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1999-05-27 第145回国会 衆議院 行政改革に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月二十七日(木曜日)     午前九時二分開議   出席委員    委員長 高鳥  修君    理事 伊吹 文明君 理事 岩永 峯一君    理事 杉山 憲夫君 理事 虎島 和夫君    理事 山口 俊一君 理事 小林  守君    理事 田中 慶秋君 理事 若松 謙維君    理事 中井  洽君       岩下 栄一君    衛藤 晟一君       大野 松茂君    大村 秀章君       金田 英行君    熊谷 市雄君       倉成 正和君    河本 三郎君       実川 幸夫君    砂田 圭佑君       谷  洋一君    戸井田 徹君       中野 正志君    細田 博之君       牧野 隆守君    松本 和那君       水野 賢一君    宮島 大典君       宮本 一三君    望月 義夫君       森  英介君    山本 幸三君       伊藤 忠治君    岩國 哲人君       桑原  豊君    中川 正春君       中桐 伸五君    平野 博文君       藤田 幸久君    山本 譲司君       石垣 一夫君    佐藤 茂樹君       西川 知雄君    桝屋 敬悟君       岩浅 嘉仁君    江崎 鐵磨君       小池百合子君    菅原喜重郎君       西川太一郎君    西田  猛君       三沢  淳君    米津 等史君       鰐淵 俊之君    春名 直章君       東中 光雄君    平賀 高成君       松本 善明君    畠山健治郎君       深田  肇君  出席国務大臣         内閣総理大臣  小渕 恵三君         大蔵大臣    宮澤 喜一君         文部大臣    有馬 朗人君         運輸大臣    川崎 二郎君         建設大臣         国務大臣         (国土庁長官) 関谷 勝嗣君         自治大臣    野田  毅君         国務大臣         (内閣官房長官         )       野中 広務君         国務大臣         (総務庁長官) 太田 誠一君         国務大臣         (防衛庁長官) 野呂田芳成君         国務大臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君         国務大臣         (金融再生委員         会委員長)   柳沢 伯夫君  出席政府委員         内閣審議官         兼中央省庁等改         革推進本部事務         局長      河野  昭君         内閣審議官         兼中央省庁等改         革推進本部事務         局次長     松田 隆利君         内閣法制局長官 大森 政輔君         地方分権推進委         員会事務局長  保坂 榮次君         金融再生委員会         事務局長    森  昭治君         総務庁長官官房         審議官     西村 正紀君         総務庁人事局長 中川 良一君         総務庁行政管理         局長      瀧上 信光君         総務庁行政監察         局長      東田 親司君         防衛庁長官官房         長       守屋 武昌君         防衛庁装備局長 及川 耕造君         防衛施設庁総務         部長      山中 昭栄君         経済企画庁長官         官房長     林  正和君         国土庁土地局長 生田 長人君         大蔵大臣官房長 溝口善兵衛君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵大臣官房審         議官      津田 廣喜君         大蔵大臣官房審         議官      福田  進君         大蔵省主計局次         長       坂  篤郎君         大蔵省金融企画         局長      伏屋 和彦君         国税庁次長   大武健一郎君         文部大臣官房長 小野 元之君         文部省教育助成         局長      御手洗 康君         文部省高等教育         局長      佐々木正峰君         運輸省航空局長 岩村  敬君         建設大臣官房長 小野 邦久君         建設省建設経済         局長      木下 博夫君         建設省都市局長 山本 正堯君         建設省河川局長 青山 俊樹君         建設省道路局長 井上 啓一君         建設省住宅局長 那珂  正君         自治大臣官房長 嶋津  昭君         自治省行政局長         兼内閣審議官  鈴木 正明君         自治省財政局長 二橋 正弘君         自治省税務局長 成瀬 宣孝君  委員外出席者         衆議院調査局第         三特別調査室長 鈴木 明夫君 委員の異動 五月二十七日             辞任         補欠選任   小野寺五典君     望月 義夫君   松本 和那君     大村 秀章君   中桐 伸五君     桑原  豊君   並木 正芳君     西川 知雄君   小池百合子君     江崎 鐵磨君   西川太一郎君     岩浅 嘉仁君   三沢  淳君     鰐淵 俊之君   平賀 高成君     東中 光雄君 同日                 辞任         補欠選任   大村 秀章君     松本 和那君   望月 義夫君     小野寺五典君   桑原  豊君     中桐 伸五君   西川 知雄君     並木 正芳君   岩浅 嘉仁君     西田  猛君   江崎 鐵磨君     米津 等史君   鰐淵 俊之君     菅原喜重郎君   東中 光雄君     平賀 高成君 同日                 辞任         補欠選任   菅原喜重郎君     三沢  淳君   西田  猛君     西川太一郎君   米津 等史君     小池百合子君 本日の会議に付した案件  地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案内閣提出第九一号)  内閣法の一部を改正する法律案内閣提出第九六号)  内閣設置法案内閣提出第九七号)  国家行政組織法の一部を改正する法律案内閣提出第九八号)  総務省設置法案内閣提出第九九号)  郵政事業庁設置法案内閣提出第一〇〇号)  法務省設置法案内閣提出第一〇一号)  外務省設置法案内閣提出第一〇二号)  財務省設置法案内閣提出第一〇三号)  文部科学省設置法案内閣提出第一〇四号)  厚生労働省設置法案内閣提出第一〇五号)  農林水産省設置法案内閣提出第一〇六号)  経済産業省設置法案内閣提出第一〇七号)  国土交通省設置法案内閣提出第一〇八号)  環境省設置法案内閣提出第一〇九号)  中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律整備等に関する法律案内閣提出第一一〇号)  独立行政法人通則法案内閣提出第一一一号)  独立行政法人通則法施行に伴う関係法律整備に関する法律案内閣提出第一一二号)     午前九時二分開議      ————◇—————
  2. 高鳥修

  3. 倉成正和

    倉成委員 自由民主党の倉成正和です。  本日は、今回の行政改革法案理念意義及び今後さらに取り組むべき課題について、また、特に中央省庁等改革法案の重要な柱であります独立行政法人制度について、質問をさせていただきたいと存じます。  私は、平成八年の暮れから昨年、平成十年一月まで、三菱総合研究所というシンクタンクのワシントン事務所長として米国に勤務させていただく機会を得ました。その間に、日本経済の低迷や、決してつぶれることのないとされていた大手金融機関の破綻、そして日本じゅうに衝撃を与えた神戸での児童殺害事件の報に接して、このままでは日本はだめになってしまうのではないか、そういう思いに駆られました。  さらに、米国における日本に対する関心の極端に少ないこと、そして存在感が希薄であることに驚きました。政府関係者経済人から一般の人々まで、日本日本人に対してほとんど関心がないというのが米国での実態でありました。  一方、米国においては経済が絶好調であり、同時に、低い失業率や、犯罪率の低下を実現していました。現在もその傾向が続いております。  戦後五十年続いた東西冷戦体制が崩壊し、世界はまさに歴史的転換期にあります。ソビエト連邦が崩壊し、米国の一方的勝利の形で冷戦が終結しました。唯一の超大国となった米国の主導のもと、第一に、経済社会グローバル化が進行しています。第二に、市場経済の徹底と規制撤廃により競争が激化し、いわば大競争時代に突入しております。第三に、産業社会情報化デジタル化が進行しています。これらの三つの大きな潮流が予想以上に急速に進展しています。米国経済の好調の原因は、これらの三つの大きな潮流を主導的に推進していることにあると考えます。特に、三つ目潮流である産業社会情報化デジタル化というのをうまく産業に生かしているのが米国経済の好調の原因ではないかと思います。  一方、日本は、国民が一体となって戦後の復興と高度成長をなし遂げ、世界第二の経済大国となりました。一定目標は達成されましたが、冷戦の終結とバブル経済の崩壊以降は、日本は新たな目標を見出せないでいるというのが実情ではないかと考えます。私は、今こそ、第一の開国でありました一八五三年のペリー来航とそれに続く明治維新、第二の開国でありました一九四五年の敗戦による民主主義の導入と戦後の諸改革に続いて、第三の開国実施すべき時期に来ていると考えます。  第一の開国及び第二の開国は、いずれも外圧による開国でありました。経済大国となった日本が、外圧でなく、みずからの意思によって世界に開かれた日本を目指して第三の開国を行うときであり、このことによって現在の混迷を打破することはできると考えます。江戸時代において、二百十五年間の鎖国時代世界に開かれた唯一の窓でありました出島のある長崎選出の代議士として、強く我が国の開国を、すなわち二十一世紀に向けての第三の開国を唱えたいと存じます。  以上のような観点から、第三の開国一つとして、今回の中央省庁等改革法案意義深いものであり、大いに推進すべきと考えます。その観点から、幾つかの質問をさせていただきたいと思います。  そこで、まず太田行政改革担当大臣に御質問いたします。  まず、この法案意義理念について、また今後さらに取り組むべき課題についてお尋ねをいたします。時間の限りもございますので、簡潔にお答えをいただければと思います。
  4. 太田一男

    太田国務大臣 今回の中央省庁改革は、行政における、あるいは政府の中での政治のリーダーシップというものを確立したいということであります。そして、行政システムを抜本的に改めて、透明な政府を実現すること、そしてまた国民の負担あるいは国民に対する干渉を削減するために、スリム化効率化あるいは政府の施策の整合性を確保するということを目的といたしております。
  5. 倉成正和

    倉成委員 御答弁ありがとうございました。  次に、同じ質問ですが、堺屋大臣にお尋ねいたします。  私は、堺屋大臣の著書についてはできるだけ目を通すようにさせていただいておりまして、その明確な論理、いつも敬服しているところでございます。改革に当たっては、やり方を変えるのではなくて仕組みそのものを変えなければだめだという主張をされていると思いますけれども、現在の法案について、なかなか難しい質問だと思いますけれども、点数をつけるとしたら何点ぐらいの法案でしょうか。また、今後さらに取り組むべき課題は何でしょうか。お答えいただきたいと思います。
  6. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 一昨年の暮れだったかと思いますが、行政改革会議最終答申が出た直後に、ある新聞の座談会で全く同じ質問を受けました。そのとき、六十五点と申し上げたか七十点と申し上げたか、合格点ぎりぎりである、こう申し上げました。そして、補欠入学のような形で入ったこの改革をいかに育てて優等生にしていくか、それがこれからの問題だというふうなことを申し上げましたが、基本的にその考え方は今も変わっておりません。  当時はまだ、今のような早い時期に本当に多数の設置法が出せるかどうか疑問視する向きも多かったのでございますが、このたび、小渕総理大臣の決断と太田担当大臣以下諸大臣の御尽力国会先生方の御尽力によりまして、非常に早い機会にこの設置法が出された。非常にその意味ではいい線を、最善のコースを進んでいるのではないかと思います。  特にここで申し上げたいことでございますが、改革というのは、およそ百点満点というものはあり得ません。ある人にとって十分満足、完全に満足な改革案は、他の人にとっては著しく不満なはずなんです。したがって、改革には常に不安を伴い、不満も伴うものでございますから、改革というのは、いわば最小不満、みんなの最小不満でやらないと妥協ができません。ある人が理想を追求していたら、他の人にとっては不満が残るのに間違いありません。そうすると、いい案ができるのではなくして、結果としてはあしき現状が続くんですね。  だから、改革というものはみんなの妥協で成るものでございますから、このくらいの線でいければ、私としては、非常にいい仕組みの変革になっていくんじゃないか、これを立派に育てることがこれからの問題だと思っております。
  7. 倉成正和

    倉成委員 一応、六十五点から七十点ということで、合格点をつけていただきまして、そして、私は、この法案ですべて解決ができるものではないというふうに思っております。この次にまたさらに改革を続けていくことが必要だと思っております。  特に、昨日来からの話題にもなっておりますけれども、特殊法人改革の問題、また情報公開の問題その他もこれからさらに続ける必要があると思っております。そういう意味で、これからまずこの法案を早期に通して、そして、実際に中身検討、大きな枠は一応の形ができてきているんだと思いますけれども、この中身をしっかりとやっていくことがこれからの課題ではないかと思っております。  次に、今回の中央省庁等改革法案の重要な柱として独立行政法人制度の創設がありますけれども、具体的に、今までの行政組織運営問題点をどのように改善するものでしょうか。また、本年四月二十七日に中央省庁等改革推進本部において決定された八十九の事務事業に限らず、独立行政法人制度仕組みを適用できるものがあれば積極的に独立行政法人化検討すべきではないかと考えますが、今後とも独立行政法人化について政府として検討を進めていく方針かどうかをまず太田長官にお尋ねしたいと思います。
  8. 太田一男

    太田国務大臣 この中央省庁改革の中で、きのうも柳沢大臣が答えておりましたけれども、一つの柱になった考え方は、企画立案という仕事事業実施という仕事政府の中できちんと分けていこうという考え方であります。もちろん、それはどのレベルに視点を置いて考えるかによって、同じ仕事で、上から見ると企画立案ではなくて実施だと思われている中で、さらにその実施の中で企画立案実施というふうに分けるという、そういう解釈はいろいろあるわけでありますけれども、基本的な考え方としてそういうことでやろう、そして実施はむしろ内閣の直接の統制のもとに置かないで、それはそれで自分でやっていただこうというような考え方であります。  その一番典型的な例が独立行政法人であって、独立行政法人は、いわば内閣が直接コントロールするというよりも、自分自身創意工夫というようなことでやってもらいたい、自助努力でやってもらいたいという政府仕事を、それを、一つ省庁にもたくさんの仕事があるわけですから、その群れの中から切り離して、そして独立をさせて、そして外からその姿がよく見えるように、国民から見えるように透明性を確保する。そしてまた、その透明性を確保された状態で、自分自身の責任でもって定員を管理し、負債や資産を管理し、そして、それをさらに定期的に評価されるという仕組みにしたものでございます。しかも、これはなくてもいい仕事ではなくて、国としては、公共性観点から見て、どうしてもこれはやってもらわなくちゃいけない仕事でありますから、むしろ渡し切り交付金を与えて、その活動を活発にやってもらうということになるわけでございます。こういう仕組みを導入したわけであります。  今、八十九の独立行政法人を設立するということを決めておりますけれども、今委員がおっしゃいますように、これは途中経過でございまして、これまでもさまざまな努力をして、各行政機関を説得し、それにふさわしいところには独立行政法人化することをお願いしてまいりましたけれども、その努力の途中でございますので、さらにこれは進めてまいりたいというふうに考えております。
  9. 倉成正和

    倉成委員 今、八十九でなくて、さらにこの対象となるようなものを検討していくというふうなお話がございましたけれども、ぜひこの方向で進めていただきたいと思っております。  同じ質問でございますけれども、特にこの独立行政法人意義といいますか、具体的に八十九のものが出されているわけですけれども、この点について簡潔に堺屋大臣からもお話しをいただければと思います。
  10. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 独立行政法人という制度は、現在国が行っている事務事業のうち一定のものについて、国とは別の法人格を有する独立行政法人を設立して、その法人事務事業を行わしめることにより、事務事業効率性や質の向上を図るものでございます。  この制度は、民営化になじまないもの、あるいは民営化までまだ時間がかかる、準備時間がかかるというようなものに対して、明確な効率性という目標を与え、その結果を評価し改善していく仕組みといたしまして、非常に効率的で透明な運営が確保できる仕組みと期待できます。  しかしながら、組織論で申します、組織論の最初に書いてあることでございますが、必ず失敗する仕組みはあるけれども、必ず成功する仕組みというのはないんだ。株式会社であろうが、財団法人であろうが、政府であろうが、やり方によって失敗することはあります。もし必ず成功する仕組みがあったら世界じゅうそれを取り入れるんですが、残念ながらそれはございません。  それで、新しい仕組みを入れるときには、必ず不安とか危惧とかがつきまといます。これを余り大きく言っておりますと、制度というものは全く進歩しないんです。そこで、この制度の目指すところを、独立行政法人を担当される方々、あるいは監督官庁、周囲の消費者がよく理解いたしまして意欲的な運営をすれば、この仕組みは本当に国民のニーズに合致したものになり、行政サービス向上するだろうと思います。そうなりますと、さらに現在の八十九に加えて新しいものもそういう仕組みにしていこうとその機関自身も思うでしょうし、世間も納得していただける、そういう意味で、これが善循環していくだろうと考えております。
  11. 倉成正和

    倉成委員 ちょっと時間が迫ってまいりましたので、ごくごく手短にお答えをいただきたいと思いますけれども、文部大臣の方から、文部科学省対象となる幾つかの機関につきましても、独立行政法人ということで話題に上っております。この辺について、昨日もお答えをいただきましたけれども、手短にお答えをいただけませんでしょうか。
  12. 有馬朗人

    有馬国務大臣 科学技術庁関係国立研究所のかなりの部分を独立行政法人に移すことにいたしました。それからまた、文部省でも、例えば国立機関の中で幾つか、国立博物館とか科学博物館独立行政法人にすることにいたしました。  国立大学に関しましては、国立大学独立行政法人化につきまして、「大学自主性を尊重しつつ、大学改革の一環として検討し、平成十五年までに結論を得る。」と、去る四月二十七日に閣議決定されました。このことに従いまして、現在、国立大学独立行政法人化につきましては、教育研究機関としての特性に配慮しながら、世界的な大学になり、国際的に評価される教育研究実施することのできる大学とするんだ、そういう観点に立って検討を行う必要があると考えております。  現在、大学審議会答申とか中央省庁改革基本法等々を踏まえまして、国立大学改革において、まず第一に、責任ある組織運営体制を確立する、情報公開推進する、内外に開かれた国立大学を実現するための法改正を今国会で行ったところでございまして、引き続き、人事会計等柔軟性向上や適正な評価システムの確立を図っていく考えでございます。
  13. 倉成正和

    倉成委員 国立大学については後ほどちょっとお尋ねしようと思っていたのですけれども、先に御答弁をいただきました。国立大学の問題につきましては、中央省庁等改革推進に関する方針によりますと、平成十五年までに結論を得るということになっております。  その中で、いろいろな議論がなされていると思いますけれども、一つは、今度の学校教育法の一部改正の問題その他でいろいろ改革を進めていけば独立行政法人にはしないのか、それとも、改革を進めていくというのは独立行政法人への一つ準備というか前段階なのかということが大きな議論の分かれ道だと思っております。  それで、ちょっと時間も迫ってまいりますので、国立大学の問題に少し絞ってお話しをいただきたいと思います。  時間の関係もございますので、まず経企庁長官堺屋大臣の方に、日本教育を考えますと、明治維新唯一アジア近代化をなし遂げて、そしてまた、戦後の荒廃の中からここまでの経済大国になった日本を考えると、やはり教育というのが一番大事だというふうに思います。そういう意味で、国立大学も含めてこれまでの教育が果たした役割というのは非常に大きいというふうに私は思います。しかし、これからの二十一世紀、これからの日本をつくっていくときにどういう教育がいいのかという観点で、これまで役割があった、あるいは非常によくやったということでなくて、これからどうしていったらいいかという観点で、この問題を考えるべきだと思います。  順番が逆になりますけれども、まず堺屋大臣の方から、この国立大学の問題に絞って、時間がございませんので、簡潔にお答えいただければと思います。
  14. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 去る一月十八日に、総理大臣の方から、経済審議会に対しまして、十年程度の先を見た日本経済のあるべき姿という諮問をいただきまして、今、教育問題もその一環として考えております。  大学を考える、これは研究機関としての分野と教育機関としての分野とございますが、従来は、二十世紀においては大学が研究機関として非常に大きな役割を果たしてまいりました。二十一世紀においてはどうなるのか。この点、シンクタンクとかあるいはインターネットとかいろいろなものが出てくる中で、大学の占める地位というものがまず一つ問題であります。  それから、教育機関として考えますと、小学校教育からもっと個性の発揮できるような教育をつけていって、それが大学で花開くというような形にならなければいけないのではないか。そういう一連の教育として考えますと、やはりこれからの大学教育というのはもっと個性を伸ばすような、優秀な人を大量につくるよりも、個性のある人をそれぞれにつくるような機関になっていく必要があるのではないか。そういうぐあいな方向で考えております。
  15. 倉成正和

    倉成委員 独立行政法人という制度は今まで全くなかった制度でございますので、新しい制度なので、それぞれそこの機関に勤められている方、あるいはそこに関係の方にとってみれば、そういう新しい制度になるというのは非常に不安も多いかと思います。しかし、これからの日本の大きな改革を進めていく中で考えると、新しい制度に挑戦して、そして、そこに行くのが決してペナルティーとか、何かよくやってない機関だからそこにやられるというのではなくて、独立行政法人に行った機関はむしろ一定の期間は優遇を与えるぐらいのことを私はやっていくべきじゃないか。そうしないとなかなか、そこに行くのはもうばば引きで、どうしても幾つかの機関を出さなきゃいけないから、ここの機関だけはしようがないから出してしまおう、大事なところはとっておこうみたいな、そういうことになりかねないという気がいたしますので、その辺をぜひお考えいただきたいと思います。  それで、時間も限られていますけれども、やはり国立学校の特別会計でいいますと、歳出でいいますと、二兆七千億円の歳出でございます、今年度の予算でございますけれども。そして、歳入につきましては一兆五千億円の一般会計からの繰り入れがある国立大学。まあ、国立学校といいましてもほとんどが国立大学だと思いますけれども、それについてはこれから前向きに国立大学独立行政法人化というのを検討していただきたいなと思っております。  それで、総務庁長官からも国立大学の問題について、これも大変恐縮でございますけれども、一分ぐらいでお答えいただければと思います。
  16. 太田一男

    太田国務大臣 従来の国立大学独立行政法人化についての議論は、何か国立大学改革法案も出ておりますし、その法案が出るということは、改革を免れるためにこういうことをやっているのではないかというふうな見方は、広くはないけれども、ちょっとそういう見方もあったわけでありまして、いや、そうではないんだと。そんなものは避けて通るのではなくて、堂々と、独立行政法人化もあり得る、視野に入っておる、そして、国立大学改革は進めていく、正面からそういうことに取り組むんだということを確認をしていただいた。それを十五年までに決めていただくということでございます。そこからは逃げない、正面から見る。  それから、国立大学独立行政法人化したとして、普通の考え方でいえば、独立法人化した時点でこれだけの一般会計からの繰り入れがあるということであれば、当面はそれは確保していく、渡し切り交付金の中で確保していくという考え方であろうと思います。
  17. 倉成正和

    倉成委員 今、国立大学、どこかの大学独立行政法人化を進めたとします。一遍にはなかなか無理だと思います。そうすると、極端にすぐ一般会計からの繰り入れが少なくなって予算が減ったということになると、これはどの大学も手を挙げないということになります。むしろ予算をふやす、一定期間は予算をふやしてもっと活力を与えてあげるようなことが私は必要じゃないかと思っております。  続きまして、時間も迫ってまいりましたけれども、企業会計の原則の導入も含めて、独立行政法人という制度は新しい試みでありますけれども、いろいろな工夫がされております。この工夫というのは、これから同じような立場といいますか、政府の本体ではないけれども、やはり国としてかかわっていかなければいけないという意味では、特殊法人その他の公益法人も似たような立場にあるんじゃないかと思います。こういう意味特殊法人改革、この次にやられる改革において、大いに活用できるものではないかというふうに思います。そして、今後の特殊法人改革においても、この独立行政法人制度の利点を導入していくべきだと思います。  そしてまたさらには、ここに盛られたようないろいろなこと、例えば中央省庁等改革推進本部の事務局から出されているパンフレットがございますけれども、こういうものを見ますと、行政サービス向上効率化、計画を立てて弾力的に仕事を進める、事後にしっかりチェックする。これは、いろいろな中身、会計原則の見直しとか企業会計原則とかそういうものを個々に見ますと、すべて中央省庁本体にも適用できるようなものがたくさんあるんじゃないかなという気がいたします。  この点について、何もかにも一遍にはできないと思いますけれども、今後の、次の課題として、ぜひこの辺の取り組みについて前向きの御答弁太田大臣の方からいただければと思います。
  18. 太田一男

    太田国務大臣 これはむしろ大蔵大臣がおられれば大蔵大臣お答えをした方がいいと思いますけれども、国の一般会計を、従来大福帳といいますか現金のやりとりだけで見ていたわけでありますけれども、そういう大福帳方式を改めて複式簿記にする、あるいは企業会計原則に準ずる形にするということは大蔵省の方でも検討を始めておるようでありますし、特に特別会計については、もともとそのような取り扱いができる余地があると思っております。私が所管しているわけではないけれども、今行政改革をやっておる立場からいいますと、今の委員の御指摘は十分に念頭に置いてまいりたいと思います。  特殊法人は、再三ここでもお答えをしておりますけれども、現に今、その都度指摘されてきた問題に対してこたえるべく、再三閣議決定をいたしまして、特殊法人の状態を改善する法案もただいまこの国会に出ております。そして、私どもは、この独立行政法人がここで法律としてお認めいただいてスタートをするということを踏まえて、次の段階で、特殊法人についても同様の、透明性を確保し事後の評価というものがきちんとなされるような体制に改善をしていかなければいけないと考えております。
  19. 倉成正和

    倉成委員 独立行政法人制度というのは新しい試みでありますから、これがすべて最初からうまくいくとは限りませんが、今後の、この制度をうまく使って、同じような立場にある特殊法人改革にも、そしてさらには中央省庁本体の改革にも生かしていくような方向で検討されて——こういうものがありますと、ほかのところは、同じような立場のものが、全然違う、透明性もない、会計も公開されてないということでそのままでいられるわけがない。やはり独立行政法人があって、それがトップランナーとして先行してこれからの行政改革ができていくんじゃないかと思いますので、ぜひその方向で進めていただきたいと思います。  質疑時間が終了いたしましたので、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  20. 高鳥修

    ○高鳥委員長 次に、戸井田徹君の質疑に入ります。
  21. 戸井田徹

    ○戸井田委員 自由民主党の戸井田徹であります。よろしくお願いいたします。  きょうはテレビカメラがここにあるのかなと思いながら実は期待して来たわけですけれども、しかし、なかなかそういう場には出させていただけない。しかし、何とかここで物を言える、言論の府で物を言える機会を与えていただいたということで、本当に実は自民党にも感謝いたしております。  行政改革といいますと、私は省庁名のことがまず頭に浮かんでくるわけであります。最初から終わりまでどうも省庁名のことで大騒ぎして、結果出てきた省庁名を見て、なるほどなと。  いろいろ勉強したわけでありますけれども、その中で、一つはこういうことがありました。役所の名前というのはそれぞれその時代を反映している、ある学者がそういうことを言っておりました。戦時中に軍需省だとかそういう名前があったように、後で振り返ってみると、その時代にしかなかったような名前というのが出てくるんだ。そうして考えてみると、今の役所の名前というのはどういうものかな、もっと年数がたってみて初めてわかることなのかな、そんな思いもありました。  文部科学省、当初教育科学技術省でありました。いっときは文部省という名前が維持されるような情報もありました。しかし、結果的に文部科学省、科学技術庁の巻き返しがあったのかもわかりません。また、大蔵省が財務省に。非常に多くの方々が、こうした、たかが名前のことだけで、裏でいろいろなやりとりがあった、そういうことも肌で感じてきたわけであります。しかし、結果としてこういう名前がついたということを思えば、その名前のもとで、お互いけんかせずに力を合わせてこれから新しい時代に向けての日本を動かしていく、そういうエンジンになってほしいものだな、そういう目で行政改革というものを見させていただきました。  文部大臣がおられますけれども、時間があるから早目に質問してくれということでありますので、文部大臣を最初にお願いしたいと思うのです。  実はこの行革の議論の中でみんなそれぞれ言われていました、第三の開国のときだと。それぞれその時代時代のいろいろなシステムがあって、その中でもって国民は、そのシステムに知らず知らずのうちに合わされながら自分たちの人生を切り開いてきたわけであります。そして、その本人の意欲によって国を支える者にもなり、また自分が生きていくのが精いっぱいという人もいるかもわからない。しかし、公平にそういうチャンスを与えられなきゃならないという理念は、やはりこれは今も同じように息づいているんだろうというふうに思うわけであります。  そこで、考えてみますと、我々が、今は小学校、中学校と義務教育があって、そしてそれぞれ希望に応じて高校に行き、またさらに上の高等教育である大学に行く、そういう手順を踏んでいくわけであります。自分自身に力をつけようと思えば、その手順をやはり踏んでいかざるを得ない部分がある。  しかし、そういう中において、昔は、戦前と大くくりにしてみましたら、戦前はお金がなかったら高等教育を受けられないという基本的なシステムだったわけであります。ですから、自立するためには、というか、昔は自立そのものが、飯が食えるようになって初めて自立ということで、親元でもって食わしていけないから外に出てでっち奉公でもして働けということで、それが自立だったわけであります。しかし、そういう人の中にもやはり優秀な人間がいたかもわからない。だけれども、その人たちにはお金がないために、教育を受けるチャンス、より高等教育を受けるチャンスが与えられなかったという実態があるわけです。  戦後はどうだろうか。どんどん経済成長のもとに個人個人の所得が上がっていった。それによって結果的にはみんな大学にも進学するようになった。四年制の大学に進学するのは三三%になった、短大以上だったら四七%ということを聞いております。高校を卒業して、なおかつ専門学校も含めていえば七割、八割というような数字も出てくるわけであります。  そういうことを考えてみますと、その時代、戦前と戦後、大くくりで、戦前はお金がなければ高等教育を受けられなかった。でも、そういう進学率がありながら、戦後も本質的にはお金がなければ高等教育を受けられないシステムには変わりないわけであります。その結果がこういう、今現在景気が悪くなって、リストラされて、親が職がなくなった、親のお金で学校に行っている子供が、家に帰ってこいということで途中で勉学を断念せざるを得なかった、その子供が勉学をしていたか遊んでいたかは別として、現実には大学から戻ってこざるを得なかった者がある。経済の水位が低下していったことによってそのシステムがあらわになってきたんだろうというふうに思うわけであります。  そういうふうにして考えてみますと、これからの新しい時代におけるシステムというのは、行政の枠組みだけでなしに、その社会の社会通念そのものも変えていくような、そういうシステム転換がなされなきゃならないんじゃないかなと思うんですね。  そういう中でも一番大きな影響力があるのは何かといったら、子供の学費だろうというふうに私は思うわけです。子供が十八歳で自立できるようなシステムができ上がってきたら親も自立ができる。一番所得の高い年代のときに子供を大学にやらなきゃならない、その費用を親がほとんど負担しなきゃならない、そういうシステムがあるということは決していいことじゃないんじゃないかな。  そして、資源もない、食糧も自給自足ができない、こういう日本の中で何が重要な宝だということになると、だれもが人材だと言う。その人材にどれだけの投資がなされているのかということを考えると、今度新しい時代に入っていくには、その辺のところがしっかりとできていなきゃいけないんじゃないかなというふうに思うわけであります。  一人で話していてもしようがないので、大臣の時間もありますから、以上、私の本質的な考えはそういうことなんですけれども、今の制度と、それから将来に対する子供の教育費に対する見通しみたいなものがありましたら、ちょっと御答弁いただけたらありがたいんですけれども。
  22. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私は、随分現在は経済力がついて、御指摘のように、戦前と比べてはるかに、小学校、中学校は義務教育でありますが、高等学校以上に進む人がふえてきて、高等学校はほとんど、もう九八%ぐらいでございますので、ほとんど行っていますね。大学も今御指摘のように非常に多くなってきた。  ここで、経済的な面で、やはり奨学金を十分大学に対しては準備しておくというふうなことが必要であろうかと思っています。特に私は、戦後のごく初めでありまして、戦前的考えと戦後の考えとの中間ぐらいのときに旧制の高校、大学を出ましたけれども、そのときに本当に奨学金のお世話になりました。そのことが一つ。  それから、日本は、かなり、私は心配しておりますことは、大学の入学金と、それから授業料が高過ぎると思うのです、世界的に比べて。アメリカの私立の方が日本の私立より高いですけれども、それでも西欧諸国はただの国が非常に多い、高等教育においては。こういうことも考えまして、やはり入学金、授業料というものはできるだけ抑えていくというふうなことを今後していかなくちゃならないと思います。  そういう意味で、奨学会、日本育英会ということが正しいんですが、日本育英会、大変努力をいたしておりまして、先ほど申しました奨学金を非常に、抜本的に今ふやしているところでございます。平成十一年度予算では、大幅に無利子奨学金の貸与月額を増額していただいたり、貸与人数の増額を図っているところでございます。それから、資金を有効に活用し、極力多くの学生を支援するという観点から、有利子の奨学金について、貸与人数の大幅な増員を図っておりますし、貸与月額の選択制の導入、また貸与に係る学力基準及び家計基準を緩和するというふうな努力をしているところでございます。  できるだけ、だれでも行きたい人、勉強したい人は高等教育を受けさせたいと思っております。
  23. 戸井田徹

    ○戸井田委員 ありがとうございます。  確かに、この十一年度でも有利子の奨学金の枠は一挙に倍にふえた、そういう意味はわかるんです。我々もわいわい大騒ぎしましたし、文部省のしりをさんざんたたきました。その結果で倍かな。だけれども、倍というのも確かに大きいように思うんですけれども、じゃ同じシステムのアメリカと比べたらどうなんだろうか。  アメリカの奨学金というのは、大ざっぱでありますけれども、私の知っている情報では、四兆円という、日本の規模のはるかに、二けた以上の倍数であることは間違いない。そういうことを考えると、もっと根本的な、発想を変えてやらなきゃいけないんじゃないかな、そうしないとこの一けたの差というのは埋められないんじゃないかな、そういうふうに思うんですね。そして、それをするだけのものがあるのがこの奨学金だと私は思うわけであります。  同時に、私は、いろいろ調べていく過程の中でもって、私立の大学で慶応大学が、学生に対して、有利子の奨学金を学生に借りさせる、そしてその保証を学校法人がするという制度でもって、非常にそれが学生にも好意的に受けとめられている。そして、そういう制度を聞いて、今度ライバルである早稲田大学が同じようにこれをやろうということを言い出してきた。こういう動きというのは、逆にこれからの、今のこの行革の時代に非常にマッチした動きであって、私立大学が、そういう制度を持っていない、そういう大学はこれから先、生き残っていけない、そういう効果をあらわしてくるんじゃないかな、お互い競争の中でもって学生のための奨学金制度を充実させていく、それが充実している学校を親も子供も選択していく、そういう時代に変わっていくんじゃないかな。そういう二つが相まって、そしてそこに官の何らかの、利子補給なり、そういう制度ができ上がっていくことによって非常に理想的な制度ができ上がっていくんじゃないかな、私はそういうふうに思うわけであります。  大変長い時間ありがとうございました。参議院の方に行くのに十五分あったら行けると思いますので、どうぞ。  それでは、行革の方の、特に今回の行政改革の中で、総理大臣のリーダーシップということがちょくちょく出てくるわけでありますし、また、総理のリーダーシップの強化ということで、それができる体制ということで練られたんだろうというふうに思うわけであります。  私は法律の文章を読んでいるとすぐわからなくなるものですから、自分でもって総理になったとしてと考えるわけですね。自分のスタッフはどれだけいるんだろうか、そういうことを思ってずっと考えていくと、官房長官がいて、官房副長官が二人いる。そしてそれ以外に、今度は内閣府というのが出てくるわけですね。内閣府の中にまた大臣とともに副大臣がいる。そして政務官がいる。さらに今度副長官補というのがあるわけですね。それからまだ総理の秘書官があるだろうし、さらに補佐官という制度も、平成八年ですかにできている。これがそれぞれあって、それぞれきちっとした連係プレーがとれるのかな。そして順位、そのお互いの関係というのはどうなっているのかな。さらに今度は省庁間の調整システムまでができ上がってきている。そういうことを思うと、整合性のとれた制度になっているんだろうか。  太田長官が総理になったとして、それがそういうふうに、行き違いのないような制度になっているのかどうか、その辺のことをちょっとお聞きしたいんですけれども。
  24. 太田一男

