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1999-05-31 第145回国会 衆議院 行政改革に関する特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月三十一日(月曜日)     午後二時八分開議   出席委員    委員長 高鳥  修君    理事 伊吹 文明君 理事 岩永 峯一君    理事 虎島 和夫君 理事 山口 俊一君    理事 小林  守君 理事 田中 慶秋君    理事 若松 謙維君 理事 中井  洽君       飯島 忠義君    小野寺五典君       大石 秀政君    大島 理森君       大野 松茂君    金田 英行君       熊谷 市雄君    倉成 正和君       河本 三郎君    佐田玄一郎君       実川 幸夫君    砂田 圭佑君       谷  洋一君    中野 正志君       根本  匠君    林  幹雄君       桧田  仁君    牧野 隆守君       松本 和那君    水野 賢一君       宮本 一三君    森  英介君       山本 幸三君    横内 正明君       渡辺 博道君    石垣 一夫君       佐藤 茂樹君    福島  豊君       桝屋 敬悟君    岩浅 嘉仁君       西川太一郎君    三沢  淳君       春名 直章君    平賀 高成君       松本 善明君  出席国務大臣         法務大臣    陣内 孝雄君         文部大臣         国務大臣         (科学技術庁長         官)      有馬 朗人君         厚生大臣    宮下 創平君         建設大臣    関谷 勝嗣君         自治大臣    野田  毅君         国務大臣         (総務庁長官) 太田 誠一君  出席政府委員         内閣審議官         兼中央省庁等改         革推進本部事務         局長      河野  昭君         内閣審議官         兼中央省庁等改         革推進本部事務         局次長     松田 隆利君         内閣官房内閣安         全保障危機管         理室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障・         危機管理室長  伊藤 康成君         総務庁長官官房         審議官     大坪 正彦君         総務庁長官官房         審議官     西村 正紀君         総務庁行政管理         局長      瀧上 信光君         防衛施設庁総務         部長      山中 昭栄君         科学技術庁長官         官房長     興  直孝君         法務省人権擁護         局長      横山 匡輝君         文部大臣官房長 小野 元之君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         厚生大臣官房総         務審議官    真野  章君         厚生省健康政策         局長      小林 秀資君         厚生省社会・援         護局長     炭谷  茂君         厚生省児童家庭         局長      横田 吉男君         厚生省保険局長 羽毛田信吾君         社会保険庁次長 宮島  彰君         建設大臣官房長 小野 邦久君         建設省建設経済         局長      木下 博夫君         建設省河川局長 青山 俊樹君         自治省行政局長         兼内閣審議官  鈴木 正明君         自治省財政局長 二橋 正弘君         自治省税務局長 成瀬 宣孝君  委員外出席者         衆議院調査局第         三特別調査室長 鈴木 明夫君 委員の異動 五月三十一日             辞任         補欠選任   衛藤 晟一君     佐田玄一郎君   大野 松茂君     飯島 忠義君   金田 英行君     横内 正明君   熊谷 市雄君     林  幹雄君   谷  洋一君     大島 理森君   戸井田 徹君     桧田  仁君   細田 博之君     根本  匠君   松本 和那君     渡辺 博道君   伊藤 忠治君     山元  勉君   並木 正芳君     福島  豊君   小池百合子君     岩浅 嘉仁君 同日                 辞任         補欠選任   飯島 忠義君     大野 松茂君   大島 理森君     谷  洋一君   佐田玄一郎君     衛藤 晟一君   根本  匠君     細田 博之君   林  幹雄君     熊谷 市雄君   桧田  仁君     大石 秀政君   横内 正明君     金田 英行君   渡辺 博道君     松本 和那君   福島  豊君     並木 正芳君   岩浅 嘉仁君     小池百合子君 同日                 辞任         補欠選任   大石 秀政君     戸井田 徹君 五月三十一日  国民生活を重視した行政改革等に関する請願知久馬二三子紹介)(第三五八七号)  国立病院療養所の廃止・民営化独立行政法人化反対に関する請願石井紘基紹介)(第三五八八号)  同(熊谷弘紹介)(第三五八九号)  同(小林守紹介)(第三五九〇号)  同(坂上富男紹介)(第三五九一号)  同(知久馬二三子紹介)(第三五九二号)  同(土井たか子紹介)(第三五九三号)  同(中西績介紹介)(第三五九四号)  同(畠山健治郎紹介)(第三五九五号)  同(山元勉紹介)(第三五九六号)  同(横光克彦紹介)(第三五九七号)  同(池端清一紹介)(第三六五二号)  同(石井紘基紹介)(第三六五三号)  同(川端達夫紹介)(第三六五四号)  同(坂上富男紹介)(第三六五五号)  同(高木義明紹介)(第三六五六号)  同(畠山健治郎紹介)(第三六五七号)  同(鉢呂吉雄紹介)(第三六五八号)  同(深田肇紹介)(第三六五九号)  同(山花貞夫紹介)(第三六六〇号)  同(山元勉紹介)(第三六六一号)  同(横光克彦紹介)(第三六六二号)  同(石井紘基紹介)(第三六八四号)  同(坂上富男紹介)(第三六八五号)  同(島津尚純紹介)(第三六八六号)  同(辻元清美君紹介)(第三六八七号)  同(畠山健治郎紹介)(第三六八八号)  同(鉢呂吉雄紹介)(第三六八九号)  同(日野市朗紹介)(第三六九〇号)  同(横光克彦紹介)(第三六九一号)  同(石井紘基紹介)(第三七〇八号)  同(坂上富男紹介)(第三七〇九号)  同(島津尚純紹介)(第三七一〇号)  同(中西績介紹介)(第三七一一号)  同(畠山健治郎紹介)(第三七一二号)  同(鉢呂吉雄紹介)(第三七一三号)  同(石井紘基紹介)(第三八二四号)  同(川内博史紹介)(第三八二五号)  同(島津尚純紹介)(第三八二六号)  同(畠山健治郎紹介)(第三八二七号)  同(鉢呂吉雄紹介)(第三八二八号)  通商産業省諸機関独立行政法人化民営化、整理・統廃合等反対に関する請願坂上富男紹介)(第三七〇七号)  同(川内博史紹介)(第三八二九号)  同(古賀一成紹介)(第三八三〇号)  同(横光克彦紹介)(第三八三一号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案内閣提出第九一号)  内閣法の一部を改正する法律案内閣提出第九六号)  内閣設置法案内閣提出第九七号)  国家行政組織法の一部を改正する法律案内閣提出第九八号)  総務省設置法案内閣提出第九九号)  郵政事業庁設置法案内閣提出第一〇〇号)  法務省設置法案内閣提出第一〇一号)  外務省設置法案内閣提出第一〇二号)  財務省設置法案内閣提出第一〇三号)  文部科学省設置法案内閣提出第一〇四号)  厚生労働省設置法案内閣提出第一〇五号)  農林水産省設置法案内閣提出第一〇六号)  経済産業省設置法案内閣提出第一〇七号)  国土交通省設置法案内閣提出第一〇八号)  環境省設置法案内閣提出第一〇九号)  中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律整備等に関する法律案内閣提出第一一〇号)  独立行政法人通則法案内閣提出第一一一号)  独立行政法人通則法の施行に伴う関係法律整備に関する法律案内閣提出第一一二号)     午後二時八分開議      ————◇—————
  2. 高鳥修

    高鳥委員長 これより会議を開きます。  民主党及び社会民主党・市民連合所属委員の御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。  内閣提出地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案並びに内閣法の一部を改正する法律案等中央省庁等改革関連十七法律案の各案を一括して議題といたします。  本日は、特に地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案について審査を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水野賢一君。
  3. 水野賢一

    水野委員 自由民主党の水野賢一でございます。  まだ衆議院に登院したばかりの私に、また、浅学非才の私に質問の機会を与えていただいたことを、委員長また理事の皆様にも最初感謝を申し上げたいところでございます。また、御出席いただいた大臣方々には、今週もいろいろ質疑があるとかなりお疲れになるんじゃないのかなと思うわけですけれども、週明け早々に、早々といっても午後になってしまったわけですが、来ていただいたこと、感謝を申し上げたい、そう思うわけでございます。  私も、質問の中でまずお伺いしたいのが独立行政法人についてでございます。そして、その後に、地方分権に関係いたしまして住民投票の問題を少しお伺いしたいな、そんなふうに考えておるところでございます。  独立行政法人の問題をなぜ取り上げたかと申しますと、独立行政法人は、今回の行革の中の一つの目玉として導入された、少なくとも、行政スリム化ということに関しての切り札であるかのような形で導入されたわけでございます。しかし、その割には、内容が必ずしもよくわからない部分もございます。新しく導入されたものですから、新しいものですのでわからないことがあって当然でございますし、私も十分にはまだよくわからない。その点で、太田総務庁長官にはいろいろと御教示をいただければと思っておるところでございます。  太田長官は、伺うところによりますと、この制度の創設にも非常に尽力された、その対象業務をかなり広げてそれにも非常に力を尽くされたというふうに伺っておりますから、その点にはまず心から敬意を表したいな、そういうふうに考えております。  しかし、やはり疑問の点というのは幾つかあるわけでございまして、その疑問のうちの最大のものとして、独立行政法人の中にも、公務員型と申しましょうか、特定独立行政法人とおっしゃっているようですけれども、公務員型と非公務員型がある。そして、公務員型の方が圧倒的多数になっていらっしゃるわけですけれども、そこで、まず最初質問として伺いたいのは、政府独立行政法人化を打ち出した八十九の事務事業のうち幾つ特定独立行政法人、つまり公務員型というふうになる予定であるのか、そこからまずお伺いしたいと思います。
  4. 太田誠一

    太田国務大臣 水野委員からお尋ねでございました。  私も、この独立行政法人という制度が導入されるにつきましては、この制度そのものについて私が特段の思い入れがあったわけではありませんけれども、昨年の六月に成立いたしました行政改革会議最終報告そしてまた基本法は、まさにこの最大の柱として独立行政法人を位置づけておられまして、御尊父の水野清事務局長が大変な御尽力をされてこのような姿になったわけでございます。そのようなお気持ちを、行政改革会議に携わった方々のお気持ちをそのまま忠実に実現をしようとしたのが今日の姿でございます。  そこで、今般、独立行政法人化することとした八十九の事務事業については、基本法第四十条に基づき公平公正にかつ真剣に検討を行いました結果、国家公務員身分を付与する事務事業が八十五となりました。これは、現在国で行われている事務事業独立行政法人化するということでありまして、同種のサービスを提供するものがほかにないということや、あるいは、公正中立業務執行が求められる事務事業が多いということなどによるものであります。  なお、独立行政法人制度は、職員身分のところに思い入れがあるというよりも、現にそのような制度が、姿が組織としてスタートいたしましたときに、その効率化サービスの質の向上のために、厳格な目標管理、それから第三者による評価が導入をされるということ、それから、ディスクロージャー、積極的に情報が公開をされる、公表される、さらに職員の給与などが業績を反映されるように設計されるということが大切なことであります。業務効率化サービスの質、透明性が図られる仕組みとなっておる。これによって、そこで働く人たち意識が改革されるということが大切であるということでございます。
  5. 水野賢一

    水野委員 今長官の方から、私の父の名前まで出していただきながらの答弁、ありがとうございました。  今長官の御答弁の中で、独立行政法人の問題を論ずるに当たっては、職員身分のことだけじゃなくて、ディスクロージャーとか目標管理とか第三者機関による評価とか、そういうプラスの部分にも焦点を当ててくれということだと思うわけですけれども、私がきょう聞きたいのは、長官には申しわけないですが、この職員身分のことをまずお伺いしたいものですので、ちょっとここを続けてお伺いしたいと思うわけでございます。  では、公務員型と非公務員型、今八十五は特定独立行政法人だというお話ですけれども、八十九を分類するに当たって、どういう基準特定独立行政法人なのか、そうじゃない非公務員型なのか、どういう基準で振り分けられたのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  6. 太田誠一

    太田国務大臣 今般、独立行政法人化することとした八十九の事務事業につきましては、基本法の第四十条に基づき公平公正かつ真剣に検討を行った結果、国家公務員身分を付与する事務事業が八十五となったということでございますということに尽きるわけでございます。すなわち、基本法に書いてあることは、そうはっきりしたこと、明快なことが書いてあるわけではありませんので、個別の、双方の議論が、大変激しいやりとりが行われたわけでありますけれども、その中から決まってきたということでございます。
  7. 水野賢一

    水野委員 今度法案として出されております独立行政法人通則法の方を見させていただきますと、この第二条に「その業務の停滞が国民生活又は社会経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすと認められるもの」云々は公務員型、まあ特定独立行政法人にするというようなことが書いてあると思うわけでございます。  これを文字どおり読むと、要するに、非公務員にしてしまうと社会生活にいろいろ影響のあるようなものは公務員にするというふうに思うのですが、これは私もわかるわけなんですけれども、理解するんですが、現実問題にこれを当てはめると、必ずしも素直に心に落ちないなと思うようなこともちょっとあるわけでございます。  例えば、国立近代美術館、この職員国家公務員のままなわけですね。一方、貿易保険の方は非公務員型になった。それはそれでいいんですけれども、しかし、ではこの法律の第二条にある「社会経済の安定」そういう点から、それだけから見れば、貿易保険の方が少なくとも美術館や博物館よりは社会経済にいろいろ影響はあるだろうと思う。  しかし、そう考えると、何かこの公務員型と非公務員型の分け方というのは結構あいまいもことした部分もあるんじゃないか、私はそう思うわけですが、いかがでしょうか。
  8. 太田誠一

    太田国務大臣 おっしゃることは、そこを読めば確かにそうなんですけれども、それと同じように、並べて「その他」と、以下のところがあるわけでありますので、前段が後段の「その他」のところを縛っているわけではないというふうに御理解をいただきたいと思います。  また後で事務局の方からも答えさせますけれども、一つ公務員型、非公務員型というときに、国家公務員身分を与えるということはどういう意味なのかということであります。  行政改革会議議論がどういうふうになされたかということを私も後でいろいろ調べさせていただいたんですけれども、そのときに、国家公務員型の身分を与えてもよいではないかというその意見の背後には、例えば保護司とかあるいは行政相談員とか、現に、何も身分保障はない、そしてまた有給でもない、そういう仕事が世の中は幾つもあって、それは専ら国家仕事を自分は担ってやっておるんだという責任感とか誇りとか、そういうものを大切にしようではないかということで、堂々と国家公務員型の身分という考え方を導入したというふうに伺っております。  それからまた、その部分注目をし過ぎると、組織として、これだけ自己責任化、そして効率性を求められていることが非常に損なわれる、その部分に対する注目とか、あるいは、そこに配属される方々意識というものが、余り国家公務員型ということにこだわると損なわれるというふうに思うのでございます。  できましたら、ちょっと事務局の方の説明もお聞きいただきたいと思います。
  9. 河野昭

    河野(昭)政府委員 先生先ほど、今回の通則法の二条の定義を引用されましたが、実は、この二条の定義文言は、行革会議を受けましたいわゆる基本法文言をそのまま持ってきたものでございます。先ほど太田大臣からも御説明申し上げましたが、先生が引用されましたいわゆる「著しい支障を及ぼすと認められるもの」、それで「その他」としまして「当該独立行政法人目的業務性質等を総合的に勘案し」ということでございます。この「目的業務性質等を総合的に」と申しますのは、例えばその事務事業公共性でございますとか、あるいは今回独立行政法人化する予定事務事業をごらんいただきますと、例えば検査検定でありますとか権力的な要素があるものも含んでおるわけでございます。そういうことを総合勘案して今回判断したということでございます。
  10. 水野賢一

    水野委員 職員身分部分ばかりに焦点を当てるのは私も必ずしも本意ではないんですけれども、今、この問題を効率化とかそういうことだけで論議していいのかどうか、私も多少疑問はあるんですが、先ほど保護司の方などの例を挙げられて、名誉とかいろいろなこともおっしゃっていましたので、私もおっしゃることは非常によくわかります。  ただ、やはり効率的な運営、その部分でいえば、特殊法人がいろいろと経営の不透明とか非効率化などと言われていますけれども、その特殊法人身分公務員じゃないわけですが、そういうふうに言われている。それが、公務員型の独立行政法人で果たして効率的な運営ができるのか一抹の不安があるということだけここで申し添えさせていただいて、そこは運用をきちんとしていただければとお願いを申し上げたいと思うわけでございます。  さて、次に進みまして、今政府は、国家公務員を十年間で二五%削減するという目標を立てていらっしゃるわけでございます。人数にすると、どうも十三万人を超えるような人数削減ということになるというふうに承っております。  ところが、ちょっとここで不可解なのが、独立行政法人に移行する方々、大体七万人ぐらいというふうにも言われているみたいですが、これが削減に入っている。これは、国家公務員身分がほとんどはそのままなわけですから、やはり物の道理に合わないんじゃないのかなと思うわけなんですけれども、これは野党方々が随分おっしゃっていらっしゃることなので、その野党方々、きょう余りいないのでこれは結構ですけれども、私も与党の一員でございますから余りこんなことは申し上げたくないんですが、与党だろうが野党だろうが、やはり道理に合わないと思うことは、おかしいものはおかしいというふうに思うので、これはちょっと指摘したいと思うわけでございます。  さて、質問はここからでございます。  国家公務員の場合は、十年間で二五%削減という目標があるわけでございますね。ところが、では、独立行政法人の方に移られる、これは七万人といえば七万人なんでしょうが、その方々に関しては何らかの削減目標、例えば十年間に何%とかそういうものを今立てていらっしゃるのか、削減目標があるのかないのか、その辺ちょっとお伺いしたいと思います。
  11. 太田誠一

    太田国務大臣 今、国家公務員定員削減対象となっております分母対象というものはどういう範囲かということをもう一回きちんと申し上げたいと思いますが、それは狭い意味総定員法の中の定員ではないわけであります。すなわち、国家公務員の中から自衛隊のような特別の法律でもって手当てをされている部分については、今の我々の視野の中にはないわけであります。  その次に、いわゆる現業非現業という分け方がございますが、非現業はすべてが今我々の視野の中に入っております。現業のうち、いわゆる郵政事業庁、そしていずれは郵政公社に行かれる方々の職場の定員は除いてあるわけでございます。  したがって、今現在で五十四万数千人ということになっておるわけでございます。したがって、その中には本来の非現業の、我々が考える非現業国家公務員のほかにも、印刷、造幣部門も入っておりますし、またほかの現業も一部入っております。そこで、それを分母として二五%削減でありますので、言ってみれば大体十三万七千ぐらいの数が目標になる数字だと思うわけでございます。  それに対して、独立行政法人に移行した部分は入らないと言っておりますのは、そういう従来の総定員法視野、狭い意味視野ではなくて広い意味視野にも独立行政法人定員管理は入ってこない。なぜならば、まさにそこが独立行政法人の特徴でありまして、定員管理、どれだけの定員を維持していくのかということはひとえにその独立法人の長が経営者として判断をすることであって、そして、そのような厳しい判断をしてもらうためにディスクロージャーも行い、企業会計原則にのっとって会計も明示をする。そして、第三者による監査も受ける。それからまた、五年あるいは三年に一度中期的な目標を立てて、目標管理をして、その目標をどのぐらい達成したかということを第三者によって評価をされることになるわけでございます。  特殊法人との違いは、まずディスクロージャーについて外部監査が義務づけられているかどうかという違いがあります。  それからもう一つは、評価について、今は特殊法人について客観的な評価をできる仕組みは何もないわけでございますので、これは第三者による評価ということは、総務省に置かれます、全体の、各省庁が行う独立行政法人に対する評価というものをさらにダブルチェックでもって、総務省第三者の目を持って評価をするということになるわけでございますから、そこが、第三者による評価第三者による監査というところが大きく違うところでございます。  そういうことで、独立行政法人は、まさにその制度の本旨によって、この定数は行政が、つまり内閣目標を立ててその目標削減していくということになったら、これは自主性とか自己責任になりませんので、そこが違うところであります。
  12. 高鳥修

    高鳥委員長 水野君に申し上げますが、今、野党の方がいらっしゃらないのでというふうに言われたようですけれども、野党の方の中には出ていらっしゃる野党もありますので、そのように御理解をお願いします。
  13. 水野賢一

