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1999-04-16 第145回国会 衆議院 運輸委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年四月十六日(金曜日)     午前九時三十二分開議   出席委員    委員長 石破  茂君    理事 衛藤 晟一君 理事 久野統一郎君    理事 実川 幸夫君 理事 玉置 一弥君    理事 細川 律夫君 理事 赤羽 一嘉君    理事 江崎 鐵磨君       小里 貞利君    菅  義偉君       橘 康太郎君    宮島 大典君       望月 義夫君    森田  一君      吉田左エ門君    米田 建三君       渡辺 具能君    渡辺 博道君       赤松 広隆君    今田 保典君       佐藤 敬夫君    高木 義明君       永井 英慈君    倉田 栄喜君       寺前  巖君    平賀 高成君  出席国務大臣         運輸大臣    川崎 二郎君  出席政府委員         運輸政務次官  林  幹雄君         運輸大臣官房長 梅崎  壽君         運輸省運輸政策         局長      羽生 次郎君         運輸省鉄道局長 小幡 政人君         運輸省自動車交         通局長     荒井 正吾君         運輸省海上交通         局長      宮崎 達彦君         運輸省海上技術         安全局長    谷野龍一郎君         海上保安庁長官 楠木 行雄君         気象庁長官   瀧川 雄壯君         建設省道路局長 井上 啓一君         自治省財政局長 二橋 正弘君  委員外出席者         運輸委員会専門         員       長尾 正和君 委員の異動 四月十六日         辞任         補欠選任   田中 昭一君     渡辺 博道君 同日         辞任         補欠選任   渡辺 博道君     田中 昭一君 本日の会議に付した案件  鉄道事業法の一部を改正する法律案内閣提出第四三号)  海上運送法の一部を改正する法律案内閣提出第四五号)     午前九時三十二分開議      ————◇—————
  2. 石破茂

    石破委員長 これより会議を開きます。  内閣提出鉄道事業法の一部を改正する法律案及び海上運送法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉田左エ門君。
  3. 吉田六左エ門

    吉田(六)委員 おはようございます。おかげをもちまして、きょう、鉄道事業法そして海上運送法の一部改正、これにかかわる御質問大臣初め皆さんにさせていただく機会筆頭理事初め先輩各位の御配慮によりまして、私、その機会を授かりました。ありがとうございます。感謝をしながら、少しだけ質問をさせていただこうと思います。  小渕総理は、二〇〇一年から新しい中央省庁の名前をということで、きのうも最終的にこれが報じられまして、私たちがかかわる運輸省は、建設省国土庁、北海道開発庁と統合して、国土交通省という国土開発運輸行政とを一体に所管する新しい大きな省に生まれ変わることになりました。こうしたかかわりの中で、過ぐる予算委員会の折にも大臣質問させていただく機会があったわけですが、やはり国土を治めていくときに、建設運輸がコンビネーションよく整備していかなければならない、そんなことがあまたあるものですから、私は今度のこの省にかける期待が大きいんです。  今回は、その前段でありますけれども、運輸省から、鉄道事業法海上運送法道路運送法、そして航空法、まさに陸海空にわたる各輸送について規制緩和を行うための法案提出されまして、今までは許認可を減らすというような方向での規制緩和を進めてこられたわけでありますけれども、今度の規制緩和はこれらとはまた趣を異にして、事業を始める、そして参入する需給調整規制を廃止しようというものだ、いわば運輸行政の基本的な姿勢を転換する大変意味のあるダイナミックな法律一部改正だと私は理解しています。  そこで、大臣に、規制緩和を進めるための今回の四法案提出された基本的なこれに対するお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  4. 川崎二郎

    川崎国務大臣 まず規制緩和に対する認識でございますけれども、既に何回かこの委員会でも私自身の考え方を申し上げさせていただいておりますが、消費者立場また製造者立場両方立場から、日本の高コスト構造を変えていかなきゃならない。戦後今日まで努力してきて、世界有数の所得を上げる国民となった。しかしながら、生活実感として世界有数のところにあるかとなると、そうではない。また、製造者立場からいえば、国際競争がますます激しくなる、その中で、空洞化というものを招かずに日本生産基盤というものを維持できるか、この二つから考えたときに、どうしても日本の高コスト構造というものを二十一世紀に向けて直していかなきゃならぬ、こういう基本的な方針があったと思っております。  その中において、運輸省は安全というものを特にお預かりいたしておりますので、昭和六十年代まで二千を超える規制がございました、各省庁の中でも一番でございました。平成五年の段階から通産省さんにそのポストはお譲りをいたしましたけれども、いずれにせよ、あらゆるいろいろな面での規制が多かったことは事実でございます。これを逐次改正していこうということで今日まで取り組んでまいったところでございます。規制緩和によって自由な競争が促進され、結果として多様なサービス、そして低廉サービス国民に提供されていく、これが大きな目標でございます。  しかしながら、一方で需給調整規制が廃止されるということになりますと、生活路線維持の問題、安全の確保の問題、消費者保護等の問題、こうした問題が予想されますから、平成九年四月に、必要となる環境整備方策について運政審に諮問をし、旅客鉄道貸し切りバス国内旅客船国内航空、こういう四分野について答申をいただきましたので、それをもとにしながら、運輸省として、内閣として方針を決めて、今回、国会に提出をさせていただいて御論議いただくことになったわけでございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
  5. 吉田六左エ門

    吉田(六)委員 大臣ありがとうございました。御答弁の中に、国民低廉なそして安全なという、国民のというより利用者立場に立ってのお話が含まれておりまして、大変にありがたいと思っています。私も利用者利便向上という視点、この点を中心にして幾つか質問させていただきたい。  まず、鉄道事業法改正についてお尋ねをしたいと思います。  自民党は昨年十一月、「二十一世紀を展望した鉄道整備の推進を求める決議」、大都市圏鉄道における混雑の緩和でありますとかバリアフリー化ターミナル機能の充実、そして幹線鉄道については新幹線の計画を着実に進捗するというようなことでありますとか在来線高速化、果てはリニア鉄道やフリーゲージトレーンなどの技術開発を進めることなどを、今後の鉄道の基本的な方針として決議をさせていただきました。  この中には、我が日本海側を縦断するための新たな新幹線構想なども、私は、議論の中にあって、思いを込めながらさせていただいたわけです。このような鉄道の特性を生かしつつ、二十一世紀に向けての鉄道事業あり方を踏まえたものであると思いますが、具体的に、今回の改正により、現在の規制制度と比べ利用者利便はどのように向上するのか、これをひとつお尋ねさせていただきたいと思います。
  6. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  まず参入規制につきましては、需給調整規制を行わない許可制とすること等によりまして、競合路線への新規参入が制限されることがなくなるため、路線の円滑な展開が進みますとともに、鉄道事業者間の競争促進による輸送サービス向上期待できるかと思います。また、特定の目的を有する旅客運送を行う鉄道事業につきましては、参入規制を大幅に緩和することから、観光地におきます観光旅客を対象とした鉄道事業等参入が活発化することが期待できるかと思います。  さらに、運賃料金規制緩和によりまして、事業者創意工夫によって、利用者ニーズにより弾力的に対応した多様な運賃料金の設定が迅速に行われるとともに、運賃料金低廉化期待できるかと思っております。  また、乗り継ぎ円滑化措置に関する制度を設けることによりまして、これから乗り継ぎ措置事業者間の協議が円滑に進みまして、駅施設機能向上等が促進される結果、旅客乗り継ぎ利便向上が図られることが期待できるかと思います。  以上、申し上げましたように、今回の法改正により利用者利便増進が図られるものと考えております。
  7. 吉田六左エ門

    吉田(六)委員 よき競争、それによって起こる利用者サービス、しかし、最小限必要な部分は、新たな企業参入しやすくなってのよき競争というようなことで、私も理解しますが、この法文を読ませていただいたときにふっと頭に浮かびましたのは、先んじてこれらが導入された航空業界のことなのであります。  北海道と九州から、新たに、航空機整備で一番負担のかかる定期修理とかそういったものを大手業者に頼んででも安く飛行機を飛ばそう、これは大変いいことだなと思ったら、既成の飛行機会社が全部、その飛行機の時間の前後にまた同じものを飛ばして、たった一機持った人たちが、せっかく参入したのにというような方向からの考え方と、もう一つは、いいとこ取りじゃないかという考え方と、これは私の頭の中ではまだ整理されていないんですが、このことを思い出したんですね。  実際に鉄道の場合は、理由は若干違うんですけれども、私の家の裏をチンチンと走っています新潟電鉄という約三十六キロの電鉄が、先週、とうとう六十年の歴史を閉じてしまいました。規制には関係ないんですが、企業家の技量というか、あるいは、もう少し早くに手を打ったなら、あの電車は、信濃川の中の口という分水のわきをずっと通っていくのどかな田園電車だったので、もっと利便に使う方法があったのではないかななどという思いがいたします。そんな中から、今の御説明両方の場面でこれをバランスよく運用していくことが、技術的にというのか指導的になかなか難しい部分もあるんじゃないか、こんなふうに率直に私は考えています。  そこで、今回の改正において、貨物鉄道事業への参入について、当面需給調整規制を廃止しないとしたこと、これには何か理由があるのか、こう思いましたので、この理由をひとつ具体的にお聞かせいただきたいと思います。
  8. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  物流市場は、御案内のように、基本的には荷主と運送事業者との間の市場原理が働きやすい市場でございます。これは貨物鉄道事業も同様と考えております。したがいまして、貨物鉄道においてさらなる利用者利便増進を図るためには、旅客鉄道事業と同様、貨物鉄道事業に係る需給調整規制を廃止いたしまして、事業者間の競争促進による輸送サービス向上が可能となるような環境整備を図ることが重要と認識はしております。  しかしながら、鉄道貨物輸送中心をなしますJR貨物経営状況が極めて深刻な状況にあるわけでございまして、こういう現時点において、仮に需給調整規制を廃止した場合には、収益性の高い路線のみで新規参入による競争が行われ、JR貨物経営破綻に追い込まれる可能性がございます。その場合、これは単なる一事業者経営破綻にとどまらず、我が国の物流サービス全体の安定的な供給に支障を来す等のおそれがあると考えております。  したがいまして、JR貨物経営基盤が不安定な現時点におきまして需給調整規制を廃止するよりは、JR貨物経営合理化等を進めることによりまして、経営改善が図られた段階需給調整規制を廃止した方がその目的を十分に達成できると判断いたしまして、当分の間、貨物鉄道事業需給調整規制は現行のまま維持することとしたところでございます。
  9. 吉田六左エ門

    吉田(六)委員 当を得た、規制を廃止しないという御決断だと思います。一番環境に優しくて、そして物が大量に安く運搬できて、言えばトンネルでも何でも大きくして、日本もダブルデッカーの貨物列車が、数キロにわたった長いものが上越線を、清水トンネルを越えて関東圏へというようなところまで指導いただいて、運賃が驚くほど低廉になるというようなことも自分としては思いの中にありますものですから、貨物が力強く日本物流を担うように、ひとつ育成をいただきたいと思います。  そして、先ほどちょっとお話にありました乗りかえ円滑化措置、これは今回の改正の二十二条の二及び第二十二条の三にあるわけでありますけれども、利用者乗りかえをしやすいようにすることは大変に大事なわけでありますけれども、この措置をすることがこれまた規制緩和に若干逆行するのではないか、こう文章の読み口から感じたわけでございます。  事業者はなかなか大変な状況でございます。当然こうした乗り継ぎ円滑化措置については、たくさんのおかげをこうむる国や地方自治体も何らかのこれに対する負担とか手助けをしていくことの方がよりスムーズにこうしたことができるのではないかと思います。  過ぐるテレビで、駅のエスカレーターは、私たち健常者は、上るところについているとありがたいのですが、お年を召した方々は、何かひざの都合で下りの階段の方が難儀だ、こうおっしゃいますし、大きな空港、旅行用のトランクを持った人たちも、上りは何とか引き上げられるけれども、下りは危ないので下りエスカレーターだというような声が収録されたものを見たことがあります。  規制緩和とともに、新しい時代に見合うそうしたターミナル整備だとか、あるいはここにあります乗りかえ円滑化措置、これらには随分と大きな原資が必要なのではないか、このように思います。このことに対して支援措置を検討すべきではないかなと私は思うのでありますが、運輸省方針をひとつお尋ねさせていただきたいと思います。
  10. 小幡政人

    小幡政府委員 お話しの乗り継ぎ円滑化措置に関しましては、まず平成十一年度税制改正におきまして、都市鉄道ネットワーク化交通結節点での改善を図るために、相互乗り入れ等乗り継ぎ利便向上のための駅の大規模改良工事により取得いたしました鉄道施設につきまして、固定資産税軽減措置が新たに認められたところでございます。鉄道事業者に対するインセンティブとして有効に機能するものと考えております。  なお、近年、鉄道建設費の高騰、それにまた用地取得困難性建設期間長期化等がさらに顕在化しているため、鉄道事業者鉄道整備に対する投資のインセンティブは低くなってきております。そういう意味で、大規模施設改良民間資本のみでは進みにくい状況にあることから、現在、社会的に必要とされております適切な鉄道整備あり方及びその方策について、運輸政策審議会において御審議をいただいております。今後は、同審議会審議状況を踏まえまして、乗り継ぎ円滑化措置に対する助成方策を含みます鉄道整備円滑化について、適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
  11. 吉田六左エ門

    吉田(六)委員 ありがとうございます。  そして、従来は大変厳しかった技術関係規制緩和された、これは今の時流でありますから、私は大きく評価していきたいと思うんですね。  でありますけれども、鉄道会社鉄道会社といったところで、先ほど事例を挙げまして、先週なくなってしまった私の裏のチンチン電車からJRまで、その技術力組織力、体力、資金力、大変な乖離があると思うんですね。サッカーでいえばJリーグとJ2。余分なことですが、アルビレックス新潟は四連勝をしている。だけれども、まだJ2だ、このクラスと。  そういうふうに業界を仕分けまして、そして今までよりは緩和しながらも、しかし、ある程度安全のためにシビアな指導もしなければならない。あるいは、技術規制緩和してしまって、そして報告程度で、一部、線路の修理だとかあるいは車両の改造、リニューアルとか、そうしたことに対して緩めるという、何か区分けをしていくことが大事なのではないか。一度に全部、一つの規則で緩めてしまうことなく、緩いところは精いっぱい、そしてシビアにチェックをしなければ、まだ自浄できないところは厳しく、こんな意見が私にはありますことを一言申し上げさせていただいて、鉄道関係につきましては終わらせていただきます。  次に、海上運送法についてでございます。  海上輸送分野において特に留意しなければならない点として、離島生活の、いわゆる生活航路維持確保があります。今回の法律改正に当たって、このような生活航路維持についてはどのような配慮がなされているか伺いたいのです。  と申しますのは、私たちの真っ正面には日本で一番大きな離島佐渡島がございます。先ほど、冒頭の大臣の御答弁にもありましたように、あくまでも今度の緩和新規参入しやすくするんだということはよくわかります、いい意味での競争を喚起するために、そしてナイス利用者サービスということで。ですけれども、佐渡島を一つ例にとると、冬など、ろくに人は乗らぬのですね。そして、連休から島開きのフェスティバルが始まります。夏は島じゅうをニッコウキスゲが黄色く色をなすというような、そして史跡その他があまた、大勢の人が鈴なりになって佐渡へ渡ってきます。こんなときには、一そう余分にほかの会社が走ったらどうなのかなと思いますけれども、軽々にそんなことを口にしてはならない。冬の厳しい時代の、さっぱり人も乗らないけれども、定期便でありますからスケジュールどおり船は出さなければならない。  このことを、さっきも申し上げましたが、いいとこ取りのようなことが起こらないようにという、この思いから生活航路を守っていただきたいということなのでありますが、最初に申し上げたように、この配慮がどのようになされているか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  12. 宮崎達彦

    宮崎(達)政府委員 先生おっしゃいましたように、今回の法改正目的が、市場原理導入によりますところの輸送サービス向上ということをねらいとしておるわけでございますが、離島住民日常生活に用いられておりますようないわゆる生活航路につきましては、住民日常社会経済活動を営むに当たって必要最低限海上輸送サービス確保されるということが今後とも必要であるというふうに考えております。  御指摘のように、このような航路におきまして、例えば需要の多い時間帯だけでありますとか、需要の多い区間だけというような、いわゆるいいとこ取り、クリームスキミングと申しておりますが、そのような事業運営を認めるということになりますと、需要の少ない部分、少ない時期でありますとか、含めて、現在サービス継続、一体的に行われておりまして、そのようなサービス継続が困難となりまして、離島住民日常生活支障を来すということになりかねないというふうに考えております。  このような区間には、単純に市場原理導入ということではございませんで、指定区間という制度を今回の法改正で盛り込ませていただきまして、そのような指定区間、いわゆる離島航路区間、単純に申し上げればそういうことでございますが、新規参入する者に対しましては、一定以上のサービス水準を満たさないとだめだ、いいとこ取りだけではだめですよというような制度を今回確保させていただいたということでございます。
  13. 吉田六左エ門

    吉田(六)委員 ありがとうございました。指定区間にまで触れて御説明をいただき、よく理解をさせていただきました。  私どもも、地元の声を国政に反映させる代議士という立場で、事情、情報、あまたお伝え申し上げますので、地域の実情を十分反映される指定区間指定に意をお払いいただきますようにお願いを申し上げさせていただきます。  そして、先ほどもバリアフリー鉄道関係お話ししたんですが、これは船とて同じことだと思います。随分と、列車の方あるいは駅舎の方は、エレベーターがついたり、何かされていますけれども、あるいは車いすの人たちに優しいという。船の方は、構造上の制約もあるんだろうと思います。そして、船舶乗りおりのランプやターミナル施設が古いものが多いものですから、なかなかでこぼこが多い。こうしたことをもっと力強く進めていただきたい。この点にかかわる取り組み状況と、今後どのようにしてこれを進めていかれるのか、このことをお聞きしたい。  あわせて、最後になりますが、離島住民日常生活に必要不可欠な生活航路維持について、今後国としてどのようにこれに温かく支援をしていくのか、国としての基本的な考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  14. 宮崎達彦

    宮崎(達)政府委員 船にかかわりますバリアフリー化、先生御指摘のように、いろいろ難しい問題がございます。海難防止観点から、いろいろな構造上の制約があったりすることでございまして、現在のところ、正直申しまして陸上交通機関ほど進んでいないというところが現状でございます。  ただ、我々も、これで放置するということではございませんで、例えば、今年度から新しく離島航路船舶固定資産税減免措置でございますけれども、三分の一に減免されるわけでございますが、その要件といたしまして、そのようなバリアフリー化措置をしている船舶ということも要件一つに入れておりまして、促進するようにしております。  また、交通エコロジー・モビリティ財団というところの支援旅客船におけるエレベーターとかエスカレーター整備など、二層、三層になるような旅客船につきましては、そういった助成エコロジー財団を通じて行っていただいているところでございます。今後とも進めてまいりたいと思います。  また、全体的に、生活航路についての支援措置でございますけれども、現在、離島航路整備補助というのがございまして、欠損のすべてではございませんけれども、企業努力も求めておりますが、その一部につきまして国庫補助をしております。あとは、地方公共団体の方で相当積極的に助成をしていただくということと相まって離島航路助成をしておりますし、もろもろの税制措置について、今後ともその拡充に努力してまいりたいと思っております。
  15. 吉田六左エ門

    吉田(六)委員 ありがとうございました。  私は、今法律の一部改正、まさに時を得たものだと評価をさせていただきたいと思いますし、質問をいろいろさせていただきましたけれども、低廉でそしてナイスサービス、これが利用者に与わるんだなという何か確証を得たような気がいたします。大きくこのことに期待をして、質問を終わります。ありがとうございました。
  16. 石破茂

    石破委員長 次に、細川律夫君。
  17. 細川律夫

    細川委員 民主党の細川でございます。  今提案をされております鉄道事業法の一部改正、それから海上運送法の一部改正案、いずれも規制緩和中心でございます。  これらにつきましては、これまで運政審の中での議論、そして答申に基づいて今回、この法案提案をされてきているところでございます。その根幹にあります規制緩和というのは、民間にできるものは民間に任せて、国は国にしかできないことを行う、こういうことであろうというふうに思います。そういう観点に立てば、一切の経済的な規制の撤廃というものは当然の流れでありまして、運輸行政についてもその趣旨は十分理解もできるわけでございます。  しかし一方、自由競争で解決できない問題も、またたくさんあるわけでございます。自由競争で解決できないこれらについては、引き続き国の方が関与しなければいけない、あるいは今以上に行政が関与しなければならないんではないかというふうに思っております。  そういう中に、一つは安全の問題がございます。そしてもう一つは、規制緩和によって、自由競争による弊害といいますか、国民生活や福祉がマイナスになっていく、こういうような点、これらについても十分配慮した政策がとられていかなければいけないというふうに思っているところでございます。  安全性の問題については、この点は大臣も大変重く考えておられるというようなことを、これは所信でも言われましたし、また当委員会でもいろいろと議論がされてまいったところでございます。人の命というものにかかわる問題でありますから、規制緩和の影響によってこの安全面が軽視をされるというようなことがあってはならないというふうに思っております。  そこで、具体的な例を挙げながらお聞きをいたしますけれども、ことしの二月の二十一日、品川のJR山手貨物線で作業中の五人が回送中の列車にひかれまして、五人全員死亡いたしました。大変大きな事故でありまして、これはマスコミなどでも大変大きく報道されたわけでございます。  これについては、早速、関東運輸局からは、JR東日本に対して翌日に警告が出されまして、そして事故調査と再発防止策というものを要請されました。四月の二日付でJR東日本から報告書が運輸省の方に参りまして、その内容を私も拝見いたしましたけれども、この事故が起こるまでの管理体制、この問題がそこに浮き彫りにされているというふうに思っております。  このJR東日本から報告のありました事故防止策、これに対して、私はびっくりいたしたのですけれども、こういうようにまず書いているのです。どういう対策をとるかという前提のところで、初めのところにこういうふうに書いてあるのです。「列車見張員の注意力のみに依存した工事は行わないこととし、工事を行う場合は以下のように工事箇所に列車を進入させない措置を講じる。」こういうふうにありまして、そもそもこれまでは、事故がしょっちゅう起こっているにもかかわらず、列車の見張り員の注意力だけに頼っていたということが明らかになっているわけでございます。  これまでも事故がしょっちゅう起こっておりますし、事故防止策というのをきちんととっていれば今回のような、五人の命が失われるような事故は防げたのではないかというふうにも思います。四月二日付で出されたJR東日本の事故防止策、まず、これらについて運輸省としては一体どういうふうに評価をしておるのか。事故が防止をできたのではないかということ、それから、この防止策についてどういうふうに考えておるのか、まずお聞きをいたします。
  18. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  本件事故の原因につきましては、回送中の臨時列車に作業員が接車したものでございまして、工事着手の際に必要な列車の運行確認が行われていないと推定されるなど、御指摘のとおり、基本的なルールが守られていなかった可能性が非常に高いということでございます。昨年初めに、実は同種の接車事故が相次いで発生したため、鉄道事業者に注意喚起してきた、そういうやさきに再び今回のような事故が発生したことでございまして、非常に残念に思っております。  事故直後の二月二十二日に、先生お話しのように、関東運輸局長の方から指導をさせていただいたわけでありますが、その後、三月十七日には鉄道保安連絡会議を開催させていただきまして、鉄道事業者における列車間合い作業時におきます作業実態、総点検の実施状況等につきまして報告を受け、今後の再発防止に向け意見交換を行っております。  以上のような経過を経た後、先生お話しのように、JR東日本から提出されました再発防止策でございますが、この内容につきましては、保守作業の仕組みの改善、JR東日本の安全管理体制の強化、工事会社の安全管理体制の強化などが打ち出されておりまして、再発防止に向けて安全管理の原点に戻った取り組みが行われることとなったものと理解しております。  運輸省といたしましては、鉄道保安連絡会議におきます鉄道事業者との意見交換結果を踏まえまして、また、JR東日本の報告を参考といたしまして、労働災害を所管する労働省とも連携をとりながら、鉄道事業者に対し接車事故の再発を防止するために必要な指導を行う、こういう考え方でございます。
  19. 細川律夫

