のダンピング提訴が、大手鉄鋼メーカー、労組からあった。そして昨年の十一月に、ITC、米国貿易委員会において、熱延鋼材、日本、ロシア、ブラジルに対してクロの仮決定があった。また、昨年の十二月末には、米鉄鋼七社、そして全米鉄鋼労組が通商法の二〇一条に基づいてセーフガード、輸入数量の制限について発動を求め、そしてことしの一月の七日に、アメリカ政府が議会に対して、鉄鋼輸入増に対する包括プランという中で、通商法に基づく輸入制限措置の発動も辞さない、こういうものをにじませ、そしてまた一月十九日、私もあっと思ったのですが、クリントン大統領が一般教書の演説の中で日本の鉄鋼について名指しをして、輸入増がおさまらなければ対抗措置をとる、こういうことがあり、そして一月二十六日には、スーパー三〇一条の復活、大統領命令という形の発表がある。こういう状況が続き、二月にはまた、アメリカの業界の方として冷延鋼板についてもダンピングの提訴の準備をするとか、こういうような動きがあるわけです。  こういうアメリカの戦略、そしてアメリカ議会あるいは鉄鋼メーカー、労組のプレッシャー、これについてどうお考えなのか。また、大臣は訪米もされて、向こうの商務省あるいはUSTRの方にも行かれておる。実際向こうの責任者と会って、その中で感じてきたことも含めてお答え願いたいと思います。
  81. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 日米間というのは非常に緊密でありますし、通商関係も非常に深いわけですから、その日米間でその時々いろいろな問題が出てくるということはやむを得ないことだろうと私は思っております。ただ、問題が出てまいりましたときに、日本としては冷静にそれに対処するという態度で臨む必要があると思います。  確かに、昨年一年間を見てみますと、日本から米国に参りました鉄鋼の量はふえております。従来、アメリカ市場の中で日本の鉄鋼が占めておりました量というのは、アメリカ国内の全体の消費量の中のわずか二%でございました。ただ、それが四%に上昇したということは事実でございまして、二%から四%に上昇したことは、倍になったというふうに表現してもいいですし、一〇〇%ふえたというふうに表現してもいいわけですから、四%の水準が決して高いとは思いませんけれども、二から四にふえたということで、アメリカの鉄鋼業界、また鉄鋼業界からいろいろ話を聞いておりますアメリカの議会等も、この問題を大変重要視したわけでございます。  しかし、これは意図的に日本の鉄鋼業界がアメリカ市場計画的に、洪水的に輸出したものではありませんで、実際は、アメリカの鉄鋼に対する国内需要が大変強くて、しかし一方ではその国内需要に対してアメリカの鉄鋼業界が供給できない、供給力不足ということで、日本を初めブラジル、韓国、ロシアのケースもございますが、そういうところから輸入をしたわけでございます。  しかし、これについては、アメリカのバシェフスキーさんとお目にかかったときも、二度の機会がございますが、鉄鋼問題を非常に深刻に言っておられました。一方、日本では、別にこれは昔のように自主規制というものを皆さんにお勧めするわけにもまいりませんし、また、WTOのいろいろなルールに従った処理、処置をしなければならないということですが、日本の鉄鋼会社各社もそういういろいろな事情を大変よくわかっておられた。と同時に、アメリカの景気もだんだんと鉄鋼需要を減らしておりまして、我々が予想したとおり十一月、十二月と相次いで、日本からの船積みを勘定いたしますと鉄鋼の輸出量は従来の水準に徐々に戻りつつあります。  これは、アメリカもその辺の事情は多分わかってくれていると思いますので、鉄鋼の問題は大きな問題としてはこれから日米間を悩ます問題にはならないだろう、自然にアメリカの心配は消えていくという状況です。  ただ、ここでやはり注意をしなければなりませんのは、日米間の通商問題、特に貿易の相互関係を見てみますと、日本の輸出というのは、対アメリカはほとんどふえておりません。ふえておりませんが、日本のマクロ経済低迷によって、アメリカから日本に対する輸入は一〇%近く減っておりまして、それがあの記録的な貿易黒字を生み出しているということで、日米間のインバランスの問題を解決するためには、やはりマクロ経済のところできちんとした対応をとらなければならないというのが私どもの考え方でございます。
  82. 大口善徳

    ○大口委員 アメリカが一国好況、そしてドル高の政策、そしてまたそれの需要があったということであるわけでありますが、そういう状況の中で冷静に対応していく。ただ、議会の方もちょっと熱い反応を示しておられるようだし、これからアメリカが、ガラスですとか、米だとか保険だとか、あと通信、建設だとかそういうことで、個別分野についてさらに要求を拡大していく、こういう動きもあります。WTOについて尊重していくというアメリカの基本的な部分がありますから、また従来とは対応は違うのではないかと思うのですが、しかしながら、これは油断ないようきちっと対応していくべきではないかな、こういうふうに思っております。  次に、今回の景気対策の中で、やはり金融システムの再生、これが第一である。昨年からそれをやってきたわけでありますけれども、そういう中で、金融再生委員会が、九九年の三月期に不良債権の処理を基本的には終了していく、そして二〇〇一年の三月末までに金融システムの再構築をしていく。護送船団と決別する、日債銀も国有化しました、こういうことなわけです。そしてまた、資本の増強に当たっては、償却だとか引き当てについてかなり厳しい基準を立てた。これから国際会計基準導入されますし、分類についても厳格にしていく、こういうことであります。  そうなってきますと、これはある方から聞いたのですが、日本はGDPの一・四倍金融機関が貸し出しをしている。欧米は大体一倍だということで、そういう点で、そこら辺の貸し出しについて、かなりこれが欧米並みに圧縮していく可能性も出てきている。そしてまた、金融機関が厳しいリストラをするわけでありますから、借りている方の全産業についても、リストラですとかそういうようなことが起こってくる。もちろん貸し出し態度についても、私はキャッシュフロー重視という形でかなり厳しくなっていくのではないかと思っておるわけです。そういう中で、二〇〇一年の四月のペイオフの実施延期問題、こういうものも、自民党の一部からもまた銀行関係からもそういう話も出ております。  こういうことで、金融再生委員会の厳しい取り組みの経済に対する影響、貸し出し等に対する影響、そしてまたペイオフの延期なんということについて、経企庁長官はどう考えておられるか、お伺いしたいと思います。
  83. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 金融再生問題は、先ほどからも議論がございますように、我が国経済の極めて重要な問題でございます。したがって、私はペイオフの延期というのは今のところ考えるべきではないと考えております。当然それに伴いまして、委員指摘のような貸し渋りあるいは信用収縮という心配もございます。それから、日本の貸し出しがGNPに比べて一・四倍、かなり大きい。これはバブルのときに相当増加したのでございますけれども、この反面には日本の直接金融市場が育っていないということもあるのです。したがって、このペイオフを実施すると同時に、金融の多様化ということもあわせて考えていくべきではないかと考えております。
  84. 大口善徳

    ○大口委員 その金融の多様化、間接金融だけではなくて直接金融、こういうことなわけであります。そして、私も資金調達については新しいチャンネルをいろいろ用意すべきである、そういうことなわけでありますが、国民的に言ってもこの直接金融、投資家意識というのがなかなか育っていない、こういうことで、これをどう育てていくかという非常に難しい問題もあるわけです。  そういう中で、新しい金融調達のチャンネルをつくっていくということで、企業一般と中小企業の問題とあるわけですが、中小企業のことはまた後でお伺いしますが、その新しいチャンネルについて、経企庁としてどういう新しいチャンネルを考えておられるか、また、こういうチャンネルは有効であると考えておるか。また、通産省としてどういうチャンネルがあるのか。中小企業の問題は後でまた聞きますから、それは除外していただいて、お伺いしたいと思うのです。
  85. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 直接金融市場ということになりますと、やはり社債、債券等の発行が中心になると思います。この場合に、大企業でございますと単独で発行できるわけですが、中小零細企業あるいは新しく起こすベンチャー企業等になりますと、ある種のパッケージを組みまして、何百社で合わせて何ぼ。そういうときに、特定目的会社、今度できましたSPC、こういったものの活用も非常に重要だと思います。  私ども、金融の専門家ではございませんが、そういったことも含めて、経済審議会を初め各種の部会でいろいろな諸外国の例などもあわせて考えております。既に金融機関の多くの窓口で証券の取り扱いが可能になってまいりますので、そういう点でも非常に便利ではないか、多くの方々に参加していただけるのではないかと期待しております。
  86. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 例えば昨年一年間をとってみますと、金融機関が自己資本比率をある一定水準のところに維持したいということで、資産の圧縮を行っておりました。そういう中で、なかなか企業が必要な資金を手に入れるということは難しいということで、特に昨年は、金融機関からの間接金融ももちろん行われておりましたが、やはりより直接金融に頼るという傾向が見られたと私は思っております。これは社債を発行した局面もありますし、コマーシャルペーパーを出して、銀行に買ってもらって、また銀行がそれを日銀に持ち込むということも昨年大変行われたわけでございます。  いずれにいたしましても、欧米先進諸国の金融の状況を見ますと、もちろん間接金融もございますけれども、必要な長期資金などは間接金融よりは直接金融で安いお金を取り入れようという傾向がございまして、日本社会も恐らくそういう方向に向かっていくのだろうと私は想像をしております。  そのためには、やはり法的な整備が十分かといえば、例えば電子取引の中での直接金融とか、そういう未開拓の分野はまだまだあると思っておりまして、これらは通産省も参加して、関係省庁の間で社債やCPの発行のための環境整備は今後とも続けていかなければなりませんし、企業にとっては、資金を手に入れる重要な手段としての直接金融、資本市場での直接金融というのは、これからますます重要な資金獲得手段になってくると私は考えております。  中小企業の問題は、後ほどまた別に。
  87. 大口善徳