    太田国務大臣 たびたび申し上げておりますけれども、この中央省庁改革の柱は、私は大きく言えば二本だと思うのです。そのうちの一本が政治リーダーシップ、特に、法律の言葉で言えば内閣機能の強化であります。内閣機能の強化といったって、抽象的な話ではなくて、内閣総理大臣のリーダーシップをはっきり明示的に強化をすることであります。  今のお尋ねの、この内閣官房及び内閣府の中の幹部の、やたらにいろいろな肩書ができているけれどもどうなんだという御質問に対しては、きちんと答えられるわけでございます。  というのは、内閣官房というのは、まさに内閣総理大臣内閣官房長官と一体、同一人格、大きく行政政府の機構でいえば一体のものであるというふうに思えるわけでありまして、その一番大事な総理大臣が閣議において提案をする、発議権を持つということが、まさにその裏づけになるのが、内閣官房自身がそこで企画立案も、自分で案を出すんだ。今までは調整だけしかやらなかった。調整ではなくて、今度は企画立案もやるんだということは、内閣総理大臣自身が考えるんだということであります。そして、考えるのについては、一応官邸は、官邸というところに官房の人たちがいるんだというふうに考えればとりあえずはいいわけでありまして、それじゃ、そこだけで各省庁に対して号令をかけるだけのものが整えられるのかといえば、そうはいかないわけでありますから、相当の部分を、内閣府というものを設けて、その内閣府において重要な政策について四つの会議を設けるほか、そこで企画立案の機能を実際に持つ、そして各省に対して号令をかけて、総合調整をやりながら物事を進めていくということでございます。  その中で、内閣官房の官房長官はどうかといえば、官房長官も総理の、一番近い、一番強力なスタッフでありますけれども、官房長官は今までどおりでありますし、それから、内閣官房副長官は今、現におられてやっておられる仕事を基本的にはずっと続けていくわけですから、これも疑問はない。  そして、副長官補ですね。副長官補というのが新しく設けられた肩書でありますけれども、これは、従来内政審議室、外政審議室長などがやっている仕事、この仕事を引き続き官房副長官補が担当するわけであります。ただ、今までと違って室制をとらないというのは、組織が固定化、硬直化しないように弾力的な状態にとどめるために官房副長官補という肩書にしたということでございます。ここまでも大体今までと違わないから、おわかりいただけると思います。  そこで、新しく設けられるのは内閣府でございます。内閣官房は前からある。内閣府の方は、これは新しく設ける役所でありますから、特に重要政策である経済財政諮問会議を初めとする四つの会議、それからそのほかの企画立案機能については、新しい役所でありますから新しい機能を、責任体制を組まなければいけない。そこに副大臣というものが登場する、それからまた政務官も登場するわけであります。  それから、今の補佐官でございますけれども、これは補佐官、秘書官というのは、人によってどう使うかというのは違うわけであります。橋本さんのときは補佐官制度をとった。小渕内閣になってからは補佐官制度は事実上、だれも任命されておりません、とられておりません。それは、そのときそのときの総理大臣のお考えでもってどうにでも対応できるようにしようということでございます。  特に大事なことは、このような内閣官房の幹部というものを特別職にしたというところが全然今までと違う話でございます。政治任用という考え方を初めてここで導入したわけでありまして、言ってみれば、特別任用にしたということが最大の、今度の政治リーダーシップということからいえば、人事権を文字どおり総理が持てるということが最も大切なところだと思っております。
  25. 戸井田徹

    ○戸井田委員 そうすると、副長官補の中の、特別職ということは民間からも採用できるということですね。(太田国務大臣「そうです」と呼ぶ)そうですね。  それと、内閣府の設置が挙げられているのですけれども、内閣府の中に特命担当大臣が置かれるということがあるのですけれども、この特命担当大臣の性格はどういうあれなんでしょうか。
  26. 太田一男

    太田国務大臣 特命担当大臣は、いわゆる内閣府というものが全省庁に対して持っておる総合調整という機能があるのですけれども、その内閣府が持っておる総合調整機能のうちの特定の部分を担うわけでありますから、特命の担当大臣も同時に全省庁に対して総合調整機能を持つわけです。  だから、例えば、経済財政諮問会議担当の特命担当大臣ができるということになれば、これは予算編成の基本方針についてかかわるわけでありますから、文字どおり全省庁に対して調整権限を持つわけであります。大変これは強力な存在であります。
  27. 戸井田徹

    ○戸井田委員 総理がリーダーシップを持ちながらいろいろ動ける、そういうのは何となくわかるわけですけれども、さっき申し上げましたように、内閣府がある、今までどおりの内閣官房がある、そして、さらに特命担当大臣というのが出てきて、それを総合調整するのは本来は官房長官であるわけですね。それと内閣府の担当大臣と、そこらの関係というのはどういうふうになるのですか。その辺がまだもう一つわからないのですけれども。
  28. 太田一男

    太田国務大臣 内閣府は新しい役所でありますから、今のような直接総理を支えて、直属のものであって、全省庁に対する総合調整をやるというところは新しいことでありますから、まだよくわからない、ぴんとこないということはそのとおりだろうと思います。  その中で、官房長官と特命担当大臣関係というのは、大変ここは難しいところだろうと私も正直言って思います。しかし、内閣官房長官は総理の直属の官房それから内閣府の全体に対して責任を持つ、そこの中で、一部についてこれは特命事項であるからこの大臣にお任せをしようということになるわけでございます。  そういたしますと、例えば経済財政諮問会議であれば、その部分の企画立案については特命担当大臣が責任者になるわけであります。しかしながら、この特命担当大臣は、人事とかあるいはいわゆる内部の予算とか、そこまでは口を挟まないわけでありますから、そこは官房長官が、全体としての服務を統督するという部分については、あるいは人事については、官房長官が仕切るということになります。
  29. 戸井田徹

    ○戸井田委員 もう一つ自分自身がやはり総理になってみないとわからないのかもわかりませんけれども、基本的に総理大臣のリーダーシップの強化が行われたというのは、何となくわかるような気がいたします。  今回の連休に、私は実は、コソボの難民キャンプに仲間四人と行ってきました。いろいろな情報が伝えられる中で、できるだけ近くでもって政治家としてやはり現場主義、現地を見てくる、そういうのが非常に重要なんじゃないかなというふうに思ったからであります。ですから、ホテルは要らない、寝袋でもいいと言いながら、二泊四日でもって強行軍でありましたけれども、現地にいたのはわずか一時間ちょっとでありました。しかし、そこで見えてくるものというのは、やはりあるわけですね。着のみ着のままで逃げてくる。  着のみ着のままで逃げてくるというのはどういうことか。国境を越えてくる、どういうことなんだろう、そういうことを考えると、着のみ着のままの人間がまさに目の前にいるわけですね。この普通の安心した日本の社会で見ているとそういうものは見えてこないけれども、しかし、現地でもって、着のみ着のままで家族が逃げてくる。それも女子供だけ、年寄りだけだ。そういう実態を見てくると、まさに報道されて、本当にあるんだろうか、ないんだろうか、言われていた民族浄化というようなことが非常に強い印象として受けられる。  そういうことを考えてみると、総理がリーダーシップを発揮するのに、昔のお庭番じゃないですけれども、総理の手元からあちこち飛んで、現地を見てきて、そしてそれを、生の報告をさっとできる、そういうシステムこそまさに総理の周辺に必要なことなんじゃないかなというふうに思うわけであります。  それと同時に、一人でできることじゃないと。今、NHKで「元禄繚乱」をやっております。松の廊下が済んだところであります。ちょうど私の選挙区の姫路というところは赤穂の隣であるわけであります。地域柄非常にそういうことに関心があるわけですけれども、あの忠臣蔵の本懐を遂げることも、大石内蔵助一人でできたわけじゃないわけです。そして、四十七人がいたからできたわけでもないわけであります。その下に、三百の藩士がいたわけであります。その藩士が参画しない、しないということは、やはり自分としてはその当時は不名誉だったわけだ。ということになると、それであるにもかかわらず、あえてそこで、その行為を知っていても言わずにじっとしている仲間意識。さらに、それを支援する多くの民意というものがあって初めてああいうことが可能だったんじゃないかなということを考えると、これからはまさに、総理を中心にこの新しいシステムの中でもってみんなが一つになって国のために当たっていける、そういう体制をどうつくっていくかということだろうというふうに思うわけであります。  そういうことを含めて考えていくと、これから一層切磋琢磨して、そして、この中央省庁再編法案が立派に通ることを心から祈念いたしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  30. 高鳥修

    ○高鳥委員長 次に、山本幸三君の質疑に入ります。
  31. 山本幸三

    山本(幸)委員 自由民主党の山本幸三です。  私は、財政と金融の分離の問題についてお尋ねしたいと思っております。大蔵大臣、どうもありがとうございます。ぜひよろしくお願いします。  財政と金融の分離が今回の中央省庁改編の中の一つのテーマになりまして、先般も民主党の鳩山議員が、三会派合意を何で破るんだというような趣旨の話がありまして、私も聞いておりましたが、そのときに奇異に思ったのは、合意はどうだという議論ばかりで、そもそもの本質論が全然なされていない。つまり、金融とは何か、財政とは何かというようなこと、そして、なぜそれが金融と財政分離ということになるのかというような、本質論が全くなされていないところに私は大変危惧を持っております。  また、この議論は、昨年の金融国会のときに行われたわけでありますが、私も委員として修正案等の仕事にも携わったわけでありますが、どうもそういう本質的な議論なしにそういう方向に行ってしまったような気がしておりました。大蔵省の不祥事というのがあって、大蔵省バッシングはわかりますけれども、ただそれに熱に浮かされたようで、本質的な議論がないというのは、これはやはり問題なので、一回少しそういう議論をしておく必要があるんじゃないかと思っております。  それでは、どういう議論かということになるわけですが、では、金融とは何かということを、私は、財政、金融分離を主張する人から一度も聞いたことがない。金融とは何かということをはっきり定義してそんな議論をしている人はいない。では、金融とは何かという定義をいろいろ調べてみますと、非常に難しいんですね。  例えば、「金融論入門」という本を書いた川口先生の本に、金融とは、金融の定義ですね、給付と反対給付との間に時間的な隔たりがある貸付取引のうち貨幣そのものを対象とするもの、そう書いてある。あるいは、本院の議員であります鈴木淑夫先生の「現代日本金融論」によりますと、貯蓄の方が投資より多い部門から投資の方が貯蓄よりも多い部門への資金の流れと書いてある。  ケインズによりますと、金融とは、富に対する既存の権利を保有し、また交換する経済活動を意味し、その中には株式取引所及び貨幣市場の取引、投機並びに経常貯蓄と利潤とを企業者の手に送達する過程を含むものである。何が何だかさっぱりわからない。  広辞苑の定義によりますと、金融、「金銭の融通。かねまわり。」そしてまた「経済社会における資金の貸借。」広辞苑のこれを見ると、要するに、金に関する事象だということはわかりますね。しかし、金に関する事象といえば、それは経済そのものであって、金融を定義しようとすると、それは経済そのものですよと言わざるを得ない。  つまり、それだけ広い定義になってしまうと、これは、物事を議論するときに使えるような定義じゃないですね。  そのほかの、サムエルソンの「経済学」とか、あるいはハロッドとかシュムペーターとかフィッシャーとか、いろいろそういう経済学の基本的な教科書を見ても、もうそういう人は、金融というのは定義できない、そもそも、そういう教科書には金融の定義などない。つまり、金融というものを、これですよというように明確に定義することは不可能。  それでもって、金融は財政と分離ですよという議論は、私はなかなか難しい議論だと思いますね。だから、分離をやろうという人がもしこれからもこの委員会で議論をするとすれば、まず最初に金融とは何かということをしっかり定義してもらいたい。その定義なしに議論を進めるとすれば、それは議論にならないと私は思います。  それからもう一つ、ちょっと資料を配らせていただいたのですが、マネタリーベースの動向、これは日本銀行が発表しているものですが、この中身については、時間があれば後で大蔵大臣にお伺いしたいと思いますが、ちょっと私が言いたいことは、金融はお金だ、お金とは何かということをどんどん究極的に突き詰めていくと、このマネタリーベースになるのですね。マネーサプライのもとになっているものですから、マネタリーベース。  具体的に定義すると、銀行にたまっているものも含めた、市中に出回っている現金プラス市中銀行が日本銀行に持っている準備、現金プラス準備をマネタリーベースといって、究極的にはお金はここに収れんする。逆に言うと、お金の量というのは、ここを動かしたときに初めてふえる。そうすると、これはまさに金融ですね。金融というものを突き詰めていくと、これはこのマネタリーベースということになる。  では、そのマネタリーベースというのは何で動くか、どうして増減が起こるかというと、これは基本的に二つしかない。一つは、日本銀行が行う金融調節、日本銀行信用というものですね。もう一つは何かというと、財政の要因で起こる。これは、外為介入をやったり、あるいは国債を発行したり、あるいは税金が入ってきたり、財政支出したり。  つまり、お金を究極に突き詰めていくと、マネタリーベースということになって、そのまた動かす要因というのは、日銀信用か財政要因か、この二つしかない。そうすると、議論を突き詰めていくと、そこでは金融イコール財政なんですよ。逆に言えばまた、財政イコール金融なんです。これが、金融と財政が不可分のものであるという究極の原点だろうと私は理解しています。  したがって、世界じゅう、金融については中央銀行とそして財政を預かる大蔵省、財務省が大体やっている。それが本来の本質的な方向ではないかと私は個人的には思っています。だから、これから財政、金融分離を議論する場合には、ぜひ、金融とは何かという定義と、この突き詰めていけば財政イコール金融ということになるマネタリーベースについての見解を表明しない限り、私は傾聴に値しないと思って、これから判断させてもらいたいと思っています。  そこで、ただ、政党政治ですから、いろいろな、大蔵省バッシングもあったりして、いろいろな議論がありまして、金融行政を分離した方がいいじゃないか、監督行政を分離したら、そういう議論もあって、それはある程度私もわかります。では、どういう形でやっていけば本当に国民経済のためにうまくいくかという観点で物事を考えていくべきだと思いますが、しかし、最後の本質はさっき言ったことだということは頭に置いておかなければいかぬ。  そこで、いろいろなそういう政党間の話を、経緯を経て、最終的に政府案として出てまいりまして、私は、まさに自自公の最後の良心が働いたと評価しています。それは、やはり危機管理のものについてはどうしても財政的な観点が必要だ、したがって、そこは金融庁と財務省の共管ですよということになりました。  これは、私は、危機管理というのは非常に重要なことで、一昨年来のアジアの金融危機を見ていますと、従来の経済危機というのは、大体、国内経済政策がおかしくなって、インフレが起こって、そして財政が悪化して、そして経常収支がおかしくなって、為替レートに異常な変動が起こるという形で起こる経常収支危機というものだろうと思いますし、IMFはそういうものに対する対応策を言っていました。  しかし、アジアの経済危機は実はそういう方向で起こらなかったんですね。むしろ逆に、資金の流れが先に起こって、急速に欧米、日本の銀行融資が一斉に引き揚げて、そのことが、タイなんというのは経済的なファンダメンタルズはかなり良好だったんですけれども、逆に、資金の流れががっと一気に起こることによって、信用機構がおかしくなり、信用収縮が起こって経済が危機に瀕する。そういう意味では、従来とは全く違う資本収支危機というのが起こってこういう状況になったんじゃないかと思うんですね。  資本の流れがこれだけ大きくなると、私は、将来的にも、日本経済にとっても何が起こるかわからない。これは、やはり危機管理というのが非常に大事な問題になってきて、まさに国家の信用、通貨の信用にかかわる話なので、そこはしっかりと対応できる体制を考えておかなきゃいかぬ。私は、最終的にはそういう信用危機に対しては財政資金の投入がどうしても必要になるし、あるいは国家の信用をもってそれをやらなきゃいかぬし、そしてまた、最後には、お金のコントロールということで、財政の動きによって決まってくるので、これはどうしたって、将来なる財務省としては、当然看過できないものだというふうに思って、今回の法案の形になったと思いますが、その点についての大蔵大臣の御見解、金融監督庁長官の御見解をお伺いしたいと思います。
  32. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨年来、国会でこのことにつきましてはいろいろ御議論がありましたし、またそのよって来るところは、少なくとも数年あるいはそれより長い間における大蔵省の金融行政の誤りが背景であったことは間違いがないところだと思います。それを反省に置きながら、このたび立法を御提案し、御審議をいただいておるわけです。  その過程におきまして、私も実は、金融というのは何であろうかという、山本委員と同じような疑問を抱きまして、金融庁の設置法というのを読んでみましたが、「金融庁は、我が国の金融の機能の安定を確保し、」途中を飛ばして、「金融の円滑を図ることを任務とする。」と書いてありまして、金融というものについては何も定義を与えておりません。金融という言葉をいきなり使っております。  ただ、政府として、国会の御議論にかんがみて大事だと考えましたのは、その金融というものが何であれ、その金融というものは金融庁の任務であって財務省の任務ではないということを基本原則としてははっきりさせることが、昨年来の御議論にかんがみて必要だと考えましたので、財務省設置法には金融という言葉は一言も出ておりません。財政、課税、税関、国庫、通貨等と申しておりますけれども、為替、造幣、印刷。金融ということは申しておりません。これで基本的には、金融は原則的には財務省の仕事ではなくて金融庁の仕事である、こういうふうに法律では整理をいたしました。  もっとも、その際、日銀というものはどうなるかということは、山本委員もおっしゃいましたが、私の脳裏にもありまして、そこはどうなるのかなということは、まあしかし、日銀法がございますから、法律としてはこういう仕分けでいいのだろうと。これが、昨年来の国会の御議論、あるいはそれにさかのぼる大蔵省の金融行政についての批判にこたえなければならない私どもの道であろうというふうに考えたわけでございます。  ただ、そういたしましたが、まさに先ほど山本委員がおっしゃいましたように、一昨年の七月にタイでああいうことが起こって、それが東南アジアの国に波及をする、それが我が国でも、十一月に金融機関、証券会社がつぶれる。それから後のことをいろいろ考えてみますと、一昨年の十一月に我が国でそういうことがありましてから間もなく、日本の銀行のジャパン・プレミアムというものが高騰をいたします。対外的な信用が明らかに極めて損なわれて、金が取れない銀行も出てきた。  他方で、国内の貸し渋りというものがかなり顕著になりました。このことは、一つはやはり早期是正措置というものが先行しておって、そして、大きな銀行はともかく、小さい銀行もそれに合格しなきゃいけないという焦りと金融不安とが両方一致しまして、大変な貸し渋りになりました。  そういう状況に対して、財政は三月に公的資金の投入をいたさなければならなかったし、また、為替関係者は海外のそういうジャパン・プレミアムの解消についていろいろな苦労をしなければならなかったわけであります。そしてさらに、大きな補正予算を組むといったようなことがあったり、また、当然これは景気にも影響いたしますから、歳入の大きな減少があったり、あるいはまた、私が就任しまして、最初は九月、次は十月、国際社会で日本経済のあり方というものが非常な議論になりましたことは御承知のとおりでございます。  そのことはやがて、ことしの三月の公的資金導入にも及びまして、ここでジャパン・プレミアムというものはまずまず解消をいたしましたが、日本経済の対外的な信用はなおすっかり回復したとは申せないという、長くなりましたが、現実に、一昨年の十一月から起こりましたことを考えてみますと、狭い金融という範囲で事は済んでおりませんで、非常に広い影響をそのことは持ったわけでございます。  したがいまして、財務省の任務には金融ということを一切申しておりませんけれども、四条の財務省の所掌事務の中で、財政の関係、国庫の関係、通貨の関係、為替の関係等々から、金融が破綻をするということは非常な影響を持つ、そのことについて、財政というものはその管理に処するということについて無責任ではあり得ない、実態的な経験が現実にそうでございますので、そういうことを第四条に掲げてあるわけでございます。このことは、しかし、基本的に金融というものは財務省の仕事ではない、基本は金融庁だという政府の姿勢を明確にいたそうとしたものでございます。  冒頭に国会議員としての御感想をお述べになりました。それは政府の申すことではありません。しかし、大蔵省の行政の数年にわたる誤りのみならず、実は護送船団方式というものそのものが、自由化の時代になり、あるいは消費者、利用者本位の社会にならなければならないときに、もう既にその意味を失っておって、弊害が大きくなっていたという部分もあったかもしれません。それらのことが世論となり、国会の御意向となったということは、私どもとしては、やはり素直に受けとめるべきことだろう、こう考えております。
  33. 柳沢伯夫

    柳沢国務大臣 金融危機管理の所管をいかに定めるかということについての御質疑がございました。  私、今、宮澤大蔵大臣から非常に広い視野のもとでの御見解の表明がありまして、もうそれにつけ加えることはほとんどないと言うほかないわけですが、ただ、最近の一連の金融の破綻等の実務に当たっている者の経験から、どんなことを感じているかということで申し上げたいわけでございますけれども、金融の危機が起こった、あるいは破綻が現実に起こってしまったというときに、とりあえずは日本銀行の特別融資、日銀特融でもって資金繰り的にはまず対処するということでございまして、これは今後とも続くわけでございます。  しかし、日銀当局はそのときに、私にも常々言うわけですが、これはつなぎの資金ですよ、日本銀行の融資というのは、そんな何年もその金融機関に寝かせてしまってその金融機関の存在そのものを支えるような、そういう機能ということは期待されておらないのです、我々もやるつもりはないのです、こういうことをおっしゃられます。そうすると、本当の、今言ったような金融の存立を支えるようなことが必要になった場合に、どのお金がこれに対して責任を負っていくのかといいますと、これはもう財政資金しかない、ほかにはどこにもお金はないわけでございます。  したがいまして、金融危機に対処するお金というのは、しょせん、突き詰めて言いますと、日本銀行の融資と財政資金、こういうことになりまして、そして片っ方はもう全くつなぎの一時的なものである、こういうことになっておるわけでございます。  そういうことを考えますと、私は、現実に金融危機に対処したときに、例えば預金者保護、これはペイオフを実施するということでございまして、そういう御議論が随分積み重なっておりますので、これはちょっと横に置いても、今、山本委員が御質疑の中でおっしゃられたように、もっと物すごい銀行間の資金の移動が資本の移動として起こっている、こういうことで、それを放置するわけにはいかない。これは、現実に今、日本の金融機関でいろいろ起こっているときに、大蔵大臣も、それから日本銀行総裁も、特別な言葉でもって国際金融の世界に発信をして、大丈夫ですからということを申すわけでございますが、それをこれから一体だれが言うようになるのだろうか。仮に預金のことは別に置いても、そういう銀行間の資金のいろいろな貸し借りに対して、これは保護される、大丈夫ですよというのを一体だれが言うのだろうか。全然お金の裏づけのない金融庁担当大臣が言って、世の中本当に落ちつくのだろうか、信用されるのだろうか。私は非常にそこのところも疑問に思っております。  やはり国庫大臣、つまり、最終的に財政資金というものについて責任を持っている、所管している、その国庫大臣が、名前は大蔵大臣と言おうと財務大臣と言おうと、私は関係ないと思うのです。しかし、国の資金をすべて取り仕切るのは国庫大臣でございます。財務大臣と言ってもいいですが、その人が世界に向かって、大丈夫、保護しますということを言わないと、危機管理委員会が言いました、何とか担当大臣が言いましたというようなことで、本当に世の中、世界がそれで安定をかち得るのだろうかという感じがいたしております。  日銀特融についても同じでございまして、日銀特融は、今は私が日銀特融をお願いするという立場にございません。よく宮澤大臣が私に注意をしてくださるわけですが、日銀特融をお願いするのは私なんですからね、柳沢さん、こう言うわけです。よくわかっておりますということで、私はその都度大蔵大臣にお願いして、恐らく国庫大臣としての大蔵大臣から、最後のしりは自分たちも責任を持つから、とりあえずのつなぎを日本銀行さん出しておいてくださいよという意味なのではないだろうかというふうに思っております。  そういう実践的ないろいろなことを考えたときに、この権限というか所掌事務の分担というものはいかにあるべきか。とりあえずは企画立案を財務省に残すという形になりましたけれども、せめてそのくらい残っていないと、これは、ちょっと説得力のある制度の運用というものが難しいのではないか、こういうように私は感じております。
  34. 山本幸三

    山本(幸)委員 ありがとうございました。  せっかくの機会ですから、一つだけ大蔵大臣にお伺いしたいのですが、この表で私が非常に気にしているのは、昨年の暮れからマネタリーベースがすごく落ちちゃったんですね。これは、ある意味で言うと、今後の景気動向に大変大きな影響を与えるだろうと危惧しています。金利が上がったのは国債を財投が買わなくなったからだと言っていますが、私は、基本的にはこのマネタリーベースを落としたからだと思っています。  この前、日銀の幹部の方に、ではどうして落ちたんだと聞いたら、いや、現金が落ちたんだ、これはボーナスとかが落ちたからだと説明をしちゃって、私はあきれ果てて物が言えなかったのですが、先ほどもお話ししたように、最終的にマネタリーベースを決めるのは、そんなことで動くわけがありません。最終的には、財政が動くか日銀信用かが動かない限り、マネタリーベースというのは動かない。  これについては日銀の中でもいろいろ議論をやられているようですが、私は、日銀の独立性というのは一つは重要だと思いますが、それは日銀がちゃんとしたことをやるという前提であって、そこはしっかりとしないといかぬ。結果については、もしだめだったら責任もとってもらわなければいかぬ、そういうシステムをつくらなければいかぬだろうなと思っています。  政策委員会での議論を聞いていまして、マネタリーベース、量的緩和をやるべきだという議論は少数派で、いつも否決されていまして、これはぜひ大蔵大臣、政策委員会でも、少しこの辺は懸念すべきだというような御発言をお願いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  35. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 表は、M2プラスCDですね、平残は。  私も、どうもそういう感じを持っておりまして、時々日銀総裁ともお話をいたします、いろいろ御説明はあるのですが。  私は、基本的には、日本銀行総裁のお仕事に信頼を寄せておりますし、結果を評価いたすものでございますけれども、今、山本委員の言われましたように、新しい制度が発足をいたしまして、新しい制度運営されてきております。そこには大蔵大臣を代表する者も出席して、ずっと間違いなく出席しておりますし、意見も述べておりますので、反映する道はあると考えておりますけれども、またそれは反映されておると考えておりますが、新しい制度が完熟してうまく動くように、今のところその道にあると思いますけれども、なおお願いすることは十分お願いしてまいりたいと思っております。
  36. 山本幸三

    山本(幸)委員 あと一分半ありますので、最後に、総務庁長官、この金融と財政の一応の整理はついているわけですが、しかし、先ほど申し上げたように、金融の本質の問題あるいは危機管理の問題等で、これは将来、金融の分野では危機的な状況というのは何が起こるかわからない。それに今回のものでうまく対応できればそれは結構なことだと私は思いますが、万一うまく対応できないというような場合、将来、例えば五年後とか十年後とか、見直しをすることもあり得るものかどうか。  それからもう一つ、今の日本銀行の独立というのができているのですが、やってもらっても結果がちゃんと出なければ、これはそれなりの責任をとってもらうというような、評価するようなシステムというのは考えるべきじゃないかと思うのですが、そのことについて一言。
  37. 太田一男

    太田国務大臣 私は、こういうさまざまな政治的な過程があってこういうところにたどり着いたといったときには、そこにある文言以上のこともないし、以下のこともないと。そこはやはり一つの勝負だったわけだから、一つ一つの言葉の選び方から。だから、それ以上のことを今言うことはできないと思います。  ただ、一般論としては、行政機構というのはその時代その時代で、こういうふうにしたけれどもこれはどうも適切ではなかったということはあり得るわけです。一般論としては見直しはあると思いますけれども、今のようなことで、それはあるのだということを言うことは、やはりこれはひきょうなのだと思いますね。我々も堂々としていなくてはいかぬ。  ですから、今宮澤大蔵大臣は大変クリアカットな解釈をしていただいて、私も傍らで聞いておってほっといたしたわけでございますけれども、そういう意味で、それ以外の思いというのは、解説は、やはりそれは盛り込まれていないものは盛り込まれていないでおしまいであると思うのでございます。  それで、今、日銀の総裁の話ですか、日銀の評価の話。  これは、私は、どうかといえば、日銀総裁はだれがではなくて国会に対して説明責任を負っておって、国会がそのことはどうするかということは、さまざまな手段があると思いますけれども、国民の世論を代表して国会がどうするかということであって、それは万能とは言わないけれども、国会には相当大きな権限の範囲があるというふうに思っております。
  38. 山本幸三

    山本(幸)委員 ありがとうございました。
  39. 高鳥修

    ○高鳥委員長 次に、岩永峯一君の質疑に入ります。
  40. 岩永峯一

    ○岩永委員 自由民主党の岩永でございます。  中央省庁等改革関連法案と、そして地方分権法案の審議に入って以来、この委員会でもさまざまな議論をなされているのは、私たちじっくり拝聴しておりました。  それらの議論の中には、野党委員先生方を中心にして、一府十二省庁制は数合わせであり不十分な改革であるとか、国の権限の移譲が不十分であり地方の主体性は発揮できないとかいった意見が多く見受けられるように私には思われるわけでございます。これは、今回の改革の志向する最終的なビジョンがそれほど国民全体にまだ理解されていないということによるものではないかと私自身は思うわけでございます。  太田長官お話しになっておられますとおり、今回の改革は戦後五十年来の大改革であるということは私も承知をいたしております。しかし、それは、この法案成立後五十年間は改革をしないということではなくて、今後も随時改革を続行するということであろうと思いますし、国民のニーズに効率的かつ機動的に対応できる行政制度、地方が主体的に自分の地域のことに責任を持てる地方自治制度を確立するための出発点であろう、このように私は思っております。もう一度繰り返すわけでございますが、出発点であるということの確認はいいわけですね。  そして、そのために、本来、行政改革によってどのような国家像を最終的に目指すのか。これら二法案の成立を出発点として、新しい行政制度の中でいかに次の段階に進んでいくかということを私は伺いたいと思うわけでございます。  私も、二十年間県議会等で地方自治に携わってまいりました。そして、今回の行政改革省庁改革地方分権には、大変強い関心を持ってきた者でございます。特に、野田大臣のかなり強力なイニシアチブで地方分権推進の第一歩が築かれた。野田大臣は、自由党で市町村を三百に合併しなさいという方向をお示しいただいているわけでございますし、かなり積極的な対応を志向してきておられるわけでございます。そういうような、党でお考えになられ、そして積み上げられてきたものを、今自治大臣として御対応になっておられるわけでございますので、その思い入れには大変大きなものがあろう、私はこのように理解するわけでございます。  同様に、私自身も思い入れを持っておりますので、私自身がかく国家像、それから、これからの国、地方をあわせた行政のあり方についてひとつ述べさせていただきたい、このように思うわけでございます。  一番基本は、市町村合併であろう。そしてその市町村合併は、基本的に多くの国の業務、そして県の業務を受けられる、そして行政自身が住民の身近なものに感じられる、そういう部分を遂行していこう。そして人口は、五十万、三十万、二十万、十万、五万と、政令市だとか中核市だとか特例市だとか、いろいろな形の中で付与していく権限というものをそういうところへ持っていこう、このようにお考えになっておられるわけですが、私は、ずっと今までお聞きしておって、適正な規模というのはどこか。その中で国ができるだけ仕事を、県ができるだけ仕事をおろせる規模というのはどこか。今二十万の特例市というものをお出しになってきておるわけですが、私はその中で付与すべき権限をずっと精査してみたのですが、まだまだこれでは合併したいという気持ちがわいてくるようなものではない。むしろ十万だとか十五万ぐらいでも、もっともっと多くの仕事を付与することができるのではないか、こういうように思うわけでございます。  だから、これからはできるだけ国の権限というものを思い切っておろす、そしてそのことのために、合併のメリットを市町村にひとつ考えてもらう、そういうことを積極的にお考えいただきたい、このように思っております。  しかし、今度は県でございますが、滋賀県の場合、百二十万の人口でございます。だから十万都市、二十万都市になりますと、五つから十ぐらいの市になるわけです。では、五つから十ぐらいの市で本質的に県が必要なのかということになると、私は、むしろ近畿全体のブロック、これは全国で十になるのか十二になるのかは別にいたしまして、市町村の権限が大きくなり、そして力を持った状況の中では、州制度でいいのではないか、このように私自身は考えております。  だから、その中から今度は県の職員が州へ移る、また各市町村の職員が合併していく。そうすると、おのずと総務課だとか企画だとか土木だとか、管理的なそういう部分というのは少なくなって、できるだけ住民の身近な本当の現場へ職員をおろすことになって、そこまでのことをやってくれたから、やはり我々の身近に行政サービスがしてもらえるんだ、そういう実感を味わうような具体的な方向というものを、やはり私は国民に説明してやってもらいたい。  だから、自治体が主体的に合併を考えていくんだということもありましょうけれども、基本は、やはり国が改革をする将来像というのはこういうものだということの提示をしてもらう、そして具体的に、行政サービスが、今までは一つの町の中心ですべてをやっていたけれども、今度は部落まで出ていって、そして具体的な、皆さん方の身近な相談に乗り、お手伝いができる、サービスができる、そういうものを提示してもらうために、私は、県の合併、市町村の合併というものをそういう部分で積極的に行ってもらいたい、このように思うわけです。  もう一方、太田大臣省庁再編ですが、先ほども言ったように、数合わせであるんじゃないかとか、まだ具体的に国民として、大きくなっていって何がメリットかということはなかなか理解できないだろう、このように思います。しかし、やはり基本的に、将来ビジョンを示して、理解できるようにしていかなきゃならない。  よく言われるように、国というのは、外交だとか防衛だとか、そして金融だとか、国家的な部分のものを中心にする、そしてあとの部分は地方へ渡していく、こういう議論がよくされるわけですが、私も国会議員になってまいりまして、本当にそうであろうか。  今の地方事務官の問題にいたしましても、やはり統一的にやっていかなきゃならない、そういう部分というのはある。だから、国がやらないということではなしに、国が現場におりていく、そういう部分というのをきっちりつくっていく。国の職員であり、国の作業をしていくけれども、やはり、近畿州なら近畿州のもとまで、東北州なら東北州のもとまで、きちっと国の行政機関がおりていく、そういう姿勢が大事ではないか。そのことを我々は支部支局と、このように言っているわけでございます。  国土交通省の場合も、確かに、巨大官庁だ、こういうように言われました。そして、橋本総理は、基本的に河川と道路を分けて、そして国土保全省、国土開発省にするということだったんですが、縦割りの状況の中で、私は、割っていいんだろうかという疑問を当時抱いたわけです。  むしろ、地方を考えるときに大事なのは、その地域全体を考えた都市機能は、川も道も、そして鉄道も港湾も、いろいろな部分が寄り合って都市機能があるわけです。だから、そういうものは、やはり一つのものとして考えていただく、しかし、おのおののブロックに分けて、そしてそのブロックの中でその地域全体を考えるような、支部支局というか、統括的なものができていくことがどうであろうか、こういうように私は考えました。  国土交通省は確かに大きな巨大官庁だけれども、現場できっちり分かれているんじゃないか、だから地域の事情に応じて行政ができるようにできているんではないか、私は、そういうものをきっちりと見せてほしかった、こういうように思うわけです。  国は、根元はスリム化していく、そして支部支局、それぞれの州にきっちりと現場として仕事をおろしていく、そして市町村も国から全部受けて立てる、そしてなおかつ、今度は近畿という州、東北という州の中で、広域的な、全体的な行政を考えていくというような形のものを私は私なりに描いておったわけです。そこまでやると、ああ、そうか、ここまで進んでくるんだな、今までは滋賀県と言っていたのを近畿州と言うんだな、これからは国も、遠いところのものじゃなしに、その現場までおりてくれるんだな、そういうような全体的な絵が私はかける。  だから、今回のこの委員会も、そういう部分で、将来的にどうなるんだ、今はスタートだ、そして、ここまで、今まで五十年間できなかったことを思い切ってやってきたけれども、もう一つ踏み込んで、将来は、新しい二十一世紀に付与する行政機能というものはこういうものだというようなことの議論ができたら私は大変幸せであったろうと思うし、何か、今、蛇のしっぽを切ったような感じがするんですが、そのことについてはどうか、お伺いしたいと思います。  私の考えについて、それぞれの御感想をお聞きしたいと思います。     〔委員長退席、杉山委員長代理着席〕
  41. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 広範な角度からの御意見をちょうだいして、基本的には、発想において相共通するものと受けとめております。  今回、国の中央省庁の問題、それから国と地方との関係、この二つの関係について、特に一括して御提案を申し上げて、審議をお願いしているわけですが、共通する部分というのは、明治以降の国つくりのシステムというものを、国、地方を通じて、この際きちっともう一遍整理をし直そうということであり、その基本原則は、国でなければならない、あるいは地方自治体でなければならない、つまり、政府サイドがしなければならないことは極力小さくしようじゃないか、そしてできるだけ民間部門が、みずからの才覚において、みずからの責任において、そしてその自由な活動の中で動ける領域をふやしていこうじゃないか、そういう意味での規制緩和の部分、みんな一連の中にあるだろうというふうに実は考えております。そういった中で、本当の意味で、自立した個人なり、あるいは自立した地域なりというものが自主的にみずからの行方を決定できる、そういう仕組みをどうやってつくり上げていくかという角度が基本にある。  そういう点で、自己責任と言うとちょっと大上段になりますけれども、ややもすれば、国と地方の関係においても、地方自治という言葉はあるんですが、実際問題、財政なり権限の面でかなりの制約を受けているものですから、結果として、そのことがある種のエクスキューズに使われてしまっているんではないか。だから、結局、人から規定をされていく、その枠の中で生きていくということに何となく不満を感じながらも、安逸な部分もある。それを、やはり自主的、自立的な自己決定というものを本当にきちんとつくり上げていかないと、国家としても個人としても地域としてもうまくいかないのではないかということが基本にあると思っています。  そういう点で、今回、そういう意味での国と地方自治体の関係について、本当に戦後初めてこういう形で、終戦直後につくられた姿から、初めて、もう一遍きちんとした原則を打ち立てて、その中で、役割分担あるいは権限移譲等について、かなり網羅的、包括的に御検討いただいて、これが最終結論ということではないと思います、まだまだこれからも引き続いてやっていかなきゃならぬと思いますが、大きく前進したと思っています。  その中で、時間の関係がございますからもう多くを申し上げませんが、例えば都道府県が現在行っております事務、機関委任事務、つまり国の下部機関として位置づけられる、そういう上下の関係でやってきた事務が、全体で、やっております事務の約七割から八割を占めているというふうに第一次勧告で言われておるわけでございます。今回、機関委任事務を廃止して、そして法定受託事務と自治事務ということに区分けをした。トータルでいきますと、その結果、大体二、三割と七、八割となっておった仕事中身が、逆に、県では、自治事務がおおよそ七割、法定受託事務が三割という形に大きく逆転をしているということは大きな前進である。市町村においては、結果として、全体の事務の中で八五%程度が自治事務として位置づけられてきている。私は、この一つを見ても大きく前進をしていると思います。  また、それを支えていくためには、お話しのとおり、その事務を遂行するための財政基盤、組織基盤あるいは人材の確保、そういったことを考えれば、やはり小さな規模では、市町村としてより大幅な権限を移譲しようとするときには限界があるということで、今市町村の合併を大幅に促進していかなければいけないというふうに考えておるわけでございます。
  42. 太田一男

