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参考人(
速水優君) 本日は、
日本銀行の
金融政策運営につきまして
説明の機会を与えていただきましたことを厚くお礼申し上げます。
本年四月に新しい
日本銀行法が施行されまして八カ月が経過いたしました。新法は、
日本銀行による政策運営の柱として、独立性と透明性という二つの理念を掲げております。中央
銀行が独立して
金融政策の責務を担っていくためには、その背後に国民からの揺るぎない信認が必要となります。また、そうした高い信認を得るためには、政策決定過程の透明性を確保していくことが不可欠でございます。私
どもはこの点を強く念頭に置きながらこれまで政策運営に当たってまいりました。
アカウンタビリティーの向上の一環として、
金融政策決定会合の議事要旨の公表などに加えまして、このほど日銀法第五十四条に基づいて初の半期
報告書を
国会に提出いたしました。本日は、半期
報告書に基づいて、
日本銀行の
金融政策運営につきましての私
どもの考え方を述べさせていただきたいと思います。
まず、本年の
日本経済の
動向でございますが、一言で申しますと、景気の低迷と
不良債権問題の重荷が相乗的に経済
状態を悪化させてきたように思われます。
設備投資や個人消費などの
民間需要が弱い
状態を続けるもとで、
企業は大幅な減産を継続してまいりました。この結果、
企業収益が悪化し、雇用・所得環境も一段と厳しさを増してまいりました。物価も年央以降軟調に推移しております。このように、
日本経済には、
民間需要の落ち込みが生産や所得の減少をもたらし、これが再び
民間需要を減少させるという
マイナスの循環が働いております。
金融面を見ますと、
民間銀行の
融資姿勢は、
不良債権問題に伴う実質的な自己資本の目減り、
銀行自身を取り巻く
資金調達環境の厳しさ、さらには
企業業績の悪化による借り手のリスクの高まりといったような
要因が複雑に絡み合って、昨年末以来、一段と慎重なものとなってまいりました。こうした
金融面からの制約は
中小企業の
設備投資などに悪影響を与え、景気の下降圧力をさらに強める
要因となっております。
この間、
金融システム安定化
関連二法の成立や総合経済
対策の決定など、さまざまな手だてが講じられてきましたが、
民間経済の力が一段と弱まったことや、夏場以降、
金融システムに対する不安が再び強まったことなどから、景気の悪化にはなかなか歯どめがかからなかったのが実情でございます。
こうした情勢を踏まえまして、
日本銀行は、九月九日の
金融政策決定会合におきまして、経済がデフレスパイラルに陥ることを防止し、景気の悪化に歯どめをかけますために、一段の
金融緩和に踏み切りました。
具体的には、
金融調節運営の目安としております無担保コールレート・オーバーナイト物の誘導目標を、平均的に見て公定歩合〇・五%をやや下回るというかつてのものから、〇・二五%前後というところまで引き下げました。
御存じのとおり、九五年九月の公定歩合引き下げ以来、我が国の金利水準は極めて低い
状態が続いてまいっております。そうしたもとで、金利収入に多くを依存している家計にとりまして大変厳しい
状況にあることは私
どもも十分承知しているつもりでございます。しかし、現下の経済情勢のもとでは、やはりまずもって
金融面から経済活動を下支えしていくことが重要となります。投資採算を改善し
企業収益や資産価格を下支えすることが経済の悪化を食いとめ、ひいては雇用や所得によい影響を与えることになります。私
どもとしましては、そうしたマクロ的な視点に立ちまして九月の
金融緩和を決定したものであります。
また、こうした
金融調節方針のもとで、
日本銀行は、
金融市場に対して潤沢な
資金供給を行い、市場の安定に努めてまいりました。特に、
金融システム不安が根強く続くもとで、年末、
年度末越えの市場金利に強い上昇圧力がかかっていることを踏まえまして、長目のオペレーションを積極的に実施してまいりました。
ただ、こうした思い切った
金融緩和の継続にもかかわらず、
民間銀行の
金融仲介機能の低下を背景に、
企業の
資金調達環境は依然厳しい
状況が続いております。
日本銀行では、このような
企業金融の
実態を踏まえまして、先月十三日、さらにオペレーション・
貸し出し面からの新しい三つの
措置をパッケージで決定したわけでございます。
第一には、コマーシャルペーパー、いわゆるCPオペをさらに積極的に活用することとしまして、買い入れ
