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1999-02-10 第145回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月十日(水曜日)     午前十一時二十一分開議   出席委員    委員長 中馬 弘毅君    理事 福田 康夫君 理事 牧野 隆守君    理事 茂木 敏充君 理事 森山 眞弓君    理事 上原 康助君 理事 玄葉光一郎君    理事 赤松 正雄君 理事 東  祥三君       柿澤 弘治君    瓦   力君       河野 太郎君    阪上 善秀君       櫻内 義雄君    中谷  元君       額賀福志郎君    深谷 隆司君       細田 博之君    八代 英太君       吉川 貴盛君    川内 博史君       中野 寛成君    藤田 幸久君       坂口  力君    山中あき子君       井上 一成君    藤井 裕久君       古堅 実吉君    松本 善明君       伊藤  茂君  出席国務大臣         外務大臣    高村 正彦君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 柳澤 協二君         防衛施設庁長官 大森 敬治君         防衛施設庁総務         部長      山中 昭栄君         防衛施設庁施設         部長      宝槻 吉昭君         法務省刑事局長 松尾 邦弘君         法務省人権擁護         局長      横山 匡輝君         外務政務次官  町村 信孝君         外務省総合外交         政策局長    加藤 良三君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    上田 秀明君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 竹内 行夫君         外務省欧亜局長 西村 六善君         外務省経済局長 大島正太郎君         外務省経済協力         局長      大島 賢三君         外務省条約局長 東郷 和彦君  委員外出席者         外務省中近東ア         フリカ局長   天江喜七郎君         外務委員会専門         員       宮本 吉範君 二月四日  核兵器完全禁止核廃絶国際条約締結に関する請願太田昭宏紹介)(第三六四号)  WTO協定WTO衛生植物検疫協定改定に関する請願松本善明紹介)(第三六五号)  日米物品役務相互提供協定改定反対に関する請願木島日出夫紹介)(第三六六号)  同(寺前巖紹介)(第三六七号) 同月八日  核兵器完全禁止核廃絶国際条約締結に関する請願伊藤茂紹介)(第四四五号)  日米物品役務相互提供協定改定反対に関する請願志位和夫紹介)(第四八三号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件     午前十一時二十一分開議      ————◇—————
  2. 中馬弘毅

    中馬委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  平成十一年度外務省関係予算について、その概要説明を聴取いたします。外務政務次官町村信孝君。
  3. 町村信孝

    町村政府委員 平成十一年度外務省予算重点事項を御説明いたします。  平成十一年度一般会計予算において、外務省予算は、七千五百九十五億二千二百万円が計上されております。これを前年度予算と比較いたしますと、一・六%の増となっております。  新しい世紀を迎えようとする中、国際社会における脅威は多様化しており、平和で安定した世界への道のりは決して平たんではありません。また、アジア経済危機とその世界的な波及に見られるように、グローバリゼーションの陰の部分への対応も急務となっています。こうした課題を前に、我が国は、高まる国際社会の期待にこたえ、その国際的地位影響力にふさわしい、積極的で創造性豊かな役割を果たしていく責任があります。このような観点から、我が国外交に課せられた使命は極めて重大であると言わざるを得ません。  この使命を果たすため、平成十一年度においては、厳しい財政事情のもとではありますが、定員等の増強、在外公館機能強化等外交実施体制強化及び外交施策充実強化の二点を最重点事項とし、予算効率的配分を図っております。  まず、外交実施体制強化でありますが、外務省定員につきましては、危機管理安全体制強化中心として、本省及び在外公館合計で八十六名の増員を図り、十一年度末の外務省予算定員合計五千二百三十四名といたしております。  機構につきましては、在アゼルバイジャン大使館及び在モザンビーク大使館の新設、ベルリンへの首都機能移転に伴う在ドイツ大使館移転等を行うこととしております。  在外公館機能強化につきましては、在外公館施設等強化危機管理体制海外邦人安全対策強化在外選挙実施体制整備に要する経費として、対前年度比三・三%増の四百二十四億七千四百万円を計上しております。  また、外交政策策定の基盤となる情勢判断に不可欠な通信・情報収集等機能推進のため、六十五億四千八百万円を計上しております。  次に、外交施策充実強化に関する予算について御説明いたします。  外交施策充実強化の四つの柱は、二国間援助等推進、対ロシア政策推進、平和・安全、軍縮のための協力、そして国際文化交流推進であります。  まず、平成十一年度政府開発援助ODA)につきましては、一般会計予算において、政府全体で対前年度比〇・二%増の一兆四百八十九億円を計上しております。  外務省ODA予算について見ますと、対前年度比〇・三%増の五千五百八十二億円となっております。これは、微増とはいえ、アジア経済危機アフリカ諸国支援等の面での我が国の積極的な姿勢を示すものと考えます。  このうち、無償資金協力は、対前年度比一・〇%減の二千三百七十九億円を計上しておりますが、その内訳は、経済開発等援助費が一千九百九十八億円、食糧増産等援助費が三百八十一億円であります。また、我が国技術協力の中核たる国際協力事業団事業費として、対前年度比〇・五%増の一千七百七十億円を計上しております。さらに、援助実施体制強化観点より、国際協力事業団定員につき一名の純増、機構改革等を図ることとしております。  なお、ODA透明性効率性という面では、ODA事業の公募のモニター、インターネットを用いたODA情報公開の一層の促進、無償資金協力実施体制強化といった新しい工夫を施しております。  次に、昨今の日ロ関係の進展を踏まえ、新たに外交施策充実強化の柱の一つとした対ロシア政策推進については、支援委員会北方領土関連等総額十五億三千六百万円を計上しております。  また、平和・安全、軍縮のための協力でありますが、我が国国際的地位に見合った責務を果たすべく、軍縮・不拡散分野における貢献を積極的に行い、また国連活動に対する支援を一層強化し、さらに地域の安定に向けた取り組み等を行うため、総額五十億九千六百万円を計上しております。  最後に、国際文化交流推進でありますが、異なる文化間の相互交流を促進するために留学生受け入れ数の増大を図るべく、留学交流環境整備のための経費として、一億二千二百万円を計上しております。  以上が、外務省平成十一年度予算重点事項概要であります。
  4. 中馬弘毅

    中馬委員長 以上で説明は終わりました。     —————————————
  5. 中馬弘毅

    中馬委員長 次に、国際情勢に関する件について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河野太郎君。
  6. 河野太郎

    河野(太)委員 自由民主党の河野太郎でございます。外務大臣演説に対しまして、幾つか御質問をさせていただきたいと思います。  まず初めに、今、国会議員が地元で国際問題に関して国政報告をすると、決まって有権者皆様から質問が飛んでまいります。その一つが、北朝鮮からテポドン日本に向けて発射されたときに、日本はこれを一体迎撃する能力があるのだろうかという質問が決まって有権者皆様から来るわけでございますが、これについて外務大臣はどのように御承知されておりますでしょうか。
  7. 高村正彦

    高村国務大臣 極めて残念なことでありますが、迎撃する能力はない、こういうふうに思っております。
  8. 河野太郎

    河野(太)委員 そうしますと、ミサイル発射される前にこれをたたかなければいかぬということになるのかと思いますが、一九五六年、衆議院の内閣委員会において、当時の船田防衛庁長官が「誘導弾等基地をたたくことは、法理的には自衛範囲に含まれ、可能である」との答弁をされております。その前段に、「わが国に対して、急迫不正の侵害が行われ、その侵害手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨」ではない。「誘導弾等基地をたたくことは、法理的には自衛範囲に含まれ、可能」、そういう答弁が一九五六年にございました。  この見解を今の内閣も同様にお考えでございますか。
  9. 高村正彦

    高村国務大臣 憲法解釈そのものとしては、そのとおりだと思っております。
  10. 河野太郎

    河野(太)委員 それでは、テポドン核兵器あるいは化学兵器生物兵器が装着をされ、これの発射準備が進められ、なおかつその目標日本国土であるということが可能性として非常に高く、なおかつ北朝鮮から、これを日本に向けて発射をする、そういう脅迫があった場合に、これを先制してたたくということは自衛権範囲である、そう考えてよろしゅうございますでしょうか。
  11. 高村正彦

    高村国務大臣 今いろいろ前提条件をつけてお話しになりましたが、現実の場合というのはもっといろいろな状況があるわけでして、そういう仮定の場合を想定して、ある一定の条件を、かなり条件を絞られましたけれども、それでもなおかつ仮定状況を想定して、この場合は自衛権範囲内であるとかないとか言うことは私は差し控えた方が、外務大臣としては申し上げるべきことでない、こういうふうに思っておりますので、御理解いただければ大変ありがたいと思います。
  12. 河野太郎

    河野(太)委員 それでは、本来ならば日本政府はそういう場合には毅然とした態度をとるということを北朝鮮に向けて示すことが日本の強さにもなると私は思っておりますが、そこはいろいろな状況があるということも承知しておりますので、願わくばそこまでの状況に達しない、そういうことにしていきたいと思います。  その場合、今の日本北朝鮮関係でございますと、枠組みの中で粛々とKEDOの作業を進めていくということであろうかと思いますが、現在の北朝鮮をめぐる状況考えますと、このKEDOに対する資金拠出を中止せざるを得ない、そういう状況考えいかなければいけないだろうと思います。もし何らかの事情でこのKEDOに対する拠出日本も行わない、そういうような場合に、日本政府はその後どういうシナリオを想定していらっしゃるのか、伺わせていただきたいと思います。
  13. 高村正彦

    高村国務大臣 我が国といたしましては、北朝鮮核兵器開発を阻むための最も現実的かつ効果的な手段としてKEDOを維持していくことが重要であると考えております。この観点から、我が国KEDOを引き続き支援していく必要があるというのが基本的な立場であります。  他方KEDO枠組みを維持する上で、北朝鮮秘密核施設疑惑ミサイル問題等国際社会懸念を解消する行動をとることが重要であります。我が国としては、米韓両国と緊密に連携しつつ、このような国際的な懸念に対処していく方針であります。  今御質問の、我が国北朝鮮に対して有しているカードについて包括的に御説明することは、これもまた極めて誤解を招きやすいということで、適当ではないと考えております。  ただ、申し上げたように、最も現実的、効果的な枠組みKEDOである、こういうふうに考えておりますので、ぜひともこれを維持するようにしたい、まず第一選択肢としてこう考えておるということを申し上げておきます。
  14. 河野太郎

    河野(太)委員 それ以上お伺いすることは控えますが、仮にKEDOがうまくいかなくなっても、それ以外に北朝鮮交渉をする何らかのチャネル外務省はお持ちになっている、そう考えてよろしゅうございますでしょうか。
  15. 高村正彦

    高村国務大臣 残念ながら、そんなに太いチャンネルを持っているわけではありません。ただ、全く接触ができないというわけでもないわけでありますが、そういったことについても、お互い何を考えているのかわかり合えるような、そういうチャンネルをもう少しつくっていきたい、そういうふうに考えております。
  16. 河野太郎

    河野(太)委員 交渉事、特に外交交渉でございますから、正面切った交渉、あるいは裏のチャネル、いろいろなものを駆使して、何とか日本北朝鮮の間がこれ以上悪化しないように御努力をいただきたい。しかし、いざという場合には日本にもそれなりの覚悟があるということは、政府から北朝鮮に対して何らかのメッセージを出していただきたいと思います。  さて、冷戦後の国際社会考えていきますと、北朝鮮の問題を含め、日本アメリカ同盟関係、あるいは日本アメリカ安保条約が基軸になってくると考えます。しかし、どうも日本アメリカの間で幾つか基本的なスタンスが違うような気がいたします。一つは、究極的に核廃絶を目指そうと考えている日本と、核兵器をあくまでも力の源泉であると考えている節が見られるアメリカ立場は、突き詰めていくと、これはなかなか一つにならないのではないかと思います。  CTBT以降、核の廃絶に向けた動きというのはやや停滞をしている、臨界前の実験その他が行われる等を含め、やや核廃絶に向けての動きがとまっているのではないかと思うのでございますが、今後もこのような状況でいいのか、あるいは、日本政府としては何かこの核廃絶に向けて一歩踏み出すお考えがあるのか、そこをお聞かせいただきたいと思います。
  17. 高村正彦

    高村国務大臣 我が国は、核兵器のない世界を実現するために努力を積み重ねているわけでありますが、米国核兵器究極的廃絶という目標は共有しているというふうに考えております。また、核抑止力についていえば、現実国際社会の中では、我が国としても米国の核を含む抑止力のもとで自国の安全を確保する必要があると考えているわけであります。このように、核軍縮につき両国は共通の目標を有しており、また、核抑止について両国立場は基本的に一致していると考えております。  我が国といたしましては、国連中心とする国際平和のための努力に対し積極的に寄与することが必要と考えておりますが、このような考え方は両国とも共有しているものと考えておりますし、例えば、インド、パキスタンの核実験の際の対応等を初め、これまで米国とは緊密に協力しており、今後も引き続き協力していきたい、こういうふうに考えております。
  18. 河野太郎

    河野(太)委員 現在の日本アメリカの核をめぐる状況あるいは国際社会現実を見ておりますと、日米間でまず現実的に最初の一歩となり得るであろうと思われるのは、米国核兵器先制使用を宣言して、米国核兵器を保持しているが、これを第一撃として使うことはしないということをまず明言するべきではないかと思います。私の承知している限りでは、中国は先制使用ということを言っているようでございますが、アメリカはいまだに核の先制使用もあり得るという立場を崩していないのではないかと思います。  冷戦が終わり、ソ連の核兵器脅威も減りました。ヨーロッパにおける対立の構図もなくなってきた現在、アメリカが、アメリカ政府核兵器は保持しているものの、これを先制使用することはないと宣言することは、そしてほかの核保有国がそれに倣って核兵器先制使用をしないと宣言することは、核兵器使用に対する敷居を高くしていくことになるであろう。これは、日本アメリカも目指すところ、究極核廃絶に向けてともに協調して歩める第一歩であろうと思いますが、日本政府いかがお考えでございますでしょうか。
  19. 高村正彦

    高村国務大臣 核先制使用の問題については、現時点では核兵器国間での見解の一致が見られていないというふうに承知しているわけでありますが、いまだに核などの大量破壊兵器を含む多大な軍事力が存在している現実国際社会では、我が国としても、米国との安全保障条約を堅持し、その抑止力のもとで自国の安全を確保するとともに、核兵器を含む軍備削減努力を重ねて、核兵器使用を必要としないような平和的な国際社会をつくっていくことが重要だと考えているわけであります。直ちに日本政府として核先制使用とか、それについていろいろ言うということは考えておりません。
  20. 河野太郎

    河野(太)委員 アメリカの核の抑止力に守られているという事態は、アメリカの核の第一撃で守られているのではなくて、核兵器使用されたらアメリカ核兵器でこれに対して報復をする、そういう意味での第二撃を主とした核の抑止力であるのではないかと思います。そういう状況が正しいのであれば、先制使用を宣言しても差し支えはないのではないか考えます。  また、日本政府が率先して、アメリカに対し、先制使用だ、これを宣言しろと迫るのは難しいかもわかりませんが、仮にアメリカ政府先制使用という考えを打ち出したときに、日本政府はこれを支持する、これは可能でございましょうか。
  21. 高村正彦

    高村国務大臣 米国が核の先制使用を打ち出すという全くの仮定状況現実には当面はありそうもない仮定状況だと思っておりますので、それが我が国安全保障に大きくかかわる米国核抑止力に関する問題であるだけに、直接お答えするのは余り適切でないと考えておりますが、別にアメリカ先制使用を宣言したからといって日本が反対する理由はないと思っています。
  22. 河野太郎

    河野(太)委員 究極的な核廃絶を目指すという国是のようなものがあるわけでございますから、日本政府もこの問題に少し積極的なお立場をとっていただいて、究極的な核廃絶に向けて一歩も二歩も大臣のイニシアチブで進んでいただければと思っております。  大臣演説の中で、グローバルな問題への取り組みに対して最も重要な枠組み一つ国連であると大臣もおっしゃっておりますが、私も同感でございます。しかし、最も重要な国際的な枠組みである国連に対し、日本アメリカを除く常任理事国四カ国が拠出している分担金合計額以上の拠出を行っているにもかかわらず、依然として日本国連で果たしている役割というのは非常に限られたものでございます。私は、日本安全保障理事会常任理事国になるべきだし、なる資格はあるし、もっと言えばならなければいけないと思っております。  おととし、昨年と安保理改革議論が盛り上がりましたが、少しその状況が変わってきたような気もいたします。現在の安保理改革状況は、大臣いかが推移しているとお考えでございましょうか。
  23. 高村正彦

    高村国務大臣 国連改革につきましては、安保理財政開発の三つの分野改革を全体として均衡のとれた形で進めることが重要であるというふうに考えております。  このうち、今御指摘の安保理機能強化のためには、その実効性及び正当性の向上を図ることが必要であって、そのためには常任議席、非常任議席双方拡大が必要であると我が国としては考えているわけであります。  我が国常任理事国入りの問題は安保理改革に関する議論の中で扱われておりますが、我が国常任理事国入りについては大方の支持がある。その反面、拡大後の安保理の規模だとか拒否権扱いだとか、あるいは新常任理事国選出方法安保理改革の具体的なあり方について、いまだ各国の意見が十分に収れんしていないというのが現状であります。しかしながら、安保理改革早期実現は、国連加盟国の総意ともいうべきものであります。また、安保理改革を実現するためには、多くの加盟国支持を得られるような案が提示されることが必要であるということであります。  我が国としては、国連の場での議論や多くの国との協議を精力的に重ねることにより、そのような具体的な案を早期に取りまとめられるよう、一層の努力をしていく考えであります。
  24. 河野太郎

