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1999-02-10 第145回国会 衆議院 厚生委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月十日(水曜日)     午前十時一分開議   出席委員    委員長 木村 義雄君    理事 佐藤 静雄君 理事 鈴木 俊一君    理事 長勢 甚遠君 理事 金田 誠一君    理事 山本 孝史君 理事 福島  豊君       安倍 晋三君    伊吹 文明君       岩下 栄一君    衛藤 晟一君       大村 秀章君    奥谷  通君       桜井 郁三君    園田 修光君       棚橋 泰文君    戸井田 徹君       能勢 和子君    桧田  仁君       堀之内久男君    松本  純君       宮路 和明君    山下 徳夫君       吉川 貴盛君    家西  悟君       石毛えい子君    五島 正規君       土肥 隆一君    古川 元久君       松崎 公昭君    青山 二三君       久保 哲司君    桝屋 敬悟君       武山百合子君    吉田 幸弘君       児玉 健次君    瀬古由起子君       中川 智子君    笹木 竜三君  出席国務大臣         厚生大臣    宮下 創平君  出席政府委員         公正取引委員会         事務総局審査局         長       平林 英勝君         厚生政務次官  根本  匠君         厚生大臣官房総         務審議官    真野  章君         厚生省健康政策         局長      小林 秀資君         厚生省保健医療         局長      伊藤 雅治君         厚生省生活衛生         局長      小野 昭雄君         厚生省医薬安全         局長      中西 明典君         厚生省老人保健         福祉局長    近藤純五郎君         厚生省児童家庭         局長      横田 吉男君         厚生省保険局長 羽毛田信吾君         厚生省年金局長 矢野 朝水君         社会保険庁次長 宮島  彰君  委員外出席者         環境庁企画調整         局環境保健部長 澤  宏紀君         農林水産省食品         流通局野菜流通         課長      岡島 敦子君         郵政省放送行政         局地上放送課長 田中 栄一君         厚生委員会専門         員       杉谷 正秀君 委員の異動 二月十日         辞任         補欠選任   砂田 圭佑君     吉川 貴盛君   田村 憲久君     園田 修光君 同日         辞任         補欠選任   園田 修光君     棚橋 泰文君   吉川 貴盛君     奥谷  通君 同日         辞任         補欠選任   奥谷  通君     砂田 圭佑君   棚橋 泰文君     田村 憲久君 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件     午前十時一分開議      ————◇—————
  2. 木村義雄

    木村委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。長勢甚遠君
  3. 長勢甚遠

    長勢委員 おはようございます。  ことしになりまして幾つか厚生省関係のことがマスコミ等で報ぜられ、社会不安に近い問題もありますので、その点を二点最初に御質問させていただきます。  一つは、インフルエンザの問題でございます。  ことしは大変インフルエンザ蔓延をしておる、しかも高齢者あるいは乳幼児等死亡者が多数出るといったようなことで、社会不安とまで言い切れるかどうかわかりませんが、大変不安な気持ちでみんなが過ごしておる状況があるようであります。大変心配をいたしております。  昨年は、この委員会で大変御議論をいただいて感染症新法というものもつくったわけで、その際に、その柱として、行政の方で感染症発生状況等を的確に把握をし、それを分析して迅速に情報提供する、また対応する、こういう事前対応型行政をこれから進めようというふうなことが議論になっておったと思っておりますだけに、法施行前とはいいながら、ぜひそういう方向厚生省もきちんとした対応をとっていただきたいなと思っておりましたし、今回のインフルエンザの問題について、こんなことにならないように何とかもう少しできなかったものかという思いを隠し切れないのが私の気持ちでございます。  特にことしのインフルエンザ状況は、先ほど申しましたように、高齢者中心にしてたくさんの死亡者が出ているという報道が連日なされておるわけでございますが、ことしのインフルエンザ蔓延状況、そして、死亡者が大変多いということなんですが、これの実態、そして、こういうことになる前に何とかできなかったものか、今後もインフルエンザ蔓延ということがあり得るわけでございますから、これほどの社会不安になる前にきちんとした対応をしていくためにはどういうことを考えたらいいのか、今回の反省に立ってどういう対応があるのかということを、ぜひひとつこの際責任ある御答弁をお願いいたしたいと思います。
  4. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 インフルエンザにつきましては、委員から御指摘のとおり、感染症新法におきましては事前対応型の行政を行うということが一つの柱でございまして、したがいまして、感染症に関する情報を収集、分析いたしまして、医師、国民等に対しまして的確に提供していくということが一つの柱でございます。  現行の制度におきましても、インフルエンザ発生動向調査につきましては、全国の二千四百の小児科と内科の医療機関に報告をお願いしているわけでございますが、これらについては週ごとに公表しております。さらに、全国の小中学校を対象にしまして、学級閉鎖などの状況について集計をいたしまして公表しているわけでございます。  しかしながら、必ずしも十分とは言えないわけでございまして、感染症新法施行当たりましては、さらにこの発生動向を的確に把握するために、現在、約二千四百の定点につきまして五千に拡大をいたしまして、そしてインフルエンザ専門の、インフルエンザ固有定点という形にいたしまして、詳細な迅速な情報提供に努めていきたいと考えております。  さらに、事前対応型の対応策といたしまして、新法におきましては特定感染症予防指針というものを作成することになっておりまして、蔓延の防止、医療提供研究開発の推進など総合的な指針をつくって対応していきたいと考えております。  それから、高齢者の問題でございますが、現在、インフルエンザ死亡者状況につきましては、死亡診断書をもとに作成されます人口動態統計によって把握しているのが実態でございまして、毎年死亡者があるわけでございますが、平成九年には八百十五名の死亡がございました。おおむね九割程度が六十五歳以上で占められておるわけでございますが、現在の人口動態統計におきましては五カ月後に概数がわかってくるという一つ問題点がございまして、今後、特にインフルエンザにつきましては、死亡者動向をいかに的確に迅速に把握するかということが一つ検討課題だというふうに考えております。  インフルエンザにつきましては、現在のワクチンによりましては、重症になることを防止する効果でございますとか、それから死亡するのを予防する効果があるわけでございますが、蔓延そのものを防ぐというような効果は残念ながらございませんので、流行そのものを的確に抑え込むということは難しいわけでございますが、今後、できるだけ予防接種というものを高齢者を含めてどのように考えていくかというのが一つのテーマでございまして、予防接種制度検討の中で、高齢者も含めましてインフルエンザ予防接種あり方を小委員会での検討を踏まえて六月を目途に結論をいただき、それを踏まえて厚生省としての対応を考えていきたいと考えておるところでございます。
  5. 長勢甚遠

    長勢委員 今後不安のないようにぜひひとつよろしくお願いしたいと思います。  次に、最近話題になってといいますか、問題になっております所沢ホウレンソウですか、それのダイオキシン汚染問題についてお話を伺いたいと思います。  ダイオキシン問題は当委員会でも大変熱心に取り組んでおるところでございますが、健康、生命にかかわる極めて重大な問題でありますから、今後抜本的な対策を講じていかなければならない、このように思っておるわけであります。同時に、現時点では、きちんとした情報、十分な情報がないためにいたずらに不安がかき立てられておる、特に風評被害等が生ずるということが起きていることはまことに残念なことだと思います。  昨年、同志能勢町のダイオキシン被害の地区も視察させていただきましたが、そこでも地元農家方々風評被害等で御苦労、心配をされておるというのも実感をいたした次第であります。今回の報道所沢農家方々も大変御苦労されておるというふうに聞いておりますから、一刻も早く解決をして農家消費者方々に安心をしてもらう必要があると思っております。  そこで、まず問題となっておる先般のテレビ報道内容、そしてその当否について、厚生省から御説明また御見解をお伺いをいたします。
  6. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 御指摘の本問題につきましては、報道において数字が示されているわけでございますけれども、どのような地点で、どのような種類の野菜を、どういうふうにして測定したかということが調査をされた側から公表されていないということがございまして、その評価に関しましては、データの実際を見ませんとなかなか評価をしづらいという実情にございます。  さはさりながら、今先生指摘のように、風評被害があるというふうに私ども聞いておりますし、また、実態をきちんと解明をいたしまして情報提供するということの必要性も感じているところでございまして、先般、農林水産省環境庁及び埼玉県と私どもと共同で野菜類等につきましての実態を解明し、本当に健康に影響が及ぶようなレベルなのかどうかという点につきましてできるだけ早い時期に調査を完了し、評価をし、公表したいというふうに考えております。
  7. 長勢甚遠

    長勢委員 テレビ報道数字は、何か伺っているところによると、厚生省の示しておるような基準とは全く違うんだというような報道、相当高いというようなこともあったように聞いておりますが、そこら辺について少し詳しくお話しいただけませんか。
  8. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 いわゆるテレビ報道で出されました数値につきましては、私どもちょっと詳細を入手できませんので、先ほども申し上げましたように、その内容の細かいことについて論及することは難しいと思いますが、ただ、昨日、JA所沢市がホウレンソウダイオキシン濃度の測定結果を公表したところでございます。  その結果を見ますと、その量は、ホウレンソウグラム当たりでございますが、〇・〇八七から〇・四三ピコグラムの範囲ということで、発表内容はそういうふうになっておりまして、平成九年度の厚生省実態調査におきますホウレンソウ数値と比較いたしましても、特に高いものではございません。  それからまた、通常食生活におきまして、特定食品のみを長期にわたりまして大量に食べるということは普通は考えがたいわけでございますので、人への健康影響評価する場合には、通常食生活によりまして摂取されますダイオキシンの総量によりまして判断をする必要があるわけでございます。  例えば、極端な仮定でございますけれどもJA所沢市が公表いたしました最高値を示しますホウレンソウ、すなわち〇・四三ピコグラム・パー・グラムホウレンソウを毎日二十グラムずつ食べるというふうに仮定をいたしました場合には、それを含めました食品全体の摂取量は、一日体重一キログラム当たり二・六二ピコグラムというふうに推計をされるわけでございまして、これは、WHO調査をいたしました主要先進国におきますダイオキシン類及びコプラナPCB摂取量、二ないし六というふうに言われておりますが、それと比較をいたしましても特段に高いということではなくて、通常レベルであろうというふうに考えております。
  9. 長勢甚遠

    長勢委員 報道では、厚生省全国平均等の八百倍という大変な数字であるといったような報道がなされたのではないんですか。そこら辺、きちんとお話をいただきたいと思います。
  10. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 報道の中におきまして、一グラム当たり三・八一ピコグラムというダイオキシンが検出されたという報道がされたわけでございますが、これがどのようないわゆる野菜類……(長勢委員「それについての評価報道されたんじゃないんですか。その数値がどういうものであるかという評価」と呼ぶ)  これがホウレンソウ類から検出されたのかどうかという点につきましては、この三・八一ピコグラムというのがどの野菜からどういうふうに検出されたかということは全く情報が公開されておりませんで、私どもといたしましても、ちょっと評価のしようがない、大変申しわけございませんが。
  11. 長勢甚遠

    長勢委員 今、局長の御答弁のような程度でしたら、どうしてこんなに大問題になって、ホウレンソウを買わない人が出てくるのですか。そこをきちんとそういう認識で議論をされているのですか、厚生省は。
  12. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 私どもといたしましては、以前より全国野菜類、魚類、肉類、乳製品等につきましてダイオキシン類汚染実態調査は行ってきておりまして、その結果は判明次第公表しているところでございますが、この三・八一というふうな非常に高い値を示した例というのは、私ども承知をいたしておりません。  いわゆる通常のベースの汚染濃度というふうに考えておりますので、この三・八一というのは、私どもといたしましては、測定された研究所のデータそのものに直接接しないとちょっと評価はできないというふうに考えておりますが、昨日のJA所沢市の公表データを見る限りにおきましては、ホウレンソウにつきまして、特段の健康上の影響が出るものというふうには考えていないところでございます。
  13. 長勢甚遠

    長勢委員 当然、これだけ問題になっておるのですから、厚生省において、報道内容等、それを根拠にした報道評価というか見解等十分精査をして、住民方々あるいは消費者等に不安のないようにきちんとしたお話をされるものと思っておりましたので、私、先ほどちょっと数字を言いましたが、正直言ってうろ覚えでありますから間違っているかもしれません。私は、きょうは資料は当然厚生省が知っていると思って持ってこなかったのです。  しかし、今、局長お話のようなことでは、それはとても住民の不安にこたえようという姿勢がほとんどうかがわれない。私は、あれだけ騒ぎになっておるのですから、地元方々の不安を、本当に悪いなら悪いと言わなければいけないし、間違っているなら間違っているということを正確に伝えるのが行政の義務だと思うのです。私は、姿勢について相当疑問に思いますし、ぜひ、これは本当に不安なものなのか、危ないものなのかそうでないのかはっきりしないと、行政としての責任はとれないのじゃないでしょうか。どうですか。
  14. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 先生の御指摘は、まさしく私ども非常に重要なものというふうに受けとめております。  農林水産省とも十分お話をして、消費者皆さん方の不安、あるいは生産者皆さん方のいろいろお困りの点を早急に解決しなければいけないということで、早急に調査に着手することは今週の初めに関係省庁で話をしておりまして、早急に調査に移って、その結果を公表したいと考えております。  ただ、御理解を賜りたいのは、ダイオキシン調査といいますのは、資料をとりましてから結果が出ますまでに、どう見積もっても三週間近くの時間を要するという非常に厄介な問題がございます。しかしながら、そういった問題はございますけれども農水省等とも共同しながら、年度末までのできるだけ早い時期にすべての結果を公表し、生産者あるいは消費者皆さんの御理解を得たいというふうに考えております。
  15. 長勢甚遠

    長勢委員 この調査ということなんですが、もともと起きている問題は、報道によって風評被害が起きている、また、大変心配を皆されているということなのです。したがって、その報道内容について全く知らないような今のような姿勢は、今起きている問題についての一つの視点が抜けておる、このように私は指摘せざるを得ません。  それから、こういうふうなことが起きた場合にどういうふうに対応するかについて、環境庁の問題、また厚生省の問題があるのでしょうが、食品中のダイオキシンについての規格基準とか土壌の安全のための基準とかというものを早急に明確にして、みんなが安心していけるように、だめなものは早く直さなければいかぬし、だめでないのだったら、いたずらな不安がないようにするのは当たり前のことだと思うのですね。  ぜひこの点についてもう一度、厚生省環境庁から御答弁をお願いします。
  16. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 御指摘報道されていた数値につきましては、まだ入手をし得ておりませんが、私どもとしても、可能な限り詳細を把握するような方向で努めてまいりたいと思います。  それからもう一つ先生の御指摘のいわゆる安全基準という問題でございます。  現在までの私ども把握しておりますデータによりますと、我が国平均的な食生活におきますダイオキシン摂取量は、現在のところは主要先進国と比べて特に高い値になっているということではございませんが、昨年の五月にWHO専門家会合が、耐容一日摂取量、いわゆるTDIにつきまして、一ないし四ピコグラムという数値を提案されているわけでございます。  これをどのように評価し、我が国において評価基準とすべきかという点につきましては、環境庁と合同した専門家会合を設置いたしまして御検討いただいているところでございまして、この検討結果を踏まえまして、食品衛生法等に基づきます食品衛生対策必要性基準あり方等も含めまして、食品衛生調査会において食品安全性の確保という観点からいろいろな諸問題については御検討いただきたいというふうに考えております。
  17. 澤宏紀

    澤説明員 環境庁におきます大気あるいは土壌ダイオキシン濃度基準の取り組みについてお答えさせていただきます。  環境庁では、大気環境濃度低減目標値といたしまして、一立方メートル当たり年平均値で〇・八ピコグラムダイオキシン濃度を設定しております。また、土壌中のダイオキシン値につきましては、環境庁が設置いたしました検討会におきまして、居住地等土壌処理等対策を必要とする暫定的なガイドライン値案といたしまして、土壌グラム当たり千ピコグラムが提案されております。  所沢市の土壌中のダイオキシン類濃度は、この値からしますと、低い数字を私どもは得ております。  今回の所沢の問題につきましては、環境庁では、埼玉県や農林水産省厚生省と協力しまして、早期に調査すべく、地点選定作業等を進めております。この中で、大気土壌中のダイオキシン量調査中心に実施してまいり、この結果については、年度内のできる限り早い時期に結果を取りまとめて、公表させていただきたいと思っております。
  18. 長勢甚遠

    長勢委員 ダイオキシンの問題は、全国的にみんな大変心配もし、関心を持っている問題ですし、我々も一生懸命やっていかなければならない問題だと思っておりますだけに、今回の報道に基づく事件と言っていいのか事態は、やはり両省とももう少し真剣に取り組んでもらいたいと思うんです。何か今の答弁は物すごく逃げ腰で、本当に不安をきちんと解消するという姿勢がどれだけあるのかと。また、本当にだめなら何かしなければならないんだし、何かその地域に限定したような感覚だけじゃなくて、全国的にも不安をかき立てる事案ですから、もうちょっと真剣に、また早急に対応してもらいたいと私は思います。  それで、報道等によると、風評被害によって農家の方も大変困っておられるというふうなお話も聞くのですが、どれほどの状況が生じておるのか、農水省把握しておられたら、御答弁をお願いいたします。
  19. 岡島敦子

    岡島説明員 報道によりまして農家の方のホウレンソウの販売にどのくらいの影響額が生じているかにつきましては把握しておりません。  ただ、ちなみに、テレビ報道する前の二月一日のホウレンソウ卸売価格は一キログラム当たり二百七十八円、それが八日には百十二円に低下しております。また、JA所沢市のホウレンソウの一日当たり出荷量につきましては、一月下旬の平均が約八トン、八トン強でございますが、報道後、出荷量が五トンに満たない日もある、そういう状況でございます。
  20. 長勢甚遠

    長勢委員 今言われるような状況のようでございますが、どうも厚生省の話がぴんとこないものですからあれなんですけれども、今回の報道の結果として、私は、地元中心に大変な不安が生じておるという事態は大変遺憾なことだと思うんです。もちろん報道の自由がありますから、そのことは尊重しなければなりませんが、やはり社会不安が生じたときに、そういうことについての報道あり方についてそれなりの対応も、道義的な意味も含めて、姿勢というものについてみんな関心を持っていかなきゃならぬ、このように思います。  そこで、放送行政を預かっておる郵政省の方として、このような事態にどういう考えで、どのように対処をされておるのか、伺います。
  21. 田中栄一

    田中説明員 お答え申し上げます。  一般的に申し上げますと、放送は、放送法でも規定しておりますように、真実の原則に立って放送することが期待されておりまして、そういう意味で、放送事業者がこのような原則を十分自覚して放送業務に当たるべきものと考えております。  ただ、今御指摘いただいておりますダイオキシンの本件に係る問題につきましては、事実を曲げた報道であるのかどうかというようなことにつきまして、先ほど来、他省庁の方からも御答弁が出ておりますけれども、極めて高度な、科学的あるいは技術的な観点からの専門家判断をまたなければならない事案であるというふうに考えております。現時点におきまして、放送法に違反しているというようなことを判断できる状況にはないということでございます。  いずれにいたしましても、今後とも、こういった事態の推移、状況把握ということにつきましては、関心を持って見守り、取り組んでまいりたい、かように考えております。
  22. 長勢甚遠

    長勢委員 私は、各省ともすごく地元方々の不安と比較して慎重といえば慎重ではございますが、何の役にも立たない役所だなという思いを深くしております。  これは、先ほどもたびたび言っていますように、不安がないのなら安心させてあげなきゃならないし、本当に何かまずいのならきちんとしなきゃならぬ。しかも、それを難しい問題だからといって時間を費やしておるような雰囲気を今感じまして、非常に不愉快であります。ぜひひとつきちんとしていただきたいし、さらに、同志議員とともにこの問題以上に各省姿勢について追及してまいりたいと思います。  せっかく新進気鋭政務次官に御出席いただいておりますので、これからの社会保障等の問題について議論をしたかったのでございますが、時間がとられましたので、一点だけ質問させていただきます。  今、年金とか医療とか大変な抜本改革が迫られておる。いろいろな意味社会福祉社会保障制度あり方議論されております。私は、国民方々がこういう制度について公平で合理的であると納得できる制度にしていくことが一番大事であり、財源問題ももちろん大事でありますけれども、それだけではなくて、公平で納得できるものであるというふうに国民が思う制度にしていかなければならない。  そういう観点から見ますと、私もこういう問題に取り組ませていただいておりますが、年金にしろ医療にしろ、その負担をする場合に所得が大体その基準になるわけですが、雇用労働者と非雇用労働者との間における所得把握について格差や不公平があるのではないかということが大変に関係者の間の議論を複雑にしたり、あるいはまた根深い対立になったりということを強く感じております。保育料の算定においてもそういう問題がありますし、私は今、拠出型年金制度の導入に取り組んでおりますけれども、その議論をしても、やはり同じ問題に逢着をする。  税制の問題ではありますけれども、これからの社会保障制度において最も大事な問題である公平の維持という観点からも、ぜひこの所得把握について仕組みを公平なものにする。今、税制の方ではいわゆる納税者番号制度の導入が検討されておるわけでございますが、厚生省としても、社会保障制度の公平を図るという観点から、ぜひこの納税者番号制度の導入について主張なさるという姿勢が必要なのではないか、このように思いますが、重大な任務を帯びておられます根本政務次官の御所見をぜひ伺いたいと思います。
  23. 根本匠

    ○根本政府委員 長勢先生指摘のような所得把握の問題、これは社会保障制度の設計上重要な位置を占めておりまして、委員指摘のように、公平性を確保する観点から、社会保障制度の適切な運営を確保していく上で重要であると思っております。  納税者番号制度につきましては、近年の経済取引のグローバル化あるいは多様化、複雑化などの経済社会情勢の変化を踏まえながら、適正、公正な所得課税、資産課税の実現、税務行政の機械化、効率化などの観点から、現在、政府税制調査会において御議論いただいているということを承知しております。  この納税者番号制度につきましては、国民の受けとめ方あるいは考え方を十分酌み取りながら、経済取引への影響、あるいは民間、行政のコストと効果、プライバシー保護等々の課題を含めて大いに議論を深めていくことが大事だと思います。
  24. 長勢甚遠

    長勢委員 終わります。
  25. 木村義雄

    木村委員長 吉田幸弘君。
  26. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 自由党の吉田幸弘でございます。  早速ですが、質問に入らせていただきます。  我が国の経済状況は依然として低迷を続けている中で、少子・高齢化社会はますます進んでまいります。国民が安心して暮らせる社会の構築のためには、社会保障制度の抜本的見直しが必要であることは言うまでもありません。  そこでお伺いをいたします。  国の政策のあり方として、多少社会保障が薄くなっても減税を進めるべきなのか、むしろ社会保障を維持、充実するために積極的な減税は行わないとするのか、基本的なお考えをお伺いいたします。  また、クリントン大統領の打ち出す年金や福祉等の社会保障充実政策についてはいかがお考えなのかをお伺いいたします。
  27. 根本匠

    ○根本政府委員 吉田委員の質問にお答えします。  少子・高齢化が進行する中で、国民生活の安定を図る、あるいは国民に安心を与える、こういう社会保障制度は重要な役割を担っておりまして、安定した社会保障制度の確立が必要だと思います。今後の少子・高齢化の進展に伴いまして、社会保障における給付は増大することが予想され、これに伴って負担の増大が見込まれております。  こういう観点から委員指摘のような意見が出てくるんだと思いますが、私は、将来の社会保障の給付と負担の水準については、経済との調和を図りながら、給付と負担の均衡を確保して国民の需要に適切に対応できる水準とする、これが適当だと思います。要は、いかなる給付が必要なのか、個々の給付の水準が大事で、そのために財源をどうするのか、こんな議論が出てくるんだと思います。  その際の財源としては、将来の世代の負担が過重とならない、こういうことを重点に置きながら、世代間の公平あるいは経済活力への影響というものを考慮しながら、社会保険料、税、自己負担を適切に組み合わせていく必要があると思います。  なお、福祉目的税化、去年なり議論がありましたが、昨年、自民党と自由党との協議によりまして、消費税の使途を基礎年金、老人医療及び介護に限定する、こういうことを受けまして、今般、予算総則に消費税収の使途を明記し、広く国民の老後などを支える基礎年金、老人医療及び介護のための予算に使う旨を明らかにしております。  それから、クリントン大統領の打ち出した年金や福祉等の社会保障充実施策でありますが、クリントン大統領は、一月十九日に行われました一般教書演説におきまして、財政黒字を背景にして、財政黒字を公的年金に充当するなどの公的年金改革の実行、高齢者、障害者を対象とした公的医療保障制度であるメディケアの改革、介護者などに対する所得税控除の創設、これらの社会保障に関する政策を打ち出しております。  実は、この社会保障改革政策をクリントン大統領は打ち出したわけでありますが、我が国と米国と比較してどう考えるかという問題でありますが、我が国と米国は、社会保障制度内容、水準、充実度、あるいは財政状況が大きく異なっております。例えば、アメリカですとメディケアは今まで薬剤をカバーしておりません、今回は薬剤をカバーしようということでありますが、日本の医療保険制度はこれはカバーしておりますから、その意味では、日本とアメリカとの必要な改革の単純な比較は困難であるというふうに認識しております。
  28. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 いずれにしても、医療制度を抜本的に改革していくことが急務であると思うわけでありますが、国民が安心して暮らせる社会、健康で暮らせる社会の実現を目指すためには、医療制度についても新しい考え方、発想の転換が必要になってくるのではないかと考えます。  医療制度の考え方として、単に疾病を治すという考え方ではなく、むしろ、いかに疾病にかからないようにするかという視点が重要ではないか。すなわち、今後、我が国国民に保障すべきことは、まずは疾病にかからないように適切な予防活動を行うことだ、そして予防医療などに関する取り組みをさらに強化していくべきだと考えます。  特に、検診などの予防医療の取り組みを保険給付の対象に含めることによって予防活動を強化していくなど、また、代替医療、この範疇の医学も積極的に評価をしていくべきではないかというふうに考えておりますが、御見解をお伺いいたします。
  29. 根本匠

