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1999-05-28 第145回国会 衆議院 安全保障委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月二十八日(金曜日)     午後一時三十八分開議   出席委員    委員長 二見 伸明君    理事 安倍 晋三君 理事 浅野 勝人君    理事 江口 一雄君 理事 仲村 正治君    理事 前原 誠司君 理事 横路 孝弘君    理事 佐藤 茂樹君 理事 西村 眞悟君       伊藤 達也君    池田 行彦君       臼井日出男君    大野 功統君       大村 秀章君    嘉数 知賢君       木村  勉君    栗原 裕康君       小泉純一郎君    阪上 善秀君       杉山 憲夫君    田村 憲久君       中山 利生君    山崎  拓君       吉川 貴盛君    伊藤 英成君       岡田 克也君    神田  厚君       桑原  豊君    島   聡君       河合 正智君    冨沢 篤紘君       冬柴 鐵三君    塩田  晋君       佐々木陸海君    東中 光雄君       辻元 清美君  出席国務大臣         外務大臣    高村 正彦君         国務大臣         (防衛庁長官) 野呂田芳成君  出席政府委員         防衛庁長官官房         長       守屋 武昌君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 柳澤 協二君         防衛庁装備局長 及川 耕造君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 竹内 行夫君         外務省欧亜局長 西村 六善君         外務省条約局長 東郷 和彦君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      今井  正君         安全保障委員会         専門員     田中 達郎君 委員の異動 五月二十七日  辞任         補欠選任   岸本 光造君     木村  勉君 同月二十八日  辞任         補欠選任   河井 克行君     大村 秀章君 同日  辞任         補欠選任   大村 秀章君     河井 克行君 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件     午後一時三十八分開議      ————◇—————
  2. 二見伸明

    二見委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前原誠司君。
  3. 前原誠司

    前原委員 民主党前原でございます。  きょうは、防衛庁長官外務大臣、お二人お見えでございますので、テーマを大きく三つに分けまして御質問をさせていただきたいと思います。  質問通告をしております順序を少々変えまして、防衛庁長官の方からまず御質問をさせていただきたいと思います。  まずは両大臣、衆参、長いガイドライン議論を御苦労さまでございました。このガイドライン議論の中でいろいろな問題点指摘をされ、また、我々からすれば、改善が図られた部分もあったし、また足らざる部分もあったということでございますけれども、私は、基本的に、国の安全保障危機管理というものを考えたときには、この第一歩というものは前向きに、積極的に評価をすべきではないかというふうに思っております。  そこで、質問をさせていただきたいわけでございますけれどもガイドラインそのものというのは、これは平素からの協力日本有事、そして周辺事態三本柱でございまして、今回はその周辺事態の、三本柱の一本をやったにほかならないわけでございまして、当然ながら、平素からの協力日本有事というものをやっていくということが必要なんだろうというふうに思います。  少々私見を申し上げますと、私は、この三本柱日本有事からやればもうちょっと国民に対して理解が得られやすかったんではないかなというふうに思っております。いろいろな御判断周辺事態をまず手がけられたということでございましょうけれども日本有事防衛協力からやっていれば、国民は、日本攻撃をされている場合、攻められている場合に、アメリカ日米安保条約第五条に基づいて協力をしてくれている、また、その米軍に対して、一部、国でありますとかあるいは民間、地方自治体が協力をする、こういうことになれば、自分の国が攻撃されているんだから、それにかかわってくれているアメリカ協力をするのは当たり前だ、こういうことの中で、もう少し防衛協力というものがすんなりと受け入れられたんではないかと思いますし、その後に周辺事態ということであれば、もう少し整理のされた議論がなされたんではないかと思います。  これは実際にもう周辺事態の方を先にやられて、そしてあと二つ残っているわけでございまして、これはお二人の大臣に伺った方がいいかもしれませんが、今後の予定、またどういうふうに取り組むべきなのかという御決意を、両大臣からお聞かせいただければというふうに思います。
  4. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 ただいま御指摘いただきましたように、新たな日米防衛協力のための指針は、周辺事態に際しての協力のほかに、平素から行う協力、それから日本に対する武力攻撃に際しての協力、これらについて、より効果的かつ信頼性のある日米協力ための堅固な基礎構築することを目的としておるものであります。  具体的には、平素から行う協力につきましては、ガイドラインに示されているとおり、情報交換政策協議実施安全保障面での種々協力、これは安保対話とか防衛交流とか軍備管理、軍縮や、あるいは国連平和維持活動等の分野での協力などがありますが、これらの種々協力推進、あるいは日米共同作業推進調整メカニズム早期構築、こういうものに努めてまいりたいと考えているところであります。  また、日本有事、すなわち日本に対する武力攻撃につきましては、平素から行う日米協力として位置づけられている共同作戦計画についての検討等推進するとともに、対日武力攻撃への対処に備えた我が国の態勢の構築に努めてまいりたいと考えております。  なお、周辺事態に際しての協力につきましても、平素から行う日米協力として位置づけられている相互協力計画についての検討等推進するとともに、法案の成立、承認を受けて、政令等整備など本法律の着実な実施に向けた体制の構築に努めてまいりたいと考えております。
  5. 高村正彦

    高村国務大臣 防衛庁長官が述べられたことと基本的に同じように考えております。
  6. 前原誠司

    前原委員 ガイドライン最終報告を読めば、今防衛庁長官がおっしゃった内容についてはそのとおりでございますし、また、そういう中身について精査をしながら詰めていく、こういうことは必要だと思います。  私が聞きたかったのは、ようやくこの三本柱のうちの一つが終わった。終わった中で、次はどういうタイミング日本有事防衛協力をやるのか、それとも平素からの防衛協力をやるのか、またそれについてのタイミングはどう考えておられるのか、またそれについてのアメリカとの協議はどのように進んでいるのか、もうちょっと具体的な、ガイドライン中身というよりは今後のスケジュールというところでお伺いをさせていただきたいと思いますので、防衛庁長官、御答弁をよろしくお願いします。
  7. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 基本的には、今両大臣から御答弁いただいたところでございます。  具体的な点につきまして若干補足をさせていただきますと、まず、平素からの協力ということで、これは何よりも、いろいろな情報交換なりあるいは政策協議なり、こういったものを充実していくことが一番の基本になろうかと思います。こういうことで、これからも私ども米側カウンターパート、そういったところの意見交換をさらに充実していきたいと考えております。  それから、この調整メカニズム構築ということでございますけれども指針で予定されております二つメカニズムのうち、包括的メカニズムは去年の一月に発足しているわけでございまして、この調整メカニズム構築推進を進めてまいりたい、こういうふうに思っております。これにつきましては、現在、関係省庁協議をしているところでございますので、その協議が整い次第その構築ができるものだろう、こういうふうに思っております。  それから、平素からの協力、またこれが周辺事態なりあるいは日本有事の際の協力基礎になるわけでございますけれども共同作戦計画検討、あるいは相互協力計画検討、こういったものは包括的メカニズムの中で、特に、現在は昨年の三月からBPCというレベルでもって検討しているわけでございまして、こういった検討をさらに促進をしてまいりたい、こんなふうな状況に今ございます。
  8. 前原誠司

    前原委員 そこを説明をしていただいたわけでございますが、国民から見て、私がもうちょっと簡単にお聞きをしたいのは、まあ準備は要ると思います。準備が要るから、次の国会だとかそういうことで、すぐにということを申し上げているんではなくて、三本柱のうちの一つが終わった、要は、あと二本はどういう順序で、どういうタイミング政府としてはやられようとしているのか、こういうことであります。  私の意見から申し上げれば、周辺事態法案、先ほど申し上げたように、順序としては日本有事からやった方がよかったんだろう、その方が国民からしてもわかりやすかった。つまり、周辺事態を先にやって、周辺事態というのは、日本有事にならないように未然に防止する策でありますけれども、万々が一それがうまくいかなくて日本有事という形になってしまった場合、今まで周辺事態と認定して協力できていた事柄がそこでぷっつり切れてしまって、逆に法律が何もない、あるいは協力関係が何もないという事態になるというのは、これは全く本末転倒だというふうに思います。  したがって、順序からいえば、日本有事防衛協力、またそれにかかわる国内の法整備を行うべきだというふうに思いますけれども、その時期と、またそういうお考えというものについてどのような御見解をお持ちなのか、それをお伺いしているわけです。
  9. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員が御指摘のとおり、日本有事に対する法体系整備というのは私は大変急ぐべきものだ、こういうふうに認識しております。  ただ、二十二年前に始めたこの日本有事法制研究につきましては、あくまでも研究をするようにという縛りがかかっておりまして、立法の準備じゃないということになっているわけでございます。  そういう前提で二十二年間その検討をしてきたわけでありますけれども、五十二年に開始されて、昭和五十六年の四月に、防衛庁所管法律について、防衛出動時における物資の収用等を規定した自衛隊法百三条に係る政令が未制定であるなど幾つかの問題点指摘しております。また、五十九年の十月には、他省庁所管法令について、損傷した道路等自衛隊がみずから応急補修をし速やかに移動等ができるようにするため、道路工事等の規制を定めた道路法に対し特例措置が必要である、こういうような何点かの問題を発表しているわけであります。  それからもう一つ、第三分類と言われる所管省が明確でない事項に関する法令につきましては、個々の具体的検討事項担当省庁をどこにするかとか、あるいは今後の取り扱いについて、内閣安全保障危機管理室が今種々調整を行っている、こういうことであります。  私どもとしては、その有事法制整備がぜひ必要であるということは累次申し上げてまいりました。例えば、日本有事になって、海岸に陣地を構築しようと思っても、現行法だと海岸法許可をとるのに三週間もかかる、あるいは指揮所をつくろうと思っても、建築基準法許可で三週間もかかるということで、これじゃ防衛出動をしたとしても、国土を守るということにおいては非常に問題があり過ぎるわけでありまして、そういう意味で、歴代の防衛庁長官が長い間研究してきたのでありますから、研究にとどまらず、この研究成果に基づき法制整備されることが望ましいという考えを歴代申し上げている次第でございまして、この点につきましては、私どもも、政府の中でも国会でも、ぜひこういう検討が進んでいくことが望ましいし、我々もぜひそういう対応をしてまいりたいなと考えておるところであります。
  10. 前原誠司

    前原委員 次に質問しようと思っていた部分まで、つまり有事法制整備の分まで御答弁をいただいた部分もございますが、この質問をしながら、防衛庁長官一人にこの質問をするのは酷な話かなというふうに実は思っています。  といいますのも、今おっしゃったように、第一分類については防衛庁所管だ、第二分類については他省庁、第三分類についてはわからないと。また、米軍協力してくれるときのそういう法律もございますので、大まかに分ければこういう四つの分類について、防衛庁長官としてある程度頑張れと後押しをできるところというのは第一分類だけでございますので、総理あるいは内閣が一体となって政治的なリーダーシップをとりながらやっていかないと、幾ら防衛庁長官にこれをどうするんだということを突き詰めていっても、防衛庁長官自身としては、仮に意思があってもなかなかお一人の御判断ではうまくいかないというのはわかった上で質問をしているわけであります。  ただ、やはり中心となるのは自衛隊を預かる防衛庁長官が政治的なリーダーシップ閣内でとられて、周辺事態の後は日本有事のための防衛協力、また、それに関連をした法的な整備をやらなきゃいけないということをしっかりと閣内で物を言われる、そして総理がそういう政治的な意思を持って各大臣に対してそういう指示をされる、こういったことが必要だと思いますし、また、私は総理に対して何らかの場で、こういう委員会の場で質問ができる機会があれば総理に対してしっかり言いたいと思いますけれども、要は、望んでいるのではなくて、防衛庁長官として、次は日本有事防衛協力だ、あるいはそれにかかわる法律だという意思をやはり所管の一番ポイントになる大臣として持たれることが私は非常に重要だと思いますので、望んでいるということじゃなくて、御自身がどういうふうに今思っておられて、これからどういうふうに閣内で動こうとされるのか、そういった意思も含めてもう一度御答弁をいただきたいと思います。
  11. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今委員指摘の点につきましては、総理もたびたびいろいろな国会の場において前向きの発言をされている向きもあります。また、政府の中には極めて慎重論を唱える人もいることも事実でございます。そこで、私はそのはざまに立って、内閣安全保障危機管理室長に対しては、第三分類につきまして、早く研究成果を出していただきたい、できれば六月いっぱいぐらいに出してほしい、そういう全体の枝ぶりができてから、関係者が集まって、これを議論しながら進めていくということが大事だろうというふうに今は認識しております。  それから、先ほど、周辺事態については米軍とのかかわり合いが整備されたけれども日本有事の場合には米軍との関係法制がないという御指摘がございましたけれども、この点については、はっきり申し上げまして、まだ研究に着手をしておりません。しかし、安全保障上の問題、大事な課題と認識しておりまして、ぜひこの検討もしなければいけない、そういうことの検討が開始された場合には、防衛庁としても特に外務省等関係省庁とともに必要な協力を行っていきたい、こう考えているところであります。
  12. 前原誠司