    細川委員 再びこういう事故が起こらないように、ぜひしっかり指導してもらいたいというふうに思います。  そこで、今回の鉄道事業法改正案と関係をしてくるわけなのですけれども、安全規制につきましては、この改正案では、事前規制緩和いたしまして、技術力に応じて事業者負担軽減を図っております。したがって、この安全性の問題については、事後チェックあるいは事故などが起きた場合の原因究明あるいは再発防止について、国がきちんとやっていかなきゃいけない、そういう重要性がさらに増すというふうに考えられます。  そこで、これらについて、昨年の十一月に運輸技術審議会答申がこれに関して出ております。  これによりますと、「事後チェックのあり方」というところの「事故等の調査・分析のあり方」、この項目でこういうふうなことが提言をされております。「事故等の原因の究明等は、一義的には鉄道事業者が行うものであるが、事故等の当事者という立場を離れ、公平・中立の立場から、国が事故等の調査・分析を行うとともに、鉄道事業者の事故等の調査・分析結果を的確に評価することが必要である。 したがって、今後、国が事故調査等を行うための体制を整備する必要があり、」こういうふうに提言をしているわけでございます。  私たちは、かねてからこの委員会などでもたびたび主張を訴えてまいりましたけれども、事故調査あるいは分析については、当事者とは別の機関できちんと行うべきだ、こういうようなことを言ってまいりました。  航空機が事故を起こした場合には、航空機事故調査委員会が設置をされておりまして、この第三者機関がきちっと調査をするわけでありまして、こういう鉄道事故調査委員会のようなものを運輸省の外につくることが必要じゃないかというふうに私は思います。そういう観点からしますと、昨年十一月に出されました運輸技術審議会答申の内容は、一歩前進した答申になっているというふうに評価することができると思います。  そこで、運輸省にお聞きをいたしますが、インシデントも含めた列車事故等の調査、分析を行う、そういう体制をどういうふうに整備していくように考えているのか、そこをお答えいただきたいと思います。
  20. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  先生お話しのように、我々運輸省といたしましても、より安全な鉄道を目指すためには、事故等の教訓を生かしまして、問題の所在に的を絞った効果的な対策を講ずること等によりまして、同種の事故を未然に防止することが極めて大事だというふうに考えております。その意味で、お話しのように、事故原因の徹底的な調査、これを公平な客観的な立場で行うことが大事であるというふうに理解しております。  その中で、我々といたしまして、現在検討中でございますが、その趣旨は先ほどの運輸技術審議会答申を踏まえてでございますが、当然でございますが、第三者の方々を含めた調査委員会的なものを、今までのところは、事故が起きてから実は任命させていただきまして、客観的な評価をしていただくということをしておりましたけれども、今回、我々は、事故の起きる前、まず通常から第三者を含めた人選を行いまして、それで、不幸にして事故が起きたときに直ちに指名をし、発足し、スタートする、こういう臨機応変に対応できる委員会制度というようなものを念頭に置いて、近々そういう制度をつくるべく検討中ということでございます。  そういうことを行いまして、我々としては、事故の場合での原因究明というものを直ちに客観的にできる仕組み、こういうものを勉強してみたいということで検討中でございます。
  21. 細川律夫

    細川委員 運輸省の方からは前進的な回答が得られました。ぜひ、しっかりした整備をしていただきたいというふうに思います。  次に、海の安全の問題についてお聞きをしておきます。  海の安全の一番の問題は、やはり船と船との衝突がないように、そういうことが一番の重要なことでありますけれども、これも例をとって申し上げますが、昭和四十九年に東京湾の浦賀水道でタンカーと便宜置籍船が衝突をいたしまして、火災が発生し、三十三名の乗組員が死亡したという事故が起こりました。東京湾があわや火の海になるのではないか、こういう事故が発生をいたしました。この事故は、その外国船が操縦について不案内なものでありますから日本船のLPGタンカーに衝突をした、こういうものでございました。この場合、水先案内人がその船におりまして、きちんと案内をしていたならばこういう事故は発生しなかったのではないか、こういうことが言われたわけでございます。  そこで、外国の船が日本の港に入ってきたときには、きちんと強制的に水先案内人をつけて、その水先案内人の協力によって入港する、こういうことにしていく、強制的な水先案内人制度を設置しなければいけないということになったわけでございます。  そして、そのときにできましたのが、東京湾などは一万総トン以上の船に強制水先人をつける、そして大阪湾もそう、それから明石海峡、来島海峡、関門海峡、こういうところで一万総トン数以上の船に強制的に水先案内人をつけなければいけない、こういうことになったわけでございます。  それ以前は、戦後GHQの要求によりまして、横浜、神戸、関門の主要な港、それから横須賀、佐世保の軍港、これらが水先法の強制対象区域と定められていたわけなんですけれども、この浦賀水道の大きな事故があってから、先ほど申し上げましたように、一万総トン数以上の船について水先案内人をつける、こういうことになったわけであります。  そこで、お聞きをいたしますけれども、一体、一万総トン以上の船には強制的に水先案内人をつける、それ以下の船はもう自由だ、どうしてそういうふうに基準を一万総トンにしているのか、そこについてまず具体的な根拠をお聞きをいたしたいと思います。
  22. 谷野龍一郎

    ○谷野政府委員 お答えさせていただきます。  一万トンの強制区は、先生御指摘のとおり、東京湾において昭和五十二年に初めて制定をされております。  一万トンにされた理由につきましては、次のような経緯がございます。  昭和四十九年に、先生御指摘の、第十雄洋丸が中ノ瀬航路を北上中に、リベリア籍船だったと思いますが、鉱石運搬船がぶつかったということで、三十三名の方が亡くなるという大変悲劇的な事故が起こっております。政府全体でさまざまな安全対策が検討されまして、その中の一つとして水先問題が取り上げられました。  ちょうどその事故にさかのぼる半年ぐらい前でありますが、四十九年の四月に、当時船舶の入港隻数が日本国内全体で相当ふえていた時期でございまして、強制水先区の拡大を海上安全船員教育審議会に諮問申し上げていたさなかであります。  したがいまして、大変悲劇的な事故が起こりましたので、これを優先的に審議していただくということで種々御議論いただいた結果、三千トンを強制水先にして東京湾はスタートを切ればどうだろうか、こういう議論がなされました。ただ、その当時まだ水先人の数等、体制整備が十分整っておりませんでしたので、とりあえず、緊急性を要するので、ちょうどぶつかってきた船が一万トンでありましたので、一万トンから始めようという結論で、そういう御答申をいただきまして、一万トンからスタートをした次第です。  その後、昭和五十六年に最終的に答申をいただくことになりますが、その間、東京湾の海上交通センターでありますとかあるいは一万トンの水先の効果でありますとか、さまざまな安全対策の効果が上がってまいりまして、この分では一万トンでそのまま規制してもちょうどいいのではないかという結論を再度審議会からいただきまして、しかる後に、東京湾をスタートとして、先ほど先生御指摘のあった一万トン区が制定されていった次第でございます。
  23. 細川律夫

    細川委員 一万トン以上ということにしたその根拠が、今の説明ではよくわかりません。例の浦賀水道での事故のあった船のトン数がたまたま約一万トンであったから、したがって一万総トン数になった、そういうことでありまして、それではその船が五千トンとか一千トンとか、そういうようなことならば、五千トンとか一千トンの基準になるのではないかというような感じがいたします。  そういうことで、どうもはっきりした根拠があるとは思えませんけれども、しかし、昨年の七月には神戸港が、それまでは基準が三百総トンであったものが一万総トンに緩和をされまして、一万総トン以下の船は水先案内人が不要となっております。  それから横浜港につきましては、これまたことしの七月一日からは三百総トンから三千総トンに緩和をされる、平成十七年までにはここも三千総トンから一万総トンへの緩和を検討する、こういうことになっております。  そうしますと、神戸港も横浜港も、隣接する大阪港や東京港が一万総トン以上になっているために、その経済的な不均衡があるから、どうも船を大阪港とか東京港の方にとられる、こういうようなことから緩和をしていくというように思われます。  しかし、そもそも一万総トンというものにどうも根拠がないということと、それから、この水先人、強制的に水先案内をつけるという制度そのものの趣旨から考えますと、画一的に一万総トン以上にしていくというようなことについては、水先制度そのものを形骸化していくおそれがあるというふうに思います。見直すとするならば、岸壁の使用料とか水先料あるいは入港料などのポートチャージに係るコストにある。むしろ、これをどうするかということを考えていかなければいけないのじゃないかというふうに思います。  やはり水先制度の最大の意義というのはいわば安全の確保でありまして、もし事故が起こったりいたしますと、例えばタンカーなんかですと、その原油が流出いたしまして、海洋汚染が広がって、大変な事態になるというような意味で、水先制度というものは大変意義の大きいものだというふうに思います。さらには、この強制水先をやりますと、日本の港に入ってまいります外国船をいろいろチェックもできる、こういう意味からいたしましても、安全保障上からも意義があるというふうに私は考えております。  そこで、お聞きをいたしますけれども、この水先制度というものは、海上の安全面それから海洋の汚染を防止する、そういうような観点から論じられるべきだというふうに私は考えますけれども、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
  24. 川崎二郎

    川崎国務大臣 まず、強制水先制度は、船舶交通の安全を図ること等を目的とする安全規制だということで私も考えております。  予算委員会審議のときにもございましたけれども、この安全規制、片一方の議論としては、過剰規制になっているのじゃないか、こういう議論委員の方々でございました。一方で、細川委員のように、まだまだ足りない、もうちょっと安全というものに配意をして、きちっとした基準をつくるべきだ、こういう議論もございます。  そういった中で、強制水先の見直しに当たっては、港湾の整備や管理の状況、安全技術の進展等も踏まえ、いずれにせよ慎重な検討を行っていかなきゃならぬ、このように考えております。
  25. 細川律夫

    細川委員 海外の水先制度を見てみますと、例えば、外国船のすべての船舶に対して強制水先を適用していく、こういうのは、例えばアメリカとかロシア、中国、トルコ、南アフリカ、フランスのルアーブル港とかブラジルとか、そういうところはすべての船にやっております。  それから、一定のトン数以上の基準につきましても、大体五百総トンから三百総トン、これ以上の船については強制水先、こういうことになっておりまして、例外的にはシンガポールの一地域に五千総トンというのがある程度でありまして、大体三百トンから五百トンが外国の基準みたいな形になっております。  そういうこととも比較をいたしまして、この強制水先の基準を設ける際にはそういうことも考慮し、また、日本の各重要港湾におきます船舶の運航状況あるいは安全性というのを改めてきちんと実態を調査して、我が国の実態に即した水先制度というものを確立すべきだというふうに考えますが、この点についてはいかがでしょうか。
  26. 谷野龍一郎

    ○谷野政府委員 お答えをさせていただきます。  強制水先のあり方を含む水先制度あり方につきましては、平成九年の七月に海上安全船員教育審議会に諮問をして、現在御審議をいただいているところでございます。  せんだって、昨年の十二月に中間答申をいただきましたが、その中間答申におきましては、強制水先の対象船舶の範囲の設定に当たっては、個別の強制水先区ごとに地形的な条件でありますとか自然条件、船舶のふくそう状況あるいは海難の発生状況等多様な要素を総合的に勘案して判断をする必要があるというふうに書かれております。  したがいまして、今後、強制水先対象船舶の範囲の見直しに当たりましては、先生から御指摘がございましたが、個別の強制水先区ごとに船舶の運航状況とか安全の実態を十分に調査をいたしまして、慎重に検討していきたい、こういうふうに考えております。
  27. 細川律夫

    細川委員 ぜひひとつ、水先制度の趣旨を踏まえた形でやっていただきたいというふうに思います。  次に、二番目の問題といいますか、規制緩和については、安全性の問題、それからもう一つは、規制緩和をすることによって国民生活あるいは国民的な福祉にとってマイナスになることがないように、十分留意しなければいけないというふうに思いますが、その後半の問題についてお聞きをしていきたいと思います。  この鉄道事業法改正案によりますと、退出も自由にできるわけであります。今まで鉄道を営業していたけれども、これをやめる、こういうことも自由にできるというようになってまいります。  そうしますと、特に地方などでは、鉄道というものが、高齢者あるいは通学の生徒などにとりまして大変大事な、いわば地域の足というふうになっておりまして、そういう意味では、経済性の観点から事業者事業を撤退するということになっては、その人たちは大変困るわけでございます。その点についてお聞きをしたいというふうに思います。  この改正案の二十八条の二によりますと、その二項で、「運輸大臣は、鉄道事業者が前項の届出に係る廃止を行つた場合における公衆の利便確保に関し、運輸省令で定めるところにより、関係地方公共団体及び利害関係人の意見を聴取するものとする。」こういう内容になっております。  そこで、お聞きをいたしますが、ここに言います利害関係人、意見を聞かなければならないというこの利害関係人とは、具体的にどういう人を指すのか。また、地元の人たちとの協議、地元協議の方法、あるいはどういうふうにして合意を取りつけるのか、そういう運営方法について、運輸省は一体どういうふうに考えているのか。この点についてまずお聞きをいたします。
  28. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  まず、第二十八条の二第二項に言います利害関係人の範囲でございますが、本項に言っております利害関係人とは、本項に規定する意見聴取が代替交通機関の確保等に関して十分な意思疎通を図ることを目的としており、そういう意味で、関係地方公共団体と並んで、廃止を行った場合における公衆の利便確保に関して意見を聴取すべきものであるということにかんがみますと、代替交通機関の確保等に関する利害関係人、具体的には代替交通機関の運行を行うことが想定される交通事業者などを想定してございます。  次に、鉄道事業の廃止について、地方公共団体や地元利用者の意向はどのように反映されるのかというお尋ねでございますが、今回の法改正は、参入に際しまして需給調整規制を行わない許可制とすることとあわせまして、退出についても鉄道事業者の自主性、主体性を尊重することが適当であること、経営上の支援をせずに鉄道事業者に対し鉄道輸送サービス維持を求める合理的な理由がないことなどにかんがみまして、事前届け出制とすることとしたところでございます。  しかしながら、鉄道輸送サービスが廃止される際には、当該地域における通勤通学、通院、買い物などを初めとする地域住民日常的な生活に真に必要不可欠な生活交通サービスにつきましては、需給調整規制の廃止後におきましても政策的に維持することが必要であると認識しております。  したがいまして、今回の法改正後におきましては、運輸省としては、まず第一に、法律上は、廃止後の交通の利便確保に関し、関係地方公共団体及び利害関係人から意見を聴取するということにさせていただきましたが、二番目に、これに加えまして、運用上は、鉄道事業者が廃止の意思を表明した段階で、地方公共団体の申し出があった場合には、地元協議会を設置させていただきまして、代替交通機関の確保などに関しまして関係者間の調整を行うことにより、代替交通機関の確保等を図り、生活交通サービスが中断したりしないように適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
  29. 細川律夫

    細川委員 利害関係人については、代替交通機関というように言われたんですけれども、これだけではなくて、例えば鉄道なんかで働いている人とか、そういうような方なんかの意見も具体的にいろいろとお聞きするように、そういうことも特に要望をしておきたいというふうに思います。  地元との協議会については、本当に地元にとっては、生活のいわば足が奪われるわけですから、将来に対しての不安とかそういうこともたくさんあるだろうと思いますし、きちんと事業者が対応していくような方法、合意のあり方をぜひ詰めていってもらいたいというふうに思います。  例えば、広島の可部線なんかにつきましては、この法案が施行されますと、廃止をされるのではないかという大変な危惧も付近の住民の方は既に持っておられるようでありまして、地元の人たち生活をきちっと守るような対応をぜひ運輸省の方としてもやっていっていただきたいというふうに思います。  そこでもう一つお聞きをいたしますが、今度の改正案旅客鉄道事業に限られておりますけれども、退出の自由を認めますと、貨物鉄道輸送についても大きな影響が出るというふうに考えられます。エネルギー効率の面あるいは環境負荷の面から見ましても、鉄道貨物はすぐれた特性を持っていることはこれまでにも当委員会でずっと指摘をされてきているとおりでありますし、運輸省の方もモーダルシフトの推進を掲げているところでございます。  そこで、お聞きをいたしますが、貨物輸送のルートにもなっている旅客鉄道の場合に、旅客の方がだめだということで廃止をして、貨物輸送の方もだめにする、貨物鉄道の方もだめになる、こういうことでは、先ほども言いましたように、貨物輸送の、鉄道貨物の持っている大きな意義からいたしましても、これは認めるべきではないというふうに私は思っておりますが、その点についてはどういうふうに考えているのかお聞かせをいただきたい。結局、旅客の方を廃止すれば、それに伴って貨物鉄道の方もだめになるというような場合には、廃止をすべきではないというふうに考えますけれども、この点についてはどうお考えでしょうか。
  30. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  鉄道事業法法律上のスキームから申し上げますと、一般的に、第一種または第三種鉄道事業者が保有する鉄道線路を使用しまして第二種鉄道事業者鉄道輸送を行う場合、両者の線路使用関係は私法契約に基づいて行われているということでございまして、当該路線の廃止等に際して、当該路線の使用関係について両者間の意向が異なった際には、当該契約関係をもとにして両者間で調整が行われるべきものという認識でございます。  したがいまして、全国的な鉄道貨物ネットワークを運行しているJR貨物などの第二種鉄道事業者鉄道線路を使用させている第一種または第三種鉄道事業者事業の廃止をしようとする場合にも、基本的には当該第二種鉄道事業者と第一種または第三種鉄道事業者との間で当該契約関係の中で調整が行われるべきものと認識しております。  ただ、これは法律上のスキームでございまして、我々国の政策として、運輸行政として、鉄道貨物のネットワークというものの大切さは認識しておりますので、そういう観点から、この私的な契約関係の成り行きについて、我々としては当然関心を持ち指導はしていきたいというふうに思っております。  ただ、法律上の整理としては、鉄道事業の法的なスキームとしては、先ほど申しましたように、契約関係ということでございますので、そのスキームとは離れまして、我々、政策としてそういうネットワークの維持等については考えていきたいということでございます。
  31. 細川律夫

    細川委員 鉄道貨物につきましては、先ほども申し上げましたように、エネルギーの問題だとか環境負荷の問題、大変すぐれた特性を持っているわけでありますから、鉄道貨物のネットワークが崩れないように、そういう意味では、行政の方で強い指導もしてもらうようにひとつよろしくお願いをしたいというふうに思います。  それから、鉄道事業改正案のもう一つの問題、乗り継ぎ円滑化措置についてお聞きをいたします。  また具体例を申し上げますけれども、これは私の地元の方でありますけれども、JRの武蔵野線というのが走っておりまして、この武蔵野線と東武鉄道の東武伊勢崎線というものが交差をしておるところがございます。交差しているところが、JRは南越谷駅、そして東武は新越谷駅というところがございます。最近東武線の連続立体交差事業が完成をいたしまして、駅付近は大変きれいになり、便利になりましたけれども、乗り継ぎ乗りかえについては非常に評判がよくないところでございます。  以前は、東武鉄道は地上を走っておりまして、武蔵野線、JRがその上を走っておりました。ところが、立体交差によりまして、今度は東武線の方がJRの上を走る、こういうことになりまして、東武線の方がいわば今は三階になっておりまして、JRが二階ということでございます。  今までは、東武線は一階から二階にJRにすぐ乗りかえ、JRの方は二階から一階におりたらすぐ乗りかえ、こうなっていたのですけれども、今度は、東武線の三階から一階までおりてまた二階まで上がる、JRの方からは二階から一階におりてまた三階まで上がらなければいけない、こういうことになっております。したがって、大変不便になって時間もかかるということで、乗客からいたしましても大変乗客の利便を無視した形の乗りかえということで、こういうことは大変よくないことでありまして、今度の法案での乗り継ぎ円滑化措置というのは、そういう意味でよく理解できるわけでございます。  しかし、乗りかえ利便向上させるということについては、これをやること自体については、事業者の方としては経済的なメリットはないわけでありますから、この解決はなかなか難しいと思います。そういう意味で、鉄道乗り継ぎの実態について一体どういうふうに大臣は考えておられるのか、そこらについてまずお聞きをいたします。
  32. 川崎二郎

    川崎国務大臣 細川委員と同様の認識を持っております。  私も、この春に新宿、渋谷駅等を視察してまいりました。また、羽田への京浜の乗り入れ、こうしたものも自分の目で見てきたところでございます。そういう意味では、バリアフリーの問題と乗り継ぎ問題、大きな課題であるという認識の中で今回の法改正を出させていただいております。  ただ、問題は、このバリアフリーにしましても乗り継ぎにしましても、果たして民間業者に利益をもたらすかというところが一番大きな問題でございます。利用者利便向上という意味で一番いい施策であることは事実でございます。  したがって、私どもはまず自主的な話し合いを求めてまいりたい。しかしながら、自主的な話し合いがうまくいかないときに、我々運輸省状況を聞かせていただいて、特にバリアフリーもそうでありますけれども、企業の社会的責任というだけでかぶせていってうまくいくかというと、なかなかいかぬ。したがって、地方自治体なり国がどのような支援策を組み込むことができるか、これは私ども大きな課題として検討させていただきたいと思っておりますし、地方自治体ともしっかり話し合いをしたいな、このように思っております。
  33. 細川律夫

    細川委員 今私がちょっと事例に出したような駅についてお伺いするのですけれども、一たん改装が終わったようなケース、そういうような駅について、地元から強い要請があったような場合はこの円滑化措置の対象になる可能性があるのかどうなのか、そこのあたりはいかがでしょうか。
  34. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  需給調整規制の廃止をお願いしているわけでありますが、その廃止後におきましても、鉄道施設という極めて公益性の高いインフラを保有いたします鉄道事業者は、公共の福祉、すなわち利用者利便増進観点から一定の責務を有するものでございまして、利用者がより円滑なる乗り継ぎができるような施設整備の推進のため、必要な範囲において相応の法的義務を課すことも可能であるとの認識のもとに、鉄道事業者に対し、乗り継ぎ円滑化措置の実施に関する努力義務などを課する内容とさせていただいているところでございます。  したがいまして、このような鉄道事業者に対する努力義務などにつきましては、建設中であると開業後であるとを問わず一定の責務を負うものと考えておりまして、一たん整備が終わったような駅舎等の鉄道施設につきましても、今回の乗り継ぎ円滑化措置の対象となるものと認識しております。
  35. 細川律夫

    細川委員 わかりました。  時間も近づいておりますからはしょりますけれども、この改正案の二十二条の三に規定があります運輸大臣の勧告が出た場合、乗り継ぎが円滑にできるような施設をつくるということは事業者にとってもなかなか経済的な負担が重くなるわけなんですけれども、二十二条の三で大臣の勧告が出たような場合には、施設整備に伴って何らかの財政的な支援が予定をされているのかどうなのか、このあたりをお聞かせください。
  36. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  そういう乗り継ぎ施設整備に当たりまして、先ほど大臣から答弁ございましたように、鉄道事業者の相応の負担、それからやはり地域あるいは国からの支援というようなものがあわせてないと、この施策は進まないということを申し上げました。  そういう観点から、国としての対応、支援あり方につきましては、現在、運輸政策審議会鉄道部会でせっかく議論していただいているところでございまして、その結論をもって我々としては支援策を講じていきたいというふうに考えております。
  37. 細川律夫

    細川委員 ありがとうございました。  それでは、時間がありませんから、あと簡単にちょっとお伺いをいたします。  海上運送法改正案の方についてお聞きをいたしますけれども、今回の法案では、旅客船需給調整規制の廃止に伴って、目的のところから秩序の維持というところが削られまして、例えば道路運送法にあるような公正な競争確保といったような文言がないわけでございます。  そこで、お聞きをいたしますけれども、この法律目的、第一条には、公正な競争確保というような文言もありませんけれども、しかし、公正な市場環境整備と秩序のある発展というものは行政上の十分な配慮というものがなされなければならないというふうに考えますけれども、この点大臣はどういうふうに考えておられるでしょうか。
  38. 川崎二郎