    ○根本政府委員 これから疾病にかからないように適切な予防活動を行う、これは私も本当に大事だと思います。今、医療改革をやっておりますが、医療制度改革の中では、単に病気になったときの医療制度改革だけではなくて、予防保健活動も大きな柱で取り組むべきだと私も思っております。これからの来るべき本格的な少子・高齢化社会を健康で活力あるものとしていくためには、生涯を通じた健康づくりが極めて重要な課題だと思います。  こういう観点から、いわゆる健康寿命の延伸などを図ることを目標といたしまして、健康日本21と言っておりますが、二十一世紀における国民健康づくり運動、健康日本21を平成十一年度までに策定して、疾病予防対策に重点を置いた健康づくりを推進していきたい、こう思っております。  予防医療の取り組みを保険給付の対象にするべきではないか、こういう点でありますが、先生指摘のように、現在、医療保険制度におきましては、保険者が、健康の保持増進や疾病予防という観点から、健康相談や健康診査等の保健事業を実施しております。  この予防医療を保険給付の対象としてはどうかという具体的な御指摘でありますが、一つは、予防医療を保険給付の対象にいたしますと、保険財政上の費用負担が過大になる、こういう点。それからもう一点、多様な形態のものがありまして、画一的な医療保険の給付とするよりは、実態に即したきめ細やかな実施が可能な保健事業とすることが適切である、こう考えておりまして、引き続きこの分野は保健事業として実施することが適当だと考えております。
  30. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 代替医療についてお尋ねがございましたので、私の方からお答えをさせていただきます。  代替医療、特に東洋医学につきましては、中国を中心とした東洋において古来から発展し、普及してきている医学でございますが、その効果程度や作用機序には科学的な解明を待たなければならないものが多いと考えられるわけでして、今後、こうした点の調査研究を進めることによりまして医学全体の発展に資することが期待されているところでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、東洋医学に関する研究をフォローするなど、国民の健康を保持、増進する観点から、この分野についても取り組んでまいりたいと考えているところでございます。
  31. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 ありがとうございます。  予防医学を充実させることによって、医療費は一時的にはふえると思います。ただ、最終的に、長い目で見た場合には私は減るのじゃないかというふうに考えておりますので、今の御答弁、積極的に進めていただきたいと思います。  また医療抜本改革についてお話を進めさせていただきますが、厚生省において検討が進められております診療報酬体系、薬価制度高齢者医療制度及び医療供給体制の見直しについて、その検討内容を簡単にお示しいただきたいと思います。  また、この診療報酬体系の見直しに当たって、どのような見直しを行うのか、いつごろまでにどのような手順で見直しが行われるのか。また、その中で歯科の診療報酬の充実のためにどのような方向で見直しが行われているのか、詳しくお伺いをいたします。
  32. 根本匠

    ○根本政府委員 経済成長の伸びと医療費の伸びの不均衡が拡大していく中で、将来にわたって信頼できる安定した医療保険制度を確立することが不可欠でありまして、先生指摘のように、現在、総合的、抜本的な改革に取り組んでおります。  医療制度の四つの大きな改革に取り組んでいるわけでありますが、医療制度抜本改革につきましては、全体のスケジュールといたしましては、現在、医療保険福祉審議会や医療審議会などにおきまして、平成十二年度からの抜本改革の実施に向けまして精力的な議論が行われているところであります。  先生の御質問の診療報酬体系の見直し、これは論点が幾つかあるわけでありますが、一つ医療機関の機能に応じた評価、二つ目は医療従事者の質の向上を図る技術評価、三つ目は出来高払いと包括払いの組み合わせ、これらを中心にして現在検討しているところであります。  診療報酬の見直しについては、基本的な枠組みについて医療保険福祉審議会において検討された上で、中央社会保険医療協議会において具体的な仕組みについて検討が行われる、今後そういう予定になっております。十二年度抜本改革の実現ということですから、それまでに今申し上げたようなスケジュールで検討する。  それから、歯科の診療報酬の見直しについてでありますが、歯科の特徴は幾つかありますが、一つは外来が中心である、それから、患者間で歯科疾患の個人差が大きい、歯科固有の技術がある、こういう歯科の特性を十分に踏まえて、全体との整合性を図りながら診療報酬の見直しについては検討してまいりたいと考えております。
  33. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 今の歯科診療の診療報酬に関してなのですけれども、私の考えとしてはマルメは余りなじまない。今、歯科の特性を述べていただきましたが、このことから考えても、やはり出来高払いで進めていくのがいいのではないかというふうに考えております。  次に、毒劇物及び薬物の対策についてお伺いをいたします。  昨年来より、毒劇物、毒劇薬、向精神薬等を用いた犯罪が非常に多発しております。厚生行政の原点である国民の安全と健康を守ることが今脅かされているのであります。また、先般公表されました麻薬・覚せい剤行政報告においても、導入剤の薬物が多量に盗難をされているということであります。  そこで、医療機関におけるこれらの薬物の管理や規制はどのようになっているのか。また、このような事件の発生を防止するため、厚生省としては今後どのような対策を講じていくのか、お示しいただきたいと思います。
  34. 根本匠

    ○根本政府委員 先生指摘のように、昨年来、毒劇物や向精神薬等を用いた犯罪が多発している現状は非常に遺憾だと思っております。  これらの毒劇物や向精神薬などの管理、販売についての規制でありますが、毒物及び劇物取締法、麻薬及び向精神薬取締法、これらの法律に基づきまして、保管管理、譲渡手続について厳格な規制を実施しております。  また、これらの遵守状況につきましては、毒物劇物監視員、麻薬取締員などによる立入検査によって実態把握し、必要な指導を実施する、こういう法体系のもとでの対応を強力にやっております。それから、医療機関に対してでありますが、医療機関に対しましても、一連の事件の発生を踏まえまして、毒劇物、向精神薬等の保管管理の徹底を平成十一年一月十三日付で改めて指導をしております。  それから、今後の取り組みでありますが、毒劇物につきましては、厚生省だけではなくて、内閣に関係十省庁から成る毒劇物対策会議が設置されておりまして、昨年十一月に今後の対策についての報告書が取りまとめられました。これに基づいて、関係省庁と連携しながら毒劇物の管理体制の強化などを推進していきたいと思います。  今後とも、指導、啓発、監視の徹底に全力を挙げていきたいと思います。
  35. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 続いて、廃棄物対策についてお伺いをいたします。  先般、名古屋市では、環境庁や運輸省の示唆により、国内有数の渡り鳥の飛来地であります名古屋港の藤前干潟を保全するために、藤前干潟にごみの埋立処分場を建設する計画を断念したところであります。環境を重視する姿勢評価するとしても、この時期に藤前干潟以外の場所に新しい埋立処分場を確保することは極めて困難であり、今後、名古屋市においては、ごみの分別収集をより一層徹底し、リサイクルを推進していくことにより、廃棄物処理の一層の充実を図っていかなければなりません。  このような状況を踏まえ、厚生省として、名古屋市のごみ処理問題を解決するために、今後、どのような支援措置を講じていく考えであるのか、詳しくお伺いをいたします。
  36. 根本匠

    ○根本政府委員 名古屋市においては、要は藤前干潟ではやらない、こういうことになったわけですが、名古屋市のごみ処理問題の解決のためには、一つは家庭から出されるごみをリサイクルして再資源化する、こういうことによって焼却し、埋め立てるごみの量を減らす、これが重要だと思います。一方で、ごみの埋立処分場を確保する、これも必要であると認識しております。  まず、ごみの処理につきましては、住民に身近な自治体としての名古屋市において行うとされておりますから、藤前干潟の代替地案についても、名古屋市が主体となって、関係自治体と調整、協議を行い、決定すべきものだろう、こう考えておりまして、地元において適当な代替地案が決まれば、厚生省としても、関係省庁と連携しながら、最終処分場の整備について必要な支援を行いたいと思います。  必要な支援というのは、例えば最終処分場の構造など施設整備に対する技術指導や、あるいは最終処分場に対する国庫補助、こういうものがございます。  それから、もう一つ大きな柱であるごみの減量化、リサイクルの推進については、名古屋市において、今後、容器包装リサイクル法に基づきまして、空き瓶や空き缶等の分別収集をより一層拡大するなどの対策を講じていく予定と聞いております。名古屋市におけるこのような取り組みが推進されますように、厚生省としても、名古屋市などの具体的な状況や課題を伺いながら、必要に応じてごみの減量化やリサイクルの取り組みに関する先進的事例についての情報提供、リサイクル関連施設等の整備に対する支援などを行ってまいりたいと思います。
  37. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 もう一度詳しく聞きたい点がありまして、この代替地というのは、現在、まことしやかに聞こえてきております代替地に関してはどのようにお考えなのか。また、支援措置ということに関して、もう少し詳しく、具体的にいつの時期でと、時間的な部分を考慮した御答弁をお願いしたいと思います。早急にか、しばらくか、その時期の問題を明確にしていただきたいと思います。
  38. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 代替地に関しましては、名古屋市あるいは愛知県、両方が主体となりまして、関係自治体といろいろお話をされているというふうには伺っておりますけれども、具体的にどの場所というふうなことは、まだ私どもの方として正式にお伺いをしているわけではございません。  この問題に関しましては、名古屋市あるいは愛知県からもたびたびいろいろな陳情もいただいているところでございまして、私どもといたしましては、代替地が決まりますれば、可能な限り速やかにその施設整備等については最大限の御援助を申し上げたいということは何回も表明をいたしているところでございまして、まずは地元におきますいろいろな調整がございますので、その調整の結果を今は見ながら援助策を検討しているということでございます。  したがいまして、案がまとまれば、可能な限り速やかに私どもとして可能な援助を差し上げたいというふうに考えております。
  39. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 次に、インフルエンザについて御質問いたします。  先ほどインフルエンザに関する質問がございましたから、できる限り重複しない点でお伺いをいたしたいと思います。  インフルエンザに罹患をした患者さん方が多く死亡されております。実際、亡くなる死因というか直接的な原因、このことについて何かデータがおありであればお示しいただきたいと思います。また、多度病院の事例について、この件についてはどのようにお考えなのかをお示しいただきたいと思います。
  40. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 インフルエンザにつきましては、発生状況については迅速に私ども把握しておりますが、死亡者につきまして、どういう合併症を起こして死んだのかということについては、現在、その詳細な統計がないわけでございますが、いろいろ専門家の御意見によりますと、インフルエンザによる死因は、細菌による二次感染により生じた肺炎によるものが最も多いというふうに言われているわけでございます。  また、三重県の多度病院の件でございますが、一月の八日から二月四日までの間に十九名の入院患者が死亡したということでございまして、この件につきまして三重県が病院に報告を求めましたところ、すべての患者につきましてインフルエンザ感染の関与があるのではないかということでございました。  具体的に死亡病名について、病院からの報告によりますと、十九名の内訳を申し上げますと、肺炎が九名、呼吸器系疾患が三名、心不全が五名、多臓器循環不全が一名、老衰が一名となっております。  これらの状況を踏まえまして、三重県は、二月九日、昨日でございますが、病院に立ち入りまして、死因や医療環境等の調査を開始したわけでございまして、厚生省といたしましても、県との連携を密にしながら、原因の究明とその対応に努めてまいりたいと考えております。
  41. 吉田幸弘

    ○吉田(幸)委員 インフルエンザでお亡くなりになる方で、高齢者の方は肺炎による死亡ということが私の方にも多く聞こえてまいります。  さきの厚生委員会でも質問をさせていただいたと思いますけれども、嚥下性肺炎、これは要望としてお伝えをさせていただきますが、口腔内の細菌が寝たきりの方あるいはお年寄りで嚥下機能が劣っている方の肺に入って、いつも慢性的な炎症、慢性肺炎、こういう状態にかかっている人が多いという報告もあります。ここにインフルエンザなど新たな病気になった場合に、もともと肺の中に炎症があるわけですから、インフルエンザなり、また、肺炎の劇症化が起こります。また、その逆も考えられるわけです。ほかの病気にかかって、口腔内のケアが十分でない場合は同じように気道感染したり、肺に菌が落ちて一気に劇症化する。  このことは歯科業界においてはどんどん研究は進めてはおられますが、なかなかまだ広く国民には知れ渡っておりません。このことについて歯科保健対策の一環として、要介護のお年寄りの方に対して、今後とも適切な対応を講じていただきたいと思います。  要は、インフルエンザだけにとらわれずに、関連するいろいろなことも想定して、その中に歯科医療も関係するんだということを要望を申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  42. 木村義雄

    木村委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  43. 木村義雄

    木村委員長 速記を起こしてください。  五島正規君。
  44. 五島正規

    ○五島委員 大臣が参議院の本会議でおくれておられるようでございますので、政務次官、代理でお答えいただければ結構でございます。  昨日、厚生大臣は、診療報酬体系、薬価制度高齢者医療制度及び医療供給体制の見直しについて、平成十二年度からの改革実施のため、今国会に法案を提出すると所信を述べられております。こうした課題があることは事実でございますが、現在、各市議会あるいは厚生省で準備されている状況を見せていただきますと、厚生省は、これらの問題の中において薬価制度の問題というものを入り口に位置づけられて、これらの改革を進められようとしているように見えるわけでございます。  そういう意味におきまして、この薬価制度についてまずお伺いしていきたいと思います。  これまで過去において、薬価差益依存医療というものが厚生省からも盛んに御指摘いただきましたし、また、マスコミからもいろいろと指摘のあったところでございますし、本委員会でも幾つかの御指摘がございました。  ところで、この薬価差益依存医療というものが何が理由で生まれたのかということについての議論がきちっとされていないのではないかと思います。  薬価というものは、御案内のように、公定価格として薬の価格が決定される、そして医療機関が購入する購入価格との間に差額ができてくる、この差額が医療機関の経営原資ということになる中で、より差額の大きな薬価に主要医薬品がシフトし、薬価依存の医療というものが生じてきたということであるかと思います。  しからば、こうした責任はどこにあるかといえば、この公定価格の決定というものが適切でなかった、そこに大きな差額が生じたということに問題があるわけでございまして、この公定価格の決定が誤りであったということがそもそもの出発であったということをやはり厚生省は率直にまず認め、国民におわびをすべきではないかというふうに思います。  そして、なおかつ、二年ごとの薬価の改定の中において、市場価格を調査する中においてそれに追随させてきたわけでございますが、同時に、マイナーチェンジの新薬の公定価格の決定を常に高く決定し、結局、その中においてより高価格の医薬品にシフトしていく、その結果、医療費における薬剤比率を押し上げてきたという経過があったと思います。  もちろん、医療保険制度が公的保険として存在するわけでございますから、医療全体の中において公的な管理が必要であることは当然であろうと思いますが、この薬価の決定というものについて、本当にそうした観点からきちっと決定されてきたのかどうか。官僚の密室的な審査によって、メーカーとの協議の中で決定されてきたという経過があったのではないかというふうに考えるところでございます。  昨今、いわゆるバイアグラの問題が非常に大きなうわさとなっておりますし、国内におきましても並行輸入という形で随分売られているようでございます。これを見てみますと、アメリカで十ドルというバイアグラの価格が、昨年の秋ぐらいには日本円に直して大体三千円とか四千円していた。昨今、私のところにも何か並行輸入しませんかというダイレクトメールを送ってまいりました。見てみますと、大体千四百円台になってきている。市場価格においては、こうしたものはかなりリーズナブルな価格に落ちついてくるものでございます。  公定価格で決定することが市場に放置するよりも矛盾が大きい結果になるとするならば、この公定価格の決定の仕組みをどう見直すのかということがまず反省としてなければならないと思います。なぜ今の状況の中で薬価を公定価格にしなければいけないのかということについて、まず第一点お伺いしておきたいと思います。  また、日本型参照価格制度を導入するとしても、償還価格がこれまでの薬価の決定と同じような密室的な状況の中で決定されるとするならば、これは新たな公定価格の決定ということになりまして、そこには改革が全く存在するわけがございません。まさか製薬会社への官僚の天下りの確保のために薬価の決定権を保持したいということではないと存じますが、この決定のプロセスの透明性について、この償還価格を決定する場合にどのように変えようとしておられるのか、お伺いしたいと思います。  この二つの点について明らかにならない限りにおいては、この問題についての国民の同意は得られないだろうと思います。  また、公的管理というものが不必要に及ぶことによって問題がより複雑になるという観点を考えるならば、むしろ公的な価格というのは、本当の意味での新薬、すなわち競争のない特許中の新薬とか、あるいはオーファンドラッグ、希少医薬品、あるいはどうしても普及させておかなければいけない局方品、そういうふうなものについて、参照価格といおうと薬価といおうと一緒でございますが、公的に決定しておきながら競争が生まれてくる状況においては、そうした統制を必ずしも必要としないのではないかというふうに考えるわけでございますが、すべての薬について公的統制が必要である理由は何なのか、この三点についてお伺いします。
  45. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 三点のお尋ねがございました。  まず現行薬価制度でございますけれども先生、今、現行薬価基準で公定していることについて、そこから生まれてくる薬価差が、現行制度の薬価決定が不透明で、高い薬価をつけているから薬価差益が発生するという点での反省というものがまず要るではないかというお話がございました。  私ども、現行の薬価基準につきましても、その制度を前提とした、できるだけ透明化をし、また価格決定を合理化をするという努力は、この間においても続けてきたことは御案内のとおりでございます。  現在、新薬につきましては、中医協の建議等によりまして定められたルールに基づきまして、類似薬のあるものについては類似薬効比較方式、それのないものについては原価計算方式という一つの客観的なルールというものの中でやってきております。あるいは既収載品目につきましても、その間、バルクライン方式から加重平均を基礎とした方式に持っていくというような中での合理化を図ってきております。  そうした中で、現行制度によるそういった透明化あるいは価格決定の合理化ということはやってまいりましたけれども、確かに、現在の公定価格、つまり、銘柄ごとにそれぞれの薬価を公定をし、そこが出発点になりまして薬価差を求めるような形での当事者間での競争が行われる、そういう中で実際の購入価格が決まってくるという、いわば構造的な要因というものは薬価差をどうしても生み出す。ある意味からいえば、客観的なルールを今のように決めるということの限界みたいなところだろうと思いますけれども、そういった仕組みを持っております。  そういった観点に立って、現行の仕組みではある種の限界があるということで、そのことが薬価差を原因とする薬剤使用でありますとか、あるいは企業の新薬開発行動のゆがみを生じさせている。そういった反省にも立ちまして、その仕組み自体を改めるということが必要ではなかろうかということで、現在取り組みをいたしておるということでございます。したがいまして、現在の公定価格制度それ自体は改善をするにしても、それ自体が持っている構造的な問題についての対応が要るという点では、まずそういう取り組みをさせていただいた。  しからば、いわゆるバイアグラの例をお出しをいただきましたけれども、そういった公定という世界を全く離れて、自由価格の世界でやっていったらどうかということでございますけれども、できる限り国が介入することのない制度とすべきであるという基本方向はそういうことでございますけれども我が国では国民皆保険のもとで、医療保険で治療に必要な薬剤についてはすべてある種のフリーアクセスという形で、公的保険制度でいわばカバーをするという制度をとっております。そうしますというと、そこに保険制度によって負う財政的な制約も当然ございますし、どのような仕組みにしますにしましても、公的な医療保険制度で見る限界という意味での一定の上限というものは、やはり必要最小限の国の関与という意味では必要だと考えております。その中で、できるだけ自由な、メーカーが自主的に判定をするような価格設定ができないかというのが、今私どもが模索をしている方向でございます。  そういった意味で、全く自由価格とすべきということになりますと、すべての医薬品について自由価格にしますと全体の価格が著しく増加をするという懸念は去りませんので、そういった意味での薬剤給付を保険の外に出してしまえば別だと思いますけれども、やはり保険制度でカバーをしつつ、今のような方向での公定価格制度からくる薬価制度という制約をどう打破をするかということになりますと、ある種の上限を引いた中で、できるだけメーカーなりの自主的な価格決定というものを尊重する仕組みに持っていくというのが現在でのやり方としては適切なのではなかろうかというふうに考えておるところでございます。  そうしたところで、いずれの制度をとるにしましても、先生お挙げいただきましたように、価格決定というものが不透明であってはならない、それから、その価格決定のそれぞれのコストなりなんなりをきちっと反映をしたような仕組みに最終的に結果として落ちつく方向に持っていかなければならないという点は、そのとおりであろうと思います。  そういったことで、その具体策については、先般の審議会の意見も踏まえて目下検討中でございますから、どういう制度に最終的に持っていくかはこれからの検討になるわけでありますけれども、意見書での検討中心となりました薬剤定価・給付基準制度というものに即して御説明申し上げれば、薬剤定価は基本的には国が定めるのではなくて企業の主体的判断で定める、そして、中医協にさまざまな分野の専門家から成る組織を置きまして、薬剤の薬効、薬理作用での分類、あるいは薬剤定価に係ります流通経費率等につきましての検討、あるいは画期的新薬の範囲をどうするか、そういった基準上の例外扱い等をするものについてどのように範囲を決めるか、こういったことにつきましては専門家の組織で、厚生省が密室でやるというような御指摘がございましたけれども、そういうことではなくて、情報も公開をして、透明性、公平性を確保した中でやっていくというような方向を考えようというのが今の薬剤定価・給付基準額制で、これ自体がまだたたき台ということでございますから、これからどうするかはこれからの議論を経なければなりませんけれども、いずれにしても、そういった透明性、公平性というのは大事な観点だと思っておりますので、どういう制度の結果になるにしろ、そういった点は今の制度以上にきちっと位置づけていかなければならない、こんなふうに考えておるところでございます。
  46. 五島正規

    ○五島委員 羽毛田局長、いろいろおっしゃったわけですが、これまで羽毛田局長がおっしゃるようなやり方をやってきて薬価差益というのが生じているわけです。したがって、そうした形での薬価の決定の仕方というものがだめなんだということで、この医療改革の先頭に薬価制度の改革ということをお持ちになってきているはずです。ところが、今羽毛田さんのお話を聞いていますと、結局、これまでの薬価の決定システムそのものを反省して、これをどう変えるかという話にはなっていない。  また、新薬に対しても同一薬効、薬効という言葉を今回の参照価格でも非常に重視してお使いになっているわけですが、それによって価格を統制していこう。これはほかのもので言うならば、自動車というものが走る、目的地へ着くということが同じであれば同じだということと同じなのだろうかなと思うわけですが、そういうふうなものによって薬価が常に高く決定されてきた。そのことが問題だということは明らかでありながら、それにかわる、どういうやり方があるのかという提案が、今回の審議会の答申を読ませていただいても全く見えておりません。  あのやり方の中で、本当に参照価格といってみても、現在の薬価制度を言葉を参照価格と変えただけ。そして、薬価の給付を引き下げて、自己負担として患者本人からお取りくださいというだけの話です。言いかえれば、これは中身として現在の薬価制度であるけれども、薬剤の保険給付をもっと低くしましょうということだけが目的の改革ではないかというふうに受け取れるわけでございます。  そういう意味において、この薬価の決定方法そのものはどう変えるのか、変えないのか、簡単にお答えいただきたいと思います。
  47. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 公定価格ということでは同じではないかということでございましたけれども、現在の公定価格という意味合いと、まだ最終案ができておりませんから確定的にこの案に準拠して物を申し上げるということがなかなかできないところがございますけれども、仮に薬剤定価・給付基準額制というたたき台ということで出していただきましたのはいわゆる給付基準額という形で、上限を決める額とは本質的に事柄としては違っていると私どもは思っております。  まず、現在の公定価格は、先生も御案内のとおり、一つ一つの銘柄について国が保険で払う薬価そのものを決めております。そして、その決めた価格と当事者間の自由競争、その自由競争の赴くところは、当然その間の薬価差を求める方向に行くというのが経済的には優位になってまいります。そういった宿命的な構造がある。そこはやはり今回の制度の反省点。そういう意味で、まずそこのところについて根本的なメスを入れる必要があるのではないかというのが問題意識としてございました。  そして、今回、仮に薬剤定価・給付基準額制を考えるといたしますと、そこのところにおけるいわゆる給付基準額として引くものについては、薬価そのものについては基本的にはメーカーの自主的判断に基づく定価を基礎にして決めていく。しかし、保険制度としてお払いをする上限を給付基準額という形でつくり、そのことによって、言ってみれば一つのルールをつくった中での競争という形で競争をさせていく。全部取っ払った競争では全体の薬剤費が高くなっていくであろうということで、そういった一つの保険制度として公的な財源で賄われるということを配慮しまして上限を設け、その中で競争が行われる。しかも、その上限については、臨床上同一の効果であるというふうに思われるような薬をグルーピングをして、その中での競争をつくる。競争にそういう場をつくってやるということでございますから、そこにおける競争の中で、先ほどお話で申し上げれば、薬剤の使用の適正化、ひいては薬剤費の使用の効率化ということが結果としてもたらされるというような方向を考えるというのが今回の一つの提案だと思います。  ただし、これは繰り返し申し上げますけれども、そういった提案について意見書の中でもいろいろの意見がございました。したがいまして、ここらを踏まえて、基本的に、先ほど申し上げましたような、今の薬価基準制度問題点対応し得るような答えは何かという観点から、さらに幅広な検討を進めているということでございます。
  48. 五島正規