    前原委員 私が申し上げるまでもなく、安全保障というのは何かがあったときに対処できるものを平素からしっかりと整えておくということでございますし、その点でも最も大事な部分というのが、そういうことがあってはいけませんし、ないような外交努力外務大臣中心にしてやっていただきたいわけでございますけれども、そういう法律を整えるということが我々の使命だと思いますので、ぜひ防衛庁長官閣内でもリーダーシップをとっていただいて、前の昭和五十三年のガイドライン、三つ決めたけれども法整備が全然行われずに二十数年間放置された、今回のガイドラインについても、周辺事態についてはやったけれどもあと二つについてはまた放置されるということが絶対ないように、ぜひ継続してあと二つについて取り組んでいただくように要望させておいていただきたいと思います。  次に、領域警備の問題について御質問をさせていただきたいと思います。  これは、私は防衛庁長官にも御質問いたしましたし、またこの間の特別委員会総理にも質問いたしまして、研究をしたいということで、ある程度の前向きの御答弁をいただいていることでございますけれども、再度、中央省庁再編法案が出ているわけでございますので、警戒監視活動法的根拠についてお尋ねをさせていただきたいと思います。  今回、中央省庁再編法案の中で、これは防衛庁設置法のみならず、他の役所の設置法についても所掌事務権限規定というものがダブっているんじゃないか、そして権限規定というものが裁量行政につながっている、通達行政につながっているんじゃないかという批判のもとで、今回の法案では権限規定を削除する、こういう形になっております。  しかし、この間の北朝鮮の工作船のときにも、警戒監視活動はどの法律根拠法にしてやっているんだという私の質問に対して、防衛庁設置法の第六条の十一号、調査研究、こういうものをその根拠にしているんだという御答弁がありました。そして、これは権限事項に入っておりますので、これを、権限事項をすべて削除してしまえば警戒監視活動に対する法的根拠がなくなるということで、所掌事務の中に今回入れる、こういう改正がなされるわけでございます。  確かに、組織をいじるための便宜的な組織法改正と、そして、これは防衛庁から説明をいただいておりますけれども内容についての検討というのは作用法の問題であって、これは分けてもらいたい、こういう指摘があるのも事実ですし、一面理解ができないテーマでもございませんけれども、しかし、こういった省庁再編法案というものが出されて、そして所掌事務の中に調査研究というものを入れないといけない、こういうことについては、私はやはり、これを契機に自衛隊法の中に警戒監視活動というものをしっかり入れ込むということが大切じゃないかと思います。  いろいろな外国の事例を研究したりあるいは今までの歴史を研究したりすることの根拠になっている調査研究と、警戒監視活動が同じ法的根拠というのは、だれが考えてもおかしいわけでございまして、そういう意味で、前回安保の、あれは正式な委員会じゃなくて、何かやったときに、防衛庁長官に私が質問をいたしましたときに、研究したい、こういう御発言でございましたけれども警戒監視活動について自衛隊法なりにしっかり法的根拠を明記するという意見について、現在のお立場、考えをお聞かせいただきたいと思います。
  13. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 警戒監視活動につきましては、防衛庁権限を規定した防衛庁設置法第六条第十一号の一環として実施してきたものであり、そのことは累次申し上げてきたところでありますが、今般の中央省庁等改革に伴う防衛庁設置法改正においては、各省庁押しなべてでありますが、権限規定を置かないということになったものですから、組織法防衛庁設置法の第六条が全面的に削除されたわけであります。そこで、自衛隊が引き続き警戒監視活動調査活動を行うことができることを法律上明らかにするため、今回は、第五条の所掌事務規定を見直し、同条に新たに第十八号として「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと。」を設けることにしたという経緯でございます。  警戒監視活動は、国民権利義務にかかわらない行為であって、実力の行使も伴うようなものではなく、かかる活動については設置法所掌事務範囲内で行うことが可能であると考えておるわけでありますが、いずれにしましても、この警戒監視活動を、委員がおっしゃるように、自衛隊法に明記すべきではないかという御指摘の点につきましては、前回も申し上げたとおりでありますが、今回の改正とは別途に、その法的意義等を十分に整理しつつ慎重に検討してまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  14. 前原誠司

    前原委員 前回の御答弁と変わったのは、慎重にという言葉が入ったんじゃないですか。  今まではこれを根拠法としてきたので、変えるというのは、それは行政継続性部分からなかなか難しいのは事実だと私は思いますけれども、しかし、これを機会にしっかりとした法的根拠というものをつくるんだ、こういうことは、私は、わかりやすい政治、行政というものをやる上では必要だと思いますので、慎重は当然慎重にしていただくわけでございますけれども、しっかりとそれについては対処をしていただくように再度要望させていただきたいと思います。  また、それに関連をして次に質問をさせていただきますけれども、この間の工作船の問題で、海上警備行動自衛隊法をつくられてから初めて発令をされました。これについては、意外とと言ったら失礼かもしれませんけれども、すんなり発令をされた部分があって、取り逃がした取り逃がさないという議論もありながらも、その対処については私は一定の評価をしております。ただし、今の法律範囲の中でということになると、なかなか難しいことも出てくるのかなということを思わざるを得ません。  具体的にどういうことかと申しますと、空と海と陸に分けた場合、空は、一義的に警察としてやっているところがございませんので、これは自衛隊がある意味警察活動もともに行っているという部分があるわけです。隊法の八十四条の領空侵犯措置というものについては、そういったものを含んでいるわけでありますけれども、海については、一義的には海上保安庁警察の任に当たる、そして陸については、当然警察がその任に当たるということでございますけれども、その任に負えない部分が出てきた場合、あるいはその任ができない場合で、しかし、自衛隊としてその能力があるとか、あるいはその時点においては自衛隊が出た方がより効果的にそういった警察活動ができる場合というのはあると思うんですね。その場合に、海上警備活動隊法八十二条の海上警備活動がああいう形で出ましたけれども、やはり海上警備活動発令というものは、これは重いものだというふうに受けとめなくてはなりません。つまり、常日ごろの警察活動と、それから、その警察活動海上保安庁が手に負えないというときに発令する海上警備行動とのすき間がかなり大き過ぎるんじゃないか、ハードルがかなり高過ぎるんではないか、私はそう思っているわけです。  私は、海よりももっとハードルが高いのは陸だと思っておりまして、一義的には警察がやる、しかしながら、警察では手に負えない、つまり、このごろのテロでもかなりの火力のものが使われる、ロケット砲とかが使われるということになってくれば、なかなか警察では対処できないということもあるかもしれません、テロが起こった場合とかそういう場合については。そうなると、自衛隊が出ようと思ったら、手段としては、国会承認事項である治安出動にいきなりなっちゃうわけですね。これはまたハードルとしてかなり高過ぎる。  つまり、海ですと、海上保安庁が常日ごろやっていること、自衛隊がそれに加わろうと思えば海上警備行動発令、そして陸でありますと、警察がやっていることで自衛隊がそれに加わろうと思えば、治安出動とか、はたまた防衛出動とか、そういう極めて高いハードルになっちゃう。そこのすき間を埋める新たな取り決め、ひょっとしたらこれは法律じゃなくて運用かもしれません、これは我々民主党もしっかりとこれから議論していきたいと思っておりますが、その高いハードルを埋める何らかの措置というものは必要なんじゃないかなというふうに私は思っておりますが、防衛庁長官、その点について見解をお聞かせいただきたいと思います。
  15. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 平時におきます不法行為等への対処につきましては、今委員からもお話がありましたとおり、第一義的には警察機関の任務であります。自衛隊は、警察機関では対処が不可能もしくは著しく困難と認められる事態が発生した場合には、治安出動海上警備行動により対処することとなる、これは私は、この法的枠組みはぜひ守る必要があると考えております。  防衛庁としては、こうした枠組みのもとで適切に対処してまいる所存でございますが、いずれにせよ、このような事案に対してのより適切な対応を期するため、今委員からも提起されたようなことも含めまして、自衛隊の対応のあり方や関係省庁間の連携について今後ともさらなる検討を行い、万遺漏なきを期したい、こういうふうに考えております。
  16. 前原誠司

    前原委員 一人一人の国民から見れば、防衛庁の役人の人あるいは自衛隊員も公務員であり、そしてまた我々政治家も公務員であり、また海上保安庁で働いている人や警察の人も公務員なんですね。つまり、税金を払って、そしてそれでサービスを受けて、安全保障あるいはそういう治安というものを維持してもらっているということでありまして、いかに税金を少なく、しかし効果は最大に得られるかということを、我々は共通の基盤で考えていかなければいけないというふうに思います。  そのときに、私は、やはり厳に戒めなければいけない一つの大きなポイントは、もし役所間の縄張り争い、あるいは自衛隊の中でも陸海空の縄張り争いというものがあれば、それはおかしい、そしてよくない、それは国民の視点から見ればかなりゆがんだ行政であるというふうに思うわけです。したがって、警察も任務遂行を一生懸命やってもらっている、自衛隊も一生懸命やってもらっている、海上保安庁もそうだという中で、やはり政治がリーダーシップをとって、今おっしゃったところの検討の中には、他省庁防衛庁長官でしたら運輸大臣とかあるいは国家公安委員長、自治大臣とかと常にそういう協議を、うまく連携を図っていただきながら、その役所の垣根を越えた、しかし、国民から見れば、税金が本当にうまく利用されている、そして治安が効率よく発揮されている、こういう視点というものが私は必要だと思います。  そういう観点から、もう一度防衛庁長官に伺います。  つまり、他省庁にまたがる問題であるという御認識を述べられましたけれども、やはりそういうところについてはリーダーシップをとっていただいて、ぜひ、運輸大臣やあるいは国家公安委員長ともうまくこれから連携をとっていただいて、そして治安あるいは安全保障というものに遺漏のなきように努力をしていただきたいということで、ぜひもう一度御答弁をいただきたいと思います。
  17. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 政府側としても、今委員から一々御指摘いただいたようなことを痛感しておりまして、内閣におきまして、今七つのテーマに基づきまして、内閣主導で、防衛庁、外務省、それから海上保安庁、国家公安委員長、こういう関係者が相集まりまして、ひとつ完全な形で海上警備行動等に対処していこう、こういうようなことを今連日検討しているところでありまして、私どもは、それが政府の統一見解としてまとまればそれに従って行動していくことになる、こういうふうに考えております。
  18. 前原誠司

    前原委員 防衛庁長官、ぜひその点はまたリーダーシップをとっていただいて、御努力をいただきたいと思います。  お待たせをいたしましたので、外務大臣に御質問をさせていただきたいと思います。北朝鮮政策でございます。  時間がありませんので、若干短目に私の思いを述べさせていただくと、ガイドラインというのは、よくお二方とも答弁されておりましたように、対話と抑止の抑止の部分だろうと思います。しかし、やはり紛争というのはできる限り起きないようにする、その前の努力が必要だという点では、これはだれも変わらない認識だろうというふうに思います。そういった点で、今の北朝鮮政策というものを、私は重大な岐路に来ていると思いますし、ある意味でいいチャンスというふうな萌芽が出てきているんではないかと思いますので、ぜひ対北朝鮮政策についてのリーダーシップをお願いしたいという立場から、幾つかの点について質問をさせていただきます。  まず、北朝鮮に行かれる前にペリー調整官が日本にも立ち寄られて、外務大臣とも会談をされたということでございますが、どういう意見交換をされたのか、また、外相からはペリーさんにどういうお話をされたのかをお聞かせいただきたいのが一点。  ちょっと時間がないのでまとめて御質問します。  これは新聞報道でございますし、まだペリーさんのレビューというものが出ておりませんので、どういうものになるかというのはまだもちろんはっきりしていないわけでございますが、新聞報道の中では、ペリー報告には三点の柱が盛り込まれるであろうと。一つは関与政策の維持、それから包括的アプローチ、それから北朝鮮への警告。この最後については、いかがなものかというふうなお話があったということも若干承っておるわけでございますけれども。  この包括的アプローチということは、きょう趣旨説明のあったKEDOの問題についてもしかりでございますし、KEDOのみならず、日米韓あるいは四者会談、そういった横のネットワークというものが意味を持つんだろうと思いますが、この包括的アプローチの中に日本はどのように関与をしていくおつもりなのか。その二点について御質問をいたします。
  19. 高村正彦

