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1999-06-07 第145回国会 衆議院 行政改革に関する特別委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年六月七日(月曜日)     午前九時三十一分開議  出席委員    委員長 高鳥  修君    理事 伊吹 文明君 理事 岩永 峯一君    理事 杉山 憲夫君 理事 虎島 和夫君    理事 山口 俊一君 理事 小林  守君    理事 田中 慶秋君 理事 若松 謙維君    理事 中井  洽君       岩下 栄一君    衛藤 晟一君       小野寺五典君    大石 秀政君       大野 松茂君    木村  勉君       熊谷 市雄君    河本 三郎君       砂田 圭佑君    田中 和徳君       戸井田 徹君    中野 正志君       萩山 教嚴君    細田 博之君       松本 和那君    水野 賢一君       宮島 大典君    森  英介君       山本 幸三君    渡辺 博道君       石毛えい子君    岩國 哲人君       末松 義規君    中桐 伸五君       平野 博文君    藤田 幸久君       山本 譲司君    石垣 一夫君       佐藤 茂樹君    並木 正芳君       桝屋 敬悟君    小池百合子君       西川太一郎君    三沢  淳君       春名 直章君    平賀 高成君       松本 善明君    畠山健治郎君       深田  肇君  出席公述人         国際基督教大学         教授      西尾  勝君         元獨協大学長  恒松 制治君         姫路獨協大学教         授       井下田 猛君         自治体問題研究         所常務理事   池上 洋通君         社団法人経済団         体連合会事務総         長       内田 公三君         社団法人行革国         民会議事務局長 並河 信乃君         KPMG フィ         ナンシャル・         サービス・コン         サルティング株         式会社理事長  西崎 哲郎君         日本国家公務員         労働組合連合会         中央執行委員長 藤田 忠弘君  出席政府委員         内閣審議官         兼中央省庁等改         革推進本部事務         局長      河野  昭君         内閣審議官         兼中央省庁等改         革推進本部事務         局次長     松田 隆利君  委員外出席者         衆議院調査局第         三特別調査室長 鈴木 明夫君     ————————————— 委員の異動 六月七日  辞任         補欠選任   金田 英行君     大石 秀政君   倉成 正和君     木村  勉君   実川 幸夫君     渡辺 博道君   中川 正春君     石毛えい子君   畠山健治郎君     濱田 健一君 同日  辞任         補欠選任   大石 秀政君     金田 英行君   木村  勉君     田中 和徳君   渡辺 博道君     実川 幸夫君   石毛えい子君     中川 正春君 同日  辞任         補欠選任   田中 和徳君     倉成 正和君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案内閣提出第九一号)  内閣法の一部を改正する法律案内閣提出第九六号)  内閣設置法案内閣提出第九七号)  国家行政組織法の一部を改正する法律案内閣提出第九八号)  総務省設置法案内閣提出第九九号)  郵政事業庁設置法案内閣提出第一〇〇号)  法務省設置法案内閣提出第一〇一号)  外務省設置法案内閣提出第一〇二号)  財務省設置法案内閣提出第一〇三号)  文部科学省設置法案内閣提出第一〇四号)  厚生労働省設置法案内閣提出第一〇五号)  農林水産省設置法案内閣提出第一〇六号)  経済産業省設置法案内閣提出第一〇七号)  国土交通省設置法案内閣提出第一〇八号)  環境省設置法案内閣提出第一〇九号)  中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律整備等に関する法律案内閣提出第一一〇号)  独立行政法人通則法案内閣提出第一一一号)  独立行政法人通則法の施行に伴う関係法律整備に関する法律案内閣提出第一一二号)      ————◇—————
  2. 高鳥修

    高鳥委員長 これより会議を開きます。  内閣提出地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案並びに内閣法の一部を改正する法律案等中央省庁等改革関連十七法律案の各案について公聴会を行います。  午前は、地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案について審査を行います。  この際、公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用の中御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。公述人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  西尾公述人恒松公述人井下田公述人池上公述人の順に、お一人十五分程度意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のために申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。  それでは、西尾公述人にお願いいたします。
  3. 西尾勝

    西尾公述人 地方分権推進委員会委員を務めております西尾勝でございます。  本年三月末日をもちまして、三十八年間奉職してまいりました東京大学を定年退職いたしまして、この四月より国際基督教大学に移籍をいたしました。  議員各位には、常日ごろから、地方分権推進につきまして格別の御支援を賜り、まことにありがとうございます。また、本日は、現在、貴委員会において御審議中の地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案につきまして、私に意見陳述機会をお与えくださいましたことに深く感謝申し上げます。  本日、私は、内閣提出地方分権推進一括法案の内容に賛成し、その一日も早い可決成立を切望する立場から、意見を申し述べさせていただきます。  去る五月二十八日の参考人質疑の場で、私ども委員会諸井委員長が既に同趣旨陳述をしておられますが、その後の国会審議状況を拝見しておりますと、審議は格段に深められ、かなり細目にわたる御論議が種々展開され、中には、原案批判し、これに修正を求める御意見も出てきているようにお見受けいたします。  そして、そうした御批判修正意見の中には、地方分権推進委員会行政関係検討グループの座長として、勧告原案の取りまとめに従事してまいりました私といたしましては、懸念を覚える点もございますので、地方分権推進委員会関係者として、改めて意見陳述機会をお与えいただき、私ども勧告がどのような調査審議方針のもとに作成されたのか、また、私ども勧告と、政府地方分権推進計画と、そして今回の地方分権推進一括法案の間の関係を私たちがどのように認識しているのかを御説明し、議員各位の御理解を得たいと念願している次第でございます。  地方分権推進委員会は、地方分権推進法に基づいて設置され、私ども委員会委員は、衆参両院の同意を得て任命されております。いわば国会の御意思に基づいて設置された審議機関でございます。したがって、私ども委員会は、国会の超党派の御賛同を得られるような勧告を作成するように努める責務を負っているというふうに考えてまいりました。  しかし、それには、差し当たりまず、時の政府与党の御理解が得られる勧告でなければなりませんが、委員会発足時から第四次勧告に至る時期は、自民、社民、さきがけの連立政権時代でございましたから、少なくとも、これら与党三党の御理解を得られる勧告でなければならないと考えてまいりました。  ところで、今回の分権改革の柱の一つになっております機関委任事務制度につきましては、地方分権推進法の第五条には、機関委任事務整理合理化その他所要の措置とあるのみでありまして、機関委任事務制度全面廃止勧告まで許容されているのか否かは、法文上に明記されておりませんでした。  そこで、当初の段階では、私ども委員会が、この制度全面廃止を目指して調査審議を進め、勧告を提出した場合、これが政府与党によって、さらには国会によって受け入れられるのかどうかという点に大きな不安を抱いておりました。この点は、第一次勧告で同制度廃止を提言しましたところ、その直後に、行政改革プログラムの中に書き込むという形で最大限尊重閣議決定をしていただき、初めて安堵したというのが正直なところでございまして、今国会における審議では、機関委任事務制度全面廃止を大前提にしてすべての論議がなされている状況を拝見いたしますにつけ、隔世の感を覚えます。  第一次勧告提出直後の閣議決定で、機関委任事務制度全面廃止を含む、勧告最大限尊重閣議決定をしていただいて以降は、関係法令を所管しておられる関係省庁の御理解を得ながら、従前機関委任事務のすべてを今後どのように処理するかを一つ一つ確定させ、この制度全面廃止を確実なものにするために膨大な時間とエネルギーが消費されることになりました。  この作業には、大きく分けて二種類のものがございました。  一つは、従来の機関委任事務制度にかわる新しい制度設計する作業でありまして、自治事務法定受託事務の区分、それぞれの事務に係る関与基本類型の設定、関与手続ルール創設関与をめぐる係争を処理する仕組み創設など、各省庁横断的な共通制度設計でございます。  この種の制度設計事項につきましては、委員会側がまずたたき台を提示して関係省庁の御意見を伺い、次には第一次試案を提示して関係省庁の御意見を伺う、そして第二次試案を提示して再度関係省庁の御意見を伺うといった手続を繰り返し、これで大方省庁のおおむねの御理解を得られたという心証を抱きました段階で、これを勧告事項に盛り込むという調査審議方針を採用いたしました。  そこで、この種の事項につきましては、私ども委員会勧告した段階では、大方省庁のおおむねの御理解を得ていたにとどまるのでございまして、私どもの提案した新制度の細部に至る隅々まで、全省庁の全面的な賛成を得ていたのでは決してございません。また、私どもによる新制度設計は、相当に詳細なものではありましたけれども、そのまま直ちに法律上の文章に採用できるほど十分に厳密な検討を加えたものではありませんでした。  そこで、第一次勧告のとき以来、勧告たびごとに、その末尾の「おわりに」の部分で、政府はこの勧告を受けて、法制的な検討を深めてほしい旨を付記してまいりました。そこで、この種の事項につきましては、その後の政府地方分権推進計画上の表現が、勧告表現とは若干異なるものになりましたり、さらに、今回の地方分権推進一括法案上の表現が、地方分権推進計画表現とも若干違うものに変わっていたりするところがございますが、これは、事柄の性質上やむを得ないところであり、委員会としては初めから覚悟していたことであります。  しかし、政府によるより厳密な検討の結果なるものが、私ども委員会勧告趣旨をゆがめるものであれば、これを許容するわけにはまいりませんので、その後の監視活動の一環といたしまして、地方分権推進計画作成段階でも、また今回の地方分権推進一括法案立案段階でも、その都度、政府側から御説明を求め、点検に努め、時には修正を求めてきたところでございます。  そこで、法定受託事務の定義の変遷を初めといたしまして、国会審議で御論議の対象になっている数々の点につきましては、最終的な法文上の表現は、それぞれしかるべき正当な理由があって修正されてきたのでありまして、私ども勧告趣旨をゆがめるものでは決してないと理解しているところでございます。  ところで、機関委任事務制度全面廃止に伴うもう一つ作業は、各省庁所管の個別の機関委任事務を、関係省庁との合意に基づき、一つ一つ自治事務法定受託事務、あるいは国の直接執行事務などに振り分けていくとともに、自治事務にどの程度まで基本類型以外の関与を許容するかを確定していく作業でございました。この種の作業の方は、俗にグループヒアリングと呼ばれていた方式で、関係省庁担当部局との間で個別に進められました。  このグループヒアリングでは、委員会は、国政選挙選挙管理事務など、ごく少数の例外的な事務につきましては当初から法定受託事務にふさわしいものであると認定しておりましたけれども、それ以外の機関委任事務はすべて自治事務に変更可能なはずであるという推定折衝に臨み、これは法定受託事務または国の直接執行事務でなければならないというのであれば、関係省庁の側がそのことを説得力のある論法で論証してみせるべきであるという方針を採用いたしました。  こうして論議を何回も重ね、そのうちに、委員会側、私どもの側も、相手省庁の言い分をもっともだと認めるに至ったときに、それではこれは、そちらの御主張のように、法定受託事務なり国の直接執行事務なりに振り分けることにいたしましょうという合意をしていったのでございます。  そこで、外部の方々がこの折衝経過を外からごらんになりますと、初めは自治事務にすべきだと言っていた委員会側がだんだんに、関係省庁側の頑強な抵抗に直面し、あるいは関係省庁側からの強烈な反撃に論破され、次々に敗北し、譲歩を強いられ、法定受託事務または国の直接執行事務にせざるを得なくなったというように見えるのかもしれません。  しかし、そのような見方は正しい見方ではございません。私どもは、すべて自治事務になり得るはずだという推定に立って議論を始めることによりまして、相手の論理にどれだけ確かな論拠があるのかを確認することができる、そして、この方法によることが最終的に最も妥当な結論に落ちつくことができると考えて、このような折衝方法を採用していたのでございまして、作業の結果は、まさにそのような妥当な結論に落ちついていると確信しております。  第四次勧告までのグループヒアリングは、委員会側関係省庁側の間の基本的な信頼関係のもとに進められたのでありまして、途中経過にはいろいろと厳しい論議のやりとりもございましたけれども最後には、双方が完全に納得して、実に気持ちのよい雰囲気の中で合意に到達しているのでございます。この点をぜひとも御理解いただきたく存じます。  法定受託事務に振り分けられたものの割合が多過ぎるという御批判がございますが、新しく創設した法定受託事務性質に該当するものしか法定受託事務に振り分けてはいないはずであります。  ただ、今回、法定受託事務に振り分けられた事務の中には、メルクマールの七に該当するもの、すなわち、都道府県市町村が国の手足として事務のごく一部分のみを担わされているにすぎない事務、また都道府県市町村が国への経由機関として使われているにすぎない事務が、私どもが当初予想していた以上に数多くございまして、これらが法定受託事務全体の三割方を占めているのでございますが、これらは、将来、事務事業執行体制仕組みそのものを改め、徐々に整理し、廃止していくべきものではないかと思われます。  以上、機関委任事務制度全面廃止に関連した作業を、各省庁横断的な共通制度設計作業と、各省庁所管の個別の事務振り分け作業とに分けて、それぞれの事項をどのような調査審議方法で処理してきたかを御説明してまいりましたが、いずれにも共通することとして、この一連作業に初めから終わりまで終始一貫してかかわってまいりました当事者として、ぜひともこの機会に申し上げておきたいことが三点ございます。  第一点は、地方分権推進委員会は、地方団体から寄せられました改善要望事項出発点にし、これらを極力実現することを目標にしながらも、勧告を実行可能なものにすることに最大限の配慮をし、関係省庁側の御理解を取りつけることに粘り強く努め、その結果として、関係省庁側が実行を確約してくださった事項のみを勧告したということであります。そこで、勧告事項はほぼ一〇〇%そのまま地方分権推進計画に盛り込まれ、さらに、それがほぼ一〇〇%忠実に今回の地方分権推進一括法案法形式にまでまとめられているということでございます。勧告と、地方分権推進計画と、地方分権推進一括法案の間に見られる表現上のずれは、ごくわずかな範囲内にとどまっています。しかも、それらはいずれも、政府において慎重に法制的な検討を深めた結果でありまして、それぞれに正当な理由があってのことでございます。  第二点は、機関委任事務制度全面廃止することに伴い、これにかわるさまざまな新制度設計し、これらの新制度を前提にして、従前機関委任事務を新しい事務類型に振り分けているわけでありますが、これらは相互に密接に関連し合っております。それらは、一貫した思想と方針に基づいて設計され、振り分けられているのでありまして、それゆえにこそ関係省庁の御理解を得ているところでありまして、そのうちの一部分だけを取り出して、これに不用意な修正を加えますと、全体の体系が不調和なものになってしまうおそれが強いのであります。  例えば、自治事務に対する是正要求について、これを受けた地方公共団体是正または改善のために必要な措置を講じなければならないとする義務がある旨を規定している点につきまして、種々疑問が提起されているとのことでございますが、この点は、新たに国地方係争処理制度創設していることと密接に関連しているところでございまして、その相互関係を正確に御理解になった上で御判断いただきたいと存じます。  第三点は、これまで地方事務官方々が処理してこられた事務を初めとして、幾つかの事務をこの機会に国の直接執行事務に切りかえているという点につきましても、種々の疑問が提起されているとのことですが、委員会は、地方分権推進法第四条に定められておりますように、国と地方公共団体役割分担を明確にするという観点に立ってこれらを御提案申し上げているのでありまして、これは、地方分権推進と矛盾するものでもなく、また国と地方公共団体を通ずる行政スリム化に反するものでもないと確信しております。  最後に、以上に述べましたことを総括して私の結論を申し上げれば、今回の地方分権推進法案を、できるだけ原案どおりに、一日も早く可決成立させていただきたいということでございます。  今回提案されている一連分権改革は、現時点において、現在のさまざまな状況のもとで望み得る、直ちに実行可能な最善の改革案になっていると信じています。もちろん、今回の分権改革は、地方分権推進方策として決して万全、完璧なものではありません。今後さらに検討を深め、改革を進めていくべき事項が多々残されていることは申すまでもないところでありますが、改革は一日にして成らずであります。制度改革にはさまざまな摩擦とあつれきを伴います。すべての課題を一挙に解決することには無理を伴います。課題一つ一つ着実に解決し、その制度改革定着状況を見ながら、次の課題の解決に向かうのが賢明な方策ではなかろうかと考えます。  議員各位の御理解と御支援を切にお願いする次第であります。  以上でございます。(拍手)
  4. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  次に、恒松公述人にお願いいたします。
  5. 恒松制治

    恒松公述人 恒松でございます。  ただいま西尾公述人のお話を聞いておりまして、大変なこれまでの御苦労があったということを痛切に感じました。しかし、私は、一財政学を勉強している者の立場から、今度の一括法案に対して若干意見を申し上げたいと思っております。  最初に、昭和二十四年、ここで申し上げるまでもないことでございますが、いわゆるシャウプ勧告なるものが出ました。これは、日本の国の財政及び税制の将来に関する大きな指針を示したものであると評価されておりますが、しかし、一方では、地方自治というものがいかに大切であるかということをも十分に示したものとして、私は受けとめております。  このシャウプ勧告が出ましてから五十年、財政学を通じて、現実行政仕組みがいかに地方自治にとって形ばかりのものであるかということに大きな関心を抱いて、分析をしてまいりました。ついには、現実地方行政に携わりもいたしました。そうした経験の中から、今回の地方分権関係法案について意見を申し上げます。何とぞ御理解をいただきたいと存じます。  まず最初に、このたびの分権法案の中で大きな問題は、機関委任事務廃止ということでございます。これはもう、私は、もとより長年の念願であり、大賛成でございます。  もちろん、これは、政党政派を超えて推進すべき地方の問題でございます。分権推進委員会最初勧告で勇断を持って指摘されました。それは、国と地方、あるいは中央政府地方政府と呼んでもいいと思いますけれども、上下、主従の関係であってはならないということであります。それを、行政制度として長く続いた機関委任事務制度というものを全廃することによって実現しようとしたことは、私は、大変大きな功績であり、すばらしい勧告であったと思っております。ただ単に、行政事務中央地方とでどう分け合うかということではなくて、地方自治の確立とか、あるいは地方自治の成熟への道としてあるということを、十分に審議の過程できわめていただきたいと念願するわけでございます。  こちらに参るに当たりまして、膨大な参考資料をいただきました。よく広辞苑二冊分という表現がされておりますけれども、いやいや、もっとたくさんの資料を送っていただきました。見ただけで勉強する意欲を失いました。申しわけございませんけれども、今やそういう気力もございませんでしたので、幾つかの点に絞って、感じていることを申し上げたいと存じます。  一つは、機関委任事務というものが廃止されまして、それにかわるものとして、法定受託事務という制度が導入されました。  これは、行政制度上、あるいは法律的にも、どういう問題があるか私はよくわかりませんけれども、確かに、制度的には大きな変化でありましょう。しかし、私ども一般の外側から見ておる者にとりましては、この制度が変わることによって、実質的に何がどう変わるかという点は必ずしも明らかでないというふうに思っております。  もとより、地方団体を国の機関として考えるということの誤りを是正した点は評価すべきではございますが、この法律の中にもありますように、国が本来果たすべき役割地方団体に行わせるシステムというものは、機関委任事務の場合と変わってはおりません。自治体の行うサービス自治体が主体的に実施するという、自治の理念に必ずしも沿ったものだとは言えないと私は思っております。国の果たすべき役割国自身がやった方が責任の所在がはっきりしていいというのが、私は、年来の主張でございます。  それから第二番目に、これに関連いたしまして、自治事務に対する国の関与がこの法律の中でも色濃く残っているということであります。  今までスムーズに行われてきた行政を、全部根底からひっくり返すということは現実的には難しいことではありますけれども自治事務に対する是正要求措置というものが余りにも多いということに気がつきます。言いかえれば、自治事務自治事務として地方自治体がやるんだけれども、それに対して、国の立場から、間違っていることがあれば是正要求ができるということであります。これをやっていけば、地方自治というものは一体いかになるだろうということを心配するわけでございます。  もちろん、この問題は、ただ法律上の字句の問題ではなくて、具体的にどう運用されるかということにかかっている問題であります。しかし、そうではありますけれども、地域住民の責任で実施されるべきことに国が関与するということは、決して望ましいことではございません。こういう制度が残りますと、明治以来続いたいわば中央集権的な仕組みというものを根本から直していく、そして地方自治の確立に資するということには、どうもほど遠いような感じがいたします。  それから第三番目に、これは地方自治体の議会に関する問題でございますけれども地方自治体の議会の機能は、地方自治にとって極めて重要でございます。したがって、議員の定数とか議会運営の仕方については、地方議会の条例で定めるのが本来のあり方だと思っております。  ところが、これを法律で統一的に定めるべきだというのが今回の法律でございますけれども、それはやはり本当ではないと私は思っております。それは、多分に地方自治体に対する不信感のあらわれと言えるかもしれませんけれども、自分たちの自治体を信ずるか信じないかは、住民自身が決めることであって、中央政府が決めることではないというのが私の基本的な考え方でございます。  最後に、都道府県の性格についてであります。  資料がたくさんございましたけれども法律案の提案理由説明の第二番目のところに、こういうくだりがございます。「法定主義の原則、一般法主義の原則、公正、透明の原則に基づき、地方公共団体に対する国または都道府県関与の見直し、整備を行うこととしております。」こういうふうに提案理由の説明に書いてあります。  ここでは、これをそのまますんなりと読めば、地方公共団体市町村であり、この市町村に対する国または都道府県関与ということの表現は、国と、いわば中央政府と、都道府県が一体のものとして位置づけられているように私は受けとめたわけでございます。言いかえれば、都道府県というのは国と一体のものだ、都道府県自治ということは一体どこにあるのかということが私には疑問に思えました。  現実に、皆様方も御存じのように、都道府県市町村にとってはお上的な存在であり、お上意識が色濃く残っております。自治体としての意識が必ずしも十分に練れているとは思えません。地方自治の上で、都道府県をもし自治体と定義づけるならば、一体それをどういうふうな姿に位置づけるかということをやはり明確にすべきだというふうに私は思っております。  以上、若干気のついた点をかなり漠然と申し上げましたけれども最後につけ加えさせていただきます。  地方分権というのは、中央の権限をできるだけ地方自治体に移すということに重点が置かれているようでありますけれども、私はそうだとは思いません。地方自治体が住民とともに行政サービスを行う場合に、大切なことは、権限の量の大小ではないということであります。権限が大きいからそれだけ地方分権が進んだということではなくて、たとえ権限の量は少なくても、その行政に自主性が尊重されることの方がより大切だと思っております。  言いかえれば、地方自治体の権限がたとえ小さくても、それを自分たちの、地域住民の主体性、自主性によって行っていくということの方が地方自治にとっては非常に大切だ、こういうふうに私は感じております。そういう点も含めて、皆様方の慎重な御論議をお願い申し上げたいと思います。  なお、つけ加えて申し上げます。  長い間の中央集権体制を根本的に改めようとする大事な法律案であります。そして、このたびの法律の改正は、将来の地方自治に対する一つ出発点だということであります。したがって、それほど重要な出発点になる法律案でございますので、ちょっと申し上げにくいことではございますけれども、今国会で成立させるというふうな意気込みも大事ではございますけれども、そういうことではなくて、ゆっくり時間をかけて、そして国民の納得が得られるように御審議をいただきたい、これが私の最後のお願いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。  以上で終わります。(拍手)
  6. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  次に、井下田公述人にお願いいたします。
  7. 井下田猛

