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1999-07-21 第145回国会 衆議院 決算行政監視委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年七月二十一日(水曜日)     午前九時開議   出席委員    委員長 原田昇左右君    理事 鴨下 一郎君 理事 熊谷 市雄君    理事 佐藤 静雄君 理事 村田 吉隆君    理事 石井 紘基君 理事 前田 武志君    理事 谷口 隆義君 理事 佐々木洋平君       安倍 晋三君    赤城 徳彦君       粕谷  茂君    倉成 正和君       桜田 義孝君    田中眞紀子君       田邉 國男君    滝   実君       萩山 教嚴君    林田  彪君       堀之内久男君    御法川英文君       矢上 雅義君    山口 泰明君       安住  淳君    鍵田 節哉君       田中  甲君    葉山  峻君       石田 勝之君    旭道山和泰君       福島  豊君    米津 等史君       辻  第一君    中林よし子君       保坂 展人君    栗本慎一郎君  委員外出席者         総務庁行政監察         局企画調整課長 鎌田 英幸君         大蔵省主計局司         計課長     児島 俊明君         会計検査院事務         総局第一局長  関本 匡邦君         参考人         (構想日本代表         )         (慶應義塾大学         総合政策学部教         授)      加藤 秀樹君         参考人         (新潟大学経済         学部教授)   大住莊四郎君         決算行政監視委         員会専門員   中谷 俊明委員の異動 七月六日             補欠選任              林田  彪君 同月二十一日  辞任         補欠選任   三塚  博君     安倍 晋三君   森  喜朗君     御法川英文君   村山 富市君     保坂 展人君 同日  辞任         補欠選任   安倍 晋三君     三塚  博君   御法川英文君     森  喜朗君   保坂 展人君     村山 富市君 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  歳入歳出実況に関する件及び行政監視に関する件(公会計在り方)     午前九時開議      ————◇—————
  2. 原田昇左右

    原田委員長 これより会議を開きます。  歳入歳出実況に関する件及び行政監視に関する件、特に、公会計在り方について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として構想日本代表慶應義塾大学総合政策学部教授加藤秀樹君及び新潟大学経済学部教授大住莊四郎君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 原田昇左右

    原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。     —————————————
  4. 原田昇左右

    原田委員長 この際、両参考人一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。両参考人には、公会計在り方につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、加藤参考人大住参考人順序で、お一人二十分程度御意見を述べていただきたいと思います。次に、委員からの質疑に対しましてお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず加藤参考人にお願いいたします。
  5. 加藤秀樹

    加藤参考人 加藤でございます。  国とか地方自治体、きょうは主に国のことを念頭にお話をいたしたいと思いますが、なぜ公会計バランスシートが必要か、ではそれをやれば何がわかるのかということ、最後に、その場合何に注意をしないといけないのか、何が必要かという、この三つの点からお話をいたしたいと思います。  簡単なレジュメを用意しております。それに沿って、資料を御参照いただきながらお話ししたいと思います。  まず最初に、やや総論的になりますが、なぜバランスシートが必要か。これは私がここで申し上げるまでもないことでありますけれども、一般的に言いますと、小さい政府を実現して、効率よく、しかも行政サービスが低下しないような、きちっと適切な行政サービスを行うということだと思います。  では、そのためになぜ必要かというところですけれども、ややバランスシート以前の話になりますけれども、資料として三枚紙をつけております。その一番上の絵ですけれども、これをごらんいただきたいと思います。  この上の方で「民間が担う公共的活動」と書いております。小さい政府、官から民とよく言われますが、小さい政府というのは何かといいますと、単に民営化、要するに、政府がやっていることをやめて、それはどんどん市場に任せる、ビジネスに任せるということではないと私は思っております。  これはもう言うまでもない話だと思いますけれども、絵でいきますと、これまで日本は公的な部分はすべて官、国なり地方自治体がやってきた。場合によっては、公的なこと以上に私的なところまで踏み込んでやってきた。これを公的なところまで戻すのが恐らく、例えば民営化とか規制緩和といったことだと思いますけれども、大事なのは、この公的なことの一部を民間自体がやる。英語で言いますと、今まで日本ではパブリックなことはすべてガバメントがやってきた、しかし、パブリックなことをパブリックみずからがやるという仕組みに変えていくということが大事なんだと私は考えております。  最近、いわゆるNPOというのが盛んに活動しております。これなどはまさに民間の非営利、パブリックみずからがパブリックなことをやる。日本ではよく、公とか公共とか、それから官とか、いろいろな言葉がやや入り乱れて使われておりますけれども、公的なことを官だけでなく民がやる、これが一番大事なことであると思います。  また、これは割合どこの国でも、例えば日本でも、かつては実際にそういうことが行われていた。ちょっと古くなりますけれども、江戸時代でいえば、例えば寺子屋とか火消しとか目明かしとか飛脚とかあるいは道普請とか、我々はこういう言葉を知っております。これはすべて、今でいえば官がやっている公共的なことで、政府が提供しているサービスですけれども、実はこれは全部民間だったわけですね。ですから、そういう意味で、民間が、パブリックパブリックなことを担う仕組みをつくっていかないといけない、そういうことだと思います。  では次に、バランスシートの前にそんなことを申し上げたわけですけれども、ちょっとその下にある、下半分の絵、卵形の絵を見ていただきますと、今回、省庁再編に関連して、各省庁設置法が改正されました。この下の絵は、私が属します構想日本でずっと提唱してきたことなんですが、設置法権限規定をとろうということです。  とればどうなるのか。今までは、日本における公的な、公共的なことはすべて官が担ってきた。しかし、それを個々の法律がカバーするところだけに限定しようというのが、その卵形の白地があるところです。  それで、バランスシートで何がわかるかといいますと、このAとかBとかという丸の、その中身が適正に行われているかどうかということがそこから見えるということであります。  行政改革あるいは財政改革ということを考えていきます場合、小さい政府、どうやってその小さい政府を実現するかというときに議論されますのが、大きく四つあると思います。まず組織、それから二番目に定員、三番目に予算、それから行政サービス内容。例えば省庁再編というのは組織に当たると思います。それから、公務員制度あるいは定員というのも議論されております。  形をつくることからいえば、組織とか定員というのはわかりやすいわけですけれども、私はむしろ四つのうちの最後の、行政サービスをどうするかというのが一番大事なところであって、その次に、そのための予算をどうするかということを考えないといけない。このサービス内容自体予算のことがきちっと整理できれば、組織定員というのはおのずとついてくるものだと思います。  このサービス中身予算、これが適正に使われているかどうかということを見る上でどうしても必要なのが、バランスシートだと考えております。  次に、ではバランスシートをつくって何がわかるかという点ですけれども、二枚目資料をごらんいただきたいと思います。これは「地方行政」という雑誌のコピーでありますけれども、図表八として、ケース一、ケース二、ケース二の別表ケース三と四つ表が並べられております。この上の方から、ちょっとこの表を使ってお話をしたいと思います。  まず、ケース一でありますけれども、これは日本の今の予算決算仕組みを書いたものであります。単純化のために、歳出側でいきますと給与費公共事業費、この二つだけを挙げております。それぞれ数字を、仮にですけれども、百と百五十と置きました。給与費といいますのは、もう少し一般的に言いますと経常的支出典型でありますし、公共事業費といいますのは資本的な支出典型、そういう意味でこの二つを挙げております。  それで、それぞれを、これも仮にですけれども、租税公債発行で賄うという例にしてあります。  ですから、今の予算あるいは決算仕組みですと、これがすべてということになります。これは簡単に言いますと、家計簿と基本的には同じ要領ということになります。これは、現金が出入りしたときにその数字を、そこに現金の出入りに関する数字だけをつけておく、それぞれ出と入りを書くという意味で、単式会計ということになります。  バランスシートといいますのは、これに対比していいますと、発生主義による複式会計ということになります。ケース二をごらんいただきたいと思います。ケース二も全くケース一と同じ数字でありますが、一番上の表の下に二つ箱がくっついております。この二つに分けて考えるというのが、バランスシートの基本的な考え方であると思います。  その二つといいますのは、まず上の箱が負担計算書、これは民間企業では損益計算書と言っておりますけれども、行政では負担計算書と言った方がいいのではないかと考えます。これが四月から翌三月の会計年の間に出入りしたお金であります。それから、バランスシートは、三月末の時点で切った場合の資産負債残高であります。  この百と百五十という数字を使いますと、給与費は、その期間支出をされた、それからそれを租税で賄っておりますが、これは百と百でちょうどバランスしている。それから、バランスシートの方を見ますと、公共事業費として建物が百五十つくられた、それに対して公債残高の百五十が残った。全く上の単式会計と同じことではあるのですけれども、ことし分とそれから後世に残って使われるもの、それに対して、後世に残る負担がここで分けられるというのが非常に大事なところであります。  それから、次のケース二の別表でありますけれども、これは「(部分発生主義による複式会計)」と書いてあります。ここではちょっと例を変えて、給与費公共事業費、これは同じなんですけれども、給与費の分も含めてすべてを公債発行で賄った、こういう前提にしてあります。  そうしますとどうなりますかと申し上げますと、基本的な原理は同じであります。ただし、その給与のところが、費用が百に対して収益、これは税収がないわけですから、ここは空欄になります。そうしますと、結局この負担計算書のバランスがマイナス百、そこで、マイナス百とはっきり書いておかないといけない、こうなるわけです。  一方で、ではバランスシートがどうなるかといいますと、建物の百五十、これは同じなんですけれども、負債の方がもう百ですね、給与費を賄った百がふえてマイナスマイナスといいますか、二百五十になります。ですから、これも正味財産としては、後世に残った負担、後世に残った資産差し引き負担の方が百多いわけでして、これが上の負担計算書と見合うということになります。  ですから、ここで同じように二百五十入って二百五十出ていくとはいっても、給与費の本来ことし使われてしまったフロー部分公債で賄うといいますと、こうやって分けて書きますと、明らかに違いが出てくるということになります。  それから、ケース三をごらんいただきたいと思いますが、これは「(完全発生主義による複式会計)」。この上が完全ということの部分で、これが完全ということです。  そのことの意味でありますけれども、この一番上の箱をごらんいただきますと、給与費公共事業費、これは百、百五十。それから、それに対して租税公債発行、これは同じであります。三行目に、発生費用(非歳出)五十、それに対する引当金五十というのを加えました。  これは何かといいますと、例えば、公務員も毎年退職をしていきます。そうしますと、退職金を払わないといけない。その分は、これは常に発生しているわけですが、しかし、退職するまでは現金として支払わない。ですから、例えば民間企業でありましたら、退職給与引当金という格好で積み立てないといけないわけですけれども、今の現金主義による会計の場合には、この部分は全然考慮されていないわけです。ですから、そこがこの三番目の場合には、発生して、現金としては支出されていないけれども、本来は発生しているものについても入れておくという意味完全発生主義と言うわけです。  これで見ますとどうなりますかといいますと、これは、本来はこの五十の部分以外はケース二と同じなんですけれども、給与費の上に発生費用がもう五十加わります。ですから、実際の収益、ことし払うべき給与費に見合う租税が百であれば、正味財産はここでやはりマイナス五十となります。それに対して、引当金バランスシートの方で引当金として五十負債の方に乗せておかないといけない、こういうことになるわけです。  ですから、この四つの箱といいますかケース、それぞれ単純化されたものですけれども、原理としては、ケース一と、ケース三あるいはケース二の別表を比べていただきますと、二つに、負担計算書バランスシートに分けて計上するということで、お金がどこにどういうふうに流れているかというのが非常によくわかるということになると思います。  それから最後に、ちょっと大きい、これはきょうの日経新聞の「経済教室」の記事のコピーであります。ちょっと印刷が悪くて恐縮でありますけれども、これの左下の方にやはり表があります。この表に従って、これは図一が日本政府推定貸借対照表となっております。これは構想日本試算したものであります。それに対して、図二が米国の連邦政府連結財務諸表アメリカの例であります。  ここでは、日本のこの試算でいきますと、正味財産が九百兆のマイナス、九百兆円の債務超過という数字が出ております。そのうち、厚生年金が非常に大きい数字を占めているわけですけれども、今、この数字については、試算ですからそれほど大きい意味はございません。それについては特にここでは申し上げませんが、むしろその下の、アメリカが具体的にどういうことをやっているかということについてお話ししたいと思います。  アメリカも、先ほどのケース一とかケース二でお話ししましたのと同じ仕組みでありますけれども、まず、「1行政コスト計算書」、これが九六年十月から九七年の九月までの一年間で出ていった行政コストを並べたものです。国防費とか社会保障費とか、各政策費目ごと行政コストというのが出されております。  例えば、これは十億ドル単位でちょっと見にくいのですが、通商郵政住宅費といいますのが、コスト総額が八百六十億、それから料金収入、この場合には料金収入が七百二十億あって、ネットの行政コストが百四十億ドルと出ております。それに対しまして、社会保障費というのは三千六百四十億ドル、これは、料金収入がありませんので、そのままがすべて行政コストとして計上されております。ですから、政策費目ごとコスト計算が行われているというのがこの「行政コスト計算書」、これが非常に大事な表であると思います。この表をつくることによって、例えばアメリカ通商郵政住宅費というのは独立採算性が高いんだなということも、あわせてわかる仕組みになっております。  それの合計金額が、ここでは一兆六千三十億ドル、行政コスト合計が一兆六千三十億ドルと出ております。  それに対しまして、「2正味財産計算書」、これも同じ期間中ですけれども、これはいわば負担計算書と呼んでいいものかと思います。どういうもので賄っているか。「租税収入など」と書かれまして、その中身が書かれております。それで、その金額合計が一兆六千億になっております。  この1の一兆六千三十と一兆六千、そのうち一兆六千億を租税収入などで賄っている。その結果、三十億ドルのマイナスが出ている。それがこの期首の正味財産、五兆ドルあったわけですが、それにその三十億ドルつけ加わって、五兆三十億ドルの正味財産マイナスが出ているということになります。  その一番下、三番目、3が九七年九月末現在でのバランスシートであります。そこでは、「資産」「負債」と書かれていまして、その「負債」の中に「国債」とか「退職年金など」と書かれております。ですから、ここでも、先ほどお話ししましたことと同じように、国債租税収入と同じところに記されて合計歳入が幾らということではなくて、あくまでも将来に残る負担というのが別に記されて、それぞれ一つの表の中で、現在の負担、将来の負担、何が残るかというのがわかるようになっております。  ただ、ここで大事なのは、バランスシートというのはあくまでも財政の現在の実態をそのまま、ありのままに出すということでありまして、その出されたもの、その数字の是非、これ自体については何も語っていないということであります。  ですから、例えばこのアメリカの例でいきますと、社会保障費が三千六百四十億ドルかかっているわけですけれども、その中身が適正に使われているかどうか、あるいは三千六百四十億ドル自体が適正かどうかということ自体は、これは別途検討しないといけない、それを行うことが行政評価であります。  ですから、行政評価バランスシートをつくること、これが車の両輪になって、この両方が備わって初めて、行政改革あるいは財政改革、適切な財政行政の姿が見えてくるということだと思います。  繰り返しになりますけれども、最初に申し上げましたけれども、なぜバランスシートが必要なのか。それは一言で言いますと、情報公開そのものであります。やはり財政現状をなるべく正確に、ありのままに出すということに尽きるということかと思います。現在でも、例えば国の資産は、個々に見ますと、国有財産台帳といったものに出されているわけですけれども、こうやって金額表示で一表にしてわかりやすく出すということに意味がある。そこから、行政改革財政改革がスタートするということであると思います。  最後に、一言申し上げますと、日本の場合には、国と同時に、国と地方地方の場合も、都道府県と市町村、それぞれの財政というのは非常に入り組んだ形になっております。また、国の場合についても、一般会計特別会計、それから特殊法人、さらには公益法人のところまでいろいろな形で入り組んでおります。ですから、やはり本当に国の財政の全容を理解するには、全体のいわば連結のような形で示すことが必要であると思います。だから、そのためにも、まず国できちっとしたものをつくるということが大事になると思います。  以上で終わります。(拍手)
  6. 原田昇左右

