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1999-06-04 第145回国会 衆議院 行政改革に関する特別委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年六月四日(金曜日)     午前九時一分開議   出席委員    委員長 高鳥  修君    理事 伊吹 文明君 理事 岩永 峯一君    理事 杉山 憲夫君 理事 虎島 和夫君    理事 山口 俊一君 理事 小林  守君    理事 田中 慶秋君 理事 若松 謙維君    理事 中井  洽君       飯島 忠義君    岩下 栄一君       衛藤 晟一君    小野寺五典君       大野 松茂君    金田 英行君       熊谷 市雄君    倉成 正和君       河本 三郎君    桜田 義孝君       実川 幸夫君    砂田 圭佑君       戸井田 徹君    中野 正志君       細田 博之君    牧野 隆守君       松本 和那君    水野 賢一君       宮島 大典君    宮本 一三君       森  英介君    山本 幸三君      吉田左エ門君    渡辺 博道君       岩國 哲人君    大畠 章宏君       桑原  豊君    末松 義規君       玉置 一弥君    辻  一彦君       中川 正春君    中桐 伸五君       平野 博文君    藤田 幸久君       山本 譲司君    石垣 一夫君       大口 善徳君    佐藤 茂樹君       並木 正芳君    桝屋 敬悟君       小池百合子君    佐々木洋平君       西川太一郎君    松浪健四郎君       米津 等史君    石井 郁子君       春名 直章君    平賀 高成君       松本 善明君    畠山健治郎君       深田  肇君    保坂 展人君  出席国務大臣         法務大臣    陣内 孝雄君         大蔵大臣    宮澤 喜一君         文部大臣         国務大臣         (科学技術庁長         官)      有馬 朗人君         厚生大臣    宮下 創平君         通商産業大臣  与謝野 馨君         運輸大臣    川崎 二郎君         労働大臣    甘利  明君         建設大臣    関谷 勝嗣君         自治大臣    野田  毅君         国務大臣         (内閣官房長官         )       野中 広務君         国務大臣         (総務庁長官) 太田 誠一君         国務大臣         (環境庁長官) 真鍋 賢二君  出席政府委員         内閣審議官         兼中央省庁等改         革推進本部事務         局長      河野  昭君         内閣審議官         兼中央省庁等改         革推進本部事務         局次長     松田 隆利君         内閣官房内閣安         全保障危機管         理室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障・         危機管理室長  伊藤 康成君         総務庁長官官房         長       菊池 光興君         総務庁長官官房         審議官     大坪 正彦君         総務庁長官官房         審議官     西村 正紀君         総務庁人事局長 中川 良一君         総務庁行政管理         局長      瀧上 信光君         総務庁行政監察         局長      東田 親司君         経済企画庁調整         局長      河出 英治君         科学技術庁原子         力局長     青江  茂君         科学技術庁原子         力安全局長   間宮  馨君         環境庁長官官房         長       太田 義武君         環境庁水質保全         局長      遠藤 保雄君         法務大臣官房長 但木 敬一君         法務省人権擁護         局長      横山 匡輝君         法務省入国管理         局長      竹中 繁雄君         公安調査庁長官 木藤 繁夫君         大蔵大臣官房長 溝口善兵衛君         大蔵大臣官房審         議官      福田  進君         大蔵省主計局次         長       坂  篤郎君         大蔵省理財局長 中川 雅治君         文部大臣官房長 小野 元之君         文部省生涯学習         局長      富岡 賢治君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省教育助成         局長      御手洗 康君         文部省高等教育         局長      佐々木正峰君         厚生省生活衛生         局長      小野 昭雄君         厚生省社会・援         護局長     炭谷  茂君         厚生省老人保健         福祉局長    近藤純五郎君         厚生省年金局長 矢野 朝水君         社会保険庁次長 宮島  彰君         通商産業省環境         立地局長    太田信一郎君         資源エネルギー         庁長官     稲川 泰弘君         運輸大臣官房長 梅崎  壽君         労働大臣官房長 野寺 康幸君         労働省職業能力         開発局長    日比  徹君         建設大臣官房長 小野 邦久君         自治省行政局長         兼内閣審議官  鈴木 正明君         自治省財政局長 二橋 正弘君         自治省税務局長 成瀬 宣孝君  委員外出席者         衆議院調査局第         三特別調査室長 鈴木 明夫君 委員の異動 六月四日               辞任         補欠選任   金田 英行君    吉田左エ門君   谷  洋一君     萩山 教嚴君   松本 和那君     渡辺 博道君   岩國 哲人君     桑原  豊君   中川 正春君     辻  一彦君   中桐 伸五君     大畠 章宏君   山元  勉君     玉置 一弥君   佐藤 茂樹君     大口 善徳君   三沢  淳君     松浪健四郎君   平賀 高成君     石井 郁子君   畠山健治郎君     保坂 展人君 同日                 辞任         補欠選任  吉田左エ門君     飯島 忠義君   渡辺 博道君     桜田 義孝君   大畠 章宏君     中桐 伸五君   桑原  豊君     岩國 哲人君   玉置 一弥君     末松 義規君   辻  一彦君     中川 正春君   大口 善徳君     佐藤 茂樹君   松浪健四郎君     佐々木洋平君   石井 郁子君     平賀 高成君   保坂 展人君     畠山健治郎君 同日                 辞任         補欠選任   飯島 忠義君     金田 英行君   桜田 義孝君     松本 和那君   佐々木洋平君     米津 等史君 同日                 辞任         補欠選任   米津 等史君     三沢  淳君 本日の会議に付した案件  地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案内閣提出第九一号)  内閣法の一部を改正する法律案内閣提出第九六号)  内閣設置法案内閣提出第九七号)  国家行政組織法の一部を改正する法律案内閣提出第九八号)  総務省設置法案内閣提出第九九号)  郵政事業庁設置法案内閣提出第一〇〇号)  法務省設置法案内閣提出第一〇一号)  外務省設置法案内閣提出第一〇二号)  財務省設置法案内閣提出第一〇三号)  文部科学省設置法案内閣提出第一〇四号)  厚生労働省設置法案内閣提出第一〇五号)  農林水産省設置法案内閣提出第一〇六号)  経済産業省設置法案内閣提出第一〇七号)  国土交通省設置法案内閣提出第一〇八号)  環境省設置法案内閣提出第一〇九号)  中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律整備等に関する法律案内閣提出第一一〇号)  独立行政法人通則法案内閣提出第一一一号)  独立行政法人通則法の施行に伴う関係法律整備に関する法律案内閣提出第一一二号)     午前九時一分開議      ————◇—————
  2. 高鳥修

    ○高鳥委員長 これより会議を開きます。  内閣提出地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案並びに内閣法の一部を改正する法律案等中央省庁等改革関連十七法律案の各案を一括して議題といたします。  本日は、特に地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案について審査を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉置一弥君。
  3. 玉置一弥

    玉置委員 おはようございます。  地方分権もございますが、私の方は、中央省庁再編の方の目的が非常にあいまいであるというのと、なぜ今こういう中央省庁再編を急がなければいけないのか、その辺が非常に不明確だというふうにいつも感じておりまして、このことを中心にいろいろとお尋ねをしたいというふうに思います。  官房長官が九時半までに退席をされるということでございますので、できるだけ、まず全体の話をお聞きいたしながら、官房長官には、答弁が終わりましたらいつでも退席をしていただくというような態勢で進めてまいりたい、こういうふうに思います。  まず、今回の中央省庁再編、これは行革会議論議をされてまいりまして、ことしになって国会の方に提出をされたということでございますが、私どもが伺っておりますのは、橋本内閣当時に、行財政改革を思い切ってやるんだというお話がございました。それは、消費税が三%から五%に引き上げをされるというときの口実でございまして、そのときには、行革でその分をどこかで吸収をして、国民負担をなるべくかけないようにという配慮かな、こういうふうに考えていたわけでございますが、実際には、中央省庁再編並びに地方分権法が今回提出をされて、国民に対する負担というものがどう変化していくかわからないというのがあります。  もう一つは、昨年、一昨年、政策不況と言われる、日本がさらに長期不況の追い打ちをかけられて不況に落ち込んだわけでございますが、この間に、約七十数兆円を使って経済対策金融対策をやられてきた。このことだけでもかなりの国民負担の増加になるわけでありますし、国や地方長期債務という面で見ますと、約六百兆円に上る国債発行残高というような形で残っておりまして、この辺を将来どうしていくのかということを考えていきますと、目的のない行革というものはあり得ないのじゃないか、こういうふうに思うわけです。  私ども大蔵委員会やいろいろなところで一緒に経済金融財政の勉強をしてきた皆さん方がちょうど大臣をやっておられまして、本当はその財政論からお聞きしたいのですが、今回は目的というものに絞りまして、六百兆円と言われております国、地方長期債務、この辺について、どう軽減していくのかというのが目標の中に含まれていなければおかしいと思うのです。  今回の提案されました中身をずっと見てまいりますと、コスト低減は約三〇%やるんだ、それから人員については二五%削減、こういう話をされておりますけれども、何年ぐらいかかって長期債務を消していくのか、その辺も検討課題の中で論議されてきたのか。そして、まず一番目は、今回の中央省庁再編地方分権法を提案されたときに、目的目標、これがどういうふうになっていたのかということをまずお聞きしたいと思います。これは官房長官ですか。
  4. 野中広務

    野中国務大臣 少子高齢化国際化高度情報化など、経済社会情勢が激変をいたします中におきまして、戦後五十年間続いてまいりました従来の行政システムが今日の時代に合わなくなり、縦割り弊害肥大化硬直化などの問題が指摘されてまいったことは、委員御承知のとおりであります。  今回の中央省庁等改革は、このような認識のもとにおきまして、行政における政治主導を確立し、内外の主要な課題や諸情勢に機敏に対応できるよう行政システムを抜本的に改めますとともに、透明な政府実現行政スリム化効率化を目指すことを目的として行うものでございます。  この改革をいわば突破口といたしまして、我が国の社会経済システムの転換を促し、自律的な個人を基礎とした、より自由かつ公正な社会実現を目指してまいりたいと考えておるところでございます。
  5. 玉置一弥

    玉置委員 五十年間手がつけられなかった行政機構に対して突然手をつけていくという話でございますが、昭和五十年代の半ばぐらいから行財政改革がうたわれてきました。それから既に二十年近くたつわけであります。その当時は、国債発行をゼロにすれば、そのときの経済伸び率からいきますと、ごく自然に財政再建ができるんだ、こういうことで、その当時の、太田総務庁長官とかあるいは宮下厚生大臣とか、それぞれが持論を一生懸命説いておられましたけれども、私どももその当時は、それで多分回復できるだろう、こういうふうに思ったのですね。  ところが、今は、発行残高からいきますと、実際に対GDPの約九〇%になってしまっているということでございまして、GDPの九〇%、税収からいくと五・何倍、六倍ぐらいだと思いますが、国だけでいきますと。それが、行財政改革とか大幅な行政経費の切り込みがなくて、回収、要するに財政再建ができるのかということに大変疑問を持っているわけでございます。  そういう面からいきますと、今回打ち出されました目標並びに目的というのは非常に甘いんじゃないかと思いますが、これについてはいかがお考えでございましょうか。官房長官並びに総務長官にお聞きしたいと思います。
  6. 野中広務

    野中国務大臣 その打ち出した方向がどのように評価されるかは別でございますけれども、私どもといたしましては、従来、総合的な調整の仕組みの導入中心とした行政システム改革することにいたしまして、その任務を機軸といたしまして、一府十二省庁体制への大くくりな再編成を行いましたこと、あるいは省庁間の政策調整中心として内閣機能強化を行ってまいりましたこと、さらには、副大臣政務官導入を行うことによりまして、総理内閣のリーダーシップの強化を行い、内閣機能強化を行いましたこと、あるいは、透明な政府実現を目指すことを基本といたしまして、独立行政法人制度の創設を行うようにいたして、行政運営透明化自己責任を明確にすることにいたしましたこと、さらには政策評価の結果の公表ということを行うことにいたしましたこと、あるいは意見提出手続等を入れたことでございます。  さらに、行政スリム化効率化等につきましては、廃止、民営化民間委託あるいは独立行政法人化、すなわち、八十九事務事業についてこれを行うことにいたしました。  また、組織整理でございますけれども、官房なり局の総数を百二十八から九十六に減らしましたり、課室総数を千二百から千に減らしましたり、審議会等整理合理化を行うことにより、二百十一から九十に審議会を減らし、また、公務員定数の十年間で二五%減を行うことといたしましたことなど、それぞれ省庁等改革に重大な決意を持って臨むことといたした次第でございます。
  7. 太田誠一

    太田国務大臣 今、目的は何か、そしてまた、財政の大変な状況を踏まえて、それに対してどう思うのかということでありますが、この中央省庁等改革問題意識のスタートは、縦割り行政弊害ということに象徴されるように、各省庁が分立割拠してそれぞれ自己増殖をしてきたというところから、財政肥大化、それからまた民間に対する過剰な介入ということがあったわけであります。  そのような各省庁が分立割拠して自己増殖するという体質そのものを直さなければ、これは、部分的に数字の目標を掲げて再建をしようとする以前に、内閣政府体質そのものを変えなければできないということで、今官房長官から御説明ありましたように、政治主導にすることによって、時代変化に対して敏速に機動的に対応できるようにしよう、それが政治主導目的であるし、また、政治主導だけではなくて各省庁間で調整をして、きちんと政府全体として整合性がとれた、優先順位を決める、ばらばらに同じことを方々の役所でやっているんではなくて、どこか一カ所で決めるというふうな整合性のとれた決断、決定がとれるように体質を変えようということでございます。
  8. 玉置一弥

    玉置委員 出かけられる時間が来ているので余り詰めた話ができないんですが、どこの国を見ましても、行財政改革は、背景になった原動力というのがあるわけですね。どことも、大体財政悪化というものが基盤でありますし、あと経済変化とか、そういうものに合わせて行政が確かに機敏に動けるようにということがあります。しかし、私たちが何回見ても、では、財政悪化にどういうふうに対応するのかというのが全然わからない。  それから、今、要するに、内閣主導性というような話もございますし、自己責任という話もございました。内閣合議制そのものが、私はかなり問題があると従来から思っておりますし、危機管理等におきましても、総理大臣のいわゆる指揮権的な要素が全く見られないということなので、その辺の改善は必要だというふうに思います。  それと、やはり縦割り行政弊害というのは従来から言われておりましたけれども、今度はそれぞれ調整機能を取り入れたということでございますが、行政組織全体を見て、どこで同じことをやられているんだ、あるいはその両方が寄って、まさに一本でよりいいものをつくるという、本当にそういう組織ができるかどうか、大変今心配をしているわけです。そのことがございます。これは後ほど続けて質問したいと思います。  あと厚生大臣の方にお聞きしたいんですが、当初、橋本内閣のときにうたわれておりました、要するに、行財政改革をやります、と同時に、年金改革そして医療改革、これはもう、逆に三本柱ということで大変大見え切って、やります、こういうふうに言われてきたのですが、全然ことしも出そうにない。特に、医療関係は本当につぶれてしまったという話が内々伝わっております。年金も、要するにサービスを低下させるかどうか、それから、どこまでが税金でどこまでが保険料でという分野の面があります。その辺がまだ未調整ということなんですが、三本柱のあとの二本がなかなか出てこないということでございまして、今、この大改革の前にどういう状況になっているのかということをお聞きしたいと思います。
  9. 宮下創平

    宮下国務大臣 御指摘のように、今、年金改革医療改革、私ども法案改正前提といたしまして取り組ませていただいております。介護保険は、もう法律が通って実施を迎えるだけということで、諸準備をやっております。  その中で年金改革についてでございますが、これは私ども少子高齢化社会というのが急速なスピードで進んでおるという事態がございまして、平成六年には改正をやりましたが、五年ごとに、財政計算期に見直すということでございますから、平成十一年度中にこれは改革をやらなければなりません。  そういう前提と、それから、今申しました、実態的に高齢化が進んでまいりますから、平成六年の改正のままでございますと、保険料の高騰は避けられませんし、保険財政その他がピンチになるということもございますので、ここで国民が安心できる安定した制度を構築しようということで、保険料はなるべく引き上げを抑制的にしよう、それから給付の方の調整も、これはどうしたって受給者が多くなれば多くなりますから、それを最小限度調整にとどめよう、あるいは、支給開始年齢もまだまだいろいろこれから調整を要する問題がございますから、これもいたしましょう、そういう、いわば三点の問題を中心にいたしまして検討をやっております。  私どもとしては大体成案を得ておるのでありますが、正直申しまして、これはもう政党政治でございますから、今、自自の連立政権でございまして、自由党の了解なしには閣議決定まで持ち込めないという状況でございますので、与党間の調整にまっておりますが、その基本的な、一番の大きな課題は何かといいますと、基礎年金についてですね。  今、国庫負担が三分の一でございますが、これを全額税方式でやったらどうかという方向性を示されておりまして、私どもは、今回の改正では、三分の一を二分の一までして、社会保険方式は存置しようということで取りまとめをいたしているところでございますが、その間の調整がつきませんので、なお国会提出するに至っていないということでございますが、早晩結論を得て、自由党基本政策基本政策として我々は尊重しますけれども、同時に、国庫負担三分の一を二分の一とすることも織り込もうとしておりますので、方向性としてはその方向にあるわけでありますが、基本的に全額かあるいは社会保険方式かということになると、基本的な認識の相違がございますので、今調整与党間でしていただいておる、これができ次第、国会の御論議にお願いしたい、こういうわけでございます。  それから、医療保険につきましては、御案内のように四つばかり項目がございます。診療報酬体系をどうするかということ、これは従来、出来高払い中心にいたしておりますが、慢性期疾患等については定額払い方式導入も一部実験的にもうやっておりますが、そういうことでどうかとか、いろいろ問題がございます。これは中医協でやる話でございますが、それが第一。  それから第二は、一番重要な課題として、薬代、薬価基準価格の問題がございます。  これにつきましては、私どもは、医療保険福祉審議会でずっともう一年半有余検討してまいりまして、その結果、薬剤定価基準価格制というのを、いわゆる日本型参照価格制度というのを提示申し上げたのでありますが、なかなか党内の御同意も得られないし関係団体同意も得られない、また、アメリカ等々の要求等も背後にあるというようなこともございまして、一応そのもの自体は、白紙還元でもございませんけれども、これに固執しないということにいたしました。  しかし、薬価制度薬価に基づく診療体系というのは、これは変則でございますから、私どもは、あくまで薬価差に基づく医療体系医療保険のあり方は是正していきたいということで、目下鋭意検討中でございます。これも、できれば今国会中と考えておりましたけれども、会期も残り少なくなりまして、なお未調整でございますので、精力的に詰めていきたい、実施は十二年中からいたしたいと考えておるところでございます。  なお、第三番目として、老人医療ですね。これは、今国民医療費が三十兆円を超すと言われております、その三分の一を占めますが、高齢化がいよいよ進みますと、老人医療費もかさんでまいりまして、三分の一が二分の一くらいになるだろうと想定されますし、絶対額も五十兆円になる、あるいは来世紀半ばには百兆円を超えるとも言われております。  この問題は、今健保連から老人拠出金を出していただいておりますが、千八百くらいのうち千五百くらいが赤字で、その要因の大きな一つは老人拠出金だと言われておりますから、これらを含めて、老人医療のあり方を独自の体系にするのか、あるいは健保連その他で上乗せ方式でやるのか、これも審議会で今二つの試案を中心に議論していただいておりますが、これも大きな課題でございます。  それから最後に、医療提供体制でありますが、これは、地域医療計画によって病床の地域的な配置を適正にするとか、いろいろそういった問題のほかに、インフォームド・コンセントあるいはレセプトの開示等、情報開示の問題がございます。それからまた、医師の研修の問題等もございますから、これらも提供体制としては非常に重要な問題でございますので、これら四つが今並行して議論されておると御理解をいただいてよろしいかと思います。  その中でも非常にいろいろの論議を尽くさなきゃならぬのは老人保健のあり方ではないか、そしてまた、薬価制度もなかなか利害調整その他が困難だ、こんな状況にございますが、私どもとしては、この改革はどうしても進めなきゃならないと思っておりますので、ぜひとも成案を得てこの御審議をいただき、そしてまた御協力をいただきたい、こう思っております。
  10. 玉置一弥

    玉置委員 まだまだお聞きしたいことはたくさんあるのですが、例えば介護保険、いろいろな問題点がある。片方では引き延ばそうという方と、それから、いや、決めたからにはやらなきゃということでございますが、まず問題点がどこにあるかというのを突きとめて、それから、やるかやらないかということだと思うんですよね。決めたからにはやるというのは、それは当然のことだと思いますが、ぜひそういう気持ちでやっていただきたいというふうに思います。  それから、医療改革ですが、特に業界団体が結構うるさいところでございまして、特に自民党さんは選挙に影響するというのがあるわけですね。しかし、国民の立場から十分配慮していただいて、本当にだれにもわかるように決めていただきたい。  御要望だけ申し上げて、あとはもう御退席していただいて結構でございます。ありがとうございました。  それから、官房長官もぼつぼつお時間でございます。まだ聞きたいことはありますが、いいですか。  さっきの、総理のリーダーシップという面でございますが、その中で、今回、つい最近設けられた危機管理監という制度がなくなるということがこの間書いてあったような気がしたんですけれども、逆に言えば、内閣の合議制から一歩踏み出て、総理がどういうところで今までと違ったことを指導力を発揮してできるかという面、それが内閣の権限強化の一つだと思うのです。いわゆる総理の権限強化ですね。  内閣そのものの権限強化と、それから総理大臣のリーダーシップという面で、では、リーダーシップは、自分より下の副大臣をたくさんつくるとか、そういうことではなくて、ここには発議権とかいろいろ書いていますけれども、では、どこでそのリーダーシップを発揮できるのか、その辺を最後にちょっとお答えいただきたいと思います。
  11. 野中広務

    野中国務大臣 ただいま御審議をいただいております内閣法の一部改正案及び内閣設置法案におきましては、内閣総理大臣の国政運営におきます指導性をより明確なものといたしますために、内閣総理大臣が閣議におきまして、内閣の重要政策に関する基本的な方針等をみずから発議できることを明確化しておるところでございます。  同時に、内閣官房副長官補等の新設や内閣総理大臣補佐官及び内閣総理大臣秘書官の定数の弾力化等を行うことによりまして、内閣総理大臣を長といたします内閣府を新設いたして、四つの合議制機関を設けておるところでございます。  すなわち、内閣の重要政策を内閣総理大臣主導で機動的に策定をいたしますために、経済財政諮問会議、総合科学技術会議、中央防災会議、男女共同参画会議、この四つの合議制の機関を設けまして、内閣総理大臣主導のもとで内閣の重要政策を機動的に策定することなど、内閣の政策決定において、内閣総理大臣がリーダーシップを一層発揮しやすい体制を整備しようとしておるところでございます。  なお、内閣危機管理機能に関しましては、平成九年五月の行政改革会議の中間整理の提言を受けまして、先行的に平成十年四月に内閣官房に内閣危機管理監を置いたことは御承知のとおりでございます。その機能強化に努めてまいったところでございますけれども、さらに、今回の法案におきましては、防災を内閣の重要政策と位置づけ、内閣府が内閣官房を助けて防災に関する企画立案、総合調整機能を担うことといたしまして、内閣全体の危機管理機能の充実を図りまして、内閣の首長であります内閣総理大臣がリーダーシップをより発揮しやすい体制を整備することとしておる次第でございます。  御指摘で、内閣危機管理監について言及がございましたが、これは充実をいたすことでございまして、危機管理監を廃止することはございません。
  12. 玉置一弥

    玉置委員 それでは、御退席していただいて結構でございます。ありがとうございました。  まず、この全体の流れの中で、継続してお伺いをいたしますが、行政のコストあるいは投資コスト、こういうものをやはり削減していかなければいけないということでございます。時間がないのでちょっとはしょりながら、お聞きをいたしていきたいと思います。  今回、例えば、私が今所属しております運輸省関係とかいう形で見ると、国土交通省という大変膨大な公共事業を抱えた省庁ができてまいりまして、どこともに、公共投資の権限を握るから、そこの大臣はかなり力を持つんじゃないかとか、あるいは公共投資を一省庁でそれだけ持っていいのかとか、いろいろな話が出回っております。どういう形でその処理をされていくのか。  私の側から見ると、例えば、今予定をされております国土交通省、この国土交通省の公共事業が全体の約八〇%くらいということで、その八〇%の公共事業が七兆二、三千億ですね、今でいいますと。九兆円の八〇%ということであります。  そうなりますと、例えば、ほかにまたがって、各省庁に分散されて、縦割り行政弊害でお互いに取り合いしてきたという中で、本来ですと、取り合いですから当分減らないだろうというふうに思いますが、では、まとまれば、これから公共事業そのものがある程度合理化されて、より効率的な運営という面で前向きに考えていけば、当然、例えば今七兆二、三千億ある国土交通省の公共事業を見直しをした結果、あるいは、今PFIとかやっておられますけれども、ああいう結果、効率化が進んで二割ぐらい減ったとか、そういう可能性もあるんじゃないか、こういうふうに思うのです。  だから、全体として、集中された公共事業がどういう形で進められていくのか。運輸省と建設省が一緒になりますが、どういう形で組織全体が運営されていくのか、その辺をまずお聞きしたいと思います。     〔委員長退席、岩永委員長代理着席〕
  13. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 国土交通省は、先生御承知のように、現行の省庁を大くくり再編することによりほぼ半減とする今回の改革の一環として、四省庁を母体として設置されるものでございまして、これによりまして、国土の適正な整備、管理についての責任官庁という意義を持つわけでございます。  四省庁が一つになるものでございますから、権限が集中し過ぎるのではないかということでございますが、それは、その懸念を払拭するという意味だけではなくして、行政改革の実を上げるというためにも、徹底した規制緩和、それから地方分権推進等によりまして、先生御指摘のように、所管行政効率化透明化というものを進めていかなければならないと思うわけでございます。  それで、その中で、例えば、これまでの建設省の地方建設局で行ってこなかった都市行政であるとか業行政や補助金等に関する事務を本省から地方整備局に大幅に委任をすることを盛り込んでおるわけでございまして、中央省庁は、そういうようなことで非常に事務的なものを中心としてスリム化を行っていくことになると思うわけでございます。今後は、組織及び体制の確保を図ることを前提とした上で、地方整備局が主体的かつ一体的に事務を処理することにより、効率的な事務の遂行ができるよう努力をしていきたい、そのように考えております。
  14. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 運輸委員会でもかなり議論をしてきたところでございますけれども、私どもの立場からいいますと、交通、物流インフラの整備、これをもう少し前向きにやるべきだ、こういう御議論をいただいております。また一方で、昨日の会合でも出てまいりましたけれども、道路と港湾、道路と空港また駅等の結節点、両省調整をしながらやって、努力をしておるつもりでありますけれども、他から御批判があることは事実でございます。  こういうものが、一つの役所になる中でより一層緊密化を図りながら政策が打てるのではなかろうか。そういう意味では、国民生活という側面、それから、今一番大事になっております経済活動という側面から、やはりこのインフラ整備というのは大事だろう。前向きにとらえて努力をしてまいりたい。  一方で、私は、北海道開発庁長官も兼任になりました。水曜日だけ北海道開発庁に詰めておりまして、そういった意味では、二つ兼任というのはかなり大変だなと実感をいたしております。それだけに、これから入ってまいります副大臣制度、こういうものはやはりしっかり動いて、そこへ権限というものが委任されていく、そしてその後、物事の決定のルール、発注にしましても政策決定にいたしましても、透明化することによって、御批判に対してしっかりとした回答をしていけるのではなかろうか、こう思っております。
  15. 玉置一弥

    玉置委員 地方支分部局、ちょっと言いにくいのですが、そこへ大幅な権限移譲をされるという話でございます。全国八つぐらいに分けて、いわゆる公共事業部隊が全部出先に行くというような形になると思うのです。  そこで、心配いたしますのは、それぞれ河川とか道路とか、いわゆる縦割り。例えば日本の治水体系を整えていくとか、道路は総合交通体系の一部でございますが、そういうような話とか、鉄道との関係とか、あるいは航空との関係とか、要するに、縦割り調整されてきた事項が八つに分散されたときにどういうふうな弊害を生むかということが一つ懸念されます。  それから、今までは、中央で陳情政治によっていろいろやられてきました。今度は地方へ行けということですね。ところが、業者を決めるのがまた国というか中央だということさえ可能性がありますよね、今の政治体質がそのまま変わらないとすれば。そういうことからいきますと、せっかく地方へ行っていろいろ詰めても、そこで詰めてきた業者さんは、また今度本庁へ行ってまた同じような話をしなければいけない、こういう話が出てくるのではないか。  ですから、業者にとっても、地方へ行かなきゃいけないし、また国の本庁へ行ってやらなきゃいけないということで、業者というよりも地方自治体でもいいですよね、要するに二度手間がかえって強化されていくんじゃないかということ。  片方では、企画立案される技術者の方、あるいは行政としての権限といいますか機能、これが、地方は今度横割りになります。八つが今度予算の取り合いをして、自分たちのゾーンを守ろうとして一生懸命使っていくんじゃないかということで、要するに、行政改革財政改革の面からプラスはないんじゃないかと私は思うのですけれども、その権限と機能からいいまして、私が思っておりますようなそういう危険があるのかないのか、どういうふうに考えておられるのか、建設大臣、お答えいただきたいと思います。
  16. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 まず、地方整備局にいわゆる主体性を任すわけでございますから、その予算の配分あるいはまた業者選定というのは、これは透明性というのをますます明らかなものにして、ディスクロージャーでやっていくわけでございまして、今までのような中央に云々ということはなくなってまいります。  ですから、先生おっしゃいますように、地域間のばらつきや予算配分の固定化という問題を招かないように、そのことは肝に銘じて今後十分に検討をしてまいりたいと思っております。
  17. 玉置一弥

    玉置委員 時間がないんですが、本当はそこが一番大事なところで、地方支分部局、ちょっと名前がなかなか難しいんで言えませんが、そこへどういう人を配置するか、それからいわゆる行政監視、これをどうやるかというのは非常に重要になってくると思いますので、その辺については、まだほかのメンバーの方ともこの委員会でぜひ詰めていただきたい、こういうふうに思います。  それから、先ほどの効率化行政コストの話ですが、目標がないというのもありますね。それで、これからのこともございますが、今までにOA機器とかいろいろなものが採用されてまいりまして、では、OA機器を採用したときに、いわゆる行政官の人数が何人減りましたかというふうに聞きますと、わからないという答えが返ってくる。では、幾ら投じてどれだけの効果が出ましたかというと、またわからない。これが今の行政の物の進め方なんです。  そういう面からいきますと、幾らいろいろな新しい機器類を導入しても人が減らないなら、手書きでみんな、余った人たちが書いていればお金はかからないわけですから、何も新しいものを入れる必要はないんじゃないかというふうに思います。  ちなみに、情報機器類がどういうふうに設置されてきたかといいますと、例えば平成七年、オフィスコンピューター三千百四十六台、平成八年が二千六百八十五台、九年が二千八百九十六台、平成十年が二千八百九十四台、これだけ毎年機器類が買われている。パソコンもすごいですね。三十万台、四十万台、五十万台、こう入っているわけです。これだけ買ってどうするのですかねという感じなんですが。  そういうふうに見ていきますと、本当に、機器類を買っても合理化ができない、それから、行政改革をやってもコスト削減ができない。こういう形で、今、私たちの国のこれから将来を決めようとしているということですね。だから、やはり考え方を変えないといけないのだと思うのですが、その効果をどう見るか。それから、政策評価というのがありますが、それをどう生かしていくのかということをお聞きしたいと思います。
  18. 岩永峯一

    ○岩永委員長代理 時間が来ておりますので、簡略に。
  19. 太田誠一

    太田国務大臣 大変本質的なことでありますので、前の方の御質問に対しても私、お答えさせていただきたいと思います。  昨年の参議院選挙がどういうものであったかといいますと、それまで橋本内閣財政構造改革行政改革の二つの柱を立ててやっていったわけでありますけれども、あの参議院選挙で、財政構造改革の方は真っ向否定されたということでもって、文字どおり火だるまになって橋本内閣が退陣をされた後でありますので、これは民意がそういうものであるということでありますので、今は、財政構造改革については小渕内閣としては触れないわけであります。ということをぜひ御理解いただきたいわけであります。  そして、では今のOA機器とかそういう話でありますけれども、これはコスト三〇%削減の話であって、コスト三〇%削減は、事業費を三〇%カットするのではなくて、事業を行う体制の中で三〇%削減できるものはないかという政策イニシアチブ、総理がそういうことを全省庁に対して呼びかけて、何か出しなさいということで、どんどん出てきているところであります。その結果、私、OA機器のことは特にそういうことに関係があるのだと思いますけれども、コスト意識に各省庁が目覚めていく、その過程であろうかと思うのであります。  それから、政策評価につきましては、それこそ、その部分で今まで評価をしないでもよかった、特に事後的に評価をしないでなあなあで終わらせてきたものを、きちんと定期的に決めてやっていこう、政策評価、各省庁の政策を総務庁に設けられる第三者機関が評価をするという体制をとるんだということで、締まっていくということだと思います。
  20. 玉置一弥

    玉置委員 まだまだ言いたいことはありますけれども、時間が参りましたので、同僚議員に譲ります。ありがとうございました。
  21. 岩永峯一

    ○岩永委員長代理 次に、辻一彦君の質疑に入ります。
  22. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は、きょう二点御質問したいのですが、一つは、「もんじゅ」を今省庁再編の中で科技庁の所管から経済産業省に、文部科学省から経済産業省に移そうという法案が出ているので、この辺についての問題、それからもう一つは、原子力安全委員会をより強化すべきである、この二点で質問をしたいと思います。  まず第一の問題ですが、文部科学省の設置法案要綱を見ると、この中に、今まで科学技術庁が所管しておった「もんじゅ」のいわゆる安全性を初めいろいろな所掌事務が、経済産業省に発電云々の理由をもって移すような中身のように聞いておりますが、これはなぜそういう考え方を持っておるのか、ここについてお尋ねしたい。
  23. 太田誠一

    太田国務大臣 お答えいたします。  原子力の安全行政については、原子力のエネルギーとしての利用に関係する安全規制を一体的に行う方がより適切に安全が確保されるという観点から、中央省庁等改革基本法におきましては、原子力のエネルギーとしての利用に関する安全の確保のための規制、もう一回言います、原子力のエネルギーとしての利用に関する安全のための規制については、経済産業省がまず第一次的に行う、そして第二次的には、引き続き原子力安全委員会が行うこととされております。これを踏まえて、経済産業省設置法案においては、現在科学技術庁が担っておりますエネルギーとしての利用に関する安全規制などを含め、エネルギー関係の原子力行政経済産業省の事務といたしたところであります。  個別法の改正の内容につきましては、中央省庁等改革基本法及び経済産業省設置法案に沿って今後具体的な検討をしていくこととなりますが、「もんじゅ」の安全規制は、原子力のエネルギーとしての利用に関係する安全規制であり、経済産業省が担うこととなると考えられております。すなわち、原子力のエネルギーとしての利用に関する部分は経済産業省というふうに分けたわけであります。
  24. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ということは、研究開発であれば、これは文部科学省の設置要綱の五十以下にありますが、研究開発ならば科技庁が所管するということ、簡単で結構ですから、それでいいですか。
  25. 太田誠一