    太田国務大臣 岩永委員には、この行政改革中央省庁改革を進める中で、さまざまな御意見をいただいたりあるいは御指導をいただいたりしてまいりました。  でき上がったものについて、何か国土交通省の存在を初め、極めて心外な論評を受けるわけでございますが、今回の中央省庁改革は、明治維新、戦後、そして今度というふうに言われますけれども、では、その戦後の、太平洋戦争が終わった直後に、その当時の日本人は一体本当にみんなで考えて、憲法はまずアメリカの憲法とほとんど同じものであったわけで、日本人が考えたと言うのかもしれないけれども同じものであると。自分が考えたとは到底思えないわけでありますけれども、その他の基本的な法律についてどれだけ真剣に議論をして、どれだけ物を考えてつくったかというのは、私は疑問だと思っております。その当時は国会はなかったんですから、戦前の国会はあったけれども、その続きであったわけでありますから、三権分立という考え方を踏まえて議論があったとは到底思えない、そういう時代ではなかったはずでございますから。今度初めて、そのことを踏まえて、三権分立を踏まえて、内閣法を初め行政にかかわるすべての法律を見直すわけでございますから、私は、これは明治維新以来初めて、日本人が自分自身の頭でもって考える改革をやろうとしているんだと思っている。  そういう意味では、委員がおっしゃいますように、今始まったところであって、そして、同じ土俵の上にみんなが乗っていただいてそれぞれ自分の意見を言っていただくことは大事だと思います。  国土交通省については、今まで縦割りで、それぞれが運輸省は運輸省、北海道開発庁は開発庁、それから建設省は建設省でやっていたものを一くくりにして、その中で、広い範囲の中で整合的に国土政策を考えられることになったらこんないいことはないではないか、その中から優先順位をつけていけるのだから、何が悪いのだということを私は申し上げたいわけでございます。  そういうことを聞いてくれないから私は答えていないだけでありまして、そういうふうに私は思っておりますので、胸を張って立派な改革を進める第一歩が始まったというふうにお考えいただきたいと思います。
  43. 岩永峯一

    ○岩永委員 野田大臣並びに太田長官には、大変この法律を上程されるまでに御苦労があっただろうと思いますし、その御苦労の中からみずから持っておられます御意見を法案に整理して上程されたわけでございますので、私はその心意気に敬意を表しますし、何とぞひとつ、新しい二十一世紀のすばらしい国家形態をつくり上げるという男の本懐をなし遂げてもらいたい、このように思うわけでございます。  それで、さっきの話とちょっと関連するのですが、今回行革本部、そして太田大臣のところでこの省庁再編が進められてきたのですが、これから新しい省庁になった場合に、どんどん新たに改革をしていかなければならない。そしてそれを継続的に持続して、やはりほんまもんをつくり上げなければならない。私がさっき言ったように、支部支局と州制度あたりとは、むしろうまく地方の段階の中で合併して大きな効果を発揮してもらうようにしなければならぬ。これはどこがこれからは担当していくのですか。     〔杉山委員長代理退席、委員長着席〕
  44. 太田一男

    太田国務大臣 総務省の設置の中に、任務として行政改革は総務省がやりますということを言っておりますので、まず、普通の状態では総務省が所管をするわけでございます。絶えずそれはやってまいると思います。特に、先生の御関心の地方の制度と中央の制度とを同時にということになれば、今度の総務省は自治省と総務庁と一緒にやるわけでございますから、そのような可能性が広がるというふうにお考えいただいていいと思う。  ただし、それだけではなかなか国を挙げての改革というのは進まないだろう、問題はもう差し迫ってあるということになれば、内閣で決めまして、今回の中央省庁改革推進本部のような本部をつくって、全閣僚が参加をしてやるということは、将来の総理、あるいは小渕総理がそうされるかもしれないけれども、内閣が考えなければいけないことだ、そういうスキームはつくれますということです。
  45. 岩永峯一

    ○岩永委員 そのことは、出発と同時に今太田長官の管轄であるようなそういう組織をもってやられるのか、それとも総務省の一課か一部かでやろうとしておられるのか。そこらあたりをお願いします。
  46. 太田一男

    太田国務大臣 中央省庁改革推進本部は、今各省庁から百四十人の大変すぐれた若手、中堅の官僚が集まって、別の組織をつくっております。この組織は、後で確認をいたしたいわけでございますが、まだ、この法律をつくった後、政令をつくり、個別法もつくりますので、この体制で改革の真っ最中でございますので、この後のことについては、またそれは終わる時点で我々が考えることだと思うのですけれども、ちょっと正確を期すため、事務局長に答えさせたいと思います。
  47. 河野昭

    ○河野(昭)政府委員 今の私ども事務局でございますが、これは三年間の時限で設けられました内閣機関であります中央省庁等改革推進本部の事務局でございます。この三年間と申しますのは、二〇〇一年の一月に移行するわけでございますが、二〇〇一年の六月まで継続するということでございます。
  48. 岩永峯一

    ○岩永委員 次に、地方分権を進める上で大変重要な税の問題についてをお聞きしようと思っておったのですが、もうわずか二分しかございません。それからその次に、今度は政策評価と人事運用についてをお伺いしようと思っていたのですが、これも時間がないので、今回行革の理事をさせていただいておりますので、この二分間を預けてひとつ終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  49. 高鳥修

    ○高鳥委員長 次に、中桐伸五君の質疑に入ります。
  50. 中桐伸五

    中桐委員 民主党の中桐でございます。  私は、きょうは地方分権というテーマを中心に質疑を行いたいと思いますが、地方分権一つの手法として、古くから言われてきていることとして、国と自治体の役割を明確にするということが大変重要ではないかと思います。  シャウプ勧告を受けた一九五一年の神戸勧告では、国の役割を二十九項目に限定をし、大原則は五項目という形にされておりましたし、また最近では、一九九四年に、地方六団体の皆さんが国に対する初めての意見書となった地方分権推進に関する意見書というものの中でも、十六項目に国の役割を限定しているところであります。  そういう意味から、国の役割を限定して、その事務事業を自治体の仕事とすることによって、いや応なしに権限移譲を進めよう、こういう考え方に立つべきであり、このような明確な態度で臨まなければ、日本の中におけるあらゆる問題に口を出してきた中央省庁の体質というのはなかなか変わらない、私はそのように考えるところであります。  そこで、これは自治大臣にお聞きしたいのですが、国の役割ということについて今回の地方分権法律案の中ではどのように規定をされているか、簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  51. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 国の役割というのは、御案内のとおり、改正後の地方自治法の第一条の二において、国が本来果たすべき役割に係る事務として、「国家としての存立にかかわる事務、」あるいは「全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動若しくは地方自治に関する基本的な準則に関する事務」「全国的な規模で若しくは全国的な視点に立つて行わなければならない施策及び事業実施」というようなことが具体的に規定をされておるわけでございます。
  52. 中桐伸五

    中桐委員 先ほど大臣が指摘をされましたこの三つの規定ですね。この規定の具体的な事例をそれぞれ示していただけたら審議がやりやすいと思いますので、具体的事例などを示しながらお答えをいただきたいと思います。
  53. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 まず第一の「国際社会における国家としての存立にかかわる事務」といいますと、例えば外交や防衛、あるいは通貨、司法というような事務がございます。  それから、「全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動若しくは地方自治に関する基本的な準則に関する事務」というのは、例えば公正取引の確保であるとか、生活保護基準であるとか、労働基準、こういったものがあろうかと思います。  それから、「全国的な規模で若しくは全国的な視点に立つて行わなければならない施策及び事業実施」というのは、公的年金、あるいは宇宙の開発、基幹的な交通基盤の整備などの事務があろうかと思います。
  54. 中桐伸五

    中桐委員 ありがとうございます。  さて、そこで、地方分権推進計画では、この三点目の、全国的な規模もしくは全国的な視点に立って行わなければならない施策及び事業実施の後に括弧書きがありまして、「ナショナルミニマムの維持・達成、全国的規模・視点からの根幹的社会資本整備等に係る基本的な事項に限る。」という文言があったわけであります。  私は、この文言は括弧書きで書かれてあるわけでありますが、法律の条文をつくる際にいろいろな検討がされたのだろうと思うのでありますが、しかし、この分権推進計画で括弧書きで書いてある内容というのは、非常に重要なことを少し具体的に書いていると思うのであります。先ほど大臣、交通などの問題ということで具体的な例示をされましたけれども、そういったものを、やはりこれまで余りにも中央集権的に中央に権限が集中してきたわけですから、そこを大胆に地方分権に移るためには、国の役割というところをもう少し限定的に書くような表現をするべきではないかと私は思うのであります。  そういう点でいいますと、先ほどの括弧書きであったものが、なぜこの文言が法律の条文の中に入ってこなかったのか、その点についてお答えいただきたいと思います。
  55. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 これは、先ほど類型化して規定を申し上げたわけですが、国と地方公共団体との役割分担の基本となる方向を大体この三つという形で規定したわけです。今御指摘の部分も、内容においては基本的に同じような事柄を含んでおるということで地方分権推進法第四条の例示と同じであり、同法に基づく地方分権推進委員会の勧告、さらにはそれを最大限尊重して作成された地方分権推進計画の内容を踏まえて、こういう形で規定をしたということであります。
  56. 中桐伸五

    中桐委員 答えの趣旨は了解いたしました。  しかし、これは、条文の中にこういうふうな文言の形でしか書けないということを、具体的にはどういう形で担保していくのか。極めて抽象的な表現になっておるわけでありまして、もうちょっと工夫があってもいいのじゃないか。つまり、特にこれまでの我が国の公共投資、歳出構造の中に占める公共投資の位置というのは、国際的に見ても非常に特異な歳出構造になっておりますね。そういうものを、これからは国が関与するものを限定して、公共事業も原則として地方に移すというふうなこと、そこに重要な一つのポイントがあると私は思うのです。  その点、大臣、先ほどのお答えはそういう方向というふうにお伺いできるのですが、もう少し、その担保というか、そういうものについての御意見、ございますか。
  57. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 今回の国と地方の権限移譲、あるいは役割の配分といいますか、国と地方の役割の分担、こういったことの中ではっきりと規定をし直そうということでやった結果、先ほど、都道府県が現在やっております事務の、機関委任事務がおおむね七、八〇%ある。これが今回、この機関委任事務を自治事務と法定受託事務ということに分けた結果、結果として現在の七、八割ある機関委任事務が三割程度の割合に法定受託事務として、小さくなってきている。市町村においては、第一次勧告では機関委任事務が市町村事務の三、四割を占めているということが指摘をされておったわけですが、今回のいろいろな見直しの結果、約一五%程度に非常に圧縮されてきているということ。  それから、特に国の地方自治体に対する関与のあり方についても、ここは法律または政令に基づかなければ国は関与できないようにしたということも、自治体の自主性を高めていく非常に大きな背景になっていると考えております。  その中で、今、公共事業に関連するお話がありました。この点は、これにとどまらず、これからのいろいろなプロジェクト、いろいろな事業実施されていく上において、極力、やはり住民に身近なことは住民に、自治体に主体的に判断をしてもらうという形に持っていかなければいけないという基本原則は、今後、どのような事業であれ、生かされていくものであるというふうに考えております。
  58. 中桐伸五

    中桐委員 全国的な規模であるいは全国的な視点に立って行わなければならないというところが、いわば地域限定的にといいますか、そういったものとの関係で明確になってくるような、そういうものと、それからもう一つは機能全体、機能として全国的な社会資本の根幹的なネットワークの中の一つというふうなものと、二つの観点からあると思うのですが、そのあたりはケース・バイ・ケースで、要するにこれからの具体的な事務の取り扱いの中で、位置づけの中で決めていくということなんでしょうか。
  59. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 基本的に二つの側面があろうかと思っていますが、今先生の御指摘の部分は、いわば全国的なものについて、国の事務とするか地方の事務とするかというこの取り扱い。それから、地方の事務になった場合に、それが法定受託事務になって、それに対して国の関与がどうなっていくかという問題。この二つの側面をあるいは念頭に置いての御質問かというふうに承ったのですが、そういうことでよろしいでしょうか、とりあえずは。  そうすると、第一の点、これはどういう形で行われるかというのは、まず第一に何らかの形での、当然のことながら、国の事務であるか地方の事務であるかということについて、まず何らかの法律なりなんなりというものがあって、そこで規定をされていくことになるのではないかと私は考えております。  それから、それを法定受託事務として地方自治体に仕事をお願いしていくというような形になる場合には、当然のことながら、先ほど申し上げましたが、従来のような包括的な指揮監督のもとにおいていくような仕事ではありませんで、あるいは通達で随時ということではなくて、きちんとした法律あるいは政令に基づいて行われるということになっていきますので、従来よりもかなり、かなりどころか、大幅にその点は明確になっていくのではないかというふうに考えております。
  60. 中桐伸五

    中桐委員 この問題は大変重要な問題でありますので、私は、今後の具体的な権限移譲、事務の移譲などについて、十分今後の経過をチェックしていかなければいけない問題だというふうに確認をさせていただきまして、次に移らせていただきたいと思います。  きょうは、私は建設大臣に特に来ていただいておりますが、何しろ、これまでのシステムの中で国の関与が最も多い省庁は建設省であります。これは、統計が出されております中でも、最も直近の平成十年の三月三十一日現在で、建設省は五百九十六項目の国の関与の事項がある。次は農林水産省ということになっております。相当数の関与を行っている省庁として、この二つの省庁が大きい位置を占めていると思います。そこで、具体論、具体的なテーマを取り上げながら、国の関与の問題について、今回の法改正の中に重大な問題点も含んでおりますので、その点についての質疑に移りたいと思います。  まず、都市計画に関しまして、国がどう関与していくかという問題で、国の関与の問題を取り上げたいというふうに思います。  まず、都市計画法の第十八条「都道府県の都市計画の決定」という項目の三項に、「都道府県は、大都市及びその周辺の都市に係る都市計画区域その他の政令で定める都市計画区域に係る都市計画又は国の利害に重大な関係がある政令で定める都市計画の決定をしようとするときは、あらかじめ、建設省令で定めるところにより、建設大臣に協議し、その同意を得なければならない。」こういう規定がございます。  建設大臣と協議をしてその同意を得る。その前提は二つの前提があって、「大都市及びその周辺の都市に係る都市計画区域その他の政令で定める都市計画区域に係る都市計画」と「又は国の利害に重大な関係がある政令で定める都市計画の決定」ということになっている。  ここでお聞きをいたしたいのは、「国の利害に重大な関係がある政令で定める都市計画」というのは、具体的にどういうことを言っているのか。建設大臣お答えいただきたいと思います。
  61. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 今回の地方分権で、先生御指摘のように、建設省関係の許認可が一番多いということでございますが、それは、今日までの国づくり、明治維新からが近代国家とするならば、ことしで百三十一年になるわけでございますが、その間、何といいましても社会資本の整備ということを行ってまいりまして、そして、やはり国を一つのものとしていろいろ整備をしてきた。そこに中央集権あるいは許認可というもので大きく縛られておったということであろうと思うわけでございまして、そういうようなことを、今回、地方分権ということで、地方に分権をしていくということであるわけでございますが、その過程において、私は、基本的な考え方として、大きな河川であるとか道路であるとか、そういうものはやはり国が一括してやっていかなければならない。そしてまた、二つ以上の府県にわたるというようなことは、これはやはり建設大臣の認可等々、指導のもとでやっていかなければ、一つの色に染まった道路であるとか、きちっとした流れがある河川であるとか、そういうものはなし得ないと私は思うわけでございます。私は、そういうような基本的な考え方で進めておるわけでございます。  先生御指摘の、今回の改正によります都市計画決定につきまして、今までは建設大臣の認可というものでございましたが、今度は、建設大臣に協議し、同意を得ることに改正するわけでございまして、御質問対象範囲は、現行法と同様の、法律または政令で決めるわけでございますが、まず一つが、都道府県が三大都市圏等一定の都市計画区域内で都市計画を定めるとき、それが一つでございまして、もう一つは、都道府県が国道あるいは都市高速鉄道または第一種空港、一級河川等の国の利害に重大な関係がある都市計画を定めるときに限っておるわけでございまして、それ以外のものは対象にはしていないということで、地方分権の趣旨に沿っているものである、私はそのように考えております。
  62. 中桐伸五

    中桐委員 地方分権推進委員会の第二次勧告には、都市計画の調整のあり方という項目で、明確に、都道府県の区域を超えた広域的視点という文言があったわけでありますが、なぜこれが落ちているのですか。
  63. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 今回の都市計画法の改正案におきましては、都道府県が定める一定の都市計画について、先ほど言いましたように、建設大臣の認可にかえまして、建設大臣に協議し、その同意を得ることとしておりますが、これは、先生御指摘のように、国の利害との調整を図る観点から必要不可欠な関与であるということでございまして、今回の法改正により、「国の利害との調整を図る観点から、」と明確に定めております。  例えば国道の計画について隣接都道府県の間で調整がとれているかどうか等、そういうものをチェックするということはきちっと入っておるわけでございます。
  64. 中桐伸五

    中桐委員 ちょっとお答えが私は納得いかない。  といいますのは、次の第十九条「市町村の都市計画の決定」というところを見てみますと、市町村の都市計画の場合には、第十九条の第四項で明確に、「都道府県知事は、一の市町村の区域を超える広域の見地からの調整を図る観点」という文言が明記されておりまして、これは、またはとかそういったものでいろいろな条件を設定するにしても、私は、非常にここはおかしいというふうに思っております。  第二次勧告の内容は、都道府県の区域を超えた広域的視点、国土政策や国の利害に特に重大な関係がある場合の国家的視点というふうにそれぞれ具体的に書かれてあるわけですから、私は、単に「国の利害に重大な関係がある」という表現だけでは納得がいかないわけでありますが、大臣どうですか。
  65. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 最初、私、述べさせていただきましたように、基本的には、国の利害に関係するものは、やはり大臣がそういうようなことをきちっとチェックしていくということでなければ、全国を一つの範疇に置いて社会資本の整備をしていくことができないのではないか、私はそのように感じます。
  66. 中桐伸五

    中桐委員 国の利害というところの問題が一つ焦点にありますが、その問題を私は否定しているわけじゃないのです。しかし、第二次勧告で明確に、都道府県の区域を超えた広域的視点というものをはっきりと明記しているわけですね。それを落とした理由をお聞きしたいのですよ。
  67. 山本正堯

    山本(正)政府委員 お答えを申し上げます。  第二次勧告につきましては、二以上の広域的な視点という格好で規定をされておるわけでございますが、これにつきましては、具体的にどういう施設、どういう都市計画について対象になるのかということを明確にするために、私ども、施設の概念を具体的に使いまして、国道、一級河川等、政令で定めるそういう大きな施設等についてのものにつきましては大臣の同意つきの協議が必要である、こういうふうに今回の法律では規定をさせていただいたわけでございます。  この場合、「国の利害との調整を図る観点から、」ということで、明確に大臣が同意つきの協議を行うときの観点をきちっと書かせていただいたわけでございますけれども、「国の利害との調整を図る観点」という中には、当然のことながら二以上の広域的な観点も含まれております。また、施設として、国道とか一級河川等の非常に大規模なものというものも、当然のことながら、この利害の調整を図る観点からということで、具体的な対象の都市計画としては含まれている。こういうことで整理をさせていただいたところでございます。
  68. 中桐伸五

    中桐委員 私の質問に全然答えてないじゃないですか。国の利害との調整ということについて、国の利害に重大な関係があるという問題について私は否定しているわけじゃありませんよ。問題は、市町村の計画のときには、一つの市町村の区域を超える広域的なというものが入っていながら、なぜ都道府県のところでは抜けるのですか。おかしいじゃないですか。
  69. 山本正堯

    山本(正)政府委員 お答えをさせていただきます。  市町村の関係につきましては、二以上ということで現在の法律で書いておるわけでございますけれども、今回の法律の中では、十八条の四項で、「国の利害との調整を図る観点」と、観点について書いておるわけでございまして、その観点の中には、先ほど申しましたように、二以上の広域的なものも当然含まれるということでございます。  条文の具体的な文言の書き方につきましては、二以上の広域的な市町村というような点についての文言は使っておりませんけれども、「国の利害との調整を図る観点」ということで、正式にそこの中では当然入るという解釈という格好で今回の条文の規定をさせていただいている、こういうことでございます。
  70. 中桐伸五

    中桐委員 この地方分権の重要なところは、法令主義でいくということが重要なポイントなんですね。そのときに解釈では困るんですよ。裁量的なものが入るじゃないですか。だから私は言っているのです。これは絶対納得できませんよ。どうですか。法令主義でいくんでしょう。
  71. 高鳥修

    ○高鳥委員長 どうですか。きちっとした答弁をしてください。二次勧告で入っているものをなぜ落としたかという、そこをはっきり答弁してください。
  72. 山本正堯

    山本(正)政府委員 二次勧告で入っておりましたものを法制局として法制的に整理いたしました段階で、国と重大な関係があるということで書かせていただいたところでございます。  国の利害との調整を図る観点から、国道であれば、各県ばらばらの都道府県の都市計画ではまずいということで、関与をするという格好で条文上書かせていただいたということでございます。
  73. 中桐伸五

    中桐委員 それは説明にならないんじゃないですか。全然なってないじゃないですか。私は、国の利害に関係がある場合の国家的視点というのを入れることに反対しているわけじゃないんです。これは入れていいんですけれども、第二次勧告が言っているように、都道府県の区域を超えた広域的な視点というのも入れてくれと言っているんですよ。なぜ入らないんですか。  それじゃ、法制局の見解というのをもう少し説明してくださいよ。法制局はきょうは呼んでないからあれなんですが、法制局はどう言ったんですか、具体的に。
  74. 山本正堯

    山本(正)政府委員 今回の改正の中で、先ほど大臣から御答弁を申し上げましたように、都道府県が三大都市圏等の一定の都市計画区域内で計画を定める、これは非常に広域的な観点であります。それからもう一つ、国道とか第一種空港でありますとか、国の利害に重大な関係がある施設、そういうようなものでございます。こういうふうに、都道府県の区域を超えた広域的な視点、あるいは国土政策や国の利害に関係があるといったような、この二つの視点を国家的視点から調整を行うということを明確化して今回の規定を入れたということでございます。  第二次勧告で広域的視点あるいは国の利害に重大な関係があるということを書いてございますが、そういうことを二つ踏まえて国家的視点ということで条文を書かせていただいている、こういうことでございます。
  75. 中桐伸五

    中桐委員 それは全然説明になりませんよ、法令主義の基本原則から逸脱する答えですから。そういう広域的な視点というのが入っているということを今おっしゃったんだったら、それを入れてくださいよ。第二次勧告を無視したことになるわけですから。私はそのことを強く求めたい。省庁と法制局だけが物事を進めているように映るんじゃないですか、そういうことを言うことは。
  76. 山本正堯

    山本(正)政府委員 たびたびの繰り返しで恐縮でございますけれども、二次勧告で広域的視点ということが書かれておりまして、それについて、確かに法文上はその文言がないわけでございますけれども、先ほど来、たびたび御説明申し上げておりますとおり、国家的視点、国の利害に重大な関係があるということの調整を図るという文言で、そこまで含めて書かせていただいている、こういうことでございます。
  77. 中桐伸五

    中桐委員 これは、この地方分権一括法案の最も基本的なルールですから、そのルールの明記を、先ほどのように、解釈でそういうことはできるんだと言っている、こういう法律では私は全然納得できませんよ。
  78. 山本正堯

    山本(正)政府委員 恐縮でございます。  条文といたしまして、私ども、国の利害に重大な関係があるという観点から調整を行うということで、その対象としまして、現在の都市計画法の対象といたしておりますと同様の対象にしておるわけでございます。  現在の都市計画法で書いておりますように、三大都市圏等一定の広域的な都市計画区域内の都市計画、さらに、国道でありますとかそういう国の利害に重大な関係がある都市計画という格好で、法文上も、都市計画の現行の法でも規定をさせていただいておるところでございます。それに基づいて、調整の観点を書かせていただき、その対象になる施設について都市計画法の十八条で書かせていただいておるということでございます。御理解いただきたいと思います。
  79. 中桐伸五

    中桐委員 いや、全然同じことを繰り返されているので私は前に進めないんですが、市町村の都市計画では、「一の市町村の区域を超える広域の見地からの調整を図る観点又は都道府県が定め、」云々、こうあるわけですよ。ですから、そういう文言を第二次勧告が明記したように、これを尊重して明記をしてくれと言っておるんです。明記できない理由を言ってくださいよ。
  80. 山本正堯

    山本(正)政府委員 大変、たびたびの繰り返しの答弁で恐縮でございますが、そういう二以上の地域を超える広域的な観点も含めてきちっとした格好で、国の利害に重大な関係があるという観点ということを書いたということでございます。それも含まれておる、こういう趣旨でございます。
  81. 中桐伸五

    中桐委員 これはちょっと、そういう意味を込めてという裁量的な判断で法案の条文が、しかも、第二次勧告で重要な文言で指摘をされているものについてそういった解釈のレベルで、私、次の質疑に移ることができないんですよ。これはちょっと、どういうふうにやってもらえますか。
  82. 高鳥修

    ○高鳥委員長 中桐委員に申し上げますが、ただいまの御質問についてはまだ必ずしも御納得のいただける答弁が出ていないように委員長も思っておりますので、この際、この問題については委員長に預からせていただいて、後刻きちっとした答弁が出るようにさせていただきたいと思います。
  83. 中桐伸五

    中桐委員 では、委員長の裁定でそのようにしていただきまして、私は、もっと重要なことを質疑しなきゃいけませんので、その次に移りたいと思います。  昨日の質疑で自治大臣は、代執行の問題について、自治法にはできる限りとなっているけれども、実際には代執行が置かれている個別法はないというふうにお答えになったというのをまず確認したいんですが、それでよろしいですか。
  84. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 自治事務に関してはございません。
  85. 中桐伸五

    中桐委員 わかりました。自治事務に関してはそういう個別法はないというふうにお答えになったということをまず討論のベースにしたいと思います。  次に、この都市計画法の中の第二十四条です。この第二十四条には非常に重要なことが書かれてあると私は思っているんですが、「建設大臣の指示等」という項目であります。この第二十四条をちょっと読んでみますけれども、「建設大臣は、国の利害に重大な関係がある事項に関し、必要があると認めるときは、都道府県に対し、又は都道府県知事を通じて市町村に対し、期限を定めて、都市計画区域の指定又は都市計画の決定若しくは変更のため必要な措置をとるべきことを指示することができる。この場合においては、都道府県又は市町村は、正当な理由がない限り、当該指示に従わなければならない。」という条文がございます。  さらに、その第四項では、「建設大臣は、都道府県又は市町村が所定の期限までに正当な理由がなく第一項の規定」、先ほどの規定なんですが、「第一項の規定により指示された措置をとらないときは、正当な理由がないことについて都市計画中央審議会の確認を得た上で、自ら」、大臣「自ら当該措置をとることができるものとする。ただし、市町村がとるべき措置については、建設大臣は、自ら行う必要があると認める場合を除き、都道府県に対し、当該措置をとるよう指示するものとする。」こうなっております。つまり、簡単に言いますと、都市計画中央審議会の確認を得た上で大臣みずから必要な場合には措置を行う、こういう規定になっているわけです。  この問題は、どう解釈するか非常に難しい問題を含んでいるんですが、さてそこで、この都市計画法二十四条の第一項というのは、機関委任事務の中に今日まで既にあった規定であります。ところが、この都市計画の事務については、今この法律が改正されるとどういう事務になるんでしょうか。
  86. 山本正堯

    山本(正)政府委員 お答え申し上げます。  従来の二十四条の都道府県知事は機関委任事務の地位でございますが、今回の法改正によりまして、自治事務になるということでございます。
  87. 中桐伸五

    中桐委員 この二十四条の規定にあるところの事務は自治事務であるという確認ができたと思います。  したがいまして、この自治事務、先ほど自治大臣は、自治事務については代執行は個別法においてないというふうにお答えになっているんですが、さて、この規定は大臣自身が直接執行できるという規定になっておりますが、まずこの規定の中の、国の利害に重大な関係があるという、これも先ほどのこととも関連があるんですが、この事項というのは一体どういう事項なんでしょうか。
  88. 山本正堯

    山本(正)政府委員 国の利害に重大な関係がある都市計画について適切に決定が行われなければ国の政策の実施に重大な支障を及ぼすということでございまして、例えば、先ほどもございましたように、国土の骨格を形成いたします高速自動車国道とかそういったようなものにつきましての都市計画決定は、全国的な、広域的な観点から都市計画決定をする必要があるわけでございますが、例えば一部の県において行われないというような場合には、国の政策の円滑な実現という観点から非常に支障が出る、こういうことでございますので、そういう場合には指示を行うというようなことが予想されるのじゃないかということで、そういうものを対象にした規定というふうに理解をいたしております。
  89. 中桐伸五

    中桐委員 地方分権推進計画の十二ページには、国において直接執行が許される範疇は、「その性質上特に必要があるものについて、国民の利益を保護する緊急の必要がある場合」とされているんですよね。国の利害に重大な関係があるかないかという要件にはなっていない。この点について、どう御説明をしていただけますか。
  90. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 例えば一級河川などは、ある地方においてそれが認定をされないというようなことになりますと、その一級河川を完成することはできないわけでございますから、国民のいわゆる生命財産の安全確保というような立場から考えましたときには、それはいわゆる国の利害に重大な影響を及ぼす、そういう事態だろうと私は思うわけでございます。  ですから、今その法律自体を読んでそのまま直ちに、どういうケースがどうというのは、私は表現がしづらいところがあると思うわけでございまして、具体の事案に即してそれを行うことが適当であるか否かというのは判断すべき性格のものではないかな、そのように私は考えます。
  91. 中桐伸五

    中桐委員 私が重要だと思っているのは、国の利害というものじゃなくて、分権推進計画は「国民の利益」と、こうなっているわけです。国というものの利益がイコール国民の利益かどうかという議論がありますが、私は、この文言は、分権推進計画の文言の方がそういう措置をとるに当たっては非常に適切な、より適切な文言ではないかと思うんですけれども、そこをやっていると私は時間がありませんので、せっかく官房長官も来てもらっていますから。  私が最も言いたいのは、そこの論議よりも、そこも後ほどまた議論の時間があればやりたいと思いますが、それよりも、この規定は国が関与して自治体の決定を変えるものでありますから、したがいまして、これは大変重要な規定なんですよね。国の関与という点では大変大きなものなんです。  従来は、機関委任事務という形で行われてきたものであれば、裁判というふうなものを通して機関委任事務の代執行というルールの中にあったわけですよ。従来は、裁判というものを経た上で措置するという形になっていたわけですよ。ところが、私が大変重大だと思うのは、都市計画中央審議会の確認というものが入っているけれども、しかし、それをやったら後は措置できるというんですよ。これは大変な規定ですよ。  しかも、審議会なるものが非常に問題になっておりますが、東京都の最近の例では、審議会が、年間二百件あって、それを四回、一回につき二時間、つまり八時間でやっている。一件につき二・四分、これが審議会の実態なんですよ、東京都の場合。こんなもので、例えば自治事務で、都道府県あるいは都道府県を介して市町村に、こういう非常に実態の形骸化している審議会を通して確認をすれば変えられるというのは、これは大問題ですよ。  これが代執行なのか、直接執行というのはわかるんですが、代執行制度にほぼ近い、つまり代執行もどきじゃないですか、自治大臣。これは大問題ですよ、そう思いませんか。
  92. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 従来、機関委任事務につきましては、たびたび申し上げておりますが、地方公共団体を国の下部機関という位置づけのもとに、個別の法令に基づくさまざまな関与のほかに包括的な指揮監督権というものがあり、その中には、職務執行命令という形で国の事務を地方公共団体に国の機関として行わせるという法体系があったことは御承知のとおり。  今回、その機関委任事務というものをなくして、法定受託事務と自治事務とに分類をすることにいたしたわけであります。その中で、法定受託事務については代執行というようなものが規定をされ、基本的に自治事務についてはできるだけそういうようなことは置かないということになったわけです。それがなぜできるだけという限定がついたかということについては、ここは同じ国会で決める法律の中で上下関係はつくれないという多少立法技術の問題があったということを申し上げたわけであります。  そこで、一たん自治事務ということに分類された中のものにありましても、同じ事務を国の行政機関が、法令の定めるところによりみずからの権限に属する事務として処理する、言うなら並行権限の行使というふうに考えられておるわけですが、こういう場合には、これは地方分権推進委員会の勧告においても述べられておりますが、それを踏まえた地方分権推進計画におきまして、国民の利益を保護する緊急の必要がある場合には行うことができる、こういうことになっておるわけでございまして、今、いろいろな例もございますが、どういうようなことがあるか。それは、例えば医療法に基づく事務であるとか、あるいは精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に基づくいろいろな事業の停止命令であったり、そういったことがこういう場合に該当するという形で、厳格な要件を付した上で行うことができるということになっておるわけであります。
  93. 中桐伸五

    中桐委員 私は、ここの中には二つの大きな問題があって、これは大変大量な機関委任事務を自治事務と法定受託事務に分ける大変御苦労な作業をやられたと思うのです。  その中で、これは意図的なのかどうかわかりませんが、機関委任事務から自治事務にしたときの国の関与の仕方について、十分国の関与のあり方についてはきちんとやっておかないといけない。ところが、どうもここは、かなりずさんにできちゃった、ずさんに移行しちゃっているんじゃないのと。  つまり、機関委任事務であれば裁判後に措置をするというシステムが、審議会という形になっているわけですよ。私は、審議会というのは非常に問題だと先ほど言いましたけれども、その審議会の細かいことまで国が関与して今までやってきた。その通達を見ても、大変な細々としたところまで指示をしている。  これは、例えば「都市計画地方審議会の組織及び運営の基準を定める政令の制定について」というのを見ても、例えば二十人の委員の場合、学識経験のある者七、関係行政機関の職員七ですよ。学識経験者の数と同じ数が関係行政機関の職員ですよ。それから、その次に、市町村の長を代表する者一人、都道府県議会の議員四人、市町村議会の議長を代表する者一人、こういう構成になる。つまり、非常に行政のサイドの人がたくさん入ってきている、そういう審議会なんですよ。  こういう審議会で簡単に、自治体の決めた自治事務の決定を変える。これは大変な問題じゃないですか。これは自治権の侵害に、かなり重大なところにいくんじゃないですか。  だから、私は、これはシステムをもう一遍、従来の裁判等というものもありました、そういうものを含めて、裁判とは必ずしも言いませんから、もうちょっときちんとした仕組みに変えてもらわないと、これはとんでもないことになりますよ。
  94. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 この十七条の件でございますが、これは、例えば、その建築計画が適法であるにもかかわらず地方公共団体の建築主事等が違法にその事務を怠る場合には、国の利害に大きな影響を与えるから、建設大臣がそういうことをすることはできるということであるわけでございます。ですから、その前に地方公共団体の建築主事等が違法にその事務を扱ったという場合だけでありまして、それ以外に入っていこうとするものではないわけでございます。
  95. 中桐伸五

    中桐委員 時間がないので、官房長官の質問に最後移りますが、今の大臣お答えは全くおかしいですよ。というのは、そんなこと一つも書いてないじゃないですか、二十四条の一項には。違反も何も書いてない。「国の利害に重大な関係がある事項に関し、必要があると認めるときは、」こうなっているだけじゃないですか。何を言っているんですか。
  96. 山本正堯

    山本(正)政府委員 お答え申し上げます。  二つ、先生の御質問があったかと思いますが、二十四条の指示のところで、確認を必要とするものは都市計画中央審議会でございます。都道府県の審議会ということじゃなくて、中央審議会でございます。私どものところに、建設省にございます都市計画中央審議会で十分な審議を行うということでございます。  なおまた、個別の法律に基づきまして、こういう指示についての規定をすることもいいという、地方分権推進計画にも掲げておりまして、それに基づいて、現在の都市計画法の指示の規定をそのまま、地方自治、自治事務でもございますけれども、その性格においては、その必要性においては変わらないということで、二十四条で規定をさせていただいた、こういうことでございます。
  97. 中桐伸五