    ○五島委員 私は、国民に必要な新薬の開発、あるいはオーファンドラッグ、あるいは局方品というふうなものの維持のために公的にやらなければいけないことと、あるいは特許期間が済んでから後、一般に使用される医薬品との間において公的関与が同じであっていいとは思いません。  まして、今局長の方からグルーピングというお話が出てまいりました、何か薬効別に云々と。なぜそのようなことを厚生省がやらなければいけないのか。まさに同一成分であるならば、その中における価格というものは自由競争の中でやらせればいい。厚生省が関与しなければいけないのは、その医薬品の有効性、安全性、そうしたものについてのチェックであって、これまでの厚生省の御意見を聞いても、例えばゾロ品については、溶融性が悪いとか血中濃度が得られないかもわからないとかいうお話がある。そのような薬を認可することが問題なんであって、まさに厚生省はそうしたことをきちっと管理すれば、それについてはあと先発か後発か等々に分けて参照価格を決めていく、そんなばかなことをする必要は全くない。そういう意味において、現在厚生省がお考えのことについては、どう考えても納得がいかないということをまず申し上げておきたいと思います。  時間がございませんので、次に、施設基準や人員配置基準の変更についても、これは審議会において御検討なさっているということでございますし、恐らくきのうの厚生大臣お話でも、当然これは出されてくるんだろうというふうに思います。  その上で質問をいたしますが、医療法上、療養環境の改善を進めるのは当然でございます。しかし、先ほども申しましたように、これまで医療の経営原資の多くを薬価差益に依存させた医療を温存してきたのは厚生省の責任である。それは、何よりも明確な一つの理由として、現在の診療報酬制度の中でキャピタルコストというのは全く保障されていないわけです。だから、国公立病院においては、そこのキャピタルコストについて、ほとんどの場合税で処理しているというのが実態でございます。  薬価差益をなくする医療を進めていくということになるならば、このキャピタルコストというものを診療報酬に反映させなければいけない。現在、例えば八・〇平米以上の病室に対して一日三十点という点数がついております。そうした部分はキャピタルコストの部分と言えるかもわかりませんが、ごく一部の部分にしかキャピタルコストというのは診療報酬に反映されていません。結果として、財源が先ほど申し上げました薬価差益であったり、あるいは短時間診療であったり、社会的入院であったり、貧しい人員配置ということの原因になっていることは明らかでございます。これに対してどのように措置をするのか、お伺いしたいと思います。  また、医療機関は、開設のときにおいては医療法上の人員配置により使用ベッドが規定されてまいります。しかし、一たん認可されてしまいますと、人員配置によりベッドの使用が制限されるというシステムをとっておりません。開設時だけしかこれは現実には制限されていない。結果として、診療報酬上、より乏しい人員配置のところにはより低い診療報酬をつくっていくということを重ねてきて、現在、これは医療法の最低基準と言っているわけではございませんが、医療法において求めている人員基準以下の病院というものを法的に容認するという結果が続いてまいりました。  今回審議会に提示された案によりますと、この人員基準についても暫定期間を設けることというふうになっておりますが、こういうふうになりますと、これまでの繰り返しになるおそれというのは十分にあるのではないか。これが建物の構造基準であればあしたからというわけにはいかないのはある程度わかるけれども、人員配置等については、こうした暫定期間というものを設けるべきではないのではないか。むしろ、施行時期をおくらせても、一たんこうした法律を通す以上は、その基準、すなわち、言いかえれば認可ベッドの範囲内で、人員が配置された範囲の中でベッドの使用を認めていく、そういうふうなことが必要なのではないかというふうに思います。  そうなりますと、当然診療報酬の中において、技術料という意味とは別の意味におきまして、キャピタルコストと並んで人件費というものが独立してきちっと整備されるという制度に診療報酬をやはり分けていかざるを得ないのじゃないか。すなわち、技術料と人件費、キャピタルコスト、この三本立ての診療報酬ということに整理していかない限り、今厚生省がまとめられている内容というのは現実のものにならないのではないかというふうに思うわけでございますが、それについてはどのようにお考えでしょうか。
  49. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ちょっと冒頭、参議院の本会議がございまして出席できませんで、おわびを申し上げます。  今委員の御指摘の点は、三点ばかり、キャピタルコストをどう保険に反映させるかという問題と、本来、技術料で社会保険は構成さるべきであるということ、それから、人件費と医師の配置については、やはりそれが正当に評価されるような保険診療システムであるべきであるというようなお尋ねだったように思います。  キャピタルコストにつきましては、実は、個々の医療機関におきまして投資額が非常に違いますし、私も、これを一般化して社会保険の点数表の中にどう反映させるかというのは非常に難しい問題があると存じますが、それはそれとして、やはり広く薄く、とにかくそれを考慮すべき点は当然でございます。  なお、キャピタルコストにつきましては、これは私見でございますが、いろいろ多大な投資をした場合には税法上の優遇措置その他の措置で補完をしていきませんと、診療点数だけでなかなか解決できない問題があるかなという感じがいたしております。  それから、技術料によって点数を評価するというのは当然な原則だと存じます。薬価差に基づく医療行為、医療経営というのは、これは本来の姿でないことは委員の御指摘のとおりでございまして、私どもは、今後は薬価差をなくした薬価基準制度をつくると同時に、正当に医療の技術料が評価されるシステムに将来持っていかなければならない、こう思っております。  なお、人員の配置につきましては、医師の養成が地域的に、県あるいは病院によって非常に偏在しておりまして、これを一律にというわけになかなかまいらぬのが実態でございます。  一方、私どもは、医療の給付を公平にやるためには、そういう適正配置という基準目標値を定めることも必要でございます。その乖離がございますが、これにつきましても、今いろいろ充足率等によって経過措置を設けておりますが、この経過措置は余りよくないのではないかという御指摘でございますが、あるべき姿を描きながらその経過措置を考えていくということもやむを得ないのではないか、こう思っております。  総じて、こうした個別の病院経営その他にまつわる点を総合的な点数制度、診療報酬の中でどう反映していくか、非常に難しい問題がございますが、これはいろいろな手段を講じて、適正にこれが補てんされ、保障される制度でなければならないというように考えております。
  50. 五島正規

    ○五島委員 若干大臣のお話は混乱があるかと思いますが、果たして現在の診療報酬のシステムのままにおいて厚生省が求めている形になるのか。  医療経営原資として薬価というものに依存させる医療を進めてきた。そうしたものをなくしていこうとするならば、当然キャピタルコストをきちっと反映できる診療報酬にしていかなければいけないだろう。そして、必要な人員、看護人員、医療人員を確保していくとするならば、その人件費がそれなりにきちっと反映される、同時に人員の配置によって使用ベッドが決まっていくという形にならない限り、診療報酬が現状のままにおいてやっていくとするならば、先ほども言いましたように、薬価差益がなくなればますます短時間診療とかあるいは乏しい人員配置によっての医療という方向に経営としてはいかざるを得ないのは明らかでございます。したがって、ここのところをどういうふうにしていくのかということを聞いているわけでございます。  時間がございませんので、ここで押し問答しても仕方がないと思いますが、私ども見解として申し上げておきます。  次に、先日、非常に嫌な思いをする医療に関係する事件が二つございました。  一つは、横浜市民病院の事件でございます。  厚生省は、これまでもよくインフォームド・コンセントということを強調されてまいりました。インフォームド・コンセントというのは形式ではないはずですね。ところが、横浜市民病院の事件というのを見てみた場合に、ここにおられる厚生省の技官の人たちも、何でこんな事件が起こったとお考えになることは当然だと思います。なぜ公立病院でこんな事件が起こったのか。これは、ミスとかなんとかいうマスコミの書き方ではありません。  まず、自分が執刀する患者、自分が麻酔をかける患者に対して、それぞれの専門の医者が話をし、安心を得る努力も全くしないままに手術をしたのか。まさか肉の解体ではあるまいし、そんな医療があるとは私には想像もつかなかった。  インフォームド・コンセントというのは、主治医が患者に対して手術の説得をすればいいということだけでいいわけではない。患者にはさまざまな不安があります。まして、主治医が外科医でなく内科医であり、そして手術をする医師に対してその患者をお任せする場合には、当然のこととして外科医が直接その患者に対して術式の説明と予後の問題、どういうことなのかという説明を麻酔医とともにするというのはイロハのイの字だろうと私は思います。それもしない医療が公的病院で行われている。一体これはどういうことなのか。こんなものは事情を聴取するもせぬもない。医療の初歩ができていない。こんな病院に対しては、やはり一定の制裁を厚生省として加えるべきだと思うわけでございます。  同時に、これはマスコミのバラエティー番組のことでございますが、一月の末のフジテレビにおいて、医療者としては、なぜそのようなことが、どうしたら起こるだろうかという事件が起こっています。これは、何か看護婦さんが患者をいじめたというふうな事件でございます。  内容から見ますと幾つか類推できます。植物人間の患者を扱っておられるということですから、恐らく脳外科等を持った一定の病院だろう。急患が来た。十分後に来たときは死んでいたというわけですから、恐らく救急病院か何かでしょう。歩いてきた患者さんが十分後に死んだというのは、よほどのことがない限り考えられない。そういうふうな病院において、病院の受付の窓口が看護婦に任されており、そして看護婦の恣意的な判断で、主治医への連絡もないままに患者を断ったりあるいは受け入れたりできる。そのようなことが本当に起こり得るだろうかと考えると、私はこの番組の信憑性について非常に疑問を持つ。  しかし、バラエティー番組というのはかなり多くの人が見ておられることは事実です。それだけに、こうしたニュースというものが、あたかも一定の事実であるかのような形で、多くの国民が今の医療実態はそんなものだというふうに考え始めているのも事実です。このことについて、やはり事実関係を明らかにすべきであると私は思います。  この二点についてお伺いしたいと思います。
  51. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 まず、横浜市立大学附属病院の事件について申し上げます。  今先生からお話がございましたように、医師と患者の関係というのはインフォームド・コンセントという方式を用い、それでなくても両者の信頼関係というのが非常に大切である、このように我々も思っておりますし、現に医療法にもその規定があるところでございます。  この基本的な考え方から見ましても、横浜市立大学附属病院の事故はあってはならないことである、このように考えておりまして、国民医療に対する関心が高まっている今日、このような事故が起きたことを大変遺憾に思っておるところでございます。  このため、厚生省では、医療人がミスをする、ミスしたことが患者に被害が及んではいけない、そこにはやはりシステム上の問題点がある、我々はこう見ておりまして、今後このような医療機関側の過誤により患者が被害をこうむることのないよう、類似事故の再発防止を目的として有識者から成る検討会を設けました。そして、院内の管理体制のあり方等について検討を進めることにいたしておりまして、この二月十七日から会をスタートさせようと思っておるところでございます。早急に成果を得て各医療機関への普及を図ってまいろう、このように考えておるところでございます。  なお、今回の事件について関係者の制裁と先生おっしゃられましたが、そのことに関しましては、現在まだ関係者による調査が警察当局等で行われている段階でございまして、その調査を見守った上で考えてまいりたい、このように思っております。  また、過日医療審議会で出た話でございますが、この大学病院に対する制裁ということも考えるべきだという御意見が医療審議会で出されました。それについても今検討をいたしておるところでございます。  いずれにしても、こんな事件を再度起こしてはいけないという思いで我々も必死に対応してまいりたい、このように思っておるところでございます。  次に、テレビ報道でありました看護婦のまことにひどい話でありますが、私どもはあれが真実の話だとはとても思っておりません。私は、何かの間違いではないか、このように思っておりますが、今のところ、我々の方の担当者からテレビ局に電話をかけまして、どうだったと言って事実関係を問いただしても、一向に向こうからこちらの納得のいくような返事が得られないという状況でございまして、今、どう追及していいものかというところで悩んでおるというのがまだ現状でございます。
  52. 五島正規

    ○五島委員 次に、大臣の昨日の所信表明からいいますと順序が飛びますが、関連しますので、国立病院・療養所問題についてここでお伺いしておきたいと思います。  国立病院・療養所を初め国公立病院というものはなぜ必要なのかということを考えた場合に、やはりそれは政策医療というものがどうしてもあるということがこの必要性の原因だろう。そして、この政策医療というのは時代とともに当然変わってまいります。かつて結核が国民病であったときに、結核の治療のために国立療養所をたくさんつくられた、これは当然だったと思います。しかし、政策医療というのは、逆に言えば、時代の流れとともに当然変わってくるわけでございます。  そして、この政策医療を実施していくためには、診療報酬だけでやっていくということには困難のある場合が当然ございます。したがって、そこでは、国民の健康を守るという意味から、診療報酬以外に税による補てんというものが必要な医療というのが存在する、この事実については、私もそのように思っております。  問題は、国立病院・療養所で期待される政策医療が終了した場合、社会的に変わってきた場合、あるいは必ずしもそうした医療が国の政策医療としてやらなくても、民間において十分それが補てんされるようになった場合、その場合、国立病院・療養所をどのようにしていくのか。これをやはりきちっと解決するシステムというものがないと、診療報酬で賄われている民間医療機関、それから、何らかの形において税によって補てんされている国立病院、国立療養所の存在というふうなものとの間に非常に大きな矛盾が起こってくると思うわけでございますが、その点について、一体、今期待されている政策医療は何なのか。そして、その役割が終わったときはどのようにしようとしているのか、それを明確にお答えいただきたいと思います。
  53. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 国立病院・療養所の役割につきましては、六十年の三月に「国立病院・療養所の再編成・合理化の基本指針」というものを定めておりまして、平成八年の十一月に改定をいたしまして閣議に報告しているわけでございます。  この基本指針によりまして、地域における医療供給体制の中で基本的、一般的医療提供は私的医療機関及び地方公共団体立等の公的医療機関にゆだね、国立病院・療養所はその時代におきまして国の医療政策として担うべき医療を実施することとしておりまして、その実施に当たりましては、診療、臨床研究、教育研修、情報発信を一体として行うこととしているわけでございます。  具体的には、がん、循環器病等の高度先駆的な医療の開発、普及。二番目といたしまして、結核、エイズ、重症心身障害等、歴史的、社会的経緯などによりまして、地方、民間での対応が困難な領域での役割。三番目といたしまして、国際感染症、国際医療協力など、国家の危機管理や国際貢献における役割。四番目といたしまして、臨床治験など、国家的見地から重要な医療政策を実施する役割などの役割を果たすこととしているわけでございます。  したがいまして、こうした政策医療機能を担い得ない施設につきましては、統廃合または経営移譲の対象施設として再編成を実施していくというのが厚生省の基本方針でございます。
  54. 五島正規

    ○五島委員 一から四までの政策医療について私も同意するわけですが、問題は、その役割を終えた、あるいはそういう機能を担い得なくなった国公立病院あるいは国立療養所、そうしたところであったとしても、それが医療を継続している以上、地域医療に貢献していることは事実なんですね。  したがって、それを厚生省はこれまで統廃合の対象あるいは移譲の対象というところだけでやってこられて、結果として余り目立った効果が上がっていない、ここのところはもう少し別の方法を考える必要があるのではないかということについて意見として申し上げておきたいと思います。  時間がございませんので、もう一点お伺いいたします。  ダイオキシン問題につきましてでございますが、これは、昨日、大臣もお触れになりました。所沢周辺を中心とする農産物のダイオキシン汚染というものが非常に大きな問題となりました。きょうの新聞を見てみますと、それほど高くないと言っていいのか、ダイオキシンがついていることが問題だと言っていいのか、それは別といたしまして、○・四ピコ以下ぐらいのダイオキシンがついているということのデータが出ていました。  この点について、二点だけお伺いしておきたいと思います。  一つは、このマスコミ報道の中で非常に国民に誤解を与える可能性があるのは、ダイオキシンが植物中に含まれているという受け取りをされている向きが多うございます。ダイオキシンというものの性格から考えて、基本的に植物体内に移行するということについては非常にあり得ないんじゃないか、これまでの考え方でいえば当然そうなるかと思うわけです。  そうなりますと、このダイオキシンというのは、降塵あるいは汚染土壌から表面に付着したダイオキシンということで、その周辺のダイオキシンによる環境汚染によって植物の表面に付着しているということになるかと思います。しかし、国民の不安は、ここまで来ますと、ダイオキシンというものが食物体内に移行する心配があるのではないか、そして、そのまま食べたら危ないんじゃないかという議論まで来ているかと思います。  この点について、これは厚生省がやるというよりも農水省がやる仕事かと思いますが、ダイオキシンが実際に植物体内に取り込まれることがあり得るかどうかということの実験、研究を早急に食品衛生の立場からも求めていくべきだ。そういう意味で、ぜひ農水省の方に対してこの点について大臣の方からもお話しいただきたい。このことが第一点でございます。  第二の問題として、ダイオキシンの発生源は幾つかございますが、やはり一番大きいのは焼却場におけるダイオキシンの発生でございます。  今回、ダイオキシン対策について厚生省がお持ちになっている方針というのは、ダブルスタンダードというよりもトリプルあるいはそれ以上の基準値を設けているわけでございますが、環境ということから考えるならば、この基準値というのは、本来はダブルスタンダードであってはならない。どういうふうな状況にあろうと、既設であろうと新設であろうと、あるいは大型であろうと小型であろうと、こういうものの発生については一定の基準値以下で発生を抑えていくという強い姿勢が必要でございますし、また、そのための技術というのも決して不可能ではないと思います。  そうした形でダイオキシンの発生濃度を抑制していくとするならば、方法としては二つしかないだろう。一つは、焼却炉を大型化して、それに一元化していく。すなわち、たしかドイツでは三十幾つしか焼却炉はないと言われておりますが、各県に一つぐらいの大型焼却炉をつくり、そして、各地方自治体においてごみの燃料化のプラントをつくって、そこで焼却をしていくことによって、いわゆる大型炉においてエネルギーのリサイクルとして使いながら、このダイオキシン問題を解決していく。あるいは徹底的にごみの分別を行い、小型炉において生ごみとほかのごみとを一緒に燃やすことによって焼却温度を下げるというふうなことが起こり得ないようなところまできちっと整備した上で対応していく。現実問題、ダイオキシンを一元的に抑制していこうと思えば、この二つの方法しかないのだろうと思います。  そこのところを現状の実態から考えてなかなか難しいということでダブルスタンダードをつくり、そして猶予期間を置いていくということの中で、環境汚染が非常に進んでいっているというのも事実である。人に対して、むしろ人間だけじゃなくて生命そのもの、生物そのものに対して非常に影響があるこういう環境汚染物質抑制のためには、やはり一定の期間を集中的な介入期間としてこの問題については一元的な規制を行うべきだと考えるわけでございますが、大臣、いかがでございましょうか。
  55. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 まずマスコミの放送の誤解、私もこれは客観的な調査をして明らかにしたいと存じておりますが、必ずしも明確な根拠であるかどうか、疑問に思っております。  そういう中で、今委員の御指摘のように、ダイオキシンというのは水溶性の性格はないようでございますから、食物が地中の水分と同時に吸収するということは非常に少ないようにお伺いしております。その点はおっしゃられるとおりでございますから、恐らく付着するとかそういうことの原因が多いのではないかと私も思いますので、これは農林省等に厳重に申し入れます。  なお、農協の発表した中では、ホウレンソウ等の野菜は、そういう意味である程度大気の中でダイオキシンが付着したものと思われます。その証拠として、里芋等もやったようで、これはダイオキシンゼロということでございます。そんなことからしても、大体委員のおっしゃられる方向性ではないかと思いますので、農林省にその点は申し入れます。  それから、ダブルスタンダードの問題でありますが、厚生省としては、大型の焼却炉の方が効率的であり、また熱効率その他総合的に見てよろしいと。それからまた、小型の技術的な問題もございまして、今補助対象としては一日百トン以上の処理ということで補助の対象にしておりますが、小型であってもダイオキシンの防止に役立つ、そういう技術的なものを持っておれば、地方財政措置等によってこれは一応対応はしておるわけでございますが、今委員のおっしゃるように、小さな型のものでも技術的にダイオキシンの防止が可能であるように技術改良は私は可能だと思いますから、そういう点の技術改良もやっておるところでございます。  なお、こうしたダイオキシン問題の発生源をどうやって防止していくかという分別の問題とか、あるいは焼却技術の問題とか、リサイクル社会を全体としてどうやって築いていくか等々の問題は、御指摘はそのとおりであると存じます。
  56. 五島正規

    ○五島委員 終わります。
  57. 木村義雄

    木村委員長 金田誠一君。
  58. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 民主党の金田誠一でございます。  きのう大臣の所信を伺いまして、その中で、障害者の問題でございますけれども、「障害者の自立と社会参加の促進に向け積極的に取り組む」、このような表明がされておるわけでございまして、大変心強く思っているところでございます。そういう観点から、障害者のうち、耳の不自由な方の画期的な治療方法とも言えます人工内耳の問題について、まず第一点目お聞きをしたいと思うわけでございます。  申し上げるまでもないわけでございますが、人工内耳は、一九八〇年から世界の先進国で採用されて、我が国では一九八四年、東京医科大学の舩坂宗太郎先生によって初めて試行をされた。一九八五年、翌年からは保険適用にもなっているということでございます。後天聾の方はもとよりでございますが、先天聾の子供さんも聴覚を回復して言葉が話せるようになる、画期的なものだと思うわけでございます。先進各国では、約八割の子供さんがこの手術によって普通学校に通えるようになる、こう伺ってございます。  そこで、この先天聾の場合でございますが、二歳代からの装用が好ましい、四歳ぐらいが上限ではないか、余り年齢が上がってからでは効果が非常に薄いというふうに言われております。それが一つ。  もう一つは訓練センター、諸外国ではチルドレンセンターと呼ばれているようでございますが、人工内耳装用者の訓練があって初めて人工内耳が機能するといいますか、いわばチルドレンセンターは必須要件であって、これを欠くことになれば仏つくって魂入れずと言うに等しいと言われているわけでございます。そういう立場から、舩坂宗太郎先生は、明けて四年前ということになりますでしょうか、中野区の自宅を開放されてみずからの自宅にチルドレンセンターを開設された。約二十人の子供さんが通って訓練を受けているわけでございます。  しかし、個人のやっていることでございますから限界があるわけでございまして、今後これ以上人工内耳を普及させていくには、国の援助によってチルドレンセンターを全国に展開しなければならない、要所要所に配置をしなければならない、あるいはそこで訓練をする訓練士をしかるべきところで養成もしなければならない、こういうことで主張をされておりまして、去年だったと思いますが、大臣、暮れに舩坂先生に大臣室でお会いをいただいたというふうに聞いております。その際、恐らくビデオなどもごらんいただいたのかなと思いますし、その後舩坂先生から御連絡がありまして、大臣には大変感謝をしておられまして、今後国の具体的な対応が進むのではないか、ぜひ進めてほしいということで、大変期待もしておられたわけでございます。  そこで、新年度予算など拝見をして、具体的な活字になった対応策は残念ながら見当たらなかったわけでございますけれども、チルドレンセンターの普及に向けて予算の中で具体的にどのような対策をなされようとしているのかを、まずはお答えをいただきたいと思うわけでございます。今後の見通しなど含めてお答えいただければありがたいと思います。
  59. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今御指摘のように、人工内耳の装着の問題につきましては、舩坂先生と私も若干の時間をいただいたことがございます。  生まれつき耳の聞こえない幼児に対しまして装着するということの有用性については、関係学会から認められておるところだと承知しております。  人工内耳を装着した幼児に対しましては、今御指摘のように時間をかけて言語訓練等を行う必要がございます。そんなことで、専門の医療機関とかあるいは児童福祉法に基づきます難聴幼児通園施設等において関係者によって積極的に取り組まれておるということもお聞きしております。そしてまた、先生の自宅を開放してのチルドレンセンターも、その有力な一つの先導的な役割を果たしているものというように思っております。  なお、こうした問題は日本ではなかなか遅いというお話で、そのとおりでございますが、人工内耳技術の向上等も見ながら、そして関係学会の意見も聞いて、人工内耳を装用いたしました先天聾の子供たちに対する言語訓練その他がいかにあるべきかということをもうちょっと検討させていただいた上でこの位置づけをしていかないと、舩坂先生の善意は善意としてよくわかりますけれども制度としてビルトインするにはまだまだ検討を要するかなということで、十一年度予算には特段の計上をしてございませんが、別に予算というものは計上をしていないといっても包括的にそういうことの対応も可能でありますから、場合によりまして前向きな対応が必要であれば、また御相談をさせていただきたいと思います。
  60. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 実は、私も中野区のチルドレンセンターを伺いました。実際訓練を受けておられる子供さんにもお目にかかり、親御さんのお話も伺ってまいりまして、ここしかないんだということで切実に訴えておられました。人工内耳を装着して本当に何不自由なくといいますか、普通に遊び回って話をしてという子供さんを拝見して、その子供さんが先天聾なのだという話を伺って、本当に驚いて帰ってきたような次第でございます。  極めて画期的な医療技術というものだろうと思いますが、その普及と同時に、訓練、チルドレンセンターの普及ということが車の両輪になるわけでございますから、ぜひひとつ前向きに取り組んでいただきたい、御要請を申し上げておきたいと思うわけでございます。  訓練の方では、カナダのシムサー教授という方が訓練の第一人者であると伺っておりますし、人工内耳の普及の方では、もともとオーストラリアで開発をされた技術でございますから、オーストラリアが大変進んでおる、あるいは台湾などでも非常に普及しているということなどを伺っております。  こうした先進国の実態どもできれば早急に調査をいただいて、やむにやまれず御自宅を開放してボランティアでやっておられるという状況ですから、一日も早くこうした状況を解消して、国の制度にのせて、舩坂先生は、国公立というのは非常に効率も非効率になる、理想的には財団などが設立されて民間レベルで展開するというのが一番いいのではないかということもおっしゃっておられましたけれども、そうした観点も含めて早急に道筋をつけていただきたい、改めてこれは御要請、御要望申し上げておきたいと思うわけでございます。よろしくお願いいたします。大臣、いま一言決意のほどをお願いします。
  61. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 いろいろの問題点を抱えておるようでございますから、しかし、非常に重要なこの治療の問題でございますから、ひとつ検討させていただくということで御承知をいただきたいと思います。
  62. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。  次に移らせていただきます。  化粧品の流通問題ということで、公取の方もいらしていますでしょうか。  実は、手元にありますのがマックスファクター社のマスカラというのでしょうか、まつげにつける、固めるもののようでございます。これは日本の国内で販売されておりまして、二千五百円。これはカウンセリング商品、対面販売商品ということで値引きはまかりならぬということで、私は価格支配、再販価格の支配がなされていると思うわけでございますけれども、いずれにしても、カウンセリング商品ということで二千五百円の正札がついている。こちらはアメリカのドラッグストアで売っていたもので、四ドル六十六セントでございます。レートによってもいろいろ違うでしょうけれども、約五百円程度。片や五百円、片や二千五百円で値下げまかりならぬというものだそうですが、これはどう考えても問題ではないかと思うわけでございます。  まず大臣、ちょっとお手にとってごらんいただければ……。これはひもがついているのですけれども、このひもは、私の部屋に実はつるしてございまして、お客さんにみんな見せるわけでございます。そうすると、皆さんびっくりしてお帰りになるわけでございますけれども。何ぼ何でも五倍の格差、どこかに問題がある。そのどこかをこれからちょっと質問の中で明らかにしていきたいなと思うわけでございます。  大臣、いかがですか。まず、その二千五百円と五百円の両方見て、感想などちょっとお聞かせいただければと思います。
  63. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 私もこれは使ったことがございませんのでよくわかりませんけれども、包装の外形だけ見ると非常に類似しておりますね。そんな感想だけでも……。
  64. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 二千五百円と五百円少々で余りにも違い過ぎるではないか、片っ方は値引き販売ができないような何らかの規制が働いているというふうに思うのが常識だと思うのですけれども、考えられることは二つだと思います。  一つは、並行輸入の規制がずっとあってなかなか輸入がしにくい、特定の業者だけが輸入できるものだから価格の維持が容易になるという、輸入規制に絡む問題が一つあるのかなというふうに思います。  もう一つは、独禁法の適用に問題があるのではないか。以前、この業界は排除勧告などを受けた経過がございまして、それを受けて、一部カウンセリング商品から外してセルフ商品というものにして、そこだけは値引き可能と、値引き率もかなり統制されているようでございますけれども、そんなふうにしてその場しのぎの一時逃れをしているのが実態なのですが、独禁法上の問題があるのではないかという、この二つの問題があろうかと思います。  そこで、まず輸入の規制緩和でございますけれども、オリジナルの成分表の提出がかつては義務づけられていたのが規制緩和でこの辺が緩和されたというのですが、まず、厚生省の方から、輸入規制に絡む規制緩和の状況といいますか、緩和がかなり進んでいると聞いておりますけれども、その辺のところを簡単にお答えいただきたいと思います。
  65. 中西明典