    太田国務大臣 そういうことでございます。
  26. 辻一彦

    ○辻(一)委員 そこで、お尋ねしますが、「もんじゅ」は平成七年の十二月に試験をやっておって、四三%のところまで発電能力が上がって、そこで事故を起こしてナトリウム漏れがあって、これは小規模でありましたが大きな事故に発展をしていったということでありますが、発電の容量を正確に、当時どれぐらい発電をしておったのかということを念のためお尋ねしたい。
  27. 太田誠一

    太田国務大臣 「もんじゅ」は、高速増殖炉の実用化のための研究開発という側面も有するものであるという点は御指摘のとおりでありますが、既に出力二十八万キロワットの発電能力を有し、現在でも電気事業法の規制対象になっている施設でもあります。そういうことから、エネルギーの利用の段階のものと言える。このようなことから、その安全の確保のための規制については、経済産業省の事務ということに位置づけております。
  28. 辻一彦

    ○辻(一)委員 科技庁長官に伺いますが、「もんじゅ」は一体高速増殖炉としていつごろ実用化の段階に達するのか。政府はいろいろ検討しておるのですが、それを伺いたい。
  29. 青江茂

    ○青江政府委員 お答え申し上げます。  お答え申し上げます前に、先ほど電気出力がどの程度まで行っておったかということにつきましては、数値的には四〇%でございました。  それから、いつごろ実用化というものが見通し得るのかということにつきましては、従前、数年程度前の段階におきましては、FBRの実用化は二〇三〇年ごろではないかということで、二〇三〇年ごろの実用化を目指しましてその研究開発を進めるというふうな考え方で、所要の研究開発というものを進めてきておったわけでございますが、その後、「もんじゅ」事故を含めまして、経済情勢を含めまして、いろいろな事情変化がございました。  この段階におきまして、いつごろという時期的な明示というのはなかなかしづらい状況にございます。したがいまして、将来の実用化を目指しまして、現段階におきましては、着実に研究開発を進めるというふうな路線で研究開発を進めている段階にございます。
  30. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この間とまったのは、発電の大体四〇%まで試験をやって、四〇%でとまって、三年半ほどとまっているわけですね。そして、その実用化は、数年前では二〇三〇年、これから三十数年後、そして、検討の結果ではなかなかその見きわめがつかないので、研究開発を続ける、こういうことを政府は方針として出しておるんですね。しかも、一般的に言えば、FBR、高速増殖炉の開発の可能性は五十年後ぐらいでないとなかなか難しいのではないかというのが、学界、電力業界の定説なんです。  そうすると、これは原型炉になりますか、それとして四〇%まで電力を上げて三年半とまっているということ。その実用化の可能性は三十年ないし五十年先。こういうものを一体、利用できる、いわゆる経済産業省、通産が所管する実用炉の中に入れて、安全規制からそういうものを全部やるというのは極めて矛盾があると思うんですが、その点はどうなんですか。
  31. 青江茂

    ○青江政府委員 お答え申し上げます。  今般の新省におきましての文部科学省におきましては、試験研究の用に供する原子炉と研究開発段階にある原子炉で、発電の用に供するものを除く、そういうものを担当するということにいたしてございます。  同じ、試験研究、研究開発というものに供しますいわゆる施設といたしましての炉といたしましても、例えば原研におきましての研究炉、これは試験研究の用、それ自体を目的とするものでございますけれども、その研究の進展が進んだ段階におきまして、原型炉、実証炉、こういうふうに研究を進めながら実用化というものを目指すわけでございますが、そういうふうな進展が進んだ段階におきましてのものと申しますのは、それは研究開発段階にある炉というふうに規定し得るのではないかと思うわけでございます。  一方、研究開発段階にある原子炉といいますものが現実に電気を生ぜしめるというのもまた事実でございまして、そのような施設でございますと、当然のことながら電気事業法の適用も受けるということになりますと、規制というものの実効ということを考えてみましたときに、どういう形でどういう責任のある者が規制を行うのが最も効果的、効率的であるかという観点から整理をいたしたものというふうに考えてございます。
  32. 辻一彦

    ○辻(一)委員 「もんじゅ」は一体、研究開発の段階でいえば、実験炉、原型炉、実証炉、実用炉と、普通は原子力の開発はこういう四つの段階を踏んで実用炉に至っているんだけれども、「もんじゅ」はいかなる段階にあるのか。
  33. 青江茂

    ○青江政府委員 お答え申し上げます。  原型炉と呼ばれる段階にあると了知してございます。
  34. 辻一彦

    ○辻(一)委員 実用化に至るには、「常陽」のような実験炉、そして原型炉「もんじゅ」、その先にもう一つ難しい関門の実証炉というのがあるんですね。実用にほぼ近い、あるいはそれを拡大すれば大体実用炉になるという段階が実証炉なんですが、それを超えるのは、今「もんじゅ」は原型炉の域を脱することができずに三年も四年もとまって、これからどうしていくかはこれからの問題ですね。それから、その次の実証炉の段階はさらに長い道のりが必要である。そして二〇三〇年、三十年から一般的には五十年ぐらいかかるだろうと言われる、これを経なければ実用化の段階に達しない、利用する段階に達しないんですよね。  それを今日の段階において、これを利用という面だけ、それは電力を起こさなければ実験できないんですから、結果としては電力は起きますが、それは実証炉や実用炉とははるかにまだまだの段階ですね。そういうものを今利用の範疇に入れて、これを科技庁から経済産業省の所管に移すということは、これはまた非常に矛盾があると思いますが、それについての見解を伺いたい。
  35. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 私も、「もんじゅ」というのは研究開発段階であると思っております。そういう意味で、原型炉である、これは間違いのないことでありますが、同時に、まだまだ発電容量は小さいですけれども、発電をしているということもまた事実でございます。  ですから、私自身もどちらにするかという議論に参画したことはございましたけれども、この問題はなかなか判断の難しいところでございます。やはり先ほど太田長官より申し上げましたように、エネルギーを出している、電力を出しているという、そこで将来の経済産業省が担当するということがあろうかと思います。  しかし、安全規制というのは、どの省がやろうともやはりきちっとやっていかなければならないことでございますので、これは経済産業省が担当してくださっても十分きちっとやっていけるものと考えております。  中央省庁等改革基本法を踏まえまして、エネルギーの利用に関する原子力の安全確保につきましては経済産業省が、科学技術の原子力の安全確保については文部科学省がそれぞれ所管することになっております。この整理に従いまして、ただいま申し上げましたように、「もんじゅ」の安全規制は経済産業省が担当することになったのであります。  いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、行政府といたしましては安全を十分確保していかなければなりません。行政府で行います一次審査に加えまして、原子力安全委員会にも二次審査をお願いいたしまして安全の確保に万全を期してまいりたいと考えております。
  36. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ちょっと今の答弁は納得できないですね。  まず、政府が出している見通しについて、数年前ではさっきの答弁のように二〇三〇年、前からさかのぼれば三十五年ぐらい先に実用化するだろう。しかし、「もんじゅ」の事故を踏まえていろいろ検討した結果、これはやはり相当な時間が要る。まだまだ、それを見きわめるには研究開発を相当踏まなければいかないということを見て、かなりな修正といいますか、三〇年ということを明確にできないですね。だから、さっき、繰り返しますが、業界や電力業界あるいは専門の学者の中では、まあ実際は五十年ぐらい先でないか、こう言われておるのですね。  しかも、これからまだ「もんじゅ」は、原型炉の段階でもいろいろな問題を起こす可能性があると私は思うんですよ。  例えば、今まで随分と「もんじゅ」問題も論議をしてみましたが、後で原子力安全委員会の強化という問題で触れますが、やはり安全委員会がもっとチェックをしなくちゃならぬ。あるいは、フランスあたりのスーパーフェニックスで起こったナトリウム漏れの火災事故というものが、フランスでは公聴会を開いて公の文書にして、それが全部明らかにされている。そういうものを科学技術庁も動燃もそして原子力安全委員会も入手をしながら、これはそのまま棚上げになっている。  後で申し上げますが、安全委員会のシステムは、設置者がまず初めにやる、動燃がやる、今は核燃ですが。そして、それの第一次チェックを行政庁がやって、第二次チェックを安全委員会がやるから、申請が上がってこなければこれは手がつけられない、こういうシステムに実際なっておるのですね。  となれば、多くの問題を安全面から検討してみますと、まだまだやらなくちゃならない、起こる可能性のある問題、こういう問題がたくさんあるんですよ。総点検をやっても、それは必ずしもそれで満たされているとは思えないですね、具体的に言うと。そうなると、そういう可能性を将来にずっと持っているものを、これを研究開発の段階を超えて、言うならば研究開発と一緒に、発電の分野で利用の分野だと、そっちの範疇の中に組み入れてしまうというのは、それは余りにも無理があると私は思う。  当然これは文部科学省において十分な研究開発の段階を、やるならば踏むべきであって、まだまだ曲折が何十年かの間にある。世界じゅうがもう現に、ドイツもイギリスもアメリカもそれからフランスも、私もこの間アメリカのハンフォードの高速炉も見てきましたが、皆とめているんですね。フェニックスもそうですよ、スーパーフェニックスも。  そういう中で、今までは新しい経験というか、先進国のいろいろな経験を取り入れていくということでかなりできたが、もし「もんじゅ」を開発しようとするならば、これは未知の分野、よその経験のない分野を開かにゃいかない。  そういう全く研究開発の段階にあるものを、電気は出ているから、起きているから、これは発電の方で経済産業省の所管、実用化の分野の中に組み込むということは、何としても私は納得できない。だから、ひとつ納得できる御説明をいただきたい。
  37. 青江茂

    ○青江政府委員 お答え申し上げます。  「もんじゅ」を含めましてFBR開発というものが研究開発段階にある、実用化の段階には決してないということにつきましては、先生御指摘のとおりだと思ってございます。したがいまして、私ども、今後かなり長期にわたりまして、研究開発の努力というものをさらに着実に積み重ねていかなければならないというふうに考えてございます。実用化の段階に決してあるものではないということは明確であるというふうに思ってございます。  ただ、一方、それと、安全規制をどのような形でどのような者がかけていくのか、どのような者が責任を持っていくのかというのは別の問題であろうというふうに思うわけでございます。原子炉等規制法という法律に基づきまして規制というものをかけていくわけでございますが、その法目的に則しまして、だれが責任を持って規制というものをかけていけば一番実効性が上がるかという観点からいたしまして、整理をいたしたのが今回の整理というふうに御理解いただけますればと思うわけでございます。
  38. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いや、それは答弁にならぬですね。  大体、政府の方も認めておるように、どこが所管をしたら一番効果的か、実効性があるかと言うけれども、こんな、まだまだいっぱい問題を抱えているFBR、高速増殖炉の開発段階はまだまだ曲折があるんだ。それは経済産業省の問題よりも、文部科学省、科学技術庁の中で当然取り上げられるべきものであると私は思うのです。  それから第二は、安全性の問題は別ですね、それはどこでやってもと言うけれども、まず安全性は、第一次にチェックするのは所管省がやるんです。今、営業実用炉を、ずっと営業炉をやっているのは通産省が所管をしているから、所管省が第一次チェックをやる。第二次チェックは安全委員会がやっているんですね。  しかし、研究開発炉は、これは全部今までは科学技術庁がやっている。そして第二次は安全委員会がやる。第一次チェックはあくまで所管する省が責任を持って第一次チェックをやるわけですから、だから安全はどこがやっても同じじゃない。それは所管する省がまず第一に責任を持つべきものである。そういう点において、今の答弁では納得ができない。
  39. 青江茂

    ○青江政府委員 大臣からお答え申し上げます前に、事務的なと申しましょうか、事実関係につきまして、少し補足をさせていただきたいと思うのでございます。  所管をするところが安全規制を行うということで、規制の責任官庁が決まっているというわけではございません。と申しますのは、「もんじゅ」を使いましての研究開発の推進、具体的な実施主体は核燃料サイクル機構になるわけでございますが、これを含めまして、そういう段階にございます研究開発の推進ということ自体につきましては、省庁再編成後におきましては、文部科学省が責任を持って行うということでございます。すなわち、研究開発の推進ということ自体につきましては、文部科学省であるわけでございます。その所管と、原子炉等規制法に基づきますところの規制の所管といいますものは、これは別に考えておるわけでございます。
  40. 辻一彦

    ○辻(一)委員 新法によって適用された場合に、第一次チェックはどこがやるんですか、第一次のチェックをするのは。それじゃ、仮に経済産業省に移ったとすれば、そのとき第一次チェックはどこでやりますか。
  41. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 経済産業省が行うことになります。
  42. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今政府の通産省、きょうは大臣に出てもらうべきだったんですが、急にちょっと、通産、関係が非常に深いと思って、急なのでエネ庁長官の答弁でやむを得ないと思いますが、第一次チェックは明らかに経済産業省がやるとするなら、一番最初の責任はその所管省が持つ、これは当然ですよ、今までは。それをほかに移しておいて、安全は、いや、心配ありません、こういうことは、私は、日本行政組織の今までの仕組みからいっても成り立たないと思うんですね。これは長官にひとつお尋ねしたい。科技庁長官
  43. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 私は、もちろん研究開発の段階にある責任は、これは文部科学省が持つべきだと思っておりますが、安全に関しては、これは経済産業省にお任せするといっても、やはりその前には文部科学省としてしっかりした安全を考えていかなければならないと思っています。これは開発研究者の責任でもあるわけでございます。  その上で、第一次チェックをどこでやるかという問題でありますけれども、研究開発にある研究炉と、それから完全に商業炉になったものとの間には、おのずから安全に関する検査の仕方等々においても違いがあり得るとは思っております。  しかし、何にしても、安全である、きちっと運転しているということをきちっとチェックするということは、いずれの省がやるにいたしましても、これはきちっとやっていかなければならないと思っております。
  44. 辻一彦

    ○辻(一)委員 丁寧な御説明をいただいておるんですが、原子力局長や長官、科技庁長官の答弁ではこれは納得はできません。  第一次チェックをやるところは厳しい責任を持つんですよ、第一次チェックをする。それが経済産業省に移っているのに、いや、安全問題は文部科学省が責任を持ちますといっても、システムとして、国の行政の仕組みからいって、そういうふうに私はならないと思うんですね。だから、これは、明確に文部科学省にこの所管を「もんじゅ」については残すべきである、このように私は思いますが、これについて納得できる答弁がなければ質問は続けられない。以上です。
  45. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 科学技術庁長官がお答え申し上げておりますが、この「もんじゅ」については二つの側面があると思います。一つは安全規制の側面であり、もう一つは、委員かねておっしゃっておられます研究開発の側面でございます。  安全規制の側面につきましては、エネルギーとしての利用に関係する安全の確保、将来の実用を目指した、将来を見越した一貫した安全規制の考え方、責任のとり方というのがあろうかと思います。  いま一つは研究開発の側面でございまして、これを実際に行うのは旧動燃でございますが、そこは科学技術庁の多大の経験、知見、そうしたものを見ながら、ここで御監督をいただき、また実施をいただく。  そういう二つの側面で、全体としての「もんじゅ」の計画を実現していく、かようなものと理解をしておりますし、また、有馬長官のお答えもそういうお答えであったかと理解しております。
  46. 辻一彦

    ○辻(一)委員 同じような答弁を何回聞いてもしようがないと思いますが、もう一度申し上げます。  現在においても、なかなか日本の中でも「もんじゅ」の見きわめがつきかねるから、十分な研究開発の段階を踏まなければ将来の実用化は困難である。だから二〇三〇年を、この時期をもう明示できない、何年というふうに明示できなくなっている。ということは、研究開発の段階がこれからずっと続くということをそれは物語っていると思うんですね。そういうものを、いや、電気が起きているから、それから安全は政府でやるんだから心配はないといっても、第一次チェックを責任持ってやるのは、それは所管する省がやるべきことなのであって、こういう点からいえば、研究開発の段階であるということを認めるならば、文部科学省がこの責任を第一次的にまず持つべきである。  これについて納得できなければ、私はこの問題についてはこれ以上質問はできない、理事会でひとつ検討いただきたいと思います。
  47. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 高速増殖炉につきましては、御指摘のとおり、実用化までに時間を要する面がございますが、我が国の将来のエネルギー源の一つの有力な選択肢として位置づけられておるものでもありますし、また、既に出力二十八万キロワットという発電設備能力としてはかなり大型のものでございます。そうした側面から、安全規制にかかわる各種の知見を蓄積しながら将来につなぎ、一元的、一貫した安全規制というものが必要なのではないか、我々としてはかように考えております。  そういう趣旨で、この基本法において、原子力のエネルギーとしての利用に関係する安全の確保のための規制という趣旨で、経済産業省の事務として位置づけられたものと理解をいたしてございます。
  48. 辻一彦

    ○辻(一)委員 加えて通産の説明も納得できないと思いますから、私はこの問題についてはもう質問はできない。
  49. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 御心配の点、大変私も理解できるところがあるのでございますけれども、しかし、今回の行政改革の最も大切なことは、各省庁縦割りを破ることであると私は思っているわけです。  そういう意味で、安全性に関しても、やはり、今の科学技術庁すなわち文部科学省も、それから経済産業省も一緒になって今後守っていかなければならない。エネルギー問題でございますので、確かに開発の部分は文部科学省が受け持ってやってまいります。同時に、いろいろな面でさらに強力な協力体制をしいていかなければ日本の原子力行政ということが危ういわけでございますので、そういう点で安全性に関しても両省が十分な連携をとって進んでいくことがいいことではないかと私は考えております。
  50. 辻一彦

    ○辻(一)委員 では、もう一回だけ申し上げますが、縦割りを、一般的に言えばそういう行政弊害を除いて直していくということ、それは大変大事だと思う。私は、従来縦割りの持っておった多くの弊害を直すことについては賛成、結構ですね。  しかし、これは縦割り弊害を直すからというような問題ではない。これだけ日本じゅうで問題になり、世界的にも関心が持たれ、そして、さらに何十年か先でなければ実用化は難しいというその研究開発の段階を、実用炉並みに発電をしているから、電気が起きているからということで所管をかえるということは、縦割り弊害の問題ではない、極めて重大な安全問題をどう扱うかにあると思うので、同じような答弁ならもう質問できません。
  51. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 確かに、研究開発の部門があることは、私も強く認識いたしております。そして、その上で、研究開発部門の担当である文部科学省が安全性に対しても十分責任を持たなければならないということは、事実でございます。  そして、しかし、エネルギーを出す、電力を出すという点で、しかるべき安全性についてきちっと検討しておかなければ、将来産業炉として動き始めるときの準備として不十分だと思うんですね。そういう意味で、経済産業省の規格において安全性はどう満たすべきかというふうな検討をきちっとしていくことは重要なことと考えております。  ですから、研究炉であろうと開発段階であろうと、どういう条件を安全性の上で満たしていかなければならないか、こういうチェックはどの省がやろうとも重要なことであります。そういう点で、経済産業省がやるということは、これはこれで一つのやり方であると考えているわけです。そしてまた、安全性も守られます。大丈夫です。
  52. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は有馬文相また科技庁長官を大変尊敬していますから、普通ならば説明を聞き入れたいが、この問題についてはそうはいかないと思う。だから質問できない。
  53. 岩永峯一

    ○岩永委員長代理 辻一彦君、質問を続行してください。
  54. 辻一彦

    ○辻(一)委員 通産省は大体いつも実用化の範囲を扱うのが今までの原則なんですね。科技庁は研究開発の段階を扱う。大分けはもうこうなっているんだから、今は「もんじゅ」が研究開発の段階であるということを政府は確認をしているんですから、実用化の段階は何年も先、ならば、科技庁は責任を持って研究開発のすべての事務から安全について責任をとるのが当然じゃないか。だから、経済産業省に移すべきでない。それ以上のことは私はない。
  55. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 安全規制にかかわる内容というのはいろいろな蓄積が必要であることは、委員認識のとおりでございますが、この「もんじゅ」につきましては、研究を続けながら将来の安全規制に向けてその基礎をずんずん積み上げていくという意味がございます。現在も電気事業法の規制の対象として、炉規制法とあわせ規制を行ってございますが、そうした経験を積みながら、将来に向けて、将来重大なエネルギー源の一つであるという選択肢でございますし、また、先ほど申し上げましたように、かなり大型の発電設備でございます。そういう内容を見ながら、今後、将来に向けた安全規制の充実を図るという趣旨で、経済産業省においてこの内容を見るというふうに定められたものと理解をいたしてございます。
  56. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は、時間延ばしみたいに似たような答弁を何回も聞いても意味がない、質問できません。これはもう理事会に諮って考えてください。
  57. 岩永峯一

    ○岩永委員長代理 辻一彦君。
  58. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間がもう切れかかっておるんですが、発電用ではない。それは研究開発の中で電気が起こるということで、発電用にするならば、実用化は五十年先とか何十年先に可能な問題であって、これを実用化の中に入れるということは私は納得できない。そういう意味で、科技庁が研究開発の段階としてあくまで責任を持つべきだ、こういうことを言っておるのです。いかがです。
  59. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 この問題は随分検討をいたしましたけれども、二十八万キロワットを出しているということは事実でございますね。もう既に出し得るという。そういう意味で、やはりエネルギーを出す。この問題は、やはり将来実用炉となったときの、商業炉になったときの安全規制はどういうものかという面から見てもちゃんと押さえておかなきゃいかぬ。こういう意味で、両方の省が努力して、協力して今後も安全に当たることになると思いますが、こういう点で努力をする。しかし、もちろん責任はあくまでも文部科学省が、開発の安全性も含めて責任を持たなきゃならないと思っています。しかし、その第一次の検査というのは経済産業省がやるということになると思います。  たびたび同じことを申し上げて恐縮ですが、あくまでも必要なことは、両省が努力をして、一緒になって日本のエネルギー政策、広い意味でのエネルギー政策を進めていかなきゃいけない。同時に、原子力に関しても、一緒になって、安全性も含め、よりよい原子力を開発していかなければならぬと思っております。よりよくしていくということが重要でございます。
  60. 辻一彦

    ○辻(一)委員 まあ、理事さんに余り迷惑をかけるのも望まないことですから切り上げますが、答弁は納得できない。あくまで私はこのことは今後とも主張しなくちゃいけないし、これは本来なら修正案をもって問うべきであるが、いずれにしても、この問題は納得はされない状況で終わったということだけ申し上げて、残念ながら、時間が来たようですから、これで終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  61. 岩永峯一

    ○岩永委員長代理 次に、平野博文君の質疑に入ります。
  62. 平野博文

    ○平野委員 民主党の平野博文でございます。持ち時間の範囲内で質問をさせていただきたいと思います。  きょうは厚生大臣が時間の関係上退席されるということでございますので、少し流れ的には飛んだりいたしますが、御理解をいただきながら、できるだけ大臣に迷惑をかけないように、集中的に質問をさせていただきたいと思います。  私は、今回の地方分権という法案、さらには中央省庁の再編、こういう中での議論で、この委員会でも質問をさせていただきましたが、国と地方の役割分担の明確化をしましょう、関係については対等の関係で協力し合いましょう、こういうことを基本にした今回の改革でございます。そういう中にあって、私の持論でもありますし、そうならねばならないと思っておりますことは、基本は個人がするんだ、個人ができないところは地方自治体がするんだ、地方自治体ができないことについては国がするんだ、いわゆる補完をし合いながら、先ほど申し上げましたような役割を明確にしていきたい、していかなきゃならない、こういうことだと思っています。  しかし、財源的には非常に裏づけがないものですから、不満な法案だと私は思っていますが、それはひとつおいておきまして、そういう中で、国と地方の仕事の役割の中に、今は国の仕事と地方の仕事を明確にしましょう、こういうことでございますが、今まで地方がやっている、あるいは地方に機関委任をしている仕事であって、不十分だから国がそれをとって、国家の仕事としてやっていこうという発想もこの改革の中に必要な視点だと私は思っています。  そういう中で、特に産業廃棄物、こういう視点をとらまえますと、この廃棄物という定義は非常に難しゅうございますが、日本経済成長とともに、産業廃棄物、いわゆるごみの排出量というのは膨大な量としてふえています。これは一方、経済活動の足跡あるいは産物だというふうにも理解できるわけであります。  今まで国の施策の中には、人間の体でいいますと、動脈に対する発想は非常に、世界の国々よりも先取りしていろいろな施策を打ってきた。いわゆる技術立国として日本が発展してきたわけでありますが、動脈から今度は静脈に戻ってくるところの問題については余りにも放置をし過ぎてきたのではないか、こういうふうに私は思えてなりません。特に、病気の中でも、動脈瘤といったら生命にかかわる問題だということで緊急的にやるわけですが、静脈瘤のときには、少し痛いけれどもほうっておったら、まだ命に別状ないわ、こういうことで余りにも放置しているのがこの産業廃棄物の問題だと私は認識しています。きょうお越しの大臣、静脈瘤になっていませんか、体。そういう視点で少し質問をしてまいりたいと思います。  きょうは、特に動脈の部分と静脈の部分ということで通産大臣にお越しいただいておりますが、特に近年、産業廃棄物の排出量というのは、総排出量で大体年間四億トンだ、こういうふうに聞いております。四億トンといいますと、これは私、自分で目測したわけではありませんが、大体どれぐらいの量が出ているんだ、こういうことで調べてみますと、容積では東京ドームの約三百二十七杯分だ、年間それだけ産業廃棄物が出ているということでございます。  そういう中で、中身を見ますと、第一次産業、この部分での比率は大体二〇%弱ぐらいだ、残りの八〇%というのは第二次、第三次産業が占めている、こういうことでございます。これを見ますと、まさに今の日本経済の成長に伴ってこのウエートが高まっているんだ、こういうことを暗に言っているものと私は理解をしています。  そこで、今GDPが五百兆を超えている日本の指標でございますが、通産大臣にお聞きしたいと思います。通産大臣の役割のもとに大きく経済成長が伸びていっていることも事実でございますが、産業廃棄物が一方では年間約四億トンも出ていっている、これがここ近年ずっと続いていっている。こういう視点で見たときに、大臣はこういう排出量に対してどういう御認識か、まずお聞きしたいと思います。
  63. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 産業廃棄物と申しましても、幅広いもので成り立っているわけでございます。そういう中で、我々は二つのことを考えなければならないと思っております。一つは、資源というものは有限であるということ。それからまた、環境制約というものもある。この二つのことを同時に達成する必要があるわけでございます。  ただ、経済活動をやってまいりますと、当然、例えば家電でも寿命が来れば処分せざるを得ないとか、それぞれの製品に寿命という宿命があるわけでございます。  そこで、私たちが考えておりますことは、一つは、やはり廃棄物をなるべく出さないというシステムをつくること。それからもう一つは、何といっても、出た廃棄物の中で利用できる資源というものは、もう一度リサイクルをして製品につくり直していく。こういう二つのことを実は考えておりまして、このためのリサイクルに対するシステムをつくる、あるいは必要な法律をつくる、あるいは税制上のいろいろな仕組みも考えなければならないだろうというのが基本的な我々のスタンスでございます。  それと同時に、廃棄物をやむを得ず処分しなければならないときには、やはり環境に対する安全性ということも考えていかなければならないと思っております。  結局、これをだれが負担するのかという問題に帰着をいたしますけれども、これは物を購入するときに消費者があらかじめ負担をしておくのか、あるいは例えば廃棄するときにそれを負担するのかという問題はございますが、いずれにしても、そういう廃棄物を出す方に負担をしていただかないと、公ですべてを持つということは多分財政的には不可能なことだろう、そのように思っております。
  64. 平野博文

    ○平野委員 動脈側の立場での見識を聞かせていただきました。特に、今通産大臣が言われたように、その中で排出を抑制していくんだ、さらには排出したものをリサイクルするんだ、こういう考え方は非常にやっていかなきゃならない問題ですし、既に法案の一部としてでき上がっている部分もあるとは認識していますが、まだまだやっと踏み出したところだ、こういう認識でございます。  そういう中で、厚生大臣、静脈という表現で正しいかどうかわかりません、私はそういうふうに例えて言いますが、今度は出したものをどう安全に、あるいはうまく処理していくかという視点で見たときに、年間四億トンというのが毎年出ているんです。今まで幾ら出たのか、ゆゆしきことだと私は思っていますが、私はそういう視点でずっと調べてみました。  省庁に聞きましたら、今日までに一体幾らほうったんだ、幾ら処分したんだという数字を出してくれと言いますと、なかなかわからない、こういうことでございますから、大臣にそれを言ってくれと言っても大変難しかろうと思いますが、ずっとここ十年ぐらい四億トンぐらい出ているんですね。それまでは、五十年ぐらいは大体二億トンぐらいのベースできていますが、二十一世紀は本当に日本の国はごみの山になりますよ、今の状態でいきますと。  そういう視点で、厚生大臣、今言われましたように、毎年四億トン出ているということに対する見解をお聞かせいただきたいと思います。何回も質問したいものですから、簡単で結構です。
  65. 宮下創平

    宮下国務大臣 今、通産大臣基本的な立場は私も同感でございまして、循環型社会、つまりリサイクルをやるということはぜひ必要です。廃棄物を発生させないこと、それには生産段階から、委員はいろいろメーカーの御事情に詳しいわけですが、そのときからリサイクル計画を織り込んで、それを企業のコストに内在化をして、そしてそれを消費者が負担していくという基本的な構えが必要だと思います。  なおそれでも出た場合は、やはりリユースするということも必要でしょう。それから、リユースできないものは、これは廃棄物処理として公共の責任において処理をしていくという基本的なスタンスだと思います。
  66. 平野博文

    ○平野委員 大臣がちょっと退出されるということで、質問の流れでいきますと少し飛びますが、そこで、私が言いたいことは、今の実態を見てみますと、既存の埋め立てをしたところ、これは都道府県の認可のもとに民間業者がやっています。そういう視点で見たときに、各地でいろいろな問題が起こってきています。これからの問題の対処の仕方と今までの問題の対処の仕方についての考え方が要ると思うんですね。  今回の法案は、これからは少し踏み込んだ格好にしましょう、踏み込み方は私はだめだと思っていますが、踏み込んでやりましょうという発想に立っていますが、今日まで延々と、何の基準もなく、あるいは不法投棄をしてきた、そういうことに対する対処のあり方について一言も触れられていない。  私、これから二十一世紀一番問題になってくるのは、今まで何十年にわたって埋めてきた、あるいは焼却して、最終処分地というところの問題が、環境の問題あるいは地域の住民との間での摩擦、それぞれ地方自治体が大変な問題として認識をしているわけであります。したがって、今回の法案改正の中に、少し関与を強める、こういうことを言っておりますが、関与ではない、これは国家の問題だとして国が直接対処していくべきだと私は考えています。  そういう意味で、これからの問題もさることながら、今日までの問題に対してどう対処されるのか、ぜひ聞きたいと思います。
  67. 宮下創平

    宮下国務大臣 廃棄物の処理及び清掃に関する法律によりますと、一般廃棄物は、これは市町村の責任でやっていただく。今議論になっているのは、そのほかの産業廃棄物でございます。これにつきましては、やはり汚染者原因といいますか、PPPの原則といいますか、産業廃棄物を排出した人の責任ということで、契約関係によって廃棄物業者がこれを処理する。その場合の基準になる法的な規制その他は当然なければなりません。現在でも廃棄物処理法でそのことが規定されております。  したがって、今後、これは今委員の御指摘のように立地の問題その他ございます。また、環境汚染の問題等も提起されているわけでございますから、これは適正に立地をして、どうしてもリユース、リサイクルをしてもなお残るものはきちっとしなければいかぬ。それには、住民パワーで反対が多いでしょう。しかし、なさなければならないことも多うございますから、私どもは、これからは実体法の世界としてはこれを検討してまいりたいと思っております。そして、立地が最小限必要なものであれば、それは御理解を得て、できるようにするということが必要だと思います。  ただ、その実施のやり方につきましては、地方分権推進法によりまして、これは自治事務にするか機関委任事務にするかということですが、産廃の多くは法定受託事務として位置づけをしておる。したがって、実体的な法律とその実施の仕組みその他、今回御提案申し上げているのは仕組みの問題でございまして、これが従来機関委任事務であったのが法定事務になるということでございまして、実体はあくまで非常に重要な課題を含んでおりますから、私ども、これからも大いに研究して、できれば法律改正等も将来必要になるでしょう。そして、実体的な規制を強化して立地が適正に行われるようにしたい、こう考えております。
  68. 平野博文

    ○平野委員 今まで問題になっているところについての対処の方法はどう考えますか。
  69. 宮下創平

    宮下国務大臣 今までのは、やはり産廃施設をつくりますときに一番問題は、地域住民との摩擦問題です。これが住民投票にかけられたりいたしまして、そして、実際は府県知事の権限でこれを許可できるわけでありますが、許可できないでいるという事例が各所に出てきておりますから、これはそれとして、住民の御意向もある程度そんたくしなくちゃならない。それに対してどうするべきかと。  あとは不服審査とか訴訟の問題も法的には残されておりますけれども、私どもとしては、そういう適正な立地であれば、できるだけ処理施設が立地できるような方向で相談にもあずかっていきたいなとは思いますが、一義的には都道府県知事の権限に今のところはなってございますから、将来課題としては、そこに少し国の意思も働かせながら、住民意思との調和をどうやって図っていくかというそのプロセスあるいは運び方についても検討しなければならないというように考えております。
  70. 平野博文

    ○平野委員 私の言っているところも少しは答えてもらいましたが、要は、この問題というのは地元住民の摩擦が非常に多いんですよ。地元住民の摩擦を、都道府県だといいながらも、各市町村が地元住民の苦情ばかり聞いているわけですよ。しかし、地元の自治体には何の権限もあれもない、こういう実態になっているんですよ。  だから、法定受託事務であるならば、もっと国が直接執行するぐらいの課題である。景気が落ちたら緊急に景気対策をするじゃないですか。これは、静脈瘤といいながらも、明らかにこの国の国土をむしばんでいる大きな問題だと私は思っています。それに対して国が直接執行するぐらいの気持ちを持たないで、機関委任事務から、これについては法定です、それ以外は自治事務です、こういうことだけでは済まない問題であるということを私は強く求めたいのであります。改めて。
  71. 宮下創平

    宮下国務大臣 私のお答えしたのも大体同趣旨でございまして、これからの検討課題はそういうところにあるということを申し上げたつもりでございます。
  72. 平野博文

    ○平野委員 大臣、退出するところですが、もう少しやはり、わかったと、力強い答弁をぜひもらいたいものですね。それをぜひお願いします。それで、どうぞ。
  73. 宮下創平