    水野委員 これは本当に失礼いたしまして、これは取り消します。  何を質問していたかと申しますと、そうなんです、独立行政法人は、今総務庁長官がおっしゃったように、中期目標、これが終わるごとに見直しをするわけですね。だから、例えば、これは三年から五年が中期目標なわけでしょうから、十年間あれば恐らく二、三回は見直すわけでしょう。その中で、見直しはしたけれども定数が全く減らなかった、こういうことになりかねないんじゃないかと思うわけです。それはそれで構わないというふうにおっしゃるかもしれませんけれども、そういうことを、つまり、見直しはしたけれども全く削減できなかったなどということにならないためにも、私は、何らかの削減の数値目標というのは立ててもいいんじゃないのかなと思うわけですが、ほかの国家公務員については十年間で二五%というのがあるわけですから、私はそう思うわけですが、もう一回お伺いしたいと思います。
  14. 太田誠一

    太田国務大臣 そういうふうに物事を考えると、独立法人の本旨に沿わないわけでございます。というのは、そういう効率性をどのぐらい重視されるか、それから、いわゆる目標に対して適正に仕事をしているかどうかという、適正性と効率性という二つのことを独立行政法人は負わなければならないわけであります。  その中で、特に効率性を求められる独立行政法人については、そんな二五%ぐらいでは困るのですよ。もっとハイピッチで減らしてもらわなくてはいかぬ。特に、いわゆる生産性のようなことを求められる部分では、それこそ新採用はゼロぐらいのペースでやっていただかなければ困るわけでございますから、そういう目標を掲げると無難な目標になりますので、甘えて、そういう効率性が求められるにもかかわらずそれが達成できないおそれがありますので、それはやらないということでございます。
  15. 水野賢一

    水野委員 今長官の方から力強い意気込みもお伺いしましてうれしい限りなんですけれども、先ほどの非公務員型か公務員型かというのもこれにかかってくるわけでして、非公務員なら私も何もそこまで言いませんけれども、公務員型である以上、削減目標というのがあってもいいのではないか。ここは、私はそう思うということでございます。  話を進めまして、今長官の方も、独立行政法人の場合は、何年かごとに見直す、中期目標も立てる、外部からのいろいろな評価もある、そういう部分をおっしゃったわけですが、中期目標ごとに見直すというふうにあるわけでございます。通則法だと三十五条だと思うわけですけれども、この見直しには、これは必要ないという結論に達したら、例えば廃止とか民営化とか、もしくは職員身分、これは公務員型を非公務員型に変えるというような、そういうことも含まれていると考えてよろしいですか。
  16. 太田誠一

    太田国務大臣 独立行政法人評価委員会というものが各省に設けられ、また総務省にもそれ全体を見る評価委員会が置かれるわけでありますが、その評価委員会は、三年から五年の実績の評価の結果、改廃や、あるいは独立行政法人の、今の特定かそうではないか、公務員型か非公務員型かということまで含めて、それを所管の大臣に対し、主任の大臣に対して勧告をできるということになっております。それがこの制度の、最初から改廃もあり得る、あるいは組織の形態の変更もあり得るということの意味であります。
  17. 水野賢一

    水野委員 今お伺いした中の、法律の条文をただそのまま読みますと、三十五条には今長官のおっしゃった改廃というような言葉は入ってはいないわけですね。入ってはいないのだけれども、今の答弁で、廃止もあり得るというようなことで、そう理解してよろしいですか。確認ですので。
  18. 太田誠一

    太田国務大臣 おっしゃるように、そういう意味でございます。そういう意味で、評価委員会が主任大臣に勧告をできるようになっておるということです。
  19. 水野賢一

    水野委員 私は、独立行政法人が三年から五年ごとに見直しをするというのは非常にいいことだと思っておるわけでございます。何も独立行政法人のマイナス面だけをここでお伺いするわけではなくて、プラスの評価すべき面はちゃんと評価すべきだと思っておりますし、見直しというのは非常にいいことだなと。  というのは、行政だろうと民間だろうと、失敗ということはあり得ると思うわけです。無謬性というのは、そういうことはないわけであって、失敗をした場合には潔くそれを認めて、過ちを改める、そういうことが必要だなと思うわけですから、その点、見直し制度を導入したというのは、非常に画期的なことだというふうに考えております。  先ほど、前の質問で、見直しには独立行政法人の改廃、廃止を含むというような御答弁をいただいたわけなんで、その点も非常に評価させていただきたいと思うわけですが、事実上、この法律でも、六十六条で独立行政法人の解散について触れていらっしゃるわけですね。  これは、六十六条をそのまま読ませていただきますと、「独立行政法人の解散については、別に法律で定める。」というふうにありますけれども、これはどういうことなんでしょうか。例えば、次の国会とかで独立行政法人の解散に関する法律とかそういうようなものを提出されるとか、そういうふうに考えてよろしいのでしょうか。ちょっとお伺いしたいと思います。
  20. 太田誠一

    太田国務大臣 通則法の第六十六条で「独立行政法人の解散については、別に法律で定める。」というふうに規定している以上の規定をあらかじめ通則法及び個別法にて設けるということがなかなか難しい、前もってやるということがなかなか難しいということでございます。  それはどういうことかというと、今、何を独立法人にしたかというときに、この独立行政法人は、あくまでも公益上、公共上の観点から必要なものであって、なおかつ国が直接に行う必要がない、なおかつ一つの主体に独占的にゆだねた方がいいものというふうな幾つかの条件がございますので、そのような、国にとって公共上の観点から必要なものということで独立行政法人化したものを解散するということになりますと、その判断、公共、公益上の観点からして必要だという判断が変わったということになりますので、それについては法律をもって、この独立法人の役目はもはや必要がなくなったということを個別の法律で定めなければいけないということになるわけであります。
  21. 水野賢一

    水野委員 さて、独立行政法人の長のことについてお伺いしたいと思うわけでございます。  この通則法の第二十条を読ませていただきますと、長の要件として二つ挙げられておるわけでございます。一つは、高度な知識及び経験を有する者、そしてもう一つが、事務や事業を適正かつ効率的に運営をすることができる者というわけでございますが、それはもちろん両方兼ね備えておるのが一番望ましいわけですけれども、あえて言えば、こういう質問が適当かどうかわかりませんが、あえて言えばどちらを優先するというふうにお考えでいらっしゃいますでしょうか。
  22. 太田誠一

    太田国務大臣 この部分につきましては、いわゆる経営者としての能力とそれから高度な専門知識、それは比率としては両にらみなんでしょうけれども、これは全く個人的に申し上げれば、後半の方の、経営者としての能力の方がやや大事かなという感じはいたします。  ただ、それは個人の見解でありまして、それぞれ歴代大臣がその人事権を持つわけですから、その主任の大臣がまさに政治家としてどう判断するかということでありますので、あらかじめこっちがいいというようなことを言って人事権を縛るというのは適当でないというふうに思います。
  23. 水野賢一

    水野委員 今の御答弁をいただいて、少なくとも太田長官の場合ですと、経営能力は二の次、そういうことはないということはわかりました。ありがとうございます。  それで、私はなぜこの質問をしたかといいますと、高度な知識及び経験という部分に余り力点が当たりますと、どうしてもその部分の経験が多い、例えば官僚の方とか、そういう方に登用する道を開くということになるんじゃないか。それが一〇〇%悪いというわけじゃないんですけれども、天下り先になりやすいんじゃないか、そういう懸念があるわけでございます。  この点でちょっとお伺いしたいのですが、独立行政法人の長に対する天下りは容認される、そこら辺はどういうふうにお考えでしょうか。
  24. 太田誠一

    太田国務大臣 まさに大事なポイントでございます。  私は、この独立行政法人の長について、それを特別職にするということに大変な思い入れを持って内部で検討いたしたわけでございます。  それはなぜかというと、あらかじめ独立法人の監督の省庁に現にいる行政官の方々最初からだめなんだ、あるいは向かないんだということは必ずしも言えないわけでありまして、そうであれば、そういう方々もあらかじめ排除はしない。しかし、そういう方も、あるいは民間から請われて来られる方々も、そのポストについて本当に国民が納得できるだけの仕事をされたのか、効率性においてそれだけの仕事もまた厳しくやったのかということを後から事後的にチェックされれば、それこそ公正な人事になるのではないかというふうに思っているわけであります。
  25. 水野賢一

    水野委員 よくわかりました。この法律のもとでは、天下りはあり得ることはあり得るということだと思うわけですが、ただそれは、それを任用される所管の大臣方々がきちっとした政治判断でやられるということを私も強く望みたいと思うわけでございます。これが第二の特殊法人みたいな形で天下りの温床になってしまっては、余り独立行政法人意味がないのではないか。太田長官のようなお考えの方が今後も所管の大臣になられるのが望ましいのかな、そんなふうに思うわけでございます。  さて、総務庁長官はたびたび、独立行政法人の設立に当たっては、特殊法人の問題に対する批判とかいろいろな反省点を生かして独立行政法人という制度をつくったのだというふうに国会でも今まで答弁をしていらっしゃるのを私も伺っております。  それであれば、率直にそれを聞くと、そんなに特殊法人というのはいろいろ問題があって、独立行政法人はその問題点を改めたものだというのであれば、現在の特殊法人というものはなくしてしまって全部独立行政法人に、よりよいものなわけですから、独立行政法人にすればいいのではないかというふうに率直に思うのです。すべてをそういうふうにするわけにはなかなかいかないと思いますが、今から特殊法人が改革を進めていくに当たって、独立行政法人化というのは、一つの選択肢としては、選択としてはあり得るということでよろしいですか。
  26. 太田誠一

    太田国務大臣 それはもちろん、よりよい制度をつくったつもりでありますので、その制度が比較するものができるわけでありますから、特殊法人についてもそれに倣っていただきたいという部分はたくさんございます。  つまり、そこまで今は、中央省庁の、現に国家機関がやっております仕事をどう切り出して独立させるかということに我々は集中をいたしましたので、最初からその視野の中に特殊法人は、純粋な、狭い意味の中央省庁改革の視野には入れていなかったということであります。  そういう問題があることは知っているけれども、問題があるたびに全部それを取り込んでいったら答えはいつまでたっても出ないわけでございますから、絞るということが我々は大事だろうというふうに判断をしたわけです。
  27. 水野賢一

    水野委員 そこで、有馬先生にお伺いしたいわけですが、大臣は、かつて行政改革会議のメンバーとして深く行革問題にかかわられた。それでなおかつ、特殊法人の理化学研究所の理事長もなされた。たまたま今、それを所管していらっしゃる科学技術庁の長官文部大臣とともに兼任していらっしゃる。  かつて独立行政法人の問題がいろいろと取りざたされたときに、御自身の理化学研究所についても独立行政法人化ということについて、賛成したかどうかは知りませんが、関心を持たれたというふうに承っておりますけれども、今現在、やはり理化学研究所を独立行政法人にした方がいいとお考えなのか。それとも、もしそういうふうにお考えならば、公務員型ということも考えていらっしゃるのか。ちょっとその辺について、大臣長官の御意見を聞かせていただければと思います。
  28. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 特殊法人独立行政法人にするかどうか、これはこれから検討が行われることであると思っております。現在のところ、理化学研究所は特殊法人でございますので、すぐに独立行政法人に移行する対象機関にはなっておりません。  それから、公務員型か非公務員型かということでございますが、現在は特殊法人でございますから、これは非公務員型でございますね。ですが、今後どういうふうに対応していくか、これからの動きを見ていきたいと思っております。  理研について申し上げますと、理研は現在、日本の代表的な研究所として考えられるくらい非常にすぐれた成果を生み出しております。  例えば、理事長を選ぶ際には、このところずっと外部の研究者を理事長にするというふうな努力をしておりますし、また、三年ごとに、全機関、理化学研究所全体にわたって外部評価、外国人を半分以上入れました外部評価を行っておりますし、主任研究員は七年ごとに他者評価を行っております。そういう自己努力で、大変厳しい努力をしているということ。一方、同時に、国立研究所や大学にない特殊法人としての自由度を活用して、大いに活躍をしているところでございます。  科学技術庁といたしましては、理研のこういう研究機能がより一層すぐれたものになるよう、向上するような組織形態について今後も検討いたしたいと思っております。
  29. 水野賢一

    水野委員 よくわかりました。  特殊法人独立行政法人にするという場合、職員身分というのが、もし公務員型、つまり特定独立行政法人になってしまうのだとすると、今特殊法人においては、これは非公務員なわけですから、公務員の数をふやすということになってしまうのじゃないかと思いますので、その点は、今後の特殊法人改革について、そういうことも留意して、余り公務員の数の拡大というふうにならないように気をつけていただければと私は思うわけでございます。  さて、特殊法人の問題点として指摘されるのはいろいろあるのですけれども、特殊法人が子会社や孫会社を持っている、つまり、特殊法人がいろいろ株式会社に出資なんかをして、その子会社と、言葉はあれですが癒着というか、さらに子会社の方が天下り先になったりというような、そういうことをよく指摘されるわけでございます。  太田長官は、独立行政法人を創設するに当たりまして、特殊法人の反省を生かしているんだというお話ですので、この部分に対してその反省は生かされているのか。つまり、具体的に言いますと、独立行政法人は子会社、孫会社というものを持つことはできるのでしょうか。
  30. 太田誠一

    太田国務大臣 独立行政法人業務などが国民のニーズとは無関係に自己増殖するということは、その膨張は厳に慎まなければなりません。  そこで、独立行政法人による出資等は、独立行政法人の本来業務及びそれに附帯する業務にかかわるもの以外は認めないものとし、個別法令に定めがある場合に限ることといたしております。  それに対して、今の特殊法人の場合は、今の本来業務及びそれに附帯する業務という限定のほかに、目的達成に必要な業務というものがくっついているわけであります。そういうことを落としてありますので、ここは立法者の意図としては、こういうことは厳に広がらないように気をつけていこう、個別法令に定めがない限りはだめだということにいたしておるわけでございます。
  31. 水野賢一

    水野委員 それでは、その個別法令を作成するときに、そういうときにもそのことに留意をしていただければというふうにお願いを申し上げたいと思います。  それでは、特殊法人経営が不透明だということが常に指摘されておるわけですけれども、そう言われていながら、今月成立しました情報公開法でも、特殊法人の情報公開というのはちょっと先送りというような形になったわけですよね。具体的に申せば、情報公開法の第四十二条と附則によって、公布後二年後をめどに情報公開のための法的措置を講じることになったみたいですけれども、それはいいのですが、特殊法人の反省の上に立って、独立行政法人の場合は情報公開法の対象になるということでよろしいですね。
  32. 太田誠一

    太田国務大臣 まず、透明性ディスクロージャーの話、全体から申しますと、今委員が言われましたものは、国民に要求されて行う情報公開であります。事柄は、国民に求められてやる情報公開とみずからやる情報公開の二通りあって、独立行政法人の場合の特徴は、請われるまでもなくみずからやるということが制度の建前になっております点が第一。  それからもう一つは、特殊法人についての国民から求められて行う情報公開の話でございますが、先送りというふうに言われたわけでございますけれども、これは二年以内に見直しを、特殊法人についてどのように適用するかということを見直しするというつもりでおりますので、先送りをいたしたというつもりはないわけであります。そういうふうにおっしゃるのは、やや正確に事態を見ていないということでございます。  そして、それはなぜなのかといえば、情報公開は現に国家機関である、行政機関であるところの仕事の公開の話であるのに対して、特殊法人の場合は、半ば、それこそ公務員ではないというのに象徴されるように、民間の人格も一部持っておるわけでございますから、民間についてはそのような義務がないということを考えると、そこをどうバランスをとっていくかという検討に時間がかかったというわけでございます。  当然のことながら、独立行政法人はより行政に近い位置づけになっておりますので、同時期に同じようなペースで検討されていくということになろうかと思います。
  33. 水野賢一

    水野委員 お伺いしたいのは、国民が情報公開を請求した場合に、独立行政法人がそれを公開するのかどうかということですから、これは別に新たな法的措置を講じなくても、現行法のままでも独立行政法人は情報公開法の対象と考えてよろしいのでしょうか。改めてお伺いします。
  34. 太田誠一

    太田国務大臣 それはやはり手当てをしなければ、一般の行政機関と同じような意味で、直ちに独立行政法人が情報公開の対象ではない、手当てをしなければならないと思います。
  35. 水野賢一

    水野委員 それでは、この独立行政法人通則法の第三条でいろいろ透明性についてもうたっているわけですので、そういう手当てを速やかにされるようにお願いをしたいと思うわけでございます。  いろいろ伺ってきたわけですけれども、ちょっと誤解を招くといけないので断っておきますが、私は、何も独立行政法人が間違っていると言っているわけではなくて、画期的な制度だと思っているわけでございます。ただ、まだ新しい制度でございますのでよくわからない点が多いからそういう点をお伺いしたわけでございますが、今後、成立した暁にはよりよく運用されるようにお願いを申し上げたい、そう思うわけでございます。  次に、地方分権に関連して、住民投票について少しお伺いをしたいなと思うわけでございます。  私は、これは自治大臣にお伺いする形になると思うのですが、地方分権の中で、地方の問題は地方が、地域が決めるんだ、これは非常にいいことだと思いますし、さらに一歩進んで、住民投票を通じて、地域のことは地域住民が決めるというふうになることこそ本当の地方分権じゃないかと思うわけでございます。  これはちょっと話を拡大していきますと、国のことは国民が決めるということで、国民投票なりさらには首相公選なりというものがあってもいいと思うのですが、そこまで話を広げると焦点が拡散してしまいますので、地域の問題だけ、住民投票にちょっと絞りたいと思います。  これも誤解のないようにあらかじめ断っておくわけですけれども、私は、何もあらゆる問題を住民投票で決めるのがいいと思っているわけではない。それに適するもの、適さないもの、いろいろあると思います。  具体的にお伺いしたいのは、市町村合併なんかの場合に、住民投票による承認とか、今住民発議制度だけありますよね。だけれども、それだけじゃなくて、地域の問題ですから、住民投票による承認とかそういうことがあってもよろしいんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。自治大臣にお伺いします。
  36. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 今、市町村合併についての住民投票に対する、ある意味では法的有効性を与えてもいいのではないかという趣旨のお話がございました。  住民の自治ということ、つまり、地域のことは地域自身の責任において決すべきであるという事柄と、それから住民投票に法的効果を与えるべきであるということは、必ずしも同じ性質のものではないと思います。  それは、いわゆる地方の制度におきましても代表民主制という姿をとっておるわけで、そういう中で今日は、その自治体の長あるいは議会、こういったところにそういう法的な権能、効果を与えておるわけで、ただ、住民として非常に関心の深い、そういうテーマについて大方の住民の意向あるいは動向を知りたいというようなことから、それを参考にしたいという意味で条例において住民投票を現実実施している。そのこと自体は、別段今日の法制の中で禁止をされてはいないという姿になっておるわけです。今御指摘のとおり、いわゆる住民投票に適する事項あるいは適さない事項ということは多少交通整理をする必要もあるのではないか。  この点については、地方分権推進委員会の第二次勧告におきましても次のように述べておるわけです。つまり、   住民投票制度については、住民参加の機会拡大のために有効と考えられる一方で、現行の代表民主制との関係に十分留意する必要があり、また、適用対象とすべき事項、その法的効果等についての検討も必要なことから、国は、その制度化については、今後とも、慎重に検討を進める必要がある。 こう述べておるわけです。  私は、時間をずるずるかけ過ぎてもよくないので、今後、こういう指摘もありますが、もう少し論点を絞り込んでいけるように引き続き精力的に勉強してまいりたいというふうに考えております。
  37. 水野賢一