    ○中西政府委員 先生指摘のとおり、かつては、化粧品を輸入する場合におきまして、同一の化粧品であっても外国製造事業者の証明書、いわゆるオリジナル成分表などを事前に提出することを求めてきたわけでございますが、この手続が輸入総代理店以外の輸入業者の参入を困難にして、内外価格差を生む原因の一つになっていたのではないかという御指摘があったところでございます。  そうした問題を受けて、平成八年三月から、並行輸入という形で、既に輸入が許可されている化粧品と同一の化粧品を別の輸入業者が輸入する場合にありましては、外国製造事業者の証明書を省略することができるという取り扱いに切りかえたところでございます。その結果、平成八年三月以来今日まで約百業者、計約二千品目が並行輸入の形で我が国にはなされている、こういう状況でございます。
  66. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 規制緩和が着実に進んでいるということだろうと思います。  私の立場は、参入規制などということに通ずる規制は極力緩和をしていくということは当然だと思うわけでございますが、一方で、厚生省の重要な役割は安全性に対する規制でございます。  輸入の薬物に関しては、例えばクロイツフェルト・ヤコブなどが今大変な問題を引き起こしたわけでございますけれども、そうした安全性観点からの規制、監視は万々怠らないように御要請申し上げておきたいと思います。輸入に関する規制の緩和については理解をいたしました。  次に、そこで公取の方でございますけれども、公取がしっかりしていると二千五百円と五百円なんということにはならぬだろうと思うわけでございますが、例えば、去年の二月、東京都生活文化局が、このような調査報告書、化粧品の価格と流通に関する調査報告を出しております。これを開きますと、「「殆ど値引きされない化粧品」は「カウンセリング品」、「値引きされる化粧品」は「セルフ品」と言われ、流通上では区別されていることが判った。」あるいは、「スーパーや量販店を中心に値引きが行われているが、これはセルフ品であって、カウンセリング品は調査の結果では殆ど値引きされていないようである。」こういう指摘が東京都の結果で出ているわけでございます。  あるいはまた、化粧品問題を考える会というところでも実態調査を、これは去年の五月でございますが、出しておりまして、これは買い取った化粧品のレシートのコピーが全部ついておりまして、全部同じ価格、これはカウンセリング品の方でございますけれども、こういう実態がある。それで、お見せしたような五百円と二千五百円という格差もある。  こういう状況を見れば、何らかの再販価格の支配といいますか価格維持の行為が行われていると思うのが当然だと思うわけでございますけれども、その辺、公取はどのように認識されていますでしょうか。こういう調査報告が出ているということを知っておられるのかどうなのか。それであれば、実際どう認識をされておるのかを聞かせていただきたいと思います。
  67. 平林英勝

    ○平林政府委員 お答えいたします。  御指摘のありました東京都生活文化局の化粧品の価格の実態調査、それから適正な価格を実現する会の化粧品の価格の実態調査については、私どもも承知はいたしております。  そうした報告書に対する私どもの取り扱いにつきましては、具体的ないわば事件と申しますか独占禁止法違反の疑いにかかわることでございますので、従来から、私ども、審査に支障がありますので答弁は差し控えさせていただいているということでございますので、その辺は御理解いただきたいと思います。  ただ、一般論としてこれは申し上げさせていただくわけでございますけれども、再販売価格維持行為をしている疑いがあると言うためには、ただ安売りがされていない、あるいは内外価格差があるといったことではなかなか違反事件の端緒とはなりがたいのではないか。やはり具体的な価格拘束の疑いがあって初めて私どもとしては事件の端緒として必要な調査をしていくというふうにいたしているところでございます。
  68. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 そういう悠長なことを言っているからいろいろな事件が起こるわけでございます。例えばこの間の水道管のやみカルテルにしたって、市民団体から告発を受けてようやく動き出す。非常に情けない話だ。職務をもっと忠実に執行していただきたい。きょうは委員長も来ておりませんから、しかるべき場でまた改めてそのことを申し上げたいと思うわけでございます。  そこで、今の価格調査というのは、傍証といいますか、情況証拠のたぐいだと思うのですけれども、今度は具体的に証拠になるものがあるわけでございます。  株式会社冨士喜本店、化粧品の値引き販売で有名な店でございまして、ほかにも以前は結構値引き販売の店があった、しかし、それぞれメーカー側の圧力によってつぶされていくといいますか、値引き販売できない状態にされてきて今日に至っている、もうごくごく、残っている数少ない会社の一つでございます。そこに対して株式会社マックスファクターから出荷を停止するというおどしの文書といいますか、それが入っているわけでございます。  この店は一般に二割引き程度で販売をしているようでございまして、全国に幾つかの店舗を展開している。本店で一括仕入れをして、各支店でもそれを配送して販売をしているというのが実態でございます。ところが、マックスファクター側は、支店に配送して販売するのはけしからぬ、配送した分についてはすべて回収をしろ、こういうことのようでございます。実質仕入れて売っているわけでございますから、メーカー側としては、仕入れた商品に適正に代金を払ってもらえればそれでいいでしょうし、売り上げが伸びれば伸びるだけいいのでしょうけれども、考えられるのは、要は値引き販売をやっているからそこには出荷しないということでございます。  そういう具体的な通知書が昨年の十二月十八日とことしの一月十四日に出されているわけでございまして、それについて、直ちに公取にも実はこういうことが起こっているということで話しに行かれたと聞いていますが、本件に対する事実は公取はもう承知をしているということでよろしいですね。
  69. 平林英勝

    ○平林政府委員 先ほど申し上げましたように、具体的な事案にかかわることでございますので、それを私どもがどう取り扱うか、取り扱っているのかという点につきましては、答弁を御容赦させていただきたい、かように考えております。
  70. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 具体的なマックスファクターと冨士喜本店の間に交わされているこういう文書でのやりとり、そのことは承知はしているということはいいでしょう。
  71. 平林英勝

    ○平林政府委員 再三申し上げて恐縮でございますけれども、具体的なことにつきましては答弁を御容赦いただければと思います。  一般的に申し上げれば、私ども、独禁法違反の疑いがあるかどうかにつきましては、それは絶えず情報収集はしているわけでございますし、また、一般から申告があれば、それについてもちろん検討はしているところでございます。
  72. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 具体的に本件については承知をしているかしていないか、これはどうですか。
  73. 平林英勝

    ○平林政府委員 先ほど来申し上げているとおり、私ども、個別の具体的な情報につきましては、従来からも答弁は差し控えさせていただいておりますので、御容赦いただければと思っております。
  74. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 承知しているかしていないかだけ聞かせてほしいと言っているんですよ。きのうは担当の課長さんに部屋においでいただいて、話は伺いました。資料どもすべて既にお渡ししてあるということでございましたから、こういう問題があるというのは承知はしているというふうに答えればいいんじゃないですか。承知しているかしていないかも答えられないというのは、独禁法上のどこかに規定があるんですか。
  75. 平林英勝

    ○平林政府委員 一般的に申し上げれば、私ども、もちろん化粧品業界も含めまして、独占禁止法違反の疑いがあるかどうかについては、絶えずその情報収集に努めているところではございます。  それから、独占禁止法に規定があるのかという点につきましては、独占禁止法の三十何条かに、事件についての事実の有無、法令の適用については意見を述べてはならないといったような規定がございますし、また、一般的な国家公務員としての守秘義務規定もあろうかと思います。
  76. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 三十九条に守秘義務とあるんですけれども、「その職務に関して知得した事業者の秘密を他に漏し、又は窃用してはならない。」ということですね。これがなぜ今事業者の秘密なんですか。今この国会の場で公に事実を明らかにしているわけで、秘密でも何でもないんじゃないですか。
  77. 平林英勝

    ○平林政府委員 私が申し上げたのは、三十九条ではなくてむしろ三十八条の「委員長委員及び公正取引委員会の職員は、事件に関する事実の有無又は法令の適用について、意見を外部に発表してはならない。」という規定があるわけでございますし、それから、先ほど申し上げましたように、国家公務員法にも守秘義務の規定がございますので、職務に支障があるという場合には、その観点から答弁を差し控えさせていただいているということでございます。
  78. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 納得いたしかねます。しかるべき場で委員長なりにまた改めてただしたいと思うわけでございますが。  最後に一つ、東京都生活文化局なりの出された調査について、値引きされる商品はセルフ品と言われ、流通上では区別されていることがわかった、ほかの方は値引きされていないというのをこの公的機関が調査の結果出しているわけですが、これについてどのような具体的な調査、これから対応されるのか、それを聞かせてください。
  79. 平林英勝

    ○平林政府委員 先ほど来申し上げておりますように、東京都がされた調査結果に対して具体的にどう対応されるかという点についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思いますけれども、これは先ほど来申し上げましたように、一般論として、私どもは、いろいろな資料等々に目を通して情報を収集いたしておりますとともに、一般の方からもいろいろ情報提供がございますので、そういったものも含めまして独占禁止法違反の疑いがないかどうか、絶えず検討はしているところでございます。
  80. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 カウンセリング商品というものがほとんど値引きされていない、されているのはセルフ商品だけであるという事実がこのように明らかになっておる中では疑いを持って当然だ。疑いを持って当然なところに、今回のような、マックスファクターから冨士喜本店あてにこういう出荷差しとめをするような文書まで出ている。これ以上何が証拠として欲しいのか理解に苦しむわけでございますけれども、まずは公正取引委員会、ぜひしっかりしていただきたい。給料をもらって国家公務員として勤めているわけですから、最低の職務、職責は果たしていただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。改めて、しかるべき場で委員長なりにこのところをたださせていただくということを申し上げておきたいと思います。  化粧品の問題は時間もあれですからこれで終わらせていただいて、次は、薬剤給付のあり方についてお尋ねをいたします。  先般、一月七日付で「薬剤給付のあり方について 意見書」というものが出されておりまして、前段五島委員の方からも指摘がありました。私も同じような問題意識を持っております。これは極めて問題の多い内容だなというふうに思っております。そういう立場から、順次お尋ねをしていきたいと思うわけでございます。  多少資料に立ち入っての質問で恐縮でございますが、十一ページに、(3)「1 定率患者負担の価格への影響について」という記載がございます。一つ目の丸印のところには、「定率患者負担による安価な薬剤の選択は機能しない。」ということが書いておるわけでございます。二つ目の丸には、「適正な定率患者負担が設定されれば安価な薬剤の選択が生じる。」というふうに書いておるわけでございます。  一つ目の丸と二つ目の丸は全く正反対のことを書いておるわけでございますが、厚生省は、この一つ目の丸の立場はおとりになっておらない、二つ目の丸の立場をとっていると思うわけでございますけれども、なぜ厚生省が「定率患者負担による安価な薬剤の選択は機能しない。」という立場をとらないのか、二つ目の立場をなぜとるのか、これについてまずはお聞かせいただきたいと思います。
  81. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 まず、先ほどもお断りをさせていただきましたけれども先生お話しのございましたように、いろいろな意見が実はまざった形での意見書をちょうだいして、全体の制度のありようについては今さらに具体案を詰めておるところでございますので、そういう段階のこととしてお聞きをいただければというふうに思います。  今先生指摘のございました二つの考え方のうちどちらをとっているかということについては、結論的に言えば、私どもの現在の考え方でいえば、先生仰せのとおり、後段の二つ目の方の考え方にむしろ立っているとおっしゃっていただきましたが、そういうことだろうと思います。  そのゆえんのものは、適切な定率の患者負担が設定をされるということになりますと、やはりそこに患者のコスト意識というものが働く。砕いて申し上げれば、効き目が同じならできるだけ安い薬をというインセンティブがそこに働いてくる。そうしますというと、医師のサイドにおける薬剤の選択におきましても、患者のいわば願いと申しますか、そういった患者本位の選択ということが行われるようになってくる。そうしますというと、そこに、臨床上同じような効き目のものについてはグルーピングをする、分類をするという一つの仕掛けがあるわけでありますが、その中におけるある種の競争と申しますか、今申し上げた、効き目が同じなら安い方を選ぶというインセンティブが働いてくる、そういう世界ができてくる。  したがって、定率患者負担では安価な薬剤の選択は機能しないという見解は必ずしも当たらないのではないかというふうに思っておりますし、そのことのいわば一つのあらわれとして申し上げれば、直接ではございませんけれども、例えば平成九年に薬剤一部負担を導入いただきました。その後をたどってみますというと、老人なんかの場合については受診率は余り下がらなかった。受診率が下がることなく医師の処方内容が変化するという形でのまさにコスト意識を反映した薬剤選択、そのことによってある意味からいえば薬剤選択の適正化ということが行われましたことが一つございます。  それから、ドイツの参照価格制度、実はこれは定額負担でございますから定率負担の世界とは違うのでございますけれども、ドイツにおける定額負担の世界においてさえ、参照価格を下回る価格の薬剤というものは多数存在をするということも、ある種の傍証かもしれませんけれども、そういうことになるのじゃなかろうか。  そういった患者のコスト意識により薬剤選択を変化させているということの実例にもなると思いますし、そういう趣旨の意見という二つ目の方にむしろ合理性があるのではなかろうかと考えております。  しかし、二つながらに貴重な意見としてちょうだいをいたしておりますから、その点については私どももさらに検討を深める必要があるであろうというふうには考えております。
  82. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 局長答弁の中の薬剤の患者負担の定額負担が導入されたときに云々というくだりは、今問題にしているのは、定率負担がどういう効果を及ぼすかということで問題提起をしているものですから、その部分の答弁は余り適切な例にはならないのではないかなというふうに思いますので、指摘だけさせていただきたいと思います。  そこで、二つの見方があるわけですけれども、これが局長のおっしゃるように機能するんだという場合は、極端な例を言いますと、保険給付がゼロの場合、もし全額患者負担になったとすれば、これはかなり機能すると思います。それは、患者さんは、薬効が同じであればできるだけ安い薬剤を先生お願いしますよというふうになるわけですね。  ところが、この場合は患者負担が著しく抑えられている。特に老人医療の場合なんかそうですけれども、そういう中で、通常の商品のように同じものなら安い方ということになるかどうかというのが問題のポイントだと思うわけでございます。  そこで厚生省はかなり慎重な言い回しをしているのかなと思うのですが、二つ目の丸では、「適正な定率患者負担が設定されれば安価な薬剤の選択が生じる。」こういう書き方ですね。したがって、適正な定率患者負担というのは何を想定しているのかがポイントではないか。  もし患者負担がゼロで、全額保険から給付されていたとすれば、それは安価な方に選択が生じるとは言えないわけです。一〇〇%患者負担になると生じる。この生じるか生じないかの分岐点が適正な患者負担という表現になっていると私は思うのですけれども、具体的には、今は保険給付八割、患者負担二割、老人は違いますが、おおむねそういう原則が確立をされているんですが、おっしゃりたい適正な定率患者負担というのは今の二割ということなのか、それとももっとこれを高くしなければ安価な薬剤の選択が生じるとは言えないと思っておられるのか。二割なのか、三割なのか、四割なのか。この辺、適正なというのはどこを想定しているのか、教えてもらいたいと思います。
  83. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 いわゆる患者負担によって薬剤の選択が生じるという意見の中で、適正な患者負担であればという、適正なということの意味合いのお尋ねがございました。  これは審議会の意見としてそのように出ておりますので、審議会御自身としてそれが何割であるかということの具体的な御明示はまだございません。したがって、私どもも、今後具体案を考える際にそれをどう考えていくかという問題であろうかと思います。  その際に、意見書の中でも別途、いわゆる薬剤定価・給付基準制度を是とする意見の中にも、いわば前提条件という形で、患者負担が余りに過大にならないようにしなければいけないということを一方において書いてございますから、患者負担につきましては、今後、そのあり方検討する中で、患者あるいは医療機関のコスト意識を高めるという一方の要請と、それから過重な患者負担が生じないようにするという要請との中で決めていかなければならない課題であろうというふうに思います。  したがって、今の段階でその答えが何割であるかというところについては、私どもまだ答えを持っておりません。さらによく検討をしなければならないことであると思います。  それから、先ほど先生、定額だから定率と違うと言われまして、私も傍証と申し上げたのは若干そこがあるのでございますけれども、ただ、これも、あるいは乱暴かもしれませんけれども、定額においてさえそういうことがあったんだから、定率という、言ってみればコストに非常に敏感な仕掛けをつくれば、なおそういうことになるのではないかというある種の予測みたいなものを含めて申し上げたつもりでございます。
  84. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 厚生省は、これから薬剤定価・給付基準額制をやろうというふうに思っているわけでしょう。そうではない、全く白紙でございますというならそれはそれでいいのですけれども、これほど手間暇かけて検討しているのは、それを導入しようというお立場なわけです。  給付基準額があった、これより低い定価があった、その場合、この定価が給付基準額まで上がってしまうのではないかという問題が一方で指摘されているわけですよ。ドイツだって上がったではないかとか、いろいろな指摘がされているわけです。それに対して厚生省は、いや、そうではない、給付基準額より低い定価があっても、それが上がるということにはならない、同じ薬理作用、同じ薬効であれば低い方を選ぶ選択が生じるんだ、こうおっしゃっているわけです。その場合に、適正な率、適正な定率患者負担があればという条件つきで言っているわけです。  したがって、これはどうなんですか、その辺の、何割になるかわかりませんじゃ困るんじゃないですか。そもそも議論が成立してこなくなるんではないでしょうか。基準額まで上がることはありません、低くても低いなりに選択されるんですよということを立証しようとすれば、何割の患者負担であればそういう効果が生じるのかということを言わなければだめじゃないですか。もしかすると、これが一〇〇%患者負担でなければだめだなんということになったら大変な話ですから。局長、これは逃げてもだめだと思いますよ。
  85. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 逃げるということではございませんで、現段階における検討の段階というのは、先ほど申し上げましたように、これは意見書としてちょうだいをいたしました。その前の段階において、私ども、確かにたたき台という形で一つの考え方を提示いたしました。そのたたき台を一つの素材にして御議論をいただきました結果、こういう意見をいただきました。  その意見の中で、いわば多数意見でこれを是とする中で、適正な定率の患者負担があればということで御意見をいただいておるということでございまして、適正な患者負担をどうするかというのは、逃げておるわけではなくて、これからの検討の中で、まさに患者なり医療機関のコスト意識を働かせるという要請と、余りにそれが過大になってはいかぬという二つの要請、これは意見書にもそのように書いてございますので、そこを探ったところでその具体案を作成していかなければならない、そういう段階であろうというふうに思います。
  86. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 一方では、給付基準額がしかれればそこまで上がってしまうのではないか、それが卸にしても医療機関にしても一番利益が高くなるところであるという指摘があるわけですよ。そうではないんだ、給付基準額の下であっても選択が生じるんだ、その場合適正な負担があればという条件つきでこういう議論をしているわけです。その条件とは一体何なんだという話をしなければ、議論さえできないということになりませんか。  もう時間がありませんからあれですけれども、適正な定率とは何を意味するか、これは近々出てくると。これは審議会にかけるか厚生省が独自にシミュレーションなりをして、基準額まで上がるのでない、例えば二割とか三割とかの負担であれば必ず安価な選択が生じるんだという根拠をきちんと出してくれるというふうに思っていていいわけでしょう。それをまず一つ確認をしたい。  ついでに全部聞いてしまいます。  もう一つは、そういう選択が生じるのであれば、給付基準額というのはなくたっていいじゃないですかということを本当は申し上げたかったわけです。給付基準額がなくたって、いろいろな値段があったっていいんだ。同じ薬理作用、同じ薬効であれば安価な方に選択が生ずるんだということを自信を持っておっしゃるのならば、給付基準額というのは必要ないじゃないですか。その給付基準額があることによって、例えば鴇田先生指摘しているような、新薬開発のインセンティブが大変阻害をされるのだということは、これはもっともな話だと思いますよ。薬剤定価は新薬開発意欲にダメージを与えるということを鴇田先生指摘をされているわけです。  画期的な新薬を大変なリスクをしょって開発しても、頭を押さえられてそこまでしか請求できないとなったら、だれがこんなものを開発しますか。そういう新薬開発にダメージを与えるわけですよ、給付基準額をしくということは。しかし、給付基準額はなくても適正な価格にシフトしていく。同じものなら安い方を使う、高くてもいいものを使うかもしれません、こういう選択が生じるというのであれば給付基準額は要らないではないかという指摘に対して、どうやって反論しますか。
  87. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 二点ないし三点のお尋ねがございました。  まず、具体的な負担の水準についての考え方が追って出てくるのかというお話でございます。  私ども、負担水準だけではなくて、薬価制度改革全体についての成案を得るべく、今、鋭意検討をしております。したがって、そういう意見書を踏まえてそういう考え方が出てくれば、当然、今度は厚生省としてそれを問う段階ということになりますので、その中ではそういった負担水準といったようなものについても考え方が出てまいります。  それから、二点目でございます。今のようなことでいわば選択が生ずるのであれば基準は要らないではないか、ある種の競争は自由競争でいいではないかというお話です。  実は、これは検討をされた中にもそういう御提案、自由価格のもとでの競争ということでいいではないかという御提案もありました。  これに対しましては、自由価格のもとで定率患者負担による、いわゆる患者のコスト意識ということだけでの競争ということであれば、確かに相互の関係において相対的に安い方の薬の選択というようなことは行われるであろう、それはやはりそうなるであろうと思います。  しかし、現在、保険給付によりましてすべての薬剤を一応皆カバーをするような体制になってございますから、そうしますというと、保険給付によりまして患者さんは少ない負担で、ある意味からいうと高価な薬剤が購入できるということになりますと、相対関係では安い方の選択という仕組みは働くにしても、全体的な薬価の平均的な価格水準というのはやはり上がってくるということが一つの大きい可能性としてあり得ると思います。  そうしますというと、薬剤の価格の設定につきまして、根っこから、保険給付から薬剤を外してしまうとか、あるいは先生先ほど来おっしゃっている、まだ定性的な議論しかできないというところでおしかりをいただいていますけれども、非常に過度な患者負担をするということなら別ですけれども、そうでないとすれば、すべての薬剤につきまして、上限を設定せずに自由価格を認めた場合には薬価が高騰してくるということは避けられない。  そうしますというと、我が国で一応保険の体制の中で治療に必要な薬剤については患者のフリーアクセスと申しますか、そういったものを薬剤についても保障しているという体制をとり、一方において、最終的には国民の負担になるような、いわば公的負担で営まれる制度であるということになりますというと、そこには保険として、おつき合いをするというのは変ですけれども、保険としてその給付をする上限という意味での給付基準額というものはやはり要るのであるというふうに考えておるところでございます。  ただし、これらにつきましても、さらに議論をした上で全体の姿を示さなければならないと思います。  それから三点目で、これは御質問ではなかったですけれども、画期的な新薬の開発が阻害をされるではないかという点でございますけれども、これについては意見書の中でも、そういった画期的な新薬については、先ほどの給付基準額等の扱いについて特別の扱いをするという中で、その阻害をしないようにするという配慮をすべきであるという御意見をいただいておりますし、私どものたたき台でも、その点はそのような配慮をしたたたき台を出していただいたことを申し添えさせていただきます。
  88. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 画期的な新薬のくだりのところだけ反論しますけれども、どういう新薬が給付基準額を外すかという基準も何もない、お役人の裁量だけというようなことはもうやめましょうというのが大きな流れじゃないですか。  私は、これからの日本の産業を支えるかなり重要なファクターにこの薬剤というものがなってもらわなきゃ困ると思っているのです。今は車だとか半導体だとかいろいろありますけれども、これが将来まで続くという保証は何もない。  それぞれ所管している業界というものをどうやって健全に発展させていくか。護送船団方式で守るということは、金融を見てもわかるとおり、結果的にだめだったわけですよ。そうではなくて、本当に競争の中で、対外的にも打ち勝てるような産業としてどうやって育てていくか、そういう視点がこの案には全く欠けているし、今いろいろ御答弁をいただきましたけれども、いつになく説得力がないという印象でございました。  大臣、ぜひひとつ抜本的に考え直していただきたいということを申し上げて、質問を終わります。
  89. 木村義雄

    木村委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十一分休憩      ————◇—————     午後一時三十二分開議
  90. 木村義雄