    宮下国務大臣 よく委員の御指摘の趣旨は理解できます。そして、私ども、先ほど申しましたように、この問題は放置できない問題でございます。ただ、やり方についてどうするかということと、法規制その他実態的なプロセスをどうするかということとは、一応形式的には別の問題に私はなると思うんですね。  だから、実体法としてその手続その他を定めて、その執行は、あるいは県にお願いするなり市町村にお願いすることはあるので、今回の分権法では今の状況のままで分権をお願いしているということですから、実体法をもう少し検討して、そしてそのあるべき姿を模索すべきでありまして、国が直接これを事務として、廃棄物処理を府県と関係なしに国の権限においてやるというところまでは私は考えておりません。
  74. 平野博文

    ○平野委員 厚生大臣、どうもありがとうございました。だれか御担当の方もおられると思いますから、大臣どうぞ、お忙しいそうでございますから。ありがとうございました。  まだまだこれは私納得はできませんが、やはり今回の法案改正の中にあるんですが、法定受託事務、国が本来果たすべき役割に係る事務を地方自治体にする分には法定受託事務としてこの問題を取り上げるんですが、責任の区分というところで、私、問題があろうと思います。  この責任の区分が非常にあいまいであります。この責任の区分というのは、法定受託をした責任、あるいは受託を受けてやった執行責任、こういうところが非常にもやっとしているわけでございまして、特に、産業廃棄物、こういうものについて法定受託を受けた、こういうところで、もし、住民なり地域の環境汚染等々の問題が起こってきたときの責任は、これはどこにあるのでしょうか、自治大臣
  75. 鈴木正明

    鈴木(正)政府委員 お答えいたします。  まず、一般的な考え方を申し上げますと、法定受託事務は国の性格が強いですから、しかし地方団体の仕事でございますから、その意味での執行上の責任というのは都道府県、地方団体にありますが、法定受託事務につきましては、法令上かなり国の関与というものが行われることが通常でございますので、そういった面での国の関与の責任というものは、またこれは国の方にある、こういうのが一般的考え方でございます。
  76. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 考え方につきましては、基本的には先ほど大臣が申し上げたとおりでございますが、これは若干の経緯がございまして、平成九年に廃棄物処理法を改正いたしました際にも、機関委任事務か自治事務かという、産業廃棄物につきまして大変な議論がございました。いろいろな議論を経まして、事務の区分を平成九年の改正で行ったわけでございます。今回は、その流れを基本的に受け継いでいるということでございます。  なお、不法投棄に関しましては、これはいわゆる排出者責任でございますので、当然排出者が原則としてその不法投棄を撤去するということになりますけれども、さまざまな困難が伴います場合には、国あるいは地方公共団体も関与してこれに当たるという仕組みを平成九年の改正で新しく条文を起こしたところでございます。
  77. 平野博文

    ○平野委員 基本的にとか、そういうことは現場では通用しないんですよ。現場でもめるのは、基本的には理解するがということだったらもめないんですよ。何でもめているんだ、ここのところをもっと。国の問題ですよ、これは。地域の問題というよりは国の問題ですよ、環境、安全は。  それで、これは法定受託で、例えば最終処分地が終わっちゃったら、この法定受託の事務が解消したときに、後で問題が起こったときについては、これは昔法定受託事務だった、機関委任事務だったからといって、責任は継続するのですか。
  78. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 いわゆる法定受託事務と自治事務の一般論につきましては、私ども直接解釈する立場にはございません。しかしながら、今先生が御指摘のような事案に関しましては、これも平成九年の法律改正におきまして、積立金制度をつくって対応するとか、そういったことで対応できるような法的な措置はいたしておりますが、なおいろいろ問題も指摘されておりますので、現在、これらについては、審議会の御意見を聞きながら検討いたしております。
  79. 平野博文

    ○平野委員 ちょっと待ってください。  法的責任がずっと継続するのかどうかということに対して、します、しませんという答えでいいですよ。
  80. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 大変私の説明が悪いかもしれませんが、産業廃棄物処理に関しましては、施設の設置の許可等につきましては都道府県知事の権限でございますけれども、施設の運営、維持管理、それから閉鎖した後の諸問題が起こったときの対応、これは当然産廃施設の設置者の責任に帰せられるものということで法的な対応をいたしております。
  81. 平野博文

    ○平野委員 設置者の責任ということにしてしまいますと、その設置者の会社が倒産したときどうするんですか。そのときはどうするんですか。環境汚染だけが残るんですか。
  82. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 実際には、埋立処分が終わった後に、維持管理ができないで、維持管理の途中に倒産するというケースはございます。そういったケースがございましたので、埋め立て期間中に埋め立て終了後の維持管理の費用をあらかじめ積み立てる制度というふうなものを既に法改正で設定いたしているところでございます。
  83. 平野博文

    ○平野委員 それは少し実態と乖離した発言だと思います。現場を知らないんじゃないですか。現場を知っておったら、こんな法改正なんかできませんよ。  私は、この問題についていろいろ現場を歩いてきました。地元の人はみんな泣いていますよ。民間ゆえになかなか中に立ち入れない、こういうことがあるのです。一般ごみは自治体がやっていますから、住民がどんどん入っていけるんですよ。何か、あたかも不法投棄をしているときに、入りたいと言っても、民間地ですから入れないんです。環境を汚染するんだ。これは北朝鮮からミサイルが飛んできたのと同様ですよ。動脈か静脈かの違いですよ。これに対して、もっと国が強力に直接執行していかなければならないと思っています。  全国で何件こういうケースが起こっているか知っていますか。
  84. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 過去十年で産業廃棄物処理施設の設置に係ります紛争は、私どもは二百三十五件と承知をしております。
  85. 平野博文

    ○平野委員 そのうちで解決したのは何件ですか。
  86. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 現在、手元にそういう数字を持ち合わせておりません。後ほどよく調べてみたいと思います。
  87. 平野博文

    ○平野委員 ほとんど解決していないですよ。全部長期になって、結局、悲しんで泣いているのは、その地域住民が被害をこうむっている。  国は、地方自治体だ、これは都道府県だといって逃げていますが、地元の自治体は逃げられないんですよ。毎日地域住民の方の苦情を受けて、しかし権限も、それをきちっと担保する財源もないんですよ。これは財源手当てしますか。十兆も二十兆もあったらこれは十分に対応できますよ。今まで数年で百兆ぐらい、不良債権だといって、静脈の不良債権だといって投入してきたんだよ。国土の不良債権ですよ、これは。  これに対してどうするか。今後の対応、環境庁長官来られていますが、今度は環境省でこれを担当されるということですが、従前と同じ考え方で引き継がれるんですか。
  88. 真鍋賢二

    ○真鍋国務大臣 まさに今、引き継ぐべき中央省庁等の再編成の御審議をいただいておるところであります。  先ほど来、先生の御意見、私はもっともだと思うわけでありまして、残念ながら、私の選挙区の香川県の豊島が今問題になっておるわけであります。これは県が許認可を与えてそこに投棄をさせたわけでありまして、その責任は排出者、事業者が負担していかなきゃならないわけでありますけれども、長きにわたって不法投棄をさせて、その大きな被害が出るまで県の方で承知することができなかったわけであります。そこに県の行政の大きな責任があるということで、今この問題が訴訟に上がっておるわけであります。  この問題をどのように処理していくか。これは大変難しいわけでありまして、国もぜひ関与してもらいたいと私は思いますけれども、今の段階では、県としての処理方法を模索していく以外に方法はない。国がもし対応するならば、例えば環境庁にしてみれば、技術的な面で何か支援の体制をとることができないかとか、また、自治省に、今野田自治大臣がおられますけれども、何か特別な措置ができないか、その程度のところしか今の段階では対処できないということであります。  いろいろな問題があると思いますけれども、先生の御趣旨を尊重しながら、私は、今後ごみ対策を環境庁がしょっていくならば、そういう問題についても措置できるような法案を処理していきたいと思っております。     〔岩永委員長代理退席委員長着席〕
  89. 平野博文

    ○平野委員 今まだ庁ですから、今度省になったときには、もっと権限と財源も持ってもらって、国が、今野田大臣おられますが、これは自治省の問題です、これは厚生省の問題です、これは環境省の問題ですということじゃなくて、これは国家の問題なんですよ。産業廃棄物、二十一世紀の大きな課題になりますよ。食料、平和、環境ですよ。技術立国と言っている日本が環境のことを軽視した発想をしたら、世界から取り残されますよ。  そういう意味からすると、もっと踏み込んだ政策を出してもらいたいし、機関委任事務だとか法定受託事務だとか、そういうことですみ分けするのではなく、これは国が直接執行する大きな課題である、こういうことをもっと明確にしていただきたい。  このことだけを強く申し上げまして、今まで大臣、官僚の方が御答弁されましたが、それぞれ不十分な答えであるということを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  90. 高鳥修

    ○高鳥委員長 次に、桑原豊君の質疑に入ります。
  91. 桑原豊

    桑原委員 民主党の桑原でございます。自治大臣にお伺いをいたしたいと思います。  法定受託事務というものが、機関委任事務の廃止に伴って、自治事務と区分けをされて新たにできるということでございます。我々は当初、大半が自治事務になるものだ、こういうふうに考えて期待をしておったわけですけれども、現実にふたをあけますと、当初の予想をはるかに超えて、約半分近くが法定受託事務だというようなことで、この先法定受託事務がさらにどんどんふえていくんではないかという危惧も含めて、非常に期待に反した結果になった、そういうふうに思っております。  そこで、まず、今後法定受託事務をどのように定期的にチェックしていくのか。機関委任事務も、一九五二年の自治法の別表で創設をされた当時は二百五十六だったと聞いておりますけれども、現時点ではその倍以上の五百六十一ということで、ほっておけばこれと同じようなことになることは目に見えているわけでございまして、まずどのようなチェックをしていくのか、自治大臣にお伺いいたしたいと思います。
  92. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 御指摘のとおり、機関委任事務という制度が廃止になりまして、これが自治事務と法定受託事務とに振り分けられたわけであります。その中で、基本的に地方自治の本旨にのっとって作業をやっていただいたわけでありますが、そういう意味で、法定受託事務の創設については将来にわたっても厳に抑制されるべきものである、この基本的考え方はまことにそのとおりであります。  そこで、今回の改正でまず法定受託事務の振り分けはしたんですが、今後さらに法定受託事務がふえていかないようにどうチェックをしていくのかというポイントなんですが、一つは、今回法定受託事務の定義そのものを、要件を明確化した。これは今後いろいろな事務あるいは新たな事務が必要となる場合に、国がやるべきことなのか地方自治体がやるべきことなのかということと並んで、地方自治体がやるべきこととなる場合に、それが法定受託事務とされるべきか、あるいは自治事務とされるべきか、そういう際の大きな基準になっていくと思います。  そこで、それだけではなくて、今回この法案に先立ちまして、昨年、振り分けをするための作業、そのメルクマールを閣議決定において地方分権推進計画で定めたわけであります。したがって、これは今後においても、この八つのメルクマールというのは、政府部内における振り分けの作業の非常に大事な規制の基準になるというふうにも考えておるわけであります。  さらに申し上げれば、最終的には国会法律をお決めいただくときに、政令にゆだねる場合をも含めて、どういうものをゆだねるのかというところまで含めた審議のチェックを当然受けていくわけでありまして、そういう際に、類似制度間のバランスや法律相互間の比較などをしていただくという意味で、その辺、審議の上で十分参考にされるべきであろうということもあって、個別の法律に規定するということだけではなくて、地方自治法の別表で一覧性を付して御提案を申し上げておるということにいたしておりまして、今回の作業が終わればあとはというわけにはいきませんで、これからも常にチェックをしていかなければならないテーマであるというふうに考えております。
  93. 桑原豊

    桑原委員 従来の機関委任事務よりも、区分けのメルクマールといいますか、そういうものをはっきりさせたということはそれなりに私は一歩前進かな、こういう気もいたしますが、国会でいろいろ審議をするからそこでチェックをするんだということに関しては、そういった従来の経緯もありながら機関委任事務がふえてきたという歴史的な現実があるわけでして、そういう意味では、私は、やはり本当に分権を進めていく、そして今まで法定受託事務だというふうに区分けをされたものでも、今後自治権を拡大していくという意味では見直しをしていかなきゃならぬ、法定受託から自治事務に移さなきゃならぬ、そんな事務だって私は出てくるというふうに思います、地方自治の成熟度に伴って。  そういうものをしっかりとチェックをしていくときには、我が党も今修正で出すわけですけれども、例えば三年程度の期限を切って、定期的に区分とか国の関与のあり方などを検討し直すような仕組みというものをつくっていかないと、結局、いかにチェックをするといっても、結果的にやはり惰性に流れていくということになりかねない。私は非常にそこら辺を心配するわけでして、自治法にぜひそういった定期的なチェックというものの仕組みを書き込むべきではないかと思うのです。  自治省の立場として、私はそこら辺まで踏み込むべきではないかというふうに思うのですが、その点についてどうでしょうか。
  94. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 今回、大作業の結果、ある意味では一律見直しをやったわけであります。しかし、今後、社会経済情勢変化に伴って、今回は法定受託事務というふうに仕分けされたものであってもまた自治事務に返っていくべきではないかという議論も当然起きてくるし、また逆の議論も起きてくるかもしれませんが、いずれにせよ、社会情勢変化に伴って見直しということは常にやっていかなければならぬことであると思います。  今回、大作業でこうやって一括して御提案を申し上げておりますので、これからまた三年ごとを区切って機械的にというのは一つの考え方かもしれませんけれども、やはりそれぞれ個別の、これから新しい法律をおつくりになるときに、今申し上げた基準、今までよりもはっきり、先ほど御評価をいただきましたが、メルクマールであったりいろいろな形をつくっておるわけですから、それに基づいてきちっと入り口のところを整理していくということがより大事なことであると考えておりますので、今の段階で、機械的に三年ごとの見直しという規定まで入れることは考えてはおりません。
  95. 桑原豊

    桑原委員 具体的に、そういう自治事務を拡大していくということを保障していく手だてとしては非常に不十分ですので、私は党として修正を求めていきたい、こういうふうに思います。  それと、個別法で、政令によって法定受託事務が定められる場合の法律の書きぶりの問題なんですけれども、個別法案を見てみますと、ほとんどが、この法律に規定する何々大臣の権限に属する事務の一部または全部は、政令で定めるところにより、都道府県知事あるいは市町村長が行うことができるというような規定ぶりになっておりまして、大臣に属する権限事務を執行機関である知事、市町村長に委任するというような、書きぶりから見ると、まるで廃止されるはずの機関委任事務のような書きぶりだ、こういうふうに思うわけです。  こうした書き方であっても、政令による法定受託事務も地方公共団体の事務であり、また条例制定権が及ぶというような考え方でとらえていいのか、どうも書きぶりから見てそうでないような、そんなようにとらえられかねない、そんな危惧を感じるものですから、その点についてお聞きしたいと思います。
  96. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 これは御指摘のとおり、当然、条例の制定権が法令に違反しない限り及ぶということでございまして、機関委任事務は廃止をされたわけでございますので、当然の、今御指摘のとおりの認識であります。
  97. 桑原豊

    桑原委員 そのことを確認させていただきたいと思います。  それからもう一つ、通達行政がこのことによって廃止をされる、その種の議論も行われてきたわけですけれども改正自治法の二百四十五条の九、法定受託事務については処理基準というものを各大臣が定められることになっております。この処理基準については、都道府県や市町村がその法定受託事務を執行する際のよりどころになるわけでございますけれども、その定め方が明示をされておりません。そこに、通達による不透明な関与の排除、それが今回の大きなテーマであるわけですけれども、通達行政が本当に改善されるのかどうか、一つの危惧を感じます。  そこでお尋ねをいたしますが、処理基準の出し方なんですけれども、通知というようなものでもそれは許されるのか、そういうものを認めているのか、そこら辺をまず一つお聞きしたいと思います。  それともう一つは、処理基準というのは個別の事案に対して出されることはない、あの書きぶりからしてはないというふうに思うのですけれども、一般的な基準として出されるんだろうと思うのですけれども、そういった考え方でいいのかどうか、そのこともあわせてお聞きしたいと思います。
  98. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 法定受託事務の処理基準についてのお尋ねですけれども、その形式は、告示とかいう形に限られるのではなくて、御指摘のとおり通知という形で行うことも可能であります。  ただ、従来機関委任事務については、国の包括的な指揮監督権があって、今御指摘のような通達という形で、事務の管理、執行、その全般にわたって一般的に定めるということを可能としておったわけです。その中で、具体的な事例に即して個別の指示をすることも可能であったわけです。ある意味ではそれだけではなくて、必置規制とか、国との協議あるいは承認を義務づけるということもその中で定めるということも可能であったということなんです。  それが、今回の改正によりまして、法定受託事務に係る処理基準は、御指摘のとおり、個々の具体的な事例を対象としてその都度個別に定めるというようなことではなくて、あくまで一般的な基準として定めるものである、したがって、その内容も、その目的を達成するための必要最小限度のものに限られるということにいたしておるわけでありまして、また、新たな事務の義務づけや国との協議とか承認とかいうような関与、必置規制を定めるということはできないというふうに認識をいたしております。
  99. 桑原豊

    桑原委員 今大臣、私がその後聞こうと思ったことも含めてお答えになられましたけれども、新たな、法令にない事務を課すとか、あるいは新たな関与を課すとか、あるいはまた必置規制を創設するとか、そういったことはないんだ、そして、個別の事案についてやるということではなしに、一般的にきちっと基準を決めていくんだ、こういうことでございますので、そのことは、そういうことで確認をさせていただきたい、こういうふうに思います。厳格に運用していただきたい、このことを申し上げておきたいと思います。  もう一つ、法定受託事務に関連をいたしまして、総務庁長官にお尋ねをいたします。  分権一括法でも総務庁設置法でも、法定受託事務につきましては、国の監査に伴う調査というものを自治体に対して行うことができる、こういう規定になっております。  しかし、分権推進委員会の第二次の勧告においては、機関委任事務制度が廃止をされて、国による監査というようなものが減っていくんだ、そして、管区の行政監察局などをそれにあわせて合理化していくことができるんだと。  私は、自治事務はもちろんですけれども、法定受託事務も、地方自治体の事務、あるいは条例制定権の及ぶ、地方議会の監視が及ぶ、そういう事務に区分けをされるわけですから、そういう意味では、私は、大幅にそういったことが減ずると思いますし、本来的には、そこにまで国の監査が及ぶというのは勧告にもとることになるのではないか、こういうふうに思うわけですけれども、その点についてどのようにお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。
  100. 太田誠一

    太田国務大臣 行政監察は、国の行政機関の業務の実施状況を監察し、必要な勧告を行うものであります。そのためには、国の行政機関を調査するのは当然としても、このほかに、国以外の主体が行う業務についても、行政監察の目的を達成するために必要な範囲で調査をすることが必要であります。そのため、従来から、機関委任事務や特殊法人に係る業務等について調査することができる旨、規定されていたところであります。  今般、機関委任事務制度が廃止されることから、国の各行政機関の業務と一体として把握する必要がある受託事務に限り調査の対象としたものであります。  もとより、法定受託事務の調査は、国の行政機関の業務の実施状況に関する監察及び勧告のために行うものであって、地方公共団体に対して直接勧告を行うものではありません。地方分権の趣旨を尊重し、調査は必要な最小限度において行い、あらかじめ関係地方公共団体の意見を聞く旨の規定を設けていることを御理解いただきたいと思うのであります。  なお、このような仕組みのもとで、一定の範囲で法定受託事務を調査の対象とすることについては、地方分権推進委員会の御了解もいただいているところでございます。  私は、国の行政監察は主として、例えば納税者でいえば、国税の納税者に対する、タックスペイヤーに対する責任でありますので、税金がきちんと使われているかどうか行政監察をしなければいけない。そうすると、その使われ方の中で、国が直接やっていること、あるいは機関委任事務ではなくて法定受託事務でやっていることについても、国の税金をいただいて、タックスペイヤーに対する責任に対して調べなくちゃいけないことがあれば、やはりこれは調べざるを得ないということだと思います。  しかも、地方に行っても、そこにおられる住民の方々は、県民や市民であると同時に国民でもあるわけですから、そこにおられる方々に対しても責任はあるんだと思います。
  101. 桑原豊

    桑原委員 今の総務庁長官の議論でいきますと、すべてのことが国の監査の対象になるというような論理に、自治事務も含めてなっていくような言い方ではなかったかというふうに私は思います。  私は、法定受託事務というのも、地方自治体の事務として、そして、もちろん議会の審議も及びますし、国の関与もある意味では自治事務以上にいろいろな手だてを講じて関与されていく。そういうことの中で、もちろん県あるいは市町村のそういう監視も当然及ぶわけでございますから、そういう意味では、自治体の力をさらにつけていく、自立性と責任性を高めていくというような意味でも、必要以上の監査というものは要らない、こういうふうに私は思います。
  102. 太田誠一

    太田国務大臣 余りそういうことで論争をするべきではないのかもしれませんけれども、それは、事前の調整で、行政指導とか通達によって地方自治体の意思決定そのものに介入をするという話と、事後のチェックでそれはどうなったんだということを調べる話とは、私は本質的に違うと思っております。
  103. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 一般論として、原則論を言いますと、今回、国の機関委任事務という制度そのものが廃止になりました。したがって、自治事務であると法定受託事務であるとを問わず、基本的に地方公共団体の事務であるという位置づけがなされたわけでありますから、法定受託事務といえども、一般的に、当然調査が及ぶというものではないと私は認識をいたしております。  ただし、法定受託事務の中には、国の行政機関が行う業務に密接に関連するものがあって、当該国の行政機関に対する監察の目的を達成するためには、地方公共団体における法定受託事務の実施状況もあわせて把握することが必要不可欠な場合もあるということも現実であります。したがって、法定受託事務のうち、国の各行政機関の業務と一体として把握される必要があるものに限って調査を行うことができるというふうに規定をしたものであると承知をいたしております。  なお、地方公共団体の事務であるということに配慮して、第一に、調査は必要最小限度とし、第二に、調査に当たってはあらかじめ関係地方公共団体の意見を聞くこととするとともに、第三に、特殊法人等の調査とは違って調査を拒んではならないとの規定は置かなかったということでもあります。
  104. 桑原豊

    桑原委員 私は、勧告の基本的な精神にもとっているのではないかというふうに思いますし、そういう意味では、いわゆる国の行政との一体性の考え方も、あるいは自治体の裁量という点でも、やはり勧告の精神に沿って厳密にそれを考えていく、運用していくということが、監査の調査の対象というものを決めていくときにぜひともその点に特段の留意をしていただきたい、そのこともあわせながら、批判的見解として述べておきたいと思います。  それから次に、自治大臣にお伺いいたします。  自治事務に対する是正の要求、そして、いわゆる改善していくという義務、そのことについていろいろ議論をされておるわけでございますけれども、改めてお伺いをいたしたいのですが、現行の地方自治法の二百四十六条の二の是正措置要求と今回の法案の是正の要求、これの違いについてまずお伺いをしたい、このように思います。
  105. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 違いですか。(桑原委員「違いです。相違点」と呼ぶ)現行の二百四十六条の二というのは、是正措置要求、これはもう、条文を読みましょうか、いいんでしょう。  要は、国の地方自治体に対する関与の仕方の問題でございます。恐らく御指摘の点は、現行の是正措置要求というのにいわゆる法的義務ということは明記していない。しかし、今回の是正の要求というのは明記したではないかということも答弁せよ、こういうことかなとは思うのですが、もしそういうことであれば、そういうことであります。
  106. 桑原豊

    桑原委員 質問の仕方が余りにも抽象的だったかもしれません。  私は、まず、国の関与の主体の違いがある、こういうふうに思います。これまでは各大臣総理大臣に請求をして内閣総理大臣が是正措置要求を行うというような仕組みで、これは恐らく今まで一度も行われたことがない、こういうふうに聞いております。今回は、各大臣がみずからできる。実際にそうなりますと、執行される可能性が非常に高くなってまいりますし、しかも、関与できる大臣というのは法令所管大臣ではなくて事務を担任する大臣だ、こういうふうにお聞きしております。  そのように書いてあるわけですけれども、そうなりますと、例えばNPOの認可の事務なんかになりますと、主管の経済企画庁長官自治大臣、さらには海外協力ならば外務大臣、あるいは福祉なら厚生大臣ということで、担任する事務ということになると、本当に多くの大臣がそれに関与をしてくるというようなことになるわけですけれども、一気に自治事務に対する関与が非常に広範囲になって、そして頻繁に行われる可能性が出てくる、こういうふうに思うのです。  そういう意味では、関与の主体の側からしても、自治事務というものに対してかなり大幅な関与が行われる、そんなふうに私はとらえるわけですけれども、その点について、自治事務がそれでいいのか。もう分権の時代だということで、新たに鳴り物入りで自治事務というのがその中心に座っているわけですけれども、それにそんな大幅に関与ができるような仕組みにしていいのか。まず、この点をお伺いしたいと思います。
  107. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 今回、是正の要求を総理大臣ではなくて各大臣の権限とした理由ということでありますが、一つは、個別の法律において国の関与を規定する場合、その行政事務を分担管理するそれぞれ各大臣の権限とするのが原則であると思います。そういう意味で、いわゆる法律については、それぞれの所管大臣というような発想があるのは御承知のとおりでございます。  それから第二に、今回の改正におきましては、個別の法律の事前の関与を大幅に廃止、縮減をいたしたわけでありまして、一般ルールである地方自治法の事後的な関与、これは是正の要求などをいうわけですが、こういった事後的な関与に収れんさせるということを考えておりまして、その場合、地方自治法に基づく関与の主体についても各大臣とすることが適当であるというのが理由のもう一つでございます。  それからもう一つは、その権限行使に地方自治体が不服があるというような場合には、今回、御案内のとおり、新たに係争処理手続を設けることにしたわけであります。その係争処理手続においてどういうやり方をするかということでいえば、その行政事務を分担管理する各大臣と、関与を受けたその事務を担任する地方公共団体の執行機関との間で争っていただくという制度にする方が、制度として簡明であり係争の早期解決にも資するものであるというようなことから、総理大臣ということではなくてそれぞれの各大臣ということにしたわけであります。
  108. 桑原豊

    桑原委員 自治事務というものが一体、本来どうあるべきなのかという点が、どうも大臣の答弁からは伝わらない。私は、自治事務というのは、自治体が自分の責任において自己解決をしていく、その能力を認めていくということだと思います。  そういう意味では、国の立場から是正の要求、確かに、事態によってはそこまでは容認できるのではないかと私は思います。もちろん、限定的な、いろいろ厳密な制約をした上での話でございますけれども、しかし今回は、それに加えて改善の義務というものが法律で規定をされている。従来から自治省の解釈では、そういう明文の規定はなかったけれども、考え方としては、法的な義務というものに相当する拘束力があるというのですか、そんなふうなとらえ方を解釈としてされておったようでございます。  私は、そういう解釈と、今回、明文の規定を置いて、まさに明文をもって強制をするということと、質的にやはり違うというふうに思うのです。そういう意味では、自治事務たるものをそんなふうな国家の、政府の考え方で縛っていくという発想そのものが、問題が生じたら、ちゃんと係争処理機関があるんだから、国に文句があったら言えばいいじゃないか、係争処理機関があるからいいじゃないかというような考え方になると私は思うのですけれども、それでは、自治事務を自治事務として認めていく、あるいは自治を自治として育てていく、そういうことにはならないのじゃないでしょうか。  法律で自治事務をそんなふうに決めていくということになれば、自治事務の名がまさに泣く、こういうふうに私は思わざるを得ないのですけれども、その点はどうなんですか。学者の皆さんも、これは憲法にも触れるのではないか、あるいはやはりいろいろな意味で大変な問題じゃないかということで、かなり多くの方々が声を上げているようですけれども、どうなんですか。
  109. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 根本的に、ちょっと誤解があるような気がしてなりません。  それは、日本国においては、この国会が国権の最高機関であります。これは当然のことであります。そして一方、地方自治との関係でいえば、御案内のとおり、憲法九十二条で、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」つまり、地方自治ということを本当に大事に大事にしながらも、国と地方国民のためにそれぞれ役割をしっかりと踏まえて、国民の福祉のために相協力して仕事をしなさいというのは、当然の憲法の精神であると思っております。そういう中で、基本的に地方が責任を持ってやるべき範囲、国が責任を持ってやるべき範囲をある程度仕分けしてきたわけでございます。  ただ、そういう意味で、最も望ましい形で、お互いが役割を相分担し、必要な場合には相協力をして、仕事を国民のためにうまく回転させていくということがノーマルな状態であると思います。しかし、残念ながら、不幸にして、そうでないケースもごく例外中の例外としてあり得る。そういう場合に、仮に地方自治体が法令違反を犯したり、著しく適正を欠く事務処理が行われて、それが明らかに公益を害しているというような状況があった場合に限っては、それを放置するわけにはいかないんじゃないのでしょうか。  本来ならば、自分自身みずからで是正をされるべきが当然であるし、あるいは住民の手によって自主的に是正されるべきであるとは思いますが、そのような自律的な作用だけですべて解決できないような状態が発生した場合に一体どうするのか、放置できないのではないかという意味で、何らかの形で国が適正、円滑な、そういった自治体の運営を維持するための実効性のある措置を講ずることは必要不可欠な部分でもある。そういう意味で、この是正の要求というのは、自治事務に対する関与ではあっても、やはり外すわけにいかない部分だ。  ただし、御指摘のとおり、法定受託事務と自治事務とでは、分けた意味もあるわけですから、そういう点で内容において当然考慮、配慮されるべきである。そこで、是正改善の具体的な措置内容については、これは必要最小限のものとして、一般的な、地方公共団体の裁量に具体的なものはゆだねなければならないということでございますが、もう一つは、そういった場合に、是正の要求に不服がある場合には、自治体としては係争処理手続で争うことができるという道を開いて、その関与の適否について第三者の客観的な判断を仰ぐことができるということにしたわけであります。  今回の改正は、いずれにしても、新しい関与のルールとして、関与についての法定主義、あるいは手続のルール、ルール行政への移行、それから、不服がある場合の国と地方のそういった係争処理の手続ということを、わかりやすく、透明度を高くしようということで、今回の関与に関するルールを規定したわけであります。このことを特に申し上げておきたいと思います。
  110. 桑原豊

    桑原委員 自治事務というものが本来どういうものなのか。自治体が自分の責任において、そして住民の意思に基づいてそれを自己完結的にやっていくということが自治事務だというふうに私は思いますし、勧告の段階でも、そういうことを踏まえて、是正要求に基づく改善義務などというものが勧告の中でも盛り込まれていなかったというふうに私は思います。それが、法案化をされる段になって、ある意味では忽然とこれにつけ加えられてきた。どうしてもやはりそこら辺が私は納得できません。  そして、従来のように、是正の要求だけならいざ知らず、加えて義務まで明記をする。機関委任事務から自治事務に区分けをされた事務ならまだしも、従来固有事務として見られていたそういう事務にとっては、さらに自治事務になることによって義務が加えられたというようになると私は思うので、そういう意味では、自治事務に対する考え方が、逆に、従来の固有事務に対する考え方以上に国の関与を認めるような形になったのではないか、そういうふうに受けとめざるを得ないわけです。そのことについて、どうしてもそこら辺は納得できないということを申し上げておきたいと思います。  時間もございませんので、次に、厚生大臣にもお越しをいただきましたので、社会保険行政地方事務官の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  私は、今回の行革、中央省庁の再編、そして地方分権、この二つは、日本のこれからの国の形を本当に新しい、国民のためのものにしつらえていく本当に大切なものだ、欠かせないものだと思うわけでございますけれども、残念ながら、地方事務官、社会保険行政のここについては、その両方ともにもとっておるのではないか。地方分権といいながらこの問題については分権に逆行する、馬脚をあらわすと言ったらちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、そういう印象を持たざるを得ないわけでございます。  そこで、行革の面からまず総務庁長官の方に先にお伺いをしたいのですけれども地方事務官は現在個別法で予算措置をされておりますけれども、今度の改革で国家公務員化されるということによって、総定員法上の定数にカウントされるということに制度的にはなるのかどうか。定員法の根拠でございますけれども、そういうことになるのかどうか、まずお聞きしたいと思います。
  111. 太田誠一

    太田国務大臣 総定員法上の数ということは広い意味と狭い意味とありまして、総定員法の考え方に基づいて定員管理をする対象になっておりますのは、狭い意味の総定員法の人数のほかに、地方事務官と沖縄特別措置法と国立学校設置法というものがその範囲に入っているわけでございます。それがこの後移管をされたとしても、地方自治法での地方事務官の一万八千七百五十八人は今度は総定員法の中に、狭い意味の総定員法の中に入るという違いでありまして、これまでの行政管理局がやっている定員管理の仕事からいいますと、同じ枠の中の、大枠の中の移動であります。
  112. 桑原豊

    桑原委員 そうしますと、今度の改革によって狭い意味での総定員法の中にカウントされる、そういうふうに考えてよろしいわけですね。
  113. 西村正紀

    ○西村(正)政府委員 今度の法律地方事務官がそれぞれ厚生事務官、労働事務官になりますと、総定員法一条の上限を定めている定員の中に入ることになります。
  114. 桑原豊

    桑原委員 今後二五%の削減を目指して定員管理を行われていく、こういう目標があるわけでございますけれども、私は、社会保険の事務に関して申し上げますと、その中の例えば国民年金法の事務などは、従来、市町村の大きな協力を得て大変緻密に、綿密に、いろいろな努力を重ねられてやってこられたわけですけれども、それが一部を残して国の直接執行事務ということになると、今後、総定員法に組み入れられるか、あるいは全体管理の中で位置づけられるかは別として、その事務をこなしていくというときには、大変、これからの削減というものとある意味では逆に、こちらの方はふやしていかなければならぬというようなことにもなるのではないか、その事務を従来どおり執行していくということになれば。  そういう意味では、従来問題なくやってきたのを、あえてふやす要素もあるようなそういう中に組み込んでいくというのは、行革の観点からしてどういう意味があるのかということをお聞きしたいと思います。
  115. 太田誠一

    太田国務大臣 たびたびこの特別委員会でも御質問にお答えをしておりますように、私どもの二五%削減という場合の分母、母数は、五十四万六千というふうに申しております。それ自体は、先ほど御説明いたしましたように、地方事務官の取り扱いが変わったとしても、その目標そのものは変わっておりませんので、我々としてはそのことで難しいとかやさしいという話は起きないと考えております。  なお、地方事務官を厚生事務官、労働事務官とする内容の法律案を提案し、御審議をいただいておる立場でありますので、これに反する前提を置いて考えるということは、この立場ではできないということでございます。
  116. 桑原豊

    桑原委員 私は、例えば、二五%削減のプロセスの中では、従来国が総定員の中で考えていたけれども独立行政法人化で、できるだけそういう形で削減の中にカウントしていくのだというようなこと、あるいは、従来地方と一体になってやってきたようなことはできるだけ地方へやるとか民間へやるとか、そんな形でやっていくという考え方が行革の一つの削減の中に込められた考え方だと思うのですけれども、一方では独立行政法人でそういうふうにやっていくんだと言いながら、一方では、こっちは従来どおり、総定員法の中に入れたり、こっちにあっても全体の枠では同じなんだからということで。むしろ逆に、そちらも従来どおり、問題なくやってきたわけですから、地方へ移管するという発想になるのが行革じゃないかなというふうに思うのですけれども、どうなんですか。これは厚生大臣にお願いしたい。
  117. 宮下創平

