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1999-03-03 第145回国会 衆議院 安全保障委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月三日(水曜日)     午前十時開議   出席委員    委員長 二見 伸明君    理事 安倍 晋三君 理事 浅野 勝人君    理事 江口 一雄君 理事 仲村 正治君    理事 前原 誠司君 理事 横路 孝弘君    理事 佐藤 茂樹君 理事 西村 眞悟君       伊藤 達也君    池田 行彦君       臼井日出男君    大石 秀政君       大野 功統君    嘉数 知賢君       河井 克行君    岸本 光造君       栗原 裕康君    小泉純一郎君       佐藤  勉君    阪上 善秀君       杉山 憲夫君    田村 憲久君       中山 利生君    船田  元君       吉川 貴盛君    伊藤 英成君       岡田 克也君    桑原  豊君       島   聡君    河合 正智君       冨沢 篤紘君    冬柴 鐵三君       塩田  晋君    佐々木陸海君       中路 雅弘君    東中 光雄君       辻元 清美君  出席国務大臣         国務大臣         (防衛庁長官) 野呂田芳成君  出席政府委員         防衛庁長官官房         長       守屋 武昌君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 柳澤 協二君         防衛庁人事教育         局長      坂野  興君         防衛施設庁長官 大森 敬治君         防衛施設庁総務         部長      山中 昭栄君         防衛施設庁施設         部長      宝槻 吉昭君         外務省総合外交         政策局長    加藤 良三君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 竹内 行夫君         外務省欧亜局長 西村 六善君         通商産業省貿易         局長      佐野 忠克君         運輸省海上交通         局長      宮崎 達彦君         運輸省港湾局長 川嶋 康宏君         海上保安庁長官 楠木 行雄君         自治大臣官房総         務審議官    香山 充弘君  委員外出席者         警察庁警備局外         事課長     内山田邦夫君         大蔵省関税局業         務課長     振角 秀行君         大蔵省国際局国         際収支課長   大村 雅基君         国税庁課税部法         人税課長    吉川 元康君         安全保障委員会         専門員     田中 達郎君 委員の異動 三月三日         辞任         補欠選任   山崎  拓君     大石 秀政君   東中 光雄君     中路 雅弘君 同日         辞任         補欠選任   大石 秀政君     山崎  拓君   中路 雅弘君     東中 光雄君 二月十六日  周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案内閣提出、第百四十二回国会閣法第一〇九号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出、第百四十二回国会閣法第一一〇号) は日米防衛協力のための指針に関する特別委員会に付託替えされた。 同月十九日  AWACS導入撤回に関する請願保坂展人君紹介)(第七七一号) 同月二十五日  AWACS導入撤回に関する請願辻元清美紹介)(第九〇八号)  同(土井たか子紹介)(第九五〇号)  沖縄・名護海上ヘリポート基地新設計画断念に関する請願知久馬二三子紹介)(第九四七号)  同(濱田健一紹介)(第九四八号)  同(古堅実吉紹介)(第九四九号) は本委員会に付託された。 二月十六日  周辺事態法などの制定反対に関する請願中林よし子紹介)(第八号)  同(吉井英勝紹介)(第九号)  同(石井郁子紹介)(第二〇一号)  同(大森猛紹介)(第二〇二号)  同(金子満広紹介)(第二〇三号)  同(木島日出夫紹介)(第二〇四号)  同(児玉健次紹介)(第二〇五号)  同(穀田恵二紹介)(第二〇六号)  同(佐々木憲昭紹介)(第二〇七号)  同(佐々木陸海紹介)(第二〇八号)  同(志位和夫紹介)(第二〇九号)  同(瀬古由起子紹介)(第二一〇号)  同(辻第一君紹介)(第二一一号)  同(寺前巖紹介)(第二一二号)  同(中路雅弘紹介)(第二一三号)  同(木島日出夫紹介)(第四四一号)  同(寺前巖紹介)(第四四二号)  同(佐々木陸海紹介)(第五三五号)  有事法制化反対に関する請願辻元清美紹介)(第二五号)  周辺事態法案の廃案に関する請願辻元清美紹介)(第二六号)  新ガイドラインに基づく国内法整備のための関連法案撤回に関する請願中西績介紹介)(第三六一号) は日米防衛協力のための指針に関する特別委員会に付託替えされた。 二月十六日  防衛庁背任事件全容究明等に関する陳情書(第四六号) は本委員会に参考送付された。 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件     午前十時開議      ――――◇―――――
  2. 二見伸明

    二見委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阪上善秀君。
  3. 阪上善秀

    阪上委員 我が国からの北朝鮮への資金技術流出等に関して質問をしてまいりたいと思っております。  昨年の北朝鮮ミサイルはメード・イン・ジャパンだと言われるぐらいであります。数年にわたり北朝鮮は深刻な経済危機にあるとされ、工場稼働率は低下し、食糧生産は乏しく、餓死者の発生すら指摘されてまいりました。国民生活が困窮をきわめていると言われておりますにもかかわらず、兵器生産輸出、特に昨年八月のミサイル実験に象徴されるように、大量破壊兵器開発に相変わらず傾注しておるのであります。弾道ミサイルなどの大量破壊兵器開発は、我が国にとっても深刻な脅威であります。  我が国は、米韓とも北朝鮮大量破壊兵器開発阻止を目指して、各種の支援をてこに交渉を続けてまいりましたが、最近の地下核施設疑惑を挙げるまでもなく、北朝鮮交渉合意に従う意思が希薄なことは明らかであります。米韓はそれぞれの立場から硬軟両様北朝鮮にアプローチを続けてまいりましたが、我が国も、従来からの日朝関係、特に資金技術の流れを再点検すべきではないかと思います。  大量破壊兵器開発を続けております北朝鮮脅威に対して、我が国は、米国との協力のほか、独自の情報網の構築などの対応策を立てるべきではないか。日本ミサイルと言いましたのに、アメリカ人工衛星と言ったのであります。防衛庁長官所見をお伺いいたします。
  4. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 お答えいたします。  防衛庁としては、北朝鮮軍事動向については細心の注意を払っていく必要があると考えております。米国との密接な情報交換も含め、可能な限り情報収集体制をとることが重要であると考えております。  したがいまして、防衛庁におきましては、現在、このような認識に基づき、重要事態に対する情報収集分析、伝達の円滑な実施の確保及び所要の対応のあり方について、防衛庁長官のもとの重要事態対応会議において議論を重ねているところであります。情報面も含め、北朝鮮問題について適切な対応ができるよう努力をしているところであります。  なお、御指摘情報収集衛星につきましては、政府としては、御案内のとおり、平成十四年を目途にこれを導入すべく取り組んでいるところでありますが、防衛庁としては、このことによって独自の情報収集力確保ができるあるいは情報源が多様化できる、こういう観点から、これを導入して活用することとしております。今後も積極的に進めてまいりたいと思っているところでございます。
  5. 阪上善秀

    阪上委員 資金流出についてお伺いをいたします。  北朝鮮研究専門家にお会いして聞きますと、経済危機下にある北朝鮮にとって、我が国からの資金流出は貴重な外貨収入であり、大量破壊兵器開発の一助をなしていると言っておられました。その実態政府はどのように把握されておるのか、お伺いをいたします。
  6. 阿南惟茂

    阿南政府委員 我が国から北朝鮮への送金につきましては、確かにこれが北朝鮮にとっての貴重な外貨収入源であるというようなことが言われておりまして、私ども関係省庁と連絡を密にして情報収集努力しておりますが、日本から直接送られる資金また第三国経由のもの等いろいろなルートがございます。そういうことで、その総額や、また送られた後、北朝鮮の中でどのように使われているかということについて、正確に把握しているという状況ではございません。
  7. 阪上善秀

    阪上委員 我が国からの流出規模についてお伺いをいたします。  我が国は、北朝鮮貿易相手国としては、平成九年度、中国に次いで第二位、日朝貿易額総額五百八十一億円に達しております。そのほか在日朝鮮人からの送金もございます。最近一年当たりの送金総額と、これが北朝鮮経済に与える影響力はどの程度と認識されておるか。  そして、去年の十月五日のアエラに記載されておりました北朝鮮の元秘密工作員証言によりますと、北朝鮮核開発に多数のロシア人技術者関係しているとの指摘もあり、彼らの給与としてはこれらの送金が使用されている節があると証言いたしておるのであります。この件について政府実態を把握されておるのかどうか、お伺いをいたします。
  8. 阿南惟茂

    阿南政府委員 先生の御質問の、最初の、日朝経済関係がどの程度北朝鮮経済に大きな意味を持っているかという点につきましては、貿易量、それから、先ほど必ずしも総額を正確に把握している状態にございませんと申し上げましたが、相当多額の資金北朝鮮に行っているということが考えられますし、また北朝鮮自身が、外貨獲得源というのはほとんどないんだ、余談でございますが、それでミサイル輸出しているんだというようなことを言っていることから考えましても、日本との経済関係北朝鮮経済にとって非常に大きな意味を持っているということは容易に想像できるところでございます。  また、北朝鮮核開発ロシア人技術者等関係しているのではないかという点でございますが、これもいろいろな情報には接しておりますけれども内部の事情、また核開発という事業の性格からいって、私どもはこの実態について確たる情報には接していないと申し上げざるを得ません。
  9. 阪上善秀

    阪上委員 次に、送金停止の可否についてお伺いをいたします。  北朝鮮が二回目のミサイル実験を行った場合、我が国はKEDOへの支出を見合わせることもあると政府は発表しておりますが、北朝鮮我が国の抗議の意思をより強烈に伝えるためには、これら在日朝鮮人からの送金を停止させる方が効果的であると考えますが、防衛庁長官所見をお伺いいたします。
  10. 大村雅基

    大村説明員 外為法を所管している大蔵省として御答弁させていただきます。  仮に北朝鮮が二回目のミサイル実験を行った場合というふうなお話でございましたが、これは、送金停止も含めましていろいろな手段がある中で、我が国としてどのような対応をとるかということは、安全保障上の観点やあるいは外交的観点等政府全体としての総合的判断が求められるということになるのだろうというふうに考えております。  ちなみに、現在の外為法について申し上げますと、送金等の支払いを大蔵大臣等許可に係らしめることが可能となっておりますが、そのためには、国際約束の誠実な履行または国際平和のための国際的な努力への寄与、これが前提となっているところでございます。
  11. 阪上善秀

    阪上委員 全面停止部分停止についてお伺いをいたします。  昨年九月十日の安全保障委員会答弁で、送金停止には外為法国際協調の形が必要と答弁をされております。平成九年に外為法が改正され、国際平和のための経済制裁措置はとれるようになっておりますが、二国間関係送金停止措置がとれるか不明瞭であります。  我が国安全保障上の観点から、外為法をさらに強化するため改正する必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  12. 大村雅基

    大村説明員 現在の外為法につきましては、今先生からお話がありましたように、また先ほど私が申し上げましたように、送金停止等経済制裁を発動するためには、国際約束の誠実な履行のためまたは国際平和のための国際的な努力我が国として寄与するため特に必要があると認めるとき、このいずれかの発動要件を満たすことが必要となっております。このうち、後者の国際平和のための国際的な努力我が国として寄与するため、これについて、どのような状況となれば満たされたと判断するのかということについてはケース・バイ・ケースで検討を行うということになろうかと思いますが、いずれにしましても、経済制裁を行う前提としましては、国際協調行動が必要となっておるということでございます。  国際協調行動枠組みと全くかけ離れたやり方での制裁を可能とすべきか否かということにつきましては、基本的には、外為法は、自由な対外取引を基本としまして、必要最低限の調整を原則としているということでございますので、そうした法目的からはおのずと限界があるのではないか、そのように考えております。
  13. 阪上善秀

    阪上委員 朝鮮信用組合等についてお伺いをいたします。  北朝鮮研究専門家にお会いをいたしますと、朝鮮信用組合在日朝鮮人商工連合会はかねてその内部実態を明らかにされず、二重帳簿の存在など不明朗な経営が指摘され、また、国税庁との間でも特権的な取り扱いを定めた合意事項があるように聞いております。また、都道府県の監査も形骸化されておると聞いておるのであります。  政府としてはどの程度実態を把握しておるのか、また、法のもとの平等の観点から、不法、脱法行為には毅然とした態度で臨むべきであると思いますが、大蔵国税庁の考えをお伺いいたします。
  14. 吉川元康

    吉川説明員 課税面での実態把握という観点からお答えさせていただきたいと思います。  一般論として申し上げますと、国税当局におきましては、常日ごろから、あらゆる機会を通じ、課税上有効な資料情報収集に努めているところでございます。また、収集した資料情報納税者から提出された申告書等を総合検討いたしまして、課税上問題があると認められる場合には税務調査を行うなど、適正な課税に努めているところでございます。  先ほど先生がお触れになりました在日本朝鮮人商工連合会とのいわゆる合意事項でございますが、これは在日本朝鮮人商工連合会側の要望にすぎず、国税庁がこれに合意したということではございません。この旨、機会あるごとに申し上げておるところでございまして、また、本年一月、合意事項なるものは存在しない旨について改めて職員周知徹底を図ったところでございます。  今後とも、適正かつ公平な課税の執行に努めてまいりたいと思っております。
  15. 阪上善秀

    阪上委員 政府はそのように答弁されましても、向こうの団体が合意事項があると言っておりますので、不可解この上ないところでございます。  次に、日本に停泊中の北朝鮮船舶動向把握についてお伺いをいたします。  これも北朝鮮専門家にお会いして聞いた話でございますが、新潟港に毎月二回から三回、北朝鮮の万景峰92が入港しており、その船内では国内朝鮮総連関係者への指導などが行われており、政府は、同船を通じて不法な資金、不法な物資が出入りし、そして不法なハイテク技術流出情報収集、不法な工作員の出入り、出入国についてどの程度チェックされておるのか、事実関係を明らかにされたいと思います。
  16. 楠木行雄

    楠木政府委員 私の方からは、その入港実態について、先生のお尋ねに対してお答え申し上げたいと思います。  海上保安庁におきましては、新潟港にほぼ定期的に入港しております北朝鮮船舶、万景峰92の入港実績を把握しておりますが、先生おっしゃるように、大体月二、三回ぐらいの感じでございまして、この五年間、年間約三十回前後、ちなみに、十年で申し上げますと、二十七回入っておるというのが実態でございます。
  17. 内山田邦夫

    内山田説明員 お答えいたします。  警察といたしましては、我が国技術物資及び資金の不正な流出につきましては、外国為替及び外国貿易法、これの違反に該当するおそれがある重大な事案であると認識しております。  昨年十月、外為法によって輸出が禁止されておる潜水具、これを通産大臣許可を受けずに貿易商社が万景峰号で不正に輸出していた事件、これを検挙するなど、これまでに北朝鮮関係で五件の外為法違反事件を検挙しているところであります。  一般論として申しますと、警察は、公共の安全と秩序を維持するという観点から、北朝鮮の万景峰号我が国入港時の動向について重大な関心を持っているところであります。ただ、情報収集捜査等の具体的な内容につきましては、事柄の性格上、コメントを差し控えさせていただきます。
  18. 佐野忠克

    佐野政府委員 お答えを申し上げます。  今、警察庁の方から通産省協力ということをおっしゃっておられましたので若干申し上げますと、私たちの方は、我が国国際の平和及び安全の維持観点から、外為法に基づきまして厳格な輸出管理を実施いたしているところでございます。その際、渡航する人が手荷物として規制対象貨物を携帯する場合や、非居住者に対して規制対象技術にかかわる技術指導等を行う場合につきましても、これは通産省許可の取得を必要といたしております。  なお、北朝鮮向け輸出等につきましては、第三国経由も含めまして、個別案件ごとに厳格な輸出審査を実施することといたしておりまして、当省といたしましては、今後とも、国際の平和及び安全維持のために厳格な輸出管理に万全を期してまいりたいと思っております。  以上でございます。
  19. 振角秀行

    ○振角説明員 大蔵省関税局業務課長でございます。税関を所掌しております。  今まで各省庁からいろいろ御答弁がありましたけれども、私のところは、北朝鮮向けに出国する旅客等に託して輸出される託送品あるいは同国向け一般貨物につきましていろいろチェックをしておるわけでございますけれども税関は従前より、関税法あるいは今まで言及がありました外為法等の適正な運用を図るため、取り締まり上必要な人員を配置し、輸出規制物品等に該当するおそれのある貨物については慎重な審査あるいは検査を行い、該当するかどうかについて疑義のある貨物については、先ほど答弁されました通産省確認するなど、不正輸出防止に努めてきたところでございます。  今後とも、関係省庁との連携を密にするとともに、一層の実効性確保して、輸出規制物品等不正輸出防止に努めてまいる所存でございます。  以上でございます。
  20. 阪上善秀

    阪上委員 次に、北朝鮮の核保有についてお伺いをいたします。  先ごろ防衛庁は、北朝鮮はいまだ弾道ミサイル核弾頭搭載能力を保有していないとの見解を示されました。しかし、先ほど申し上げました、昨年十月五日のアエラの、北朝鮮亡命者金秀幸氏の証言によりますと、ウクライナから六発の核弾頭核兵器用プルトニウム三十二キログラムを購入しているという指摘があるのであります。  防衛庁はこうした情報を入手されておるのかどうか、お伺いをいたします。
  21. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 御指摘の点につきましては、阪上委員も多分御出席されておったんじゃないかと思いますが、自民党の勉強会において、その場に出席しておりました防衛庁職員が、ある議員からの質問に対し、核兵器を小型化しミサイルの弾頭に搭載するためには高度の技術を要し、北朝鮮がかかる技術を有しているか否かについて疑問に思うという応答をし、一部そのことが報道されたことは承知しているところでありますが、私は、この応答は多少言い過ぎているのじゃないかなとも考えております。  核兵器弾道ミサイルに搭載するためには、核兵器そのもの開発し、かつ小型化することが必要となるわけでありますが、北朝鮮が極めて閉鎖的な体制をとっており、また、一般にこの種の兵器開発は、仮に行うとしても極秘裏に行われる性格のものでありますから、北朝鮮弾道ミサイル核弾頭搭載能力については、各国とも断片的な情報をもとに推論を積み重ねて、鋭意分析評価を行ってきているところであります。  例えば、アメリカの国防省の公刊資料によりますと、北朝鮮は九四年の枠組み合意以前に、少なくとも一個の核兵器に十分な量のプルトニウムを製造したと信じられているとされているなど、既に同国核兵器一、二個を製造するに十分なプルトニウムを抽出、保有しているとの指摘もありますが、防衛庁としては、御指摘核弾頭搭載能力を含め、北朝鮮核兵器開発現状に関しては、明確なことを申し上げるだけの情報を有していないというのが現状でございます。  また、委員から御指摘のありましたウクライナからの核移転につきましては、北朝鮮核兵器開発疑惑につきましては、我が国安全保障に非常に重大な影響を与えかねない問題であるとの観点から、私どもも強い関心を持って継続的に情報収集分析評価を行っているところでありますが、御指摘の事実については明確に確認はできていない、こういうことでございます。
  22. 阪上善秀