    高村国務大臣 二十三日、私は、訪朝前に来日されたペリー米国北朝鮮政策調整官と会談したわけでございます。その際、私からは、同調整官が緊密に日韓と協議していることを評価していること、我が国の懸念する問題が包括的かつ統合されたアプローチに十分取り上げられていることを評価して、このアプローチを支持すること及びこのアプローチの中で我が国としても積極的な役割を果たしていきたいと考えていることを伝えたわけでございます。  これに対して、ペリー調整官から、これまで日米韓三カ国が緊密に協議して政策見直しが行われてきており、日本側の協力に感謝している、日米韓の協力は重要であり、今後とも緊密な連携協力を図っていきたいという発言があったわけであります。  ペリー北朝鮮政策調整官は、実現可能な対北朝鮮政策の選択肢として、核やミサイル問題等を含んだ、包括的で、かつ日米韓三カ国の協調により統合されたアプローチを検討中だということでありますが、このような内容は我が国の立場を十分踏まえたものなので、我が国政府はこれを支持しているわけであります。  このアプローチへの我が国の関与につきましては、ペリー調整官による政策見直しが完了していない現時点において確たることを申し上げるのは困難でありますが、今までも申し上げておりますように、北朝鮮がこのアプローチに前向きに応じるのであれば、我が国としても米韓両国と緊密に連携しつつ前向きな対応を行う考えでありまして、今後とも、北朝鮮をめぐる諸問題につき積極的な役割を果たしていきたい、こう考えております。
  20. 前原誠司

    前原委員 日米韓の協力関係のみならず、どういうものが具体的に挙げられるのかということはなかなか、逆に聞かれれば難しい部分もございますけれども日本として何ができるかという視点も常にお考えをいただきながら、もちろん米韓と協力をしつつ、この包括的アプローチということには関与していただきたいというふうに要望いたします。  きのう外務省北東アジア課から資料をいただきまして、この資料を読ませていただきました。  私が質問したかったポイントというのは、北朝鮮は変化しつつあるのか、あるいはその萌芽というものが見出せるのか、こういうことでございます。きのう北東アジア課からいただいた「北朝鮮内政」という部分については、五年ぶりに予算というものが出されて、財政赤字の存在を初めて認めた。そしてまた、予算は五年前と比べてほぼ半減している。そしてまた、今までは金正日総書記はみずから経済にかかわっていない、そして、経済の失敗というものをある意味でその担当者の責任にして、みずからは一歩引いていた。こういう分野についても、人民経済計画法の起草に全面的に関与し、みずからが経済分野に乗り出してきたというふうに書かれております。  また、客観的な情勢を見れば、ペリーさんが行かれたときに、これからどなたに会われるのかよくわかりませんが、今私の知る範囲では、今度中国に八年ぶりに首脳としては行くことになった金永南、ナンバーツーの最高人民会議常任委員会委員長と会われたという報道もなされておりましたけれども、北朝鮮が積極的にペリーさんと会うとか、あるいはまた、その会った人自身が八年ぶりに中国を訪問する、こういうことから、どういう萌芽があるのか、変化があるのか、またそれをどういうふうに見ておられるのか、外務大臣、ちょっと分析をしていただければというふうに思います。
  21. 高村正彦

    高村国務大臣 我が方の資料を御紹介いただきまして、ありがとうございました。  資料にはそういうことが書いてありますが、同時に、北朝鮮は対外政策の基本的な方向性などを明らかにしていないわけでありまして、その意思決定や行動は依然として極めて不透明で、余り確かなことは申し上げられないわけであります。  今も御紹介ありましたように、一九九二年の中韓国交正常化以来疎遠になって、一九九四年の故金日成主席の死去以降は首脳レベルの往来がないとされている中国との関係において、六月三日から金永南最高人民会議常任委員長が訪中することが発表された。北朝鮮の対外政策における一定の変化と言ってもよいと思いますし、また、ペリー調整官についても受け入れて、そしていろいろ話をしている。これがいい方向の変化であればいいな、こういうふうな感じを持っております。
  22. 前原誠司

    前原委員 いささか断定的に物事を申し上げるかもしれませんが、今の日本の北朝鮮への対応というのは、私が断定的に申し上げるのでは、入り口政策である。つまり、入り口で、入るか入らないかでいろいろもめている。  この入り口政策、出口政策というのは、私の言葉ではなくて、北方四島の返還のときに、旧ソ連のときから領土問題でどういうスタンスをとるのかということでよく使われていた言葉でございますけれども、私は、ある意味でこの対北朝鮮政策も、今の日本のとっている政策というものを、つまり拉致問題などの諸懸案の解決が関係改善の前提である、こういう立場の中でなかなかそこから前に進まないという入り口政策よりは、もう少し中に入って、出口でそういうものをある程度解決できるような交流というものもあわせて図っていくという、まあ出口政策になるのか中間政策になるのかわかりませんが、そういう形に徐々に変えていった方が私はいいんじゃないかと思いますし、むしろ、アメリカ、中国というものは、私が見る限りはそのスタンスに変わってきているのではないかという感じがいたしております。だから追随をしろということではなくて、やはりさっきの包括的アプローチということを考えれば、日本もその変化の芽というものを機敏に感じ取って、入り口政策から出口政策というものに変わっていくべきではないかという思いをいたしております。  その中で、日朝間の貿易の振興、これを私は一つ重要なポイントとして見るべきじゃないかなというふうに思っております。  これもまた、きのう北東アジア課からいただいた資料でございますけれども、過去十数年間の日朝貿易の推移とか、あるいは一九九七年一月から十二月にかけての累計で、日本からどういうものが輸出されて、またどのようなものが輸入されているかという統計資料もいただきました。  貿易量を見ますと、日本の輸出というものは、一九八〇年以降、だんだん下がってきているわけですね。相当下がってきています。大体四分の一ぐらいまで日本からの輸出というのは減ってきている。日本の輸入というものは、ほぼ変わっていないけれども、一割程度減っているということで、全体としては、日朝貿易というものは今の日朝関係を反映して先細りになってきている。  もっと貿易振興というものは考えていいんじゃないかと思いますが、その点について、最後ちょっと質問になって、余り外務大臣にお答えをいただくような話ではないかもしれませんけれども、そういう経済の草の根の交流というものをもうちょっと分厚くしていくということも政府のとるべき大きな措置じゃないかと思いますが、その点についてお答えいただきたいと思います。
  23. 高村正彦

    高村国務大臣 日朝間の貿易が拡大することは、北朝鮮との交流が進み、相互理解が促進されるとの側面があって、そのようにして北朝鮮が徐々に国際社会に開かれていくことは基本的に好ましいことだと考えております。  ただ、日朝間には外交関係がなくて、北朝鮮における邦人の利益の保護の面で制約があるという事情によって、北朝鮮との経済活動は活発ではないわけであります。  また、北朝鮮には、我が国との間で多額の貿易代金を未払いのままにしているという問題があるというふうに承知をしております。昨年末現在で、我が方は、北朝鮮との間で一千億円を超える輸出債権を有しているわけであります。
  24. 前原誠司

    前原委員 時間が参りましたので終わりますけれども、そういうことも昨日伺って、未払いがあるというのは存じ上げておりますけれども、そういうことも含めて、政府が何らかの後押しをする中で民間交流、経済交流が進んでいけば、私は、新たな日朝関係の糸口が見えるのではないかというふうに思いましたので質問をさせていただきましたので、ぜひそういう部分も含めて御努力をいただくことを期待しまして、私の質問を終わります。
  25. 二見伸明

    二見委員長 次に、河合正智君。
  26. 河合正智

    ○河合委員 公明党の河合正智でございます。  高村大臣、訪ロ前の大変慌ただしい時間でございますが、質問させていただきます。よろしくお願いいたします。  また、防衛庁長官にも質問させていただきたいと思います。  最初に、パキスタンによるインド軍機の撃墜事件についてお伺いさせていただきたいと思います。  この問題について、高村大臣としてはどのような所感をお持ちですか、まずお伺いさせていただきます。
  27. 高村正彦

    高村国務大臣 基本的に困ったことだな、こういうふうに思っております。  事実関係を簡単に述べさせていただきますと、二十七日にパキスタン政府は、カシミールのカルギル地区において、パキスタン領域内七、八キロ付近にインド空軍二機が領空侵犯したため、地上火器によりこれを撃墜し、インド空軍操縦士一名が死亡、その他同国空軍操縦士一名が捕虜としてパキスタン側に捕らえられた旨発表いたしました。他方、インド空軍当局は、インド軍機によるパキスタン領空侵犯はなかったとするなど、事実関係の発表ぶりについて食い違いが見られると承知しております。  どっちがいい、どっちが悪い、わかりませんが、非常に困ったことである、こういうふうに思っております。
  28. 河合正智

    ○河合委員 日米ガイドライン関連法案が成立したところでございますけれども、アジアの平和、安全保障考える場合に、インド、パキスタン、核を保有し、しかもミサイル技術について開発激化しているこの二国を抜きにして考えられないと思いますけれども、それに対する日本政府としての取り組みについて、どのようにお考えでしょうか。
  29. 高村正彦

    高村国務大臣 我が国といたしましては、昨年五月、相次いで核実験を行った印パ両国が戦闘を行っていることは、アジア太平洋地域の安全保障にも悪影響を与えるものとして懸念しており、二十七日、両国に自制と速やかな戦闘停止を求める外務報道官談話を発表したところでございます。  両国間の紛争の原因としてカシミール問題が存在していると承知しておりますが、我が国は従来より両国に対し、二国間での話し合いを通じた平和的解決を求めてきているわけでございます。  本年二月にはパキスタンのラホールにおいて印パ首脳会談が行われ、両国の緊張緩和に向けた好ましい動きが見られたところ、かかる動きを勇気づけるべく、両国に関係改善に向けた対話プロセスの進展を強く働きかけていく所存でございます。
  30. 河合正智

    ○河合委員 ありがとうございます。  次に、アメリカの下院調査特別委員会が中国の核スパイ疑惑の報告書を発表しましたことについてお伺いさせていただきます。  日米ガイドライン日本において成立しました時点で米中間にこのような応酬が行われておりますことについて、同じように大臣、どのようにお考えでしょうか、お伺いさせていただきます。
  31. 高村正彦

    高村国務大臣 今回、米下院調査特別委員会が公表した報告書について、クリントン米大統領は、本報告書に示された勧告の実施とともに、中国に対する関与政策の継続を確認していると承知をしております。  政府といたしましては、米中関係が今後どのように進むか予断することはできませんけれども、我が国としては、本件をめぐって、アジア・太平洋地域、ひいては世界の平和と繁栄にとって不可欠の要素である米中関係が後退することがないように切に希望しているところでございます。
  32. 河合正智

    ○河合委員 少し観点を変えまして、いわゆるあいまい戦略につきましてお伺いさせていただきたいと思います。  周辺事態という定義自体がこれはあいまい戦略に基づいているという説がございますけれども、いわゆるあいまい戦略ということについて、大臣個人のお考え、また日本政府としてどのように位置づけているのか、お伺いさせていただきます。
  33. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 先生が御言及されておられますあいまい戦略ということにつきまして、私どもしかと定義をしてお受けとめするということができないわけでございますので、なかなかお答えづろうございますが、いずれにしましても、周辺事態安全確保法におきましては、法律におきまして周辺事態について明確な定義をしているというのが法律を提出した政府考えでございますし、さらに、この衆議院の審議におきまして、より丁寧に例示的に説明をするということで修正が加わったということも事実でございます。  あいまい戦略、政府考えというよりも、恐らく先生がお話しになられているのは、いろいろな安全保障の観点からすれば、一種の抑止力をということで安全保障を保つというためには、いろいろなことについて明確でない方がかえって抑止力が維持されるというような考え方であろうかとも思われますが、周辺事態安全確保法、ガイドラインとの関係につきましては今申し上げたとおりでございます。
  34. 河合正智

    ○河合委員 いわゆるあいまい戦略と言われているものにつきましては、これを戦略的あいまいさという形で主導いたしましたジョーセフ・ナイ教授の言葉をかりますれば、例えば、中国に対しては明確にこのように述べられたことがございます。  米国が強力で重要な国である中国と定期的な接触を保ち、中国が同じ立場をとる場合は協調し、そうでない場合は影響力を行使する方法を見出すことが重要であると言われております。  しかし、この戦略的あいまいさの上に立って主導してまいりましたナイ・イニシアチブ、東アジア戦略報告に基づくこのガイドラインというものに対して、日本はそのガイドライン関連法案をやっと成立させたところでございますけれどもガイドライン最終報告が提出されましたのは九七年の九月ではなかったかと思いますけれども、それに基づいて私どもは、日本政府ガイドライン法案というものを審議したわけでございますが、実は、このあいまい戦略の主導者でありましたジョーセフ・ナイ教授が「ア・タイワン・ディール」という論文を、昨年の、一九九八年三月八日、ワシントン・ポスト紙に寄稿されているところでございます。  この意味するところは、実は危機回避の最善策は米国の政策を明確にすることだ、戦略的なあいまいさというのはかえって危険だ、そういう立場に立ちまして、さらに踏み込んでこのようなことを提案されております。  それは、一、米国が台湾の独立を認めず、防衛しないということを明言する。二、台湾も独立を目指さない方針を確認する。三、中国は台湾の幅広い国際活動を認め、香港に対する一国二制度を、台湾を含めた一国三制度に拡大するという内容でございます。  これが昨年の三月八日でございますが、六月にクリントン大統領は御案内のように訪中をいたしております。  こういうことを検証いたしますと、アメリカという国は、非常に戦略的あいまいさに基づくスタンスをとりながら、外交交渉の場におきましては実にぎりぎりの対話を行っていることがうかがえるのではないかと思います。このことにつきまして、高村大臣はどのようにお考えでしょうか。
  35. 高村正彦