    宮下国務大臣 ちょっとお話を承っておりますと、誤解があるように存じます。  今の地方事務官制度というのは、これは二十二年に地方自治法ができたときに、官吏として、つまり国家公務員として残す部類にされたわけでありますが、国の厚生年金、船員保険、それから政管健保等の保険事務は国の事務でございまして、国はこれを一体的にやる必要があるという建前のもとに、現実には、地方自治法で暫定的に国家公務員とされておる職員にこれを機関委任の事務としてやっていただいておるわけです。  しかし、その担い手である地方事務官は、全く国家公務員と同様でございまして、これは厚生省の方で国が一元的に採用いたしますし、国家公務員法の適用もございますし、人件費その他は全部国が見ておりますし、その他身分関係も国家公務員と同じでございます。ただ、違うところは何かといいますと、都道府県知事の指揮監督権を認めておりますが、これは保険事務が国の事務でございますので、事実上、有名無実と言っては言い過ぎかもしれませんが、そういう状況にある。  一方、国民年金の場合は、三千三百の市町村の方々に、地域住民と非常に密着しております、その移動等も市町村でなければわからない点がありますから、機関委任事務を今度は法定受託事務にいたしておりますので、そのままそっくり機関委任事務が法定受託事務になるというだけでございまして、変化はございません。したがって、地域住民のサービスに何ら変化はない。  それから、今定員上の管理のお話がございましたが、地方事務官は、今総務庁長官のお答えになったように、総定員法には入っていないけれども、実態は国家公務員でございますから、国家公務員としての総定数の中には入っておるということでございますから、これは総定員法に入れるか、あるいはその別枠としての国家公務員とカウントするかは、これは取り扱いの問題だと私は思いますが、今は、御答弁のように、総定員法に入るということであれば、総定員法上の人員はふえるかもしれませんが、国家公務員としては何らふえるところではない、同じである、こう理解しております。
  118. 桑原豊

    桑原委員 地方事務官をどこに位置づけをしていくかということについては、確かに、国家公務員の中で位置づけをされてきましたけれども、暫定的に地方事務官制度というものをつくって、それが将来的に都道府県に行くのか、あるいは国へ行くのか、それは種々の議論があったところだと思うのですよ。決して、最初からこれは当然のごとく国に位置づけられるものなんだというふうに来たわけではないと私は思うので、そこはどの立場に立って議論をしていくかによっていろいろ考えの相違するところだと思いますから、当然のごとくそうであったような、そんな物言いというのはどうかというふうに思います。  それから、私が一番気になるのは、後々の議論にも絡むわけですけれども、例えば、国民年金の仕事でいいますと、いわゆる空洞化が大変問題になっている。そして、年間大変多くの未加入者といいますか、百五十八万人とも聞いております。そういう未加入者がいるにもかかわらず、市町村から住民基本台帳の情報に基づいて未加入者を捕捉していくのじゃなしに、今度は医療情報などを中心にして、そこから未加入者を国が直接捕捉していくということになると、私は、そのプロセスの中でもさらに未加入者がふえていくんじゃないかと思います。また、印紙検認事務ということで、現年度の保険料については、市町村の窓口でいろいろな便宜措置を講じながら徴収するわけですけれども、そういったことについても将来的にはなくしていくということになれば、直接国がやる。いろいろな意味で、私は、そこで百七十二万人と言われている未納者の数もふえていくのではないかと。  社会保険庁の皆さんが、昨年ですか、取り組まれたアンケートでも、本当に多くの未納者、未加入者がいるわけですね。市町村の皆さんは、自分たちの専任の窓口をつくって、一万二千人の担当事務者を置いて、二千人の専任の徴収員まで配置して、そしていろいろ努力をした結果でも大変に多くの問題を抱えておる、こういう実態なわけですね。そういうことを今度は直接執行事務にするということになれば、逆に——この国民年金の仕事が機関委任事務という形で発足をした昭和三十六年当時でも、国が直接やったら五万五千人の人が要るんだというようなことで、そんなばかげたことはできないから、市町村に協力をいただいてやっていくんだということでこの制度そのものが発足をしているわけです。  そういう意味では、今度とられようとする措置は、私は、まさにそこに逆行するのではないか、非常に増の要素を抱え込まざるを得ない、そういうことになるのではないかというふうに危惧をして、そういう意味で、行革との問題はどうなんですかと。全くそれは関係ありませんよ、全然そんな要因はないんですよというふうなおっしゃり方でしたけれども、とてもこの実態から見て、私はその言葉をそうですかというふうに真に受けるわけにはいかないんですよ。そういうのはどうなんですか。
  119. 宮下創平

    宮下国務大臣 お答え申し上げます。  地方事務官の制度の建前等について、建前上きちっと申し上げたということでございまして、委員の御意に沿わなかった説明かもしれませんが、実態はそのとおりでございます。  そこで、今未加入者あるいは未納者の問題と国民年金の扱いの問題でございますが、今までも一万二千人の地方の市町村の方々にお願いをしてやっておるわけで、これは機関委任事務としてやっておりました。そして、その事務費は交付してあります。  ところが、一方、今回はそれを法定受託事務として同じく国民年金の市町村における事務はお願いしておるわけでございますから、そして、それらの費用手当てもいたすわけでございますから、実態は変わりないわけだと思います。それによって国家公務員が、直接一万二千人入れかえて、国家公務員に全部してやるという性格では国民年金の場合にはございません。申し上げるまでもなく、これは機関委任事務から法定受託事務に今度整理をさせていただいております。  ところが、一方、社会保険事務所の方は六百十二ありますけれども、これはやはり直接的な問題ですから、これは地方と、市町村とは直接人員的には関係ございませんから、文字どおり国家公務員に実態的にほとんどなっておるというのは先ほど申しましたとおりで、それを国家公務員の処理として行う、こういうことでございまして、そこのところは、私が先ほど、当然国家公務員になっているんだからそのままだという御説明に聞こえたようですが、実態はそうなんですけれども、実際、形式上は監督権もあり、政令によって地方事務官という呼称も設けられておりますから、それは現実にそういうものとして存在している。ただ、その実態は先ほど私が申し上げたとおりであるということでございますので、御理解いただきたいと思います。
  120. 桑原豊

    桑原委員 いろいろお話をされても、私はいわゆる種々の国民年金に関して言えば、届け出等の受け付けを除いて国が直接執行するという形になって、従来とは違って市町村の関係は大変希薄になることだけは確かなんですよ。そこら辺を何か従来と全然変わらないようにおっしゃるなら、一体今までとこれはどうなんだ、何がどうなんだというふうに反論したくなるわけで、ちょっととてもそこは承服できないところでございます。  そこで、もう時間がございませんので、最後に一つお伺いしたいのですが、この国民年金法では、戸籍法のように地方自治法による関与の一般ルールの適用排除の規定というのがございません。これは国民年金法上の関与は、地方自治法による関与の一般ルール、これは改正自治法の方では、大臣、都道府県、市町村、そういうルートで行われるということでございますけれども社会保険庁や社会保険事務所と市町村とストレートにやられるということであれば、そういう適用排除の規定、こういうものが、ある意味では、ないのはどういうことなのかということなんですけれども、その点はどうなんでしょうか。
  121. 宮下創平

    宮下国務大臣 国の関与のあり方についてのお尋ねでございますが、今回の改正によりまして、国の関与の基本類型としては、これは法定受託事務であれ、自治事務であれ、助言、勧告あるいは資料の提出の要求、あるいは法定受託事務の場合は是正の指示、自治事務の場合は是正の要求ということになっておりまして、このルートは私どもとして指定はいたしておりません。  ただし、戸籍法は、御承知のように、府県が介在しないように個別法で規定しておりますが、私どもは、国が県を通じ市町村に至るルートを、あえてこれを消す必要もなかろう。大半の事務は、国が直接市町村に行くということで一種のバイパスみたいなことになりますけれども、それが主体になっておりますが、あえてそれを指定するまでのこともない。場合によると、そういう府県を通じて指導をお願いすることもあり得るかもしれないということで残してございますので、戸籍法で、個別法にバイパスのみにして府県を排除しておりますが、そういう理由は年金についてはないというように私どもは理解しております。
  122. 高鳥修

    ○高鳥委員長 桑原君、時間が来ておりますので。
  123. 桑原豊

    桑原委員 時間も来ましたので、私は、やはり実際の事務の流れというものと規定の仕方というのは乖離しているのではないか。もし実際の事務の流れに合わすなら排除の規定が必要ですし、今大臣が言われたように、時には県に協力をしてもらうことがあるかもしれないというようなことを想定されるのなら、これはやはり県の機関委任事務、都道府県の法定受託事務というような形で明確に位置づけるべきではないか、その振り分けをきちっとすべきではないかというふうに思うのですけれども、そういうあいまいなやり方でしたら、いわゆる勧告で言うところの二重の関与、そんなものを許すことになるのではないかというふうに思いますので、その点について、もう一言だけお伺いして終わりたいと思います。
  124. 高鳥修

    ○高鳥委員長 時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。
  125. 宮下創平

    宮下国務大臣 私どもは、そのこと自体が、国民年金の執行事務上、法定受託事務、自治事務のあり方と非常に相背馳するというようには考えておりません。そういうバイパスでやることが多いわけでございますが、一般論として、自治事務、法定事務にそのような経過、ルートがありますから、それはあえて指定しなくてもよろしいのではないかということで整理をさせていただいておるところでございます。
  126. 桑原豊

    桑原委員 どうもありがとうございました。
  127. 高鳥修

    ○高鳥委員長 午後零時三十分に委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十四分休憩      ————◇—————     午後零時三十二分開議
  128. 高鳥修

    ○高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。山本譲司君。
  129. 山本譲司

    山本(譲)委員 民主党の山本でございます。  時間が限られておりますので、早速質疑に入らせていただきます。  今回の中央省庁等改革推進に関する方針、ことしの四月二十七日に改革推進本部で決定をされ、また閣議決定もされたものですが、この中で、審議会等整理合理化に関する基本的計画というものが含まれております。そこで、まず最初に、国の審議会などに関する問題、これから質問させていただきたいと思います。  よくこうやって国会で質問をしておりますと、その件につきましては○○審議会で現在鋭意検討中でございます、こういった答弁が平然と、また当たり前のように答弁として返ってくる。そのことによって、あたかも国会よりも審議会の方が重要度が高いんだ、そう言わんばかりの答弁に対して、憤りを感じたりあるいは業を煮やした思いをしたのは私だけではないと思います。  この行政改革特別委員会で、先日も小渕総理大臣に、私の質問の中で、今後の地方分権推進にかかわるさまざまな課題をどうされるのか、こういう質問をしたところ、分権推進委員会の意見を尊重したい、こういう旨の答弁もございました。この地方分権推進委員会のことを云々言うわけではございませんが、どうもそういった委員会を尊重し過ぎるんじゃないか。  一方、この間の行革特の質疑の中でも、太田長官、一連の今回の改革によりまして、官主導から政治主導に変えていくんだ、転換をしていくんだ、こういう決意をたびたび申されているわけでございます。  そこで、今回、この改革の中で、審議会の問題が整理合理化をするということで取り上げられたわけなんですが、どうも、やはり審議会というのが政治主導ではなくて逆に官僚主導になっている、まさしく官僚の隠れみのであり、または政治の責任逃れだというような批判もたびたびされるわけでございます。そこで、二百十一の審議会ですか、これを、存続するものと基本的に廃止をするもの、こういう区分けを精査をしてやられたわけでしょう。そこで、前提として、やはりこの審議会、一体どういう弊害があったのか、何が悪かったのか、おかしかったのか、そういうさまざまなデメリットを前提に今回の整理統合に臨まれたと思いますが、まず最初に長官に、こういったこれまでの審議会のあり方の問題点についての認識を伺いたいと思います。
  130. 太田誠一

    太田国務大臣 審議会につきましては、おおむね、大臣あるいは総理大臣が諮問をして、例えば三年後か四年後にその答えが返ってくるわけでありますけれども、諮問をした人と答申を受ける人が別々の人であることが多いわけであります。そうすると、諮問をするということは、本来は、その大臣内閣総理大臣がこの人に聞きたいから諮問をしているはずでありますけれども、聞きたいと言った人はいなくなっていて、受ける人は、全く自分が諮問した覚えもない人から答申を受けるわけでありますから、全くそれは、諮問した趣旨と答申を受ける趣旨が違ってくるわけであります。  それとまた、審議会が開かれている間は、今までの例であれば、諮問をした大臣はそこには出ないわけでありますから、もう諮問をしたっきりで、その何年間かはおつき合いがないわけであります。そうしますと、一体何が議論をされているか、実は自分はこういうところが聞きたいんだ、あるいは自分はこういう問題意識があるんだ、あるいはそれに対する答えを出す人、有識者に対してこういうふうに言いたいんだということがあっても、それは言えないわけであります。それは中に入っていて当然だと私は思っておりますけれども、中に入ることは困るというふうに言われる。中には一応入れないわけであります。そうすると、生きた諮問、生きた審議にはならないというふうに私は思っております。  そういたしますと、結局、実態を申し上げれば、そもそも委員の任命も大臣がかかわらない場合がほとんどでありますから、そしてまた任命をした人、そしてそのプロセスにおいても調整も事務方がいたしますので、事務方の案がそのまま答申として出されてきて、それに対してさらに尊重義務がつけば、大臣政治家として思っていないことでも、答申を尊重しなくちゃいかぬということで、それをそのまま法案として出してくるということになるわけでございますから、このプロセスこそ、政治主導あるいは内閣の責任でもって法律案を提案する、つまり、政治家の責任でもって法律案を提案するという内閣法の精神そのものを損なうものであるというふうに考えたわけであります。  そのようなことで、今、審議会整理、廃止を考えました。
  131. 山本譲司

    山本(譲)委員 そこで、今長官から指摘のあった問題点をこれからどう進めて、その辺の問題点というのを改善していこうとしているのか、その件について、今後の方針をどうかぜひ長官の方からお聞きしたいと思います。
  132. 太田誠一

    太田国務大臣 今申し上げたような考え方というのは必ずしも多くの方々が受け入れるところではまだないわけでございます。委員は大変鋭い感性をお持ちだからその部分にちゃんと着目をしていただきましたけれども、まことに世間の理解はまだ進んでおりません。  それで、全体、すべて一切ここで廃止ということにすべきだと思いましたけれども、やはりそれはさまざまな関係者との協議の中で決まりますので、各省、旧省について基本的なものを一つか二つか残すということについては譲歩、妥協をいたしております。しかしながら、全体、政策審議の審議会を六分の一にいたしました。数は六分の一にいたしました。審議会委員の数も、ちょっと正確に数えておりませんけれども、大体六分の一ぐらいになったと考えております。  それからまた、さらに尊重義務規定については、尊重義務はないというふうにはっきりは言っておりませんけれども、尊重義務がないような姿にいたしております。運営のところを読んでいただければと。
  133. 山本譲司

    山本(譲)委員 今、最後に、長官の方から運営というお話がありましたが、この間、審議会全体に対する運営のルールというものがあったのかどうか、この点はどうでしょうか。
  134. 河野昭

    ○河野(昭)政府委員 従来から、審議会に対するいろいろな御批判がございまして、例えば運営でございますが、議事は公開すべきでありますとか、あるいは委員の任命等については、閣議決定等で決めておったわけでございます。今回、今大臣が御答弁されたような趣旨で大幅に審議会整理するこの機会に、そういう運営等につきましての政府としての指針を集大成しまして、閣議決定させていただいたわけでございます。
  135. 山本譲司

    山本(譲)委員 四年前の平成七年九月二十九日に閣議決定をされている「審議会等透明化、見直し等について」、これは今回の基本方針の中でかなりダブる部分があるんですね。四年前にこういうことを決められている。  私は、削減をしていくというのは当然のことだと思いますが、審議会を削減するだけではやはり問題点の解決にはならない。やはりその一番大きな問題点として指摘をされているのは、要は、人選が不透明じゃないか、役所が自分たちの意見を通しやすいように、役所の考えに沿った人たちを結局は任命してしまうんじゃないか、役所による役所のための審議会と言われても仕方がないような状況が続いてきたんじゃないかと。しかし、四年前には多少そういったことを改めるべく閣議決定をされたにもかかわらず、どうも余り是正をされていないんじゃないか。こういう審議会の総覧なんか見てみても、まだまだ、やはりそれぞれの省が抱えている審議会に、その省庁のOBでありますとか、たくさん入っているという現状がございます。  そこで、この審議会、一体どういう形で委員の人選がされているのか、その辺を具体的にお願いできますか。
  136. 太田誠一

    太田国務大臣 すべての省庁のことは存じませんが、私が知っている範囲では、やはり事務方が、こういう人でどうかということでリストを持ってくるのが普通でございます。
  137. 山本譲司

    山本(譲)委員 長官、非常に正直に言っていただいて。  大臣任命になっていますけれども、それが、大臣が細かくその人選までするということにはなかなかなっていないんじゃないか。結局、例えば、総務庁でいいますと、三月八日に、統計審議会というのは委員がかわっていますね。これは細かいことを御存じなのかどうなのか。あるいは、野田大臣もいらっしゃいますけれども、自治省で地方公務員共済組合審議会というのが、これは四月の八日に新しい委員が出てきていますけれども、これは別に質問じゃないです、なかなかこれも大臣が陣頭指揮をとってこの人だということには実はなっていないんじゃないか、任命権者が大臣であっても。しかし、その辺をやはりきちんとルール化をして、その選び方というものもオープンにしていただきたいと思っています。  特に、今、審議会委員の人数というと、これは細かくは聞きませんけれども、五千ぐらいになるんでしょうか。その中で、結局は、国会承認が必要な委員というのは何名でいらっしゃいますでしょうか。
  138. 河野昭

    ○河野(昭)政府委員 十一年の四月現在で百五十六人でございます。
  139. 山本譲司

    山本(譲)委員 まあ、これは非常に少ない、もう一割にも満たない、五分にも満たないという形で、結局は、これも裁量行政の典型的なところにこの審議会の人選というのもあるんではないかということを強く感じます。  そこで、この審議会、特に問題なのは、やはり委員の中に官僚のOBがたくさん入られている。四年前のこの閣議決定でも、当該省庁の出身者または現在当該省庁の顧問、参与にある者は原則としてこれをその委員に任命しないという文章が、これは明文化されて、閣議決定でされているにもかかわらず、結局、その後、審議会の会長までが官僚のOBによって占められてしまっている。一向に改善をされていない。閣議決定をされても、結局はむだだったということでございます。  特に、官僚のOBの中でも、今回の基本方針によりますと、これは、常勤委員というのはなくしていくということですか。常勤の委員。非常勤と常勤がいる。
  140. 河野昭

    ○河野(昭)政府委員 先ほどお話しになりました、今回閣議決定いたしました審議会等の運営に関する指針におきまして、委員につきましては、原則として非常勤にするということを決めておるわけでございます。
  141. 山本譲司

    山本(譲)委員 これはちょっと後で長官に感想を求めたいんですが、今、常勤委員が、全体でこれは四十八名ですか、その中で、行政経験者、官僚OBが半分以上だ。特にこれはその給与を見ているとすごいですね。この官僚OBの常勤委員、これは官僚OBに限らないんですけれども、常勤委員の給料が、一般常勤委員が月額百十八万五千円ですね。委員長や会長ですと月額百三十四万六千円。これだと、特殊法人の役員への天下りと同じようなお金で、ボーナスも入れますと年収で二千三百万円以上になるというのがざらでございますよ。  結果的に、これは、今回、常勤委員を抱えている審議会がありますが、二百十一の審議会を九十に減らす、九十が存続するわけですけれども、常勤委員がいる委員会は全部存続になっているんですよね。これじゃ、これは一つは天下りの問題もありますし、さらには、官僚的な発想でありますとかあるいは省益中心的な考え方、これが一向に改まらないのではないかと思います。その点について、長官、どうですか。
  142. 太田誠一

    太田国務大臣 まず、国会承認の、同意人事のお話をされましたけれども、それは恐らくほとんどが、審議会は、企画立案、法律、いわゆる基本政策の審議に関する審議会と、それから法律が定まった後にその執行について、例えば行政手続上にやる審議会と、二つございます。そういたしますと、そういう不服申し立てのような、行政不服審判のような機能を持った審議会とはきちっと分けて考えたいと思っているわけです。政策の企画立案については、そういう国会同意の人事はもうほとんどないと思います。そこにあるのは、国会同意人事というのは、法律の執行にかかわる行政不服審判的な機能についてあるんだ。  それからもう一つ、今の常勤の委員も同じでありますけれども、それも同じく法律の執行にかかわるところにいるわけであります。つまり、そこは何というか、許可、認可みたいな、認める認めないの話を、行政的な手続をどんどん進めていくようなところでありますので、常勤であることが必要であるとか、あるいは客観的であるために国会同意が必要であるということで、そういうことになっております。  その部分については、執行の方については今回は余り厳しく改革のメスを入れていないということはおっしゃるとおりであります。今回は、専ら政策審議のための審議会について大幅な改革をいたしたということでございます。  しかし、同意人事に関しても、同意人事のときに、去年も、私もずっと見ておりましたけれども、大変高額の所得を得ておられますし、公団に行かれるのと余り変わりはないなと。そこで、大分世間の風当たりも強くて、だんだんそこは穏当な姿に変わっていっていると思いますけれども、まだ現状はそうかもしれません。
  143. 山本譲司

    山本(譲)委員 官僚の意見を聞くんだったら、別に審議会をつくる必要はないんで、役所の中で話してもらって大臣が聞けばいいわけですから。特に、常勤委員の中で官僚OBがこれだけ占めているというのを、これは是正というよりも廃止をする方向で、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思っております。いかがでしょう。
  144. 太田誠一

    太田国務大臣 先ほども申しましたように、執行の部分についての審議会というのは、名前は審議会ですけれども、実際には行政委員会のような実態があるものもあるので、にわかにそこは識別がしがたいというところで、もしそういう、今おっしゃるような、執行目的審議会の中にも常勤である者が必要でないものもあるかもしれませんから、それは今後は精査をしてまいりたいと思います。
  145. 山本譲司

    山本(譲)委員 これだけ平成七年で閣議で決めても、ある省庁の次官が会長に居座る、新しくまた選任をされるということもありますので、ぜひここは政治力で、リーダーシップを持ってやっていただきたいと思います。  委員会、これは内容を見ていますと、私もこういう国の委員会に入っていらっしゃる方と意見交換をしたりする機会がございますが、どうも、六十人以上の委員がいる審議会なんか二けた以上ありますよね。これは、総会が二、三時間とすると、全員話したとしても一人当たり一分か二分しか話せないというような審議会で、結局はシナリオは全部官僚が書いてしまうんじゃないか、そういう心配があるわけでございますし、現にそういう運営をされているという指摘を委員を経験なさった方からも伺っております。  そこで、重要なのは、やはりそういった審議の内容の公開をきちんとやるのかどうなのか。先日のこの委員会で、分権関連で都市計画の問題で質問をしたとき、都市計画中央審議会、この議事録を出してくれと言ったら、原則公開なんですけれども、今の時点では出せません、委員の先生方に許可を受けないと出せません、こういうことで、議事要旨しかもらえなかったのです、国会議員に対しても。議事要旨というのは大体項目だけで、内容なんてほとんどないですね。こういうものを、議事要旨まで含めて、公開をしたら、公開が進みましたというようなとらえ方。  実はこの間の総務庁とのやりとりで、情報公開、これだけ公開が進みました、こう言われるわけなんですが、二百十一の委員会のうちに、議事録を公開するというのは、これは資料によりますと百三審議会ですよね。これはやはり審議会本体の情報公開をさらに徹底するのと、もう一つ、今回の基本方針の中でも、審議会の下部組織として、分科会でありますとか、あるいはその下にまた部会を設けることができるという規定があるのですが、そこに関しては、人数の制限ですとか情報公開とか、そういうところは余りかかっていないように見受けられるんですよ。それと同時に、国家行政組織法の八条に載っている審議会だけではなくて、いろいろな問題を指摘されています私的諮問機関、いわゆる懇談会等というんですか、これに関しても情報公開というのはほとんどやられていない、全くやられていない。  この辺の、審議会及び私的諮問機関、こういうものに対する情報公開については、長官、どうお考えでしょうか。
  146. 太田誠一

    太田国務大臣 山本委員のお考えと私どもがやろうとしていることはちょっと違っておって、あくまでも政策審議のための審議会を問題にしたわけでありますので、政策審議については、内閣総理大臣内閣の責任によって政策は決めるものでありますから、その過程でだれに聞いたか、あるいは、だれがどのぐらい時間をかけて何を言ったのかということは余り問題ではなくて、最終的に主任の大臣なり内閣総理大臣がどういう結論を出すかというところがすべて大事なんだ。  その経過というのは、だれに聞いたかというのは、結局、それはあくまでも諮問でありますから、大臣なり内閣総理大臣が、自分がこの人の意見を聞きたいという人から聞けばいいわけであって、それはだれかれに押しつけられるものではない、その人から聞けばいい。そして、別に、そこに十人いれば十人十色で、別々の意見を言ったとしても、それを無理に一まとめにする必要はないということになりますよね。最終決定権は内閣の方にあるんであれば、そこで十人の人が別々のことを言ったって問題ではないわけでありますから。  依然として今の公開のことにこだわられるのは、そこで審議されたことが直ちに結論になるというふうに考えればそこは大事かもしれないけれども、そこは別に結論になるかどうかもわからない、十人十色のままで終わる可能性が多いのであれば、公開をするしないというのは余り問題ではないと思うのであります。  そこで、公開をすることは別にやぶさかではないけれども、発想の原点が少し違うということを言いたいわけです。要するに、公開をすることはいいことですよ。経過はわかる方がいいから、それは進めていくべきだと思いますけれども、ただ、そこに余りこだわられる価値はないんじゃないか。
  147. 山本譲司

    山本(譲)委員 多分、四年前に聞いても、十年前に大臣にそう聞いても、諮問機関については、あるいは審議会については、そう答えられる方が多かったと思いますよ、当然そうであるべきですし。ところが、そうじゃなかったというところに問題があるわけで、精神論としてはわかりますし、また、尊重義務を外したというところは一つの効果だと思いますが、いずれにしても、これだけ審議会に対する国民の批判も多いわけですから、それは、痛い腹を探られないように、どんどん公開すればいいじゃないですか。  そういう公開をぜひ積極的に行っていただきたいと思いますと同時に、最後に、この審議会、本当は私的諮問機関のことも言いたかったんですけれども、薬害エイズの問題のあのエイズ研究班というのも、何百とある私的諮問機関ですよね。ここに五百万ぐらいの助成金を厚生省は出しているわけですよ。それが結局、ある意味ではこれは結論を出したわけです、それに役所全体が従ったというような流れになっていますので。その辺はきっちりと、これはあくまでも研究機関なんだ、その辺をしっかりと認識して、私的諮問機関改革というのもしっかりとやっていただきたいと思っています。  いずれにしても、これは、本来、国会をもっと活用すべきじゃないか。民間の意見を聞くんだったら、公聴会あるいは参考人招致といろいろあるわけですから、これは私ども国会に携わる者全員の反省点として、ぜひ国会に、単に受け身の法案審議ではなくて、そういう立法過程まできちんとやるということをやっていきたい、やっていただきたいと考えております。  最後に一つ、これは自治省ですが。  これは通告をしているわけじゃないんですが、宝くじを自治省はやられていますよね。これで、今コマーシャルでもやっていますが、昨年の法改正で、今三億円ジャンボなんて盛んにやられています。しかし、最近、マスコミの一部が報道されておりますように、その収益金の分配が一体どうやられているのか、この辺に問題があるんじゃないか。  これはそもそも、当せん金として国民に還元をされる率も四六・何%ですから、ほかの公営競技と比べたらかなり低いわけで、それに、天下り先である、例えば日本宝くじ協会でありますとか財団法人自治総合センターに直接巨額な資金が回されているという実態があります。  さらに、本来、各自治体の財政に組み入れられるべき地方自治体分、三九・五%ですね、これが再び中央に吸い上げられるようなシステム。例えばサマージャンボは、自治体を素通りして財団法人の市町村振興協会、さらにその金の二〇%が全国市町村振興協会に上納される。さらに財団法人自治体国際化協会。さらに、財団法人の地域創造というところは、平成十五年までに二千億の基金造成をする。これも地方に配分された宝くじの収益金を還元する、逆に吸い上げていく。これは、本当に宝くじの収益金が役所のいわば地下金脈になっているんじゃないかなんという指摘もあるわけでございます。  地方分権を標榜して、これから本当に自治省に頑張ってもらわなきゃならないんですよ。機関委任事務の区分のし直しとかいろいろやっても、このような別ルートでとんでもない、ある意味で中央が地方からいろいろなお金を収奪するというようなことが、地方分権の旗振り役の自治省がこのようなことをやっているというのはやはり問題だと思います。  ぜひその点についての感想と、あと一つ、やはりこの額なんかもしっかりと公開をしていただきたいと思っていますので、四点の資料要求をしたいと思います。  宝くじの収益金、これは総額幾らかということが一点。そして、宝くじ収益金の各公益法人への配分状況、これはいかがか。それと、当該公益法人の天下り状況。そして、当該公益法人の事業内容。この四点をぜひ要求したいと思っています。
  148. 高鳥修

    ○高鳥委員長 理事会において協議いたします。
  149. 山本譲司

    山本(譲)委員 ぜひしっかりと出していただきたいと思っております。  地方分権推進を担う官庁というのは自治省をおいてないわけでありますから、この自治省にかかわる問題で、ぜひその辺をはっきりとさせていただきたいと思っています。
  150. 高鳥修

    ○高鳥委員長 時間が来ておりますので、答弁は簡潔に願います。
  151. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 時間切れ間際にちょっと聞き捨てならぬ表現がなされたものですから、私は非常にフェアでないと思っています。地下金脈であるとか、あるいは中央が収奪するとかいうのは、大変不適切な表現であると私は思っています。  今日まで、この問題については国会でも何度か議論もされて、その際、必要な資料の提供あるいは説明をきちんと堂々とやってきたと私は考えております。  時間がありませんので、この点について、なお一層、透明度を高くしてしっかりやれという励ましであろうとあえて好意的に受けとめて、この程度でとどめたいと思います。
  152. 山本譲司

    山本(譲)委員 終わります。
  153. 高鳥修

    ○高鳥委員長 次に、並木正芳君の質疑に入ります。
  154. 並木正芳

    ○並木委員 公明党・改革クラブの並木正芳でございます。  大変審議が長時間にわたっておりまして、各大臣ともお疲れのことかと思いますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げます。  御承知のとおり、今回の改正の柱として、行政の簡素効率化スリム化ということがあるわけであります。当然ながら、中央省庁を一府十二省庁に統合するといういわば器の見直しだけで行政が簡素、スリム化するわけではありません。まして、規制緩和や地方分権を先行させて、中央省庁の仕事を先に減らして、その上で再編をやっていく、そういう経過にはなっていない。こういうことからすると、今後、よほどの覚悟を持って行政の簡素効率化に取り組まなければならないんじゃないか。我々公明党・改革クラブは、そういう意味では、これは入り口にあるというふうに考えているわけです。  そういう中で、これまでの太田大臣のお答え等をお聞きしていると、どうも省庁再編、地方分権、こちらの方は自治大臣の方ですけれども公務員定数削減、このようなことについて、その決意のほどをもう一度伺っておく必要があるんじゃないか、そのように思うわけです。  先日の我が会派の石井議員の質問に対しても、いわゆる公務員定数二五%削減、こういうことでございますけれども、削減すればサービスが低下するけれどもそれでもよいのかというような表現のお答えがありました。まさにここのところが問われているわけでありまして、人数を減らせばすぐサービスが低下する、それでは何の工夫もないわけでありまして、まさにそこのところでめり張りのきいた人事、言われるところの小さな政府実現、これを目指すという橋本前総理が提唱されました行革路線、これが継続されてきているのではないかというふうに思っているわけです。  ともすると形だけが継続されて、その行革精神がどこかへ行ってしまう、いわゆるつけかえとか数合わせで終わってしまいがちだというふうな感があるわけですけれども、この辺についてもう一度、総務庁長官太田大臣官房長官、継続的な行革路線という中での決意、それを伺っておきたいと思います。
  155. 野中広務

    野中国務大臣 委員御承知のとおりに、行政改革は、国の行政組織及び事務事業の運営を簡素かつ効率的なものにいたしますとともに、その総合性、機動性、透明性の向上を図ることによって、戦後の我が国の社会経済構造の転換を促進し、自由かつ公正な社会の形成を目指そうとするものでございます。  この基本的理念に沿いまして、二十一世紀の我が国にふさわしい行政の姿をお示しいたしましたのが、ただいま御審議をいただいておる中央省庁等改革関連法案及び地方分権一括法案でございます。これらと関連いたしまして、公務員定数の削減につきましてもきちんと取り組んでいく旨、改めてきのうの委員会において太田総務庁長官が発言をしたところでございます。  さまざまな行政改革課題につきまして、基本認識が薄れているなどということは全くないと確信をしておる次第でございます。
  156. 太田誠一

    太田国務大臣 昨日も述べましたように、十年二五%削減の方針につきましては、自民、自由両党の合意を受けて政府方針として閣議において正式に決定したところであり、政府としては、自自連立の合意を尊重して、与党とも密接に連携しつつ、この方針に沿った定員削減を実施いたします。  すなわち、中央省庁改革基本法に盛られているとおり、各府省の定員の少なくとも十年一〇%の計画的削減を進めるとともに、独立行政法人化という行政組織改革による一層の定員削減を強力に進めまして、増員の徹底した抑制を図ることなどにより二五%純減を目指した定員削減を実現するために、必ず実行いたすという覚悟でございます。  そこで、今並木委員には、恐らくこの法案のあらかたも、あるいは特に方針の部分もお読みをいただいたと思うわけでございますが、橋本内閣でもって非常に大胆な構想を打ち出したわけでございますが、その細部については、一部にリストが挙がったものもありますけれども、実際には、これはただリストだけであって合意はできていなかったわけでございますから、それを、八十九の事務事業につきまして独立法人化するということのために、事務局も我々もどれだけ血を吐く思いをして頑張ったかということは、ぜひ御理解をいただきたいわけであります。  そこで、具体的にリストを挙げ、そして具体的に合意を取りつけるということこそが、各論で行政改革が成功したか失敗したかということを見ていただけることであります。抽象的にこういうことをやるべきだと言うことはできるけれども、しかしそれは総論であって、総論で幾らいいことを言っても、各論でできなければ何にもならないわけでありますから、リストを挙げる勇気をまず出す。そして、それを実行する粘りと実行力と情熱というものが必要なわけでありまして、それについて、私は、いささかもここでその種の批判を受けるいわれはないというふうに思っております。
  157. 並木正芳

