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棚橋参考人 ただいま御紹介をいただきました
社団法人日本青年会議所近畿地区協議会本
年度会長を仰せつかっております
棚橋でございます。
本日は、この特別
委員会におきまして
参考人としてお呼び立てをいただきまして、本当に光栄に存ずる次第でございます。
私ども
青年会議所におきましては、今し方二名の
参考人からもお話をさせていただきましたとおり、
地域主権の
社会づくりを目指した中で、
首都機能移転というものが必要不可欠であるという思いにおいて一致をするところでございますけれども、私が本日、近畿
地区協議会の
会長としての
立場で
出席をさせていただいておりますところ、近畿・畿央にということに特に重点的にお話をさせていただきたいというふうに考えておるところでございます。
さて、この
国会等の
首都機能移転の問題につきまして、まず、
青年会議所として考える中でのその必要性について述べさせていただきたいというふうに考えます。
そのまず一点目は、この国のシステムを根本から変革する必要があるのではなかろうかということを考えております。
今日の長引く不況につきましてはいろいろと論じられておりますところでございますけれども、その根底には、中央で決まらなければ、あるいは中央集権のシステムが変わらなければ
自分たちでは何もできないといったような無力感が支配しているように感じております。
青年会議所では、十数年来、
地域主権の国家像を思い描きまして、
規制緩和や市町村合併、道州制など、みずからが主体的に
町づくりにかかわれるべき方策について研究、また提言をしてまいりましたけれども、その意を一層強めたものは阪神・
淡路大震災の救援活動でございました。それは、現場が必要とする
情報は現場にのみあり、刻々と変わる
状況には、現場で判断し、現場で
対応することが最も
効果的である、そのような実体験によるものでございます。もちろん、そのとき駆けつけたボランティアに無力感はありませんでした。
一刻も早くこの国のシステムを
地域主権に基づくものに転換する必要性を痛感しております。そして、その覚悟のほどを明確に
国民にアピールするとともに、小さな
政府、行財政改革の成功のためにも、
首都機能移転が急がれるものというふうに考えております。
二点目に、価値の多様性を醸成していくということがこれからの国家に必要ではなかろうかというふうに感じております。
東京のものでないと本物ではない、そのような
価値観が生まれつつあるように感じます。先ごろ、ある新聞記者の方とお話をしておりましたところ、悲しいかな、大阪本社の記事であっても
東京の記者によるものの
情報が優先されますというようなことでございました。確実に
価値観の
一極集中が加速していることの証左であり、
価値観の一極支配構造の危険性を含んでいるのではないでしょうか。
価値観の多様性の意義についてはここで言及するまでもありませんが、国家の安全性と創造性豊かな
発展性の
確保に向けた価値の多極化を図る意味におきまして、
首都機能移転の持つ意味は重要だというように考えております。
三番目に、
国土の均衡ある、また持続可能な
発展についてであります。
東京への
一極集中につきましてはここで論じるまでもございませんが、その弊害は、
地方の活力の低下と非効率化、また
東京や
地方との税の活用効率の悪化、またダイオキシン問題ですとかあるいは
産業廃棄物処理場の問題にあらわれますとおり、今後の持続可能な
発展はなかなか期待できるものではありません。多極分散型
国土軸の形成を期待したというところでも、先ほども述べましたように政経
文化が一極に
集中する
状況にありましてその
実現は不可能としか言いようがありません。その解決策として、政治
機能を
東京から分離し、
東京を
地方と
位置づけることによって健全なる中央と
地方のバランスを発現せしめ、
国土の均衡ある
発展の契機とすることが必要だと考えています。また、均衡ある
発展は各
地域のサイズの適正化にも寄与するものと考えており、将来にわたっての持続可能な
発展が期待できるものと思います。
次に、以上のような
首都機能移転の必要性に続いて、
首都機能移転に求められるべきものを、この近畿
地区協議会、私どもで
議論をしたことについて少し申し述べさせていただきたいというように考えます。
一番最大の求められるべき要件といたしまして、国家のアイデンティティーを内外に表現することではないかというふうに考えております。
日の丸・君が代問題に象徴されますように、今、
国民にとって国家という
概念が非常に希薄になっていることを危惧しています。また、
国際社会において、我が国は顔の見えない国と表現されることがよくあります。一方、今日、グローバルスタンダードという言葉に象徴されますように、
国際社会における標準化が進行しています。現在は、この標準化に乗りおくれまいとして数字合わせに右往左往している
