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上山参考人 おはようございます。
私は、主に
民間企業、大
企業の
リストラあるいは
MアンドAなどの
経営改革を支援しております
経営コンサルタントであります。
企業の
経営に関しては
専門家なのですけれども、
政府の
経営に関してなぜいろいろな
意見を各所で述べておるのかということを
最初にちょっと
お話しします。
二つ理由がありまして、
一つは、多
国籍企業の役員を務めておりますと、
我が国の、まあ
企業の
経営もそうなんですが、
政府の
経営は非常に甘いものがある。そういう点からいろいろな
問題意識を持つに至ったというのが
一つです。
もう
一つは、若いころ運輸省及び外務省で公務員として勤務をしておりまして、そのころの
経験に照らすと、やはり外に出てみると役所の中の
常識というのは非常に世間の
常識からずれたものである。
自分自身を民営化してことしで十三周年目になるわけですけれども、そういう
立場から
意見を述べてみたい、こういうことであります。
お
手元に横長の資料がありますが、これに沿って
お話をしたいと思います。
きょうの
テーマは、私なりに解釈したのですが、
政府の
経営をいかに
監視するべきであるか。これは
企業の
経営に照らしますと、
ガバナンスの問題というふうに言うことができます。
一ページに書いておりますけれども、この
ガバナンスの問題というのは、何も
政府だけが甘いというわけではありませんで、
企業でも非常に大きな問題として出てきております。不祥事の
背景にも
ガバナンスがあるわけですし、
経営が甘いので
御存じのように
赤字企業が続出する、こういうことであります。
これは
右肩上がりの
経済が終わるとどこの国でも起きる現象でありまして、八〇年代、
英米企業はそれを
経験し、
リストラを経て、そして
政府も同じような
手法で改善をしてきている、こういうことであります。
英米の
歴史を見ますと、
企業の
手法、例えばIBMであるとかマークス・アンド・スペンサーであるとか、こういった大
企業が
手法を開発し、それを自治体の革新的な首長が流用して、そこから出てきた
成功体験を、英国のサッチャーであるとか、あるいは
米国でありますと最近のクリントン、ゴアのような
人たちが集大成して法制化している、こういう
流れが考えられます。
我が国の今の
現状というのは、まさに約十五年から二十年、
英米よりも後の
歴史をたどっているというだけのことでありまして、決して
日本だけの特殊な問題ではない、おくれて問題が顕在化しただけであるというふうに思います。おくれて顕在化しているわけですから、イギリスあるいは
アメリカのように試行錯誤をたどらなくても、
英米のいわばベストプラクティス、一番よいノウハウをさっさと持ってきてはめれば数年で
改革はできるのではないかというふうに私は思っております。こういう仮説に立って
お話をします。
まず、
企業企業というふうに申し上げておりますけれども、
企業の
ガバナンスがそんなにいいものなのかということについて
お話をします。
三ページをごらんください。
政府よりは
企業の方が恐らく効率的であるというのは
経験則からほとんどの方が感じておられると思うのですけれども、なぜそうなのかといいますと、四つの
角度からの
チェックが行われている。
これは上から四種類に分けて書いておりますけれども、まず外からの
評価というのがあります。
御存じのとおり、インベスターリレーションあるいはディスクロージャー、こういう
情報公開を広くやって、いろいろな
角度から
人々に
情報を与えて
チェックを受ける。これがまずあります。
それから、当然、アナリストによる
評価とか格付、
専門家がお客の
満足度を勝手にレーティングして雑誌で発表する。
自動車業界などではこれがまた非常に
インパクトを持つわけです。
第三者、
専門家が勝手に
評価をする、これが外からの
評価であります。
この
二つに加えて、当然
内部で
自己管理評価をやっておるわけですけれども、
経営サイド、お金あるいは人を握っている社長及び
企画セクション、こういうところは、
戦略目標を各
部門に立てさせて、ことしは幾らの金を投入してどれだけの
成果を上げるのか、こういうプランを了承して、その上でそれができたかどうか
チェックして、翌年度、資源をまた与える、こういうサイクルが、当然なんですが行われている。
さらに大事なことは、
現場で自主的な
活動が行われている。これは、例えば機械一個つくるのに三十五秒かかっている、これを十五秒でできないかというようなことを
現場の
人たちが考える。幾らもうかるというようなことは
現場の人は考えずに、お客様に喜んでもらうにはどうすればいいか、あるいはこの仕事を効率的にするにはどうすればいいかと。これはこれで
現場で自主的な
活動をやっている。
こういう四
段階の
チェックがあって
企業というのはうまく