    ○並木委員 決意のほどはお伺いしたわけですけれども。  社会経済的に言うなら、ソ連が崩壊して冷戦構造が終わった、その結果として、いわゆる市場経済時代といいますか、マーケットが物事を決めていく時代が到来した。そうした中で、日本も、これまでの官主導と言われたいわゆるキャッチアップ型の、言いかえるなら管理された市場経済、こういうところから規制とか行政介入をどんどん外して、選択肢を広げながら公平な競争を行っていく、そういうグローバルな市場経済時代に入ったわけであります。  当然ながら、こうした時代に合わせた仕組みが必要であり、それが今回の省庁再編だということで、そのとおりに趣旨が示されているわけでありますけれども、つまり、国民の多くが、いわゆる市場が、大きな政府負担にもう耐え切れずに悲鳴を上げているという状況である。であるならば、その悲鳴を素直に聞いて、しっかりと将来的展望を持った明確かつ計画的な削減策を示すべきだ、こういうふうに思うわけです。  今、その方向性というものはお聞きしたわけです。しかし、具体策となるとなかなか、努力はする、一〇%削減についても当初の計画どおり着々とやっていくというようなお話もあったわけですけれども、実際上、機関、業務の独立行政法人化、こういうことで見込める人員削減というのも約七万人ぐらいというふうに言われています。五十四万六千人の公務員の二五%といえば約十三万六千人、その半分ということで、さらに計画的に一〇%を十年にわたって減らしていくということですけれども、一方では、八十六機関、業務というのは公務員身分を維持していくと。  こういうことでは、いわゆるスリム化の中二階をつくっていってしまう。しかも、これまでも特殊法人、役割は終えたといいながら、なかなかなくしていけない。これからは評価が厳しくなっていく、しかも第三者的な評価まで加わっていくということでありますけれども、こうした中、公務員削減というのが、独立法人化で公務員身分を維持するところにみんなつけかえていってしまうのじゃないか、こういうような疑問もあるわけなんですけれども、もう少し突っ込んだ具体策が今の時点で示せないのでしょうか。
  158. 太田誠一

    太田国務大臣 これは、十年一〇%削減ということと、それから全体として二五%の定員削減、二重にここは自分自身を縛っているわけでございます。そしてそれは、たびたび申し上げますように、小渕内閣閣議決定でございますから、ここはまさに小渕内閣の命運をかけてお約束していることでございますので、その詳細はまたおいおい詰めていくことになると思いますけれども、定削の一〇%と全体として二五%ということは、これは、そこにかけているということで御理解を賜りたいのでございます。  そして、あと独立行政法人の話でございますが、先ほども申し上げたのですけれども、具体的なものがないとおっしゃるのですけれども、八十九の独立行政法人化は合意済みのものでございますから、何年か後には必ず実行されるということで合意している分でございますから、これはもうそういうふうに、絵にかいたもちではなくて、文字どおりもちそのものになっているというふうに御理解をいただきたいわけでございます。  そして、それが国家公務員の身分であるということがどうかということもたびたびここでも御意見がございましたけれども、国家公務員の身分というのは、これは言ってみれば、保護司さんや統計調査員、あるいは行政相談員の方々も国家公務員でありますから、国家公務員の身分ということ自体が何か身分保障を直ちに言うわけではありません。  しかし、ここで御注目いただきたいのは、定員管理の責任は独立行政法人の長にゆだねられていることでございます。そして、その独立行政法人の長は、特別職であって、業績が、実績が悪ければ途中交代を求められるということになっているわけでありまして、民間企業の経営者とほぼ同じ緊張感を持ち続けなければできないという仕事でございます。当然、それに伴って報酬なども変化するものになっていこうかと思います。  そして、自己責任でそれは動かしてもらって、その経営内容はディスクロージャーをするということでございますから、もちろん仕事の内容は、単に効率性だけではなくて適正性、つまり、その法人が設立された目的に対して適正にその目的を果たしているかどうかというところ、二つの柱でもって評価をされるわけでございますけれども、そこに配属された方々は、今までのような親方日の丸では絶対できない状態になるわけでございます。御理解いただきたいと思います。
  159. 並木正芳

    ○並木委員 太田大臣は、その辺、人事面においても、官僚の天下りもあえて規制しない、結果主義として問われるものをということで、ある意味では、方向性としてはこれからの方向性に合っているのかと思います。  ただ、独立行政法人の中には、研究機関等々、あるいは博物館とか、これは客観的評価をどう出すかはこれからの話なんですけれども、独立採算といっても、なかなか評価が難しいものがあると思うのです。そういうことになると、結局、それなりに理由をつけていくと、特殊法人のようにサンセットすることはできなくなってしまうというふうにもなりかねないと思うのですけれども、そのところをもう一度お願いします。
  160. 太田誠一

    太田国務大臣 評価が難しいということは、そのとおりであります。今合意をしていただいておりますほとんどのところは、簡単に評価できないということだと思います。ただし、これはどういうふうに考えるかというと、結局は、納税者の納得が得られるかどうかという問題でありますから、独立行政法人の長に求められる能力は、言ってみれば説明責任を果たす能力だと思います。  随分と、国立の博物館や国立大学の共同施設の、大変世間で我々の尊敬しております大家の方々にも、何人にもお目にかかっております。そのときに恐れながら申し上げておるのは、これまでは、自分たちがどういう仕事をしているのかというのは、大変高度なことでよくわからないだろうということで説明をされなかったことがあるかもしれないけれども、独立行政法人になれば、そのことは、どうやってかみ砕いて、どうやって本質を損なわないように、納税者に対して、有権者に対して説明できるかということが、その独立行政法人が将来どうなるかの運命を決めるんですよということを僣越ながら申し上げているところでございます。そういう世界だと思います。
  161. 並木正芳

    ○並木委員 その辺の仕組みとしてはわかりますので、今後、経緯を見守っていきたいと思います。  ところで、スリム化をしていくには、財政事情というものもあってスリム化せざるを得ない、一方では、スリム化する中では、やはり財政事情をよくして、雇用とかも確保していかなければこれまたスリム化もできないという、パラドックスみたいなものに陥るわけです。  さきの六月一日ですか、大蔵省の発表によりますと、九八年度の一般会計税収も十一年ぶりに五十兆円台を下回る、こういうようなことであります。今後、企業が過剰債務の処理に本格的にこれから取り組んでいくと思うわけです。当面、法人税とか所得税の回復は望めないのじゃないか、つまり、財政状況はさらに厳しくなるんだというふうに考えます。  こうした中でスリム化も進めなきゃならないというところなんですけれども、この辺の財政状況大蔵大臣、見通しはいかがなんでしょうか。
  162. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先般、九兆円の減税を所得税、法人税等々にわたっていたしましたことは御存じのとおりでございますが、それは決して、財政事情がそれを許した、余裕があるという意味ではなくて、むしろ、この経済を正常な状態に戻しませんと財政そのものも実は再建が難しい、そういう状況の中で減税をお願いいたしたわけでございます。  したがいまして、そのような状況でございますから、ただいまお話のありましたように、平成十年度、既に三月に終わっておりますが、国庫の締まりますのはもう少しございまして、ただいま最終的に法人税が入ってきているところでございますが、ここまでのところで、個人所得税、申告納税は、昨年定額減税をいたしましたこともございまして納税者が激減をいたしまして、申告納税につきましては既にかなりの減収が確定をいたしております。法人税につきまして、いまだに収納が終了していないわけでございますけれども、ここへ来まして、各企業が赤字決算をすることを大変にちゅうちょなくやっておられまして、余りいい傾向は見えておりません。したがいまして、法人税収につきましても何がしかの不足があるというふうに見込まれます。  その他でプラスが見込まれる税種目は少のうございますので、全体といたしましては税収の不足は避けられない。六月の終わりごろになりませんと確定的には申し上げられませんが、傾向としてはそうでございます。  おっしゃいますように、かつて我が国が、昭和六十二年でございましたか、六十兆円国税がございましたので、今それが五十兆をさらに割り込むという状況で、非常に悪い状況でございます。  今、企業には設備投資の意欲は見えませんし、またリストラ等々でこれはどうしても、いわゆる個人消費は弱含みだと考えざるを得ませんので、その両方から判断いたしまして、まさに御指摘のように、これは地方税においても同じことなんでございますけれども、税収は非常に落ち込んで、なかなかそこから脱却する気配が見えないというのが実情であると思います。  御指摘のとおりでございます。     〔委員長退席、杉山委員長代理着席〕
  163. 並木正芳

    ○並木委員 最近のいろいろな経済調査機関の経済見通しでも、非常に成長率を軒並みマイナスとしているわけです。また世銀も、ことしの日本の見通しはマイナス〇・九%。さきの日米首脳会談でも、さらに一層の景気対策等の継続をしていただかないと、日本の先行き、景気回復の先行きというのは厳しいんじゃないか、こういうようなことであったと思いますけれども、小渕総理はこういう中でもなお〇・五%成長を見込めるんだというようなことなんですけれども、なおそういう見解でしょうか。官房長官から。
  164. 野中広務

    野中国務大臣 我が国の経済の最近の動向を眺めてみますと、景気は、民間需要が御承知のように低調なために極めて厳しい状況にあるわけでございますが、各種の政策効果に下支えされまして下げどまりつつあると言われております。また今後は、平成十一年度の予算の効果も本格的にあらわれてくることが期待をされておるところでございます。さらに、来る六月十一日に産業構造転換・雇用対策本部を開催いたしまして、雇用対策と産業競争力の強化対策を一体として取り組んでまとめていきたいと考えているところでございます。  一方、我が国経済は、委員御承知のように民間活動がその主体をなすものでございますし、特に国際環境の変化には予見しがたい要素が多いと考えられますこともございますけれども、現在は、あらゆる対策を効果的に進めるよう、まさに内閣を挙げて全力で取り組んでいくということに尽きると思っておるところでございます。
  165. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 恐れ入りますが、ちょっと訂正させていただきます。  先ほど、六十兆円国税収入がございましたのを昭和六十二年度と申し上げました。平成二年度の誤りでございます。失礼いたしました。
  166. 並木正芳

    ○並木委員 〇・五%成長を目指していくということなんですけれども、そういうことになると、年度後半に向けてさらに景気刺激策を行わなければならないというのが大方の経済通の意見かと思います。  しかし、こうなればまた赤字国債だ、そういう赤字国債がまた先行きの景気の足を引っ張る。そして、こういう状況を繰り返していくということになると、さらに厳しいリストラあるいは雇用の失業率の増大、こういう悪い方に循環していくんじゃないかというふうに考えるわけなんですけれども、〇・五%の成長確保のために、こうした後半に向けた補正というのを、官邸はあえて赤字国債発行も辞さずやっていくようなおつもりなんでしょうか。その辺について、官房長官あるいは大蔵大臣
  167. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まさに仰せられましたようなことが私どもの今一番悩んでいるところでございます。  殊に、今も官房長官からもお話がございましたが、ここで企業のリストラが一段と進行をいたしまして、これはどうしても雇用に響いてまいりますので、雇用が深刻になりませんためにはあらゆることをしなければなりません。それは必ずしも公共事業をふやすようなことではないのでございましょうけれども、ともかく、これがこれ以上深刻にならないためにはいろいろなことを考えてまいらなければなりませんで、その中には恐らく、もとより歳出に関係のあるものが何がしかはあると考えておかなければなりませんしいたしますが、本年度は、御承知のように当初から三七・九%の国債依存をいたしておりますので、これにさらに上乗せをする余裕はあるとは思えない。  したがいまして、既にいたしております政策の効果がこの四—六月期、それは多分九月の最初ごろにわかってまいるわけでございますけれども、私どもとしてはかなりの効果を及ぼして、そして、ずっとここのところ四半期ごとにマイナス成長をいたしてまいりましたけれども、その動きが逆転をしてプラスに転じていくということをいろいろに祈念しながら、現在のこの予算の施行をいたしておるところでございます。
  168. 並木正芳

    ○並木委員 時間が余りありませんので、まだあれなんですけれども、非常に厳しい経済情勢がわかったということです。  そういうことからして、このいわゆる行政コストというものの削減、これはまさに待ったなしだということだと思います。ですから、これは大変、省庁再編も地方分権も時間のかかる問題ですけれども、悠長に構えているわけにはいかないというふうに思うわけです。  そうしたことからして、緊急性、こういうものを要するというふうに考えるわけなんですけれども、ちょっと大臣等々のお話では、難しい面というのを強調される余りかもしれませんけれども、かなり、そうした財政的に待ったなしだというような危機意識からくる省庁再編あるいは地方分権、こういう意識にちょっと乏しいんじゃないか。二十一世紀という百年にかけて、その初頭にそれなりのシステムをつくればいいんだというふうな、そちらの気持ちの方が強いような気持ちもするんですけれども、その辺についてそれぞれ、太田大臣あるいは野田大臣からお聞きしたいと思います。
  169. 太田誠一

    太田国務大臣 私がお答えするのは少し僣越かもしれませんけれども、昨年の参議院選挙はどういう選挙であったのかといえば、財政構造改革とそして行政改革と、特に財政構造改革の方にウエートを置いて橋本総理が政権運営をされて、そのことが真っ向否定されて、退陣のやむなきに至ったと思っております。そして、それを受けた小渕内閣は、その方は国民がオーケーと言わなかったということで、もって行政改革を今一生懸命やっているわけでございます。  ですから、今私どもが言っておることは、今の状態から抜け出るためには、将来どうなるのかという姿をはっきり国民の前に示すことでもって将来の不確実性をなるべく少なくして、確実なものにして、その見通しのもとでみんなが生涯設計を立ててやっていけるように、早く将来の政府の姿、国民政府の関係をはっきりさせることが大切だというつもりで行政改革に取り組んでおります。
  170. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 先ほど来、日本経済の厳しい状況等についての御議論もございました。今日の情勢は、それは単に経済の一分野に限定されたことだけではなくて、結局、明治以降今日までやってきた近代化という中で、それぞれ、個人なり企業なり、あるいは地方公共団体なり国なり、そういったものが、今までのやり方というものをもう一遍きちんと、根底から組み立てをやり直そうじゃないか、またそれを迫られているという一つの作業の一環にあると私は思っています。  そういった意味で、経済動向についても、そう簡単に通常の好景気、不景気という循環論的な対応だけではできないんだ、構造的な対応、企業自身のビヘービア、業界の慣行、そういったあらゆる分野から、今そういう意味での本格的なリストラクチャリングに着手をしておられるということを反映していると思っています。  そういう一環として、官対民の関係あるいは国対地方の関係、どうやって組み立てをやり直すかという大作業をいろいろそれぞれの分野でやってきて、今回、中央省庁の再編についての法案と国と地方の関係の分権に関して、今日まで調ったところで、その段階でお出しを申し上げている。  ただ、財政関係については、主として先ほど申し上げた経済関係を反映して、国、地方の税財源の配分まで踏み込んでいないということはこの委員会で御答弁申し上げておるとおりでありまして、そういう意味においては、今回の地方分権に関係する一括法に関して言えば、百点満点でそろったということではございません。  ただし、これはたびたび申し上げておりますが、小さな一歩のように見えるかもしれませんが、鉄道のレールのポイントの切りかえみたいなところがありまして、これが将来に向けて非常に大きな意味を持つ踏み出しであるというふうに私は考えております。
  171. 並木正芳

    ○並木委員 大臣お二人にちょっと失礼な言い方かもしれませんでしたけれども、いわゆる役所の長としてでなく、まさにこの改革がなそうとしている政治主導、そういう中でのお話をお聞きしたいということで、役所という中での悠長さというものでないものをお聞きするために今質問させていただいたわけですけれども、それぞれに、それなりの決意をお聞きしました。ありがとうございました。  ところで、一方、雇用の問題なんですけれども民間は、どんどんリストラを進めながらそれぞれの生き残りを図っておる。ここでまた、行政財政状況等を踏まえてスリム化をしていかなきゃならない。こういう中で非常に、「前門の虎、後門の狼」というような状態であるわけで、こういう状況を克服しなければこの改革もなしていけないというところなんです。  御案内のとおり、今春の四年制大学卒業者のうち、就職希望者の内定率というのが九割を切ったというようなことでありますし、また男性の完全失業率が五%に達して、女性も含めた全体の水準ももう既に五%目前だ、さらに六%までいくのじゃないかといういろいろな分析まである。こういうふうに雇用情勢というのは一段と厳しくなっているわけであります。  そういうような中で、産業等々もシフトチェンジして、雇用創出に役立つ、そういう方向性にしていかなければならないというふうに思うわけですけれども官房長官、お忙しいでしょうから、最後に一つ、その点についてお聞きします。  たまたま、昨日の午前中にも、産業競争力の活性化のための会議、それで総理もお話しになられたようですけれども、いわゆる二十一世紀に向けた、日本経済の転換と雇用創出に役立つと言われている、三Kと私呼んでいますけれども高度情報化、環境、高齢化、こうした産業に向けてのシフトチェンジ、さらには都市部の開発、こうした効果がすぐにあらわれるような、都市再開発とかあるいは福祉インフラ、そういうものへの減税策とか、こういうものも進めていくべきだと思います。  そうした産業へのシフトチェンジ、さらにはこういう投資減税、これは大蔵大臣の分野になるわけだと思いますけれども、その辺についての具体的なビジョンがあれば、お聞きしたいと思います。
  172. 野中広務

    野中国務大臣 先ほども申し上げましたように、産業再生と雇用の問題とは、切り離すことのできない重要な課題でございますので、それぞれ、現在関係者が御努力をいただき、御提言をいただいておるところでございまして、来る十一日に取りまとめをいたしたいと考えておるところでございます。  今委員おっしゃいましたように、二十一世紀に向けた、我が国経済の転換と雇用の創出に役立つと言われる分野は、委員がただいま御指摘になりました、それぞれ、都市の開発とか情報インフラとか、あるいは教育、人材育成、福祉インフラ、環境など、さまざまな分野が言われるわけでございます。  わけても、情報投資とか環境対策など、このような政策目的に対応して種々の租税特別措置等を講じているところでございますけれども、税制上の特例措置を検討するに当たりましては、その効果の有無、手段としての妥当性等の観点から十分な検討が必要であると思っておるわけでございます。ただ、既存の優遇税制をこの際見直し、真に必要なものに限定するという視点は重要であると考えておるところでございます。  いずれにいたしましても、雇用問題及び産業競争力の強化につきましては、先ほど申し上げましたように、小渕総理より、産業構造転換・雇用対策本部を開催して、特に深刻な雇用対策及び産業競争力強化の対策を取りまとめるよう指示されておるところでございますので、内閣挙げて取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。
  173. 並木正芳

    ○並木委員 時間があと二十五分ほどでございますので、次に移らせていただきます。  今回、省庁再編によって、財政金融が分離される、かねての約束というか、そういうとおり、そういうふうになっていくということですけれども、我々公明党・改革クラブは、金融危機管理と破綻処理の企画立案機能は共管でいいのではないか、こういう提案をさせていただいたわけです。ちょっとその違いというか、現状においては国民銀行の破綻問題とかこういうものもあって、これから地銀とか第二地銀にこうした破綻が波及するおそれもあるわけですけれども、これを現実に処理しているわけです。  この辺で、共管とするメリット、そしてこれは共管でなければならないんだというような処理の、財政出動云々も、もちろん財政出動を伴うということでございますけれども、多寡でいえば、何でも財政出動が伴ってしまいます。国防の緊急出動のときにもこれは莫大な財政出動を必要とするかもしれないし、そういうようなことでは、あれもこれもということになるわけなんですけれども、具体的に、金融の破綻処理という中での共管のメリットというのを大蔵大臣からお話しいただきたい。
  174. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 このたび御提案を申し上げております中央官庁の再編成につきましては、ごらんのように、財務省からは、その任務の中から金融という文字は一切落としてございますし、また、金融庁には金融ということを正面から取り上げておりまして、そこは国会のいろいろお考えも十分承りましていたしたつもりでございます。  そこで、今のお尋ねでございますが、現実に起こっておりますことは、今でも時々そういうことがございますが、今日、金融監督庁が大体各金融機関の、まだ全部ではございませんでしょうが、検査をずっとやっておられまして、内容をかなり的確に把握しておられます。そのことは非常に大事なことなんでございますが、しかも、同時に、こういう新しい体制になりまして、公認会計士、監査法人が自分の任務を怠ることについての結果というものを非常に真剣に考えるようになりましたこともございまして、今おっしゃいましたような事案が起こってまいります。  そういたしますと、金融監督庁あるいは再生委員会等々で、その事案をごらんになって、これは是正命令をする、是正措置を命令されて、それができればよし、できなければどうするかという判断をなさらなければなりません。そのあたりで、財務省には事実問題としていろいろな御連絡をいただいております。  そして、最終的に、さて、そのような金融機関をどういうふうに処理するか。管財人を入れて、いわば整理をして新しい買い手を待つ、あるいは、場合によっては公的資金を導入されるということもあり得ることですけれども、その際には、これは預金保険機構が公的資金の導入にかかわるわけでございますから、預金保険機構に、そこは金融庁と財務省の共管になっておりまして、その段階では、当然私どもに、財務省の方に御相談がございます。  それから、そうでないにしましても、日本銀行の特融を必要とする、金融の方で手当てをしておく必要があるというようなときにも、これは日本銀行総裁に要請をする必要がございますので、その段階でも財務省にお話がある。  そういったようなことで、現実に、金融監督庁あるいは再生委員会が金融の実態を今把握されるに至りましたので、大変に行政はスムーズに動いておりまして、ちょっと当初心配いたしましたけれども、そんなこともなく、国会がこうとお考えになられたような事態、そういう関係で、割にスムーズに動き始めておるように見ております。     〔杉山委員長代理退席委員長着席〕
  175. 並木正芳

    ○並木委員 この問題、ちょっと時間がかかるかと思いますので、一応今のメリットをお聞きしましたので、この辺にさせていただきます。  さらに、今の大蔵、今後財務省ですけれども、関係していくと思われる改正点でございますけれども総理を議長とする経済財政諮問会議が設置されて、予算編成の基本方針が示されていく。これについては、諮問会議というのが、総理が指名する大臣が二人、関係機関の長が二人、民間人が四人、総理官房長官により構成される、こういうことですけれども、この人事というのは専任になっていくんでしょうか。
  176. 太田誠一

    太田国務大臣 経済財政諮問会議は、内閣総理大臣を議長とし、内閣官房長官及び経済財政政策担当大臣、その他関係国務大臣、関係機関の長及び民間有識者を議員とするものであります。  民間有識者議員については、各分野の第一線で活躍中の、まさに経済政策、財政政策に関する第一人者に御就任いただき、その豊富な学識や実務経験をもって時の内閣の政策決定に寄与していただくことが必要であります。したがって、勤務条件等で制約のある常勤ではなく、御本人の本来の職務を行い、常に現実の経済状況に触れながら議員を務める非常勤の形態が適切と考えられます。  ですから、専任というのは常勤という意味ですね。常勤ということは想定をいたしておりません。
  177. 並木正芳

    ○並木委員 その民間委員についても、いろいろなお仕事と兼務ということになるんでしょうか。
  178. 太田誠一

    太田国務大臣 例えば、学者であれば、どこかの大学の教授であれば、第一線で活躍したままそこで御助言をいただく。会社の経営者であれば、経営者のまま御助言をいただくということです。
  179. 並木正芳

    ○並木委員 ところで、具体的に予算が編成されるプロセスなんですけれども、これは、諮問会議基本方針を示す、実際には財務省が予算を作成するとありますので、財務省が省庁間の折衝を行って、そして予算をつくっていく。この辺の、基本方針と具体的な予算編成のプロセスと、その辺がどうも不明確じゃないか。この担当、諮問会議の下に、特に予算調整の人間が内閣府の中では実際あるのかないのか、多分ないんじゃないかな。  すると、実際には財務省がほとんど省庁間折衝、調整を行っていく。そしてまた、その予算を閣議が決定していく。そういうふうな運びになっていくと、今の閣議も事務次官が閣議前に調整していく、そういうことになっていくと、諮問会議基本方針が形骸化しかねないんじゃないか、こういう危惧もあるんですけれども、その辺はいかがなんでしょうか。
  180. 太田誠一

    太田国務大臣 省庁再編後の予算編成のプロセスはこういうふうになるわけであります。  経済財政諮問会議内閣総理大臣の諮問を受けて予算編成の基本方針について調査審議を行い、内閣総理大臣を議長として、関係国務大臣民間有識者等の合議によって取りまとめられたその答申等は、閣議決定を経て内閣の重要政策に関する方針となります。ですから、予算編成の基本方針が内閣決定をされると、そこがすべての基本になります。  この閣議決定された予算編成の基本方針に基づいて、財務省が概算作成等の具体的な予算編成事務を予算折衝を含めて行い、閣議決定を経て内閣として政府予算案を作成し、国会提出されるものであります。  また、予算編成の基本方針は、閣議決定により内閣の方針となり、各省に対して拘束力を持つことになるため、各省の予算関連事務や折衝もこの方針に基づいて行われることになるため、形骸化するおそれはないわけであります。  なお、内閣府は、経済財政諮問会議の事務局機能を担うとともに、内閣官房の企画立案を助けるものでもあり、経済財政政策を担当する局長級分掌職などが予算編成の基本方針の諮問会議における調査審議を補佐し、内閣官房の企画立案を助けることとなるわけでございます。局長級分掌職がそれを助けるということであります。
  181. 並木正芳

    ○並木委員 一方、財務省の所掌事務には決算の作成もあるということですけれども、各省庁とこの総務省の行政評価委員会の評価が、決算から新たにつくる予算へとどのように取り入れられていくのかなと。具体的なプロセスですね、財務省が決算という数字をまとめていく、それをまた諮問会議が、この評価委員会が出してくる評価を勘案して新たな基本方針を組んでいく、こういうことなのかなというふうにも思います。  その場合に、すぐに決算というのが新たな予算に反映していく、今はどうもそういう要素が弱いわけなんですけれども、そういうふうなプロセスが、スピーディーに評価が反映されるシステムになっていくのかどうか、この辺についてはいかがなんでしょうか。
  182. 太田誠一

    太田国務大臣 政策評価については、政策について評価を行い、それを企画立案に反映させる仕組みとして制度設計したものであり、評価の結果については、中央省庁等改革推進に関する方針において、「各府省は、政策評価の結果が予算要求等の企画立案作業に反映されるようにすること」といたしたところであります。総務省等の政策評価結果が、各府省の予算要求段階及び予算編成の過程において適切に反映されることが重要であり、今後、政策評価の仕組みの具体化を進めてまいりたいと思います。
  183. 並木正芳

    ○並木委員 これは、決算が新たな予算に反映する、そういうシステムですね。今どうもその辺が、決算を行っているのは、もう既に予算がすべて終わってしまってからというふうなことになるわけなんですけれども、その辺についてのスピードというのを何らか変えていくような考え方というのは含まれてくるのでしょうか。
  184. 太田誠一

    太田国務大臣 この私どもの今の枠組みの範囲の中では、決算をそこに活用してやるということは視野には入れておりませんでしたが、それは当然これだけにとどまるものではございませんから、当然それは今後考えていかなくてはいけないことだと思います。
  185. 並木正芳

    ○並木委員 では次に、環境省のことについてちょっと、環境大臣、真鍋大臣においでいただいていますのでお聞きしたいのですけれども、環境省へと既に昇格、移行したような表現であったかもしれませんけれども、そういうふうになっていくわけなんです。ところが、廃棄物、鳥獣愛護などの分野が加わるけれども、その人員が三十人そこそこじゃないかというようなことですね。現状で定員が研究所を除いて約七百人。千人省庁と言われて、調整機能的な役割しか果たしていないということなんです。予算も約八百億円と、先進諸外国に比べて、率直に言って大変少ないというふうに思うわけです。  日本とほぼ同じ所管事項であるのがドイツと言われておりますけれども、ドイツの場合は原子力対策も、放射能対策というのも含んでいるということですけれども、これが約二千百人の人員を擁しているというようなことです。  先般の太田大臣の答弁でも、環境省はスリム化で最も優遇された官庁で、局が一つも減らなかったというのは環境省と外務省の二つしかない、こういう発言もあったわけです。環境問題は、しかしながら、これから地球的規模で取り組まなければならない、現に取り組んでいるわけですけれども。温暖化防止の問題あるいは廃棄物対策、環境ホルモン、ダイオキシン問題、さまざまな化学物質の問題、さらには国土保全等々、こういう使命と役割というのはますます増大の一途であると思いますけれども、環境省の強化について、林野庁を移行してその人員も加えていくというような話もあるわけですけれども、こういう定数枠も含めてどのようにお考えか、太田大臣と真鍋大臣のお答えをいただきたいと思います。
  186. 太田誠一

    太田国務大臣 環境行政の使命と役割の重要性は十分認識をいたしております。  環境省設置法案において、環境省に一元化または共管することとされた事務や他府省に対する調整、勧告等の機能について、中央省庁等改革基本法の趣旨を忠実に反映するように明確に位置づけたところであります。単に局を減らさなかったというだけではないわけでございまして、調整、勧告というリーダーシップをとる機能を踏まえた上での判断でございます。環境行政の全般にわたって適切な機能を発揮することができるようになるものと考えております。  また、今後決定されることとなる環境省の組織等についても、現行の環境庁に比べ、事務が増加することなどに伴う機能の充実については考慮してまいりたいと考えております。
  187. 真鍋賢二

    ○真鍋国務大臣 並木先生からいろいろと御意見をちょうだいいたしたところでありまして、私も、ぜひこの多岐にわたる環境行政の中で人員増を求めてまいらなければ諸問題を解決することは不可能だ、こう思っておるわけであります。  そこで、せっかく二〇〇一年の省昇格を機会でございますので、私は、この時点でやはりもう一度見直しをしていただかなければならないと思っておるところであります。他の省庁と比較して幾らというだけでなくて、環境省がしょって立つ大きな任務があるわけでありますから、その責務にこたえられるような体制をぜひとっていただきたいと思っておる次第であります。  他の中央省庁との再編成の中で人員のやりくりをしなければならないわけでありまして、やはり組織というものが時代とともに変わっていくわけでありますから、要らなくなったとは申しませんけれども、必要度が少なくなったところからはぜひ人を派遣してもらって、そして、まさに優秀な環境マンとして行政の責任に当たっていただく体制をしいていかなければならないと私は思っておるわけであります。その点についての御理解と、そしてまた増員に対する御協力をぜひお願いいたしたいと思う次第であります。
  188. 並木正芳

    ○並木委員 これは簡単にお答えいただければよろしいのですけれども、最近、環境犯罪というのが増加しております。不法投棄とかいう現象的なものから、化学物質等になるとかなり高度な知識を要するような、データの改ざんとか、これから公表していくようなものも多くなる過程で、そういうようなデータ改ざんみたいなものもふえてくると思うのですけれども、警察とは別に、厚生省では例えば麻薬取締官、こういうようなものがあるわけですけれども、環境Gメンといったような専門の取締官も置いていく、こういう環境省。今後の課題かと思いますけれども、そういうものもいかがかなと考えるわけですけれども、せっかくおいでいただきましたので、真鍋大臣の見解をお願いします。
  189. 真鍋賢二

    ○真鍋国務大臣 廃棄物処理とかダイオキシン、環境ホルモン等々の問題につきまして、十分な目配りをしていかなければならないと思うわけであります。  そこで、先般も私、くぬぎ山の周辺を視察させていただきましたけれども、産業廃棄物の処理場が林立しておるのを見まして、何とか整理を図っていかなければならない、それがためには地方行政のお力添えもいただかなければならないし、また国としてもそれだけの監視体制をつくっていく必要があるのではないだろうかと思っておるわけであります。今後、検討課題として、ぜひこの問題についても取り組ませていただきたいと思う次第であります。
  190. 並木正芳

    ○並木委員 最後に、自治大臣地方分権についてお聞きいたしますけれども地方分権については、規制緩和もそうですけれども、よいことばかりではない。つまり競争ということが、地域間競争等々生まれてくると格差の問題というのも生じてくると思います。  自立というのが不可欠であるわけですけれども、そういうふうな格差ということになると、今度は自立したがらない地方があるのも現実かとも思います。  という中で、やはりこれは、分権というとそれなりの格差というのもある程度は認めざるを得ないのかなと思うのですけれども、是認すべきなのかどうなのかということですね。それと、どう是正していくのかというようなものがあろうかと思います。  補助金の一括交付方式というのもとっていくということですけれども地方交付税の制度を根幹から見直す必要があるんじゃないかと思うわけです。基準財政需要額方式というのが地方の中央依存と活力低下あるいは財政赤字の原因、こういうふうになっていると思いますけれども、地域間格差の是正という点ではドイツ方式というようなこともあるわけですけれども、税財源を移譲した場合の格差の問題について、大臣、どのようにお考えでしょうか。
  191. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 前半、後半、二つの御質問かと思うのですが、基本的に、地方が自分たちの地域のことを主体的、自立的に責任を持って決定していこう、そういう構造をさらに推進していこうというのが今回の一つの分権推進の流れの中での我々の判断でございます。そういう点からすれば、御指摘のとおり、地域間において取り扱いにそれぞれ濃淡の差が出てくるということは当然容認をされるべき世界であると思っています。  ただ、その中身が格差を生じさせてはならないような制度年金の問題があったり、あるいは国のいろいろな統計をとる上で基本的な、共通的な部分はぜひお願いしなきゃならぬことだとか、そういう点でどうしても共通事項ということ、これがあることはまた当然のことであります。  それから、財政的な面で、今地方交付税についての抜本見直しのお話がありました。  この点について、基準財政需要、基準財政収入、それぞれの計算において、現状においてもかなり配慮はなされていることだと思っております。多少技術的なところになりますから詳しくは申し上げませんけれども、今日においても、例えば財政需要の算定の仕方というのは、人口などの客観的な指標を用いて、標準と言うと言葉は悪いわけですが、一応そういう典型的な一つの指標という形を基本にしておりますから、地方団体がみずからの自己努力によって財政健全化や行革の努力をして歳出を削減するという場合には、当然その部分は交付税から減らされるということにはならない仕組みになっております。  一方で、基準財政収入というものの計算の仕方におきましても、法定外普通税とかあるいは超過課税、この部分は算定外にいたしておりますし、また、標準的な税収入の計算というのは、都道府県では八割、市町村では七五%をカウントする、つまり、一〇〇%をカウントしないということによって自主努力できるような余地をつくるように配慮いたしておるということでございます。  ただ、いろいろなやり方があろうかと思いますが、基本的には、まず地方税自身をどうやって組み立てていくか、それをカバーしていくような一般財源を交付税によってどうやって確保していくか、そして同時に、今度の分権推進によって仕事が地方にどんどんふえてくるというようなこともあって、特にそれに伴う財源の裏づけ、補助金の統合化等々もございます。そういったことをどうやって一般財源化していくか、そういったこともあわせて考えていきたいと思っております。
  192. 高鳥修