    水野委員 今、慎重に検討というような表現がございましたが、私は前向きに検討していただきたいのです。合併に関しては、住民は今でも合併協議会の設置は直接請求できるわけでございますけれども、そういういわばアクセルを踏むことはできるわけでございます。ただ、僕は、何も合併が悪いと言うわけじゃないんだけれども、決定権、つまり、ブレーキを踏むのもアクセルを踏むのも自由に住民に決定させるということこそ真の地方分権であり住民自治というものじゃないかと考えるわけでございます。  質疑時間も終了したということですので、そのことを前向きに検討していただければということをお願いいたしまして、私の質疑を終了させていただきたいと思います。ありがとうございました。
  38. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、佐藤茂樹君の質疑に入ります。
  39. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。  木曜日に続きまして質問をさせていただきますが、きょうは地方分権一括法案を中心に質問しなさいというお話をいただいておりますので、地方分権一括法案について主に質問をさせていただきながら、後半、時間が余りましたら、中央省庁等につきまして総務庁長官の所見も賜りたいと思います。地方分権の中でも一、二問総務庁長官にもお伺いするかと思いますので、よろしくお願いします。  それで、今回のこの地方分権一括法案、前回も申し述べたんですけれども、明治以来の機関委任事務というものが廃止をされて、国と地方の関係が上下さらには主従関係から対等協力関係に変わるということは、私ども、画期的なことである、この点については大いに歓迎したいな、そのように思うわけでございます。  この地方分権一括法案、もう既にいろいろと言われておりますけれども、地方分権推進委員会の第一次勧告から第四次勧告に基づいてつくられた地方分権推進計画をきちっと法案化したというのが中心であろうというように思うわけですが、第一次勧告から地方分権推進計画、そして一括法案に至る流れの中で、個別法に関する問題は別として、大きな考え方の中で、微妙にいろいろ表現が変わっている部分が私は大きく二つのテーマであると思っているのです。その一つが法定受託事務の定義等でございますし、もう一つは、国と地方が紛争したとき、その紛争処理の仕組みをどうするのかという部分について勧告から少し変わっているな、そのあたりについて、きょう中心にお伺いをしたいわけでございます。  それで、機関委任事務を廃止して、基本的に、地方公共団体の事務というのは法定受託事務と自治事務しかないんだ、そういう形になるわけですね。ところが、今回の一括法案の地方自治法の改正案でも書いてあるんですが、そうしたら自治事務の定義というのはどうなっているのかというと、「地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のものをいう。」と。法定受託事務以外のものが自治事務だというので、法定受託事務の定義がどういうようにきっちりしているのかということが実はポイントになるわけですね。  それで、これから何点かお聞きしたいわけですが、お手元に法定受託事務の定義、私なりに、第一次勧告から今回の地方自治法の改正案に至るまで、どのように変わってきたのかということを四段階書かせていただきました。  これだけ細かく全部読んでいると時間がございませんので読みませんけれども、第一次勧告、これは平成八年の十二月二十日の段階でございます。それから、自治省内で機関委任事務廃止大綱というのをまとめられたんですけれども、これは平成九年の十二月。そして、昨年の五月二十九日に地方分権推進計画。こういう形で大きく変遷をしてきているわけです。そこから今回の改正案に至るわけでございます。  第一次勧告から地方分権推進計画への流れというのは、微妙に表現が変わっているんですけれども、一言で言わせてもらうと、勧告のときには、国の義務で直接執行すべきであるが、国民の利便性などから、法令により自治体が受託する事務となっていたものを、地方分権推進計画の段階では、法令により地方自治体が処理する事務のうち、国の責務に係る事務である、そういう表現になっていまして、この三段階を経て、ほとんど表現は変わらないのですけれども、どちらかというと、重きは、国よりも地方自治体の仕事である、事務であるということに、少しずつですけれども、比重を置いた表現にこの分権推進計画まではなっておったわけです。  ところが、今回の改正案では、今まで使われておった「国民の利便性又は事務処理の効率性の観点から」、そういう文言が消えまして、かわって、「国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして」、そういう表現が置かれたわけですね。  私は、ここは二つ、やはりきちっと確認しておかなければいけない問題があるんだろうと。  一つは、それまでの三段階、計画までに丁寧に説明されておった、なぜこの事務が自治体が処理するものなのかという説明、つまり、国民の利便性または事務処理の効率性の観点から見てこれを地方の事務とするんですということが一つですね。これが欠如してしまったということ。  もう一つは、「国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして」ということだけが加えられたことによって、新定義によって、国が逆に自由に定められるような、そういう印象、特に積極的に関与する領域を広げていくのではないのか、そういうイメージを与えるような定義にわざわざ地方自治法の改正はなっているわけですね。  私はやはり、勧告の精神を生かすならば、本来国の責務にかかわるものだけれども、国民の利便性または事務処理の効率性の観点から地方に任せる事務が法定受託事務なんだ、それを法や政令によってきちっと定義したものが法定受託事務なんだ、そういう考え方が明確に表現されている計画の段階の表現というのが、やはり今回の地方自治法の法案の中でも、きちっとそういう定義をもう一回明確に、計画の段階に戻って明記しておくということが大事なんではないのか。  その全体の流れを見てきた人は、こういういきさつで、例えば第一次勧告から、また、先ほどの機関委任事務廃止大綱からこうなって、計画までこうなって、その上に立って今度の法案ができているんだというのがわかりますけれども、でき上がった地方自治法のこの法案の中身の定義だけを見れば、法定受託事務というものが定められてきた精神というか、考え方がもう一歩わかりにくくなっているのではないか。  そういう意味では、改正というのは非常に難しいかもわかりませんが、やはりこの計画の段階の表現の方が、勧告に携わられた委員方々の考え方も反映するし、ふさわしいのではないのか、そのように考えるのですが、まず自治大臣の所見を伺いたいと思います。
  40. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 そう言われてみれば、なるほどそういう受けとめ方もあるのかなというふうに感じなくもないんですけれども、実際問題、国の事務と地方公共団体の事務をどう振り分けるかということがまずあるわけです、この点は。そういう意味では、地方自治法の第一条の二でしたか、まずそこが働いている。そこで今御指摘のような角度のことが入っている。  その次に問題なのは、一たん地方公共団体が処理することになった事務の中で、その中で逆に法定受託事務として引っ張り出すということになるものですから、一定の性質を有する事務を法定受託事務ということを法文上どういうふうに定義づけるのがいいかという中で御指摘のような表現に変わったということは、ひとつ御理解をいただきたい。  そういう意味で、もともと国民の利便性または事務処理の効率性というのは国がやるべきことなのか自治体がやるべきことなのか、その事務を振り分けるときに、利便性というのは地方団体の事務にするのがいいんですよという意味意味があったということに力点があったということを申し上げておきたいと思うのです。  したがって、この定義によって法定受託事務に対する国の関与のあり方が変わるものではもちろんありませんし、それから、今回の法改正におきまして、関与は法律または政令の根拠がなければならぬという法定主義というのを新たに規定することといたしましたし、必要最小限でなければならぬ、あるいはルール化しなければならぬ、その他、透明、公正、ルールというものを法定したということとあわせて考えていただければ、今回表現上の問題が多少変遷があってわかりにくかったかとは思うんですが、その点は、このことによって国の関与が強くなるというようなものではないということは御理解をいただきたいと思っております。
  41. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 これに関連して、大臣はもう御答弁いただかなくても結構なんですけれども、今、この表現によったことによって国の関与を広げるとかルールが変わるとか、そういうことではないという確たる答弁をいただきましたのでいいんですが、私、この土日、自分のした質問をもう一回議事録を読んでいますと、昨年の十月六日の地方行政委員会で、法定受託事務のこと、当時、まだ五月に地方分権推進計画ができてから国会も開かれていなかったので、臨時国会でこのことをちょっとお聞きしたことがあるのです。  そのときに、同様に、法定受託事務の定義が微妙に計画までに変わってきておるじゃないか、そういうことをお聞きしたときに、当時、西田自治大臣でしたが、鈴木行政局長が次のように答えられたんですね。「頭にありますのは、いずれ法制化、条文化いたしますので、法制的になり得るような表現として計画には書きたいということで検討いたしまして計画に書いているものでございまして、基本的には勧告の趣旨に即したものである、こういうふうに考えております。」と。基本的には勧告の趣旨に即したけれども、計画の表現自体が法制的になるようにこういう表現にしたんだ、簡単に言うとそういう答弁なんです。今回出てきた一括法案の地方自治法の改正案というのは、その計画からさらに変わっているわけですね。  これは技術的な話なのかもわかりませんが、きょう局長等来られていたら一応確認でお聞きしたいのですけれども、これは去年の十月の段階の答弁なんですよ。そこからこの春に至るまで、先ほど言いました表現でありますけれども、「国民の利便性又は事務処理の効率性の観点から」をわざわざ抜いて、そして「国においてその適正な処理を特に確保する必要があるもの」、そういうものをあえて入れられた、そういう理由を確認の意味でお尋ねしておきたいと思います。
  42. 鈴木正明

    鈴木(正)政府委員 お答えいたします。  昨年の地方分権推進計画におきましても御答弁申し上げましたように、できる限り法制化ということを頭に置いて、計画に盛られた表現が法案として生きるという趣旨で検討をして、こういう表現にしたところでございます。  その後、さらにいよいよ法案ということで詰めましたところ、今ほど大臣から御答弁申し上げましたように、「利便性又は事務処理の効率性」といったものについては、やはり国と地方の事務の振り分けの考え方であるということで、定義としては入れなくていいんではないかということでございます。  もう一つは、「国が本来果たすべき責務に係るもの」というところの表現は、果たしてこれで十分なのかどうか、本質をあらわしているのかどうかということで、結局その本質は何かということで、「国が本来果たすべき役割に係るものであつて、」「その適正な処理を特に確保する」というのが本質ではないかということで、自治事務と法定受託事務との対比ということで、こういう整理に最終的になったものでございます。  もちろん、それには、先ほど言いました関与の基本原則、法定主義という規定も確定したということも相まちまして、こういう規定に最終的になったものでございます。
  43. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 お二人に確認しましたので、もうこの定義のことは聞きません。  あと、当時、第一次勧告、平成八年の段階ですが、その段階で言われていたのは、我々も地方分権特別委員会ですか、当時の諸井委員長なんかもお呼びしたときにも言われていたことなんですけれども、当初、この法定受託事務というのは、やはり基本的には自治事務に振り分けるんだ、そして法定受託事務というのはせいぜい二〇%程度、そういうふうにしたいんだ、そういうようなお話もありましたけれども、その割合が、そのころ言われていた勧告の段階からふえ続けまして、結局、推進計画の段階に来ますと、四〇%ぐらいが法定受託事務に振り分けられて、あとの六割ぐらいが自治事務になった。なぜこういう形で、勧告からだんだん計画に至るまでこういう割合に法定受託事務がふえてきたのか、このあたりの事情について簡潔に御答弁をいただきたいと思います。
  44. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 今御指摘の点、私も不思議に思って、ちょっと調べさせてみたんです。そうしますと、地方分権推進計画の閣議決定後、法制化の段階で、新たに法定受託事務と規定することになった法律は全部で二十六件。一方で、法律を廃止したり整理をして、三十一の法律で逆に計画段階よりも減っているということがあるわけです。  そこで、何でそういうことになっているのか。四五対五五というお話もございます。これは法律単位、数え方の角度の違いということもあるのではないかと思っているのです。この一括法案を取りまとめた時点において、法律単位で数えた場合に、機関委任事務を規定する法律は四百三十二件あるわけです。自治事務を規定する法律は二百九十八件、法定受託事務を規定する法律は、委任政令で規定されるものを含めて二百四十七件で、自治事務が五五、法定受託事務が四五ということになっているのですが、これは地方分権推進計画策定段階の整理に大体即した結果になっているのです。  そこで、最初に指摘されました二〇%程度の話なんですが、これは、従来の団体事務といいますか、それと国の下部機関としての機関委任事務と両方合わせた中で、県の場合は七、八割が機関委任事務であった、それから市町村の場合は三、四割が機関委任事務であった。その機関委任事務を自治事務と法定受託事務とに整理をして、その結果、トータルとしてどういうことになったかといえば、都道府県においては自治事務が七で法定受託事務が三、七対三ということになっているし、それから市町村では八・五対一・五ということになっているわけで、そういう意味では、法定受託事務の割合は自治体の全事務の中でおおむね今御指摘のまあ二〇%程度の見込みになるのではないかというのは、あるいはそういうことであったのかというふうに思っています。     〔委員長退席、岩永委員長代理着席〕
  45. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 今大体お聞きしまして、数のことはもうこれ以上細かく聞いてもあれなのでお聞きいたしません。  それで、今後の問題として何点かお聞きしたいのですけれども、今大臣がいみじくも答弁されましたように、行政需要に伴って計画の段階からもさらに法律がふえて、それによってまた法定受託事務と自治事務を振り分けたんだというお話がありました。今後ともそういう法律また政令というのはふえていくと思うのです。むやみに法定受託事務をふやさないというのがやはり勧告からの流れの精神であろう。  そのための方策として、私は二つポイントがあると思うのです。一つは一覧性の確保。全体が見える、法定受託事務が今大体全体でどれぐらいあるのかということが常にわかるというようにさせるということが一つ。もう一つは、自治事務というのは法定受託事務以外の地方自治体の事務ですから、法定受託事務を決める基準というものをはっきりさせておくということが二点目として私は大事になってくるのであろう、そのように思うわけです。  そこで、これは今回の地方自治法の改正案の中で言われているのですけれども、どのように言われているかというと、「この法律又はこれに基づく政令に規定するもののほか、」法定受託事務のことなんですけれども、「法律に定める法定受託事務は第一号法定受託事務にあつては別表第一の上欄に掲げる法律についてそれぞれ同表の下欄に、第二号法定受託事務にあつては別表第二の上欄に掲げる法律についてそれぞれ同表の下欄に掲げるとおりであり、政令に定める法定受託事務はこの法律に基づく政令に示すとおりである。」こういうように書いていまして、要するに何が書いてあるのかというと、法律に定める法定受託事務と政令に定める法定受託事務というのがありますよと。  さらにもうちょっと解釈すると、この法律またはこれに基づく政令に規定するものというのが一つある。次に、法律に定める法定受託事務というのがある。政令に定める法定受託事務というのがある。そういう書きぶりになっておるわけですね。  その中で、ここにも書いてあるように、法律に定める法定受託事務というのは、今までと同様、機関委任事務が五百六十一、地方自治法の別表で書かれていたように、法律で定める法定受託事務というのは別表第一にきちっと書かれておるわけです。第二号法定受託事務についても別表第二に書かれておるわけですね。  問題として聞きたいのは、政令に定める法定受託事務というのが、逆に言うと野放しになっておる部分があるんじゃないのか。野放しと言うたら失礼かもわかりませんが、この別表第一のように一覧性のあるものとしてきちっと明記されてない、そういう部分があるわけですね。今後、法律で定める法定受託事務、これが別表第一であると同様に、やはり政令に定める法定受託事務も、全体が見えるような形できちっと一覧性を確保しておく必要があるのではないか、私はそのように思うんですけれども、具体的にどういう形で、そういう政令に定める法定受託事務の全体が見えるような具体策を考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  46. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 御指摘のとおり、法定受託事務の創設は将来にわたって厳に抑制されるべきものであると考えております。  それから、今後、どういう形で抑制していくのかということでありますが、今、そのうちで、二つの中の一つ、特に全体像を明らかにせよというところがございました。もう一つは、地方分権推進計画、これは、昨年決めましたこの計画は閣議決定でありまして、そのメルクマールというのは、当然のことながら、今後も政府内で規制基準として機能するということは当然のことだと考えております。そういったことも一つございます。  それから、最終的には、国会において類似制度間のバランスや法律相互間の比較などを考慮しながら、具体的に法定受託事務とするかどうかということの妥当性は、法案審議の際に当然十分御審議をいただけるものだ、国会のチェックということが一番大きなチェックであるというふうにも考えております。  そこで、これに加えて、それだけじゃだめなんで、わかりやすく網羅的にどうだということでありました。この点は、個別の法律に定める法定受託事務については地方自治法の別表に掲げる、個別の政令に定める法定受託事務についても、地方自治法に基づく政令の別表という形で、それぞれ網羅的に掲げるということにいたしたわけであります。これによって、法定受託事務の定義及び効果、それから事務の全体像が、基本法である地方自治法の体系の中で一元的に明らかになって、理解しやすくなっていくのではなかろうかというふうにも考えておるわけであります。  いずれにせよ、一覧的に掲げるというこの二つをあわせることによって、常に法定受託事務の全貌が明らかになっていくのではないかというふうに考えております。
  47. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 今大臣から、地方自治法と地方自治法に定める政令の別表で、それぞれ、法案に基づく法定受託事務、そして政令に基づく法定受託事務はきちっと明記するんだと。  私はなぜ大事かというと、一つは、昨年の五月、地方分権推進計画が出たときに、分権推進委員会から五つ要望が出ておりました。その三番目にもこのことを言われているんですね。「法定受託事務について、その全体の姿及び毎年度の推移が明らかとなるよう適切な措置を講じていただきたいこと。」と。これを今御答弁でいただきました。  もう一つは、機関委任事務も長い間続いておりましたけれども、五百六十一きちっと別表に書かれていたから、これだけあるのかということが法を見れば常に意識づけられてきた、そういう部分もありますし、やはり全体として、それぞれの個別法に散らばっているものも、また政令に散らばっているものも、全体が見えるという形にしておくことは大事であろう、そのように思うわけです。  そこで、今もう大臣から、次に聞こうと思っておった話まで行きましたが、もう一つは、法定受託事務の基準をしっかりさせる。今も、閣議決定なのでこれをそれぞれの省庁がしっかりと守るであろう、そういうお話でございましたので、あえてそのことを繰り返してお聞きいたしません。というのは、第一次勧告とそして計画の中にきちっとメルクマールというのは、表現は微妙に変わっているのでしょうけれども、書かれておるわけですね。第二次勧告にもありました。  そうすると、あえてお聞きしたいのは、この勧告さらに計画の中で明記されている法定受託事務のメルクマールなんですけれども、これをずっと読んでいきますと、八つぐらい基準が書いてあります。ところが、この八つは、どれもこれもいわゆる第一号法定受託事務、国と都道府県、市町村間の法定受託事務。それで、第二号法定受託事務、要するに、都道府県のものなんだけれども市町村に、また特別区に法で定めて受託するのだ、そういうような事務のメルクマールというのがこの計画の段階まででは明記されていないわけです。  私は、やはり第二号法定受託事務のメルクマールというものもきちっとつくるべきであるし、文書という形できちっと示すべきではないのかな、そのように考えるのですが、自治大臣の所見を伺いたいと思います。
  48. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 今御指摘のとおり、第二号法定受託事務というのは都道府県と市町村の間の関係でございまして、第一号法定受託事務に関して設けられたメルクマールのうちで、その性格上都道府県についても当てはまるというものについては、同じようにメルクマールとして第二号についても機能することになると考えられるわけであります。  例えば、今回の法案で第二号の法定受託事務とされたものの例として、都道府県の統治の基本に密接な関連を有する事務として、公職選挙法における都道府県知事、議員の選挙に関する事務とか、また、都道府県が執行する事務の前提となる手続の一部のみを市町村が処理することとされているものとして、土地収用法における都道府県知事の事業認定に係る裁決申請書の公告縦覧の事務、あるいは土地区画整理法における都道府県知事の土地区画整理事業の施行の認可に係る申請の経由事務などがあるわけであります。
  49. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 今例を出されたのですが、私がお聞きしているのは、計画を参考例にとりますと、例えば、法定受託事務のメルクマールは次のとおりとするということで、一、「国家の統治の基本に密接な関連を有する事務」とか、二番目、「根幹的部分を国が直接執行している事務で以下に掲げるもの」、三番目に「全国単一の制度又は全国一律の基準により行う給付金の支給等に関する事務で以下に掲げるもの」等々、どれを読んでも、国と都道府県あるいは市町村間の法定受託事務の基準をどうするのかという、そういうようにしか読めない基準しか書いてないわけです。  ところが、計画でもそうですし、今回の一括法案の地方自治法の改正案でもそうですが、この法定受託事務というのは二種類あります。その二番目の、「市町村が処理する事務のうち、都道府県が本来果たすべき責務に係るものであって、国民の利便性又は事務処理の効率性の観点から市町村が処理するものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの」、要するに都道府県、市町村間の法定受託事務、これはどういう基準で都道府県から市町村に、きちっと法で定められて、また政令で定められて移っていく事務になるのかというこの基準を、国と都道府県、市町村間のこのメルクマールが八つあるのと同様に、きちっと明確にすべきじゃないのか。  先ほど、国と地方間のメルクマールがあるので、これは閣議決定したので、これからこれが基準になりますという大臣の御答弁はありましたけれども、都道府県と市町村間の第二号法定受託事務のメルクマールというものも、計画段階まではなかったんですが、地方自治法に第二号法定受託事務のことを明記するのであればやはりきちっとメルクマールをつくるべきではないのか、そういう主張を先ほどからさせていただいておりまして、つくるべきかどうか、そのことについてお考えを伺いたいと思います。
  50. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 ちょっと行政局長答弁させます。
  51. 鈴木正明