    阪上委員 次に、我が国からの技術流出についてお伺いをいたします。  先刻行われました囲碁のロボット大会で、北朝鮮日本を抜いて世界一になったのであります。恐るべき技術の進歩であります。  内外のマスコミ報道によりますと、北朝鮮弾道ミサイル構成部品に多数の日本製ハイテク技術が使われておるというのであります。それらは日本から日中合弁企業へ一たん輸出され、中国国内にある北朝鮮ダミー会社へ納入され、そこから北朝鮮へと渡っているとされておるのであります。ここ数年でも数件の不正貿易取引が摘発されました。また、北朝鮮から九四年に韓国へ亡命いたしました金秀幸氏は、弾道ミサイル開発担当機関に所属し、日本からの技術流出にも深くかかわったと証言しておるのであります。  このような技術流出をとめる対応策政府は現在有しておるのか、現在なければ今後どのように対応しようとされておるのか、お伺いをいたします。
  23. 佐野忠克

    佐野政府委員 お答えを申し上げます。  先ほど申し上げたところでございますが、我が国といたしましては、国際の平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるような貨物技術輸出につきましては、外為法に基づきまして、通商産業大臣許可に係らしめて厳格な管理を行っているところでございます。  今後とも、引き続き我が国から輸出される貨物技術大量破壊兵器開発等に転用されることがないように万全を期してまいりたいと存じます。  なお、先ほど委員指摘のありましたアエラ等報道に関しましては、その御指摘の件につきましては、関係省庁協力も得ながら、事実関係を鋭意究明をいたして調査をいたしているところでございますが、現在までのところ、外為法違反する事案というのは確認をされていないところでございます。以上でございます。
  24. 阪上善秀

    阪上委員 最後に、関係者国会への招致について委員長にお願いをいたします。  北朝鮮核弾頭を六基も持っておるという疑惑、これは日本にとっても大変重大な事態であります。金秀幸氏並びに同氏から貴重な証言を得ておると言われております現代コリア研究所の所長、お二人を本委員会参考人として招致すべきであると思います。  委員長においてしかるべき取り計らいをお願いいたしたいと思います。
  25. 二見伸明

    二見委員長 この件につきましては、理事会で後日相談をしたいと思います。
  26. 阪上善秀

    阪上委員 以上で終わります。
  27. 二見伸明

    二見委員長 次に、前原誠司君。
  28. 前原誠司

    ○前原委員 事前の通告に従いまして御質問をさせていただきます。  まず、日米安保条約の第六条について御質問をさせていただきたいと思います。  この文言を読むと、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」このように書いてあります。これをはっきり読むと、アメリカは四軍体制であるのに、いわゆる海兵隊の記述がない、こういうことになります。今まで国会でもこのことは取り上げられているそうでありまして、政府側からは、アメリカの国家安全保障法の第五〇一三号において海兵隊は海軍省に所属する旨が規定をされている、こういうことであり、そしてまた政府の見解としては、だから海兵隊も日本の施設・区域を使用することはできるんだ、こういう答弁を今までされているわけであります。  経緯から少々お聞きをしたいのでありますが、海兵隊というのは極めて古い軍隊でありますけれども、なぜ、この日米安保条約を結ぶときにこの三つ、陸海空のみ書いて、海兵隊とは書かなかったのか。それはアメリカの全く組織的な話なのかどうなのか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  29. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 ただいま先生指摘のとおりの規定が安保条約の六条にはございます。先生も御承知のとおりでございますし、先ほど御指摘のありました国会答弁におきましても述べられているところでございますけれども、海兵隊につきましては一八三四年以来米海軍省に属しているという歴史がございます。  それで、現行の米国安全保障法、これは先生先ほど御引用になりました五〇一三号というのが、その後改正がございまして五〇六一号ということになっておりますが、いずれにいたしましても、現行の国家安全保障法におきましても海兵隊は海軍省に所属する旨規定されております。  日米安保条約締結交渉の際の経緯でございますけれども、実はつまびらかにその交渉の経緯、やりとりということについては、寡聞にしてここで申し上げるほど承知いたしておりませんけれども、この六条を読んでいただきますと、その表現といたしまして、私が申し上げたいのは英文の方でございますけれども、陸海空と言う場合に、いわゆる米国で固有名詞として使われておりますアーミー、ネービー、エアフォース、マリーンというような表現ではなく、ランド・エア・アンド・ネーバル・フォーシズということで書かれてございます。つまり、固有名詞ではなく、地上であったり空中であったりそれから海上、海であったりという、そういうところで活動する軍隊、こういうふうな書き方、表現をとっております。  したがいまして、機構的には海兵隊は海軍に属するということとともに、この条約の文章といたしまして、表現といたしましては、アーミー、ネービー、マリーン、エアフォースという表現ではなく、ランド・エア・アンド・ネーバル・フォーシズというふうに書かれている、そういうことで交渉がまとまった、その際に、海兵隊が海軍に属しているということを踏まえて、ネーバル・フォーシズの中に含まれる、こういうふうな解釈であろうと思います。
  30. 前原誠司

    ○前原委員 そんな大きな問題はないので、余り細かく議論することは避けたいと思いますが、今の御答弁ですと、要は英文の方を読んでくれ、こういうことですね。  確かに、海軍、空軍、陸軍を英語に直すと、ネービー、エアフォース、アーミーということであって、第六条には、ランド・エア・アンド・ネーバル・フォーシズということになっておりますから、違うんだという意味はわかるんです。わかるんですが、今までの政府答弁ですと、いわゆる海軍省に所属をしているということであると、私はこのネーバル・フォースに入っているのかなと思っていたんですけれども、今の局長の御答弁ですと、要はランドとネーバルに両方海兵隊はかかっている、こういうふうに読んでくださいということですか。
  31. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 ちょっと舌足らずであったかもしれませんですけれども、機構の上からいたしますと、まさに海軍の中に含まれているということで、ネービーということでネーバル・フォーシズというふうに読めるということが一つ。  それから、この条約の文章とか交渉の経緯を踏まえた解釈ということのお尋ねでございましたので、そういう観点から見ますと、さらに陸空海というところでの軍隊という活動と申しますか、その陸海空という点に着目した点から見ても、これは海軍というところで読めるであろう、こういう趣旨でございます。
  32. 前原誠司

    ○前原委員 ちょっと整理したお答えを、今でなくて結構ですので、また文書でもいただければありがたいと思います。  つまり、日本語では陸軍、空軍、海軍ともう明確に書いてあるわけでありまして、英語ですとランド・エア・アンド・ネーバル・フォーシズということになっていて、海兵隊は、そのアメリカの法律では海軍省に属しているけれども、あれは陸戦の機能もあるということでランドにもかかってくるということになると、日本語と英訳が非常に、一対一対応になっていないということにもなりかねないので、これについてはこれ以上質問はいたしませんが、少しまとまった、今の私の質問に対するお答えを文書として出していただければと思いますが、よろしくお願いいたします。  さて、それでは防衛庁長官に御質問をさせていただきたいと思います。まず先制攻撃について私は御質問をさせていただきたいと思います。  我が党でもいろいろな意見を言っているというふうに言われておりますけれども、実はそうではなくて、基本的には、敵基地攻撃と自衛権の範囲という政府の統一見解にあるように、攻撃を受けたときには、我々としては、憲法の範囲の中でも、報復のために、敵基地などを、他に手段がない場合、必要最小限度で行うことは自衛の範囲に含まれるんだ、こういう話が根本的に一つあるということ。それからもう一つは、きょう主に問いかけたい部分でありますけれども、絶対にやられた後でないとやり返しちゃいけないのかということ、先制攻撃並びに武器使用についていろいろ確認をさせていただきたい、このように私は思っております。  まず、ざっくばらんに長官にお聞きをしたいのでありますが、我が国に実際に被害が出ていない時点で、相手国の基地、戦闘機あるいは艦船を我が国が攻撃することは可能なんですか、どうなんですか。
  33. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 もう委員御案内のとおり、憲法九条のもとにおいて許容されている自衛権を発動するためには、政府は、従来から、いわゆる自衛権発動の三要件というものがございます。すなわち、一つは、我が国に対する急迫不正の侵害があること、一つは、これを排除するために他の適当な手段がないこと、一つは、必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと、こういう三つの要件がございます。これに該当する場合に武力の行使は限られると解されております。我が国に対する急迫不正の侵害がない場合に自衛権の行使をして武力の行使をするということは、やはり憲法上認められないものだと考えております。  この場合に、我が国に対する急迫不正の侵害がある場合については、従来から、我が国に対する武力攻撃が発生した場合を指しておりまして、この武力攻撃が発生した場合とは、侵害のおそれがあるときではなく、また我が国が現実に被害を受けたときでもなく、侵略国が我が国に対して武力攻撃に着手したときである、こういうふうに解されているところであります。  委員から、戦闘機や艦船はどうかという具体的なお尋ねがございましたから、多少長くなりますがお答えさせていただきますが、我が国に現実の被害が発生していない時点であっても、侵略国が我が国に対して武力行使に着手しておれば、我が国に対する武力攻撃が発生したことと考えられ、自衛権発動の他の二つの要件を満たす場合には、我が国としては、自衛権を発動し、相手国の戦闘機や艦船を攻撃することは法理上可能となる、こういうふうに考えております。  また、敵基地への攻撃に関してはどうかというお話でありましたが、もう御案内のとおり、昭和三十一年の政府統一見解にありますように、我が国に対して急迫不正の侵害が行われ、その手段として我が国土に対し、誘導弾等により攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところではない、そういうふうには考えられない、そのような攻撃を防ぐために万やむを得ない場合に、必要最小限度の措置をとること、例えば誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、敵の誘導弾の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である。こういうふうに考えている次第でございます。
  34. 前原誠司

    ○前原委員 確認を二点ほどさせていただきたいんですが、では、私の質問の、我が国が被害が出ていない時点でも、ある国が我が国に対して武力の行使の着手をしている場合においては、我が国に被害が出ていなくても、相手の戦闘機、艦船などを攻撃することは可能であるということですね。まず一つ。
  35. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 我が国に対する急迫不正の侵害がある場合というのは何かと申し上げたわけでございますが、その場合とは、侵害のおそれのあるときではない、また我が国が現実に被害を受けたときでもない、侵略国が我が国に対し、武力攻撃に着手したときであるというのがこれまでの政府の統一された見解であります。  したがって、では、着手した時期は具体的にいつかということになってくるわけでありますが、それは、そのときの国際情勢、相手国の明示された意図、攻撃の手段、態様等について総合的に勘案して判断されるものであるというのが政府の従来からの見解でございます。
  36. 前原誠司

    ○前原委員 被害が出ていない場合、今大臣がおっしゃった条件、急迫不正であるとかそういう条件を整えておれば、被害が出ていないときでも、向こうが武力攻撃に着手しておれば、我々は攻撃することが可能だ、そういうことでございますね。  それから、あわせてお聞きをしたいのでありますが、日本語の問題なんですけれども、これはちょっと教えていただきたいんですけれども、今長官が引用されました昭和三十一年の政府の統一見解なんですが、「わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾等による攻撃が行われた場合、」ということが書いてあります。つまり、「行われた」というのは、これは我が国に被害が出ている場合と出ていない場合があるわけですね。つまり、撃って、我が国の国土に達していない場合もある、そして我が国の国土に着弾をした場合もある、しかし攻撃が行われたという事実には変わりないということであります。  つまり、私が伺いたいのは、敵基地攻撃、これにおいては、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨ではないと書いてありますので、憲法上も、攻撃が行われた場合は我々は報復として敵基地攻撃を行うことは可能だと言われていますけれども、さっきの話に戻りますが、仮に被害が出ていない場合においても、誘導弾等による攻撃が行われた場合は我々は敵基地攻撃を行えるのかどうか、その点もう一度詰めさせていただきたいと思います。
  37. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 三十一年のこの統一見解の後、私どもとしては、急迫不正の侵害というものにつきましては、侵略国が我が国に対して武力攻撃に着手した時点を意味するものだ、こういうふうに政府が統一見解を表明してきたということでございます。
  38. 前原誠司

    ○前原委員 今の大臣の御答弁は先ほどお伺いをいたしました。私が質問しているのは、仮に誘導弾等の攻撃が行われた場合においても我が国に被害が出ていない場合もあるけれども、それでも敵基地攻撃というのは憲法上可能なのかということを伺っているわけです。
  39. 守屋武昌

    ○守屋政府委員 お答えいたします。  前原先生の御質問されたところというのは大変要件を限定していて、大変レアケースなわけでございまして、そういう前提を置いてお聞きになっていただきたいんですけれども、今のは、武力攻撃が発生したことを、現実に我が領域内に及ぶ攻撃があって、それによって被害があったことと解さない理由についての先生の御質問だと思うわけでございますけれども、こういう解釈を政府がとっていることについて申し上げますと、自衛権は、本来国家の領土及びその国民の生命財産を外国からの加害行為から守るために存在する権利でございます。したがって、武力攻撃による現実の被害があった後でなければ自衛権の発動が許されないというのでは、そもそも自衛権の存在価値を著しく減らして、減殺してしまうか、場合によっては無意味なものになってしまう場合もあるんじゃないかというところに着目しているわけでございます。  このような自衛権の本質に照らせば、無論武力攻撃が単なるおそれであっては全然だめなわけでございますけれども、その意味では確かに現実的なものでなければなりませんけれども、被害の現実化まで要求するものではないということに解しているわけでございます。御理解いただきたいと思います。
  40. 前原誠司

    ○前原委員 ということは、いろいろな条件がつきます。もちろん、一般論としてお答えになるのには、重いテーマでありますので、いろいろな条件をつけていただいて、それは当然なのでありますけれども、もう一度確認させていただきたいのは、武力攻撃が行われた、しかし日本に対して被害が出ていない場合においても着手が行われたということをもって敵基地攻撃をすることは可能だというのが今の守屋官房長の御答弁と解していいのかどうか、もう一度御答弁お願いします。
  41. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 官房長がお答えしたとおりでありますが、我が国に現実の被害が発生していない時点であっても、我が国としては自衛権を発動し、敵基地を攻撃することは法理的には可能である、こういうことを申し上げておきたいと思います。
  42. 前原誠司

    ○前原委員 同様な、同様というか、今のは自衛権の発動で、あとは私がお伺いするのは武器使用ですので、これは正当防衛とかそういうジャンルで、ちょっと違うかもしれません。が、要は、自衛隊員の生命それから安全というものを考えたときにいろいろちょっと詰めておきたいことがありますので、御質問をさせていただきます。  スクランブル発進をしている空自の戦闘機は、相手が発砲するまで武器使用はできないのかどうか、できるとすれば、どのような法律に基づいて、どのような場合に可能なのか、その点について御答弁をいただきたいと思います。
  43. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 対領空侵犯措置の任務を実施している要撃機の武器の使用は正当防衛または緊急避難の要件に該当する場合のみ許されるというのが政府の考え方であります。例えば、領空侵犯機が実力をもって抵抗するような場合や、あるいは領空侵犯機により国民の生命及び財産に対して大きな侵害が加えられる危険が間近に緊迫しており、これを排除するためには武器の使用を行うほかはない緊急状態もこれに該当すると考えております。必ずしも領空侵犯機が発砲するまで武器を使用できないわけではない、こういうふうに考えます。  なお、この武器の使用は、自衛隊法八十四条に規定する対領空侵犯措置実施のため必要な措置の一環として認められるものと解しております。
  44. 前原誠司

    ○前原委員 今御答弁をいただいた自衛隊法の八十四条の領空侵犯に対する措置という中で、その必要措置をとるために、相手が発砲するまでにも、これは刑法の三十六条、三十七条を援用されたと思いますが、正当防衛、緊急避難ということで武器使用を行うことは可能だ、こういうことであります。  さらにお伺いをしたいわけでありますけれども、例えば、今イラクの方で米軍あるいは英国の戦闘機が飛んでいるときに、レーダーの照射を行っただけで、それを敵対行為とみなして相手のミサイル基地などを攻撃するということが、アメリカやイギリスの内規、あるいは法律か、それはわかりません、私は詳しく知りませんが、それでは可能になっているわけでありますけれども日本にはそういう、例えばパイロット一人か二人しか乗っていないわけでありまして、そのときに、こういう場合においては発砲していい、だめだ、そういうようなきちんとしたマニュアルが整っているのかどうなのか、その点について長官、お答えをいただけますでしょうか。
  45. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 お答えいたします。  領空侵犯に対する措置につきましては、従来から御答弁しておりますが、この実施に関する内訓を私ども持っております。それに基づきまして、それは一応、スクランブルの際の手順として確認をし、警告をし、誘導するというような手順とあわせまして、いかなる場合に武器を使用するかという基準は持っておるところでございます。
  46. 前原誠司

    ○前原委員 以前政府・与党、与党というのは自民党単独政権のころでありますけれども自衛隊法の改正はやはり必要なんじゃないかという議論があったということを伺っております。  そのときに議論として出たのは、自衛隊員の権限として、国際法規及び慣例というものに基づいて武器使用する権限を与えるべきではないか、そういう議論がされたやに聞いております。つまり、先ほど長官がお答えになりました刑法の三十六条、三十七条の正当防衛、緊急避難というよりも、むしろ、国際的な法規及び慣例に基づいての武器使用というものを認めるように自衛隊法の改正をすべきであるという検討がされたと聞いておりますけれども、その事実関係と、また、今おっしゃったいわゆるスクランブルの際のマニュアル、ROEというのでしょうか、内規、内訓、そういったもので足りないということなのかどうなのか。私が想像しますのに、これだけではなかなか自衛隊員の安全が確保できないのではないかということで、自衛隊法の改正を含めて、今申し上げた国際法規及び慣例に基づく強力行使の権限行使であることを明確にするということが検討されたと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  47. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 事実関係でございますから、私の方からまず申し上げますと、先生言われておりますところの、例えば自衛隊法八十四条の措置の中で行う武器の使用というのは、一応我々の考え方として、刑法に言う正当防衛、緊急避難に当たるような場合に武器の使用ができると理解しておりますが、それは、いわゆる違法性阻却要件という意味ではなくて、まさに武器の使用をするときの判断基準ということで、したがって、それに従って武器の使用をした場合には、違法性が阻却されるのではなくて、むしろ法令に基づく正当行為としてやるのだと我々は考えております。  国際的な基準との関係で申しますと、国際法の世界からいいますと、領空侵犯の例で申しますと、領空侵犯をしている外国の軍用機に対して武器の使用をするというのは一般的に認められていると私どもは思っておりますが、ただ、その場合でも、国際法上、ではいかなるケースでどのような程度の武器の使用をするかということは必ずしも明確に規定されてはいないものと我々は承知をしております。  そこで、日本自衛隊法の考え方といたしましては、そこは、国際法上認められているという前提ではございますけれども、それを我々は国内法に基づく一種の行政警察的な権限の行使という範疇でとらえておりまして、したがって、基本的にはそう大きなそごはないとは思っております。ただ、あとはいろいろな経験を積んでいく中で、この場面の経験が実はまだ我々は乏しいわけでございますが、絶えず現場の意見も吸い上げながら、より使い勝手のいいものにするための努力はいろいろ必要であると思っております。  ただ、また先生お触れになりました、それを国際法の基準に従って今の私どもの内規なりを直していく、あるいは法令なりを直していくという具体的な目標を設定した検討作業を防衛庁で行っているかということで申し上げれば、そういったことではございません。
  48. 前原誠司