    ○高鳥委員長 並木君、時間が来ておりますのでよろしくお願いします。
  193. 並木正芳

    ○並木委員 時間もございますので、最後に一点だけ。もう大口委員もおいでになっていますので。  今回の改正点であります地方事務官制度の国と地方との峻別、こういうものについては、過去からの経過措置について現行の都道府県との間ですみ分けたものだということで、それ自体が地方分権に大きく資するとは私は考えていないわけなんですけれども、今後、この入り口から地方分権の受け皿づくりとしての現行の都道府県制度改革、つまり、道州制の導入とか市町村の合併促進、こういうものを図る必要があると考えますけれども、最後に自治大臣に簡潔に、簡潔にしにくい問題かもしれませんけれどもお答えをいただいて、質問を終わらせていただきたいと思いますけれども、よろしくお願いします。
  194. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 市町村の合併については、今回、合併特例法の改正、詳しい内容はもう時間の関係上申し上げませんが、御案内のとおり、かなり強力に前進できるように法改正を盛り込んでおります。  それから、道州制のことに言及がございましたが、地方分権推進委員会の勧告におきましても、それを受けました分権計画におきましても、この点はそのことをも視野に入れて検討しようということが書かれております。この点は、特に都道府県という問題はかなり定着をいたしておるということも現実でございます。  いずれにせよ、地方分権推進していく上で、その受け皿の基盤強化ということは何よりもまた大事なテーマでもございますので、その点も踏まえて鋭意努力をしてまいりたいと思っております。
  195. 並木正芳

    ○並木委員 どうもありがとうございました。
  196. 高鳥修

    ○高鳥委員長 次に、大口善徳君の質疑に入ります。
  197. 大口善徳

    大口委員 公明・改革を代表して質問をさせていただきます。  今回、地方分権一括法、中央省庁の再編法につきまして、特にきょうは教育行政について質問をさせていただきたいと思います。  昨年の九月に、中教審、今後の地方教育行政のあり方についての答申が出ました。そして、その中で、地方分権推進し、より地域に根差した主体的かつ積極的な教育行政を展開できるよう、関連する諸制度の多様化、弾力化を進めるとともに、国、都道府県及び市町村の役割分担を見直し、国、都道府県の関与を縮減する、こういうことで、さまざまな地方分権、要するに、国と地方公共団体の関係、また都道府県と市町村の関係、教育委員会と学校の関係という形でいろいろと答申がなされているわけでございます。  そして、今回は、答申の一部については法改正ができておりますが、まだまだこれからではないか、こういうふうに思うわけでございます。そこで、こういう答申も踏まえながら、今の教育制度のあり方について御質問をさせていただきたい、こう思います。  一つは、教員の年齢構成、また平均年齢、今どうなっているか、そこら辺からまず現状を確認したい、こういうふうに思います。  一つは、一番最新のデータでいきますと、平成七年ですか、小学校の先生は四十・五歳、中学校で三十九・六歳、高等学校で四十一・九歳、こういうふうに平均年齢がなっております。  今後どういうふうに推移するか、二〇〇〇年、二〇〇五年、二〇一〇年で私なりに試算をさせていただきました。その結果、これは昨年度末の教員数を基礎として、現行の六次の教職員配置改善計画の最終年度、十二年度になるわけですけれども、これの改善数、それから毎年の退職見込み数、教員定数の自然増減、児童生徒の増減による教職員の増減率、この見込みをもとに、新規採用者、これをすべて二十二歳で採用されたもの、そういう仮定をして機械的に試算をしました。  そうしますと、二〇〇〇年で、義務教育については四十二・四歳、高等学校については四十三・二歳、それから二〇〇五年には、義務教育が四十四歳、高等学校が四十四・一歳、二〇一〇年、これも義務教育が四十三・三歳、高等学校が四十四歳、こういうふうに、高齢化と言ってはなんでございますが、そういうものがかなり進む傾向にある、こう思うわけです。  この現状について確認させていただきたいと思います。
  198. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 平成七年度の教員の平均年齢につきましては、先生御指摘のとおりの統計となっております。  また、今後の見込みにつきましては、先生御指摘の一つの計算ということでございますけれども、いろいろな仮定がございましたように、そういった仮定を前提にすれば、大体平成十七年度ぐらいまでで子供の減少数が減っていくというようなこと、あるいは現在の三十代、四十代、五十代の教員の年齢構成等々を見ますと、ほぼそういった傾向で落ちつくのではないだろうかと思っているところでございます。
  199. 大口善徳

    大口委員 次に、年齢構成についても調べさせていただきました。  これも平成七年度を見てまいりますと、例えば小学校の平均をとりますと、四十代が二三・一%、五十代が一五・九%、四十代と五十代を合わせたものは三九%でございます。  それから中学校につきましては、四十代が二六・二%、五十代が一六・一%、四十代、五十代合わせますと四二・三%ということになります。  高校でいきますと、もう少し進んでおりまして、四十代が二八・四%、五十代が二四・六%、四十代、五十代合わせると五三%、こういう現状でございます。  そしてまた、東京都あるいは大阪府また静岡県、こういうことで調べてみましたら、さらに高齢化が進んでおります。まず、東京都は平成十年五月一日現在、大阪府も平成十年五月一日現在、静岡県は平成十一年五月一日現在。これで見ますと、小学校の場合でありますが、四十代が四三・九%、それから五十代が二六・〇%、四十代と五十代合わせますと六九・九%、これは東京都の小学校の姿であります。  次に、大阪府の小学校の先生の年齢構成を見ますと、四十代が五九・六%、それから五十代が二三・六%、四十代と五十代合わせて八三・二%、こうなります。  それから静岡県で見ていきますと、これは地方都市ということで見ましたが、これでいきますと、四十代が三九%、そして五十代が一九・五%、五八・五%が四十代、五十代でございます。  中学校について見ますと、東京都でいきますと、四十代が四〇・九%、五十代が一六・〇%。大阪府の場合は、四十代が四九・九%、五十代が一九・一%、合わせますと六九%。それから静岡県で見ますと、四十代が三五・二%、そして五十代が一六・一%、合わせて五一・三%でございます。  また高校で見ますと、東京都の場合、四十代が三六・五%、五十代が二四・九%で、四十代、五十代で六一・四%。大阪府は、四十代が四九・五%、五十代が二四・五%、合わせて七四%。そして静岡県で見ますと、四十代が二八・三%、五十代が二九・五%、合計五七・八%が四十代、五十代である。  こういうことで、全国の平均よりも特に東京とか大阪はさらに高齢化が進んでいるという現状がございます。これについて確認をしたいと思います。
  200. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 一つ一つの数字、必ずしも全部チェックできませんでしたのでなんでございますけれども、大方の御指摘につきましては、ほとんどそのとおりかと思っております。
  201. 大口善徳

    大口委員 そして、これも二〇〇〇年、二〇〇五年、二〇一〇年、こういうことで試算をしてみました。これは、やはり昨年度末の教員数を基礎として、現行の第六次の教職員配置改善計画の最終年度、十二年度の改善数、それから毎年の退職見込み数、教員定数の自然増減数等をもとにして、新規採用者をすべて二十二歳でという仮定で機械的に試算しました。  小学校、中学校合わせて、義務教育でまとめて考えました。二〇〇〇年で、四十代が三九・九%、五十代が二一・六%、六一・五%が四十代、五十代であるというのが二〇〇〇年の見込みであります。  それから、これが二〇〇五年になってまいりますと、四十代が三八・五%、五十代が三一・二%、四十代、五十代合わせて六九・七%。二〇一〇年の見込みを見てみますと、四十代が二九%、五十代が三六・八%、合わせて六五・八%。  高校の見込みを考えてみますと、二〇〇〇年で、四十代が三三・二%、五十代が二六・五%。二〇〇五年で、四十代が三九・〇%、五十代が三〇・九%で、合わせて六九・九%。そして二〇一〇年でいきますと、四十代が三二・二%、五十代が三五・五%、四十代、五十代合わせて六七・七%。  こういう見込みで、二〇〇〇年から二〇一〇年にかけて四十代、五十代が六割から七割近くになる、こういう見込みに私の試算としてはなったわけです。これについて確認させていただきます。
  202. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 今後、各都道府県がどのような採用を行うか確定ができませんが、先生、一つのお考えでそういった、先ほど述べられたような仮定で計算するということでありますれば、ほぼ御指摘のような形になるのだろうと私ども思っているところでございます。
  203. 大口善徳

    大口委員 かかるように、教育現場においての先生の高齢化が確実に進んでいる。しかも、大阪あるいは東京はそれが非常に深刻な状態になっている。こういうことについて、文部大臣としてどのような感想を持たれているか、お伺いしたいと思います。
  204. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 お答え申し上げます。  平成十年度末の教員の年齢別構成において、三十年代後半、四十年代の教員が他の年齢層に比べて多くなっているということから、今後数年間に年齢構成比として四十代、五十代の教員数が大きくなり、平均年齢が上昇するのではないかと考えられます。御指摘のとおりでございます。  私どもも、どうしたらいいかいろいろ考えているところでございますが、ただ、このことにつきまして、若い教員が少なくなり活力が失われるという見方も一方でございますが、一方では、経験の豊かな教員がふえて教育活動が充実するという考え方もあるわけでございます。学校教育に与える影響につきましては、教員の年齢構成をもって一概には言えないのではないかと考えておりますが、さまざま検討をしているところでございます。
  205. 大口善徳

    大口委員 私は、やはりあるべき年齢構成というのはあると思います。年齢によって決めつけることはできません。しかしながら、傾向性として、例えば年をとればそれだけ保守的な考え方も出てくるでしょうし、そしてまた、もっと言えば、これからの採用、新しい人を採用していく枠が非常に狭まっている。こういうことは非常に大きな問題になってきているわけでございます。  要するに、今、大学の教育学部の教職課程といいますか、これを出ても学校の先生になれない、こういう現実がありまして、それこそ、教育学部の教職課程の大学の教授なんかに聞いてみますと、気のきいた人はなかなか教師を志望しなくなっていると。  というのは、教師の待遇が格段によくて、もう何が何でもなりたいという、純粋に待遇ではなくて使命感に基づいて教師を目指す人もいらっしゃいます、難関を突破される方もいらっしゃいます、それだけでいいのか。やはり、大変狭き門の割にそれほどの待遇でもない。そうなれば、いろいろな選択肢が学生にはあるわけですから、教職課程の方に向かないということも、教師の志望というのが、余りにも狭き門であるがゆえに志望者自体がどんどん減っていく、こういうようなことも教育現場において危惧をされている、こういうふうに思っております。  そこで、そのことを数字で考えてみますとどういうことが言えるかといいますと、これも文部省から資料を要請いたしましたが、それによりますと、新規採用者数というのが非常に長期減少傾向にある。  昭和五十年度、小学校の先生は一万七千七百七十七人採用されました。中学校は九千六百三十一人。そして、高等学校は六千四百一人。合わせまして三万三千八百九人が昭和五十年度に採用されています。では、今はどうかということで平成十年度を見てみますと、小学校は四千五百四十二人、およそ四分の一になっています。中学校も、四千二百七十五人ということで半分になっています。高等学校も、三千四百十九人ということで半分になっているわけであります。そういうことで、非常にこれは採用数が少ないということでございます。  では、教育学部の定員を見ていきますと、最近の入学定員もこれはもう急激に減らしております。平成七年度で一万九千二百十五人の定員、教員養成課程は一万五千八百四十五人。それが平成十一年度では一万五千四百九十五人で、一万一千二百七十人が教職課程。こういうことで、定員をどんどん減らしているわけでございます。  そこで、では、見込みについてどうか。これも計算しますと、まず二〇〇〇年と二〇〇五年と二〇一〇年で見込みを出してみますと、大体、小学校については、二〇〇〇年では四千六百人、二〇〇五年で一万人、二〇一〇年で一万五千人になってくる。ですから、だんだん採用の数はふえてくるわけですけれども、この十年間ぐらい非常に厳しい状況が続くわけです。  それから、中学校は二〇〇〇年は七百人です。もう一挙に六分の一ぐらいになったわけですね。四千二百七十五人が七百人になるわけですね。二〇〇五年では四千人、二〇一〇年で七千人。高等学校は、二〇〇〇年が三千八百人、二〇〇五年が二千人、二〇一〇年が六千人、こうなっているわけです。  そこで、例えば平成八年、一九九六年に教育学部そして教職課程に入った人は一万五千八十人いるわけでありますが、これは大体小学校を目指すわけですけれども、その場合は四千六百人しか採用がない。そうなってきますと、教職課程一万五千八十人のうち四千六百人しか小学校の先生になれない。こういうことで、これが例えば社会科なんかで見てみますと、ある国立大学の社会科でいいますと、三、四十人が社会科を目指していても三、四人しか先生になれない。  こういうことで、今細かく数字を述べてまいりましたが、今大臣は、年齢構成とは一概に言えないとおっしゃいましたが、採用が大きく揺れておりまして、安定的に教員を出していくということに対して非常に深刻な事態が生じているわけであります。  ですから、やはり新規採用者を確実に、ある程度、志望する学生も安心して見込みがつくような形にしていかないと、本当に、四年前に入ったけれども、ほとんど三分の二は小学校の先生になれなかったということになりますと、これはやはり志望者も少なくなってしまいますし、安定的に質の高い教員を養成していくということに対して、非常に大きなマイナスになってくるわけです。そこら辺のことについて、大臣、どうお考えですか。
  206. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 御指摘の点は、私どもも大変心配をしているところでございます。今特に、教員養成学部をどうしていくか、あるいは大学をどうしていくかという問題が一つございます。  御指摘のように、近年、児童生徒数の減少により教員採用数が著しく減少してきております。教員養成課程の平成十年三月卒業生の教員就職率は、臨時的任用を含めて約三五%という状況になっております。御指摘のとおりでございまして、この減少傾向は、今後、当分の間は続くと考えられております。このため、教員養成課程の入学定員を平成十年度から平成十二年度までの三年間に五千人程度削減する、約一万人体制とすることといたしております。  教員の需要につきましては、今後変動が予想されているため、今後とも、教員養成学部の定員については、卒業生の教員就職状況等を見ながら、必要に応じて見直しを図っていきたいと考えております。しかし、これは重要な問題と考えている次第でございます。     〔委員長退席、杉山委員長代理着席〕
  207. 大口善徳

    大口委員 そこで、重要な問題と大臣認識をされている、しかしながら、なかなか新規採用者をふやせないと。それは財源の問題が一番の問題でありましょうが、そういうことで、今は文部省としても壁にぶつかっていると言えると私は思うんですね。  そこで、私は、今世界の傾向がどうなっているのかということを考えていかなきゃいけない、要するに、財政で学校にどれだけのお金をかけるかということではないかと思うんですね。  日本は、一九九六年で、学校教育費の対一般政府総支出費に占める割合が一〇・二%、GNP比で三・六%、こういうふうになっておるわけです。GDPとGNPの単位は余り変わりませんので。それから、アメリカはどうなっているかといいますと、これが対一般政府総支出費は一四・四%、日本に比べて四・二%多いわけです。それからGNP比でも五%と、一・四%高い割合でございます。イギリスにつきましては、これは一九九五年ですが、今の、アメリカは九四年です。イギリスは九五年で、これも一般政府総支出費に占める割合が一〇・九%、そしてGNP比に占める割合は四・八%、こういうことでございます。  そこで、ブレアさんが教育改革というのを熱心にやっておりまして、小学校低学年、一年生、二年を三十人学級にする、あるいは、これは一九九八年の発表ですが、三年間で教育訓練への支出を年率五%、総額百九十億ポンド、四兆三千七百億円増額する、こういうふうに発表しているわけでございます。  どこも財政は厳しいわけです。しかしながら、教育はしっかりやっていかなきゃいけない、こういうことでございますので、私どもは、やはりこの際、中教審も、教員一人当たりの生徒数について欧米並みにする、こういうふうに言っておるわけです。欧米並みといいましても、教員一人当たりの数だとそんなに差はないんです、欧米と。だから、中教審でわざわざ欧米並みにすると言っているのは、欧米並みにもなっているということを前提にして欧米並みにするというのは、この答申はどういうことかなと思うわけでございます。  それはともかくとしまして、今回のこういう教職員の高齢化、それから新規採用の急減、こういうことにかんがみまして、平成十二年でこの第六次の教職員の配置改善計画が終了するわけですから、平成十三年から、確かに財政は非常に厳しいわけでございますけれども、やはりここは、学校の現場が今は大変な状況でもございますので、三十人学級というものを真剣に考えるべきであるということでございますが、大臣、いかがでございましょうか。
  208. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 幾つかお答え申し上げることが必要かと思います。  まず、公財政支出における日本負担というのが、GNP当たり、欧米諸国に比べて、アメリカ、特にイギリス、今御指摘のとおり少ないということは事実でございますが、どこが少ないかというと、実は高等教育が少ないということでございます。特に高等教育が〇・六%と少ないということが問題でございます。  それからもう一つ、クリントン政権、ブレア政権のことを御指摘でございましたけれども、アメリカ等は地方自治体が非常に教育負担を大きく持っておりますので、中央政府、クリントンの場合でありますと千四百億程度でありますし、ブレア労働党政権の場合でありますと百三十億円程度の予算措置をとったと聞いております。こういうふうに、多少日本とお金の出し方が違うということを申し上げておきたいと思います。  三十人学級についての御質問でございますが、中教審でもこのことは随分心配をいたしまして、私も、欧米並みにと主張した人間の一人でございますので、よく事情を知っているつもりでございますが、学級の大きさが違うというところがございましたのでああいう言い方をしたわけでございます。ただ、先生一人当たりの生徒数は、かなり日本も少なくなってきているということを御報告申し上げておきたいと思います。  公立学校の学級編制につきましては、教育の機会均等と教育水準の維持向上に資するため、国が全国的な標準を定めてきたところでございます。  昨年九月の中央教育審議会答申におきまして、学級編制のあり方等に関し幅広く御提言をいただいたところでございますが、文部省といたしましては、現在、今後の学級規模のあり方や学級編制の弾力化等につきまして、学校週五日制時代における新しい教育課程の実施も視野に入れまして、専門家の協力を得て検討を行っているところでございます。  財政的なことについても検討を行っているところでございます。仮に、全国一律に三十人以下の学級を実施するといたしますと、国にしても地方にしても、相当の財政負担が必要となります。この点についても十分慎重な検討が必要でございまして、現在検討を行っているところでございます。
  209. 大口善徳

    大口委員 私、御指摘させていただいたことを十分勘案していただきたい、こう思っております。  自治大臣、今までの私の質問等を聞いていただいて、財政ということになってきますと自治大臣のところにも要望することになるわけですね。今の私と文部大臣の質疑を聞かれていて、御感想と、それから学校教育費についての財源の措置についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  210. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 今三十人学級等々のお話もございましたが、基本的に、小中高校の教職員の配置というのは、もう御案内のとおり、教職員配置改善計画に基づいて教職員定数の改善が進められておるところでありまして、自治省としては、これに伴う教職員の配置については、地方財政計画において所要の人員を計上して、そこで適切な交付税措置を講じておるということは、もう御案内のとおりであります。  現在の教職員配置改善計画は、平成十二年度までの計画となっております。その後の学級規模、教職員配置のあり方は、文部省において今検討中であると承知をいたしております。  いずれにしても、ここは、そういう教育という見地から教職員の配置ということが検討されるべきテーマであろうかと思います。それに必要な財政手当てというのは、自治省としては当然していかなきゃいかぬということは一つあります。  それから、いま一つ、先ほど来、高齢化のお話がありました。ここは、教職員ということに限らず、いろいろな分野で似たようなことがあるいはあろうかと思います。その辺をどうやってバランスのとれた一つの人事管理がやっていけるのか、その辺の適正な配置ということは、自治体としては大変頭の痛い問題だと思います。それを教職という現場の中だけでやれるのか、あるいはその枠を越えた形でやれるのか、この点について、自治省から、右に左にという指図的なことをするわけにはまいらぬと思います。しかし、その辺は、いろいろ工夫を凝らしながらやっていかなければならぬテーマであろうかとは思っています。  特に、高齢化ということだけでなくて、これからは国、地方を通ずる行政の簡素効率化をしていこう、スリム化をしていこう、特にアウトソーシングをしていこう、仕事をできるだけ減らしていこうということであれば、当然のことながら、従来やっていた事務が要らなくなっていくということは当然予想される話であって、そういったことを考えれば、弾力的な人事管理のあり方というのは、十分研究していかなきゃならぬテーマであるというふうに考えております。
  211. 大口善徳

    大口委員 一つはそういうことで、三十人学級ということによって、それが子供のためにもなるし、そしてまた新規採用者というものもふやしていくことができるし、そうなってきますと年齢構成のバランスもとれる、こういうことで提案をさせていただいたわけでございます。  そのほかに、地方分権ということで、都道府県がかなり教員の定数について、そしてまた学級編制の弾力化について、中教審でも提言がなされております。そして、今回法案では法改正にはならなかったわけでございますが、これは早急にやるべきであろうと思います。  具体的に言いますと、例えば、今大規模校を前提とした部分があって、非常に小規模校、中山間地ですとかあるいはドーナツ化現象の都心ですとかいうところは小規模の学校であるわけです。しかしながら、一校当たり最低必要な教員というのは要るわけでございまして、こういうあたりについては、しっかり教員を確保するというような柔軟な対応をしていかなきゃならない。  統廃合というようなことも行われているようでありますが、特に中山間地の場合は、子供の通学の負担というのは、父兄の負担というのは大変でございます。ですから、安易に統廃合ということを考えるべきじゃない、こう思っているわけでございます。  そしてまた、学級編制の標準の弾力化ということにつきましても、まあブレアさんも、小学校低学年、一年、二年なら三十人学級というふうなことも、そういう方向で今は進んでおります。学校の中で、ではその小学校低学年、一年、二年、三年については三十人学級、それから、それ以外についてはいろいろな形でこれは工夫をしていくというようなことも、都道府県あるいは市町村、そしてまた校長先生の裁量で、学校の中における学級編制の弾力化ということを大いに進めていくべきではないか、こういうふうに思いますが、いかがでございますか。
  212. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 御指摘のとおりでありまして、弾力化を図るという必要があると思っております。  現在、教職員配置の改善や定数の弾力的運用、学級編制基準及び運用の弾力化等、その他の事項につきましていろいろ検討を図っているわけでございますが、まず第一に、現行改善計画の実施状況、第二に、今後の教職員配置及び定数のあり方並びに学級規模及び学習集団のあり方、第三に、諸外国の実態等について検討を行うとともに、教育委員会等関係者の意見を十分聞いて具体的な改善方策を検討する必要があることから、現在、先ほど申し上げましたように、文部省において、専門家の協力を得ながら、学校週五日制時代における新しい教育課程の実施も視野に入れて検討を行っているところでございます。そういうような中で、先生の御指摘のようなことも検討させていただいている次第でございます。
  213. 大口善徳

    大口委員 次に、私は、教職員の流動化ということもこれからは大事になっていくんではないかな、こう思います。自治大臣も若干今示唆されたわけでございます。その中で、一つは、コミュニティースクールの創設ということを私は提案したいと思うんです。  今回もこの法案の中で、所掌事務として、生涯学習の整備ということがうたわれております。生涯学習というものを文部省はこれからやっていくわけでありますけれども、その場合、例えば小学校、中学校、高校あるいは公民館等にコミュニティースクールというものをつくる、そして、このコミュニティースクールというところにその生涯学習の場を持ってくる。それからまた、もう一つ、職業能力の開発の場ということも、これは、大学も専門学校もないところもたくさんあります。ですから、そういう身近なところに職業能力の開発の場というものもつくればどうか。  そういうことが、今ちょうど経済戦略会議で、能力開発バウチャーという形で出てきております。これは、コミュニティーカレッジというものが想定されておるわけでありますが、カレッジのないところがあるわけです。ですから、コミュニティースクール、小中高あたりを一つの舞台としたものもあって、そしてまた、そこに能力開発バウチャー、教育バウチャーというものでもって通うということによって、それこそ生涯学習をする、また職業能力をアップする。今、失業というのは、能力のミスマッチ、こうも言われておるわけです。  現実に、地方におきまして、一部コミュニティースクールというのが実践されております。千葉県とか東京とか、あるいは静岡県とか福岡県、北九州でそういうものが実施されておるわけでございます。ボランティアでやっておるわけでございますけれども、こういうコミュニティースクールを創設し、そしてそこに、現職の教員がそういうコミュニティースクールの担い手になって出向していただく。これは、小中合わせて三万五千校あるわけで、それに全部つくったとしましたら、それだけの人が、現役の先生がそこへ出ていくことになる。そして、地域と学校のパイプ役として、コーディネーターとしてやっていただいて、そして二、三年やっていただいて、また学校現場に帰っていただく。そのことがまた、何よりの教員研修にもなるんではないか。  これを一つのキャリアコースとして、管理職へのコースとして考えていただければ、これは非常にこれから乗せていく段においても、強制ではなくて、そういう一つのコースというのを考えていけるんではないか、こういうふうに私は考えておるわけでございます。  これについて、文部大臣、そして労働大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  214. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 アメリカなどでコミュニティーカレッジというのが大変活躍をしている、重要な役割を演じているということは私もよく知っておりますが、また、生涯学習ということも重要なことであると思っております。ですから、そういう意味で、各地域において人々が自発的に学習できる環境を整備することは、極めて重要なことと認識いたしております。  生涯学習の場といたしましては、今御指摘のように、地域の公民館等の社会教育施設はもとより、学校も地域社会において最も身近で利用しやすい生涯学習の場として大きな役割を有しており、その重要性は年々増してきていると認識しております。  こうしたことから、学校の余裕教室を活用した事業に対する助成措置や、学校教育活動に支障のない範囲での教育機能や施設の開放を求める指導通知を発出するなど、既に各種の施策を講じているところでございまして、学校が生涯学習の場として充実するよう努めているところでございます。  このコミュニティーカレッジというふうなものを新たにつくっていくとなりますと、それはまた予算措置が要ることでございましょう。そういう点がこれからの問題であろうかと思っております。  また、現職の教員をコミュニティースクール等に回すことということで御指摘でございますが、教員を社会研究施設、教育施設等に一定期間異動させることは、従来から行われております。特に近年は、教職以外の経験を豊かにする観点から、さまざまな取り組みが行われているところでございます。しかしながら、公立学校職員の数が地方公務員全体の三分の一を占めているという現状を考えますと、御提案のように、教員の年齢構成の是正や採用枠の増という観点から、他の職種に配置することはなかなか難しい事情があろうかと考えております。
  215. 甘利明

    ○甘利国務大臣 一つのお考えだとは思いますが、いわゆる教養をつけるという意味での学習と、それから私の所管をしております職業能力をつける、つまり再就職に結びつけるために個人のスキルアップをする、技能や技術を向上させる、あるいは職業能力をつけていくというのは、若干その専門性が異なると思うんですね。  今、確かにミスマッチ、特に職業能力のミスマッチによる失業があるということは事実でありまして、私どもは、どうやって職業能力をつけていくか、その場をどう設定するか、それをどう使いやすくするか、どう開放するか、これに今鋭意取り組んでいるわけでありますけれども、いろいろ調べてみますと、だんだん要求される職業能力が高度化しているんですね。  例えば、昔でいえば、パソコンが使えれば一応それが職業能力として相当に就職を有利にした。ところが、今はもうインターネットが駆使できないとだめじゃないか、さらにもっと言えば、それの上の技術というもので武装すればどこでもあるけれども、単に入門程度のことであったらなかなか難しいですよとか、そのつける職業能力が次第にアップしていっています。ですから、それを教育する場も相当な専門性というのが要求されてくるのでありまして、一般の教職員の先生方がそこの場で、言ってみればプロを育てるさらに教師になり得るかということについては、ちょっといろいろ難しい問題があるかなというふうに思っております。  いずれにいたしましても、いろいろなアプローチから検討をされていくのは、それ自体はいいことだと思っております。
  216. 大口善徳

    大口委員 もう一つは、福祉の場、例えば特別養護老人ホームとか保育所ですとか、あるいは相談機関ですとか、こういう場に現職の先生を出向させる、出てもらう。こういうことによって、今、ボランティア教育というのが盛んにこれからなされます。それからまた、福祉教育ということもなされます。福祉の現場に学校の現職の先生が出向されて、そこで学んできたことをまたフィードバックして学校に戻す、こういうようなことも私は大事ではないかな、こういうふうに考えています。要するに、学校と福祉のパイプ役、コーディネーターとして、学校の先生がそういう役割を果たしていくということが大事ではないかな、こういうふうに思うわけでございます。  この点について、厚生、そしてまた文部、自治、それぞれの大臣からお話をお伺いしたいと思います。
  217. 宮下創平

    宮下国務大臣 学校教育におけるこれからの少子高齢化に向けての福祉に対する理解を深めるということは、大変これは重要なことで、御指摘のとおりだと思います。  一例で申しますと、御承知のように、厚生省としては、義務教育の教員の免許取得希望者に対しては、七日間の実習教育を義務づけているわけですね。そして、福祉に対する理解を深めた人が教育に従事してもらって、子供たちに福祉の重要性を教えていただくということが、現に平成十年から行われております。これは、私はすばらしいことだと思います。     〔杉山委員長代理退席委員長着席〕  一方、今委員のおっしゃるように、教員の方々が現場のところ、その他に出ていただいて働いていただくということも、アイデアとしては非常にアトラクティブなものだと思います。ただ、これは実際、人事政策上の問題もございますし、またこれは文部省文部大臣の話かもしれませんが、今の教職員定数が標準法で決められておりまして、それに基づいて国庫負担をいたしておりますから、そういった福祉の問題に従事する期間が長ければ長いほど、いわゆる教育として国庫負担法の対象であるかどうかというような議論等も出てまいりますので、私どもとしては、そういうことができれば、だめだというわけではなくて、いいアイデアかもしれません。  ただ、国全体として見ますと、教員配置はなかなか厳格のようでございまして、標準法できちっとしておりますから、それをあえて除外してなお国庫負担の対象にできるかどうか。あるいは、別個にやるということになると、離職している間はどうなるかというようなこと等も考えますと、現実には、そういういいアイデアであっても、実現がなかなか困難かなというような感じがいたします。  いずれにしても、教育現場における福祉の問題、それはもう、教職員の先生方が大いに理解していただくことは大歓迎でございます。
  218. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 先ほども少し触れましたが、基本的には、これからのあり方を考えますと、いろいろ配置転換ということも、考えていかなければならない大事なテーマであると思っています。  特に、積極的にそれをやっていこうとするならば、処遇の面におけるところをどうするのか、給与水準がいろいろ変わってくるでしょうし、それから、何よりもやはり、その仕事にふさわしい人材をどうやって獲得するかということが、これまた住民サービスを考えたときに極めて大事な要素でございます。  そういった点で、そういう新しい職場に適合できるのかどうか、またどうやったら適合できるように訓練なりそういった能力開発ができるのかどうか、そういったことも含めて総合的にそれぞれの自治体で考えていただき、また御努力もいただかなければならないし、関係者の労使双方の理解、努力が必要な部分もあるということを私はつけ加えておきたいと思います。
  219. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 今後の高年齢化社会の進展に伴いまして、子供たちの豊かな心をはぐくむという観点から、福祉教育やボランティア教育の推進は大変大切な課題であると認識いたしております。  まずそのためには、教員がみずから福祉活動やボランティア活動を体験し、その意義を十分に理解して指導に当たることは極めて大切なことと考えております。こういう観点から、小中学校の教職員免許状の取得に当たり、先ほど厚生大臣が御説明になられましたように、介護等の体験を義務づけている次第でございます。また、教員の研修において、福祉施設等において体験的な研修を行う長期社会体験研修も行っているところでございます。  文部省としては、今後とも、このような施策の充実に取り組んでまいりたいと考えておりますが、御提案のような人事政策としてということになりますと、厚生大臣自治大臣も御指摘でありましたが、なかなか難しい問題があろうかと考えております。
  220. 大口善徳

    大口委員 しかしながら、冒頭でも言いましたように、今の硬直した人事体系をやはりどこかで突破しなければいけないわけでして、よくこれは自治、また厚生、労働、各省庁と真剣な議論を始めていただかなければいけない、こういうふうに思います。そのほか、研修休業制度の創設とかいうのも答申には出ておりますように、民間企業への出向等もこれから検討されると思いますが、次の質問に入ります。  次に、今法案地方公務員の再任制度というのがこれから審議をされる予定でございます。教職員につきましても再任制度というのが設けられるわけでございますが、この方々も、要するに再任になりますと、フルタイムの場合は定数に入りますし、パートタイムでも時間的にフルタイムに換算して定数に入れます。そうしますと、六十歳の定年を過ぎても教員の定数の中に入ってまいりますので、ますます窮屈になって、採用される方が少なくなる、こういうことになる。  ですから私は、再任される教員こそ、やはり福祉の場ですとか、学校と地域のパイプ役、学校と福祉の現場のコーディネーター、こういう形で働いていただくことがいいのではないか、こう思うわけですが、いかがでございますか。
  221. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 現在の六十歳定年された後、学校の教職員につきましても、相当多くの方々が学校教育におきまして非常勤の講師として働いたり、あるいは社会教育部門で公民館等で働いたり、あるいはその他の分野で、公務部門におきましても、あるいは非公務におきましても、現実に再就職しているという状況でございます。  現在御審議をいただいております地方公務員につきましての新たな再任用制度導入されました際には、先生御指摘は大変大きな課題でございますので、これは具体的に、任命権者でございます各都道府県の教育委員会がどのような形でこの方々を配置していくのか、勤務条件の基本にかかわることでもございますので、それぞれの任命権者と職員団体との間での十分な話し合いも踏まえながら、適切に対処していただくよう、私どもといたしましても、さまざまな形で今後支援をしてまいりたいと考えているところでございます。
  222. 大口善徳

    大口委員 次に、教員の研修制度についてお伺いします。そしてまたもう一つ、人事考課についてお伺いします。  今教員研修というのは、経験年数で初任者研修、それから五年、十年、二十年、こうなってきています。そして、経験二十年以上になってきますと、それこそ生徒指導主事研修とか新任教務主任研修とか、教頭研修、校長研修、管理職研修になってくる。  ただ、これからは、高齢化が進んでまいりますと、管理職にならない四十代、五十代の方が当然出てくるわけでありまして、こういう方々に対しても、新しい教育事情の中で、やはり新たな研修というものを考えていかなければいけない。そういう点で、抜本的に研修のあり方も、年齢構成の変化に対応するような形で、三十年研修まで含めて考えていただかなければいけないのではないかな、こう思うわけです。それについてお伺いしたいということ。  また、次にもう一点、東京都が、それこそことしの三月に「これからの教員の人事考課と人材育成について」、こういうことで、教員についての人事考課、そしてまた人材育成ということで答申が出ております。これは、能力開発型の評価制度ということで、自己申告制度というものとあわせて、双方向でこの評価制度導入し、そしてまたその評価に基づいて、これを人事だとかあるいは定期昇給、特別昇給等に反映させていく、こういうことが答申をされているわけでございます。  教師に対してどういう評価をしていくか、そしてそれをまた、自己申告制度等をして、みずからの能力開発というものをそういう評価システムを通してやっていく、この考え方に対して、文部省はどうお考えか。この二点、お伺いします。
  223. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 まず、三十年研修等々のことについてお返事を申し上げます。  御指摘のように、教員の経験年数に応じて必要な研修機会を確保する観点から、現在は教職経験者研修といたしまして、五年、十年あるいは二十年経過といったそれぞれの節目ごとに、全教員を対象とする研修が各都道府県、指定都市教育委員会において実施されているところでございます。  これらとは別に、教職経験二十年経過の五十代、四十代といった教職員に対しては、経験年数に応じた、悉皆の研修という形ではございませんが、これらの年代の教職員の大多数が担う校長、教頭、教務主任等のそれぞれの職能に応じた研修のほか、各教科や生徒指導等に係る専門的な内容など、それぞれの専門領域、関心等に応じた専門研修が実施されているところでございます。  なお、今後の教員研修のあり方につきましては、現在、教育職員養成審議会において審議されているところでございまして、御指摘のような、教員年齢構成の高齢化をたどる問題等も審議の過程で考慮されていくと認識いたしております。  東京都のことにつきましては、局長よりお答え申し上げます。
  224. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 東京都におきましては、本年三月、教育長に対しまして、これからの教員の人事考課と人材育成についての検討結果を取りまとめて報告したところでございまして、この報告におきましては、能力開発型の教員評価制度を取り入れるとともに、自己申告制度等を導入するというようなこと、さらには、教員評価の結果を能力開発や人事異動、あるいは管理職の選考や昇給等に反映させるということを提言しているところでございます。この評価制度の具体化に向けて現在検討しているところでございまして、この検討結果に基づきます具体の制度、いつからということは決まっていないわけでございます。  私どもといたしましても、教員の能力や成績等につきまして、こういった各任命権者におきましてさまざまな研究が行われる、大変大事なことと考えておるわけでございまして、今回の東京都教育委員会の研究会において示されました教員評価制度につきましても、地方公務員法の第四十条に規定されております、職員の執務について定期的に勤務成績の評定を行い、その評定の結果に応じた措置を講じるという、この規定の趣旨に沿うものであると考えておりますので、今後の制度化について注意深く見守ってまいりたいと考えているところでございます。
  225. 大口善徳