    鈴木(正)政府委員 お答えいたします。  第二号法定受託事務についてでございますが、この事務の本質は、「都道府県が本来果たすべき役割に係るものであつて、都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして」という性格を持つものでございますので、そのメルクマールといたしましては、先ほど大臣から御答弁いたしますように、第一番目のものでございます。都道府県のいわば統治の基本に密接な関連を有する事務、そういう性格のものが一つ。もう一つは、大臣から先ほど答弁いたしましたように、都道府県が執行する事務の前提となる手続の一部のみを市町村が処理すること。ですから、国の言っています一番と七番、これがメルクマールになるものと考えております。
  52. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 間違いないですね、一番と七番で。  これ以上くどく言いませんが、私は何でこういうのをあえてやるかというと、今回の地方分権の統一法案全体で、今の段階ではやはり国と都道府県と市町村の三層構造を基本的には変えないでいきましょう、そういう大前提の上でこれはずっと一括法案まで出されてきているわけですね。  そのときに大事なことは、しかしながら、いろいろ第一条等に書かれているけれども、そうすると、国と都道府県と市町村の三つの階層でどういう役割分担を基本的にさそう、きちっとそういう役割分担を明確にした上で地方分権を進めていきましょう、そういうことがはっきりしているのかどうかということがポイントになる。その一つが、法定受託事務といえども、メルクマールがそれぞれできちっと、基準が明確になっているのかということ。  そのことを考えたときに、これは多分地方分権推進計画、さらには勧告の段階も同様だったんですが、国と都道府県間の基準というのはこういう形で文書できっちりとされておったにもかかわらず、都道府県、市町村間の事務の受託、任せるかどうかという基準、ここが実ははっきりしてなかった。ここを少なくとも法の段階でははっきりさせられるのかなと思っていたら、法にはメルクマール自体も載せられないし、そうすると計画に戻らないといけない。そうしたら計画にはっきりさせているのかというと、明記されてない。このままこの第二号法定受託事務という言葉だけが条文上進んでいったら、一体、都道府県の中の事務のうちどれだけを市町村に任せるのかということが不確かになるのではないのか。  そういうことでございまして、私は、今、答弁だけではなくて、やはり計画の修正なりするようにして、この第二号法定受託事務のメルクマールはこういうものですということをきちっと何らかの形で、地方分権推進計画の補足みたいな形でもいいかと思うんですけれども、ここによって立って都道府県と市町村が事務をこういうように法定受託で分けているんですということを明記していただければなと思うのですが、自治大臣、御所見ありましたらお答えいただきたい。
  53. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 十分に検討します。
  54. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 ぜひ、そういう形で明記したものを、委員長、代理でございますが、理事会等に、この特別委員会の最中に提出していただきますよう要望をさせていただきたいと思います。お取り計らい、よろしくお願いいたします。
  55. 岩永峯一

    ○岩永委員長代理 理事会で審議いたします。
  56. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 もう一つは、先ほど自治大臣から御答弁がありましたが、国会の審議のときに、個別法ごとに、今後出てくる行政需要に対して、法定受託事務と自治事務とどういうように割り振るのかということを国会の論議できちっとやっていただきたい、そういうお話がございました。  これは確かに国会議員の責務としてやらないといけないことだろうと思うのですが、問題は、政令等については国会にかからないわけですね。そうすると、やはり今後を考えていくときに、今までの法案地方分権推進計画ができてから以降のことはちょっとできなかったかもわかりませんが、地方分権推進委員会という、諸井委員長以下のこういう機関があるときには、この法定受託事務と自治事務を振り分ける労作業をずっとされてきた第三者機関がございました。しかし、やはりこういうチェック機関、法定受託事務と自治事務をこういうように分けなさいということとか、さらに、本来の勧告の精神どおりの分かれ方になっているのかということをきちっと見ていくような機関が今後とも必要になるのではないのかな、そのように私は考えるのですが、そのことについて自治大臣の所見を賜りたいと思います。     〔岩永委員長代理退席、委員長着席〕
  57. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 御指摘の点も十分、気持ちはよくわかるのですが、先ほど来申し上げておりますとおり、まず第一に、閣議決定としてのメルクマールが現にワークしていくだろう、これがまず一番、政府部内の基準として当然のことながら機能する。その次に、第二番目に、何といっても、国会審議において、政令にゆだねる場合も法律に基づいて政令にゆだねるわけでありますから、その際に、しっかりと法定受託事務にするべきかどうなのかということを含めて、十分御審議をいただきたいと考えておるのです。  そのほかに、さらにそれをチェックする第三者機関のような常設機関が果たして必要かどうかということについては、一方で、法律をつくるときに、当然そこに至る各個別の法律をつくっていく過程の中で、関係の審議会等々の審議も経た上でこういう法案化がなされるケースも多いわけで、そうすると、それを別の審議会みたいなものが、そういう形で、そういう意味でのチェック機能を専門にやるような組織をつくっていいのかどうかというような部分もこれあり、いずれにしても、その辺はなかなか難しい問題がございます。  しかし、いずれにしても、地方分権推進法の期限切れ後の体制において、地方分権推進のためのフォローアップ等々、これからどうしていくかということは、十分その時点で考えていかなければならぬテーマであると考えております。
  58. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 あと三十秒ほどあるので一問だけお聞きしますが、もう一つ、冒頭申し上げましたように、国地方係争処理委員会のことでございます。  長い文章を読もうと思いましたが、もう時間もありませんので、第一次勧告さらには第四次勧告とも、この段階では、地方公共団体からの不服の申し出だけではなくて、この勧告の段階では、国からも、地方公共団体が例えば言うことを聞かぬとか、是正の要求など出している、そういうときにはきちっと申し出ができますよ、そういう勧告をこの分権推進委員会ではされていたんですね。この計画の段階、さらには今回の法案の段階に至って、なぜ国からの申し出というものをなくされたのか、最後にお尋ねをしておきたいと思います。
  59. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 御指摘のとおり、第四次勧告におきましては、国からも審査の申し出などを行うことができることとされていたわけです。今回の法案の中では、それを盛り込まないということになりました。  その理由ですが、それは、是正の要求や指示などの国の関与については、それ自体に従うべき法律上の義務があるということでございますので、国からの審査の申し出などを行う法的な意味はないのではないかということもございます。  それから、御指摘のような国の適正な関与を地方公共団体がずっと無視し続けるという事態はなかなか想定しにくいんですが、仮に、万が一そのような事態が法定受託事務に関して生じたような場合には、改正後の地方自治法第二百四十五条の八の規定によるいわゆる代執行の手続によって適正な事務処理が担保されるということにもなるわけです。自治事務に関してこのような事態が生じた場合は、法的手段によるのではなくて、住民の批判などの力によって是正、改善が図られるものと期待をいたしております。  なお、自治事務については、国民の利益を保護する緊急の必要がある場合などについて、個別の法律の定めるところにより、国が直接事務を処理するという道も開かれておるということであります。
  60. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 時間が参りましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。
  61. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、若松謙維君質疑に入ります。
  62. 若松謙維

    ○若松委員 佐藤委員質問に関連しまして、引き続き質問をさせていただきます。きょうは、二十分時間がありますので、二項目について御質問させていただきます。  まず、人権教育、啓発、これをぜひ内閣全体で今後も検討してほしいという趣旨から質問させていただきます。  中央省庁改革関連法案では、人権擁護及び人権教育、啓発に関して法務省が所管する方向が打ち出されております。確かに、人権侵害事件などの人権擁護に関しては今日まで法務省が担当されてきましたが、しかし、人権教育、啓発については、総務庁や文部省、労働省、建設省、厚生省などが中心になって、いわゆる全省庁にまたがって研修や啓発、教育が行われてまいりました。  人権教育は、基本的人権にかかわる重要な課題である。我が党も、この人権というのを党の基本方針の中心軸に置いております。そういうことで、この人権問題ですけれども、内閣全体が取り組むという基本認識に基づいて行われたものでありまして、問題の性格上、当然と私どもは認識しております。  事実、前法務大臣も、省庁再編に関連した質問に対して、個人的見解と前置きしてではありますが、こう言っております。人権問題というのは、一法務省が取り組むよりか、内閣府等で内閣全体として取り組むべきものかなとも思うわけであります、こう述べておられます。また同じく、内閣全体で取り組むべき重要な問題だという方向性を持って組織の改革に努めてまいる、こうも述べております。  ここで質問なんですけれども、人権教育、啓発については、やはり内閣全体でこれに取り組むという意味内閣府に置いてはどうか、こう認識しますけれども、法務大臣及び文部大臣にお伺いいたします。
  63. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 人権啓発に関することでございますが、人権啓発というものについては、広く国民の間に人権尊重思想の普及、高揚を図り、国民一人一人に人権を尊重することの重要性を認識していただくとともに、その認識が日常生活の中に根づくことを目的とした活動である、このように考えております。  法務省は、従来から、こうした人権尊重思想の啓発活動に関する事項を所管しております。本国会に提出した法務省設置法案にも、国民の権利擁護をその任務とする法務省の所掌事務として、人権啓発に関すること等の規定が設けられており、法務省としては、これまでの取り組みとその実績を踏まえつつ、人権啓発活動のより一層の充実を図ってまいりたいと思っております。  八つの法務局、それから四十二の地方法務局がございますが、この局、地方法務局におきまして、それぞれ人権擁護部門を擁し、この活動に鋭意取り組んでいるところでございます。
  64. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 憲法及び教育基本法の精神にのっとりまして、人権尊重の教育を推進していくことは極めて重要であると考えております。国全体として、もちろんこの人権教育ということを大切にしていかなきゃなりませんが、文部省の教育という面からも、これを大切と思っております。  このため、学校教育におきましては、社会科、道徳、特別活動を初め学校教育活動全体を通じて、人権尊重についての理解と認識を深める教育の充実を図るとともに、児童生徒の人権に十分配慮し、一人一人を大切にした教育の推進に努めているところでございます。  また、社会教育におきましては、公民館等の社会教育施設を拠点に、地域の実情や学習者の年齢に応じた多様な人権教育の推進に努めているところでございます。  文部省におきましては、「人権教育のための国連十年」に関する国内行動計画を踏まえ、学校教育において人権教育研究指定校事業及び教育総合推進地域事業を実施しまして、人権意識を培うための教育や、教育上特別の配慮が必要な地域における総合的な取り組みの充実に努めております。  また、社会教育において、国及び地方公共団体が、青少年から高齢者に至る幅広い人々を対象に人権教育総合推進事業を実施し、人権に関する学習機会の提供、指導者の養成等の事業の総合的な取り組みの充実に努めているところでございます。  今後とも、学校等における人権教育の一層の充実に努めてまいりたいと思っております。
  65. 若松謙維

    ○若松委員 この話をさらに続ける前に、ちょっと御紹介したいのが、私の地元の市の教育委員会がまとめた「平成十年度 上尾市小中学生 人権作文・標語集」というものがございます。子供の学校からもらった資料を見たんですけれども。  そこの「上尾市人権尊重都市宣言」、これは平成七年十月三日制定ですけれども、ちょっと読みますと、「日本国憲法は、すべての国民に基本的人権を保障しています。 しかし、私たちを取り巻く現実の社会には、同和問題をはじめ障害のある人や女性に対する差別など、基本的人権にかかわる問題が依然として存在しています。」そういうことで、上尾市民はこういった差別に対しては徹底して闘ってまいります、こういう小中学生の意見をまとめた、大変すばらしい試みだと思います。  そういう観点から、改めてお伺いします。  現在、人権擁護推進審議会、これはたしか文部、総務、法務の共同所管だと思うんですけれども、この審議会が、今後の人権教育、啓発のあり方について審議を進めていると思うのです。これが、たしかことしの七月ですか、何らかのものが出てくる。ですから、その結論が出てから、この人権に関して総括的に行うところを、もしくは何らかの検討をもう一度加えても遅くはないのではないか、こう考えるんですけれども、これについて法務大臣及び総務庁長官、法務大臣に先にお願いします。
  66. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 御指摘の人権擁護推進審議会、これは法務省に設置されておりまして、平成九年五月に、法務大臣文部大臣総務庁長官から、人権教育、啓発に関する施策の基本的事項について諮問を受け、現在その審議が行われており、御指摘のように本年七月末ごろに答申がまとめられる予定であると承知いたしております。  法務省といたしましては、この答申が出された際には、これを踏まえて、人権啓発活動の一層の充実強化を図ってまいりたいと考えております。
  67. 若松謙維

    ○若松委員 総務庁長官にコメントいただきたいのですけれども、従来、例えば先ほどの人権問題、特に同和問題というか、非常に日本人特有の、独特の問題について、総務庁がさまざまな聞く配慮を見せていたわけですけれども、法務省がここを所管でやるということですけれども、どうも私は、法務省に対するイメージはやはり捜査なんですよ、パニッシュメントというか、懲らしめるというのですか。私、長崎の大村の難民キャンプへ行きまして、鉄格子がありまして、法務省の公務員の方が鉄格子をがらがらとあけて、おまえらという感じなんですよね。私は、そういう所管がこういう非常にデリケートな話をやるのはどうかなと。  そういう意味で、法務省が所管にしても、内閣府が全体としてするような形を引き続き総務庁長官として御努力いただきたいのですけれども、そういった観点からいかがですか。
  68. 太田誠一

    太田国務大臣 日本国憲法に定められた、十四条でありますけれども、すべての国民は基本的人権の享有を妨げられず、個人として尊重され、法の下に平等とされているところであります。人権教育、啓発の重要性は言うまでもないことでありますけれども、平成八年の地域改善対策協議会の意見具申において、同和問題における差別意識の解消に向けた教育及び啓発の推進、人権侵害による被害の救済等の対応の充実強化を図るため、今後、すべての人の基本的人権を尊重していくための人権教育、啓発に発展的に再構築することが示されたところであります。  憲法十四条は、いわゆる思想、信条そして性別、門地ということを取り上げてうたっております。そのような人権教育、啓発について、人権擁護施策推進法の制定を受けて、現在、その基本的なあり方について、さっきおっしゃいましたように七月に答申が出されるというふうにお聞きをいたしておりますけれども、私も、総務庁は従来から地域改善対策協議会を所管しておりますところでありますので、政府として必要な対策に十分留意してまいりたいと思いますということでございます。  そこで、今おっしゃった点も、私も個人的には考えないわけではないわけでありまして、特に内閣府において、今度男女共同参画局が設けられることになった。男女共同参画局は、従来の男女機会均等のようないわゆる労働に関する部分を除いては、特に全体的に人権にかかわる女性の、さっき言った十四条の性別の女性に対する差別というふうなところが主たる問題意識であろうと思うものであります。それが内閣府にあるということなので、私も、当初、よく基本法を読むまでは、これは法務省よりも内閣府に総合的な人権問題に取り組む機関を設けた方がいいのではないかというふうに思って、一時期までは主張しておったわけでございます。  ところが、よくよく勉強して、基本法を読んでみると、これは確かに基本法では、法務省において充実強化をするということがたびたび出てくるわけでございますので、我々の作業は、作業というよりも我々の仕事は、まず基本法のあれを大切にしてやるということからスタートしておるので、いかんともしがたいということで、今日に至ったわけでございます。
  69. 若松謙維

    ○若松委員 いかんともしがたいじゃなくて、そういう趣旨をまず理解しているわけですから、太田長官、ですから、それを何らかの形でちゃんと配慮するようにしていただきたいということです。それはよろしいですね——いいということです。  では、法務大臣にも再度確認しますけれども、そういうことで、あくまでも人権の啓発というのは取り締まりじゃない、いや、差別がある限りはずっとケアするというのが総務庁の一貫の趣旨ですから、それを大事にしていただきたい、それを確認したわけですけれども、確認したという理解でよろしいわけですね。
  70. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 法務行政の役割というのは、法秩序を維持し、それから人権を保護していくという、大きな二つの柱でございます。そういう意味で、私ども、先ほど来、人権擁護について、特に啓発面について、私どもがこれまで取り組んできたことを踏まえて、さらにこれの充実を図ってまいりたいということを申し上げておるわけでございます。確かに、人権施策全般については各省庁でいろいろな取り組みが総合的に行われて初めて全うできるわけでございますが、少なくとも人権啓発につきましては私ども法務省の所管であるということを改めて申し上げさせていただきたいと思います。
  71. 若松謙維

    ○若松委員 所管をどうのというのではなくて、先ほど言ったように、法務省は誤解しないでちゃんとやっていただきたいということを改めて確認申し上げます。よろしくお願いいたします。  それでは、最後の質問ですけれども、これは四月二十七日の閣議で決定された政府の方針ですね、今回の法案に関する政府の方針。そこの「内閣設置法案関連」ということで、「経済企画庁の経済研究所は、調査機能の充実、経済財政政策その他の各省の事務に広範に関係する事項に関わる総合的な研究の充実等による政策研究機関としての機能強化を図るとともに、内部部局と連携して機能するようにし、必要な措置を講ずる。」こういうことで、これも顧問会議の方の御意見もありましたけれども、今の経済研究所、お聞きしましたら、人数八十人、そのうち四十人の方がいわゆる新SNAという統計作業の事務方です。ということで、実際に、いわゆるマクロのエコノミストとかそういう感じですともう二、三十人しかいないということで、これが政府のいわゆる経済専門のシンクタンクというのはちょっと弱過ぎる。  ちなみに、他のシンクタンクを見たわけですけれども、野村総研、これは証券系ですけれども、さらには日本総研、これは銀行系ですね、その二社を見ましたら、二社とも二千二、三百人いるんですね。  ですから、これからやはり経済というものがますます大事になってきますし、経済財政諮問会議、これは今の経企庁を母体にいろいろと再編されるわけですけれども、ぜひこの経済研究所を内閣のシンクタンクとして拡充、強化していただきたいんです。こういう形ではなくて、本当に、まさに日本のある意味最大のシンクタンクにしてもいい。これは単なる、行革に逆行するとかそういう人数の話ではなくて、やはりこれは国のこれからの経済政策の戦略的な、大変重要なシンクタンクになるべきものと私は考えますので、そういう面でこの経済研究所を内閣のシンクタンクとして充実、拡充していただきたい。それについて、総務庁長官答弁を求めます。
  72. 太田誠一

    太田国務大臣 内閣府に移行される現行経済企画庁の経済研究所については、最終報告及び基本法等を踏まえまして、中央省庁等改革推進に関する基本方針において、内閣府の所掌する経済財政政策、そのほかの各省の事務に広範に関係する総合的研究の充実等による政策研究機関としての機能充実を規定しているところであり、これによって、内部部局との連携を図るとともに、内閣府の政策立案の高度化に寄与するものとなるようにしてまいりたいと存じております。  すなわち、これは今おっしゃったところがあるわけでありまして、要するに、経済企画庁の従来の仕事も、いわゆる政策についての、こうあるべしというふうな政策の企画立案の仕事と、同時に、一体この問題がどうなのかという、特に日本経済についての認識というのは、これは違う話であります。こちら側はゾレンの問題で、こっちがザインの問題です。ザインの問題についてきちんと分析をするということがもともと主たる仕事でありましたので、経済研究所については充実強化されるべきであるというふうに私も考えております。
  73. 若松謙維

    ○若松委員 では、認識は一緒ですね。そういう理解でよろしいですね。  ぜひひとつ、まさに民間に負けないぐらいのしっかりした、中身のある、かつ有能な人材をそろえた、まさに内閣に所属する経済研究所ということを心から期待しまして、次の同僚議員に質問を移します。ありがとうございました。
  74. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、福島豊君の質疑に入ります。
  75. 福島豊