    ○大口委員 そういう中で、通産省も電子CP法というものを検討されている。券面化されていると手形法の適用もあるということから、決済も二日かかる、そういうことで、これを電子化していくというふうなことも、これはもうアメリカ等でもなされていることですから、早急にやるべきだ、こういうふうに私は考えております。  そこで、中小企業の問題に参ります。  中小企業の貸し渋りにつきましては、特別保証枠というようなもの、あるいは政府系金融機関の融資ということで、四十兆という枠を設定されて、これについては旧債の振りかえ等の問題が結構、我々地元におりますとそういうことが言われておりますし、私も相談を受けたことがございます。ただ、ある程度これは機能して、倒産件数がそういう点で減少したということは効果があった、こう私は思うわけでありますし、またこれからもこのものはしっかりしていかなければいけない、こう思っておるわけでございます。  そこで、中小企業政策についてお伺いしたいと思うんですが、今通産省におきましても中小企業政策研究会というものが開かれておって、新たな中小企業政策方向性について議論がなされている。私は、昨年の新規事業創造法ですとか、あるいは今回提出される経営革新法等の前に、本来からいえば、順序としては新たな中小企業政策はこうだというものがあって、そしてそれに基づいて、こういう法案、こういう法案という形で出していく。新たな政策のここに位置づけられるんだなと。中小企業政策の新しい地図があって、そしてその中できちっと位置づけをして法が出されていくというのが本来のあり方だと思うのです。  これまでの中小企業のいろいろな政策を見ましても、増築増築でもうかなり古くなっているわけでして、増築増築でわけがわからなくなっている、使い勝手も悪い、こういうことですから、まずぶち壊して、そして新しいものをつくっていく、こういうことではなかろうか、こう思っております。ですから、私としては、新たな中小企業政策方向性、そういうのがまず早急に打ち出しがあって、それに基づいていろいろな立法をしていく、これが本当のあり方だろう、こう思っております。  いずれにしましても順序が逆になっておるわけですが、それだけ今の中小企業対策というのが緊急の課題であるということもその原因ではないかと思うわけでありますが、そういう中で、これまでの中小企業対策の理念というのが、格差の是正。中小企業が弱者である、そういう位置づけをして、そしてこの二重構造について格差を是正していこう。そこから、生産性の向上ということで、高度化資金等の融資。ただ、この高度化資金についても、メニューが多くてわかりにくいとか、非常に手続が煩瑣で時間がかかるとか、使い勝手が悪いと言われておるわけでありますが、そういうもの。そしてまた、事業活動の不利の補正という形で政策を立ててきた。今度は、その理念を変更していくべきではないか。  例えば開業と廃業の率の逆転、これも、経企庁長官もアメリカの例を出しておっしゃっておられました。そしてまた、中小企業の多様性の増大ということから、新たな理念という形で、多様で活力ある独立した中小企業育成、発展、こういうこと。そして、企業というものを一つの苗床という考えで育てていくということであります。  ただ、中小企業は大企業に比べて弱者という面も当然ありますし、そういう部分についてまた格差というものもありますし、そこら辺を全く捨象することもできない、こういうふうに私は考えておるわけです。  こういうふうにまた理念、政策について新たな方向を打ち出していく、こうなってきますと、中小企業の定義の問題も出てくる。今まで、中小企業の従業員の人数、それから資本という形でやってきているわけですが、中小企業にもいろいろな多様性がある。その多様性に合った形で政策をきちっと打ち出していかなければならない。そういう点で、中小企業の定義というものの再検討も十分考えなければいけない。  そういうもろもろの中小企業政策方向性、新たな中小企業政策方向性について、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  88. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 中小企業庁長官のもとで、長官の私的な勉強会と申しますか、そこで今後の中小企業政策方向性というのは今勉強をしております。いずれお話しできる機会があると思いますが。私は、やはり、中小企業日本経済の活力を支えてきたことも大事な事実ですし、また雇用を吸収してきたということも大事な点でございますし、また、新しい技術とか製法とかそういうものも中小企業の中で多く生み出されてきたわけでございます。いわば中小企業というのは日本経済にとっては大事な宝物であると思います。  東南アジアを回ってみますと、いわゆるひとつの工場をつくったけれども、それを支える中小企業、あるいはサポーティングインダストリーと言ってもいいのですが、そういう周辺事業が充実しないために、実際は工場が能率的に動かないということもあります。  日本中小企業は、いろいろな分野がありますので一言では論じられませんが、金融的な側面からやはり特別な支援をする必要があるのだろう、これが第一点です。  第二点は、小さいがゆえに技術革新とかあるいは研究開発とかということでは困難に遭遇する可能性がありますので、社会全体としてそういうものを支える必要があるのではないかと思っております。  また、人材確保したり情報を入手したりということは組織が小さいだけに大変になると思いますので、人材とか情報を入手するためのインフラとかそういうものをやはり国あるいは地方自治体で整備する必要があると思っております。  概して言えば、私は、サービスを提供している中小企業と製造業に携わっているところと全く違うと思いますが、やはり製造業等をやっておられるところには、人材技術資金、あらゆる面で応援をする、あるいは税制でも応援をするという考え方が必要でありますし、流通に関しては、いわば商店街活性化というのは、中心市街地活性化法という法律はつくりましたけれども、やはり商店街中心に町を活性化していくという考え方、そのためには、後継者難とかいろいろな側面がございますので、中小企業の問題は一言で解決策があるわけではなくて、出てくる問題を一つ一つ丁寧に解決するというアプローチが必要であるというふうに個人的には思っております。
  89. 大口善徳

    ○大口委員 その中で私、大臣の所信を見ておりまして、商店街振興について触れられていないということで、昨年あれだけ議論されてどうなのかなと、ちょっとこれは指摘をしておきたいと思っております。  それから、そういうことで、中小企業資金につきまして、資金調達、非常にこれが大事になってくる。それで、投資事業有限責任組合ということで、有限責任ということを盛り込んで、これが大きな資金調達をして、今いろいろ工夫もされております。  それから、製造業というのを見てみますと、やはり銀行は技術がわからない、だから要するに担保主義になっている。銀行は、本当に技術がわかれば技術を評価して、それに対して融資をしていく、こういうことじゃないかなと。そういう点で、金融機関の技術評価能力をどうアップしていくか、強化していくか。直接、間接金融についても、やはりそういう金融機関の技術評価能力のアップ、そしてまた投資事業組合等の活用が大事だ、こういうふうに思います。  そういう点でいきますと、今大学あるいは国立研究所とジョイントをして投資事業組合というものをつくって、いろいろ新しい試みがなされております。例えば、東海大学と湘南信金。東海大学の方で技術についてこれを見ていく、また応用についてアドバイスしていく、また実験等もお手伝いをする。そういうものと金融が組んで、投資事業組合等をつくってやる。  それから、特許キャピタル株式会社というのができるそうでありまして、これは国立研究所の未使用の特許があると、その未利用の特許をいろいろと応用した形にして、それをベンチャー企業に提供し、そしてまた投資事業組合という形にして投資も行っていく。それから、関西ベンチャー・キャピタルというような形で、吉田先生がやっておられるような試み、こういうものもあります。そういうことで、大学の機能といいますか、大学が果たす役割は非常に大きいのじゃないか、こういうふうに思っております。  そういうことで、一つは、技術の商業化について、これをコーディネートできるような人材を発掘する。大学でそういう者を育てていくということも大事でしょうし、また今、直接金融の、あるいは投資事業組合において、技術評価能力をアップするために大学が非常に大きな役割を果たすのじゃないか。そういうことで、きょうは文部省に来ていただきましたものですから、ベンチャービジネス・ラボラトリーとか、あるいは共同研究センターと銀行の提携とか、こういうことについて御答弁願いたいと思います。
  90. 若松澄夫

    ○若松説明員 ただいま先生から御指摘ございましたように、大学の持っております高い研究水準、あるいは技術革新を生み出しますポテンシャルというようなものに対しまして、産業界等からの連携協力という要請は大変高まっておるというふうに私どもも思っておるわけでございます。そういうことから、私どもといたしましては、国立大学におきますところの産業界との連携協力の窓口ということで、共同研究センターというものを各大学に設置してまいっております。  この共同研究センターと申しますのは、民間との共同研究などの実施の場となることのほかに、企業等の技術者に対します高度な技術研修、あるいは研究開発に関します技術相談というようなことなどを行いまして、地域の産業との連携協力や活性化に資したいということで設置をいたしておるものでございます。昭和六十二年からこれは設置をいたしてきておりまして、これまでに四十三の都道府県、五十二の国立大学に整備をいたしてきているわけでございます。  特に今年度、十年度におきましては、従来の共同研究センターとは若干タイプを異にいたしましたいわゆるリエゾンの機能を有して、新技術、新産業創出を目指します新しいタイプの共同研究センター、キャンパスインキュベーションと呼んでおりますけれども、そういうような共同研究センターというものも設置をするということになっておるわけでございます。こういう共同研究センターの中には、先生指摘のございましたように、銀行とタイアップをいたしまして地域企業の支援を行うということを行っている例が幾つかあるということで承知いたしております。  これは宮崎太陽銀行のパンフレットでございますけれども、一番下に、ちょっと小さくて見えにくいかと存じますが、協力研究機関として宮崎大学の地域共同研究センターとタイアップをしているということが記載されておるわけでございます。こういうように、宮崎大学の共同研究センターでは平成九年から地元の宮崎銀行また宮崎太陽銀行と科学技術相談等に関する業務提携というものを交わしてございまして、企業の新技術、新製品の開発というような中で生じました技術的な相談というようなものにつきましてセンターに銀行が取り次ぎをする。そしてそこで、大学等の中では、発展をいたしますと、共同研究などに発展をしていくというようなケースもあるというふうに聞いておるわけでございます。  先生の御指摘のような大学の持っておりますポテンシャルというものを、こういう宮崎大学の例も含めまして、広く地域の企業産業との連携ということを図っていくということは、国立大学におきましても重要な使命の一つというふうに私ども考えておりまして、今後とも、地域に根差しました各大学の多様な取り組みというものにつきまして積極的に支援をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。     〔小此木委員長代理退席、委員長着席〕
  91. 大口善徳

    ○大口委員 そういうことで、大学を活用していくというのは非常に大事だということです。  これについての大臣のお考えと、それからもう一つ、今、中小企業が社債を発行するに当たって保証の付与をやる。これは、商工中金は法律上はできるという話を聞いております。信用保証協会についてはどうなのか。そういうことによって、中小企業の社債発行、直接金融の手段としてそういうものを考えていけないか。  ただ、中小企業もその場合はディスクロージャーをしっかりしなければいけないと思います。ですから、ちゃんと監査法人等の意見書等も必要であると思いますが、いずれにしましても、そういう中小企業が社債を発行するに当たって、少しそういう市場が育つまで積極的に保証をしていくということは大事なことじゃないか、私はこう思っております。  マーケットの方にもいろいろ聞いてみましたが、そういうことが市場形成に当たってプラスかマイナスか、いろいろ検討を要するが、プラスと判断していいのじゃないかという意見を言う人も結構出ております。そういう点で、ディスクロージャーを前提として、中小企業の社債発行について公的な保証の付与ということについてのお考えもお伺いしたいと思います。
  92. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 先ほど間接金融から直接金融へということで御答弁申し上げましたが、中小企業もいずれ直接金融ということに重点を置くという時代が来るだろうと私は思っております。そのときに、社債なのかCPなのかわかりませんが、そういう手段をとります。  そもそも、社債に対して保証をつけるということが正しいことなのかどうなのか。やはり社債というのは、ある企業が発行して、そのリスクに対していわば金利が決まってくるという世界なのであって、保証をつけて、結局その社債を買ったことで全くリスクがなくなるというのは本当に資本市場として正しいのかどうかという議論もありますが、一方では、そんな原則論を言っていれば中小企業の直接金融は育たないという意見もありまして、通産省でも今研究をしているところでございます。  そこで、どういう方々と御相談しているかといいますと、保証協会を初めとして幾つか中小企業の金融をやっておられるところの意見を聞きながら、保証ということ、または中小企業の直接金融はどうすれば広がっていくかということを今研究をしております。ただ、むやみやたらにやりますと、そういう社債市場などは大混乱に陥りますし、その辺のあんばいが難しい話に実はなっているわけです。  いずれにしても、大変大事な点でございますから、今後とも研究を続けてまいりたい、そのように思っております。
  93. 大口善徳

    ○大口委員 そういう点では、中小企業のレーティングといいますか評価制度というようなことも育てていかないといけないんじゃないかな、そういうふうに思っています。  次に、コンピューターの西暦二〇〇〇年問題について、中小企業についてちょっと心配しております。  昨年の十月から十二月、五千六百社に調査したところ、基本ソフトとハードウエアが、中小企業全体で二〇%ですが、五人以下というのが二八・五、六人から二十人が二六・五が未対応。それから応用ソフトについては、中小企業全体が一九・一、そして五人以下が二八・二、六人から二十人が二八%が未対応。それから設備、機器等の制御システム、これは三一%が未対応、こういうことです。こういうことについて、中小企業の二〇〇〇年問題への対応についてどう考えるか。  そして、二〇〇〇年一月一日以降も、例えばトラブルが起きた場合にどうするかということで相談窓口を置く。そしてまた、SE等の直接派遣制度をやはり二〇〇〇年の一月一日以降もやるべきじゃないか。あるいはそのための金融、税制、リースの利子補給等もやるべきじゃないか、こういう意見もあるわけですが、これについてどうお考えでしょうか。
  94. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 先生指摘のように、二〇〇〇年問題というのは、特に中小企業者にとっては大変深刻な面があろうかと思います。と申しますのは、大企業、中堅企業の場合ですと、技術力あるいはノウハウを含めた人材等々、あるいは資金力もございますが、中小企業においては一般的にはそういった面で格差があるというように我々は認識しております。  先ほど御指摘をいただきましたように、平成八年から経年的、経時的にいろいろ対応状況について調査をいたしております。先生指摘のように、二六%とか、あるいは三一%とか、改善はしてきておるんですが、依然三割ぐらいの方は対応ができていないという状況にございます。そういった観点から、私どもとしましては、既に御指摘をいただいたような低利融資あるいは税制上の措置、あるいは相談体制というのを現在組ませていただいております。  二〇〇〇年の一月以降について、つまり二〇〇〇年を迎えてからどういうことになるのか、それに対する支援策を講ずるべきではないかという御指摘でございますが、既に、来年の三月までは、相談、指導体制、あるいは金融、税等、手当てをしてございます。その後さらに、これは余り予想はしたくありませんが、さらなる手当ての延長が必要であれば、その時点でまた検討議論をしてまいりたいと思います。
  95. 大口善徳