    河野(太)委員 安保理改革一つの大きな問題に、拒否権取り扱いがあると思います。現在の五カ国は拒否権を持っておりますが、今後新しく安保理常任理事国になる国は拒否権を持つべきなのか、それとも拒否権がなくても構わないのか、大臣いかがお考えでございますか、差し支えなければよろしくお願いします。
  25. 高村正彦

    高村国務大臣 我が国としては、同じ責任を負う常任理事国が権能の上では異なった扱いを受けるということは、原則論立場から問題があると考えております。これが基本的な立場であります。  他方拒否権というのは、過去しばしば乱用されたわけでありますが、その乱用は厳に戒められるべきであって、このような観点から、我が国は従来より、拒否権自国の国益を実現するために行使されるべきでないというようなことを表明してきているわけであります。  拒否権の問題は安保理改革全体に深くかかわっている問題であって、最終段階において安保理改革の全体的な文脈の中で総合的な政治判断を行う際に、初めて最終的な判断をしたいと日本国としては考えているわけであります。
  26. 河野太郎

    河野(太)委員 お考えはよくわかりました。この安保理改革の問題は、このままほっておくと動きがだんだん鎮静化してしまうのではないかと思います。  私は、日本国連にこれだけの財政的な貢献をしているわけでございますから、義務的な分担金アメリカのように滞納することは決して好ましいことではないですし、そうしたことはすべきでないと思いますが、任意拠出している任意拠出金については、これは日本政府がある程度の政策的な裁量で左右して構わないことだろうと思います。  日本安保理常任理事国に入れろというのではなくて、安保理改革のための枠組み決議案をきちっと総会で採択をしろ、そのために、あるいはそれまでは日本任意拠出金取り扱いについて少し考える、そういう立場を、行政府が出しにくければ与党、立法府がそうした立場を出していくことも私は可能であると思いますし、イタリアのように正面切って日本あるいはドイツ加盟に反対している国と共同歩調をとる国に対するODA取り扱いについても、少し日本は厳しく考えいかなければいけないんだろうと思います。そういうことを糸口にして、この安保理改革動きをもう一度モメンタムを取り戻していただきたいと思っております。  さて、大臣演説の中では、日本ロシアに関するコメントが非常に少ないようでございます。北方領土に関する問題は進展しつつあるのか、それとも足踏み状態という認識であるのか。それから、現状では日本ロシア関係は、エリツィン大統領との個人的な関係に負うところが多々あるのではないかと思います。もし万が一ポストエリツィン体制考えなければいけない、そんな状況になった場合に北方領土問題はどのような影響を受けるとお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  27. 高村正彦

    高村国務大臣 北方領土問題に関しましては、東京宣言及びモスクワ宣言に基づき、二〇〇〇年までに北方四島の帰属の問題を解決して平和条約締結するため、引き続き精力的に交渉を進めており、一月二十一日にはモスクワにおいて、国境画定委員会共同経済活動委員会の第一回会合が開催されたところであります。今月二十一日からのイワノフ外相の訪日の際も、この問題について外務大臣レベルで率直な話し合いを行う考えであります。  最近の日ロ関係が、首脳レベルでの信頼関係牽引車となる形で、あらゆる分野で着実に進展してきていることは事実であります。同時に、このような状況は、閣僚レベルを含む種々のレベルにおける対話などを通じ、さまざまな施策を重層的かつ着実に実施してきたことの結果として生じてきているものであり、引き続き維持していきたいと考えております。  問題はそんなに簡単なことではないと思っておりますが、政府としては、今後とも両国間のハイレベルでの間断なき対話の継続を通じて、あらゆる分野における関係を一層強化しながら、東京宣言モスクワ宣言に基づき平和条約締結して、両国間の関係を完全に正常化するよう全力を尽くしていく考えであります。
  28. 河野太郎

    河野(太)委員 ありがとうございます。  北方領土の問題も核の問題と並んで日本の国民に対し大変大きな影響を与える問題でございますので、ぜひこの問題にも積極的に取り組んでいただきたいと思います。  さて、昨日、私の事務所に国連の事務次長補の方がいらっしゃいました。いろいろな雑談をしている中に、先方から話が上がりましたものが、国連で働いている日本人の職員の皆様の中に何となく人事の停滞感のようなものがあるのではないかという話をされました。日本拠出金あるいは日本が職員数として本来得られるべき数に職員の数が足りていないのも事実でございますが、日本人として国連の中で頑張っていただいている方々の中に、明石さんあるいは緒方さんに続く人がなかなか出てこないというのも事実だろうと思います。  外務省はいろいろな方策で国連職員の問題に取り組んでいただいているようでございますが、そろそろもう少しそれを一段レベルアップしなければいけないのではないかと思いますし、全体的に日本人を採用してくれ、あるいは日本人をどうしてくれと言うのではなくて、そろそろ国連職員の中で個人名を挙げて、こいつを次にどこかのポストへ出してくれ、あるいはこの人を次にここへ出してくれ、そのような具体的な動き外務省、代表部あわせて行っていかなければいけないのではないか考えた次第でございますが、この国連における邦人職員の問題について、外務大臣はどのようにお考えなのか。雑駁な感想でも構いませんので、お聞かせいただきたいと思います。
  29. 高村正彦

    高村国務大臣 今委員がおっしゃったのと同じような感じ方を私もしております。  国連にかかわらず、国際機関における日本人職員、邦人職員の数が絶対値として少ない、それからまたレベルの問題もいろいろ問題がある、そういうことで、国連関係者あるいは国際機関の関係者にお会いするたびに、もう少し邦人の採用を考えてほしいということは私が直に申し上げているところでありますが、そのとき必ず、それはもっともだ、こういう御返事をいただくのですが、逆に、では日本人に本当にそれだけの候補者がいるのですかというと、国内の方にも問題なしとしないということもあるわけであります。  国際機関で働いた経験のある方たちに集まってもらって、ちょっと簡単なレセプションみたいなものをやっていろいろな意見も聞いて、そういった集まりからまた広げていくとか、いろいろな形でこの問題を進めていきたい。大変大事なことでありますから、国連を初め国際機関に働きかけるとともに、日本の国内でそういうことを望む人が多くなるように、そして国際機関に入って、その人が将来希望を持ってやれるような、そういったことをどうやってつくっていくかということは私たちもさらに考えいかなければいけない、こう思っております。
  30. 河野太郎

    河野(太)委員 ありがとうございます。  ぜひ大臣、ニューヨークへ行かれました際には邦人職員と懇談をしていただいて、彼らを励ましていただき、また今まで以上にこの問題に大臣みずからあるいは大使みずから取り組む機会をふやしていただければと思います。  最後の質問でございますが、もう毎回私はこの質問ばかりで恐縮でございますが、外務省の情報公開の問題でございます。  新年度の予算にこの情報公開の問題について予算がどのように計上されているのか、あるいは今後外務大臣外務省の情報公開にどのように取り組まれていくお考えか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  31. 高村正彦

    高村国務大臣 外交だけでなくて、あらゆる分野で情報公開というのは非常に大切なことだと思っております。そして特に、小渕総理が外務大臣のときから、国民とともに歩む外交、こういうことを言っておられるわけでありますから、できるだけ情報公開ということは外務省としても心がけていかなければいけないことだ、こういうふうに思っております。  それと同時に、外交というのはどうしても外交機密というのが一方であるので、そこの線引きをどうするかとか、そういったことを考えながらも、全体として、外交のことだから全部機密だなどということではなくて、できるだけ国民に明らかにする方向で進んでいきたい、こういうふうに思っております。  今度の予算でどういうふうに取り扱われているかという具体的なことについては、政府委員から答弁させます。
  32. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 申しわけございませんが、ちょっと手元に資料がございませんので、早速調べて御報告申し上げたいと思います。
  33. 河野太郎

    河野(太)委員 よろしくお願いします。どうもありがとうございました。
  34. 中馬弘毅

    中馬委員長 次に、上原康助君。
  35. 上原康助

    ○上原委員 私も、まず国際情勢、朝鮮半島情勢から外務大臣にお尋ねをしたいと思います。  高村外務大臣、この委員会終了後にも、韓国にきょう行かれる日程のようでございますが、対話といいますか、いろいろ外交案件があると思うのですが、行かれる目的とか外務大臣のお考えがあれば、まずお聞かせを願いたいと存じます。
  36. 高村正彦

    高村国務大臣 三時に国会を出て韓国に向かいたい、こう考えておりますが、その目的は、三月に小渕総理が訪韓されますので、その準備ということが一つあります。それから、昨年金大中大統領が日本に来られたときに行動計画というものを出してありますので、そのフォローアップ、どういうふうに進んでいるかというのを両国の外相間で検討したい、こういうことが一つあります。  二国間関係ではそういうことが主体になると思いますが、対北朝鮮について、金大中大統領が言っておられるいわゆる太陽政策、そういったものの詳細についてもお話を伺ってきたい、こう思っておりますし、当然、お話を伺えれば、私の方からもそれのお話を伺った上でコメントすることになるだろう。  いずれにしても、日米韓で協力してこの対北朝鮮問題に対処していかなければいけないということでありますから、お互いの立場を確認し合いつつ、どう協力していくかということをお話ししてきたい、こういうふうに思っております。
  37. 上原康助

    ○上原委員 私は予算委員会でも総理並びに外務大臣に少しお尋ねしたわけですが、何といっても日本の平和と安全、あるいはアジア、特に北東アジアの平和環境をよくしていくという上では、朝鮮半島の情勢というものが平和的に解決できる方向をつくっていく、造成していくというのが一番肝心なことだと思うんですね。  先ほども御質問があったわけですが、確かにテポドン一号の打ち上げ等々、我が国と朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮との関係というのは、国交もないし、大変外交的に難しい点はあるわけですが、これを力の政策によって解決しようということは、私はやはり無理だと思うんですね。特に、国民感情としてはわかるけれども、目には目、歯には歯という力の対決のような環境になっていく、あるいは日本側が過剰な反応をしていくということは、むしろ問題解決を停滞させることにもなりかねない。さりとて、いろいろ日本側の要求なり要請なり、外交案件というものを解決していかなければ、KEDOの問題にしても、経済援助、食糧問題にしても、なかなか応ずるわけにはいかないと思うんです。  そこで、具体的に一つだけお尋ねしてみたいわけですが、今月三日に米国務省のルービン報道官は、テポドン一号よりも大型なテポドン二号の発射実験が早ければ年内にもあり得るのではないか、こういう見通しを表明というか示した。多分、政府もこの情報等については承知しておられると思います。  一方、野中官房長官も、北朝鮮への食糧支援について、テポドン発射中止の担保がとれない限りは制裁措置は簡単に解除できないと関係国に伝えている、この発表があった後にこう述べておられるんですね。  恐らくこのことについては内閣外務省一体でお話しの上か、あるいは呼吸合わせをしておられると思いますが、そういう立場政府はあるということは一応理解いたしますが、仮に米国から北朝鮮への食糧援助を求められたとしても、ミサイル発射問題が解決しない限り、我が方というか日本政府としてはそういうことには応じられない、こういう意思表示なのか。  テポドンの年内、あるいは一説には五、六月という非常に緊迫した見方もあるようですが、これに対して、はっきりした発射中止の担保がとれない限り制裁措置等には応じかねるという立場を堅持していかれるのかどうか。この点、ぜひお考えをお示しいただきたいと存じます。     〔委員長退席、森山委員長代理着席〕
  38. 高村正彦

    高村国務大臣 米国政府は、北朝鮮の長射程の弾道ミサイルであるテポドン二号の開発状況に関し、早ければ今年中には最初の発射実験を行うことが可能になり得るとの認識を表明したものと承知をしているわけであります。  理論的には、北朝鮮テポドン二号の開発を進めることにより、その発射可能性が高まることも排除しないと思いますが、いずれにしても、現時点で北朝鮮が近々にその発射を行うことを準備していると判断するには至っていないわけであります。  それで、北朝鮮の食糧事情は依然厳しい状況が続いているものと見られますが、北朝鮮に対する食糧支援については、昨年九月一日、北朝鮮によるミサイル発射を受けて官房長官発表を行い、その中で食糧等の支援は当面見合わせることといたしまして、現時点においてもこの方針を維持しているわけであります。  他方我が国は、従来は緊急及び人道の観点から必要と判断される場合は対北朝鮮食糧支援を行ってまいりました。北朝鮮が種々の問題に対して建設的な対応を示すことによって、このような食糧支援に対して我が国国民の理解が得られるような環境をつくってほしいと心からこいねがっているところであります。
  39. 上原康助

    ○上原委員 そのお答えといいますか御見解については、予算委員会等でもいろいろ既に外務大臣は表明しておられましたが、やはり経済援助というか食糧支援という問題と、あるいは軍事、安保とは全く切り離すというわけにはいかないんだが、多少というか、北朝鮮のいろいろの対応の仕方も見て、人道的な援助というのは必要でないかという見方も主張も、米国内あるいは日本国内にもないとは言えないと思うんですね。  その調和というか程度の問題だと思うんですが、人道的なことについてはやはり日本側としては積極的に対応しつつ、一方、安全保障のことについても十分な配慮をするという、大変難しいかもしれませんが、そういう点もぜひ御留意いただきたいということを申し上げておきたいと思います。  これは、なぜそういうことを申し上げるかといいますと、昨日ですか、マイク・モチヅキ・ブルッキングス研究所主任研究員が、東京新聞でしたか、発表して見解を表明しているわけですが、朝鮮半島情勢の緊張緩和ということで。私が冒頭申し上げましたように、日本の国会はもっと外交論を論じてみたらどうかという見解を述べておられるんですね。やはり日本の政治指導者たちがまず北朝鮮国際社会に取り込む建設的な国際協調プランというものを内外に示して、事態の推移というものを有事に至らさない外交手段というか手法というものを講ずるべきじゃないのか。その意味で、米国、韓国、中国の四者会談、いわゆる北朝鮮を入れたのではなくして、日本も積極的にそのメンバーに参加できるアプローチというものをもっと試みたらどうだろうか、こういう見解を述べておられるわけですね。  これはやはり、もしそういう状況日本政府としておつくりになることができれば、より問題解決にプラス作用していくのじゃないか、私はこう思うのですが、外務大臣の御所見はいかがでしょう。
  40. 高村正彦

    高村国務大臣 北朝鮮をめぐる情勢は依然不安定であり、また、ミサイル発射あるいは核疑惑など、国際社会懸念が増大しているわけでありますが、我が国としては、米韓と密接に連携していくことを重視することはもとより、現在行われている米朝協議における米国努力を引き続き支援していくとともに、北朝鮮が諸問題に建設的に対応を示すのであれば、対話と交流を通じ、関係の改善を図る用意があるということを小渕総理初め申し上げているところでございます。  それと同時に、小渕総理、六者会合というようなことも提案しておられるわけでありますが、当面、北朝鮮、中国は余り乗ってこないというような状況もあるわけでありますが、今の四者会合に取ってかわるというものではなくて、やはりそういう北東アジアの安全に大きな関係を有する日本とかロシアが入る、そういう枠組みも将来的に考えいかなければいけないということで、日本としても積極的に提案をしているところでございます。
  41. 上原康助

    ○上原委員 中国、北朝鮮が余り積極的でないというか、好意を示さないというのは、私なりにそれは推測できる気はします。しかしそれでは、今大臣もおっしゃるように、北東アジアの平和的な環境づくりというものは厳しいのじゃないか。やはり積極的に日本側もオブザーバーとかそういう、随時じゃなくて常に、韓国、北朝鮮、中国、アメリカ、もちろんロシアが入ればそれでも結構です、今の六者会談ということも。  そうしますと、冒頭申し上げた、これで朝鮮情勢については終わりにしたいと思うのですが、今度の訪韓によって、金大中大統領が打ち出しているこの太陽政策等々のことを含めて、今私が指摘をした四者会談あるいは六者会談等を、何とかそういう道筋をつけるような、そういうことについても意見交換なさるおつもりはあるのですか。
  42. 高村正彦

    高村国務大臣 すぐ道筋がつくというような状況にないと思っていますが、金大中大統領は、小渕首相がそういう話をしたときに非常に乗り気でありまして、韓国側は非常にその提案に対して好意的であります。ロシアももちろん自分が入るということでありますから好意的でありますが、現時点ですぐ道筋がつくというような状況ではない。ただ、当然のことながら、両国の外相が話す中で、そういったことも話題になってこようかと思っております。
  43. 上原康助

    ○上原委員 ぜひそういう明るい展望といいますか、何か今にもミサイルが飛んできて大変な事態になるような危機感だけあおるのではなくして、外交努力によって、一衣帯水的環境にある韓国、北朝鮮との関係をもっと平和裏に解決していく、そういう御努力外務省政府としてやっていただくことを強く御要望申し上げておきたいと存じます。  次に、外務大臣の外交演説の中にも、また昨日の沖縄北方委員会での外務大臣所信表明でも、いろいろ沖縄の米軍基地、SACO問題についてお述べになっております。何回か外務大臣のお考えについては聞いてまいりましたので、繰り返しになると恐縮なんですが、私は、政府の言わんとする立場あるいは気持ちというのはよくわかる気がします、これは。日本アメリカの、首相、大統領が取り決めたSACO最終報告ですから、そう簡単に、これを見直しなさい、あるいは変更しなさいと言っても、まだ緒についただけではないかと。二年経過してもなかなか進展しないという、アメリカ側はむしろそのことに大変不快感を示しているという情報もないわけではありませんが。だが、二年有半たっても進展しないということは、いかにこの合意内容が困難であったか、あるいは未調整のまま決められたか、こういう逆の見方もまた、私なり沖縄県民の、全体はそうじゃないかもしらないが、大半が私はそう見ておると思うのですね。  そういう意味で、きょうもあえて普天間飛行場の移設問題とか那覇軍港のことについては触れませんが、これが目玉だと私は見ておりますが、それは稲嶺県政がどうなさるのかもう少し、立ち上げようとする沖縄県のプロジェクトも見なければいけませんけれども、一つは、このSACOの報告とも関連をしてかねがね我々が主張してきたこの日米地位協定の見直し、あるいは、米側の責任で実行していかなければいかない案件などもSACOの取り決めの中の一部にあるわけですね。こういうことも、何か事件、事故が起これば、マスコミが取り上げる、あるいは県民のいろいろな意思表示があるということで外務省政府も動くわけですが、なかなか動かない、今のところ。  そういう中で、柳井事務次官がせんだって沖縄に行ったときに、この日米地位協定の見直しは必要ないと言い切っておられるような感じがしてならない。私も柳井さんを尊敬しているのだが、ちょっとこの点についてはいささか真意がわかりかねる、こう思いますので、やはり地位協定についてももう少し、運用面で改善するというのでなくして、何が問題なのか、何が沖縄側が不満なのか、あるいは、今日本は全体的にいろいろ問題があるわけでしょう、環境問題を含めて。こういうことについては、外務省も積極的にその問題点というものを拾い出して、運用面で本当にできるのか、見直しや改正が必要であるのか、そこいらの基本的なことについてはおやりになった方が、これからの沖縄の基地問題だけでなくして、在日米基地のいろいろな諸問題、難題について解決していくことに資すると私は思うのですが、そのことについての大臣のお考えを改めて聞かせていただきたいと存じます。
  44. 高村正彦