    井下田公述人 地方の姫路からやってまいりました井下田でございます。  今回、お集まりの皆さん方の前で公述人をさせていただきますけれども、少しく長い間地方自治絡みの勉強を地方でしてきた者にとっても、とても感慨の深いものがございます。  御承知のように、今回の分権改革は、場合によっては、明治維新の動きあるいは戦後改革に並ぶ第三の改革と一般的に言われていますように、改めて、そのような重い意味を今回の分権改革は持っているように思われてなりません。とりわけ、お集まりの皆さん方は、既に九三年の六月の段階で、衆参両院地方分権推進に関する決議を採択されて、以来六年を今迎えているわけですけれども、それだけに、地方分権改革が全体としてより具体的に動き始めていますことを、私は先ほど来から、感慨を持ってと申し上げましたけれども、感慨を持ちながら、改めて、時の流れの大きなことを確認したいと思います。  さて、私は、全体としては、以上のような経緯から、今回の分権改革の一括法について基本的には賛成したいと思います。しかし、冒頭の部分であえて地方の姫路からと申し上げましたように、地域や地方で生活していますと、少々ながら、注文やらあるいは疑義の部分がないわけではありません。したがって、ないものねだりの部分もあろうかなと思いますけれども、以下数点にわたって、考えておりますことを申し上げてみたいと思います。できましたら、お集まりの委員の皆さん方、よく聞いてくださって、考えていただければ、考え直しをしていただければ、とてもありがたいと思います。  第一点は、今回の一括法の問題点と一般的に言われていますように、拙速主義とかかわる部分について申し上げてみたいと思います。  御承知のように、一九八〇年代に、行政改革推進から、一括法の立法形式がとられてきました。そしてまた、今回も、会期内の成立を目指して、改正作業の効率化のために今回の分権改革の一括法が上程されているわけですけれども、先ほどの恒松公述人ではありませんけれども、やはり量が余りにも多過ぎますね。法案だけでも千二百ページに及びますし、新旧の対照表の部分だけでも千八百ページですし、参照の条文の部分だけでも千五百ページというわけですから、これは幾ら何でも、量的に余りにも多いものを含んでいます。  そして、今回の機関委任事務廃止部分だけでも三百五十一本に及ぶわけですね。そして、法律改正が、この三百五十一本を含んで一挙に四百七十五本に及ぶというわけですから、これは、お集まりの委員の皆さん方が幾ら力量的にすぐれたものをお持ちであっても、まず物理的に無理な話だろうと思います。それだけに、今回の一括法は、個別根拠法の中身にわたる審議部分については、まあ、改めて、ほぼ絶望的だと言うのは言い過ぎでしょうか。  多くの国民にとってみれば、せっかくの機会です、審議してよかったという確認を国民の多くは期待しているかなと思いますけれども、この部分がやはり拙速主義だろうと思われてなりません。精査がなされない一括法であっては、逆に、国会の存在意義があるいは疑われるのかもわかりません。  とりわけ、政治の行政化が問われていて、その抜本的改革課題視されています今日です。改めてお集まりの皆さん方に、先ほどの恒松公述人のお話ではありませんけれども、できるならば、もう少々時間をかけて、市民レベルで、国民的レベルに立って御検討していただくような、そのような時間の問題をもう少々確保していただければありがたいと思います。  以上が第一点の、一括法の問題点と拙速主義に対するいわば歯どめにかかわるお話です。  第二点に移りたいと思います。  第二点は、地方自治の原則と今回の一括法の現実と関連して、もう少々申し上げてみたいと思います。  私は、分権改革というのは、とりわけ、集権と画一を排して分権と多様性を保障して、国民、市民レベルによる自主裁量権と自己決定の原則が保障できるシステムをつくって、結果的には、国民の人としての尊厳や、国民の人としての自立を保障する営みを分権改革と名づけてみたいと思います。  この観点に立って、今回の一括法案のすべてを読んできたわけではありませんけれども、今回の一括法案について少々ながら検討してみますると、中央省庁の機能純化の点でも不十分ですし、そしてまた、随所に分権ぼかしが顕著であり過ぎるかなと思います。とりわけ、省庁主張にすり寄って、地方に厳しく国の役割を強化し、結果として、地方分権改革はかなり形骸化して、中央集権は依然として健在であると指摘せざるを得ない部分を多々持っているように思われてなりません。  現に、機関委任事務は、原則として自治事務とされたものの、実際には五割ちょっとのレベルに後退していますし、事前協議による合意が必要とされて国の強い関与が残る法定受託事務は、当初二割の予定が大幅にふえて、四割ないしは五割に近くなっているわけでしょう。この法定受託事務に係る関与の類型に、技術的助言や勧告などに加えて、特に必要な場合は許可、認可、承認と指示、それに特定の場合には一定の手続のもとに代執行がとられることにもなっているわけですが、しかし、措置要求や事前協議制もまた、国レベルからの歯どめ的な縛りや、それに恣意的判断やコントロールの余地が多々残っていて、問題が伏在していると言わなければなるまいと思います。  加えて、国と地方を通ずる税制や財政に踏み込んだものが乏しくて、特に地方財政レベルでいえば、依然として歳入の自治と歳出の自治はほぼ手つかずのままに推移しているところに、最大の問題点が残っているというふうに指摘できるのじゃないでしょうか。  以上が第二点の、地方自治の原則と一括法の現実絡みの部分です。  第三点に移りたいと思います。  第三点は、自治事務に対する国の関与絡みの部分について、指摘させていただきたいと思います。  自治事務に対する是正要求改善義務が付されていることは、地域における自己決定よりも国の省庁の判断を優越させていて、やはり疑問符が残ると言わざるを得ません。  今回の地方自治法の改正案では、自治事務の処理が法令に違反していると認めるとき、または著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害していると認めるときは、各大臣は、知事に対し是正を求めることができ、知事に指示して市町村長に対し是正を求めさせることができると規定されています。そして、是正要求があった場合には、自治体にその改善義務が課せられることになっています。  なるほど現行法にも是正措置要求制度はありますけれども、ここには改善義務が課されているわけではありません。それに、内閣総理大臣のみに認められている権限であります。これを各大臣にまで拡大し、さらに改善義務を課しているというのは、従来と比べてみても、この部分はかなりの後退だと言えるかなと思います。  これが第三点の、自治事務とかかわる国の関与部分です。  第四点に移りたいと思います。  第四点は、法定受託事務の問題と地方事務官制度の問題について、少しく申し上げてみたいと思います。  なるほど地方分権は、国と地方の上下、主従関係から対等、協力なものへと変え、地方に自己決定権と自己責任の原則を確立するものであり、ローカルイニシアチブによる実効ある分権化が問われています。この観点から見ても、できることならば、法定受託事務量を可能な限り削減するということが、今日及び今後の時代の要請として、抜かすわけにはいかない大事な視点の一つかなと思います。それだけに、国行政やお上の都合に合わせることではなくて、国民や市民と直結する部分で、個性的で多様な地域づくりを可能にする分権の内実の拡充が図られることを、大いに期待したいと思います。  この観点に立って考えてみますると、改めて、地方事務官制度の問題あたりも、今回の一括法で指摘されている部分については疑問符を持ちたくなります。といいますのは、都道府県知事のもとで社会保険や職業安定の仕事をしている国家公務員の地方事務官制度廃止して、通常の国家公務員とするということは、改めて、国民や市民の利便性や効率性の観点から見て、大いに問題が残るかなと思われてならないからです。  なお、私の持ち時間は二十分ぐらいで、十五分が終わりますので、もう少々急がさせてください。  第五点に移ります。  第五点は、都道府県による市町村への関与部分についても疑問があります。といいますのは、都道府県が国と並んで市町村に対する関与機関となっている部分が、これまたどうかなと思われる部分を含んでいるからです。  地方自治法の改正案は、都道府県を国と並ぶ市町村への関与機関としています。例示すれば、新設される第十一章第一節のタイトルは「普通地方公共団体に対する国又は都道府県関与等」であり、条文にも同様な表現幾つか示されています。現に普通地方公共団体市町村のみを指しているようにうかがわれてなりませんけれども、実際にも、市町村都道府県機関から広く関与を受ける規定になっているところに問題が残っているかなと思います。この点でも改めて御検討いただければありがたいと思います。  そして、用意してきましたのは実はたくさんありますけれども、もう一点だけ申し上げて、私の方の公述を終わらせていただきたいと思います。  といいますのは、この分権改革一括法案は、同時に国レベルの省庁再編の問題と大きなかかわりを持っているわけですから、その観点に立って、今私は、六点目の問題提起をさせていただきたいと思います。  御承知のように、政府、各省庁は、その政策を通じて、その行政分野のあり方を決定づける面と、政府、各省庁、それ自体が事業体であるという二つの側面を持っているわけです。  先月、五月のおしまいに、九八年度の新しい環境白書が公表されました。そこでは、環境の負荷を減らすグリーン化を進めて、環境立国の道を歩むべきだと提言されています。私もまた、この部分については大いに賛成したいと思います。  この部分を補強する観点で、今私は、せっかく明後二〇〇一年から環境省が発足するように伺っておりますけれども、ひとり環境省だけではなくて、政府の一府十二省に期待したいのは、行政の仕事の質とその内容を問うエコ政府をぜひともつくり上げてほしいと思います。繰り返し申し上げますけれども行政の仕事の質と内容を問うエコ政府の形成と、当該行政分野で最も大きな事業体であることから事業活動のあり方が問われているわけですから、言うならば、政府活動は、他方ではエコオフィスの形成が問われているかなと思います。  一方では、今申しましたように、せっかくの省庁再編の動きが示されているわけですから、このような観点を下敷きにして、できることならば政府省庁の再編の部分について、いずれ午後のお時間で、これまたこの場などでも御論議が繰り返されるかなと思いますけれども、それだけに改めて、政府活動のすべての領域で環境主義を取り入れて、政府自体と政府活動をエコロジカルに変革してもらえないでしょうか。  国民の政治や行政不信が厳しい今日のことです。省利省益を優先して、時によっては行政のうまみを温存し、さらに焼け太りの巨大官庁づくりを目指すものでは決してあってほしくないと思います。二十一世紀のキーワードの一つは、やはり環境の時代だろうと思います。せっかく始まるであろう省庁再編のその下敷きに、政府みずからがエコロジカルに変わっていってほしいと願いたいところです。  もしもこのような部分が実現できるならば、市民や国民、地域社会で生活しておりまする私ども多くの国民にとって、今は政府、官庁がとても遠いところに位置づけられていますが、遠い政府、官庁を、国民にとって近くの政府機関へ変身させることができるに違いありません。お集まりの委員の先生方、どうぞ熟考を心から期待したいと思います。  私の方の公述は、以上でお開きにさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  8. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  次に、池上公述人にお願いをいたします。
  9. 池上洋通

    池上公述人 こうした公述の機会を与えていただきまして、大変感謝申し上げたいと思います。  私が所属しておりますのは、自治体問題研究所という組織でございますが、一九六三年に、日本の民主的な発展は地方自治の発展なくしてあり得ないという考え方のもとに設立されました、自主的な研究団体でございます。現在、全国各地の自治体職員、住民、研究者、約一万人の会員を持っておりまして、一万七千部ほどの月刊雑誌を発行しておる団体であります。私は、そこで常勤役員として、研究プログラムを担当する常務理事をいたしております。  実は、地方分権に当たりましては、地方分権推進法がつくられました、一九九五年五月に行われました参議院の特別委員会での審議の過程で、参考人として招かれまして、地方分権推進法賛成する立場から発言をさせていただいております。  それは、これまでの地方自治現実、特に、国と地方自治体の関係が、先ほど来御指摘されております機関委任事務に象徴されますように、明らかに国が地方自治体を支配する、そういう形になっていたことに強い懸念を持っていたからであります。憲法第九十二条の地方自治の本旨という観点から考えますと、当然あってはならない機関委任事務制度であったわけでございますが、そうしたものを含めて、全面的な検討を加えて、本来憲法が求めている地方自治をつくらなければならないという思いがございまして、地方分権推進に期待をかけたわけであります。  また同時に、東京一極集中現象に見られます、ゆがんだ今日の社会経済の姿がございまして、私どもは、それに対しても大変強い危惧を抱いてまいりました。  私は、年間、毎年ほぼそうですが、全国各地で百二十カ所から百三十カ所ぐらいで講演、研究会に招かれておりますけれども、各地の町や村にまで伺いますと、大変な御苦労をなさって、首長の皆さんがあえいでいるような形で財政のやりくりをするというような姿に、しばしば出会っております。何とか、こうした東京一極集中現象のようなものを転換して、本来の地方自治の姿が実現できないかということも、年来の強い願望でございました。  そこで、地方分権推進をぜひ実現しまして、新しい、私たちが納得をする、そして、日本地方自治がこうした姿で、つまり憲法に基づく姿で発展していくという希望を私たちは持ちたい、こう願っていたわけであります。  今国会に提出されました地方分権一括法案の中で、地方自治法の部分を見ますと、私、やはり最も強い印象を受けましたのは、機関委任事務の全廃ということでございまして、この点は、年来の願望でございましたから、心から賛成をしたいというふうに思っておりますし、先ほど西尾公述人のお話がございましたが、このために御苦労をなさった推進委員会関係者の皆さんの労を本当に多としたいというふうに思っております。  しかしながら、同時に、私たちは懸念も幾つも持っておるわけでございまして、きょうは、その中から幾つかのことを率直に申し上げたいというふうに思っております。  その前に、一言申し上げておきたいのでありますが、私の前にお話をされた公述人の皆さんがこもごも指摘をなさいましたけれども、私も、今度のこの一括法案の形はちょっとぎょっとしたわけであります。四百七十五本の法律一括法案でまとめる。その手法が正しいかどうかということはさておきまして、それを一回の国会で、一つ委員会審議をしてしまうということが本当に妥当なのかどうなのか。これについては、国民の一人として大変深い疑問を持っているということを、率直に申し上げておきたいというふうに思います。  そこで、改正法案の内容でございますけれども、まず私は、ぜひ皆さん方に一つお願いを申し上げたいなと思いましたのは、現行法の第二条の第三項を全部削除して、いわゆる事務の例示をなくすということになっておるようでありますが、あの部分をなくしますと、国民の目から見て、一体地方自治体は何をするところなのか、自分の生活という現実に引き比べて、何が自分たちの権利であり何が義務なのかということがわからなくなってしまうのではないかという強い懸念を持っております。ぜひ、皆さん方で審議をしていただくときに、この点を御理解いただきたいというふうに思っております。  とりわけ、今後の地方自治体の運営には住民の参加が欠かせません。財政困難が広がっている中で、住民の力をかりずに地方自治体の運営はできないわけでありますから、一体地方自治とは何か、自治体は何をするところなのかということがわかるということは大変重要だと私は考えておりますので、そのことを申し上げているわけであります。  それから、これも先ほどからお話が出てございますが、機関委任事務廃止した後の事務配分の中で、やはり私も、法定受託事務の範囲が広過ぎるということを、率直に指摘しておきたいと思います。  それともう一つ、これは西尾公述人がおっしゃっておられましたが、法定受託事務の定義にちょっと私はひっかかるものがございまして、今度の改正案ではこうなっています。国が本来果たすべき役割に係るものであって、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律またはこれに基づく政令に定めるものというふうになっております。推進委員会の提言でも、また、政府が昨年の五月に策定しました推進計画におきましても、国が本来果たすべき責務に係るものであって、国民の利便性または事務処理の効率性の観点から都道府県または市町村が処理するものとして法律またはこれに基づく政令に定めるものというふうになっていたはずであります。  私がこのことにひっかかっておりますのは二つございまして、一つは、国が本来果たすべき責務ということを、責務という言葉で明確にすることが事務のあり方からして必要なのじゃないかという気がするわけであります。今度のそれですと、一体、最終的に国に責任があるのか、地方自治体にあるのかがあいまいだと言われても仕方ない側面があるように思いますので、このことを申し上げているわけであります。  これは、将来にわたって、法定受託事務の財源配分、財源負担をだれがするのかという問題にもかかわるのではないかという危惧を実は持っておりまして、そのこともあわせて申し上げておきたいわけであります。  それからもう一点は、推進委員会でおつくりになった、あるいはまた、政府推進計画の中で語られていたこの文言の方が、国民の側からして本来の姿ではないか、国民の利便性または事務処理の効率性の観点から法定受託事務が必要なんだという説明の方が、本来の姿ではないかということを思うわけであります。この二点を御指摘申し上げたいと思います。  それから、議員定数の問題につきまして、私も意見がございまして、先ほど恒松公述人がおっしゃっておられましたが、私も、本来は自治体が自由に決めるべきテーマであるというふうに思っております。ただ、仮に憲法第十四条の言う法のもとでの平等を著しく欠くということが心配されるということがあるとするならば、それは、法の規定は最低限数を決めるべきであって、上限数を決めるべきではないというふうに思うわけであります。つまり、最低限の数字を決めて、何人にするかを自治体が決定するというのが本来の姿ではなかろうかというふうに思います。  もともと、現在の定数は、御承知のように、明治二十一年、市制、町村制がしかれたときの定数がベースになりまして、何回かの改正を加えて、今日の地方自治法がつくられるときに、数の上乗せをして今日の定数になったという歴史的いきさつがあります。実は、百年を超えて国民の間に定着したと見るべき定数の仕組みなのでありまして、私は、こういう形で簡単にいじることそのものが少しおかしいのではないかという思いも持っているところであります。  それから、国の自治体に関する関与の問題でございますが、この点も、既に幾つもの御指摘がなされておりますが、それらについては、私、ほぼ同じ意見でございますので、なるべくダブらないように申し上げたいというふうに思います。  まず第一番目に、私が大変強い印象を持ちましたのは、国が地方自治体に関与する構えの中に、国が基本的に正しい、国を物差しにして、そして自治体事務をはかるということに終始一貫しているのではないかという、大変強い危惧を持ちました。この点は、どんなふうに皆さんはお感じなのでしょうか。  そうしたことを配慮なさって、多分、関与の法定主義であるとか国の配慮とかということを繰り返し条文の中に盛り込まれたことと思いますけれども、そうした配慮にもかかわらず、先ほどから御指摘がございます自治事務に対する是正要求、それから自治事務に事実上すべての関与ができる、そういう形になっているわけであります。それから、基本類型が八種類定められておりますけれども、それ以外の関与自治事務に対してもできる。法文でいいますと、個別具体的な云々ということで、できるようになっておるわけであります。それからさらに、各大臣が所管事務について自由に関与できると言ってよい、そうした法文の流れになっております。  いずれも、私は、国と地方自治体の関係で見ますと、場合によっては、現行法よりも強い国の支配が生まれかねないという思いを隠すことができません。  それから、これも先ほどお話ございましたが、都道府県市町村に対して行う関与のお話がございました。私も、都道府県が監督機関になるのではないかという危惧を持っていることを、率直に申し上げておきたいと思います。  それと、通達行政廃止するということでございました。これは全くそのとおり、そうでなければならないわけでありますが、どうも、いろいろ調べてみますと、法定受託事務についての処理基準をつくるというふうにおっしゃっている。処理基準をつくることは、やはり法定受託事務だから、全国一律でなきゃいかぬから必要だというふうになるかもしれませんけれども、しかし、今度の法改正では、法定受託事務も条例制定権を認めているんです。そうすると、国のつくる処理基準というものと、地方自治体が条例制定権を持つということの間にあるものはどうなるのかということを、率直に指摘しておきたいと思います。  それからもう一つ基本類型以外の関与にわたる場合、個別具体的という場合に、形の変わった通達行政が広がるのではないかというおそれを抱いていることも申し上げておきたいと思います。  それから、係争処理の制度が新しくできるわけでございますが、私は、係争処理の制度そのものの意義については軽々に論ずるつもりはございません。ただ、気になっております点が二点ございます。  一つは、この係争処理の委員会を通じて係争処理の手続を踏まないと、自治体が訴訟を起こすことができない、裁判に訴えることができないというふうになっている点であります。この前置主義は、自治体の訴訟権との関係でどうなるのかという疑問を表明しておきたいと思います。  それからもう一点、この処理委員会委員の任命が、自治大臣が行うというんですけれども、これも少しおかしいと思います。政府地方自治体が争う、そうしたことを処理する委員会委員自治大臣が決めるというのはいかがなものかということでございます。  それから次に、いわゆる並行権限の規定がございます。国が自治事務と同様の事務を直接執行できるという規定がございまして、これまでも実は事実上あったわけでございますが、私は、今度の法改正の考え方からいうと、この並行権限、つまり、国が自治事務と同様の事務を直接執行できるんだというこの部分は、関与の一種ではないかというふうに思いまして、関与の類型に含めるべきではないかという意見を持っております。  それから次に、市町村合併を推進するための法改正と思われる部分がございます。中核市の要件緩和、特例市制度の新設等がそれに当たるわけでありますが、この市町村合併についても一言申し上げておきたいと思います。  実は、私ども地方自治の専門家として地方自治のこれからを考えるときに、忘れることができませんのは、高齢社会の到来でございます。高齢社会の現実を、介護保険その他、非常に皆さん頭を悩めていらっしゃいますけれども、実際には、高齢社会の中で地域社会が活性化する一つの基本は、足弱になった高齢者が外出できる範囲で行政の力が働けるかどうかということがあるわけであります。そういう意味からいいますと、どんどん行政の単位を広域化していきますと、そもそも高齢者は行政へ参加することはできなくなります。  そうしたことも含めて、私たちは、子供の成長過程、成長の課題もそうでありますが、子供もやはり、子どもの権利条約などで確認されておりますように、子供の意見表明権というのがあるわけでありますから、そうした参加のことを考えますと、これからのいわば行政の単位というものを、もう少し生活のレベルで考えていただけないものかというふうに思っておるわけであります。  それ以外にも幾つかございますが、最後に、今後の討論の中で、住民投票の制度についてぜひ改めて議論していただきたいということが一つ、それから、地方自治の発展の立場に立った税財政制度をどうするのかということについて、全面的な議論をしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  私は、実はかつて、東京のある市役所の職員をいたしておった時期がございます。そうした現場の経験から見ましても、今日のこの国会に出されておりますこの一括法案は、拙速なというお話がさっきございましたが、拙速という言葉は大変失礼だと思いますけれども、来年四月実施を金科玉条になさらないで、本気になって現場の声を改めて聞いていただきたい。そして、国民各層、すべての自治体の参加ということ、特に自治体の参加については、すべての自治体の参加を思い切ってやるぐらいのことをして、この法案の審議に当たっていただきたいと思います。  その点では、地方分権推進法をつくったときの基本理念にもう一回立ち返っていただいて、日本国憲法の地方自治の本旨に基づく、私たちの地方自治の発展というものに私たちは期待をかけたいわけでありますから、そうした観点によるところの一括法案につくりかえていただきたい。  特に、今国会において何としてもこれを全部通そうということについては、特に強い懸念を表明して、私の意見陳述といたします。どうもありがとうございました。(拍手)
  10. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  以上で公述人からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 高鳥修

    高鳥委員長 これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野寺五典君。
  12. 小野寺五典

    ○小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。きょうは、地方分権一括法案につきまして、公述人の皆様にいろいろお伺いしたいと思います。  まず、初めまして、きょうはお忙しいところ、大変ありがとうございます。  今までのお話を伺いまして、まず感じますこと、それは、今回の地方分権という流れに関しては、公述人の皆様すべて前に進んでいると、それから、中にはやはり、井下田先生のように、感慨を持ってというような御感想もあると思います。  その中で、ちょっと皆様の論点を整理しますと、まず、西尾勝先生は、今回のこの法案策定に当たりますその前段階の、地方分権推進委員会委員、そしてまた、その中の行政関係検討グループの座長ということで、文字どおり、例えば機関委任事務の問題に関しましては、一つ一つ心血を注がれて検討されたということをつぶさに伺っております。そういう中から、今回はこの法案、国とのいろいろなことを協議した結果、なるほど、法文の精緻の中で、このような形になるのは最善の改善策ではないかということで、これを通していただきたいというような御趣旨だったと思います。  また、恒松先生は、知事の御経験あるいは研究者の御経験という中から、今回の分権に関しては、いろいろな形で、例えば機関委任事務廃止については勇断である、ただ、その中で中央との対等な関係を考える上でまだまだ議論すべきところは多いのではないか、もう少し納得すべき形でまとめるべきではないかという御意見だったと思います。  また、井下田公述人に関しましては、地域に住まわれる、またその研究者として、私も御著書を読んでおります。その中で、今回の改革、拙速なものではないか、特に、四百七十五本という改正は、これは大き過ぎるのではないかというような御趣旨だと思います。  また、池上公述人は、自治問研の雑誌、私も購読者でございます。非常にすばらしい研究をされていると思うのですが、その中で同じく、この膨大な法案というのは本当に一括してできるものなのかというような御懸念があったと思います。全体としましては、まず、この全体の流れについてはよし、ただ、この短い国会の間でこれだけの膨大なことを一気に決めるのはどうなのかというような御意見だったと思います。  その中で、ちょっと個別についてお伺いをしたいことがあります。  まず第一点。今回の議論になっておりますのが機関委任事務の全廃ということです。この全廃に当たりましては、今回いろいろな御意見があると思います。特に、当初の見込みに比べまして、法定受託事務がふえてしまったということ。  それからもう一点。自治体に、自治事務の中に是正要求が出た場合の改善義務が生じてしまったということ。これは、公述人の皆さんのお話を伺う中では、どうも逆に中央関与が強まるのではないかというような御懸念があったと思うのですが、ただ、これに関しては、恐らくかなりの議論が今回この法案策定の中で行われたと思います。  そこで、まず、この法案策定を含めまして、全体の主査も行いました西尾公述人から、この機関委任事務の全廃ということの検討の中で、特に、法定受託事務がふえたということ、あるいは実際に精緻する中で、この是正義務が必要だということ、改善義務が生じることの必要性ということについて、少し具体例がありましたら、教えていただければと思うんです。
  13. 西尾勝

    西尾公述人 まず第一点でございますが、法定受託事務が見込み以上にふえたのではないかと言われますのは、第一次勧告を提出しました後の記者レクなどで問われました委員会側が、最終的には自治事務が八割、法定受託事務が二割ぐらいにおさまるのではないだろうか、私を初めそう申し上げたことが、その後ずっと伝わって、こういうことになっているわけであります。  端的に申し上げますと、我が委員会の見込み違いということに尽きます。もっと正直に言えば、当時、機関委任事務制度の全貌について、私どもが正確な把握をしていなかったということでございます。  御承知のように、地方自治法の別表には一覧表が出ていることになっておりますけれども、あそこの書き方はかなり概括的でありまして、細かく全部列挙されているわけではありませんし、あの別表に載っていない機関委任事務というのが多数続々と出てまいりまして、それがどんどん最終的に整理されていったということになるわけでありますが、正直に申し上げますと、私どもが全体像を正確に把握していなくて、あの時点で、その辺でおさまるのではないかと見込みを述べたことが、大変軽率であったというふうに思います。  しかし、もう一つ、それだけふえた大きな要因になっておりますのは、先ほども冒頭陳述の中で申し上げましたように、メルクマールの七に当たっているというような、経由事務的な実に細々としたものが、件数としては非常に膨大にあるということでございます。これがなかなか、一つ一つ、どれだけ数があるかということを私どもが確認できていなかった、把握していなかったというところに最大原因があるかと思っております。  結論として、でき上がってきたものについて、法定受託事務が多過ぎるというふうに私は思っておりません。事務性質に従った分類があれできちんとなされている、理屈は立っているというふうに考えております。  第二点目でございますが、ここは先ほど来公述人からもいろいろ御意見がございましたけれども、現行の地方自治法における内閣総理大臣による是正措置要求というものの法的効果について、私とは解釈が違います。  私は、現行の地方自治法の内閣総理大臣による是正措置要求がなされたならば、地方公共団体はこれに従う義務があるというふうに解釈されてきたと考えております。その意味では、その点は変わるわけではありません。  ただ、私どもが考えましたときに、第一次勧告の時点ではそのことをはっきりと書いておりませんけれども、第二次勧告になりましたときに、国が市町村に対して行う、あるいは都道府県が国からの法定受託事務として市町村に対して是正改善を求めるというときの是正要求、当時は私ども是正措置要求と言っておりましたが、今度の法案では是正要求という言葉に変わっておりますが、この是正要求とは区別いたしまして、都道府県自治事務として市町村に対して改善を求める場合には、これは是正勧告という言葉を使っているわけであります。あえて是正要求是正勧告を分けているわけであります。ということは、勧告には尊重義務が生じるのみでありますけれども是正要求の方については、一段と尊重義務以上に強い義務が生じるということを当然の前提に考えておりました。  さらに戻って申しますと、関与基本類型の中に、技術的助言、次に勧告とありまして、それから特定の場合の指示があって、是正要求というような話になるわけですけれども、一般的な勧告是正要求とどこが違うのかという問題が起こります。これが単に尊重義務であれば、勧告と何ら違わないものということになるわけであります。  したがって、是正要求は、勧告よりは一段と強い求めである、それに従う一段と強い義務が地方公共団体に生ずるということを当然の前提として、私ども設計しておりました。したがって、是正要求については、国地方係争処理委員会係争の対象になる、司法審査にまで行き得る話である、こういうふうに考えていたわけであります。  ただ、現在の地方自治法も、あえて、是正または改善措置を講ずる、必要な措置を講ずる、講じなければならないというような書きぶりにはしていないわけですね。したがって、そういう解釈だといたしましても、そこまではっきりと法文に書くか書かないかは一つの選択肢だと思っておりました。したがって、私どもはその点を勧告ではっきり書いておりませんでしたけれども政府の方におかれましては、法制的な検討をした結果、最終的にああいう表現をとるという決断をなさったわけであります。  それは、こういうことを明確にしておきませんと、今度は、訴訟に行くときには、その取り消しを求めるのだということに組み立てないとなかなか理屈が立たないので、そこを明確に書くことにしたんだ、こう理解しております。その趣旨は、私にはよく理解できると思います。  以上です。
  14. 小野寺五典

    ○小野寺委員 大変よくわかりました。どちらかといいますと、今の係争処理の問題に関しては、国が今回の法案を成立させる中で最終的な選択をしたというような方向だと思います。  私も、元県職員の経験がございます。その中で、現実的には、このような改善ということが、ある程度国の関与があってもしかるべきなのではないかという経験も持っております。ですから、余り今回の要求というのが強くならないように、運用上で地方主権、地方分権が担保されることを期待している一人でもあります。  次の質問に移らせていただきたいと思います。  議論の中で幾らか出てきたと思うのですが、分権後の財源の確保ということがいろいろ課題になっていると思います。ちょっとこのことについて西尾先生と恒松先生にお伺いしたいのですが、まず西尾先生、いろいろなところで、今回の分権後の財源の確保、特に国の関与の問題に関して、国庫補助負担金の整理合理化ということが今後いろいろな形で検討が必要じゃないかということをおっしゃっていると思うのですが、その辺について少しお話を伺わせていただければと思います。
  15. 西尾勝