    ○大口委員 経企庁長官にお伺いしたいのですが、私は、昨年三月十九日に予算委員会で消費者契約法について質問をいたしました。そのときに、当時尾身長官が、「来年の通常国会にはこの法律を提案させていただくべく、全力を尽くしているところでございます。」ということで、この消費者契約法について、来年、つまり今ですね、この通常国会で提案をします、全力を尽くします、こういうふうに答弁をされているのです。  私は、法制審議会にかけると時間がかかりますけれどもというようなことも危惧しておったわけですけれども、そうじゃなくて、民事局で、そういう研究会でもってやって、法制審議会にかけませんよというようなことで、できるだけ、できるだけというか、ここではもう、全力を尽くしてまいります、こういうことであったわけです。  ところが、今の経企庁長官の所信には、「いわゆる消費者契約法の制定も積極的に検討いたします。」と。何か、積極的に検討いたしますというのは役人言葉で言えばやらないことじゃないか、そういう気がするわけです。しかし、規制を撤廃する、そうなってきたときに、やはり消費者と事業者の民事ルールを確立して事後的なチェックという形をしていかなければ、私は大変なことになると思うわけです。  そういう点で、なぜ尾身長官がこの通常国会で出すと言ったものが出せなかったのか、その理由と、それから、いろいろ団体訴訟、クラスアクション、あるいは裁判外の簡易な紛争解決の手段、そういうことについてどう考えているのか。そして、来年の通常国会では必ず出す、こういうふうに長官に言っていただきたい、こう思っております。答弁を短く、もう一問ありますので簡潔に。
  96. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 消費者契約法というのは、非常に広い範囲の、消費者と事業者との関係を律する民事的な法律でございまして、これをなるべく早く実施すべく、尾身長官、そしてそれを引き継ぎました私自身も大変努力をいたしました。そして、広く意見を聞くということで、前任者の尾身長官も答えておられますように、私どもも二十八業種五十二団体から意見を聴取いたしました。  その結果、いろいろと問題があることが判明いたしまして、残念ながら、私自身としてはちょっと注目されるような法案だから出したかったんですけれども、正直言って出したかったんですけれども、いろいろと問題があるのでさらに勉強する必要があるということが判明いたしました。  その一つは、重要事項というものの内容でございます。一体どういうものを重要事項とするか、これを明確に規定することが非常に難しいということであります。  第二番目は、不当条項というものがございまして、不当条項が約款に入っていれば契約取り消しになるという仕掛けになっているわけでありますけれども、不当条項とは一体どのようなものを言うべきであるかというようなこと、これは三十数項目を並べて検討したのでございますけれども、容易に結論にまだ達しておりません。  さらに、それぞれの業種について特殊性がございまして、お医者さんの場合はどうなのか、宅建業者、エステなんというのはよく出ておりますけれども、さらに建築、設計になればどうなるのかというようなことになりますと、非常に難しい問題がございまして、必ずしもクリアにするわけにはいきませんでした。  また、今、大変新しい業態がどんどんできております。これについても検討する必要があります。例えば、通信衛星については何が重要事項か、何時間放送するというようなものは指定しなきゃいけないのかどうか。あるいは、コンピューター取引についてどのような問題を考えるか。さらに、金融の自由化に伴ってどんな条件が出てくるのか。大変大きな変動期でございますので、安易にできない面もございます。  私といたしましては、さらにこれらの問題を鋭意検討いたしまして、決して後ろ向きではございません、鋭意検討いたしましてできるだけ早くやりたいと思いますが、来年必ずやると公約できるまでにはまだ自信がございません。その点、御了解いただきたいと思います。
  97. 大口善徳

    ○大口委員 尾身長官が昨年、来年中にと言ったことがかなり今、堺屋長官らしからぬお話でございましたが、大臣の答弁というのは経企庁の約束なわけですから、来年ぜひともこれを出すというように、全力を尽くします、こういうことは言っていただかなきゃ僕は困りますが、どうですか。
  98. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 来年出すように全力を尽くしますが、必ずできるという自信は今のところございません。
  99. 大口善徳

    ○大口委員 最後に、今回のダクタイル鋳鉄管製造業におけるシェアの協定事件、やみカルテル事件についてお伺いしたいと思います。  日本は、平成二年のやみカルテル告発方針、厳しくやると方針が出てから五件刑事告発事件があるわけですが、アメリカの場合は、司法省の反トラスト局において、平成五年八十四、平成六年五十七、平成七年六十、平成八年四十二、平成九年三十八、こういうふうにかなり刑事事件になっております。ですから、日本の公取はちょっと取り締まりが弱いんじゃないか。アメリカは千七百二十四人おりまして、公取の場合は五百ですから、数からいえば確かに少ない。それにしたって、私は、二年に一回ぐらいの刑事告発事件というのは余りにも少な過ぎる、こう思うわけです。  今回の件におきましても、なぜ三十年も放置をしていたのか。情報は公取委員会にはいろいろ入っているわけです。なぜこんなに遅くなったのか。そしてまた、今回告発をするわけでありますが、さらに排除命令とか売上金の課徴金等が今後どういうふうになっていくのか、お伺いしたいと思います。
  100. 根來泰周

    根來政府委員 ただいまのお話でございますが、アメリカと日本制度が違いまして、日本は、公正取引委員会というのは行政措置をとる役所、そして悪質なものについては告発という制度をとっているわけでございます。  それで、ただいまの具体的事案について、三十年やっておったか四十年やっておったかというのはこれからの調査あるいは捜査の結果わかることでありますけれども、仮にそういうことがございましたら、私どもの網の目が少し粗かったかなという反省をするのでございますけれども、ある意味では、こういう寡占業種におきましてはなかなか端緒がとりにくいということもひとつ御理解いただきたいと思います。  いずれにせよ、平成二年六月の公正取引委員会の方針を我々も踏襲いたしまして、悪質なものに対してはどしどし告発するという趣旨でございますので、ひとつ御理解賜りたいと思います。
  101. 大口善徳

    ○大口委員 では、以上で質問を終わります。
  102. 古賀正浩

  103. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 初めに通産大臣に、要望といいますか、ある意味ではお礼といいますか、申し上げたいと思いますのは、先ほども委員からお話が出ておりました信用保証協会を使っての融資制度。  私の体験でございます。数日前に私の地元の行政の長が、大変助かったと。それは昨年の四月—十一月で、私ども二つの行政区にまたがっておりますが、どちらも大体七十件前後の倒産件数でありました。ところが十二月には、荒川区はゼロであり、墨田区ではわずか四であった。そして、荒川区については、七百億に近い、六百六十億に近いお金が三千七百人ぐらいの人に貸し出された。墨田区でも特別枠だけで一千億を超えた。こういう成果は非常に高く地元から評価をされているのでございますが、この制度を具体的に法律にして、予算をつけて実現してくださった与謝野通産大臣に、私はそれだけでも平成の名大臣と言ってもいいぐらいだと思っております。これはまじめな話です。  そこでお願いしたいのは、せっかくこれだけの効果が出てきたのですから、例えば、きょうは御検討いただくということで申し上げるのですが、借りてしまったけれども、今度はそれを返す段になってその体力が持続できるかということをよくもう一度検討していただいて、際限ない追加融資という意味じゃなくて、さらに追加ができるか。またもっと簡単に言えば、返せる仕組みを、例えば少し返済期間を延長してもらうとか、もちろん利率もそうです、保証料もそうですが、下げてもらえるものは下げてもらう、そういうようなことをひとつ検討していただいて、これは大事な問題でございますので、これをさらに御検討いただきたいということを要望申し上げておきます。  もう一点は、この種の政策というのは新規の政策でもありますから、いろいろと評価が分かれるところで、せっかくこうやって、助かった、助かったという人がいるのに、依然としてモラルハザードの問題を取り上げる人もいます。しかし、現実に倒産件数と、それからこれはなかなか数字には出ません、自殺された方々が減ったとか、それから失業者が減ったとか。こういう政策による結論がどうなったかということを、お互いに、何といいますか、バリューアナリシスとでもいうのかエスティメートというか、そういうものをやって発表するということが通産省として大事ではないかと思うのです。  実は我々は統計を今ここに持っておりますけれども、全国信用保証協会にはこの都道府県別の実績しかないのですね。区市町村に対してはどうなのかということは、それぞれのところに聞かないともちろんわからない。では倒産との関係はどうだ、改善されているんじゃないかといっても、そういうデータが一つになって出てこない。そういううらみがありますから、これも所管大臣としてぜひ御指示をいただきたい。  それから、当然、大口委員から指摘された債務のつけかえも、これはさらに厳しく金融機関に御監督をお願いしたいということを要望しておきたいと思います。  そこで、質問に入らせていただきますが、産業再生計画、二十九日に閣議で決定された問題を中心に五、六問お尋ねをいたします。  まず、産業再生計画で、サプライサイドの強化をしなければいけない、有効需要が減少しているためにということでございますけれども、しからばなぜその有効需要が減少したのかということは、政策的な問題ではなくて、産業構造の面で何か要因があるのか。つまりもっと平たく言えば、わかるのです、大体。制度疲労みたいなこともあっただろうし、それから一産業三十年とかいうようなこともあって、国際競争力の中で苦労していることもよくわかるのですが、念のため、日本産業のどこに問題があったのかをお尋ねしたいと思います。
  104. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 原因は十年以上さかのぼらなければならないわけですが、やはり日本経済はバブルに浮かれた時期がありまして、あらゆる分野の方々が将来に対して楽観過ぎるほどの見通しを立てました。そういう楽観的な見通しに立って、非常に生産性の低い分野にどんどん投資を行った。その結果、社会全体としては生産性も低くなりましたし、投資過剰によって供給力の過剰というものが出てまいりました。  したがいまして、そういう面では、過剰人員を抱えている、過大な投資をしてしまった、設備はあり余るほどできた、供給力もふえた、そういうやや肥満体質になっております。それをどういうふうに整理するのかということを考えなければなりませんし、整理した上で、どういうふうに日本産業が将来に向かって飛躍をするのかということも考えなければなりません。これらはいずれも、一言でサプライサイドのという表現をしておりますが、実際は、過去の清算と将来の飛躍という両面を考えていくというのが産業再生計画だろうと私は思っております。
  105. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 今のお話の中で一点、これも要望しておきたいと思いますのは、過去の清算をして、過剰な設備を廃棄するのか償却するのか、いろいろな方法があると思いますが、いずれにしても、投入した、要するに投資を決定した、設備投資をした人々にとっては、償却し切れていなければこれは負債で残るのですね。だから、これに対する手当てももちろん十分していただきたい。これは要望であります。  そこで次に、私は日本の高コスト体質というのは、結局は供給サイドの問題だろうと思います。しかしそれは、日本の置かれている地政学的な問題もありましょうし、それから、資源が石灰石と米と野菜以外はほとんどとれない、こういうことももちろんありましょうし、それから、人口構造の少子高齢化ということもあるでしょう。それから一つは、日本経済産業の体質で、オリジナリティーというものをなかなか出さずに、先進諸国の、明治維新以来の追いつけ追い越せみたいな発想で、人のまねをすると言うと語弊があるけれども、そういうことには大変すぐれているけれども、自発的に何かを開発して日本特許を取るというような感じは余りない、特にリーディング産業では。そういうこともいろいろあるのだろうと思います。  そこで、これは政府委員にお伺いしますけれども、生産性の国際比較というのがよくいろいろなところで出されます。  日本がとてもよい時代もあったのに、不景気になった途端に今度は日本の生産性が低いなどということを言われるわけですけれども、例えばアメリカが、メイド・イン・USAというMITの報告書で有名になりましたけれども、欧米と日本とアメリカを比較して、生産性を上げていかなければいかぬ、こういうようなことを盛んに言って、実体経済としてはアメリカは改善ができたと言う人と、いやそうではないんだ、何とか金融の資産の運用でアメリカは食っているんだとか言う人もいます。  決定的な生産性の国際比較のデータというのは、どこに依存して、今どういう事情なのか。それをちょっと議論していただかないと質問の基本が成り立たないので、産政局長さんでもどなたでも結構です、お教えください。
  106. 江崎格