    高村国務大臣 米国の民間有識者の中には、ナイ氏のように、中台両岸関係に関する政策のあいまいさはかえって危険性を生むといった議論があることは私も承知をしております。  昨年六月に中国を訪問したクリントン大統領は、いわゆる米中間の三つの共同コミュニケに基づく従来の政策を維持しつつ、江沢民主席に対して、中台間の対話を平和的解決への最善の道として追求するよう促したというふうに承知をしております。  今委員が御指摘になったことは、これはナイ氏の主張であって、アメリカが外交の中でそういうことを中国に対して言ったということは私は承知をしていないんですが。
  36. 河合正智

    ○河合委員 アメリカの外交の中で取り上げられている政策にまで至っていないという認識は確かに承りました。  ところが、昨日の朝日新聞に掲載されております、中国社会科学院の日本研究所副所長の蒋立峰氏、この方がいわゆる新ガイドライン後の安保というテーマの中でこのように申されております。これは、新たな段階に入ったと言える日米安保の台湾への影響をどう見ていますかという質問に対して、国務院のシンクタンクである社会科学院の副所長はこのようにおっしゃっております。米国、日本両国とも台湾に対して独立不支持、一つの中国の約束を堅持すべきだ、このように明確に述べておりますが、これは文脈からしますと、実にナイ教授、ある意味ではもう、アメリカの国防次官補を退きまして、今ケネディ・スクール大学院の院長でいらっしゃいますから政府から離れてはいらっしゃると思いますけれども考え方としては、私は非常に明確な米中の間の対話の、合意とまではいきませんけれども、基軸と言えるものを見る思いがするわけでございます。  私は、なぜこのことを取り上げるかといいますと、実は小渕総理大臣も、七月訪中時にこの日米新ガイドラインの問題につきましては中国側の理解を得るべく最大の努力をするということを官房長官の記者発表を通じてお述べになっているところでございますけれども、日米という二十一世紀の安全保障にとって非常に基軸となる基軸、しかし、日本アメリカという太平洋を離れた同盟でございますが、一衣帯水の国であります中国は、息遣いもそのまま伝わってくる、そういう位置、また歴史的な関係性、そして日本は文化を多大に中国によって歴史的に受けてきたという関係からしましてもあるわけでございまして、こういうスパイ疑惑事件に対する米中の激しい論争の中にありまして、日本政府のとるべき外交のスタンスというものも、もう少し、腰が引けないで、踏み込んで、積極的に対話、そしてそれを通じた交流まで含めたものにすべきではないかと私は考えるところでございます。  したがいまして、高村大臣、きょうはロシアへお出かけでございますけれども総理大臣が七月に訪中されるときには、中国との話し合いにおきまして、アメリカにはできない、しかし日本にはできる、そういう安全保障対話と、そして人事交流、これをぜひともお願いしたいと私は思うわけでございます。対立点があることに危機があるのではなくて、むしろそういう対立点があるままに放置していくことに危機が芽生えるのではないかと私は思います。  その意味で、これは外務大臣にも強くお願いするわけでございますし、そして防衛庁長官にも、現在日中間においてなされております交流、これをさらに、人民解放軍との、自衛隊との交流も、幅広く、積極的に、相互理解が深まる、しかし、それがまた透明性を高めるというまで交流をお願いしたいと私は思うわけでございますけれども、この点につきまして、私が今述べましたことに対しまして、大臣、そして防衛庁長官のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  37. 高村正彦

    高村国務大臣 日本政府としても、既に、台湾の独立は支持しないということは、これは言っていることでございます。  日米ガイドライン関連法案がこの間成立しましたが、この問題につきましても、従来から、関心を有する諸国に対して、総理、私、防衛庁長官と、累次の機会説明を行ってまいりました。  例えば中国については、本年三月のベルリンにおけるASEM外相会談の際に、私からトウカセン外交部長に対して説明を行いました。中国側の一定の理解は得た、こういうふうに考えております。  韓国につきましては、本年一月の野呂田防衛庁長官の訪韓等、累次の機会に新関連法案等の整備状況について説明しており、韓国政府は今般、本法案はこの地域の安定に寄与するものとの論評を発表しているわけであります。さらに、二十四日、本法律等が成立、承認されたことを受けて、現在、外務省及び防衛庁の担当者を説明のため韓国及び中国に派遣しているところでございます。  また、従来から、シンガポールを初めとするASEAN諸国及び豪州からも、一般的に肯定的な評価を得ているものと承知をしております。政府としては、今後とも本件に関心を有する諸国に対して透明性を確保することが重要であると考えており、必要に応じ、しかるべく説明を行っていく考えでございます。  このガイドライン関連法案だけでなくて、できるだけ防衛政策、安全保障の問題、お互いに透明性を確保して信頼醸成をしていくことが大切だと思いますので、今後ともそのような努力をしていきたい、こういうふうに思っております。
  38. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 アジア太平洋地域において大きな影響力を有しておる中国との間で相互理解や信頼関係を増進することは、両国間の安全保障のみならず、アジア太平洋地域の平和と安定に資するものでございます。まさに、委員のおっしゃるとおりでございまして、防衛庁としては、中国との防衛交流の中で、特に我が国の防衛政策に対する中国側の理解の促進に努めるとともに、中国の軍事力や国防政策の透明性の向上について働きかけているところであります。  昨年は、二月に遅浩田国防部長が訪日され、五月に防衛庁長官が訪中し、大臣の相互訪問が実現したところであります。そして、その際に、大臣レベルの対話の継続的実施、総参謀長の訪日及び自後の統幕議長の訪中、次官級協議実施、分野別、軍種別交流の積極的推進、艦艇相互訪問の実現に向けた事務的調整実施等について合意され、それを実行しているところであります。  また、十一月の江沢民国家主席訪日時の日中首脳会談においても、安保、防衛分野での交流を漸進的に拡充することを確認しており、防衛庁としては、今後とも中国との防衛交流を一層推進してまいりたいと考えているところであります。
  39. 河合正智

    ○河合委員 大変ありがとうございます。ぜひとも積極的な取り組みをお願いするところでございます。  特に、二十四日、中国外務省の朱報道局長はこのように談話を発表しております。日米ガイドライン成立に対する談話でございますが、日本が歴史の潮流に逆らい日米の軍事協力を一層強めることに固執した行動をとったことについて重大な関心を表明するという表現を使っております。七月の訪中という総理の重要な日程を最大限利用していただきまして、積極的な外交努力をお願いするところでございます。  次に、北朝鮮のミサイル技術についてお伺いさせていただきます。  一九九三年のノドンミサイルの発射は、我が国にまことに衝撃的なショックを与えたところでございますけれども、昨年のテポドンの発射をさかのぼること五年前でございますけれども、このスカッド級ミサイル、ノドンミサイルの着弾地点について、防衛庁としてはどのように掌握されておりますか。お伺いさせていただきます。
  40. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 御指摘の一九九三年の実験について、当時、各種情報を総合的に分析した結果、北朝鮮が九三年の五月二十九日に、北朝鮮の東沿岸部から日本海中部に向けて弾道ミサイルを発射する実験を実施したものと判断されたところであります。発射されたミサイルの飛距離は約五百キロメートルと考えられ、このミサイルはノドンであった可能性が高いと考えられたところであります。  なお、今委員から御指摘がありましたが、この発射実験に関し、着弾点やミサイルの飛しょう態様、また、実験が成功したかどうかといった点につきましては、ただいま私から述べた以上の事実関係については不明でございます。
  41. 河合正智

    ○河合委員 五百キロメートルと考えられる、これは十分な根拠を持ってそのように答弁なさったのでございますか。
  42. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 私どもは、韓国やあるいはアメリカなどともいろいろ協議をして総合的に判断するわけでございますが、ノドンにつきましては、種々の情報を総合しますと、北朝鮮がその開発を既に完了しており、その配備を行っている可能性が高い、その飛距離は五百キロメーターぐらいである、この点につきましては、先般私も韓国の千容宅国防長官と会談した際に、同長官からも同様の認識の発言がありました。意見が一致したわけであります。また、先般来日されたコーエン米国防長官と会談した際にも、同じ認識であるとの発言がありました。  ノドンの射程は、昨年八月の北朝鮮によるミサイル発射など各般の情報を総合した結果、その時点では千三百キロメートルに達すると見られ、我が国のほぼ全域がその射程内に入る可能性があるものと現在では評価しております。しかし、お尋ねのように、一九九三年におけるノドンの実験の際は五百キロ程度であった、こういうことでございます。
  43. 河合正智

    ○河合委員 韓国国防長官と意見が一致し、コーエン長官とも一致したというふうに、今長官の御答弁でございます。一部に、九三年五月二十九日の実験の着弾地点は、日本海ではなくて太平洋であったという情報がございますけれども、これについては御確認されておりますでしょうか。
  44. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 ノドンの開発状況につきましては、今大臣からお話ございましたように、韓国の国防部長官、あるいはアメリカの国防長官とのお話の中でも、既にこれが開発を完了して配備段階である、こういうことが確認をされているわけでございます。  また、そもそもの射程につきましては、非常にオープンな格好でやられているものではございませんからなかなかわからないわけでございますが、従来は、ノドンというのは千キロぐらいの射程ではなかろうか、こういうふうに言われておりましたけれども、今回、先ほど大臣からお話ししましたように、それにつきましては千三百キロではないか、こういうことで、これにつきましても、三国とも同じような見方をしているわけでございます。  実は、九三年のときの事象というのは、なかなか状況を把握するのが難しゅうございまして、先ほど大臣も申しましたように、当時、いろいろな情報を総合いたしますと、仮にノドンが千キロの射程を持ったとすると、それの発射の仕方とかいろいろなものを調整して五百キロ程度の発射をしたんではないかということが当時言われていたわけでございます。  今先生がお触れになりました、その後、これは五百キロではなくてむしろ太平洋側まで飛んでいたのではないのかという情報があるのではないかというお話がございました。確かにそういう情報が流れたことはございます。これにつきましては、このミサイルの開発自体、それからまたいろいろな発射自体が非常に隠された格好でやられておりますので、本来、把握するのは非常に難しいわけでございます。今言われました、従来五百キロとは違う飛しょうをしたのではないかということにつきまして、そういう情報があるということは私どもも承知をしてございますけれども、それを確認することはできておりません。
  45. 河合正智

    ○河合委員 先ほどの長官の答弁の中で、韓国国防長官と意見が一致した、これは五百キロメートルと考えられるということで意見が一致したということでございましょうか。ただ、コーエン長官と意見が一致したのは、今の佐藤防衛局長の話によりますと、ノドンの配備段階について意見が一致したというふうに答弁されておりまして、飛距離について、着弾地点についてコーエン長官と意見が一致したわけではないというふうに聞き取れますけれども、それでよろしいでしょうか。
  46. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今防衛局長から答弁したとおりでありまして、国防部長官あるいは国防長官と会談したときの話で、飛距離についての議論は全くしておりません。ただ、ノドンについては、開発が完了し、既に配備が完了していると推定される、そういう点で認識が一致したという意味でございます。
  47. 河合正智

    ○河合委員 これは、実はスカッドミサイルが配備されて、テポドンが保管されている、そういう状況で私たちが認識するのと、実はこの九三年の時点で既にある意味でテポドン級に近いものが開発されていたというのでは、我が国の防衛構想が全く違ってくるのではないかと私は思いますので、この点について、九三年のことですから確認できないという現段階でございますけれども、米国国防総省ともきちっとその辺を認識を一致させて、きちっと検証した上で対応していただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  48. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 これは先生御高承のところでございますが、北朝鮮におきましては、八〇年代にソ連から導入いたしましたスカッド、これをいろいろ改良を重ねる等でミサイルの開発を進めておりました。その後、ノドンと言われるミサイルの開発に着手したもの、こういうふうに私どもは見ております。  それで、ノドンは一段階のミサイルでございます。ノドンの性能につきましては、当時のいろいろな考え方からしますと、基本的には約千キロ程度か、こういうことでございましたが、その点につきましても、最近のいろいろな情報からいたしますと、千三百キロ、こういうふうに見られているところでございます。  一方、昨年八月に発射をされましたテポドン、テポドン1というものでございますが、これにつきましては構造が基本的に二段でございまして、まず一段階目がノドンミサイル、その上にスカッドミサイルを載っけたような、こういう基本的な構造を持っているだろう、こういうふうに考えておる次第でございます。  したがいまして、九三年に行われましたのはノドンミサイルの可能性が高い。それは今申しましたような特徴を持ったミサイルではなかろうか。一方、それからさらにミサイルの開発が進み、昨年八月には、今申しましたようなノドンプラススカッドを基本とします、こういう構造を持った新しいミサイルの開発が進んでいるということが明らかになりつつあるということだと思います。
  49. 河合正智