    大口委員 最後に、規制緩和、あるいは学校に、校長先生にもっと権限を与えましょう、こういう方向性が今出ております。そういうことで、学校選択の弾力化、学区の弾力化についてお伺いしたいと思います。  確かに、東京の場合ですと、私立の小学校に一割行く、そして私立の中学に行くのは四割、もう中学校で私立に五割行きますので、要するに地元の中学校には五割しか行かない、こういう傾向性がますます強くなっておりまして、学区が一つのコミュニティーとしてだんだん形骸化していっておるという状況にございます。そういう中で、学区の弾力化をして、そしてそのことは学校間の競争にもなってくるわけでございますけれども、そういうことによって教育現場を活性化していこうということは、私は理解するところでございます。  しかしながら、これは大都市と地方中心都市、それとまた小さな市町村では、やはり違いが出ているんではないでしょうか。地方でありますと、まだ生活現場と学校現場というのが共通しておりますし、大体PTAのお母さんたちが参加して、今度は地域のこと、学区の仕事もやりましょうということで、地域のコミュニティーの担い手がまさしく学校のPTAの方であるということから、もしこの学区の弾力化ということを推し進めますと、今度はコミュニティーの崩壊ということにもつながってまいります。  そしてまた、もう一つは、学校の競争が、六歳の選択あるいは十二歳の選択、そういう現実に東京で行われているようなことが全国に広がっていくのではないか、こういうことも考えられます。また、もう一つは、学区の選択の弾力化ということであれば、やはりそれを進める方向であれば、学校の人事権とか予算等も校長先生が担わなければ、これは活性化しません。  私は、整理して言いますと、学区の弾力化は地域によってこれは対応が違うだろう、こう思っておりまして、コミュニティーの崩壊というような副産物もよく考えて、市町村あるいは都道府県でしっかりとこれは判断すべきであって、画一的にこれを推し進めるのはいかがなものかというふうに考えております。
  226. 高鳥修

    ○高鳥委員長 時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。
  227. 大口善徳

    大口委員 この二点について両大臣にお伺いして、私の質問を終わります。
  228. 高鳥修

    ○高鳥委員長 有馬文部大臣。時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。
  229. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 それでは、二点について簡潔にお答え申し上げます。  確かに、受験競争の過熱化を招くようなことは絶対避けなければいけないと思っております。各地の、すなわち市町村教育委員会等々が地域の実情に即して設定していくべきだと考えております。そういうことについて、弾力化を図りながら、地域社会とよく相談をして進めてほしいと思っております。  それから、校長の裁量を拡大することを提言しております。具体的には、教員の人事や学校予算に係る校長の裁量を拡大することを提案しておりますが、その理由は、自主的、自律的な学校運営を行うということをねらっている次第でございます。
  230. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 小中学校のいわゆる通学区の指定の問題です。これは、従来の市町村の教育委員会への機関委任事務ということから、今回は市町村の自治事務ということになりました。したがって、市町村において、コミュニティーとの関係や地域の実情を踏まえて、自主的に決定をしていただくということになるものと考えております。
  231. 大口善徳

    大口委員 以上で終わります。
  232. 高鳥修

    ○高鳥委員長 次に、石井郁子君の質疑に入ります。
  233. 石井郁子

    石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。私は、きょうは文部行政の問題で質問させていただきます。  今回の法案は、地方分権推進する趣旨で提案されているというふうに思うわけでございますが、戦後五十年、今教育は戦後最大の曲がり角に来ていると言っていいと思います。いじめ問題、子供たちの自殺、学級崩壊、大学生の学力低下など、どれを見ても、このままいけば二十一世紀の日本社会の土台を崩しかねない、こういう事態になっていると言わなければなりません。  画一化し硬直化した教育行政が学校教育、学校現場に何をもたらしたのか、このことの真剣な反省の上に、教育行政のあり方を変えなければいけない、大きく変更することが求められているわけでございます。  そこで、この教育行政における地方分権化という問題は、特に歴史的な意味があると思うのでございます。戦後の改革におきましては、明治以来続いた中央集権的な教育、あるいは画一的な統制を大胆に転換をいたしました。その場合に、第一に、教育行政の民主化の原理、第二に、教育行政地方分権化の原理、第三に、教育の自主性確保の原理、こういう見地で教育委員会などが確立、制度化されてきたというふうに言えると思うのです。このことは、その当時、文部省が発行いたしましたさまざまな出版物にも書かれているとおりでございますね。  ところが、今回の法律案を見まして、私は、教育の地方分権推進するどころか、逆行していると言わなければならないわけであります。私は、きょう、主に三点についてお尋ねをしたいと思います。  その第一は、学校教育法の改正部分なんです。ここでは、学校の設置認可、教育内容の基準設定などの主体を監督庁と定めて、附則百六条において、当分の間は文部大臣、何条は都道府県の教育委員会などとされていましたが、本則でこの当分の間がとられて、監督庁を文部省などと確定したわけですね。条文の十七項目が文部大臣と確定されたことになるわけでございます。  そこで、それこそ五十年前ですけれども、学校教育法が制定された当時、なぜ当分の間というふうにしたのかという問題なんです。この点で文部省は、行革推進本部の地方分権推進委員会のヒアリングにおきまして、このような説明をされているわけです。  学校教育法二十条で、教育課程は監督庁がこれを定めるとあり、監督庁は当分の間文部省とすることについて、古い話でわからない面もあるが、学校教育法が施行された時点で中央、地方の教育行政制度、法令が未整備であったために、こういう規定になったと考えている。これは、平成八年二月五日の会議の議事録に出ておりますけれども、なぜこのような説明をされたんでしょうか。この説明で、何かその後、変更されたというような事実はおありでしょうか。
  234. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 大変恐縮でございますが、私自身、その会議に出ておりませんので、どういった説明をしたかということにつきまして、今先生からお伺いしたところでございますけれども、おおよそ古いことでございますので、必ずしも明確でないという意識を持っていたことは事実であろうかと思います。  この点につきましては、私どもといたしましては、その議事録にもございますように、学校教育法は昭和二十二年に制定されたわけでございましたけれども、現在の地方教育行政制度を担っております教育委員会ができましたのは、昭和二十三年に教育委員会法が制定されておりまして、このときに、確かに地方制度は明らかになっていないということで、各本条におきます監督庁の規定を、附則の百六条におきまして、すべて当分の間文部大臣と、こういうぐあいに規定したということは事実でございます。  その後、昭和二十三年に教育委員会法が制定されまして、その際に、百六条も第二項が新設をされまして、例えば高等学校や幼稚園等、地方の公共団体の住民の身近な事務に関するもの、こういったものの設置認可につきましては、都道府県の教育委員会に当分の間これをさせるというようなことに条文の整理がされているところでございますので、地方制度の制定に伴いまして、それなりの整理をしてきたという事実があるわけでございます。
  235. 石井郁子

    石井(郁)委員 今の御答弁にもちょっと出ておりましたけれども、やはり古い話だという言い方は私はとんでもないと思うんですね。だって、教育基本法と並んで、学校教育法というのは、文部行政の根本となるというか、基本となる法律じゃございませんか。それが、なぜ制定されたか、そのときの問題ですから、それはもう踏まえなければいけない話だと思うんです。  この問題は、きのうの質疑でも取り上げられておりましたから、ある面で繰り返すことにもなるんですけれども、一九四七年ですよ。これは政府委員の答弁でありますから、はっきりさせなければいけません。なぜ当分の間としたのかというのは、将来は各都道府県及び市町村に教育委員会というものを予想した、それが完成した場合においては、相当部分を都道府県、市町村に移しまして、文部大臣の権限から外していこうじゃないかという考えだったということでしょう。  私は、そういうことで、改めて伺いたいんですけれども、今の局長の御答弁のように、学校教育法ができて、次の年には教育委員会法もできているわけですね。それで、教育委員会というのが発足したわけです。ですから、私は、今回の改正で、教育委員会も続いているわけでありますから、立法の趣旨を生かそうとしたのか、それともそうじゃないのか、このことはぜひ伺っておきたいと思います。
  236. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 学校教育法制定当時の昭和二十二年三月十九日あるいは三月二十四日におきます帝国議会貴族院あるいは帝国議会衆議院におきます政府委員の答弁があることは事実でございます。私ども、そういう形で、当時、制定過程におきまして担当者がそういう考え方を持っていたということは、これは間違いのない事実であると認識しているわけでございます。  先ほど申し上げましたように、こういった考え方のもとに、新たに教育委員制度ができました際にそれなりの見直しを行っておりますのは、まさに当時の政府委員の答弁の趣旨に沿った措置であろうかと考えているわけでございます。  今回、地方分権推進一括法におきまして、この百六条の規定について見直しましたのは、そういった昭和二十二年あるいは二十三年、その後も一度、専修学校制度ができました際に法律改正を行っておりますけれども、そういったこれまでの五十年に及びます国と地方の役割分担が既に定着しているという現状を前提にいたしまして、今回、現在文部大臣が行っております規定を各本則におきまして文部大臣の権限とし、都道府県教育委員会が行っております権限を各本則におきまして都道府県教育委員会の権限として条文を整理するということによりまして、今回、百六条の規定を廃止するという改正をお願いしているところでございます。
  237. 石井郁子

    石井(郁)委員 ちょっと事実として伺っておきますけれども、読みかえ規定で文部大臣と定めていたのが十七項目で、それを全部文部大臣としたわけですね。さらに、読みかえ規定で明確化されていなかったものも新たに文部大臣とされたと思うんですが、それは何項目ございますか。——時間がもったいないですから、それは後でお示しください。  教育委員制度ができて、ことしで五十年になるわけでしょう。先ほど現状が定着しているというふうに言われましたけれども、この現状というのは、立法の趣旨とは違った現状で定着しているんですね。そこが問題なんですよ。  私は、最初にお尋ねした点でまだ御答弁いただかないことがございますけれども地方分権推進委員会のヒアリングに対する文部省の説明ですけれども、その後、それは訂正されるという事実はなかったわけですね。そうすると、地方分権推進委員会の皆さんには、文部省は、これは古い話だ、それから教育委員会や学校教育制度についての法体系が、特に教育委員会、地方の教育行政制度の法令が未整備であった、だからこれは当分の間としたんだ、こういう理解で終わったとしたら、私は重大だというふうに思うんですね。(発言する者あり)そうですよ。  だから、この問題では、やはりもう一度局長の御答弁をいただきたいと思うんです。いかがですか。
  238. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 学校教育法の百六条の規定ができました経緯につきましては、私先ほど申し上げているとおりでございまして、この点につきましては、地方分権推進委員会の勧告におきましても、教育長の任命承認制度の廃止とそれに伴います新たな適材確保方策、さらには、それらに伴いまして教育委員会の活性方策、こういったものについて十分検討するようにという勧告をいただいているわけでございます。  文部省といたしましては、これらの勧告を踏まえまして、中央教育審議会におきまして、地方教育行政のあり方全般について検討を加えた結果、中教審の答申におきましては、附則百六条の規定の整理につきましては、今回法案で審議をお願いしているような形で整理するようにという御答申をいただきまして、それに従って法律改正の案文をお願いしているところでございます。
  239. 石井郁子

    石井(郁)委員 残念ですけれども、きちんと御答弁いただいていないんですね。  私は、この学校教育法の施行の当時の附則の理解をめぐって、この立法の趣旨は何だったのかということをお尋ねしているわけであります。だから、将来は都道府県に教育委員会ができる、それが完成したときには、そこに、文部大臣の権限から外して、相当の部分を都道府県や市町村の教育委員会に教育行政の権限を移していくんだとはっきり言っていたじゃありませんか。そこのところをねじ曲げているわけですね。これは本当に戦後の日本の教育行政を、ここからやはりゆがんできたと私は言わなければならないというふうに思うんです。  それから、先ほど現状がこうなっているからその現状をいわば追認したんだ、条文を整備しただけだというような御説明ですけれども、今この現状こそがやはり重大なんですね。  それは、臨教審、臨時教育審議会の答申で、既に十年以上も前にこの現状についての厳しい批判もあるじゃないですか。読み上げますと、臨教審の答申ですからまさに皆さんがおつくりになったものですよ、こう言っているわけです。  近年の校内暴力、陰湿ないじめ、いわゆる問題教師など、一連の教育荒廃への各教育委員会の対応を見ると、各地域の教育行政に責任を持つ合議制の執行機関としての自覚と責任感、使命感、それから次が大事なんですね。教育の地方分権の精神についての理解、自主性、主体性に欠ける。二十一世紀への展望と改革への意欲が不足していると言わざるを得ないような教育委員会が少なくない。  つまり、教育委員会がやはり活性化していない、地方の教育委員会にいろいろ問題があるようだ、それはやはり地方分権の精神に基づいていないのじゃないかということを言っていたじゃありませんか。そのことが、もう十年以上たって、今回の改正で、では地方の教育委員会に本当に活性化するような道が開かれたのか、そこが問題なんですよ。ないじゃないですか。そういう意味で私は質問しているわけであります。  さて、その立法、制定の当時は、やはり市町村の教育委員会に大変な権限を与えていました。これは当時の文部省が発行の、いろいろ資料がございますけれども、例えば教育委員会設置の手引だとか、ちょっと古いものですけれども、私は読んでみました。本当に重要なことが書いてございます。それは、市町村の教育委員会まで人事権、教育内容も含めて権限を移していくという方向でしょう。それで、この手引ですけれども、教育委員会の職務権限ということまで書かれておりまして、教科内容及びその取り扱いについて、教育用図書の採用に関することなど、十八項目にわたって述べてあります。  だから、法整備云々、法整備が未整備だったというのは、私はとんでもないと思うのですね。やはり当時、真剣な努力の中で、こういう教育委員会をつくろうということをしてきたじゃありませんか。それが地方分権方向だったというふうに思うわけであります。  そういうことで、私は、まさに現状、五十年以上たった今日、この地方に権限を移していくという立場に立つべきであって、それを、そうではなくて逆に文部大臣に権限を集中する、それが今回の方向だというのはとんでもないと言わなければなりません。今回は、この学校教育法の当分の間を外した分について言いますと、分権化法と言えるものではなく、むしろ文部大臣の権限の固定化だ、永久化だと言わなければならないと思うわけであります。今後、地方に教育権限を本当に移譲する気があるのかないのか、このことが一つ。  それから、私は、そういう意味では、今何も文部省を監督庁として定める必要はないし、監督庁としてこういう項目で握る必要はないと思うのです。そういうふうに考えるわけです。しかし、今回こういう法整備が出されておりますけれども、十七項目、ずっと文部大臣が権限をこの先も握って放さないというつもりなのかどうかという問題。  それから、ちょっと一つ例を申し上げますけれども、例えばこの中には、十一条で、児童生徒というか学生も含めて、懲戒という問題もあるでしょう。つまり、退学処分だとか停学処分だとかという問題は、今大変大きな社会問題でもありますし、子どもの権利条約が批准されたという状況や世界の流れを見てみますと、ここの項目などは、私はぜひこれは見直しが必要だというふうに考えているわけですけれども、そういうことも含んで、この十七項目、たくさん問題があるわけですよ。その点で、文部大臣の御所見をぜひ伺いたいというふうに思います。
  240. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 見直すことがあるかどうかということでございますが、まず、これまでの教育行政において、当分の間監督庁を文部大臣として国の権限とされたものについては、いずれも、学校教育法が制定されて以来、教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るという観点から、国の役割として定着しているものと考えている次第であります。地方分権推進計画や中央教育審議会答申で示されております国の役割に照らして、今後とも国が担うべき事務であると考えております。  なお、今回、学習指導要領を改訂し、そのさらなる大綱化、弾力化を図ったところでありますが、国が学校教育法に基づき監督庁として定める基準等の内容につきましては、今後とも、中央教育審議会答申の趣旨を十分に尊重して、必要な見直しを図っていきたいと思っています。  しかしながら、今後、地方分権の進展や各地域、各学校の状況を踏まえながら、引き続き見直しを行っていくことが必要と考えております。  国の役割というのはどういうものかということについて考えてみますと、今申し上げましたことも含むわけでありますが、教育行政においては、憲法で定められた国民の教育を受ける権利を保障するため、国、都道府県、市町村がそれぞれの責任と役割を果たしながら互いに連携協力して、全国的な教育の機会均等を確保し、教育水準の維持向上を図っていくことが基本と考えております。  このような観点からは、国は、学校制度等に関する基本的な制度の枠組みの制定、学校の設置基準や教育課程の基準など全国的な基準の設定、義務教育費国庫負担など地方公共団体における教育条件の整備に関する支援、学校運営や教育内容等に関する指導、助言、援助など、教育事業の適正な実施のための支援措置ということを担っていると考えております。  先ほど既にお答え申し上げましたけれども、さまざまな点で見直しということは今後あり得ると思います。
  241. 石井郁子

    石井(郁)委員 どうもありがとうございました。  私、二つ目の問題ですけれども、今大臣に申し上げましたように、どうも文部省が権限を固定化する、永久化するという方向が出されているということを指摘しましたが、さらに権限が強化されるのではないかということもありまして、その点で質問をいたします。  それは、地方教育行政組織法と簡単にしておきますけれども、措置要求の問題がございますね。五十二条の措置要求の項目は削除されています。そのことを見る限りは、これは全く是正勧告だとか措置要求がなくなったのかなというふうに思われるわけですが、そうではなくて、この部分は地方自治法に一本化されるということですね、ここでもたびたびいろいろ質疑がされておりますけれども。では、この措置要求、地方教育行政組織法の措置要求の規定というのは、地方自治法でどうなっていくのかということをお尋ねしたいと思います。
  242. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 従来は、御指摘のように、地方教育行政法に基づいて文部大臣が措置要求できたところでございます。今回の改正により、この規定が削除されました。  今後は、地方自治法の改正規定に基づいて、地方公共団体における教育に関する事務の処理について、それが法令の規定に違反していると認められる場合、または著しく適正を欠き、かつ明らかに公益を害していると認められる場合には、地方自治法に定める要件及び手続により、都道府県または市町村に対し、是正の要求、是正の指示を行うことができるというふうになるものと考えております。  こうした地方自治法の規定の趣旨に沿って、今後とも、適切に処理していきたいと思っております。
  243. 石井郁子

    石井(郁)委員 それでは、今の御説明ですと、結局、地方自治法のもとで是正措置要求というか勧告等々が出されていくということですが、この中身といいますのは、やはり地方公共団体が違反の是正または改善のための必要な措置を講じなければならないということで、かなり強制力、あるいは義務として課せられているというものですね。それは確認してよろしいですか。
  244. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 現行の文部大臣の措置要求に関する規定は、内閣総理大臣の措置要求に関する規定と基本的には同じ考え方で私ども解釈をし、運用しているところでございますので、今回の改正によりましても、地方自治法の一般原則に基づいてこれを行うということでございますので、従来の考え方と基本的には変わっていない、このように考えているところでございます。  なお、先ほど答弁、大変手違いがございましておくれてしまいましたけれども、百六条の第一項関係で、監督庁の権限を当分の間文部大臣としているという形で、明確に、今回百六条の規定を廃止いたしまして、本則に書きました事項が、文部大臣につきましては十四項目でございます。  これ以外に、例えば大学や高等専門学校の設置認可等の廃止あるいは大学等の入学資格等に関する監督庁の権限、こういったものにつきましては、百六条の規定の中にはこれを当分の間文部大臣とするという具体的な指示がございませんで、学校教育法本則の中に、例えば六十四条におきまして、大学に関する事項は文部大臣がこれを所管するというような権限、あるいは国立学校設置法一条の規定等に基づきまして、これを文部大臣の権限という形で従来からも運用してきたところでございまして、この際、各本則の条文におきまして、これらにつきましても、あわせて文部大臣の権限という形で条文を整理させていただいているところでございます。
  245. 石井郁子

    石井(郁)委員 措置要求の問題でございますけれども、今の御答弁ですと、地教行法五十二条で削除された部分と今度一般自治法に移された部分とでは基本的に変わらないという御答弁なんですけれども、私は、変わらないことはいいことのようには思うんですけれども、しかし、本当にそういう理解でいいのかどうか、これはちょっと事実の問題として確かめなければいけません。  といいますのは、現行法で勧告や措置要求、やはり文部省として、都道府県あるいは都道府県議会が出した部分かもしれませんけれども、出されてまいりました。その場合は決して義務ではありません。もちろん罰則もないということは、当国会での議事録にも十分あるわけですよ。私は今お話を伺って、では文部省は従来の答弁を今回変えることになるのかというふうに思うんですね。というのは、ちょっと例を出します、わかりにくいと思うんですけれども。  実はこの問題で重大なことは、教育委員の公選制の問題で、東京都の中野区というところで準公選制度を取り入れたことがございますね。三回にわたって投票があり、教育委員会の公選制度が一時期続けられたわけですけれども、この中野区の準公選制の教育委員会の実施について措置要求が出されています。しかし、措置要求は出されたけれども、決してこれは義務とかあるいは強制とかあるいは罰則を科すというものではなかったということが、国会の議事録の中には出ているわけですね。  ちょっと局長に伺いますが、では当時のその答弁は誤りだったということになるんでしょうか。
  246. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 具体的な答弁につきまして、手元にございませんので確認できませんが、中野区の準公選制度にかかわりましては、文部大臣が措置要求をした経緯はございません。これは、地方自治法の二百四十五条の規定に基づきまして、中野区の準公選条例が地方教育行政組織及び運営に関する法律に定められている法律上の権限を越えているということで、勧告という形でその是正を求めた経緯があるわけでございます。
  247. 石井郁子

    石井(郁)委員 だってこの問題は、国会でも大論議になって、議事録だって相当あるわけでしょう。だから、文部省は当然そういうことは踏まえられているわけでして、私がここで明らかにしたいことは、それは地方自治法の全体とも関係するわけですから言っているわけですけれども、これは答弁の中で、今回の地方自治法の中に盛られる是正措置要求というのはやはり法的な義務を負う、これは我が党の議員の質問に対して、法的な義務を負うのか負わないのかというふうに聞きましたら、これはやはり是正、改善する義務を負うという御答弁だったわけですね。だから、措置要求というのは、そういうことに今度はなるんだ、それを今度文部大臣がもし発した場合には、それは文部大臣か都道府県が発するかもしれませんけれども、必要に応じて義務を負うものだということになるわけですね。  しかし、先ほど局長が言われましたけれども、中野の準公選制のときの勧告というのは、文部省はやはり通知としても行政指導しているわけですよ。それで勧告もしているということですが、それはどういうものなのかということで、それに対する答弁で、この当時高石政府委員が答えていますね。地方公共団体が従わなかった場合に罰則を適用するとか罰則の規定があるというような仕掛けになっていないわけでございます、こう言っているわけでしょう。では、こういう措置要求の理解と今度の理解と同じだということにならないじゃないですか。おかしいですよ。はっきりさせてください。
  248. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 先ほどの答弁の繰り返しになりますが、文部省といたしましては、昭和五十九年三月五日付で、中野区長あて、文部事務次官名で「中野区教育委員会の委員の選任に関する事務の改善について(勧告)」という形で、先ほども申し上げましたように、今御指摘ございました地方自治法第二百四十六条の二と同じ規定でございます地教行法第五十二条に基づく文部大臣の措置要求という権限ではなくて、直接二百四十五条に基づきます主務大臣の都道府県教育委員会に対する勧告ということで通知を出してございますので、基本的な根拠条文が違いますので、委員の御指摘の今回のこの措置要求に関する答弁とは分けて御議論いただければと思う次第でございます。
  249. 石井郁子

    石井(郁)委員 そうしたら、当時も地方自治法の二百四十五条に基づいて勧告を出したということですか。そういうふうに聞いたわけですが、そういうことでよろしいですね。  しかし、私は一般的には、なぜ地方教育行政組織法の五十二条が削除されて地方自治法に一括されるのかという問題と、それから、先ほど来中野の準公選制をめぐる国会論議政府委員が答弁されていることと、今回とはやはり全然違うと思うんですね。やはり違いますよ。ですから、明らかに、今度は地方自治法の中での、文部省が一層是正措置要求ができるという権限が強化されるというふうに理解するのが私は自然ではないかというふうに思うんですね。そういう意味で、やはりこれは重大な問題だと言わなければならないと思います。  実際、先ほども文部省の方は教育委員会の問題について、いろいろ文部省のお考えもあるかもしれませんが、本当に教育委員会の活性化というような問題でいきますと、やはり地方教育行政法そのものが教育委員会の公選制をつぶし、任命制を導入するという形で、あるいは教育委員会の権限縮小という形で教育委員会の主体性、自主性をそいできたんですね。  そういうもとでこういう中野の準公選制という問題もあったかと思うんですが、私は本当にこの問題で、今教育委員会にちょっと話を戻しますけれども、教育委員制度がある、この形があるわけですから、そこにやはり魂を入れるということが大事だと思うんですが、その魂とは何かといえば、これは実は地方分権の勧告の中にもはっきりあるように、やはり住民の意向を反映させるとか尊重する、教育行政にはそれはどうしても必要なことなんですね。そういうことで考えると、本当に中野の準公選制の財産というのは、今やはり光っていると言わなければならないというふうに思うんです。  しかし、きょうはその問題でここで議論するわけではありませんので、私はどうしてもまだちょっと、先ほどの局長の答弁ですっきりはしないんですけれども、要するに、地方自治法の是正措置要求ということで、文部大臣の権限が一層強化される、今までと違った事態になるというふうに考えざるを得ないわけですが、その問題を指摘させていただいたわけであります。  三つ目の問題ですけれども、これも現行の地方教育行政組織法の第四十八条ですけれども、ここでは、都道府県または市町村の教育委員会に対して、文部省が「必要な指導、助言又は援助を行うことができる。」。「行うものとする。」という条文が「行うことができる。」というふうに今度変えられたわけですよね。この問題に関して伺いたいというふうに思います。  この指導、助言、援助は、これもまた大変広い範囲にわたっているわけでしょう。学校の組織編制、教育課程がありますし、また校長や教員の研究集会、講習会、いわば研修に当たる問題もございますし、そのほか社会教育の分野もあり、十一項目が対象となっているわけですね。  実は私は、この問題をめぐっていろいろ現場から意見も聞いているわけでございまして、例えばその中には、これは今マスコミでも時々取り上げられ、話題にもなるわけですけれども、指導要録への記入問題、この記入の仕方あるいは開示の問題というのはありますよね。  こういう事件があるわけです。これも文部省の方針のもとで、例の、関心とか意欲とか態度という新学力観と言われるもので、人格評価に当たる部分も記入しなければならないというふうになりましたね。しかし、現場では、そういうことはやはりできないと、していないところもあるわけです。ところが、ある教育委員会が、五年間にわたって記入しなかった先生を呼び戻して、それをやはり記入しろと。しかし、その先生は転勤していらっしゃるわけですね。そういうことまで起こっているわけです。それから、各都道府県が初任者研修あるいは経験者の研修などをしていると思いますけれども、その研修のときの資料、どういう資料で研修しているのか、文部省が来て、それを全部持って帰るという話もあるわけです。  ですから、文部省は本当に地方に対して、地方の自主性どころか、やはりそういう介入をしているじゃありませんか。私は、ここで伺いたいのは、こういうことが指導、助言、援助なのかという問題ですね。いかがでしょうか。
  250. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 具体的なことに関しては今お答えをいたしませんが、従来、文部大臣または都道府県教育委員会は、地方公共団体に対し、指導、助言、援助を行うものとするとされておりました。これは先生御指摘のとおりであります。今回の改正により、指導、助言、援助を行うことができると改めたものであります。  これによって、中央教育審議会の答申、昨年の九月に出された答申でございますが、それで指摘された、文部省や都道府県教育委員会の指導助言が法的拘束力があるかのように受けとめられたり、都道府県、市町村の自主的判断を過度に制約したりするなどの問題点が改善され、また、指導行政に係る文部省を初め教育関係者の意識改革が図られるなどの効果があらわれるものと考えております。
  251. 石井郁子

    石井(郁)委員 もう一度確かめたいんですけれども、今までの指導、助言、援助を行うものとするから、行うことができるというふうに変えた趣旨については、中教審の答申を引用されて御答弁されたと思うんですけれども、しかし、今の御答弁ですと、受け取る方が、都道府県や教育委員会の方が、法的拘束力があるかのように思っているからそうしたんだということですね。文部省がされる内容、文部省がされるやり方、そこが変わるのか変わらないのかということを、はっきりさせてほしいというふうに思うんですね。行うこととするから、行うことができるということで、文部省としては何が変わるんですか。具体的にお示しください。
  252. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 やはり、今までのように、法的拘束力があるというふうに判断されるようなことはなくなると思っております。そういう点で、随分変わっていくと思います。
  253. 石井郁子

    石井(郁)委員 法的拘束力がないのにあるかのように受け取っているという話も変ですけれども、もっと具体的に、私、ぜひお聞きしたいなと。文部省として、指導、助言、援助ということでいろいろなことをやっているじゃありませんか。それが、では変わらないということですね、結局。
  254. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 まず、条文上の御説明をさせていただきたいと思います。  今回、指導、助言、援助を「行うものとする。」という規定を「行うことができる。」ということによりまして、法律的な意味といたしましては、従来これが、文部大臣あるいは都道府県教育委員会の責務というぐあいに観念をされていたのに対しまして、今後は、文部大臣あるいは都道府県教育委員会の主体的な判断による権限、こういう形で、法律的には私ども整理されたものと考えているわけでございます。  中教審の答申におきましては、今後の指導助言行政のあり方といたしましては、情報の収集、提供などの支援的な機能を重視していくことという観点と、それからもう一方、学校の管理運営が教育基本法あるいは学校教育法等の基本的な法令に違反することがある場合、こういったものについては、指導ということを通じて、それはもちろん法令違反は、みずから行政執行の主体であります教育委員会や学校において、法令に基づいて正していかなければならない事項でございますけれども、そういった法令に基づいてきちっとするようにといった意味での指導、こういったものにきちっと整理していくという御指摘があるわけでございまして、私ども文部省の職員といたしましても、この法律改正をきっかけにいたしまして、都道府県教育委員会あるいは市町村の教育委員会を含めまして、こういった方向で指導助言の適切な運営が図られるよう努力をしてまいりたいと考えております。
  255. 石井郁子

    石井(郁)委員 いろいろおっしゃいましたけれども、結局、何が変わるのかといえば、どうも変わるようには考えられないわけですね。私は、こういうところも大変問題のように思っています。  関連しまして、この四十八条の二項目めなんですけれども、さらに、市町村に対する指導、助言、援助に必要な指示をすることができるというふうになってございますね。これは全く新たに加わったものじゃないでしょうか。しかも、指示ですから、法律用語的にも、都道府県に対して指導、助言、援助、さらに指示ということで、一層義務を生じさせるのではないかというふうに思うんですが、これを入れた内容、御説明ください。
  256. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 御指摘のとおり、今回、地教行法四十八条三項という規定を新設したわけでございます。これは、改正後の四十八条第一項の指導、助言、援助のうち、法定受託事務として都道府県の教育委員会が行うものに対しまして、文部大臣が都道府県教育委員会に対しまして必要な指示を行うことができるための規定でございます。  これは、地方分権推進計画におきましても、法定受託事務に対する基本的な関与の類型として認められているわけでございまして、今回、地方自治法の改正案におきまして、二百四十五条の四第二項に、各大臣は、都道府県知事その他の執行機関に対し、市町村に対する助言もしくは勧告に関し、必要な指示をすることができるという規定と平仄を合わせたものでございます。
  257. 石井郁子

    石井(郁)委員 結局、かなりというか、こういう形で指導、助言、援助、指示、いろいろ文部省が細かく指導できるという、これはやはり強化されているわけですね。問題は、しかし本当に現状でいいのかということなんですよ。私、最初にそれを申し上げました。  私は、ここでちょっと御紹介したいんですけれども、昨年は、教育基本制度ができて五十年ということで、いろいろ行事がございました。そして、いろいろな出版物もありました。これは文部省が出されているものでございますよね。この中で、私は大変びっくりする一文にお目にかかったんです。  これは前鹿屋体育大学長ですね、今村武俊先生、「教育委員会発足五十周年に望む」という文章なんです。今村先生といえば、文部省関係者の皆さんはすっとおわかりになるような、本当に文部省の中での重鎮だと思うんです。戦後ずっと教育行政の中枢を担ってこられた、文部省初中局長を初めとして各局長をされた方ですよね。その今村先生は、こういうふうに書いていらっしゃいます。  文部省としては、教育行政地方分権化、教育委員会の自主性の尊重という理念はしばし抑えても、教育行政の一枚岩の団結を確保せざるを得なかったのであるが、残念ながら、その期間が長くなり過ぎてしまった。そのため、教育行政硬直化、超保守主義を招き、国民や住民の意向を進んで実現するという態度にブレーキがかかることになった。そして、調査報告制度、補助金制度、教育長の承認制度などにより教育委員会に手かせ足かせをはめていた。手かせ足かせの拘束の中で自主性を発揮せよという注文は、どだい無理な要求というものであった。  私は、やはり本当に今、こういう文部行政、文教行政の転換が必要になっているというふうに思うんですね。こういう手かせ足かせを課してきた文部省、そして都道府県の教育委員会の役割や仕事を十分発揮させることができなかったという問題があるんですね。  この点では、後でぜひ大臣の御所見もいただきたいんですけれども、実は、調査報告制度、それから補助金制度、こういうことの締めつけが本当にきつい。都道府県、地方教育委員会ががんじがらめになっているということも私は聞いています。これはある県の教育関係者ですけれども、そういうことをおっしゃっていました。だから、文部省の言うことを聞かないと予算上不利になるんだ、その締めつけに本当に現場は困っていらっしゃるというお声があるわけであります。文部大臣のところにはそういうお声は届いていないのでしょうか。  先ほどの今村さんの文部行政に対する述懐、反省の弁について、どういうふうにお考えでしょうか。御所見を伺いたいと思います。
  258. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 この問題は、中央教育審議会でも随分問題になったことでありまして、昨年の九月に出ました中央教育審議会の答申の中で、現在の国、都道府県、市町村に係る制度と、その実際の運用についての批判がなされております。まず第一に、国あるいは都道府県の関与が瑣末な部分にまで及び過ぎているものがある。特に指導助言等については、その運用が強目に行われてきたり、あたかも法的拘束力があるかのような受けとめ方がされてきた等の指摘がございます。  今回の法案におきまして、こういう状況を踏まえた上で、地方教育行政法第四十八条の指導、助言、援助に関する規定の改正など、所要の改正を盛り込んだところでございます。これにあわせて、今後、指導助言の運用の見直し、改善など、指導行政のあり方や地方公共団体に対する関与のあり方の見直しに努めていかなければならないと思っております。
  259. 石井郁子