    高村国務大臣 日米地位協定につきましては、政府はこれまでその運用の改善に取り組んでまいりました。平成七年に刑事裁判手続の改善を行ったほか、SACO最終報告において、沖縄県の御要望を踏まえつつ、公務外の事件、事故による被害者への支払い手続の改善措置等種々の具体的な措置を盛り込み、既に実施しているところでございます。  政府としても、今後とも日米地位協定の運用につき、改善すべき点があれば誠実に対応していく所存でございます。  貴委員のお気持ちはよくわかるんですが、今直ちに地位協定の見直しを行うというようなことは考えておりません。
  45. 上原康助

    ○上原委員 直ちに見直しを考えない、これは何かてこでも動かないという外務省のかたくなな考えのようで大変残念、残念というか遺憾に思うんですが、それでは理解と協力を得られませんよ。私だけがこういうことを主張しているわけではなくして、稲嶺新知事も地位協定の改定を公約に入れているわけですよ、地位協定を見直しなさい、あるいは改定をしなさいということは。今後、問題提起がなされると思いますよ、私は。  それと、元内閣安保室長でもあり、ミスター防衛庁と言われた、防衛施設庁長官もなさった佐々淳行さん、佐々さんもこの地位協定にはおかしい点がたくさんあるということを指摘しているんです、経験上。そうおっしゃっている。地位協定見直しを稲嶺さんの側から言うべきだし、そのチャンスだと思うと。本当に理解と協力を得られるというなら、むしろ沖縄側なり日本国民から問題点だということを指摘されたら、それについて誠意を持って外務省でも研究して対応していくということが大事じゃないでしょうか。その点、強く要望というか要求をしておきたいと思います。  それと、この関係予算委員会でも野呂田防衛庁長官から御答弁があったわけですが、SACOの取り決めでギンバルのへリポートというものをブルー・ビーチに移すと。だが、これは金武町はそういうことはだめだと言っているわけだ。それじゃ問題解決にならないということで今いろいろ政府関係者間で協議をしているやに聞いておるわけですが、どうも外務省がそれに消極的だと。むしろ外務省が積極的に洗い直すところは洗い直して解決するべきだと私は思うんですが、この点については、まさか高村大臣も消極的なお考えは持っておらないと思うんです。いろいろなことを解決するには、地域の頭越しにやらないというわけですから、そういった地域の振興策とかいろいろな関連施策と連動させた形での解決策というものが私は基地問題の現実的解決だと見ているんですが、このギンバル問題について外務省としてどういうアプローチを米側となさろうとしておられるのか、聞かせていただきたいと存じます。
  46. 高村正彦

    高村国務大臣 SACO最終報告において、ギンバル訓練場については、ヘリコプター着陸帯が訓練場に、その他の施設がキャンプ・ハンセンに移設された後に、平成九年度末までを目途に返還することとSACOの最終報告になっているわけでありますので、現在、いまだ移転先の地元自治体の御理解を得るに至っておりませんが、政府としてもその方向で努力をしていきたい、こう考えておりますが、特に私がそのことに執着してどうだとかそういうことではありませんで、地元のお考えもよく聞いてみたい、こういうふうに思っております。
  47. 上原康助

    ○上原委員 ぜひそうしていただきたいと思います。これはいろいろの整理縮小問題との関連性もあると思いますので、今柔軟な対応をすることにやぶさかでなさそうな御答弁だったと私は理解をいたしますので、御努力を願いたいと思います。  あと、県道一〇四号越えの経費問題について防衛庁にただしたかったのですが、もう時間ですから。沖縄での実弾砲撃演習の場合は予算措置しなかった。だが、平成十一年、十二年度、本土の五関連施設については相当の予算が投入されているという点を指摘しておきます。これはいろいろ環境問題等との関連もありますので、また別の機会にやります。  最後に、あと一分ちょっとありますから外務大臣に、このことも外務省が一応の所管ですから、二〇〇〇年サミットについては沖縄で開催してもらいたいという強い要望があります。これは今委員長もちょっとにこっとしておられますが、外務省がいろいろ調査をしておられると思うんですね、八カ所について。そのことについてはいつごろ、これは恐らく内閣なのか、官邸、総理に御報告なさるんじゃないかと思うんですが。私は予算委員会でも取り上げて、総理も重要な候補地の一つであるという御答弁があったわけですが、外務省が一応の所管庁でありますので、この点について高村外務大臣に沖縄側の期待にこたえる方向でやってもらいたいということを私は強く要望しておきますが、御見解があればお聞かせを願いたいと存じます。
  48. 高村正彦

    高村国務大臣 予算委員会委員質問に総理が答弁されている点がありますので、そういったことを踏まえて、関係諸要素を考慮しつつ、鋭意検討を行ってまいりたい、こういうふうに思います。
  49. 上原康助

    ○上原委員 ありがとうございました。終わります。
  50. 森山眞弓

    ○森山委員長代理 次に、藤田幸久君。
  51. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 民主党の藤田幸久でございます。  まず、昨日小渕総理がヨルダンの弔問から帰られましたが、中東和平に大変功績のあったフセイン国王の死去というのは、中東にとりまして、あるいは世界の情勢にとりまして大変残念だと思っております。それから私個人は、急遽の決断で総理がヨルダンまで行かれたということは高く評価したいというふうに思っております。  それで、ヨルダンのフセイン国王が亡くなられた、仲介者としての切り札のお一人が亡くなられた。その影響、フセイン国王亡き後の中東の情勢、それから、たくさんお子さんがいらっしゃったお一人のアブドラ王子が王位を継承されたわけですけれども、まだ未知数の面がございますが、今後のヨルダンの体制の行方についてまずお聞きしたいと思います。
  52. 高村正彦

    高村国務大臣 長年にわたって中東和平を推進してこられたフセイン国王の御逝去は極めて残念なことであり、心から哀悼の意を表したいと思います。  八日に行われました同国王の葬儀には、中東や世界の主要各国の首脳とともに小渕総理が参列し、国際社会全体として和平プロセス前進のため協力していくことを確認したところであります。  アブドラ新国王は、故フセイン国王のもとでの外交政策を継続させることを明確に公表しており、新国王の就任がジョルダンの外交政策及び域内諸外国との関係に大きな変化をもたらすことは当面ないものと認識しております。  それで私、葬儀のあれをちょっとテレビで、日本で見たわけでありますが、直前まで皇太子であったハッサン殿下が新国王のそばにかいがいしく付き添っているのを見て、ああ、よかったな、こういうような個人的感じを持ったところでございます。
  53. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 今回見ておりまして、シリアのアサド大統領も出席をされ、それから、いわゆる今まで敵対していた国との会話もされた。そもそも首脳の今回の弔問外交というのは立ち話が多かったようですが、それも大変意味があるのではないかというふうに見ておりましたけれども、総理に外務大臣はきのう以降お会いになったかどうか存じませんけれども、総理御自身のほかの国の首脳との立ち話あるいは会話、あるいは現地におきますアサド大統領及びイスラエルの首脳等との会話等について、何か今後の中東情勢について示唆があるような会話等があったかどうか、情報等があったかどうか。ございましたならば、おっしゃっていただきたいと思います。
  54. 高村正彦

    高村国務大臣 この問題について、残念ながらまだ総理ときっちりしたお話ができていないわけであります。  フセイン国王の葬儀において小渕総理と会談あるいはあいさつをされた主要な各国指導者リストというのがあるわけですが、十九人ぐらいいるんですが、ちょっと主要なところだけ読んでみます。アブドラ・ジョルダン新国王、ハッサン・ジョルダン前皇太子、クリントン米大統領、シラク仏大統領、ブレア英首相、アブドラ・サウジ皇太子、アラファト・パレスチナ自治政府長官、アサド・シリア大統領、サレハ・イエメン大統領、シュレーダー独首相、ネタニヤフ・イスラエル首相、ムバラク・エジプト大統領、シャリフ・パキスタン首相、金韓国首相、カブース・オマーン国王、アナン国連事務総長ほかでございます。残念ながらエリツィン・ロシア大統領とはお会いできなかったということであります。
  55. 天江喜七郎

    ○天江説明員 ただいまの外務大臣の御発言を若干敷衍させていただきます。  総理大臣は、ただいま申し上げました各国の首脳とお話をされたのでございますが、特にアラファト・パレスチナ自治政府長官とは、日本支援を感謝するというアラファト長官からの話に対しまして、日本側は引き続き支援を行っていくということをはっきりと申されておりました。  また、アサド・シリア大統領との簡単な会話の中では、総理から、中東和平をともに進展させていこう、こう述べましたのに対して、アサド大統領は、シリアはいつでもその用意がある、日本はいつも正しい立場を示しており、ともに協力していくということも申されております。
  56. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 一月に高村外務大臣御自身が中東を歴訪されました際に、四項目でしょうか、包括的な解決策の提案をされておられるわけですが、その中にはシリアとイスラエルの和平交渉推進を含めた包括的解決というようなものも入っておりまして、この間アサド大統領が来られたということ、それからイスラエルも数名の首脳がいらっしゃったということも、そういう流れの中にあってほしいというふうに思った次第でございます。  私は昨年、あるヨーロッパの国際会議に出ておりまして、まるで自分の認識になかった新しい事実を学んだわけです。それは、イスラエルから二人の国会議員が来ておりまして、一人はもちろんユダヤ人なんですが、もう一人の国会議員はパレスチナ人だったわけです。つまり、イスラエルの国会議員の中にパレスチナ人でイスラムの方が国会議員として存在しておられた。その方々が、二人ですけれども、立場の違いを超えてイスラエルの国会議員として参加をされ、隣接国の国会議員あるいは政治家の方々と交流をされておられた。ヨルダンに関しても、六、七割がパレスチナ人ということでございますが、もしかするとユダヤ人も入っているのかもしらない、あるいはほかの人種の方々も入っているかもしらない、ちょっと勉強しておりませんけれども。  私自身、イスラエルというと全員ユダヤ人、それから、イスラエルの周辺アラブ国はパレスチナ人あるいはアラブ人と考えがちなんですが、どうもそうじゃなくて、混在している。ということは、国としての体系は国体をなしておっても、恐らく国民同士のいろいろな交流というものも、あるいは親近感というものも実はあるのではないか。その辺に対するアプローチというものが非常に重要ではないかと感じたわけであります。  有名な「ノルウェー秘密外交」という本がありますが、ノルウェーの外交官及びNGOの方々が、五年ほど前ですが中東和平に活躍をされたわけです。もともとはガザの社会支援、人道援助から始まって、ノルウェー人の女性の方が外交官で、男性の方が労働関係のシンクタンクの専門家でございましたが、片方の女性の方はイスラエル側、それから男性の御主人の方はパレスチナ側の人道援助から仲介の役に立ったということを思い起こすわけです。  そういう国に対する支援と同時に、いろいろな民族が混在しておられる、その方々の底辺を底上げしていくということが環境づくりとして大変重要ではないか。実は、日本もそういう面での人道援助は、これまで余り目立たないがしてまいったわけですし、その延長上にこの四項目の提案というものがあるのではないかという気がするわけです。  そういう観点から、これは具体的な質問通告をしたことではございませんけれども、おとついテレビを見ておりましてそういう思いをしておりますが、そういう観点でのより創造的なアプローチといいますか建設的なアプローチというものがますます重要ではないかという気がしておりますが、そういう私の認識について、大臣の方から、大臣自身のじかの言葉でコメントをいただければ幸いです。     〔森山委員長代理退席、委員長着席〕
  57. 高村正彦

    高村国務大臣 今委員がおっしゃったことと全く同様の認識を持っております。  一月に中東に行きまして、どこの国からも大変な歓迎をされたわけでありますが、日本は歴史的にその地域に手を汚していないということもあるわけでありますが、日本が経済的支援をしているということが、それぞれの国はもちろん、国民から大変な評価をされている。もちろん、イスラエルは豊かな国でありますから、イスラエルにそういう意味の経済支援はしておりませんが、イスラエルの人たちからも、私たちは貧しいパレスチナよりも豊かなパレスチナを望むんだ、パレスチナを支援してくれることは大歓迎であるとみんな異口同音に言っていたということで、私たちはそういった支援をこれからも続けていかなければいけない、こういうふうに思っております。  また、ジョルダンの中に難民キャンプがあって、かなりの方たちがおられるわけでありますが、そういう方たちへの支援ということも考えいかなければいけないと思っております。
  58. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 それでは、朝鮮半島の問題に移りたいと思います。  きょう外務大臣がソウルに飛ばれるということ、大変御苦労さまでございますが、幾つかお聞きしようと思った点は先ほど上原議員の方から質問が出ましたので、ちょっと違った角度から質問させていただきたいと思います。  まず、けさの報道で、アメリカのニューズウイークの最新号に高村外務大臣のインタビュー記事が掲載されておる。その中で外務大臣は、北朝鮮に対する人道支援は日朝国交正常化前でも可能だとの見解を明らかにした。これは、北朝鮮への大規模な経済支援は国交正常化の後でなければならないという原則を示しながらも、北朝鮮が核開発疑惑などに対する国際社会懸念に建設的な対応を行えば、正常化前でも食糧などの人道支援を開始することは可能である。つまり、人道援助を国交正常化後の大規模援助と切り離して、いわゆる核開発疑惑などに対するおそれを除去する環境が整えば、人道援助というものも可能だというふうにおっしゃったというふうに報道されておられますが、これはそのとおりでよろしいでしょうか。
  59. 高村正彦

    高村国務大臣 私は、まだその記事を見ていないのですが、今の委員がおっしゃったことを聞いておりまして、その部分については大体私が申し上げたとおり載せていただいているということが確認できました。  もともと、日本北朝鮮に対する大規模援助は国交正常化後でなければやらないということ、それと別に食糧支援等の人道援助は実際にやってきたわけでありますが、昨年のミサイル発射以降、それに対応する措置として、食糧支援は当面見合わせるということになっているわけであります。  今私が申し上げたことがニューズウイークに書かれて、今委員がおっしゃったことを聞いておりましたら、核疑惑についてだけ触れていましたが、要するに全体的に、ミサイルの問題も含めて、国際社会懸念に対して建設的な対応をしてもらえるのであれば、私たちは、ミサイル発射以前のことに戻って、そういうことについてはそれなりの対応をしていきたいという趣旨を申し述べたものでございます。
  60. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 ということは、昨年のテポドン発射以降、人道援助の凍結あるいはKEDOの一時凍結等の政策がございましたけれども、今北朝鮮側の方が核開発疑惑などを含めた環境が変わってくれば、人道的な、ということは、食糧援助、これは大規模援助とは違った次元での支援というものが可能であると。これはきょうもソウルに行かれて、韓国の太陽政策あるいはアメリカの対北朝鮮政策、今協議が行われておりますが、それにより整合するような形で前向きな姿勢を日本としても示していこうというようなお気持ちがおありでしょうか。
  61. 高村正彦

    高村国務大臣 日本は、もともと北朝鮮にそんな対決的な姿勢をとってきたわけではないわけで、ただ、ミサイル発射という事実があったから、それに対しては毅然とした対応をするということでやってきたわけでありますから、北朝鮮の側が国際社会懸念に対して、あるいは日朝間に横たわるいろいろな問題について建設的な対応を示してくれるのであれば、日本の方から別に敵対的な関係を持つなどということは当初から毛頭考えていないわけであります。  もちろん日米韓、緊密に協力して対処していかなければいけない問題でありますから、太陽政策、そういったものとどうすり合わせていくかというような話もありますが、本質的に日本が当初から考えていたこととそうそごがあるわけではありません。
  62. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 今、アメリカのペリー前国防長官が、各国を回りながら報告書の作成に当たっておられますけれども、ということは、北朝鮮の方からできるだけそういう、日本としても動きやすいような環境づくりを進めてほしいというようなアプローチを、アメリカ側の方からも北朝鮮の方に発してもらう。それから、先ほどテポドンに対しては毅然とした態度ということがありましたが、ということは、けさも二人の委員の方から話が出ておりました、仮に、再びテポドン発射の兆候があれば、日本日米安保条約がございますから、アメリカに攻撃をするのと同じような扱いに当たるというようなことも含めまして、ある意味では警告を発しよう、そういう毅然とした態度と、一方で、環境づくりを進めなさいというような発信をアメリカ側から北朝鮮側にしていただくということが、今のような環境づくりに役立つのではないかと思いますが、そういうお考えはございませんでしょうか。
  63. 高村正彦