    川崎国務大臣 御指摘のとおり、海上運送の秩序の維持については、今回の法改正により、目的規定より削除いたしました。  過当競争による利用者利便の低下は防ぐ必要があると一方では考えております。また、市場原理導入により競争を促進するに当たっては、公正な競争確保は重要な課題であると考えております。  このような観点から、現行法に規定するサービス改善命令、輸送安全確保命令については改正後も引き続き存置するとともに、運賃変更命令を新たに規定するなど、市場原理のもとにおいて、過当競争等により利用者利便が害されることのないよう措置が図られております。  また、あわせて、競争環境整備により公正な競争確保を図る施策として、人の運送すべてに対する安全規制及び利用者保護規制の適用、二番目として、旅客不定期航路事業の原則乗り合い禁止による競争条件の整備、三番目として、罰則内容の強化を図ったところでございます。  市場原理導入後も、公正競争確保には十分配意をしてまいりたいと思っております。
  39. 細川律夫

    細川委員 ありがとうございました。  もう時間が過ぎておりますので、最後にお聞きをいたしますけれども、今大臣の方からもお話がありましたが、旅客不定期航路事業者は、通船あるいは遊覧船以外は乗り合い事業は原則的に禁止がされました。指定区間の規定とともに、このことはこの法案の中でも積極的に評価をしたいというふうに私は思います。  ただ、これまでもいろいろ違法行為がございまして、法を無視する、あるいは法を悪用するような形でいろいろな違法行為が行われてきたということは、海上保安庁の方も十分御承知のとおりでございます。罰則の強化なども今大臣の方から言われましたけれども、しかし、今後、違法な行為がいろいろ行われる可能性も十分あるわけでありまして、公正な競争という意味においては、きちんと取り締まりもまたしていかなければいけないだろうというふうに思います。  そういう意味で、今後、不定期航路事業者の違反などについて、海上保安庁は一体どういうふうに取り締まりをしていくつもりなのか、このことについてお聞かせをいただきたいと思います。
  40. 楠木行雄

    ○楠木政府委員 ただいまの先生のお尋ねは、行政罰が新しく設けられまして、その行政罰の励行に関して、海上保安庁が運輸省のそういった制度改正にいかに敏感であるべきかということについて、大変重要な問題提起をされているのだと思います。  海上運送事業につきましては、先ほど大臣がお答えいたしましたように、運輸省海上運送法に基づく一定の枠組みで指導監督を行っておるわけでございます。そして、今回の改正により設けられました規定の遵守につきましても、第一義的には、海上運送事業を監督する運輸省におきまして、報告徴収、立入検査、輸送安全確保命令等によりまして指導監督されるものと考えておりますけれども、やはり私どもの方も、御指摘のような事例につきまして、海上におきまして違法行為があれば、法に基づいて厳正に取り締まる所存でございます。
  41. 細川律夫

    細川委員 しっかりと取り締まりの方をよろしくお願いしたいと思います。  まだ質問の予定もありましたけれども、これで私の方は終わりにいたしたいと思いますが、この二つの法案につきましては、規制緩和ということで、経済的な面での規制の撤廃ということは、これはこれで進めていくべきだというふうに私も思いますけれども、先ほどから質問をいたしておりますように、自由競争になったときの安全性の問題、あるいは自由競争の中で住民人たちの足が奪われるとか福祉の面とかで後退するようなことがあってはならないというふうにも思います。  そういう意味で、ぜひ、そういう面にも十分配慮いたしましたこれからの行政というものを、きちっとやってもらいたいということを申し上げまして、私の質問は終わりたいと思います。ありがとうございました。
  42. 石破茂

    石破委員長 次に、永井英慈君。     〔委員長退席、衛藤(晟)委員長代理着席〕
  43. 永井英慈

    ○永井委員 民主党の永井英慈でございます。  私は、今まで運輸行政あるいは交通産業等々については余り関心がなかったわけです。ですから、全くの素人なのですが、実は、去年の暮れに、自分の通勤の経験をもとに本を出しました。題して「私の電車主義宣言」という本なのですが、自分の書いた本で、ちょっと言いにくいのですけれども、執筆してきた過程で、電車に対する思いというか交通に対する思い、都市交通に対する考え方、そういうことをずっと収れんしてきまして、今回こういう質問をさせてもらう機会をいただいたわけです。  したがって、鉄道事業法の一部を改正する法律案海上運送法の一部を改正する法律案につきましては、先ほど同僚の細川委員の方からかなり詳細にわたって質疑が行われましたので、私は、その電車への思い中心質問をさせていただきたい、こう思っております。  そこで、その前に、きょうの新聞、皆さん目を通しておられると思いますが、省庁の再編の記事が出ておりました。運輸省建設省国土庁と北海道開発庁が合体して、大変大きな役所になるわけでございます。  そこで、今まで運輸運輸という言葉を使ってきましたね。ところが、今度、交通という言葉に置きかえられたと言ってもいいと思うのですが、この辺の経過について、少々今まで物を書いたりしていますので、用語にはちょっと過敏なところがあります。今まで、交通、運輸運送輸送あるいは通運、運搬、こんなような用語があるわけですが、この中で今回、交通という言葉を省庁の名称に採用した経過をまずひとつ御説明いただきたい。  それから、こういう機会ですから、これは法律用語でもありますね。交通、運輸運送輸送、通運、運搬、こういったことをこの際公式にきちっと定義して、この委員会で明確にしていただきたいと思います。  というのは、今まで運輸省の政策を見てきますと、運輸政策、運輸政策ということで出てきておりますが、今年度からは、運輸白書も交通運輸政策という言葉をふんだんに取り入れて記述をしていることに特に気がつきましたので、この際、明確にしておいていただきたい、こういうことでございます。
  44. 梅崎壽

    ○梅崎政府委員 ただいま先生の御指摘の交通、運輸輸送運送、運搬、それぞれどういうことであるかということでございます。あるいはそれに関連いたしまして、今回、国土交通省運輸ではなくてなぜ交通にしたのかということでございますが、まずそちらの方からお答え申し上げたいと思います。  新しい役所の名前、これは先生御承知のとおり、総理大臣が有識者の御意見をお聞きになりながら決断をされたものでございます。その中で、運輸ではなくて交通という言葉を使いましたのは、中央省庁等改革基本法におきましても、国土交通省につきましては、交通政策の推進ということを主要な任務とするというぐあいになっておりますけれども、これは従来から、私ども運輸省が担っておりました運輸行政のみならず、統合されます他の役所が所管しております行政も含めまして、総合的に交通行政を推進していくことが重要であるというようなところから、国土交通省ということで、交通という言葉を使ったのではないかと考えております。  運輸と交通、これはむしろ私どもよりもあるいは先生の方が御造詣が深いのではないかと思いますけれども、若干個人的な感じ、私見になるかもしれませんが、運輸といいました場合は、運輸事業による輸送という感じ、ニュアンスが強いのではないか、それに対しまして交通というのは、まさに自家用自動車による運送輸送ということも含めまして、個人的な輸送も含めた、より広い概念として一般的に使われることが多いのではないか。  そのような、もともと物あるいは人がある地点から別の地点に行くというのが輸送であり、運送であり、またそういったようなこと全体を交通というと思いますけれども、個人的な輸送とかそういうことも含めまして、より広い概念として交通という言葉が使われている、若干そういうようなニュアンスの差みたいなのが、あるいは使われ方の差みたいなのがあるのではないか、こういうぐあいに私ども、先ほど申し上げましたように、個人的な意見でございますけれども、そのような差があるのではないかというように考えております。
  45. 永井英慈

    ○永井委員 こういう省庁のネーミングを決めるときですから、やはり個人的な考え方というようなことではなくして、役所として、官庁として国民にわかりやすく、これからはこれでいくんだ、運輸にしても運搬にしても、あるいは通運というのは、通運事業法という法律がありましたか、昔。こういう用語もきちっと整理して、公式に国民に告知することが極めて大事だと私は思うのですけれども、どうでしょうか、大臣、こういった考え方は。そんな必要はないとお思いかどうか。
  46. 川崎二郎

    川崎国務大臣 最終的に総理大臣の判断ですから、私の私的な考え方でございますけれども申し上げますと、建設省国土に変わり、運輸省が交通に変わったというふうに私ども思っておりません。確かに、厚生労働省のように両省くっつくんだから両方の名前を持ってきたという発想もあったかもしれないけれども、我々はそうではないと思っております。国土という中に、もちろん港湾というものもあれば、国全体の政策として国土というものがあるのだろう。そういう意味では、私は、国土交通というものの中に運輸という全体が今回は含まれていったのかなとまず第一に理解をいたしております。  同時に、先生大変難しい話なんですけれども、私は北海道開発庁長官もやっているのです。国土交通の中にウタリ対策、アイヌの問題をどう入れるのだとなると、実はなかなか難しい議論でございます。例えば気象も入ります、私どもが入れば気象も入る。海上警察である、海上消防である海上保安庁が何で国土交通に入るんだと言われると、なかなか正直言って、我々、いや、これはこういう理屈だとすべて先生に御理解いただけるような説明はできないのだろうと思います。  もっと言えば、十幾つに分けてしまった中で、それぞれ分野の仕事があって、これはこちらが担当しろという中ででき上がった、私はそう思っております。そして、運輸省全体としてとらえた場合は、国土交通というネーミングで何も国土建設を指しているものではない、私はこういう理解をいたしております。
  47. 永井英慈

    ○永井委員 説明はよくわかるし、国土交通省という名称もそれなりに私は理解をしておりますが、こういう機会ですから、ぜひ国民に周知徹底し、しかも理解を得られるように具体的に何か施策を講じるべきだ、こういう考えでございますので、ぜひそれはやっていただきたいし、今、冒頭申し上げました運輸、運搬、輸送とか通運、こういうような交通にかかわる法律用語があるわけですね。こういうのもきちっとこの際、律しておく必要があると考えます。  例えば、ほかの省庁法律によりますと、運輸省はどうかわかりませんけれども、ちゃんと定義を条文でしておりますね。それほどの必要はないにしても、やはり用語あるいは名称、ネーミングというのは明確にしておいていただきたい、要望を申し上げたいと思います。  それから、全く交通運輸行政についてはど素人ですけれども、今後、省庁が一緒になる、国土交通省になる、そこで、今運輸省が担当している部門を問わず、今お話しされたような、今度は国土の方も関係してくるわけですが、どういうところに一番のウエートを置いて行政展開をしていくか、基本的な取り組みというか基本的な姿勢、また御認識について、まずお伺いしておきたいと思います。
  48. 川崎二郎

    川崎国務大臣 その前に、国土交通省という名前を国民にわかりやすく説明できるようにきちっとしておけという御提案は、まさにそのとおりだろうと思います。また同時に、どういう英語をつけるのかなと、まだ英語訳も決めておりません。これも、逆に言えば、国民だけではなく世界に対して説明責任もあると思いますので、そういった意味では、委員の御指摘をいただいて、我々もしっかり努力をしなきゃならぬな、こういうふうに思っております。  実は、たびたび申し上げているのですけれども、私は情報交通省というのを主張していた方なんです。その中で、国土交通省という一つ議論が固まりました。その中の議論で一番中心になりましたのは、やはり物流コストが日本は高いではないか、これを何とか低減させるような努力をしていかなければならない、これが一番大きな議論であったと私は思っております。  したがって、例えば、港湾と道路、空港と道路、また地方に行けば駅と道路、こういうものをしっかり結びつけをしなきゃいかぬぞ、それから、当然、港湾と河川という問題も重なり合っていく。もちろん、鉄道というものが整備されればそこへ住宅というものも整備される、こういう意味で、広く、お互いの連携をしっかりしなさいということであろうと思っています。  その中で我々がこれから一番注視しなければならないのは、従来型の建設省が残り、従来型の国土庁が残り、従来型の運輸省が残って、三つがたまたま結婚しただけで、もともと戸籍が違いますよということがいつまでもあってはならないだろうと思っております。それは実は、今の運輸大臣である私ができることではなくて、まさに新しい国土交通大臣が英断をもってやっていくべき仕事であろうと思っておりますけれども、その地ならしは私どもも心がけていかなければならぬなと。そして、いい道路と鉄道の組み合わせとか、そういうものが本当に機能的に動いていけるように努力をしてまいりたい、このように思っております。
  49. 永井英慈

    ○永井委員 そこで、交通産業というのですか、運輸産業というのか、今用語にも迷っておるのですが、鉄道、自動車、船舶、航空というのか、この四者の総経済というか市場規模、マーケットのスケールですね、こんなことをぜひ御説明いただきたい。そして、それらがまた日本経済全体に占めるシェアはどの程度になっているのか教えていただきたいと思います。
  50. 羽生次郎

    ○羽生政府委員 お答えいたします。  陸海空の運輸事業市場規模でございますが、事業者の売上高ベースで見てみますと、九年度実績でございますが、鉄道関係で六兆九千億、バス、タクシー、トラックの自動車関係で十六兆五千億、海運、港湾運送事業で六兆九千億、航空関係で二兆七千億となっておりまして、これら陸海空の運輸事業の総計で売上高ベースで三十三兆円でございます。  これを単純に平成九年度の国内総生産と比べますと、平成九年度の国内総生産は五百四兆円でございますので、単純に比較しますと約六%となります。
  51. 永井英慈

    ○永井委員 日本経済に占めるシェアが約六%ということで、大変大きいと評価していいのか、小さいと評価していいのか、私はもうちょっと大きいと思っていたのですけれども、意外に小さいなという感じがいたします。  そこで、運輸産業全体、景気の動向等によって不振を続けているということを聞いておりますが、経済の規模に関連しての、また交通渋滞に関しての記事で、私は衝撃を受けたのです。去年の五月末でございまして、ここに、私が書いたのですけれども、この本を書くきっかけは実はこの記事だったのです。ちょっと衝撃的で、もう一年近くになりましたけれども、ちょっと読ませてもらいます。  御出席の皆さん、とっくり聞いて御理解をいただきたいと思うのですが、これは経済同友会の代表幹事の牛尾治朗さんの提言です。去年の五月二十九日の読売新聞朝刊、「メディア時評」というのです。  経済危機が恒常化している、経済活力を阻んでいるのは何だろう、一つは渋滞による不経済、何しろ目的地までの時間のめどがつかない、例えば東京で、都心から新宿まで一時間見ないと行けない、一時間見ないと行けないというのですね。もし確実に十五分—三十分でいいとなれば、車は半分で済むことになる、この渋滞で失われている時間は、これは多分日本全体だと思うのです、全体で五十六億時間、ちょっと見当がつかない時間ですが、五十六億時間、金額にすると十二兆円というのですね。そして、低スピードによる過剰なガソリン消費もまた膨大で、環境汚染も激しい、渋滞がなくなるだけで日本の生産性は三%ほど上がるというのですから、運輸業界全体の半分ぐらい経済効果が出ると理解していいのじゃないでしょうか。  これは三年前から言われていることだ、しかし、経済的側面から渋滞をどう考えるかという視点が今は全くない、そして、いかにして渋滞をなくすかは都市経営の基本だと言うのです。ですから、我が国の基本でもあろうと思うのですね、都市化が進んで。都市経営の基本だ、それは経済を最も阻害するからだ、経済を最も阻害するのは交通渋滞であると経済同友会の代表幹事は強調されておられる。  時間から換算した損失は、先ほど言いましたように、十二兆円だが、経済効果のロスを入れたら倍の二十四兆円になるかもしれない、としたら、先ほど話がありましたけれども、総経済、GDPと言っていいのでしょうか、総経済が五百兆円だからその五%にもなるというのです。渋滞を重大な経済問題として掲げ、プロジェクトをつくって、これを数年間で解決したらどうだろうと牛尾治朗さんは提案をしている。  交通渋滞によるロスですね。私も、電車で通勤していて、電車の効率性、利便性、これは毎日感じておりまして、電車を使えば、交通渋滞がなくなれば、これだけの経済ロスはかなりの部分解消できるだろう、そんな思いがしているわけです。  運輸省では、運輸省の外郭団体、特殊法人かな、運輸経済研究機構というのがあると思うのですが、運輸省自体でもこういった渋滞による、交通障害による経済ロスについての試算のようなものはしているかどうか、ちょっと聞かせていただきたい。そういうセクションがあるのかどうか、研究所を持っているのかどうか。
  52. 羽生次郎

    ○羽生政府委員 先生御指摘運輸政策研究機構というのは、私どもの関係の公益法人でございます。そことは緊密に連絡をとって、私ども相互に研究等をやっておりまして、その中でいろいろ意見交換はしております。  ただ、運輸省の中で、具体的に道路交通混雑に伴う経済ロスの試算というのは、運輸省自体では今のところやっておりません。先ほど申し上げました、機構の中でそういう研究を行う、そういったものに対していろいろな面で我々も一緒に仕事をしているということでございます。
  53. 永井英慈

    ○永井委員 道路管理者である建設省では、このような試算はかつてしているのか。こういった議論が省内であったか。  また、運輸省にもお伺いしますけれども、こういった議論、研究を運輸省としてはやって、かなり具体的な政策に生かしているかどうか。  その辺について、運輸省建設省にお伺いしたいと思います。
  54. 井上啓一

    ○井上(啓)政府委員 今の先生の渋滞による経済損失でございますが、これは、建設省で出しておりまして、全国の道路交通情勢調査というのを五年に一度ずつやっております。  そういうことで、実際の道路を走っている車の走行スピードがどうなっているかというようなことと、道路が持っている機能としてどれだけの速度で走れるか、六十キロの制限なら制限で走れるかどうかというようなことの差を出しまして、今先生ちょっと、経済同友会の方のですと五十六億人・時というお話でございましたが、私どもで計算しておりますのは、平成六年の全国道路交通情勢調査の結果をもとに計算しますと、五十三億人・時間でありまして、国民一人当たり年間約四十二時間の時間ロスになるということでございます。  これを、今の日本の一般的な、標準的な一人当たりの時間価値で計算しますと、今お話しの約十二兆円になるということで、渋滞による時間損失と経済的な損失が非常に大きい、私どもとしては渋滞対策を重点的に実施しようというようなことで、平成十年から十四年、渋滞対策プログラム、これは三次の渋滞対策対応でございますが、重点的に実施しているという状況でございます。
  55. 荒井正吾

    ○荒井政府委員 運輸省の道路渋滞対策についての御質問にお答えいたします。  我が国の自動車保有台数は七千四百万台ということで、世界の保有台数の約一割でございます。アメリカの二億台に次いで世界で二位ということでございます。一方、可住地面積当たりの自動車保有台数は相当のレベルで世界の一位ということで、大変な車大国でございます。  その中での道路渋滞対策でございますが、道路の渋滞によって経済的損失もございますし、最近特に、平均速度が落ちますと、排ガスあるいは燃料の消費が大きいということで、環境対策上大変重要な課題だというふうに認識しております。  その対策でございますが、基本的に、道路を走る輸送鉄道とか公共輸送機関に回す、地下鉄をつくるということは各国に比べて大変進んでいる国だと思います。人、物の移動が我が国の経済社会のライフライン、都市生活のライフラインでございますが、鉄道に回す。しかし、地方におきましては鉄道のない都市も多いわけでございますので、マイカー、バス等が主力の輸送機関ということでございますので、自動車の交通の対策からいたしましたら、バスを利用しやすくしてなるべく移ってもらう。例えば郊外の停留所に自転車置き場をつくってバスに乗りかえてもらうとか、あるいは専用レーンをつくってカラー舗装して通勤時間に走るとか等々、例えば浜松市、金沢市、松江市、奈良市のようなところで、数少ない例でございますが、行われてきております。  さらに、都市内では物流を自動車が受け持っておりますので、朝晩の物流配送でよく駐車による渋滞ということがありますから、都市内の物流を効率化するということでございますが、いずれにしましても大変難しい課題でございます。  運輸技術審議会に、環境と安全に配慮した自動車交通ということを諮問しておりますが、その中の議論では、最近の情報技術、ITSを利用して全体の交通量を抑制ぎみに利便確保するという議論が行われて大変期待しているところでございますが、例えばタクシーの全体の流し走行量を削減できるとかいろいろ具体的なアイデアが出ております。  また御報告する機会があろうかと思いますが、基本的な姿勢としては以上でございます。
  56. 永井英慈

    ○永井委員 先ほど来からお話ししていますように、交通渋滞というのは大変な経済的なマイナスのみならず、地球環境への大変な負荷の問題、電車通勤して電車主義を考えていると、深刻な都心の渋滞を毎日毎日心配せざるを得ないような状態です。  そこで、大臣にお伺いしたいんですが、こんなことを聞いていいかどうかわかりませんが、大臣、幾つになって、何期当選したかわかりませんが、政治家になる前の自分の生活を振り返ってみて、どんな交通手段を使っていたか、ちょっとお話をいただきたい。次に、政治家になってからの交通手段はどんなものが重立ったものか。そしてまた、今閣僚として、VIPとしてSPを伴って移動、行動をしているわけですが、その三段階に分けてちょっとお話をいただければ、参考にしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
  57. 川崎二郎

    川崎国務大臣 私は世田谷に住まいいたしておりました。東京生まれの東京育ちでございますから、小学校に通うころから満員電車でございました。当時の東横線というのは三日に一遍ぐらいはガラスが割れるのが当たり前、こういう生活をずっと続けてまいりました。その後慶応でございますから、やはり東横線のお世話になり、ずっと続けてきました。会社へ入ってからは、会社が芝にございましたので、大体慶応に通うのと同じルートでございました。  さあ、それで政治家になって変わったんですかと言われるんですけれども、先生御案内のとおり、例えば雨が降って車が込んでいる、地下鉄に飛び乗って東京駅に行った方が近いんですね、その方が時間が短い。ですから、そういう意味ではそういう利用の仕方はかなりいたしております。  それから、私は田舎に住んでおりますから、これは新幹線飛行機もございません。したがって、名古屋まで出て、そこから近鉄へ乗りかえて、毎日四時間、往復で八時間電車に乗っております。先週は三往復いたしましたので二十五時間、多分先生より相当私の方が大臣になっても電車に乗っておる口だろうと思っております。  いろいろな御意見があると思いますけれども、この間、新宿からずっと渋谷まで見ました。今度は十三号線というのも、今調査に入っておりますけれども、東横線代官山あたりから潜って、渋谷駅を地下化する。それから新宿へ抜けていって池袋に抜ける。うまく西武につながればそのまま所沢まで入っていくということで、よく私、東横線を使うのですけれども、横浜のベイスターズと西武がそのまま電車一本でつながる、こういうことでかなり、正直言って都内の電車に改めて乗ってみますと、随分、結節点も含めて、地下鉄も含めて整備が進んできたなと思っております。しかしながら、まだまだ足りぬという御意見もいただいておりますので、一生懸命整備を進めているところです。  しかし一方、先ほど申し上げたように、私、田舎に帰りますと、車がないとどうしても生活できない。何としてもそこは残ってしまいますので、都市のあり方、地方のあり方、しっかり両方議論をあわせながらやっていかなきゃならぬだろう、こう思っております。
  58. 永井英慈

    ○永井委員 幼少のころから電車を利用されて、今も東京にいるときには電車を大分使われる、政治家になっても電車を使われる。大臣になって新宿や渋谷あるいは京急を視察に行かれた。私も電車主義者になってから丸々五年近くなるわけです。電車というのは乗ると便利なんですね。乗るにはコツがあるんです。東京の地下鉄や電車を一人前に乗りこなせなければ東京人とは言えないなんという話さえあるんですね。実際私は電車を利用してみて本当にすごい。  先ほどどなたかが御説明されましたが、日本は自動車大国、自動車王国と言うけれども、私はこの本の中でも電車王国、電車大国と表現しているんですが、首都圏のとりわけ東京の鉄道網、私はトレーンネットと言っているんですが、鉄道網は本当にすごい。  そこで、もう一度大臣に伺いたいんですが、この東京、首都圏の鉄道網をどう評価しておるか、使い勝手はどうか、お聞かせいただきたい。
  59. 川崎二郎