    原田委員長 ありがとうございました。  次に、大住参考人にお願いいたします。
  7. 大住莊四郎

    大住参考人 新潟大学におります大住でございます。  私の方からは、先月の暮れに公表いたしましたPHP総合研究所の「日本政府部門財務評価」につきまして御報告させていただきたいと思います。基本的には、加藤先生の言われた趣旨に沿って私どももPHP総合研究所におきまして試算作業を行ってきたわけです。  そもそも日本政府財務状況が客観的に見てどうなのかということがよくわからないわけです。その理由は単純であります。現金主義会計で、毎年毎年のフロー経済活動フローのみを押さえている、こういうところに原因があるからです。今現状政府税収などを使いまして公共サービスを供給しているわけですけれども、その結果、今何があるのか、こういうことは全く、全くとは言いませんけれども、ほとんどわからないわけです。したがいまして、私も、一研究者といたしましてPHPのこのプロジェクトに参画をいたしまして、勉強しながら、とりあえず試算をしてみた、つくってみたということでございます。  お配りいたしております資料がございます。実はおわびを申し上げる必要があると思いますけれども、二枚目以降の図表がやや不鮮明であります。私、新潟に住んでおりますので、ファクスで送りましたところ、どうも不鮮明な形でコピーがお配りされているようですので、恐縮ですが、調査室の方で作成をされております「公会計在り方に関する関係資料」の中の十二ページ以降をあわせてごらんいただきながらということでお願い申し上げたいと思います。  そもそも公会計改革目的でございますけれども、これはまさにアカウンタビリティー確保であります。直面する課題といたしまして、財政危機が進行しているというような何となく漠とした感覚があるわけですけれども、財政危機がどの程度深刻なものなのか、果たしてこのままいくと財政が維持可能なのか、サステーナブルであるかどうか、こういうことがよくわからないわけです。さらに、個々の、個別の政策につきましても、その政策コストが、費用がどのぐらいかかり、それがどのような効果を上げているのか、こういうことがよくわからないわけです。  そもそも政府経済活動といいますものは、財政学的な観点に立ちますと、租税国民の皆様から税収を集めて、それをもと公共サービスを供給しているわけですから、少なくとも財政実態については明らかにすること、さらに、政府経済活動が適正であるかどうか説明をする、国民に対して説明をしていく、こういう義務があろうかと思います。  そういう観点に立ちますと、公会計改革目的は、先ほど私はアカウンタビリティー説明責任確保だと申し上げました。これはまさに二つ観点でございます。  PHP報告書におきましては、狭義アカウンタビリティーと広義のアカウンタビリティーということでまとめておりますけれども、第一の狭義アカウンタビリティー、これはまさに財務状況を開示することであります。現金主義会計もとで見ますと、ストックに関する情報が全くありません。こういう観点から、複式簿記発生主義会計へ転換することで、フローストック両面から財政状況がどのようになっているのか、債務がどのぐらいあるのか、あるいはどういう資産がどの程度あるのか、こういうことを開示していく必要があろうかと思います。  これは、財政制度を客観的に見ますと、国民からの租税もと経済活動をしているわけですから、租税負担との関係財政がどうなっているのか、維持可能なのかどうか、こういうことを示す、こういうことであります。  第二が、先ほど申し上げました、ある意味での政府の業績に関する指標を出していくことであります。  会計情報から出てまいりますものは、これは当該年度行政コストがどのぐらいかかっているのか、こういうことであります。機関別に見ますと、政府全体という観点も重要なんですけれども、建設省なりあるいは運輸省なり、個々省庁がどれくらいの行政コストをかけてサービスを提供しているのか、公共サービスを生産供給しているのか、こういうことを示していくということであります。当然、民間企業で行っております発生主義会計のフレームを使うことで、行政サービスを供給するコストが厳密に出てまいります。  コストが出てまいりますと、それは資産活用を効率化する。例えば、政府の中にも遊休資産あるいは非効率な使い方をしている資産があろうかと思います。そういった資産コスト、年度当たりのコストをはじき出していくことで、資産運用の効率化へのインセンティブを与えることになるということであります。  もっと言いますと、民間企業で使われている会計的な発想を導入するわけですから、コストの官と民の比較、官民比較、こういうことがある程度可能になってまいります。ひょっとすると、コスト民間の方がはるかに安いということになりますと、民営化すべきだという議論にもなりますし、あるいは、民営化とまではいかなくても、民間委託などの疑似的な、広い意味での民営化の手法を使うこともできますし、あるいはPFIといった社会資本の整備に民間の資金を活用する、こういったこともより効率的に実施できるはずだろうと思います。  実は、公会計改革の国際的な潮流を見ますと、二つの考え方、二つの潮流があると言われております。英国・ニュージーランド型と米国型であるということであります。これはとりもなおさず、先ほど私が申し上げました、公会計改革目的二つあるわけですけれども、どちらにウエートを置いているか、そういう違いになっているわけです。  少し資料をごらんいただきたいと思います。少し不鮮明で恐縮でございますが、お配りしております資料の方の三ページをごらんください。  英国タイプと言われるもの、これは広義のアカウンタビリティーの達成を重視するということであります。  英国の行政改革の歴史を振り返りますと、保守党政権、サッチャー、メージャー両政権のもとで、公的企業の民営化を初め、さらには広義の民営化と言われる民間委託の手法、強制競争入札などというような仕組みを導入したりとか、あるいは、九〇年代に入りまして、もう御案内のとおり、独立行政法人の手本になっております、やや違いますけれども、手本になっておりますエージェンシー、ネクスト・ステップス・エージェンシー、こういったものを導入する、これも疑似的な民営化の手法の一つであろうかと思います。こういうことを厳しく推進をしていったわけです。さらには、PFI、こういったものですね。  こういう広義の民営化の背景、幅広い民営化手法の導入の背景には、当然、コストをはじき出していこう、官と民のコストを厳密に比較をして、同じサービスを供給するならば、たとえ社会資本整備であっても民間の方がはるかに安いコストで供給できるとすれば、民間に任すべきだ、こういう発想であります。  幾つかの考え方があるわけですけれども、例えば、会計学の議論の中で、時価評価をすべきか、特に固定資産の扱いですけれども、時価評価をすべきなのか、あるいは取得原価、かかった費用でいいじゃないか、こういう議論、両者両様あるわけです。  英国の場合ですと、時価評価。固定資産の評価も、再調達価格というふうに書いていますけれども、原則、時価評価なんですね。時価で判断をしましょう、今つくれば幾らかかるのか、こういう発想なんですけれども、こういう形で評価をしていくということであります。  これを、例えば公共投資、社会資本などの分野を考えますと、十年前につくった道路と今つくった道路、今デフレですから微妙ですけれども、通常であればインフレですので、恐らく物価上昇がある、そうしますと、同じものであっても今つくった方が費用が高い、こういうことが推定されます。ところが、十年前につくったものであっても今現在つくったものであっても、同じ道路であれば同じ便益を住民は享受できるわけです。そういったものはやはり時価で評価がえをすべきだ、こういう発想に立っています。  ところが、米国タイプですとそうではないのです。米国ですと、第一の狭義アカウンタビリティーを重視しますので、実際に租税負担をお願いする国民負担との関係で見ていくわけです。かかった費用を世代間でどう配分していくのか、どう負担していくのか、こういう観点を重視します。したがって、歴史的原価と書いていますけれども、取得原価なんですね。かかった費用で表示をする、こういうことになっております。  こういうことが典型的にあるわけですけれども、英国タイプと米国タイプを比較しますと、英国タイプですと、公会計の分野を限りなく企業会計に近づけよう、公会計の特殊性、こういうことは余り考えない、極限まで民間の企業会計の考え方を導入し、政府コストを明示し、効率化を図る、こういう道具に使おう、こういうことであります。  米国タイプ、これは公会計の特殊性をある程度考慮しているわけですね。といいますのは、政府は、民間企業とは違い、利益を目的にしません。これは当然であります。そんなことをしてはいけないわけですし、また、利益を上げるにも、費用を徴収しておりません。いわゆる公共サービスですので、民間の私的なサービスとは違う、私的財とは全く違うのだ、この二つ観点公共部門の経済活動は特殊だ、こういう観点を比較的重視しております。そういう考え方を米国タイプではある程度取り入れているわけです。租税、税負担国民負担と、実際にでき上がった資産あるいは国債などの負債、こういったものを明確に表示していく、こういう観点に立っているわけです。  PHP総合研究所がまとめましたバランスシートでございますけれども、最初のレジュメにお戻りください。  バランスシートが全くないか。日本にはない。いや、バランスシートがないということは正確ではないのです。バランスシートらしきものは、実は経済企画庁が公表しております国民経済計算にございます。国民経済計算の制度部門、五つの制度部門があるわけですけれども、一般政府というカテゴリーがございます。中央政府地方政府と社会保障基金をまとめたものなんですけれども、こういうくくりで実は貸借対照表、バランスシートが存在はしております。ただ、極めて不完全なんですね。  PHP総合研究所のアプローチは、ゼロからスタートするということではなくて、国民経済計算の一般政府もとに、これを組みかえよう、組みかえ推計をしていこう、不十分なところを直していこう、こういうことでつくりました。  どこをどう変えたかということなんですけれども、先ほど加藤先生お話にも多少出てまいりました。私どもの作業で申し上げますと、二点ほどにまとめられようかと思います。  発生主義会計典型的な修正ポイント、これは、固定資産、特にインフラなんですね。インフラ資産の減価償却費用、毎年毎年、企業であれば減価償却費用を積み立てています。これを計上していこうということであります。今回の推計で、統計的な制約がございましたので、最もインフラ資産の中で大きなウエートを持つと言われております道路について減価償却費用を計上しております。  もう一つ、これは人の面であります。政府公務員を雇用しておりますので、公務員共済の公務員部分の年金の将来債務について、少なくとも政府が積み立てる必要がある。恐らくほとんど積み立てておりませんので、これを積み立てますと、政府バランスシートは悪化するということになります。  もう一点、公務員退職金の将来債務、これを計上しよう。退職金というのは、退職年齢に達したならば支払われるわけですけれども、何も、例えば六十歳なら六十歳という定年に達した時点で発生するわけではなくて、雇用されている期間、毎年毎年発生しているわけですね。そういう部分債務を計上する、こういうことであります。  推計結果でございますけれども、数字をごらんいただこうと思います。調査室でおつくりいただいております資料の十六ページをごらんください。こちらの方が写りがよろしいですので、ごらんいただきやすいかと思います。  SNAで一般政府バランスシートの帳じりのところ、正味財産がございます。これが九六暦年で四百二十四兆円というかなりのプラスの額だったわけです。  ところが、今回の組みかえ推計、修正作業をいたしましたところ、九六年度ベースで二百十二兆円という形で大きく減少しております。これは、先ほど申し上げました修正した部分の影響であります。インフラ資産の減価償却費用及び公務員共済、退職金の将来債務の計上、こういうことであります。  多少減ったけれども資産負債よりも多い、したがって健全だ、こうお考えになるかもしれません。しかし、よく考えてみますと、政府資産、これは大半が売却できないものであります。負債があるからといって資産を売って負債の返済に充てる、こういうことができません。したがいまして、この二百十二兆円という数字がどういう意味を持つのかということをよく考えてみますと、微妙な面を持っております。  したがいまして、もう一つ別の概念をつくりました。政府可処分正味資産と言われるものであります。つまり、政府資産の中で売却ができない資産、売却不可能な資産がございます。こういった資産を取り除いていこう、そうするとどうなるのか、こういうことをやったわけです。そうしますと三百六十八兆円の赤字、こういうことです。ジャーナリスティック的な表現を使いますと、ひょっとすると債務超過ということになるわけです。政府の保有している資産を売っても債務が返済できずに三百六十八兆円残ってしまう、こういうことです。  仮に、これは簡単な試算なんですけれども、現状債務超過の三百六十八兆円を返済しようとしますと、例えば消費税に直しますと、七%の追加が必要である。この前提としまして、二〇二五年までで完遂する、ゼロにする、こういうことで簡単な計算をしたわけですけれども、こういう結果になるわけです。  問題点が細かい部分ではかなりあります。ただ、とりあえず試算をまとめてみたわけですけれども、今回の作業を通じまして、何となく公共部門におけるバランスシートの作成の意義と限界というものがわかってきた感じがいたしております。  まず、意義でございますけれども、財務情報の開示ということがある程度できるということであります。政府財務状況の健全性をチェックする有効な素材を提供する、こういうことは評価していいと思います。  ところが、現状政府全体あるいは中央政府地方政府、こういう大きいくくりで今回つくったわけですけれども、これだけで一体何がわかるんだろう、こういう疑問がやはりわいてくるわけです。それは二点ほどございます。  先ほど加藤先生お話にもございましたけれども、やはり連結会計的な発想が必要なんだということであります。今回のPHPの推計作業、これは国民経済計算の一般政府制度部門を出発点としております。したがって、ある意味でこれが限界になっているんです。はっきり言いますと、第三セクターを初め特別会計で独立採算的な運営をしているもの、あるいは公的企業、公営企業のようなもの、こういったものが抜け落ちております。しかし、例えば地方自治体財政状況を見ますと、第三セクターの破綻が問題になっておりますし、あるいは、公営企業の抱える債務の問題、これも非常に大きな問題としてクローズアップされております。したがいまして、こういった部分連結をした情報を提供する必要があるのではないか、こういう考えを持っております。ただ、今回の作業では、基礎統計がなかったのでできなかったということであります。  三番目のところなんですけれども、バランスシートだけではやはりこれは不十分であります。政府の業績評価に活用するということを申し上げました、広義なアカウンタビリティーだということを申し上げましたけれども、これは二つの点で不十分だろうと思います。  今回つくっておりますバランスシートですけれども、一般政府ですとか、あるいは霞が関の中央政府ですとか、地方自治体の全部ですとか、こういう形でくくっております。実は政府はいろいろなサービスを供給しているわけです。こんなことは申し上げるまでもございません。ですから、サービスカテゴリーごとにどれぐらいの行政コストがかかったのか、まさに先ほど加藤先生の御説明にございましたけれども、米国におきましてとられているような行政コストの原価計算のようなもの、こういう資料を添付することは不可欠であろうと思っております。  第二点ですけれども、少なくとも純粋な会計的な情報では、行政コストしか、費用しか出てまいりません。確かにこれはこれで非常に重要な情報でありますけれども、やはり行政の生み出したサービスそのものの評価を加える必要がどうしても出てくるだろう。したがいまして、行政評価公会計改革が車の両輪であるというお話がありましたけれども、まさに私もこの点は重要だと思います。コストのみでは評価できないわけですね。ですから、そういう点で、今回まとめましたPHP総合研究所バランスシートをきっかけに、こういった将来の展望も含めまして議論が進めばということを期待しております。  以上でございます。(拍手)
  8. 原田昇左右