    高村国務大臣 昨年のテポドンテポドンというかミサイル発射と同じような形態のミサイル発射が察知されたときに、直ちに日米安保条約の発動ということになるのかどうか、それはともかくとして、現実ミサイル発射されそうな兆候があった場合には、それを阻止するに足る強い警告を日米韓でしようというような話し合いは、日米韓でしているところでございます。
  64. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 それでは、ちょっと別の質問の方に移ってまいりたいと思います。  昨年の末でございますけれども、国連の人権規約委員会の方から、日本政府が一昨年の六月に出しました第四回の報告というものに対する勧告の内容が示されたわけでございます。これは、今まで国連の人権委員会において、九三年に、第三回の報告に対して、国連の人権委員会の方からいろいろな是正勧告が来た。それに対して、九七年、一昨年の六月に日本政府が第四回の報告を出し、それに対して、昨年の十一月に国連の人権委員会の方からさまざまな修正を求める勧告が寄せられたわけでございます。  この勧告を見ておりますと、日本政府の方で大変改善があるという項目も三つぐらいございます。しかしながら、それに対して、いろいろな懸念を示した事項とか、あるいは改善を求めた勧告が、カンコクというのは朝鮮半島の韓国ではなくて、中野寛成先生がいらっしゃるので申したわけではありませんが、改善を求める勧告が二十九もあったということで、肯定が三に対して否定が二十九というようなわけですが、それだけかなりいまだに改善勧告が多かったということに対して、まず、どういう認識を持っておられるか、お伺いをしたいと思います。
  65. 上田秀明

    ○上田政府委員 お答えいたします。  御指摘のとおり、人権委員会による最終見解におきまして、肯定的要素として何点かの点を挙げるとともに、懸念事項及び勧告ということがなされております。  私どもといたしましては、関係省庁と十分な連絡をとりながら、日本現状あるいは改善努力について報告をしたわけでございまして、それに対しまして最終見解が示されたこと、これはこれとして受けとめてまいりたいと思いますが、この委員会は、御案内のとおり、個人の資格で成り立つ専門の方々が委員でおられますので、今後とも、日本努力あるいは現状につきましてもさらに御説明するとともに、また関係省庁で改善すべき点はできるところから改善を図っていくという考えでおります。
  66. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 昨年の十二月にハノイで小渕総理が、人間の安全保障ということについて提案をされました。人間の尊厳に立脚した平和と繁栄の二十一世紀というような言葉も使われましたし、それから一月の、今回の国会の外務大臣演説の中でも、人間の安全保障ということを言われたわけでございます。  その一月の高村外務大臣の人間の安全保障に関しては、例えば環境とか薬物とかテロとか難民とか、いわゆる国境を越えた諸問題に関する人間の安全保障ということをおっしゃっておられるわけですが、小渕総理のハノイの演説、それから一月の高村外務大臣演説の中にも、人間の安全保障の中に人権という言葉が入っておらないのです。私は当然人権というものが入るべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  67. 高村正彦

    高村国務大臣 委員のおっしゃるとおりでございます。
  68. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 ありがとうございます。  そうおっしゃっていただいたわけですが、にもかかわらず、実は、人権という言葉がハノイにも、それから今回の外務大臣の言葉にも入っていなかった。それから、ハノイの小渕総理大臣の提案の中で、五億円の人間の安全保障基金ということが盛り込まれておりますけれども、五億円というのは余りにも少ないなという気がしたわけでございます。  それで、前の質問で申し上げましたように、肯定三に対して改善勧告が二十九あるということは、やはり日本の全体として人権に関する取り組み方が非常に希薄であるということの証明ではないかという気が私はいたしまして、ぜひ人権問題に対して、これは外務大臣というより、もちろん所轄の官庁がたくさんあるわけです、それから国連の人権教育のための国連十年に関する国内行動計画の推進本部というものがございまして、いろいろな省庁がかかわっておるわけです。  ただ、省庁ごとにいろいろな事情があっても、やはり国連の人権委員会で扱われ、しかも国連外交ということを日本は非常に重視しておる、そして人間の安全保障ということを大変日本の外交の柱にしておられる割には、そのことと、日本政府の第四回の報告書との間に随分乖離があるような気がするわけです。  そういう観点から、私は、外務大臣にぜひ、きょうは個々の問題をもう少し超えた、日本全体としての、外交の柱としての人権問題について、もう少し積極的に取り組んでいただきたい、そういう観点から、幾つか個々の問題について質問をしたいと思います。  まず一つは、特に狭山事件を中心とする同和問題でたびたび明らかになっております証拠開示の問題なんです。  実は、勧告二十九の項目のうち強く勧告するというのが四つあるんです。それから、再度勧告するというのが二つあるんです。その再度勧告をするということの一つが、この証拠開示問題です。つまり、第三回報告に対して是正を勧告した九三年、既に一回勧告がなされている。それに対して、今回も改善がなされていない。それで、この五年間にわたって改善措置がなされなかったという点が大変憂慮されるというふうに、今回の人権委員会の最終見解の中にあるわけですが、この点について、なぜ改善をしなかったのか、それから、今後改善をする努力をする予定がないのか、そのことについてまずお聞きをしたいと思います。
  69. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 お答えいたします。  先生お尋ねの証拠の開示の問題でございますが、確かに捜査機関といいますか公判の問題になりますと、検察官の手持ちの証拠を全部開示すべきではないかという議論があることは承知しているところでございます。  ただ、刑事事件の捜査記録といいますと、広範な捜査活動の結果、多種多様なものがその記録の中に編綴されておりまして、証拠も多様だということでございます。その中には事件の争点と必ずしも関連しないものも含まれておりますし、また個人のプライバシー等の権利の保護や、あるいは将来における捜査に対する協力の確保等が、それを開示することによって侵害されるおそれもあるというような証拠あるいは資料も含まれるわけでございます。  刑事訴訟法の第二百九十九条第一項は、検察官が公判廷で取り調べを請求する証拠物及び証拠書類についてはあらかじめ弁護人等に閲覧の機会を与えなければならない、こういうこととされておりまして、公判廷で取り調べを請求する証拠物、証拠書類についての開示をすべきである、こういう規定になっております。  また、このほかにも、これに加えまして、最高裁判所の決定によりまして、裁判所は一定の場合には訴訟指揮権に基づきまして検察官が所持する証拠の開示を命ずることができるものとされるところでございます。実際、具体的必要性に応じまして、裁判所から検察官に対し証拠開示の命令または勧告が行われておりまして、検察官においても、事案に即して証拠開示の要否、時期及び範囲等を検討して、被告人の防護上合理的に必要と認められる証拠についてはこれを適正に開示しております。  ただいま御質問の勧告につきましては、このように弁護人等には公判の準備をするために必要な証拠の開示を受ける機会が十分に保障されていることから、さらに証拠開示を受ける機会を保障するための新たな措置をとる必要はないと我々としては考えている次第でございます。
  70. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 いつも同じような答弁が法務省側の方から出てきておるようでございますけれども、そもそも検察側が持っておる情報量の方が弁護側が持っておる情報量よりもはるかに多いわけでございます。  そもそも、例えば、弁護側が請求をしたらという話ですけれども、検察側がどんなものを持っておるのかわからない。まして、今のお話の中で、検察側が持っておる情報が多種多様でいろいろ関連外のこともあるというお話でございますが、逆に言いますと、リストがなければ関連があるかないかわからないわけでございまして、したがいまして、リストがなければ弁護側の方でも裁判長に対してどういう証拠を出してほしいと言うことができないわけでございます。ですから、実態としてこれは明らかに不公平である。  これは恐らくほかの国の裁判の体系からいたしましても、日本が極めて異なる体系にあるんではないかという気がいたしまして、外務大臣も弁護士でおられますからその辺よくおわかりじゃないかと思いますけれども、やはりこれは実効的な公平性ということを追求していくということが必要ではないか。  人権というのは、ある意味では法律に等しい重さを持った人権で、恐らくこの国連の人権委員会で扱っておるところの人権の意味というのは、非常にそのぐらいの重みがあるんではないか。  ですから、今法律上の説明を法務省の方がされましたけれども、実際に弁護側が検察側に対してどういう証拠を持っておるかということのリストを請求すること自体は法律の中で可能ではないかと思うのですが、その点についてもう一度法務省の方からお聞きしたいことと、弁護士でもあられる外務大臣からもコメントをいただければ幸いです。
  71. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 お答えいたします。  実質的には同じお答えをいたすことになろうかと思いますが、捜査の一連の過程を通じて膨大な証拠あるいは資料が収集されるわけでございまして、検察官は、その中から、公訴を提起すべきであると判断した事案につきまして公訴を提起し、また証拠の開示においても、その事件の争点に関連するものについての開示をするということでございます。  確かにリスト等もございますけれども、そのリスト自体が、今言った捜査の過程で広範に集められたものを網羅的に記載してあるものということでございますので、それ自体の開示も、先ほどと同じ理由でございますが、個人のプライバシーとかの権利の保護や、あるいは将来における捜査に対する協力の確保等に支障がある場合がございまして、これを開示するのは適切でないという判断でございます。
  72. 高村正彦

    高村国務大臣 私も弁護士でありますから、個人的にはいろいろな感想がありますけれども、政府見解といたしましては、今刑事局長答弁したとおりであります。これからも政府内部でいろいろ話し合っていきたいと思っております。
  73. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 大臣にここでお聞きしたいのですが、人権委員会が言っておる人権というのは非常に、法律にあるいは匹敵するぐらい重いのではないかという認識についてのコメントをいただきたいことが一つ。  それからもう一つは、いわゆる被疑者の保護ということから考えますと、これは結果的に保護がされていなければ私はいけないのではないかという気がするのです。つまり、今までの法務省の説明を聞いておりますと、いわばプロセスの問題でございまして、実はこの二十九の勧告等の中を見ておりますと、やはり結果的に人権が保護をされているかどうかという観点が非常に重要で、日本の行政の中に、結果的に人権が保護されるかあるいは尊重されるかということよりも、手続上という観点からの回答が多いので、したがってこれだけ乖離をしているという気がいたしますが、その点について、大臣からコメントをいただければ幸いです。
  74. 高村正彦

    高村国務大臣 この委員会の報告書は法的拘束力はないわけでありますが、法的拘束力がないからといって、そんなに軽いものだとも思っておりません。軽いものだとも思っておりませんが、先ほど松尾刑事局長が述べられた理由もまた、それも重いものでありますから、そういうことを勘案しながらも、政府の中で最終的に責任ある決定を行っていきたい、こういうふうに思っております。  それから、私が政務次官のときでありますが、ロビンソン人権高等弁務官が日本に来られて、一緒に食事をいたしました。また、ジュネーブに行ったときもあちらでお会いしたこともありますが、そのときにロビンソン人権高等弁務官が言っておられたことは、基本的に日本に大きな人権の問題があるとは考えておりません、ただもう一つ日本国際社会に対してもっと積極的に人権の面でリーダーシップを発揮してもらえればありがたい、こういうことを言っておられたことを付言しておきます。
  75. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 ちょっと二つほどまたこの勧告についてお伺いしたいと思いますが、一つは、政府から独立した国内の人権救済機関の設置というものを強く勧告する。強く勧告するという幾つかの勧告の一つですけれども。それで、こういった政府から独立した人権救済機関については、例えばアジアにおいても、インド、インドネシア、フィリピンなどにも設置をされており、そして日本取り組みの遅さが目立っているわけですけれども、これについて、救済機関の設置についてどう考えるかということ。  それからもう一つは、裁判官に対する国際人権法の教育が必要ではないかということが言われておるわけであります。これは、人権においては先進国であろう、あるいはあってほしい日本に対してこのような指摘がされていること自体が非常に大きな問題だろうというふうに思っておるわけですが、この二点について、勧告に対してどうこたえるのか、政府の方の見解をお聞きしたいと思います。
  76. 高村正彦

    高村国務大臣 この勧告につきましては、所管省庁において現在検討をしているものと承知しております。私自身余りよく知りませんので、もし必要であれば政府委員から答えさせます。
  77. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 では、簡潔にお願いします。
  78. 横山匡輝

    ○横山政府委員 お答えいたします。  政府から独立した救済機関の設置の関係でございますけれども、現在、法務省に人権擁護施策推進法に基づきまして人権擁護推進審議会が設置されておりますが、この審議会に、法務大臣から人権救済制度のあり方についての諮問がなされております。今後、本格的に調査審議されることが予定されております。国連規約人権委員会からは、委員御指摘のとおり、独立した人権救済の機関の設置についての指摘を受けているところでありますけれども、人権救済を行う機関については一定の独立性が必要であるという考え方もあるところでありまして、審議会での調査審議の結果も踏まえまして慎重に検討してまいりたい、そのように考えております。  それからなお、裁判官に対する研修の問題、これは、私ども行政に属する者が司法部に属します裁判官の研修についてこういう席でお答えするというのはいかがかと思いますので、そちらの答弁は控えさせていただきたい、このように思います。
  79. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 大臣にまた申し上げたいと思いますが、国連の人権委員会における、日本がどういう、いろいろな提案に対して賛成しているか反対しているかという表を実は取り寄せたのですが、かなり欧米系の国々と同じ投票パターンになっておりまして、アジアのほかの国に比べて、日本それから若干韓国が異なっておる。かなり日本が、この人権問題に関してはいろいろな面で反対をしている案件が多いのです。しかも、欧米が反対しているところに日本も反対しているというパターンが多いのです。  そのことと、先ほど法的拘束力はないと言いながら、かなり、世界各国の人権に関する専門家が勧告をされたことが、この二十九の勧告に出ている。ということは、もちろん、きょうはたまたま法務省ですけれども、いろいろな日本の省庁の設置法の問題から含めて事情があると思いますけれども、これから日本世界で信頼をされて、外交その他、そして外交は日本安全保障にとって極めて重要だという観点からいたしますと、先ほどハノイあるいは外務大臣演説の中にも人権がなかったということにもあらわれているような、やはり人権の問題をこれから重要視していくということが、これは日本に対する信頼と同時に、日本安全保障上からも非常に重要ではないかと思いますので、さらなる前向きな取り組み、私は、やはり外務省の方から、あるいは総理も含めまして、各省庁にもっと具体的なアプローチをしていくべきではないかという気がいたします。  たまたま、例えば対人地雷の問題なんかもそうでしたけれども、やはり国全体としてどういう政策をとっていくべきかということを各省庁に外務大臣の方からもアピールをされるということが非常に重要ではないかと思いますが、その点について、ちょっと一言おっしゃっていただければ幸いです。
  80. 高村正彦

    高村国務大臣 人間の安全保障という中に例として挙げたものが、地球環境問題、薬物、国際組織犯罪、難民等となっているわけでありますが、だから人権は軽んじている、そういうことじゃないわけでありまして、基本的人権というのは我が国憲法にきっちり書いてあることで、今の国際社会の中で特に問題である地球環境、薬物、国際組織犯罪、難民。人権というのは今の時点だからどうという話じゃなくて、ずっと必要なことでありますし、憲法にも宣明してあるから、入れた方がよかったのかどうかということは、それは一つの御意見としてお伺いしますが、決して軽んじているわけではないということは申し上げておきます。  私も、外務大臣としても、人権ということは大切だと思いますから、国内的にもあるいは国際的にも、そういった問題について、日本国というのはこれを大切にしているんだということはきっちりわかるような行動をとっていきたい、こういうふうに思っております。
  81. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 いえ、逆でございまして、ずっと続いておる事柄がたくさん、二十幾つものことについて指摘をされておるわけであります。つまり、男女共同参画の問題にしてもそうですし、在日外国人の問題もそうでございますし、それから同和問題もそうでございますし、戸籍の、相続権の問題もそうでございますし、これだけ二十九もの勧告があるということは、これはずっと続いておる現在進行形の問題である。しかも、人権という問題はまさに国境を越えた共通の普遍的な問題であるということを申し上げて、ぜひ、そういう認識で今後ともこの人権の問題について取り組みをいただきたいということを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。  もう数分しかございませんので、ガイドラインのことについて二、三お聞きをしたいと思います。  それで、まずお聞きしたいことは、よく武力行使との一体化、あるいは戦闘地域との一体化というような言葉が使われますけれども、それを英語で何と言っておるのかということをお聞きしたいわけです。というのは、これは英語で何と言っておるかということが私は非常に重要な意味を持っておるという気がしておりますので、英語で何と言っておるかということをまず二つお聞きしたいと思います。
  82. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  武力行使との一体化、これは、我が国がみずから直接武力行使をしていないとしても、個々の具体的状況によっては我が国も武力行使をしたとの法的評価を受ける場合があり得るとする考え方でございますが、自衛のための必要最小限の範囲を超える武力の行使を禁じている日本国憲法との関係で用いられている概念でございます。  したがいまして、国際法上はこのような武力行使との一体化という確立した概念が存在するわけではございませんで、委員質問の、武力行使との一体化の英訳についても確定したものがあるわけではないわけでございます。
  83. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 お答えいたします。  戦闘地域とは一線を画されるという点についての、英語で何と言うかという御質問でございますが、日米防衛協力に関します指針におきましては、捜索・救難及び後方地域支援の定義の中で使われております。その場合に、「戦闘行動が行われている地域とは一線を画される」という日本語訳に対応いたします英語は、distinguished from areas where combat operations are being conductedとなっております。  なお、委員御案内のとおり、周辺事態安全確保法案におきましては、この一線を画されるといったような文言が用いられていることはございません。
  84. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 ガイドラインあるいは周辺事態法、これは、いわば日本の周辺におきまして米軍と共同行動をするということになっておるわけです。それで、今いろいろ国会で論議されておる内容の事柄を、アメリカ側といろいろな時期に、頻繁に協議をしながら説明していかなければ、そもそもアメリカ側は日本は何を考えて、それから実際何ができるのかできないのかということを説明しながらやっておられるはずですが、その際に、この極めて重要な武力行使との一体化ということを英語で説明ができなければ、コミュニケーションも図れないし、信頼された共同行動なるものは不可能ではないかという気がするのですが、いかがでしょうか。
  85. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 御指摘のとおりでございまして、アメリカ側と話をするに際しましては、いろいろな言い方で先ほど申し上げましたようなことを説明しなくちゃいけない、そういうことかと思います。先ほど申し上げましたのは、いわゆる武力行使との一体化ということについての国際法上の定訳というようなものはないということでございます。  例えば、一つ説明の仕方としましては、becoming an integral part of the use of forceというような言い方が近いかなというような感じもしますが、しかし、今申し上げたその英語だけで完全に意味が伝えられるかというと、これはまたなかなか難しゅうございまして、先ほど私が申し上げたようなことを英語に直して説明しながらアメリカ側の理解も得ていく、こういうようなことではないかと思います。
  86. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 つまり、それだけ説明をしなければいけない。多分、人によって、場合によって違った英語で説明をされているのじゃないかという気がするわけですけれども。  そうしますと、今、武力行使との一体化ということを、日本語でも非常にわからないというか難しい、それをまたいろいろな方が、いろいろな英語の表現でアメリカの方に説明をしておる。これでは私は本当に、円滑な共同行動というものができないばかりか、非常に誤解を増幅してしまうという気がいたします。  それをぜひ一度、武力行使との一体化というのを、一言じゃなくても結構ですよ、先ほど条約局長がおっしゃったことを説明書きで結構ですから英語に直していただけませんか。それでなければ私は非常にこれから、また例えば事前協議ということの意味も、日本語では協議という意味になっていますが、実態では事前同意のような扱いに今までなっているわけですね、岸・ハーター公文以来の。したがって、ノーと言わざるを得ないことを予測して日本側からその申し入れをしないというようなことになっているわけで、そういった意味も含めて、この武力行使との一体化というのは非常に重要な意味を持っておると思いますので、説明書きで結構です、A4一枚になるならそれでも結構ですから、英語の、武力行使との一体化の説明を出していただくことをお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  87. 中馬弘毅