    川崎国務大臣 私が大臣になりまして御陳情が一番多いのは、千葉県、埼玉県の方々の都市へのつなぎ、そこの整備をしっかりしろという御意見が一番多うございます。私は実は就任したとき、新幹線が一番多いのかなと思っておりましたけれども、都市鉄道整備に対する期待というのは極めて高い、これは改めて感じ入っております。  そういった中で、今日まで進めてきた施策をもう一歩前へ進めたいということで、昨年も小渕総理からの御指示もありました。都市鉄道整備ということで調査費用をつけさせていただいて、今いろいろな調査をいたしております。これは大阪、東京を中心としながら、もう一段の都市鉄道整備というものをどう考えていくかということでさせていただいているところでございます。  いずれにせよ、極端な話で、番号を分けて、入るのを半分ぐらいにしたらどうだという御議論もあります。運輸省の中で一時議論をしたことも事実でございますけれども、そこへ一挙に飛躍するよりは、先生御指摘のとおり、まず都市の鉄道をきちっと整理して、皆さん方に、御不便をかけないからなるべく電車に移ってくれ、こういう体制をつくることの方がまず第一だろうと思って努力をしているところでございます。
  60. 永井英慈

    ○永井委員 そうすると、今の話では、埼玉やその他、大変な新線設置のニーズ、要望があって、まだまだ不十分だ、これはもう不十分なことは承知しておりますが、そして、完備してから、さあ移ってくれと、これはいい話ですね。しかし、そう簡単に鉄道はできない。現状、先ほど言いました、首都圏とか東京の鉄道網を見た場合、すごいんですね。まさに鉄道王国、電車王国だと私は思っております。これだけの鉄道網をつくり上げた先人の先見性というか努力というのは大変なものだと思っております。  そこで、今ある電車網、電車を使って、まだまだ輸送余力はあると思うんですね。ところが一方、先ほど言いましたように、都内の渋滞は深刻です。気象庁も来ていただいているかもしれませんが、ここに巨大地震でも起きたらどうなるんかいなと私は毎日心配しております。一分後に巨大地震が起こる可能性もないとは言えない、こういう状態ですね。先ほど言いました、牛尾治朗さんが、もし確実に十五分から三十分でいいとなれば、車は半分で済むことになると。ですから、電車をどんどん使うことによって車を削減していく、総量を削減していくということは焦眉の急だと私は思うんです。  そこで、言いにくい話なんですが、これだけ深刻な渋滞を放置しておくことはできない、環境対策からしても。まず、省庁の公用車を規制するなり削減するなり全廃するなり、象徴的なこととして取り組むべきではないか。逆に、例えば山手線の内側だけ見ても、公用車なんて全然必要ないんですね。私は五年近くやってみて、全部電車で、そして行けるところは、ちょっと気が向くと路線バスに乗ってみて、路線バスというのは高いですから意外におもしろいんです、景色が変わるんですね。そして、急ぐときにはタクシーを使う。電車、タクシー、路線バス、こういうものの組み合わせの利用をすることによって、公用車はまず私は全廃して支障がない。ただ、大臣のようなVIPは警備の問題とかありますから、廃止することは困難だと思いますけれども、いわゆる公用車は即座に全廃しても問題ないと思うんです。  ただ、雇用の問題とか派生するいろいろな問題がありますが、基本的に、省庁の車、とりわけ中央省庁の車を全廃するという方向は打ち出せないものか、運輸省はまず率先垂範をしていいのではないか。そのほか、自治省とか環境庁とか、そういうことによって、かなり車の抑制というか、これが新しいライフスタイルの引き金にもなるんじゃないかなという感じがしているんです。これは私の電車利用の経験から申し上げることで、ひとつ抑制、廃止についての御見解をいただければと思います。
  61. 川崎二郎

    川崎国務大臣 公用車をふやしていくという政策はとらない、また、公用車自体を低公害車また低燃費車にかえていく、この努力をしていかなきゃならないと思っております。  ただ、永井委員の御指摘でございますけれども、私の基本的な認識として、東京都内が込んでおるだろうか、果たして東京都内に流入する車が込んでおるだろうかということになりますと、実は私は後者だと思っているんです。東京都内に流入する車が極めて多い。  例えば、先週私が行ってまいりました北京とか、ソウルとかそういうところと比べたときに、東京都内が大変混雑して身動きとれない、実は、身動きとれないのは割合高速道路であったり、東名であったり、また埼玉や千葉からの流入であったり、神奈川県も含めてでございますけれども、そういった方が問題であって、今その辺について建設省が必死になって努力をしておるところではなかろうか。公用車をふやしていくという方向は、御指摘のとおり減らしていくべき方向になっているだろうと思いますけれども、都内での効率性からいって、自動車というものが全部否定されるものであろうかということになれば、私はちょっと今、先生の御意見とは違うと思っております。
  62. 永井英慈

    ○永井委員 自動車の効用というものを、私はいささかも否定するものじゃありません。人類のつくり出したすごい道具だと、私は自動車も高く評価し、便利にも使っております。しかし、その使用、利用するエリア、これがこの過密の、この巨大な都市のど真ん中で、公用車は必要ないんです。霞ケ関から国会議事堂前までは二分ですね。私は毎日乗っています。大臣もおわかりだと思います。間隔が丸ノ内線なんかはほぼ二分、一分のときもありますね。すごく使い勝手がいいわけです、どっちから見ても。そして、地下鉄は昼間はほとんどがらがらで走っております、ほかの路線もみんなそうですけれども。  私は五年近く徹底して電車を使ってみて、もう省庁の車は要らぬという結論に達したんです。ですから、削減するのはいい、それは時代のニーズにこたえることだという程度でなく、それからまた、環境に優しい、ハイブリッドカーというんですか、低公害車を導入するということ。しかし、これは渋滞には関係ないですね、それを導入しても。そこで全廃をぜひ検討し、検討というか実現してもらいたい。これは象徴的なことなんです。中央省庁の公用車が廃止になったということになったら、どうしてだと国民は本当に真剣な議論を巻き起こしてくれるものだと思うんです。  そういうようなことで、これはもう、うんもすんもない、やってみて、十分、その方が効率的、能率的、環境にもいいということでございますので、もう一度答弁をいただきたい。  それから、後者の流入の件ですけれども、そういう意味で、この巨大な国の首都機能が集積しているんですね、集中、集積しているこの都心部に、とりあえずは自家用乗用車、白ナンバーの自家用乗用車。トラック類は運搬のため、重量物を運ぶため、これは規制はなかなか難しい。例えば山手線の内側とか環状八号線の内側とか、エリアを決めて、これはまさに大臣が言われるように、流入する自動車が深刻なんですね。そういうようなことで、そこまで規制ができるかどうか。  私は所管が違いますよ、それは警察庁ですよなんて言わないで、運輸行政を担当している者として、御見解あるいは今後の見通し、取り組み等についてお話をいただければと思います。
  63. 川崎二郎

    川崎国務大臣 貴重な御意見だと思っております。  ノーカーデーというのを月に一遍実施いたしております。それによってどういう効果が上がり、またどういうふぐあいがあるか、しっかり私も勉強してまいりたいと思います。
  64. 永井英慈

    ○永井委員 時間もございませんので、では、具体的なことを聞かせていただきます。  中央の運輸省で都内に保有している公用車の台数はどのくらいあるか、ちょっとお聞かせいただきたいんです。それから、建設省についても同じ質問をさせていただきたい。
  65. 梅崎壽

    ○梅崎政府委員 運輸省が東京都内におきまして公用のために使用している車でございますが、本省、海上保安庁等全部合わせまして六十八台でございます。
  66. 井上啓一

    ○井上(啓)政府委員 建設省の本省で所有している公用車は四十三台でございまして、うち三台が今のハイブリッド車でございます。
  67. 永井英慈

    ○永井委員 それぞれ台数を伺いましたが、ハイブリッド化というのか低公害車化というのか、導入が大変進んでいないということを、去年だったと思います、新聞報道されました。これは、どうしてこの導入が遅々として進まないのか。これも運輸大臣に伺ってよろしいでしょうか。あるいは官房長でもいいです。
  68. 梅崎壽

    ○梅崎政府委員 本省が所有している車のうちの三台は既に御指摘のような低公害車でございますが、この拡充につきましては、私どもを初め政府全体で取り組んでいるところでございまして、平成十二年度末にはこれを二十四台にまでふやすということで運輸省としては取り組んでいるところでございます。  従前、この問題、使い勝手が必ずしも十分よくないということもございまして、なかなか進まなかった面もあろうかと思います。いい低公害車も出てまいりましたので、これをさらに進めていこうということで、今申し上げましたように、努力しているところでございます。
  69. 永井英慈

    ○永井委員 これだけ地球環境が叫ばれて、これだけ東京都心の渋滞やら環境汚染が深刻化していながらも、その具体的な防止策、保全策というのが具体的に実施されていない、また実施しようとしても進捗していない現実、私は恐ろしいことだなと思っておるんです。  そこで、話はちょっと飛んで恐縮ですけれども、時間がございませんので、最後に、これだけ慢性的渋滞が起きて深刻な状態であるこの都心部、ここに突然、もちろん突然なんですが、巨大地震が襲ったときに一体どうなるか。もう神戸の地震でも大変な惨状をついこの間目の当たりにしているわけですね。それとは比較にならないほど、首都機能等々のいろいろな機能が集積、集中しているここです。  そこで、気象庁のどなたかに来ていただいておると思いますが、予知体制、これはもう大変なことなんですね。私は、二十四年間、この予知については関心を持ってきました。でも、遅々として進まず、動物等の異常現象も私は重視しているんですが、科学的には何の根拠もないということで一笑に付されたりしてきましたが、ぜひこれはどんなことがあっても、予知体制、予知を進めていくということは、この地震火山国日本にとっては最大の関心事にしなければいかぬ、特に東京はそうだということで、予知体制についてちょっと御説明をいただきたい。
  70. 瀧川雄壯

    ○瀧川政府委員 お答えいたします。  ただいま地震予知のお話がございましたけれども、地震予知は一般的にまだ研究段階にございまして、いつ、どこで、どのぐらいの規模の地震が起きるか、すなわち、地震の起きる時期と場所、さらに規模を特定する地震予知は、現在では困難な現状でございます。  しかしながら、東海地震につきましては、過去の地震活動の記録から、発生する場所や平均的な地震の繰り返し間隔がわかっておりますし、また、昭和十九年に東海のすぐ隣の隣接地域で発生いたしました東南海地震につきましては、前兆現象があらわれております。こういうことから、前兆現象があらわれる可能性がありまして、前兆現象があらわれた場合には直前に予知ができる、そのように考えてございます。  そのため、東海地域とその周辺には、地震計、地殻岩石ひずみ計などを設置しますとともに、大学等関係機関の協力も得まして、各種のデータをリアルタイムで気象庁に集めまして、二十四時間体制で監視しているところでございます。  今後とも、東海地震の前兆現象をとらえるための努力をしてまいりたい、そのように考えてございます。
  71. 永井英慈

    ○永井委員 確かに予知することは難しいわけです。しかし、観測体制は強化していかなければいかぬと私は思っております。  そこで、十一年度の予知に対する研究費用というんですか、あるいは観測に対する予算、どのくらいになっているか、ちょっとお聞かせいただきたい。
  72. 瀧川雄壯

    ○瀧川政府委員 ちょっと手元に予算書を持ってまいりませんでしたので、直接お答えできませんけれども、ただいま御指摘の観測体制の強化、こういうものにつきましては、私ども毎年これまで配置しております地震計の更新、こういうものを行っておりまして、つい先日の前年度の第三次補正でございますけれども、その中でも機器の更新、そういうものをやっております。またさらに、新しく観測の施設としましては、衛星を用いましたGPS、これはカーナビゲーション等で使われておりますけれども、そういうデータを集めまして地殻の変動を監視する、そういうことで、観測体制についても年々充実してきているところでございます。
  73. 永井英慈

    ○永井委員 時間になりましたので、この辺にいたします。  十分な議論を私は尽くせなかったし、また大臣からも公用車の廃止宣言を聞けなかったのはまことに残念です。腰が引けているのです。地震はいつ来るかわかりません。都心のこの交通渋滞、環境汚染、放置しておくわけにいかぬ。ここへ巨大地震が来たらどうするのだということでございますので、そういう面で、電車鉄道の果たす役割、これは非常に大きいと思っておりますので、なお一層、快適な通勤ができるように努力していただきたい。また、具体的には議論もさせていただきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いを申し上げます。ありがとうございました。
  74. 衛藤晟一

    ○衛藤(晟)委員長代理 この際、暫時休憩いたします。     正午休憩      ————◇—————     午後二時三分開議
  75. 石破茂

    石破委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。赤羽一嘉君。
  76. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。  きょうは、まず鉄道事業法改正について主に三十五分間質問させていただきますので、どうかよろしくお願いをいたします。  まず確認をいたしたいわけでございますが、午前中、大臣の御答弁にもありましたが、我が国の現状、特に交通運輸市場が成熟段階に達しつつある点とか、また行政改革、経済構造改革が焦眉の急であることにかんがみて、自由競争の促進によって交通運輸分野における経済活動の一層の効率化、活性化を図る必要があるとの御認識で、まさに平成八年の十二月五日、従来の運輸行政、特にこの需給調整規制廃止を決定された、これはまさに運輸行政ビッグバンともいえる大転換だというふうに、まずそう評価をしたいと思いますが、運輸大臣の御見解はいかがでしょうか。
  77. 川崎二郎

    川崎国務大臣 先ほど私の認識を少しお話し申し上げたところでございますけれども、明治以来、鉄道を各地域に引いてきた、ある意味では、国鉄、国の力によってやってまいりました。しかしながら、国鉄改革というものを契機としながら、やはり民間の力というものを生かしていく時代により誘導していかなきゃならない、これが我々の一つの判断であったと思っております。加えて、先ほど申し上げましたように、高コスト構造を変えていかなきゃならぬ、この二つの要請から、私ども、やはり規制緩和というものに進んでいかなければならない。  申し上げましたように、運輸省というのは、ある意味では、あの細川さんの言葉に使われましたように、規制の官庁である、こういうお言葉をいただいていたことも事実だろう。その中で、大きく政策転換に踏み切らせていただいた。しかしながら、一方で、影の部分というものも十分配意をしながらやっていかなきゃならない。いろいろな御議論をいただいた中で、今回、法案提出をさせていただいたところでございます。
  78. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 まさに、私、交通運輸全般の、鉄道に限らず、全般に対する需給調整規制のこの廃止というのは、本当に大きな大転換だというふうに思っております。  その鉄道事業における需給調整規制の廃止についてちょっともう一度確認をいたしたいんです。この需給調整規制を廃止することによって、鉄道事業者の自主性、主体性を尊重しながら、そして事業者間の競争を促進して、事業活動の効率化、活性化を通じたサービス向上、また運賃料金の低減等の効果を上げることによって、鉄道利用者利便向上を図る、こういう目的でこの鉄道事業法改正が今回提出されたということで間違いないですか。よろしいですか。
  79. 川崎二郎

    川崎国務大臣 そういうことを期待して制度改正に取り組んだということでございます。
  80. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 では、需給調整規制の採用の論拠というのはあったと思うんですね、これまでの運輸行政の中で。運輸政策審議会の総合部会の答申を見ていますと、これまで需給調整規制の採用をしてきたという論拠が幾つか述べられておりまして、一点には、過当競争による運輸サービス、安全性、質の低下を防ぐために需給調整の規制をしてきたんだ、これが一点でございます。  二点は、市場における独占性を付与することによって、採算路線と不採算路線との間の内部補助を容易にすることによって交通運輸サービス確保してきた、この論拠は間違いないですか。
  81. 小幡政人

    小幡政府委員 今の運政審答申の中の考え方、二つ御紹介ございましたけれども、我々鉄道についても当てはまると思っております。ただ、お話の中の我々の鉄道の特性から申し上げますと、後段でおっしゃられた、市場の独占性のウエートの方がかなり高いというふうに認識しております。
  82. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 それで、同じ答申に、その需給調整規制の中での問題点ということも同時に述べられております。これはちょっと文書、違うかもしれませんが、一つ目は、長期安定的な事業経営を保証するということは、臨機に新たな運輸サービスを提供しようとする意欲のある事業者参入が妨げられるというのが問題点の一つ目に挙げられております。  この一点目なんですけれども、この問題、臨機に新たな運輸サービスを提供しようとする意欲のある事業者参入が妨げられる、だから、この需給調整規制を外して、新たな事業者参入させて、競争原理を起こさせてサービス向上に努める、これは運輸行政全般には当てはまるかもしれませんが、この経済状況の中で、かつ少子高齢社会で鉄道利用者というのはまさに少なくなっていく、一方では、土地の高騰化で設備投資というのは莫大なものになる、こういった状況の中で、新規参入事業者というのが期待されているとはちょっと私は思えないんです。ほかの分野においてはこういった規制緩和意味合いというのはあると思いますが、どうも、鉄道事業に関してのこの部分については、なかなか腑に落ちないものがあるんですが、どうでしょうか。
  83. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  我々、今回の鉄道事業法改正の中で、需給調整規制を廃止してということでの目的として、先ほど大臣が申し上げましたような視点があるのは事実でございます。一方、現実問題として、そういうことを我々は期待いたしますけれども、本当にそういうふうに新規参入が活発に起きてくれるのだろうかという実態を見ますと、我々も先生と同じように、さほど期待は実はできないのではないかという問題意識は持っております。  そういうことの中で、我々としては、この需給調整規制の廃止という規制緩和のみでは、鉄道事業への参入の促進、それによる競争の促進というのが図りにくいということの認識を持っております。このため、規制緩和とあわせまして、利用者利便向上策やあるいは鉄道整備円滑化方策を講じていく必要があるというふうに認識しております。
  84. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 また、この問題点の二つ目に、既存事業者のうちで効率性や進取の意欲に乏しいものであっても事業継続が可能となることから、結果的に国民生活の変化を反映した消費者サービス需要の多様化への柔軟な対応が困難になるおそれが生じてきた、こういう問題点も指摘されておりますが、こういった問題点は、現実にこの鉄道事業の中で確認されるのでしょうか。
  85. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  これは、鉄道事業をバス事業、航空事業等々それぞれの輸送機関と比べまして、鉄道については、その大量性あるいは非常に長距離性というような中で、今先生のお話のようなことがどうであるかということについて、相対的には大分違うものがあると思いますけれども、鉄道について申し上げますと、やはり鉄道もほかの自動車交通等との競争はございます。そういう中で、旅客サービス向上に向けて、そういう意味での競争市場において努力はしてきておりますけれども、鉄道事業に新たに参画する、あるいは新しい発想でのサービスが提供されるというような面での競争ということを考えますと、我々としては、もう少し進んでほしいなという認識を持っておるのは事実でございます。  その意味において、需給調整規制の廃止という参入規制緩和についてもそういう視点でございますし、運賃についてもしかりでございます。そういう意味で、今回の鉄道事業法改正の中においては、よりよい鉄道事業者間における競争というようなもののインパクトを与えられれば幸いという視点で議論させていただいているところでございます。
  86. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 それと同じように、三つ目の問題点として、都市近郊部で宅地開発が進行している。そういった新たな宅地開発がされたところは、鉄道へのアクセスが極めて不自由な地域が数多く存在する。このような地域に新規事業者の進出を促進すべきであり、あたかも既存事業者のテリトリー化を図るがごとき需給調整を行うべきではないというのが、この答申一つの問題点として挙げられている意見でございます。その一方では、これは答申じゃないかもしれません、行政改革委員会の小委員会の報告かもしれませんが、そういった既存事業者のテリトリー化を図るということには当たらない、こう意見が対立しているところなんですが、これは運輸省としてはどう認識しておるのでしょうか。  わかりにくければ、参入規制が既存事業者のテリトリー化を図るものであるとの批判は当たらないという意見が一方あるわけであります。どうなんでしょう。参入規制というものが既存の事業者のテリトリー化を図っているのだという意見と、図っているという批判は当たらないという両論があるという報告がされておるのですが、このことについてはどういう御見解ですか。
  87. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  鉄道参入規制が既存事業者一つのテリトリー化を与えているかどうかという認識でございますけれども、これはそのまま真正面の答えではないかもわかりませんが、やはり鉄道事業というものは相当な投資が必要でございますし、その資本回収にも相当の期間を要する、また非常にリスクの高いものであるという過去の経験からして、実は新規参入は非常に難しい事態がございます。一方において、そういう苦労を重ねた結果、でき上がりますと、お話しのように地域独占性というものが実際問題として生じてくるということでございます。そういうことの中において、やはり新規参入が生じにくいという結果として、既存の事業者が独占性の中で、とかく旅客サービス等々の見地あるいは他との競争の見地において、テリトリー化といいますか、独占性に甘んじるという事態が生じがちだという認識は我々もしております。  先ほど申し上げましたように、今回、既存の事業者に対して新規参入というのが今よりはあり得るというインパクトを与えることによって、既存の事業者の方々の旅客に対するサービスの視点というものが変わってくれはしまいか。あるいは、運賃の弾力化ということの中で、そういうことがまた我々として期待できるのではないか。そしてまた、後ほど申し上げますけれども、乗り継ぎの問題についても、そういう視点から我々としては新しい措置を講じる必要があるのではないかというようなところで提案させていただいているわけでございます。
  88. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 運輸省として、既存の事業者が現状の制度の中で経営的な安住の傾向があるところもあり、サービス向上また効率性の向上がちょっとまだ甘いところがあるのじゃないかという御認識があるというのは承りましたけれども、そこを改善するために、新規事業参入という、局長も御認識されていると思いますが、現実的にはその可能性がほとんどない、こういう参入制度を開くのではなくて、私は、もっと違ったやり方をするべきではないか。違った形でのサービス向上なり経営の効率性を求めるような、そういう運輸行政を考えていくべきではないかというふうに私は実際思っておるのですね。線路が敷かれているところでまた新たに線路を敷いて新規参入するみたいなことは現実的にはもうあり得ないというのは、御認識が一緒になっていると思うので、私はそういう意見だということをまず表明をしておきます。  鉄道事業というのは、公共性というのは物すごくあると思うのですね。それは私は、今の意見につながるのですけれども、公共性、国民日常生活に欠かせない、通勤通学の日常の交通手段になっているということが一つであります。また、特殊性としても、事業の開始に当たっても莫大な設備投資というか投資の費用がかかる。その投資コストを回収するには、多分二十年から三十年は平均してかかっている。ですから、事業参入するからにはある程度長期またかつ安定的な経営状況環境状況をつくることがまず大前提なのではないかというふうに思うのです。  そこについて、新規参入者に門戸を開いて市場原理に任せるというよりも、私は、ちょっとここの部分については全く逆のことを言うようですが、認可を与えた運輸省として、事業開始のときにもっとシビアな事業計画に対するチェックを行うとか、今後の、今後のというか事業の推移に対してもっと関与をしていく。これは規制緩和と逆かもしれませんが、そういったことをしていかなければ、今は一部のローカル線が経営的にもうどうにもこうにもいかなくなっている状況かもしれませんが、今後、これからの社会の趨勢として、全国で鉄道事業というのは経営が非常に難しくなる。ですから、新規参入ということが、鉄道事業を支えていくというか再生させていくための手段、支援策、施策としては、ちょっと僕は的外れのような気がするのですが、どう思われますか。
  89. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  我々は、需給調整規制の廃止ということを打ち出しております参入規制緩和につきましては、現在置かれております鉄道事業者鉄道経営をどうするかという見地よりは、社会的に必要な路線整備なり延長なり増強というような鉄道整備が、先ほど申しましたような事情の中でなかなかはかどっていないという状況下において、いかばかりでもそういう参入というものを呼び起こしたいという気持ちでやっておるわけでございますけれども、それだけでは実は余り期待ができない。  そこで、我々は、この鉄道整備を行うべく、新規参入あるいは既存の事業者鉄道整備でも結構でございますけれども、鉄道整備については、民間経営だけではなかなか投資採算性等の関係から投資対象として成り立ち得ないということであれば、公的なセクターからの鉄道整備支援ということについてやはり基本的に考え、強化する必要があるであろうということを先ほど申し上げました。  そういう見地から、この規制緩和とあわせまして、我々、運輸政策審議会鉄道部会の中において、鉄道整備方針それから円滑化方策、具体的には支援あり方等についてせっかく御議論いただいているところでございまして、規制緩和策とその整備あり方、強化、これを両輪といたしまして鉄道整備を図っていきたいということでお願いしているわけでございます。
  90. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 私も、やはり鉄道整備に関するある程度の公的支援というのが必要であるというふうに思っております。  ちょっとまた話は変わりますが、事業参入の形で、線路は他の鉄道事業者の保有する線路を利用して新規参入する、こういった形も出てくると思うんですが、そういった形の新規参入を促進していくような仕組みというのは考えられているんですか。
  91. 小幡政人