    木村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石毛えい子さん。
  91. 石毛えい子

    ○石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。  今国会、昨日の厚生大臣の所信表明ももちろんでございますけれども、お触れになられていらっしゃいましたように、年金制度をどのように設計するかということが大変大きなテーマでございます。  私は、本日、年金制度の改革といいましょうか改正をめぐってということではなくて、その前段の課題として大変重要な課題だと思っております厚生年金保険の国庫負担の一部繰り延べ問題、いわゆる隠れ借金という言い方がございますが、そのことについて質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、事実の確認でございますけれども、昭和六十三年、一九八八年に一兆四百九十億円の繰り延べ金の返済をいたしまして、その後、平成元年、一九八九年に一兆三千四百八十億円の繰り入れをしております。その後は、当分の期間繰り延べはございませんで、平成七年、九五年に四千百五十億円、翌年八千億円、七千二百億円、七千億円、この四年間の累計が二兆六千三百五十億円の繰り延べになっておりますが、この事実経過は改めて確認していただくこともないと思いますけれども、まず、それでよろしゅうございますか。     〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
  92. 宮島彰

    ○宮島政府委員 今先生指摘のことに相違はありません。
  93. 石毛えい子

    ○石毛委員 それで、繰り延べられているわけでございますから、厚生年金特別会計に——最初の方の八八年は返済ですし、八九年度につきましては後にちょっと問題にさせていただくつもりですけれども。繰り延べているということは、厚生年金特別会計に返済になっていないわけですから、この繰り延べ分は、考え方の問題として、年金保険の積立金に対して繰り入れていない、未積み立てになっている、こういう理解でよろしゅうございますか。
  94. 宮島彰

    ○宮島政府委員 繰り延べした額につきましては、当然積立金の中には入っておりません。しかし、繰り延べした額につきましては、法律でもって返済時にはその間の運用収入相当額を加えて戻すということになっていますので、結果的にはその間運用した形のものは確保できるというふうに我々は理解しております。
  95. 石毛えい子

    ○石毛委員 わかりました。要するに、ちょっと言葉が荒いですけれども、積立金を食いつぶすというような状況はもちろんなくて、保険料収入を積み立てるべきところを繰り延べ分は積み立てていない、ただし、特例法によって運用収入も加えて後々時期を見て返済する、こういう御説明をいただいたと思います。  そこで、次の質問に移りますが、昭和六十三年、八八年度と翌年の八九年度は、それぞれ一兆四百九十億円、一兆三千四百八十億円を補正予算を組んで繰り入れをしております。そこで、一九八九年の補正予算の繰り入れは、当時の委員会の質疑等を拝見させていただきますと、年金勘定に繰り入れずに、業務勘定として特別保健福祉事業資金として繰り入れた、そういう記載がされております。  そこでお尋ねしたいのですけれども、特例法ではこういうふうな規定になっております。政府は、後日、将来にわたる厚生年金事業の財政の安定が損なわれることのないよう、繰り延べ額と運用収入相当額を一般会計から当該勘定に繰り入れるものとするというふうに特例法の記載はなっております。ただし、私が見ました特例法は、これは平成八年度における特例法を見ておりますので、平成元年度、一九八九年度の法律を確認していないのですけれども、八年度の法律による限り、後日、厚生年金事業の財政の安定が損なわれることがないよう、一般会計から当該会計、これは厚生年金の特別会計のことを指していると思いますけれども、一九八九年度は年金勘定ではなく業務勘定を立てて入れてございますけれども、これは厳密に言いますと、法律に合っているのでしょうかどうでしょうか。もしかしたら、法令に違反しているというようなことはございませんか、その点を確認させてください。
  96. 宮島彰

    ○宮島政府委員 厚生年金の繰り延べ額の返済につきましては、今先生お話ございましたように、原則としましては、一般会計から厚生保険特別会計の年金勘定に繰り入れるというのが原則でございます。  ただ、今お話のございました平成二年に、特別保健福祉事業資金ということで一兆五千億円が厚生保険特別会計の業務勘定に繰り入れられております。  この特別保健福祉事業資金と申しますのは、老人保健制度の基盤の安定化のための措置等を講ずるという目的で厚生保険特別会計の業務勘定に特別の資金として繰り入れられまして、現在その運用益をもって特別保健事業が実施されておるところでございます。  そういう意味では、いわゆる年金勘定への繰り入れというものは行われておりませんので、したがいまして、いわゆる繰り延べ額が返済されたという形にはなっていないというふうに我々も認識しているところでございます。  なお、将来、この六十一年から平成元年までの繰り延べ額につきましては、その返済のときにこの特別保健福祉事業資金を業務勘定から年金勘定へ繰り入れて返済することもできるということが法律上規定されていまして、その場合は、先ほど原則の一般会計から年金勘定へ繰り入れたものとみなすという法律規定の整理になっているところでございます。
  97. 石毛えい子

    ○石毛委員 もう一度確認させていただきたいのですけれども平成二年度の特別保健福祉事業に活用するために一兆五千億円を業務勘定として繰り入れた、そして、その業務勘定として繰り入れた分は将来もう一回年金勘定に返済するということは法令上規定されていることでございますね。
  98. 宮島彰

    ○宮島政府委員 それは、厚生保険特別会計法の第十九条ノ四で、厚生保険事業の長期的安定を確保するため必要あるときは、特別事業の必要性を勘案しつつ業務勘定より資金の金額を限度として年金勘定へ繰り入れすることができるという規定がございます。それに基づいております。
  99. 石毛えい子

    ○石毛委員 その点は理解いたしました。  それでは、次の質問でございますけれども、今宮島次長がおっしゃってくださいましたので改めて確認するまでもないかと思いますけれども、当時の予算委員会でのやりとりで非常に強調されておりますのは、政府としては年金勘定への返還は終わっていないという見解を予算委員会で示しておりますけれども、現在それが引き続いているということは、まだ年金勘定への返還は終わっていなくて、宿題といいましょうか、課題はそのまま継続をしている、この認識に変化はないという理解でよろしいでしょうか。
  100. 宮島彰

    ○宮島政府委員 現在まで業務勘定から年金勘定へは繰り入れられておりませんので、したがいまして、いわゆる繰り延べの返済は完了していないという認識は変わりありません。
  101. 石毛えい子

    ○石毛委員 わかりました。それでは、「後日、将来」にわたってというこの条文に従って、後日というのがいつかはわかりませんけれども年金勘定に繰り入れるということでございますね。  そこで、もう少し踏み込んで確認の質問をさせていただきたいのですけれども平成元年、まだバブルが続いていたときで、財政状況はいい状況でしたから補正を組めて返済という手だてがとられたと思うんですが、このときに、本来でしたら年金勘定に入れる筋合いのものをどうして年金勘定ではなく業務勘定に入れたのか、そこの点を御説明いただきたいと思います。
  102. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 特別保健福祉事業になぜしたのかということでございますけれども平成二年度から老人保健拠出金の加入者按分率が一〇〇%になる予定になっておりまして、移行に伴いまして被用者保険の拠出金が非常に急増するということで、その負担増を緩和するということと、それから、老人保健制度の基盤事業、まだ当時非常に脆弱でございまして、それの財源基盤を緊急に確保する必要がある、こんなようなことで創設されたわけでございます。  具体的には、先ほど来御説明ありましたように、厚生保険特別会計法を改正いたしまして、保健福祉施設活動の経理を行っております業務勘定に当分の間厚生年金国庫負担の繰り延べ分の返済見合い財源を用いた資金を置きまして、その運用利益、利子を財源といたしまして保健制度の基盤安定化を図るための措置を講ずる、こういうふうな政策意図で導入されたわけでございます。
  103. 石毛えい子

    ○石毛委員 今老人保健福祉局長から、当分の間として業務勘定に入れたという御回答がございました。その当分の間というのは、その後もう十年たっているわけですけれども、どのように議論をされてきておりますでしょうかという点と、それからもう一点でございますけれども、業務勘定に入れられましたこの一兆五千億というのは資金ということでございまして、保健福祉事業に使われて、実際に使われたのは運用益ということだと思いますけれども、この運用益は一兆五千億円にプラスしてどれぐらいになっておりますのでしょうか。  今の局長の御答弁ですと、運用収入の部分も含めて返済するというふうに規定しているとお答えになられたというふうに私は伺ったんですけれども、当初のその一兆五千億円は、使われている運用収入の部分も含めますと今どれぐらいになっていますでしょうか。それともう一点、最初の当分の間というのはどんなふうに議論をされておりますでしょうか。この二点をお答えいただきたい。
  104. 宮島彰

    ○宮島政府委員 前半の方の運用収入の関係でございますけれども、これは、利息につきましては、返済した時期によって金利が変動いたしますので、いわゆる返済期にそれを確定して精算していく形になりますので、ちょっと現時点で確定数字を申し上げるのは難しいかというふうに思います。
  105. 石毛えい子

    ○石毛委員 最終的な確定は返済時ということになると思います。  それで、返済時についてはどういう議論がされておりますかということが、当分の間ということに対する私の質問ということになりますけれども平成元年以降十年間でおよそ運用収入がどれぐらいになっているかということは、当然ながら保健福祉事業にこれを充ててきているわけですから、その観点からいってもわかると思います、御専門でいらっしゃるわけですから。私は計算がすごく苦手なんですけれども、利率をおおよそ想定していただければ、大体幾らぐらいで、トータルは二兆円になっているとかなっていないとかというような、そのあたりの見通しは示していただいてよろしいのではないかと思います。
  106. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 申しわけございませんが、数字の合計はないんですが、経年でちょっと申し上げます。  平成二年度でございますが、七百五十億。それから、三年から八年度までずうっと八百五十億でございます。六年間八百五十億。それから、九年度からは若干落ちておりまして、これは利率が下がったということもございまして六百億。それから、十年度が六百二十億。それから十一年度は、これはこれからのあれでございますけれども、三百二十億。こんなオーダーでございます。
  107. 石毛えい子

    ○石毛委員 私もすぐ暗算できないんですけれども、七百五十億、それから、三年度から八年度まで八百五十億で、九、十が六百億円台といいますと、それだけで多分六千億から七千億ぐらいになっているとしますと、もう優に二兆円を超えていると思いますが、この二兆円は、いわゆる業務勘定にコンクリートされたまま、相変わらず年金勘定という観点からすれば隠れ借金として続いているということでございますよね。  それで、当分の間ということにつきましては、もう十年たっているわけですけれども、どんな議論がされておりますでしょうか。
  108. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 このお金でございますけれども、主といたしまして、財政力が弱い被用者保険の保険者を中心にいたしまして助成をいたしているわけでございます。はっきり申し上げまして、こういう財政力が弱い被用者保険につきましては、全体として拠出金もふえておりますし、それから普通の医療費もふえておりますので、非常に厳しい状況にあるわけでございます。  したがいまして、引き続きこの事業を推進することによりまして、老人保健制度の基盤の安定化というのは確保していく必要がある、こんなようなことで引き続き私どもとしては残してほしい、こういうふうなことでお願いをいたしているわけでございます。
  109. 石毛えい子

    ○石毛委員 今確認させていただきましたのは、依然として、要するに制度上繰り入れたはずになっております一兆五千億円は業務勘定の方にコンクリートされているわけですから、現在時点で一兆五千億円は二兆円を超えていて、それがこのまま運用収入を付加された形で累積していくということで確認をいたします。  次の質問に移りたいと思いますけれども、その後九六年度から、先ほどもちょっと触れましたけれども、四年間繰り延べがされておりまして、平成十一年度、九九年度予算についてはこれはなしになったということですが、四年間での累積が二兆六千三百五十億円でございます。トータル合わせていきますと、もう五兆円は優に超えているという金額になるわけでございますけれども、私は、この五兆円という金額は厚生年金財政にとって決して軽視できる金額ではないだろうというふうに思います。  伺うところによりますと、割と直近の平成十一年度の積立金の累積が百三十四兆ということでございますから、その中で五兆円、しかも今の近藤老人保健福祉局長の御答弁ですと、業務勘定の方にコンクリートされている部分は、今の時点ではいつ返すかというようなことを具体的に見通しているわけではないという御答弁だったと思いますので、これがそのまま続くと大変大きな金額になってくるという懸念を持ちますけれども、ちなみに約五兆円というこの金額は、厚生年金の保険料率にいたしまして何%になりますでしょうか。
  110. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 繰り延べの運用収入につきましては、先ほど次長が答弁いたしましたように、現時点で運用収入を確定する、これがなかなか難しいということでございますので、元本だけということを仮定いたしますと約四兆円でございます。  それで、平成十一年度の一年間の保険料率に換算した場合は、これは十一年度の標準報酬総額が百三十兆円でございますので、保険料率で三%、こういうことになるわけでございます。
  111. 石毛えい子

    ○石毛委員 もしかしたら、私がこれから申し上げることに対して筋合いが違いますという御答弁をいただくことになるかもしれませんけれども、現在のこうした経済状況から見ましても、それから社会保障制度の先行き見通しが大変不透明、不安定というような状況にかんがみまして、今御答弁いただきました三%を、もしこれを保険料率の引き下げに回すということになれば、これは積立金を食うことになるからそういうことはできないとか、いろいろ答弁はあると思いますけれども、緊急事態に対する緊急政策として三%を引き下げることの原資として充てることになって、その背景の説明をきちっと国民にされれば、これはこれで年金制度に対する国民の信頼を回復する一つの考え方としてあり得るかと存じますけれども、この点いかがでございましょうか。
  112. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 繰り延べ分を担保にしてといいますか、それをもとに保険料を下げられないかということでございますけれども、結論から言いますと、そういうことはできないということでございます。  といいますのも、年金の財政計画におきましては、繰り延べ分というのは利子をつけてちゃんと返ってくる、これを前提に保険料計画を立てておるわけでございます。したがって、保険料の引き下げをやるということは積立金を食うということにつながるわけでございまして、将来にツケを回す、こういうことになるわけでございますので、そういうことはできかねるということでございます。
  113. 石毛えい子

    ○石毛委員 御答弁についてはわかりました。ただし、これは政策判断をどこに求めるかということでございますから、論議を交わす必要性は依然として続いているところだというふうに思います。  そこで、次に、もう時間がありませんので最後の質問になるかと思いますけれども、この繰り延べ金というのは財政再計算には入っているんだと思いますけれども、まさかそれを除いて積立金の計算をしているわけではないと思いますから、入っているのだと思いますけれども、もしもの仮定でございます、今で累積五兆円を超えることだと思いますけれども、これがこのまま続いていくとしまして、もしもこの繰り延べ金が繰り入れられないとしますと、財政再計算の論拠は違ってまいります。  現在時点でも先ほど来の金額ですから、決して軽視していい金高ではないというふうに思います。最後に大臣に御答弁いただきたいのですけれども厚生大臣は大蔵省にいらっしゃった御経験から、そのあたりも思い返していただきまして、いつの時期までに返してもらうように大蔵省と厚生省との間でお話を進められるのか。  私見を申し述べさせていただきますと、今年度の年金制度がどうなるかということにかかわると思いますけれども、少なくとも制度をきちっと設計するその時点では、この積立金にまつわる繰り延べ金、いわゆる隠れ借金の問題は何らかの形できちっと解決して、制度の次のステップを踏み出すべきだというふうに私は考えておりますし、そのことを国民に対しても説明されなければ、私には説明責任を十分に果たされているというふうには到底思えませんので、大臣、いつまでにと期限を区切って大蔵省との間で尽力をしていただけるかということを御答弁お願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
  114. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 この繰り延べ分につきましては、今回の年金の財政計算の基礎には当然織り込んでいるのは今局長方が答弁されたとおりでございます。  この問題は、法律的に国家が、一般会計が厚生保険特別会計にいわば借金をしているわけでありまして、その利息を含めて返還するということが担保されておりますので、それがだめになるということはありません。したがって、当然年金計画の中へ算定をしてございます。  ただ、特別会計で年金を経理しておりますから、一般会計との間で、国の中同士であるからといっても、やはり節度は守った方がいいと思いますので、繰り入れを繰り延べしたのは財政状況その他緊急な状況のもとでとられてきていると思います、ことしは七千億の繰り入れは、当該年度発生分は繰り入れていただきましたけれども、なるべく早く財政事情が許せばこれを繰り入れていただくということは当然でございますが、そのことは年金の財政にとって致命的であるかどうかという問題は、これは国民皆さんに明らかにしないと、年金計算の中の国家内の貸借の話になりますので、そこは理解をしていただきたい。しかし、区分経理をしている以上、なるべく早く返還していただくのは当然でございますから、そういう努力はさせていただきたいと思っています。
  115. 石毛えい子

    ○石毛委員 医療保険の方では棚上げしたというような過去の経緯もあったかに聞いております。年金は積立金を膨大に持っておりますから、即そういうことが発生するということはないにせよ、私は、その五兆円が累積していけば、これは非常に大きな金額になっていくわけですから、九九年度は繰り延べをしなかったわけですから、当然こういう財政大盤振る舞いのときに一挙に返していただくのが筋だったのではないかということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  116. 鈴木俊一

    ○鈴木(俊)委員長代理 青山二三君。
  117. 青山二三

    ○青山(二)委員 公明党の青山二三でございます。  本日は、子育て支援という観点から、短時間ではございますけれども、大臣の柔軟かつ明快な御答弁をいただきたい、このように思っております。  一九八九年に一・五七ショックという言葉が危機的に宣伝されまして、少子化の問題が一般的に社会問題として認識されるようになりまして、以来十年がたっております。その間、合計特殊出生率は下降線を描き、平成九年にはついに一・三九という過去最低にまで落ち込んでおります。こうした出生率の低下を招いている原因の一つといたしまして、子育てにかかる重い経済的な負担が指摘をされております。  児童手当制度は、児童手当法の第一条にございますけれども、「児童を養育している者に児童手当を支給することにより、家庭における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会をになう児童の健全な育成及び資質の向上に資することを目的とする。」とされております。まさしく、子育てにかかる家庭の経済的負担の軽減に大きく貢献するものと理解をいたしております。この制度がこれまでに果たしてきた意義とその評価について伺いたいと思います。  そして、児童手当はこのように重要な制度であるにもかかわらず、日本の社会保障制度の中では昭和四十七年と比較的遅い創設になっておりますけれども、その理由を伺いたいと思います。
  118. 横田吉男

    ○横田政府委員 児童手当制度につきましては、早くは昭和二十年代に、社会保障制度審議会の社会保障制度確立のための覚書等におきましても、その設立の必要性等がうたわれていたわけでありますけれども、何分にも、当時におきまして大きな課題というのは、貧困対策でございますとか、医療保障あるいは雇用といったような問題がございまして、三十年代を通じて社会保障の大きな課題は国民皆保険、皆年金体制の確立ということで、これが優先されて、かなり努力もここに傾注されたというような事情がございます。  また、三十年代当時におきましては、若年人口のウエートが人口構成上も非常に高い時期でもありますし、人口増加なり、あるいはむしろ人口の過剰といったようなことが問題になっている時期でもございました。また、子供の養育というのは全く親の責任であるというのが社会的な一般的意識でございまして、こういった中で児童手当創設についての具体的な動きは見られなかったということでございます。  我が国が昭和三十六年に国民年金、皆保険体制を達成して以降、この問題についても徐々に具体化いたしまして、その後、中央児童福祉審議会の中にもいろいろな部会を設けて、報告等も出されております。具体的には、四十年代に入りましてから児童手当懇談会が設けられまして制度創設の動きが始まりまして、四十六年に成立したということで、他の社会保障制度と比べますと、先生指摘のとおり、おくれているところでございます。  これは、今申し上げましたようないろいろな事情があってこうした時期に創設されたということでございますけれども、この制度の意義につきましては、私ども、児童を育てている家庭の経済的な基盤を強化するとか、社会連帯によりまして児童の健全育成を図るといった意味において大きな意味を持っているのではないかというふうに考えております。
  119. 青山二三

    ○青山(二)委員 御答弁ございましたように、いろいろな事情で遅くなったということでございます。  小さく産んで大きく育てるという言葉もございますけれども、最初は、第三子以降で義務教育終了前の子供だけを対象にして月額三千円を支給するという制度としてスタートしたわけでございます。しかし、本来の児童手当制度から考えますと、やはり第一子からやるべきであったと思います。その後何度か改正を経まして、支給対象児童は第二子、第一子と拡大されました。しかしながら、その対象年齢は、義務教育終了前から六歳になってしまいました。そして、現在は第一子から支給されてはおりますけれども、三歳未満までと、この対象が非常に絞られてきております。このように、支給期間は延びるどころか短縮してしまっているわけでございます。  また、さらに支給額を見てみますと、当初は三千円でございましたけれども、その後ほんの少しずつふえてきてはおりますけれども、ほとんど変わってはおりません。平成四年から第一子、第二子が月額五千円、第三子以降が一万円となって、現在に至っております。  こうした現状を見てみますと、先ほど申し上げました児童手当法第一条の崇高な理念とは大きくかけ離れていると言えるのではないでしょうか。全体的に見ますと、この児童手当制度は縮小してきた、このように考えられますけれども、大臣はいかがでございましょうか。
  120. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今委員の方から、四十七年に創設以来の経緯について御説明がありました。  児童手当制度は、縮小したといえば、年齢的には三歳未満にいたしましたから、確かに形式的には縮小いたしておりますが、一子、二子まで含めて三子以降と単価において差等を設けるとかいうようにいたしましたが、これは三歳児未満に限ったのは、やはり人間形成の上で三歳児未満の幼児における問題というのは非常に重要な時期でございますから、そこに一点重点を絞ったということがございます。  また、そういう幼児、小さいお子さんたちのお母さんたちの就業機会も少ないし、収入も少ないというようなこともありまして、そこで重点化をしてきたということでございまして、形の上では確かに義務教育終了前から就学前になり、そして三歳になってきたという点だけ踏まえれば縮小したような感じがいたしますが、重点化してきたということであろうかと思います。  なお、申し上げるまでもございませんが、少子化対策としてこの児童手当の果たす役割はある程度期待できるわけでありますが、少子化対策としてはそのほかいろいろの対策が必要でございまして、税制上の問題もございますし、またいろいろの保育所の軽減措置とか、職場における女性の職域を確保する、両立できるような体制を築くとか、いろいろの総合施策によって少子化対策というのは行われるべきだと考えておりまして、政府としては、今の制度を、これだけで少子化対策というように考えておりませんけれども、重点化してきたものだというように理解をしております。
  121. 青山二三

    ○青山(二)委員 この児童手当の支給年齢を下げてきたということは、私はどうしても納得がいかないわけでございます。細長いおもちを四角にした、体積は同じ。ですから、巧妙なやり方で福祉を切り捨てた、こんなふうにとれるわけでございます。  それでは、児童の定義というのをちょっと教えてください。
  122. 横田吉男

    ○横田政府委員 児童については、児童福祉法上十八歳未満の児童を言うというふうにされております。
  123. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは、幼児の定義を教えてください。
  124. 横田吉男

    ○横田政府委員 幼児について法律上定義しているという規定はないわけでありますけれども、ある程度幅を持って、乳幼児から就学前ぐらいまで含めて使われるのが一般的ではないかというふうに考えております。
  125. 青山二三

    ○青山(二)委員 ですから、児童手当というにはふさわしくない制度になっている。乳児手当とか、そんな名前にしなければいけないのではないかと私は思っております。  それで、諸外国の様子を見てみますと、フランスなどを初めといたしまして、スウェーデン、イギリスなど、社会保障の中で非常に大きな分野を占めているのがこの児童手当制度でございます。これらの国は支給対象児が十六歳未満ということで支給いたしておりまして、しかも、学生につきましては二十歳まで支給され、さらに、親の所得制限もありません。また、財源につきましても、スウェーデンやイギリスは全額国庫負担となっているなど、大変充実している制度となっているわけでございます。  いろいろな条件の違いはあるとは思いますけれども、こうした諸外国と比べて日本の児童手当制度をどのように大臣は評価されますか、率直なお考えを伺いたいと思います。
  126. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 ヨーロッパ諸国の児童手当制度状況を見ますと、支給対象につきましては、基本的には一子から、フランスは第二子からでございますが、そういうことになっております。支給額はおおむね一万円から二万円程度になっております。また、支給年齢は原則十六歳または十八歳までということで、学生の場合には延長があるといった状況でございまして、米国には制度はございませんが、ドイツは十八歳、それからフランス、イギリスは十六歳未満ということになっております。  これはどうしてそうなっているかということでございますが、私どもの認識では、児童手当と関連性の大きい賃金構造あるいは税の扶養控除との絡みがございます。  賃金の構造について申し上げますと、ヨーロッパの賃金というのはおおむね能力給体系でございますので、三十歳ごろになりますとこれが横ばいに推移するという特色がございます。しかし一方、我が国の賃金はおおむね生活給、年功給与体系で終身雇用を前提としておりましたので、五十歳前後まで賃金が上がっていく、そういう状況を反映していると思うんです。つまり、ヨーロッパはフラットでいきますから、それに対して何らかの対応措置が必要だということであったんだろうと思います。  それから、扶養控除につきましては、これは税制上の措置でありますが、スウェーデンとかイギリスでは扶養控除はございません。ドイツでは扶養控除と児童手当の選択制がございます。アメリカは、先ほど申しましたように児童手当制度はございませんが、税制上の扶養控除はあります。我が国では児童手当と扶養控除が併存をしている状況でございまして、このように国際的に見まして、それぞれの国でそれぞれの事情によって制度を異にいたしておりますので、単純に、一概にこれを比較することはいかがかなというように考えております。  我が国の児童手当制度につきましても、こういった税制上の措置とかあるいは現金支給の問題とかさまざまな点を含めていろいろ改正も行われてきたのは先ほど申し上げたとおりですが、さまざまな議論がございまして現在の状況になっているということであります。
  127. 青山二三