    中馬委員長 続いて、赤松正雄君。
  88. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。  先ほど来、北朝鮮をめぐる情勢のことについて先輩、同僚の議員からお話がございました。きょう三時には、外務大臣、国会をお出になって韓国に向かわれて、先ほどお話があった小渕総理の三月訪韓の準備等を含めて、特に、金大中韓国大統領との間で北朝鮮をめぐるさまざまな問題についての会談をなさるということでございますので、それに関連をして御質問したいと思います。  まず、一九九四年のノドン一号、あれから始まってこの約五年というもの、特にメディアを中心に、要するに、北朝鮮日本との間における軍事的事態、紛争事態、そういうものも含めて、そういう緊急の事態が起こったときにどうするかというふうなテーマが非常に新聞、雑誌等をにぎわせている、こういうふうなことがあると思います。先ほど上原委員からもお話がありましたけれども、危機をあおるというんではなくて、いかに北東アジアに平和な環境というものをつくっていくかということについて、やはりさらに今まで以上に力を注がなくちゃいけない、そういうふうに私は思います。  先般、あるメディアで、外交とそれから軍事的対応という二つの側面がこういったテーマにあるとするならば、日本の場合は、第一章から九章ぐらいまでの、平和をいかにもたらすかという外交的努力について多く語られるけれども、最後の一章、軍事的対応というものについてはほとんど語られることがない、こういうふうな言い回しで一つの討論会が行われておりましたけれども、私はそうかなという気がいたします。もちろん最後の部分について語られることは少ないということは認めますけれども、ではその一章から九章までの、いかにして平和をもたらし、そうした平和な環境をつくっていくかということについて、いわば国民的対応というのか、世論を挙げた形でそういったことについて真剣に語られているということは意外と少ないんではないか、そんなふうに思う次第でございます。  そういったことを前置きにいたしまして、まずお聞きしたいのは、アメリカの対北朝鮮協議というものの現状をどういうふうに認識しておられるか、北朝鮮をめぐるアメリカ対応について、アメリカがどういうふうにこの問題について対応しているのかということについての外務大臣としての基本的な認識をまず冒頭お伺いしたいと思います。
  89. 高村正彦

    高村国務大臣 今真剣な話し合いが行われているというふうに承知していますが、双方の立場には依然として差があるというふうにも承知しているわけであります。米国としては、かかる協議を通じて、秘密核施設疑惑ミサイル問題等国際社会懸念を解消するよう北朝鮮に働きかけているわけでありますが、北朝鮮との協議は常にと言ってよいほど紆余曲折を伴うこともあり、協議の今後の見通しについて、現時点で予断を持ってお答えすることは難しいということであります。  いずれにいたしましても、我が国としては、韓国とともに、このような協議における米国努力支援すると同時に、種々の場において北朝鮮に前向きの対応を求めていく考えであります。
  90. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 ことしの初めだったと思いますけれども、韓国大使それからアメリカ大使、中国大使、お三方の新聞紙上の鼎談だったと思うんですけれども、これはしばしばメディアの方がそういう問いかけをするわけですけれども、アメリカ北朝鮮に対する空爆の可能性について聞いているくだりがあったわけです。それに対して斉藤米大使が、可能性についてはなしとしない、あると、可能性を認める発言、もちろんたくさんあるとかないとかそういう表現ではなしに、なしとしない、そういう認識を表明されておりましたけれども、どういったときにアメリカの北に対する空爆の可能性というものが高まるのかどうか、どういう認識をしておられるかについてお伺いしたいと思います。
  91. 高村正彦

    高村国務大臣 斉藤大使が、米国が武力行使というオプションを捨てているとは思わない、こう語ったとの報道がなされた事実は承知しているわけでありますが、斉藤大使の発言は、米国が米朝協議等を通じ北朝鮮の適切な対応を引き出す努力を行っていることを強調したものであって、米国による空爆の可能性が強いことを示唆したものではないと私は思っております。  秘密核施設疑惑ミサイル問題等により国際社会北朝鮮に対する懸念が増大している中、現在、これらについて米朝間で協議が進行中でありますが、委員質問に直接お答えするのは非常に難しいんですが、少なくともこの協議がきっちり進展すれば、そういうことはないということははっきり言えるのだろうと思います。
  92. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 それは当然なんでしょうけれども、私、これに関連をしまして思いますことは、これはちょっと大臣のお考えを聞かせていただきたいんです。  要するに、先ほども藤田委員から、新日米防衛協力の指針に関する周辺事態安全確保法案についての質問がありましたけれども、しばしばこの法案の審議を急げという角度からのお話の中で私思いますのは、この法案のねらいというのが恐らく、明言はされないにしても、ほとんど我々の中において共通の認識としてあるのは、北朝鮮において紛争が起こる、何らかの形での事態が発生するというふうなときにどう対応するかという、アメリカに対する、米軍に対する後方地域支援ということが主軸になっているわけですけれども、これは仮に、要するに周辺事態安全確保法案が成立をしたというときに、ある意味でアメリカは安心をして空爆する一つ条件が整うということになるんではないかという見方がある。  というのは、イラクの問題が引っかかってくるわけですけれども、イラクと北朝鮮を単純に比較すれば、両方ともいわゆる大量破壊兵器を持っている、そしてテロ国家である。北朝鮮については過去のことであって、今はそうではないというふうな見方があるようですけれども、それについてもやはり一般的な国民の受けとめ方からすれば、イラクと余り変わらないという印象を持っている。  そういった中で、もちろんイラクを取り巻く周辺の地域と北朝鮮を取り巻く周辺の地域の事情の違いということはよくわかっておりますけれども、しかし、単純に言って、イラク周辺にも、イランであるとかサウジアラビアであるとかインドであるとか、そういう国際政治において非常に重要な地域がある。人口とか国際政治における濃度の浅さ、深さというか位置づけは違うかもしれませんが、中国、日本というのがある北朝鮮とイラクを単純に比較すると、今言ったようなことが言える。  非常に逆説的な言い方ですけれども、周辺事態安全確保法案ができない方が、成立しない方が際立って北東アジアはとりあえずは安心だというふうな見方があるんですけれども、大臣、どう思われますか。
  93. 高村正彦

    高村国務大臣 今の見方には同意できないわけであります。  日米安保条約の中にも、当然のことながら、国連憲章に従って行動しなければいけない、こういうことになっているわけで、今北朝鮮の中で爆撃を正当化するような国連決議があるというようなことも承知をしておりませんし、当然に米軍というのは国連憲章に従って行動すると思っていますから、この周辺事態安全確保法が成立したことによって米軍が爆撃する確率が高まるというようなことは全くないことだ、こういうふうに思っております。
  94. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 アメリカにも国務省あるいは国防省、それぞれの政府の中における立場の違い、考え方の違いというのは当然あると思うんですね。  私は、そういう観点から、外交の姿勢というのはどの国でも、国と国の二国間においても当然、今日のようなこういう事態が起こった場合に、厳しい接し方とそれからやわらかい、硬軟両方の対応の仕方というのは大なり小なり今どこの国の外交の姿勢でもあろうかと思うんですが、そういう観点で、アメリカはやはり、まさに硬軟両方取りまぜた、厳しい対応あるいはやわらかい対応、さまざまな角度の外交方針というもので臨んでいる。  言ってみれば、今私が申し上げたようなことが出てくることも関連するような、そういう厳しい姿勢も見せている。実際にそうなるかどうかについては、恐らく今外務大臣がおっしゃったことが支配的な考え方なんでしょうけれども、私が先ほどそのお答えをいただく前に述べたような見方も全く出てこないことではない、可能性なしとはしないと私は思うんです。  いわば硬軟両方、あめとむちといいますか、そういう方の外交姿勢という観点からいきますと、先ほど上原委員に対して外務大臣がおっしゃった、きょうの韓国大統領との対談の中で、恐らく主たる一番大きなテーマなんでしょうけれども、金大統領に、韓国のいわゆる北朝鮮に対する太陽政策について、大筋というかガイドラインを聞いた上で我が方としてもコメントを述べたい、そんなふうなことを先ほどおっしゃいました。韓国にしてもやはり、いわゆる太陽政策という名のもとにおける政策が今表立って出てきているわけですけれども、やはり両方のスタンスというか、今、太陽政策ということが強調されていることは、恐らく一方で、北風政策という言い方が当たるかどうかはわかりませんけれども、そういう側面もあって、今はいわゆる太陽政策というものが表に出ているんだろうと思います。  日本の場合、さて、では、そういうネーミングがある外交姿勢というか、北朝鮮に対する基本的な外交姿勢というのは、国民に、高村外務大臣が、我が日本国の対北朝鮮外交はこういう政策でもってやっているんですというふうなお立場をわかりやすく言っていただいて、ついでにそういうネーミングまでしていただくようなものがあれば、今なければ、これからこういうふうにやるんだというものがあれば非常にいいなと思うんですけれども、まず、その辺について。
  95. 高村正彦

    高村国務大臣 残念ながら、余りネーミングにふさわしいような基本政策があるということではないわけでありますが、北朝鮮をめぐる情勢は依然不安定でありまして、昨年のミサイル発射秘密核施設疑惑などにより国際社会懸念が増大しております。  我が国としては、米韓と緊密に連携していくことを重視することはもとより、現在行われている米朝協議における米国努力を引き続き支援していくとともに、北朝鮮が諸問題に建設的に対応を示すのであれば、対話と交流を通じ、関係改善を図る用意がある、これが日本国の姿勢でございます。
  96. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 一般的に、国民の側から見ると、今の外務大臣のお話に出たようなことを含めると、要するに、ここのところ、去年の八月末のテポドン以来、どちらかといえば北風政策的な厳しい対応というものが表に出て、相手次第によってはこうよという、そちらの対応によってはこういうことをやる用意があるというような言い方を少し見せてはおられますけれども、基本的には、どちらかといえば、太陽と北風でいえば北風政策だなという印象を受けるんです。  濃度の深さ、浅さ、濃さ、薄さは別にしまして、今日本が、対北朝鮮の外交の中で、大きく言って、厳しく対応しているのはこれだ、それに対して、そうじゃない側面の政策はこれだ。二つに分けて言っていただけませんか。
  97. 高村正彦

    高村国務大臣 基本的には、今の状況というのは北朝鮮ミサイル発射から始まったことでありますから、その状況を、ミサイル発射を含めて、国際社会懸念に対してしかるべきそれを解消する建設的な努力を払ってもらいたいというのがその立場でありますが、厳しい対応ということでいえば、食糧支援は当面見合わせる、それから、国交正常化交渉は当面見合わせる、この二つが厳しい対応でありますし、あと運輸省関係のものも若干ありますが。そうであっても、建設的な対応を示してもらえるのであれば、いつでも関係改善を図っていく用意がありますよというメッセージは繰り返し出しているところでございます。
  98. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今、メッセージを繰り返し送っているとおっしゃいましたけれども、実際には、本当に向こうに通じているんでしょうかね。さっき上原委員とのやりとり、人道的な対応はきちっとすべきだというお話の中で、そういうことをする。厳しい対応の中で、食糧支援の話は今見合わせているという話がありましたけれども、そういった点が、我が日本の方の国民的理解を得るような、背景としてそういうものが出てくるような事態が生まれることを心よりこいねがっているという期待の表明がございました。  実際には、神頼みというかこうやってほしいという期待感だけであって、いつぞや安全保障委員会外務大臣とお話を申し上げたときに、パイプは課長クラスのみ、そこ以外に確たるパイプはない、こういうふうなお話がありましたけれども、今申し上げたような点を含めて、北に対するメッセージの送り方、そして手ごたえ、この辺についてはどういうふうに感じておられますか。
  99. 高村正彦

    高村国務大臣 基本的には、今私が申し上げたようなメッセージを総理みずから何度も出しているわけであります。  相手に通じているのかと。通じているというのはどういう意味だかわかりませんが、少なくとも何らかの反応が返ってきております、余りいい反応ではないわけですが。だから、反応が返ってくるという意味は、何らかの意味で通じているんですが、それが、少なくとも現時点で、水面上といいますか、公式にはいい反応が返ってきていないというのが残念ながら事実であります。  ただ、こういうメッセージを繰り返し出すことによって、やはり北朝鮮側としても、日本だけがそう厳しい対応をしているわけじゃなくて、国際的に孤立している状況でありますから、ますます孤立していく方が北朝鮮にとって利益があるのか、あるいは、そうでなくて、それぞれの国際社会懸念を解消して、そして、国際社会とともに繁栄を図っていく方が利益があるのかということを粘り強く説得していくということであって、相手が強く出たからいつも引く、引く引く引くということが必ずしもいい対応であるとは思っておりません。
  100. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 ぜひとも、きょうの韓国訪問を皮切りに、北朝鮮に対する、あるいは北東アジアの平和と安定に向けて、積極的な政策展開をお願いしたい、こんなふうに思います。  次に、もう一つのテーマに移りますが、国連PKOに関する問題に入りたいと思います。  総理の所信表明演説の中にこうあります。PKF本体業務の凍結解除を含む国連の平和活動への一層の協力について、国民各位の御理解をいただきながら、積極的に進めてまいりたい。PKF本体業務の凍結解除を含む国連の平和活動への一層の協力について、こういう表現がさきの所信表明演説の中にありますけれども、この所信表明演説の中にこういうものが出てきた背景についてお伺いしたいと思います。  といいますのは、昨年の四月三十日の衆議院本会議一つ、それからもう一、二回私は違った委員会でもお話をしたことがあるんですけれども、いわゆるPKO法改正についての質疑の中で、こういうPKF本体業務の凍結解除ということについてお伺いしますと、さっき申し上げた本会議では、当時の小渕外務大臣が、「これまで国連より我が国に対し、いわゆるPKF本体業務に対する参加、協力の要請はございません。」いわばにべもなくそういうふうなお答えが返ってまいりまして、そこから先へ話が全然進まなかったわけですけれども、ここへ来てこういう所信表明演説がなされたということについて、その背景をお伺いしたいと思います。
  101. 高村正彦

    高村国務大臣 いわゆるPKF本体業務につきましては、憲法上の問題はないものの、内外の一層の理解と支持を得るために、国際平和協力法附則第二条により、「別に法律で定める日までの間は、これを実施しない。」こととされているわけであります。  我が国国際社会への応分の貢献を行うべきことは当然であると考えておりまして、PKF本体業務の凍結解除を含む国連の平和活動への一層の協力について、国会はもとより国民各位の御理解をいただきつつ、積極的に進めてまいりたいと考えているわけであります。時間の経過とともに、もうそろそろ国民の理解をいただくことに着手すべきときかな、こういう機運がだんだん強くなってきたということだと思います。
  102. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 それは今、では国民の理解を得るに足り得る、そういう時期が迫ってきたかなというふうに、外務大臣を初めとする政府側が主体的なそういう判断でされた。つまり、外からの、国連等の要請は、先ほど言ったように、小渕外務大臣当時の状況と全く変わっていないということでしょうか。
  103. 高村正彦

    高村国務大臣 国連の側から特別、PKF凍結解除をしてほしいという要請があったというふうには承知しておりません。小渕総理、にべもなく答弁されたとおっしゃいますが、私は時々にべもなく答弁いたしますけれども、小渕総理は非常に丁寧な方でありますから、その時点でどういう答弁をされたかよくわかりませんが、誠意を持って答弁されたことだと思っております。
  104. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 先ほど来の話で、外務大臣の方から話が出てこないのですけれども、一般的には、国民の側からすれば、これはもう新聞等を通じてはっきりわかっていることですけれども、自由民主党と自由党とのいわゆる自自政策協議の中からこの話が出てきたということは、もう既に新聞等で報道されているとおり、とおりかどうか、そういうふうに承知しているわけです。今のお話の中には一切それが出てまいりませんでしたけれども、それはわざとおっしゃらないのか、それとも私の質問の流れの中では答える必要がないから言われなかったのか。自自両党の間でこの問題が出てきた背景について、外務大臣はどこまで御承知なんでしょうか。
  105. 高村正彦