    ○江崎政府委員 今先生の御指摘お話に関連しまして、私ども手元に二つの種類のデータを持っておりますけれども一つは、OECDの行いました先進国における生産性の国際比較でございます。  これによりますと、日本の場合には、一九五〇年から七三年の場合に、年率の生産性の伸び率が四・六という数字でございます。当時はOECDの各国平均が二・七、それから御指摘のアメリカの場合は年率一・五%という伸びでございます。  それが、七三年から八七年になりますと、日本が一・一、OECDの平均は〇・八。ですから、日本はまだこの時点では平均を上回っておりました。アメリカは、このころは実はマイナスになっておりまして、マイナス〇・二という数字でございます。  その後、八七年から九三年の平均でございますが、これになると随分様相が変わりまして、日本は〇・八と大分落ちてまいりました。この期間、OECDの平均は〇・九でございますので、日本はついにOECDの平均を下回ってしまったということでございます。一方、アメリカは、この期間〇・六ということでございます。  それから、もう一つの御参考になるデータということでございますが、スイスのIMDという一種の研究機関でございますが、ここが世界競争力白書というものを毎年出しております。  これは、八つぐらいの大きな項目に分けまして、競争力といいますか、企業にとって事業活動のしやすさという観点だと思います。つまり、その国の政治的な安定性の問題とか科学技術予算とかそういうものを比較しておりますから、事業環境はその国がどの程度国際比較で好ましいか、こういう比較だと思いますが、これは、九〇年代の初めぐらいまで実は日本は一位だったのでございますけれども、その後、日本は順位を落としてまいりまして、最近では、九八年では四十六カ国中十八位というところまで落ちてきているということで、日本が国際的に見てかなり事業環境の面で見て劣になってきている、こういうことが言えるかと思います。
  107. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 局長、もう少し今の、私も大体その資料を知っておりますけれども、四十六カ国中十八位に落ち込んだ理由を、今抽象的なおっしゃり方をされましたけれども、具体的に例えばこうだというところがありましたら教えてください。
  108. 江崎格

    ○江崎政府委員 今、八項目と申し上げましたけれども一つは、例えば国内経済状況がどうであるか、あるいは国際化の程度がどの程度進んでいるか、それから政府の体制の問題、それから金融のシステムの問題、それから産業活動にとってのインフラ整備の問題、それからそれぞれの経営の問題、それから科学技術の進展の度合い、こういったようなもの、それから国民の、恐らく人口の大きさの問題なり人口構成の問題だと思いますが、そういったような項目にそれぞれ分けまして国際比較をしております。  この中で実は、科学技術に関する項目だけをとりますと日本はまだまだいい方なんですけれども、その他の項目でさっき申し上げたように相当順位を落としている、こういう状況でございます。
  109. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 私が今のことをあえてお尋ねした理由は、サプライサイドというふうに言いますけれども、やはりこれは厳密に定義しなければいけないんで、ディマンドサイドというのは、先ほどどなたかの質問通産大臣お答えになっていましたけれども、今まではクレジットクランチをどうするかとか、ある種の応急的な対策で需要面を手当てしてきた。しかし今後は、中期的というのかな、五年ぐらいの計画でこれをやるんだと思いますが、またはトレンドとしては長期的にどういうふうにするのかということに力点を移していくんだ、こういう御趣旨の答弁があったと理解しておりますけれども、その方向でもちろんよろしいんだろうと思うわけであります。  そこで、しからばサプライサイドを強化すると簡単に言いますが、どこをどう強化しようというふうに今度の産業再生計画では押さえておられるのか、そこをもう少し敷衍していただければと思います。
  110. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 大変大ざっぱに幾つかの点に分けてお答え申し上げます。  一つは、サプライサイドのいろいろな改革、改善をやっていく場合のテーマというのは何かという多分御質問だと思います。  一つは、企業経済活動にかかわる法制度や公的制度等の経済システム改革。こう言っただけでは大変わかりづらいことでございますが、一つは、分社化を進めるための制度とか、あるいは分社化を進めるために必要な連結納税制度とか、いろいろな会社経営に関して経営者が選択肢をとれる、選択の幅が広い、そういう制度面を、いわゆる会社法と申しますか、広い意味での商法的な中で解決していく、あるいは税法の中で解決していくというのがまず第一でございます。  それから第二は、企業経営の資金、財務、資産面の効率化、こういうことでございますが、これは文字どおり資金、財務、資産面の効率化でございまして、こういう面も制度的に補えるものは補っていこうということです。  第三は、企業産業間の労働力移動の円滑化ということで、市場原理を追求していく、あるいは効率の悪い分野をやめて効率のいい分野に事業がかわっていくということになりますと、企業の中で労働力が移動するか、あるいはその企業での雇用がなくなって別の雇用の場に移っていくかということですが、労働力が移動するというのは、教科書的に右から左に労働力が移動するということではなくて、やはりそれは一人一人の働く人の生活がかかっているわけですから、いわゆる失業保険を初めとした雇用調整助成金とかあらゆることを充実しなければならないし、また労働力が円滑に移動するためには、人の再教育、労働力の質の向上ということも必要になってまいります。これが三点と四点、あわせてお答えしました。  五は、やはり技術進歩、イノベーションによる資本ストックの質の向上、こういうことですが、これは何といっても、技術を大ざっぱにとらえますと、先端的なものはどうもアメリカが優位に立っているというような分野が多くなってきておりますし、また、在来型の技術に基づいた産業とか企業というのは、発展途上国も技術を習得し、人材を養成し、それなりの力強い競争力を持ち始めておりますから、やはり日本が競争力を持っていくためには、技術を背景にした、人がまねすることのできない日本の独自の分野を持ち、また新しいノウハウで企業を経営していく、そういう分野も必要になっております。  ただ、今申し上げました五つの点は、いずれも演説をしているだけではだめでございまして、実際に制度を変え、例えば技術でしたら開発投資を多く行いという実際の行動をやはり政府国会が力を合わせてやる、民間もそれに呼応するという形で日本経済を再生していくというのが大事だろうと私は思っております。
  111. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 結局、生産性を上げていくということに尽きるわけですね。労働力の投入の傾向も、長いトレンドで見れば少子高齢化でなかなか期待できない。それから、新たな産業が起こってミスマッチを解消して、今の大臣のおっしゃるとおりトレーニングをし直して職につくといったって、すぐ急な話じゃないのですね。  したがいまして、私は、ただいまのお話の中で大事な点は、さっきも申しましたけれども、いかにして高コストの体質を変えるか、これをやってもらわないと、これが政治の仕事だと思うのですね。  個別企業は、例えば、グローバルに対応するのか、ローカルでやるのか。資源を外からとる、アウトソーシングか、またはインハウスで調達するか。それから、この報告書にも出ておりますけれども、得意な分野でむだのない投資をするという意味のコアコンピタンスというものがありますけれども、そういうようなことを総合的にやって、それぞれの企業はイノベーションもやり、そういう意思決定をして戦略を立てる。だけれども、与件として与えられているものが高コスト体質を強制するようであれば、これは国内的にはよくても国際的には、まあ自由化時代だから国内的にもよくないけれども、ここのところをしっかりやってもらわないと困る。  そこのところをもう一度大臣お願いをしたい。
  112. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 例えば、企業がある生産活動を行うというときに、生産活動を行うためのいろいろな要素が必要なわけでございます。  一つは、例えばどの生産活動にもエネルギーが必要です。これは電気、ガスとか、実際に必要なわけでございます。これをエネルギーコストと呼びますと、エネルギーコストが高いか安いかという問題があります。それから、物流コストというのもあります。物流コストというのは、港に荷物が着いた、工場まで運んだ、あるいは倉庫に置いておいたという、実際の運賃、あるいは倉敷料、あるいは港での通関コスト等々を考えますと、その物流コストが果たして国際的に競争力のあるものかどうかというものがありますし、そのほか、税制もそのうちの一つでございます。  そういう、やはり日本が有利な部分と日本が不利な部分もあるわけでございまして、我々としては、これから国際的な経済社会の中で競争力を維持していくためには、なるべくそのような高コスト構造というのを是正して、幾ら働いても、西川委員が今言われたように、与えられた条件としてもともといろいろなコストが高いという中では、企業経営者、従業員が幾ら頑張っても競争力は持てないわけでございますから、我々としても、規制緩和あるいは自由競争を進展させることによって高コスト構造をなるべく是正していくということですし、また、規制緩和、自由競争のほかに、やはり今後の公共事業のあり方等についても、間接的に日本の生産性を上げるという方向で公共事業は使われるべきだというように私は思っております。
  113. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 今度の国会では、電気事業、ガス事業も、卸売だけではなくて小売も含めて、そちらの方向に自由化を促進するというようなことも出てまいりましたし、また、持ち株会社の話、分社化、そういうようなことも積極的にやろうとしておられるし、私は、いわゆる地域独占というものが必要であった時代は少しずつ薄れてきて、やはりマーケット支配型の経済に変わってくるということは、これは趨勢として否めないと思うのですね。  そういう中で、大きく言えば、産業社会のビジョンを通産省は打ち立てていただきたい。それはどういうことかというと、今の大臣の御答弁にもありましたとおり、個別企業が群れをなして一つの業界というものをつくっていますね、産業界。今までの通産省は、産業界ごとのガイドラインは大変明確に示してこられた。しかし、昨今、同じ産業の中でも企業間格差というものが出てきているわけですね。それをどう埋めていくか、またはどういうふうによい方向に右倣えさせていくかという、各企業が範とするに足るガイドラインを産業社会のビジョンとしてつくっていただきたい、こういうふうに思いますが、これはどうでしょうか。
  114. 江崎格

    ○江崎政府委員 私ども、この産業再生計画をつくるときの背景としてまず考えました将来の日本社会のあり方の問題でございますけれども経済構造改革などを推進することによりまして、企業とか個人が非常に自由濶達、自分の創意工夫を生かして、あるいはすぐれたアイデアを生かしまして、人材とか資金とか技術が絶えず日本に集まってくる。そうした状況のもとで、新しい産業が次々に生まれてくる。それから、海外からも、日本のそういう魅力のある社会環境を目指して人も企業も集まってくる。こういう社会をぜひ実現したいというふうに思っております。  こういう社会の中で、いわば社会のエンジンになります産業を再生するということを考えていきたいと思っておりまして、その中で、先ほど来大臣が申し上げておりますような産業再生計画というようなことで、高コスト構造を是正する、そうした中で企業が元気を取り戻す、そういったことを考えていきたいと思っております。  個々の業種ごとの具体的なビジョンということを私どもとりあえず想定しているわけではなくて、むしろ今おっしゃったように、企業によりましていろいろ格差が出てきております。そういう中で、業種ごとのまとまったビジョンをつくっていくというのは少し無理があるのではないかというふうに思っておりまして、むしろ、努力するといいますか、頑張る企業が自分の目指す姿を実現しやすいような環境をつくっていくということが私どもの役目ではないか、このように思っております。
  115. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 バブルという妖怪が暴れて、その後始末で日本経済が自信をなくしてしまって、さあ困ったな、こんなにもろかったのかと思っていたら、いや潜在的にはまだまだ大丈夫なんだという大臣各位の御意見の発表もいろいろなところであって、しかし国民からすると、では何だったんだ、政策不況という言葉もあったりしていろいろよくわからない、こういう時代でございますので、もう一度明確に国民に向かって、私たちももちろんそれぞれの場で努力いたしますが、大臣におかれましては、特に堺屋大臣にもお願いしますが、そういうアナウンスメントを大いに発信していただきたいというふうに思います。  もう時間ですから、最後に一言感想を述べて終わりますが、堺屋大臣の所信表明の中に、失敗者という言葉が出てきまして、私は地方議員も含めて二十二年議員をやっておりますが、そういうある意味では価値判断を交えた、生々しい、体温の伝わる言葉をこういうところで言われたというのはすばらしいことだ。情の通った、思いが国民に届く、そういう発言をこれからも、仲間の閣僚の中でけちつける人がいるとか聞いておりますけれども、そんなことは気にしないで頑張っていただきたい。余計なことを申しました。  以上で終わります。どうもありがとうございました。
  116. 古賀正浩