    石井(郁)委員 戦後ずっと教育行政を担ってこられて本当にお詳しい方が、今の教育行政硬直化、超保守主義だということを厳しく批判していらっしゃるわけですから、今本当に教育の転換が求められているときに、やはりここに真剣に取り組むべきだということを私は強く指摘しておきたいというふうに思います。  時間もないんですけれども、ずっとこの委員会でも出ていると思いますけれども、少人数学級の問題でございます。  今回のこの改正で、市町村独自で少人数学級に踏み出せるのかどうかということが大変注目をされました。しかし、結果的には、都道府県の教育委員会と事前に協議して、その同意を得なければならないというふうになったわけであります。  表現は変わりましたけれども、現行の認可を受けなければならないというのとどう違うのか。これは変わりがないのではないか、少なくとも文言上はそんなふうにしか読めないわけですけれども、これはいかがでしょうか。
  260. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 ただいま御指摘のことでありますが、昨年九月の中央教育審議会の答申におきまして、教職員配置や学級編制のあり方等に関し、幅広く提言をいただいたところでございます。このうち、都道府県教育委員会による学級編制の許可制度につきましては、現在御審議いただいている地方分権一括法案において、義務標準法の改正をお願いし、同意を要する事前協議制に改めることにしたところでございます。  現在、文部省においては、たびたび申し上げますように、学級編制基準及び運用の弾力化等について、専門家の協力も得ながら、学校週五日制時代における新しい教育課程の実施も視野に入れまして検討を行っているところであり、今後の都道府県と市町村の関与のあり方については、引き続き検討していきたいと思っております。
  261. 石井郁子

    石井(郁)委員 結局、認可を受けなければならないということが、協議で同意を得なければならないということにしたというあたりは、さほど変わらないじゃないかというふうに思うんです。この点では、本当に市町村のいろいろな事情とか努力だとかがございまして、やはり踏み切るべきだというように思うんです。中教審でも、やはり届け出制にすべきというのが答申ですよね。なぜこの中教審の届け出制ということが取り入れられなかったのか、その辺はいかがでしょうか。
  262. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 今回の法改正は、地方分権推進計画にのっとりまして、同意を要する事前協議という形でお願いをしているわけでございます。御指摘のように、中教審の答申におきましては、この地方分権推進計画によります事前協議または届け出という形での御提言をいただいているわけでございます。  この届け出につきましては、公立義務教育諸学校の学級編制につきましては、それに基づいて都道府県教育委員会は必要な教職員を責任を持って配置し、それに要する経費をすべて都道府県が負担する、こういう教職員の人事あるいは給与負担と密接に結びついていることでございますので、なお今後、現場の関係者等の具体的な御意見も踏まえた上で、新たな検討を加える必要があるだろうということで、現在、大臣からも御指摘ございましたような専門家の会議の中での一つの検討課題として、引き続き検討をさせていただきたいと考えているところでございます。
  263. 石井郁子

    石井(郁)委員 市町村が独自に実施をするというか、したいというのは、やはりかなり切実な、緊急な要求なんですよね。  私は、長野県の小海町というところで伺ってきたんですけれども、例えば、一学年で子供が四十一人になったら、先生が二人で、二十人と二十一人のクラスになるわけでしょう。ところが三十九人だと、この学年は三十九人で一人の先生と。それは、親から見ても子供から見ても、随分違うじゃないか。そうでしょう。やはり手厚い教育を受けたいし、したいというのは親も教師もみんなの願いでしょう。だから、そういうことがないように、せめて町や市独自でも、例えば非常勤講師としてでも、いろいろな形で教員を配置するという努力は起こり得るわけですよ。そういう道は大いに推進する、残していいのじゃないか、そう思いますよね。  ところが、長野県の小海町では、県の教育委員会が、それはやっちゃならぬ、それは文部省の方針だからやっちゃだめだということで、ストップがかかるわけです。こういうことはやはり時代に合わないですよ。できるところから、そういうことはやはりやっていいわけでしょう。(発言する者あり)ほら、先生おっしゃってくださっておりますよ。  ですから、今、少人数学級の実施を求める地方自治体の決議は急速に去年から広がっていまして、九百自治体を超えているんですね。やはりこういう声に本当に、分権推進法で今議論をしているときですから、やはりやるべきじゃないですか。私は本当にそう思うんですね。  そういう点で、今回の、同意を得なければならないなどということで、それにさらに枠をはめていくというやり方はよくないというふうに思うのですが、ぜひ、市町村独自で実施できるようにする、その方向へ踏み出すということでの文部大臣の御決意を伺っておきたいと思います。
  264. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 現行の義務標準法及び高校標準法においては、御案内のように、各都道府県に置くべき教職員の総数の標準を定めております。したがって、各学校への教職員配置につきましては各都道府県にゆだねられているところであり、現行の法令のもとにおいて、標準法における教職員定数の算定方式を一応の目安にしながら、関係者の理解を得て、各都道府県教育委員会、市町村、学校の実情に応じた弾力的な教職員配置を工夫することは可能でございます。  昨年九月の中央教育審議会の答申におきましては、標準法に定める教職員定数の標準は、「国がその給与費を国庫負担し、あるいは地方財政措置する際の基礎となる教職員定数を算定するための基準であるという性格をより明確にして、都道府県が弾力的な教職員配置基準等を定めるなどにより、実際の教職員配置がより弾力的に運用できるようにすること。」との提案をいただいたところでございます。  文部省といたしましては、この趣旨につきまして周知に努めるとともに、今後の学級規模や教職員配置のあり方及び学級編制の弾力化等について検討する中で、このこともさらに具体的に検討してまいりたいと考えております。
  265. 石井郁子

    石井(郁)委員 本当に今求められているのは、やはり少人数学級の実現というか実施を市町村が独自でできるように、そういう国の支援だというふうに思うし、できることは地方自治体がやれるという道を開くことだというふうに思うのですね。その点では、私たちもいろいろ努力していきますけれども文部省としては思い切って進めてほしいということを重ねて指摘をしておきたいというふうに思います。  時間がなくなりまして、私は、最後に省庁再編に関係して質問をいたします。  文部省が今度、文部科学に、新しい省庁名に変わりますが、文部省が最も重視すべき分野だと私どもは考えていますが、教育助成局が消えてしまったわけですね。これは、教育基本法の十条を持ち出すまでもなく、教育行政の最も中心的な仕事は教育条件の整備にあるということからすると、これを外して一体文部省はどうなるのかというふうに思わざるを得ないわけですが、教育助成局が所掌している分野、そして、なくすことによって文部省基本的な任務はどうなっていくのかという問題で伺いたいと思います。
  266. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 手短にお答え申し上げます。  局の数を、政府全体として百二十八あるものを九十近くに減らすことが求められているわけでございます。これを踏まえまして、文部省でも、初等中等教育局と教育助成局を統合し、初等中等教育行政に関して、指導行政と教育条件整備に係る行政を両輪として、一層効率的な行政体制の整備を図ることといたしたいと思っております。  新たな初等中等教育局においても、従来の教育助成局が果たしてきた教育条件整備の機能は基本的に引き続き維持する考えでございまして、私は、これは両方まとめた方がより効率的にさまざまなことが実行できると考えております。
  267. 石井郁子

    石井(郁)委員 きょうの質問で、私は、地方分権法の名においてこれまでの文部省の権限がかたくなに守られようとしている、これまでの文部行政を貫こうとする今回の改定というのは、学校現場をますます暗くするというか、いい方向には向かないということを指摘しなければならないというふうに思います。  教育行政のいかんは全教育の死活を制するという言葉があります。これは、田中耕太郎文相に請われて、東大の教授のまま文部省参事を歴任され、文相を補佐して教育基本法を初め重要教育法令の立法作業に当たった方で、田中行政法学という理論体系を構築した、後に最高裁の裁判官に就任された故田中二郎氏の言葉なんですね。  私は、今こそこの言葉をかみしめて教育行政に当たるべきだ、本当に子供たち、学校、そして父母や教師の皆さんが、自由の中でこそ教育が花開く、そういう教育行政に転換をしていかなければいけないということを申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。
  268. 高鳥修

    ○高鳥委員長 次に、保坂展人君の質疑に入ります。
  269. 保坂展人

    保坂委員 社会民主党の保坂展人です。きょうは、法務省のあり方、改革が進むのかどうなのかについて絞って伺いたいと思います。  まず、法務大臣に伺いたいと思うのですが、国連の規約人権委員会の勧告、最終見解、とりわけ、我が国は褒められているところもあるわけですけれども、主要な懸念事項、これは改善した方がよいというところが多々指摘されているわけですが、これをどういうふうに受けとめられておるでしょうか。
  270. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 昨年十一月の国連規約人権委員会最終見解についてのお尋ねでございますが、人権救済制度のあり方につきましては、人権擁護施策推進法に基づきまして、平成九年三月に法務省に設置されました人権擁護推進審議会におきまして、ただいま法務大臣から諮問を行っているわけでございまして、本年九月以降、本格的に調査審議がされる予定であると承知いたしております。  委員御指摘の人権委員会からは、人権侵害の申し立てによる調査のための独立した機関を設置すべきとの指摘を受けております。  人権救済を行う機関につきましては、一定の独立性が必要との考え方もあるところではございますが、法務省といたしましては、審議会での調査審議の結果も踏まえまして、慎重に検討してまいりたいと考えております。
  271. 保坂展人

    保坂委員 法務省は、組織的な犯罪に対する対策では、国連あるいは国際社会の議論を大変重く引用されるし、また紹介されるのですが、法務大臣に端的に伺いますが、この規約人権委員会の勧告の中で、国際的にも注目が強い死刑の問題。これは、死刑廃止を目指した措置をとるように、確定死刑囚の処遇を改善しろという問題、もう一つ、代用監獄制度のあり方などについて強い意見が表明されていますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  272. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 そのような勧告を受けておることは承知いたしております。  死刑制度等につきましては、我が国の中でこれを維持すべきだという国民世論が、国民の考え方が非常に多うございまして、そういう国民各界各層の意見の動向を見据えながら、これから慎重に検討していくべき課題であろうかと考えております。
  273. 保坂展人

    保坂委員 今法務大臣の御答弁では、国民の中にいろいろな世論があるということを死刑問題について言われましたが、規約人権委員会がまず最初に指摘していることは、人権の保障や人権の基準が世論調査によって決定されるべきではないということを強調する、世論調査結果を繰り返し使用することにより、規約上の義務に違反するかもしれない締約国の姿勢を正当化することに懸念を有する、こうあるのですね。世論調査を多用するなという指摘ですが、いかがお考えですか。
  274. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 ただいま死刑の問題を例にとっておっしゃっておりましたけれども、この死刑の制度につきましては、各国それぞれの対応の仕方があるわけでございます。我が国におきましても、これまでの経緯を踏まえながら、国民の動向を見守って対応していく必要があろうかと思っております。
  275. 保坂展人

    保坂委員 では、ずばり伺いますが、これまで政府は、規約人権委員会の勧告について法的拘束力はないものと考えるという答弁がしばしばあったのですが、これは法務大臣、どういうふうにお考えですか。  もし法的拘束力がないんであれば、勧告を受け取らない、あるいは、政府の報告書の作成も二〇〇二年十月にまた求められておりますが、そういう報告書の作成も必要ないのではないかと思います。いかがでしょう。
  276. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 規約人権委員会の勧告につきましては、これは法的拘束力はない、しかし尊重していくべきものである、そのように理解しております。
  277. 保坂展人

    保坂委員 尊重しているんなら、なぜ規約人権委員会の勧告、懸念事項の中にある、例えば外国人登録証の常時携帯義務の刑事罰を外せ、これは参議院段階では行政罰ということに決着したようですけれども、こういうものは、勧告を重く受けとめるんなら政府原案の中に盛り込まないというのが筋だと思うんですが、余り重く受けとめていないのではないかと思いますが、いかがですか。
  278. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 十分尊重するという前提で取り組んでおるわけでございますが、今、外国人登録証の携帯義務の件に関しましては、委員御指摘のように、国会の審議の段階で科料を過料に修正するという取り扱いがなされたことと承知いたしております。
  279. 保坂展人

    保坂委員 規約人権委員会の議論から入りましたのは、日本の法務省は、犯罪を防止すること、あるいは起きた犯罪を捜査、摘発して、またその矯正という機能を持っているわけですが、一方で人権擁護ということも、両方抱えているわけですね。  この視点で、例えば入管行政を見ていくと、入管行政の中で、これはまさにオーバーステイの外国人の摘発という部分と、難民申請と認定システム、これもまた法務省がやっているということで、これは国際世論あるいはUNHCRから具体的に改善の指摘を受けているんではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  280. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 難民認定に関しましては、UNHCRとさまざまな意見、情報の交換をいたしております。  難民条約の締約国が難民を保護するためにどのような国内手続を採用するかにつきましては、当該締約国の立法裁量に任されておる事項でございます。UNHCRも、そういった締約国の国内手続に対しては十分尊重をしていただいているところでございます。
  281. 保坂展人

    保坂委員 総務庁長官に伺います。  先ほど、法務大臣からの答弁にもありましたけれども、この国連規約人権委員会の最終見解では、人権擁護委員制度そのものについて、法務省の監督下にあって、この権限は勧告を発することに限定されているため、人権侵害を調査し不服に対して救済を与えるための制度的な仕組みではないというふうに断じた上で、独立した人権救済機関を求めるべきだ、こういうふうに勧告をしているわけです。  縛り屋の部分を持っている法務省、そして、過って縛られている場合もあるわけです。したがって、人権救済というほどき屋の部分、これは両方法務省が兼ねるという仕組みに無理があるのではないか。この点から御見解を伺いたいと思います。
  282. 太田誠一

    太田国務大臣 大変難しいテーマであります。  これまで、戦後ずっと法務省の中に人権擁護局があった、そのもとで人権擁護委員という制度が続いてきたということの歴史があるわけでございます。そこで、今、国連規約人権委員会の見解ということでありますし、その点はどこか念頭に置いておかなければいけないのではないかという気もいたしますけれども、いずれにせよ、人権擁護推進審議会というものが法務省の中に設置されております。そして、その中で、人権擁護委員制度の充実方策も含めて、人権侵害の場合の被害者救済に関する施策の基本的事項について検討される、そういうふうに承知をいたしておりますので、その調査審議の結果を待ちたいと思っております。
  283. 保坂展人

    保坂委員 もう少し歯切れのいい答弁を期待したんですが。法務省は、ほとんどありようが変わらないんですね。その中で、公安調査庁についてお聞きしたいと思います。  公安調査庁の活動によって犯罪行為が事前に把握されて、あるいは現在進行形でもいいですが、捜査機関に情報提供して摘発、立件に至ったというケースは過去にあったでしょうか。公安調査庁。
  284. 木藤繁夫

    ○木藤政府委員 お答え申し上げます。  公安調査庁が破壊的団体に関する調査を行う過程におきまして犯罪捜査の端緒を把握した場合は、適宜捜査当局に通報しているところであり、実際に捜査に着手したこともあるわけでありますが、その件数は統計として把握しておりません。そういった実情にございます。
  285. 保坂展人

    保坂委員 今の答弁ではあるということなんですが、どの程度あったのかというのは、当然、公安調査庁はみずからの活動によってそれが摘発、立件されたということを、統計とっていないというのはちょっとおかしいと思うんですが、なぜわからないのかということ。  もう一つ、オウム真理教の事件、これは坂本弁護士一家殺害事件に端を発して、その後の凶悪事件が数々起こるわけですけれども、オウム真理教の坂本一家、あれはあの時点では警察は失踪事件というふうにとらえたようですが、あの坂本事件以降、公安調査庁はオウム教団をどのように情報収集して、どのように実態を把握してきたんですか。具体的に御答弁ください。役に立つ活動があったのかどうか、お知らせください。
  286. 木藤繁夫

    ○木藤政府委員 捜査上有益な情報につきましては、適宜捜査当局に通報しておるわけでございますが、もともと捜査の端緒というものは捜査の秘密に属することでございまして、そういう意味では秘匿を要するということもございます。また、私どもの方から捜査当局に通報したといたしましても、必ずしもそのことを一々また記録に残しているということでもないと思いますので、その実情というものはなかなか把握しにくいわけでございます。  オウム真理教に対する調査の従来の経緯の実情ということでございますが、オウム真理教に対しましては、地方自治体といろいろトラブルが発生するような過程から私どもも注目いたしまして、それなりに調査しておったところでございます。しかしながら、私どもの調査が任意手段による調査でございますので、その調査がその団体内部まで、深いところまで届くというような実情にはなかなかなかったわけでございますので、御指摘のような、松本サリンとかあるいは地下鉄サリンといった事件の事前にその危険性を十分把握することができなかったということは、御指摘のとおりでございます。  しかしながら、そういった事件の後、非常に重要な団体だということで、私ども、鋭意それについて調査をいたしまして、弁明手続を経て団体規制の請求をしたということでございます。その規制は棄却されましたけれども、その後もオウム真理教の実情について鋭意調査しておるというところでございます。
  287. 保坂展人

    保坂委員 地下鉄サリン事件でということではなくて、坂本弁護士の事件からほとんど機能できなかったということがわかりました。  公安調査庁では、過去十年間の、例えば自己都合の退職者の方、あるいは懲戒あるいは懲戒外処分の人数、これはどうでしょうか。職員の規律の問題でお聞きしたいと思います。
  288. 木藤繁夫

    ○木藤政府委員 過去十年間の自己理由による退職者の数は、平成元年から十年までで合計百二十四名でございます。また、懲戒処分者の数は、同じく平成元年から十年までで合計十二名という数字になっております。  懲戒外の数については、これはもともと処分権者に処分がゆだねられているところでございますので、従来公表しておりませんので、お答えは差し控えさせていただきます。
  289. 保坂展人

    保坂委員 十年で百人を超える方がやめられて、その処分も内部である。どういう不祥事があったのかぜひ公開をしてほしいところですけれども、法務省全体のあり方として、まとめの質問に入りたいと思います。  法務・検察にはひときわ高い倫理性が求められる、これは言うまでもないことでございます。ところが、今回のいわゆる則定問題のようなことが具体的にあって、国会の中で、これがどんな問題なのかと我々質問もいたしましたし、いろいろ聞きただしをしようとしたところ、あっという間に、最高検の調査が始まったかと思うと土日を挟んで月曜には終わってしまった。大変スピーディーなんですね。スピーディーはスピーディーだけれども、検察がそもそも、他の事件に見せる執拗かつ入念な捜査あるいは捜査の前の調査というような形跡はほとんどないということで、極めて身内に甘いんじゃないかということを我々指摘をしてきたところです。  法務省の幹部は、検事でなければ人でないという言葉がありますけれども、それは、キャリア、ノンキャリアの区別、差別どころか、検事でなければ絶対に法務省の事務次官になれない、こういう仕組みは今回をもってやめるというのが、法務省全体の職員にとっても、努力をして、民事局であってもあるいは人権擁護の仕事であっても、積み上げていけば役所のトップになれる、これが公平な人事かと思いますが、この点は法務大臣、いかがでしょうか。
  290. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 冒頭お尋ね、御指摘の件でございますが、法務大臣は、国家行政組織上、検察官の服務について監督権を有しておりまして、これまでもその監督を適正に行ってきたところでありますが、御指摘の件につきましても、私としては、早急に実態を明らかにするようにということで、調査を急がせたわけでございます。  その結果、御指摘のような短期間に終わったという批判を受ける面もございますけれども、私としては、事柄の重要性上、早くしっかりとした実態を明らかにすべきであるという思いから、そういう措置を命じたわけでございます。  なお、法務省の人事につきましての御指摘がございました。トップ、事務次官のことになるわけでございますけれども、法務事務次官が検察出身であるということはそのとおりでございます。ただ、法務事務次官というのは、法務省の長たる法務大臣を助け、省務を整理し、当省各部局及び機関の事務を監督する職務を担っておりますので、このポストには、その職務を遂行するに十分な能力と適性を備えている者をこれまで充ててきております。  今後とも、そのような能力と適性を備えている者を配置する、要するに適材適所の人事管理が大事であると考えております。
  291. 保坂展人

    保坂委員 大臣、もう一度確認しますが、検察官出身者でなければその能力は担保できない、こういう御判断でございましょうか。
  292. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 法務省では、司法制度、民事、刑事、こういった基本法令の立案、人権の擁護に関する事項等を所掌事務といたしております。基本法制の維持及び整備、法秩序の維持、国民の権利擁護等という重要な任務を遂行しておりますことから、一部の事務に偏ることなく、所掌事務全般について適材適所に配慮した人事配置を行う必要があるということを考えて、適正な人事評価を行って運用しておるところでございます。
  293. 保坂展人

    保坂委員 もう一回聞きます。  それでは、今の答弁ですと、検察官出身者以外にも事務次官はあり得る、こういうことですか。端的にお答えください、もう時間がありませんので。
  294. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 繰り返しの御答弁になって恐縮でございますが、人事というのは適材適所で運用すべきである、このように考えております。
  295. 保坂展人

    保坂委員 中村法務大臣時代に、検察行政国会に対するアカウンタビリティーの明確化、説明責任をちゃんと検察も持てということを、これは一月四日の読売新聞に報道されています。これは、前法務大臣が打ち出した非常に明快な、検察という最強の捜査権力が国会において全くチェックされない、これはおかしい、これは陣内大臣、継承されていきますか。それだけ聞いておしまいにします。
  296. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 今御指摘の件は、これは事務方がたたき台としてつくったものである、そういう経緯を承知しておりますが、いずれにしましても、行政というものは国民に信頼していただくような形で十分努力していかなければならないと思っております。
  297. 保坂展人

    保坂委員 それでは、事務方がたたき台としてつくったもので、正式な法務省の見解ではないということでございますか。
  298. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 中村前大臣が、そういう事務当局のつくったものを踏まえていろいろ御発言になっておったと私は理解しております。
  299. 保坂展人

    保坂委員 中村法務大臣大臣として公職にあって、筋が通った、それこそ検察をきちっと国会で答弁させるべきであるというふうに言ったんじゃないですか。それを継承して現法務大臣があるんじゃないですか。
  300. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 いろいろ改革を志して、大変熱心に取り組んでおられたわけでございます。それを受けて、事務当局でもいろいろな角度から検討しておったと思いますが、今後の検討課題の一つとしてそういうものもお取り上げいただいているんではないかと私は考えるところでございます。  私も同じように、これからの検討課題として考えていく必要があろうかと思います。
  301. 保坂展人

    保坂委員 検討課題ということで、ぜひきちっと継承して、課題として遂行していただきたいと思います。  終わります。
  302. 高鳥修

    ○高鳥委員長 この際、昨日の本委員会における答弁に関し、太田総務庁長官から発言をいたしたいとの申し出がありますので、これを許します。
  303. 太田誠一

    太田国務大臣 昨日の小林委員への私の答弁の中で、次のような点がございました。深田議員に対する答弁に先立って、委員長から御発言も許していただきまして、ありがとうございます。  昨日の小林委員への私の答弁の中で、昨年の六月に成立した法律案に小林委員も私も賛成しておりますと答弁いたしましたのは、誤りでありまして、昨年の六月に成立した法律案に私は賛成しておりますと、謹んで訂正させていただきます。
  304. 高鳥修

    ○高鳥委員長 次に、深田肇君の質疑に入ります。
  305. 深田肇

    ○深田委員 社民党の深田肇でございます。私は、人権擁護の確立のための施策について——いいかな大臣、いいかな大臣。もう一遍言いますが、これで十五秒ぐらい損しちゃったな。  人権擁護確立のための行政についての質問をさせていただくわけでございますけれども、実は私、埼玉県におりますので、ちょっとそのことを一、二お話ししておきたいと思います。  御案内のとおり、狭山事件という事件がございまして、埼玉県の石川一雄さんは、部落差別によると見られる差別事件に当たったんでございます。これらの部落差別の問題について少しお話ししながら、日本の人権行政について意見を申し上げてみたいと思いますので、よろしくお願いいたしたいと存じます。  一九六三年ですから、今から三十六年ぐらい前になるのでありますが、石川一雄さんは当時二十四歳でありましたが、別件逮捕で逮捕されまして、死刑、次は無期というような判決を受けておったのでありますが、一九九四年の十二月、本人が五十五歳になりましたから三十一年たちましたが、そのときに、当時の法務大臣、ここにいらっしゃいます、心から信頼申し上げておる中井洽法務大臣の温かい、温情ある御判断によって仮釈放をいただいたのでございます。思い出していただければありがたいと思います。  改めてお礼を申し上げるのでありますが、そういう仮釈放をいただいて、今日の石川一雄さんは、まじめに業務に携わりながら今再審を請求しておりますから、再審が実現できるように高裁の判断を待っているということを経過として申し上げて、お礼をしておく次第でございます。  同時にまた、いま一つ申し上げなければいけませんのは、こちらにいらっしゃいますように、石川一雄さんと御家族は狭山市の市民なんです。狭山の市長さんを大野松茂先生がやっておられまして、部落差別と世間でたくさん言われますが、いわゆる石川一雄さん及び家族に対して、この市長さんは実に優しく、差別なき配慮をいただきまして、日ごろから激励いただき、人間的に温かく御援助いただいたということも思い出しながら、感謝を改めて申し上げる次第でございます。  というふうに、部落差別が存在しているのでありますが、いろいろと難しいことがありますけれども、時の大臣や時の市長はちゃんとしていただいていることも含めて、太田長官や法務大臣と一、二これからやらせていただきたいと思っておる次第でございます。  恐らく、太田長官も法務大臣も、決して前の大臣や前の市長さんに比べて差別意識があると思いませんから、寄り寄り抜本的な政策をおつくりいただくだろうというふうに期待した上で申し上げるわけでございますので、よろしくお願いをいたしておきたいというふうに思います。  そこで、本来ですと、ここですぐ太田長官と思いましたが、法務大臣いらっしゃいますので、昨日同僚議員の方から質問したことに対しての、ここに議事録もありますが、ちょっと確認を事務的にやらせてください。  現在、法務省を所管として、人権擁護の推進審議会があって、いろいろやっておられますね。そこで中間取りまとめが近々出るだろうということがわかっていますが、その中間取りまとめが出たら、それを国民に発表して、国民の御意見を聞いてやってくれるんですねという小林委員の質問に対して、そうなんですよということをおっしゃっていますから、そういうふうに確認してよろしゅうございますね。それを聞かせてください。それは一言でいいんです。
  306. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 そのとおりでございます。
  307. 深田肇

    ○深田委員 じゃ、確認しますよ。議事録とちょっと微妙な違いがありますけれども、一番いいお言葉をいただきました。  中間報告が出たら、それを国民に示して、最終報告じゃないですよ、中間報告が出たら、国民に知らせて、国民の声を聞いて、また審査をして、審議をして、正式の最終報告をつくる、こう二段構えをいただいたわけでありますから、これはぜひ実行してもらいたい。今までそういうことを約束していない、だれも。あなたが今約束してくれましたから、ありがたいお言葉でございますので、ぜひ両筆頭、御確認いただいておきたいと思う。ありがとうございました。  法務大臣、ありがとうございました。お忙しいでございましょうから、どうぞ御退席いただいて結構でございます。  そこで、太田長官と一、二、お話をさせていただくわけでありますが、これもちょっと気になるんです、太田長官。  何かとおっしゃいますと、きのうの小林委員とのやりとりの中で、基本法に賛成したか反対かは訂正されましたから抜きますが、それはもう決まったんだ、この議事録を読ませていただく限りにおいては、私と小林さんの意見は、私が個人的に思っているものと同じものだ、ああ、こうなっちゃったから、これは無理だな、こういうふうに思ってしまったのでもうできません、こういうお言葉があったんですが、政治家であるあなたは、基本法の解釈をだれかにされて、あなたが思っておることと小林さんの意見と私の意見とも一致しているはずなんだが、それは棚上げして、そうはできないんだよとおっしゃったというふうに議事録を読むと読めますが、そのとおりでいいんですか。そのとおりでいいんですか。
  308. 太田誠一

    太田国務大臣 基本法をよく読む前には、私は少なくともそういうふうに思っていたということでございます。  基本法を読んだ後、この基本法のもとでこの次の立案作業をするということになりますと、これはちょっと無理だなというふうに考えを変えたということでございます。
  309. 深田肇

    ○深田委員 時間がありません。端的に言いますが、基本法をお読みになった、どこを読んだら、いわゆる法務省の人権擁護のところだけしか人権擁護問題をやれないと、どこに書いてありますか。あなたが読んだ基本法のどこに書いてありますか。  もう一遍言いますよ。きょうの答弁よ。基本法を読んだら、人権擁護の行政は法務省以外はできないということに気がついたので、私個人は小林とも深田とも同じ意見だが、そうはできないと思ったよと、ほかの答弁は要らない。政治家のあなたに聞いているんだ。あなた言うじゃない、政治家同士でやろうやろうとおっしゃるじゃない。
  310. 太田誠一

    太田国務大臣 どこの条文というのは、正確に覚えておりません。(深田委員「どこにも書いてありませんよ。私きのう読んできた。書いてありませんから」と呼ぶ)
  311. 高鳥修

    ○高鳥委員長 今、答弁中。
  312. 太田誠一

    太田国務大臣 ちょっとお時間をいただければそこを確認できますが、去年の夏の話でございますので。
  313. 深田肇

    ○深田委員 それは、もらっていたら時間がなくなっちゃうから、もういいですよ。  とにかく、私が言いたいことは、賛成して通ったという基本法を、我が意と違うが、お読みになった新しい大臣は、人権擁護施策は法務省以外はできないと思ったんで、したがって、いろいろなことをやれとおっしゃったが、できませんよと答弁を再確認されるんだ。そんなことは、人権擁護の仕事は法務省以外はやれないとは書いていないというんだ。ここのところを私は強調して、ちょっと話を進めます。後で説明があれば説明してもらえばいいんですが、もう政治家同士の話で結構です。あなたが一番得意とする政治家同士の話でやりましょう。  そこで、私は、小林委員も言われたように、今の日本が、憲法十四条の精神に基づいて、人権擁護こそ世界の日本として最も大事なことだというふうに感じますと、そうなりますと、法務省にある人権擁護局を中心とする機関の活動をきちんと評価した上で、そこしかできない、法務省の所管局の仕事に限定するのではなくて、いわゆる内閣府とか、総務省という言葉に当たらぬかもしれませんから内閣府がいいかもしれませんが、そういう格好で全部回すことがいいんではないかと思います。  例えば、いろいろなことがあった経過の中で、期限立法でありますが、五年間の期限を延長して、地域改善室があって、現在まで部落解放のためにいろいろな行政を各省庁にまたがってやっておられることが総務庁の中にあるわけでありますから、これは一つ区切りがありまして、区切りで終わるでしょう。終わるでしょうが、そのことは言いません。その答弁があるかもしれませんが、そんなの要りません。あるでしょうが、そういったようなものを歴史的につくってきたことを確認するならば、法務省の中の仕事と同時に、総務長官、あなたが行政関係の言うなら実質的総責任者で旗振っているわけですから、担当大臣だし、副本部長でもいらっしゃるんだから。そうなると、人権国家日本をつくるためには、法務省よ頑張れ、同時に、この内閣府の中にそういうものをつくっていこうというふうにお考えになることが必要なんではないかという提言をしたいんです。  きょうは、そんなことすぐ返事をもらえるかどうかわかりませんから、ぜひ、そのことを申し上げて、お考え合わせいただきたい。  例えば、現在、人権教育のための国連十年推進本部というのがあって、それは御案内のとおりいわゆる内政審の中に置いておりますね。というふうに、何かそういう全体をくくって、日本省庁全体の中で同和対策等々をやるような仕事を、やはり何とか行政改革の一環として、もう決めたからだめだとおっしゃるんじゃなくて、わからずに賛成した私が悪ければ私が自己批判しますから、わからず賛成したのがいけないというんなら謝ってもいいから、今からでもいいからつけ加えてもらって、人権擁護全般は法務省だけでなくて全体でやるような、我が内閣府でやるんだというようなことに変えてもらうように提言いたしますから、積極的な御発言をいただけないかというふうに実はきょう申し上げているんだ。その答弁できなければ、受けとめるで結構でございますから、御意見を賜りたいと思います。政治家の御発言を下さい。
  314. 太田誠一

    太田国務大臣 今おっしゃっていることは、この今回の改正の中でということですか、そうではなくて、今後ともということですか。もし今後ともということであれば、私もそういうふうな気持ちはございます。
  315. 深田肇

    ○深田委員 そこまで詰められるとどっちか言わないけぬようになりますから、そこは政治家で、前向きにやろうよ、確認できます、こういうことでよろしいと思いますので、よろしくお願い申し上げておきます。(発言する者あり)終わりません。  最後に、いま一つ御報告をしておきたいことがあります。  実は、埼玉県の大宮の駅前の大ホテルで、一般大衆が集まった大きな集会をやりました。そこへあの有名人である、前の建設大臣の亀井静香先生がお見えになりまして、話をされました。そのときの言葉をちょっと引用いたします。日本で恥ずかしいものの一つとして部落差別問題がある、こうおっしゃった。それで、その全面解消のために早急に進めなきゃならないと思っている、人権日本としては何としてもなさなきゃならないことであると。わあっと拍手が起きた。集まった方は千人近くいましたから。部落解放同盟だけじゃないですよ。一般市民の中でわあっと起きた。  そのことをここで御紹介申し上げて、亀井元大臣の御発言に心から感謝申し上げながら、長官、部落解放のための、差別をなくするために、加えて人権日本をつくるために、積極的な御発言を最後にいただいて、政治家の発言として承って、終わりたいと思います。どうぞ一言、お願い申し上げます。
  316. 太田誠一

    太田国務大臣 深田先生から御激励をいただきまして意を強くいたしまして、憲法十四条の考え方というものを受けとめる法律制度というものを整備していかなくちゃいかぬと決意を新たにいたしました。
  317. 深田肇

    ○深田委員 どうも長い時間ありがとうございました。
  318. 高鳥修

    ○高鳥委員長 次回は、来る七日月曜日午前九時理事会、午前九時三十分公聴会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十三分散会