    高村国務大臣 そういうふうにストレートに聞いていただければ、私もストレートに答えることができたかと思いますが、私は自自合意の際に立ち会っておりませんけれども、少なくとも、自由党がそういうことを主張されたということは一つの大きなきっかけであったと思っております。  ただ、それは何も、自民党はやりたくないのに無理に押しつけられた、そういうことではないわけでありまして、だんだんそういう時期が近づいてきたかなというときに自由党から、やったらどうだ、こう言われて、それが契機になった、こういうふうに考えております。
  106. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 恐らく外務大臣、余りこのことについて深くかかわっておられないんだなという印象を受けるのですが、それを承知で聞くのはせつないのですが聞きますけれども、先ほども申し上げたこの総理大臣の所信表明演説の中の国連の平和活動という言葉の使い方、これには何か特別な意味があるのでしょうか。  つまり、私、これは正確なこの言葉の定義ということについてはいささか自信はないのですけれども、一般的には、国連の平和活動というのと国連の平和維持活動というのが分けて使われている。国連の平和維持活動というのは、国連平和維持軍、PKFを含むところのいわゆるPKOについて、紛争が終わったその後、それにどう対応するのかという、いわゆる伝統的なPKOを中心とした活動を指している。国連の平和活動といった場合には、もう少し幅広い、国連憲章第七章的なもの、いわゆる多国籍軍的なるものも含めて、国連平和活動というふうな表現で一般的に使われているように思うのですが、その辺はどのように認識をしておられるのでしょうか。
  107. 高村正彦

    高村国務大臣 国連の平和活動につきましては、国連平和維持活動等、国連が行う国際平和のための努力に係る活動を指すものと理解をしております。いずれにいたしましても、我が国国際社会への応分の負担を行うべきことは当然であると考えており、国連の平和活動への一層の協力について、国会はもとより国民各位の御理解をいただきつつ、積極的に進めてまいりたいと考えているわけであります。  今、多国籍軍の活動を含むかという趣旨のことでありましたが、いわゆる多国籍軍については、これまで累次申し上げてきたとおり、その概念が必ずしも明確でなく、それへの具体的関与のあり方については今後さらに検討を進める必要があるわけであります。実際に、多国籍軍に対し、いかなる後方支援を行うかについては、憲法解釈上の問題に加え、諸般の情勢を総合的に勘案した上で慎重に検討すべきものと考えております。  いずれにせよ、我が国国連の平和活動への協力のあり方につきまして、その具体的対応等について議論を深めてまいりたいと思います。
  108. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 多国籍軍に対する我が国支援協力のあり方云々については少し後に回します。  ここでちょっと確認をしておきたいのですが、自民党と自由党との間で出てきた、その出てきた最終的な政策の合意の部分のみがひとり歩きしているというか、我々の目に入ってくるので、こちらに深くかかわっておられる方がいらっしゃるわけで、直接聞いた方が早いのかもしれませんが、私としては、ぜひはっきりしておきたい。どういう流れの中で、どういう位置づけであるのかということをこの際はっきりお聞きしたいと思うのです。  日本のPKO法の中には、いわゆる合意、同意、中立、そして必要最小限の武器の携帯、そしていわゆる緊急事態が起こったときにはその場から撤退をするという五原則があの法律の中にちりばめられた格好でビルトインされている。そういう形が続いたまま、いわゆるPKFの本体業務凍結解除になると、かえって直接現場に対応する自衛隊員の皆さんが非常に厳しい立場に立たされる。  つまり、ある意味で僕は、適切な表現かどうかはあれですけれども、少し手足を縛るような格好で、いわゆるPKO活動、PKF本体業務活動に参画をするということは、これはいわゆる——いわゆるが多くて恐縮なんですけれども、PKOにおけるグローバルスタンダードになる。ところが、日本のそれへのかかわり方というのはグローバルスタンダードにまだならないというふうなことで、現場では、かえってそれならPKF凍結解除をしてもらわない方がいい、今のままの方がいいんだという声が私はあるやに聞いておるのですけれども、その辺のことについての御理解、認識、さっき外務大臣はそろそろそういうときかなとおっしゃいましたけれども、そろそろそういうときかなと言われる判断に至る中で、今の問題についてはどういう位置づけがされているのでしょうか。
  109. 高村正彦

    高村国務大臣 いわゆるPKF本体業務は、五原則に沿って立案された国際平和協力法に基づき実施される国際平和協力業務であることから、その実施について、憲法上の問題はありませんが、内外の一層の理解と支持を得るために今凍結することとされているわけでありますが、凍結解除と五原則の取り扱いは別個の問題であります。  五原則につきましては、我が国国連平和維持隊に参加するに当たって憲法で禁じられた武力の行使をするとの評価を受けることがないことを担保する意味で策定された国際平和協力法の重要な骨格でありますので、仮に凍結が解除されるとしても、その場合に五原則を変更することは政府としては考えておりませんし、今の法律がそういう建前になっているということであります。
  110. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 その外務大臣のお答えは非常に私のスタンスと同じなんですが、もう一度念を押すというか、あれなんですけれども。  私はちょっと今、どの場面で発言があったかというのは明確に思い出せないのですけれども、この五原則を含めてこの法律全体の見直しをするというふうな発言が、小渕総理だったか外務大臣外務大臣は直接今お答えになったんだからないと思うのですが、というふうに聞こえる。明確に、細かく発言されたのではなくて、じっと聞いているとそうかなという感じがするものであったので、不確かなんですが、今の外務大臣がおっしゃった、この五原則とそれからPKF本体業務凍結解除ということは全く別であって、法律の中に深く根差したものであるからそういうことは考えていないというのは、それでよろしいのですね。もう一遍、念押し。
  111. 高村正彦

    高村国務大臣 先々、そのときの政府あるいはそのときの国会がどう判断するかは知りませんが、少なくとも現時点で、私たちは、先ほど申し上げたとおり、それ以上のことは考えておりません。
  112. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 それだと、先ほどお答えいただかなかったのですが、要するに、現場では、そういう凍結解除をされると、五原則がそのままになった形で凍結解除されるというのはちょっと困るんだ、いろいろ不都合があるという自衛隊の方々の御意見というのは、外務大臣としては聞いておられませんか。そういうのは全く初耳だと、いや、聞いているんだけれどもそれはもういいんだと、どっちでしょうか。
  113. 高村正彦

    高村国務大臣 全く初耳というわけではありませんが、そういったことも考慮に入れた上で現行の法律が国会で通されたわけでありますし、そして、今の法律に従って、国民の理解が得られれば凍結解除をしたい、少なくとも現時点での私の立場はそれ以上のものではありません。
  114. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 わかりました。そのお立場がわかれば、まああれなんですけれども。  さらにこの点についてぜひ外務大臣にお考えを聞かせていただきたいのです。PKOは、私はPKOについては深い関心を持ってきたのです。その深い関心を持つに至った、恐らく日本じゅうがそうだろうと思うのですけれども、あの湾岸戦争をめぐっての日本対応、国際貢献いかにあるべきかという中からこのPKO法というものが成立をしていったわけですけれども、そのときから今や既に約十年近い歳月が流れている。その間、世界に展開されたPKOというのは、いわゆる伝統的な第一世代のPKOから、私たち日本人が深い関心を持ち、かかわったカンボジアのPKOというのはいわば第二世代PKOと言われているわけですね。その後、第三世代という、いわば代表的なのはソマリアに対するPKO派遣なのでしょうけれども、これが第三世代。そして今、直近の過去で言うと、第四世代、ボスニア・ヘルツェゴビナに対するPKO活動。  こういうふうに、この約七、八年の間にPKOも大分違ってきている。伝統的なPKOがあって、それに対して、今、私たちの目の前にあり、そしてこれから恐らく起こってくるであろう事態に対するPKOというのは、かなりやはり変質せざるを得ない、そういうふうな環境の変化というものがあると思うのですけれども、こういうことを聞いて失礼かもしれませんが、そういう今申し上げたようなPKOの第一世代から第四世代への変化ということに対する自覚、日本政府としてそういう自覚がおありなのかどうかという点が一つ。  それから、伝統的なPKOというものに対するものをしっかり意識した上での凍結解除なのか、それとも、今申し上げた、第四世代的なPKOが、これからの世界におけるPKOが出ていかなくてはいけない場合は、いわばソマリア、ボスニア・ヘルツェゴビナ的なところにおけるPKOが一般的になるんだということを理解した上での凍結解除なのか。これは私は非常に重要な差があると思うのです。  つまり、七、八年前にばあんと時間を戻した時点でPKF凍結解除というのならある意味でいいのですけれども、今非常に環境が変わってきている。そのときに、さっき、もうそういう凍結解除のときかなとおっしゃいましたけれども、明確にそういう変化を認識された上で凍結解除をしようとされているのでしょうか。その辺の今申し上げた点についてお伺いしたいと思います。
  115. 高村正彦

    高村国務大臣 冷戦の終了後、従来の停戦監視、兵力引き離し型のものに加え、国連カンボジア暫定機構、UNTACのような行政管理、選挙管理・監視、人権状況の監視等をその任務に含む包括的なPKOや、国連保護隊のような安全地帯の保護や人道援助の実施確保を任務とするPKO、さらには、マケドニアに展開している国連予防展開隊のように紛争の発生を未然に防止することを任務としたPKOも設置されているわけでありますが、いずれにせよ、国際平和協力法のもとで我が国としていかなるPKOについて協力することができるかについては、具体的な要員の派遣等の検討が必要となった時点で慎重に検討してまいりたいと考えております。  いずれにいたしましても、法律がないことはできないのですから、今、凍結解除した、それ以外のものを想定していることではない、こういうことでございます。
  116. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 いや、何かよくわかりませんね。  では、もう一遍聞きますけれども、実際に、どこへ派遣するのかが具体的に出てこないとわからない、こうおっしゃっているわけですね。そのときに考えると。  要するに、私は、伝統的なPKO、カンボジアまでだろうと思うのですけれども、それに対して、今、我々の目の前に展開し、これから恐らく国連が、日本に要請するかしないかは、それは国連判断することですからわかりませんけれども、我々にPKOで参加してほしいと出てくるPKOは、際立って過去におけるPKOと違いますよと、そういう差異は認識しておられるんですかと。ともかく、そういう差異はどうあれ、我々の前に、言ってみれば日本国に対してPKOに参加要請が来たら、それはそういう差異にかかわらず、その時点でどうするか決めるんだ、こうおっしゃっているんでしょうか。
  117. 高村正彦

    高村国務大臣 国際平和協力法第三条第一号は武力紛争が発生していない場合について規定しているわけでありますから、この法律上、国連平和維持活動の一形態として、武力紛争が発生していない場合のみ日本は法律上可能なわけでありますから、委員がどの程度の範囲まで想定して従来型じゃなくて新しいところまで出るのかと言っておられるのかよくわかりませんけれども、少なくとも、武力紛争が発生していない場合のみ法律上協力が可能だということだけははっきり申し上げておきます。
  118. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 そういうふうに答えていただいたら、私の意図どおりのお答えになるんです。  国連の、今広島にいらっしゃる、今時の人になりつつある明石康さんが、先般もNHKの「人間大学」の中で体験的国際平和論というのを展開しておられて、なかなか興味深く拝見したんですけれども、実際にあの人がカンボジアPKO、そしてボスニア・ヘルツェゴビナのPKOに参画された体験に基づいて、これから我々の世界の前に展開されるであろうPKOというのはこういうものだということを言っておられて、非常に印象深かったのです。  六つぐらいの特徴がある。一つは小規模化していく。そして、二つは混合型だ。単なる軍事的側面、軍事的と言ったら言葉は悪いかもしれませんが、兵力引き離しだとかそういう部分だけじゃなくてさまざまな側面が入ってくるということとか、あるいはまた地域機構との一致協力という側面が非常に大事になってくるとか、あるいは今の話と関連してくるんですが、実際には多国籍軍化せざるを得ないと明石さんはおっしゃっているわけです。つまり、一部の国々が中心になって、紛争は終結したかに見える、それをさらに安定したものにする、そういう状況の中で、また紛争が再発するかもわかりません。そういったことを含めて多国籍軍化する可能性がある。  それからもう一つは、賢い経済制裁というものが求められる。単なる経済制裁じゃなくて、通常の経済制裁だと相手の国民そのものにさまざまな厳しい影響を与えるので、そういう、国民ではない、相手の政府に対して的確なインパクトを与えるようなより賢い経済制裁というものがますますこれから求められる、今世界的にそういう機運にあるというようなことを言っています。さらに、六番目には、包括化という言葉を使われている。  今申し上げたような五つ六つの特徴を挙げておられるわけです。  私は何をここで言いたいかというと、もう大臣からお答えいただいた後でございますので繰り返しになりますけれども、やはり現状では、日本のPKOの協力というのは、さっき大臣がおっしゃったような、あるいは私が明石さんの言葉を引いたりあるいは第一世代から第四世代まで言ったような、最近の、少し形態が変わったようなPKOには、今の日本の世論、そして日本の法律、そういった観点からは、やはりちょっとこれは対応できないというふうに思う。つまり、伝統的なPKO的なるものにしか今の時点では恐らく参画できないだろうというふうに私は見ているんです。  そういう流れの中で、自自連立の中で出た話、私がいろいろな角度でメディアから取材を受けるときのメディアの受けとめ方というのは、やはりかなり積極的に、先ほど私が申し上げた区分からいえば、より伝統的ではない、新しいスタイルのPKOにも日本が入っていこうとしている、そういう懸念を感じるというスタンスの質問をたくさん受けますもので、改めて聞かせていただいたような次第でございます。  そこで、この問題に対する最後に、外務大臣が御自身の所信表明の中で、まさに今私が申し上げたようなことに関連する重要なことをおっしゃっているんですね。それは、世界各地の紛争に対処するためには包括的取り組みが必要とされているというくだりがございまして、まさに私はそれは大事な言葉だなと思いました。  ただ、一般的には、国際貢献という形で日本日本のスタンスをはっきりアピールしていくには、このPKO活動というものに対して積極的な取り組みをすることが大事だ。国際平和維持活動に積極的な取り組みをすることが大事だ。私は、集団的安全保障ということに関して積極的に取り組むべきではない、今の時点ではない、そういう立場に立っているんですけれども、そういったときに、PKF本体業務凍結解除というふうなことだけが活字が躍っているという現状に対しては、非常に私は不満を持っております。  そうではなくて、大臣がおっしゃっているような包括的取り組みがまさに必要だと思うんですが、なかなかこういったことはメディアも取り上げないし、そして、少なくとも私なんかに対しても、外務大臣がおっしゃっているこういうのを見てほうと思ったぐらいで、ああそうか、外務大臣もそういうことを考えているんだというようなことを思ったぐらいでして、インパクトが弱いわけです。  ぜひ、具体的には、ここで言う世界の各地の紛争に対する包括的取り組みというのはいかなるものなのかについて、所信表明でおっしゃったよりもっと詳しくわかりやすく言ってほしいと思います。
  119. 高村正彦

    高村国務大臣 御質問の包括的な取り組みとは、冷戦後の国際社会においても後を絶たない紛争に対処するためには、紛争そのものへの対処のみならず、紛争を未然に防止すべく、紛争の根源にある貧困等の問題に対処すること、また、紛争後の復興に協力すること等、幅広い視野を持って取り組んでいく必要があることを述べたものであります。  我が国としては、さきの外交演説でも述べたごとく、第二回アフリカ開発会議、いわゆるTICAD2でありますが、これを初め、昨年一月に開催された紛争予防戦略に関する東京国際会議等さまざまなイニシアチブをとってきており、今後とも、国連や各国とも協力しつつ、このような包括的な視野に立った紛争問題への取り組みを継続していく考えであります。
  120. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 何か余りおいしくない答えでございました。  要するに、大臣、包括的取り組みは非常に大事でございますので、包括的取り組みというと、なかなか人口に膾炙しないというか、すとんと落ちない。せっかく外務官僚の皆さんがいろいろやっておられるのに、そのインパクトが弱いというふうに思いますので、ぜひとも何かいいネーミングを考えられまして、この日本の国際的紛争に対する取り組み対応、PKOを中軸にしてさまざまな取り組みをしているんだということについて、積極的な姿勢をさらに一層はっきりさせていただきたい、そう思います。  最後に、時間がなくなってまいりましたので、核軍縮の問題についてお聞きをいたしたいと思います。  アメリカが、原子力発電所の中で取り扱われる物質トリチウムを、従来の方針、民生用のみという方針を変えて軍事転用ということに踏み切ったということの事実はあるわけですけれども、これに対して、日本政府としては、アメリカに対して何らかの意思表示、違うじゃないか、おかしい、今までの方針と違うじゃないか、そういう抗議表明をされたのかどうか。これは非常に大事だと思います。北朝鮮の地下核施設に対してそれを抗議する、向こうにそうじゃないというふうなことを言わしめる根拠にもなってしまいますので、それに対してどういう対応をとられたのかということが一点。  それで、もう質疑時間が終わりましたので、もう一点あわせてお聞きしますけれども、今各地方自治体で、米艦船の入港に際して非核証明要求の動き、神戸は非核証明書を出せ、そういうふうなことについての決議をしている。それに対して、新たに函館ですとか高知ですとかそういう地方自治体において条例化をする動きがある。これに対して、政府としてはどういう姿勢で今おられるのか、明確にお答えを願いたいと思います。
  121. 高村正彦