状況でありますが、その先にある本質的な問題は個性ではないかと考えます。今求めている標準が当たり前になったとき、個性なきものは埋もれ、個性あるものだけが輝きを持って存続し得るのではないでしょうか。
なればこそ、混沌とする国際情勢の中で、世界に対して、また
国民やグローバル化する企業に対してアイデンティティーを指し示し、
日本という国のあり方を明らかにすることが急務であるというように考えています。また、その場は、
首都機能移転という最大級の
国家プロジェクトをおいてほかにはないものというように確信をしております。
次に、国際性、特にアジアの一員としての要因でございますけれども、国際
時代の新都に求められるべきものには、その
都市が世界に開かれていること、また、戦略的に見て我が国がアジアの一員であるとの強い意思表明が必要不可欠であるというように考えます。
欧米の知識人あるいは親日派のお話としてよく聞かされることに、冷戦後の新たな世界秩序づくりに関して
日本に寄せられる期待は絶大のようです。それは、単に
経済大国であるということだけではなく、多分に儒教的哲学を持った資本主義
経済圏の一員としての期待であるように感じています。
また、アジア
地域における
経済の牽引車として、またアジェンダ21に規定されるようなアジア北東部の一員として、その他枚挙にいとまありませんが、国際戦略上アジアの中での存在意義を明確にすることも
首都機能移転時には必要
条件であると考えております。
次に、
地方分権の加速性ということで、私どもが十数年来
地域主権を唱えている中で、その我々の
運動に直接寄与するところの
部分でございます。
東京を
地方にするということは既に述べましたけれども、中央と
地方の
関係を
東京のみに行わせることは、
地方分権の推進に必ずしもよい
効果は生まれないと考えています。また、
東京経済圏に従属する形をつくることも同様であります。複数の
経済圏が活性化し、多極構造をとる中で衛星的に近郊
経済圏が力をつけ、徐々に
国土に均衡ある
発展が進んでいくとするならば、必ずや
地方分権の推進が加速するのではないでしょうか。このような
観点から、
首都機能移転先には
地方分権をにらんだ戦略的
候補地の策定が望まれます。
以上、
青年会議所として、この新しい国のシステムをつくっていくに当たりまして、三
候補地、いずれ劣らぬ
候補地ではあります。そういう前提におきまして、
首都機能移転ということの大前提、その必要性と備えるべき要件について
意見を述べさせていただきましたが、ここからは、近畿・畿央にというところで、畿央の検証というところについて述べさせていただきたいというふうに考えております。
まずは、
歴史、
文化の確認から入ってまいりたいというふうに思います。
改めて論じるまでもなく、近畿は
歴史の表舞台を歩み続け、特に国宝、重要
文化財等の保有量は、
東京を第一位としても、京都、奈良、滋賀がそれぞれ二位から四位を占めております。この国の成り立ちを十分に知らしめる
地域であります。また、
文化財に加え、茶道、華道、仏教など、我が国の精神
文化を体現する多くの機会がちりばめられています。国家の象徴としての天皇に関する事象も同様でありまして、国家のアイデンティティーは、新しくつくるものではなく、既にこの
地域に存在するものであります。私
たちのみならず、諸外国の方々にとりましても、この国の成り立ちとあり方を考える上で、ほかに類を見ない
地域であると確信をいたします。
次に、
国土の中央であり、三つの
国土軸が
集中をするという
利点でございます。近畿は、
国土のほぼ中央に
位置をしまして、これは全国との均等なアクセスが可能であることを意味しています。また、この
地域は、
日本海
国土軸、太平洋
国土軸、西
日本国土軸の三
国土軸が
集中していることに加えまして、
日本海
地域と太平洋
地域を最短距離の約九十キロで結んでいるという
地域特性を持っております。これは、全国均等のアクセスとあわせ、
経済的
連携並びに連鎖が容易であるとともに、我が国の多様な
生活習慣や
文化と交流するたぐいまれなる
地域と言うことができると思います。
次に、近畿
地区内では非常に多くの多様なプロジェクトが推進をいたしております。近畿では、現在、最先端
技術の研究分野の関西
文化学術研究
都市、また、鈴鹿山麓研究学園
都市、びわこ
文化公園
都市など主要プロジェクトを初めといたしまして、国立
国会図書館の関西館や京都迎賓館など、新たな投資を必要としない
首都機能として有効に活用することが可能な
機能が点在をいたしております。
また、先ほど来お話になっております
環境ということにつきましても、
環境立県としての滋賀、またCOP3の開催のありました京都というものをその域内に抱えておるところでございまして、
国際社会の趨勢といたしまして、新
首都が諸外国に与えるインパクトを考えましたら、
環境への配慮が必要不可欠であります。滋賀県は、石けん
運動に象徴されますとおり、
官民一体となった
環境運動が有名でありまして、
環境先進県という呼び声にふさわしい