    福島委員 まず初めに、私は、厚生省関連の法律につきましてのお尋ねをしたいと思います。  関係各省庁別の改正法律の数では、厚生省関連の法案が九十一本ございまして、広範な行政にかかわる内容が盛り込まれております。  まず初めに私がお尋ねしたいことは、保険関連業務の社会保険庁また厚生大臣への一元化ということでございまして、これは地方事務官の問題が非常にクローズアップされているわけでございますが、この関連の法案をよくよく読みますと、単にそこにとどまるということではなくて、保険業務をいかに一元化して、その効率化を図るのかということがうかがえるのではないかというふうに私は思っております。  具体的に申し上げますと、第百四十六条の保険医療機関の指定等、これが厚生大臣また社会保険庁長官に移されますし、百四十七条では船員保険の標準報酬の決定が移されます。百五十五条では社会保険診療報酬の審査委員の推薦が厚生大臣に移されますし、百六十九条では社会保険医療協議会が社会保険事務局へ移されることになる。また、百八十五条では社会保険審査官が社会保険事務局へ移ることになりますし、百八十七条におきましては厚生年金保険の標準報酬の決定が厚生大臣また社会保険庁長官に移るわけでございます。また、保険医療機関等に対しての指導につきましても、国民健康保険に関しましては百九十七条で、老人保健に関しては二百二十六条で地方社会保険事務局長の方に移される。  という意味で、非常に広範な業務が社会保険庁また厚生大臣に一元化されるという形になるわけでございまして、これは一面では、現在も医療の世界におきまして保険者の機能強化というものを図っていかなきゃいけない、それを進めることによって医療の効率化等に結びつけていこうという考え方があるわけでございます。  この点につきまして、今回の法改正の目指すものにつきまして厚生大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  76. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 御指摘のように、今回の一括法で、いろいろ厚生省関係の法案の改正をお願いしてございます。  地方事務官制度にかなり焦点を合わせて議論されておりますけれども、今委員の指摘のように、保険者、つまり社会保険事務所では年金とか政管健保とか船員保険をやっておりますが、そういった医療に関する知識や情報を集積したりあるいは被保険者に正確に提供して、保険者機能を強化していくということは、これは非常に重要なことで、その背景にあることは申し上げるまでもございません。  一方、今回の地方分権法案におきましては、三次勧告に基づきまして、国と地方の事務分担を明確にすることが責任の所在を明らかにするゆえんであるということで整理をさせていただいておるわけです。保険者機能の強化を、直接今回の改正の目的としたとまで言い切れるかどうかはちょっとわかりませんが、結果として社会保険事務その他が、保険者として財政収支の均衡を図るという統一的な立場をとる必要もございますし、全国的な一体的な事務処理も必要だという機能強化の点もあることは間違いございません。そういった点から、保険者の機能を強化するという意味で、今回の改正にいたしました。  なお、これは保険者の事務だけではなくて保険医の医療機関の問題、今御指摘がございましたが、これは、開設等は別の行政事務でございますが、病院がどういう保険に適用されるかということ、保険医療機関としての指定、こういったこととか、その指導監督等については国の直接執行事務に今回いたしております。  これはやはり、医療保険制度全体について国が健全な事業運営に責任を負うという立場からのものでございまして、今まで地方事務官制度のもとで、それも行政事務の一部でございますが、県の保険課等でやっていたものを今度は一元的に地方社会保険事務局として統合いたしまして、そこで組織的にも機能的にも一体化していくということでございますから、より一層社会保険事務その他が強化されていくというように私は考えております。
  77. 福島豊

    福島委員 よくわかりました。  次は、児童福祉の問題につきましてお尋ねをしたいと思います。  これは、第百四十九条になるわけでございますが、児童福祉法の一部改正ということで、都道府県及び市町村に置かれる児童福祉審議会並びに児童福祉司に関する規制を弾力化することということがここに挙げられております。ただ、この点につきましては、児童福祉の分野におきましては専門家の数が非常に少ない。近年は児童虐待等の問題が大変大きくクローズアップされておりますけれども、実際に、都道府県等で、児童相談所を初めとしまして、それを担う行政のマンパワーを支える専門家が少ない。これは厚生省がたびたび指導してきているけれども、地域によって大変な格差があるということが現状であるというふうに私は思っております。  その点につきまして、都道府県に行政の責任を移譲するということは、地方分権の観点から適切なことであろうかというふうに思いますけれども、それぞれの地域での児童福祉の後退ということがあってはならないわけでございまして、この点につきましてのお考えをお聞きしたいと思います。
  78. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今御指摘の点は、都道府県の児童福祉審議会や児童福祉司に関する改正についてのお尋ねかと存じますが、これは地方分権推進計画に基づきまして、地方公共団体の自主的な組織権、自主権を尊重する、あるいは行政の総合化や効率化を目指すという観点から、これらの設置は存置いたしておりますが、ただ、これらの機関の審議会あるいは児童福祉司のネーミング、名称等については、それぞれその地域のいろいろな要請、独自性もございますから、弾力化等を図ることにしたものでございまして、これによってそういった児童福祉に関する専門委員の弱体化を招くとか、そういうことはないと思います。  それから、法改正後も引き続き、そのネーミングは自由にいたしましても、そういった機能を持つ職種につきましては引き続き同じ資格を必要とする、つまり、今現在、児童福祉司について資格要件がございますが、これはそのまま存置していくということでもございますし、現在の児童福祉司がネーミングが変わろうとも、それはそういう機能として尊重して、研修その他もやって充実していこうということでございます。
  79. 福島豊

    福島委員 次は、医療法の一部改正についてお尋ねをしたいと思います。  これは百六十五条関連でございますが、都道府県等に置かれる医療監視員に関する規制を弾力化することということが挙げられております。ただ、この医療監視の問題でございますが、私は大阪府の出身でございますけれども、大阪府におきましても、安田病院の問題というようなことが発生をいたしました。都道府県の医療監視のあり方というものが、その場合には非常に鋭く問われたわけでございます。  この点につきましても、地方分権推進するということは大切なことであるというふうに思いますけれども、実際に都道府県が医療監視を担った場合に、その質といいますか、それはやはり確保することが必要である、不可欠であるというふうに思うわけでございます。この点につきましての厚生省のお考えをお聞きしたいと思います。
  80. 小林秀資

    小林(秀)政府委員 現在、御指摘の医療監視業務につきましては、医療法上、厚生大臣及び都道府県知事等がすべての病院等の開設者等に対し報告徴収等を行うことができることとなっておりまして、都道府県知事等の当該事務は機関委任事務として整理をされているところでございます。地方分権一括法におきましては、当該事務にかかわる厚生大臣の権限を削除し、病院等の開設者等に対する報告徴収等の事務を都道府県知事等の自治事務として整理し、国民の健康を守るため、緊急の必要があると認めるときは、厚生大臣も当該事務を執行することができることとされているところでございます。  このように、地方分権一括法案により、病院等の開設者等に対する報告徴収の事務は、医療そのものが住民の身近なサービスであるということは先生御案内のとおりだと思いますが、したがいまして、今回、住民の身近な行政主体である都道府県知事等の自治事務として整理をされたことから、当該事務は、当該事務を執行する都道府県等において適切に運用されるものと考えております。  国としては、必要に応じて地方自治法等に基づく技術的な援助等を行っていくことなどにより、当該事務の適切な執行が図られるよう努めてまいる所存でございます。
  81. 福島豊

    福島委員 都道府県の主体性というものを尊重しながら、緊急の場合には国の介入が可能になっているわけでございますけれども、尊重しながらも、これを見ますと地方分権に反対しているように聞こえるわけでございますけれども、適切な関与といいますか、適切なスーパーバイズの機能を果たしていただきたいというふうに私は思っております。  次に、百七十一条の生活保護に関してでございますが、これは生活保護法の一部改正ということがここに盛り込まれております。ここでは、改めて明文化されまして、保護の実施機関が要保護者の自立助長のための相談及び助言を行うことができる旨を規定することというふうになっております。  こうした法文を拝見いたしますと、こういった相談及び助言というのが、逆に生活保護を受けるということに対して、これを忌避させるような機能として働くのではないかという懸念も同時にあるわけでございまして、この点についての厚生省の御説明をいただきたいと思います。
  82. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 生活保護の決定事務に関する事務につきましては、生存に係る最低限度の生活を保障するため全国一律に行う金銭給付の事務でありますので、基本的に国が担う必要があることから、法定受託事務として整理いたしました。  しかし、地方分権推進委員会におきましては、生活保護に関する事務の中にも、地方公共団体の主体的判断に基づいて行われる必要があり、自治事務として位置づけられるべきものがあるのではないかという議論がございました。その中から、要保護者からの求めに応じて、相談及び援助を行う事務について、先生がただいま御指摘されましたように、自治事務として規定を設けたところでございます。  この事務につきましては、従来から、生活保護に関する事務の一環として行われてきておりますし、また、これは要保護者の求めに応じて、相談や助言によって要保護者を支援する事務であること、またこれについては強制的なものがございませんでして、相談及び助言に従わなかったからといって保護の停廃止を行うことはできない規定になっておりますから、新たな規定を設けることによって生活保護を忌避させるようなことはないというふうに考えております。
  83. 福島豊

    福島委員 適切な執行をお願いしたいと思います。  次に、障害者福祉の問題でございますが、これは二百一条でございます。  二百一条では、これも先ほどの児童福祉とほぼ同様の形になっておりますけれども、都道府県に置かれる知的障害者更生相談所並びに都道府県及び市町村に置かれる知的障害者福祉司に関する規制を弾力化することということが、ここには盛り込まれているわけでございます。  この点につきましても、先ほどの児童福祉と同様の懸念を持っておりますけれども、この点についての御説明をいただきたいと思います。
  84. 真野章

    ○真野政府委員 知的障害者福祉法では、今先生御指摘の二つの点の改正を考えておりますが、一つは、都道府県が設置をいたします知的障害者の更生相談所、これを知的障害者の更生の援助と必要な保護に関する相談所というふうに、名称を自治体の判断にお任せをするという内容でございますし、また知的障害者福祉司、これにつきましても知的障害者の福祉に関する事務をつかさどる職員というふうに、名称規制を廃止いたしまして、自治体の自主性にお任せをするという内容でございます。  したがいまして、名称はそういうことでございますが、設置そのものにつきましては従来どおり設置をお願いいたしておりますし、また、知的障害者福祉司につきましては、業務を担当する職員は引き続き一定の専門的知識を有する者から任用するということになっておりまして、業務の専門性自体を後退させるものではないというふうに私どもは考えております。  今後とも、知的障害者の福祉に関する相談、指導等の業務につきまして、その専門性が確保されるように努めてまいりたいというふうに考えております。
  85. 福島豊

    福島委員 厚生省に関連しての法案質疑は以上でございますので、大臣、もう結構でございます。ありがとうございました。  次に、自治省に関連する法案につきましての質疑を行わせていただきたいと思います。  今回の地方分権関連法案にさまざまなことが盛り込まれましたが、甚だ不十分な点もまだあるのではないかというふうに私は思っております。  近年、自治体破綻ということが言われておりますし、そのような著作も出ております。地方自治体の財政状況が、バブルの崩壊後の景気の低迷の中で非常に困難になっている。これは、経済状態が悪いということは一つの理由だと思いますけれども、もう一つの理由は、地方自治体の行う歳出に関して、これが長期、中期の見通しが不十分なままに行われてきた。経済状況が悪くなる中でも、言ってみれば蛇口をなかなか閉めることができなくて、財政状況のさらなる悪化を招いたのだということが言えるのではないかというふうに思います。  この自治体の経営のあり方、これを根本から見直すということが地方分権のもう一つの柱だ。国から権限を移譲すると同時に、片方では、自治体が自治体としてみずからの判断で、中長期的な判断のもとに行動していく、そういう主体性を確立させる、そういうことが極めて重要だというふうに私は思っております。  それを両足とするならば、その片足の部分の自治体の主体的な経営の確立ということにつきましては、この法案の中には十分なものは恐らく盛り込まれていないというふうに思いますし、この地方分権に関しての作業というのは、今後も政府として引き続き取り組んでいかなければならない大きな課題だと思いますので、ぜひとも積極的な検討をしていただきたいというふうに私は思っております。  建設委員会では、今国会におきましてはPFI法案というものが提出をされたわけでございます。このPFIという考え方も、自治体の事業の経営のあり方に対して、民間の考え方というものをどれだけ導入することができるのか、ここのところが非常に大切な話でございまして、それを安易に、かつての民活論のような次元でとらえてはいけないんだというふうに私は思っております。  先日の決算行政監視委員会では、第三セクターのことにつきまして私は質問をさせていただきました。本日は、法案に関しての直接の御質問をする前に、地方公営企業の問題につきましてお尋ねをしたいというふうに私は思っております。  まず初めに、事務的な事柄でございますが、地方公営企業の現在の経営状況について、どうなっているのか。これは水道もあれば病院もあれば交通もありますし、それぞれにおきまして経営状況というのはもちろん異なるわけでございますが、その現状について、自治省から御説明をいただきたいと思います。
  86. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 平成九年度の地方公営企業の経営状況でいいますと、八割以上の企業が黒字経営でございまして、また、全体の収支は前年度に比べて改善されてきております。  しかしながら、一部の事業においては、不良債務額が増加するなど、引き続き厳しい状況でございまして、事業で申しますと、水道、下水道、電気は経営が比較的安定いたしておりますが、病院、交通事業の経営は厳しいものがございます。
  87. 福島豊

    福島委員 病院そしてまた交通の経営状況は厳しいということでございましたが、こういった経営状況の厳しいところも含めまして、現在までの累積欠損金はどのくらいに及ぶのか。そしてまた、この累積欠損金に関しましては、投資をして、その投資を回収するまで時間が非常にかかるわけでございますので、今の欠損金が非常に巨額だからといってすぐにどうこうという話ではないかもしれませんけれども、中長期的にこれを果たしてどのような形で処理されていくのかということにつきましての御見解をお聞きしたいと思います。
  88. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 平成九年度末におきます累積欠損金を有する事業の数でございますが、千二百四十六事業でございまして、累積欠損金の額は全部で三兆八千五百四十億円ということになっております。そのうち、交通事業が二兆円強、それから病院事業が一兆強でございまして、累積欠損金全体の約八割はその二つの事業で占めておるという状況にございます。  この累積欠損金の発生いたします原因は、ただいま委員もお触れになりましたように、多額の投資を要します傍らで、全体の採算をとるまでに長期間を要するということでございまして、そういうことから、事業の効率化あるいは経費の節減に努めますとともに、料金収入の確保に努めて、この累積欠損金の解消を中長期的に図っていく必要があるというふうに考えております。
  89. 福島豊

    福島委員 料金の徴収ということに最後に力点を置かれて御答弁がございました。この点については、水道事業に関連しまして、後ほど重ねてお尋ねをしたいというふうに私は思っております。  ただ、非常に疑問に思いますことは、交通事業につきましても、その投資が切れ目なくずっと行われ続けている。累積欠損金は非常に巨額に及んでいるけれども、投資が続いている。一体この投資がいつやむのか、これはだれもなかなか答えが出ないわけでございまして、そしてまた景気対策ということもありますから、さまざまな事業をせざるを得ないというような側面もある。これが長期にわたって、投資がどこかで終わって、そこから、それまでにも資金の回収はありますけれども、その後は資金の回収で欠損金はだんだん減っていくんだというふうな御説明がありますけれども、果たしてそうなるんだろうか、発散してしまうようなことになるんじゃないかというようなことを大変に懸念いたしております。  それはそれとしまして、昨年の一月十三日付で自治省の財政局長が、「地方公営企業の経営基盤の強化について」という通知を各都道府県知事等に出しました。その中ではこのようなことが述べられております。「地方分権推進に伴い、国の関与が縮減されるとともに、地方公共団体が自主的・主体的に決定し、処理することのできる分野が拡大されること、事業の効率化を促進する観点から、規制緩和が進められていること等を踏まえ、総点検を行うことが適当である。」というふうに述べられております。  それから一年と五カ月ほどがたったわけでございますけれども、この地方公営企業の総点検についての各自治体の取り組みは一体それからどうなったのか。そしてまた、そうした総点検によりましてどのような結果が得られているのか。例えば方向転換をするとかいろいろなことが考えられますけれども、この点について、自治省が御存じのところをお教えいただきたいと思います。
  90. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 昨年の一月に、今お示しになりましたような通知を各地方団体に出しておりまして、それぞれの地方団体におきまして、公営企業全般についての点検をお願いいたしておるところでございます。  本来公営企業は、言うまでもございませんが、住民の福祉を向上させるために行っているものでございまして、同時にまた、企業として行っておりますので、経営効率化について常に点検をしていただく必要があるということで、この通知は総括的な指針を示して、公営企業全体の不断の見直し、広域化によります経営基盤の強化、あるいは給与、定員の適正化等によります効率的な経営、財務の適正化など、広範な要請をいたしたところでございます。  個別には、私ども、各地方団体の方から、例えばバス事業について、公営企業のあり方の見直しということに関しまして、バス事業を市営から民間に移管するといったようなケースがございますとか、あるいはそれぞれの新しい投資を行う際に個別に御相談をいただくというケースがございます。  全般的に、この通知が直ちに、全体どういう結果になっているかということを網羅的に今調査してはおりませんが、個別にそういうケースを通じていろいろな御相談がございますし、また、これからもそういう状況の把握に私どもとして努めていきたいというふうに考えております。
  91. 福島豊

    福島委員 要するに、通知は出しましたが、たくさんありますから、余り細かなところまで把握をしていないというのは、それはそうかもしれませんが、相談があって初めてその時点で知り得るということでは、やはり私はいかぬのではないかなという思いがいたします。  何も手とり足とり全部やれという話ではなくて、先ほどもスーパーバイザーということを私は言いましたけれども、まさに自治省というのは、各自治体の経営に当たってのコンサルタントではないかというふうに私は思います。そのような機能をより発揮してほしいと思いますし、この総点検に当たりましても、その取り組みの現状がどのように進んでいるのかということについての積極的な調査というものをぜひとも進めていただきたい、私はそのように考えております。  そしてまた、この総点検に関連しまして、「地方公営企業の経営基盤の強化について」ということで、「建設投資の適切な実施」、中略ですが、「新規事業についてはもちろん、継続事業についても、投資規模の適正化、整備進度の調整等に配意し、過大投資ないしは過度の先行投資となることのないよう留意する必要がある。特に、継続事業であっても、将来における需要が明確に見通せない場合には、休止等を含め適切に対処する必要がある。」というふうに指摘をされております。ここのところが一番大事なところではないかというふうに私は思います。  「休止等を含め」というのは、大変決断力の要る判断であるというふうに思います。しかし、こういう通知を受けて、果たしてどれだけの自治体がそのような決断力のある判断を下したのだろうかということが甚だ心配されるわけでございまして、この点についても、こういう公営企業では大胆な見直しを行ったというような事例があるのであれば、それを御紹介いただきたいと思います。
  92. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 御指摘のように、地方公営企業におきましても、建設投資の適切な実施ということが非常に大事な課題でございまして、地方団体に、今委員がお示しになりましたような趣旨のことを要請、指導いたしておるわけでございますが、例えて申しますと、愛知県の矢作川河口堰の河川開発事業に伴います水道事業についての見直しを行うというふうな例を私ども聞いております。  あちこちでそういうダム関係の見直しというものが行われているようでありますが、今後とも、各公営企業につきまして、投資規模の適正化等に配慮されるように引き続き要請してまいりたいと思っておりますし、私どもとしてもまた、先ほど申しましたように、いろいろな事業計画の策定等を通じて状況の把握に努めていきたいというふうに思っております。
  93. 福島豊