    小幡政府委員 お答えを申し上げます。  現行法におきましては、鉄道事業者が他の鉄道事業者の保有いたします線路を利用して新規参入しようとする場合には、線路を保有する第一種または第三種の鉄道事業者と、車両の運行を行う第二種鉄道事業者との間で、線路使用についての契約が行われることになります。  御指摘のような他の事業者に保有線路の開放を促す仕組みの整備につきましては、競争促進という点については確かに効果があると思われますけれども、一方、線路を保有いたします事業者の線路容量の問題といった物理的制約、あるいは運行管理への影響等も踏まえながら、慎重な検討が必要と我々は感じております。  なお、線路容量に係る物理的制約がある大都市圏、特に東京圏の鉄道整備あり方につきましては、先ほど申し上げましたように、絶対的な容量が足りませんので、現在、我々としては、利用者ニーズに対応した新線建設あり方も含めまして審議会の場で御審議をいただいているところでございまして、競争原理が働くような新たな参入が行われるよう、今後、この審議の結果も踏まえつつ、適切に対処していきたいというふうに考えております。
  92. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 いろいろ物理的問題はあるにせよ、新規参入を促すとしたらこういった形がまず現実的なのではないかと思いますので、よろしく御検討をお願いしたいと思います。  次に、事業体質の方について質問をしたいと思いますが、これは、午前中細川議員が質問をされておりました。  利害関係人ということで代替の輸送事業者ということが指摘されておりましたが、ここには地元自治体、地元利用者とか、もしくは、さっき出ておりましたが、廃止とされる鉄道事業者の代表者というか内部の人というようなことというのは、利害関係人の意見を聴取する対象には入っていないんでしょうか。
  93. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  廃止の話が出た場合には、運輸大臣地方公共団体あるいは利害関係人に意見を聴取するということになっておりますが、この目的は、法案の中に書いてございますように「公衆の利便確保に関し、」ということでお聞きするわけでございます。その意味からいいますと、まず、廃止されようとしておる関係企業の労働組合の方でございますが、これは、ここで言う法文上の利害関係人には、先ほど申しましたように、公衆の利便確保に関する直接的なかかわり合いでございませんので、対象ということには第一義的にはなっていないと思います。  ただ、現実問題として、我々運輸行政を進める上で、そういう事態におけるときの当該事業者、あるいはその関係の労働組合等々の方と意思疎通するのは通例でございまして、この法文上の話とは別な話として、当然、御意見を伺う機会、あるいは場というようなものがあり得ると理解しております。  それから、もう一つ、利害関係人として地元の利用者というお話でございます。我々、関係地方公共団体というのもそういう立場で書かせていただいております。御希望の方全員というわけにいきませんけれども、どんな形にするのか、例えば地方公共団体の最小単位の市町村、もっと小さな、例えば地区会というようなものがあろうかと思いますが、そういう利用者の代表たる方々も当然我々としては念頭に置いてございます。     〔委員長退席、久野委員長代理着席〕
  94. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 局長、午前中答弁されておりましたけれども、地元協議会をつくっていくという段取りになっておるということですが、この地元協議会の構成メンバーというのは、今お話があった地方公共団体及び利害関係人ということですか。それとはまた別の話ですか。地元協議会の構成メンバーと、運輸大臣が意見を聴取する相手というのは、また別の話ですか。
  95. 小幡政人

    小幡政府委員 これは、法律運輸大臣が意見を聴取させていただくところと、それから協議会というのは、これから具体的に、実際に議論する話が、例えば、協議会の場では、第一義的には鉄道輸送サービス継続していくかどうかという大議論があろうと思います。そういう意味での関係、例えば、その場合に当該事業者だけでは経営の存続が難しいということですと、地元からの御支援がいただけるかどうかとか、経済界からでもいただけるかどうかとかという議論になってまいりますと、そういう関係の方々も協議会に参画していただく必要があると思います。  それからまた、バス転換をしていこうということであるなら、そのバス転換の運営主となるべき、想定される方にも入っていただかなければなりませんしというようなことで、それぞれテーマに応じまして協議会の構成というのは決まってくると思います。  その意味で、先ほどの法律上書いてございます意見聴取を行う対象の利害関係人とは、ちょっと範囲が違ってくるというふうに理解しております。
  96. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 地元協議会の構成メンバーは、鉄道輸送サービス継続するのかどうか、かつ、バス転換していくのかどうかという立場での構成メンバーだということですが、利用者の代表イコール地元自治体というのは、ちょっとあれだと思うんですけれども、地元協議会というのは利用者の方たちの声というのを聞く場になるんでしょうか。
  97. 小幡政人

    小幡政府委員 今申し上げましたようなことの中で、具体的には、我々、協議会の場における第一義での相談相手といいますか、当然、運輸省の出先機関、地方運輸局が主宰者になりまして招集するわけでございますが、その際に、地方公共団体からの御要請を受けてということになりますので、当該地方公共団体がメーンになります。その地方公共団体と御相談しながら最終的なメンバーを選んでいくことになります。  その際に、例えば今念頭に置いてございますのは、バス転換するとすれば、運輸省地方公共団体、それから代替交通機関等を想定している事業者の方であるとかというようなところが中心になってくると思いますけれども、そのほかどのような方々に入っていただくかというのは、地方公共団体の御意見も踏まえながら、御相談の上決めてまいりたいということで、まだ具体的にどこまでということを念頭に決めているわけではございません。
  98. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 こういった会議体のときに、往々にして住民代表というのは参加されにくい傾向があると思います。使っている方たちが一番困るわけでありますので、その人たちの声を聞くべきだということを、地方公共団体との話し合いの中でぜひそういった方向で御指導していっていただきたいというふうに要望いたすところでございます。  それで、バス転換するときに、往々にして、代替のバスがあればいいだろうという話では僕はおさまらないと思うのですね。利用者にとっては運賃がどうかという話があると思うのですが、JR西日本の可部線の廃止問題で考えられている、可部から三段峡ですか、ここのところの代替のバスは、通学定期で三倍だ、通勤定期で二倍のバス運賃になるというような統計も出ているようでございますが、ここの場合の差額補償、バス転換をしたときの差額補償はどうなっているのか、また今後どう考えていくのか、お答えいただきたいというふうに思います。
  99. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  今、JR西日本の可部線の現地での御相談の中身が御紹介されましたけれども、まだ実は我々の方には廃止申請が出ておらない状況でございます。仄聞するところによりますと、JR西日本としてはバス転換をしたい、その際に、JR西日本が代替バスは運行いたします、運賃につきましては、当該地域のバス運賃程度、こういうことで御相談いただいているというふうに聞いております。確かに、我々も当該地域のバスの運賃を調べてみますと、通学につきまして三倍というような部分もございます。また通勤についても二倍というような部分があることは承知しております。  そういう状況の中で、せっかく現在、当該利用者の方、地域の方とJR西日本が相談されているというところでございますので、その辺の結果を見ながら、また、申請をいただいた後、我々として判断させていただきたいと思っております。
  100. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 バス転換するときに差額補償をしてきた例というのはあるのですか。
  101. 小幡政人

    小幡政府委員 そういう意味で、バス転換するときに、運賃について、バス転換した場合にバス運賃の方が高くなるという、この差額について補償したという例は、私は聞いておりません。
  102. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 これはやはりそこの部分が、これだけの経済不況の中で、転換したバスを用意する、それでいいことにはならないと思いますね、利用者立場からは。毎日のバス運賃を払うのは利用者でありまして、それが、日常の毎日の通勤通学の手段、特に通学が問題だと思いますが、三倍の料金になるということは、この可部線の具体的な例でいけば、ある高校の七割の学生が今後廃止されると見込まれている路線を使っているというような現状から見まして、ここは、幾ら規制緩和だからといって、規制緩和をすればいいというような話には私はならないと思います。  それともう一つ、この可部線の点で、可部線というのはもともと横川から三段峡までですね、横川—可部—三段峡と。全部でならすと、旧国鉄時代の採算ラインというのですかね、廃止をするかどうかという基準は超えているぐらいの乗客員数がある、一日に四千六百人というふうに聞いております。これが今回は、横川から可部までは一万八千人だ、可部から三段峡というのは五百人だと、一日。だから可部から三段峡の部分だけを廃止する、こういうようなことを考えられていると思いますが、これは、海上運送法の中で今回運輸省が考えられている、離島航路の中で、新規参入に当たっては、おいしいところだけをつまみ食いさせないよ、クリームスキミングというのですか、をさせないんだよというのと全く逆の話じゃないですか。可部線という全線では一応の経営基準をクリアしている、しかし、一部の可部—三段峡という部分だけが特に採算が悪いのでここだけは廃止をする。それを認めるとすると、認めるというか、それを廃止する自由をこの法案で与えるということは、まさにクリームスキミングを逆に認めているということになりませんか。
  103. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  実は、可部線というのは確かに長距離の、ある程度の距離を持った路線でございますけれども、今回、廃止の議論がされておりますのは、その先端の、横川—三段峡の一部分であるということのようでございます。その路線の、いわゆる路線の一部廃止というのはできるかどうかという問題でございますけれども、我々といたしましては、実は実例もございますが、路線のうち一部区間がそれぞれの特別な事情によって継続が困難という場合、そういう意味で一部の路線廃止というのが決して法律上妨げがあるというようなものではないというふうに理解しております。
  104. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 それは、全線がもう大変な、経済的に厳しい、そしてとりあえずここの部分だけは廃止にさせてくれという話ならまだ理解もできますが、全線ならすと旧国鉄時代の基準をクリアできているという段階にあって、その一部分だけ外すというのは、今回、海上運送法改正の中で御配慮されたクリームスキミングという発想とは逆行するのではないですかということです。矛盾はしない、矛盾というか、違う話ですけれども、それはどうなんでしょうか。
  105. 川崎二郎

    川崎国務大臣 確かに、鉄道法と今の離島航路の問題、一つの見方をすればそういう見方であろう。しかし一方で、生活路線というものをどう維持するか、離島航路の発想でございますので、そういう意味では、地元自治体と話し合いながら、可部線におきましても、当然生活路線というものは何らかの代替をつくるという意味では、ある程度御理解いただけるのではなかろうかと思っております。
  106. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 確かに大臣が言われたように、離島とこの地域、陸上とは違うと思いますけれども、先ほどお話がありましたように、陸上で代替バスが用意できる、しかし、そのバスは通学定期で三倍という話だと、これは実質的に用意したことにならない御家庭の状況も出てくるのではないかというふうに思いますので、実態として、廃止をすることができるような制度にしていくのであれば、その代替措置のときに差額補償なりなんなりをするべきだ、私はそう思いますので、ぜひ御考慮に入れていただきたいということが一つです。  それと、最後、繰り返しになりますけれども、この可部線も、昭和六十二年には一日に八百人、それがこの平成九年で五百人になったということでありまして、四割ダウンしたと。これはもうちょっと、私、最初に話をしましたけれども、そもそも、この鉄道事業を認めるときにもっとシビアな見方をして、かつ、認めたからには認可した側の責任というものを感じながら支援をしていくといった態度が必要なのではないかなと思います。そういった点で今回の、運輸行政全般においての規制緩和というのはすばらしいと思いますが、新規参入がしにくいこの鉄道事業法の中で、今回のような規制緩和が果たして鉄道事業を支えていく意味で本当に的を得た施策になるのかなということを私はちょっと若干の疑念を感じておりますので、大臣、もし何かあれば御答弁いただいて、終わりにしたいと思います。
  107. 川崎二郎

    川崎国務大臣 過去の例でよく私も地域で話を聞くのですけれども、確かに、参入がすぐ生まれるかということが大きな課題になることは事実だと思います。しかし一方で、参入が生まれることによって逆にサービスが既存の鉄道の方がよくなったという例は何回も聞かせていただいております。そういう意味では、やはり思想として競争というものを導入させていくという努力を私どもはしていかなければならぬ、こう思っております。  それで、一方で、今極めて経済状況が悪いときでございますから、新規参入があるかどうかということで大変御懸念をいただいておるわけでありますけれども、形としてつくり上げていくこともやはり大事ではなかろうかなと思っております。  実は、船舶法の改正、参議院先議で始まっておりますけれども、百年間改正をしておりませんでした。外国人の取締役を認める、何で前に改正していなかったのだ、いや、需要がなかったから改正しておりませんでした、こういう回答になっておりますけれども、新規参入があるからこの法律を今改正しますというよりも、やはり新規参入ができやすい体制をつくり上げていくという中で、先ほど御指摘いただいたように、公的な援助というものを含めて、新規参入ができる体制というものをつくらなければならぬな、このようにも思っております。
  108. 赤羽一嘉

    ○赤羽委員 その際に、先ほど言いましたけれども、利用者に対しての負担が残らないように、最大の努力をしていただきたいと思います。  以上です。
  109. 久野統一郎

    ○久野委員長代理 次に、倉田栄喜君。
  110. 倉田栄喜

    ○倉田委員 私は、まず需給調整規定の廃止ということにつきまして大臣の御認識をお伺いしたい、こう思います。  今まで大臣からのお話がありました。いわゆる競争原理、市場原理を取り入れることによって、我が国の物流コストが高い、この問題を何とかして解決するためにも民間の力を導入しなければならない、また一方で、事業者にとっても国際競争力という問題もこれあり、こういうふうなお話でありました。  そこで、これは、運輸行政、非常に大きな転換で、英断だ、そういう評価もあるみたいでございますけれども、我が国の市場原理というもの、これ全般につながる話でありますけれども、いわゆる競争原理というのをどこまで持ってきていいのか、競争原理というのみで果たして大丈夫なのかどうか、一方で影の部分を考慮しなければならない、こういう話もありました。  その影の部分という言い方のみならず、組織あるいは事業体に与えられた目的を機能的に達成するために、いわゆる競争原理というものだけでいいのかどうかという問題意識を私は持っています。一つの組織あるいは事業体というものが、ある目的のために与えられている、その目的をより機能的に達成していかなければならないのだけれども、いろいろな規制の中で、その目的を機能的に達成するということではなくて、いかにその組織の中あるいは事業体の中が居心地いいように、いわゆる共同化みたいな言い方でされますけれども、組織体そのものの中の利益のみに執着をしてしまうみたいな弊害があって、それを打ち破るためには、自由競争原理というのが取り入れられていくということは非常にいいことだ、私はこう思っております。しかし、それはあくまでもその事業体あるいはその組織に与えられた目的を機能的に達成するためにということでなければならない。  我が国のいわゆる物流コストが高い、だから民間活力を導入して、あるいは参加も容易にして、そこでサービス向上していくだろう、こういう考え方が一方であると思うのです。しかし、大臣も御承知だと思いますけれども、いわゆる市場の失敗、そういうことも言われているわけですね。競争原理に伴う影という部分だけではなくて、競争原理そのものに含まれている、その光の部分に含まれている問題点というのはいっぱいあろうかと私は思います。  目的を機能的に達成する、それは、輸送という問題でいえば、安全かつ安定的に人及び貨物輸送して国民生活向上に資していく、こういう大きな大義があるのだろうと思います。だけれども、自由競争原理だけでやっていったときに、一方で、物流コストが高い、それは民間をしてお互いに競争し合うことによってよくなっていくだろう、悪いところは退いていただかなければならないだろう、弱肉強食という言葉ではなくて優勝劣敗ということで言われるのだろうと思いますけれども、その行き着く先が、今運輸省期待されているような姿になるのかどうか。  もうずっと、先ほど同僚議員のお話の中にも出てきておりましたけれども、そのことによって、果たしてその選択の手段というのがふえるのか、逆に減るのではないのか。輸送体系ということからすれば、いわゆる物流輸送手段の存在というのが前提に、合理的な範囲だとは思いますけれども、輸送手段の存在というのがなければならないのだろう、こう思うのですね。しかし、競争社会の中で淘汰されていっていく中で、輸送手段そのものがなくなってしまうのではないのですかという危惧も実はしているわけです。それが総論的な話であります。  そこで、もう本当に基本的な認識でありますけれども、いわゆる共同化現象を防ぐというために、競争原理が導入されることは非常にいいことで、評価をされなければいけないと思うけれども、しかし、競争原理だけで大丈夫なのですか。市場の失敗ということもありますね。一方で、我が国はずっと、これが護送船団方式と言われるところにつながるのかもしれないけれども、競争原理とともに、お互いに目的を達成し合っていくために協力をし合いながら機能的に目的を達成していきましょう、足らざるところは補いながら一つ目的を達成するためにやっていかなければいけませんねという、競争原理と同時に協力原理というのも市場原理の中に存在する、私はこう思っています。しかし、今運輸行政の大転換と言われる中で、非常に大きく、全面的に打ち出されてきているのは競争原理。市場原理という名目の中で、競争原理ということだけが強く強く打ち出されているような気がしているわけであります。  影の部分も考慮しなければならない、こういうふうにお答えでありますけれども、その影の部分を考慮するときに、どういう基本的な姿勢、スタンスに基づいてされようとしているのか、市場の失敗とか、いわゆる弱肉強食、優勝劣敗、こういうことで物流コストの高価格体質を下げなければいけない、そしてそのもう一つの前に、我が国の輸送体系、その物流輸送手段がきちんと、全国、均衡あるような形で存在をしなければいけませんね、こういうことも当然、それはもっと上位の概念として、目的手段としてあるはずだ、こう思うのですね。  そういうところを、大臣として、今回の、運輸行政の大転換と言われる、いわゆる需給調整規定の廃止、市場原理導入ということを決断されるについて、大臣御自身はどういう問題意識、そしてそれで果たして、期待されていると思いますけれども、期待どおりに動いていくのかどうか、弱肉強食、優勝劣敗でいいのかどうか、基本的な御認識をまずお伺いしておきたいと思います。
  111. 川崎二郎

    川崎国務大臣 市場原理、一方で市場の失敗、そのためにはセーフティーネットをどういう形で張るか、これは当然の議論であろうと思います。例えば、独占というものになってしまう、そのときに、国民に結果として安い料金が提供されるということになれば、これもまた、ある意味では市場の結果に基づくものかもしれません。しかし、それが失敗というのは、逆に高いものが供給されることになってしまう、独占であるがゆえに、今日の値段の何倍かになってしまった、こうなれば、当然失敗という御判断をいただくのだろう。そこはやはり料金というものに対して、運輸省の権限というものは、一定のものは持たなければならぬ、このように思っております。  それからもう一つは、敗れていくことによってその地域がなくなってしまう、この問題であります。  それは、先ほどから議論いたしておりますけれども、やはり、一年前という期間を置きながらしっかりとした議論をそこはしていかなければならないだろう。そのときに、国の役割としてどこまでやるか、地方自治体としてどこまでやるか、ここの組み合わせをやはりきちっとつくっていかなければならない段階を迎えておるんだろう。  運輸省が今一生懸命議論しておりますのは、自治省と議論をいたしております、地方というものをしっかり守っていくために、鉄道中心としながらこの問題にどう対応していくかというのを考えていくことになるんだろう。  今日までの政策はどちらかというと、市場の失敗を前提としながら、全部つぶれていってしまうから、高い公共性を持つんだからなるべく国が関与していた方が心配ないよねという形でやってきたと思います。しかしそれは、昭和六十二年の国鉄改革で示されたように、現実問題は失敗という結果になって変わっていったということは御承知のとおりであります。ある意味では、今回の鉄道一つの決断というものは、やはり国鉄改革というものから流れてきておるものだろうと私は思っております。  そこで、どういう形に変わっていくか、私はまだ見えません。航空のように明らかに、小さな会社が二つ入っただけでも激変をする場合もあります。それから、例えばJRという極めて大きな民営会社が今度はでき上がりました。このことによって、地域の私鉄というものがこのJRと競争していくときに、果たして分かれたままで戦い得るか、JRがもっと力をどんどん持ち始めたときに果たしてどうしていったならばいいだろうか、こういう議論も出てくるだろう。そこへ今度の規制緩和というものもあわせながらやはり次の市場というものがつくられていくのかな、こういうふうに思っています。  その市場というものを我々が初めから見通してそれをやっていくというのは、やはり計画経済であろうと思っております。そこは、自由主義の競争の中でやはり市場がつくり上げるもの、こういう一つ我々の信念の中でやらせていただいている、このように考えております。     〔久野委員長代理退席、委員長着席〕
  112. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今大臣のお答えの中にもあったわけでありますけれども、我が国二十一世紀の社会の姿を描くときに、いわゆる市場原理に基づく自由競争があって、そしてそこで優勝劣敗、破れた、あるいはそこに、そこではどうしても戦えない部分のためにいわゆるセーフティーネットを張る、基本的にそういう考え方で来ていると思うのですけれども、私自身は実はそうではなくて、セーフティーネットというのは一番最後の手段だ、一番最後の手段として存在をしていかなければならない。市場原理の中に、競争原理のみならず協力原理、つまりお互いの特性に基づいてそれぞれが助け合いながら、部分的に協力し合いながら、それが今までやってきたことと同じ意味で言っているわけではありませんけれども、今までやってきたことをやはり、私は共同化現象というのは随分弊害だな、こう思うんだけれども、そこは直さなければいけない。しかし、今、今までやってきたことを非常に重大に受けとめたということであろうと思いますけれども、競争原理のみが一方的に導入されてそこから引いていくとしたら、一つはセーフティーネットの部分、いわゆる影の部分を何とか配慮しますよ、そういうことだけではいけないのではないのか。  これは運輸行政だけの問題ではありませんよ。我が国全般のいわゆる市場というものをどう考えるかということにつながる話だと思いますけれども、私は、競争というところのほかにもう一つ協力ということも考えていかなければならない、こう思っておりますので、ぜひそういう意見があるということも大臣は御認識をいただいて、その影の部分と言われる部分をどう配慮するかということに実は、それはセーフティーネットという部分配慮するだけの問題でなくて、もっと機能的に整理的にお互いにうまくいかないか、そこにうまい知恵はないのかどうか、そこを考えていただきたい、こういうことなんです。  どうしてそういうふうに申し上げるかというと、先ほど大臣も言われましたけれども、実は、競争をやってください、最後に一社だけ残りました、あとはなくなりましたみたいなこともありますし、いわゆる市場の失敗ということがある中で、いわゆる弱肉強食、それからサービスの質、安全性、そういうのを市場の原理に任せたときに、最終的には利用者が判断をして利用者が決めたことだ、それでいいのかどうかということですね。最終的にもう全部それは利用者に任せますよと。  私もそういかなければならない、こう思っているわけでありますけれども、しかし、過渡期の経過の中、利用者は今の状況の中で、まだきちっとした情報公開がされていなくて、将来の見通しが、実は国会あるいはそれぞれお役所が持っておられるほどの情報を持っているわけではありません。なくなった後に困ったなみたいな話が起こってくることも十分あり得るんだろうと思いますけれども、大臣は、いわゆる競争原理が導入される中でいろいろな交通手段が、もしかしたらさっき鉄道路線がなくなっているかもしれない、後でこれは第三セクターの問題と関連してお伺いさせていただきますけれども、一方で、バス路線に転換しようとしてもなかなかできない。自由競争の中で、サービス競争というよりも実は価格破壊競争みたいな形の中でどんどん質が低下をする、そういう危惧感だってあり得ると思いますけれども、今この時点で、最終的な判断はもう利用者それぞれにお任せして、それは利用者の御判断です、こういうことでいいのかどうか。この点については大臣はどうお考えですか。
  113. 川崎二郎