    ○河合委員 わかりました。  それでは次、高村大臣にお伺いさせていただきますけれども、さきのガイドライン特別委員会で、高村外務大臣は、朝鮮有事は事前協議の対象外だとする密約はない、あればアメリカ側からきちっと言ってくるはずだという答弁をされたところでございますけれども、一九六四年三月二十三日付の「日本の将来」というアメリカ国務省内部の政策企画文書、これを起草した一人だったロバート・フィアリー極東局東アジア副部長代行が同省の法律顧問に送ったとされる六四年四月二十日付の内部文書が今般入手されまして、そこでは密約を裏づける文書だというふうに報道されていることにつきまして、高村大臣の見解をお伺いして終わりたいと思います。
  50. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 ただいま先生御指摘の報道については我々も承知をしているところでございまして、米国のかつての国務省の方が書かれた内部の文書である、それが公開されているという報道を承知しております。  従来から繰り返し申し上げておりますけれども、米国政府としましては、事前協議にかかわるものを含めまして、安全保障条約及び関連取り決めに基づきます日本に対する義務を誠実に遵守する、さらに事前協議については、日本政府意思に反して行動することはないという旨を繰り返して述べているところでございます。  先生御案内のとおり、米軍日本から行われる戦闘作戦行動のための基地といたしまして日本国内の施設及び区域を使用するに際しましては、安保条約第六条の実施に関するいわゆる岸・ハーター交換公文に基づきまして、事前に我が国政府協議してその同意を求めることが米側に義務づけられております。そして、朝鮮半島有事がその例外ということはないわけでございまして、この点は政府が累次答弁しているとおりでございますし、例えば一九七一年に佐藤総理から、いわゆる朝鮮半島有事の際の戦闘作戦行動にかかわります事前協議につきましても、事前協議ついては国益に従って自主的に決定をいたします、イエスもありノーもある、こういうことをはっきり申し上げたのでございます、こういうふうに述べておられるところでございます。  さらに米側からも、先ほど申しましたように、日米安保条約のもとでの事前協議に係る事項については、日本政府意思に反して行動する意図がありませんということを明らかにしてきているところでございます。
  51. 河合正智

    ○河合委員 以上、終わります。
  52. 二見伸明

    二見委員長 次に、佐々木陸海君。
  53. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 アメリカが主導しているNATOによるユーゴスラビアへの空爆は、人道上の理由を掲げつつ著しく非人道的な行為を積み重ねるという事態に立ち至っていると思います。空爆を支持する側からも空爆は失敗だったという否定的な評価が圧倒的だという報道もあります。NATO諸国内、そしてアメリカ国内でも、空爆即時中止の声が広がっている現状であります。  我が党は、この野蛮きわまりないユーゴ空爆を厳しく糾弾し、その即時中止を要求するという立場から、NATO諸国首脳に書簡を送るなど国際的な働きかけも行ってまいりました。その書簡の中では、今回のNATOの空爆は、それを認める国連安保理決議が一切なく、国連を完全に無視して行われている、しかも主権国家内の民族紛争に対して外部から不当に軍事干渉を行うことにより、主権尊重、内政不干渉、武力不行使という国連憲章の根本原則を乱暴に踏みにじっているというふうに断定をしているところであります。  ところで、政府はこの空爆について法的な評価あるいは法的な判断を下していないというふうに言っておられると思うんですが、その場合の法的な評価とか法的な判断というのはどういうことか、基本的なことですけれども。例えば、国連憲章の精神に反するというような断定とか、あるいは国際法違反だというような断定とか、こういったものも政府の言う法的な評価とか法的な判断ということになるわけでしょうか。それとももっと別の概念なんでしょうか。政府の言う法的評価とか法的判断という概念。
  54. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  国際法上の法的な判断をしておらないというふうに御理解いただいてよろしいと思います。
  55. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 ちょっと、質問をよく聞いてください。法的判断というのはどういうことかと言っているんです。国連憲章違反だとかというのは法的判断ですか。あるいは、国際法違反であるという断定を下すことが法的判断になりますか。
  56. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 国際法におきまして法的な判断を言うのにはいろいろな視点があると思いますけれども委員が御指摘になりました、例えば国連憲章に合致しているかしていないか、国連憲章違反かどうかというのは、これは法的判断一つになると思います。
  57. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 簡単な話なんです。  政府答弁を調べてみますと、この問題について法的な評価、法的な判断は下していないというような表現があると思いますし、それから下せないという表現もあるように思いますし、下さないという表現もあるように思うのですが、ちょっとニュアンスがそれぞれ違うわけですが、一体どれでしょうか。正確にはどういうことなんでしょうか。そして、その理由は何でしょうか。外務大臣にお伺いしたいと思います。
  58. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 国会の御審議の中でいろいろな形で御答弁申し上げたことはあると思いますが、今回のNATOによる行動の当事者では我が国はなく、また作戦面を含むNATOの軍事行動に関する詳細な情報を有しておらず、政府として、安保理決議上の根拠を含め、今回のNATOの行動につき法的評価を下すことができないことを御理解いただきたいということでございます。
  59. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 下していないとか、あるいは下さないとかというんじゃなくて、下すことができない、下せないということなんですね。外務大臣、いいですか。
  60. 高村正彦

    高村国務大臣 下せませんから下さないわけでありまして、その結果、下していない、こういうことでございます。
  61. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 下せないんだ、下すことができないんだということですね。そして、その理由は、当事者でないとか、あるいはNATO側の軍事作戦の内容について詳しく承知する立場にないとかいうような理由を挙げましたが、それも外務大臣、そういうことでよろしいんですね。
  62. 高村正彦

    高村国務大臣 当事者でない、そしてそれぞれどの程度のことがどう行われているのか、あるいは逆に、それに対する空爆がどういう条件でどういうふうに行われているか、その詳細を知ることができないということも含めて、そして改めて申し上げますが、当事者でないということでございます。
  63. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 理由はわかりました、納得するわけじゃありませんけれども。  今の世界的な秩序あるいは国際環境を考える上で、国連とかあるいは国連憲章というものが非常に重要な意味を持っているということについては、我々も政府も同じ立場だろうというふうに思います。  その国連憲章は、二条四項で、武力による威嚇または武力の行使、戦争を一般的に、原則的に禁止をしているわけです。これは、国連を中心とする現在の世界秩序、それから国連憲章に基づく今の国際関係の最も重要な基礎、国連憲章や国連の歴史からいっても、この戦争の原則否定、禁止というのは大事な意味を持っているんだろうと思います。  その原則的に否定されている武力行使が、国連の有力な加盟国、常任理事国三カ国を含む諸国が、白昼公然とユーゴに対して武力行使を行っている、空爆を行っている、戦争を行っている。こういう事態が二カ月以上も続き、現在の世界政治の中心問題になっているわけであります。  日本は、そういう中で、世界にも珍しいと言われる平和を目指す憲法を持って、それで世界に対処しようとしている国であります。その憲法に本当に忠実であろうとするならば、そして本当に国連憲章を生かそうとするのであれば、これだけの重大問題、世界の今の中心の根本問題で、理由はどうであれ、法的評価は下せないんだと言っていることはいささか無責任に過ぎるんじゃないか。わからないならわからないで、調べて、法的評価をきっぱり下して、この戦争の問題について日本の立場はこうなんだ、これは国際法に照らし、国連憲章に照らしてこうなんだと判断を下して対処していかなければ無責任になるというふうにはお考えになりませんか。外務大臣、いかがでしょうか。
  64. 高村正彦

    高村国務大臣 日本政府は、今までも第三国が行った軍事行動すべてについてこういう法的判断を下しているわけではない、そのときそのときで、下す場合もあるし、下さないときもある、こういうことでありますし、私たちは今一番大切なのは何か、このコソボの中でまさにユーゴ政府の手によって人道的惨劇が起こっている、このことをなくすということが一番大切で、そしてそれがなくなって、今後ともなくなるという保証があれば空爆は当然に停止されることである、そういうことに向けてどうやって政治的解決をするのかということが一番重要なことで、そこのところに全力を尽くしているわけであります。  私たちは、日本政府というのは、別に世界の裁判官でも検察官でもありませんから、法的評価をして、これが正しい、右が正しい、左が正しい、こういうことを言って政治解決に役に立つのならまた別でありますが、そういうことではなくて、この問題についてはどうやって政治解決をして、そして人道的惨劇がおさまるか、その結果、空爆もなくなるか、こういうことに向けて全力を尽くす、そういうことで国際的責任を果たしていきたい、こう思っているわけでございます。
  65. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 正しい解決をこういう問題に与えるということについては私たちも同感なんです。  ある国の内部で人権にかかわる重大な事態が生じるということが今の国際社会の中で当然あり得るわけです。今コソボの惨劇ということを挙げられましたが、そういうことは当然起こり得る。そして、その事態が重大な場合に、国際社会がこれに対する何らかの対処を探求することがあり得るし、しなきゃならぬことがあり得るし、そしてそれに適切に対処することはまた当然のことだと我々も思っております。  一国の内部の人権問題であっても、それが重大になった場合には国際社会が適切に対応する必要がある。しかし、その適切な対処というのはどういう対処なのか、この適切な対処ということがやはり徹底的に追求されなきゃならない。その基準は何かといえば、今の世界ではやはり国連憲章がその基準にならなきゃいけないし、その憲章に沿った公的な、公正な、正当なルールに従って問題が解決されていくということが求められるのじゃないか、これが我々の考え方です。  今、外務大臣は、この爆撃に法的な判断を下すようなこと、世界の審判官というような形で下すようなことが役立つのかということを言われましたが、我々はそういう考え方はとらない。やはり、この爆撃に国連憲章上いろいろな問題があるのだったら、その問題点はきちんと指摘をして、違法であるなら違法性をきちんと解決して、やめて、その時点で、そういうことからスタートして問題を解決しなければならないというのが我々の立場であります。それはもうはっきりと申し上げておきたいと思います。  その場合の武力行使の国連憲章に照らしての正当性の問題ですが、政府は、周辺事態法との関連で、国連憲章のもと違法な武力行使を慎む義務を負っている同盟国たる米国が周辺事態において違法な武力行使を行うことは、そもそも想定していないということを繰り返してまいりました。  私は、そのことに関連して、二月十六日の予算委員会で、では、国連憲章上合法的な武力行使というのはどういうものなんだということについて総理質問いたしました。これに対して、小渕総理は、憲章二条第四項を全文引いて、武力行使が原則禁止であるということを示しつつ、「ただし、ある国が自衛権の行使として武力の行使を行う場合や、国連憲章第七章のもとでの国連安保理の決定に基づき加盟国がその国際関係において武力を行使する場合には、これは違法とされない場合がある、」というふうに答弁をされました。私は外務大臣にもお聞きしましたが、外務大臣は、マイナー自衛権の問題をちょっと持ち出されましたけれども、「基本的に総理がお答えしたとおりであります」というふうに答弁されました。  ですから、私ははっきり申し上げたいのですが、このときに総理も認め、外務大臣も基本的に認めたのは、国連憲章上違法とされない場合がある武力行使というのは第七章の、具体的に言えば四十二条とそれから五十一条の自衛権行使、この二つのケースしかないんだ、これは間違いありませんか。
  66. 高村正彦