    古賀委員長 吉井英勝君。
  117. 吉井英勝

    ○吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。  先日の予算委員会で、我が党の志位書記局長質問に対して、地方財政の危機の一つの重要な原因が公共事業の膨張にあったという事実については、小渕総理が、事実であると思いますと認めました。また、財政危機をもたらした責任について、国もその責任の側面というものは持っておるという答弁もありました。  そこで、きょうは私は、国の政策誘導によってどのように地方の負担や借金が膨らんでいったのか、こういう角度から少し見ていきたいというふうに思います。  まず、国と地方の公共事業、これは行政投資の実績ということになりますが、最初に自治省の方に確認しておきたい。  行政投資は、一九八〇年の二十七兆八千七百億円が、九五年には五十兆八千九百億円へ、一・八倍。一方、地方の負担は、一九八〇年の十四兆一千四百億円が、九五年には三十二兆八千四百億円へ、二・三倍。そして国と地方の負担は、八〇年の五〇・七%、二分の一の負担が、九五年には六四・五%、三分の二へと地方の負担がふえた。これが大体この間の地方自治体財政というものを見るときの実情じゃないかと思いますが、まず自治省の方から確認をしておきたいと思います。
  118. 香山充弘

    ○香山政府委員 お答えいたします。  行政投資実績についてのお尋ねでございますけれども、地方費を見ますと、一九八〇年度、昭和五十五年が五一%程度、平成二年まで増加してまいりましたが、平成三年以降はやや減少傾向にございまして、平成七年度、一九九五年度では地方費の割合が六五%程度と相なっております。
  119. 吉井英勝

    ○吉井委員 今お認めいただいたとおり、これが今日の地方自治体財政の抱えている問題の一端をあらわしているというふうに思うんです。  次に、地方自治体が工業団地の造成などを行うとき、これは大体、例えば大阪府であれば企業局が中心にやりますが、県によっては企業庁という名前を使ったりさまざまですが、そういうところの工業団地造成に係る建設投資の実績というものについても自治省の方でまとめていらっしゃるので、伺っておきたいんです。  これは八〇年に四千五百二十四億円であったものが、九五年には一兆六百三十八億円へと二・三五倍に膨らみ、一方、借金の額も、八〇年の千五百二十五億円から、九五年の四千五百五十七億円へと三倍に急増し、事業費を賄う借金の割合が三分の一から二分の一へと高くなってきた。つまりこれは、工業団地造成を進めるほどに自治体の借金が大きく膨らむ、こういう状態にあったという事実を見ることができると思うんですが、これについても自治省の方から確認しておきたいと思います。
  120. 香山充弘

    ○香山政府委員 お答え申し上げます。  私ども、公営企業として実施しております地域開発事業についての数値を把握しておるわけでございますけれども、建設投資額につきましては、御指摘にありましたように、昭和五十五年度は四千五百億円強でございました。その後増加傾向をたどりまして、平成五年度、一九九三年度の一兆二千億円強をピークにいたしまして、最近はやや減少傾向にございます。  また、そのうちのいわゆる企業債、借金の比率でございますけれども、これは土地売却収入がどういうふうになるかということによって大きく左右されるわけでございますけれども、一九八〇年度、昭和五十五年度では三三・七%であったものが、平成二年度を底に上昇いたしまして、平成五年度以降最近はおおむね四〇%台で推移をしております。そういうような状況でございます。
  121. 吉井英勝

    ○吉井委員 それで、今おっしゃったように、かつてのときのように土地が売れるとそういうおっしゃった面もあるんです。  例えば大阪府の企業局の事業で見ましても、かつての、これは住宅の方になりますが、千里ニュータウン事業の方です、あるいは泉北ニュータウン事業会計ですと随分大きな黒字をつくったんだけれども、しかし、その後のいわゆる関西空港の前島建設などの中では大きな赤字が出てくるなど、これは時代によっても、また地方によってもそういう変化があるのはもちろんわかった上で聞いているわけですが、次に、国土庁の方に聞いておきたいと思うんです。  六〇年代以降の工業開発で、新産・工特で指定された二十一地域を見ますと、一九六四年から九五年までの三十二年間に八十一兆五千百七億円を投じて、地方自治体が工業団地造成に取り組んできました。さらに、九六年から二〇〇〇年にかけての第六次基本計画で、二十八兆四千九百二十一億円の事業を進めているというふうに伺っております。結局、新産・工特全体として見れば百十兆円の事業規模になってくるのではないかと、単純計算でいきますとそうなるんですが、まず、この新産・工特の事業の大きさというものについて、国土庁の方から伺っておきたいと思います。
  122. 中川浩明

    中川(浩)政府委員 お答えを申し上げます。  ただいまお話しのように、新産・工特二十一の地区がございますが、この投資実績、すなわち第一次計画から第五次計画、昭和三十九年度から平成七年度まででございますが、この投資額の合計は、全地区合計で約八十一兆円となっております。  また、この額に現行の第六次計画、平成八年度から平成十二年度までの計画の目標額を加えますと、新産・工特地区の投資額は、全地区合計で約百十兆円となることになっております。
  123. 吉井英勝

    ○吉井委員 それで、いずれにしろ非常に大きな投資を行ってきたわけですが、その新産・工特の指定地域における団地の総面積に対して、分譲済み面積が幾らになっているのか、このことを次に伺いたいと思います。
  124. 中川浩明

    中川(浩)政府委員 お答えを申し上げます。  新産・工特制度に基づきます基本計画の目標は、工業出荷額、総人口、就業人口などでございまして、今御指摘の工場用地に関する目標は基本計画には定められておりませんので、その詳細な面積を把握はいたしておりませんが、概算の数値ということでお許しをいただければ、平成八年からの第六次計画策定時点の数値といたしまして、計画面積は全地区の合計で約四万七千ヘクタール、うち造成済みの面積が約三万二千ヘクタール、そのうち工場用地等として売却を予定いたしております面積が約二万二千ヘクタール、そのうち売却済みの面積は約二万ヘクタールと推計をいたしているところでございます。
  125. 吉井英勝

    ○吉井委員 そうすると、四万七千に対する、これは分譲済みが二万二千ですから、いずれにしても五〇%を切るところ、こういうことになろうかと思います。これは総務庁の方でも実は調査していらっしゃっているのを見ますと、今のより少し、団地総面積は五万ヘクタールと言っていますから少し大きいようですが、いずれにしても総務庁のデータでも四四%ということですから、大体そういうところかと思います。  次に、通産省の方に、先端産業導入、誘致を掲げた、テクノポリス承認地域における工業団地の計画総面積と分譲済み面積の状況はどのようになっているのか、これを伺いたいと思うのです。
  126. 太田信一郎

    ○太田(信)政府委員 お答えいたします。  テクノポリスの承認地域で、団地の数、これは県単等の事業についてはちょっと把握しておりませんので、地域公団の中核団地、あるいはテクノと頭脳が合体しているところがございますので、頭脳団地と合わせて十四団地ございます。造成済み面積は平成九年度で八百七十二ヘクタール、分譲済み面積が七百五十五ヘクタールで、分譲率は八七%という状況になっております。
  127. 吉井英勝

    ○吉井委員 実はそれについても、本当は通産省データに基づいてまとめたと思うのですが、総務庁の方のデータによりますと、総務庁はみんなまとめているわけですね、それによりますと、団地総面積が三万四千八百十七ヘクタールで、造成済みが一万四千八百十七、分譲済みは一万三千百四十三ヘクタールということになりますから、これは団地面積に対する分譲済み面積の割合としては三七・七%、こういうことになってくるというふうに思うのです。  それは、通産省データをもとにして向こうは集計しているから、あなたのカウントの仕方との違いはあるにしても、もともとあなたのところのデータが行って計算しているわけだから、総務庁のデータが間違いであるわけじゃありませんね。
  128. 太田信一郎

    ○太田(信)政府委員 地域公団の整備した団地については、間違いなく先ほど申し上げたとおりでございます。ただ、県単あるいは民間のディベロッパー等が開発された団地についての数字の詳細については、私ども承知していないところでございます。
  129. 吉井英勝

    ○吉井委員 妙な話なんですが、大体、県の方でやっているのとそれから工業団地なんかを造成する振興公団の方でやっている分を合わせて総務庁が発表しておりますから、総務庁データでいくと三七・七%が実績。別段、数字についてあなたに今とやかく言っているわけじゃないんだから、やはりそういうところはきちっと、せっかく総務庁の方は通産省などからのデータに基づいてやっているわけだから、ちゃんとしておいてほしいと思うのです。  なお、総務庁の報告書によりますと、全国の工業団地の総面積は十五万五千百二十八ヘクタールで、これは九五年度現在ですが、分譲済みが七万七千百七十九ヘクタールですから、分譲済み比率が四九・八%、つまり半分は売れ残っているということになるわけです。自治省の方から先ほど、全部売れたとしたときの、企業局会計なんかでやった場合ですね、それは採算がとれる場合もあるという話もありましたが、実は実態はなかなか深刻だというのはここに数字の上で出ているというふうに思うのです。  国土庁の方で言っている立地未決定の工場適地の面積というのは四万七百六十八ヘクタールということになりますから、今日の立地する増加の度合いといいますか、その立地ペースでいきますと二十三・五年分もできてしまっている。重厚長大時代とは違うわけですから、もちろんハイテク産業などへの構造変化も生まれているわけですが、高度成長期に進んだ過疎問題の解決も問題になってきて、過疎地域へ大企業誘致の期待という背景もあったことがあるだろうと思うのですが、そういう中で、工業再配置とかテクノポリス法、頭脳立地法など、国は地方自治体に競って工業団地造成をやらせるように誘導政策を進めてきたということもやはり一面あるというふうに思います。  中でも、テクノポリス法でつくった二十六地域では、計画承認から九〇年度までに投資された累積額だけでも、工業団地、工業用水、道路、都市基盤整備で約三兆四千億円に上り、その後の九年間にもさらに同額規模の支出を行ってきているわけですから、地方自治体の単独事業を初め自治体負担が非常に膨大なものになってきている、これは明らかであります。  分譲面積割合というのはさきの三七・八%にしかならないわけですから、事業の採算というのは成り立ってこないんじゃないか。この結果として非常に大きな借金が地方自治体に今残ってきているというのが実態じゃないか。この点については、自治省の方に伺っておきたいと思います。
  130. 香山充弘

    ○香山政府委員 お答えいたします。  地域開発は、地域の経済の発展あるいは住民福祉の向上に寄与するということで地方団体は取り組んできておるわけでございますけれども事業の性格上、事業期間が長期にわたったりあるいは多額な資金を要するというようなことがありますので、社会経済情勢によってかなり左右される面があります。  率直に申し上げまして、現時点では造成地等の需要の動向あるいは採算性等について問題を含んでおるケースも多々ございますので、私ども、既に着手している事業見直し、そういったことにつきましても、地方団体において適切な措置が講ぜられるよう地方団体に指導、助言をいたしておるというような状況でございます。
  131. 吉井英勝