    川崎国務大臣 逆に、赤羽委員から先ほど御質問いただいたように、また鉄道局長から答えましたように、今回の規制緩和で、例えば航空がそうであったように鉄道関係が激変するであろうかということになると、今経済も悪い、なかなか投資環境が整っていないときの提案でございますので、すぐ激変するということを私、想定は実は今はしておりません。しかしながら、こういう仕組みができることによってだんだん変わっていくんだろうというふうな理解をいたしております。  そういう意味では、セーフティーネットの張り方について、先ほど申し上げたように、可部線の議論がございましたけれども、地方自治体等、代替交通問題について地域の声を聞きながらきちっとやるというセーフティーネットを張ることによって、今日は一つ課題は抜けていくのではなかろうか、こういうふうに考えております。  ただ、いろいろその面で足らざる点は、委員の先生方からいろいろ御指摘いただいていることは承知いたしております。
  114. 倉田栄喜

    ○倉田委員 私は、それぞれの輸送事業体、それぞれに特性を持ちながらその特性に応じて、自分に足らないところはほかのところにやってもらう、あるいは小回りのきくところは小回りのきくところでやってもらう、そういう協力関係、つまり本当に国民全体の利便に資するという意味での協力関係というのもうまくつながっていかなければならない、こう思っているわけです。今打ち出されていることはいわゆる競争原理ということで、ともかく活を入れようということだ、こう思うんですけれども、そういうものも必要だと私も思っております。  そこで、協力原理のことは申し上げました。では、いわゆる市場原理としての競争というのを導入するときに、競争条件というのはどういうふうに整備をされているのと、公正でかつ自主的ないわゆる環境整備というんですか、それはどういう形で今回の改正の中で運輸省はお考えになっているんだろうか。基本的にはそれはきちっとしたルール、こういうことに基づいてやってくださいよ、こういうふうに思うんですけれども、どうもその辺がまだ明確になっていないみたいな気が私にはします。  今回の需給調整規定の廃止をにらみながら、やはり今までの運輸行政では随分やらなかったことを、認めていなかったことを、いろいろ資料等を見てみると、それはこれからこういう状況になるんだからいいんじゃないのということで、ある意味では、法律に違反しているということではないけれども、非常に弾力的に運用されてこの事態になっている事例があります、具体的な形で。だけれども、これから自由競争ということで競争原理を導入なさるのであれば、やはり競争あり方についても、それは公正でなければならない。  そうすると、細かく言えばいろいろあるんだろうと思いますけれども、例えば、どういう形でどれだけの設備が必要なのか、どれくらいの検査が必要なのか、どういう人員が必要なのか、そういうところを、果たしてイコールフッティングみたいな形できちっとした競争条件の環境整備というのができるのだろうかというふうに思っているわけですけれども、この点は、運輸省としては、いわゆる競争環境整備というのですか、どういうことをお考えになっているんでしょうか。
  115. 羽生次郎

    ○羽生政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、競争確保するためには、公正な競争を図るルールというものが重要であるということはよく認識しております。  まず第一には、交通分野において自由な競争確保されるためには、交通インフラというものが整備なされて、これが過不足なく使われていくようでなければなりませんので、インフラの整備という面においても、我々としても所要の措置を講じていきたいと思っております。  さらに、この中で競争が行われたときも、先ほど大臣からも申し上げましたように、競争破壊的な行為が行われる、これについてはやはり一定の権限を持って運輸省として対処しなければならないと考えております。したがいまして、他者を市場から排除するような略奪的な価格設定を行う場合、こういったものについては変更命令等を行えるようにしてございます。  さらに、先生も先ほど御指摘のように、一番重要なのは、仮に利用者が自己責任で判断するとしても、十分な情報開示がなければできないわけでございますから、事業者に対し十分な情報開示を行うようにこれについて強力に指導してまいりたいと考えております。また、何か一朝あった場合の対処として、損害賠償、保険等についても十分な整備が行われるよう、この辺を確保してまいりたいと考えております。
  116. 倉田栄喜

    ○倉田委員 競争環境整備ということは、細かく言えば実はもっと具体的にいろいろ出てくるんだと思うんですね。では、どの部分でしたら果たしてそれぞれの事業体に応じた適正、公正な競争条件と言えるのかというのは、実は検査のあり方一つをとっても、あるいは人員は何人必要なのかという問題等々いろいろあるんだと思いますけれども、そういうことを一つとっても難しい、こう思います。ぜひそれは、せっかく市場原理競争ということを入れるんですから、公正なルールにのっとった競争でありますように、お願いをしておきたいと思います。  そこで、これもちょっと総論的な部分でありますけれども、私は、いわゆるセーフティーネットというのを、これは最後ですからきちんとやってもらわなければならない。本当は、セーフティーネットを張らなくてもいいように、競争と協力の中で各事業体がうまくやっていただく方が一番ベストなんだけれども、なかなかそこまでいかなくて、セーフティーネットのところでやらなければいけない部分があって、これは当然、先ほど大臣がお答えになりましたけれども、国、地方自治体等々いろいろあると思うんですね。このいわゆるセーフティーネットの張り方、あるいは国、地方自治体、行政のいわゆる補助、支援あり方についての基本的な考え方の変更が今回の改正に伴ってあり得るのかどうか、あるいは新しい措置というのがあり得るのかどうか、この点については大臣いかがでしょうか。
  117. 宮崎達彦

    宮崎(達)政府委員 まず、海上運送法関係で申しますと、海上運送関係におきましては、離島航路につきまして、離島航路維持をするために離島航路整備補助というのを、欠損の一部でございますけれども、現在、離島航路整備法というものに基づきまして実施いたしております。今回、海上運送法改正そのものに伴いまして、直接的にこの補助事業の運用、運用と申しますかシステムを変えるつもりはございません。  この離島航路整備補助が、先生のおっしゃるセーフティーネットそのものに該当するのかどうかというところはよく存じませんが、そういう形で離島航路整備維持に努めてまいりたいというふうに考えております。
  118. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今お答えいただいたのは、生活路線維持というところで、離島航路路線指定区間お話をいただいたんだと思うんですけれども、要は、そういうことだけなんですか。行政、国があり地方自治体があって、我が国の輸送体系がありますね。それは、鉄道事業をどう位置づけるか、これからの環境問題を含めて大問題ですよ。  そういうことも含めて、これはやはり、市場原理世界の中で優勝劣敗で、ああ、負けたところはしようがありませんね、それも利用者の選択でしたねという形で、じゃ、そこの路線、そこの輸送手段というのは、代替手段があれば生活路線としてぎりぎりのところは考えるけれども、それだって無理だったら難しいよ、あるいはもっと上の段階に至って、もう維持できないところはしようがありませんねという話になるんですかということです。
  119. 羽生次郎

    ○羽生政府委員 お答えいたします。  今先生の御指摘は、交通ネットワークの確保整備、それから利用者利便確保の視点から、補助についてはどうあるべきか、こういう御質問かと思います。  交通運輸事業というものは、利用者の支払う運賃収入により事業運営を行うという考え方が基本でございますが、鉄道のような巨額な投資を必要としてそのリターンの懐妊期間の長いもの、特にまた収益性が低いもの、こういったものについては、所要の補助というものを国、地方公共団体がやる必要もございますし、また、中小企業等で安全投資余力が十分でない場合、こういったものについても所定の補助を行う必要がございます。さらに、先ほど海上交通局の方からお答えがございましたが、過疎地域における生活交通の維持といったものについても、やはり地方公共団体とともに補助をしてまいる必要があると考えております。  もちろん、この補助をすることが効率的な経営を損なってはならないわけでございますが、効率的な経営をしても成り立たず、かつ足の確保をする、あるいは、効率的な経営を前提としてもなかなか投資回収ができない、しかも公共的な必要があるといった場合には、やはり国の補助というものは必要であると考えております。
  120. 倉田栄喜

    ○倉田委員 今お答えいただいた部分は、今回の法改正に伴って変更したわけではないわけです。従来からの方針ですね。その従来からの方針を今回の法改正にかかわらず続けていく、こういうことでいいわけですか。
  121. 羽生次郎

    ○羽生政府委員 先生おっしゃるとおり、基本的に従来から行っているところではございますが、法改正に伴い、さらに必要というものが出てくれば、またこれをさらに強化するということも考えなければならないと考えております。  ただ、私どもの考えでございますと、先ほどから申し上げているとおり、市場機構を利用して、先生のお言葉でいいますと、活を入れるということによりかなり改善が逆にできるのではないかと考えておりますが、それによりまして、負の部分というもの、これにつきましては、所管局長から申し上げているとおり、所要の手当てをしております。  また、その他の問題につきまして、鉄道の改修等につきましても、我々としては、従来どおり、あるいは、もし必要であれば従来にも増して今後考えていかなければならない問題であると思っております。
  122. 倉田栄喜

    ○倉田委員 その支援あり方、あるいはその補助の内容等々について、今回出ているわけではありませんけれども、国の補助のあり方、そして地方自治体の補助のあり方、今まで一つのルールがあったんだろうと思うんです、一定の割合があったんだと思います。それから一方で、民活導入ということで事業主体というのがある。  それぞれの割合あるいはその支援の仕方について、今検討されているというふうな話を聞いたんですけれども、それは、直截に言えば、じゃ、もっと地方自治体に頑張ってくださいよという話なのか、もっと事業主体に頑張ってくださいよという話になっているのか、いや、国はもっとしっかりやらなければなりませんねという話でやられているのか、それはどういうことなんでしょうか。
  123. 羽生次郎

    ○羽生政府委員 先ほど大臣からも御答弁申し上げたと思うんでございますが、自治省等ともそれは検討しているところでございまして、多分国のやるところもあるかもしれませんし、また地方公共団体にお願いするところもあるし、事業者も頑張らなければならない。それぞれの分野であると思いますが、今これについては鋭意検討しているところでございます。
  124. 倉田栄喜

    ○倉田委員 鋭意検討をされているということを聞いて、どういうふうな中身になっていくんだろう、こう心配しますよ。だから、それもできるだけ多くの意見を聞きながら、例えばこの委員会の場であったとしても、早い段階でこういう検討、こういう課題について、財政負担という問題もあるわけですから、地方自治体だって財政は大変ですよ、そういうこともある中で、どういう方向を考えていながらどういう異論が出ているのかということも早目にぜひ公開をしていただきたい、こんなふうに思っております。  そこで、もう時間がなくなりましたけれども、実は今回の改正の中で、先ほど議論も出ましたけれども、いわゆる退出規制緩和というのか、従来は地元住民の同意が基本的に必要だったんだろうけれども、今回はいわゆる地元協議会みたいな話で、利害関係人の意見を聴取するだけでいいみたいな話になっています。簡単に言えば、退出をする事業主体、鉄道に関して言えば相当あるのではないのかなという気がしてならないわけでありますけれども、第三セクター、いわゆる鉄道事業ですね、第三セクター路線、これは運営の現状はどうなっていますか。もう時間がないですから、簡潔にお答えください。
  125. 小幡政人

    小幡政府委員 現在、国鉄からの転換鉄道等は三陸鉄道等三十八社ございますが、これらの九年度決算について見ますと、黒字会社は七社、赤字会社は三十一社でございます。
  126. 倉田栄喜

    ○倉田委員 非常に簡潔にお答えいただいたわけです。黒字会社が七社で、赤字会社が三十一社。恐らくこれからの採算の明るい見通しがあるところは多分ないんだろうと思うのですね。  これは、一九八〇年、いわゆる日本国有鉄道事業再建促進特別措置法ができたときに、それぞれの国鉄線を類型化した。地方交通線と、それからバス輸送への転換ができない、できないところはしかしまだ当分残しましょうというところで、特定地方交通路線ですか、そういうふうに、一九八〇年段階でも相当苦労をしてそれぞれの路線の選定をされたと思うのですね。その中で第三セクターという方式でやってきた。そして一方で、ここはバス路線への転換は難しいなというところも残してきた。この第三セクターが、今お答えいただいたように三十一社赤字である。これは事業好転の見通しも余り立たないんだろうと思うのですね。  そうすると、今回の規制の中で、この三十一社それぞれどうなるかわからない、もちろん真剣な事業努力をなされるんだろうと思うんだけれども、しかし、結果としては、いわゆるこの退出規制によって、もう第三セクターはアウトですね、この路線を運営していくことはできませんね、こういうことが早晩、いつになるかわからないけれども、徐々に徐々に出てくるんだ、こう思うのですね。これをどうお考えになるのか。では代替輸送手段、バス路線に転換、もともとバス路線に難しいところだってあったわけですよ。それで、鉄道輸送基盤みたいなのがありますね、それをどういうふうに利用するのか。そういうことについては運輸省は今どんな御認識をお持ちですか。
  127. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  先ほど例に出されました国鉄改革時のいわゆる転換鉄道等々の件については、先生御案内のとおり、鉄道事業としては収支上なかなか維持し得ない、バス転換が適当であるというような路線中心に、実は地方公共団体支援のもとに現在の鉄道事業として三セクという形で運営が継続されているという鉄道でございます。そういう意味から、実は鉄道事業として運営していく上において困難さは決して変わっていない、こういうふうに我々認識しております。  そういう意味において、この鉄道事業がどうなるかということについては、今回の法律改正とある意味では直接関係がない事案というふうに我々理解しておりまして、今申し上げましたような経営の実態については、法体系がどうであろうと、やはり問題として残るというふうに理解しております。  そのときに、将来これをどうしていくかということについては、やはり鉄道としての機能を維持するためにもっと支援をしてほしいという声もございます。一方また、我々国、地方におきましても、財政の上から見てどこまで支援できるかという問題もございます。そういう中において、この三セク等々の支援あり方につきまして、先ほど申し上げました運輸政策審議会鉄道部会におきまして、一つの検討課題として御審議いただくことになっておるところでございます。我々といたしましては、その審議結果を踏まえまして適正に対処させていただきたいと思っております。
  128. 倉田栄喜

    ○倉田委員 最後に、この問題ですが、大臣にぜひお答えいただきたいと思います。  現状は、その第三セクター三十八社の中で、七社が辛うじて黒字、三十一社は赤字。赤字といっても、程度の差はあるけれども、大変厳しいところがある、事業継続が難しいところだっていっぱいあるんだ、こう思うのですね。  今回の法改正の中で退出の枠組みがつくられた。そうだとすれば、これは推測的に見るならば、今鉄道局長は、今回の改正と第三セクターの問題は関係ない、それは運営の問題は関係ないですけれども、退出という問題については非常に関係があるんだと思うのですね。大臣はこの点どういうふうに御認識をされておられるのか。  そして、これが退出を、もう事業経営できませんよ、これ以上地方自治体も支援できませんよという状況の中になったときに、うまく生活路線、あるいはその鉄道基盤を利用しながらも新しい代替生活路線として交通輸送手段というのをどう位置づけておられるのか、大臣に最後にお答えいただいて、質問を終わりたいと思います。
  129. 川崎二郎

    川崎国務大臣 鉄道局長が必ずしも同じスキームでないと申し上げたのは、多分、民間鉄道事業者が退出をするというときに、一年前に通告がされ、そして運輸大臣のもとに地方自治体と一緒になりながら意見を聞いていく、そして、その代替については地方自治体と私どもができるだけの援助をしていきたい、こういう考え方がございました。  しかし、今度の場合は、地方自治体自体が三セクでございますので主役になってしまいます。自分たちが自分たちでまず一つ考え方を示していかなければならないだろう。事業者であり、かつ、地域のこうした過疎問題に対して一つの対応をしていく責任、両方持っておる自治体でございますので、そういう意味では、その自治体というものがどう物事を考えていくかということを私どもしっかり把握しながら、その上で、委員が御指摘いただいたように、例えば代替というものでやるのか、いや、そこを、鉄軌道をバス軌道にしっかりかえて使ったらどうか、こういう御議論もございました。一つ一つ路線によって異なると思いますけれども、しっかりした対応をしなければならないなと考えております。
  130. 倉田栄喜

    ○倉田委員 質問を残した分もありますけれども、時間が参りましたので、以上で終わります。
  131. 石破茂

    石破委員長 次に、江崎鐵磨君。
  132. 江崎鐵磨

    ○江崎委員 自由党の江崎鐵磨でございます。  私は、議員にさせていただいてから間もなく六年経過しようとしておりますが、自来今日まで運輸委員会に所属をいたしましたが、実は与党席で質問をさせていただくことはきょうが初めてであります。先ほども委員部の案内で、さあ、どちらの発言席でと思っておりましたときに、きょうはこちらの方でといったお話がございましたが、特にこの運輸委員会は、与野党ともに切磋琢磨しながら国土の全域の均衡ある発展に取り組んでいただくといった非常にチームワークの整えられた委員会だと、この六年間、私はしみじみ思うものであります。さきの国会で、あの難しい国鉄、林野長期債務の処理法案にあっては、私どもの党と共産党と一部意見が一致するような場面もありました。ことごとく私どもの委員会は、国民のまさに足となる、本当に利便を整える、そうした中枢にある運輸行政といったものは非常に重要であると位置づけて、これからも大いに政治活動を続けなければならない、そうした強い気持ちを持つ一人であります。  それでは早速、きょうは、鉄道事業法の一部、そして海上運送法の一部を改正する法律案に対しての質問をさせていただきます。  二十一世紀に向け、新しい流れの中、社会構造の基盤をなす運輸サービス分野のうち、旅客鉄道、国内海運、貸し切りバス国内航空の四つの分野で、このたび事前規制型から事後チェック型へ行政の取り組みを大転換し、事業参入などについて規制緩和を図り、競争原理に基づき利用者利便増進向上させるという事業運営の基本的な制度の見直しを図られるための法案提出されました。まさにこれは、我が党の主張するフリー、フェア、オープンを目指すものであり、時宜を得たものと私どもは高く評価するものであります。同時にまた、これらの運輸サービスは、国民にとって日々の日常生活で絶えず利用されているものであり、非常に身近な、関心の高いものでもあります。  既に同僚議員から類似した御質問がありました。このような二十一世紀に向けての問題意識を持って、幾つかの基本的な問題について、特に運輸大臣運輸省のお考えを伺ってまいりますので、よろしくお願いを申し上げます。  まず、鉄道事業法関係についてのお尋ねであります。  皆様御承知のとおり、鉄道はレールの上しか走ることができない、至極当然のことでありますが、これは鉄道の最大の利点でもあり、また弱点でもあるわけであります。他の公共輸送手段では、空港や港湾といった固定したターミナルはありますが、ターミナルがあることを前提として、航空事業者や海運事業者はかなり自由に路線を張りめぐらせることができるわけであります。バス事業などは、おおよそ道路のある限り、自由に路線を展開できるわけであります。  しかし、鉄道では、鉄道事業者がみずから敷設した限られたレールのネットワークの中でしか運行できないことは御案内のとおりであります。これはある意味では鉄道制約でありますが、逆に、鉄道事業者はそのレールのネットワークを独占して使用することができ、また、レールの上では大規模で速度の速い車両を運行することができるという構造上の特徴があるため、鉄道は、大量性、高速性、定時性にすぐれた輸送機関、輸送手段であります。このような鉄道の利点、長所が、省エネルギーであり、地球環境にも優しいという特性を伴っているわけでありますが、この特徴、特性を十分に生かすように、二十一世紀に向けての事業あり方を考えていかねばなりません。  一方、鉄道事業を始めるためには、このようなレールを初め、さまざまな施設整備が欠くことができないとき、その整備は、時間的には長時間に及び、また経費も多額のものとなります。これも一つ鉄道制約でありますが、鉄道施設整備は、輸送手段としての特性を十分に発揮できるように計画的に進めていく必要があることは当然のことであります。  そこで、まず、この鉄道の特性を十分に発揮できるようにするための二十一世紀に向けての鉄道整備の進め方について、川崎運輸大臣の基本的な方針をお伺いしたいと思います。
  133. 川崎二郎

    川崎国務大臣 私、先週、中国、北京を訪問してまいりました。これは、高速鉄道計画、上海—北京間、そこへ我が国の新幹線を採用してもらいたい、売り込みに行ってまいったところでございます。しかし、同時に、中国全体の鉄道計画の話もさせていただきました。私はこんな例え話をいたしたわけでありますけれども、我が国は、一億二千万人の国民で、今七千四百万台の車を有している、中国は今四千万台の車だけれども、日本と同じだけの車の率になると七億四千万台の車が中国は走ることになる、そうなると、環境問題、エネルギー問題、大変な時代を迎えることになるだろう、それだけに、中国も鉄道網の整備をしっかりやってください、我々もできるだけの御支援をします、こう申し上げた。しかし、その前提として、我が国ももう少し鉄道問題をやらなければならぬと思っております、実はこういう発言をして帰ってまいりました。  そういう意味では、自由党さんが強く御主張をいただいております、まず縦の軸として日本列島を貫く新幹線網をしっかりつくり上げたい、こう考えております。今、我が党と自由党の中でこの問題についてさまざまな議論をいただいておる、ちょうど議論が開始された、こういうふうに考えているところでございます。  同時に、都市鉄道というものをどう進めていくか。これは、昨年の暮れに小渕総理から御下命をいただいて、今、調査費をつけながら、東京、大阪、名古屋を中心にしながら都市鉄道整備というものを考えさせていただいているところでございます。今日の法案にも出させていただいておりますとおり、やはり各路線ごとのつなぎ、先ほども御質問をいただいておりましたけれども、私鉄が、また地下鉄を中に挟みながら、相互に乗り入れをよりしていくことによって利便性を高める、こんなことが大事だろう。今、埼玉や千葉、また神奈川の皆さん方からも東京への乗り入れ問題、そしてつなぎの問題、いろいろ御議論をいただいているところで、この二つをしっかりやらなければならぬだろう。  そうなると、もう一つ、当然地方の問題になってまいります。  そこで、在来線をどういうふうに整備していくか、高速化していくか。新幹線計画を引いているところはいい、大都会は地下鉄網を中心にしながらきちっとした鉄道整備を行う、では在来線はどうしますかねというのがこれからの一つの課題だろうと思っております。そういう意味では、一つはフリーゲージトレーン等、技術開発を行いながら、新幹線から一般の路線へ入っていける、それも線路の敷きかえをしなくてもそのまま入っていける、まあ秋田、山形新幹線の例もありますけれども、それ以上に科学技術で乗り越えることはできないだろうか、こんなことから、昨年の十二月十八日に、運政審に「中長期的な鉄道整備の基本方針及び鉄道整備円滑化方策について」ということで、今議論をいただいているところでございます。  そんなものをあわせながら、前提で申し上げましたように、我が国自体、鉄道整備をしっかり進めていかなければならぬ、このように思っております。
  134. 江崎鐵磨