    高村国務大臣 米国によるトリチウム生産は、いわゆるSTARTI、第一次戦略兵器削減条約のもとで保有を認められる核兵器を維持するために行われるもので、核不拡散条約等の国際約束に抵触するものではありませんので、我が国政府として抗議する考えはありません。  それから、その後の条例の問題でありますが、国と地方公共団体とは相互に異なる次元においてそれぞれの事務を処理しており、国として責任を有する外交関係の処理が地方公共団体によって関与または制約されるようなことがあってはならないと考えているわけであります。  外国軍艦の本邦寄港については、その具体的な実施上の調整には港湾管理者たる地方公共団体もかかわることになりますが、寄港自体は、外交関係の処理につき責任を有する立場から、国がその是非を判断すべきものであります。地方自治体がいわゆる非核証明書の提出を求め、その結果、国として同意を与えた外国軍艦の寄港が妨げられるようなことがあってはならないと考えます。  なお、米軍艦船については、日米安全保障条約及びその関連取り決めにおいて、我が国の港への出入りが認められておりますが、日米安全保障条約上、いかなる核の持ち込みも事前協議の対象であり、核の持ち込みについての事前協議が行われた場合には政府として常にこれを拒否する所存ですので、非核三原則は堅持するとの我が国立場は確保されているわけであります。
  122. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 終わります。
  123. 中馬弘毅

    中馬委員長 次に、松本善明君。
  124. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣に伺いますが、きょうは周辺事態について伺おうと思います。  周辺事態については、そう認定すれば対応措置として自衛隊も動くということになりますので、中心的な概念ですが、閣僚の答弁のたびごとにかえってわからなくなるというような状態があります。  きょうは野呂田防衛庁長官の発言を最初にお聞きしたいんですが、きょうは野呂田さん、お風邪で御出席いただけない。事前にお話をしておきましたから、外務大臣、よくお考えでいらっしゃると思いますので、伺います。  まず、野呂田防衛庁長官が二月一日の予算委員会で、自衛隊に対する地方自治体の協力義務に関して答弁する中で、周辺事態については、日本の存立にかかわる、日本の平和と安全に重要な影響を持っている事態、こういう新しい概念で答弁をされました。  広辞苑によりますと、存立というのは、存在して自立するというふうにあります。日本の存在にかかわるということになると、日本がなくなるかどうかという問題がある。また、日本が自立できるかどうかということになりますと、日本の独立が脅かされるということです。周辺事態というのは、そういう場合を想定しているんですか。
  125. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態とは、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であり、その事態の規模、態様等を総合的に勘案して判断するということは、何度も答弁申し上げているところでございます。  ですから、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態でありますから、野呂田防衛庁長官が何と言ったか正確に覚えていないわけでありますが、場合によっては、そういう場合は存立に影響することもあるというようなことをおっしゃったのかな、こういうふうに思っております。
  126. 松本善明

    松本(善)委員 これは、そんなあいまいにするわけにはやはりいかないんですよ。そのときになって判断するんだということになりますと、結局、政府に白紙委任をすることになるんですね。  私、端的に聞きますが、野呂田さんが言われた、日本の存立にかかわる、これは先ほど言いましたような意味になります、存在、自立にかかわると。これは重大なことで、あるいは、自衛隊法の日本に対する武力攻撃のおそれというところにもつながる、あるいは、それそのものではないかということになります。これは、あいまいな概念では済まされない。  この野呂田さんが言われた、日本の存立にかかわるという言い方は、外務大臣、賛成ですか、反対ですか。
  127. 高村正彦

    高村国務大臣 防衛庁長官が存立にかかわると言ったのはどういう意味で言ったのかよくわかりませんが、周辺事態の正確な政府としての定義は、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であります。
  128. 松本善明

    松本(善)委員 それでは、はっきりしておきますが、外務大臣としては、日本の存立にかかわるという言い方はしないということですか。
  129. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態の定義として、そういうことは申し上げません。
  130. 松本善明

    松本(善)委員 それで外務大臣考えは大体わかりましたが、これは、やはり野呂田防衛庁長官に改めて聞かなければならないかもしれないし、それから、政府の統一見解も求めなければならないかもしれません。  その外務大臣立場からお聞きをいたしますが、日本の存立ということになりますと、米軍が戦う相手国、あるいは、戦っている相手国が日本に攻撃の矛先を向けるとか、日本を攻撃すると表明するとか、その意図や行動が日本に向かっているということが明らかでなければならぬと思いますが、そうではないでしょうか、日本の存立ということを言うとすればですよ。
  131. 高村正彦

    高村国務大臣 ですから、野呂田長官がどういう意味で存立と言ったのかよくわかりませんので、ちょっと答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  132. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣も同じ閣僚がどういう意味で言ったかもわからぬようなあいまいな言い方が、防衛庁長官によって国会で答弁をされています。これは、私は極めて重大なことだと思います。  きょうは、これ以上この問題についてはできませんけれども、これは、政府の統一見解なり、あるいは野呂田長官の御意見なりをきちっと聞いてはっきりさせなければならぬということを申し上げて、そして委員長に、理事会でもその点の協議をしていただきたいとお願いします。
  133. 中馬弘毅

    中馬委員長 そのように取り扱います。
  134. 松本善明

    松本(善)委員 もう一つ、野呂田防衛庁長官の発言で聞かなければならぬ問題があります。  日本の存立にかかわるということを言う一方で、一月二十八日の予算委員会では、周辺事態とは、代表的なのは、武力紛争が発生したとか発生のおそれある場合、こういうふうに言ったんですね。外国で武力紛争が発生してもいない、発生するおそれがあるという場合で、ちょっと長官の言ったことがわかりにくいんだけれども、もう一回言いますと、外国で武力紛争が発生してもいない、ただ、発生するおそれがあるという場合を長官は言っているわけですね。発生するおそれがある場合で、しかも、日本の存立にかかわるというようなことが果たしてあるんだろうか。外国で武力紛争も発生していない、それで日本の存立にかかわるということがあり得ると思いますか。  外務大臣は、そういう言葉は使わないと言っているんだけれども、一般論として、外国で武力紛争も発生していない、おそれがあるというのはどういうふうに認識するかわかりませんが、そういう状態で日本の存立にかかわるというのはあり得ますか。
  135. 高村正彦

    高村国務大臣 先ほど申し上げましたように、日本政府の周辺事態の定義は我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態でありますから、武力紛争が発生しなくともこういうことはあり得ると思います。  定義はこうだということはきっちり予算委員会で申し上げているわけで、人によって、例えばかかわるという言葉をどれだけ広く使うかということは、それはそれぞれ違ってくるのかな、こういうふうに私は思っております。
  136. 松本善明

    松本(善)委員 私は、やはりそれは大変ぐあいの悪いことだと思いますよ。  外務大臣はそういうようなお言葉は使われないで、かなり慎重に政府見解をそのまま述べられますが、防衛庁長官は、この点でも、述べられたことが、あなたがそれを確認して、そして、これはこういう場合だ、野呂田さんが言ったのはこういうことで、政府はこう考えているのだとはっきり答弁できないじゃないですか。  そんなことを防衛庁長官が言う。それほどこの周辺事態という概念が極めてあいまいもことしている。突き詰めていけば、中身のない今の外務大臣答弁だけになってしまうのです。これは国民がわかるわけがない。そして、私どもの言うように、その答弁だけでいけばどうでも解釈できる。現に今のやりとりのとおりですよ。  そうすると、結局、政府に白紙委任するということにならざるを得ないのですね。私は、この問題についての外務大臣答弁を聞けば、ますます私たちの認識が裏づけられた、こういうふうに思います。  では、次の問題に参ります。  昨年四月十七日に、当時の高野北米局長が、周辺事態は国家間の武力闘争ということに限られていないというふうに安全保障委員会答弁をいたしました。これは政府見解でありましょうか。外務大臣、追認されますか。
  137. 高村正彦

    高村国務大臣 何回も申し上げますが、周辺事態は我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態であり、ある事実がこれに該当するか否かについては、あくまでもその事態の規模、態様等を総合的に勘案して判断することになります。  このような周辺事態の性質にかんがみれば、典型的に考えられるのは、我が国周辺の地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような武力紛争が発生している場合等があります。しかし、それが国家間の武力紛争に限られるわけではありません。御指摘の高野局長答弁は、このような趣旨を述べたものであります。  いずれにしても、周辺事態はあくまで我が国の平和及び安全に重要な影響を与えるか否かとの観点から判断すべきものであります。
  138. 松本善明

    松本(善)委員 結局、全体を説明されて追認されたということになろうかと思いますが。  国家間の武力闘争には限られていないということになりますと、内戦とかクーデターとか政変、そういうものも入るということになるのでしょうか。先ほどの全体の説明はわかっていますよ。それにかかわるということになれば、内戦、クーデター、政変なども入りますか。
  139. 高村正彦

    高村国務大臣 ある事態が国家間の紛争でない場合でも、その事態が我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合には周辺事態に該当し、また、そのような影響を与えない場合には周辺事態には該当しません。  いずれにしても、指針において明記されているとおり、日米両国のすべての行為が、紛争の平和的解決及び主権平等を含む国際法の基本原則並びに国際連合憲章を初めとする関連する国際約束に合致したものであることは言うまでもないところでございます。
  140. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣、せっかくこうやってやりとりするわけですから、一般的に今まで答弁されていることであれば、私も多少はちゃんと調べて質問しているつもりでございます。  お聞きしていることは、何を聞いているかと言えば、我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態の中で、国家間の武力闘争に限らないということを言われるわけだから、国家間の武力闘争ということに限られていないということならば、それじゃ内戦とかクーデターとか政変が入るのかと聞いているのですよ。  それはもちろん、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼさないということになれば、これはあなた方の立場からすれば周辺事態にならないということになる。これはもう承知の上なんですよ。承知の上なんだが、言っている意味が、国家間の武力闘争ということに限られていないということになれば、その中には内戦、クーデター、政変が入るかということを聞いている。きちっと、対応するようにお答えいただきたい。
  141. 高村正彦

    高村国務大臣 何度もお答えしているように、我が国の平和と安全に重大な影響を与えるものが周辺事態であるということは何度も申し上げているとおりでありますし、そのとき行動する場合には、当然、国連憲章に従ったものになる、こういうことでございます。
  142. 松本善明

    松本(善)委員 私も何度もお聞きをしていますように、我が国の平和と安全に影響のある場合が周辺事態なんだ、これはもう何遍も聞いてわかっているのですよ。問題は、国家間の武力闘争ということに限られていないという答弁の中身に内戦、クーデター、政変が入るかどうか。  今、二回にわたって聞いたのですが、お答えにならない。答えられないということですか。私は、閣僚は、憲法答弁の義務があると考えています。私の質問には答えられないということならば、答えられないという理由をお答えいただきたい。
  143. 高村正彦

    高村国務大臣 何度も申し上げている答えで私は足りるものだ、これがお答えですということを誠意を持って申し上げているところでございます。
  144. 松本善明

    松本(善)委員 もう一回聞きます。  私の言ったことには直接答えないということですか。国家間の武力闘争ということに限られていないということになれば、だれだって、それじゃ内戦、クーデター、政変は入るのかどうか、場合によってはそういう場合が周辺事態になり得ることがあるのかと。あなたも言われた、日本の平和と安全に重要な影響がある場合は、国家間の武力闘争に限られていなくても周辺事態になると言ったんじゃないですか。だから、それは内戦、クーデター、政変を意味するのかということ。  これは、極めて普通の常識で、普通の理解能力なら聞くのは当たり前ですよ。私は、議事録が公開されて、私が聞いているのは無理だと思う人は一人もいないと思う。それでも答えないならば、なぜそれで十分だというのか、なぜ答えないのかをはっきりさせてもらいたい。
  145. 高村正彦

    高村国務大臣 何度もお答えしているとおりで、必然的にそうなることでありますからお答えしていたわけでありますが、日本の平和と安全に重大な影響を及ぼすことであれば、委員が御指摘のような場合を特別排除することにはならない。それは私が何度も答えていることから当然のことだと思います。
  146. 松本善明

    松本(善)委員 そういうふうにはっきり答えてほしいものであります。そうすれば、時間のむだがなくなります。  そうすると、内戦の場合ということになりますと、それは排除しないということであれば、日本攻撃の意図というのはないはずであります。それでも周辺事態になるということがあるのですか。
  147. 高村正彦

    高村国務大臣 絶対あり得ないわけではないと思っております。  ある国、地域における、内戦でもそうですが、いろいろな状況によって、当該国あるいは地域から大量の避難民が発生し、そして我が国に大量に流入する蓋然性が高まっているという状況、そういうことが我が国の平和と安全に重大な影響を与えるような、そういう状況にまで高まっているような状態は私はあり得ることだと思っております。
  148. 松本善明

    松本(善)委員 大量の難民の発生、これは外交問題として解決すべきことですよ。私の聞いたのは、内戦の場合は日本攻撃の意図はないはずだ、それでも周辺事態になると。だから、武力紛争が起こっても、日本を攻撃するとはだれも考えていない、それでも周辺事態になるのですか。あなたの今の答弁では、なり得るような答弁でもあるのですよ。ならないというならはっきりならない、なるならなると。
  149. 高村正彦

    高村国務大臣 なるということは言えませんけれども、絶対にならないわけではない。さっきはっきり申し上げたつもりでございます。
  150. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、絶対ならないわけではない、それは含まれることがあり得ると。内戦で周辺事態だということで対応措置をとる、自衛隊も出る。これは内政干渉になりませんか。
  151. 高村正彦

    高村国務大臣 国連憲章に従って行動するわけでありますから、内政干渉になるようなときは行わないということであります。
  152. 松本善明

    松本(善)委員 しかし、今までの答弁でいきますと、内戦で周辺事態になり得るということになると、これは内政干渉になりますよ。幾ら日本は国際法を守るのだと言ったって、現実の事態が国際法違反になるということは十分あり得る。私は、恐らくこれはもう一回聞いても同じ答弁に、あなたも頑固だから、そういうふうになるのじゃないかと思うけれども、それではやはりぐあいが悪い。別の形で聞きましょう。  内戦で、そして周辺事態になるという場合に自衛隊が出動する、対応措置として出動する。これは憲法の禁止をしている武力による威嚇ということになりませんか。
  153. 高村正彦

    高村国務大臣 武力による威嚇になるようなことは行わないということであります。
  154. 松本善明

    松本(善)委員 その二回の答弁は、やはりなり得るのですよ、なり得る。武力による威嚇とか内政干渉になり得る。だけれども、そういうことはやりませんというだけの答弁です。これはもう極めて危険な、紙一重の事態が周辺事態では起こる、私はそういう事態が起こり得る極めて危険なものだと思います。  もう一つ聞きます。  外国で武力紛争が起こって、しかも内戦というようなことであるかもしれない、そういう場合は、これは安保条約五条にも六条にもない、いわば安保条約の枠外のことですね。
  155. 高村正彦

    高村国務大臣 先ほどのお話でありますが、周辺事態安全確保法案で日本がやることは、例えば後方地域支援だとかそういうことに限られておりますので、武力による威嚇、そういうような問題は出てこないだろうと思いますし、日米安全保障条約の目的は、我が国と極東の平和と安全でありますから、我が国の平和と安全に重大な影響を与える、そういう事態に対処するということは日米安全保障条約の目的の範囲内である、こういうふうに考えております。
  156. 松本善明

    松本(善)委員 結論をそういうふうに言ってもちょっとだめなのですよ。外務大臣、御存じの砲艦外交、昔ありましたね。何もあれは発砲しないのですよ。威嚇だけで外交的効果をおさめるわけですよ。それが武力による威嚇ですよ。私は、後方地域支援も戦争に参加することだと思いますよ、国際法上は。これは、あなた方は武力行使ではないと言うけれども、国際法的に言えば後方支援は明白な戦争参加ですよ、兵たんですからね。しかもそれを展開する。防衛出動だって、展開するだけで、発砲するかどうかはまだその前。その展開はするのですからね。これは、武力による威嚇であることはもう明白だと思います。  私のお聞きしている点にはお答えにならなかった。それは一応済んで、もとへ戻ってお答えになったけれども、これは安保条約五条にも六条にも書いていない、安保条約の枠外だろう、こう言っているのですよ。
  157. 高村正彦

    高村国務大臣 ですから、私が申し上げているのは、安保条約の目的の枠内、こういうことを申し上げているのであります。
  158. 松本善明

    松本(善)委員 それでは、五条、六条以外に明記しているかどうかをお聞きしたい。安保条約にこういうことは明記されているか、されているなら何条です。
  159. 高村正彦

    高村国務大臣 先ほどお答えしたとおりでありますが、日米安保条約の目的は、我が国及び極東の平和と安全の維持であります。周辺事態安全確保法案は、我が国の平和と安全の確保に資することを目的としており、我が国の安全に着目したものであります。したがって、周辺事態安全確保法案は、日米安保条約の目的の枠内であり、日米安保条約を超えることはないというのが政府見解であります。
  160. 松本善明

    松本(善)委員 結局しかし、条文を挙げることはできなかったのですよね。これは五条、六条で明記をされていない、枠外であることは明白でだ。全体からいう以外にないということがあなたの答弁でもわかります。  私は、もう一つお聞きしたい。  先ほど、内戦の問題で議論をいたしました。それは排除しないという。台湾で武力紛争が発生した場合は、当然中国の内戦というふうに、今までの政府立場から見ればそういう認識にならざるを得ないと思いますが、いかがでしょう。
  161. 高村正彦

    高村国務大臣 特定地域を想定して、そういう場合はなる、ならないというのは、外務大臣として触れるべきことでないと思っていますので、そういうことについては直接お答えできません。
  162. 松本善明

    松本(善)委員 私は、周辺事態の問題にかかわって言うのではないのですよ。これは一般的に、台湾で中国との関係で紛争が起こった場合、それが武力にかかわる。内戦として認識するのは、中国は一つという立場日本政府はいるのですから、台湾も中国の領土と考えているのでしょうから、これはもう当然に内戦というふうに認識するのが当たり前だろうと思うのです。  政府見解からすればもう当然のことを私お聞きしているのですが、それでもお答えになりませんか。
  163. 高村正彦