    福島委員 今御紹介いただきました、一例ございました。全国では、本当にこういうケースというのはまれだろうというふうに私は思いますし、そしてまた、そこには地元住民の大変大きな危機感のもとでの働きかけがあるんだろうというふうに思います。これは神奈川県でもそのような話はございますし、なかなかしかし、声を上げても事業は変わらないというようなことがあるようでございます。  一つ、先ほど政府委員の方から御答弁ございましたけれども、適切な料金を設定することによって公営企業の経営というものをきちっと確保していかなきゃいけないという話がございました。  これは山口県の水道の話です。これは、どういうふうにこういった過大な投資というものが水道料金にはね返っているのかというお話でございまして、先日、「水道がつぶれかかっている」という本が出版されましたが、その中で紹介をされている事例でございます。これを御紹介いたしたいと思います。  山口県には、山口・小郡地域広域水道事業団というのがございます。これは、山口市、小郡町、秋穂町、阿知須町と、一市三町から成る水道事業団でございますが、八〇年に事業の開始をしている。椹野川という川がありまして、そこに荒谷ダムというものを企業団と山口県が共同で建設した。建設費用は二百三十六億円、これはダム、そしてまた浄水・送水施設、取水・導水施設とで二百三十六億円ということでございますが、このうち三分の一は国庫補助金で出資されましたけれども、三分の一は一般財源、そして三分の一が企業債でこれを集めたわけでございます。八八年の二月に完成をして、四月より給水が行われている。  計画段階では、企業団は、一日最大六万七千トンを一市三町の水道に卸すということが予定されていた。しかし、九六年時点でも、一日平均二万二千トン、予定の三分の一にしかならない。三分の一しか水が売れませんから、企業団は、売り上げ収入が上がらないということで、財政状況は非常に厳しいということがございます。それが一点でございます。  この事業団を構成する一町でありますところの小郡町は、大体山口というのは地下水が多いところで、わざわざダムをつくらなくても水源があるという話でございまして、小郡町は地下水で間に合っているので、この企業団からは購入をしていない。しかし、責任水量というのがございますので、基本料は支払わなきゃいけない。余分な負担を強いられている。これは、もうダムをつくってしまいましたので、その借金を返すためには払ってもらわないと困るということでございます。  この企業債、三十年ローンの企業債でございますけれども、これの元金、利子の返済にこの企業団は大変に苦しんでおる。一般会計から毎年三億四千万円の補てんをしている。これでも足りませんで、毎年起債を重ねているということがございまして、起債は、企業債の方は、当初の七十八億円でしたか、そこからまたますますふえまして百三十九億円になっておる。当初の二倍弱に拡大しておる。毎年十二億円を返済しなければならないというような状況になっておる。  これがまた水道の料金に非常にはね返ってくるわけですね。山口市の水道局は、企業団からの受水費として五億八千万円を九六年に払った。年間の山口市の水道局の料金収入というのは二十二億円しかありませんので、その四分の一にも当たる大きな負担だ。ここで非常に大切なことは、企業団から受水を始めた八八年に水道料金が二七%引き上げ、九三年に一五%引き上げているわけです。これは、企業団に対しての受水費を払うためにはこれだけ料金を引き上げなければ、採算がとれない、経営がバランスがとれないということで、料金に対して大きな負担がはね返っておる。  そしてまた、この荒谷ダムからの受水をするために、もともと自己水源は非常に豊かだという話をさっきしましたけれども、自己水源からの受水というものをどんどん減らしていって、約束していた部分の企業団からの受水をどんどんふやしていっておる。高い水をわざわざ買わなきゃいけないということが続いて、それがまた水道料金に全部はね返っておるというような実態があるわけでございます。二〇〇五年になればこの受水費は現行の四倍の十六億円になるだろう、その採算を合わせるためには水道料金を現行の三倍程度に引き上げる必要があるんじゃないかというような話があるようでございます。  これは私の地元の話ではございませんが、しかし、こういう話はいろいろな地域で恐らくあるんだろうなというふうに思います。  ですから、公営企業の経営状況、先ほど上下水道については大体黒字でございますという話がございましたけれども、その黒字の中をあけてみると、要するに負担を国民に、住民にみんなツケ回ししているだけじゃないか。採算性のとれない事業というものをやって、そこで出てきた負担を全部ツケ回ししているだけじゃないか。ツケ回しができないと、これがまた赤字ということになるわけでございまして、それは将来の納税者に対してのツケ回しということになるんだろうというふうに私は思います。  こういう問題について、一体どうするのか。景気対策としての公共事業が必要だというのも私はよくわかります。よくわかりますけれども、過大な見通しをして、それで採算性がとれないような事業をやってきた。例えば国鉄にしても、その大きなツケが残ったわけですね。それを処理しなければならなかったわけです。それはもう地方自治体においても同じことが起こっているんだということを、現時点においてやはり真剣に認識して、その対応というものを先送りせずに取り組むべきであるというふうに私は思っております。  この点について、これは水道だけに限りません。むしろ交通、こちらの方が大きな問題ではないかというふうに私は思います。この問題にどのように今後取り組んでいくのかということにつきまして、大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  94. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 御指摘のとおり、基本的に、地方公共団体がみずからの責任においてそういう投資の意思決定をしていく。その際に、当然のことながら、その事業の必要性なり緊急性なり、あるいはその規模なり将来にわたる採算性なり、いろいろな角度から意思決定をなされなければならない、これは当然のことだと思います。  ただ、その中で、今、いわゆる景気対策として、その必要性からどんどん過大なことが進んでいった面もあるのではないかという御指摘があったんですが、私は、公営企業の世界において、どちらかといえばその種の発想はやや少なかったのではないか。むしろ、公営企業独自の論理の中で、一たん意思決定をしたことについて、やはり途中でもう一遍その点についてきちんとした自己チェックをしていくというようなことがあってもいいのではないか。  そういった意味も含めて、先ほど財政局長からも御答弁を申し上げたわけですが、昨年、各自治体に対して地方公営企業の経営の問題について通知を出して、一般論だけではいけないんで、具体的にいろいろ相談に乗って、改善策を具体的に検討していこうという体制に今入っておるわけであります。  いずれにしても、これは公営企業のみならず、一般の事務においても不必要な公共投資が財政を圧迫する要因にならないように、ここは厳に慎んでいかなければならない事柄であるというふうに考えております。
  95. 福島豊

    福島委員 確かに大臣のおっしゃるとおりだと思いますが、これは具体的なスケジュールをきちっと決めて総点検をしないと、将来にわたって禍根を残すのではないかというふうに私は思います。  また、こうした巨額の先行投資を支えてきたのは地方債でございます。この地方債のあり方というものをその根本で見直す必要があると私は思っております。次に、地方債につきましてのお尋ねをしたいと思います。  今回の法改正におきまして、地方債の取り扱いについても改革が行われることになりました。具体的には、自治体の主体性というものを重んじて、今までの許可から協議というような形に移行していくということが御趣旨であるというふうに私は承っております。  しかし、自治体の現在までの地方債の発行に伴う負担、そしてまた、今申し上げたように地方公営企業等の現在までの過大な投資というような姿を見るときに、これは単純に協議に移すということで、それで結構ですねという話にはなかなかならない。  先ほどスーパーバイズ機能という話を申しましたけれども、むしろここでは、協議において自治大臣が、この地方債の発行というものは中長期にわたって自治体の財政にどのような影響を与えるのかということについて、できるだけ客観的な立場で、いわば市場評価と同じような性格の評価を与えることによって歯どめをかけていく、チェックをしていく、チェック機能を果たすということが必要ではないかというふうに私は思いますが、この点についての御見解をいただきたいと思います。
  96. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 御指摘のとおり、今回の改正におきまして、地方債の制度について、より自治体の自主性を高めようという観点から、従来の許可制度を廃止して協議制に移行しようということにしておるわけでございます。そういう意味で、原則、協議の手続を経れば、自治体が自由に地方債を発行できるという体制に入るわけであります。  ただ、その場合におきましても、各自治体において、少なくともその地方債の発行がみずからの財政に与える影響、この点については、自治省からどうとかいうことではなくて、やはり自己責任の中で従来に増してしっかりと検討をしてもらう必要がありますし、議会や住民に対しても客観的かつわかりやすい形で情報開示もしてもらわなければならないと考えております。  また、新たな地方債制度下におきましても、起債制限比率、これは公債費の負担が標準的な一般財源に占める比率をいうわけですが、こういう起債制限比率や赤字比率、この赤字比率というのは赤字額が標準的な規模の収入に占める比率をいうわけですが、こういう起債制限比率や赤字比率などの客観的な指標を法令で定めて、これらの比率が一定水準以上の場合にはやはり許可を要するというようなことをして、地方債の新規発行制限を行う仕組みをとろうとしておるところでもあります。
  97. 福島豊

    福島委員 従来の地方債の発行にわたる判断の枠組みというのが恐らくうまく機能していないんではないかという反省が必要じゃないかと私は思います。それはもう地方自治体の財政の、言ってみれば骨格的なパラメーターで判断をするということであって、事業そのものについての踏み込んだ評価というところになかなか立ち至っていないということが一番問題じゃないかというふうに思います。  それはさておきまして、財政投融資制度の改革ということが考えられているわけでございます。まさに金融ビッグバンという形の一環として財政投融資制度の改革というものを位置づけることが恐らくできると思いますし、また、そのようなものにならなきゃいかぬというふうに思っております。  このことは、公的な資金の流れというものを大きく変えることにもなりますし、ひいては、地方債の引き受けのあり方ということについても大きな変化を与えざるを得ないというふうに私は思いますが、この点につきましては大臣はどのように認識しておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  98. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 現在、地方団体の間には、財政力に大きな格差もありますし、地方債の資金を金融市場から直接に調達しようという能力には、当然のことながらかなりの差が存在をしておるわけです。また地方債は、世代間で経費を分担し合うという役割をも有しておりますし、そういう意味で、施設の耐用年数といったことに応じた長期資金の確保ということもまた大事なテーマでもあります。  そこで、地方債の資金として、民間資金のほかに、政府資金やあるいは公営企業金融公庫のような長期かつ低利の安定した資金を確保して、自治体の起債の引き受けをやってきたわけでございます。  そこで、今後、公営企業金融公庫を含めて財政投融資制度が見直しになっていく、あるいは金融機関のいろいろな仕組みが変わっていく、そういった中で、どういうふうに資金調達の手順なりルールなり手法が変わっていくのかということは、今から直ちに、必ずこうなりますということはなかなか言いがたい面はあります。  しかし、少なくとも自治省としては、ただ単に自由に任せてそれでおしまいというのではなくて、やはり自治体が、今後においても強いところ弱いところが混在をするわけですから、いずれにしても、そういった財政力の弱い自治体においてもやはりきちんとした社会資本の整備が計画的に達成できるような長期で安定した枠組み、そういう資金確保の枠組みということは、当然のことながら考えていかなければならないと考えています。  そういう点で、今から具体的にこうなりますと断定的に言うことは、まだ今の段階では差し控えたいと思いますが、いずれにしても、そういう枠組みというものは、当然のことながら役割を果たしていかなければならない。そういう中で、公営企業金融公庫の果たすべき役割というのは、ますますこれからも大きな意味を持っていくと私は考えております。
  99. 福島豊

    福島委員 そこのところだというふうに私は思うのですね。  ですから、先ほども言いましたように、事業として十分採算性が、厳しく見ればですよ、数字をつくれば別ですけれども、厳しく見れば成り立たないような事業に対しても資金を集めることができる。それはまさに公的セクターの資金の流れがあるからこそできるわけでございまして、ここのところをどう見直していくか。  ただ、一方では非常に財政力の弱い自治体もあるというのは事実です。しかし、ここのところにどうやって市場原理を入れていって、事業の可能性、採算性というものについてより厳しいチェックを導入するのかということではないかというふうに私は思います。まさにPFIの導入というのもそこのところに最大のポイントがあるわけでして、肥大化した公的セクターをいかに効率化するのかということについては、そういうメカニズムをビルトインしなければ無理だろうというふうに私は思います。  そういう市場原理をいかにして資金の調達ということにおいて、もちろん公的な部分も大切だということはわかりますけれども、レベニューボンドとかをどういうふうにして導入していったらいいのかということについては、十分に私は検討を進めていただきたいと思いますが、この点について再度大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  100. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 市場におけるそういうチェックを受けるということは極めて大事なことだと考えております。ただ、それが具体的にどういうような形でチェックを受けるべきなのかということについては、一概に定型的な形というのはまだなかなか難しい。これはおわかりいただけることだと思っています。  それから、財政力の強い弱いということと、現実に市場公募のボンドにおきましても、知名度が高い自治体というものと、起債の条件それぞれ違いますけれども、それが必ずしも財政力をそのまま反映しているというものでもない。そういった意味で、なかなか客観的な評価というものを画一的につくるのはまだちょっと難しい。しかし、方向性として、今御指摘の方向は極めて大事なことだと考えておりますので、なお精力的に検討したいと思っています。
  101. 福島豊

    福島委員 次に、地方税法の改正も今回の法案の中には盛り込まれておりまして、ここも非常に大切なポイントだというふうに私は思っております。  具体的な規定としましては、条例で定める費用に充てるため、道府県または市町村が課することができる目的税として法定外目的税を創設する。法定外目的税の新設または変更に当たっては、自治大臣に協議し、その同意が必要だ。二項めとしまして、自治大臣は、法定外目的税の新設または変更に係る協議の申し出を受けた場合には、一定の事由があると認める場合を除いて同意。基本的には、自治体の主体性というものを非常に重んじる内容だというふうに私は思います。  具体的に、どのような目的で創設すれば、また、目的税でございますけれども、どのような税率の新税の創設であればこれを認めるのかということにつきましての御見解をお聞きしたいと思います。
  102. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 今回の改正におきまして、御指摘のとおり、従来は法定外普通税ということでありましたが、今回さらに法定外目的税の創設についても独自に行うことができる、こういうことにしたわけでございます。  そこで、法定外目的税の新設の際、自治大臣への事前協議に当たってどういうことが必要かということですが、基本的に、国税または他の地方税と課税標準を同じくし、かつ住民の負担が著しく過重となる場合、第二に、地方団体間における物の流通に重大な障害を与える場合、第三に、国の経済施策に照らして適当でない場合、この三つの場合を除いて自治大臣は同意しなければならないこととされておるわけであります。  具体的な法定外目的税の目的や税率などについては、今後各地方団体において地域の実情を踏まえつつ検討されることと期待をいたしておりまして、少なくとも、地方団体が、条例で定める特定の費用に充てるため地方税法に定めのない目的税を独自に創設するという場合には、今のような考え方に基づいてやっていただくということになります。
  103. 福島豊

    福島委員 そこで、お尋ねしたいのは、財政再建のために新しい税を創設しても許されるのかどうかということなんです。この点については、要するに、創設される税が、今大臣が三点申されましたけれども、最後の三点目はいかようにでも解釈ができそうな気がいたしますが、その三点にのっとるものであれば、最終的には、財政再建という目的であっても目的税という形で創設していいというふうに考えてよろしいわけでしょうか。
  104. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 今御指摘のように、ただ財政再建を目的とする目的税というのは、私は率直に言って、いただけないことだと思っております。  それは、今申し上げましたように、特定の費用に充てるための財源確保の手段でありますから、あくまでそこのところが大事なポイントでありまして、住民の受益と負担の関係が明確になり、課税の選択の幅を広げることにもつながる、これが法定外目的税創設の考え方であります。つまり、目的税というのは、本来、受益と負担の関係ということははっきりしてなきゃいけません。そういう意味で、まあ大体新税を設ければ何でも財政再建に役立つといえば役立つわけですが、その種のことで目的税と称するのはいかがかというふうに考えてはおります。
  105. 福島豊

    福島委員 次に、自治体の政策評価についてお尋ねをしたいと思います。  今回は、中央省庁の再編関連法案の中にこの政策評価ということが盛り込まれておりますが、より重要なのは、自治体における政策評価ではないかというふうに私は思っております。三重県を初めとしまして北海道、また宮城県等々を含めまして、さまざまな地域で政策評価というものが行われておるようでございます。  ただ、その中身は、種々雑多といいますか、多様であるというふうにも伺っておりますが、まずこの点について、どのような実施状況なのか、自治省の御認識をお聞かせいただきたいと思います。
  106. 鈴木正明

    鈴木(正)政府委員 お答えいたします。  地方自治体における行政評価制度でございますが、事務事業評価制度あるいは政策評価制度ということでございまして、お話のように、静岡県や三重県では導入、実施されているところでございます。その他の都道府県におきましても、導入あるいは検討がなされているという状況にあります。市町村におきましては、国や県の動向などを踏まえながら導入に着手あるいは検討を進めている団体もある、このように見ております。
  107. 福島豊

    福島委員 非常にまだ差があるということだというふうに私は思いますが、この点は、ぜひ自治省も音頭をとって、それぞれの自治体にやってもらったらいいんじゃないかというふうに思います。  それは、何を評価するのかというのは幾つもの観点がありまして、それなりに複雑な議論だということは承知いたしておりますけれども、一定のマニュアルといいますか、方向性といいますか、模範になるようなものをつくっていただいて、ぜひこの取り組みを進めていただきたいと思いますが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  108. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 まことに、地方公共団体がみずからの行政改革を進める、あるいは、できるだけ住民の考え方を反映する中でオープンな行政を進めていこうというような中で、住民参加の実も上げていきたい、いろいろな意味で自己努力をしておられるわけです。その中で、今の、制度的な政策評価への取り組みというのは非常に大事なことであるという、これは私も全く同感であります。  この情報公開の推進外部監査制度の活用など、さまざまな方法があるんですけれども、地方団体が政策評価を導入するに当たっては、大半の団体にとってはまだなじみが少ないという側面もございますし、導入に当たっての経費負担ということもまたあるわけです。  そういう点で、自治省としては、今日まで、地方団体における政策評価への取り組みを進めるために、まず、さまざまな手法が存在する政策評価について、国や諸外国、先進的な団体の取り組み事例などを整理をして、研修会やインターネットなどを通じて地方公共団体に対しては情報提供を積極的に行っている、これを通じて、ぜひ参考にして、みずからもいろいろ努力をしていただきたいと考えております。  それから同時に、導入に必要な経費について、地方財政措置を講ずる、こういうことを通じて行財政支援を行っていきたいと考えております。  また、自治省自身として、今の段階で、画一的でオーソライズされた政策評価への手法、これだというものはまだ確立されておりません。しかし、さらにこの点についても積極的に検討、勉強をしてまいりたいというふうに考えております。
  109. 福島豊

    福島委員 さまざまな形で取り組みをしていただいておるようでございますが、思いつきのような発言で大変恐縮でございますけれども、一度、それぞれの自治体がいろいろ取り組んでおります政策評価のレポートをファイリングしまして、そういう報告書のようなものも検討していただいたらどうかというふうに提言をさせていただきたいと思います。  最後に、自治体の合併につきまして、これも本法案に盛り込まれている非常に大切な点であるというふうに思います。合併を促進するためのさまざまな特例措置というものが拡充をされたという意味評価をするものでございますし、そしてまた、自治体の合併には幾つかの波がありましたけれども、今もまたそういう時期に恐らく当たっているんだろうというふうに私自身は思います。効率的な地方政府を確立するため、合併というものを促進していかなければならないというふうに思います。  時間も限られておりますので、まず大臣に。  三百自治体ということをかつて主張しておられた、今も主張しておられると思いますが、今回の法改正で果たしてそこまでいくのかという話になりますと、なかなかそこまでは難しいなというふうに私は率直に思いますけれども、現時点でも、三百自治体というようなかなり絞り込んだ形の合併を実現すべきであるというふうにお考えなのかどうか、その点についての御見解をお聞きしたいと思います。
  110. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 自由党、これは前の新進党においてもそうなんですが、基本的に、より強い地方分権の姿、地方主権と言ってもいいかもしれません、そういった形をきちんと整備するべきである。そのためには、今まで以上に権限なり財源なり、そういったことをきちんとした形で位置づけなきゃいけない。それにはそれを担うだけのきちんとした能力というものが、あわせて受け皿としての体制が整わなければいけない。できれば、国、県、市町村という三層構造というものを、より基礎的な自治体が責任を担っていくような形をとっていこう。そういうことであれば、三百というのは一つの考え方だ。  そういうことを一つ目標にして、トータルとしての国、地方を通ずる行政というものを考え直していいのではないかという問題意識から、そういう提言をいたしておるわけです。  実際、自治大臣として、ではそこまで今一気にいけるのかいということになりますと、率直に言って、今直ちにそこにいくには随分とまだまだ現実との間にギャップがあるということは、これは現実の課題だと思っています。  特に、横浜市は既に人口が三百万を超えているわけですし、中には二百人程度の村もあるわけです。これを同じ市町村ということで、ここに権限移譲を同じような発想で議論してもなかなか始まらない。そういったこともあって、あるいは中核市であったり、今回は特例市という制度を入れて、できるだけ市町村の合併ということだけではない、特例市などとか、ある程度、自治体の能力と言うとちょっと語弊があるかもしれませんが、組織力なりそういったことに応じた分権ということを実際に進めたいという発想もあるわけです。  そこで、市町村の合併は、まず三百ということは、将来のことは意識はしながらも、当面、そこへいくよりもより現実的に、戦後約一万ぐらいありました市町村が二十年代後半からの一連の合併の動きの中で約三千三百という形に集約されたわけで、今回、それも一つの参考になるのかもしれません。  これはもちろん、住民の協力を得て、住民の自主的な発議によって行われるのが一番望ましいことでありますが、いつまでも放置するわけにいきませんが、そういった中で、自治体の受け皿を強化するという意味において、より積極的な市町村合併のための支援措置を講じていきたい。  初めに数ありきということだと、誤解を生ずるかもしれませんが、今言いました約三分の一というのは、二十年代の後半から今日まで、これは一つのステップとしての参考にはなるのではないかと考えております。
  111. 福島豊

    福島委員 無理やりこうするということはなかなかできない、私はそう思います。  最後に一言提案ですが、介護保険が来年からスタートする、これは実は非常に大きなチャンスなんだと思うんですね。広域で取り組むところがある程度出てきておりますけれども、まだ十分ではないと私は思っております。介護保険のスタートに当たって、さまざまな懸念が呈されているということも事実でしょうし、この夏に向けて、自治大臣も自治体の行政を担うということから、どうやって来年からするのかということについて最後の知恵を出さなきゃいかぬという話になると思うんですね。  いろいろな発言がいろいろなところから聞こえてきます。ぜひともここを一つのチャンスとして、事実上の共同で行政を行うという範囲を、三百になるかどうかわかりませんけれども、築き上げていく、そこのところが実は三百自治体というようなところに向かっての一つの大きな突破口になるんではないかというふうに私は思っております。時間も限られておりますけれども、政府の中でその点についてはよくよく御検討していただいて、国民だれにとっても安心のできる体制づくりをしていただきたい、そのように最後に要望しまして、私の質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  112. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、春名直章君の質疑に入ります。
  113. 春名直章