    高村国務大臣 国連憲章上明示されているのはその二つしかないわけで、明示されているのがその二つしかない以上、基本的にそういうことだということを申し上げたわけであります。  コソボの空爆について日本政府は法的評価をしておりませんが、もしこれが法的に許されるものであるとすれば、これはもうまさに例外中の例外というようなことである、許されるものであるとすれば。そういうものかどうかということについて日本政府は法的評価をしていない、こういうことでございます。  ちなみに、国連憲章違反であるかどうか、国際法上許されるか許されないか、そういったことを判断するのは第一義的に国連安保理である、そう思っておりますが、ロシアが国連安保理に、この空爆は国際法違反である、だから空爆を停止せよという決議案を出して、これは十二対三、大差で否決されているわけであります。ですから、国際社会の中においても多くの国が、これは私は積極的にこういうことが法的に許されるという判断をしているのかどうかは知りませんが、積極的に許されないと判断している国は少数である、こういうふうに思っております。
  67. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そういう判断についてはいろいろあるでしょう。しかし、国連憲章上でいいますと、合法的な武力行使というのは二つのケースしかない。そして、今NATOがユーゴスラビアで行っているのは明らかに武力行使である、これはもう間違いありません。そして、国連憲章は原則的に武力行使を違法としており、例外は二つだけだ。  これを前提にして考えると、この空爆が安保理の決定によるものなのか、それとも五十一条の自衛か、これを判定すれば、そのどちらにも当たらないというふうに政府は言っていると思うのですが、だとすれば、事の理屈としては国連憲章違反ということにならざるを得ない、論理的にはそうならざるを得ないと思うのです。空爆が国連安保理の決定によるものか、それともこの空爆が憲章五十一条による自衛権行使なのか、これははっきりしていると思いますが、いかがですか。
  68. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 NATOの空爆につきまして、国際法上どう考えるべきかということについてもう一度私の意見を述べさせていただきたいと存じます。  我が国は本件の当事者ではないということを申し上げました。それでは、NATOの空爆の当事者が今の国際法のもとでいかにこの問題について法的に対処しているかということにつきましては、ただいままず外務大臣が御説明申し上げましたように、国連憲章に違反なのかどうかという問題に関しましては、国連憲章に違反だという決議が十二対三で否決されたという事実が一方においてございます。  それから、空爆を行っているNATO自身がこの問題に関しましてどのように位置づけをしているかと申しますと、空爆が行われた直後に、ソラナ事務総長が、今回の軍事行動はユーゴ政府が和平合意案をかたくなに拒否し、他方で、国連安保理決議等に反しコソボにおいてユーゴ軍及びセルビア治安部隊による過度な武力行使が続く中で、人道上の惨劇を防止するために万やむを得ざる措置であるという評価を下している、このことに尽きているわけでございます。  したがいまして、国連憲章との関係、それから法的にどのように位置づけるべきかということについて、当事者の国々より私が今申し上げたこと以上のものが出てきていないというのが現下の国際法の状況だと思います。そういう状況のもとで、当事者でない我が国がこれ以上の法的な評価を申し上げることはできないということでございます。
  69. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 いろいろ説明されましたけれども、私が聞いているのは、このNATOの空爆は国連安保理の決定によるのか、それからまた、憲章五十一条の自衛権行使に当たるのかということなんです。もう答えなくてもいいです。安保理の決定なんかありませんし、五十一条による自衛権の行使だなんてことはNATO自身もそんなことは言っちゃいないわけですから、どちらにも当たらないんです。  先ほど外務大臣も言われたように、国連憲章上からいえば、五十一条の場合か、あるいは安保理の決定によるものか以外の武力行使は、国連憲章違反になるんですよ。これは論理的に言ってそうなんですよ。今のNATOの空爆というものは、論理的に言えばということを私、繰り返し言いますけれども、論理的に言えばそういうことでしょう。違いますか。
  70. 高村正彦

    高村国務大臣 私が申し上げたのは、国連憲章上その二つしか明示されていない、ですから、基本的にはその二つであると。  仮に、NATOの空爆が法的に許されるものであるとすれば、それはまさに例外中の例外、その明文の規定のない例外中の例外というものになるのかなとは思っていますが、NATO自身も具体的に法的な説明を行っておりませんし、当事者でない我が国政府としては、法的評価はしないです。(佐々木(陸)委員「さっき、できないじゃなかったですか」と呼ぶ)できないとしないは別に矛盾することじゃありませんから、その時々で、しないということもあるし、できないということもありますが、しない、そういうことであります。  ただ、私たちは、さらなる人道上の惨劇を防ぐためにやむを得ずとられた措置であると理解をしている、こう申し上げているわけで、法的評価はしていない、何度も繰り返しますが、そういうことでございます。
  71. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 いろいろ苦しいことを言っておられると思うんです。  この問題での国連憲章上の法的な評価というのは、別にNATOの作戦の内容が一〇〇%わからなきゃ下せないとか、コソボの状況が一〇〇%わからなきゃ下せないとか、当事者であるかないかなんてことは関係ないんですよ。国連憲章のそういう原則に照らしてみれば、この白昼公然とやられている戦争が憲章に合致するのか、合致しないのか、そのレベルでの判断は当然できるんですよ。明確な問題なんですよ。  我々は、そういう明確な問題は明確にして、これが違法だということを我々判断しているわけですから、違法だったら違法で直ちにこれをやめて、そして国連憲章の本当のルールに戻して問題を解決していかなければこの問題が解決できないということを主張しているわけです。それはその程度にとどめておきましょう。  ただ、ここで言いたいのは、判断できないと判断しないとは同じようなことだと言いますけれども判断できないというのは、するつもりがあるんだけれどもキャンノットだ、できないんだと。材料がなかったり、あるいはいろいろなほかの国との関係や何かを考えてやることができないんだというのと、しないというのは積極的な意思としてやらないという意味なんですから、これは意味違いますよ、当然。それはいいです。  しかし、判断することもあれば判断しないこともあるというふうにさっき言われました。歴史的に見れば、例えば一九六八年八月二十日のソ連など五カ国軍隊のチェコスロバキア侵略。この問題については、我々も当時必要な調査をした上でこれが侵略であるというふうに断定をいたしましたが、このとき政府も、直ちに、その日のうちに法的な判断を下していると思います、もう詳しく申し上げません。  それからまた、一九七九年十二月二十七日のソ連によるアフガニスタン侵略。これは、なかなか報道もなく我々も困難でしたけれども調査を続けて、翌年一月十日にこれを侵略というふうに我々も断定いたしました。政府も、これについても、一定の日時がたってからだったと思いますが、これが国際法に反するものだという判断を下していると思いますが、間違いありませんか。詳しく述べる必要はありません、時間がありませんから。
  72. 西村六善

    西村(六)政府委員 簡単に申しますれば、今先生がおっしゃったとおりでございます。
  73. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そういうふうに判断を下している事実はあるわけですよ。世界の大問題になったあのチェコスロバキア侵略とかアフガニスタン侵略なんかについて、政府は直ちに、これは侵略だ、やめろ、ソ連は撤退しろという形で国際政治に働きかけているわけですよ。やっているんですよ、そういうことはちゃんと。その限りでは、我々と基本的に同じ立場に立っているわけです。立ったわけです、その時点では。  しかし、その後、例えば八三年のアメリカによるグレナダ侵略、そして八九年十二月のパナマ侵略、これらはその後に開かれた、国連安保理では決定がなされませんから、国連総会で、明確に侵略だ、アメリカは直ちに撤退せよ、こういう決議もなされているわけです。  そういう問題については、日本政府は法的判断を下せないのか、下さないのか、要するに今まで下していないんですね。つまり、下す場合もあるけれども、下さない場合もある。そこに一体どういう基準があるのかということが問われるわけです。ソ連の行為だったらすぐに国連憲章あるいは国際法違反だと断定できるけれどもアメリカのやっている行為だとちっとも断定できない、いつまでたっても断定できない。  二、三年前の予算委員会質問で、橋本総理が、我が国は国連加盟以来米国による武力行使を国際法上違法であるとして反対したことは一度もありませんというふうにおっしゃいました。それ以後見ても、去年のアメリカの一連の行動とか、アフガニスタンとかあるいはイラクとかありましたし、それから、ことしになってのこういうユーゴの空爆といった問題についても、政府判断を下せないのか、下さないのか、下していないわけです。  先ほど、判断を下す第一義的な当事者は安保理だとおっしゃいましたけれども、今はありませんがソ連とか、アメリカとか、こういう安保理に席を占めている大国が行っている武力行使については、安保理は判断を下せないですよ。それが正当な行為である場合に立派な行為だという判断は下すでしょうが、侵略かどうかということが問われたようなときにその国が拒否権を行使すれば判断を下せないわけですから。  実際、グレナダのときなんかは、アメリカ一国の反対で、これを侵略だ、やめろという決議が安保理では葬り去られているわけです。さっきは三対十とかなんとかという最近の国連安保理での決議の問題がありましたけれども、このグレナダの問題では、アメリカ一国が反対しただけです。あと棄権が三カ国ぐらいありましたが、その他の国は全部賛成してこれはアメリカの違法行為だということをやったけれども、それは結論を下せないんですね。つまり、安保理常任理事国がかむような、加わっているようなものについては、安保理は第一義的な当事者なんてあなた言うけれども、それは結局へ理屈にすぎない。そこではまともな判断を下せるわけないんです。  だから、まさにそういうところがかかわっているようなものについて、日本が安保理に席を占めようなんて言っている国であるならば、そういう問題について積極的に法的な判断を下して世界に働きかけて、違法なら違法だ、やめさせるということの先頭に立ってやっていくことがまともな外交のあり方じゃないか、私はこういう意見を申し上げておきたい。  時間になりましたので終わります。ありますか。
  74. 高村正彦

    高村国務大臣 安保理の常任理事国が当事者になっている国では下せないと決めつけますが、現実の場合そういうことはあるかもしれませんが、国連がそういう制度になっている、その国連の制度を頭から否定して、そんなことだめだ、こう言ってしまって本当にいいのかなという気はいたします。  それと、また、例えばチェコで自由を求めて立ち上がった人たちを弾圧するために侵略した行為と、それから、国際軍事法廷で起訴されるような残虐な行為をやった、それに対する対応とを全く同列に述べるというのは、私は違うんではないか、こう思っております。
  75. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そう言われると私も言わざるを得ませんが、さらに外務大臣の反撃を呼ぶようなことは言わずにおきますが、国連の安保理の制度を否定するつもりはありませんよ。しかし、そういう制度のもとで安保理の常任理事国が加わるようなこういう武力行使の場合に、そう簡単に判断を下せるわけないんですから、そういう場合に日本なんかがもっと積極的な役割を果たすべきじゃないかということを言っているわけです。  そして、私はチェコスロバキアだけを対置したわけじゃなくて、グレナダとかパナマなんかのああいう人権弾圧の問題についても述べているわけですから、その点は留意しておいてもらいたいと思います。終わります。
  76. 二見伸明

    二見委員長 次に、辻元清美君。
  77. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党、社民党の辻元清美です。  私は、本日、核不拡散・核軍縮に関する東京フォーラムについて質問したいと思っておりましたが、その前に、今白熱した議論がありまして、ちょっと一点私も聞いてみたい点がありますので、お聞きしたいと思います。  それは、コソボの件で佐々木陸海議員との議論の中で、判断を下さない、もしくは下せないということが今言われておりました。  そうしますと、一点お聞きしたいのは、このコソボの件に関して、アメリカから事情を聞いた、もしくはアメリカ意見交換した、そのようなことはあるのでしょうか。どうなっていますか。というのは、日本アメリカと同盟国と言っているわけですから、始終こんな大事なコソボの問題で話していないはずはないと思いますが、いかがですか。
  78. 西村六善

    西村(六)政府委員 NATOの行動でございまして、NATOの行動との関係におきまして、NATOの当局から説明を受けたりするということはございます。
  79. 辻元清美

    辻元委員 そうしましたら、今、NATOからの説明では納得できなかったということですね、日本政府は。事情がわからないとおっしゃっていましたので。
  80. 西村六善

    西村(六)政府委員 先ほど来から御説明しておりますのは、NATOは自分の行動をかくかくしかじかと説明をしているということを私どもは承知しているということをたびたび申し上げている次第でございます。
  81. 辻元清美

    辻元委員 ですから、日本政府としては、判断をしていないということは、その説明、かくかくしかじかの内容日本政府としては納得できるものではないという理解でよろしいのでしょうか。
  82. 高村正彦

    高村国務大臣 NATOの説明範囲内で、これは法的に許されるものであるということを断定するとか、そういう法的評価ができるというだけのものはない、こういうことです。
  83. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、先日以来、新ガイドライン問題で、日米の同盟関係という言葉、これを強化していくという話がありましたけれどもアメリカとはコソボの件についての意見交換は一切していないという理解でよろしいでしょうか。
  84. 西村六善

    西村(六)政府委員 アメリカとも、意見交換といいましょうか、情報の提供といったようなことは可能な限度で行われておりますし、アメリカのみならず、ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、その他の諸国と、普通の外交上の情報交換という範疇に入ります限度におきまして意見交換情報交換を行っているわけでございます。
  85. 辻元清美

    辻元委員 その情報交換をしていて、腑に落ちない点や判断が下せない点があれば、さらに日本としても、これだけ大きな国際問題になっています、中国大使館の誤爆事件などもありまして、広がりかねないような緊迫した状況もたびたび迎えている中で、やはり日本政府として、そういう不明な点があるならば調査するとか、それからさらに突っ込んで議論していくということは、全くお考えではないのでしょうか。
  86. 高村正彦

    高村国務大臣 日本政府が法的評価をすることによってこの問題がたちどころに解決するというのであれば、私たちは、万難を排して、どんなことがあったってそれは調べますが、解決に対して今一番役に立つことは何かということに日本政府は全力を尽くしているわけであります。それと難民をどうやって支援していくか、そういったことについて全力を尽くしているわけであります。  例えば、よくここで例に出されるスーダンだとかアフガニスタンの爆撃については、私たちは、アメリカから、これは自衛権の行使であるというかなり詳しい事実関係等を含めた説明を受けています。  ただ、日本政府がそこで法的判断を下さないのは、その事実関係そのものが、例えばここでVXガスがあったとかそういったことについて、日本政府はすべてそういう事実を調べることができないから、あえて法的判断を下さない、こういうことであります。  今度の場合に、日本政府として何が一番この問題に役に立つかということは、ともかく法的評価をするための調査を一生懸命やることではなくて、G8の中で政治解決に向けて統一ポジションをつくって、ミロシェビッチ大統領を説得して、そしてその統一ポジションをのんでもらって、そういう中で人道的惨劇がやみ、空爆もやむ、こういうことに全力を尽くすことが一番有意義だと思って今一生懸命やっているわけでございます。
  87. 辻元清美