    西尾公述人 今後の地方税財源の充実確保に関しましては、基本的に二つの方策があると思います。  第一番目は、私ども自身が努力をしながら十分な成果を上げられなかった話でありますけれども、国庫補助負担金を整理いたしまして、その場合に、負担金的なものと奨励的補助金的なものを明確に区分していくことが非常に重要でありますが、いずれにしろ、全体の整理合理化を図りまして、そこから浮き上がってくる国の財源を地方一般財源に切りかえるということによって地方税財源を充実していくというのが、第一の方策であろうと思われます。  しかしながら、第二の方策は、現在の制度を前提にしながらも、国と地方公共団体の間の財源の配分が現在の配分比率で最も妥当なものであろうか、地方公共団体により一層の財源が必要なのではないだろうかという点は、私どもの分権委員会で十分に審議した点ではないわけであります。  したがって、ここは今後非常に大きな問題でありますけれども、特に、予定どおりいけば、明年度以降介護保険行政というものが始まることになっております。このことで市町村にかかってくる財政的な負担というものがどのくらいのものになるかというのは、正確なところ、だれにもよくわかっていないのではないだろうかと思われますけれども政府で現在推定されている以上の費用が市町村にかかることになるのではないかと、私は個人的に思っております。  そうしますと、地方公共団体が現在の財源でやっていけるだろうかというのは、早晩かなり大きな、大問題として起こってくるのではないだろうか。そのときには、地方にかかっている財政需要をきちんと精査し直して、税財源の配分を考え直すべきではないかというふうに思っております。
  16. 小野寺五典

    ○小野寺委員 同様の質問なんですが、分権後の財源の確保ということについて、恒松公述人に、現場の御経験も含めまして、御意見をお伺いしたいのです。
  17. 恒松制治

    恒松公述人 大変難しい問題でございまして、今西尾公述人も言われましたように、分権推進委員会でもまだこれからの取り組みの問題になっているようでございます。  私は、確かに、地方団体がいろいろな行政事務をやる場合に、自主財源を強化するということは非常に必要なことだと思いますけれども一つは、今国税で取っておりますところの税の一部を地方団体に移すという、言いかえれば、税源の配分の問題が一つあります。それからもう一つは、その税を自主的に徴収することができるかどうかという自主性の問題がございます。  この点は、便宜上から申しますと、国が税金、例えば所得税なら所得税を取りまして、それの何%という形でやった方が一番簡単であります。しかし、それで自主性というのが保たれるのかという議論になりますと、これは大変、もっと議論を詰めなきゃならない問題だと思います。  それから、よくいろいろ批判されますのに、地方団体は、中央地方の総行政事務量の六五%を分担しているにもかかわらず、税の方は三五%しかない、これはおかしいじゃないかと言われますけれども、それは確かにおかしいんです。その場合に、私は、先ほどもちょっと申しましたけれども、それは、地方団体のやる分野といいますか、分担する分野は少し大き過ぎるという判断も考えてもいいのであって、税金の配分が三五%だったら三五%の行政事務量をやればいいではないかという考え方も、一方にはあるわけでございます。  言いかえれば、どれだけの権限を持つかということより、その権限をどれだけ自主性を持って運営することができるか、そういう点で財源の問題はもう一遍考え直してみる必要があるのではないかというふうに思っております。
  18. 小野寺五典

    ○小野寺委員 ありがとうございます。  時間となりましたので、大変残念でありますが、井下田先生あるいは池上先生には、ちょっときょうはお伺いすることができませんでした。  私は、今回の地方分権、本当に期待している者の一人であります。また、ぜひこの法律を実効ある形で成立させたいと思っている一人であります。公述人各位には、実効ある形で、今後もこれを見守っていただきまして、もし不足であれば、ぜひ第二次地方分権改革などについても御提案いただき、また御示唆いただければと思います。  なお、最後に、西尾先生には、本当に私の恩師であります。これからも一生懸命頑張っていきたいと思います。  きょうはどうもありがとうございました。
  19. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、三沢淳君の質疑に入ります。
  20. 三沢淳

    ○三沢委員 自由党の三沢淳です。  本日は、四人の公述人の先生方、大変お忙しいところをどうも御苦労さまです。新しい世界へ入りまして、いろいろ毎日勉強している最中でございますので、またいろいろと御意見を、よろしくお願いいたします。  私ども自由党は、「日本再興へのシナリオ」と題しまして、政策集を昨年出しましたが、これはかなり急激な案が盛り込まれています。それは、背景には、ゆっくりしては間に合わないという時間的な制約に迫られたものですが、その中で、例えば衆議院定数削減であるとか政府委員廃止、また副大臣制度の導入などが、御承知のとおり自自党首間で合意され、実行に移されようとしています。  そして我が党は、地方分権についても、基本的に、国の仕事を限定し、その他のことは地方で自主的に行うとしています。いわば、事前介入型から事後チェック型へ、国と地方は対等の関係を目指すというものであります。まさにこれは、西尾先生が、地方分権推進委員会行政関係検討グループの座長として、長年にわたって御尽力なされた点と同じ方向性を目指しているものであります。  そこで、西尾先生にお伺いしますが、先生御自身がお考えになる国と地方のあり方というものについて、国が果たすべき役割を明確にし、住民に身近な行政はできる限り地方団体にゆだねるということは、どのような社会を目指すことになるのか、お教え願いたいと思います。
  21. 西尾勝

    西尾公述人 お答え申し上げます。  私も、先生と全く同意見でございまして、国の役割を極力限定し、できるだけ地域の事務地方公共団体事務に広くゆだねていくというのが、基本的な私の考え方であります。ただ、それを非常に具体的に実行していく、具体化していくとなりますと、なかなか難しい問題があるということでございます。  地方分権推進法にも国が担うべき役割を三項目に分けて列挙しておりますし、私ども勧告でもほぼ同様な考え方を述べましたし、今回の一括法案の中の地方自治法の改正の中で、第一条の二の中に同様のことが書かれているわけであります。  問題は、そこからだんだん演繹的に具体化をし、そうであれば、その下をさらに具体化するとこういうことになるんじゃないかというふうにだんだんおろしていきまして、現在国が担当しておられるもののうちの、これは国がみずから担当する必要がないのではないかというふうに処理していくことは、これは非常に難しいことだと私は思います、実際問題といたしまして。  例えば、外交は国の役割だということをどなたも否定はなさいません。しかし、地方公共団体も、自治体外交等々の名前で、さまざまな国際交流事業を展開しておられます。地方公共団体が展開する国際交流と国が担当する外交の境目というのはどこであるかというのを、これを厳密に決めようとすることは非常に難しいことだと思います。  あるいは、どなたがお考えになっても、防衛は国の役割というふうにお考えになると思います。しかし、防衛の中で、基地等、駐屯地等をどこに置くかという問題は、地域社会にとっては極めて大きな影響を持つ問題でありまして、地方公共団体が無関心でいられる問題では到底ありません。基地があれば、さまざまな施策を地元市町村都道府県は担当しなければなりません。したがって、防衛に関係することは何から何まで国というわけでもないわけでありまして、そこで、どこまでが国、どこからは地方公共団体もかかわる話かというような線引きをしていく仕事というのは、議論だけやっていたのでは収拾がつかない難しさがあると思います。  したがって、私どもは、まず、むしろ下から積み上げの方法で、地方団体等が、ここだけは変えていただきたい、ここは都道府県市町村に任せてほしいと言ってこられたようなことを、順次関係省庁と交渉して解決していくという方法をとったわけですけれども、これではなかなか抜本的な事務権限の移譲にはならないというのは事実であります。より大がかりなことをしようと思ったら、どういう方法が、賢い、有効な方法があるか、これは、だれにもいい知恵がないのではないかというふうに私は思っております。  その上で、極力地方公共団体役割を担わせた上で、一体どういう社会をつくろうとしておるのかということでありますが、分権委員会が使ってまいりました言葉で言えば、地域住民による自己決定、自己責任の地域社会をつくり上げるということに尽きます。地域的な問題は極力地域住民の選択と決定によって決められる、その代表機関である地方議会あるいは地方公共団体の首長の決断によって、自分たちの地域社会に最も合った自治体政策を選択し、決定することができるという権限をおろしていくということが重要であります。  今回のものでも、一つ一つ例を挙げていたら切りがありませんが、例えば学校教育行政で申しますと、小中学校の学期を決定する権限は、都道府県教育委員会から市町村教育委員会におります。また、就学校の指定の弾力化ということがうたわれております。さらに言えば、学校管理規則というものの制定を柔軟化するということも言っております。これは、教育委員会と学校の関係を規定するものであります。  そしてさらに、カリキュラムの弾力化という話が出てくるわけでありますが、いずれにしても、市町村都道府県に、これまでは自分たちで決められなかったところに、決められる余地が出てくるわけであります。つまり、都道府県市町村ごとに違う政策が行われ得るということがいろいろ出てくるわけであります。  そうなりましたならば、地域の住民は、それぞれの市町村、県に対して、これまでは国の法令、通達でできないというから仕方がなかったけれども、今度は県や市町村で決められるというのならば、ぜひこうしてほしいという声が、今まで以上に住民から地方公共団体に寄せられるでしょう。そして、そうした多様な住民の声をどのように地方公共団体がおまとめになって、我が自治体はこうしていくんだという決断をしていかれるかどうかというのが、これからの地方公共団体にとっての課題であります。  私は、今回の改革一連改革が行われましたとき、市民の発言は一層活発になると確信しております。  以上です。     〔委員長退席、杉山委員長代理着席〕
  22. 三沢淳

    ○三沢委員 ありがとうございます。  我が党は、防衛庁を省にしようとうたっておりますが、先生の御意見では、その辺のところの、地方自治体と国との外交、防衛に関しての線引きはなかなか難しいところがあると言われました。教育の問題もそうです。人づくりは国づくりだといいまして、今の教育問題は、これから取り組まなければいけない大変な問題だと思っております。今の子供たちが、果たして二十一世紀、本当にこの日本を背負ってくれるのかどうか、私自身も不安に思っておりますので、先生の御意見を聞きながら、外交、防衛、そして教育と、また改めましていろいろ御助言をいただければ、そういうふうに思います。  続きまして、西尾先生に次の質問をお伺いします。  地方分権地方と国とのかかわりを述べる前に、まず官と民のかかわりを先に決めるべきだとの御意見がいろいろあるんですが、その議論はむしろ中央省庁改革の方に譲るとしまして、この地方分権法案、物すごく分厚い法律でありまして、私も目が、頭がくらむような感じだったんですけれども、熱心な議論も相当されてきたわけであります。  中でも、機関委任事務廃止及びそれに伴う事務区分の再構成が、明治以来の大改革と位置づけられているわけでありますが、この改革によって、実に大きな影響が国民の中に生じてくるというわけであります。  その意味がなかなか専門的で、国民の皆さんにわかりにくい面もあると思うんですが、この地方分権が徹底されてくることによって、地方自治体に自己決定、自己責任の原則が浸透し、また、住民の皆さんもその影響を必然的に受けるのですが、西尾先生、短期的には今回の改正で、また長期的には二〇〇一年の省庁再編、その後の諸改革を行った結果、一体この地方分権というものが国民の皆さんに与える影響、意味、そして国民の皆さんの意識というものはどういうふうに向いていったらいいのか、ちょっと重複するかもしれませんけれども、お願いいたします。
  23. 西尾勝

    西尾公述人 今回の改革で、国民、住民に少しわかりにくかった点というのは、改革の焦点が、機関委任事務制度廃止を初めといたしまして、国による関与を縮小、廃止するという点に重点が置かれていたということが、一つのわかりにくくしている原因ではないかと思います。  これが、事務権限の移譲という形が中心になっていて、例えば、これまで国の役所が、出先機関が担当しておりました仕事が、これからは県庁が担当する、あるいは、県がこれまで担当しておりましたものが、市役所、町役場が担当するように変わるということであれば、役所あるいは企業の方々は、どことこれから接触するのか、どこの窓口に行くべきなのかということが変わるわけですから、仕事の変化というものを痛感するわけですね。これから変わったんだということがよくわかるわけです。  ところが、今回の改革の焦点は、関与の縮小、廃止でありますから、都道府県が今までも担当しておられた、市町村が今までも担当しておられたままなので、住民には、何が変わったのかがよくわからないというわけであります。  市町村の仕事、都道府県の仕事と申しましても、市町村は国や都道府県からさまざまな拘束を受けています。いろいろな指針、ガイドラインを示されて、このとおりしなさいと言われています。都道府県も国からそういうものを受けているわけです。自由がないわけであります。ところが、そこを拘束を緩めて、都道府県市町村の自由をふやそうとしているわけですから、まずは都道府県の議会、知事さんたち、理事者たち、そして職員たちが、今度の改革の意味をよく理解いたしまして、この与えられた自由をこれからどのように行使するかということを、真剣に考えていただかなきゃならないわけであります。  この与えられた自由をそれぞれが使い出したときに、住民の方には初めてわかる、今度の分権改革が何であったのかということがよくわかるようになると思っております。少しこの関係が間接的ですので、国民、住民の方にはわかりにくいということになっているのかと思います。  したがいまして、改革が行われましてから、この改革の意味を正確に読み取って、積極的にこれを使って自治をやっていこうという自治体、先進的な自治体が、まずこれと取り組み始めるであろうと思いますが、それが三千二百有余の全市町村にまで及び、すべてが今度の改革の意味を理解し、それを活用するようになるのには、私の予想では、恐らく十年ぐらいかかるのではないだろうかというふうに思っております。
  24. 三沢淳

    ○三沢委員 国も地方も、今本当に第一歩目を踏み出したところでありますので、みんなでいい意見を出して改革していかなきゃいけないんじゃないか、そういう意識が一日でも早く国民の皆さんにも伝われば、この地方分権はうまくいくんじゃないかと思います。我々もしっかり努力をしてまいりたいと思います。先生の御助言もまた、よろしくお願いしたいと思います。  時間が残り少なくなりましたけれども恒松先生は前に島根県知事をやっておられたということでして、私は島根県の出身でして、同郷で、昭和四十六年まで島根にいまして、その後はちょっと町へ出てきたんですけれども、大変御苦労さまでございました。  恒松先生にお聞きしますが、これからの地方分権で、権限、財源、人間、三ゲンと言われておって、この三つがよく議論になるんですが、中でも財源の問題だと思います。  そこで、現行の交付税制度ですが、例えば群馬県の清水・太田市長さんなどは、経営改善してもしなくても交付税は入ってくる、それどころか、努力して歳入をふやせば交付税を減らされる、こういうふうに言っておられます。この交付税が自治体の経営努力の障害となっており、また、今各自治体とも財政危機ですが、交付税によって財政危機の深刻さがわからなくなり、合理化努力が進まない等の欠点も指摘されております。補助金についても、全国一律の仕組み地方の個性を失わせていると言われているのは御承知のとおりであります。  我が党は、三百に再編された市には独自の税収システムを認め、国の個別事業補助金を廃止し、地方に一括交付する制度に改める案を出しておりますが、これらの地方財源のあり方について、簡単でもいいですから、御意見をお伺いしたいと思います。
  25. 杉山憲夫

    ○杉山委員長代理 時間が来ておりますので、簡潔に。
  26. 恒松制治

    恒松公述人 先ほども申しましたが、大変難しい問題であります。  ただ、交付税があるばかりにむだがふえているというのは、それは極めて特異な例でございまして、交付税は、地方団体の自主的な行政サービスを実施する場合に、極めて有用なものだと私は思っております。したがって、この交付税制度を変えるというような形にはなかなかならないだろうというふうに思っております。  交付税という名前からもおわかりになるように、交付税制度ができます前は、平衡交付金と言っておりました。これは、国税の何%かを国が管理して、それを地方団体に交付する、いわば平衡的な交付をするということであったんですけれども、これが昭和二十九年に交付税という名前になりました。その交付税というのは、国税の三税、所得税、法人税、酒税の現在では三二%ですけれども、三二%は、これは国が便宜的に徴収はするけれども、本質的には地方団体の税金なんですよということでございまして、これが正しく運用されておれば、私は、それほど大きな問題にはならなかっただろうと思います。  問題は、交付税制度という立派な制度がありながら、その運用の面で、必ずしも地方団体にとって十分な意識を植えつけるような運用がされてこなかった、こういうふうに私自身は理解をいたしております。  以上です。
  27. 三沢淳

    ○三沢委員 ありがとうございました。恒松先生にも、これからもいろいろな御意見を、よろしくお願いいたします。  どうもありがとうございました。ちょっと時間が延びまして、済みません。     〔杉山委員長代理退席、委員長着席〕
  28. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、岩國哲人君の質疑に入ります。
  29. 岩國哲人

    ○岩國委員 おはようございます。民主党を代表して、質問させていただきます。  各公述人の皆様に、大変お忙しいところをお出かけいただきまして、いろいろお教えいただきまして、心から感謝をいたします。  私も、短い期間ではありましたけれども地方自治関係した人間の一人として、また、第三次行革審の専門委員を務めさせていただき、二年間、国のあり方、地方のあり方についてもいろいろと学ぶことが非常に多かった人間の一人として、この地方分権については非常に関心を持ち、また、各公述人の御意見も傾聴させていただきました。  できるだけたくさんの質問をさせていただきたいと思いますけれども、時間が限られておりますので、各先生方、大変失礼ですけれども、大体二百字原稿用紙一枚ぐらいの感覚でお答えいただければと思います。  まず、恒松先生にお伺いしたいと思います。  私も島根県におりまして、時期的には少しずれはありましたけれども、直接、間接にいろいろ教えられることが多うございました。きょうも貴重な御意見を賜りましたけれども、こうした地方分権という大切な法律、非常に膨大な内容を持っているものを、国の形、地方のあり方を、これを今国会で成立させなくともいいのではないかという御意見を賜りました。また、これは井下田公述人にも、同じような御意見を、さらにはっきりした表現で伺っております。  確かに、うっかり、びっくり、がっかりの地方分権ではなくて、ゆっくり、じっくり、しっかりの地方分権をと、私も望む者の一人であります。そうした観点から、仮に一年、この地方分権法律が成立がおくれたとしたならば、どういう影響が出てくるというふうに恒松先生はお考えでありましょうか。
  30. 恒松制治

    恒松公述人 大変いいごろ合わせの表現をなさいまして、私はそのとおりだと思います。  先ほども申しましたように、これは地方自治出発点になる法律でございまして、これがかなり問題が多い形で、あるいは問題を残しながら成立いたしますと、恐らく今後五十年は変わらないだろう。それほど重要な法律でございますから、今国会でとか来年の四月からとか、そういうことを考えないで、やはりじっくり取り組んでいただきたい、こういうふうに思っております。
  31. 岩國哲人

    ○岩國委員 確かに、四百七十五本目の法律を私自身も読まずして、この審議の場と別れ、そしてこういう法案が成立していくということは、国会議員として大変恥ずかしい思いをいたします。  もう一つ恒松先生にお伺いしたいと思いますけれども、きょうの御意見の中に、自主性がより問題である、形を整えるよりも。確かにそのとおりだと思います。また、いろいろな新聞、雑誌等で、恒松先生は、そもそも自治体には主体性を持とうという意欲があるのか疑問を感ずる、こういう御意見もおっしゃっています。  ひとつ、島根県知事として島根県の五十九市町村をごらんになっておって、あるいは島根県だけに限ったことではありませんけれども、今でもそういう御意見を持っていらっしゃるのかどうか。具体的に、例えばどういった点で自治体の主体性は欠けておるか、それをお聞かせいただけませんでしょうか。
  32. 恒松制治

    恒松公述人 幸か不幸か、岩國先生とは、私が知事をしていたときとちょっと時期がずれておりまして、まさに幸か不幸かと申し上げたわけでございますけれども、そういう自治体としての意識がないということは、私が現実に経験をいたしましたところでは、市町村の、特に町村の助役とか幹部職員に、都道府県の職員をよこしてくれという意見が非常に強いわけです。なぜそういうことを言うかというと、補助金がふえるかもしれない。  これは、県の幹部職員が中央政府から、霞が関から来る場合も同じ意識でございまして、それでは、そういう意識が多い限りは、やはり地方自治というのは本当に育たない、こういうふうに私自身は思っております。
  33. 岩國哲人

    ○岩國委員 あと二問、恒松先生にお伺いしたいと思います。  例えば、そうした主体性の欠如ということをおっしゃいますと、知事をお務めになっていらっしゃったときの宍道湖・中海の淡水化、それから中海の干拓の問題があります。知事は、退任に当たられて、そのときに凍結という決断をされた。今、その凍結された中海干拓は再開されようとしております。  こういった点は、農水省御出身の、決して官僚出身の知事というイメージはだれも持っておりませんでしたけれども、農水省との関係があったから決断しにくい面があったのか。あるいは、知事のあり方として、今おっしゃいました、決して恒松知事は主体性がなかったと御自分のことをおっしゃっているわけではありませんけれども、結果として、あの中海干拓については凍結までが精いっぱいだったのか。あるいは、こうした分権法ができれば、はっきりと中止にまで踏み込めたと今は思っていらっしゃるのか。それを簡潔に、よろしくお願いします。
  34. 恒松制治

    恒松公述人 大変具体的な、何かちょっと、大変責任を感ずるわけでございますけれども、私は、反対でございます、中海干拓については反対。  それなりに、私としては、そういう決断ができる努力をいたしました。いろいろな専門家にも意見を聞きました。しかし、むしろ、私が最初に農林省の研究所に入ったということでやりにくかったかというと、そうではなくて、逆に農林省側としては大変やりにくかったということだろうと私は思っております。  したがって、分権法ができるとできないとにかかわらず、私は私の考え方を押し通しましたし、恐らく知事をやっておりましても押し通したであろうというふうに思っております。
  35. 岩國哲人

    ○岩國委員 知事は、三期十二年で退任されました。非常にさわやかな感じが今でも残っておりますけれども、今、地方市町村長あるいは知事等において多選の弊害ということ。特に、これから権限が大きくなる、そして国会議員の選挙区は小さくなる。相対的な意味でも絶対的な意味でも、知事、市町村長の権限が飛躍的に増大します。そのときに、そういった多選の弊害というのはさらに目立つことになってくるのではないか、このように思います。  こうした点について、多選問題について、これはかなりはっきりとした形で多選禁止を打ち出すべきなのか、あるいはそうすべきでないのか、簡潔にまたお願いいたします。
  36. 恒松制治

    恒松公述人 地方分権の問題と多選の問題とは直接に関係しない、言いかえれば、地方分権が進んだから多選がいけないということではないと私自身は考えております。  これは個人個人の、それぞれの首長の考え次第でございまして、私は、四期四選したら恐らくだめだろう、住民の期待にこたえられなくなるのではないかという危惧を非常に持っていたものですから、その主張を通しただけの話でございまして、それぞれこれは人によって違いますし、もっとやれ、七選も八選もやった方が地域にとって大変重要だというふうに思う人もいるかもしれませんけれども、ただ、私はそう思わなかったということだけでございます。
  37. 岩國哲人

    ○岩國委員 次は、井下田公述人にお伺いいたします。  拙速主義ということについて、大変批判的な御意見を賜りました。こうした膨大なページ数、四百七十五本の法律、言ってみれば、政治の行政化という表現もございましたけれども、確かに私は、こうした国会におりまして、四百七十五本の法律をもらい、まるで国会が霞が関の下請をやらされているような感じを持たざるを得ません。  ちょうど、恒松知事がいらっしゃるからではありませんけれども、県庁へ市町村長が呼びつけられて、膨大な条例案をもらって、そして言いたい意見も余り言えないで、結局どこの一字一句違わない法律ができてくるということを承知でたくさんの条例集を市町村へ持って帰る、そのような場面を思い出して、ふと懐かしさを覚えたりなんかしております。  省庁再編についても御意見を賜りました。エコ政府というものが必要であるという御意見ですけれども、確かに私もそのとおりであると思います。しかし、現実に、きょうの午後いろいろ審議されますけれども、エコ政府どころか、エゴ政府が今できようとしております。江戸政府からエゴ政府への推移を、今、日本省庁は遂げつつあるのではないか、そのように思います。  例えば是正要求についても、井下田公述人は、総理だけの権限であったものが、各大臣にまで全部これからその権利が与えられるという点は問題ではないか、あるいは改善義務がしっかりとつけ加わった、この点は、むしろ後退であると。仮に、この地方分権一括法案の中にもいろいろ前向きのところもあると思いますが、そうしたものを一歩前進とすれば、何歩後退に値するのか。全体的にどういう評価をされますか、御意見を賜りたいと思います。
  38. 井下田猛

    井下田公述人 今岩國委員から、とても大事な、しかし奥行きの広く、かつ深いお話が提起されたかなと思います。  私は、百点満点で換算できる代物が今回の分権一括法案ではないと思っていますので、点数の評価はできませんけれども、基本的には、先ほど申し上げましたように、依然としてやはり中央関与の側面が余りにも強過ぎるかなと思います。といいますのは、逆に言えば、依然として地方不信を払拭できないままに今回のような一括法案が組み立てられているところに、もともとの問題の根が内在しているかなと思われてならないところです。  それだけに、私は、冒頭の部分で、あえて地方の姫路から来ましたというふうに申し上げました。つまり、生活者や、あるいは地方レベルで生活していますと、東京、中でも中央省庁が、先ほどの委員さんの御指摘にもありましたけれども、余りにも大き過ぎて、中央省庁は遠い距離にあるかなと思います。  御承知のように、政治というのはもっと身近な部分に引き寄せてもらいたいと思うものですから、点数こそ計算はできませんけれども、その観点に立って考えてみれば、やはりその部分については、落第点とはもちろん申しませんけれども、かなり低い点をつけざるを得ないかなと思います。
  39. 岩國哲人

    ○岩國委員 西尾先生にもいろいろと御質問させていただきたいんですけれども、各委員からの御質問をたくさん受けていらっしゃいますので、それでは、池上公述人に質問させていただきたいと思います。  市町村合併について、やや消極的、否定的な御意見もおありでしたけれども、仮に、コストの高い役所が近くにあった方がいいのか、それとも、たとえ遠くてもコストの低いサービスをもらえる方がいいのか、どちらを住民は期待する、どちらの方が住民のためにいいとお考えになりますか。簡潔にお願いいたします。
  40. 池上洋通

    池上公述人 お答えいたします。  市町村合併に私が否定的な発言をさせていただきましたのは、今お話のありましたコスト論から見ましても、合併したからイコールコストが安くなるということに実はなっていません。これは、きょう数字を申し上げる時間がございませんので申し上げませんけれども、私どもの研究機関幾つかのデータをつくって持っておりますけれども、人口が大きくなったからコストが安くなるというふうなデータに実はならないのです。さまざまな事実に基づくそうしたものが一つある。  もう一つは、何よりも、そうしたこともあわせて、それらをベースにしつつ、一体住民の期待にこたえる地方自治体の形は何かということを率直に考えつつ、先ほどの発言をさせていただいたものだというふうに受けとめていただきたいと思います。
  41. 岩國哲人

    ○岩國委員 合併してもコストは下がらなかったというのは、自治労とかそういった職員組合の抵抗があって、なかなか合併後のリストラというものを企業感覚でもって今まで実行できなかったというところに、一つの大きな問題点があるように私は思います。そうしたインフラ整備を官民一体となって進めなければならないときに、市町村合併になったら職員の数を減らされる、だから市町村合併そのものにまず反対とか、合併できても、そうした職員組合の反対があるといったことでなかなか合理化ができないということも、私は理由一つだと思います。  それでは、池上公述人のお立場から、これから行政サービスのコストを下げてほしいというのは国民の強い願いとすれば、職員の側からどのような努力が、どのような策があるとお考えになりますか。
  42. 池上洋通