    原田委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  9. 原田昇左右

    原田委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  この際、両参考人に申し上げます。  御発言は、すべてその都度委員長の許可を得てお願いをいたします。また、委員に対しましては質疑ができないこととなっておりますことをあらかじめ御了承いただきたいと思います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井紘基君。
  10. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 きょうは、お二人の参考人の方々、本当にありがとうございます。  PHPさんについても、あるいは加藤秀樹さんのところの構想日本につきましても、私ども、日ごろから大変参考になる御指摘をいただいておりまして、大いに勉強させていただいているところでございます。  加藤さんは、文芸春秋で書いておられますように、「今でも役人でいたら何の疑問も持たなかっただろう。」こういうふうに言われておるわけでございますが、本当に私は、加藤さんはそうしたお役人をやっておられて、そういう中で思いをいたして、意を決して、そして今の仕事をされておられる、そのことは非常に大きな意味があると私は思うのです。  といいますのは、今日こうしたバランスシートというようなものが議論されるようになりましたのは、そもそも、政府の行う事業というものが非常にふえてきまして、そして、しかも財政構造も、そうした事業関係財政がふえてきているために非常に複雑になってきた。しかしながら、官あるいは政治の権力のいろいろな裁量、権限というものの中でもってそうした事業の拡大が行われてきておりますために、底が非常に見えない。  権力の内部からそうした経済活動というものがはびこってきたといいますか、膨張してまいりましたために、一般の経済学者とかあるいは評論家とか、例えば加藤寛さんなんかも、実態がわからない、そこが問題なんだ、こういう前提でもって常に経済分析等を言われておりますように、まさに官の内部でございますので、あるいは権力の内側のことでございますので、実態がわからない。  そういうところから、何とか今の日本経済あるいは社会経済というものの実態がどうなっているのかということをわからなきゃ、あらゆる政策というものが有効性を持ってこない。一番肝心のところの分析を欠いた、そうしたいわば当てずっぽう的な政策にならざるを得ない。したがって、このバランスシートというようなことの発想も、そういう中から出てきたのであろうというふうに私は思うわけでございます。  ですから、したがって、数字を出されて、バランスシートを最大限、推定も含めてお出しになっておられますように、実際の数字というものはそれでもまだわからない部分が大変多いわけですね。果たしてこの部分から推していけばわかるようになるかどうかということは、これは私はやはり大きなクエスチョンマークが依然としてついているだろうと思うのです。  むしろ私どもが、この国政調査権というようなものを付与された政治の立場からその実態というものをえぐり出していくということを中心に、やはり解明がされていかなきゃならない問題点というものが非常に多いのじゃないかと思います。  そこで、まず初めにお尋ねしたいことは、一つは、行政というのは一体何か。行政というのは、広い意味での国民福祉というものの向上を図るために、国民から税金を取って、その税金を使ってサービスをする、ある意味ではこれが行政であろう。それに対して、いわゆる企業活動というのは、やはり利潤の追求が目的でありますので、収支が合わなきゃいけない、利益が、剰余価値というものが上がってこなきゃいけない、こういうのが企業の活動の基本だろうと思うのです。  そういたしますと、行政というものをバランスシートというようなもので抑えていくということは、今のお話を聞いていても、必ずしもそうはおっしゃっていないと思いますが、これはやはりバランスシートだけではだめなんだというお話もありましたように、そういうことだろうと思うのです。  それにしても、バランスシートをやる際に、まず前提として、行政というものはどこまでやるべきものなのか。例えば福祉事業だとか、あるいは道路建設だとかその他の建設というものが大変広くなっちゃって、公共事業という概念が、もう何でもかんでも公共事業というような感じに昨今ではなってきている、そこが私は大変大きな問題だろうと思うのですね。  ですから、行政がやるべき仕事の範囲というものをまずきちっと、最小限の行政サービスお金国民から取ってやるものですよ、したがってお金がかかるものなんですよというような範疇で抑えておくべきじゃないかと私は思うのですが、この行政サービスの範囲というものについてはどんなふうにお考えか、まず加藤さんから伺ってみたいと思います。
  11. 加藤秀樹

    加藤参考人 今の石井委員お話に、私は全く同感いたしております。  ただ、行政サービスはどこまで含むのか。もちろん、これは私がここで、いや、ここまでじゃないですかとお答えできるような話じゃないと思いますし、これこそがまさに政治でもって決める部分である、一言で言うとそういうことになるのじゃないか。  一つ例をお話しいたしますと、ナショナルミニマムという言葉が時々使われます。国民にとって最低限必要なものは何かということだと思います。非常に卑近な例を申し上げますと、例えば、新しく夫婦ができて、家庭ができる。やや昔風な言い方をしますと、まず、なべかま、布団。古い言い方ですが、そういうものが必要だ。そのうちに、だんだん家財道具がふえてくる。掃除機もテレビも、今ではそんなものは最初からあるのかもわかりません。車も必要だ。子供ができる。電話が部屋に一つずつある。  例えば、私は、ナショナルミニマムというのを、五十年前、戦後間もなく、やはり国民の最低限の福祉の施設ですとか、福祉で何を提供するのか、あるいは衛生医療で何を提供するのか、その時点ではまさにミニマムであったはずのものが、その後どんどんどんどん膨らんできて、今や、車が二台ある、いや電話が携帯電話も含めて三つある、テレビは部屋ごとにある。今の日本行政というのはそこまで来てしまっているのではないか、こんなふうに考えております。  先ほど冒頭に申し上げました絵は、それを抽象的に申し上げたことになるわけなんですけれども、行政で何が必要かといいますのは、私は、今や国が一元的に、一律に判断できないのではないか、そんなふうに思っております。東京で必要なもの、北海道で必要なもの、あるいは鹿児島で必要なもの、それぞれ違うわけですし、できるだけ分散して身近なところでそれを考える、また、身近なところでいわゆる受益と負担が見合うかどうかを判断できるようにするのが基本ではないか。  ここに十億円の建物をつくります。十億円の建物をつくるときに、地方でしたら、ついては国からお金をもらってきますというのが今の仕組みなんだと思いますけれども、それではやはり、その十億円というのは回り回って補助金とか交付税という形で、もちろん国民負担しているわけですけれども、しかし、それがわからない。  しかし、十億円の建物をつくります、ついては、市民一人当たり十万円ずつ余計に出しますかどうしますかと言うと、そこで初めて本当に必要かなということがきちっと議論される。私は、そういう仕組みが今非常にないというんでしょうか、仕組みはあっても、それがちゃんと運用されていないというのが現状ではないのかなと。それで私は、バランスシートの意義というのは、そういうものが見えるようにするというところに最大のものがあるのではないかなと思います。  ちょっと長くなりますけれども、政府の歴史というんでしょうか、大まかに言いますと、かつて、産業革命までは夜警国家と言われていた。政府というのは、要するに秩序の維持、治安の維持等、まあ外交とか安全保障だけをやっていればいい、あとそれ以外のことはそれぞれ身近なところで、地域で、コミュニティーで大抵のこと、教育とか福祉とか、今風に言えば町づくりですとか、そういうことは行われていた。それをどんどん国がやるようになっていった。それが、福祉国家と言われるものだと思います。  ただ、福祉国家というのも、一定のところまではそれでよかったんだと思いますが、最初に申し上げましたように、ナショナルミニマムをはるかに超えたところで、そこまで必要ないんじゃないのかな、幾ら何でも部屋じゅうにテレビを一個ずつ置くところまで面倒を見なくていいんじゃないのかなと。そこまで来ているんじゃないか。ですから、私は、むしろこの福祉国家で行き過ぎた部分もとに戻す作業が必要だと思います。  バランスシートというのは、そのための一つの有力な手法であると同時に、やはりそれを議論して決断していただくのは、私は官僚には、もともと官僚制はそれをできる仕組みではないし、それを期待すべきでもない、やはり選挙で選ばれた政治家の世界で議論をして、まさに議会で議論をして決めていただく、そういうことだと考えております。
  12. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 ありがとうございました。  今度は大住参考人にちょっとお伺いをしたいと思いますが、今加藤さんがおっしゃったように、以前、昔はというか、そういえば農村で、ちょっと道が必要だな、小さな道だったら自分たちでつくったとか、あるいは少しずつ土地を出し合って二、三軒の人たちで道をつくったとか、あるいは、ちょっと下水を流すところが必要だとかというようなことも、こうやってきた。  あるいは、都会で言ってもそうですが、例えば東京都なんかも、劇場だとか博物館だとか映画館みたいなものまでつくってしまう。やはり以前は、映画館みたいなものさえも公共がつくるというようなことはほとんどなかったわけですね。地方では、さらには公民館とかあるいは劇場なんというのはもう至るところにできちゃって、人が入っていない。こういうことまでみんな公共がやるようになってしまった。  これはまた別の意味があるわけですが、そのことは私はきょうは申しませんが、何でもかんでも公共事業、公共事業。そういう事業をやるということは、投資して、それが利益が出るとか、あるいは採算が合うとか合わないとか、そういうことになりますからこれは予算上も一般会計になかなか入れにくいということがある、投機だとか投資だという部分は。そうやって、事業会計というのは特別会計をつくったりする。私は、この特別会計というのは暗いトンネルをつくるようなものだと言っているんです。マネーロンダリングという言葉があって、汚い金をきれいにするのをマネーロンダリングと言うんですか、その逆マネーロンダリングがこの特別会計、特に事業会計なんかはこれだろうと。あるいは、さっき加藤さんが言われたのでしたか、特殊法人財政投融資なんかもそうだろうと思うわけです。  そうやって事業をふやした結果、ちょっと私が調べてみましたら、特別会計の例えば予算額ということでいきますと、十年ごとに大体見てみますと、一九八〇年あたりは九百億弱だったんですね。それが二十年足らずで約三百兆になっておる。これは三・五倍近い拡大。一九七〇年から見ますと、三十年弱で十七倍以上規模がふえているわけですね。あるいは財政投融資計画の財政規模から見てみましても、二十年弱、一九八〇年と比べると二・九倍以上、一九七〇年と比べると約十五倍というふうに、どんどんどんどん規模がふえている。  それに従って、財投の貸出残高、いわゆる借金ですが、これも、結局一九八〇年と比べると四・二二倍、一九七三年ぐらいからこれは始まっていますから、始まった七三年と比べると十三・六一倍というふうに、この残高も、借金もどんどんふえている。  こういうふうに、一方では、そういう公的セクターが行う事業といいますか、いわばわかりやすく言えば商売ですね、この商売が非常にふえている。私は、これが本質的な、量が質に転化すると言いますが、これが質に転化して今の日本の経済というのは資本主義経済ではなくなっているというふうに私は言っているわけですが、そこは別として、こういうふうにいわゆる公共事業というようなもの、それから官の事業、ビジネス、こういうものがふえてきている。  これをバランスシートでやりましょうと言ったときに、これは、バランスは絶対とれないですね。絶対とれないんですが、もう最悪のところはここですよ、これ以上行ったらもうだめだということを法律で決めたとしても、それはなかなかそこまで決め切れないと思いますが、それでも、やはりこれが本質的には別の部分、今の行政がビジネスを——これは行政が悪いと私は思わないんです。政治が悪いと思っているんですが、政治家がいろいろけしかけるというか、政治家の必要でもってそういうふうに行政が拡大してきておりますので、ここをそっちの方からとめるということは私はやはりできないんじゃないかと思います。  そこで、例えばPHPさんにしても加藤さんのところにしても、このお出しになったバランスシートの中の数字で、加藤さんは九百兆円という数字をお出しになって、私は、ちょっと別の観点から日本の国の借金は九百兆円だというふうにずっと前から言ってきているわけですが、この中で、財政投融資、財投の残高というものはやはり基本的には借金に加える。しかも、これは返済不可能なものです。これは基本的には私は返済不可能だと思うんです。現に、毎年毎年この残高というものはウナギ登りに上っていきまして、多くの特殊法人はその年の事業規模よりも借入金の方が多いといいますか、その年にかかる経費よりも借入金の方が多いなんというところが、それが毎年毎年だというようなこともかなりあるわけです。ですから、財投をやはり大きく問題視すべきだ、これを、マイナス要因といいますか、返済できない負債なんだというふうにカウントすべきだと思うんです。  いろいろ申し上げましたが、この財投については、大住さんはどんなふうにお考えでしょうか。
  13. 大住莊四郎

    大住参考人 PHP総合研究所の推計におきましては、財政投融資関連機関は公的所有の企業、公的企業でございますので、外しています。原則入っておりません。ですから、先生のおっしゃる御指摘が、まさにこのバランスシートには反映されていないということであります。  財投をどう扱うべきか。これは私は、先ほどの御説明最後に申し上げましたとおり、当然、国の会計地方自治体会計連結ベース、公的所有、政府所有の企業も含め、あるいは、第三セクターの出資比率のようなものをベースに、第三セクターの部分まで含めてつくるべきだろうと思っております。  今回、そこまで作業が進みませんでした。基礎的な統計が足りなかったということと、やや時間が限られていたということがありまして、そこまで至らなかったわけですけれども、恐らく、財政投融資については、個別機関ごとに、個別事業ごとに精査をしていく必要があろうかと思います。
  14. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 それから、ちょっとまたさっきの話に戻るかもしれませんが、社会的インフラということで公共事業を進めるわけですが、加藤さんもおっしゃったように、社会的インフラというのは、これもまたどこまでやるかというのは非常に難しいことだと思うんですね。インフラ整備をやったおかげで非常にコストが高くなって、むしろ負担がふえるという傾向が、最近は特に非常に強いわけですね。  特に、観光事業なんかまで公共事業でやっちゃいますので、そういうことにすると、一方では、そのインフラ自体を利用するコストが高過ぎて、これが経済にとってマイナス要因になる。生活にとってマイナス要因になる。それからまた、そういう観光事業やなんかまで、あるいは旅行、そういうことまでやっちゃうために、民間経済が疲弊してしまう。そういう二つの面からの民間経済との関係もやはり重要だと思うんですね。  国が事業をやるわけですから、民間の事業と当然これはぶつかり合うわけですから、そこのところの関係も重要なんで、そういう二つの点から、社会的インフラというものについてもやはり一定の考え方の基準というものが必要ではないかなと思うんですが、いかがでしょうか。加藤さんから、いかがでしょうか。
  15. 加藤秀樹