    ○吉井委員 それで、自治省の方からも今の地方自治体の置かれている実情というものについてはお聞かせいただいたわけですが、国家プロジェクトとして進めてきた苫小牧東とか、むつ小川原工業団地造成が失敗に終わったということ、今膨大な財政赤字の処理が大問題になっているのは、これはもうみんな国民がよく知っていることでありますが、このほかにも無数の失敗例があります。  今もお話がありましたように、情勢の変化もあるし、自治体財政の状況などいろいろありますが、ただ問題は、今になってからじゃなくて、見きわめるべき指標というのは早い時期にいっぱいあったと思うのです。問題が生じてきても手法を少し変えるだけでずるずる引っ張ってきたことが、今日、地方財政の危機という面で見れば傷口を大きくしているというのが、私は問題として見なきゃいけないところじゃないかというふうに思うわけです。  ミニ経済白書の中で、不良債権処理に関して、失敗を素直に認めないことがさらなる失敗の原因になるという状況が官にも民にも見られたという指摘がありましたけれども、私はこの点はなかなか大事な指摘だというふうに実は思っているのです。  そこで、通産大臣にここで中間的に伺っておきたいのですが、失敗したら手法を少し変えるだけで別な法律に滑り込ませて続けるとかそういうことだけじゃなしに、やはり失敗したら誤りを認めて縮小、撤退するということも大事な教訓になってくるんじゃないかと思うのですが、この点については大臣のお考えというものを伺っておきたいと思います。
  132. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 一般論で申し上げますと、先ほどもどなたかの質問にございましたが、倒産法制を含めて、いろいろな立ち直りの機会というものをやはり法制の中で用意する必要があるのではないか、こういう趣旨の御質問がありまして、私はその意見には賛意を表したわけでございます。  特に中小企業は、新しい事業を手がけてみますと、それが必ずしもうまくいくとは限らない。そのときに、それをやめてまた新しいことに挑戦しようとしたときに、そのチャンスを社会が与えるということもまた今後の日本にとっては大変大事なところだろうと思っております。  現在、法務省において、倒産法制、すなわち商法、破産法会社更生法等々、和議法というのもありますが、もろもろ研究されているようでございまして、これらの法律はいずれも戦前につくった法律でございますから、今の時代に合わせて法整備をする必要が出てきたというのが我々の考え方でございます。
  133. 吉井英勝

    ○吉井委員 個々の中小企業とかそういう問題じゃなくて、工業団地造成を、かつては新産・工特で誘導したり、あるいはその後はテクノポリスでやったりとかさまざまな形で、私もいろいろ調べてみて、また特定の件について調べてみたときも、本当にさまざまな手法で工業団地造成をやっているんですね。農村圏なんかでもあるわけです。  ところが、そういうやり方でもって実はつくったのだけれども企業は今、東南アジアに行ってしまったりして全然やってこない。造成した工業団地も売れ残る。計画して買収はしたが全然めども立たない。いっぱいあって、それが今地方自治体にとっては、財政を非常に深刻な事態に追い込んできているという一つの事実があるわけですね、それは先ほど来お話ししたところなんですが。  そういうときに、これまでは、ある法律で造成したのだが、これがうまくないとなると別な法律でもって造成を続けるとかやってきたわけですが、しかし、このミニ経済白書で言っているように、失敗を素直に認めないことがさらなる失敗の原因になるという状況が官にも民にもあった。私は、この点の指摘はなかなか当を得た指摘だというふうに実は思ってあのミニ経済白書を読んでおったのです。  そういう角度から見たときに、今日の工業団地造成など、今も続いておりますが、やはり失敗したらその誤りを認めて縮小するとかあるいは撤退するとか、そういう立場に立つということが、この二十年、三十年来の日本の工業政策あるいは工業団地造成政策を見たときに生まれてくる大事な教訓の一つではないか。その教訓をやはり今生かすことを考えるべきときではないか、こういう点を大臣に伺っているのです。
  134. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 工業団地をつくる、あるいはテクノポリス法を通して地域を指定するといったときには、それなりの経済的な背景あるいは合理性のあった政策選択だったと私は思います。  ただ、産業の空洞化と申しますか、生産拠点が移動をして、なかなか造成をしたところに人が入らないというところもありますし、一番大きな例は、苫東とむつ小川原の壮大な計画が、その後の経済状況の変化によってなかなか進展しないというケースもございます。これは、各地方自治体がやっております場合には国の助成等も入って最初はスタートしたわけですが、その後実際には分譲が進まない、入居者がいないということであれば、それはそれなりの、個別の地域に最も適した縮小策、撤退策というものをとる必要は当然あるだろうと思っております。
  135. 吉井英勝

    ○吉井委員 個々の問題とともに、私は、国の政策を進めていくときにも、一つの進めてきた政策が行き詰まりを来したり問題を生じたときには、それを何か似たような政策でずるずる続けるのではなくて、思い切った見直しをやはりやっていくということをやらないと、こういうことを繰り返すであろうということを指摘しておきたいと思うのです。  実はこの間も、余談になりますが、鹿児島県の上野原工業団地を見てきたのですよ。全然売れないわけですが、うまいぐあいに一万年前の上野原遺跡が見つかって遺跡指定を受けて、むしろ観光資源として県の方も大喜びですよ。そういう時代なんですから、やはりそこをきちっと見きわめていくということが大事だというふうに思います。  八六年の民活法以来、運輸、通産、郵政、農水など、国が補助金をつけた民活プロジェクトというのは、九七年度までで二兆六千億円を超す総事業費、これは土地を除いてになりますが、そういうものになっております。  自治省に伺っておきたいのですが、その中で、自治体が出資して、民間企業も出資して、その民間の出資企業が工事を落札し、融資を行って事業を進める、こういう第三セクターが急増してきているのが民活法以来の特徴なんですが、この三セクの推移、その状況はどうなっていますか。
  136. 香山充弘

    ○香山政府委員 お答え申し上げます。  自治省におきましては、第三セクターの出資状況等につきまして三年ごとに調査をいたしておりますが、そのうち、経年変化を見ることが可能な二五%以上地方団体が出資しております第三セクターの数について申し上げますと、いずれも一月一日現在でございますけれども、昭和六十二年が四千七百二十、平成二年が五千四百七十七、平成五年が六千六百五十九、平成八年が七千五百八十でございます。
  137. 吉井英勝

    ○吉井委員 それで、あらかじめ数字もお聞きしていて、調べてみると非常に特徴的なことがわかりました。  民活法、リゾート法成立以前の十年間と、成立後の十年間を比べてみると、成立以前の十年間の三セクのふえ方というのは三六%、民活法、リゾート法成立後の十年間は六〇%、ふえ方が二倍も、非常にたくさんふえているわけです。問題は、それでその事業がうまくいったのか、あるいは地方自治体財政がどうなかったのかということが今まさに問われているときだと思うのです。  郵政省に来ていただいておりますから、簡潔でいいですから伺っておきたいのは、民活法認定プロジェクトである例えば東京テレポートセンターの総事業費、自治体の出資額と比率、それから自治体の貸し付けその他財政支援の状況はどうなっているか、また、上位三社ぐらいで結構ですが、主な企業とその出資額、これだけを先に伺っておきたいと思います。
  138. 金澤薫

    ○金澤政府委員 お答え申し上げます。  総事業費は一千四百二億円でございます。それから、東京都の出資でございますけれども、九十億八千万円でございます。その他主要な出資者でございますけれども日本開発銀行が十五億四千万、日本電信電話株式会社が八億円、国際電信電話株式会社が六億四千万円ということでございます。  以上です。
  139. 吉井英勝

    ○吉井委員 それで、そこはかなり財政的には借金や赤字を抱えて、自治体の方が財政支援を行っていると思うのですが、その状況はどうですか。
  140. 金澤薫

    ○金澤政府委員 お答えを申し上げます。  この民活施設でございます東京テレポートセンターでございますけれども、郵政省のほか通産省、運輸省、建設省がおのおのの所管におきまして認定いたしました。平成四年度から六年度までに合計八億円の民活補助金を交付しているというところでございます。日本開発銀行から百八十五億円の無利子融資、それから四百四十億円の財政投融資、これも開発銀行でございますけれども、行われているということでございます。  それから、この再建を行いますために現在東京都におきましてさまざまな努力がなされているわけでございますけれども、増資として三十億円、それから無利子貸し付けとして四十億円、それから地代を七五%減免ということで、東京テレポートだけではございませんけれども、ここにございます第三セクター三社を一体として経営を改善していくという視点で自治体としての努力を行っているというふうに理解しております。
  141. 吉井英勝

    ○吉井委員 東京都自身が大変な財政危機なわけです。それで、第三セクターで始めて、これはまた大変な事態になっているものですから、東京都がさまざまな形でサポートしないと成り立たない、そういう状況にあるということは今わかりました。  運輸省に伺っておきたいのですが、竹芝地域開発についても同様に、総事業費や自治体の出資額と比率、それから主な三社ほどの企業名とその出資額、なお、財政的に今大変な事態にありますから、自治体の貸し付けその他財政支援の状況について、伺いたいと思います
  142. 金子彰

    金子説明員 お答えいたします。  総事業費でございますが、竹芝は二つございまして、竹芝ピアビルディングが約百四十五億円、ニューピア竹芝サウスタワーが約三百七十億円、これが総事業費でございます。  主な出資者ということでございますが、東京都が七十五億八千万円、それから民間でございますが東京電力五億八千万円、東京ガス同じく五億八千万円、日本興業銀行五億八千万円、富士銀行五億八千万円、こういうようなところが主なところでございます。  それから、自治体の財政支援額でございますが、平成十年度におきまして二十億円の無利子貸し付けの支援をしているところでございます。
  143. 吉井英勝

    ○吉井委員 いずれにしろ、累積赤字が約百九十四億円とか、財政的にめどが立たなくて、東京都などが応援をしていかなきゃにっちもさっちもいかないという事態に立ち至っている、これが今日の実情であります。  通産省事業についても伺っておきたいのですが、第三セクター方式で国の輸入促進政策などによるFAZ施設というのが各地につくられてきましたが、大阪市のATC、WTCについても同様に、事業状況について伺いたいというふうに思います。
  144. 佐野忠克

    ○佐野政府委員 お答えを申し上げます。  大阪には二つ、FAZ法に基づく施設がございます。一つが、アジア太平洋トレードセンターでございます。略称ATCと呼んでおりますが、総事業費が約千五百億円でございます。それから、主要な出資者は、大阪市が七十五億、伊藤忠、ダイエーが十九億、十八億という出資費率になっております。もう一つ、大阪のワールドトレードセンターというビルがございまして、これはWTCと呼んでおりますが、総事業費が千二百億円、主要な出資者は、大阪市が二十五億、三井不動産、三井物産が十五億及び七億五千万という数字になっているところでございます。
  145. 吉井英勝

    ○吉井委員 今、お話しあったような千五百億とか千二百億という事業費でつくったわけです。これはうまくいっているかといったら、うまくいっていないわけなんです。大変な赤字を出して、テナントも予定どおり入るどころか、入ってきたのが出ていっちゃったりして、テナントが入らなくて大変な事態。  これは大阪市の文書なんですが、WTCについて、現在の危機的な経営状況を抜本的に改善していく必要がある、WTCの経営改善は会社がみずからの努力で進めることが基本であるが、会社の経営の現状や現在の経済情勢では、それだけでは経営改善の見通しが立たない状況にあると。  今、FAZだ、民活だと言ってやってきた事態がここへ来ているんです。タコが自分の足を食うといいますか、フロアがあいているところへ大阪市の港湾局とか関係する機関を、八千二百七十平方メートル、床を、テナントが入らないものだから大阪市と外郭団体が入る。そういう異常なことをやって大阪市がテナント料を払って、財政的に大変になるのを何とかしよう、こういう事態まで生まれてきているというのが今の実態です。  北九州市のAIMというのがあります。これは駅前にありますが、七階に三セクや公的団体を入居させて空き家の埋め合わせをやっても、三階から五階まで空き家。ここへ無理に輸入家具専門店を、家賃をうんとダンピングして入居させようとしているんです。実は福岡県といえば、集積活性化法の指定地域にもしているぐらいの大川市のような木製家具の産地もあり、そこの中堅企業中小企業も輸入家具などに押されて今は大変な危機的な状況で、自殺者もたくさん出るという状況にある中で、わざわざ輸入家具専門店を入れて、一方では地場産業を締め上げていく、一方では地域の家具小売商業者を苦しめるような事態を、通産省がそんなことをねらっているわけじゃないんですよ、よくわかっているんですが、結果としてそういう事態になっていっているというのがFAZでやってきた事業の実態であることを、私は見ておく必要があると思うんです。  実は、九五年十月十八日のこの委員会で私が質問いたしましたときに、ATC、WTC、AIMについて取り上げたのですが、当時、牧野産業政策局長は、おおむね所期の目的を達成しているし、この民活法は非常に有効なものであると確信していますと。当時の広瀬貿易局長は、御心配いただくことはない、大丈夫だと、胸を張ってお答えをいただきました。  貿易局長に伺っておきますが、今日のこういう事態を見ても、うまくいっているという評価をしていらっしゃるのですか。
  146. 佐野忠克