    中桐委員 まあ審議会は、中央審議会であろうと、都市計画の地方審議会であろうと、私は、審議会の性格が極めて行政サイドの方向に偏りやすい、そういう問題があるから、審議会の問題すら今までたくさんの議論が行われてきたんじゃないですか。  その審議会の問題、この決定を変えることを審議会でやったらできるというようなものは、私は容認できないので、この問題については、もう時間がありませんので、引き続き時間があればやらせていただきたい、こういうふうに思います。  自治大臣、これは、私、代執行もどきというか、代執行にほぼ、もう限りなく近いというか、もう代執行と言ってもいいような制度じゃないかと思っているのですよ。この問題を議論すると大変なので、ちょっと自治大臣もこの問題については検討しておいていただきたいと思います。  最後ですが、せっかく官房長官に来ていただいておりますので。  実は、公共事業とか、あるいは統括補助金とかそういったものについては、地方分権推進委員会の第五次勧告を受けてこれから取り組むという形になるんだと思います。しかしながら、地方分権推進法は来年でリミットを迎えるわけですね、五年のサンセットでやっているわけですから。  そういうことになりますと、官房長官、この公共事業のあり方だとか統括補助金、極めて重要な問題が含まれているものでありますけれども、このプログラムを、地方分権推進法でいえばもうあと一年少々しかない。この期間にどのようなスピードでおやりになる予定なのか、そのプログラム及び決意を答弁していただければと思います。
  98. 野中広務

    ○野中国務大臣 政府におきましては、地方分権推進委員会からいただきました一次から四次までの勧告を最大限に尊重いたしました地方分権推進計画を、昨年五月に作成をしたところでございます。  委員御指摘のとおり、今それに基づいて今国会において御審議をいただいておる次第でございます。  今後の地方分権推進委員会の活動につきましては、委員会の御判断を尊重してまいりたいと考えておるところでございますが、いずれにいたしましても、私どもといたしましては、地方分権の一層の推進に取り組んでまいりたいと考えております。
  99. 中桐伸五

    中桐委員 時間が参りましたので、質問を終わります。どうもありがとうございました。
  100. 高鳥修

    ○高鳥委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     正午休憩      ————◇—————     午後一時二分開議
  101. 高鳥修

    ○高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。平野博文君。
  102. 平野博文

    ○平野委員 民主党の平野博文でございます。  持ち時間の中で質問をさせていただきたく思うわけでありますが、二日間の総括質疑の中で御議論がありました点、いま一つ確認したい点がございます。そういう中にあって、少し確認をしたい点から始めさせていただきたいと思います。  我が党の議員の方から少し指摘がございました阪神道路公団の問題でございます。私は大阪なものですから、毎日阪神道路公団を使って仕事をしておるものですから、それが償還ペースでいきますと二百七十一年かかるなんということになりますと、江戸中期の借金を今払うようなものだ、こういうところで、そういうはずがないと私思いまして、改めてこの点について建設大臣に確認をしたいと思うんです。  といいますのは、阪神道路公団の事業の概要からいきましても、道路網全体で償還をしていくのはやはり四十年償還だ、こういうふうに事業の概要にもあるわけでございまして、確かに、この平成五年ぐらいのときの償還のペースで見たときの数字でいきますと二百七十一年、こういうことでございますが、まず一つは、本当に実態はそうなのかだけを確認させていただきたいと思います。
  103. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 先生御指摘のとおりでございまして、これは償還ペースということで、先生が今述べられましたように、平成五年の収支で計算してそういうようなことを出しておったわけでございまして、総務庁が行いました阪神公団の財務内容調査結果報告書においては、「償還のペースは二百七十一年に相当する。」とされており、このただし書きにおいて、「「償還ペース」は、償還に要する期間を表すものではない。実際の償還は、元金の返済が進み利息が減少することにより加速する。」わけでございまして、この二百七十一年という数字は実際に償還に要する期間を言ったものではないわけでございます。  それで、平成十年三月に策定をいたしました現在の償還計画におきましては、平成四十四年十一月、したがいまして四十一年八カ月になりますが、償還を完了するという計画になっております。
  104. 平野博文

    ○平野委員 できるだけ早く償還をされることが一番好ましいわけでございますし、償還を早めるということは、料金、フィーを値上げをするということにつながったら、一番安易な手段で償還の期間が短くなるわけでございます。そういう意味では、逆に言いますと、安易に値上げをされないで、公団自身の努力もそこの中にはめてもらわないことには、やはり利用者の立場でいきますと、私もお金は余りありませんから百円上がりますと大変なものでございますから、そういう意味合いで、ぜひ努力をいただきたいと思うんです。  ただ、内容を見てみますと、阪神公団というのは、他の公団もいろいろあると思うんですが、非常に経営努力の中で見ますと悪いわけでございますね。この点、他の公団と比較したときにはどんなものですか。
  105. 井上啓一

    ○井上(啓)政府委員 今大臣お答えしましたように、償還の方向は四十一年八カ月というようなことで同じように進めておりますし、また、公団も経営努力を同じように進めておりますが、現状のところでは、首都高でありますとかあるいは日本道路公団に比べますと、まだ若干そういう意味で、償還準備金の積み立て等では劣っておるようなところがございますが、これから、先生御指摘のように、いろいろ経営努力を重ねた上で、それから、国あるいは地方自治体の公的補助も、十一年度から従来一三%の出資補助率だったものを二五%に上げる等やりまして、今先生の御指摘のような方向に努めてまいる、そういうことで指導してまいりたいと思っております。
  106. 平野博文

    ○平野委員 いずれにしても、特殊法人を含めていろいろ言われるわけでございますから、不断の努力をしていただきたい、このように思います。冒頭確認だけということで、質問をこの点については終わりたいと思うんであります。  それでは、地方分権関係について、順次御質問をしてまいりたいと思うんです。  まず一つは、平成七年に制定されました地方分権推進法では、地方分権を総合的にかつ計画的に推進していくことを目標に、その基本理念として、地方分権推進は、国及び地方公共団体が分担すべき役割を明確にし、地方公共団体の自主性、自立性を高め、個性豊かで活力に満ちた地域社会を実現することを基本に分権法というのが制定されたわけでございます。  ここで大事なことは、地方分権を総合的にかつ計画的に、なお、地方公共団体の自主性、自立性を高めるということが非常に私大事な目標だと思っております。すなわち、地方自治体の基本であります住民自治、これは私自身が解釈しておりますが、住民みずからがみずからの地域のことを考えみずからの手で治めていく、こういうことを住民自治だと私は思っています。加えて、団体自治という、地域のことは地方公共団体が自主性を持ってみずからの判断と責任のもとに地域の実情に合った行政を行っていく、こういうことを考えているものだと私自身は理解をしておるところであります。  しかし、現在までの中央集権型行政システムの中では、国民は地方自治体や国に、また地方自治体は国にいろいろな面で依存をしているところが散見できるわけであります。これはまさに、中央集権という仕組みの中ではやむを得ない、当然といえば当然だと私は思うのであります。地方分権は、まさにこの考え方とは正反対の方向に改革をしていくというふうに、また、していかなければならないと思っています。すなわち、国民一人一人でできることは国民個人でやっていくんだ、個人でできないことは、国民ができないことは地方自治体が補っていくんだ、地方自治体ができないことは国が補完をしていく。いわゆる補完性の原理をやはりシステムの中に取り入れる中にあって、自立と自己責任を明確にしていくことが非常に重要である、私はこのように考えておるわけであります。  まず、私自身がこういうふうに思っていることに対して、この地方分権の基本的な考え方について、きょうは総理に基本的なことですからお尋ねをしようと思ったわけですが、総理代行で陰の総理大臣官房長官に来ていただいておりますから、官房長官からお答えをいただきたいと思います。
  107. 野中広務

    ○野中国務大臣 委員長のお許しをいただきまして総理が他の公務に出ておりますので、御指名でございますので私からお答えをさせていただきたいと存じます。  地方分権の基本的な考え方は、委員がただいまおっしゃったとおりであると思っておるわけでございます。したがいまして、最重要課題であります行政改革推進いたしまして、今後効率的な行政システムを確立していきますためにも、地方分権は強力に推進していかなくてはならないわけでございます。  地方分権というのは、明治以来形成をされてきました、委員が御指摘になりましたように、国、都道府県、市町村という従来の縦の関係である中央集権型行政システムを変革いたしまして、対等、協力の横の関係に構築をしていこうというわけでございまして、今回のこの法案は、ある意味においてこれを実行の段階を迎えておると考えておる次第でございます。この法案国会においてぜひとも御成立をいただきまして、地方分権を具体的な形で進めてまいりたいと思っておるわけでございます。  しかし、地方分権の道はなお遠い、険しいと思っております。また、分権だけでなく、これを担う地方税財源の確保というのは、非常に大きな、並立した課題であるわけでございます。私どもは、今お願いをしておる分権法は、長い地方分権の道のりの一つの段階と位置づけまして、これからさらに実りあるものにしていかなくてはならないと考えておるところでございます。
  108. 平野博文

    ○平野委員 基本的な考え方については同じ認識であるというふうに御答弁をいただきましたので、その前提に立って順次具体的な質問に入っていきたいと思います。  私は、先ほども申し上げましたように、自立と自己責任を明確にしていくために何をしなければならないか、こういうことについてまず認識をしなければならない、また、それをきちっと明確にしていかなければならないと思っています。今回提出の法案では機関委任事務を全廃し、自治事務と法定受託事務に整理したことは、官房長官がお答えになっていただいたとおり、上下、主従から対等、協力の関係に変える意味においては一歩の前進だと私は思っています。この機関委任事務の全廃に伴い、自治事務は、より住民に近い行政を担う基礎自治体が地方自治体であることをはっきりさせる意味において、また、地方自治体が自立を持って、責任を持って事務を遂行していくという上においても、一つの前進だと考えています。  しかし、ここで私自身一つ疑問に思う点がございます。この法案で私、問題と指摘したいのは、法定受託事務の定義であります。本法案では、国が本来果たすべき役割にある事務にあって、国においてその適正な処理を特に確保する必要性があるものとしての法律が、法定受託事務、こういうふうに定義されております。また、これに基づく政令に特に定めるものと定義されているわけでございますが、私自身、この文章を読む限りであれば、国の直接執行事務でも別に問題ないのではないか、こういうふうにも読み取れるわけであります。地方自治体になぜ実施をしてもらうかが明確に書かれていない。なぜ国の役割である法定受託事務を国の直接執行事務にしないのか、逆説的にこれは疑問がわいてくるわけでございます。  この点について、まず自治大臣の方からお聞かせをいただきたいと思います。
  109. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 御案内のとおり、今回の新しい地方自治法の第二条において、法定受託事務と自治事務、この二つに定義をいたしておるわけです。時間の関係上、細々と申し上げることはいたしません。その前に、第一条の二において、国と地方の役割分担についての条項がございます。これも長々書いてありますので、ここではもう多くを言いません。  そういう国と地方のまず基本的な役割分担、事務の配分ということがあって、その上でこの定義をいたしておるわけで、法定受託事務の定義は、国の事務である機関委任事務、こういう位置づけがかつてはなされておりました。それを今回は、自治事務と同じように地方公共団体の事務であるという位置づけをしたわけであります。つまり、地方公共団体がみずからの事務として行うという位置づけをしたわけです。機関委任事務は、国の機関としての仕事をするんですということでありました。そういう点で、はっきりと地方団体の事務だと位置づけをした。  しかし、そういうことではありますけれども、その内容が、国が本来果たすべき役割にかかわる事務でもある。かかわる事務であるが、国でしかやってはならぬということではなくて、そういう役割にかかわる事務であると。したがって、そのために適正な処理を確保することに対して、国として自治事務とは違った高い責任と関心を有するということを、そういう性格を明らかにした、こういう位置づけになっているわけですね。だから、国から地方団体に対する関与について、自治事務とは異なった関与の体系、法的効果を今回規定した、そういうことであります。
  110. 平野博文

    ○平野委員 自治大臣の言われたことはごもっともでございます。  しかし、そこでなのです。地方分権推進委員会の勧告においては、法定受託事務というのは、事務の性質上、その実施が国の義務に属し国の行政機関が直接執行すべきであるが、国民の立場から見たときの利便性または事務処理の効率性観点からこれを法定受託にすべきである、こういう勧告があるのですね。  したがって、私が言いたいことは、直接事務をやってもいいのをたまたま法定受託にやっているだけではないか。そうではないのですよと。勧告にあるように、国民の利便性、さらには事務処理をより効率化する、こういうところに定義を修正しておかないと、直接執行でもいいじゃないか、こういうことを私みたいな変わった人間が思うわけですよ。だから、自治大臣がおっしゃる意味はわかっているんですが、やはり利便性と事務の効率を高めていくためには法定受託事務にしたんだよ、ここのところが抜けているんじゃないか、勧告の指摘に対して。その点について、いかがなんですか。
  111. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 今、利便性等々についての言及がございましたが、確かに、国の事務とするか地方公共団体の事務とするかという際に、大きな基準としてこれが重要なメルクマールになるというのはそのとおりであります。そこで、国の事務ではなくて地方団体の事務であるというふうになりましたその後、法定受託事務にするか自治事務にするかという基準をどこに設けるかという形で、この法定受託事務というものを規定したわけです。  したがって、この定義については、御案内のとおり、自治事務についての積極的定義はいたしておりません。つまり、地方公共団体の事務という包括的な中で、特に定義づけた法定受託事務、これを法定受託事務とする、その他は自治事務にするんです、こういう形の定義づけになっておるものですから、御指摘の国と地方の振り分けの基準をあえてここではもう入れなくていい、その作業は終わったという前提でこういう規定になっているということであります。
  112. 平野博文

    ○平野委員 私は、実際実施をする地方公共団体の人の立場から見ると、我々が法定受託事務という定義のもとに仕事する大義がやはり要ると思うんですね。国と地方の差を、境目を明確にしたからあなたやるんですよというのじゃなくて、我々が、地方自治体の職員がやることによって国民にサービスがより効率よくやれるんですよという大義を公務員の職員に与えていくためにも、やはりこういう言葉の定義をつけてもらった方がより意欲がわくんじゃないですか、地方公務員の皆さん方は、公共団体の皆さん方は。  そういうふうに、勧告のあれに対しては、やはり正しい勧告をしているなと。ただ、法律の定義でいくとそのところが抜けておるので、別に直接執行してもいいじゃないか、こういうふうに思うのであります。この点をひとつまず指摘をしておきたい、このように思うわけであります。  次に、この法案で法定受託と地方自治を分けたわけでございますが、大臣からのこの委員会での答弁の中では、大体、法定受託事務が事務全体の三〇%、あるいは四〇%ぐらい。それぞれ都道府県等によって違いますが、私はやはり、地方分権推進していくという上においては、法定受託事務というのは限りなく少なくしていく方が好ましい、このように思っていますが、その点はどうでございますか。
  113. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 地方自治の精神からいきまして、御指摘のとおり、法定受託事務というものは極力抑えられ、やはり住民に身近な行政については、住民自治の中で、地方自治の中で、みずからの自律性、自主性の中で運命を決定してもらうという、これが一番の原点的発想だというふうに考えております。
  114. 平野博文

    ○平野委員 そこで、今回の法律案で、政令でも定められるというふうになっています。そうしますと、これでは、各省庁の権限によって法定受託事務がどんどんつくれていくという仕組みをこの中に内在をしているのではないでしょうか。  私は、法定受託というのはやはり国会議論をして、これは法定受託ですよということを明確にしていかなきゃならない、こういう立場から、政令で定めるということはやめるべきではないか、このように思いますが、その点はいかがですか。
  115. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 現実問題、政令でそういうことを定めるべきかどうかということは、そのもとになる根拠法律を国会で御審議いただくわけであります。その法律でいろいろなことを規定されるわけですが、現在の法体系の中で、細目的な事項や手続的な事項まで全部、法律で、国会審議でチェックをしていくということが現実的に可能なのかどうなのかということも実はございます。そういう点で、一定の範囲内で法律が政令にこれをゆだねるということが許されておることはもう御案内のとおりであります。  ただ、その場合、では政令で何でもいいのかということであると、そういうわけではありませんで、法定受託事務を政令で定めるということであれば、その個別法を審議していただく際に、その際、そのことを含めてこの国会で御審議をいただくということにもなるわけでありますから、そういう点で、国会におけるチェックというのは当然経た上で、そういったことが規定をされるということになるものと考えておるわけです。  政令において法定受託事務を創設する場合におきましてもまた法定受託事務の定義に該当する必要があり、さらに、地方分権推進計画、これは閣議決定をいたしておるわけですが、ここではかなり詳しいメルクマールをつくっております。この閣議決定で定めたメルクマールに従うことになりますので、法定受託事務が無限定に創設されるということにはならないというふうに考えております。
  116. 平野博文

    ○平野委員 大臣は今そうおっしゃるけれども、理屈の上ではできるようになるわけですね、政令で起こせるということは。それはチェックするんですよと言うけれども、理屈の上では起こるわけですよ。  そうすると、裁量の幅が出てきて、省庁の中で、そこにおられる野田大臣だったらしっかりしていますからチェックはかかるでしょうけれども、ほかの人がかわっていって、時間がたてば、政令の中でその部分が勝手に行われるということだってあるわけですから、行われないという担保が本当にとれているのかどうか、ここが非常に私は疑問を感じます。
  117. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 これは先ほど申し上げたとおり、何にもなしで、いきなり政令でこういった事務を創設するわけにはまいらないわけでありまして、必ずその根拠とする法律があるわけです。その法律を制定する際には、まさに国会での審議を経た上で初めて制定されるわけでありますので、そういう点でノーチェックでということにはならないんじゃないか。それは、そういうことを私が言えば、国会軽視、こういうことになってしまうのではないかと思います。
  118. 平野博文

    ○平野委員 余りこのところで議論しても時間がたつばかりでございますが、私が言いたいことは、今までとは違うんですよ、ルールに沿って進めていくんですよ、裁量の幅というのはルールに基づく権限なんですよ、幅の中での権限はないと。これぐらい厳しいチェックをしなきゃならないという視点で、政令という言葉がなければいい法律だなと思ったんですが、あるものですから、非常に気に入らないわけであります。この点、強く、気に入らないということを申し添えておきます。  さて、時間がたってまいりますので次に参りたいと思うんですが、地方分権への大きな一歩ということで私自身も一面評価をしていますし、私も、地元に戻り、あらゆる機会には、地方分権社会をつくらなきゃならない、こんなことを言ってきたわけであります。  しかし一方、本当に大事なことは、住民、国民の皆さんが、地方分権社会というのに変われば、どのように我々にとって変わっていくんだろうかということが本来見えなきゃならないわけであります。しかしながら、今地域住民から見たときに、その事務が地方自治体でやってもらっているのであれば、それが自治事務であろうが法定受託事務であろうが、余りそこまで、これは法定受託事務ですからありがとう、これは自治事務ですから御苦労さんと国民が言うだろうか、私は決して言わないと思います。  今、国民は、国会で最大の課題だといって地方分権一括法案をやっているんですが、国民がどれだけやってほしいと言っているかといったら、意外に冷めていますよ。きょうの委員の皆さん方もみんな冷めているのかもわかりませんが。  それはやはり、本当に分権社会になったときに、国民の一人として、社会がこう変わってくるんだな、このことが明らかになっていないからなんですね。その点をやはりぜひ明確にしていかないことには、私は、本当の意味地方分権にならずに、今処理しているのは官官分権ですよ、官官分権のための法律をすみ分けしておるだけなんですよ、これをぜひお考えいただきたい。  私は、したがって、これは総理大臣にお聞きしたいわけでございますから、きょうは官房長官と野田大臣に聞きたいんですが、国民が、特に地域住民から見たとき、地方分権が進んだなと感じるために何が必要だと思いますか。  今の法律審議では、住民の一人として、国民の一人として、何をやっているんだ、ああ、国会で勝手にやっているだけじゃないか、こういうことになりますので、もっと感動を与えていくためにも、国民の皆さんが、なるほど早くやってほしいというためにも、何をこれから与えていく、あるいはもっとアピールしていけば感ずるのか、官房長官、どうでございますか。
  119. 野中広務

    ○野中国務大臣 大変難しい課題でございますけれども、先ほども申し上げましたように、今度の地方分権と申しますのは、一つには行政改革でありますとともに、明治以来の地方自治のあり方を、縦の組織から横に変えていく、大きな歴史的革命ともいうべき転換でございます。けれども、それはまた、申し上げましたように、一つの段階でございます。  これに、地方自治が真に地方自治たるためにやっていきますためには、私は、住民がみずから主権者としての認識を持っていただき、表現はよくありませんけれども、市町村は住民の内堀であり、そして府県は外堀であるということで、主権者たる住民を守っていかなくてはならない、こういうことを考えるわけであります。それにはまた、私は、市町村が市町村たるような状況をつくり上げていかなくてはならないと思うわけでございます。  明治二十二年の市町村制で、約三万ありました地方公共団体が一万に変わりました。昭和三十年を前後いたしました市町村合併で、この一万が三千六百になりました。それから四十年、わずか三百余りより市町村合併が行われておらない現実をかんがみますときに、やはり今後住民みずからが、この地方自治を地方自治たるために、地方分権を全うし、地方の主権を回復するためには、私は、地方公共団体の合併が大胆に行われていかなくてはならないし、それがある意味において、また地方分権の大きな認識を住民自身に与えることになるのではなかろうかと思う次第であります。
  120. 平野博文

    ○平野委員 官房長官が言われた合併ということも、一つの大きなインセンティブになってくるんだと思いますが、なかなか合併がここ数十年進んでいないという問題もあるんですが、合併をしていく、こういうことも一つ課題だと思うんです。  私は、そのことも一つあるんですが、地方自治への住民の参加、これがやはり不可欠な要素だと思っています。そのためには、地方自治体の財政的な自立が非常に重要になってくる。幾ら参加したって、住民自治の中で、地方公共団体の中で何ら財政の担保がとれないということであれば、参加しても仕方がない、こういうことになるわけでございまして、特に、財政責任を明確化していく中で、地域住民の、納税者の立場で、やはりその使い方を、また自治への参加を促す、こういうことが、地方自治への住民の参加の意識を高めていくことになると思っています。  そういう中で、地方財源の問題でありますが、先ほどの官房長官の話では、これがまず一歩だ、こういうことでございますが、私、いろいろなことを調べてみました。いろいろな文献等々、地域の方々、地方自治体の方々、住民の方々、いろいろなことを確認いたしたわけですが、地方財源がどうなるのかということが一番、特に地方公共団体の方々の一番のやはり心配事であります。  今回、分権法案をずっと進めておるんですが、地方財源は次だという御答弁もあったように聞きますが、これは本来表裏一体のものでなければなりません。権限は変わる。権限は地方に移します。その財政的担保もないのに、権限だけが動くのか、こういうことに相なってくるわけでございます。  特に、先ほど冒頭申し上げましたように、地方分権推進法、この法律というのは、総合的に自立性、自主性を高める、こういうことであります。財政問題を抜きにしたら、この自立性を高めることにならないし、自主性を高めることにもならない、私はこう思うんですが、その点は、大臣、いかがなものでしょうか。
  121. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 たびたび申し上げておるんですが、今回の地方分権推進一括法は、まだトータルパッケージとしての地方分権推進する全体系を網羅したものではない。残念ながら、そこへ行くにはまだ若干時間がかかります。  まず、そういう点で、全部が整うよりも、より急ぐもの、そういう意味で、先ほど来申し上げておりますが、国が行うべき事務と地方自治体が行うべき事務を振り分け、そして、そういった事務に関する国のかかわり方、関与の仕方ということに、先ほど来御指摘のございました法定ルールという、法律あるいは最低政令に基づくものでなければ、そういうことを新たに地方団体に対する法定受託事務という形で規定はしない、そういう受託事務としてのかかわり方はしない、こういうことにしたわけです。  今まで、先ほども申し上げたんですが、都道府県で従来行われておりました事務の中で、おおむね機関委任事務が七、八割あったもの、これが今回、その機関委任事務を廃止して、自治事務と法定受託事務ということに分かれていった。その結果、従来ありました都道府県の団体事務と、今回新たに機関委任事務から自治事務という形に位置づけられた事務、こういった自治事務が、改正後では約七割がそういう形に分類される。市町村においては、それが八五%対一五%ということでなっているわけです。また、国のかかわりも法定ルール主義にはっきりと踏み切った、こういうことですから、そういう点では一定自主性、自立性を役割分担、事務、権限の中で明確にしていったということはぜひ御理解をいただきたい。  ただ、本来なら、それにあわせて財源面が伴っていければ申し分ないんです。しかし、その点は幾つかの理由がございまして、これは早急に、しかしいつまでもずるずる放置するわけにはいきません、早急にしなければなりませんが、そういう点で、特に国と地方の間の税財源の配分という問題については、少なくとも現在の経済状況がノーマルな姿に立ち戻るということがないと、これだけ落ち込んでいるバブル崩壊後の異例な経済状況の中で出てくる税収を基礎として国、地方の税源配分をするということになれば、必ず正しい配分結果が得られないと我々は考えております。  それは、もう細かく言いませんが、法人税にしても、これだけ不良債権がどんどん重なっているものですから、銀行からの法人税というのは全然入ってこない。これは、かつては、十年ぐらい前は何兆円も皆入ってきていたわけで、これが全く入ってこないという状況が現に続いているわけですから、法人系統の税収を国、地方でどう配分するかという場合だって、どうもならぬわけですね。そういう意味で、大蔵大臣も申し上げておられるとおり、少なくとも二%程度の実質の経済成長という形が確保できるような段階になって初めてそこの話に踏み込めるのではないかというのが一つございます。  それからいま一つは、その中で地方税をどういう感覚で仕組んでいくかということであれば、税収の安定性がより強いもの、そういうような仕組みを入れていかなければなりません。それから、受益の範囲が広いわけですから、できるだけ、偏った人たちだけが納税するような仕組みではなくて、ある程度普遍性のあるような形も考えなければなりません。そういったことも当然やらなければなりません。  しかし、それでもなおかつ各自治体間の格差がありますので、地方交付税を中心とする財源調整システム、そういったことも当然、一般財源、自主財源をどうやって確保するかということも、もう一つ必要であります。  長くなって恐縮でしたが、現在の国庫補助負担金のあり方についても、これから第二次地方分権推進計画に基づいてやっていきますが、さらにそういったもののあり方についても積極的に見直していかなければならぬ。できるだけ一般財源化を図っていくということに向けて、努力をしていきたいと考えております。     〔委員長退席、杉山委員長代理着席〕
  122. 平野博文

    ○平野委員 いや、自治大臣、財源問題抜きに地方の自治の確立なんというのは図れないということを私は言いたいのですよ。  今、補助金とか交付税とかいろいろな財政措置の仕組みがあるのですが、この制度は、私もよく調べましたが、非常にわかりにくい算出基準なんですね。大臣、わかりますか。基準財政需要額なんという、これは調べたら、もう気が狂いそうになりました。私、きのう一晩いろいろ考えたのです。  というのは、特に、やはり自治体が自立していく財源をどう担保するかということを、抜本的財政措置ができないのならば、現行の中にもやはり自立できるための財源措置というのが考えられないかということを、きのう一晩かかっていろいろ考えてみたのです。  ところが、今の補助金にしろ、負担金にしろ、交付税のあり方にしても、自主財源を担保するところの領域というのは極めて少ない。一般財源じゃないかという、一方の国の言い方はしますが、地方自治体ベースから見ますと、それが本当に一般財源になっているのか。まやかしになっているのですよ、これは。間違いなくまやかしですよ。  多少、一般財源化するような要素はありましたよ、地方交付税の制度の概要の中では。しかし、これは真の意味の自治の確立につながらない制度ですよ。これを抜本的に変えていくためにはという官房長官の話も、大臣の話も、今後はやはりやっていかなければならない、こういう発言はいただきましたが、現行法の中でも何とかやはりそれをしておかないと、自治の確立というのは絶対にできないと私は確信を持って言えると思うのですね。  今の行政システムでいきますと、交付税をもらおう、不交付団体、このところを見てみますと、ほとんどが交付金をもらっておるわけですよね。そういう意味合いから見ますと、行政が一生懸命効率よくやって節約すると交付金が少なくなる、だらだらしてやっておると交付金がふえてくる、単純に言いますと。これが今の行政仕組みなんですよ。  そんな中で、自治体が一生懸命やったら、一生懸命やったということで御褒美に何かくれるのだったら一生懸命やるでしょうけれども、一生懸命やったら国の交付金が減らされる、こういうことになってきますと、だれもが、働かぬ方がいいじゃないか、ひもつきのものをどんどんもらっていった方がいいじゃないか、そういうふうになってくるわけですよ。そうすると、今大臣おっしゃったように、景気が悪い、その中にそういうことを変えたらえらいことになる、当分、景気回復までちょっと待っていようか。それでは私は論点がちょっと違うと思うのですね。  そこの点をぜひ言いたいわけでございますから、大臣
  123. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 総理もお見えになりましたので、簡潔に。  今大体三点の問題を御指摘になったように思っています。  一つは、地方交付税を計算していく基礎になっていきます基準財政需要の計算方式、大変ややこしいというのは御指摘のとおりでございます。  ただ、よく言えば大変きめ細かく、財政力の弱い団体にまで配慮をしていろいろな補正を積み重ねた結果、芸術品みたいになってきたというようなことがあります。そういう点で、この辺をもう少し見直せというのは一つの考えであり、我々もそのことを念頭に置いております。  いま一つ、地方財源が、努力をしてもどんどん落ち込んでいく、だから結局ひもつきのものでもいいから金が欲しくなる、こういうような御指摘があります。  そういうことでは困りますので、特に本年度は、恒久的減税等々もございました、それから一般的な景気の落ち込みによる税収減もございました。そういう点で、地方財政が極めて危機的な状況に立ち至りましたので、国の御尽力もちょうだいをして、一般財源、つまり地方自治体として自由に使える一般財源として、地方税のほかに、交付税は一般財源として使えるわけですが、この点については対前年度で一九%増という、地方交付税として対応をさせていただいた。  したがって、結果として、地方の、今年度の地方財政計画におきまして、一般財源の比率は約六五%程度ということで、おおむね昨年度並みのそういう比率を確保することができたということは、この機会にぜひ御理解もいただきたいと思うわけであります。  それからいま一つ、地方団体が一生懸命努力してもその部分だけ何か交付税が減っちゃうんじゃないか、そんなことをしたら自主的に税収をふやす努力をしなくなりますよという御指摘がありました。  この点は、そういうことのないように、今現在、法定外普通税、あるいは標準税率を超える、条例で独自に税率を上積みしておやりになる超過課税分、この増収部分は、交付税算定の上の基準財政収入にはカウントしないというやり方をいたしております。  それからいま一つ、自治体自身がいろいろな企業誘致その他の努力をされるということで、言うなら税源涵養努力をした成果が一体どうなるんだと。その結果、多少地域がよくなって雇用もふえて税収も上がってきたら、その部分だけ交付税が減るじゃないかという懸念もあるわけです。  そういう点で、これも基準財政収入額の算定上、標準的な税収入の算定に当たって、都道府県にあっては一〇〇%ではなくて八〇%、市町村にあっては七五%という形にして、そういう自主的な税源涵養努力を無にしないような配慮を加えておるということをやっておるということを申し上げておきたいと思います。
  124. 平野博文

    ○平野委員 今大臣おっしゃったことは、この表なんですね。市町村にあっては七五%算入する、こういうことなのですが、これは実態的に言っても絵にかいたもちですよ。  一番下のC市というのは非常に標準税収がたくさんあって、基準財政収入額が百二十億だから、こんなに保留分がたくさんありますよと。今、こんな市がどこにありますか。こんなところだけ、物すごくそういうことを配慮していますよと言うけれども、こんな具体的な市なんてないですよ。ここをやはりぜひ考えてもらわないとだめですね。特に市町村が厳しいんですよ。その点どうですか。
  125. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 それはもう御指摘のとおりでして、今のような経済情勢の中で、新たに企業誘致しようと一生懸命努力をしておられても、なかなか来てくれない。むしろ今までの企業からの税収も落ち込んでいくという意味で、なかなか標準的な、対前年比で同じだけの税収を上げることにも苦労しておられるという実態でありますから、それは、今現在その部分を留保部分として使える形にはなっていません。ただ、システムとしてはそういうことになっているということは申し上げたわけです。
  126. 平野博文

    ○平野委員 余りこの問題ばかりやっていますとほとんど大多数残ってしまいましたので、この審議は、やはりかなり続けていただかないことには十分な理解が国民も得られないな、このように思うところでございます。  次に移りたいと思います。時間が余りないものですから、総理もお越しになりましたので。先ほど陰の総理にも御答弁をいただきましたからあれなんですが、失礼な言葉で申しわけございません、ただ、新聞には書いてありましたからね、そういうのが。  まず、総理大臣にお聞きしたいと思うんですが、先ほど官房長官にもお答えをちょうだいいたしましたが、やはり分権社会ということをつくっていく上においての必須要件というのはどういう要件であるか。そのための手段として、国、地方の役割、こういうことを明確にしましょう、財政も担保していきましょう、しかし、担保していくプロセスとしては、野田大臣答えていただきましたが、順番にしていきますよということなんですが、これはもう、総理大臣ですから、地方自治体に課税権を与えていく、こういう発想、やはり地方財政を確立していく上においてはそのことがないと、先ほど野田大臣がおっしゃったような部分のインセンティブを含めて、住民がやはり、こういうことをするためには税も負担するんだ、こういう意識が高まってこない、こういうふうに私は思うんです。  今、課税権という考え方というのは余り言われてないですが、やはり一番大事なことは地方公共団体に課税権を持たせることだ、こういうふうに私は思っておるわけですが、まずひとつ、総理大臣、この行革の責任者でございますし。
  127. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 課税権ということ、どういう規定を考えるかということにもよりましょうけれども、税源が確保されなければそれぞれの自治団体として十分な働きができないということは、言うまでもないことであろうかと思います。  そういう意味で、国と地方とのことを考えれば、いわゆる国税と地方の税と分かれるわけでありますが、それぞれ県、市町村におきましてもそれの仕分けができておるわけでございますけれども、しかし、今後、自治団体としてより自主的に運営をしていくために、その財源を確保するための姿の中で、税源の配分の問題等試みながら考えていくということは、これは当然のことだろうというふうに考えております。  どの範囲のものをどうするかということは、従来、国際的にも国内的にも、俗に国税と考えられるもの、いわゆる国税三税ございますけれども、その他の税についての考え方というものはこれから自主的に考えていかなければならない。また、地方において独自に財源として考えるものがあれば、それは税源として考えていくことは望ましいと思っておりますが、自治団体におきましても、それぞれの状況というのは非常に差異がございますだけに、今日交付税というような形で税の配分を行っておるわけでございます。  長くなりましたが、基本的に、そういうものが必要かと言われれば、それは必要なことだろうというふうに思います。
  128. 平野博文

    ○平野委員 今、一部には確かに課税権があるんですよ。固定資産税とか、多少調整の幅は少ないですが、あるんです。ただ、地方税というのは、これは国が決めている国法ですから、やはり地方自治体が独自に、自立自主という考え方であれば、そこに、地方自治体が責任を持ってその自治を預かるんだ、そういう視点で国民にやはり負担感を持ってもらう、負担をしてもらう、そのかわりこの町はこう変えていくんだ、そういう意味の財源担保をとっていく権限を地方自治体に与えていくべきだと私は思うのですが、いかがですか。
  129. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 まさに御指摘のとおりでして、現在も、地方自治体は条例に基づいて課税が行われておるわけでございます。  地方税は、基本的には地方税法、つまり国の国会において、基本的な税目について標準税率などで規定をいたしております。しかし、多くの税目におきましては、その標準税率にだけ縛られるのではなくて、条例に基づいて上積み税率をして、先ほど言いました超過課税という形をとってみたり、あるいは法定外の普通税をみずから条例で定めるということは、現在も行われておることでございます。  今回、それに加えて、法定外目的税を新たにつくっていいという、これを創設したということでございまして、課税自主権を拡大するということは非常に大事なことだし、そのことは十分念頭に置いて、これからも国、地方の税財源の配分、地方財政の基盤強化、そういった枠の中で念頭に置いて、これからも検討していきたいと考えております。
  130. 平野博文

    ○平野委員 元来、総理大臣に、当初の地方自治に対する決意と考え方を聞きたかったわけですが、時間が少し変わられたのでこういう格好になって、十分な総理に対する質問ができなかったのですが、最後に一つ。  読売新聞に、きのう、介護保険の件で自由党の小沢党首が来年実施を批判、こういう記事がございました。やはりこれは消費税を含めた福祉目的税にして賄うということを小沢党首が発言されているわけでございます。  きのうの答弁を聞いておりまして、税でやるのか保険でやるのか、こういう議論になるわけですが、自自連立の中で、一方の党首がこういう発言をしている、一方保険方式でやっていこうとしている。こういう中にあっては、十分政策的一致がされておるのかどうか、この点が非常に気になるところでございますので、総理大臣並びに野田大臣にお聞きしたいと思います。
  131. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 小沢党首のみならず、自由党といたしまして、今御指摘のようなお考えを持っておられることについては承知をいたしております。  しかし、自自連立を組みまして、内閣をともにして責任を持っておる立場から申し上げて、このことにつきましては、政府といたしまして、今までのこの両党の話し合いの上に立ちまして、今日、予算を編成し、かつ提出をいたしておることでございますので、かねて来、小沢党首のお考えも承知をいたしておりますが、その点につきましては、現実の政策実行あるいは予算の編成ということになりますれば、当然これは十分両党の間において話し合いの上、決定をいたしておることでございます。連立の一方の党首のお考えではございますけれども、それは今日、予算の編成上は、連立の内閣の話し合いの上で成立しているものが、これがこの内閣の立場でございますので、御理解いただきたいと思います。
  132. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 昨年、党首間合意に基づきまして、平成十一年度予算編成の共同作業をいたしたわけでございます。そのときに、両党間で予算編成に関して、五項目について文書に基づく確認を交わしております。  該当する部分を申し上げますと、「介護制度については、平成十一年度末までに基盤整備実施主体の状況などを点検し、円滑な実施が図られるよう財源のあり方などを含め検討する。」いま一つ、「所得減税の方式等および消費税率のあり方については引き続き協議する。」いま一つ、「消費税はその使途を基礎年金、老人医療、介護に限定する。」こういう確認をいたしまして、これに基づいて予算総則で、今申し上げました第三番目について、消費税の使途について規定がなされたということであります。
  133. 平野博文