    辻元委員 といいますのも、私は、このコソボ問題は、空爆が始まって以来、第二段階、第三段階というふうに事態が刻々と変わっている中で、日本の国内にいても、日本政府がどういう努力をしているのかなかなか見えにくいというふうに言わざるを得ないと思います。  今月に入りまして、私は、フランスを中心にヨーロッパ諸国に社民党の土井たか子党首と一緒に行きまして、今回のコソボ問題についての各国の意見ども聞きに行きました。  そうしますと、例えばフランスのファビウス国会議長などは、公式の会見では、ミロシェビッチ大統領が屈服するまで断固空爆をやるんだというように発言されたりするわけなんですが、それ以外の場所では、一たん武力を使ってしまったけれども、どこに落としどころを持とうかというような中で、日本への調停といいますか仲裁への働きかけの努力をというようなことも幾つか聞いてまいりましたので、それと今白熱した議論がありましたので、これはちょっと聞いてみたいなということで質問いたしました。  この件につきましては、また開かれると思いますので次の機会にしたいと思いますけれども、きょう、そういう中で、それ以外にも核の問題というのは日本も非常に重要であるということで取り組んできていますので、その質問に移らせていただきたいといったら、もうあと七分しかなくなってしまったのですが、ちょうど東京フォーラムの件です。  なぜかといいますと、今度七月に、二十三日から二十五日、核不拡散・核軍縮に関する東京フォーラムの最終会合が東京で持たれる予定になっていると思います。これは、国際社会への核軍縮の提言を出していこうという非常に重要なものではないかと私は思っています。  ちょうどきょうまでですか、五月二十三日から、日本時間では二十七日までだと思うのですが、きょうは二十八日ですけれども、ジュネーブでその提言の起草委員会が開かれていまして、日本政府からも代表の方が行っていらっしゃると思います。  そういう中で、東京フォーラムにつきましては、ちょうど小渕総理外務大臣でいらっしゃった折に、各国の専門家による核不拡散・核軍縮に関する緊急行動会議の設立が大事だということで準備を始め、そして総理が昨年の所信表明でも、このフォーラムを通じて、核不拡散体制の堅持強化、核軍縮の促進、さらには核兵器のない世界を目指した現実的な取り組みにつき、世界に向けイニシアチブを発揮していくと所信でもおっしゃっている結論が、いよいよ提言という形で七月に出されることになっています。  さてそこで、このフォーラムは、このような経緯から見ますと、外務省の外郭団体二団体によって主催ということになっていますけれども、この小渕総理の提言から始まっていますし、日本政府がどのような姿勢で七月を迎えるのか、これは非常に重要です。  そこで、今まで三回開かれましたね。四月にはニューヨーク郊外でも開かれたと思います。この三回の今までの会議でどのような議論がなされたのか、まずその点についてお聞きしたいと思います。
  88. 高村正彦

    高村国務大臣 東京フォーラムは、日本国際問題研究所の松永副会長及び明石元国連事務次長の共同議長のもと、世界各国の軍縮、安全保障、国際問題等の著名な専門家が集まり、昨年八月、十二月、本年四月と計三回の会合を開催してきております。これまでの会合におきましては、インド、パキスタンの核実験への対応、核不拡散体制、包括的核実験禁止条約、核関連物質、技術の輸出管理、米ロ間の戦略兵器削減交渉を含む核軍縮問題等について活発な議論が行われてきており、七月の第四回会合で提言が発表される予定であります。現時点で、七月の第四回会合に向け、提言を取りまとめるための作業が進行中の現段階でありますので、議論の詳細についてコメントを行うことは差し控えさせていただきたいと思います。
  89. 辻元清美

    辻元委員 この七月に向けての、ちょうど今ジュネーブで提言をまとめるための作業をされていますけれども、やはり私は、専門家の方も含めまして、それからもう少し広く、日本で開きますので、先日はハーグで大きな平和の国際会議も開かれておりますので、今実際に地雷の問題などでもNGOを初めさまざまな人たちが平和に向けての提言をしていますから、そういう意見も聞くような機会を七月までに持ってみたらどうかというように私は提案したいというふうに思います。  さて、次にもう一つちょっと核問題で、これも関連していますので、来年の二〇〇〇年にNPT再検討会議に向けた第三回の準備委員会が五月十日から二十一日にニューヨークで開かれたようです。この場で五月の十二日に、核軍縮に熱心な七カ国連合、御承知だと思いますが、いわゆる新アジェンダ連合というところを中心とする三十二カ国による核軍縮への具体的措置を二十六項目にわたる共同声明ということで出されています。私ここに持っているのですけれども、これも核軍縮にとって非常に重要ではないかと私は位置づけているのですが、この中に日本は入っていません。これはどうしてなのでしょうか。
  90. 今井正

    ○今井説明員 お答え申し上げます。  先生御存じのとおり、昨年の国連総会に提出されました新アジェンダ決議がその背景にあると思いますけれども、この決議について、我が国としても支持し得る部分も多々あったわけでございますけれども、同時に、その一方で、やはり核兵器国と非核兵器国の対決、対立を助長するというような記述も入っておりましたために、いろいろ検討いたしましたけれども、最終的にはこれに棄権したという状況がございます。
  91. 辻元清美

    辻元委員 核を持っている国と持っていない国の対決を助長という、これの前文のところにも多分御指摘のような点があると思います。核を持っている国に対して非常に厳しく核軍縮を迫っていくというような内容があるのですが、私は、これは日本政府の姿勢に合致していると思っているのですね。ところが、やはりアメリカなどへの、よくここでも指摘が出ていますけれども、核大国に対する変な配慮で、はっきりと、もっとしっかりと、この核軍縮への提言ができていないのではないかと心配を持っています。  そういう点を、全部これは五月の出来事なんですけれども、オランダのハーグで、世界百カ国から平和運動家らが八千人集まって、ハーグ平和市民会議というのが開かれました。これは、ちょうど百年前にこのハーグで一八九九年に第一回会合が開かれて、その折には、平和のための枠組みづくりとして、常設機関の設置というのが初めて百年前に出た会議です。非常に伝統のある会議だと思います。二回目は、一九〇七年に、これは紛争の規制などを求める現在の国際人道法の発展の基礎をつくった。そして百年たって、ことしの五月に、十五日まででしたけれども、数日間ハーグで開かれました。  その中で、特に出た意見としましては、社民党からは土井たか子党首も出席いたしましたけれども、その提言書の中に、「公正な国際秩序のための基本十原則」というのを話し合って、十五日に採択された中に、第一項に、「日本の憲法九条を見習い、各国議会は自国政府に戦争をさせないための決議をすべきだ」というような文言が一番最初に入ったわけなんですね。私は、これを非常に高く評価しています。  それと同時に、もう一つ出た意見では、ジャパン・デーというのを開きまして、これは政府の方も御出席だったと思いますけれども、欧米からも、あちこちから、アメリカの核軍縮を促すよう日本政府はとにかく働きかけてくれというような意見がたくさん出ました。私は、やはり、この五月にさまざまな核軍縮をめぐる会議と同時にこのような平和会議も開かれている、これを重く受けとめて、今後七月の提言に向けて準備をしていただきたいと思いますが、最後に、これは外務大臣でしょうか、このようなハーグでのNGOも含めての平和に向けた国際会議、どのように評価をされているでしょうか。
  92. 高村正彦

    高村国務大臣 ハーグ世界市民会議が、核兵器廃絶条約の作成の呼びかけ及び国連総会の新アジェンダ決議への支持を含むアピールを発したことは承知をしております。政府自体としてこのアピールどおり行動するということは、今までもるる説明したことで、なかなかできないわけでございますけれども、NGOが世界の平和、人道問題に関心を持ち、積極的に議論、行動することについては非常に望ましいことであると考えております。  政府といたしましては、今後ともさまざまな機会をとらえ、市民との対話を通じ、核軍縮問題についての政府の立場を伝えるとともに、市民の考え方をお聞かせいただくように努めてまいりたい、こういうふうに思っております。
  93. 辻元清美

    辻元委員 という力強い御発言をいただきましたので、ぜひ七月の提言に向けてさまざまな意見を取り入れていただきたいことと、その提言をアナン事務総長に渡した折に、アナン事務総長はこうおっしゃったのですよ。戦争防止で最も大切なことは、政治家や外交官が和平の機会を逸しないようにすることだ、この和平のチャンスをいかにつかむかということが、政治家や外交官に課せられた使命であるというようなことをアナン事務総長がおっしゃいました。私たち安保委員会は、これを重く受けとめて、コソボの問題その他に対処していくことを最後に呼びかけて質問を終わります。ありがとうございました。
  94. 二見伸明

    二見委員長 吉川貴盛君。
  95. 吉川貴盛

    ○吉川委員 外務大臣、御苦労さまでございました。お気をつけてロシアにおいでください。  私は、防衛庁長官に何点かお伺いをしてまいりたいと思いますが、まず最初に、新ガイドラインの成立まで、外務大臣はもちろんでありまするけれども、野呂田長官におかれましては、大変な御苦労をされました。その御労苦に対しまして、心から敬意を表する次第でございます。  最初に、調達関連の一連の不祥事に関して伺いたいと思いますが、この過払い問題のその後についてであります。  私は、昨年十二月に質問させていただきました際に、二百八十社の関連企業を調査して、この四月までに整理をする、こういうふうに事務方から答弁があったかと思うのでありますが、今日まで過払いが判明した企業から、もう既にこの過払い分を返還させたと聞いているわけでありまするけれども、現在の、今日まで対応されてまいりました進捗状況と、そして、今後の対応をいかにされていこうとしているのか、まずその辺をお伺いをさせていただきたいと思います。
  96. 及川耕造

    ○及川政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、平成五年から平成七年にかけまして過払いが発覚いたしました、いわゆる四社事案の反省を踏まえまして、このような事案がほかの企業で行われていないかどうかなどを確認するための制度調査を平成八年度から実施しているところでございます。  この調査によりまして、昨年、日本航空電子工業が過大請求を行っていたことが判明しているほか、本年四月には、トキメック並びに富士通ゼネラルという二社が過大請求を行っていた可能性があることが判明をいたしております。  このほか、企業側から過大請求を行ったという旨の申告をしてまいりました日本電気及び日本電気電波機器エンジニアリングや、背任事件に至りました東洋通信機及びニコー電子の事案を含めまして、過払いが発覚した場合には、防衛庁としては調査を行った上で損害額を算定することとしております。  これまでのところ、東洋通信機及びニコー電子の事案につきましては、過払い額をそれぞれ約六十二億円、約三十一億円と算定いたしまして、そのうち、ニコー電子からは防衛庁の請求額の全額が返納されているところでございます。  今後の点でございますが、過払いが判明している他の事案につきましても、可能な限り速やかに過払い額を算定すべく作業を行うとともに、一般確定契約を主体といたします御指摘の企業約二百八十社を中心といたしました制度調査につきましては、平成十四年度までに完了させたいと考えておりまして、本年からは監査法人に調査を委託するなど、作業の加速化をいたしているところでございます。
  97. 吉川貴盛

    ○吉川委員 ただいまの答弁の中で、東洋通信機の関係ですけれども、六十二億円の返還請求を不服として、二月十日の日に東洋通信機は東京地裁に提訴をしているわけであります。防衛庁は、この東洋通信機に対しまして、二月十二日に損害賠償請求訴訟を起こすことを決めたと聞いております。  同社は、防衛庁の算定した返還額の合理性や調本による算定過程の透明性を求めるため訴訟に踏み切ったとしているわけでありまするけれども、この提訴に至る経緯と、東洋通信機の主張に対する防衛庁の反論、裁判の今後の見通しなどお聞かせをいただきたいと思います。
  98. 及川耕造

    ○及川政府委員 背任事件に至りました東洋通信機の事案、ただいま申し上げましたけれども防衛庁といたしましては、予定価格訓令に従いまして非原価項目を控除するなどして適正に算定いたしまして、損害額を約六十二億円と確定いたし、二月五日に、国の債権の管理等に関する法律に基づきまして、同社に対して返還請求を行ったわけでございます。  これに対しまして、先生ただいま御指摘のとおり、東洋通信機の方から二月十日に債務不存在の訴えが提起されました。防衛庁といたしましては、二月十二日に法務省に対し訴訟提起依頼を行いまして、三月十九日、国から反訴状を提出し、これまで二回の口頭弁論が行われたところでございます。  防衛庁の請求額約六十二億円に関しましては、東洋通信機は約二十二億円を供託いたしまして、そして防衛庁がその還付を受けましたことから、現在は損害額を四十億円といたしまして請求をいたしているところでございます。  御指摘の論点でございますけれども防衛庁といたしましては、間接調達、いわゆる下請分の取り扱い、交際費や宣伝広告費等の非原価項目の取り扱いあるいは立会検査費の取り扱い等について、当方の考え方を反訴状で提起しているところでございます。  ただ、恐縮でございますが、これについての見解は、今後の裁判との関係がございますので、申し述べることは差し控えさせていただきたいと存じます。  いずれにしろ、今後の裁判において論点が明確になるものと考えておりまして、防衛庁としては、当庁の算定額の正当性を明らかにし、適正な金額の回収に努めてまいりたいと考えているところでございます。
  99. 吉川貴盛