    池上公述人 まず、一般的に申し上げまして、なるべく効率的な行政をつくるというのは自治体そのものの責務の一つであるというふうに思っておりますので、その点は確認をさせていただきたいと思います。  その上で、自治体の職員が、今後のいわばコスト論、ただいわばサービスの切り下げという意味ではない、本来の意味でのコスト論を考えた場合に、二点のことがあるのではないかと思います。  一つは、自治体の職員に、思い切った研修の機会も含めた、資質、レベルの向上を期待するという点であります。これは私も、先ほど言いましたように自治体の現場にいて、常に痛感をいたしておりました。それをどのように私たちがやってのけるかということが今大切になっていると思われてなりません。これが第一点です。  第二点目は、非常に重要なことで、これは政策論でありますけれども、先ほど申し上げました、いわば住民参加型の政治をどれぐらいつくれるか、行政をどれぐらいつくれるかということにかかっているんだろうと思うのです。  私自身も自治体におった経験で申し上げますと、私は実は、一人の市民として障害者運動のボランティアというのを三十年ほどやっているんですね。障害者の例えばそうした政策を考えるときに、市民がどれくらい、住民がどれくらい熱心に、障害を持っている人たちとともに歩む生き方をしながらボランティアの活動をやるかということは、実はそのままコスト論でございまして、そうしたことにきちんと向き合える行政の職員、あるいは行政の質というものが求められているといつも思っております。  以上を申し上げておきたいと思います。
  43. 岩國哲人

    ○岩國委員 私の質問時間が終わりましたので、終わらせていただきます。  池上公述人からは、これからの新しいそうしたNPO、NGO等の住民参加の行政の時代を迎えて、これから官民一体、職員も一体となってのそういう合理化に取り組むべきだという御意見、大変貴重な御意見だと思います。  また、西尾先生には大変失礼いたしましたけれども、この後、各委員からの御質問に対する御意見を聞かせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  44. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、佐藤茂樹君の質疑に入ります。
  45. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 公明党・改革クラブの佐藤茂樹でございます。  きょうは、雨でお足元の悪い中、四人の公述人の先生方におかれましては、貴重な意見を冒頭陳述していただきまして、まことにありがとうございました。岩國委員のような格調の高いごろ合わせ抜きで、持ち時間の範囲内でどんどんと質問をさせていただきたいと思うのです。  最初意見陳述の中で、特に西尾公述人井下田公述人の中で意見の分かれているものがございまして、それは地方事務官制度廃止の問題なんですね。特に今回、社会保険と職業安定に係る地方事務官制度廃止の問題についてお二人に御意見を伺いたいのですが、実は、我が党、我が会派も、いろいろなところからさまざまな要望がございまして、この問題につきましては、今もまだ賛否両論、いろいろ分かれているところなんです。  いろいろな考え方はあるんですが、その事務をされる方の身分のことも確かに配慮しなければいけないでしょうが、物事の考え方として、今回対象になっている事務が、国の事務なのかどうなのか、また地方事務なのかどうなのか、国の事務とするならば、それが直接執行する事務なのか、それとも法定受託事務に値するものなのかどうなのかということを、冷静に分析していって見きわめた上で、その上で、その仕事をされる方の身分というものも後でついてくるんであろう、そのように私は考えているわけです。  先ほど来、井下田公述人の中でも御意見がございましたけれども法定受託事務は、国民の利便性または事務の効率性の向上ということが計画までの定義で明確にされていましたし、私が聞いた政府の答弁でも、今回、法文上は消えたけれども、そういう考え方というのはきちっと踏襲しているんだというお話がございました。そういうところが一つのキーポイントになるんではないのかな、そういう感じを私は持っておるわけです。  それぞれ賛否両論を言われた公述人の先生方、まず井下田公述人から、地方事務官制度廃止について疑問符が残るんだというお話でございましたが、どういう根拠に基づいてそういう意見を述べられたのかということ、それと西尾公述人については、推進法四条を根拠にされましたけれども、そのあたりについてどういう検討をされたのかということを、時間の許す限り、わかりやすく、詳しく御説明いただきたいと思います。
  46. 井下田猛

    井下田公述人 地方分権推進は、基本的には、人が生活している地域レベルで、あるいは身近なところで、できることならば、自主裁量権が保障され、あるいは自己決定権が保障されることが最も望ましいと思います。  国の省庁の省益あるいは省エゴに立つことではなくて、人の身近なレベルで、物事の中身がより具体的で、かつ目に見える形で決められていくことが、恐らく地方分権趣旨の上からいってとても望ましいことだろうと思うものですから、改めて、確かに議論の余地が残っていることは私もよく承知していますけれども、今回の地方事務官制度の問題は、やはりこの段階で、できることならば、以上の観点に立って決着をつけてもらいたいと考えていますものですから、先ほど来のお話をしてみました。  以上で答弁にかえましょう。
  47. 西尾勝

    西尾公述人 お答え申し上げます。  地方分権推進委員会は、まず委員、専門委員、参与にもたくさんの方がおられまして、それぞれいろいろな御意見の持ち主であります。それを、いろいろ議論のある中をまとめて、地方分権推進委員会としては、どういう勧告にしていくか、皆様の納得を得るような案をつくるということに大変苦労するわけでありますが、同時に、今度は外、地方公共団体の、全体として支援してくださる事柄か否かを確認しなければいけませんし、中央省庁が納得してくださることかどうかを確認していかなきゃいけないという作業をしていくわけであります。したがって、あらゆる関係者の御支援と御理解が極力得られるように勧告をつくるというのが基本的な方針でありました。  しかし、残念ながら、第三次勧告で提出しました案件につきましては、そうはいかなかったわけであります。その第三次勧告は、駐留軍関係の二件の事務の処理の問題と地方事務官の問題が含まれているわけであります。  お尋ねの地方事務官問題につきましては、関係省庁のほかに、労働組合の問題にも、正式には職員団体と言うべきでしょうか、職員団体の問題にも絡んでおりますので、自治労それから全労働、全厚生、それぞれから正式の委員会としてのヒアリングも行いまして意見を伺いました。それから、いわゆるグループヒアリングの場でも、重ねて三団体にお越しいただきまして、かなり徹底した討論をさせていただいたところであります。  そのほか、自治労の場合には、かなり頻繁に私のところにもお見えになりまして、いろいろとお話をしたこともございますし、各地方単位組織から熱烈なお手紙が多数参りました。これは、本当に直筆で一人一人が自分の言葉でお書きになった封書の手紙というのも多数寄せられまして、私は極力すべて読ませていただきました。それで、そこにお書きになっていることも理解しようといたしました。しかし、最終的に私どもが到達しました結論は、どうも自治労に納得いただけるような結論にはならなかったということであるわけであります。  一つは、今までは、国家公務員ではありますが、都道府県に所属して、都道府県庁で仕事をしておられる主管課の方々と、そのさらに出先である社会保険事務所で働いておられる方々とがいらっしゃるわけでありますが、その方々が、国の直接執行事務になると、県の中で、県庁が持っているさまざまな事務との横の調整ということが難しくならないかということが一つの論点でありました。  それからもう一つは、今は県で仕事をしているので市町村との関係をかなり円滑にすることができるけれども、社会保険事務所も厚生省の末端地方出先機関ということになると、市町村との関係が果たしてうまくいくであろうかという御懸念も述べられたわけであります。  一つ一つのことについて、非常に大事なことでありますから、私どもも慎重に考えましたけれども、県内の事務の分担ということについては、厚生省とも非常に細かく議論をして振り分けをいたしました。  それから、国民年金関係市町村との関係については、最も重要なところでございまして、現在のやり方自身に多々問題があり、市町村から大きな不満の対象になっている点でございますから、そうした問題点をこの機会に抜本的に解決するという方策をいろいろと折衝させていただいたわけであります。  そういう周辺的な危惧をされているような問題がそれなりに解決するといたしますと、事務の本質からいえば、これは、国が保険者となっている全国的な事業でありますから、国が最終的な責任を負うという体制をとらなければいけない仕事ではないだろうかと思います。何よりも、財政収支に国は責任を持っているわけでありますから、この健康保険、国民年金の保険料をきちんと徴収するという努力をしなければならないと同時に、歳出の面で不当な歳出が行われていないかということを厳しくチェックしなければならない。  これは明らかに保険者たる国の責任なのでありますが、これを都道府県地方公務員の方が担当するという場合に、自分の金庫に入ってくるわけでもない、自分の金庫から出ていくわけでもないというサービスに、それだけの慎重さ、真剣さというものが期待できるであろうかということが最大の問題点ではないだろうかというふうに思いまして、私は、これは、厚生事務官、労働事務官に切りかえるべきことではないかと思っております。  特に今は厚生省関係の社会保険中心に申し上げましたが、労働省関係の職業安定の関係につきましては、職業安定所そのものは現在でも労働省の地方出先機関ということになっているわけであります。労働事務官の方々が担当しているわけです。今、地方事務官で残っておりますのは、県庁におりまして、職業安定主管課、雇用保険主管課というようなところで職安の仕事を指揮監督しておられる部門の方だけが地方事務官なんであります。  そうしますと、国の機関である職業安定所を指導監督するという仕事が地方公務員にふさわしい仕事でしょうかという問題でございまして、やはりこれは純然たる労働事務官たる国家公務員の方が行うべきではないかと考えます。  以上です。
  48. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 大変詳しく説明いただきまして、ありがとうございました。  それで、あと五分になりましたが、先ほどの公述人の答弁の中にもあったのですが、実は、今回の、機関委任事務廃止を中心とした分権の第一次改革といいますか、そういうものだと思うのですけれども、そうすると、この改革は、それぞれ自治体で生きておられる住民の皆さんにとってどれだけの効果が感じられるのかという、そこの問題というのは、そういう点から見たときに、今後の問題として二つ課題があるのじゃないのかという所見を私は持っているのです。  一つは、自治体に対して、自治体の自己決定権が今までから比べると極めて拡大されるわけですね、機関委任事務都道府県八割、市町村四割という事務、それが自治事務に相当な部分、権限が与えられるわけですから。だから、その自己決定権を拡大された自治体が、今度はどういう政策をきちっと打ち出していくのかということと、そしてさらには、住民まで巻き込んでどういう合意形成のシステムをつくっていくのかということが一つポイントになる。それがきっちりと運用されていけば、住民にとっても、確かに今回言われている一括法案改革という意味が感じられてくる。  もう一つは、もう一つ住民にとって身近なレベル、いわゆる基礎的自治体と言われる市町村にまで権限、財源の移譲というものを落としていくような、落としていくというか、本来そちらが主権であるという考え方もございますが、そういう分権にまでしなければ、なかなか住民にとって、本当に地方分権ということが、ありがたみ、効果として感じられないのではないか、私はそのような所見を持っているわけでございます。  そういう持説を述べた上でお尋ねいたしますが、恒松公述人井下田公述人に、そのあたりの、住民の側から見て、地方分権というものの効果をあらしめるための今後の課題ということにつきまして、簡単な御意見を承りたいと思います。
  49. 恒松制治

    恒松公述人 先ほど西尾公述人からもお話がありましたけれども、本当に住民サイドにまでこの分権の効果が出てくるには恐らく十年以上かかるだろう、こういう話でございましたが、私もそうだと思います。  現在の段階では、一体権限をどう割り振るかという問題で、住民の生活に直接かかわるような姿になっておりません。今度の四月の統一地方選挙の中で、地方分権というものが政策論争になったということはないのですよね。財政が厳しい、お金をどうするかということは随分議論になりましたけれども、分権ということに対して一体自分たちはどうするんだということが選挙の争点にならなかったことを見ても、よくその点はわかると思います。  したがって、これは気長に検討すべき課題だというふうに私は思っておりますが、一番大切なことは、やはり行政当局、市町村なり、あるいは都道府県もそうですけれども、みずからの判断でいろいろな政策をつくるという、政策能力を十分に発揮するような体制を整えることが大事なことではないか、こういうふうに思っております。
  50. 井下田猛

    井下田公述人 先ほどは、委員の質問時間が短くなることを考慮して、あえて短いお答えをしてみましたけれども、ポイントは、私は次のように判断したらよいと思います。  先ほどの地方事務官絡みでも同じことなんですけれども、でき得るならば、中央政府権限の多くを国民、市民、民に最も近いレベルにどのようにして引き戻すことができるかという、この視点をとても大事にしたいと思います。この観点に立てば、先ほどのような地方事務官絡みのお話が出てくるかなと思います。  せっかくの機会です、遠くにある中央省庁を身近な中央省庁に引き戻すような施策が今回の分権一括法案のベースに太く位置づいていってほしいと思います。そして、そのことが、実は、同時に、全国三千三百弱の都道府県やあるいは市町村が、それこそ身近な自治体になり得る下敷きにもなるかなと思います。  中央政府にかわってもらわなくて、それこそ先ほど来からの、三ゲンの地方自治で代表されますような問題状況を多々抱えているわけですから、財源の部分、人様の問題、権限の部分のそれぞれについて、やはりより具体的な歯どめをかけながら、もちろん、自治体やあるいは市民、住民の皆さん方にも、改めて地方自治の何たるかについてより具体的な問題提起、政治家の皆さん方はもちろんですけれども自治体関係者の皆さん方にとっても、まだまだ問題提起の仕方が時によってはやや乏しかったかなと思います。  市民、住民の皆さん方は、この部分についても関心が大ありだろうと思います。以前の時代とは違うんです。問題点が、具体的で明確に、かつわかりやすく提示できるならば、せっかくの今回の分権一括法案です、人様はこれを御自分たちのものにしてくれるにやぶさかではないと思います。  終わります。
  51. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 ありがとうございました。  実は、時間が許せば、第五次勧告の過程においてのいろいろなことを、この前実は政府側に質問をしたんですが、西尾公述人からお聞きしたかったんですが、時間が参りましたので、また別途ゆっくりと、そういう機会が許されるんであれば西尾先生からお伺いしたい、その希望だけお伝えしまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  52. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、春名直章君の質疑に入ります。
  53. 春名直章

    ○春名委員 日本共産党の春名直章です。  四人の公述人の皆さん、本当にありがとうございます。  まず最初に、池上公述人に、少し大きな話なんですけれども、憲法第八章に地方自治が盛り込まれました。明治憲法にはこれがなかったと思うんですね。それで、これが新たに設けられたその意味合いですね。そして、それとの関係で、先ほどの公述の中で、今度の分権法案の中で、関与の問題で、全体の姿勢として、国が正しいという物差しが全体としてあって、そこから地方事務をはかる、そういう姿勢になっているんじゃないかという御指摘をされました。  この地方自治の根本理念との関係で、それができた経過だとかその趣旨、それから、その目から見て、今度の関与の問題などについての、大きな意見ですけれども、ちょっと御意見を聞かせていただけたらなというふうに思います。
  54. 池上洋通

    池上公述人 お答え申し上げたいと思います。  今お話ございましたように、現行憲法は第八章に地方自治の条項を設けておりまして、第九十二条から九十五条まで四つの条項を設けているところでございます。  私どもが特に感慨深く思いますのは、大日本帝国憲法、すなわち明治憲法で地方自治の条項がなかったにもかかわらず、実際の地方制度というものは存在したわけでございまして、明治二十一年、一八八八年に市制、町村制がしかれ、そして一八九〇年に府県、郡制がしかれるという経過の中で、戦前のいわば地方制度がございました。  そこで、一言申し上げておきたいと思いますのは、明治憲法の中に地方自治の条項がなかったにもかかわらず、戦前のそれぞれの地方制度のもとにおける首長さんや地方政治家の努力というものが実は胸を打つものがございまして、戦前、例えば東北の地域にあって大きな飢饉が起こるというようなときに、私財をなげうって行政を行った首長さんたちがいらっしゃるんですね。これは東北だけじゃございません、栃木にもございますし、幾つもの例を挙げることが実はできるんです。私、いつも思いますのは、こうした非常に真剣な努力の上に今の日本地方自治があるということを我々はやはり考えなきゃいけないというふうに思います。そのことをまず一つ申し上げておきたいと思います。  それで、そうした上に立って、今の地方自治、現行憲法の中に地方自治の条項が入ったというのは、したがって、まず歴史的に大変意味のあることだということを第一番に確認をしたい。  もう一点憲法上重要だと思いますのは、現行憲法がある限り、いわば国民の権利としても地方自治という制度が確立をしたということが明確になっているという点であります。この二点をまず申し上げておきたいというふうに思います。  そこで、関与とのかかわりでございますが、御承知のように、憲法第九十二条は地方自治の本旨という概念を明確に規定しておりますが、これは、あらゆる憲法あるいはまた地方自治についての解説書でほぼ共通しておりますのは、この内容は住民自治団体自治を指すものであるという理解であります。住民自治に基づく団体自治というのが私ども理解でございますけれども、一言で言えば、地方自治とは住民自治を実現するものだということを明確に指摘をされている解説書もたくさん出回っておるところであります。  そうしたふうに考えますと、関与の問題を私たちが見るときに、実は、団体と、つまり地方公共団体と国の関係のように見えておりますが、本当は、それぞれの地方自治体の住民と国との関係ということに最終的には帰着せざるを得ない、いわばそういう構造になっているということであります。  その点で、先ほど、議会の議員の定数のお話を申し上げましたが、いわば住民における合意形成が大切だという御指摘がございまして、私も全くそうだと思いましたが、この合意形成の機関こそ実は議会であります。私どもの憲法で、今日の制度で考えておりますのは、議会にあっていわば合意形成を行うということを基本にしておるわけでありますから、その議会をもって合意形成の場とするという、憲法上も明確になっておりますこの制度をいかに大切にするかということが、今後も非常に注目されるところだというふうに一つ思います。  それと、あわせまして、議会をもって合意を形成する、つまり自主的に合意を形成するそうした制度をきちんと持っておるわけでありますので、今度の法改正案にもございますが、もし国の関与という制度をつくるとしても、できる限り最小にというふうな書き方が実は中にございましたけれども、本来の形でいいますと、もう関与はしないというのがむしろ出発である、そして、やむを得ざるときにするんだという観点を法の論理の上でもう一度明確にしていただきたい。  その点から考えますと、是正要求の議論は、さっきからございましたが、余りにもちょっと広過ぎるし、厳し過ぎるし、権力的過ぎるということをやはり言わなきゃならないのです。  実は、先ほど岩國委員から御質問いただきましたときに、私が職員の資質の向上というふうに申し上げましたが、私自身が役所にいたときの経験を踏まえますと、自治体の職員がやる気を出すとき、やる気を出さないときの差は明確でありまして、機関委任事務のように、何一つ自治体が自主的に決定できない、職員が知恵や知識を使おうと思っても使うことのできない、そういう制度が存在するもとで職員の質が向上するはずがありません。  今後においても、関与が強くなればなるほど職員の質が下がっていくと私は見ておるわけでありまして、本来の分権、本来の地方自治の発展のためにも、関与の問題は本気になって考えないといけないということを率直に、あわせて申し上げておきたいというふうに思います。
  55. 春名直章

    ○春名委員 どうもありがとうございました。  恒松公述人にお伺いしたいと思います。  私は、九七年十月号の「地方議会人」に載った「地方分権と議会」という論文を読ませていただきまして、大変感銘をしました、議会が非常に大事だと。今の池上公述人のお話にもちょっと通ずるものがあるのですが、その中で、地方分権という行政権限や財源配分のあり方が問われるのは、それによって市民の政治参加のあり方が決定されることになるからだ、こういうふうにおっしゃって、その仲介をするのが議会活動で、議会、議員の役割が非常に大事だ、決定的なことは、議会事務局人事を執行部から独立させてほしい、こういうお話や、休日、夜間にも議会を開いて市民にもっと知らせるようにしたらどうかと、非常に積極的な提案なども読ませていただきました。  ぜひ議会の活性化というのを実現していきたいと思うのですけれども、私はここでも質問させていただいたのですが、残念ながら、この法案の中では、議員の定数は削減するという方向になっているのですね。それはやはり、少し、この議会の活性化という面から考えても間違っている方向ではないかと率直に思っております。その点についての御意見を聞かせてください。
  56. 恒松制治

    恒松公述人 最後のところだけ申しますけれども、議会議員を削減すべきではないというのが御意見だと思いますけれども、それを法律で決めるなどということがそもそもおかしいんじゃないかというのが私の考え方でございまして、そういうのは、やはり住民自身が決めるべきことなんですね。自分たちがどれだけの議会人を持つのか、あるいは議会議員が多い方がいいのか少ない方がいいのかというのは、それは住民が決めることであって、こういう法律でもって決めることではないというふうに私は思います。それは、大きい方がいいか小さい方がいいかということは、それぞれの地域社会によって事情が違うと思いますので、そういうふうに私は理解をいたしております。
  57. 春名直章

    ○春名委員 どうもありがとうございました。  西尾公述人一つお伺いします。  法定受託事務の定義の変遷について、私もちょっとよくわからないところがありまして、第一次勧告のときには、「国民の利便性又は事務処理の効率性の観点から、法律又はこれに基づく政令の規定により地方公共団体が受託して行うこととされる事務」、こういうふうになりました。法律になった現段階では、「国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの」というふうに変更されました。  私は、それを比べただけですけれども、国民の利便性という観点がなくなっているとか、本来国の果たす役割という形で、国が随分強調されているような感じを受けます、この変遷を見ますと。それは私のうがった見方かもしれませんが、結局、国の強い関与を残せるようにするための定義の変遷、こういうふうな感じもするわけでありますけれども、この定義の変遷、どうしてこういうふうになっていったのかについて、一言、御意見を伺えたらと思います。
  58. 西尾勝

    西尾公述人 先ほど冒頭の陳述でも申し述べましたように、私ども勧告というのは、そういう文章の点になりますと、最終最後に、法律上の文章にそのまま使えるような文章表現というところまで厳密に詰めて、推敲に推敲を重ねた文章では決してないわけであります。したがって、その後の政府における検討で変わることはやむを得ないというふうに考えておりました。  当初から私どもが考えておりました定義のときには、何とかではあるが何とかというような書き方になっていますが、ああいう文章は、あれが法律の文章になるはずがないということはよくわかっていたわけであります。そういう意味で、最終的な法律上の定義は違う形を政府がお考えになるだろうなと覚悟しておりました。  問題は、中身が変わったかどうかということであります。そういう目で私どもはその後の定義の変遷を常に注視いたしまして、これで我らの趣旨が変わらないだろうかというチェックをしてきたつもりでございます。  そこで、まず第一点としまして、国民の利便性あるいは事務処理の効率性という表現が消えてしまったという問題がございます。  これは、私ども自身、これを国の直接執行事務にすべきか、それとも地方公共団体事務である法定受託事務にすべきかというその区分けをするときの基準として、それを都道府県なり市町村なりに法定受託事務として委託するというのであれば、その根拠は、国民の利便性から考えてその方が便利であるからとか、事務処理がその方が効率的であるからということでしょうということで二つの基準を考えたわけであります。したがって、今度は、地方公共団体事務になったものの中で、どれは法定受託事務であるべきか、どれは自治事務であるべきかというときの基準ではないわけですね、国民の利便性、事務処理の効率性というのは。  そこで、何を国の直接執行事務として国に留保して、国の出先機関で担当するか、都道府県なり市町村にお任せするかというときの問題でございますので、我々の理解はそのとおりだったのですが、そこで例えば中央集権制限法みたいなものを考えたとして、どういう事務をこれから地方に押しつけるかとか、中央に吸い上げるかなどということを制限する基準としては有効な基準かもしれないのですけれども地方自治法は、地方公共団体事務となったものについて、どういう事務分類をするかという定義を置くのだという建前になっていますので、これは要らないということに最終的な判断はなってしまった。国民の利便性、事務処理の効率性というのは、その限りでは必要のない基準であるから定義から外すということであります。  次は、国の責務、本来責務と言っていたのが途中から役割に変わったとか、いろいろございます。しかし、それは法制的な検討で、責務という概念があいまいであり過ぎるので、それにかわる表現を考えよというふうに言われて、いろいろ工夫した結果が今回の定義であるというふうに聞いております。  問題は、それが関与を広げることになるかということですが、その点は、関与に関する基本類型の設定等々は、私ども委員会勧告どおりに実現してくださっている。それ以上余計なものを追加もしておられませんし、その対象となる事務をいじってもおられません。そういう意味で、その後の、今度は係争処理手続も私ども勧告どおり創設していただいておりますので、この定義が変わったことによって関与が拡大しているということは全くないというふうに認識しています。
  59. 春名直章

    ○春名委員 ありがとうございました。  池上公述人に再度。  先ほど、関与のお話を最後にしていただきましたけれども自治大臣の御答弁でも、自治事務の中で代執行の対象になるような事務はないし、今後もないと考えている、こういう御発言をされております。ところが、都市計画法の二十四条とか建築基準法の十七条とか、明らかに国の直接執行、代執行の規定が存続されていたり新設をされているものが幾つか散見できます。その内容は、審議会にかけてそのままできるなどということになっているので、法定受託事務のときには裁判を通して代執行となるのですけれども、そうではない可能性があるんですね。  そういう意味でいいますと、むしろ法定受託事務よりも国の関与が、あからさまになっていると言ったらあれかもしれませんけれども、そういう面も私はあるんじゃないかと思ったんですね。そして、そのことができる基準も、建築基準法でいけば、国の利害に重大な関係がある建築物という問題だとか、水道法のところでは、非常の場合だとか、非常に定義が抽象的なんですよね。その辺に、非常に危機感といいますか、関与が広がる危険性を感じますので、時間が来ましたので、手短で申しわけないんですけれども、この問題についてお答えいただきたいと思います。
  60. 池上洋通

    池上公述人 簡潔にお答えいたします。  私も全く同感でございまして、大変強い危惧を抱いております。特に重要だと思いますのは、そうした関与を行うときの判断基準が、特に代執行というのは極めて強い関与でございますが、その判断基準が、文字どおり一方的に国。仮に係争処理委員会にかけるとしても、係争処理委員会結論は九十日以内というふうになっておりますが、そんなことを待っておることのできる事態であれば代執行は行われないんじゃないかと私は実は思うんですね。そうしたことを考えますと、やはり強い懸念を表明せざるを得ない、こう考えております。
  61. 春名直章

    ○春名委員 どうもありがとうございました。終わります。
  62. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、畠山健治郎君の質疑に入ります。
  63. 畠山健治郎