    ○平野委員 よくわかりにくいのですが、こういうものが出てきますと、やはり連立が一致していないのではないか、こういうふうに思いますから、非常に心配でございます。  時間が参りましたので私はこれで終わりますが、まだまだ十分御質問ができていませんので、長い審議をお願いいたしまして、質問を終えたいと思います。ありがとうございました。     〔杉山委員長代理退席、委員長着席〕
  134. 高鳥修

    ○高鳥委員長 次に、山本譲司君の質疑に入ります。
  135. 山本譲司

    山本(譲)委員 民主党の山本でございます。  早速質疑に入らせていただきますが、どうも総理は時間の制約があるようでございますので、まず最初に小渕総理大臣に、地方分権法案につきまして、絞って基本的なことについて何問かお伺いをしたいと思います。  さて、今回の提案をされました地方分権関連一括法案、これは言うまでもなく、地方分権推進委員会の一次から五次までの勧告、特にそのうち四次までの勧告、これを受けて昨年の五月に閣議決定をされた地方分権推進計画に基づくものであると思うんですが、この間の地方分権推進委員会の皆さんの大変な御努力に対して、心から敬意を表すると同時に、紆余曲折の末、法案を提案される段階にこぎつけられましたことを、やはり政府の方にもこの点は敬意を表させていただきたいと思います。  しかし、法案の個別の中身につきましては、まだまだやはりじっくり議論をして、修正をしなくてはならないと思われるところもたくさんありますし、また、今後の課題というのも数多く積み残されていると思います。その意味では、地方分権推進委員会は、これからもその役割というものを増してくると思うんです。しかし、分権委、地方分権推進委員会は来年の七月に任期が切れるということでございます。  そこで、総理に伺いますが、当然、この地方分権関連一括法案が成立をしたことによってすべてよしとは総理大臣は考えていらっしゃらないと思います。そこで、今後の地方分権推進委員会の役割、今後の活動状況をどのようにしてほしいとお考えなのか、これが一点。  そしてまた、この間の勧告の中でさまざまな提案がなされておりますが、それがやはりまだまだ課題として山積みになっております。今後の地方分権をめぐる課題について、これが二点目でございます。  この二点についてお伺いをいたします。
  136. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 まず最初の点でございますけれども、今後の地方分権推進委員会の活動につきましては、委員会の御判断を尊重してまいりたいというふうに思っておりますが、諸井委員長を初め、本当に熱心に御審議をいただいた結果、五次までの答申をいただいておりますけれども、今回法整備をいたしますのは四次までということでございます。地方自治をめぐる問題というものは、これは大変幅広く、かつ問題が多いことでございますので、その基本となる推進法に基づく基本的な考え方を取りまとめて、今回法律案としてお願いをいたしております。  こうした今回の御審議のいろいろな経過等も、恐らく推進委員会の諸先生方におかれても注目をされておられると思いますので、そうしたことの中で、今後委員会としてもどのように進めてまいるかにつきましては、その経過を見守ってまいりたいと思いますが、政府といたしましても、地方分権の一層の推進のためにこの果たしてきた役割を高く評価いたしますと同時に、今後ともの御指導をいただきたい、このように考えておる次第でございます。
  137. 山本譲司

    山本(譲)委員 まだまだこの間の勧告が法案化されていない、実際に実現をしていない問題はたくさんございます。  きょうの午前中の審議でも、例えば連邦制の問題はどうなのか、道州制の導入はどうなのかでありますとか、住民投票の自治法上の制度化でありますとか、あるいは首長、都道府県知事あるいは市町村長、この多選の禁止の問題、あるいは根幹の問題であります、分権を実質的に担保いたします税財源の地方自治体への移管の問題、こういった問題、たくさんございます。  どうも報道などによりますと、第五次勧告の提出に当たりまして地方分権推進委員会の諸井委員長は、委員長談話として、これは去年になりますが、七月中旬からの省庁調整は大変困難を極めた、こういうことをおっしゃっております。厭戦気分になられているのかどうかわかりませんが、ここはやはり、当然国会の場での議論、政治のリーダーシップと同時に、政治家であります小渕総理大臣の方から強い要請をしていただいて、さらなるさまざまな勧告を出していただくような機能をぜひ持たせていただきたいと考えております。  そこで、昨日も岩國委員の方から、地方分権を実質的に行っていくためには、財源と同時に、権限そして人間、この三ゲンセットの移管というようなお話がありました。しかし、どうもその人間、財源、これが逆に使われているんじゃないか。例えば例を挙げてみますと、中央省庁からの自治体への出向、これはどれぐらいいらっしゃるか、ちょっと数字だけ、どなたかわかりますか。  では、委員長、総理も時間がありませんので。  例えば自治省だけでも二百名以上の出向者がある。その他の省庁にしても、例えば二年半ほど前ですか、厚生省の出向者がある県で特別養護老人ホームを舞台に汚職事件を起こしたとか、これはどうもそういう補助金というひもつきのお金と一緒に人間も送り込まれているのではないかといった誤解も生じるわけであります。  この人的配置をして、相変わらず上下、主従関係というものを国と自治体が持ち続けるというような体制を続けていかれるのかどうなのか。こういった中央省庁の地方自治体への出向について、これは総理は今後どのようにお考えでしょうか。
  138. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 まず、ちょうど資料がございましたので、最初のお尋ねの、本省庁から地方公共団体への出向の数字につきましては、計一千百四十六となっておりまして、今委員が御指摘をされた自治省が二百四十三。これを上回る省としては、建設省の二百四十六が今の数字の内訳としては多いようでございます。  さて、今お尋ねの、中央省庁と地方公共団体との人事交流についてでございますが、国と地方公共団体との間の人事交流につきましては、相互理解の促進、人材の育成、組織の活性化等の面で意義があるものと考えております。  地方分権推進という考えも踏まえつつ、これまでの地方分権推進委員会の勧告や地方分権推進計画にも述べられておりますとおり、相互対等交流の促進を原則として、各地方公共団体との協議に基づいて行うべきものと考えておりまして、山本委員御指摘のように、最初から、中央から地方に人事交流があるから中央の集権的な物の考え方を即地方においてこれを実行するという意味合いでの交流ということでなく、今申し上げたように、本当に横の関係としても、その連絡を強調する意味でも、人事交流というのを必ずしも否定すべきものではない、こう考えておるところでございます。
  139. 山本譲司

    山本(譲)委員 私も、中央省庁から地方自治体に職員の方が出向される、これを否定するわけじゃありません。しかし、そこに補助金が絡むセクションですとか、そういうところに行くということがあらぬ誤解を受けるんじゃないか。そこで、補助金制度そのものも今後見直していくということによって、人事交流という意味で、地方自治体の方から請われて行く場合もあるでしょうから、そういう、主従関係という形ではなくて、対等のつき合いということであれば、私は、この交流ということは肯定できると考えております。  そこで、総理に最後の質問でございます。  先ほど平野委員からも触れられましたが、今回の地方分権、確かに多くの機関委任事務が地方自治体に自治事務として、仕事が、そして責任がおりてくる。そこで、これからこの地方分権がうまく機能すれば、どうもこれまで機関委任事務で国が地方自治体を、コントロールという言葉がいいかどうかわからないのですが、いろいろなことである意味で影響を与えてきた、しかし、これから地方分権が進んでまいりますと、これはまさに地方自治体に対して、住民でありますとかあるいは地方の議会というところが地方自治体をコントロールしていく、そういう時代に入ってこようかと思います。  そこで、住民が地方自治体のいろいろな施策に対して参加をする、NPO法案も成立いたしました、そういった行政施策への市民の参加、政策決定も含めてどんどんこれは拡大をしていくべきだと私は考えるんですが、その点について、総理の見解を伺いたいと思います。
  140. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 権限を受けた者はそれだけの責任を負うわけでありますので、そういった意味で、住民そのものが大きな責任を背負いながら、力を合わせて地方の発展のために尽力することは当然だろうと思います。  そこで、今回の法改正によりまして、国と地方の役割分担が明確になりますとともに、地方公共団体の自主性、自立性が大幅に高まってまいります。このことは、地方公共団体が住民の意向を踏まえて行政を進めることができるようになるということでもありまして、そういった意味で、住民自治の面におきましても大きな意義を有するものであると考えております。  なお、政府におきましては、地方分権推進計画を踏まえまして、引き続き、住民投票制度や直接請求制度の見直しの検討などにも取り組んでまいりたいと考えております。
  141. 山本譲司

    山本(譲)委員 国と違いまして、地方自治体の場合は、住民監査請求でありますとか、条例をつくる直接請求ですとか、住民の皆さんが、あるいは納税者の皆さんが手が届くところに自治体の行政があるだけに、責任も重いと思います。自治体もこれだけ大変な財政状況であります。国民の皆さんにも納税者の皆さんにも、ある意味での役割分担を持ってもらって、責任を持ってもらって、能動的にやれるような、行政と市民が対立関係にあるのではなくて、協調して何かをやるんだというような制度づくりというのを、やはりこの地方分権とあわせて、政府の方でも、あるいはこの国会の中でも積極的に考えていかなくてはならないと考えております。  そこで、今、地方自治体を住民の皆さんと議会がコントロールするというお話をさせていただきましたが、この地方議会、今回の改正で——私は、国会は立法機関でありますけれども、地方自治体の議会といえども、条例をつくったりする立法機関一つだと思っています。そういう意味では、議員の提案権というのが、議席の全定数の八分の一から十二分の一に改められるということは、大変意義のあることだと思います。  しかし一方で、自治体の中で定数を決められるとはいえ、これは地方議会からとってみれば機械的に上限が決められてしまう。これはどういう考えのもとに自治体の議会の上限を設定するということに至ったのか、まず御説明をいただきたいと思います。
  142. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 御指摘のとおり、地方公共団体の自己決定権という点からすれば、条例だけで、何の法律の制約も受けないで決められるということが一番望ましい方向であるのかとは思います。  ただ、今日まで、明治以来、法定定数制度というものが現に維持されてきたという歴史的な経緯があって、地方行政を取り巻く状況はそういうような状況で、やはり法律で何らかの基準を定めておくということは適当ではないか。そうはいいましても、法律ですべて決めるというのではなくて、せめて現行制度下において採用しております実質的な議員定数、これを勘案した上で人口区分ごとに上限を定めて、今までの法律で決める法定定数というやり方を変更したということでございます。  ただ、現在の法定定数ということではありますが、それぞれの自治体がみずからの自己決定権に基づいて減数条例を持って、かなりの団体が現に実行しておられるということも現実でございます。そういう意味で、この点は必ずしも自治体の自己決定権を侵害するものではないだろうというふうに考えております。
  143. 山本譲司

    山本(譲)委員 今、自治大臣のおっしゃった減数条例、これはもう九七%ぐらいが減数条例というのを現につくられているということを聞いたんですが、この減数条例によって議会の定数を決めていくということに、これまで何か不都合があったのかどうか。また、資料を見てみますと、上限定数を超える市町村というのは、市及び特別区でいいますと四十八自治体の議会、町村でいいますと六十一自治体の議会、計百九自治体でございまして、この国会の近くでいいますと、新宿区におきましては、現在四十四の定数が上限では三十八名になる。これは六名の減ですね。それから、港区、これは一名の減ですが、三十五が三十四になる。  この間、議員定数は、減数条例に基づいて地方議会の中でいろいろな議論をされている。特に最近、議員定数削減の市民の皆さんからの意見書でありますとかそういうのを受けて、議会がかなり突っ込んだ議論をされていて、それをまた住民の皆さんが、議会に傍聴に行ったり、さまざまな意見を議会に反映すべく努力をされている。  それは、やはり地域地域に合った議会構成というのはあるのじゃないか。新宿でいいますと、昼間人口と夜間人口がこんなに違います。行政のこなしていかなくてはならない政策も本当にたくさんありますね。にもかかわらず、こうやってばさっと切ってしまうということはいかがなものなのかということを、もう一度自治大臣の見解を求めたいと思います。
  144. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 確かに、同じ人口規模でも地域によってかなり経緯が異なったりすることがございます。そういう意味で、今回、法定という形よりも上限という形をとった方が好ましかろうということであります。ただ、逆に言うと、数日前、本委員会でも、もっと厳しく法定すべきではないかという議論があったことも事実でもあります。  そういう点でなかなかここは悩ましいところではありますけれども、そういう意味で、自己決定権ではありますが、上限そのものさえ取っ払ってしまえということが本当にいいのかどうかについては、法定定数という形よりは上限で縛るという形の方がよりいいのではないかというふうに実は考えております。  この点で、分権推進委員会の方の勧告は、「地域の実情等に応じた組織・構成の見直しが弾力的に行えるよう、人口段階を大括りにするなど、基準の一層の弾力化を図る。なお、この基準の見直しに当たっては、減数条例の制定状況を十分に勘案する。」というのが分権推進委員会の第二次勧告の内容であります。
  145. 山本譲司

    山本(譲)委員 海外の例などを見ますと、基本的に、州にしても市にしても、議員の数は自治体みずからが決めるというのが常識でありまして、ここで上限を設けるというようなことも、まずほかの民主主義の先進国にはないように、私は調べた結果認識をいたしております。議会というところは最終的に有権者から選ばれるわけですから、本当に野方図に定数をふやしていけば、そういうことを決めた議会自体が有権者から判断を下されるわけですから、この辺はやはり、余り上限という縛りをかけないようぜひお願いをしたいと思っております。  そこで、続きまして、先ほど中央省庁から地方自治体への人の出向ということを取り上げさせていただきましたが、補助金というのがやはりかなり、自治体が霞が関の省庁に物を言えなくしてしまっているのじゃないか、萎縮をさせてしまっているのじゃないか、そんな評価も当然あるわけではございます。  そこで、三月二十六日に閣議決定をされました第二次地方分権推進計画の中で、さまざまな補助事業の見直しとして、統合補助金制度というのですか、こういうものがこれから施行されるということに、そういう方針のようでございます。これは、個別補助金にかえて、適切な目的を付した統合的な補助金を交付し、地方公共団体に裁量的に施行させるということでございますが、この統合補助金制度の目的についてちょっと伺いたいと思います。
  146. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどもお話がございましたが、補助金というものを整理し、合理化しなければいけないということ自身は、もらう方も出す方も、総論としては従来から比較的賛成をしやすい課題であるわけでありますが、いざ各論になりますといろいろ困難にぶつかるということが何度もございました。  今度、おっしゃいますように、第二次の地方分権推進計画で統合補助金ということを言われて、これはひとつ何とか実現をいたしたいという考えで、先ほどお話のございました、今年の三月二十六日に閣議決定をいたしております。  その基本的な考え方といたしましては、国が箇所づけをしない、これがどうしても基本であると思います。つまり、地方の発意において箇所づけをすることができる、また、箇所づけをする。そういうことであれば、これは統合補助金ということになっていくわけでございますから、実現したいというふうに各省庁考えておりまして、さしずめ平成十二年度から、来年度でございますが、その創設をしようということで、どういう事業があるだろうか、それを所管する各省庁はどんなことであろうかということで、今大蔵省と各省庁と具体的な検討をいたしております。  したがいまして、ただいまの検討が進んでまいりますと、やがてことしの夏に行われるでありましょう来年度の予算編成に当たりましては、これをできるだけ多く実現をいたしたいということで、各省庁努力をいたしておるところであります。
  147. 山本譲司

    山本(譲)委員 この制度は、そうはいっても、最終的にやはり国の運用次第ということになろうかと思いますし、さらに、結局、統合といっても、さっき各省庁がというお話をされましたが、省庁間にまたがるような補助金が統合されるわけではない、省庁ごとの縦割りというのは残るのじゃないか。  この統合補助金制度の創設というのを前から言われていました高知県の橋本大二郎知事、これは高知県でやったみたいなんですけれども、十億円ぐらいみたいですけれども、市町村に対してやったわけですよね。将来的には県の部局の一つ一つの補助金を全部まとめてしまう、そんな方針のようですけれども、国の方でもそういった、一括して自治省あたりで、また地方交付金になるのかもしれないですけれども、いわゆるひもつきじゃないと受け取られるような将来的な補助金の姿にすべきだと考えますが、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  148. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨日も将来の財政再建について申し上げましたときに、このときにはやはり地方の財政も一緒に考えなければならないということを申し上げましたが、そのことにも実は関係のあることでございますが、やはり総論としては、国が一つ一つ自分省庁の補助金を持っていて、それで地方に影響を及ぼすと申しますか、そういうことはお互いに余り感心したことではありません、先ほどおっしゃいましたような人の行き来にもなりますので。  そういうことはやめたいなということはございますが、今そこまで大きく中央、地方を動かせませんから、今の間でも、やはり各省庁の間で重複するものは少し一緒にするとか、そういうことを中央でもやり、地方でもやりまして、とにかく、今回の予算編成に当たりまして、そういうことをできる限りやってみようと。これはお互い、ある程度譲り合うということも入り用ですけれども、同時に地方の方でも、いや、もうつまらないものをあれこれひもつきでもらって迷惑だという声はよく聞こえておりますから、何とかそういうことで地方分権推進計画の精神をあらわしてみたいというふうに考えております。
  149. 山本譲司

    山本(譲)委員 地方分権推進委員会の二次勧告の中では、かなりこの補助金改革ということで、原則五年で廃止でありますとか、そういう勧告がなされております。同時に勧告をされました、例えば法定外普通税の許可制の廃止でありますとか、自治体に対するこういう財政上の措置というのがとられているのですけれども、やはりこの補助金の問題も、今回の分権法にはなかなかその方向に、今答弁で、いろいろ大蔵大臣も前向きに今回の予算でも努力をされているという答弁でありましたが、ぜひ制度として、こういった地方分権推進委員会の二次勧告の精神というものを取り入れていただきたいと思います。
  150. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 したがいまして、今の統合のことと、それから、一遍補助金を設けますといつまでもだらだらそれが続くということにつきまして、最近は、新しく補助金を設けますときに、これは五年以内ですよと終期を設定するように、なるべく努めております。  それから、既にございます既存の補助金につきましても、終期をいつにするかということをその都度相談をするようにしておりまして、大分この点も考え方としては徹底してまいったように思い、努力をいたします。
  151. 山本譲司

    山本(譲)委員 次の質問に移らせていただきます。  次は建設省関係でございまして、きょうは建設大臣、出番が多いようでございますが、それだけ建設省は、この地方分権関係について、ある意味で許認可権も補助金もいろいろ持たれているということのあらわれではないかと思います。  そこで、自治体の職員の皆さんともいろいろなお話をさせていただきました。この地方分権によって、ある意味で大きな影響を受けるのは、あるいは前向きに期待をしているのは、都市計画の関係のさまざまな分権であるというようなことを率直にお話をされるわけでございます。  そこで、現在、市町村の都市計画で許可というものを必要とするのは、これはほぼ全部と考えていいのですかね。細かいのはあるかもしれませんけれども、いろいろな都市計画決定をする上で、市町村の独自の判断で最終的に決定を出せるのかどうか、まず伺います。
  152. 山本正堯

    山本(正)政府委員 お答えをさせていただきます。  市町村が都市計画の決定をしようとする場合には、広域の見地からの調整を図る、あるいは都道府県知事の定める都市計画との適合を図るということの必要がございますので、基本的には、ごく一部の都市計画を除きまして、都道府県知事の承認を得るということが必要とされているところでございます。こういう観点から都道府県知事の承認に係らしめている、こういうことでございます。
  153. 山本譲司

    山本(譲)委員 市町村が用途地域などを決定しようとするとき、これは都道府県に行って、まずいろいろ相談をするわけなんでしょうけれども、具体的に、市町村は現在都道府県に大体どの時点で協議に行くのですか。
  154. 山本正堯

    山本(正)政府委員 市町村の都市計画決定の手続でございますけれども、まず初めに都市計画の案を市町村が作成をするわけでございます。そのときに、公聴会の開催でありますとか、住民の意見の反映をして都市計画の案を作成するわけでございまして、その案につきまして公告縦覧をするということでございます。  そのときに、さらに関係の住民の方々の意見の提出があるという場合がございます。縦覧期間中に意見の提出が求められる、こういう格好で、その場合に、都道府県知事の同意を得て、市町村の都市計画審議会にその意見書も要旨を送付いたしまして、その市町村の都市計画審議会での議を経まして、都市計画決定をするということでございます。  したがいまして、承認の手続につきましては、都市計画の案の縦覧、それから、住民からの意見の提出の手続を経た後に、市町村が都道府県知事に対して承認の申請をするというのが正式の手続でございます。  ただ、都市計画の関係は住民の方々と大変密接に関係をするということでございますので、運用につきましては、案の公告縦覧の前にもいろいろな関係で、市町村が都道府県知事に内々のいろいろな御相談をすることはあろうかというふうに考えております。
  155. 山本譲司

    山本(譲)委員 今、現状を、これはすべてとは当然言いませんけれども、いろいろな方に伺いますと、これは建設省ではないですよ、都道府県ですが、縦覧の後に持っていったって、何をやっているんだと。これは知事が最終的に同意をしなければならないわけですが、当然市町村のそういう担当者が知事に会えるわけじゃないですから、大体若い担当者が出てきて何だかんだ言って、結局それに従わないと、一歩も縦覧だとかそういうところまでたどり着かない。どうもそういうのが現在の市町村と都道府県の関係のようでございます。  これが今回、都市計画関係は、この協議には同意が必要になってくるわけですよね。そうですよね。結局、また同じようなことが起きてしまうんじゃないか。やはりこれは、よほどその手続の問題、運用の問題というのを気をつけなくてはならないのじゃないか。  これは、行政と市民の間では行政手続法というものができましたね。そういうような何かルールというのが必要になってくるんじゃないか。分権をしましたといっても、これまでのように、同意を求めなくてはならない協議ですから、地方自治体の方から言わせると、これは一体何なのだ、やはり結局は許可じゃないかと。どう変わるのか。その辺のやはり運用のルールというのをぜひつくっていただければと思うのですが、どうですか。
  156. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 先生御指摘の点は、全く皆無ではないと私も思っております。  今までがそういうようなことでございまして、広域的な見地から調整をするということも必要でありましょう。それと、やはり都市計画というものでございますから、やはり基本的な規則といいましょうか、ルールというものの中で都市開発を進めていくということもまた必要でございましょうから、どうしてもそこで住民の声を聞くとか縦覧等々が行われるわけでございますが、先生御指摘のようなことを十分我々は意識して、本当に住民の声が反映されるべく指導をしていきたいと思います。
  157. 山本譲司

    山本(譲)委員 やはり、今の国の都市計画制度というのを見てみますと、どうも全国一律で画一的になっている。その結果、今、地域の町づくりを行う上で弊害になるような、マスコミなんかでも取り上げられているような事態というのはいろいろ起きていますね。産業廃棄物の問題でありますとか、あるいは農地への土捨てだとか、いい景観の場所にとてもその景観にそぐわないような建物が建ってしまう、山林開発といって一ヘクタール未満ならどんどん開発できるとか、それから有姿分譲というのがあるらしいですね、山のまま小さな単位で土地が売られる。こういったいろいろな、ある意味でその地方自治体にとって死活問題になるような、いわば乱開発でありますとかそういうのをなかなか国の都市計画法では防げないというのが現実だと思います。  そこで、これまで、こういった問題に対処しようと、自治体の方では、宅地開発指導要綱、こういうものをつくってきた。今、自治体のうち宅地開発指導要綱をつくっているのはどれぐらいの自治体ですか。
  158. 木下博夫

    ○木下政府委員 お答えしたいと思います。  御質問の宅地開発指導要綱につきましては、四年に一度調査をしておりますが、最新では平成九年末に調べておりまして、全国で千五百九十八、全市町村の約五割がこの要綱を策定しておりまして、マンションとかマンション以外のもの、あるいは、市街化区域あるいは市街化区域以外ということで、同じ市町村でも二つ以上の要綱を定めたりしておりますので、今、全国では千九百四十七制定されております。
  159. 山本譲司

    山本(譲)委員 昔から、宅地開発指導要綱が優先なのかどうなのか、それとも都市計画法、国の法律なのかと。よく地方自治体の中で、宅地開発指導要綱の中で、その自治体にとってふさわしくないものを防ぐために、宅地開発指導要綱の中身に違反した場合は、例えば道路を占用させないとか、あるいは自治体がやっている水道事業、こういう水道を通さないとか、いろいろなやり方で自治体は抵抗してきたようでございます。しかし、裁判になるとやはり業者の方が勝ってしまう。宅地開発指導要綱というのは、自治体の長あるいは行政側が決める問題で、正式な議会というものの手続、議会を通った条例と比べるとやはりまだ拘束力というのは弱いと思うのです。  そこで、今さまざまな自治体で町づくり関係の条例がどんどん生まれてきていると思うのですが、これは、七年ほど前の神奈川の真鶴の町づくりの条例、景観の条例でありますとか、自治体は大変苦労しているようでございます。  こういった町づくりに関する条例がどんどんできていっているという現状に対して、建設大臣はどのような認識でいらっしゃいますでしょうか。
  160. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 町づくり条例は、現在、三十七都道府県、四百八十七市町村において策定されているようでございまして、その内容は、拘束力を持たない宣言的なものから個別の土地の利用規制に関するものまで、多岐にわたっていると伺っているわけでございます。  そういうようなことでございまして、これも一律にいい悪いと評価するのはなかなか難しいところがあるわけでございますが、やはりこれも、一つの基本方針を定めたり、その中で住民の方々の意識といいましょうか、住民組織を位置づけるというような意味での積極的な住民の主体的な参加によって、先ほど先生言われましたように、全国はユニホームな、画一的な町づくりではいけないわけでございまして、個性ある町づくりをするためにいい方向でこれがつくられるということであるならば、進めていくべきではないかな、私はそう思います。
  161. 山本譲司

    山本(譲)委員 一時、こういう条例ですとか宅地開発指導要綱に対して、建設省が通達によって、余り縛りをかけるような要綱をつくるなと。現場の自治体としてみたら、市民からいろいろな苦情が来る、しかし、それを認めなくては今度は建設省の方からおしかりをいただくんだ、この板挟みで大変な苦労をしてきたようですが、今回の地方分権によってこういった自治体独自の条例というものがつくりやすくなるのかどうなのか。これは影響を与えますでしょうか。
  162. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 私は、そういうものがつくりやすくなる方向に指導していかなければならないと思うわけでございます。今、とにもかくにも少子・高齢化という社会にもなってきておるわけでございまして、この都市計画法が施行されましてから三十年を経過しておるというようなことでございます。そういうような中で、一人一人の所得水準がもちろん上がってまいりましたし、あるいは車社会というような社会にもなってきておるわけですから、その中での道路の位置づけ、あるいはまた、いわゆる弱者に対しまして温かい方策も打ち出していくべき時代でありますから、そういうようなことも含めましたら、私は、こういうようなことはいい方向に進めていくべきだと思います。決して建設省が押さえつけるというようなことはしないようにやっていきたいと思っております。
  163. 山本譲司

    山本(譲)委員 最近、長野県の穂高町という自治体でやはり町づくり条例ができまして、これは、農地転用がされてしまうと開発を拒否できないわけなんですが、農地転用の段階で、町の権限で、それが町に合った農地転用なのかどうなのか検討していこう、そういう条例のようでございます。これは、本当に基礎的な自治体だからこそできたんだと思います。これがまさに地方分権だと思うのです。  この条例をつくる前に、町では土地利用調整基本計画、これは建設大臣、もう一つ国務大臣であります国土庁の方でやられている、大変いい制度だと私は思っております。要は、そういう制度をそれぞれの自治体につくってもいいですよ、補助金も出しますよ、こういうことを国土庁の方で推進をされている、大変いいことだと思います。どうも、聞くところによると、これに対して建設省や農林水産省が消極的じゃないかと言われているんですが、これは兼任をされている大臣でございますので、ぜひ、こういう自治体の中でしっかりと利用計画を定めていくということを推進していただきたいと思います。そうはいっても、平成九年度からの事業でありまして、まだ三十何市町村ぐらいしかやっていないですが、ぜひこういった制度を拡大していただきたいと考えております。そのことによってやはりそれに合った条例というものもどんどんできてくるでしょうし、ぜひ建設大臣によろしくお願いをしたいと思います。  そこで、これは私も何回か建設委員会の中で、それぞれ建設大臣等との質疑の中で、いわゆる条例が法律の上乗せあるいは横出し、こういうものが認められるのか、法的にどうなのかというような議論もしてまいりました。昨年一月の都市計画審議会の報告の中では、上乗せ条例は問題だが、町づくりの手続について条例によって詳しく定めていく、これはいいんじゃないか、こういうことが記述をされているんですが、このことについて建設省の見解を伺いたいと思います。
  164. 山本正堯

    山本(正)政府委員 お答えをさせていただきます。  今先生御指摘のように、去年の一月、都市計画中央審議会から答申をいただきまして、その中では、公聴会の開催など、住民の意見の反映措置というようなものについて、そういう決定手続については都市計画決定権者の判断にゆだねられるものである、こういうことでございまして、「手続きをより具体化したり加重的に行うことについて条例を制定することはあり得る」、こういうふうに御指摘をいただいたところでございます。  これを受けまして、私ども、都市計画決定手続のあり方、条例との関係等につきまして、都市計画中央審議会に計画制度委員会を設けまして、その項目も含めまして現在検討させていただいている、こういう状況でございます。
  165. 山本譲司

    山本(譲)委員 私の聞くところでは、この手続、専門家はデュープロセスと言うようですが、最近、市町村の条例でこういった手続を定めているものがあるようでございますが、その中では、議会が町づくりの最終判断ができるというような制度を条例で定めているところもあるようでございます。このような事例がふえるような、これは分権と同時に、こういった都市計画面での手続を民主的にあるいは公開制でやっていく、そういった条例をつくるような、そんなことを広めるような制度を、法律になるのかどうなのか、これは建設省としての姿勢なのかもしれないですけれども、ぜひ前向きに取り組んでいただきたいと思います。  そこで、今回、市町村の都市計画審議会、これはこれまで任意だったわけでありますが、しかし、都市計画区域がある自治体の九割ぐらい、二千ぐらいの自治体で既に設置をされている、これが来年四月から法定化をされるということであります。  これまで、都道府県の都市計画審議会、これを見てみますと、いろいろきめ細かい、構成メンバーでありますとか運営についてだとか、そういうことを政令によって基準を地方自治体に定めているようでございますが、市町村においても法定化をされる、これは都道府県とどう違ってくるのか、これが気になるところでございます。  今、都道府県の都市計画審議会、これは議事録は大体公開をされているんですか。いかがでしょうか。
  166. 山本正堯

    山本(正)政府委員 お答えをさせていただきます。  公開をされておりますものと非公開でやられているというもの、両方ございます。具体的に数字を申し上げますと、審議会の公開につきまして調査をいたしました結果、公開しているのが二十二でございます。非公開にしているのは二十四、無回答が一で、四十七ということでございます。半分半分であろうかというふうに思っております。
  167. 山本譲司

    山本(譲)委員 法定化をされている都道府県の審議会で半分ぐらいが非公開になっている。  実は、これは中央審議会の議事録でありますが、本当はもう第五十五回都市計画中央審議会の議事録というのは出ているはずなんです、これは五十四回ですけれども。この五十五回についてその議事録を、これは公開だからいいんだ、これは総会ですね、この議事録を出してくださいと言ったら、委員の人たちに全部断らなきゃならない、それでこの内容を見せて最終的にオーケーが出ないと見せられない、こういう答えでございました。  私ども国会の中で、これは公開でやっていますよね。国会の議事録を一々全部見せて、これでいいですかなんていってそれを公開するという手続はとっていないと思いますね。どうも、この中央審議会にしても都道府県の審議会にしても、原則公開と言いながら非公開性が強いんじゃないかと思います。  現在、市町村でやっております審議会の中では、市民からの公募でありますとか、あるいは場合によっては会議そのものを公開しているような自治体というのもあるやに聞いております。それが逆に法定化することによって非公開性というのが高まるんじゃないか、そんな危惧さえするわけでありますが、その点について、一番身近な自治体であるだけに、それは運用についてはいろいろあると思いますよ。都市計画の問題ですから、細かいところについて利害関係だとかそういうところもあるかもしれませんが、全体の町づくりの件については公開をどんどんしていく、そしてまた、その委員のメンバーも公募も含めて行っていく、今回の市町村の都市計画審議会の法定化に当たって建設省はぜひそういう姿勢で臨んでいただきたいと思いますが、建設大臣、いかがでしょうか。
  168. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 先ほどの地方の審議会でも半分が非公開であるというようなことでございますが、今までは往々にして、どうしても土地等々の関連が多いものですから、個人的な問題があって公開にしていなかったというところが多々あったと思いますが、もう今はそういう時代でもございませんし、この審議会は本当にすべてオープンにやっていくというその方向、またそれが地方分権一つの向かっているところでもあると私は認識をしておりますから、そういうふうに努力をしたいと思っております。
  169. 山本譲司

    山本(譲)委員 なかなか時間がありませんが、今回、一括で法案が審議をされるわけですが、膨大な数の法律になってまいります。  やはり、この間の経緯を聞いてみますと、地方分権推進委員会の勧告が役所の抵抗によってそのまま実現できなかったというような例もあるやに聞いております。やはりきっちりと地方分権を、本当の意味での地方分権推進していくには、やはり国会が、国権の最高機関でございます。それは役所と相談しても、自分の権限を手放すということはなかなかできない、これはわかります。やはり国会の場でしっかりと議論をし、修正すべきは修正をする、そういった方針でぜひこれからのこの委員運営を行っていただきたいということを最後に委員長に申し上げまして、私の質問を終了させていただきます。
  170. 高鳥修

    ○高鳥委員長 次に、佐藤茂樹君の質疑に入ります。
  171. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。当委員会、実は、昨年度の締めくくり総括に続きまして質問をさせていただきます。  きょうは初回でございますので、両法案につきまして質問をさせていただきたいと思いますが、結論から申し上げますと、大きな二つの法案地方分権一括法案中央省庁等改革法案、それぞれ見ましたときに、地方分権一括法案という方は、やはり一つは、明治以来百年続いてきた機関委任事務の廃止に象徴されるように、自治体に対する中央の極めて集権的な関与のあり方というものが今回緩和されて、先ほど来、官房長官とか各大臣も言われていますが、上下、主従関係から対等な関係へ一歩前進したという点では非常に画期的な法案である、そういう評価を一面で持っております。  他方、しかしながら、自治体への権限と財源の移譲を推し進めて、中央省庁行政スリム化という点ではやはり不十分であったのではないのか、そういうことを私は一点感じております。  それと同じように、中央省庁等改革法案を見ましたときに、一つは、やはり今までの官主導のそういう政策運営から政治主導に切りかわる、こういう点では大きく前進しますし、さらには、今まで官僚がされておった裁量行政が法的にできなくなりまして、極めて透明な行政が進められる。そういう利点もある反面、もう一方、やはり大事な観点というのは、本当にこの二十一世紀にふさわしい、簡素で効率的な政府が、果たしてこの法案、去年の基本法、プログラム法にのっとってできてきたのですが、それによってできるのか。  特に、一つのポイントとして、肥大化する一方だった中央省庁を大くくりに再編されているわけですけれども、そのときに同時にやらないといけないのは、実施部門の本庁からの分離はもちろんとして、民間移譲であるとか民営化、そして地方分権化ということがやはり行政スリム化の大前提になるのではないのかな、そこの部分で一つまだ不満足な点がある。  そういう観点から、まず最初にお聞きしたいのは、特にその象徴的なあらわれとして、中央省庁等改革法案によって、国土交通省、総務省、そして厚生労働省などの巨大官庁が幾つも誕生する。  その中で、きょう、特に総務庁長官にまずお聞きしたいのは、この国土交通省は、母体となる建設、運輸などの四省庁を合わせると、正確な数字ではありませんが、約九兆八千億円の公共事業関係予算のうち、七兆二千億ですか、約八割、七九・三%に当たる、そういう予算も占めますし、許認可件数も二千五百件を超える。そういう群を抜く予算と権限を集中させた巨大官庁になるのではないのか、そういう懸念が、マスコミ等も含めていろいろと指摘されているわけでございますが、この点は、実は今に始まったことではなくて、去年の基本法、これはプログラム法ですけれども、それを制定したときから言われておったことなんですね。  そこで、改めて、きょうこの時点で確認したいのは、何のために、またどのような理念考え方に基づいて、そういう批判も受けながらも、この四省庁を統合させて国土交通省というものをおつくりになったのかということをまずお伺いしたいのですが、総務庁長官が雄弁なのは、前長官に劣らず雄弁なのはよくわかっておりますので、ほかに聞きたいこともありますから、簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  172. 太田一男