    ○江崎委員 二十一世紀に向けての着実な鉄道整備をお願い申し上げると同時に、過日、川崎運輸大臣には、わざわざ中国までお運びいただき新幹線のPRをしていただいた。日本の場合は技術が非常にすばらしいといったことを特に主張いただいたそうですが、我々、できる得る限りの成果を期待するものであります。  そして、ただいま乗り継ぎ円滑化措置関係についてお触れになりましたが、これは特に、私どもも、早急に結論を出していただきたい。乗りかえの場合、乗りかえ駅が離れているなどの事情のため、接続が悪く、乗りかえに時間がかかる、あるいは乗りかえのときに駅構内の混雑に巻き込まれるなど、鉄道の特性である高速性が全く発揮できないケースも多々あるわけであります。  運輸省は、鉄道整備については、これまで都市鉄道については輸送力の増強、幹線鉄道については高速化に重点を置いてこられましたが、このような施策のみでは、ただいま申し上げたような乗りかえの不便さを十分に解消することはできないのではないかと思うものであります。  そこで、今回の法律案では、これまでの施策とは異なる新たな鉄道行政の展開を目指す施策として、路線間の乗りかえ円滑化、いわばネットワークの結節機能の向上に着目した乗り継ぎ円滑化措置についての法制度導入されております。利用者利便向上観点からは、このような措置導入により、鉄道事業者間において、例えば路線の相互直通、ホームでの対面乗りかえ、駅舎を近接して整備することなどが行われることにより、乗り継ぎの不便さを少しでも緩和されることが必要ではないかというとき、一方では、なるべく規制緩和し、民間の自主性を尊重しようという時代の流れがあるとき、今回の法改正鉄道事業者の自主性、主体性を尊重するという趣旨のもとに行われていると理解しております。このような中で、乗り継ぎ円滑化措置についての新たな法制度導入し、協議のルールや裁定、勧告の制度を設けることについて、運輸省のお考えをお聞かせください。
  135. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  現行法上、鉄道事業者乗り継ぎ円滑化措置を講じないことによりまして、利用者利便、その他公共の利益を阻害している事実が認められましたときには、当該事業者に対して運輸大臣改善命令を講ずることができることになっております。  今回の改正におきましては、乗り継ぎ円滑化措置に関しまして新たに鉄道事業者間の協議を促進するための法制度導入したわけです。これは、需給調整規制廃止後の国の関与のあり方は、事業改善命令という強権的な行政手段のみにとどまらず、できる限り事業者の自主性、主体性を尊重した法制度とすることが必要であると判断したからでございます。本制度は、今回の改正の基本スタンスでございます事業者の自主性、主体性の尊重の趣旨に沿ったものであると考えております。  また、鉄道事業者に対しましては、乗り継ぎ円滑化措置を行う努力義務にとどめた上で、協議義務、協議命令等の規定を設けることによりまして、あくまで事業者間の自主的解決を主眼としていること、運輸大臣の裁定については、乗り継ぎ円滑化措置に関する事業者間の基本的合意を前提として、費用負担等、細目的な事項について協議が調わない場合にのみ行うものであること、さらに、運輸大臣の勧告についても、費用対効果の観点から適当であると認めた場合にのみ行うこと等としているところでございます。  以上申し上げましたように、乗り継ぎ円滑化措置についての行政の関与は必要最小限のものとしておりまして、鉄道事業者の自主性、主体性を尊重した制度となっていると考えております。
  136. 江崎鐵磨

    ○江崎委員 ただいまの答弁にもありましたが、利用者利便増進観点から必要最小限の行政の関与を行うのみであるとのことですが、民間の自主性の尊重の観点に十分配慮し運用がなされるよう、特にお願い申し上げる次第であります。  また、現実の問題としては、例えば、鉄道事業者乗り継ぎ円滑化のために駅舎を整備しようとしても、膨大な費用がかかることなどから、このような協議のルールを設けるのみではそのような施設整備が順調に進まず、その結果、利用者利便増進の効果が必ずしも十分にあらわれないのではないかと考えるわけであります。  そこで、このようなルール化に加え、鉄道事業者乗り継ぎ円滑化を講じようとする場合の支援措置もあわせて講じることにより、鉄道事業者インセンティブを与える必要があると考えますが、これについての運輸省のお考えをお聞かせください。
  137. 小幡政人

    小幡政府委員 乗り継ぎ円滑化措置に関しましては、平成十一年度の税制改正におきまして、都市鉄道ネットワーク化、交通の結節点での改善を図るため、相互乗り入れ等乗り継ぎ利便向上のための駅の大規模改良工事により取得いたしました鉄道施設については、固定資産税軽減措置を新たに認めたところでございます。これは鉄道事業者に対するインセンティブとして有効であると考えております。  なお、近年、鉄道建設費の高騰、用地取得困難性建設期間長期化等がさらに顕在化しているため、鉄道事業者鉄道整備に対する投資のインセンティブは低くなってきております。大規模施設改良民間資本のみでは進みにくい状況にございますことから、現在、社会的に必要とされる適切な鉄道整備あり方及びその方策について運輸政策審議会で御審議いただいているわけでございます。今後は、同審議会審議状況を踏まえまして、乗り継ぎ円滑化措置に対する助成方策を含みます鉄道整備円滑化について対処してまいりたいと思っております。
  138. 江崎鐵磨

    ○江崎委員 せっかくつくった制度でも利用しにくいものがあれば、その役割を十分果たすことができないわけであります。そのためにも、鉄道事業者インセンティブを与えるような支援措置の拡充、これは特に、これから川崎運輸大臣もしっかり取り組んでいただきたいと思うものであります。  この乗り継ぎ円滑化措置は、許認可行政から、利用者利便向上を図るための政策的な調整行政への転換ともとらえることができますが、この点を高く評価するものであります。ぜひとも利用者の側に立った制度の運用がなされるようお願いを申し上げまして、次の質問に移らせていただきます。  今回の法改正の主要な事項の一つである参入規制緩和についてお尋ねをいたします。  まず、今回の法改正においては、参入規制について、これまで需給調整規制を行う免許制であったものから、競争原理に基づき利用者利便増進向上させるために、需給調整規制を行わない許可制に改めることとしております。  そこで、鉄道事業について、免許制はやめるものの、引き続き事業の許可を必要とする理由を確認したいと思います。これも鉄道局長にお考えをお聞きいたします。
  139. 小幡政人

    小幡政府委員 今回の改正案は、旅客鉄道に対する国民のニーズが高度化、多様化し、鉄道輸送サービスのより一層の向上が求められていることを踏まえまして、事業の効率化、活性化により利用者利便向上を図るために、需給調整規制を前提とする免許制を廃止することとしているところでございます。  一方、旅客鉄道事業は、大量、高速の輸送機関でございまして、万一事故が起こった場合の被害は甚大でございます。また、安全性の確保に関して十分な体制がとられているか等の安全上の事前規制が不可欠であるというふうに考えております。加えまして、定時性、大量性、高速性という輸送特性を生かした地域における基幹的な輸送手段としての公益性は非常に高いものがございます。信頼するに足りる安定的な事業継続を図り得るかについては、あらかじめ事前に確認しておく必要があることなどの観点から、これらの事項に限りまして国が事前に審査を行うことにより、事業への参入を認めることとすることが必要である。このため、旅客鉄道事業への参入につきましては、免許制の廃止後も、これらについて審査する許可制としてお願いしているところでございます。
  140. 江崎鐵磨

    ○江崎委員 鉄道事業において参入許可制が必要な趣旨はわかります。許可に当たっては、行政の過剰介入とならないよう、参入の際の審査基準の明確化や手続の透明性の確保など、現在の行政に求められている機能を十分に果たしていただくことを特に切望するものであります。  本来ならば、認定鉄道事業者制度関係質問も予定しておりましたが、時間の関係で省かせていただきます。  そして最後に、今回の鉄道事業法改正は、事業者の自主性、主体性を尊重する観点から、需給調整規制の廃止を初めとする規制緩和、合理化が行われたものと理解をいたしております。一方、今回の法改正についてよく言われておりますことは、需給調整規制の廃止が行われた場合、地方ローカル線のような不採算路線の切り捨てという問題が生じるのではないかといった危惧を持つものであります。  私は、今回の法改正後において、地域住民日常生活に必要不可欠な生活交通サービスについては何らかの形で政策上維持される必要があると考えますが、これについての川崎運輸大臣の基本的な取り組み姿勢をぜひお聞かせいただきますようにお願い申し上げます。
  141. 川崎二郎

    川崎国務大臣 影の部分の問題の御指摘でございます。  先ほどから議論が続いておりますけれども、基本的には、不採算部門、どうしても経営が続かないという場合に、鉄道事業者が一年前に告知をするということになっております。その中において、私どもは地方自治体と一緒になりながら、地元の意見を聞きながら代替というものを当然確保しなければならない、このように思っております。  いろいろな御懸念をいただいておりますけれども、例えば、鉄道の方がすべてにまさるという意見は必ずしも正しくないだろうと思っております。需要量に合わせて、バスの方が適切である場合もございます、また、その他の輸送手段の方が適切である場合もございます。そういった需要というものに合わせながら、しかしながら、生活路線といいますか代替というものはしっかりつくり上げなければならないだろうと思っております。  一方で、先ほどから御指摘いただいた、結果として地域の皆さん方の負担が上がっていくという問題について、厳しい御指摘をいただきました。この問題についても十分勉強してまいりたい、このように思っております。
  142. 江崎鐵磨

    ○江崎委員 運輸大臣におかれましては、この法律案のみならず、今後も真に国民にとって必要な鉄道運輸サービスが提供されるよう積極的に努力をされることをお願い申し上げまして、鉄道事業法関係質問を終わらせていただきたいと思います。  次に、海上運送法関係質問に移らせていただきます。  鉄道同様、海上運送分野についても、需給調整規制を廃止して基本的な事業制度の見直しを行うということが提案されております。しかしながら、鉄道鉄道、海上交通は海上交通、それぞれの交通体系からくる特性の差によって、このような方針転換を実現するに当たっての環境整備方策が異なるわけであります。  まず、運輸省は、平成八年十二月に、従来からの行政の転換を行い、その根幹をなしてきた需給調整規制を、原則として目標期限を定めて廃止する方針を打ち出されておりますが、今回の海上運送法の一部改正案提出に至るまでに、旅客船事業についてどのような検討をしてこられたのか、お尋ねをいたします。
  143. 宮崎達彦

    宮崎(達)政府委員 御指摘のとおり、運輸省におきまして平成八年十二月に需給調整を原則として廃止することを決定いたしました。これを実施するに当たりまして、その翌年の九年四月に運輸政策審議会に対しまして、需給調整規制廃止に向けて必要となる環境整備方策等について諮問して、審議してきていただきました。  その審議会におきまして、我々の関係では海上交通部会及びその中での旅客船委員会を設置していただきまして、学識経験者の方、旅客船事業者の方、労働者の方、地方自治体など関係する分野の方々に委員として参画していただきまして、いろいろな意見を出していただきまして、集約して、答申をまとめていただいた次第でございます。  今回の法律改正案の作成、提出につきましては、十年六月にこの審議会答申がまとめられまして、「国内旅客船事業における需給調整規制廃止に向けて必要となる環境整備方策等について」という題名でございますが、それらの内容を十分尊重しながら作成に当たってまいりました。特に、答申に盛り込まれました需給調整規制廃止後の事業制度あり方にかかわる考え方に従いまして、参入、退出制度、それから運賃制度、それぞれ見直しまして、利用者保護、安全確保についても適切に措置しているつもりでございます。特に、生活航路維持方策につきましては新たに指定区間制度導入いたしまして、答申を踏まえて十分な配慮をいたしております。
  144. 江崎鐵磨

    ○江崎委員 時間をかけ、関係者の方々から広く意見を集約し、今回の法案方向づけがされたと伺ったわけであります。  しかし、このような方針転換を実現していくに当たっては、そのモードを取り巻く客観的状況に照らして適切な時期に実施されることが必要と思います。  旅客船による旅客輸送量、そして現在の経営状況は、全体としてどのような状況にあるのか、お尋ねをいたします。
  145. 宮崎達彦

    宮崎(達)政府委員 旅客船につきましての旅客輸送量をまずお答えいたしますが、昭和四十年代までは航路ネットワークの整備ということで増大を続けてまいりました。ただ、昭和五十年代以降になりますと、他のいろいろな交通網の発達の影響を受けまして減少に転じまして、近年においても景気低迷の影響が厳しくて、引き続き減少を続けておるところでございます。  平成九年度の年間旅客輸送人員一億四千五百万人、人キロで申しますと、五十三億五千百万人キロという数字になっております。  また、そういった状況を受けまして、旅客船事業者経営状況は非常に厳しゅうございまして、平成九年度における経常損益の合計は約二百億円の赤字という非常に厳しい事態になっております。
  146. 江崎鐵磨

    ○江崎委員 近年の我が国経済全体の不況の影響も受け、多くの事業者が非常に厳しい経営状況のもとに置かれているというときに、旅客船による旅客輸送量は減少傾向、またその経営状況も厳しい中にあるということですが、そのような中で需給調整規制を廃止することを柱とする法律改正を行う効果はどのように考えておられるのか、お尋ねをいたします。
  147. 宮崎達彦

    宮崎(達)政府委員 現在の需給調整規制のもとにおきましては、需要が増大しない限り制度的に新規参入は不可能ということになります。例えば、既存事業者に比べてより低運賃サービスが提供できるとか、あるいは創意工夫によって高度で多様なサービスの提供などによりまして需要喚起を図るというような意欲ある事業者、そういった人たち参入も不可能にしてしまうという制度の枠組みになっております。関係事業者経営、厳しい折でございますが、そういうときであるからこそ、意欲ある事業者創意工夫を生かしていきたいと思っております。  今回の法改正におきまして需給調整規制を廃止することによりまして、こうした意欲ある事業者事業参入が可能となるものと考えておりまして、既存の事業者との間で健全な競争をしていただくということによりまして、利用者利便向上して旅客船事業全体を活性化させる、またそういうことになるのではないかというふうに期待しております。
  148. 江崎鐵磨

    ○江崎委員 非常に厳しい状況にあるからこそ、旅客船事業者事業運営上の自由度を高め、事業全体を活性化させようという趣旨はわかります。また、事業者同士の競争を通じて高度で多様なサービスを提供することを促進し、利用者ニーズにこたえることによって旅客船事業全体の需要の拡大につながるものと考えますが、規制緩和をしてみても、このようなプラスの効果が出るばかりではないと思います。競争原理を導入するといっても、何のルールもなしに単に規制緩和するだけでは市場原理が働きにくい。需要の少ない離島航路などは、いいとこ取り、クリームスキミングが起こって、結果的には航路全体がなくなってしまうというマイナスの効果が生じるおそれがあるわけであります。  離島住民にとっては、離島航路はその生活を支えるために必要不可欠な足と位置づけられていますが、今回の法改正によって、そのような離島航路自由競争のもとに淘汰されるようなことがあってはならないと考えます。ついては、今般提案されている指定区間制度により、離島航路維持が図られると考えてよいのかどうか、お尋ねをいたします。
  149. 宮崎達彦

    宮崎(達)政府委員 今回の法目的が基本的に市場原理導入ということでございますが、それの単純なる導入によりますと、いわゆる離島航路におきまして、需要の多い時間帯だけでありますとか、そういった需要の多い区間だけを運航する、先生おっしゃいましたいわゆるいいとこ取り、クリームスキミングというようなことまで認められますと、需要の少ない部分を含めて一体的に離島航路が運営されておるという実態にかんがみますと、全体のサービス継続が困難となるということが心配されます。  こういった点は、先ほどの運輸政策審議会の方でも御指摘を受けまして、何らかの対応をするようにということで御指摘を受けておりましたので、今回、それを一体として指定区間という制度を設けまして、その中で一定水準以上のサービスをしなければ新規参入を認めないという形によりまして、単純なる市場原理導入によって離島住民日常生活が害されるといったようなことは防いでいけるというふうに考えております。
  150. 江崎鐵磨

    ○江崎委員 今の御答弁、非常に大切なポイントかと思います。現在、十二名以下のいわゆる非旅客船の数も多いと聞き及んでいますが、ついては、それらの船舶によるいいとこ取りを防止するための規制の必要性についてお尋ねします。  十二名以下の非旅客船について、参入は届け出で自由にできるとしても、旅客運送する以上、安全の確保利用者保護は必要最小限のルールとして守ってもらわなければならないと考えます。他方で、これら非旅客船による事業を営んでおられる方々は必ずしも大企業ばかりではありません。過度な規制はかえって旅客輸送サービスを停滞させることにもなりかねません。  ついては、これらの点に関し、安全規制利用者保護規制の適用範囲の拡大が盛り込まれていますが、その概要と基本的な考えについてお尋ねをいたします。
  151. 宮崎達彦

    宮崎(達)政府委員 現在の海上運送法でありますと、旅客定員十二人以下のいわゆる非旅客船ということになりますが、事業の開始ないし廃止の届け出という義務が課せられておるだけでございます。旅客運送する場合でありましても、安全規制利用者保護規制が適用されないという問題がございます。  これは、法の制定時、古くなりますけれども、小型旅客船にまでそういった規制を及ぼす必要はなかろう、非常にそういう実態が少なかったということを踏まえてそういうことになっておりましたけれども、今回の改正の折に、全体を見直してみますと、近年におきましては、貨物フェリー、または内航ローロー船によりましてトラック運転手の運送、それから、先ほど御指摘がございましたいわゆる海上タクシーなどによります小規模旅客運送が相当の数に上って行われているということになってきております。  また、これを、だからといって規制するというのは、いわゆる普通の旅客船事業を補完するという小回りのきく運送事業も行っておりますので、やみくもに規制するということでは問題かと思いますが、お客様を運ぶ以上は必要最小限の基本的ルールというものを守ってもらいたいということでございます。そういった事業につきまして、例えば運航管理規程の届け出、輸送が非常に安全性が乱れておるという場合には、輸送の安全確保命令が発することができるように、また運賃料金運送約款の公示、それから、保険契約も締結していないという場合は、保険契約締結命令、そういった最小限のルールは守っていただこうということで規制を適用することにいたした、いずれも、関係者の意見も聞きながら、過大な負担を課するものではないというふうに考えまして、今回、そういう措置をさせていただいたということでございます。
  152. 江崎鐵磨

    ○江崎委員 よくわかりました。しっかり対応していただきますように。私は、今回の海上運送法改正法案は、規制緩和ではなく、規制改革の法案ということで理解をいたしております。  最後に、川崎運輸大臣にお尋ねいたします。  いずれにしましても、我が国が二十一世紀に向けて、海洋国家として引き続き存立していく上で、海運というものは国民生活を支える極めて大きな動脈であるときに、特に離島航路離島住民生活に必要不可欠であり、ぜひとも維持していくことが必要であると考えますが、この点について大臣に国としての基本的な取り組みをお尋ねいたします。
  153. 川崎二郎

    川崎国務大臣 今回の海上運送法改正によりまして、自由で活発な競争、そしてその結果として国民にいいサービスが提供される、これを期待するものであります。一方で、まさに先ほどから御議論が出ております規制緩和の影の部分離島航路につきましては、離島住民日常生活に欠かせない交通機関であり、これを維持していくことは重要な課題と考えております。  今回の法改正によって、いわゆるクリームスキミングを防止しながら、住民生活に必要な海上輸送サービスの供給の維持を図ってまいりたいと考えております。従来より離島航路補助金として、航路運営上生じた欠損の一部について補助をしているほか、船舶の新造代替についての船価の一部を補助いたしております。また、十一年度からは、離島航路に就航する船舶のうち、利便性、安全性及び高速化に資する船舶については固定資産税軽減措置を拡充いたしたところでございます。  いずれにせよ、さまざまな施策を組み合わせながら、離島住民日常生活に欠かせない交通をしっかり守ってまいりたいと思っております。
  154. 江崎鐵磨

    ○江崎委員 川崎大臣の、生活の足を守っていくといった強い決意、私どもも大変心強く思うものであります。特に、私ごとを申し上げて甚だ恐縮でありますが、大臣の兄上とは親友であったときに、今日の、大変御苦労して、大臣が堂々とこの職責を全うしておられること、非常にうれしく思う一人でもあります。今後一層の御活躍を御期待して、質問を終わらせていただきます。
  155. 石破茂

    石破委員長 次に、平賀高成君。
  156. 平賀高成

    ○平賀委員 日本共産党の平賀高成です。  私は、鉄道事業法の一部改正案について質問をいたします。  今回の改正案は、鉄道事業参入、撤退の自由化、そして運賃の上限制の導入、さらには安全規制緩和など、鉄道事業規制の根幹を変えるものであります。その中でも、特に事業者の判断で参入、撤退を自由にする問題は、鉄道事業の公共性を事業者の採算性がとれる範囲に限定するものであって、この法案が通りますと、これはネットワークとしての全国の鉄道網が寸断されていく、大変重大な問題だと私は考えるものであります。  本来鉄道は、これは皆さんも言われましたが、大量輸送や高速性、そして定時性、さらには環境、エネルギーなど、地球環境問題の観点から見ましても、二十一世紀に向けて、諸外国でも鉄道の役割が見直されてきているわけです。ところが、政府は逆に鉄道網を切り捨てようとしているわけです。  きょうは、そうした重大な問題であるにもかかわらず時間が非常に少ないために、私は、鉄道事業の退出問題に絞って質問をしたいと思います。  今回の改正目的、背景では、近年における旅客鉄道輸送に対する国民のニーズは高度化、多様化しており、鉄道輸送サービスのより一層の向上が求められている、このために、旅客鉄道事業における需給調整規制を廃止することにより、輸送の安全の確保等に配慮しつつ、さらなる利用者利便増進を図る必要があると述べております。  私は、ここで質問をしますが、現在地方ローカル線を抱えて交通網を維持しようとして努力をしている関係の地方自治体やさらには沿線住民の皆さん、そして事業者の団体、こういうところでこの需給調整規制の撤廃を要求しているところがあるのですか。  さらに、運輸大臣運輸大臣から説明がありましたけれども、この需給調整の規制を撤廃することによって、地方自治体だとか利用者負担が減るとか利便性が高まっていくのだ、こういうお話がありましたが、実際にそれを実証する資料やデータなどは、調査をしてちゃんと持っているのですか。この二つの点について、質問をまずします。
  157. 川崎二郎

    川崎国務大臣 何回か御答弁させていただいておりますけれども、規制緩和を進めて、日本の持つ高コスト構造、特に物流の問題についてしっかり進めていかなければならない、これは政府の大方針だと考えております。また、多くの国民消費者理解をするところだろうと私は思っております。  私どもが、戦後経済発展を遂げてきた、世界有数の経済国家と言われるようになった、国民所得は高くなった。しかしながら、生活実感はどうであろうかということになれば、これはもう委員に前から御指摘をいただいているとおりでございます。生活実感とどうして我々の名目的賃金との開きがあるのかということになれば、当然、高コスト構造ということになります。  これを解消していくためには、やはり規制緩和、そして、市場原理に基づいてやっていくことが大事であるという一つ方針の中で今日まで来ておる。その中において、今回、影の部分というものにどう私どもが対処していくか、規制緩和の結果としての影の部分にどうやって対処していくかということも踏まえて、今回の法案提出をさせていただいたところでございます。
  158. 平賀高成

    ○平賀委員 私が質問をしたのは、実際に地方ローカル線を抱えている自治体や関係住民事業者で、いわば今言ったこの三つの範囲で需給調整規制の撤廃を要請している団体があるのかどうなのか、これがまず一つです。  二つ目には、実際に需給調整規制を撤廃して利便性や負担がよくなったという資料を持っているか、この二つです。的確に答えてください。
  159. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  今回の規制緩和に関しまして、需給調整規制の廃止に関しまして、地方のローカル線を抱えておる地域から要望があるかというお話でございますが、我々は、そういう具体の話を伺ったことはございません。  それから、規制緩和によってよくなった例があるのかというお話でございますが、これは大臣が申し上げましたように、規制緩和によって効率化は図られます。そういう意味でいい面もございますけれども、大臣が申し上げましたように、影の部分というのもあるわけでございまして、一概には言えないというふうに理解しております。
  160. 平賀高成