    ○畠山委員 公述人の皆様には、大変お忙しい中を御出席いただきまして、貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。とりわけ西尾公述人には、まさにメンバーの一人として大変な御活躍をいただきまして、重ねて厚くお礼を申し上げたいと思います。  私も、きょう、限られた時間でございますが、お尋ねをすることに大変ちゅうちょをいたしまして、迷いました。というのは、当委員会における審議は、総括質疑が終わりまして、一般質疑が終わって、きょうのこの公聴会、まあまあこんな順調に審議が進んでいっていいのか悪いのか、中身についてはほとんど触れるチャンスがなくて、ここまでどんどん来てしまった。この結末は一体どうなるのかというようなことを本当に心配をしておる一人でございます。  そういう意味で、公述人の皆さんからすると、それぞれの分野をお持ちの方々でございますから、その分野での貴重なお話をお伺いしたいというふうに思いましたが、流れからすると、そんなことを言っておられるのかというような思いでありますから、大変失礼なこともあろうかと思いますが、そういう思いでお聞かせをいただきたいというふうに思いますので、よろしくひとつお願いを申し上げたいというふうに思います。  先ほど、恒松公述人それから西尾公述人から、地方分権が定着するまでは十年もかかるんじゃないのかというようなお話がありました。そしてまた、これだけ大事な問題、明治維新、戦後改革、それに次ぐ三つ目の改革だという鳴り物入りで入った中身でありましたが、中身はこのとおりでございます。絶好のチャンスであった統一地方選挙でも争点にすらならなかった、こういう状況でありますから、果たして、これから先、一体どうなるだろう、国の方向を変えるという大変大事な仕事がこんな姿で終わっていいのだろうか、単に今だけじゃなしに、これから先に向かってもそういう深い思いがしてならないわけであります。  そこで、西尾先生と恒松先生にお尋ねをいたしたいというふうに思いますが、そういう現状を踏まえて、西尾先生からすれば、今までの審議過程と現状を踏まえて、大変だ、これからどうあるべきというふうに、経験を通してどうお考えになるのか、その点をひとつお尋ねをしたいということと、恒松先生からすると、いわゆる知事さんの御経験からして、一体地方としてどこにどんなことをした方がいいのかという、積極的な提案も含めて、もしございましたら、お聞かせをいただきたいというふうに思うのです。
  64. 西尾勝

    西尾公述人 お答え申し上げます。  地方分権推進は、私にとって自分の信念のようなものでございましたし、今回のこの地方分権推進委員会にかかわらせていただいて、明治以来の機関委任事務制度をここで全面廃止するということがほぼ決まりそうな状況になってきているわけですが、こうした非常に大きな、社会的な意義のある仕事にかかわることができたということは、私にとって、学者冥利に尽きることだと思い、またそういうことにかかわることができたことを非常に幸せに思っております。  それで、今回の分権改革は、なかなかわかりにくいところはあるかと思いますけれども、十年かかると申し上げたのは、全自治体理解され、使われていくようになるのにはと申し上げたのでありまして、理解の早いところは直ちに反応を起こすであろうというふうに思っております。そして、このことが、まず一つ、この経験を積んでいくということが、地方公共団体にとって重要だと思っております。  それで、地方公共団体をよりいい自治体にしていくために、これから行わなければならないことは多々あると思っておりますが、それは、今回の改革を第一次分権改革と言うとすれば、第二次分権改革、第三次分権改革というものを考えていくべきであるというふうに思っておりまして、それは、改めて、不足なものをこれからまたどうやって改革をしていくかということを、みんな、国民的な論議をして積み上げていくべきなのではないだろうか。それが今十分ではないから総合的な改革案ができるまで待とうというのでは、私は改革は進まないと思うのですね。まずここまで、まとまったものはまずそれでやる、そして次のステップに行くというふうに進めていただかないと、歯車全体がとまるのではないかというふうに恐れております。  以上です。
  65. 恒松制治

    恒松公述人 知事をした経験上どうかというお話でございますけれども、私はやはり、地方団体はそれぞれ確信を持って、住民の目線で、言いかえれば、住民にとってこれがどうであるかということに自信を持って行政に取り組むという姿勢が大事だと思っております。その点では、私は、現在の制度の中でも、機関委任事務というふうなかなり厳しい制度の中でも、自治体によってはそれができないわけではないというふうに思っておりますし、私自身はそうしてきたつもりでございます。  したがって、それは、新しくこの分権一括法ができまして地方団体の主体性が非常に高まったということは、言いかえればプラスの要素でございまして、要はやる気があるかないかということだけだと私は思っております。ただ、今までそういうやる気を失わせてきたものは、中央集権的な体制それ自身がそういうやる気を失わせてきたものでありますから、これはいい時期だというふうに私はプラスに考えております。
  66. 畠山健治郎

    ○畠山委員 余り深入りはしたくない質問の一つでありますが、地方事務官問題でいろいろとお話がありました。  私は、国の事務でないなどというような思いは一つもいたしません。全くそのとおりで、しっかりとやってもらわなければいけないというふうに思うのです。そういう立場ではなくて、今現場で何が起こっているかということが出発点でなければいけないと思うのです。  今現場で何が起こっているかといったら、無年金者が三割にも達しているのですね。年金を持たない人間がどんどんふえているわけです。なぜふえているかということが問題だと思うのですね。なぜふえなければいけないかというようなこと。それは、国だ地方だ、無責任の部分があるから、言ってみれば説得力がちゃんと届いていないというところに問題があると思うのですね。無年金者になったら、あなたも困るけれども自治体を持っている首長さんだってこれからこんなに迷惑します、あなた方の生活をどうするかということにかかわり合いを持ちますという、現場から出発してもらわなきゃいけないと思うのです。  確かに、後始末の問題、財源の問題とかというようなことは残ることもあろうかと思います。それは国の事務でありますから、当然のことながらそうしてもらわなきゃいけないと思うのです。それよりも、そういう問題点が起こらないようにするためにはどうあるべきか、ここから解決点を求めていかなきゃいけないのではないだろうか、そう思うからであります。  そういう立場から、池上公述人井下田公述人からお伺いをいたしたいと思います。
  67. 池上洋通

    池上公述人 私は、地方事務官の問題は、基本的には今委員がおっしゃったとおりだと実は認識しておりまして、現実に年金事務などを行っている友人たちもおるわけでありますが、今無年金のお話をなさいましたけれども、実は、高齢社会に向かって極めて重大な制度であります。そういう制度の現場の中でどういう事務が望まれているのか、とりわけ住民、国民の生活との関係でどんな事務が望まれているのか、それをもっと正面から精査する必要があるというふうに率直に思っております。  その点で、先ほど西尾公述人が職員団体との間の御苦労をおっしゃって、私も胸をつかれる思いがいたしましたけれども、そうしたことを改めてきちんとするということが何よりも大切だということを申し上げておきたいというふうに思います。
  68. 井下田猛

    井下田公述人 先ほど来から、私は、あえて原則論あるいは原理の問題にこだわって申し上げてきました。  今畠山さんの方からとてもよい御指摘を伺って、私なりに改めて納得させていただいたところなのですけれども、政治のポイントは、今御指摘のように、現場主義に立ち返ってみるということだろうと思います。  今御指摘のように、それこそ全国のあちこちでは、悩みやうめきや苦しみを持っている人たちがいっぱい出てきています。それらの人々と最も身近な部分でコンタクトが持てる職員ということになれば、確かに、現実の法制度その他の上からいって、なるほど国レベルの職員ではありますけれども、この機会に、地方分権地方自治のありようを抜本的に手直しをしてみるという立場に立てば、うめきや悩みに近いところにいて、よい仕事をしてくれる人たちがこれからふえてほしいと思うものですから、先ほど来からの地方事務官絡みのお話を申し上げました。  いま一つ、勝手ですけれども、先ほど来から地方議会絡みのお話も幾つか出てきています。先ほどのように、人口段階に応じた上限を設定していることに対して、私も大いに疑義があります。  加えて、現行の地方自治は、首長とそれから議会の二元代表民主主義になっていますけれども現実には、例えばの例で申し上げれば、議会の招集権が、議長権限ではなくて、御承知のように、知事さんだとか市町村長にあるわけですけれども、改めて、これからの地方議会のありようの部分から考えても、できるならば、長の権限ではなくて、議会権限にというふうに変えてほしいところですね。  というふうに、今西尾公述人のお話もありましたけれども、できることならば、今回の地方分権論議が、第一次改革ではなくて、さらに幾つか積み上げをしてほしいと思います。その段階で、今のように矛盾や問題点が残っている部分については、私どもたくさん気がついている部分があるわけですから、そのあたりを詰めてもらいたいところです。
  69. 畠山健治郎

    ○畠山委員 恐らく時間切れとなると思いますが、最後一つだけ、西尾公述人にお願いしたいというふうに思います。  というのは、確かに、改革一つの区切りですから、早く法律を成立させてやらせてくださいというのは、お説、よくわかります。よくわかりますけれども、議論をすればするほど、これで十分だなどというようなことには、とてもじゃないけれどもなりません。  区切りをつけて、まず出発させてくださいということはよくわかります。それであるとすれば、地方分権推進法というのは来年の七月で法定期限になるわけでありますから、ちゃんとさらなる部分を、もっと端的に言うならば、関与のあり方の問題はこのとおり議論になっています。それからもう一つは、法定受託事務自治事務化をこれから先も図る必要もあると思うのです。こういう観点から地方分権推進法の延長を図って、見届けをちゃんとやっていただく、こういうことも一つの方向ではないだろうかと私は思うのですが、西尾公述人の御意見最後にお承りいたしたいと思います。
  70. 西尾勝

    西尾公述人 第四次勧告までで出しましたものが第一次地方分権推進計画にまとめられ、そして今回の一括法案にまとまってきたわけでありますが、御承知のとおり、私どもは、その後、さらに第五次勧告に向けた作業に取り組むことになりまして、かなりのエネルギーをそれに消費させられました。それはまたそれで、ある程度の決着はつけまして、第二次地方分権推進計画の作成までいっているわけでございますけれども、今後、私どもとしては、少し監視活動の面で手抜きになっていたところを、この第五次勧告提出後、急遽、分権推進一括法案のチェックをしなければいけないということで、この立法作業関係のチェックに集中して仕事をしてきたわけでございます。  現在は、この国会審議をずっと注視して、どういうことになるかと非常に気をもんでいるところでございますが、この一括法案可決成立されたならば、これに続いて膨大な政省令の改正が行われます。国の政省令の中には、そこをどう決めるかということが非常に大きく後に影響するものも中にございますので、この政省令の改正も一件一件丁寧にチェックをしていかなければならないと思うのですね。  これができ上がってきますと、今度は地方公共団体の方は、特に都道府県レベルでは、規則であったものをかなり条例に変えなければいけないという膨大な作業がございまして、都道府県の方も、本当に今度これを議会でやるのかということで準備を急いでいるところでありますから、これが今回の国会で成立するかしないのか、非常に大きな範囲にわたって影響を与える事柄でございます。  私どもは、そういう関係のことの今後の動きを監視していくということにかなりのエネルギーを使わなきゃいけないと思っています。それから、第二次地方分権推進計画のその後の実施の過程を監視しなきゃいけないということがございます。したがって、第六次勧告を目指したような、何か勧告をつくる作業に取り組む余力があるかどうかということは、この国会審議が終わった段階で改めて委員会としては慎重に検討しなければならない課題であろうというふうに思っておりますし、委員長もそのように常に語っておられると思いますが、一応、国会の会期が終わりました段階で慎重に考えさせていただきたいと思います。
  71. 畠山健治郎

    ○畠山委員 終わります。どうもありがとうございました。
  72. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて午前中の公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。なお、若干時間が延びましたことを恐縮に存じます。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十九分休憩      ————◇—————     午後二時開議
  73. 高鳥修

    高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午後は、内閣法の一部を改正する法律案等中央省庁等改革関連十七法律案の各案について審査を行います。  この際、公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席いただきまして、まことにありがとうございます。公述人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、内田公述人、並河公述人、西崎公述人、藤田公述人の順に、お一人十五分程度意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることとなっております。  それでは、内田公述人にお願いいたします。
  74. 内田公三

    ○内田公述人 経団連事務総長の内田でございます。  本日は、この委員会におきまして意見陳述機会を与えていただきましたことを、大変光栄に存じます。私は、現在審議されております中央省庁等改革関連法案に賛成し、今国会での早期成立を望む立場から、意見を述べさせていただきます。  今さら申すまでもありませんが、我が国は、戦後、国民が経済的な豊かさを求めて一丸となって邁進した結果、世界第二の経済大国を実現いたしましたが、今日、大きな転換期を迎えております。我が国が二十一世紀においても経済社会の活力を維持し、真に豊かで活力のある市民社会、世界の平和と繁栄に貢献する国を目指すためには、経済社会の構造改革が不可欠でございます。  民間企業は既に身を切るようなリストラや組織改革に取り組んでおりまして、行政におきましても、内外の主要課題や諸情勢に機敏に対応できるよう、政治主導の体制を確立していただくとともに、経済社会のあらゆる面で民間の創意工夫、活力が発揮できるよう、官民の役割分担を見直していただくことが喫緊の課題であると考えております。  経団連は、かねてから規制緩和を初めとする行政改革推進に力を入れておりまして、さかのぼれば、佐藤第一次臨調、その次の土光第二次臨調、それから第一次から第三次にわたる行革審、さらに行政改革委員会、また規制緩和推進三カ年計画など、政府行政改革を積極的に支援してまいりました。特に、土光臨調が発足した昭和五十六年以降は、経済五団体のトップから成ります行革推進五人委員会というものを設けまして、経済界挙げて支援する体制をとっております。  今回の中央省庁等改革につきましても、明治維新、第二次大戦後の改革と並ぶ歴史的な大改革と位置づけまして、行政改革会議の発足に当たっては、行革推進五人委員会の全面的な支持を得て、当時の豊田経団連会長が委員として参加するなど、経済界としても全面的に協力してまいりました。  このようなわけで、昨年の通常国会において行政改革会議の最終報告に沿った中央省庁等改革基本法案が審議された際には、私も、経済界を代表して参議院の参考人として意見陳述を求められましたが、基本法案に賛意を表明し、その早期成立を求めた次第でございます。  その後、基本法が成立し、政府推進本部が設けられ、顧問会議の座長に今井経団連会長が就任したことは御高承のとおりでございます。  また、昨年の十一月には、経団連と全国の八ブロックの経済連合会の共催で、太田行革担当大臣にも御出席いただき、行政改革の断行を求めるフォーラムを開催し、機運の醸成に努めてまいりました。  次に、現在審議されております法案に対する経済界の評価を御説明申し上げます。  私どもは、現在御審議いただいております中央省庁等改革関連法案は、閣議決定された改革推進に関する方針とあわせますと、基本法の趣旨に沿って忠実に具体化されていると評価いたしております。  特に、私どもが評価している点を五つほど指摘したいと思います。  第一は、内閣総理大臣の指導性の明確化でございます。  実は、私は、第三次行革審のときに、専門委員として、内閣総理大臣の権限の強化の検討に携わりました。我が国におきましては、これまでの法解釈では、総理大臣も大臣の一人にすぎないとされ、これが縦割りの弊害を招いてきたと考えます。総理大臣の指揮監督権の強化、この問題は長年の懸案であったわけでありますが、今回、内閣の重要政策に関する基本的な方針について、閣議における総理大臣の発議権が明記されるとともに、強力な調整権限を持つ特命担当大臣及び内閣府の設置など、総理を補佐する体制が大幅に強化されることになったことは、まことに感慨深いものがございます。  この総理の指導性の強化に関連して、経済界が特に期待しておりますのが、内閣府に設置される経済財政諮問会議と総合科学技術会議などの合議制機関でございます。  これらの会議は、従来の審議会とは違って、総理大臣がみずから議長を務め、実質的な決定の場と位置づけられております。グローバルな競争の時代を迎えて、政策決定と実施のスピードが問われておりますが、民間人も参加した場で総理の決断によって政策が決定されていくことになれば、日本経済は、競争に打ちかち、内外からの信頼をかち得ていくものと確信いたしております。  第二は、省庁の再編と、副大臣及び政務官制度の導入でございます。  省庁の再編については、一部には数合わせという批判もございますが、大臣の数を大きく減らすということは、日本を変えていこうという決意を、政治が、政界が身をもって示すものと考えます。また、副大臣及び政務官制度につきましては、政治と行政関係を本来あるべき姿に戻すものと期待しております。  すなわち、これまでの政治と行政関係を見ますと、政治が行政に依存していた傾向がありました。今後は、政治が本来果たすべき役割を果たし、行政もその本来の役割に徹するということが期待されるわけでありまして、立法と行政関係をあるべき姿に戻すという意味で、今回の改革は大きな意義があると考えております。  第三は、政策評価と政策調整でございます。  国家行政組織法に、行政機関の政策に関する評価及び調整についての規定が置かれることになりましたが、これによって、これまで指摘されてきた行政の硬直性と縦割り行政の弊害が大きく改善されることを期待しております。  特に、政策評価については、直接の当事者である府省と総務省の二段階で評価が行われるだけではなく、総務省に民間有識者による評価委員会が設けられることになったことを歓迎しております。  第四は、経済界と特にかかわりの深い問題でありますが、行政指導の根拠として使われることが多かった各省設置法から権限規定が削除されまして、所掌事務の範囲の中で行政行為の権限があるかないかは、個別の法律によることが明確になりました。ただし、これは運用の段階で若干の懸念も残っておりますので、その点は後ほど触れさせていただきます。  第五は、独立行政法人化でございます。  最終的に、行政改革会議の最終報告の表にはなかった貿易保険あるいは造幣、印刷なども加えられまして、八十九の機関、業務が独立行政法人に移行することになりました。廃止、民営化等とされた事業が独立行政法人として存続することや、ほとんどが公務員型となったことが批判の対象となっておりますが、三年ないし五年ごとに見直すことになっておりますので、その際に、非公務員型への移行、さらには民営化や廃止検討されるものと理解しております。  そういうわけで、まずは、これだけの機関、業務が独立行政法人に移行することになったことを評価しまして、見直しの徹底に今後期待したいと考えております。また、引き続き、改革推進に関する方針に沿いまして、平成十五年までに結論を得るとされております国立大学やその他の事業についても、速やかに検討が進められることを期待しております。  このように、中央省庁等改革基本法の趣旨に沿って忠実に今回の法案が具体化されたことは、関係者の御努力のたまものであり、心から敬意を表する次第でございます。  二〇〇一年一月からの新体制移行は、今や国際的な公約とも言えるわけでありまして、日本がみずから改革を行えるかどうかの試金石でもあります。今回の改革が万が一にもおくれるようなことがありますと、我が国の自己改革努力に対する海外の不信はもとより、国民の政治への決定的な絶望感を生み出すことになりかねません。  二十一世紀の幕あけに合わせて二〇〇一年一月に新体制に移行するには、来年度予算で新体制の予算を組む必要があるなど、いろいろと大変な準備が要ると聞いております。何としても今国会で法案を成立させていただきたいと存じます。  なお、せっかくの機会でございますので、最後に、運用段階等で配慮していただきたい点を二、三申し上げたいと存じます。  一つは、私は、これからの行政は、内閣官房や内閣府だけではなく、あらゆる部門で民間の能力あるいは人材を活用していただくことが重要であると考えております。そのためには、官と民の間の人事交流が円滑に行われるようにしていただくことが必要でありまして、また、民間サイドとしても、一たん官に出た人が民に戻ってくる際の復帰の保証などを検討する必要があると考えております。また、官の中におきましても、府省間の人事交流も基準をつくって進めることになっておりますが、こういった基準を明確なものにするようお願いしたいと思います。  二つ目は、経済財政諮問会議の運営でございます。日本の将来のために、時宜を得た正しい経済財政政策が策定されますよう、メンバーの人選、事務局のあり方等は、慎重な検討をお願いいたします。  三つ目は、各省設置法の所掌事務でございます。先ほど申し上げたとおり、設置法から権限規定が削除されたことは評価いたしておりますが、所掌事務が権限を示すものであるかのように使われますと、せっかくの措置が無意味になってしまいます。特に、何々業の発達、改善及び調整に関することというような規定が個別産業の活動への行政介入につながらないように、注意深く見守っていくことが必要と考えております。  以上、中央省庁等改革関連法案の評価と運用段階等での若干のお願いを申し上げさせていただきましたが、経済界としては、ぜひ今国会で法案を成立させていただき、多くの国民が待ち望んでおります行政改革を実現していただきたいと、切にお願いする次第でございます。  以上をもちまして、私の意見陳述を終わります。ありがとうございました。(拍手)
  75. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  次に、並河公述人にお願いをいたします。
  76. 並河信乃

    ○並河公述人 並河でございます。  土光臨調以来、今日までの行政改革の流れの中で、時には直接に審議に参加し、あるいは時には外野からやじを飛ばすということで、ずっとフォローしてまいりました。そういう立場から、二、三、意見を述べさせていただきます。  ここに来るに当たりまして、最初に、委員会事務局の方から、公述人はまず賛否を明らかにするようにという注文がありました。今回の再編法案全体は非常に多岐にわたるもので、これ全体を一括して賛成か反対かというのは、正直言って非常に難しい問題でございます。あるものはいいなというものもありますし、あるものはどうかなというもの、いろいろないまぜになっている、そういうことをまず申し上げさせていただくということでございます。  ただ、全体としての雰囲気といいますか評価をさせていただきますならば、今回の改革全体を通じて、どうもやはり全体としての理念がはっきりしない。何のために中央省庁再編をやるのかということがはっきりしないということは申し述べなくてはいけないと思っております。確かに、政治の復権、あるいは内閣機能の強化というようなこと、あるいは行政の透明化を図るというようなことにおいて幾つかの進歩があった、これは私も率直に評価いたします。しかし、各省の再編成、統廃合という問題につきましては、どうもはっきりしない。  実は、きょうお持ちしたのですが、この間の総選挙のときの自由民主党の公約に、中央省庁の数を半減いたしますということを公約されて、その説明として、こういう文章がついているわけであります。  ちょっとそこだけ読んでみますと、「中央省庁をその機能に応じて整理し、省庁の数を現在の半分程度を目標に削減します」これが表題ですが、文章としまして、   国の役割の縮小(スリム化)、規制緩和、地方分権、「官庁周辺産業」の是正などの行政改革を集約するものが、中央官庁の再編成(リストラ)・統廃合(スリム化)です。中央官庁の再編成・統廃合は、これまでの一局削減などがしばしばそうであったように、内容の伴わない、外側からの数合わせであってはなりません。実体は何も変わらないからです。 云々という立派な、私はこれでもって非常に感激に打ち震えたのです。  こういう公約を前提として考えてみますと、今度の再編というのは、本当にここに書いてあるように、ここで戒めているような内容の伴ったものであるのか。  確かに総選挙のときにも、いろいろテレビなんぞで、各省の縦割り行政是正ということが言われました。しかし、今度の法案を見て、では道路は、建設省、農水省、いろいろ分かれている、それが一体これで一緒になるのか。あるいは下水道の問題についても、建設省の問題あり、厚生省の問題あり、農水省の問題がある、これが一体一緒になるのか。あるいは、よく言われておりますが、幼稚園と保育所、これも一緒にこれから仲よくやっていくのだということは書いてありますけれども、そんな簡単に問題がこれから一緒になるのか。あるいは、もっと大きな言い方をしますと、財政、予算の縦割りの問題、あるいは外交の一元化というような問題がこの再編によって是正されるのかということになりますと、どうも私は疑問だなという気がするわけであります。  それから、そのときによく、企画と実施の分離ということが言われました。本省はという言い方は変ですが、本省は企画に専念し、実施は出先だとか地方だとか、いろいろなところにやらせるということだったと思いますが、果たして今度の改革法案に、どこに企画と実施の分離というきちっとした線があるのかということになりますと、私どもにはよくわかりません。  それから、行革の中心テーマでございましたスリム化というような問題も、必ずしもこれではわからない。  そうしますと、各省の看板をかけかえて一緒にしてというのは、やはりこれは莫大な費用を要するわけでありますが、しかし、それだけのお金をかけてやるほどの魅力が、あるいはメリットが今回の法案にあるのかということになりますと、このままではどうもないのではないのかな、そういうようなことを私どもはどうしても感ぜざるを得ない。  では、こんなものを全部やめて、もとの、今のままでいいかというと、やはりそうはいかないんであって、私は、新聞なんかで読みますと、これからの議事日程がもう決定したごとく書いてあるので、何かよくわかりませんけれども、残された時間がどれだけあるか私は存じませんけれども、しかし、これから、せっかくのここまでやってきた作業というものをもう一歩手を入れて、やはり国民から見てなるほどなというような作業、それにぜひこの委員会として取りかかっていただきたい。それを心からお願いしたい、それを申し上げに参りました。  今さら、話をもとの、そもそも論に戻してあれこれ言うのもいかがかと思いますので、とりあえず、昨年の基本法が通ったとき、あるいは基本法の御審議、一応こちらも議事録を拝見して承知しているつもりでございますが、それとの照らし合わせ、あるいはそのとき疑問に思っていたことがいまだに残っているということも含めて、二つ、三つ、ちょっと具体的に指摘をさせていただきたいと思っております。  一つは、内閣府には金融庁が置かれ、それから総務省に公正取引委員会が置かれるということが、私にとっては最初から、何で片っ方が内閣府でもう一つが総務省なのかということは理解しかねることでございました。  この件につきましては、昨年の四月の二十二日にこの衆議院の特別委員会でも質問がございまして、それに対して当時の橋本総理大臣は、こういうふうにお答えされているわけです。公取の問題ですが、「内閣府に位置づけるべきかどうかとなりますと、私は、」これは橋本さんですが、「公正取引委員会というまさに組織の性格から、逆にその強さが反対に出てしまいはしないか、バランスをとる上で総務省の方がよいのではないか、私はそう思います。」というお答えを当時の橋本総理大臣はされている。このバランスをとるという意味がよくわかりませんけれども、これ以上の突っ込んだ質疑はなかったわけであります。  今度の国会で、私は文書で見ておりませんけれども、総務省は事後チェックであって、内閣府は企画立案であるという御説明も総務庁長官の方からあったようでございます。しかし、それにしても、何で公取と金融庁とが別々のところなのか、そこにある考え方というのは何なのかということについて、私は、もう一遍ぜひ確認をさせていただければありがたい、この審議で確認をしていただきたいというふうに思っているわけであります。  といいますのは、これはこの問題だけに限りませんで、午前中のテーマになります地方分権との絡みで、今度出ております地方分権関係一括法案の中に地方自治法の改正がございます。そこに、国地方係争処理委員会というものが置かれることに自治法改正でなっている。置かれる場所は、今の出ている法案では総理府に置くと書いてあるわけですが、当然これはこの再編によって変わる。総務省の設置法案を見ると、総務省の審議会としてこの国地方係争処理委員会を置くというふうな書き方になっております。  この係争処理委員会が三条機関がいいか八条機関がいいかという議論はちょっとおきまして、やはり置く場所が、なぜこれは総務省なのか、なぜ内閣府に置かないのかというのが、先ほどちょっと御紹介いたしました橋本さんの答弁で、何かバランスをとる上で、内閣府だとどうもひとりで歩いてしまうかもしれない、総務省に置いておけばバランスがとれるんだというお考えが、もしこの国、地方の問題にもあるならば、国と自治体との対等、協力関係というものを保障するという制度上、やはりこれは問題ではないか。  ですから、私は、公正取引委員会の問題、それから新たに設置される国地方係争処理委員会、この二つの問題は、内閣府に置けば何でも解決するとは思いませんけれども、しかし、総務省の中に置くよりは内閣府の中に置くべきではないか。今の省庁で考えますと、国地方係争処理委員会自治省の中に置くといったら、やはり、え、ちょっと変じゃないのという感じになるんじゃないかと思うのです。そういう意味で、私は、この問題は内閣府の問題だろうというふうに思っております。  それからもう一つは、独立行政法人。これも、非常に議論の初期の段階では抽象的で、一体どういうものなのか、また、これが特殊法人とどういう関係になるのかということがよくわかりませんでした。  しかし、実際にこうやって法案の中で出てきますと、一体これが、一番最初に考えていた、企画と実施の分離、外庁化、括弧エージェンシー化というふうに言われた内容であるのか。そう言うと対象の機関になった方々には申しわけないですけれども研究機関とか、行政の本体からすれば、へりと言ってはいけませんけれども、意思決定そのものあるいは行政の中心部ではない、言葉は悪いですが周辺部の機関を独立行政法人というものにする。一体これで、果たして一番最初に考えていた行政スリム化あるいは透明化というものが図れるのかどうか。これについて、私は非常に疑問に思っておるわけであります。  それと絡めて、もう一つぜひ御検討いただきたいと思いますのは、情報公開法がこの間成立いたしました。情報公開法の対象は国の機関ということでありまして、特殊法人については見直し規定がついたということでありますが、では一体、この独立行政法人というものは、今の情報公開法の対象となっているのか、なっていないのか。恐らく、普通に考えますと、国の機関というふうに読めないということで対象外でありましょう。  しかし、特殊法人の情報公開を進めるべきだという議論を延々とやったわけでありますけれども、そのときに、一つの考え方として、特殊法人というものは非常に千差万別である、いろいろなものがある、それをただ十把一からげに特殊法人と言っているだけであって、一概には決められないんだというような御説明があったように、こちらは承知しております。  今度の独立行政法人は、今回の国会に通則法が提出されているわけでありまして、全部横通しで、こういうものが独立行政法人なんだということが、きちっとそれなりに書いてあるのでしょう、まあ書いてある。であるならば、できたばかりの法律を改正するのもいかがかと思いますが、しかし、情報公開法の対象にこの独立行政法人というものを加えるんだということを、ぜひ今度の国会で御審議いただければ非常にありがたい。  いずれにいたしましても、二年の間に特殊法人につきましても情報公開の問題を検討するということであるならば、それよりも国に、行政により近い独立行政法人について、その情報公開をためらうという理由は全くないと私は思うのでありまして、ぜひそういう御検討をお願いできればありがたいというふうに思っているわけであります。  それからもう一つでございますけれども、今度、パブリックコメント制というものが導入されることになりました。もちろんこれは、基本法には書いてございますけれども、今度の法案には出ておりません。とりあえず行政の運用でやるということで、規制緩和についてのパブリックコメントをやるということでございます。  私はやはり、前に行政手続法ができて、このたび情報公開法ができた。それで、最初行政手続法は、それぞれの国民一人一人と行政との間の関係行政指導をどうするとか、侵害処分をどうするとか、聴聞の手続をどうするという、行政と国民との間の関係を調整するのが行政手続法でした。今度の情報公開法で、国民一般、人々に対して行政はどういう対応をするかということで、情報の開示請求権を認めたということでございます。  そうしますと、次の第三の段階として、国民が行政にいかに参加するか。審議会がいろいろ整理統合されるということであるならば、国民の参加というものについての手続、これについての行政手続法というものを、再度検討すべき段階に来たのではないか。そうすると、情報公開法、それから国民の行政への参加を定めた行政手続法を新しくつくるということで、民主的な手続というものが一応完成するんじゃないかというふうに思うわけであります。  パブリックコメント制というのは、そのごく最初段階ということでございますけれども、それを契機に、新しく手続法の検討をぜひお願いしたいということを申しまして、ちょうど時間になりましたので、とりあえず陳述を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  77. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  次に、西崎公述人にお願いいたします。
  78. 西崎哲郎