    太田国務大臣 省庁行政目的別に、つまり任務に応じて大くくりに再編成するというのが今回の中央省庁改革の目的でありまして、まさにその典型的な例が国土交通省でございます。  すなわち、同一の目的、あるいは重複をしている目的、あるいは競合する目的ごとに束ねるということでございますから、国土政策という観点から見れば、運輸省と建設省は同じ目的に対してその役割を果たしていると見ることができるわけでございます。  そこで、大くくりにしたことによって、そこが整合的に行われるようになれば、整合的に選択が行われるようになれば、その広い範囲の中から優先順位を決めることができますから、例えば、新幹線をとるか、それとも高速道をとるかということを、その地域はどちらかを選ぶことができるわけで、それは別々にしておくと、半分ずつ両方ともつくるということになるわけでございますから、合理的な選択ができるようになる、こういうことでございます。
  173. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 今の長官の答弁というのは、いい点を非常に強調されたと思うのですね。  確かに、政治がリーダーシップを発揮して、今までばらばらになっていたものを一くくりにして、政策判断として合理的に選んでいく、この点だけが強調されれば非常に生きてくるかと思うのですけれども、他方、やはり問題なのは、冒頭から指摘しておりますように、今までの仕事、または権限をそのままにしておっていいのかどうか、そういうことなんですね。それはもう聞きません。またおいおい流れの中で聞きますが。  そのような懸念を生む一つの大きな去年からことしにかけての動きの中で、地方分権推進委員会の第五次勧告がまとまるまでの過程、ここにやはり一つの、今回、地方分権改革というか、そこの挫折があったのではないのかな、そのように私自身は受けとめておりまして、千載一遇のチャンスをもしかすると政府は、政府というか政治の側が逃したのではないのかな、そういう気がしているのですね。  何が大事なのかというと、後で振り返って最も問題になるのは、あの第五次勧告によって国の直轄事業がどの程度縮減されたのかということ、つまり、省庁スリム化にあの勧告によってどの程度結びついたのかということが極めて疑問であるということを私は指摘しておきたいと思うわけでございます。  既に皆さん御存じの方ばかりなので、あえて言いませんけれども、九七年の十二月に行政改革会議の最終報告が出たときに、同じような批判があったのですね。省庁の数は減っても行政スリム化につながらないのではないのか、そういう批判がありまして、それを受けた当時の橋本前総理が、事務、権限の地方への一層の移譲について検討してほしい、そういう特別の要請を受けて、地方分権推進委員会が、主として公共事業の国と地方の役割区分について議論を始められたわけでございます。  それ自体は私は正しい作業をされてきたと思うのですが、ところが、各省庁の聖域とも言われる公共事業に作業の手を入れた途端に、関係省庁やいわゆる族議員と言われるような人たちが大変反対した。これは従前にない大変な抵抗であったというようにも報道されているわけですね。その報道ぶりというのは、後でまた時間があったら詳しくやりますけれども、ちょっと聞くにたえない、そういう評価が実は政府の側にされておりました。  発足して間もない小渕政権ですから、いろいろな政策とか懸案はあったと思うのですけれども、例えば、二、三例を引いてみますと、これは十一月二十二日の朝日新聞、十一月十九日に勧告があって、その後ですけれども、「問題は、橋本氏を引き継いだ小渕首相が分権に熱意をみせず、そのことが族議員や官僚を勢いづかせたことだ。中央省庁はこぞって反対し、分権委員会のヒアリングを足踏みさせた。対案もぎりぎりまで出そうとしなかった。」朝日に対して、今度は産経新聞。本来なら違う論調になっていいはずのものが、次のように言われているのですね。「しかし、第五次勧告にあたって小渕恵三首相や小渕内閣の閣僚が指導性を発揮した形跡はほとんどない。」ほかは時間がないので読み上げるのはやめますが。  そこで、官房長官に確認というか所見を承りたいのは、私は、小渕内閣の閣僚が指導性を発揮した形跡はほとんどないというのは、事実関係をしっかりと見たらひとつ間違いであったのではないのかなという気がしているのです。特に、九月の二十五日に官房長官が、太田総務庁長官も同席されたそうですけれども、公共事業官庁と言われていた農水省、中川農水大臣ですね、さらに川崎運輸大臣、そしてきょう来ていただいていますけれども関谷建設大臣の三閣僚と会談して、第五次勧告の取りまとめに向けて各省庁の協力を要請した、そういうことになっているわけです。それによってやっと最終的に勧告にこぎつけたのではないのかなとも言われているわけです。  その辺、裏舞台の最終調整に当たられた官房長官にぜひ伺いたいのは、特に官房長官は地方自治で大変豊富な経験を積み重ねておられた方でございますので、大変な熱意を持ってされたのだとは思うのですが、中央省庁の抵抗、そして推進委員会との対立ですね、この辺も十分把握されていたと思うのですけれども、そういう事実を具体的にどういうように内閣としてとらえておられたのかということと、そして、結果として第五次勧告の内容についてどういう見解を持っておられるのかということが二点目。  そして、冒頭ちょっと披露しましたけれども、マスコミが酷評するような程度の、例えば小渕首相とか小渕政権の地方分権に対する熱意なのかどうなのか、そのあたりにつきまして、あわせて官房長官にお伺いしたいと思います。
  174. 野中広務

    ○野中国務大臣 地方分権推進委員会の第五次勧告につきまして、今委員からさまざまな御意見なり御質問をいただいたわけでございますが、当時を振り返りまして、私どもといたしまして、私は今委員から御指摘いただきましたように、特に地方自治を長い間やってまいりましたが、あの第五次勧告を見て、むしろ受け皿になるべき地方公共団体の混乱がございました。  というのは、例えば国道五十八号線以下は全部都道府県の所管とするとか、県内を一つの河川とするのは全部地方に渡すとか、こういう具体的なものが出てまいりまして、それぞれ地方で行政をやっておる者は想像もできないことが勧告の中に織り込まれておる。自分たちは今まで、いかにして主要地方道を国道に昇格させるか、それが地方に対する自分たちのエネルギーであり、そしてそれが自分たちの力量を示すものだとやってきたのが、これを丸ごと抱えなくちゃならぬという、むしろ地方公共団体側にあの勧告で大きな戸惑いが出てきたのは、私は正直なところ想像できないほどでございました。  したがって、各省庁がそれで反乱を起こしたとかそういうことではなしに、地方の声が非常に高く戸惑いとなってあるいは不安となってあらわれてまいりましたことは事実でございます。  そういう中で、諸井委員長初めそれぞれ地方分権推進委員会の先生方もまた各省との御協議をいただきまして最終的なお取りまとめをいただいたわけでございまして、結果的に、統合補助金等を含めまして、ある程度、当初の案の状態とは異なった結果でございますけれども、あのまま行っておったらとても、地方はむしろ分権への勢いを失ってしまったというようなショッキングな状況でございました。  したがいまして、私がたび重なる答弁で申し上げておりますように、これは地方分権のある意味において一里塚でございます。これですべてが道筋があくわけでなく、これから我々は幾つもの山を越えて真の地方分権を確立しなければならないというのは、国、地方を挙げての課題であると考えておる次第でございます。
  175. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 官房長官に地方自治に対する情熱も含めた御答弁をいただきましたので、官房長官、公務お忙しいでしょうから、もう結構でございます。  それで、今、全体を通しての観点、特に地方が戸惑いがあったというお話をいただいたのですけれども、我々実は地方分権推進委員会のあり方自体も問題だと思うのは、密室でいろいろ各省庁と協議されておったがゆえに、我々はそこから漏れ伝え聞くところの新聞等を通じてしか、大分混乱しておるな、そういう点がわからない部分が実はあったわけですね。  そこで、今になってで申しわけないのですけれども、きょうは建設大臣お越しになっていただいておりますので。  先ほど官房長官が、問題になった点等について内容を言われましたけれども、昨年の八月の時点で地方分権推進委員会が「論点の整理」をまとめられました。今、官房長官からありましたように、例えば象徴的なものとして、道路の直轄は、約四百六十六線ある国道のうち、国道一号から沖縄県を走る国道五十八号までと高速道路に限定して、それ以外は地方管理とする。河川も、大規模なダムと災害復旧工事を除いて、百九の一級河川のうち、国直轄は複数の都道府県にわたる水系などに縮小し、そのほかは都道府県管理の二級河川にする。  大体道路と河川が象徴的に出ていると思うのですけれども、こういう論点整理に対して、何が原因関係省庁が強い抵抗をお示しになったのか。抵抗なのかやりとりなのかわかりませんが、例えば、分権委員会の西尾座長がやめられた。これはこの委員会でも冒頭田中委員の方からもありましたけれども、そのときの話、どういう話をされているかというと、これは十二月四日の読売新聞によると、西尾氏は次のように言っている。「「特に建設省から交渉役として認められなかった。こういう状況でうまくいくはずがない」と憤慨、委員はそのまま続けるが、座長辞任の意思は固いという。」そういう報道まであるように、何らかのものがあったんだろうと私は思うのですが、具体的に、そういう感情論は別として、論点の整理を分権委員会がされたその項目について、建設省としてはどういう見解を持っていろいろ交渉されたのか、伺いたいと思います。
  176. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 まず、一つの例示として先生がお示しになられましたように、例えばその一級国道につきましては、国道一号線から国道五十八号線に限定して直轄にして、その他は全部地方道にするというようなことがございましたが、私はあの時点でも、そのことでも、別に建設省の立場であるとかどうとかそういうようなことではなくして、一政治家として、そんなことが地方から求められているのであろうか。そういうことは一切ございませんし、かつまた、国道は、その他の国道におきましてもこれはやはり国が直轄で扱うべきものである。例えば一号から五十八号以外となりますと、北海道などは全部地方道になってしまうというような現状もございます。そういうようなこと。  それから、河川にいたしましても、小さな河川、二級河川というのは地方に任せておるわけでございまして、今残っております一級河川が直轄でございますが、これはやはり私は国として扱っていかなければならないのではないかな。例えば、比較が的確でないかもしれませんけれども、やはり防衛であるとか司法であるとかあるいは教育であるとか、そういうものは国が一括で縛ってやっていくべきだと私は思います。  そのように、やはり一級国道であるとか一級河川などというのは国が管轄すべきそのものである、またそういう性質といいましょうか性格のものである、私は素直にそのように思いましたから、西尾座長がそういうようなことを言われたというときには、これは余り現実を認識されてない、いわゆる優秀なお方であるなというふうに私は思いまして、そういうようなことを正直述べさせていただきましたし、そういう考え方でもって、るる意見は発表をさせていただいたということでございます。  ですから、そういうようなことを推進委員会におきまして建設省の役人は正直に述べさせていただいたという報告を伺っております。決して、建設省がその方に対してどうこう威圧的なことをしたということは、これは本当にございませんので、御理解をいただきたいと思います。
  177. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 今やりとりしていると、総理が全権を託したその分権推進委員会といえども、なかなかその地方の本当に求めているようなものに合わない、そういう部分も勧告の中等に入れようとして論点整理された部分もあるのかなという実態は、確かに官房長官であるとか建設大臣答弁の中でいろいろうかがい知れるところなんですけれどもね。  そこで、そういう、地方まで巻き込んでどういうように分権推進をしていくのかということが今後の課題になっていくんではないのかな、そういう感じがするんですね。一次から四次までの勧告というのは、伝え聞くところ、特定の自治体では反対という人もいるかもわかりませんが、大体、私の知っているところ、地方分権推進委員会のこの勧告と、またそれに基づいた計画に対しては、地方自治体、いわゆる六団体と言われているところが大変バックアップした、そういうように伺っているわけですね。ところが、今回については、公共事業のことになってくると自治体で大変足並みが乱れたと。  その部分をきょう、通告しているので、あえてやりますが、総務庁の広報誌、これは十一月号の「MCビューズ」という広報誌なんですけれども、それで、総務庁長官がインタビューに答えられて、その当時の模様をこういうように言われています。   地方分権推進委員会が多くの国の事務・事業をできるだけ地方に譲ったらどうかといった方向での議論を行っています。   それに対して、ある市長さんからは、是非それを実現すべきであるという御意見を聞いたりするんですが、一方で、相当数の県知事さんや市町村長さんたちがそれはやめてくれという陳情に来られるんです。やってくれという人は本当に少なくて、あとはやめてくれと来るわけです。それで私なども大変戸惑っているわけです。 地方の戸惑いがそのまま総務長官が戸惑っておられる、そういうインタビューなんですけれども、そういうことも含めて、分権に対する地方の意識を高めていく、またこっち側の勧告等で出すものも、そういうものに合ったものにしていくという、その辺がこれからはやはり大変な作業になっていくなと。その辺で、地方のそういう分権に対する意識をいかにしたら高めていけるのか、また今度どういう対策を打っていくべきと考えておられるのか。本来、自治大臣も関連するんですが、あえてこのインタビューにこう答えておられるんで、まず総務庁長官の所見を伺いたいと思います。
  178. 太田一男

    太田国務大臣 総務庁とそれから自治省と大蔵省が、実はこの分権推進委員会の、あえて言うとその担当の省庁になっておりまして、今、自治大臣おられますが、私がそのときにいたものですから、いつもこの話になると私が出てくるわけでございます。  結局、これは正直に申し上げまして、本当に一部の限られた大都市の首長さんだけが大歓迎ということで、一般の地方の市町村長さんたち、あるいは県知事さんたちからは、来られる方、来られる方、ほとんどすべて反対ということでありました。それはもうやむを得ないことであって、問題はここに客観的にあるわけです。どこのものでもなく問題はあるわけです。その問題を自分たちの相当の負担において解決するのか、自分たちは負担しないで国の負担において解決するのかといえば、それはお金がかからないわけだから、国の直轄でやってくださいというふうに今までさんざん要望して、やっと実現してきたことでございますから、そういうふうに考えるのはやむを得ないわけであります。  ただ、もう少し、そういう市町村長たちの、現実の、日々のこれまでの行政に対する取り組みではなくて、我々が、つまり政治家の方から、あるいは広く国民が、国全体を視野に置いて考えるとすれば、それは財源の配分を最初から考えて、地方分権が成り立つようなことを財源ともども考えていかなければいけないということではないかと思います。
  179. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 まさに私も長官のお考えと一緒で、例えば公共事業一つとっても、そういうものを含めて、そういう権限と財源とセットで、両方をどうしていくのかというのが、実はまだ今後の課題として残っているわけです。  その中で一つ、第五次勧告、さらにそれに基づいてできた第二次地方分権推進計画、これを見ると、やはり今までの議論も含めて、今後しかしどうしていくのかなと。どうしていくのかなというのは、特に直轄事業の見直しの基準づくり、これが結果として、第二次地方分権推進計画の三ページには、「範囲の見直しの具体的な内容については、今回の計画を踏まえ、関係審議会等において早急に検討し、結論を得ることとする。」と。そういう、早急に検討し、結論を得ることにしているんですが、ただ、関係審議会等においてということになっているわけです。ここがもう最終的に腰砕けになっている部分だなという実感を私は持つわけですね。  なぜそう思うのかというと、この審議会自体が、四月二十七日の中央省庁等改革のための基本方針の中でも言われているんですが、もう整理合理化していきますと。何で整理合理化していくのか。いろいろな批判がある。一つは、縦割り行政を助長しているという、そういう弊害がある。もう一つは、官僚の隠れみのになっているという、そういう批判がある。そういうように言われている審議会、例えば道路審議会とかそういうところかもわかりませんけれども、そういう省庁抱え込みの審議会で果たして自分たちの省庁の権限を縮減するような、そういう基準づくりというものを最後まで任していいのかどうか。本当にそういう思い切った基準が出されてくる、そういうように政府として考えておられるのかどうか、その辺の所見を賜りたい。  私は、審議会任せというのは大いに疑問があるなというように思うんですが、そのあたりについて長官の答弁をいただきたいと思う。
  180. 太田一男

    太田国務大臣 変な話ですけれども、審議会を整理合理化をいたしますのは平成十三年の一月から、すなわち二十一世紀になったらやる、二十一世紀冒頭からやると。今は二十世紀ですから、二十世紀の間は、ちょっと私もおかしいと思ってはいるけれども、この今までのやり方を続けていかないと。そのために期限を切って、ここからスタートすることにしたわけでありますから、それまでは、まどろっこしいけれども、これは今の審議会でやっていただく。それを信用できないとか信用できるとか言っても、既に五次勧告に同意したときに、今のその現体制、さっきの公共事業三省の体制の中でそういう合意ができているわけでございますから、そこは心配ないと思います。
  181. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 そういう同意したからそうなんだということですけれども、私は、本当に地方まで期待するような、そういう基準づくりが審議会任せでできるのかというのは、本当に疑問であるということだけ、また次回、機会があったらもう一回議論したいんですが、指摘しておきたいというのと、もう一つは、しかし、やはりこれは二十一世紀の国のあり方をどうするのかということで、そんな時間をかけてどうこうしていく、そういうものじゃないと思うんですね。いつまでに、明確な計画に基づいた直轄事業の基準づくり、そういうものをされようとしているのか。  計画の中を見ていると、平成十一年度措置予定とかいうのが括弧の中に入ってずらっと並んでいるんですけれども、このとおり、平成十一年度中に全部ほとんど基準づくりをやりますよということなのかどうなのか、政府の所見を伺いたいと思います。
  182. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 私の関連の直轄事業の問題でございますが、これは先生御指摘のように、審議会においてこの結論を得るものとされておるわけでございまして、これを受けまして、現在、河川審議会及び道路審議会におきまして検討を進めていただいているところでございまして、建設省といたしましては、七月にも答申を得まして、それを踏まえて速やかに指定基準の策定に取り組む予定でございます。
  183. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 七月にも答申を得て、それに基づいてやるという明確な答弁をいただきました。きょうは建設省だけお越しいただいたのですが、多分他省庁もそう変わらないであろう、そういう認識を持っておきたいと思います。  そこでもう一つ、きょうは、これは各大臣とか長官にお聞きするのがいいのかどうかあれなんですが、政府全体の取り組みであるし、また地方分権推進委員会自体のことにもなるのでしょうけれども、そういう今後の地方分権推進をどういう形で進めていくのかということなんですが、もう既にいろいろ言われていますが、任期は来年の七月まで。地方分権推進法自体も、時限立法ですから来年の七月に消えてしまう。  しかしながら、いろいろこの期間でも議論していますが、公共事業を含め国の権限とか財源の移譲、そういう分権の本当に本丸部分の中心課題についてはこれからどうするのかというのは、これがまだ残ったままなんですね。それを本当に考えたときに、今までが、地方分権推進改革というのですか、そういうものの第一ラウンドとすれば、これから二十一世紀に向けて第二ラウンドだと思うのですけれども、この第二ラウンドを、具体的にどういう形で地方分権推進を進めていかれるのか。今までのような地方分権推進委員会に主力として任せていく、そういう方式をとられるのか。それとも、全く地方分権推進委員会とは別のやり方地方分権推進というものを進めていこうという考えなのか。どういう体制を考えておられるのか、関係大臣の方にお尋ねしたいと思います。
  184. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 これは、先ごろ総理から似たような質問で御答弁がありましたので、全省庁に実は共通する課題でありますので、私から申し上げるのがいかがかとは思いますが、いずれにせよ、地方分権推進委員会の任期が来年の七月まで現にあるわけであります。  今日まで五次にわたる勧告を、精力的に作業を進めていただいた結果、お出しをいただいた。今現在、それに基づいて、四次までを今回一括して法案化してお願いをしている。第五次勧告部分については、三月に閣議決定をして、その勧告の線に沿って必要な手当てを今実行中である。そういう意味で、とりあえず、今日まで勧告をちょうだいした事柄をどうやって具体的に実行に移すかという作業が同時に伴わなければならぬということで、今まさにその作業に全精力を注いでいるという状況にございます。  しかし、これで一〇〇%、耳をそろえて地方分権推進のためのシナリオが全部でき上がったかというと、まだ残っている。そういう点で、残された部分、財源の問題もございますし、そういった部分をどうやっていくのか。それから、ある意味では、今それぞれこれから法律に基づいて実行に移していくわけでありますが、言うならそれについての進行管理的な部分を、フォローアップをやるのかやらないのかということをも含めて、来年の七月までの間にまた十分検討して、必要な対応をしてまいりたいというふうに考えております。
  185. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 では、地方分権推進委員会のこの勧告と計画についてはこれまでにいたしまして、地方分権一括法案の部分で、きょうは建設大臣お見えなので、このテーマだけ質問をさせていただいて、後は退室していただいて結構かと思うのですが、今回、法定受託事務と自治事務に分けられた中で、一つだけ異質な制度が僕はあるというように、全体をさっと見て思ったわけです。  それは何かというと、建築基準法改正案の中での直接執行制度というのが新たに設けられているわけです。一昨日来、当委員会で話題になっているのは、国の関与の基本類型の中の自治事務に対する是正の要求という点がいろいろ話題になったのだと思うのですが、私は、ある観点からすると同様に分権を骨抜きにする部分ではないかと言われる部分として、この建築基準法改正案の中の直接執行制度というのは、きちっと見解を伺っておかないといけないな、そのように思っているわけです。  それで、機関委任事務制度の廃止に伴って、今回の一括法案でも言われているのは、建築基準法に関する事務については原則全部自治事務にしますよ、これがまず大原則なんですね。そういう大原則を認めつつも、しかしながら、国の利害に大きく関係する建築物の建築許可を自治体が出さない場合には、最終的に建設大臣が自治体にかわって建築許可を出すことができる、そういう直接執行制度が、たしか建築基準法の十七条に新たに設けられているわけです。  どういう趣旨、目的、ねらいがあるのか。先ほど来言っているように地方分権推進の流れに逆行するのではないのか、そういう懸念もあるのですが、そのあたりについて建設大臣の見解を伺いたいと思います。
  186. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 大変重要な問題でございまして、国等の建築物で地元地方公共団体の利益と必ずしも一致しないような建築物につきまして、その建築計画が適法であるにもかかわらず地方公共団体の建築主事等が違法にその事務を怠っている場合には、これらの建築物の円滑な整備ができず、いわゆるその中にうたわれております国の利害に大きな影響を与えるおそれがある、そういうときには直接執行をすることができるということでございます。  また、現行では、建築主事等が違法な処分を行った場合などには、建設大臣が、これは先生御承知のように代執行を行うということができる制度でございますが、今回の改正案におきましては、この要件に加えまして、国の利害に重大な関係がある建築物に限定して、さらに政令で定める審議会の確認を得る手続を経た上で、直接執行ができる制度を設けております。  今日までの代執行ができます場合には、これは裁判にかけて行うわけでございますが、これからは、そういうようなことで、審議会の確認を得る手続を経た上で直接執行を行うということができるわけでございます。ですから、こういうようなことを行うのはごくごくまれなるケースだろうと私は思うのですが。私はそう思います。
  187. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 ここでも、先ほど来言うている審議会が出てくるのですね。まれなケースと言われるのですけれども、そういう国の利害に重大な関係がある建築物であるとか、これは執行するときです。指示するときの条件としては、「多数の者の生命又は身体に重大な危害が発生するおそれがあると認めるとき」、そういう要件もある。  このあたり、具体的にどういう要件を考えておられるのか。先ほど言われた、地方の利益と必ずしも一致しない、けれどもそういうものの場合はそうするのだと言われたので、このあたりの要件をちょっとこの場で明確にしていただきたいと思います。
  188. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 まず、国の利害に重大な関係がある建物といたしましては、その建物が建築されなかった場合には、国家としての存立にかかわる施策や全国的な視点で行わなければならない施策の実現が非常に困難となる、そして結果として国の利害に大きな影響を与えるものということだろうと思います。  また、それではどのような建物かというようなことでございますが、これもなかなか、個別具体的な事例でそのときに判断すべきものだろうと思いますが、あえて「多数の者の生命又は身体に重大な危害が発生するおそれがある」場合というところから考えてみますれば、例えば、多数の方が利用をされる劇場であるとかデパート等の建築物に構造上の欠陥があり、崩壊の危険性がある場合などはそれに当たるのではないかな、そんなことも思います。  あるいはまた、どのような建築物が国の利害に重大な関係がある建築物に該当するかどうかというお問い合わせでございますが、重要な防衛施設であるとかあるいは原子力発電所などが当たる可能性があるのではないかなと思っておりますが、先ほど言いましたように、いろいろな個別の具体の事例でもって、その時点で判断すべきではないかなと思っております。
  189. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 大臣、済みません。これはまたガイドラインの周辺事態の定義と同じになるかもわかりませんが、個別の具体的な事例に応じてという話なんですけれども、それは結局この法案でいくと全部建設大臣あるいは建設省が判断していく、そういうようにこの十七条を見ると読み取れるんですけれども、そのとおりですか。だから、そのときになってみないとわからない。いろいろな状況を勘案して、これはそういう建物である、国の利害に重大な関係のある建物である、それにもかかわらず地方のそういう建築主事なんかが怠っておる、そういう建物、一件一件の個別のケースに応じて建設大臣であるとか建設省が判断をしていって、それに応じてはこういうような直接執行制度を適用しよう、そういう判断をされる、国の方が全部判断をされるというように理解してよろしいですか。
  190. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 この改正後におきましては、流れがあるわけでございますけれども、いわゆる建築主事等が違法な処分を行った場合で、その中で、そのもので国の重大な利害関係を有する建物であるということを、建設大臣がそういうふうに判断した場合には直接関与することができるというふうに私は判断しております。     〔委員長退席、杉山委員長代理着席〕
  191. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 これは、もうすぐまた総理に来ていただくので、違うところに移りたいので、また大臣とやってもいいんですが、これで、ちょっと自治大臣にお伺いしたいのは、こういう直接執行制度というのは、私の知る限り、分権推進委員会の勧告の段階ではここまではっきり言うてなかったと思うんですね。それが具体的にこういう一括法案のときにこれはやられた。少なくとも分権推進委員会の方々はかかわっておられない、省庁側がこういう形にされたというように私は認識しているんです。  今回の一括法案一つの特徴というのは、国の関与のあり方というものを、基本の原則をきっちりとつくりましょう。これは具体的に、例えば三つの原則、法定主義の原則、一般法主義の原則、一般的なルールを地方自治法に定めましょうと。そのルールは何なのか。三番目、公正、透明の原則ですけれども、地方自治法に決められた一般的なルールというのが四類型というように言われています。  その四類型というのは、一つは助言または勧告である、二番目が資料の提出の要求、三番目が協議、四つ目が是正の要求というように言われています。是正の要求も問題あると言う人もいますけれども、その四つにも全然入っていないのがこの直接執行制度という、極めて例外的なことをこのようにされようとしているわけです。  こういう例外措置は、分権推進委員会の精神を酌んで、あってもいいという考えでおられるのか、また、これは多分ここの建築基準法の部分だけではないのかと思うんですが、ほかにも今回の一括法案でこういうものはあるのかどうなのか、ちょっと答弁をいただきたいと思います。
  192. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 物の整理としていいますと、地方分権推進委員会の第一次勧告の中で「なお、自治事務として地方公共団体が処理する事項に関し、その性質上特に必要があるものについて、国民の利益を保護する緊急の必要がある場合には、国は、法律の定めるところにより、直接事務を処理することができるものとする。」というのがあります。これを受けて、地方分権推進計画の中において、国の直接執行という中で、それを受けた表現で整理をいたしております。  これに基づいて、今建築基準法のお話がありますが、その他、例えば都市計画法、国土利用計画法等々あるかと思います。一方で、児童福祉法、医療法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律というものもある。例えば、医療法では、病院等の施設の使用制限命令等、これが医療法の第七十一条の三に基づいて、「国民の健康を守るため緊急の必要があると厚生大臣が認める場合」とか、こういうようなことの規定があるわけです。  したがって、通常のパターンにおけるいわば国の地方団体に対する関与というものは、法律に基づく、あるいは政令に基づくか、そういう意味での法定主義、そして公正、透明な形、ルールに基づいた関与という形を、言うなら平時という言葉がいいかどうかわかりませんが、そういうことを基本パターンとする。  しかし、緊急、本当に緊急、そういう場合には、今申し上げたような「国民の利益を保護する緊急の必要がある場合」、ここは放置できないという意味で、直接執行をすることができる道を例外として開いたというふうに位置づけるのが妥当かと考えております。
  193. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 今、ほかにもあるという話、児童福祉法とか医療法という話もありましたので、建築基準法だけではなくて、この委員会を通じて一つ一つ中身も含めてやはりきちんとチェックしていくのが我々立法府の役割であろう、そういうふうに思います。きょう各論に入ると中途半端に終わるので、総理も間もなく来ていただけるということなので、続けてほかのをやりたいんです。  それで、もう一つは、国家公務員の削減について、まず確認ですけれども、簡潔にお答えいただきたいんですが、これは政府として、純減二五%である、純減である、そういう認識でよろしいですか。
  194. 太田一男

    太田国務大臣 その覚悟であります。
  195. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 覚悟であるというところに、何か意味を深めているなという、そういう意味深な表現だなという感じがするんですが、総理、来られましたので、総理に対して質問させていただきたいと思うんです。  私、この部屋で三月の中旬から、ガイドラインの特別委員会の一員として、九十四時間質疑させていただいたうち、約五時間質問をさせていただいて、本当に総理の安保観また世界観、こういうものを十分拝聴した一人なんですけれども、その上で、国家国民のために最終的に、このテーマに限っては自自公で修正案、合意いたしまして、私も修正案提出者の一人として、参議院まで、この月曜日まで出張させていただきまして、答弁者としてやらせていただいたんですけれども、そこで、総理のそういう世界観または安全保障観または東アジアの情勢等をどう見ておられるのか等については十分わかったわけです。  施政方針演説の中でも、総理は五つのかけ橋ということを具体的に述べられていまして、その中の一番目が世界へのかけ橋でした。その中に、国会でのガイドライン法案、きちっと成立させていかなければいけない、そういうことを述べられている。二番目のかけ橋、これは全体では繁栄へのかけ橋ということなんですけれども、その中に、我々が当委員会で議論をさせていただいております行政改革であるとか地方分権、規制緩和、そういうことが書いてあるんですね。  この施政方針全体でも言われていましたし、当委員会の冒頭でも言われていたんですが、今の時代の時代認識、明治維新さらには第二次世界大戦後以来、それとともに大事な第三の改革のときである、こういう時代認識は、私は本当にまさに総理と同感でありますし、私もよく使わせていただいているのです。そういう時代認識はもう共有するのですが、問題は、その中でやっていかなければいけないことの五つの柱が施政方針演説でも書いてある。この行政改革であるとか地方分権、そして規制緩和、広い意味での行政改革と言っていいのかもわかりませんが、こういうものの位置づけというのは、五つの大きな柱の中の、さらにその中の小さな一つの柱であるというような御認識なのか。  お聞きしたいのは、国の政策の中で、今我々が論じている中央省庁改革と、さらには地方分権等の一括法案について、どういう位置づけをされて、その重要度というのは、二十一世紀の中にあって、日本の国づくりの中にあって、どれぐらい大切なものと御認識されているのかということを一点お聞きしたいのと、それと、総理のこれからの日本国のありようで言われているのに、富国有徳ということを一貫して総理は言われているんですけれども、そういう総理が目指すべき国の方向と、我々が今論じている広い意味での行政改革、これはどういうように結びついていくのか。そのあたりにつきまして、御答弁をまずいただきたいと思います。
  196. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 総理大臣を引き受けさせていただいておりまして、年当初には施政方針演説をいたすことに相なっておりまして、ことし一月十九日、させていただきました。  そこに五つの柱、五つのかけ橋を申し上げましたが、時あたかも、二十世紀を終えて新しいミレニアムに入っていくわけでありまして、そういう意味で、例年、それぞれ、政府の施策については万般にわたるわけでございまして、省庁別縦割りといいますか、大体そういう形で論じてきたように思われますが、この機会にそれを大くくりしまして、五つ、たまたま二十世紀から二十一世紀に橋を渡すというような気持ちを込めて、申し上げたわけでございます。  必ずしも、その中で、今御指摘のような行政改革とか地方分権とかというものを仕分けするという考え方は特にないわけでございますが、強いて言えば、世界へのかけ橋、これは外交問題中心でございますし、繁栄へのということは財政その他経済問題、安心、安全、そして未来、こう分けさせていただきましたが、それぞれに実はかかわり合いを持っておるということで、その中での、五つの中に特に分類してという気持ちは余りなかったのであります。  いずれにしても、申し上げておりますように、本問題につきましては、明治以来の新しいシステムとして、長い間の地方分権についての中で、中央集権的と思われることについて、新しい地方自治あるいは地方分権という、新しい姿を期待しつつ出させていただいておるわけでございますので、そういうこととして御理解を改めていただければと思います。  それからもう一点の、富国有徳と申し上げますのも、これまた三回演説させていただきましたけれども、それぞれに挿入をさせていただきました。  思いますに、やはり、特に第二の改革と言われた戦後、いわゆるマッカーサー司令部に発した幾つかの大きな改革、これをこなしてきたわけでありまして、農地改革を初めとして、なかなか大きな力が働きませんと実行できなかった、やや外圧といえば外圧の中で執行をしてきましたが、今般、第三の改革と言われるのは、まさに、日本人がみずから考え、みずから改革をしようということの幾つかがあるかと思います。  戦後の時代を考えますと、私自身も三十数年、国会にお世話になってまいりましたが、最初に国会議員に就任して以来、経済の回復といいますか、日本の繁栄ということにやや重きがなされてきたような感じがいたしておりまして、必ずしも忘れておったわけではありませんが、物と心ということを考えますと、物に集中してきたような感じがしております。それを、いま少しく一体として考えていくべきものを、象徴的に、富国ということは経済であろうと思いますし、また、有徳ということは、国としての志といいますか、国としての形ということ、これを何とか強調した形で、世界の諸国民からも、真に日本国憲法の期待をいたしておるところで諸国民の真の信頼と理解を得られるような形のものを願えれば、こういう気持ちで今勉強させていただき、ひとつそれぞれの施策においても、そうしたことを一つのプリンシプルとして国民の皆さんの御理解を得られれば、こういう気持ちで今努力させていただいておる、こう御理解いただければありがたいと思います。
  197. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 今、本当に五つのかけ橋の土台となる考え方が富国有徳という考え方だと。そんな簡潔に一言で言うたら失礼になるのかもわかりませんが、そうであろうというように私は理解をしたわけでございますが、その中で、もうあと時間があれなんで、やはり骨組み、特に二十一世紀のあるべき行政のあり方、地方のあり方、そういうものを本当に具体的な形としてどう変えていくのかということが、今論じている法案で大変大事になってくるかと思うのです。  総理にこういう各論を聞くのはどうかと思うのですが、私、冒頭申し上げましたように、今回の中央省庁改革法案で、三つぐらいポイントがあるんだろうというように思うのですが、その一つの中で、今までの行政のあり方、どちらかというと官僚の裁量行政ということが強調されていた部分が、今回の各省設置法改正案等を見ておりますと、やはりそういう行政からおさらばするような、一言で言うと権限規定が廃止されたところというのは、私は大変高く評価しているわけです。  今までは、権限規定というのは、各役所の権限を大まかな表現で定めていて、大変それが不透明な行政指導であるとか、官民のもたれ合いの土壌になっていた、そういう指摘があったわけですけれども、それがなくなったことによって、官僚のさじかげんでの裁量行政というものがこれからは全く行われなくなっていくという点でも、これは国民にとって、また民間にとっても、大変大きな一歩前進である、私はそのように理解するんです。  その権限規定という言葉が設置法からなくなったのですが、所掌事務規定というのは残るんです。  ここで、もう最後になるのですが、全省庁を統括される総理にあえてお尋ねしたいのは、再度確認しておきますが、各省設置法案に規定されている今回の新しい所掌事務規定には、そういう今までのような包括的な権限規定は一切含んでないと我々は理解しているんですけれども、総理大臣の明快な答弁をいただきたいと思います。
  198. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 まさに御指摘のとおりだろうと思っております。  今回の中央省庁等改革におきまして、各省は任務を基軸として、総合性及び包括性を持った行政機能を担うよう編成することといたしておりまして、国家行政組織法改正法案におきまして、任務及び所掌事務を各省の組織構成原理とし、各省等設置法案には、広範な裁量権限の根拠となっているのではないかとの疑念を抱かれる、いわゆる権限規定は置かないことといたしたところでございます。  各省等設置法案の所掌事務規定は、これまで各府省の権限を定めていた権限規定とは異なり、各府省が担う事務を規定するものでございまして、先刻来、いろいろ御質疑応答がございましたように、いわゆる作用法としてきちんと法律に基づいて権限を行使できるものは別といたしまして、あらゆる設置法にこうしたものを置くことによって、がんじがらめと言ってはなんですが、そういう規定を置いてそれぞれやっていくということについては、これを取り除くということは、佐藤委員御指摘のように、大きな行政の姿としてこれを守っていくということは、私は、新しい姿だというふうに認識し、ぜひこれは実行していかなければならぬ、このように考えております。
  199. 佐藤茂樹