    ○前原委員 この防衛二法ができるときに、基本的にこの国際法規及び慣例というものをやはりしっかりと明記をすべきではないかという議論があったように私は聞いております。  今の運用局長お話ですと、別にこういうものを明記しなくても、ある程度の訓練、指導徹底を積めば法律の改正は必要ない、こういうふうに私は受け取ったのですけれども、そういうお答えでよろしいのですか。
  49. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 自衛隊の行動に関する法制として、もちろん基本的なものは整っていると考えております。これまでのところ、それをもって我々は運用させていただいておるわけであります。  ただ、運用の世界というのは、やはり日々いろいろ経験を積ませていただきながら、さらによりよいものを目指していくという意味では、いろいろな形で勉強はさせていただきたいと思っております。
  50. 前原誠司

    ○前原委員 今はスクランブル、つまり空のことについてお伺いをいたしました。  空というのは、海の海上保安庁やあるいは陸の警察みたいな機能がなくて、これはもう直接自衛隊が出ていくという世界でありますから、そういうものがある程度規定しやすいといえば規定しやすいところになります。ただ、海とか陸の場合になると、違う組織がありますので、なかなかすっきりいかない部分があるんじゃないかと思いますが、その点について、次に質問をさせていただきたいと思います。  自衛隊法の第八十二条には、防衛庁長官が総理大臣の承認を得て海上警備行動を行う、こういう規定がございます。この八十二条に基づいて海上警備行動を行っている護衛艦は、先ほどの話と同じような種類でありますけれども、簡単に言いますと、相手が発砲するまで武器使用ができるのかできないのか、できるとすればそれは自衛隊法第九十三条に基づくと考えられるが、どの場合に可能なのか、その点について、長官、御答弁いただけますでしょうか。
  51. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 海上警備行動を命ぜられた自衛官の職務の執行につきましては、今委員指摘のように、自衛隊法九十三条において、警察官職務執行法第七条「武器の使用」の規定が準用され、「自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。」とされております。  海上警備行動を命ぜられた自衛官は、このような要件を満たす場合には、御指摘のように、自衛隊法九十三条に基づき、武器を使用でき、必ずしも相手方が発砲するまで武器を使用できないというわけではないと解しております。
  52. 前原誠司

    ○前原委員 今長官が答弁されました自衛隊法の第九十三条には、海上警備行動時の警察官職務執行法などの準用が書かれております。これは同法の七条のみの規定になっていますね。つまり、同法の第一条から六条、例えば「立入」とかそういったものについては規定をされていないわけでありますけれども、私は、これは何かちょっとクッションがなさ過ぎるのではないか。つまり、海上警備行動を行うという中で、いきなり武器の使用しか決めていなくて、立ち会いとか、一条から六条に書いてあるようなことが準用されないというのは、何か私はクッションがなさ過ぎるのではないかと思いますが、長官、その辺はいかがでございましょうか。
  53. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員の御質問、一つの御見識であるとは存じますけれども自衛隊法の第八十二条の規定に基づき海上警備行動を命ぜられた自衛官の職務の執行については、御指摘のとおり、警察官職務執行法七条、これは「武器の使用」でございますが、この規定が準用されるが、御指摘のとおり、同法一条から六条までの規定は準用されておりません。  この警察官職務執行法の一条は法律の目的であり、二条は質問であり、三条は保護であり、四条は避難等の措置であり、五条は犯罪の予防及び制止、六条は立入ということになっておりますが、実は、これは海上警備行動が、海上における人命もしくは財産の保護または治安の維持を目的とする行動でありまして、自衛隊法九十三条によりまして、海上保安庁法第十六条、これは人または船舶に対する協力要求、十七条第一項、船舶書類の提出、立入検査等が書かれてあります。それから十八条、船舶進行停止、航路変更等の規定でございますが、こういう海上保安庁法第十六条、十七条、十八条の規定が準用されておりまして、行動の目的を達成するために必要な手当てがなされていると考えられますので、あえて、警察官職務執行法の一条から六条までの準用はしなかった、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  54. 前原誠司

    ○前原委員 それに絡めた質問になると思いますけれども、二月二十四日に江間事務次官が講演をされているようでありまして、自衛隊の活動に領域警備を加えることについてお話をされている。  内容は、沿岸警備や重要施設の警備という課題がある、自衛隊の持つ人的、物的な組織力を国家の危機管理の分野にどう有効に活用するかを十分検討する必要がある、このように講演で述べられている、こういう話を伺っております。  沿岸警備とか重要施設、例えば原子力発電所になるのでありましょうけれども、そういうことになれば、今大臣の御答弁では、いわゆる海上警備行動においても、海上保安庁の法律などによってある意味でのすき間というものは埋められているので、その点の必要性はないのではないかという御答弁をされました。しかし、事務次官がこういう御発言をされているということは、やはり何らかの自衛隊の権限というものを新たに明確にしておかなければいけない。それと同時に、今大臣が御答弁された、海上保安庁あるいは警察との調整というものも必要になってくると思うのですね。  事務次官が講演でこういう発言をされているということは、防衛庁としてもう既にそういう研究を始められているということだと思いますが、この発言の意味、そしてまた、これから生じるであろう他省庁との調整をどのように考えておられるのか。その点について、長官、御答弁いただきたいと思います。
  55. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 実は、江間事務次官が講演したのは、私の方に講演依頼があったものでございますが、予算委員会で出られないものですから、かわって出席していただいたものでございます。  沿岸や重要施設の警備につきましては、第一義的には警察機関、これは海上保安庁警察の任務となっております。  他方、不法行為の発生時には、防衛庁として、自衛隊の保有する装備や訓練等を通じて得た技能や経験を十分に生かしまして、法令の定めに従い、例えば不審船舶を発見した場合の警察機関に対する連絡、あるいは警察機関の依頼を受け警察官等の輸送やあるいは各種資器材の提供等の必要な支援を行うということが考えられるところであります。  また、警察機関では対処できないと認められる事態が発生した場合には、委員御承知のとおり、海上警備行動あるいは治安出動によって自衛隊が対処することも考えられるのであります。  この場合の自衛隊の具体的な対応は、事態の具体的な状況に応じて異なるものでございますけれども、例えば、法令により付与された立入検査、進路変更等の権限により不審船舶に対処したり、あるいは、自衛隊が警察機関と連携し重要施設の警備や事態の鎮圧等に当たることなどが当然考えられるわけであります。  いずれにしましても、防衛庁としては、委員指摘のとおり、警察機関と緊密な連携をとり、各種の事態対応することが大変緊要であると思っております。  実は政府は、橋本内閣以来、緊急事態対応策の検討を進めておりまして、江間事務次官の発言も、そういったこれまでの検討の結果の一部を話されたと思いますが、今後とも、こういった緊急対応策を進めていくと同時に、一層緊密な連携体制の構築に努めてまいりたいと考えておるところであります。
  56. 前原誠司

    ○前原委員 時間になりましたのでもう終わりますが、一つだけお伺いしたいのは、今長官が御答弁をされた内容というものを詰めていくとすれば、それは法律の改正を伴うものなのかどうなのか、あるいは運用の改善で済むものなのかどうなのか、その点については、長官は、見通し、どういうふうに考えておられますか。
  57. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 政府として、橋本内閣以来、この研究を進めているわけでございますが、出てきた内容によりまして法律の改正に及ぶかどうかということになるわけでありますが、現在のところ、法律の改正までは考えておらないというのが現状でございます。
  58. 前原誠司

    ○前原委員 終わります。
  59. 二見伸明

    二見委員長 次に、島聡君。
  60. 島聡

    ○島委員 民主党の島聡でございます。  安保委員会では初めての質問になりますので、よろしくお願いいたします。  高知県の橋本知事が、議会に、非核三原則の尊重を定めました港湾施設管理条例改正案を提出しまして、それにつきましていろいろな議論が巻き起こっているところでございます。  高知の港に入るような艦船については、外務省に対しまして、核は持っていませんという非核証明書を出してくださいというようなことを要綱で定めるそうでございますが、これに対しては、国は、外交権は国のものだということで、いろいろな議論が出ている。小渕首相は、国が認めた外国軍艦の寄港が非核証明の有無で妨げられてはならないと述べました。  本日は、高村外務大臣がおられましたら、高村外務大臣が二十三日の記者会見で、悪いやつを捕まえるのはいいことだといっても、警察官が捕まえるべきところを消防署が捕まえるのはよくないという例を例えられたということだったものですから、おいでだったら、ちょっとこの真意をきちんとお聞きしたいと思ったわけでありますが、きょうはおいでにならないということでございますので、それは割愛したいと思います。  それで、今後議論されるでありましょう周辺事態法も含めまして、これは自治体の協力が極めて不可欠になるわけであります。港湾はもとより、空港とか医療とか輸送とか通信とか警備とか、そういうものに対して、自治体のきちんとした協力、その前提には、政府に対する信頼というか外交政策なり防衛政策に対するきちんとした信頼というものがない限り、恐らくこれはきちんと機能しないのではないかというふうに思っております。  新ガイドラインが合意されて以降、五十余りの自治体が、例えば非核神戸方式について問い合わせを神戸にしたというようなこともございます。そういう観点から、きょう質問をしていきたいと思います。  まず最初でありますが、外交は国の専権事項だという言葉がよく言われております。言われますのは、憲法七十三条をよくとられる。憲法七十三条、内閣の職務というところで、「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。」ということで、「二 外交関係を処理すること。」とあります。外交関係を処理するということであるわけでありますが、これだけを読むと、処理をするのは国はやりますよということでありますが、専権事項というのは一体どこにあるのか。  きょうは外務省にお聞きするわけでありますから、外務省の見解をお聞きしたいのですが、昨年十二月に、外務省が、高知県のこの動きに対しまして、外国軍艦の寄港を認めるかどうかは国の事務で、地方自治体が制約することは許されないとする文書を県に示したということだそうでありますけれども、これがどういう法律や判例に照らしてそういうような見解を外務省として持ったのかということについて、まず答弁をお願いしたいと思います。
  61. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 今お尋ねの高知県に対する回答は、高知県の方から文書をもって外務省に、政府の見解についての問い合わせがございましたので、外務省の方として、政府の中での見解を取りまとめましてお答えをしたという経緯でございます。  それで、お尋ねの憲法との関係でございますけれども、御承知のとおり、憲法第七十三条におきまして、他の国家機関の事務としてではなく、外交関係の処理につきましては特に内閣の事務であるということが明記されているわけでございます。お尋ねの外務省との関係で申しますと、外務省設置法、これは第三条でございますけれども、そこにおきまして、外務省が一体的に外交のいろいろな事務に関して、それを遂行する、責任を負う行政機関であるということが外務省の任務として書かれてあるわけでございます。そういう立場からお答えを申し上げたところでございます。  なお、各地方公共団体が、個々ばらばらにと申しますか、個々に外交関係の処理に関与や制約を加えるということがもしあるとすれば、それは我が国の外交の一体性ということを損なうものであり、これは適当ではないという考えが根本にあるわけでございます。
  62. 島聡

    ○島委員 では、要するに、専権事項という言葉がよく使われるわけでありますが、それはどういうところからよく発言されるわけですか。
  63. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 お答え申し上げます。  これは先ほど申しましたとおり、外務省から申しますと、外交を一体的に遂行する責任を有している役所として、外務省が法律上の権限を有しておるということでございます。そのことは、他の国家機関がおよそ外交にかかわることを、あらゆることをやってはならないということではないと思います。ただし、国家を代表すると申しますか、例えば条約の締結であるとか、外交交渉であるとか、外交の基本的な政策を決定、企画するとか、そういうことはやはり国の専権事項ということだろうと思います。
  64. 島聡

    ○島委員 今同じようなことを言われたかもしれませんが、きょうは自治省にも来てもらっていますので、改めて聞きたいと思います。  外交は国の事務というのは、「外交関係を処理する」ということで憲法七十三条にありますが、自治体レベルで地域的に外交に取り組んでいられるという現状があると思います。さらに、今回の高知県の条例というのは、港湾法とかあるいは日米地位協定等を吟味しても、これには違反しているとは私は言えないと思うのですが、自治省としてはどう考えますか。
  65. 香山充弘

    ○香山政府委員 お答え申し上げます。  まず、地方団体が外交関係を処理しているということに関してのお尋ねでございますけれども、私どもは地方分権の流れの中でも、地域における行政を地方団体が自主的に対応できるようにしよう、そういうねらいでいろいろ改革を進めておるわけでありますけれども、これは一方で、国と地方の役割分担を明確にするということを前提にしたものでございまして、したがって、外交など国の分担する役割に関してまで地方団体が権限を行使する、そういうことを認めようという趣旨ではございません。  国として、それではどういうことが外交になるのかといいますと、結局、国として義務を負うことになります条約の締結とか、あるいは外国大使にアグレマンを与えるとか、そういったいわゆる日本国を外に向かって代表する権能を指すわけでありまして、このような権能に関して地方団体が関与したり制約をするということは我々は考えておらないということでございます。  もちろん、地方団体が姉妹盟約を締結するとか、あるいはJET青年を受け入れるだとか、地域レベルでの国際化に積極的に取り組んでおられますけれども、これは、今申し上げたような意味での外交問題を処理しているということにはならないものと考えております。  それから次に、高知県の条例改正についてのお尋ねでございますけれども、この条例改正案そのものを読んだ限りにおきますと、だれかに対して特定の行為を義務づける、そういったものではない、いわゆる宣言的な条例でございまして、そういった意味で、法律的な効果を伴うものでないというふうに考えることもできますので、その意味では、改正自体を直ちにどの法律に違反しているとか、こういうことは言えないものと私ども考えております。  ただ同時に、高知県は外務省に文書の提出を求めまして、その結果に基づいて港湾施設の使用そのものに関する決定を行おうとしておるわけでありまして、そういうことになりますと、外交関係の処理に当たる国の決定に地方団体が関与したり制約をするということになりますので、地方団体の権限の行使を逸脱するものであるというふうに私ども考えておる次第でございます。
  66. 島聡

    ○島委員 これは、平成十一年二月十六日の外務省から出された「高知県における港湾施設管理条例改正問題について」というペーパーを、私どもの党の分科会で出されたものを使っての質問になります。その基本的考え方の(2)、今、国と地方公共団体の関係で、外務省のものでありますが、「国と地方公共団体とは、相互に異なる次元においてそれぞれの事務を処理。」と書いてありますが、この相互に異なる次元というのは、どういうように次元が違うというふうにお考えなのかということを外務省にお尋ねしたいと思います。
  67. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 なかなか根本的な問題で答えにくうございますが、国としては、外交政策であるとか国防政策であるとか、それからよく言われて、この関係でも国会で御答弁がされておりますのは、貨幣と申しますか国家経済の問題であるとか、そういう国家としての、憲法でも書かれておりますような内閣の職務、事務というものと、それから地方自治の本旨に基づきまして、地方においていろいろな業務、行政が行われるということには、おのずからやはり異なる点があるだろう、こういうことだろうと思います。
  68. 島聡

    ○島委員 極めて基本的なことをお尋ねをします。  いろいろなことを、法的なことを言われたりしますけれども、国がいろいろなことをおっしゃる、あるいは政府が、先ほど言ったように信頼関係がこれから、周辺事態法等の議論とか、あるいはきちんとそれを機能させるためには必要であるという意味で、信頼が必要であるということでありますが、一般的によく、国民の素朴な疑問があります。今回の高知県の問題につきまして、非核三原則というものがあって、これは国是と言われる、その国是に沿う条例がなぜ悪いのですかという基本的な疑問があると思います。非常に基本的なことでありますが、それにどのような説明をされるのか、お聞きしたいと思います。
  69. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 少し答弁が長くなるかもしれませんので、御容赦をお願いしたいと思いますけれども、まず基本的な点で、先ほど来御議論がされておりますとおり、国と地方公共団体とは、相互に異なる次元におきましてそれぞれの事務を処理するという中で、非核三原則という国の基本政策に沿うものであるからという理由で地方公共団体が、国として責任を有しております外交関係の処理に関与しまたは制約し、これを妨げるというようなことは許されないということが基本の視点でございます。  さてそこで、具体的に外国軍艦の本邦寄港の問題で、島先生のおっしゃられました問題、私もよく理解しているつもりでございますけれども、これは外国軍艦の本邦寄港につきましては、やはり外交関係の処理について責任を有する立場から国がその是非を判断すべきものであろうと考えます。仮定の例で申し上げるのは余りよくないかもしれませんですけれども、ある国が日本に艦船を寄港させたいというような申し入れをしてまいりましたときに、それはいろいろな角度から検討して、それでオーケーをする、それから、時期をちょっと、今はまずいというようなこともあるわけでございます。これはまさに外交上等、国がいろいろな角度から判断をするものでございます。  さて、そうした中で、地方公共団体がいわゆる非核証明書の提出を求めまして、その結果に基づいて地方公共団体が港湾施設の使用に関して決定を行うというようなことがございますれば、これは、国が外交関係の処理として責任ある立場からその是非を判断している寄港問題について、地方公共団体が、いわゆる非核証明書の提出の有無とかその内容の是非によりまして改めて判断を行うということになろうかと思います。これは、かかる判断は、港湾管理者としての権能を逸脱するものであって、地方公共団体の権限の行使としては許されないものであろうというのが我々の考えでございます。  さらに、ちょっとつけ加えさせていただきますと、このようなことを行いますと、場合によりましては、地方の方で国の判断というものを再吟味といいますか、再検討といいますか、改めて地方レベルで検討をされまして、その入港の可否について検討をされまして、これを改めて許可するとか、それから、極端な例を申しますれば、場合によっては、国の決定を覆すといいますか、反対の決定をされるというようなことも、理論的には可能性としてあり得るかと思われます。  そういうようなことになりますと、これはやはり国の外交関係の処理という責任を全うできなくなると申しますか、そこで衝突が起こるということで、やはりそういうことは地方自治体の権能を越えることになるのではなかろうか、こう考えるところでございます。
  70. 島聡