    ○青山(二)委員 いろいろ各国で事情が異なっているということはわかりますけれども、私が子育てをしている若い夫婦を見て感じますことは、やはり子育ての支援の中軸は何といっても経済的な支援ではなかろうかと思うことでございます。若い夫婦が決して高い給料で働いているとは言いがたいわけでございまして、この児童手当制度の充実は緊急を要している、このように思うわけでございます。  現在、我が国では税制面では扶養控除がありますけれども、現在の扶養控除を見てみますと、高額所得者には確かに有利でございます。ですから、満遍なく子育ての支援がなされているとは言えないと思います。子供の健全な育成に対しまして国としては大きな責任を果たす必要がありまして、やはりこの児童手当制度は抜本的な見直しが必要であると思っております。  子育て支援を実効あるものにしていくためには、税制面の措置ではなくて、児童手当の支給要件である所得制限の撤廃、そして支給額の大幅な改善が不可欠であると思っております。  そこで、児童手当の支給対象を十六歳まで、児童手当というんですから十六歳まで拡大して、所得制限をなくすとともに、支給額を第一子、第二子は一万円、そして第三子以降を二万円とするなど大幅に充実をすべきと考えておりますけれども、大臣、このあたりはいかがでしょうか。
  128. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 税の扶養控除の問題につきましては、これは所得税を納められるだけの資力のある方々に確かに恩恵があるという点がございまして、それは税を納めない方々の児童に対する手当てが欠けている点はございますが、税の扶養控除は、人的控除制度を設けて課税ベースの統一を図って、均衡化を図って、その上で課税するという税本来の制度の趣旨から来ております、これは言うまでもなく。そういうことでありますから、私は、税体系を基本的に変えないと、この控除制度はやめて児童手当の方へ振りかえるべきであるという議論にはにわかに賛成しがたい点がございます。  一方、貴党の申し上げておられる点は、十六歳、所得制限なし、一万円、三子以下二万円ということで御提案をいただいていることは承知いたしておりますが、これには相当な金額を、所要額を要します。しかし一方、貴党の提案によりますと、扶養控除制度はやめてしまえばいい、その浮いた分で充てればいいというわけですが、なお一兆四、五千億の追加支出が貴党の案によっても予想されるわけでございまして、今の状況の中でそうした問題を解決するのはなかなか困難である。  つまり、一つは税体系の話であるということと、一つはそういうことによって振りかえたとしてもかなりな不足分が生ずる、一兆四、五千億の追加が必要であるということがございますので、私どもとしてはにわかに賛成しがたい、こういう事情でございます。
  129. 青山二三

    ○青山(二)委員 大臣の御答弁では一兆四、五千億円が追加になるからにわかには賛成しがたいということでございますけれども、本当に子育て支援ということは、子供は国の宝でございます、二十一世紀の人材を育てるのに一兆四、五千億円が本当に大臣にとって莫大な金額と思える額でしょうか。私は、これぐらいの投資はすべきである、二十一世紀のためにこれぐらいの投資ならしてしかるべきだと思っておりますけれども、もう一度御答弁いただけますか。
  130. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 国の歳出の中で資源配分をどうプライオリティーをつけるかという問題に最終的には帰着いたしますけれども、私どもは、少子化対策としてやはり子育て支援サービスの方もかなり重視していきたい、総合的に考えておりますので、児童手当の現金支給だけが子育ての対策の有力な柱であるというようには考えておりません。全体としてこれを総合化してやろうということでございまして、これは総理の諮問機関である有識者会議の提案を見てもそうでございますし、いろいろ各種の審議会等の御意見等も、児童手当の有用性は認めつつも、それらを包含したよりいろいろ多角的な角度から少子化対策を講ずべきであるという意見が非常に強いように私ども思います。  そういう点で、一兆四千億、それぐらいのことは決断すべきだということでございますが、いろいろ資源配分の点では優先順位はあろうかと存じますし、子育ての対応としてそれだけで柱が立てられるものでもないということを再度申し上げまして、答弁にさせていただきます。
  131. 青山二三

    ○青山(二)委員 児童手当だけではないということをおっしゃいましたので、それではもう一つ重要な子育て支援、経済的な負担を軽減するために私がずっと申し上げております乳幼児の医療費の無料化についてお話をして、そして御答弁をいただきたいと思います。  これまでに私は何度も、大臣がかわりますたびにこの乳幼児の医療費の無料化を訴えてまいりました。そして、一昨年の健康保険法の改正を審議した際にも、衆参両院におきまして、「就学前児童の一部負担について、少子化対策観点及び地方公共団体における単独事業の実情も踏まえ、その軽減を検討すること。」という附帯決議がなされております。それから二年が経過しようとしておりますけれども、この附帯決議にあるように何らかの検討は行われているのでしょうか、お伺いをしたいと思います。
  132. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 原則的なことを最初に申し上げて恐縮ですが、医療費につきましては、医療を受ける者と受けない者との均衡という点がやはり必要でございまして、受診者に一定の御負担をいただくというのが医療保険制度の基本でございます。これは言うまでもないことでございます。  一方、国としては、難病の子供とか未熟児とか障害児といった手厚い援護が必要な児童の疾病につきましては、これは医療費の公費負担を実施いたしておるところでございます。  したがって、就学前児童の医療費一般について、附帯決議の問題は確かに私ども承知いたしておりますが、そしてまた、地方公共団体で単独事業でかなりの市町村が負担をしながら軽減策を講じていることも承知はいたしておりますが、就学前児童の医療費一般につきまして直ちにそのような特別の対策を講ずべきかどうかについては、ただいまのところは新たな措置を講ずることは考えておりません。  ただ、この問題は中期的にはやはり検討すべき課題だと思いますし、総理の有識者会議等におきましても少子化対策一つとしてこの医療制度が取り上げられておるということも承知しておりますから、今後検討はさせていただくつもりでございます。
  133. 青山二三

    ○青山(二)委員 検討させていただくという御答弁をいただきましたけれども、それでは、大臣はもう十分御承知のことと思いますけれども平成六年に沖縄県の制度がスタートいたしまして、すべての都道府県でこの制度が実施されております。あれから五年が経過したわけでございます。ですから、あとは一刻も早く国の制度として創設してほしい、そういう大きな声が全国から上がっているわけでございます。  と申しますのも、各自治体の実施状況を見ておりますと、対象年齢や所得制限、支給方法などに大きな差がございまして、同じ子供を育てるのに自治体によって大きな違いがあるということを国民はどうしても納得できないからでございます。また、昨年の児童手当の所得制限の強化によりまして、この制度を乳幼児医療費無料化の所得制限に準用している自治体がありまして、国の制度がないために母子家庭が経済的に本当に苦しめられております。  大臣は、さきの委員会で、この制度に関しまして中期的な検討課題、そして今は検討する、このように御答弁をいただきましたけれども、早く国としても自治体を支援してこの乳幼児の医療費の無料化を進めるべきである。検討する検討するということで何年もたつのではなくて、一刻も早く、一日も早く進めていただきたい、こういう切なる思いでございますけれども、もう一度御答弁いただきたいと思います。
  134. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 地方公共団体におきまして自主的にいろいろやっておりますが、それ自体は地方自治体の御判断でやっていただくことでございまして、また財政上の措置もそれぞれなされていると存じます。  しかし、国民の側から見ますと、隣の市町村とこことが違うとか、隣の県とうちの県は違うというようなことは、医療給付の公平性からいいますと、多少問題なしとしないと私も思います。そんな点を含めて、国と地方の役割の中でまた考えるべき側面があろうかとも思いますが、そういったことを総合的にひとつ検討もしてみたい、こう思います。
  135. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは、ちょっとお聞きしたいのでございますけれども、この三歳児未満の医療費を無料化するといたしますとどれくらいの費用がかかりますか。
  136. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 これは、ゼロ歳から二歳までの医療費等を推定いたしまして三歳未満児の医療費を推計いたしますと、国庫負担額で約四百億円くらいかなというように推定されます。今のは国庫負担額で、自己負担額ではございません。国庫負担額が四百億くらい。  ちょっと正確に申しますと、この三歳未満児の医療費は、ゼロ歳から四歳までの医療費等が、これは平成七年度予算ベースで出されておりまして、五千六百億円くらい要します。給付費としては四千四百億円ということでございます。一方、ゼロ歳から二歳までの医療費等についてでございますが、仮にゼロ歳から二歳児の医療費をゼロ歳から四歳の今申しました平成七年度の医療費の六〇%といたしまして計算すれば、平成七年度予算ベースの医療費で三千四百億円になります。給付費は二千六百億円ということになります。三歳児未満の医療費を無料化した場合の財政への影響額というのは、結局三千四百億円と二千六百億円の差額ということになりまして、これは自己負担額になりまして八百億円。そして、国庫負担額としてはその半分の四百億円、こういうことで四百億円ということを申し上げたわけでございます。
  137. 青山二三

    ○青山(二)委員 ですから、国で持ち出しが四百億円ということですよね。では、金融機関にどれくらい入れましたか。何十兆ですよ。それの何分の一になりますでしょうか。先ほど計算が難しいとおっしゃった議員さんもいらっしゃいましたが、本当にびっくりするほど、これは何百分の一ですね。ですから、これだけの、たったと言うと申しわけありませんけれども、これだけのお金をどうして出し渋るのか。かわいい子供を育てるために、若いお母さんが四苦八苦して一生懸命頑張っている。ましてや母子家庭は、所得制限でこの制度が打ち切られまして大変苦しんでいる。ですから、何とかこれは国でやるべきだ、私はこのように思っております。  大臣も私のこの話を聞きまして、いずれやらなければならないなとお思いになったと思いますので、せめて今見直していただきたいことがございます。  それは、今、市町村はこの制度を行うに当たって償還方式ということで、現物給付をいたしておりません。しているところは交付額を減額されるというペナルティーをつけられているからでございます。そういうことで、なかなか現物給付には変えられないというところで大変困っているわけでございます。  ですから、この制度を国で実現していただきますと、本当に地方も助かる、お母さん方も助かる、そういうことでございますので、地方自治体への、現物支給方式に対しまして交付額を減額することだけでもやめていただきたい、このように思いますが、いかがでございましょうか。
  138. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 地方の単独事業でやっております点につきましては、これは先ほど申しましたように、地方公共団体が独自に実施しているものでございまして、まちまちになっておるのは御指摘のとおりです。  それで、地方単独事業によりまして一部負担金の割合が、患者負担が法定割合よりも軽減されている場合には、一般的に法的割合どおりの場合と比較いたしまして医療費が増嵩する、これはそういうことになります。  したがって、このような市町村に対しまして国庫負担金の調整措置を講じなかったならば、国庫負担の配分という観点からは、法定割合どおり一部負担を徴収している市町村との間に不公平が生ずることになると存じます。  このために、地方単独事業を行っている市町村における医療費の波及的増加部分がございますが、これにつきまして国庫負担金の対象外としているところでございまして、当該措置を廃止することは今のところ困難であると申し上げざるを得ません。そんなことであります。
  139. 青山二三

    ○青山(二)委員 そういうことならば、早く国でこの医療費の無料化の制度を実現していただきたい、このように要望を申し上げておきます。  それでは次に、生まれたばかりの赤ちゃんのへその緒と胎盤に含まれます臍帯血移植の公的バンクについてお伺いをしたいと思います。  一昨年、私も本委員会で質問をいたしておりますが、日本臍帯血バンクボランティアの会とともに我が党が取り組んでまいりました臍帯血移植に対する医療保険の適用が昨年の四月に実現し、関係者は大変喜んでおります。  本年度の予算案の中でも、臍帯血移植推進のための体制整備として初めて約四億円の予算が計上されるなど、公的バンクの設立の作業が進んでおりますが、さらに十分な予算の確保が必要でございます。  現在、臍帯血移植が有効な主な病気の年間患者数は、子供が一千七百五十人に対しまして、成人は一万三百人に上っておりますが、二万人から臍帯血を採取できれば九五%の患者さんたちに移植が可能になると言われております。厚生省の臍帯血移植検討委員会が昨年七月に発表いたしました中間まとめでは、臍帯血二万件を五年間で収集するとしております。  また、こうした中、昨年の十月、東京大学医科学研究所の附属病院が国内で初めて成人患者への臍帯血移植治療に成功したという明るいニュースが飛び込んでまいりました。この成人への移植治療の成功で、適応患者が約三倍になるなど飛躍的に拡大し、臍帯血移植の需要の増加が予想され、利点の多い治療法として普及が期待をされております。  このように臍帯血の収集は急がれておりますので、これを五年といわずに三年間で急いで集めるべきである、こんなふうに考えておりますけれども、いかがでしょうか。
  140. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 臍帯血移植につきましては、昨年七月に臍帯血移植検討会において取りまとめられました中間まとめに基づきまして、現在事業を推進しているところでございます。  そこでお尋ねの、二万個程度を五年間でという中間まとめの結論でございますが、これは二万個の保存をすれば希望する方の九割以上に提供できるという考え方に基づくものでございまして、これをどうやって集めるかということでございます。  特に、この検討会におきましては、主として現場を預かる産婦人科のお医者さんのサイドから、安全かつ質のいい臍帯血を集めるということになると、現在の能力からして五年かかるという意見が出たわけでございます。私どもとしては、できるだけ早く達成したいと考えておりますが、この安全性、それから質の確保ということを考えますと、当面五年ということを目標にやっていく必要があるというふうに考えております。  いずれにいたしましても、今後のいろいろ学問的、技術的な進歩の状況など踏まえまして、再検討するということはあり得るかと思います。
  141. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは、再検討をよろしくお願いいたします。  そして、臍帯血移植に希望を託して闘う人たちのためには、公的臍帯血バンクを一日も早く設置して、全国的なネットワークを構築することが急がれております。この公的臍帯血バンクが正常に機能するためには、バンクの利用料として十分な保険点数をつけなければなりません。これは当然のことと考えておりますけれども、公的臍帯血バンクの医療保険の適用を来年四月からぜひとも実施していただきたい、このようにお願いをするわけでございますが、いかがでございましょうか。
  142. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 臍帯血移植につきましての保険適用、診療報酬の点についてでございますが、臍帯血を用いました治療そのものにつきましては、平成十年の四月から診療報酬改定におきまして保険適用をすることにいたしたところでございます。  それにあわせまして、先ほどお話のございますように、厚生省におきましては、平成十一年度予算で、その体制整備という意味で臍帯血バンクに対する補助等、所要の予算計上をした、こういうことで進めてまいったわけであります。  さらにその上で、今お話のございました臍帯血の採取あるいは保存といったような費用についてどのように対応していくんだという問題でございますけれども、これにつきましては、移植の基準でありますとか移植体制の運営方法とあわせまして、今、臍帯血移植検討会先ほどお挙げをいただきました検討会でさらに検討していただいておりますので、昨年四月から診療報酬改定で適用しましたことに加えてさらにどんな対策が必要なのかどうか、ここらのところは今の検討の結果を待って検討してまいりたいというふうに思います。  いずれにしても、臍帯血移植そのものは引き続き推進をするという方向での取り組みは必要なことだというふうに考えております。
  143. 青山二三

    ○青山(二)委員 臍帯血移植検討委員会で今検討しているという御答弁でございましたけれども、聞くところによりますと、その臍帯血移植検討会では平成十二年四月の改定で必ずつけると保健医療局長答弁しているということでございますが、この点いかがでしょうか。
  144. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 先ほど申し上げましたように、平成十年四月、つまり昨年の四月から臍帯血を用いました治療そのものについては診療報酬の対象にいたしました。対象にいたしまして、残るのは御指摘の臍帯血の採取だとか保存。治療行為でいえば、そのとき使います臍帯血の保存にかかっているコスト、あるいはその採取にかかっているコスト、これを今度は治療行為のときにどういうふうに扱うか。もう一段先の議論でございますが、それについては、臍帯血検討委員会中間報告はまとまりましたけれども、費用については現在も検討中と伺っておりますので、その結果を待ちましたところでどのようにつくるか。やはり保険の立場からしますと、そういった臍帯血そのものの採取とか保存の費用までをいわゆる材料費的にこれに乗せるのがいいのかどうか、これはまた別途の検討が要ると思いますので、そこらのところは今後の検討ということで、まだ結論は出しておるわけではございません。
  145. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは、時間が参りましたのでこれで終わらせていただきますけれども、ただいまいろいろなことを御要望申し上げましたけれども、どうか前向きに検討していただけますように再度お願いをいたしまして、質問を終わらせていただきます。大変にありがとうございました。
  146. 鈴木俊一

    ○鈴木(俊)委員長代理 次に、児玉健次君。
  147. 児玉健次

    ○児玉委員 日本共産党の児玉健次です。  最初に、インフルエンザについて二、三お聞きします。  今インフルエンザが大変な猛威を振るっている中で、全国の各地において入院のベッドが足りない、何とかしなければ、こういう声が盛り上がっています。医療法の施行規則第十条では、病室には定員を超えて患者を収容しないこと、それらのことが規定されていますが、同条ただし書きで「臨時応急のため収容するときはこの限りでない。」こういうふうになっています。  北海道では強い要望が出されまして、この二月五日、施行規則第十条ただし書きの適用と医療保険上の取り扱いの特例について、各保健所、そして北海道医師会に事務連絡を出しております。厚生省、御存じだと思います。これは臨時応急の措置として当然のことだと私は考えるわけですが、ただ、北海道だけでなく、全国的にもこのような対応を緊急にすべきではないか、このように考えます。大臣のお考えを伺います。
  148. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 医療法におきます患者の収容定員の関係でございますが、これは病室以外の場所に患者を収容する等のことがあれば患者の療養環境の悪化を招くために原則として認めていない。しかし、今御指摘のように、医療法の施行規則によりまして、臨時応急のために収容するときはこの限りでないということで、北海道の例に言及されました。私どもとしても、定数を超えて患者を入院させた場合には直ちに減額を行うというようなことは考えておりません。
  149. 児玉健次

    ○児玉委員 考えていないことはよくわかるのですけれども全国にやはり緊急にこの趣旨を徹底するためにも、厚生省として積極的な対応をしていただきたい、こう思うのですが、いかがでしょう。
  150. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今月の上旬にかけてインフルエンザが非常にはやっておりますから、委員の御指摘の趣旨はよくわかりますので、連絡を図って、そのような緩和措置をインフルエンザの入院について特別に適用するということをお伝えするようにいたします。
  151. 児玉健次

    ○児玉委員 予防接種法の改正以降、インフルエンザのワクチンの製造が激減している。一九九三年、平成五年から現在までのワクチンの製造量、それが何人分に相当するのか、それぞれ示していただきたいと思います。
  152. 中西明典

    ○中西政府委員 平成五年度、これはまだ予防接種が義務接種の時代でございますが、四百七十四万人分、六年度が三十万人分、七年度が七十一万人分、八年度が六十万人分、九年度が七十九万人分、本年度でございますが、最近の増加状況等を勘案して、昨年度の約二倍の約百五十三万人分を製造したところでございます。
  153. 児玉健次

    ○児玉委員 ことし少々ふえているとしても、一九九三年に比べて激減をしている、そのことはもうはっきりしています。国として、当面のワクチンの確保に努力するとともに、必要量の予測を行う必要があるのだろう、こう思います。一九九四年の六月二十二日、本委員会が全会派一致で行った附帯決議の中に、「予診の充実を図るとともに、ワクチンの改良開発に努めること。」このように明記されています。この提起に対して厚生省がどのようにこたえているか、端的に答弁いただきたいと思います。
  154. 中西明典

    ○中西政府委員 インフルエンザワクチンの関連研究につきましては、厚生科学研究費補助金あるいは保健医療分野における基礎研究推進事業におきまして、ワクチン等による予防治療に関する研究、インフルエンザワクチンの効果に関する研究であるとか、あるいは開発、製造、品質管理に関する研究、あるいは製造株の開発、全臨床試験、抗原量測定に関する研究等々を、それぞれ専門の研究者に補助いたしまして研究を推進してきているところでございます。
  155. 児玉健次

    ○児玉委員 この点の努力は思い切って強めていただきたい。けさほどの質問でも、昨年の死亡者が八百十五人、そういうことでもありますから、厚生省の努力を強めていただくことを希望します。  さて、そこで、昨日の宮下厚生大臣の所信に触れて何点かお伺いしたいと思います。  この所信表明、真剣に聞かせていただきました。少子化についてどのようにするか、そのことが随分各所に出てまいります。私は、少子・高齢化と一言で言いますけれども、高齢化というのは人類の成熟、進歩のあらわれであって、これは誇るべきことだ、祝福すべきことだ、一方、少子化の方は、これは社会全体の力を結集して克服すべき課題だ、このように考えております。  きのう、大臣の所信表明の中で総合的な取り組みということが強調されておりまして、そのことに触れて質問したいと思います。  大臣は、昨日の表明の中で、少子化への対応を考える有識者会議の提言を踏まえて取り組みを強化する、こういうふうにもお述べになった。昨年十二月二十一日の有識者会議の提言に検討課題が挙げられておりまして、その中に、児童手当の引き上げ、支給期間の延長、所得制限額の引き上げが具体的に列挙されています。所得制限額の引き上げについては一定の改善がなされているように私は聞いております。この改善で第三子の給付率がどうなるのか、これはちょっとお聞きしておきたい。  ところで、肝心のと言っては問題がありますが、児童手当の額の引き上げと支給期間の延長の方は実施されない。なぜなのか。この部分は子供を育てる多数の親の強い願いだと思うんですが、その点お答えいただきたいと思います。
  156. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 特に児童手当について申し上げますならば、平成十一年度予算案におきまして、多子世帯に配慮して所得制限額の大幅な引き上げを行いました。その結果、今お尋ねの第三子以降の支給率は、五五%でございましたが、七五%に上昇する見込みでございます。  一方、もう一つの問題は、それ以外の単価の引き上げあるいは実施期間の延長等はどうなんだというお尋ねでございます。  これは、私ども、四十七年に児童手当ができましてから、いろいろの幾多の変遷を経て三歳未満の児童に特化をして、一子、二子、それから三子に差をつけて給付するという制度にしたような事柄、あるいは三歳未満というのは人間形成の基礎として非常に重要である、あるいは三歳未満のお子さんをお持ちの御家庭の収入は必ずしも高くないというような点に配慮して、そのような措置を継続させていただいております。  一方、各党でいろいろの提案がございますけれども、巨額の財源を要するというようなこともございます。  そしてまた同時に、子育て支援サービスというのは私は大変重要だと思うんです。これは総合化ということを申し上げておりますが、いろいろ女性の職場進出に伴って、男女共同参画型社会の中でいかに子供を産み育てていく環境をつくるかとか、雇用面とも関係がございますし、さらには経済的な問題では、税法上の扶養控除あるいは保育料等にいたしましても、第三子以降はもう九割も保育料をまけて軽減するというようなことども、いろいろ調べてみますと、かなり詳細なきめ細かな対応は一応しております。  そこで、そういった子育て支援サービスの充実を優先すべきであるということと、巨額な財政負担を伴いますので、党の一部で十六歳までいかがかというような御提案もあることは承知しておりますけれども、私どもは、これはなかなか容易に結論の出せない問題で、慎重な検討が必要だ、こういうふうに思っております。
  157. 児玉健次

    ○児玉委員 最近、政府のさまざまな文書、厚生省を含めて、子どもの権利条約からの引用がふえているということを私は歓迎するものです。  この子どもの権利条約の第一条、「児童とは、十八歳未満のすべての者をいう。」。グローバルスタンダードとよく話が出てきたりもいたしますが、文字どおりこれは国際的な常識ですね。そこに向けて確実に近づけていくことが今求められている。その点で厚生省の努力を私は強く求めて、次の児童扶養手当の問題に移りたいと思います。  子供を養育している最中に夫と離別をするというのは、人生における一つの重要な困難だと思います。その困難にぶつかったとき、母子を社会が温かく支えていく。宮下厚生大臣に伺いたいんだけれども、児童扶養手当の役割についてどのように考えていらっしゃるでしょうか。
  158. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 児童扶養手当は、御承知のように母子家庭等が対象でございまして、そういう恵まれない家庭環境の家庭の生活の安定あるいは自立を促進するということに寄与するために手当を支給してございます。そして、児童の福祉の増進を図ることを目的とした制度であることは、委員の御承知のとおりでございます。  本制度は、経済的に厳しい状況に置かれている母子世帯の自立と児童の健全育成に大きな役割を果たしておると考えておりまして、平成十一年度予算におきましても、特に条件改定等はいたしておりませんが、月四万二千円くらいの支給額を行っておるということで、かなり大きな役割を果たしているのではないかというふうに評価しております。
  159. 児玉健次

    ○児玉委員 昨年の所得制限の引き下げ、これによって対象除外になった方の数、本人、扶養義務者がそれぞれ何人か、この点を明らかにしていただきたいのと、これに伴う国の予算減は幾らか、お答えいただきたいと思います。
  160. 横田吉男

    ○横田政府委員 十年度におきまして、所得制限の強化を一部支給及び扶養義務者分について行っておりますが、これによりまして支給停止となりました受給者については、予算上の推計でございますけれども、受給者本人の所得制限によりまして約三万九千人、扶養義務者の所得制限によりまして約三万五千人、計約七万四千人と推計いたしております。  これによりまして、もしこの所得制限の強化を行わないこととした場合の予算と比べますと、国の予算が約八十一億円ほど減少しているという状況でございます。
  161. 児玉健次

    ○児玉委員 約八十一億円の国費の削減で七万四千人の母子が今大変な困難に直面している。私は、この問題について、まずとりあえず改善すべき問題と、そしてこの後、文字どおり社会の総力を挙げて前進させていく課題と、多少そのことを区別させながらお聞きをしたいと思います。  厚生省は、昭和五十五年六月二十三日の児童家庭局通知で、児童扶養手当申請の際提出される所得状況届を現況届に改めた、これですが、この通知は現在も生きていますか。
  162. 横田吉男

    ○横田政府委員 現在も生きております。
  163. 児玉健次

    ○児玉委員 私ははっきり言っておきたいんですが、先ほどの児童手当について言えば、申請者の所得が明らかにされれば手続的にはそれで可となります。もちろん、申請者が主として生計を支えている者、そのように期待されておりますが。児童扶養手当でも、今の答弁で明らかなように、昭和五十五年、一九八〇年までは所得状況が明らかにされれば支給されていた。ところが、それが現況届に改められている。私は、ここのところは今真剣に再検討しなければならない、こう考えています。  まず問題になるのは何か。それは、申請者本人が親や兄弟等と同居している場合です。生計を同じくしているか、生計が別個であるか、このことが問題になる。その点でいろいろ調べてみましたら、厚生省の通知が出されたのが昭和五十五年六月二十三日です。昭和六十二年八月に発刊された「児童扶養手当法の解釈と運用」、中央法規出版、著者は厚生省児童家庭局長坂本龍彦氏。今述べた問題にまさに触れて、同居している場合、生計を同じくすると見るかどうか、そのことについてこの書物の四十四ページに次のように書いてある。「生計同一とは、両者の生活に一体性があることをいう。具体的には、収入及び支出すなわち消費生計上の家計が同一であることが、一応の基準となる。」私はこれはよくわかるんですね。このとおりですね。     〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
  164. 横田吉男