    高村国務大臣 我が国といたしましては、中国政府が、台湾をめぐる問題は中国人同士の問題として平和的解決を目指していると承知しており、我が国としても、この問題が関係当事者の間の話し合いにより平和的に解決されることを強く希望しているわけであります。それと異なる前提を置いて議論することは、少なくとも外務大臣として適切でないと考えているということであります。
  164. 松本善明

    松本(善)委員 私も、中国がこの台湾問題を平和的に解決することを願っていますし、そうすべきであると考えています。しかしながら、これはやはり、日本が、今私ども周辺事態法というのを政府が提案をしていますから、それについて、一体どういうことになるのだろうか、国民の前に明らかにする義務があるのですよ。  中国でそういうことが起こった場合には、日本政府はどう考えるのだろう。今の実際の外交問題として、平和的な解決を望む。当然ですよ。私どももそうですよ。しかし、起こった場合には内戦と見るのは当たり前じゃないか。だれが考えたってそうですよ。その答弁を拒否するというのは、何らかの意図があるのじゃないかと思う以外にないのですよ。そのぐらい当たり前のことですよ。それが、答弁するのが適切でないというのはどういうことですか。  私は先ほども申しました。私の質問は決して適切でない質問ではない。だれが聞いたって、国民が聞きたいと思っていることです。何度も国会で聞かれた点でもあります。これは、私は憲法上閣僚は答弁をする義務があると思うのです。お答えいただきたい。
  165. 高村正彦

    高村国務大臣 今答弁したとおりの理由でございます。  私がこの問題についてこういうふうに答えたということで、国民に広く知られてそれなりの批判を受けるということは、それはそれでいいわけで、私はその覚悟を持ってこういう答弁をしているわけであります。
  166. 松本善明

    松本(善)委員 批判するなら勝手に批判しろと。言うならば開き直りですね。  私は、やはりそういうことではぐあいが悪いんじゃないだろうかと。国民に真相を全部知らせる。今、私の質問は周辺事態とはかかわりなく一応聞いたのですが、大臣の最初の答弁は周辺事態とかかわってきた。周辺事態ということになりますと、しかも内戦を排除しないということになれば、あなたは中国の問題を否定しなかったから、もしこれも排除しないということになれば、中国で台湾問題、武力紛争が仮に起こった場合には、周辺事態ということで自衛隊が動くのではないか。これをあなたははっきり否定することができますか。答えられないではなくて、そういうことはあり得ませんと答えられるかどうかお聞きしたい。
  167. 高村正彦

    高村国務大臣 これも何度もお答えしている、私の前の外務大臣あるいは防衛庁長官が何度もお答えしているところでございますが、周辺事態とは、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であり、その事態の規模、態様等を総合的に勘案して判断するわけであります。したがって、その生起する地域をあらかじめ地理的に特定することはできない。このような意味で、周辺事態は地理的概念でないわけであります。  ですから、その周辺事態が、あるところで起こるか起こらないか、そういうような議論は適切でないということを思っております。
  168. 松本善明

    松本(善)委員 これで時間ですので終わりますけれども、やはり具体的な問題について何も答えないで、最後は一般的なことであいまいもことしてくるのですよ。そして、これはやはり、私が最初に申し上げましたように、周辺事態について無限定で政府に白紙委任をする、自衛隊が海外に出ていくことについて白紙委任するというのと全く同じもので、極めて危険きわまりないものだということを申し上げて、私の質問を終わります。
  169. 中馬弘毅

    中馬委員長 次に、伊藤茂君。
  170. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 外務大臣はこの後ソウルにいらっしゃるということで、御苦労さまです。それまでの時間、短い時間ですが、二つだけ質問をさせていただきます。  その一つは、安保条約の運用、特に事前協議などの問題についてであります。事実問題についての対応という視点からお伺いしたいのです。  予算委員会で申し上げたのですが、例えばその一つなんですが、昨年の一月に、当時横須賀が母港となる空母インディペンデンスが中東に出撃をする。急な命令で、県や関係町村に数日前に事前に連絡するというルールになっているわけですが、その連絡がなく、非常におくれたとかしたのですが、言うなら無届けで、無連絡で、どかどかと演習をやり、NLPの訓練をやり、そして緊急出動ということになりました。  私は、一つは、やはり日米間あるいは安保条約、当然ですが、お互いに信頼のある安定した運用ということが必要なわけでございますから、このルール無視という状況、私はこの問題だけではないというふうに認識をいたしておりますが、この問題。これが一つですね。どう認識をされ、どうなさいますかということと、それからもう一つは、これはもう事実として、横須賀母港から直接湾岸に出動する。自由出撃とかなんとか申しませんが、要するに直接出動という事態ではないだろうか。  こういう点を考えますと、これは六〇年安保改定以来、岸・ハーター交換公文など、いろいろと事前協議についての議論は長いことあるわけでありますが、いろいろな意味で最近、事態が何だか現実問題、変わってきているのではないかという懸念と不安を持つわけであります。そういうことで、現実に起こりましたことについて、二つ外務大臣に伺います。
  171. 高村正彦

    高村国務大臣 まず、事実関係でありますが、昨年一月のNLP、夜間着陸訓練につきましては、事前に通報があったことはあったのですが、その通報が直前であったということで、それからまた週末を含めて夜遅くまで訓練が行われたこと等の問題があって、日本側からは米側に遺憾の意の表明及び再発防止についての申し入れを重ねて行ったところでございます。これに対して、同月来日したコーエン国防長官より、周辺住民の方々に御迷惑かけたことを申しわけなく思う、今後このようなことがないようにしたいとの発言があったところであります。  それから、事前協議の点ですか——安保条約第六条の実施に関する岸・ハーター交換公文に基づく事前協議の主題となる日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用に言う戦闘作戦行動とは、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動を指すものであります。昨年一月の空母インディペンデンスの中東湾岸地域への派遣のように、米軍の運用上により米軍艦船及び部隊を我が国から他の地域に移動させることは事前協議の対象となるものではありませんし、このような解釈は一貫して御説明申し上げているところでございます。
  172. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 二番目に大臣答弁されたことが、いろいろな意味で私は現実問題としてそれで通るのかどうかということが問われている事態ではないだろうかというふうに思います。  予算委員会でもちょっとだけ申し上げたのですが、例えば今回のイラクへの米英の攻撃に関連をいたしまして、大量の巡航ミサイル発射をされました。聞きますと、ほとんど大部分は艦船からの発射というふうにも聞いております。  これは横須賀市民などの懸念と不安なのですが、横須賀に巡航ミサイル発射する能力を持った船が何隻かおります、しょっちゅうですね。イラクへの攻撃が起こったときには全部出港しておりませんでした。それから先はわからないわけですね、こちらの方は。どうなんだろうかという不安があるわけであります。  今の空母のことで申しますと、一月にインディペンデンスが湾岸に緊急訓練、緊急出動いたしまして、その後に、たしかコーエンさんでしたか、新聞で見ましたが、来られまして、横須賀へ飛んで、それでインディペンデンスの軍艦の上で、諸君の力でイラクをやっつけるんだという意味の何か激励の演説をなさったと聞いております。それから、前の湾岸戦争に関連をして、佐世保にいる上陸強襲艦ですか、海兵隊を乗せる船、三隻いるというのは御承知のとおりなのですが、沖縄から直接海兵隊を乗せて移動したというようなことも、何か報道で私ども読んだりしているわけでありまして、いろいろなそういう事実を積み重ねますと、従来政府が言ってきた、例えば日本の港から移動してそれから後直接作戦行動、そういう理屈が通らぬ事態がいっぱい重なってきているんじゃないだろうかという気がするわけであります。それらについては、事実と判断と、いろいろな問題について、やはり、国の政策としてフェアな議論をお互い詰めなくちゃならぬと思います。詰めるべきだと思います、国民の皆さんへの説明として。  だから、そういうことについて、私はもっとやはり情報公開、きのう予算委員会でもGAOの原子力空母のことを申し上げました。これは別途やりますから、きょうは申しませんけれども。いろいろな意味での情報とかなんとかは、むしろアメリカなどの国の方からそういう責任ある情報が出されてくるという形があるような気がします。ですから、理屈でのさまざまの従来の説明というもののベースから、やはり、現実発生しているさまざまの事実をベースにして、国民にきちんとルールとして説得性のある、そういう対応をする。その中から、私の考えでは、必然的に、今までの事前協議の運用などなどの理屈というものはもう変更せざるを得ない事実。それは、そういう意味で政府が変更なさると言うのならば、これは国会のルールか条約のルールか、それはきちんとやはり議論すべき問題ではないだろうかというふうな気がするんですが、大臣いかなる感想をお持ちですか。
  173. 高村正彦

    高村国務大臣 日本に駐留している米軍というのは、我が国とそして極東の平和と安全を守るために駐留してもらっているわけでありますが、たまたま我が国にいる軍隊というのは、任務はそれだけに限られるわけではなくて、他に展開した上でほかの任務につくこともあるわけで、それはまた逆に言えば、日本で有事があったときに、ほかにいつもいるところがまた応援に来てくれることもあるわけですね。  だから、日本から直接戦闘作戦行動に飛び立つようなときは、それは事前協議の対象になるというのは当然でありますが、ほかの任務につくためによそに移動するときに、日本が、よそに行っちゃいけないよということを事前協議にかかわらしめるというのは、日本アメリカに対して基地を提供している、これは大変なことをしているわけですが、それと同時に、ある場合には、日本の平和と安全を守るために血を流していただくということもアメリカ軍がするわけでありますから、それが、ほかの任務につくためにほかの地域に行くときが事前協議だよというのは、やはり私は、それは国際的にちょっと無理だろうなと。そして、今まで一貫してそのように運用されてきているわけでありますから、今からそれを変えてくれとアメリカに言うつもりはございません。
  174. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 私も、これは非常に重要な問題ですから、今まで長い期間、この二十年、三十年、四十年、政府の方が事前協議についての政府の態度についての御答弁を国会で表明されてきました。それについてのさまざまの議論もございました。  大臣が今おっしゃったのもその延長の立場であろうと私は認識をいたしますが、今起こっているさまざまのことを考えますと、それで済むんだろうかという懸念を私は非常に持つわけでありまして、その勉強を私も懸命にやらなくちゃならぬと思って今やっているところですから、こういう事実、こういう事実、例えば、沖縄の海兵隊の部隊が直接行ったんじゃないですかとかいろいろな問題がございますから、その面は、単なる報道だけではなくて、事実その他もきちんと一遍全部整理をしてみて、戦後から、現在も将来もそうですが、やはり、日米安保条約というのは我が国一つの重要な運用の柱になっているということは事実ですから、そういうものを、将来あるいはその運用において、常にやはりオープンであり、フェアであり、フェアルールで国民に説得されなくちゃならぬというふうなことであろうと思うわけでございます。  私は、それらを考えますと、きょうはもう時間がございませんけれども、いずれ、それらを全部精査してみまして、どうでしょうか、こういう事実についてという議論を国民の前ですべきではないだろうか。  私の考えでは、何か、今度のガイドラインとかいろいろな法律がこれから議論されるわけですが、安保の枠組みは変えないということも再三外務大臣も御答弁なさっておりますけれども、事実上枠組みが変化したんじゃないか懸念を持つわけでございまして、きょうはこの程度だけにさせていただきます。  あと短い時間が残っておりますので、北朝鮮の問題について一、二問だけさせていただきます。  いろいろ、特に米朝の交渉など緊迫した交渉が行われている。私どもも、一月、二月どうなるのか、来週でもまたどうなるのかということを非常に注目して見ているところでございますし、何といってもアジア、東アジアの焦点になる問題でございますし、我が国対応も非常に大事なことだというふうに思いますし、何とかやはり、こういう緊張の局面が打開されることを、当然ですが、私どもも強く望んでおります。  また、そのために政府としてやっていただきたいという私の気持ちもありますし、また、政党としても私どもも長年かかわってきたところでございますから、また、政治家としてもできる努力をどうしたらいいのかということを真剣に考えますし、もちろんそういうことは日本の政治家として当然ですが、国民的、アジア的な視野からどういう努力をすることが将来にとってプラスなのかと考えながら、できる努力もしなくちゃならぬというふうな気持ちでいるところであります。  そういう中で、二つだけ、時間がありませんからさせていただきたいと思います。  先ほど同僚議員の御質問がございましたが、米朝間の第三次のジュネーブでの協議、疑惑の核施設とか言われているものへの訪問と申しましょうか検査と申しましょうか、それと食糧問題、人道援助とかというふうな話があったようでありますし、もう近い時期に第四次の協議が行われるであろう、詰めたぎりぎりの議論が出るんではないだろうかというふうにも言われております。それから、政府としては、大臣がしょっちゅう言われておりますように、日米韓、緊密な意見交換と御相談の上に立って判断をする、言うまでもありません。  また、マスコミなどではやはり、アメリカなどの方では核施設と言われているものへのウエートが非常に大きい、日本の場合にはミサイルというものへのウエートが非常に大きいなどと言われておりますが、いずれにしても、これは相談をしてやらなくちゃならぬ問題だと思います。  多少、そういうことで日米韓の間であるいは世論的なムードの違いがあるかもしれません。しかしやはり、例えば、近い時期に米朝交渉が、一定の打開の方向が見つかってくるという場合には、小異を捨て大同につくという言葉がいいかどうか知りませんけれども、何かやはり、日米韓の相談で、ここでこう決断しましょうというふうなことがあるべきなんじゃないだろうかというふうに私は思いますし、ペリーさんの、今月か来月への議会にも、レポート作業とかいうものを見ますと、今月、来月、非常にそういう重要なときではないだろうかというふうな気持ちもいたします。  そういうことを考えますと、総理のこの問題への表明、それから全く同じ表現での外務大臣の所信表明の言葉、誠意ある向こうの対応があればそれは考えますというメッセージなんですが、そういうものをやはり、もうこの一カ月、二カ月か目の前の期間にできる努力をする、あるいは決断か判断をする時期がだんだん近づいてくるみたいな今日の状況ではないだろうかというふうな気がしているわけでありますが、お差し支えない範囲で、きょうソウルへいらっしゃってざっくばらんなお話もなさると思うので、その辺の状況をどう御判断なさるか、まず伺いたい。
  175. 高村正彦

    高村国務大臣 我が国とすれば、総理が所信表明において国民に説明するとともに、北朝鮮に投げかけたといいますか、それは重いものでありますから、そういったことについて北朝鮮側がどう反応するかということを見ているところであります。少なくとも、公式の反応というのは余り喜ばしいものではない、望ましいものではない反応が戻ってきているわけでありますが、必ずしも公式の反応だけがすべてと限りませんので、総理が表明した立場を貫いていきたい。そういう中で、残念ながら我が国北朝鮮の間の対話のチャンネルというのは極めて限られたものでありますが、そういったものをもう少し大きくしていくというようなことは考えいかなければいけない、こういうふうに考えております。  きょう、韓国に行って、また洪淳瑛外交通商部長官と、北朝鮮に対してどう対応するのかということを、韓国側の意見も十分に聞き、私なりの意見も申し上げ、そしてそういう調整をしていきたい、こういうふうに思っております。
  176. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 もう一点だけお伺いいたします。  きのうこの関係の本を読んでおりまして、朝鮮問題についての専門的ないい御意見をいつも私も伺っておりますが、慶応大学の小此木政夫さん、「北朝鮮問題を発火させないための現実的な提言」と世界週報に書かれておりました。包括的な包括提案という発想でありまして、私はそのとおりだなと思います。私も、この朝鮮問題を打開するためには、今進んでいる四者の話し合いとか、あるいは米朝会談とか、それから朝鮮半島南北の話し合いとかいうものと日朝関係、これらが多少のテンポの差はあってもやはり大きな意味では並行して進んでいくというのが最も安定的な方法だろうというふうに思います。  そういう前提で見ますと、その中の一つの重要な要素は、北朝鮮側が国際社会に通用する誠意ある対応をするということが一つの要件であることは言うまでもありません。  と同時に、そういう中でやはり大臣がおっしゃったようなチャネルをもっとつくっていきたい、今度の国会でもみんなが言われている言葉、気持ちでもあるということになるわけでありまして、その辺、この段階ですから、この小此木さんの中身を詳しく紹介する時間はございませんけれども、そういう包括方式で我が国考え方を整理し、きちんと述べ、そして米国とも韓国とも相談をし、局面を打開し、意見が北朝鮮側と違いいろいろあることはこれは事実、一遍に消滅することはないと思います。ただ、やはり米朝のように直接に言うことはいい。そして、直接に提案し合い、議論し合い、交渉するということが望ましいというふうに私は思うので、ペリーさんの提案でも、新聞でも一括方式とか包括方式とかいうふうな形でよく表現をされておりますが、この言葉についてどういう気持ちをお持ちでしょうか。最後に。
  177. 高村正彦

    高村国務大臣 我が国といたしましても、北朝鮮をめぐる諸問題の解決のためには地域の各国、特に日米韓が緊密に連携して全体として整合的な対応を行うことが重要であると考えておりますし、議員御指摘のように、四者会合、米朝協議、南北高官会談等についても引き続き関係各国と十分に協議、意見交換を行ってまいりたいと考えております。  話し合いの中で、包括提案とか一括方式とか、そういうことでありますが、それぞれの方があるいは国が、包括といってもどのぐらいの程度を包括するのかいろいろな考え方がありますので、そういう中でプラス・マイナスあると思いますが、やはり一つ一つのことを解決する方がやりやすいのか、あるいはほかの幾つかのものを絡めてやる方がやりやすいのか、そういうことも考えながら現実的に対応していくことが必要だ、こう考えております。
  178. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 終わります。
  179. 中馬弘毅

    中馬委員長 これにて質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四分散会