経営されているということです。これは何も昔からこうではなくて、矢印を書いていますが、一番下から順番に発達をしてきております。下の
二つは
日本企業も
かなりうまくできているというふうに思います。上の
二つに関しては、バブル
経済が崩壊しないとなかなか前に進まないということで、最近になって問題になってきている。
英米企業に関しては、この
二つが九〇年代に入って
かなり急速に普及した、こういうことであります。
四ページを見ていただきますと、先ほど、
企業の
手法が自治体それから中央
政府に伝播したんだということを申し上げましたけれども、現在の
状況を見ますとこのようになります。
まず
情報開示に関しては、原則的に行政
評価の結果はすべて
公開。
それから、
専門家による監査。これは昔からGAOとかNAOというような会計検査部もありますが、それに加えて、サッチャーは効率室を
政府の中につくり、
アメリカは各
省庁にインスペクターゼネラルというようなものを追加して置いています。
さらに注目すべきは下の
二つでありまして、
民間企業型の戦略計画システム、これを追加している。
それから、
現場改善
活動。これも非常にきめ細かな、いわゆるTQC
活動のようなことをイギリスも
アメリカもやっているということであります。
翻って
我が国の
状況を見ますと、五ページになりますけれども、まだ
かなり不備である。上の
二つ、
情報開示それから
専門家による監査、これがないということは非常によく言われますけれども、私は、このこと自体は、制度をつくればいいし、今までなかったことを別に批判する必要は特にないというふうに思います。ですが、問題は、
政府の中での自己管理が行われていないということであります。
現場改善
活動というのは、例えば、
省庁再編の
組織論は大変に熱心に霞が関の中でも
議論していますけれども、具体的な、
サービスをどうするかとか
コストを下げるというようなことに関する
議論は皆無であります。唯一、自治体で一部このような
活動が始まっているという
程度であります。
それから、戦略の立案に関しても非常に不明瞭であって、ほとんど主計局と各省の担当官の間であうんの呼吸でなされている。これは一部政治の問題もあるかとは思いますけれども、非常に不透明で、かつ
目標管理がなされていない、こういうふうに私は
評価をします。
それで、きょう申し上げたいのは七ページ以降のことでありまして、行政
評価システムというものをぜひ法制化して、予算プロセスにつなげるべきであると。一言で言いますと、業績
評価をして、その結果を
公開しない
事業に関しては、予算は一切つけない、こういう法律をつくってはどうかということであります。
これは、
米国で九三年に通りましたガバメント・
パフォーマンス・アンド・リザルツ・アクト、
政府業績
評価法というのがありますけれども、これを二〇〇〇年以降まさに実施しようということであります。七年間の実験を経て、二〇〇〇年以降は予算と
評価というものをセットにしていく、これが
米国の
動きでありまして、
我が国もこれを入れない限り、会計監査あるいは
情報公開ということだけをやっていても
政府の中での自助努力が始まらないというふうに思っているわけです。
かいつまんで
お話しすると、七ページにありますようなプロセスでありまして、まず各
省庁、各
事業の実態
分析をする。一体どれにどれだけのお金を使ってどういう
成果が出ているかというのをはっきりさせる。
目標を立てさせて、それが達成できたかどうかということをまた申告させる。さらに、その結果はすべて
情報公開にかける。こういう、ある意味では非常に単純なことであります。
例を
お話ししますと、十ページに飛びますけれども、これは実際に
分析をしたものではなくて、わかりやすくするためにつくった例でありますけれども、例えば、文部省には初等教育であるとか中等教育であるとか、恐らく二十本ぐらいいろいろな
政策があると思います。そのそれぞれの
政策に関して、その下の施策レベル、英語で言うとプログラムという言い方をしますけれども、ここに書いてありますような施策レベルに関して、何年間でどれだけの
成果を出すのか、そのためにどれだけの仕事が発生するのか、お金に直すとそれはどれだけの税金を投入することになるのかということを、全部
事業を始める前に開示する。
これをやった後、例えば
事業によっては一年後あるいは二年後に、どれだけ実際にお金が使われ、かつ
成果が出たかということを
チェックをかけていく。
パフォーマンスが悪いものに関しては予算を与えない、あるいは逆に予算が足りなかったから
パフォーマンスが悪いんだということを
国会の場できっちりと
議論をして、主に
委員会だと思いますけれども、
委員会の
議論の質をさらに上げていく、このようなことができるのではないかというふうに思います。
先ほどの、
企業の
チェックの四つのモデル、十一ページに移りますけれども、これに行政
評価をはめるとどういうふうに変わるかといいますと、直接的には