    加藤参考人 今の点につきまして、先ほど私お話しいたしました、最初に簡単な絵を資料としてつけておきましたけれども、公的な部分と私的な部分、それをだれがやるかという担い手を見る上での官と民ですね。官が公的な部分をもっと通り過ぎて私的なところまで入り込んでいるということを申し上げましたが、それはまさに今石井委員がおっしゃった、御指摘の点であります。  これについて、では、どこまでやるか。私は基本的に、やはりビジネスに任せ得るものはもう余計なことはやらない方がいい。例えばいわゆる第三セクターというのはその典型だと思いますけれども、これで成功した例はほとんどないんだと思います。昔から武士の商法と言われるように、ビジネスはやはり違う感覚でやるものですし、こんなことは、本気で商売をやっている人に任せないとうまくいかないということだと思います。  ただ、それ以上にさらに、もっと公的なところの中でも、さっき使いました言葉で申し上げますと、何もパブリックなことは全部ガバメントがやるんではなくて、パブリックなことはパブリック自身がやるんだ。パブリックというのは、公共という意味もありますし、大衆という意味もありますし、パブリックなことはパブリックがやるんだというのが、私はむしろ基本なんではないかと。  ですから、先ほどの御質問へとダブることになると思いますけれども、どこから削っていくかよりも、むしろ、ゼロからスタートしてどこまで積み上げていって、それと現状がどれだけ乖離しているか、その乖離している部分をもう思い切って切っていく、そういうことが必要なのではないか。  これもここで私は一つ一つ、いやこれは必要、これは必要でないというようなことを申し上げることはできませんけれども、まさにバランスシートへ出てきたもの、あるいは行政評価の結果、同じ、例えばいわゆる箱物、道路、あるいは必ずしも公共事業の中には入るわけではないですけれども福祉サービス、そういうものについても、行政で提供してほしいという部分とあるいはそれは要らないという部分が、またその地域によって違うんだと思います。福祉サービス、例えば高齢者の介護でも、どうしても行政サービスしてほしいというのが政治的な決定であれば、それはその地域ではそうするということになるでしょうし、必要ないということであれば必要ないわけです。  そこで、私は、パブリックパブリックなものについて判断する際に、やはり負担と受益というんでしょうか、行政に提供してほしい、そのために余計に一億円要るんであれば私たちは一人ずつ余計に一万円払ってもいいですという合意ができるかどうかだと思うんですね。  いや、負担はしないけれどもやはりサービスはしてほしいということではだめなわけでして、そのために行政はちゃんと数字を出さないといけないし、また、私はたびたび政治家はと申し上げますけれども、政治家はやはりどうしても、いやもっとやれるよということを言わざるを得ない、選挙というのがありますから。そういうお立場ではあるんだと思いますけれども、そこをやはり、いや欲しいんなら一万円余計に要るよといったようなことをきちっと出していただかないといけないんではないか。尽き詰まるところ、やはりそこに戻ってくる、負担と受益の話に戻ってくる、こんなふうに考えております。
  16. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 よくわかりました。  最後に、我が内閣の堺屋経済企画庁長官はいろいろなことを言って、国民に千二百兆の資産があるんだからバランスは十分とれておるというようなことを言うわけですが、私は、これは随分またあの人もほら吹きの人だな、こう思う。アバウトといえばアバウト過ぎるし、アジテーションといえば何かアジテーションみたいなもので、根拠はさっぱりないんじゃないかと思うんです、これはどこかからとってきた数字を言っているんでしょうけれども。その千二百兆の国民資産とか預金とかというものがある、だから十分我が国はまだまだ健全なんだという発言に対しては、大住参考人はどんな感想をお持ちでございましょうか。
  17. 大住莊四郎

    大住参考人 千二百兆円の根拠がどこにあるか私はわかりませんけれども、仮に、日本国の資産政府の抱える資産の評価をもとにそういう発言をされているのであれば、誤りであろうということを感じるわけです。つまり、民間企業バランスシートで評価をされる資産評価、固定資産の評価、これは市場が決めるわけです。例えば売却をしたときにこれだけの価格で売れる、こういうような形で評価が可能なんですけれども、先ほど来私が申し上げておりますように、政府の抱えておりますインフラ資産は売却できません。売却不可能な資産でございます。  したがいまして、では、どういう手法で評価をするのかということなんですけれども、基本的に、かかった費用なんです。例えば一億円でつくった施設は、一億円として計上されるわけです。非常に役に立つ資産、住民にとって非常に便利な資産であろうとも、あるいは、例えは悪いですけれども、だれも使わないような片田舎の農道のようなもの、これを一億円でつくったとしましても、同じように一億円として計上されております。したがって、資産が住民に対してどのような便益を生むかということは全く評価をしておりませんので、資産をつくればつくるほどふえていく。かかった費用だけ、仮に借金をして、国債によって財源を賄ったとしても、負債資産が同額増加しますので、バランスがとれるんですね。  そんなことを言っても始まりません。そうではなくて、もっと重要なことは財務内容財務評価を客観的に行うことだろうと思います。資産内容政府の抱えている、特に固定資産ですけれども、本当に役に立つ資産かどうか、役に立たない資産であれば取り除くべきであるなんということを私は申し上げませんけれども、厳密に資産内容を吟味しながら評価を加えていく、こういう必要があろうかと思います。その上で、仮に資産が幾らあるから日本国が大丈夫だということであれば、私は妥当な発言だと思います。
  18. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 どうもありがとうございました。
  19. 原田昇左右

    原田委員長 次に、谷口隆義君。
  20. 谷口隆義

    ○谷口委員 公明党・改革クラブの谷口でございます。  本日は、加藤参考人、また大住参考人、大変お忙しい中を当委員会出席を賜りまして、ありがとうございました。先ほどから両参考人お話、また当委員会委員の質問等々お聞きしておりまして、私、公会計のあり方と申しますか、特にバランスシートの問題が最近ここに来て大変議論が高まっておることは大変すばらしいことだというように思っております。  私は議員をやる前に公認会計士を二十年ばかりやっておりまして、議員の世界に入って、決算書と申しますか、我が国の予算状況等々拝見をして、大変従来から疑問に感じておったところも何点かあったわけでございます。機会を得るたびにそのようなことを従来からお話をしておったところでございます。  特に公会計の中で、今回バランスシートについて、加藤参考人は先日も月刊誌で書いていらっしゃったわけでございますが、バランスシートというのは一時点の財政状態を示すものであるというようなことで、企業会計を長いことやっておる者が見ますと、我が国の決算書類と申しますか、これを見ますと、決算書類といっても、御存じのとおり、予算制度が基本になっておりますから、決算が余り重視されておらないわけでございます。これも大変おかしいといえばおかしいわけで、予算は大変慎重な審議を行われるわけでございますが、決算の方がおざなりになっておるといいますか、どうも私たちの感覚からいいますと、使いっ放しで、あと、最後のところがもうチェックされておらないというような状況があるわけでございます。  そういうような決算書を見たときに私が感じたことは、企業会計におけるバランスシートというのは、一番大事なのは一つは一覧性である、もう一つは網羅性である、このように思うわけでございます。もう何枚かの書類にわたって、例えば国有財産はここを見ればあるよとか、この財産はここを見ればわかるよとか、こういうように言われても、全体的な概要がはっきりわからない。また、網羅性でございますね、すべてがここに計上されておるのかどうかわからない。こういうような状況があるわけで、そういう観点で、ぜひこのバランスシートをつくっていく必要があるということで従来から申し上げておったところでございます。  今、お二人が大変一生懸命そういうようにおっしゃっていただいておるところを、政治の立場で私自身もまたそれを推し進めてまいりたいなというふうに思っておるわけでございます。  そこでまず第一点、お聞きしたいことがございます。  加藤参考人、御経歴を拝見いたしますと、行政サイドの大蔵省にいらっしゃったということもある。これは当然、バランスシートを国の方がつくっていこう、今そういうような方向にあるようでございますが、財政も大変厳しい折でございますので、大蔵省もそういうバランスシートの作成に関しましては前向きな対応をされておるというようなことでございますが、仮に、貸借対照表、バランスシートを作成しようとする場合の手続的な障害になる一番大きなもの、主な障害でございますが、どのようなことがこの障害になるというように考えられるでしょうか。というのは、先ほども申し上げましたように、加藤参考人は大蔵省にいらっしゃって、普通の方よりそういうことは詳しいという前提でお聞きしたいわけでございますが、いかがでございましょうか。     〔委員長退席、佐藤(静)委員長代理着席〕
  21. 加藤秀樹

    加藤参考人 大蔵省でバランスシートをつくることについて前向きという、今谷口委員お話でした。これ以外にもあるのかもわかりませんが、三月五日の参議院の予算委員会で、円委員が、日本でもバランスシートをつくるべきではないか。それに対して大蔵大臣が、各省庁で勉強していかないといけないと思うという答弁をされております。  一つ、私はここで考えないといけない大事な点だと思っておりますのは、確かに、手続的というのでしょうか、どこがまず考えないといけないかということでいえば、やはり大蔵省かなと。これは、予算決算との中で必要なものですから。そういうことかと思いますけれども、ただ、基本的には私は、これは内閣、政府全体で考える話である、大蔵省がつくるということではないんだというのが一つあると考えております。  その上で、どこに障害があるかという御質問でした。私もきちっと全部まだ整理したわけではありませんけれども、ただ、今の財政法あるいは会計法の仕組みの中で想定されておりますのが、やはり歳出歳入ということです。これは先ほどの御説明の中でお話ししましたけれども、あくまでも現金主義単式会計が想定される、そういう制度ですから、発生主義複式簿記、将来発生し得るものもきちっとカウントする仕組みにしないといけない。それを分けて、行政コスト資産負債に分けて計上できるような仕組みをつくっていかないといけない。これはやはり、法改正が必要であると考えております。  それが基本的なところでありますけれども、私は、大事なのは、大蔵大臣がここで答弁されておりますように、これはまずやってみるということではないのかなと考えております。試算でありましたら、例えば国会にきちっと報告するという以前のレベルでまずやってみるということであれば、とりあえずは法改正はなくて済むわけですから、そういうことから始めるのが大事なのではないか。  大住参考人、それから私、ともにこれはいわば外野から公表数字でもって試算をしてみたわけですけれども、本当は政府がきちっとつくらないといけない。ただし、難しいのは、政府がみずからつくろうとすると、やはりきちっとしたものを出さないと、マスコミを含めて何を言われるかわからない。数字が大きければ大きいで、ほら見ろ、財政破綻だと言われる。小さければ、何か隠しているんじゃないかと言われる。どっちに転んでもなかなか出しにくい、こういうものだと思います。  ですから、そこはまあ、こんな言い方をするとどうかとは思いますけれども、外からは、やはり出すのが必要なんだということで、余り細かいことに目くじらは立てないというのでしょうか、数字そのものに余り最初から細かいことは言わない、やや優しく見守ってやって、まずつくってごらんよ、そういう雰囲気をつくっていくことが大事なのではないか、こんなふうに考えております。
  22. 谷口隆義

    ○谷口委員 確かに、そのようなことなんだろうなというふうに思うわけでございますが、一方で、出すからにはそれなりの正確性も要求されるわけです。とてもじゃないけれども、不正確なものを出したところで、これはもう混乱を生じるだけの問題でございますので、そのあたりが一つ大変大きな問題になるんじゃないかなというように思うわけでございます。  しかし、さっき私が申し上げましたように、バランスシートというのは一覧性と網羅性を外すわけにいかないわけでございますので、例えば仮に国家のバランスシートということで提示された場合に、これが網羅性のところで果たして問題がないのかどうかというような観点でいったときに、当初は大変行き違い等々があって、確かにおっしゃるように完璧なものができない可能性があるわけでございますが、しかし、やっていかなければいかぬという一つの緊急命題があるわけで、そういう観点で考えた場合に、ある一定の期間を置いた方がいいのか。  今の我が国の財政の状態、危機的な状態は大変なものでございますから、行政の効率性と申しますか、そういう観点バランスシートをつくる必要があるということならば、これはそういう時間的余裕がないわけで、しかし一方、それはとにかくさておいて、バランスシートをつくることに意味があるんじゃないかということになりますと、若干の時間的余裕もあるというようなことになるわけでございます。  このような観点でこのバランスシートを考える場合に、時間的な問題と申しますか、早急につくる必要があるのか、若干時間を置いてもいいのじゃないかということについてはどのようにお考えか、御見解をお伺いいたしたいというように思います。どちらでも結構でございますが、では、大住参考人から。     〔佐藤(静)委員長代理退席、委員長着席〕
  23. 大住莊四郎

    大住参考人 時間があるかどうかということだと思うんですけれども、それはまさにバランスシートをつくってみて初めてわかることではないかというふうに感じております。  したがいまして、今回、PHP総合研究所で行いました作業でも、とにかく試算ということで行ってみたわけです。これが完璧なものではないことは先ほども申し上げたとおりであります。でき上がったものを見ますと、やはりもう少しちゃんとしたものを早急につくる必要があるという認識がさらに強くなった次第でございます。
  24. 谷口隆義

    ○谷口委員 欧米の諸外国においては、このような公会計バランスシートをつくっておられるところがかなりある。また、先ほどの大住参考人お話をお聞きしましても、この公会計制度の方法が、例えば英国タイプであるとか米国タイプであるとか、企業会計をかなり念頭に入れたやり方であるとか、一方では、ちょっと特殊性を勘案したやり方であるとかいうようなやり方があるということでございます。  一つは、先ほど申し上げましたように、バランスシートを導入する際の諸外国の状況でございますが、私がさっき申し上げたように、とにかく一遍つくってみて、その後調整をした結果、ある程度の水準に落ちついておるというようなやり方であるのか、もしくは当初からかなりの完璧性を考えながらつくられたものなのか、これについてお伺いしたいことと、我が国の公会計のあり方について、先ほどおっしゃいました英国型の企業会計の考え方に近いやり方と米国型の公会計の特殊性を勘案したやり方と、どちらが向いておるというようにお考えなのか。この二点について、大住参考人にお伺いをいたしたいというように思います。
  25. 大住莊四郎