    ○西崎公述人 御指名いただきました、西崎でございます。  私は、この委員会審議されております行政改革関連法案に賛成する立場であります。二〇〇一年一月からの実施に間に合うよう、この国会で早期に成立を強く期待するものです。  しかし、いろいろ検討してみますと幾つかの問題点があるわけでして、評価すべき点、あるいは明確にすべき問題点などについて、重点的に意見を述べさせていただきます。  まず、今回の行革の目的は何かということを確認しておく必要があると思います。  今回の行革の枠組みをつくった行政改革会議の最終報告は、冒頭で、行革の目的として、第一番目に、「内閣・官邸機能の抜本的な拡充・強化を図り、かつ、中央省庁行政目的別大括り再編成により、行政の総合性、戦略性、機動性を確保すること、」二番目に、「行政情報の公開と国民への説明責任の徹底、政策評価機能の向上を図り、透明な行政を実現すること、」三番目に、「官民分担の徹底による事業の抜本的な見直しや独立行政法人制度創設等により、行政を簡素化・効率化すること、」この三点を目標として掲げております。  結果は一体どうなったかということです。  まず第一の、行政の総合性、戦略性、機動性の確保という面について見ますと、閣議での首相の発議権あるいは首相補佐官の拡充、こういった総理大臣のリーダーシップの強化、閣議での多数決制導入、国務大臣の閣議付議権、各省との政策調整権付与などが、御存じのように図られております。また、内閣官房に重要政策の企画立案権と最終的な調整権を与え、内閣官房及びその事務局である内閣府に、各省に対する優越性を確保しております。さらに、経済財政諮問会議を初めとする、政府首脳、民間人による合議制諮問機関内閣に設置、重要政策に関して事実上の決定権を持たせております。  こういった内閣主導の政策決定メカニズムが、今回の改革によって構築されたわけであります。この内閣・官邸機能の強化は、これまでの行革で実現できなかった長年の懸案でありまして、これが実現したことは高く評価したいと思います。  中央省庁の再編に関しては、一府十二省庁にこだわったために、巨大省の出現など問題がありますが、明治以来膨張を続けてきた中央省庁の数に大なたを振るい、再編した意義は大きく、小さな政府実現のための改革の重要なステップと位置づけるべきだと思います。  第二の、行政の透明化についてであります。  行政の過剰介入や裁量行政の温床となっていた、設置法における包括的な権限規定が削除され、権限の行使は、すべて個別の行為法によることになりました。これは、行革会議報告、基本法でも盲点となっていたのを行革推進七百人委員会が指摘、新党平和が、現在の公明党ですが、基本法成立時に附帯決議で強く要求したもので、行政の透明化にとって大きな前進と言えます。また、これと並行して、各省庁の政策評価システムについて、大ざっぱながら制度設計がなされたこと、情報公開法が今国会で成立するなど、国民に対する説明責任の具体化は、まことに喜ばしいと思います。  第三の、行政の簡素化、効率化についてでありますが、その前提となる、民に任せるものは民に、地方にゆだねるべきものは地方にという基本理念の実現は、時間的制約もあって不十分と言わざるを得ませんが、これは、今後継続的に推進されることが期待されます。  独立行政法人は、ほとんどが国家公務員型となりましたが、八十九法人と予想より数がふえたこと、国立大学など、当初独法化を拒否していた機関についても継続して検討することになったこと、国家公務員型の場合も、経営の自由度と自己責任がかなりの範囲で与えられ、非公務員型への移行ないし民営化の助走的役割を果たすことが期待されるなど、前進と言えます。  国家公務員の二五%削減を義務づけたことは、地方分権、官民の役割分担の見直しによる中央省庁の仕事量の削減を強制する効果を持ち、思い切った自己規制策と言えます。  以上、時間の関係で主要な項目にとどめましたが、行革の目的に照らし、その達成度はかなり高いと評価いたします。特に、推進本部事務局の努力を多とするものであります。  しかし、同時に、今回の行革の目的を貫徹するためには、あいまいな点、不十分な点を明確にしておく必要があります。  まず、内閣内閣関係でありますが、内閣府に置かれる合議制諮問機関審議結果は最大限に尊重するとともに、会議内容は可能な限り公開することを明示すべきであります。  特に、目玉とされている経済財政諮問会議について、内閣府設置法十九条は、所掌事務として幾つかの重要政策を挙げておりますが、また、これについて調査審議することというふうに決めております。  この具体的な審議内容、例えば「予算編成の基本方針」とありますが、これは、予算の性格と規模、歳出の重要項目の増減、税制改正など、予算編成の全過程での重要事項を含むと理解すべきであり、財務省の予算編成は同会議方針に拘束されるものであるということ、また、「調査審議」とあるのは、閣議が持つ決定権との関係での法律上の表現であり、正式決定は閣議で行われるにしても、首相が議長であり、関係閣僚も出席する同会議での決定は、事実上の政府としての決定である、こういったことを明確にしておく必要があります。  また、内閣府について、ここは知恵の場として、各省及び民間の人材を集めることになっていますが、すぐれた人材を登用、処遇するための人事ルールの確立、各省ローテーション人事の排除、民間人については参加しやすいような対策、例えば、既に明らかになっておりますが、任期付任用官制度の導入など、一連の具体策を早急に準備すべきであると思います。  また、経済研究所、これは内閣府の外局として設置されるわけでありますが、この経済研究所を内閣のシンクタンクとして抜本的に拡充強化する必要があると思います。また、対外発信機能を持たせて、日本経済に対する内外の迅速かつ正確な理解を促進する必要があります。最近の日本の金融危機あるいは一連の経済対策について海外では理解が十分ではなかったということからしても、この必要性は明らかであります。  第二番目に、政策調整についてであります。  各省庁国務大臣の調整権の行使、また内閣官房の優越的調整権の発動などのやり方は別途決めることになっていますが、具体的な方法を早急に決める必要があります。  三番目に、政策評価についてであります。  評価の方法あるいは国民に対する説明などを組織法である設置法で規定するのはもともと無理でありまして、当面はこれでスタートするにしても、早急に行政評価法の制定などを検討すべきであります。  また、行政に対する国民の苦情や不服を円滑、スピーディーに処理するため、行政審判庁構想も含め、不服審査体制の拡充を早急に検討、実現していただきたいと思います。  四番目に、独立行政法人についてでありますが、中期計画終了時に、各省及び総務省に設置される評価委員会によって、廃止、民営化、公務員型から非公務員型への移行などを検討する段取りと義務づけを明確に規定する必要があります。また、解散手続は別法によるとされていますが、これも早急に準備する必要があります。  今回の行革で積み残しとなった各省庁の実施部門の民営化、民間委託、独立行政法人化を今後引き続き検討するためのスケジュールを決めるべきであります。  五番目に、特殊法人についてでありますが、特殊法人は、経営の効率化、透明度において、今回制度設計された独立行政法人に比べてはるかに後退することになり、整合性を著しく欠くことになります。この点からも見直しは不可避であり、政府も早急な見直しを行う方針を明らかにしていますが、業務運営、財務、人事管理、民間人による第三者機関による評価など、独立行政法人に準じた制度設計を中心に、一定の期限内に見直しを行うべきであると考えます。  六番目に、審議会に関してであります。  整理されるべき審議会を事実上存続させるための合併や分科会方式は厳しくチェックすると同時に、逆に合併が必要なもの、例えば税制調査会と財政制度審議会を合併して、それぞれ分科会編成になると思いますが、歳入歳出の一体的な検討が可能となる仕組みを考えるべきだと思います。  七番目には、個別省の問題として、個別機関の問題として、環境省と公正取引委員会の問題であります。  林野行政は、環境保全の見地から重要性がますます増大していることは皆様御存じのとおりであります。環境省の環境行政と密接な連携を保つ必要があります。  また、公正取引委員会が総務省に所属することによりまして、同省の例えば情報通信、放送などの独禁行政の対象となる行政部門との利益相反が懸念されております。基本法の改正によって内閣府に移管するのが最善ですが、それができない場合、公正取引委員会の独立性保障を改めて確認する必要があります。  また、規制緩和の進行に伴い、公正取引委員会審査体制の拡充は不可欠でありまして、基本法もその必要を明記しております。分掌官の配置も含め、内部体制の拡充を図る必要があります。所属変更ができず、内部体制強化も不十分ということになりますと、日本の独禁行政に対する海外からの不信感が増大することは明らかであります。  最後に、今回の行革の具体的な中身の多くが政令にゆだねられることになります。政令の書き方いかんで、行革会議最終報告あるいは基本法の趣旨がゆがみかねないおそれがあります。政府は、政令を公布する前に、第三者機関である顧問会議に報告、チェックを受けるとともに、国会に必要な報告をすべきだと思います。  以上、評価すべき点、明確にすべき問題点を、大変お聞き苦しかったと思いますが、早口で列挙したわけですが、私は、今の段階は六合目まで来ていると思います。これが、政令その他細目も含めてどこまで形を整えるか、ここが八合目でありまして、最終的には、これは政治家のレベル、それから今度は、民間が参加するいろいろな合議制機関あるいは評価委員会がつくられているわけですが、本当にいい人材が民間から参加できるかどうか、こういったものによってやっと頂上にたどり着くということでありまして、したがって、まだ頂上ははるかなり、そんな感じがしております。  しかし、全体的に、言いましたように、目的の達成度は高く、賛成するものであります。  以上であります。(拍手)
  79. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  次に、藤田公述人にお願いいたします。
  80. 藤田忠弘

    藤田公述人 国公労連の藤田でございます。  このたびこのような発言の機会をちょうだいいたしまして、感謝を申し上げたいと思います。  私どもの組織は、運動を進めるに当たりまして、日本国憲法を尊重、擁護する、こういう者の集団でございますから、当然のこととして、単に組合員の労働条件を擁護するということにとどまらずに、いかにしてこの国の行政を国民の皆さん本位のものに充実をするか、そういう立場を重視しているところでございます。そういう立場でありますだけに、二十一世紀のこの国のあり方というものが問われております今回の行政改革につきまして、強い関心を持たざるを得ないわけでございます。  そういう立場から、省庁再編関連法案を今日まで拝見してまいりました。率直に申し上げて、以下申し上げるような諸点について強い危惧の念を抱いております。そして、到底納得しがたい、こういう思いを強めているということを率直に申し上げたいと思います。  まず第一点は、今度の行政改革の目玉とされておる内閣・官邸機能の強化とも密接にかかわっております大ぐくりの省庁再編の問題でございます。  提案理由の説明によりますと、行政の目的である任務を基軸に一府十二省に再編するというふうになっておりますが、複数省庁を統合いたします総務省、それから国土交通省、厚生労働省などがどのような任務をもって再編をされるのか、理解をいたしかねております。  例えば、総務省の任務を一読しただけでは、何を行政目的にするのか判然といたしておりませんし、国土交通省の場合は、開発最優先の巨大公共事業官庁として機能強化されるのではないか、この危惧を強く持たざるを得ないのでございます。また、厚生労働省の任務に労働者の福祉や国民生活の安定という語句が見受けられないことは、従来、労働省が第一義的目的として重視をしてまいりました労働者保護の立場が、福祉一般に埋没させられるのではないかとの危惧を禁じ得ないのでございます。  私どもは、このような大ぐくり再編と各省任務の洗い直しというものが、憲法に規定された基本的人権の実現を法の枠組みを前提に、政策の実施を通じて追求する、そういう行政責任の後退につながるのではないか、そしてそれは、全体の奉仕者たる公務員の役割と使命を変質させるのではないか、こういう危惧を強めざるを得ないのでございます。  第二の点は、行政減量化が実施部門に集中をして、行政サービスの後退が危惧をされる点でございます。  今回の省庁再編では、政策の企画立案機能と実施機能の分離を前提として、かつ国の役割の重点化という方針が貫かれております。各省の設置法を見ましても、企画立案の意味するところが判然としないままに企画立案部門の重視ということが強調されて、その一方で、実施部門につきましては、官から民、国から地方、こういう再配分が図られようとしているわけでございます。  多くの識者が指摘をされておりますし、また私どもの経験からも言えることですが、政策の企画立案と実施は、本来一体的でなければならないと思います。これを機械的に分離することによりまして、良質で効率的なサービスが確保されるとは考えられないのでございます。それをあえて分離するというのは、結局、実施部門のスリム化自体が目的の行政改革ではないのか、こう言わざるを得ないと思っているところでございます。  第三の問題は、公務員の二五%削減の問題でございます。  端的に申し上げますが、現在の職場実態、労働実態からいたしまして、まさに想像を絶する数値目標だと言わなければならないと思っています。  我が国の公務員数が先進欧米諸国に比べましても格段に少ないことにつきましては、本委員会でもたびたび指摘をされて、今では共通の認識になっていると思います。加えて申し上げたいと思いますのは、一九六七年から三十年余の九次にわたる定員削減計画の実施、及び七八年からの人員要求そのものを抑制するというシーリング、これをあわせて実施されてまいりました中で、この二十年間で五万人を超える定員が純減をしているという事実でございます。  一律的な定員削減によって新規需要にこたえる財源を確保するという計画削減も、行政需要の増大に見合った人員要求を認めることが前提にならなければ、それは行政サービスの切り捨てにつながる減量化という結果しかもたらさないと思います。  今、政策的に脚光を浴びる新規の行政需要の陰で、例えば、深刻な不況下で失業者のひしめく公共職業安定所のような通常の実施事務に、一律削減のしわ寄せが行われているのが実態でございます。また、国立病院と民間医療法人の病院を比較いたしますと、一般病院百床当たりで、医師の数は、国立七・一人、民間七・三人、看護職員は、国立三十六・一人、民間三十九・四人、こういう状況になっております。  行政事務それぞれが維持すべき基本的な水準も確認をしないで、定員の削減だけを一律に押しつけることが、行政サービスの後退につながっていることは明らかでございます。そういう点での検討もないままに、やれ一〇%だ、二〇%だ、あるいは二五%、こういう削減目標だけがひとり歩きしていますが、これは、単に手順の問題としてではなくて、政府行政サービスの低下を当然視していることのあらわれだ、こういう批判を免れることはできないのではないか、こう思います。  第四の問題は、独立行政法人でございます。  公共性の見地から必要な事務事業について、もはや国が直接行う必要がないなどの理由で、別の法人格で行政事務を執行させるのが独立行政法人であると言われているわけでございますが、今国が行っている事務事業で、国が行う必要がないとする基準や根拠は極めてあいまいでございます。  先ほど述べました国立病院の場合、診療収入ですべての費用を賄う意味の経営収支率一〇〇%、こういうことが各病院に課せられているわけでございます。つまり、今の特別会計制度のもとにあっても、実質的に独立採算の執行が追求をされているわけでございます。にもかかわらず、なぜ別法人としなければならないのか。あるいは、現にある特殊法人と何がどう違うのか。制度全般にわたってこういう不明確な点が数多くございます。  また、対象に挙げられております九十の機関事務を考えましても、民間はもとより自治体でも実施が困難な離島、僻地などでの地域医療や、難病医療の面で重要な役割を担っております国立病院・療養所や、営利目的では成り立たない基礎研究、あるいは文化芸術の維持発展、継承の役割を持つ国立博物館や美術館などは、国が直接実施することによってこそ、効率的かつ公正な行政サービスが提供できるものと考えております。  さらに、総務庁長官は、独立行政法人は二五%以上の職員削減を、このように答弁をされておりますが、法人の目的や業務への需要などを度外視して、大臣が一方的に決める中期目標の重点が人員や営業費の削減などに置かれれば、早晩、法人の運営が立ち行かなくなることは明らかでございます。また、運営を支える財源措置も明らかではありませんし、独立行政法人化に伴う職員の雇用継続を保障する規定もございません。  以上のことからいたしますと、私どもは、結局のところ、本来国が一体的に政策実施しなければならないはずの事務事業を、法人化によって小さく分断をして、民営化や廃止をやりやすくするための制度ではないのか、こう言わざるを得ないわけでございます。  最後は、公務員制度の問題でございます。  時間の関係で一言にとどめさせていただきますが、端的に申し上げまして、私どもは、今回の改革では、政財官の癒着やキャリア特権優遇と言われる公務員制度の非民主性をさらに深めるのではないかという危惧を持っております。  例えば、内閣官房や内閣府で、いわゆる政治的任用、つまり特別職公務員の範囲や数の拡大が言われております。そして、そのような政治的任用の職に一般公務員からの任用をも想定されているようでございますが、その際に、一般公務員と特別職公務員の厳格な区別もなく、相互の交流を当然のこととされているように見受けられます。また、各省局長以上の幹部職員の任免の内閣承認も言われております。  いずれも、行政の中立性を損ない、政治と官僚の癒着を深めかねない危険を感じざるを得ません。政財官の癒着への厳しい批判行政改革の契機であったことからいたしますと、公務員の中立性を厳格に確保することこそが必要だと思います。それを、政治主導とか効率性などという改革理念の後景に追いやってはならないと存じます。  以上が、私どもの危惧の念の要点でございます。  今、全国津々浦々で懸命に働いております公務員労働者は、かたずをのんでこの国会審議を見詰めております。特に、独立行政法人の検討の中で、国が行う必要のない事務とされましたことへの驚きと憤り、国民生活に密着する行政から国が撤退することを前提に、二五%の公務員削減を、初めに結論ありきのやり方で強行しようとする手法に対する不信と不満は、はかり知れないものがございます。  私は、こうした公務員労働者の気持ち、意思を踏まえまして、今進められようとしている行政改革には改めて反対の態度を表明いたします。国民の皆さんにとって真に必要な行政改革を追求するという私ども立場は一貫しております。どうか、本委員会が私ども意見に御理解を賜りまして、行政改革の原点に立った審議を尽くされますことを切望いたしまして、発言を終わるものでございます。  ありがとうございました。(拍手)
  81. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  以上で公述人からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  82. 高鳥修

    高鳥委員長 これより公述人に対する質疑に入ります。  本日は、後の都合がございますので、申し合わせの時間に答弁とも終わるように御配慮をお願いします。  それでは、質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大野松茂君。
  83. 大野松茂

    ○大野(松)委員 自由民主党の大野松茂でございます。  本日は、公述人の先生方、それぞれのお立場から貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。  お尋ねをいたします前に、実は、本委員会におきましても、国、地方行政改革の進みぐあいについて議論がございました。私は、行革は国よりも地方自治体の方が進んでいる面が多いと思っております。  今、地方では、大胆なリストラや情報公開が進んでおりまして、住民に身近な形での改革が、住民の支持を得て進んでおります。組織の改革は、リーダーの高い意欲がなければ動きません。その点、自治体の首長には組織の権限が集中しておりまして、やりやすい面が多分にございます。  同時に、地方自治体には、行革を迫られる事情もございます。それは、住民の批判に直接さらされることでありますし、放漫財政は、ともすれば首長選挙で命取りになることであります。借金を膨らませて辞任に追い込まれた総理や国会議員はおりませんが、自治体財政を悪化させたとして、組織が機能していないとして落選した首長は数え切れません。  財政が苦しいから行革に取り組む、だから行革に熱心というものではございません。現実には、問題、障害は山積いたしております中で、原動力は首長の強いリーダーシップにあると思っております。首長は、住民の監視と評価の中で、常に住民にビジョン、未来像を示すことが必要不可欠であります。  そこで、国のことになりますが、中央省庁の再編成、統合を進める今回の行政改革の中で、政策評価制度の導入は、将来的に行政運営の透明化という質の変革にもつながるだけに、大きく期待されております。  これまで総務庁が行ってきた行政監察では、チェックの対象がつまみ食い的で、多くの政策が評価の対象から漏れていたという反省がございます。政策評価制度仕組みが示されておりますが、従来の反省に立って厳正な評価ができるのか、課題が多いものと思っております。先ほど、西崎公述人からは評価法の制定の御提言もございましたが、実効性を高める政策評価制度、このことにつきまして、御意見を順次お聞かせいただければありがたいと思っております。
  84. 内田公三

    ○内田公述人 お答えいたします。  政策評価というのは初めての試みかと存じますが、ただいま先生もお触れになったように、会計検査院などというのは、会計が厳正に行われているかどうかという点をチェックする。行政監察も、政策目的に忠実に行政が行われているかをやや形式的にチェックするという嫌いがあるのに対して、今度やろうとしている政策評価というのは、政策の内容自身に立ち入って評価しようという画期的な試みだと存じます。  しかも、今回、この政策評価は、冒頭の陳述でも触れましたように、その政策を担当している省なり府自身がそれをまずやる。それだけではなくて、その政策が横断的なものであるとか、いろいろな条件がありましたが、大半のものについてはさらに総務省自身も、横からといいましょうか、第三者的にそれをチェックするという二段階の評価になっているということ。  それからさらに、民間の目から見たチェックもやろうじゃないかということで、総務省に民間有識者による評価委員会というものが設置されて、これもその評価に参加するということで、この二段階評価及び民間人を入れた評価委員会によるチェックという仕組みで、新たな政策評価というものをだんだんと定着させていくことがいいんじゃないかというふうに私は考えております。  政策評価及び政策調整について今度取り入れられたということは、まことに今回の行政改革趣旨に沿った、それをさらに効果あるものにするための極めて有意義な手法であるというふうに考えております。  以上でございます。
  85. 並河信乃

    ○並河公述人 簡単に意見を申し述べますが、評価の前提として、その行政が何をやるのかということがはっきりしていない限り、評価というのはどうしても恣意的になる。そうしたときに、例えば行政というものは、市民に対して、あるいは国民に対して何をやるのかという契約、これをやはりはっきりさせていく。  例えば、イギリスなんかですと、シチズンズチャーターというものがあって、行政分野ごとに、どういうことをやるのか、どういうサービスをやるのかということを全部オープンにして、そしてそれがなぜ達成できなかったかということもちゃんと報告する。縦割りの弊害が向こうでもありまして、今では、もうちょっと総合的に行政について、市民に対して、こういうことをやるんだということをオープンにする、また、その内容の策定について、市民をどうやって参加させていくかという議論が行われています。  ですから、私は、細かい評価のシステムというよりも、行政の中に契約概念を、国政であれば国民との契約というものを入れていくのが基本であって、それがない評価というものは何か非常に恣意的なものにならざるを得ない、そういうふうに思っております。  以上です。
  86. 西崎哲郎

    ○西崎公述人 先生がおっしゃったように、今度の行革で政策評価システムが導入されるということは、これは非常に画期的なことですね。  それで、評価システムと一口に言っても、独立行政法人についての評価システム、これは独立行政法人の業績評価システムが重点になる。もう一つは、各省の政策、政府全体の政策に対する政策評価システムです。  私は、独立行政法人に対する、各省ごとに第三者による評価委員会を設置して、これが中期計画を初めいろいろな評価を徹底して行うというこの設計は、非常によくできていると思います。問題は、そこに民間人が一体どれだけ参加するかということで、効率が上がる、また各省がどれだけそれに協力するかということ。  政策評価については、各省に置かれる評価機能というのは、各省が専任の部局をつくるということで、全体的には、総務省に第三者から成る評価委員会をつくって、ここがかなりの権限を持って動いていくということですね。  したがって、この場合、まず各省の評価システムがどう動いていくのか。それから、総務省のこの第三者機関を中心に、従来の行政監察局も行政評価局ということになるし、それから特に今度の場合、事前の評価、政策の事前評価制を導入したということは、これは非常に大きな意味があるわけです。こういったものを、私は、組織法である設置法でこの仕組みを細かくつくるということは非常に無理があるということで、行政評価法なり、あるいは、説明義務とこの評価というのは一体になるわけでありまして、その意味では行政運営法とか、そういう行為法によってつくるべきじゃないかと思います。  それで、これがうまくいくのかどうかということは、やはり政府だけではなくて、岩國先生も御存じでしょうが、例えばアメリカはあらゆるところ、大学について、マスコミについてもこの第三者の評価システムができています。アメリカの場合はみんな署名で書くわけでありますが、ジャーナリストに対する評価、ランクもできている。大学についても、払った授業料に見合うかどうか、そういう評価制度もアメリカはある。だから、日本の場合これからの問題だと思います。  以上です。
  87. 藤田忠弘