    ○佐野政府委員 お答えを申し上げます。  まず第一に、FAZの経営状況についてでございますが、全体、全国に二十二のFAZがございまして、輸入関連基盤施設整備等がFAZ事業として行われ、二十五社の第三セクターが設立されておりますが、その第三セクターのうち営業黒字を計上いたしておりますのは、平成八年度決算において四社、九年度決算では六社となっております。  平成七年度の段階におきましてなお多くの第三セクターが経常赤字を計上しているということについて、御指摘のとおりのところがございますが、その理由としては、第一番目に、平成九年度の段階ではなお多くのFAZにおいて輸入関連基盤施設が整備されている途上にございます。これらのFAZの第三セクターでは、いまだテナントからの賃料収入がなかったというところがございます。  また、そもそも輸入関連基盤施設の整備のような大変公共性の高いものについては、収益性の低い事業投資回収に比較的長期間を要するというふうに考えておりまして、当初からの経常黒字を計上するということはなかなか難しいというふうになっていると思っております。
  147. 吉井英勝

    ○吉井委員 いずれにしても、当時の貿易局長が胸張っていらっしゃったころに比べて、非常に深刻な事態になってきているというのは事実なんです。そして大阪市の例で見ても、FAZといったって、小さいところの話を幾らやってみたって、とにかく千五百億とか千二百億とか、そういう大きいところでどうなっているかというのが一番問題なんですが、小さいところを含めても赤字が多いということは今お認めになったとおりなんです。  そういう中で、私は、このFAZについて、FAZ法で進めてきた事業が地方自治体財政を困難に追い込んでいるというのは事実なんですから、今までのやり方は、民間の出資企業というのは責任をとらないで、自治体が補助金や貸付金やみずからテナント料を払って入居するなど財政負担をしてきている。それがさらに地方自治体財政を深刻にしてきているというのは事実なんです。私は、第三セクターに出資者となっている民間企業にも破綻した事業とか経営が大変なときに責任を負わせるということは当然のことじゃないかと思うんです。  FAZ法をつくったときの意図、あるいはそのとき考えていたデザインと、かなり状況は変わっているということはあるにしても、しかし、少なくとも第三セクターを民間企業も地方自治体も一緒に出してやるならば、困ったときの面倒は全部地方自治体が見なさい、出資した銀行は貸し付けて利子を取ってもうける方は考えるけれども、出資したゼネコンの方は仕事をとってもうける方は考えるが、その事業がうまくいかないときとか破綻したときは知らないよということでは、私はこれは通用しないと思うんですね。  ここは、通産大臣、やはり第三セクターなどで事業を進めたときに、経営危機に陥ったりとかそういうときに当然民間の出資企業にも応分の負担を求める。そういうことをきちっと進めるというのは、国としても民活法をやってきたわけですから、そういう立場で必要な物を言っていただいたり、場合によっては指導したり、そういうことはあるべきじゃないかと私は思うんですが、大臣、どうでしょうか。
  148. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 第三セクターが例えば赤字になった場合に、それを治癒するためにどうするのかという話だろうと思いますが、これは個別の事業ごとに物事を判断せざるを得ないと私は思うわけです。  仮に、地方自治体が中心になって民間から出資を求めたというようなケースは、やはり地方自治体自身が責任を大きく負うということが当然のことだろうと思いますし、対等でやろうということに最初からなっていたような場合には、それは民間と地方自治体が力を合わせていろいろな始末をするということであって、民間が知らぬ顔をするというふうになかなか非難をできない場面も数多いのだろうと私は思っておりまして、むしろ、地方自治体というのが第三セクターをつくったということは、公共性も自覚しながらつくったというふうに解釈されますから、そういう意味では、地方自治体の首長のその当時の判断というものが極めて重要な判断であった、それに基づいてその後のことを考えていく。  むしろ、民間にしわ寄せをするということの方が理解を得られないことだろうと私は思っております。
  149. 吉井英勝

    ○吉井委員 それでは、第三セクターの事業の実例の一つとして、宮崎県のフェニックスリゾート開発、シーガイアについて、非常にわかりやすい例なので見ておきたいと思います。  これは時間があれば国土庁に確認しておきたいと思ったのですが、もう時間が、あと五分というメモが回ってきましたからおいておきますが、この事業は、ここではフェニックスリゾート社、資本金三億円なんですが、その六百倍の一千八百五十四億円の事業をやっています。借入金が当然膨大になってきます。このほかに道路とか人工ビーチの建設など、基盤整備に自治体が千五百億円投じてきて、残った借金が一千億円というものですが、フェニックスリゾート社の負債総額は今二千五百八十九億円です。採算のめどは立たないという状態です。  このフェニックスリゾート社の役員構成を見てみますと、副社長以下取締役の半数を握って、経営権もあれば経営責任もあるというのが実は第一勧業銀行です。一千三百億円融資している、大きな影響力を持っているのも、これは第一勧業銀行であるわけです。  民活プロジェクトとして指定されて進めた事業であるわけですが、破綻したときにどのように財政負担をして処理するかというのが今まさに問題になってくるところなんです。自治体負担だけでなくて、当然これは出資した民間企業にも応分の負担を求める。私はこういう点でやはり、地方自治体も国のさまざまな誘導政策に乗っていろいろやってきた、どんどん金を使って財政破綻を来した、だから、地方自治体に責任がないなんというようなことを言っているんじゃないんです、しかし、その誘導政策をつくってきたという面での国の責任が一つあると思うんです。  同時に、こういう三セクのように、これは実はリゾートについて国も入った研究会の方で出している報告書に出てまいりますが、第三セクターの問題について、出資した銀行とかゼネコンが、融資してもうけ、仕事してもうけるだけで、あとの事業そのものについては知らぬよということで本当にいいのか、破綻したときにそういうところが全部逃げちゃって、逃げちゃってというと逃がさないようにしなきゃいけないわけですが、経営責任があるのに、ほとんどは地方自治体が責任をとらされて借金をかぶる、こういうやり方でいいのかということが今まさに問われてきているときなんです。  私は、この二つの問題、地方自治体を困難にした上での、誘導政策をとってきた国の責任というもの、そして現にこういう三セクで問題が起こっているときに、民間企業、出資企業あるいは経営体に入っている企業が応分の負担をしなきゃいけないんじゃないか、この二つの点についての大臣のお考えというものを聞いておきたいと思います。
  150. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 国が確かにいろいろな面で制度を整備してまいったことは事実でございます。しかし、責任回避を申し上げるわけではなくて、やはり、最終的にあるプロジェクトを決定したというのはその地元の方であり、またそれに参加する方であって、それは国の責任として処理するということはおかしなことだろうと私は思っております。制度を整備したのは確かに我々かもしれませんが、物事を決定したのは地方自治体の長であり、出資した関連の方々であるというのが常識だろうと私は思います。  そこで、融資をし、もうけ、建設をやって、もうけて逃げちゃったというのは、それだから責任をとれというのは少しどうかなという気がいたします。それは、お金を提供したというのは、お金を提供したという大事な経済行為をしているわけですし、それに社会的な常識に反しないような金利をいただくというのは当然ですし、建設業の方も、建設をするという対価として代金を支払ってもらっているわけですから、やはり個々のケースでだれが主導的な立場を貫いて物事を進めてきたかということで責任の分担というのが決まるんだろうと思います。  しかし、概して言えば、やはりバブルに踊った日本社会全体の問題の一部がそういうところに現象的に出てきているのかなというふうに私は考えております。
  151. 吉井英勝

    ○吉井委員 もう時間が参りましたので終わりますけれども、工業団地の造成にしても、ずっと政策誘導してきたのは国の方に問題があるわけですよ。それに乗って踊ったかどうかの別は地方自治体にそれぞれあるでしょうけれども、私は、その点では国の方としても責任をきちっと考える必要がある。  それから、民活法をつくってやってきた、この三セクのやり方、民活法のやり方は、いかに危険な要素を持っておったかということが今のお話にも示されたと思います。この点についてはよく研究をしていただいて、各地でこれから起こる問題についても対応していただきたい。  以上申し上げまして、時間が参りましたので質問を終わります。
  152. 古賀正浩

    古賀委員長 前島秀行君。
  153. 前島秀行

    ○前島委員 時間もたってきましたので、端的に質問させていただきます。  最初に企画庁長官にお聞きしたいと思うのですが、いわゆる経済見通し、平成十一年度中に何としても〇・五プラスにするんだ、これは小渕内閣のいわば政治的公約だろうと思うし、これが実現できるかどうかというのは大きな政治的な課題というふうに受けとめていいと思うのですね。しかし、今の状況等々を見ると、果たしてそう簡単に国民的に実感としてそういうものが伴うのかなというのは、なかなか厳しいような状況がある。  今の日本経済のこの萎縮状況あるいは落ち込み状況にさまざまな要因があるということは言われているだろうと思うし、政策的な判断の問題だとかあるいはアジア経済の云々だとかいろいろあると思いますが、私はやはり、せんじ詰めてくると、金融不安というものが起こってしまった、そのことがまた不良債権ということの、時間的な問題もこれあって、これがかなり大きなウエートを占めている、こういうことは間違いない。  そのためにさまざまな手を打ってきたことは間違いないだろうと思いますけれども、現実に、政府が昨年四月に十数兆円、あるいは十一月には二十数兆円の経済の特別政策を立てた。しかし、片や需給のギャップという問題とか、あるいは二度の経済政策の真水の議論というものを考えてみると、その需給ギャップを埋めるだけのものが果たしてあるのかどうなのかとか、いろいろな問題がある。  結局は、やはり今日の大きな落ち込みの要因である金融システムの中での不良債権の処理の問題というものが大きなウエートを占めている。公的資金導入だけで果たして成るのかどうなのかということはもういろいろな議論のあるところだろうと思うし、また片や、後でもお聞きしたいと思っていますけれども、貸し渋りという現象、かなりの改善は中小企業の部分ではあることは認めますけれども、まだまだその辺の部分について存在していることは間違いない。この貸し渋りの現象というものは二年前から比べれば三%余の云々、それがある計算では二十兆近くの貸出残高の減になっているということも現実に言われている。  そんなこんなを考えると、この経済見通しの十一年度中に〇・五何とかするんだということの根拠というのは一体あるのかな。また同時に、このことがあるなというのを国民的にもあるいは企業のサイドからも実感すると、別な意味でかなりの回転というものが要因としてまた起こってくる。その辺のものが双方に裏腹な関係で、今日、国民的な受けとめ方をしているんではないだろうか。そういう面では、絶対この見通しがあるんだ、可能なんだというところがあるんだったら、説得力を持って国民に示すということが大きく今政府に求められている課題でもあるんじゃないのかな。  そういう面で、私は、国民なりあるいは産業界等々に向かって、そこは自信があるんだよと、なるほどという根拠みたいなものをどうしても政府国民に向かって示すことが大事ではないだろうか、こういうふうに思っていますので、その経済見通しを達成する具体的な根拠みたいな、自信みたいなものを最初にちょっとお聞きしたいなというふうに思います。
  154. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 何度も申し上げておりますように、現在の経済には三重の問題がございまして、非常に深刻な情勢でございます。これに対しまして、政府といたしましては、まず第一に、この不況の存在はどこに原因があるのか観察をいたしまして、この不況の環を三段階で断ち切るようにいたしました。  その第一が金融不安の解消でございまして、六十兆円の大きな金融再生スキームを立てまして、既に金融再生委員会、金融監督庁の方で実行段階に入っております。これに伴いまして、自己資本比率の上昇等をねらって貸し出しを渋るというようなことが起こっております。大なり小なり起こっておりますが、これに対しまして、政府といたしましては、保証制度をつけるとか、あるいは政府系金融機関を拡充するとかいうような対策も打っております。  二番目には、先生指摘のとおり、需給ギャップがあるということでございますが、これには公共事業及び税制の改革によって需要拡大を図っていること、先ほども申し上げたとおりでございます。  さて、先生が御指摘のように、それで十分なのかという問題でございますが、恐らく需給ギャップをことごとく埋め尽くすほど需要が伸びるのではなくして、ある程度やはり供給力が劣化するというような部分も出てくると思います。古い施設が廃棄されるとか、事業が選別されるとか、リストラが起こるとかいう部分も出てまいると思いますが、まだ平成十一年度は始まっておりませんが、平成十一年度中にはかなりの改善が見られると思います。ただ、それでも、我々の見通しでも、平成十一年度も設備投資はそれほど伸びないだろうと考えております。これを公共事業及び減税の刺激による消費で支えるということであります。  そして三番目には、やはり雇用の問題を解決しなきゃならないというので、緊急経済対策及び平成十一年度予算におきましては一兆円に達する雇用対策事業計画いたしまして、雇用の面でこれからのリストラで流動化する労働力を安心していただけるような対策をとりたい、こう考えています。  そういうことで、合計いたしまして約二・三%経済が成長するだろう。自然のままで任せておきますと一・七%くらいマイナスになるところを、二・三%押し上げることによって〇・五%のプラス成長は達成できる。これはIO表その他いろいろ複雑な計算をいたしまして出した結論でございますが、見通しでございますからやはり言葉だけにならざるを得ないのでございますけれども、そういうことをある程度国民の皆さん方も織り込んでいただきまして、最近幾分かそういう明るい兆しを感じるとおっしゃっていただく方々もふえている、そんな現状でございます。
  155. 前島秀行