    ○島委員 今の説明は十分承りました。  これは高知新聞の社説なんですが、非常に国が強硬姿勢である、それはなぜか。非核三原則のうち、持たず、つくらず、持ち込ませずのうち、持ち込ませずが形骸化しているためではないか。実際に、米艦船について核兵器搭載がチェックできない状態である。核の持ち込みは、重要な装備の変更に当たり、日米安全保障条約の事前協議の対象になる。ところが、米国は、核戦略上の理由から、核配備についてはイエスともノーとも答えない。それに対し、日本政府は、事前協議の申し出がないから核兵器は持ち込まれていないとの奇妙な見解を押し通してきた。こういう政府のあいまいな姿勢が非核三原則を形骸化させている。今回の非核港湾化の是非は、入港許可の権限問題にすりかえられているが、あくまでも、本質は持ち込ませずをどう考えるかにあるはずだ。少なくとも、非核を国是としながら、核持ち込みに目をつぶる政治は、国民はどう思うだろうか。  これは、この問題について、私は全部これについて賛成とは言いませんが、本質はついていると思う。つまり、今国と地方の権限問題に議論が収れんしているけれども、そうじゃなくて、これをどう考えるかということになっていると私は思うわけであります。  この問題については、要するに、持ち込み、イントロダクションというものの解釈問題があいまいなままにある今の日本の政策に一石を投じていると私は思っています。これが議論になったのは一九八一年といいますから、もう十八年も前になるわけでありますが、ライシャワー元駐日大使が、核の持ち込みに関し、アメリカ側のイントロダクションと日本側の持ち込みに解釈の違いがあると発言をした。寄港や領海通過はイントロダクションには含まれないとしたわけであります。  これは、一九八一年当時の世界週報というところに出された「「非核」の虚構性を浮き彫り」という論文でありますが、いわゆる持ち込み解釈問題は、政府は、持ち込み、イントロダクション問題については日米間の食い違いはないとした。その論拠というのは、安保改定時の岸・ハーター交換公文によるものである。また、藤山・マッカーサー口頭了解、六〇年一月当時から、イントロダクション解釈については日米間は一致していたと説明した。野党側がその当時要求した交換公文、口頭了解についての議事録提出に対し、政府は、記録はないわけではない、園田外相がそう言った。  野党の議事録の証拠提出は拒んだとここには書いてあるわけでありますが、外務省に事前にこの論文を送りまして、この議事録というのは何を意味するのかということを聞いたわけでありますが、これは何を意味し、こういうのは存在するのですか。まずそれをお聞きしたいと思います。
  71. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 お尋ねの議事録というのが具体的にいかなるものか、ちょっと私にもよく、正直言ってわからないのでございます。  いずれにしましても、当時の交渉の記録ということはあるわけでございますが、この当該の部分について議事録が議事録という形であったのかどうかということにつきましては、ちょっと申しかねるところでございます。  それから、申しわけございませんが、ちょっと、先生、NCNDといいますか、触れられましたね。現状で申しますと、これは事実の問題でございますけれども、御承知のとおり、ブッシュ大統領が一九九一年に核兵器削減イニシアチブというのを発表いたしまして、これは実現しているわけでございます。クリントン大統領もそれを引き継ぎまして、地上及び艦船搭載の戦術核と海外へ配備された戦術核というのはすべて撤去されまして、除去されているというのが現状でございます。  それから、クリントン大統領のイニシアチブで、これは九四年に発表されておりますけれども、核戦略見直しにおきまして、水上艦艇から戦術核兵器を搭載する能力そのものが除去されているというようなことになっておりますので、通常の状況におきましては、核を持った船が、世界じゅうアメリカの船が航海している、戦術核を持った船が航海しているということはないというのが現実の状況になっているわけでございます。
  72. 島聡

    ○島委員 それで、ぜひこれは調べて、きちんと後で文書で教えてほしいのですが、ここには野党が要求したとあるわけですから、議事録の証拠提出。これが違っているというならばそれで結構ですけれども。野党が要求して、議事録の証拠提出を拒んだと言っているわけです。きのうの夜聞いたわけですが、それらしきものはないという話であります。きちんと要求したとあるのですが、それは事実かどうか。その要求したものは何かということは調べればすぐわかると思いますので、それを教えていただきたいと思います。  要するに、これは、藤山・マッカーサー口頭了解なんというのは六〇年一月のことでございますから、もう既に三十九年前の話であります。今、情報公開等々が議論をされている状況でありますので、その当時の状況判断でそうであった、あるいは、国の核政策等、国の政策等も今後ある程度時間が来ましたらそれに基づいてきちんと見直すときもあるわけでありますから、そういう意味でも、この問題について、この論文が完全に間違っているなら間違っているで結構でありますし、そうではなくて、野党がそういうものを、議事録の証拠提出を求めたと書いてありますから、それは一体どういうことなのかということについての経緯を後できちんと教えていただきたいと思います。  次に、北朝鮮問題等々について質問をさせていただきたいと思います。  まず、アメリカ国務省の報告で、一九九九年版の国際麻薬戦略報告を発表しました。それによりますと、朝鮮民主主義人民共和国が、国家主導で麻薬の製造や密輸などの国際犯罪に関与している疑いがある。ここに原本がありますけれども。覚せい剤の製造能力を急速に高めておりますし、日本への流入が激増しているとも警告しております。  これをどのように認識し、対応をどのように考えているか、お聞きいたします。
  73. 阿南惟茂

    阿南政府委員 米国務省の国際麻薬規制戦略報告、ここに、北朝鮮が外貨獲得のために薬物に関する活動に関与している可能性がある、また、確証はないけれども、諸般の状況から判断して、国家機関が関与している可能性があるという記載がございます。先生指摘のとおりでございます。  また、この報告の中には、我が国の違法な覚せい剤市場において北朝鮮の覚せい剤が大きなシェアを占めるに至った、そういう報道があるということにも言及しております。  外務省といたしましては、この北朝鮮による薬物等に関する犯罪への関与、また薬物をめぐる活動の全貌について確たる情報を有しているという状況にはございませんけれども、非常に重要な問題でございます。重大な関心を持って、関係省庁とも連携しつつ、情報収集に一層努力してまいる考えでございます。
  74. 島聡

    ○島委員 今、確たる情報を入手しているわけではないとおっしゃったわけでありますが、本当に重要な問題であると思いますので、これは十分なる関心を持って進めていっていただきたいと思う次第でございます。  同じように、北朝鮮で今どのような政策展開がされているか、アメリカでペリー調整官の報告がどういうふうにされて、今後どのように外交政策が変わっていくかということは当然注目をしなくちゃいけないことだと思いますが、二月二十五日のウォールストリートジャーナルに、ペリー調整官が、現在は慎重な関与を軸とする政策は失敗だとした上で、軍事圧力を含めた二段階アプローチを中心とする見直しの原案をワシントンのクリントン大統領に説明したと報道をされております。これでいきますと、調整官は北朝鮮に、米国国際社会との関係改善に向けた最後の機会を与えた上で、不調に終わった場合には軍事的な封じ込めをしたりする政策に転換する案を提示する予定だという報道であります。  もちろんこれは報道ですから、多分答弁は、慎重に重大な関心を深めつつという話になると思いますが、日本安全保障にとって、この北東アジアの緊張関係があるかないかというのは非常に重要な問題であります。今後アメリカが封じ込め政策をとった場合の緊張状況はどのようになると考え、どのように日本はここを分析して考えているかということについて答弁をお願いしたいと思います。
  75. 阿南惟茂

    阿南政府委員 ペリー調整官の作業そのものについてはもう申し上げるまでもないと思いますが、現在進行中でございまして、今後、日本、韓国とも相談して報告の最終的なものをつくるという段階でございます。  今先生の御質問の、軍事的な封じ込め政策ということになったらどういう状況になるか、これはなかなかその状況をきちんと設定して分析するということは難しいと思いますが、一九九三年、九四年に北朝鮮の核疑惑問題が起こったときの国際社会全体の緊張状態ということを考えれば、決して生易しい状況ではないということは容易に想像できるわけでございまして、現在米朝間で、秘密核施設疑惑、それからミサイルの協議も先般行われましたが、こういう協議が進行中でございますので、先生おっしゃいましたような封じ込めというような状況の前に、日本政府としては、米朝間でのこういう協議の成り行き、進行状況を見守っているということでございます。
  76. 島聡

    ○島委員 そういう分析の中で北朝鮮の問題について防衛庁長官にお聞きするわけでありますが、野呂田防衛庁長官が、二十六日でしたか、閣議後の記者会見で、国民の安全確保観点から、適切な情報提供を含めて対応には万全を期したいと述べて、ミサイルの発射を察知した段階から情報を公表する方針を正式に表明したというふうに報道されております。現時点で方針を明確にした理由は何かということをお聞きしたいんですが、例えば、安全確保観点から、適切な情報を察知したら出すことはいいんですが、これはどのように国民にお知らせになるのか。  それから、目的はどういう、例えばダメージコントロールのためなのかあるいは避難誘導のために出そうとされておるのか。また、受け取った国民は、もうミサイル発射の準備がされていますよということを公開されるわけでありますが、それだけであったらある意味で不安を持つだけでありますので、どのように対処されようとしているのか、お聞きしたいと思います。
  77. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 私が二月二十六日の閣議後の記者会見で、ミサイル発射等の兆候情報の広報を決定したのかという記者団の質問に対して、政府としては、国民の安全確保観点からその対応について検討していることは確かでございますが、その具体的内容については今は公表を差し控えさせていただきたいと思います、いずれにしましても、国民の安全確保観点から、国民の皆さんへの適切な情報の提供を含め、その対応には万全を期してまいりたいと思いますと答えたのでありまして、今委員から御指摘ございましたが、私が発射を察知した段階から情報を公表する方針を正式に表明したとの事実はないわけでございます。  しかしながら、政府は、北朝鮮弾道ミサイルを再度発射する場合に備えまして、昨年八月の教訓を踏まえ、政府部内の情報の伝達体制の整備とかあるいは各省庁間の連携等について常々鋭意検討を行っているところであり、防衛庁としても、かかる検討に積極的に参加してきているところであります。  また、防衛庁としましては、北朝鮮問題への対応、特にミサイルが発射された場合の対応について防衛庁の中に重要事態対応会議を設置し、議論を重ね、適切な対応をなし得るよう努力しているところであります。  いずれにしましても、国民の皆様の安全確保観点から、重要な情報の提供を含め、それに対応するには万全を期することが必要であります。私は、御指摘のようなことを、先日、そういう観点から申し上げたわけであります。  いずれにしましても、北朝鮮ミサイル発射の活動に係る情報の公表については、政府としては、国民の安全確保観点からその対応について十分な検討をしなければならないものでございまして、今先生が申されたようないろいろな問題があります。そういうことについて現在真剣に検討していることでもあり、具体的内容について今明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思っております。
  78. 島聡

    ○島委員 今の、報道は違っていたというのと、今後きちんとそういう点について検討をしていただくということでお願いをいたしたいと思います。  次の問題は、最初に質問通告したものは飛ばしまして、具体的にちょっとお尋ねをしたいと思います。  例えばこんな報道がありました。まず、これは事実かどうかということで尋ねると、事実ではないとまた言われるかもしれませんが、防衛庁の対策としては、もし北朝鮮なりのミサイル発射等を事前察知した段階で抗議し、公表をする、日本領土に着弾したときは応急的に災害派遣を適用して自衛隊を派遣する、武力攻撃の意図があると事前に判断したら直ちに首相が防衛出動を命じられるよう準備を開始との方針を固めていると報道されています。これもまた事実ではないという話になるかもしれませんが、まず二点お尋ねしたいと思います。  一つは、例えば現時点では、情報を事前に察知するというのはどういう方法でやられるのかということであります。  二番目は、着弾した場合に一体どういう形で派遣されるのか。災害派遣になりますと、自衛隊法第八十三条で、都道府県知事その他政令で定める者は、天災地変その他の災害に関して行えると書いてあります。その他の災害というのは、戦争災害ということで解釈しているのかどうか。私は、自衛隊の七十六条の行動で、防衛出動、「特に緊急の必要がある場合には、国会の承認を得ないで出動を命ずることができる。」とありますが、着弾した場合には、これはどういうふうに考えるのかについてお尋ねをしたいと思います。
  79. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員からたくさんの御質問をいただきましたので、少し長くなることをお許しいただきたいと思います。  まず、防衛庁の対策としては、発射を事前察知した段階で北朝鮮に抗議し、公表する、日本領土に着弾したときは応急的に災害派遣を適用して自衛隊を派遣するとか、武力攻撃の意図があると事前に判断したら直ちに総理が防衛出動を命ぜられるような準備を開始するとの方針を固めていると報道されておりますけれども、実は、そのような事実を改めて固めたという事実はないということをまずお断り申し上げておきたいと思います。  防衛庁としては、北朝鮮への対応、特にミサイルが発射された場合の対応については、重要事態対応会議というものを持ちまして真剣な議論を重ねておりますところであり、適切な対応ができるように努力してまいりたいと思います。  情報を事前に察知するというのは具体的にどのように行うのかということでございますが、専守防衛を旨とする我が国にとって、防衛に必要な情報収集分析を行うことは、もうこれは国土を守るための必要不可欠の問題であります。防衛庁としては、その任務を全うするため、平素からいろいろな手段、方法を用いて情報収集分析に努めているところであります。  具体的には、各自衛隊、陸上部隊、艦艇、航空機による警戒監視活動というものを絶え間なくやっておりまして、それからいろいろな情報が得られます。それから商業用地球観測衛星データの解析も必要かつ十分に行うような体制になっております。それから、我が国上空に飛来する各種電波の収集は、これは大変な量でありますが、これについての収集と解析等を行っております。それから在外公館に派遣されている防衛駐在官による情報収集活動もあります。それから各種公刊資料等の収集、整理があります。それから外国国防機関との情報交換など、こういうものを十分に総合しながら事前察知に努めているわけであります。  それから、日本国土に着弾したときに災害派遣とするのは無理があるのじゃないかというお尋ねでございましたが、仮にミサイル日本国土に着弾した場合の対応について、一般論として申し上げますと、防衛庁としては、早期警戒情報を含む関連情報の公表等に努めるとともに、落下状況及び被害の発生状況を迅速に確認することになるわけでありますが、ミサイル着弾により人の生命、身体、財産に被害を生じた場合は、自衛隊法八十三条に基づき災害派遣を実施する等適切に対処することにしているわけであります。  災害派遣で対応するのは法的に可能かというお尋ねがありましたが、自衛隊が災害派遣を行う場合は、天災地変その他の災害に際し、人命または財産の保護のため自衛隊の部隊等を派遣することができる旨を規定している法八十三条を根拠としているわけであります。この八十三条の天災地変は確かに当たりませんが、その他の災害、これに当たると私どもは思っております。  例えば、これまでも、飛行機の墜落事故とかあるいは地下鉄サリン事件にも自衛隊を災害派遣で出動させたという実績もあります。この天災地変その他の災害派遣は、人の生命、身体、財産等を侵害する災害のすべてを含むものと解されておりますから、ミサイル日本領土に着弾し何らかの災害が発生した場合には、自衛隊はこの隊法八十三条に基づき災害派遣を行うことがあり得ると考えております。
  80. 島聡

    ○島委員 時間の関係で続けて質問したので。答弁もきちんとしていただきまして。  最初に申し上げましたように、今後やはり防衛政策というのが、今までのように割とあいまいにしておいたままでは、今後の周辺事態法も含めたことを考えていった場合には、国民の協力とか理解というのは得られなくなってきていると思います。今その他災害でいいと言われましても、本当にそうかなと普通の人は多分思う。そういうことも含めて一つ一つ、みんなが理解しやすい形で国の安全を守れるような形に進めていく必要があるということを主張しまして、質問を終わらせていただきます。
  81. 二見伸明

    二見委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十六分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  82. 二見伸明

    二見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。冨沢篤紘君。
  83. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 公明・改革の冨沢篤紘でございます。  通告書にありますとおり、領土問題、北朝鮮問題、基地周辺対策、以上三点について順次質問をいたしますので、簡潔な御答弁をお願いをいたします。  まず、北方領土問題でありますが、北方領土がいつ返ってくるか、国民の大きな関心事であります。二〇〇〇年までに領土問題を解決をする、日ロの合意があるわけでございますが、領土問題を解決するということは二つの意味がある。一つは、日ロ平和条約を締結をする。もう一つは、ロシアとの国境線を画定をして、北方四島が日本に帰属をする、この二つを明確にするものと私は理解をしておりますが、この点いかがでございますか。
  84. 西村六善

    西村(六)政府委員 お答え申し上げます。  かねてから、ロシアとの国境問題につきまして交渉を続けてきているわけでございますけれども、今先生がおっしゃられましたように、我が国は、北方の四島につきまして、我が国の固有の領土であるという立場から交渉に臨んできている次第でございまして、最終的に到達しなければならない解決といいますのは、四島は日本に帰属するものであるということを実現しなければいけないわけでございます。そのような形で領土問題を解決した上で平和条約を結んで、日ロの関係を最終的に確定するということが、現在、政府が取り組んでいる課題でございます。
  85. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 さきの日ロ外相会談でも、イワノフ外相が、二〇〇〇年までの平和条約については難しいであろう、こういう発言が伝えられております。エリツィン大統領と橋本総理の間で二〇〇〇年までに領土問題を解決をする、この合意は大事にしなければならないと考えますが、伝えられてまいりますロシアの国内情勢を見ますと、ロシアが経済でまさにロシア病にかかってしまっている。エリツィン大統領も本物の病気にかかっているようでありますし、ロシアに日本のことを考える余裕が今あるのかどうか、私は疑問に感じているところでありまして、こういうロシアの国内情勢から見て、二〇〇〇年解決という大きな問題は大変難しいと率直に私は感じているのですが、四月に入ってすぐにまたロシアとの東京会談も行われるやに伝えられておりますが、この見通しをどんなふうにお考えになっておられるか、明らかにしていただきたい。
  86. 西村六善

    西村(六)政府委員 先生今おっしゃられましたとおり、ロシアにおきまして非常に困難な状況が生じていることは、そのおっしゃられるとおりでございます。しかしながら、先月の二十一日でございますけれども、高村外務大臣とイワノフ外務大臣との会談におきましても、これまでの積み上げられました合意及び宣言に基づきまして平和条約を締結すべく、領土問題の解決のために交渉をさらに加速化していくべきであるという合意をいたした次第でございます。  今先生がおっしゃられますとおり、四月の初めにおきまして、事務レベルの協議をさらに継続することになっておりますし、エリツィン大統領の訪日も要請しているところでございます。高村外務大臣が三月ないし四月の時点でロシアを訪問するという予定も現にあるわけでございまして、そういうハイレベルの協議あるいは事務レベルの協議を通じまして、二〇〇〇年までに領土問題を東京宣言に基づきまして解決をして、平和条約を締結すべく、最大限の努力をするという方針でやっている次第でございまして、現在、政府としてはその方針のもとで最大限の努力をしているという状況でございます。
  87. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 過去にアメリカの沖縄返還という成果が日本外交にあるわけでございますが、戦争が終わった後、国境線をどこに引くか、大変難しい問題であります。殊に、この北方領土を見た場合に、現にロシア人が居住をして生活をしている。その前には、日本人の元島民の権利がある。そして、さらにはアイヌ民族の先住権要求もある。三つどもえになっているのが北方領土の現状でありまして、この帰属問題、まさにロシア、日本の外交交渉にかかっているわけでございます。  橋本、エリツィンさんのお二人の信頼関係によって、二〇〇〇年という一つの時期が設定をされた。これは大変喜ばしいことでありますけれども、一方で一つ危うさもあるわけで、合意した当事者が、既に片方は、日本側はいなくなっている。そして、エリツィン大統領も病気のぐあいが非常に思わしくない。こうなると、二人の合意が全く一気に損なわれるという危険な面もトップ会談にはあるわけでございます。  そこで、今世紀中に万が一、交渉で領土問題が解決できないときに、こういう見込みを立てながら、札幌大の鈴木利喜男先生が、外交交渉に加えて、司法解決の並行利用を提案をされております。二〇〇〇年までに、今世紀中に交渉で領土問題を解決できなかった場合に、二〇〇一年からICJに問題解決をゆだねる道を設定したらどうか、こういう提案をされているところでございますが、交渉を多面的に行う、私は大変すばらしい提案であると受けとめております。  ICJに問題付託をする。この場でお互いの主張が理性的に行えるわけでございますし、早期解決の公正な、しかも着実な手段と私は考えておりますが、外務省、この点いかがお考えになりますか。
  88. 西村六善