    大住参考人 最初に私が御説明申し上げました英国も米国も、英米法系の諸国でありまして、どちらかというと試行錯誤が許される環境にあるということだと思います。さらに先行いたしておりますニュージーランドでは、まさに試行錯誤的に、最初はやや欠陥があるかもしれないけれども、やりながら考えよう、こういう姿勢で進めておるというふうに存じております。  日本が英国タイプと米国タイプのどちらをとるべきかということですけれども、公会計改革の国際的な潮流が二つある。両方とも図らずも、図らずもというより理由はあるんですけれども、英米法系の諸国であるということであります。二つのタイプがあること自体、よくこれは考える必要があるわけです。つまり、それは公的部門の、公共部門のバランスシート意味合いであります。  民間企業でありますと、財務諸表、損益収支計算書と貸借対照表があれば、企業のすべての評価、つまり業績評価がこれ一枚でできるわけです。といいますのは、すべて財務諸表の収支じりを見ますと、それは例えば企業の営業活動の結果であり、売り上げが伸び、収益が上がれば、バランスシートのチェックポイントである幾つかの指標が改善するわけですから、これ一枚で完結をするわけです。  ところが、公会計の場合、そうはまいりません。公会計の場合、業績評価が難しいわけです。これは私が最初に申し上げました、また、それ以前に加藤参考人の御説明にありましたとおり、行政評価と一対の関係にあるわけです。バランスシートをつくったからといって、これで直ちに行政評価ができるわけがないんですね。つまり、コストはわかっていても、行政コストは評価が仮に完璧にできたとしても、でき上がった公共サービスを客観的に、客観的にというのもやや問題ですけれども、住民の立場に立って評価する視点がなければならないわけです。  そういう観点で見ますと、国際的な公会計改革の潮流が二つのタイプがあるということなんですけれども、まさにこれは思想が違うんですね。  英国タイプの場合ですと、広義のアカウンタビリティー、要するに、このバランスシート、さらに公会計改革を通じて、行政の業績評価、行政評価の一環として活用しようということであります。つまり、かかった費用当該年度にかかった行政コストを厳密に計算するんだ、こういうことであります。業績評価ですと、投入、かかった費用と、それで何を生み出したか、生み出した側が必要なんですけれども、それは別の行政評価のフレームを使うわけですけれども、少なくとも片方、投入面、費用面を厳格に評価するんだということであります。したがいまして、企業会計的な発想が随所に出てくるわけです。  恐縮ですが、私のお配りいたしました資料の三枚目、ちょっと印字が悪いですけれども、固定資産の評価、これは時価評価にするんだ、要するにその時点の再取得価格で評価し直そう。十年前につくった道路であっても本年度つくった道路であっても、生み出す便益があれば同じなわけですから、少なくともインフレで地価ですとか資材費の上昇分はカウントすべきだ、合わせていこうというわけです。これは、厳密に当該年度行政コストをはじき出そう、こういう意図なんですね。  ところが、米国はそういう考え方をとりません。つまり、行政の活動といいますのは、租税、税をもとに行っているということです。税負担との関係財務諸表を整備すればいいんだということです。つまり、固定資産の評価のことを申し上げましたのでこれに関連して補足いたしますと、例えば、バブルのようなもので地価が高騰した、道路の評価額がひょっとすると上がったかもしれない、ところが、その上がった部分というのは、税によって賄われたものではありません。ですから、そんなものは表記すべきではないんだ、こういう発想に立つんですね。  といいますのは、米国タイプの発想の根底には、公会計といいますか、公共部門の特殊性をある程度勘案をしているわけです。民間企業と同列ではないんだ、道路の評価がえをするといっても道路は売れないじゃないか、こういうことがあるんですね。少なくとも税金を充てて政府の活動をしているわけですから、その時点で政府が負っている負債がどれだけあるのか、資産がどのぐらいあるのか、こういうことを税負担との関係であらわせばいい、これがアメリカの考え方であります。  英国はそうではありません。毎年毎年の行政コストを出していくんだ、税負担と直接リンクしなくてもいい、関係しなくてもいい、毎年毎年のコストを企業と同じような発想で考えよう、こういうことです。英国タイプでありますと、当然、コストの官民比較、官と民の比較、さらには、ひょっとすると、自治体でこういう制度を導入したりしますと、自治体間のコスト比較、要するに官官比較、こういうことが可能になってまいります。コストの官民比較、コストの官官比較を通じて、市場メカニズム、競争原理の導入を図ろう、より行政の効率化を図っていくんだ、これが英国タイプの改革の根底にある考え方だろうと思います。  どちらを日本が選択すべきかということなんですけれども、PHP総合研究所報告書の姿勢を申し上げますと、英国タイプを目指しているということです。  これはどうしてかと申し上げますと、日本財政状況を考えますと何が重要なのか。当然、税負担関係を厳密に財務諸表の中に生かしていくということ、米国型の、狭い意味での、狭義アカウンタビリティーを達成すること、これは重要です。それ以上に、政府の業績の改善、効率化が重要だろう。もう今そういう状況ではないんだという認識です。ですから、私は、英国タイプを目指すべきだということだろうと思います。
  26. 谷口隆義

    ○谷口委員 私自身もその方がいいのではないかと。行政の、例えば地方公共団体の首長あたりも経営者的感覚を持ってやはりやっていかなければ、この財政状態の悪化しておるときでございますから、地方公共団体間の格差もどんどん広がっておるというような状況でございますので、その方がいいのではないかというふうに考えておるところでございます。  今地方公共団体の話が出ましたので、これは、状況を聞いておりますと、もう既にバランスシートをつくったところが五県十三市あるというようにお伺いをいたしております。また、中には、二〇〇一年から連結をしたい、岩手県あたりは、企業会計方式を取り入れて、第三セクターも含めた連結バランスシート損益計算書を作成し、公表したいというようなことをおっしゃっておるようでございます。  先ほどからこの連結の問題が出ておりました。アメリカ連邦政府は、一九九七年九月決算において、初めて会計検査院の監査を受けた連結バランスシートを公表したというようなことでございます。先ほどからのお話がございましたように、一般会計単体だけのバランスシートではなくて、そこから、例えば第三セクターであるとか特殊法人であるとか、このようなところに資金が行き、その行った先が例えば仮に不良債権化するというようなことも往々にして今あるようでございますので、いわば連結グループということになりますと、それが一つのグループ下に入るわけですから全容がわかるわけです。  そういう意味において、公会計のあり方を検討する場合に、この連結という概念を外しては、これは成り立たないんじゃないか。単体のこの感覚だけでは成り立たないというような観点からしますと、連結を行うことはいわば必須条件だというように私は考えておるわけでございますが、そのことにつきまして、加藤参考人、どのようにお考えか、御見解をお伺いいたしたいと思います。
  27. 加藤秀樹

    加藤参考人 今谷口委員お話の中にありました、連結が必要であるかどうかということについては、私も全くそのとおりであると考えております。  もう繰り返しになりますけれども、特に日本財政の場合には、国と地方地方といいましても都道府県と市町村、非常に入り組んでおります。また、それを大まかに申し上げますと、国のバランスシートはどちらかというと赤字になっていく、国が最後の資金の上でのツケを全部しょっていくような形になって、逆に地方自治体は、使うというのでしょうか、黒字といっていいのか、少なくともバランスシート上では資産の方が大きく出てくる、そういう構造になっていると考えております。  例えば、地方自治体個々バランスシートをつくりましたといっても、その地方自治体一つ一つを見ていった場合に、本当のものが見えてくるかどうかというのは必ずしも保証はないのではないか。ですから、特に、例えばいろいろな形の補助金ですとかあるいは交付税、これは地方負担を国がしょい込むことが制度化されたような仕組みですから、それに対して、決算側の、先ほどの行政コストの計算と、それからバランスシートも、やはり連結で全体がわかるような仕組みになっていないといけないと考えております。  ただ、そうはいいましても、なかなかこれは一どきに、最初から全部というのは難しいということだと思います。ですから、今谷口委員お話の中にもありましたけれども、地方自治体でもう大分つくり始めているわけですから、国も早くそれに追いついて、まず、早く試算をしてみる、それで、なるべく連結全体、日本の国全体の財政状況がわかるものに近づけていくというのが大事ではないか。  先ほど谷口委員から時間の話が出ましたけれども、いずれにしても国の財政だけでも今、国と申し上げますのは政府ということですけれども、各省庁で作業をしていって全容が出てくるには相当やはり、少なくともその手法が確立するまでにはかなり時間がかかると思いますので、そういう意味でも、早くスタートしないといけないのではないか。最後はやはり連結に持っていく必要がある。アメリカが九七年から連邦政府連結財務諸表ということで出すようになったわけですけれども、これも、そこに至るまでに非常に長い道のりがあったと聞いております。ですから、まず、やはり早く着手することが大事だと考えております。
  28. 谷口隆義

    ○谷口委員 全く同意見でございまして、一刻も早くそのような形に持っていく必要があるというように思うわけでございます。  しかし一方、現在の我が国の財政法を見ますと、御存じのとおり、単年度主義であるとか会計年度独立の原則等々がございまして、先ほど、冒頭に私がお話ししたように、予算が重視されておって、決算がほとんど、いわば行政責任も問われないし、政治責任も問われないというような形になっておって、単年度主義、また会計年度独立の原則等々があって、未消化の予算を繰り延べができない、当年度に使い切らなければいけないというようなことが大変問題になっておったり、また、ここに来て、公会計というか我が国の財政状態も急激に悪化しているわけでございますが、その悪化の状況がどうもはっきりわからない。  風聞するといいますか、決算書といいますか、財政状態を見てどの程度の赤字なのかということも、これは総理並びに大蔵大臣の予算委員会における答弁でも、大体六百兆弱ぐらいの国、地方負債がある、借金があるということなんだけれども、これははっきりわからないわけでございまして、これが、私にしますとかなりいらいらするところでございます。このような状況は、そういう公会計のあり方を見直して、透明性と申しますか、先ほどからお話のございましたアカウンタビリティーと申しますか、こういう観点でもこれは極めて重要な問題だ、当委員会決算承認をする委員会でございますから、ぜひそのように改革をしていかなければいけないというように考える次第でございます。  現行の予算制度について御意見等がございましたらお伺いをいたしたいというふうに思いますが、大住参考人の方から、いかがでございましょうか。
  29. 大住莊四郎

    大住参考人 公会計改革の障害が法制度予算制度にあるとすれば、即刻に見直した方がベターであろう、これは当たり前のことでありまして、単年度主義会計、こういったものが効率的な予算の執行の弊害になっているということはまさに事実だと思います。  ただ、そうはいいましても、ある程度既存の枠内で、例えば三重県の予算の執行を見ますと、既存の制度の枠内でもできることをやっている自治体はあるわけです。ですから、制度だけではないということだろうと思います。ただ、そうはいいましても、既存の制度的な枠組みがかなりの障害になっていることは事実ですので、できるだけ早く見直した方がよろしいのではないかと存じております。
  30. 谷口隆義

    ○谷口委員 時間が参りましたので終わりたいと思いますが、いずれにいたしましても、この公会計のあり方は、最終的に実態を把握するという意味において極めて重要だと思う。実態を把握しないと、それに対する処方せんが書けないわけでございますので、政治の立場、また行政の立場から考えても、今の財政がどの程度悪化しておるのか、どういうように行政効率を高めていけばいいのかということは、まず実態を知っていかないと手の打ちようがないという観点で見ても、一刻も早く現在の公会計のあり方を変えていかなければいけないというように申し上げまして、終わらせていただきたいと思います。  以上でございます。
  31. 原田昇左右

    原田委員長 次に、米津等史君。
  32. 米津等史

    ○米津委員 自由党の米津でございます。  両参考人におかれましては、大変お忙しい中を当委員会に御出席いただきまして、また、大変貴重な御意見をお聞かせいただき、心より感謝しております。  私は、民間会社に約十五年ほど在籍していました経験から、国にもバランスシートが必要だという指摘は全くもっともなことだと思っております。行政サービスの質的な評価とともに、二つの柱として、行政のさらなる充実を図る必要があるということから考えますと、なるべく早い段階で真剣にこのバランスシートの導入というものに取り組んでいかなければならないというふうに考えております。特に、公会計におけるバランスシートをいかにわかりやすいものにするのかということについては、一般の市民の方々の中には会計的な知識が乏しい方もいらっしゃるため、その人たちにもわかりやすいバランスシートの作成が可能なのかということについて、両参考人にお伺いしたいと思います。
  33. 加藤秀樹

    加藤参考人 わかりやすさということだと思いますけれども、私はやはりこれをここで、国あるいは地方自治体バランスシートをつくる、あるいは行政コストというものを計算して出していく、それがすべて、だれが見ても、ああ、こんなものだなとすぐわかるというふうにはなかなかいかない、当たり前の話でありますけれども。  もともと、例えば企業の財務諸表にしても、これもふだん見なれていない人間にとっては、必ずしもそんなにわかりやすくないんではないかと思います。ですから、そこは、そのわかりやすさということでいえば、限界はあるんだと思いますけれども、最も大事なことは、やはり正確に今の財政状況がきちっとわかるものをつくっていくという、もうこの一言に尽きるのかなと考えております。  私は、企業と公会計というのはやはり基本的に違うといいましょうか、どこまで企業会計的手法を利用できるのか。使えるのか。そこは大いに使える部分は使っていかないといけないわけですけれども、ただ、企業の場合には、これはもうけを追求するのが目的ですから、コストを常に最小にしていこうという、これはもうほっておいてもそうなる、そうしていこうとするわけですね。  ところが、公会計の場合には、使った予算金額行政マンも評価される。予算をどれだけとってきたか、とってきたものが多ければどちらかというと評価されるような傾向にありますし、また、政治家も、どれだけやはり予算を獲得して地元にそれをつけたかというふうなことで各選挙区では評価される傾向があるわけです。ですから、企業と違いまして、むしろコストが極大化される。常にそういう圧力が非常に強く働いてくるということだと思います。  ですから、私は、ここの部分でわかりやすさというところにもつながってくるんだと思いますけれども、どうやって財政が行われているか、それを数字で、金目といいましょうか、金額で公に対して出していくというところが、このバランスシートをつくることの意義だと思います。ですから、正確に出すということが、その数字自体のわかりやすさといいますよりも、行政で何が行われていてそれにどの程度お金がかかっているかということについての、行政自体のわかりやすさに通じる、そういうことではないかなと考えております。
  34. 大住莊四郎

    大住参考人 先生の御指摘のありました、今のわかりやすさというのは非常に重要なことだと思っております。  といいますのは、会計報告、財務諸表の作成の目的は、だれが見るのか、だれが活用するのかということだと思います。企業の会計報告ですと、投資家でありましょうから、投資家が判断できる資料をつくればいい、こういう発想が当然出てくるはずです。ひょっとすると、投資家はプロですので、かなり専門的な用語がちりばめられたとしていても、当然そういった知識は持っているものとして財務諸表がつくられているということだろうと思います。  ところが、政府バランスシート財務諸表につきましてはそういうわけにもまいりません。納税者、住民に情報開示をするということになりますと、普通の住民が理解できる、表現は悪いですけれども、そこまでわかりやすい開示、例えば、一つ一つの財務諸表の項目が、見てわかる、わからなければ注釈をつける、こういったことが必ず必要になってくるだろうと思います。これはまさに、会計報告の目的がだれを対象にしているのか、恐らく政府会計報告は、プロの公認会計士の方とかあるいはオンブズマン、こういった人たちを対象にしているわけではありませんので、住民が見てわかるという視点、これは不可欠だろうと思います。     〔委員長退席、熊谷(市)委員長代理着席〕
  35. 米津等史

    ○米津委員 再度また両参考人にお伺いをしたいんですが、公会計における外部監査というんでしょうか、上場企業、公開企業では公認会計士による外部監査の導入が義務づけられておりますけれども、公会計についてはどういうふうにお考えなのか、両参考人にお伺いしたいと思います。
  36. 加藤秀樹