    ○前島委員 四月に統一自治体選挙がありますので、それぞれ選挙の対応で事務所を探すという行動をそれなりに皆さんやっていると思うのですね。かつては、私たちの地方の中堅都市でも、選挙のための事務所を探すというのは非常に大変だった。ある意味だったら、畑のど真ん中に行ってそこにプレハブでも建てなければ、なかなか簡単に人が通るような事務所は見つからない。しかし残念なことにと言っていいのかどうなのかわかりませんけれども、今回は非常に簡単に事務所が見つかるんです。皆さん恐らく実感される、大臣も恐らく実感されていると思いますね。やはり中小零細の企業が、特に商店のあるところがぽつぽつ穴があいていて、すぐ見つかるというのが皮肉な現象と言っていいと思います。やはり相当実感として落ち込んでいるな、こういうふうに言わざるを得ないだろうと私は思っています。  貸し渋りの現象だって、いわゆるマイナス三・三の残高の減少があって、マイナス一です。大体、GDPを〇・五押し上げるという見方をすると、その減少だけ見たって相当のGDPのマイナスだ。それを超えてさらにというのは、我々、先ほどのような事務所一つ探すのでも数年前と今との違いを実感すると、なかなかそう簡単ではないぞということは、実感として存在するということだけはやはり受けとめてほしいなと、私、率直に思います。  そういう意味で、従来型の景気策とかではだめだということは間違いないだろうと思います。やはり今日の日本経済が収縮してしまった、落ち込んでしまった要因の中に、需要の側、消費者の側から見ると先行き不安という問題がどうしても避けて通れない。これは中小企業の側から、やはり企業家の側からもこのことが言えて、相当萎縮しているな、こういうことだろうと思います。したがって、大臣が先ほど言われましたように公共投資だとか予算だとか減税だけではここは乗り越えられないというのが現状ではないだろうかなということを、私は強く実感として感じます。  だとすると、要するに先行き不安的なもの、これは需要の側からも供給の側からも、そこを解消するセーフティーネットというのでしょうか、そこにかなり政府としては政策的にもウエートを置くし、また国民に需要なり投資を呼び込ませるような積極的な姿勢というものがなければ、私は、先ほどの需給ギャップを埋めたりという形にはなかなかいかないというのが率直なところではないだろうかな。だから、貸し渋り現象だって、六十兆あるから公的資金をやれば貸し渋りがおさまるのだと私は言い切れない部分というのは現実にある。特に中小零細のところには実感としてまだまだたくさんあるだろう、こういうふうに思います。  そういう面で、積極的なというか、刺激的な景気対策というふうなもの、特に消費の側、国民の側の消費なりあるいは投資を呼び込むようなセーフティーネット的なものを積極的に、従来の教科書と言っては語弊がありますけれども、基本的なものとは別に意識的にやらないと、枠を、壁を乗り越えられないのではないかというところを私は盛んに感じてしようがないわけなので、そういう面では、従来型の経済対策といいましょうか景気対策ではだめなので、この先行き不安を解消するセーフティーネットを積極的に呼び込むような施策というものが、特に経済企画庁の側から見れば積極的に提起するというところが絶対的に必要ではないだろうかな。  そこの点が、我々、原点といいましょうか、現場の側から見ると実感として伝わってこないということをよく聞くわけでして、その辺の経済企画庁長官としての観点というものを、今後、私たちからは政府の中で積極的にやっていってもらいたいな。そういうアナウンス効果といいましょうか云々というものを出して誘導していかないと、なかなか消費もあるいは投資というものも呼び込めないのではないのだろうかなということを実感するので、その辺のところの受けとめ方、長官なりあるいは通産大臣、もしあったらよろしくお聞かせいただきたいな、こう思っております。
  156. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 まことにお説のとおりでございまして、将来不安というのは大変難しい問題でございます。  例えばアメリカでございますけれども、アメリカはどう見ても福祉なんかは低い水準にございまして、健康保険も皆保険にはなっておりません。それにもかかわらず、現在アメリカは一〇〇%を超えるような消費性向がございまして、これによって景気がずっと好調に維持しております。そういう世の中の楽しさということも、これは大変重要な意味があるのだろうと思うのでございます。  お尋ねの点について申し上げますと、今度の経済対策では、従来型ではだめだというので、三つほど新しいことをやりました。その一つは、繰り返し申し上げますが金融対策で、金融大手二十行をそのまま護送船団でやるのじゃないのだ、もうこれは市場に不適当なものは退場いただくということで整理をし出した、これが一つでございます。  第二番目には税制でございまして、これも去年の税制では緊急対策的なもので定額減税をいたしましたが、ことしは恒久的な減税をいたしまして、将来、業を起こして成功した人にはそれ相応に報いられるというので、国税、地方税合わせて最高税率を五〇%にするというようなことで、人々の挑戦の意欲をかき立てるような形をとりました。企業課税につきましても、国際的な四〇%水準にいたしまして、企業の流出をとめる手だてを打ちました。  もう一つ、公共事業でございますが、これは即効性、波及性がやはり必要でございますので、すべてとはいきませんが、その中でも特に二十一世紀先導型プロジェクトというものを起こしまして、電子立国日本をつくる、ペタクラスの光ファイバーネットをつくる、ペタネットをつくるなどというのは、これはもう世界的にも例のないような大きな前進の話をしております。  また、都市の国際競争力を高めて、日本に知的な都市産業が起こりやすい、来やすいような条件をつくる。これは都市の交通、生活条件を高めるということです。  そして三番目には、委員指摘のとおり、今商店街が非常にあいております。私は選挙はやりませんけれども、選挙をやらなくてもそれは重々わかるぐらいシャッターの閉まったところがたくさんございます。こういうところを再生して、歩いて暮らせる町づくりをしよう。安心でゆとりのある町づくりをしよう。そういたしますと、女性もお年寄りも非常にたやすく生活できて、仕事が持てる。そういう町づくりの考え方を変えていこうという研究を、地域戦略プランとして行っております。  そして最後に、やはり雇用の問題として、流動性を持ちながらも安定した雇用政策をいかにしていくか、こういったことにかなりの力点を注いでおります。ことしはまだ金額としてそれほど大きくございませんが、これらが、各省の横断的なプロジェクトといたしまして総理直属で進めていきますと、何年か後にはかなりのものになりますから、人々に対して、新しいことが始まったなという感覚を持っていただけるのではないかと考えております。
  157. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 やはり、いろいろな政策を決め、また今国会でも予算お願いしておりますけれども先生の御指摘のように、先行きに対する不安をある程度除去いたしませんと、国民の消費性向も上がってまいりませんし、私はこの不況は続くのだろうと思っております。  最も典型的な先行き不安というのは、雇用に対する不安と、そして例えば将来でございますが年金に対する不安というものは、典型的な消費を抑えるものであると私は思っております。平成九年というのはそういう意味では大変大事な年であって、やはり平成九年の十月—十一月にかけまして三洋証券とか山一とかというところが倒産をして、あんな大きな会社も倒産するんだということを国民が実感したわけでございます。  また経営者も、リストラ、リストラと一つ覚えのことをずっと繰り返しておりまして、リストラというのは人員をカットするというイメージがあって、やはりどんな大きな会社にいても雇用不安を覚え、また、年金の財政がパンクするのではないかという無用な不安を持って、やはり個人個人は守りの姿勢で生活をするようになった。ここの部分をやはり解消しなければならない。  ですから、年金の改革とか、雇用不安を除去するための施策とか、こういうものをやはり力強くやらなければならないと思っております。
  158. 前島秀行

    ○前島委員 時間がないものですからちょっと、貸し渋りで去年の十月からありました二十兆円枠のあれ、それなりに私は効果があったと思うのです。ただし、現場の部分ではまだまだ門前払いを食らって、ぎりぎりのところというのを私も何件か聞いています。例えば市中銀行、ノンバンクにかかわっていたら門前払いにされたとか。  しかし、中小企業、零細企業というのは、数字に出てくる企業の赤字と実際の自分の持っている資産その他からちゃんと厳密に見ていくとそれほど、帳面上、数字とは違うものが出てくるという問題があって、利用者側から見れば何で門前払いという部分がかなりある。そういう市中銀行、ノンバンクとの絡み合いの問題で門前払いだとか、あるいは会社更生中の企業についてはもう全部棒を引いているとか、しかしそれだったら民間金融と何も変わらないので、それが再生の見通しがあるというところが政府の金融機関の主な意味なので、そこをどう見るのかというところが私は政府機関の役割だろう。その辺のところの更生中の企業に対する見方というのも、もっと大切にすべきではないだろうかな。  あるいは、担保物件が土地だ云々だというのは、現実に経営の苦しい、資金繰りに苦慮しているところは、持っている不動産なんというのはもう全部担保に入っているのですよ。そこで出てくるのは、手形だとかなんかの評価というものが、民間の金融機関と政府系機関の違いとしてそこのところを見てくれ、こういう問題等々が現実の声として出てきているわけなので、その辺の政府の金融機関の対応の仕方について、民間との違いが出てこないと現実には意味がないのではないかな、その辺のところが一つ。  それから最後にもう一つは、中小企業、零細企業に対する元請だとか大手企業の嫌がらせというのが非常に起こっているということなので、その辺のところも中小企業対策として考えておく必要があるのではないかというところをお願いして、もし答弁があるとしたら時間が過ぎましたから結構でありますけれども、その辺のところはぜひ具体的な中小企業対策として考えないと、私は、制度があるけれども現実には苦しんでいるところが現場にはまだまだたくさんいるということだけは十分に理解をしておいてほしいというふうに思っています。
  159. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 簡潔にお答えいたします。  信用保証制度につきましては、御承知のように、十のネガティブリストというのをつくりまして審査を迅速に行う、ただ他方、モラルハザードを生じないようにしようということでやっております。  具体的に御指摘をいただいた会社更正手続中のケースにつきましても、基準では、手続中ということだけでけるということではありませんで、かつ事業継続の見通しが立たない場合ということで整理をしてございますので、具体的に事案の内容を審査させていただいて、受け入れるということも出てくるかと思います。  それから、担保につきましては、中小公庫等の政府系金融機関あるいは信用保証協会につきましても、通常の民間の金融機関と違いまして、単に土地でなければいかぬとかいうことではなくて、動産的な物的担保も評価をさせていただいておりますし、あるいはいろいろなソフトの工業所有権的なものについての評価もできるように、今鋭意努力をさせております。
  160. 前島秀行

    ○前島委員 終わります。
  161. 古賀正浩

    古賀委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十二分散会