    藤田公述人 端的に申し上げます。  政策の執行状況を評価するという意味での評価自体は、私どもも当然だと思います。問題は、その際の視点といいますか、目的が、やはり民主、公正、効率というこの三つの尺度を過不足なく立てて評価をしていくということが大事ではなかろうかというふうに思います。
  88. 大野松茂

    ○大野(松)委員 政策によっては中止あるいは変更に踏み切る政策評価制度でありますから、役所の体質転換に迫る仕組みになるもの、こういう期待をしているところでもございます。  次に、限られた時間の中でございますが、内田公述人に何点かお尋ねをさせていただきます。  先ほどの中でもお触れになったことでございますが、内閣府に、予算編成の基本方針などの原案を作成する経済財政諮問会議、そして科学技術の総合的で計画的な振興策を打ち出す総合科学技術会議などの会議を設けて、官僚依存の政策決定のプロセスを改めることをねらっております。  我が国のあり方を決めていく上で意義深いものと実は思っているところでございますが、先ほど、経済界の期待は大きいという御発言がございました。具体的にはどのような期待をお持ちか、お示しいただければと思います。
  89. 内田公三

    ○内田公述人 簡単にお答えいたします。  私どもが、経済財政諮問会議、総合科学技術会議に大変期待しております理由は、まず、この会議には、総理初め関係閣僚が参加し、そしてこれに民間の有力委員が参加し、そしていろいろな問題について議論を尽くして、その結論が実質的に内閣方針になるということが期待されている、こういうふうに理解しているわけでありまして、従来のいわゆる審議会とか、そういうものとは全く異なるものであるというふうに考えておるわけであります。  特に、経済財政諮問会議では、予算編成の基本方針でありますとか、経済財政政策一般についての整合性のある政策を議論していただくのではないかということで大変期待しておりますし、総合科学技術会議の方も、従来も科学技術会議というのがあるわけでありますが、どうもそれが、期待に反して余り効果が上がっていないうらみがございます。今度これが発足いたしますれば、総理が議長になって、民間人も参加して、技術開発の戦略目標などを、予算の裏づけのある国の政策として実現していただけることになるんじゃないかということで、大いに期待しているわけでございます。
  90. 大野松茂

    ○大野(松)委員 総理大臣が国政についてどういう見識と意気込みを持っているかということがこの中にあらわれるわけでありまして、その成果に私も期待を強くしているところでもございます。  それと、先ほど、経済界は法案に賛成であるという明確な御発言をいただきました。地方分権行政改革全体の中で中央省庁改革をどのように位置づけていくかということ、あるいはおられるかということ、このことを経済界のお立場の中でお示しいただければと思います。
  91. 内田公三

    ○内田公述人 お答えいたします。  この十年か二十年か、官から民へ、国から地方へというスローガンのもとに、いわゆる行政改革を私どもはお願いし、推進してきたわけでありますが、いわゆる行政改革と言われます場合に、やはり地方分権、これは国から地方へということでありますけれども、それから規制緩和、これは官から民へということ、そしてそれと並行して進められるべき中央省庁の再編、この三つは、いわば一体のもので、同時並行的に進められるべきものであるというふうに考えております。  その意味で、今回、地方分権推進法案それから中央省庁再編関連法案が同時に検討され、そしてまた、政府の方では規制緩和推進三カ年計画が着実に進行しているということは、まことに評価すべきことであるというふうに考えております。
  92. 高鳥修

    高鳥委員長 時間が来ています。
  93. 大野松茂

    ○大野(松)委員 ありがとうございました。  中央省庁改革というのは地方分権と一体のものであるということを認識しながら、行革のスタートとして、さらに私どもも頑張ってまいりたいと思っております。  質問を終わります。ありがとうございました。
  94. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、西川太一郎君の質疑に入ります。
  95. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 自由党の西川でございます。  きょうは、先生方、御苦労さまでございます。私は、内田公述人を中心にお尋ねをさせていただきたいと思います。ここで急にお尋ねをするわけでございますので、御迷惑をかけないように気をつけてお尋ねをしたいと思います。  きょう、実は、我が自由党は、ただいまも続行中でございますが、党大会をやっておりまして、政治家としては、小渕内閣総理大臣・総裁、森幹事長、神崎公明代表、小沢辰男改革クラブ代表が御来賓でお見えをいただき、ごあいさつや御紹介がありました。本当にありがとうございました。この機会に御礼を申し上げます。  その中で、学者として御出席をいただきました京都大学の中西輝政先生が、四つの命題がこれからの日本にあるのじゃないかというか、現下の日本にそういうものがあるのじゃないかと。一つは、日本国民が自信の回復ということをしなければいけないのじゃないか、二つ目は、国の決断力の確保というものをしなければいけない、そして三つ目が、いわゆる自己犠牲と規律、こういう問題も大切だ、そして最後に、国の活力と適応能力というものを持たなければいけない、こういう四つのものは保守しかこれを担うことができない、こういうごあいさつがありました。  革新の方々からは、そんなことあるか、我々もそうだ、こういう御意見が出れば大変結構なことだと思っておりますが。  そこで、お尋ねをしたいのは、国の決断力をつけるとか、活力や適応力をつけるとかいうことは、今我が国が、外から内から、いろいろな矛盾が露呈したことに対する改革を迫られているということは共通の認識として持てると思うのですが、この審議でまくら言葉のように言われてまいりましたのは、先ほど公述人もお使いになりましたし、午前中にも公述人の方からその表現がございましたが、いわゆる明治維新、戦後の諸改革、それに次ぐ第三の改革であるということ、こういうふうにおっしゃるわけでありますけれども、どこが第三の改革なのか。  私は与党ですから、別に意地悪でどうこう言っているのじゃなくて、素直に、国民の皆さんに、議事録も後でできることですから、どこが明治維新や戦後改革に匹敵する大改革なのかということを、この法案に賛成されるお立場としてどんな御認識を持っているか、伺いたいと思います。
  96. 内田公三

    ○内田公述人 お答えいたします。  国の決断力なり対応力なりを整える、そのための今回の行政改革であるということでありますが、それが何ゆえに明治維新、第二次大戦後の改革の次の第三の改革であるかという点についてであります。  一つは、内閣総理大臣なり内閣の機能の強化、特に内閣総理大臣の、今度発議権という形ではありますが、しかしながら、それなりに総理大臣のリーダーシップの発揮が制度的に保障されるということ、これは非常に画期的なことであるということ。これが、明治維新、敗戦に次ぐ第三の改革一つの意味。それから、中央省庁の再編。  実は、第三次行革審のときもこの二つの問題を議論いたしました。そして、中央省庁再編については、そのとき、ちょっと名前はあえて申し上げませんが、当時のある委員の先生は、こういう中央省庁の再編などということは革命とか戦争のときでなければできませんよ、あなたは一体何をそんな夢のようなことを言っているんですかというようなことを私に言われました。しかし、その革命とか戦争のときでなければできないと言われている中央省庁の再編が、まさに今や行われようとしておるということは、もう明治維新、第二次大戦に次ぐ第三の改革と言って決して言い過ぎではないというふうに私は確信しております。特に、内閣総理大臣の、あるいは内閣府の機能の強化ということは、法律が実現しますと、じわじわといろいろな面で、効果といいますか、成果が出てくるんじゃないかと私は思います。  つまり、日本の社会というものはどうしても縦割りだということで、これは行政に限らず、民間会社でも何でも縦割りの弊害がよく言われております。それは結局、総理大臣もワン・オブ・ゼムの大臣にすぎないというようなことで、各省、各局あるいは各課が同じような立場で対立して、いつまでたってもそれが、さらに一段上の立場からの調整というものが行われない。そういう仕組みになっているということが、日本行政なり経済社会の一番の問題だとかねがね私は思っておりますので、この改革は、恐らく考えられている以上の成果が上がるんじゃないかと期待しているわけであります。
  97. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 ありがとうございました。  そこで、続いてまた内田公述人にお聞きするのでありますけれども、今度の中央省庁の統廃合によって、先ほど公述されましたとおり、国の内外の諸課題にクイックレスポンスができる政治主導体制を確立する。私ども主張と一致をいたしておりまして、大変意を強くいたしております。  経済という分野に限ってみても、経団連さん初め、日経連さん、皆さん、そういう経済団体に所属しておられる企業家の方々は、結果がはっきりする世界にいらっしゃるわけですね。投資をしたものが国民経済にどういう影響を与え、その結果、社会的な責任も果たし、同時に企業としても利益を上げていく、そういうことが一期ごとにはっきりする世界におられるわけです。  しかも、グローバルスタンダード、これはアングロサクソンスタンダードだとおっしゃる方もいますけれども、しかし、仮にそうであるにせよ、我が国が世界の中で堂々と経済で身を立てていかなければいけない。  そういう場合に、今度の中央省庁のこうした思い切った再編というのは、まさにクイックレスポンスが世界に向かってもできるんだというふうに私どもは強く信じているわけでございますが、この辺の、競争力確保とか、そこまで広げていいかどうかは別でございますが、いわゆるサプライサイドの改革とか、高コスト体質の改善とか、この中央省庁の再編というものは、当然そういうものにつながっていかなければ、ここでこれをやる意味はないと私は考えております。その辺についての財界の代表としての御意見を賜れればと存じます。
  98. 内田公三

    ○内田公述人 今先生がおっしゃったことをそっくりそのまま私の考えとして申し上げてよろしいかと私は思うのでありますが、今まで、日本政府なり政策というものは、いつも海外から、やることがツーリトル・ツーレートというような批判を受けてまいりました。その結果、対米経済摩擦その他において、経済界として非常にもどかしい思いをしてきたというのが事実であります。これは、やはり一つには、日本の政策決定、政治の意思決定というものが、行政機構、官僚機構の壁に阻まれて、迅速的確になかなか進まなかったということがあるんじゃないかというふうに思います。  そういう意味で、何遍も繰り返すようでありますが、今回、内閣のリーダーシップの体制が曲がりなりにも整えられ、行政の簡素化、そして民間の意思を迅速に、的確に反映するようないろいろな仕組みが整えられようとしているということは、まさにこれは、産業あるいは経済界の方の競争力の強化にも、間接的ではありますが、つながっていく改革であると考え、また信じております。
  99. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 西崎公述人に一問だけ簡単にお尋ねしますが、私の持論というと大げさになりますけれども、私の考えは、公正取引委員会型の中央省庁をつくるべきだ、こういう考えなんですね。  つまり、かなり経済活動を自由にして、社会的規制とか経済的規制とかいろいろありますけれども、ともかく原則自由にする。しかし、やってはならないことをやった場合に対して厳しくチェックをしていく。こういう大原則をとらないと、藤田公述人にはまことに御不快に聞こえるかもしれませんが、私ども自由党は二五%減らせと言っているものですから、そういうことができないんじゃないか、こういうふうに思うんです。  効率性を確保するという、これは行政組織としてはなかなか尺度は難しいですね。これは主観的です。一生懸命働いているんだと言われれば、それまで。だけれども、経済社会では答えが出るわけですね、その部の売り上げだとか社の利益だとか。そういう意味では、私はいわゆる評価制度というのを今回大いに期待をしているんですが、それとはちょっと別に、いわゆる公取型の国家組織、行政組織というものをつくったら、もっと効率がいいんじゃないかと思うんです。  もう時間でございますので、簡単で結構でございますので、ひとつ。
  100. 西崎哲郎

    ○西崎公述人 私も、理論的には先生のおっしゃったことは賛成なんです。  しかし、現実に、そういう委員会方式あるいは行政委員会方式、八条機関、三条機関、いろいろあるわけですけれども、なかなか一遍にそこへ移行するというのはあれですけれども、将来的には、私は、非常に明確な透明化、あるいは権限と責任、それから機動的な決定、柔軟性、その意味でその部分というのはどんどんふえていくだろうというふうに思います。
  101. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 終わります。どうもありがとうございました。
  102. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、田中慶秋君の質疑に入ります。
  103. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は、民主党の田中慶秋です。  公述人の皆さん、大変御苦労さまでございます。  実は、私どもは、立党以来、行政改革の基本的な考え方として、官から民へ、あるいはまた中央から地方へ、大きな党是としてこのことを検討させていただいております。そして今、この中央省庁の問題を検討させていただいているわけでありますが、まず、行革の基本というものは、やはり財源、権限、さらには人間、これをワンパッケージですることが必要ではないかということを信じているわけであります。  中でも、お話にもありましたように、行革の問題に、スリム化なりあるいはまた透明化、そしてスピード化が要求されております。今回の法案は、むしろこのことに逆行している部分があるだろう。一府二十一省が十二省になられた基本はいいですけれども、肥大化されているこの組織等々を考えたときに、私は、むしろ逆行しているんではないかなというふうに感じております。  そこで、大変恐縮でございますが、内田公述人に、最初に、このことについての感想をぜひともお聞かせいただきたいと思います。
  104. 内田公三

    ○内田公述人 御質問の真意が那辺にあるのか、ちょっと私、必ずしもつかみかねておりますが、私の考えでお答えをいたしますと、例えば、問題になっております、運輸省と建設省を一緒にして、国土交通省でしたか、そういうものができて、これはかえって巨大官庁、肥大化して問題じゃないかという意見があるのは私も承知しておりますが、省庁の数を減らすということをやろうとすれば、それはおのずから二つの役所が一つになるというようなことになるわけでありまして、それがけしからぬということになると、省庁スリム化ということはどだいできないということになるんじゃないかというふうにまず考えます。  それから、そういう一つ省庁の中に大ぐくりされることによって、従来その間でいろいろなコンフリクトというか、利害調整が進みにくかったことが、同じ一つの、国土交通省でもいいんですが、そのもとにくくられることによって、やはり比較して言えば調整なりなんなりが進みやすくなるんじゃないかということを考えますと、私は、おっしゃるような、求められているスピードに逆行するんじゃないかということは、そうではない、むしろそういう要請に沿った改革であるというふうに考えております。
  105. 田中慶秋

    田中(慶)委員 次に、同じ考えに基づきながら、並河さんに。  先ほど申し上げた、行革というものは財源、権限、人間、そして中央から地方、官から民へという考え方、あわせて、巨大官庁というものが本当にスリム化になっているんだろうか、大きくなればなるほど逆に透明度が進まないんじゃないか、役所が大きくなればなるほど決裁権限等々が複雑になって、スピード化が進むんだろうか、こんなことを考えたときに、私は、そうでない、こんな感じを受けておりますが、先生のお考え方をお伺いします。
  106. 並河信乃

    ○並河公述人 ちょっと考えを申し述べさせていただきますが、昨年、イギリスでリージョナル・ディベロプメント・エージェンシーの法律というのができました。略してRDA、地域開発エージェンシー。今いろいろな文書が出ていまして、立ち上がりが始まりまして、ことしの秋口には本格的に動くということです。  これは何かというと、国の出先機関をイングランドの域内で九つに分けて、そこで統合する。そこで大事なことは、その運営に当たって、その地域の自治体、それから経済界、市民、そういった人たちがその運営について審議に参加して意思決定に入ってくるというようなシステムであります。  私は、今度の国土交通省の問題で思うんですが、確かに今のままでも問題が多い、さりとて一緒にするとばかでかいマンモス官庁になってどうしようもない、では一体どうすればいいかというときに、例えば地方整備局というものが出ていますが、これをむしろプラスの方向で活用する方法がないのか。  審議の間でも、予算を枠配分するとか、いろいろなお話が出ているかに承知しておりますが、本当に思い切って公共事業について、とりあえず国土交通省の所管だけで結構ですが、ブロックごとに枠配分して、その運営の仕方についてその地域で決定するというようなものを、一挙に全部でなくても、部分的でもできないか。そういうふうにすればこの考え方は一つおもしろい。このままだったらひどいけれども、むしろ、活用の仕方によっては非常におもしろい。そういうことだと思うんですね。そしてそのときに、ではもう一つ、何で北海道開発局という変なものがあるのか。ではそれも、農水予算も一緒にしてやらないかというようなことで、順次出ていく。  私は、もちろん私自身はもうちょっとドラスチックな考え方ですが、しかし、やはり現実の政治その他を考えると、今のシステムというものを前提としながら、何か、もう一歩高いことを目指すということをぜひ考えていきたい。そのためには、今度国土交通省というものが出てきたのを逆に、まあ奇貨としてという言い方は評価が入りますが、奇貨として、むしろそれに対してローカルな人たちの参加、市民の参加、そして予算の枠配分、そういったものをやれば、まず予算の効率的な使用ができますし、それから変なものができないということもできます。それから、何よりも民主主義というものが確立するということで、一石三鳥の効果があると私は思っております。  以上です。
  107. 田中慶秋

    田中(慶)委員 重ねてお伺いいたしますが、特に、限られた財源の中で、よりむだのないように執行しなければいけない。しかし、今回の中央省庁の財源の基本的な考え方は、地方の出先機関、ここに財源を渡し、権限も渡す、そういうシステムになっている。これはむしろ、中央の出先機関ではなくして、都道府県を中心とする地方自治体にその権限や財源を渡した方が、より効率的にその地域に合った形の中での財政の執行ができるんではないかな、こんなふうに考えております。そのことがむしろ、この行政改革の、官から民へ、あるいは中央から地方へという基本のような気がするわけです。  並河先生、そのことについて、私どもはそんなふうに考えて、今回の一番問題は、権限はそういう形になりますけれども地方自治体に財源がついていない、こういうところも含めて、感想をお聞かせいただきたいと思います。
  108. 並河信乃

    ○並河公述人 多少繰り返しになりますけれども、昨年の基本法案の審議のときには、要するに、大胆な分権をするんだという前提で国土交通省の議論が行われたと思います。しかし、そう言っては申しわけございませんけれども、その後の地方分権推進委員会の第五次勧告その他を見ますと、そのときの前提条件が崩れているというふうに思っております。  私は、例えば土光臨調のときも参加して思ったのですが、累次の国鉄の財政再建の失敗があるわけですね。これは、全国一本ということを前提として、幾らやってもうまくいかないということで分割・民営ということになったわけですが、財政の再建ということも考えますと、ある程度ブロックごとに中央財政を分割して、その中で基本的には自前でやっていく、それで必要な財政措置はもちろん透明な形でやっていくという形にしない限り、私は財政の問題も解決しない。  今度の中央省庁の再編の話も、そういったものとリンクして、それで先ほど、とりあえずその第一歩として地方整備局と、極めてマイナーなところから入ったわけですが、しかし、そういうことを考えているわけです。  以上です。
  109. 田中慶秋

    田中(慶)委員 次に、西崎先生にお伺いします。  今回、行政コストを三〇%削減する、こういう形で小渕総理は言われておりますけれども、私たちは、この三〇%削減の大きな手続論として、もう少し本当にスリム化しなければいけない、今のままではむしろ三〇%削減はできないんじゃないかという懸念を持っております。  先生の、今までのいろいろなコンサルティングの仕事の立場で、このことについて何か考え方があれば教えていただきたい。
  110. 西崎哲郎

    ○西崎公述人 本来的に、小さい政府、効率化、これは、まず仕事を減らしてから組織、体制を検討するというのが普通のやり方だと思います。ですから、官から民に移せるものは移し、中央から地方に移せるものは移して、それで組織形態その他を考えていくというのが一番やりやすいわけですが、今回の場合、並行して進めざるを得なかった。しかも並行してやらないと、これは先ほどから、基本的なこの国の形を変える意義、つまり、あらゆる面での改革ということで、同時に進行せざるを得なかったというところにいろいろな問題点が出てきているわけであります。  それで、三〇%行政コスト削減も、結局問題になるのは、ではどれだけ民へ、あるいは地方へ仕事を移せるのか。特に、先ほど地方の問題をおっしゃいましたけれども、私は、分権だけではなくて、財政も含めた行財政改革を一括して総合的に、しかも時限的に、この行革と同じ方式で、そして出てきたものを尊重するということでやらなければもうだめだというふうに思っております。  ただ、いずれにしても、三〇%行政コスト削減、二五%人員削減という非常に大胆な目標を掲げた、自分で自分を縛るような目標。これ自体は、私は非常にびっくりし、かつ、その意義は十分にあるのじゃないかというふうに思います。
  111. 田中慶秋

    田中(慶)委員 内田先生にお伺いしますけれども、今回、公務員の定員の見直しの問題が、一〇%から二〇%、二〇%から二五%、こういう形で四分の一までいったわけですが、そのかわりに独立行政法人ができた。そして、現在の特殊法人とまた同じようなことを、大体特殊法人と内容的には似ている、こういうふうに私は見ているわけです。  特殊法人は現在五十二万人、あるいは認可法人が全部で四十八万人、これだけでも百万人ぐらいいるわけです。ただ、私は、一番心配しているのは、独立行政法人というものが、二五%という一つの大きな人員削減の、定員削減の隠れみのとして、受け皿、すなわち天下りの拡大になっていくのではないかなという心配をしている。  特に、民間であるならば、むしろ出先のそういうところから、特殊法人みたいなところから整理をするというのが手法であろうと思いますが、今度の独立行政法人というのは、そういう点では逆行しているのかな。むしろ、特殊法人等々を含めて、サンセット方式をもって整理統合に当たり、やっていかないと、このことが拡大するおそれがある。  こんな心配をしておりますけれども、この件について、今までの経験上、御見解をお伺いしたいと思います。
  112. 内田公三

    ○内田公述人 私どもも、行革会議検討にいろいろと御協力してきた過程で、独立行政法人というものが出てきて、これは一体どういうものなのかということについて、率直に言って若干戸惑いというものを覚えたことは事実であります。  しかしながら、今考えてみますと、これは、やはり国の業務なり国の事務というものをなるたけ外に出していこうという趣旨で、ぎりぎり工夫された一つの手法であるというふうに理解しております。これは三年なり四年なりの期間の後で見直しをして、そのときにさらに、民営化あるいは廃止も含めて検討する、見直すということになっておりますので、その見直しに私どもは期待したいと思っております。  それから、特殊法人というのは、今度独立行政法人になるようなものよりもはるかに民間に近い、もう民間活動そのものと言ってもいいぐらいの活動をやっているわけであります。ですから、私どもは、今の幾つかある特殊法人については、これはもうなるべく早く民営化なりなんなりに、早く抜本的な改革をしてもらいたい。特殊法人を独立行政法人に持っていくなんということは、これはむしろ、民間にせっかく近づいているものを国に引き戻すようなことで、逆行ではないかというふうに考えております。
  113. 田中慶秋

    田中(慶)委員 終わります。どうもありがとうございました。
  114. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、並木正芳君の質疑に入ります。
  115. 並木正芳

    ○並木委員 公明党・改革クラブの並木と申します。どうぞよろしくお願いいたします。  公述人の先生方には、貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。  西崎公述人を中心にお聞きしたいと思いますけれども、内田公述人あるいは西崎公述人、ともに賛成ということですが、西崎先生の方から、くしくも、山登りでいえば六合目ではないか、そういうお話も出ました。それぞれに、今後の推移を見守りながら期待していくものだというような御意見であったかと思います。また、並河先生も、賛否こもごもということですけれども、とどまっているわけにもいかないというようなことでは、この法案に対する期待というのはそれぞれに大きいものがあるかと思います。  まず、西崎先生にお聞きしたいのですが、内閣府の権限強化あるいは総理のリーダーシップの強化ということで、合議制機関、この問題です。  これは、単なる諮問会議というよりも決定機関としての性格を与える必要があるのじゃないか、そうしなければやはりその目的達成ができないのじゃないかということなんですが、この委員の選定に当たって、これは経済諮問会議等で予算編成まで基本方針を決定していくということで、行政評価、決算等に連動して予算編成をということでは、かなり専任性も要するのじゃないかというような考えもあるのですが、西崎先生のお話だと、むしろ知恵の場というような形で、柔軟な人事、いろいろな知恵を集めた方がいいのじゃないか、こういう御意見も以前お伺いしたこともあるのです。  政府の方でも、これは大臣はもちろん兼任ですし、民間人も、大学の先生等々兼任でお願いしていくようなお話ですけれども、この辺については、この人事等いかがお考えでしょうか。
  116. 西崎哲郎

    ○西崎公述人 例えば経済財政諮問会議の場合、これは、ここで非常に重要な政策を審議するわけですね。ですから、人数を極力限定する。総理及び本当に必要な関係閣僚、各省ともみんなできるだけここに出たいという希望は非常に多いのでしょうけれども、これは限定する。それから、大体官民半々ぐらいの、日銀総裁を民間に入れればそんな比率で、限定されたハイレベルの政策の審議機関というふうに今位置づけていますね。  ここで問題になりますのは、民間人、民間から参加する人が本当にこれは大変だと思うのですね。それから、一応原案の作成機能も持つわけですから、スタッフが一体どうなるのか、直接のスタッフですね、これも問題だと思います。  それから、今おっしゃった、知恵の場としての開かれた柔軟な体制というのは、内閣府の構成になるわけです。ここは経済財政諮問会議事務局機能も務めるわけで、企画庁が、今の調整、調査、計画三局がそのまま移って仕事をするのではなくて、各省の人材それから民間からの人材も集めて、それで知恵の場にしていろいろなアイデアを出していく、そういうふうになっております。  実際にそういう構成がどうなるか、特に民間からの本当に有能な人材が集められるかどうか、それが本当に経済財政諮問会議の議論にどこまで反映されてくるかどうか、この辺はこれからの問題だと思います。
  117. 並木正芳

    ○並木委員 次に、行政評価についてなんですけれども、政策評価あるいは業績評価、こういうものを客観的にどう評価していくかというのは、性格も異なりますし、システム自体は、各省庁、総務省に第三者機関もできて、こういうものには期待するところもあるのですけれども、やはり我々は、より明確に、法的な規定も設けていこうじゃないか、そういう提案もしていこうではないかということなんですが、大変難しい問題でありまして、その辺についてアドバイスがいただければというふうに思うわけなんです。  会計制度等についても、バランスシートの作成とか、あるいは独立行政法人と政府部門との連結的な決算制度をとっていくとか、そしてさらには、独立行政法人の解散規定の明確化にもつなげていきたい、もちろんその外にある特殊法人についてもこうした規定を援用していきたい、こういうふうに思っているわけです。  先ほど、並河先生も、その前に契約の思想が必要じゃないかというようなお話もあったんですけれども、政治家ならば公約、公約を果たすかどうかというその実行性を問われるわけなんですけれども、どうも日本政府というのは、政治家と官とが乖離していまして、政局があるいは政治家の方が揺らいでも官の方は揺るぎない中でやっていくというようなことで、大統領制のような、個人的な中で国民から選ばれて、人事も含めてやっていくというのと、どうも内閣の中で総理大臣の責任といっても、政党の中で入れかわるというような中で、そこでワンクッション置かれてしまう。契約云々が政と官との中で見えにくいというような部分もあるかと思います。  そういうようなものも含めて、そういう約束と評価、さらには責任、そういう問題についてどういうような形で法律化するか、アドバイスがいただければ。西崎先生と、できれば並河先生にも一言お伺いしたいと思います。
  118. 西崎哲郎