    ○佐藤(茂)委員 総理から明快な答弁をいただきましたので、以上で質問を終了いたします。
  200. 杉山憲夫

    ○杉山委員長代理 次に、西川知雄君の質疑に入ります。
  201. 西川知雄

    西川(知)委員 西川知雄でございます。  総理にわざわざお越しいただいたので、まず総理に、財金の分離のことについて確認の意味で若干御質問をしたいと思います。  御存じのように、自民党と当時の平和・改革クラブと民主党、その三会派で、昨年の十月に財金の分離について覚書が交わされました。その後、自民党の池田政調会長、津島議員、そして自由党からも自民党に対してのアシストとして鈴木議員が、民主党からは中野政調会長、仙谷議員が、平和・改革からは現在の坂口政審会長と私が、どういうことが具体的にそこで意図をしている内容なのかということを何回も話させていただきました。  残念ながら、その三会派の意見調整というのは完全に成りませんでしたが、そこでことしの四月十四日に、公明党・改革クラブとして、自民党の方にこういう考えでいかがかということで提案をさせていただきました。  その中で、金融庁は、「国内金融に関するすべての企画・立案を所管する。」財務省は、「金融破綻処理制度および金融危機管理に関する財政面からの企画・立案をするものとする。」次が重要でございまして、「但し、主務官庁は金融庁とする。」こういうふうに決めさせていただいたわけでございます。  また、金融安全保障会議、これは当時の仮称でございまして、現在は法案では金融危機対応会議となっておりますが、これは、総理が主宰されて、大蔵大臣、金融担当大臣、日銀総裁等によって構成されて、ここで基本方針を協議して決定する。ただ、その次がまた大事でございまして、「省庁間」すなわち金融庁と財務省で「意見の相違がある時には、その調整を行うものとする。」こういう文言が入っております。  少なくとも私の理解するところでは、この案を自民党の方で承諾をされまして、そして政府の方に、この意図で法案の作成をしてほしい、こういうようなことがあったと思います。  そこで、私の今の理解、すなわち、この四月十四日の提案、これを自民党の方、政府・与党の方で御理解されて、そしてそれを今回の法案の中にそのまま入れる、また入れたというふうにまず概括的に理解をしてよろしいかどうか、ちょっと確認の意味でお尋ねをしたいと思います。
  202. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 いわゆる財政と金融の分離等に関しまして、政党間協議をいただきました。が、三会派を含めての合意には結果的に至りませんで、四月十五日の協議の場におきまして、自民党から、それまで自民党から示された考え方に沿って作業を進める旨の発言がなされるとともに、同日後刻、公明党・改革クラブから、同会派の考え方がまとめられ、示され、自民党も基本的にこれを受け入れたものと承知をいたしております。また、自由党も自民党と同じ考えであると聞いております。  政府といたしましては、このような状況で政党間協議の経緯を踏まえながら法案化を行ったものであり、御理解をいただきたいと思っておりますが、今西川委員御指摘のように、その過程におきまして、公明党・改革クラブから四月十四日、今お示しをされました提案がなされておるわけでございまして、結論的に言いますと、その要請につきまして自民党もこれを了解してこの結論に至ったものと理解をいたしております。  委員御指摘のように、一部名称等については仮称の点がありましたので、先ほど御紹介したような形に法案としては提案されておるものと理解しております。     〔杉山委員長代理退席、委員長着席〕
  203. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 法案につきまして、それでは御説明を簡単に申し上げます。  事柄の背景は、金融行政をやっておりました大蔵省に対する国民の非常な不信を背景として、それが一つの背景になって国会の御議論が行われたことをよく承知をいたしております。したがいまして、このたび御提案いたしました法案には、財務省の設置法案には、任務、第三条でございますが、金融ということを一切触れておりません。財政、課税、税関、国庫、通貨、為替等を言っておりますが、一切この任務には金融ということを書いておりません。  それに反しまして、金融庁の設置法には、「金融庁は、我が国の金融の機能の安定を確保し、」中略しまして、「金融の円滑を図ることを任務とする。」明快に金融庁が金融をつかさどる、それが任務であるということを明快にいたしております。  さらに、これに加えまして、中央省庁等の改革基本法がございますが、これをこのたび改正をいたしておりまして、現行法によりますと、財務省の主要な任務は、健全な財政の確保、通貨、為替、金融破綻処理制度及び金融危機管理に関する企画立案等となっておりましたものを、これを全部削除いたしました。したがいまして、ただいまの、改まります中央省庁等改革基本法における財務省の主要な任務は、健全な財政の確保、通貨制度、為替の安定確保等で、今までございましたものを全部削除いたしてございます。  したがって、お話しの、いずれが主であるかということは、法案の上で極めて明快になっておると思います。  ただ、その上で、財務省設置法の中で、いわゆる関連事項のあります場合に、財務省としてもいわゆる所掌事務としてすることがあるということを、四条五十五号に書いてございますけれども、これは所掌事務として述べておりますので、主たる官庁と申しますか、金融というものは基本的には金融庁の仕事である、財務省の仕事は基本的にはそうではない、関連事項でそれが出てくるということを、法文上明確にいたしたつもりでございます。
  204. 西川知雄

    西川(知)委員 これからその内容を質問しようと思っていたわけでございますが、ちょっと大蔵大臣の方から、法案上は、主たる官庁、責任を持つのは金融庁であるということが書いてあるという御確認をいただきました。  もう一つでございますけれども、先ほども申しました内閣設置法で四十二条に金融危機対応会議、我々の提案書の金融安全保障会議、これが今そういうふうにこの法案で呼ばれておるのですが、我々の案では、これは金融庁と財務省の間で、財務省も所掌する事務について金融庁と意見が食い違った、食い違った場合にいろいろな形で調整をされていくと思うのです。  それがうまくいかなかった場合に、総理が主宰されて、そして大蔵大臣、まあ財務大臣、金融担当大臣、日銀総裁によって構成される。これは国家の基本的なことに関係するところでもありますので、そこで協議をして一番いい方法を考えていこう、こういうことの趣旨でこの案文が考えられたわけでございます。  今の内閣設置法案では、これは例示として、「金融機関等の大規模かつ連鎖的な破綻等の金融危機への対応に関する方針その他の重要事項について」、内閣総理大臣の諮問に応じて審議がされる、こういうふうに一応法文上は書いているわけでございます。  そこで、総理に確認をさせていただきたいのでございますけれども、このもともとの案文にございました、省庁間で意見の相違があったときに、例えば財務省から、または金融庁から、ぜひそういう会議でこの問題点について話してほしい、こういう要請がありましたときには、総理が諮問されて、そしてこの会議で意見の調整をする、こういうふうにこの条文の中で読んでいける、また、そういうふうにされるつもりであるかどうかということをお答え願えればと思います。
  205. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 この金融危機対応会議につきましては、今委員が御指摘のような運用となると考えております。
  206. 西川知雄

    西川(知)委員 ぜひそうしていただきたいんですが、もう一つだけ、これは、質問通告をした後に、ある、イギリス政府の方から届いた文書がございまして、通告していないのでございますが、簡単なことでございますので、それに関してちょっとお尋ねしたいんです。  実は、イギリスの方でも、例の日本の大蔵省に当たるトレジャリーと、それから日銀と、それから金融庁に当たるところとが、ある了解事項というのをしていまして、やはりこういう金融危機に直面したときに、その三者がうまく協調していろいろな意見を交換してやっていかないといけないということで、今の金融危機対応会議と同じような構造をとっています。  そこで月に一回意見交換をしよう、定期的にやっていこうというようなことが了解事項として書かれているんですけれども、これは、やはりそういうふうに定期的に意見調整とか、また会議を持っていかれるような性質のものなのか、それとも、去年ありましたように、突発的なといいますか、連鎖的な大規模なところとか、完全に意見が合わないような場合だけにやっていかれるつもりなのか。その辺のところ、どういうおつもりなのかだけ、ちょっと確認をさせていただきたいと思います。
  207. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 この四十条、四十二条等を見ましても、そのことを否定はしておらないようでございますので、必要とあればそうした会議を開いて、それぞれの分野、すなわち、日銀あるいは金融庁その他を代表する方々との会合というものもなされてもよろしいかと思いますが、この法案がこの会議に期待いたしておりますのは、それぞれかなり重要な事例に基づいて会議に諮ることに相なっておりますので、今後、そうした具体的事例において会議を開催するか、あるいはまた今御指摘のようなイギリスの例をとるかについては、今後検討させていただきたいと思います。
  208. 西川知雄

    西川(知)委員 総理に対する概括的な質問は以上でございますので、どうぞ御退席いただいて結構でございます。  それでは、ちょっと具体的に続けさせていただきます。  今、宮澤大蔵大臣の方から、主たる業務というものは金融庁がやることになっている、そして財務省の方は、財務省設置法の四条の第五十五号で、「健全な財政の確保、国庫の適正な管理、通貨に対する信頼の維持及び外国為替の安定の確保の任務を遂行する観点から行う金融破綻処理制度及び金融危機管理に関する企画及び立案」である、ですから範囲が狭められている、こういうことでございまして、法文上からは、なるほど狭められている。  全体を見渡せる金融庁の所掌事務と、今度はその幾つかの観点から遂行するということで、それは差はあるということでございますが、実質的に果たしてどう違うんだろうかということで、逆に、財務省は関与できない、またはしないというような金融破綻処理制度及び金融危機管理に関する企画及び立案というものは具体的にどんなものかというのを、理解を深める意味でちょっと御説明を願いたいと思うんです。
  209. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 仕分けはこれではっきりしておると思いますが、それでは、全く財務省が関係ない、そういう出来事というのはどういうことかというお尋ねがございまして、専門家が申しますのは、例えば破産に関する出来事、それは大きくないような破産でございますが、そういうことについては、性格的には同じことが起こって、しかし、それは天下の一大事でございませんから、財務省はそこに関係ない、そういったような例が考えられると申しております。
  210. 西川知雄

    西川(知)委員 もう一つ、確認の意味で今のところを御説明願いたいんです。  健全な財政の確保ということは私も理解しているつもりでございます。また、外為の安定の確保というのもわかる気がしますし、通貨に対する信頼というのも理解ができます。  一つよくわからないのは、国庫の適正な管理ということが掲げられておりますが、これは、具体的に、国庫の適正な管理で、どういうような観点からこの金融破綻処理または金融危機管理に関する企画及び立案に関することをされるのか、ちょっとイメージが、私も、破産のことは今おっしゃったようにわかるし、そのほか三つのこともよくわかるんですが、国庫の適正な管理からする企画立案というのは一体どういうことなのか、ちょっと御説明を願いたいと思います。
  211. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府委員から申し上げるべきかもしれませんが、国庫とは何だということは、実はちょっと議論をいたしております。  長くなるといけませんので簡単にいたしますが、昨年起こったことを考えておりますと、一昨年の十一月にああいうことがありましてから、結局、ジャパン・プレミアムが生まれた、あるいは国内の貸し渋りが出て、そうして早期是正措置をやめて、それから三月に投入をいたしました。そして、財政が非常に難しくなりまして、予算編成につきまして、あるいは補正予算が先でございますか、相当の公債を増発するといったようなこと。それでも六月には為替が百四十何円まで行きましたので、非常に大きな影響を生みましたから、今、半ば御理解いただきましたように、財務省としても関心を持たざるを得ない事態であった。  それで、恐らく、国庫といいますのは、一番の政府のフィスクのことでございますので、財政を離れて国庫ということになりますと、そのような財政のデフィシットを、足りない分をどのようにして賄うかというのが国庫の問題なのではないか。公債を発行するか、あるいは増税をするか。財政と分かれて国庫ということを申しております意味は、そういう意味だというふうに考えております。
  212. 西川知雄

    西川(知)委員 そこで、法制局長官に来ていただいておりますので、ちょっと確認をさせていただきたいと思います。  金融破綻処理、それからまた金融危機管理に関する企画立案について、一つは金融庁が持っている。もう一つは、今大蔵大臣から御説明された点も含めて、ある特定の任務を遂行するため、そういう観点から企画立案をする、こういうことである。これが当事者の趣旨としては、主たる任務というのは金融庁である、こういうことで、今大蔵大臣は、そういうことが法案の中にも書いてある、こういうふうにおっしゃいました。  そこで、その範囲の大きさからすると、確かに金融庁が大きくて財務省が少ない。こういう意味で、どっちが上か下かというのは、何となく主従関係はわかるのですが、ここで書いてあることをもう少し詰めますと、金融破綻処理制度及び金融危機管理に関する財務面からの企画立案をするというのが財務省でございまして、その点についても、金融庁もそういう権限を持っている、所掌事務がある。  その二つを比べてみても、そのレベルでどっちが主従かというと、そのレベルも金融庁が主である。こういうような意図も含まれてはおるのですが、それは今の大蔵大臣が説明されたところとはちょっと角度が違うのですけれども、そういうこともこの法案の、設置法とそのほかの法律のところと、そしてまた法文の解釈でそういうふうに理解してよろしゅうございますでしょうか。
  213. 大森政輔

    ○大森(政)政府委員 お尋ねの件につきましても、先ほど大蔵大臣から非常に簡潔明瞭に御説明があった点で尽きるのではなかろうかと思うわけでございます。  要するに、金融破綻処理制度及び金融危機管理の企画立案と申しますのは、そのスキームへの財政の関与の有無を問わずに、およそ金融機能の安定や預金者等の保護の観点から行われるものである以上、やはり金融機能の安定とかあるいは預金者の保護等を本来の任務とする金融庁がこれを所掌するものである。そういう意味で、金融庁が主として、俗的な意味でございますが、主として主管するものである。  それに対しまして、財務省は、金融破綻処理制度等のスキームに財政等が関与する場合に、健全な財政の確保等というその任務を遂行する特定の観点から、金融庁とともにこれを所掌するにとどまる制度とされておりますので、やはりそういう意味では、お尋ねのような意味における、金融庁が主で、財務省が主ではないというふうに説明することができようかと思うわけでございます。
  214. 西川知雄

    西川(知)委員 ちょっとこれは、余り細かいというか、机上の理論を展開しているようでございますので、この辺でやめます。  最後に、この点について大蔵大臣にお尋ねをしたいのです。  金融庁、今は金融監督庁でいろいろな、金融機関の検査とか監督、そういう事務が実際上行われている。そういう事務などを通じて、検査等を通じて、ああ、これはちょっと変えないといけないなとか、破綻処理でこういうことを実際上はやらないといけないな、こういうことになると思います。ですから、そういうインフォメーションは今のところ大蔵省にもありませんし、将来は財務省にもない。  ただ、例えば外国で、アジアならアジアでまたいろいろな金融の危機が起きた。そういうときはむしろ、金融庁、金融監督庁よりも大蔵省の方が、また財務省の方が、そういうインフォメーションをすぐに察知して、そして金融庁と協議をして企画立案を金融危機のためにやる、こういう場合があるのじゃないか。  ですから、法律上もそうなっていますし、実際上もやはり財務省の方は、金融危機管理の立案についてイニシアチブをとっていくとか、そういうようなことはないのじゃないか、こう私は理解しているのですが、大蔵大臣の御理解もそれでよろしゅうございますか。
  215. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今のお尋ねは、外国で何か起こりましたときの情報は財務省の方が早くとる状況にある。そこで、その場合に……
  216. 西川知雄

    西川(知)委員 法律上は主と従というようになっている、そういうお答えでございました。実務上も実際上も、プラクティスとしてそういうふうになるのじゃないかということで私は認識しているのですが、その認識は大蔵大臣も御一緒でございますか。
  217. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そのとおりに思っております。  実際は、つまり事柄が起こりますと金融庁あるいは金融監督庁、再生委員会、そちらがそれを取り上げまして、ずっと追っていきますと最後のところで、ひょっとして財務省の持っている部分にかかってくるかもしれない、そういう関係にあっていくのだと思います。
  218. 西川知雄

    西川(知)委員 財政と金融の分離については今、総理それから大蔵大臣、法制局長官に明快に御答弁を願いまして、四月十四日に我々が提案させていただいたことが法文上もそのとおり書かれている、そしてその趣旨もそうである、こういうことで理解をさせていただきました。それでよろしゅうございますね。  次に、あと十分少々時間がありますので、先ほど佐藤議員の方からも裁量行政の話が出ました。それで、これは国税庁のことについて少しお尋ねをしたいと思います。  国税庁のことについて裁量行政等を議論されている方は余りいらっしゃらないと思うのですが、私、これは何回も実はやっておりまして、古くは平成九年三月二十四日の税制特別委員会、また三塚大蔵大臣が四月二十二日の大蔵委員会で、私の、アドバンスルーリング等の質問について答弁をしていただいております。  簡単にかいつまんで申し上げますと、金融ビッグバンといって新しい金融商品がたくさん入ってくるけれども、税の取り扱いというものがどうなっているのか、余り明らかじゃない。そうすると新しい商品が、いろいろな業法上の規制がなくなって入ってくるのじゃないかと思っていたのですが、なかなか入ってこられない。それは一つのコストですから、大体コストがこれぐらいだとわかっていれば入りやすいのですが、コストは三年後にわかるとか二年後にわかるとかいうことですと、心配で入ってこられない。これはやはり事前に、典型的なものについてはアドバンスルーリングというのをつくった方がいいのじゃないか。  こういうことを私申し上げて、それもそうだということで、当時御回答いただいた薄井主税局長が国税庁の長官になられて、そしてそのことを随分と覚えていただいておりまして、やっと去年の十月に、デリバティブの取引について幾つかの典型例を挙げて、いつこの収益が認識されるのか、いつ損金として落とせるのかとか、そういうことで一応ガイドラインみたいなものをつくっていただきました。私は、それはとてもよかったというふうに思っております。  ただ、もう二弾、三弾も来るんじゃないかというふうに実は思っておったんですが、その後何にもなくて、三塚大蔵大臣も、「行政庁、国税の見解は明確に早く伝わってまいりませんと市場は拒否をする、こういうことになる論拠はよくわかりましたので、督励をしてまいります。」一生懸命早くやってまいります、こうおっしゃっているんで、ちょっと宮澤大蔵大臣にも、日本の実際的な金融市場についての開放の一つの重要なメルクマールである税務についてのアドバンスルーリング、これをほかの面でもいろいろと広げていっていただきたい、こういうふうに思うんですが、それについての御見解、御所見をお願い申し上げます。
  219. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 三塚大蔵大臣に対する西川委員の御質問は、速記録で読み返して承知をいたしました。  正直を申しまして、デリバティブスなどにつきましては国税庁も勉強してくれて改善をしておるようですが、変なことを申しますが、私が税務署長をしておったときは申告納税ですらありませんで、所得調査員というものが署長に答申をするという不思議な制度でしたから。それからもう数十年たちますけれども、しかし、アメリカが法治国であるのと日本が法治国であるのと、やはり法治国のあり方が基本的に違うように私は思います。  かなり我が国の方がいわば法治でなくて、あいまいと言っては言い過ぎですけれども、なるべくけんかをしない方がいい、なるべくけんかを起こさない方がいいといったような考え方が、それでも国税庁は随分よくなって、近代化しましたが、どこか国民性の中にそういう部分がまだきっとあるので、そういう意味では、デリバティブスで、お話がありましたように、あらかじめ予知しているものはちゃんとアドバンスルーリングしろという物の考え方、それをもう少しやはり徹底していかなければいけないだろうと。  これは、すぐ国税庁が悪いと私は言おうとしているのではないんですが、考え方が、同じ法治国でも、なかなか法治に徹し切れない部分があって、そこのところが——そのかわり、法律を盾にしてけんかするときはけんかする、日本はけんかをしたら損だというふうに判断するというようなところがありますから、やはりそこは直っていかないといけないんだろうと思います。
  220. 西川知雄

    西川(知)委員 今の大蔵大臣の御見解というのは、私、極めて正しいと思っておりまして、ただ、実際に税務をやられる税務署の職員の方も、ある程度の基準というものがちゃんとしていないと、実際やりにくいわけですね。  例えば、細かい話ですけれども、所得税の申告のときに、当然のことながら必要経費というものしか経費として認められない、これは当たり前です。ところが、必要経費というのは一体何なのかといって法文をひもとくと、それは政令に決めてあると。政令には恐らくたくさんのことが書いてあるんだろうなと思うと、もうほとんど書いてないんですね。そうすると、これが必要か不必要かというものは、いろいろな研修とかされて、実例とか、これは必要経費だよ、これは違うよというようなことは言っていらっしゃるとは思うんですが、詳しい実例を挙げてガイドラインみたいな形ではっきりと言ってあげないと、いろいろな人たちはとても困る。  これは、不良債権の例の第三分類、これで必要額を引き当てなさいというのがありまして、ある人は引き当てするのはちょっとでいい、ある人はたくさんじゃないとだめだということで、大変困っておりまして、そこで、去年の金融国会のところでも、私、これを提言しまして、一応のガイドラインでいいんだ、そういうものを出していったらどうか。例えば第三分類であると七〇%、第二だと一五%、こうして、そしてそれよりも少なければそれは少なくていい。ただ、少ない場合には、それを何で少ないんだと自分の方で立証しなさいということを申し上げて、そしてこういうガイドラインができて、ある程度わかりやすくなったわけですね。  ある程度わかりやすいことをちゃんと言ってあげないと、それぞれの人が違う判断をせざるを得ない。そこまでするのは現場の人に気の毒だと私は思いますし、また、ある税務署はこう言った、でも、ちょっと税務署を変えたら違うふうにまた言われる、今までやってきたことが今度はだめになる。  必要経費というのは、例えば必要ということを解釈されるそれぞれの理論が違うんで、それはやむを得ない点もあるんですけれども、ただ、それはやはり税務の公平さ、中立性からすると、何らかの基本方針というものなりを、単に必要だからとか、そういうんじゃなくて、もう少し詳しくやってあげないと、実際の現場のところで混乱が大変起きるんじゃないか、こう私は思っておるのでございますが、もし大蔵大臣の方でその辺について御所見があれば、お伺いしたいと思います。
  221. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一生懸命改めていますけれども、そういうことがあるだろうと私は思います。つまり、法治でなくて、ちょっと最後のところが人治になってしまえば、これは悪気でなくても人に迷惑をかけますし、プレディクタブルでなくなりますから、それはやはりその法治ぶりをもっと先進国に学ぶべきところがあるんだろうと思います。
  222. 西川知雄

    西川(知)委員 大蔵大臣がそういうふうにおっしゃっていただいて、国税庁の方としても、実際上、ある程度のもう少し明白なガイドラインとか、そういう明確性を国民なりまた署員に伝える、そういうようなことをすべきである、こういうふうに大蔵大臣の御意見を私は解釈したんですけれども。  それで、そういう方向でやっていただけるかどうか、ちょっと国税庁の方からも確認をしたいと思うんですが。
  223. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういうふうにやってもらうようにいたします。
  224. 西川知雄

    西川(知)委員 あと、国税庁の問題、いろいろと具体的なところで難しいところもあることは重々承知しておりますが、今経済も悪い、そして税がどうやって使われているのか、またどうやって公平に徴収されているか、これは国民はやはりすごく注目していると思います。  こういうことは決してないと思いますけれども、例えば、税金をたくさん取ってきた税務署員は出世するとか、そうじゃないと何かうまく出世できないとか、そういうような話も聞きます。それから、税務署長さんをやめると税理士になられて、そのときに、税務署の方から十人ぐらい顧客を紹介するとか、そういうような話も漏れ聞こえてきます。それは多分真実じゃないと思いますが、そういうことのないように、非常に厳正な、やはり中立公平性を保っていく、また職員をそういうふうにさせるような体制でないといけないと思います。  私はそういう見解を持っておりますが、最後に、大蔵大臣、もし何かその点について御所見があれば、お伺いしたいと思います。
  225. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 税務調査に係るいわゆる増差差額で勤務評定を行うということは、これはよもややっておらないことと思いますが、よく改めて注意をいたします。  それから、長い間の税務官吏生活をやめまして退官するときに、国税局の人事担当者が顧問先をあっせんするというようなことはあるように存じます。ある程度あるように存じますが、ただ、その場合に、税務代理士の場合もそうでございますけれども、税務職員で、事務の経験年数によりまして相応の科目の試験免除をすることはございます。それから、しかし、税務代理士となった者は、離職後一年間は、離職前一年内に占めていた職の所掌に属すべき事件については税務代理業務を行ってはならないということが税理士法に書いてございまして、これも疑惑を招かないように注意をいたしております。  何十年勤めまして、やめて、大抵その地域で仕事をするというような場合に、なるべく地域に溶け込むように、安定した暮らしをさせてやりたいと考えるのは人情であると思いますけれども、それが過大にあるいは過剰になりますことは、極力厳重に注意をしなければならないところでありまして、そのことはよく国税庁も知っておると思いますけれども、とかく人情に流れるということもございますから、十分注意いたします。
  226. 西川知雄

    西川(知)委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  227. 高鳥修

    ○高鳥委員長 次に、東中光雄君の質疑に入ります。
  228. 東中光雄

    東中委員 私は、地方分権推進一括法関係の米軍用地特措法について伺いたいと思います。  米軍用地特措法につきましては、ちょうど二年前、九七年の四月に、沖縄の米軍基地の使用期限が切れるとして、使用期限は切れても暫定使用の名目で、収用委員会の正規手続を経た権利取得裁決あるいは明け渡し裁決がなくても土地の強制使用を継続できるというとんでもない大改悪がやられました。  そのときの安保土地特別委員長は野中官房長官でございました。野中さんはあの審議の委員長報告の最後に、大政翼賛会のようにならないことを望むという歴史的な委員長報告がありました。  ところが、今回は、あのときの暫定措置どころか、従来の地方自治体が行ってきた代理署名や公告縦覧などの収用手続の事務をすべて国に吸い上げてしまった。その上、新規の、継続じゃなくて新規の土地強制使用について緊急裁決の制度をつくった。さらに、首相の代行裁決制度までつくった。これは収用委員会を完全に骨抜きにしてしまう、国が一方的に米軍用地の強制使用をできる仕組みをつくったということであります。  これは大変な大改悪でありますし、これが地方分権推進という名前で出てきたということは、私は非常に異常だと思うんですが、官房長官、どういうことでこういうものが分権の推進になるんでしょうか。ちょっとお伺いしたいと思います。
  229. 野中広務

    ○野中国務大臣 今回の駐留軍の用地の特別措置法の改正におきまして、緊急裁決あるいは代行裁決制度は、収用委員会の事務が遅延をするなどいたしまして土地等の権原取得に支障が生ずることを回避いたしまして、条約上の義務を的確に履行するという極めて高度な公益的な要請を満たすものでございまして、私有財産権の尊重という点に欠けることがないよう補償額の決定のための詳細な手続を定め、適正な補償を確保することとしておりまして、憲法二十九条に反するものでないと考えておるところでございます。  ある意味において、今日までこういう収用手続というのは、私は、国が手続上困難なものを地方に渡しておったという立場にあったと思うわけでございます。したがいまして、今回の地方分権推進によりまして国が行う責任というものを明確にされたことであると理解をしておるわけでございまして、私が沖縄特措法に対しまして、その通過の際に、議事録削除になりまして現存いたしておりませんけれども、申し上げました平和に対する、沖縄に対する気持ちはいささかも変わりはございません。
  230. 東中光雄

    東中委員 今、沖縄で普天間基地の代替基地建設や那覇軍港の移設が問題になっております。沖縄で、野中長官は、SACOの実施や新たな基地建設に当たって住民の意思に反して強制する考えはないと述べておられました。その一方で、政府による一方的な土地取り上げをやる、米軍用地を取り上げる仕組みを今政府は強行する方向ですね、そういう新しい制度をつくられているわけですから。  こうしたことになると、沖縄で新たな代替基地の建設あるいは創設という問題が起こるんですが、その建設に当たっては、今度の緊急裁決とか代行裁決ということは使うことがないということになるんですか、使うことがあり得るということなんでしょうか、お伺いしたい。  要するに、長官は、SACOの実施や新たな基地の建設に当たっては住民の意思に反して強制する考えはないということを言われているんです。ところが、これは、意思に反して強制する場合の、しかも緊急裁決、代行裁決の制度をつくられるんだから、沖縄ではこれをつくっても適用しないんだということなのかどうかということを聞いているんです。
  231. 野中広務

    ○野中国務大臣 私がSACOの合意に基づくことで申し上げましたことは、沖縄県を越えて政府が行うことはありません、こういうことを申し上げました。そのことは今も変わりありません。
  232. 東中光雄

    東中委員 そうすると、住民の意思に反して強制することはないと。いろいろ報道されておりますから、報道は必ずしもそのまま正確かどうか私、知りませんけれども、そういうことを言われたのではないという意味ですか。
  233. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 駐留軍用地の使用権原の取得につきましては、従来から地権者の方々との合意によりこれを行うことを基本としてきたところであります。  官房長官の発言もそういうことに由来していると思うのでございますけれども、真にやむを得ない場合として、ただいま御答弁ありましたとおり、条約上の義務を誠実に履行するため、この法律を適用する際には、まず、我が国の安全と極東における国際の平和と安全の維持に係る国際情勢、また駐留軍による当該土地等の必要性の有無や程度、あるいは、この土地等を駐留軍の用に供することによってその所有者や周辺地域の住民などにもたらされる影響等、諸般の事情を総合的に勘案して適切に対処をしてまいる考えでございます。
  234. 東中光雄

    東中委員 いや、私は、そんな決まり文句の、教科書に書くようなことを聞いているんじゃないんですよ。  官房長官、わざわざ来ていただいてあれなんですが、要するに沖縄担当大臣でもありますから。そして、沖縄の県民の合意に従ってやるということを、基地の移転にしても、SACOの実施は、そういう趣旨のことを発言してこられましたから。それにもかかわらず、今この時期に、二年前にあれだけもめて、しかも現にもめている問題について、法律をつくって暫定措置をやった。随分問題があったわけですけれどもね。それを今度はもっとひどい改正、しかも米軍用地の改正。  それで、沖縄では今、海上基地をどうするか、ヘリポート、代替基地をどうするか、現実に問題になっているんです、那覇軍港の問題にいたしましても。そういう問題で、話がつかなかったらこれでやるぞというためにつくっているように見えるんです。そうじゃないというならそうじゃないということを言っていただいて、時間いろいろあると思いますから。
  235. 野中広務

    ○野中国務大臣 委員御指摘の普天間の移転とか浦添の那覇軍港の移転という問題につきましては、今、沖縄県の中におきましてプロジェクトチームがつくられまして、これに対して政府といたしましても、沖縄県の要請でお手伝いできるところがあればお手伝いをいたしますということで取り組んでおるところでございまして、先ほど申し上げましたように、沖縄県を越えて政府が何かをする立場にないわけでございます。  今ここに法案としてお願いしておることとは別の問題でございまして、従来、土地の収用につき、国が地方にむしろ嫌なことをお願いしておったことを、国、地方がそれぞれ責任ある今度の地方分権のありようについて明確にその取り扱いをした、一般的な取り扱いとして御理解いただきたいと思うわけでございます。
  236. 東中光雄

    東中委員 一般的な土地収用の問題じゃなくて、米軍用地の取得についての緊急裁決という新しい制度をつくるということなんです。例えば海上へリポート基地をつくるかどうか、新しい基地をつくるという問題ですね、それを陸上につくるかもしれぬという。要するに、新しい基地をつくるという問題が現実に今起こっているのは沖縄なんですよ。そのほかにはそんな問題は何も起こっていないわけです。  そういうときに、この、二年前に大問題になったやつを上回る大変な法律を地方分権推進ということで出してくることについては、私たちは、官房長官、それはまあ、これをやるとも言えないし、やらないとも言えないということだと思いますけれども、そういう点で、極めてこの必然性というのは、非常に危険な内容を持っておるということだけ申し上げておきたいと思うんです。——官房長官、どうぞ。  それで、米軍用地特措法についてでありますが、要するにこれは、国民の土地、財産を米軍基地のために強制収用するあるいは強制使用する、そういう制度であります。ですから当然のことながら、国民の財産権を明記した憲法二十九条に従って処置されなきゃならないということであります。それから、私有財産はこれを侵してはならないという憲法二十九条の原則と、そして公共のためにやむなく使用する場合には、公正な手続、デュープロセスと、そして正当な補償が要る、これはもう大原則であります。  ところが、今までやってきたことと違った新しい制度が今出てきたんです。だから、なぜこの時期にこの新しい緊急裁決制度、代行裁決制度をつくったのか、これが非常に問題だと思うわけであります。  それで、土地収用関係についてお伺いしたいんですが、土地収用法の所管は建設省でございますが、建設大臣、現行の土地収用法、昭和二十六年に制定されました。その前は明治三十三年の収用法でありました。明治三十三年の旧収用法は、非常に帝国憲法時代の体系でありました。二十六年にできたときは、憲法が新しくなったからということで制定されたわけですが、基本的に、明治憲法下の土地収用法と現在の土地収用法の原則的な違いがあると思うんですが、それを所管の建設大臣から明らかにしていただきたいと思います。
  237. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 現行の土地収用法は、今先生がるる述べられましたように、憲法第二十九条によります私有財産の補償を全うするため、時代にそぐわなくなった旧土地収用法を昭和二十六年に廃止して、新たに制定されたものでございます。  その趣旨は、これは言うまでもなく、先生の専門分野でございますが、目的は、公共の利益となる事業に必要な土地等の収用または使用に関し、その要件、手続及び効果並びにこれに伴う損失の補償等について規定をいたしまして、公共の利益の増進と私有財産との調整というものをきちっと図っておりまして、もって建設省の一大目的でございます国土の適正かつ合理的な利用に寄与することということにいたしておるところでございます。
  238. 東中光雄

    東中委員 いや、明治憲法下における、二十六年の改正まであった収用法と今の収用法との違い、原則上の違いがあるんです。  それは私から言いますと、あのときの提案理由、これは参議院の議員立法です、そこでの提案によれば三つあるんです。  一つは何かというと、土地収用をする対象が、公共事業ですね。その対象は、前は国防その他の軍事に関する事業あるいは皇室の陵墓に関する事業、これは、新憲法のもとにおいてそういうものを収用の対象にすることは当然不適当という言葉を使って、落とした。だから、軍事関係はあったんだけれども、現在の収用法ではないんだ、これが特徴なんですね。  それからもう一つは、今までの収用機関は、これは審査機関は強制使用の裁決を行う機関である、当時は収用審査会といった、それは国の任命機関だったわけです。地方長官、当時は知事は地方長官ですから、官僚ですね、そして高等文官で構成するとなって、だから国家機関がやるということになっておった。  これでは官憲的、一方的であって、一方的土地取り上げになるので、国民の財産権の侵害が横行するということで、審査機関は公平中立かつ民主的な機関に改めるということで、公選の知事の任命した都道府県の収用委員会というふうにしたんです。だから、収用委員会にしたというのは、憲法において戦前と違った非常に重要な意味を持っているわけです。  それからもう一つは、審査の手続、これを民主的にやるということで、旧法は慎重を欠くとして、事実認定に際して、各方面の意見を聴取し、できるだけ公正な事業認定を行う。官憲的、一方的認定にすることのないようにするということで、審査手続は公開、口頭による陳述の道を開く、当事者双方の意見を十分提出せしめる、だから地方自治体も縦覧とか何とかする、こういうことに変えたんです。ここがだから三つ違うんですね。目的で違う、軍事はやれないというふうになった。そしてもう一つは、やる機関は公平中立、県の収用委員会だ、収用するのは。そして、やり方は民主的にと、この三つの原則なんですよ。そうでないという異論があったら、大臣、言うてもらって結構です。
  239. 関谷勝嗣

    ○関谷国務大臣 全くそのとおりであります。
  240. 東中光雄

    東中委員 建設相が確認をされました。これが非常に重要なんであります。  そういうことで確認をされましたので、そこで建設大臣にお伺いしますが、今度の地方分権法で、土地収用法についての改正もあります。その中で、これまで都道府県や市町村の機関委任事務とされてきた収用手続のうちで、土地調書への代理署名、第三十六条の四項、五項や、裁決申請書の公告縦覧、四十二条一項、六項などの事務を法定受託事務というふうに今度の地方分権法ではされました。国の直轄事務とはしなかった。なぜですか。
  241. 木下博夫

    ○木下政府委員 土地収用法の対象になります事業認定については、従来からいろいろな実績を踏んでおりますが、知事のレベルで決めますものと国レベルでのいわば事業認定になろうかと思います。今回の場合は、したがいまして、本来国がやります事業認定については、先生御案内のとおりに、法定受託事務ということで、国の事務を委託するような形でございますが、従来機関委任事務的扱いをしておりましたものについて、県みずからが事業認定するものにつきましては県の自治事務ということで、先ほど来御議論のございましたように、それぞれの事業の性格、重要度に応じまして二つに分けさせていただいて、事業の分類を明確にしたわけでございます。
  242. 東中光雄

    東中委員 それで、国のやる事務を機関委任事務から法定受託事務にしたのはなぜですかと聞いているのです。
  243. 木下博夫

    ○木下政府委員 先ほども申し上げましたように、それぞれの事業の性格、重要度ということについて峻別いたしまして、やはり国家的な重要な事務については、国みずからの事業として事業認定を従来からもやっておりました。したがいまして、機関委任事務にも二手のものがあったということで、今回の分権議論で明確に分けたわけでございまして、何ゆえかということは、事業の性格、重要度で御理解いただきたいと思います。
  244. 東中光雄