運動が推進されています。また、先ほども申し上げましたとおり、京都は一九九七年にCOP3が開催をされ、これを契機に、近年
環境問題への取り組みが急ピッチで進んでおります。
このような地盤を持つ近畿であればこそ、急場しのぎではない、戦略的な
環境整備を進めることができましょうし、また我が国の
姿勢をアピールすることにつながるのではないかと考えています。
最後に、畿央高原への
首都機能移転の優位性について述べてみたいというふうに思います。
先ほど、
首都機能移転に際しまして最も大切なことは国家のアイデンティティーを内外に表現することだというふうに
意見を述べさせていただきました。この
地域への
移転そのものが国家のアイデンティティーの表現になるというふうに考えています。
この国の成り立ち並びに我が国の精神
文化を体現できるこの
地域に
首都機能を
移転することは、それ自体が国家のアイデンティティーを世に示すことであり、国家の
概念が薄れかけている
国民に
日本国民としての根っこを与えることにつながると同時にまた、真の国際人を生み出す源泉となるだろうというふうに考えています。
一方、新
首都には多くの各国の国際機関とともに要人がお越しになることと存じますが、そのような折、机上の
議論だけではなく、この国の成り立ちや精神
文化を実体験し、理解を深めていただくことがどれほど外交上有益であるかはかり知れません。
会議に疲れた体をいやす知的な空間が畿央高原を取り囲んでおります。
次に、地形、
環境の優位性でございますけれども、
首都機能移転は、広域的かつ長期的なプロジェクトであることに加えまして、
自然環境への負荷を可能な限り回避するという課題から、
クラスター型の
開発が求められております。畿央高原は、複数の盆地群で構成され、一カ所に大
規模の
開発が入り込む余地がなく、
中心クラスターから適度の距離を置いてネットワークを形成する複数の
クラスターへの段階的
開発が必然となります。これは
環境に対する配慮を受け入れやすく、今後の自然
共生型
開発の見本ともなり得ます。
また、国立公園や国定公園が集まる
地域でもあり、
周辺の
都市機能、びわ湖ホールや京都迎賓館なども考え合わせますと、各国要人へのおもてなしや国際
会議などでのエクスカーション要素も十分であります。
三点目に、陸海空それぞれのアクセスの
利便性であります。
畿央高原は両翼に関西国際空港と、計画中でございますが、中部国際空港の二つのハブ空港を擁し、陸路は新幹線、名神高速道路、計画中の第二名神など、この上もなく国内外の
交通アクセスに至便な
地域であります。また、近畿は
日本海、瀬戸内海、太平洋の三海域に臨みまして、舞鶴港、若狭港、大阪港、神戸港、
名古屋港の活用が可能であります。
このような
環境は海外からの要人の来訪を容易にするとともに、非常時の緊急な
対応に対しまして選択肢の幅を広げる意味で大変有意であるというふうに考えております。
最後に、二大
経済圏の活用でございます。
畿央高原は、空港と同じく両翼に関西
経済圏と中部
経済圏を従えています。新
首都はこの両
経済圏を有効に活用でき得るとともに、両
経済圏の活性化に寄与することが可能であります。これはさきにも述べましたような、
地方分権を推進する上で、
東京ひとりに
地方の牽引を覆いかぶせることなく、
経済並びに
町づくりの多極性を現実のものとすることに重要な意味があろうというように考えています。新しいこの国のシステムを構築する上で最も望ましい立地であるということを確信いたしておる次第でございます。
以上、私の方から
意見を述べさせていただいたわけでございますが、近畿
地区協議会、九六年の堺屋太一先生の御講演を初め、今日までさまざまな研究と提言をしてまいりました。既に皆様方にもお配りをさせていただいていると存じますが、この「
未来首都・畿央」も、
経済界や学者の方々、また
地域行政の方々を主体とします
首都機能移転構想研究会の方々の協力を得まして、昨年度近畿
地区協議会で出版をさせていただきました。ただいま私が述べさせていただきましたようなことはすべてこの中に記載をされておることでございますし、単に行政、
経済界というだけではなくて、
地域の住民をも巻き込んだ中での各地
青年会議所、それは単に近畿
地区協議会だけではなくて、四国や中国の
地方の
青年会議所の方からもたくさん寄稿をいただいて、そういった万全の体制で今後も進めてまいりたいというふうに考えております。
また、畿央
地区は四県が接する地点にございます。この四県の
地方自治体、また
青年会議所、また住民等々におきましてスクラムを組んで頑張って、畿央の方に
国会、
首都機能移転の
誘致を進めてまいりたいと思います。
先生の皆様方にはこれからもいろいろな形で御指導、御鞭撻等を賜らなければいけないと思いますけれども、どうぞこの近畿・畿央高原への
首都機能の
移転に御理解をいただきまして、推進をいただきたくお願いを申し上げまして、私の
意見陳述とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)