    加藤参考人 この点につきましては、私は、現在の歳入歳出による予算決算と、バランスシートをつくるかどうかというのは、決定的に違うと思っております。歳入歳出については、これはこうやってもちろん国会に報告するあるいは審議をしていただく、そういう手続はあるわけですけれども、基本的には、決まった予算金額支出された金額を、きちっとそのとおり、当初の予定どおり支出されたかというチェック、ミスがないかどうかということに尽きるんだと思います。  しかし、それに比べまして、バランスシートになりますと、実際についたお金をどう使ったか、それをどう振り分けるか。さっき私は最初に、箱が一つのものが二つあるいは三つに分けられると。アメリカの例でも、行政コスト、それからそれに対する、どうやって賄ったか。それから最後の帳尻、箱はこう分かれてくる。分けて記帳してくるわけですから、フローストック、それから将来のコストをどうやって換算するか、算入していくか。あるいは、例えば道路とか、いわゆるいろんな箱物と言われるもの、それをどう減価償却するか。判断が入ってくるわけですね。  ですから、その判断自体についてそのことのチェックをしていかないと、いろいろな恣意的な判断が大いに入り得るわけですから、そこに、外部監査というのでしょうか、行政専門の監査人というのがどうしても必要になってくるということだと考えております。
  37. 大住莊四郎

    大住参考人 私は、監査の基準あるいは目的ということでお話し申し上げたいと思います。  従来型、従来型といいますか、今の会計検査のあり方、これは恐らく、法手続ですとかあるいは会計の規則、あるいは、議決された予算どおりに執行されているかどうか、こういう手続的な監査がほとんどであろうということであります。細かい規則があり、恐らく予算の細目にわたって使途が決められている。そのとおりに使っているかどうか、これが監査の基準であったかと思います。  この公会計改革の考え方を理解するためには、その背景にある、行政改革といいますか、行政運営のあり方の変革、こういったものを当然把握する必要があろうかと思います。  御案内のとおり、英国、米国もややそれに近いのですけれども、英国、ニュージーランドといった公会計改革を進めている諸国は、ニューパブリックマネジメント、新公共経営、新しい公共経営というふうに訳されているようですけれども、ニューパブリックマネジメントという革新的な行政運営の考え方を幅広く導入をしているわけです。  一言で申し上げますと、行政の運営、行政管理というのでしょうか、運営の方法に、民間企業的な理念、発想、手法、こういったものを大幅に入れていくんだということであります。民間企業ですと、マネジメントサイクルというものがあります。プラン・ドゥー・シーのサイクルがあるわけです。新しい業務の企画をし、プランをし、それを実行し、その結果を評価する、評価したものをさらに次のマネジメントの企画に反映させていくということでありまして、先ほど来申し上げております公会計改革と車の両輪である行政評価というのは、まさにマネジメントサイクルのシーの部分であります。行政評価をしても、それを次の行政の運営、企画、政策の立案に反映させなければ、何も意味がありません。  つまり、こういう発想のもとで監査を行うということになりますと、監査の中身が違うのですね。行政の業績評価を厳密に行っていく、業績評価を行ったその結果を、次の行政の企画立案、政策の企画立案にフィードバックしていく、こういうことが当然求められていくわけです。  ですから、恐らく監査の中身が従来は法手続ですとか予算の執行、何か手続的な、決められたとおりに予算を執行すればいいんだ、こういう発想で監査が行われていたかに承知しておりますけれども、そうではなくて、行政の業績評価を行う、公会計部分は少なくとも行政コストについての厳密な評価という点で重要だということであります。
  38. 米津等史

    ○米津委員 大変参考になりました。先ほど参考人がおっしゃっていましたように、大事なことは、まずスタートしてみるべきだということだと私も思います。ただ、いかんせん、一気に一〇〇%のスタートはできるわけではないので、ぜひ両参考人におかれましては、今後もスタートに至るまでの助走期間、ここのフォローをよろしくお願いをしたいというふうに思います。  ありがとうございました。
  39. 熊谷市雄

    ○熊谷(市)委員長代理 次に、辻第一君。
  40. 辻第一

    ○辻(第)委員 きょうは、お二人の参考人には、お忙しい中当委員会に御出席をいただいて、貴重な御意見を拝聴いたしました。心から御礼申し上げます。ありがとうございます。  それでは、お尋ねをさせていただきます。  我が国では、長期にわたって公会計現金主義単式簿記に基づく会計が行われていたのでございますが、そういう中で、最近急速に、公会計改革バランスシートの導入、発生主義複式簿記ということを柱にしたことが大きくクローズアップされてまいりました。なぜこのように、急にといいましょうか、大きくクローズアップされてきたのか、その背景といいますか、政治、行政財政実態などについてのお二方の考えを伺いたいと思います。
  41. 加藤秀樹

    加藤参考人 もう相当長い間、日本の経済は不況の状況にあって、経済の話というと必ず景気対策というのが現状かと考えております。ただ、一方で、景気対策のために国の支出がどんどんふえていく。それで、これのツケがたまっているわけですけれども、それを何とかしないといけない、景気が一段落すれば次が財政の話だということは、これはもう恐らく日本人全員が見えている話だと思っております。  それとあわせて、行政改革についてはまず、先ほど私、行政改革を進めていく上で、組織定員予算、それから行政サービス中身四つのうちの後ほど私は重要だと考えておりますけれども、やはりまだ、手がついているのはむしろ最初の方からなんですね。ですから、大事なところはまだまだ手がついていない。行政の話と財政をどうするかというのは、これは裏腹の関係にあるわけですから、その両方の点に関して、やはり財政及び行政改革をどうするかというのはもう避けられない、目の前に迫っている話だと考えております。  まさにこれは、企業が過去数年、長くとれば十年近くずっとリストラというのをやってきたわけでして、そこで企業も本当に死に物狂いでやってきた。それと同じ状況が国と地方自治体にも迫っている、そういうことについてはだれも異論を挟む余地はないわけだと思います。  そういう状況が、やはりこの公会計、まさに現状をきちっと把握するところから、企業にしてもバランスシート一つなければリストラもあったものではないではないか、国だって同じではないか、そういうことだと考えております。
  42. 大住莊四郎

    大住参考人 公会計改革の背景ということの御質問ですけれども、私は、公会計改革会計だけの問題としてとらえるのは間違いだろうと思っております。公会計改革は、恐らく、先ほど申し上げましたような行政改革、もう少し申し上げますと、ニューパブリックマネジメントの改革の一環であります。  その背景に何があったかということですけれども、恐らく先進諸国共通の問題があったかと思います。経済の成熟化に伴い、経済成長率が低下をする、経済の停滞が続く、こういった中で、税収が伸びない、そもそも政府の活動の財源である税収自体が伸び悩む、こういう状況がまずございます。その中で無理な財政運営をしますと、当然、財政の悪化に伴って、財政の赤字ですとかこれに伴う累積債務の蓄積、こういうことがございます。  一方で、そもそも財源が集まらないわけですね、税収が伸びないわけですから。政府の活動運営資金が少ない。少ない中で、住民のニーズは多様化する。これは、経済の成熟化に伴ってそういうことは当然起きてくるわけです。  ナショナルミニマムがある程度達成をされますと、その次どうなのかということなんですけれども、タイミングが悪いことに、先進諸国、日本もそうです、急速な高齢化が進んでおります。これに伴いまして、行政サービスに対するニーズがそもそも増大をするわけです。増大するだけならまだしも、ニーズ自体が多様化をする、こういう状況を迎えます。そうしますと、政府を含めた公共部門は、限られた少ない財源で、従来よりもより多くのサービス、より多様化したサービスを生産し供給する、住民に提供していく必要性に迫られる、こういう状況に立ち至っていく、こういうことになります。  日本の場合ですと、昨今の財政運営、経済の停滞というものを見ますと、まさにこの状況が当てはまっているわけですけれども、そうなりますと、政府に対するアカウンタビリティーの要請が高まってくるということになります。その政府に対するアカウンタビリティーを満たす有効な一つの手段、これが複式簿記発生主義会計への転換を内容とします公会計改革になった、こういうことだろうと思います。     〔熊谷(市)委員長代理退席、委員長着席〕
  43. 辻第一

    ○辻(第)委員 この間、国や地方公共団体をめぐって、財政危機の問題やあるいは行財政のあり方の問題ともかかわって、この公会計のあり方が議論が高まってきた。先ほどその背景もお聞きをしたわけでありますが、この発生主義会計方式あるいは企業会計方式などの導入、これまで長きにわたって続けられてきた我が国の、現金主義といいましょうか単式簿記といいましょうか、そのような国や地方公共団体の会計の原則がありますが、さまざまある国や地方公共団体と企業の違いなどを踏まえた上で、先ほどお聞きしたんですが、国や地方公共団体における発生主義会計方式を導入する場合のメリット、そして反面デメリットがあると思うんですが、そういうものについて、両先生のお考えをお尋ねいたします。
  44. 加藤秀樹

    加藤参考人 メリットとデメリットということだと思います。  私は、まずデメリットの方から申し上げますと、デメリットはないと考えております。もちろん、最初、少し手間暇はかかると思います。しかし、手間暇は何をやるにも、新しいことをしようと思えばかかるのは当たり前でして、その手間暇についても、私は、最初の、行政コストをどう考えるか、あるいは将来発生するものをどういうふうに考えるかという、そのルール決めのところだと思うんですね。あとは、いずれにしても毎年、資金の出入りだけのために何万枚というような伝票をつくっているわけですから、その手間暇が今以上にふえることではない。単に左右に分けるだけのことをするだけですから、基本的に、当初どうするかというところを除けば、そういう意味ではデメリットはないと考えております。  一方、メリットですけれども、これは先ほど私、最初に幾つか簡単な例でお示し申し上げました。やはり行政コストがどうかということと、それから、ある時点で切ったときの資産負債というものをきちっと一つの表、先ほど来委員の方からもいろいろお話がありまして、私も伺っておりました、その一覧性、網羅性というお話が谷口委員からもありましたけれども、メリットはやはりこのことに尽きるのかなと考えております。  それと、行政の場合には、行政コストアメリカの例のように、各政策費目ごとコストを計算していくことによって、それに一体どれだけかかったかということが情報が公開されるということのメリットは非常に大きいのではないか。それと同時に、どれだけの資金が先送りされているのか、将来の負担になっているのかということが、これまた一覧性ということで出てくる。そのことのメリットが非常に大きい、こんなふうに考えております。
  45. 大住莊四郎

    大住参考人 私も基本的に、加藤参考人のおっしゃったとおりでありまして、デメリットについてはまずないということであります。  確かに、移行期、行政コストがかさむ、大変だという意見が多いわけですけれども、ルールづくりがなされ、例えばこの新しいシステム、発生主義会計のシステムに転換するためのソフトウエアのようなものを作成して関係省庁に配付をすれば、あとは入力するだけで自動的に出てまいります。ですから、そんなに大変なことではないと思います。  メリットにつきましては、まさに加藤参考人がおっしゃったとおりでありまして、財務状況を客観的に理解し得る情報が入手できるということにあわせまして、政府行政評価の重要なコスト情報が出てくるということであります。
  46. 辻第一

    ○辻(第)委員 国や地方公共団体には、企業では果たし得ない分野といいましょうか、サービスや業務がございます。そういう中で、いろいろメリットのお話も聞かせていただいて、なるほどなるほどと思ったところもあるんですが、しかし、一面、企業で行われている会計方式を国や地方自治体に適用するということはいかがなものかというような懸念もするわけでございます。  国や地方公共団体における会計制度に関して、発生主義あるいは企業会計制度の考え方を導入する場合には、どのような形でこれらの制度公会計に取り入れていくべきなのか、この点についてお二方にお伺いをいたします。
  47. 加藤秀樹

    加藤参考人 少し先ほどの繰り返しになる点もあるかと思いますけれども、発生主義による複式会計、これは本来、企業だけのためにあるということではないんだと私は考えております。ただ、公会計につきましては、伝統的に歳入歳出だけで把握するという仕組みがあって、しかも、それでも何とかやってこられたという状況の中で導入がおくれていたということにすぎないんだと私は考えております。  ですから、もともと、企業会計の手法を取り入れるというよりも、政府会計をきちっとしていく、そういうことではないのか。ですから、本来、企業に合った手法ということではないと私は考えております。ですから、企業会計化というよりも、公会計政府会計の近代化というふうに言う方が私は適切なのではないかと考えております。  その中身は、会計を分けるということであります。行政コストがどうであるか、それと、資産負債がちょうど対応してわかるように変えていく。分けるということですから、そのことに関しては企業も公会計もない、この方が見やすいという一点に尽きる、こんなことではないかと考えております。
  48. 大住莊四郎

    大住参考人 私も、加藤参考人の御意見に全く賛成でございます。  複式簿記発生主義会計は企業会計的なシステムですけれども、これが企業だけに適したものなのか。そうではないと思うのです。恐らく、これは政府にも同じように適用可能だろう。適用可能であるどころか、これを適用することによっていろいろな情報が出てくるということだろうと思います。  複式簿記発生主義会計の導入によって得た情報もとに、それをどう活用していくのかということがまさに重要な点でありまして、今回御説明申し上げておりますPHP総合研究所バランスシートなんですけれども、これは二つの方向で発展させなければ余り意味がないだろうと思っております。  これは説明の繰り返しになりますけれども、連結ベース、公的企業ですとか第三セクターまで広げ、まさに岩手県さんがやられているような方向、これは正しいわけです。一方でセグメント会計行政サービスカテゴリーごとのコスト計算をする。これは中央政府でも有効ですけれども、何よりも有効なのは、自治体でこういうことを進めていくことだと思うのですね。恐らく宮城県さんは、一部こういうことをやられているようなんです。  行政サービスカテゴリーごとの、サービス分野ごとのコストがどのぐらいあるのか。このぐらいコストがかかるのであれば、例えばNPOにお願いするとか、あるいは場合によっては民間企業でもいいかもしれない、コストの官民比較なども行い得る、こういうことでありまして、いろいろな使い方がある。恐らく、情報が整備されてくるにつれて、こんな使い方もある、あ、こういう使い方もあると、いろいろな使い方が認識されるようになると思っております。
  49. 辻第一

    ○辻(第)委員 最近の新聞を見ておりますと、公会計とそのあり方をめぐる記事を時々目にするわけでございます。導入を進めるべきという御意見、その反面、例えば五月二十六日の朝日新聞の記事によりますと、作成しても、道路や防災工事など、資産をどう扱うかなど簡単にはいかない。佐賀県の声。また、行政と一般企業は違う、財政が苦しくても道路を売るわけにいかない。厚木市。ここは貸借対照表を作成していない自治体ですか、あるいは作成しても、先ほどの佐賀県のような声もございます。また、静岡県や三重県などにおいて、住民サービスの縮小につながるという批判も出ているようでございます。  自治体の財政状況を的確に把握するために活用することと、これらを踏まえつつ、一律的な対応ではなく、行政の責を踏まえて施策、政策を進められることが求められる、こういうふうに思うわけであります。  そういう中で、大住先生に伺うわけでございますが、米国では以前から発生主義会計を取り入れられた。また、一九九〇年代に入って、ニュージーランド、スウェーデン、フランスあるいはイギリスなどでその導入が行われ、一定の経験を経ているようでありますが、そういう中で、メリットはいっぱい聞いたのですが、デメリットというようなものはあるのかないのか、どのようになっているのか、お伺いをいたします。
  50. 大住莊四郎