    ○平賀委員 私も実際にどういう団体が要請しているのかということで調べましたら、一つは、九六年の六月五日に日経連が行政改革委員会に、運輸関係でいいますと、参入規制緩和競争条件の整備ということで要請していますし、二つ目には、平成九年の一月に、運輸省が個別の規制緩和意見、要望及びその検討状況というところで、今度は経団連が認可申請、届け出義務の廃止を検討すべきである、こういうことで出ているわけですね。  ですから、一体どういうところが要望しているのかといったら、財界とかそういうところが要望しているわけですよ。しかも、具体的にどう利便性がよくなり、どうその負担が軽くなっていくのか、こういう点についても、しっかりとした資料というのはなかなか持っていないわけです。ですから、私は、非常にこれはずさんな法案だということを思わざるを得ないのですね。  それで、実際にこれは鉄道事業の廃止や休止をする場合に、現行法では、鉄道事業法の二十八条で、公衆の利便が著しく阻害される場合には、これは大臣が許可しない、また地元の自治体の同意というものが求められる、こういうふうなシステムになっているわけです。しかし、今回この需給調整規制が撤廃されるとこういう縛りがなくなって、事業者経営面から、採算性を理由にして撤退の届け出を一年前に出せば、無条件で撤退することができるということになるのじゃないですか、今回の法案というのは。
  161. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  退出の仕組みの議論でございますが、まず、現行法では、先生お話しのように許可になっております。運輸大臣が許可する際に、お話しのように、当該鉄道サービスがなくなった場合に公衆の利便に重大な支障がある場合を除いて許可をしなければならないという規定になっております。その意味で、現在の退出についても、代替輸送機関が確保された場合には運輸大臣は許可をしなければならない、そういうスキームになっておるわけでございます。  その際に、我々は、実際問題として地方公共団体の同意を原則として用意してきてくださいという指導をしておりますけれども、これはあくまでも原則的な指導でございまして、要は、地方公共団体の同意がとれたということは、地域として非常に円満な形で御理解いただいたという、これは一番理想の形でございますので、そういう形で指導させていただいておりますが、残念ながらそれがとれない場合、許可申請があった場合に、我々としては今申しました法律上の原則に従って対応するというのが現行法の体制でございます。  一方、改正後でございますけれども、今回の改正は、お話しのように、参入に際して需給調整規制を行わない許可制とすることとあわせまして、退出につきましても、鉄道事業者の自主性、主体性を尊重することが適当であること、経営上の支援をせずに鉄道事業者に対しまして鉄道輸送サービス維持を求める合理的な理由がないこと等にかんがみまして、事業の廃止については事前届け出制とすることとしたところでございます。  なお、鉄道輸送サービスを廃止する際は、当該地域における通勤通学、通院、買い物等の住民日常生活に真に必要不可欠な公共輸送サービスが中断されることのないよう留意する必要がございます。このため、当該廃止予定路線維持あり方、またはバス等の代替輸送機関のあり方についての調整を行うために必要な期間等を勘案いたしまして、鉄道事業者に対しまして事業の廃止の一年前の事前届け出制を義務づけること、それから、代替交通機関の確保等に関して十分な意思疎通を図ることを目的として、法律上、運輸大臣は、廃止を行った場合における公衆の利便確保に関しまして、関係地方公共団体、利害関係人の意見を聴取すること、また、運輸省としては、運用上ではございますが、届け出の前後を問わず、鉄道事業者が廃止の意思を表明した段階で、地方公共団体の申し出があった場合には、地元協議会を設置いたしまして、当該事業者より当該路線維持できない事情等について十分説明を求めるとともに、代替交通機関の確保等に関して関係者間の調整を行う、こういう手続を行うこととしておるところでございます。
  162. 平賀高成

    ○平賀委員 いろいろ長々と説明していただきましたけれども、要は、現行では自治体の同意だとかそういう条件がありますけれども、今度の新しい法案で、これでやるということになりますと、一年前に出せば、あとは話し合いはするけれども、自動的に撤退できるという仕組みが新しい法案の特徴ですよ。  そういう立場でいきますと、例えば、国鉄時代のローカル線で、バス転換への目安とされた輸送密度が四千人未満、このローカル線というのは今全国に六十三線で、キロ数でいきますと六千三百一・九キロ。これはJRの営業キロ全体の三一・四%がこういうふうなローカル線になっているわけですから、これが廃止の対象になる可能性があるわけですね。しかも、信越線の横川—篠ノ井間は既に寸断されてなくなりましたけれども、幹線の特定区間も廃止されるおそれがあるわけですよ。  そういうことで、次から次へと廃止申請が出された場合、これは歯どめがあるんですか、実際に。簡潔にお願いします。
  163. 小幡政人

    小幡政府委員 鉄道事業者におきましては、経営する鉄道ネットワークにおける位置づけ等を勘案しつつ、個々の路線等の取り扱いについて判断して、当該路線等が不採算であることを理由に直ちに廃止するものではないと認識しております。  しかしながら、事業者による最大限の経営の合理化、利用促進等の努力にもかかわらず収支採算の確保が困難な路線等は、通常、コストに比較して利用者が著しく少ないなど、鉄道特性を失っていることが通例でございます。このような路線等のうち、バス等のより適切な輸送モードへの転換を図り得るものについては、代替交通機関の確保を図った上で鉄道事業を廃止することもあり得るものと認識しております。
  164. 平賀高成

    ○平賀委員 歯どめはあるのかないのか、この点についてだけ答えてください。
  165. 小幡政人

    小幡政府委員 それは、先ほど申し上げましたように、現状においてもそういう事態においては歯どめはございません。その意味では現行の制度と変わらないとも考えております。
  166. 平賀高成

    ○平賀委員 歯どめはないということを確認します。  さらに、赤字を理由にして廃止ということになりますと、JRの三島の北海道、四国、九州、これはいまだに採算はとれておりません。この三社が採算性を理由にして鉄道事業の撤退の届け出を行えば、運輸省としてこれは認めることになるんじゃないですか。実際にそういうことをやれば、もう北海道や四国や九州では鉄道がなくなっていくというふうなことになりますけれども、そういう場合でも運輸省は認めることになるんですか。
  167. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  これは、今回御審議いただいております鉄道事業法のスキームとは別な観点からのお話でございますけれども、先生御案内のように、国鉄改革を通じてJR各社発足したわけでございます。その国鉄改革の際に、国鉄からの分割・民営化時に、当時の不採算路線を含め、事業主体として黒字が確保できる等の所要の政策措置を講じたところでございまして、特にJR三島会社につきましては、そのために経営安定基金というようなものも積んで営業段階での赤字を償う、こういう措置をしたわけでございます。  その後十年余りの経過があったわけでございますが、その間、路線によっては、過疎化の進行、道路整備の進展等、路線を取り巻く経営環境が分割・民営化時と比較して構造的に大きく変化していることもあり得るものと認識しております。したがいまして、JR各社においては、経営している線においてそのような経営環境の変化を踏まえ、鉄道として維持することは困難であるとの経営判断のもとに路線の廃止を検討することはあり得るものと認識しております。  しかしながら、この問題は、先ほど申し上げましたように、この鉄道事業法のスキームの議論ではなく国鉄改革の経緯に伴うものでございますので、この鉄道事業法においては、現在においてもその対応についての手だてはしてございません。  なお、先ほども申し上げました国鉄改革時の考え方、そちらでの考え方でございますが、こういうものの経緯がございますので、JR各社が鉄道事業の一部廃止を行います場合には、国鉄改革時とその後の事情の変更等々について十分に説明する義務がある、地元に御理解いただく説明を行う義務があるというふうに考えておるところでございます。
  168. 平賀高成

    ○平賀委員 非常にわかりづらい説明でした。  実際にスキームが違うというようなことも言われましたけれども、しかし、実際にその赤字を理由にして撤退をしたいというふうな申請がもし出されるということになったら、これは結局認めざるを得ないんですよ、今の新しいこの法案の体系でいきますと。実際に運営できないということになったら、これはさらに基金を積み増しするか、さらにはいろいろな形で自治体が支援をするか、そういうことをやらなかったら実際に地方のローカル線は守れない、こういうことを今度法案としてやろうとしているんですよ。結局、もうかるところはやるけれども、もうからないところは地方自治体や利用者負担をしてもらう、こういうことをやろうとしているわけであって、絶対に私はこういうやり方は認められないということを指摘をしておきたいと思います。  さらに、路線維持の問題について質問します。  日本国有鉄道改革法、これは国鉄改革法ですが、第一条で、輸送需要に「的確に対応し得る新たな経営体制を実現し、その下において我が国の基幹的輸送機関として果たすべき機能を効率的に発揮させること」、同第四条では「利用者利便確保」を明記しています。鉄道事業では採算がとれない三島会社には基金による支援経営維持を図ってきたことは今議論があったとおりです。  このように、国鉄分割・民営化の枠組みからいって、鉄道事業者事業や一部区間事業者だけの判断で廃止することは、国鉄分割・民営化という政府の方針からも反することになるのではないですか。
  169. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  鉄道の一部廃止の場合に路線の一部の廃止というのはあり得るかという御指摘かと思いますけれども、我々としては、やはり鉄道事業の実態に応じて一部の廃止というのも現にあり得るものと考えておりますし、特に民鉄等にございますけれども、そういう例はございます。
  170. 平賀高成

    ○平賀委員 実際に、分割・民営化のときに路線維持をやるということは政府の方針としてもあったと思うんですね。ところが、今回の法案というのは、採算が合わなかったら撤退をしていくんだということですから、政府の基本方針と違うんじゃないのかということを聞いているんです。
  171. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  国鉄改革時、昭和六十二年にJRが発足いたしましたときに引き継いだ路線の中に一部赤字の路線があったことは事実でございます。それはそういうことでスタートしておりますけれども、その後、先ほど申しましたように、輸送需要の実態が大幅に変わったであるとか、そしてその結果、鉄道特性を有しているというほどの事情でなくなったというような路線の一部につきましては、当然一部廃止というものはあり得るということを申し上げているわけでございます。
  172. 平賀高成

    ○平賀委員 例えばJR本州三社の問題についていいますと、これは実際に、分割・民営化のときからいえば事業収入の状態というのは非常によくなっているんですね。ですから、路線維持しようと思うんだったらやはり体力だって十分あるわけですよ。  しかも、国鉄改革法によってこの間いろいろJRは支援をされてきたわけですね。それで、地方自治体が固定資産税等の支援を今でも行っているわけですが、分割・民営化による地方からの支援は、税制や財政を含めてどの程度になっているのか、私はちょっと自治省に伺います、どういう支援を額としてもやってきているのか。
  173. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 昭和六十二年度分割・民営化以降平成九年度までの間に、地方公共団体がJR各社に対しまして寄附金等を支出するというケースがございまして、これにつきましては、私どもの方に協議をいただいて同意をするという手続になっております。そういう同意いたしました金額は、六十二年度から九年度までで件数で百七十九件、金額で千四百七十五億円となっております。
  174. 平賀高成

    ○平賀委員 額で千四百七十五億円だと。これは九七年度のJR東日本の全営業利益の三千三百七十八億円の四三・七%に相当する、言ってみれば大きな支援をしてきたわけです。そういう支援を現に受けてきたわけですね、JRなどは。しかし、赤字を理由にもう撤退するというふうになったら、これは住民としましても、国民としましても、一体国鉄の分割・民営化というのは何だったのかということが問われざるを得ないと思うのですが、そういうことについて大臣はどう思われますか。
  175. 川崎二郎

    川崎国務大臣 六十二年当時の輸送状況、また経済状況ならばその議論であろうと思います。しかしながら、その後の変化というものに対応しながら、そして現実の話として、鉄道というものでお客様を運ぶ方がより効率的であるのか、またバスの方がより効率的であるのか、いろいろな議論の中で一つの結論が出されるものだろうと思っております。
  176. 平賀高成

    ○平賀委員 私は、これは国民立場から見たら余りにもひどいやり方だなというふうに思います。  そうした鉄道事業からの撤退計画の中に、いろいろ全国的にはありますが、愛知の名鉄の三河線だとか、広島の議論にもありましたが、可部線などがあって、私も調査に行ってきました。  例えば、広島県内の横川から三段峡までの可部線の問題がありますが、可部線全体としては、国鉄時代の八五年度に三十一億円の赤字がありましたが、九七年度は十一億円と二十億円も赤字が改善されているわけですね。一応採算分岐点と言われる乗車密度四千人も超えております。バスへの転換部分とされている区間の中で、三段峡駅、戸河内駅、筒賀駅は、それぞれ町が委託職員を派遣して駅を維持しているわけです。一つの駅を維持するために人件費や光熱費、さらには電話代など、関係自治体は年間三百万円を支援して、関係自治体や関係住民は存続のために努力をしておりました。  ところが、昨年九月にJR西日本から関係自治体に対して、JR可部線の可部—三段峡間をバスに転換したい、こういう申し入れがあったわけです。これに対して、昨年十一月の二十七日に、広島市と戸河内町、湯来町、加計町、筒賀村で構成する可部線対策協議会は、JR可部線の可部—三段峡間の存続に関する要望書を国会議員に出しています。その要望書では、JR西日本に対して、昨年九月に、バスへの転換を前提としての検討ではなく、利用しやすいダイヤ改正を初めとして、いかに存続していくかという観点で検討を申し入れたことを述べています。大臣もこの申し入れを十分検討するようにJR西日本を指導するべきではないですか。
  177. 小幡政人

    小幡政府委員 お答え申し上げます。  JR西日本におきまして、可部線のバス転換について地元協議に入っておるというのは我々承知しておりますけれども、まだ本件について許可申請等の役所に対する手続はいまだしでございます。  そういう状況でございまして、この案については、我々としては事前の御相談を見守っているというところでございます。
  178. 平賀高成

    ○平賀委員 実際、現地に行きますと、JR西日本が言っているのは、これは極端に利用者が少ないということを言っています。いかに存続していくかという本来の努力はやっておりません。やっているのは反対の努力で、いかに存続できなくするかというような努力になっています。  JR西日本は四、五年前から、観光客が多くなるピーク時に、三段峡駅で町の費用で現金引きかえで切符を購入しているわけですが、JR西日本に言いますと、切符を現金引きかえで欲しいんだと言っても、すぐには印刷できない、まとめて渡すと盗難に遭うかもしれない、こういうことで切符を売ってもらえないという声が出ているのですね。  さらに、九六年の三月には、加計駅から三段峡駅までの従来の信号でありますCTCを旧式のスタフ閉鎖方式にわざわざ変えて、そのために、同区間に一たん列車が入ると、同区間を出るまでほかの列車が入れない、列車本数を非常に少なくしなければならなくなった。そのために、現在、可部駅から加計駅まで一日上下で十六本、加計駅から三段峡駅までは十本になっている、終点である三段峡駅から広島に直通列車を走らせないために広島への通勤や通学に使用できない、こういう状況になっていますね。  私は、大臣質問しますが、いかにも存続させないというようなこういう努力というのは、きちっと指導してやめさせるべきではないですかね。どうですか、大臣
  179. 川崎二郎

    川崎国務大臣 事実関係を承知いたしておりませんので、調べた上で、後でお話し申し上げます。
  180. 平賀高成

    ○平賀委員 しっかり調べていただきたいと思います。  私は、現地に行っていろいろ話を聞いてきましたけれども、既に、国鉄分割・民営化の後、JR西日本は、人減らし合理化、そしてコスト削減の一環として、八九年に鉄道部構想を明らかにして、可部線にも鉄道部を発足させました。当時の井出社長の出席のもとに、鉄道部長がそのあいさつをしているのですが、可部から先はないものとして対応してもらいたい、こういうあいさつをやっているのです。ですから、もう営業努力を本当に本気になってやらないという立場を言っているわけですよ。  こういう姿勢は、政府が行ってきた国鉄改革の趣旨からいっても、それから運政審鉄道部会の「分割民営化時に当時の不採算路線も含め、事業全体で採算が確保できるよう所要の政策的措置を講じた」というこの答申からいっても、相入れないものだと私は思います。  今回のこの法改正が行われますと、採算を理由にして次から次へと鉄道がなくなっていく、こういうことに私はなりかねないと思います。今回の改正案は、鉄道事業参入、退出の自由化だけにとどまらずに、運賃の上限価格制の導入、さらには安全規制緩和やこれら鉄道事業規制の根幹を変える重大な改悪法案でありますから、私は、断固撤回を求めて質問を終わりたいと思います。  最後に一言。大臣、どうですか、このJR西日本のこういうやり方やこのような退出自由化の法案の問題について、一言見解を伺いたいと思います。
  181. 川崎二郎

    川崎国務大臣 現在ある法律と、法律改正によって歯どめがなくなるのかという御議論が先ほどございました。基本的には事業者一つの判断であります。しかしながら、事業者一つの判断をなされたときに、私どもは、必ず生活路線については代替のものをしっかりつくり上げるように努力をすると申し上げてきておりますし、実行してまいりたいと思っております。
  182. 平賀高成

    ○平賀委員 時間が来ましたから終わりますが、次に、海上運送法の一部改正に関する法律案質問を、寺前委員から行います。
  183. 石破茂

    石破委員長 次に、寺前巖君。
  184. 寺前巖

    ○寺前委員 海上運送法について、十分でございますので、質問にならぬかと思いますので、ふだん思っておったことをこの際に聞いておきたいと思います。  今回の法改正は、需給調整の廃止が基本にあるわけですが、航路の廃止規制緩和ということになってくると、不採算生活航路の切り捨てにつながるんじゃないだろうかと非常に危惧をするものです。  特に、離島では航路以外の代替交通機関がなく、多くの島民の通勤通学、食糧等の輸送、医療、福祉など地域の生活を支えるに欠かせない命綱になっている。だから、離島航路事業は七六%が赤字経営であり、廃止規制緩和し撤退が自由化されると、島民の足に相当な影響を与えるおそれがある、私はそういうふうに見ているんです。  それで、私、東京を今離れがたいいろいろな仕事をやっておる都合がありまして、この間、所用で私の秘書さんに、岡山県の笠岡市の離島航路維持のための努力について調査をしてきてもらいました。その調査をしてきた結果について手紙をよこしましたので、私読んでおってなるほどなということを感じました。  どういう返事が来たかというと、笠岡諸島といって六つの島があり三千九百四十四人の市民が住んでおられる、六十五歳以上の高齢者が、市平均で二三%であるのに対し六つの島では平均が三五%、最高の島で五〇%になっているところです。この六つの島と笠岡市を結ぶため、個人営業も含めて七つの航路があり、そのうち一つ事業者が国の補助を受けています。九四年度までは、二つの事業者が国からの補助を受けていたそうです。  この市の離島航路に対する補助金の推移を見て私は驚いた。九四年度までは、二千七百五十万円の国県市合わせての総補助額のうち二千万円以上、約七五%を国が面倒を見ておってくれたが、九八年度には四千六百六十万円の総補助額のうち四百九十万円、約一一%しか国が面倒を見ていない。それにしても、国の補助金の割合が少な過ぎるということを感じた。九四年に国の補助金を出す際の欠損金の計算方法が変わってしまったんだ。それまでは赤字として国の補助をもらっていた事業者が、計算方法の変更で黒字と査定されてしまう。生活航路を守り抜かねばならない、この事業者の欠損を県と市が面倒を見て、こんな結果になっている。だから、県や市は必死の思いでこれを助けている。  そこで、そういう人たちが要望書を出しておられる。岡山県の笠岡市の当該の会社が岡山県離島航路行政連絡会議に出している要望書を読みますと、こういうふうに書いてある。「現在、当社の航路距離は二十九・五三キロメートル、旅客賃率は二十九円十三であります。標準収益の旅客運賃収入を算定する際には、距離帯三十キロメートル—一キロメートル賃率五十六円七十六で算定しますので、航路の実態とかけ離れた旅客運賃収入となります。したがって、距離帯区分を見直し、改善をお願いしたい。」二番目、「標準費用のうち減価償却費と利子の算出方法について見直しをお願いしたい。」こうやって岡山県で問題を提起しておられる。  ところが、こういう内容については、岡山県だけではなくして、例えば山口県離島振興協議会の会長さんの名前で県知事に出しておられる文書があります。要望事項、それを読みますと、   離島住民にとって、離島航路は何ものにも代え難い根幹的な交通手段であり、離島航路の公共性は、本土における幹線道路や鉄道の比ではありません。   離島航路の安全性、確実性、高速性、快適性並びに就航頻度は本土におけるいずれの交通機関に比べても著しく劣っており、加えて離島航路事業者の大部分経営基盤の脆弱な零細企業であり、近年の経営は危機に瀕しています。   こうした離島航路を抱える市町も、離島住民の足である離島航路維持に懸命の努力を重ねてきているところであります。   平成十一年度予算の編成にあたり、貴職におかれては、かかる実情を御賢察のうえ、離島航路補助にあたっては、従来どおりの補助制度維持と所要額の確保について格段の御配慮をいただくよう、 云々という文書が出ているわけです。  だから、いずれにしても、国の方で算定基準を変えたところから全国各地で大変な事態が起こって、府県、市町村で面倒を見なければならない事態というのはもう一層激しくなっておる。ところが、この事態を乗り越えられなくなって、十一のところではついに廃止になった。今度それが規制緩和になってざっと出てきたときには、この負担というのはどうなるだろうかというのを各地の諸君たちが心配しているという実態が、今私が提起した問題なんです。  そこで、私は、こういう問題に対してどんな対処をされるのか、少なくとも助成あり方はもとへ戻してくれ、この訴えについて少なくともこたえてやる必要があるんじゃないだろうか、これが聞きたい第一点です。  それから、聞きたい第二点は、これはもう時間の都合がありますのでやめますけれども、それぞれの自治体では、例えば、岡山の笠岡諸島を回る福祉の船「夢ウェル丸」というのをつくって、船内でおふろも入れるようにしてやるなど、本当に陸上と同じようなことを、手をどうして打ってやるかと必死の思いでおるわけです。だから、そういう離島航路の船に対して、陸上を走る鉄軌道と同じように福祉の対策の助成を考えられないものなんだろうか。  ことしの二月九日の当委員会の所信表明で、大臣は、「少子高齢化社会に対応し、また障害者の自立的な社会参加を促進するなどの要請に的確に対応するため、鉄道駅におけるエレベーターエスカレーターの設置を進めるなど、公共交通機関のバリアフリー化を積極的に推進」してまいりたいとおっしゃっている。それで、予算面においても、障害者対応便所などの国の補助率が一〇%、財団一〇%であったものを、国の補助を三分の一に引き上げるなどの措置を、三次補正予算から五十億の予算を組まれておやりになっている。だから、このバリアフリー施設整備を海の分野でも取り上げてやるということが考えられないものだろうか。  この二点についてお聞きして、終わりたいと思います。
  185. 川崎二郎

    川崎国務大臣 寺前委員、仕組みのことはすべて御承知の上で御質問いただいたと思っております。  今までは確かに、実績費用引く実績の収益、その差額の七五%を国から補助いたしておりました。それでは、実際に離島航路を走る経営者の努力というものがどこで生かされるのか、赤字だけが全部補てんされるということになれば経営努力というものは生かされないということになってまいります。そんなことから、近年は、国庫補助対象航路を除く全国の離島航路のデータの平均単価、これを持ってきて、標準費用と標準収益、この標準を出して、標準欠損そのものに対して国庫補助を今行っているところでございます。  ある意味では、経営努力によって結果として黒字になるところ、また、補てん金額では足りずに赤字になるところ、こういう差が出てきておるところでありますけれども、基本的には、やはりお互いの経営の努力というものは必要であろうと思っております。そして、その差額が、今お話しのように地方自治体に転嫁されている、こういう御指摘でございますけれども、経営努力については地方自治体が一番見ているわけでありますから、もう少し地方自治体も御努力を賜りたいなと思っております。  いずれにせよ、地方自治体、自治省とのこの問題についての議論というのはまだまだ詰めてまいりたい、このように思っております。  それからバリアフリーにつきましては、平成六年三月に、公共交通ターミナルにおける高齢者・障害者のための施設整備ガイドライン、そして、昨年の補正で新たな考え方を打ち出したところでありますけれども、旅客船ターミナルにつきましても、交通エコロジー・モビリティ財団において、旅客船ターミナルに加えて、旅客船自体につきましても助成を行わせていただいているところでございます。また、平成十一年度より、離島航路に就航する船舶バリアフリー化促進にインセンティブを与える観点から、エレベーター等、移動制約者等の利便向上に資する構造の新造船舶に対して、固定資産税軽減措置の拡大を図ったところでございます。  まだまだ少ないという御指摘かと思いますけれども、努力をしてまいりたいと思っております。
  186. 寺前巖

    ○寺前委員 御努力をお願いして、時間が来ましたので、やめさせていただきます。
  187. 石破茂

    石破委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。  次回は、来る二十七日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十二分散会