    西村(六)政府委員 今の先生お話は、二〇〇〇年までに平和条約が仮にできなかった場合、そういう措置を考えてはいかがかという御意見であろうかと思うのでございますけれども、二〇〇〇年までに、さらに私どもといたしましては最大限の努力をいたすつもりでございまして、その努力を専ら一生懸命やっていくことが政府の当面の方針でございます。  したがいまして、二〇〇〇年までにできなかった場合という仮定の状況におきまして私どもの、政府の姿勢を申し上げることはなかなか難しいのでございますけれども、一方におきまして、先生もよく御存じであろうと思うのでございますけれども、九三年の東京宣言におきましては、日ロの間におきまして、新たなといいましょうか、非常に明確な交渉指針が確定、合意をいたしておりまして、その交渉指針に基づきまして現在交渉を行っているところであるわけでございます。  その交渉指針と申しますのは、東京宣言の第二項でございますけれども、四島の名前を明記いたしました上で、その四島の帰属の問題を歴史的、法的な事実に立脚し、両国間において合意の上作成された諸文書並びに法と正義の原則を基礎として解決することによって平和条約を早期に締結すべきであるという合意をいたした次第でございまして、その合意に基づきまして両国が精力的な作業を行っているわけでございます。  したがいまして、先ほども申しましたとおり、二〇〇〇年までに平和条約ができなかったという場合においての仮定の問題として御議論をすることはなかなか難しいわけでございますけれども、さらにその上に、今現在、私がただいま申し上げましたような交渉の基礎的な合意があるわけでございまして、その合意にのっとって行動すべきものではないかというふうに考えているわけでございます。そういう観点からいたしますと、ICJ、国際司法裁判所に付託するという考え方は、繰り返し申し上げますけれども、そういう仮定の上での議論でございますけれども、かえって問題を複雑にし混乱させるのではないかというふうに心配しているところでございます。
  89. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 政権の命運をかけてとにかく頑張ってもらう、これは当然のことでありますけれども、相手がロシアで、しかも事は領土問題。そう簡単に日本の主張が通ずる相手とは思えませんので、したがって、今、御答弁は要りませんけれども、いろいろな方策、多面的に領土返還の道を探っていく、このことはあわせて必要なことになろうかと思います。きょうの私の趣旨を御理解いただきまして、間違いない手だてをお願い申し上げておきます。  竹島問題に移ります。  韓国と領有権が問題になっておりますが、実態は韓国が今実効支配をしている、防波堤をつくったとか、あるいは港の建設に進むのではないか、いろいろ情報が入ってくるわけなんですが、韓国の実効支配の現状をまず御説明いただきたい。
  90. 阿南惟茂

    阿南政府委員 先生もお触れになりましたが、韓国側は竹島でいろいろな施設を建設するというようなことをやってきておりまして、現在も警備隊を配置している、そういう形で同島を実効的に支配している、そういう現状でございます。
  91. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 竹島というのは日本海に浮かんでいる島ですが、私たちは、日比谷公園ぐらいの広さというふうに教わっておりますが、これは当然日本の領土だと信じておりますし、ここに韓国が実効支配を強めている、国民にとっては我慢がならないところ、これが率直な日本人の感情でありましょう。この国民感情に比べますと、政府の竹島への対応が大変手ぬるい、韓国に対して大変手ぬるいというふうに感じておるのですが、この点いかがですか。
  92. 阿南惟茂

    阿南政府委員 先生が竹島問題に関する日本国民の感情にお触れになりました。おっしゃるとおりであろうと思います。  私どもは、竹島の領有権問題についての我が国の立場、これは一貫したものでございますが、韓国側に対してこれまでも累次さまざまな機会に我が国の立場を申し入れるということで外交努力を続けてきておりますし、交渉という意味では、先般発効いたしました日韓漁業協定の交渉も長い時間かかりましたけれども、その前半の大半は竹島問題をめぐる協議でございまして、それに鋭意取り組んできたという経緯もございます。
  93. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 さまざまなルートで我が国の立場を説明されている、こういう御説明ですけれども、具体的に日本の領有を主張する、具体的な提案を韓国にぶつけたことがございますか。
  94. 阿南惟茂

    阿南政府委員 この問題で韓国側と話をする際には必ず我が国の立場、すなわち歴史的にも国際法上も我が国固有の領土であるという立場をきちんと述べているわけでございまして、先生がおっしゃる意味で向こうに提起したことがあるかという御質問でございますが、例えば、かなり古い話でございますけれども、これを国際司法裁判所の場で解決するように韓国側に提案をしたというようなことはございます。  いずれにいたしましても、韓国側にさまざまなルートでこの問題について申し入れを行っている際には常に先ほど申し上げましたような我が国の立場をきちんと述べている、そういう状況でございます。
  95. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 韓国が実効支配を強めている、現に港ではなしに防波堤をつくっているというような情報も入ってくるわけなんですが、これを具体的にやめさせるような手だては外務省として申し入れをされておるのですか。
  96. 阿南惟茂

    阿南政府委員 港でございますとか防波堤とか灯台の建設というようなことが最近あるわけでございますが、それをやめるように強く抗議をしているわけでございます。
  97. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 それに対して韓国はどういう回答をされておりますか。
  98. 阿南惟茂

    阿南政府委員 韓国側は韓国側の主張がございまして、我が国の主張と真っ向から対立する、この島は、韓国では独島と呼んでおりますが、韓国の領土である、その自己の領土において韓国政府が主権を行使することに何ら問題はない、こういう対応でございます。
  99. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 それで質問を申し上げておるのですが、このまま今までの従来方式をやっておりますと、最終はこれは韓国の島になってしまうのではないですか、そういう懸念はありませんか。
  100. 阿南惟茂

    阿南政府委員 冒頭に先生が、現在実効支配されていると。不法占拠でございますが、そういう大変遺憾な事実があるわけでございますが、それをそのまま放置し時間が経過するということのないように、機会あるごとに我が方は立場を申し入れているわけでございます。  この問題の解決を考えるに当たって、竹島の領有権をめぐって、日韓関係が極度に悪化するというような事態は避けなければいかぬという考慮が一方に当然あるわけでございまして、そういう意味からも、両国間で粘り強く冷静に話し合っていく、それ以外に方法はない、その努力に最善を尽くしたい、そういうふうに考えております。
  101. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 最後は韓国の島になってしまったというようなことのないように、しっかりとした対応をお願いします。  次に、中国との間で領有権問題が起こりました尖閣諸島なのですが、八つの無人島と岩礁からできていると勉強しておりますが、一八九六年、明治政府が領有宣言をして以来、日本が実効支配をしてきた、当然のことでありますけれども。ところが、太平洋戦争後、石油がありそうだということで、一九七一年になって中国も領有権を主張し始めた。  この問題は日中間でいろいろ見解が違うようでありますが、これは昔から日本の領土で、アメリカの沖縄返還にも、明確に対象物件の中に入っている。一九七八年、トウショウヘイさんが、この問題を棚上げして次の賢い世代に解決を任そうということで先送りになっておりますが、日中間の領土の懸案になっていることはもう間違いがございません。これを日本が実効支配しておるのですが、その実効支配の現状について御説明を願います。
  102. 阿南惟茂

    阿南政府委員 尖閣諸島の領有の経緯、先生がお述べになりましたとおりでございます。これは我が国固有の領土でございまして、現に我が国がこれを有効に支配しているということでございまして、現在のところ、尖閣諸島をめぐる情勢は平静な状態でございます。  また、トウショウヘイ氏がこの問題を棚上げにするということを言ったという発言にお触れになりましたが、もちろん、この問題をめぐって、日中間で紛争、対立の種とするということは日本としても望まないわけでございますが、これを棚上げしたというのは日本政府の立場ではございません。中国側は、後生の知恵に任せようということをトウショウヘイさんが言ったことは事実でございます。
  103. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 実効支配をしておる、日本の領土だという活動を常時継続的になすっていると受けとめているのですが、その内容について御説明ください。
  104. 阿南惟茂

    阿南政府委員 固有の領土を実効支配しているというためには、単に抽象的な、編入をしたという行為のみでは足りないということでございまして、現に支配権を及ぼすことが必要なわけでございます。尖閣諸島について、我が国政府は、領域の表示また地籍表示、標柱を立てております。それのみならず、学術調査、測量等の実施、尖閣諸島周辺の領海における警備、取り締まり、こういうことも行っておりまして、我が国の実効支配という事実は明らかでございます。
  105. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 しっかりとお願いをいたします。  二番目の北朝鮮問題についてお尋ねをいたします。  午前中からこの問題は議題になっておりますが、北朝鮮というのは本当にわからない国で、しばらく前の金賢姫、ラングーンの爆破事件とか日本の拉致事件とか、このごろは覚せい剤も国家の関与だなんという話が伝わってくるのです。昨晩のNHKの報道でも、クムチャンリに大規模な地下核施設アメリカの衛星が確認をしている、こういう報道がされておりますし、直近のアメリカの下院軍事委員会でも、ノドン一号射程千キロの配備を完了した、こういう証言がレスター・ライルズ・ミサイル防衛局長からされている。日本にすぐ近い国でありますので、三陸沖のミサイルの着弾というけしからぬ国家行動もやっている。  そこで、あり得ない話ではないので防衛庁質問するのですが、核つきテポドン、二回目の発射がされる、大阪に向けて発射に着手をした、こういう情報が入った場合に、自衛隊は一体どうなさるのですか。
  106. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 日本に向けてミサイルを発射しそうだという情報防衛庁が得た場合は、防衛庁としては、常日ごろから艦艇や航空機によりまして我が国周辺の海域において常続的に情報収集を行っており、現在もこのような態勢の中で情報収集を行っているものであります。  今後、北朝鮮弾道ミサイル発射に関して状況が緊迫してきた場合には、現在の態勢に加えまして、さらに艦艇や航空機を投入することにより、まず情報収集活動を一層強化することを考えている次第でございます。
  107. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 テポドンの発射をしそうだ、着手をした、こういうときに自衛隊は発射の拠点をたたけるのですか。
  108. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 まず、テポドンの発射に着手というのがどういう状況かというのも、一概に判断することの難しさはあるだろうというふうに思います。そして、先生が後に言われた点でありますが、午前中の御質疑の中でも大臣から答弁申し上げましたように、法理的な考え方としては、我が国に対するミサイルによる武力攻撃があって、それを防ぐのに他に手段がない場合は、当該相手の基地を攻撃することも法理的には可能だということでございます。
  109. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 二番目のシミュレーションでは、北朝鮮の艦船の護衛で北朝鮮の上陸艇が日本海から上陸しようとして日本に接近をしている、領海に入ろうとしている、この場合、海上自衛隊はどういう行動をとるのですか。
  110. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 北朝鮮の艦船が日本の領海に侵入した場合の自衛隊の対応といった委員の仮定の御質問でございますからお答えすることは差し控えたいところでありますが、一般論として申し上げたいと思います。  不審船舶の領海侵犯への対処は、第一義的には海上保安庁の任務であり、自衛隊は、平素から警戒監視等の実施に際し、不審船舶を発見した場合の連絡など、海上保安庁と緊密に連携して不審船舶対処に協力しているところであり、御指摘のような事態が起こった場合は同様の対応をとることとなります。さらに、事態に応じ、自衛隊法に規定された海上警備行動等が下令された場合には、法令により付与された立入検査、進路変更等の権限により、領海に侵入した不審船舶に対し適切に対処することとなります。
  111. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 上陸艇から戦車がいよいよ日本本土に入ってきた、これに対して陸上自衛隊はどういう迎撃態勢をとるのですか。
  112. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 御指摘のように、上陸用舟艇を使いまして、戦車等を使って上陸するような事態が生起するという事態はなかなか想定しにくいのでございますけれども一般論として申し上げますと、ある事態我が国に対する武力攻撃またはそのおそれのある場合を含む場合に該当する場合には、防衛出動が下令され、自衛隊は我が国を防衛するため必要な武力を行使することになるわけであります。
  113. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 話によると、日本の戦車は道路交通法上日本の道路は走れないと聞いておりますが、迎撃態勢を組み立てられるのですか。
  114. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 有事法制の問題とも関連してくるわけですが、例えば、道路法の管理者がある場合に、たまたま敵の攻撃で道路が損壊して戦車等が通れないような事態になった場合、これは道路法によりまして道路管理者の許可を受けなければそれを直すこともできないということになります。そういう場合に、自衛隊としては、そういうものを即座に損壊した箇所を修復する能力を持ちながら、道路法の許可をとらなければできないということになりますから、戦車等が通行できないという事態があります。そういう場合に、道路の管理者の許可がなくても、そういう有事の場合には道路の損壊した箇所を自衛隊が修復する権限を与えられないかどうかというようなことが有事法制等で検討されることであります。  同じような問題で、敵が上陸してきた場合に、簡単な陣地を構築しなければならない場合でも、海岸法の許可をとる、あるいは自然公園法の許可をとるということになります。しかも、海岸法は、建設省が一般に海岸を管理しておりますけれども、農林省管理の海岸もありますし、運輸省管理の海岸もあるということで、それぞれの許可をとっていればもうとても上陸に間に合わないということになりますから、そういう場合にも自衛隊に、許可を受けないでも、そういう対抗する陣地の構築を認めてほしいというようなこともございます。  そういう意味で、私どもとしてはこれまで有事法制のあり方について検討してきたところであります。しかし、長い間検討してきましたが、法制化を前提としたものでないものですから、今委員から御指摘を受けたような事態になってくると、そういう有事の際に対応する手段を欠くということになりかねないというのが現在の体制であります。
  115. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 航空自衛隊、スクランブルについてもいろいろなシミュレーションがあるわけなのですが、要は、午前中の議論の中でも、防衛庁長官は、現在は法改正までは考えていない、こう明言をされているわけでございますが、日本のすぐ近くには具体的に北朝鮮という無法国家があるわけです。有事が起こる可能性はいつもある。これに有効に自衛隊が対処できなければ、何のための軍隊であるか、税金を使って動かしている自衛隊ですから、こういう疑問が出てくるわけです。  したがって、私は、自衛隊を動かす根拠、平時の法律では無理がある、やはりこれは国家が、防衛庁が責任を持って法整備が必要である、こう考えるものですが、いかがですか。
  116. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 有事の際に、自衛隊法におきましては、自衛隊の行動として、外部からの武力攻撃に際して、我が国を防衛するため必要があると認められる場合には、委員が御承知のとおり、防衛出動を初め、治安出動、海上における警備行動、災害派遣、領空侵犯に対する措置などを規定し、またこれらの行動を命ぜられた際の自衛隊の権限について自衛隊法ではきちっと書かれております。  このように、現在の自衛隊法によって自衛隊の任務遂行に必要な法制の骨幹は整備されているところでありますが、先ほども述べたような事態に遭遇した場合には、これを適切に行使するということの非常に障害になりますので、これをより適切にするために有事法制の問題を含め今後ともさらなる検討をしてまいらなければならないと考えているところであります。
  117. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 次に移ります。三番目の基地対策、基地周辺対策について伺います。  私は選挙区が神奈川第十三区でありますが、神奈川十三区は四つの市から成っておりまして、その中に、大和市、綾瀬市にまたがる厚木基地がある。この厚木基地でアメリカのキティーホークの艦載機のNLP訓練が行われております。  衆議院に送っていただいてから既に二年四カ月が過ぎたわけですが、当選以来私はこの場で滑走路の進入表面下への交付金制度を新しくつくれ、こういう主張を何度もしてまいりましたが、久間、額賀、野呂田各防衛庁長官は検討を進めたいという極めて誠意のない答弁に終始をしております。  そこで、改めて伺いますが、夜間騒音が受忍の限度を超えている、これは裁判所の判断で国が敗訴をした。裁判所が、受忍限度を超えた音だ、そして損害賠償を命じている。原告三千五百人は二十七億円余りの補償金を国からかち取ったのであります。金をもらった人間というのは、日米安保体制に反対してきた方々でありまして、戦後一貫、反米、反安保、反基地を主張し行動してきた方々であります。  一方で、防衛の重要性を理解して、音は確かにうるさい、しかし国防の基地だから、防衛は最大の国民福祉だからということで長年厚木基地の安定運用協力をしてきた方々もいるわけです。国防不要論を唱える方が、音がうるさいからといって裁判を起こして金を取っている。基地の安定運用協力した人、これは受忍限度を超えた音にひたすら耐えている。金も要求をしていない。ここに行政の光を当てる、これが国の責任ではないか、こういう主張を繰り返してきたのですが、検討を進めたいと言う。検討を進めたいという答弁は、これは役人でもできる。私は、政治家ならば、こんな問題をほうっておいて、これは人道問題ですよ。受忍限度を超えた音に耐えている人間、これは行政は何にもしてくれない、何にもしない。行政の不作為責任があると思いますが、いかがですか。
  118. 大森敬治

    大森(敬)政府委員 厚木の飛行場周辺の騒音対策につきましては、防衛施設庁といたしましても、裁判の判決が出たこともありまして、極めて重大に受けとめているわけでございます。  厚木飛行場周辺におきます住宅防音工事につきましては、防衛施設庁の周辺対策事業の重点施策といたしまして、防音工事の約四割を投入して鋭意努力しております。また、騒音の軽減のため、NLPにつきまして、できるだけ硫黄島でできるように多くの努力を払っているところであります。  また、先生指摘の交付金の件でございますけれども、大臣からも指示がありまして、施設庁内の関係者を集めまして種々検討したわけでございますけれども、御提案のような、使途を限定しないような形での交付金というような補償制度を設けることは極めて困難であるというふうな結論を持っております。  しかしながら、いずれにいたしましても、厚木飛行場の騒音軽減には最大限の努力をしなければいけないというふうな認識を持っておりまして、私ども、現在の周辺整備法の中で可能なあらゆる施策を講じて、騒音の軽減につきまして最大限の努力をしていきたいと思っております。  また、御提案の点につきましては、非常に難しいわけでございますけれども、使途を明確にしたような形での対策は何ができるかということについて検討していきたいと思っております。
  119. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 防音工事も、代替訓練飛行場をつくったこともよく承知をしているのですよ。現行法の中で救済策がないということもわかっておる。その上に立って質問をしているのでありまして、長官、御答弁いただきます。  これはやはり政治家が新しい制度をつくる、新法をつくって対応する。安保体制反対で裁判を起こした人が金をもらって、この音の犠牲に苦しんでいる人に全く救済策がない、ここのところはおかしいじゃありませんか。長官としてのお考え、最後に伺いたい。
  120. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 この間も申し上げたところでありますが、小松とか三沢基地周辺の町内会に対する交付金制度等も十分取り寄せて検討させたのでありますが、今施設庁長官から答えたとおり、使途を限定していない交付金というのはなかなか大蔵省等を説得できないという非常に難しい壁があることも事実であります。  しかし、今委員が御指摘のとおり、厚木飛行場周辺の騒音問題については、これは大変御負担をかけているわけでありますし、今後、地元の要望を十分しんしゃくしながら、御負担を軽減するためにどのようなことができるかということを関係各省と検討していきたいというふうに思っております。
  121. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 終わります。
  122. 二見伸明