    ○吉川委員 NECの返還額算定に、たしか三月に、一年以上かかると報道されたと思うのですが、その後の状況の変化は何かございますか。簡単で結構です。
  100. 及川耕造

    ○及川政府委員 現在、引き続き過払い額の算定を行うために、同社の経理処理システムに従いまして、真の原価元帳の信憑性を確認するための作業などを行っているところでございます。  御案内のとおり、契約件数が直接調達だけでも約七千件以上に上ることでございますので、量的に膨大な作業量が見込まれます。また、過大請求の操作がかなり複雑な仕組みになっておりまして、その解明作業に相当高度な原価計算、監査等が必要になるものと考えております。  これらの作業に対応可能な職員が量的、質的にも限られておりますので、私どもとしては、相当の期間今後もかかるのではないかと思っておりますけれども、さはさりながら、できるだけ速やかに調査を行いまして、算定作業を早めてまいりたいと思っているところでございます。
  101. 吉川貴盛

    ○吉川委員 国民は注視をいたしておりますから、今答弁がありましたように、できるだけ速やかにこの算定額をきちっとできるようにしていただきたいなと思います。  次に質問を移らせていただきたいと思いますが、装備品調達の見直しについてお伺いをさせていただきたいと思うのです。  特に、陸上自衛隊は、純国産装備の占める率が大きいと思うのでありますが、その中でも戦車や装甲車両は国産で生産をしているわけでありまして、諸外国と比較すると大変コスト高になっているのではないかと思うのです。  聞いた話によりますと、例えば九〇式戦車、これは純国産であります。約十億から十二億ほど生産費が必要である。一方、アメリカの、湾岸戦争で活躍をしたM1式戦車でありますが、これは約二億円でありますから、五分の一から六分の一で生産をされているということであります。  国内の産業の保護だとか育成ですとか技術力向上という点も確かに重要なことであろうかと思うのです。ですが、このコスト高が配備のおくれにつながっているとすれば、これもまた一つの大きな問題だと私は思うのです。コスト高是正のために、輸入やライセンス国産の増加等を含め、装備品調達の見直しを行うべきと考えるのでありまするけれども、長官の御所見をお伺いさせていただきます。
  102. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 確かに、今委員から御指摘があったような点も勘案しまして、今般決定いたしました「調達改革の具体的措置」におきましては、装備品の調達の基本は経済性の追求であるとの考えのもと、安全保障上の要請にも十分に配慮しつつも、供給ソースの多様化の追求等競争原理の導入を高め、調達コストの低減に努めることとしております。  このため、御指摘の輸入品等の増加についても、その導入に努めることとしておりますけれども、部品等の突然の製造中止といったような事態が起こったりします。あるいは、為替変動による価格の不安定性等の問題等も惹起するということも考えられますので、その点の解決のための工夫も必要であるというふうに考えております。  とりわけ、陸上自衛隊の装備品、戦車、装甲車両等につきましては、我が国の国土あるいは気候等自然条件に適した仕様が求められるということから、その多くが国産とならざるを得ないところでございますけれども、いずれにしましても、防衛装備品等の調達に当たっては、民生品あるいは民生部品、輸入品の活用のための規格・仕様書の見直しを行っておりまして、調達コストの低減を目指した競争原理の強化等の調達改革施策を推進してまいりたい、こういうふうに考えております。
  103. 吉川貴盛

    ○吉川委員 ぜひ、コスト高の是正ということも、防衛費予算の中では大変大切なことだと思いますので、これからも研究を続けていっていただきたいなというふうに思っております。  次に質問を移らせていただきますけれども、北朝鮮の不審船問題のその後についてであります。  海上自衛隊は、この不審船の対応の教訓を踏まえて、もう既に報道されていますけれども、高速船の侵入対策といたしまして、高速ミサイル艇二隻を舞鶴に配備することとしたと聞いております。二〇〇一年から配備が始まりまして、最終的に十隻程度配備する計画と聞くのでありまするけれども、舞鶴以外への配置計画はあるんでしょうか。  さらに、今北海道の余市というところに高速艇が三隻配備されているんですね。二〇〇一年というとまだ二年あるわけでありまするけれども、不審船がいつまたあらわれるかわからないという状況の中で、この余市に配置されている高速艇を先に舞鶴の方に持ってくるとか、そういった何か防衛庁としての戦略というものがないんでしょうか。その辺をお伺いさせていただきたいんです。  さらに、従来、対潜作戦重視だったと思うんですけれども、やはり沿岸警備というものもさらに重視をしていかなければならないんだろうと思うんですが、対潜作戦重視から沿岸警備重視へ移行するというような、そういった戦略も今防衛庁ではお持ちでしょうか。あわせてお伺いいたします。
  104. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 ミサイル艇につきましては、今委員もお触れになりましたが、日本海側の三個地方隊、大湊、舞鶴、佐世保に配備することを念頭に平成二年度以降整備しており、現在、大湊地方隊隷下の余市に一個隊、これはお話のように三隻でございますが、それを保有しているところであります。十一年度には二個隊目の整備を念頭に二隻を建造する予定でございますけれども、その配備先については、これは十三年度が就役年度でございますが、この時点で決めることと考えており、現時点では確たることは申し上げられませんけれども、先般のような不審船への対処ども十分考慮に入れて検討を進めていきたいと思っております。  今委員からお話があった、余市にあります一個隊をほかの方に切りかえることも考えているかということでありますが、現在のところはそういうふうには考えておりません。  その他の問題については政府委員の方から答弁していただきます。
  105. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 今大臣からお答えいたしましたとおり、余市に置いてございます今のミサイル艇は五十トンのもので、しかも水中翼船タイプということで非常に特殊な施設なんかも必要でございます。また、水中翼船ということで、果たして先般のような任務にうまく使い勝手があるかどうかということも考えていかなきゃいけないと思っております。  それから、沿岸警備重視の装備体系等に移行するかどうかということでございますが、従来から、防衛力がトータルとして、主たる任務の防衛に最も効率よく働くということで考えてやっておりますが、そういう装備体系全体の整合性を図る中で、今御議論いただいております先般の不審船対応といったようなことも当然念頭に置いて、全体として効率のいい防衛力で、かつ考えられるいろいろな事態対処できるものを工夫して整備していきたい、一般的にはそのように考えております。
  106. 吉川貴盛

    ○吉川委員 次に質問を移らせていただきたいと思います。  有事法制の必要性について大臣の御所見を伺いたいと思うのでありますけれども危機管理の側面からの有事法制整備が私は重要だと思うわけであります。  有事法制といいますと何か国民総動員法的な、一般的にはネガティブなイメージが非常に強いわけでありまするけれども、例えば大規模災害あるいは大規模事故さらには犯罪事件、これにはテロやハイジャックや要人誘拐や建物占拠等々たくさんあろうかと思うんですけれども、国家的な緊急事態対処という観点から有事法制というものを検討する必要性が非常にあるのではないかというふうに私は思っております。さらに、国家的な緊急事態におきましては、自衛隊はもちろんでありまするけれども警察や消防、海上保安庁といった組織を一元的に運用して対処し得る体制整備の必要性があるんだろうと思うんです。  国家の危機管理体制の強化という観点から、私は、今も申し上げましたけれども有事法制整備を急ぐべきだと考えるわけでありまするけれども、長官の御所見をお伺いさせていただきたいと存じます。
  107. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 有事法制に係るものとしまして、私どもは、防衛庁所管法令、これは第一分類と言っております。それから他省庁所管法令、これは第二分類、そして所管省が明確でない事項に関する法令、これは第三分類に分けまして、第一分類につきましては五十六年四月に問題点を公表しております。それから五十九年十月に第二分類についての問題点を取りまとめて公表したところであります。第三分類につきましては政府全体として取り組むべき性格のものでありまして、個々の具体的検討の担当省をどこにするかというような問題の検討も必要でありましたが、現在、内閣安全保障危機管理室がいろいろな取りまとめや調整を行っているところであります。  有事法制の問題につきましては、もう二十二年間研究検討を重ねてきたわけでありますが、現在の研究問題点の整理を目的としているものであって、立法の準備ではないという前提が置かれていること等の事情を勘案し、引き続き必要な検討を続けているわけであります。  しかし、累次申し上げているところでありますが、防衛出動した場合に、相手が日本に上陸してきても陣地を構築するに海岸法許可をとるのに三週間もかかる、あるいは指揮所構築するために基準法の許可に三週間もかかるという事態ではなかなか防衛出動の実効が上がらないということを我々も実は憂慮しているわけでございまして、ほんの一例を申し上げたんですが、そういう観点から、防衛庁としては歴代防衛庁長官が、単に研究にとどまらず、立法化されることが望ましい、こういうふうに国会に対して御答弁申し上げているところであります。
  108. 吉川貴盛

    ○吉川委員 私どもも一生懸命努力をさせていただきたいと思いまするけれども、野呂田大臣の特段なる御努力もお願いを申し上げるところであります。  次に質問を移らせていただきたいと思いますが、私の地元は北海道でありまして、私の選挙区には北部方面航空隊、いわゆるヘリ隊の基地がございます。さらに、北部方面航空隊の補給処の分屯地と申しましょうか、そういったのもございます。  具体的に申し上げますと、丘珠駐屯地というわけでありまするけれども、この北部方面航空隊や、十一師団あるいは第七師団の飛行隊も一緒に駐屯をしているところなんです。  さらに、この丘珠自衛隊には、飛行場は民間と共用でございまして、航空管制や、例えば、札幌は大雪が降るところでありまして、ことしあたりは、降雪深というんですけれども、長官のところも雪の多いところだと思いますけれども、降雪深で何と七メーター以上ことしは雪が降りました。大変な豪雪でございました。札幌で、除雪費が百五十億円から百六十億円かかったのであります。この丘珠自衛隊の、民間と共用している飛行場の除雪は自衛隊員がやっていただいているんです。  いよいよこの飛行場、滑走路百メーター延長の計画が持ち上がりまして、ことしじゅうに運輸省の方で決められると思いまするけれども、一千四百メーターのところが今度一千五百メーターになるわけでありまして、そうなりますと、発着便もふえることが予想をされているわけであります。さらに、聞きますと、管制塔の業務の増大や、もちろん、滑走路が百メートル長くなることによって、除雪区域の拡大等で現地部隊の負担はさらに重くなるものと考えられるわけであります。レーダーも新たなものにしなければ対応できないのではないか、こう言われているわけであります。  お伺いしたいことは、隊員の負担の軽減のためにも、管制塔の処理能力の向上など、飛行場の維持管理のための予算措置をぜひ講じていただきたい。こういった共用飛行場に対しての防衛庁の予算というのはそんなに多くはないんだろうと私は思うんです。そういったことを、ぜひ長官の心温まるお気持ちをお伝えいただきたいなと思っているところであります。いかがでございますでしょうか。
  109. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 自衛隊の飛行場については、自衛隊として、それぞれ利用に高い需要を有しておりまして、本来は専用で利用することが望ましいのでございますけれども、共用飛行場については、地元の需要が高いことから、これまでも地元との共存、基地の安定的使用等の観点を踏まえまして、防衛上の任務との調和を図りながら、民航機の運用協力してきているところであります。  丘珠飛行場につきましても、防衛庁としては、航空機の運航状況を踏まえるとともに、隊員の負担軽減、隊務の円滑な運営、航空交通の安全の確保等にも配慮し、管制処理能力の向上を図るべく、財政事情も勘案して検討していくことが必要ではないかと考えておりますが、特に、今委員指摘のレーダーは、飛行場に離着陸する航空機を誘導するターミナルレーダー管制業務に使用するレーダーを指しているものと考えますけれども、現在、防衛庁が運輸大臣からの委任に基づきターミナルレーダー管制業務を行っている飛行場は全自衛隊で十二カ所ございますが、丘珠飛行場における同業務の実施は、航空交通の安全性を向上させる上で有効なものと考えております。  防衛庁としては、航空機の運航状況、財政事情を勘案し、関係機関と調整の上、同業務の実施について積極的に検討してまいりたい、こう思っております。
  110. 吉川貴盛

    ○吉川委員 ありがとうございました。  時間が少し残っておりますけれども質問を終わりたいと思いますが、最後に、大臣一つだけ御要望申し上げたいと思うんです。  大臣に御就任をされましてから大変忙しい日々を送られているかと存じます。北海道は今、北部方面隊、日本一の、自衛隊員も、数も多いわけでありまして、御承知のとおりであろうかと存じまするけれども、ぜひこの北部方面隊に一日も早く御視察をいただいて、隊員に御激励をいただければ、隊員もこんな幸せはないのではないかと思っておりますので、ぜひよろしくお願いを申し上げたい。  質問を終わらせていただきたいと思います。
  111. 二見伸明

    二見委員長 次回は、来る六月一日火曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十五分散会