    ○西崎公述人 おっしゃったとおり、非常にこれは評価すべきですが、実際、具体的にどう運営していくかになると、いろいろな問題点がある。それから、日本の場合は、例えばアメリカなんかと比較すると、そういった評価システム、評価機能、特に評価意識ですね、行政のサイドもそうですし、国民のサイドもおくれている。いろいろな問題がここで一遍に出てきているわけです。  私は、いずれにしても、これは最初から余り理想的なものはなかなかできないと思うんですね。しかし、重要なのは、やはり政策について、これはその政策を決める場合も含めて、今までは、事後の評価というのは少しずつ出てきたわけです。今度は、政策を導入する、決めるときも含めて客観的な評価の対象にし、しかもその評価の問題点、中身を公表し、事前の場合には、それは同時に、例えばパブリックコメント制度審議会にかわるパブリックコメント制度が導入されていく。事後については、きちっとしたチェック機能が働いていく。それから同時に、情報公開法もという形で動いていく。その対象が各省、政府全体、それから独立行政法人に及んでいく。それがさらに、行政の不服審判、苦情処理までつながっていく。この一連行政運営、これは非常に私は画期的な改革だと思うんです。  その意味で、そういう行政運営にかかわるものを、本当は行為法で独立にこれはきちっと規定していった方がいいだろう、いずれその時期は来るんじゃないかというふうに私は思います。
  119. 並河信乃

    ○並河公述人 いい知恵がなくて明確なお答えはできないんですが、これはやはりやりながら考えていかざるを得ないだろうなというふうに思っております。  ただ、一つだけ心配しておりますのは、こういう評価の基準が、えてして金庫番の議論といいますか、要するに赤字か黒字かというレベルだけで判断される、あるいはそれが非常に強く意識されるということは、逆に言って、行政の分野ですと多少問題であります。一般会計から仮に繰り入れながら、赤字なんだけれどもそれを繰り入れながらサポートしていかなくちゃいけないという行政サービスも当然これはあるわけで、私は、そういうことを防ぐためにも、一体この機関は何をやる機関なのかということを一種の契約にしたらどうかというようなことを申し上げたわけです。  契約は何も大統領制の問題だけではなくて、イギリスはまさに議院内閣制ですけれども、あそこで病院についてのシチズンズチャーター、それから地下鉄について、道路工事について、あらゆる行政分野についてそれぞれシチズンズチャーターというものがある。例えば地下鉄の構内なんかへ行きますと、自分たちのチャーターが駅の構内に張ってある、横に達成率というものがあって、電車のおくれが何分出てしまった、それでどうしていくんだ、さらに詳しいことを知りたければ窓口に来てくれというようなことを、まあたまたまの例ですが、そういうこともやっている。  そういうことを考えると、あの手この手でやはりやって、定着させていくということが必要かな。余り答えになりませんけれども、そう考えております。
  120. 並木正芳

    ○並木委員 時間もありますけれども、公務員削減の問題ということなんです。  当初の一〇%が自自合意という中で二五%、これは独立行政法人への移行の公務員も含めるということなんですけれども、そういうようなものも含まれて二五%ということが打ち出されたんですけれども、手順について、不明確だ、宣言だけというような面も言いようによってはあるわけです。こうした中で、現状においては、民間もリストラがどんどん進みまして、失業率は五%を超え、六%にまでなるんじゃないか、こんなことも言われているわけです。  公務員削減については、三年、五年で独立行政法人の存廃、民営化等も考える、こういう中でいろいろな手順がまた考えられていくのかもしれませんけれども、現状において、やはり民間のリストラと相まって、これ以上失業率増加というわけにもいかないということだと、なかなか厳しいものがあって、新しい産業基盤の整備というようなものを、雇用拡大を含めてやっていかなきゃならないということだと思うんです。  きょうは内田公述人においでいただいていますので、この辺について、経済界のお考え、いろいろお聞きしていますけれども、お聞かせいただければと思います。
  121. 内田公三

    ○内田公述人 まず、二五%削減のことについて最初にちょっと私の意見を申し上げたいんですが、お役所の人の説明を伺うと、今までも、総定員法というのがあって、着実に減ってきているというふうに言われるわけでありますが、私がそのときいつも疑問に思いますのは、定員というのと実際の実員というのはどうも違う概念のようでありまして、定員というのは確かに計画どおり減っているのに対して、実際の実員というのは案外減っていなかったりするようなことが従来あったように、私の記憶ではあるんです。したがいまして、二五%削減ということについては、ぜひ本当の意味での、観念的な削減ではなくて実質的な削減、純減であることを私はお願いしたいと思っております。  次に、雇用問題でありますが、これはまことに重要な、また深刻な問題であると経済界でも考えております。百人の経営者に聞けば百人とも、経営の一番大事なことは雇用の安定である、雇用の確保であるというふうに答えるのが日本の経営者の従来の姿勢でありました。しかしながら、今こういったことについては、いろいろな意味でやはり転換というか改革が迫られているのではないかというふうに考えております。  まず一つやるべきことは、いろいろな労働関係の規制の緩和であります。これについては、既に、職業紹介の自由化でありますとか派遣労働の実質的な自由化でありますとか、そういうことが進みつつあります。これをやれば、それはそれなりに雇用の安定、拡大に役に立つと思います。  しかしながら、もちろんこれだけでは十分ではありません。さらにやらなければいけないのは、やはり新しい市場の、雇用の開拓、つまりそれは、情報通信とか高齢化関係のビジネスであるとか環境関係のビジネスであるとか、いろいろ言われておりますが、いずれにしてもそういう新しい時代のニーズに即したいろいろなビジネスチャンスというものをとらえて、これをどんどん企業化していく、そうすればそこに雇用の機会というものがどんどん出ていく、これをこれから急いでやらなければいけないというふうに考えております。
  122. 並木正芳

    ○並木委員 時間ですので。どうもありがとうございました。
  123. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、松本善明君の質疑に入ります。
  124. 松本善明

    松本(善)委員 公述人の皆さん、御苦労さまでございます。日本共産党の松本善明でございます。  最初に、藤田公述人に伺いたいと思います。  二五%削減目標の問題が大きな一つの問題になっておりますが、それとのかかわりで、今新規採用の抑制ということが言われております。この問題についてはどのようにお考えですか、伺いたいと思います。
  125. 藤田忠弘

    藤田公述人 新規採用の抑制問題が言われているわけですが、どうも議論の前提として、平均の離職率が四%だというところから議論されているように伺っております。しかし、御存じのとおり、職種多様でして、その職種ごとに離職率は随分差があるわけですね。  例えば九七年度の数字ですが、医者で二三・一、看護婦で九・四、小中学校の教員で一七、刑務所の看守が五・五などなど、随分ばらつきがあります。それを一くくりにして、四%だから、そのうちの幾らずつを削っていって十年なら十年足し上げれば達成可能ではないか、こういう議論は、公務の実態に即した議論としては大変乱暴な議論ではないか、こういうふうに思っております。
  126. 松本善明

    松本(善)委員 行政コストの削減問題、これは、行政サービスの水準を維持するかどうかということの関係でやはり一つ問題だと思いますが、この点についてはどのようにお考えですか、藤田公述人に伺います。
  127. 藤田忠弘

    藤田公述人 一つは、一律的にこれも三〇%とかという、そういうかぶせ方については、私ども賛成するわけにはまいりません。  ただ、基本的に、貴重な国民の税金で賄っているわけですから、節約執行に努めて効率的に運営をしていく、この立場は私ども当然貫かなければいけないと思っています。その上で、それぞれの職務の中身によって、大変無理な執行が現状でも行われているという点をやはり直視していただきたいと思います。  時間の関係でたくさんのことは申し上げられませんが、例えば国立病院なんかですと、医療器具整備の費用は財投からお金を借りてきてやるとか、そういうことをやっておりますし、それから、登記のコンピューター化が今どんどん進んでおりますけれども、これなども、印紙のお金を毎年毎年値上げをして、収入をふやして、それで、つまり国民の皆さんに対してはいわば税金の二重負担を強いるというような形で賄っているというような現状もあるわけです。  それから、よく引き合いに出されますが、ロシアのタンカーが転覆したときの油回収船なんか、当時この日本には一隻しかなかったわけです、その後もう一隻しゅんせつの機能を持ったものがふえましたけれども。  そういう非常にいびつな実態に置かれている状況でありますから、やはり子細な、ここをこうすべきだ、ここをこうすべきだという検討、吟味を抜きにした一律の削減だとかという議論は、にわかにはくみしがたい、そういう気持ちでおります。
  128. 松本善明

    松本(善)委員 新規採用の抑制との関係で、今、医師や教職員への就労が非常に狭くなっていますが、これは雇用との関係でどういうふうに実情把握をしていますか、藤田公述人に伺いたいと思います。  医師や教職員への就労の門が非常に狭くなっている、これも新規採用の抑制との関係で起こっているんだと思いますが、学生の就職問題なんかでは非常に深刻だと思います。この点について、どういうふうに実情把握をしているかということを伺いたいと思います。
  129. 藤田忠弘

    藤田公述人 恐縮ですが、ちょっと数字を把握しておりませんので、お答えいたしかねます。
  130. 松本善明

    松本(善)委員 それでは、内田公述人に伺いたいと思います。  先ほどの公述の中でも、経団連の豊田前会長が行革会議に参加をされていたことをおっしゃいましたけれども、今、経団連の今井会長も中央省庁等改革推進本部の顧問会議の座長になっておられますね。そういう点でいうと、経団連はこの行政改革ないし省庁再編には全面的に賛成ということでございますね。
  131. 内田公三

    ○内田公述人 基本的に賛成ということであります。  という意味は、行政改革も細かいいろいろな各論に入っていきますと、経団連といってもいろいろな人がおりますので、必ずしもすべての人の、メンバーの意見がぴったり一致しているということはございません。しかしながら、大事な基本的な点についてはコンセンサスができております。つまり、そういう意味で私どもは基本的に賛成しているということでございます。
  132. 松本善明

    松本(善)委員 あなたは経団連の事務総長としての立場におられるわけですが、先ほどの公述も、基本的に経団連の意見、こういうふうに伺っていいですか。
  133. 内田公三

    ○内田公述人 結構でございます。  経団連のコンセンサスのある限りでの意見を私は申し上げたわけでありまして、私の個人的意見というわけじゃありません。
  134. 松本善明

    松本(善)委員 経団連が出しております「Keidanren」という月刊の雑誌がございますね。ここで、座談会で、今井さんだとか佐藤さん、あなたも座談をしていらっしゃる記事を拝見いたしました。その中で、佐藤幸治京大教授、佐藤さんが、いわゆる国への依存を社会権によって正当化するようなところがあるとすれば、これは改める必要があると。私は、今の憲法が基本的人権について社会権を規定している、これは日本国憲法の非常にすぐれた部分だと思っておりますが、今度の行政改革については、最終報告でも、行政への依存体質を改めるということが中心課題だということが言われております。  その点でお聞きをしたいんですが、佐藤さんの言われている、国への依存を社会権で正当化するということがある、そういうのはよくないとあなたもお考えですか。
  135. 内田公三

    ○内田公述人 ちょっと社会権という概念について私は素人なものですからよくわかりませんが、国への依存の問題について私の考えを述べさせていただきますと、やはり官から民へという思想は、民としても官への依存をなるべくこれからはやめていこう、そして自立、自助、自己責任、これは今の今井会長が経団連会長に就任したときのスローガンといいますかモットーでありますけれども、自立、自助、自己責任という精神でこれからは経済界もやっていかなければいけないというふうに訴えておりまして、実際にすべてそううまくいっているかどうかはともかくとして、そういう覚悟で、考え方で取り組んでいこうというのが今の経団連の考えでございます。
  136. 松本善明

    松本(善)委員 社会権といいますのは、言うならば生存権のような権利です。日本国憲法の二十五条、これはそういうものとして、非常にすぐれたものとして評価をされています。  国の行政の中で、例えば国立病院が、重度心身障害者でありますとかそういう難病を、民間では採算のとれないものをやっております。これは生存権の具体化というふうに受けとめられておりますけれども、こういうものが行政に対する依存体質だと。社会権で行政への依存体質を正当化する、これはよくないという考え方は、こういうことをやめていこうということではないかと私は思いますが、あなたはどのようにお考えですか。
  137. 内田公三

    ○内田公述人 社会権で国への依存云々ということについては、ちょっと私も座談会の細かいやりとりをはっきり記憶しておりませんので、それについて今コメントは差し控えますが、例えば病院の経営とかそういう問題については、経団連では、株式会社が病院の経営に参加することも認めるべきであるということを主張しております。これは、別に病院経営を国や公的な機関がやっちゃいけないということを言っているわけではないのでありまして、民間が参入することも認めろということを主張しているわけであります。
  138. 松本善明

    松本(善)委員 時間がそうありませんので、並河公述人、西崎公述人に。  この今の行政依存体質、これが行政改革会議以来、中心的な課題と佐藤幸治教授などは言われ、参考人としてこの委員会でも意見を述べられたわけであります。この点について、お二人の公述人はどのようにお考えになっているか、簡明にお答えをいただきたいと思います。
  139. 並河信乃

    ○並河公述人 世の中に行政依存体質があるということは、私は全然否定しておりません。また、それが改革の障害となっているということも事実であります。  問題は、行政の責任と実際にその行政サービスをやる主体というのは必ずしも同一ではない。最終的に行政が責任を持って、そして民間でも、あるいはだれでも、ボランティアでも、いろいろな組織があるわけですが、それが社会的なサービス、公共サービスを提供するというシステムをつくっていけばいいので、私は、官依存体質というレベルからは議論は余り発展しないのじゃないかという気がちょっといたしております。  以上です。
  140. 西崎哲郎

    ○西崎公述人 行政依存といった場合、一つはお上に対する依存ですね、明治以来の国民対お上という。これは、例えば金融破綻を見てみると、金融業界も大蔵省の監督検査行政に依存してきたわけですね。そのために自己責任体制、これがおくれて、いろいろな問題が発生している。御存じだと思います。これは明らかにもう依存しっ放しで、欠陥が出てきた。  もう一つは、政治主導と行政、つまり官僚の問題ですね。これは、要するに官僚機構を政治主導でどう活用するかという意味で、従来は行政の言いなりになっていたという面もあるかと思います。  それで、今の社会権の問題ですけれども、例えば私は今自動車賠償責任保険の運輸省の懇談会の座長をやっているのですが、あれはもう強制保険で、これははっきり言って社会的な安全ネットですね。本来的には、民でやれるものは民でやるという意味では全部強制保険を撤廃するのが一つの考え方ですけれども、撤廃すると社会的な安全ネットが崩壊するということで、どうそれを両立させるか。ですから、この社会権の問題というのは、いろいろな形であると思うのですが、結局、どうバランスをとるかということだと思います。
  141. 松本善明

    松本(善)委員 終わります。
  142. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、深田肇君の質疑に入ります。
  143. 深田肇

    ○深田委員 社民党の深田肇でございます。  公述人の先生方、大変お疲れのところを恐縮でございますが、もう最後になりましたので、いま少しのおつき合いのほどをよろしくお願い申し上げておきたいと存じます。  いつも申し上げるんでありますが、社民党は、一連のこの行政改革につきましては、与党時代も含めて、市民本位の行政への改革及び公務員の雇用、労働条件の確保の立場から臨んできたことを冒頭に一言申し上げた上で、一、二質問させていただきますので、よろしくお願い申し上げたいと存じます。  そこで、最初に並河先生にお尋ねいたしますが、並河先生は土光さんの秘書をしておられたと伺っております。いわゆる土光臨調に携わって以来、これまでずうっと行革問題について特に専門的に仕事をされたことを聞いております。  今回の一府十二省、これだけがすべて行革ではないんでありますが、言われるところの省庁再編成を初めとする行政改革というものと、私どもが今まで学んでまいりました土光臨調との共通点は何でしょうか。そして、土光臨調と違うところはここだよと、そしてその立場から、これからの行政改革はこのようなことが大きな問題ではないかということをお話しいただければありがたいと思います。  お互い持ち時間が短うございますけれども、時間を気にされずにゆっくりしゃべっていただいて、あと、なくなれば私がやめればいいんでありますから、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
  144. 並河信乃

    ○並河公述人 土光臨調のときには、一番の土光臨調の基本というのは、行政の守備範囲を議論したということだと思います。今度の中央省庁再編は、その守備範囲論がむしろ後退して、それを前提にしてとは言っておられますけれども、主として扱われている問題が、土光臨調以前の佐藤第一次臨調の組織論になってしまっている。ですから、ある意味では私はアナクロだと言っているわけです。  それで、佐藤臨調なり土光臨調があって、今度全体の改革をやるとするならば、今度は、政治システムも全部含めた、本当にこの国を民主的な国にするにはどうしたらいいのかという意味での改革をしないとだめだ。それが、もとの第一次臨調に戻ってしまったというような感じを持っております。  先ほど、第三の改革云々という御議論がありました。質問されていないのに答える必要はないんですが、そのとき考えておりましたのは、今度の改革というのは、国民主権というものが、戦後の民主主義のときに一応導入されましたけれども、これが結局形骸化していった、形だけだった。それを本当に実のあるものにするのが今度の行政改革の基本である。その意味で、非常に私は物足らないというふうに考えているところであります。  以上であります。
  145. 深田肇

    ○深田委員 えらい時間を気にしていただきまして、短いお話でございました。  国民主権というのは、今度の政府もよく使うんです。しからば、国民主権が今回の行政改革の中にどれだけ生かされているか、そのいわゆる思想がどう入っているかについては、率直に申し上げまして、総務庁長官とのやりとりでもまだ決着がついていないと私どもは考えておるんであります。その意味合いで、きょうは、土光臨調のすばらしいところを思い出しながら、これからあるべき姿についての御意見を少し伺ったところであります。  どうもやはりこれから行革をやるについては、今お話が出ましたとおり、政治の側のリーダーシップというのが大変大切だという、これはお互いの合い言葉にはなっているんです。なっているんですが、あえて合い言葉を申し上げるとおり、どれだけの裏づけができているのかについては、お互いにまだまだ不十分だと思います。  特に、行政のあり方や官僚のあり方に対して大胆なメスを入れるべきだという話もあるんですが、メスが入っているかどうかについても、大変意見がお互いに分かれるところだと思います。  同時にまた、大先輩の前で恐縮でありますが、政治家の方も変わっていかないかぬというのが私どもの見解でありまして……(発言する者あり)そのとおりだという御声援を今いただきましたが、そういうふうに実はみずからを反省しながら考えているところでございます。(発言する者あり)政党——どの政党であるかは省略いたします。  そのようなことでございまして、まさに官僚体質と言われるものをどう改革するかということが大変重要なことだと思いますが、この官僚体質の改革について、並河先生の方からもう一言御説明いただけるとありがたいと思います。
  146. 並河信乃

    ○並河公述人 官僚の人に官僚的だと批判しても、これはしようがないと思うのですね。官僚はお役所仕事をするのが仕事。ですから、それをどうやって我々市民なり国民が制御していくのかというシステムの議論が大事なのです。私は、余り官僚体質そのものを正面から議論してもしようがないので、そういうものだという前提で、トータルのシステムを組む方が建設的かなという感じを持っております。答弁になったかどうかわかりませんが、そう思っております。
  147. 深田肇

    ○深田委員 官僚体質そのものを認めろというお話でございます。そのことはお互いの共通認識だと思いますが、しからば、今度の行革の中で、官僚体質に対してメスを入れるというふうに、お互いがこれまた合い言葉としてやってまいりましたが、入っているというふうな認識をお持ちでしょうか。これは足らないよという御指摘があったら、そこのところをいただければありがたいと思います。
  148. 並河信乃

    ○並河公述人 短く答えると出番が多くなることに気がつきまして、今度は少しゆっくりしゃべるようにいたします。  結局、行政改革というのは、私は民主主義の貫徹だというふうに思っているのですが、その基本は、こう言っては悪いですが、やはり中央省庁の官僚が握っている権限を、一つは政治の場、一つはマーケット、もう一つ地方という三つの方向へ分散することだ。それによって、より身近な我々国民の、例えば政治家に対しては有権者として、あるいはマーケットに対しては消費者なり投資家として、それから身近な自治体に対しては、身近な自治体ですから、より直接的な参加の機会がふえてくる。そういうことによって民主主義を貫徹するということが今度の行政改革の基本であって、そういう意味からすると、繰り返しになりますけれども、今度の、省庁を横に合わせただけでは何ら改革にならない。  それから、内閣機能の強化も大事でありますが、その基本は、我々有権者がその政権を場合によっては左右し得るという前提がなければ、内閣機能の強化というものは民主主義の意味からは暴走する。  そういう意味で、いろいろ考えてみますと、先ほど六合目というお話がありましたけれども、私は、まだまだ序の口であって、昨年の基本法案の審議のときにベースキャンプ論というのがございましたけれども、どうも、ベースキャンプはベースキャンプかもしれませんけれども、これからどっちの頂上へさらに行くつもりなのか。ここら辺で撤収して、何か退却するんじゃないか、そこら辺の心配を逆に持っているというところであります。  これでよろしいでしょうか。
  149. 深田肇

    ○深田委員 ありがとうございます。  お話はよくわかったところでございますが、せっかくの時間がございますから、もう少し話をさせていただきたいと思います。  私どもの考えを申し上げる時間をなるべく少なくしたいと思いますから、はしょりますけれども、一言で言えば、いかにして行政の質をよくするか、改革するかという意識を持っているわけでありますが、これもちょっとなじむ言葉かよくわかりませんが、私たちが日ごろ使っている言葉に、政官財の癒着構造というのをよく使うのです。  それを正直に申し上げた上で、こういったものが、今度の行政改革の、いわゆるいろいろなことが提案されたり、それから地方分権推進法も出ておりますが、そういう状況の中で、この癒着構造はメスが入って改革されるだろうというふうに我々は考えてこれを進めていっていいかどうかについて、公述人の先生のお話を伺いたいと思います。  恐縮でありますが、本当は四人の先生方にお話を伺うべきところではありましょうけれども、きょう伺ったところで一番私が関心を持ちましたのは、何といってもやはり経団連の内田先生から。この癒着構造という言葉の使い方がいけなきゃいけないとおっしゃられれば結構でありますし、そのことについて、今度のものは改革できるよというのであればまたそこのお話を伺いたいと思いますし、別の問題なら別の問題だということで結構でございます。  お言葉をいただいた上で、並河先生にも一言、この癒着構造についての、これからなくするためにどうしたらいいかについてのお話をいただければありがたいと思います。
  150. 内田公三

    ○内田公述人 今、政官財の癒着構造というお話がありましたが、いわゆる五五年体制のもとでは、私は、政官財の相互牽制メカニズムというのがあったんじゃないかという見方をしております。  という意味は、非常にわかりやすく言うと、やはり経済界は規制権限を持っている行政、官僚に弱く、官僚は政治家に弱く、政治家はお金を出している財界に弱いと言うとちょっとこれは語弊があるかもしれませんが、要するに三つのグループがお互いにチェックし合うといいますか、そういう意味でのよさも政官財の三極構造にはあったんじゃないかということを私はちょっと申し上げたいのです。  それから、むしろ大事なのは、これからの問題であります。今回の行政改革で一体どうなるかという問題でありますが、要するに、癒着とかなんとか、そういう問題が起きてくるのは、やはり権限とか規制というものがそこにあって、それをめぐっていろいろと問題が起きてくるということなのでありまして、要するに、私は、規制撤廃、ディレギュレーションというものを徹底して行うことが一番大事なことだというふうに考えております。
  151. 並河信乃

    ○並河公述人 癒着構造という言葉の是非は別といたしまして、確かに今度の法案そのものには入っていなくて、むしろ、規制緩和をさらに進めるとか民営化を進めるとか、あるいは地方分権も進めるとかいう大前提の話でこのいわゆる癒着の話が処理されるんだろうというふうに思っております。  それから、例えば政と官の間も、我々今内部でいろいろ議論しておるのですけれども、ここは政治家の方々の場ですから言葉は気をつけますが、幾ら政治家の方々に政治の主権復権といって官に負けるなといったところで、我々市民の側が、政治家の方々あるいは政党に対して何ら提案できない。市民の力がなければ、結局、こづかれた政治家の方々は官に力を頼るしかない。ですから、政官の癒着の問題が仮にあるとして、それを批判するだけじゃだめなんで、むしろ、そうじゃない第二、第三の道、例えば市民がもうちょっと、せめて法案の要綱ぐらいつくるというような力を出していかない限り、今回の改革の全体の仕上がり像はできないという議論をしているところであります。  それからもう一つ、簡単に言いますと、今度の中央省庁再編の中でも、我々、実は再編の一つの原理として、業者行政とマーケットの監視というものの分離。例えば、ちょっと前ですが、厚生省の薬務局を医薬品の安全局と健康政策局に分けましたが、そんなような考え方で、例えば金融行政も、財政だどうだこうだという議論は別として、マーケットを監視するのと業者行政というものを峻別するとか、そんなような考え方があちこちに見られないといけなかったのじゃないのかな、そういう考えがちょっと希薄だなという感じも持っております。  以上です。
  152. 深田肇

    ○深田委員 あと二、三分ありますので、おつき合いをお願いしたいと思います。  最後になりましたが、国家公務員でいらっしゃるのですね、藤田先生は。それで、私どもはおつき合いはきょう初めてなんでありますけれども、率直に申し上げて、二五%が飛び出してまいりまして、一〇%もいろいろ意見があったところでありますが、二五%削減が出てまいりまして、ここの場でもやりとりさせてもらいました結果、長官の方の答弁が不足なのかどうかは別にいたしまして、正確な文章を読み上げられたりいろいろしておりますけれども、聞けば聞くほど二五%の根拠は余り明確でないように思います。  まず二五%削減ありきの感じがいたしますが、公務員が減ることは間違いないので、減って果たしてどれだけサービスができるかと思ってみたりしておりますが、現場で働いている公務員の方の心境はどんなものでしょうかということをひとつ伺いたいというふうに思います。  いま一つは、ちょっと畑は違うのでありますけれども、この間、他の会派の方から、環境省を強化するためには、ひとつ林野庁の問題を環境省に入れたらどうかという話がありました。私たちのメンバーがいろいろと意見交換いたしますと、むしろ今の段階は、総合的に、農だとか林だとか漁だとかいうのを一緒にやることが意味がある、こういう意見で、林野庁の環境省入りはいかがなものかという意見もあるのですが、その辺のことについての御意見をちょっと伺えればありがたいと思います。  よろしくお願い申し上げます。
  153. 高鳥修

    高鳥委員長 時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。
  154. 藤田忠弘

    藤田公述人 では、端的にお答え申し上げます。  冒頭にも申し上げましたように、二五%というのは、どこを押せばそんな数字が出てくるのかというのが現場の感情でございます。  それから、林野行政の問題につきましては、私ども、環境行政それ自体が強化をされることについてはもちろん賛成であります。ただ、林野行政そのものという角度から論ずる場合には、やはりこれはかなり総合的な意味合いを持っておりますから、それを環境に移してそれでいいのかという疑問を持ちます。ですから、当該関係者を含めて、もう少し検討を深めていただかないと、性急な結論は私は出していただきたくないというふうに思います。
  155. 深田肇

    ○深田委員 どうもありがとうございました。終わります。
  156. 高鳥修

    高鳥委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  これにて公聴会は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十分散会