    大住参考人 まず、日本の国内の自治体で、こういうバランスシートをつくっても意味がない、例えばインフラ資産の評価が非常に難しい、何のためにやるのかわからない、現行どおりでいいじゃないか、こういう意見があることは承知しております。  ただ、恐らくそれは二つの理由があると思うのです。そもそも作業が大変だ、そういうことだと思います。ただ、やってみると、意外とさほどでもないということがおわかりになると思うのですけれども、作業に入る前の段階ですと、実態がよくわかりませんですから、大変だ、こういう先入観が先立ってしまうということだろうと思います。  もう一つは、何のためにこれを導入するんだ。公会計改革を行うんだという理念のようなところが、全くおわかりではない。要するに横並び的な意識が強いものですから、三重県さんがやった、宮城県さんがやった、ではうちもやらなければいけない、こういう発想だと思うのですね。  そもそも何のためにやるのか。これは、きょうの冒頭で御説明申し上げましたけれども、アカウンタビリティーの達成のためであるということだろうと思います。そもそも何のためにやるのかという目的が定まらなければ、確かにそういう自治体の反論のようなことが出てくると思います。  諸外国の事例ですけれども、PHP総合研究所におきまして、簡単なサーベイをしております。厳密な調査ではありませんけれども、文献を中心にサーベイをしたわけです。諸外国におきまして、確かに導入当初、今の日本の自治体におけるような意見があったということは承知しておりますけれども、デメリットが大きいとか、そういう話は余りなかったと思います。  ただ、このPHP総合研究所調査の結果ですけれども、ちょうど調査室でおつくりになりました資料の三十五ページ以降に、簡単なまとめがございます。この中で、例えばドイツ。いまだに現金主義会計を継続しているのは日本とドイツだけであるということなんですけれども、ドイツがまだ公会計改革に踏み切っていないわけです。  ただ、全く動きがないわけではございませんで、州政府、自治体ベースで公会計改革の議論を進めております。恐らく、何らかの改革案が出てくるだろうと思っております。中央政府は、まだ動きはないということです。
  51. 辻第一

    ○辻(第)委員 どうもありがとうございました。
  52. 原田昇左右

  53. 保坂展人

    保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  加藤参考人に、もうお時間とは思いますけれども、いろいろ項目を用意していましたので、まとめて一問だけお聞きしたいと思います。  お話の中で、NPOが大きな役割を担うべきである、そして国民の活動が、官庁が全部網羅している社会から、卵の中に、官庁もあるし、自由な部分もある、そういうふうな変化が必要だと伺いました。  私、つい最近、こちらの石井さんとも一緒に行ったのですが、神戸空港の問題を現地で見ていこうよということで、作家の田中康夫さんとともに、六甲山の裏側の巨大な、あれは土を掘削してベルトコンベヤーで海の側までずっと十数年移動させている、そういう開発の現場などを見てきました。また、神戸の財政状況や、あのあたりの埋立地の状況なども見てきました。  御存じのとおり、住民投票という署名運動があったわけで、これが必ずしも議会の中では受けとめられなかった、大変残念だと思いますが。一方で、吉野川の第十堰などではやはり、官の側から発想した公共事業やあるいは計画というものに対して、住民の側あるいは納税者の側、あるいは別の言い方をすれば有権者の側で直接異議申し立てをしていこうという動きが出てきていると思います。  このあたりについてどういうふうにお考えになっているのか、お時間がないと思いますが、ぜひここだけ質問をしたいと思います。
  54. 加藤秀樹

    加藤参考人 非常に広範かつ重要なお話だと思います。先ほど申し上げましたことの、これまた繰り返しになるかと思いますが、私は、パブリックなこと、公共的なこと、これは簡単に言いますとみんなのことですね、みんなのことというのは人のことじゃなくて自分たちのことですから、自分たちのことは自分たちでやるというのが原則だと思います。  これは、最近よく自己責任という言葉が使われます。自己責任というのは、何もビジネスをやる上での自己責任ということでなくて、公共的なことに関しても、まずはやはり例えば地域、コミュニティーでどうするか。私、先ほど江戸時代のことを申し上げました。昔から日本には、NPOというような言葉を今さら使わなくても、結とか講とか組とか衆とかいろいろな言葉があって、まさに自分たちのことを自分たちで処理してきた長い歴史がある。そういう意味では、日本というのは、民がパブリックなこと、パブリックパブリックなことをするという意味では、非常に誇るべき歴史を持っている国だ、かつて日本はNPO大国であった、私はこんなふうに思っております。  それが、明治の初めに、やはりこれは近代化しないといけない、追いつかないといけないという中で、パブリックなことをガバメントがすべてやるんだという仕組み制度化されてきたわけですね。ですから、例えば民法の三十四条、公益法人の規定ですけれども、これは、公益は国が判断するんだ、公益、要するに公の利益に立つか立たないかは国が、お上が判断するんだということを制度化した規定だと私は思います。ですから、例えばこんなものは早く変えないといけないのではないか、そんなふうに考えております。  それから、神戸の例について委員からお話がありました。神戸自体については、私自身は神戸市民ではないものですから、必ずしもよくわかりません。しかし、それを公共事業ということに一般化して言いますと、今や、そんなに物をつくる、しかもそれをすべて広く言って官が、地方自治体も含めてですけれども、リードしていく時代ではない、もうとっくにそういう時代は過ぎているのではないのかなと私は考えております。  それから、住民投票のお話も出ました。住民投票というのは、それが万能ではありませんし、やや扇情的になる可能性が常にあるわけですから、気をつけないといけない。ただ、それはわかった上で、私は、これは非常に大事な手だてだとは思います。今は投票率が平均して六割程度ですから、四割の人がすべて政治に関心がない、自分のこと以外に関心がないとは私は決して思いません。その四割の人も、例えばごみの問題であれそういう空港の問題であれ、問題が特定されると、やはり自分のこととして考えるようになってくるのではないか。その結果が、住民投票ということに出てくるのではないか。そういう意味では、非常に大事な手だてだと思いますし、また、それが正確に、住民投票というものがきちっと行われるためには、やはり情報公開というのは非常に大事であると。きょうのテーマでありますバランスシートを筆頭にして、やはりどれだけきちっと行政情報を出していくか、これがスタートかなと考えております。
  55. 原田昇左右

    原田委員長 加藤参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、私から厚く御礼を申し上げます。  御多用中であると承知いたしておりますので、ここで御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。  保坂君。
  56. 保坂展人

    保坂委員 それでは、続きまして、大住参考人の方にお聞きしていきたいと思います。  このバランスシートの問題にしても、この国の債務が一体どのあたりのところにあるのかということ、もう最も基本的な問題すらわからないというまことに恥ずかしい状態だと思うのです。しかし、これはいきなりでき上がった状態ではなくて、明治の昔から長い年月を重ねられてきてこういう制度ができ上がり、そしてまた、本来なら、敗戦、そしてさまざまな役所のつくりかえが行われた時期にもっと透明化されてしかるべきだったと思うのですけれども、高度経済成長があって、このような会計システムでも何とかやってこれた、あるいはやってこれたように思えたというところに変革がおくれた原因があったというふうに思うわけなんです。お役所の中にもおられたということですので、こういった情報公開やバランスシートの導入、これだけでも不十分だというふうにおっしゃっているんですけれども、では、どういう手順で、何から始めていくべきなのか。特に、役所の中からということ、あるいはその外からということ、あるいは国会の中でということも含めて、これは有機的に、どんな順番で事を始めていくべきなのかということについてお考えを伺いたいと思います。
  57. 大住莊四郎

    大住参考人 本日、私が冒頭で御説明いたしました中で、図らずも米国型と英国・ニュージーランド型、こういう二つのタイプをお示ししておりました。これは、公会計改革の理念の違いであるわけですけれども、もうそれ以前に、行政改革といいますか、自治体改革といいますか、改革の発想が少し異なっているように思います。  英国型の場合ですと、御案内のとおり、八〇年代、サッチャー、さらにメージャー、こういう保守党政権下で、改革が中央集権的な形で、強い首相のリーダーシップのもとで進められていったわけです。トップダウン型の改革であり、包括的で急激な改革を推し進めていったわけです。それが民営化を推し進めたということもありますし、さまざまな制度改革を急激に、中央集権的に一律でやっていった、こういうことです。  もう一つのタイプ、これは米国型だと思うのですけれども、GPRAなどというのが最近有名ですけれども、米国の連邦政府改革のモデルは、ほかの国ではありませんで、実は米国内の州政府改革のモデルであった、これは有名な話であります。オレゴンとかテキサスとか幾つかの州で、州政府改革、州政府におきまして行政評価のシステムを入れていった、こういうお話は御案内のとおりであります。恐らく、テキサス州のモデルをベースに、ほかの州の事例も参考にしながらGPRAの仕組みをつくっていったというような形だと思います。  つまり、比較的適正な規模というんでしょうか、モデルとなるようなどこかの、自治体なり州政府日本は単一国家ですからありませんけれども、どこかの自治体をモデルにとりあえずつくってみる、そういうアプローチもあろうかと思います。いずれが適正であるかということは、多分政治システムにかかわる問題ですので何とも申し上げられませんが、二つのパターンがあるということだけ申し上げさせていただきます。
  58. 保坂展人

    保坂委員 もう一問、第三セクターについて伺いたいと思うんです。  今日、金融機関の破綻の原因になったさまざまな不良債権、これは、途方もない計画のリゾート事業だとかあるいは巨大な開発が失敗し、破綻したということが原因になっているわけです。実際に、全国の第三セクター、自治体が出資している事業の中で、その第三セクターも機能不全に陥ってもうなくなってしまい、そして自治体もその出資した部分以上の責任は関係ないし、都道府県も及び腰で、国の方もこれは財投で貸し出しているんだからと。  例えば、典型的なのは、環境事業団が王子が岳リゾートというビルをつくったわけなんですね。そこをリゾートにしようとしたところで、結局とんざしちゃった。主体がなくなっちゃったわけですね。そういうことを抱えている自治体というのは多々あるだろうというふうに思います。  確かに全体の、国の財政地方財政もそれぞれ同じルールでリンクさせていかなければならないでしょうし、そして地方に隠れている第三セクターの問題について何か、実態究明が必要だということは言うまでもないと思いますけれども、お話を聞かせていただきたいと思います。
  59. 大住莊四郎

    大住参考人 第三セクターの趣旨につきましては、恐らく、官と民、公共性のあるサービスを供給するために民間の経営ノウハウなり資金を入れていいとこ取りをしよう、官と民のいいところを組み合わせて事業運営をすれば非常にいいものができるんじゃないか、こういう発想だったと思うのですけれども、それが破綻をした、そういう事例が相次いでいるわけだと思います。  第三セクターが失敗した原因、これはいろいろ言われると思うのですが、そもそも責任が不明確であったということではないかと思います。責任が不明確であり、経営が傾くと民が手を引く。下手に債務保証的なことをやっておりますと、とめどもなく自治体の方に負担が来る。最近は、裁判の事例でも、これは有限責任だということが大体決まりつつあるわけでしょうけれども、それにしても、第三セクターのこの問題は、恐らく自治体の会計連結ベースでつくる場合に非常に重要な問題になってくるだろうと思っています。ですから、第三セクターの債務につきましても、恐らく持ち分のようなものを設定しながらつなげていく必要があろうかというふうに思っております。  さらにもう一つ申し上げますと、PFIの仕組みがありまして、これはまさに、社会資本整備の領域に民間の資金と経営ノウハウを導入するということだろうと思いますが、どうも、本国であります英国のPFIとは少し違うんじゃないかという懸念を持っております。  つまり、本来英国のPFI——PFIが失敗というか、PFIの形態があいまいになりますと、恐らく第三セクターの二の舞だなんという報道がいろいろ散見されますけれども、英国におきましては官と民の役割分担が非常に明確である。つまり契約で決まっているわけです。個々の契約で、官がここまで責任を負う、民はここまで責任を負うということが明確に決まっております。安易な債務保証などはやらない、これは当然のことなんですけれども、どうも日本のPFIが、そういう方向ではない、第三セクターにやや近いようなものになっているんではないかという懸念を持っております。
  60. 保坂展人

    保坂委員 ありがとうございました。時間になりましたので終了します。
  61. 原田昇左右

    原田委員長 次に、桜田義孝君。
  62. 桜田義孝

    ○桜田委員 自由民主党の桜田義孝でございます。大住参考人につきましては、本当にお忙しいところをありがとうございます。  公会計のあり方ということでお伺いするわけですが、私は、衆議院議員になる前には、県会議員、市会議員とやってきたわけなんですけれども、十二年前に柏の市議会議員になったとき初めて質問をしたときに、なかなか単年度制の会計がわからなかったわけですね。私は会社を経営していたもので、複式簿記が普通で、複式簿記しか知らなかったわけですね。それで、いつも財政部長にいろいろなことを聞きに行くんだけれども、なかなかのみ込みが悪くて、難しかった。少しずつなぜ企業会計のようなことをやらないかということを聞いて、市会議員になる前に行政改革懇話会とかで、行政改革ということについて非常に興味のある立場にあったものですから、よく伺ったんです。  それで、企業会計にやるには非常に膨大な作業が必要だ、柏市のことをやれと言われても、その人手がない、そしてだれがやるのか、自分以外の命令する人がいないんだというようなことで、大変行き詰まったというか、なかなかやってもらえなかったわけなんです。そのときの財政部長は既に亡くなられているわけなんですけれども、その財政部長の話の中に、それをやっても行政面でいうと余り意味のないことなんだ、こう言われたことを今でも非常に鮮明に覚えているんです。  そんなことで、バランスシートを導入する、そして損益計算書を導入することについていろいろな、帰られた加藤参考人も、大住参考人もおっしゃられていることについて、私自身は大賛成で、取り入れるべきだな、取り入れるべきだなというよりは、作成すべきであるというような観点を持っております。すぐにでもやった方がいいんじゃないだろうか。すぐ実施すべきだと参考人が言っていましたけれども、私もそのとおりだと思うんです。  ただ、そのすぐ実施するについても、やはりもっともっと議論が必要なのではないかなというような感じがいたします。二次的に参考資料として利用するにはつくった方がいいとは思うんですけれども、やはりいろいろな面から見て、直ちに行うについては若干時間が必要なんではないだろうかなという気がします。  そこで、まず第一番目に、このプラスマイナス、先ほどの質問の中においても、マイナスはないんだ、すべてプラスなんだということをお伺いして、私自身も、行政の効率化や税金の有効活用ということについて極めて重要だとは思っているんですけれども、これを取り入れた場合、日本政府におきまして、国民におきましても、果たしてどの程度の効果があるのかなと。効果という点について、まず一点お伺いしたいなと思います。
  63. 大住莊四郎

    大住参考人 恐らく、バランスシートを作成し、導入していくという効果は、とりもなおさず、どう活用するのか、どう使っていくのかという関係だと思います。これを単なる情報提供に終わらせるならばほとんど効果はないだろうと思いますけれども、行政運営、ニューパブリックマネジメント的な考え方に立ちますと、次の政策に反映させていく一つの素材にしていくということであればそれなりに効果が出てくることは間違いないと思います。
  64. 桜田義孝