対象となるCPの期間を
拡大した次第です。第二には、
企業金融を支援するための臨時貸出
制度を創設し、今月から実施することといたしました。第三に、
民間企業の
債務である
社債や証書貸付
債権を
金融調節の中で一層有効に活用するため、これらを根担保とする手形オペレーションの導入について検討を進めることとしました。
私
どもとしましては、
日本銀行の資産の健全性に留意しつつ、今回の
措置により
企業金融の円滑化に最大限の努力を払ったつもりでございます。
冒頭に述べましたように、現在の
日本経済は
金融面と実体経済面とが相互に強い連関を示しながら低迷を続けております。
日本銀行は、そうした情勢を踏まえまして、
金融政策面から、
金融市場に流動性を供給し、あるいはその供給の仕方を工夫することによって
対応を図ってきた次第であります。
ただ、
日本経済が活力を取り戻すためには、そうした流動性の面からの
対応に加えまして、我が国
金融システムの早期立て直しを図り内外からの信認を回復すること、また即効性のある
需要を追加することが同時に必要となります。
金融システム問題につきましては、十月に
金融機能早期健全化法が成立し、それに基づいて主要
銀行の多くが公的資本取り入れの意向を表明いたしております。こうした動きや国際的な
信用収縮懸念の後退もありまして、
金融市場の不安感は最近になって徐々に鎮静化の
方向にあるように見られます。また、年末に向けての
企業金融も、
金融政策面からの
対応や政府によるさまざまな
措置の効果もあって、ひところに比べ幾分緩和してきたようにうかがわれます。
このほか、外資や異業種間を含めて
金融業界再編の動きも目立ってきております。私としましては、こうした
金融機関自身による経営改善努力を率直に評価したいと思います。ただ、一たん大きく毀損された
金融システムを健康体に戻すのは決して容易なことではありませんので、引き続き各方面からの粘り強い努力が不可欠と考えます。
実体経済面では、四月の総合経済
対策に基づく公共投資が明確に
増加してきています。私
どもも、その効果が本格的にあらわれてくるにつれて、今後、景気の悪化テンポは次第に和らいでくるものと見込んでおります。ただ、国内の需給ギャップは既に
かなりの大きさに達しておりますために、当面、厳しい経済
状態が続くことに変わりはありません。したがって、現時点では、
緊急経済対策に盛り込まれた
需要追加策などが早期かつ着実に実行に移されていくことを強く期待している次第でございます。
さらに、このように
金融、
財政の両面から経済活動を下支えするもとで、景気が本格的な回復に向かうためには、やはり
企業や家計のコンフィデンスがしっかりとしたものとなることが必要になります。そのためには、
民間経済に新しい息吹が生まれることが重要であり、経済の構造改革を引き続き力強く推し進めていくことが大切であります。もしそうした努力を怠れば、
日本経済には巨額の
財政赤字だけが残されることにもなりかねません。
世界を見渡しますと、米国経済は次々と生まれる技術革新のもとで
長期にわたる成長を謳歌しております。欧州では、長年の悲願であった通貨の統合がいよいよ明年一月に実現します。世界は激しく動いています。
日本経済もそうした国際的なダイナミズムのうねりを真正面から受けとめて、みずからの構造改革を実現し、新たな発展を目指していくことが必要です。そのことは、我が国自身にとっても、アジアにとっても、さらに世界にとっても重要なことと確信しております。
この点、
金融面でも、
金融市場の一層の整備、育成を進めていくことが待ったなしの課題となります。そのことが国内のみならず海外から見ても円の使い勝手をよくして、真の円の国際化に資するものと考えます。
日本銀行としても、これらの課題の達成に向けて、今後とも中央
銀行の立場から全力を挙げていく考えです。
また、
日本の中央
銀行として、物価の安定や信用秩序維持のための業務を運営していくに当たっては、
日本銀行自身の財務の健全性を維持していくことが重要な課題となります。このことは一国の信用にもかかわることでございますし、中央
銀行として常に守らなければならない原則と考えております。今後とも資産内容の健全性維持に努めるとともに、政策・業務運営の機動性を確保する観点から、資産の流動性にも最大限の配慮を払っていく考えであります。
このような
日本銀行としての決意を申し述べまして、私からの
説明とさせていただきます。
国民の皆様並びに議員各位の御理解と御支援をよろしくお願いいたす次第でございます。