かなり細かい
チェックというものが可能になる。
内部で自主管理もできますし、外からの
評価も非常にしやすくなる。それから、このことをやりますと、予算の単年度主義が非常に弊害になっているとか、先ほど
金本先生がおっしゃっていたような、そもそも行政システム自体が抱えている矛盾、これも露呈してくるというふうに思います。
ですから、初めに行政
評価ありきでありまして、これを入れることによってほかの制度というものが順番に崩壊していく、こういういわば全体システムを変える
最初の入り口になるのがこの制度だというふうに私は考えております。
それで、まとめますと、十三ページになりますけれども、
政府の
経営を
チェックする上では、今申し上げたような行政
評価というものがまずは手始めとして不可欠だというふうに思います。もちろん
会計検査院の強化であるとかディスクロージャーというようなこともセットで必要ですが、
政府が
自分自身のやっていることを
自分で理解できていない、この現実が非常に大きな問題でありまして、
自分で何をやって何ができているのかということをきっちりと
国民に開示する、これがまず初めであると思います。
これは抽象的な
政策レベルではだめで、先ほど申し上げたような、初等教育の中の十個のプログラムというようなレベルでやらないとだめです。それから、個別の道路の箇所づけのような極めて個別的なことですと、これまた客観
評価ができないので、一定の、ある
程度大まかな単位じゃないとできないというふうに思います。
これをだれがやるかということが非常に重要な問題でありまして、実は、執行
部門の方が
議会よりも意識的には
かなり先行しているというふうに私は思います。自治体の
動きを見ましても、
議会が本来行政
評価を進めるべきなんですけれども、
事務当局の方が非常に熱心で、いわゆる
事務・
事業評価というものを
自分たちがやっているということをマスコミを通じて宣伝し、行政
評価は役所がやるんだというふうな、ある意味ではキャンペーンを張っている。
これは、私も昔役所におりましたので、役人であれば当然こういうことは
自分でやりたいと思うし、やってみるというのは非常に重要だと思うのですが、
自分で
自分を
評価するというのは人にはなかなかできないことでありまして、やはり政治あるいは専門
機関が
評価しないとなかなか正しい
評価はできないというふうに思います。したがって、今自治体でやっておりますような
事務・
事業評価というものは、
評価のための基礎資料としては結構だと思いますし、あるいは、職員による
自分自身の仕事の点検という意識
改革運動としては意味がありますが、とても国政の一部のシステムとして正当化できるようなものではないというふうに考えております。
以上のことをまとめまして、
最後に提案があるのですが、十四ページであります。
アメリカにGPRA法というのがございます。これはそのまま
日本で使えるかどうかというのは異論もあるかと思いますけれども、同じような法律を
日本もつくってみてはどうか。予算査定の判断材料にする、各
省庁二つぐらいの事例のものをとって、それを毎年数をふやしていくということから始めてはどうか。
それから、だれが
評価するのかという問題に関してですけれども、これはやはり役所出身者でないとなかなか難しいということを私は非常に感じます。同僚の
経営コンサルタントあるいは財界の大
企業の社長さんなどと行革の問題を
議論しますが、やはりなかなか、外から
チェックするというのは非常に難しい。ですが、わずか数年でも役所の中におりました私のような人間が見ると、どこを攻めればいいかというのがわかります。
ということは、各
省庁のキャリアの官僚をヘッドハンティングして、大蔵官僚よりも上位のステータス、これは給与においても地位においてもですね、逆にスーパーキャリアのようなものをつくって、それを
会計検査院あるいは
議会の
事務局に置く、このようなことが実施の上では不可欠かというふうに思います。
民間の会計士やコンサルタントはアウトソーシングという形で彼らが使いこなすということをすればいいと思います。パワーが官庁の中にあるわけですから、その中の人のパワーをシフトさせるというのが現実的で、外から幾らつついてもなかなか難しい。中の頭脳を外に引っ張り出すというような仕掛けがないと、
評価は現実にはできないというふうに思います。
最後に申し上げたいのは、いわゆるエージェンシー制の問題でありまして、今
我が国でやっているエージェンシーは、あれは特殊法人、非常に枝葉末節の部分に関してエージェンシーというふうに呼んでいるだけであります。サッチャーの行革の場合は、
御存じのとおり、公務員の七割がエージェンシーに移行したということであって、そのことによって、
評価というものが非常にやりやすい体制ができている。やはり
政策と執行を分離しない限りなかなか明快な
評価はできないというふうに思います。
以上であります。どうもありがとうございました。(拍手)