    東中委員 私が聞いているのはそういうことじゃなくて、国の直接事務としなかったのはなぜかと聞いているのです。  それでは、防衛庁長官にお伺いします。防衛庁は、その問題について、国の直接執行事務というふうにしましたね。今までは機関委任事務だった。今度はそれを国へだっと取り上げたということになっているのですが、なぜですか。
  245. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 地方分権法に明記されているところでありますけれども、国及び地方公共団体の役割分担を明確にした上で、地方公共団体の自主性や自立性を高め、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図るというのが地方分権推進の眼目であります。また、国と地方公共団体の役割分担につきましては、国は、国際社会における国家としての存立に係る事務等の国が本来果たすべき役割を重点的に担おう、他方、地方公共団体は、地域における行政の自主的かつ総合的な実施役割を広く担うべきものだ、こういうふうに峻別されているわけであります。  地方分権推進委員会の勧告においても、駐留軍用地特措法の事務が、国が国際的に負っている安全保障上の義務の履行に直接かかわるものであることを踏まえまして、国と地方公共団体との役割分担を明確にする観点から、土地等への署名押印代行等の事務を国の直接執行事務とするとの考え方が示されたところであります。  今回のこの駐留軍用地特措法の改正は、今申し述べたとおり、地方分権法あるいは地方分権推進委員会の勧告等の考え方によって出てきたものでありまして、地方分権推進に反するものでも何でもないと私は考えております。
  246. 東中光雄

    東中委員 それが違うのですよ。今までは、先ほど言いました、土地収用法自体の体系が戦前のものとは変わったんだと、手続は意見を全部聞くんだという、だから、財産権の保障の問題と、それから、公共事業といいますか、それの実施の場合の調和点なんですね。それを、国のものだから国がやるんだ、国で必要だからということだけではいかない。  それに対して、今度は財産権を保障する調整をどうするかということで、だから、調書なんかをつくるのも今までは委任事務にしておったのはなぜかというと、署名を本人が拒否した、そうすると市町村長がやる。何で国がやらぬかというたら、その本人の立場に近い、その財産権を守る側にある自治体にそれをやらせる、そういうことで調和をとるというのが、これが民主的な制度として二十六年にできた土地収用制度なんです。それでずっと今まで来たんだ。  それで、何も防衛庁も、この軍用地特措法で今までそうやってきたんでしょう。ところが、今度地方分権推進なんていうて、何のことはない、地方自治体の権限をおれのところが直接やるんだと、これでは戦前の方に戻っていくわけです。だから、そういう体系になっているということを私たちは非常に重視するわけです。初めから……(発言する者あり)防衛じゃないのです、米軍用地ですからね。防衛じゃないです。周辺事態で飛び出していくというのだから。そんなものは防衛じゃないです。何を言っているんだよ。  そういうことで、これを変えた理由は何ら説明していない。ただ、おくれないようにするためにというだけのことじゃないですか。  土地収用の原則として、事業認定に際して各方面の意見を聴取し、できるだけ公正な事業認定を行う、そのためにあらゆるところから聞くんだというのが、あの一番最初に聞いた土地収用、建設大臣がそのとおりだと言って確認された原則なんですよ。それで、だから地方自治体のああいう代理署名制度もできておったのです。それを、この際、分権推進だというて、まるっきり逆の戦前に近い方向へ変わった。これが今の実情だということを申し上げておきたい。  沖縄で、銃剣とブルドーザーで米軍が占領中にとったあの土地収用の継続ですね。期限が来たから継続するというので、昨年は暫定措置が随分問題になった。ところが、今度出ているのはそういうのじゃないのですね。継続じゃなくて、それも、期限が切れるのだから返すべきものを、継続だから、暫定だからというて取り上げたけれども、今度は新たにつくるケースについて、こういう地域の人たちの意見あるいは地方自治体の意見を聞く制度になっておるのを、わざわざ明治三十三年時代のあの収用法と同じペースに戻っていくということなんだからだめだ、こう言っているわけであります。  それで、緊急裁決の制度を導入して、さらに内閣総理大臣による、緊急裁決も収用委員会がやらない場合は代行裁決。だから、土地収用を要求している国が、今度は代行裁決で自分でやっちゃう、まさに戦前と原理的に同じようになってしまうというものを今度導入したわけですが、なぜこういう制度を、今までなかったものをあえて導入したのですか。
  247. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 今度こういう制度に切りかえたのは、本来国がやるべきことは国がやるという原点に返ったというだけの話でありまして、国がなすべきことを今まで地方公共団体にやらせていたことが問題だというのは地方分権法の明記しているところであるし、地方分権推進委員会の勧告でも明らかなところであります。だから、本来の姿に返っただけの話であります。  さっき委員から、いろいろ正当な補償がないからどうとかという話でありましたが、憲法二十九条は財産権の保障について規定しておりますが、その第三項においては、正当な補償のもとで、公共のために用いることができると明記されているところでありますし、今回の駐留軍用地特措法の改正における緊急裁決や代行裁決制度は、収用委員会の事務が遅延するなどして土地等の権原取得に支障が生ずることを回避して、条約上の義務を的確に履行するという、極めて我が国にとりましても高度の公益的要請を満たすために設けたものであります。  私有財産権の尊重という点に欠けることがないように、仮補償金とか補償裁決等の詳細な手続を定め、適正な規制を確保することとしており、憲法二十九条に違反することはいささかもないと私どもは考えております。
  248. 東中光雄

    東中委員 質問に答えてください。今まで緊急裁決とかいうのはなかったんだと。いわんや代行裁決なんというのはなかったんだと。  この前は、暫定使用ということで、あれだけもめたのです。あれは、もう期限が切れて今現実にどうにもならぬ事態が起こるから、ほっておくわけにはいかぬのだと当時の橋本総理は言いましたよ。今は何にも言っていないでしょう。おくれたらいかぬからと。おくれておる事態があるのですか。  新たに米軍用地の収用手続を、一番新しい収用手続をやったのはいつですか。
  249. 高鳥修

    ○高鳥委員長 答弁、だれですか。わかる人はいないのかね。——東中君。
  250. 東中光雄

    東中委員 こういうことですよ。三十八年間、一回も請求していないのです。  新規の土地を、米軍基地の土地収用をやった、特別措置法で収用手続をやったのは、一九五三年から六一年にかけて、日本本土で約百四十件の使用、収用認定の申請があった。うち四十三件、二十一施設・区域、使用が三十九件、収用四件について裁決があった。東宝劇場、板付基地、砂川基地など。しかし、それ以後は、新規の土地について、米軍用地特措法による使用申請もしていなければ裁決も出ていない。おくれることも何もありはせぬ。  ところが、何にもないのですよ、わかっておるのに、それを今何で出してきたのかと言っておるのです。必要性も何もありはせぬじゃないですか。おくれたらいかぬからと。ガイドラインが出てきて途端に、基地を提供するのにはちょっとでもおくれたらあかんのやということでやり出したのじゃないかということであります。  それでは——だって、問題が何にも起こっていないということを、最後に申請したのはいつかということさえも知らぬようなものをやっているというのが実情であります。  まあ、いいですよ。
  251. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 委員から何の御指摘もなかったものですから、私どもはこれまでの経過につきましては直ちに答えることができませんでしたが、今事務局が調べて……(発言する者あり)あなたに答えているのじゃない、聞きなさいよ、何言っているんだよ。だから、ちゃんと調べて報告するということを今申し上げておるわけであります。  そこで、先ほど来申し上げているとおり、この法律は、地方分権法と地方分権推進委員会の勧告に基づいて法律を出しているわけでありまして、私どもが勝手に出しているわけじゃない。これらはすべて民間から選ばれた有識者によって構成された者の意見でこれをつくっておるわけであります。(東中委員「そんな聞いてないことを言うな」と呼ぶ)何でですか。聞いたから答弁しているのじゃないですか。(東中委員「聞いてないことを言うな」と呼ぶ)
  252. 高鳥修

    ○高鳥委員長 順次御発言を願います。
  253. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 そこで、私が今申し上げたいと思いますことは、こういうせっぱ詰まった事態が起こって法律をつくるということこそ、これは政府の手落ちでありまして、私どもは、いろいろな事態を想定してこういうものを国会に出して、今御審議をいただいているというようなことであります。
  254. 東中光雄

    東中委員 安保条約というのは、この米軍用地特措法をつくったのは何年か御承知ですよね。それで、今緊急裁決のことをおっしゃいました。これは、今度のやつによりますと、公用地特措法の場合も、そういう強制的にやるということがあるからだということでした。だから、強権的に収用をやるということ自身は制度としてはあるけれども、しかし、公用地特措法で緊急裁決を申請するというケースがあったと、この答申の中ではそういうことも書いていますね。  それで私、運輸大臣に来ていただいているのでお伺いするんですが、公用地特措法で緊急裁決をやった事案とかいうのがあると思うんですけれども、それはいつごろにやられて、そして何件ぐらいあって、どうなっているか……(発言する者あり)それは知っていますよ。簡単に言ってください。
  255. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 成田空港におきましては、当初、任意取得を基本方針として用地取得に当たってまいりました。しかしながら、完成予定期日が大幅におくれ、これは昭和四十六年でございます、早期開港が至上命題となってまいりました。このため、一坪運動用地等、任意取得が極めて困難な用地について、土地収用法及び公特法に基づく収用、取得を行い、昭和五十三年、ようやく開港にこぎつけたところでございます。四十六年のことでございます。
  256. 東中光雄

    東中委員 公用地特措法で運輸省がやった最後は昭和四十六年の六月十二日。四十六年です。もう三十年たつんですね。後ないんです。その後、成田飛行場の第二期工事については普通の申請をやったんです。しかし、それはとうとうこの前取り下げましたね。一九九三年六月、第二期計画用地の一般土地収用法に基づく収用裁決申請はすべて取り下げる、そして話し合いによってやりますというて、反対運動にかかわられた農民の皆様へというて、これは運輸大臣が、強権的にやったらだめなんだということをおわびして、そしてそういうことは取り下げますという文書まで出しましたが、これは平成七年の一月二十日付の、成田空港反対農民に対する書簡の発出についてといって、閣議報告までやられていますね。  だから、強権的にやったらだめなんだ、三十年ほど前はやったことがあるけれどもといって、わざわざ取り下げているんです、公用地特措法。それで、緊急裁決をもうやらないというふうになっているんです。  ところが、公用地の特措法にあるからというて、今度、米軍用地にこれを入れてきたんです。なっちゃいないんです。新規の土地収用というようなことは全然やっていないんです。やろうとしているのかもしれない、しかし、今までやっていないんです。そういうことだから、今までやっていないことを今度やるようになったのはなぜかということについて、非常時に備えてとおっしゃいましたけれども、これはガイドラインにその規定があるからなんです。  ガイドライン、あなたは読みましたか。ガイドラインを隅から隅まで読んだらはっきりします。「周辺事態への対応」として「施設の使用」という項目があります。そこでは、「日本は、必要に応じ、新たな施設・区域の提供を適時かつ適切に行う」と。それから、一時的な空港、港湾の使用を確保すると書いていますね、ガイドラインに。確保するの方は、ガイドラインの協力で随分問題になりました。ところが、米軍用地の提供、新たなる基地の提供という言葉を使っています。新たな基地の提供を適時適切に行う、必要に応じと。  私は、あのガイドラインの最初にあった本会議質問のときにその点を聞きましたよ。アメリカの必要に応じと書いてあるんだから、必要だといえば、その内容については日本は入ることなしに、沖縄の基地でもそうですね、何に使っているかということはわからない。わからぬでも、必要だというから必要なんだということを言うんです。そして、提供を適時適切に行うということをガイドラインにうたったんですよ。それの実施じゃないですか、これは。それ以外にないでしょう。  今まで、この三十年余り適用したことない、どないになっとるのかは知らないという防衛庁が、もしおくれたらいかぬから、条約はちゃんと守らないかぬからと。条約を守らないかぬというのは初めから決まっておるんでしょう。しかし、適時適切に行うということをこの間約束した。私がそれを質問したのに対してどう答えたか。真正面から答えないで、協力というのは自主的な立場で自主的に判断しますと。自主的な立場で自主的に判断するんだったら、なぜこんな緊急裁決の制度を入れるのか、戦前と同じ制度を。運輸省はそれをやったけれども、もうだめだといってやらなくなった。普通の申請さえやめて、話し合いで解決つけるんだ、そうしなきゃできないんだといって、ついこの間も成田についてやっているじゃないですか。  ところが、米軍の基地についてだけは、今まで使ったこともないのに、今度使って、それで、おくれるようなことがあったら急にやるんだと。主張や意見を聞くと言うておったのに、それまで全部取り上げてしまったということで、そういうことになっているということをはっきり申し上げておきます。  ちょっと時間がないので、総理にわざわざ来ていただいたので、一言だけ。  中央省庁改革のための国の行政組織整備法の中で、防衛庁調達実施本部の廃止と、それから原価計算部門と契約部門を分離するという方針が出されているんですが、それは結局、改革と言っていますけれども、前に起こった例の不祥事件の対策、それの再発防止ということを、これも本会議で何回か質問をしてやってきたんですが、時間がありませんので、私はそのことについて一点だけ聞いておきたいんです。  調達実施本部を変えて、原価計算部門と何とかを分けなかったことが、お互いに相互牽制できなかったことがああいう不祥事件が起こった重要な原因であるなんて書いているんですよ。そんなもんじゃない。  これについて、私は総理に何回か質問をしておりますが、この問題については、去年の九月十八日の本会議質問、そのほか予算委員会でもやりましたが、総理は、今後、事件関係の徹底的な解明をやるとともに、再発防止に向けて、調達の仕組みの抜本的改善と綱紀の保持に全力で取り組み、国民の信頼回復に万全を期するということを言われましたね。要するに、全容を解明せないかぬということを言われているんです。その上で、対策と。ところが、全容解明があったのか。それから、防衛庁長官に強く指示するという答弁もあります。  いわゆる調達実施本部の不祥事件についての全容解明があったかなかったか、それについての一応の結論があったかどうかということをお伺いします。
  257. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 防衛装備品の調達をめぐる背任事件に関しましては、防衛庁において、装備品調達における透明性やチェック体制が十分に担保されていないなどの問題があり、これらの問題を解決し、再びこのような事案を起こさないよう調達実施本部の解体などの改革案を取りまとめるとともに、事案の実態解明に向けての取り組みに不十分な面があったことから、関係者の厳正な処分を行ったとの報告を受けております。  現在、防衛庁におきまして、調達改革の具体的措置の実施に全力で取り組んでいるものと承知をいたしております。  なお、背任事件の事実関係につきましては、現在行われている公判において明らかにされることと考えておりまして、今御指摘の昨年の九月十八日の東中委員のお尋ねのうち、一連の防衛調達行政の不正の全貌を解明しという点につきましては、今申し上げましたように、公判において今明らかにされてきておるところだろうと思います。  一方、もう一点の関係資料の隠匿、真相を徹底的に究明すべきということにつきましては、四社事案関連文書の管理実態に関する報告、昨年の十一月公表の分におきまして明らかにされておるところでございまして、こうしたことを通じまして、委員御指摘の点につきましては、政府といたしましては、その任に当たりまして、解明に努力をいたしておると認識をいたしております。
  258. 東中光雄

    東中委員 終わります。
  259. 高鳥修

    ○高鳥委員長 次に、深田肇君の質疑に入ります。
  260. 深田肇

    ○深田委員 社民党の深田肇でございます。  長い時間でございます。お疲れでございましょうが、もう最後でございますから、いま少しおつき合いのほどをお願い申し上げておきたいと存じます。  我が社民党といたしましては、今回の一連の行政改革について、与党時代も含めて、市民本位の行政改革及び公務員の雇用労働条件の確保の立場から今まで臨んできたところでございます。  本来ですと、きょうはそこから切り込んでまいりまして、太田長官とさしでやりましょうときのう申し上げておったのでありますが、実はきょうの昼の理事懇で、思わず感謝申し上げたのでありますが、お隣にいらっしゃいます伊吹筆頭理事の方から、この際の機会だから、総理に残っていただいて、深田君が質問をしたり、それから総理の御意見を聞く機会をつくろうという特別の御配慮がありまして、総理の御高見をこれから伺うチャンスができましたことを感謝申し上げながら、したがって、事前にどういうことを御質問するかということを申し上げる時間もなかったものですから、日ごろ考えていることを率直に申し上げて、総理の哲学的な見解を伺いたい、こんなことを思っておる次第で、御勘弁をいただいておきたいと思います。  そこで、実は、このいわゆる省庁改革に対しての提案理由の説明の中に、よく使われる言葉でありますが、主権者である国民の信託に基づいてという、主権者である国民という言葉が出てきたり、それから、数ページめくっていただきますと、行政権が属する国民主権の理念に沿ったという格好で、国民主権論が大変今回は目立つように思います。  そこで、実は、憲法を少し読ませていただきましたところ、確かにここに引用されているような主権在民論という言葉があることは否定しません。しかし、これだけでいいのでしょうかと思います。したがって、私は、本会議の席上でもちょっと申し上げたのでありますが、言葉だけのいわゆる国民主権論というのが少し前へ出過ぎて、形式的で手続論的であって、言うなら、その主権者が選んだ国会議員がいわゆる国会を編成して、そこで間接的な状況であるけれども総理大臣を選んで、総理大臣が任命した大臣がいて行政をやっていくんだ。それは、そういうことが書いてあるんです。  書いてあるんですが、憲法の精神は、ここでわざわざ主権在民論を引用されて、今度の行革を、そのことについて大変レベルの高いものとして国民に説得されようとするのであるならば、私は少し言葉が足らないのではないかというふうに率直に思います。  と申しますのは、お互い知っておりますように、いろいろな経過がありまして、この憲法ができたときに、文章をちょっと読ませていただきますならば、主権は国民に存することを宣言するという、宣言という言葉まで入れて確認をしたのが始まりでございますね。同時に、そのことから始まりまして、その権威は国民に由来し、そしてその次なんです。そこを太田長官はしょっちゅう使われるのです。その次に書いてありますのは、そのいわゆる権力は国民の代表者がこれを行使し、こうくるんですね。  したがって、その後半だけ使いますと、これはもう憲法そのものとおっしゃるんだが、主権在民論を引用されるのなら、すべての権利が主権者にあり、いわゆる国民にありというふうに憲法が書いて、そのことを宣言して、その中で、その権利は本来国民が持っているものだ、由来するものだということを、わざわざ前にあるわけでありますから、そうなりますと、後半の現在のいわゆる内閣法によって云々されるということを認めたとしても、今のように政治不信があったり政治不関心があったり、同時に投票率が低かったり、こういう状況の中で、国民が持っている、我々に対する、国会や政治や、もっと言えば今の政府に対する批判などというものはたくさんあるだろうと思いますね。  それをどういうふうに、国民参加の政治の感覚だとか市民に開かれたものだとか、はやり言葉はたくさんありますけれども、主役論を私が申し上げるわけではありませんが、どういうふうにやっていくかということが大切だろうというふうに実は思いながら、きょうまで発言の番を待っていたわけでございます。  したがって、私は、あえて申し上げるならば、ここ数日間続いておりますが、国と地方が対等、平等という話がありました。同時にまた、地方の方から国に物を持っていくんだという話もありました。そういう格好で地方分権論ができ上がってくる。それに基づいて行政改革も、革命的な変革だという、革命的かどうかというのは意見の分かれるところでありますが、そういう言葉まで使われて今回の行政改革をやっていくんだ、これは二十一世紀に出す新しい日本のイメージなんだという格好で国民にお話をされるんでありましょうけれども、私は、率直に申し上げて、国民がどれだけ今日の行政改革法案がわかっているか、それから、もっと言えば地方分権法の精神がどこまでわかっているかとなると、まだまだ認識の度は低いと思います。  低い状況の中で物事がどんどん決まっていく。もっと言えば、信託されたメンバーが多数決で決めればいいんだということで、短い審議の中で物が決まっていく。それがどんどんと行政として執行されるということになりますと、いわゆる主権者との間の距離は埋まらないという感じが率直にするんです。  突然で申しわけありません、総理に、そういうふうな主権者である国民の意思をどういうふうに政治に反映するか。例えば、昨日もきょうもいわゆる住民投票や国民投票の必要性が出ました。きのうの自治大臣はちょっと冷たい、国民投票で冷たい御説明の印象を持ちました。悪いことがたくさんあるということの印象が強かった。しかし、きょうは、総理が予定して読まれた原稿の中には、住民投票、国民投票も今後考えていかなければいかぬと思うという一つ発言が出ました。  などなどを含めて、主権者の意識や意思をどう政治に反映させるかということが伴っていかないと、行政改革をやった、それから分権法をつくった、ではこれで皆オーケーだろうということではいけないんではないかということで、実は太田長官とやりとりしたかったのでありますが、総理、恐縮ですが、総理の方の哲学的な見解を伺えればありがたいと思います。
  261. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 委員のお尋ねを取り違えておってはいけないと思いますが、一つは、今回、この二つの大きな法律につきまして、関連法案もそうですが、これは、歴史的に見て日本のいわゆる中央集権的な行政を抜本的に改めようということでございまして、日本はどちらかというとフランスの中央集権的な政治システムで明治以来やってまいりましたが、ここに至って、本当に今委員御指摘のように横の関係をしっかりして、中央と地方が相協力していくという形のものをつくり上げるということだろうと思います。  その点について、国民の御意思ということになりますと、極論いたしますと、国会の御審議を受ける前に、この重要な案件についていま一度国民の意思を明らかにしなければならないともお聞きするわけでありまして、そのくらいの重要な案件であることは私も認めますが、せっかくに国会があり、また内閣もございますので、この機会に十分御審議をいただいて、そして、そのことについては国民の御理解を改めていただくことでなかろうかと思います。  それからもう一点は、しからばこの法案の中における住民自治という問題についてどうあるべきかとのお尋ねであるとすれば、先ほども御答弁申し上げましたように、住民投票制度やあるいは直接請求制度の見直しの検討なども今後取り組んでいきまして、この法律が企図することについて、住民が十分その権利を主張し、またこの自治が、地域が発展のできるように行ってまいれるようないろいろの仕組みは考えていかなきゃならない、このように受けとめさせていただいて、御答弁させていただく次第でございます。
  262. 深田肇

    ○深田委員 ありがとうございました。  両筆頭のお話で、地方公聴会もできるようでございますから、などなどをこれからお話ししてもらって、地方の声をどんどん反映することが保障されると思いますから、総理、ありがとうございました。  そこで、ちょっと具体的な問題に入りますので、太田長官、よろしくどうぞ。  ずばり申し上げて、これはなかなかこの雰囲気では言いにくいことでありますが、公務員の定員削減の問題から入っていきたいのです。リストラとか削減というのは、もう今やときの声のようになっていますから、私はちょっと待ってくださいよの立場で言うので言いづらいのですが、そこはひとつ率直に私の見解を申し上げます。したがって、少し穏やかに御答弁をいただきたいというように思っている次第であります。  実は私どもは、御案内のとおり、十年間で一〇%というのは、基本法をつくるときに、この場でやりとりをして、あなたは前の長官から引き継ぎを聞いているはずですよ、総理からも。そのときにもいろいろ論議をして、十年間で一〇%削る、いや三〇%削らなきゃ本当の行政改革じゃないじゃないかという御意見もありました。しかし、最終的集約は、賛否の採決をとった結果、一〇%が通っちゃったんです。  ところが、突如として、総理大臣になられるのかどうかわかりませんが、自民党の総裁選挙か何かのときにお話があって二〇%、その後は自自の合意があって二五%と、こういうふうな経過があることは承知しているので、これはもう具体的に、総理とやりとりするよりは長官に、前任者からの引き継ぎを含めて、しかも採決の結果基本法が通って、それが、あえて言えば突如として、私、いつも中井さんにしかられていますけれども、確かに自自合意があったとはいうものの、一〇が二五にはね上がったという経過については、もう少し正確なお話をしないと、私たちにとっても大いに不満だし、国民はわからない。もっと言えば、職員もわからぬと思う。国家公務員がほとんどわからないと思いますよ。御説明ください。
  263. 太田一男

    太田国務大臣 その点につきましては、私も今、深田先生が御承知のこと以上のことは実は御説明すべきことがないわけでありまして、それはまず、政権ができた、小渕内閣が発足したときには既にもう総裁選挙で約束をしていたことで、党員に対して公約していたことでありますので、それをそのまま所信表明演説の中に盛り込まれて、それは我々小渕内閣の者としては、もう有無を言わさずそれは受け入れなくちゃいけないということでございます。  その後、十二月に至っていよいよ自自ということになりまして、これまた我々は反論をする余地はないわけでございまして、至上の命題として与えられた。どうやってこれを、一〇%が二五%になったわけでありますから、我々も大変当惑をいたしたわけでございますけれども、何とか深田先生初め先生方の御理解を得て取り組んでいこうということになっておるわけでございます。
  264. 深田肇

    ○深田委員 納得できる話じゃないですよね。恐らく、今のことがテレビ放映されたり、あしたマスコミが正確に新聞に書いていただいたら、長官の言っているのはひどいよと。自民党はそんなに保守的で、総裁選挙で約束したら、それはもう有無を言わずにやらなきゃいかぬ、自自で決めたんだから、私は行政の責任者であるがそれはうのみにしてやらなきゃいかぬ、だからこういう法律をつくっちゃって今提案しているんだ……(発言する者あり)公約と言われることで、党内で討論されたんでしょう。そこは他党のことだからどうだっていいのですが、そういうようなことは私は答弁を聞いた上で納得できないのでありますが、こればかり言っておれませんから。  やはりどうしてもリストラとか行政改革という言葉が前へ出ることによって、数を減らすというところに物事が皆いっているように思いますよ。それで、同僚議員、先輩議員が質問されていると、確かに、長官もそうだし、自治大臣も御説明があったとおり、一律じゃなくて、ふえるところもあるし減るところもあるよというようなことがあります。  したがって、二五%というのは目標であるという言葉が出てきたり、絶対的なものであるようなないような、二五%は三〇や三五に広がっちゃうのかもしれませんけれども、いずれにしても、とりあえずそういう格好のもので、いろいろなことがあるよという話をされていますから、これから具体化されるのでしょうが、しつこいようですけれども、二五%に仮にするために、経過は了承できませんが、何か試算といいますか、積算ですか、そういうようなものはお持ちなんでしょうか。
  265. 太田一男

    太田国務大臣 これは我々が考えたというよりも、自自連立の際に自由党の方からそういう御示唆があったというふうに聞いておりますが、毎年、我々が知っているところでは、今管理しております国家公務員の人数からいえば、四%くらいが実際に退職をされるわけでございます。そうしたら、それに対して、正確に言えば二・八%分を不補充ということにすれば、つまり四%から二・八%を引けば一・二%だけ補充して、あとは補充しないということにすれば、毎年二・八%ずつ減っていって、十年間で二五%が減るというような計算があるというふうにお聞きをしております。  そういうふうにしてやったら実際にどうなるだろうかということは、仮定のことでございますけれども、さまざまな職場ごとに考えてみたわけでございますけれども、それは大変な、本当にそれをやっていくとすれば、その職場の機能というのは大きく損なわれることは間違いないわけであります。それは、病院とかあるいは国立大学、例えば国立大学でいえば、助教授が教授になるときに一回はやめられるわけですけれども、それはその四%の中に入っているわけでございますから、そうしたら助教授はやめたけれども助教授を補充しないということになりますから、それができるのかというふうなことなどがありまして、なかなかこれは大変だ。  そういたしますと、仕事をどうやって減らしていくかということになるわけでございまして、そうしたら、我々が考えている、今、透明性を確保するためにやる改革、それから政治主導でやるための改革、規制緩和でやる改革地方分権でやる改革、あるいは任用制度に新しい新機軸を導入することによって行われる改革、さまざまな改革の中でそれを達成していくということでなければならないということになっているわけでございます。
  266. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 若干、自由党の提案をしたことについての言及があったものですから、補足をしたいと思いますが、二五%というのは、御指摘になったとおり、やめていく人の半分しか補充しないというやり方を十年間続ければ、おおむね四分の一、二五%は削減できるじゃないか。  なぜそういうことを言ったか、それは生首をすぐ飛ばせという話にしたくないということなんです。  それからもう一つ、役所の、これは何でもそうなんですが、人間がいれば仕事をふやすのです。だから、そういう不補充をするということが、結果的にポストを減らし、仕事を減らして、余分な仕事を減らすことにつながるのです。そういう意味で、アウトソーシングだとか、権限を見直してできるだけ規制もやらないとか、あるいは地方に関することは国はもう一々くちばしは入れないとか、そういう形をどんどんやっていくという、もう一方でそういう意味での定員管理をする。つまり、いろいろな角度からそういう形でスリム化していく。そういうことがもう一つつながらないと、実際、この仕事は要るのか要らないのかということばかり言っていても、現実にはなかなか進まないじゃないですか、それをいかに生首に影響させない形でやることができるのでしょうかと。そういうことをあわせて、そういう発想の中で提案をしてきた。  それを総務庁長官は、現実の各省庁仕事の中で、すぐ直ちに何カ年計画かの中でどういうふうに配分しようかと思うと頭が痛いということだろうと思いますが、しかし、それをあえてやろうというのが両党首の政治決断で、それに基づいて今苦労をしながらも達成していこう、こういうことだと思っています。
  267. 深田肇

    ○深田委員 御丁寧なお話を伺ったのですが、同時にまた、一番気にする生首は飛ばさないのだ、そのためにどうするかというお話を自治大臣からもいただいたわけでありますから、その点はしっかりと期待をして、お願いしておきたいというふうに思います。  要するところ、どこかの国と比べる必要はないでしょうけれども、今でも我が日本は私の立場からいうと大変すばらしい国と思っておりますから、したがって比べることはないでしょうけれども、一般的に言って、人口比率からいえば、うちの国家公務員がそんなに多いのではなくて少ないということはわかっているわけです。そこをもっと、四分の一をいくわけでしょう。  そうなってくると、現在の八十五万なら八十五万。それが郵政公社ができる、それから独法が出てくる、こうずっとやってくると、長官、十年後は国家公務員は何万人ぐらいになると読んでおられますか。  そして、そのときに、日本世界の中の日本として、国家公務員は国民に対する奉仕者ですから、それがずばっと減っていくという状況の中で、あなたは次の人に引き継ぐのだけれども、次の世代として、その国家公務員は国民に対する行政上のサービス等々は間違いなくやれるよという青写真はまだかいていないのだろうが、そのことをかかずにまず二五%削減ありきといってしまうと、どうなるのかなという不安は、私だけではなくて国家公務員の方も持っているのではないかと思いますが、その辺をちょっと聞かせてください。
  268. 太田一男

    太田国務大臣 今のはおっしゃるとおりでして、日本は国家公務員の数が少ない。人口に比しての国家公務員の数はアメリカの半分ぐらいだ、あるいはヨーロッパの半分ぐらいだ、こう言われるのはそのとおりだと思います。したがって、その数だけを見れば、多過ぎるという批判そのものが間違っているということになるわけでございます。  しかし一方で、なぜ多いと人に思われるのかということをやはり考えてみなければいけないわけでありまして、それは、いわゆる事前の調整という部分にたくさんの人が配置をされておって、事後のチェックの方に配置されている人が少ない。例えば、よくあるような、金融監督に携わる人たちの数が全然、二けたぐらい違うというようなことが言われるわけでございますので、そこの構造は変えていかなければなりません。  そして、いわゆる実施企画立案というものが混然となっていることがあるわけでございますので、そこをきちんと分けて、実施部門を実施部門とする、企画部門を企画部門とするということの中で相当整理されてくれば、私は、事前の調整に携わっている企画と実施の部門の方々はもう少し少なくてもいいということにやはりなるのではないかと思うのです。  そして、純粋の実施というところは、今後とも、ニーズに応じてふえるか減るかはわかりませんけれども、違う物差しでもって定員管理されなければいけない。それから、いわゆる準司法的な部門については、むしろふえていかなくてはいかぬということになるのだろうと思います。  だから、十年後にどうなるかといえば、今おっしゃいましたように、要するに、そういう四分の一とかあるいは五分の二とかが減っているという状態に、今の形でいけばなろうかと思いますけれども、そこはまたさらなる工夫が要ると思います。
  269. 深田肇

    ○深田委員 これからいろいろ考えるというお話だろうというふうに思いますから、恐らく国民も大変不安だろうけれども、あえて伺います。国家公務員八十五万と言われております方々は大変不安な状況で、十年間かかるが今すぐ首は飛ばない。おれは計算したら十年間のうちに卒業できると思っている人もいるだろうし、そうすると、十年以上これから勤めるという若い人から見れば、どうなるかという心境もあるだろうと思うし、そういう状況の中で、私などは、職員組合等々の御意見を拝聴する限り、不安材料の方が多いですね。  これを契機にして、とにかく橋本、小渕時代につくり上げた行政改革地方分権法に基づいて、さあ新しい日本に向かって船をこぎ出すのだというので、国家公務員の意欲が満々で燃え上がっているという感じを持ちませんが、あなたはどういうふうに職員の心境状況や雰囲気をとっておられますか。大丈夫だと。やるかやらぬかと言ったら、やると言うに決まっていますよ。しかし、今そんなに安定して、職場の中が明るい雰囲気で、太田路線に基づいて走ろう、こういうふうにあなたは思いますか。現場とは大分違うよということを進言申し上げて、この件についてはそこで御感想を聞いて、ほかの問題へ入りたいと思います。
  270. 太田一男

    太田国務大臣 それは私は、我が国の国家公務員のモラールというのですか、やる気というのは大変あると思っております。そして、そういうものがこの国の骨格を支えてきたと思います。  今度新しい独立行政法人のような制度が導入されるということで、御心配や御不安があることはよくわかるわけであります。そして、我々も初めての世界にこぎ出すわけでございますから、そんなに何もかも自信があるわけではないけれども、ここは一番、それは同じ船に乗っていただく、我々も同じ船に乗るわけですから、何とかこの困難な時期を、新しい二十一世紀に向かって力を合わせて、運命をともにして頑張ろうということを申し上げたいわけでございます。
  271. 深田肇

    ○深田委員 働くメンバーなり職場で頑張るメンバーの心境は大変正確につかんでおられるようでございますから、間違いないような指導のほどをお願いしておきたいというふうに思います。  そこで、もう時間がありませんので、この間の本会議で御答弁をいただいたときに、本会議というのは我々から見ると大変権威があって、それで原稿を読まなければいかぬと思うし、皆さんの方もきちんとした御答弁をいただけるというふうに、大体そういうふうに慣習で思っておりましたが、実は、ちょっときのう申し上げたら、ジェスチャー入りで、いわゆる良好な労使関係をしっかり守ってくださいよと言ったら、頭の片隅にあるよと。きのうはここで、頭の真ん中にあるよ、こういうジョークも含めてお互い大変わかりやすい話でございます。これはひとつ笑い話ではなくて、真剣な話としてお互い受けとめておきたいと思いますが、きょうはもう一つ、こんなこともあなたはおっしゃったのですよ。  特殊法人関係と独法との関係を私が質問したときに、本会議でこうあったのです。「国民から見られている、問われているわけでございますから、」これも「ございます」と丁寧な言葉ですよ。「でたらめなことをするわけにはいかないわけでございます。」国民が見ていなければでたらめをやるということは、今までやってきたんだ。まあそれは言葉のあやで、私があなたの部屋へ行っておいおいと言うのはこんなことだけれども、国会の本会議場で質問に対してあなたはここまでおっしゃったので、これは恐らく国民は不愉快というか、あなたの大衆性、庶民性だけを喜ぶのではなくて、という感じが率直にします。  こういうことであってはいけないというふうに実は思いますし、独法の問題というのは物すごくお互い関心を持っていることでございますから、したがって時間がありませんから最後のお答えをいただくわけでありますけれども、当時申し上げたとおり、これはやはりいろいろとありましょうけれども、一九九七年十二月二十六日、いわゆる当時の三党が確認いたしました労働関係への配慮、これは私が野田自治大臣に聞く必要はないと思いますが、自自確認の中でそれは否決してしまえ、そんなものは忘れてしまえということがあったわけではなくて、一〇が二五に上がりましたけれども、この確認事項は生きているのだろうと思います。生きていると思います。  同時に、基本法をここで仕上げたときの経過として、四十一条に、しかもこの行革のところの附帯決議の趣旨もありますから、それは十分尊重してやっていただきたいということを再度、もう一度申し上げて、見ておられるから今度は大丈夫だよ、でたらめやらないよというような御答弁じゃなくて、少し厳粛に御答弁をいただいて確認事項にしておきたいと思いますが、いかがでしょうか。ちょっと申しわけない言い方かもしれませんが。
  272. 太田一男

    太田国務大臣 大変、言葉遣いを間違えたりすることがありまして、心からのおわびを申し上げたいと思います。  自社さの三党の合意というものがあって、それからこの基本法の四十一条になって、また、そのことを政府の大綱を一月に決めますときにも閣内で確認をいたしまして、良好な労使関係ということに対する配慮を忘れたらば、この行政改革中央省庁改革は成功しない、成功するものではない。国家公務員の現場の皆様方の御協力なしには、この国の運命をこの行革に託すことはできないということであろうかと存じております。  謹んできょうの御意見をまた承りました。ありがとうございました。
  273. 深田肇

    ○深田委員 委員長、大変恐縮なことでございました。言いたいことを言わせてもらいましたが、これからも、これまた両筆頭のあんばいによって大分しばらくこれからこういう質問の場があるようでございますから、また改めて次の機会をお願いいたします。  どうもありがとうございました。
  274. 高鳥修

    ○高鳥委員長 次回は、明二十八日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時一分散会