    二見委員長 次に、塩田晋君。
  123. 塩田晋

    ○塩田委員 自由党の塩田晋でございます。  前回の本安全保障委員会におきまして、野呂田防衛庁長官は、我が国は主権国家として固有の自衛権を持ち、その自衛権の行使を裏づける自衛のための必要最小限度の実力を保持することを我が国憲法上は許されると言われましたが、大臣、これでよろしゅうございますか。
  124. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員から御指摘いただいたとおりでございます。
  125. 塩田晋

    ○塩田委員 さらに、野呂田大臣、高村外務大臣、政府委員からは、自衛権には個別的自衛権と集団的自衛権がある、我が国は、国際法上、日米安保条約上も当然に両者ともに有しておるが、我が国は憲法上の制約から集団的自衛権は行使できない、そういう答弁がございました。私は、権利を保有するといいながら行使できないようなものは権利でない、権利を保有するとはいえないと反論したのでございます。  さらに、集団的自衛権の定義といたしまして、外務省からは、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利であると理解する、こういう答弁がございました。また、同盟関係にある国が直接攻撃を受けた場合、自国に対する攻撃のようにみなして反撃する権利と理解してよろしいという答弁もございました。これを再確認してよろしゅうございますか。
  126. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 我が国は集団的自衛権を有するが、またそれには制約があるということを申し上げてまいりましたが、もう一度申し上げますと、我が国国際法上、国連憲章五十一条による個別的自衛権及び集団的自衛権を有していることは疑いないことだと思います。しかしながら、先般も申し上げたとおり、我が憲法のもとで認められる自衛権の行使は、我が国に対する急迫不正な侵害に対して、これを排除するためとられる必要最小限度の範囲のものでありますから、個別的自衛権の行使に限られると統一して政府は申し上げてきたところであります。すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利、これが集団的自衛権でありますが、そういう意味での集団的自衛権を行使することは我が国の憲法の認めるところではない、こういうふうに従来から政府は申し上げてきたところであります。  外務省の発言に関する部分につきましては、外務省から答弁いただきます。
  127. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 先ほど来先生が御指摘なされたような答弁がされております。
  128. 塩田晋

    ○塩田委員 そこで、野呂田大臣にお伺いいたします。  個別的自衛権の発動として、実力を持っている自衛隊組織、これが行動を行うに当たりまして、防衛、治安、災害あるいはPKO、周辺事態の自衛隊出動の決定と自衛隊への下令までの手順、また、その間どれぐらいの時間がかかるか、国会承認まで含めてどれぐらいかかるものか、一言概略御説明をお願いします。
  129. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 大変たくさんの御質問でございますので、少しお時間をお許しいただきたいと思いますが、まず、防衛出動というのが自衛隊法の七十六条にあります。我が国に対する武力攻撃、また、そのおそれのある場合を含むわけでございますが、この武力攻撃に際しまして、我が国を防衛する必要があると認められる場合には、総理大臣は、防衛出動の可否について、まず安全保障会議における審議を行い、それを経て閣議の決定を得るということになります。同時に、国会の承認を得て自衛隊の防衛出動を命ずることになるわけであります。  なお、特に緊急の必要がある場合には、国会の承認を得ないで出動を命ずることができますが、その場合、命令後直ちに国会の承認を求めることとなります。  また、命令による治安出動というのがやはり自衛隊法の七十八条にありますが、これは、いわゆる間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもってしては、治安を維持することができないと認められる場合に、内閣総理大臣は閣議の決定を得て自衛隊の治安出動を命ずることができるものであります。この場合、出動を命じた日から二十日以内に国会に付議し、その承認を求めることとされております。  なお、治安出動については、内閣総理大臣が国防に関する重要事項に該当すると認める場合には、安全保障会議に諮ることとなります。  また、自衛隊法の八十一条に要請による治安出動というのがありますが、都道府県知事から、当該都道府県公安委員会と協議の上、自衛隊の部隊等の出動の要請が内閣総理大臣に対してなされ、事態やむを得ないと認める場合には、内閣総理大臣は閣議の決定を得て治安出動を命ずることができる。その場合、国会の承認は必要とされておりません。  なお、安全保障会議との関係は、命令による治安出動と同じ手順であります。  それから、先生さらに御指摘のPKO、これは平和維持隊本体業務を除いた場合でありますが、この国際平和協力法の、国際連合の要請があり、我が国として国際平和協力業務を実施することが適当であると認められる場合であって、停戦合意等の要件が満たされる場合には、内閣総理大臣は、国際平和協力業務を実施すること及び実施計画の案につきまして閣議決定を求める、実施計画の決定があったときは、その内容について国会に報告をするということになっております。  なお、国際平和協力業務の実施については、内閣総理大臣が国防に関する重要事項に該当すると認める場合には安全保障会議に諮ることとなります。  それから、周辺事態確保法案で後方支援等を行う場合でありますが、この場合は、後方支援が実施される必要があると認められる場合には、内閣総理大臣は基本計画案を作成し、安全保障会議における審議を経て閣議の決定を求めることとなります。基本計画は、安全保障会議における審議を経た後、閣議で決定され、遅滞なく国会に報告される、こういうことに相なっております。
  130. 塩田晋

    ○塩田委員 集団的自衛権につきましては、我が国が加盟しております国連憲章第五十一条、日米安保条約の前文に明定してございます。同条約の前文は、御承知のとおり、両国が国際連合憲章に定める個別的または集団的自衛権の固有の権利を有していることを確認し、極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、本条約を締結したとございます。  また、第四条では、日本国の安全または極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方国の要請により協議するとございます。さらに、第五条では、日本の領域におけるいずれか一方に対する武力攻撃が自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、共通の危機に対処するように行動すると宣言しております。この条約については、日本国憲法第九十八条第二項におきましても、日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守する必要があると定められております。  私は、個別的自衛権と集団的自衛権とは同根一体のものであると認識しているものでございます。自衛権そのものが集団的及び個別的自衛権である、このように認識しております。集団的自衛権は、むしろ個別的自衛権のためにある、このようにも考えておるわけでございます。これが国際的な一般通念である、このように認識しております。法理もそのとおりであると思っております。  したがって、政府見解の、集団的自衛権は保有すれども行使できないという、これは法理でなくして、憲法の解釈、運用の問題であり、政府の判断、決定による政策あるいは態度あるいは方針、これに当たるものと考えております。現に、日本周辺事態の際に、武力と一体化しないとは言っておりますけれども、米軍への後方支援、これを行うというのは、日米共通対処への前進と見るのは間違いないことだと思います。  これらを前提といたしまして、次の質問に移ります。  いわゆるミサイル攻撃に対しまして、座して死を待つよりは、他に方法がなければ、敵基地をたたく、これは昭和三十一年あるいは三十四年の大臣答弁でありまして、政府の統一見解になっておりますが、これは法理的には自衛権の範囲内であって憲法違反にならない、これが政府の統一見解でございます。この場合、どのような手順で行うか、敵基地をたたくという場合。我が国にその意図があっても実力はないということは、先般来この委員会でも明らかになっております。そういう現状で、米軍にこれを依頼するということになる。これは、日米条約はそのような事態に対処するためにあるのだ、こういう外務大臣の前回の委員会における答弁もございました。その場合の手続、手順についてお伺いいたします。どのような協議がどのような段階で、どのような機関で行われることとなるのか、お伺いいたします。
  131. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 今先生指摘ございましたように、昭和三十一年の二月の二十九日の統一見解で、万やむを得ない、他に手段がないような場合には、相手の基地に対する攻撃も自衛権の範囲内に含まれている、これは法理上そうだということでございます。ただ、現実にはそういう能力を我が国としては保有していないわけでございますし、そういう場合には、現状におきましては日米安保体制のもとにおきまして共同対処をする、こういうことになるわけでございます。  この点につきまして、この新しいガイドラインにおきましても、そういう事態に対する対応といたしまして、自衛隊及び米軍は弾道ミサイル攻撃に対応するために密接に協力し調整する、米軍は、日本に対し必要な情報を提供するともに、必要に応じ打撃力を有する部隊の使用を考慮する、こういうふうになろうかと思います。  それで、こういう事態になりましたときに、もちろんこの前の段階からいろいろな兆候等もございましょうから、日米間でこの状況についての情報交換、意見交換をし、こういうものに対応していく、こういうことになろうかと思います。
  132. 塩田晋

    ○塩田委員 敵のミサイル基地をたたくのは、ミサイル発射後でなくして、我が国に向けて敵が攻撃に着手したという段階で先制的にたたくことを含むということはきょうの委員会でも先ほど議論がなされたところでございます。これは事の性質からいって、時間なりあるいは技術的な面から非常に難しい問題だ、これはもうだれしも考えるところでございます。TMD開発とかあるいは偵察衛星の予算化等につきまして前向きに、これが本格化していっておるということはよいことだと思っております。そのスピードアップを図らなければ間に合わない、このように思うわけでございまして、十分に対処して取り組んでいただきたいと思います。  そこで、片や三万五千キロ以上の上空で停止をしている早期警戒衛星、これはミサイル対策として極めて有効であり必要と思うのでございますが、今のところ防衛庁は考えていないというふうに伝えられておりますが、これはどうしてでしょうか。米国との関係で何か支障があるのか。ほかの同種の衛星、これは日本でも四個以上持っておるわけです。技術的にはできないことはない。そして、金額もかなり安くなって、発射装置を含めて百億円以内で一個を上げておる。こういう状況の中で、なぜミサイル対策に有効と思われるこの早期警戒衛星を持たないのか、持てないのか、これについてお伺いいたします。
  133. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 安全保障関係の衛星でございますけれども、おっしゃいますように、情報収集衛星、これは地上数百キロのところを周回する衛星でございますが、今先生お触れになりました早期警戒衛星、これは地上三万六千キロの上空で、例えば弾道ミサイルの発射に伴います赤外線を探知をする、こういうふうな衛星でございます。確かに、弾道ミサイルの発射に対応する意味では、こういうものが非常に有効であることは事実でございますけれども、現在この弾道ミサイルに対します対応といたしまして、BMDということで私どもそのあり方を検討しているところでございます。まだ現段階でその最終的な成果が得られているわけではございませんので、この早期警戒衛星の保有の是非についてもお答えするような段階に至っていない、こんなことでございます。
  134. 塩田晋

    ○塩田委員 いわゆるガイドライン法案での船舶検査についてでございますが、その性格はどういうものでございますか。海戦法の戦時封鎖とかあるいは海洋法の公海海上警察権の行使、そういうものと別にいたしまして船舶検査、これの性格をお伺いします。  これは国連の決議という要件が入っておりますが、これも周辺事態が想定しているものとはちょっと違ったジャンルの問題を持ち込んでいるのではないかというふうにも考えられますし、もしこの国連決議の要件を外した場合には、これは自衛権の何でもってこういう行動を自衛隊がやるのか、お伺いいたします。
  135. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 周辺事態安全確保法における船舶検査、これは国連憲章の四十一条の非軍事的措置である経済制裁、これに実効性を与えるためにとられる措置ということで規定されておるわけでございます。我々はその実効性確保ということが非常に重要だと思ったものでございますから、この法案に国連安保理決議が前提になるということを規定しているわけでございますけれども、御指摘のように、その船舶検査活動について、この国連安保理決議の要件を外すべきであるという御議論があることは十分承知しているわけでございます。  しかし、一般論として申し上げますと、国連安保理決議がない場合には、船舶検査活動を行うことが国際法上認められることになるかどうかということにつきまして、検査を実施する国と対象船舶の属する国、旗国との関係など、いろいろな事情を踏まえた上で判断すべき問題ではなかろうかと考える次第でございます。
  136. 塩田晋

    ○塩田委員 自衛隊員の退職時の再就職に際しまして防衛庁の不祥事に絡めてかなり制約をしようという動きがあるようでございますが、これは短期制の自衛官は除くそうでございますが、自衛隊員にかなり厳しい制約を課そうとしておるという動きを聞いておりますが、自衛隊の隊員は、自衛官は、命を国にささげるということを誓って、誓約して入って、そしてその任を終えて退職していく。この人たちに対しても全く失礼なことではないか。また、一般の自衛隊員に対しまして、自衛官に対しましても、士気と名誉に非常に大きな影響を与えるものではないかと思いますが、これをどのように考えておられますか、お伺いいたします。
  137. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 御案内のとおり、元調本幹部による背任事件等を契機に自衛隊員の再就職のあり方につきまして、若年定年制や任期制により早期の退職を余儀なくされている自衛官が安んじて職務に精励し得るよう配慮しつつ、これまで外部の知恵もかりながら検討を重ねてきたところであります。部外の有識者から成る自衛隊員の再就職の在り方に関する検討会をつくりまして、そこにおける議論や、あるいは先般、政務次官を団長として、アメリカ、イギリス、フランスが再就職に関する先輩国でありますので、これらの国に派遣した調査団の調査結果等を踏まえながら、再就職に関する制度の見直しや再就職状況の透明化の施策の具体化に取り組んでいるところであり、これに必要な法律の改正につきましても、法案を通常国会に提出すべく、政府部内において目下調整を行っているところであります。  自衛隊の再就職に対する公務の公正性及び透明性を確保しながら適正な再就職の実施を図るために、承認を要する再就職の範囲、承認手続、承認状況国会への報告に関し所要の法律改正を行うことを考えておりますが、現在政府部内で鋭意調整をしているところであり、詳細な内容につきましては、この調整を了した段階で御説明を申し上げたいと思っておりますが、早期に退職したり任期制の自衛官等に対する処遇は、むしろこれから改善されていくという方向で検討されているということを申し上げておきたいと思います。
  138. 塩田晋

    ○塩田委員 諸外国の例もよく検討し調査して、この問題については、自衛隊の士気にかかわることでございますので、慎重にひとつ対処していただきたいとお願い申し上げます。  次に、日本外航船の海外における航行安全につきまして、海上保安庁、どのように配慮しておられますか。海賊等が各所で出ておるということも聞いておりますが、いかが対処しておられますか。
  139. 楠木行雄

    楠木政府委員 お答えいたします。  まず、一般に各国がその沿岸海域の警備を行うのが通例でございますので、先生お尋ねの趣旨が我が国のかなり周辺であります場合には、これは、海上保安庁といたしましても巡視船、航空機を現場に急行させまして、そして、我が国の法令に従って犯人の逮捕等所要の措置をとることとしております。現に、平成三年の三月から平成五年の七月まで東シナ海の公海上におきましてかなり事件が続発をしたことがございまして、そのときには不審船に対して所要の対応措置をとっております。  また、かなり遠く離れました場合も含めてでございますが、一般的に、日本籍船の外航船舶でそのような問題が起こりました場合には、海上保安庁におきましては、海賊に遭遇した日本船舶から被害通報を受けた場合に、遅滞なく付近の航行船舶に対して航行警報によりまして周知するとともに、被害船舶が本邦に入港する際には、海上保安官が訪船をいたしまして被害状況調査防止方法の指導等を行っているところでございます。
  140. 塩田晋

    ○塩田委員 我が国経済の動脈でありますところのシーレーン防衛につきまして防衛庁からもお聞きをしたいんでございますが、また次回に譲らせていただきます。  最後に、海洋国家日本の外航船が種々の事情によりまして激減をしておる、船員につきましても減り、計画養成が非常に支障を来しておる、こういう状況、まことに情けない事態でございます。我が国経済安全保障を考えれば、有事を考えれば一層のこと外航船の確保は重大問題でございます。  諸外国においては船舶に対する種々の優遇策がとられていますが、特に、米国におきましてはかなり思い切った援助措置をして法令的にも整備をし、また、財政のかなりの補助を行っておる、こういう実情で一朝有事に対処しておるわけでございます。  我が国の加工貿易立国の立場から必要な船舶の確保は極めて重要であります。この観点から、米国の例を参考にしながら我が国も思い切ったそういった対策を早急に手を打つべきである、このように考えますが、いかがでございますか。
  141. 宮崎達彦

    ○宮崎(達)政府委員 先生指摘のとおり、日本籍船、外航に携わります日本人船員、コスト競争力の関係から非常に最近激減しておりまして、いわゆる便宜置籍船という船に変わってきつつあります。  我々も、先生指摘のとおり、島国であり貿易立国である我が国におきましては一定程度日本籍船、日本人船員の確保が必要であろうかというふうに思っております。そういう観点から平成八年に国際船舶制度というものを創設させていただきまして、登録免許税、固定資産税などの減税措置も実施してきておりますし、この五月からは、昨年法改正をしていただきまして、そういった国際船舶につきましては、日本人につきましては船長と機関長二名だけでいい、ほかは外国人船員を、もちろん一定の条件がございますが、雇ってもいいという制度が導入されることになっております。また、船員の貴重なノウハウを若い人にも伝承していくというような観点から、若年船員の養成プロジェクトということで補助事業を進めております。  これらの施策によりまして日本籍船、日本人船員の減少に歯どめがかかることを期待しております。  先ほど御指摘ございましたアメリカの補助政策でございますけれどもアメリカの場合、どちらかといいますと海軍予備船隊という非常に明確な位置づけがございまして、その大幅な海運に対する補助金につきましても、いざというときには徴用が前提であるとかいうような種々の条件がございまして、その辺につきましては、これからの国民的コンセンサスが得られるかどうかということにかかっているかと存じております。
  142. 塩田晋

    ○塩田委員 ありがとうございました。終わります。
  143. 二見伸明

    二見委員長 次に、中路雅弘君。
  144. 中路雅弘

    中路委員 最初に、先日起きました横浜市南区の米軍根岸住宅地区の隣接地域におけるがけ崩れ事故についてお尋ねしたいと思います。  最初に確認しておきたいんですが、このがけ崩れ、崩壊箇所ですね、二月二十六日に防衛施設庁の文書をいただきましたが、これは国が借り上げている土地で、かつ米軍に提供している土地外の土地であるというふうに述べていますけれども、防衛施設庁、国の管理地域、施設局に管理の全責任がある、これは間違いありませんか。確認しておきます。
  145. 宝槻吉昭

    宝槻政府委員 今先生が御指摘になりました先般のがけ崩れの管理責任についてでございますが、確かに、がけ崩れが国が借りている土地のがけにおいて崩落しているという事実があることは承知しておりますけれども、今先生おっしゃった責任という御指摘でございますが、この事故の原因と責任につきましては捜査当局において捜査中でございますので、その点は差し控えさせていただきます。
  146. 中路雅弘