    ○横田政府委員 母子家庭等の状態にある者が、実家の方に戻りまして、その母親の両親等と一緒に暮らしている場合につきましての児童扶養手当の支給につきましては、民法上の扶養義務者である母親の父親なり母親、生計を支える者の所得によりまして支給要件を決定しているというようなことにしておりまして、その場合の生計が同一かどうかという判断を見るために現況届を出していただきまして判定をしているということでございまして、基本的には、この要件を見るための一つ基準としているものでございます。
  165. 児玉健次

    ○児玉委員 もう一遍言いましょう。生計同一とは、「具体的には、収入及び支出すなわち消費生計上の家計が同一であること」、これが基準ですね。どうですか。そうであるかないか、お答えいただきたいと思います。
  166. 横田吉男

    ○横田政府委員 基本的には、これを基準にして判定をしているということであります。
  167. 児玉健次

    ○児玉委員 よくわかりました。  そうなりますと、たとえ何らかの事情で離婚した母子が親の実家に戻ったとしても、実体的に、この坂本さんがおっしゃっているように、消費生計上の家計が同一であるかまたは別個であるか、そこが明らかになれば支給の要件が満たされる。もちろん、その要件を私はいいとは言いません。さっき言ったように、本来これは児童手当と同じようにすべきだと私は強く考えているけれども、一応そのことはこの際さておきましょう。  同居していても消費生計上の家計は別個である、例えば光熱水費について言えば分割負担をしている、それから食事は完全に別であって、教育費等について、同居している例えば親だとか兄弟からは一切受けていない、そのことが明らかになれば、これに照らして、生計を異にするというふうに判断できるんじゃないでしょうか。
  168. 横田吉男

    ○横田政府委員 母子が実家に戻りまして同じ家の中に生活し、かつ住民票も一緒になっているというような場合が多いかと思いますけれども、そういった場合には、通例生計が同一であろうということで大部分の場合がこれに該当することで、所得制限要件が判定されることになると考えておりますが、仮に、そうした場合において生計が別であるということが客観的に証明されたような場合には、事実認定の問題として、外れる場合もあるかと考えております。
  169. 児玉健次

    ○児玉委員 今横田局長がおっしゃったように、生計が別個であるということが明らかにされる。その際、例えば外形的な何らかの要素、玄関が別であるかどうかだとか、水道だとか台所が二つあるかどうかとか——玄関が二つあって、台所が二つあって、トイレが二つあるというのは、これは最近よく二世帯住宅といって新聞の広告に出てきますね、三階建てで。私もああいう堂々たる家に住みたいと思うけれども、一軒当たり、建築費は大体数千万円ですね。そういうところに住んでいる方々でこの児童扶養手当の申請者というのは、もちろんあるでしょうが、比較的考えにくいですね。建設省にも聞きました。玄関が別個で、台所が別で、メーターも全部別、どのくらい建てられたかと聞いたら、つかみようがありませんと。しかし、それは最近幾らかふえ出してきているけれども、既往にさかのぼれば、新しい、特定の需要者の需要にこたえる建築だということですよ。  だから、外形的な何かに依拠するのでなく、それこそこの坂本龍彦氏が述べているように、収入及び支出すなわち消費生計上の家計が同一であるかどうか、別個であればそれは別個と判断する、その上でなおかつ疑義があれば、先ほどの昭和五十五年の通達にありますように、これははっきりそう書いているけれども、本人に照会をして確かめればいいのではないか、そのように考えますが、いかがですか。
  170. 横田吉男

    ○横田政府委員 実家の親と同居しているような場合につきましては、まずは、その住民票でございますとかそういったものをとりまして、そこで第一次的に同一生計であるかどうかという判定をすることになるかと思います。そういった場合におきましていろいろな疑義があるような場合におきましては、必要に応じ追加の資料をお願いして、客観的に同一でないという状況が明らかになれば、その方については適用しないということになるかと思います。
  171. 児玉健次

    ○児玉委員 大臣にもこの点は伺いたいんですが、この際、社会通念というのが大いに問題になりますね。そして、その際、坂本龍彦氏が述べているように、消費生計上の家計が別個であるということが明らかになればそれで足りるんじゃないんでしょうか。なおかつ疑いがあれば、本人に照会して疑いを晴らせばいいんだから。そのように進めていくことで、この問題についてはかなり双方の誤解が解けていくと思うんです。大臣、いかがでしょうか。
  172. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今お伺いしておりまして、消費生活が別個であるということは、いろいろな意味で世帯の独立性というようなものが前提になっていると存じますので、基本的にはそういう方向でいいのかなという感じを持ちました。
  173. 児玉健次

    ○児玉委員 まさにそういうことなんで、こういった問題で、厳しい生活の中で懸命の努力をされている母子を悲しませるようなことがあってはならない。もちろん、これは窓口が都道府県ですから、都道府県でそれぞれさまざまな判断をなさっていると思うけれども、今の議論が徹底していけば、そのあたりの道というのはおのずと開けていくと思います。  それで、私はこのことに関連して言えば、まさに所得制限を大幅に引き下げてしまった。特に部分支給のところが大幅に引き下げられてしまった。なぜそんなに激烈に下げられてしまったのか。  このことで、去年の四月七日、私どもの西山登紀子参議院議員が小泉厚生大臣と質疑で若干の討論をいたしました。そのとき、この児童扶養手当の所得制限見直しは、財政構造改革法で福祉全般を、以下は前大臣の言葉ですけれども、全部見直しさせなければならないというところから出てきた措置であります、率直な言葉だと思うのですね。財革法によって福祉のいろいろな分野、医療の分野を全部抑制する、全部見直す、そのことで出てきたことだと。小泉大臣は、その答弁の別のところでは、そういった要素がなければこんなことは考えない、こうも述べていらっしゃる。  そうであれば、その財革法、先日の特別委員会に私も参加して質疑に加わりました。そのとき、私が言ったのではなくて政府の側から、財革法は限りなく廃止に近い停止でございます、こういうふうに言われている。限りなく廃止に近い停止。そうしておいて、この児童扶養手当のところの抑制措置だけはそのままにしておく、これではだれも納得しませんね。  やはりとりあえず所得制限を旧に復するところから改善に一歩踏み出していただきたい。そのことが、言ってみれば少子化に向けて、厚生白書のキャッチフレーズは私はなかなかよく考えたものだと思いますね、「子どもを産み育てることに「夢」を持てる社会を」。そこに近づいていくときに、今の改善措置は、それがすべてではない、総合的な多くの取り組みの中の大切な一つとして意味を持つと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
  174. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 財政構造改革法の視点を踏まえながら、小泉前大臣がそのような措置をとられたという背景なり気持ちはわかります。しかし、財政構造改革法を凍結したからといって、すべての施策を全部もとへ戻すこともいかがか。  要するに、いろいろな面で合理化をしたり、それなりの理由のある改革はさらに継続すべきものだという前提に立っておりますので、この児童扶養手当ばかりではございませんが、ほかでいろいろ合理化したものが継続している点は多々ございますので、我々の認識としては、やはりこの児童扶養手当もその一つであるという基本的な認識に立って、今回は昨年の所得制限のまま予算計上をさせていただいております。
  175. 児玉健次

    ○児玉委員 今の点ですが、これも特別委員会議論したことですが、結局、既に発足をしている制度については、発足したその状態を維持する、これは去年八月の閣議了解ですね。そうやっておいて、一方では、例えば公共事業——私たちは福祉密着型の公共事業に切りかえるべきだと強く主張しています。そのことで、公共事業全体の財政の規模を半分にしていくことができるだろう、多くの財源を生み出せると。  ところが、そっちの方向ではなく、従来型の公共事業についていえば、財革法で一時相当な削り込みがされていたのに、そこのところは野方図に一切お構いなし。ことしの予算についていえば、一〇%以上プラスになっていますよ。そっちの方については、さあ、どうぞ御自由にと。  しかし、国民の暮らしや今国民全体が合意して努力しなきゃいけない少子化をどうやって乗り越えていくか。もちろん、結婚しろ、子供を産めなんて、そんなやり方をすべきではないと思う。社会全体が、若い男女が文字どおり自然に結婚して、安心して子供を産み育てるような、そういう社会の支えをどう進めていくか。そちらの方についてこそ——昨年の八月の閣議了解というのはしょせん閣議了解なんですから、やはりこの際、厚生省としては、児童扶養手当の抑制措置についてとりあえず旧に復するというところから一歩を踏み出すことが総合的な少子対策一つではないか、重ねて大臣のお考えを聞きたいと思います。
  176. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 財政構造改革の扱いをめぐって予算措置においても大きな変化があるのは、委員の御指摘のとおりでございまして、これは景気対策としての視点が非常に強く働いておりますので、財政拡大という点で公共投資に着目したものであると存じます。  一方、社会保障の分野におきましても、これは景気対策的な配慮を全然していないかといえば、社会保障本来の目的のほかにそういうことも加味いたしまして、三次補正その他ではエンゼルプランの前倒し等をかなり大胆に行っております。  そういう点で、例えば介護の前提になる特別養護老人ホームとか老健施設その他はかなり前倒しにやっておりますし、また、少子化にかかわる保育所の多様性あるいはこの待機組の解消等のための予算措置等も補正等でかなり充実してやっております。そういう景気対策としての政策上のいろいろの視点から行っているのは、福祉の面も例外ではございません。福祉というのは、これから経済的にかなり重要な位置を占める、雇用面でも、また施設の需要面でも相当なウエートを占めるという認識は私ども持っております。  なお、視点がそれぞれございますから、そのことのために、個々の施策についていろいろ評価はあろうかと存じます。委員のおっしゃる点も全くわからないではございませんが、私どもとしては、一時構造改革をやったのは、母子家庭が増加しているし、また、もらっていない家庭とのバランスその他も考えてのことでございましょうし、そこに財政構造改革というおもしがかかってきて調整をされたという誘因は否定できないにしても、それじゃ今のあるべき姿が全く間違っておるかというと、そうは考えないというのが率直なところでございます。
  177. 児玉健次

    ○児玉委員 児玉の言うことが全くわからないわけでもないというのは、ちょっと私はまだ距離があるような気がしますね。それで、この議論は、この後また何回もする機会があると思います。  私は、少子化を社会全体の力で乗り越えていくというとき、やはり理念が必要だと思うのです。その点で、何年か前、スウェーデンに、かつて合計特殊出生率が相当下がっていて、上向いたという点で行ってまいりまして、そのとき、当時のカールソン首相のアドバイザーをなさっていたアグネッタ・タムさん、この方が私が行った前後に日本においでになって、こうおっしゃっているんです、自分の意思で子を産む社会で出生率が下がることは、人々が未来に希望が持てないことのあらわれです。よく理解できます。自分の意思で子を産む社会で出生率が下がることは、人々が未来に希望が持てないことのあらわれだ。そういう人たちに未来に希望を持たせる、まさに総合的な少子対策を進めていくために私たちも努力をしたいということを述べて、終わります。
  178. 木村義雄

    木村委員長 桝屋敬悟君。
  179. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 委員皆さん、大変お疲れと思いますが、公明党・改革クラブの桝屋敬悟でございます。久々に厚生委員会に帰ってまいりまして、引き続き質疑をさせていただきたいと思います。  大臣所信に対する質疑でありますので、私は、介護保険の問題に限りまして議論をさせていただきたいと思います。  大臣所信では、平成十二年四月からの円滑、確実な実施に向けて全力を挙げたい、こういう決意を申されておられます。その点は、全く私はその決意を持っていただきたいと思っておりましたし、実は私は今地方行政を主にやっておりまして、自治大臣と議論したときには若干違う答弁がありまして、また時間があればその辺の御紹介をしたり、予算委員会議論したいと思っておるわけであります。  そもそも私ども公明党は、この介護保険制度につきましては、法案には反対いたしました。入り口部分で反対であるということを申し上げた立場でありますが、現在、現場で、三千三百の市町村で着々と準備を進めておられる実情を見まして、法案には反対いたしましたけれども、大変な悩ましい声も聞かせていただいているわけでありまして、これは看過できないいろいろな問題があるということでございまして、大臣が来年の円滑、確実な実施に向けて全力を挙げよう、こうおっしゃっているわけでありますから、何点か確認をさせていただきたいと思います。  最初に、認定漏れの問題であります。  私は、最近、厚生省の幹部職員の方の講演をある場所で聞かせていただきました。その方を責めるつもりは全くありません。誤解のないように聞いていただきたいのですが、その方が大変興味ある発言をされておられました。介護保険が今準備されているけれども全国の市町村の皆さん、介護保険が大事なのではありません、もっと大事なのは介護保険の周辺部分です、こういうことをおっしゃっていました。  確かにその発言は、私も感じておりましたので大事な発言だなと思ったのですが、そういう声は介護保険の法案の審議をしているときにぜひ言ってもらいたかったなと思うわけでありますけれども、今になってそういう発言が出るというのは、それは現場で準備が進まないと見えない部分もあるのでしょう。  問題は、現在、ホームヘルプサービスやデイサービス等在宅サービスを現に受けておられる方々で、要介護認定をすると自立なり要支援になるということで介護保険のサービスから外れるのではないか、対象にならないのじゃないか、あるいは施設入所の方で、特別養護老人ホームに入っておられる方で、要介護認定をしますと自立というふうになるケースが、よもやないだろうと思っておりましたけれども、やはりあるのでありまして、そういう現場の悩ましい声を聞いております。  最初の話に戻るわけでありますが、介護保険の本体、いわゆる対象者に対するサービスの仕掛けも大事だけれども、これから漏れる方々対策は、実は今の市町村の現場において大きな課題になっているということであります。  私は、いろいろなモデル事業もおやりになっているようでありますが、そうした認定漏れ、現にサービスを受けておられる方で認定漏れになる方がどのぐらいいらっしゃるというふうに厚生省把握しておられるのか、最初にその辺の状況を聞きたいと思います。簡単で結構です。
  180. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 悉皆調査でつかんでいるわけではございませんけれども、十年度の要介護認定等の試行事業におきまして、現に在宅でサービスを受けられている方で自立と判定された方は一〇・一%でございます。それから、現に施設に入られている方で自立または要支援、こういう判定をされた方は七・四%でございます。  いずれにいたしましても、介護認定基準そのものはまだこれから直すということでございますけれども、試行で認定されたものはそういうことでございます。
  181. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ありがとうございます。そんな数字を私も聞いております。  今の御説明では、在宅サービスを現に受けておられる方で一割ぐらいの方が自立になってしまう、それから施設に入っておられる方でも、要支援も入れると七パーぐらいいらっしゃるということでありまして、県によっては、地域によっては、これが一七パーという数字があったり、我々もずっと現場を回っておりましていろいろ悩ましい声を聞いているわけであります。  こうした実態にどう対応するのかということでありまして、この点では厚生省もお考えになって、さっきの厚生省の幹部のお話ではありませんが、今や予防や生きがい対策ということが極めて大事だよ、こういう御説明をされておられたわけでありまして、私は、そのとおりだろう、現場はもうそういうことになっているだろうと。認定漏れになった方は、予防の観点やあるいは生きがい対策として何らかの仕掛けをしないと、現にデイサービスに来られているおばあちゃんに、おばあちゃん、来年の四月からもう来ぬでいいよというふうに首長さんとしてはなかなか言えないわけでありまして、代替のものを用意するとかいろいろなことが必要なわけであります。  それはやはり生きがい対策ということが勢い言われるわけでありまして、そういうことで、厚生省平成十年度から高齢者在宅生活支援事業なるものを、新しいメニュー補助事業のようでありますが、組み立てられましてやっておられる。ことし平成十一年度が百億という数字を聞いておりますが、私は、これは横出し、上積み、上乗せの部分あたりもこの事業で対応する部分があるかもしれませんが、まさに生きがい対策というようなことでは、あるいはサービスメニューから外れる、例えば配食のようなサービスを現場はやめるわけにはいかぬ、あるいは拡充しなきゃいかぬということがあるわけでありまして、介護保険とは違う外側の部分をしっかり拡充しなければいかぬのだろう、これは放置できないということだろうと思います。そういう意味では、百億というのは余りにも少ない。私は、単位が一けた違う、一千億のオーダーで必要なんじゃないか、これが現場の実態のように実感として感じております。  ただ、これは私が感じているわけでありまして、こうした事業をせっかく組み立てられているのであれば、今まさに僕が申し上げているようなことは現場がやっと気がつき始めた状況なんです。したがって、今から来年四月の施行に向けて、どうか現場の声をしっかり聞いていただいて、現場のニーズも聞いていただいて、制度発足時に円滑な移行ができるようなお取り組みをいただきたいと思うのでありますが、どうでしょうか、大臣。
  182. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 そうした健康予防事業等は一般論としては極めて重要なことでございまして、私ども、これから力を入れていきたいと思っております。  今、百億の支援事業のお話がございましたが、介護保険を来年の四月から私どもとしては確実に実施する予定でございますが、四月以降になりますと、具体的な問題として、今の介護保険以上のサービスが行われている、あるいは上積み、今横出しと言われましたが、そういう問題を含めていろいろ周辺の問題があろうかと存じております。  したがって、私も、百億では到底来年四月以降の対応としてはできないだろう、十一年度予算では百億を計上させていただいておりますが、さらにその充実はやはり基本的には考えていかなければいけないんだというように思っております。
  183. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 どうぞよろしくお願いします。  今現場は、去年の大型経済対策、三次補正ですね、三次補正の予算の執行——もちろん十年度の当初予算の執行、三次補正のあの大型の執行、それから、来年度どうするかと、ぐちゃぐちゃになってやっておりまして、恐らく厚生省からがんがん現場の県あるいは市町村に話がおりて、お金が来たからどんどんやれと言って大混乱になっていると思うのです。よく落ちついて来年以降のことを想定していただいて、本当に必要な事業は組み立てていただきたい、私はお願いをしておきたいと思います。  それで、もう一点だけ。さっき、特養ホーム入所者は七パーぐらいが自立、要支援というお話。これも、現に特別養護老人ホームに入っている、常時介護を必要とすると思われる人の中で認定してみると、七パーぐらいの方がどうも特養に入るのはいかがな人かなという感じなわけですね。これはそれなりに問題があるわけでありますけれども、しかし、必要だから入っておられる、こういう実態もあるわけです。  法案の審議のときに、私は、特養に入っている人は五年間は暫定措置で置いてもらえるんだろう、こういうふうに理解しておりました。今から準備が始まっている状況をよくよく聞きますと、五年間は確かに置いてもらえるけれども、置いていただける五年間の介護報酬も、要介護の状態に応じて別の基準を設定しますよということになっているんですね。  これは、金の切れ目が縁の切れ目でありまして、私は五年間置いていただけると思っておりましたけれども、五年間確かに置いてあげるけれども、おじいちゃんの場合は要支援だから介護報酬は三十万じゃありません、十万です、これでやってくださいねといったら、施設はどうするかといったら、わかりました、二十万は施設が頑張りましょうという施設は絶対ありません。どうぞおじいちゃん、どこへなりとお帰りください、こういうことになるわけでありまして、ここは大変心配しております。  今から介護報酬を設定されるのでありましょうが、別途設定される介護報酬については、十分現場の声も聞いていただいて、当然要介護に応じて介護報酬は傾斜配分になりますが、できるだけ傾斜をなだらかにしていただくといいますか、たとえ要支援たりといえども最高の額に近づくような配慮が必要だろう。でないと、来年四月にえらいことになりますよということを申し上げたいんですが、いかがでしょうか。
  184. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 五年間は、特老なら特老におることが可能でございます。  要支援あるいは自立として判定された人、今七%という数字が出されましたけれども、この方々に対しては、介護保険上はやはり一定の介護サービスをする前提での給付になりますから、基本的には介護保険の給付費で算定するということになりますれば、そこで急激なサービスの低下等は実際問題なかなかできませんから、今御指摘のように、経営体が非常に苦慮されると思いますね。  そこで、どうしたらいいかという問題でございますが、今委員のおっしゃられているとおり、そこの配分その他であとう限りアローアンスがとれるものならとって軟着陸をしたいと思いますし、また、その点はもう少し調べなくてはいけませんが、先ほどの周辺事情ということでございますが、そういう中であるいは対応し切れるのかなどうかなということを含めて、これは介護保険の実施に当たって大変不安感を醸成している一つの原因でもございますから、開始までに十分検討していきたいと思っております。
  185. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 これを余り厳しい形でやりますと、どうしても現場市町村は、生身の人間がいらっしゃるわけでありますから、そこがひどいことになりますと、市町村はまた独自の給付や何かを考えなきゃいかぬ。そうすると、介護保険制度の根幹が結果的に崩れていくことになると私は思いますので、どうぞ、これはしばらくの間だろうと思います、スタート時の、制度移行期の問題としてとらえていただいて、善処をぜひお願いしたいと思います。  続いて、保険料の問題であります。  保険料は、いろいろマスコミでも言われております、ワークシートも既に発表されて、私もいろいろはじいてみました。そうしますと、最初、この委員会で法案を議論するときは二千五百円というのがひとり歩きしたものですから、二千五百円というのは全国民に徹底されちゃったんですね。計算してみると、どうも二千五百円じゃ済みそうもないというところがたくさん出てきております。これがまさに今の問題だろうと思います。多くは言いません。  それで、私はきょうここで確認をしておきたいのは、現場の市町村が一番困るのは何かといいますと、今回の介護保険というのは、市町村がその地域に応じたサービスを組み立てる。もちろんそれは住民の負担と合意によってサービスを組み立てるわけですね、そういう仕組みになっているわけであります。言葉をかえて言いますと、いいサービスを、たくさんのサービスを提供しようと思えば、当然保険料は高くなる。特に一号被保険者の保険料には影響を与えるわけでありまして、そこがこのサービスの私ども一番反対したところでもあるし、厚生省はそれをぜひ進めたかった、まさに今までの福祉を大きく転換するものであります。  問題は、来年の四月からスタートするときに、市町村長にとって、市町村長の責任において、市町村長の意思の中で、みずからが決めてサービスを組み立てて、これだけの保険料です、皆さんいいですか、うちは二千五百円ではない、三千円になりますが了解していただけますか、こうやるわけですね。そのときに一番困るのが療養型病床群であります。  ほかの在宅サービスや特養等については、もちろん市町村長が、保険者たる市町村が腹を決めてつくってきたものですからある程度説明できますけれども、療養型病床群については、私は、現に介護保険が始まるきょう今日に至っても市町村長が管理できない数字だろうと思うのです。市町村長が思わない、自分が腹を決めてつくらないでもできているのが療養型病床群であります。  しかも、療養型病床群というのは単価が高い。四十六、七万ぐらいしますか。それで、あいていることはないわけでありますから、療養型病床群がたくさんあるということは、一号被保険者の保険料には大きい影響を与えるわけです。現実にそういうところがあります。  そこは市町村長が腹を決めてつくってきた療養型病床群だったら問題はありませんけれども、そうではない。市町村長が腹を決めてつくってない療養型病床群があるということで、その市町村の保険料は例えば五千円になる。となると、隣の市町村と違うわけでありまして、そんなことを市町村長が住民に、市町村民に説明できるだろうかという問題があるのです。  私は、ほかは言いません、きょう議論したいのは療養型病床群であります。これについては何らかの財政調整をせざるを得ないんじゃないか。でないと、市町村長は制度スタート時点では住民に対して説明に大変苦慮されるだろう、難しいのではないかと私は思うのですが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  186. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 介護保険の中で、保険料の水準がどの程度になるかというのは、その市町村における後期高齢者の割合とか、それから、今先生のおっしゃられました療養型病床群あるいは特別養護老人ホームの水準の問題、それが非常に影響しております。  きょうは療養型病床群だけに限定してというお話でございますが、確かに、医療機関として整備されてきた病床群でございますから、これが直ちに介護にそのままでいいのかという疑問は私も個人的には持っております。つまり、医者の配置、その他看護婦の配置も療養型病床群といえども同じ基準であるならば、それの人件費その他が付加されて介護保険のサービスの方に転嫁されてまいりますと、高くなるのは当たり前でございます。  したがって、療養型病床群というものは、必要でないということは言えません、これは絶対必要だと私は存じますけれども、ただ、それを医療機関としての領域から介護の領域へ移すわけでございますから、そこはおのずから、将来的に直ちにできるかどうかわかりませんが、医師の配置の問題とか看護婦のあり方の問題とか、そういうものは一般の療養型病床と介護で使う病床群とはおのずから違っていいのかなというような感じはいたしております。  いずれにいたしましても、実態をよく調べて、医療機関そのもののコストが即介護保険に来るということであればかなり高いものになる可能性がございますから、それは発足までによく検討して、それぞれの保険者が抱える療養型病床群がどのような実態かというのはよく見きわめた方がいいのかなと思います。そこのところは大変難しい問題だと思います。  医療機関側にしてみれば、医療機関として存置する部分と療養型病床群に割愛する部分が二つ生ずるわけですから、医療機関のサービスと介護サービスとは違いますから、そこはおのずから差等があってもいいのではないかと思いますので、そこのところはよく検討させていただきます。
  187. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 大臣、今の大臣のお話は、僕の質問を、いまいち私の声が理解していただけてないのじゃないかと思うのです。  もう一回大臣にお話しします。  大臣、要するに、私が申し上げたかったことは、療養型病床群を介護保険に入れることについての是非を論じているわけではなくて、市町村長が、来年四月一日から介護保険を始めるについて一番悩んでいるのは療養型病床群の存在です。  要するに、市町村長の意思が届かないところで、市町村長の責任ではない、にもかかわらず、うちの地域は、うちの市は、結果的に療養型病床群が特別たくさんできている。今、現にできている。来年四月から一斉に三千三百の市町村がスタートラインに並んで用意ドンでスタートするわけです。来年四月一日にスタートするのですよ。スタートするけれども、私の市と隣の市とは療養型病床群の数字が違うのですよ。それが一号被保険者の保険料に大きく影響を与える。それを市町村長はどう説明するのか。自分の責任でやってきたことだったら説明はできますけれども、自分の意思ではない数字が横たわっていて、それが一号被保険者の保険料に影響を与える、そういうときにどうやって住民説明するのか。その苦慮があります。  したがって、私が申し上げるのは、後期高齢者と、所得に応じて財政調整をする、五%分で調整をする、これはそれでしていただいてもいいんだけれども、していただかなければいかぬけれども、療養型病床群の存在については、私は、スタート時において別途財政調整をする必要があるのじゃないか、そうしないと、市町村長は住民説明できない状況になっていますよということを申し上げているわけです。いかがでしょうか。
  188. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 事務的にちょっと御説明を申し上げたいと思います。  確かに、療養型病床群は介護保険施設になるわけでございますけれども、すべてが介護保険施設になるわけではないわけでございまして、その前の段階で、都道府県の段階で調整することができることになっているわけでございます。ただ、十分に調整ができるかどうかというのは、これはまだ、現場のあれでございますので、それについてどうするかということでございますけれども。  調整交付金につきまして、どれだけの能力があるかという問題があるわけでございますけれども、療養型病床群等の整備状況に基づきます介護サービスの給付水準の違いが先生の御指摘のとおりあるわけでございますので、特に過大な見込み量があるようなとき、これについては、私どもとして、全体の調整交付金の枠がございますので、この枠の中でどれだけできるかということについて検討をしているところでございます。
  189. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ありがとうございます。  大臣、これは調整し過ぎると、逆に問題になります。調整し過ぎると問題になるんですが、制度発足時においては、その市町村長の苦しみをぜひ大臣に御理解いただきたいということで申し上げたわけで、私は、何らかの調整方法を暫定的に考えるべきだろう、こんなふうに思っている次第であります。  さて、もう一つの問題に行きますと、大臣、今一番問題なのは認定基準です。現場で何と言われているかというと、認定基準はブラックホールと言われております。  要するに、調査員が現場に行って調査してきて、項目を全部埋めてコンピューターにかける、それで一次判定の結果が出るわけですね。ずっとこれはモデル事業をやっていただきました。去年よりことしの方が数段よくなった部分もあります。その部分もありますが、どうあっても、これではちょっと現場はやれぬというのが実情です。  何に一番悩んでいるかというと、ケアマネジャーとか専門家は横にいて、おばあちゃんのお世話をしている立場からすると、こっちのおばあちゃんとこっちのおばあちゃんの要介護度は明らかに同じだと思うけれども専門家から見ると同じように見えるんだけれども、コンピューターにかけたら要介護度が違って出てくる。  そうすると、その利用者はどう言うかというと、何で私はあのおばあちゃんと違うのかとなるわけですね。それを説明できれば大丈夫です。ケアマネジャーが説明ができるということが大事なんです。ところが、おばあちゃんとあのおばあちゃんが違うのはコンピューターに聞いてくれ、コンピューターにかけたら、あれが答えを出してきたんだから、そんなことを言われても困ると。この悩みがあります。  それでお願いしたいのは、私は、今の認定基準は相当完成間近なものだ、こういうふうにも御説明で伺っておりますけれども、恐らくことしの十月から認定が始まると思いますが、どうぞもう一回見直していただきたい、できる限り検証していただきたい、ぎりぎりまで頑張っていただきたい。これを失敗しますと、介護保険制度国民の信頼を一気に失う。一回失った信頼は少々では取り戻すことができない、このように思うわけでありまして、どうぞ認定基準をもう一回見直していただきたい、そして、検証作業をできる限り十分やっていただきたい、ぎりぎりまでやっていただきたい、これをお願いしたいんですが、いかがでしょうか。
  190. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 委員のおっしゃる点はごもっともでございまして、そういう方向で考えたいと思いますが、ちょっと技術的な問題等もございますから、局長から詳細を答弁させます。
  191. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 コンピューターでなぜやるかということでございますけれども……(桝屋委員「それはわかっているからいいよ」と呼ぶ)  ソフトの関係につきましては、今手直しをしているわけでございまして、検証も当然やりたいと思っております。幾つかの地域に頼みまして、検証作業を行いたいと思っております。  それから、確かにわかりづらい、私自身もよくわからないところもあるわけでございまして、これはよく説明できるように工夫をやりたい、こういうふうに考えているわけでございまして、家族の方、それから本人に本当にわかるような形で情報公開をしたい、こういうふうに思っております。
  192. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ありがとうございます。  局長が現場でおじいちゃん、おばあちゃんに説明されるわけじゃないからいいんですけれども、本当に現場の皆さんが苦慮されておられるということをひとつ御理解いただきたいと思います。  時間もありません、最後に一つだけお願いをして終わりたいと思います。  制度発足時に介護報酬の支払いが二、三カ月おくれますね、現在の診療報酬と同じように。小規模事業者等はその間の資金繰りに困るということがあります。私は、民間の事業者等も想定していただいて、場合によっては小さな町村の社会福祉協議会等も想定していただいて、ぜひ何らかの融資制度を御検討いただきたいと思いますが、最後にお伺いして終わりたいと思います。
  193. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 健全な事業者が健全な給付を行っていただくことは極めて重要でございまして、その前提として、金融資金等が不足するようなことがあれば、それは当然いろいろの点で配慮といいますか活用方をサポートしていくべきものだと思います。
  194. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 以上で終わります。どうぞよろしくお願いします。
  195. 木村義雄