    ○春名委員 日本共産党の春名直章です。  きょうは、まず、地方議員定数の削減の問題についてお伺いをしていきたいと思っております。  現行の法定定数が、一九四六年に決定をいたしております。前提問題として少しお聞きしたいんですけれども、現行の法定定数を確定した一九四六年の当時の国会での議論、その特徴について簡潔にぜひ御答弁をいただきたいと思います。
  114. 鈴木正明

    鈴木(正)政府委員 お答えいたします。  一九四六年、昭和二十一年、戦後第一次の地方制度改革が行われたわけですが、議員定数に関する改正といたしまして、都市について申し上げますと、昭和十八年の改正前の制度に復するということでございます。昭和十八年の地方制度改革は、第二次大戦の戦局急迫を背景といたしまして、地方行政の能率化を図るといったことで、特に人口四十万以上の大きな都市における議員定数を減少することといたしたものでございます。この昭和二十一年の改正は、都市について昭和十八年の改正前の定数に復するということにいたしたものと承知をいたしております。
  115. 春名直章

    ○春名委員 少し私も今のお話を受けて調べてみたわけなんですけれども、お話が出たとおり、四六年は府県、市、町村制が改正をされております。その一貫として定数が確定をしております。それがずっと今は続いているわけなんですが、当時政府は、戦前の定数をそのまま踏襲しようという原案をお出しになったんですね。そのときにいろいろな議論がされました。当時の議事録を幾つか私読んできたんですけれども、例えば松浦東介さんという議員が一九四六年七月二十七日、第九十回帝国議会、衆議院でこういう発言をしています。  最近非常に有権者の数が膨大に増大いたしております、また地方自治が大幅に拡大しておりますので、定員というものはふやさなければならぬのではないか、こういう質問をしております。それから、四六年八月五日の同議会では、小野眞次さんという議員がこういうふうに言っています。自治権の拡充という建前から、あるいは有権者が非常に増加したという建前から、言いかえるならば、府県民が府県制に対する関心を持つ度合いが、実質的に増加したという建前から、私はこの際定員の増加を図ることが適当ではないかと思う、こういう質問などがやりとりがされております。  つまり、有権者の増加、地方自治の拡充、民意を議会に反映する、こういう観点から議員定数は増加すべきだという意見が強く出されて、結局、政府原案が修正をされて法定定数がふやされ、今続いている法定定数になっている、こういう歴史の経過があるわけです。  地方自治の拡充のためには議員定数は増大させるべきだ、民意を反映させるためには増大させるべきだ、これが当時の議論でありまして、私は、地方分権議論しているこの委員会こそ、そういう教訓を今生かすときだというふうに思うわけであります。  ところが、今度の法案はなかなかそうはなっていないんですね。それで、具体的に少しお聞きをしてまいりたいと思います。  上限値を設定するということに今度の改正案でなっています。そこで、この改正によって、先ほど昭和十八年の話が出ましたけれども、一九四三年の終戦直前の定数よりも低い上限値を押しつけられる自治体が今度の改正で出てまいります。どの人口区分がそれに当たるのか、それから該当する自治体がどれぐらいあるのか、これは技術的なことですので局長でも結構です、ぜひお答えいただきたいと思います。
  116. 鈴木正明

    鈴木(正)政府委員 お答えいたします。  お尋ねの人口区分につきましては、市では、人口四十万以上四十五万未満の市につきまして、議員定数が昭和二十一年の市制改正で四十八人から五十二人に引き上げられ、今回の改正で、前は法律で決まっておりましたが、今度の議員定数は上限値ということで、基本は条例で定めるわけですが、上限値は四十六人となるということでございまして、その人口区分に属する市区の数は十一団体でございます。  また、町村につきましては、昭和十八年の町村制改正によりまして、人口一万から二万未満の町村の議員定数が二十四人とされておりましたが、それが昭和二十一年で二十六人に引き上げられまして、今回の改正で上限数が二十二人ということでございます。この人口区分に属する町村の数は、平成七年国勢調査ベースで七百団体ということでございます。
  117. 春名直章

    ○春名委員 今お話が出たとおり、市区でいいますと、人口四十万人から四十五万人未満、この区分が戦前の定数以下になっている。町村では、一万人から二万人未満の自治体が戦前の定数以下になっている。つまり、その数が十一市それから七百町村というふうにおっしゃいました。七百十一市町村、つまり全体の二二%の自治体が、戦時下の、戦前の定数以下に抑えられるということに今度の法改正でなるんですね。  当時の人口と今の人口を比べれば、はるかに今の人口の方が多いわけです。私はこういう事態があるということに本当に驚きました。  そこで、引き続きお聞きをしたいと思うのですけれども、戦争中の一九四三年の定数は、どういう形で、どういう議論で決められていったのかを引き続きお答えいただきたいと思います。
  118. 鈴木正明

    鈴木(正)政府委員 お答えいたします。  昭和十八年改正前の議員定数でございますけれども、現在の地方自治法に基づく定数と同様、法定定数制度で、おおむね市制、町村制の制定当初の定数の考え方を踏襲いたしております。これは、我が国の地方制度の母体となった外国の制度、プロシアの制度を参考にしたものと考えられているところでございます。
  119. 春名直章

    ○春名委員 一九四三年の定数がどういうふうに決められたのかも、私自身も勉強してみたんですね。四三年の定数改正は、それまで三十万以上については十万人増加するごとに四人、五十万人以上については二十万人増加するごとに四人の定数を増加するという制度だったものを、人口三十万以上については十五万人増加するごとに四人、六十万人以上については三十万人増加するごとに四人、こう増加することにしまして、しかも、上限値、定限はなかったんですけれども、八十人をもってこれを限度とする、こういうふうな改正になりました。  このときの改正は、今局長がおっしゃったとおり、市制、町村制の大改正がこの時点で行われているんですね、その一環としてこの定数削減というものが実行されたのであります。  橋本勇さんという「地方自治のあゆみ」という本を書いていらっしゃる、この方は自治大学校の教授ですけれども、自治省の振興課長補佐を勤められた方が書いている本、この中で、この市制、町村制の四三年の大改正というのが、どういうねらいと目的であったかというのが述べられております。  その改正点は、市町村会、つまり今の議会のことです、市町村会の権限を縮小すること、市町村長の指導的地位を確立することというのが柱でありまして、とりわけ市町村会の権限の縮小についてはこんなことを言っています。軽易な事項は、簡単な事項は議決の対象にしないでよろしい。歳入歳出予算について増額修正することはできないようにしよう。事務の管理、議決の執行、出納についての実地検査の権限は廃止する。  つまり、市町村会、今の議会ですけれども、この権限を骨抜きにしてしまう、なくしてしまって、権限を市町村長などに集中していこう、こういう改悪といいますか改定がされているわけであります。その一環としまして議員の定数が削減されるということになったんですね。  その当時、政府が提案理由を説明しています。時局の急迫に伴い国家の施策はいよいよ広範かつ煩多となり、これが遂行具現については市町村の活動に負うところが大である。特に防空、生活必需品物資の配給確保、貯蓄の増額、食糧増産、労務の供出等に関しては、その機能の十分なる発揮にまたなければならない。しかるに、市町村の現状はこの時局の要請に沿いがたい点があると認められる。よって、この際、市町村行政について根本的刷新と高度の能率化を図って、もって国策の浸透徹底、国民生活の安定に万全を期せんとするものである。政府の提案理由がこういうふうに述べられているわけです。  つまり、侵略戦争をその当時、四三年はやっていました。戦争をやっていた。そのときに、国民総動員してもらわなきゃいけない、そのために市町村長の権限は強化をしましょう、そして市町村会の権限はできるだけ縮小しましょう、こういう議論のもとに、その一環として定数も削減する、こういう構図だったんですね。  そういう議論をしてできた四三年の定数よりも、先ほどお話が出ました七百十一の市町村、団体が、四三年当時よりも、今度の改正によって上限値が決められることによって定数が削減されていく、こんなことになるんですよ。異常だと思いませんか。平時の今でも七百十一市町村が四三年よりも少なくなる。こんな重大なことがいとも簡単に実行されようとしているというところに私は非常に危機感を覚えます。  自治大臣にぜひ御答弁いただきたいと思いますけれども、本会議では、歴史的な経緯を踏まえて今度の定数問題について改正をしたと言われました。歴史的な経緯を勘案するというのであれば、こういう問題についてしっかりと勘案をする、四三年の定数削減がどうしてやられたか、四六年はそのままいこうとしたけれども原案は否決をされて今の定数になって少しふえた、そういう経緯をきちっと踏まえて当たるべきだと私は思うんですね。そういう御認識はないでしょうか。自治大臣、いかがでしょう。
  120. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 戦前の、あるいは戦時中の議会の議事録等までお勉強されて、お勉強の姿勢には敬意を表しますが、ただ、随分と違っているんじゃないかと思っています。  要は、今日なぜ我々が本当に真剣に地方分権といいますか、今回一括法案を御提案申し上げているか。それは、やはり住民に身近なことはより自治体の自己責任といいますか、自主的、自立的な判断にゆだねていくべきである、国が行うべき仕事は極力これを抑制的に、やはり国でなければならぬのだ、どうしても必要だというものに限定したいということが基本的な発想であるということは、かねてから申し上げておるとおりです。  それをさらに徹底してやっていきますと、具体的に事務を処理する自治体の行政遂行の組織力なり財政力なり、あるいは自己責任なり意思決定等に関することについての包括的な国民的あるいは住民の信頼感、そういったもろもろのことが、実は受け皿としてやはり非常に強く要請を受けていることも事実です。  今日、地方自治を一方ではぜひ大いに進めろということと同時に、担い手としての自己責任体制が本当に万全の体制にあるのか否かということについて、いささか百点満点を与えられていない。それが今日、合併問題であったり、あるいは基盤の強化のための方策がいろいろな角度から問題提起されているわけであります。もちろん財政の問題もございます。  そういった中で、私は、地方議会の仕事というのは、数が多ければ立派な仕事ができるとか、数が多ければ自治能力が向上するとかいうことと次元が異なるのではないか。本質論ではないのではないか。私は、そもそも国会議員の定数も同じだと思っています。数が多ければ立派であって、少なければじゃ非民主的な方向に行くのか、私はそんなものではないと思っています。  そういう点で、より住民の意思が的確に反映されるような、そういう議会の運営であり、基本的には議員一人一人が住民の意思を的確に反映するような仕事をしておられるか否か。言うならば、選挙において、有権者自身がそのことをきちんとした主権者としてチェックをしていくということが、本当にきちんと的確に行われているかいないかということが私は一番大事なことであるというふうに考えております。  どうも数を一つの原点にして、それが地方自治が充実されるかされないかということの議論に結びつけるのは、ちょっと直接の関連は薄いのではないか、そのように考えております。
  121. 春名直章

    ○春名委員 なぜ私が最初に歴史をお話をしたかということを、もう一度考えてください。  四六年当時、戦前の定数と同じ定数でやろうというふうにしたときに、自治が拡大するのだから、住民の意思をもっと反映するためには議員定数はもっと増大させなければならない、そういう真摯な議論があって、そして今の定数が確定をしているのですよ。だから、私はそのことを言っているのですよ。  そして、今自治大臣がおっしゃったことについて私、反論しておきますけれども、自治大臣がおっしゃったのは、意思決定や自己責任をもっとしっかり持って一つ一つの自治体がやらなきゃいけない、確かにそのとおりだと思います。そのことと、地方議員を削減する方向に結びつけていくことがどうして結びつくのですか。なぜ上限値を決めて削減をさせるということと、自己決定をしていく力を自治体が持つということと結びつくのでしょう。  住民とのパイプ役が議員じゃないのですか。その議員が何ぼでも減ればいいと、そんな議論にはならないと思うのですね、何ぼでもふやせばいいとは私も言いませんけれども。しかし、今の仕組みは上限値を決めるわけですからね、頭打ちで決めるわけですからね。地方分権、本当に一つ一つの自治体が自治権を拡充し、そして住民の声をしっかり受けとめてその仕事を果たしていこうと思ったときに、なぜこういう定数を削減するような方針が出るのか。私は、今の自治大臣のお話を聞いても、どうしても理解できないのですね。その点、いかがですか。
  122. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 地方議会の定数について、明治以降いわゆる法定主義をとってきたということはこの前も申し上げました。つまり、法律で決めるというやり方をしてきたわけですね。それを今回は、法律で決めるというのではなくて、上限を法律で決める。したがって、それ以下、自主的に条例でお決めくださいという形をとっているわけです。そういう点では、地方自治という点からいえば、法定主義よりも上限という形の方が自主権は拡大しているということは言えるんじゃないんでしょうか。  それから、上限をどういう数字で決めるかということについて、今日、法定主義ではあるけれども、条例において減数条例を自主的におつくりになっている自治体がたくさんある。その減数条例が現に行われているということをも、その数字をも一応参考にしながらの上限という数字を決めているわけでありまして、そういう点では、現在の自主的に行われている自治体の減数条例を参考にして、法律ですべて決定していくというやり方ではなくて、上限を決めて、あとは条例で自主的にお決めくださいという方が、私は、今日時点で現実に、地方の自主性を現行制度よりもより勘案した方向にあると判断をいたしております。
  123. 春名直章

    ○春名委員 それでは、今の自治大臣のお話に沿ってお聞きしますけれども、今度の改定で幾つの自治体が減数条例を新たに制定しなければならなくなるのか。つまり、上限値を決めますので、幾つかの自治体がそれよりも今上回っているところがありますから、減数条例を決めなきゃいけないところが出てきますね。それは幾つですか。行政局長で結構ですけれども。
  124. 鈴木正明

    鈴木(正)政府委員 お答えいたします。  現在、減数条例の制定によりまして、法定定数の累計と比較いたしまして、平成十年の十月一日現在で見ますと二六・九%の減少という状況でございます。  それで、同じく十年の十月一日の時点で見てみますと、現に適用されている議員定数、それから既に改正されているが未施行の減数条例に規定しております議員定数、これを参考といたしまして計算しますと、上限数を超えることとなる市区町村の数は百九団体ということでございます。
  125. 春名直章

    ○春名委員 今度の上限値を決めることによりまして、町村で六十一自治体で、市区で四十八自治体で、今お話が出たように百九自治体で下げなきゃいけない、こういうことになるわけですね。十三の県庁所在地も入っていますし、百二十万人の福岡市も入っていますし、それから岩手県の北上市とか沖縄の金武町ですか、一七%、一八%、現行の定数よりも削らなきゃいけないところが出てくるのですね。こういうところは、今度の法改正によって半ば強制的に減数条例を定めなきゃいけないんですよ。これがどうして自主的と言えるんですか。今までよりも自主的、自立的だ、そういうふうに言っている。全然矛盾しているじゃないですか。  今回と同じように、今自治大臣おっしゃいましたけれども、法定主義から条例主義に改めようという提案が一九五二年に政府によって出されたことがあります。そのときの提案理由、どういうものだったか説明してください。いいですか。法定主義から条例主義に改めようという提案を今回と同じように一九五二年にやられております。そのときの提案理由はどういうものだったか、言ってください。
  126. 鈴木正明

    鈴木(正)政府委員 お答えいたします。  昭和二十七年に議員定数の法定主義を改めまして、法律には議員定数決定の場合の基準のみを定めることといたしまして、議員定数は地方公共団体が条例で自主的に定めることができるようにしようといたしております。  その決定の基準といたしましては、法律に掲げる定数はおおむね戦前の定数を参考として定めたものというふうに承知をいたしておりまして、現在の数字で申し上げますと、例えば人口五万から二十万のところは、今の法律では三十六人、四十人ですが、標準としては、三十一人以上三十五人以内という標準を示しております。
  127. 春名直章

    ○春名委員 先ほど自治大臣は、法定主義から条例主義に変えるのでその点では自主的な面が拡大するということをおっしゃったので、上限値を定めることによって百九の自治体が半ば強制的に減数条例をつくらなきゃいけなくなるということは自主的とは言えないと私は第一点、指摘しました。  もう一点、今一九五二年の改正の趣旨を説明していただきましたが、この中でこういうふうに言っています。確かに条例主義でやるんですね、五二年、そういう提案が出されて、そして上限値という形じゃなくて、基準値というのを示すというふうになっているんです。そうだと思うんです。その基準値というのがどういう性格のものかという説明を、これは当時の自治庁次長の鈴木俊一さんがしていますよ。既に市町村については条例で減少させてよいという規定があったわけです。だから、こういうふうに言っているんですね。  市町村につきましては、減少の方はできますけれども増の方はできない、これはまずい、減少だけはいいけれども増は認めないのだ、こういうふうに法律を決めることは、やはり自主的な議会の定数を決定するという原則からいって適当ではない、こういう御答弁をされているんですね。自治体が自主的に決めるのであれば、減だけを決めさせるようなやり方じゃだめで、基準値は決めるけれども、それは増もあれば減もあるんだ、そういう御答弁をされているんですね、一九五二年に。基準値というのはそういうもの。  条例主義をとるというけれども、同じ条例主義をとった五二年のときには、増も減もということを、同じ政府がそういう提案をされているんですよ。いつからこれは変わったのでしょうか。なぜこの教訓を学ばないのでしょうか。この点、自治大臣、どうですか。
  128. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 とても古いお話ばかりされるんですけれども、地方分権推進委員会の第二次勧告、これはちゃんとした先生方の勧告でございます。そこで書いてありますのが、議員定数について、「国は、議員定数について、地域の実情等に応じた組織・構成の見直しが弾力的に行えるよう、人口段階を大括りにするなど、基準の一層の弾力化を図る。なお、この基準の見直しに当たっては、減数条例の制定状況を十分に勘案する。」つまり、細かいくくりではなくて大ぐくりにしなさい、そういう意味で、条例で自主的に決めていただくその範囲を、弾力的な範囲をより拡大したということでもあるわけであります。
  129. 春名直章

    ○春名委員 だから、私は、条例主義そのものについての問題を言っているのじゃなくて、五二年当時は基準値というのを一緒に定めたけれども、それは増もあるし減もある、それが地方自治なんだ、地方自治を認めるのであれば減だけ一方的に押しつけるのはまずいんだ、そういう答弁をされているんですよ。それはいつ変わったんですか。今度は上限値をつくってそれ以下にするんでしょう。  そこのところを、古い話とおっしゃるけれども、原理原則の問題であって、法定定数を決めたのは四六年に決めているんですから、どういう歴史的経緯を持って今この定数が決められていっているかというのをきっちり吟味しないとだめなんですよ。だから私は問うているので、五二年の当時、増も減も認める、基準値はそういうものだ、地方自治というのはそういうものだと言っていることについて、どう変わったのか、いつ変わったのか、このことをはっきり答えてください。
  130. 鈴木正明

    鈴木(正)政府委員 お答えいたします。  昭和二十七年の改正は、今お話のございましたように、法定定数を標準数に改めるということでございましたが、当時国会で御議論をいただきまして、最終的には国会修正ということで現行どおり法定定数制度になった、こういう経緯がございます。
  131. 春名直章

    ○春名委員 私も承知しております。しかし、その政府の考え方は、地方自治を守るためには一方的に減だけ決めちゃいけないんだという考え方があった、私はそこを本当に大事だと思うから繰り返し質問しているのであります。  そして、二次勧告のお話が出て、私も二次勧告はもちろん読んでおります。しかし、減数条例の制定状況は勘案するけれども、上限値を決めなさいとは書いてないんですね、第二次勧告は。このことを決めたのは、皆さんが法律のときに決めているわけですね。だから私は問うているわけであります。第二次勧告に全部沿っていますということにもならないんですね。私はそのことを改めて申し上げておきたい。
  132. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 何か議員の数をふやすということに大変御熱心なように受けとめられるんですが、率直に申し上げて、今我々が置かれている環境というのは、少なくとも、国家公務員においても地方公務員においても、言うなら納税者の負担を最小限に持っていくためにも、いかに行政を国、地方を通じて簡素効率化していくか、これが今最大のテーマの一つなんですよ。そういう中にあって、議員だけを勝手にふやすことがあっていいのでしょうかというのは、私は一般国民の、日本の国民の大きな声だと思っています。  そういった中で、国会においても、これは政党間で今いろいろ御議論いただいておりますが、さらに議員定数のあり方について御議論いただくということになっておるようであります。地方議会においても、今あることをよしとするのではなくて、さらによりよく簡素効率化ができるような地方の行政サービスをやっていってもらう、その上で、地方議会においても、自分たちの条例において上限の中で自主的に決めていただくということは私は当然のことである、十分に理解をされることであるというふうに思っております。
  133. 春名直章