    中路委員 私が聞いているのは、管理の責任があるだろうということだけ聞いているんですよ。原因の責任はこれからなんです、質問するのは。  私は二月の二十六日に現地で調査しました。施設局の案内もいただきまして、住民の皆さんからお話も聞き、あるいは神奈川県それから横浜市等からもお話を聞いてみましたけれども、このがけ崩れ対策の問題についての防衛庁対応についてきょうはお尋ねしたいと思います。  防衛施設庁はこの土地を九〇年四月一日に地権者との間で賃貸の契約を結んで借りたわけですけれども、この賃貸契約を結ぶときには、当然現地を視察をされて調査をされていると思います。この周辺隣接地域は全部七四年の十月に神奈川県の急傾斜地崩壊危険区域の指定を受けた地域です。したがって、この法律六条によって危険地域の標識の設置が義務づけられていますから、現地調査をされれば危険区域の標識も確認されていると思いますが、この点についてどういう自覚があったんですか。確認されているんですか、危険地域だということについて。
  147. 宝槻吉昭

    宝槻政府委員 ただいま先生がおっしゃった御質問の件でございますけれども、防衛施設庁が当該がけ地を含む土地の借り上げに際しまして、現地におきまして土地の所有者の理解のもとに土地の現況等について確認して賃貸借契約を結んだところでございます。  今さらに御指摘ございました県の急傾斜崩落危険区域の指定に関してでございますけれども、私どもが承知している限りでは、当該崩落のあった箇所につきましては崩落危険区域の指定はなかったものと承知しております。
  148. 中路雅弘

    中路委員 今聞いているのは、その隣接地域は全部指定されているだろうと。皆さんのところは国が管理しているところでしょう。だから、その地域には標識があるんですよ、この地域は危険地域だと。そういうことも賃貸のときに確認されているでしょうということを聞いているんです。皆さんの土地が危険地域だということを言っているんじゃないです。それは、国だからといって指定しなかったところに責任があるから、後でお尋ねしますけれども
  149. 宝槻吉昭

    宝槻政府委員 失礼いたしました。  確かにその近隣のところが、北側になると思いますけれども、既に防衛施設庁が借り上げる以前に崩落危険区域として指定されておったという事実は、当然承知しておったろうと思います。
  150. 中路雅弘

    中路委員 九五年の三月に、これはその年の初めに阪神・淡路の大震災がありました。だからこの九五年の三月に、このマンションの住民の人たちの八割、大半の署名を携えて、マンション管理組合の理事長初め町内会長が南区役所にがけ崩れ対策の陳情を行っています。この陳情について、横浜市や区役所は防衛施設庁に陳情の趣旨を伝えたと言っています。そしてこの陳情に対して、マンション管理組合に、横浜防衛施設局に陳情内容などを伝えてあるので施設局から回答があるということを、これは理事長の話ですけれども、横浜市から連絡があったんです。  この陳情について、受けたのかどうか、あるいは、回答すると言っていたんですが、回答したんですか。
  151. 宝槻吉昭

    宝槻政府委員 御指摘平成七年三月、当該マンション自治会から横浜市の南区役所に対しまして中村町五丁目地区のこの擁壁に対する防災総点検調査の要望があったことについては、今回の事故後の報道がございまして知ったところでございまして、事故後の本年二月二十二日、横浜局から横浜市に照会したところでございます。  他方、平成七年当時におきまして横浜市の南区役所から防衛施設局の方にその旨説明があったか否かにつきましては、今回横浜局において事実を調査するとともに、横浜市の方にも確認したところでございますけれども、当該申し入れに関する記録等がないということで、不明であるということでございました。  したがいまして、当庁として、当時の対応も含めまして、その事実を確認できていないという状況でございます。
  152. 中路雅弘

    中路委員 ここのポイントのところは、一貫してまだわからないということを繰り返しているんですよね。私、何度も横浜市に聞きました。そうしたら、防衛施設庁にこのことを伝えて、マンション管理組合には陳情内容について施設局から回答があると、これはこの管理組合の岩田理事長も、そういう返事を横浜市から、区役所からもらっているということをはっきり私たちにも言っています。だから、横浜市が伝えて、回答は皆さんがするということを伝えたことは、関係者が皆一致しているんですよ。しかし、マンション管理組合の理事長は、その後回答は全くないということを先日も私に言っていました。  ここのところ、ごまかしちゃだめですよ、担当者がかわったから今調べている、わからないとか。マンションの住民の圧倒的多数が、大半が署名を集めて陳情に行ったんですよ、阪神大震災の後に署名を添えて。そして、横浜市も、皆さんに伝えたと、回答は施設局からあるという返事も、理事長も関係者も皆確認しているんです。それを今調査中、こういうごまかしをやっちゃだめですよ。責任回避ですよ。  もう一度、その点は調査をやっているんですか。
  153. 宝槻吉昭

    宝槻政府委員 その点につきまして、報道もございましたし、また先生からのこの間の御指摘もあったわけで、私どもの方は、局から横浜市の当局に対してこの件につきまして照会いたしたわけでございます。その結果、先ほど申し上げたように、市の方の御返事としても、当時の記録等がないので確認ができていないということでございましたので、また、局自身の調査ももちろんいたしたわけでございますけれども、同じように、当時施設局の方に市の方から照会が来たということは確認できておらないわけでございます。
  154. 中路雅弘

    中路委員 当時の関係者は皆そう言っているんですが、市も施設局も、担当者がかわって今はよくわからない、問い合わせたということで、この問題を回避しているわけですが、これははっきりとさせていただきたいと思います。  この陳情の後、横浜市と神奈川県がこれを受けて現地調査をやっています、六月に。現地調査をした横浜市が、県に対して急傾斜地崩壊地域の指定を打診しているんですね。この皆さんが借り上げた土地についても当然指定すべきじゃないかと危険区域の指定の打診をしているんです。このとき、県は、この土地は国の管理だからということを理由にして指定をしなかったという経過があります。  防衛施設庁は、横浜市あるいは神奈川県から現地調査の結果について報告があったんですか、あるいはがけ地対策についてどうするか、そういう相談がありましたか。
  155. 宝槻吉昭

    宝槻政府委員 その件につきましては、県の方から施設局の方に相談ないし照会はございませんでした。
  156. 中路雅弘

    中路委員 県の方も、当然これは危険地域だということで指定すべきだということを市も言っているにかかわらず、国が管理しているところだからといって、この問題は、きちっと危険地域に指定の問題について皆さんと話をしていないんですね。いわゆる行政が、市も県も国も、お互いにこういう形であいまいにして、なれ合ってこの事故を引き起こす要因をつくってきたということも過言ではないと思うんです。  その後も、マンション住民がこの陳情を行った後も、例えば九六年の七月に二回にわたって、現場から少し離れたところですが、五十メートルほどですが、斜面でがけ崩れが起きている。このことは承知していますか。
  157. 宝槻吉昭

    宝槻政府委員 承知しております。
  158. 中路雅弘

    中路委員 これは九六年の七月十一日、それから二十二日ですが、いずれもマンションの管理組合から、この崩れた箇所を含めて施設庁に通報しているんですね、がけ崩れがあったということで。これについても何の対策もやっていないわけです。  さらに、九月十六日にがけ崩れが、大きいのがありました。このとき、神奈川県警も入って、南区も市に報告をしています。このがけ崩れの発生に対して管理組合から区役所を通じてがけ崩れ対策の補強を求める要望書をこのときにも出しています。横浜市の担当者は、管理組合の要望と県警から入った情報をもとにして横浜施設局に伝えていますけれども、このときはどういう対応をされましたか。
  159. 宝槻吉昭

    宝槻政府委員 まず初めに、平成八年七月に二回の崩落があったことについて言及させていただきたいと思いますけれども、当時、マンション管理会社の方から小規模崩落の連絡がありまして、施設局も現地調査に立ち会い、さらに、この二回の崩落の後に、米軍が崩落した土砂をあわせて除去しておることをまず申し上げさせていただきます。  それから、今先生おっしゃった第二点目の、昨年の九月の崩落に関してでございますけれども、この崩落は、今回の崩落箇所から約五十メーター南側のところで、台風等の影響で、コンクリート吹きつけ壁上部の表土の部分の一部土砂等の崩落があったわけでございます。  これに対しまして、横浜施設局が直ちに現地調査を行うとともに、米軍と調整しまして、米軍において、崩落土砂等の除去及び崩落箇所付近の再発防止のための土砂あるいは樹木の除去等の応急措置を講じたところでございまして、局の職員もこういった米軍の措置について確認を行ったところでございます。
  160. 中路雅弘

    中路委員 この応急処置は、米軍に任せたわけですよ。しかし、あなたたちが管理している責任の地域ですから、米軍がやった応急処置が、土砂を取り除いただけですけれども、これで万全なのかと。要望が出ている、危険があるんだということについて万全なのかという判断を皆さんはされたんですか。防衛施設庁は、これについて何の手も打っていないですね。そうでしょう。
  161. 宝槻吉昭

    宝槻政府委員 確かに、昨年応急措置を講じたわけでございますが、その後、今回のように、その北側ではございますけれども、やはりその近傍の、同じようにコンクリートを吹きつけたところにおいて今回のような事故があったわけでございまして、私ども決して、昨年の崩落があったところについても万全という認識ではおりません。何らかの調査を行って、またしかるべき対応を考えていく必要があるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  162. 中路雅弘

    中路委員 具体的には何の処置もしていないですよ。必要じゃないかなと考えたというだけですね。  マンションの理事長は、今回の大崩落が起きる一カ月前に、がけの問題について防衛施設局に管理事務所を通していろいろ連絡を、一カ月前にまた起きましたから、連絡しているんですけれども、この崩落事故があった二月十七日の、これは夜ですけれども、午後二時に管理組合が局に対して、調査をしてほしい、がけ崩れがある危険があるということで連絡して、皆さんは現地に行かれましたけれども、このときはどうしたんですか。崩落の直前です。
  163. 宝槻吉昭

    宝槻政府委員 確かに、本年二月の十七日、事故が起こった当日でございますけれども、この日の午後に、横浜施設局がマンション管理会社の方からがけの一部が崩壊しているという連絡を受けまして、直ちに局としては職員を現場に派遣しまして、確認を行わせました。  その際、がけの地表近くのコンクリート吹きつけの表面が一部剥離している、あるいはそのほか、がけ沿いの雨水管とか、あるいは崩落防止フェンスの基礎コンクリートにずれがあったといったようなことで、早急に原因調査を行って、崩落防止対策等について検討することとしていたという状況の中で、今回、その日の夜、このような事故が発生したということでございまして、この点については、まことに遺憾であると考えております。
  164. 中路雅弘

    中路委員 現地に行って、大崩落の前兆を皆さんも既に確認しているのでしょう。現場で聞きましたら、対策は何もやらない、帰ってさらなる調査を行いますと言って、戻ったのですよ。そして、この大崩落がその直後に起きたわけですね。  私は、大事な調査はまだ幾つもあるのですけれども、二、三、主な点を取り上げました。これをずっとたどってみると、これだけ崩落の危険があり、あるいは現地からも何度も防衛施設局に連絡もあり、要請もあるにもかかわらず、応急的処置もやっていないのですね。調査をしますと言って、帰っていったりしていますから。そういうのにとどまってきた、これが今度の大崩落の事故につながったということは明らかなのですね。  だから、マンション管理組合は、数年前からこのがけを覆うコンクリートに亀裂が入ったとかいうことは認めて、たびたび管理事務所を通して防衛施設局に補修を申し入れてきたわけです。これについて皆さんが具体的な対応をしなかったということが、今回の大崩落を導いているのです。原因について、今警察で調べているからとさっき言いましたけれども、この私の経過からいえば、皆さんが、これだけ訴えがあったにもかかわらず、何の抜本的な手も具体的に打たなかったということが崩落につながっていることは明白なのですね、これは。警察調査も何もないですよ。だから、その点で、今度の事故について、これは天災じゃないですよ、明らかに人災なのです。管理責任は皆さんにあるのです、この土地について。安全管理も責任があるのです。  施設庁長官、まずお聞きしますけれども、この点について、責任は感じられますか。
  165. 大森敬治

    大森(敬)政府委員 今回の事故といいますか、がけ崩れにつきましては、私ども施設の管理全般につきまして責任を持っております防衛施設庁といたしまして、非常に遺憾なことであると思いますし、また、私ども、これからの施設管理につきまして考えていかなければいけない点を多く示唆しているものと思います。  いずれにいたしましても、本件事故により災害に遭われた方々に対して、心からお見舞いを申し上げたいと思いますし、私どもが防衛施設庁としてとれる措置につきましては、当面の措置といたしましても全力を挙げてやっていきたいと思いますし、また、今後、施設の管理につきまして、抜本的な施策につきまして積極的に取り組んでいきたいというふうに思っている次第であります。
  166. 中路雅弘

    中路委員 今、今後のことを聞いているのじゃないのですよ。この大崩落につながった、これまでの間に、経過については認めたでしょう、たびたび要請があったのですよ、補強をしてくれ、あるいは危ない、見に来てねと。これについての対応は、私が質問して皆さんが答えたとおりなのですよ。こういう経過をたどって、大崩落になっているわけです。  防衛庁長官、やはり防衛庁として、施設庁として、責任の一端があるということははっきりさせなければいけないのじゃないですか。いかがですか。
  167. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 こういう事態を惹起したことはまことに残念なことであり、申しわけないことであり、防衛庁として、全面的にその責任を負うべきものと考えております。
  168. 中路雅弘

    中路委員 大臣も責任があると言っているのだ。施設庁長官、あなたが一番責任があるのだぞ。それを、何にも言わないじゃないか。  時間も限られていますから、後のことで一言お尋ねしますが、責任があるとすれば、後の補償の問題ですね。あるいは、この応急対策を含めて、あるいは抜本対策を含めて、全面的にひとつ住民の意見も聞いて対応してほしい。  私、きょう時間ないので読めませんけれども、現地に行ったらこれだけ、これは文書で、住民の皆さんが今困っていること、要望ですね。例えば、マンション暮らしをしていても、食事の問題、交通費の問題、子供を抱えて大変なんですよ。家はまだ電気も切られている、水道も通らない。上の方の一種地域の米軍さえ避難しているじゃないですか、崩落するかもしれないということで。そういう状態の中で大変な不便を感じてやっておられる、そういう訴えがびっしり詰まっている。私は現地に行ったとき、読んでくださいということでもらったんです。  抜本対策についても言っているんですよ。例えば、こんな傾斜の住宅ですから、上の方の米軍住宅の一部分を、住宅部分を削っても斜めに直してほしい、階段をつけてほしい、そうした今後の問題についてもいろいろ要望が出ています。この要望にひとつ全面的にこたえて、補償の問題と、それから当面雨季を前にして大変な不安になっています。この点については施設庁、責任を持って住民の皆さんの声を聞きながらやっていきますか、一言。
  169. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 この事故によりまして被害に遭われました方々に、まず心からお見舞いを申し上げますとともに、被害の補償については誠意を持って対応してまいりたいと考えております。  周辺住民に対する補償問題の取り組みにつきましては、マンション居住者に対し、とりあえず見舞金を支給したところでありますが、現在ホテル等の生活を余儀なくされている住民の方々に対し、仮住居のあっせん等を含め、その生活の安全と安定の確保のため誠意を持って取り組んでいるところであります。今後、損害賠償についても、被害調査の上、責任を持って対処してまいる所存であります。  また、こういう事故が二度と起こらないように、恒久的な対策について先般私から防衛施設庁長官に指示したところでありますが、このたび、部外有識者、日本を代表するがけ地の崩落の専門家を網羅した対策委員会をあす設置することになり、一回目の検討会が行われることになりました。そういうことで、恒久的な対策、工事について実施してまいりたいと思っております。  なお、日本の各地で、施設庁が管理する急傾斜地でこういう問題が起こらないように、今回の事故の教訓を踏まえまして、特別な安全対策が必要か否かを把握しておくことが重要と考えまして、二月の二十五日、各防衛施設局長調査実施を指示したところであります。
  170. 中路雅弘

    中路委員 最後に言われた部分、私も質問でお尋ねしようと思ったんですが、もう今お話しありましたからあれですが、例えば横浜でもこういうがけ崩れの地域がいっぱいあるんですね。その中に、施設庁が管理しているところ、例えば小柴貯油施設なんかそうですね。こういうところはこの機会に全面的な調査をやるべきだということを、私からも要求しておきたいと思います。  時間が来ちゃってもう数分しかありませんから、もう一つお尋ねしようと思った上瀬谷通信基地のこと、外務省来ておられて申しわけないんですが、私の方からちょっとしゃべりますから、一、二問答えてください。  前も取り上げたことがあるんですが、在日米海軍の上瀬谷通信基地、これは二百四十二ヘクタールという広大な地域を、第七艦隊の通信や情報収集のために、受信するために基地としてあったわけですね。しかし、これは平成七年の十一月六日の外務委員会で外務省も答弁されていますが、ここを使っていた暗号通信を中心とする海軍保安部隊あるいは太平洋統合情報センターなどの分遣隊は、全部廃止か、あるいは移動して、同年の秋までにいなくなったんですね。  これらの部隊の廃止や移動によって、この部隊が使用していた受信用アンテナも、私も現地に行きましたけれども、全部取り払われました。このアンテナで、広大な地域が電波障害防止制限地域として制約を受けてきたわけです。しかし、この部隊が移動したわけですね。廃止になったわけですから、今金網で囲われている建物の一角だけが使われている。だから、表に行きますと、正面の看板も、上瀬谷通信施設という看板じゃなくて、上瀬谷支援施設というふうに変わっています。  これだけの広大な地域が事実上今遊休化しているんです。だから、横浜市初め各地からこの返還の問題を要求されています。  私が二年前にこの委員会で取り上げたように、米軍はこの地域に大量の、六百戸の米軍住宅をつくる計画で、既に具体的な案を太平洋軍がつくっているわけですね。この前取り上げました、これは英文の膨大な住宅建設の案です。私は、この問題はまだ話が来ていませんという答弁が来るのはわかっているんですけれども、こういう計画が進んでいる。  しかし、遊休となっている土地は当然地位協定からも返還すべきなんです。それをずっと延ばして、永続してまたこれを米軍に貸そう、こういうことは許されないと思うんですね。  今、通信基地はまだやっていますからと言いますけれども、この通信基地は、前にいた部隊と違って全く別の部隊なんですね。アンテナも要らない、P3C等の哨戒部隊、連絡部隊です。だから、通信でも全く任務が違いますから、このアンテナがあった地域は完全に今遊休化している。  この返還について当然日米で協議をしてほしいということを、もう時間になりましたので一言お聞きをして、答弁いただきたいと思います。外務省と施設庁、両方からお願いします。
  171. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 上瀬谷通信所につきましては、横浜市を初め、地元自治体の皆様から強い返還の要求があることは承知しているところでございます。  他方、この通信施設は現在も米海軍第七艦隊隷下の第七十二任務部隊の司令部として使用されておりまして、日米安保条約の目的達成のために必要なものであると認識しております。第七艦隊麾下の第七十二任務部隊の司令部が駐留しているわけでございますけれども、この部隊は通信関係の任務を負っておりまして、また機能といたしまして、マイクロウエーブタワー一基が現地に存在しているというふうに承知しております。  こういうような状況にかんがみまして、現時点で米側に返還を求めることは考えておりません。
  172. 大森敬治

    大森(敬)政府委員 ただいま外務省の方からお答えがあったとおりでありまして、私どもも、現在の上瀬谷通信所、現在も通信施設として利用されているというふうに認識しておりますし、また、現段階におきまして、この通信施設が返還義務の対象となっているというふうには私どもも判断しておりません。
  173. 中路雅弘