    木村委員長 中川智子さん。
  196. 中川智子

    ○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  きょうは、まず最初に、低用量ピルのことで質問をさせていただきます。  最初に、私の友人で、広島で産婦人科のお医者さんをしております河野美代子さんという方が書かれた「さらば、悲しみの性」という本がございまして、非常にたくさんの人に読まれている本ですが、この中の一文をちょっと御紹介したいと思います。  彼女はもう長いこと産婦人科の医者をしている女医さんなんですけれども、一カ月に何十人も赤ちゃんの誕生に医師として立ち会っています。   でも出産には、いつまでも慣れるということはありません。赤ちゃんがはじめてそのからだを空気にさらして、「オギャアッ」と泣く瞬間、胸にこみあげてくるような感動を覚えます。そして、ほんとうに心から「おめでとう!」といいたくなるのです。   ところが、一方、同じ妊娠なのに、本人にとってはとてもつらい妊娠となり、祝福したくともできない人たちがいます。とくに十代の妊娠ということになると、産める人というのは、ごくごくわずかです。ほとんどの人が、残念ながら人工中絶を受けることになる。   よく週刊誌などに、十代の性が乱れていて、多くの少女たちが、ゴミでも捨てるかのように、いとも簡単に平気で人工中絶を受けていると書かれています。しかし私は、それは絶対にちがう、と断言できる。   ゴミでも捨てるように人工中絶を受ける少女なんて、どこにもいやしない。みんな心に深い傷をおって、涙を流しながら、手術を受けているのです。   私は、涙なしに子どもをおろした少女を見たことがありません。みんな、泣く。 このように書いています。  ところで、いきなりバイアグラで恐縮なんですけれども、バイアグラは、米国FDAの承認が一九九八年の三月でした。日本での申請は九八年の七月、そして認可は一九九九年、ことしの一月二十五日。申請後六カ月で認可がおりています。一方、低用量ピルは、FDAの承認は一九六〇年、日本での申請は一九九〇年七月。そして、九年以上結論を先送りにして、いまだに認可がおりていません。  私も二人子供を産みまして、一人流産をいたしました。流産自体は自然に、本当に自然流産だったんですが、本当に二日ぐらいは泣けて泣けて仕方がありませんでした。私の何が悪かったのか、この子が死んだのはどうしてなのかと、本当に自然の流産でも体を傷め、心に深い傷を負います。ましてや、望まない妊娠をして、そして中絶しなければいけないその女性は、一生心と体に傷を負って生きていかなければいけません。  今、日本の出産は、望んだ出産は三六%、予定外の出産が三六%、望まない出産は三%、中絶は二五%。年間三十三万八千人が一九九八年の時点において中絶しています。これは都道府県に届けられただけでこれだけの件数ですので、実態は少なくとも一・五倍から二倍以上に達すると見られています。そして、一九九七年に生まれた赤ちゃんが百十九万人ですから、妊娠した人の少なくとも三割近くが中絶しているという実態があります。  WHOもこの低用量ピルは安全と言いましたし、世界じゅうでバチカンと日本だけこの低用量ピルが認可されていない。この九年間中薬審というのはどういうふうにこれを議論して、九年間も結論が出ないということ。いろいろな議事の経過は結構ですので、端的に、なぜこんなに九年もかかっているかということをまず最初にお伺いしたい。大臣にお願いしたいです。
  197. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 この低用量のピルの解禁につきましては、国会議員の先生方の中でも、特に女性議員を中心として何度か私も陳情を承っておりますが、私も、これが長いことかかっておりますので、いろいろ事情の説明も受けました。  しかし、サボっているわけではございませんで、これはいろいろの角度から検討しておるということでございまして、一々の経過はまた必要であれば局長の方から答弁していただきますが、今現実に問題になっている論点として、何が問題になっているかといいますと、ピルの使用とがんのリスク等の安全性評価の問題、それからピルの使用がHIV等の性感染症の拡大に及ぼす影響等公衆衛生上の問題がかなり指摘されておるようでございます。それから、承認するとした場合の情報提供あり方の問題とか、ピルに含まれております成分と言われる環境ホルモンとの関係等々、幾多の問題がございまして、中央薬事審議会におきまして、昨年の十二月二日に、ピルの有効性と安全性についての中間取りまとめを公表するなどいたしております。  現段階で承認の可否とか時期は未定でございますけれども、私としては、今後とも精力的にこれは論点を整理していただいて、中央薬事審議会での結了を早期にお願いしたいなという感じを持っております。
  198. 中川智子

    ○中川(智)委員 前向きの御答弁ありがとうございました。  いろいろな理由に関しては、きっちりとそれに対する科学的な知見というのもこちらの方から出しているはずでございます。ですから、WHOの安全ということと、そして同時に、世界で日本だけ恥ずかしい状況になっているということを、ぜひとも御認識をきょうまた新たにしていただきたいと思うのです。  それでは、中薬審の常任部会が近々に開かれると伺っておりますが、そこで、厚生省からは認可の諮問をするのかどうか、それだけ伺いたいのですけれども局長、御答弁お願いいたします。
  199. 中西明典

    ○中西政府委員 厚生省の方からは、既にピルの承認の可否については諮問をいたしておりまして、中央薬事審議会で承認すべきか否かという点について今御議論いただいている最中でございます。  中央薬事審議会は三つのステップがございまして、調査会、特別部会、常任部会というプロセスがございまして、調査会、特別部会を終え、現在常任部会で審議をお願いしておる。だから、前進しているという事実については御認識いただきたいと思います。
  200. 中川智子

    ○中川(智)委員 ぜひともよろしくお願いいたします。本当に心と体に深い傷を負って、女性が選択できない、選択肢が少ないということに対しては、非常に男女差別がまだまだこの日本において、認可が認められることによって一歩前進する、そのように思いますので、大臣、よろしくお願いいたします。  それでは次に、二月四日の予算委員会で薬害クロイツフェルト・ヤコブ病について質問いたしましたが、お答えに対して納得できかねる点が多々ございましたので、すぱすぱすぱとあと十分ぐらいの間で質問させていただきますので、簡潔な御答弁をぜひともこれは大臣に、ビデオもお渡しして快く受け取っていただきましたので、大臣にお願いしたいと思います。  この病気は発症から一、二年で亡くなると言われております。御家族や患者本人、支えていらっしゃる方、そして滋賀県下の議会での早期解決を求める意見書が出されていますが、この薬害問題の早期解決そのものを大臣は希望されていますか。これに対して、やはり早期に解決しなければ、このクロイツフェルト・ヤコブ病の裁判ですとか、この問題に対して早期に解決していかなければいけないかどうかという、そのことの思いを一言でお願いいたします。
  201. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 まず冒頭に、中川委員から毎日放送の編集によります谷たか子さんのビデオは拝見をさせていただきました。私も大変痛ましい、本当に同情すべき谷さんの状況と御主人の状況に痛ましく思いました。  さて、この問題につきましては、CJD、ヤコブ病でございますが、賠償責任が問われて今裁判にはなっておりますが、私どもとしては、これはいろいろ裁判上こちらの主張をいたしておりますけれども、この谷さんの場合には、米国の症例報告があったのは一九八六年でございますか、それから安全警告が出されたのが一九八七年で、谷さんは二年後の一九八九年に移植をされておられます。そして、それが発症したのが一九九六年ということでございますから、七年後に発症しているということでございます。  たまたまその年には英国の狂牛病の調査がございまして、実態調査をしている中で極めて明らかになってきたわけで、一九九七年に回収命令等を発した、こういう経過をたどってきております。  それでは、国として法的責任があるのかどうかという点は、これは裁判所の判断にまたざるを得ませんが、今までの主張としては、世界で一例しか報告されていない等の当時の医学的、薬学的知見から、乾燥硬膜とCJDとの関連を予見することは不可能であった。したがって、当該事案にかかわるヒト乾燥硬膜移植手術までに厚生大臣がこの使用禁止等の措置を講じなかったことが国家賠償法上違法性を問われるということまで言えるのかどうかという主張を行って、現在まで来ております。  そんなことでございますので、裁判の成り行きを見ながらその決着に従っていきたい、こう考えておるところでございます。
  202. 中川智子

    ○中川(智)委員 早期にということでの質問だったんですけれども、大臣といたしましては、厚生省の最高責任者として安易に裁判を長引かせるべきではないと私は思いますし、大臣も今の実態をごらんになって、そのような思いというのはおありだということを酌み取りまして……。  今おっしゃいました中で、一九八七年にCDCが初症例を報告した後、一症例のみだからという御発言が今ありましたが、アメリカ、イギリス、カナダは自国の安全警告をその一症例だけで出しました。これに対しては、大臣、どのようにお考えでしょうか。日本は十年間ほっておきました、アメリカはすぐ出しました、それに対してどうお考えかということを、大臣、自分のお言葉でぜひともお願いします。
  203. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 一九九六年の五月に発症したことが確認をされておりますから、委員のおっしゃるように、米国の第一症例が、一九八六年に移植されまして、米国においても一九八七年にそのことが報告されておりますので、期間的な問題はかなり経過していることは承知します。  しかし、一症例があったからといって、当時の情報伝達その他、情報のキャッチが不十分であった。当時の状況はそういうことでございますので、現実にその症例を本省がキャッチする場面がなかったというようにお伺いしておりますので、これは当然、国際的な情報についてこれからも触覚を伸ばして、適時適切にキャッチして対応することが必要であろうかと思います。  この事案の場合は、どうもいろいろお伺いしてみても、症例報告を研究所の一人の方がキャッチはしておられたようです、調査しますと。しかし、それが本省への連絡もなかったというようなこともございまして、そのようなことになっておりまして、今後は、気持ちとしては、一症例であっても、それが重大な影響を及ぼすということが確認されれば、直ちに対応しなければならないケースだろうと思います。
  204. 中川智子

    ○中川(智)委員 私の質問は、今後のことは今後のことで、それは大事です、当たり前のことなんですが、このヤコブ病に関しましては、十年間放置したことによって、厚生省調査でわかっているだけで、乾燥硬膜を移植して六十人の方が発症している。そして、その実態を調べたらもっと何百人になると思います。それはやっていないだけですね。ですから、そこのところは、今後は今後、これはその責任に対して私は質問しているわけです。  今大臣おっしゃいましたが、二年前に厚生省が裁判所に出した準備書面の中に、世界で一例のみの報告がなされた時点ではヒト乾燥硬膜とクロイツフェルト・ヤコブ病との関係が予見可能であったとすることは適当でなくという準備書面がございます。そのような事実があったとしても、世界で一例のみの報告がなされた時点というのは八七年です。そのとき厚生省は、ヒト乾燥硬膜とクロイツフェルト・ヤコブ病との関係を全く知らなかった。それは、その情報がきっちりと獲得できないで知らなかったということを一貫しておっしゃるわけですが、そうすると、厚生省が今から二年前に調査してわかったとする時点では、その時点では一例だけではないわけなんですね。国内で九一年に新潟医大の症例報告がありました。九三年には滋賀医大の症例報告があり、九四年には虎の門病院もありました。ですから、矛盾すると思うのです。  ですから、一九九六年七月十日に厚生省がFDAに緊急ファクスをした内容を——これはアメリカから入手したのです、日本は、厚生省情報公開していませんから。FDAに緊急ファクスした内容を見ますと、一九八〇年代に硬膜移植手術を受けたクロイツフェルト・ヤコブ病患者とに関連があるということをうかがわせているように見えるというふうに厚生省は書いています。  そうすると、この準備書面というのは、一例のみで予見可能ではなかったと書かれている準備書面はいつの時点のことでしょうか。
  205. 中西明典

    ○中西政府委員 事実関係でございますので、私の方から申し上げたいと思います。  訴訟を提起されておられる方々、これは全体で七人の方々について訴訟が提起されておるわけでございますが、アメリカのCDCの一九八七年二月の硬膜移植とCJDとを関連づける最初の症例報告を受けて、FDAが一九八七年四月に安全警告を発しておるわけですが、訴訟を提起されておられる七人のうちの五人の方々は、安全警告が出る前に移植手術を受けておられるところでございます。  残りの二名の方々も、二番目の症例報告、これは八九年二月、ニュージーランド症例でございますが、その症例報告が出る以前に手術を受けておられるところでございます。  現在、保健医療局の方でCJD患者を調査の上把握しておりますが、全体九百八人のうち、硬膜移植歴のある患者数は六十人でございます。六十人につきまして、FDAの安全警告の前に移植手術を受けておられる方というのが五十二人でございます。  そういう事実関係がございます。
  206. 中川智子

    ○中川(智)委員 大臣、時間がございませんので、ぜひともこの問題は厚生委員会として参考人を呼ぶなり、きっちりした形で一回議論させていただきたい。でないと、本当に救われませんし、真実の解明、六、七年置きにこの薬害が繰り返されているという現状を厚生省はどう認識しているのか。裁判で闘っている、争っている。争うようなものではないと思うのです。  大臣、ぜひともこれは一度厚生委員会としてクロイツフェルト・ヤコブ病のことで参考人なり、しっかりとした議論をしたいと思います。それを大臣にお願いして、大臣の答弁を、これに対して……。委員長。——委員長
  207. 木村義雄

    木村委員長 理事会で協議をいたします。
  208. 中川智子

    ○中川(智)委員 理事会で協議するそうですので、理事の皆様、委員の皆様、ぜひとも応援をよろしくお願いします。  私は本当につらいのです。厚生省の方は、一人一人はいい人なんです。でも、組織となるとなぜ守りに入るのか。大臣、ぜひとも、これは厚生省を守るんじゃなくて、国民を守るお立場で、勇気ある一歩を踏み出していただきたいと思います。  時間がないので、つらいですが、委員長、ぜひともこれは時間をとってください、理事会で。
  209. 木村義雄

    木村委員長 理事会で協議をいたします。
  210. 中川智子

    ○中川(智)委員 大臣も後押しをよろしくお願いします。  では、つらいですが、終わりましたので、終わります。
  211. 木村義雄

    木村委員長 笹木竜三君。
  212. 笹木竜三

    ○笹木委員 笹木竜三です。  質問を始めます。  きょうは、年金のことについて、基本的な確認というか方向について、短い時間お尋ねしたいと思います。  今本当に景気の悪い話ばかりがあるわけですけれども、よく言われるわけですけれども、経済のいろいろな諸条件で、例えば対外収支あるいは外国に持つ日本の資産、そういった数字を見ても、どうしてこんなに景気の悪い話ばかりになるのか。  幾つかあると思いますけれども、一番大きいのは、やはりよく言われる国民の貯蓄残高千二百兆円。借金は十一年度末で国と地方で六百兆円になると言われますけれども、政府の資産は、金融資産が四百兆、不動産物件で五百兆、これで政府が持つ資産は九百兆。この資産の運用、マネーの運用というか、ここにおいて決定的におくれをとっているのじゃないか。特に、アメリカとかに比べるとそれが言えるのじゃないか。それで、こんなに経済的な諸条件ではいい数字が出ているにもかかわらずこういう状態になっているんじゃないかとよく言われます。  その中で、年金は金融資産の中に入るわけですけれども年金のことについて確認をしたいわけです。  よく最近は四〇一Kプランのことなんかで、アメリカの企業年金の運用収益が非常にいいという話が出ます。アメリカだけじゃなくて、イギリスでも年金の基金の収益率一三・三%。これは過去十年で見てですけれども、一三・三%という数字を上げている。インフレ率を控除しても、実質利回りでいっても八・八%の数字を上げている。アメリカは企業年金の場合、基金の収益率、これもやはり一三・六%、過去十年で上げている。  日本はどうか。例えば年福事業団の過去十年での収益四・六%。よく言われるように、資金運用部からの借り入れの利息は十年で平均して五・三%。よく言われる問題ですけれども、こういう実態にあります。資金運用部等の関係はこれから改善をされるわけです、自主運用でいこうという話になるわけですけれども。  過去十年のこの現状はどういうことでこうなったのか、大臣はどう総括されているのか。今後、自主運用で運用の収益率を上げていこうということだと思いますけれども、どう総括されているのか、お聞きしたいと思います。
  213. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 年金福祉事業団の市場運用事業でございますけれども、今御指摘ございましたように、非常に厳しい状況にございます。平成九年度末で見ますと、時価ベースで約八千億の累積欠損が生じておるわけでございます。  これはどういう理由でこういうことになっているのかということでございますけれども、これは、一度年金として徴収した保険料は資金運用部に預ける、それを年金福祉事業団が資金運用部から七年なり十年の固定金利で借りて運用する、こういう仕組みでございます。したがいまして、金利が低下する局面ではどうしても借りてきた金利と毎年毎年の運用成果との間に逆ざやが生じてくる、こういうことでございます。現在、高金利時代に借りてきたお金がまだ結構残っておるということで、その差がこういう累積欠損という形で生じておるわけでございます。  これは、年金福祉事業団の運用が非常にまずい、失敗したからこういう欠損が生じておる、そういうこともよく言われるわけですけれども、今申し上げましたように、借りてきて利払いをしながら運用する、こういう制度的な側面が非常に大きいわけでございまして、運用実績自体は、ほかの機関投資家、例えば厚生年金基金とかそういったところと比べて劣っているわけではございません。やはりこれは制度的な改善が必要だと思っております。  もちろん、今のこういう制度の中でも、できるだけこういった逆ざやを防止しよう、プラスに転化しようということで努力をしてきまして、運用規制を緩和するとか、運用機関の競争を促進するため投資顧問会社を導入するとか、いろいろあの手この手で頑張ってきているわけでございますけれども、やはり制度的な見直しが必要じゃないか、こういう考えを持っておるわけでございます。
  214. 笹木竜三

    ○笹木委員 もう時間が来るみたいなので、大臣にぜひお聞きをしたいわけですけれども、四〇一Kプランにすればそれで収益率が上がる、そんな簡単な問題じゃないはずです。よく言われますけれども、全世界の中でどう金を動かしていくか、こういう問題もあると思うわけですけれども、大臣にぜひ確認したいわけです。  いまだに、例えば物価上昇率が一・五%、賃上げ率が二・五%の前提で年金の収益を四・〇%ぐらいでいろいろな見通しを立てている。これを今後、自主運用とか、今お話があった制度的な改正をした上でどのぐらいに上昇させていくのか、基本的な姿勢をお聞きしたいと思います。希望でも結構です。
  215. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今おっしゃられているとおり、これからの二〇二五年までの設計でございますから、その間における物価上昇、賃上げの状況あるいは金利の動向等々を的確に予測することは事実上不可能と言っていいと思います。ただ、私どもとしては、長期設計をやりますから、当然ある前提を置いて、非常に蓋然性の強い数字でもって予測をするというのは、これは制度設計の場合にやむを得ざるところでございまして、そういった視点での数字であるというように理解していただくほかはないと思います。  現実に今の経済が停滞しておりますから、賃金の引き上げもそう行われませんし、物価も、卸売物価はマイナスの時代でございますから、なかなか物価上昇もそう予定したとおりにはまいらないでしょう。そういう現実からスタートすると、そんな楽観論で設計できるかなという思いをあるいはお持ちかもしれませんが、私どもとしては、これは二十数年間、二〇二五年までの長期間にわたる設計を想定しておりますので、控え目な、しかし実現が割かし可能な数値として設定したものである、こう理解をしていただきたいと思います。  なお、資金運用につきましては、これはいろいろ我が国の金融システムなり投資環境の問題あるいは国際的な環境等もございまして一概に言えませんが、これから金融システムが確実なものとして競争にさらされても十分な体制ができてくる、あるいは外国の金融機関と日本との連携も進んでまいります。そういう中で、四〇一Kの問題も主として金融機関あるいは証券市場等からも求められている問題でございますが、そう楽観できる状況でもございません。  設計をきちっとして、そして不安感のないように、これは拠出が確定しておるだけでございますから運用が非常に大切だと存じますので、この問題は、今言及されましたが、本年の六月ぐらいまでに一つの設計をいたしまして、税制上の問題等もございますから、あるいは他の資産運用とのバランスもございますから、それらを検討しながら、年末に向けて税制改革その他で結論を得て、来年以降法案化していきたい、こう考えているわけです。
  216. 笹木竜三

    ○笹木委員 もう時間だそうですから、ぜひ制度改正して、その結果、収益率、運用率が逆に低い数字になるというのでは制度改正の意味がないわけで、ぜひこの運用の改善ということを最も力点を置いて取り組んでいただきたい、そう思います。  また違う機会に質問したいと思います。ありがとうございます。
  217. 木村義雄

    木村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十七分散会