    ○桜田委員 この中に、単式簿記、歳入歳出のやり方は今日本とドイツだけだ、こう言われております。諸外国の例を見ますと、アメリカやイギリス、フランスなんかはもう既に、昔は今の日本やドイツと同じようなやり方をやっていて、ある時期に何らかの税金の効率的利用に疑問を持った段階で、あるいは行政改革アカウンタビリティーという点から見て、いつごろからこういうシステムになったのか。そしてまた、日本やドイツよりも英米の場合の方がよりよい財政政策ということが、特に目立った形で発生しているのかどうか。その辺、どの程度状況を把握しているかどうか、ちょっとお伺いしたいなと思っています。
  65. 大住莊四郎

    大住参考人 まず、いつというお話でございますけれども、これは八〇年代の後半以降ということだろうと思います。  そのきっかけとなりますのは、恐らく、政府財政赤字、累積債務の問題が顕在化をしてくるということと、納税者に対する負担の問題が非常に重大な問題としてクローズアップされ、ある場合では納税者の反乱というようなことが起きてくる。こういうプロセスを経て、政府部門につきましても財務状況を客観的に開示する必要がある、これは納税者に対する義務だ、負担を強いているわけですから当然の義務であるという考え方が出てまいります。それとともに、先ほど申し上げましたように、限られた財源でより多くの、より多様化したサービスを供給していく必要があるわけですから、効率化を図る必要がある、行政のイノベーションをする必要があるという観点が出てまいります。この二つの問題点から公会計改革が一気に加速されたというふうに認識しております。  済みません、二つ目の御質問……。
  66. 桜田義孝

    ○桜田委員 英米では会計をやり直しして、目覚ましい効果という形でどの程度出ているのかという質問でございます。
  67. 大住莊四郎

    大住参考人 アメリカにおきましては、まだ本格的に移行したという段階ではありません。まだ、とりあえず出してみたという段階だと存じております。  英国におきましては、中央政府は、資源会計というのでしょうか、RABというふうに呼んでおりますけれども、リソース・アカウンティング・アンド・バジェティング、こういう仕組みを導入することを決定しております。ただ、決定をしたといいましてもまだ試行期間でございまして、完全に移行するのは二〇〇一年度以降ということなんです。ですから、そういう意味でいいますと、まだ効果ははっきりと検証できないということだろうと思います。
  68. 桜田義孝

    ○桜田委員 よくアカウンタビリティー説明責任ですけれども、私は、企業会計でなくても、歳入歳出でも、よく大蔵省なんか、我々が予算委員会でやる部分については情報の開示というのはある程度できているんじゃないかなという気がするんですけれども、どの辺の部分がそのような、開示が十分でないという認識を持たれているのか、ちょっとお伺いしたいなと思います。
  69. 大住莊四郎

    大住参考人 現行で十分かどうかという御質問かと存じますけれども、恐らく現行の情報開示ですと、少なくとも経済活動フローストックの結びつきがよくわからないんですね。ストックに関する情報がよくわからない。これは発生主義会計を導入すべきだという議論の根幹にかかわることなんですけれども、社会資本を含めまして、政府が固定資産を取得したときの費用が、支出したときだけにかかってしまう。本来であれば、社会資本なり固定資産を使っている期間、均等に費用が発生しているはずだ、こういうふうに認識するのが普通の考え方だと思うのですけれども、そういう情報が全くない。  さらに言いますと、社会保障関連の費用ですとか、あるいは退職金債務といったものが、本来であれば毎年毎年費用が生じているはずなんですけれども、そういったことが、現金主義会計に基づく現行のシステムでは全くわからないわけです。毎年毎年発生しているはずの行政コストを正確に見積もろうということだろうと思います。
  70. 桜田義孝

    ○桜田委員 バランスシートの導入の議論の中で、特に目的論、技術論ということもありますけれども、まあ目的については先ほどから何度もお話しなさっているのでちょっとここでは省略させていただくんですが、この導入に関しては、技術的な面において、行政面は企業とは大分違うのではないだろうかなと思いまして、国の資産評価について、本当にこのバランスシート評価にたえ得るものの仕上げになることが可能なのかどうかという、基本的なことをちょっとお伺いしたいなと思います。  そもそも、政府のやることあるいは行政全般のやることというのは、企業と違って、採算の合わないものをやはり行政府が担うのではないだろうかというものであって、利益を目的とする企業とは根本的に違うのではないだろうか。採算が合わないからこそ行政が担当するのであって、もしもうかればみんながやってしまうのではないかなというような、国が黒字になるような制度は、やはり政府ではないのではないだろうかと思うんですね。やはりいろいろな、福祉手当だとかいろいろありますよね。児童手当だとかそういったこともありまして、それは企業の利潤関係とは全く相反しているのではないだろうかなというふうに思うんです。  いろいろなものを見ましても、やはり前提や仮定というものは非常に多いわけなんですけれども、公共的なものに関する基本的な考え方というものは、また企業会計に単純に取り入れさせるのは難しいのではないだろうかというような気がするんです。  例えば、平成十一年度の予算案一つ見ても、税収は五七%、まあいろいろなことで六〇%ぐらいしか税収がない。やはり支払いが四〇%近く、正確には三八%でしたけれども、三八%は借金であるということになると、単年度制をとってみても、収入よりも支払いの方が大きいというこの一年の構造を見ても、収入と支払いが同一にならないと半永久的に黒字の財政というのはできないのじゃないか。永久的に政府会計というものは債務超過になるのではないかという気がするのですけれども、その点についてはどういう御見解を持っているか、ちょっと伺いたいと思います。
  71. 大住莊四郎

    大住参考人 政府の仕事は民間企業とは違う、まさにおっしゃるとおりでございます。政府は利益を追求するわけではありません。むしろ利益を上げてはいけないわけで、黒字であればむしろ納税者に還元すべきだということだろうと思います。  そもそも公共サービスというのは対価をとりませんので、それで独立採算なんというものは成り立ち得るはずがありません。ですから、民間企業と全く同じ考え方、同じ理念というものは公共部門には該当しないという考え方があり得ます。ただし、それは利益を上げるためにバランスシートを導入するというわけでは必ずしもありませんので、つまり、政府行政運営の効率化を図るための一つの素材としてバランスシートを導入すべきだということを申し上げているわけです。  技術的に困難がある、これはまさにおっしゃるとおりでございまして、特に固定資産の評価、先ほど来申し上げておりますように、道路のようなインフラ資産、こういったものは売りたくても売れません。売ってはいけないものであります。したがいまして、こういったものをどうやって評価をするのかということがまさにバランスシート公会計改革の主要な議論の一つであったことは言うまでもございません。  つまり、先ほど、社会資本、道路のようなものはどういう評価をするのでしょうということで、一億円かかった道路であればとりあえず一億円として資産評価をします、使っている耐用年数の期間、次第に減価償却をさせますということなんですけれども、こういう評価でいいのかどうか、大議論があるわけです。  とはいうものの、こういった資産を計上しない方がいいという議論にはならないわけです。少なくとも、こういう資産を税金で購入をしているわけですから、あるいは国債なり地方債で借金をしながら整備をしているわけですから、情報開示という意味では当然バランスシートに掲載すべきであろうというふうに思っております。  国の財政が今三八%赤字である、公債で埋められているということの御指摘なんですけれども、ただ、それは経常的な経費ですべて消えているわけでは当然ないはずです。景気対策という趣旨で、社会資本整備を進めている資金としてかなりの部分が回っているはずでありまして、それは一たん施設、社会資本が整備をされますと、その便益は後世代にわたって及ぶはずであります。もしそうであるならば、仮に今年度かなりの財政収支の赤字であったとしても、その施設整備にかかった費用、例えば道路、景気対策で整備をしましたこの費用を、当期だけのコスト、今年度だけのコストとして計算するのではなくて、例えば二十年使うのであれば二十年間に配分していけばいい、二十分の一だけ積んで当期の行政コストとして見てみましょう、そういう発想なんです。  発生主義会計はそもそもそういうコストの厳格な期間配分のようなことが前提になっておりますので、発生主義で見た方が、少なくとも今の、現金主義ベースでの三八%の公債依存率なんという指標よりははるかに正しい情報が得られると思います。
  72. 桜田義孝

    ○桜田委員 そうしますと、参考人におかれましては、日本のあるべき姿という言葉が最近非常に出回りつつあるのですけれども、今、財政の方からいうと公会計複式簿記にした方がいいという感じの御意見でありますけれども、私もそれについては異論ありませんし、そうあるべきだなと思うんですけれども、ただ、私は、時間がもうちょっと必要かなと思うときに、参考人におきましては、日本債務超過、三百何兆円というような債務超過になっている、あるいは先ほどの加藤参考人については、九百兆円の債務超過であるということになると、やはり日本会計財政の基準というものは、債務超過、プラスマイナスゼロが本来の日本のあるべき姿としては望ましいという前提に立っているのかどうか、その辺もちょっとお伺いしたいなと思います。
  73. 大住莊四郎

    大住参考人 PHP総合研究所試算によりますと、三百七十兆ほどの債務超過なんですけれども、債務超過が直ちに悪いかと。そうではございません。これは売却不可能な資産、例えば本当に役に立つインフラ整備、社会資本整備を進めたとしましても、売却不可能ですので、結果的に、仮に財源が国債なり地方債で賄われたとしますと、借金だけが膨らんで、債務だけが膨らんでいきますので、資産の方からは除かれますから、債務超過としてカウントされてしまうんですね。ですから、それはそれで、債務超過だからけしからぬということではないはずなんです。ただ、現にこれだけ純粋な負債がありますということを情報開示する意味はあろうかと思います。  私は、プラスマイナスゼロがいいと申し上げているのではなくて、むしろ、恐らく債務超過であって当然だろうと。ただ、その金額あるいは幅が問題だろうと思っております。
  74. 桜田義孝

    ○桜田委員 債務超過についてもうちょっとお伺いしたいんです。  私は、地元で毎月第二月曜日の夜、平成目安塾という塾をやっているんですけれども、そのときの参考人に、第一勧銀総合研究所の山家悠紀夫さんという専務理事の方においで願って、実は、お配りしたものは、そのときの講演の一部なんですけれども、中にいらっしゃる方はぜひこの六ページを見ていただければありがたいなと思っております。  日本財務会計アメリカ、ヨーロッパのやり方とは違うんだ、それはわかりました。ただし、アメリカなんかの財政は、よくそのお話を聞いていると、日本歳出歳入にプラス年金会計というものを合算してあるというのがアメリカ会計だそうであります。私が調べたわけじゃなく、あくまでも研究所の調べに基づいて、信頼をしてお話しさせていただいておるんですが。  今でも日本は年金会計が毎年十兆円ほど黒字、収入より支払いの方が十兆円少ないというふうになっていて、もし、日本も英米流の会計にすると、この年金の問題についても合算した場合は、いろいろなことで日本財政は米英よりも財政内容は悪化してないと。  私は、ぜひこの六ページの方を見ていただきたいんですが、下の図なんですけれども、これはアメリカ、ドイツ、日本というふうに書いてありますけれども、九七年度における我が国一般政府債務残高はGDP比に対して一八・五%であると。しかし、それを同じ基準に合わせると、ドイツの四六・五%、四四・〇%のアメリカよりも低いというような数字が出ているんですけれども、果たして日本は国家財政というものが本当に危機的状況にあるんだろうか。  むしろ日本人の心の中で、やはりその上の方にもありますけれども、心配性が余り過ぎて、正確な議論から若干移りつつあるんだろうかと。やはりいろいろなことで不安感を訴えるようなことの方が人間の頭の中には残りますんで、果たして日本財政は危機的な状況なんだろうかと。同じ基準、同じ物差しで統計をとった場合、今、日本の一般、通常の会計を英米流の企業会計にして、日本アメリカ、ヨーロッパ、イギリス、ドイツ、こういうふうに全部やってみたら、果たして本当に諸外国と比べて日本財政は悪化しているんだろうかという基本的なことについて、私は疑問を持っているところであります。  もし、この山家さんという先生の数字が正しいということになれば、日本財政政策というものは極めて失敗したんではないだろうか。余りにも財政政策を急ぐ余り、日本政府は大蔵省などが提示した統計、いわゆるデータをうのみにし過ぎたがために、政府政策に誤りが生じたのではないかという見解を持っておりましたが、私も若干その意見に近いんですけれども、果たして日本財政は危機的状況にあるのだろうかというこの大前提、財政の健全化についての前提を、先生はどのように認識しているか、お伺いしたいなと思います。
  75. 大住莊四郎

    大住参考人 このいただいた統計データの出所がよくわかりませんけれども、これは純債務ということですので、これに対応するグロースの債務というものが恐らくあると思うのです。そういったものもとる必要があろうかと思います。  それともう一つ。企業会計ベースに直したときにどうなるかということ、これは結構重要なことでありまして、実は国際機関におきまして、公会計の分野についても統一的な基準、つまり、複式簿記発生主義会計に基づくルールづくりを進めるべきだという意見が強まっているというふうに聞いております。  国際会計士連盟の方に統一的な基準づくりについて真剣に検討せよというような指示が複数の国際機関から行っております。当然補助金もかなり出ておるようなんですけれども、今現在この発生主義会計の議論が個別に進んでいるわけですけれども、恐らく、数年といいますか、二、三年以内には国際的な動きとして表面化してくると思います。そうなりますと、新しい会計基準に基づいて、同じような財務の、財政の健全性を図るような指標がより厳密にとれると思います。
  76. 桜田義孝

    ○桜田委員 バランスシートをつくる基準についてちょっとお伺いしたいんです。いろいろバランスシート基準というもの、まあ統一基準ということでやるならば、やはり外国と日本とを比較するときに統一基準というものをつくることはかなり難しいんではないだろうかなどというような気がするんですけれども、それが統一基準ができれば、日本と諸外国の比較ができます。そして、国内においてならば、政府会計の手法について統一的なものをまとめれば、それはできると思うんです。  ただ、果たしてそれが現実的可能性としてはどの程度あるんだろうかという問題と、これをつくることが、政府の内部でつくることが正しいか、あるいは外部機関でつくることがいいんではないだろうか。私自身は、外部機関で作成した方がより精度が上がるんではないか、あくまでもこれは情報開示というものを前提として思っているんですけれども、いかがでしょうか。
  77. 大住莊四郎

    大住参考人 まず、現実的かどうかということなんですけれども、それに対しましては、少なくとも試行錯誤でもいいからつくってみるべきだと思います。それで、よりいいものをつくっていくということだと思います。  行政機関内部でつくっていくのか、あるいは外部でつくるのかということだと思いますけれども、恐らく両者両様、メリット、デメリットがあろうかと思います。外部でつくった場合、基本的な情報が入手できるかという問題が恐らく出てこようかと思います。むしろ、そうであれば、個別の行政機関に基準を示してつくらせる、つくったものを監査するというやり方もあると思います。私はその方がベターだと思います。
  78. 桜田義孝

    ○桜田委員 どうもありがとうございました。
  79. 原田昇左右

    原田委員長 大住参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、私から厚く御礼を申し上げます。  どうぞ御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。  次回は、来る二十八日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時九分散会