    中路委員 これで終わりますけれども、改めて論議しますけれども、この通信施設、ああ言うと思ったんだよ、通信をやっているからと。しかし、今いる部隊、七十二任務部隊は第一哨戒群ですね。これは私が言っているように、前の部隊と全く違って、この地域は必要ないんですよ、アンテナも。  今、その機能について、時間がありませんから論争できませんけれども、当然このアンテナがあった地域は遊休化しているんです。ただ通信が違っている、前も通信だ、今度も通信だ、そんなことでごまかしは許されないんです。このことを改めて指摘をして、質問を終わりたいと思います。
  174. 二見伸明

    二見委員長 次に、辻元清美君。
  175. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党の辻元清美です。  私は、今国民的に関心がある、いわゆる非核神戸方式について質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、地位協定の話から入りたいと思います。  地位協定三条、五条の問題ですが、アメリカの船舶が日本にある施設及び区域以外の港、神戸や苫小牧、それから函館や高知、今いろいろ議論されておりますが、この以外の港に入る場合、同船舶が享受し得る特権や免除は、第五条で定められているほかには特に明文規定がないと承知しているんですが、それでよろしいでしょうか。
  176. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 地位協定第五条、御指摘の条文でございますけれども、読み上げることは省略した方がよろしいかと思いますが、いずれにしましても、ここで該当します合衆国の船舶というものは、入港料または着陸料を課されないで日本国の港または飛行場に出入りすることができるという特権を、特権と申しますか、これは権利を認められているわけでございます。これが、いわゆる米軍艦船は五条によって我が国の港への出入りの権利は認められているということでございます。  それで、五条に関しましては、先生御承知のとおり合意議事録がございまして、そこでまた別途細かな規定がございます。
  177. 辻元清美

    辻元委員 ということは、この五条による入港の際は、地位協定の定める通告を行いさえすればその施設及び区域へ入ることができるという三条と違いまして、三条の場合は施設・区域に自由に出入りするわけですが、いつでも自由に日本の港に出入りすることができるわけではないという理解でよろしいわけですね。三条とは違いますよね。
  178. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 この五条に該当いたします米国の船舶は、この地位協定上の権利といたしまして出入の権利を認められているわけでございます。したがいまして、もちろん、いろいろな港湾の技術的な問題等につきまして、その権利を行使する際にいろいろな調整が行われるということはあろうかと存じますが、入港するという権利自体、それは条約上、法律上の権利でございます。したがいまして、その権利が全くゼロになるというようなことはない、法律上担保された権利である、こういうことでございます。
  179. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、一九六〇年に署名されました米軍地位協定合意議事録というのがあります、御存じだと思いますけれども。この議事録によりますと、地位協定第五条に関する了解事項としてこのようになっております。「この条に定めのある場合を除くほか、日本国の法令が適用される」と記されているわけですね。これは、「日本国の法令が適用される」というこの部分なんですけれどもアメリカ船舶及び航空機に日本の法令を遵守する義務があるというふうに理解されるかと思います。この場合、この「日本国の法令が適用される」、「日本国の法令」というのはどのようなものなんでしょうか。
  180. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 お答え申し上げます。  一般国際法上、外国軍隊は、接受国といいますか、受け入れ国との間で特別の条約とか取り決めがある場合を除きまして、一般的には接受国の法令の適用がないということでございますが、我が国に駐留する米軍につきまして、この日米地位協定第五条に関する合意議事録四項、先生今御指摘の項目でございますが、それにおきまして、「この条に特に定めのある場合を除くほか、日本国の法令が適用される」旨、規定されております。  この項に言います「日本国の法令」についてのお尋ねでございますが、これは地位協定第五条の趣旨からいたしまして、米軍の船舶――航空機、車両、人員等も含みますが、そういいました通行主体の通行行為自体を通行秩序の維持観点に立って規制する日本国の法令を指すというふうに従来から解してきているところでございます。
  181. 辻元清美

    辻元委員 きょうは運輸省にもお越しいただいているんですが、運輸省の方にお聞きしたいんですが、港に関する場合、この日本の法令というのは具体的には何になりますか。
  182. 川嶋康宏

    ○川嶋政府委員 港の管理運営に関連いたしましては、港湾法がございます。
  183. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、この港湾法と、その港湾法にのっとってつくられております港湾施設条例はどうなりますでしょうか。
  184. 川嶋康宏

    ○川嶋政府委員 施設条例につきましては、それぞれの港湾を管理しております港湾管理者が管理運営上必要なものを定めている条例と解しております。
  185. 辻元清美

    辻元委員 先ほど私、運輸省の方に問い合わせましたら、お答えは、港湾法と港湾施設条例であるというふうに、電話ですけれどもお答えいただいているんです。  そうしますと、この神戸の問題ですね、引き続きまして具体的に幾つか伺っていきたいんですが、これは運輸省の方にお聞きしたいんですが、神戸港の港湾管理者はどこになるんでしょうか。
  186. 川嶋康宏

    ○川嶋政府委員 神戸市でございます。
  187. 辻元清美

    辻元委員 ということは、神戸市は神戸市港湾施設条例にのっとった運用をする義務を負うわけですね。
  188. 川嶋康宏

    ○川嶋政府委員 義務という御指摘でございますけれども、港湾を適正に管理する、そのために必要な条例を定めているというふうに解しております。
  189. 辻元清美

    辻元委員 さて、そこで、今お答えいただきましたこの五条による入港の「日本国の法令」、港湾法であるというふうに運輸省の方からお答えいただいておりますけれども現状では、昨年も何隻かのアメリカの艦船も日本入港しております。これは五条における入港であると思われますけれども、港湾法及びそれぞれの地方自治体が定めております港湾施設条例のもとでの入港と理解してよろしいわけですね、これを遵守しての入港
  190. 川嶋康宏

    ○川嶋政府委員 港に入港するその実績につきましては、入港について必要な手続をとって、その上で港湾管理者が判断して入港させているというふうに解しております。
  191. 辻元清美

    辻元委員 ということは、遵守しての入港をされているというふうに理解いたしました。そうでないと、昨年も、私は手元にたくさん持っておりますが、遵守せずに入港しているというようなことはちょっと許されるべきことではないと思いますので、そのお答えで結構かと思うんですが。  さて、今問題になっております神戸方式につきましては、一九七四年の十一月の参議院の運輸委員会で議論されております。その一節をちょっと御紹介したいんですが、これは政府委員の方の答弁です。  「米艦船が日本の港湾に入港する場合には、」長いですからちょっと中略なんですが、「港湾管理者あるいは港長に通告することになっております。」ちょっと中略で、「港湾管理者が管理しておりますところの港湾施設を米艦船が使うという場合には、港湾法上の施設の使用条例等がございまして、港湾管理者の許可を受けるということに」なりますというふうに政府答弁が行われていますが、現在もこれは変わりありませんね。
  192. 川嶋康宏

    ○川嶋政府委員 具体的にどの施設を使うということについては、港湾管理者の許可を受けて使用しているということでございます。
  193. 辻元清美

    辻元委員 ということで、このときの議事録は、神戸市の、神戸の港についての議論ですから、これは神戸の港に限っての議論をしておりますので、繰り返しますが、使用条例等があるので管理者の許可を受けるというような神戸方式をめぐる議論なんです。  ということは、神戸港の港湾管理者である神戸市が、外国の軍艦の入港に関する規制も含めて、神戸港の利用全般に関して必要な規制を行うことが認められているというふうに理解できますけれども、それでよろしいですか。
  194. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 米国の艦船がそもそも我が国の港に入港できるか否か、それを認めるか否かという問題と、それから港湾管理者が港湾の秩序等のために種々の、行政と申しますか措置をとるということとは次元の異なることだというのが従来からの我々の考え方でございます。  もちろん、外国軍艦の本邦寄港そのものにつきましては、外交関係の処理に責任を有する立場から、国がその是非を判断すべきものであるというのが一般的な立場でございまして、米国の艦船につきましては、先ほど来言及のございます地位協定の第五条により、米国の艦船は、我が国の港への入港を権利として認められているということでございます。  他方、地方公共団体に対して認められております、例えば係留場所の指定でありますとか、港湾施設の使用に関する規制というものは当然認められているわけでございますが、これはあくまでも港湾の適正な管理及び運営を図る観点からの港湾管理者としての地位に着目してのものでございます。  私が先ほど申しましたのは、米国艦船は入港そのものについては条約上の権利として認められ、またその入港の可否を決めるというのは本来的に国の責任である、こういうことでございます。
  195. 辻元清美

    辻元委員 次元の異なることであるとおっしゃいました。  そうしますと、法的な根拠ですね。今地位協定の五条とおっしゃいましたが、この五条は、先ほどの議事録によりますと、「日本国の法令が適用される」。五条では、免除されている事項は、入港料、着陸料を課されないで日本の港または飛行場に出入りできること等々具体的に書いてありますけれども、これのどこを読めば三条と同じように自由に入港できるというふうに理解できるんでしょうか。法的な根拠です。「日本国の法令が適用される」ということとの整合性ですね。これは港湾法を指すというふうな話でしたが、その整合性について御説明ください。
  196. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 先ほど御答弁申し上げましたことの繰り返しになるかもしれませんが、先ほど御質問のございました地位協定五条に関する合意議事録の四項でございますけれども、「日本国の法令が適用される」という規定の趣旨は、そもそも五条の趣旨からいたしまして米軍船舶等が通行主体であるということ、その通行主体というものに着目いたしまして、通行行為自体を通行秩序の維持観点に立って規制する法令を指すということでございます。  他方、先ほど来申し上げておりますとおり、入港を認めるか否かという、そのこと自体につきましては、これは外交関係の処理でございまして、法的な根拠はと言われますと、あえて申せば憲法第七十三条におきまして外交関係の処理というのは内閣の事務であるということが特に明記されているところでございます。
  197. 辻元清美

    辻元委員 ということは、この五条における入港に際しての「日本国の法令が適用される」という、この法令の港湾法の中の、例えば十二条の一項四号の二にあります水域施設の使用について必要な規制を港湾管理者が行うことができるとか、五号の二にあります「港湾区域内における入港船又は出港船から入港届又は出港届を受理すること。」ができる等々については適用されないと外務省はお考えなんでしょうか。
  198. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 港湾法の個々の条項の適用の有無に関しまして、外務省は主管でもございませんので権威あるお答えができないかと思います。  いずれにしましても、先ほど来申し上げておりますのは、五条の趣旨から見まして、通行行為、通行行為と申しますか通行の秩序の維持観点に立った法令の条項が適用される、こういうことでございます。
  199. 辻元清美

    辻元委員 私は今のはお答えになっていないと思いますけれども、運輸省の方に同じ質問をお聞きしたいと思います。  それでよろしいんでしょうか。十二条の一項四号の二、五号、これが適用されない、今そういうような状況で、去年も艦船がたくさん入港していますけれども、そのような理解で入港させているんでしょうか。どうですか。
  200. 川嶋康宏

    ○川嶋政府委員 御指摘の点につきましては、港湾管理者は尊重義務を有しているということと解しておりますので、それに従いまして対応しているということと解しております。
  201. 辻元清美

    辻元委員 今のもちょっとお答えいただいていないように思うんですが、この港湾法の十二条について、米国の艦船については港湾管理者は権限を行使できないということかどうかだけ答えてください。
  202. 川嶋康宏

    ○川嶋政府委員 先ほどお答えいたしましたとおり、尊重義務がございますので、その義務に従いまして措置をしているということでございます。
  203. 辻元清美

    辻元委員 しかし、先ほど申し上げました運輸委員会、一九七四年十一月の政府答弁では、「使用条例等がございまして、港湾管理者の許可を受ける」。「許可を受ける」ということは、許可というのは、裏腹に規制その他が含まれると思うんですけれども、いかがでしょうか。
  204. 川嶋康宏

    ○川嶋政府委員 先ほどもお答えいたしましたけれども、具体的な施設の利用についてはそのときに、あいている、あいていないとかそういったものを含めて判断をいたしまして港湾管理者が許可をしているということでございます。
  205. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、次に、先ほどの北米局長の御答弁だったと思いますが、入港に関して国が是非を決めるというようなことをおっしゃいました。  さて、この神戸方式については非核証明を提出させることを条件にしているというところが今争点になっているわけですけれども、これにつきまして、一九八四年三月十七日の参議院予算委員会で、当時の総理大臣のと申し上げましたら皆さん、うっ、来たかと思われるかもしれませんが、中曽根康弘総理がこういう答弁をしています。総理大臣がしている答弁です。これは非核証明提出についての、いわゆる神戸方式についての議論の中でです。「神戸市は神戸市という自治体の固有の権限に基づいて、神戸市に関することについてそのような処置をしておる。」「そのような」というのは、この神戸方式のことです。「それ」これは神戸方式を指しますが、「それは地方自治の本旨に基づいて神戸の市長及び市議会がとっておる一つのやり方でありまして、それはそれとして我々はよく理解できるところであります。」また、こうもお答えになっています。法律の範囲内で行うことには我々もできるだけ協力するのが筋だとおっしゃっているんですけれども政府の御見解はこのときの中曽根さんの、総理の御見解を変えるということですか。
  206. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 御指摘の中曽根総理大臣の答弁でございますが、これは神戸市の方針は神戸市としての考え方を表明したものとして受けとめているとの御趣旨と考えます。  また、同総理は、御指摘答弁を行われました際を含めまして累次の機会に、自治体がその考え方に基づき決議等を行うことは自由であるが、非核三原則等外交上の問題は中央政府の専管的な所掌事項であること、国と地方公共団体とは相互に異なる次元においてそれぞれの事務を処理しており、はっきり分けて考えられるべきであるとの趣旨を繰り返して述べておられるところでもございます。
  207. 辻元清美

    辻元委員 この中で、よく理解できる、協力するのは筋だということをおっしゃっていますが、同年に参議院の予算委員会で、岡崎外務省調査企画部長が当時このようなこともおっしゃっているわけですね。神戸にオーストラリアの駆逐艦が入港する際に、オーストラリア政府から駆逐艦に核を積んでいないとの口上書を外務省が受け取って神戸市に伝えたということをおっしゃっていまして、これはまさしく中曽根さんがおっしゃっている、理解して協力するのが筋だということを外務省が実行されている事例というふうに受けとめられるんですが、それでよろしいでしょうか。
  208. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 御指摘の昭和五十九年の参議院予算委員会における答弁でございます。これは、過去におきまして外国軍艦が神戸港に寄港する際に、たまたま当該艦船の核兵器不搭載の情報が神戸市に対して提供された事例があったという事実関係を御紹介申し上げたものでございまして、その後におきまして、国会におきます答弁や地方自治体からの照会に対する回答を通じまして、いわゆる非核証明書に対する政府としての考え方は明確にいたしまして、その後一貫した姿勢をとっておるところでございます。したがいまして、神戸市において行われていた運用を容認したということではございません。
  209. 辻元清美

    辻元委員 しかし、このオーストラリア政府からの口上書を神戸市に伝えたというのは事実ですね。
  210. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 そのような事実はございます。
  211. 辻元清美

    辻元委員 ということは、私の理解によりますと、実際に神戸市に対しても、外務省はこの非核条例――条例ではありませんね、この神戸方式というものができてから、それを認めるような行動をとっていると言えるんじゃないでしょうか。
  212. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 神戸市議会の決議でございますけれども、これは昭和五十年の三月に、御承知のとおり「核兵器積載艦艇の神戸港入港拒否に関する決議」という形で採択されたものと承知しております。これは、当時、議会における決議でございまして、神戸市から外務省に対してこの決議に関する説明が行われたということもございませんでした。また、これにつきまして当省の、と申しますか、政府の見解について照会がなされたということもなかったことから、外務省として見解を神戸市に伝えるというようなことも行われなかったというのが当時の状況であったと存じます。先ほど申しましたとおり、その後このことが整理されまして、いわゆる非核証明書に対する政府としての考え方を明確にしてきたということでございます。
  213. 辻元清美

    辻元委員 私の質問とちょっと観点が違うお答えだったのではないかと思うんですが、もう一点伺いたいんですが、この神戸市のいわゆる神戸方式をとって以来、アメリカを含みます諸外国から、外務省は抗議やクレーム、批判を受けたことはありますか。
  214. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 ちょっと私の記憶で、抗議とかクレームとかということでは特別のことはなかったと思いますが、事情についての説明と申しますか、を求められたということはあったかと思います。
  215. 辻元清美

    辻元委員 それはいつ、だれから求められましたか。
  216. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 外国との関係からいいますと、例えば最近では、カナダの艦船の神戸市への入港問題というのが昨年ございましたが、その際にもカナダとの間で我々の承知している限りのことはお伝えしたということはございます。
  217. 辻元清美

    辻元委員 それは報道等をされておりますので私も存じておりましたけれども、それ以外はないと。  私、防衛庁長官伺いたいんですけれども、先ほど中曽根総理の答弁につきましてるる御説明がありましたけれども、総理が答弁の中で、理解できるとか協力するのが筋だというようなことをはっきりおっしゃっている点というのは、これは非常に重いと思います。予算委員会でそれもおっしゃっているわけですね。この点について防衛庁長官はどのようにお考えでしょうか。
  218. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 神戸方式を条例化しようとする自治体の一連の動きは、港湾管理者である地方公共団体が外国艦船が核兵器を搭載していないことを証明する書類を提出しないという理由により外国軍艦の港湾施設の使用を規制してこれを認めないこととする権能を与えるものであります。このような場合に我が国への寄港を認めるか否かというのは外交関係の処理に当たる国の事務であり、地方公共団体によるかかる権能の行使は、国の寄港の同意に関する決定に地方公共団体が関与し、またこれを制約することになり、港湾の適正な管理及び運営を図る観点からの港湾管理者としての地位に基づく権能の範囲を逸脱しているものであって、地方公共団体の事務としては許されないところと考えます。  しかし、このような見解については既に小渕内閣総理大臣や外務大臣から累次明らかにされているところであり、私も同じ認識を持っているということをお答え申し上げておきたいと思います。
  219. 辻元清美

    辻元委員 あと三十秒で終わりますが、中曽根さんの答弁と違うじゃないかと、小渕さんはそう答弁していますから、政府は変えたということですねというのを大臣に聞きたいんです、大臣に。  今だらだらと――だらだらと言ったらちょっと失礼ですが、お読みいただいたんですが、お書きになったものを読んでいただくよりも、大臣の気持ちを聞かせてください。これは国民が注目しているところです。
  220. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 御指名でございます。事実関係だけ、一言だけ言わさせていただきたいと存じます。  中曽根総理はその日の答弁でも、例えば「国は国、地方自治体は固有の自治権に基づいて地方自治体の行為を行う、そういう次元が違うものであるというふうに御理解願いたいと思います。」それはやっぱりはっきり分けて考えるべきであると。また、やはり非核三原則のこの国策という外交法上の大方針というものは国家としては基本にあるわけでありますということもおっしゃっておられますということを、事実として補足させていただきます。
  221. 辻元清美

    辻元委員 またやります、この問題は。  以上です。
  222. 二見伸明

    二見委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時十六分散会