    ○春名委員 当然のことじゃないんですよ。政府自身が、そうではないと言っていたときもあるんですね。そのことを私は言っているんです。地方自治の原理原則から私は問題提起をしている。  そして、行政改革をみんなやらにゃいかぬと言いますけれども、九七年度の議会費の地方財政に占める比率の一覧を私調べてみました。そうすると、歳出の中に占める議会費の割合はどれほどか。都道府県はわずか〇・一八%ですよ、わずか〇・一八%。市区では〇・七四%。町村でも一・六九%。それだけのわずかなものなんですよ。  議員というのは、住民の声を届けるパイプ役なんですよ。そして、これからいろいろな権限が移譲されていくのであれば大きな力を持つようになる、自治体が、執行機関が。それをチェックする役を持っているんですよ。地方分権ということでいうのであれば、そういうことを勘案して初めて定数という問題も議論できるんじゃないんですか。そこのことが全く逆の方向に話が進んでいくので、私は、増ばかり、何ぼでもふやしたらええなんて一言も言っていませんよ。あなた方の歴史の考え方からいっても、歴史の教訓からいったって、こういう考え方がおかしいんじゃないかと言っているんですよ。  私はそのことを改めてきょう、質疑を通じて非常に痛感をいたしました。地方自治を非常に軽く見ているということを厳しく指摘しておきたいというふうに思います。  次に、今度の改正で、自治体を強い統制下に置いていく重要な手段となってまいりました通達行政について聞いていきたいと思います。  国民は、通達行政が改善されるという場合に、微に入り細に入り、はしの上げ下げまで自治体を指示するようなやり方、これを通達行政、こういうのは改善してほしいというふうに思っていると思うんですね。今度の改正で自治権が拡充するとか、いろいろお話が出ています。関与も縮小するということが、話が出ております。膨大な通達、通知類が地方自治体に送られているわけですけれども、今度の改正で、この通達、通知類は整理され、減らされていくことになるのかどうか。  ちょっと漠然とした質問で申しわけないけれども、自治大臣、これはどういうふうになっていくのでしょうか。いわゆる通達行政と言われるものは、どのように改善されていくのでしょうか。少し自治大臣のお考えをお聞かせいただけたらと思いますが、どうでしょう。
  134. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 機関委任事務については、従来、国の包括的な指揮監督権があって、そういうもとにおいては、事務の管理、執行全般にわたって通達の形で一般的に定めることも、あるいは具体の事例について個別に指示するということも可能であったわけです。また、一定の事項については、国との協議や、あるいは国の承認ということを義務づけるということも可能であったわけです。  これに対して、今回、機関委任事務を廃止するということになりまして、その中で自治事務と法定受託事務とに振り分けられたわけですが、その法定受託事務にかかわる処理基準というのは、あくまで一般的な基準として定めるものでありまして、その内容も、目的を達成するために必要な最小限度のものに限られるということで考えております。  また、新たに地方公共団体に事務を義務づけたり、国の承認や国への報告などのような関与を定めることはできないものだというふうに考えておりまして、漠然とした問いかけということで、通達というのは大幅に減るかと問われたら、当然のことながら大幅に減るというふうに認識をいたしておるということを申し上げたいと思います。
  135. 春名直章

    ○春名委員 そうなればいいのですけれども、四省庁に、通達、通知文書を全部、ちょっと取り寄せて調べてみたのですね。一九九八年、去年の四月一日から九九年三月三十一日までの一年間で、これは自治省ですけれども、通達、通知が三百二十三本、厚生省が三百十二本、文部省が百五十九本、農林水産省が九百七十六本。四省庁だけで千七百七十本、一年間に。  すべてがだめだとは僕も言いません。大事なものもあると思うのですね。しかし、余りにも多いですね。四省庁で千七百七十本の通達、通知が出ているのです、一年間に。四省庁だけで千七百七十本だから、一日約五本。土曜日、日曜日、祝日という実際に役所があいていないという日を除くと、一日七本以上の通達、通知が出ているということになるのですね。これが四省庁だけですから、驚きの数字ですわ。二十一省庁、今度省庁が減るからあれかもしれませんけれども、それにもし換算したら、機械的に当てはめたら、一日三十本以上の通知や通達が出されているということになるわけなんですが。  そこで私、余り減りそうにないなと思っているのは根拠がありまして、例えば農林水産省が九百七十六本出しているのですけれども、この中の、大体法律の根拠というのは、一つは今の地方自治法の二百四十五条の四項の各大臣の技術的な助言ということから出されているのですけれども、これが二百五十本ありまして全体の二五%を占めている。これは、実は今度の地方自治法の改正では技術的助言、勧告というのが関与の類型でできますので、根拠法令がありますので、そのまま残る可能性がある。  それから、あと、補助事業に基づく通達が六百八十三本出ていまして、全体の七〇%を占めていまして、これは補助金行政が整理されれば少し減るかもしれませんけれども、しかし、今回の改正とは余り関係ありませんからそのまま引き継がれていく。だから、数で調べてみても、非常に多いと驚いたわけなんですね。そういう事態が、そのまま余り縮小されずに温存されるのではないかということを私は想像しておるわけであります。  数字だけの問題ではありませんで、きょうは建設大臣に来ていただいておりますので、関谷建設大臣に少し具体的なお話を聞いてみたいと思うんです。  通達と通知という行政一つの具体的な姿として、各自治体が宅地開発等指導要綱というのをずっと出してきたんですね、御存じのとおり。一九八二年から、建設省は、自治体が定めている宅地開発等指導要綱の見直しを求める通達、通知を繰り返し出してまいりました。それも見させていただいたら、そのものだけでこれだけあるんですね。何回も出しておられる、一九八二年から。  この宅地開発指導要綱は、住民の要望に基づいて、環境の保全とか乱開発の防止とか、そういうことのために各自治体が創意工夫を凝らして制定してきたものだと思うんです。市町村の約四割を超えるところでこれはつくられてきていると思うんですね。  ところが、今言いましたように、この宅地開発要綱に対して、見直しをせよ、細かいところまで基準を示して、これに従いなさい、こういう指針、通達を繰り返し出してまいりました。地方分権、地方自治の拡充というのであれば、こういうものが具体的に改善されていくのかどうか、自治体の自主性がもっと尊重されていくのかどうかが私は一番の関心事であり、注目点だと思っております。  そこで、建設大臣、今度の改正などによって、こういう見直しを強要するようなものは改善されるんでしょうか。どうぞ。
  136. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 現状は先生もう既に御存じのとおりでございますが、宅地開発等の指導要綱の見直しの通達の発出は、建設省設置法上、建設省の所掌事務でありまして、宅地造成に関する指導を行うことが規定されておりましたから、この事務の一環として、地方自治法に基づいて今日まで助言を行ってきたという流れ。そのもとで、今回の地方分権の論議を踏まえまして、今後どのように指導を行っていくかということであるわけでございますが、これは言うまでもなく、宅地開発の指導要綱というのは、良好な都市環境を形成するという上で今日まで一定の役割は現に果たしてきたと私は思っております。  反面、その一部におきまして行き過ぎがあるというようなことが以前から指摘をされておりまして、それは事実でございまして、建設省としても、その適切な見直しについては指導を行ってきておるところでございます。  そういう中で、今後、この要綱の行き過ぎ是正につきましては、地方公共団体の自主性に配慮しつつ、良質で低廉な住宅の供給の観点から、必要に応じて適切な助言を行うということは必要である、そういうふうに私は認識をいたしております。
  137. 春名直章

    ○春名委員 どうも今のお話では余り変わるような話じゃないですね。  一九八三年に、宅地開発等指導要綱に関する措置方針というのが事務次官通達で出されていますね。これも私、ちょっと読んだんですけれども、すごい細かいですね。びっくりしました。自治体の要綱にこういう行き過ぎがあるということを全部、逐一指摘をして、これを基準にして直しなさいというものなんですけれども。  例えば、道路では、区画道路、取りつけ道路、幅員、勾配等々、全部の項目がありまして、区画道路についていえば、合理的な理由によるものを除いて六メートルを超える幅員の区画道路は求めない、そういうことを業者に求めてはだめだ。幅員、勾配の項目では、勾配が最大七%と決めているのに、それ以上に厳しい基準を決めるのは設定し直せ。物すごい細かいんですよ。  それから公園、緑地の項では、公園の確保、位置、形状、緑地面積率などが全部ありまして、開発指導要綱以外の条例で緑地面積率を上乗せして業者に過大な負担を強いているものはやめなさい、緑地面積率は基準以下にしなさい、それ以上緑地をふやしてはだめだ。  すごいですね。まさに、はしの上げ下げ。道路の勾配率まで全部縛って、それを上回る自治体独自の規制については厳しく見直しを求める、こういうものであったわけです。  私、一定の大まかな基準を通知や通達で示すことは、建設大臣、あり得ると思うのです、一切なくなったら自治体も困る場合もありますので。しかし、これほど細かい要綱を出して、これ以下は絶対だめだという点を全部見直しを求める、そんなことがやられてきたのですよ。  しかし、今のお話では、自主性は配慮するけれども適切に助言はするといって、何の意味かよくわかりませんけれども、同じようにこれからもこういう見地でやるんだというふうにしか私は読み取れませんでしたけれども。地方分権、地方自治というのであれば、これは自治事務ですから、このようなものはもう一切やらないというふうにはっきりさせないと、自治体の方も、本当にこれで地方分権なんだろうか、こういう話になりかねないと私は思うのですよ。  もう一点言いますので、答えてください、そのことと同時に。  要綱の中には、周辺住民などの同意書、それに類する住民の同意、これを一つの許可要件にしているという要綱なんかがあるんですよ。それは、やはり住民一人一人の声をよく聞いて、納得をして宅地開発をするということが大事ですから、当然のことだろうと思うのですよ。  ところが、八三年の通達では、「中高層建築物に関する指導について」という項目の中で、周辺住民の同意書の提出を求めることは、建築行為を遅延させるなど建築主の権利の行使を妨げることになるおそれがあるので、適切ではないからやめなさいという指示をしています。九五年の通達では、開発に対して抑制的に作用するから、周辺住民などの合意または実質的に周辺住民の同意書と同一と認められる書面の提出を求めることは適当ではない、こういう指示をしているのですね。だから、そんな同意までやるべきじゃないということを厳しくやっているのですよ。  私は、地方自治というのだったら、それぞれの自治体が、一定の基準はあるだろうけれども、それぞれのところでそれぞれ状況が違うのですから、そのことについてしっかりと裁量を認めていくということの方が本当に分権にとっては大事だと思うのですよ。  こういう方向が本当に改善されるのでしょうか。もう一度お答えいただけますか。
  138. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 今までの流れは、一に建設省は真摯に良質で低廉な宅地、住宅を供給するという思いでいろいろなことを発出したわけでございまして、それがそのまま今後引き継がれていくというわけではありませんから、この地方分権という意味もそれはそれなりに理解をして進めていきますから、今までと同じ数のものが発出されるとは私は思いません。
  139. 春名直章

    ○春名委員 今までと同じ数のものが発出されるとは思いませんというのは、それは当然なんですけれども、ただ、私は非常に危惧しておりまして、今までは技術的助言、勧告、旧自治事務は、今出されたものは自治事務ですから、今度も自治事務になりますから、技術的助言、勧告という形でこれがやられてきたと思うのですよ、根拠としては。しかし、今度は、技術的勧告、助言とともに是正の要求というのも入っている。私、前の質問のときに自治大臣にもそのことを議論しましたけれども、自治事務についても法的な義務を持たせて、是正の要求というものをやれるというような文面に今度変わっているんですね。  今の建設大臣のような御態度で、私は非常に危惧をしておるのは、この是正の要求というのを今度は晴れて使えるわけですから、この見直し基準に従わないという自治体がもしあったとする、自治体の方は、国はそうおっしゃるけれども、住民の現状、環境を考えたら、それよりも厳しい規制を多少は加えなければいかぬ、そういう自主的な判断をする場合はあるじゃないですか。しかし、そのときに、国はこの基準であるからそれはだめだと。今までは技術的な助言、勧告をしていたけれども、今度は法的な義務を負う是正の要求という形でこれをやれるというような仕組みになっているわけでしょう。  私は、だから、そのことを非常に危惧しているわけなんですね。上乗せや横出しということについて、自治体自身が住民と相談しながらやるということは当然あってよろしい。そういう仕組みに今度法律改正によって、是正の要求という形で建設大臣もできるようになるんですから、そんなことを私は非常に心配をするんですね。  そんなことはない、行き過ぎた見直しをやれというようなことは、もうそういう細かいことはやらないというふうにはっきりおっしゃっていただければ、私は安心するかと思うんですけれども、その点、建設大臣、もう一度どうぞ。
  140. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 地方の方々のるる御意見を伺うというのは、これは当然のことでもございますし、今は逆に、住民投票条例云々とかそういうようなことが出てきておる時代でもございましょう。そういうようなことで、意見を聞くとそれだけ時間がかかるからそういうことをやめろなんということは、それはあり得ませんでしょうし、先生御心配のようなことは私はないとは思います。
  141. 春名直章

    ○春名委員 現実に一九八二年からこういう通達が出されてきて、効果てきめんだったんですよ。八二年十一月から八五年十月まで三年間の調査しかちょっとないんですけれども、二百七十九市町村で、延べ三百六十四の指導要綱が、この通達が出されたがために、規制を緩めるという形で修正されているんですよ、そういうことをやられているんですから。  私は、そういうことがあるから、良好な環境を整備するためにやっているんだからわかっていただけるでしょうと言うけれども、自治体一つ一つにとっては死活問題ですから、こういう基準以上にもっと厳しくせないかぬ面が出てくるんですよ。そういうときにどういう対応を国がされるのかということを私は今問題提起しているのであって、そのことを改めて私は申し上げておきたいと思うんです。  それから、建設大臣、以上で私の質問を終わりますので、自治大臣に最後に御質問させていただきたいと思います。  今回の法改正の中で、現行の地方自治法の中に、二百四十五条の第一項で、自治大臣による技術的助言、勧告という規定がありますね。これが、今度の改定によって、雑則二百五十二条の十七の五にそのまま残されることになっています。私は、関与の一般的な類型の中で技術的勧告、助言というのがあるんですから、わざわざこの自治大臣の技術的勧告、助言というのを雑則に持ってきて、横滑りして残す必要は全然ないと思いますが、なぜあえてこの項目を残されているのか、そのことの趣旨を聞かせていただきたいと思います。
  142. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 地方分権の実を上げるためには、地方公共団体は、ますます今後その行政体制の整備充実や行政運営の合理化などを図っていかなければならぬわけであります。その場合に、特定の行政分野に係る専門的、個別的な助言や勧告だけでなくて、多くの地方公共団体が実際にどういうふうな行政運営をそれぞれやっておられるか、その実績を相互に比較検討するということが非常に大事なことでもあると思います。  つまり、自分たちだけで独自のやり方だけを追求するのではなくて、同じ地方公共団体の行政事務を実際に行っていく過程の中で、いろいろな情報交換なり、いろいろな経験交流なり、そういったことをやっていくというのは、実はそれが自治大臣仕事でもあるわけで、そういう意味で、自治大臣が、必要な資料を収集して、総合的な見地からそういう意味での技術的な助言、勧告をすることによって地方団体みずからの組織運営の合理化の努力を支援していくということは、極めて地方自治行政を円滑、円満に運営していく上で大事なことであるというふうに考えておるわけであります。  これは、いわゆる助言、勧告ということでありますから、詳しくは申し上げませんが、非常に有益なことであるということで申し上げておきたいと思います。
  143. 春名直章

    ○春名委員 この二百四十五条一項に基づいてこの一年間、先ほど三百二十三本の通達、通知が自治省から出されているというふうに言いましたけれども、この二百四十五条一項の自治大臣による技術的助言、勧告規定によって出されたものが百二十三本、約四割なんですね、この一年間に。その中身なんです。黙過できないものがあるんです。  地方自治体の役割というのは、住民の安全や健康、福祉、しっかりこれを支え守っていくことだと思うんですけれども、そういう点で、今、例えば多くの住民が、高過ぎる国保料を下げてほしい、上げないでほしい、切実な声を上げていますね。その声に何とか自治体もこたえようということで、国保会計に一般会計などから財源を繰り入れをして、住民負担を少しでも軽減しよう、こういう努力が各地であるわけです。  ところが、こうした取り組みをこの二百四十五条一項に基づいて問題視されて、毎年、自治事務次官の通知で「地方財政の運営について」というのを出して、こういうことを指導してきているんですね。事業勘定に対する一般会計などからの繰り出しは、一部を除き、その性質上行うべきものではない、財政支援的な繰り出しを行っている団体にあってはその是正に努めなさい、これは平成十年度の、四月二十八日の自治事務次官の「地方財政の運営について」の通達です。  こういうことがやられていまして、つまり一般会計から繰り入れをする、一つの例ですよ、そういうことをやるなと。地方自治体は、一つ一つ何とか住民の声に、健康、福祉を守るという声にこたえなければならないということでいろいろな努力をしている。そういうことをやっちゃだめだ、この自治大臣の技術的な助言、勧告という規定を使ってそういう指導もされているんですよ。  そして、昨年の八月の二十日に、行政局長のお名前で、地方分権に伴う地方公共団体の行政体制の整備・確立について、こういう文書をお出しになっています。私は、地方行革、地方自治体リストラという問題についての考え方は自治大臣とは違うかもしれないけれども、しかし、議論をしておきたいことは、この二百四十五条一項の規定に基づいて八月二十日に出されたこの行政局長名の通知はこんなことを言っているんですよ。  平成十年度末まで、ことしの三月末までにできる限り早い時期に行政改革大綱を全部見直しなさい、三月末まで期限を切って見直しをしなさい、今年度の取り組み内容を示した実施計画を策定しなさい、策定に当たっては、定員管理の数値目標などの取り組み内容についてできる限り数値化を図りなさい、こういうことが言われて、ことしの三月までに大綱の見直しを全自治体やりなさい。これはアドバイスだと自治大臣はよくおっしゃる。しかし、それだったらそんな義務をさせる必要はないわけで、三月末までに全部見直しをせいなんということを言う必要はないわけです。  実は、自治大臣のこの二百四十五条一項の技術的勧告、助言という中身で、そういう行政改革、自治体リストラと私たち呼んでいますけれども、そういうことをここまでやりなさいということを実際には指導しているというのがこの中身、根拠規定なんですよ。  だから私は、地方自治というのであれば、こういうものこそ地方自治を預かる担任の大臣として真っ先に削除すべきだと私は思うんですね。違うでしょうか。私はそのことをぜひ大臣にお聞きしたい。
  144. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 何か、お話を伺っていますと、地方行革の指示はしない方がいい、通知はしない方がいい、好き勝手にやりなさい、地方財政に関して適切な運営もしない方がいい、言わない方がいい、あなた、好きなようにやりなさいというのが自治省の仕事であるように受けとめられると困るんです。  それから、先ほどの国保の話にしても、少なくとも社会保険という枠組みの中でやっていこうというのなら、国保税を下げるだけ下げてどんどん一般財源をつぎ込んでいってしまうなら、ほかの事務そのものの執行に影響が出てくるのは当たり前の話です。したがって、財政の節度ということをお守りいただくように助言、勧告するのは、これは当然のことだと思います。  私は、ちょっと今のお話だと、何か日本共産党の方針が、行革はするな、財政の適切な運営をするなというふうにどうも主張をしておられるように聞こえるので、もう少し表現なり、もう少し違うことできちんとした対応をされた方がいいのではないか、私はそのように思いますよ。
  145. 春名直章

    ○春名委員 まじめに私が言っていることを聞いてください。そんな言い方はしておりません。三月末までに全部の大綱を出しなさいとか、何でそんなことをするんですかと言っているんですよ。  行革をするのは、みんなが自主的に努力すればいいでしょう。大くくりの基準を示して出せばいいでしょう。国保の問題だって、そんなことはわかっているんですよ。しかし、住民の声にこたえようと思ったら、そういうやむにやまれぬ努力もして支えていこう、そして何とか自分たちでやっていこうとしているんですよ。  そういうことについて、全部だめですよ、そういうふうに言われることについて私は同調できないとはっきり申し上げまして、質問を終わりたいと思います。
  146. 高鳥修

    高鳥委員長 次回は、明六月一日火曜日午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時一分散会